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死せる妊婦・プレブナント
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「フフ・・・もうまもなく完成するぞ・・・死せる戦士、レブナントがなぁ・・・!」
うすぼんやりと暗闇被う部屋の中、黒いローブの若い男がニヤリと笑う。
部屋の床には魔方陣が描かれており、その真ん中に妙齢の女が裸で横たわっていた。黒髪豊かで豊満な肉体だが、その腹は大きく膨らみ目立つので臨月に近いのが判る。
しかしそのぽかんと口を開けている顔に生気はなく。さらに肢体のいたるところが縫合糸で継ぎ接ぎになっている。
その妊婦は屍体であった。
「さぁ思う存分使役してやるから蘇るがいい、この私の手と足となり働き戦うのだ・・・!」
男が屍体の腹に手を当て、なにやらぶつぶつと呪文を唱え出した。
すると屍体の体がぼんやりと輝き始め、次第にバリバリと電流のような激しい光へと変化した。それを見た男が手を離し、後ろに下がる。
光の奔流が部屋を包み込んだ。やがて光が弱まってゆき、部屋は再びうすぼんやりの暗闇に被われた。
突然、屍体の体がビクンと動いた。そしてゆっくりと目を開き、ゆっくりとゆっくりとだが上体を起こしたのだ。
「あ・・・あぁ・・・あ・・・?」
声にならない声をあげ何が起きたか理解できないまま、蘇った妊婦は辺りを見回し男のほうを見た。妊婦と目が合った男は嬉しそうな笑みを浮かべ狂喜した。
「く、くはは・・・!!!やったぞ成功だ!!!この私、ブロワールの自信作のレブナントだ!喜べお前、お前は再びこの世に蘇ることが出来たんだよ!このブロワールのおかげでな!!!」
男は高らかに声をあげ笑い続ける。妊婦がぽかんと男を見つめている。
「あぁ・・の・・・?」
「おっとそうだったな、お前に名前をつけなければな。そうだな・・・お前の名前はロザリアだ。私の為に働けよ、ロザリア?かーっはっは!!!」
再び声を高らかにあげ笑い出すブロワール。そんなブロワールを尻目に、ロザリアを自分の体に目を下ろし大きく膨らむ腹を見た。
「あ・・・・・あた・・・しの、あかちゃ・・ん・・・」
ロザリアはただただ心配そうに自身の腹をなで続けるだけであった。
ロザリア(享年25) 元々は死体であったがブロワールの手によって復活させられた妊婦。ブロワールの魔力と死者であることにより生前とは比べ物にならない力をもつ。
ブロワール(23)ロザリアを蘇らせた魔術師。その腕は確かだが性格は高飛車で傲慢。
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ブロワールから渡されたボロっちいマントを羽織って、上の階へと案内されるロザリア。まだこの世に復活させられたばかりなので歩き方がぎこちない。壁を支えにしてなんとか階段を上る。
上った先はどうやらブロワールの研究室らしくごちゃごちゃとよくわからない器具や本、なにに使うのかよくわからない怪しいものが散らばっていた。なにやら血のついたものまである。
「さぁてと…」
ブロワールが近くにあった椅子にどかりと座ってロザリアのほうを見た。困惑するロザリアは思わず聞いた。
「あ・・・あの、あ、あなたは一体何者・・・なんですか?あと・・・あたしを蘇らせたって・・・あたし死んでしまっていたのですか?」
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「まあそういうことになるな。」
「あのぅ私は蘇らされて何をされるのですか?まさか実験体に・・・・」
ロザリアが質問をする。
「いや私の助手的なことをすればいいだけのことだ。既に実験は終わっているのだからな。君を蘇らせるという実験をな。」
ブロワールが答える。
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ブロワールの言っていることに嘘は無かった。
屍体を蘇らせるのはこれが初めてなのだから。
ブロワールは蘇らせたロザリアを自分の雑用だけでなく戦力としても使う予定だったが思わぬ誤算が起こる。
ガチャーーーン!!
