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家庭内臨床試験

1 : 出産好きの名無し :2017/10/24(火) 00:50:56
「できた...」
そう言って、僕は今しがた出来上がったものの入った試験管を眺める。この中には、僕が研究を重ねてようやくできた、妊娠期間を伸ばす薬が入っていた。
僕がこれを作ろうと思ったのは5年前、14歳のときだ。母が流産をしてしまったのだ。そこから僕の研究は始まった。我が家は研究者の家系なので、小さい頃から理系の知識を叩き込まれており、あんな年齢でも研究ができた。流産で失われる命を助ける。そのことを1番に考えて過ごした5年間が身を結んだと想うと感極まって泣きそうになる。だが、これにはまだ大きな課題が残っている...臨床試験である。ただ、まだ成人もしていない人間の薬に対して臨床試験を許可してくれるほど現実は甘くない。この先のことを考えると胃が痛かったが、思わぬところから救いはやってくる。
「私、多分妊娠したから、あんたの薬飲んでやるわよ」
そう言ったのは、僕の母であった。



臨床試験なので、妊娠中もそこそこ書きたいです。基本的に出てくるのは母と息子だけで、息子視点で進めます。妊娠期間は薬の効果の出すぎで16ヵ月くらい、胎児は9000gをとりあえずの上限とします。

息子(船田晴彦)
優秀で物静かな研究者。出産好きの気はない。
母(船田智子)
39歳で、細身の高齢妊婦。若く見えるが、やはり年齢には逆らえず、肌に小皺が出てきた。流産の記憶から、赤ちゃんをなるだけお腹に入れておきたいと思っている。


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2 : ヨーク :2017/10/24(火) 01:19:39
「多分妊娠した、ってどういうこと!?」
僕だって驚いて当然だ。
母が最後に父と会ったのって、そんなに最近か?
そもそも、いつ会ったんだ……?
「何よその顔。この前、丸一日家空けたことあったでしょ、あの時よ」
確かに、3週間ほど前に母は朝帰りしてきたことがあった。
まさか、その時に?
でも、まあそれは今詮索する話じゃない。
今は母の言うことを信じよう。
そう思って、僕は母に試作品の薬を渡した。

しばらくして、すぐに結果は出た。
強い吐き気を訴えた母は市販の検査薬を購入、その結果と医師の診断、両方で妊娠を確認したのだ。
これからが勝負だ。
僕の薬がちゃんと効いているのか、見守っていかないといけない……。


3 : 出産好きの名無し :2017/10/24(火) 18:35:46
効いているのか、だと少し語弊があるかもしれない。何せ僕の薬は、流産や早産になりそうなときに使うもの。何もない状態で使うもんじゃない。母の身体は、20週目で流産になるような体質になってしまっているので、そのときに使うのだ。そこで流産しないかどうかが鍵になる。そしてもう一つ、臨月で自然発生の陣痛が来たときも抑えて妊娠を延長できるかがある。こっちは試験ではなく実験だ。もし後者の方ができれば、この薬の可能性はさらに広がる。学者として興奮を覚えずにはいられなかった。


4 : ヨーク :2017/10/31(火) 01:12:14
そこからは、順調というほかなかった。
悪阻は軽くなり、母の様子は普段と変わらない。
順調に、お腹も大きくなっていく。
そして、運命の20週目を迎える。
僕は当然だが、本職ではないので診断は出来ない。
母が検診から帰ってくるのを待つしかない。
不安もある中、母がついに帰宅する。
すぐに検診結果を問うと、母は笑顔で言った。
「赤ちゃん、大丈夫だって……ありがとう……!」


5 : 出産好きの名無し :2017/10/31(火) 23:57:33
その後、母の妊娠は何事もなく...はいかなかった。おそらく薬のせいだろう。
胎児が発育曲線と照らし合わせたときに多少大きめになっていったのだ。まあこれは予想の範囲内。
特に気にすることもなく、僕はこの薬の効果が絶大だと世界に示すための次の実験について考えていた。
その内容は、陣痛開始後に薬品を投与して陣痛を止め、妊娠期間延長が可能かどうかというもの。
成功確率は低いが、試さずにいられないのが科学者というものだ。


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6 : ヨーク :2017/11/01(水) 00:29:07
だが、当然無断というわけにはいかない。
改めて、確認をとることにする。
それで母が拒否するなら、まずはあきらめるしかないだろう。
なので、思い切って尋ねてみる。
「あのさ、薬の話なんだけど、もう一つ実験したいことがあるんだ」
「実験?いったい何を?」
「変な話じゃなくて、もう一度飲んでほしいんだ。僕の作った薬を」
素直に伝えると、母は少し考えてから言った。
「いいわ、どうせ私のためなんだし、いつ出来るかしら?」
流石に、いきなり目的を伝えてしまうといくら母でも妙な目で見て来かねない。
いっそ、ぶっつけ本番で飲ませてしまおうか……。
そう思っていた僕だったが、妊娠30週目、予想外の事態が起きた。
流産こそしなかったものの、切迫早産の疑い。
それを聞いた僕は、すぐさま見舞い品にあの薬を忍ばせ、一時入院となった母の元に向かった。
薬の色は無色透明なので、ミネラルウォーターに混ぜ、母に渡す。
データが正しければ、水との反応で二日あれば効いてくるはず。
僕は、心の中で神に祈った。


7 : 出産好きの名無し :2017/11/01(水) 00:36:21
後日、切迫早産の可能性はなくなり、母は退院した。だが僕は、その後にとんでもないミスに気付いた。
母に渡したあのミネラルウォーター、あれに入れる分量を間違えたのだ。
このままだと、妊娠期間が異常なほど伸びてしまう可能性が高い。
母にこのことを伝えなければならないが、いかんせん気が重い。


