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海未「江戸の町は華やかですね」

1名無しさん@転載は禁止:2017/09/02(土) 01:54:18 ID:SLKx4vTk
初投稿なのでおかしいところや直してほしい所があれば教えてください
スクールアイドル要素はないです

2名無しさん@転載は禁止:2017/09/02(土) 01:55:44 ID:SLKx4vTk
第一話 悪行は砂糖菓子と共に



海未「人の賑わい多く、何より笑顔にあふれています。さすが日の本の中心といったところでしょうか」

じりじりと夏の暑さが迫る昼時、人々は日陰を探し、軒先の店員が打ち水などをしている往来の真ん中で、紺色の着流しを身に着け、腰に一振りの刀を提げている一人の侍が辺りを眺めながらそう呟いた。

???「じー」

海未「故郷で仕事にあぶれ、流浪人として路頭に迷うならばと、一縷の望みをかけて訪れてみましたが、ここならいい仕事が見つかりそうです」

???「じーー」

海未「しかし、私の懐は少々寂しいですね。果たして今日の宿に泊まれるほどあるかどうか・・・」

???「じーー、ねえそこのお人!刀を提げたお侍さん!!」

海未「いや、まずは宿を探さなければ!まだ来たばかりで右も左もわからないのですから日の昇っているうちに見つけないと、最悪野宿なんてことも・・・!」

???「もーっ!無視しないでよ!あなたに話しかけてるんだよ!」グイーッ

海未「へ?わ、私ですか?い、一体何用でしょ・・う・・・か」

???「ふえ?どうしたの?」

海未「か・・・か・・・!」

???「か?」

海未「かわいい!!です!」

???「へ?・・・ってうええ!?」カアアアッ///

海未「は!私は初対面の人にいきなり何てことを!す、すいません。いきなり変なことを言ってしまって・・・」

海未(しかし・・・本当にかわいいですね)

???「えへへ、かわいい。かわいいかあ」

海未「あ、あの?大丈夫ですか?」

???「はっ!大丈夫だよ!ちょっといきなりすぎてびっくりしちゃったよ。大胆なんだねえ、お侍さん」

海未「う、忘れてください・・恥ずかしいです」///

???「えへへ、どうしよっかなー?あ、そんなことより、私の名前は高坂穂乃果!江戸一番の甘味処『穂むら』の看板娘なんだ!あなた、ここらへんじゃ見ない顔だね!最近この町へ来た人かな?」

3名無しさん@転載は禁止:2017/09/02(土) 01:57:08 ID:SLKx4vTk
海未「穂乃果ですか。良い名前ですね。私の名前は海未です。確かに私は今朝がた、この町へ来ましたが・・・」

穂乃果「やっぱり!穂乃果、接客の仕事をすることが多いから人の顔を覚えるのが得意なんだ!ねえ海未ちゃん、お腹すいてない?穂乃果のお店で和菓子でも食べながら江戸のことについて教えてあげるよ!」

海未「え?い、いや、確かにお腹は空いていますが、お金はあま―――穂乃果「じゃあ決定!それに海未ちゃん立派な刀を持ってるしきっと武士の人だよね?穂乃果一回武士の人と話してみたかったんだー!」

海未「ま、待ってください!(どうしましょう!?このままでは今日の宿代が・・・!それに私はもう武士ではありませんし・・・)」

穂乃果「ん?どうしたの?」ジー

海未(言うのです!海未!あまり持ち合わせもありませんしお断りさせていただきますと!)

穂乃果「もしかして・・・いやだった?」ウルッ

海未(!!)

穂乃果「ご、ごめんね。なんか穂乃果一人で舞い上がってたみたい。迷惑だったよね――海未「いえ!そんなことはありません!」

穂乃果「え、でも・・・」ウルウル

海未「行きます!行かせてください!ぜひ江戸一番の和菓子とやらを食べさせてください!いやー!楽しみだなー!!」

穂乃果「ホント!?やったー!じゃあ行こう!すぐ近くなんだー」

海未(ああ、さようなら、私の財布・・・だってあんな可愛い娘の頼み、断れる訳ないじゃないですか・・・)

4名無しさん@転載は禁止:2017/09/02(土) 01:58:02 ID:SLKx4vTk



《甘味処『穂むら』店内》


海未「ええと、穂乃果・・・確かこの店は江戸一番の甘味処なんですよね?」

穂乃果「まあね!その言葉に偽りはないよ!偽りはない・・・けど・・・」


  ガラーーン・・・・


海未「お客が誰一人いないじゃないですかー!」

海未(ひょっとしてやばいところに連れて来られたんじゃ・・・)

穂乃果「だ、だってしょうがないじゃん!最近真向いに出来たお店にうちのお客全員取られちゃったんだから!」

海未「それにしたって客の一人もいないというのは・・・」

穂乃果「もー!文句はうちの和菓子を食べてから言ってよ!雪穂ー!お客さんだよー!」


  ガタンッ!ドタドタドタ!!ガラララー!!