「ご、ごめんなさ〜〜い!!」
「き、貴重な標本が・・・・・・・」
ロザリアは極度のおドジだった。
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「しまったな、まさかこの女ここまで役立たずだったとは・・・これじゃ戦闘は愚か家事をさせるのも難しいか・・・・」
ブロワールは悩んだ。
「仕方ない戦力として使うのは諦めよう。産まれてくる胎児の方に期待するか・・・」
ブロワールは産まれてくる子供を教育して自分の優秀な部下にしようと考えたようだ。
「まあとりあえずせめて家事くらいはできるようにしてもらわないとな・・・・」
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それからしばらく経った。以前とはうって変わりテキパキと掃除と洗濯をこなすロザリアの姿があった。
だがその後ろのほうでロザリアに向かって手を翳しているブロワールがいた。
簡単なことでブロワールの魔力によってロザリアは動かされているだけなのであった。人形遣いに使役される操り人形のようなものであった。
「よいかロザリア、このように家事とはこなすものだ。これらの一連の動作を頭と体とそのぼて腹に叩き込めるがいい!」
「は、はい・・・あの、お腹に叩き込むのはさすがにお腹の子が可愛そうです・・・」
「うるさいぞ、集中しろ!」
「は、はいぃ・・・!」
しどろもどろになりながらもロザリアはお腹を揺らしてテキパキと家事をさせられるのであった。
(やれやれ・・・こいつの為になんで私は家事を教えねばならんのだ。どちらが雑用係なのだ・・・・・・)
ブロワールはため息をついた。
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おまけにロザリアは今回の妊娠が始めてだったらしく出産に関しての知識も殆どなかった。
元々彼女の故郷では出産の時に産婆が指導してくれるらしいのだが、その前に死んだため教えてもらっていなかった。
そのためそれもブロワールが教える羽目になった。
無論男のブロワールに知識があるはずもなく、今ブロワールは出産に関してのことを調べている。
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「くそ!なんで私がこんなことまでせねばならんのだ・・・まったくどこまでも手間の掛かるレブナントだ・・・」
舌打ちし、イライラしながらお産に関する本を読む進めるブロワール。ロザリアは申し訳なさそうに縮こまる。
「うぅ・・・すみません・・・」
泣きそうな顔で自身のお腹を撫でるロザリア。
「はぁーめんどくさいな・・・いっそのこと腹を捌いて赤子を取り出すかなぁ・・・」
「ひえ、そんな殺生な!・・・せめてお腹の子だけはお救いを・・・」
「冗談だ、もともと死んでたくせに怯えるんじゃない!だいたい腹を切って赤子を取り出す方法ってのはその腹の子だけでも救う手段なんだぞ、やれやれ・・・」
ため息をついて背筋を伸ばすブロワール。本をバタリと閉じる。
「そうだなロザリア、お前さんがどこまで成長したのか確認するためにお使いをしてもらう。隣の町まで行って実験の材料を買って来い」
そう言ってロザリアに材料が書かれたメモと少量の金貨が入った袋を渡した。
「あ、は、はい、それでは行ってきます・・・!」
「あぁ待て!そんな格好じゃあ捕まるぞ!私のローブを羽織れ!」
ブロワールが止めるのも無理はない。ロザリアはボロのマントを羽織っただけの姿だったからだ。
ボロのマントなのでムッチリと肉付きはよいがツギハギのある青白い肌に大きなお腹が丸見えになっているのであった。
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「一人で出かけるのは初めてだけどメモあるし大丈夫だよね。」
そう言い隣の町へと向かった。
「着いたのは良いけど、メモに書いてあるものってどのお店で売っているのかな?」
どのお店で売っているのかわからずロザリアは街をうろうろする。
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その時である。
突然背後から誰かがぶつかってきた。
「きゃっ?!」
思わず声をあげるロザリア。後ろを振り返るとまだ幼さの残る少年がいた。
「お腹の大きなおばさん、ごめんね!」
少年はそう謝るとすぐ様いずこかへ走り去っていった。
「はぁ、驚いた・・・お腹の子もびっくりしちゃったわね・・・それにしてもおばさんだなんて・・・あら・・・?」
ふとロザリアは違和感に気づいてローブのあちこちを触り始める。
「どうしよう・・・財布がどこにもない!」
さきほどまであったはずの財布がなくなってしまっていたのだ。
「・・・・・・ひょっとしてさっきのボウヤが・・・?ま、待って!」
ロザリアは急いで少年が走り去ったほうへ小走りし、後を追う。
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ロザリアは必死に少年を追う。
「はあはあ、待ちなさーい!!」
大きなお腹なのにもかかわらず息切れせずに追いかけれているのはレブナントだからと言える。
がしかしそのお腹のせいか走る速度は早いとは言えず中々少年に追いつけない。
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「はぁ、はぁ…ま、待って…」
