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*+゜:*月夜の怪盗*:+゜・*
1リサ:2007/09/21(金) 17:22:18 ID:bVwKr1T2
『彷徨う闇』を書いているリサと申します♪
リア友のレミと共に進めていきます。

SF系のお話デス☆
よろしくお願いします!!!!

2レミ:2007/09/22(土) 22:38:21 ID:.Ub/3BoM
こんにちは〜☆
この作品は二作目になります!
頑張って書くのでよろしくです♪

3リサ:2007/09/23(日) 18:20:04 ID:bVwKr1T2
《ボンッ》

「ひゃあッ!」

軽い爆発音と共に、少女の悲鳴が上がった。

「えぇ〜・・どこで間違えたんだろ?」

何か、怪しげな本をじっくりと見つめ

透き通った水のような瞳で

本とにらめっこしている。

ブルーのショートヘアを、横に傾け

首をひねってうなり声を上げている。

「ん〜・・・聖水と2BK薬じゃ、相性が合わないのか・・
またやり直しだぁ・・・」




この少女の名前は、ルイカ。

今、ルイカがやっているのは

相性の合う魔法製品の調合。




そう。ここは、魔法学校。

と、言っても色んな学科がある。

ルイカの学科は、アイテム科。

様々な魔法アイテムを作る勉強を受けるところ。

ただ、アイテムを作るのはとても危険なことで

かなり修行し、アイテムについて学び

優秀な成績を納めた者しか、アイテムを作る許可が出ない。



他の者は、先生と共に説明書どおりアイテムを作ることしかできない。



ルイカの場合は、この学科一、優秀な生徒なので

材料や、作りたいアイテムなどをレポートに書き

提出し許可さえできれば

好きなように実験ができる。



他に、オリジナルアイテムではなく

説明書にのっているものならば

授業中ならいつでも好きなように作れる。

4リサ:2007/09/23(日) 18:37:29 ID:bVwKr1T2
ルイカの学科の他は、

呪文科、体魔術科、洗脳科、魔方陣科がある。

魔方陣科には、ルイカの親友

シキがいる。

シキは、ルイカと身長も体重も全く一緒。

そんな二人は気が合うので

とても仲がいい。






「えーと・・・」

その、シキは今、魔方陣をかいている。

魔方陣は指で空にかくこともできれば

杖で地面にかくこともできる。

呪文とは違い

召還魔法なので

攻撃の威力や、速さなどが

その魔方陣によって

呪文科とは違う。

場合によっては

呪文よりもいい効果がでることもある。



魔方陣科は

集中力が大切だ。

呼び出す魔法なので

精神を集中させ

願わなければ・・・・



(大丈夫。シキ!あんたはこの学科一の能力の持ち主なんだから!)


そう自分に言い聞かせ

魔方陣を杖で描く。


その杖は、ルイカからもらった

ルイカの作った杖。



そして、魔方陣が完成に近づいたとき・・・


「よぉ、お前新しい魔方陣完成したのか?」


クールなカンジで登場した

この、カッコイイ男の子。



実は・・・



「ハ、ハルキッ!」



シキの彼氏だったりする。

彼氏の登場に180度集中力が別へ動いたシキ。

今まさに完成した魔法人は

何もおきなかった。


「んだよ、失敗か。俺の呪文とどっち威力高いか比べようと思ってきたのに」


「〜〜〜〜!!ハルキのせいでしょッ!!!!」

シキは、ブロンドのセミロングの髪を揺らし

エメラルド色の綺麗な瞳をツンと吊り上げ

ハルキに八つ当たりした。

5レミ:2007/09/23(日) 19:30:06 ID:.Ub/3BoM
「なんで俺のせいになるんだよ」

ハルキが呆れた顔でシキを見つめる。

「それは、お前の集中力がまだまだだからだろ」

シキはその言葉に反論出来なかった。

「うっ・・・・・」

「ほら、反論出来ないだろ?」

ハルキがニヤニヤ笑ってきた。

それがいけなかった。

シキが魔方陣を手早く創る。

「ハルキ」

ハルキが顔を上げる。そして、目の前にある魔方陣に驚愕した。

「ま、待てよ!ちょっと待て・・・・!」

ハルキが必死でシキを抑えようとする。

しかし、

キレたシキを止められることは出来なかった。

「ハルキなんか〜〜〜〜〜っ!!!」

魔方陣が発動する。

辺りが眩い光で覆いつくされる。

「っのばか野郎・・・・・!!!」

ハルキは瞬時に呪文を唱えて結界を作る。

間一髪のところで魔方陣によって放出された光は結界によって消し飛んだ。

「〜〜〜〜〜っ!!!」

シキが悔しそうにハルキを睨んだ。

「ほんとに、未熟だな」

ハルキが不敵そうに笑ってシキのもとを離れた。

シキは考え込む。

「仕方ない、アイツのところにでも行って策を考えなきゃ。」

シキは思いついたらすぐに行動に移った。

6レミ:2007/09/23(日) 19:57:44 ID:.Ub/3BoM
シキの言っていた”アイツ”は特殊な学科にいた。

言い忘れていたが、この学校には4科の他にもう一つ特別な学科が存在していた。

それは魔法の使用を極端に抑えた学科である。

トラップ科。

極度な身体能力と知能が無ければ入れない、

リスクが高い学科だ。

シキがトラップ科のある一室を訪ねた。

「レイ、いる?」

シキが部屋の扉を叩いた。

「なんだ、シキか」

扉を開いたのは、整った顔をしているかっこいい男の子。

「何よ、ルイカの方が良かった?」

シキはイタズラをした子供のように

レイに笑って見せた。

「や、あいつが来たら罠の準備とかうまく進まないから、まだマシ」

そう、彼はルイカの彼氏なのだ。

レイが疲れた顔をして言った。

「そんな顔してちゃ、トラップ科随一の腕が衰えるよ?」

「俺、お前よか腕には自信あるぜ」

シキはむっとする。それから、レイに尋ねた。

「あのさ、ハルキを懲らしめてやりたいんだけど・・・いいモノある?」

実はこの二人、悪戯が大好きでいつもこうして吊るんでいる。

「お前、いっつもハルキにやられっぱなしだよな」

レイがからかうように言ってきた。

「早く頂戴よ」

シキが苛々しながら言った。

「ほらよ」

レイが部屋の棚から持って来たものをシキに渡す。

「ハルキが嫌いな”ホイップマフィン”だ。

もともと甘いけど、性能をちょっと意地って激甘にしといたから」

シキはそれを嬉しそうに受け取る。

「さんきゅ」

「じゃな」

レイは用が済んだ瞬間、扉をバタンっと閉めた。

「ルイカも、よくこんなヤツと付き合う気になったな・・・」

シキはつくづくそう思いながら、トラップ科を後にした。

7リサ:2007/09/23(日) 20:59:59 ID:bVwKr1T2
その頃、ルイカはハルキのところへ行っていた。

相手の彼氏の方へ同時に行くルイカとシキは

やっぱり気が合う。


「ハル、ちょっといいかなァ?」


呪文科の部屋のドアを少しあけて

ひょこっと顔を出して

おずおずと中の様子をうかがっている。


「そんなとこから覗いてないで、入れよ」

その一言にホッと顔をほころばせて

笑顔になるルイカ。

「お邪魔しまぁ〜す」

なにやら本を読んで勉強中だったらしいハルキ。

「さっそくなんだけど、バニング・フラインを
このアイテムに調合したいから
このカプセルに打ち込んでくれる?
ちょっといれればいいから、威力おさえてね。
でないとカプセルが威力にたえられなくて
破損しちゃうから」

バニング・フラインとは、炎系の呪文だ。



ルイカの説明を聞いていたハルキが

笑った。


「お前って、普段ドジばっかふむくせに
こーゆう話になると饒舌になるよな」


その発言にルイカは少し赤くなった。

それを見て


(彼氏じゃねぇ男の前で赤くなるとか無防備すぎ・・・)

と、ハルキは思った。



「そ、そういうハルも、今日はやたらご機嫌だけどシキといいことでもあったの?」


ハルキがその言葉に

一瞬ピクリと反応する。

けど、そこはポーカーフェイス。


「別に」


と、ハルキはスルーした。


「本当に?でも普段そうやってあまり笑わないから・・・」

「まぁな」

またスルーされた。

「とっ、とにかく!!カプセルにいれてッ!!」

「言われなくても・・・・」

言いつつ、既にハルキは手を前に出し

カプセルを指差す。

「バニング・フライン」

一言、小さく言うと

指先から小さな炎が出て

カプセルに赤い光が灯った。

「ほらよ」

「ありがとう♪」

ニッコリと笑う。

「あっ、邪魔しちゃ悪いからもう戻るね!じゃ・・・・ひゃわッ!」

《ゴン》

後ろを向きながらドアに向かって歩いていたせいで

ドアの柱に頭をぶつけた。

「いたた・・・・」

頭を押さえつつ、ハルキを見ると

また少し笑っていた。

「ばーか」

「ううぅ・・・ひどいぃ!レイに言いつけてやるぅ・・・///」

そう言いながら

顔を真っ赤にして部屋を出て行った。

8レミ:2007/09/23(日) 22:28:46 ID:.Ub/3BoM
ルイカがアイテム科の部屋へと帰ろうと廊下を歩いていると、シキとばったり会った。

「あ、シキっ!」

ルイカが笑顔でシキのもとに走り寄ってきた。

「そんなに走ってたらまたこけるよ?」

シキにまでこんなことを言われては、ルイカも黙ってはいられなかった。

「シキこそ、天然のくせに〜!」

「その言葉、そっくりそのまま返すわ」

ルイカがむっとした顔でシキを睨んできた。

シキはその顔を見て笑い出した。

「あはははははっ!」

「?!な・・・なによ?」

ルイカは驚いた。

なんで急に笑うかがよく分からなかったからだ。

「ルイカの顔・・・・団子みたぁい!!!」

シキがお腹を押さえながら笑う。

「シキの馬鹿〜〜〜!」

ルイカは腰の近くにぶら下げている、薬品をシキ目掛けて投げた。

「くらえっ!」

ボワンっ!

「ちょっ・・・、何すんのよルイカ!!!」

シキの周りを煙幕が包む。

その間に、ルイカは目を潤ませながらシキのもとを離れた。

煙幕が消えると、シキは辺りを見回した。

「そんなに・・・ショックだったかナ?」

シキが困ったような顔をしてから廊下を歩き出した。



「ハルキ〜」

シキがハルキのもとへとやって来た。

そう、

マフィンを届けるために・・・・。

「何、仕返しにでも来た?」

シキは一瞬ギクッとしたが、顔に出さないよう笑顔で言った。

「まさか〜」

そして、ハルキの近くまで歩いていく。

「これ、差し入れ」

そう言ってシキはハルキにマフィンを見せる。

「おい、俺が甘いの知ってるだろ?」

ハルキがイヤそうな顔をする。

「だから、甘くないように作ったんだから」

シキが得意気に言った。

ハルキはシキを疑いの眼差しで見つめてからマフィンを手に取る。

そしてそれを一口、口にほお張った。

「うっ・・・・?!」

ハルキのい表情が変わる。

シキはそれを見てにやりと笑った。

「ハルキ、引っかかったね〜」

「・・・てめぇ」

ハルキが青冷めた顔でシキを睨んだ。

「いけない・・・今度は逃げなきゃ!」

シキは魔方陣を書く。ワープの魔方陣だ。

「じゃね♪」

シキが手を振る。

「待て!」

ハルキがシキの腕を掴もうとする、が、その手は空を切っただけだった。

「・・・絶対許さねぇ」

ハルキの顔は屈辱に染まっていた。

9レミ:2007/09/23(日) 22:31:33 ID:.Ub/3BoM
間違えました!
ハルキのセリフで「俺が甘いのは知っているだろ?」は
「俺が甘いのは苦手って知ってるだろ?」の間違えです・・・。

10リサ:2007/09/23(日) 22:53:06 ID:bVwKr1T2
その頃、ルイカは今日既に2人の人間にからかわれ

落ち込んでいた。

今日は授業を受けず、1人で実験する許可を先生にもらえた

貴重な日。



でも、ルイカの場合

機嫌や気分がよくないと

ミスばかりするので

今、アイテム作りをすると

せっかく調合したものがダメになる。



「ハァ〜・・・レイのとこに行ってみようかな・・」


もしかしたら、

気分がよくなるかもしれない。



でも、逆にからかわれてもっと落ち込むかも・・・・。



そう思ったけど

やっぱり好きな人に会いたい気持ちが大きくて

ルイカは、レイのところへ向かった。




ドアを開け、レイに声をかける。


「レイ〜・・・」

「・・・・ハァ。今度はお前か」

レイがそう言った途端、ルイカの目に涙がこみ上げてきた。

「は?ちょ・・お前、どうしたわけ?」

「あたし・・来ちゃダメだった・・・?」

その様子を見て、レイはルイカが落ち込んでいるのに気付いた。

「ちげーよ。いいから、座れ」

ルイカは大人しくイスに座った。

11レミ:2007/09/23(日) 23:10:42 ID:.Ub/3BoM
「・・・・どうした?」

レイが一拍置いてから聞いた。

「・・・からかわれた。」

ルイカが涙声で言った。

レイはため息をついてから口を開いた。

「あいつらに?」

ルイカは黙って頷いた。

「・・・・・・」

ルイカはレイが呆れていると勘違いした。

涙が次から次へと溢れ出て来た。

レイはルイカの頭に手をのせて、髪をくしゃっとした。

「ばか、泣いてたら余計からかわれるぞ」

「〜〜〜だって!」

ルイカが涙で腫らした目を見開いて反論しようとする。

「大丈夫、俺がなんとかすっから」

レイが意地悪そうに笑った。

「だから、せめて笑えよ」

ルイカがきょとんとする。

「泣いてても、なんも変わらねぇからさ」

ルイカは少しだけほっとする。

「うん・・・ありがと・・・・」

その笑顔を見てから、レイは立ち上がる。

「おし、反撃開始だ」

12リサ:2007/09/23(日) 23:23:39 ID:bVwKr1T2
レイはルイカの手をとり

どんどん歩いていく。


「ちょっ・・・レイ!?どうするの・・?」

「仕返し」

「仕返しって・・・・?」

すると、レイが顔を近づけてきた。



思わずドキリとするルイカ。



耳元で、レイが囁く。



「お前は、俺が合図したら悲鳴あげろ。分かったな」

(分かんないよ・・・)

そう思いながら、ルイカは黙っておいた。


「でもでも、どこに行くつもり?2人がどこにいるかなんて・・・」


カラーン カラーン


学校のベルがなる。


「今から昼食の時間だろ。あいつら屋上にいる」

そう、ルイカとレイは中庭で食べるが

シキとハルキは屋上、というかんじなのだ。


もちろん、4人で食べることがほとんどだけど。

誘ってこないということは

2人の場所で食べているはず。


「レイ・・さすがトラップ科・・頭いい〜!」

(こんなん誰でも普通分かるだろ・・・)

そう思ったが、今は黙っておく。


屋上の扉の前まできたとき

レイはあるシカケを色々した。


そして・・・

「お前はここにいろ。で、合図したら悲鳴あげろよ?」

ニヤッと笑うレイ。

こういうイタズラ好きな子供っぽいところも

ルイカは好きだった。


シキには理解しがたいらしいけど・・・・。



そんなこんなで

2人の反撃が開始された。

13リサ:2007/09/23(日) 23:39:20 ID:bVwKr1T2
重く軋む扉を片手で簡単に開けるレイ。

「よ、俺らのここで食うから」

「おう」

「ねぇ、ルイカ落ち込んでなかった?ちょっとからかいすぎたみたい」

シキが申し訳なさそうに

そう聞いてくる。

「さぁな」

ここはちょっと意地悪な返事をしてみた。

「で、ルイカは?」

「後から来るってさ」

(そろそろ・・・か)

レイは、咳払いをした。

それは扉越しに待機しているルイカにも聞こえる声だった。

(もしかして・・・これ、合図!?でも・・どうすれば・・!?)

「ぇ、ぁ・・キャ、キャアーーー!!!」

ぎこちない悲鳴を上げるルイカ。



その声に、シキとハルキが反応する。

「今のって・・・・・!?」

ハルキが予想通りに驚いている。

「ルイカ・・・!?」

そして、2人はレイの思惑通り

走り出した。

扉の向こうへと。




実は、ルイカはもう1つ頼まれていたことがあった。

『俺が屋上に出たら、ここのスイッチ押しとけよ』

ルイカはそのスイッチを押す。

そして、それから1分ほどだったとき

扉が開いた。


「ルイカー!!・・きゃッ!!?」

「!!?クソッ・・何だこれ!?」


扉が開いた途端、壁に設置してあった小さな箱型のトラップから

ゴム製の長いヒモのようなものが

たくさん出てきて

あっという間にシキとハルキを縛りあげた。


そう、これはレイの仕掛けたトラップ。

扉が開くと同時に

ヒモが飛び出てくるシカケだ。

しかも、激しく動く人間にくっつく性質にしてあるので

飛び出してきた2人に勢いよく巻きついたのだ。


身動きの取れない状態の2人の前に

レイとルイカが立つ。


「ルイカ〜〜〜〜レイに告げ口するなんて〜〜!!」

「ごっ、ごめ・・・じゃなくて!シキが悪いんだよ!!」

「レイ・・てめェ・・・!!」

「俺の彼女からかうのが悪ぃんだよ、馬鹿」



今回の勝負(?)は、どうやらレイとルイカの勝ちらしい。

14レミ:2007/09/24(月) 00:00:51 ID:.Ub/3BoM
「〜〜〜〜〜〜っ!!!」

シキは機嫌が悪かった。

それもそのはず、

あんな場面でトラップが仕掛けてあるなんて予測していなかったからだ。

「一杯食わされた!」

苛々しながらシキが言った。

「でも、シキが悪いんだからね!」

ちょっと躊躇いながら、ルイカはシキを責めた。

「ま、いいや」

しかし、シキはあまり強く根に持たないタイプ。

冷めたら冷めたでそれでお終い、という感じだ。

「お前らのせぇで、昼飯食えなかっただろうが」

ハルキがすこしむくれて言った。

「仕方ねぇだろ、お返ししただけなんだからさ」

レイが横目でハルキを睨んだ。

「お返し・・・?あっ、そういえばシキ!!!」

ハルキは思い出したかのようにシキを睨んだ。

「ぁあっ!」

当の本人もマフィンのことは忘れていたらしい。

「ひぇ〜〜〜っ!」

シキはダッシュでハルキから逃げた。

「待て、こらっ!」

ハルキもその後を追いかけた。

「・・・まったく、アイツらって」

「喧嘩ばっかだネ・・・・」

そんな二人をルイカたちは呆れて見ていた。

15リサ:2007/09/24(月) 00:21:52 ID:bVwKr1T2
「こら、止まれ!待てっつってんだろ!」

「嫌!誰が止まるか!!」


2人は廊下を走りまわっている。

だが、ハルキの方が断然体力があるので

2人の距離は簡単に縮まる。


「や〜〜!!見逃して〜〜!!!」

魔方陣なんて書いてる暇のないシキは

ただただ逃げるしかなかった。


そして、ハルキの手がシキの腕を掴む。



「ひゃッ!!!!」

「捕まえた。俺の勝ちだな」

「ごめんってば〜〜〜〜〜!!」


咄嗟に謝り、身を縮こませて

目をギュッと瞑るシキ。


(本気で叩きのめす気なんてねぇのに・・・馬鹿な奴)


そう思いながら、

シキを自分の方へと引き寄せた。



「◎×△!?ちょっとハルキ・・・・ッ////」



ジタバタするシキを抱きしめる。



「ハルキ・・苦しッ・・・!!///」

「俺をからかった罰」

「う・・・///」




シキは頭がよく

大人っぽいので

結構強気なところがあるが

テレ屋なことをハルキはよく知っている。


「仕返しは相手の弱みを突かないと・・・だろ?」

「・・・・あほ///」


そして、シキを離した。


「もう!やめてよね!窒息死するとこだったでしょ!?」

「俺だってあやうく気絶するところだった」

マフィンのせいで。


「そんなの知らないもん!!」

「・・お前、そんなに絞め殺されたいわけ?」

「・・・ッドあほ!!」

そう言って、今度は魔方陣をかいて

素早くワープした。


「ったく・・・赤面性なのはルイカもシキも同じだな」

16レミ:2007/09/24(月) 00:44:40 ID:.Ub/3BoM
「眠い・・・・」

レイが眠たそうに目を擦った。

「寝不足なの?」

ルイカが心配そうに聞いた。

「ん、課題やらなんやらでね」

「・・・部屋で寝たら?」

「無理、散らかってるし」

レイが冷たく言い返すので、思い切ってルイカは言った。

「中庭行こう!?」

レイがきょとんとする。

「・・・・授業は、出なくてもあたしたち大丈夫だもん」

そう、特待生は授業など受けなくても

自習で済むのだ。

「あのなぁ〜・・・」

レイが面倒臭そうな顔になる。

ルイカはなんとかしてレイを楽にさせてあげたかった。

「う〜ん、う〜ん・・・・」

そんな一生懸命自分のために、何かしようと考えている姿を見ていると

とても微笑ましかった。

しかし、レイはあえて顔に出さなかった。

そして、レイはそんなルイカの頭にチョップした。

「?!いたっ・・・・!」

ルイカが手で頭を押さえた。

「ばか」

レイが冷たく言った。

ルイカは、また自分が悪いことをしたのではないかとハラハラし

次第に目を涙で潤していた。

「ご・・・ごめっ・・・」

ルイカの謝ろうとする言葉は遮られた。

「冗談」

ルイカはレイを見上げる。

ちょっとだけ悪戯に笑うレイがいた。

レイの片手がルイカの頭にのっかる。

「めっちゃ、感謝してる」

ルイカの目線に合うよう、レイはちょっぴりしゃがんで言った。

「ありがとな」

そして、ルイカの額に軽くキスをした。

「っ?!なぁっ!?/////////」

ルイカが照れて顔を真っ赤に染める。

レイは踵を返してルイカにいった。

「おやすみ」

レイは、そうルイカに言ってから、廊下をまた歩き始めた。

17リサ:2007/09/24(月) 01:02:56 ID:bVwKr1T2
ルイカがさっきの余韻に浸りながら

ぽーっと歩いていると

同じく顔を真っ赤にしたシキに合った。

「シキ・・・どしたの?」

「ルイカこそ・・・・」

「あ、あたしの質問に答えてよっ!!」

「べべべ別に?ただ、ちょっとギュ〜みたいなかんじなような・・・」

後半部分ごにょごにょと濁しているシキ。

だがハッキリ聞こえた。

「ぎゅ、ぎゅ〜って!?ええええぇ///」

ルイカの頭からケムリがあがっている。

顔は真っ赤だ。

「ばっ!馬鹿!大声出さないのーッ!!!!」

「だって・・・・はふぅ・・////」

「そ、そぉゆうあんたはどうなのよ!?」

「えっ!?違う!!口じゃないよッ!!おでこだもん!!」

いきなり口走るルイカ。

「は?あんた何言っ―――・・って、えぇ!?デコチュー!?学校で!?///」

「ひゃああぁ!!多き声やめてよぉー!!」

ルイカは顔を真っ赤にしながらも

半泣き状態だ。

「あ、あたしよりもすごいじゃないのッ・・!あーこっちが照れる!」

「何が俺らよりもすごいって?」

「へ?」

シキが振り向くと

そこにはレイがいた。

18リサ:2007/09/24(月) 01:04:36 ID:bVwKr1T2
すいません;
ルイカのせりふ部分ミスしましたァ!!
「多き声やめてよ」になってますが
「大きい声」に訂正です。
スイマセン。。。

19レミ:2007/09/24(月) 01:18:23 ID:.Ub/3BoM
「レ、レレレレレイ!!!!//////////」

ルイカの顔がさらに赤みが増す。

「ね・・・寝たんじゃなかったの?」

「ああ、寝れなくてさ」

レイが即、返事を言った。

「レイって結構やるね」

シキが信じられなさそうな目でレイを見つめる。

「何が?」

レイがきょとんとして返事をする。

「だ〜か〜ら、学校でデコチ・・・・・?!」

ルイカが慌ててシキの口を押さえた。

「ああ、あれ?」

しかし、レイには聞こえていた。

「シキもハルキにしてもらいたいワケ?」

「・・・・は?」

レイが悪魔のように笑う。

「俺から言ってやろうか?」

シキは怒った。

と、いうかキレた。

「うるさい!デコチュー如きで!!!」

「シキ・・・・声でかいよォ〜」

半泣きのままルイカがシキを止めようとする。

「ルイカにキスも出来ない甘ちゃんが、調子に乗るな!」

「出来るよ」

シキの言葉はレイの返事で打ち消された。

「俺に、不可能なんてねぇから」

意地悪に微笑むレイに、ルイカはぽけら〜としていた。

キス・・・・って・・・・

何それ〜〜〜?!

20リサ:2007/09/24(月) 10:59:37 ID:bVwKr1T2
レイの顔が

少しずつ、ルイカの唇に近づく。

ルイカも真っ赤だけれど

見せ付けられているシキも負けずに

赤面している。

(ほ、本当にやるわけー!?///)

シキが目を逸らそうとするより

わずか1秒早く、ルイカが顔を逸らした。



レイではなく左を向き

やや俯き気味。



「ルイカは嫌なわけ?」



こういうときだけ

『お前』とかじゃなくて

名前で呼ぶレイは

ずるいとルイカは思っている。



すると、ルイカが視線をレイに戻した。


真っ赤な顔に、潤んだ瞳で

上目遣いで

レイを見つめ



「嫌なんじゃなくて・・恥ずかしいんだもん・・・///」



レイはそのままルイカを見つめ

沈黙が続いた。



(み、見つめあってるしー!!!!////)

ただ、見つめ合っているのを見るだけでも

シキは顔を真っ赤にしている。



レイは、ルイカの頭をくしゃっと撫でると

そのまま廊下を歩き消えていった。



「レ、レイ・・?/////」

不思議そうに立ちつくすルイカ。

レイが怒ってしまったのかと、不安にもなるけど

キスをしなくてすんで、少しホッとした。



「な、何よ!結局出来ないんじゃないー!!」

シキの怒声が廊下に響いた。






一方、レイは――――



《ガチャッ》


「どうしたんだよ?レイ」

「・・・・・・・」


ハルキの部屋に来ていた。


「なんか不機嫌そうだな」

「ルイカにキスできなかった」

そう言うと、ハルキは驚いた表情になった。

「お前、校内でキスとかしようとするほうが間違いじゃね?」

ハルキの意見は

なかなか正論と言える。

21リサ:2007/09/24(月) 11:11:01 ID:bVwKr1T2
「絶対出来る自信あったんだけどなー・・・・」

自信喪失しているらしい。

「何?お前が緊張するとか珍しいな」

「ちげーよ。あのままだったら出来たけど・・。
ルイカの奴、上目遣いで目潤まして見つめてくるんだぜ?」

ハルキはフッと笑いを零した。

「ルイカって計算とかじゃなくて素でそうゆう表情するから怖えーよな」

「まじで、他の男にもあんな表情してんじゃねぇかと不安になるわ」

そこでハルキは少し意地悪を言った。

「俺にはするよ?そうゆう表情」

レイは、ため息を付いた。

「本当、馬鹿だよなぁ・・・」

「ああ」

そこで、レイはハルキに言おうと思っていたことを思い出した。

「そういや、シキの奴欲求不満らしいよ」

「誰が言ってたの?」

ハルキの問いに、レイが

「シキ」

と、即答した。

「締め具合が足りなかったか・・・・・」

もちろん、抱きしめたことを言っている。

「お前って締めるの好きだな」

「おう。だってあいつ抱き心地めちゃいいから」

ハルキの発言にレイはすかさず

「お前、なんかエロい」

と、言った。

「キス魔が んなこと偉そうに言うな」

と、ハルキが言い返す。

「とにかく、俺ここで寝るから。黙ってろ」

「おま・・・自室で寝ろよ」

「嫌」

即答。

「あんなゴミ屋敷で寝れるかっつーの」

自分の部屋なのに、他人事な言い方だ。

そして睡眠発言をして数秒たった後、

レイはすぐに眠りについた。

22レミ:2007/09/24(月) 20:25:29 ID:.Ub/3BoM
「もう寝たのかよ・・・・」

半ば疲れた顔をしてハルキはため息をついた。

そして、

ハルキは立ち上がった。彼の銀髪がわずかに揺れた。

「欲求不満女にでも会いに行くかな」

そう言ったハルキの蒼い瞳は、決心したような迷いのない瞳だった。



「ルイカ、顔真っ赤〜」

シキがすこし心配そうに言った。

ルイカはレイがいなくなったというのに

ポケーっとしてて、すこし押しただけで倒れてしまいそうだった。

「もしかして、残念だった?」

「ふぇ?」

ルイカが反射的にシキを見た。

「キス出来なかったコト」

「〜〜〜〜〜〜〜っ?!////////////」

ルイカは頭から、モクモクと煙が上がるぐらい顔を赤くして反論する。

「ち・・・・ちちちち違うもん!!!////////」

いまいち説得力のないその言葉に、シキはニヤニヤしてルイカを見つめる。

「へ〜ぇ?」

ルイカがすこし怒ったように言った。

「ま、またレイに言いつけるよ?!」

さすがのシキも、これには懲りたらしい。

「それは、勘弁」

ルイカはほっとしたような顔になる。

「あ、あたし・・・顔洗ってくる・・・・」

「そんなに真っ赤だしね」

シキは納得してから言った。

「あたしも勉強しなきゃだし、行くね」

「うん、後でね〜」

ルイカが可愛らしい笑顔でシキに手を振る。

それを背に、シキは思った。

(あれ見たら、レイもイチコロかもね)

そして、自室へと廊下を歩き始めた。

23レミ:2007/09/24(月) 20:57:13 ID:.Ub/3BoM
「あれ・・・・ハルキじゃん」

シキが驚いたように自分の部屋の中にいるハルキを見た。

「鍵、開いてたぜ」

「うそ!?」

「ったく・・・無用心にも程がねぇか?」

呆れてハルキが言った。

シキはすこし怒っていった。

「用が無いんなら、帰ってよ」

「なんだよ、来てやったのに」

ハルキがすこしイラついて言った。

「でなきゃ・・・・」

シキが魔方陣を創った。

「追い出してやるっっ!!!」

その瞬間、魔方陣が発動した。

ハルキは面倒臭そうに、その魔方陣を消した。

「なっ?!」

一瞬にして、自分の創った魔方陣が消されたのだ。

シキはなんだか悔しくなり、もう一度魔方陣を杖で描く。

しかし、その魔方陣を描く腕は、ハルキの手によって止められた。

「は・・・離して〜っっ!!!」

シキが暴れる。しかし、ハルキにはまったくもって効果は無かった。

「こんなんじゃ、まともに話せねぇじゃん」

ハルキがシキの腕を自分の方に引き寄せる。

顔が近づく。

シキの鼓動が高まる。

「あっ・・・・・」

シキの体が小刻みに震えた。

ハルキはシキの、すこし怖がっている顔をみて、シキの腕から自分の手を離した。

「欲求不満じゃねぇのかよ?」

「・・・・はぁぁぁぁ?!」

シキが一拍間を置いて叫んだ。

「なななな何でそうなるのよ?!」

シキはすこし赤くなった顔で懸命に否定する。

「違うの?」

ハルキが尋ねた。

「違うわよ!」

シキも負けずと即答。

「本当に?」

そのハルキの問いかけに、一瞬戸惑うシキ。

「う、うん!」

「いま、戸惑ったろ」

「?!」

シキの顔が余計に赤くなった。

ハルキがニヤッと笑った。

「分かったよ、退散してやる」

「今日のところは」

シキは悔しかった、相手の方が一枚上手だということが。

「それまでに、もっと集中力磨いとけ」

そう言って、ハルキはシキの部屋を出た。

ハルキが部屋から出たとたん、シキは悔しそうに言った。

「絶対、負けないんだから・・・・・!!!」

24リサ:2007/09/24(月) 21:12:45 ID:bVwKr1T2
そのころ、機嫌が直ったルイカは

アイテム作りを、再び始めていた。


もう、学校は終わり

寮に戻る時間なので

自室でやっている。


でも、問題があった。

さっきのことが頭から離れず

機嫌が直ったのはいいが

逆にぽ〜っとしてしまい、些細なことで

ミスを繰り返してしまう。


「だめだァ・・集中できない」


さっき、レイはどうしたんだろう。

自分はもしかしたら

変な顔をしていたのかも・・・

など、不安がたくさんで

アイテム作りが進まない。



ルイカはベッドに倒れこんだ。

「はあぁ〜・・・・///」

まだ、顔が熱いルイカ。


レイは、恥ずかしいと思うことがないのか

ルイカは疑問だった。

そして

自分ばかり照れたりして

自分ばかりレイが好きな気がして

悔しい、とルイカは思った。

(最近、レイのことで頭がいっぱいかも・・・)


さっきレイに会ったばかりなのに

既に会いたい気持ちが

溢れてくる。

だが、ルイカは

何度も会いに行ったらうざがられるかも・・・

など、ちょっとのことで不安がったりするので

なかなか行動に移せない。


(やっぱり、あたしの方がレイを好きなんだな・・)


レイは、こんなふうに

悩んだりしていない。


ルイカは、ベッドから起き上がり

部屋を出た。

25リサ:2007/09/24(月) 21:29:22 ID:bVwKr1T2
向かったのは

男子寮の方。

ルイカはあまり男子寮にはこない。


男子のいるところ、と思うと

恥ずかしくてなかなかいけないのだ。


《コンコン》


2回程、ノックする。

返事はない。


(せっかく来たのに・・・)

肩をガックリ落とし、戻ろうとすると

廊下でハルキに会った。


「あれ?レイならさっきトラップ科のほうにいたけど・・」

「違うの、ハルに用があったの」

慌ててルイカはそういう。

「へぇ?んで、何」

ポケットからカプセルを取り出すルイカ。

「これに、ブリード・レインをいれてほしいんだけど・・」

ブリード・レインとは

氷系の呪文。

「いいけど、ここじゃちょっとやばいし、俺の部屋入れ」

「うん、ごめんね?」


普通にハルキの後につづいて

部屋に入るルイカ。


(まじで変な男にも簡単について行きそ・・・)

レイが、不安になるのも分かる。


そして、カプセルにいれる作業が終わった。

「じゃな。後で食堂でな」

4人はいつも、一緒に夕飯を食べている。

別れの挨拶をしたのに

ルイカは動こうとしなかった。

「おい、どうしたんだよ?」

ルイカは言いにくいことでもあるのか

チラチラとハルキを見ては

また視線を逸らしている。


「何だよ?」

「えっと・・・・その、レイってどんな子がタイプなのかなァ・・?」

ハルキが驚いた顔になる。

「んなもん、本人に聞・・・・」

そういおうとしたところで

口を閉じる。

ハルキにちょっとしたイタズラ心が芽生えた。

「さぁ?やっぱ、色っぽい女が好きなんじゃね?」

「い、色っぽい・・・///」

言葉を繰り返しているルイカ。

その言葉だけで赤面している。


(こいつ、本当はこれ聞きにきただけだな)


カプセルに魔法をいれるのは

ハルキのところへくるための

ただの口実。

本命は、レイの好みを聞きにきただけだった。

自分だけでなく、レイにも自分を好きだと思ってほしくて。

「あ、ありがとう。今の質問、深いイミはないから。気にしないで?」

そう言って部屋をダッシュで出て行った。

「わかりやすすぎ・・・・・」

ハルキは、そんな様子をみて思わず笑った。

そして、ルイカが出て行った後

「あいつの好みなんて『ルイカ』に決まってるだろ」

こう、呟いた。

26レミ:2007/09/24(月) 21:55:23 ID:.Ub/3BoM
夕食の時間になる。

食堂に生徒たちがぞろぞろと入って来る。

今日は珍しく、シキとルイカが遅刻しているようだ。

「遅いな・・・」

レイが寝起きの顔で目をごしごし擦った。

ハルキはルイカに期待していた。

ああ俺が言ったからには、

ルイカは思いっきり色っぽくなって来るな、と。

そう、自分に騙されたルイカにハルキはとても笑えたのだ。

「こんなに遅いってコトは、なんかあんじゃね?」

ハルキが期待を交えた言葉をレイに言った。

そう発した瞬間、ぱたぱたと小走りする足音が聞こえた。

「遅れて、ごめん」

シキが二人のもとへ走って来て、謝る。

「なんで遅くなったの?」

レイがシキに尋ねる。

「それが・・・・」

シキはすこし黙ってから後ろを振り向いた。

「ルイカ、おいでよ」

「え・・・・////////」

食堂の入り口の辺りから、ルイカのもじもじした声が聞こえてくる。

ハルキは何度も噴出しそうになったが、こらえた。

「いいから」

シキがすこし怒ったように言った。

「・・・うん//////」

ルイカがもじもじとレイたちに姿を現した。

目はマスカラでパッチリとしており、

口はグロスでプルッとしている。

頬はチークでほんのり赤く染まっている。

そう、これがルイカの想像する色気。

「・・・・ルイカがあたしに、化粧してって言って来てさ」

レイはきょとんとしている。

ルイカはそんなレイに上目遣いで聞いた。

「・・・・どう、か・・・な?」

レイはすこし間を置いてからルイカに聞いた。

「何が?」

ルイカが驚き、落ち込む。

ハルキはこらえきれなくなり、笑った。

「ルイカは騙されやすいよな〜、本当に・・・・」

27リサ:2007/09/24(月) 22:11:10 ID:bVwKr1T2
「・・・・・・・・?」

ルイカは何が?と、言いたげな表情になり、

その後何か考えこむような表情をしたあと

何かに気付いたような顔になり

頬が真っ赤にそまっていき

最後には涙を浮かべて

怒った表情になった。


そんな表情の移り変わりをみて、ますますハルキは笑いをこらえられなくなった。

「今頃気付いたのかよ・・・まじおかしー」

そう言ってクスクス笑うハルキに

ルイカは口をパクパクさせ

何か言おうとしている。


「だ、だ、騙したの〜〜ッ!!?」


顔を真っ赤にして怒鳴る。


まだ笑っているハルキを見て

ルイカは涙を堪えられなくなった。


「ひど、ひどい・・・あたし馬鹿みたいじゃんッ!!
ハルのばかあああぁあ〜〜〜〜!!!!」


「ル、ルイカが超久しぶりにキレたぁッ!!!!」

シキの声は、心なしか楽しそうだ。



ルイカは腰のベルトについている鉄砲のようなものを

ハルキに向け、

引き金を引いた。


すると青い光が一瞬でハルキに命中し

ハルキの動きが止まった。


「くそッ・・・動けねぇ・・」


一時的に動きをとめることができるアイテム


ストップ・ガン・アローだ。

これは、ルイカのオリジナル。

似たようなアイテムはもちろんたくさんあるが。





「どうぞ!ずっとそこで笑っててください!!」

そう言ってルイカはその場から逃げ出した。



そして、レイが横目でハルキを見つめ

「で、お前あいつに何吹き込んだわけ?」

と、問いただした。


「あいつがお前の好みを聞いてきたんだよ、んで色気のある女って・・・いてッ」

レイのチョップが直撃した。

「あんまからかうなよ。本気にするから」

そういうと、さっきのことを思い出したのか

ハルキはまた笑い出した。

そこにまた、レイのチョップが入る。

「笑いすぎ」

28レミ:2007/09/24(月) 22:27:46 ID:.Ub/3BoM
そんな男子二人を呆れて見ていたシキは、

ルイカの後を追って走った。

食堂の一歩手前にある大きな広間の壁にもたれ掛かって

ルイカは泣きじゃくっていた。

「ルイカ」

ルイカがシキの声に振り返る。

「・・・・からかいに来たの?」

ルイカがすこし警戒して聞いた。

「まさか」

そうシキが言ってルイカの隣にちょこんと立った。

「だって、ルイカはレイに好かれたくって化粧したんでしょ?」

「・・・・」

ルイカは黙ったままだった。

「それなら、悪いことじゃないと

あたしは思うけどなァ・・・・」

ルイカは予想外の言葉に驚いた。

「え・・・?」

シキがそういってくれるとは思っていなかったのだ。

「ただ、ハルキがすこし無神経なだけだよ」

シキがそう言って笑った。

「好かれたいんなら、堂々と胸張りな!」

「で・・・でも・・・・//////」

ルイカが躊躇う、

そこでシキがすこし厳しく言った。

「そうじゃなきゃ、あんたの気持ち、負けちゃうよ?」

「うっ・・・・」

「大丈夫だよ、自信を持って」

ルイカがすこし安心して言った。

「うん、頑張る」

「じゃ、行くよ」

「うんっ!」

ルイカが笑顔で立ち上がる。

そして、

二人はパタパタと食堂へと駆け出した。

29リサ:2007/09/24(月) 22:40:56 ID:bVwKr1T2
再び食堂に戻ってきたルイカを見て

驚く男たち。

ルイカはレイのほうに近づく。

「レイ・・あ、あのね・・・・?///」

ドキドキしながらレイを見つめるルイカ。

すると、レイはしっかりルイカの目を見て

「ん?」

と返事をした。



その瞬間、ルイカは

「キャアー!!/////」

と、絶叫しつつ頭からケムリを出し

思い切り手を振り、

レイに何かを投げた。


その瞬間煙がまたたくまにレイを包む。

「・・!?ルイカ・・!!?」


煙幕が消えたときには、ルイカの姿がなかった。

「はぁ〜・・・」

シキは、ため息をつきながら

さっきの場所へと歩き出す。


予想通りさっきと同じ場所にいた。


「ルイカ」

「シキ、だめだぁ・・レイ、よく見たらかっこよすぎ・・・////」

「何を今更・・・・てか、テレるのは勝手だけど、食堂に煙幕振りまかないでくれる?」

ルイカのテレ方は

少々過激だ。

「う・・・スイマセン・・」

「とにかく、うだうだ言ってないでさっさとアタックせんか!」






その頃、レイとハルキは学食を食べつつ

喋っていた。


「なぁ、女って時々わけわかんねぇよな」

ハルキの言葉に、レイは頷く。

「確かに」

そういいながらも、レイは笑顔だった。

「んだよ、幸せそうな顔しやがって」

「ん?ヤキモチかよ?自分はシキといちゃつけないから」

「あ゛?なんか言ったか??」

ハルキがレイに向かって手を差し出している。

どうやら魔法を使うという脅しらしい。


「食堂、魔法禁止」


レイはそれだけ言うと黙々と食事を続けた。

30レミ:2007/09/24(月) 22:54:16 ID:.Ub/3BoM
ルイカを説得するのに疲れたシキは、踵を返す。

「し・・・シキ!?」

「もうヤダ、お腹空いたから行くね」

ガーン・・・・。

ルイカは見捨てられてしまったのだ。

「とにかく、やってみなきゃ始まらないからね?」

そういい残して、シキは食堂へ戻った。



「ルイカは?」

シキが食堂に戻ってきた瞬間、レイはシキに尋ねる。

すると、

「準備中」

と即答して席についた。

「あ、今日はもしかしてホイップマフィン?」

シキが嬉しそうに言ってから、ハルキに言った。

「ねね、ハルキ」

「んだよ」

ハルキがタコさんウインナーをほお張っていた・・・・・。

シキは、それを見た瞬間、

即死。

「ぐはっ!」

シキが倒れた。

「?!おい・・・・!」

ハルキがシキのもとへ駆け寄る。

(ハルキとタコさんウインナー・・・・

可愛すぎ・・・・///////////////)

そう混濁した意識の中で思った。

シキはそのまま、意識を失ってしまった。

「・・・・俺、なんかした?」

ハルキがレイにまじまじと聞いた。

「・・・・・」

レイには黙っていることしか出来なかった。

31リサ:2007/09/24(月) 23:16:08 ID:bVwKr1T2
「あれ?シキどうしたのー!?」

その後、戻ってきたルイカ。

やはり、ルイカにアタックする勇気はなく、化粧を落とし再登場した。

「失神中」

レイの言葉に、ルイカは頭にクエスチョンマークを浮かべ

シキをゆすった。

「シキ〜!!大丈夫!?」

それでも起きないシキ。

「どうしよ・・・・」

そこでレイが身を乗り出し、ハルキの横に座り

机に突っ伏しているシキに

顔を近づける。


ちなみに今の席順は


ル レ
―――
 机
―――
シ ハ


こうなっている。


そして、レイはシキにこう囁いた。



「起きないと、ハルキに襲われるぞ」



「ひぃやああぁ!!!//////」



絶叫しながらガバッと起き上がった。


「あ・・・れ・・?////」


3人の視線がシキに注がれる。


シキはハルキと目があった。


「な、な、何よ??」

「スケベ」

「なっ・・・・!?////」


完全にシキがからかわれモードになっている。

レイはひたすら笑っている。


「くそ〜〜ッ!!くらえッ!!!」

シキは横にあるルイカのコップと

自分のコップを握り締め

立ち上がり

中の冷水をレイとハルキにかけた。


「ちょ・・・シキ、てめぇ!」

「何でお前らのケンカにおれまでまきこまれなきゃなんねぇんだよ・・」

レイは半分諦め気味だ。


「へへーん!ざまーみろ♪」

そう言って、また席につき

食事を始めた。

ルイカはずぶぬれの2人を見て苦笑いしながら

「お風呂前で、まだよかったね・・」

と、いいながら

ティッシュを差し出している。

32リサ:2007/09/24(月) 23:19:05 ID:bVwKr1T2
すいません!訂正です!><

横にあるルイカのコップ・・・ではなく
前にあるルイカのコップ・・・デス!!