雪穂「う、嘘!お客さん!?冷やかしじゃなくて!?いいい一か月振りのちゃんとしたお客さん!!??」

穂乃果「そんなこと教えなくていいから早くお茶菓子の準備して!あと口にあんこついてるよ!」

雪穂「うわわ///ちょちょちょーーっとお待ちくださいねお客さん!すぐにご用意しますので!」

海未(やはり不安です・・・)

5名無しさん@転載は禁止:2017/09/02(土) 01:59:00 ID:SLKx4vTk


《数分後》


雪穂「先程はお見苦しい所をお見せして申し訳ありません///これがうちの看板商品『ほむまん』です」

穂乃果「まあこれだけしかないんだけどね」

雪穂「お姉ちゃん!あ、梅昆布茶と一緒にどうぞ」

海未「はあ、どうも・・・揚げ饅頭なのですね」

海未(と言っても、この客足の無さ・・・あまり期待できそうにありませんが・・・それに・・・)チラッ

穂乃果「じーーー」

雪穂「じーーー」

海未(食べにくいです!しょうがない・・・ここはさっさと食べて退散するとしますか・・・)

海未「お、美味しそうだなー」

穂乃果「じーーー」

雪穂「じーーー」

海未(いやでも、よく見ると本当に見た目は美味しそうですね、それに揚げたてなのでしょうか、そのおかげで香ばしい香りが鼻孔を刺激します)ゴクリ…‼

海未(ええい!ままよ!)


パクリッ!


穂乃果「!!」

雪穂「!!」

海未「う・・・・・・」

ほのゆき「「う?」」


海未「うんまああーーい!!」

ほのゆき「「やったーー!」」

海未「なんですかこれは!?こんなに美味しいものは初めて食べます!表面はカリッとしていてそれでいて中はモチッと!饅頭という枠にとらわれない新食感の美味しさです!そしてなんといってもこの中にたっぷりつまったあんこ!ほどよい甘さがアツアツとした饅頭にここまで合うとは!!!」

穂乃果「褒め過ぎだよ〜海未ちゃん///」テレテレ

雪穂「こんなに喜んでもらえるなんて・・・!このお店を守り続けて良かったよ〜」ウルウル

海未「いえ、本当に美味しいです。だからこそ、どうしてこんなにも客足が絶えているのか不思議でならないですよ」

そう告げると途端に暗い顔になる二人。
その顔は、海未に事の深刻さを訴えるのに十分であった。

海未「良ければ、私に話してくれませんか?こんな美味しい饅頭を作ってくれた二人のために、少しでも力になりたいのです」

すると穂乃果と雪穂は、しばらく沈黙したのち、小さくコクンとうなずいたのだった。

6名無しさん@転載は禁止:2017/09/02(土) 02:02:30 ID:SLKx4vTk


「穂乃果がさっき、向かいのお店にお客さんを取られちゃったって言ったのは覚えているよね?実は一か月前、あそこにお店、甘味喫茶『シャロン』が建ってからなんだ、穂むらにお客さんが来なくなったのは

「そこのお店っていうのはここと同じように甘味処で、甘いお菓子を売りにしているところなんだけど…実はただの甘味じゃないんだよね。……たしか西洋菓子って言っていたかな?遠い遠い外国から渡ってきたもので、日本の和菓子とは全然違くってとっても甘くてとってもキラキラしたものなんだよ!初めて食べたときのあの美味しさといったら…………えへへへ……ハッ!ごめんごめん雪穂。話を戻すね……えっ?食べたことがあるのかって?まあ、敵情視察と称してね!敵を倒すにはまず敵を知らなければならないのだ!

「え〜っと、確かけぇき…とかいってたかな?まあ確かにとっても珍しくてとっても美味しかったんだけど……それでもうちのほむまんが負けてるとは思えないよ。問題はその次、そして穂むらの客足が途絶えた最大の原因なんだよ……

一気に喋った穂乃果は、そこで一息つくようにお茶に手を伸ばした。

海未(というかそのお茶私のなのですが……)

穂乃果「話を続けるよ。ちょうど一か月前、あのお店が建ったその日ぐらいから、ある噂が立ち始めたんだ……」


  「曰く、甘味処『穂むら』は呪われている」


そこで私は、思わず脱力してしまいました。

海未「はあ、それはまあ…なんとも曖昧な……もっと恐ろしいものを予想していましたが」

穂乃果「うん、穂乃果たちも最初はそう思ってて、どうせすぐ噂も消えるだろうって無視してたんだ」

雪穂「だけど……あんなことが起きたせいで…………!」グッ

穂乃果「雪穂……」

海未「ふむ………どうやら、ただならぬことがあったようですね」

穂乃果「うん……まあここまで話したんだし、海未ちゃんには教えるよ、それに、街を歩いてればすぐ分かっちゃうだろうし。それに海未ちゃんには真実を知っていてほしいんだ」

海未「…………それはどのような」

7名無しさん@転載は禁止:2017/09/02(土) 02:03:13 ID:SLKx4vTk

穂乃果「三日後。あの噂が立って、たった三日後に、お父さんとお母さんが死んじゃったんだ」

海未「なっ……!!それは!」ガタッ

穂乃果「落ち着いて、海未ちゃん」

海未「しかしそれは……あまりにも……!偶然にしては出来過ぎています!」

穂乃果「うん。穂乃果もそう思う。あの日、お父さんたちはこっそり出かけて行ったんだよ。皆が寝静まるような時間帯に。穂乃果はたまたま起きてたから家から出ていくのを見ていたんだ。きっと誰かに呼ばれたんだと思う。そうして翌日帰ってきたのは、もう冷たくて動かなくなった二人だった。あの時、お父さんとお母さんは誰かに襲われたんだ!その誰かは分からないけど……」