我が子が宿る孕み腹を手で抱えながら少年を追う。数分くらい走り続けただろうか。
肩と腹を揺らして、町外れにある寂れた貧民街にたどり着いた。しかし少年は姿はどこにも見えない。逃がしてしまったようだ。
「あぁ、どうしよう…このままじゃあブロワールにお仕置きされちゃう…」
ブロワールに様々な拷問をされる己自信の姿を想像して身震いするロザリア。
取り敢えず、しらみつぶしにそこらにある家中の窓という窓を覗いてゆくことにした。
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ロザリアは家中の窓と言う窓を見るがそれらしい人影は見当たらなかった。
「はあ、どこに行ったの・・・・・・・?」
ロザリアが溜息をついていると話し声が聞こえる。
「うん?何だろ?」
ロザリアが話し声のする路地裏を覗くとそこにロザリアから財布を取った少年がそこにいた。
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ロザリアを聞き耳を立てる。
少年はどうやら男と話しているようだった。
「おじさん…いつものお薬を…!」
どうやら男は薬売りのようだった。
少年が盗んだ財布から硬貨を取り出し男に支払う。男は懐から薬が入った袋を取り出し少年に手渡した。
「ありがと、おじさん…!」
少年は男にそう言うとさらに路地裏の奥へと走り去っていった。
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ロザリアは薬屋のことも気になったが少年の後を追うことにした。
「誰のための薬なんだろ?」
ロザリアはそう思いながら後をつける。
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大きなお腹を庇いながら少年の後をこっそりと追い続けるロザリア。
やがて少年はとある住居の中へ入っていった。
ロザリアはこっそり窓から中の様子を覗いた。
狭い部屋の中に粗末なベッドがあり、その上には病的に痩せ細った女性が寝そべっていた。その女性のすぐ側にあの少年が駆け寄っている。おそらくあの少年の母親なのだろう。
二人の様子を探る為にロザリアは聞き耳を立て集中する。
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「もしかしてあの子母親病気なのかな?」
ロザリアはそう思った。
「あっ!!ブロワールさんなら病気治せるかも!!」
ロザリアは名案を思いついたと喜んだ。
ちなみにブロワールのことはさん付けで呼んでいる。
ロザリアは既にお使いのことなど忘れてしまっていた。
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いそいで元来た道を戻ろうするロザリア。
その時である。
「誰かいるの!?」
少年が窓から覗いていたロザリアに気づいたようだ。
「ま・・・まずいわ・・・!」
覗き見がばれて慌てるロザリア。
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ロザリアはすかさず身を屈めた。
「見つかりませんように。」
ロザリアは息を潜めて待つ。
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「おいそこにいるの誰だ!!」
「ってばれてる〜〜〜〜。」
思わずロザリアは逃げてしまった。
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そしてそのままロザリアはブロワールのところに帰ってしまった。
「はあ・・・・・どうしよう帰ってしまったわ・・・・・・」
ロザリアは扉の前でウロウロしていた。
「う〜む起こったこと素直に話せば許してくれるかな?」
そう言いロザリアはドアを開けた。
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「おお、帰ったかロザリア。んで頼んだものは?」
「そ、それが実は・・・・・」
ロザリアはブロワールに起きたことを全て話した。
「なるほど少年にお金を掏られるとはな、まさかここまで間抜けとは・・・・・」
「あのぅ怒らないのですか?」
「元々お前がドジなのは既に知っていることだ。一々怒ってられるか。むしろ通り越して呆れているわ。」
ブロワールは大きくため息を吐いた。
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「よしとりあえずはまず少年のところに行くか。」
「ブロワールさんまさかその少年に呪いを掛けるのですか!?もしくは抹殺!?」
「するか!!人を殺したり呪ったりしたら、困るのは私だ。噂がたって下手に動けなくなる。」
「じゃあなんで?」
「少年の母が病気だと聞いてな、私なら直ぐに治せると思ってな。」
「えっ?治してくれるんですか!?」
「言っておくがあくまで研究の成果を試したいだけだからな。」
ブロワールはそう言う。
「ブロワールさんって意外と優しいんですね!」
「うるさい!」
ロザリアの言葉にブロワールは照れたように叫んだ。
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「ふむロザリアその親子のところへ案内してくれないか?」
「はいわかりました。」
