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原住民 パート2
1名無しのごんべ:2012/10/24(水) 12:11:50

「うぅ〜お母さんが住んでたって言う村はまだかしら?」
私は、アイ15歳。
飛び級で大学も卒業して今は、お父さんと一緒の研究所で働いてるから、世界のあちこちにいくことはあるけど、今回はお父さんとお母さんの私用でおつかいで出掛けたの。
この村は、お母さんが産まれた所で私が生まれる1年前にお兄さんと私より年上の甥っ子たちが送り込まれた村だけど、お母さんたちは政府の人ともう連絡はとっちゃダメって16年前に無理矢理別れてから一度もあってないんだけど、私が今回、様子を見に行こうって思ってきたの。初めは反対してたけど、やっぱり息子が心配だからっていかせてくれることになったの。
村がやっとみえてきて安心しちゃった。
あら?村の離れた所にもテントがあるわ。
なにかしら?
それよりまずは、村へいかないと。
「すみません!」
一応この村のことも調べにきたんだし。


この滞在で私は、人生が変わることになるなんて今は気づいていなかった。

2名無しのごんべ:2012/10/24(水) 17:56:41
「あなたがアイさんね?僕はトモ、アイさんのガイド役ね。」
トモさんはニコニコしながらハグしてきた。優しそうな人ね。
「私が頼んでいた家はどこ?」
「あぁ。ホントにアソコでいいのか?」
「えぇ。」
やっぱり両性といえど男の子たちばかりだからダメなのかしら?
「わかった。あそこに離れてる家があるだろ?あそこがその家だ。」
さっきのとこね。何で離れてるのかしら?
トントン
とノックしてみた。
「あぁ。あんたがアイか?」
私と同い年くらいの男の子がでてきた。
「私は、アイ。あなたは?」
「マナだ。」
「よろしく。私は、マナトお兄さんの妹なの。お兄さんはいらっしゃる?」
「入れ。」
私は、やっと家にいれてもらえたけどマナトお兄さんはどこかしら?

3名無しのごんべ このあとからリレーでお願いします:2012/10/24(水) 18:18:24

「きたか?」
「あぁ。兄さんきたよ。アイだって。」
マナさんと同じ顔の人がもう一人!?
「あの…マナトお兄さんは?」
「母さんなら15年前に死んだよ。」
15年前って私が産まれた年だからここにきて1年しかたってないのに?
「病気?」
「違う血が入った奴は悪魔だって。母さんは、身籠ってたんだけど俺たちの兄弟とともに出産中に殺されたんだ。」
マナトお兄さんは、兄弟のなかで一番お父さんの血が濃かったってお母さんいってたもんね。
「でももうすぐ俺たちも母さんのもとにいけるからどうでもいいけど。」
マナトお兄さんとこにいくって?
「ど、どういうことなの?」
「俺らのお腹も膨れてるだろ?悪魔が増えるからって。」
「多分出産中の事故として殺されるだろうな。あぁ、俺らもうすぐ生まれそうだけど、もしアイがいるうちになにか起こっても無視してくれて構わないから。」
あっさり言ってるけど、そんなことをさせたくない。
「今からこの村を出ましょう!」
「「はぁ!?」」
「いい、あなたたちはマナトお兄さんの分以上生きなきゃダメなのよ!さっさとしなさい!」
「ちょっとアイさん!」
近くにいて見守っていたトモも驚いている。
「トモさんは、案内役としてきてもらうわ。いいわね?」
「ーーーわかった。面白そうだし、僕もここはおかしいと思ってたし、何よりアイさんに一目惚れしました。」
「まぁ!」
私は、無理矢理2人に身支度を進めさせて夜にこの村を4人ででることにした。

アイ(主人公)15歳
とにかく正義感が強く、明るい。父親と同じく両性の研究を行い、助産師の資格も持っている
トモ20歳
初対面でアイを気に入り、すぐに告白。優男で好奇心が強く、共にこの村をでることになった。
マナ17歳(現在妊娠8ヶ月)マナト死後、あの村の住人をマトイ以外誰も信用していない。狩りが得意。
マナトと同じく両性の能力で妊娠。
マトイ17歳(現在妊娠8ヶ月)
マナの双子の弟。マナより人間不振。マナトと同じく両性の能力で妊娠中。

4無能:2012/10/24(水) 21:57:35

「ところでアイさん、これからどこいくね?」
「確かこの辺りに昔、お母さんのためにお父さまが研究施設を作ったの。そこは今でも出産研究所として機能してるのよ。」
そう、あのお母さんとお父さんが作った施設。
あそこに行ければお父さんとも連絡とれるわ。
「あ、あそこよ!」

やっと着いたわ。まぁ、私がいつでもこれるように連絡してくれたからすぐに事情を話してマナとマトイの出産をここで行うことになった。

「はぁ〜い、マトイ、マナ、調子はどお?」
私は、ここでマトイとマナの主治医になったの。
ちなみにトモとは無事に恋人同士よ。

5妊蔵:2012/10/24(水) 23:08:52

「「まぁまぁ。」」
2人は全然私を見てくれない。
「はぁ〜お腹の張りがあったらすぐに伝えてね。」
「「・・・。」」
ホントにここにきてから全然慣れてくれないのよね〜。あっちが年上だからか私の甥なのに全然かわいくなーい。
「アイ、僕もついてるから大丈夫だよ。」
マナとマトイの陣痛センサーが反応した時のためにトモがそばにいてくれるのはありがたいわ。

6無能:2012/10/25(木) 14:55:36

マナとマトイが臨月になる頃に私は、トモとの子を妊娠したことがわかった。
私の妊娠を期にお父さんもこっちに短期的にマナとマトイの出産がてらやってきた。
「やぁ〜、マイ、妊娠おめでとう。元気だったか?」
「えぇ。お父さん。」
「はじめまして、タイキさん、僕はトモといいます。」
お父さんを私とトモで迎えにいって早速マナとマトイのところにいく。
まぁ2ヶ月たっても2人は全然心を開いてくれないからお父さんにあってくれるかわからないけどね。

7妊蔵:2012/10/26(金) 22:22:04

トントン
「マナ、マトイ、入るわよ〜。」
私が先陣をきって入っていくと相変わらず2人で窓を向いててそっけない。
「マナとマトイ、大きくなったな。」
お父さんは、多分マナト兄さんの面影を懐かしんでいるみたい。
「「で、母さんを捨てた人が今更何の用?」」
2人は珍しくこっちを向いたかと思うとスッゴい形相でにらんでいる。2人は顔も瓜二つで同じかおが2つだからか余計に怖いかも。

8出産子:2012/10/28(日) 04:30:48
「捨てた、か…、そうとられても仕方ないな…。でもあの時はいろんな人間でマナトのために話し合って、これが最善だと信じていたんだよ」
「そんなの言い訳だね!結局母さんはこの村で殺されちゃったし、俺たちだって…。三歳だったけど日本で暮らした記憶もあったのに、こんな原始的な生活する羽目になって。俺とマトイがどんだけ苦労したと思ってんだ!」
マナが怒鳴って、マトイはもうお父さんの方を見もしない。
「…本当に、すまなかった…。信じてもらえないかも知れないが、マナトは俺の始めての子で特に可愛がっていたんだ。今回、アイからマナトが亡くなっていたと聞いて、アクトとどれだけ悲しんだか…。孫にあたるお前たちだって、母親のマナトと一緒に居た方が良いだろうと思って」
「煩い、もう聞きたくない! あんたのことじいちゃんだなんて思ってないし! アイだけ連れてとっとと日本に帰れよ!」
「ま、まあまあ、そんなに興奮しないで。もう臨月なんだからビックリして陣痛始まっちゃうわよ〜」
マナがあまりに興奮するので、お腹の子に障ると思って私は慌てて二人の間にはいった。
私には良い父親だし、甥のマナとマトイも、今はそっけないけど嫌いじゃない。でも祖父と孫の間の確執は深そうだ。
「本当にすまなかった…、せめて、マナトに詫びたい。墓に案内してくれないか」
「……墓なんてない、お腹の子と一緒に殺されたあと、ジャングルの獣に喰わされたからな」
そんな、酷すぎる…。私は想像以上の現実にショックを受けて、貧血を起こしその場に倒れてしまった…。

9出産子:2012/10/28(日) 04:31:25
マナとマトイからその話しを聞いてすぐ、お父さんはマナト兄さんのお墓を造った。
場所は研究所の内庭の一番大きな木の根元。墓の中には、幼いマトイが握り締めていたというマナト兄さんの服の切れ端を納めた。可愛そうなマナト兄さん、これで少しでも安らかに眠れますように。

マナとマトイはそのことで少しだけお父さんに気を許したようで、よくお墓の前で話しをしていた。
「じいちゃんが初めてこの村に来たのは確か26歳のときで…、それから41年、か? 67歳になってまた来ることになるとは思ってもいなかったな」
「そのときはアクトが12歳で、弟のほうのマナトが10歳で出産していたんだ。そういえば弟のほうのマナトも13歳で亡くなってしまって。お前たちの母親は20歳でか…」
「そうだ、マナトがお前たちと別れる前に産んだ子を覚えているか? 女の子でな、ナナと名づけて大事に育てているよ。きっといつか会わせてやるからな」
…訂正、話しをしているんじゃなくて、お父さんが一方的にしゃべってた。

10出産子:2012/10/28(日) 04:32:07
そして私はというと、あの時貧血で倒れたのが引き金となったかのように悪阻が始まってしまいすっかり弱っていた。
眠いしだるいし吐いてばかりで、日本から持ち込んだ食料が全然喉を通らない。
妊娠出産に関しては資格を取れるほどの知識はあるけど、実際に自分が経験するのとでは大違いだ。
「は〜…、最悪…。もう、はやく産みたいよ〜」
「アイさんゴメンね、僕が妊娠させたから…。二人の愛の結晶のために、頑張って!」
私はまだお腹も出ていないのに弱音ばかり。だって、まだ15歳の女の子なんだモン。トモが根気良く私のわがままを聞いて世話をしてくれるのが救いかな。

そんな臥せっている私のところに、瑞々しいフルーツが届けられた。
何でも、私が悪阻で食べられるものがないと聞いたマナとマナトが、ジャングルを駆け回って採って来てくれたらしい。
あの二人、ほんとに何時産まれてもおかしくないし、ジャングルには危ない獣もいるって言うのに!
でも私のためにそんなことをしてくれるって言うことは、少しは気を許してくれたってことなのかな。なんだか嬉しい。早く元気になって、約束どおり二人の出産の手助けをしなくちゃ。
その見たこともないフルーツを恐る恐る口にするととても美味しくて、私は久しぶりに食事をすることが出来た。

11無能:2012/10/28(日) 20:58:42

2、3日伏せてたけど2人のお陰でフルーツを食べれたこともあってなんとか起き上がれるようになった。
「んー!久しぶりの外は気持ちいいわね。」
せっかくだから研究所の中庭にトモとやってきた。
「アイさん、無理したらダメよ。」
トモはまだ心配みたいだけど、せっかくだし動けるようになったしマナト兄さんのお墓参りいかなくちゃ。しゃがみこんで手をあわせている私の頭上から封筒が落とされた。
「マナ?」
上を見た私の目に入ってきたのは立ったまま無愛想にこっちを見ているマナだった。

12妊蔵:2012/10/28(日) 22:34:09

封筒を開けてみると三枚の航空チケットがはいっていた。
「マナ、どうしたの?これ。」
「研究所の人に頼んだ。」
「え、でも高いでしょ?お金は?お金はどうしたの?」
もともと自給自足のマナとマトイにはチケットなんて買うお金、ないわよね?
「どうせ死ぬんだし、研究所の奴に死んだら献体にしていいっていったら二つ返事でくれた。どうせもうすぐ死ぬんだし、俺らに構ってないでとっとと日本に帰れ。」
まだ出産で死ぬと思ってるみたいね。後はつわりのひどい私のため?