海未「なるほど……しかし、襲われた現場を直接見ていないなら、誰かに襲われたと決めつけることは出来ないのでは?そしてそこまで分かっているのなら、街の警察などに届け出を出すのも一つの手ではないでしょうか?なぜそうしないのです?」

雪穂「そんなことしても無駄だからだよ」

海未「!!」

穂乃果「雪穂?大丈夫?」

雪穂「うん。大丈夫。というかむしろ、だんだん怒りが沸いてきたよ……!」

穂乃果「……そうだね」

海未「教えてください雪穂、穂乃果。無駄とは一体どういうことなんですか」

穂乃果「まず言っておくと、お母さんたちが襲われていたことを知っている人は、街の人には穂乃果達を含めて数人しかいない」

海未「?それならどういった風に街のひとに伝わっているのですか?」

雪穂「『高坂の父母は呪い殺された。洗頭様の祟りに触れたからだ』」

海未「あらい……ず?」

穂乃果「んー?なんて言うんだろう……最近になって急速に信徒を増やしてきた仏教の宗派だよ。頭を清めることで極楽にいけるみたいな変な教えを広めてるんだけど……その人たちが信仰しているのがその洗頭様なんだ」

海未「なるほど、つまりあなたたちはその洗頭様とやらの怒りに触れ、呪われてしまったという荒唐無稽な噂が広まった。しかし、その……穂乃果たちの両親が、亡くなってしまったことで、さらにその噂に拍車がかかってしまった。そのせいで、このような閑古鳥が鳴くような事態になってしまったのですね」

穂乃果「うん、その通りだよ!海未ちゃんの理解が早くて助かるよ。」

海未「しかし、それだとしたら、あなたたちの両親の死は……」

穂乃果「おそらく…ううん、十中八九仕込まれたことのはずだよ」

海未「なら、それをやはり街の警察に言ったほうが……いえ、そうするのは無駄なんでしたっけ?一体なぜなのです?」

穂乃果「……海未ちゃんさっき穂乃果に言ったよね、なんでお父さんとお母さんが襲われたと決め付けられるのかって」

海未「確かに言いましたね。何かその根拠たる理由があるのでしょうか」

8名無しさん@転載は禁止:2017/09/02(土) 02:04:21 ID:SLKx4vTk

穂乃果「うん。穂乃果と雪穂はね、あの時確かに見たんだ……。お父さんとお母さんが夜中に出かけた次の日の朝、穂乃果たちは誰かが訪ねてきた音で目を覚ました。それは警察の人だったよ。いつもはお母さんがそういうのに対応するんだけど、その日はいつまでたってもお母さんが出る気配がなかったし、まあ、当然だよね、そのときお母さんはとっくに………それに、「高坂さん!高坂さん!」って呼ぶ声がずっと響いてるもんだから、結局雪穂が対応してくれたんだ。穂乃果はそのときは正直二度寝でもしようかなーって考えてたよ。お気楽だよね。その数時間前に穂乃果が二人を止めておけばこんなことにはならなかったのかもしれないのに」

雪穂「そんなことない!お姉ちゃんは悪くないよ!悪いのは全部お母さんたちを殺したヤツなんだから!」

穂乃果「うん、ありがとう雪穂。だけどね、そのとき雪穂の悲鳴が聞こえたんだ。びっくりしたよ。何事だと思って跳び起きた。急いで玄関に出て、そして……そこにお父さんとお母さんがいた。」

海未「あ……それは」

穂乃果「慰めはいらない。穂乃果の中では一応の区切りはついてるから」

海未「……穂乃果は強いのですね」

穂乃果「えへへ、これでもお姉ちゃんだからね、だけどその時はさすがに冷静ではいられなかったよ。いや、逆に冷静だったのかな。何も考えられないのに、周りの風景と音だけははっきりと記憶にこびりついてくるんだ。朝だってゆうのに野次馬が結構いたなあ。お母さんたちはさ、麻布に包まれてて顔だけしか見れないんだよ。あれが土気色って言うんだね。一瞬誰か分からなかったもん。警察の人は三人いて、真ん中の一人がこっちに少し近づいて言うんだ。「この度はご愁傷様です。我々が来た時には道端に倒れて、とうにこと切れておりました。外傷も無いようで死因も分からず、追って分かり次第伝えますが……まるで呪いのような…………」そこで周りがざわっとしたよ。「やっぱりあの噂は本当だったんだ…」「洗頭様の祟りじゃ!」そんな余計な雑音ばかりが入ってくる。雪穂はお母さんに覆いかぶさって泣いてた。大声でお母さん、お父さんって何度も呼びながら。穂乃果もそうしたかった。だけどね、そのときに気づいたんだ。雪穂がお母さんをあまりにも大きく揺さぶったから、麻布がずれて、肩がちらっと見えたんだよ。それだけじゃあ何とも思わなかったさ。だけどそこに、ちょうど肩の真ん中あたり、そこにね?まるで刀で斬られたような傷跡がついていたんだ。衝撃だった。さっき警察は何て言った?外傷が無い?ここにくっきりとあるじゃあないか!きっと麻布をめくれば肩から腰まで伸びるような傷跡がついている!それぐらい容易に想像できるほどに深い傷だった。すると、警察の人も私の視線に気づいたのかな、すごい力でお母さんたちを雪穂から引きはがしたんだ。「それでは、この遺体は私達が持ち帰って検分いたします。それでは、また後日」そう言って別の二人の警察に、お父さんとお母さんを乗せた担架を運ばせて去っていった。それからお父さんとお母さんの体は帰ってきてない。家の裏の墓の中には、何も入っていないんだよ」