そしてロザリアとブロワールはその親子のところへ行く。
「ここですブロワールさん。」
「ふむ。」
そう言いブロワールは家へ堂々と入って行く。
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「!?おい何だお前勝手に人の家に入って・・・・・・・ってあんたは!?」
「ど、どもぉ・・・・・・」
ロザリアは思わず挨拶をする。
「少年、私の使いが世話になったようだな?」
「もしかして金を盗った仕返しに来たのか!?」
「そうではないお主の母の病気を治してやろうと思ってな・・・・・・・」
少年の問いにブロワールが答えた。
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「な、治せるのか!?」
「それは診てみないとわからない。」
「わかった。」
少年はブロワールに任せることにした。
そしてブロワールは少年の母の容態を診る。
「むむむむむむ、むむむむ。」
「どうですかブロワールさん?」
「どうなんだよ、おい変な格好のおじさん!」
「おじさんとはなんだ小僧!私はまだ23だぞ!!それにこの格好はれっきとした魔術師の・・・・・・」
「あれブロワールさんって私よりも年下なの?」
「ロザリア今はそれは関係ないだろ!!それより集中できないだろ。静かにしてくれ!!」
ブロワールの言葉に二人は沈黙した。
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「ふむふむこんなの簡単だ。」
ブロワールがそう言った途端ブロワールは手を少年の母に当てる、するとブロワールの手が光り始めた。
ブロワールの手が光り始めて暫くすると少年の母の血色がみるみる良くなり健康的になっていく。
しかも痩せ細った体もみるみる肉付きが良くなり健康な体になっていく。
「よし終わったぞ。」
ブロワールがそう言い終わった頃には少年の母はさっきまで病気だったとは思えないほど健康的ですっかり元気になっていた。
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「すげぇ母さんの病気が治った変な格好のおじさんありがと!!」
「だから私はおじさんじゃないし、この格好も・・・・」
「ありがとうございますなんと御礼をすればいいのやら。」
少年の母親がお礼を言ってきたのでブロワールは言うをやめ一旦咳払いをする。
「むっまあ、私はただ自分の力を試したかっただけだ。それよりも小僧。」
「ん、なんだ?」
「あの薬はどこで買ったのだ?」
「そ、それが?」
「言っておくがお前の母親の病気の原因はあの薬だぞ。」
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「えっ?それってどういうことだよ。」
「小僧、お前の母親は病気ではなかったのだよ、あの症状は毒による物だ。」
「!?毒って、ま、まさか・・・・・・」
「そうお前が薬だと思っていたのは毒なのだよ。」
少年はショックだった。
なにせ自分が薬だと思って買ってきていたのが、母の病気の原因だったのだから。
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「そう落ち込むな小僧。この毒は魔法薬の一種でな病死のように見せて殺すための道具だ。素人にわかるはずがあるまい。」
「・・・・・・・・・・・」
ブロワールがそう声を掛けても少年は落ち込んでいた。
「さてと小僧、この薬を売ったその薬屋の元へ案内してくれないか?」
「えっ?」
突然ブロワールの言葉に少年はきょとんとする。
「なにお主は私の使いから盗った金でこの薬を買ったみたいだからな。取られた金を取り返すだけだ。」
「犯人をこらしめてくれるのか?」
「お前が金を盗った事を不問にしてやるのだがそれでは不満か?」
「・・・・・・・わかった。」
「よしロザリアいくぞ。」
「は、はい!!」
こうしてブロワールとロザリアは少年に案内されて件の薬屋の元へ向かった。
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「あのひとだよ・・・・」
「あの男が件の薬売りか・・・」
ブロワールはそう言い少年とロザリアを連れて薬売りのところに行く。
「ん?どうしたのかな坊や・・・・・・・ってお前はブロワール!!!」
「ふん、私のことを知っているってことはその手のものだな?」
薬屋はブロワールを見て動揺する。
「何のようだ!」
「何お前が薬と偽って毒を売っているのと聞いてな・・・・・・」
「くそ捕まってたまるか!!!」
そう言い薬売りは魔法を放つがあっさりとブロワールに防がれてしまう。
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「なっ!?」
「ふん、お前程度の者がこの私に敵うと思っているのか!!!」
あっさりと渾身の魔法を防がれた薬売りは何か手段はないと周りを見てロザリアと少年が目に入った。
「ちくしょ!こうなったらおめえらを人質にして・・・・・」
そう言い薬売りはナイフを持ちロザリアと少年に向かいます。
「きゃああああーーーーこっちに来ないで〜〜〜〜。」
ロザリアは思わず接近してきた薬売りの手を掴み背負い投げをしてしまった。
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ドシーン!!!
