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100万年しなないあずにゃん

1 : いえーい!名無しだよん! :2013/07/25(木) 23:57:21 kBNkQvYg0
100万年もしなないあずにゃんがいました。
どんなにかわいい女の子とにゃんにゃんしたとしても、どんなにいっしょにいたいと願っても、
最終的にあずにゃんはずっとひとりぼっちでした。
そんな100万年目のある夏、あずにゃんは1人の女の子と出会いました。


2 : いえーい!名無しだよん! :2013/07/25(木) 23:57:56 kBNkQvYg0
不思議なことにあずにゃんはその女の子に対して、なにかしらの性的なよっきゅうというものがわいてきませんでした。
だからといって不快感をおぼえたというわけでもありませんでした。
その女の子は道端できたない格好をしてギターを弾いていたあずにゃんを見て、ひとこと言いました。

「あー、ひとりぼっちのキミ、私たちと一緒に演奏をしようよ」

あずにゃんは「いきなりなんだこいつ」と毛をさかだてました。
だいいちいんしょうはあまり喜ばしいものではありませんでした。
が、そんなことはおかまいなしなその子の様子にとうとう折れて、とりあえず一緒についていくことにしました。

しぶしぶ女の子のよこを少しおくれぎみにあるくと、女の子に頭をポンと撫でられました。
その感じが妙にここちよかったことをあずにゃんは最期まで覚えていました。

「私はどうせおまえより長くいきるし、おまえはどうせ私より先にしぬのだからちかよってくるなです。
 なかよくなんてしてもむいみです。しぬのなら、そんなものははじめからない方がましです」

お風呂にいれられながらそんなことをあずにゃんは訴えましたが、すべて、シャワーの音とその女の子の歌声にかき消されました。


3 : いえーい!名無しだよん! :2013/07/25(木) 23:58:30 kBNkQvYg0
ところで、あずにゃんの昔の昔の昔の昔のそれまた昔の昔の昔のずっーと昔の恋人には
「中野梓」という女の子がいました。彼女はあずにゃんの容姿をいたくきにいり、あずにゃんにギターを教えました。
あずにゃんのギターはその子のお下がりで、あずにゃんのギターの音色はその子のものそのものでした。

女の子につれられて、あずにゃんは階段をのぼって音楽室というところにやってきました。
扉のまえに立つとなかからなにやらごそごそと話し声が聞こえます。
女の子が扉を開けると、そこにはすでに3人の先客がいました。
あずにゃんは人見知りはしないのですが、そこは初めて来るばしょだったのでようじんして中に入りました。

その時、誰かがあずにゃんの機嫌を損ねるような言動をしていたのなら、あずにゃんは二度とそのばしょに来ることはありませんでした。
しかし、4人はその様子をあおることもなく、早くしろ、と野次を飛ばすこともなく、一歩一歩をたしかめるようにして部屋に入ってくるあずにゃんを丁寧に見守りました。

その部屋には机が4つきれいに並べられていて、
あずにゃんは最初に出会った女の子のふとももの上に座り、振る舞われたケーキと紅茶をたべました。
4人の話をあずにゃんはケーキをたべながら聞いていました。
どうやら女の子はあずにゃんのことを3人に話をしていたようで、あずにゃんは質問攻めにあうことはなく、

「かわいいなぁ」

「かわいいわねぇ」

「かわいいでしょー」

「おまえがいばるのかよっ!」

というやりとりが頭の上でなされるのを、まるで自分にはかんけいのないことのように聞き流し、紅茶を一口のみました。
夕日が窓からへやの中に差し込むころ、4人はようやく席を立ちました。
1人はなにやら怒っているようでしたが、その怒った顔がかわいいとあずにゃんは思いました。
4人はなにやら楽器を構え、えんそうを始めました。
その音のおおきさにあずにゃんは驚き、からだをビクッとさせましたが、驚いたのは初めだけでした。
だてに長生きはしていないあずにゃんです。様々な修羅場をくぐり抜けて来たあずにゃんは、すぐにその音のおおきさにもなれて、からだを音にあわせて揺らしはじめました。
あずにゃんがノリノリになっているのをみて、4人は嬉しくなり、いつもより張り切ってえんそうをしました。
帰り際、「また明日!」とあずにゃんは3人に言われてすこし驚きました。
「明日もきていい」と言われるとは思ってもいませんでした。
1人とわかれ、次には2人とわかれ、最後には女の子とあずにゃんは2人になりました。
「はい」と不意に女の子から左手が差し出され、あずにゃんはすこし戸惑ったあとにおずおずとその手をにぎりました。
夕暮れの町の中で女の子の影とつながってあずにゃんの影がうんと延びていました。


