■掲示板に戻る■ ■過去ログ倉庫一覧■

変身ロワイアルその5

1 : 名無しさん :2014/03/22(土) 14:01:01 eOkcmNEk0
この企画は、変身能力を持ったキャラ達を集めてバトルロワイアルを行おうというものです
企画の性質上、キャラの死亡や残酷な描写といった過激な要素も多く含まれます
また、原作のエピソードに関するネタバレが発生することもあります
あらかじめご了承ください

書き手はいつでも大歓迎です
基本的なルールはまとめwikiのほうに載せてありますが、わからないことがあった場合は遠慮せずしたらばの雑談スレまでおこしください
いつでもお待ちしております


したらば
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/15067/

まとめwiki
ttp://www10.atwiki.jp/henroy/


2 : 名無しさん :2014/03/22(土) 14:03:31 eOkcmNEk0
参加者

【魔法少女リリカルなのはシリーズ】1/7
●高町なのは/●フェイト・テスタロッサ/●ユーノ・スクライア/●スバル・ナカジマ/●ティアナ・ランスター/○高町ヴィヴィオ/●アインハルト・ストラトス

【仮面ライダーW】1/7
○左翔太郎/●照井竜/●大道克己/●井坂深紅朗/●園咲冴子/●園咲霧彦/●泉京水

【仮面ライダーSPIRITS】2/6
●本郷猛/●一文字隼人/○結城丈二/○沖一也/●村雨良/●三影英介

【侍戦隊シンケンジャー】1/6
●志葉丈瑠/●池波流ノ介/●梅盛源太/○血祭ドウコク/●腑破十臓/●筋殻アクマロ

【ハートキャッチプリキュア!】3/5
○花咲つぼみ/●来海えりか/○明堂院いつき/●月影ゆり/○ダークプリキュア

【魔法少女まどか☆マギカ】1/5
●鹿目まどか/●美樹さやか/○佐倉杏子/●巴マミ/●暁美ほむら

【らんま1/2】2/5
●早乙女乱馬/○天道あかね/○響良牙/●シャンプー/●パンスト太郎

【フレッシュプリキュア!】2/5
○桃園ラブ/○蒼乃美希/●山吹祈里/●東せつな/●ノーザ

【ウルトラマンネクサス】2/5
○孤門一輝/●姫矢准/○石堀光彦/●西条凪/●溝呂木眞也

【仮面ライダークウガ】2/5
●五代雄介/○一条薫/●ズ・ゴオマ・グ/○ゴ・ガドル・バ/●ン・ダグバ・ゼバ

【宇宙の騎士テッカマンブレード】0/4
●相羽タカヤ/●相羽シンヤ/●相羽ミユキ/●モロトフ

【牙狼−GARO−】2/3
○冴島鋼牙/○涼邑零/●バラゴ

【超光戦士シャンゼリオン】2/3
○涼村暁/●速水克彦/○黒岩省吾

【21/66】


3 : 名無しさん :2014/03/22(土) 14:04:19 eOkcmNEk0
ルールが長くなってしまったため、特徴的な部分だけ抜粋
詳細が知りたい方は、下記リンク参照してください

ttp://www10.atwiki.jp/henroy/pages/19.html

【変身用アイテムのデフォ支給】
基本支給品やランダムアイテムに加え、変身用アイテムがデフォルト支給されます

ガイアメモリ、デバイス、ソウルジェム等があたり、これらはランダムアイテムとは別に必ず本人に支給されます
照井竜のガイアメモリやスバル・ナカジマのデバイスのように、変身用アイテムが複数存在している場合も全て本人に支給とします
ただし、参戦時期によってはその限りではなく、例えば照井竜の場合、トライアルメモリを得る前からの参戦ならば、トライアルメモリは支給されません
また、変身アイテム以外の武装、例えば暁美ほむらの銃火器等は全てランダム支給へと回されます

固有の変身アイテムを持たない人間には、この枠でのアイテム支給はされません

※ハートキャッチプリキュアのプリキュア達には、プリキュアの種とココロパフュームを支給。妖精は支給されません。
※左翔太郎、ウルトラマンネクサスのデュナミストについて特殊ルールが存在

【特殊ルール】
・左翔太郎について

左翔太郎には、仮面ライダーWへの変身用ガイアメモリのうち、彼が使う3つのガイアメモリが支給されます
残る3つのガイアメモリと、エクストリームのメモリはフィリップが所持した状態とし、そのフィリップは主催に幽閉されている扱いになります

フィリップは、戦闘中(Wへ変身した時)のみもう一人のベルトの使い手と意志疎通でき、それ以外の手段を用いたフィリップ側からロワへの介入は禁止
フィリップが独力で脱出することもありえません。

かなり特殊ですが、ダブルドライバー自体をデバイスに代表される意思持ち支給品と同等に扱うと考えればわかりやすいかもしれません

・ウルトラマンネクサスのデュナミストについて

最初に光を持っているのは姫矢准。姫矢が死んだ場合、次の人物へと光が継承されいきます
他作品キャラへの継承については書き手任せとしますが、もちろん誰でも対象というわけではなく、姫矢と面識のあるキャラに限られます
当然、他作品キャラへ継承させず、孤門や凪に継承させるのもありです

その後の継承については、姫矢→次のデュナミストに置き換え、同様の処理を行いますが、姫矢と違い、孤門や凪との面識がないキャラならば、当然2人は継承対象にはなりません

・その他

まどかの魔女化は、原則禁止です
もしも魔女化の条件を満たしてしまった場合は、魔女化はせずにそのまま死亡扱いとなります


4 : ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:08:20 FKsPOkkk0
スレ立て乙です。
ただいまより投下を開始します。


5 : 騎士の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:09:24 FKsPOkkk0



 冴島鋼牙の前に、一人の男の遺体がある。
 彼の名は、Dボゥイ。つい先ほど、暗黒騎士キバによって殺害された宇宙の騎士。
 その男の事を、鋼牙もまだ詳細には知らない。テッカマンブレードと名乗ったあの男は、強く、どこか心に強い悪への憎しみを持った男だった。それ以外の事は何も知らない。しかし、鋼牙はその男をひとまず埋葬しようと思った。

「……」

 かける言葉は見つからない。ただ、黙々と彼の遺体に手を駆けようとする。
 相羽タカヤの手はまだ温かさが残っているが、じきに消えるだろう。
 鋼牙は少しばかり時間をかけて、彼の遺体に手をかけた。

 ……すると。

「!?」

 タカヤの遺体の後ろから、突如として奇怪な虫が鋼牙に飛びかかった。
 脳髄のみが大きく、複数の足を持ち、硬い殻を持ち、鋼牙の腕の上で落ちて蠢く──それは、この世の生物ではなかった。タカヤの体を乗っ取っていたラダムの虫である。
 しかし、鋼牙はそんな事を知る由もなく、ただただ黙ってその虫を黙って振り払う。
 毒虫かもしれない。だが、実際のところ、この虫が何なのかを鋼牙は知らず、ただただ蠢いているだけならば害はない。
 不気味ではあるが、果たして潰していいものなのか、鋼牙は迷った。

「……なんだ?」

 その後も、ラダム虫が鋼牙に何かしようという事はなかった。
 いや、おそらく、鋼牙に寄生したいという気持ち自体はあるのだろう。しかし、ラダム樹がなく、フォーマットが不可能である以上、寄生したところで完全にその体を乗っ取る事はできない。
 それで、何もできないまま、迷うように地面を蠢いていたのだ。
 ……とはいえ、すぐにラダム虫は、殆どあからさまに危険な虫である。

(一瞬、殺気を感じた……。潰しておくべきか)

 鋼牙は剣を抜いた。
 ラダム虫は先ほど、殺気を持って鋼牙に襲い掛かったから、念を押す事にしたのだ。
 虫とはいえ命だが、それでも、これはただの虫ではないと鋼牙も気づいている。
 次の瞬間には、ラダム虫は真っ二つに斬れて、生命を停止した。

「……何だったんだ」

 まあ、そのまま鋼牙は何も考えない事にして、Dボゥイの遺体を地面に埋めた。できるだけ時間をかけて、丁重に葬る事となった。その途中、不思議な緑色のクリスタルを見つけたが、それは黙ってタカヤとともに埋めた。黙って受け取ってしまうのも何だし、もしかすれば彼にとって大事な物かもしれない。
 その後、その地に一礼して、鋼牙は振り返り、歩いた。

「……」

 あとは、もう何も言う事なく、とにかく街の方に向かう事にした。バラゴの遺体にこれ以上構う暇はない。
 鋼牙は黙って、街の方に歩いて進んでいく事にした。







 森を出て、E−9の草原あたりに出た瞬間、鋼牙を迎えたのは、赤い光弾の一撃だった。
 ──不意打ち。
 森を出た瞬間に、誰かが鋼牙の命を狙って、何かを放ったのだ。

「くっ!?」

 鋼牙はそれを魔戒剣で弾き返し、赤い光弾を地に落とす。
 鋼牙の真後ろで小爆発が起こると、敵の姿は見えた。真正面から不意打ちをしたというのか。つまるところ、狙撃手のように姿を隠す事はなく。
 だが、不意打ちが失敗したので、そのまま強引に戦闘に持ち込む形だろう。


6 : 騎士の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:09:43 FKsPOkkk0

「なんだ、お前は」

 鋼牙は冷淡な声で問う。
 その女は、鋼牙もよく知る怪人、ホラーの人間体にも似ていた。
 現世で着るのがはばかられるような黒衣を平然と着こなし、その目は人の色をしていない。
 いやしかし、ホラーではないだろうと、確信していた。いわば魔戒騎士の勘である。

「私の名前はダークプリキュアだ。覚えておくがいい」

 これはプリキュアの悪評を広めるための名前だったが、他に名乗るべき名前もない。
 シンケンゴールド──梅盛源太のように誇らしく名乗れる名前もない。
 強いて名前を問われれば、この名前しか答えるものはないのである。

「……お前がダークプリキュアか」

 鋼牙はキリッと眉を顰める。剣の構えは一層強固になった。
 そこにあるのは、確かな警戒。ダークプリキュアの敵意を全身で感じながら、いつでも敵の攻撃を避け、攻撃に変える準備をしていた。
 ダークプリキュアの名前は、つぼみから聞いている。
 彼女に対しては、少し迷いのある表情を見せたつぼみ。それを思うと、やはり斬るという手段は使いたくないが、いざとなればいつでも斬る準備ができていた。

「なぜ俺に攻撃をしかけた。お前はこの殺し合いに乗っているのか」
「無論だ。しかし、私の攻撃を避けてくれたからにはお前の名前を聞いておきたい。……お前の名は?」

 殺し合いに乗っているというダークプリキュア。
 しかし、その物言いは、どこかスタンスが曖昧化されている証でもあるように思えた。
 他人の名前を知りたがる彼女の様子に、鋼牙は困惑する。
 それでも、鋼牙は名乗った。

「冴島……鋼牙だ」

 その名前が口に出た瞬間、二人の戦いは始まった。







 薄暗くなってきた森と草原の間で、魔戒騎士とダークプリキュアは己の技を交える。
 魔戒剣とダークタクト。ダークタクトは、その切っ先から砲撃を放つ。
 赤黒い旋風が鋼牙を襲うが、鋼牙はそれを魔戒剣で受ける。魔法衣がそよぎ、鋼牙もまた立ち止まる。

「はぁッッ!」

 そこへ来るのがダークプリキュアの一撃。ダークプリキュアは鋼牙のいる場所まで一瞬で距離を縮めた。
 鋼牙の視界で、ダークプリキュアの拳が大きさを増す。
 華奢ながらも硬く剛健なダークプリキュアの左拳が鋼牙の眼前に迫っていた。

「ふんッ」

 鋼牙は、すぐにそれを左掌で受け、刃をダークプリキュアの方へと突き出す。
 が、そちらの一撃はダークタクトがガードしている。

「くっ」

 どちらが発したかはわからないが、少し相手の力に圧されているような声を漏らした。
 ただ、違いは声を漏らしたか漏らさなかったかの違い程度で、実際のところ、二人とも表情は少し相手の力への驚きに満ちている。
 問題なのは、鋼牙よりダークプリキュアだろうか。鋼牙以上の疲労感に打ちひしがれている。

「……ふんっ」


7 : 騎士の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:10:01 FKsPOkkk0
 腕をクロスさせた状態で、二人の両足が高く上げられる。
 一撃、蹴りをお見舞いしようとしているのだ。そのつま先が狙ったのは、相手の顔面。
 二人は、お互いにその顔面めがけて足を叩き付けた。

「ぐァッ!」
「くッ……!」

 今度声を上げたのは、二人ともであった。
 クロスしていた両腕が崩れ、二人は顔面へのダメージを感じて地面に倒れる。
 魔戒剣とダークタクトが二人の手を離れて地面に吸い込まれるように落ちていき、二人はすぐさまそれを拾った。

「……やはり、やるな」

 ダークプリキュアは鋼牙にそう語り掛けた。
 しかし、鋼牙は殆ど憮然とした表情のまま、構えを崩さなかった。
 魔戒剣を手に取った状態で、ダークプリキュアを睨み、その体を捉えている。


 次の一撃がいつ繰り出されるのか……という中で──。


『参加者のみんなー、こんばんはー!!』


 18時、放送が始まり、二人の戦士は休戦となった。







『フハハハハハハハハ……』

 緊張感のない放送は終わった。
 放送で聞こえた名前は、鋼牙が知っている者では、殆ど死を目の当たりにした相手ばかりだった。はっきり言えば、殆どその放送に意外性はなかったといえるだろう。
 問題は、市街地エリアに禁止エリアが固まっている事だろうか。
 しかし、逆を言えば、おそらくそれは参加者がある程度そこに固定しているからではないかと、鋼牙は思った。
 これだけたくさんのエリアがあるというのに、マップの殆どは山地や森で、行動しにくい。そうした大部分のエリアは殆ど禁止エリアにもなっていないし、市街地を目指した参加者はかなり多かったのだろう。
 今後も、市街地エリアを目指す方針は変わらなそうだ。
 逆を言えば、警察署あたりに人がいるのなら、逃げる方向まで自然と決まる。

「奴も死に、残り三分の一か……」

 ダークプリキュアが呟いた。奴、というのは、鋼牙には誰の事だかわからなかった。それが、大道克己の事であるとは思いもよらないに違いない。警察署でその名前を知った相手だが、まあいずれダークプリキュアの知らないところで死ぬのではないかと思ってはいた。
 残る人数は二十一人。ここまで生き残ったからには、その覇者とならねばならない。
 そう、三分の一どころではない。
 ここから更に、二十一分の一に残る。六十六分の一の選ばれし戦士にならなければ、ダークプリキュアの悲願は果たされないのである。
 まあ、パペティアー・ドーパントの力もあるし、ダークプリキュア自身の身体能力もかなり高い。これがあれば、ひとまずは勝ち残る自信が辛うじて維持される。

(……だが、こいつは厄介だな)

 しかしながら、今の戦闘は少し問題だろう。目の前の敵は強く、パペティアー・ドーパントの力も使い難い。相手の変身方法がわかった方が良いに決まっているし、相手の能力が発動しきったところで使わなければ意味がない。
 たとえば、鋼牙の場合、運動能力は高くとも、その体そのものは、鍛えていても、おそらく人間だ。ダークプリキュアのように人造生命の可能性もあるとはいえ、生身の人間という前提で考えよう。そうなると、パペティアー・ドーパントを使ったところで、変身した相手と戦えば、上手く勝ち残る事は困難だろうとダークプリキュアは思う。彼がどう力を使うのか知ったうえでなければ、ダークプリキュアにとって、彼は操る価値はない。
 彼を信頼している人間が相手ならば不意打ちもできるが、彼が誰と親しいのかなど知るはずもないだろう。


8 : 騎士の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:10:22 FKsPOkkk0
(死者のペースは下がっていない。このペースで死者が出ているなら、いっそ……)

 まだ動かずに、体を休め、時々だけ戦う。それもまだアリかもしれない。状況的には問題ないはずだ。
 ダークプリキュアの身体は少しダメージが大きい。だから、ダークプリキュアが今探しているのは、強い「人形」であり、戦闘もそれを得る為の「確認」だ。しかしながら、鋼牙の殺害には失敗したし、人形として扱おうにも、人間の姿のままでいられると難しい。
 これ以上、鋼牙の相手をしていられる時間はないだろう。無駄に体力が減るだけな気もするし、引き際という物もある。

「……ダークプリキュア。お前は、なぜ殺し合いに乗った? お前はプリキュアではないのか」

 ダークプリキュアが思索を巡らせている中、鋼牙は尚、戦闘態勢に移ろうという瞳でダークプリキュアに問うた。
 ここに来てから、何度これを聞かれ、その度に、「教える必要はない」と答えただろうか。
 今回もまた、同じだ。

「お前に教える必要はない。この名前も、そう名付けられたから名乗っているだけだ。プリキュアなど、くだらない……」

 自ら進んで魔戒騎士となり、その名に誇りを持つ零とは違う。
 彼女は、プリキュアではない。他人によってプリキュアと名乗らされただけで、実質的には別物である。そのため、かつて鋼牙が零に説いたような言葉は通じない。

「……そうか。だが、そんなお前を守ろうとしているプリキュアがいる。本当に強いのは、守るべき者の顔が見えている者だ。今のお前に、この戦いを生き残る事はできないな」

 鋼牙は、ダークプリキュアの瞳を見て、つぼみを思い出していた。彼女は、ダークプリキュアに対して非常に複雑な様子を見せた。おそらく彼女にとって、ダークプリキュアは「護」の対象でもあるのだ。
 それならば──キュアブロッサムとダークプリキュア、どちらが強いかと言われれば、キュアブロッサムだろう。誰かを守るためという明確な目的がある彼女を、鋼牙は信じていた。

 鋼牙は、自ら打ち込む様子を見せなかった。ダークプリキュアの初動を見てから、それに対応する形で動くつもりだ。
 ならば、ダークプリキュアにとって、撤退は実に容易い話である。

「そのくだらない忠告は胸の片隅にでも秘めておこう。……今回は素直に負けを認めて撤退させてもらう」

 ダークプリキュアは捨て台詞のようにそう言い残すと、背中の羽を伸ばし、宙に舞い上がり、すぐにどこかへ消えていった。……少なくとも、森の方だ。
 鋼牙は、その姿に少しばかり茫然とする。
 ダークプリキュアが攻撃を仕掛ける前提で戦闘態勢をしていただけに、その撤退は肩透かしというか、拍子抜けでもあった。
 しかし、ダークプリキュアは正真正銘、撤退したのだと知ると、肩の力をすぐに抜いた。

「……行ったか」

 終わってみれば、戦闘というより、肩慣らしのような邂逅であった。そう、今思えば、お互い、どこか力をセーブしながら戦っていたようにも思える。鋼牙自身は、ダークプリキュアの命を本気で獲る気もなかった。
 ともかく、ダークプリキュアは見送ろう。追う必要性はない。森には、おそらくキュアブロッサムや仮面ライダークウガ、響良牙たちがいる。そう、ブロッサムだ。彼女に任せよう。今はもう、殆ど山中には参加者はいないだろう。彼女によって狩られる人間もいないはずだ。

「……俺も、行くか」

 鋼牙は今の邂逅を無視して、また街に向かって歩き出した。






9 : ふたりの物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:10:48 FKsPOkkk0


 ──一方、こちらは警察署である。

「──黙祷」

 翔太郎の掛け声とともに、全員が目をつぶる。翔太郎も帽子を外して、放送で呼ばれた死者に対する黙祷を行う。最初の放送の時も、タカヤや京水と一緒に、黙祷をした。二人の名前は、今この時、呼ばれてしまった。
 二人の死を目にした者は、ここにはいない。タカヤはシンヤと決着をつけられたのか、京水と克己は出会えたのか、それさえ、今はわからない。

 ゴハットによって告げられた情報は、既に多くの情報を持っていた彼らにとっても、驚きを禁じ得ないものだった。
 告げられた名前を一つ一つ探っていく。

『相羽タカヤ』
 左翔太郎が歩む道を切り開いた男。テッカマンブレードとなり、共に敵と戦った戦友である。その死は惜しいとしか言いようがなかった。

『アインハルト・ストラトス』
 忘れるわけがあるまい。翔太郎と杏子を除く全員の前で死に、今もこの警察署に遺体が眠る少女の事だ。

『泉京水』
 街を泣かせるNEVRでありながら、彼もまたこの場では翔太郎と一時共同戦線を張った。翔太郎を奮い立たせてくれたのは彼だ。

『一文字隼人』
 沖の友人にして、この場に人を集める事を知らせた男。栄光のダブルライダーの死に、沖自身も戸惑いを隠しきれなかった。

『梅盛源太』
 ここについ先ほどまでいたはずのムードメーカーだ。変わり者だが、少なくとも『良いヤツ』だったし、『優しいヤツ』だった。ダークプリキュアとともに姿を消した後、もう姿を消してしまったようだが、その後死亡したという……。

『西条凪』
 孤門たちナイトレイダーの副隊長にして、頼れる女性だ。まさか、ここで彼女との合流が果たされなくなるとは、孤門も思わなかっただろう。

『大道克己』
 風都を泣かせたテロリスト、悪の仮面ライダーエターナル。翔太郎は、その死にだけは、どこか安堵さえ感じた。

『バラゴ』
 ザルバによると、この男は慢心から闇に堕ちた魔戒騎士だという。

『溝呂木眞也』
 孤門たちの世界の敵でありながら、最後にはダークウルトラマンではなく、ウルトラマンとして散った男。ここでは敵だったのかもしれないが、どこか感慨深くなる。

『村雨良』
 沖の知らない、後の時代の仮面ライダー。その男が、この時『BADAN』だったのか、『仮面ライダー』だったのか、どちらでもないのかは、沖には知る由もないが、会う機会が絶たれたのは残念であった。

『モロトフ』
 悪のテッカマンだ。危険人物であるという情報はいきわたっていたので、ともかく彼がいなくなった事に安心する者もいただろう。風都タワーは彼に崩され、せつなは彼に殺された。そういう意味で、因縁の深い相手だったが、もういないという事だ。

『ン・ダグバ・ゼバ』
 霧彦、ヴィヴィオ、祈里、アインハルト、乱馬、沖……あらゆる人物と戦い、そして強さを見せつけた殺人鬼もまた、散った。もし、本当に彼が倒されたのなら、あるいは喜ぶ者も出たかもしれないが、素直に彼の死を喜べないのは、「誰が倒したのかわからない」という一点にあった。
 この死が、もし、「ダグバより強い者」による死であったなら……。

「もう、ずいぶんたくさんの人が、死んじまったんだな……」

 この時点で三分の一しか参加者は残っていない。
 残る参加者たちは、全て、その中で偶然にも選ばれた存在であった。
 次は自分かもしれない。
 このペースで死ぬとしたら、また身近な人間が死ぬかもしれない。
 そんな恐怖が、ここにいる誰にもあったに違いない。
 ダグバのような巨星がその命を絶たれているという事は、強さと生存率は関係なく、そこには、ただ単純に「運」が起因しているような気がした。


10 : ふたりの物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:11:16 FKsPOkkk0
 だから、彼らの中に、少しずつでも恐怖や焦りの感情はあっただろう。
 それを押し殺しながら、彼らは何とかこれから先戦っていこうとしていた。


 放送担当者ゴハットはふざけた男だったが、心当たりを持つ人間はここにはいない。
 彼はウルトラマンや仮面ライダー、魔戒騎士やプリキュアのほか、シャンゼリオンという人物にも呼び掛けていたが……。


 禁止エリアは、だんだんと警察署を囲み始めている。
 このまま、E−8エリアやE−9エリアを禁止エリアにされてしまうと、彼らも動く事ができなくなるだろう。
 しかしながら、まだ余裕はあるし、ここが集中的に禁止エリアに囲まれたという事は、参加者が集まりつつあるという事にも思える。それに、九時以降は逆に敵襲の方角を限定できるというメリットもある。周囲を禁止エリアにされた場合でも、一時間あれば脱出も不可能ではない。
 まだもう少し、警察署で待ってみようと彼らは思っていた。


 ボーナスの「制限解除」については、各人としても大きく思い当たる節はないようであった。
 これはゴハットの言い方が曖昧なのがいけない。沖のレーダーハンドや翔太郎にとってのフィリップのように、もしかすれば何らかの没収物や人質を解放してくれる可能性もあるが、それははっきりとはわからない。
 ただ、戦いが今後激化するかもしれない事、そして、いざという時はチャンスを利用してそれに頼ってみた方がいいかもしれないという事を各々は考えていた。







『相羽タカヤ、泉京水、大道克己、梅盛源太……それに、一文字隼人や村雨良まで死んでしまったのか』

 翔太郎は、タオルを胸に当てて休みつつ、ドライバーを用いてフィリップに放送の情報を伝えた。
 いずれの命も尊いものだが、特に気にかかる名前をフィリップは口にした。NEVERの二人は死亡し、タカヤや源太といった心強い仲間も死んだ。そして、残る仮面ライダーはスーパー1とダブル、そしてライダーマンのみという状況だ。
 1号、2号、ZX、アクセル、エターナル……彼らはみな死んだ。

「おい、フィリップ……どう思う? 源太の事」
『直前まで梅盛源太と行動していたのは、ほかならぬダークプリキュアだ。……おそらく、彼女が殺害したか、或いは行動中に敵に殺されたか、だろうね。ダグバを倒したのが誰なのかも気になるけど……今気がかりなのはダークプリキュアだ』

 ダークプリキュア。
 やはり、彼女が怪しいのだろうと、翔太郎も感じている。ダークプリキュアとはおおよそ面識もなく、危険人物とだけ知らされていたから、他の人たちのように裏切られたような感情はない。
 ただ、翔太郎は、軽快していく胸の痛みとは裏腹な胸中の複雑さを感じていた。
 プリキュア──翔太郎は、その名前を持つ人間に助けられた。今も目の前にいる。きっと、それぞれの住まう街の人々は、プリキュアを絶対的信頼のまなざしで見守っているはずだ。
 その名を騙りながら、こんな事をするダークプリキュアを、許す気には……とてもなれない。仮面ライダーエターナルを目にした時の怒りにも似ていた。

「翔太郎くん。どうだい、胸の傷は」

 仮面ライダースーパー1こと沖一也がそう呼びかける。
 一文字隼人の死を知り、少し瞳を曇らせながらも、ある程度の元気はあるようだ。
 ある意味、仮面ライダーの鑑ともいえる態度である。悲しみを仮面の下に隠し、涙を流しても、それが乾いてから仮面を外す。仮面の下の涙はぬぐえないのだ。

「……大した事ないっすよ、先輩」

 話を聞いてみたところ、どうやら沖一也は仮面ライダーとして活躍していた年代も、年齢も、翔太郎よりも少し上であるらしい事が判明した。
 その結果が、この呼び方の変化だ。
 先輩ライダーとして、沖は翔太郎を「翔太郎くん」と呼び、翔太郎は沖を「先輩」と呼ぶ。翔太郎としてはかなりノリノリで、沖はこの呼ばれ方に恥ずかしさを感じているようだった。


11 : ふたりの物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:11:39 FKsPOkkk0
 ……当然といえば、当然だ。
 ドグマとジンドグマを滅ぼして、まだそう時間は経っていないというのに、この呼ばれ方である。本来なら、ゼクロスなる仮面ライダーともこんな関係になったのだろうか。
 ともかく、翔太郎の胸骨骨折は、放っておけば痛まない程度ではあったし、今は折り曲げても何とか問題はない。おそらくは、折れたというほどではなく、ヒビが入ったとか、その程度を誤解しているのだろう。動くのには問題ない程度だった。戦うのも問題はないが、そこで完全に折れて心臓に破片が突き刺さる等の大事に至らないかが問題だ。
 よって、基本的には戦闘メンバーとして活躍させるわけにはいかない。
 改造人間である沖ならばともかく、彼のように生身の人間では今後の戦いも少し辛いだろう。

「ういー、ただいまー」

 杏子が胸いっぱいに食べ物と飲み物と医療用具を抱えて警察署に帰ってくる。
 湿布やら軟膏やら、結構たくさんある。これは、殆ど翔太郎やヴィヴィオのように結構重度の外傷(主に骨折や火傷、痣)を治療するための物である。
 必要なものは、フィリップが持つ「地球の本棚」で検索し、簡易な治療方法を調べた事によるものだ。とりあえずは、タオルで応急的な処置をしているのみだ。
 放送のすぐ後、買い出しに行ったのは、孤門と杏子といつきと美希である。小さな薬局が近かったので、そこに行く事にした。沖はここまでの道のりをほぼ覚えているが、説明は口でも充分だった。杏子も薬局の位置をちゃんと覚えていたらしい。

「おう、帰ったか杏子」
「言われた薬がなかなか見つからなくてさー。お菓子ばっかり見つかっちまったよ」

 杏子の口には既にポッキーが咥えられている。杏子は手いっぱいの荷物を全部机の上にばらまくが、その中に開封済みのお菓子が二つほどあった。清涼飲料水なんかもかなり多く、これは薬屋のロゴが入ったのビニール袋に入れられていた。

「なあ、それどう考えてもお前それ自分が食いたいから買ってきただろ! ……ていうか、残りの三人は?」
「ああ、後から来るよ」

 杏子は、八重歯を見せながら笑顔で言った。
 その笑顔は屈託がないが、何か悪戯っぽく、どこか含みも感じられた。

「杏子……お前、まさか……俺に一刻も早く薬を渡すために来たのか!? おいおい……いや、まさか俺、お前がそんなに良い奴だったとは思ってなかったぜ……」

 だから、杏子だけ先に帰ってきて、この大荷物を持ってきてくれたのか。
 そう思って翔太郎は、照れて後ろ髪を掻きつつ、感動する。なるほど、一刻も早く翔太郎に薬や医療用具を渡したかったに違いない。
 いやはや、ただのヤンキーだと思っていた杏子が、まさかこんなに良い奴だったとは……。





 ……しかしながら、そんな翔太郎の感動は直後に怒号によってぶち壊される。

「こらー!」

 杏子の後を追って、警察署に現れたのは、美希であった。息を切らせているところを見ると、どうやら全力で走ってきたらしい。
 どうやら、かなり怒っている様子で、表情を崩して杏子を追いかけてきている。
 その視線は杏子に向いている。美希の怒りが杏子に対しての怒りではるのは明らかだった。そんな様子に、杏子は挑発的に笑って答えた。

「おー、きたきた」
「……………………どうしたんだよ、杏子。お前、何かしたのか?」

 美希が怒っているという事はよほどの事なのだと、翔太郎も薄々感じている。
 沖とヴィヴィオは、ただ二人の様子に茫然という様子であった。
 美希がやってきた後から、いつきと孤門が現れる。この二人は、先に行った二人を追いかけて、少し困惑しつつも息切れしているようだった。
 杏子が口を開く。

「あたしは何も悪い事なんかしてねえよ。ただ、ちょっとその辺の店からこれを戴いて来ただけだ」
「いくら無人だからって、お金を払わないのはどうなの!?」


12 : ふたりの物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:11:57 FKsPOkkk0

 美希が怒っているのは、その一点らしい。
 この状況下でお金を払う必要はないと思うが、……まあ、美希にとっても、そういう事ではないのだろう。
 こうして、お店という場所で物をもらうからには、お金とのトレードが必要となる。
 中学生ながら、モデルとして少しはお金を稼いでいて、そのうえ真面目な美希だからこういう几帳面な事を言うのだろう。

「だって、これ全部あいつらが用意したモンだろ? わざわざ金なんか払う必要がないだろ」

 当の杏子はけろっとした態度で、全く無反省という様子である。悪びれる様子はまるでなく、むしろそれを正当な事として内心抑え込んでいる。
 善悪とかそういう物には縛られていないらしい。

「そういう問題じゃないの!」
「どういう問題だよ!」
「道徳の問題よ! お店で食べ物や飲み物を買う時は、ちゃんとお金を払う! これはどんな時でも当たり前! 火事場泥棒じゃないんだから……」
「その道徳が食い物にでもなるのかよ! あ?」

 杏子と美希が、顔を近づけていがみ合う。目元から火花が散り、二人の仲が険悪になっていくのがはっきりと見て取れた。
 二人の後ろに虎と龍みたいなオーラが現れ、二人とも「がるるるるる……」と吠えている。
 二人の背後で雷が鳴ったような錯覚をする。

「だいたい、この大量の飲み物。これは盗むどころか、自販機壊して手に入れてたじゃない! お店にいっぱい売っているのに……」
「自販機壊す!? ここは日本だぞ……」

 流石の翔太郎も呆れ模様であった。日本国外だと、お金の入った機械が置いてあると壊されるから、自販機なんて置いていないらしい。
 日本でもたまに自販機を壊す人間はいるが、まさか目の前にいたとは。

「一回やってみたかったんだよ。別にいいだろぉー」
「良くないわよ!!」

 うん。これは美希が正しい。杏子が悪い。──翔太郎はそう思った。間違いなく、杏子が悪い。
 店の金を払わないくらいなら、美希の言う事もわかるし、杏子の言う事もわかる……という状態だったのだが、これは普通に強盗である。

「まあまあまあ……」

 そんな二人の間に割って入ったのは、孤門であった。孤門は二人のオデコを掌で押して引き離し、愛想笑いを浮かべる。正反対の二人の少女の目元の火花が遠ざかっていく。しかし、視線は相手の方を見つめたままで、下手をすれば孤門の掌が頭に当たっている事に気づいていないのではないかという感じである。

「美希ちゃん、杏子ちゃん、ストップ、ストップ」

 この二人と特に親しいのは孤門だ。ここまでほぼ美希と行動している孤門と、姫矢やウルトラマンを通して知り合いになった杏子。だから、孤門とこの二人とは、自然と親しくなっている。
 ……が、当の二人は、買い出しだけで極めて深刻な仲になったようだ。はっきり言って、不仲だろう。翔太郎は、これから孤門がどう頑張るのか見届けようと思って、帽子の唾を少し上げた。

「えーっと、杏子ちゃん。君の言う事もわかるけど、人として、盗みはいけない。物を買う時はお金を払わなきゃ。……ね? じゃないと、元の世界に戻った時も盗み癖がつくかもしれない。あと物を壊すのもナシ」

 杏子に有無を言わさずに言い聞かせた後、すぐに振り向いて今度は美希に言う。

「美希ちゃん。君の言う事は尤もだ。でも、この状況だから杏子ちゃんがした事もわかる。効率よく食料や薬を得るには、お金を払う必要はないと思ったんだ。きっと、もしこれが普段の日常なら杏子ちゃんだってこういう事をする子じゃないはずだよ」

 孤門は、明らかに冷や汗をかき、本心とは違う焦りを込めた笑みを見せて相手を抑えながら、なんとか仲を取り持とうとしていた。
 ……が。


13 : ふたりの物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:12:28 FKsPOkkk0
「いや、あたしは普段から欲しいものは盗んでたけどさ」

 杏子は空気を読まなかった。そして、美希はその一言に過敏に反応した。

「ちょっと! 今の聞きました!? 普段からやってるって! 犯罪ですよ!?」
「だってそれしか生きる方法なかったんだもん」

 孤門が折角取り持とうとした仲は、一瞬で崩れ去る。
 流石に、こうなるとため息しかでない。孤門も後ろに隠れた杏子を美希が捕まえようとしたり、杏子がそれを避けて美希をもっと怒らせたり。
 孤門は、この杏子の倫理観や道徳観よりも、チーム内の仲が悪くなっていく事を案じて、ため息をついた。受難の男である。特に、女性に振り回される事必至だ。

「あぁ……」

 孤門は、防御壁か柱か何かだと思われて使われているらしい。しかも、杏子と美希が交互に目の前を横切るため、その位置から動きづらい。
 そんな孤門に、翔太郎は野次をとばす。

「……あんたも大変だな、モテ男さん。女難の相が見えてるぜ」
「なんでこんな事になってるんだろう……」

 翔太郎の野次も無視して、かしましい二人の少女に振り回される自分の状況に孤門は、ただただ残念な気分になっていた。
 沖とヴィヴィオといつきと翔太郎も、いま明らかに……必死に笑いをこらえている。彼らは、のんきだ。ほほえましいとさえ思っているだろう。杏子の窃盗行為に関しては咎める必要ありだと考えているに違いないが、……それでも、先に出てしまうのはこの状況への笑い。
 トムとジェリーのように追いかけ合う美希と杏子。壁に使われて一人ため息をつく孤門。笑わずにはいられない。

(つかの間の休息か……)

 ……まあ、笑うだけの余裕があるというのは良い状況だと、ここにいる全員は思う。心の片隅には、まだどこか、人の死とか、殺し合いとか……そんな物があるような気がして、ふと自分が本当に心の底から笑っているのか、怪しくもなる。
 それでも、笑うのをやめる事はできなかった。

