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バースコントロール
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「接続開始・・・つむぎさん、どうです?おなかの赤ちゃんと繋がった気持ちは?」
「・・・不思議ね、私は私のままなのに、なんか粘りのある液体の中に浮いている感じ」
「胎児側からの感覚リンク、確認。次は心で念じで『体を動かす』と思ってみてください」
ここは近未来にあるバースコントロールセンター。出産を調整できる施設だ。
昔から、出産は母親だけでなく赤ちゃんも参加している重労働だといわれている。
ここでは母体と胎児の意識をリンクさせ、妊婦さん自身の意思で出産を進めて、
赤ちゃんを制御することで胎位不正や旋回異常を防ぐための技術を研究している。
「こうかな・・・あっ、お腹の赤ちゃんが・・・」
「無事胎動を起こせましたね。思った通りの動きでしたか?」
「はい。・・・とっても元気で、穏やかな胎動だった」
「リンク状態良好、と。では、次のフェイズに移行しましょう」
今回のコントロール実験に志願した妊婦さんはつむぎという名前で、妊娠7か月。
出産までのリンクデータ収集、および出産時のコントロールテストをやる予定だ。
「まずは今日だけでも、赤ちゃんと繋がったまま生活してみてください」
「はい。あっ、今この子、一緒に頷いた・・・ふふっ、なんかくすぐったいかも」
つづく
登場人物
つむぎ:今作の主人公で、安産のために胎児と感覚や思考をリンクした妊婦さん。
二人三脚で出産を進める様子を『リレー小説』にしてみんなで盛り上げよう!
地の文は三人称を徹し、状況の説明やつむぎの様子などの描写メインで行きたいです。
彼女の心境描写はあえてセリフだけに留まって、ドキュメンタリー感を出してみたい。
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当然のことだが、生物の脳は自分という個体専用にできている。
自分以外の個体といろんな感覚を共有したまま生活するということは、
それはすなわち脳に多大な負荷を強いることと同義だ。
よって、胎児とつながるのは一回で最大24時間という制限がある。
リミットを超えたら、母体と胎児の意識の境界が曖昧になりはじめ、
最悪の場合、母体の精神が幼児退行ならぬ胎児退行にすらなりえる。
リミットさえ厳守しておけば、快適な妊娠ライフが保証されるだろう。
なぜなら、要領がいい人はすぐにでもつむぎのように――
「みぎ向いて〜ひだり向いて〜あんよがじょうず〜」
楽しく胎教を始めれるほど、胎動を意のままに操れるようになるからだ。
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胎児との接続は専用の機材が必要なため、施設に通院してからしかできない。
繋がりが切れた時の喪失感に耐えない妊婦は『つなげて欲しい』とまた通院してくる。
依存性高いゆえまだ実験中の治療法とされているが、難産防止での実績は確かだ。
さてつむぎの場合はどうなるのか、続きを見てみましょう・・・
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あれから数か月。
胎児とのリンク実験は予定通りに進み、今のつむぎは臨月妊婦でありながらも、
妊婦なら誰だってあるはずの「お腹の中に異物がある」感じを全くなかった。
しかしその一心同体による副作用か、いつまでたっても産気づかなかった。
予定日超過4週目、推定胎児体重4600。
これ以上は母体への危険が大きいから、ついに陣痛促進剤の投与を認められる。
そして、やっとつむぎの出産が始まった・・・・・・
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「っ・・・」
薬が投与されてから少し経ち、つむぎの表情が変わった。
それを見たスタッフはすかさず
「陣痛が始めたようですね、今はどんな気持ちですか?」
と彼女に聞いた。
「えっと・・・痛いというより、気詰まり・・・かな」
「胎児の感覚が伝わってきてますね」
感覚のリンクを確認したスタッフは、つむぎに指示を出す。
「それでは、次に狭苦しさを感じたら、赤ちゃんを動かせてみてください」
「はい」
しばらくして。
「来たっ・・・んっと、赤ちゃんは頭が下だから、上に・・・うっ!?」
胎動を受けたつむぎの子宮は敏感に反応し、電流のような痛みが走る。
衝撃はそのまま卵膜を破り、つむぎは勢いよく破水した。
「破水しましたね。さ、いよいよ産道へ向かいますよ」
スタッフはにっこりと笑った。