4 : いえーい!名無しだよん! :2013/07/25(木) 23:59:03 kBNkQvYg0
楽しくギターを弾いているあずにゃんに、ある日女の子は告げました。

「あずにゃんが弾いているのは三味線っていう楽器なんだよ」

あずにゃんは学がないのでギターと三味線の違いがわからなかったのです。
というか、長いこと生きているとそんな些細なちがいはどうでもいいことなのです。
弾ければいいのです。

あずにゃんは中野梓の三味線をずっと弾いていました。
自分はきっとそれを手放すことはないだろうとずっと思っていました。
しかし、女の子はそんなあずにゃんの気持ちも過去も何も知りません。
「みんなで一緒にバイトをしてあずにゃんにギターをプレゼントしよう!」という計画を密かにたてていました。

その頃あずにゃんは放課後の音楽室というところに通うことが日課になっていました。
みんなはもうすっかりあずにゃんのことを仲間と思っていてくれているみたいです。

「あずにゃんは喜んでくれるかしら?」

「さー、どうだろなー」

「なんで否定的なんだよ!」

みんなはあれこれとひそひそとそれでいてクスクスとけいかくを進めていき、とうとうバイト代金はあずにゃんの技量に匹敵するくらいのギターは買える額にたっしました。


5 : いえーい!名無しだよん! :2013/07/25(木) 23:59:33 kBNkQvYg0
カチューシャをつけたおてんばな女の子はあずにゃんのことをあず公と呼びました。
彼女のなにかを企んでいるニヤニヤとした笑顔があずにゃんは好きではありませんでした。
昔に似たような笑顔の子があずにゃんを落とし穴に落とそうとしたり、カエルをぶっかけたりしたからです。
他人のそら似なのですが、あずにゃんはなかなか不信感を解けませんでした。
でも彼女が優しい見守る視線をたまに自分に向けていることを知っていました。
彼女はよく幼馴染の美人さんにぶっ叩かれていましたが、あずにゃんはそれを見て自業自得だとおもいつつも声には出しませんでした。

ぱつきんのちゃんねーはあずにゃんが出会った中でも歴代のお金持ちの娘でした。
でも今まで出会ったどんな令嬢と比べても彼女は性格も正しくあったし、
そのことをダシに友達を作ったり、お金で人を操るようなことをしていなくてあずにゃんはホッとしていました。
1度と言わず5百回ほどあずにゃんはそのようなお金持ちに騙されて痛い目にあっていたので、
放課後の音楽室にいるだけでケーキと温かい飲み物が振舞われることをとてもうれしく思っていました。
人の見た目と内面がいっちするものではないことをあずにゃんは知っていましたが、この人は安全だと思いました。

長い黒髪の美人さんにあずにゃんは心ときめいていました。この美人さんは10000年にいるかいないかほどのレア者で、
あずにゃんは彼女を見るとうきうきした気持ちを抑えられませんでした。
どうにかして彼女とおはなしをしたいけれど、あずにゃんと彼女が話をしていると決まってカチューシャがじゃまをしてきました。
もっというとあずにゃんはいつも最初に出会った女の子のふとももの上に座っていたので、
物理的にも長い黒髪の美人さんとは距離があってあずにゃんはなんだかションボリしていました。

最初に出会った女の子はあずにゃんのことを無条件で好いていました。
あずにゃんといると自然と無意識に右手はあずにゃんの頭を撫でていました。
あずにゃんが長い黒髪の美人さんと話をしたがっているようにしていることにも気づいていました。
でも女の子はなんだかそのことを知らない振りをしていました。
それは女の子の、あずにゃんに対するどくせんよくの表れでしたが、彼女はそれを自分自身でコントロールするにはまだ幼すぎました。
ですから、この場合自分の気持ちを見て見ぬフリをすることは少なくとも女の子にとって現段階ではせいかいでした。


6 : いえーい!名無しだよん! :2013/07/26(金) 00:00:00 8LSy/.bM0
4人はついにあずにゃんにギターをプレゼントすることにしました。色はあずにゃんに似合いそうだから、と女の子がどくだんで決めて赤にしましたが、
みんなその判断には心からなっとくしていました。
あずにゃんは赤が似合いました。
みんな、それをちゃんとしっていました。

いつも通りに放課後の音楽室へあずにゃんはむかいました。
いつも通りに三味線をかついでいきます。
あずにゃんはその三味線をとても大切にしていましたが、どんなに大切にあつかっていてもものには寿命がありました。