穂乃果「これが警察を頼れない理由、この事件にはね、きっと警察も、ううん、それだけじゃない。もっといろんなものが、組織が、根っこのところで深く、複雑に絡み合っているんだよ」

穂乃果「だけどね、穂乃果は諦めない。必ずこの事件を解決して、お母さんたちの無念を晴らして、きっとこの『穂むら』をまた、昔のように人がたくさん立ち寄る甘味処に、戻してやるんだ」

9名無しさん@転載は禁止:2017/09/02(土) 02:04:42 ID:SLKx4vTk


穂乃果の話を聞いて、しばらく、私は衝撃で動けませんでした。それは、穂乃果たちの巻き込まれた事件の根深さや、闇をこの身で深く感じ取ったこともありますが、何よりも、このことを淡々と話した穂乃果の眼に、何も出来ない被害者の絶望を全く感じ取れず、ただただ海のように澄み渡った深い意志を垣間見て、その眼から一瞬も、私は目線を外すことが出来なかったからです。


なにはともあれ、甘味喫茶『シャロン』、謎の新興宗教『洗頭』、そして街の大江戸警察。これらが関わっているであろうこの事件に、私は否応なく巻き込まれてしまったんであろうことは、確かなのでしょう。

10名無しさん@転載は禁止:2017/09/02(土) 02:05:43 ID:SLKx4vTk
今日はここまで

また一週間後ぐらいに

11名無しさん@転載は禁止:2017/09/02(土) 16:37:38 ID:gdMsfixk
長ゼリフがシュールギャグとして成立してて面白い

12名無しさん@転載は禁止:2017/09/02(土) 20:34:52 ID:jAOritf6
面白そう!
期待して待ちます

13名無しさん@転載は禁止:2017/09/03(日) 03:18:33 ID:2DNWGUO2
期待

14名無しさん@転載は禁止:2017/09/09(土) 11:52:03 ID:bOoGZ2Dg
続きです

穂乃果「あはは、なんかついつい喋り過ぎちゃった。良く考えたらこんなのお客さんに話すことじゃないよね。こんなことがあってから、穂乃果達と話してくれる人っていなかったから嬉しかったのかも。ごめんね、海未ちゃん。忘れていいよ、この話は」

雪穂「うん……この話は海未さんのためにも聞かなかったことにしたほうがいいと思う」

海未「むっ、なぜそんなことを言うんですか、穂乃果、雪穂。そこまで聞かせてもらって黙って見過ごすほど、私は人間を捨てていませんよ」

海未(それに先程の穂乃果の眼……私は以前もこれと似たような眼を見たことがあります)

海未(この眼は、なんとしても目的を達するという決意と、それを成し遂げるためなら例え自分の身でさえ犠牲にする覚悟を秘めている眼です。)

穂乃果「え、でも……海未ちゃんは全く関係ないんだよ?穂乃果の話を聞いただけで、何も関わってすらいない。そんな人を巻き込めないよ」

雪穂「そうだよ。海未さんがなんのためにこの街へ来たのかは分からないけど、私たちに関わっていたら、きっとすごい迷惑がかかると思う。そのうち街を追い出されちゃうなんてことになるかも知れないんだよ?」

海未(そのような覚悟を決めた少女を、そしてなによりこんな優しい子たちを、見捨てるなどという選択肢はありません!……二度とあのような悲劇を起こさないためにも)

海未「ふふ、おかしなことを言うのですね。あなた達は。あなた達は私に話してくれました。きっとこの一ヶ月間、胸に秘め続けてきた思いを。意思を。そのようなものを胸にしまい続けて過ごし続けた心中は、私などには到底計り知れませんが、少しでもその一端を見せてくれたのならばこの園田海未、あなた達に助力するのもやぶさかではありません」

穂乃果「海未ちゃん…本当にいいの?」

海未「はい!むしろ断られても私はあなた達に協力しますからね!覚悟してください!」

15名無しさん@転載は禁止:2017/09/09(土) 11:52:44 ID:bOoGZ2Dg
雪穂「…もしかして海未さんって相当のお人好し?」

海未「ええ、私は相当のお人好しなのです。だから大人しく助けられてください」

穂乃果「……ぷふっ、あはは。海未ちゃんって意外と頑固なんだね。そこまで言われちゃったらもう何も言えないよ」

穂乃果「だから、穂乃果からちゃんと言わせてもらうね。……海未ちゃん。穂乃果達を助けてください」

海未「ええ、約束します。あなた達を命に代えても助けると」

穂乃果「そ、それは言い過ぎだよ!少し手助けしてくれるぐらいでいいから!」

海未「いいえ!やるからには全力です!さあ、そうと決まったならば早速、この事件を解決しようじゃありませんか!……といっても、何から始めればいいのか分かりませんが……」