13無能:2012/10/29(月) 01:30:48

「あなたたちが無事に出産を終えるまで私たちは、帰らないわよ!」
「・・・もう遅いよ。」
私は去ろうとするマナに叫んだときにマナの前にはマナ達の暮らしていた村長や村人がいた。
「マナ、トモ、捜したぞ。悪魔の子をここに匿っていたとはな。マトイは、すぐにいうことを聞いて我々とくるそうだ。マナ、お前もくるのじゃ。」
「はぃ。」
「マナ!?いっちゃだめ!」
私は、必死で叫んだけどマナは冷たい死んだような目でこちらを向いてから一度も振り返らない。このままだとマナとマトイまで殺されちゃう。
「父さん、やめてくれ!」
止めに入ってくれたのはトモだった。
「トモ、おまえもいい加減もどってきて、村長の息子としてワシの跡を継ぐのじゃ。」
トモってあの村の村長の息子だったんだ。

14出産子:2012/10/31(水) 03:29:22
「父さん、何度も言っているように俺はあんな古いしきたりに縛られた村になんか戻らない。あの村はおかしいよ…。どうしても跡を継げって言うのなら、俺が村長となったあと近代的な村に作り変える!」
「トモ、お前は…。ワシの血を継いだ息子とはいえやはり男から産まれた子など碌でもないわ! 最後の子じゃからとお前だけだけでも生かしておいたのは間違いじゃったか…」
え、トモを産んだ人も、マナやマトイと同じような身体の男性だったんだ。もしかしてその人もトモを産んだときに…。
いつも明るくて優しいトモにそんな過去があったなんて知らなかった。そして私は、そんなトモのことがますます愛おしくなってきた。
「それに父さん、俺には子供が出来たんだ。俺の子供を産んでくれるその人は、この村と、マナとマトイをきっと助けてくれる」
トモはそういいながらくるりと私を振り向いた。
「え、わ、私?」
全員の視線が私に集まる。村長さんなんかメッチャ睨んでるし…。ちょっと怖いんですケド。
「む…、女、か…」
「アイさん、ゴメンね。僕はもうこんな村捨てるつもりだったけど、アイさんの知識があれば村を救えるかもしれない。村を継ぐものの妻として、母として、ずっと僕の傍に居てくれませんか?」
トモは私の前に片膝を付いて手をとり、真剣な目で私を見上げてきた。
え、と、妻としてって、それって、もしかしなくても、プ、プロポーズ!?
「あの、わ、私! そんな、急に…! 私まだ15歳だし、こ、心の準備出来てないし〜」
ビックリした。もちろんトモのことは大好きだし、それこそ子供も作っちゃったけど、突然プロポーズされるなんて思ってもいなかった。
それに私はずっと勉強ばかりしてきたせいで実は恋愛ごとには疎くて、こんな風に全力で気持ちをぶつけてこられるのに慣れていなくて戸惑ってしまう。
でも、こんな風にプロポーズされて、優しいだけの人だと思っていたトモが急に力強く、頼りがいのある年上の『男性』に見えてきちゃう。実際、脱いでみれば筋肉質で良い身体してるしね…。
「アイさん、急にこんなこんなこと言って困らせてごめんね。今すぐにとは言わない、僕たちの子供が産まれる頃までに返事をしてもらえると嬉しい」
そう言うとにっこり笑ってトモは、いつもの優しい雰囲気のトモに戻った。
私はなんとなく、トモと子供と私の三人で日本で暮らすビジョンはあったのだけれど、私がここで子供を産んで、トモが産まれた村で生きていく未来なんて想像したこともなかった。しかも村長の妻として。
私の返事一つで、いろんな人の運命が変わっちゃう…。

そのとき、マトイを取り囲んでいた村人たちが急にざわつきだした。
そちらを見ると、マトイを中心に遠巻きにして、あろうことか、槍や棍棒で攻撃しようとしている村人も居る!
「…う、ぅうっ、…お、お腹、痛い…っ。マナ…、お腹痛いよぉお! マナ…っ! マナァあーッ!」
マトイは額にびっしりと汗を浮かべてお腹を抱えるようにして座り込んでいる。
「た、大変、陣痛が始まったんだわ! 産まれちゃう!」
私は、トモも村長も村人たちも押しのけてマトイに駆け寄った。

15無能:2012/10/31(水) 23:54:30
けどいつものマナなら陣痛の始まったマトイのそばにすぐに行こうとするはずなのにマナがこない。
私は、回りを見回すとマナは私たちと反対の方を向いていて動いていない。
「マナ?どうしたんだ?」
「触るな!」
お父さんがマナの近き、マナの肩を叩くとマナはお父さんの手を振り払ったけど、汗だくでなんか様子がおかしい。

16123:2012/11/01(木) 07:20:15

「お父さん、マナももしかしたら陣痛が始まってるんじゃない?」
私は、痛みに混乱して不安でマナを呼び続けているマトイの方にいるからマナはお父さんに任せるしかないけど。
「マナ、陣痛が始まってるのか?」
「っぅるさい!触るんじゃねぇ。」
マナは一切お父さんを近づけさせない気みたい。
「マナよ、こっちにくるがよい、私たちが、マトイと一緒にすぐに楽にしてやるぞ。」
マトイのことで黙っていた村長がマナを呼んでる。
マナは、お父さんを睨みつつ村長の方へ歩き出してる。

17名無しさん:2012/11/06(火) 00:36:31

「マナ、行くな!!」
お父さんがマナの手を無理矢理掴んで村の人たちから遠ざけてくれた。
「何するんだ!」
マナが反抗した態度をとった途端、パチンッていう音が研究所に響いた。
「バカヤロー!おまえがお腹の子供と死んで、マトイは、どうする?独りにする気か?それにそんなことをしてもマナトは喜ばない。マナは生きるんだ、お腹の子と。」
呆然とたって言葉を失っているマナを抱き締めるお父さん。

18無能:2012/11/06(火) 01:23:50

「・・・!」
マナが何も言い返さないと思ったらお父さんの胸で嗚咽を吐きながら泣いているみたい。やっと心が開いたのかしら?
「う゛ぅぅ!」
感動ムードで沈黙の中、沈黙を破ったマナで、今までの緊迫した空気から緊張感が緩んだ途端、陣痛がより強くなったみたい。
「早く、対処せねば。」
村長たちも我に帰り、またマナとマトイを襲いに来たから、マトイは、トモが、マナはお父さんが抱き抱えて取り敢えず村の人たちが入ってこれないマナとマトイのセキュリティが万全な特別室に移動したの。

19無明 Birth Shopの更新もお願いします:2012/11/06(火) 01:38:45
特別室に移動して、とりあえず二人をベッドに座らせる。
村人が入ってくる前にドアを閉めようとした、その瞬間だった。
「うおおおおおっ!!!」
ドアに近づいてきた村人の1人が手に持っていた長い槍を投げつけてきた。
あわててお父さんはドアを閉めたけど、間に合わない!
そして、私は見てしまった。
槍が
私たちの
間を
すり抜けて
マトイの
胸に
突き刺さり
そのまま
突き抜けて
血が
吹き出て

「きゃあああああああああああ!!!!」
生まれて初めて、心のそこから上げた悲鳴。
マトイが、マトイが!!
マトイが、死んじゃう!!!

20無能:2012/11/06(火) 01:49:00

「傷も思ったより浅いからマトイの処置は俺とともくんで何とかする。アイはマナを頼んだ。」
何とか村人を追い出してセキュリティ施錠をしたからここへは村人たちははいることができないから安心ね。
「凄いぞ、アイ。」
お父さんがマトイの処置をしようとした時だった。マトイの身体の傷が塞がってきたの。
これが両性の特性なんだ。たしかマナト兄さんはマナとマトイを生んだときにも凄い回復力をみせたっていってたし。

出血で少し貧血は起こしているみたいだけどもう命には別状ないし、無事普通分娩で出産できるみたい。

21無明 ありがとうございました:2012/11/06(火) 02:41:13
(マナは普通に、マトイは綱渡りで行きたいと思います)

お父さんはその後もマトイの様子を見ている。
なぜかというと、一応峠は超えたものの貫通した傷なので、血管がふさがり切るまでは注意するべきなんだそうだ。
それともうひとつ、槍にも注意するべきだとか。
何のことだかさっぱりだったけど、悪い予感的中。
突然マトイが苦しみだし、白目をむいて泡を吹く。
それどころか、陣痛計が壊れそうなほどガタガタ動いている。
回復力が強いのはあくまで傷だけだったらしい。
そう、槍には毒が塗ってあったのだった!
しかも、成分分析にかけたところ毒だけじゃないという。
麦角を砕いて水で溶いたもの、いわば陣痛促進剤とも言えるものが塗ってあったのだった。

22妊蔵:2012/11/06(火) 16:19:14

「毒素はこれで解毒できるが、促進剤の成分は無理だな。」
お父さんは、村人たちからふりきり、セキュリティを潜ってやってきた研究員たちにマトイを押さえさせてマトイに注射をうってくれたみたい。
急激に強くなった陣痛にマトイは、パニックになってるみたいだけど、なんとかなるわよね?
私はマナも診ないと。