「ぐえっ!!」
薬売りは地面に叩きつけられ、ブロワールはそこをすかさず拘束魔法で動きを止める。
「やれやれロザリアは曲がりなりにもレブナントだ、それに接近戦を挑むなど馬鹿な男だ。」
ブロワールは薬売りの行動を見てそう言う。
「あのブロワールさんそれって褒めているんですか?貶しているんですか?」
「そんなことは別にいいだろさてそれよりも。」
ブロワールは動けなくなっている薬売りの方に向く。
「やはりどこかで見覚えのある顔と思えば指名手配犯の毒殺を得意とする殺し屋ウルバではないか。」
ブロワールは薬売りを見てそう言う。
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「えっ!?殺し屋おじさんが・・・・・・」
「ああ、そうだ。」
少年の質問にブロワールが答える。
「そんな、信じていたのにおじさん・・・・」
悲痛な目で少年はウルバを見る。
「この貧乏糞ガキ!!貴様がブロワールの使いから金を盗らなければ、バレなかったんだぞ!!!」
「なっ!?」
ウルバは少年に悪態をついた。
確かに金を盗んだ少年も確かに悪いが、毒を薬だと偽って売っていたウルバも人のことは言えない。
殆ど八つ当たり当然だった。
「丁度良い実験台がいて金も稼げて一石二鳥と思ったらこれだ。畜生め!!!」
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「ふん好きなだけ言っておけ所詮負け犬の遠吠えなのだから。」
「きさまぁ・・・!!」
「とは言え煩いから黙らせておくか。」
ボコッ!!
ブロワールはどこからともなく持ち出した杖でウルバの頭を叩き、叩かれたウルバは気絶した。
「あのうブロワールさん、杖ってそういう使い・・・」
「わかっているから言うな。」
「はい・・・」
「それよりもロザリア。」
「この男を役所に引き渡してくれ。ちょうど賞金首だから賞金をもらえるだろう。」
「何で私なんですか?」
「いや私はそれなりに名が有る上に、政府や役所の連中とはどうも折り合いが合わなくてな。」
「そうなのですか?」
「お前ならあまり名を知られていないし、役所の連中と揉め事を起こさないと思ってな。」
「もしかしてブロワールさん揉め事を起こしたんですか?」
「うるさい!!今はいいだろそんなこと。それより早く行かんか!!」
「は、はい」
ロザリアはウルバを文字通り持って、役所へと向かった。
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おおよそ30分ぐらい経った頃にロザリアは帰ってきた。
「ブロワールさん、言われたとおり役所に引き渡してきました。」
「ふむ、で賞金は?」
「はい賞金ならちゃんと。」
「ほういつも失敗ばかりするお前にしては珍しい。」
「もうこれくらい出来ますよ!!」
ロザリアは顔を真っ赤にして怒る。
「わかった、わかったからそれよりも早く賞金を渡さんか。」
「んもう。」
ロザリアは膨れっ面で大きな袋をブロワールに渡す。
ジャラリ。
「す、すげえ。」
その中には沢山の金貨が入っており、それを見た少年は驚いた。
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「ふむこれなら。」
そう言いブロワールは袋から、モーリーが少年から盗られた分だけの金貨を引いた後、残りの金貨が入った袋を少年に渡す。
「えっ?」
「小僧にお主にやろう。」
「い、いいの?」
「私はお前から盗られた分の金さえ取り戻せればそれでいいのだ。そもそも私は金に困っていないし、そこまで富になど興味がないのでな。」
「あ、ありがとう・・・・・」
「気にするなそんだけあれば暫くの間は金に困らないから盗みは行わないだろうと思ったまでだ、もっとも母親が元気になった今その必要もないだろうけどな。」
「ありがとうおじさん、これからはちゃんと真面目に働いて稼ぐよ。」
「お!、おじさ・・・・・!まあ良い変な格好がなくなっただけでもマシか・・・・、帰るぞロザリア。」
「あっ、はい!!」
「ばいば〜い、おねえちゃんとおじさ〜〜ん。」
こうして騒動は解決したのだった。
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そして数週間後ロザリアの出産の時が来た。
ロザリアは手術台のような物に横になっている。
「ロザリア調べてみたらお前の子供は強い魔力を秘めていることがわかってな、優れた魔術師になる可能性がある。」
「あのぅそれって・・・・?」
「早い話がロザリア、君の子供を私の弟子にしてやろうというのだ。」
「えっ、そうなんですか?」