8 : ヨーク :2017/11/01(水) 00:55:00
だが、そんな自分を勇気づけたのも母だった。
「もしかして薬を間違えたの?でも大丈夫よ、何があったって産むのは私なんだから」
そんなことをいう母のせいで、僕は年甲斐もなく泣いた。

そして、僕のミスの影響も意外なほど早くわかることになった。
検診でわかったのだが、更に成長曲線をはみ出してしまったようだ。
これは驚異的な効果といえるだろう。
少なくとも、流産や発育不良の大作としては十分なはずだ。
……分量をまちがえなけりゃ。
少なくとも、このままでは類を見ないクラスの巨大児が生まれることになるので、それは母の頑張りにかけるしかないないだろう。
もう始まったものはどうにもならない。
せめて、結果を見届けるぐらいだろう。


9 : 出産好きの名無し :2017/11/01(水) 00:59:31
帝王切開もできればしたいが、この薬は麻酔を効きにくくさせたりする効果がある。
だから踏み切ることはできなかった。
と、そんなこんなで時は流れ臨月を迎えた母。陣痛は来るのだろうか、こないのだろうか。


10 : ヨーク :2017/11/01(水) 01:07:12
陣痛の気配は全く無い。
こればっかりは本人も驚いているところだった。
ここまで来ると流石に母も事情を理解してはくれたが、納得はしてくれた。
もし早産だったらどうなるかわからなかった、というのもあるだろう。
だからか、この結果を受け入れてくれていたのだった。
「それに、せっかく来てくれたんだから、普通よりお腹にいる時間が長くたってかまわないわ」
母はそう言って笑って言うけど、僕の中には不安もあった。
だって、ここまでの過期妊娠は前例がないからだ。
どうなるかなんて、誰にもわからない。

そして、僕の薬は母の体質をも変えてしまった。
麻酔だけではなく、陣痛促進剤も効きにくくなったのだ。
まさか、僕が母のために作った薬がこんなことになるなんて……。
そして、母はここから長い戦いをすることになる。
長い過期妊娠という、初めての戦いを……。


11 : 出産好きの名無し :2017/11/01(水) 17:35:23
それから、妊娠11ヶ月目は幸いなことに何も問題は起きず、ただ、胎児はやはり恐ろしいほどの速度で成長していた。11ヶ月終了時点で6000g、通常の2倍だ。母も動くのが億劫らしく、横になることが増えた。
「お母さん、調子はどう?今日から12ヶ月目だけど」
「うーん、まだまだ産まれないらしいわ」
まあ、予想通り、か...

それから2日後、事件が起きた。母の体重が急速に減り、胎児の成長は少し加速したのだ。ここから考えられることはただ一つ。胎児に回す栄養が増え、母まで行かなくなったのだ。これは予想外だった。まさか超過期間に成長の加速があるなんて...
ひとまず母には食事と点滴で栄養をとってもらうことになった。これによって、母の体重減少は食い止められたが、同時に胎児の成長はさらに加速した。


12 : ヨーク :2017/11/01(水) 18:20:57
何処かでブレーキを掛けなければ……。
このままでは、いくらなんでも出産不可能な大きさになってしまう。
それだけは絶対に避けたい。
2週間をめどに、僕は改めて考えた。
言うなれば、薬の効果を弱める薬に近い……。
特に、胎児への過剰な栄養供給バランスを改善するものを考える。
僕は、それに没頭した。

想定通りなら効くはず、と言える薬をなんとか完成させることが出来たので、早速説明して与えてみる。
効果が出れば、とりあえずの懸念は去るはず。
でも、ほぼ確実に起きるだろう副作用がある。
現状だと14ヶ月めくらいには限界を超えてしまう、という計算なのだが、この薬を使うと更に妊娠期間が伸びるだろう、ということだ。
これは、胎児への栄養供給を少し弱める作用があるからだ。


13 : 出産好きの名無し :2017/11/01(水) 23:00:44
そんなことがあって、あっという間に月日が流れていき、もう14か月目だ。
胎児の重さはなんと大台の10000gに到達した。
母はもう家を歩くのもしんどいらしく、基本的にごろごろしていて、ごくまれにゆっくり歩いてる感じだ。
それに、さすがにもう入る服がないので、お腹はほぼ丸出し。
だが、まだまだ生まれそうな様子はない。


14 : ヨーク :2017/11/01(水) 23:34:42
一体、いつ産まれるんだ……。
流石に僕も不安をつのらせていく中、とうとう事件が起こってしまった。
胎児が重すぎて、母がぎっくり腰を起こしてしまったのだ。
ただでさえ不調なのに、まさかこれ以上になるとは……。
それでも母は気丈に振る舞っているから大したものだと思う。
やっぱり、すごいなぁ……。

なんと10kgと推測されるにもかかわらず、胎児の発育は止まらない。
一体どれだけ大きくなるのかと思うが、同時にあるデータが判明した。
あと2ヶ月もすれば、母の子宮のほうが限界になるということだ。
おそらくだが、そうなった場合陣痛が起きるのは間違いないだろう……。


15 : 出産好きの名無し :2017/11/01(水) 23:40:50
まあ、ぎっくり腰は安静にしてれば1か月で治るらしいので、しばらく母には寝床から出ないように言っておいた。
それに、陣痛もあと2か月後という確証はないし、明日来るかもしれないのだ。
希望的観測に過ぎないが、十分にあり得る話でもある。
そのために、しっかりと備えだけはしておかないと...