23無能:2012/11/06(火) 18:19:39

「マナ、診るわよ?」
今までの態度が嘘のようにマナは大人しく診察を受けさせてくれる。
「子宮口4センチ拡大。陣痛の張りもまぁまぁね。」
「マトイは?」
マナは自分よりもマトイの方が気になっちゃってるみたい。
「お父さんに任せればきっと大丈夫。だからマナも出産に集中しよう?」

24出産子:2012/11/07(水) 03:39:18

「うるさい、イヤだ。俺はマトイのところへ行く…っ」
マナとマトイは同じ部屋にいるけれど、マトイには高度な医療処置が必要なので、それが出来るベッドに寝かされパーテンションで目隠しされているのでお互いの姿は見えない。
マナの陣痛の間隔は6〜7分あって、お休みの間はまだ自力で移動できるようだった。
「ちょっと、マナ、ダメよ…」
「放せったら!」
私は勝手にベッドを降りて歩き出したマナの腕をとって引きとめようとしたけれど、いらだったマナに乱暴に振り払われてしまった。
その弾みでバランスを崩し、尻餅をつきそうになり、私はとっさにお腹をかばった!
…けど、予想した衝撃は何時までたっても襲ってこなかった。
恐る恐る目を開けると、マナがしっかりと私を抱きとめていてくれていた。そんなマナも、何処か戸惑った顔をしている。
「あ、ありがと…」
「…あ、いや…。…あ、アイだって妊娠したばっかりで、すぐに流れちまう時期なんだから大人しくしてろよ! 俺たちのことより、自分と、トモの赤ちゃんの心配だけしとけ!」
顔を赤くしながらマナが私に怒鳴った。でもその内容は、私の体を心配してくれているのがわかる。
「…うん、ごめん、気をつけるね。でもやっぱりマナって面倒見が良くて優しいよね! 私、マナのそんなところがスキだなっ」
「うるさい、うるさい! とにかく、俺はマトイの傍へ行くからな! 俺たちは産まれる前から、生きるのも、死ぬのも、出産するときだって一緒なんだ!」
ますます顔を赤くしながら、座り込んだままの私を置いてマナはマトイのところへ行ってしまった。
「おい、トモ! お前は自分の妻の面倒をちゃんと看ろよ!」
すれ違いざま、トモに注文をつけるのも忘れていない。
結局マナは、研究員を押しのけてマトイの枕元に陣取った。

「…はあ…、はぁあ、…ま、マナ、マナぁ…、い、痛い…っ、死んじゃう、よぉ…っ! 俺、怖いぃ…っ!!」
ベッドの上で、マトイは青い顔でぐったりとしながらも、激しい痛みに耐え切れず手足をばたつかせて暴れていた。
そんなマトイの手をとり、マナは優しく励ます。
「大丈夫だ、俺が傍にいるから…。俺たち、ずっと…、ぅ、ぅううっ、い、一緒、にっ、…ぅぁあ゛……っ!」
マナだって初めての出産で辛いだろうし不安だろうに。
やっぱり私がしっかりしなきゃと思って、トモの手を取りながら二人のところへ向かった。

25無明:2012/11/07(水) 17:30:13
自分も出産間近だというのに、マトイの手を握り励ますマナ。
大したものだと思う。
しかし、お父さんは苦い表情を変えない。
「お父さん?」
「不味いな………促進剤の成分が強すぎて、このままだと子宮に負担がかかりすぎる。このタイプは抑制剤なんてないし、張りどめでは効果がないんだ」
そんな、せっかく助かったのに………
「手段はひとつだ。マトイか、胎児が命を落とす危険性があるが、放っておくよりましだ。このまま出産させる」

26無能:2012/11/07(水) 19:35:04

「マトイ、死ぬ、のか?」
マナは、泣きそうな顔でお父さんを見ている。
「どっちも助けたいが、もしダメならマトイを優先するから。マナは自分自身の出産に集中するんだ。」

27妊蔵:2012/11/08(木) 20:16:49

「ぅう〜あ゛ぁぁぁぁぁあ!」
私たちがマトイとマナのいる部屋につくと、マトイの悲鳴が聞こえそれと同時に水が入ったバケツがひっくり返って水が溢れるような音がした。
マトイが破水したみたい。

28出産子:2012/11/10(土) 03:46:50
わぁああああ〜〜〜〜! み、水がっ、穢れた水が、でた、あっ! いやだ…、殺さないで…っ、いやぁあああ!!」
破水したマトイの脅え方が尋常じゃない。あまりに暴れるので、私は危なくて近づけなかった。
「だ、大丈夫だ、マトイ…。ここでは、誰も、俺たちのこと、殺したり、しない、から……、ぅう…っ」
それでもマナは、マトイの手を離さなかった。
「はあ、はあ、母さんは、股から、水が出た、ときに、…ジャングルに、置き去りに、されたんだ…。そこに、獣が…っ、お、俺と、マトイは、ず、ずっと、それを、見てて…、あぅううっ!」
「マナ! いいの、無理して思い出さなくてもいいから!」
私は助産師としてしっかりしなきゃいけないのに、15歳の女の子として、二人の甥っ子のことが可哀想で見ていられない。
「お父さん、お願い…。マナとマトイを助けてあげて…」
この出産も乗り越えて欲しいけど、これからは幸せに生きていってもらいたい。
「当たり前だ、俺の可愛い孫たちは必ず助ける。それがマナトへの償いでもあるからな」
それからお父さんはテキパキと研究員たちに指示を飛ばした。

29無能:2012/11/10(土) 12:21:59

「マトイ、ごめんな。暴れると危ないから。」
マトイは分娩台から転落を防止するために手と足を固定された。
「マナの様子も診るからちょっとごめんね。」
私もやるべきことやらないといけないからマナの様子を診ないと。

30出産子:2012/11/11(日) 03:58:30
マナをその場に横たえ、私は慎重に右手を挿入した。私の手は小さいから、内診をするのにもいくらかは楽だと思う。小さい手は、助産師の武器なのだ。
「…あれ? もうほぼ全開してる?」
「…ぅう…っ」
小さくマナが呻いたかと思うと、そこからドボっと暖かい水が溢れてきた。
内診の刺激で破水してしまったようだ。
「…あ、ああ…、み、水が……っ。…だ、大丈夫、大丈夫だ…、怖がるな…っ、ダイジョウブ……!」
とっさにマナの顔を見ると、いくらか青ざめた顔で床に広がる羊水を見つめていた。けど、必死に自分を励まして、恐怖ト戦っている。
「わぁああああ〜〜〜、マナが、マナが死んじゃう〜〜〜」
それよりも、マナの破水を見たマナトのショックが酷い。このままじゃ、本当に母子ともに死んでしまう!
「ダイジョウブだ!!」
マナの一喝が研究所に響いた。
「絶対に、大丈夫だ…、なあ、アイ、そうだろ? …マトイ、お、俺が、先に出産して、大丈夫だって、証明してやるから…っ。はあ、はあ…、だから、頼む…、アイ、……じいちゃん、俺を、無事に、出産させてくれ…っ」
そう言ってマナは、苦しいお腹を折り曲げて頭を下げた。股間からは、羊水が零れ続けている。
「…あ、当たり前じゃない! そんなの、そのために、私がここにいるんだから! ね、お父さん!」
私は、マトイの傍でポカンとしているお父さんに呼びかけた。
「…お、おう、…そうだ、心配するな。俺に…、じいちゃんに任せとけ!」
私たちは大急ぎでマナの出産の準備を整えた。

31出産子:2012/11/11(日) 03:59:25
分娩台をもう一台持ってきてマナを乗せて、マトイに娩出の様子が良く見える位置に固定した。
確度を調節して、足に滅菌したカバーをかけて、酸素と、念のためにマナの腕に点滴用の血管を確保して、準備は整った。
「はあっはあっはあっ!…も、ダメ…、出る…っ! ふーーーっ、っふーーー!」
私は椅子に腰掛けて、マナの足の間にスタンバイした。
「うん、お待たせ。もういつでもいいよ。次の陣痛で息んでみようか。そこのレバーを握って…そう、じゃ、いくよ、…いち、にい、さんっ!」
「ふ、んんんんーーーーーーーーっ、っはっはあっ、ぅんんんんん゛ーーーーーーっ!!」
息むのに合わせて、トモがマナの上半身を起こす。私たちの息はぴったり合っていた。
「良いよ! とっても上手! 会陰も良く伸びてるから心配しないで。さあ、吸って〜吐いて〜、…はい、もう一回!」
「うううぐううううーーーーーーっ! はぁあっ、ひぃい…っ、…ん、ぐ、ぐ、ぐ、ぐ、ぐ…っ!!」
マナは初めての出産にもかかわらず、パニックにもならず、私の誘導に従い声も出さずに冷静に息み続けた。
まるで、教本に載っているお手本のような出産だった。
「…マナ…、マナぁ…」
そんなマナの出産を、マトイは自分の陣痛も忘れて食い入るように見ている。

32出産子:2012/11/11(日) 04:00:54
そして、その瞬間が来るのには30分も掛からなかった。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!! …ひぃぁああ!?」
「…マナ、頭が出たよ。もう力入れないで、レバーを放して、手を胸に。はっはっはっは、よ」
「…んんっ、……っは、っはっはっは、っはっは、は、はぁあああああ…」
マナのお腹の中にいたものは、スルリと私の手の中に滑り落ちてきた。
殆ど出血もなく、ビックリするくらい綺麗な赤ちゃん。まるでピンク色の天使が産まれて来たみたい。
「マナ、可愛い女の子よ。…よく頑張ったね」
私は赤ちゃんを持ち上げてマナに見せた。
「はあ…はあ…はあ…、うん、ありがと……。な、マトイ…、はあ、はあ、ダイジョウブ…、だったろ…? …はあ、はぁ〜…」
マナ赤ちゃんを一目見た後、汗も荒い息もそのままに、すぐにマトイの方を見た。
「………うん、……マナ……、うん……っ」
マトイは泣いてしゃくりあげながら、分娩台に縛り付けられたまま、マナを見返した。
「さあ、マナ、赤ちゃんを抱っこしてあげて。ふふ、お父さんは曾お爺ちゃんになっちゃったね」
私はまだ臍の緒で母親と繋がったままの赤ちゃんをカンガルーケアのためにマナの胸に抱かせようとした。
でも、椅子から腰を上げたときに異変が起きた。
バチン! という大きな音と主に研究室の電気が全て落ち、真っ暗になってしまった。
この部屋には窓がない。医療機器も全て停止してしまった。
外を取り囲んだ村人たちが、この施設の発電装置を破壊したのだ!