 孤門にしてみれば、凪や溝呂木の死が少しばかり辛かったが、それでもまだ、この場にいる美希たちのような仲間が辛うじて生きている事に対する安堵はある。
 ここにいる人が、これから死んでいくのではないかと思うと怖い気持ちも、やはり心のどこかにある。あるいは、それが自分かもしれないと思うと、たぶん、もっと怖い。
 既に四十人以上、孤門が経験していない恐怖を、通り越し、死んでしまったという事もまだ信じられないくらいだ。
 ……まあ、今なんとかしなければならないのは目の前の二人だ。

「はぁ……仕方がない」

 ため息を合図に、孤門は思考を切り替える。一度、シャキッとしようと思ったのだ。
 二人の少女は、いま、孤門を軸に、それぞれの正義をぶつけ合って(?)、壮絶な追いかけっこを繰り広げている。
 二人の少女がお互いを捕まえる事はできない。
 ただ、柱である孤門ならばこの二人のどちらが正しいのかを見極め、その少女を捕まえて制裁を加える事もできる。
 つまるところ、今の孤門は絶対正義。杏子か美希、好きな方を選んで贔屓できる立ち場にある。
 それじゃあ、と。孤門は少し遠慮する気持ちを粉砕して、二人のうちから正義を決めよう。

「えいっ! 二人とも反省しろ」

 右と左に来た二人の少女の頭を、孤門はグーで殴った。
 喧嘩両成敗である。







 いま、この会議室の一室には、男性だけが固まる形になった。杏子が盗み、美希が後から金を払った例の薬で、翔太郎とヴィヴィオがそれぞれ上半身の服をめくって、軽く応急処置をしているのである。
 流石にこれで同室にするわけにはいかない。


14 : ふたりの物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:12:57 FKsPOkkk0

 で、当の翔太郎は、とっくにその作業を終えて服を着替え、どこから出てきたのか、変な鏡台を前に櫛で髪を梳いた後、手に唾をつけて髪型を直している。帽子を手に取って、頭にかぶせ、鍔を直した後に、キリッとした表情でネクタイを上げる。
 ……と、そんな彼は、何故か上半身スーツで、下半身はトランクスだ。ダメージを受けたのは主に上半身である。
 そんな翔太郎の姿が意味不明すぎて茫然とする二人を後目に、翔太郎は椅子に座った。トランクスのままで。

「まったく、大変だよなー、“モテる男”は」

 そう孤門に語り掛ける翔太郎の口調は、どこか含みのあるものだった。モテる男──孤門の事に違いない。まさか、翔太郎は、女性陣と積極的に絡んでいる孤門を妬んでいるのだろうか(小学生と中学生しかいないが)。
 翔太郎にはパートナーや恋人がいない。……というか、できない。他の奴ら(照井とかフィリップとか霧彦とか井坂とか大道とか)は何だかんだでモテているのに、翔太郎は何故か全くモテないのである。ので、翔太郎は少し、モテない男の嫉妬じみた感情を孤門に向けていた。
 しかし、孤門は、そんな翔太郎の言葉のニュアンスにも気づかずに、素直に訊いた。

「翔太郎さんって、モテるんですか?」

 孤門は天然である。しかも、何かと人の色恋に首を突っ込みたがる性格でもある。当人としては、斎田リコくらいしか頭になかったし、それがおそらく唯一の恋人だ。中学生と親しくなった事を、「モテた」とも言わない。
 まあ、確かに元の世界からして少女には縁があるが、凪や詩織といった特殊な人種しかいない職場では恋人の真柄になるような人との出会いも滅多にない。リコを失った今だから、また新しい相手を見つけるべきと周りも急かす事があるのだが。
 ともかく、孤門は翔太郎の目をじーっと見て、解答を待った。翔太郎は、一瞬黙る。そして、呆けた状態から、ふっと意識が戻ったように言った。

「お、おう……。それはもう、俺はハードボイルドだからな」
『嘘は良くないよ、翔太郎』
「依頼人と惹かれあいながらも、最後はその依頼人が犯人で、俺はカッコよくその依頼人を警察に引き渡すわけよ……」
『嘘は良くないよ、翔太郎(二回目)』

 フィリップの声を無視しながら、翔太郎は事実を誇張してハードボイルド仕立てにしたハードボイルド映画のような自慢をする。
 内容は嘘だらけ。見栄を張った結果がコレである。

「……へえ。翔太郎さんって、凄いんですねー」

 孤門は、その話を聞いて、笑みを浮かべて翔太郎を尊敬のまなざしで見つめていた。
 再度言う。孤門は天然である。翔太郎が言っている事がでまかせだとは、沖も思っていないだろう。そんな孤門の言葉を聞いた翔太郎は、思わず孤門の姿に後光が差しているように見えてしまった。

「うおっ! 孤門の笑顔が眩しい! やめろ……そんなまなざしで俺を見るな! すまねえ、今のは全部、俺の卑しい心が生み出した嘘なんだ! どうせ俺はモテない男だ!」

 翔太郎が孤門の視線を遮ろうと、自分の顔を隠すようにガードする。
 一人芝居のように滑稽ではあるが、彼なりに楽しんでいるのだろう。ちくりと胸が痛んだのは、おそらく普通に胸骨の痛みだろう。

「はは……。流石、二人で一人なだけはあって、仮面ライダーダブルくんは騒がしいな」

 沖はそんな二人の姿を見て横から笑う。しかし、一応外の様子からも目を離さない。今、会議室の窓から、警察署の外の様子を見張っているのは沖だ。実際のところ、今は翔太郎が一人で話しているだけなのだが、少しくだけた言い方をしたのだろう。仮面ライダーダブル、という言い回しは別に嫌味ではない。

「そうだ、沖さんはどうですか?」

 そんな折、孤門は次に沖に話しかけた。

「どうですかって、何が?」
「ほら、彼女とか、いるんですか?」

 孤門はけろっとして、どこか期待を含んだまなざしで訊いた。どうも短絡的に恋愛沙汰と結びつけるのは、まるで小学生のような興味である。
 沖は、思わず笑った。


15 : ふたりの物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:13:37 FKsPOkkk0

「ははは……。いや、俺には残念ながら、いないよ」

 しかし、沖には、恋人という立場の人間はいない(沖の事を追いかけている草壁ハルミという女性の好意にはまだ気づいていないようだ)。それは正直に言った。この余裕を見た感じでは、おそらく恋愛絡みでも結構上手なのだろうと、翔太郎は思う。
 一方、孤門は、なぜ沖が笑っているのかわからないといった表情で首を傾げた。

「なんでここの兄ちゃんは、こう、天然揃いなのかねぇ……」

 机上で、ザルバ(コイツも♂)が目の前の男性らの様子を見て、呆れたように呟いた。







「えーと、あの……そろそろ仲直りした方がいいんじゃないかな? ね?」

 いつきは、(イメージ的には頭にタンコブを作った)美希と杏子と杏子をなだめようとしている。治療のために男女でそれぞれ別室を使っているが、その結果として、いつきとヴィヴィオにとって非常に居づらい空気が漂っていた。
 二人をどれだけ丁寧になだめようとしても、どうにも二人は頑固で、それぞれのスタンスを崩さない。正直言って、いつきは自分をこの二人と同室にした男性陣三名を少し恨んでいる。
 先ほど、いつきは二人の喧嘩を前に笑っていたが、今は到底そんな気分になれない。ひきつった笑みで、ちょっと遠慮気味に言う。

「あんまり二人が仲悪くしていると、せつなも喜ばないよ……? ほら」

 二人の接点といえば、やはり東せつなの存在だろう。東せつなの存在、そして死は、二人にとって大きな影響を与えたに違いない。
 いずれも、せつなの友達なのだから、きっと分かり合えるだろうと信じて(しかし七割疑って)、いつきは二人の様子を見た。

「全く、なんでせつなはこんな子に力を託したのかしら」

 やはりというべきか、美希は杏子の方を見ずに言う。美希は、意図的に杏子を見ないようにしているので、壁の方を向いて目をつぶっている。
 手には、薬屋で仕入れてきた美容パックの箱を持っている。

「なんで、せつなはこんな奴と友達なんだろうな」

 杏子もまた、美希の方を見もせずに言った。
 口の中にチョコを入れながら、杏子は喋っている。美希としては、「口の中に物を入れたまま喋らないで」と言いたいところだろうが、そんな言葉が出るより前に、杏子の台詞に苛立ったようである。
 ちゃんと杏子の方を見て怒気の混じった声をあげる。せつなとの友情を侮辱されたようで気が立ったのである。

「私の方がせつなと長くいたわ!」
「一緒にいた時間の長さしか言う事が無いのかよ……大した友情だね!」
「何ですって!」
「何だよ!」

 二人はまたいがみ合っている。まるで、その姿は犬と猿(さっきの龍と虎より少し格が下がっただろうか)。先ほど、せつなの名前を出したのがかえって逆効果になってしまったらしい。いつきは、また頭を悩ませる。
 それでも、何とか二人の仲を取り持とうと必死になった。

「え、えーと……二人とも、一緒にお菓子食べる? あ、そうだ。お風呂入ろっか。ホラ、みんなでお風呂に入って仲良く……」

 最後の希望、裸の付き合い。

「勝手にやってろ」
「悪いけど、この子とは仲良くなれる気がしないわ……」

 杏子と美希がそんな事でどうにかなるはずがない。いつきも、万策尽きたところである。
 孤門がいかに二人を上手く扱っていたのかがいつきにもよくわかった。
 まあ、成人男性という事もあって、先生のような立場で二人を叱れたのかもしれない。いつきはそういう立場ではないので、少し勇気がいる。


16 : ふたりの物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:14:00 FKsPOkkk0

「いつきさん……」

 ヴィヴィオがうるうると涙を浮かべながら上目づかいでいつきを見つめている。
 泣きたいのはいつきの方である。
 男性陣が談笑している間、女性陣はこの微妙な空気に頭を悩ませていた。

「はぁ……どうして、この二人、仲良くできないんだろう」

 ため息しか、出ない。







 ────そして、そんな彼ら、彼女らの間に流れるこの微妙な空気を切り裂いたのは、外部から聞こえた轟音であった。果たして、何が起こったのかは誰にもわからない。ともかく、女性陣は男性陣のいる会議室へと足を急かせた。
 ドアを開け放って──

「沖さん!」

 会議室に、この場にいた女性たちが押し寄せてくる。真っ先にドアを開いたのはいつきであった。沖、翔太郎、孤門ともに、その速さに驚いているようだったが、まさかいつきが一刻も早くあの場を抜け出そうとか考えていたなど、誰も思うまい。
 会議室は窓から外が見えるし、彼らが女性陣の部屋に行くよりは、女性陣が男性陣の部屋に行った方が良い。

「……って、何でパンツ!?」

 いつきが思わず顔を隠した。翔太郎は何故かトランクスのまま、上半身はスーツを着ているというスタイルなのである。
 翔太郎は慌てた様子だ。

「あー! ノックもせずに入ってくんじゃねえ! お母さんかよっ!」

 慌てて手探りでズボンを掴もうと手で椅子を叩いている。

「……いったい何やってたの?」

 後から来た美希が翔太郎の様子を見て呆れたように言う。翔太郎は慌ててズボンを履いている。何をしていたのかはわからず、美希は視線を翔太郎の方に向けた。美希は、ジト目で、「本当に何をしていたの?」と語り掛けたが、孤門は、首を傾げた。
 なんで翔太郎があんな恰好をしていたのか、孤門にも理解しかねるところである。
 たぶん昔のハードボイルド(?)なドラマの真似事だが、それは誰も知らなかった。

「……で? レディたち、何しにここへ?」

 とにかく、今の出来事をなかった事にして、翔太郎は帽子を直し、キリッとした表情で壁にカッコよくもたれながら訊く。女性陣は更に黙った。

「おい、兄ちゃん。なんか出てるぞ」
「え?」

 杏子が指差した先は、翔太郎のズボンのチャックである。思いっきり開いており、その中からシャツが出ている。これはかなり情けない。

「うおっ! 恥ずかしいっ!」

 翔太郎は慌てて飛び上がり、シャツとチャックを直す。

「で、あの……翔太郎さんはともかく、今の音は?」

 ヴィヴィオが、そんな翔太郎を無視して沖に訊いた。翔太郎は、彼女の後ろで胸骨に微ダメージが入ったらしく、呻いており、彼の断末魔らしき声が聞こえたが、それは右耳から入ろうとして、すぐに同じ右耳から出ていった。なんでもいい。ようやく本題に入れたようだ。
 沖は先ほどから街の様子を見ていたが、街の中には、その音源らしき物はないのである。

「……わからない。ここから見える範囲じゃないみたいだ」


17 : ふたりの物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:14:24 FKsPOkkk0
「今の音、すごかったけど……」

 いつきが言った。確かに、震動さえ感じるほどの轟音である。一瞬、地震かと思ったほどだ。美希と杏子もいがみ合うのをやめて、すぐにこちらへ走ってきたくらいである。
 まあ、壁数枚の距離にとはいえ、戦力が分散している事への不安感も少なからずあったのだろう。すぐにでも彼らと合流したかったのだ。

「誰かが戦っているんだ。……近くかもしれない」

 孤門はディバイトランチャーを構えて顔をしかめた。いつでも戦闘の準備ができるように。今は確かに、戦うだけの力は持っていないかもしれないが、それでも力になる事はできる。ビーストだって葬ってきたのだ。

「……一度屋上に出よう。周囲を見渡せるはずだ」

 沖の提案で、全員屋上に出る事になった。
 屋上ならば、見通しは良いし、音源もわかるかもしれない。おそらくは戦闘音だろうから、その戦闘を行っているのが誰なのか確認できるかもしれない。
 七人は屋上へ急いだ。







 屋上。誰も使っていない時空魔法陣がいまだに光を放っている。時空魔法陣の周囲には、アインハルトの支給品であるデンデンセンサーによって見張りが行われている。ここに見張りをつけるのはやはり酷いものだろう。
 デンデンセンサーは、この時空魔法陣を通って誰かが現れた時に警告音を発するようにしている。
 ……が、翔太郎は一度それを手元に戻した。メモリを外し、暗視ゴーグルとして利用する。
 真っ暗闇でも、これを目につければ目視する事が出来る。

「あそこか……」

 沖は、煙を漂わせる山の一角を見つめた。レーダーハンドさえあればそこを注視できるが、没収されている現状では難しい。ただ、暗闇でも発達している彼の視力でははっきり見えるし、他の人々も煙や小火を目にするくらいはわけなかっただろう。
 山まではここから数キロはあるかもしれない。確かに結構な距離がある。しかし、今はそこを気にかけずにはいられない。

「……助けに行くぞ」

 翔太郎が言った。
 ダブルドライバーを構えて、今すぐにでも助けに行こうという準備をしている。
 悪人同士の相打ちかもしれないが、そこに誰かがいる可能性だって否めないのである。
 それならば、行くしかない。行って戦うしかない。そこに仲間がいるかもしれない可能性にかけて、助けに行くべきである。

「待って。全員で向かうわけにはいきません」

 孤門が言った。極力、出会った対主催陣の仲間とは共に行動する予定だった孤門は、翔太郎の提案をあまり快く思ってはいないが、それが仕方ないとはわかっていた。
 ただ、警察署内に人を置いておく必要はあるだろう。外部から街を目指してやってくる人間が、この警察署に来る可能性が高い。

「そうだな。向こうに三人、ここに四人で分かれよう。孤門はここに残って、俺か翔太郎くんが向かう」

 沖が提案する。

「俺が行く。先輩は残っていてくれよ」

 翔太郎はすぐさま、そう言った。沖は怪訝そうに翔太郎の顔を見た。
 確かに、仮面ライダーは二人それぞれ場所を変えた方がいい。変身能力や人知を超えた能力を持たない孤門は確実に警察署で待つ側として、残る男性二名は分断されなければならないだろう。

「胸の傷は大丈夫なのか?」
「ああ。何とか。……それに、俺が──いや、俺たちが行けば、向かうのは三人じゃなく、四人になる。だから任せてくれよ、先輩」


18 : ふたりの物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:14:41 FKsPOkkk0

 フィリップ。そう、彼を数に入れ忘れていた。これで四人と四人だという事か。なるほど、流石は「二人で一人」の仮面ライダーだ。

「……そうだな。じゃあ、翔太郎くん。君が見に行ってきてくれ」

 ならば、彼を向かわせよう。沖は残り、翔太郎が行く形になるようだ。
 残りは女性四人だが……。

「僕も行きます。ダークプリキュアがどこに向かったのかもわからないし。もしかしたら、彼女やつぼみがいるかもしれない」
「それなら、私も行きます」

 いつきとヴィヴィオが挙手する。いつきとヴィヴィオはこの中でもなかなか親しかった。
 しかし、そうなると今度は骨折レベルの怪我人が二人も危険な場所に向かうという状況になってしまう。ヴィヴィオは極力、建物から外に出さずに待っているべきだし、できるなら美希か杏子を向かわせるのが得策だろう。

「いや、いつきちゃんはともかく、ヴィヴィオちゃん、君は残っていてくれ。怪我人を何人も連れていくわけにはいかない」

 ヴィヴィオと翔太郎。この二人は他の人に比べてもダメージが違う。そんな手負いの二人を纏めて行かせてしまうと、今度はいつきの負担まで大きくなる。ヴィヴィオは反射的に自分が行くと言ったが、実際考え直してみれば、確かにそうなってしまう。

「……そうですか」

 そのため、ヴィヴィオはすぐにおとなしくあきらめた。
 ここで名乗り出たのは、蒼乃美希であった。

「なら、私が行きます」

 この中でいつきとのコンビネーションが高いのは、同じプリキュアである美希に違いない。それはこの場にいる誰にもわかりきっている事であった。
 指名するわけにはいかなかったが、美希の側から名乗り出た事で、問題はなく進行する事になった。

「……わかった。おそらくこれが最も良い形になる。……翔太郎くん、いつきちゃん、そして美希ちゃん。あの山の捜索は君たちに任せた。俺たちは、ここで他の参加者が来るのを待つ」

 沖がそう言うと、それぞれチームが分かれる事になった。
 全員、また帰ってくれば問題はないはずである。







 一度、会議室に戻った彼らは、荷物を整理する。その場に或る食べ物を少しずつ摘まんで、少し口に入れ、喉に通す。のんびりしている暇はないが、ある程度の準備は整えなければならない。
 翔太郎、美希、いつきの三人はそれぞれ必要な物だけを持って出かける事にした。

 翔太郎が選んだのは、まずは当然必要となるダブルドライバー。それから、ガイアメモリについて最も詳しい専門家として、沖の持つT2アイスエイジメモリも回収する。
 あとは、翔太郎の支給品の類を見る事になった。
 勿論、翔太郎もとうに支給品の確認くらいは済ませていたし、そのうえで必要ではないと判断したから、殆ど装備する事はなかった。

「これは……スーパープリキュアの種」

 一つは、スーパープリキュアの種。ハートキャッチミラージュに装填するプリキュアの種だが、これはもう二度と機能する事がないだろう。本来、ハートキャッチミラージュを使い、スーパーシルエットとなるには四人のプリキュアがそろう必要がある。しかし、もうそのうち二人が死んだ。ただ、その場にはいつきがいた。

「……翔太郎さん。これを、僕に、貰えませんか」

 だが、このスーパープリキュアの種はいつきにとっても思い出の品だ。
 だから、お守りのつもりで、それを受け取っておきたいのだ。本来の持ち主として。


19 : ふたりの物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:15:00 FKsPOkkk0

「これはもともと、君のものだ。貰うんじゃない、返してもらう……って事だな」

 翔太郎にとっては、何の意味もない支給品。ならば、いつきに返すのが自然だ。
 残りの二つの支給品は、ネットを発射する銃と短刀である。
 ネット銃は犬探しや猫探しには有効そうだが、あまり使いどころもないので放置していた。一応、探偵として、これまでも懐にしまっていたが、使いどころはほとんどない。
 短刀──これは、散華斑痕刀と呼ばれるものである。これはまあ、銃刀法違反確定な長さだし、普通の刀とは違う形状ながらダブルの能力ほど大きな力を持ってはいなさそうだ。だから、基本的に使う予定はないし、これも置いておこうと思っていた。しかし、まあこの短刀は何かのトラブルで変身して戦えなくなった時に、護身用程度には使えるだろう──そう思って、懐に入れた。

「私は全部置いていきます。あの、これの使い方がわからないんですけど……誰かわかる人は……」
「ああ、それなら俺が解析しておこう」

 美希は、マイクロレコーダーと双ディスクを含む三つの支給品を全て警察署に置いていく事にした。相羽家の人間は先ほどの放送をもって全員死亡、モヂカラのディスクを使える人間ももういない。
 そして、残る彼女の支給品は、「D−BOY FILE」と書いてある機械だ。中を開けると、カードなどが残っている。美希には、これの使い方はわからなかった。孤門も同様だ。これは全て置いておく事にする。
 沖はそういう方面で詳しいので、一応それを受け取った。


 いつきの支給品は、刃の長いナイフであった。熊でも殺すのかと思うほどの大きさで、これまた銃刀法違反レベルには間違いない。

「……ん。それ、どっかで見た事あるな」
「大道克己が使っていたナイフだって、説明書に書いてあります……。おそらく……」
「ああ……あいつのナイフか」

 これは参加者の大道克己が使っていたものらしい。
 いつきは少し考えて、それを翔太郎に差し出した。

「……もしよければ、スーパープリキュアの種と交換で……これ」
「あ、いや……いい。護身用に持っておいたらどうだ? 人殺しに使わないにしても、邪魔な草とかを斬るとかにも使えるだろ」

 翔太郎が拒否する。仕方がないので、いつきが持っていく事になった。
 大道克己のナイフが、いつきの掌に握られる。なかなか重い。確かに、これで人を殺すのは辛いから、敵を倒す時だけ使う事にしよう。
 そっと体の内にそれを隠して、各々は準備に乗り換える事にした。

「…………はい」







 各々は、警察署の玄関まで移動していた。全員そろっているが、向かう三人と残る四人は何となく見えないラインで分かれている。

「おい……死ぬなよ。ヤバくなったら逃げろよ」

 杏子が、翔太郎に言った。
 表情には不安の色が見られる。杏子がその死を不安に思うような相手が出来たのは、本当に久々な気がした。
 だが、翔太郎は言った。

「大丈夫さ。まあ、様子を見に行くだけだからな。状況によっては戦うし、状況によっては人助けもする」

 こんな時にメモリガジェットがたくさん手元にあればもう少し便利なのだが、そういうわけにもいかないらしい。
 デンデンセンサーは警察署にいる連中のために残しておき、翔太郎は山へ向かう事にした。

「おい。あんたも死ぬんじゃねえぞ」


20 : ふたりの物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:15:38 FKsPOkkk0
「あ、うん」

 いつきにも、杏子は声をかけた。いつきも立派な仲間だ。

「それからお前も。……ま、死なれると後味悪いからな」

 いつきを見たついでのように、美希にもそう言葉をかけた。杏子は、美希の目を、はっきり見ていない。
 随分と翔太郎に比べて態度に違いがあるものだ。全く、素直に死んで欲しくないと言う気はないらしい。

(……わ、私を、ついでのように……! ……ま、まあ、でも、別にいいわ……。この子に心配してもらえなくても……)

 美希は、そんな杏子の労いの言葉にも、何も答えなかった。
 杏子を認められない。
 この中に一人、杏子がいるのはいい。でも、仲良くできるとは到底思えなかった。
 美希が好きじゃないタイプだ。不真面目、不良、怠惰、挑発的……。美希とは正反対で、そのうえ犯罪までやっているというその生き方が、美希には認めがたいものだった。
 美希は杏子の言葉に答えなかった。

「おい、無視すんなよ。おい」
「……」
「……ったく。……おらっ!」

 杏子は、自分の目を見ようともしない美希に向かって何かを投げた。美希は、慌てて、……直撃を回避するようなつもりで、それを胸元で受け取った。杏子はいったい、突然、何を渡したのだろうと、胸元のそれを手に取って、見つめた。

「……何これ。どうして……?」

 美希は思わず、杏子の方を見て、杏子に声をかけてしまう。
 それは山吹祈里が持っていたリンクルンであった。
 美希は、祈里のリンクルンを杏子が持っていた事など知らなかったので、これが出てきた事に驚く。
 杏子が、これを持っていたのか。

「苦労したんだぜ、それを悪い奴から奪い返すのも。……ま、お守り代わりってやつさ。持っていきなよ」
「どうして……」
「だから、悪い奴から取り返したんだって。せつなの友達の物を盗んでいるのは許せねえ」

 意外そうに杏子を見つめる美希であった。
 胸の中にある幼馴染の形見。それを取り返したのが、目の前にいる少女。
 ……まさか、普段からの「盗み癖」とやらが、こんな所で活かされたのだろうか。
 美希は、杏子を見直す事はなかったが、……まあ、少しだけ認めてあげてもいいだろうと思った。

「この事に関しては、素直にお礼を言っておくわ。でも、人の物を盗んで平然としているあなたの事は……」

 美希は、なお険しい目で杏子を見つめた。

「ちょっと待てよ! 折角、渡してやるってのに……なんだよ! その態度は!」

 杏子もまた、決して優しい目とは言えなかった。
 二人の視線は、また、激しくぶつかっている。

「おいおい、喧嘩は後にしろよ。さっさと俺と一緒にちょっとだけ出かけんぞ。……Pretty Girls」

 翔太郎が気障に言うと、美希と杏子はお互いを睨んだまま警察署を立った。






21 : 変わり者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:18:09 FKsPOkkk0


「……ったく、なんなんだよアイツは。気に入らねえ」

 美希のいなくなった警察署で、杏子は悪態をつく。ストレスでお菓子を食い散らかしながら。
 杏子は、良かれと思ってキュアパインのリンクルンを渡した。キュアパッションの物は差し出す事ができなかったが、せめてパインの物は渡してもいいだろうと思ったのだ。
 少し、出し惜しみをしている気もしたが、それでも、渡してやったのだからもう少し言い方ってものがある。

「折角、心配してやったのに……」

 実は、彼女が内心、最も心配しているのは、翔太郎ではなくせつなの友達である美希やいつきの方であった。
 彼女ら二人と同じ「プリキュア」が死ぬのを、杏子は目にしている。プリキュアを倒したモロトフがもう死んだからと言って、安心はできない。
 どうしても、プリキュアと名の付く戦士が死んだあの時のことをフラッシュバックしてしまう。
 その場にいたわけではないが、もう一人、街で死んだプリキュアを杏子は知っていた。

「あの……杏子さん?」

 話しかけてきたのはヴィヴィオだった。
 齢、10歳ほど。……殺し合いに巻き込んだ主催者が許せないと、今の杏子なら思う。
 ただ、杏子が裏切ったフェイト・テスタロッサやユーノ・スクライアをよく知る者であり、アインハルト・ストラトスが死んでいる事に悲しみを抱いている最中だと思うと、少し話しかけるのも抵抗がいる。
 どんな顔して、彼女と話をすれば良いのかわからない気持ちもあったが、それでも杏子はヴィヴィオに、そんな内心を勘付かれないように答えた。

「何だい?」
「さっき言えなかったけど、お薬……ありがとうございます」

 そういえば、ヴィヴィオもお礼を言っていないんだっけ。
 それは、ずっと美希と杏子が張り合っていたせいで、いまいち二人に話しかけるタイミングというのがなかったせいだろう。

「いいよ、別に……。その辺の店から盗んだものだし」

 盗んだ。……まあ、杏子にとってはそうだが。
 後で美希と孤門といつきが律儀にその代金を……まあ、一部だけは払ったようである。払ったのは、実際のところ半額程度。無人となると、やはり杏子がここで回収してきただけの額(その額、×万円である)を払わなくてもいいんじゃないかと思う程度の隙間は生まれる。
 美希が怒っていたのは、そこでちゃんと全額払う事ができなかったストレスでもあり、そんな額になるぶんだけ物を盗んだ原因・杏子に対するものだろう。
 ただ、盗んだ物という言い方はするが、美希と孤門といつきはおそらく、薬や救命関連の道具に関しては、そのお金を少し出したと思う。

「……あの。さっき杏子さんは、生きる為に、元の世界でも盗みを働いていたって、言ってましたよね」
「ああ。でも、良い子は決して真似するんじゃねえぞ……」

 杏子は、ヴィヴィオの瞳を見た。
 目の前の高町ヴィヴィオは、母を亡くした。果たして、彼女に一人で生きていく道があるかというと、杏子にはそれは思いつかない。杏子と同じように、魔法少女の力で物を盗みながら生きていくのが、最も良い事だろう。
 道徳よりも、自分が生きるため──それを優先する杏子としては、ヴィヴィオにそんな事も言えないかもしれないが、まあ、それがいかに最悪な事かも教えてやった方がいいかもしれない。

「で、なんで、そんな事訊くんだ……?」
「いや、もしかして怖い人なのかなって……でも、そんな風にも見えないですし……」

 杏子は、ヴィヴィオがそう言っているので、笑った。

「……あたしはちょっと、事情があってさ。両親も妹も、少し前にちょっとした事件で亡くしたんだ。施設にも行ってない。魔法少女の力でフラフラしながら、金を盗んだり食べ物を盗んだり……まあ、自分で言うのも何だけど、最悪な事して生きてきたよ」

 これも罪という奴だ。
 ただ、この何もかもが偽りの街でまで、金を払ってやる義理はないと、杏子は思う。
 正しいとか間違ってるとかじゃなく、ただその方が合理的だ。それで良い、はずなのだ。


22 : 変わり者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:18:36 FKsPOkkk0

「でも、あたしはもう元の世界でも盗みはやらないつもりだ。あの兄ちゃんに出会って、そう決めた。……だけどさ、ここで生きるのに、別にそんな法律とか律儀に守る必要ないだろ」
「そうですけど……」

 ヴィヴィオは、何か言いたげでもあったが、その先が出てこない。
 代わりに、杏子は思い当たる事を言った。

「……道徳ってやつかい?」
「ええ……」
「ほんの少しでも、こんな状況でも、人としての道を外れる事が怖いってのか? ……なるほどな。もう、そんな気持ち忘れていたのかもしれない……あたしも」

 平然と盗みをやって生きてきた杏子が、もう忘れていたことだった。
 道徳。……それが金にならなかったから。

「……わかったよ。あたしも、ここではその辺の品物にちゃんと金を払う。あー、でも手持ちねえから、そのうち、帰ったらどっかの教会にでも寄付するか。後で美希にも謝るよ」
「……ありがとうございます」
「仕方ねえさ。変わり者の条件、一つ追加だな」

 杏子は、翔太郎から言われた例の条件を持ち出す。

「変わり者の条件……?」

 ヴィヴィオが不思議そうな顔をした。沖や孤門も、どうやらその言葉に疑問を持っているらしい。

「聞きてえか? あの兄ちゃんが考えた、変わり者の条件ってのはな……」










「……で、蒼乃美希、だっけ? 君は杏子をどう思ってるんだ?」

 仮面ライダーダブルは、キュアベリー、キュアサンシャインと並走しながら、美希に訊いた。杏子との不仲は、先ほどから見ていて明らかだ。
 しかし、杏子がいる当人の前でそんな事を聞くわけにはいかない。

「……一言で言えば、気に入りません。物を盗んで、人をからかって……もう少し真面目にできないのかしら」

「はは……違いねえな。……だがなぁ、ちょっとでいいから、あのヤンチャガールの事情も、察してくれよ。あいつは、本当は悪い奴じゃねえんだ。なあ、フィリップ」

 “翔太郎”がそう合図すると、“フィリップ”は語り出した。
 翔太郎と違い、フィリップは肉体的運動を伴っていないので、走りながらでも容易に話す事ができる。
 翔太郎とフィリップが聞いた杏子の過去。それを、この美希に伝えなければならないらしい。

『佐倉杏子。彼女は、今日、ここに連れてこられるまでに、少しばかり過酷な人生を辿っている。彼女はもともと教会の家に生まれた姉妹の姉だった。……蒼乃美希、君も“弟”を持つ“姉”で、明堂院いつき、君は“兄”を持つ“妹”だったね。彼女と同じだ』

 物語に入り込ませるため──少しでも杏子に感情移入させるためなのか、二人に語り掛けるようにフィリップは言った。
 フィリップは、姉を二人亡くしている。そして、姉は、「弟」を亡くしている。
 家族が亡くなるという事のつらみを知っている人間だから、家族がいる幸せを心に持っている二人に言いたかったのだ。

『その父親は、正直で優しい人だったらしい。新しい時代には新しい新興が必要だと考えて、教義にもない事を次々と人々に教え、……その結果、本部から追放され、彼女の家は酷く困窮したっていう話だ。それで、キュゥべえと呼ばれる悪魔に契約したんだ。キュゥべえについては知っているかい?』
「はい」


23 : 変わり者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:19:09 FKsPOkkk0

 と答えたのは、いつきだった。美希は人づてにしか聞いていないが……。
 確か、願いと引き換えに魔法少女の力を付与し、使命を与える使いだったという。
 それだけは知っている。プリキュアに力を付与した妖精とさして違わず、その存在が善か悪かもよく判断できなかったので、「悪魔」という言葉は引っかかったが。

『佐倉杏子の願い──それは、自分の父の話を聞いてほしい、というだけだった。彼女は自分の父の言葉が正しい事だと信じていたし、少しでも貰えれば支持してくれると信じていたようだね』

 ……ここまでの話を、美希は意外そうに聞いていた。
 神の御加護、なんていうものは祈里には似合っても、杏子には似つかわしくないものであるように思えた。祈里はミッション系の中学に通っていて、クリスチャンだった。教会の生まれという事は、杏子も、もともとはクリスチャンだったのだろうが、気弱な祈里のイメージとは正反対だ。何となく、クリスチャン全体に、美希は祈里のイメージを重ねてしまう。
 それに、お菓子をおいしそうに頬張る杏子の姿は、困窮していた少女のイメージとは異なったし、父の願いを聞かせようと必死だった娘の姿とも重ならなかった。

『杏子ちゃんも、世界を救うために、魔女と戦い、自分の父の言葉が人々を導いてくれるのを喜ばしく思っていた。それこそ、君たちプリキュアのようにね。……だが、そんな日々は長くは続かなかった。杏子ちゃんの父は、自分が杏子ちゃんの魔法で信者を獲得しているんだって、知ってしまったんだ。……それを彼女の父は受け入れられなかった。人の心を惑わせて信者を増やすなんて事がね。杏子ちゃんは、実の父に魔女として罵られた。父は酒に溺れて、家族に虐待を加えるようになっていった。……そして、佐倉一家は、杏子ちゃんだけを残して父親による一家心中で全員亡くなったそうだ』

 心中。──たまにニュースで、遠い世界で起こるような、そんな言葉。美希の前にいたのは、そんな過酷な運命に人生を狂わされた被害者だったのだ。
 そんな子が──一人残された中学生の少女が、それからどう生きていくか。
 ……きっと、まともな生き方なんてできない。美希なら耐えられない。自分の両親は離婚した。喧嘩だってしていた。そして、もし父が刃物を持って、母や弟や──あるいは美希に襲い掛かるとしたら。
 勿論、そんな事は、美希も想像できないし、想像したくなかった。だが、杏子だって、自分の一家が心中するなんて想像していなかっただろう。
 そして、美希や杏子の中には、そんな過酷な人生でも、施設に入らずに日々を過ごせる力があるではないか。好きなように自分の人生をゆがめられる手段があるではないか。
 世の中がいやになったなら、幸せな家庭を横目に恨みを持ったなら──この力で、奪う事だってできてしまうではないか。
 美希は、それを想像して鳥肌が立った。

『まともでいられるはずがない。普通の人なら。それから彼女は、自分のために生きる決意をしたんだろう。他人のために生きていく事が、その人の人生さえも壊す結果になるのなら……とね。それで、一人で生きていくと決めて、魔法少女の力を使って物を盗みながら生きてきたんだろう。実を言うと、最初は殺し合いにも乗っていたらしいんだ。誰か殺してはいないけど。……それに、今は違う。彼女は自分の答えを見つけた。罪を償うためにね』
「そんな……」

 美希は、心の中で愕然とし始めていた。
 目の前には、森が見え始めている。ここから山へと入っていくのみだ。
 杏子がいた警察署からは離れていく。

「美希。あいつのやってる事はまあ、確かに元の世界なら犯罪さ。……この状況でも自販機ブッ壊すのは流石にどうかと思う。だがな、あいつは生きる為に、そして、誰かに食べ物や飲み物や薬を分けてやりたくて……それで、ここでは金を払う必要はないと、そう自分で判断して、あれを盗んできた……いや、持ってきたと思ってるんだろうな。わかってやってくれよ」

 美希は、出かかった言葉を飲み込んだ。
 反論ができない。
 美希は、自分の生き方がいかに恵まれているものなのか、それを考えていた。
 美希は、両親が離婚してはいるものの、モデルとして売り出すパイプを持った親がいたし、家も裕福だ。片親ながら、私立の学校に通わせてもらっている。
 杏子のように、学校にもまともに通えず、その日の食べ物にさえ困る生活をしていた人間の事を、考える事ができなかった。
 そんな人間が自分の身近にいる事を考えなかったのだ。

(杏子……)