あずにゃんは「まだ大丈夫なんです!この三味線はこれからなんです!」とよく言っていましたが、みんなにはその三味線の寿命が近いことがわかっていました。
その日もすでにみんなは音楽室にそろっていて、音楽室の重たい重たいとびらをあけると、オレンジの光が目に飛びこんできました。

まぶしくって目をふさぎます。
するとみんなの声が近くなってトタトタと足音がいくつも重なって、なにかな、と思ってあずにゃんは目を恐る恐るあけてみました。
最初の女の子が目の前に立っていました。何やら後ろ手に隠して立っていました。
女の子の後ろにはパツキンの令嬢もカチューシャも黒髪の美人さんも立っていました。

「そっか」とあずにゃんは思いました。
きっとみんながあずにゃんに三味線の代わりになるなにかをくれるのだ、と悟りました。
あずにゃんの持ち物はすべて誰かからの貰い物です。どの時代でも誰かしらはあずにゃんのことを気にかけてくれるので、
あずにゃんが路頭に迷うことというのは数日間は続いても、一ヶ月という長い期間はありませんでした。
あずにゃんは人にたかる気持ちはありせんでしたが、
知らないうちに人があずにゃんをほっておけないと思わせてしまうオーラを放っていたので、そういうことにはもう慣れっこになっていました。
目の前にたっている女の子はなにやら緊張しているみたいで、いつものよりすこし笑顔がぎこちありません。
その笑顔を見ていてあずにゃんは中野梓を思い出しました。


7 : いえーい!名無しだよん! :2013/07/26(金) 00:00:33 8LSy/.bM0
中野梓はあずにゃんにとても仲良くしてくれました。
といっても、あずにゃんはかわいいのであずにゃんが生きているうちに出会った人間の大半はあずにゃんには優しいのですが、
中野梓の印象はそれでもあずにゃんの中に強く残っていました。
彼女との最後はどんなだったっけとあずにゃんは思いました。

中野梓の三味線をあずにゃんはゆずりうけましたが、それはそこまでストーリー性にあふれたものではありません。
中野梓はただ「これあげるよ」とあずにゃんに言い、あずにゃんはよくわからないまま、こくんと頷き三味線を受けとります。
今ではおぼろげな記憶で細部は曖昧ですが、あずにゃんは、記憶というものはそういうものなのだ、時間が経つにつれてかすかにこすれてしまってあまり思い出せなくなるけど、
でもかんぜんには忘れたりはしないものなんだ、と理解していました。

中野梓は三味線にのせて詠わなかったので、あずにゃんも詠うことを得意とはしませんでした。
2人で色々なばしょへ行き、色々なものを見て三味線を奏でました。
中野梓はあずにゃんに優しく三味線を教え、あずにゃんはそれに応えようと三味線を弾きました。
中野梓はある晩、お寺で寝ているところを山賊に連れさらわれ襲われて命を落としました。
その夜あずにゃんは長旅の疲れのせいか、いつにもましてぐっすり寝てしまっていたので、中野梓が連れ去られたことに気づくことはできませんでした。
朝起きて中野梓の姿が見えないことに不安を覚えました。

寺の周りも探しました。その周辺も探しました。
しかし、中野梓の亡骸は山賊によって深い深い谷底に落とされてしまっていたのであずにゃんはそれから中野梓に会うことはありませんでした。


8 : いえーい!名無しだよん! :2013/07/26(金) 00:01:18 8LSy/.bM0
あずにゃんにとって中野梓とのことは今ではいい思い出です。「あんなこともあったな」と思う程度です。
でも、それはきっと深い深い哀しみを乗り越えたものだけがとうたつできる「あんなこともあったな」なのです。
あの日、中野梓があずにゃんに三味線をくれた日もこんなにきれいな夕焼け空だったからでしょうか。
あずにゃんはちょっと悲しい気持ちになりました。

カチューシャが「おまえらいつまでむかいあってるんですかー!」とニヤニヤしながら言いました。
パツキンの令嬢は胸の前で両方の拳を硬く握りしめてなにやら興奮していました。
黒髪の美人さんは「がんばって」と口パクしていましたが、女の子からそれは見えません。

女の子はギターを渡す時になにを言おうか、と一週間前からずっと考えてきました。でもようやく言いたいことをまとめられたのは昨日の夜でした。
「昨日あんなに考えたじゃん!」っと思ってはいるものの、予想外の緊張にみまわれて頭の中が真っ白になってしまい用意していた言葉をわすれてしまいました。