33無能:2012/11/11(日) 12:48:08

「あ、あった!」
研究員たちは、予備にろうそくをこの部屋に用意していてくれたからそのろーそくの明かりでマトイの出産をしなくてはいけないけどここでまた問題があった。
「う゛っ、アィ、ま、また、腹がいてぇ〜〜。」
後産の苦しみかたじゃない。まだお腹に赤ちゃんがいる!まだ赤ちゃんは降りてきていないけど赤ちゃんの大きさは大丈夫かしら?
満足に診察できなかったから気づかなかったけど、確かにマトイよりもマナの方がお腹少し大きかったわね。
マトイはマナの出産で落ち着きを取り戻してお父さんの指示に従うみたい。

34名無しさん:2012/11/14(水) 23:54:02

ドクドクドク
私はマナのお腹に赤ちゃんの心音を聴く機械で触ると、確かにまだ赤ちゃんの心音が聴こえてくる。
「マナのお腹には双子がいたの。だからあともう一人いるの。」
私はマナに説明してからすぐに超音波で赤ちゃんの大きさと体位を確認する。
「さっきの子より1周り以上大きいわね。しかも逆児ね。」
んー4000gはあるわね。
マナはまだギリギリ成長過程だし腰細いけど骨盤通るかしら?
私は入念にマナの様子をチェックしていく。

35出産子:2012/11/15(木) 02:53:30
「な、なあ、マナは、どうしたんだ、はあはあ、産まれたのに、凄く、苦しそうだ…!」
マナのその様子は、またマトイを少し不安にさせてしまったみたい。
「なに、心配は要らないよ、マナのお腹には赤ちゃんが二人いたんだ。その二人目の赤ちゃんが今から産まれて来るんだよ」
お父さんが優しく説明して、マトイの不安を取り除く。
「そ、そうなのか…? でも、マナは、もうあんなに疲れて…っ、う、うわぁああ! い、痛いいたぁあいい゛っ!」
マトイの陣痛もさらに強くなっていたようで、思い出したように悲鳴を上げた。
「マトイ、落ち着いて呼吸をして、陣痛を逃すんだ。マナがちゃんと赤ちゃんを産んだのを見たろう? マトイもちゃんと産めるから頑張るんだ。じいちゃんが手伝ってやるからな」
「うぅうう゛ーーーっ! …が、頑張る、頑張る、けどっ、痛い…よぉ、お腹が、凄く、痛くて我慢できないよぉーーっ!」
マトイは分娩台に縛り付けられたまま、動く首を振って涙を流した。
マナのおかげで、出産に対して気持ちは前向きになったみたいだけど、身体の痛みが強すぎて耐えられないみたい。ちょっと可哀想だけど、この痛みに耐え切ってもらわないとどうしようもない。

36出産子:2012/11/15(木) 02:54:01
「うっ、ぅう〜〜〜、ふぅううーー…っ」
マトイは泣きながら、何か言いたげにマナを見つめる。
でもマナは二度目の陣痛が辛いのか、マトイを気にかける余裕がないみたい。
マナはしばらく迷った後、視線を彷徨わせて、それから…。
「…お、俺っ、頑張りたい、けど、痛くて、怖い…っ。ま、負けそう…っ。でも、我慢、するから、つ、つかまらせて、お願い、…………じいちゃん…っ」
「「えっ?」」
私とお父さんは多分同時に聞き返した。聞き間違いじゃなければ、確かに『じいちゃんて』。あのマナ以外誰も信用しなかったマトイが!
苦しんでいるマナを見て、マトイなりに自立しようとしているのかしら。
「…おおう、よし…よーし! じいちゃんにどーんと頼りなさい、じいちゃんに任せとけばダイジョウブだ!」
お父さんてば、こんな状況なのに顔を輝かせて喜んでる。只のじじ馬鹿みたい。

マナは分娩台がイヤだったみたいだから、拘束を解いて、お父さんが抱いて床に降ろした。
別のベッドから持ってきたベッドマットを敷いた上に膝立ちになって、向かい合う格好で、マトイはお父さんに抱きついた。
あの体勢だと支える側も結構負担が掛かるけど、お父さん腰大丈夫かな。
それからマトイは、陣痛が来るたびにお父さんのシャツを引き裂く勢いでしがみついたり、一緒に腰を揺らしたり、突き出すようになった腰やお尻を別の研究員に揉んで貰ったりしていた。
疲れれば、胡坐をかいて座ったお父さんの膝を枕にして横になった。
この調子で落ち着いていけば、何とか大丈夫かな。

「はあ、はあ、そうだ…マトイ…、頑張れよ…っ、う、がぁあああっ!」
分娩台の上からその様子を見ていたマナは、一つ重荷を下ろしたようでちょっと安心したみたい。
「マナ、マトイは大丈夫よ。後は、自分の出産に集中してね」
私も、相変わらずの暗闇で頼りになるのはロウソクの炎だけだけど、出来るだけの介助をしなきゃ。

37名無しさん:2012/11/15(木) 03:03:06

「マナ、もう一度さっきみたいに陣痛がきたら息んでね。」
「はぁ、はぁ、わかった、っ!」
マナはやっと自分の出産に集中できるみたい。
もう一度トモにマナが息む度に体を起こしてもらって息みを助けることにしたけど、今回は中々赤ちゃんがみえてこない。
逆児だからってここまで見えないのはおかしいわ。

38出産子:2012/11/18(日) 04:32:18

「はあ、はあ…、な、なんで…、上手く、いかな…っ、アイ、く、苦しい…っ」
マナはさっきと同じように息んでいるのに、スムーズに行かないことに戸惑っている。
「大丈夫よ、マナ。マナの息みかたは凄く上手よ。二人目はちょっとのんびりさんなのかな? 心音はしっかりしてるから、続けて息んでみよう」
「わ、わかった…っ。…はあ、ふぅう、ぅ、んんーーーっ、ぐぅううーーーーっ!!」
もうしばらく自力で息んでもらって、それでも進まないようなら対処法を考えよう。と言っても、電源がないこの状況で出来ることは少ないけれど。最新の知識や医療技術なんて、こんな原始的な状況じゃほんと役に立たないんだから。

マトイのほうはどうかと思って目を凝らしてみると、少ないロウソクの光源の中でもマトイの股間と太ももに赤い色が流れているのが見えた。
マトイに打ち込まれた促進剤の影響で急激にお産が進んだ所為で、身体の方が耐えられなくなってきたんだ。
激しい子宮の収縮で胎児が無理やり押し出されて、マトイの身体を傷つけている。
もうっ、ここの設備がちゃんと使えれば、私があっという間に帝王切開で助けてあげられるのに!
お願い、マトイ。何とか耐え切って…!

39名無しさん:2012/11/18(日) 21:56:02

「ん゛ぅーーーー!!あ゛、あ゛、う゛ぅーーーー!!」
マトイは身を引きちぎれるような痛みに息む度に声をあげている。
「大丈夫。少しずつ赤ん坊が下がってきてるぞ。」
お父さんはそんなマトイをしっかり抱き留めて励ましている。

40出産子:2012/11/25(日) 04:07:40

「ヒッ、ぎゃぁあああーーーーっ!」
そのとき、マトイの引き裂くような悲鳴が研究所に響き渡った。
同時に、強力な促進剤の影響で、赤ん坊がまるでマットに叩きつけられるような勢いでマトイの股間から飛び出したの。
「マトイ!」
マトイはそのまま、仰け反るように体を硬直させたまま背中からマットに倒れこんだ。
「ヒ……、ヒッ、…ヒィ……ッ」
マトイは白目をむいて、引きつる様な息をしている。
お父さんが慌ててマトイの容態を診ている。
マトイの股間からは、まるで蛇口が壊れた水道のような勢いで血が溢れ出していた。良く見たら、赤ちゃんと一緒に胎盤も飛び出しちゃったみたい。
お父さんはマトイの股間を圧迫して、何とか止血しようとしていた。
「マトイ、しっかりしろ!子宮頸管裂傷か…?、おい!早く止血剤をもってこい!子宮収縮剤もだ!くそ、裂傷部分が見えん…。縫合するのに明かりが足りん、ありったけのロウソクを持って来い!」
お父さんの怒号が響きわたって、研究員たちが慌しく動き回る。
「ぅ〜〜ん……、はあ…はあ…。じ、ちゃん…。俺、どうなって……い、痛い……」
「マトイ気が付いたか!赤ん坊は無事産まれたぞ!偉かったなぁ。身体のことは心配するな、じいちゃんが元通りにしてやるからな!」
「うん……、よ、かった…。でも、すごく、痛い……、いたい、よお……っ」
マトイは朦朧としている。

「はあ、はあ、マ、マトイ?どうしたんだ、マトイー!」
二人目を出産するために分娩台で息んでいたマナもその異様な様子に気が付いちゃった。
足を大きく広げて固定されたまま、マトイの方に向かって大きく体をよじったの。
その勢いでマナの子宮に圧が加わって、何かが膣から飛び出した。
暗くてよく見えないけど、これは、臍の緒!?
臍帯脱出だ、こっちもやばい!
「マナっ、急いで二人目を出さなきゃいけなくなったの!ちょっと苦しいかもしれないけど我慢して!」
緩く起こしていた分娩台のリクライニングを完全にフラットにして、トモがマナのお腹をまたぐようにして飛び乗った。

41無能:2012/11/25(日) 20:17:37

「トモ、私の指示でお腹を押して、いいわね?」
「わかった。」
「いくわよ!マナも苦しいけどなるべくお腹にちからを入れてね。せーの!」
私の指示でトモがお腹を押してマナもさっきの要領で息み出した。

