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白く儚げな幼馴染
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僕の幼馴染はアルビノだ。つまりメラニンが作られず、肌、毛、目の全てが白い。
そんな彼女は今妊婦病に感染してしまった...これは、そんな彼女と僕の物語...
Rー18要素、死亡はなしでお願いします。相当な難産を描きたいです。妊婦病の使用許可はくさにんげんさんから取ってあります。
アリス・レイランド(13)
アルビノ患者、胎児は14kgまでなら増やして構いません。身長は154センチほど、胸はBくらいで細身。凄い美人
アレン・プレランス(13)
親が産婦人科のために出産の知識、立会いの経験は豊富。身長は168cmほどと小さいが、超イケメン。
"
"
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彼女に出会ったのは、もう結構、5年以上は前の話。
細かい理由は忘れたけれど、何か理由があって父の仕事先について行ったときだった。
たまたま、廊下の窓から外を見る彼女を見かけたのが最初。
その時の僕はアルビノとかそういうのは全然知らなくて、だからこそ驚いたんだと思う。
絹糸のように艶やかな白い髪。
透き通るような白肌。
そして、うっすら赤みを帯びた瞳。
なにか、得体の知れない綺麗さを感じたのだと思う。
そのときは、お互い顔を見た位だった。
確か、彼女のお母さんが父の患者で、それもあってまた出会い、僕らは友人になった。
そこで初めて、彼女の体について知る。
太陽の光に弱く、そうでなくとも体が弱い。
それを聞いて、僕は不思議と彼女を助けたくなったのだった。
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アレンの身長について、13歳で168というのは欧米人でも大きすぎるようなのですが、そこら辺どうしましょう?
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>>2 160くらいにしときましょう...
周りが以上に高かったのでそこらへんの常識があやふやで...
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コレくらいの年齢になると、なんとなく何がしたいかがわかってくるようになる。
僕が選んだのは、彼女を助けるための道。
父の後を継いで、というのとはちょっと違うけれども、医者になりたいと思ったのだ。
ちゃんとした道に進めるのははるか先だというのに、僕は勉強に没頭していた。
そして、退院した彼女も、僕の行動を知ってか知らずなのか。
弱い身体をおして、よく僕のところへ来るようになったのだ。
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それから僕は、アリスとよく一緒に勉強したり、遊んだりするようになった。もちろん、アリスに無理をかけないように細心の注意を払いながら。具体的には、外で遊ばない、激しい動きを強要されることはやらない...アリスはそれができないことを残念がっていたが、いつも僕が慰めていた。そんな毎日を送っていた12歳のある日...
「アレン...私、あなたが好き、本当に好き。この白い肌が真っ赤に染まっちゃうくらいにあなたのことを考えると体が熱くなるの...アレン...私と、付き合ってくれませんか?」
告白をされた。当然返事はOK、僕らは彼氏と彼女になったのだ...とまあ、僕たちの過去はこんな感じだ。
"
"
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そんな日常が一変したのは、つい最近の事だ。
アリスが「妊婦病」にかかってしまったのだ……。
妊婦病は、正しくは突発性妊娠というらしい。
10代の女性が、突然妊娠するというものだ。
さらに、それで妊娠した胎児はかなりの成長を遂げ、その人物が産めるギリギリの大きさにまで成長してしまうという。
それだというのに、妊娠中絶や帝王切開などを行うと、神経などに何らかの作用があるのか母体が必ず死ぬというもの、
当然、アリスの両親は絶望した。
ただでさえ身体の弱いアリスに妊娠なんて、無茶だと思ったからだ。
しかも、問題はそれだけではなかった。
推定だが、アリスの胎児は、9kgという特大クラスの巨大児になるだろうということまでわかってしまったからだ。
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とりあえず「恐怖の病」文中で私が出した「なんとか自然分娩させたけれど、慢性的な妊婦病になった」症例をアリスとして考えています。
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>>6 それだと突発性胎児成長でしたっけ?を起こさなければいけないのでは...?
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>>7名前書き忘れてました...すいません
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>>7
そのつもりなので現状ではすこし小さめの体重を推定しているつもりです。
年齢については身体が弱くてアルビノ=発育も多少悪いのでは、ということで
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>>9なるほど
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父も、さすがに思い悩んでいる。
実際アリスの身体では、妊娠は難しいだろう。
それに、巨大児ともなれば……。
僕だって当然、解決策が思いつくはずはない。
でも、その中で一人だけ。
一人だけ、アリスだけは悲しんでいなかった。
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>>6 骨盤を砕くなどの残酷な描写は僕は苦手ですね...あくまでも、母体が壊れてしまわないレベル、までしか書けません...
