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『力の論理を超えて』
1 名前: 尾崎清之輔 投稿日: 2003/08/24(日) 23:42
今月に刊行されたばかりの本の紹介をさせて頂きます。

・力の論理を超えて ル・モンド・ディプロマティーク1998-2002
(『ル・モンド・ディプロマティーク』日本語版編集部編訳 NTT出版)

既に御存知のこととは思いますが、ル・モンド・ディプロマティークは
世界的なクォリティ・ペーパーの1紙であるフランスの日刊紙「ル・モンド」の
子会社ル・モンド・ディプロマティーク社発行の月刊誌であり、
日本では出版されてはいないものの、独立した有志の方々の努力により、
WEB上で誰でも閲覧可能な形による運営を行っております。
そして、ここは原文を楽しむ力の無い私にとって貴重な「場」の一つです。
宇宙巡礼のコンテンツの一つ「アゴラ」にもリンクが貼っておりますので、
御覧になられた方々も多いのではないかと思います。
また、この日本語の電子版が1998年よりスタートしたということは、
偶然にもこちらのHPとほぼ同じ長さの歴史を持っております。

さて、毎月優れた記事で構成されるこの月刊誌から、このたび初めて
活字の形による出版が日本でなされたことは、より多くの人々の目に
触れる機会を得ることになったと思いますが、この本には『時代の証拠として
長く残すに足りる価値を持つ論考』として、日本語版スタッフの手により
23本の記事が選ばれ、収録されており、これら収録された記事は、
WEB上でも同様ですが、『オフィスワーク、教育・研究、子育て、翻訳などを
本業とする』有志によって、出版に至っており、このことは
自らの至らなさを痛切に省みるための良い材料となっております。

先述したように、多くの優れた記事が収録されておりますが、
例えば『きれいな戦争という汚い嘘』には、劣化ウラン弾による汚染について、
その危険性が分かりやすくレポートされており、日本において「中立性が
高いと思われている」国際的な機関であるUNEPとWHOに対しては、
それぞれが発表した劣化ウランの「無害性」に対して疑念を浴びせかけ、
冷静なる批判を行っております。

今夏、「第2次世界大戦時の東京への原爆投下計画」についての特集が
テレビで放映されましたが、この第3の原爆投下計画について、資料を調べ上げ、
当時の投下部隊メンバーへのインタビューを行い、終戦直後の長崎での
「演出された報道映像」をスクープしたこの番組を素直に評価したいとともに、
被爆国の立場として、この記事の扱う内容にまで触れることができれば、
更に外へ向けた形のメッセージとして広がるのではないか、と考えたのは
何も私一人だけではないと思います。

掲載の順番は、イニャシオ・ラモネ編集総長の『「敵」の出現』から始まり、
近著「戦争とプロパガンダ」で知られる、エドワード・W・サイードによる、
『バレンボイムとワーグナーをめぐる論争に寄せて』で締めくくっておりますが、
この始まりと終わりに同じ号を採用したことが、この本の持つ記事それぞれの
秀逸さを更に引き立てた編集部の叡智を感じさせたとまで言ったら、
これは誉めすぎでしょうか。

最後にその『バレンボイムとワーグナーをめぐる論争に寄せて』の
下記の1文をもって、この本の紹介を終わらせて頂くことと致します。

***** 引用開始 *****

人生は批判精神や解放体験を打ちのめそうとするタブーや禁止事項によって
支配されるものではない。この心構えは、常に第一に掲げるだけの意義がある。
知らないでいることや知ろうとしないことが、現在の道を切り開くことはないので
ある。

***** 引用終了 *****

2 名前: 盛岡 金吾 投稿日: 2003/08/26(火) 00:21
 尾崎様、はじめまして。盛岡金吾です。

 尾崎様が御紹介なされた「力の論理を超えて」ルモンド・ディプロマティック日本語編集版ですが、貴殿が仰せの通り、日本人や外国人と言っても主に英語圏の思考で書かれた活字に偏りがちな日本社会の言語空間において彼女or彼らの活躍は素晴らしく、物事を考える多様な視点を提供してくれています。