 美希は、祈里のリンクルンを握りしめた。
 杏子が取り返してくれたのに、ちゃんとお礼を言えていない。それどころか、自分勝手な言葉を杏子に突き付けてしまった。
 それが……とても……。


24 : 変わり者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:19:34 FKsPOkkk0
「あ、翔太郎さん、美希、あれ!」

 ふと、いつきの一声で、美希は我に返った。
 二人の目の前には、白いコートに身を包んだ、見知らぬ男が駆けていた。
 敵か味方かはわからないが、ともかく三人は彼に声をかける事にした。







 孤門は、杏子の話を聞いた後も、警察署の外を見つめていた。三人は今、どこまで行けただろうか。
 ……つい先ほど、西条凪と溝呂木眞也の死亡も伝えられた。遂に、残る知り合いは石堀光彦だけである。
 信頼していた相手、強かった人たちまで次々と死んでいく今、本来すべきは「全員で行動する事」なのは違いないと思っていた。そうすれば、敵と戦うための兵力として、お互い支え合う事ができる。
 怪我人の防御壁として前に立つ事もできるし、孤門自身は誰かを守りたいという気持ちが根底にある。
 ……それももう、あと二十名も守れないという事だが。

(副隊長……)

 死んだ凪は、厳しい人だが、時に優しい人だった。
 リコの死を乗り越えられたのはあの人のおかげだ。
 憎しみという力が正しいかはわからないが、あの時、孤門が「憎しみ」に手を伸ばさなければ、孤門はもっと深い闇に陥り、ナイトレイダー隊員ではなくなっていた。
 千樹憐と出会う事もなかっただろう。

「あのさ、孤門の兄ちゃん」

 杏子がふと、話しかけてきたので、孤門は振り向く。

「何だい?」
「……さっきの放送で死んじまった、西条凪って人、それから姫矢准って兄ちゃん、いただろ。兄ちゃん、その人たちと知り合いなんだよな……? その人の事について聞きたいんだ……光を継いだ者として」
「ああ……」

 こうして、死んだばかりの人間の事を孤門に対する配慮もなく聞けるのは、杏子の良いところであり、悪いところだ。……いや、少し間を置いてから話したのは、せめてもの拝領というやつだろうか。
 まあ、孤門も大人なので、杏子が根は悪い人間ではないと知っているし、信じている。姫矢によって光を託された彼女が、決して悪い人間ではないと。
 いつか話せばならない話だ。

「さっき亡くなった西条凪さんは、僕が所属していたナイトレイダーの先輩で、部隊の副隊長だよ。僕はまだまだヒヨッ子で……そんな僕を支えてくれたのが、西条凪副隊長なんだ」

 黄昏るように、窓の外に目をやる。見張りも兼ねているようには見えないが、おそらくその辺りはちゃんとしているのだろう。

「僕のいた世界はね、あんまり平和じゃなかったんだ。ちょっと前は……平和な日々を、ごく当たり前の物として生きてきたし、たくさんの人がそうやって生きている。目の前にある現実が、偽りの物だったなんて知らずに……」

 孤門は、全て一から話す事にした。杏子に対しても、まだ話していない。
 彼女がウルトラマンの光を継承した事は聞いたが、その力が一体どうやって伝わっていったのかを、孤門は教えなければならない。
 その光がある世界が、どんな世界なのかも、伝えなければならないだろう。

「……一見普通に見える日常にも、得体の知れない怪物が巣食っている事がある。僕たちの世界にとっては、スペースビーストという怪物だった」

 杏子は魔女を、沖はドグマやジンドグマを思い出しただろう。
 どんな世界にも、見えない脅威というのが潜んでいるのかもしれない。

「スペースビーストは、人間を捕食して生きる巨大な怪物なんだ。小さな物でも、数メートルはある。……僕は、ある時レスキュー隊から、突然TLTという組織に異動になって、その時に、そんな怪物がこの世にいる事と、それがTLTによって人々の記憶から消されている事を知った。……人々がパニックにならないためだって」


25 : 変わり者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:19:54 FKsPOkkk0

 魔女が秘匿されているのと同じ理由であるように思えた。
 人々の記憶を消す技術が存在し、組織的に怪物の存在を隠ぺいしているというのだ。
 その話を聞くと、恐ろしい。自分の記憶というものが当てにならないかもしれない、最悪の世界だ。

「僕が異動になったのは、スペースビーストを倒すための部隊・ナイトレイダーだった。隊長は和倉英輔、副隊長は西条凪、それから、僕の他に石堀光彦隊員と平木詩織隊員がいた。そこで、まあレスキュー隊の時より辛い訓練をさせられてね……あんまり良い思い出はないんだけど、その時の鬼教官が平木隊員で、鬼先輩が西条副隊長」

 どこか自嘲気味に笑った孤門の横顔。そんな日々を懐かしんでいるようにも思える。
 いたたまれない空気が漂う。しかし、当の孤門はそこまで凪の死というものをひきづってはいなかった。

「僕たちはビーストを倒しながら、ある時、ビーストと戦う光の巨人と出会った。……それが、ウルトラマン……君も知っている、姫矢さんだ」
「姫矢……」

 この時、杏子の中で、姫矢という人物と目の前の男が繋がった。全く、不愛想というほかない男と、このごく普通の天然の男の接点というのは、正直言って、今の今まで見えなかったのである。
 この弧門と姫矢が旧知の仲だとは思っていなかったが、そうした経緯で出会ったのか──それを、初めて聞いた。

「姫矢さんは、もともとカメラマンだったらしい。僕も知らないんだけど、昔はかなり熱血漢で、社会の不正を暴くために頑張ってたらしいんだ……。でも、そうして人間の暗部を知っていくのが姫矢さんには耐えられなかった。……やがて、日本の社会を離れて、紛争地で戦場の写真を撮りに行く事になったんだって」
「……そうだったのか」

 姫矢は職業さえわからない男だったが、杏子にとってもかなり予想外の仕事であった事に驚いた。
 社会の不正を暴くために真っ直ぐに突き進んで、人間の暗部が嫌いで、戦争が起こる世の中を悲しむ……そんな男を、杏子はかつて、父に持っていた。
 杏子は、姫矢に持ったあの……謎の共感の正体が突き止められていくのを感じた。
 そうだ、彼は、世の中に裏切られ、信じる者を失った父と……全く同じ目をしていたのだ。いや、もしかすれば、鏡が自分自身の姿を捉えた時も、その目を見たかもしれない。
 ただ、変身を解いて、杏子と翔太郎を先に行かせた時の姫矢の目は、あのくらい瞳とは違った。──そうだったのだ。
 孤門は続けた。

「……戦場で、ある少女に出会って、姫矢さんは打ち解けていった。姫矢さんはその子を妹のように可愛がっていて、元の明るい性格に戻っていったんだけど、……その子は、姫矢さんが戦地で写真を撮りに行った時、姫矢さんを追いかけて、姫矢さんの、目の前で爆撃を受けて、死んでしまったらしい。でも、その時の写真が、賞を得て、姫矢さんはずっとその罪の意識に苛まれていたんだ。
 妹のように可愛がっていた女の子が自分のせいで死んでしまった事も、その瞬間をとらえた写真で人々に称賛される事も、批判される事も……姫矢さんには、耐えられなかったんだ。……そんな姫矢さんが、夢の中で、その子に導かれて、そして手にしたのが、ウルトラマンの光なんだって。それから、姫矢さんは己の罪を償うために、ウルトラマンとして戦う事にした」

 光の正体──それは、孤門にもわからない。
 わかっているのは、姫矢や憐のように、辛い事情を抱えた人間にばかり、その力が回っている事だけだ。

「そのころ、もう二人のウルトラマンが現れた。ビーストを操る、ダークファウストとダークメフィスト。……ダークメフィストだったのが、元ナイトレイダー副隊長の溝呂木眞也だ。ビーストたちの使者、アンノウンハンドによって送り込まれた手先らしい。ウルトラマンと互角の力を持つファウストとメフィストは、僕たちにとっても厄介な敵だった」

 孤門は、口を噤んだ。
 ダークファウストの正体を言おうとして、それでやはり黙ってしまった。そこから先の言葉が、出すに出せなかった。
 だから、孤門は、懐から言葉ではなく、物を取り出した。
 小さな鳥のストラップである。片翼が折れており、壊れ物であるように見えた。没収から漏れたアイテムの一つらしい。まあ、こんなものを没収してどうするという話だが。

「このストラップ、……ガンバルクイナ君って言うんだけど、これは僕の恋人のリコがくれたんだ」


26 : 変わり者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:20:28 FKsPOkkk0
「恋人!? 兄ちゃん、彼女いたのかよ!」

 杏子が反応する。それは初耳である。
 この冴えない男に、まさか彼女がいたとは。……確かに、顔はかなり良い部類なのだが。
 しかし、孤門は少し笑って、答えた。

「……いや。もういないよ」
「あ、悪い……フラれたのか……。悪いな、厭な事思い出させちまって」

 孤門の哀愁に満ちた言葉に、杏子がそう誤解するのも無理はない。
 だが、孤門は首を振って、杏子の方を見て答えた。その顔には、少し哀愁のような笑みが込められていた。こういう流れになったからこそ、孤門はもう少しくだけたように言えた。

「リコはもう死んでしまった。……リコが、ファウストだったんだ」

 失恋など、まだ容易い現実にさえ感じるほどの、理不尽な現実であった。







「おい、そこのあんた! ちょっと待ってくれ!」

 鋼牙は、背後から聞こえた声に、咄嗟に振り向く。立ち止まり、後ろから現れる謎の怪人に向けて剣を構えた。一部の隙もない動作に、思わず怪人はたじろいだ。

「……なんだ、お前は」
「……っと、これはご挨拶だな。俺は仮面ライダーダブル、左翔太郎だ」
「仮面……ライダー……? お前も仮面ライダーなのか!?」

 鋼牙は、エターナルやゼクロス、クウガなどの仮面ライダーを思い出す。
 なるほど、確かにダブルが巻いているベルトは仮面ライダーエターナルが装着していたものに酷似しており、ガイアメモリがセットされている。間違いなさそうだ。

「お前も? ……じゃあ、あんたも仮面ライダー!?」
「……いや、俺は仮面ライダーじゃない。だが、仮面ライダーは何人も知っている」

 仮面ライダーエターナル、仮面ライダーゼクロス、仮面ライダークウガ。これまで出会った仮面ライダーは三人だ。いずれも、もう少し影があったような気がする。翔太郎のこの絶妙なテンションの人間はいなかった。
 まあいい。一条によると、五代もそういう人間だったようだ。
 鋼牙は、キュアサンシャインの方を見た。彼女の姿は殆ど、キュアブロッサムの色違いだ。

「……それから、君たちはプリキュアだな。プリキュアも知っている」
「プリキュア!? じゃあ、キュアピーチと会ったの?」

 間髪入れずにベリーが訊く。

「ピーチ? いや、俺が会ったのは、キュアブロッサムとダークプリキュアだ。キュアピーチとは会っていない」

 キュアピーチというプリキュアは、そういえばつぼみも言っていたが、「キュア〜」ばかりで少し迷った。そのプリキュアの名前とは、まだ会っていない。
 考えるに、キュアピーチは桃園ラブか蒼乃美希だったような覚えがある。
 キュアブロッサムの話をしたところで、キュアサンシャインが声をあげた。

「ブロッサムやダークプリキュアと会ったんですか?」
「彼女と知り合いか。すると、君は……」

 鋼牙といえど、プリキュアの名前を覚えるのには苦戦する。
 その言葉に、思い出しながら話すようなニュアンスを感じ取ったのか、いつきは自己紹介を兼ねて、すぐに答える事にした。

「キュアサンシャイン! 明堂院いつきです」
「そうか……君がいつきか。二人は、向こうに行った。……ただ、ダークプリキュアには警戒した方がいい。……奴は殺し合いに乗っている」
「……そうですか」

 キュアサンシャインは項垂れた。少し信じてみようと思ったのに、ダークプリキュアは悪事を重ねている。アインハルトも、源太も、彼女に殺されたのだろうか。


27 : 変わり者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:21:05 FKsPOkkk0
 それを思うと、悲しい。彼女はまだ悪事を重ねるのだろうか。
 彼女の心の闇を照らす事はできるのだろうか。
 ……キュアサンシャインはそう思いながら、やはり顔を上げた。
 ダブル、キュアベリー、キュアサンシャインらは、顔を見合わせた。

「……そうだ、まだ聞いてないんだが、あんたの名は?」

 ふと、翔太郎が鋼牙に訊いた。そういえば、名乗っていなかった。鋼牙は己の名前を名乗る。

「俺は冴島鋼牙。……いや、ここではもう一つの名前も名乗るべきか。もう一つの名は、黄金騎士牙狼(ガロ)という」

 ダブルが、男の名前を二つとも、脳内で反芻する。
 冴島鋼牙。黄金騎士ガロ。いずれも、どこかで聞いた名前だ。確か、誰かが出した名前だ。いくつもの名前を知っているので、少し考えてみる事にした。
 翔太郎、いつき、美希……彼らは全員、その名前を知っていたのである。ある者から聞いていたのだ。

『ザルバが言っていた人だよ、翔太郎』

 最初に口に出したのはフィリップだった。

「……そうか! あんたが鋼牙か! 魔戒騎士だな? 警察署でザルバが待ってるぜ!」
「ザルバ!? ザルバを知っているのか!!」

 鋼牙は、かなり驚いたように白衣を震わせる。
 魔導輪ザルバ。魔導具シルヴァもここにいたので、おそらくここにシルヴァもいるだろうと思っていたが、まさかザルバを知る者がいたとは。

「……あー……っと、そうだな、会って来いよ。あいつも会いたがってたみたいだし。向こうには俺たちが行くから大丈夫だ」

 翔太郎は、そう口にした。元の世界の相棒に一刻も早く会いたい気持ちは鋼牙にもザルバにもあるだろう。彼らは、そう、「相棒」だ。
 一緒にいるのが自然である。あの口うるさい指輪を鋼牙は指にはめ、共に行動するべきだろう。

「……あ。そうだ、美希。お前、こいつを警察署まで案内してやれよ」

 ふと、翔太郎が口にした。
 ここでまさか自分の名前が挙がるとは思っていなかったらしく、「え!?」と、美希は驚く。何故ここで自分が指名される事になるのか、美希にはわからなかった。

「でも……なるべく三人以上で行動しろって……孤門さんが」

 ここまでの道筋で、警察署から山までの区間にほとんど参加者がいないらしい事はわかっている。滅多な事では他の参加者には会わないだろう。美希たちは二人で行動しても安全だと思う。
 しかし、美希が心配しているのは翔太郎たちだ。

「……だから、“三人”だろ? 帰り道はだいたい安全だろうし、そっちは二人で大丈夫だろ」

 ダブルの腰のダブルドライバーを指で軽く弾いた。
 このダブルドライバーから聞こえる「フィリップ」の声。それが、三人目か。
 ……いや、それは美希にもわかる。しかし、そういう問題ではないだろうと美希は思う。
 実戦力としての人数は二人である事に違いはない。庇い合うにも、人数が少なすぎるだろう。

「……美希。行きなよ。私たちは大丈夫。杏子にお礼、言いに行きなよ」

 しかし、そう考えていた時にキュアサンシャインが肩をたたき、優しく微笑みかけた。
 鋼牙は事情を知らないようだが、黙って立ち尽くす。

「でも……」

 美希は彼らを心配する気持ちを胸に抱いた。
 ……しかし、ダークプリキュアを止められるとしたら、それはきっとキュアベリーではない。キュアブロッサムかキュアサンシャインなのだ。
 戦いの中で美希が彼らを手助けできる余地はあまり残っていないのではないかと思った。
 美希は、二人を信じる事にした。


28 : 変わり者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:21:44 FKsPOkkk0

「……わかったわ。……あなたも、もしダークプリキュアを見つけたら」
「……うん。わかってる。彼女は、私が止める」

 プリキュア同士は、お互いの目を見て、それぞれ、ある人と「友達」になるために道を分かつ事にした。
 お互いを信頼し、お互いに健闘を祈って。
 再び、ここで美希は警察署に戻る事になった。

(……杏子。私、ちゃんとお礼言ってない。それに、謝らなきゃ……)

 美希は、杏子の境遇を知った。それで、少し彼女の事を異なる視点で見る事になった。
 同情……じゃない。
 彼女の事を全く考える事ができなかった自分の戒め。そして、彼女が生まれつきの悪人ではない事がわかった複雑な想い。
 ──友達に、なれる。
 杏子と、もう一度話そうと美希は決意した。







「……リコは僕と会った日、もう死んでいた。その後僕がずっと会っていたのは、リコの体を使ったダークファウストだったんだ……。それでもリコは、最後にはリコの意思を取り戻して、ウルトラマンを助けてくれた。
 その時……僕は大事なリコが、溝呂木に利用されて、捨てられる人形のように使われていた事を憎んだ。ナイトレイダーもやめようとして、立ち直る事もできないままに毎日生きていた。でも、そんな時に僕を救い出してくれたのは副隊長だった」

 今となっては、もうその時の事さえ懐かしい。
 ほんの数か月前の話だというのに、ナイトレイダーで生きる毎日は長くも感じる。
 レスキュー隊にいた頃よりもずっと過酷で、命知らずな日々だ。そして、厳しいながらも孤門を助けてくれる副隊長の存在は、孤門の心の中でも大きなものだった。

「副隊長は、小さい時にビーストに両親を殺された。その事でビーストを憎んで、殲滅させる事に全てをかけていた。……それから、自分の先輩だった溝呂木の事が、アンノウンハンドによってメフィストにされて、ビーストを操っている事も憎かったんだと思う。
 だから、副隊長はビーストを憎んだ僕に自分の境遇を重ねて、励ましたんだよ。……強くて、厳しくて、それでも優しい人だった。彼女の厳しさが、僕を今まで支えてくれた。彼女の強さが……僕を勇気づけてくれた」
「……そうか」

 杏子にとっては、巴マミのような人だったのだろう。そして、彼らは袂を分かつ事はなかった。かつて、ベストパートナーとして、戦場で戦い抜いていったのだ。弟子だけが生き残った。
 それは、沖にとっては玄海老師だったし、ヴィヴィオにとってはなのはやスバルだったかもしれない。

「それから、その後も僕たちと姫矢さんはビーストと戦い続けた。人々の知らないところで。……そして、やがて姫矢さんとダークメフィストとの決戦の時が来た。結果は相打ち。姫矢さんはいなくなって、溝呂木も人々の前から姿を消した。
 でも、最後には姫矢さんは、罪を償うためではなく、その力でみんなを守るために戦った。僕に一言言い残して」
「一言……?」
「『孤門、光は絆だ。誰かに受け継がれ、再び輝く』」

 その「誰か」というのは、この場合、杏子に違いない。だから、孤門は杏子を見ながらそういった。しかし、孤門にとって、その継承者はもう一人、別にいた。
 この世界で矢が光を繋いだ相手は杏子だったが、元の世界では違ったのだ。

「……ここでは君が光を引き継いだけど、僕たちの世界では、千樹憐という17歳の男が姫矢さんから光を受け継いだ。憐は、姫矢さんよりも人懐っこい性格かな。彼も、自分が光を手に入れた意味を考えて、人を守るために戦ってるよ」

 孤門は薄く笑った。

「……僕の知っている事は殆ど終わりだ。ここにいた姫矢さんは、自分の光を君に託した。それにはきっと、深い意味がある。その光を手に入れた君を、僕は信頼するし、光はまた繋がれていくだろう。杏子ちゃん、君もきっと……」


29 : 変わり者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:22:09 FKsPOkkk0
 光を継いだ意味。
 ウルトラマンとなった者たちが誰も悩み、その答えを見つけていく。
 翔太郎や孤門は、杏子にその手助けをしているに過ぎない。
 本当の意味は、自分自身の力で見つけなければならない。
 この光がまだどこかに継がれていないのなら、それはきっと、彼女にはまだやるべき事があるという事なのだろう。

「……光を継いだ本当の意味? そんなもの、本当にわかんのかな?」

 杏子が難しそうに頭を掻く。そんなに難しい事ではなくても、どうしてもその言葉が難しそうに感じるのである。
 自分が本当に光を引き継ぐにふさわしいのか、その迷いはいまだに杏子の中に在った。

「わかるよ、絶対。君を選んだ姫矢さんの友人として、君が繋ぐ絆を、僕は信じる」

 孤門は、こんなに辛いはずの想いを、杏子に笑顔で打ち明けてくれた。きっと、内心では結構、悲しんでいるだろう。
 しかし、それを悟らせないために、笑って──

「……そうだ、杏子ちゃん。もしくじけそうになったら、一つだけ覚えていて欲しい言葉があるんだ。そうだね、変わり者の条件に、僕も一つ追加していいかな?」
「何だい?」

 杏子は訊いた。ヴィヴィオと沖は、その言葉を知っている。

「──諦めるな!」

 孤門が、唯一険しい顔をする時だった。
 どんな時でも諦めず、苦難を乗り越えた孤門の口から出た言葉。返せるわけもなかった。

「僕が昔、川で溺れた時に、誰かが助けてくれて、そう言ってくれたんだ」
「誰か……?」
「その人が、誰なのかわからない。でも、その人を目指してレスキュー隊に入って、今はナイトレイダーにいる。そして、僕はその人の言葉を今も胸にしまっているんだ。すごく、単純な言葉だけど、だからこそどんな時も僕の胸に残り続けた」

 小さい頃から、一貫して忘れない言葉。
 なるほど、これが、孤門が考える「変わり者の条件」という奴か。

「……はは、実は、美希ちゃんにも全く同じ事を言ったんだ。その時の美希ちゃん、今の君と同じような顔をしていたよ」
「あ!? あいつは関係ねえだろ!!」

 杏子は、思わず乱暴に立ち上がったが、孤門は、そんな彼女をからかうように笑っていた。
 美希と杏子が仲良くなる事を、孤門は望んでいる。誰だってそうだ。魔法少女とプリキュア、随分違いはあるだろうが、きっと仲良くなれると、信じている。
 似ていないからこそ、どこかで二人の息が合ったときに、可笑しいのだ。

(……でも、あいつに言わなきゃならねえよな)

 ヴィヴィオに対して言った変わり者の条件──ちゃんと物を買う時はお金を払い、悪い事をしたら謝る事。
 それを果たすのは恥ずかしいが、しかし、杏子は翔太郎のような変わり者になりたいのだ。







 ──それから。

「……美希ちゃんだ! 美希ちゃんが帰ってきた!」

 孤門の合図とともに、他の全員が窓を凝視した。杏子、沖、ヴィヴィオが全員窓に向けて顔を出した。
 美希は、こちらに向けて合図をしている。何かジェスチャーをしているが、よくわからない。かと言って、あまり大きな声を出すわけにもいかない。……彼女は、もう一人、誰かを連れていた。それは白衣の男である。

「何かあったのか……?」
「いや、途中で誰かに出会って、ここまで案内してきたのだろう。彼を知っている人は……?」


30 : 変わり者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:22:30 FKsPOkkk0

 沖がそう訊いても、誰も返事をしなかった。あの男は、沖の知り合いではないし、孤門やヴィヴィオや杏子の知り合いでもないらしい。では、なぜ……。
 そう思ったところで、杏子の指に嵌められた魔導輪が訊く。そうだ、コイツを忘れていた。

「おい、誰かいるのか? 見えねえよ」
「あー、悪い」

 杏子がザルバを外に向ける。指に嵌めている指輪が動いて喋る姿には、最初は少し嫌悪感さえ覚えるほどだったが、今は随分と慣れたものである。

「……って、もう誰もいないじゃねえか」

 杏子がザルバを外に向けた頃には、もう美希もその男も建物の中に入ってしまったらしい。誰だかわからないが、ザルバは特に期待していなかった。
 ここまで、ザルバは魔戒騎士の知り合いと一切会っていない。まるで一人だけ別世界にいるような感覚だ。しかし──

「えっと……白い服を着てたな。大人の男だぜ」
「白い服……? もしかして……」

 ザルバは思案めいた表情になった。
 ここの参加者の中でも、黒い服か白い服ならば、一人だけ心当たりがあるのだ。
 そう、それはザルバの相棒だ。

「……ザルバ!」

 聞き慣れた事のある声が、ザルバの名を呼んだ。

「鋼牙!」

 ────冴島鋼牙と魔導輪ザルバがいま、再び巡り合う。

「……よう、あんたも」
「杏子、あなたに……言いたい事がある」

 同時に──蒼乃美希と佐倉杏子もまた、巡り合った。

「「ごめんなさい」」

 そして、美希と杏子。二人が、お互いに頭を下げ合った。







「……これ、はい」

 美希が、杏子にお菓子を差し出す。この警察署にある物ではない。美希がおすすめする、少し高いシュークリームだ。値段は張るが味は確かというところか。

「何だよ、コレ」
「お店に落ちてたから貰ってたのよ」

 店に落ちていた。貰って来た。それはすなわち、美希にもっとも似つかわしくない行動──

「それ窃盗じゃねえか!」
「だから、やってみたのよ、あなた流を。ここで生きるのに、最も冴えたやり方なんでしょ? ……わかってるわ」

 杏子は黙った。
 黙って、袋入りのシュークリームを受け取った。杏子も食べた事がない銘柄だ。そもそも杏子の街にこの店のシュークリームが存在するのか、わからない。

「仕方ねえな、ホラ」

 杏子は500円硬貨を指の上で弾いて、美希に投げるように渡した。これも確かに盗んで稼いだゲーセンで遊ぶための物だが、仕方ない。


31 : 変わり者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:23:05 FKsPOkkk0

「……何これ」
「こんな時でも金を払うのがオマエ流なんだろ。あたしも乗る事にしたよ」

 美希は、杏子の。
 杏子は、美希の。
 その生き方を理解し、お互いを尊重し合った結果である。

「……これ、全然足りないわよ」
「マジかよ!? どんだけ高えもん食ってるんだよ!!」



【1日目 夜】
【F−9 警察署 会議室】

【沖一也@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、強い決意
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(食料と水を少し消費)、ランダム支給品0〜2、首輪(祈里)、ガイアメモリに関するポスター、お菓子・薬・飲み物少々、D-BOY FILE@宇宙の騎士テッカマンブレード
[思考]
基本:殺し合いを防ぎ、加頭を倒す
0:D-BOY FILEを解析してみる。
1:本郷猛の遺志を継いで、仮面ライダーとして人類を護る。
2:警察署内では予定通りに行動する。
3:この命に代えてもいつき達を守る。
4:先輩ライダーを捜す。結城と合流したい。
5:仮面ライダーZXか…
6:ダークプリキュアについてはいつきに任せる。
[備考]
※参戦時期は第1部最終話(3巻終了後)終了直後です。
※一文字からBADANや村雨についての説明を簡単に聞きました
※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました
※18時に市街地で一文字と合流する話になっています。
※ノーザが死んだ理由は本郷猛と相打ちになったかアクマロが裏切ったか、そのどちらかの可能性を推測しています。
※第二回放送のニードルのなぞなぞを解きました。そのため、警察署が危険であることを理解しています。
※警察署内での大規模な情報交換により、あらゆる参加者の詳細情報や禁止エリア、ボーナスに関する話を知りました。該当話(146話)の表を参照してください。
※ダークプリキュアは仮面ライダーエターナルと会っていると思っています。
※霊安室での殺人に関して、幽霊の呪いである可能性を聞きましたが、流石に信じていません。

【蒼乃美希@フレッシュプリキュア!】
[状態]:ダメージ(中)、祈里やせつなの死に怒り 、精神的疲労
[装備]:リンクルン(ベリー)@フレッシュプリキュア!
[道具]:支給品一式((食料と水を少し消費+ペットボトル一本消費)、シンヤのマイクロレコーダー@宇宙の騎士テッカマンブレード、双ディスク@侍戦隊シンケンジャー、リンクルン(パイン)@フレッシュプリキュア!、ガイアメモリに関するポスター、杏子からの500円硬貨
[思考]
基本:こんな馬鹿げた戦いに乗るつもりはない。
1:杏子と話をする。その後は…。
2:警察署内では予定通りに行動する。
3:プリキュアのみんな(特にラブが)が心配。
4:相羽タカヤと出会えたらマイクロレコーダーを渡す。
[備考]
※プリキュアオールスターズDX3冒頭で、ファッションショーを見ているシーンからの参戦です。
※その為、ブラックホールに関する出来事は知りませんが、いつきから聞きました。
※放送を聞いたときに戦闘したため、第二回放送をおぼろげにしか聞いていません。
※聞き逃した第二回放送についてや、乱馬関連の出来事を知りました。
※警察署内での大規模な情報交換により、あらゆる参加者の詳細情報や禁止エリア、ボーナスに関する話を知りました。該当話(146話)の表を参照してください。
※霊安室での殺人に関して、幽霊の仕業であるかもしれないと思い込んでいます。


32 : 変わり者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:23:39 FKsPOkkk0

【高町ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
[状態]:上半身火傷、左腕骨折(手当て済)、誰かに首を絞められた跡、決意、臨死体験による心情の感覚の変化
[装備]:セイクリッド・ハート@魔法少女リリカルなのはシリーズ、稲妻電光剣@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:支給品一式(アインハルト(食料と水を少し消費))、アスティオン@魔法少女リリカルなのはシリーズ、ほむらの制服の袖
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
1:生きる。
2:警察署内では予定通りに行動する。
[備考]
※参戦時期はvivid、アインハルトと仲良くなって以降のどこか(少なくてもMemory;21以降)です
※乱馬の嘘に薄々気付いているものの、その事を責めるつもりは全くありません。
※ガドルの呼びかけを聞いていません。
※警察署の屋上で魔法陣、トレーニングルームでパワードスーツ(ソルテッカマン2号機)を発見しました。
※第二回放送のボーナス関連の話は一切聞いておらず、とりあえず孤門から「警察署は危険」と教わっただけです。
※警察署内での大規模な情報交換により、あらゆる参加者の詳細情報や禁止エリア、ボーナスに関する話を知りました。該当話(146話)の表を参照してください。
※霊安室での殺人に関して、幽霊の仕業であるかもしれないと思い込んでいます。
※一度心肺停止状態になりましたが、孤門の心肺蘇生法とAEDによって生存。臨死体験をしました。それにより、少し考え方や価値観がプラス思考に変わり、精神面でも落ち着いています。

【孤門一輝@ウルトラマンネクサス】
[状態]:ダメージ(中)、ナイトレイダーの制服を着用 、精神的疲労
[装備]:ディバイトランチャー@ウルトラマンネクサス
[道具]:支給品一式(食料と水を少し消費)、ランダム支給品0〜2(戦闘に使えるものがない)、リコちゃん人形@仮面ライダーW、ガイアメモリに関するポスター×3、ガンバルクイナ君@ウルトラマンネクサス
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
1:みんなを何としてでも保護し、この島から脱出する。
2:警察署内では予定通りに行動する。
3:副隊長、石堀さん、美希ちゃんの友達と一刻も早く合流したい。
4:溝呂木眞也が殺し合いに乗っていたのなら、何としてでも止める。
5:相羽タカヤと出会えたらマイクロレコーダーを渡す。
[備考]
※溝呂木が死亡した後からの参戦です(石堀の正体がダークザギであることは知りません)。
※パラレルワールドの存在を聞いたことで、溝呂木がまだダークメフィストであった頃の世界から来ていると推測しています。
※警察署の屋上で魔法陣、トレーニングルームでパワードスーツ(ソルテッカマン2号機)を発見しました。
※警察署内での大規模な情報交換により、あらゆる参加者の詳細情報や禁止エリア、ボーナスに関する話を知りました。該当話(146話)の表を参照してください。
※霊安室での殺人に関して、幽霊の仕業であるかもしれないと思い込んでいます。

【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(大)、ソウルジェムの濁り(小)、腹部・胸部に赤い斬り痕(出血などはしていません)、ユーノとフェイトを見捨てた事に対して複雑な感情、マミの死への怒り、せつなの死への悲しみ、ネクサスの光継承、ドウコクへの怒り
[装備]:ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ、エボルトラスター@ウルトラマンネクサス、ブラストショット@ウルトラマンネクサス
[道具]:基本支給品一式×3(杏子、せつな、姫矢)、リンクルン(パッション)@フレッシュプリキュア!、乱馬の左腕、ランダム支給品0〜1(せつな) 、美希からのシュークリーム
[思考]
基本:姫矢の力を継ぎ、翔太郎とともに人の助けになる。
1:美希と話をする
[備考]
※参戦時期は6話終了後です。
※首輪は首にではなくソウルジェムに巻かれています。
※左翔太郎、フェイト・テスタロッサ、ユーノ・スクライアの姿を、かつての自分自身と被らせています。
※殺し合いの裏にキュゥべえがいる可能性を考えています。
※アカルンに認められました。プリキュアへの変身はできるかわかりませんが、少なくとも瞬間移動は使えるようです。
※瞬間移動は、1人の限界が1キロ以内です。2人だとその半分、3人だと1/3…と減少します(参加者以外は数に入りません)。短距離での連続移動は問題ありませんが、長距離での連続移動はだんだん距離が短くなります。
※彼女のジュネッスは、パッションレッドのジュネッスです。技はほぼ姫矢のジュネッスと変わらず、ジュネッスキックを応用した一人ジョーカーエクストリームなどを自力で学習しています。


33 : 変わり者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:23:56 FKsPOkkk0

【冴島鋼牙@牙狼─GARO─】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)
[装備]:魔戒剣、魔導火のライター、魔導輪ザルバ
[道具]:支給品一式×2(食料一食分消費)、ランダム支給品1〜3、村雨のランダム支給品0〜1個
[思考]
基本:護りし者としての使命を果たす
1:みんなの所に戻る
2:首輪とホラーに対し、疑問を抱く。
3:加頭を倒し、殺し合いを終わらせ、生還する
4:良牙、一条、つぼみとはまたいずれ会いたい
5:未確認生命体であろうと人間として守る
[備考]
※参戦時期は最終回後(SP、劇場版などを経験しているかは不明)。
※ズ・ゴオマ・グとゴ・ガドル・バの人間態と怪人態の外見を知りました。
※殺し合いの参加者は異世界から集められていると考えています。
※この殺し合いは、何らかの目的がある『儀式』の様なものだと推測しています。
※首輪には、参加者を弱体化させる制限をかける仕組みがあると知りました。
 また、首輪にはモラックスか或いはそれに類似したホラーが憑依しているのではないかと考えています
※零の参戦時期を知りました。
※主催陣営人物の所属組織が財団XとBADAN、砂漠の使徒であることを知りました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを全て知りました。
※つぼみ、一条、良牙と125話までの情報を交換し合いました。


【特記事項】
※美希と鋼牙が今後どう行動するかは不明です。
※警察署屋上の時空魔法陣はデンデンセンサー@仮面ライダーWが見張っています。
※相羽タカヤの遺体は、D−8エリアに埋められています。クリスタルも同じように埋められています。
※タカヤに寄生していたラダム虫は鋼牙に倒されました。






34 : 冒険者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:24:23 FKsPOkkk0



 ダークプリキュアは、鋼牙とのわずかばかりの交戦の後、森の中を彷徨い、一つの戦いの終わりを見つけた。
 キュアブロッサム、仮面ライダーエターナル、それから見た事もない戦士が共闘し、ある怪物──特徴から考えれば、おそらく血祭ドウコク──を吹き飛ばす瞬間だ。
 ダークプリキュアは、驚くほどに冷静にその終わりを見つめていた。

(キュアブロッサム、それに仮面ライダーエターナル……なぜ共闘している……?)