穂乃果「ええー、海未ちゃん…」

雪穂「海未さん…」

海未「しょ、しょうがないじゃありませんか!!まだ江戸の街の右も左も分からないのですから!」

雪穂「あはは、海未さんってなんだか面白いね!」

穂乃果「うん!なんだか海未ちゃんと知り合えてよかったなあ。」


そう言って穂乃果と雪穂は笑う。その姿を見て、自然と海未にと笑みがこぼれていた


海未「ふふ、私もあなた達と知り合えてよかったです。これからよろしくお願いしますね。」

穂乃果「お願いするのはこっちのほうだよ、海未ちゃん。頼りにさせてもらうね」


海未と穂乃果はお互いに握手を交わす。
そしていつの間にか傾いてきた日の光が窓から差し込み、二人を眩しく照らし続けていた。

16名無しさん@転載は禁止:2017/09/09(土) 11:54:07 ID:bOoGZ2Dg

雪穂「あ!もうこんな時間!閉店の準備しないと!」

穂乃果「ふえ?あ!本当だ!話し込んじゃってて気付かなかったよ」

海未「む、ならばここにいても邪魔なようですし、私はお暇するとしますね。……あ、しまった」

穂乃果「ん?どうしたの海未ちゃん」

海未「いえ、恥ずかしながら、実は今日の宿を取っていなくて……」

穂乃果「ええ!じゃあ野宿!?」

海未「まあ、そういうことになりますね」

穂乃果「そんな!危ないよ!」

海未「大丈夫ですよ。これでも腕には自信がありますので」

穂乃果「ダメダメ!海未ちゃんみたいな女の子を野宿なんてさせられないよ!」

海未「はあ、しかしこのような時間ではもうどこも泊めてくれないと思いますが」

穂乃果「むむむ、どうしよー」

雪穂「泊まる所がないならうちに泊まればいいよ、海未さん」

穂乃果「それだー!!雪穂天才!」

雪穂「うええ⁉︎お姉ちゃんがバカなだけだと思うけど……」

穂乃果「それじゃあ早速お泊まりの準備だ!
海未ちゃんとお泊まり楽しみー!」

海未「ちょちょっと待ってください!私はまだ泊まるとは言ってませんよ!」

穂乃果「え?……もしかして嫌だった……?」

海未「うッ、いえ、そういうわけではありませんが……迷惑では無いですか?」

穂乃果「そんな訳ないよ!海未ちゃんが良ければ何日でも泊まっていいくらいだよ!」

海未「そ、そうですか。ではお言葉に甘えて……」

雪穂「そうそう!遠慮しなくていいから。さ、あがってあがって」グイグイ

海未「わ、分かりましたから背中を押さないでください!」

穂乃果「お風呂は一緒に入ろうね!海未ちゃん!」

海未「え⁉い、一緒にお風呂など………は、破廉恥ですーー!!」

17名無しさん@転載は禁止:2017/09/09(土) 11:55:03 ID:bOoGZ2Dg

そうして海未は高坂姉妹に連行されていった。
三人が家の奥に下がっていくと、ちょうど海未達が話していた場所の真上、そこの天板が外され、中から二つの人影が降りてきた。
そのうちの一人が、片手に持ったメモ帳を眺めておもむろに口を開いた。


???「ふむふむ、陰謀の渦巻く謎の事件にその渦中に投げ出された高坂姉妹、そして彼女たちに訪れた謎の救援者、と……むふ♡なんやこれから楽しくなりそうやんなあ。ね?陽ちゃん」


そう言ってほくそ笑む人影。その顔は、まるでお気に入りのおもちゃを見つけた子供のように爛漫としていた。
と、そこで曜と呼ばれたもう一人の声が響く。


曜「私は今楽しくないですけどね、希さん。こんな所に隠れてまるでこそ泥じゃあないですか。それに狭い天井裏で身動き取れなかったから体がバキバキ……」

希「む、あかん!あかんなあ曜ちゃん!そんなんじゃ立派な探偵にはなれんで!」

曜「そんなこと言って希さんは探偵じゃなくてただの記者じゃないですか」

希「まあね♡でも探偵志望さん、情報収集は基本中の基本やで。そして事件の匂いを嗅ぎ取る嗅覚も」

曜「まあそれは分かってるんですけど……希さんに言われると何か釈然としないんだよなあ」

希「ひどっ!のんたん悲しい!陽ちゃんが最近冷たいようシクシク……」

曜「はいはい、分かりましたから早いところずらかりましょう。有益な情報は手に入ったんでしょう?」

希「ん?まあなあ。本当なら直接本人、穂乃果ちゃんに話を聞きたかったんやけど。なあんか彼女らマークされてるようやし、ダメ元で潜入してみたら良い情報が得られてウチってホントにラッキーやわあ」