42出産子:2012/11/27(火) 04:28:21

私はマナの膣に手を突っ込んで赤ちゃんの足を掴み、思いっきり引っ張った。
「ぐぁあ!…が、あああっ!!」
マナが痛がっても、手を緩めるわけにはいかない。
もっとも、マナは必死に耐えて痛いなんて一度も言わなかったけれど。
トモとタイミングを合わせて、赤ちゃんを引っ張り出す。私は渾身の力を込めて、思いっきり踏ん張った。
その甲斐あって、赤ちゃんはマナの子宮から私たちの世界へやってきた途端に元気な産声をあげたの。
「ぁうう…、はあ、はあ、はあ…」
良かった、マナの身体もそんなに大きなダメージはないみたい。
「ア、アイさん!!」
でもトモが、産声をあげる赤ちゃんを抱いた私を見て驚いて名前を呼んだ。
赤ちゃんに異常はないから大丈夫、って言おうとしたんだけど、違ったの。異常があるのは、私。
私の股間から生暖かいものが溢れ出て、妊娠前からはいていたスキニーなジーパンがぐっしょりと濡れていく。
「や、やだ…、なにこれ……」
それはやがて足を伝って、床にまで流れ出た。
私は自分の身体から流れ出た血で作られた血溜まりの中に、なすすべなく立ち尽くすしかなかった。

私とトモの赤ちゃん、いなくなっちゃった…。

43出産子:2012/11/27(火) 04:29:10
それから私たちは、村人が諦めるまでの三日間、研究所に篭城したの。
その間に私はお父さんに流産後の処置をしてもらって、子宮を綺麗にしてもらった。
私も落ち込んだけど、それよりも、悲しみを押し殺して明るく振舞うトモを見ていられなかった。
マナは順調に回復して、覚束無い手で赤ちゃんを抱っこしてお乳を上げている。
赤ちゃんは、マナが産んだ双子の姉と弟、マトイの両性の子、皆元気だった。
マトイは何とか一命を取り留めたけど、今はまだ朦朧としていて、覚醒したり意識を失ったりを繰り返してる。
もう薬の蓄えも底を尽くし、いよいよ危ないってことで、私たちは危険を犯して深夜に研究所を脱出したの。

半日歩いてたどり着いた町の病院で手当をしてもらったんだけど、マトイの予後があまりよくないので開腹手術をすることになった。
そこでマトイは、傷ついて修復不可能な子宮頸管や出血の止まらない子宮をごっそり摘出されたの。
これでマトイは妊娠出産能力を失ったけど、命を助けるためには仕方のないことだったし、出産に恐怖感を持っていたので、結果的にはこれで良かったのかもしれない。

それから、長時間移動できるくらいに回復したころ、マナとマトイと赤ちゃんたちは、お父さんに連れられて日本のアクトお母さんのところへ帰って行った。
そこで、家族みんなで協力して赤ちゃんを育てるんだって。
勿論、私も一緒に帰ろうって言われたけど、断ったの。
トモをここへ一人残してはいけない。
だって、私は、トモのことを、愛しているから。

44出産子:2012/11/27(火) 04:30:00

それから、3年―。
私とトモの二人はそのままこの町に残って、医者の仕事をしながらゆっくりと心と身体を回復させていった。
二人で助け合って生きていくうちに、どんどん愛おしさが募ってくる。
そして私は、とても強く思うの。トモの赤ちゃんが欲しいって。
あれから私の体つきはより女性らしくなった。骨格もしっかりして柔らかな脂肪もつき、お腹の揺り篭も十分成熟したと思う。
15歳の私には難しかったかもしれないけど、18歳になった今ならきっと出来る。

今度は私からプロポーズして受け入れてもらい、私たちは晴れて夫婦となった。
新居は3年前に放置した出産研究所と決めた。
荒れ放題だった研究所の一部を何とか住めるくらいにして、木製の家具を入れ、手作りのファブリックで飾りつけ、無機質だった一室を暖かな家族の住処へと作り変えた。
そして後は新しい家族を迎え入れるために、私たちは手作りのベッドの上で、毎夜、深く愛し合ったの。

45無能:2012/12/08(土) 02:48:52

「うっ!」
この家に引っ越してきてから1ヶ月ほど経った辺りに私の体に変化が出てきた。
食事の度に胃がムカムカするし、ダルくて少し微熱もある。そしてなにより17歳頃からは毎月きちんと同じ周期にきていた月経が遅れていたの。

46出産子:2012/12/09(日) 04:43:46

私はある可能性を考えて、基礎体温をメモってあるスケジュール長を見ながら確認する。
「ええと、今月の生理が5日遅れてて…、最後の生理開始日がここへ引っ越す10日前ね。それから高温期が来て…、避妊しないでセックスしたのがこの日だから…。もし妊娠しているとしたら、今5週目くらい…?」
私は思わず自分の下腹部に両手を当てた。
もしかして私の子宮に新しい命が宿っているかもしれないなんて、なんだか急に緊張してしまう!
「それにこの日程だと、最初の一回で妊娠した可能性も…。嬉しいけど、もうちょっとトモと楽しみたかたかな…?」
まだ初期過ぎて、検査薬にも反応しないかもしれない。
それにもしかして、このまま定着せずに自然淘汰で流れてしまうかもしれないし…。
もうちょっとはっきりするまでトモには黙っていようか、とも思ったけど、止めた。
私たちは何でも話し合うって決めてるし、何より親として、お腹の子供を守らなくちゃいけない。
私はすぐにトモに妊娠の可能性を打ち明けた。
トモは静かに喜んでくれた。
それから二週間安静に過ごして、8週目で私の妊娠がほぼ確定した。
そこでやっと、私たちは抱き合って喜び合ったの。

今度こそ私たちの子供をこの世界に産み出すために絶対に無理をしないようにしなきゃ。
そう固く誓ったんだけど、そうも言っていられなくなった。

村からの使者だという若い男たちが5人、私たちの家である出産研究所へやってきたの。
なんでもトモのお父さんである村長は老いと病で先が長くないようで、すっかり権力を失ってしまったらしい。
それで村の若い人間たちの独断でトモを次の村長にすると、そして私を正式な産科医として村へ迎え入れたいと。
男たちは丁寧な言葉で説明し、頭を下げてくれた。
使者の中にも、見た目には分からないけど妊娠している人間がいるのかもしれない。
トモはなにやら考え込んでいる。
私も産科医として村へいけば、当然出産に立ち会うことになる。
産気づいた者や病人が出れば、日夜関係なく呼び出されるだろう。
前のような無茶はしたくないけれど、医者として困っている人間も放ってはおけない。
私たちは相談して、一週間後に返事をすることにした。

47無能:2012/12/09(日) 12:44:20

「ていうことなのー。お父さん、どうしょう?」
私は取り敢えずお父さんに相談することにしてテレビ電話で粗筋を説明した。
「んーそうだなぁ。安全とわかったわけでもないし、アイも妊娠初期だろ?どうしようなぁ?マヤ?」
お父さんの膝にはマナが産んだ両性の子のマヤを膝に抱いている。
確か今、マナもまた妊娠したって言ってたわね。私と同じくらいのはずなのにもうつわりが酷いって。
結局私たちは、子供が産まれてから移動することにして、安定期に入ってから一度私の生まれ育った日本に戻って出産は里帰りすることになった。

48無明:2012/12/10(月) 00:34:15
そして、数日後。
私たちは荷物をまとめて、日本に帰ることにした。
そして、トモのお父さんにはもうちょっとだけ村長をしてもらうことにしたので、トモも一緒だ。
そして日本行きの航空機に乗り、ちょうど太平洋を越えた辺りだった。
あの国で戦争が始まり、入国が制限されたという。
本当なら今すぐにでも戻りたかったが、まだ不安定な妊娠初期、おまけに日本人だから狙われるとのことで私は涙をのみ、日本に向かった。

49無能:2012/12/10(月) 00:55:16


「お父さん、久しぶり。」お父さんが双子のマヤ・マオ姉妹とマトイの両性のマイを連れて出迎えてくれた。お母さんはマナの体調が優れないから傍についているみたい。
「よく帰ってきたな。トモ君も日本へようこそ。疲れただろ?」

「ううん。お父さんがプレミアムファーストルームとってくれたから楽チン立ったわよ。」
昔はシートに座って乗っていた飛行機だったみたいだけど今はひとつの部屋が何個もあるの。

私たちは早速私の生まれ育った家に向かった。
その道中双子とマイは私たちに興味津々だった。

50無明:2012/12/10(月) 01:17:42
(Birth Shopの更新をお願いできますか?216レスで終わらせますので)

やはり文明の利器はインパクトが大きかったらしく、それぞれ反応を示している。
そして私は、お父さんから忠告を受けた。
戦争が終わるまで、戻ってはいけないと。
その意見に最初に賛同したのは、以外にもトモだったのもあって、私は素直に受け入れられた。

51無能:2012/12/10(月) 01:51:38

我家につくと、アクトと体調が優れなさそうなマナが出迎えてくれた。マトイは、学校で勉強しているみたい(妊娠したマナは休学中)。
子供たち(私の姪や甥)も始めは近くでボーッとお父さんの影に隠れいたけどいつのまにかなついて「あいにぇぃたん」と呼ばれたときには私は骨抜き状態。

52出産子:2012/12/10(月) 04:17:47
〓個人的メモ〓

アイ(女):18歳/タイキとアクトの娘/トモの子を妊娠中(11週目くらい)
トモ(男):23歳/アイの夫/村長の息子

タイキ(男):アイの父/70歳くらい/前作の主人公
アクト(両性):アイの母/タクトの妻/前作ラストで若返った為肉体的には40歳くらい

マナ(両性):20歳/双子の兄/故マナトの自家受精の子/自家受精の子を妊娠中(12週目くらい)
| ∟マヤ(女):3歳/マナの自家受精の子/双子の姉
| ∟マオ(男):3歳/マナの自家受精の子/双子の弟

マトイ(元両性):20歳/双子の弟/故マナトの自家受精の子/妊娠能力なし
  ∟マイ(両性);3歳/マナトの自家受精の子

ナナ(女):19歳/故マナトの自家受精の子/マナとマトイの妹
マナト(両性):享年20歳/マナ、マトイ、ナナの産みの親/タイキとアクトの第一子


・マナとマトイはアイの年上の甥っ子、タイキとアクトにとっては孫
・マヤ、マオ、マイは、アイにとって又甥(またおい)又姪(まためい)、タイキとアクトにとってはひ孫
・故マナトはアイの実の兄
・他にも親戚たくさん

53出産子:2012/12/10(月) 04:19:01

「あの時取り上げた子達がもうこんなに大きくなったんだね…」
そう思うと感慨深い。
特にマオには、特別な思い入れがある。
力いっぱい遊んであげたかったけど、適度なことろでお父さんが引き離してくれた。
今のところ落ち着いているとはいえ、私も妊婦だしね。