女の子は緊張のあまりぶっきらぼうに「これあげるよ」とだけ言ってあずにゃんにギターを渡すというか押し付けました。
あずにゃんはポカンとしてしまいました。
「おいおいなにやってんだよー」とカチューシャがなじりました。
今まで見てきた何十億もの記憶があずにゃんの目の前を通り過ぎます。
この目の前に立っている女の子の今しがたの行動とセリフがピッタリと重なるその記憶があずにゃんの眼に映し出された時、
あずにゃんの頬には涙が流れていました。

長い月日が経ってしまってきれいに加工されてしまった映像の隅々を思い出します。
ああ、そうだった、中野梓はこんな風にわたしにあの時三味線をくれた。
さりげなくだったけど、本当はこんな風に中野梓も緊張した顔をしていたり、冷静を装っていたけど声が震えていた。
中野梓との記憶はけして完全にきえることはなく、あずにゃんの中で眠り続けていました。
大切なことは目に見ることができるようでいて、その実、見えないものなのです。


9 : いえーい!名無しだよん! :2013/07/26(金) 00:01:47 8LSy/.bM0
三味線を弾かなくなるのはとても名残おしい。でも、けして手放すわけではないのだから。
泣き出したあずにゃんを心配するみんなにあずにゃんはお礼をいい、素直にギターを受け取りました。
長い黒髪の美人さんは徐にハンカチを取り出しあずにゃんの涙を優しく拭いてくれました。
ハンカチはあずにゃんの熱い涙をかんぜんには取りされませんでしたが、あずにゃんはその行為にとても慰められました。

ストラップというものでギターを肩にかけました。三味線とは全く違うズッシリとした重みが肩に食い込み、あずにゃんはよろけます。
よろけたあずにゃんを女の子はすかさず支えました。
あずにゃんはその時、この女の子のことをあったかいな、と思いました。
これからずっと温め続けていく気持ちになるであろうものの芽生えがこの瞬間であることにあずにゃんも、そして女の子も気づきはしませんでした。

「やっぱり赤が似合うね、あずにゃんは」

最初に出会った女の子はそう言って微笑みあずにゃんの頭をわしゃくしゃとなでました。顔にかかるオレンジはその濃さを増し、夜の訪れを知らせようとしています。
あけた窓の外からはどこからかひぐらしの鳴き声がへやのなかに入り込んできていました。
「これでギターは弾くんだ」そう言って黒髪の美人さんはあずにゃんにピックを渡しました。

「あずにゃん、弾いてみせて」とパツキンの令嬢が楽しそうに言いました。
みんなを見回すと誰もがそれを待ち望んでいるのがわかりました。
ギターの重みにまだ慣れないので、椅子に座ってひけばいいというカチューシャの提案にあずにゃんはすなおに従いました。
女の子にアンプというものに繋げてもらい、あずにゃんはギターを構えました。
ギターを構えてあずにゃんはふと思い出します。

「わたしはまた大切なものを作ってしまった。なくしたらとても悲しくなるようなものを」

みんなはきっとあずにゃんよりも先にしぬでしょう。みんながしんでもあずにゃんはいき続けるでしょう。
時代が移り変わり、三味線が寿命を迎えたようにこの真新しいギターも寿命を迎えるまで弾き続けるのでしょう。
あずにゃんはそう思いました。


10 : いえーい!名無しだよん! :2013/07/26(金) 00:02:23 8LSy/.bM0
あずにゃんは一呼吸おいて、中野梓に教えてもらった曲を弾きました。
それはとても夏の夕焼けと夜の狭間に似合う曲でしたが、ピックとネックに不慣れなあずにゃんはところどころでつまづいてしまいます。
それでもその曲をようやく弾き終わり、あずにゃんは言いました。
「あんまりうまくないですね」

それはあずにゃんの耳に残っている三味線とギターの音色の違いからくるあずにゃんの勘違いでしたが、それでもあずにゃんはギターの音色も悪くないなと思いました。
「あずにゃん、うまかったよぉー」女の子はそう言ってあずにゃんの頭をなでました。
なんでだか、あずにゃんはとても照れくさくなりました。
「いよっし!これであず公と一緒に演奏できるな」

「やっとスタート地点って感じだな」

「きっとすぐにうまくなっちゃうね」

思い思いにみんなは気持ちを吐き出しました。どうやらみんなはあずにゃんとこれから演奏をしていくつもりみたいです。
あずにゃんはそんなことなどそれまで微塵も思っていませんでしたが、みんなのテンションの高さを見ていて、ここにいつづけるのも悪くないな、とこっそり思います。