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>>12また名前書き忘れていました...すいません
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>>12
じゃあそこら辺はとりあえず「無し」で行きましょう
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>>14ありがとうございます...もう少し書くということでしたよね、どうぞおかまいなくお書きください。
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>>15
では「なんとか自然分娩はできたが、慢性的な妊婦病に」ということで。
この書き込みで自分がまず書けるところは終わりですので、この後はご自由にどうぞ。
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さすがに、僕もアリスに尋ねた。
すると彼女は、優しく微笑んで言った。
「だって、私はもしかしたら赤ちゃんを産めない身体かも、ってお医者さんに言われてたのよ?」
だから、赤ちゃんが出来たなら運命だから、絶対に産みたい、お母さんになりたいと言った。
お母さんになる。
これはアリスの夢だ。
「したいこと」だ。
なら、僕には止める権利がない。
できることと言えば、彼女を助けることと……一緒にいてあげること、かもしれない。
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それから1週間ほどすると、アリスのお腹が目立ち始めるようになった。何せ2ヶ月間で胎児は7kgまで大きくなるのだ。まあ当たり前である。そこまで胎児がでかくなるのは、母体の栄養をこれでもかと吸収するからだ。そしてその不足分を補うためにアリスの食欲が上がり、そのせいでまた胎児の重さが増える。こんなメカニズム、呪ってやりたくなってしまう。アリスの胎児がそこまで大きくならないように僕は願った。
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普通の妊婦さんや妊婦病患者なら、食事制限や食材を変えればなんとかなる、と父から聞いた。
だが、アリスの場合それは出来ないという。
「いいかアレン……彼女は消化器官も弱い。食事制限をすると母体が栄養失調になりかねないだろう」
「父さん、じゃあどうすれば?」
「……悔しいが、今の私にも出来ることはない」
父のその言葉を聞いて、僕は初めて口にした。
「神様、なんて貴方は残酷なんだ!」
そして、アリスの中で胎児は徐々に育っていく。
あんなに細くて小さい体なのに、お腹だけが……。
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でも唯一の救いは、アリスが笑顔なことだ。
一ヶ月がたち、胎児の重さは3500gとなった。これでも普通の妊婦では臨月でも大きい方、でもこれからこのお腹はもっと大きくなるのだ...混じり気のない白のお腹を抱えたアリスは、なんだか女神のようにさえ見えた。
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「大丈夫、アリス……?」
「うん、私は大丈夫」
それから、父の病院に入院することになったアリス。
気恥ずかしくはあるけど、僕はアリスの世話を任されることになった。
「立てる?」
「うん……っと」
外出のため、着替えることになるアリス。
その着替えもまた、僕が手伝わなきゃならないのだ…・
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「じゃあ上脱がすよ。」
「うん、お願い」
まずは服を脱がしていく。すると、下着が見えてきた。そこから下着も脱がす。すると、小さくてもしっかり存在している胸を隠すような、可愛いブラが見える。僕の理性がやばい。でもここはおさえろ...僕は医者僕は医者...1、3、5、7、11...煩悩に抗いながら、僕は彼女の着替えを済ませた。
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父の病院に入院したアリス、要するに、アリスと僕は、お、同じ屋根の下にいるということになる...やばい恥ずかしい...でもアリスはそんなことおかまいなしだった。会いにいった瞬間に大きなお腹越しに抱き付いてきたり、アレンに抱きついて寝たいなんていったり...現に一回抱きつかれながら寝たことがある。無論、アリスだけが寝て、僕は眠れなかった。僕の理性を褒めて欲しい。
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「あの子、とても明るい顔をするようになったの……あんなに辛そうなのに、今までよりも」
そういうのはアリスのお母さん。
いつもアリスのことを気にかけている優しい人だ。
「だから、あの子を支えてあげてね。お願い」
そう言うと、続けてアリスについての話を始めるのだった……。
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アリスはどうやら、僕に出会うまで家に閉じこもり、1人で泣くことが多かったらしい...学校も制限され、友達はその影響かいなくて...そんな時、現れたのは僕だったらしい。その日から、アリスは少しづつ笑顔を見せるようになった。そしていつの日か...その顔は恋する乙女の顔になったらしい。やばいムッチャ照れる、そしてアリスかわわいい...にしても、アリスは友達もいなかったということには驚いた。そして僕は、アリスと極力一緒にいようと思うようになった。
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そんな僕の様子を見ていたのか、父はある日僕に言った。
「アレン、ちょうど良い機会だし、お前にある仕事を頼もうと思う」
「仕事?父さんの手伝い?」
「ああ……アリスのカルテをお前が書いてくれないか?私が質問するより、お前の方があの子は話しやすいのかもしれなくてな」
まさか、こんな事になるなんて……。
「メジャーの使い方はわかるだろう?難しい事は私がやるから、カルテの基本と記入だけやるといい」
僕は、父に全霊の喜びを表した。
「うん、頑張る……ありがとう、父さん!」
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それから、僕はほとんど毎日アリスのカルテを書いた。アリスからは、
「アレンは私専門のお医者さん!」
などと言われて赤面した。こうやってカルテを書くと、確実に胎児が育っているのがわかる。アリスの真っ白なお腹の中で、胎児はすくすくと育っているのだ...
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二ヶ月が過ぎて、アリスのお腹はかなり大きくなった。
そして、アリスは朝寝坊気味になるようになった。
どうしてなのかは、父が書き加えてくれたカルテを読めばわかる。
(……やっぱり、かなり)
アリスは以前よりよく食べるようになったのに、血糖値が少し低い。
だから朝寝坊気味なのだけれど、原因は当然一つ。
言うまでもなく、胎児に栄養が優先して回ってるんだ……。
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でも、もうそろそろ血糖値も回復するだろう...何せ妊婦病の胎児の成長期、2ヶ月を終えたのだ。ここからは胎児の成長は緩やかになる。
案の定、しばらくして血糖値は回復した。でも食欲はどうにも落ちないらしい。相変わらずそこそこの量を食べていたが、アリスが太る気配はなかった。
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父から定期検診の結果を聞く。
「血糖値は確かに回復しているんだが、食べる量からすると低い……可能性としては母体の負担だろうか」
母体の負担、か……。
何ともできないのがもどかしい、とても。
しばらくして、今度はある日トラブルに、アリスは見舞われていた。
横になっていると息苦しいというのだ。
これの理由もわかる。
もともと呼吸器系もあまり強くないのに、子宮に圧迫されてしまっている。
この場合は、座った姿勢の方がいいらしい。
ちょっと心配だなあ……。