「マナ、体調はどう?」
リビングのソファにぐったりと座っているマナに尋ねた。
「…うん、まあ、なんとか…」
そういう顔色はあまり良くない。
「あの…、アイも妊娠、してるんだろ…、その、大丈夫、か…?」
何処か遠慮がちに聞いてきた。やっぱり、前の子を流産したときのこと、気にならないわけないよね。だから私はなるべく明るく答えるの。
「うん、全然へーき!今度は絶対に元気な赤ちゃん産むわ。マナの主治医にはなれないかもしれないけど、同じ妊婦として一緒に頑張ろーね!」
「……うん、よろしく…」
私たちはにっこり笑いあった。

「ただいま。アイが来てるって?」
アクトお母さんが夕飯の準備をしている頃にマトイが帰ってきた。
私は三年ぶりにその姿を見て驚いた。
どこか弱々しく、マナの後ろに隠れてばかりだったマトイが、年齢に相応しい立派な青年に成長していたんだもん。
身体にはしっかり筋肉がついて、背も20センチくらい伸びている。
女性器を完全に取り除くことでホルモンのバランスが変わった所為かも知れない。
お母さんが言うには、若い頃のお父さんに似てきたって。
そんなマナトには妹のナナが凄くなついていて、しゅっちゅう連れまわしたり、一緒に通っている学校でもべったりらしい。

54123:2012/12/10(月) 20:19:19

「ぱぁぱぁ。」
マトイは自身が男らしくなってきたからマイにパパと呼ばせてるみたい。
「ただいま、マイ。いい子にしてたかぁ?」
「あぃ!」
あのとき子供なんていらないような態度だったマトイも近寄ってきたマイを抱き上げて頬擦りしててすっかりメロメロみたい。

ちなみにマオはお父さんになついているみたいでお父さんのもとを離れようとしないけど、マヤは体調が悪いマナにもお構いなしでくっついて離れない。

55無明:2012/12/10(月) 21:25:22
さすがにお母さんが見かねて離したけれど、マヤは懲りてないみたい。
あとでちゃんと叱っておかなきゃ。

結局、マナはつわりがひどすぎて入院することになってしまった。
私も本当は手伝ってあげたいけど、一度流産した手前、体の負担にならないかが怖い。
「それじゃ、私に任せて!」
悩む私に声をかけてきたのはナナだった。
家事の手伝いはナナがやってくれるとのことで、こうして私たちの日本での生活が始まった。

56無能:2012/12/10(月) 23:30:58

「っく、あぃねぇたん、ままはぁ?」
入院しているマナの負担をなくすためにマナの子供たちは病院にいくことはないので、もともとマナにべったりのマヤは1日中ぐずりっぱなしでナナとマトイは学校でお母さんはマナの世話、お父さんはマヤとマイの世話で手一杯のため、私のところに泣きながらやってくる。
マヤはまだトモにはまだ馴れないみたいでトモがくると私にしがみついて隠れるようにしてて可愛いのよね〜。

57無明:2012/12/11(火) 00:32:51
しかし、だからといってずっとかまってやるわけにもいかない。
ここは何とかして納得させないと、私の赤ちゃんにも関わる。
そこで私はお母さんに相談することにした。
私達を育てたお母さんなら、きっと何か方法を知っているはずだからね。

58無能:2012/12/11(火) 01:13:40

お母さんは、入院しているマナの世話をしているから夕食の時に荷物を取りに帰るときくらいしか家にいないから私は検診がてらマナの病室にいき、マヤの話をした。
「マヤ、相変わらずだな。」
一向にママ離れしないマヤに点滴で栄養を補給しながら聞いているマナも手を焼いている問題みたい。
お母さんたちの話だとマヤは元々他の子達よりも少し体が弱いみたいで甘やかしていたら、ママっ子・人見知り・泣き虫の甘えん坊になっちゃったみたい。

まぁまだ3歳だししょうがないはしょうがないけど。
お母さんの話だと解決策がないみたいね。
お父さんやナナ、マトイもあまりマヤがなついていないみたいだし、私はなつかれている方みたい。
子育てって大変だなぁって感じる。

59無明:2012/12/11(火) 01:55:02
マナの体調はなかなか安定せず、そのまま入院を続けることになった。
そして、私の方も順調といえば順調だが、ある問題があった。
赤ちゃんの大きさが、実に1ヶ月半ほど大きいのだという。

60無能:2012/12/11(火) 02:51:03

成長もこのままだと早産で出産になるかもしれないみたい。
でもその分早く安定期にも入って今は健康のために散歩ついでにマヤと夕飯の買い物に来ている。
「マヤ、何食べたい?」
「はんばーぐぅー!!」
マヤはマナがいなくて日中はぐずらなくなったけど私が出掛けようとすると必ず着いてこようとするから一緒に出掛けている。
夜はまだぐずるみたい。

61出産子:2012/12/11(火) 06:39:54

マナや私が出産すればやっぱり赤ちゃん優先になっちゃうし、どうにかお姉ちゃんの自覚が出来てくれればいいんだけど。
いっそマナの出産に立ち合わせてみようか?新しい家族を一緒に迎えれば、少しは自覚してくれるかもしれない。
「マヤ、もうすぐ赤ちゃん産まれるね、楽しみだね〜」
「ん〜〜、まやわかんない。まやあかちゃん〜」
こりゃ産まれたら産まれたで赤ちゃん返りしそう。皆で協力して、どうにか乗り切るしかないなあ。

そうしているうちに私は妊娠18週目、所謂五ヶ月目になった。
でも胎児の成長具合は24週目くらいらしい。
と言うことは、7ヶ月になったくらい。
おかげでお腹も目立ち、胎動もよく感じるし、エコーでもすっかり人の形をしている。
私のお腹に宿った一つの命。
こういうのは個人差があるし、単純に受精日の勘違いかもしれないし、なんにせよトモの子であることには間違いないんだから、元気に産まれてきてくれれば何でもいい。

体調が安定しているので、私は少し外で働きたいなと思っていたの。。
ちょうどそのとき、付けっぱなしのテレビからあるニュースが飛び込んできた。
あの村の人間をを戦争難民として日本に受け入れたらしい。
特に妊娠している人間を優先的に連れてきたって。
テレビ画面に映るのは、空港で報道陣に囲まれているお腹の大きな妊夫たち。
皆疲れきっていて、初めての異国でおびえきっている。

私は家族と良く相談して、ボランティアの医師として出来る範囲で彼らと関わることにした。
早速準備を整えて、彼らが収容されている施設へと向かったの。

62無能:2012/12/11(火) 17:57:06

もちろん私だけじゃ心配だからとトモも一緒にいくことになった。
私達が施設に入ると1人の妊夫がびくびくしながら歩いていたけど、トモが「あっ」って知り合いかしら?
「トモ様!」
向こうも気づいて妊夫なのに走ってきてる。
「やっぱりクルハか?」
「はい。お懐かしゅうございます。」
「アイさん、僕の付き人だったクルハだよ。クルハ、僕の妻のアイさんだ。」
トモの付き人なんだぁ。16歳くらいの男の子かしら?

63123:2012/12/12(水) 00:33:51

「トモ様の奥方様、はじめまして。」
「はじめまして。」
「クルハ、アイさんは医者なんだよ。ここに来たのは何人?」
「8ヶ月のものが1人、9ヶ月のものが2人、臨月のものが私を含めて3人です。日本へは男の妊夫の比較的産み月が近いものをつれてきました。女の妊婦と子供たちはまた別の国々へいかせてます。日本は妊夫を快く受け入れてくださったのでみな来ております。」
クルハさんがみんなをまとめてつれてきてくれたのね。

64無明:2012/12/12(水) 00:52:43
とはいえ、今回の措置はあくまで一時的なもの。
なぜなら、難民は結構な人数がいるからだ。
住む場所や医療費などがかかり、あまり政府としても養ってくれる余裕が無いらしい。
その為、今回は「4ヶ月間のみの受け入れ」となっている。
これは、妊娠週数の一番若い人の赤ちゃんが生後2ヶ月を迎えるまで、という基準で決められたもの。
その発表をしている外務大臣の言葉が、私にとってはとても重い言葉だった。

「本当は、彼らをこのまま受け入れてやりたいところです。ですが、我々にも、この国の国民全体にも生活があります。
苦しむ人達に手を差し伸べるのは正しいことです。ですが、誰かを助けるということは自分の何かを削ることなのです」

誰かを助けるということは、自分の何かを削ること。
今の私には、その言葉がとても大きく、正しく聞こえた。

65無能:2012/12/12(水) 01:15:33

「4ヶ月で戦争が終わることを祈るしかないですね。」
私達はトモと一緒にテレビをみながらはなしていた。
「アイ、少しでも持っていけ。」
大分つわりが治まってきて退院してきたマナは使わなくなったフワフワの妊婦さん用の布団を何枚か用意してくれた。テレビに映っていた固い布団は、妊夫の負担がかかっちゃうものだったったからって。
「あぃねぇたん、あぃっ。」
マナが退院してからまたマナにベッタリだったマヤも私にマヤと同じくらいの大きさのぬいぐるみを持ってきた。

66出産子:2012/12/12(水) 04:26:57

「わあ、ありがと〜。マヤはいいお姉ちゃんね」
「えへへ〜」
私はぬいぐるみを受け取ってマヤの小さな頭をぐりぐりと撫で回した。
マヤはマナが戻ってきて落ち着いたのか、私たちが忙しくしているのを見て何か感じたのか、以前ほどわがままを言うことがなくなってきた。
子供は子供なりにゆっくり成長していくものなのね。
これで少しは安心かな。

私は三日に一度施設訪問することにしていた。
主な仕事は簡単な健診と妊夫たちの心のケア。
政府から派遣された専門お医者様がいるから、分娩には立ち会わない約束なの。

そういえばボランティアで思い出したけど、一度ナナがトモの代わりに一緒に施設に来てくれて、そのときに妊夫の一人とお互いに一目惚れしちゃったの。
彼は23歳で妊娠8ヶ月のカイという名前の青年。
殆ど男性よりだったのがこの歳にしてなんのはずみか自家受精してしまい、戸惑いも大きかったところにこの戦争。
村を遠く離れたこの異国の地で突然目の前に現れた同じ民族のナナがまるで光をまとった女神に見えたらしい。
ナナはナナで、今まではマトイにべったりなお兄ちゃん子だったのにあっという間にカイにぞっこんになってしまい、それは親身に世話をしていて、結婚の話も出ているみたい。
でもそうなればカイはナナの夫として日本の国籍を手に入れられるわけだから、法的にも問題なく日本に残れるわよね。