16 : ヨーク :2017/11/02(木) 00:10:29
自分で家事ができてよかった、と心から思った。
もしそうでなければ、母にムリをさせていただろうからだ。

安静にしてもらっていることで、なんとか母の腰は治ったようだ。
問題のお腹は更に大きくなってしまっているが、こればかりは仕方ない。
推定体重は11kg。
世界一の巨大児が、いま母のお腹にいることになる。
これには、医者も目を丸くしていた。
「全く……流産した子のぶんまでお腹にいる気かしら、この子は」
呆れた口調だったが、母はとても嬉しそうだった。

そして検診からの帰宅途中、突然母は「明日外出する」といい出したのだ。
このお腹を抱えて、ショッピングモールまで行く気らしい。
不安だから、ついていくほかないな……。


17 : 出産好きの名無し :2017/11/02(木) 00:16:32
移動は僕の車ですることになり、母は久々の外出と嬉しそうにしながら寝た。
そこから突き出る大きなという言葉では形容できないレベルのお腹は、皮膚が伸びて光を反射している。
思わず綺麗だと思ってしまうような光景だった。


18 : ヨーク :2017/11/02(木) 00:25:52
そして到着するやいなや、母は僕の手も借りることなく普通に歩き始めたのだ。
一度ぎっくり腰になっているのに、である。
その様子に驚きながらも、僕はその後をついていった。

道行く人が次々と振り返り、子供が指を指し、びっくりする人もいる。
当然だろう。
いくら妊婦と言っても、ここまで大きなお腹の人なんていないんじゃないだろうか……。
そんなお腹だから、目立って仕方ない。
しかも母は、まるで狙ったかのように体型のはっきり出るような服を来てきている。
みんな、あんな反応をして当然だ……。
だが、母はなんだか、それに対してすらも嬉しそうだった。


19 : 出産好きの名無し :2017/11/02(木) 00:36:41
もともと目立ちたがり屋だったからまあこうなるのは当たり前だろう。
母は服屋によって入る服がないことを嘆いたり、久しぶりのスーパーで安売りを探す主婦の癖を発動させたりしていた。


20 : 出産好きの名無し :2017/11/02(木) 00:40:53
もともと目立ちたがり屋だったからまあこうなるのは当たり前だろう。
母は服屋によって入る服がないことを嘆いたり、久しぶりのスーパーで安売りを探す主婦の癖を発動させたりしていた。


21 : 出産好きの名無し :2017/11/02(木) 00:41:40
間違えました


22 : ヨーク :2017/11/02(木) 00:47:26
しかも、妊婦ということまで最大限に武器にしている。
流石にこんなお腹の妊婦が近づいてきたら、何かあったら皆嫌がる。
それを利用して、セール品の列で他人に邪魔されないように行動したり、ベビー用品を優先的に買わせてもらったり。
割りと抜け目のない行動を繰り返していた。

楽しくなってきたのだろうか。
母の行動は止まらない。
ある程度の買い物を済ませて夕方になると、今度はまた別の場所へ行きたいとリクエストしてきた。
なんとそこは銭湯。
どうやら、家以外でお風呂に入りたいらしい……。


23 : 出産好きの名無し :2017/11/02(木) 00:53:17
大浴場はさすがに無理なので、当然家族湯だ。
母が服を脱ぎ、その大きなお腹を抱えた体をさらけ出したときはドキッとしてしまった。
2人で風呂に入ると、母のお腹も相まって恐ろしいほどのお湯が溢れた。
排水溝が溢れた水を必死に飲み込んでる間に、体を洗い始めた母。
ツヤツヤのお腹が水や泡を弾く様子を、風呂の中からじっと眺めた。


24 : ヨーク :2017/11/02(木) 01:02:38
「温まるわぁ……」
浴槽に身を沈め、そんな声を上げる母。
身を沈めているにもかかわらず、お腹の大部分が水面から突き出している。
「ねえ、母さん」
「何?」
「僕の作った薬さ、世の中に出せると思う?」
なぜだか、そんなことを聞いていた。
すると母はくすりと笑って、笑顔で答えた。
「必要としてくれる人がいる限りは大丈夫だと思うわ」
そう言って母は、僕の体を軽く抱き寄せてきた。
全く、僕をいくつだと思ってるんだ。


25 : 出産好きの名無し :2017/11/02(木) 01:06:55
ただ、居心地がいいのは認めよう。
母に抱き寄せられて当たるお腹に、かすかな生命を感じつつ、僕は家族湯を楽しんだ。


26 : ヨーク :2017/11/02(木) 16:38:44
久しぶりの外出で、母も満足してくれたのだろう。
落ち着いてくれたようで、僕はホッとした。

そして、それからしばらく。
僕の読みがだいたい当たったことが証明された。
妊娠12ヶ月目と数日、母が「陣痛かもしれない」と訴えたのだ。
普通なら病院に直行するところだけど、ある事情からそうは行かない。
なんと、大雪のせいで家のドアも開かなくなり、電線も切れてしまったのだ。


27 : 出産好きの名無し :2017/11/02(木) 23:56:35
運が尽きた…終わった…
そう思ったが、予想外に早く救助が来て、母の痛みも陣痛ではなかったようだ。
ホッとしたけど、それ以上にまだ産まれないことへの不安と、
いつ母が産気づいてもいいように知識を蓄えようという反省の気持ちの方が強かった。