すいませんでしたぁ!!

33リサ:2007/09/24(月) 23:31:00 ID:bVwKr1T2
こんな仲良し(?)の4人。

そして、こんなにラブラブ(?)のカップル。



でも・・・

ルイカとシキは

そんな大好きな彼氏に

大きな秘密があった―――・・・・・。



それは、2人だけの、秘密であり

たとえ彼氏でも

口外は出来ない内容なのだ・・・。



その秘密は

夜に関係している―――・・・・・

34レミ:2007/09/25(火) 16:43:21 ID:.Ub/3BoM
翌日・・・・・

今日はいつも通りに授業がある日だ。

魔方陣科では、シキが先生のいる前で堂々と居眠りしていた。

そんなシキを見て、息を呑む男子たち。

シキは起きているときと寝ているときが全く違う。

起きているときは、お姉さん系で大人びていてとても綺麗な感じ。

そして寝ているときは、純真で無垢なその寝顔に誰もが可愛いと

思う程である。

(まぢカワイイ・・・やべぇ///////////)

(抱き締めてぇ・・・・)

男子の視線がシキに注がれる。

しかし、本人はスヤスヤと眠っていた。

そんなシキをみて、先生は・・・・・

「シ・・・シキさん」

「・・・・」

「お、起きなさい!」

その怒声でシキはようやく目を覚ました。

「・・・どうかしました、先生?」

何が起きたのか全く分からないシキ。

「シキさん・・・・

この数式の通りに魔方陣を創ってください、

もちろんあなたのオリジナルでいいです。

ただし、グランスドラゴンを召喚しなさい。」

「・・・・え〜」

すこしめんどくさそうな返事をするシキ。

普通なら、居眠りをしている時点で廊下に放り出されるが

シキは特待生なので特別だ。

「いいですね、それでは皆さん

外に移動しますよ。」

グランスドラゴンとは猛毒を持つとても大きなドラゴン。

15〜6mはあるといわれている。

そんな大きなドラゴンを召喚するのだから、

やはり外ではないとならなかった。

そして

魔方陣科全員が外に出る。

大きな中庭だ。

その中央にシキが立ち、他の生徒は大きく距離を置いてシキを見つめる。

「それでは、お願いしますね」

先生の合図とともに、シキが面倒臭そうにポケットからリングを出した。

それを、宙に少しだけ投げる。

すると、

いままでリングだったものが、一瞬にして大きな筆に変わった。

シキの身長よりも少しでかいくらいのその筆を

シキは両手で握り、地面へとつけた。

その筆の先端には、黒いインクが付いていた。

それを器用に動かして魔法陣を創っていく。

そして、わずか13秒。

大きな魔方陣が完成した。

その魔方陣にシキが手をかざす。

そして、

「誘え、召喚獣」

と言った。

すると、その魔方陣が光を放つ。

生徒たちが目を眩ませる。

そして、生徒たちが目を開けたときには、

グランスドラゴンが優雅に自分の翼を開いて居た。

先生が唖然とする。

「これでいいんですよね?」

そういって、召喚獣を還すシキ。

「え・・・えぇ」

先生はしばらく、動き出すことが出来なかった。

「グランスドラゴンって、幻の竜よ・・・・」

先生が呆気に取られながらもそう呟いた。

35リサ:2007/09/25(火) 17:02:34 ID:bVwKr1T2
「あの召喚獣・・多分、シキだなァ」

そういいながら窓を眺めるのは

ルイカだ。


「・・・可愛い♪」


そう呟くルイカは

思考が人とズレている気がする。



ルイカは動物などの類が大好きだ。

だが、虫は大の苦手。

それでもって、お化けとかの類もだめだ。

なのに、竜は可愛く見えるのが

不思議だ。



ルイカは今、席にすわり

黒板にかかれている薬品名や

扱い方をノートに写している。



アイテム科やトラップ科は、知能が必要だ。

魔法の力は使うが、それはあくまでも

材料。

なので呪文科などと違い

アイテム使う場合に集中力や才能など不必要。

なので、ルイカとレイは知能がズバぬけてすごいのだ。



呪文や、魔方陣は集中力や、自己の元々の才能

または運の良さが必要とされる。

もちろん、どの魔法がどういった場合に使えば効果的か、

などの知識が必要になるので

シキとハルキも知能はかなりあるが・・・



それ以外に、洗脳科は

相手の心理を深く理解しなければならない。

なので心理学を学ぶ必要があり

他にも

暗示をかける訓練や、アイテム作りと、

レベルの高い学科だ。


体魔術科は

肉体的な強さを作らなくてはならない。

運動はもちろんできないとだめだし、

精神を鍛えることも重要。

その運動神経に、魔術を加えるのだ。


殴る蹴るといった攻撃に

魔法も加わるので

呪文も覚えなくてはならないコードな学科。

だが、体魔術のプロともなると

物や人に変化するといったこともできるので

非常に役立つ学科なのだ。

36リサ:2007/09/25(火) 17:11:53 ID:bVwKr1T2
そして、次の授業で

ルイカは他の生徒とは別室で

作業をしている。


アイテムを作っているのだ。

ハルキに協力してもらったりして

アイテムを調合し

素材を作り上げ

最後に形を作り上げる。



「で、できたぁーーーー!!!!」


ルイカが作ったのは

ルイカのオリジナル。


それをバッグにつめると

勢いよく部屋を飛び出した。


そして、テレパアンテナといわれる

いわいる情報通信連絡機械を使い

シキに呼びかける。

これは市販で売り出されているものだ。

「ただいま、応答待ち。ただいま、応答待―――ピッ――何?ルイカ?」


「あ、シキー?」

「ちょっと!あたしまだ授業中」

そういうシキの声は、なんだか寝起きみたいだったけど

ルイカはあえて黙っておいた。

早く言いたいことが他にあるし。

「ごめんー;授業終わったら中庭に来て!!アレが完成したから♪」

「うそっ!!すごいじゃない!!」

そう大きな声で叫んだシキの後に

小さな声だけど

かすかに「シキさんっ!」と、先生の怒声が聞こえた。

「ごめん!修羅場みたいだから切るよ?終わったらすぐね!」


ピッ―――


そして、ルイカは中庭へとスキップしていった。



いくら一人で作業をしていたとしても

まだ授業中なのに廊下に飛び出し

シキに電話をかけるルイカは

結構非常識だ。

37レミ:2007/09/25(火) 17:30:01 ID:.Ub/3BoM
一方、トラップ科では・・・・。

護身術の勉強をしているようだ。

やはりここでも、女子の声がとっても目立つ。

(レイ君、トラップ作るのうまいよね〜♡)

(しかも、頭良いから最高!)

(もちろん運動神経抜群だしねッ!)

女子が授業中ヒソヒソ、レイを見てはキャーキャー言っていた。

そしてそのレイは、

なにやらトラップ作っている。

護身術の勉強なのに・・・・・

しかし、特待生のレイに

文句がつけられない先生。

レイは一度トラップを作り始めると、

出来るまで一切の声や話を聞かない。

なので、先生はどうすることも出来なかった。

「・・・出来た」

レイがポツリと呟く。

そして、自分で作ったトラップを見て

小さな子供のような笑顔で言った。

「はやく、試してぇな・・・・」

その笑顔を見た誰もが

多分

即死しただろう。

38リサ:2007/09/25(火) 17:50:27 ID:bVwKr1T2
カラーン コローン


鐘の音と共に

シキが走ってくる。


「教師がうるさいからダッシュで逃げてきたー!!!」

「シキ〜♥」

ルイカはものすごくご機嫌な様子。

「で?できたのってどれ?」

興味津々といった様子で

シキがバッグの中を覗きこんでくる。

なのでますますルイカは気をよくして

笑顔でバックからあるものを取り出す。

「じゃあ〜ん♪」

そう言って取り出したのは・・

少し大きめのシューズ。

白くて、水色のラインがはいっている。

ずいぶんと底がぶ厚く

靴の裏側は色々なものが設置され

デコボコしている。



「で、これ、どんな効果あるの?」

「まぁ、はいてみてよ??」

言われたとおりシューズをはき

2、3歩足踏みするシキ。

「何もおきないけど?」

疑いのまなざしで、ルイカをじとっと見つめる。

「シューズの横のスイッチを軽く押して?」

「これ・・?」

押した途端、風が吹くような音がした。

靴のしたから青白い光がけむりのようにただよう。

シキが走ってみると・・・


「すごっ・・!!これ、なんか浮いてるみたいなかんじ!!」

「うん♪走ってても負荷がないでしょ?
これ、弾力性がすごいし、魔力のおかげで
浮いてるみたいになって、長時間走っても疲れをかんじないの。
それに、足も速くなるよ♪」

「へぇ〜すごいもんね。どうやったの?」

「まず、AK3薬をレイからもらった魔力性ゴムと調合して23.Hの・・・」

「STOP!もういいわ」

ルイカの説明は、アイテム科用語が出てくるうえ

理解できない。

「あ、ちょっとジャンプしてみて?」

そういわれたのでシキは言われたとおり

しゃがみこみ、思い切り飛んだ。


すると・・・


「ひゃッ!!」

思った以上に飛び上がり

シキが声を上げる。

「ジャンプ力が上がるんだ♪あと、高いとこから落ちても
わりと大丈夫だよ♪」


シキは楽しそうにずっと飛びはねている。

「きゃ〜〜〜♪楽しい〜〜♪」

「でしょ?それに、便利だし♪」

「うん!!で、これくれるの?」

「うん!あたしの分とシキの分ねッ♪」

レイとハルキの分はないらしい。

「あいつらには必要ないしね。これ以上強くなられたら困るし。
でも、これさえあればハルキにも勝てそう♪」

ルイカとしては、

せっかくの力作を

そのように使ってもらっては、なんだか虚しい。

「アハハ・・・;まぁ、ほどほどにね?」

そう苦笑いしつつ

「じゃ、後で〜」

と言って、2人は別れた。

39リサ:2007/09/25(火) 18:19:35 ID:bVwKr1T2
シキが一人で廊下を歩いていると・・・

「シキィ〜〜〜〜〜〜!!!!!」

この声は、ルイカだ。

さっき別れたばかりなのに・・・

と、シキは思った。

「どしたの?」

「さ、さっき廊下でハルに会ったんだけど・・
女の子に囲まれて喋ってたよ!!?」

ハルキがモテるのは前から知っているが

ハルキは、今まで女の子に囲まれても

相手にしていなかったのだ。


だが、今回は少し違う。



「あいつ・・・そこどこ?案内して、ルイカ」

「う、うん。こっち・・・」

ルイカはシキの腕を引き

歩き出した。

40レミ:2007/09/25(火) 18:32:19 ID:.Ub/3BoM
シキは無表情のまま、ハルキのもとへ向かった。

相変わらず女子に囲まれている。

シキは気が強いので、

構わず女子を押しのけてハルキの目の前まで行った。

「ハルキ」

「あ?」

ガシッ

「ちょっ!?・・・っなせよ!」

ハルキの意思を関係なしに、シキはハルキを引っ張っていった。

41レミ:2007/09/25(火) 18:39:04 ID:.Ub/3BoM
「・・・で、何?」

すんごく迷惑そうな顔のハルキ。

「いいわね、特待生はモテて」

と、無表情のシキ。

「お前、ヤキモチ?」

ハルキがすこしニヤッとして言った。

「そうだと言ったら?」

何やら、今回は強いシキ。

そして、

シキはハルキの片方の腕を強く掴んだ。

<<ギュっ>>

そして、ハルキを見つめる。

とても、頼りなさそうな

小さな子犬のような瞳をうるうるとさせていた。

「・・・ハルキの馬鹿」

シキはぽつりと言った。

ハルキは驚いたままだ。

「・・・お前、本当にシキ?」

その言葉に

シキは腹が立った。

ヤキモチ焼いてて、こんなに構ってほしいのに

なんじゃその態度はっ!?

シキが勢いよくハルキの腕を離す。

「馬鹿っ!」

泣きそうになりながら、それを必死に堪えて

シキはハルキのもとを

駆け足で離れた。

42リサ:2007/09/25(火) 19:01:28 ID:bVwKr1T2
「・・・す、す、すとっぷ!!!」

その場まで案内したルイカがいるのを

シキは忘れていた。

ルイカがシキの前に立ちはかだり

通せんぼする。

「・・・どいてっ!!どかないなら魔方陣で移動するから!!」

そう言うシキに

ルイカは

「逃げちゃだめだよ。好きなら胸をはれっていったのはシキだよ?」

と、言った。

「・・・・・・・・・」

黙り込む、シキ。

後ろから追ってきたハルキが

すぐに追いついた。


シキは振り返り

ハルキをまっすぐ見つめた。



「・・あんたはあたしのものなんだから。あたし以外の女と喋るな」

なかなか無理のあるお願いだ。

だが、泣くのを我慢して

強がって言ってるシキがほほえましくて

ハルキはシキを抱きしめた。

「わかりましたよ、お姫様。お前の命令きいてやる」

「抱きしめろなんて誰もいってないけど・・・?」

涙ながらそういうシキ。

「嫌?」

「・・・・・ううん」

今日のシキはものすごく素直だ。

照れもせず、ハルキに包まれている。


そんな中、シキとハルキは

ある人を忘れていた。


「・・・・・・・・はふぅ/////」


ルイカだった。

2人の世界に入っていた2人は

ルイカを忘れていた。


ルイカは顔を真っ赤にして

口に手を当てて震えている。


「シ、シキ!!///////」



ドン!!!!




その瞬間シキが思い切りハルキを突き飛ばした。

そして、シューズのスイッチをいれて

素早く逃げ出していった。



そして取り残されたルイカとハルキ。

2人は目があった。

すると、ルイカが真っ赤になりながら

「よ、よかったね・・・//////」

と、それだけ言い残し、フラフラとその場から消えていった。

43レミ:2007/09/25(火) 19:30:28 ID:.Ub/3BoM
「・・・・・っ!!!////////////」

自分がどんなに恥ずかしいことを言ったのか、

シキは後で気付いた。

意識が朦朧とする。

(なっ・・・なっ・・・・)

シキが顔を真っ赤にする。

(何言ってんのよ・・・・あたし!!!///////////)

穴があれば潜りたい気持ちだ。

そんなシキの目の前で、調度レイが気分良さそうに歩いていた。

「レイ・・・・?」

「あ、シキか」

ご機嫌なレイを見るのは久しぶりだ。

「なんかあったの?」

「ちょっとな・・・」

その笑顔に一瞬シキはキュンと来る。

(これみたら、ルイカ死んじゃうよ・・・/////////)

そうシキは思った。

そこへ、可愛らしい女の子が、

レイの後ろを歩いているのを発見した。

女の子はボーッとしていたらしく、目の前にレイがいるのにも気付かず。

ドンッ!!!!

レイとぶつかってしまったのだ。

「いたたたた・・・。あ、ごめんなさ・・・・」

女の子が目をうるうるさせる。

シキは女の本能で

(ぶりぶりしすぎだ、ゴルァ)

と思った。

「わりィ、大丈夫か?」

そう言って、その女の子を立ち起こした。

それを、レイに内緒で

シキは写真を撮る。

そして、

「ルイカに送信、っと・・・・」

(ルイカのおかげだもんね・・・・
お礼しなきゃ・・・・)

そう思い、送信ボタンを押した。

44リサ:2007/09/25(火) 19:47:41 ID:bVwKr1T2
テレパアンテナ、略して『テレテナ』が

ブルブルとルイカのポケットで震える。

「何だろ・・・?」

画面にはシキの名前が表示されている。

シキと表示されている画面を

指でタッチすると

画像が表示された。



「・・・・・・!?」



そこには、女の子の手を握って

その子を見つめてるレイの姿があった。


「何これっ・・・!?」


ルイカは廊下を走り

レイを探し始めた。



探すのにそう時間はかからず

すぐにレイの姿を見つけた。


「レイ!!!!!」

「ん?走んなよ。コケるぞ」

「むぅ・・子供扱いしないでよ〜!」


レイとの会話で幸せをかんじ

レイを探していた目的を忘れかけていた。


ルイカは思い出したかのように

テレテナをレイに見せる。


「これって、何かな?あ、疑ってるわけじゃないから・・・」

その画面を見て

レイは驚いた後

「あいつ・・・」

と、呟いた。

あいつ、とはもちろん

シキのこと。


不安そうにみてくるルイカの頭をポンと叩き

「何でもねーよ、勝手に不安がるな」

と、優しく笑った。


その笑顔にルイカは疑いなどなくなり

すっかり笑顔になった。


「・・・・うん♪」

「お前、それ心配できたわけ?」

「し、心配ってゆーか・・・・・・うん、そう」

「俺、信用ねーなー・・・・」

レイが冗談でわざと落ち込んだように言っただけなのに

ルイカは慌てふためき

「ごっ、ごめんなさい!!」

と、謝ってきた。

「別に怒ってねーよ」

そう言って頭をクシャクシャとなでてくる。

「レイってさ、頭なでるの好きだよね」

「そうか?そんなんだったらキスするほうが好きだけど?」

誰だってそうだろうけど

彼女のルイカに言うと

なんだか『したい』と言ってるみたいで

ルイカは恥ずかしくなった。


「お前は照れんの好きだよなー」

「レイのせいでしょっ////」

「俺かよ」

2人はそんなふうに楽しそうに喋りながら

廊下を歩く。


最近、はしゃぎまくったりドキドキしっぱなしだったけど

こういう雰囲気だと

ルイカもレイも普通のカップルだ。


4人集まると

普通じゃなくなるが・・・・。


ルイカはこんな穏やかな時間が

とても愛しく感じられた。

45リサ:2007/09/25(火) 19:52:50 ID:bVwKr1T2
「あ、今日はさ、どこでお昼食べるの?」

「購買でなんか買って久しぶりに4人で食うか」

「うん♪そうだね♪」

「今度はまともに食えるといいな」

昨日、夕食は結局水浸しになり(犯人シキ)

まともに食べられなかったのだ。

「そだね・・・あ、そういえばシキちゃんと屋上くるかな・・」

「何で?」

ルイカはレイにさっきのいきさつを話した。

「くるだろ。あいつ食い意地ははってるから、恥ずかしかろーが来るんじゃね?」

「・・・それ、シキの前でいったら殺されるよ」

喋りながら、購買でパンを買い

レイとルイは屋上へ向かい

シキとハルキを待つことにした。

46レミ:2007/09/25(火) 20:09:10 ID:.Ub/3BoM
「ごはんだァ〜♡」

案の定、食い意地がはっているシキが屋上に来た。

「・・・・・」

大体予想がついてたような反応のルイカとレイ。

「・・・その目、ハルキにもされたわ」

少し疲れた顔をして、シキは腰を下ろす。

「あれ、そういえばハルは?」

ルイカがストロベリースムージーも飲みながらシキに訊ねた。

「さっき廊下で話してたケド・・・・

もう来るんじゃない?」

と、ハンバーガーを銜えるシキ。

「そんなに食うと、お前の顔もハンバーガーみたいになるぞ」

レイがシキをからかう。

「んにゃことにゃいっ!」←(んなことない!)

シキはハンバーガーを銜えながら話しているので、

猫語みたいな返事をレイに返した。

「悪い、遅れた」

ハルキがやっと屋上へとやってきた。

「ハル、遅かったね〜」

「もうすげぇ腹減った・・・・」

「あれ、そういやぁなんでルイカもレイも

先に来ていたのに食べなかったの?」

シキがハンバーガーを食べ終わってから、いまごろ気付く。

「いや〜、先に食べてたらシキたちに悪いかなぁって思って・・・・」

「そそ、俺らはお前みたいに無神経じゃないの」

「何よ〜!?」

シキがまたまたキレる。←(お決まり

「うわっ、お前最悪じゃん」

ハルキがニヤニヤ笑いながら言った。

「黙れ〜〜〜〜〜っ!」

今回は、ひどい食事ではなかったものの

シキがキレない食事は、一体いつ来るのだろうか・・・・。

47リサ:2007/09/25(火) 20:19:22 ID:bVwKr1T2
「まぁまぁ、みんな落ち着いて?」

「俺は落ち着いてる」

レイが落ち着き払った声でそういう。

「俺も」

ハルキも楽しそうにしているが、確かに落ち着いてる。

「はっきり言ってみんなじゃなくて、落ち着かなきゃなんねーのシキだろ」

ハルキの一言に

「はぁ〜〜??!あんた殺されたいんか!」

と、絶叫する。

「ほら、それが落ち着きがねぇって言うんだろ」

「・・・・悪い!?」

ついに開き直るハルキ。

「別に、そーゆうとこ結構気に入ってるし」

もともとすごくカッコイイ外見のハルキが

サラッと言ってしまうと

もう、殺人的なかっこよさだ。

(・・・・・・やば//////)

シキは昇天寸前だし

ルイカはまた赤くなっている。


「はい、ストップ。4人のときに2人の世界に入らないでください」

1人落ち着いたレイがそういう。


「別にいいじゃねぇか」

と、ハルキが言う。

「ダメ。ルイカが固まるから」

と、レイが返す。

「あ・・・あたしのせいでごめんね?ハル・・・」

本当に申し訳なさそうに謝るルイカ。

「ルイカ、あんたそこ本気で謝ることじゃないから」

と、あきれるシキ。


4人でいると

退屈しない。

48リサ:2007/09/25(火) 20:21:48 ID:bVwKr1T2
スミマセン。「ついに開き直るハルキ」になってますが
名前「シキ」に訂正です!すみません!!

49レミ:2007/09/25(火) 20:40:53 ID:.Ub/3BoM
そんな二人に、学園長からの呼び出しが入った。

「やばっ、昼食中に呼び出しってありえない〜!」

パタパタと廊下を走るシキとルイカ。

「多分、任務のコトだよね〜」

少しうきうきしながらルイカが言った。


学園の最上階のある一室に、学園長の部屋があった。

「よく来ましたね、教え子たちよ」

「学園長、今回の任務は?」

シキが改まって聞いた。

「今回は、二人で任務に行ってもらいます」

「何を盗めばいいのですか?」

そう、二人は

昼間は普通の魔法学生だが

夜になると

怪盗となるのだ。

「ダイヤモンドブローチという、高級なものです

くれぐれも気をつけてくださいね」

学園長が上品に笑った。

任務を受けた二人は、礼をして学園長室を後にした。

「じゃルイカ、夜の10:00に中庭集合でいい?」

「うん!」

「じゃあ、昼食食べよっか!?」

「・・・シキ、まだ食べるの?」

呆れた顔でルイカはシキをただただ見つめた。

50リサ:2007/09/25(火) 21:03:17 ID:bVwKr1T2
そして戻ってきた2人を見てハルキが

「お前らどこいってたんだよ?」

と言ってきた。

「さぁ〜、なんかよくわかんないけど色々喋られておわった」

「何だそれ」

レイがあきれたように言う。

そう、

これは極秘の任務。


どんなに親しい相手でも

口外は絶対に禁止なのだ。



「そんなことはいいからっ!ほら食べよ!」

シキが笑顔でそういいながら、今度はメロンパンをほおばる。

「げ・・・お前よくそんな食えるな。どこに入ってんだ?」

「うっさいなー」

ハルキの問いにしかめつらで返す。

そして、そんな2人をレイは見つめながら

ルイカに声をかける。


「な、来週の夏祭りの日さ、4人で寮抜け出して祭り行こうぜ」

「わっ!!いいね〜♪花火もみたいし♪」

「どうせなら浴衣着れば?」

「・・・・見たい?」

ルイカが緊張しながら聞くと

「うん」

レイは全く普通にアッサリと答えた。

「じゃあ、いったん家に戻って着てく≪ハルキ〜〜〜!!!≫・・・」

せっかくいいムードだったのに

シキの怒声で台無しだ。

何やらケンカになったらしく

シキが召喚獣を呼び出し

それに呪文でハルキが対抗している。


シキはものすごく怒ってるみたいだけど

内心そんなに怒ってはいない。

ただ、こんなふうに接するのがシキのやり方。

それをハルキはちゃんと分かってる。


「・・・・なんだかんだ言っても、あの2人お似合いだよねぇ」


シキが後ろから首に手を回され

苦しがって暴れている。


あれだって、ハルキが後ろから抱き締めてると思えば

凄くラブラブだ。

ちょっと、過激だが・・・・・。



「ギブギブ!苦しい〜〜〜〜ッ!!」

じゃれあう2人にレイが

「そこらへんにしとけ。そろそろ戻るぞ」

と、声をかける。

「ハルキのばーか!」

「シキ、お前八つ当たりもいい加減にしろよな・・・」

何でケンカになったのか知らないが

ルイカは笑いながらも、ほっておくことにした。

51レミ:2007/09/25(火) 21:53:55 ID:.Ub/3BoM
そして夜・・・・・。

夜の闇に溶けるような黒いフードつきのマントを羽織る二人。

「さ、任務開始♪」

「うんっ!」

そういって、シキがポケットからリングを取り出す。

それを指につけてから空に魔方陣を描いた。

「誘え、召喚獣」

そして現れたのは

ライオンに羽がついたような召喚獣。

「さ、乗って?」

シキがそれにまたがる。

「カワイイね〜♡」

ルイカがそのライオンを撫でた。

「こいつは、あたしオリジナルなんだ

レオレオって呼んでるのよ」

「よし、レオレオ!レッツゴー★」

ルイカがレオレオにまたがったところで片手をガッツポーズにして突き上げた。

その声とともにレオレオは空を飛んだ。



しばらく飛んでいると、大きな宮殿が見えた。

「あそこ、ね」

シキがそういい、レオレオに「あそこに降りて」と命令した。

「楽しみ〜♥」

ルイカはひたすらウキウキしていた。

着地して、二人は入り口を探す。

「あ、シキ!あれじゃない!?」

ルイカが指を指す。

「よし、じゃあワープしますかね」

そういって、シキが二人分の大きな魔方陣を創った。

「転移」

そうシキが呟くと同時に、二人は宮殿の中へとワープした。

52レミ:2007/09/25(火) 22:01:19 ID:.Ub/3BoM
「う・・・薄暗い・・・・」

「シキ・・・そんなに引っ付かないでよ」

シキは暗所恐怖症だったりするのだ。

「これ、ハルキにバレたらお終いだね」

そう、いまのところ

暗所恐怖症はハルキにバレてはいなかった。

「仕方ないなァ、ランプ付けるよ?」

そう言って、ルイカがランプに灯りを点した。

「さて、と・・・ダイヤモンドブローチっと・・・・」

暗いときと明らかに違う素振りのシキに、内申ルイカは疲れていた。

「あ、あった!」

そう、そこには何十もの頑丈な囲いがついた防犯設備が完璧なガラスの奥に

キラキラと光輝くブローチがあった。

「ではでは・・・・」

「盗みますか♪」

二人が顔を見合わせてにんまりした。

53リサ:2007/09/25(火) 22:23:49 ID:bVwKr1T2
有花は肩から下げてるポーチから

あるビンを取りだした。

そしてその中の液体を

ガラスにほんの少したらす。

それだけでみるみるうちに

ガラスがとけていく。


そしてあっという間にガラスが溶けた。

「あらら・・・案外簡単な任務だったね〜」

そう言ってダイヤをポーチにいれて

もときた道を戻る。

そのとき


《ジリリリリリリリリリリリリリ》


警報ベルが鳴り出した。


「きゃ〜〜どうしよう!?」

そう言いつつ、ルイカの瞳は爛々と輝いていた。

「やっとそれらしくなってきたじゃん♪」

楽しそうにシキが言う。

廊下のような細い道を走っていると

前から誰かが走ってくる。


「やっば!!」

ワープの魔方陣など書いてる暇がない。

戻ろうにも後ろからも追手がきている。

「シキ!!シューズのスイッチいれて!!」

「OK」

すると、ルイカはスカートで隠れている足にまきついているベルトについている

チョークのような鉛筆のようなものを取り出す。

そしてそれで壁に大きな円を素早く描いた。

「ちょっと!!お絵かきしてる場合じゃ・・・って・・!?」

すると、壁がガコッとはずれた。

ルイカの描いた円の形が。

「嘘ォ・・・・」

ほうけているシキの手を引き

ルイカはその穴から外へ飛び出す。



間一髪。

追手が前と後ろからきて

取り押さえられる瞬間に

素早く外にでたのだ。

「ちょっ・・・!!ここ2階・・・・・・・!!!!!!」


遅かった。

もう落ちている。




シキが、もうだめだと思った瞬間、

地に足がついた。

足が少しジンジンしたが

うまく着地できた。

エアー・シューズがなければ

着地などできず

骨折しただろう。



「うまくいったね♪さっきのガラスを溶かしたのも
壁に穴をあけたのも、酸に魔力を込めて、強〜くしたやつだよ!調合大変だったァ」

いつもビクビクしているのに

こういうときだけ、ルイカはとても頼もしい。


「それに・・ね?このシューズ役立つでしょ?」

「ま、まぁね・・・」

あっけにとえあれるシキ。

それより!シキ!城から出ただけなんだからっ!気を抜いちゃだめっ!
まだ敵はうようよいるよ!!」

「そうね・・・!!」

そう言って2人は、城の外の庭を走り出した。

54レミ:2007/09/25(火) 22:45:00 ID:.Ub/3BoM
「ってか、ルイカ・・・・」

ルイカが不思議な顔でシキをみる。

「ここ、城じゃなくって宮殿よ〜;;」

「え!?てっきりお城かと思った♥」

ルイカが頭をポリポリと書きながら「てへっ」と笑って誤魔化した。

敵が次々とルイカたちの目の前に現れる。

「よぉし・・・・あたしの得意属性の雷で!」

そういって、手を天にかざした。

すると、そこに魔方陣が浮かび上がり

次の瞬間、雷が敵全体を襲った。

「シキかっこいい〜♥」

と横で見とれているルイカをなんとか引っ張って

レオレオに乗せる。

間一髪で敵から逃げた二人は学園に着いたらすぐさま、

学園長室へと走った。

「まぁまぁ、ご苦労様」

学園長が二人のもとに歩み寄る。

「これで間違いありませんね?」

シキが確認をする。

「はい、あっていますよ。ありがとうね」

「それでは、また次の任務のときに
呼んでください♡」

そういって二人は学園長室を後にした。

学園長はブローチを見つめていった。

「順調ですわね・・・・・」

55リサ:2007/09/25(火) 22:55:06 ID:bVwKr1T2
そして、翌日の朝―――

女子寮の廊下で、シキとルイカは会った。

「おはよぉ〜」

「おはよ」

まるで、昨日何もなかったかのような

平凡なあいさつ。



朝は、普通に

友達とおしゃべりし

ご飯を食べ

恋に悩む



ごくごく普通の女子生徒なのだ。


「ね、シキさ、髪伸ばしたりしないの?」

「え?今はセミで満足してるから」

「もしかして、ハルにその髪型可愛いって言われたから?えへへ、なんちゃって・・・・って、シキ?」

シキの顔が赤く染まっている。


(え・・・図星だった・・・?/////)

そして、ルイカは思った

(シキって案外単純なんだ・・・・)

可愛いといわれれば

そのとおりにする。

恋する乙女なのだ。


ルイカはただ純粋に、恋するシキを可愛く思い

クスッと笑ったのだが

シキはからかわれたと思い


「笑わないでよ〜〜!!!」

と、怒ってしまった。


「あっ、シキ待って〜ごめん〜〜(泣)」

そんなシキの後を追い、走るルイカ。

今から朝食を食堂でとるのだ。

56レミ:2007/09/25(火) 23:03:33 ID:.Ub/3BoM
「お、今日は早いな」

とハルキが関心したように言った。

「眠い・・・・」

低血圧のレイは、まだ目を擦っている。

「はよ」

シキが男二人に挨拶し、

その後に遅れて

「お、おはよ〜♡」

とルイカが挨拶した。

「今日こそ、平和に食事出来るのか?」

ちょっと怪しげにレイがシキを見つめた。

「ちょっと、なんでもかんでもあたしのせぇにしないでよ〜!」

とふくれるシキ。

「いや、お前のせぇだからお前をみるんだろ?」

と、冷静なハルキ。

そんな三人のやり取りを、笑顔で見つめるルイカ。

今日も楽しくて大変な一日のはじまりです・・・・。

57リサ:2007/09/26(水) 22:07:57 ID:bVwKr1T2
今日は4人落ち着いて

魔法の話しをしたりして

穏やかに朝食をとっていた。


だが、次の瞬間

壊されるのである。



ルイカの質問によって―――




「そういえばさ〜」


と、ルイカが半熟の目玉焼きの黄身の部分を半分に割り

口に運びながら喋りだした。


「ハルって、シキのどこが好きなの??」


ルイカは、普通の質問のつもりで

笑顔で聞いたのに


シキが顔面ごと机に倒れ、


《ガン!》



と、大きな音をたてた。



そして、横ではレイがむせている。


「あ・・・なんか、聞いちゃだめだった・・?」

焦りつつ、ルイカが言う。

「駄目ってか・・・あんま聞きにくいだろ。質問されても言いにくいし」

「言いにくいって、ハルキがあたしを好きな要素がないってイミ!?」

そういう意味ではないのに

勘違いして、赤くなった額を抑えながら、怒鳴るシキ。


「そんなことないと思うよ・・」

ルイカのフォローも虚しく、

シキはハルキに挑むようにせまる。


「言ってみて」

どこが、好きなのか。

「え・・全部?」

困ったように言うハルキ。

「なんで疑問系なわけ!?」

「シキ〜!!落ち着いてよ〜!あたしが悪かったってば〜!」

焦り半泣きのルイカ。

なんか、もう全てがぐちゃぐちゃだ。


「あー、もうやってらんねぇ」

そう言って立ち上がるハルキ。

「ちょっと、逃げる気?」

そういうシキにハルキは

「うっさい。俺はレイと男同士の話しをするって約束があんだよ」

「は?そんな約束したっけ?」

「いいから来い」

そう言って2人で食堂を出て行った。


シキは「ふぅ」といいながら席につく。

どうやら本気で怒ってたのではないらしい。

「男同士の話し、だって。アホらし。そうせスケベな会話でしょ」

「ス・・スケベ・・、レイとハルが・・・///」

「ちょっとそこ!深く考えなくていいから」

そう言ってルイカとシキも

2人で食事を再開した。

58レミ:2007/09/27(木) 20:21:38 ID:.Ub/3BoM
ハルキはレイを廊下へ連れ出すと、話し始めた。

「・・・なんで、あんなに空気が読めないんだよ
ルイカは・・・・・」

「仕方ねぇじゃん、そういうヤツだもん」

レイが当たり前のように言った。

「それに」

レイが、少し大人っぽく言った。

「お前も、曖昧な返事はよせよ
シキだって一応女なんだからさ」

「一応って・・・・
お前、今の聞かれてたら殴られてたぞ」

ハルキが少し呆れた顔で言った。

「俺、アイツに甘やかしたくないワケ
だからさ、ちょっと意地悪してるんだよ」

ハルキが廊下の壁に寄りかかった。

「・・・ま、キモチは分かるけどね
今更、好きって言っても遅いし・・・・」

レイが納得したように言った。

「あ、そういえばさ」

「ん?」

「ルイカが、この前俺に聞いてきたんだよ」

「なんって?」

レイが聞き耳を立てる。

「レイの好きなタイプ、だってさ」

「・・・・どうりで」

レイが、ルイカが化粧していた日のことを思い出した。

あれは、ルイカなりの努力らしい。

「・・・・とすると、お前
まともな返事しなかったろ?」

レイが少し膨れた。

「からかってやったんだよ
やっぱ色気が必要じゃない、って言ったら
アイツ、まぢでやりやがった」

ハルキが笑いを堪えつつ言った。

「あれが、ルイカ並みの色気ってワケか」

レイが苦笑して言った。

「ま、あっちもあっちで努力してるってことらしいな」

「ふーん」

そして、ハルキが「行くか」と呟き食堂のほうを見つめる。

レイは「そうだな」と返事をする。

二人は、踵を返して食堂へと歩き始めた。

59名無しさん:2007/09/27(木) 20:59:25 ID:bVwKr1T2
2人が戻ってきたころには、もう

食べおえていたシキ。

「何話してたわけ?ま、どうでもいいけどね」

全く興味なさげに呟き

おぼんを持ち立ち上がった。



「行こ、ルイカ。あの2人に付き合ってたら授業遅刻するよ・・ってあんたまだ食べてないの?」


ルイカの食器にはまだ、

食べ物が半分以上残っている。


「ん・・食欲なくてさ、夏だしね?」

エヘヘと困ったように笑うルイカ。

「ダイエットでもしてんの?」

と、シキの問いに

「は?必要なくね?」

と、ハルキも言う。


「違うってば、ただ食欲ないだけ〜!」

「ま、そうよね。ルイカには必要ないしね!」

「お前じゃあるまいしな」

シキの方を見て意地悪そうに言うハルキ。

ハルキの頭をペシンと叩くシキ。

もちろん、シキも充分すぎるくらい細いので

冗談で言っただけ。


「本当に大丈夫かよ?」

レイだけが、納得していない様子。

一応、彼氏だし。



「大丈夫だよっ!さ、行こうシキ!!」

そう言っておぼんをもって立ち上がり

ほとんど何も手をつけずに

食器を片付けた。

60レミ:2007/09/27(木) 21:18:33 ID:.Ub/3BoM
各自の部屋へ戻ろうと、シキとルイカは駆け足で廊下を走る。

そのとき、ルイカに異変が起こった。

視界がグラグラする。

体が言うことを利かない。

足がフラフラする。

(なんだろ・・・こ・・・れ・・・)

「あ・・・・れ・・・?」

「どうかした、ルイカ?」

シキがルイカの方を振り向いた。

ルイカは顔を真っ赤にしていて

目がポワンとしている。

「ルイカ・・・・?」

ルイカは次の瞬間、体が維持出来なくなり、倒れた。

「!?る、ルイカーっ!!!」

シキがルイカを抱き起こす。

額が熱かった。

「熱がある・・・・!」

シキはルイカを担ぎ、保健室へと向かった。

61リサ:2007/09/27(木) 21:27:03 ID:bVwKr1T2
「ごめ・・・・シキ・・・」

意識が朦朧(モウロウ)としいるルイカ。

「いいから!喋んないで!!」

シキは、なるべくルイカに負担をかけないよう

黙らせる。


途中、ルイカの意識が途切れ途切れになり

保健室についたときには

意識がなくなっていた。


ガラララ!