67出産子:2012/12/12(水) 04:27:38

妊娠20週目になったその日、マナたちが集めてくれた物資を車に積み込んで、トモの運転で施設に向かったの。
いつものようにクルハが出迎えてくれたけど、その表情はどこか暗い。
「あら、どうしたの顔色が悪いわ。どこか調子悪い?」
「…いえ…なんでも……、……、あの、昨日から、少し、腹痛が……治まら、なくて…」
少し言いよどんで、クルハが口を開いてくれた。
あら、陣痛かな?でももう臨月なんだし何の問題もない。
不安を与えないように、落ち着かせて専門医のところに誘導しようとしたんだけど。
「…は、ぅ、ううっ!」
私に不調を伝えたことで堪えきれなくなったのか、その場に膝を付くようにして蹲ってしまったの。
「はあ、は、ぁあ、い、いた…っ、いた…いっ…、うう〜、う、まれ…っ!!」
「え!?」
私は慌ててクルハのズボンを下着ごと下げた。
曝け出された秘裂からは、赤ちゃんの髪の毛が見え隠れしていたの。
分娩担当のお医者様に心を開ききれていなかったクルハは陣痛が始まったこと言い出せずに、ずっと我慢していたみたい。

68無能:2012/12/12(水) 04:35:24

「もう頭が見えてるから息んで!トモ、クルハを支えてあげて。」
私も医者なんだし、分娩担当医がまだこないなら私がやるしかない。
私は、持ってきていた布団をその場に敷いてそこにトモがクルハを移動させてくれた。
クルハは、四つん這いになってなるべく私に負担がかからないように自力で生んでくれるみたい。私はその間にタオルとか色々準備をして生まれてくるのを待つ。

69出産子:2012/12/13(木) 03:20:35

「んーーーーっ、うんん゛ーーーっ!!」
「そう、とっても上手よ。もうすぐ、頭が出るからね」
私はあまり力を入れないようにして、ガーゼで会陰を保護し、息みを誘導する程度の介助にとどめた。
クルハは、私にお尻を向けて膝立ちになって、トモにしがみつく形で息んでいるの。
「やあ、クルハくんが産まれそうだって?」
そこへ大柄な医師がどたばたと足音を響かせて駆け寄ってきた。
どうやら、分娩担当のお医者さまみたい。
私はその髭面の50代の医師に、面識はないが見覚えがあった。
世界中の妊婦と赤ちゃんを救うためにあらゆる紛争地帯へと赴きボランティアをしている、とても崇高な志を持ったお医者さまなの。
「クルハくん、産気づいていたのに気が付いてやれなくて悪かったなあ」
山之辺医師は、クルハから陣痛来たらしいことを告げられなかったことは、特に気にしていないみたい。
心の広い、凄く頼りになるお医者様だ。
この先生に任せておけば、ここの妊夫たちの出産は大丈夫そうね。
私は赤ちゃんを取り上げるのを山之辺医師に譲って、トモの隣に回りこみクルハの手を握った。
「うう〜〜、や、ヤマノベセンセー、わ、私は…っ」
「いいんだ、なにも心配しないで。君たちに受け入れられていなかったのはまだまだ私の努力が足りなかったな!」
「センセー…、う、うわぁあ、ああ〜〜〜っ!!」
おしゃべりしながらも出産は順調に進み、今まさに、赤ちゃんの頭がクルハの膣口から出ようとしていた。

70無能:2012/12/13(木) 03:34:14

「頭がでてくるぞ!ゆっくり長く息むんだ。」
「ぅんんんぅぅぅぅううう!!あ゛ぁ!?」
先生はなるべくクルハの会陰が裂けないようにアドバイスしてくれてるみたい。
先生の補助もあって一切裂けずにクルハの赤ちゃんの頭が出てきちゃった。赤ちゃんが少し大きめなのに一切裂けずにでてきてすごい。
「ん、緊張もあってか1週間予定日過ぎちゃって少し赤ちゃんが大きいけど、もう1人いるから出血も抑えたいし、裂けないようにするためにも私の指示にしたがって息むんだ。」
先生は一人一人の予定日をちゃんと把握してさすがね。クルハって見た目ではわからなかったけど双子だったんだ。

71無明:2012/12/14(金) 01:12:42
無事に一人を産み終えたクルハは、ちょうど分娩台が空いたとのことで山之辺医師に連れられていった。
「さあ、帰ろう。君にあまり無理をさせる訳にはいかない」
私を労ってくれるトモ。
トモの言うとおりなので、私たちは帰って体を休めることにした。

それから、私はお父さんとお母さんにメンタルケアを任せて、応対などの軽い仕事を主にするようになった。
分娩介助だけでなくメンタルケアも体力、精神力ともにかなり使うので、妊娠中は手伝いをやめたほうが懸命だ、と山之辺医師に言われたからである。
私も赤ちゃんがかなり大きくなってきて、今度は早産の可能性もあるためおとなしくしておいたほうがいい、と山之辺先生から言われた、
その肝心の赤ちゃんについて、山之辺先生は「いくら計算しても妊娠週数の計算を間違えたとは思えない」といい、結局私の母子手帳には「巨大児」と書き込まれたのだった。。

73123 1つ前の削除お願いします。:2012/12/14(金) 01:30:46

けどさすがに9ヶ月半ばに入り、産休という形でボランティアを今日で休むことにしたけど今はちょうど妊夫さんの入れ変え時期になっちゃったから。
カイは期限がくるまえにナナと籍を入れて日本に残ることになって、クルハはこっちで新しい妊夫が慣れるように残るようにトモに言われて残ることになったみたい。

74出産子:2012/12/14(金) 03:53:11

ところで妊夫たちが戦争難民として収容されたこの施設だけれど、ニュースを見た全国の善意の人々から大量の物資が届けられたの。
特にママさんグループからの援助が凄くて、妊婦用品から新生児用品まで施設に収まりきれないくらいだったので、それはネットやテレビで告知して、他の乳児院などにおすそ分けされたの。
それにいつの間にか募金も集まっていた。
これもかなりの高額になっていたうえに途切れることなく届けられ続けたので、関係者で相談し新しい基金をつくり、今回産まれた子供たちのために使われることになったの。
それからいろんな人たちとグループが署名を集めてくれたみたいで、避難生活は4ヶ月の期限付きだったんだけど、日本で産まれた子供が日本に残る場合に限って、日本の子供と同じ福祉と教育を受けられることになったの。
でもそれだと産みの親は日本を出なければいけないんだけど、カイの例もあるし、いろんな人がいろんな方法で引受人になってくれて、結局全員赤ちゃんと一緒に日本に残れそうなの。
根本的な解決にはならないかもしれないけれど、顔も知らない全国の人たちがあの村の子たちのことを考えて助けてくれたのがとても嬉しい。
あの村は、私のお母さんと夫の故郷、と言うことは、私の故郷でもあるんだしね。

75出産子:2012/12/14(金) 03:55:06

ボランティアを休んで一日目、私は9ヵ月半、妊娠34週目だ。
まだ早産になる時期なんだけど、もう既に3500gほどありそうなので、はっきり言ってすぐにでも産まれて欲しい。これ以上育つと、間違いなく帝王切開になっちゃうよ。
でもまあ、赤ちゃんが健康に産まれてきてくれれば、お腹を切るくらいなんてことないけどね。
やっぱりまだもう少し私のお腹の中にいて欲しいかな?
明日にでもお父さんに詳しく骨盤の大きさなど見てもらって、どう出産するかの計画を練る予定。
因みにマナは私とは逆で赤ちゃんが小さく成長具合が悪いようなので、栄養をたくさん取るようにして定期的に点滴の治療も続けているの。

とりあえず今日はリビングでマナとベビー服のカタログを眺めながらのんびりしていたんだけど、その空気をぶち破る勢いでナナが飛び込んできたの。
ナナはカイと入籍したあと、家の隣のアパートを借りて二人暮らしをしている。
日本に来たときは8ヶ月、妊娠28週だったカイは、少し出産が遅れていて今妊娠42週になっていた。
そのカイと二人で出産を促すために近くの公園まで散歩した帰り道に破水、なんとかアパートまで帰ってきたものの陣痛も始まりもう動けないという。
私は急いででも落ち着いて、施設にいるはずの山之辺医師に連絡を取ったの。

76無能:2012/12/14(金) 04:45:46

そんなときに最悪な状況が起こっちゃったの。
「っ!」
カイの部屋に来てみたんだけどカイの陣痛がうつっちゃったみたいで、お腹に張りを感じてお腹を支えて膝をついた。
「アイ、大丈夫か?」
マナは、なんともないみたい。あとで聞くとマナの場合は赤ちゃんが小さいから少しでも出産を遅らせるためと早産を防ぐためにマクドナルド手術をしたみたい。

77無明:2012/12/14(金) 16:34:12
私は緊張状態だったから、お腹が張っただけだということですぐに部屋から出された。

78無明:2012/12/14(金) 16:39:15
私は緊張状態だったから、お腹が張っただけだということですぐに部屋から出された。
「週数の上ではまだ早産だから無理をするな」という山野辺医師からの連絡を受け、私はおとなしく救急車の到着を待った。
それに、ここで私まで出産になったら助けられる人がいない。
そうなったら、カイも私もあぶないかもしれないのだから、ナナやトモと救急車に同乗して病院に向かうまでにした。

79123:2012/12/14(金) 22:54:58

それでもまだお腹の張りが収まらない。
「アイさん、大丈夫?」
収まらないお腹の張りにお腹をさすっている私にトモが心配そうに聞いてきた。
「多分大丈夫、だと思う。」
早産ではあるけど体重も3500gあるって言ってたし、私のみてもらっている先生もほとんど週数以外は臨月とかわらないみたいだから別に問題はないけどね。
「アイさん!?」
ぷしゅっと鈍い割れる音がしたかと思うと私の胎内から生暖かい液体が流れてきちゃった。
一瞬漏らしちゃったかと思ったけど、絶対、違う!破水しちゃった。これ量も前位破水の量じゃないわよね??
救急車のなかだったから救急隊員たちもえっ!?って感じでこっちを向いた。
「破水しちゃった?えへっ?」
なぜか当事者の私だけ冷静でいれた。

80無明:2012/12/15(土) 01:44:53

私は即座にその救急車で病院に担ぎ込まれ、医師の診断を受けた。
やっぱり、私もまだまだ未熟者だ。
量は多いかと思ったけど、検査結果を見せてもらったら分かる。
高位破水ということで、私はそのまま入院となった。
当然、産気づいているカイはそのまま分娩室へ。
カイはどっちにしろ、これが最初で最後なので無事で居て欲しいけれど………

私の場合、高位破水といっても穴はそこまで大きくなく、ドバっとでたのは最初だけだった。
だから、絶対安静とはいえ、入院していれば38週までは問題ないらしい。
ベッドで横になっていると、分娩室のほうからカイの悲鳴が聞こえた。
大丈夫かなあ………?