28 : ヨーク :2017/11/03(金) 00:08:41
問題はここからだ。
事情を少し話して母の担当医には協力してもらっているが、いざ本番となったら何が出来るか……。
その不安が、僕の中でどうしても渦巻いていた。

さて、なんとか妊娠15ヶ月目を迎えた母。
胎児の成長も緩やかになって、なんとか出産可能なラインをキープしてくれそうになった。
だが、問題も当然多い。
流石にもう動くのはつらそうだ。
二階に上がるなんて、危なすぎて出来やしない。
こうなったら、出産まで健康でいられることを願わないと……。
早速僕は、担当医に相談した。


29 : 出産好きの名無し :2017/11/03(金) 00:15:37
「お母さんは健康そのものだよ。無理しなければまだ持つから安心しなさい」
「なるほど、先生は出産に立ち会われるんですか?」
「いやー、学会とかもあるし、わからんよ」
「そうですか…」
どうやら、母はまだ大丈夫らしい。胎児は11.1kg。願わくばこれから成長はあまりしないでほしい…


30 : ヨーク :2017/11/03(金) 00:33:23
「フーーーーーーーー、フーーーーーーーーーッ……」
少し呼吸をするにしても、母はかなり苦しそうだ。
大きくなりすぎた子宮に肺が押されていて、しっかり呼吸をしようとするとどうしてもこうなるらしい。
早く生まれてくれ、じゃないと負担が尋常じゃないんだ。
僕のそんな思いが通じるかどうかは、分からない……。

最近の母は、何をするにも僕の手助けが必要だ。
とにかく、そのお腹がすべての原因だ。
本当なら辛くて仕方ないだろうに、弱音一つ吐かない母を僕は改めて尊敬した。
無事に出産させてあげないと……。


31 : 出産好きの名無し :2017/11/03(金) 00:40:52
16ヶ月目、母の限界まであとわずかのところまで来た。
胎児の重さは11.9kg。産むとしたらまず間違いなく日を何回も跨ぐだろう。
しっかりとサポートしなくちゃな…


32 : ヨーク :2017/11/03(金) 00:51:35
あと数日以内に陣痛が始まるだろう。
いよいよその時だ、と思いながら、僕もある準備をしていた。
陣痛促進剤とはまた違う、陣痛のきっかけを作る薬。
これがないと、もしかしたら母は自力での出産ができないんじゃないかと思ったのだ。
僕は、それほどまでに母のことが心配だった……。


33 : 出産好きの名無し :2017/11/03(金) 01:02:41
その心配は、どうやら悪い神様に伝わったようだ。
我が家の床が抜けてしまい、それの補修工事をしなければならなくなったのだ。
仕方なく山奥にある別荘に移ったはいいものの、今度は豪雨が降って土砂崩れが発生。
道路がふさがれた上に、1週間はこんな雨が続くので助けも来ない。そして最悪なことに…
「ねえ、陣痛が来たかもしれない」
全く、なんてタイミングなんだ。


34 : ヨーク :2017/11/03(金) 01:08:42
よりによって、薬がきいたのがこのタイミングだなんて……。
だが、まだだ。
まだ陣痛は始まったばかり。
母自身も含めて、今できることはあるはずだ。
ふと、母のお腹を見る。
外から見てはっきりわかるほど胎動が続く。
よし、僕の弟妹はまだ元気みたいだな……。


35 : 出産好きの名無し :2017/11/03(金) 01:14:15
母曰くまだまだ全然痛くないらしいので、家の雨戸を閉めたりしていた。
そんなこんなでもう夜になってしまった。母にきている陣痛は進む気配もなく、停滞している。
取り敢えず、寝れたときに寝るのがいいと、僕と母は少し早めにおやすみなさいした。


36 : ヨーク :2017/11/03(金) 12:45:12
そこから、僕はきっかり8時間で目が覚めた。
問題はやっぱり母だ。
普段から疲れているのだろうが、僕が起きてしばらくしても目を覚ます気配はない。
もう10時間は寝ている計算になる。
いつになったら起きるのやら。
そう思いつつ、僕は朝食をすませ準備を始めていた。
自力で対応するしかないなら、出来る限りのことをするんだ。


37 : 出産好きの名無し :2017/11/04(土) 00:12:49
準備もだいたい済ませた頃、母が起きた。
「うっ、ふぅぅぅぅ…やっぱり痛いわね…」
寝てる間にも、やはり陣痛は進んでいたらしい


38 : ヨーク :2017/11/04(土) 00:31:05
起きて来た時間から逆算すると、なんと母は12時間半も寝ていた。
問題はそこだ。
それだけ時間が経っているのに、母にはまだあれだけの余裕がある。
以上のことから言えるのは一つ。
12時間半経っても、陣痛は特に強くなっていないかもしれないということだ。
こうなると、とんでもなく時間がかかるとしか思えない。
もう僕にも予測不可能。
母を信じるしかないのだ……・。


39 : 出産好きの名無し :2017/11/04(土) 00:40:25
母曰く、陣痛はまだ30分間隔。
お産は医学的には始まってもいない。
しばらくは何も起きなそうなので、僕は母のデータを見返すことにした。
骨盤は平均的、痩せ型で、現在妊娠16ヶ月目。
なお、胎児の重さは12kgであり、これ以上育つと母はお産に耐えきれない。
分娩開始から終了まで日を何回もまたぐ可能性大。
改めて、この先が長いことを実感した僕だった。


40 : ヨーク :2017/11/04(土) 01:36:57
母の様子を見ても、痛いことは痛いようだがまだ余裕は十分、と言った具合だ。
いまはむやみに騒がず、落ち着くしかないだろう。
この、完全に孤立した別荘の中ではあるが……。