「すいません!病人一名いるんですけど!!」

保健室にいた先生は

シキとルイカを見てすぐに特待生だと気付いたらしく

名乗る前から

「ルイカさんね、熱があるのかしら?」

と、言ってきた。


「そうみたいなんですけど・・倒れるくらいひどいんですか?」

「う〜ん・・・そうねぇ、結構高いみたい。とりあえず寝かせましょう」

シキが、ルイカを心配そうに見つめる。

先生が熱冷ましや、コップ、薬の準備をしたり

体温計を出したりしているのを

ただただ、眺めていた。



そして、大切なことに気付く。


(あいつに知らせなきゃ・・・・!!)


「先生!あたしちょっと行ってくるんで、ルイカお願いします!」

そう言って廊下に飛び出した。

62レミ:2007/09/27(木) 21:46:59 ID:.Ub/3BoM
シキはパタパタとトラップ科の廊下を走る。

そして、

ガラガラガラっ!!!

トラップ科の生徒が一斉にシキを見つめる。

「レイっ!」

レイは「何?」と呟いて、シキを見つめる。

「ルイカが、ルイカがっ・・・・・!!!」

シキが用件を伝えずにそう言う。

レイはなんだかイヤな予感がして、教室を走って出て行く。

シキもその後を追った。

トラップ科の生徒は、唖然としてそれを見ていた。



レイが走っていると、シキはそれに追いついた。

「何があったんだよ!?」

レイが息を切らしながらシキに尋ねる。

「ひどい熱を出しているのっ・・・!だから朝食も少なかったんだわ!」

シキが焦りながら言った。

「・・・もっと早く気付いていればっ!」

レイは自分に無償に腹が立っていた。

そして、保健室の戸を開ける。

ガラガラガラっ!

「ルイカ!」

レイが慌ててベットに駆け寄った。

先生が落ち着いて言った。

「大丈夫、寝ているだけよ。
でも、私はこれから出張だから
あなたたちにこの子の面倒を任せるわね」

そう言って、先生は保健室を出て行った。

「シキ、戻っていいよ」

レイがルイカを見ながら言った。

「・・・うん、よろしくね」

そう言って、シキは保健室を後にした。

63名無しさん:2007/09/27(木) 22:05:37 ID:bVwKr1T2
レイが、ルイカの頭を撫でる。

ルイカは何でも隠そうとするから

気付いてやらなきゃいけないのに。



後悔先にたたず。




そんな言葉が頭に浮かぶ。


「あーあ・・・俺、最悪」


しんどそうなルイカの顔。

レイはルイカの手を握った。



「頑張りすぎなんだよお前は。少し休め」

そう呟いた。

その声に反応したのか

ルイカの瞳がわずかに動く。


「おい・・・・?」

「・・・ん・・・レイ・・?あたし・・どうしたの・・かな?」

途切れ途切れに話すルイカ。

「熱」

レイの喋り方は一言足りない。

単語ではなく、文で喋れば理解できるのに。


だが、ルイカはちゃんと理解できた。

「そっか・・・心配かけてごめんね・・?」

「全くな」

「体イタイ・・・」

「熱の症状が出てるんだろ。薬飲んで寝ろ」

「レイ、教室戻っていいよ・・・?怒られちゃう・・」

こんなときにも

レイを気遣うルイカに

呆れた表情でため息をつくレイ。

「いいから、寝てろ。ついててやるから」

「・・・・・うん・・」

ルイカの顔は真っ赤だ。

熱のせいだろうか。

それとも・・・・



それから間もなくして、小さな寝息をたて始めた。

64レミ:2007/09/27(木) 22:13:12 ID:.Ub/3BoM
「・・・・・・」

レイがルイカの顔を覗き込む。

可愛らしい寝顔だった・・・・。

「馬鹿だな・・・
お前も・・・」

そう言って、レイはルイカの少しずれていた布団を掛け直した。

(本当は、俺が温めてやりたいけどここではまずいよな・・・・)

レイはやりきれない思いに腹を立てるばかりだった。

「早く治せよ・・・・
でないと、俺が辛いんだよ」

そういって、レイはルイカの手を強く握り締めた。

65名無しさん:2007/09/27(木) 22:29:04 ID:bVwKr1T2
そうして、レイがルイカの顔をのぞきこんで

辛そうにしていたとき・・・・




ガラララッ!!!




保健室のドアが開いた。


勢いよく開けたわりに

静かにこっちを見てきたのは

シキだ。


お見舞いにきたんだろう。

今は、休み時間だから。


だが、レイをまじまじと見つめている。



(・・・何だ?)


そして、無言でドアを閉めた。


「ちょ・・お前何しにきたんだよ?のぞきか?」

そういうと、数秒たって再びドアが開いた。

シキの顔は少し赤かった。



「や、なんか・・お邪魔だったかなぁと・・・//」

「別に何もしてねーよ。勘違いすんな」

顔が近かったので

誤解したらしい。



シキに続いてハルキも入ってきた。


3人もルイカのベッドに集まると

暑苦しい。

66レミ:2007/09/27(木) 22:43:38 ID:.Ub/3BoM
「お前ら暑苦しいって・・・・」

レイが少し迷惑そうに言った。

「ルイカはレイだけのモノじゃないんだから!」

って言ってレイを睨むシキ。

「でも、ルイカはシキだけのモノでもねぇけどな」

ハルキが欠伸をしながら言った。

「うっさいな〜!」

「シキがうるさいんだよ」

とレイ。

「なんですって!?」

すると、

「ん・・・あ、皆・・・・」

ルイカが目を覚ました。

そのとたん、レイがイラつく。

「お前らのせいでルイカが起きただろうが!?」

「はぁ!?あんた何ほざいてみてんのッ!?」

と、二人の喧嘩が始まる。

「ふ・・・二人とも・・・
落ち着いて・・・
あたしなら大丈夫、頭は痛いケド、少しは良くなったし・・・」

そう笑顔でいうルイカ。

しかし、

「ダメ、お前はまだ寝てろ」

とレイがルイカをベットに寝かせた。

「休養が一番だもんな」

とハルキ。

「うん、うちらそろそろ行くわ」

とシキ。

「おう」とレイが頷き、「ばいばい」と力なく手を振るルイカ。

そしてシキとハルキは、保健室を後にした。

67リサ:2007/09/27(木) 22:55:33 ID:bVwKr1T2
そして2人が去ったあと・・・


「ったく・・あいつら騒ぎにきたのかよ・・」

小さな笑い声が響いた。

「・・・何笑ってんだよ・・」

「だって・・・おかしいもん・・・やっぱり、仲間っていいね」

いてくれるだけで

こんなにも安心できる。


心も体も

元気になれる気がする。


「仲間、だけ?」

「え・・・///あ、彼氏もね・・」

「なんかついでみたいな言いかただな」

ルイカは本当に慌てた様子で

否定する。

「分かったから、冗談だから。寝ろ」

そして

しばらく沈黙が続く。



そこで、ルイカの声が沈黙をやぶった。


「えっとね・・変かもしれないけど・・・熱が出てちょっぴり嬉しいかも・・。
レイがこんなに優しいなら、熱もいいかな、なんて・・・・///」

レイが驚いた顔をする。

「あ、お、お、おやすみッ!!///」

そう言って、ベッドに潜り込むルイカ。


レイは少し笑った。

68レミ:2007/09/27(木) 23:17:44 ID:.Ub/3BoM
ルイカの熱が治って数日後の朝・・・・。

「そういえばさ、もうすぐでテストだね」

シキが思い出したように言った。

「あ、勉強しなきゃ・・・」

そんなルイカの頭をシキが軽く叩く。

「あんたは、頭良いから大丈夫でしょ?」

「そ、そんなことないもん!」

「あ、もしかしてただレイに教えてもらいたいだけ?」

シキがニヤニヤ笑う。

「しっ、シキっ!!!!?//////////////」

シキはルイカから逃げるように食堂へと向かった。

69リサ:2007/09/28(金) 21:43:49 ID:bVwKr1T2
今は昼食の時間。

さっきまで授業に出ていたところ。

もうすぐテストだから要点をおさえなければ、と

真面目に授業を受けていた。



「ね、この後、勉強会しない?」

さっきルイカをからかったくせに、そう言い出すシキ。

「ルイカがしたがってるからさ」

そう、付け足すシキ。

「・・・・シキだってしたいんじゃないの?ハルと」

頭を叩こうとチョップを構えたシキに

すかさずストップ・ガン・アローを使うルイカ。


べー、と舌を出して笑うルイカ。

「いつもやられてばっかじゃないんだからね♪」

今日のルイカは少し強気だ。

「へぇ〜、言うじゃん。あたしに勝てると思ってるの?ルイカ」

なんだか、また昼食がとれなくなりそうになったので

レイがこんな提案をした。

「じゃ、今回のテスト4人の中でビリの奴は、一位の命令一つきくってのにすれば?
勝負はテストでやれ」

適当に言ったレイの提案だけど

やる気になるシキ。

「それ!面白そう!!!!」

こうして、テストへと猛勉強が始まる・・・。



けど、勝負なのに4人仲良く勉強会をするので

あまり勝負らしくないけど・・・

70レミ:2007/09/28(金) 22:04:13 ID:.Ub/3BoM
「え〜、お前ら勉強なんてすんの?」

ハルキが面倒くさそうに言った。

「んなもん、毎日予習とかしとけば
しなくていいじゃん」

「この、ガリ勉」

すかさず、シキが突っ込んだ。

「いいじゃん、勝負なんだし」

とルイカ。

レイは黙って昼食をとっている。

どうやら賛成らしい。

「じゃ、3:00にルイカの部屋で」

「え、なんであたしの部屋になるの!?」

少し戸惑うルイカ。

「いいじゃん」

とシキ。

一応、まともに昼食をとれたので

勉強も頭に入りそうだ。

71リサ:2007/09/28(金) 22:15:02 ID:bVwKr1T2
3:00になり

シキがやってきた。



ガチャ



「ちょっ・・シキ!ノックしてって毎回言ってるでしょ〜!」

「平気だって、女同士なんだし♪」

「平気じゃないっ!!」

プンプン怒るルイカ。


ルイカの部屋は綺麗に整頓されている。

清楚なかんじが

いかにも、ルイカといったかんじ。



ちなみに、ルイカは歌が趣味なので

楽器も少しおいてある。

もちろん、4人がルイカの歌を

きいたことはないけれど。



そして、少し遅れて男たちがくる。



コンコン




さすがに女子の部屋なので

ノックしてくる。


「どうぞ〜」



ガチャ




「よっし!!全員集まったねッ♪」

シキのその言葉で

とりあえずみんなテーブルの周りに座る。



勉強会の始まり―――

72レミ:2007/09/28(金) 22:46:21 ID:.Ub/3BoM
「んじゃ、まず体魔術からね」

シキがノートやら参考書やらなんやらを次々と開く。

「・・・お前の方がガリ勉なんじゃないのか?」

レイが一拍間を置いて言った。

「ま、ガリ勉でもなんでも
勉強しよっか」

ルイカも体魔術の教科書を開く。

「じゃ、俺は寝てる」

ハルキが欠伸をする。

「そんなに余裕でいいの〜?」

シキが横目でハルキを見て

ニヤニヤ笑った。

「お前に勝てればいいや」

面倒臭そうにそう言って、ルイカのベットに座る。

「ちょっ・・・・!?ハル・・・・!!!」

「あ、わりィ、ちょっと借りるな」

そう言って、ベットに横になるハルキ。

「も〜・・・・!!!」

と膨れるルイカ。

「いいじゃん、さ、勉強するぞ」

レイがルイカを急かす。

果たして、しっかり勉強できるのか・・・・・?

73リサ:2007/09/28(金) 22:53:16 ID:bVwKr1T2
シキがシャーペンをくるくると回す。

そして、ルイカの書いているノートを覗きこんで

その後、寝ているハルキをシャーペンで突く。

でも、起きないハルキ。



「ねぇ〜、そろそろ休憩しない?息抜き、息抜き!!」

どうやら、シキはもう飽きたらしい。

「大体、こんな勉強しなくても成績おとしはしない自信あるし」

そんなシキの声には誰も返事をせず

ルイカとレイは仲良くお勉強中。


「〜〜〜〜!!ねぇ、ハルキもなんとか言ったらッ」

ハルキをゆさゆさとゆする。

「・・っせーなぁ・・。黙ってろ」

寝起きだからか機嫌が悪い。

「ちょっと!あの2人なんとかしてよ!」

でも、それでひるむシキではない。

74レミ:2007/09/28(金) 23:23:54 ID:.Ub/3BoM
「静かにしろって・・・・」

ハルキが迷惑そうに言った。

「起きてよぉ〜!?」

シキがハルキに突っかかる。

しばらくして、

面倒くさそうに

ハルキが起きた。

「・・・ったく」

ハルキが眠たそうに目を擦る。

「お前は、ガキかよ」

シキは恥ずかしそうに肩をすくめる。

「だ・・・だって・・・・」

「ま、どうでもいいけど」

そう言って、ハルキが二人のもとに行った。

「いい雰囲気の中、悪いんだけど
このガキも混ぜてやって」

とハルキが言った。

75リサ:2007/09/28(金) 23:32:01 ID:bVwKr1T2
「ガッ・・・ガキじゃ・・ないわよ・・」

と、言いながらも確かにそうだったかも

などと思い、少しずつ声のトーンが落ちる。


「まぁまぁ、じゃ、ちょっと休憩しようか?」

この、休憩が

大変な事態を巻き起こすことになる―――・・・



「じゃ、何かしようよぉー」

シキがすこしむくれながらも言う。

「いいけど、何?」

「んー・・・紙とペンですぐできると言ったらー・・・・」

「こっくりさん?」

と、ハルキが言う。



「絶対いやああぁぁぁ!!!!」

そう言ってルイカがアイテムを持ち

投げつけようとするので

却下された。



「んー・・・あ!!わかった!!」

「何だよ?」

レイの問いに

ニヤーッと笑みを浮かべるシキ。


えっへん、と声に出していい

立ち上がり、腰に手をあてる。


「――ズバリ、王様ゲーム☆」

76レミ:2007/09/29(土) 13:39:07 ID:.Ub/3BoM
「王様ゲーム・・・?」

三人が怪訝そうにシキの顔を見た。

「何よ、知っているでしょ?」

「そりゃあ・・・・」

「知っているケド・・・・」

とハルキとルイカ。

「いいんじゃね〜の、なんでも」

とレイ。

「じゃあ、まずはくじから作らないとね♥」

と楽しそうなシキ。

これが、大変な事態を巻き起こすことになる・・・・。

77リサ:2007/09/29(土) 15:10:07 ID:bVwKr1T2
さっそく準備ができて

いよいよ、王様ゲームがスタートした。


一番初めに王様になったのは・・・

レイだった。


「んー・・・じゃ、一番が3番に告白する」

いきなりすごい命令だ。

レイがルイカを見ると、ホッとした表情。

そして、シキの顔がひきつっている。


「俺、3番なんですけど」

ハルキが自分の番号を見せる。

「ってことは、シキ!?1番・・」

「〜〜〜ちょっとレイ!何なのこの命令!」

「王様の命令は絶対」

レイの言葉にぐっと口をつぐむシキ。

「お前が言い出した遊びだろ」

(あたしが王様になって命令したかったのに・・・!!)

「・・・わかったわよ。やればいいんでしょ」

シキはハルキのことを挑むような目つきで睨む。

「ハルキ!!!」

「ん?」

「好き!!!!大好き!!!!すっごい好き!!!!!」

レイが苦笑いをしながら

「おま・・それ、告白じゃなくてケンカ売ってるようにしか見えない」

テレ屋のルイカもこれには顔を真っ赤にせず

笑っている。

「文句言わない!あたしはやったからね!?」

当の本人は少し顔が赤い。

なんだか微妙な表情のハルキ。



まだまだ続く王様ゲーム・・・

78レミ:2007/09/29(土) 18:01:15 ID:.Ub/3BoM
そして、次のターン・・・。

「俺が王様だな」

ハルキが、そう得意そうに言った。

ルイカが横を見ると、悔しそうな顔をしたシキがいた。

「じゃあ、2番が1番を抱きしめて」

とハルキが言う。

「あ、あたし2番だ」

とルイカ。

「え、あたし、1番なんだけど・・?」

とシキ。

「女同士だな」

レイがそう言った。

「ま、いいや・・
ルイカ早く抱きしめてよ」

「え・・、う、うん」

少し戸惑い、ルイカがシキを抱きしめた。

・・・なんだか、絵になるような作品だった。

「女同士で良かったァ」

とルイカ。

「じゃ、俺と当たっちゃイヤなの?」

レイの言葉に、少し戸惑うルイカ。

「え、ち、違うよっ!」

「まぁまぁ、さっさと次いっちゃお!?」

とシキが進行役を努めた。

79リサ:2007/09/30(日) 23:28:36 ID:bVwKr1T2
次の王様は・・・


「やったあぁ〜〜♪ついにあたしの時代が♪」

そう、嬉しそうに言うのは

シキ。


いつもの大人っぽい雰囲気とは違い

幼げな笑みが

可愛らしい。



「さぁーて!じゃ、いっくよー!3番は王様の肩を揉みなさい♪」

嬉しそうに言うシキ。


(ハルキが3番だったらこきつかってやるんだからぁー♪)


だが、シキの思惑ははずれた。


「俺、なんだけど」


しかも、予想外に

レイ。



「ええぇ!!?う、ま、まぁ・・命令だからね・・」

シキはレイのほうに背をむけた。

レイが後ろから、肩に手を置く。



だが、まだ揉んでもいないのに、シキが

「ぶはッ・・!!くすぐったいぃ〜〜〜!!!!」

と、抵抗する。

「緊張して肩に力いれるから余計にくすぐったいんだよ」

と、言うレイ。

「えぇ〜!?シキ、緊張してるのッ!?レイに!?うぅ〜〜・・」

心配で仕方ないと言った表情で見つめるルイカ。

「お前、彼氏以外の男に緊張してんなよ」

と、呆れたように言うハルキ。

「〜〜〜〜〜もう!!これじゃ、誰が王様かわかんないじゃないのー!!」

と、シキがいまにも爆発しそうなので

次にうつることにした。

80レミ:2007/09/30(日) 23:44:52 ID:.Ub/3BoM
「また、俺じゃん」

と、ハルキが王様のくじを見せびらかした。

その声にルイカは悔しそうな顔をした。

「あたし・・王様に一回もなっていない・・・」

「いつかはなれるよ〜」

とポジティブなシキ。

「んじゃあ・・1番と3番がポッキーゲーム」

ポッキーゲームとは、両端をそれぞれが銜え、

ギリギリまで食べて寸止めするゲームだ。

「あ、1番だ〜」

とルイカ。

「俺、3番」

とレイ。

「え・・・ぇええええっ!?」

ルイカが顔を赤くする。

「ほらほら、とっととやれよ」

ハルキが2人を急かすかのように、ポッキーを出した。

2人がそれを銜える。

そして、ゆっくりとポッキーを食べ始めた。

(ううぅっ・・・・恥ずかしい・・・///////////)

ルイカは、恥ずかしくってポッキーがうまく食べれない。

少しずつレイの顔が近づく。

(も・・・もうダメっ!!!!//////////)

グハッ!!!!

そこで誰かが倒れた。

ルイカじゃなくって、

レイでもハルキでもなくって、

そう、シキだった。

顔を真っ赤にして、倒れている。

見ているだけでも死にそうな程だったらしい・・・・・。

(シキ、ナイスタイミング・・・////////)

ルイカがそう思った。

「おいおい・・・・」

レイが呆れた顔で倒れているシキを見つめた。

「なんでお前が倒れるんだよ」

とハルキがため息をついた。

ポッキーゲームはシキのおけげで中断された・・・・。

81リサ:2007/10/01(月) 18:37:59 ID:bVwKr1T2
「王様だぁー♥」

そう、嬉しそうに笑みを零すのは

ルイカだ。

「よかったね!!!」

と、一緒に喜ぶシキ。

「ルイカが王とかにあわねぇー・・・」

と、ハルキ。

もっともな意見の気がする。

「何でぇー!?」

「大体、お前人に命令とかできんの?」

さすがはレイ。

ルイカの性格を分かっている。

「うーん・・んー・・・・・えぇーと・・・」

なんで、真面目なタイプの人って

何でもいいのに やたら悩むのだろう。

これじゃあ、王様になった意味がない。

「・・・・じゃあ、あたしのことをいっぱい褒めて下サイ」

沈黙・・・・・

「えーと、それは誰に言ってるの?」

と、シキがフォロー。

「あっ!!はうっ・・///ご、ごごごめんッ!!えっと、あの・・・///」

一瞬場がシラけたので

それが自分のせいだとわかり

かなり焦り赤面する、ルイカ。

「んなことくらいで赤面すんなよ。落ちつけ」

と、ハルキが言うが逆効果。

「恥ずかしいいぃぃ!!!!////」

はぁ、とため息をつくレイ。

「わかったから。誰も気にして無いから」

そういうとやっと落ち着き

こう言った。


「じゃあ〜・・・2番の・・・人」

「俺だ」

そう言ったのは


ハルキ。


すごく、微妙な組み合わせだ。

友達の彼女を褒めなければならないのだから。

82レミ:2007/10/01(月) 22:56:22 ID:.Ub/3BoM
「ルイカをどう褒めりゃあいいんだよ・・・」

少し困ったハルキ。

「カワイイとか萌える(?)とか色々あんじゃん〜」

とシキが言った。

「カワイイ、萌える」

それをそのままルイカに伝える。

「えっ・・・/////」

なんとなく照れるルイカ。

それを見て、苛立ちを抑えるシキ。

「お前らさぁ・・・バレバレ」

とレイが呆れて言った。

「じゃあ、レイはルイカをどう褒めるんだよ」

ハルキが率直にレイに問う。

「んなもん、伝える前から俺らはお互いのこと知り尽くしてるからいいの」

そう言って、レイはルイカを見つめる。

ルイカがドキッとする。

「・・・・?//////////////」

照れながらレイを見るルイカ。

レイはニヤッと笑う。

意地悪そうな

無邪気な子供の笑顔だ。

ルイカはそれに見惚れてしまった。

「はぅ・・・//////」

「なら、次行きますか」

ハルキの言葉でルイカは正気に戻った。

83リサ:2007/10/01(月) 23:47:58 ID:bVwKr1T2
そこで、真面目なレイが

「てか、息抜きなんだしこのへんで終わんねぇ?」

と、言った。

「えええぇぇえ〜」

超ブーイングするシキ。

「そうだね、もうやめよっか」

心なしかホッとした表情のルイカ。

「ルイカ〜!!あんた嬉しそうねぇ??」

「そ、そんなことはっ・・・!!」

そこでレイが意地悪く

「んじゃ、ヒマなハルキと2人でやれば?王様ゲーム」

2人でやるとなると

どっちかが相手に命令するということ。


「はうぁ/////」

ルイカがなにやら真っ赤になっている。

「レイ、それなんか王様ゲームじゃなくなると思う。てか、エロい」

「そりゃ、男ですから」

「キ〜モ〜イ〜!!!!変体はお断りっ!!!!」

「てか、そーゆうのに興味ないとかいう男のがキモいだろ」

レイの言うことはあたっているかもしれない。

「普通のことだよな」

と、ハルキ。

「どうでもいいけど、ルイカの教育(?)に悪いから、出てけー!!」

ルイカはもう、頭から湯気をだしてポーッとしている。

男たちは部屋から追い出された。

ほぼ、強制的に。

84レミ:2007/10/02(火) 22:18:30 ID:.Ub/3BoM
その後に、シキもルイカの部屋を後にした・・・・。

そして、運命のテストの日が過ぎて・・・・

成績発表の日がきた・・・・。

「緊張するね・・・・」

とルイカがドキドキしている。

「や、あんたは楽勝に成績上位でしょ」

とつっこむシキ。

「レイ、自信あんの?」

「ん、まぁ程々に頑張ったからな」

と男共が会話をしている。

そして、

テストの成績表が張り出された。

<<6教科 テスト 成績表>>

1位 レイ 581点

2位 ルイカ 575点


ここまでは、いいとしよう・・・・。

「あ、俺1位だ」

命令に困るレイ。

「2位だぁ」

と喜ぶルイカ。

そして・・・・・

「な、何これぇええええぇぇぇっ!?」

シキが絶叫する。

成績表には・・・・

     ・
     ・
     ・
3位 シキ 564点

3位 ハルキ 564点


と記されていた。

「同点かよ」

とハルキが疲れた顔をする。

「〜〜〜〜〜っ!!!」

テストの結果に納得のいかないシキ。

「もうちょい真面目に勉強してれば良かったのに」

とレイがハルキに言った。

「ちょっと待てぇ、それ
あたしに言うセリフでしょっ!?」

シキが怒ったような、泣きそうなような顔で言った。

「ま、約束は約束だ。
2人に命令だすからな」

そう言って、先に行ったレイ。

その後を慌てて追いかけるルイカ。

「・・・俺が真面目に勉強してたら
俺の勝ちだったな」

と余裕そうな笑みをしてから、ハルキは先に行った2人を追う。

「・・・んなぁああああぁああああっっ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」

悔しそうな顔をして

シキがみんなを追いかけた。

85レミ:2007/10/02(火) 22:21:45 ID:.Ub/3BoM
ミスです。
「あたしに言うセリフでしょ!?」

「あたしが言うはずだったセリフでしょ!?」
の間違えです・・・
ごめんなさいww

86リサ:2007/10/02(火) 22:34:12 ID:bVwKr1T2
レイとルイカが立っていたのは

今は、使われていなくて

ほぼ、物置として利用されている

空き部屋。


そこにハルキがたどりつき。

最後に追いついたシキ。


「で?何なの?命令は!!!」

「ここに朝がくるまで閉じ込められてろ」

レイにしては

意地悪な命令だ。

「はあああぁ!!?冗談でしょ!?嫌!!!」

「王様の命令は絶対」

シキが悔しそうに唇を噛む。

「レイ・・いくらなんでもかわいそうじゃない?」

「べ、別に可哀想なんかじゃないけどー」

テレ隠しにそういうシキ。

「だって、シキ暗所恐・・・・むぐぐ」

シキがルイカの口をふさぐ。

「とにかくっ!!こんなホコリっぽいところは衛生的にも・・」

「きれいだけど?」

そう言ってレイがドアを開ける。

確かにキレイだが、思ったよりも薄暗く

いや・・・薄暗いという程度ではなく真っ暗で

ますますシキの顔が青くなる。


「ねぇ、レイ・・・お願いだから・・・・」

怯えたように、いつも強気なシキが

レイを見上げている。

「へーき。ハルキがいんじゃん」

「ハルキ・・・・・・・?」

ルイカの顔が真っ赤に染まった。

「朝まで・・・2人で・・暗闇の中・・・ふあうぅ〜・・////」

「何想像してんの・・・」

そういいつつ、少し赤くなるシキ。

やはり、怖いせいか、あまり赤くなっていない。


「ま、命令されて喜ぶような命令じゃつまんねぇから。お前が嫌がる命令にしたんだよ」

「・・・・鬼!」

「じゃなきゃ、命令の意味ないじゃん」

確かに。

「じゃ、頑張ってね!シキ、ハル・・・は頑張らなくていいよ・・////」

何についてハルキに頑張るなと言っているのだろうか。

ルイカはテレ屋なくせに

結構妄想癖がある。


そしてルイカとレイが去って行った。

87レミ:2007/10/02(火) 22:41:38 ID:.Ub/3BoM
「おら、入るぞ」

意外と素直なハルキ。

「・・・なんで素直に入ろうとすんのよ」

シキが青冷めた顔で言った。

「それが男だろ」

そう言い、シキの腕を引く。

「ぎゃっ、や、ヤダぁああああああっっ!!!!!」

そして、扉が閉められた。

鍵が掛けられる。

「ぎゃああああっ、ヤダヤダヤダヤダヤダヤダ〜〜〜〜っ!!!!!」

シキが半泣きで叫ぶ。

「なんでそんなに泣くんだよ」

ハルキが少々困ったような顔をする。

そして、ハルキは感付いた。

「・・お前、暗いトコ苦手だろ?」

「うっ!?////////」

バレてしまった・・・・。

「へぇ、強情なお前が
暗いトコが苦手だとはな・・・・」

意地悪にハルキが言った。

「〜〜〜〜っ!!!!」

シキが黙り込む。

(レイ、絶対後で殺すっっっ!!!!/////////)

シキは、そう強く誓った。

88リサ:2007/10/02(火) 23:02:35 ID:bVwKr1T2
「言っとくけど、一時間とかの問題じゃないんだからな」

「分かってる」

「朝まで、だからな?」

「それも・・分かってる」

瞳に涙を浮かべ

ビクビクしながらも

ハルキと距離をとるシキ。



そのとき・・・

床が軋む音がした。



ギシシッ




「きゃああああぁ・・・んぅ・・・・!!!!」

後ろから、ハルキがシキの口をふさいだ。

シキは心臓がはねるのを感じた。


「お前、馬鹿じゃねぇーの。声出したらバレんだろ」

隣室の生徒などに。

「もう、やだッ・・・///」

そういうと、シキはなにやら指で何かをかいている。

その手をハルキがおさえる。

「ワープ禁止」

「ううぅ〜〜〜〜・・・ハルキと2人きりなんてやだぁ〜・・・・」

もう、ほとんど泣き状態。

しかも、ハルキのせいにされてる。

「お前、それ本気で言ってんの?」

ハルキの問いに

「当たり前でしょっ!!」

と、言えるあたりまだ元気はありそうだ。

89レミ:2007/10/02(火) 23:09:09 ID:.Ub/3BoM
「・・そんなに嫌かよ」

ハルキの顔がシキに近づく。

「わっ・・・・//////////」

顔を赤くするシキ。

そして、しばらくしてから

「ううん、・・・嫌じゃ・・・ない」

と呟いた。

ハルキが驚く。

シキは体育座りで、顔を埋めていた。

相当恥ずかしかったらしい・・・・。

ハルキとの距離が、少し縮まった。

シキは、それだけでドキドキしていた。

(こんなんじゃ・・・一晩なんて越せないよ//////////)

シキが改めて思った。

90リサ:2007/10/02(火) 23:23:26 ID:bVwKr1T2
(レイの奴・・・ありえねーだろ。この命令)


余裕ぶってるハルキも、実は結構こたえている。

それもそうだろう。

好きな女と2人きりで

普通でいられるほうがおかしい。


それなりに緊張もするだろうし。

でも、ハルキをみていると

そんなキャラには見えない。



「どうする?なんか喋ってヒマ潰すか、寝る?」

「寝るとか・・こんなところで寝れる神経の人がいたら会ってみたいわ」

「レイとか寝れるんじゃね?」

普段、荒れた部屋で寝ているから。

「あー、まぁ研究オタクだしね」

そう、レイの部屋が汚いのは

決してだらしないからではない。

自室でトラップ作りをしているからだ。

「よかったな。そんな神経の人と知り合いで」

「よくないわ!」

ハルキは、シキの機嫌がよくなってきたことに

少し安心した。

ずっと泣かれるんじゃ

困るのはこっちだ。

91レミ:2007/10/02(火) 23:35:51 ID:.Ub/3BoM
レイに命令を受けたのは、夜の8時。

かれこれ、部屋にこまって3時間は経った。

「まだまだ、だね・・・」

シキが疲れたように言った。

疲れるのも当然、精神的にもくたくただった。

「なんかしてればすぐだろ」

ハルキが率直に答えた。

「う〜ん、何すんの?」

やっと機嫌が戻ったらしく、

いつものポジティブ調が出てきた。

「俺は寝るかな」

「はぁっ!?あんたもレイと同じ神経だったの・・・!?」

半ば呆れるシキ。

「俺、寝不足なの」

ハルキが壁際にあった、タンスに寄りかかる。

「一人にはしないでよ〜」

シキがだだをこねる子供のような声で言った。

「んじゃあ、何でもするからやりたいこと言ってみて」

眠たそうにハルキが言った。

シキは、いつもなら悪戯などを考えるが

いまこの状況だと、何も考えられなかった。

「・・あたしも寝る」

そう言って、床に寝そべるシキ。

そして、

ゆっくり瞳を閉じた。

「お前の神経も、狂ってるんじゃね?」

ハルキの言葉に

「うるさいなァ〜!!!」

といいながら、眠りについたシキであった。

92リサ:2007/10/02(火) 23:42:48 ID:bVwKr1T2
「どんだけ無防備なんだよ・・・」

男の前でそんなふうに

寝られるシキの神経は

ある意味、普通ではない。


シキの寝顔は

あまりにも純粋で

汚したくなかった。


「たく・・・俺も寝るか」

そう言って、自分のはおっていた服を一枚

シキにかぶせ


眠りについた。

93レミ:2007/10/03(水) 20:01:45 ID:.Ub/3BoM
シキが物音で目を覚ましたのは、深夜の2時すぎだった。

ガタン、ガタッ・・・・

ギシッ!!!

「・・・ん〜?」

眠たそうに目を擦りながら、シキは起き上がった。

「・・何の音だろ」

そして、自分の上に掛けられた上着を見つめた。

しばらくそれを見てから、ハルキの方をみる。

タンスに寄りかかって、ぐっすり眠っていた。

この上着がハルキに掛けられたことを後の方から知り、

シキは慌ててハルキにその上着を被せた。

上着を被せてから、シキはゆっくりと辺りを見回す。

真っ暗で、辺り一面が黒一色だった。しかし、窓から光がこぼれていた。

シキは、窓の方へとゆっくり歩み寄る。

おそらく、外灯の明りであろう。

シキがしばらくして、寝床に戻ろうとしそのとき!