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アリスのベッドは基本的に起こすことになった。僕の心配や不安をアリスに悟られないようにしながら、僕は今まで通りにアリスのカルテを書く。書いて書いて書いて...そんなことの繰り返しで、いつの間にか3ヶ月目は終わっていた。
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4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月。
順調にときは過ぎていく。
ぼくもアリスも誕生日を迎えたし、病院では沢山の命が生まれた。
季節も変わって、最近はよく雨が降るようになった。
今日も僕はアリスの様子を見ている。
本人には言ってないけど、血糖値が少し低いのは相変わらずだし、アリスの食べる量も減らない。
もっとも、一度にじゃなくて少しずつ、ずっと食べているような感じだけれども……。
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アリスの白いお腹は、決してぷ人としているわけではないしなぁ...こと異様な食事は、妊婦病の症状なのだろうか?そんな仮説を立てるけど、そんな症例はない。じゃあ一体なんなんだろうか?答えの出ぬまま、7ヶ月目が終わった。アリスのお腹は大きく出っ張り、そんなに出っ張っていても相変わらず真っ白だ。
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同年代と比べてもあからさまに華奢だから、お腹だけが嫌でも目立つ。
最近は入る服も少なくて、残念だけど病院服を来てもらっているほど。
その病院服の下にあるアリスのお腹は、まるで卵のように見える。
「中に赤ちゃんが居るんだから、本当に卵みたいなものね」
アリスはそんなことを言って、くすりと笑っていた。
9ヶ月目にはいったある日のこと。
僕は、パニックを起こしていた。
アリスのお腹が、突然成長を再開したのだ。
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それも突発的に増えたのだ。いきなり、5kgも。ようやくここで僕は悟った。食欲だけが低下しなかったわけを。つまり、この現象のためのエネルギーを蓄えていたのだ。
「アレン、怖い、私は壊れちゃうの?」
「大丈夫、大丈夫だよ」
取り敢えずそういうが、先例がない症状である。不安でしかない...取り敢えず、増加分の胎児の重さを入れてアリスに産むことが可能か調べて、本当にギリギリだけど可能なことがわかったことが救いだ。
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「父さん……」
「色々見せてもらった。こんなことが起きるとは……」
「アリスは助かる?」
「助けたいが、かなり厳しいだろう。これを見てくれ」
父はそう言って、アリスのレントゲン写真の、腰を指差す。
「ここに通っている神経がとても圧迫されていて、おそらく無事に出産できても後遺症が残るだろう。それに……」
さらに父からは絶望的なことを聞かされた。
「アリスの骨盤は狭すぎる。自然に広がるまで、アリスに出産を我慢してもらうしかないだろう」
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お産を遅らせるなんて、どれだけアリスにとって苦しい処置かわからないが、やってもらうしかないのだ...神様を呪いながら、父に後遺症の内容を聞く。そして、それを聞いた僕は、さらに神様を呪った。妊婦病の慢性化だ...アリスにそれを伝えることは、僕にはできる気がしなかった。
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そして、アリスのところに行く。
でも、何も言えない……。
その時だった。
「ねえ、アレン」
「アリス……」
「私ね、もし赤ちゃんが生まれたなら、とても喜ぶと思うの。無理だって言われてたことができたんだし、私はお母さんになれるんだから」
だから、と言って、僕を改めて見つめるアリス。
「だから、アレん、ずっと私のお医者さんで居てね?」
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僕はその言葉を聞いた瞬間、そっとアリスを抱きしめた。
「うん、僕はアリスの隣にいるよ。僕は永遠にアリスの専属医だ!」
軽くプロポーズをしてしまうあたり僕ららしい。
そして僕は、アリスにアリスの状況、それについての処置を、覚悟を決めた話し始めた。
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覚悟はしているだろうけど、そりゃ恐ろしいだろう。
アリスはやっぱり、黙り込んでしまった。
「ごめん、でも……」
「大丈夫、アレン、私頑張るわ。でも、でもね……」
今だけは泣かせて。
そう言って、アリスは泣き出した。
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一通り泣き終わった後、アリスは眠りに落ちてしまった。白いお腹はアリスを覆うかのごとく大きくなった。この後少し先にアリスが激痛に苦しむなんて考えるだけで嫌だ。できれば痛みもなく産ませてあげたい...でも、それはできない。自分の無力さに、今度は僕が泣いてしまった。
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結局、僕もそこから疲れて寝てしまったらしい。
起きたのは、揃って真夜中だった。
寝苦しかったアリスに僕が起こされたというような形ではあるけれども。
彼女のお腹を枕にするような形だったことをすぐ謝ったけど、気にしてないようだった。
眠れないし、少し暑い。
アリスの身体を冷やさないように気を使いながら、僕は窓を開けた。
すると……。
「みて、アレン!」
言われるままに外を見て、気づいた。
なんと、すごい量の流星群が見えるのだ。
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そうか、ペルセウス座流星群か。こんなに星が流れるのは珍しいな...
「アレン、願いごと!願いごと!!」
アリスはよほど嬉しいのか、僕の腕を抱きしめながら騒いでいる。そうだ、願いごとしなきゃな....
「アリスの赤ちゃんが安産で産まれますように!!」
しばらく考えてから、僕は流れ星が大量に流れる空に向かって叫んだ。
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アリスが何を願っていたのか、僕は知らない。
でも、同じことを願っていただろう確信が僕にはあった。
当然だろうけど、同じはずだ……。
翌日、僕は父に呼び出されていた。
いったい何かというと、ついに決まったのだ。
アリスの出産に対してのプランが……。
「以前言ったように、胎児が骨盤を広げてくるのを待つつもりだ。それに、しっかりした陣痛が来るまでとなると……そこまでて4日は最低かかるだろう」
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「そしてそこから最低4日、最高1週間はかかるだろうな...つまり、アリスは最高で11日は陣痛と戦うことになる」
うそだろ...そんなの、アリスの体力が持つのだろうか。僕の思考は不安で満たされていく...
でも、アリスを信じよう。流れ星にも願ったんだ。きっと、きっと大丈夫。
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問題はいつ生まれるのかだ。
処置ができないから、そこは運任せ。
いつでも、対応できるようにならないと……。
そして、アリスは臨月を迎えた。
早く、早く生まれてくれ……。
動くのも辛そうな彼女を、見ていられない。
僕はひたすら願っていた。
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白いお腹は、痛々しいほどに大きい。このお腹に、超巨大児が入っているのだ。
「胎児が下がってきている気配はないな...少なくともまだあと1週間、長くて2週間は生まれないな...陣痛開始の時の推定体重は14kgを超えそうだな...」
父はそんなことを言っていた。
早く陣痛が始まってくれないだろうか...