「はい、これだけあれば良さそうなのね」
「うん、あとは僕がやる」
母にも軽い運動を兼ねて、準備を手伝ってもらった。
別荘のあちこちから、使えそうなものをかき集めた。
きれいなガーゼや新品のタオル、それにプラスチックの桶。
いまハサミは消毒中だし、お湯もなんとか湧かせそう。
さて、準備は整ったぞ……。


41 : 出産好きの名無し :2017/11/04(土) 01:46:01
ただ、問題の母の陣痛は、とても準備完了とは言えない状況だ。
この先の時間を有意義に過ごしたいけど何をしようか…と思ったところで、
僕を産んだ時の話をしてもらって、母が陣痛中どういう風になるか探ろうと考えついた。
母にそれを言うと、
「あぁ、それならそこにビデオテープあるでしょ、あれに動画残ってるから、それ見ながら横で解説するわよ」
と言ってきた。
昔懐かしいビデオテープをセットし、再生ボタンを押す。するとそこに映し出されたのは胎児のエコー映像で、
それからしばらくして出産動画が始まった。


42 : ヨーク :2017/11/04(土) 02:40:53
えっと、これはつまり……。
「そう、あんたが生まれたときのやつよ。ビデオデッキ残しててよかった……」
確かに、母の出産の様子が記録に残っているのはこのくらいだ。
見てみる価値は、あるかもしれない……。

結果、陣痛が強くなってからの母の反応はよくわかった。
割と声は殺すタイプだが、痛すぎると絶叫する。
これは、状態の確認に使えるかもしれない。


43 : 出産好きの名無し :2017/11/04(土) 13:04:37
それにしても、20歳というお産にはベストなタイミングの時ですら極期になると涙を流して苦しんだのだ。40歳、さらに超巨大児となると、母の苦しみは計り知れない。だから、今の最善策は母に休んでもらうことだ。そう思い、母には体力を温存するよう言っておいた。


44 : ヨーク :2017/11/04(土) 14:47:45
「温存する、って言ってもねぇ……」
母は困惑しているが無理もない。
ずっと寝ているわけにもいかないが、普通にしているだけで体力を使ってしまうからだ。
それに、陣痛が長引けば体力はいやでも消耗する。
ある程度は消耗するものと見るしかない。
だから、僕は出来る限り楽な環境づくりに集中する事にした。
部屋の温度は23℃、湿度も適切。
よけいな汗をかかず、かつ寒くない環境。
コレならいくらかましになるはずだ。


45 : 出産好きの名無し :2017/11/04(土) 18:49:30
「........ッ...フゥゥゥゥゥ....」
そんなことをしていたら、少しずつ母の陣痛が強くなり始めた。少し顔をしかめて、深呼吸を繰り返している。お腹を撫でてみると、まだそこまでではないが、張って硬くなっていた。


46 : ヨーク :2017/11/04(土) 19:52:15
「大丈夫?」
「ええ、まだね……」
こうやって話す余裕があるうちは、本当にまだ大丈夫だろう。
ストップウォッチで間隔を測ってみたが、まだ30分からそう進んでいない。
つまり、まだ陣痛と呼ぶのもどうかということだ。
だが、痛いというのはそれだけで体を緊張させる。
リラックスさせることが大事だ。
「そうだ、何かしてほしいことある?」
「そうね……腰を、腰をもんでほしいわね」
マッサージはリラックスにもちょうどいいはず。
母には側臥位になってもらって、腰をもんであげることにした。


47 : 出産好きの名無し :2017/11/04(土) 22:07:51
「あっ、そこ痛い!」
腰の押しどころが悪いと、母は痛がる。だから慎重に、優しく、そしてしっかりと揉んであげなければならない。
「ああぁ、そこ、そこよぉ〜」
何回もやるうちに、だんだん慣れてきた。


48 : ヨーク :2017/11/04(土) 22:22:18
その方が母も楽なんだろう。
しばらくしても、母はその姿勢のまま、床とお腹の間にクッションを敷いて横になっていた。

しばらくして、痛みは強くなってきたらしい。
時たまうーん、と苦しそうに唸っていることが増えた。
だが、間隔はわりとそのままだし、まだ唸っているだけ。
声を殺して我慢し始めるのも、叫び出すのもまだ先だろう。
とりあえず、その方が楽だというので、陣痛に合わせて腰を背骨に沿ってなでてあげた。


49 : 名無しさん :2017/11/04(土) 22:50:30
気付けばもう7時過ぎ、外はすっかり暗くなっていた。雨が止む気配はない。
「母さん、夕飯作るからマッサージ一旦やめるね。」
「ハイよっっ...ふぅぅぅ...」
心配だけど、腹が減っては戦はできない。


50 : 出産好きの名無し :2017/11/04(土) 22:51:07
>>49名前書き忘れてました


51 : ヨーク :2017/11/04(土) 23:15:05
我ながら、包丁さばきも慣れたものだと思う。
具材を刻みながら、そんなことを思った。
時たま聞こえてくる母の唸り声をBGMに、料理を進める。
母が食べやすいようシチューにしてみた。
冷めても美味しいような工夫ができれば、もっといいんだろうけど……。

ちびちびと母はシチューを食べてくれている。
だが、陣痛の一回あたりの時間はなかなか長いものになったらしい
唸り声がどんどん長くなっていて、食べるペースも遅くなっている。
大丈夫だろうか……。