曜「本当、何日もこんなことをさせられずにすんでよかったですよ。あのお侍の人に感謝ですね」

希「お侍の人?……ああ、あの海未ちゃんって娘か。海未ちゃん、海未ちゃん……」

曜「?どうしたんですか?」

希「いんやあ、別になあんもないよ」

曜「……(これは絶対なんかある顔だ……また変なことに巻き込まれるのかなあ)」

希(海未ちゃん、姓は園田とか名乗ってたかな?確か地方の大名、南家の家臣だったはず。それがなんで江戸に来たのか……あの娘も別個で調べてみる必要がありそうやな)

希「とりあえず曜ちゃん、今日の所はひとまず帰ろか。噂のシャロンで甘いものでも食べようやん」

曜「え!?本当ですか!一回あそこに言ってみたかったんだ!」

希「ふふ、やっぱり女の子には甘いものが必要やからな。今日はうちのおごりやで!」

曜「やったー!さっすが希さん!!」

希(ふふ、曜ちゃんには悪いけど、うちの予想では江戸の町はこれから荒れる。きっと甘いものをとる時間もなくなるほど忙しくなると思うから、今日のおごり分でチャラにしてな?)


曜と希、二人はおもむろに歩き出す。日暮れがかった夕日がふたりの影を、長く長く伸ばしていた。

18名無しさん@転載は禁止:2017/09/12(火) 02:24:28 ID:3WGuPUZg
乙乙
読んでるで

19名無しさん@転載は禁止:2017/09/15(金) 12:12:45 ID:eIME7.SA
面白いね
待ってる

20名無しさん@転載は禁止:2017/09/18(月) 14:25:07 ID:imlvtrao


《翌日》

1日程度では人の営みとはそうそう変わらないもので、からっとした天気の中、昨日と同じように打ち水をする織物屋の娘や、人好きしそうな笑顔を浮かべた飴売りが人々の合間を売り歩くなど、江戸の人々は賑やかに各々の生活を全うしていた。

その中でも一際人の賑わいが多い一角がある。
立ち並ぶ長屋の中で異彩を放つその建物は、どことなく西洋建築の様相を見していた。
軒先には比較的女性が多く集まり、ショーウィンドウの奥の食べ物に目を輝かせている。
それがケーキと呼ばれる西洋由来の菓子だと知った町娘が、その珍しいケーキというものを一目見ようと、もしくは食べようとして集まっているのだ。

そう、まさにここが件の『シャロン』!

穂乃果たちの話していた甘味処である。


「いらっしゃいませー!甘味喫茶シャロンへようこそ!お召し上がりの際は店内へご案内します!」


一様に腰を屈めケーキを眺め見る客たちに向かって上から声がかけられた。
ショーウィンドウの向こう側には笑顔の店員が控えている。

21名無しさん@転載は禁止:2017/09/18(月) 14:25:51 ID:imlvtrao


「あ、じゃあ私はこの『しょうとけぇき』ってやつをください」
「わ、私はこの『ちぃずけぇき』!」
「あー、いいなあ!じゃあ私はこの『まかろん』が食べたい!」


胸に『高海千歌』と書かれたネームプレートをつけた店員の言葉を聞いて、我先にと注文をとりだす少女たち。
千歌は少し苦笑いしながら丁寧に注文を繰り返す。


千歌「はい、ショートケーキにチーズケーキ、それとマカロンですね。では店内へどうぞ!海未ちゃーん!お客さんを案内してーー!」

海未「わ、私には無理ですーー!このような格好で人前に出るなど……!」

千歌「もー!まだゴネをこねてるの!?お客さん待たせちゃってるよー!」

海未「ううう……なんで私がこんな目に……」


シャロンの店内は華美な外装に漏れず、西洋然とした雰囲気を醸し出している。
20人はゆったりとくつろげそうな清潔感漂う店内には、おしゃれな椅子に丸いテーブルが整然と並んでいて、改築前に床に敷かれていた畳は全て取り払われ、変わりに敷かれた白いフローリングが目に眩しい。
昼時ともあって八割がた席が埋まった店内の端、『従業員以外立ち入り禁止』の立て札がかかった扉の向こうで、なぜか海未が半身だけ体を覗かせていた。


海未「それに……なんですかこの制服はあ……」


海未は視線を降ろし自分の姿を確認する。
海未が袖を通している服は、この店の従業員服であり、和服を大胆に改造してドレス調にしたものだった。この制服も町の娘たちからの人気を集める要因となっていて、可愛いもの好きの女の子なら一度は着てみたいと思わせるような作りになっているが、いかんせん今まで武士として生きてきた海未にとっては、フリルがふんだんにあしらわれ裾も膝上までしかないこの服は刺激が強すぎたようで……。

