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ダンゲロスSSCINDERELLA幕間スレ
1
:
タケダネット公式
:2016/06/28(火) 21:41:11
ダンゲロスSSCINDERELLAに関するSS・イラストなどを投稿するスレです。
キャラクター投稿者以外も自由に活用していただいて構いませんが、wikiに転載はされません。ご注意ください
4
:
マッスル先生
:2016/06/30(木) 06:07:41
《マッスル先生の悩み相談》
「――マッスル先生、これが、そのポータルチケットです」
鞄の中から小さな紙片を取り出して見せた少女の身体は細かった。触れたならば折れてしまうのではないかと錯覚しそうなほどに。
マッスル先生と呼ばれた教師、薪屋武人の体躯は対照的に太く逞しい。
この藩立高校にも、魔人の生徒は通っている。
数少ない魔人教師である薪屋の元に、悩み事を相談するため生徒が訪れることは珍しくはない。
《魔人》とは、常識を越えた能力を持った存在であり、魔人生徒の相談事もまた常識の範疇には収まらないものが多い。
だが、この生徒が持ちこんだチケットは、それらの魔人生徒の悩みと比較しても風変わりな一品であった。
「それを『ダンゲロス』を通じて手に入れたのだね」
薪屋は、努めて穏やかな口調で聞いた。
彼女の纏う空気は危うく、迂闊なことをすれば心を閉ざしてしまいそうであったから。
「戦ってみたい。思いっきり《能力》を使って自分はどこまでやれるか試してみたい――そう思っていたんです」
「だが、気が変わった?」
「はい。怖くなってしまいました。やっぱり《能力》を使って戦うなんていけないことですよね?」
少女の瞳には、迷いの色が濃く浮かんでいたが、それでも強い輝きが秘められていた。
自分の力を限界まで試してみたいという気持ちと、人的資源として真っ当に社会貢献したいという気持ちがせめぎあっているのだ。
恐らく、今は後者の気持ちが強く出ている。
薪屋の元にやって来たのは、馬鹿な真似をするなと一喝して試合出場を止めてもらうことを願ったのだろう。
「そんなことはない」
薪屋は大きな身体をかがめ、少女の目を正面から覗き込んだ。
「自分の能力を活かしたい。その気持ちは間違いじゃない――だが、能力を使わず人的資源として生きるのも正しい道だ。冷たいことを言うようだが、どの道を歩くのは選ぶのは君自身だ。私達教師は、その手伝いをすることしかできない。まずは、ホットミルクでも飲みなさい。とてもよく効くプロテイン入りだ――筋肉がつくぞ」
傍らのテーブルには、薪屋が自ら注いだプロテイン入りミルクのカップが二つ、湯気を立てていた。
こうしたプロテインの類は、薪屋が管理する中庭の温室で育てられている。
その目的は、もっぱらこのように生徒の心を癒し、筋肉をつけるために使われる。
5
:
マッスル先生
:2016/06/30(木) 06:08:17
(続きです)
「落ち着いて、じっくり考えよう」
薪屋に促されるままに少女は細くしなやかな指を伸ばし、プロテイン入りミルクのカップを手にとった。
彼女は二口、三口と少しずつプロテイン入りミルクを飲み干してゆく。
その様子を満足そうに見守りながら、薪屋はラジカセにテープを挿入して再生ボタンを押した。
穏やかな明るい曲が流れ出す。
「音楽――?」
少女は目を丸く見開いて驚いた。
ラジカセが、音楽を演奏する装置だとは思わなかったのだ。
タケダネットからダウンロードしてポータブルデバイスで再生する以外の方法で音楽に接した経験のない世代なのだから、当然の反応である。
「いい曲だろう。この音楽は『ジャズ』という名前らしい。世界幕府には禁止されている音楽さ」
薪屋の言葉を聞いて、少女は更に驚いた。
厳しく校則を守らせ、厳格な指導をすることで有名なマッスル先生が違法な音楽を聴いているなんて!
「昔、傭兵をしていた頃に、反政府カルト集団から押収した曲なんだが、なぜか気に入ってしまってね」
穏やかに笑う薪屋の顔は、生徒指導のマッスル先生ではなく、今まで少女が一度も見たことのない表情であった。
「若い頃の私は、手の付けられない暴れ者だったんだ。自分の力を試してみたくて、傭兵部隊に入った。間違った道を歩いたとは今でも思っていない。だが――」
薪屋の目が、暗く濁る。
ラジカセがシンバルの音を二度、打ち鳴らした。
「汚いものを色々と見てしまった」
ふと気付くと、二人のカップは空になっていた。
「先生、私はどうすれば――」
少女の迷いはまだ消えていなかった。
薪屋は穏やかに笑い、決断した。
これから少女の不安を取り除くことにしたのだ。
「最後に決めるのはあなた自身です。――しかし、迷いを捨てる手助けならば、できます」
薪屋は、戸棚から何かを取り出してみせる。
一本の金属棒と、その両端に取りつけられた五キロウエイトであった。
「マッスル先生、それは?」
少女は訝しげな顔をした。
「これはダンベルです。このダンベルで、あなたの悩みを消すことができるかもしれません」
薪屋は、少女を勇気づけるべく微笑んだ。
「一緒に解決方法を探しましょう。私はあなたの味方ですよ」
薪屋は、少女の面前で五キロダンベルを手に持って、ゆっくりと上下に振り始めた。
――その翌日、薪屋武人は『ポータルチケット』の所有者となっていた。
変わり果てた姿となって発見された少女が、試合に出ることはなかった。
だが、少女の表情は穏やかなものであった。
きっと、マッスル先生の“生徒指導”の結果として辿り着いたこの結末に、彼女も納得しているのだろう。
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