52 : 出産好きの名無し :2017/11/04(土) 23:31:08
ようやく食べ終わった母を、次はお風呂に入れた。僕も一緒にである。浴槽を埋め尽くさんばかりのお腹は、僕が洗ってあげてる間にも定期的に硬くなり、母に苦痛をもたらしていた。


53 : ヨーク :2017/11/04(土) 23:59:03
風呂から上がって体を拭いてあげると、またそのタイミングで陣痛が来たようだ。
長いうめき声を上げ、母は顔をしかめる。

深夜0時を超えた辺りで、ようやく母の陣痛は20分間隔にまでなったようだ。
だが、これも言うまでもなくまだまだ。
まだ始まってすら居ないのに、ここまで苦しそうな母に、僕は一抹の不安を覚えた。


54 : 出産好きの名無し :2017/11/05(日) 00:08:05
「だい...じょうぶ...よ...ううぅぅぅぅっっ!」
さっき見たビデオでは、大体5分感覚になったときの苦しみ方に似ている。
これじゃあ、まるで陣痛自体が強化されてるみたいだ。


55 : ヨーク :2017/11/05(日) 00:45:39
大丈夫なのか、こんなの……!

それからさらに時間が過ぎ、間隔はようやく短くなってくる。
母は唸ることもやめ、必死に口を閉じてこらえている。
本当は体をよじるほど辛いだろうに、お腹が大きすぎてそんな仕草も難しい
動くことも出来ず、ひたすら耐えるしかない状態だというのだ。
頼む、早く生まれてくれ……!


56 : 出産好きの名無し :2017/11/06(月) 21:55:27
だが、冷静に考えてこんな巨大児が早く生まれてくるはずがない。
今はただ、待つだけ...
ようやくおさまった陣痛。
母はグデーっとし始めた。


57 : ヨーク :2017/11/07(火) 00:04:07
とはいっても、だらけているわけでもない。
文字通り疲労しているのだ。
陣痛のたびに身体をぐっとこわばらせて耐えているから、疲れてくる。
息もかなり荒くなっていて、苦しそうだ。
唸りながら耐える母。
徐々に進展があったのだろう。
だんだん、声の上げ方も変わってきたのだが、それは深夜になってからの事だった。


58 : 出産好きの名無し :2017/11/07(火) 00:14:18
ようやく10分間隔まで進んだ陣痛は、母が悶え苦しむほどに強くなっている。
「ううぅぅぅ...ああっ!」
胎児が生まれる体制につこうとするだけで、その大きさのせいで母へ苦痛をもたらす。
だから、こんなスタートラインに立ったかどうかみたいなところでも、通常では強めとされる痛みが母を襲うのだ。


59 : ヨーク :2017/11/07(火) 00:24:21
身体が暴れすぎないようにしようとしたのか。
母はベッドの縁をぐっと握りしめて、痛みに耐え息を吐いている。
「うっく、ぁあーーッハァーーーーー……っくっあーー!!」
だが、うまく行かず声が出る。
僕も、多少の手伝いはしようと脚を押さえる。
ある程度体勢を固定する事で無駄な力は入らなくなるからだ。
そして、僕は見た。
母のお腹が締め上げられるように動くのを。
それほどまで、陣痛が強いのだ。


60 : 出産好きの名無し :2017/11/07(火) 00:29:53
陣痛が収まってから、母は四つん這いになりだした。
床につくギリギリのお腹を抱えて、崩れたら一大事の格好だが、母が楽というなら仕方ない。
「あっ、ああ!またぁぁぁきたあぁぁ!!」
そのとき、その大きなお腹がぐっと母の方に持ち上がるというトンデモ現象が起きた。


61 : ヨーク :2017/11/07(火) 01:21:48
でも、それが何かはすぐにわかった。
子宮の収縮の仕方だ。
巨大児にナリすぎてしまったがために、普通なら子宮口へ押し出すための収縮がうまく行かなくなっているのだ。
そして、胎児が背骨の方に押し付けられるから、母にさらなる痛みが襲う。
地獄のような痛さだろう。
「あ゛ぁあァァァァーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
思わず耳をふさぎたくなるような絶叫。
そして痛みが終わると、今度は一気にお腹の大きさが戻って、体勢が崩れるほどの衝撃が母を襲った。


62 : 出産好きの名無し :2017/11/08(水) 00:02:48
とっさに母を支え、お腹の方を確認する。
何もなくて幸いだったが、もう四つん這いはやめたほうがいいだろう。
背骨に負担をかけないようにしなければならないので、座って耐えてもらうとかどうだろうか。


63 : ヨーク :2017/11/08(水) 00:27:24
その後しばらくいろんな姿勢をためし、結局中腰のように、立って体をテーブルに預ける体勢に落ち着いた。
この形が一番マシ、と言えるのだろう。
しかしそれでも陣痛はどんどん活発になり、容赦なく母を襲う。
そのたびに卵型の母のお腹は俵型と言わんばかりに強く変形し、収まると戻る。
微弱陣痛の恐れは一切ないが、なんて強さだろう。
最初の懸念とは逆に、強すぎる陣痛を僕は恐れていた。


64 : 出産好きの名無し :2017/11/09(木) 00:00:57
だが、ここにそれを抑えるものなど存在しない。
だから、母が苦しむのをただ見守るしかないのだ。
「お母さん、子宮口みるね」
「うん…あっ!ああぁあああ!」
5cm。これだけ苦しんで半分という現実は、超巨大児の出産の大変さを物語っていた。


65 : ヨーク :2017/11/09(木) 21:27:28
その後も、母は苦しみの声を上げ続ける。
胎児は下がる気配を見せないのに、陣痛は強くなる一方だ。
しかも、その大きさと重さゆえ、身動きを取るのも難しい。
そして、堅い子宮口はそれほどの陣痛にもなお、耐え続けてしまっていた……。