 エターナルとクウガの二人によるキックはあまりに強力であった。だが、どうしても疑問は沸いてしまう。
 キュアブロッサムはともかく、仮面ライダーエターナルは本来殺し合いに乗る者のはず──いや。
 仮面ライダーエターナルには、ダークプリキュア自身も変身したではないか。
 となると、このエターナルは、かつてダークプリキュアが会ったエターナルとは全くの別人という事もありえる。

(なるほど……)

 ダークプリキュアは、あの進化を見届けた。
 いずれ、パペティアーメモリを使う事になるかもしれない相手だ。強力な戦士を手ごまにして利用し、その力を利用して殺し合いの覇者となる。あの進化を引き出さなければならない。
 ダークプリキュアは、跳躍する。
 殺し合いの覇者となるために相応しい力を見せてやろうと、ダークプリキュアは、三人の前に姿を現した。

「ダークプリキュア……!」

 キュアブロッサムが、いきなり驚いたようにこちらを見つめる。
 クウガのビートチェイサーは動きを止め、エターナルもまた動きを止めた。

「久しぶりだな、キュアブロッサム」

 今、用があるのはキュアブロッサムではない。プリキュアは意図的に避けているが、利用する相手としてはこの上ないと知っている。
 また、エターナルでもない。エターナルの強さは知ったうえで、自分より格下の相手だと理解している。
 ダークプリキュアが問題としているのは、仮面ライダークウガ。
 クウガを操り、その力を引き出すのである。

「……あなたは」

 ブロッサムが、前に出る。エターナルが警戒する。クウガがマシンから降りる。
 相手は警戒した様子を見せているが、ダークプリキュアは決して、すぐには殺しに来る気はない。
 クウガの情報は、ダークプリキュアは警察署で得ていなかったのである。
 またプリキュアを利用してそこに溶け込み、パペティアーメモリでチームを崩壊させようとしていた。

「今は戦うつもりはない。少し話を聞かせてくれ」

 ダークプリキュアは、できる限り穏やかにそう言う。
 言葉の端々に刺々しさは隠せない。利用する相手なのだから、精一杯穏やかにやろうとしていたが、ダークプリキュア本来の性格は消し去れなかった。

「……つぼみ、こいつ一応敵なんだろ? 何か隠している装備があるかもしれねえ。ガイアメモリとか……」

 エターナルに図星をつかれる。
 エターナルはメモリを使う戦士だ。だから、ガイアメモリに反応したのか。まあ良いだろう。
 相手は所詮この人数。すぐに解散させればいいのだから、迂闊に嘘をつくよりは、ガイアメモリを見せた方がいい。

「……私が持っているのはこの二本のメモリだけだ。ただ、これをお前たちに預ける気はない。私にもこのメモリは必要なものだ……」

 ヒートメモリとパペティアーメモリ。二つのメモリを翳す。
 身体検査などをされたらそれこそ没収されてしまう。あらかじめメモリの存在を語っておいても問題ないだろう。キュアブロッサムは殺害対象ではないし、残る仮面ライダークウガとエターナルで潰し合わせるくらいならば、隙はできるだろう。
 警察署ではそんな事をする暇はなかったが、ここでは問題ないと判断した。


35 : 冒険者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:24:44 FKsPOkkk0

「……だが、それを君のもとに置いておくことは……」

 しかし。
 クウガがそう言いかけた途端、ダークプリキュアと三人の間に、突如として爆発が起こった。
 来客。何者かが、ここに現れ、彼らに挑戦状を叩き付けたのである。







 サイクロン号は走る。カブトムシの怪人を乗せてただ走る。
 ガドルは山を、下る。己の騎馬に手さえ添えず、両手で銃を構える。
 鋭敏な感覚は、眼前の敵を狙う。新たなるクウガへの挑戦状を送り付ける為に。
 敵の数メートル前。そこにこのガドルボウガンを当て、相手の動きを封じ、挑戦する。

「フンッ!!」

 ガドルボウガンの先から空気弾が放たれる。
 流鏑馬の如く、騎馬の上から放たれた射撃体の一撃は、彼らとダークプリキュアの間の地面へと落ちる。眼前で強烈な空気圧による地面の爆発が起こる。
 風向きにかかわらず正面に進む、超感覚で放たれた射撃。もはや百発百中のレベルだった。
 不意打ちする事もできるが、それは面白くない。あくまでこれは威嚇の射撃だ。相手の動きを封じ、こちらに注目させるための壁である。
 無論、そこにいる誰もが、動きを止めた。

「今度はなんだ、いったい……」

 エターナルが言う。
 その間にも、サイクロン号は山を走り、斜面を下る。ガドルは、そのサイクロン号のグリップを握って加速する。
 加速していくサイクロン号から、ガドルは飛び上がる。走行するサイクロン号は真っ直ぐに走っていき、急な斜面に耐え切れず、クラッシュする。側面を山の斜面に削らせながら、山を下り、荒地にサイクロン号が空しい音を立てて崩れていった。
 キュアブロッサムと仮面ライダーエターナル、仮面ライダークウガは、突如として後方から聞こえた音に振り向いた。ダークプリキュアなど、意に介す事もなかった。
 そこには、月光の下、山の真上から一体の怪物がムササビのように手を広げて落ちてくる姿があった。

 ドシン。

 重い音が鳴り、人は言葉を無くした。彼らの目の前、十メートルの距離。
 禿げた大地に現れた新たなる刺客──ゴ・ガドル・バ。
 その邪悪な瞳に、そこにいる全員は、圧された。
 今の着地で感じた敵の重量感、そして力強さ。登場だけで場を凍らせるほどの強敵。

「46号……だと!!」

 カブトムシの異形に、仮面ライダークウガは反応する。
 彼は見た事がある。未確認生命体第46号。五代が変身した仮面ライダークウガを、一度打ち負かした怪人だ。西多摩警察署で男性職員108名を惨殺した、堂々の悪魔である。一条もかつて、生身でこの怪物と戦った。
 神経断裂弾を何発も放ち、一度は息の根を止めたと思った。だが、それさえ、このグロンギの怪人には無意味であった。数分の昏睡に終わり、この怪物は生存した。別種のグロンギを何人も葬ったあの弾丸を、だ。
 おそらく、究極の闇を齎す者──ン・ダグバ・ゼバの次に強いグロンギである。

「……ゴレ ゾ ゾン バ デ ヨブ ザ キガラ!(俺をその名で呼ぶ貴様は!)」

 ガドルも、確信した。
 グロンギをこのように呼ぶのは、リントの戦士(警察)のみだ。
 ロンギ族は未確認生命体としてその通し番号をつけられている。
 しかし、一般人で有名なのはせいぜい2号と4号くらいのもので、46号まで殆ど暗記し、一目見てその名前で呼ぶ事ができるのは、クウガである五代雄介か、リントの戦士たちくらいのものだろう。
 正確にそのナンバーを記憶し、一目見ただけでそれを認識できる相手。ガドルの知る限りでは一人。そして、この男はおそらく、その一人──

「イチジョウ──」


36 : 冒険者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:25:11 FKsPOkkk0

 リントの戦士、一条薫だと、確信した。
 しかし、その名で呼ぶのはたった一度だった。一条ではない、目の前の敵は、クウガだ。
 古代にガドルを封印し、現代でガドルを一度屠ったゲゲルの邪魔者──しかし、ガドルがその殺し合いを楽しめる稀有な相手。
 クウガ。

「タタバエ クウガ!(戦え、クウガ)」

 クウガの眼前に、ガドルボウガンが突き付けられる。
 ガドルボウガンは、鋭い矢を向けながら、いつでも発射できる準備に取り掛かっているようだった。
 しかし、すぐに打とうとはしない。

「……おい、二人とも! こいつ……!」

 エターナルが、ガドルの様子に何か気づいたのか、戦慄した様子であった。
 そこまで言ったところで、唾液をごくりと一飲みした。

「何を言ってるのか、……全然わからねえ」
「もう、そんな事言ってボケてる場合ですか! この人、敵なんですよ!?」

 キュアブロッサムはずっこけそうになったが、エターナルのボケに真摯な顔で突っ込んだ。

「わかってるよ! ……コイツの闘気、ケタ違いだ。ありえねえほど強い……」

 エターナルも、ガドルが持つ闘気が今までの敵と桁違いである事を察知している。ただ、言語がわからないのがちょっと辛かっただけだ。
 今眼前にいるガドルが放っているのは、ドウコクさえも超える圧倒的なまでの闘気だ。コイツは、戦いだけに生きて、容赦なく敵の首をかく戦鬼なのである。
 乱馬や良牙の持つ闘気の数倍。そこには殺気も交じって、更に強い力を感じさせる。
 日本語さえ喋れれば、その闘気の源を聞きたいところだが、残念だ。彼は外人らしい。

「わかるか。……貴様には」
「……って日本語喋れるのかよ!!!!」

 思わず、今度はエターナルがずっこけそうになった。

「フン」

 ガドルは、憮然としていた。まあ、せめて一言、良牙の言葉に感嘆して、リントの言葉で返したのみだ。
 ガドルが持つ“闘気”に気が付いた相手は珍しい。
 そして、良牙の持つ闘気の強さにも、ガドルは気づいていた。いずれ戦ってみたい相手だ。生身で戦っても相当強いに違いない。
 しかし、今のガドルの目的はあくまでクウガだ。彼は後でいいだろう。
 ガドルボウガンは、一瞬だけエターナルの方に向けられたが、再びクウガの前に向けられた。

「今は貴様らに用はない。用があるのはクウガだ」

 ガドルの眼中には、既にエターナルやキュアブロッサム、ダークプリキュアはない。

「そうは行くかよ。……お前が俺の敵なら、俺自身の手で自分を守る。……仮面ライダーとして」
「おい……!」

 エターナルは、己の持つT2ゾーンメモリをその手に持った。
 良牙は、この敵と戦うのに、相応の力が必要であるのを確信している。この身ひとつで戦うのも良いが、それでは到底敵わない相手なのではないだろうか。
 乱馬──あいつなら、あるいは──そう思ったところで、やはりやめる。
 戦いを楽しむのも良いが、コイツに負けてしまったら、仲間の命だって危ない。そんな時に楽しい戦いなんかできるはずはない。
 今は、格闘じゃない。殺し合いなのだ。

 ──Zone!!──

 エターナルの腰にあるマキシマムスロットにゾーンメモリが装填された。

「おい、折角だからメモリ借りるぜ」

 ──Zone Maximum Drive!!──


37 : 冒険者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:25:41 FKsPOkkk0

 電子音とともに、その場にあるガイアメモリがゾーンメモリの力で全て良牙の元に集結する。マキシマムドライブは使用者の体力を大きく消費するが、良牙の並外れた体力を前には、さほど大きなものではない。
 連続使用をすればかなり大きな負担はかかるだろうが、NEVERを以て、「タフ」と言わしめたほどである。
 それに、ゾーンメモリの力は肉体的な動作を伴わず、肉体の負担は他のマキシマムドライブよりも小さい。
 ゾーンの力によって、クウガやキュアブロッサムの持つ、いくつもT2ガイアメモリがエターナルの元へと転送される。







 ダークプリキュアの手にあったT2ガイアメモリの一つ、パペティアーメモリや、デイパックの中に入れられていたはずのヒートメモリも──ゾーンメモリの力では集められる例外ではなかった。
 AtoZのT2ガイアメモリを全て集める事もできるのが本来のゾーンメモリのマキシマムドライブの力だが、制限によって、せいぜいその範囲は1エリア。敵の手からT2ガイアメモリを奪う事もできるが、知覚していないメモリは奪えない。
 怪しまれないために魅せたとはいえ、「知覚」はされてしまった。
 場合によっては、ここで勝者を見極め、勝者を操り、そのまま優勝に近づく気だっただろう。
 しかし、その野望は、思わぬ形で絶たれるのである。
 完全に隠しておけば、こうして敵の手に渡る事はなかったに違いない。

「くっ……! 何だと……!?」

 ダークプリキュアは、宙を飛んで自らの手から勝手に放たれていくガイアメモリを必死に両手で押さえつけようとしていた。これはパペティアーメモリだ。
 ヒートメモリは既にエターナルの元へと転送されている。
 しかし、このパペティアーメモリは渡すわけにはいかない。このメモリが勝利の鍵となるはずなのだ。ゆりの為、月影家の為の希望──ダークプリキュアにとって、パペティアーメモリはそれだけの価値のある物だった。

 だが──

「ぐあっ……!」

 メモリによる拒絶。ダークプリキュアの両手を、静電気のように弾くメモリ。
 パペティアーメモリは、エターナルの元へと転送されていく。
 目の前で、エターナルの手元にヒートメモリが、そしてパペティアーメモリが飛んでいく。

「くっ……何という事だ……!」

 希望が崩れ去り、これから己の身を使って、非効率な戦いを強いられる事を、ダークプリキュアは嘆いた。
 この戦いへの希望が絶たれるという事は、すなわち、月影一家もダークプリキュアも救いから遠ざかるという事であった。







 ゾーンのマキシマムドライブの力で、ウェザー、ルナ、メタル、ヒート、パペティアーの五つのメモリがエターナルの元に転送される。エターナルは、それを体中のマキシマムスロットではなく、手元に集めた。
 二十六本ものメモリのうち、良牙の手元に来たのは、この五本のみ。しかし、それで充分足りるほどであった。

「じゃあ、ちょっと貸してもらうぜ」

 五つ。ダークプリキュアのメモリもある。とにかく、その中から使えそうなメモリをエターナルは手に持った。
 真っ赤なメモリを握りしめる。

 ──Heat!!──
 ──Heat Maximum Drive!!──


38 : 冒険者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:26:01 FKsPOkkk0

 ヒートメモリをベルト脇のマキシマムスロットに装填し、エターナルの両腕の青い炎が紅蓮に燃える。
 ヒートメモリは熱き記憶を有するガイアメモリである。エターナルの攻撃に「熱」の力を付与する事ができるのだ。
 そして、両腕の青い炎が本当の炎に燃え盛る事になるのであった。このエネルギーを敵に叩き付ければ途方もないダメージを与える事ができるだろう。

「獅子灼熱咆哮弾!!」

 エターナルは、ヒートメモリのエネルギーをそのまま、獅子咆哮弾のエネルギーに組み合わせ、敵に向けて放つ。灼熱の獅子は、鬣を燃やしながら、ガドルの全身を噛み千切ろうと駆けだす。
 ガイアメモリの能力は伊達ではない。そのまま、ガドルの全身を焼き尽くす。

「グァッ……」

 ガドルは小さく呻きながらも、己の身を剛力体へと変化させる事で、その場で耐え抜く。膨大なエネルギーがガドルの元に流れ込んだが、全て剛力体の強固な肉体が弾き、ガドルのダメージは最低限に抑えられた。

「見ろよ、効いてるじゃねえか!」

 良牙の中に、少しの慢心が生まれる。
 つぼみや一条もまた、エターナルの力を知っていたから、ガドルに打ち勝つだけの力があるのではないかと期待していた。
 楽観視には違いないが、それも納得するだけの強さがある。エターナルレクイエム以外の技が使えるうえに、それが五種類。心強いというほかない。

「次はコイツだ!」

 続けて、エターナルはウェザーメモリを取り出した。
 ガドルが自分の想像以上にタフである事を理解し、連撃を試みたのだ。大丈夫、マキシマムドライブの負担などさほど大きなものではない。
 ガドルが反撃する間は与えない。銀のメモリを手にする。

 ──Weather!!──
 ──Weather Maximum Drive!!──

 ウェザーメモリをスロットに挿し込むと、音声とともにガドルの頭上に暗雲が立ちこみ、豪雨が降り注ぐ。
 ウェザーメモリは天気を操る。そのために生まれた暗雲だ。
 山の天気は変わりやすいとはよく言ったものだが、ガドルの頭上にだけに生まれた雲は、風と雨を巻き起こす。一人の人間の上に、大豪雨が生まれた。

「キュグキョブ ン ジャリ……!(究極の闇……!)」

 何かを思い出したのか、ガドルは頭上のどす黒い雲を見上げた。
 それは、そう──究極の闇が生み出す力にそっくりだ。
 プラズマを操り、炎や黒雲、豪雨を自在に生み出す。その異常ともいえるパワーは、ガドルも旧知である。
 敵がそれに値する力を持っている事に、驚かざるを得ない。
 もしや、究極を継ぐ者ではないかと、ガドルは一瞬、思った。

「だから、日本語話せるなら日本語話せよおおおおおおりゃあああああああ!!!」

 エターナルは、そんなガドルに飛びかかり、雷を帯びた右の拳で叩き付ける。
 電撃の右腕は、ガドルの胸部に到達し、更に強い雷のエネルギーでショートする。
 ガドルの全身を濡らしている雨水から、その雷のパワーは両足両手の先まで伝っていった。それはガドルの全身を発光させ、全身からピリピリと音を立たせる。
 夜だというのに、彼の周囲数メートルはまるで快晴の昼間のように明るかった。

「ウグゥゥゥゥッ!!」

 その一撃を胸で受け止めながら、ガドルは獣のように慟哭する。
 しかし、両手を広げ、宙を掬うように拳を握って大の字になったガドルは、まるで眼前のエネルギーをその全身で受けんばかりであった。
 エターナルの攻撃を好機と思ってか、ガドルは内心で笑った。

「フハハ……」


39 : 冒険者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:26:45 FKsPOkkk0

 笑いは、その瞬間、声となって外に出た。
 笑み──?
 なぜ、この瞬間、敵は笑ったのだろう。良牙も、つぼみも、疑問に思ったに違いない。
 そして、その疑問を一瞬だけ頭に浮かべた後、一条は答えを出してしまった──。
 己が忘れていた事。

「……そうか! 駄目だ! 響君……!」

 そう、グロンギの敵に雷の技は禁じ手だ。
 エターナルの強さを前に、勝利をおおよそ確信してしまっていたのが敗因だ。
 電撃。雷。電気。──それは、彼らにとって、一瞬のダメージに過ぎない。
 五代が何度も受けた電気ショック、そしてガドルがそれに対抗するべく体に備えた武器。

「そいつは、クウガと同じ霊石を体に秘めている……電気の力を吸収して強くなるんだ!!」

 そう、グロンギの持つ霊石はクウガの持つ者と酷似しているというデータが既に椿の手によって明かされている。
 クウガの力は、霊石が電気ショックを受けた事によって強化されたのである。
 それならば──まさか、敵も同じではないのか。
 46号は、ライジングフォームのように電撃を使って戦う事ができた。……まさか、敵はそれを知っていたのではないだろうか。

「何……!?」

 エターナルは、その事について知らなかった。
 ゆえに、雷を使って、敵に強化のための架け橋を作り出してしまった。

「ウグルァァァァァァァッ!!!」

 しかし、それを知ったところでもう遅い。ガドルは、己の力が更に強い物となる喜びに身をゆだね、その力のごく一部を使って、エターナルを弾き返した。
 咆哮をとともに、膨大なエネルギーが周囲を吹き飛ばす。

「ウグルアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァッ!!!!」

 エターナルの姿が数メートル遠くへと弾かれ、木に背をぶつけて、落ちた。
 そして、ガドルの持つその余りのエネルギーに耐えられなくなったのか、エターナルの変身が解かれた。
 地面に落ちた良牙のもとにキュアブロッサムが駆けよる。
 咆哮が鳴りやむ。

「……手遅れか!」
「くそ……!」

 良牙は、起き上がれなくなった。体に残留していたダメージ、マキシマムドライブの負担、今の攻撃による衝撃、──そして何より、この圧倒的な威圧感と、己の失態。それが、良牙の体を起こす力を打ち消すようだった。
 ……自分の攻撃が、敵にダメージを与えるどころか強化してしまったというのか。
 何度とないフォトンランサーファランクスシフトによって強化された体が、更にウェザーのマキシマムドライブの力でガドルのベルトに力を注いだ。その結果が、ガドルの更なるパワーアップ。
 一条自身が禁忌の技を止めなかった責任であり、これまでフェイトや良牙が安易に電撃技をガドルに飲み込ませてしまった応酬でもある。
 ライジングフォームを超えた電撃体。それを超える力があるとすれば──

「くっ……!」

 良牙の顔が曇る。
 キュアブロッサムが固唾を飲む。
 仮面ライダークウガが、顔を顰める。
 ダークプリキュアさえ、絶望する。


40 : 冒険者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:27:09 FKsPOkkk0



「……ラタ チバヅギタ ビ キュグキョグ(また究極に近づいた)」



 ゴ・ガドル・バの胸部は発光し、瞳の色が黒く変色する。
 赤い瞳は、クウガのマイティフォームに対応する格闘体。
 青い瞳は、クウガのドラゴンフォームに対応する俊敏体。
 碧の瞳は、クウガのペガサスフォームに対応する射撃体。
 紫の瞳は、クウガのタイタンフォームに対応する剛力体。
 金の瞳は、クウガのライジングフォームに対応する電撃体。
 ならば、黒の瞳は──



「ゴゼパ! ザバギ ン バシグラ! ゴ・ガドル・バ────キョグデンタギ ザ!」
(俺は! 破壊のカリスマ! ゴ・ガドル・バ────驚天体だ!)



 驚天動地──まさしくその言葉に相応しかった。
 アメイジングマイティフォームに相当する新たなる力──ガドル・驚天体の全身から雷が鳴り響いた。







 ダークプリキュアの眼前で、進化しているガドルの姿。
 その覇気を、ダークプリキュアは全身で感じていた。
 足が震える。心臓が高鳴る。唾を飲む。
 強者──いや、王者。
 現れただけで風が舞い、砂埃が波打つほどの圧倒的なエネルギーがダークプリキュアを襲う。

(くっ……勝てるはずがない……!)

 あれは強敵という次元ではない。
 いや、あれはもう、これまでダークプリキュアがこれまで使ってきたような意味の「敵」じゃない。
 対等に戦えるような相手ではないのだ。あれは、いわば「狩人」。戦いという土俵にさえ立てないような相手である。

(最後の希望は、絶たれた……! 奴の勝利だ……!)

 パペティアーメモリも奪われた今、ダークプリキュアは戦略的撤退を試みるしかなかったのである。
 ダークプリキュアはもう、撤退するしかない。クウガにしか興味のないガドルは、ダークプリキュアが背を向けて逃げている事に気づいても、追う様子はなかった。
 ……そして、気づけば──ダークプリキュアは、元いた場所へと帰るべく、慌てて森を駆けていた。キュアブロッサムたちを監視している場合ではない。
 更なる闇。これまでの比ではない、最低最悪の闇。
 ダークプリキュアもその誕生の恐怖を全身で感じていた。

(エターナルめ、余計な事をしてくれた……!)

 パペティアーメモリの効力さえ知っていれば、エターナルがそれを使って敵を操り戦う事だってできたかもしれない。そもそも、ゾーンのマキシマムドライブを使いさえしなければ、ダークプリキュア自身が戦っていただろう。

(また奴のせいで、クソ……! どうやって奴を倒せばいい……! 今の私に……!)

 あのガドルの強化は、ダークプリキュアの誇りや自信さえも打ち破るほどだ。
 事実、今のダークプリキュアはどんな手を使ってでも、優勝し、この殺し合いの頂点に立つために奮闘しようとしていたから、正攻法で勝てない相手を操り殺すという手段も使おうとしていた。
 ただ、その正攻法で勝てない相手が存在しているのは、あくまで自分の体が弱っているからだ。万全ならば、キュアームーンライトがいない今、正攻法で勝ち進められるとダークプリキュア自身も思っていた。

 ……が。

 ガドルのオーラを見ればわかる。あんな圧倒的なパワーを有した相手は、少なくともダークプリキュアの中では、初めてだ。
 彼が倒せるか? ──ダークプリキュアが、万全だったとして。
 否。それは、おそらく確実。そして、倒す手段──いや、屈服させる手段だったのが、パペティアーメモリだ。確かに強い相手だが、パペティアーの力でガドルを使えば殺し合いに優勝する事も難しくなかっただろう。


41 : 冒険者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:27:32 FKsPOkkk0
 その希望も打ち砕かれた。

「ダークプリキュア!」

 その逃亡が始まってすぐの段階で、ダークプリキュアの名前が呼ばれた。
 何? ダークプリキュアは、顔を上げた。顔を上げた……という事は、自分自身が今、全く俯いた状態だった事を現している。まさか、自分が俯いているとは思わなかった。
 目の前に、知っている顔があった。それから、知らない顔も一つ。
 後方にも敵。前方にも敵。どうやら、別々の敵に挟み込まれたらしい。

「……キュアサンシャイン!」

 ダークプリキュアの目の前に、現れたのは、キュアサンシャインだ。
 警察署で分かれたはずだったが、ここで再び追ってきたらしい。
 キュアサンシャインが追ってくるのは当然として、もう一人の戦士が何者なのか、ダークプリキュアにはわからなかったが、おそらくその「半分半分に分かれた戦士」というデータから、それが仮面ライダーダブル──左翔太郎だろうと察した。
 警察署で得たデータもところどころ、役には立つようだ。

「見つけたよ、ダークプリキュア」
「……その瞳、私に挑もうという目だな」
「そうだね。当たりだよ。僕は君に挑ませてもらう」

 キュアサンシャインは、強がるように笑った。
 しかしながら、ダークプリキュアの目は、そんなキュアサンシャインに応えようとはしなかった。脱力したように、その体を動かしている。

「……キュアサンシャイン。無駄だ。私たちはもう、この殺し合いを勝つ事はできない」

 ダークプリキュアは、辛い表情で言った。見たところ、死への絶望という感じではなかった。ダークプリキュアの体そのものが度重なる戦闘でかなり弱っている事も確かだが、あの自信に満ちたダークプリキュアが、しょげている。
 確かに、向こうから、先ほど光が挙がり、なんだかわからない奇妙な恐ろしさがキュアサンシャインたちを襲った一瞬があった。

「……何だって?」

 仮面ライダーダブルが言った。ダークプリキュアは、かなり弱気だ。
 敵ながら、もう戦意を喪失しているように見える。ダブルには、ダークプリキュアが希望をなくし、怯えているように見えた。

「お前たちも知っているだろう? 奴はカブトムシの怪人、ゴ・ガドル・バだ……。奴が、新たなる力を得た。もう希望も何もない……! 終わりだ……! ゆりも、もう……!」

 敵に情報をばらまくのも、もう構わない。今は、とにかく一刻も早くガドルから逃げたい気持ちでいっぱいだ。ダークプリキュアに勝機などない。
 ゆりももう、蘇らないと考えて良い。……いや、それどころか、ダークプリキュアの命ももう、危ういといったところか。
 ガドルは強すぎる。それがよくわかった。奴は、キュアムーンライトよりもはるかに強い力を持っている。あそこにいるキュアブロッサムや仮面ライダーエターナルももう、死んでいるかもしれない。

「ゆりさん……?」

 ふと、キュアサンシャインは、そうオウム返しした後に、疑問に思った。
 ダークプリキュアは、月影ゆりを、「ゆり」と呼んだ。しかし、彼女は、月影ゆりを「キュアムーンライト」として見ている。彼女が、そんな事を言うはずがない。
 彼女がそう呼んだからには、わけがある。

「ガドル……!? 最悪じゃねえか!」

 ダブルが言った。ガドルとは面識がある。フェイトやユーノ、霧彦を葬ったカブトムシの怪人だ。ダグバに並ぶ最低最悪の敵だと、翔太郎は言える。そして、そいつが更にパワーアップしたと……そんな最悪の情報が、翔太郎の耳に入ってきた。

『彼女の言う通り、無理だ、翔太郎……。出直そう……。きっと、今の僕たちでは彼には勝てない』

 フィリップも、ダブルドライバーの向こうで、絶望を感じている事だろう。ガドルの強さは、フィリップもよく知っている。
 それが更なる力を得た。この距離で悪寒を感じるほどだ。
 だが、しかし。翔太郎は、訊く。


42 : 冒険者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:27:49 FKsPOkkk0

「おい、ダークプリキュア。ガドルの他には、誰か向こうにいるのか?」
「……三人いる。キュアブロッサムと、仮面ライダーエターナルと、それからもう一人だ。……全員、ガドルと戦っている」

 自暴自棄に近いが、持っている情報は明かしても不都合がないので、正直にダブルに明かした。ダブルもおそらく、エターナルを知っている事だろうし、ブロッサムとサンシャインは知り合いだ。

「エターナル……?」

 エターナルというと、大道克己だろうか──翔太郎とフィリップは思う。しかし、彼は死んでいる。
 ロストドライバーを使って、別の変身者がエターナルに変身しているのだろうか。

「ブロッサムが、いるの……?」
「ああ。……だが、もうやられているかもしれないな……」

 花咲つぼみは、月影ゆりの友人だ。ダークプリキュアとしても、生きていて欲しい。だから、プリキュアを殺すのは意図的に避けたのである。
 プリキュアの奇跡が、ゆりを蘇らせる事ができるのなら、それをゆりに分けてほしい。
 しかしながら、ガドルに敗北すれば、そこにあるのは死だ。奇跡など起こす暇もない。

「……チッ、何だか知らねえが、行くぞフィリップ。あのマッチョメンをぶっ倒す」

 この翔太郎の言葉には、流石にフィリップも絶句する。
 ダークプリキュアもまた、同じだった。だが、ダークプリキュアは、絶句しても尚、ダブルに悪態をついた。

「……やめておけ。奴には勝てん。知り合いがいるのかもしれないが、諦めるのが得策だ」

 ガドルを前にしたダークプリキュアの恐怖たるや、生半可なものではなかった。
 しかし、そんな言葉がダブルの、いや、翔太郎の耳を通る事はなかった。

「……おい、ダークプリキュア。一つ言っておく。俺は知り合いがいるから行くんじゃない。俺たちは仮面ライダーだ! 泣いている人がいるなら、絶対に助ける。困ってる人がいるなら、手を差し伸べる。危機が迫るのならこの身でその危機を振り払う……それが、俺たちだ。たとえ負けるとしても、俺はそこにいる誰かを救うための努力をする!」

 フェイトやユーノのような犠牲をこれ以上出すわけにはいかない。
 キュアブロッサムや、新しい仮面ライダーエターナルの変身者も助けるべきだと、翔太郎も思っているところだった。

「……何だと?」

 ダークプリキュアは、ダブルの一言に、苛立ちさえ覚えた。
 ダブルが、こうして正義の味方のような事を解いた時、それがダークプリキュアの沸点となった。……エターナルやスーパー1のような仮面ライダーと出会い、その度に感じていたストレスが、どこかにあった。
 この時は、自暴自棄で何を言うのも嫌だった心が、解き放たれた。

「ゆりを殺したのも、私から希望を奪ったのも、貴様ら仮面ライダーだ!! 仮面ライダーのために、私の……私の、ゆりはっ!!」

 ゆりを殺し、ダークプリキュアを一度でも悲しませ、そして──その望みがあるうちならまだしも、ゆりの命を諦めた今──仮面ライダーにしか、その怒りをぶつける矛先はなかった。それはいわゆる、八つ当たりに違いなかった。
 キュアサンシャインが黙って、ダークプリキュアの言葉を飲み込んだ。

「…………お前が何を言おうが、俺は行く。そして、そいつがどんな奴だろうが、俺は俺の仮面ライダーを貫く。ただ……ダークプリキュア、そいつはきっと……仮面ライダーじゃないし、今のお前にもプリキュアの名前を冠する資格はねえ」
『ぼくからも一つ。君が殺した人間の家族もまた、君と同じ苦しみを抱えた事──君の罪は重いという事を伝えておこう。そこで絶望して立ち止まるのなら、俯いて自分の罪を数えているといい』

 仮面ライダーダブルにとって、ダークプリキュアはただここで出会った『明日を諦めた』そんな、死人のような悪人にすぎない。
 その言葉は耳を通さなかった。

「じゃ、俺は行くぜ。サンシャイン。……お前は、お前のやる事を果たしていいぜ。コイツは任せた。その代わり、ブロッサムの事は俺に任せろ」


43 : 冒険者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:28:06 FKsPOkkk0
『結局行く事になるのか……、まあ、仕方ないか。どうせ行くと思っていたよ。僕も仮面ライダーだ。最後まで付き合うよ、翔太郎』

 仮面ライダーダブルは、それだけ言うと背を向けて、山の真上に向かって駆け出した。
 厳しい一言だったが、アインハルトや源太を殺したのがダークプリキュアだと、確信しているダブル──特に翔太郎にとっては、切実な怒りが込められた一言だった。
 それでも尚、ダークプリキュアの罪を洗い流すか、それとも裁くのかは──その場に残したキュアサンシャイン──明堂院いつきに任せる事にした。

「くっ……」

 ダークプリキュアに、ダブルの背に向けた反論はない。
 だが、それでも胸の内にわだかまりはあった。
 ダークプリキュアは、砂漠の使徒だ。「他者を尊重する」という事を習っていない。自分勝手に他人を巻き込み、自分の好きなようにする。多少、相手の感情を理解できても、それはそれ。自分が全てである。
 ゆえに、アインハルトや源太の肉親などの話に共感する事もない。最初から、他者に感情移入する事などプログラムされずに生まれた生命なのだ。
 むしろ、アインハルトや源太は羨ましい。おそらく、二人には、生まれた時から家族がいるのだから。ダークプリキュアには、そんな物はなかった。普通の暮らしなどなかった。サバーク博士の命令で、キュアムーンライトを倒すために戦う。それだけが目的だった。

 しかし。

 今は時折、バグのように生まれる、命がなくなる事への不快感を払拭できなかった。
 ゆりが死んだ。でも、ゆりは、生き返らせる事ができる。だから、その生命の停止を一時は悲しんだが、やがて、その蘇生を夢見るようになってからは、割り切れた。一時的な生命の中断だと。
 えりかも死んだ。ゆりの友達らしい。もしかしたら、生き返らせる事ができるかもしれない。できなければ、それはそれでいい。ゆりが生き返れば、ダークプリキュアは「家族」を得られる。
 源太が死んだ。これは殺した。テンションが高く、妙に張りきった声の男が、もう喋らなくなり、海に消えていくのを見た。死ぬかもしれない体で立ち向かおうとする源太の姿に、罪悪感さえ、感じた。

「……ダークプリキュア。君はもしかして、ゆりさんを生き返らせるために……?」

 キュアサンシャインが、少しばかり感情を緩めた声で囁いた。優しいような、しかし怒っているような。感情が読み取れないからこそ、内面で何を思っているかがわかりにくい。
 ダークプリキュアは、答えなかった。
 答えなかったが、すぐに口を開いて、実質的な回答とも取れる言葉を、口に出した。

「……それももう終わりだ。何もかも。……私には、できなかった」
「……」
「戦わなくてもわかる。奴には勝てない。……もう私はボロボロだ。ただでさえ勝てそうにない相手に、立ち向かう事なんてできるはずがない。私にとって、希望だったガイアメモリも奪われた……」

 ダークプリキュアの立てた計画は狂った。
 キュアサンシャインは、ガイアメモリという単語を聞いて、フィリップの推理を思い出した。
 あの推理は正しかったのだ。ダークプリキュアは、ガイアメモリを使って、この殺し合いを勝ち残ろうとしていた。

「警察署でみんなを襲ったのも、君なの……?」
「……」

 ダークプリキュアは、もはやどうにでもなれという気分であった。答える気はなかったが、きっとキュアサンシャインはその態度で察したに違いない。

「……あなたは私の友達の命を、奪ったんだ。……私は……とても悲しかったよ。許せない」

 ダークプリキュアにとって、それは知った事ではないが、改めてその知り合いから言われると、何も言えなかった。
 ダークプリキュアが殺した人間にも、友はいた。目の前のプリキュアは、その死に悲しんでいるらしい。……ダークプリキュアが、ゆりの死に際に抱いたような感情だろうか。
 全く見知らぬ人間が抱く分には、ダークプリキュアも不快感は抱かなかったかもしれない。しかしながら、こうしてゆりの仲間が同じ感情を抱いているのは、不快感があった。

「……だけど」

 キュアサンシャインは拳を握った。


44 : 冒険者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:28:39 FKsPOkkk0

「私の友達の命を奪ってまで、あなたはゆりさんの命を蘇らせようとした。……それなのに、こんな形で諦めてしまう事が……、それが、私にはもっと許せない! それじゃあ、死んだ二人は何のために死んだの!? あなたのやっている事は間違っているけど、それさえ諦めるのなら……あなたは二人の死さえ、こんな形で無駄にする気だったの……!? それが、……許せないよ!!」

 二人。三人殺したはずのダークプリキュアは、その言葉に少しばかり違和感を感じたが、それどころではなかった。

「あなたは、誰かのために殺し合いに乗った。それは許されない事だよ。でも……勝てない相手がいるからって、人を殺してまでやろうとした事を放棄していいの!? これまでのあなたの行いだって、正しくはない。絶対に間違ってる! ……それでも、あなたがした事は……」

 感情的になったキュアサンシャインの言葉が、一度途切れる。
 キュアサンシャインは、怒気の混じった声を、一度後ろに下げた。

 そして、深く呼吸する。
 一度、心臓を落ちつけた後、あふれ出る感情を、別の形でダークプリキュアにぶつける事にした。

「……いや、言葉で教える事はできないかもしれない。戦おう、ダークプリキュア。
 私はあなたを止める。あなたが勝手に諦めて止まるんじゃない。
 ……僕は君を倒す。既に倒れている君じゃない。
 私はあなたを救う。でもそれは、救いようがないあなたじゃない。
 ……僕は希望を失った君を止めるんじゃない。君の持つ、間違った希望を止めるんだ!!」

 キュアサンシャインは、ダークプリキュアのしょげた瞳を睨んだ。
 その生気のない瞳に、常に自信と余裕を持って戦うダークプリキュアの力の片鱗はない。普段はあの姿が恐ろしく、人々を脅かしていた。それが今、こんな形で奪われていた。
 しかし、それが今、キュアサンシャインには許せないのはなぜだろう。
 アインハルトの命や源太の命を犠牲にするほど、ゆりの命を大事に思っていたなら、なぜこんな所で諦める?
 ここにあるのは、ダークプリキュアの本当の心じゃない。偽りの心をぶつけ合ったところで、本当に他人の心を救う事なんてできるはずがない。

「ダークプリキュア、……このキュアサンシャインが照らすのは、敵に怯えて、自分の信念を曲げるような心じゃない!!」

 ダークプリキュアは、屍のようになっていた瞳を、キュアサンシャインに向けた。
 その瞳は、キュアサンシャインを睨んでいた。
 確かに、キュアサンシャインを睨んでいた。

