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届かぬ光
17
:
その名前で、
:2011/11/25(金) 18:03:37 ID:jh65eeck
今まで学園で恐れられることしかなかった俺を、容姿にも性格にも似つかない可愛らしい愛称で呼ぶ唯一の人間がいる。
「ちーちゃん、
ちーちゃんの耳はきらきら光るピアスがたくさんついてるのね」
真ん丸の大きい目を輝かせ、彼女は愛らしい声で昔の童話にでてくるような言葉を喋った。
「…自分の力を制御するためにつけてるもんだからな」
ひとつ溜息をつくと彼女はむう、と頬を膨らませるという分かりやすい拗ね方をした。
多分俺の返答が気に食わなかったのだろう。
もっと別の言い方をしたほうがよかったのだろうか。
しかし彼女は頬を膨らませながらも不満は零さず、また口を開いて愛称を呼んだ。
「ちーちゃん、ちーちゃんの目はとっても綺麗な色をしてるのね」
「………生まれつき」
「それにちーちゃんの手はとっても細くて折れちゃいそう」
「……特に気にしたことなかった」
「……それから!」
彼女が声を張り上げる。
「透明感のある、芯の強い声」
「…苺花の声は可愛いよな」
すると膨れっ面な顔が一気に満面の笑みへと変わった。何が嬉しかったのだろうか。
よく分からずにいると、彼女が「もう一回言って」と無邪気に笑ってみせる。
「…苺花の声は可愛いから、」
「もう一回!」
「苺花の声」
「もっともーっと繰り返して!」
「苺花の、」
「ちーちゃんがやっと私の名前を呼んでくれた!」
――苺花
そんなことかと笑うとそんなことなんかじゃないよと反論された。
名前を呼ばれたことですごく嬉しそうな笑みを浮かべる単純な彼女に感化されたのか、
いつもは呼ばれるのが恥ずかしくて嫌だった愛称も今なら許せる気がした。
「苺花、名前呼べよ」
「ちーちゃん?」
もうずっと、これから先、一生それでいいよ。
「これから先も、ずっとその呼び方で呼べよ」
「当たり前だよ! ちーちゃんは、ずっとちーちゃんなんだから」
そうやって、俺を優しくしてくれるその名前で声で、彼女が変わらず呼び続けてくれたらいい。
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