81名無しさん:2012/12/15(土) 01:57:30

「トモ、カイ、大丈夫かなぁ?」
一応ナナの旦那さんだから私の甥にあたるわけだし、やっぱり心配ね。
「大丈夫だよ、きっと。それよりアイさんのが心配ね。」
一応まだ張りが収まらないためにつけられている張りを見る機械がお腹につけられていて動けない私の手をトモは握ってくれた。

ほんとうはゆっくり休まなきゃダメだけどカイの声が丸き声で眠れそうにない。様子を見に来た看護師さんにきくと自家受精の男性妊夫でありながら初産を20代で迎える人は産道と子宮口が固くて女の人以上の難産になるんだって。

82出産子:2012/12/16(日) 04:09:49

そのまま夜になり面会時間は終了。
私はしばらく、多分、産まれるまで入院ってことになったので、トモは一旦家に帰ったの。
入院患者の病室と、陣痛、分娩室は同じフロアにある。
消灯後、シンと静まり返った病棟に産みの苦しみに耐える声が響きわたる。


  うぅうーーっ、あ、ぁあああああ〜〜!!
  カイ、大丈夫よ、しっかりして。息をちゃんとして!
  …あ、ぁああ、なんて、痛み、だ…っ。腹の中が、ねじ切れそうだ…っ!
  赤ちゃんもきっと頑張ってるわ。産まれて来るのは私たちの赤ちゃんなのよ、頑張って…!

  あああ゛っ、もう、だめだっ、な、ナースを呼んで、くれ…っ、…い゛、痛い゛っ!!
  辛いのね? もうちょっと我慢して!
  カイさん、どうですかー。…ん〜、まだまだですね。また一時間したら内診にきますからねー

  はあっ、は、あ゛っ、苦しい…、ナ、ナナ…、僕に、もしものことがあったら…、子供の、ことを頼む…
  なに馬鹿なこと言ってるの!カイはちゃんと産むの!そして二人で子育てして、今度は私がカイの赤ちゃん産むんだから!

  あああーーー!? ダメだダメ…出る…っ、もう、産まれるっ!!
  はい、カイさん、まだですよー、我慢ー。息まないでー
  カイ、ひっひっふーよ!ほら、お尻押してあげるから、こっち向いて!…もう、息んじゃダメだったら!

  ん〜〜、そろそろですかね。カイさん、頑張りましたねー。分娩台に移動しましょっか
  …はあ…はあ…、む、り、…動け、な…
  カイっ、しっかりして!ほら足上げて、今から赤ちゃん産むんだから!

  よしっ、カイくんお待たせ!もう赤ちゃんも疲れてきちゃってるから、さっさと出しちゃおうね!
  …や、ヤマノベ、センセー…、も、息んで、いいですか…、ぁああ゛!来た…っ、いたぁああーーっ!!
  よし、いいよぉ、はい、今!
  ぅんんん゛ーーーーーっ!!
  いいよぉ、その調子で!
  〜〜〜〜〜〜っん゛、っはっはっは、…ぅ゛ん゛ん゛ん゛ん゛っ!!

  ……、あ、カイ、見えてきた!赤ちゃんの頭が見えてきたよ!
  あぁあ、ああああ〜〜〜〜っ!
  はい、声は出さないでー。もう一回息んでみよーう。

  んー、ちょっと切開させてもらうからね。…はいこれでよし。次で頭が出るからね。
  カイ…カイ…っ
  …っ、はっはっはっは、…あ、あああ゛…、…………ひ、…ぎゃっ!?

  はい頭出ましたー、そのまま短い呼吸しててー
  あ、ああ、やだ、うそ…、凄い、あそこから頭が出ちゃった…。カイそっくり。…凄いよぉ

  …はあ、ふ、う…、ぅうっ、…んんっ、んんん゛…っ!………っ、っ、っ、っう、あぁああ〜〜〜っ!!!


程なくして、元気な産声がフロア中に響き渡ったの。
何時のかにかすっかり夜は明けていて、朝日がとっても眩しかった。

83123:2012/12/16(日) 04:42:00

あ〜ぁ、カイの赤ちゃん生まれたんだなぁって思って小一時間ほど経ってからやっと眠れそうと思ったら突然病室のドアがパッと開いた。
「アイ!みてみて私とカイの赤ちゃん!カイそっくりの両性ちゃんなのー。」
興奮の覚めきらないナナがやってきた。
ナナとは幼なじみのように育って仲がいいけど、今、まだ産まれたばかりの赤ちゃんを抱いてきて大丈夫なのかしら?
カイは疲れはてて産後の処理中に気絶するように眠っちゃって話し相手がいないみたい。

84無能:2012/12/17(月) 21:07:43

「カイさんの奥さん、まだ赤ちゃんを持ち出さないでください!」
すぐに看護師さんが慌ててやってきたけど、ナナはほんとうに慌てんぼね。
カイは私と同室にしてくれたみたいでしばらくして眠ったままのカイが運ばれてきた。
ナナは結局カイのベットに潜り込んじゃって眠っちゃったけどいいのかなぁ?

85名無しさん:2012/12/24(月) 01:10:26
しばらくするとカイは無事に退院していき、残すは私の出産となった。
絶対安静で動いていなかったせいもあるのか、赤ちゃんの推定体重はなんと4000g。
いくらなんでも大きすぎる。
絶対安静から一転、早めに出産したほうがいいということになって、私は促進剤の点滴を受けた。

86無能:2013/01/01(火) 02:08:36

「アイ、大丈夫?陣痛始まったぁ?」
陣痛促進剤を打たれてからしばらくしてナナがカイが産んだカナを連れてやってきた。
「うん、まだ打ったばかりだから大丈夫。凄い楽しみなだけ。」
「赤ちゃんって可愛いよね〜。カナも1ヶ月なのにもう大きくなったのよ!」
今日はカナの検診だったんだぁ。
やっぱり新生児は成長が早いわね。

87名無しさん:2016/05/03(火) 14:47:16
そして結局その日は陣痛は起きず、ナナと楽しく会話して一日が終わった。
出産は次の日に持ち越しとなった。
そして次の日、私は今日も陣痛促進剤を受けている。
そして午後4時を過ぎた頃に少しお腹が痛み出した。

88名無しさん:2016/05/03(火) 21:08:11
お腹の痛みは少しずつ強くなってきた。
陣痛で間違いみたい。
ただ本陣痛じゃなくてもとても痛いと聞くからまだかも。
私はすぐに看護師を呼んだ。

89名無しさん:2016/05/04(水) 22:03:24
すぐに看護師が来て子宮口の開き具合を確認してもらった。
ちょっと同じ女性とは言え股間の中を見られるのはちょっと恥ずかしいな・・・・・・
「まだ完全には開ききっていないですねもうちょっと待ってください。」
(えええ~~もうちょっと待つの~~~~)
それを聞いたあたしはそう思った。

90名無しさん:2016/05/05(木) 17:12:55
私はこの痛みを抱えたまま、また明日を迎えるんじゃないかと思いながら午後4時を迎えた頃。
また看護師さんが確認をする。
「もう完全に開いてますね、もう息んでもいいですよ。」
そう言われ、私は心の中でやった!と思いながら息み始めた。

91名無しさん:2016/05/06(金) 12:39:06
しかしやはり胎児が大きいからか中々胎児が進まない。
それでも私が頑張って息んでいると。
「やはり胎児が大きいからか中々進みませんね。お腹を押しましょう。」
看護師さんがそう言い私のお腹を押してきた。

92名無しさん:2016/05/06(金) 13:52:29
「ううううう・・・・・・あああああああああっ!!」
お腹を押されて私は声を上げる。
するとパチンッ!と言う音と共にあそこから水のような物が出てくる。
「どうやら破水したみたいですね。」
看護師さんがそう言った。

93名無しさん:2016/05/07(土) 11:17:47
「破水してしまった以上のんびりはしていられませんよ。」
「はいわかりました。」
看護師にそう言われた私は強く生きんだ。
「んんんんーーーーーーーーっ!!んんんんんんんーーーーーーーーっ!!」
看護師さんも私のお腹を押してくれている。

94名無しさん:2016/05/08(日) 18:00:00
それでも中々胎児が進まない。
「アイさん、会陰切開をしましょう。」
胎児が大きすぎるため私は会陰切開をすることになった。
そして看護師さんが医療鋏を持ってくる。
そして私のあそこに鋏がはいる。

95名無しさん:2016/05/10(火) 23:19:30
ジョキンッ!!!
「っ!!」
大きな音と共にあそこが切られる。
私は一瞬痛みで顔が歪むが我慢する。
そして私は再び息み始める。

96名無しさん:2016/05/13(金) 23:23:08
「んんんんーーーーーっ!!んんんんんんんんんんーーーーーーーっ!!!!」
「頑張ってくださいアイさん!!!」
私が息むのに合わせて看護師さんがお腹を押してくる。
そして息み続けて10分くらいの頃にようやく頭が見え始めた。

97名無しさん:2016/05/15(日) 17:58:38
「頭が見え始めましたよアイさん頑張ってください!!」
看護師にそう言われ私は息み続けた。
「ううううううううううーーーーーーっ!!!うううううううううううううううーーーっ!!」
そしていき続けること20分が経った頃遂に。

98名無しさん:2016/05/16(月) 00:11:44
スポンッ!!
オギャア!オギャアッ!!
「おめでとうございます、アイさん女の子ですよ!!」
看護師さんがそう言い産まれた私の娘を抱きかかえて私に見せる。
産まれた子供はやはり大きかった。
あ~~~~~痛かった~~~~。
私のあそこ巨大児が通ったから広がったかも。
こうしての私の出産は無事に終わった。
世の中はまだまだ問題が沢山あるけれどトモとこの子と一緒ならどんなことでも乗り越えていける。
そう私は思った。

原住民 パート2
  END

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