窓から、大きな人影が大きく伸びた。

その影から大きな手がシキの方へと伸びる。

「!?きゃぁあああっっ!!!!!」

その声に、ハルキが目を覚ました。

「・・っるせぇな、バレたらどうす・・・っ!?」

ハルキが起き上がると同時に、

シキがハルキに抱きついた。

「・・・おいっ」

ハルキが驚いて、シキを見る。

シキの体は震えていた。

「は、ハルキぃ・・・っっ!!!」

シキが上目遣い(しかも涙目)でハルキを見つめた。

94リサ:2007/10/03(水) 21:29:09 ID:bVwKr1T2
「お前・・・無意識でもやりすぎだろ・・・俺だって男なんだし」

ハルキがそう言ってシキに言うが

シキの耳には全く入っていない。


「あそこ!!誰かいるうぅ〜〜〜〜!!」

「・・・・誰だよ、てか黙れ。バレたらどうすんだ」

「ううぅ〜〜!!ハルキどうにかしてよぉッ!!」

ハルキは疲れた顔で

窓のほうを見つめる。

確かに人影がある。

そしてその人影は窓を開けた。





ガラララッ





「きゃあ〜〜〜ッ!!やだぁ〜〜!!」

シキは叫びながら走り出そうとするが

足がもつれこけそうになる。

「!!あっ・・・」

だが、ハルキがシキの頭に手をあてて

かろうじて頭は守られたが

そのまま2人は地面に激突した。


「って〜・・・、お前なぁ・・・」

そう言いながらハルキは自分の下にいるシキを見下ろす。

だが、シキは別の方向を見ていた。

そう、ハルキの後ろの窓のほうを

目を点にして。


ハルキがそのままの体勢で、振り向くと・・・・

おぼんを持ったルイカがいた。


今は夜なので、寮の出入り禁止だ。

なので窓からきたルイカ。

どうやら、差し入れに夜食を持ってきたらしい。

気をきかせたつもりだったんだろう。

だが、今の状況は最悪だった。


なぜなら・・・

「し、失礼します・・・・・・・//////////」

ルイカが放心しつつ、窓を閉めた。



それもそのはず。

ハルキはシキの上に馬乗りになっていたので

ルイカには、ハルキがシキを押し倒しているようにしか見えないから。




まずい、とハルキは思ったが

既にルイカは走って逃げ出して行った。

95レミ:2007/10/03(水) 21:39:50 ID:.Ub/3BoM
「終わった・・・」

今度はシキが放心する。

「・・・・・」

色々なことがありすぎて疲れたハルキ。

いきなりシキが飛びついてきたり、この体勢を見られたりで

ハルキはもうクタクタだった。

体勢を戻してから、ハルキはため息をついた。

「・・・あの馬鹿」

あの馬鹿とは、

もちろんルイカ。

お人好しにも程がある。

それに、あんな体勢を見られたからには

誤解しているに違いない。

「・・これで、もう安心だろ
とっとと寝ろ」

「・・差し入れぐらい、置いて行けばいいのに」

いつもなら赤面するところなのだが、いまはそれどころではないシキ。

「俺、寝るから」

ハルキが再びタンスにもたれる。

「え〜」

シキはまた駄々を捏ねるようにハルキを見つめる。

「俺は知らん、もう起こすな!」

そう厳しく言い、ハルキは眠りについた。

その後に、シキも渋々眠った。

96リサ:2007/10/03(水) 21:49:52 ID:bVwKr1T2
その頃・・・・


ルイカは寮から離れた場所で、放心していた。

手におぼんを持ちながら。


もって帰るわけにいかないのに

持ってきてしまった。

でも、もう一度あの場所に行く勇気などない。


「・・・・・シキと、ハルが・・・////////」

顔を真っ赤に染める。

自分の友達のそんなところを見て

ショックを受けないわけではない。

しかも、ルイカにしては相当刺激が強い。


「はぁ〜・・・・・・」


戻るに戻れず、おぼんをもって立ち尽くす。

すると、レイがやってきた。

ルイカはレイに夜食をもって行くことを報告していたので

(レイはルイカの部屋にいた)

戻るのが遅いルイカを心配してきたのだ。

「お前何やってんの?」

「シキとハルがぁ〜〜〜〜////////」

わけの分からないことを言うルイカ。

「何かあったのか?」

レイが、落ち着いて問いただす。

97レミ:2007/10/03(水) 21:57:04 ID:.Ub/3BoM
「あ・・・あのね・・・・
シキとハルがね・・・
はうぅ〜っ//////////」

ルイカが顔を真っ赤にする。

「何、キスでもしてた?」

ズバッというレイに、恥じらいを持ちつつ、

ルイカは顔を横に振った。

「ハルが・・・シキを・・・・
押し倒して・・・・//////////////」

しどろもどろ、ルイカが話し始める。

「ふーん」

レイはいたって普通の反応。

「キスぐらいすりゃあいいのに」

はっきり思ったことを言ったレイ。

「シキとハルが、キス!?・・・・ふぁ///////////」

ルイカはしばらく、妄想に浸っていた。

98リサ:2007/10/03(水) 22:12:18 ID:bVwKr1T2
そして、次の日―――


ガチャッ



解放されたシキとハルキ。

「どうだった?罰ゲームはww」

楽しそうにレイがそういう。

「もう最悪だったわよ〜!!!!」

シキがそう叫ぶ。

「そりゃ、楽しそうだな」

あざ笑うようにレイが笑う。

「鬼!悪魔!!」

シキがレイに暴言を放つ。

「それより、ハルキお前、とうとうおさえきれなくなったのか?」

「は?」

「どーでもいいけど、許可なくするのはマナー違反だからな。心得ておけ」

「何が?」

「てか、どんだけ欲求不満なんだよ?」

ハルキが何かに気付いた表情した。

「ルイカ・・・てめぇ喋ったな」

「ひっ・・ごごごごめん!」

反射的に身構えるルイカ。

「ルイカに八つ当たりすんじゃねぇよ。暴れ馬め」

「ちげーよ!あれは事故だったんだよ!!!!」

「んなことわかってる。まじになんな、馬鹿」

「は?」

レイは、最初からルイカの見間違いか

もしくは誤解だと勘付いていた。

「お前にそんな度胸あるわけねーもんw」

レイがニヤッと笑う。

「んだと?んじゃ、てめぇはどうなんだよ?」

ルイカの顔が真っ赤になり

ひぅ〜〜!やら、ふあぅ〜!などと奇声を発している。

「俺は欲求不満なんかじゃねぇけど?」

余裕でそう答えるレイ。

レイとハルキがごちゃごちゃと言い合っている間に

シキがルイカの誤解を必死にといている。



そんなわけで

一件落着した・・・・が

そんな平穏な生活が

壊れるかもしれない出来事が起きることを

4人はまだ知らない―――・・・・・

99レミ:2007/10/03(水) 22:24:18 ID:.Ub/3BoM
ある夜、久々の任務でうきうきしていたシキとルイカ。

学園長室に入り込む・・・・。

ガチャ!

「失礼します」

2人が学園長のもとへと駆け寄る。

「・・あなたたちに、伝えておかなければならないことができました」

「・・・何でしょう?」

2人が顔を見合わせる。

「気を付けてください、追っ手はどうやら本気になったようです。あなたたちを見つけ次第、
捕まえるか、もしくは・・・殺すかもしれないわ」

「は・・・?それって一体・・・」

シキが不思議そうな顔をする。

しかし、学園長はそれ以上は話さなかった。

「・・・とにかく、今日は神秘の壷を盗んできて頂戴」

「了解!」

2人はそう言って、学園長室をあとにした。

100リサ:2007/10/03(水) 22:29:51 ID:bVwKr1T2
「ねぇ、何だと思う?さっきの・・・」

シキの質問に

「さぁ・・・」

と、ルイカ。

「でもさ、極秘任務ってくらいだし、あの学園長が盗みたいから盗んでるわけないと思うし・・
何か、悪の組織絡みじゃないかなぁ・・・って思う。あっ!あくまでもあたしの妄想だから!!」

「ふぅん・・・ありえるかも!!」

「とにかく、あたしたちは無事盗みができればいいんだよッ♪」

楽しそうに弾んだ声で言うルイカ。

「そうねッ!!」

そして、月夜の中

光に照らされ

2人は学園を飛び出した。

101レミ:2007/10/04(木) 21:54:54 ID:.Ub/3BoM
レオレオに跨りながら、2人は夜空へと飛び立つ。

「今回は・・・・
遊園地の中にある、幻の鎮魂歌を盗めばいいみたいだね」

ルイカが、学園長から手渡された手紙を見ながら言った。

「なんだろ、それ・・?」

シキがルイカの方をみて、不思議そうな顔をする。

「う〜ん・・
詳しくは記されていないなァ」

「なら、自力で見つけますかね」

遊園地が調度見えてきたところで、レオレオは高度を下げていった。

そして、2人は遊園地へと着いた。

この後、激しい戦いとなることを知らずに・・・・。

102リサ:2007/10/06(土) 14:52:38 ID:bVwKr1T2
「きゃ〜♥みてみて!!メリーゴーランド!!」

ルイカが嬉しそうに指差す。

「はいはい、いいからさっさと探すわよ」

キラキラ笑顔のルイカの手をひき

シキがさっさと歩き出す。

「てか、こんな広い中どうやって見つけろっていうの・・・」

「だね・・・」

しばらく考えたあと、

シキがこういった。

「じゃ、2てに別れる?」

「そうだね!じゃ、見つけたら連絡してネッ!!!!テレテナで!!」

「了解☆じゃ、あたしはこっち行くからあんたはそっちね!!」

2人は右と左に分かれ

走り出した。

103レミ:2007/10/06(土) 16:15:24 ID:.Ub/3BoM
シキが暗い遊園地の中を走り出す。

「・・う〜ん、それらしいモノは見つからないな」

辺りをキョロキョロする。

夜の遊園地は、さすがに不気味。

シキはお化け類は怖くないほうだが、

こう暗いと少し怯えてしまう。

いくらなんでも暗すぎるので、

シキはローブの中から杖を取り出した。

それで手早く魔方陣をつくり、

召喚をした。

「誘え、召喚獣」

魔方陣から溢れんばかりの光が生まれる。

そして、召喚されたのは・・・・

黒猫。

「ショコラ、久しぶりィ★」

シキがテンション高めにその召喚獣に抱きついた。

ショコラと呼ばれた黒猫は優雅に毛づくろいをしている。

(一人じゃ心細いから呼んじゃった♪)

シキはショコラを抱き上げると、

真っ暗な遊園地のある一角へと

入り込んでいった・・・・。

104リサ:2007/10/06(土) 17:52:50 ID:bVwKr1T2
ルイカはブーツのスイッチを入れて、

素早く移動する。

「鎮魂歌ってそもそもなんだろう・・・?」

初歩的疑問から

ルイカは探すことすらできていない。

「むぅ〜・・・どこだぁ?」

きょろきょろと周りを見る。

そのとき・・・

「あっ!」

靴に何かがひっかかった。

それと同時に、どこからか煙が吹き出てきた。

「ゴホッゴホッ・・・これ、もしかしてっ・・・睡眠薬入りの煙!?」

ルイカにはアイテム知識があるので

対策のしかたも分かるが

あまりにも急だったので

無理だった。

ルイカの視界が霞み、意識が遠のいていく。

(どうしよ・・・)

ルイカは力を振り絞り、丸い煙玉を投げた。

その玉から煙がたちまち噴出し

真っ赤な色つき煙が空に昇る。

これは、自分の居場所を緊急時にしらせるための

煙玉。

「・・ハァ・・ハァ・・・シキ・・・」

ルイカの意識が完全に途切れた。

105レミ:2007/10/06(土) 18:04:25 ID:.Ub/3BoM
シキは遠くの方から赤い煙が見えてきた。

「あれ・・まさか!!!」

シキがショコラを地面に降ろすと言った。

「ショコラ!!!!
私をルイカのところまで連れて行って!!!」

ショコラは御主人の願いならなんでも叶えてくれる、

とても幸福な黒猫。

でも、願い事の代償は、

シキの精神力。

幸福を呼ぶことは呼ぶが、

その代償は不幸を呼ぶものだ。

ま、一つの願い事でシキの精神力が途切れるわけでもないが・・・・。

ショコラがシキの周りを一回だけ走った。

その瞬間、シキの体が空気に溶けるようにして、消えた。

それと同時に、ショコラが還った。

106レミ:2007/10/06(土) 18:11:37 ID:.Ub/3BoM
「ルイカっ!!!!」

シキがワープした瞬間、ルイカのもとへと駆け寄った。

シキが到着した頃には、煙幕は消えていた。

シキがルイカを抱き上げる。

ルイカの意識はもう無かった。

「ちっ・・・一体誰が・・・・!!!!」

シキが辺りを見回す。

と、その時



ザンッ!!!!!



シキの足首に激痛が走った。

「・・・いたっ!!!!!」

シキが手で足首を抑える。

シキの足首には、細身のナイフが刺さっていた。

傷口からは血が滲んでいた。

「学園長が言っていたコト・・・・
本当らしいわね」

シキがナイフを抜いて、立ち上がった。

ルイカを守るようにして。

「どっからでも来なさい、
魔方陣科のエキスパートを舐めんなよっ!!!!!」

シキが痛みを堪えながら、不敵そうに笑った。

107リサ:2007/10/06(土) 20:04:10 ID:bVwKr1T2
「いたぞっ!!」

そこに、何やら完全防備といった服装の奴らが

ぞろぞろと現れた。

警報が鳴り、ここへきたようだ。

「あんたたち?ルイカをこんなふうにしてくれた奴は」

シキが思い切りそいつらを睨む。

「蝶(パピヨン)だ!!眠ってるのはアイだ。捕まえろ!!」

「あいにくあたしは・・・」

そういいながらシキが魔方陣をつくる。

「もっと可愛い名前があるのよっ!!」


「雷撃錯乱!!」


そういうと同時に、雷があたりに放たれた

「ぐあっ!!!」

追手らしき奴らが、倒れこむ。

が、ガードしているものも多く

少ししか倒せていない。

「ちっ・・・手ごわいやつらねっ!!」

そういいながら、ブーツのスイッチをいれ、

ルイカを抱えながら高く上に跳んだ。

そして、メリーゴーランドの屋根に飛び乗る。


そしてそのまま逃げ出すシキ。

「あいつらをどうにかしないと盗むどころじゃないわね・・」

「シキ、おろしていいよ」

「!?ルイカッ」

なんとルイカが目を覚ましていた。

「あたし、何度も実験でこの煙使ったことあるから、もう免疫がついてて
すぐに目が覚めるの。普通だったら半日は眠ってるけどね」

「なるほど・・・」

だが、ルイカはすぐに笑顔になり

「なーんてねッ、それもあるけど本当は倒れる寸前に薬のんだの!」

「とにかく、今の状況はあたしたちが不利なの。今は作戦考えながら走る!!」

シキの言葉に

「了解!」

と、ルイカが言う。

108レミ:2007/10/06(土) 20:40:11 ID:.Ub/3BoM
シキとルイカが周囲を警戒しながら観覧車のある一角に身を潜める。

「さっきの雷撃、あんたも見たでしょ?」

ルイカがこくりと頷く。

シキの得意属性の雷の魔方陣があんなに利かないことは滅多にない。

「あの人たち、アイテムについても魔方陣についても
かなり詳しいみたいだね・・・・」

そこで、シキが思いついたかのように言った。

「でも、召喚魔法だったらどうかしら・・・?」

召喚魔法はその魔方陣によって効果や効能が違う。

何が起こるか予測出来ないはずだ。

「確かに・・・
でも、創る時間がちょっと掛かるよね・・・・」

「うん、だから
それまで敵を引っ張ってくれるかな?」

シキの言葉にルイカが笑顔で頷いた。

「今度はこっちの番よっ!」

シキとルイカが立ち上がった。

109リサ:2007/10/08(月) 17:31:28 ID:bVwKr1T2
敵が走り、ルイカとシキを探す。

「あ、いたぞー!!」

敵の一人が指差したところに

ルイカが倒れていた。

敵がルイカに近づき取り押さえようとした瞬間・・・

ルイカがフッと消えた。

「ど、どこだー!?」

「あっ、あそこに・・!!」

上を見上げると

ルイカが高くジャンプしていた。


「こんばんは〜♪」

そう言って、上から下に向かってスプレーを吹きかける。

あたりが真っ白になる。


「ゴホゴホッ・・くそ!何も見えないぞ!!」

そして視界が見えた頃には

少し遠くにルイカとシキが立っていた。

「蝶とアイ発見!!A班は蝶!B班はアイを捕まえろー!」

「何で、あたしアイ?」

ルイカが不思議そうに首をかたむける。

「さぁね」

そう言いながら、シキが攻撃態勢にはいる。


敵がルイカとシキの方へと走ってくる。

「飛んで火にいる夏の虫、ね!!」

「なっ・・・こ、これは!?」

シキとルイカの前には、魔方陣が描かれている。

つまり、敵の目の前に魔方陣があるのだ。


そう、ルイカの煙幕であたりを見えないようにしてる間に

シキが魔方陣をつくったのだ。

110レミ:2007/10/08(月) 17:47:17 ID:.Ub/3BoM
「じゃあ、お気に入り出しちゃおうカナ♡」

シキがニヤリと笑った。

「ひっ・・・!!!!」

敵が逃げようと後ろへと下がる。

「誘え、召喚獣」

魔方陣が発動した。

辺り一面が光り輝く。

「さぁ〜て、いっぱい暴れまわりなよ〜♪」

シキの言葉と同時に、人型の美しい美女が現れた。

「あらあら、早速命令かしら?」

その美女は背中に大きな鎌を担いでおり、

長い黒髪が特徴的で肌は黒。

瞳は赤。

「レディ・ラビング、そこの悪党共をやっつけちゃって〜」

シキが敵を指差す。

「はいはい、主人は相変わらず戦いが好きなのね」

レディ・ラビングは鎌を背中から抜くと大きく一振りする。

その瞬間、大きなカマイタチが敵全体を襲った。

「うわぁあああぁぁっ!!!!!」

敵は気絶するものもいれば、腰を抜かすものもいた。

「お疲れ様w」

「また呼んでよね」

レディ・ラビングが還った頃、

怪しい影がぞくぞくとシキたちの周りに集まってきていた。

111リサ:2007/10/08(月) 18:10:00 ID:bVwKr1T2
手のひらサイズくらいの、黒い生き物だ。

それが大量にこちらに近づいて来る。

「な、何コレー!?」

ルイカが叫び声をあげる。

「気持ち悪ッ・・・!!」

それらは、足元にくっつくと

スライムのように溶けていく。

「これ・・・デビル・ビーアーだ!」

「何それ?!」

必死に足を動かすが、地面にすごい粘着力でひっつき

身動きがとれない。

そして、攻撃を受けていない敵たちが襲いかかってくる。

「とにかく・・・こーゆう奴ら!!追跡型生命体なの!トラップ科に分類される・・・
敵は相当賢いみたいよ!シキ!!」

そういいながら、ポケットから小さなビンを取り出し

そいつらにふりかける。

「早く〜ルイカ!敵がきてる!」

あっという間に蒸発したかのように

消えていく。

「ルイカ!上よ!!」

シキの声で、2人とも上にジャンプした。

間一髪のところで

敵から逃れられた。

「ふぅ〜・・・てか、こんなことで苦戦してらんないのよ!
戦いにきたんじゃなくて、盗みにきたんだから!」

「そうだね!!」

そう言って、屋根に飛び乗った2人は

再び走り出した。

112レミ:2007/10/08(月) 18:22:14 ID:.Ub/3BoM
「ルイカのコトだから、鎮魂歌なんて知らないでしょ?」

「う、うん」

2人が走りながら会話を続ける。

「魔楽器をやってないと解らないからねw」

シキが笑顔でそう言った。

シキは魔楽器の経験者だ。

幼い頃からやらされてたとか・・・・。

魔楽器というのは、その名の通り

魔法の楽器ということ。

魔法を吹き込めば、楽器は演奏者の好きなように

音を出してくれる、といったところだ。

「鎮魂歌っていうぐらいだから、”歌”に決まっているわ。
遊園地とかで流れている曲のことを言っているんだと思う。」

「なるほろ〜」

ルイカが納得したように相槌をついた。

「とにかく、放送室かどっかを探さないとね」

「でも、多分
仕掛けしてあるよね・・・・」

ルイカが疲れたように言った。

「あ、放送室はお化け屋敷を抜けたところだったような・・・・」

「お、お化け屋敷ィ!?通るの・・・・!!!!??」

「それしか方法はないみたいね」

ルイカの顔が青冷めていく。

「さて、着いたわ」

「し、シキ・・・・
暗いよ・・・ここ・・・・」

「大丈夫、先頭はルイカに任せるから♪」

シキはそう言って、ルイカをお化け屋敷の入り口へと突き飛ばした。

「ひぃやぁあああぁぁぁああっっ!!!!!!」

ルイカの声にならない叫び声が響き渡った。

113リサ:2007/10/08(月) 20:07:52 ID:bVwKr1T2
「ねぇ、シキ〜〜!!だったらさ、お化け屋敷の建物の上に飛び乗って行こうよ」

ルイカの提案にシキが

「できたらそうしてるって。無理なのよ、高すぎる」

「そんなぁ〜」

そういいながら、ルイカは一歩も歩こうとしない。

「さっさと歩いてよ!ここにいても暗いだけ!!」

暗いのがダメなだけで、お化け自体は作りものだし

夜なので、機械のお化けは動かないので、怖くない。

シキとしてはさっさと進んでもらえばいいらしい。

「無理〜だったらシキが先頭歩いてよぉ〜!!」

半べそでそううったえるルイカ。

「無理、暗いの怖いもん」

「あたしだってお化け怖いよぉ〜・・ぅわぁ〜ん!!」

とうとう泣き出すルイカ。

「仕方ないなぁ〜・・・」

と、シキがルイカの横にならび手を繋いだ。

「これでお互い様なんだからねッ!!」

そう言って歩き出した。

114レミ:2007/10/09(火) 22:13:45 ID:.Ub/3BoM
真っ暗なお化け屋敷。

その中の細い通路をルイカはビクビクしながら歩く。

「ルイカ〜、しっかり歩いてよっ!!!!」

やっと暗さに慣れたシキ。

「シキが歩かないからだよ〜〜っ!!!!!」

ルイカは半泣きのままだ。

「もう、あんた15歳でしょ!?泣いてすむと思うな」

ここでルイカの頭にシキのチョップ。

「いった〜いっ!!!!!」

余計機嫌が悪くなったルイカ。

「も〜〜っ!!!!お化けなんて機械だよっ!!!!!」


ガタンっ・・・・・



「ひぃやぁああああぁぁぁあああっっ!!!!!!!」

シキが偉そうなことを言いつつも、

小さな物音で

ルイカより先に腰を抜かす。

「・・・シキ、説得力なさすぎ」

ルイカはもはや、

怖すぎで叫ぶ元気もなくなっている。

顔は青冷めていて、

声も震えている。

これはもう重症だ。

115リサ:2007/10/10(水) 21:59:36 ID:bVwKr1T2
腰を抜かしていたシキ。

たちあがろうとした瞬間

体が後ろに浮いた・・感覚がした。

そしてそのまま誰かに口を押さえられ

後ろにひっぱられる。

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

恐怖のあまり絶叫しているが

口を押さえられていて

声がでない。

やっと口から手が離れた瞬間

シキが手を振り上げた。

「何すん・・・・!!!」

だが、簡単に手を掴まれた。

相手の顔は見えないが

力があるし、背がたかいあたり

男だ、とシキは冷静に判断した。

「お前、命狙われてんだぜ?危機感ねーのかよ?」

「ないわね。あたしは死なないし、ピンチのときはルイカがいるし」

「ふーん・・・気が強い女」

その言葉に少しムッとなりシキ。

「あんた、追手かなんか?・・・とはちょっと違うわよね」

男が少し笑った。

「そんな格下じゃねぇよ。俺はお前の敵だ」

「!!」

シキが戦闘体勢にはいろうと

構えようとするが

手が押さえられていて

動けない。

「何もしねーよ。今日は見学するだけだからな。お前たち2人を」

「はぁ!?意味わかんない!!」

「俺、結構お前のこと気にいったし・・・・」

そういいながら、指を差し出し

めの前に指を近づける。

それをみた瞬間、体が硬直した。

(体が・・・動かない・・・・)

「じゃーな、月夜の怪盗さん♪」

そう言って、シキの手に軽くキスをして

消えていった。






―――

―――――


「・・・キ・・・シキー!!どこー!!?」

急にシキが見当たらなくなり

もう既に涙を零しながら

あたりを見回すルイカ。

「シキィ〜〜・・・グスッ・・どこぉ〜〜〜?」

少しずつ、歩きながら

シキを探しさ迷うルイカ。

116レミ:2007/10/10(水) 23:06:12 ID:.Ub/3BoM
どれだけ呼んでもシキは見つからない。

ルイカが泣いていると・・・・

後ろから妙な気配を感じる。

警戒して振り向いてみると、



「あ、シキっ!!!!!」


シキが真後ろにいた。

「良かった〜怖かったンだよ!?一人にしないでって・・・・・!!!!!??」

ルイカが話を続けているのにも関わらず、

シキはどんどん近づいて、

ルイカの目の前にたった。


「し・・・シキ??」


そういい、シキの顔を少し見上げた次の瞬間、

「シキ、誰それ?」

ルイカが驚愕している間に、

ルイカの手は自由が奪われた。

「・・・っ!?誰っ!!!!!!」

ルイカが手を振りほどこうと暴れる。

しかし、相手は男らしい

力ではとうてい敵わない。

「なんだよ、せっかくお前に会いに来てやったのに」

その青年は暗闇の中でニヤリと微笑んだ。

「そんなの、頼んでないもんっ!!!!」

ルイカが怒って言った。

「お子ちゃまめ」

「なっ・・・・!?」

「ま、顔はまぁまぁカワイイし
どうでもいいか」

そう言って、ルイカを自分の方へ引き寄せた。

ルイカは顔を見ようとした。

しかし、

暗いせいで顔は見えない。

「今日はまだ何もしねぇよ、
ま、それまでに俺の手を振りほどく対策でも練っとけば?」

ルイカの耳に男はそっと囁いた。

「は、離して〜〜〜っ!!!!!」

「またな、今度はたっぷり相手してやるよ」

「イヤでも、な」

次の瞬間、男の声はもう聞こえなくなった。

手にも自由が戻った。

ルイカはとても微妙な表情で、

「誰、なんだろ・・・・」

と考え込んでいた。

117リサ:2007/10/10(水) 23:43:04 ID:bVwKr1T2
考え込むのもたった数秒。

今の自分の状況を思い出した途端に

涙がこみ上げてくる。

「いやぁ〜!シキィ〜〜!!!!」

そのとき

後ろから、肩をたたかれた。

「きゃあああぁッ!!!!」

「ひゃあッ!!・・・ルイカ、あたしだってば!びっくりするじゃん!」

ルイカが振り向くと

シキがいた。

「シキィ〜・・・うぅ・・・」

「ね、ルイカ、変な奴みなかった?」

「え?シキのとこにもきたの?」

シキが怪訝そうな顔で

額にシワを寄せる。

「あーあっ、思い出すだけでもムシズが走る!気持ち悪いッ!!」

そう言って、手をぶんぶん振っている。

「何があったのかわかんないけど・・・誰かわかんないんだし、
とりあえず今のことを考えよう!!ほら、出口!!」

「そうね。ゆっくり歩いてられる状況じゃないみたいだしね」

そう言って、2人はお化け屋敷から出た。

118レミ:2007/10/11(木) 22:50:42 ID:.Ub/3BoM
「あ、あれ放送室じゃない?」

お化け屋敷を出てしばらく歩いたら、放送室らしき部屋が見えてきた。

「入ってみよっ!!!!!」

ルイカがドアを開けた。



ガチャっ・・・・



「とにかく、CDでもMDでもなんでもいいから、
音楽が入っているもの探さなきゃっ!!!!!」

シキが放送室の棚やら引き出しやらをめちゃくちゃに開けて、

中身を放り出していく。

「シキ・・・・」

「なによ、ルイカも手伝ってよねっ!?」

「テーブルの上にあるけど・・・??」

ルイカが

テーブルの上にある、CDディスクを指差す。

「あ、あったんかい〜!!!!!」

シキがテーブルのディスクを取り上げて、はしゃぐ。

「学園長のとこへ、急ごう!!!!」

ルイカの言葉で2人は放送室をあとにした。

119リサ:2007/10/11(木) 22:58:33 ID:bVwKr1T2
放送室を出ると、敵が大量に周りを囲んでいた。

「ちょっ・・・待ち伏せ〜!!?ええい、面倒くさい!!」

シキが荒々しく

ワープ魔法を使った。

ワープ魔法は、ある程度近くにしか移動ができない。

少し離れた場所に出たが、まだそこは遊園地内。

シキはレオレオを呼び出すと

すぐさまルイカを乗せ

夜の闇の中に消えて行った。




「はぁ〜・・・どうなるかと思ったよ」

「そうね・・魔方陣の勉強もっとしないと」

「あたしも!!アイテム作り頑張る!!」

笑顔のルイカ。

2人は、学園長のもとに向かった。

120レミ:2007/10/11(木) 23:05:39 ID:.Ub/3BoM
「学園長っ!!!!!」

2人が学園長室の扉を開いた。

「・・敵がたくさんいたようですね」

学園長が真剣な顔になる。

「・・・遊園地で、誰だか分からない人物とあったンですけど・・・・・」

ルイカの言っている、誰だか分からない人物とは

シキとルイカに手を出した、あの男たちだ。

「・・彼等は多分、敵の親玉かもしれませんね」

「お、親玉・・・ってコトは・・・・」

「ボス・・・・」

2人は唖然とする。

「気をつけてくださいね、あなたたちが死なないという保証は
ありませんからね」

学園長は少し厳しく言った。

「はい」

「あ、これ・・・」

シキが幻の鎮魂歌を学園長に手渡す。

「お疲れ様でした、さぁ早く寝なさい」

「はい、失礼します」

2人は学園長室を後にした。

121リサ:2007/10/12(金) 20:25:07 ID:bVwKr1T2
次の日――・・・

食堂に早めについたハルキが

シキを見つけた。

どうしたことか、今日は一人。

いつもならルイカと一緒なのに・・・・


「ルイカは?」

第一声がルイカのことなのが、少しひっかかる。

「ルイカはね・・・」

と、シキがそこで言葉をとめる。


(昨日の騒ぎの疲労でまだ休んでる・・・なんて言えないし)


そう、ルイカは昨日の戦いで

すっかり体力がなくなったらしい。

熱があるわけでもないが

ルイカはもともと低血圧のうえ貧血をおこすので

昨日のように走り回ると

朝がキツいのだ。


「んーと、軽い風邪よ」

なので、適当にごまかす。

「またかよ?」

最近熱を出したばかりなので

ハルキの意見はもっともだ。

「でも、遅れてくるから。たいしたことないんだってさ」

怪しまれないように、付け足すシキ。

「ふーん」

ハルキが納得してくれたことに

ほっと胸をなでおろすシキ。

そこにレイがやってきた。

また同じ説明をしないといけないのか・・・

と、シキはため息をついた。


「あいつは?」

「はぁー・・・あんた達はルイカの存在が当たり前になってるみたいね〜」

さすがに同じ反応をされると

シキとしても、呆れてしまう。

「当たり前だろ。んで、どうなんだよ?」

そこにハルキが

「風邪だとさ」

とシキより先に口出しした。

「まじで?」

「でも、軽いから。うん、もうたいしたことないの」

レイが様子を見に行くなど言い出したら

風邪でないとバレてしまうので

慌ててごまかすシキ。

「ふーん、なら昼には授業でれるかもな」

どうやら納得してくれたらしい。

122レミ:2007/10/12(金) 22:05:30 ID:.Ub/3BoM
今日は普通の授業。

それでも、シキはつまんない。

なので、相変わらず

昼寝。


「シキさん・・・・っっ!!!!!」

先生が目を吊り上げて怒る。

「あ゛、眠いから黙ってくれる?」

すんごい迷惑そうな険相で、シキが言った。


「あなた、特待生だからって・・・・
調子に乗って・・・・っっ!!!!!」

先生は今にも突っかかりそうな勢いで、シキの席へとズカズカ歩く。

「黙ってってんだろ」

シキの態度はこの頃悪い。

お化け屋敷の出来事で、とてもムカついているらしい。

「〜〜〜〜っ!!!!」

先生は諦め切れないようだが、

シキは既に眠りについていた。

123リサ:2007/10/12(金) 22:39:04 ID:bVwKr1T2
2時間目から復帰したルイカは

昨日のことをバネに

授業中も必死にアイテム作りを考える。


シキとルイカは考える方向が間逆のようだ。



黒板をノートに写す時間なのだが、

ルイカはノートに新しいアイテムの材料や、形などを

書き込んでいる。



先生には、熱心にノートを書いてるようにみえるので

何もいわれないのだ。



ルイカは必ずトラップ科でしか作れない材料を

アイテムの材料にいれておく。


なぜなら、材料をもらうという口実で

レイに会えるから。

何もないのに行くのは

恥ずかしい。



トラップ科に材料のことでお世話になることは少ないのだが

反面、ハルキにはよくお世話になる。

そのことでシキが嫉妬したりすることもないし、

・・・というか、いちいちしてたら仲間関係が続かない。


つまり、仲のよいグループなのだ。





そして、昼食時間・・・

124レミ:2007/10/12(金) 22:51:58 ID:.Ub/3BoM
「なぁ、夏祭り行かね?」

レイの突然の質問。

シキとハルキはきょとんとする。

「あ、あのね・・・
今年はみんなで夏休み行きたいナァって思って・・・・」

ルイカがホットドッグを食べながら言った。

「いいよ、あんず飴食べたいし」

「お前は食べ物のことしか頭にねぇんだな」

「おいしいじゃん、あんず飴!!!!」

「まぁまぁ、ってコトは行くってことだろ?」

レイがカレーパンを食べながら問うた。

「ん〜、そういうコトかな・・・」

シキがバナナスムージーを飲みながら言った。

「楽しみだね、浴衣かぁ・・・・」

「ゆ、浴衣っ!?」

シキが驚く。

「え、着ないの、シキ・・・??」

「え・・・・」

少し戸惑うシキ。

シキには着る気など全く無かった。

「いいじゃん、着れば?」

ハルキが普通に言った。

「ほ、本当っ!?じゃあ着ようカナ・・・・」

シキが俯き気味で言った。

「うん、ってかもう明日の夜だからな
夏祭り」

「いきなりっスか」

「明日なんだ・・・・」

シキとルイカが気難しい顔をする。

「ま、詳しいことは明日な」

そう言って、ひとまず

一時解散となった。

125リサ:2007/10/12(金) 23:07:48 ID:bVwKr1T2
夜は、シキの部屋にお邪魔することにしたルイカ。

明日のことを話すためだ。

シキの部屋はオシャレだ。

クッションもシャレていて、中でも丸い形のクッションはなぜかルイカのお気に入り。

シキの部屋にくると、いつも胸に抱いている。

「ねぇ、シキ〜!一度家に行って、着物きるんだよね。どこで待ち合わせだっけ?」

「えっとー、ルイカの家の近くのルシュルーの泉のベンチ前、6時だったと思う」

「そっかァ〜・・・浴衣なんてもうずいぶん着てないよぉ〜・・」

ルイカが楽しそうに話すのを見て

シキが笑う。

「?何?シキ・・・」

「なんか、ルイカって本当素直だよね〜わかりやすいっていうか・・」

ルイカがきょとんとした顔で「そう?」と聞き返す。

「でもさ、シキだってわかりやすいよ?」

「え?嘘!?」

シキが驚いたように、セミロングのキレイな髪をブラシでときながら、ルイカを見る。

「女同士だからね、わかるよ。あたしが恥ずかしいことはたいていシキだってそうだろうし・・
でも、たまにあたしと違うとこあるけどねwだから微妙かも」

「ふ〜ん・・」

シキが納得したようなしてないような微妙な表情で鏡の方を向き

ネックレスをはずしている。


「明日、楽しみだね〜♪」

「うん、いっぱい遊ぼ!」

明日のことがあるせいか

2人とも妙にハイテンションだ。

126レミ:2007/10/12(金) 23:18:10 ID:.Ub/3BoM
その頃、

相変わらず、自分の部屋で寝たくないレイが

ハルキの部屋に来ていた。

「おま・・そろそろ部屋の整理しやがれ」

「面倒」

やはり即答。

「お前さぁ、俺の部屋で寝んの
そろそろ止めろよ」

迷惑そうにハルキが言った。

「そういや、明日浴衣じゃん」

「いきなり話そらしたな、てめぇ」

ハルキがイラつきながら言った。

「んで、ルイカの浴衣
そんなに楽しみか?」

「まぁな」

「アイツが着ると、七五三みたいにならね?」

「黙れ」

レイがハルキに質問を持ちかけた。

「明日、行動に移す?」

「そうだな、進展ねぇし
お前は?」

「もち」

「なら、俺もそうするかな」

「でも、ルイカは恥ずかしがりだからな〜」

「ま、そういうとこがいいんだけど」

レイが自分の言葉に付け加えた。

「そんなのこっちも一緒、すぐにカーッとなるからな」

「うまく、持ってって
今度こそしてぇんだけどな」

「・・このキス魔」

「お前もどうせ締めるんだろ?」

「まぁな」

これが15歳の男子でありふれた会話。

そして、2人は夜遅くまで

計画を練っていた。

127リサ:2007/10/12(金) 23:33:55 ID:bVwKr1T2
そんなことは知らずに、女子達は既に眠っていた。

普段大人っぽいかんじのシキだけど

寝顔はものすごく幼げで可愛い。

ルイカは普段から可愛いかんじの顔なので

寝顔も動揺、可愛らしい。

そんな2人が同じベッドで寄り添って寝てるのは

かなりのベストショットだ。

見たものを気絶させる力があるくらいに。



男たちはいくらなんでも、別々で寝る。

レイがソファに寝転がり

ハルキはいつもどおりベッドで寝る。



・・・が、今日はまだ眠りにつかずに

いつまでも話込んでいた。



「そういや、シキって俺たちといるときと、教室とじゃ全然雰囲気ちげぇよな」

「あー、だってあいつ、チャラついてる系だし」

「見かけは、な。不良って程じゃねぇんだろ?」

「さぁ」

ハルキの曖昧な返事に、怪訝そうな顔をするレイ。

「俺たちの前では結構素だすときあるかもな」

その言葉にレイが笑いだす。

「んだよ」

「だって・・普通素だすのって彼氏の前だろ?お前と俺らも同類かと思うとお前むなしいな、と・・・」

「黙れ。お前らよりもあいつのことわかってるから」

「あー、ノロケはいいですから」

レイが思い切りスルーしたのが、ハルキは面白くないようだ。

「何だよそれ、お前がふった話しだろ」

「俺のせいにすんな、俺もう寝る。明日のために」

ハルキがイラついたかんじでレイに言葉をかける。

「ちょっ・・待て、ここで寝るな、そこで寝ろ」

ベッドで寝ようとしたのを阻止し、ソファに誘導する。

「はぁ〜・・寝心地わりぃ・・・」

「だったら自室行け」

ハルキの声のトーンが本格的に下がってきたので

レイは大人しく寝には入り

間もなくハルキも眠りに付いた。

128レミ:2007/10/14(日) 00:43:00 ID:bVwKr1T2
翌朝、今日は目覚めるのが遅いシキとルイカ。

「ん〜、ルイカ
早く起きてよ〜ッッ!!!!!」

シキが寝癖だらけの髪で、眠たそうな目を擦りながらルイカの体を揺する。

「もう少し〜・・・・」

ルイカは低血圧なので、まだ眠たそうに布団にしがみついている。

「ばか」

シキは暴言を吐き捨てて、顔を洗いに洗面所へ向かう。

シキはオシャレなので、顔や髪のセットに合わせて1時間も掛かる。

やっと、自分で気に入ったと思ってから、アクセを付ける。

シキはアクセサリーが大好き。

ハルキからもらった、クロスのネックレスはいつも付けている。

爪にマニキュアを塗っているシキ。

シキにとって顔のセットというのは、化粧ではない。

ただ、洗顔して、パックして終わりだ。

化粧が嫌いらしい・・・・・。

「おし、完成♡」

機嫌がよさそうに、シキがドレッサーから立ち上がる。

そして、ルイカに置き手紙を書く。

「さて、家に帰りますかね」

シキが自室を後にした。

129レミ:2007/10/14(日) 01:07:01 ID:bVwKr1T2
人の部屋ですっかり眠りこけてしまったルイカ。

目を覚まし、シキの置手紙で我に返る。

顔を洗い歯を磨き、髪をととのえる。


ルイカは潔癖なところがあるので、冬の時期でも

制服(自由だけど)は、2日に一回洗っている。


そして、シキの部屋を後にする。

今日は土曜なので、自宅に帰るのもOKだ。


廊下を歩いていると・・・

「あー!!ルイカ先輩〜♪」

何故か、ルイカは同学年の人に先輩と言われることがある。

特待生と言うことから

何故かそう呼ばれるのだ。

「あ、ミカちゃん、どうしたの?」

「先輩も、祭り行くん?」

・・・とはいえ、やはりタメ口。

ルイカたちだけでなく、他にも夏祭りに行く人は多いらしい。


「急がないとっ・・!!」

ルイカは外に出てから、ブーツにスイッチをいれ

素早く家へ向かう。


すると、やがて大きな館のような家が見えた。

500坪はありそうな大きな洋風の家に

大きな門つきだ。


「・・っただいまぁ・・!!」

息を整えつつ、玄関で叫ぶ

すると、奥の部屋から、綺麗な若めの女性がでてきた。

フワフワの茶色い髪を揺らしながら優雅に歩く。

桃色のワンピースが髪によく映えている。


「あら、おかえりなさい。ルイカ」

ふんわりと微笑むその顔は

とても温かみがある。

「ただいま。今日、お祭りにいきたいから、浴衣着るの手伝ってくれるかな?」

「いいわよ〜、お母さんにまかせて♪」

そう、この女性はルイカのお母さん。

ルイカの母親は普通の花屋の娘だったが

金持ちの医者の父と恋をし

大反対を押し切り、結婚にいたったという

大恋愛をとげた2人なのだ。


しかも、結婚したのは、母親が17のとき。

なので、母親はまだ若さが残っているのだ。

130レミ:2007/10/14(日) 01:43:48 ID:bVwKr1T2
学校から20キロ離れた辺り、

和式の大きな木造建築の家がある。

「ただいま」

「キャァアアアァァ!!!!!シキちゃん、おかえりなさァい♥」

シキが玄関の戸をガラガラと開く。

玄関はまるで、部屋一部屋分あるぐらいの大きさだ。

「・・・ママ」

呆れた顔で自分に抱きついた母を横目で見る。

「シキちゃん、毛先のキューティクル無くなってきたんじゃないの!?
髪の艶も薄れちゃって・・・・」

シキの母は16歳でシキを生んだ。

ということは、シキの母は31歳。

すんごくピチピチしている。

「シキちゃん、パパにもしっかり挨拶してきなよ??」

「あ、着物準備しといてくれる??」

シキが家に上がりこみ、廊下を歩く。

「パパに挨拶しに行って来る」

父の部屋は全部で4つある。

母によると、父は書斎にいるらしい・・・・。

「ただいまァ、パパ??」

「シ〜〜〜〜〜キ♡」

父親がシキに抱きついた。

「うん、離れてくれる??」

すんごい迷惑そうな顔をするシキ。

親バカにも程がある。

「パパ、仕事順調??」

「まぁ、シキのためなら
パパはどこまでも頑張るよ〜♪」

「・・・・・・」

シキは黙って部屋を後にする。

「し・・・シキ!?
もう行くのか!?」

「ううん、ちょっとね・・・・
またね」

シキが扉をピシャンと閉めた。

「ハァ・・・・」

小さくため息をついてから、シキは

自らの部屋へと歩き出した。

131レミ:2007/10/14(日) 02:09:03 ID:bVwKr1T2
だいぶ日がくれてきた頃・・・

「う〜ん・・やっぱりルイカには可愛く、ピンクなんかいいんじゃない?」

どうやら母親に浴衣を見立ててもらっているらしい。

一体何枚浴衣があるのだろうか。

「・・可愛いより、綺麗って言われたいから・・・・」

「あら、もしかしてレイくん?」

「!!////////」

ルイカの顔は真っ赤に染まる。

「ふふ、わかりやすいわね♪パパには内緒にしといてあげる♪」

父親に、レイもことがバレるのはたまらない。

「ありがとぉ・・・」



結局ルイカの意見どおり

少し大人っぽく

紺色をベースに、ピンクと水色の色とりどりの花が描かれた浴衣になった。

髪留めには、かんざしを使用する。


「やっぱりルイカは何着ても似合うわね!さすがお母さんの娘だわ♪」

「・・・ありがと///」

褒められるのは、少し気恥ずかしい。

身支度が整ったルイカは

時間を見る。

(そろそろ出ないと・・・)