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思い悩むまま時が過ぎていって、アリスの陣痛がついにきた。
なんと、16日も後のことだ。
「アレン、任せたぞ……なんとしてもこらえさせるんだ」
「うん……」
父の覚悟のこもった目を見て、僕はまだ初期の陣痛で実感のわいていないアリスの隣に行った。
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「アリス、陣痛はどうだい?」
「まだ大したことないわね...痛みも軽い生理痛みたい」
「まあ、今のうちにゆっくり休んどいてね、これからがまん続きだから。」
アリスの陣痛がどれくらいの早さで進むのかはわからないが、アリスには極力体力を温存してもらおう。それが最善なことには変わりない。
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まだ陣痛が強くないのは幸いだった。
アリスも落ち着いているし、僕が不用心に怖がらせなければいい。
父も、今は必死に対策を調べている最中。
なんとかする、してみせるんだ……。
そして、僕はアリスの覚悟を偶然聞いてしまった。
「ねえ、赤ちゃん……私はあなたが産まれてくるのが嬉しいの。私はあなたが無事だったら、壊れてしまっても構わないわ」
そう言っているところを、偶々見てしまったのだ。
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そんな覚悟を聞いて、僕は泣いてしまう。そしてそのあと、そのことを聞いたことを悟られないように顔を洗った。
そして、その後アリスには、
「アリス、君を絶対に壊させやしない。子供もアリスも助けるよ」
と言っておいた。そうでも言わなきゃ、アリスは無理をしそうだったから...
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僕はそう言った。
けれど、それが難しいことも同時に知っている。
恐らく出産前最後のレントゲン写真。
それを見て、気がついた。
「父さん、これ……」
「ああ、より神経への圧迫が激しくなっている……最悪、アリスは」
歩けなくなる。
最悪、じゃなくてこれは決まりだ。
アリスのために、父からいろいろ教えてもらい、自分で勉強もした。
だからわかってしまう。
でも、だとしたら……だとしたら、僕が助けないと。
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妊婦病の慢性化に続いて歩行不可能...もはや悪夢以外の何物でもない。でもアリスは、自分の体が壊れてもいいという覚悟を決めているのだ。僕はその言葉に少し頼ろうと思う。でもいつか...慢性化した妊婦病も、歩けなくなってしまう後遺症も、僕が治す、治してやる!
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そして、その日の夜のこと。
父の提案で、アリスに一度入浴させることになった。
体を温めて血の巡りをよくすれば、陣痛にもいい作用があるからだという。
当然、誰かが見ていなきゃならないのだけれど……。
父は、何の問題もないかのように僕に任せようとしていた。
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まあ、現に任されてしまったわけだが...今の状況を簡単に説明すると、理性がやばい。そう、なにせアリスの裸体を直視しているのだ。やっぱり真っ白だ。思わず見惚れそうになりながら、アリスを風呂に入れた。
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「アレン……?」
「あ、いや、その、僕、女の子と一緒にお風呂に入るのって初めてだから……」
ドキッとして変な反応を返す僕を見ても、アリスはずっと微笑んでいる。
そして、僕は彼女の手を引いて湯船に入れる。
一緒に入ることになるとは……そう思っていたら、アリスが僕に話しかけてきた。
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「アレン、私はこれからながーい時間をかけてこの子を産むのよね。アレン、産まれるまで私のそばにいて...!」
「いいよ、僕もそうしたかったんだ。」
「わたし、きのこだけは何があっても産む。きっこわたしはこれからs死ぬほど辛い思いをすると思う。それでも...この子を産んであげたい。この腕で抱きしめてあげたい」
そんな決意を聞いた僕は、頑張らねばと決意を新たにした。
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「わかった。そばにいる……僕が居るよ」
そう言って、僕はアリスを抱きしめた。
風呂から上がってしばらくして、はっきり言い切れるほどではないがアリスの陣痛は少し強くなってきたようだ。
時たま顔をしかめては、お腹を抱え込むようにしている。
僕はそんなアリスの背中を擦ってやったり、声をかけたりすることを続けていた。
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「ううん....最初らへんでも結構痛いのね...」
しかめっ面で耐えるアリス、腰を揉んであげながら思うことは...これから先際限なく強まる陣痛にアリスはどこまで耐えてられるかだ。巨大児が子宮口をこじ開ける痛みなんて並大抵のものではないし、それを言うと骨盤を抜ける時なんて死ぬほど痛いだろう。アリスの耐久力も問われるな...そんなことを考えていた。
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一日目はそんな感じで終わって、2日目。
ホンの少しづつでも、陣痛は強くなってきている。
まだ何も出来ないほどじゃないみたいで、今は体力を温存してもらうことに専念している。
そんな中でも僕は、どうしても気になることがあった。
骨盤が開ききるまで最低でも4日。
それって、いつからだ?
骨盤に胎児の頭がはまるとなれば、もう陣痛は強くなってからのはず……。
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「骨盤が開くときには、胎児の頭でゆっくりと押し広げてもらうんだ。だから、胎児が下がって来てからがようやく本番だ。無論、アリスの苦しみは凄まじいだろう。だがそれしか骨盤を開く方法はないんだ。」
父に聞いたら、こんな答えが返ってくる。要するに、アリスは地獄の責め苦を受けるしかないというのだ...
-
これを伝えるべきかどうか、僕は迷った。
生む前ならともかく、陣痛の真っ只中である今のアリスにそれを伝えていいのか。
決めきれない……。
僕は一旦、黙っておくことにした。
2日目の夜。
陣痛は、なかなか強くならない……。
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でも、アリスは少し苦しそうにしている。
「フゥー、フゥー、やっぱり...生理痛よりは痛いわね...」
言えない。。。これ以上の、発狂してししまうような激痛と、この先何時間、何日間と戦わなきゃいけないなんて。僕は、アリスにそのことを黙っておくことにした。現に父からは伝えることを勧められてはいないのだ。本職の指示に従おう...