22名無しさん@転載は禁止:2017/09/18(月) 14:26:22 ID:imlvtrao

海未「は、恥ずかしすぎますぅ!!!」

ルビイ「ぴぎい!?」

海未「あ!すいません、驚かせてしまいましたかルビイ……さん」

ルビイ「あ、大丈夫だよ。ちょっとだけびっくりしちゃっただけだから。それとルビイでいいよ。多分海未さんの方が年上だろうし」

海未「はあ、とはいえ……」

ルビイ「いいのいいの。ルビイ、さん付け慣れてないし」

千歌「ルビイちゃんからも言ってやってよ!海未ちゃんが全然動いてくれなくてさ〜」

ルビイ「え?うーん……その服海未ちゃんに似合ってて可愛いから大丈夫だよ!頑張ルビイ!」

海未「そう言われても恥ずかしいものは恥ずかしいのです……」

ルビイ「ルビイも最初は恥ずかしかったけど、慣れれば恥ずかしくなくなったよ」

千歌「そうそう!こういうのはテンションで乗り切るんだよ!ノリだよノリ!」

海未「ノリ、ですか……分かりました。この園田海未、全力でノリ切って見せます!」

千歌「そう!その意気だよ!さあ、お客さんを案内して!」

海未「い、いらっしゃいませーー!」


まだ羞恥心がぬぐい切れて無いようで、顔を赤く染めながらも海未は客の対応に当たっていく。
とはいえ、なぜ海未がこの店で働くことになっているのかを知るためには、前日まで遡る必要があるだろう。

23名無しさん@転載は禁止:2017/09/18(月) 14:27:28 ID:imlvtrao


《前日・穂乃果の家の風呂場》


雪穂「つまりね、私達が怪しいと睨んでいる『シャロン』の実態を知ることが、何よりも先決だと思うんだよ私は」

海未「そ、そうですか」

穂乃果「それなら穂乃果が行ったよ。お客さんとしてね!いやあもう一度食べたいなあ……」

雪穂「よだれ垂らさないでね。ていうか私に内緒でなんで勝手に行ったの!?」

穂乃果「ごめんごめん、今度は一緒に行こうね」

雪穂「そういう問題じゃないよ!言うなればあそこは敵地なんだよ」

海未「あの、二人とも」

穂乃果「う〜ん、まあそうなんだけどね、行ってみたらお客さんの対応も丁寧だったしケーキも美味しかったし怪しい感じじゃ無かったんだよねえ」

雪穂「見た目じゃそんなの分かんないよ。裏じゃあどんな悪どいことをしているか……」

穂乃果「なるほど。笑顔の裏では悪事の限りを尽くしている訳だね」

24名無しさん@転載は禁止:2017/09/18(月) 14:28:16 ID:imlvtrao

海未「あの、二人とも!少々近すぎではないでしょうか!」

雪穂「え?そうかな?」

穂乃果「せっかくの裸の付き合いなんだし恥ずかしがらなくていいんだよ?」

海未「いえ、なにか柔らかいものが両腕に当たっているのですが……」

雪穂「そんなことより!『シャロン』が裏でどんなことをしているか知るために海未ちゃんにはあそこに従業員として潜入してほしいの!」ズイッ!

穂乃果「おお!ナイス考え!」

海未「せ、潜入?私がですか?というか顔がさっきよりも近いです!」

雪穂「海未ちゃんなら最近この街へ来たばかりで身バレしてないし、適任だと思うんだよね。だからお願い!これは海未ちゃんにしか頼めないの!」ズズイ!

穂乃果「穂乃果からもお願い海未ちゃん!」ズイー!

海未「わ、分かりましたから少し離れてくださいーー!」


こんな会話が交わされ、結果的に海未はフリフリの和服を着ながら接客に奮闘することになったのである。


海未(なんだかあれよあれよと言う間にこんなことになってしまいましたが、私の思っていた協力と大分かけ離れています!)