ルイカは家を出た。

132レミ:2007/10/14(日) 02:21:24 ID:bVwKr1T2
シキは幼い頃から着物を着るのが風習だったので、

部屋で一人で着替えていた。

シキの髪や瞳に合うようにするため、

母が特注で頼んだ

その浴衣は

黒色の生地に金魚が泳いでいる浴衣だ。

化粧台の前に座り、浴衣を着た自分を見る。

そして、化粧台に出されていた紅を小指に取り

唇に塗る。

「ママったら、準備いいなァ・・・」

髪を後ろにくくり、お団子にする。

髪どめはやはりカンザシ。

代々受け継がれて着た、シキの家での浴衣を着るときの慣わし。

シキは、それを守るために、

数珠を利き手につけた。

シキの家は、妖魔に狙われているので

その魔よけとしての数珠である。

シキの眼光が妖しげに輝く。

この睨むような鋭い、しかし光が宿っている瞳も

シキの家に受け継がれてきたもの。

そして、シキは玄関へと向かう。

「ママ、行って来る」

「シキちゃん、気を付けてね」

意味深な言葉をシキに伝える母。

シキはこくりと頷くと、家を後にした。

133レミ:2007/10/14(日) 02:49:27 ID:bVwKr1T2
待ち合わせの場所には、既に男たちがいた。

まだ、待ち合わせの時間よりも5分早いのに・・・

ルイカとシキは途中で待ち合わせをしていたので

一緒にやってきた。

「あれ?2人とも珍しく早いけど、どしたの?」

シキが、ハルキとレイに問いかける。

「あー、俺ら、学校からそのままこっちきたし。準備とか必要ねぇからさ」

「男は楽でいいね。女子の苦労もわかってほしいわ。ね、ルイカ」

「う、うん・・・」

ルイカは照れてるのか、シキの後ろで身を固めている。

「じゃ、行きますか?」

シキの一声にみんな頷く。




夏祭りの夜の始まりだ――・・・・

134レミ:2007/10/14(日) 02:56:39 ID:bVwKr1T2
ゆっくりと神社の階段を登る4人。

ルイカはもじもじしていて、

レイは眠そうな顔をしていて、

シキはいつも通りで、

ハルキも普通だ。

「階段長くね??」

シキが疲れたように笑った。

「まだまだあるけど??」

レイとハルキにはまだまだ余裕らしい。

「浴衣じゃ歩きずらいもんね・・・・」

ルイカがようやく口を開く。

そこでレイが口を開いた。

「でも、似合ってるよ
すんごく。」

「ふぁ・・・・っ////////」

ルイカの顔が真っ赤になる。

「はい、二人の世界に入らないでくださ〜い」

そこでシキがビシッと言った。

「そろそろ、階段終わるんじゃね??」

ハルキの言葉に、他の3人が顔を上げる。

あと3・4段あとには、

お祭りの風景が広がっていた。

135リサ:2007/10/14(日) 03:28:15 ID:bVwKr1T2
「わぁっ・・・!!すごーい!!」

ルイカが顔いっぱいの笑顔で目を輝かせている。

「あたし、ゲームしたい!!人形とってやる!」

シキもお祭りの雰囲気にはしゃいでいるようだ。

「んじゃ、勝負すっか?どっちが多く射的で打ち落とせるか」

「オッケー!勝負ねッ!!」

シキとハルキは、射的の方へと行ってしまった。



一度別行動をする2組。




シキとハルキが狙うのは、クマの人形だ。

始めに挑戦するのはシキ。

「よぉ〜し・・・うっ・・・重・・」

銃を構えるが、重くてフラついてしまう。

その姿がほほえましくてハルキは笑ったが

シキはバカにされてると勘違いし

銃をハルキに向けた。

「動くな」

その言葉にハルキは両手を頭のあたりまであげる。

その行動にシキが思わず笑う。


「あははっ!まじでやってるし!」

今日のシキはとても楽しそうだ。

「綺麗だな、浴衣」

「え?そぉ?まぁ、高かったしね一応・・・」

テレ隠しなのか、浴衣の値段について語ってる。

浴衣が綺麗なんじゃなくて

本当に綺麗だと思ってるのはシキなのに。


「分かったから、早く打ち落とせよ」

「言われなくても・・・」

そういいながら狙いを定めるシキ。

だが、一発目は見事にはずした。

二発目は当たったのだが、少し揺れた程度で

落ちなくて、最後の一発もむなしく終わった。


「もうちょっとだったんだけどなぁ〜・・」

「今度は俺の番だな」

ハルキが得意げに銃を構える。

そして、見事クマの人形を打ち落とした。

「ハルキ、かっくい〜!!!」

自然に出た言葉に、後から照れるシキ。

「てか、勝負負けたんだあたし!悔しい〜」

ハルキがシキの手に、人形を置いた。

「え?いいの・・?」

「俺の部屋にこんなもん飾ってどうすんだよ?」

「・・・・引く」

その言葉に2人は笑い合った。


「俺からのプレゼント」

「さんきゅっ!じゃ、あたしからは・・・」

言いかけたが、シキがあげられるものなどない。

無言になるシキに、ハルキはこう言った。

「物じゃなくて、気持ちでいーから」

「は?ど、どーゆう意味!?」

だが、ハルキはあえて答えなかった。

シキは焦っていたが、ハルキの方に近づき、

ハルキの肩におでこをくっつけた。


それを、ハルキが片手で軽く引き寄せる。

「よく出来マシタ」


「ほら・・ルイカたちが待ってるから、もう行こ!」

急かすシキにハルキは

「もう少し」

と、言う。

もう、シキはされるがまま、ハルキに寄りかかっていた。

そして、ハルキが急にシキの手を取り

歩き出した。

「行くか」

「・・うん!!」

手をつないで、人ゴミをかきわけ歩き出した。

136レミ:2007/10/14(日) 03:41:44 ID:bVwKr1T2
シキたちが射撃でわいわいやっているとき

レイとルイカは金魚すくいをしていた。

「あ〜、破けちゃう・・・」

ルイカが破れてしまった自分の網を見つめてしょんぼりする。

レイがそんなルイカを見て、金魚すくいのおじさんにお金を渡す。

「れ、レイ、やるの!?」

「欲しいんだろ、やってやるよ」

レイが腕まくりをする。

「見てろよ、ルイカ」

レイがにやっと笑った。

網を見ていろとレイは言ったはずなのに

ルイカはレイに釘付けだった。

「よっ」

レイが金魚をすくいあげる。

大きな出目金だ。

「うわぁ・・・すご〜いっ!!!!!!」

やっとレイから目線を離したルイカが、大きな出目金にはしゃぐ。

「うっしゃ!!!」

レイがとても無邪気な笑顔で喜んでいた。

そんな笑顔を隣で微笑んで見つめるルイカ。

(なんか・・・可愛い・・・・)

「ん、そんなにジロジロみんなよ」

レイがルイカの視線に気付いたらしく、

少し笑顔で言った。

「はうぁっ!!!!!!ご・・・ごめ・・・・っ///////」

レイの声にルイカは我に返る。

レイは笑顔で、ルイカの頭をくしゃっとした。

「ほら、これやるから」

レイがルイカに金魚を渡す。

「やった、ありがと!!!!」

ルイカが嬉しそうに言った。

「んじゃ、行きますか」

「そだね」

二人は金魚すくいの屋台を後にした・・・・・。

137レミ:2007/10/14(日) 03:59:42 ID:bVwKr1T2
4人が合流する。

「なんか食べ物買わない?せっかくだし、屋台とかで!」

「いいね!そうしよッ♪」

さすが、女子はやはり食べることが大好きだ。


「あたしは〜・・・クレープ!チョコフレッシュホイップにしよ〜っと!」

「じゃ、あたしは〜・・あんず飴!!」

「俺、いらね」

レイは、何も買わないらしい。

「じゃ、俺なんか買おうかな」

ハルキがそう言って、たこ焼きを買った。

「俺だけ浮くじゃん。やっぱ焼きそばでも買うかな」

結局4人で食事することになった。

「ん〜♥おいしっ♥」

無邪気な笑顔でクレープを頬張るルイカ。

シキは飴をなめて幸せそうだ。

シキもルイカも食べてるときは人一倍嬉しそうな顔をしている。

「お前ら、何でもおいしそうに食うな」

ハルキが少々驚きながら言う。

「だって、おいしいもん♪」

笑顔でルイカが言う。

「そうそう、しかめっ面して食べてもおいしくないしね!」

シキとルイカは顔を見合わせて「ね!」と同調している。

あきれつつも笑顔のレイとハルキ。





この後は、花火大会がある。

138レミ:2007/10/14(日) 04:16:18 ID:bVwKr1T2
「そういや、花火大会あるんでしょ」

シキがあんず飴を舐め終わったあとに尋ねた。

「ああ、あと15分後」

レイが時計を見ながら言った。

「うっわ〜、もうすぐじゃん
あ、ルイカ!!!クレープ頂戴!!!!!!」

「うん、いいよ〜」

ルイカがシキにクレープを渡す。

シキはそれを口に頬張った。

「おいひい〜!!!!」

食べながらシキが言った。

「お前、生クリーム付いてんぞ」

ハルキが笑いながら言った。

シキの顔が赤くなる。

そして、慌ててそれをティッシュで拭いた。

「さて、行きますか」

レイが立ち上がる。

ルイカも、シキにクレープを返されたあとに全部食べきったので立ち上がった。

「行こうぜ〜」

シキも楽しそうに立ち上がる。

ハルキも立ち上がって

4人は歩きはじめた。

139リサ:2007/10/14(日) 16:34:40 ID:bVwKr1T2
4人は並んで歩き出す。

屋台をとおり、人ゴミに押されながらも

人ゴミから抜け出し

花火がよく見える、神社の丘まで上がり

座る4人。

「そろそろ・・かな」

ルイカが嬉しそうに言う。

丘の階段の段に腰をおろし

背筋を伸ばして膝に手を重ね、綺麗に座っている。

目線は、空を見ているので、斜め上だ。

「あと、3分。もうすぐね」

シキがオシャレな腕時計を見つめながら、呟く。

「これって時間ピッタリに上がるんだよな。10秒切ったらカウントダウンしようぜ」

「それ、いいじゃん!みんなでだからね?」

ハルキの提案に、みんなが賛成した。

「もう30秒切ったよ!」

そして・・・

「10、9、8、7・・・・・」

カウントが始まった。

シキとルイカの顔は空一直線に向けられ

みんなの声が重なる。

140レミ:2007/10/14(日) 16:49:22 ID:bVwKr1T2
「6、5、4、3、2、1・・・・・!!!!!!」



ドーンッ!!!!!



その直後、空には色鮮やかな花火が輝いた。


「わぁ・・・・」

ルイカが歓喜の声を上げた。

「意外と大きいな」

ハルキが花火を見つめる。

「最初から小さかったらショボいじゃん」

シキが悪戯にハニかむ。


その後は、連続で小さな花火が出たり

大きな尺玉の花火が出たりで

4人はとても楽しそうだった。


「終わったね〜」

ルイカが背伸びをする。

「次はどうしよっか・・・・??」

「そういやぁ、向こうにお化け屋敷があったけど・・・・??」

レイがニヤリと笑う。

シキとルイカの顔が青冷める。

「却下」

シキが苛立ちながら言った。

「あたしも、ちょっと・・・・」

ルイカもあからさまにイヤな顔をする。

「いいんじゃね、夏祭りのお化け屋敷って
すんげぇ怖いらしいし」

ハルキもレイに同調する。

「アホか、あたしとルイカの気持ち考えろ」

シキが今にも殴りそうな勢いで2人に言った。

ルイカはシキの後ろで青冷めている。

「イヤ、行くから」

レイがルイカの手を引く。

「きゃっ・・・・!!!!!」

ルイカはレイにやれれるがままな状態だ。

「くぉら〜、ルイカを離せぇええぇぇえええっっ!!!!!」

シキがレイを追いかける。

「おい、気ぃきかせようぜ」

ハルキがシキの腕を掴む。

「俺らはもう少ししてから、な」

ハルキがニヤッと笑った。

「・・・って、入るの〜〜〜〜!?」

シキの声が辺りに響き渡った。

141リサ:2007/10/14(日) 17:13:40 ID:bVwKr1T2
いつもはルイカの嫌がることはしないのに

今日のレイはなんだか強引だ。

「ね、レイ〜!!やめようよ!怖いよ!」

「ダメ」

レイが聞く耳ももたない様子なので

ついにルイカは落ち込んでしまった。

仕方なくレイに引かれながら

お化け屋敷に入った。


暗い細い道を

歩く。

「も、もっとゆっくり行こうよぉ・・」

レイの腕をしっかりと掴み

震える声で訴える。


そこに、大きな破裂音がした。





パンッ!!!!!!!






「きゃあッ!!!」

ルイカが頭に手をやりしゃがみこむ。

「大丈夫かよ?」

「ぅう・・・・もう、やだァ〜・・」

と、言っても、歩かなければ一生出られない。

142レミ:2007/10/14(日) 17:19:34 ID:bVwKr1T2
「ほら、掴まって」

レイがルイカに手を差し伸べた。

「・・・・グスッ」

ルイカはもう泣きの状態。

レイはため息をついてから、

ルイカの目線に会うように少し屈む。

ルイカの頭に手を乗せて、レイが優しく言った。

「俺がいるから、大丈夫」

ルイカがレイの顔を見る。

レイが笑っていた。

「ほら、行くぜ」

レイが再び歩き出した。

「う、うん・・・・///////」

目はまだ潤んでいたが、

ルイカの頬は

ほんのろ赤く染まっていた。

143レミ:2007/10/14(日) 17:21:08 ID:bVwKr1T2
すみません〜!!!!
ほんのろ赤く染まっていた、は
ほんのり赤く染まっていた、の間違いです・・・・
ごめんなさいw

144リサ:2007/10/14(日) 17:39:16 ID:bVwKr1T2
ルイカは暗闇の中、思った。

この人といれば、大丈夫だ、と。

そう思える安心感がある。

自分の求め続けていたもの。

ルイカにとっての居場所は

4人の仲間の中―――



その中でも

自分の中で大きな存在なのが

レイだ。





その頃・・・

「いやーッ!嫌がらせなの!?やだってば!」

「祭りのいい思い出になるじゃん」

ハルキとシキもお化け屋敷に入っていた。

145レミ:2007/10/14(日) 17:48:21 ID:bVwKr1T2
入った瞬間、シキの顔が青冷めた。

「イヤだぁああああぁあぁあぁぁぁああああっ!!!!!!!」

「なんだよ、一夜一緒に明かしただろ」

シキの動きが止まる。

「一夜・・・・・」

一夜と言えば、

思い出したらとても恥ずかしい思い出。

罰ゲーム。

シキの顔が赤くなる。

「お前何考えてんの??」

「はゎあっ!!!!
違うからね!!!!あたしがハルキに抱き付いたなんて
ただの偶然だからねっ!!!!!」

シキがいきなり口走る。

「は、偶然??」

シキの顔はますます赤くなる。

「そ、そそそうよッ!!!!!
すんごい偶然・・・・
き、奇跡なんだからっ!!!!!」

「へぇ、あんなにしっかりしがみ付いてたのに??」

ハルキが意地悪をする。

「〜〜〜〜〜っ!!!!!!」

シキが悔しそうに俯く。

ハルキはそんなシキを置いて

スタスタ歩いていく。

「ま、待ってよ〜〜〜〜〜!!!!!」

シキが怖がりながらもハルキの後を追った。

146リサ:2007/10/14(日) 18:17:09 ID:bVwKr1T2
「ごめん!どーでもいいから置いてかないで!!」

ハルキの腕をとり、ハルキを止める。

「じゃ、もっと素直になれよ」

ハルキは少し意地悪なところがある。

過去にレイにも言っていた。

「俺、アイツに甘やかしたくないワケ
だからさ、ちょっと意地悪してるんだよ」

と。

でも、これではただの自己満足としか思えない。

「それとこれとは関係ないでしょっ」

意地になるシキ。

「じゃ、知らねぇ」

「〜〜〜〜〜!!」

シキは魔方陣を作り出した。

ワープするつもりなのだろうか。

「こら、学校外で魔法使うのは禁則だって知ってんだろ?」

ハルキがシキの手をとりとめる。

「だって・・・ハルキが意地悪するからじゃん・・」

シキの目に涙が浮かぶ。

147レミ:2007/10/14(日) 21:51:15 ID:.Ub/3BoM
「ハルキの馬鹿ァ・・・・」

シキは、涙を堪えようと頑張る



やはり涙が溢れてくる。

「・・・・・・」

ハルキはしばらく考えこんでから、シキに言った。

「ごめん」

「!?」

シキが驚く。

「よく考えてみれば、俺がからかい過ぎたのかもな」

「ハルキ・・・・」

シキが俯いたまま言った。

「あたしも、もう少し素直になる・・・」

そして、シキが顔を上げる。

シキは笑顔だった。

「ハルキに迷惑かけたくないもん」

ハルキは微笑むと、シキを自分の方へ引き寄せた。

「馬鹿、全然迷惑じゃねぇって」

「ほ、ほんと・・・?///////」

シキが照れつつ聞いた。

「ああ」

ハルキはシキを離した。

「おら、俺たちだけいい雰囲気だと
アイツ等が怒るから、行くぞ」

ハルキがシキの手を引いた。

「うん・・・///////」

シキは照れ笑いをしながら、走った。

148リサ:2007/10/14(日) 22:08:32 ID:bVwKr1T2
一方、ルイカの方は、そんな雰囲気ではなかった。

「いや〜〜!!絶対に無理〜〜!!」

「行かなきゃ出れないだろ・・・」

ルイカたちの前を歩いていたカップルがいたのだが

そのカップル達が通った直後、壁が開いてお化けが飛び出したのだ。

それを見たルイカは恐ろしくてその壁の横が通れないのだ。


「うぅ・・・無理!絶対無理〜!!」

そう言って歩こうとしない。


「じゃ、ずっとここにいるきかよ?」

「・・・・やだ」

それでも歩けないルイカ。

一歩足を出しても

一歩下がってしまうのだ。


「ほら行くぞ」


レイが手を握って優しくさとしても

歩こうとしない。


もはやラブラブする気力もなく

真剣に恐怖一色のルイカ。


今のルイカならある意味何をしても

動じないかもしれない。

149レミ:2007/10/14(日) 22:18:58 ID:.Ub/3BoM
レイはルイカに目隠しを付けた。

「っ!?何したの〜〜〜〜〜っ!!?」

「俺の手、離すなよ」

レイは強引にルイカを引っ張る。

「レイ、これの方が怖いよォ〜〜〜〜〜っ!!!!!」

ルイカはまたまた泣き出した。

ルイカはもはやされるがままだった。

すると、

「もう、いないぞ」

レイの言葉が聞こえて、ルイカは少し警戒する。

が、しばらくして

ようやく目隠しをはずした。

「も〜〜〜、強引すぎだよ〜〜〜」

ルイカが半べそ掻きながらレイに言った。

「わりィ」

レイが意地悪に笑った。

「お前が泣いてばっかじゃ
俺もやってられねぇからさ」

その言葉と笑顔に

ルイカは少しだけ赤くなる。

「もう少しだから、俺にしがみついてろよ」

「・・・・ウン」

ルイカはもじもじしながら言った。

150リサ:2007/10/14(日) 22:29:42 ID:bVwKr1T2
ルイカはいつも思う。

レイに助けられてばかりだと。


シキだって、怖いときはハルキに頼るけど

普段は、ちゃんと自分の力でやってるのに・・・


そこが、ハルキがシキを好きになった理由かもしれない。



なのに、自分は

いつもないてばかりで・・・

何の役にもたてていない。



ルイカはいつも悔やむ。



だが、レイはそんなルイカが好きだということを

ルイカは分かっていない。




ルイカは思った。

強くなりたい・・・と。

151レミ:2007/10/14(日) 22:37:18 ID:.Ub/3BoM
その頃、シキとハルキは

出口に順調に近づいて来ていた。

「もうすぐだね」

シキが笑顔で言った。

「お前、暗いの苦手じゃないのかよ」

「苦手だよ」

シキは少し困った顔をする。

「ヘラヘラ笑うなよ、
馬鹿みたいだぞ」

ハルキが無神経に言う。

シキは少しムッとする。

でも、

シキの機嫌は良かった。

ハルキが、自分に謝ってくれたから。

優越感とかじゃなくって

ただ、それが嬉しかった。

(でも、謝るときぐらいは
無表情やめてよね・・・・・)

シキは心の中でそう思った。

「出口だッ!!!!!」

シキが笑顔で出口に走った。

「ったく、ほんとにガキだよな」

ハルキはつくづくそう思うのであった。

152リサ:2007/10/15(月) 00:00:44 ID:bVwKr1T2
だが、お化け屋敷というのは最後までしかけがあるのだ。

出口のドアを開けた瞬間・・・

「どああぁああっ!!!!」

絶叫した顔が横から飛び出てきた。


「っぎゃああぁッ!!!!」

シキが滅多に出さない声で叫んだ。

それを見て、笑いをこらえるハルキ。

「何コレ〜!ひどいでしょ・・・怖、怖すぎ・・・!!」

フラフラと出口から出たシキに

ルイカが駆け寄った。

「シキ、大丈夫!?あたしも同じ目にあったよ・・」

ルイカもあらぬ声で叫んだのだろう。

ハルキと動揺レイも笑いをこらえている様子。

・・・というかもう笑っている。

シキが不機嫌そうに、

「笑いすぎ」

と、だけ言った。

「わりぃ・・でも、この最後のはビビるよな」

と、ハルキがフォロー。

「だよな。俺もビビった。ルイカの声に」

ちゃかすような言葉にルイカが

「もぉ〜!」

と頬をふくらませて、レイを横目でチロリと睨む。

「また来年も入ろうな」

レイが意地悪そうに

ものすごく整ったその顔で、

少し悪いカンジも交えて微笑みながら言った。

「「絶対いや!」」

見事にシキとルイカの声がハモる。

でも、ルイカは

(今の笑顔が見れるなら・・・入っていいと思わないこともないかも・・・///)

と、思った。

153レミ:2007/10/15(月) 00:07:28 ID:.Ub/3BoM
「この後、どうすんの?」

シキが気になっていたコトを聞いた。

「う〜ん、そろそろお祭りも終わりだよね・・・」

ルイカが寂しげに言った。

「じゃあ、俺らで花火しない?」

ハルキの提案に、シキが飛び跳ねる。

「ナイスアイデア〜www」

「じゃあ、買って来ようかw」

ルイカも楽しそうに言った。

「じゃ、決まったことで
行きますか」

レイが神社の階段を下り始めた。

それに続き、みんな

階段を下りた。

154リサ:2007/10/15(月) 16:04:13 ID:bVwKr1T2
適当に24時間開放のショップに入り

打ち上げ花火や、ねずみ花火、かんしゃく玉、煙玉、線香花火、連続花火など

色々な種類を購入した。


もちろん、持つのは男。

「火は、ハルキの魔法でどうにかなるよね」

川原まで歩きながら言うシキ。

「お前・・・俺の魔法なんだと思ってんだよ。そんなもんに使うもんじゃねぇぞ」

魔法を花火の火に使うのは、

確かになんだか虚しい。

「あ、花火セットにちゃんとマッチ入ってるよ」

ルイカがレイの持つレジ袋から

マッチを取り出す。

「つまんないのー・・」

シキがボソッと呟く。

そうやらハルキにやらせたかったらいし。

「なんなら、お前に火、つけてやろうか?」

ハルキがニヤッと笑いながら、シキに手をかざす。

「エンリョしとく」

が、あっさりかわされた。



そんなこんなしているうちに、川原についた。

155レミ:2007/10/15(月) 16:14:48 ID:.Ub/3BoM
「じゃあ、やりますかね」

シキが、花火セットについていた蝋燭にマッチで火をつける。

シキが手にとったのは、

打ち上げ花火。

「いきなりかよ」

レイが少し驚いて言った。

「いいじゃん、
テンション上げよっ!!!!!」

シキが楽しそうに言った。

「じゃ、いきますよ♪」

シキがマッチで火をつけて、

打ち上げ花火に点火する。

その数秒後・・・・・


ドカーンっ!!!!!!



綺麗な花火が空に向かって飛んだ。

「わぁ・・・」

ルイカが花火に見惚れる。

「じゃ、どんどんやろうぜ」

ハルキがみんなを急かした。

156リサ:2007/10/15(月) 16:34:02 ID:bVwKr1T2
そして、ルイカが手に持ったのは・・・

線香花火

今度はレイがルイカに

「いきなりかよ」

と、言う。



「だって、線香花火って小さくて一番可愛いもん」

そう言ってウットリと線香花火を見つめている。

川原の前でしゃがんで花火を見るルイカは

なんだか、とても綺麗だ。


と、そこで線香花火がおちる。

「なんか、線香花火ってむなしいよな」

と、レイが追い討ちをかけるように意地悪く言う。

「そんなことないよ。儚いカンジがいいもん」

と、言ってニッコリ笑うルイカ。

どこまでもポジティブな考えだ。

「線香花火は最後ってルールがあんだよ。ほら、これやれ」

普通の噴出し花火を手渡すレイ。

「レイ、火つけてくれる?」

そう言って花火を差し出すルイカ。

「何?お前もしかして怖くてつけらんないわけ?」

「せ、線香花火ならつけれるよ」

苦し紛れのいいわけ。

ルイカの顔がどんどん赤くなる。

「お前料理得意じゃん。いつも火つかってんのに?」

「だって、こーゆう花火って急に噴出すから手にあたりそうで・・・///」

レイは笑いながら火をつけた。

「ありがとッ////」

慌ててそれだけ言うと、シキの方へ走って行った。

157レミ:2007/10/15(月) 17:03:44 ID:.Ub/3BoM
「ルイカ、真っ赤っ赤〜」

シキのところまで来ても

ルイカはからかわれている。

ルイカが膨れる。

「だ、だって・・・・」

シキは噴出し花火を両手に持ち、

ニカッと笑っていた。

ルイカが線香花火をやっているときとは全く違い、

お世辞にも綺麗とは言えない。

「お前、ガキっぽい」

川原に座り込んでいたハルキが、シキを見ながら言った。

シキは負けじと

「ガキですから」

と舌を出して言った。

「ま、少なくとも
あたしよりルイカの方がガキだし〜」

「シキひどい〜〜〜〜〜っ!!!!!!」

ルイカが怒った。

「ルイカが久々にキレたぁ〜♪」

楽しそうにシキが逃げ出す。

「シキ〜〜〜〜っ!!!!!!」

ルイカはそんなシキを追い掛け回した。

158リサ:2007/10/15(月) 19:03:26 ID:bVwKr1T2
今日はあいにく浴衣でアイテムも何ももっていないので

ルイカはシキを追いかけることしかできない。

「シキ〜〜〜〜〜ッ!!」

ルイカが怒りながらシキの後を

必死に追いかける。

真夜中で浴衣を着ながら

川原で美少女が鬼ごっこをしている・・・


なんだかとても奇妙な光景だ。

その光景をレイとハルキは座りながら

眺めていた。



運動神経のあるシキは足が速くて

知識がある文化系のルイカは

到底、追い付けない。


しかもどんどん差が広がるばかり。

それに、浴衣なので足を開くのをためらって

小走りになるルイカ。


シキは両手の花火を振り回しながら

ルイカを挑発する。

「ルイカは足が遅いなぁ〜」

ルイカの顔がぷぅっと膨らみ

足を大きく開いた瞬間・・・




ドシャッ!!!!




思い切りルイカがずっこけた。

「ひぅ・・・痛ぃ・・・」

手をついて上体をおこすルイカ。

それを見て、クスクスとこらえられない笑いを噴出すシキ。

159レミ:2007/10/15(月) 20:00:53 ID:.Ub/3BoM
「ば〜か」

シキが意地悪に言った。

「シキのせいだからね〜〜〜〜っ!!!!!」

ルイカが半泣きで言った。

「いや、ルイカがドジすぎなんじゃね?」

レイが笑いながら言った。

ハルキも隣で笑っていた。

「俺もレイに同意」

「も〜〜みんなひどいよ〜〜〜〜っ!!!!!!!」

「あ〜あ、ルイカ擦りむいちゃって・・・・」

シキがルイカのもとに駆け寄る。

そして、しゃがみこんでルイカの膝を痛そうに見た。

その時、ルイカは思い出した。

「そういえば、怪盗になったとき
シキ、足をナイフで刺されなかった?」

小声でシキにルイカは言った。

「ああ、まだ少し痛むけど
大丈夫だよ」

シキが刺された足首を撫でながら言った。

「ならよかった・・・・」

ルイカが嬉しそうにいった。

160リサ:2007/10/18(木) 23:23:42 ID:bVwKr1T2
「てゆーか、あんた。人の心配より自分の心配しなさい」

コツンと拳でルイカの頭をこずく。

これが、シキの思いやり。

自分が辛いのは隠して

人のことを考える。


ルイカの場合も、自分以上に人を心配するけど

結局自分はいつも助けられてしまう。

役に立てていない・・と感じている。



だからこそ、ルイカはシキが好きで

ひそかにシキにあこがれている。


シキのように

みんなに頼ることなく

みんなを助けられるように

強くありたい・・・・と。

161レミ:2007/10/18(木) 23:33:29 ID:.Ub/3BoM
「そろそろ、線香花火でもしよ〜」

買ってきた花火はもう、

線香花火しか残っていない。

「俺パス」

ハルキが一目散に言った。

「俺も」

「ちょ・・・っ!!!ノリでやろう!?」

「うん、やろうよ〜っ!!!!」

シキとルイカが説得する。

「あ、ハルキとレイって
線香花火がすぐに落ちるから
恥ずかしくってやれないの〜??」

ハルキがシキの言葉に

「ざけんな」

と即答した。

「ちげぇよ」

レイも即答。

「ねぇ・・・やろう??
お願いだから・・・
思い出作ろうよ・・・」

ルイカが男2人を説得する。

「・・仕方ねぇな」

レイが少し面倒くさそうに言った。

ハルキも「やるか」と言っている。

そこでシキが

「待てっ!!!あたしとルイカとじゃぁ豪く態度が違うンじゃない!?」

とハルキとレイに怒鳴る。

「そうかもな」

意地悪な笑みでシキを見るハルキ。

レイも隣で頷いている。

「うがぁああああぁっ!!!!何よ、それェ!?」

そんなシキを無視して、

三人は線香花火を取りに行った。

162リサ:2007/10/18(木) 23:54:39 ID:bVwKr1T2
線香花火を、再びうっとりと眺めるルイカ。

きっとルイカの脳内では

素晴らしく夢のようなロマンの世界が広がっているのだろう。


一番最初に落ちたのは、シキの花火だった。


「あ」


花火の火はむなしく地面に落ち・・・・なかった。




ボトリ




「っあち!!おい、シキ!」

ハルキがたちあがって、足を軽く振っている。

「あ、ごめん!本当ごめん!!アハハ、熱かった?」

そう、シキの線香花火はハルキの足の上に落ちたのだった。

「お前は本当に俺をいたぶるのが好きだな・・・」

そういった瞬間、何かを感じ取って

シキはたち上がり、ハルキから離れた。

そして両手をブンブン振っている。

「いやっ!今のは、わざとじゃないのっ!!分かって??」

そういいながらも、シキは笑いを堪えている様子だ。

うまいことハルキの足にあたったことがおかしくて仕方ないようだ。

ハルキもわざとじゃないのはわかっているが

笑っているシキを見ると、なんだか無性に

素直に許したくなくなる。

「まぁまぁ、ハル。これで冷やして?」

川原の水で冷やしたタオルを、ルイカが差し出した。

「そうそう!早く冷やさないと!」

シキがハルキに遠くから声をかける。

「お前がゆーな」

言いながらも、ハルキはまた座り込み

タオルを足にあてた。

163レミ:2007/10/19(金) 21:53:40 ID:.Ub/3BoM
シキの線香花火が落ちて、

ハルキも線香花火を続行するのも諦めて、

残るは2人となった。

でも・・・・



ポトッ・・・



「あ、落ちちゃった・・・」

ルイカが拗ねたようなしょうんぼりした顔をした。

そんなルイカを見ると、

なんだか頭を撫でてあげたいくらいに

可愛らしくてしょうがない。

「俺のやるよ」

レイがルイカに線香花火を手渡す。

「え、いいの〜!!!??」

もう最後の花火ということもあるから、

ルイカは嬉しそうに笑った。

ルイカは線香花火が大好きだということを、

レイは知っててルイカに渡したのだ。

「落とすなよ」

レイがさりげなくルイカにプレッシャーをかけた。

ルイカがその言葉に緊張して、



ポトッ・・・



「・・あ〜あ」

遠くでシキが残念そうな顔をしている。

「落ちちゃった・・・」

またもしょんぼりするルイカ。

そんなルイカに、レイが

「ば〜か、実はまだあったりして」

「えっ!?」

「い・・いつの間に!?」

ルイカとシキが驚く。

「俺のトラップ品で、1つのモノを倍にするのがあんだよ
それ使った」

レイが懐から線香花火を2本取り出した。

「あ、言っとくけど
コレは俺とルイカのだから」

「ずるっ」

シキが悔しそうな顔をする。

レイがニヤッと笑って

「残念だな」

と嫌味ったらしく言った。

164リサ:2007/10/19(金) 22:09:31 ID:bVwKr1T2
「おい、おれって何でも倍にできんのかよ?シキも倍にできるのか?」

ハルキが興味津々といったかんじで

しゃがみこんで、レイに問いかける。

しばらく間をおいて、レイが

「・・・・・・・・お前、欲しい?もう1人こいつが」

シキを指しながら、レイが慎重に言葉を並べる。

シキがきょとんとした顔で2人の会話に聞き入る。

ハルキは一度、シキを見て

それからレイに顔を向けなおした。

「・・・・・・・や、それはちょっと・・」

その言葉にシキが怒ったような顔でハルキを見つめる。

睨むかんじだと怖いけど、スネたような起こり顔は

なかなか可愛い。

「なーんか、あたしがこれ以上いたら困る、みたいな顔ね」

「・・・てか、同じ人間がいるなんてブキミだろ」

その言葉に

「はぁ、なるほど」

と、シキが納得。

そこでレイがボソッと

「俺は、こいつ2人もいらねー・・・・いてっ!!!」

レイの足を軽く踏むシキ。

「レイは、いつも一言多いよ」

ルイカがシキをかばうように、レイをしかる。

なんだかレイの母親みたいだ。

「ルイカ〜〜〜」

シキがルイカに軽く抱きつく。

「ごめんね、シキ。あたしがちゃんとレイに言っておくから」

ルイカもシキも、とっても仲良しだ。

「てか、ほしいほしくないは別として、人間は2倍にできねーよ。できるものと
できないものがあるに決まってんじゃん。なんでも2倍にできるトラップアイテムなんて聞いたことねぇし」

