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希「雨垂れでオナニーってどうやろ?」
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授業中
先生「えー、では次の設問を……」
希(暇やなぁ)
希(こんな暇なこと中々無いで)
希(うん、暇……)
希(……)
希(いや暇やなぁ、どうあがいても暇や)
希「せや、雨垂れでオナニーしよう」
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絵里「授業中に突然何を言い出すのよ、希」
絵里「見なさい、先生も授業を中断して閉口している」
希「蔑んだ目やなぁ」
絵里「当たり前じゃない。貴女は授業中にオナニーと発言したのよ」
絵里「教室から放り出された後、極刑に処されても文句は言えないわ」
希「絵里ちはそういうとこあるやんな」
絵里「何が?」
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希「ほら、すぐに極刑とか奢りとか言い出すところ」
絵里「百歩譲って奢りはよく言っていることにしていいわ」
絵里「極刑は今、産まれて初めて人に向けて使ったのよ。普段から言っているわけないじゃない」
希「そうやったっけ……」
絵里「貴女、本当に希よね? 私の親友の」
希「つまり、絵里ちの初めてはウチなんやな?」
絵里「希だったわ」
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希「それより、雨垂れオナニーやん」
絵里「先生が何事もなかったかのように授業を再開したから許されてる節あるけれど、本来なら指導室に呼ばれても文句言えないわよ?」
希「まぁまぁ、聞いてや」
希「雨垂れオナニーの方法を、じっくりとさ」
絵里「さっさと済ませて。私受験生だから授業に集中したいのよ」
希「ウチもや」
絵里「いいから話しなさいよ」
絵里「そろそろ気絶させるわよ」
希「拳で?」
絵里「シャーペンで」
希「そっかぁ……」
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希「まぁ説明言うても単純なものなんやけどな?」
希「まず、雨垂れオナニーは雨の日にしか出来へんのよ」
絵里「それは薄々感じていたわ」
希「雨が降っていることを確認したら、最初に感謝をするんや」
絵里「感謝を?」
希「雨を降らせてくれた天に、感謝するんや。気分によっては雨に唄えばを歌ってもいい」
絵里「雨に唄えば、良い曲ね。掛け値なしに」
希「ひとしきり感謝した後はスカートとパンツをおもむろに脱ぎ、ベランダに出る。屋根と外の境目さえあればどこでもええんやけど」
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希「そこでバックブリッジの形を取り、下半身からそろそろと外に向かって進んでいくんよ」
絵里「捕まらないの?」
希「さぁ……」
希「ここで注意せなあかんのは、足が先に雨に当たらんようにすることや。先に足に当たったらその時点でもう全てはおしまいや、死んだ方がマシなくらいの悲壮感に晒される」
絵里「ということは足は畳んで?」
希「そうや」
希「ゆっくりとゆっくりと、クリトリスだけが雨に当たるように調整し……」
希「クリだけが雨に当たるゾーンを見付けたら雨垂れオナニーの完成や!」
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絵里「それはイくまでその姿勢で耐えるの?」
希「当たり前やん」
絵里「苦しいんじゃないの?」
希「オナニーってのは苦しいもんや。絵里ちも分かってるやろ?」
絵里「それは分かってるけど……」
絵里「いやそもそも雨垂れオナニーが気持ちいいのかって、そこが疑問なのよ」
希「いや、それは分からん」
絵里「分からない?」
希「今さっき考え付いたところやからな」
絵里「貴女、ピーターソン先生の授業を聞きながら雨垂れオナニーについて考え込んでいたの?」
絵里「あんまりよ、私がピーターソン先生ならこの場で泣き崩れるわ」
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希「まぁまぁ、ピーターソン先生も雨垂れオナニーなら許してくれると思うやん」
絵里「大丈夫? 雨垂れオナニーに許す要素が無いわよ?」
希「ピーターソン先生も雨垂れオナニーをすれば良さが分かってくれると思うんや」
絵里「ピーターソン先生にクリトリスがあると思って?」
希「無いなぁ……」
希「ちんこでええやん。クリトリスが大きくなったものがちんこである、って物の本に書いてあったし」
絵里「どうしたのよ希、今日は気が狂っているとしか思えないわ」
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希「まぁ絵里ちも雨が降ったら試してみるといいよ」
絵里「雨が降ったらね」
希「約束やで? 雨が降ったら雨垂れオナニーをするんやからな」
絵里「はいはい、じゃあ授業に戻るわよ」
希「あかん、全然ノート取れてへんやん」
絵里「それ自業自得って言うのよ、知ってた?」
希「絵里ちはウチを小馬鹿にする節があるな」
絵里「希は節があるなってよく言う節があるわね」
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希(そう、この時ウチらは何も分かっていなかったんや)
希(雨は当たり前に降るもので)
希(暇な授業を毎日受けて)
希(クラスの友達と馬鹿な話をして)
希(絵里ちという親友が側にいることが)
希(どれほど幸せなことだったか、を)