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「ふぅ〜〜んっんん〜〜〜っ……ぅー」
痛みが長引いてきたのだろう。
アリスの声は、どんどん苦しげになる。
僕がしっかりしないと……。
その一心で、アリスにどんな姿勢が楽かを聞いて、出来る限り助けになろうとした。
-
アリスは、僕にしがみつきながら耐えるのが楽だという。少し照れくさいが、僕はアリスを抱きしめながらアリスの背中をさすったりした。
「ふうぅぅぅぅぅぅ...アレン〜〜痛い〜〜」
「頑張れ〜、頑張れ〜、赤ちゃんも頑張ってるよ」
そう言って、僕はアリスを励ました。
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覚悟はしていたけど、助けるこっちも辛くなる。
それほどまでに、進行が遅い。
確かに強くはなってきているし、確かなんだろう。
でも、それでもだ。
あまりに進みが遅くて、僕にはアリスが苦しむだけにしか見えなかった……。
-
「うう〜、あああ〜いたい、痛いよ〜」
アリスは痛がってはいるが、未だに胎児が下がらないので骨盤が開き始めてもいない。しかし、アリスの体力は陣痛でジワジワ削られている。
「ああぁぁぁ、はぁぁぁ、ううう...」
なんとかできないものか...
-
妊婦病でさえなければ、すぐに帝王切開してるんだろう。
でも、アリスは仮にそうだったとしても、手術に耐えられないかもしれない。
つまり、出来ることは1つ。
待つだけだ、
それまで、僕がアリスを励まして、頑張らせるしかないんだ……。
-
「あぁ〜、ううう、はぁぁぁぁぁぁっ!」
どうやら胎児が少しだけ下がってきているらしい。アリスの苦しみ様が少し変わった。よし、このまま骨盤を広げてくれ...お願いします神様!
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でも、やっぱりそこからが進まない。
そうこうしているうちに夜明けが近くなってくる。
アリスには悪いけど、寝なきゃ……。
結局、かなりの長時間眠ってしまった。
疲れていたのだろう。夢を見た記憶すらない。、
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僕が目を覚ましたのは次の日の朝だった。
「痛い痛い痛い痛いいいいい!!」
アリスの叫び声によって起こされた僕は、すぐさまアリスの元へ駆けつける。そこで目にしたのは、布団にしがみつき、顔をこれでもかと歪めながら痛みに耐えるアリスの姿だった。
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すぐさま父が診断する。
「かなり下がっては来ている……が、子宮口が開いていないし、骨盤にも入りきっていない、かわいそうだが、まだだ」
まだ、だって……?
アリスはこんなに辛そうなのに、まだなの……?
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「ああああああ、はぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!!」
枕を握りしめ、顔を歪め、汗をダラダラかきながら陣痛に耐えるアリス。僕はその横で腰を揉んだりしてアリスの痛みを和らげようと努力する。頑張れ、アリス!
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もどかしさと無力感。
それが、僕の中で強く渦巻いている。
でも、本当に何も出来ない。
まだ何も出来ないのだ。
苦しむアリスを、励ますことしか……。
-
父は言っていた。愛する人が苦しんでいて、何もできないときの無力感は凄まじい。でも何もできないというのは思い込みだ。その人にとって自分がどんな存在なのかを思えば、何をするべきかわかるはずだ...
そうだ、僕はアリスの彼氏なのだ。自分で言うのもあれだが、アリスの最愛の人なのだ。
「アリス...!」
僕はアリスの手を握った。
-
夜まで、特に進展はなかった。
言い方を変えるなら、夜になってようやく進展があったともいえる。
それは、父が触診して初めて分かったことだった。
「子宮口が少し開いてきている……あと、大分下がってきているな。この調子だ」
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「ああああ...はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ...いたい、痛いよ〜〜〜〜...」
アリスの胎児が下がっていることはお腹を見てもわかる。少しだけ、全体的にお腹が下へ行ったのだ。アリスを励ます様にお腹を撫でると、そのお腹はとても硬かった。
-
進みは、驚くほど遅い。
狭いのは胎児だってそうだ。
コレだけ大きいとなると、ゆっくり降りてくる他ないんだろう。
このまま、進んでいくことを祈るしかない。
願わくば、それまでアリスの体力が保ちますように……。
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アリスに陣痛が来るたびに、アリスは下を向き、顔をしかめて唸る。
「ううっ、くっ、あっっっっ!いたぁぁぁぁ!」
そんな様子を見るたびに心が痛くなるが...僕が焦ってはいけない。今はただ、待つだけだ...
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「ううううう………!!」
「アリス、深呼吸して。僕はここにいるから!」
アリスをなだめるために、僕は声をかける。
お腹はさっきより堅くなっていたかと思うと、すぐにゆるむ。
「っ、はぁ、はぁ、はぁ……」
肩で息をするアリス。
助けるために、僕は吸入器を持ってくることにした。
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酸素マスクをつけたアリスは、まるで病魔に冒されている様だった。苦しみ、叫び、お腹を抱えながら荒く息をしている。頑張れ、頑張ってくれアリス!
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>>80
大掛かりな酸素マスクではなくて、スポーツの後などに使うような缶と吸入器が一体化した奴をイメージしてました。
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>>81なるほどです
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しばらくすると、アリスの荒い息はいったん収まる。
緊張しすぎて呼吸が浅くなり、息苦しくなるんだという。
父はそう言う人のために、こういった酸素吸入器をたくさん常備している。
助かった……。
「はぁ、はぁ、はぁ……ふー、ふーぅ……」
落ち着きを取り戻し、深呼吸するアリス。
今は、耐えよう。
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でも、アリスが苦しむのは変わらない。
「あああああいたいよ〜〜〜〜!」
胎児はそんなに下がっていないし、子宮口もほとんど開いていない。それでこの痛がり方だ...