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「く、来るっ!」
「はい、そのままイメージして、粘性の高いプールの中を進むように」
「プール、プ・・・ルぅぅううううぁあああ!!!」
胎児が産道を通過する痛みには耐えれなかったつむぎは、ついに叫びだした。
母体の思考にリンクしている胎児も、つられてパニックになってきた。
「あ、痛い、いたいいたい!赤ちゃんが、あ、あああ!!!」
「陣痛の波が収まったら、いったん深呼吸して落ち落ち着きましょう」
「は、はぁいいい!!」
幸い、指示を聞く余裕はつむぎにはまだあったようだ。
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「すうーはー、すうーはー。」
つむぎは言われた通りに深呼吸をした。
「なんとか落ち着きました。」
深呼吸をしたおかげで少しは落ち着いたようだ。
リンクしている胎児も落ち着き動きが止まった。
「何とか落ち着いた?」
「はい・・・・っ!?」
つむぎを再び陣痛の波が襲った。
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「痛い痛いーーーーーーーーー!!!!!」
再び襲った痛みにつむぎは暴れ始めた。
「落ち着いてくださいつむぎさん!!!」
「主任リンクを切ったほうがいいのでは?」
「まだ破水していないので、そう判断するのには早すぎます。ここは規定通りに。」
「はいわかりました。」
そういうやり取りをした後スタッフ達はつむぎを落ち着かせようとする。
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「痛い、痛い痛い!!!いたああああああああい!!!」
つむぎを再び襲った陣痛はさっきよりも痛みが強くなっていた。
その為つむぎは痛さのあまり手足をばたつかせて暴れてしまう。
「つむぎさん落ち着いて!!!」
その時リンクしていた胎児もつむぎに合わせて手足をばたつかせる。
これを怪我の功名と呼ぶべきか丁度手足の動きでうまいこと産道を進んだのだ。
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すいません2018/04/17(火) 15:57:36 の投稿で既に『破水』してましたね。
私の2019/01/03(木) 09:34:55の投稿の『破水』の部分はなかったことにしてください。
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「主任胎児が産道に入り少しずつではありますが進んでいます。」
「えっ?本当だわ。つむぎさん胎児が産道に入っています我慢して水の中を進むイメージをしてください。」
「ぎゃああああああああーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
もはやつむぎは冷静に対応できる状態ではなかった。
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「主任!!患者の様態が危険です!!リンクの解除を!!!」
「いや、胎児が既に産道に入っているから解除せずにお腹を押して進ませよう。」
スタッフは胎児が既に産道に入っていることからリンクしたままお腹を押すことにした。
「では押します。」
「うむ、押せ。」
そして主任の号令により、スタッフはつむぎのお腹を押し始めた。
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「ぐぎゃあああああああーーーーーー!!!!ぐえええええええーーーーーーーー!!!」
つむぎは自身のお腹を押される痛みだけでなくリンクしている胎児の痛みも感じていた。
また胎児もつむぎのお腹を押される痛みを感じていた。
そのためつむぎは二倍どころか二乗の痛みを感じていた。
なのでつむぎは激痛のあまり普段なら発しないであろうもはや奇声になりかけている悲鳴を上げていた。
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「主任!!やはりリンクを切った方が・・・・」
「まて!!もう少しで頭が見えてくるはずだ。」
既に胎児はあともう少しで出口にたどり着こうとしていたが・・・・・・
「主任頭が出てきません!!」
「何どういうことだ!?」
よく見るとつむぎの恥部はピッチリと固く閉じていた。
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「主任膣が固くて胎児が出てこれないようです!!」