「……面白い」

 「面白い」──まだ、そんな言葉が出る余地が己の中にあった事に、ダークプリキュアは驚いたが、すぐに納得した。
 いつもの癖で言葉が出たのかと思ったが、どうやら違うらしい。
 何だか、目の前の相手に無性に腹が立った。
 それだけだ。
 それだけだが、ガドルに怯える心よりも強い感情が、今ダークプリキュアの中に上書きされたようだった。

「今更私を救うなどと……!」

 ダークプリキュアはここまで、三人の命を殺めている。
 高町ヴィヴィオ、アインハルト・ストラトス、梅盛源太──この人数の殺害を行ったダークプリキュアだ。よもや救いようがないと、ダークプリキュア自身も思っていた。
 しかしながら、そんなダークプリキュアに対して、今もなお──その罪を知りながら、救おうとする人間がいる。

 自分が犯した罪を理解し始めているからこそ、自分が許せず、ダークプリキュアを許そうとする敵が許せず。感情は複雑になっていく。
 「父性の獲得」、「プリキュアの打倒」、「アイデンティティの確保」──それしかない単調だった脳に、次々と書き込まれていった感情が、キュアサンシャインを前に、自分でも理解できないほどに湧き上がる。
 殺し合いに乗る。それでいい。それがダークプリキュアが望んだ生き方だ。

 ──プリキュアを倒す事こそ、元はといえばダークプリキュアの原点だ。かつて、確かこの辺りのエリアでキュアブロッサムと戦った時も、それを求めたのかもしれない。


45 : 冒険者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:29:07 FKsPOkkk0
 キュアサンシャインを倒す──そのための本能が疼いているのである。これが彼女の持つ確かな本能。

「貴様に私を倒す事ができるか? キュアサンシャイン……」
「……私は勝つ! 勝って、君の名前を呼ぶよ、ダークプリキュア」
「名前とは、正しくこの世に生まれた者にだけ与えられる。人造生命の私は言わば、花を枯らす雑草のようなモノ……。私に名前などない! ダークプリキュアで充分だ!」

 名前──それが当然のようにそこに在る自分。それを誇りに思うのなら、ダークプリキュアにも、分け与えなければならない。
 本当の名前は、ダークプリキュアにも必要なのだ。

『それに……闇のプリキュアなんていう哀しい呼び名で呼ばないでちゃんと名前で呼んでください』

 高町なのはの──いつきより、遥か年下の少女の言葉を、キュアサンシャインはよく覚えている。彼女は死んでしまったが、彼女が求めた解答。それは、ダークプリキュアの救済だ。
 源太も、アインハルトもまた、生きていたなら……己の命を賭けて、ダークプリキュアを救おうとしただろう。源太は誰とでも仲良くなろうとする優しい人だ。アインハルトはあのなのはの友達なのだ。
 むしろ、彼女を許さずに救う事こそ、死んだ二人への侮辱。──そうなのだと、感じる。
 ダークプリキュアを生かし、この広い世界で──あるいは、光のプリキュアとして罪を償わせる事こそ、ダークプリキュアに必要な罰なのだ。
 罪は償える。キュアパッションだって、かつては敵だったのだ。

 名前がない孤独から、ダークプリキュアを解放しよう。
 なのはが教えてくれた事を、いつきが果たそう。

「さあ、始めよう……ダークプリキュア」

 キュアサンシャインが、ダークプリキュアを見て構えた。今すぐにでも目の前の敵に向けて駆けだす準備ができているようだった。
 ……しかし、ダークプリキュアはそんなキュアサンシャインの姿に物足りなささえ感じた。これではダメだ。これでは、戦いは始まらない。
 仕方がないので、一言言ってやる事にした。

「まだだ。……開始の合図がない。お前たちプリキュアは、己の名前を名乗ってから戦うんだろう?」

 それが開始の合図とは考えなかったが、いや、考えてみれば確かにそうだ。
 ダークプリキュアも面白い事を言う。

「おかしい事言うね、ダークプリキュア……。でも、確かに、必要だよね」

 キュアサンシャインは、初めて変身した時のポーズを思い出す。

「……陽の光浴びる一輪の花! キュアサンシャイン! またの名を、私立明堂学園生徒会長! 明堂院いつき! ダークプリキュア……あなたの心の闇、私の光で照らしてみせる!」

 キュアサンシャインの心も、明堂院いつきの心もひとつ。
 ダークプリキュアを救い────名前を、呼ぶ。そのために。







 目の前には、驚天体となったガドルがいる。尚、体に火花を散らして、しかしそれに動じないガドルの姿と、恐怖さえ感じるほどの怪物的なオーラに、そこにいる三人は息を飲んだ。
 最初に口を開いたのは、クウガ──一条薫だった。

「行け、二人とも」

 彼は、ゴ・ガドル・バを前に、どことなく冷淡な声でそう呟いた。
 否、冷淡というより、これからの戦いがどんなに過酷なものかを理解し、その恐怖をかみ殺しているような声だったのだろう。
 それが乾いて聞こえるのは仕方がない。

「ダークプリキュアはもう逃げた。彼女の判断は賢明だ。君たちも逃げた方がいい」


46 : 冒険者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:29:27 FKsPOkkk0
 彼の口からそんな言葉が出てくると思わなかった良牙とキュアブロッサムは、少し言葉を失ったが、言葉の意味を理解したところで、クウガに言い返した。

「行けって……オイ、そんなわけにもいくかよ」
「そうですよ! だって、今目の前にいる敵は……」

 良牙とキュアブロッサムは、自分も戦おうと構えている。
 しかし、クウガはそれぞれ二人の様子をちゃんと見ていた。キュアブロッサムはまだしも、変身が解除されるほどのダメージを負った良牙が戦えるだろうか。そんなはずはない。
 良牙は今、戦えるような状態ではないはずだ。

「この怪物は俺が倒す。……この怪物の目的はこの俺、そして五代が宿したこの力だ」

 良牙に戦わせるわけにはいかない。先ほどもそうだが、良牙がいくらタフネスとはいえ、一日に何戦もすれば当然だが疲労するし、ここしばらくで彼にかかった負担は小さなものではないだろう。
 それでも、良牙にも意地はある。いや、彼も早乙女乱馬と同じか。──意地だけで生きているような男だった。

「待てよ……。もしかして、俺がもう戦えないと思っていやがるのか……? 俺はまだ、コイツとろくに戦ってすらいないんだぜ……」

 良牙は、屍のように立ち上がり、エターナルメモリを取り出した。
 変身をしていないから戦えないのだと思ったのだろう。──良牙は、そう思って、それを鳴らす。姿を変え、装甲に身を包めば、きっと一条も認めてくれる。
 より強い力を。
 より強いエターナルを。望んで、彼は電子音を鳴らす。

──Eternal!!──

「変身!」

──Eternal!!──

 再び、良牙は仮面ライダーエターナルに変身するが、その息は切れ切れだった。

「見ろよ……変身してやったぜ」

 前のめりに立ちながら、ほとんど辛い全身を起こすようなものだった。その姿は、哀れとでも言うべきか。
 意地に対して、体の力が伴っていないようである。

「……駄目だ。今の君では、コイツには勝てない」
「こんな痛み……少し待てば消えるさ」
「……その少しの暇をくれる相手じゃない」

 こう言っている間にも、クウガは相手の瞳を睨んでいた。敵は、今は一応、待っている。
 ガドルの目的はあくまで、クウガ。他はオマケだが、あまり待たせれば、良牙も邪魔者の一人として殺すだろう。おそらくは、あくまでクウガのみを敵とするガドルならば、
 今の目的がクウガだからといって、それを倒したらどうなる……?
 勿論、死ぬつもりはないが、良牙は休ませるべきだし、この怪物との戦いには極力、他の人間を巻き込みたくなかった。

「……こんな奴を生み出したのは我々の世界の責任だ。同じ世界の人間として、決着をつける時が来たらしい」

 グロンギは、おそらく──遥か昔の人間たちだ。
 その人体構造が人間と全く同じという事は、一条自身もよく知っている。
 他の世界にグロンギがいるか否かは知らない。が、一条の世界には生まれてしまった。
 霊石が人の心を惑わせ、グロンギと呼ばれる怪物が野に放たれてしまったのだ。

 霊石の事を知っていた一条が、他所の世界の良牙に対して説明を怠ったがゆえに、ガドルは更なる力を得た。良牙の責任ではない。
 責任を果たすべきは、その世界の住人なのである。

「躊躇う必要はない。過ちを犯した者を見つけ出し、人を守るのが俺たち警察の仕事だ。これは我々の世界のが生み出した敵と、その世界の警察と仮面ライダーとの戦いだ。部外者の君たちを関わらせるわけにはいかない。……それに、仮面ライダークウガは必ず勝つ!」

 響良牙、花咲つぼみ。この二人には、逃げてもらう。その意思は、頑なだ。
 一条薫にもまた、強い意地と、意思がある。たとえ勝てないとしても、勝てるように見せる程度の迫力で、良牙たちを納得させるばかりの意地は、その胸にある。
 そして──


47 : 冒険者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:29:46 FKsPOkkk0

「五代も、俺も、こんな奴のために、これ以上誰かの笑顔が奪われるのを見たくない! この気持ちは同じだ! だから、あいつは……あいつは一人で戦い続けた。だが、今は一人じゃない……!」

 ガドルに殺害された西多摩警察署の108人も、ここでガドルと戦った戦士たちも、きっと辛かっただろう、痛かっただろう、怖かっただろう。彼らは笑顔を奪われたに違いない。家族がある者もいた。その家族も泣いている。
 だが、その苦しみをこれ以上、誰かに味あわせるわけにはいかない。味あわせたくない。
 突如として世界に現れた理不尽──そんなグロンギたちのために、これ以上誰かの笑顔を奪わせるわけにはいかないのだ。
 そして、警察の人間として、一条薫はこのガドルを仕留めなければならない。
 たとえ、それが暴力であったとしても。
 この拳が、人を殴り、人の命を殺めるとしても──。

 クウガは、ガドルの目を強く睨んだ。

「超変身!」

 クウガは黒の金のクウガ──アメイジングマイティフォームへと再び姿を変えた。今できる最高の姿だ。
 五代によると、確か強化されたアマダムは、「ずっと金でいける」という事だった。
 ならば、この形態にも、まだしばらく変身できてもおかしくはないはずだ。全て五代が受けた電気のお蔭である。一条自身は、まだ何もしていない。

「……アンオキ ン グガタ バ(あの時の姿か)」

 ガドルがかつて、戦い、朽ち果てた時の姿。
 黒の金。このクウガには、ガドルも借りがあった。
 命を奪われ、敗北という屈辱を感じたあの時の記憶。それを思えば、ガドルが最も戦いたい形態はこの姿なのだと言える。

「二人とも……さっきも言ったように、俺、いや……俺とクウガは勝つさ。また会おう、二人とも」

 クウガこと一条薫がサムズアップを送る姿が、エターナルとキュアブロッサムには見えた。
 そうだ、確かに、彼は今、仮面の下で笑っている。──二人を安心させるために。そして、必ず勝つから心配がいらないという事をアピールするために。
 その笑顔を信じていいのだろうか。虚勢という事は、ないのだろうか。

「……仕方ねえな。信じるぜ、一条刑事」

 ……少なくとも、良牙は、この男の意地を信じた。
 一条が勝てるか否かはわからない。しかし、これだけ説得力のある“意地”を見せてもらっては、良牙は一条を信じさせないわけはない。

「……だけど、その前にこれだけ受け取れ!」

 ──Weather!!──
 ──Weather Maximum Drive!!──

 ウェザーの力で、クウガの頭上に暗雲が立ち込める。
 エターナルは、そのクウガの懐に駆け寄ると、親指だけを立てた右腕で、クウガの胸元を叩いた。
 クウガの全身に、先ほどのガドルと同じように電撃のエネルギーが走る。

「ううっ……!!」

 雷の一撃は、先ほどと違い、殺気を持ったものではない。力を分け与えるような、どこかやさしさのこもった拳だった。
 人体には、ほんの少しばかり辛い一撃だが、それでも五代はきっと、こんな痛みにも耐えて、グロンギを倒そうとしたのだ。
 それを思えば耐えられる。
 良牙の想いが乗った電撃を無駄にするわけにはいかない。
 電流は全身に流れた。腕にも、胸にも、足にも、頭にも、アマダムにも……心にも。
 つぼみが持っていたウェザーメモリの力が、良牙の手で一条の体へと送られる。これは二人が与えれくれた力でもあるのだ。

「あぁっ……!!」


48 : 冒険者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:30:10 FKsPOkkk0

 エターナルは、その手を離した。マキシマムドライブの連発で、流石に彼も相当疲労しているのだろう。

「……わかった。俺、尊敬してるよ。あんたを。それから、五代も。俺にはとてもなれねえと思う……だけど、なれるとしたら、あんたらみたいな大人になるぜ」

 良牙は、ずっと思っていた事を一条に伝えた。
 成り行きで一緒にいた相手だったが、やっぱり、五代や一条と一緒にいられて、良牙は楽しかったし、ためになったと思う。とても一日に起きた出来事とは思えなかった。
 彼らの住む世界の人たちは、凄く良い人ばっかりだ。

「ははっ……彼に聞かせてやりたいな……。五代なら、君と冒険したみたいと思うだろう……」
「五代だって、聞いてるさ。……今は、……一緒なんだろ?」

 一条の腹部には、五代が戦った証──アマダムが埋め込まれている。それを、エターナルは指差した。

「……そうだったな」

 エターナルは距離を取って、キュアブロッサムとともに、右手の拳を握り、親指だけを立てた。五代雄介の癖だった。この親指を立てるしぐさで、笑いかけるのが。

「一条さん。また会えますよね?」

 不安そうな瞳で訊くキュアブロッサム。

「未確認生命体を殲滅するまで、俺は死なない」
「……わかりました。信じます」

 しかし、一条が放つそのパワーを、意思を、優しさを、つぼみは信じた。
 一条薫は、警視庁不死身の男だ。果たして、彼が負ける事があるだろうか。
 そして、彼はおそらく、嘘などついた事のない人だ。彼が勝つというのなら、クウガは勝つ。どこまでも律儀な人だ。

「一条さん、また……」

 彼は良い人だ。死んでほしくない。
 これまでも、どんな困難もともに乗り越えてきた仲間だ。

『Wish you good luck.(健闘を祈ります)』

 エターナルは、ビートチェイサーに積まれていた荷物を全て抱えていた。
 ビートチェイサーに乗る事はない。これは、一条が自分たちの元へとやってくるための手段になるだろうし、そもそもバイクに乗れるとしたら良牙だが、良牙では道に迷ってしまう。
 だから、ビートチェイサーに乗っていく事はできない。

「行くぞ……」
「はい!」

 エターナルとキュアブロッサムは山のふもとに向けて駆けていった。
 クウガは、少しだけ不安そうにその背中を見つめていたが、それでも、すぐにガドルの方を向き直した。

「ジャラモン パ キエタ(邪魔者は消えた)」

 ガドルはずっと、つぼみと良牙がいなくなるのを待っていたらしい。
 彼にとって、二人は邪魔者だ。かつて、クウガに敗れた時、ガドルはクウガと一対一で敗北した。その雪辱を果たすならば、もう一度あの時と同じ戦いを再現しなければならない。
 一刻も早く戦うために、あの二人を殺すのも一向だが、それをせずともクウガが二人を逃がすであろう事は、彼らの言葉から察する事ができた。だから、ガドルは待ったのだ。

「ベッチャグ ン オキ ザ!(決着の時だ!)」
「争いを……なくす時だ!」

 そう、かつても、とある森の中で、黒の金のクウガと未確認生命体46号は対峙した。
 しかし、かつてと違うのは、黒の金のクウガに変身するのが五代雄介ではなく、一条薫であるという事。
 そして、ゴ・ガドル・バが更なる力を得ている事だ。






49 : 冒険者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:30:49 FKsPOkkk0



「うおりゃああああああああっ!!」

 仮面ライダークウガ アメイジングマイティフォームの拳はガドルの胸部を殴る。
 壁を殴ったように硬い皮膚だ。しかし、目の前の相手は生物だ。どんなに誤魔化しても、これは暴力に違いない。
 殺意を乗せた拳で、相手の皮膚を貫こうとしたのだから。

「フンッ!」

 クウガの視界の外れから、ガドルの拳が顔の真横を殴る。突如として受けた一撃に、クウガは殴られたとさえ認識しなかった。真横から球速180キロのボールが飛んできたのかと錯覚するほどである。
 常人ならば即死。しかし、クウガの顔はその暴力にも屈しない。
 大きく右手によろめいた体を起こし、左足を上げる。力を込めて、足を延ばす。屈から、伸へと変わるエネルギーに、アマダムから送られるエネルギーを乗せて、マイティキック並の一撃がガドルの腹部を蹴り飛ばす。
 ガドルもまた、左足を後ろにつくほど、よろめいた。

「はぁっ!!」

 クウガは右腕を大きく引く。そのまま、息を吐き、声を漏らし、右手の拳でガドルの顔面に一撃お見舞いする。
 パンチはしっかりと、ガドルの鼻先を捉えた。
 仮面の中に在る一条薫の顔は、決して笑顔ではなかった。
 犯人を捕らえる時の一条の顔など、まだ聖人に見えるだろう。今は、般若だ。一条の笑顔を見た事がある者ならば、決して想像する事はできまい。

「くっ!?」

 しかし、そんなクウガの右腕を、ガドルは両手でがっしりと掴んだ。
 顔面の痛みなど、微々たる物とでも言うのか。──ガドルは、そのままクウガの右腕を真上に向けて放り投げる。それに追従する形で、全身が持ち上げられる。
 ガドルの真後ろで宙を泳ぐ事になったクウガは、そのまま木に叩き付けられた。

「ぐあっ!!」

 クウガは、うめき声を漏らした。
 アメイジングマイティとなったクウガでさえ、今のガドルには敵わないというのか。
 そうだ、────金になったクウガは、金と同じ力を得たガドルに手も足も出なかった。
 それならば、黒の金になったクウガが、黒の金の力を得たガドルに勝つ事が出来るだろうか……?
 確かに、変身者である一条薫は、五代雄介よりもはるかに戦闘経験がある。武術も心得ており、射撃能力も精密、そして、普段は暴力も止む無しの仕事に就いている。そこを割り切るだけの力がある。警察であれ、犯人を射殺した警官は辞職する事が多いし、人を殺す事には慣れないが、一条も、割り切って、未確認を何度も葬った。甘い事は言っていられない。
 はっきり言えば、五代が変身したクウガよりは強い。

 しかし──

 ガドルは、強い。ガドルは、クウガの一撃を通さない。
 純粋な力の差で、クウガは同じ形態ではガドルに及ばないのだ。

(負けるわけにはいかない……こんな奴に……!)

 それでも、クウガには、そんな力の差を埋めるだけの『想い』があった。
 クウガの足は自然と前に出た。両目が、振り返るガドルの顎を捉える。右拳がそこを狙いに行く。

「うおりゃあああああああああッッ!!」






50 : 冒険者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:31:23 FKsPOkkk0



 少し前──

『おまもり』

 ──そう書かれた、あのイラスト付きの紙を、一条薫は支給品の中に見つけた。
 お守りとは言っても、そこに神の力や祈りは宿っていない。何のお守りというわけでもない。しかし、2000の技を持つ冒険家の子供たちへの想いが込められた優しいおまもりが、参加者の誰かのもとに支給されていた。
 一条は、つい先ほど、荷物の整理をする時にそれを目にしてしまった。彼がわかば保育園の子供たち一人一人に送った、何十枚ものお守り──それを、こんな殺し合いの場に送り込んだ主催者が許せなかったが、一条薫は、それを自分自身のお守りとして、コートの中にしまい込んだ。

(やるぞ……)

 未確認生命体の犠牲者には、当然の事ながら、幼い命もあった。いくつもの夢や希望も奪い、未確認生命体は人殺しをゲームとして楽しんでいた。
 遺留品として警察に預けられるランドセルや子供向けのバッグ。一条はそれを何度も見てきたし、椿のもとには子供の遺体も預けられた。
 だから、彼はきっと、世界中の子供たちにも、このおまもりを届けたかったに違いない。
 でも、彼は己ができるだけ──悩みながらも、己が描けるだけの子供たちの絵をおまもりにした。そんな彼の作ったお守りだ。

(五代……!)

 誰かを守りたい男の想い。
 誰かを傷つけたくなかった男の想いが、今の一条の胸にある。

 今、戦っているのは一条だけではない。
 その男の強さが、力が──一条の体を強くする。



『こんな奴らのために、これ以上誰かの涙は見たくない! みんなに笑顔でいてほしいんです!! だから……見ててください、俺の、変身!!』



『一条さん。俺、なります』



『……そんな顔、しないでください、俺は後悔、してないんです……』





『……だって、一条さんに会えたから!』





 彼が一条の胸に響かせた数々の言葉。彼の言葉は、いつも真っ直ぐだ。
 何より、一条にとってうれしかったのは、最後まで一条に声をかけてくれたことだ。
 友情は、ホンモノだ。
 彼と一条の胸に輝き続ける友情は消えない。
 いつまでも、そう、輝き続ける。







 アメイジングマイティの右アッパーが、ガドルの顎に到達する。顎を砕き、首を持ち上げるようにしてガドルの体重を浮かせる。
 ガドルはつま先を立てて、己の体重がクウガの右手に持ち上げられている事を認識した。
 浮き上がり、そのまま、空中を泳ぐ。
 顎には、封印エネルギーの残滓が残ったまま、ガドルの体は数メートル吹っ飛び、地面に頭を打ち付けた。土がガドルの頭にこびりつく。頭は特に痛みを感じなかった。
 だが、己がこうしてアメイジングマイティの一撃に身を倒している事にショックを隠せなかった。


51 : 冒険者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:31:55 FKsPOkkk0
 今の己とアメイジングマイティクウガならば、おそらく己が上だと、確信していた。
 しかし、今、自分は倒れている──夜空を見ている。

「グォッ──!」

 ガドルが起き上がる。
 吠えるように声をあげながら、その手を地面について、立ち上がる。
 クウガが追い打ちをかける事はない。むしろ、何歩か退いている。
 ──いや、退いているのではない。
 あれは──

「……ゾグバッ!!」

 あれは、そう──かつてゴ・ガドル・バを打倒した技の再現。その構え。
 クウガは、片足を前に出して屈み、両腕を少し広げている。あそこから駆け出し、ガドルに向かって駆け出し、そこからキックを放つに違いない。
 そうか、ならばガドルも、己がクウガを超える力の持ち主だと証明せねばならない。
 今のガドルはあの時のガドルよりも数段強くなった。電気のエネルギーがガドルの肉体を強化している。
 勝てる。
 それを確信しながら、ガドルもまた、よろけたまま数歩退いた。

「──いくぞ、五代」

 クウガが呟くのを、ガドルは耳にした。

「ゼンゲビ……ビブブ!!」

 クウガは真っ直ぐ前に駆け出す。
 ガドルもまた、前傾しながら駆け出す。
 二人は同時に飛び上がる。


「うおりゃああああああああああああああッッッ!!!!」
「ハァァァァァァァァァァァァッァァァァッッッ!!!!」


 クウガの両足蹴りが。ガドルの回転蹴りが。
 二人のエネルギーが込められたキックが空中でぶつかり、炸裂する。
 空が晴れる。いや、これは晴れではない。──太陽光にも匹敵する一瞬の光。一瞬だけの朝。それが、二人のもとに降り注いだ。







 ──二つの影がいま、地面に降りた。
 空中で激突し、己の力を互いにぶつけ合ったクウガとガドル。
 勝つのは、クワガタか、カブトムシか。地上に落ちた影は動かない。
 膝をついたまま、二つの影は殆ど意識を失ったような衝撃を喫していた。
 微かな気の迷いさえも勝敗を左右するほどの互角。
 しかし──

「……やった」

 先に、クウガが膝を上げ、立ち上がった。
 クウガは勝利を確信している。
 黒の金のクウガが、辛うじて立ち上がった。
 そして、振り返る。
 振り返った先には、ゴ・ガドル・バが動かずに固まっている。

「勝った……倒したぞ、五代……」

 いま、クウガはガドルの元へと、よろよろと歩き出そうとしていた。
 奴はもう動けない。
 未確認生命体は殲滅された。
 あとは、この暴力を使うのは、残る主催者を打倒するためだけで良い。
 五代、やったぞ。
 ゴオマ、ダグバ、そしてガドル──全てのグロンギが倒された。
 倒された──はずだった。


52 : 冒険者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:32:48 FKsPOkkk0

「なっ……」

 クウガは、ガドルの元へと歩いて行こうとした時、地面に倒れた。
 彼自身も気づかないほど、体内に受けていたダメージは大きかった。
 今、クウガがガドルから受けた攻撃の強さは、半端な物ではない。

「……残念、だな……」

 俺は、負けたのか──。

 クウガの目の前で、ゴ・ガドル・バは立ち上がった。
 クウガの一撃は確かに胸部に叩き付けられた。大量の封印エネルギーがその胸、二か所に叩き込まれたほどである。
 しかし、その封印エネルギーの痕はベルトのバックルに到達する事はなかった。到達する前に、ガドルは封印エネルギーを弾き返したのだ。

(すまない、五代……)

 ガドルは、形態を剛力体へと変え、胸の装飾品をもぎ取る。装飾品はガドルソードへと変質した。彼は、クウガの方へと歩み寄る。

 ゲゲルの敗者はベルトを砕かれる。
 ガドルは、クウガのアマダムを完全に粉砕すべく、この剣でクウガの腹部を突き刺そうとしていたのだ。







(五代……)

 勝利を確信していた一条だったが、どうやら敗北したらしい。
 そして、敗北は死。いまこの瞬間もまた、一条は死に近づいているのを感じていた。


53 : 冒険者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:33:23 FKsPOkkk0
 全身は痛み、廃れ、アマダムなしには生命の維持さえできないほどである。
 全身に供給される力は、クウガとして戦うためではなく、生命の維持のために使われているような気がする。

『あきらめないで、一条さん』

 五代の声が聞こえる。
 遂に幻聴が聞こえるほどに──なってしまったのか。
 大丈夫だ、すぐお前のもとへ行く。だから待っていてくれ。

『確かに一条さんは頑張った。でも、まだやれる事、あるよ、絶対。……俺は信じてる、一条さんの事。だから……一条さんも俺を信じて!』

 五代は、言った。
 まだやれる事がある……?
 五代のもとへ行く前に、まだやり残した事があるのか……?

(そうだ……俺はまだ、倒すどころか……一矢報いる事さえできていない……! このまま倒れるわけにはいかない……!)

 そう、この戦いは決して死んだ五代のための戦いじゃない。
 生きている良牙やつぼみ──たくさんの人たちの笑顔を守るための戦いなのだ。
 ただ、五代は一条とともにある。
 五代はもうアマダムも関係ない人間として青空になった。しかし、一条は警察の道を選び、自ら戦う道を選んだ。それなら、俺は五代と一緒にいたアマダムと運命をともにしてもいい。

『俺たちで、一緒にやろう、最後の冒険……!』

 ここで満足してしまっては、何も果たしていないのと同じ事だ。
 死ぬのは良い。しかし、せめて最後の瞬間まで、ガドルを倒すための活路を開く。

(────!)

 一条の脳裏で、一瞬だけ“凄まじき戦士”のイメージが掠められる。
 これが、凄まじき戦士か。──一条はそう思った。これは、アマダムが、憎しみだけで戦わぬように「警告」として送るアルティメットフォームのイメージである。
 これに変身した時、もしかしたら理性を失い、グロンギと等しくなるかもしれないというクウガの究極の姿だという。これが現れるという事は、一条が危険な状態であるという事だろう。
 ……しかし、それが脳裏に現れた瞬間、一条は笑った。

(──大丈夫だ、俺は。なあ、五代……)

 ポケットには、五代のおまもりがある。君がくれた笑顔がポケットにしまわれている。
 これがあれば──これだけあれば、一条薫は、どんな憎しみに圧されたとしても、理性を保てる。
 一条は、心優しき警察官の一人でい続けられる。

「そうだな……俺もお前と行こう! これが俺の冒険だ!!」

 憎しみになど飲まれない。
 五代は、一条に笑顔を見せて、消えた。







 突如、ガドルの体表が燃える。
 ガドルは、己の体に突然発現した炎の正体がわからなかった。わからなかったが、クウガの手がこちらを向いている事に気づいた。
 熱い炎がガドルの体表を焼き、ガドルを苦しめる。
 ガドルが数歩下がる。

「ガギゴ ン ギジ バ!(最後の意地か!)」

 見れば、クウガの姿がまた変わっていた。
 全身が鋭利になり、黒が全身を支配し、金の意匠はより細かく全身に行き渡っている。
 四本角。そう、これは凄まじき戦士──仮面ライダークウガ アルティメットフォームに変身しているという事ではないか。


54 : 冒険者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:33:57 FKsPOkkk0

「ゴミギソギ……(面白い)」

 強化したガドルの力が究極の闇に匹敵する者なのか、この場で試せる。
 ガドルは、数歩後退した体を再び、ゆっくりとだが前に出した。
 炎に包まれる上半身の痛みを掻き消しながら、足を前に出す。

 アルティメットフォームになったクウガが地面に手をつき、体を起き上がらせる。
 その目は赤い。心が黒く染めあがる前の──わずかな理性が顔に見て取れた。
 そして、クウガはガドル以上に深刻なダメージを受けているらしい事もよくわかった。

「……くっ」

 クウガは、立ち上がりこそしたものの、それだけで全身の力を振り絞ってしまったような気さえする。しかし、敵の前に必死で手をかざし、プラズマ操作で敵の体を焼こうとしていた。
 仮面の下は泣いている。
 こうして、また人を苦しめ、暴力を振るう結果になる事を。それでも、五代とともに最後に果たさねばならない使命を果たすべく、右腕に力を込めた。

「うお……」

 クウガの全身を駆け巡る痺れ。体を支配する金縛り。
 全てを解き放つため、クウガは吠える。

「うおりゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ…………!!!!」

 クウガの手は伸ばされ、ガドルの体めがけて駆ける。その拳が到達するのは、その直後だった。もともと、そう距離を置いていたわけでもない。結果的に、クウガの拳はガドルの腹のバックルの真上を叩いた。

 そこに封印エネルギーが込められた一撃。一条薫と仮面ライダークウガの最後の“暴力”が突き出される。アルティメットフォームの命をかけた一撃であった。全身を焼く炎よりも強い、封印の一撃ガドルの腹を再び襲う。
 本来ならバックルを狙うはずだったが、微かに位置がずれた。朦朧とした意識は、決してクウガには、優しくなかった。
 しかしながら、その一撃は、ガドルに物理的にも大きなダメージを与えたし、ベルトのバックルに近い箇所に封印エネルギーを込めた。

(……五代……)

 遂にアマダムが破損し、一条薫の変身が解かれる。眼前で、ガドルは腹を抱え、もがく。

(お前が声をかけてくれたおかげで……)

 これが決め手となるかはわからない。決め手となるかはわからないが、ガドルに一矢報いた事だけははっきりとわかった。

(この冒険は……成功した……よ……)

 いくらガドルが究極に近づいたとはいえ、本当の究極には勝てないだろうと──楽観視しすぎかもしれないが、そう思った。

(一緒に行こう、悲しみと争いのない未来まで……)

 このまま夜が青空になり、そこで誰かの笑顔を見届ける事はできなかったが、残念ながら一条薫の意識は薄れ、視界から全てが消えていく。

(俺も、お前と会えて、……良かった!)

 バトルロワイアル開始一日目、19時32分。──一人の戦士が、散った。


【一条薫@仮面ライダークウガ 死亡】
【残り20人】






55 : ピノキオの物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:34:30 FKsPOkkk0


 仮面ライダーダブルは、この山にひと時だけ来た「昼」をすぐ下で目にしていた。
 エレクトリックをはるかに凌ぐ電気の光。夜の山に光を齎すほどのエネルギー。
 それが今、おそらくガドルの手によって放たれているのを、ダブルは確かに感じていた。

「くそっ……!」

 ダークプリキュアが屈するだけはある。
 殺し合いの覇者を目指す戦士が新たなる力を得て、山の天候さえ答えている。
 キュアブロッサムは。仮面ライダーエターナルは。──彼らは生きているのか。
 いや、ダブルは、たった三人。そこにいる人を救えればいい。
 ガドルを倒す事はできないかもしれない。しかし、そこにいる人々が困っているなら、助ける。それがダブルの行動原理だ。
 問題なのは、その行動の果てに、全員が生きて帰れるか──という一点。

「エクストリームもねえのに……! これだと行動も制限されて──」

 ファングやエクストリームといった力さえあればまだしも、今のダブルで勝利するのは難しい。それはこれまでも感じていた力の差だ。
 あれらの姿へ変身する事ができれば、もう少し有利に戦えただろうが、今翔太郎の手にそれがないのは変えようのない事実だ。

「制限……?」

 ダブルは、エクストリームの不在で己の強さが“制限”されてしまっている事に気づく。
 そうだ、もしかするとゴハットに言われた制限という奴は、その事かもしれない。
 そうおとなしくフィリップを解放するわけがないとも思うが──人質だと思っていたフィリップは、実は「制限」なのだとしたら。

「チッ……まあいい。どっちにしろ行くしかねえ」

 それでも、どう頑張ってもエクストリームは今すぐには手元に来ない。それよりも、ダブルは今の姿でどう戦うのかを考えなければならないだろう。
 山の真上を見上げる。そこには人影があった。

「……オイ! あれは……」

 その時、前から駆け出す二人の姿にダブルが気づいた。
 そう、それはまさに赤いプリキュアとエターナル。ダークプリキュアから聞いていた二人だ。やはり、彼女は、嘘は言っていなかったらしい。
 しかし、死んだと言われた二人は生きて逃げ出す事ができたようだ。

「おい、お前ら!! おい!!」

 ダブルはそこにいる二人に手を振って声をかける。
 キュアブロッサムとエターナルはすぐにダブルに気づいて走り出す。
 いったい、今戦況はどうなっているのか。そして、一緒に行動しているはずのもう一人はいないのか。

「……あなたは?」
「俺は仮面ライダーダブル。お前たちの事は知ってる。キュアブロッサム、花咲つぼみに仮面ライダーエターナル、あー……」
「この人は響良牙さんです」

 エターナルの代わりにブロッサムが答える。
 響良牙。一応、警察署で貰った情報の中にはその名前もあった。全く不明なのは数名だけである。良牙は、確か信用していい人間に分類されていた気がする。

「良牙……か。あんたが。……まあ良い。いまお前らがガドルと戦ってるのはわかってる。だが、一体どうなってんだ? あとの一人は?」
「一条だ。いま、そいつが、そのガドルって奴と戦ってる。……たった一人で」
「一人!? 無茶言うんじゃねえ、あいつは一人で倒せるような相手じゃ……」

 そう聞いた瞬間、ダブルの体は勝手に動いた。
 ガドルの強さをよく知っているから、助けになろうとしたのだ。
 しかし、それをエターナルが止める。エターナルがそうしてダブルの腕を止めるのが、とても新鮮な体験だった。
 戦争屋の仮面ライダーだった彼が今、こうしてダブルを止めている。

「待て、ダブル。一条は勝つ。あいつも仮面ライダー──仮面ライダークウガなんだ。今の電撃を起こしたのはきっと、ガドルじゃない。クウガなんだ!」


56 : ピノキオの物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:34:48 FKsPOkkk0

 良牙が分け与えたウェザーによる電撃がクウガにも届いているはずだ。それがきっと、ガドルの打倒を果たしていると、良牙は信じる。
 いや、もっと消極的な言い方かもしれないが──信じたい。
 一条を知らぬこの男にわかるはずがないと、そう思いながら良牙は、まるで自分自身に言い聞かせるように言った。
 どこか激昂しているようにさえ聞こえた。

「……」

 ダブルは、少し悩みつつも、いや、やはり……心の中に在る不安を拭う事にした。その一条という男は、ガドルと交戦し、果たして勝つのか。それはわからない。しかし、クウガという男が仮面ライダーなら、信じるしかない。
 自分が同じ状況に陥ったとしたら、ダブルもまた、一条と同じように二人を逃がしてガドルと戦うのではないかと──そう、思わざるを得なかった。

「……わかった」

 その男が、翔太郎と同じなら、翔太郎は一条の策を無駄にしたくはない。
 折角、ガドルと戦おうという状況だったが、撤退しかない。……という事であった。

「……そうだ、キュアブロッサム。それからお前も。この下にプリキュアの仲間がいる。今、そいつはダークプリキュアと戦っているところだ」
「ダークプリキュアが!?」

 キュアブロッサムが反応する。ダークプリキュアは、先ほどの戦いの途中で消えてどこかへ行った。やはり、撤退したのか。殆どあの場で会ったばかりだから仕方がないとも思う。
 仲間のプリキュアというのがキュアピーチかキュアベリーかキュアサンシャインなのかはわからないが、どうやらダークプリキュアがいるらしいという事はキュアブロッサムについても、食いつかずにはいられない事実だ。