「あずにゃん、これからはずっといっしょだね」

と女の子は言いました。
それが心の声に対しての返答に聞こえてあずにゃんはびっくりして顔をあげました。
あずにゃんと目があった女の子は、顔にはてなまーくを浮かべた後に、いろんなものを引き受けてニッコリと笑いました。


11 : いえーい!名無しだよん! :2013/07/26(金) 00:02:53 8LSy/.bM0
ある秋の日、あずにゃんは泣き声で目を覚ましました。みると女の子が泣いていました。
どうしたのか、とあずにゃんが尋ねると女の子は「あずにゃんと知らない女の子が楽しそうに三味線を弾いている夢を見たの」と言いました。

あずにゃんにはすぐにピンときて、あぁ、そういうセンチメンタルな夢をなぜ自分ではなくこの人が見ることになったのか、とあずにゃんは思いましたが
口には出さずに女の子の背中をなで続けました。
「ごめんね、あずにゃん」と、女の子は涙を流しながら謝りました。
あずにゃんはわけがわからなくて、戸惑って何も言えませんでした。

「あずにゃんにとって、三味線はあんなに大切なものだったんだね。私はそんなこと知らないで、ギターを簡単な気持ちで贈ってしまったよ。
ごめんね、あずにゃん。あずにゃんの三味線をないがしろにするようなことをしちゃって」

泣きやもうと努力しているのですが、女の子は自分の吐いた言葉にさらに泣くことになってしまって、少しだけこほんこほんとむせました。

「いいんです、私には今はもう大切なギターがありますから」


12 : いえーい!名無しだよん! :2013/07/26(金) 00:03:21 8LSy/.bM0
あずにゃんは、女の子のへやに飾られた自分のギターと女の子のギターの方をちらりと見ていいました。
時の流れとともに、大切なものが移り変わってしまうことをあずにゃんは身を持って知っていましたから、
三味線とギターのことはあずにゃんの中ではすっかり整理のついたことでした。
でも、女の子の中ではまだそれは未知のことで、とても罪悪感が付きまとうことでした。
心のダムに少しずつ貯まってしまった涙が一気に溢れ出てしまったように女の子は泣き続けました。
こういう時は無理に泣き止ませずに心ゆくまで泣かせた方がよい、とあずにゃんは思ったので、そのまま女の子の背中をさすり続けてそばにいました。
この人はそのことをずっと気に病んでいたのかな、と思うと、そのことに気づいてあげられなかったことをあずにゃんは強く後悔しました。
次第におえつの声が小さくなったので、涙で濡れた女の子の冷たい頬を、あずにゃんは手のひらでゆっくりと拭いました。

「あったかいな、あずにゃんのて」と女の子は言いました。

ふと、あずにゃんはギターを初めて肩にかけてふらついた時に、今の女の子と同じようなことを思ったことを思い出しました。
「これでおあいこですね」とあずにゃんは言い、その言葉に対して女の子の顔に浮かんだはてなまーくに向けてニッコリと笑いました。


13 : いえーい!名無しだよん! :2013/07/26(金) 00:03:57 8LSy/.bM0
ある春の日、あずにゃんは動かなくなっていました。
ギターの練習をしていたのでしょうか。ギターをだいたままうつ伏せで床に倒れていました。
女の子はその日しゅうがくりょこうというものに出向いでおり、家にはいませんでした。女の子の妹がすぐに連絡を入れました。
女の子が家についた時には色々なものが移り変わってしまっていた後でした。
女の子は泣きながらあずにゃんを抱きしめました。
女の子はあずにゃんの手に握られているケータイに未送信のメールを見つけました。

『帰ってきたら、頭をなでてほしいです。初めてあった時のように、頭をなでてほしいです。』

あずにゃんは意外と恥ずかしがり屋だったので、きっと素直に送るのが恥ずかしかったのでしょう。
女の子はその日あずにゃんを抱きしめながら、頭をなでつづけました。

「おやすみ、あずにゃん。いい夢を見てね。三味線もいいけど、ギターもたまにはそっちで弾いてね?」

女の子の涙で濡れたはてなまーくに、あずにゃんはきっとニッコリと笑っていました。

おわり


14 : いえーい!名無しだよん! :2013/07/26(金) 04:02:27 /1wnqko.0
コックローチのこと?
ごめん俺バカだからよくわからない


15 : いえーい!名無しだよん! :2013/07/26(金) 08:02:55 2ipqYXeQ0
乙ちゃん


16 : いえーい!名無しだよん! :2013/07/26(金) 16:38:47 QTcVHUE20
泣いた


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