「慌てるな何のため感覚リンクだ?今胎児が大分進んだから陣痛の痛みは弱くなっているはず・・・・」
主任の予想通り痛みはさっきよりかはマシになったらしくつむぎは暴れるのを止めていた。
「大丈夫ですかつむぎさん?」
「はい何とか・・・・」
大分暴れたためか息が乱れているがどうにか落ち着きを取り戻したようだ。
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「よく聞いてくださいつむぎさん、今つむぎさんの赤ちゃんはもう出口の目の前まで来ています。」
「えっそうなんですか?」
スタッフの言葉につむぎはきょとんとする。
「でも出口、つまりつむぎさんの膣が固く閉じてて出てこれないようなんです。」
「じゃあそれじゃあお腹を押してくれたら・・・・・」
「いや固すぎるのでお腹を押しても出て来るのが難しいと思うんですそこで・・・・」
「そこで・・・・・?」
「今胎児とリンクしているつむぎさんあなたが直接出口を開けるんです。」
「ええそんな出来ませんよ!!!もうこれ以上体力も・・・・」
「ほんの少しだけでいいですから。」
つむぎはスタッフの言葉に渋々了承して胎児を動かす試みをしてみた。
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まずつむぎは手を頭の上にかざして突き出す感じで伸ばしてみる。
その動きに合わせてリンクしている胎児も手を動かす。
そして胎児のその手は固く閉じている出口に当たった。
「何か手に当たった感覚があります。」
「そのまま隙間がないかどうか探ってください。」
「わかりました。」
つむぎは手を探るように動かす。
それに合わせて胎児も手を動かす。
そして胎児の手が出口の隙間に入った。
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「あっ何か隙間みたいなのに指が入った感覚がします。」
「よしそのままこじ開けるイメージをしてください。」
「えっ!?こじ開けるんですか?」
つむぎは躊躇った、こじ開けるのは自分の体の一部なので痛いのが確実だからだ。
「つむぎさんこのまま産まれないと赤ちゃんが危なくなりますよ。」
スタッフの言葉につむぎは意を決して隙間をこじ開け始めた。
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ビキビキッビキッ!!!
つむぎの動きに合わせて胎児が出口を広げていく。
それと同時につむぎを激痛が襲った。
「っ!!痛いーーーーーーーーーーーーー!!!」
つむぎは激痛のあまり再び暴れ始めようとする。
「耐えてくださいつむぎさん、ここで諦めると帝王切開になってしまいますよ!!」
「っ!?いぎぎぎぎぎ」
スタッフからの言葉を聞いたつむぎは激痛を我慢して手を動かす作業を続けた。
そうして数分・・・・・
グググググ・・・・・・・・
「主任、つむぎさんの少しだけですが出口が広がりました!!!」
「よしもう一度お腹を押し始めるぞ!!!患者には引き続き出口を広げる作業を!!!」
主任の言葉によってスタッフは再びお腹を押し始めた。
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スタッフにお腹を押されるたびにつむぎに激痛が襲う。
それでもつむぎは痛みに耐えながら出口をこじ開けるイメージをし続けた。
そしてそれをすること数十分・・・・・
「主任!!胎児の頭が!!!」
「よしその調子でお腹を押し続けろ!!!」
ついに頭が見え始めた。
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「つむぎさん頭が見え始めました!!!」
「えっ!?頭が!?」
スタッフから頭が出てきたことを聞いたつむぎは出口をこじ開けるのをやめ息み始めた。
「頑張ってくださいつむぎさん!!」
スタッフにお腹を押されながら、激痛に耐えて息み続けるつむぎ。
頑張ること数分そしてついに・・・・・・・
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ジュルウリッ!!!!!
ほぎゃあほぎゃあ!!
大きな音がしたかと思うとすぐさま大きな産声が部屋中に響いた。
「おめでとうございます!!!元気な男の子ですよ!!!」
「よ、よかった・・・・・」
つむぎは感動のあまり涙を流す。
こうしてつむぎの出産は無事終わった。
つむぎの出産の記録は今後に役立てられていくであろう・・・・・
バースコントロール
完
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