「……ダークプリキュア」

 キュアブロッサムは、憂いを込めた瞳でそう言った。
 先ほど、ダークプリキュアは本当に戦う気がなかったのだろうか。とてもそうは思えなかった。







「プリキュア・ダークパワー・フォルテッシモ!」

 ダークプリキュアが描いたfがキュアサンシャインに向けて全力で放たれる。
 この一撃の火力はなかなかに大きい。しかし、キュアサンシャインは即座にヒマワリ型のシールドを展開する。サンフラワー・イージスである。
 ダークパワー・フォルテッシモはダークタクトから送られてくる闇の力に呼応し、更に勢いを増す。
 闇。──そう、ダークプリキュアの力の根源は闇の力である。
 根本的に、プリキュアとは相容れない力で戦っているのだ。その力を持つダークプリキュアが、光に足を踏み入れる事などできるはずもない。

「はあああああああっ!!」

 ダークタクトから送り出される全力のエネルギーを注ぎ、障壁を壊そうとする。
 サンフラワー・イージスも限界に近いようであった。
 かつてならばもっとあっさりと障壁を打ち壊せたはずだった。しかし、サンフラワー・イージスはまだ持ちこたえている。
 それはキュアサンシャインの成長であり、ダークプリキュアの闇の力の減退でもあるようだった。

「くっ……!」

 それでも、やはりダークプリキュアの力は強大であった。
 サンフラワー・イージスに罅が入る。裂け目ができた瞬間は、そこからエネルギーが逃げ出そうとするため、非常に危険だ。このままいけば、すぐにダークパワー・フォルテシモに負ける。

 そして──


57 : ピノキオの物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:35:08 FKsPOkkk0

 すぐに、サンフラワー・イージスが弾ける。
 ダークパワー・フォルテシモがキュアサンシャインのいた場所に殺到する。
 キュアサンシャインは、その崩壊の瞬間をいち早く察知して、後方に逃げた。
 地面を強く蹴り、数メートル飛び上がる。
 ダークパワー・フォルテシモは不発だ。その隙にダークプリキュアのもとへ、キュアサンシャインがアーチを描くように飛んだ。まるで、落ちる位置さえ彼女にはわかっているようだった。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 掛け声が響くと、空中から降り注ぐ太陽は、地の闇に向けて拳を差し向けた。
 空を落ちる太陽の一撃は、ダークタクトが防ぐ。しかし、そこから体制を立て直すように地面に足をついたキュアサンシャインは、次に回し蹴りをダークプリキュアの脇腹に命中させた。

「ぐふっ!」

 ダークプリキュアがバランスを崩す。
 左に向けて少しよれたが、次のキュアサンシャインの突きは腕でガードした。
 その次のキュアサンシャインの一撃は、ダークプリキュアも手を伸ばしながら、真横でガードした。
 そこから、自然と連撃が始まる。
 キュアサンシャインもダークプリキュアも素早い「攻」に転じたのである。相手の体の一発でもパンチを当てようと、まるで拳がいくつもに増えて見えるほどの戦いぶりが始まる。

「はああああああああああああああああああああっっ!!」
「はああああああああああああああああああああっっ!!」

 全て相手に到達するが、お互いに急所への一撃を全て回避する。
 お互い、光と闇の力でパワーを強めあい、物理ダメージも最小限に抑えているので、急所以外の攻撃は受けても大きな問題はない。岩さえ砕くようなパンチが致命傷となる事はないほどだ。

「あっ……!」

 先に急所に一撃受けたのは、キュアサンシャインの方であった。みぞおちに一撃、ダークプリキュアのカウンターが入った。
 そこで出来た隙が、次のダークプリキュアの一撃に繋がる。
 両手の指先を絡ませ合い、二つの拳を繋げる。そこに全身の力を込める。二つの拳を、ハンマーのように、キュアサンシャインの頭上に振り下ろす。

「ああっ……!!」

 キュアサンシャインは上半身を地面に打ち付け、ダークプリキュアは空へと飛び上がった。キュアサンシャインが地面に叩き付けられた衝撃で、地面にはキュアサンシャインよりも一回り大きいクレーターが生まれたのである。そこに巻き込まれぬために、ダークプリキュアは飛び上がったのだ。
 キュアサンシャインはその中心で倒れ伏す。

 それでも、両腕を地に立てて、キュアサンシャインは立ち上がった。
 全身に受けたダメージに打ちひしがれながら、それでも立ち上がった。

「はああああああああああああああっ!!」

 跳躍。ダークプリキュアのいる空まで、サンシャインは飛ぶ。さながら、羽を傷つけた小鳥のような力のなさもあったが、声にだけは覇気があった。
 その時は、その跳躍に全身の体力を使ったような気がしたが、次の瞬間にはもう腕が前に出ていた。
 その腕はダークプリキュアを捉える。
 空に輝く太陽と月が激突する。

「ダークプリキュア……ッ!!」

 拳がダークプリキュアの胸に届く。
 ダークプリキュアの真っ赤なブローチに、キュアサンシャインの拳骨が触れる。

「……どこから、そんな力が……っ!!」

 跳躍時の様子から、その拳が届かないと思い、避ける事さえしなかったダークプリキュアは、己の胸元のブローチに到達したキュアサンシャインの拳に驚愕する。
 キュアサンシャインへの攻撃には常に全力を尽くした。


58 : ピノキオの物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:35:28 FKsPOkkk0
 サンフラワー・イージスのないキュアサンシャインのどこにそんな力があるのかと思いながら、ダークプリキュアはただ吃驚した様子で攻撃を受ける。

「……大好きな人達のためなら、頑張れる!! それが、私たち……プリキュアだから!!」

 衝撃がバランスを崩す。
 外的要因か、内的要因か。キュアサンシャインの拳が空中でダークプリキュアのバランスを崩させたのか、それともこの言葉がダークプリキュアの心の均衡を崩したのか、それはわからない。
 しかし、ダークプリキュアはそのまま、まっさかさまに落ちていく──それは確かな事実。

「アインハルトも、源太さんも、えりかも、ゆりさんも……大好きだった!!」

 ダークプリキュアが地面に到達する前に、太陽の光が見えた。

「……ブロッサムも、あなたも……大好きだから!!」

 ダークプリキュアは、辛うじて地面に両足で折りたち、手をついた。
 そのまま立ち上がる。

「大好き……? それならば、お前は何故、戦って死んだ人間を勝ち取ろうとしない!!」

 ダークタクトを握りしめて、ダークプリキュアは中空のキュアサンシャインを睨んだ。

「死んだ人間は……蘇らない!!」

 ダークプリキュアのもとに、無数の小型光弾が放たれる。
 サンシャイン・フラッシュである。サンシャイン・フラッシュは一瞬でダークプリキュアを取り囲んだ。
 何発もの光弾が、一瞬前までダークプリキュアがいた地面を次々とえぐっていく。ダークプリキュアは、縦横無尽にそれを回避していた。

「蘇るさ、NEVERの技術を使えば……」

「……NEVERになったら、それは私の大好きなゆりさんじゃなくなる……あなたの大好きなゆりさんでもなくなるよ!!」

 翔太郎から、NEVERについては聞いている。
 感情を失くしていく死者の兵士。大道克己や泉京水といった参加者がそうらしい。
 生前の人格とは殆ど別人になり、殺人に対する躊躇さえなくなってしまう。
 それは、ゆりじゃない。

「ならば、時代を超えて……生きている時のゆりを連れてくればいい!」
「そんなの……! あなたが好きなゆりさんじゃないよ……!? それでいいのっ……!?」
「くっ……」

 ダークプリキュアは、図星をつかれたようによろめき、サンシャイン・フラッシュの一つを腕で受けた。その一撃は回避ができなかったのだ。

「君の命も、僕の命も……有限なんだ!! だから僕だって怖いんだ!! いつ死ぬかわからないこんな状況で……それでも、大好きな人がいるから、僕は戦ってるんだ!!」

 そして──。
 キュアサンシャインとしての言葉ではなく、明堂院いつきとしての言葉が爆発する。
 友達がたくさん死んだのに、自分だけ大丈夫なんて思えない。
 いつきはまだやりたい事がたくさんある。帰りたい家があるし、学校がある。
 死ぬのが怖くないはずがない。
 命が何度でも蘇るならそれが良い。でも、本当にそうだったら、怖くなんかならないはずだ。

「私には大好きなんて人いない……。大好き……その感情がそんなに愚かな……自分さえ捨てるほど愚かな物なら、私は……」

 ダークタクトが、両手に闇のエネルギーを集めて、赤い光弾を作り出す。

「感情などいらない!! 私は心のない人形だ!!」

 赤い光弾が上空のキュアサンシャインを狙う。
 しかし、それが命中する直前にキュアサンシャインがサンフラワー・イージスを展開した。
 光弾は弾かれ、逆にダークプリキュアの方へと反射して襲ってくる。


59 : ピノキオの物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:35:59 FKsPOkkk0

「──!?」

 咄嗟に避けるが、地面を狙ったそれから、吹き荒ぶ砂埃に視界を奪われる。

「集まれ、花のパワー!」

 その隙に、キュアサンシャインは花のパワーを両腕に集中させる。

「シャイニータンバリン!」

 キュアサンシャインの手にシャイニータンバリンが作られる。

「はぁっ!!」

 シャイニータンバリンの淵を回転させて、キュアサンシャインは手、手、尻、手と四回シャイニータンバリンを叩いた。

「花よ、舞い踊れ! プリキュア・ゴールドフォルテ・バースト!」

 無数のヒマワリのエネルギー体が発現する。自らの光弾を避けたダークプリキュアの元へと殺到した。

「……これは、かつての!」

 ダークプリキュアをかつて襲った攻撃であった。
 そして、それはまたダークプリキュアの体へと集中し、全身の動きを封じる。

「なっ……くあっ……!」

 無数のエネルギー弾はそのまま炸裂し、ダークプリキュアを全身から苦しめる。

「ああああああああああああっ!!」

 かつてよりも威力を高めたプリキュア・ゴールドフォルテ・バーストを前に、ダークプリキュアは、力を失う。
 硝煙のような砂埃が、倒れていくダークプリキュアの姿を包んでいる。
 キュアサンシャインは一撃、当てた。ダークプリキュアがもう動き出す事はないだろう。

「……やっ、た……」

 キュアサンシャインは勝利の喜びに身を委ねていた。
 しかし、その喜びにはもう力が残っていなかった。ひきつった頬で笑うと、空中に立っていられるほどのエネルギーさえなくなり、キュアサンシャインは力を失って落下した。







 ……そして、いつきが目を覚ますと、そこはキュアブロッサムの顔があった。
 自分は、一体……。
 いつきは、そう思いながら、周囲を見た。自分がいるのは、キュアブロッサムの腕の中だ。
 あの戦いから、そう時間は経っていないらしい。……いや、まだ少しも時間は経っていないのだ。意識を失ったのは、ほんの数分。
 長い間眠っていたような気さえするが、キュアブロッサムは空中から落ちていくいつきをキャッチし、つい先ほど着地したばかりだった。
 いつきは、変身する途中のあの白い下着のような姿になっていた。

「……サンシャイン」

 ブロッサムが、心配そうな顔で言った。
 いつきは力なく微笑む。ブロッサムの顔がそこにある事に安心する。

「良かった……無事だったんだね、ブロッサム」

 ブロッサムがガドルという敵との戦いで生存している事を、まずサンシャインは喜んだ。彼女の事も心配だったが、生きていたのだ。
 あの戦いの後で、随分と疲れたが、とにかくサンシャインは勝った。
 思い返せば、これはかなり、楽しい武道だった──と、いつきは思った。お互いの全力を尽くして戦い、そして勝った。
 ダークプリキュアに勝ったのだ。


60 : ピノキオの物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:36:20 FKsPOkkk0

「……翔太郎さん」

 ダブルと、もう一人、知らない人がいつきの前にいた。この知らない仮面ライダーも、たぶん仲間だろう。ダークプリキュアはエターナルと、呼んでいたはずである。

「……ブロッサム。下ろして」

 ブロッサムを促して、いつきは地面に立つ。だいぶよろけてはいるが、とにかくダークプリキュアに勝ったのは確からしい。
 見れば、ダークプリキュアが、地面から倒れ、起き上がろうとしている。いつきは、ダークプリキュアのもとへと歩き出そうとしていた。
 ダブルが肩を貸してくれようとしたが、いつきは拒否した。それほど消耗しているわけじゃないし、自分の足で歩いて行きたい。
 ふらふらになりながらも、ダークプリキュアのもとへ行こうと、いつきは歩き出した。

「……ダークプリキュア」

 ダークプリキュアの前で、いつきは、彼女の偽りの名前を呼んだ。
 これで最後のつもりだ。キュアサンシャインは、明堂院いつきは勝った。今、呼びかけるのは勝負した相手の名だ。
 ダークプリキュアはダークプリキュアとして戦ったのである。
 だから、この場で呼ぶのはその名前だ。

「……立てる?」

 手を、差し伸べる。
 ダークプリキュアは茫然としているようだった。
 いつきが手を差し伸べる事に驚いたのではない。彼女がそういう人間だというのは、もうわかりきったことだ。

「私は……負けたのか……?」

 ……自分が負けた事に、彼女は驚いていた。
 全力だった。全力で戦った。それなのに負けた。キュアサンシャインに。
 全力の自分に打ち勝てるようなプリキュアが、キュアムーンライト以外にいるとは思っていなかったのだ。
 力の差は、本来、歴然であるはずだった。
 しかし、その差を、キュアサンシャインは埋めて戦った。……大好きな気持ち。それをエネルギーとして。

 同じような決闘を、ダークプリキュアは思い出す。
 海辺でのシンケンゴールドとの戦いだ。

「かつて、シンケンゴールドは私にこう言って戦いを挑んだ……。自分が勝ったら、殺し合いをやめろと」
「……源太さん。そんな事を」
「結果、奴は敗北し、死んだ。……私はその時、そんな奴が愚かだと思っていた。奴はあの状況下で私を信じようとしたのだ」

 ダークプリキュアは、いつきの手を握ろうとはしない。
 しかし、いつきはそれでも手をかざし続けた。

「……だが、奴はもしかしたら敗北などしていなかったのかもしれない……」

 源太やアインハルトの死を乗り越えたキュアサンシャインに、ダークプリキュアは敗れた。ダークプリキュアは、とうの昔に彼らに負けていたのかもしれない。
 それが今、キュアサンシャインに敗北するという形で、確かな物となったのだとしたら。

「……君はさっき、感情なんていらないって、う言ったけど、今の君はとても輝いて見える」

 そう……目の前にいるダークプリキュアからは、彼女の闇を象徴するかのような羽が消えていた。闇の力を集めるダークタクトももうその手にはなかった。
 ダークプリキュア自身は、今それに気づいたようで、その手が、キュアサンシャインの手を掴めるという事を、今更知ったらしい。

「そうか……」
「心のない人形なんて、嘘だよ。君は、きっと人間になれたんだ」

 “人形”は“人間”に“変身”した──。心の闇を吐き出して、人形の殻を脱ぎ捨てたのである。
 いつきは、それを確信していた。


61 : ピノキオの物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:36:56 FKsPOkkk0
 いつきは、ダークプリキュアに微笑みかけたが、すぐに……そこからいつきは少し表情を険しくした。

「でも、もう殺し合いをするのだけは……やめてほしい。いや、やめるんだ。君がどんなにゆりさんを望んだって、君の知ってるゆりさんは蘇らない。……それは、凄く残酷な話だけど。……それに、君は勘違いしていたようだけど、ゆりさんは多分……それじゃあ喜ばない」
「……そうか」

 憂いを帯びた瞳で、ダークプリキュアは空を見た。
 それは、もうダークプリキュアが「家族」を得る事ができないという事だった。 

「……所詮、叶わぬ夢だったか……」

 普通の人間のように生きる事は。
 諦めるのは辛かったが、心のどこかは既に諦めていたのかもしれない。

「私に勝ったお前が言うなら、そうなんだろうな……」

 ゆりの気持ちは、ダークプリキュアよりもキュアサンシャインの方が詳しいのだろう。……いや、おそらく彼女は確信している。
 ゆりの気持ちがわからず、エターナルが見せる“色”に全てを委ねたダークプリキュアなどよりも、ずっと確かにわかっていたのだろう。

「もう殺し合いをする意味なんて、どこにもない。……私がこれからすべき事も、もうないだろう。私に必要なものは……もう手に入らないなら、私に生きる意味なんてない」

 ダークプリキュアが望み続けたのは、キュアムーンライトの決着だった。それももうできない。
 ダークプリキュアが求め続けたのは、家族だった。それももう手に入らない。
 もう、何もない──びっくりするほど、何もなくなった自分に、もう生きる意味などないとさえ、ダークプリキュアは感じた。
 しかしながら、心が洗われたようで、不思議だった。

「そんな事ありません!」

 激昂するような声が、もうひとつ、いつきの後ろから聞こえた。
 キュアブロッサムであった。

「あなたの家族は、もういないかもしれません。でも、私たちは、もう戦い合う敵じゃない。友達になれるんです。……あなたは知らないだけで、友達だって、とても大切なものなんですよ」

 ダークプリキュアがこうしていつきと友達になった事を祝福するように、ブロッサムは笑顔でそう言った。

 友達。
 ……それはダークプリキュアには、存在しない言葉。
 友なんていなかった。
 彼女が求め続けたのは家族。友達などという単語は脳をかすめた事もなかった。
 しかし……彼女は、いま少しだけ、それが欲しいと思った。

「……だが、どうすれば友達とやらになれるんだ……? 私には、何も、わからない……私は、そんなもの……習っていない……」

 友達という物の大切さなど、わかるはずはないが、それを掴む事で何かを得られるのならば、それでいいのかもしれない。
 ダークプリキュアは、いつきに向けて手を伸ばした。しかし、その手が届く前に、いつきは一つ気づいたように言った。

「……友達になる方法。それは簡単だよ」

 いつきは、笑うように言った。
 簡単な事なんだ。なのはは、それを教えてくれた。
 なぜ、名前で呼ぶ事が大事なのか──。

「……名前を呼んで? ちゃんと僕の目を見て、はっきり僕の名前を呼ぶんだ」

 なのはが、名前を呼ぼうとした意味を、いつきは考えた。
 きっと、はじめはそれだけでいいんだろう。難しい事はいらない。

「キュア、サンシャイン……?」


62 : ピノキオの物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:37:24 FKsPOkkk0

 ダークプリキュアが、そう呼んでから、いつきは首を横に振った。いや、違う。その名前じゃない。ずっとダークプリキュアが呼び続けた名前じゃない。戦う時の名前じゃなく、友達の名前が必要なんだ。

「ううん……。僕の名前は、いつき。明堂院いつき」
「いつき」
「そう、いつき。君の名前は……?」

 そこで、ダークプリキュアは少し戸惑った。
 名前。それは与えられる物だと思っていた。自分で考えていいのだろうか。
 自分で少し考えたが、やはり、やめた。思いつかない。

「……悪いが、それを最初に呼ぶべき者は────もう、この世にいない。だから、本当の名前じゃない。……仮の名前でもいいのか……?」
「……うん。わかった」
「……それなら、それはお前が決めてくれ。きっと、私にはゆりが決めた名前があるはずだ。名前は自分でつける物じゃない……誰かがくれた名前が欲しい」

 ダークプリキュアは悩んだ。
 自分の名を自分で名づけるのは、普通じゃない。
 名前は本来、与えられるものなのだから。

「……そっか。じゃあ、僕に大切な事を教えてくれた……とても大切な友達の名前を……もう、いないけど、君に贈るよ」

 いつきもまた、少し考えて、その名前に決めた。
 ゆりもきっと、彼女の名前を考えていただろう。彼女が考えた名前が「本当の名前」。しかし、いつきが考えるなら──

「なのは」

 ダークプリキュアの名前を呼ぶ事を、いつきに教えてくれたあの子の名前を。

「月影なのは」

 菜の花の花言葉は──、「小さな幸せ」。

『That’s a nice name.』






63 : ピノキオの物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:37:48 FKsPOkkk0



 ダブルは、ダークプリキュアの様子を黙って見つめていたが、翔太郎はフィリップの一言聞いた。

「……なあ、フィリップ。あいつも罪を償えると思うか?」
『やっぱり、翔太郎はハーフボイルドだね。君は罪を償えると思っている。甘いよ。……でも、彼女の方がもっと甘いね。“ノットボイルド”ってところかな』
「焼いてすらいねえ! 生卵じゃねえか!」

 自分の仲間の命を奪った敵さえ、自分を裏切った相手さえ許す。
 それがプリキュアだ。

『……ただ、そうだね。ダークプリキュア、……彼女には家族と、それから名前がなかったのか。名前もなく、自分自身の決断もなく、ただ命令だけをこなしていた……そういう事か』

 フィリップが呟く。その言葉には、遠い昔を懐かしむような語調が込められていた。

『わかるよ、僕にも。彼女の気持ちが。……決して人を殺めていい理由にはならないけど、僕も彼女と同じだった時期がある。彼女もまた、最高の相棒……いや、仲間たちと出会えたみたいだ。……彼女はきっとやり直す事ができる。どれだけ時間をかけてでも……彼女は自分の罪を数えるだろう』
「フィリップ……」

 フィリップは鳴海壮吉に名前を与えられるまで、「名前」がなかった。小説の中の探偵フィリップ・マーロウの名を借りて、フィリップと呼ばれるまで、彼には名前も何もない。
 そして、翔太郎と出会うまで、「家族」がなかった。園咲来人でも、フィリップでもない時期というのが確かにかつて、彼の中には存在していたのである。

「結局、お前もハーフボイルドだな」
『失礼だな……翔太郎』

 そう言うフィリップの言葉も、どこか嬉しさを交えたようだった。







「さあ、手を……」

 いつきはダークプリキュアの手を取って起こそうとする。
 ダークプリキュアは、その手を掴んだ。

「手と手を繋いだら、もう、本当の友達です……私たちは」

 ブロッサムは、その姿に涙さえ浮かべていた。一人の敵が、いま和解しようとしている。
 ダークプリキュアは、長い間仇敵だった。確かに、彼女は敵だった。

「……ああ」

 ダークプリキュアが立ち上がり、キュアサンシャインの瞳を見る。
 そこにお互い、敵意という物が消えていた。

「キュアブロッサム……お前の名前も、教えてくれ」
「花咲つぼみです。よろしく……月影なのはさん!」
「……つぼみ」

 “なのは”はつぼみの名前を呼んだ。そして、彼女とも、手を繋いだ。
 一件落着、と言いたいところだった。しかし──

「なのは……その体」

 しかし、ふと……いつきが、“なのは”の異常に気付いた。


64 : ピノキオの物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:38:11 FKsPOkkk0
 そう、彼女の体が粒子のように消え始めていたのである。
 羽やダークタクトだけではない。スカートも消えかかり、腕さえ消えかかっている。
 このまま、体全体が消えてしまいそうなほど、粒子化が進んでいた。
 ダークプリキュアの表情が柔らかくなるにつれ、その速度は加速していた。

「……そうか」

 彼女は、いつきの一言で、己の体が消えかかっている事に気づいたようだ。
 そして、その理由にも、すぐに察する事ができた。

 ──そう、砂漠の使徒はその心が完全に浄化されると消滅する。彼女は闇に生まれ、闇に生きる戦士だった。その体もまた、闇の心が作り上げている。
 ここまで、よく保たれたと驚かれるほどだろう。それは、彼女自身が殺し合いに乗る事で「己」を保持していた事なのかもしれない。
 彼女が人になる事はできなかったのか──

「お別れの時だ、つぼみ、いつき……。私は、人間になれたようで、本当の人間にはなれないんだな……」

 所詮、ダークプリキュアは砂漠の使徒だったという事だ。
 正しい心に生まれ、正しい心に生きる事など最初から不可能な生命体だったらしい。

「闇に生まれた私は、心が浄化された時、体ごと消える運命だったようだ……。しかし、生まれた事にも、後悔はしていない。私は少しの間だけでも、人間のような心でいられた……それでいいのかもしれない。私は、生まれてきて良かった……」

 ピノキオは人間になれて本当に幸せになったのだろうか──。
 そんな疑問を説いた人がいる。人間には醜さもある。時に争い合い、人さえ殺める。実際、“ダークプリキュア”は人を殺した。
 しかし、ここにいるピノキオは、人間になれて幸せだったと、そう断言する事ができる。
 だから、心に何のわだかまりもなく消える事が許されると思った。

 だが、それでも──プリキュアたちは納得しなかった。

「駄目です……あなただけは、消させません! 友達になった人が消えるのは、もう……もういやなんです!」

 えりかの名前が放送で呼ばれた時の事や、友達になったさやかが死んでしまった事、折角仮面ライダーになれるはずだった大道克己や村雨良が消えていった事を、つぼみは思い出す。──そう、あの時のような悲しみを何度も背負いたくはない。
 折角、彼女は人間になれる。折角、彼女と友達になれる。

「そうだよ、お願いだ……。消えないで……。一緒に色んな事をしようよ……。まだ君と友達になったばかりじゃないか……」

 いつきが握っている手が消えていく。
 ダークプリキュアの体は透過して、間もなくお別れが来る事を示しているようだった。
 つぼみは何度も、ここで出会ってきた人たちとのお別れを前にしてきた。

「いいんだ、……もう、いいんだ……、つぼみ、いつき……“ありがとう”」

 彼女の口から、そんな当たり前の挨拶が出たのは、初めてだった。
 だが、つぼみは決して、それで良いとは思わなかった。何度も何度も、こうして人がいなくなるのを見たくはない。何度も何度も、それを抗えない自分の無力を痛感したくはないし、友達が消えるのは──厭だ。

(──お願いです! みんな、力を貸して!)

 ブロッサムは祈った。
 神に。仏に。花に。大地に。仲間に。世界に。







 ──この場所には、四つのプリキュアの力があった。
 キュアブロッサム──花咲つぼみが持つ、ココロパフューム。
 キュアマリン──来海えりかが持っていた、ココロパフューム。
 キュアサンシャイン──明堂院いつきが持つ、シャイニーパフューム。
 キュアムーンライト──月影ゆりが持つ、ココロポット。
 そして、それぞれが使うプリキュアの種。


65 : ピノキオの物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:38:38 FKsPOkkk0

『大地に咲く、一輪の花! キュアブロッサム!』

 ココロパフュームとプリキュアの種が光る──。

『海風に揺れる、一輪の花! キュアマリン!』

 ココロパフュームとプリキュアの種が光る──。

『陽の光浴びる、一輪の花! キュアサンシャイン!』

 シャイニーパフュームとプリキュアの種が光る──。

『月光に冴える、一輪の花! キュアムーンライト!』

 ココロポットとプリキュアの種が光る──。



『ハートキャッチプリキュア!!』



 四人のプリキュアは、いつも一緒だ──。
 友達が困っていたら、いつも助けてくれる──。







「……ココロパフューム!」

 それは奇跡と呼ぶべきものだろうか──“なのは”の身を、彼女たちの変身アイテムから来る四つの光が包んだ。
 赤、青、黄色、紫──それぞれ異なる色の花の力が、“なのは”に照射される。朽ち果てるはずの少女の元に、四つの光が降り注ぎ、消滅を食い止めていた。
 デイパックの中からそれらを取り出し、更に光を強める。

『つぼみ、いつき、私たち……ずっと一緒だよ──』
『不出来な妹だけど、お願いね……』

 光の中に、キュアマリンとキュアムーンライトが見えたような気がした。彼女たちの姿は、すぐに見えなくなったが、光とともに突き進んでいった。
 ダークプリキュアと呼ばれた少女に、光を与え、それでも尚、生き続けるだけの体を与える為に。

「えりか……」
「ゆりさん……」

 死んだはずのプリキュアたちも力を貸してくれている。
 闇の力の消滅で消えゆくダークプリキュアの体。そこに、花の力が新しい身体を与えようとする。

 つぼみが持つハートキャッチミラージュも光を照射する。
 いつきが持つスーパープリキュアの種も光を照射する。

 全てが、かつてダークプリキュアだった命を照らし、花の力で新しい身体を作り出す。
 彼女の中にある「命」と「心」がこの世に存在しているうちに、新しい身体を作り上げる為に──。

「花の力が……」
「私たち、みんなの想いが……」

「「……奇跡を、呼んだ……」」

 キュアブロッサムも、明堂院いつきも、あらゆるプリキュアの力が見せているその姿に驚く。

「「おいおい、信じらんねえぜ……」」
『『Beautiful.(ゾクゾクするねえ……)』』


66 : ピノキオの物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:39:04 FKsPOkkk0

 仮面ライダーダブルも、仮面ライダーエターナルも、マッハキャリバーも──その姿に茫然とする。単調な言葉しか出てこないほどに。
 まばゆい花の光が、“ダークプリキュア”をあの邪悪な羽のない、ただの人間の形として、転生させた。プリキュア四人の力が結集し、彼女を生み出したのである。
 ゆりを生き返らせるための一つの手段としてすがろうとしていた「プリキュアの奇跡」。それは、皮肉というべきか──ダークプリキュア自身を滅ぼし、新しく生まれ変わらせる。
 彼女の生命はもう人造ではない。
 大地の恵みにより生まれた、自然の生命。

 そして、眩い光は輝きを増して、

「──私は、生まれ変わったの? また、戦うために……」

 かつて、ラビリンスの幹部──イースが、キュアパッションへと生まれ変わったように。
 ダークプリキュアは、今度こそ完全な、つぼみたちと同じ年代ほどの人間の体が形作られた。その心からも、邪悪さは消え、彼女は心優しき少女──“月影なのは”となったのである。

「……いいえ」

 彼女は、ようやく、美樹さやかや大道克己のように、わかりあえるはずの人間との死別を避ける事ができた。

「私たちと友達になるために生まれ変わったんです」

 それは、つぼみといつきの新しい友達であった。



【“ダークプリキュア” ────消滅】





67 : 強者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:39:33 FKsPOkkk0



 ガドルは己の腹部に込められた究極の力に抗っていた。
 これが究極の力。──想像以上である。この一撃でガドルは敗北を悟りかけた。
 クウガが遺した最後の力である。
 クウガはもう死んだが、この一撃でガドルが死んでしまったら、それは同士討ち。
 クウガへの勝利とはいいがたい。

「フンッ……!」

 一分間、息さえ吸えないほどの猛攻がガドルの中で繰り広げられる。
 封印エネルギーは尚消えない。しかし、全くそのエネルギーはベルトまで進んでいかない。
 両者の力は互角。
 死してなお、ガドルと戦うとは、クウガは流石凄まじき戦士である。
 ガドルの力も弱り始めている。この封印エネルギーを振り払うために、腹部にエネルギーを溜めこみすぎたのだ。

「……ウガッ!!」

 封印エネルギーが少し、ベルトに近づく。
 このまま到達すればガドルの体ごと周囲数キロ圏内は大爆発する。
 ガドルの体、意思はこの世から消える。

「ラベスモンバ クウガ……!」

 しかし、ガドルは己が放てる限りの全力を腹部に集中させる。
 到達しようとする封印エネルギーを弾くために、体の隅々に僅かずつでも残っていたガドル自身のパワーを一点に集中させる。

「ハァッ!!」

 そして──

 ガドルは、究極の封印エネルギーを弾いた。

 ガドルの力はまだ、究極には届いていない。それでも、究極の一つ下にガドルはいる。
 ガドルはクウガと戦い、そして勝ったのである。

「バッタ……(勝った)」

 己の勝利に浸る。

 いや、まだだ。
 まだアマダムを砕いていない。ガドルはガドルソードを構え、一条の体のある場所に向かった。そして、それはもうあっさりと──アマダムを、砕いた。
 元々壊れかけていたアマダムはその役目を終え、一条の体とともに眠る。
 そこに、ガドルは『塔』のタロットカードを添えた。電撃のキックによる死者。雷を落とした塔の図柄のカードを添え、ガドルのゲゲルは更に趣向を凝らしたものとなった。
 ガドルはこれを持って、このゲゲルの勝者となる──。

「バッタ ビ “クウガ”!(クウガに勝った!)」

 かつて己を破り、言いようのない屈辱を味あわせたクウガに、ガドルは勝ったのだ。
 確かに、この身に、最も強い一撃を与えたのはクウガだ。しかし、それをガドルは振り払った。
 フェイトの一撃よりも、ナスカドーパントの一撃よりも、確かに強い一撃に朽ち果てそうになったが、それでも勝てた。
 もし、ガドルが進化していなければ、究極の力を持つクウガには勝てなかっただろう。

「“クウガ” ビ バッタ パ “ゴレ”!!!!!!(俺はクウガに勝った)」

 ガドルは吠えた。
 クウガではなく、勝者である己を強調して叫ぶ。
 どこまでその声が届いたかはわからない。
 とにかく、勝つべき相手に勝ち、ガドルはひとまずの満足に浸った。

「……ソグザ! ジャズ パ(そうだ、奴は)」


68 : 強者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:39:52 FKsPOkkk0
 しかし、ここで終わりではない。まだ戦うべき相手はいる。空虚な心をまた少し埋めるには、更に強い敵との戦いが必要だ。
 そう、クウガとの決戦の前、もう一人戦いたいと思えた男がいた。
 この力があれば、奴など容易く倒す事ができるだろう。

「カメンライダー……」

 もう一人の仮面ライダー、その名は、エターナル。──響良牙であった。







「ハァッ!」

 キュアブロッサムたちの前に、敵が、山を下りて現れた。
 ビートチェイサーにその身を乗せ、走らせるその怪物は、カブトムシの異形をしていた。
 ゴ・ガドル・バであった。

「……ガドル!?」

 最初に声を発したのは、ダブルであった。
 上方から迫りくる殺気。もしや──

「どういう事だ!? 奴は……奴は……」

 エターナルがガドルの方を見て、悲痛の声をあげていた。
 そう、ガドルが乗っているのは、自分たちを攻めてきた時のサイクロン号ではない。
 あれを乗り捨てて、新しく乗っている機体は一条薫が乗っていたビートチェイサー2000である。
 ビートチェイサーは、クウガが勝利してここに来る時、便利だろうと良牙たちが置いて来たものである。

「奴は、なんで……アイツのマシンに乗ってるんだよォッ!!」

 つまり、一条が敗北した、と──そういう事なのだろうか。

「フンッ!」

 ブルルゥゥン! ──ガドルは、バイクで飛び上がった。
 見れば、その右の手には、ガドルボウガンを装備している。ガドルボウガンは、クウガと同じように、ライジング化していた。電気の力を帯びた、ライジングペガサスフォームに近い形態である。
 銃口が、そこにいる人間の一人を狙う。

「……危ないっ!」

 “なのは”だった。
 この状況で最も無防備なのは、彼女に違いない。
 戦いを求め続けるガドルだが、その思考上、本来弱者は狙わないはずだった。
 しかし、残るは殺し合いの覇者となる事だけ──クウガもダグバももういない。
 ここからはその戦いの中で、強者との戦いを楽しむのみであった。
 その過程上、弱者を殺すのもまた構わない。何故ならば、もうガドルは「究極を超える者」だからだ。
 ゲゲルに縛られる事もなく、自由に殺害する事も厭わず、その過程で弱者が死ぬのは、いわば一つの「犠牲」だ。仲間が犠牲になるたびに、彼らは強くなる。それと戦う。
 究極に近づいたガドルには、そんなダグバのような思想さえ生まれ始めていた。

「なっ……!」

 ガドルボウガンが自分の真上から発射用意されている事に、“なのは”は驚く。
 プラズマ電気を帯びた空気弾が直前までなのはがいた地面に突き刺さる。

「危ないところでしたね」

 キュアブロッサムが助けてくれたらしい。
 なのはは、ブロッサムの腕の中にいた。そして、優しい声で微笑みながら言う。

「ありがとう、キュアブロッサム」
「はい!」


69 : 強者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:40:20 FKsPOkkk0

 浄化され、新しい心と体を得たダークプリキュアは、もうかつてのように刺々しい言葉と口調を使う事はなかった。
 その姿に、いつきは自らの父を「おとうさん」と呼んだ時の、あの優しい声を感じた。
 不思議な感じもあったが……少し照れるが、まあ良い。

 ブロッサムは、なのはをその場に下ろすと、ガドルの方を睨んだ。

「……一条さんは、どうしたんですか!!」

 それは、既に怒りの込められた一言。既につぼみは気づきながらも、その事実がまだ確実でない──わずかな確率でも信じようとしていた。

「クウガか。奴は俺の手で殺した!」

 ガドルは、リントの言葉で返す。一条が、死んだ。
 ダークプリキュアが死ななかった代わりに、一条が死んでしまった。
 その事実が悲しかった。ずっと一緒にいた一条が殺されてしまったのだ。

「そんな……私、堪忍袋の緒が切れました!」

 そして、ガドルを睨みながらも、ガドルの手にあるガドルボウガンがまだ生身の人間を狙おうとしている事を察知した。

「いつきも、早く変身を!」
「うん!」

 いつきは、再び変身しようとシャイニーパフュームを翳す。
 そこにプリキュアの種を装填、再び戦う。

「プリキュア、オープンマイハート!」

 シャイニーパフュームの力で、いつきはキュアサンシャインへと変身する。

「大地に咲く、一輪の花! キュアブロッサム!」
『海風に揺れる、一輪の花! キュアマリン!』
「陽の光浴びる、一輪の花! キュアサンシャイン!」
『月光に冴える、一輪の花! キュアムーンライト!』