66 : 出産好きの名無し :2017/11/24(金) 01:05:50
朝を迎えても、状況はあまり変わらなかった。強いて言えば、子宮口が5.5cmになったくらいだろうか。あとは、変わったところと言えば、母に襲いかかる痛みだろう。
さっきから、ソファーに腕をおいて座るような姿で、陣痛が来るとソファーのカバーを握りしめて、唸り声をあげている。


67 : ヨーク :2017/11/24(金) 01:22:58
「痛ぁいーーーーーーーーーーーーー!!!!」
絶叫が響く。
相当に辛いのか、もう我慢が効かないのか。
母は足を大きく開いてソファに座り、痛みのたびにのけぞって耐えている。
なんとなく状態がわかる。
このままだといきんでしまいそうだから、必死に堪えているんだ……。


68 : 名無しさん :2017/11/24(金) 01:42:41
「いやああああああ!おっ、うぁああ、あああああ!」
おひるどき


69 : 出産好きの名無し :2017/11/24(金) 01:43:26
>>68ミスです


70 : 出産好きの名無し :2017/11/24(金) 01:45:32
お昼頃になって、ようやく変化が出てきた。
子宮口の開きがよくなったのだ。
7cmまで開いたが、その分陣痛はえげつない。


71 : ヨーク :2017/11/25(土) 13:12:55
その後も、すすみは遅いとしか言いようがない。
夕方になってようやく8cm、母は最高にいきみたい時だろう。
でも、まだいきめないのだ。

そう思うと不安も浮かび始める。
もしかしたら、息まねばならないときにはもう母の体力が残っていないのでは……?


72 : nemesis :2018/04/12(木) 00:16:23
「出来れば一縷の望みを掛けたいけど・・・・・」
そう言って母を見る。
「はあはあ・・・・・」
胎児が大きいのと陣痛による痛みの疲れのためか、母はぜえぜえ言いながら呼吸していた。
「万が一の場合はこれを使うしかないか・・・・・・」
僕はそう言い奥の手を棚から取り出した。


73 : 正和 :2018/04/12(木) 22:58:53
それは体力を回復する薬である。
いや薬という栄養剤といった方がいいのか。
ただこれには副作用があって陣痛の痛みが倍になると言う欠点があった。
「出来ればこれを使うことになって欲しくないが・・・・・・・」
とりあえずこれは子宮口が完全に開いてからの話だ。
今は子宮口が完全に開くのを待つしかない。


74 : nemesis :2018/04/14(土) 14:28:35
そして子宮口が完全に開いたのは深夜1時を迎えた頃だった。
「もう息んで良いよお母さん。」
僕の言葉を聞いた母は息み始めた。
「ふごおおおおおおお・・・・・・・・・・・・はあはあ・・・・・・・」
しかし息み始めてからすぐに息むのをやめてしまった。
「大丈夫お母さん!?」
やはり母にはもう息むだけの体力が残っていないのか・・・・・・・


75 : 正和 :2018/04/14(土) 15:46:35
「やむを得ないか・・・・・」
僕はとりあえず母に許可を取ってから使うことにした。
「お母さんこの薬を体力が回復するだけど、これを使うと陣痛の痛みが倍になるんだけどどうする?」
「はあはあ・・・・・た、頼むわ・・・・」
母は息も絶え絶えながらも使ってくるようお願いしてきた。
それを聞いた僕は母にその薬を打った。


76 : nemesis :2018/04/16(月) 13:13:37
ドクンッ!!!
「・・・・・・う・・・・・・う・・うぎゃあああああああーーーーーーーーーー!!!」
しばしの沈黙の後、母は突然普段は発しないような叫び声をあげた。
それは最早奇声と言った方が早い代物だった。
誰の目にも見ても陣痛が激しいものになったことがわかるものだった。
「あがああああああ、うぎいいいいいいいいいいいい!!!!!」
「大丈夫お母さん、お母さん!!!」
母は激痛のあまり暴れ始めたので、僕は抑えるのに精一杯だった。


77 : 正和 :2018/04/16(月) 23:51:29
しかしさっきまで動くのもままならなかったのにこれ程暴れるとは・・・・・
うん間違いない薬はちゃんと効いたようだ。
その分副作用もちゃんと出ているようだが・・・・・・
僕は母を用意していた分娩台に乗せ母の手足をベルトで固定した。
こうしなければ母は激痛のあまり暴れるばかりだからだ。
「お母さん痛いだろうけど、その痛みに我慢しながら息まないといけないよ。」
僕は母にそう言った。


78 : nemesis :2018/04/17(火) 00:23:27
「う・・・・・ん・・・・・・・そ・・・う・・・・・だね・・・・・・」
僕の言葉を聞いた母は激痛に耐えながら息み始めた。
「ふううううううううう!!!!!うううううううううううう!!!!」


79 : 正和 :2018/04/17(火) 17:34:27
母が激痛に耐えながら息んでいると
パシャッ!!
何かがはじけたような音がしたかと思うと
ジャパアアアアアッ!!!!
母の股間から大量の水が流れてきた。
考えるまでもない母は破水したのだ。
僕はいよいよこれからだと感じた。


80 : nemesis :2018/04/17(火) 18:58:18
「ウギィッ、ウガアッ、アッ、アッ、アッ!!」
陣痛が本格的に強くなってきたのか母は声にならない声を出している。
ただでさえ薬によって陣痛が強くなっているのにこれ以上強くなるのは過酷だろう。
しかしこうでもしなければ産むのは難しいのだ。
僕はせめての助けとして母のお腹を押すことにした。