ちなみに私は上記の編集部に今までメールを何度か送り、こちらのHPの紹介をし、いつでも掲示版に遊びに来られることを歓迎しています。

ルモンド・ディプロマティックのお話が出たついでに私の方から本を一冊紹介したいと思います。

「ルモンド」インタビュー集 哲学・科学・宗教 (ルモンド・エディション編・丸岡高弘、浜名優美訳 3200円 
産業図書

少し以前に出た本ですがヨーロッパの香をかぐのに如何。

3 名前: 堂島新之助 投稿日: 2003/08/28(木) 00:02
皆様、こんにちは。私は堂島新之助と申す者です。同じ関西圏の知人の盛岡さんの紹介でこの掲示版の存在を知り投稿させて頂きます。

上記で尾崎さんや盛岡さんらによる本の紹介があったので、私の方からも一冊、

「デカルトなんかいらない?」・カオスから人工知能まで、現代科学をめぐる20の対話 FAUT−IL BRULER DESCARTES ?ギタ・ぺシスーパステルナーク 松浦俊輔訳 産業図書ですが、ちなみにこの本の中身も「ル・モンド」紙をはじめとして一般向けの新聞・雑誌にも掲載され、ラジオでも放送されていたものです。対話の顔ぶれを適当に抜粋してみたいと思います。

ルネ・トム  「カタストロフ」の数学者、異端の危険を冒す科学の冒険

イリア・プリゴジン 「散逸構造」の建築家

アンリ・アトラン  自己組織化の理論家

エドガール・モラン  知の密猟者

パウル・ファィヤアーベント  科学のアナーキスト

ジャンーピェ−ル・デュピュイ 複雑さの先駆け

ハインツ・フォン・フェルスター  サイバネティックスの開拓者等々。

4 名前: 尾崎清之輔 投稿日: 2003/08/30(土) 18:59
盛岡さん、堂島さん。

はじめまして。早速のレスにつきまして、ありがとうございます。
最新号の記事では情報に関わるテーマを取り上げていたのが印象的ですね。
また、書籍の御紹介につきましても、重ねて御礼申し上げます。

自分の文を再読して書き足りない部分がございましたので追記いたしますと、
最初の記事は9.11直後の2001年10月号であること、途中を彩る記事は、
様々なテーマを多角的な視点で捉えつつ、覇者の基準ではない見解を示すことで、
読者に多くの考える機会を与え、締めくくりの記事は最初と同じ号であったことが、
私にとって新たなる次元への展開とその回天軸を強く感じさせることとなりました。

西條さんが別のスレッドで言及されておりましたように、良書の紹介や
書評などを継続的に続けていくことで貴重な知的財産として残されることは、
後世にとって大切な行為の一つではないかと思います。

5 名前: ナニワのだるま 投稿日: 2003/09/27(土) 23:39
 皆様、こんにちは。お久しぶりです。上記で各々方々が本の紹介をなされ、特に関西圏の発言が目立ったので、私も本にまつわる近況報告をしておきたいと思います。

最近、ネット上の古書店を通じて購買しており、当たりが続いています。例えば、「ジャパン・レボリューション」の正慶孝教授による「「楽園回復」の社会経済学 」時潮社や、
「経済学ワンダーランド」八千代出版をはじめ藤原博士の「湾岸危機・世界はどう動くか」など、入手しにくい本をゲットしました。

ちなみに山の手書房から出た「インテリジェンス戦争の時代」の本もありましたよ。

又、新刊としては岩瀬達也記者による「年金大崩壊」講談社も最初の数章だけですが、興味深い内容でいろいろ考えさせられます。将来に直結する身近な問題ですからね。

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