千歌「お疲れさまー、海未ちゃん。大変だったね今日は」

海未「あ、お疲れ様です千歌。まさか頼み込みにきた当日に働かされるとは思いませんでしたよ」

25名無しさん@転載は禁止:2017/09/18(月) 14:28:47 ID:imlvtrao

海未が羞恥心を抑えながら仕事に取組み始めてから数時間後、日は傾き、お客さんも帰りはじめ、従業員は閉店の支度に取り掛かっていた。


千歌「うちはおかげさまで盛況だからね。猫の手でも借りたい状態なんだよ。正直海未ちゃんが入ってくれて助かったなー。うちの採用基準って無駄に厳しいから」

海未「はあ、そうなんですか?私としては面接にきたはずなのにいつの間にか店に立つことになってびっくりしていますが」


ダイヤ『採用!ですわ!それでは早速制服に着替えて仕事に入ってください』

海未『え?え?』


海未「あの人、店長ですか?ダイヤさんと言ってましたっけ。たいした面接も行わずに採用されてしまいましたが大丈夫だったのでしょうか」

千歌「それだけ海未ちゃんがダイヤさんのお眼鏡に叶ったんだよ。いいなあ、千歌なんて一週間毎日頼み込んでやっと採用してもらえたんだもん」

ダイヤ「千歌さんの時とは忙しさが違いますからね。満客御礼で嬉しい悲鳴ですわ」

千歌「あ、ダイヤさん!今までどこにいたんですか?途中から見なかったけど」

ダイヤ「ええ、少し所用で出掛けていまして……そんなことより、海未さんの仕事振りはどうでしたか?」

千歌「海未ちゃんはねー、最初はあれだったけどその後は呑み込みも早かったしよく働いてくれてたよ

ダイヤ「それは重畳ですわ。やはり私の目に狂いは無かったようですわね」

ルビイ「お客さんからの評判も良かったよ。あの可愛い娘は誰か?って聞かれたりしたし」

千歌「ああ!千歌も聞かれたよ!これはついに千歌のこの店一番の看板娘の座も取られちゃうかなー?」

26名無しさん@転載は禁止:2017/09/18(月) 14:29:30 ID:imlvtrao

ダイヤ「何をほざいてますの千歌さん!この店一番の看板娘は未来永劫ルビイに決まってますわ!」

ルビイ「ええ!?ルビイなんて全然ダメだと思うけど……」

千歌「いや、ルビイちゃんはすごい頑張ってるよ!てゆーかひどいよダイヤさん!」

海未「あはは……皆さん仲がいいのですね」

海未(やはり、穂乃果から聞いた通り従業員の皆さんは普通の方に見えますね。果たしてこのお店から悪事の証拠が見つかるかどうか)

海未「あ、すいません皆さん、これから予定が入ってるのでここらで上がらせてもらいますね」

千歌「ええー!もう帰っちゃうの!?これから歓迎会でもしようと思ってたのに!」

ダイヤ「こらこら千歌さん。海未さんにも用事があるんですから無理に誘おうとしてはいけませんよ。それでは、気を付けて帰ってくださいね」

海未「はい。それではまた明日。千歌さん、歓迎会はまた後日誘ってください」

千歌「はあーい、じゃあね、海未ちゃん」

ルビイ「さようなら〜」


店の外は既に夜の帳が下りており、辺りは真っ暗になっていた。
海未は穂乃果たちの待つ家に帰ろうと歩き出す。
『穂むら』と『シャロン』は距離的には近いが、間に大きな川が流れていて、向こう岸に渡るためには数百メートル先にある橋を渡らなければならなかった。

27名無しさん@転載は禁止:2017/09/18(月) 14:29:58 ID:imlvtrao


ルビイ「海未ちゃんちょっと待って!」


海未が数メートル進むと、後ろから声がかけられた


海未「ルビイですか。どうしました?」

ルビイ「うん、忘れてたんだけど、これうちの自慢のケーキ!今日頑張ってくれたから差し入れにどうぞ!」

海未「わあ、ありがとうございます。ご丁寧に包装までしてくれて……」

ルビイ「いいのいいの。じゃあ気を付けてね。あ、あともうひとつ……」


そう言って顔を少し近づけるルビイ。何か内緒の話でもあるのかと、海未も自然と顔を寄せる。


ルビイ「実はね、最近ここら辺で人斬りが出るって噂なんだ」

海未「なんと、それは本当ですか?」

ルビイ「うん、夜中に歩いていたらどこからともなく鈴の音がして、気が付いた時には斬られているんだって。怖いよね……。だから気を付けてねって言おうとしたんだけど……海未ちゃんにその心配はいらなかったかな?その腰の刀。もしかして海未ちゃんお侍さん?」


そういってルビイは海未の腰に差さった刀をちらっとみた。

28名無しさん@転載は禁止:2017/09/18(月) 14:31:06 ID:imlvtrao


海未「ああ、いえ、私は……侍ではありませんよ。これは護身用です。ただの見掛け倒しですよ」

ルビイ「ふ〜ん……まあ一応忠告はしたから、用心はしててね。海未ちゃんに何かあったら大変だもん」

海未「ふふ、ありがとうございます。ルビイ。それではまた明日」

ルビイ「うん、また明日」


一度手を振り、ルビイは店の中に戻っていった。
その背を見送り、海未はまた歩き始める。


海未「ふむ、人斬りですか……。穂乃果たちの両親を襲った人物と関係があるのでしょうか?まあ、今考えても分かりませんね」


昼間は人通りが激しかった道の通りも、夜になれば心臓の音が周囲にこだましているのではと錯覚するほどの静けさが空間を埋めている。
夜の町もまた乙なものだと、おぼろ月を眺めながら進み、いつの間にか橋の半ばまで歩いていた。

29名無しさん@転載は禁止:2017/09/18(月) 14:31:45 ID:imlvtrao


  シャララアン……


ふいに鈴の音が周囲にこだました。


海未「ふむ、噂をすればなんとやら……というのは……こういう時に使うのですかね?」

海未「あなたは、どう思いますか?」


音の出処、海未はゆっくりと後ろを振り返る。

海未から十数メートル離れた位置、ちょうど橋の根元に静かに人の影が佇んでいた。


海未「ちょうどいいです。穂乃果たちの両親との関係をその口から吐かせてあげましょう。覚悟してくださいね」


海未はゆっくりと腰から刀を抜き、戦闘態勢に映る。

雲が晴れ、月が顔を覗かせた。
そして月の明るみの下、影の姿がさらけ出される。

30名無しさん@転載は禁止:2017/09/18(月) 19:06:24 ID:khXNTkOo
海未ちゃんはやっぱり侍似合うなぁ

31名無しさん@転載は禁止:2017/09/19(火) 01:33:34 ID:BGnlN3LE
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