希(そして、約束がどんな意味を持つのかも。ウチには何も、分かっていなかった)
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一週間後
希「……」
絵里「どうしたのよ、希。神妙な顔して」
希「雨が、降らんのよ」
絵里「雨? ああ、そういえば最近降ってないわね」
絵里「それがどうかしたの? まさか、雨垂れオナニーを本気で……」
希「……見てみ、絵里ち。このネットニュース」
絵里「どれどれ……ってこれまとめサイトじゃない。くだらな……」
希「ええから」
『【悲報】人類滅亡確定。今後一切雨が降らないことが明らかに』
絵里「……」
希「……」
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絵里「いやいや……」
希「ウチも最初はうん? って思ったんやけどな、なんかこのスレの人えらい文面に真剣みがあるんよなぁ」
絵里「いつものデマでしょ? 何よ、雨を一時的に晴れにする装置を作ったら暴走してしまったって。SF作品の見すぎよ」
希「……うーん、けど実際降ってないし」
絵里「ええっと……」
絵里「ほら、スマホの天気予報。予報では明後日から雨よ?」
希「……」
絵里「心配しすぎなのよ、少し雨が降らなかったぐらいで……」
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希「そ、うやんな……」
希「うん、ごめん。ウチ、雨垂れオナニーが出来ないせいで精神的に参ってたみたいやわ」
絵里「雨垂れオナニーに対してどれだけ期待してるのよ……」
希「まあ明後日降るんやったら、絵里ちもその時に一緒にやろうな。用意しとくから」
絵里「えっ? ええ、うん。分かったわ」
希「楽しみやなぁ、明後日」
絵里「ええ……楽しみね……はぁ」
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一ヶ月後
文化人『明らかにおかしいじゃないですか! もう一月も雨が降っていないんですよ!』
ニュースキャスター『しかし国は、たまたま雨が降らない日が続いただけだと……』
文化人『たまたまで一ヶ月連続で雨が降らないんですか!? 梅雨なんですよ、今は! 総理は何をーー』
ブツッ
絵里「……」
希「ん……ああ、絵里ち。もう起きてたんか」
絵里「おはよう、希。ニュースでは今日も水の配給は無いらしいわ」
希「嘘やん、もうすぐ水尽きるで……」
絵里「また誰かに分けてもらいましょ……」
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希(言って絵里ちは、細い手に不似合いな大きな鉈を手に取る)
希(表面に付いている渇いた赤色を指で弄びながら、絵里ちは笑う)
希(壊れたように、嗤って、笑う)
絵里「希も早く準備して?」
希(ウチは軽く頷いて、押し入れの中からゴルフクラブを取り出す)
希(父親の私物をこんなことに使う罪悪感や躊躇いは、今のウチにはもう無い)
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希「死んじゃうからなぁ……」
絵里「何か言った?」
希「何でもないよ。今日は何処に行くん?」
絵里「テレビ局とかどう? ニュースに出てた人達、皆元気そうだったわ。きっと何処かに水を隠しているのよ」
希「そら酷いな。水は皆の物やのに」
絵里「ええ、そう思うでしょう? だから、私達が本来貰える筈だった分を、受け取りに行くわ」
希「うん、了解。じゃあ……行く前に水、飲んどこうか」
希(言って、台所に唯一残っている500mlのペットボトルからウチは指一本分だけ水をコップに注ぐ)
希(大量に水を確保できるまでは、一回にそれ以上は飲んではいけない。それがウチと絵里ちの間の約束だった)
希(脱水症状にはまだなっていないけれど、いつなってしまうかは分からない。だからこそ、ウチ達には水が必要だった)
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希(ドアを開け、外に出る)
希(空に浮かぶ太陽は、腹が立つほどにウチ達を照らしている)
絵里「希、太陽なんて見つめちゃ駄目よ。水分が持っていかれるわ」
希「……分かってるやん」
希(それだけ言って、ウチと絵里ちは人の気配もない、音の無い渇いた町を並んで歩く)
希(いずれ死ぬその瞬間まで、ただただ水を求めて、歩いていく)
完
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SS祭りに乗っかろうとしたけど失敗しました
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いや、面白かったよ
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どうしたら雨垂れオナニーなんて思いつくんだよ
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最初からぶっ飛んでる
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きがくるっとる
でも嫌いじゃない
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スレタイで作者が分かってしまった
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めっちゃ面白かったわ
乙
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