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そして、3日目はそこから大した進展もなく終わる。
とうとう、4日目だ。
あまりに痛がっているから寝不足を恐れていたけれど、それは杞憂だった。
アリスは疲れすぎてしまって、結果的に陣痛だろうと気絶するように眠れてしまっているのだ。
とはいえ、もう悠長に食事なんかはしていられない。
「いっ………あああああっ……!!」
また陣痛が来たようだ。
僕は彼女の手をしっかりと握り直し、背中を擦ってやった。
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「いいっ、ああああっ、いたい、いたいの!腰が、腰がぁぁぁぁあぁぁ!!」
ついに腰まで来たらしい。ここから胎児の頭で骨盤を広げる。アリスは痛みに耐えきれるのだろうか...
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「痛たあああああああああああ!!!」
アリスの絶叫が響く。
「アリス、しっかりして、負けないで」
声をかけて、手を握る。
これしか、出来ることがない。
まだ、まだアリスの出産は始まったばかりなのだ……。
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アリスの胎児が、少しずつアリスの骨盤を広げている。なんでわかるかと言うと、アリスの苦しみ方だ。絶叫してる時が、胎児がアリスの骨盤を広げているとき。そしてアリスは...
「いだい、いだい、イダぁぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
叫びっぱなしなのだ。だから、骨盤は激痛を伴いながらではあるが、開いてきてはいるのだろう...ただし、あとどれくらいかかるかなんて考えたくないけど。
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父の言うとおりで、そのままだったら骨盤の広さが足りず、つっかえてしまうのは間違いないだろう。
それを無事なぐらい広がるまで待つ、とは言っても……。
元々無理があるものを解決するには、もうどれだけかかるかわからない。
「い゛い゛ぃーーーー!!」
歯を食いしばり悲鳴を上げ、それでも耐えるアリス。
早く、早く!
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それから少し経った時、アリスの苦しみ方に変化が出る。「い゛い゛い゛い゛い゛!!...アッ、ギャァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
見るからに痛みが増している。
「お父さん!!」
今すぐ父を呼ばなくちゃ!
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すぐに、父は診断を始める。
見慣れない道具まで持ち出してきているほどだ。
「うむ……これは、ああ……この調子だ……あとは、しばらく耐えてくれ」
この調子。
つまり、進んでいるということだ。
最低でもあと4日……。
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到底そうとは思えないほどに、アリスは苦しむ。
「いだい、ああああああ!!!イダッッッッッッッッッッッーーー!!」
これからさらに酷くなっていく痛みに4日も耐えるなんて...
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「いぃっああぁーーーー!!んんーーーーぁああ!!」
「アリス、力抜いて!」
ひたすら痛みに悶えるアリス。
あまりにもゆっくりすぎて、進展があるとは思えなくなってきた。
でも、だからって何かできるわけじゃない。
どうすりゃいいんだ、僕は!
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僕はただ、アリスの手を握ったり、腰を揉んであげたりしかできない。
「ああっ、そこ!そこもっとつよくぅぅぅぅぅぅ!」
その言葉の通りに僕は腰を押す。これでアリスが少しでも楽になってくれれば...!
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「あぁ、ふぅー……ふぅーぅゔうっ……!」
まだまだ続く痛み。
コレ以上何が出来るかというと、アリスが気をやらないように声をかけ続けるくらいだろうか。
耐えて、耐え抜いてくれ、アリス……!
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それにしても、痛みが長く続く。これは突発性胎児成長がおきた人に起こりやすい症状だ。胎児が大きすぎるが故に、少し胎児が下がったり戻ったりするだけで激痛なのだ。そのせいでアリスは...
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!い゛い゛い゛い゛だあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
この苦しみから逃れられないのだ...
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もう意味のある言葉にならず、ひたすら悲鳴と叫び声をあげるアリス。
たのむ、たのむから早く終わってくれよ……!
そうじゃないと、何も出来ないんだから!
そんなボクに、父は更に絶望的な言葉をかけてくる。
「アレン、辛いかもしれないが……アリスを寝かさないでやってくれ。そうしないと危険だ」
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「アリス、眠くなったら言ってね、起こすから。そうしないと君が危険なんだ。」
「こんな痛くて眠れたらその人天才よ!ううっ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」
反論されてしまった...少し落ち込みながらも、僕はアリスを見続ける。
僕自身も寝てはいけないから注意しなきゃ...!
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正直、父が説明不足なだけでどういうことなのか僕にはわかってる。
眠気はあるとして、アリスが気絶してしまってはいけないってことだ。
もし気絶したらそこまで。
僕らは、アリスの命を諦めるしかない。
それだけは、絶対嫌だ……!
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「ああああああ!!痛い痛い痛いいいぃぃぃ!」
無論、眠気だけが気絶の原因ではない。痛みのあまり...なんてこともあり得る。だから僕は、懸命に腰を押し続けた。
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そして、次の日の朝。
なんとか、迎えることができた。
けど、頭がぼーっとしてきて、うまく働かない。
ああ、ヤバい……。
足下もおぼつかないし、頭がグラグラする。
ダメだ、アリスが……。
意地は張ったけど、さすがに限界。
僕は、どうにもできず眠ってしまった。
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「いやぁぁぁぁぁぁぁ!いだぁぁぁぁぁぁぁぁああぁ!!!」
僕が目を覚ましたのはそれから1時間後、アリスの叫び声に起こされた。アリスにはお父さんが付いている。
「あまり無理しすぎるなよ、倒れたらどうしようもない」
「ごめんね、父さん。」
「ああ...なあアレン、これから言うことは私の独り言だ。そういえば医者はあまり勧めんらしいが、眠け覚しなんてのがこの世にはあったなぁ」
そう言いながら父は去っていく。途中で落としていったのは子供用の栄養剤。お父さん...!
