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武勇伝まとめ

33第九次ダンゲロスメインGK:2012/06/28(木) 22:59:07
夢売 誘子

■武勇伝
ドリームカンパニーは所属グループの戦費を賄うために、1億円を融資している。利率は0.001パーセント(単利)である。
所属グループ以外に対する融資を含めると、その総額は20億円にも上るが、返済された額は1億にも満たない。
来栖曰く、「これじゃ、いいように利用されているだけだ」であるが、あながち間違いでもない。
誘子自身は「ボランティアでやってることだから、儲けはいらない」と語り、受け取った利息は全てボランティア団体に寄付している。

「いいよ」

無表情で頷く少女。彼女こそが誘子その人である。
周囲には誘子のほかに眼鏡をかけた少年と、2人の少女がいる。うち一人は氷雨であり、もう一方は3年生と思われた。
「ありがとう! きっと返すからね!」
3年生と思しき少女が、その場で跳ねる。
「いつでもいいよ」
「もう、ほんと誘子ちゃん大好き!」
少女は誘子の頬にキスをした。
その側でトランクを担いだ少年――来栖は、その少女を蔑むような目で見つめる。
「ほら」
来栖はトランクを少女へと投げた。少女は慌てて手を伸ばす。
「あ、サンキューねー!」
少女はトランクを受け取ると、瞬く間に姿を消した。
「きっと返ってきませんよ」
ぼそりと来栖は告げた。
「そんなことないですよ! とってもいい先輩なんですから」
氷雨は頬を膨らませた。その様子を見て来栖は目を細める。
「何を根拠に……」
「どうしてそう言いきれるの?」
誘子は来栖の方を向き、そう尋ねた。
すると、来栖は待ってましたと言わんばかりに、中指で眼鏡を上げた。
「これで五度目ですからね。あのサークルにはすでに2350万円ほど貸し付けています」
その言葉を聞き、氷雨は呆然と口を開いた。
「なるほど」
それを聞き、誘子はぽんっと手のひらを打つ。
氷雨は申し訳なさそうに、しゅんっとした。
しかし、来栖は誘子の方を向いたまま、深くため息をつく。
「知ってて貸しましたよね?」
「まぁ、見過ごせなかったから」

「……」
その言葉に来栖は呆れと悲しみの入り混じった表情を浮かべる。
「もっと助けるべき人はたくさんいますよ」
「それでも、あの人が使ったお金は、また別の誰かへと渡るでしょ? それは回りまわって、私の手が届かない誰かを救うことになるかもしれない」
その言葉を聞き、氷雨の顔がぱっと明るくなる。
それを見て来栖は氷雨を睨んだ。眼鏡のレンズがギラリと光った。来栖の視線に気づいた氷雨はしょぼんとまた俯く。
「誘子はもっと、自分のためにお金を使うべきだ。人が良すぎる」
来栖は誘子にそう告げた。しかし、誘子は首を振る。
「私はみんなが言うような聖人君子じゃないよ、人が良いってのも買い被りだよ」
「僕はもっと贅沢をすべきだと言ってるんです。その理屈なら、もっと自分のためにお金をかけても良いじゃないですか」
「かけてるよ、もう。十分に私は贅沢だよ、こんな贅沢なことない」
「失礼ですが、客観的に見て、そうは見えませんよ。現実をみてください。そんな状態になってまで、身を削って誘子は働いたのに、手元には何が残りました?」

「うん。だから、また頑張って働かなきゃ」
誘子は無表情でそう告げる。その奥でどのような感情が渦巻いているのか、もはや窺いしれない。
「私もお手伝いします!」
いつの間にか氷雨も、けろっとしており、また張り切っている。
来栖は拳を固く握りしめる。はじめの頃は、来栖も誘子を止めるべく実力をもって阻止していたが、来栖がどれほどかんばっても誘子を止められなかった。
それに、誘子のこの行動は、この学園において誘子自身を結果的に守ることに繋がっている。

故に今は、来栖は静かにただ流れに従うことにした。だが、それは自らの無力さをより自覚することになる。
『キシシ』
来栖は聞いた。宙空から彼をあざ笑う、その声を。
仔貘の姿をしたその影は、誘子のすぐ傍らで浮遊している。

誘子はその仔貘の頭を撫でた。


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