「『「『ハートキャッチプリキュア!』」』」

 “四人”のプリキュアが声を揃える。キュアブロッサムとキュアサンシャインは背中合わせに、二人でポーズを決めた。

「えりか、ゆりさん……私たち、今も一緒なんですね……! それなら……」

 その声に応えるかのように、マリンのココロパフュームとムーンライトのココロポットが光る。ハートキャッチミラージュやスーパープリキュアの種もここにあった。
 ブロッサムは、ハートキャッチミラージュにスーパープリキュアの種を装填する。

「鏡よ鏡! プリキュアに力を……!」

 キュアブロッサムとキュアサンシャインの体が、鏡に反射する。
 心なしか、その中にマリンとムーンライトの姿も一瞬だけ映ったような気がした。

「世界に輝く一面の花! ハートキャッチプリキュア! スーパーシルエット!」

 スーパーキュアブロッサムとスーパーキュアサンシャインは、進化する。仲間たちの想いを乗せて。これは、ここに全てのプリキュアの力が結集した事による最後の奇跡。
 ダークプリキュアにではなく、キュアブロッサムとキュアサンシャインにだけ与えられた奇跡であった。
 二人は、その進化に何の違和感も感じなかった。ただ、すぐにガドルを狙い、地を走りだした。

「「はああああああああああああああっっ!!」」

 ガドルは、駆けてくる二人の少女を前に呟く。

「ゴモギソギ(面白い)」

 ガドルの体は、金の俊敏体になる。電撃俊敏体となったガドルは、ガドルロッドを取り出して、その切っ先で二人を捉える。
 二人のプリキュアはロッドの先端を掴み、逆上がりをするように、同時にガドルの体表を蹴り上げた。






70 : 強者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:40:41 FKsPOkkk0



(一条刑事……)

 響良牙は、その男の事を思い出す。一条薫は死んでしまった。
 それは、誰が原因なのか──良牙は考える。いや、自然と考えてしまった。

(俺の……俺のせいじゃねえか……)

 エターナルが突っ走って、ウェザーの力を敵に浴びせた。
 それが相手の力を強化させる事など知らなかったとはいえ、マキシマムドライブで余計な事をしてしまったのはほかならぬ良牙だ。
 新たな力に溺れ、良牙は敵を手っ取り早く倒そうと、マキシマムドライブを使った。
 それがこんな形で無に帰されるとは──

(……すまねえ……一条刑事……)

 自然と出てくる詫びの言葉。
 エターナルは、ガドルを前にも、どうすればいいのかわからなくなる。
 プリキュアたちは戦っている。
 だが、また自分自身の手で、敵に力を与えてしまうとしたら……。
 それが恐ろしい。
 ガドルを更に強くしてしまえば、良牙には今度こそ勝ち目がなくなってしまう。

(くそっ……くそっ……)

 五代のみならず、一条まで、自分のせいで死んでしまった。
 こんな事ならば、あの時、一条ではなく、自分の手で責任を取るべきだったのだ。
 良牙の心を、どうしようもない後悔が襲っていた。
 これ以上、何ができる……。また、良牙が戦う事が、「余計」であったら──。
 それなら、いっそ何もしない方が正しいのかもしれないと、良牙は思った。







「はあああああああっ!!」

 スーパーシルエットにまで進化したキュアブロッサムが、ガドルの胸部を蹴り上げる。
 一発、二発、三発、四発……。
 まるでガドルの胸で足踏みをするように何発もの蹴りを叩き込む。

「ボシャブバ(こしゃくな)」

 ガドルがガドルロッドで振り払おうとしたところで、スーパーキュアブロッサムはより強くガドルの胸を蹴り上げて、空へと飛ぶ。
 ガドルロッドは虚空を掠める。
 そして、次に隙のできたガドルの腹に重い肘鉄が叩き込まれる。スーパーキュアサンシャインによるものだった。

「……はあああああああああああああああああっ!!」

 スーパーキュアサンシャインはそこで静止する。
 肘から伝わる攻撃の余韻を敵の腹に残すために、肘を限界まで敵の腹に残しているのだ。実際、それは重い一撃であり、ガドルはその攻撃には「痛み」を感じていた。
 ガドルの体が、そこから遅れて数メートル吹き飛ぶ。
 それは、先ほどアルティメットクウガが狙った場所と同じ。
 この腹部への一撃は重かった。スーパーキュアサンシャインは離れる。

「クッ……!」

 ガドルは形態をチェンジする。
 電撃剛力体。既にアメイジングマイティフォームと同等の能力を得たガドルも、クウガと同じく金で戦い続ける事ができる。
 これはライジングタイタンフォームに匹敵するフォームだ。


71 : 強者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:41:04 FKsPOkkk0

「ハァッ!」

 そんな彼の背中や腕を無数の弾丸が打ち付けた。いくつかの弾丸をガドルソードが割る。
 自由自在、縦横無尽に攻撃を命中させる仮面ライダーダブル ルナトリガーの弾丸、炸裂。
 インファイトで戦うスーパーキュアブロッサムとスーパーキュアサンシャインに攻撃を当てないために、より確かな方法で戦う事にしたのだ。
 今は後方支援がちょうど良いところだろう。身の丈に合った戦い方をすべきだというのを理解したうえで、このポジションがちょうど良いと思ったのだ。

「ブスギ……!(温い)」

 しかし、それらはガドルが今、攻撃と認識できるほどのものではない。煙の中で憮然と立つガドルは、もはやノーダメージである。
 ダブルの現状の能力は、全く今のガドルとは程遠い物だったのだ。ガドルは以前もダブルと数戦交わしたが、それが果たして戦いと呼べるほどのクオリティに達していたかといえば、否と言える。
 それがただでさえ、ガドルの大幅なパワーアップによって強化されたとなれば、ダブルの立つ瀬はない。

「……カメンライダー」

 それでも、ダブルの一撃は、ガドルの本当の目的を思い出させるには充分だった。
 ガドルは、仮面ライダーエターナルと戦いに来たのだ。
 奴は確か、仮面ライダーと名乗った──ダブルと同じく。
 しかし、ダブルと違うのは、奴が「究極」に近い力を発動した事である。天候を自在に操り、火を作ってガドルを微かにでも苦しめた。
 クウガもダグバも死んだ今、「究極」を持つ数少ない敵だ。





「アバ、バ────」





 ガドルがエターナルの方を見やる。
 見れば、エターナルの腕が、青から赤へと変化し、背中のローブが消えている。
 赤、か。
 奴もまた、クウガやガドルのように、体の一部が赤や青になる。ダブルもそうだが、より確かな形で色を変える。メモリを入れ替える動作もなく、自発的に。
 おそらく、クウガと同じならば赤い姿が奴の基本形態。そういえば、青のエターナルは、バイクを追っていた時の姿だ。即ち、移動に適した俊敏体である可能性が高い。
 あの時のエターナルは本来の究極ではないというのか。──面白い。

「はああああああああああああああっっ!!!」

 上空から現れるスーパーキュアブロッサム。
 天使が舞い降りるとは言い難い怒声のような唸り声とともにガドルの元へと蹴りを入れる。降りて一回転、パンチを放つ。そして、退く。
 そこへ、スーパーキュアサンシャインの応戦。駆け出してきたスーパーキュアサンシャインは、ガドルの剣を持つ手を抑え込み、足を大きく上げ、ガドルの顔面を蹴る。それでも全くダメージを受けた様子がないので、次の瞬間には右足を下して、左足をガドルの右肩に乗せるように叩き込む。
 ガドルの体がよろめく。

「フンッ!!」

 ガドル、激昂──。スーパープリキュアの強さに魅せられながらも、彼にとって最大の目的は「究極」の力を持ち、闘気を理解するエターナルのみ。
 今の空虚な心を満たすには、そんな、「クウガ」や「ダグバ」に匹敵する超人との戦いを挑み、勝つ事で己がザギバスゲゲルに挑む価値のある男だと証明する事だけだ。
 ゆえに──

「ハァァァッッ!!」

 黒の金の力を、再び己の体から呼び覚ます。


72 : 強者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:41:21 FKsPOkkk0
 ガドルは驚天体へと進化し、地響きを起こす。それは周囲を振り払う嵐や竜巻ような覚醒であった。砂埃が舞い、全員がその場に立つバランス感覚が消える。
 驚天動地。
 ガドルの瞳が深く黒ずむ。その場にいる全員を威圧し、鼓動を急かすほどの最強形態。

「ズバエ ゾ キン ン チバラ! ソギデ ゴレ オ タタバエ、カメンライダー!!(金の力を使え! そして、俺と戦え、仮面ライダー!!)」

 砂埃の中からエターナルのもとへ、言葉がかけられるが、全く心当たりのないエターナルの耳は素通りする。
 己に語り掛ける事はないだろうと、エターナルは思った。
 あいつは戦いにしか興味がない。それなら、戦意が消えていく今のエターナルを狙うだろうか。──彼が呼んだ仮面ライダーとは、ダブルに違いない。

「エターナル! 今の状態のあいつをパペティアーの力で操って!!」

 そう声をかけたのは、なのはだった。
 今は戦う力を持たない彼女だが、敵に有効な力を思い出した。
 あのパペティアーメモリは、今仮面ライダーエターナルが所持しているはずだ。あれを使えば、姑息的な手段だが、ガドルを一瞬止められる。

「パペティアー……?」
『P・u・p・p・e・t・e・e・r』

 エターナルは、ゾーンメモリの力で手に入れた五本のガイアメモリのうち、どれの事だか一瞬わからなかったが、マッハキャリバーがサポートするようにアルファベットの名前で綴りを言う。
 通常は滅多に使わない単語であるがゆえ、サポートが必要だと思ったのだろう。

「……駄目だっ! 何が起きるかわからねえ……! 使えねえ、俺には……!」

 しかし、パペティアーメモリを見つめながらも、エターナルはそれを使う事ができなかった。自分が使ったメモリがガドルを強化させ、結果的に一条を死なせてしまった事実が、エターナルを苦しめる。
 メモリを握る手が震える。
 マキシマムドライブを使うのが怖い。たとえどんな能力でも、ガドルにとって、それが力となってしまったら──。

「赤い、エターナル……」

 ダブルは見ていなかったが、仮面ライダーエターナルは先ほどまで「青」だったのに、いつの間にか翔太郎たちも見たことのない「赤」のエターナルに姿を変えている。
 ダブルを苦しめたあのエターナルローブも装着されていない。
 やもすると、奴の──更に、弱い形態ではないのだろうか。

『翔太郎、彼は……』
「ああ。杏子と同じだ……。自分の力を出し切れなくなっている、いや、出し切れなくなっちまったんだ……。クソッ、味方になれば心強いと思ったのに……!」

 かつてエターナルと戦った事のあるダブルならわかるが、エターナルの力を最大限に引きだせば、それこそダブルはここで戦えないほどである。
 いや、考え直してみれば──そう、奴がマキシマムドライブの「エターナルレクイエム」を使えば、ダブルの変身が解除され、T2以前のガイアメモリは永久停止する可能性まである。
 そうだ、確かに彼を戦わせてはいけない。──しかし、それさえ使わなければかなり心強い相手のはずだ。

「ゴグビョグモン──(臆病者)」

 ガドルの顔は、エターナルに対して、失望の色を見せている。
 エターナルが全く自分を楽しませてくれそうにない事は、この戦いの全景を見渡して理解した。
 他人に言われた通りに「操る」などという姑息な手段を使おうとしたならまだ良い。エターナルは今、それを使う事にさえ臆している。戦う方法がないと思っているのか。
 その程度の相手が、あの究極を使いこなしたというのか。
 笑わせる。

「キガラ ビ ボン チバラ ゾ ズバグ バチ バ バギ(貴様にこの力を使う価値はない)」

 ガドルは、興が失せたように姿を変身させる。
 黒の金から、紫の金へ。わざわざ、一瞬だけ変えた究極に近い力も、彼らに使う気が起きなかった。しかし、その手にガドルソードを構えた。


73 : 強者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:42:06 FKsPOkkk0
 そして、エターナルの方へと走り出す。

「ギベ……!」

 ガドルは重量級の剛力体に変身したものの、あっという間にエターナルの前方へと距離を縮めた。
 そして、ガドルソードが振り下ろされる。

 ────ただし、ガドルがガドルソードを振り下ろそうとした相手は、エターナルではない。


「危ないっ!!」


 その対象者を心配する少女の声が、響く。ガドルが切り裂こうとしたのは、エターナルの隣にいた月影なのはであった。







「ぐ……」

 そして、ガドルソードは振り下ろされた。
 ガドルの狙いは、周囲の人間の殺害だったのである。周囲の人間が殺されれば、怒りが、エターナルを奮い立たせると信じた。
 クウガがそうして覚醒していくように、究極を持つ者もまた同じ覚醒を辿るのではないかと思ったのだ。
 言ってみれば、「ダグバ」に近い考え方だった。

「……ぁ」

 聞こえるのは、ガドルソードを受けた者の呻き声。
 声にさえ、ならないような小さな声が聞こえた。
 月影なのはの目の前で──

「いつき……!」

 そう、キュアサンシャインが、なのはを庇ったのである。
 間に合ってよかった、とばかりに、キュアサンシャインは微笑む。

「そんな……また……」

 かつて、彼女がダークプリキュアだった頃、同じように、彼女を身を挺して庇った人がいた。その人は、月影ゆりと言った。
 今、月影なのはを庇うのは、明堂院いつきであった。
 二人とも、彼女の大切な人、だった──。

「……な……の、…………」

 電気を帯びたガドルソードは、スーパーキュアサンシャインの左肩に振り下ろされ、彼女の肩の真上を切り裂いていた。
 彼女は、咄嗟になのはの前に出て、ガドルの一撃から彼女を庇ったのである。

「………………は……」

 そして、咄嗟になのはが、いつきの名前を呼んで、いつきは辛うじてそれに答えた。
 それを呼んだ事に満足してしまったいつきの意識が朦朧とし始める。
 その驚異的なダメージ──生命維持すら危うい致命傷に、プリキュアの変身も解かれた。
 プリキュアの力は、「闇」を「光」に還元してダークプリキュアに体を与える事はできても、こうして失われていく命をどうする事もできなかった。

「いつき……!!」

 ガドルの真後ろで、もう一人、いつきの名前を呼んだ。
 キュアブロッサムがスーパープリキュアの姿を解いて──いや、スーパーキュアサンシャインの力が解かれた事で自動的に解けて──そこに駆け出した。

「つ、ぼ、み……」


74 : 強者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:44:14 FKsPOkkk0

 エターナルは、自分の真隣で、少女の肩が胸元まで、剣で叩き斬られている事に、ショックを感じていた。
 ダブルもまた怒りの声とともに駆け寄ったが、彼もまた無力であった。

「……そんな、折角友達の作り方がわかったのに……私に愛を教えてくれたのに……私に、名前をくれたのに……私、何もまだ返せてないのに……友達になったばかり、なのに……」

 そうだ、最後に言わなきゃ──

「……全部、教えてくれてありがとう、いつき……私は……」

 いつきは、自分の背中から聞こえるそんな声に安堵しながら、微笑み、

(どういたしまして……)

 そして、この瞬間、完全に息絶えた。
 死んだ命は蘇らない──そう言ったのは、いつきだった。
 だからこそ、死ぬのは怖いと、──そう打ち明けたのも、いつきだった。

 まさしく、そう、彼女はその身を持って、命が消えていく瞬間を、月影なのはに教えた事になる。
 しかし、自分の命が失われる恐怖よりも、誰かの命が奪われる事が、厭だったのだろう。彼女は最後までプリキュアだった。
 ゆりの時と同じく、『彼女』がその死に悲しむ事はあっても──月影なのはが殺し合いに乗る事は、もうなかった。



【明堂院いつき@ハートキャッチプリキュア! 死亡】
【残り19人】






75 : 強者の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:44:33 FKsPOkkk0



「うわああああああああああああああああああっっっ!!!!!!!!」

 エターナルは立ち上がった。
 仮面の下に涙が流れる。ガドルは、そちらを凝視した。

「てめえっ!! なんで、俺を殺さなかった……っ!! てめえが殺したいのはこの俺なんだろっ!! ガドルッッッ!!!!」

 咄嗟に、エターナルの手から放たれた気。
 怒気──獅子咆哮弾のように、気を操り、ガドルを威圧する。つぼみの友達を殺し、つぼみの泣き顔を作り上げている目の前の怪物を殺したい。──良牙は、強くそう願った。
 怒りが、エターナルを強くする。
 怒りが、エターナルの色を変える。
 怒りが、エターナルをブルーフレアへと変える。
 再び青の姿を取り戻したエターナルは、仮面の下に悲しみを浮かべながら、叫ぶ。

「ウオオオオオオオオオオオオオオオリャァッッ!!!」

 エターナルの拳が、ガドルの胸を一発殴る。
 ガドルは、それでも尚、憮然としていた。この一撃は全く通じていない。

「……バスホゾ(なるほど)」

 しかし、ダグバのやり方が効率的だったらしい事を、ようやくガドルは確信した。
 周囲の人間を殺せば、戦士はもっと強くなる。
 この一撃は、確かに以前、ガドルの胸を殴った一撃とそっくりだ。あの時の覇気だ。

「面白い」

 敵に伝わるよう、リントの言葉で言う。
 ガドルは、リントの言葉でそう返した。それが返って、良牙の顰蹙を買ったか。
 エターナルは怒っている。

「……面白い、だとォッ!?」
「そうだ。面白い。もっと強くなり、もっと俺の心を満たしてくれる存在となれ、カメンライダー」

 ガドルは、ダグバに近づいていた。体も、また、思考も。
 最初から人名など尊重する気もなく、ただ縦横無尽に暴れ、強い者との戦いを楽しむ。
 今、少女を庇ったスーパーキュアサンシャインの加速力も、また、一瞬でも早くその場に辿り着こうとした自己犠牲の精神を感じた。

「……お前たちリントも、いずれ俺たちグロンギと等しくなる。そうだ、俺を憎め。そして、憎しみを力に変え、凄まじき戦士として俺に挑むがいい……リントたちよ!」

 今は見逃そう。
 しかし、ここにいる全員が怒りを感じている。
 いずれまた、出会う事を信じて、ガドルは、周囲の視線をまるで意に介す事なく、その場を離れた。
 彼に手を出す者はいなかった。全員が、己の無力を痛感していたからだ。


 驚天体。あの姿より一段劣る形態ですら、あの強さだというのに、あれに変身されたらどう立ち向かえばいいのだろう──。
 ただ犠牲だけが彼らの前にある。敵に何もできず、そこに犠牲だけが横たわる。






76 : 風花の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:45:11 FKsPOkkk0



「……いつき」

 それはもう、生者ではなく遺体だった。
 明堂院いつきは死んだ。ガドルによって殺された。
 ガドルは、何のつもりかわからないが、いつきの遺体に『太陽』のカードを添えていた。
 確かにいつきは太陽のような、人だった……しかし。

「……私は」

 なのはは、その無残な姿を見ても、ガドルに対して怒りを感じる事ができなかった。
 そう、彼女は斬殺されている。これはかつて、ダークプリキュアとして、シンケンゴールドを操って行った暴虐と全く同じだった。
 自分は、誰かにこの痛みを与えていた。
 ゆりの時以上にその感覚が強まっていく。家族じゃなくて、友達でも、こんなに心は痛んでしまう。
 自分は、それをやった。

 自分は──

「なのはさん……」

 つぼみは、いつきの遺体を抱えるなのはに、声をかけた。
 こんな事をしても遺体に命は吹き返さない。それはわかっているはずだ。
 しかし、抱きしめずにはいられなかったのだろう。命が蘇らないと知りながら、命を諦めきれないように、その温もりが消えていくのを感じてしまう。
 繋がった時、あんなに温かった手には、触れる勇気さえ持てなかった。

「つぼみ。私は、これと同じ事をやったんだね……」

 つぼみは、黙ってしまった。
 彼女が言っている事が真実だ。彼女にとってはそれを言ってもらう方が幸せだろう。
 まだ、生まれたばかりで何もわかっていない子供のような彼女には、それも教えなければならない。

「……あなたは、ここで人の命を奪ったんですね」
「三人も……私のために……」

 二人、と言われたが、ダークプリキュアとしては三人殺害した記憶がある。
 しかしながら、実際のところ、高町ヴィヴィオは辛うじて生存している事を彼女は知らない。

「やり直す事なんてできるのかな……私が」
「できます。……絶対。やり直しのきかない事なんて、ないんですから……」

 以前はマッハキャリバーにそう言っただろうか。
 スバル、克己、さやか。罪を犯した人はいた。けれど、救いはあった。
 どうすれば世界は彼女を許すのか。それはわからない。日本の法律で、もし成人だったなら、死刑もやむを得ないほどの罪かもしれない。
 それでも、彼女にはこの場でも、帰ってからもまだできる事がある。
 彼女は生まれ変わったのだから、もうあの時のダークプリキュアとは別人なのだと、何度でも言ってわかってもらいたい。

「私は本当に生きていていいの? ……生きていたかった人の希望を奪って、その人の大事な人を悲しませて……。それなのに、私が生きていて、本当にいいの……? そうだ、姉さんも……」

 高町ヴィヴィオ、アインハルト・ストラトス、梅盛源太。それから、明堂院いつきや月影ゆりもまた、彼女を庇って死んでしまった。
 それに、月影ゆりも、罪を重ねていた。来海えりかを殺したのは彼女かもしれないという事だった。

「……ゆりさん、やっぱり」

 ……彼女は、そういえば以前に、月影ゆりが犯した罪を全て、自分のものとしてつぼみに話したのである。つぼみはきっと混乱している。
 なのはは、つぼみに全てを話す事にした。全てを話すと、つぼみはどこか納得して、驚きもせず、茫然とする事もなく、ただ……悲しそうな瞳をしていた。ずっと、心のどこかで疑っていたのかもしれない。
 ただ、あくまでえりかが死んだ一件は、ダークプリキュア、大道克己の推察であって、本当かどうかはわからない。その可能性があるというだけだ。それも踏まえて、全て、これまでのいきさつをちゃんと話した。
 つぼみは、そんななのはに、強く言った。

「行きましょう。あなたは自分の罪と向き合うべきです。……そうすれば、きっと答えがわかると思います。あなたが罪を犯した警察署で、みんなに謝って……それで許してもらえなくても、生きてください。私はそれでも、あなたと一緒にいます。私は、なのはの友達ですから」

 警察署。そこに行く前に、まだ行かなければならない場所がある事に、なのははふと気づいた。


77 : 風花の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:45:36 FKsPOkkk0

「……そうだ、行かなきゃ」
「行かなきゃって、警察署に、ですか……?」

 なのはは、首を振る。警察署ではない。

「……つぼみも、来る……?」

 なのはは、つぼみに告げた。

「えりかと……お姉さんが、眠っている場所」

 ある場所にえりかとゆりの遺体が収められている場所の話もした。これから行くのは、その場所だ。
 いつきもまた、同じ場所に寄り添うように、そこにいてほしいのだと。







「くそ……俺は……」

 良牙は、自分の姿を憂いた。
 五代も、一条も、そしていつきも自分の為に死んだ。──三人は、良牙のために死んでしまったのだ。

「つぼみ、それに、なのは……すまねえ……すまねえッッ!!」

 良牙は、項垂れて両膝を突き、地面を殴る。
 己を責めながらも、その顔を見られたくないような──合わせる顔がないような様子だった。少なくとも、いつきを守れなかったのは良牙の責任である。
 つぼみは、そんな彼に何も言う事はできなかった。

「……おい、お前」

 そんな良牙に声をかけたのは、翔太郎であった。

「……やっぱ、フィリップと同年代かそこらってとこか。確かに体だけは俺より強そうだ」
「なんだ、テメエ」

 良牙は、つぼみやなのはならともかく、他の人間に話しかけられたら、こんなぶっきらぼうな返事しかできないほどに、自分を責めていた。
 ガドルへの怒り、ひいては自分への怒りが良牙の中にあった。

「お前はいつから、仮面ライダーになったんだよ」
「……つい、さっきだ……」
「なんで、仮面ライダーになった」

 良牙はそれを言われて、少し悩んだ。何故自分がライダーになったのか、それを考え直すと……何もない。しかし、自分の記憶の糸を探りながら、口に出していく事にした。

「……俺はここで、たくさんの仮面ライダーに出会った。何人も……。
 ゼクロス、村雨良。感情がねえとか言ってたけど、あいつは魂を継ぐ者、仮面ライダーとして俺たちのために戦ってくれた。
 クウガ、五代雄介、それに一条薫。あいつらは誰かの笑顔を守るために戦った。
 そして、エターナル、大道克己。奴は本当に感情を失くしていて、俺たちを襲った敵だ。それでも最後にはゼクロスと全力でぶつかり、戦う事で、生きた。つぼみに心を救われて……。
 だが、このエターナルだけは最後までゼクロスやクウガのような仮面ライダーとして戦えなかった。だから俺はエターナルを仮面ライダーにしてやるために……!」

 いや、それなら──自分で言っていて、それが解答になっていない事に気が付いた。

「じゃあ、お前にとって、仮面ライダーって何なんだよ」

 そう、良牙にとっての仮面ライダーの意味は、わからないのだ。
 仮面ライダーにするために仮面ライダーになった。──それはおかしい。仮面ライダーが何なのかもわからず、そんな事を言えるわけがない。
 良牙は、己が変身する事の意味などわからなかった。

「……」


78 : 風花の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:45:53 FKsPOkkk0

 その問いに、答える事はできない。

「わからねえのか?」

 翔太郎は、しかめっ面で良牙に言う。

「俺たちは、街を、世界を、誰かを泣かせる奴を許さねえ……! だから仮面ライダーになった。だけど、仮面ライダーを名乗る意味さえわからないからお前はガドルを恐れたんだ! 確かにお前は体も強ェし、エターナルの力も強ェだろうよ……けどなッ!」

 翔太郎は、良牙の胸倉をつかみ、俯いていた良牙の泣き顔に顔を近づける。
 その顔は怒りに歪んでいる。しかし、強い意志にも見える。目を合わせる事が怖い良牙の目を、強い瞳で睨んでいる。
 フェイト、ユーノ、霧彦、一条に続いて、いつきまで死んだというその怒りが、翔太郎の顔を激昂に染めていた。
 胸が痛い。体を曲げている現状では、翔太郎の胸は軋んでいる。しかし、それさえ忘れさせるほどのアドレナリンが彷彿している。

「……俺は、誰かを、何かを……守りたい気持ちでは、心ではお前にも、誰にも負けないつもりだ! 俺の仲間も同じだ。どんな時でも誰かを守るために立ち上がった! でも、お前は弱い! だから仮面ライダーの意味がわからねえんだ! お前が何も考えてねえし、何も守ろうとしてねえからだろッ!!」

 その言葉は、良牙の胸に深く突き刺さる。

「……そうだ、俺は……くそっ……」

 こんな、生身では良牙に敵いそうもない男の覇気。──まるで、良牙に勝てる余地が見当たらない。
 純粋に格闘で戦っても、今ならば負けてしまうような気がする。
 そう思うほどに、翔太郎の心は強く、良牙の心は弱かった。

「……おい。お前の知り合いの──早乙女乱馬と、天道あかねの事を、俺は知ってるよ」

 ふと、良牙の顔色が変わった。

「早乙女乱馬だ!! ……お前のダチだろ!!」

 早乙女乱馬と天道あかねの事は、翔太郎も知っていた。
 良牙は、彼が乱馬を知っている事に驚き、躊躇いながらも、「ああ」と力なく答えた。もう会えない知り合いだ。
 友と認めるのは癪だが、彼が死んだ時、良牙は彼の事を「ダチ」と呼んだ。
 そう、好敵手──ダチだ。

「そいつはな、仲間を失っても、大切な人を守るために戦った。……ガドルより強いダグバと戦い、最後にはダグバに一矢報いたんだよ! その結果、あいつは死んだみたいけど……でも、俺は早乙女乱馬って奴を尊敬するよ。俺の心にその名前が残ってる、俺の中では死んでねえ。そいつの遺志を受け継いだ奴らの名前もな……。俺なんかよりずっと強い奴らなんじゃねえかって思うよ。けどよ、お前はどうして……早乙女乱馬と互角に渡り合えるほどの馬鹿力を持ってるのに、あんな奴にビビッてんだよ……それが、俺には、許せねえよ……!!」

 早乙女乱馬──翔太郎は、その戦いを見たわけじゃない。
 しかし、ダグバを追い込んだその戦士の意地を、翔太郎は凄いと思った。
 生身でダグバと戦った男がいる。それが自分より年下の──あろうことか、高校生だった。
 信じられないが、それが事実だと知った時、そいつの意地に翔太郎はただただ感嘆するのみだった。
 その戦いには、あまりにも……悲しい続きがあるのだが。

「あかねさんは……あかねさんは、どうしたんだ……」
「……そうだ、もう一つ。お前に知らせきゃいけない事が、あったな」

 翔太郎は言いたくはなかったが、あの女とは、もう会った。
 会って、戦ったのだ。

「天道あかねは、殺し合いに乗っている」
「!? そんな、バカな……」

 天道あかねと、最も似つかわしくない──しかし、どこかで不安として過っていた答えが、良牙の耳に入った。


79 : 風花の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:46:19 FKsPOkkk0

「本当だ。早乙女乱馬を蘇らせる──その為らしい。ドーパントの力にまで飲み込まれて、暴走までしている。……俺たちにはそいつを止められなかった!! 俺たちがどんなに言葉を届けようとしても、俺たちの言葉は、届かなかった……」

 しかし、伝えなければならない。
 乱馬がダグバに一矢報いただけならば、それはそこそこ綺麗にまとまる良い話かもしれないが、悲しい続きも含めて、良牙に全て話さなければならないのだ。

「……あかねさん……そこまでして……乱馬を……」

 乱馬への、これ以上ないほどの敗北を良牙は感じた。
 乱馬は、俺が負けたガドルより強いダグバって奴に善戦した。
 乱馬は、その死であの優しいあかねが殺し合いに乗るほどの愛を受けていた。
 強さでも、恋でも、また乱馬に負けた……。
 案外、もうそれもどうでもいい事なのではないかと、良牙は思った。
 そう感じてしまうほど、あかねが殺し合いに乗った事実はショックだった。

「あかねさんが……、この馬鹿げた殺し合いに乗っている……」
「ああ。いつか、お前の大事な人を奪うかもしれない。……そうなっちまったんだ。悲しい事にな」

 激しいショックを受ける良牙に、それでも尚、成長してほしいと思って、翔太郎は心を鬼にする。ただの怒りじゃない。
 確かに、先ほどは、ただの怒りが翔太郎を縛っていた。良牙が仮面ライダーとして戦う意味をよく理解せずに戦っていた事への、怒りだ。
 しかし、今は、そんな彼が仮面ライダーとなる事への希望と期待を乗せたうえでの、優しさが翔太郎の鬼のような心を言葉にしていた。

「あかねさんは、俺の大事な人だった。俺はあかねさんがずっと、大好きだった」
「……じゃあ、お前は天道あかねが、そこにいるお前の仲間を殺すかもしれないのを、黙って見ているのか?」

 花咲つぼみ。
 ここで、ずっと一緒にいた少女だ。
 もう一人の少女も、死んで欲しくない。ああして与えられた新しい命が奪われるのは許せない。
 良牙は、今まで誰かを守るとか、あかねやあかり以外に対しては全く考えた事がなかった。
 孤独に旅をし続けてきたからだろうか。しかし、つぼみや一条は道を示してくれた。あるいは、良もそうだった。

「厭だ! 俺は……」

 あかねは、本当に優しい人だった。
 良牙は、強くて優しいあかねが好きだった。
 そんなあかねが、今は──

「……お前が知っているあかねが、もうどこにもいないとしたら?」

 翔太郎の、遠い記憶。亜樹子が風都に来て、最初の事件。──街を泣かせたドーパントは、ずっと昔、一緒に遊んでいた、いつも一緒だった津村真里菜という翔太郎の幼馴染だった。
 翔太郎は、それこそ恋愛感情ではないものの、彼女が好きだった。彼女と一緒にいるのが楽しかった。彼女の帽子を探して、見つけ出そうとした。
 ……だが、翔太郎は街を守るために、彼女を倒すしかなかった。翔太郎にも辛い話だった。それと同じ事を、いま翔太郎は良牙に強いなければいけないのだ。

「俺の知っているあかねさんがどこにもいないとしても……俺は、俺の好きだった優しいあかねさんを見つけ出す……! 本当のあかねさんは優しい人だ。その心が今、どこにもないはずがない……。たとえどこにもいないと言われても、俺は見つけるまで探す! そして、俺はつぼみたちも守る……これは、絶対だ!」

 あかね。
 それは、良牙が守るべき存在だった。
 その名前を思い出した時、良牙は気づく。
 あかねを守りたい。
 だが、あかねが敵だったら……きっと、つぼみたちも守りたい。

「お前……そう思えるんなら、立派に仮面ライダーできるじゃねえか」

 翔太郎は、やっと、良牙に笑った。

「やってやれよ、お前が。仮面ライダーエターナルを、仮面ライダーにするんだろ? 良いじゃねえか……」


80 : 風花の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:48:27 FKsPOkkk0

 天道あかねと出会ったとしても、彼はきっと折れない。
 いや、ガドルと出会ったとしても彼は立派に、仮面ライダーとして戦うだろう。

「俺はお前を仮面ライダーの後輩として認めるぜ、仮面ライダーエターナル」

 悲しみを乗り越えて戦う。
 どんな世界でも、響良牙が仮面ライダーとして戦う世界など、誰も想像しなかっただろう。
 しかし、ここで今、数奇な運命によって、それは実現した。
 仮面ライダーエターナル、響良牙。──悪のライダーとしてでなく、正義のライダーとして、その名が伝説を塗り替える。

「俺は、あかねさんの笑顔を、みんなの笑顔を奪ったこの殺し合いをブッ壊す! 響良牙として……新しい希望、仮面ライダーエターナルとして!」







「……結局、こうなるのか」

 その後のそれぞれの行動方針は簡単だ。
 花咲つぼみ、月影なのは、響良牙──そして、明堂院いつきは共に、えりか、ゆりの墓地に行く。
 左翔太郎は、これから単独で警察署に向かう予定だった。仲間がそこにいる事も伝えている。まあ、今後ともどうなるかはわからないが。

「本当に一人で大丈夫なんですか?」

 翔太郎は、これからしばらく参加者としては単独で行動する事にしていた。
 単純に、警察署方面に向かう必要があるからだ。危険かもしれないが、今も相棒は心強い。
 それに──制限、という奴が気がかりだった。あれは一人で行動しなければならないらしい。その条件も、『参加者』の誰にも見られず聞かれずが一人になるという事である。
 フィリップやザルバのような存在を数に入れていないあたり、おそらく参加者以外は問題なしという事なのだろう。

「……俺は一人じゃねえよ、相棒はいつもココにいる」

 翔太郎はダブルドライバーを翳す。
 それかたもう一つ──

『Is that your buddy?(それが相棒なのですか)』

 マッハキャリバー。これは、翔太郎に預けられたもう一つの支給品だ。警察署にいるヴィヴィオと合流するために、翔太郎に預けておく必要がったのだ。
 警察署に、ヴィヴィオがいる事は、なのはにとっても衝撃だったが、少なくとも自分が殺めたと思っていた人間の一人が生きていた事には、安心しているようだった。

「わかりました。……私たちは、みんなのいる場所に行ってから、そちらに向かう事にします」
「おう……気をつけてな。俺たちは、まだしばらく警察署にいる予定だ。美希の事は任せとけ……」

 響良牙。花咲つぼみ。月影なのは。
 左翔太郎。フィリップ。マッハキャリバー。
 二人は、ここでまたチームをそれぞれ分ける事になった。


81 : 風花の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:49:03 FKsPOkkk0
【1日目/夜】
【E―8/森】

