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配送体制の一元化- 1 名前: 赤十字血液センター 投稿日: 2005/08/25(木) 12:12:05
- 赤十字社におけるサプライチェーン・マネジメント
(SCM)の実践
──血液事業をモデルとして──
瀬 名 浩 一
第4章 バリューチェーン戦略?の意義
2.配送体制の一元化
「バリューチェーンの考え方についての第2の影響は,誰がその
活動をするにせよ,すべての経済的プロセスを一つとして考えざる
を得なくなるということである。例えばマクドナルドのように,常
に一貫して完璧なフレンチフライを提供するファーストフード・ビ
ジネスを興したいと思えば,顧客に対して,原料となるジャガイモ
の仕入先の農家にちゃんとした貯蔵設備がないという言い訳は出来
ない。顧客は,それが誰のせいかには関心がない。彼らが気にする
のは,フレンチフライの出来だけである。だからマクドナルドは,
仕入先のジャガイモ生産者が彼らの基準を満たすことを,どうにか
して確実なものにしなけばならないのだ。この相互依存の意味する
ところは深い。企業とその顧客だろうが,注文主と仕入先だろうが
,あるいはビジネス・パートナーであろうが,その垣根を越えたマ
ネジメントが,企業内でのマネジメントと同じくらい重要になりう
るからだ。」血液事業においても,輸血治療に不可欠なプロセスで
ある「血液製剤の配送」に最近問題が起きている。輸血用血液を東
京都内の医療機関に配送する「献血供給事業団」が,緊急に血液を
配送する際,緊急車両で直接病院に運ばず,内規に反して停車させ
るなどし,到着が約10分遅れ,病院で手術のため輸血を待ってい
た男性は死亡したというのである。(静岡新聞2004年11月1
4日)日赤によれば,献血供給事業団と日赤は別組織であり,資本
は別である。しかし役員には日赤関係者が含まれている。 事業団の
配給体制の不備は日赤には関係ないであろうか? むしろ「バリュ
ーチェーン」の考え方からいえば,誰が配給するにせよ,献血され
た血液は患者に届くまで一つの経済的プロセスは終わらないのである。
*「献血供給事業団」は1965年ごろ,当時輸血用血液は買血と献
血が入り混じっており,配給委託業者は自社の買血を優先的に供給し
たため,献血の供給が二の次となり,期限切れなどが社会問題となっ
た。この後,血液を専門的に配給する公益法人の設立が求められ,1
966年12月,東京都内を担当する?献血供給事業団が公益法人とし
て設立された。その他の県でも公益法人設立の動きはあったが普及せ
ず日赤血液センターによる直配の方向に進んだ。「献血供給事業団」
の2003年度損益計算書をみると,血液など供給事業収入1390
百万円,事業支出額1578百万円,差引188百万円の事業損失と
なっている。果たして事業団は自力で輸血用血液の輸送問題を解決で
きるのであろうか。日赤は自らのバリューチェーンを見直し,重要な
東京地区の医療機関への供給体制を再編せざるを得ないのではないか
。今回の組織変更もそれに沿った措置と思われる。実際,日赤血液事
業部は2004年10月,大幅な組織変更を行った。今まで,日赤本
社事業局の中に位置していたが,さまざまな課題に対応する機動力を
持たせるため,日本赤十字社中央血液センターと合体し,「血液事業
本部」として日本赤十字本社の総務局と事業局から独立した組織にな
った。日赤本社につながりを残しているが,社長と同等の権限をもつ
責任者「血液事業本部長」を有し,その権限のもと血液事業を行うこ
とになったのである。ようやくサプライチェーン・マネジメントを実
践する準備が整ったといえよう。
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