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梓「唯先輩に「誕生日プレゼントは何がいいですか?」って聞いたら」
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純「うん」
梓「「あ、今年はそういうのはいいよ」ってやんわり断られたのが昨日の夜」
憂「う、うん」
梓「それから一睡もしてない」
純「はぁ!?」
梓「だって眠れなくて・・・ご飯も喉を通らないし」
憂「ええっ!?」
純「・・・もしかしたら梓は食事も睡眠も必要としない体に進化しようとしてるのかもしれない」
梓「マジメな話なんだけど」
純「あ、うん、ごめん」
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梓「はぁ・・・」
純「・・・なんか変な事でも言ったんじゃないの?話の流れでそうなったとか。っていうか今更だけどそれ電話の話だよね?」
梓「うん。何も変な事は言ってないと思うけど・・・もしかして話し始めは「朝夕めっきり冷え込み、落葉の舞い散るこの季節、いかがお過ごしでしょうか」で始めたほうが良かったのかな」
憂「文通なの?」
純「話し始めなんていつも通り「どうも、おはこんばんにちは!みんなのアイドル、あずにゃんです!」でいいじゃん」
梓「私はいつもの純みたいな電話の仕方はできないの」
憂「えっ、純ちゃんって梓ちゃんと電話する時はいつもそんな感じなの・・・?」
純「ちょっとやめてよ!憂が真に受けてる!」
梓「まあ冗談だけど、純ならありそうじゃない?」
純「寝てない上にご飯も食べてないのに嘘吐いたり憎まれ口叩く元気はあるんだ?」
梓「寝てないからだよ」
純「なるほど、一理ある」
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憂「あのね梓ちゃん、電話口でのやり取りだったんなら、きっと梓ちゃんの考えすぎだよ」
梓「えっ、そうかな・・・?」
憂「うん。お姉ちゃん、電話する時は細かいことを飛ばして本題だけ伝えちゃうところあるから・・・」
純「へえ、そうなんだ。私のイメージだとそのへんしっかりしてそうなのは澪先輩かなー」
憂「純ちゃんは相変わらず澪さんに憧れてるねー」
(以前お姉ちゃんが澪さんの長電話に付き合わされて寝坊しかけてたのは黙っておこう)
梓「考えすぎかなぁ・・・憂が言うんだから間違いないような気もするけど、でも本当にキッパリ断られたからなあ」
純「やんわりじゃなかったの?」
梓「キッパリとやんわり断られたの」
純「ああ、なるほど」
梓「良かった、通じた」
純「・・・心配かけてすいませんねー」
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梓「憂の言うことだから信じたいけど、一応念のために万が一の可能性も考えておこうと思うんだ」
純「つまり?」
梓「私が唯先輩に・・・さ、避けられてる可能性・・・」
憂「絶対ありえないってばー」
梓「信じたいけど予防線も張っておきたいの!もし本当に避けられてるとしても、理由がわかれば今からでもなんとかできるかもしれないし! というわけで何か思いつかない!?」
憂「うーん、そもそも梓ちゃんから見てその時のお姉ちゃんの言い方はどんな感じだったの?」
梓「・・・取り付く島もなかった感じ? 電話もその話の後すぐ切られちゃったし・・・」
純「あっ、それって・・・」
梓「な、何!?」
純「トイレ行きたかったんじゃない?」
梓「・・・それなら確かに私の考えすぎってことになるけど」
純「あるいは梓と話してるとトイレ行きたくなるんじゃない?」
梓「それは・・・私が悪いの? 悪いとしてもどうすればいいの?」
憂「っていうか私達が平気だからあまり説得力ないような・・・」
純「じゃあ・・・あー、彼氏でも出来たんじゃない?」
梓「ゆ、唯先輩に彼氏!? そんな馬鹿な! 絶対ありえない!」
純「その否定っぷりも酷くない?」
梓「だって唯先輩はまだ子供なんだよ!?」
純「いやアンタ自分で先輩先輩言ってるでしょーが、一時的に年齢が一緒になるとはいえ基本的には年上よ」
憂「まあまあ純ちゃん、私もさすがに彼氏はないと思うよ」
純「うん、N女はその名の通り女子大だしね。それはわかってるってば」
憂「そうそう。それにお姉ちゃんまだ子供だし」
純「だから年上だって!憂のお姉ちゃんだって! それとも何!?唯先輩は後輩と妹から内面の幼さをディスられてんの!?可哀想!!」
憂「じょ、冗談だから落ち着いて純ちゃん」
梓「そ、そうそう。モチロンジョウダンダヨー。見てて危なっかしいのは事実だけど・・・」
憂「危なっかしいって例えば?」
梓「え、えっと、うーん・・・」
純「・・・あっ、例えば彼氏じゃなくて、音楽関係の業界人を騙る悪い男に騙されてたりとか? ホラ、大学の学祭で出会って、とかさ」
梓「・・・」
純「・・・なーんて、さすがに男ネタ二度目は通じn」
梓「・・・心配になってきた。やっぱり行こう。お祝いのためって大義名分を掲げて様子を見に行こう!運よく都合よく今日から週末だし! 準備して純!憂!」
純「えっ、本当に?」
梓「よし、まずは宿の手配から!」ポチポチ
純「ケータイで検索始めたよ・・・」
憂「本気だねー」
純「憂、止めないの? それともやっぱり憂も不安?」
憂「ううん、お姉ちゃんしっかりしてるし、軽音部の皆さんも一緒だし大丈夫だと思うけど」
純(しっかりしてる・・・?)