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とはいえ、これでも一発きりだ。
これの効果が切れたら、多分抵抗するまもなく寝てしまう。
でも、僕だって無限に起きていられるわけじゃないんだ。
今は、手を借りよう。
納得して、僕は栄養剤を飲み干した。
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うおっ...これは強烈だ...
材料などが書かれたシールを見ると、サソリのなんとかとか、いかにもやばそうなのまで入ってる。なんというか...かなり起きてられそうだ。
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とりあえず味が余りにもひどいので、口をすすぐ。
ついでに顔も洗って、とりあえずリフレッシュ。
アリスのところに戻らないと……。
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「い゛だい゛い゛だい゛い゛だい゛!!!」
アリスの苦しみ方は明らかにひどくなっていた。赤い目からは痛みのあまりに出てきた涙が流れ、顔は痛みに歪み、お腹は陣痛のたびに収縮してるのがわかるくらいだ。明らかに痛そうだ...
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まだ、何かできるわけでも……。
それでもただ、僕は励まし続けた。
その一方で万一を考え、父は準備に入る。
最終手段の準備だ。
もし、ダメだったときの……。
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「いいか、いざという時は、アリスに特殊な麻酔をかけて、骨盤をどうにかして産ませるしかない。それしかアリスが助かる道はなくなる。いいか、覚悟はしておけ」
全身が恐怖で震える。そして、絶対にアリスを気絶させられないという使命感が湧いた。
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あくまでも万一の準備なんだ。
無事に産ませることさえ考えれば、大丈夫だ。
自分にそう言い聞かせて、用意をする。
流石に人の手が足りないということで、この準備が終わったら父が知り合いの医師を呼んできてくれるらしい。
そうすれば、僕はアリスに付きっきりでいられるはずだ。
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手術の用意については、一応そのつもりです。
さすがに何も用意してないのは変だと感じたので。
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「全く、こちとら休みだってんのにとんだ迷惑だぜ...」
「そんなことを言いながらこんなとこに来たのは自分だろう...ほれ、患者のカルテだ。」
父の大学時代からの親友、ユリウス・マッカートラスは、隣町で産婦人科をしている。父とは常にライバルだ。
「えーっと、13歳でアルビノで体が弱いのに妊婦病...突発性胎児成長まで起きてるじゃねえか、お前大変だなぁ...」
「なあに、息子が優秀なもんでね、あまり苦労はしてないさ。」
「ちくしょー、俺が独身なこと知ってて〜!」
「結婚しないお前が悪い」
こんな会話が繰り返される。本当に仲がいいなぁこの二人...
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「だいたい、結婚してる男性の産婦人科医ってのは患者の周りが嫌がるんだよ、オレの近くじゃ」
「はあ、難儀なもんだな」
「郊外の医者はいいねえ……全く!」
そんな口喧嘩のようなやり取りをしてるけど、ユリウスさんの作業は手早い。
隣町とはいっても、ユリウスさんの働いているあたりは大都市。
すごく忙しいから、こうやって話しながら作業をする腕がないとやっていけないんだとか。
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取り敢えず、他の患者さんはユリウスさんがほとんど診てくれると思う。これからは僕はアリスのみ、父はアリスを中心にたまに他の患者さんのところへ、というシステムで動ける。そうと決まれば、早くアリスのとこへ行かなきゃ!
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駆け出そうとした僕を、父が止める。
「せっかくだ。ユリウスの仕事ぶりを見てくるといい」
「で、で、でもアリスは」
「父さんが見るから大丈夫だ。それに……普段見ていない人の仕事にも、何かヒントがあるかもしれないぞ?」
そう言われて、僕ははっとなった。
これからアリスのことをずっと助けていくためには、医者になる外ない。
たしかに、そのためには父以外の人のやることを知る必要もあるかもしれないんだ……。
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ユリウスさんの仕事は手際が恐ろしくいい。何人分ものカルテにあっという間に目を通し、病院銃をかけていく。診察もお手の物だ。しかもその中にミスはない。ここまで手際よく仕事ができるようになりたいな...
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一時間ほどユリウスさんの仕事を見て手際を参考にしつつアリスのもとに戻ることにした。
「い゛だい゛よぉぉぉ!!!」
慌てて僕はアリスの腰を必死にさする
そして、アリスの陣痛が多少ましになったとき小さな声で
「アレン…… ずっとそばにいて… そばにいるだけでいいから…」
と小さな声で言われてしまった。
僕はアリスのそばを離れない事を誓った
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陣痛は続いているもの胎児が出てくる様子はなくアリスは激痛に苦しみ続けた。
結局今日も進展はなくその日が終わった。
それからも激痛が続きアリスは眠ることも許されないと言う(もっとも激痛のお陰で眠りたくても眠れないらしいが・・)地獄が続いた。
本格的な陣痛が始まってから4日が経った。
とうとう4日目が来たものの産まれてくる様子はまだない。
検査によると少しずつではあるけど進んでるらしいんだけど・・・・・・・
この様子だと父が懸念していた通り出産に1週間もかかりそうだと僕はそう思った。
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そしてそのまま4日目も進展なく時間だけが進みそのまま5日目に入ってしまった。
5日目もアリスを激痛が襲うものの産まれてくる様子はない。
「はあ・・・はあ・・・はあ・・・・」
アリスは長く続く痛みのあまりもう言葉も発せないでいた。
胎児は進んでいるには進んでいるらしいのだが、傍目にはそうには見えなかった。
(本当に進んでいるのならもうすぐ産まれてもいいだろ!!!)