「へぇ」

ハルキが適当に返事を返す。

「さーってと!おひらきにしますか!」

シキの一言で、みんな片付け始めた。

165レミ:2007/10/19(金) 22:22:28 ID:.Ub/3BoM
「どうしよ、このまま寮に戻る??」

シキが困った様子でルイカに聞いた。

「う〜ん、あたしは家に帰る。
シキも帰ろうよ??」

ルイカも少しまよってからそう言った。

「イヤ、家に帰りたくない〜」

シキは、あんな親バカな両親に

帰ったらどんなコトをされるか予想はついていた。

「お前んち、親バカだもんな」

ハルキがバケツの中の水を捨てながら言った。

「それ、パパに言ったら絞められるよ」

呆れたような顔でシキがハルキに言った。

そこで、ルイカが思いついたように言った。

「なら、あたしの家来る??」

「うんっ、行きたい!!!!!」

シキがはしゃぎまくる。

浴衣なのに飛び跳ねている。

「おい、片付けろよ」

レイが2人に言う。

「へいへい」

シキが面倒くさそうに使い終わった花火を捨てる。

その間、ルイカはハルキと会話していた。

「どう、レイの好みのタイプ分かったか?」

「!!//////////」

ルイカの顔が赤くなる。

その顔に、ハルキはニヤニヤしながら

会話を続けた。

「色気じゃねぇコトは分かっただろ?」

「・・うん」

「じゃ、女らしさってのは?」

「お、女らしさ・・・//////」

ルイカが少し考え込む。

「ま、タイプぐらい自分で聞き出すんだな」

少しからかうようにハルキが言った。

ルイカは顔を赤くしながら、

なにやら考え事をしていた。

166リサ:2007/10/19(金) 22:38:49 ID:bVwKr1T2
行きとは違い、帰りというのはあっという間。

すぐにハルキとレイとの別れの場所。

と、言っても、明日は日曜で

次からまた学校で会うことが出来るので

別に、悲しいとも思わないのだけど。


ルイカの家につく。

「お邪魔します」

こーゆうとき、シキはすごく礼儀正しい・・・

と、言っても、シキはルイカの母親と仲が良く

普通にお喋りとかするのだけど。


入浴をすませた2人は

ルイカのベッドでゴロゴロしていた。

「ふぅ〜フカフカベッド〜〜」

シキがルイカのベッドで転がる。

ちなみに、今シキはルイカから借りた服を着ている。

白いレースのついた女の子ちっくなパジャマ。

「ほんと、ルイカは少女シュミだなー」

「んー?あ、てゆーかそれ、お母さんのシュミだよ。あたしはどっちかっていうと
清楚系よりも明るめも好きなんだけど・・・お母さんが白とか好きだし」

「へぇ〜・・まぁ、ルイカママらしいね」

笑いながら、シキがルイカを見る。

「ねぇ、シキ・・・」

「んー?」

ルイカは少し言いずらそうに、シキに問いかける。

「前にもきいたけどさ・・」

「うん?」

「ハルのことなんで好きになったの?」

急にむせこむシキ。

そんなシキに慌てだすルイカ。

「また、あんたは・・・」

「だって、だって〜・・レイの好みとか考えてたら思ったんだもん。レイかっこいいけどさ
ハルもかっこいいし、ハルもレイの性格似てるでしょ?
何で、あたしはレイが好きなのかな・・ハルじゃだめなのかな・・と思ったら
自分の好みでもさえもわからないんだよね」

そういうと、シキは笑い出した。

「そうだね〜、あたしもわかんないよ。そんなの。レイも普通にかっこいいよ?
思うときあるし。でもさ、ハルキほど思わないんだよね、やっぱ。
好きになるのに理由なんかない・・ってやつじゃない?ま、わかんないけど!」

シキが後半部分少し照れが入ったようで

ごまかすようにクッションを抱き締め寝転がった。

167レミ:2007/10/19(金) 22:51:06 ID:.Ub/3BoM
「うん、そうだよね
あたしも理由なんて分かんないや、
ごめんね聞いといて・・・//////////」

ルイカが照れ笑いをする。

シキが首を横に振った。

「まぁ、たまにすんごくムカつくときもあるし
嬉しいときもあるし、悲しいときもあるし・・・
でも、それって恋してる証なんだよッ!!!!
って・・・なんだか分かりきったコト言っちゃってる//////」

自信満々に言ったつもりが、

やはり照れてしまうシキ。

ルイカはそんなシキを見て、

笑った。

「あ、バカにしてるでしょっ!?」

シキが膨れた。ルイカは慌てて

「ち、違うよっ!!!!///////」

と否定した。

「あはは、マジになってるし」

シキがそんなルイカを見て笑った。

「シキのその性格って、シキのお母さんとお父さん
が原因でしょ?」

ルイカがシキに尋ねた。

シキは少し呆れた顔をして、

「親バカだからさ、甘えさせられてさ〜・・・」

シキが世話好きなのは、

やはり親が影響していた。

「あたしもルイカみたいなママやパパだったら、
ルイカみたいに可愛く育ったのかな・・・」

シキがボソッと呟いた。

「でも、自分の両親は両親だよ
やっぱ自分の親が一番大切だし」

ルイカが微笑みながら言った。

「うん、そだね・・」

シキもつられて笑った。

「じゃあ寝ようか〜ww」

「うん♪」

こうして2人は、

眠りについた。

168リサ:2007/10/21(日) 21:35:56 ID:bVwKr1T2
次の日は久しぶりにショッピングに行き

夕方に、学園へ戻り・・・

次の日から、再び学園生活を再開。

その日は

普通に一日を過ごした。

シキは魔方陣についての勉強を

いつもと違って、真面目にした。

ハルキはいつもどおり普通に魔法を使ったり

レイは前に完成させたトラップで実験。

ルイカは薬品を調合させるのに苦戦。

昼食は久しぶりに2組に別れて食べて

夕食が学食でみんなで食べた。



そして、入浴をすませたあと、ルイカとシキは学園長に呼び出された。

「また、いつものかな?」

ルイカは普通に聞いた・・けど、前のこともあって

少し慎重にきいた。

「そうでしょ」

そして、学園長のいる部屋の扉を

ノックする。




その夜、2人は

真実を知ることになる―――

169レミ:2007/10/21(日) 21:46:34 ID:.Ub/3BoM
「・・よく着ましたね」

学園長が扉を開けて入ってきた2人を見つめる。

「・・そろそろ、教えていただけませんか?」

シキが神妙な顔で学園長に言った。

学園長は眉を顰めてから言った。

「・・わかりました、教えましょう。
あなたたちが、何故怪盗をするようになったか」

ルイカとシキが息を飲む。

「・・私の学園にたくさんの財宝があったのです。
それは、ただの財宝ではなく
”この学園に魔を寄せ付けないモノ”だったのです。
それが、あなたたちが入学してくるときと同時に、
盗まれてしまったのです」

「盗まれたって・・・犯人は!?」

「そう、いまあなたたちが戦っている組織です」

学園長が悲しそうに言った。

「彼等に盗まれた財宝を早く取り戻さないと、
学園に張られていた魔除けの結界が破られてしまうのです。
もともとこちら側にあったものがあちら側にいくと・・・」

「・・均衡が崩れて、封印されていた魔族があふれだす」

シキが真剣な顔で学園長の言葉を受け次いだ。

「・・そうです、だから
あなたたちには早く取り戻してもらわないといけない
一刻も早く・・・。
わかりましたね?」

「「はい」」

2人が頷く。

「今回は、敵のアジト近い場所に”魔封じの鏡”というものがあります。
それを盗んで・・・いえ、取り返してきてください」

「わかりました」

「・・気をつけて」

2人は早足で学園長室を後にし、

目的地へと向かった。

170リサ:2007/10/21(日) 22:00:35 ID:bVwKr1T2
地図をみながら、ルイカが難しい顔をする。

「この紅印・・きっと敵のアジトだよねぇ。本当に近いよ」

「大丈夫よ!」

シキが、励ますように大きな声を出す。

「そだねっ!!」

ルイカが気を取り直したように言う。

いつものようにレオレオの背にのり

移動をする2人。

「そういえば、あたしたちって思い切り校則事項無視してるよね」

苦笑いでルイカがシキに言う。

「・・まぁ、特別許可でてるし☆・・当たり前か!」

学園のために戦い、魔法を使っているのだから

許されているに決まっている。

「でも、一般生徒にはバレないようにしないとね・・」

「そうね・・」

そう、これはあくまでも秘密で行ってること。

外部漏れは許されないのだから・・・



そして、2人は目的についた。

171レミ:2007/10/21(日) 22:08:28 ID:.Ub/3BoM
「・・なんか、出そうね」

「や、止めてよ〜シキ〜っっ!!!!!!」

出そうとは、もちろん

オバケ。

まぁ、廃墟なのだから当たり前であろう。

「なんだか、この家の床軋むね・・・」

シキとルイカが慎重に家へと侵入した。

幸い、そんなに暗くないので

シキは平気な様子。

でも、ルイカは・・・・

「怖いよ・・怖いよ・・・」

シキの後ろで震えている。

「大丈夫、あたしがいるんだから」

「そうそう、俺等もいるしな」

「!?」

シキとルイカが辺りを見回す。

しかし、視界には誰もいない。

「無理無理、俺等を見つけられるワケねぇじゃん」

嘲笑うかのようなその言葉に、シキが怒鳴る。

「どこにいるのよ、この変態共っ!!!!!!」

「今度は負けないよっ!!!!」

ルイカも強気だ。

「ふ〜ん、じゃあ少し遊んでやるよ」

シキとルイカは戦闘体勢に入った。

172リサ:2007/10/21(日) 22:30:27 ID:bVwKr1T2
声しか聞こえない相手。

ルイカとシキは背中をくってけ合って

戦闘体勢に入る。

すると、シキの首に何かが触れた。

「!!どこっ!?」

シキが素早く動く。

すると、目の前にネックレスが浮いている。

いや・・・実際は、誰かが持っているのだ。

「・・っ返してよ!!」

シキが手を振っても、遅かったらしく

よけられる。

すると、男の姿があらわれた。

「お前知らねぇだろ。俺、洗脳科のことは知り尽くしてるんだよ。
ハッキリ言って、超強いぜ?」

「だから何よっ・・・!!」

「今まさに、お前は洗脳されてたんだよ」

そんなことに覚えがなかったシキは驚いた表情になる。

「暗示香を使ってたんだよ。だから実際俺らはここにいた。でもお前らは暗示にかかってて
見えなかったんだよ。」

その言葉にルイカが反応する。

「暗示香・・・」

そう呟くルイカ。

「どーでもいいけど・・・それ返してっ!!」

シキが思い切り腕を伸ばす。

それを、押さえ込まれた。

そして、顔が思い切り近づく。

オレンジの綺麗な髪が揺れ、整った顔が間近にある。

思わずシキはドキリとしてしまった。

そんな自分に自己嫌悪するシキ。

「お前、前にもこれつけてたよな。そんなに大事なのかよ?」

「かっ、関係ないでしょ!!?」

思わず大声をはりあげるシキ。

その様子を見て、焦るルイカ。

「ま、取り返したかったら俺を倒しな。できるもんなら、な」

「いい度胸ねっ!!」

「おい、コウ。お前、何しにここきたかわかってんのか?こんなことしてる場合じゃないんだぜ?
こんな・・・おもしれぇことしてる場合じゃ」

どうやら、暗示をかけれるほうはコウと言うらしい。

「お前も参戦しろよ?ルウト」

楽しそうにしているほうは、どうやらルウトというらしい。

「あなたたち・・何者!?」

ルイカが声をあげた。

173レミ:2007/10/21(日) 22:39:18 ID:.Ub/3BoM
「お前等、自分たちのボスにでも聞いただろ?」

「・・敵ってコトよ、ルイカ」

シキがルイカの顔を見て言った。

ルイカもアイテムをいつでも取り出せるように、手元に装備した。

「シキのネックレス、返してっ!!!!」

ルイカがコウに飛び掛った。

「てめぇもバカだな」

コウが不敵そうに笑う。

ルイカの体がとたんに、止まる。

「う、動け・・・な・・・」

「ルイカっ!!!!」

しかし、ルイカは、

あっという間にルウトに担がれてしまった。

「っ!!!きゃっ・・・!!!!!」

「ってことで、コイツは人質に連れてくぜ」

「それと、お前のネックレスもな」

コウとルウトがニヤリと笑う。

「ルイカを離しなさいよっ!!!!!」

シキがコウとルウトに飛び掛るが、2人はワープして消えた。

ルイカも一緒に・・・。

「どうしよ・・あたしのせいだ・・・」

シキの体が小刻みに震える。

でも、シキは前向きに考えた。

「助けなきゃ・・・
学園長に知らせて
早く助けに行こう・・・」

シキはレオレオを呼び出すと、

学園へと飛んだ。

174リサ:2007/10/21(日) 22:54:27 ID:bVwKr1T2
学園に戻り

今の出来事を冷静に的確に話すシキ。

でも、本当は冷静なんかではいられなかった。


「そう・・・では、今回は盗みよりルイカさんの救出が先ですね。
こちら側の人間に連絡をいれておきます。
でも、救出に向かうのに時間がかかると思うわ。先に行ってて下さい。
私も後で向かうから」

「わかりました・・・じゃ!!」

シキは学園長の部屋を飛び出した。

するとそこには・・

「!!」

レイとハルキが立っていた。

「ふ、2人ともどうしたの!?」

「どうしたのじゃねぇよ。お前が慌ててここ入るの見えたから、何かと思ってきたんだよ。
お前ら・・・怪盗やってたんだな」

ハルキが早口でそういう。

「う、うん・・・極秘だったから、内緒にしてたの」

「それより、ルイカがさらわれたって本当かよ?」

レイがシキに問いかける。

「・・・あ、あたしのせいなの・・・レイ、ごめん・・・」

謝りだすシキの頭を軽く叩くレイ。

「お前は関係ないだろ。謝るヒマあったら助けに行くぞ」

「え!?で、でも・・・これは他の人はかかわっちゃ・・」

「俺らじゃ不満なわけ?」

ハルキが自信あるかんじでそうシキに言う。

「そうじゃないけど・・」

「じゃ、行くぞ!!」

レイがシキをせかす。

「う、うん・・!!」

戸惑い気味だったが、この2人をとめられるわけないことが

分かってる。

仲間が危険なめにあっているのに

大人しく待ってられる性格じゃない。

特にレイなんて、殴っても行こうとするだろう。

3人は学園を飛び出した。

175レミ:2007/10/21(日) 22:59:34 ID:.Ub/3BoM
学園を飛び立って数分、3人はアジトについた。

ついた瞬間、レイが早々とアジトの中に侵入した。

まるで城みたいなような感じだ。

だが、アジトの中はシンと静まり返っていた。

レイが走り出す。

「ちょ・・・レイ!!!!」

シキが驚いてレイを呼び止める。

「俺、心配だから先行く」

レイはそういい残して、走っていった。

「俺等も行くぞ」

「・・うん!!!」

ハルキとシキも、レイとは反対の通路から

ルイカを助けに走った。

176リサ:2007/10/21(日) 23:22:08 ID:bVwKr1T2
その頃ルイカは―――・・・

「離してっ!!早く!!」

縄でしばられ、身動きがとれない状態。

「やだ」

即答された。

「いっとくけど、お前は俺にとって天敵なんだよ。逃がすわけないだろ」

「〜〜〜〜〜!!」

暗い牢屋のようなところで

体の自由を奪われて

知らない危険な男がいる。


頼れる人はいないし

ルイカは恐怖に怯えていた。

思わず涙が零れそうになる。

だけど、それをグッとこらえる。

(泣いちゃダメ!あたしは、強くなるんだ!!)

「怪盗なんて、どんなゴッツイ女かと思えば・・こんな細くて華奢な奴だったのか」

「・・・アイテム使うのに筋肉なんていらないから」

ルイカが睨みながらそういう。

「・・お前自分の立場がわかってねぇみたいだな」

そう言って、ルウトが近づいてくる。

ルイカは縛られた腕ではなく手を動かし

ポケットから何かを取り出し、何かを投げつけた。

「くッ・・!爆発玉なんかちゃっちぃもので俺をどうにかできると思ってんのか?」

ルイカの顔の前で拳をつくり、脅すように言うルウト。

「あんまり変なことすると、本当にどうなるかわかんねぇぞ?」

「あたしには・・仲間がいる!きっと、来てくれるから全然へーき!!
信じてるもん!全然怖くなんかない!!」

ルイカは強い瞳でルウトを睨んだ。

「へぇー・・・おもしれぇ女・・・」

ルウトがニヤリと笑った。

177レミ:2007/10/21(日) 23:31:50 ID:.Ub/3BoM
その頃、シキたちは・・・・・・。

「この廊下、どんだけ長いのよ・・・・ッ!!!!」

「ま、城みたいなもんだから
仕方ねぇんじゃね?」

あくまでも他人事なハルキ。

「早く、助けなきゃ・・・!!!!
ルイカがあんな変態たちに変なコトされたら・・・・!!!!」

シキの顔が青冷めていく。

「変態?」

ハルキが興味津々に聞いた。

「うん、あたしたちと同い年ぐらいの男2人組が
この組織のボスなの。
そいつらに、ルイカを連れていかれて・・・・。」

「レイにもライバルが出来たってことだな」

「そんなこと、どーでもいいのッ!!!!!
とにかく、助けるコト優先なんだからっ!!!!」

シキたちが長い廊下を走っていくと、

大広間が見えた。

まるで、舞踏会が行われるような・・・。

そこに、1人の青年が待ち構えていた。

コウだ。

「・・・っ!!!!あんた・・・・!!!!」

シキがコウを睨む。

「へぇ、仲間を連れてきたのか。
お前の彼氏?」

「誰だよ、てめぇ」

いきなり険悪な雰囲気のハルキとコウ。

「あ、言っとくけど、
ネックレスぐらい
自分ひとりで取り返せよ?」

「言われなくても・・・・っ!!!!」

「・・本当に馬鹿なヤツ」

コウがニヤリと笑った。

シキは怒りで忘れていたのだ。

相手が洗脳を得意とすることを・・・・・。

178リサ:2007/10/21(日) 23:46:57 ID:bVwKr1T2
コウがシキを見つめる。

シキが走りながらコウの目を見る。

途端に、体に電気のようなものが走った。

すると・・

「あ・・・れ・・」

金縛りにあったかのように

体が動かなくなった。

動かし方がわからないような感覚。

痺れが体に走る。


そして、頭に何かが聞こえてくる。




無駄ダ、モウルイカハ殺サレチャッタヨ

聞イタダロ――?

敵ハ殺ス勢イデ来ルッテ・・




「・・・っ・・あ・・・」

シキの顔色が青ざめていく。

コウがにやりと微笑む。

その様子を見ていたハルキが気が付く。


「シキ!!目を見るな!!」

シキが一瞬反応する。

「そ・・なこと・・・・・言っても・・・動かな・・」

そして、また頭に響く。



「いいこと教えてやるよ、彼氏。これは洗脳術だ。あくまで洗脳すること。
相手を操ることはできない。でも、相手の精神をいじることはできるんだよ」

「どういうことだよ・・?」

「俺は、今、こいつの体に不快感をあたえてる。人間ってのは不思議で
体に不快感が走ると、心も弱ってくんだよ。マイナス思考に走ってる。
俺の、得意技だからな・・♪」

楽しそうに言うコウ。

「てめぇっ・・・」

「ううぅ・・・」

ハルキの声とともに、シキが苦しそうに声を出す。




仲間ナンテ所詮嘘ナンダヨ

裏切ラレル

殺シテシマエ・・・

殺シテシマエ・・・




シキが倒れた。

「シキ!!」

ハルキが駆け寄ったとき、シキが起き上がった。

その目は、シキのいつもの目ではなかった。

冷たさと殺意を帯びた瞳―――・・・・

「シキ?」

シキはハルキの手を振り払うと

広間の端にある飾りの鎧へと近づいた。

そして、鎧が持っている斧を手に取った。


その斧を構え、ハルキと向き合う。


「彼氏を殺そうとする彼女ってのも、斬新でいいかもな・・w」

コウがクスッと笑った。

179レミ:2007/10/22(月) 19:43:51 ID:.Ub/3BoM
(イヤダ・・・・
来ルナ・・・
お前ナンテ消エテシマエ・・・

殺ス・・・・

殺シテ・・・・ヤル・・・・)

シキが斧を両手で持ったまま、ハルキに一歩一歩近づく。

「ちっ・・・・」

ハルキは戸惑う。

自分はどうするべきなのか、

どうやったらシキを止められるか、

そんな考えで頭はいっぱいだった。


でも、


ハルキには迷いは無かった。


自分には、こうするしか手段はないと

すぐに悟ったのだ。

「さぁ、どうする彼氏?」

ホールの隅で柱に寄りかかり、楽しそうに見物するコウ。

シキがハルキの目の前にたった。

「殺シテ・・・ヤル・・・・」

呻くような声でシキはハルキに言った。

ハルキに向かって、斧が振り上げられる。

そして・・・

180レミ:2007/10/22(月) 20:17:38 ID:.Ub/3BoM
斧が自分に向かって振られていくのを、

ハルキは奇妙な感覚で見ていた。

好きな女に、

自分自身が傷つけられるなんて、

考えたことがなかったからだ。



ザンッ!!!!!



ハルキの腹部に激痛が走る。

ハルキの顔が苦痛で歪む。

しかし、

ハルキはまだ立っていた。

服に血がどんどん滲んでいっているのに、

ハルキは立っているのだ。


「!?」


シキは驚いていた。

なんで、立っていられるんだろうか・・・・。

シキの精神はいままさに戦っていた。

シキは迷っているのだ。

このまま、ハルキを殺すのか、

それを止めるのか・・・・。


ハルキは、自分の腹部に刺された斧を

強く握った。

そして、シキを見つめる。

「これで、満足かよ?」

「・・・・っ!?」


ハルキの斧を持つ手が力む。


「俺は、いくらだって傷ついてもいい、
それが、お前の望みなら
俺はお前を、信じるよ」

あくまでも苦しい表情を見せないハルキ。


こんなにひどい傷を負ったのに、

なんでこんなことが言えるのだろう、

なんであのときに、斧を避けなかったのだろう、



シキがハルキから斧を抜いた。




それは・・・・



ハルキがシキを、


「・・・・っ!!!!」



信じていたからだ。







シキの頬に涙が伝う。


シキの瞳の色が次第に戻っていく。


「な・・に・・・・!?」


コウがいままでのやりとりを驚愕してみていた。


シキの意識が戻った。

それとほぼ同時に、

ハルキが倒れた。


「ハルキ・・・・」

自分が傷つけた、

自分が一番大切な人を・・・

自分を・・・



信じていてくれた人を、



「ごめんなさい・・・・っ!!!!!」


シキは、黙って魔方陣を床に書いた。


魔方陣が発動する。


「・・ショコラ」


ショコラがシキを見上げる。


「ハルキ・・を・・・・
治し・・・て・・・・」


シキの精神は限界に近かった。

コウに心を衰弱させられて、

精神力は無に近い状態だった。

それでも、


シキはハルキを救いたかった。


ショコラがハルキの周りを一周する。


ハルキの傷がみるみるうちに癒えていく。


ショコラが消えた。

その途端、



シキが倒れた。









しばらくして、

ハルキが目覚める。


そして、

自分の傷が治っているのに驚く。


まさかと思い、


隣を見ると、



シキがぐったりして横たわっていた。


「っ!?シキ!!」

ハルキがシキに駆け寄る。


シキを抱き起こして、体を揺さぶっても


シキは起きない。


「ちょっと遊びすぎたな」

コウがハルキの近くに来る。

「てめぇ・・・・!!!!!」

ハルキが

コウにいまにも殴りかかりそうな勢いで、暴言を吐く。


「なんで、コイツが傷つかなきゃなんねぇんだよっ!?」


「まぁまぁ、ほら
シキとかいうやつに渡しとけ」

コウがハルキに

何かを投げた。


それは、


シキのネックレス。


「これ・・・・」

ハルキが驚いてみつめる。

自分がシキにあげたものだった。

「シキが、それを取り返すために
いままで必死だったってワケ」

あくまでもお遊びの感覚なコウに怒りを覚えるハルキ。

「二度とコイツに近づくな」

「ヤだね、俺
シキが気に入ったからな」

「なんだと・・」


「ま、今日はこれくらいにしといてやるよ」


コウがそういって、


トラップアイテムらしきものを使い、

一瞬にして消えた。


コウが消えたあと、


ハルキはシキを抱えて立ち上がった。


「ごめんな・・」


少し悲しそうにハルキがシキに言った。


そして、

いままで来た道を戻り始めた。

181リサ:2007/10/22(月) 20:44:07 ID:bVwKr1T2
その頃――・・



ルイカのブルーのショートヘアの右部分の髪が

サッと空を舞った。

頬に赤い傷跡ができる。


「・・・・・・」


そして、ルイカが座りながら寄りかかっていた壁は

ルウトの拳が当たっており

壁は割けている。

ルウトの拳はルイカにあたっていない。

だが、横を通っただけで

頬に傷ができたのだ。


「これが、体魔術だよ。これでもめちゃくちゃ威力は弱いぜ?」


ルウトが楽しそうに微笑む。


「その頬の傷はお前が俺のものって勲章だ」


ルウトが低い声で楽しそうに、ルイカを見つめる。

だが、それでもなおルイカは強い瞳でルウトを睨み続ける。


「気に入った・・俺にそんなふうにはむかってきた奴は初めてだぜ・・」


手の間接を鳴らし

挑発的な態度のルウト。

そのまま、ルイカに近づき

しゃがみこんだ。


ルイカの目の前に、ルウトがいる。


「・・・・・大嫌い!!」


ルイカがルウトにそう吐き捨てた。

182レミ:2007/10/22(月) 21:07:28 ID:.Ub/3BoM
「そんなこと言って、いいとでも思ってんのかよ」

ルウトが、ルイカの目を見つめる。

「次は反対だぜ」

遊んでいるような感覚のルウト、

ルイカはそんなルウトを憎く睨んだ。



「てめぇ、俺の彼女に何してんだよ」


「!?」


ルウトが振り返る。

レイが牢屋の入り口で、

怪訝そうにこちらを見つめている。


「レイ・・・」

思わず泣きそうになるが、ルイカは涙を堪えていった。


「あたしは大丈夫だよ!!!」



笑顔でレイに言うルイカ。


その笑顔に、


どれだけの孤独感と絶望感が隠れているか


レイは悟っていた。


「あ゛、誰だてめぇ?」


ルウトがレイの顔をジロジロ見る。


「ルイカを離せ、
汚い手でルイカに触るな」


低い声でレイが言った。


「イヤだといったら?」


「絞める」


レイが不敵そうに笑った。


「俺に勝てると思ってんのかよ、馬鹿だな」


ルウトがレイに殴りかかった。

レイはその拳を、


自分の手で受け止めた。


「へ、なかなかやるな」


ルウトがレイと距離を置く、


「でも、これからだぜ」

183リサ:2007/10/23(火) 21:52:06 ID:bVwKr1T2
ルウトがそういうと

まぶたを閉じて、手に何かをこめている様子。

すると、手に赤い明りが灯った。

それは、炎系呪文 バニング・フライン だった。



「なるほど・・・文字通り体魔術、だな」

「そう。俺はこうして体自体に魔法をこめられるんだよ。
つまり、俺はお前の好きな部分にこれをぶち込めれるってわけだ」

そういったと共に、ルウトの姿が消えた。

「っ・・・どこだ・・?」

レイが探す間もなく、後ろから衝撃がきた。

そして、レイが吹き飛ばされる。

服の後ろは煤けている。


「くっ・・・・体魔術とか速すぎだろ・・・」

「んなこと言ってられるのも今だけだぜ?これで終わりだ!」

ルウトが高く腕を振り上げ

倒れこむレイに振り下ろそうとした・・・・・・





バン!!!!!!






その瞬間、すごい音がした。

そして、ルウトを見れば、炎が消えている。



「これ・・・ブリード・レインか・・?」


そんなことできるのはハルキしかいない。

・・・が、ここにハルキはいない。



「・・・ルイ・・カ・・・・・?」


レイがルイカを見ると、ルイカは銃を構えていた。


「ハルにいっぱい魔法弾作ってもらっててよかったァ・・!!」


そう、ルイカは銃の弾に魔法をいれていた。

それを打ち込んだのだ。

ルウトの腕に。


そして、バニング・フラインとブリード・レインの効能は正反対。

なので、±(プラマイゼロ)で、両方が打ち消され

体魔術魔法が消えたのだ。



「レイに手をだしたら、許さない!怪盗はあたし・・なんだからァ!
あたしと戦いなさい!!」


(うぅ・・・言っちゃったよぉ・・・)


本当は、心底怖いのだ。


(でも・・・頑張るからっ!!)

184レミ:2007/10/23(火) 22:07:04 ID:.Ub/3BoM
「へぇ、分かった、
お前と戦ってやるよ」

そういい、一歩一歩ルイカに近づくルウト。

「じゃ、これは避けれるか?」

不敵そうにルウトが笑う。

今度は、ルウトの拳に雷が宿った。

それは、スパーク・ファング。

もともとは呪文だが、

広い範囲で敵を攻撃できるということで、

正式には魔方陣の魔術。

シキが使っていたのと同じだ。

「・・・・っ!?雷・・・・!!!!!」

ルイカは、雷と打ち消す銃弾を持っていない。

雷を打ち消すには、水の呪文(銃弾)、アクア・リージュが

必要だ。

(やば・・・っ!!!!)

ルウトの拳は、ルイカの目の前まできていた。

ルイカが諦めかけたそのとき、



「ルイカ、これ使え!!!!」



レイがルイカに銃弾を投げた。

まさしく、水の呪文がこめられている魔法弾だ。

多分、トラップ科のレイのことだから、

水の攻撃だけではなく、

他のしかけも混ざっているはずだ。


ルイカはそれを受け取り、銃にセットして


ルウト目掛けて発砲した。



バーンっ!!!!!!



雷は見事に水で打ち消された。

そして、ルウトは・・・・


「・・・んだよこれっ!?」

レイがそんなルウトを見てニヤリと笑った。

ルウトの両手が、

水のシャボンに包まれている。

これでは、魔力を念じても

手に伝わる前に、水に溶け込んでしまう。

ルウトが舌打ちする。


「レイ、ありがとっ!!!!」


ルイカが嬉しそうに笑った。


レイもそんなルイカに笑い返した。

185リサ:2007/10/24(水) 17:20:55 ID:bVwKr1T2
「・・・魔力封じたからって、いい気になんなよ。魔力がなくたって・・・」

そう言ってルウトが消えた。


そして現れたときには、レイの目の前。


「お前くらい殺(ヤ)れるんだよ!!」


そう言って腕を振り上げた。



(くそ・・・・・・!)




レイにルウトを抑える力はなかった。

そしてレイが目を閉じたとき・・・



痛みがなかった。

かわりに、自分の体が温かいのを感じた。




「てめぇ・・・・・」





ルイカがレイを抱き締めて、かばっていた。


ルウトは振り上げた手をピタリと止めた。



「レイを殺しちゃダメ・・・!!」




必死にレイをかばうルイカを見つめるルウト。

ため息を吐くと

振り上げた腕を再びおろした。



「やーめた。つまんねー」

「!!」


ルイカが驚きルウトを見上げる。


「女なんかいたぶっても面白くねぇんだよ。今日は見逃してやる。
でも、今日お前らが盗みにきたものは渡さない」


そう言って、ルイカに近づいた。


「・・・・・??」


ルイカが警戒しつつ、身を固める。



「また、盗みにくるの待っててやるよ。ま、一生かかっても渡さないけど」


そう言って楽しそうに微笑した。


「じゃな。ルイカ」



そう言って素早く消えた。

本当は消えたのではなく、移動したのだけれど。



(何がルイカ、だよ・・勝手に呼び捨てしやがって・・・・)



レイがそう思ったと同時に

ルウトの姿はあとかたもなく消えていた。

186レミ:2007/10/24(水) 17:32:33 ID:.Ub/3BoM
「レイ、大丈夫??」


「ああ、回復用のトラップアイテムなら持ち歩いてたし・・・」



レイが自作のアイテムで傷を治してから、立ち上がった。



「お前こそ、変なことされなかったか?」



「あ、あたしは大丈夫だよ」



ルイカが慌てて首を振った。



「行くぞ、アイツ等が待ってるはずだ」

「アイツ等って・・・ハルも来てるの!?」

「ま、俺がいるときはハルキもいるってことだよ」



レイがルイカに微笑んだ。



「・・・じゃ、行こっか」



「ああ」


ルイカとレイが



牢屋の入り口から、



来た道を戻り始めた。

187リサ:2007/10/24(水) 18:44:01 ID:bVwKr1T2
テレテナでシキに連絡をとるルイカ。

[応答待ち・・・応答待ち・・・ピッ「ルイカか?」]

「あ・・れ??あたし、シキにかけたつもりなんだけど・・・・」

「あぁ、だって俺シキのテレテナに出てるから」

「え?・・・シキどうかしたの?」

嫌な予感が、ルイカを襲う。

「・・・倒れたんだよ」

「!!ごめん・・・」

何故か、謝ってしまうルイカ。

「何でだよ?とにかく、今どこにいるんだ?」

「えっと・・・大きな白い銅像の前・・・」

「わかった。そこ行くから」

連絡が終わったあとも、ルイカは放心状態だった。

「どしたんだよ?」

「ん・・・・」

レイの問いにもまともに答えられなかった。

188レミ:2007/10/24(水) 20:13:55 ID:.Ub/3BoM
しばらくして、ハルキが奥の廊下から出てきた。



その腕の中には、



シキがいた。



「っ!!!!!シキっ!!!!!!!」


ルイカがハルキのもとへと走り寄る。


シキはぐったりして、瞼を閉じていた。


「・・・何が、何があったの?」


ルイカが震える声でハルキに問いかけた。


「・・俺が悪いんだ。
コイツ、コウとかいうヤツに
心を洗脳されて・・・・

俺を殺そうとしてたんだ」


「洗脳、ね
敵もやっかいなヤツばかりだな」


レイが気難しい顔をした。


「それで、ハルは・・・
大丈夫だったの・・・・?」

不安いっぱいの顔でルイカが続ける。


「俺は怪我したよ。でも、コイツが召喚獣で治して・・・
それで、

倒れたんだ」


ハルキにしては声のトーンが低かった。


顔にはあまり出ていないが、


内心、かなり傷ついているのだろう。


「とにかく、学園に戻ろう。
学園長が待ってるし、
シキの診療も必要だしな」

「うん、行こう・・・」

3人は、敵のアジトを後にした。

189リサ:2007/10/24(水) 20:46:50 ID:bVwKr1T2
学園長に話すのは、シキが目を覚ましてからのほうがいいと考え、

その日はルイカが戻れたこと

盗みは失敗したこと

敵の様子などを報告しただけで終わった。


学園長が向かわせた応援部隊は

アジトを捜索しているらしい。


ルイカは倒れたシキの看病をするため

自室にシキを運んでもらった。


「今日休めば、疲れもとれて明日には元気になるよ!」

ルイカが励ますように明るく言う。

ハルキのことを気遣ってのことだ。

「レイも、今日怪我したんだから、休まないと!ね?」

「いや、別に平気だし・・」

「平気じゃないよ!2人とも、迷惑かけてごめんね・・シキはあたしが看るから」

ルイカは早く2人に休んでもらいたかった。

これ以上、倒れるような人がでてほしくない。

190レミ:2007/10/24(水) 21:08:43 ID:.Ub/3BoM
ハルキハお前ガキズツケタ


お前ノセイダ・・・・・


お前ノセイダッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!





シキが目を覚ました。


恐ろしい夢で、脂汗を掻いている。


「あ、シキ・・・・」


ルイカが眠たそうな目でシキが起きたのに気付く。


「・・・ルイカ?
ここ・・・・あたしの・・・部屋・・・?」


シキが起き上がる。


そして、あの夢のことを思い出す。


「ハルたちに報告しなきゃ・・・って、シキ・・・!?」


シキが泣いていた。


「あた・・・あたしの・・・せいだ。
ハルキ、信じてくれていたのに、
あたし・・・あたしが傷つけたっ!!!!!!!!」

シキがルイカに抱きつく。


子供のように泣きながら、自分を責めるシキが


とても可哀相で仕方ないルイカ。


「シキ・・・・」


「どうして・・・ハルキはとても辛いのに・・・・・
なんであたしは無傷なのよっ!!!!!!!!!」

しゃくり上げながら叫ぶシキ。


ルイカは、そんなシキの頭や背中を


撫でるばかりであった。

191リサ:2007/10/25(木) 20:37:12 ID:bVwKr1T2
「ねぇ、シキ・・・」

なんて言葉をかければいいのかわからないルイカは

ゆっくり一言ずつシキに話しかける。


「シキが傷つけたんじゃない・・シキのせいじゃないんだよ。
シキのハルキへの信じる気持ちが少なかったんじゃない。
誰でも、そうなっちゃうよ。ハルは、シキに泣かれるほうが辛いと思う。
謝られる方が辛いと思う・・・」


最後の方は強い口調で言うルイカ。

シキがルイカを見つめる。


「だから・・・泣いちゃダメ」


[泣かないで]ではなくあえて強い口調で言うルイカ。


「でも・・・」

「でもはなし!!これはあたしの命令なんだからっ!
それとも、シキはハルが苦しむようなこと平気でできるの?」

「・・・・・・」

シキが俯く。

「シキらしくないよ!あたし・・・わかんないけど・・・
シキは間違ってるよ。悩んでたって、泣いてたって、ハルキは喜ばない。
解決しないよ・・・。すぐ泣くあたしが言うのもなんだけど・・あたし、いつもシキをみてて
強くなりたいって思った。憧れだったの。シキの強いところが」

「ルイカ・・・」

シキがもう一度ルイカの方を見る。

「だけど、泣くのは悪いことじゃないよね。でも、ハルの前でだけは泣かないであげて・・・。
あたしの前で泣いてもいいから・・」

ルイカがシキに微笑みかけた。

192レミ:2007/10/25(木) 21:51:15 ID:.Ub/3BoM
「・・・うん、
・・・・ハルキのとこに行ってくる」

「体は大丈夫なの・・・!?」

ルイカが心配そうにシキを見つめる。


「・・・謝ってくるよ」


「だから、ハルはシキに謝られたら辛いと思うって
いったじゃんっ!!!!」


ルイカが強い口調で言う。


「・・泣かないよ、あたし。
ただ、これは素直なキモチ。
純粋に謝りたいって思ったの」

シキが立ち上がる。


「あたしに説得できるってコトは
ルイカも成長したね」


シキはルイカの頭をポンと叩いた。


「シキ・・・・」


「ハルキに謝るのは酷だけど、
あたしは辛い顔では謝らない。
本当の素顔で、ハルキと話してくる」


シキがウインクして、

部屋を後にした。







コンコン・・・・・


誰かが尋ねて来た。


ハルキは面倒臭そうに、自室の扉を開ける。


「っ!!!!!
シキ・・・・・!?」


ハルキが驚いてシキを見つめた。


シキはニコッと笑うと、ハルキの部屋へ

入っていった。


唖然とするハルキ。


「おま・・・大丈夫か?」


「うん、あたしは元気」


シキがソファに腰掛けて言った。


ハルキには信じられなかった。


シキがこんなに早く回復するとは思っていなかったからだ。

それと、

こんなに笑顔で自分と接してくれるとは考えられなかったから。


「ハルキ、ごめんね」


シキが少し俯いて言った。


「や、俺のが悪いし・・・」


「ううん、あたしのせいだよ!!!!
でも、あたしはハルキを信じてたンだよ?」


シキが顔を上げてハルキに微笑みかけた。


「だって、あたし
ハルキが好きだモン」


「・・馬鹿か」


ハルキがシキのもとへ歩み寄る。


「ハルキ、ここ座って」


シキが自分の隣を指差す。


ハルキは疑問を感じながら座った。


「目ェ閉じて」


「・・・なんでだよ」


「いいからッ!!!!!」



ハルキは諦めて、目を瞑った。


そして・・・・・・!!!!