81 : 正和 :2018/04/17(火) 23:35:06
「お母さん、今の状態じゃお母さん一人では産むのが難しいから今からお腹を押すよ。」
僕の言葉を聞いた母は何も言わずにただ首を立てに動かしただけだった。
そして僕は母のお腹を押し始める。
「うぎゃああっ!!!うげええええ!!!」
母はお腹を押すたびに奇声としか言いようのない悲鳴をあげる。
「耐えてお母さん・・・・」
僕はそう言いながら母のお腹を押し続けた。


82 : nemesis :2018/04/18(水) 18:02:06
こうして母のお腹を押し続けること30分経つ頃に変化が現れた。
母の産道から、胎児の頭が見え始めたのだ。
(よし頭が見え始めた。でも胎児が大きいから無事に通れるかどうか・・・・・)
僕はそう思いながら母のお腹を押し続けた。


83 : 正和 :2018/04/23(月) 00:42:11
「ぎゃああああーーーーーーっ!!!ぎええええええええええーーーーーーーーーっ!!!」
母が突然今まで以上の悲鳴を上げた。
どうやら胎児が大きいため膣で引っかかっているようだ。
それでも胎児は無理やり出ようと進んでいる。
その結果激痛が起きているようだ。
「これは会陰切開をするべきか・・・・・・・」
しかし問題は僕は産科医じゃないことだ。
医者じゃない自分がしてもいいのかどうしたものか・・・・・・


84 : nemesis :2018/04/26(木) 00:43:26
ブチチチッ!!ブチッ!!
「ぎゃあああああーーーーーーーー!!!!」
突然何かが破れる音がしたかと思うと、母が大きな悲鳴を上げた。
僕はもしかしてと思い、母の会陰を見る。
「やはり・・・・・」
母の会陰は産まれてこようとしている胎児によって裂けていた。
「出血しているな、でも今は出産の途中だから・・・・・・・・」
裂けたのならむしろ好都合だ、母には悪いが出口が広がった分胎児が通りやすくなる。
僕はそう思い母のお腹を押し続けることにした。


85 : 正和 :2018/04/27(金) 00:32:13
出口が広がったためか、さっきまで殆ど進まなかった胎児が進み始めた。
「お母さん胎児が進み始めたよ、後もう少しだよ。」
僕は母を励ましながら母のお腹を押し続ける。
ブチブチッ!!ビリビリビリッ!!
「ぎゃあああーーーーーーー!!!!ぎょええええええええええーーーーーーー!!!!」
胎児が進むたびに母の会陰はさらに裂けていく。
その度に母はまるで怪獣の咆哮のような叫び声をあげる。
皮肉なことにさらに裂けることによって胎児の進みは良くなっていった。


86 : nemesis :2018/04/28(土) 20:08:41
ビリリリッ!!!ブチチチチチチチチチッ!!!
「ぎぇええええええーーーーーーっ!!!!いだあーーーーーーーーーーっ!!!」
母は会陰が裂ける叫び続けた。
その内胎児は腰の辺りまで出てきた。
「ここまで出てきたら後は僕が引っ張り出すか・・・・・・・・・・・」
僕はそう言い胎児の腰を掴む。
「痛いと思うけど我慢してお母さん・・・・・・」
そして僕は胎児を引っ張り始めた。
ズリュズリュズリュ・・・・・・


87 : 正和 :2018/04/29(日) 16:41:02
ズリュズリュ・・・・・
「うううう・・・・・・」
ここまで出てこれば楽に出せるだろうと思っていたがなんとお尻が引っかかってしまった。
「くっ、あともう少しと言うところで・・・・・・仕方ないさらに傷が広がってしまうけど強引に引っ張って出すか・・・・・・」
僕はもう直前なので傷が広がるのを覚悟で思いっきり引っ張って出すことにした。
心の中でお母さんごめんと謝りながら・・・・・・・・・・・
ブチブチブチッ!!ビリビリビリリリリッ!!
「ぎゃあ☆○★▽∴◇@¥$◆#□%&※ーーーーーーーー!!!!」
案の定母の会陰が裂け、母その痛みで声にならない悲鳴をあげた。
しかし出口がさらに広がったお陰で胎児の引っかかっていたお尻がスムーズに通りそして・・・・・・


88 : nemesis :2018/05/02(水) 00:18:08
ジュルリッ!!!
オギャアオギャア!!
「お母さん無事に産まれたよ!!!」
「はあ・・・はあ・・・・よ・・・・良かった。」
赤ん坊は無事大きな産声をあげて産まれた。
「女の子か・・・・・・・・」
産まれた赤ん坊は女の子だった。
その後僕はすぐ様母と産まれたばかりの妹を病院に連れて行った。
検査の結果母は難産による体力の消耗と会陰が裂けたことよる出血をしていたもののそれ以外は特に問題がなかった。
裂けた会陰からの出血もすぐに手術による縫合によって治まった。
とは言え大分体力の消耗しているのと出血が原因で少し貧血気味なので母はしばらく入院することになった。
もう一方の産まれた妹は体重9000gと言う新生児の平均よりもかなりの巨大児であること意外は至って健康であった。
そして数日後、母は回復して元気になり無事に退院し、今僕は薬の改良をしている。
今回は無事に産めたとは言えリスクが大きすぎて他の人になど使うなどとても出来やしない。
でも今回のことは希望への大きな第一歩に僕はなったと思う。

   END


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