憂「でも梓ちゃんがお姉ちゃんを心配してくれるのは嬉しいし、私も久しぶりにお姉ちゃんの顔見れるならいいかなぁって思うんだよねー」チラッ
純「・・・?」
憂「純ちゃんはどう思う?」チラッチラッ
純(えっ、なにこれ、私の一声で決まるパターン? 私が鶴になるの? 私くせ毛だから鶴というより蔓だよねってやかましいわ)
憂「チラッ」チラッ
純(ついに声に出してきたし。でも確かに、行くか行かないか早く決めないと、このままだと)
梓「あ、安い宿があった」
純「・・・あーもう! 落ち着け梓!週末とはいえ受験生の私らにそんな時間もお金もないでしょうが!」
梓「ど、どっちも前借りすればなんとかなるし!」
純「時間はどっから借りる気よ!?留年するつもり!?」
憂「留年したらまた一年お姉ちゃん達に会えなくなるね」
梓「ぐっ・・・」
純「効いた」
憂「効いたね」
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梓「で、でも私・・・このままなんて嫌だよっ!」
純「梓・・・」
梓「私の誕生日には先輩達は電話をくれて、プレゼントも今度の帰省の時に渡すって約束してくれて、なのに私からは何も出来ないなんて・・・!」
純「・・・嫌われたかもしれない事がショックなんだとばかり思ってたけど、それだけじゃなかったんだね」
梓「それもあるけど」
純「素直だ」
憂「素直だね」
純「でも、ま、素直なのはいいことだ」
憂「そうだね。助けてあげたくなっちゃうよ」
梓「二人とも・・・」
純「憂にはもうどうやって解決すればいいかが見えてるんじゃない?」
憂「純ちゃんだって私と同じ考えでしょ?」
純「まあそうだね。憂と同じく、梓の考えすぎだと思うよ。あの人が梓を嫌うなんてありえないし」
梓「じゃ、じゃあなんで唯先輩はあんなことを?」
純「わからないかなぁ」
憂「お姉ちゃんは梓ちゃんが大切で、心配なんだよ」
梓「・・・はっ、もしかして・・・?」
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ひとつの答えにたどり着いた私は、二人に勧められるまま、放課後にもう一度唯先輩に電話をかけた。
そして・・・
唯『・・・うん。あずにゃん受験生だし、大事な時期だし、邪魔しちゃ悪いと思って』
梓「・・・まったく、そんなことだろうと思いました」
(二人に言われるまで気付かなかったけど)
唯『・・・何か、ダメだった?』
梓「全部ダメです」
唯『ぜ、全部!?』
梓「っていうか変に気を遣わないでください。そんなことしてもらわなくても絶対合格しますから」
唯『あずにゃん・・・』
梓「先輩達だって、私が一緒にいても合格したじゃないですか」
唯『それはー、みんなと同じ学校に行きたかったし、あずにゃん達にカッコ悪いところ見せられないし・・・』
梓「・・・私も先輩達と同じ学校に行きたいし、先輩達や部の仲間にカッコ悪いところ見せられませんから」
唯『・・・そっか』
梓「そうです」
唯『余計なお世話だったね』
梓「・・・というわけで、誕生日プレゼント、何がいいですか?」
唯『なんでもいいよー、あずにゃん達が選んでくれたものなら。憂達と買いに行くんだよね?』
梓「はい。憂と純と、あと菫と直・・・軽音部の後輩も一緒に来てくれるそうなので。お金もさわ子先生が少し出してくれまして」
唯『おおー、6人分の気持ちがこもってるんだね、贅沢だなぁ私』
梓「ふふっ。この後行く予定です。あ、憂は夜に電話するって言ってましたよ」
唯『わかったー。いろいろありがとーね、部長さん。年末そっちに戻った時にプレゼント交換しようねぇ』
梓「・・・はい」
唯『・・・ねえ、あずにゃん』
梓「はい?」
唯『・・・私達、待ってることしか出来ないけど、でもちゃんと待ってるからね』
梓「・・・はいっ。ありがとうございます」
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この上なく心強い言葉だった。唯先輩の誕生日なのに、私のほうがプレゼントを貰っちゃったみたいに。
最近は冬の訪れを感じさせるような寒さが続くけど、私の心は暖かかった。
だから私も、せめて言葉にしよう。
願わくば、この優しい先輩が少しでも暖かくなってくれますように。
梓「唯先輩、誕生日、おめでとうございます!」
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おわり
唯ちゃん誕生日おめでとう!
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素敵なssありがとう
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おつ
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