ハルキの額に何かが当たる。


柔らかくって、


少しだけ温かいモノ。



そう、シキの唇。




「!?」


ハルキが目を開ける。


シキが顔を赤くして言った。


「これで、「好き」ってキモチ・・・・
信じてるってコト・・・・
わかった・・・?//////////////」


ハルキがシキに微笑んで言った。


「合格」


ハルキが片方の手で、シキの頭を

自分の方へと引き寄せる。


「ハルキ・・・・
コレ好きだね・・・//////////」


「悪いかよ」


「・・・ううん/////////」


いつもより、素直になれたシキが、


そこにいた。

193リサ:2007/10/26(金) 22:59:50 ID:bVwKr1T2
ガチャ



突然そんな音と共に

部屋の扉が開かれた。


「いい雰囲気のとこ悪いなー」


レイが扉から顔を出す。

その後ろでルイカが


「ダメだよー」とか「ノックくらいしないと〜」

とか、レイに言っている。


「別にいい雰囲気なんかじゃねぇよ」

ハルキがシキにかわって反論する。

「ふーん?」

レイは納得してないような楽しそうな微笑で

ハルキを見てから部屋に入った。


その後ろから、ルイカが顔を出す。


「ごめんねぇ・・・お邪魔しちゃダメだってレイに言ったんだけどぉ・・」

申し訳なさそうにルイカが呟く。


「まぁな、も少し2人でいたかったけどな」

ハルキが恥ずかしげもなく言うので

逆にこっちが照れる。

「ごめんね?そうだよね・・・邪魔だったね」

冗談混じりで言ったのだけど、ルイカは本気にしている。

「別にいいよ、とにかく、用事があってきたんだろ?」

「あ、えっと・・学園長に話さないと。バレちゃったこと・・・」

「あぁ・・・そういえば、秘密厳守だったんだよな」

「うん・・で、シキの体調が優れないならあたしとレイで行くけど・・・?」

そう言ってシキに問いかける。

「大丈夫。あたしも行く」

「そっか・・・じゃあ、行こっか・・・・」

まだ、心配そうなルイカ。

ルイカだけではなくみんなシキに気を使っている様子。

「ほら!行こう!怒られるかもしれないけど!」

シキがみんなにそう言って、みんな廊下を歩き出した。

194レミ:2007/10/26(金) 23:11:20 ID:.Ub/3BoM
学園長の部屋を、ノックして入る。


そして、ハルキとレイのことや


敵のアジトやボスについて詳しく説明した。


「・・・ごめんなさい、そもそも
あたしが悪いんです・・・。
ルイカを助けられなかったから・・・・」


「もう、違うってばッ!!!!!」


「あの状況は仕方ねぇだろ」


「敵は2人だしな」


シキの言葉に、

反論する3人。


「そうですね、知ってしまったことは仕方ありません。
あなた方2人を、シキさんとルイカさんのアシストに任命します」


「あ、俺怪盗服とかパス。
学園長も出さないでおいて」

普通にタメ口のレイに、

頭を抱えたくなるルイカ。


礼儀からしてなっていない。


さっきのことも・・・・・


「アシストね、こき使ってやるんだから」


「本当に使われそうだわ、お前等だと」


「そこまでドジじゃないモン!!!」


ルイカがむっとした顔でハルキに言った。


レイがそんなルイカに、


「お前が言うな」


とツッコミを入れた。


こうして(?)


レイとハルキも怪盗に参加することとなった。

195リサ:2007/10/26(金) 23:27:56 ID:bVwKr1T2
次の日―――

もうすぐ夏の体育祭が近い。

なので、魔法の勉強は削られて、体育祭の練習がある。


学科ごとに点数を競い合うのだ。

応援のときなどは、学科ごとに魔法を披露したりする。

ちなみに、体魔術科は体育的な面がものすごく優れていて勝負にならないので

各学科にちりばめられて入っている。




昨日の今日のことで

ルイカはシキが心配だった。


――――が、





パーン!!





銃声と共に8人同時に駆け出す。

徒競走の練習中なのだ。

その中でもぶっちぎりなのがシキ。


「さすがシキ・・・速い〜!!」


走り方もとても凜としていて綺麗で

風が素早く駆け抜けて行く。


周りからも、小さく囁きが聞こえる。


『かっこいい〜』

『速!あれ、誰?』

『知らないの?魔法陣科1の美人じゃん!』


楽々一着をとったシキ。

でも、あれでも本調子じゃないんだろう。

シキの運動神経には驚かされる。




ルイカはシキの姿に見とれていたが、そんな場合ではないのだ。

身長順なので、シキが8走者だった場合

ルイカはシキと同じ身長なので、1走者なのだ。



『いちについてー・・・』



(はわぁ〜〜!!ビリにだけはなりませんように・・・)

練習とはいえど、緊張する。



『よーい・・』




パーン!!!!!



銃声と共に、駆け出した。

196レミ:2007/10/26(金) 23:35:05 ID:.Ub/3BoM
周りが自分を抜かして駆けて行く。


ルイカも一生懸命まわりに追いつこうと頑張る。



が、



「・・・ひゃぁッ!!!!」




バタンッ!!!!!!!!!!!!!!!!




周りの空気が一瞬だけ固まったのを、ルイカは感じた。



シキは少し呆れた顔でルイカを見ていた。


「シキ、あれ誰?」


シキの取り巻きの一人がシキに声をかける。


「う〜ん、さぁね♪」


あえて他人のふりのシキ。



あんな場面でこけてもらっては、こちらも酷く恥ずかしい。



ルイカがこけて固まっている間、


男子の方では・・・・・。

197リサ:2007/10/26(金) 23:52:00 ID:bVwKr1T2
「ドジっ子も、ある意味いいよな〜。なんだ?萌え要素?」

「うわ、お前危なッ!汚い目でみんなよ」

「汚れるだろ?」



ルイカは男子に人気がある。

容姿だけでなく、内面からかもしだされる雰囲気が

いいらしい。



もともと、性格もいいし、きがくので

男女問わずに人気がある。


特に、シキとルイカの組み合わせは学園内でも有名だ。

ふわっとしたオーラに包まれていて

笑顔が甘く可愛らしく

ちょっと天然が入ったルイカ。

凜としたオーラに包まれていて

大人っぽい魅力と

強きで前向きなシキ。



反対なようで、一緒にいると

ものすごくマッチしている2人の組み合わせは

なんともいえない。


まぁ、そんなこんなでルイカがこけたのを見て

いわゆる「萌え」を感じている男子をよそに

ルイカは真剣に悲しかった。



(コケたの、あたしだけしかいない・・・)


もう、既に泣きたい気分だ。

でも、さすがにこれくらいでは泣いてられない。



ビリでゴールした後、

体操服についた土を手ではらう。


『ルイカ〜大丈夫?』

友達などが口々に心配してくれるが

余計にいたたまれない。


「エヘヘ・・やっちゃた。膝すりむいたから消毒してくるね!」

そう言ってその場を駆け出す。

その途中にシキのところに寄る。


「シキ!かっこよかったよ!それより体調大丈夫?座ってたほうがいいよ」

そんなルイカを見てあきれるシキ。

「大丈夫?って、それはあんたのほうでしょ。膝、血出てるし」

「んー?たいしたことないよ。出血多量で死ぬわけじゃあるまいしッ。
それより・・・見た?」

ルイカがシキにひっそりと聞く。

「ええ、そりゃもう、バッチリ☆」

「あ〜〜・・・もう、忘れて!本当、バカだ〜〜・・・」

「いいから早く消毒してこいッ」

シキがルイカの背中を押す。

「シキこそ〜〜!!日陰いったほうがいいよ!」

そう言ってルイカはその場を去って行った。

198レミ:2007/10/27(土) 00:10:42 ID:.Ub/3BoM
ルイカの心配通り、

少し頭が痛いシキ。

「ルイカはなんでもわかっているんだな」っと改めて感心する。

ま、お節介なだけかもしれないが・・・・・。



グラウンドのはずれの方にある大きな木の陰で、


シキは休むことにした。



先生がなにやらガミガミ言ってきたので、


「うるさい」


と一言行ってやってきた。



シキとレイは寝ることが大好きだ。


授業中もよく寝る2人。


でも、シキはレイのことは


性格的に合わないと思っているらしい。


むこうはどう思っているかわからないが・・・・。



「ふぅ・・・・寝るかな・・・・」


ぼんやりした頭を日陰に吹く、


爽やかな風で冷やすシキ。


だが、こんなトコロで寝ていたら


野次馬が来るだろう、と


シキは徒競走の練習を眺めていることにした。

199リサ:2007/10/27(土) 01:14:05 ID:bVwKr1T2
徒競走で丁度レイとハルキが走ってる。

ハルキが1位。

で、レイはというと・・・


「うわーやる気なさそう」

シキがそういうほど、レイは遅くないが

明らかに手を抜いている。


走り終わったときにシキの方にレイがやってきた。


「ハロー徒競走でコケた女の子の彼氏クン」

シキの発言に「うるさい」と一言。

そのままシキの横に座る。


「何、何?徒競走男子の集合場所はここじゃないわよ」

「眠い、やばいくらい眠い」

「あぁ・・・なるほど」

遅かった理由がよくわかった。

「・・・って、ちょっと寝るな!」

レイが瞼を閉じている。

こうして見ると、やっぱりかっこいい。

他の彼氏だとか関係なく素直にかっこいいことは認める。

「あのさ・・こんなとこで寝顔公開プレイしたら、女子がよってくるわよ」

「魔よけがあるじゃん」

「魔よけって・・・あたし!?何かその言い方ひどくない?」

レイが少し笑う。

「本当に、なんでお前みたいなのとルイカが仲いいんだろな。
レズなんじゃないかって程仲いいよな」


「そう?」


なんとなくそこまで言われると照れる。


「あんたこそ、ハルキとホモってくらいラブいよねw」

「黙っとけ」

「そっこそ」

2人して木によりかかって堂々とサボっていた。

200レミ:2007/10/27(土) 01:25:47 ID:.Ub/3BoM
ルイカが怪我の治療をし終わり、

校舎から出てきた。

そこで、ハルキとばったり会う。


「よ、徒競走でこけたルイカ」


「うるさいなァ、見ないでよ〜っ!!!!」


ルイカが悔しそうに頬を膨らます。


でも、表情が一転して


「そういえば、ハル1位だったね〜」



と尊敬の顔でハルキを見つめる。




「ああ、レイのヤツ
眠いってほざいてたから
シカトして置いてった」



面倒くさそうな顔をするハルキ。



「シキもハルもレイも、
運動できていいなァ・・・
あたし、ドジばっか・・・・」


少し悲しい顔をするルイカ。


なんだかいじけているようなその顔は、


とっても可愛らしかった。


「んなことねぇよ、
お前だって頑張れば6位ぐらい行けるだろ?」


「・・・嫌味ですか?」


「ああ」


「ひど〜いっっ!!!!!!」


ハルキが意地悪に、


「またコケるかもな♪」


とさりげにプレッシャーをルイカにかけた。

201リサ:2007/10/27(土) 18:00:25 ID:bVwKr1T2
すっかり落ち込んだルイカ。


「・・ハルに言われなくても運動神経ゼロって自覚してますよー」


もういじけモードだ。

あんまりこーゆう嫌味っぽいことを言わないルイカなので

とても珍しい。


「別に?んなこと言ってねぇけど?」

「言ってるじゃん!ハルは運動できていいですねッ!ふんだ、どーせあたしは
ドジでノロマですぅー」


本格的に怒ってるらしい。

まぁ、ルイカが本当に怒ってもこの程度だってことが

よく分かる。


背を向けてルイカが歩き出す。

ハルキは改めて思った。

ルイカをからかいすぎるとよくないと。

シキは、普段からかっても怒ってるようにみせていて

内心はあまり怒ってない。



でもルイカは間に受けるタイプ。

素直すぎるというか・・・冗談があまり通じないタイプかもしれない。


ルイカはそのまま女子列に戻って行った。


(やべー、・・・レイに怒られる)

ハルキはそう思った。

202レミ:2007/10/27(土) 20:22:59 ID:.Ub/3BoM
そのレイは、


眠たそうに木にもたれ掛かっていた。



「こら、寝たら先生に言いつけるぞ」


「あ゛、お前も辛いんなら保健室行けば?」



レイが眠たそうに言った。


シキは前々から思っていたが、


レイは空気が読めないと思っている。



シキとは全くタイプが違う。



「レイって、
アタシが一番苦手なタイプかも」


ズバッと言い切るシキ、


でもレイは驚いてもいなかった。



「ふ〜ん」


「相性、合わないよね
アタシたち」


シキが体育座りをして、


顔を膝の上に横向きに寝かせる。



「でも、結局俺等
一緒にいるじゃん」


レイが少し笑った。


「だね」


シキも大人っぽく微笑んだ。



「アタシさ、いままで甘えすぎだったかな・・・?」


「ハルキに?」


シキが黙って頷いた。


「さぁな、俺から見ては普通だったけど」


「もうちょっと、自立しなきゃだよね・・」


シキはかなり困っているらしい。


そんなシキに、


「お前はお前なりに頑張っているじゃん、
ならいいんじゃないのか?」


「・・そっか」


「でも、お前
見かけと性格にギャップあり過ぎだよ」


「・・え?」


「お前、もう少し大人しくなった方が
いいんじゃねぇの?」


確かに、


シキはぶっ飛んでばっかだ・・・。



性格がとても幼稚過ぎる。



「・・そだね、頑張る」


「おう」


レイはそのまま瞼を閉じた。


シキはボーッと、


周りの練習を眺めていた。

203リサ:2007/10/27(土) 23:28:37 ID:bVwKr1T2
「でさ・・・」

シキがゆっくり発言する。




ここは、シキの部屋。

昼食を4人でとることになったのだが、シキの体に障るといけないので

シキの部屋で・・・ということになったのだ。





「なんでルイカは不機嫌なの?」

シキが不思議そうにきく。


「別に、何もないよ」


早口でそう言われた。


(何もないなんて嘘じゃん・・・)


「レイとケンカでもしたの?」

「するわけないでしょ」


なんだか、自分たちはラブラブだから絶対ケンカしません。

と、いう意味でも捉えられる発言だ。


「もぉ〜、ルイカってばどうしちゃったの?」

シキが微笑みながら聞く。


「だから何もないってばぁ〜!」


ルイカがスネたように頬をふくらませつつ

ジュースをストローで吸う。


「ルイカが怒るとか珍し・・・」


ハルキがそういうと、ルイカがハルキを見た。


「あたしは怒っちゃダメなの・・?」


その発言、表情で

シキはハルキと何かあったのだということを瞬時に悟った。


なんだか空気が重い・・

いつも場を和ませるルイカが不機嫌だと

こうも重い感じになるとは・・

204レミ:2007/10/28(日) 00:41:44 ID:.Ub/3BoM
「・・ハルキ、ルイカいじめたの?」


「は、いじめたつもりなんてね〜よ」


その軽率な発言に、


シキは我慢が出来なくなった。





バンッ!!!!!!!!!!!!!!!!




シキが机を強く叩いて立ち上がる。


「・・いい加減にしてよ」



ルイカは怒ることすら珍しいが、


シキがキレることも同じくらい珍しかった。


シキのキレ方は、怒鳴るとか暴れたりする感じではなくて、


ほぼ態度と言葉だ。





「・・ハルキ、謝って」



「・・・は?」



「謝れっつてんだろ」



ハルキは黙ってた。


これが女の本性というものなのか、


ルイカは青冷めていて、


レイは唖然としている。



シキの怒りは、誰にも止められなかった。



「・・・ごめん」



ハルキが謝った。


ハルキが謝ることなんて滅多にない


素直じゃないというか、なんというか・・・・。



「あ、え、えっと・・・・
う、うん」


ルイカが冷や汗を掻きながら言った。



「シキ、もういいから・・」


レイが少し呆れた顔でシキを見つめる。



「・・・・・」



シキが黙って部屋を後にした。


荒ただしく、戸を閉めて。


「・・ハルキ、ちょっと来い」


レイも少し怒っていた。


ルイカのことで。



(なんで俺ばっかり・・)


ハルキは頭を抱えたいキモチになった。


「はいはい」


それでもハルキの態度とポーカーフェイスは変わらなかった。

205リサ:2007/10/28(日) 10:44:07 ID:bVwKr1T2
部屋に取り残されたルイカとシキ。

ルイカは怒った顔から一変、悲しそうな表情になっていた。


「ルイカは悪くないよ。そんな顔しなくていいんだから」


シキがさっきとは違い、優しくそう言葉をかける。


「でも・・ハルが・・・・・・・・・・・・・」


言葉がみつからないようで、ルイカは沈黙した。

ただただ、唇をかんで俯くだけ。


「どんな理由であれ、ルイカを傷つけたのは変わらない。
たとえ彼氏でも、ルイカを傷つけるような奴はいや」

「それは・・あたしだってシキを傷つけるような彼氏はいやだよ・・」

シキがルイカに笑いかける。

「でしょ?怒りたいときは怒ってもいいんだから。
ケンカしたあとに仲直りすればいいんだし。そんなうまくいかないかもしれないけど
あたしたちなら、できるよ」

ルイカはやっと顔をあげた。


「ハル、ちょっと可哀想だね・・・多分、悪気があってあたしを傷つけたわけじゃないと思う」

「でも、悪気がなかったからって、人を傷つけていいわけじゃない、でしょ?」

シキの言ってることは正しかった。

なんでそんなにまっすぐ生きられるのだろう・・・。

いつのまに、シキはこんなに成長したんだろう・・・。

「やっぱり・・あたしは弱いみたい。人と言い合うのが嫌いだから
傷ついてないフリしてたけど・・それって弱さだよね・・」

「でも今回はルイカちゃんと怒れてたよ!ま、ちょっと押しが足りなかったけど?
ルイカに足りないものはあたしが補う。助ける。
ルイカも、あたしを助ける。それが親友ってやつでしょ?」

「・・・・うん」

ルイカがやっと微笑んだ。




その頃、廊下に出たレイとハルキ。

ハルキが壁に寄りかかる。

その斜め前にレイが立つ。

「・・・・で?何したわけ?」

「徒競走」

その一言で、レイは大体察しがついた。

「からかったんだろ」

「まぁ・・」

ハルキがポーカーフェイスを崩さないまま、頷いた。

206リサ:2007/10/28(日) 10:46:38 ID:bVwKr1T2
訂正なんですけど、最初の文の前に

「レイとハルキが廊下に出ると同時に、シキが部屋に入ってきた」

と、いれてください。

207レミ:2007/10/28(日) 22:04:53 ID:.Ub/3BoM
「からかい過ぎるな、って言っただろ」


「そんなつもり無かったし」


自分が悪くないと主張するハルキ。


レイが少し怪訝な表情で続ける。


「あのな、自分中心の世界じゃないんだぜ?」


「そんなこと、理解してて当然だろうが」


レイの言葉に、ハルキは素早く返事を返した。


「ま、今回は大目に見てやるけど、
シキのヤツ、カンカンだぜ?」


「いつも通りに、接しれば平気」


余裕なハルキに


レイが少し意地悪する。


「さぁな、
アイツこれからめっちゃ変わると思うぞ」



「は?」



意味がわからないハルキ。


そんなハルキに


「ま、今まで通りにはいかないってコト」


とレイは言った。

208リサ:2007/10/29(月) 22:46:29 ID:bVwKr1T2
その後・・・

丁度授業のチャイムがなり

各自の学科へ移動した。


ルイカは自分の学科へ行く前に、ハルキに話しかけた。


「ハル!!」

「・・・よ。どーした?」


ルイカが言いにくそうに顔を俯かせて

申し訳なさそうな顔をする。


「えーと・・・」


そんなルイカにハルキはポンポンと頭をなでるように軽く叩いた。


「わかってる。ごめんはいらねぇよ」

「・・・・・ごめん・・あっ・・・」


言ったそばからルイカが謝ったので、思わず笑うハルキ。

つられてなんとなくルイカも笑う。

どうやら、いざこざはもうないようだ。


「でも、あれ・・・シキと、大丈夫?」

「おう」


迷うことなく、そうハルキがうなずいた。


「そか・・・じゃっ・・またね!!」


そう行って、ルイカが走って行った。


そして、ハルキも自分の学科へと歩いた。

とりあえず・・・は。

209レミ:2007/10/29(月) 23:02:43 ID:.Ub/3BoM
シキの学科の授業は、



科学室を使うため、



呪文科の塔を越えて行かなければ着かない。




科学室とは、呪文科の奥のトラップ科にある一室だ。



移動中、


シキの心はとてもモヤモヤしていた。



その大部分が、ハルキのことだ。




(今までみたいに、簡単には許せないんだから・・・・ッッ!!!!!!!)



シキが強情にそう思っていた。



すると、



目の前に、



本を片手に勉強している



ハルキの姿が・・・・!!!!!!!



ハルキもシキに気付いたらしく、少し唖然としている。



そしてシキは、



咄嗟に逃げ出した。




「・・・・おいっ!!!!!??」


ハルキも慌ててシキを追いかける。




「ついて来ないで〜っ!!!!!!」




叫びのようなシキの声に、




ハルキは聞く耳すら持たない。




そして、



シキの体勢が崩れた。




「きゃ・・・・・ッッ!!!!!!!」



(こける・・・・!!!!)



シキが思わず目を瞑る。



しかし、シキが地面に倒れることはなかった。




「ったく、危ねぇな・・・」




ハルキが、シキの体を支えていたからだ。




「は、離して・・・・!!!!!!」



シキが暴れるが、ハルキには敵わない。



「ヤダ」


「あ、あたし
許したワケじゃないからね・・・ッ!?」



しかし、ハルキはシキを離そうとしない。



「俺、すんごく反省したんだけど?
それでも許さないなら、許すまで離さないから」




ハルキが微笑する。




シキには打つ手が無かった。



シキの考えでは、



いまこの瞬間にハルキに殴りかかろうと・・・


反省させようと考えたのだが・・・



とても怖くて、可哀相で出来なかったのだ。



「許す・・許す、から」


悔しそうに唇を噛み締めるシキ。



そして、ようやく



ハルキの腕が自分から離れた。



「反省したよね・・・・?」




「お前にキレられたら、するしかないだろ」



シキが笑った。



「そうかもね、あたし怖いもんね」



「自分で言うな、バカ」



ハルキがシキの頭をクシャッとした。



シキの心のモヤモヤは、



綺麗さっぱり消えていた。

210リサ:2007/11/02(金) 19:54:02 ID:bVwKr1T2
その頃ルイカは、珍しく・・・

かなり珍しいことなのだが

授業を放棄して、机にべったりとへばっていた。



(シキとハル、大丈夫かな・・・・・・)



それが心配で仕方ない。

自分のせいで、いざこざを作ってしまったのなら

謝らずにはいられない。


(結局あたしは、迷惑しかかけられないんだよね・・・)


そう思いながら、適当に窓の外を眺めていた。

こうゆう気分のときは

レイに会いたくなる。

普段、たくさん会ってるんだけど・・・

それでも、顔がみたい。

安心がほしい。


(ダメダメ!それこそ、人に頼ってる!強くならなきゃ・・・)


「・・・・はぁ〜」


ため息ばかりがでる。

ルイカは表情にでやすいタイプなので

落ち込んでいるととてもわかりやすい。


ルイカが自分の頬をパンと叩く。


(しっかりしろ、ルイカ!!)


そう、心に決めて

体勢を起こし

勉強を始めた。

211レミ:2007/11/02(金) 23:00:46 ID:.Ub/3BoM
その頃、堂々と授業をサボっている人たちもいた・・・


「あ、そういえば」


ハルキとシキは屋上に居た。


そして、ハルキが思い出したかのように、


シキの前に何かを出した。



「これ・・・」


シキが驚いてそれを見つめる。


それは、シキがコウに奪われたネックレスだった。



「取り返したの?」



「ってか、正確には返された」



「・・そっか、ありがと」



シキがひかえめに微笑んだ。



「やっぱ、お前変わったな」


ハルキがシキを見つめて言った。



「・・強くならなきゃ、って思ってさ
このまま子供のままでもいられないし」


「お前の理想って何なんだよ?」



「大人しくって、上品ってとこかな」



「無理」



ハルキが苦笑しながら即答した。



シキが少し怒った顔をする。



「頑張るからいいもん」



「はいはい、せいぜい頑張れよ」



あくまでも他人事のハルキに、シキは少し悲しくなるが



それでもハルキがシキのことをしっかりと見ていてくれていたので



シキは嬉しかった。

212リサ:2007/11/08(木) 20:20:17 ID:bVwKr1T2
ドーン!!!!!


大きな花火の上がる音



そう、今日は体育祭。




どの学科も他の学科を敵視している。

他の学科ともあれば

今日はライバルなのだから。



「絶対優勝ーっ!!おーっ!!!!」


やる気満々の先輩たちが、1年生をひきつれて

気合をいれている。


「うわぁーっ・・みんなすごいねぇ」


ルイカがその暑苦しい風景を

ゆるやかに笑顔で見つめる。

ルイカは場に合わないカンジ。


「今日はお互いライバルだね」

「ええっ、ライバル?そんなぁ・・・」


うろたえるルイカを見て、シキが微笑む。


「別に、あたしたちが敵ってわけじゃないよ?ただ、体育祭的に言えばの話」

「なぁんだ・・そーゆうこと」

「頑張ってね!」

何故かルイカを応援するシキ。

「うん!頑張るッ!」



「宣戦布告でもしあってんの?」

そういって近づいてくるのはハルキ。

「違うもん!応援しあってるんだもん、ね?シキ!!」

ルイカとシキが顔を見合わせて微笑む。


「ハルの学科には絶対絶対負けないから!」

「へぇ、俺に宣戦布告かよ」

「何が?」

割り込んできたのはレイ。

「なんでもないのーッ!さ、早く学科の集合場所に行きなさいってば!」

ルイカが男子2人を押す。

「あたしたちもそろそろ持ち場にいく?」

「そだね。じゃ、あたしこっちだから!」

「じゃあね!」


皆それぞれグランドに散って行った。

213レミ:2007/11/08(木) 20:34:35 ID:.Ub/3BoM
「プログラム1番は、徒競走です」


そのアナウンスと共に、



各学科は気合を入れ始めた。



「一点でも多く稼げ〜!!!!」




「気合だ〜!!!!」



各学科から大きな声が聞こえる。




もちろん、魔方陣科もそうだ。



「シキ、1番とってね!!!」


1人の女子が、靴紐を結んでいるシキに駆け寄った。



「当たり前でしょ、絶対とる」



「きゃ〜シキ、カッコイイ〜♥」



と、こんな感じだった。




「シキ、俺も応援してるからな!!!」



魔方陣科の応援団長も明るく言った。



そんな応援団長に、シキは微笑んで



「さんきゅ」




と言った。




ハルキには他の女子と話すなと言ったのに



まるっきし説得力がないシキ。




「おし、絶対負けるか!!!」



シキが立ち上がって、気合を入れた。





「うん、負けないよ!!!」



「俺も頑張るぞ!!!」




シキの言葉に魔方陣科からも




大きな気迫が生まれた。

214リサ:2007/11/08(木) 20:46:32 ID:bVwKr1T2
「みんなー!1点でもかせげーッ!!!」

団長の声と共に、

「おーっ!!!」

と、みんなが掛け声をかける。

「ルイカ〜!一緒にいこ!」

徒競走の集合場所へ行こうとするルイカに

同じ学科の女子が声をかけてきた。

「うん!」





「徒競走、女子の部開始します!!」

アナウンスと共に、徒競走が始まった。




徒競走の位置に並んでいるルイカは

緊張してガチガチだった。


「ルイっち、緊張しすぎ〜」

緊張をほぐそうと茶化してくる。

「ミキちゃんは足速いからいいよねぇ・・」

ルイカがそのコにそういう。

「んなことないって!ルイカのかわゆさには負けるし!!だははっ!!」

いつでもハイテンションな様子。

「緊張してないの?」

「あ?だって、楽し〜じゃん!!!」

「・・尊敬します・・・」

ルイカは本気でそう思った。


自分の番が近づくたびに

心臓の高鳴りが止まらなくなる。

手のひらはじっとり汗ばんでいた。

215レミ:2007/11/08(木) 21:05:41 ID:.Ub/3BoM
いよいよ、シキの番。


シキは全くもって緊張している様子は見られなかった。




「あら、あなた
魔方陣科のシキさんでしょ?」



上品な喋り方でシキに近づく影が現れた。



「誰?」




内心どうでも良さそうに、適当に相槌をつくシキ。



「私、徒競走では負けたことがなくってよ」



漫画とかの悪役にいそうな、赤毛でパーマの女子生徒が



クスッと微笑んだ。




「奇遇ね、あたしもよ。
あんたみたいな人と同じ列になれるなんて
今年は楽しめそう」




シキがゲームを楽しむかのように笑った。



「負けませんわよ」



そして、両者スタート位置についた。




「よーい・・・・」






バーンッッ!!!!!!!!!!




銃声が鳴り響く。



それを合図に、各学科の5人が一斉に走り出した。



その中でトップに躍り出るのが



魔方陣科と呪文科。




シキと悪役(?)の女子だ。




面白いことに、




2人とも睨みあって走っている。




「負けませんわ〜〜〜っっ!!!!!!」




「負けるか〜っ!!!!!」




2人して叫びに似た声で気合を入れている。





ゴールまであと数メートル。



呪文科が僅かにリード。



「負けるかぁあああああぁあああぁあぁああ!!!!!!!」




シキの声が響き渡る、



その声と共に呪文科を抜いた。



「なっ・・・!?」



相手が驚愕している隙に、




シキは見事1位をとった。





「シキ〜〜〜〜!!!!!!!!」




魔方陣科のシキの友達がシキに走り寄る。




「や、やったぁ!!!!」




シキが一瞬信じられなさそうな顔をしてから、



友達に抱きついた。



「お疲れ様〜!!!!」



まだ体育祭が始まったばかりだというのに、



皆シキを英雄のように扱った。



「まだまだ♥」



シキが余裕そうに徒競走で並んでいるルイカにピースする。

216リサ:2007/11/08(木) 21:18:31 ID:bVwKr1T2
ルイカがシキに向かって弱弱しくピースを返す。

次はルイカの番だ。




ルイカはルイカなりに頑張って

なんとか4位に入った。


「お疲れー」


ゴール地点にはシキがいて

笑顔で迎えてくれた。


「シキ・・かっこよかったよぉ・・・・ハァ・・ふぅ〜〜」


息を整えつつ、ルイカがシキに話しかける。


「ルイカも頑張ったと思うよ?」

「ありがと〜・・」


緊張の瞬間を終え、ルイカの顔は安堵の表情を作っていた。


「あとは団体だけだぁ〜!!団体戦は頑張るぞぉっ!!!」

ルイカがガッツポーズをとる。

「ファイト☆あたしも負けないから!」


そう言ってシキとルイカは別れた。

217レミ:2007/11/09(金) 22:26:46 ID:.Ub/3BoM
徒競走の次は、綱引き。


でも、その前に小休憩がある。




シキが向かった先は、


呪文科のテント。



「ハルキ、いる?」



ひょこっとテントから顔を覗かせるシキ。



「邪魔」



シキは、声が聞こえた背後へ振り返る。



そこには、缶ジュースを両手に持ったハルキが立っていた。



「すまん、
でもついでだからそれ頂戴♪」



シキがハルキに悪気なく言った。




「仕方ねぇな」




ハルキがため息をついて、



シキに缶ジュースを手渡した。




「やったw」



シキが嬉しそうに微笑む。




「で、なんか用があったのか?」



「ううん、会いにきただけ」



シキがジュースを飲みながら言った。



「相変わらず、お前は1位だったな」




「まぁな、あたしに敵うヤツなんて
誰もいないから」



シキが当然のような顔をして言った。




「いや、色々な意味で
お前は弱いと思うけど?」




ハルキがにやりと笑った。



「覚えてるよな、2年前の舞踏会のダンスで
自分がリードするとか言ってたのに
俺の足踏みやがって」



「そ、それは・・!!!」



シキが驚いてハルキを見る。



そして慌てて訂正する。




「あ、あれは調子が悪かっただけ!!!
本当はうまく踊れるんだから!!!」



そんなシキの頭をハルキはポンポンと叩いた。



「分かってるよ、お前が負けず嫌いなことぐらい
もうそんな嘘つくなよ」



宥めるように言うハルキに、



反論出来ないシキ。




そして、



しばらくしてシキが立ち上がった。



「絶対負けないからな」



と、ハルキを睨むようにしてシキが言った。



「上等」



ハルキはそんなシキに



余裕そうに笑って見せた。

218リサ:2007/11/09(金) 22:41:37 ID:bVwKr1T2
小休憩が終わり、綱引き。

綱引きではルイカのアイテム科が勝利した。

ルイカはおおはしゃぎで喜んだ。

個人選がいまいちな分、団体戦で勝てたのが嬉しいのだ。


満面の笑顔でアイテム科の場所へと戻るルイカ。

すると、レイがいた。


「お疲れ」


そう言って、ジュースを差し出す。


「ありがとう♪あ、レイ!見てた??」


子供のような笑顔でレイに聞くルイカ。


「ああ、ルイカが必死に綱を引くすんごい顔を見た」

「///もぉ!レイのバカッ!!」


照れつつ、怒るルイカ。


「でも・・・楽しいな、やっぱり。こーゆうの・・」


ルイカが競技中のグランドを見ながら、呟いた。


「そーか?面倒なだけだろ」

「でも、みんなで頑張るって、いいことだと思う」


ルイカは実にマイペースで

ゆったりとした和む雰囲気をかもし出す。

口調もゆっくりした方なので

レイは余計に眠くなったり・・・・


「じゃ、そろそろ戻る」

「うん、バイバイ!」


そうして、戻っていくレイを見て、ふと、ルイカは

(そういえば、何でここにきたんだろ・・・)

と、思った。

219レミ:2007/11/10(土) 21:50:29 ID:.Ub/3BoM
「綱引き、残念だったね〜」

「エリ、あんなに頑張ってたモンね」


同じ魔方陣科のエリが、がっくりと肩を落とした。


シキは、慰めるように言葉を続けた。



「でも、チアで頑張れば?
エリは副団長だろ?」

「そうだけど・・・
学ラン着たかったナァ・・・・」

「着ればいいじゃん、彼氏のでも借りて」

「イヤ〜!!!
恥ずかしいもん〜」


こんなくだらない会話で盛り上がる2人。


「そういえば、次って持久走?
シキは出るンでしょ?」

「う〜ん、長距離はイマイチなんだよな〜」

「そんなコト言ってぇ、
魔方陣科の中で一番タイムいいのにィ〜」


シキの場合、リレーの選手も持久走の選手も


勝手に決められてやらされてる。



個人の自由では無いらしい。



「でも、シキはスタイルいいよね〜
あたしもこんだけ細くて胸あれば・・・・」


「バカか、あたしは細くないよ。
胸なんてペチャンコだし・・・」

「そんなコトないよ〜
でも、シキは口が悪いから困るわ〜。
あ〜あ、大人っぽいのにコレじゃあね〜」

「どうゆう意味だ、ゴルァ」


シキがムスッとして言った。


シキは、いまのところ言葉遣いを直す気配はないらしい・・・・。

220リサ:2007/11/12(月) 22:37:41 ID:bVwKr1T2
各学科演技披露では、もちろん特待生で優秀な生徒は強制参加。

シキはもちろん魔方陣(面倒といいながらも責任があるのでマジメに)

召喚などをして、場をいっきに盛り上げた。


ルイカはアイテムで虹のような色を作り出し(もちろんマジメに)

華やかさでアイテム科をアピール。


ハルキは魔法で強さをアピール(言われたとおりやってるかんじで)

女子の声援が大きかった。しかも、他の学科からも。


レイはトラップ科なので特にやることがないので(人をおとしいてるアイテム披露になるので)

ただ立って、カンペどおりにセリフを言っていた。

それでも見てる人にとっては充分らしいが。



もちろん、応援優勝を狙ってる・・ということもあるがそれだけではない。

毎年、このプログラムは有名で、ニュースにもとりあげられるほど。

何故なら、来年度入学する人たちが見にきたりするのだ。

なので、学科ごとに「勧誘」の意味もふくめて

自分の学科の良さを外部に披露するチャンス、ということだ。


シキもルイカもハルキもレイも

そんなことはどうでもいいようだが。

221レミ:2007/11/14(水) 21:37:04 ID:.Ub/3BoM
次はいよいよリレーだ。



ルイカ以外の3人は強制的に参加する。




しかもアンカー。






「シキ、頑張ってね!!!」


エリがシキにはきはきと言った。



「へいへい、やれるだけやりますよ〜」




いまいち、気合が入っていないシキ。




これでも、勝つ気は満々だ。




「シキはカッコイイよね〜!!!
あの走り方最高ッッ!!!!!!!」



言っている意味がよくわからないシキ。



エリの言葉はシキにとって、たまに解読不能になるらしい。



「あたし、シキのファンクラブに入る!!!!」



「え〜、そんなの困る〜」



「メンバー集めたんだ、シキは女の子に人気なのよ〜」



エリが楽しそうに言った。





もちろん男子に人気があるが、



女子の方に圧倒的人気のシキ。



バレンタインなんかチョコを大量にもらって困っているらしい・・・。



「ま、むさい男子よりは、
カワイイ女子に好かれた方がマシだな」



シキが納得するように言った。






そして、いよいよリレーが始まる・・・・!!!!!!

222リサ:2007/11/15(木) 22:05:41 ID:bVwKr1T2
「プログラム16。女子対抗リレーが開始します」

アナウンスが校内に響き、整列した選手たちが

校庭へと歩き出す。

自分たちの位置に移動し、準備は整った。

そして、開始合図のピストルが掲げられる。


「いちについて、よーい・・・」




パーン!!!!




勢いよく走り出したのは、魔方陣科の女子。

運動能力がズバ抜けていて、有名だ。

しかも、アイドル顔なのでそこそこ人気もある。

そして、その次にトラップ科、体魔術科、呪文科、アイテム科、洗脳科、とつづく。



「よっしゃ。うちらが勝つかもな!」

シキが同じくリレー選手の女子に声をかける。

「シキちゃんがいれば勝てるよ!!」

「あ、その『ちゃん』ていらないから。シキでいいよ」

「・・うん!あ、あたしの番!」

そう言ってその子がたち上がり、バトンを受け取り走る。

ここでも順調に1位をキープしている。


そして、次の女子にバトンが、まわる。

だが、呪文科の女子にバトンがまわったとき、声援が大きくなった。

呪文科の女子が体魔術科の女子を抜かしたのだ。

そして、すごく速いと有名なトラップ科の女子を抜かした。


そして、魔法人科の女子も抜かされてしまった。

それまでは2位だったが、次の魔法人科の女子は足を怪我していて

4位までおちた。


「シキ!頑張ってね!!」

応援の声がとびかう。

「まかせて!!」


シキにバトンがまわり、素早く走る。

シキの走りにみんなが注目する。

1人、アイテム科の女子を抜かす。

その瞬間に声援がワッとわきおこる。

そして、体魔術科の女子も抜かす。


だが結局、追い上げられたのは2人までだった。

結果は2位。

1位は呪文科だった。


「シキ、2人もアンカーで速い人抜かすなんて、すごいよー!!」

「ありがとー!!2位だよ!!」

女子みんながシキを囲んでいる。

シキは息を整えてから

「・・・・よし!男子のリレー応援するか!!」

と言った。

223レミ:2007/11/17(土) 21:52:17 ID:.Ub/3BoM
一方男子の方は、


面倒くさそうに配置につく2人が



とても注目されていた。




「お前、今回は真面目に走るのか?」



「そりゃ眠いけどさ・・
ここまで来たら走って目を覚ます」



ハルキの問いかけに、レイがボーッと走っているほかの男子



を見つめながら言った。





いよいよアンカー、というときの順位は



1、洗脳科


2、呪文科


3、トラップ科


4、アイテム科



というかんじだった。




しかし、走っている4人の1人1人の幅は狭い。



追い上げられる可能性も高いということだ。




そして・・・!!!!!