「ふふ感謝するのだな。」(本音を言わせれば、そうでもしないと、お前を蘇らせた元が取れんのだよ。まあ魔力が高いのは確かだが。)
ブロワールはそう思いながらロザリアにそう言う。
「あたしちょっと不安です、ちゃんと産めるのどうか・・・・」
「安心しろ私も出産には関しては素人だ。もっとも男である私には出産など体験出来ないが・・・・・・・」
「まあそうですよね・・・・・」
そう話しているうちに陣痛が始まった。
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「あのぅ、ブロワールさんお腹が痛くなってきたんですけど。」
「まだだ、本によると最初はまだ息んではいけないらしい。」
「そうなんですか?」
「もう少し痛みが強くなってからだ。」
「はあ・・・・・」
ブロワールの言葉にロザリアはもう少し待ってから息むことにした。
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その内陣痛は徐々に強くなってきた。
「あの・・うううう・・・・・・ブロワール・・・・・さん・・・・・かなり・・・・・痛くなってきたんですけど・・・・・・・・・・・・」
痛みのあまりお腹を押さえながらロザリアは言った。
「いやまだまだだ。もっと強くなってからじゃないといけないはずだ。」
「ええ、まだまだもっと痛くなるのですか?」
「出産とはそう言うものだと思うが・・・・・・?」
「そ、そんなぁ・・・・・」
ブロワールの言葉にロザリアは気落ちする。
「あっ!!」
「どうした?」
「も、漏らしてしまいしました・・・・・・・」
ロザリアは漏らしたと思っているが、それは破水だった。
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「ちょっと待て私が確認する。」
ブロワールはそう言いロザリアから出た水を確認する。
「ロザリア、これは漏らしてたのではない、恐らく破水だ。」
「えっ破水ですか?」
「そうだ、もうそろそろ息んでも良い頃の筈だ。」
「あっ、なんかさっきよりも痛みがさらに増してきました。」
「ふむ、もう息んでいいだろう。」
ブロワールの言葉にロザリアは息み始めた。
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「ふんんーーーーーーーーー!!」
その様子をブロワールは見守る。
「ふむ今のところ特に問題は無さそうだな。」
「ふうううううううううううーーーーーーーーーーー!!!」
そしてロザリアが息み始めてから30分頃、胎児の頭が見え始めた。
「おっ順調そうだな、この調子だと私が手伝うまでもないか。」
事実ロザリアの体型は安産型で、脂肪もそんなに付いていないためお産はスムーズに進んでいた。
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「ふんんんんーーーーーーーーー!!!、んぐうううううううううーーーーーーー!!!」
ロザリア息む度に胎児は少しずつ進んでいき、ついに腰の辺りまで出てきた。
「はあ、はあ・・・・もう駄目・・・・・・」
「何を休んでいるロザリア?後もう少しだぞ頑張らんか。」
「ええ、でもお。」
「はあ・・・・・・・仕方ない私が引っ張って出してやろう。」
そう言いブロワールは胎児を引っ張り始めた。
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ズルズルッ!
「ちょっとブロワールさん痛い痛い!!」
「ええいっ!!これくらい我慢せんか!!!」
ブロワールはロザリアの訴えを気にせず引っ張っていく。
そしてついに、
スポンッ!!!
おぎゃあ!!おぎゃあ!!
元気な女の子が産まれた。
その後ブロワールは本で読んだとおりに産まれた子供を沐浴させた後、ロザリアのところに持っていく。
「ほれ産まれたぞ。」
「これが・・・・・・・あたしの赤ちゃん・・・・・・・・・。」
そしてロザリアに赤子を抱かせる。
(ふう、無事に産まれたか、しかしこれでは私がまるでロザリアの夫ではないか・・・・・・・)
ブロワールは心の中で自分のした事を思い返し悪態をつく。
出産はこうして無事に終わった。
(これで後はロザリアに家事を教えるのと、産まれた娘を立派な魔術師に出来れば・・・・・)
ブロワールはそう考えていた。
しかし今度は育児で苦労することになるとはブロワールはこの時思ってもいなかった。
死せる妊婦・プレブナント
END
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