僕は内心怒りでそう思っていた。
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とうとう5日目もそのまま出産することなく終わってしまった。
遂に6日目を迎えた。
「はあはあ・・・・」
痛みは少しだけ和らいでいるらしくアリスはそれまでと比べるとまだ楽そうに見えた。
「大丈夫アリス?」
「うん大丈夫だよ、まだ痛いけど・・・」
「そう・・・・」
「でもまだ赤ちゃん産まれていないから、お母さんである私が音を上げるわけには行かないよ。」
僕と同い年なのにもかかわらずアリスはそう力強く言った。
-
(アリス自身が頑張っているのに、僕が音を上げるわけには行かない。)
僕はそう思い決心した。
そしてそのまま時間が経って7日目の朝を迎えるかと言う頃に。
アリスのアソコから赤ちゃんの頭が見え始めた。
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頭が見え始めたもののそこから進むのは遅かった。
「う、うううううう〜〜〜〜うううう〜〜〜。」
その間アリスは痛そうにしていた。
「少しずつではあるが進んでいるぞ頑張れ!!」
父さんが言うには少しずつではあるが進んでいるらしい。
「頑張ってアリス!!!」
僕はそう言いアリスの手を強く握った。
-
頭が出てからもうすぐ1時間以上が経とうとしていた。
幸いなのはこの状態なのにまだ破水していないことだ。
そのため赤ちゃんは半透明の膜に包まれた状態で出てきていた。
そうしている内に頭の全部が出てこようとしていた。
「よしもうすぐで完全に頭が出るぞ!!」
お父さんがそう言った途端。
パチンッ!!
バシャーーーー!!
大きな音と共に膜が破れ水が流れ出てきた。
遂に破水したのだ。
-
「破水したないよいよもうすぐだ。」
アリスの破水を確認したお父さんがそう言った。
この悪夢ももうすぐ終わる、そう思っていると最後の最後で大きな難関がやってきた。
ビキビキィ!!!
「あああああああああああーーーーーーーーーー!!!」
まるで今にも何かが引き裂かれそうな音がしたかと思うとアリスが大きな悲鳴を上げた。
「ア、アリス!?」
「大きい胎児が無理やり産道を広げて進んでいるから痛いんだ。」
アリスを診たお父さんがすぐにそう言う。
僕は悲鳴をあげるアリスに何もすることが出来なかった。
-
「どうやら裂けてはいないようだな・・・・・・不幸中の幸いと言うべきか・・・・・」
アリスの容態を診ているお父さんがそう言う。
不幸中の幸いとと言うべきなのかアリスの産道や性器は裂けていはいないようだ。
「とは言え油断は出来ない。少しの異変にも気付くように傍を離れるわけにはいかないな。」
お父さんはそう険しい顔で言った。
その間にもアリスは痛みが続いているらしく叫び続けていた。
-
僕はアリスに何も出来ないことに少し顔を暗くしているとお父さんが俯いている僕に気付いて声を掛けてきた。
「どうしたアレン?」
「いや僕苦しんでいるアリスに何も出来ることがないと思って・・・・・」
「そんなことないぞアレン、アリスは君が傍にいるだけでも十分大きな励みになっているんだよ。」
「そうなの?」
「ああそうだ。」
僕はお父さんの言葉を聞いて少し元気を取り戻した。
「それよりも時間が掛かっているが大分進んだぞもうすぐ肩が出てくるほら見てごらん。」
僕はお父さんにそう言われ赤ちゃんを見てみた。
「大分出てきている・・・・・」
お父さんの言う通り赤ちゃんはもうすぐ肩が見えそうな所まで出てきていた。
-
ズリュ!!!
大きな音がしたかと思うと赤ちゃんの肩が完全に出てきた。
「よしもう少しだぞ頑張れアリス!!」
お父さんに言われたアリスは最後の力を振り絞って今までよりもさらに強く息んだ。
「んんーーーーーーーんんーーーーーーーーーーっ!!!!」
-
アリスの頑張りもあって赤ちゃんは大分進んだ。
だけど腰の辺りまで出てきた所でアリスは体力が尽きてしまった。
「お父さんアリスは大丈夫なの!?」
「大丈夫だよ命に別状はない。だけど・・・」
「だけど?」
「これ以上は息むことが出来無さそうだ。仕方ない胎児は腰まで出てこいることだし後は引っ張って出そう。」
そう言いお父さんはアリスの赤ちゃんの腰の辺りを掴んで引っ張り始めた。
ジュリジュリ!!!
ビキビキィッ!!!!
「ッ!--------------!!!」
引っ張られている間もアリスは痛いらしく、アリスは既に声にならない悲鳴を上げていた。
「アリス・・・・」
僕がアリスの為に祈っていると・・・・・・・・
-
ジュポンッ!!!
ホギャアッ!!!ホギャアッ!!!
何かが抜けるような大きな音がすると共に赤ちゃんの泣き声が聞こえた。
「よし産まれたぞ!!!」
お父さんがアリスの赤ちゃんを抱きかかえながらそう言う。
「やっと産まれたんだ・・・・・」
僕は出産が無事に終わったと言う安堵とアリスの赤ちゃんが無事に産まれたと言う感動の両方の感情が湧き出ていた。
その後赤ちゃんは体を洗った後検査を受けるが普通のあかちゃんより巨大であること以外は特に問題のない健康優良児だった。
アリスは出産のダメージが大きく暫くの間そのまま寝込んでしまうことになった。
そしてそれから7年後・・・・・・・・
-
僕とアリスは大人になった。
お父さんの言った通りアリスは歩けなくなってしまった。
あれからもアリスは妊娠した。
毎年ではなかったものの、既にアリスは5人の母親になってしまった。
不幸中の幸いないなのは最初の1回以降突発性胎児成長は発症していないが。
そして今年もアリスは出産する。
まだ妊婦病の治療法は確立していない。
だけど足の方は進展があった、将来再びアリスは自分の歩けるようになるかもしてれない。
僕はあの時に決意したとおり医者になった
そして僕とアリスは結婚した。
と言っても籍を入れただけで式はまだしていない。
式は妊婦病はともかく少なくともアリスが歩けるようになってからにしたい。
そのためにも僕は治療の為の研究を続けている。
アリスとアリスが産んだ子供たちと一緒に暮らす日々の為に・・・・・・・
END
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