ハルキとレイにバトンがまわった。



しかし、ハルキの方の呪文科のバトンはハルキの手に届く前に、



地面に落下した。



「ちっ・・」



ハルキがバトンを急いで拾いあげる。



しかし、すでに呪文科は3位になっていた。



前方の2人との間はとてつもなく大きい。





その頃のレイは、



睡魔に負けず、頑張っていたが



途中からスピードがどんどん落ちていって、結局。



1位 洗脳科


2位 呪文科


3位 アイテム科


4位 トラップ科


となってしまった。


「レイ、真面目じゃなかったな」


「睡魔に襲われた」


レイがそう一言言うと、のろのろと歩きながら


日陰へと向かった。

224リサ:2007/11/18(日) 13:57:25 ID:bVwKr1T2
そして、体育祭のプログラムは結果発表となり

1位は、ルイカのアイテム科でもなく

シキの魔法人科でもなく

ハルキの呪文科でもなく

レイのトラップ科でもなく

洗脳科だった。


「優勝できなかったけど楽しかったー!!!」

ルイカが笑顔でシキと話している。

今は、後片付けの最中だ。

パイプイスを運んでいるところだ。

ルイカとシキはパイプイスを2こずつもっている。


「レイのかっこいい姿が拝見できたから、とか??」

シキがからかうような目でルイカに聞く。

「んー・・そんなことないよ。レイ真面目にやらないもん」

「それもそうか」

シキが納得したように頷く。

「後片付けとか面倒なんだけど」

「そうだねー、重いしね・・・」


よたよたとおぼつかない足取りで歩くルイカ。

そのとき、ルイカの手からパイプイスが奪われた。


「お前、危なっかしすぎ」


「あ、レイ・・・」


レイがルイカの持っていたイスを軽々と持ち上げる。

そこでレイとシキの目が合う。


「お前もかせ」

「別にいい」

「いいからかせ」

「別にいいってば」


何故か遠慮しているシキを見てレイが


「・・・お前には他に持ってくれる奴がいるか」

と、言った。


するとシキがレイの手にイスを押し付けた。


「なんだよ」

さっきまで遠慮していたのに。

「なんか・・むかついたから」


レイはイスを持って歩き出してから

少し歩いたところで振り返った。


「ハルキを見習うわ」

「?」


シキはよく意味がわからなかった。


「??」

ルイカにはもっとよく意味が分からなかった。



(俺にあいつをあつかうのは無理)

と、、レイは心の中で思った。

225レミ:2007/11/23(金) 21:52:55 ID:.Ub/3BoM
体育祭が終わってからすぐ、


怪盗の任務が入った。



内容は、ほぼ分かる。



お宝の奪還だ。



シキとルイカが、学園長室に入った。


「学園長、もうわかってます」


シキが分かりきったように言った。


「・・そうですか、くれぐれも侮らないでくださいね」


学園長が少し悲しそうに言った。


「大丈夫、護衛を連れて行きますから♪」


ルイカが笑顔で言った。



「・・あの2人ですね」



「はい、だから心配しないでください」



「それでは、行ってきますw」



2人が勢いよく、学園長室を出た。



「おせーよ」



ハルキとレイが廊下で待っていた。



「・・じゃ、行きますか」



4人は頷いた。

226リサ:2007/11/23(金) 22:39:11 ID:bVwKr1T2
目的地に着くことは、容易だった。

それもそのはず。

前に一度きてるのだから。

中の構造も大体は把握しているので

今回はなかなか有利な状況だ。


中に入る前に、レイがアイテムを出した。


「これ、俺のつくったやつ。まだ試作品だけど。
レーダーが中の構図を察知して、地図を割り出してくれるんだ。
で、お前らにこれ渡しとく」


それは指輪だった。


「これに反応するから、お前らとはぐれても俺にはお前らの居場所が
わかるってわけだ」


その地図に4人を示す赤い斑点がうかびあがる。


「へぇ〜!!すごいね!!」


「よしッ!!んじゃ用意できたし、中に入りますか!!」


バレないようにと、裏口から入り込む。

扉を開けるとそこはまっくらな道だった。

ゆっくり進む4人。


「こーゆうとこは予想外のトラップがあったりするんだよな・・」

と、レイが言った瞬間




ガシャーーーン!!!




上から思い鉄扉が落ちてきた。

しかも、ルイカの頭上から。


「きゃあっ!!!」

「・・・あぶねーな・・」


間一髪、ルイカを押したのはハルキだった。

ハルキが後ろを見たときは

上から落ちてきた扉が下におりていて

ガッチリとしまっていた。




シキとレイを扉の向こう側に残したまま。





「ちょっと・・閉まっちゃったけど、どうすんの?ルイカとハルキだけ

向こう行っちゃうし・・・」


「・・・・・・無理だ。この扉、普通の扉じゃない。壊すことはできない」


シキがはぁ?と言わんばかりにレイをにらむ。


「ちょっと、トラップ科のくせにトラップ見破れなくてどーすんの?」


「無茶ゆーな。何でも見破れるわけねぇだろ。

ま、あっちとははぐれたけど・・・見ろよ」


レイが左側を指差す。


「ここ、通れる」


シキが左を見ると、扉があった。



「・・・・妙な組み合わせだけど、まぁいいや。行こう」

「何?ハルキがよかったか?」

「・・・・・だからあんたむかつくってば」



そういいながら、レイとシキは進みだした。

227レミ:2007/11/23(金) 22:48:03 ID:.Ub/3BoM
「どうしよ・・・・バラバラになっちゃった・・・・・」


ルイカが泣きそうな声で言った。



「おいおい、もう泣く気か?」



ハルキが少しからかった。



「な、泣かないよ!!!!」



ルイカがムキになる。



「城の中はつながってるはずだから、どっかで会えるだろ?」



「そっか、ハルは頭いいね!!!!」



ルイカが尊敬するようにハルキを見た。



「ばーか、こんなの当たり前だろ」



「う・・・」



ルイカが少し悔しそうな顔をする。



「そうと決まったら、とっとと進むぞ」



ハルキが歩き出す。



「ま、待ってよ!!!!
ハル〜!!!!」



ルイカが慌ててハルキを追った。

228リサ:2007/11/23(金) 23:22:25 ID:bVwKr1T2
その頃、シキとレイは静かに歩いていた。

心なしかシキとレイの距離が近い。

レイの斜め後ろにピッタリとシキがついて歩いている。



レイが気付いたようにシキに問いかける。


「・・・・お前、怖いの?」


そう、シキは暗所恐怖症。


「・・・悪い?」


素直なのか素直じゃないのか分からない答えだ。


「・・・別にちょっと苦手なだけだから」


そう言ってシキはレイと距離をとった。


「おい、あんまり離れ・・・・・」


レイが離れるな、という前に、シキの姿が消えた。

「シキ!!!!!」


叫んでも、返事がない。


「やべ・・・・」


レイはレーダーを見る。


だが、電波が悪いのか、なかなか画面が見えない。


「くそっ・・・・早くうつれよ・・・」


やっと画面がうかびあがった。


「んだよこれ・・・・」

レイが見たのは、自分の距離と全く違う遠い場所にあるシキの赤いマークだった。

「何で一瞬でこんな遠くに移動してんだよ・・」








―――

―――――



「・・・・んー・・・イタタ・・・・・」


シキが腰をさするようにして起き上がる。

「まさか地面にワープ・マットがあるなんて・・・・・」


ワープ・マットとは、四角い人1人分の板だ。

それの上に人がのったときに

ワープしたい場所へとその人を転送することができる。



「・・・多分、あいつらだ。あたしのことどっかで見てたのか・・」


それで、シキがその上にのった瞬間、転送させたのだろう。


「・・・にしても。ワープしようにもこの城だとできないや・・」

ワープするときは、そのワープしたい場所をイメージしなければならない。

だけど、この城の中をそんなに覚えていないし

真っ暗だったので何も見えず、イメージしようがない。


城の外にワープするわけにもいかないし

どのみちワープ魔法はそんなに遠くは無理なのだ。


「どうしよ・・・てかここ暗・・・」


恐怖がシキに襲う。





コト・・・



そのとき、物音がした。



「誰ッ!!??」



シキが振り向くと、人が立っていた。



「どうやら暗所恐怖症みたいだな」


コウ、だった。


「だから何?」


シキはあからさまにイヤそうな顔をする。


「・・・そんな態度でいいのかよ?」

「何が?あんたなんかに屈服する気、さらさらない」



すると、コウはニヤリと笑った。


「イヤでも俺の言うこと聞かせてやるよ」

229レミ:2007/11/23(金) 23:30:13 ID:.Ub/3BoM
「勝手にほざいてろ」


すごい険相でコウを睨むシキ。


「バカだな、
優しい命令にしてやろうと思ったのに・・・」



コウがシキのもとへと歩み寄る。



シキは戦う気満々なのか、一歩も引かずに



コウを睨み続けている。



「作戦変更」



コウがニヤリと笑うと、シキを洗脳しようと、



目に魔力を宿らせる。



「そんなのきくか!!!」



シキは目を塞ぐ。



「バカだな」



コウが嘲笑うように言った。



「俺が命令したのはお前の心じゃない、
身体だ。」



シキが驚く。



しかし、気付いたときにはもう遅かった。



身体が言うことをきかない。



「くっ・・・・」



シキが悔しそうな顔をする。



コウがニヤニヤ笑った。




「さて、どうするかな」

230リサ:2007/11/23(金) 23:48:26 ID:bVwKr1T2
その頃・・・



「ここ・・・どこ・・」


きょろきょろと辺りを見回すルイカ。

ルイカもシキと同じく、ハルキと離れ離れになっていた。


牢獄のようなところに閉じ込められてしまったのだ。

ハルキも同じくトラップにかかったらしく

別れてしまった。



心細さに、不安がこみあげてくる。


「・・・っ・・・・」


自分の頬を叩き、顔をふるルイカ。


「よしっ!!・・・頑張る!!」


アイテムを使って脱出を試みたルイカ。

たちあがろうとした瞬間・・・・


牢獄の内側にある扉が開いた。

もちろん、ルイカがあけようとしたときにはビクともしなかった。


「誰・・??」


身構えるルイカが見たのは・・・


「レイ・・・!?」


レイが入ってきたのだ。


「どうして・・??」

「助けにきたんだよ」


レイがルイカに近づいてくる。


「レイ・・・??」


威圧されているような妙なカンジを覚えたルイカは

後ずさりしてしまう。


壁へと、一歩一歩追い詰められる。



そして、壁に背中があたる。

逃げ場はないと、ルイカは感じた。



「レイ、やめて・・?なんか・・・怖いよ・・・」


すると、レイの顔が近づいてきた。

ルイカの顔に。

「・・・・ルイカ」

「やだ・・・レイ・・・??」





――――パン!!!


乾いた音が響いた。





ルイカがレイの頬を叩いたのだ。



「レイ、どうしちゃったの!?今、みんな一生懸命なのに・・・

こんなことしてる場合じゃないのに・・・

それに、シキはどうしたの!?置いてくるような冷たい人じゃないでしょ!?

レイ・・おかしいよ。レイじゃないみたい・・・・」



そう言って、悲しそうに瞳をそむけるルイカ。



「・・・・バレたか」


ニヤっと笑いう。


その瞬間、レイの姿から一転、ルウトが姿をあらわした。


「・・・・・!?」


「体魔術はこんな能力があるんだよ」


「・・・悪趣味!!!!大ッキライ!!!!」


そう言うと、ルウトは笑みを浮かべたまま瞬時に姿を消した。

231レミ:2007/11/23(金) 23:55:13 ID:.Ub/3BoM
「なんだよここ・・・・」



ハルキも牢獄に閉じ込められていた。



しかし、ルイカと違う場所の牢獄だ。



「無意味なことしやがって・・・・」



ハルキが鉄格子に手を翳して呪文を唱える。



「バニング・フレイン」



鉄が一気に溶けた。



ハルキはため息をつくと、牢屋から出て



辺りを見回す。



同じような牢屋がいくつも続いている。



「ここから移動しなきゃな」



ハルキが行く宛てもなく、牢屋の出口へと歩き出した。

232リサ:2007/11/24(土) 00:15:24 ID:bVwKr1T2
「よぉーし・・・」

ルイカが銃口を鉄の咲くに向け、

引き金を引く。


すると、魔法[バニング・フライン]を詰め込んだ弾丸が

飛び出した。


「やったァ♪脱出成功♪」

自分の力で脱出できた事に

小さな喜びを感じるルイカ。


そして、道を注意しながら歩く。

トラップがまたあっては困る。


「この間きたときはこんなことなかったのになぁ・・」


こちらの準備が万全なら

あっちも万全の備えがしてあるらしい。


歩いていると、足音が聞こえた。

右の曲がり角からだ。


ルイカは壁に背をつけはりつき

銃を構える。


足音が近づく・・



足音が自分の元にきた瞬間に飛び出す。


銃を相手に突きつけながら。




「ちょ・・・俺だから。それどけろ」


「・・・ハル!?・・・よかったァ・・会えなかったらどうしようと思ったよぉ」


そう言って安堵の表情を浮かべたが

次の瞬間ルイカの瞳が再び鋭くなる。

そのまま銃をつきつけながら

こう問いかけた。


「シキの誕生日はいつ?」


ハルキはわけがわからないといった表情を浮かべる。


「何だよ?」

「答えて!!!」


「・・・・7月8日」


すると、ルイカが安心した表情で銃をさげ

にっこり微笑んだ。


「合格♪」

233レミ:2007/11/24(土) 00:23:47 ID:.Ub/3BoM
その頃レイは、レーダーを見ながら必死にシキを探してた。



「どんだけ広いんだよ・・・・」



レイがため息交じりに呟いた。



シキと自分の距離はとても遠い。



しかも、なぜかイヤな予感がする・・・・。



「絶対何かあるな・・・・」



レイはそう思い、駆け足で城の廊下を走る。



同じような道が果てしなく続いている。



そして、大広間が見えた。



暗い大広間にいたのは、




シキとコウ。





レイは息を潜めて、壁から様子を伺う。



「何やってるんだ・・・あいつ等・・・・!!!!」



レイがトラップアイテムを装備しながら、2人を見つめた。

234リサ:2007/11/24(土) 00:37:30 ID:bVwKr1T2
体全身に電気がはしるようなカンジがする。

それは、足がしびれたときに似た感覚。

しびれすぎると、その足は自分の足じゃないような感覚がする。

それと同じで

体を動かせない。

動かしたくても、動かない。


力のいれかたがわからないようなかんじで

動かし方がわからない。


(暗示だけで・・・こんなことできるの!?)


体を動かす、ということは

脳から神経を伝って筋肉に命令を出すということ。


その命令をシャットアウトさせているのだ。


そして・・・・・



「命令その1」


そうコウが言う。


「俺に抱き付いてみせろ」


そういわれた瞬間、足が動くようになった。

それを否定するのだが

その命令を脳からどんなに指令を出しても

まるで神経が途切れたかのように言うことをきかない。


ただ、コウの言葉に反応して

忠実に動くのだ。


「や・・・やだ・・・!!!」


小さく抵抗しても、効果はなかった。

235レミ:2007/11/24(土) 00:47:17 ID:.Ub/3BoM
「やだ、ねぇ
最初からあんな態度とるからだ」




コウがニヤリと笑った。




「お仕置きぐらい許せよな」



「お願い、もうやめて・・・・っ!!!!」



必死で抵抗するシキ。



だが、コウは許さない。



「やだね」



そして、



シキの腕がコウの背中にまわされる。



コウが満足そうに微笑んだ。



「・・・・」



シキは泣くのを堪えていた。



辛くて、

痛くて、

どんなに苦しくても、

抵抗できないのが悔しかった。



「悔しいか?」



コウが、シキの顎をくいっとあげる。



「残念だな、本題はこれからなんだよ」



「・・・っ!!!卑怯者っっ!!!!!」



シキがコウを強く睨んだ。

236リサ:2007/11/24(土) 01:05:08 ID:bVwKr1T2
「お前にとって・・あとあの男にとって何が傷つくかくらい、わかってんだよ」

とても卑怯で

酷なことだが

コウは、洗脳科として優秀だ。


相手の追い詰めかたを心得ている。

洗脳科は、操るだけではだめなのだ。

いかに相手の心理をよみとり

壊すか、が重要なのだ。


「ま、自己満足ってのもちょっとあるんだけど」

そう言って、意地悪く微笑んだ。


優しく壊れ物をあつかうかのように

シキの髪に触れる。

だが、次の瞬間、髪をつかみグイッと引っ張る。


「・・・いたっ・・・」


「謝れば、許してやってもいいけど?コウ様ごめんなさいってな」


シキは悔しそうに顔を歪める。

目に憎しみと、涙をいっぱいにためながら。


「・・・っ・・・・・・コ・・コウさ・・ま・・・・」


体が震えて、言葉もうまく発せない。


「残念、時間切れ」


残酷な言葉を浴びせるコウ。


「命令その2、お前からキスしろ」


「!!・・・う・・・」


勝手に体が動く。

コウの顔が近づく。



息がかかるくらいに間近にコウの顔がある。







「そこまで」







そこにはアイテムを持ったレイがいた。


「これは攻撃してくる相手にからみつく特殊なゴムなんだよな。お前に攻撃は不可能。

一方的に攻撃されたければ、そこにいてもいいけど?」


「ちっ・・・惜しいな。あと少しのとこ邪魔しやがって」


そういい残して、コウは姿を暗闇へと消していった。


レイとシキの目があって、レイが涙目のまま

呆けているシキに近づく。


シキの顔にレイの手が近づく。

シキはぶたれるのかと思い、反射的に目をつぶった。


だが、レイはシキの目の涙を自分の服の袖でぬぐった。


「俺が泣かしたみたいになるだろ」

「あ・・・そっか・・・」

「お前も、しっかりしろ。彼氏でもない男に簡単に

触れられてんじゃねぇよ」

シキは少し疲れたかんじだったが、レイの言葉に

「了解・・」

と、返事した。

237レミ:2007/11/24(土) 01:19:04 ID:.Ub/3BoM
「歩けるか?」



「あたしを病人と勘違いすんな」



シキがよろよろと歩き出す。



「もう少し・・・警戒すればよかった・・・・」



シキが悔しそうに言った。


今日、この日


シキの精神は、傷つけられた。


とても卑劣な手で。



「・・あんなの、思い出したくもない」



「忘れさしてもらえば、ハルキに」



「アホ」



レイは思った。


シキは強くなったと。


いつもなら、泣きじゃくっているが



いまはやり返そうと気合を入れている。



「・・たいしたもんだな」



「へ、何が?」



「別に」



シキが拳を強く握る。



「負けてたまるか・・!!!!」



怒りをこめて、シキは言葉を漏らした。

238リサ:2007/11/24(土) 01:33:08 ID:bVwKr1T2
「さ、早く行こう!この通路危ない!どこか大きな道にでないと!」

走るルイカ。

「おい、待てって!走るな!」

「ゆっくりしてらんないよ!・・・レイとシキが心配!」


ルイカの頭上からロープがおちてきた。

「きゃっ・・」

ルイカの体にからみ付く。

そのまま上に引き上げられる。

首にもまきついたロープがルイカを苦しめる。

ハルキが魔法を使うが

ロープは切れない。


ルイカはすかさず胸ポケットにある筒を取り出した。

小さな手のひらサイズの筒だ。


「ハル!あたしに向かって、氷系の魔法お願い!」

「は!?お前にやってどーすんだよ・・」

「いいから・・早くっ!」

言われるがまま、ハルキはルイカに向かって魔法を使う。

「ブリード・レイン」

青い氷のようなものが筒にすいこまれていく。

そして、筒からまっすぐに青い光を放ったソードができた。


それで、ロープを切る。

ロープがはなれ

ルイカが地面に着地した。


「ふぅ・・・ありがと!さっきの普通のロープじゃないみたい」

「だな」


「さ、早く行こう!!」

そう言ってルイカとハルキが再び歩き出した。

239レミ:2007/11/25(日) 11:16:19 ID:.Ub/3BoM
シキとレイがしばらく歩いていくと、大広間が見えた。



「どんだけ大広間あんのよ・・・」



ため息混じりシキが言った。




「ルイカたちが、近くにいるな」




レイが試作品のトラップアイテムでルイカたちの居場所を探す。




「やっと使えるようになったのね」




「前から使ってるっつーの」




そして、大広間へ歩み寄った。





その時――――。





「へぇ、妙な組み合わせだな」




頭上から声が聞こえた。



シキとレイが身構える。




「ま、少しは楽しませろよな」




そういって現れたのは、




ルウトだった。




「お前、コウに散々遊ばれたんだってな
そんなに弱いのか?」




試すような言葉に、シキが笑みを漏らした。




「ストレス解消に付き合ってよね、変態」



シキが魔方陣の準備をする。




「ってことで、俺が相手だ」




レイがシキの前に庇うように立った。




確かに、今は2人。




シキが1人でいたときとは違う。




だから、強いはず・・・・





「相性は合わなくても、
コンビネーションは合うと思うな」



シキが確かめるように言った。




「ま、実戦で確認すればいいじゃん」





シキとレイが余裕そうに笑った。

240リサ:2007/11/28(水) 18:01:47 ID:wR88ldHg
ルウトが拳を握り、空を切るかのように強く振った。

「右」

一言、レイがシキにそう言った。

「!?」


すると、ルウトが拳を振った部分の空気が刃物のような勢いで

とんできた。


「!!」

シキはレイに腕をつかまれ、思い切り引っ張られた。


そのまま倒れこむ。


「ったー・・何するわけ?」

「馬鹿、右によけろっていっただろ?俺が引っ張ってなかったらお前粉々だぜ」

さっきまでレイとシキがいた場所の影は大きくへこんでいた。


「右、だけで分かるわけないでしょ?ルイカじゃないんだから」

「は?」

「どうでもいいけど、せめて主語と述語の文法使って喋れ」

シキはルウトとこうして戦うのが初めてなので、

威力や素早さ。魔法力を知らないのだ。

「仲間割れか?コンビネーション最悪だな」

ルウトがあざ笑うようにしてそう言ってくる。

「今のは相性が悪かっただけだ。
いっとくけど俺らが組んだら、最強だからな」

(組んだことないけど)

レイはその言葉を心の中におしこめた。

「そうそう、力だけが取り柄のそっちより、
知識と魔法力のコンビのが強いから」

「シキ、お前攻撃系の魔方陣あるだろ?」

「まぁ、あるけど?」

「俺がお前の守備につくから、お前は攻撃に徹しろ」

「OK」

ルウトは2人の前にたち、右手に魔力を込め始めた。


「ま、その最強のコンビネーションとやらを拝見するかな」

241レミ:2007/11/28(水) 21:56:25 ID:.Ub/3BoM
シキが手早く魔方陣を展開した。


周りの空気が凍てつくようにこごえる。



「氷系の魔法か、そんなの効くかよ」


ルウトの右手に、炎が宿る。


氷を溶かすつもりだろう。


そのままルウトがシキ目掛けて、右手を振り上げた。


そこでシキがニヤリと笑った。


「ばーか、フェイントだよン♪」


「な・・・っ!?」


シキの魔方陣からは、水が噴出した。


当然、炎は水に弱い。


なので、ルウトの拳の炎は一気に消えうせた。



「もうちっと、頭を使いな」


シキが挑発するように、人差し指で自分の頭をちょんちょんと突く。


「へぇ、面白じゃん」


ルウトが身体に魔力をためる。



「でも生憎、攻撃方法は色々あるんだよ」

242リサ:2007/11/28(水) 22:18:13 ID:wR88ldHg
ルウトはさっきのように、拳を振った。

だが、その攻撃に本気さはない。


今度はシキとレイがうまくかわした。


「俺の攻撃は、直接ふれなくても当てれるんだよ。でも空を切る・・・
打撃空漸拳じゃあ一定の範囲しか攻撃できないから、よけられる確率が高い」

「そんなことベラベラ喋ってどうすんの?」

シキが呆れたようにルウトを見る。

「だけど・・・」


そういいながら、ルウトが拳を地面へと思い切り叩きつける。

すると地面の割れ目に光が走った。


「魔力を使えばこんなこともできるんだよ!!」


「何これ・・これ生きてるの!!?」


シキとレイに向かってその光が素早く移動してくる。


明らかにこちらに向かっている。


レイの足元にからみつくように光がまとわりつく。

シキのほうにも光が向かってくる。


その途端、地面が地面爆弾で吹き飛ぶようにして割れた。

それがレイの体に全て当たる。


「!!!・・いてーな・・・・んだよこれ!」


シキが目をあけると、シキの方はなんともなかった。


「なんで・・?あたしのほうにもきてたのに」

「フラッシュのトラップをお前の方に投げたんだよ」

レイがそう言った。

倒れこんでいるレイが、自分の上にかぶさっている地面の硬いカケラをどかしながら

立ちあがる。

「ひらたく言えば、魔法をはねかえすんだよ」

「あたしのほうに投げないで、自分で使えよ!馬鹿っ!」

「俺も使いたかったけど、速すぎんだよ。あの光」

そこで、ルウトが口をはさんだ。

「シキの方は遅かったんだよ。いくらなんでも女に打撃攻撃は気がひけるからな。
手加減してやったんだよ。で、その分お前のほうに光がくるの遅かったから
あいつがお前にアイテム投げるのも可能だったってわけだ」

「とにかく、仲間を傷つけた代償は重いから。覚悟しな。
女だからってナメてると痛い目あうよ?」

ルウトはフフッと笑いながら、次の攻撃の準備を整え始めた。

243レミ:2007/11/28(水) 22:38:35 ID:.Ub/3BoM
「どうすんのさ、このままじゃ相手の思うツボじゃん」


シキがひそっとレイに尋ねた。



「・・今度はあたしが守備にまわるよ」


「お前、守備の魔方陣描けたっけ?」


「覚えたの、今日が始めて使うケド」


「なんか危なっかしいけど、
初挑戦に賭けてみますか」


そうレイが言って、前方の方へと歩み出る。


「お、攻撃パターンを変えたか」


ルウトが楽しむように言った。


「あたし等の実力見せてやる」


そうシキが言い、


魔方陣を展開する。


そして、レイに守備魔法をかけていく。


呪文と違って、効力は様々なので


呪文よりも強力な魔方陣も中にはある。


シキがかけた魔法は、


防御力をあげる、プロテクトと


魔法防御をあげる、リフレクトだ。


「じゃ、お前の魔方陣の効力
確かめさせてもらうぜ」


ルウトの拳から魔力が放たれた。

244リサ:2007/11/28(水) 23:01:41 ID:wR88ldHg
「守備のほうばっか意識とんでんじゃねぇよ」

ロープのようなものが、ルウトを縛り上げた。

「くっ・・」

「集中力が足りねーんだよ」

ロープがより強い力でしばりつける。

だが、ルウトはそれを力ではずそうとしたので

壊される前に、レイはロープを戻した。


「いいこと教えてやるよ。お前、アイテム科とトラップ科の違い分かるか?」

「・・・・・どっちも同じじゃねぇのか?」

「シキは分かるか?」

「さぁ・・トラップはわなとかがあるんだよね・・。でもそれじゃ
アイテム科でわなをつくればいい話しか・・・」

レイがその答えに言葉をつないでいく。

「アイテム科とトラップ科の違いがわからない奴ってのはわりと多いんだよ。
でも、アイテム科とトラップ科は決定的に違うところがある。
まず、ルイカのアイテムは、ルイカが操作をして始めて力が発揮される。
でも、トラップ科は違う。[わな]ってだけあって、勝手に動く」

「・・・つまり自動式か操作式かってことか」

ルウトの答えにレイが首をふる。

「簡単に言えばな。トラップ科のアイテムは、魔動力を使ってる。
で、アイテム科は魔法力。だからトラップ科のアイテムは生きているかのように動く。
使い方も簡単で、自由自在に形をかえることもできる。
そのかわりに魔法力は少ないのが欠点。魔法力を極力使わない学科だからな」

「・・つまり、アイテム科は本人の意思で操作する。
魔法力はあるけどそのかわりに自動で動くことはない・・なるほど、トラップアイテムには
むいてないってことね」

シキが納得したようにそういった。

「お前もわりと賢いじゃん」

「わりとは余計」

ルウトがレイに向かう。

「・・で?それがどうかしたのかよ?」

「つまり、俺のアイテムはお前に向かっていくわけだ。
性能もそのたびかわる。
・・・集中してないと、死ぬかもな」

挑発するかのようにレイがそう言う。

ルウトは少し微笑してから、一息つくと

魔力を全身に込め始めた。


「そりゃー・・楽しそうだな」

245レミ:2007/11/28(水) 23:17:03 ID:.Ub/3BoM
「じゃ、これからは手加減なしでいくか」


ルウトが、シキとレイの周りをゆっくりとまわる。


一周するごとに、スピードがどんどん加速していき、


影分身がシキとレイを囲んだ。


「ここで、一斉攻撃したらお前等どうなるんだろうな」


遊び感覚でルウトが言った。


そして、一斉に影分身がシキとレイに殴りかかってくる。




それを、間一髪でシキがバリアで防ぐ。



けれども、影分身はあまりにも力が強かった。



「・・・っこの!!!」



シキが粘るが、シキの精神力は残り少なかった。


魔方陣を描きすぎたからだ。



「もう・・・ダメ・・・・っ!!!」



バリアがそこで切れた。




一斉に攻撃が降りかかってくるなか、



レイはシキの腕を強く引いた。



途端、シキとレイは影分身のいる方向の真逆にワープした。



「ちっ」



ルウトがつまらなそうに舌打ちした。



「お前、仕掛けといたな」



「当たり前だろ、戦場に来たら
敵に気付かれないように罠を仕掛けるのは基本だからな」



そう、レイは瞬時にワープマットを床に敷いていたのだ。



「味方のあたしでも気付かなかった・・」



少し残念そうな顔をするシキ。



その表情には、限界の兆しも見えていた。



しかし、諦めようとは決してしていなかった。



「レイ、反撃よろしく」



シキが無理やり笑顔をつくった。

246リサ:2007/11/28(水) 23:33:35 ID:wR88ldHg
そのとき・・・


「シキ!あたし達にまかせて!!」

そう声が聞こえた。


「・・ルイカッ!?ハルキ!!」

シキが2人の姿をとらえる。


「・・・よぉ、ルイカ」

声をかけてくるルウトに、ルイカはべーと舌を出した。

「いい度胸だな」

「ふん、最低な心の持ち主に負ける気なんかしないもん!」

そのとき、コウの姿がルウトの隣にあらわれた。

「こっちにも味方があらわれたみたいだ」

「よぉルウト、なんだよまだ全然やってねぇじゃん」

コウを見た瞬間シキの顔色が変わる。

「出たな・・殺してやるッ!!!」

そんなシキのもとへ、素早くルイカが駆け寄る。

「シキ、これ癒しの聖水。疲労回復とかのアイテムだから、精神力もちょっとは
回復すると思う!」

「サンキュ」


「全員そろったところで、本当の戦闘開始だな」

レイのその一言に、皆が頷く。


「ハルキ、攻撃専門よろしく」

「了解」

「シキは・・・」

レイが言う前に、シキが

「あたしはもちろんアイツ」

と、コウを睨みながら言った。

「・・・やめろ、っていっても聞かねぇだろうから言わないけど、あいつは手強い。
暗示される危険があるからうかつに近づけないし。
だからハルキと一緒に戦え。あいつなら呪文系で遠距離攻撃ができるし」

「分かった」

「俺はルウトのほうと戦う」

それぞれが各自の持ち場に散って行く。

戦闘開始だ。

247レミ:2007/11/30(金) 22:35:43 ID:.Ub/3BoM
「俺と互角に戦えると思ってんの?
またさっきみたいな目にあっても知らないからな」



コウが余裕そうに笑った。



「さっきと同じなんて思うな!
こっちには呪文科の特待生がいるんだから!!!」



「お前も特待生だろ・・」



半分呆れ気味のハルキ。



「へぇ、また彼氏かよ」



「悪いけど、お前の洗脳術は防御できる」



ハルキがさらっと言った。



「ちょっ・・・本当なの?」



「まぁ見てな」



ハルキがにやりと笑った。




「余裕ぶってると死ぬぞ」



コウが洗脳術を使おうとする。



その直後――――



ハルキがシキにアイテムを投げた。



サングラスのようなそのアイテムを、シキがわけがわからず装着する。



ハルキもそれを着けた。



すると――――。



「ち、ガードしやがったな」



「これ、レイの・・・・」



シキが後からようやく気付く。



レイは、前の怪盗時から、いままで



こんなすごいアイテムをつくっていたのだ。



「じゃ、今度はこっちの番ってことで」



ハルキが一歩前に出る。



ハルキの周りが、一瞬禍々しい何かに包まれる。



「エアロ・ウィンディル」



短くそう呟くと、小さな竜巻が出てきて



それがみるみるうちに大きくなっていった。



竜巻がコウ目掛けて突進してくる。



コウはそれを何とか避ける。



「へぇ、避けるとは思っていなかったな」



口ではそういっているが、顔は余裕たっぷりだ。



「ハルキはすごいな・・」



思わず口に出して、後から照れるシキ。



「こんなの中級魔法の一つだよ、もっと上がある」



「上?」



「そう、例えば」



ハルキがゲームを楽しむかのように言った。



「お前の雷と、いまの竜巻を混ぜてぶつけてみるとか」

248リサ:2007/11/30(金) 23:11:57 ID:wR88ldHg
「すごい・・・ハル、あんな魔法使えたんだ・・」


自分の戦いそっちのけで、意識がとんでいるルイカ。


「馬鹿、自分の戦いに集中しろ」

「うっ・・・ごめんなさい・・」

「そうそう。お前の相手はこっちだからな」


ルウトがルイカの目の前に一瞬にしてあらわれる。

そして、またすぐに消え、今度は少し離れた場所に姿をあらわした。


「レイ・・あの人、速いよ!!あたしがストップさせようか?」


そう言って、銃を構えるルイカ。


「俺が合図したら撃て」

「オッケー!!」


レイはルウトの方へと歩き出した。


「お前の自慢はその速さと力か?」

「まぁな」

「ふーん・・知識はなさそうだけど?」


レイがニヤッと笑う。


「俺をあんまり挑発させないほうがいいと思うけど?」

ルウトが挑むようなレイに対して

怒りをあらわにする。

「それは忠告どうも。でも、別に平気だから。お前に負けるわけないし」

ルウトの体から赤い闘気がみえる。

「てめぇ・・後で後悔すんなよ・・?」

そういうと、その闘気を全身に放ったまま

レイのほうへとぶつかっていった。


そのまま壁もろとも激しく衝突する。





ドガッッ!!!!!!!





壁がくずれ、あたりはカケラでぼろぼろだ。




「レイ!!!!」

ルイカが声をあげる。



「撃て!」


ルイカはレイが壁と一緒につぶされたのではないか、と思ったが

どこからか聞こえた声がレイだということさけはわかった。


「・・わかった!!」


そういうと、壁の破片が散る中立ちあがるルウトにむかって

ストップガン・アローを放った。


「っく・・・・・んだよ、これ!?」

ルウトが声をあげる。


「や、やったぁ!!あたった!!!」

「お前もやればできるんだな」

そう言って、レイが近づいてきた。

「レイ、よく無事だったね?」


「まぁな」

そう言って、ルウトのほうをむく。

「俺の挑発にのるから知識ねぇっていうんだよ。
お前の闘気、真っ赤だったからお前が移動してるのもわかった。
だから俺はよけれたんだよ」

そう言って、レイはルウトの前に立った。

「・・・俺を・・・・本気にさせたな・・・」

249レミ:2007/11/30(金) 23:36:05 ID:.Ub/3BoM
「何こそこそしてんだよ、もうネタ切れ?」


コウが、半分からかいを入れた感じで言ってきた。


「その逆」


作戦会議を終えたハルキが短く言った。


「今度は避けられないほど超倍速でやったるw」


シキがやる気満々で言った。


ハルキが竜巻をつくると同時に、シキの魔方陣が発動した。


2つの属性の魔法が混ざり合う。


それが、恐ろしい程の速さでコウに向かっていく。


「なっ・・!?」


竜巻がコウにぶつかった。


「チャンス♪」


「ちょ、待て!」


シキがハルキの言葉も聞かずに、コウに向かって走り出した。


「あの馬鹿っ!」


ハルキがシキを追う。


シキは知らなかった。


レイのアイテムは、近距離だと効果がないことを――――。




竜巻が消え去ったとき、コウは気を失っていた。


「今なら・・殺せるッ!!!」


シキがコウに狙いを定めて突進する。


そして、護身用のナイフを振りかぶる。



ガシッ――――。



しかし、その振りかぶった腕は、コウに掴まれた。


そのコウの瞳には、殺意が篭っていた。


「!?」


コウはそのまま、シキを押し倒す。


「死ぬって、言ったろ?」


コウがシキと首を絞める。



「くっ・・・・!!!」


シキが抵抗するが、とうてい敵わない。



「ま、俺は優しいからまだ殺さないけどな。
でも、俺の痛みを味わいな」


コウの手に力が入る。



(ダメなんだ・・・こんなんで・・・・負けてられるか!!!)


シキが、力を振り絞ってナイフを振った。


「・・って!!!」


コウの手が離れる。


「あたしは、あんたに優しくされるほど弱くない!!!」


シキがコウを睨みつける。


「シキ!」


ハルキが駆け寄ってくる。


シキは立ち上がると、ハルキのもとへ走り寄った。



「俺に傷を付けたな・・・・」


コウの中に怒りが芽生える。

250リサ:2007/11/30(金) 23:44:40 ID:wR88ldHg
「なんだよここ・・・なんか怒り倍増してるし」

レイが独り言のように呟く。

ルウトとコウの怒りの気が充満しているようだ。


「むこうでもキレてんのかよ・・・」


レイはルウトのほうに向きなおると

トラップを取り出す。


「お前のただの玩具なんて俺の拳で壊してやるよ」

「できるもんなら、な」

レイがさらに挑発するかのようにそう言い放つ。

ルウトがレイのほうへと素早く移動し

拳を振った。

「オラッ!!」

レイは素早くよけたが、それでも空を伝って亀裂が走り

レイは吹き飛ばされた。





(レイ・・・)


シキやハルキが横目でルイを見る。

だが、自分達は今、危険な相手と戦っている。

手助けしに行く余裕はない。


「それくらい元気がなきゃな・・・」

そう言って、レイは立ちあがった。

「ふーん・・今のくらって立てるのか・・褒めてやる」

ルウトが腕を組みながらレイを睨み、微笑した。

251レミ:2007/12/02(日) 22:18:48 ID:.Ub/3BoM
「よそ見してんじゃねぇよ」


シキとハルキが瞬時に振り返った。


「いってー、いくらなんでもナメ過ぎたな・・・・
女だからって、許されると思うなよ」


コウは、苛立ちをこめた視線をシキに向けた。




「こんなんじゃ終わらせないっ!!!
あんたのせぇで、どんだけ傷ついたと思ってんの!?」



「知るか、人の傷みなんてわかんねぇよ」




その態度に、シキは余計に腹が立った。


シキがコウに飛び掛ろうとすると、


シキの肩を掴む手があった。



「落ち着け」



ハルキが冷静に言った。



「やだ、落ち着いてられないよ・・・っ!!!
あたし、あいつに・・・あいつにっ!!!!」


シキが俯いて、ハルキを拒む。



「ここで取り乱したら、あいつの思うがままだろ?
また何かされてもいいのかよ」



「・・・やだ」



「なら、言うこと聞け」



ハルキの言葉に渋々了解したシキ。



「さて、と
コンビネーションから崩しますかね」



コウがそう呟いた。



そして、次の瞬間



空間が歪むように重くなる。




「な、にこれ・・・・」



「重力を洗脳しやがったな」



「えー!?何それ〜!?」



そうこうしている間に、床に敷き詰められた大理石のタイルが、



シキとハルキ目掛けて飛んできた。



「わっ・・・!!!」



シキは右側にそれを避ける。



しかし、逆にハルキは



左側に避けた。



2人の間に大きな間が出来てしまった。



コウはその様子を見て、フッと笑うと



今度はハルキをタイルで集中攻撃し始めた。




「ハルキっっ!!!!」



シキが叫んだとき、ハルキはタイルの山に埋もれてしまっていた。



しかも、とてつもない量のタイルの・・・・



「さぁて、お仕置きの時間がやって来ましたよ」



楽しそうなその声には、やはり怒りがこもっている。




「あんたの相手なんて、あたしで充分よっ!!!」



シキが負けずにコウを睨み返した。

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