【響良牙@らんま1/2】
[状態]:全身にダメージ(大)、負傷(顔と腹に強い打撲、喉に手の痣)、疲労(大)、腹部に軽い斬傷、五代・乱馬・村雨の死に対する悲しみと後悔と決意、男溺泉によって体質改善、デストロン戦闘員スーツ着用
[装備]:ロストドライバー+エターナルメモリ@仮面ライダーW、T2ガイアメモリ(ゾーン、ヒート、ウェザー、パペティアー、ルナ、メタル、アイスエイジ)@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式×14(食料二食分消費、(良牙、克己、一条、五代、十臓、京水、タカヤ、シンヤ、丈瑠、パンスト、冴子、シャンプー、ノーザ、ゴオマ、速水、バラゴ))、水とお湯の入ったポット1つずつ、志葉家のモヂカラディスク@侍戦隊シンケンジャー、ムースの眼鏡@らんま1/2 、細胞維持酵素×2@仮面ライダーW、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、歳の数茸×2(7cm、7cm)@らんま1/2、デストロン戦闘員マスク@仮面ライダーSPIRITS、プラカード+サインペン&クリーナー@らんま1/2、呪泉郷の水(娘溺泉、男溺泉、数は不明)@らんま1/2、呪泉郷顧客名簿、呪泉郷地図、特殊i-pod、細胞維持酵素×4@仮面ライダーW、克己のハーモニカ@仮面ライダーW、バッドショット+バットメモリ@仮面ライダーW、スタッグフォン+スタッグメモリ@仮面ライダーW、テッククリスタル(シンヤ)@宇宙の騎士テッカマンブレード、水とお湯の入ったポット1つずつ×2、力の源@らんま1/2、スパイダーショック+スパイダーメモリ@仮面ライダーW、まねきねこ@侍戦隊シンケンジャー、滝和也のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS、黒子の装束@侍戦隊シンケンジャー、『戦争と平和』@仮面ライダークウガ、『長いお別れ』@仮面ライダーW、インロウマル&スーパーディスク@侍戦隊シンケンジャー、紀州特産の梅干し@超光戦士シャンゼリオン、ムカデのキーホルダー@超光戦士シャンゼリオン、双眼鏡@現実、ランダム支給品1〜6(ゴオマ0〜1、バラゴ0〜2、冴子1〜3)、バグンダダ@仮面ライダークウガ
[思考]
基本:天道あかねを守り、自分の仲間も守る
0:あかねさん…
1:つぼみ、“なのは”とともに、えりか、ゆりの死地に向かい、いつきを埋める。
2:その後、警察署に向かう。
3:いざというときは仮面ライダーとして戦う。場合によってはあかねも…。
[備考]
※参戦時期は原作36巻PART.2『カミング・スーン』(高原での雲竜あかりとのデート)以降です。
※夢で遭遇したシャンプーの要望は「シャンプーが死にかけた良牙を救った、乱馬を助けるよう良牙に頼んだと乱馬に言う」
「乱馬が優勝したら『シャンプーを生き返らせて欲しい』という願いにしてもらうよう乱馬に頼む」です。
尚、乱馬が死亡したため、これについてどうするかは不明です。
※ゾーンメモリとの適合率は非常に悪いです。
※エターナルでゾーンのマキシマムドライブを発動しても、本人が知覚していない位置からメモリを集めるのは不可能になっています。
(マップ中から集めたり、エターナルが知らない隠されているメモリを集めたりは不可能です)
※主催陣営人物の所属組織が財団XとBADAN、砂漠の使徒であることを知りました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを全て知りました。
※つぼみ、一条、鋼牙と125話までの情報を交換し合いました。
※男溺泉に浸かったので、体質は改善され、普通の男の子に戻りました。
※エターナル・ブルーフレアに変身できるようになりました(ただし彼の人間としての迷いや後悔がレッドフレアにしてしまう事もあります)。
※あかねが殺し合いに乗った事を知りました。


82 : 風花の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:50:59 FKsPOkkk0

【花咲つぼみ@ハートキャッチプリキュア!】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、加頭に怒りと恐怖、強い悲しみと決意、デストロン戦闘員スーツ着用
[装備]:プリキュアの種&ココロパフューム、プリキュアの種&ココロパフューム(えりか)@ハートキャッチプリキュア!、プリキュアの種&ココロポット(ゆり)@ハートキャッチプリキュア!、こころの種(赤、青、マゼンダ)@ハートキャッチプリキュア!、ハートキャッチミラージュ+スーパープリキュアの種@ハートキャッチプリキュア!
[道具]:支給品一式×5(食料一食分消費、(つぼみ、えりか、三影、さやか、ドウコク))、鯖(@超光戦士シャンゼリオン?)、スティンガー×6@魔法少女リリカルなのは、破邪の剣@牙浪―GARO―、まどかのノート@魔法少女まどか☆マギカ、大貝形手盾@侍戦隊シンケンジャー、反ディスク@侍戦隊シンケンジャー、デストロン戦闘員スーツ(スーツ+マスク)@仮面ライダーSPIRITS、デストロン戦闘員マスク(現在着ているものの)、着替え、『ハートキャッチプリキュア!』の漫画@ハートキャッチプリキュア!、姫矢の首輪、大量のコンビニの酒
[思考]
基本:殺し合いはさせない!
1:つぼみ、“なのは”とともに、えりか、ゆりの死地に向かい、いつきを埋める。
2:その後、警察署に向かう。
3:この殺し合いに巻き込まれた人間を守り、悪人であろうと救える限り心を救う
4:南東へ進む、18時までに沖たちと市街地で合流する(できる限り急ぐ)
5:……そんなにフェイトさんと声が似ていますか?
[備考]
※参戦時期は本編後半(ゆりが仲間になった後)。少なくとも43話後。DX2および劇場版『花の都でファッションショー…ですか!? 』経験済み
 そのためフレプリ勢と面識があります
※溝呂木眞也の名前を聞きましたが、悪人であることは聞いていません。鋼牙達との情報交換で悪人だと知りました。
※良牙が発した気柱を目撃しています。
※プリキュアとしての正体を明かすことに迷いは無くなりました。
※サラマンダー男爵が主催側にいるのはオリヴィエが人質に取られているからだと考えています。
※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました。
※この殺し合いにおいて『変身』あるいは『変わる事』が重要な意味を持っているのではないのかと考えています。
※放送が嘘である可能性も少なからず考えていますが、殺し合いそのものは着実に進んでいると理解しています。
※ゆりが死んだこと、ゆりとダークプリキュアが姉妹であることを知りました。
※大道克己により、「ゆりはゲームに乗った」、「えりかはゆりが殺した」などの情報を得ましたが、半信半疑です。
※ダークプリキュアにより、「えりかはダークプリキュアが殺した」という情報を得ましたが、上記の情報と矛盾するため混乱しています。
※所持しているランダム支給品とデイパックがえりかのものであることは知りません。
※主催陣営人物の所属組織が財団XとBADAN、砂漠の使徒であることを知りました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを全て知りました。
※良牙、一条、鋼牙と125話までの情報を交換し合いました。
※全員の変身アイテムとハートキャッチミラージュが揃った時、他のハートキャッチプリキュアたちからの力を受けて、スーパーキュアブロッサムに強化変身する事ができます。


83 : 風花の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:51:29 FKsPOkkk0

【月影なのは(ダークプリキュア)@ハートキャッチプリキュア!】
[状態]:健康、人間化
[装備]:いつきの遺体(運んでいる途中)
[道具]:支給品一式×4(ゆり、源太、ヴィヴィオ、乱馬)、ゆりのランダムアイテム0〜2個、ヴィヴィオのランダムアイテム0〜1個(戦闘に使えるものはない)、乱馬のランダムアイテム0〜2個、パワーストーン@超光戦士シャンゼリオン、ふうとくんキーホルダー@仮面ライダーW、霧彦のスカーフ@仮面ライダーW、須藤兄妹の絵@仮面ライダーW、霧彦の書置き、山千拳の秘伝書@らんま1/2、水とお湯の入ったポット1つずつ、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはシリーズ、ガイアメモリに関するポスター×3、『太陽』のタロットカード
[思考]
基本:罪を償う。
1:つぼみ、“なのは”とともに、えりか、ゆりの死地に向かい、いつきを埋める。
2:その後、警察署に向かう。
3:源太、アインハルト…。
[備考]
※参戦時期は46話終了時です
※ゆりと克己の会話で、ゆりが殺し合いに乗っていることやNEVERの特性についてある程度知りました
※時間軸の違いや、自分とゆりの関係、サバーク博士の死などを知りました。ゆりは姉、サバークは父と認めています。
※筋肉強化剤を服用しました。今後筋肉を出したり引っ込めたりできるかは不明です(更に不明になりました)。
※キュアムーンライトに変身することができました。衣装や装備、技は全く同じです。
※エターナル・ブルーフレアに変身できましたが、今後またブルーフレアに変身できるとは限りません。
※警察署内での大規模な情報交換により、あらゆる参加者の詳細情報や禁止エリア、ボーナスに関する話を知りました。該当話(146話)の表を参照してください。
※心が完全に浄化され、プリキュアたちの力で本当の人間の体を手に入れました。かつてほどの戦闘力は失っている可能性が高いと思われますが、何らかの能力があるのか、この状態では無力なのか、その辺りは後続の書き手さんにお任せします。顔や体格はほとんどダークプリキュアの時と同じです。
※いつきにより、この場での仮の名前として「月影なのは」を名乗る事になりました。
※つぼみ、いつきと“友達”になりました。

【いつきの所持品は次の通り(全て遺体とともにあります)】
プリキュアの種&シャイニーパフューム@ハートキャッチプリキュア!、支給品一式(食料と水を少し消費)、大道克己のナイフ@仮面ライダーW、春眠香の説明書、ガイアメモリに関するポスター


84 : 風花の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:51:44 FKsPOkkk0

【左翔太郎@仮面ライダーW】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(大)、胸骨を骨折(身体を折り曲げると痛みます・応急処置済)、上半身に無数の痣(応急処置済)、照井と霧彦の死に対する悲しみと怒り
[装備]:ダブルドライバー@仮面ライダーW、T2ガイアメモリ(アイスエイジ)@仮面ライダーW、犬捕獲用の拳銃@超光戦士シャンゼリオン、散華斑痕刀@侍戦隊シンケンジャー、マッハキャリバー(待機状態・破損有(使用可能な程度))@魔法少女リリカルなのはシリーズ、リボルバーナックル(両手・収納中)@魔法少女リリカルなのはシリーズ
[道具]:支給品一式、ガイアメモリ(ジョーカー、メタル、トリガー)、ナスカメモリ(レベル3まで進化、使用自体は可能(但し必ずしも3に到達するわけではない))@仮面ライダーW、ガイアドライバー(フィルター機能破損、使用には問題なし) 、少々のお菓子
[思考]
基本:殺し合いを止め、フィリップを救出する
0:いつきからプリキュアや砂漠の使徒について詳しく聞く
1:出来れば事件が起きた慰安室を調べておきたい
2:風都タワーを破壊したテッカマンランスは許さねえ。
3:あの怪人(ガドル、ダグバ)は絶対に倒してみせる。あかねの暴走も止める。
4:仲間を集める
5:出来るなら杏子を救いたい
6:泉京水は信頼できないが、みんなを守る為に戦うならば一緒に行動する。
[備考]
※参戦時期はTV本編終了後です。またフィリップの参戦時期もTV本編終了後です。
※他世界の情報についてある程度知りました。
(何をどの程度知ったかは後続の書き手さんに任せます)
※魔法少女についての情報を知りました。


【特記事項】
※シャンプーの支給品は、五代雄介製のおまもり@仮面ライダークウガでした。
※一条薫の遺体はE−7荒地に放置されています。彼の死体の傍らには、ミカヤ・シェベルの居合刀@魔法少女リリカルなのはシリーズ、レミントンM870(8/8)@現実、五代雄介製のおまもり@仮面ライダークウガ、『塔』のタロットカードが放置されており、アマダムは破壊されています。サイクロン号@仮面ライダーSPIRITSは遺体の付近に倒れた状態で放置されています。






85 : 風花の物語 ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:52:14 FKsPOkkk0



 ガドルはビートチェイサーに身を乗せて走る。変身を解除し、軍服の男の姿となっていた。
 胸と腹は痛む。……これまでで最も重い一撃は、今なお軍服の男の体を痛めている。
 彼は特に行くあてもなく、ただ一人、別の参加者との合流を求めて走っていた。
 荒地を超え、再び生い茂った森を走る。

(……戦え、戦え、戦え……!)

 クウガもダグバももういない。
 ガドルの心に開いた穴を開く何者かの存在を求めて、ガドルは夜を往く。



【1日目/夜】
【F―7/森】

【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】
[状態]:疲労(小)、全身にダメージ(小)(回復中) 、肩・胸・顔面に神経断裂弾を受けたダメージ(回復中)、胸部に刺傷(回復中)、腹部・胸部にかなり強いダメージ、ダグバの死への空虚感、電撃による超強化、ビートチェイサー2000に搭乗中
[装備]:ビートチェイサー2000@仮面ライダークウガ、スモークグレネード@現実×2、トライアクセラー@仮面ライダークウガ、京水のムチ@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式×8(スバル、ティアナ、井坂(食料残2/3)、アクマロ、流ノ介、なのは、本郷、まどか)、東せつなのタロットカード(「正義」、「塔」、「太陽」を除く)@フレッシュプリキュア!、ルビスの魔剣@牙狼、鷹麟の矢@牙狼
[思考]
基本:殺し合いに優勝し真の頂点に立つ。
0:ダグバのように、周囲の人間を殺して誰かを怒らせるのも良い。
1:参加者を探す。
2:石堀、エターナルと再会したら殺す。
3:強者との戦いで自分の力を高める。その中で、ゲームとしてタロットカードの絵に見立てた殺人を行う。
4:体調を整え更なる力を手に入れたなら今まで取るに足らんとしてきた者とも戦う。
※死亡後からの参戦です。
※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。
※ナスカ・ドーパント、ダークメフィストツヴァイを見て、力を受け継ぐ、という現象を理解しました。
※フォトンランサーファランクスシフト、ウェザーのマキシマムドライブによって大量の電撃を受けた事で身体が強化され、アメイジングマイティに匹敵する「驚天体」に進化できます。また、電撃体の使用時間も無限になっており、電撃体とその他のフォームを掛け持つ事ができます(驚天体では不可能です)。
※仮面ライダーエターナルが天候操作や炎を使ったため、彼に「究極」の力を感じています。また、エターナルには赤、青の他にも緑、紫、金などの力があると考えています。


86 : ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 14:58:07 FKsPOkkk0
以上、投下終了です。
本当は警察署残留組ももう少し書きたかったんですが、ちょっと忙しくて、ちょっとしか書けませんでした。
そのため、前半で終わってる参加者と後半まで登場する参加者で時間の差が結構ある(というか、前半時点で一部登場してすらいない人もいる)ので、
個人的には前半(〜「変わり者の物語」)、後半(「冒険者の物語」〜)で163話・164話に分けた方が良いかなと思います。

今回も結構支給品が出てきましたが、支給品解説は後でwikiの支給品一覧の方に登場分は収録します。
ちょっとしんどいんで、SSの最後に書くのはやめました。

なんか矛盾、修正点、問題点、感想なんかがあったらお願いします。


87 : ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 15:05:55 FKsPOkkk0
あ。あと一番大事な事を忘れてました。

もう始まってますが、したらばの方で変身ロワイアルの人気投票やってます!
今回のSSをまだ読んでいない人も、読んだ人も、人気投票よろしくお願いします。

部門は
「好きなエピソード」、「好きなキャラクター」、「好きな台詞」、「好きなバトル」、「好きな支給品」です。
この中から、好きな部門(全部でもいい)を選んで、自分が好きな●●、1位〜3位をランク付けして投票してみてください。
既にコメントを添えてくれている方もいますが、本当にこういうのは励みになるので、余裕があったら一言でもいいので何か言ってくれたらみんな嬉しいと思います。

どしどし応募してねー(ニチアサ風に)


88 : 名無しさん :2014/03/24(月) 15:43:22 l4H.pZwg0
投下乙です!
おお……これはなんて凄い乱戦なのでしょう!
冒頭では美希たんと杏子が互いの価値観の違いで喧嘩をして、仲直りをしそうになったり
鋼牙とザルバがようやく再会できて、チームの結束が更に深まりそう……
と思ったら、次はダークプリキュアの心を照らそうとするサンシャインの戦いや、クウガとガドルの戦い
そして強化したガドルとの戦いや、月影なのはとして生まれ変わった彼女や、スーパーシルエットの奇跡など、見どころが盛りだくさんでした!
一条さんといつきは死んでしまいましたが、二人が残してくれた希望が更なる奇跡を生むと信じたいです。
あと、翔太郎の口からついに良牙はあかねが殺し合いに乗ってしまったことを知りましたが、果たしてどうなるか……?

最後にもう一度、大作投下乙でした!


89 : 名無しさん :2014/03/24(月) 15:45:59 l4H.pZwg0
そして指摘なのですが、翔太郎の状態表のいつきや京水に関する部分は必要ないかと思います。


90 : 名無しさん :2014/03/24(月) 16:03:22 .zL52vUs0
投下乙です
一条さんが最後まで熱かった!閣下は更にパワーアップしちゃってとんでもないことに…
良牙に渇を入れる翔太郎も良かったなぁ


91 : ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 16:15:34 FKsPOkkk0
>>89
ごめんなさい、翔太郎の状態表だけコピペしただけで殆ど手を付けてませんでした(確認ミス)。
アイスエイジもだぶってますが、翔太郎が良牙にアイスエイジを渡す描写は入れてないので、これも翔太郎の手にあるのが正しいという事でお願いします。
翔太郎と良牙のところは後ほど修正します。


92 : 名無しさん :2014/03/24(月) 16:48:32 N7EV..uQ0
投下乙!
やばい、やばい、やばい!

二つの因縁の対決、むっちゃ良かった!
一条さんは五代と二人で一人の仮面ライダークウガとして戦い、お疲れ様でした!
最期の台詞が、五代への返答になってるのもまたいい!

そしてもう一つの因縁…
ダークプリキュアが名前をもらったところでウルっときたと思ったら、
浄化されて消えてしまうってことで別の意味で悲しくなったところへ、
プリキュアの奇跡で生まれ変わりって…
この涙腺三段コンボがやばすぎる!
ダークプリキュア改め月影なのはちゃんには、死んでしまったいつきの分までがんばってほしいね

良牙と翔太郎のやりとり…杏子の時もそうだったけど、このロワの翔太郎の貫録はパナい
良牙はあかねを止めることが、そして真の仮面ライダーとして戦う事が出来るのか、見どころですね

長くなりましたが、とにかくとてもおもしろかったです!改めて投下乙です!


93 : 名無しさん :2014/03/24(月) 21:06:42 cpx.zOo60
投下乙です

どうなるかなと思ったら…
よくぞここまで上手く、細かく書き切った!
GJ!


94 : ◆gry038wOvE :2014/03/24(月) 22:26:02 FKsPOkkk0
【左翔太郎@仮面ライダーW】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(大)、胸骨を骨折(身体を折り曲げると痛みます・応急処置済)、上半身に無数の痣(応急処置済)、照井と霧彦の死に対する悲しみと怒り
[装備]:ダブルドライバー@仮面ライダーW、T2ガイアメモリ(アイスエイジ)@仮面ライダーW、犬捕獲用の拳銃@超光戦士シャンゼリオン、散華斑痕刀@侍戦隊シンケンジャー、マッハキャリバー(待機状態・破損有(使用可能な程度))@魔法少女リリカルなのはシリーズ、リボルバーナックル(両手・収納中)@魔法少女リリカルなのはシリーズ
[道具]:支給品一式、ガイアメモリ(ジョーカー、メタル、トリガー)、ナスカメモリ(レベル3まで進化、使用自体は可能(但し必ずしも3に到達するわけではない))@仮面ライダーW、ガイアドライバー(フィルター機能破損、使用には問題なし) 、少々のお菓子
[思考]
基本:殺し合いを止め、フィリップを救出する
0:警察署に戻る
1:制限…?
2:あの怪人(ガドル、ダグバ)は絶対に倒してみせる。あかねの暴走も止める。
3:仲間を集める
4:出来るなら杏子を救いたい
[備考]
※参戦時期はTV本編終了後です。またフィリップの参戦時期もTV本編終了後です。
※他世界の情報についてある程度知りました。
(何をどの程度知ったかは後続の書き手さんに任せます)
※魔法少女についての情報を知りました。

----------

翔太郎の状態表はこんな感じに修正します。
あとアイスエイジは翔太郎の所持品という事で。


95 : 名無しさん :2014/03/24(月) 23:12:40 OK2LyX/E0
言いたい事は他の人たちが全部言ったのでこれだけ。超大作投下乙

…あれ?ガミオ復活のトリガーってなんだっけ?


96 : 名無しさん :2014/03/24(月) 23:30:07 l4H.pZwg0
修正乙です。


97 : ◆gry038wOvE :2014/03/25(火) 00:18:23 NVuF4zb60
>>95
グロンギによる死者の数が9人になった時ですね
一応、それもラストに添える形で書いてたんですけど、この話のラストでそれを入れるとそこだけ浮いちゃう気がしたので、別話として投下したいと思います。
14人も出てくると読む気失せると思いますし。

予約していいのか悩む方が多いと思うので、復活のトリガーを引いた僕がコレが24時間経って通ったら、その後で投下しますね。
何かアイディアがあって他に書いている方いましたら、言ってくれれば引き下がります(そんな長い話でもないし大した話でもないので)。


98 : 名無しさん :2014/03/25(火) 12:49:44 zx4OWaMIO
投下乙です。

タロットで唯一、位置に関係なく不吉なカード、塔。
誰かの笑顔を守る為には、自分の笑顔を犠牲にしなきゃいけないクウガにはお似合いだな。

ガドル閣下大暴れ。
殺して強くなる事を究めると、「どうやって強い獲物を作るか」に思考がシフトしていくんだろうか。


99 : ◆gry038wOvE :2014/03/25(火) 15:51:42 NVuF4zb60
じゃあ、まあン・ガミオ・ゼダで投下します。


100 : 超絶 ◆gry038wOvE :2014/03/25(火) 15:52:22 NVuF4zb60


【D-6 屈辱の丘 08:00 p.m.】


 ズ・ゴオマ・グ、ゴ・ガドル・バ、ン・ダグバ・ゼバ──三人のグロンギが、この殺し合いには招かれていた。
 そのグロンギたちは、この場では当人たちも知らぬ間に、あるゲゲルを行わされている。
 バギンの「姿を変えるリントと、その周りの戦士」を葬る──そして、ちゃんと当人たちの手でその数のリントを殺し、封印が解かれた時、“成功”とみなされる。このゲゲルの対価は、成功者の昇格ではなく、王の復活だ。
 ゲゲルが成功し、時計の小さい針が次の偶数を指した時、この闇の中から新たなる王が蘇る──。

 ──ユーノ・スクライア
 ──フェイト・テスタロッサ
 ──園咲霧彦
 ──山吹祈里
 ──早乙女乱馬
 ──溝呂木眞也
 ──西条凪
 ──一条薫
 ──明堂院いつき

 遂に、グロンギの算法における10の数、即ち、我々リントにおける9のリントの命が、グロンギ族によって奪われた。
 ここまで約20時間を要している。彼らにとっては、数に対してこれだけの時間を要したのは、予想外だろうか。
 いわば、彼ら9人は生贄と言ったところだろうか。

 ──もう一人の王が、動き出す。

 彼らなら、一体、この王に対して何をするだろう。

 ゴオマなら、己の新たな力とその強さを過信して、無謀に挑むだろうか。
 ダグバなら、もう一人の王の存在を認めず、しかし笑顔でもう一人の王に挑むだろうか。

 彼らに仇なす者ならばどうだろう。
 五代雄介なら、グロンギの王が誰かの笑顔を奪うのを許す事はないだろう。
 一条薫なら、警察として人々を守るために彼を倒しに向かうだろう。

 今、唯一この場に残るガドルなら──────いや、それは推測する必要はない。これからいずれ、実現する事になるかもしれないのだから。

「バセ ゴセ パ レザレタ?(なぜ俺は目覚めた?)」

 ──ン・ガミオ・ゼダは、己が地上の空気を吸っている事に気づく。
 丘の上には、封印の解かれた、見覚えのない棺。ガミオは、こんな棺に閉じ込められた記憶はないし、いつ封印されたのかさえ定かではなかった。
 真っ赤な狼の異形は、グロンギでありながら人の姿を持たない怪物の──しかし、かつて人だったかもしれない男の──唯一の「自分」。

「俺は二度と目覚めぬはずだった」

 ガミオは、リントの言葉でそう言う。彼がなぜ、長い眠りにありながら、リントの言葉を知っているのか──それは誰も知らない。

 五代雄介の物語はン・ダグバ・ゼバを倒すところで終わり、再び物語が動く事は、なくなったはずだった。いつか世に出るはずのガミオも世界に現れぬ事となった。ガミオは永久にこの世に目覚めぬはずだったのだ。その存在は、姿は勿論、名前さえ世に出ず──ただ紋様だけが、その世界に存在した証として在り続けるだけだった。
 もう一つのアークルや、この丘もそうだ。五代雄介の戦いの終わりとともに抹消され、永久に日の目を見る事がないはずの存在だったのである。
 しかし、本来存在し得ぬイレギュラーがガミオの存在を見つけ出し、再び、世に送り出したのだ。──何年も培われた強い意思たちが、この屈辱の丘さえも探し出したらしい。

 本来ならば、クウガの物語は、もう誰にも侵されず、誰が望んでも動き出す事はないはずだったのに。

「なぜ俺はここにいる。なぜ奴らが俺の世界にいる」

 五代雄介と一条薫は、悲しい暴力の果てに、みんなの笑顔を獲得したのだ。
 五代雄介が守った笑顔を無駄にされぬためならば、時空さえ歪められる。五代雄介がいる世界は、たった一人の男のために神の存在にさえ抗った。彼の戦いに続く神と人との戦いは、ただ五代の願いのお陰で、別の未来に──あるいは、その戦いの過去の方が「未確認生命体第4号が居た」というだけの全く別の過去に、分岐するほどの力を得た。
 それが正しい歴史であり、五代とガミオが同じ世界に存在する事はないのである。しかし、ガミオの存在までこの世に再び姿を現すほどの意思がどこかに存在したのである。……そして、その意思がこの場でも、再び発動し、ガミオは蘇った。

「この丘もまた、別の遺跡であるはずだった……。新たな世界が生まれた事で、あの遺跡をこの丘に変えたのか。……ならば、この世界は一体、なんだ」

 五代雄介が、一人の少女の手で死んだ。
 一条薫が、仮面ライダークウガとして死んだ。
 ズ・ゴオマ・グが、怪物の餌食となった。
 ン・ダグバ・ゼバが、クウガではない戦士に殺された。
 ラ・バルバ・デとラ・ドルド・グが、その戦いを操る存在になっていた。
 ゴ・ガドル・バが、グロンギ最後の勝者となり、王となった。


101 : 超絶 ◆gry038wOvE :2014/03/25(火) 15:53:56 NVuF4zb60

 そんな世界があって良いのだろうか。この殺し合いは、ガミオがいる世界や、もう一人のクウガの力が少女に宿る世界や、未確認生命体第4号の後に“アギト”が現れる世界以上に、存在してはならぬ世界ではないか。

 本来の世界とは分岐したはずのガミオの世界。
 ガミオがいるべきは、このクウガの世界で正しいのだろうか──。
 いや、違う。ガミオが現れるべきは、この世界ではない。
 五代雄介ではない。──彼のいる世界はガミオが現れる事なく終わるはずだ。
 では──小野寺ユウスケか。それが本来ならば正しいはずだ。しかし、それも違う。
 今、ここにその戦士はいないのだ。

「……だが、蘇ったからには仕方がない。俺は俺の目的を果たすとしよう」

 何にせよ、究極の闇を齎す。──それがガミオの王としての存在意義であり、本来生まれた場合の役割だ。ガミオが復活したからには、誰かにそれが望まれているという事なのである。本来なら、黒い霧を放ち、世界をグロンギの物へと変えていくのがガミオの究極の力であるはずだ。

「闇の力が使えん……。では、なぜ俺は──」

 ……しかし、今は何故かその力は発動しない。
 彼はそれを疑問に思いながらも、────すぐに理由を悟った。

「そうか、ガドル……奴がこの世界のもう一人の王となったか」

 そう、ンの戦士は二人存在してはならない。そのルールの矛盾がガミオの能力を封じているのだ。──不条理だらけのこの世界だが、己にまつわる矛盾だけは許すわけにはいかない。
 ガドルの世界の「究極の闇」は、世界を雷雲に包み、圧倒的な力で死の絶望へと落とす。
 ガミオの世界の「究極の闇」は、世界を黒霧に包み、人をグロンギに変える。
 その二つの闇の違いが、矛盾を生み、「究極の闇」が現れるのを妨害している。──そうか、ダグバがその本領を出し切る事ができなかったのは、彼が封印されていたからなのだ。

「面白い。この歪んだ殺し合いには、まだまだ存在しえない者がまだいるようだ。奴らは抗い続けるか、俺とともに消えるか……見届けよう」

 ガドルの猛攻とともに生まれた、「月影なのは」も。
 本来とは別の経路を辿り、佐倉杏子に受け継がれた「光」も。
 仮面ライダーのない世界の者が変身した「仮面ライダー」も。
 本来は、どんな世界にもない。世界に望まれているのか、望まれていないのか、それがわからない孤独な存在である。当人たちも気づいているかはわからないが。

 ガミオはそこに裁きを下す存在ではない。しかし、己の存在を証明する過程で、そんな者たちにも会うかもしれない。
 その時は、果たして何をすればいいのか、それはガミオにもわからない。

「そして、ガドルよ。お前はどれだけ、今のお前の存在を刻める……? 俺は──」

 今のガドルが、本来生まれるはずのないガドルなら、その存在の力は、どれほどか。
 ガドルは、世界に在ってはならない「IF」の存在。歴史上にあってはならない存在だ。
 ガミオもまた同じだ。彼もまた、世界にいてはならない存在である。



 この場にいられるだけで満足であるような、そんな安堵感と、この場にいていいのかわからに不安の二つがガミオの中に渦巻く。──しかし、そんな中でも、その存在を限界まで刻み付けたい本能が、ガミオを駆り立てる。
 ガドルを倒し、究極の力を取り戻す。──そして、究極の闇を齎す事で、この場に己の存在を刻みたい。
 しばらくはその本能に従おう。
 ガドルはこの夜、獣のように吠えた。



【1日目 夜中】
【D-6/グロンギ遺跡】

【ン・ガミオ・ゼダ@仮面ライダークウガ?】
[状態]:健康
[装備]:?????????
[道具]:?????????
[思考]
基本:この世界に存在する。そして己を刻む。
1:ガドルを倒し、究極の闇を齎す者となる。そして己の力と存在を証明する。
2:この世界にいてはならない者を──。
[備考]
※この殺し合いやこの「クウガの世界」について知っているかのような発言をしています。
※黒い霧(究極の闇)は現在使用できません。もう一人のグロンギの王を倒して初めてその力を発現するようです。
※この世界にいてはならない者とは、ロワのオリ要素や、設定上可能であっても原作に登場しなかった存在の事です(小説版クウガも例外ではありません)。


102 : 超絶 ◆gry038wOvE :2014/03/25(火) 15:58:11 NVuF4zb60
以上、投下終了です。
これは前の話と地続き?みたいな形になるのですが、時間表記の問題で一応単独話です。
次からガミオも予約メンバー入りという事でお願いします。


103 : 名無しさん :2014/03/25(火) 16:01:05 FjT/bEkg0
投下乙です!
ついにガミオも目覚めたか……果たして、彼はこれからどう動くのでしょうね。
究極の闇は使えなくて当然かも。あんなのが使えたら、地獄絵図になるだろうしww


104 : ◆LuuKRM2PEg :2014/03/25(火) 17:30:52 FjT/bEkg0
そして、自分も予約分の投下を開始します。


105 : なのはの決意! プリキュアとして、戦います!! ◆LuuKRM2PEg :2014/03/25(火) 17:31:58 FjT/bEkg0
 プリキュアの奇跡で生まれ変わったダークプリキュア……いや、月影なのはの案内に従って、響良牙は花咲つぼみと共に森の中を進んでいた。
 目的は、つぼみの友達である明堂院いつきの遺体を埋葬してあげる為。来海えりかと月影ゆりが眠る地に、いつきも眠らせようとしている。元の世界では一緒に仲良く過ごしていたのに、殺し合いなんかによって居場所を無理矢理壊されてしまう……だから、せめて一緒の場所で眠らせてあげたいと、つぼみとなのはは思っているのだ。
 その気持ちは良牙だって同じ。本当なら、早乙女乱馬とシャンプーの遺体を同じ場所に眠らせてあげたいけど、不可能だ。乱馬はどこにいるのかわからないし、シャンプーはスバル・ナカジマによって跡形もなく消されている。パンスト太郎や、五代雄介と一条薫だって同じだ。
 何もできない中途半端な自分がもどかしい。数時間前、中途半端はするなと一条から言われたばかりなのに、一体何をやっているのか。
 ウジウジしていても何も始まらないし、みんなからも怒られてしまう。仮面ライダーの先輩である左翔太郎やつぼみからも認められたのだから、彼らの為に正義の仮面ライダーを目指さなければならなかった。
 その為にも、あのガドルやドウコクをまた見つけたら今度こそ叩き潰す。そして、大切な仲間達を守らなければならなかった。あかねさんのことだって、絶対に止めてみせる。
 良牙は改めて自分にそう言い聞かせた。

「もうすぐ、着くと思うけど……周りに、気を付けて」

 そんな中、先頭を歩いていたなのはの声が聞こえる。
 彼女の声は、黒い翼が生えていた頃とは打って変わって、優しさに満ちていた。元の彼女のことを詳しく知らない良牙ですらも、随分と変わったと思ってしまう。
 良牙がそんなことを考えていると、なのはが振り向いて来る。

「あの、良牙さん。一つ、いいですか?」
「ん? どうかしたのか」
「えっと、私はエターナル……いや、大道克己さんのことを憎んでいました。お姉さんがあの人に殺されたから……でも、克己さんも、元々はいい人だったのでしょうか?」

 彼女の口から出てきたのは、問いかけだった。
 気になってしまう気持ちはわかる。大道克己は自らの口で、月影ゆりのことを殺したと言っていた。そんな克己など、なのはからすれば憎い仇であるはずなのに、今は憎悪が感じられない。
 プリキュアの奇跡によって、心が綺麗になったのか。そんなことを考えながら、良牙はなのはの疑問に答えることにする。

「……さあな。俺達は昔の大道のことは何一つ知らない。でも、大道の仲間は言っていたぞ。『克己はヒーローだった』って」
「ヒーロー……?」
「ああ。それに大道自身だって、この殺し合いの新しい希望となる仮面ライダーだって言っていた……だから、あいつも昔は人々の為に戦っていたはずだ。本当かはわからないけどな」

 言葉を紡ぐ度に、克己と良の最期が脳裏に過ぎっていく。
 克己は、キュアブロッサムと仮面ライダーゼクロスのおかげで心を取り戻して……この世を去った。そこに、憎悪や無念の感情は微塵もない。
 良は、克己が間違いを繰り返す前に死力を尽くして戦い……笑顔のまま死を迎えた。彼の笑顔は、五代雄介のように優しさと力強さで溢れていた。
 だから、良牙はそんな二人の遺志を尊重するつもりでいる。

「それに俺の仲間も言っていた。あいつのことを恨まないでやってくれって……俺は正直、大道にはあんまりいい印象はない。だけど、少なくとも恨むつもりはない」
「それもあるかもな……でも、何かが違っていたら大道だって俺達の仲間になってくれたかもしれない。克己だって、道を踏み外さないように案内をしてくれている誰かが必要だった。だから、俺は憎むつもりはない。だからって、なのはまで俺達みたいになる必要はないぞ」
「……私も、あの人のことはまだ許せないです。だって、お姉さんが殺されたのだから……」
「そっか……でも、それが普通だよな」

 なのはの返答に良牙は頷いた。
 いくら克己の過去を知ったとしても、それでゆりが殺された事実が消える訳ではない。殺人者に特別な事情があるのなら、親しい人が殺されても許せてしまう……そんなことができる人間なんていないだろう。それは死者への冒涜だ。それがまかり通るのなら、薫といつきを殺したガドルのことだって許さなければいけなくなってしまう。


106 : なのはの決意! プリキュアとして、戦います!! ◆LuuKRM2PEg :2014/03/25(火) 17:33:17 FjT/bEkg0
「でも、克己さんだってもしかしたら、私みたいに生まれ変わることができたかもしれません。だから、私も克己さんの想いを受け継ごうと思います。みんなだって、それを望んでいるはずですから」
「そうか……なら、俺も力を貸すぜ。いつきも、えりかやゆりって子も、一条も、同じことを言うはずだ」
「私も、良牙さんと同じ気持ちです……なのはさん、一緒に頑張りましょう」

 良牙だけでなく、つぼみも助言をしてくれた。
 彼女は微笑んでいる。先程、いつきが殺されたばかりなのに、なのはに笑顔を向けていた。今も穏やかな笑顔を保ち続けているいつきのように。最期まで微笑んでいたのだから、彼女の前では泣いていたくないのだろう。
 そんなつぼみの強さが、胸に突き刺さってしまう。これが、ガドルとの戦いで余計なことをしたせいで、二人を死なせてしまった俺自身の罰なのではないか……ならば、それを受け止めなければならない。

(なのはだって罪を償おうとしているのなら、俺もそうするべきだな。そして、今度こそみんなを守って、あかねさんも救う……そうだろ、一条、いつき、乱馬)

 殺し合いの中で散った仲間達や、親友のことを考えながら前に進む。
 早乙女乱馬。いつ頃に出会ったのかはもう覚えていない、永遠のライバルだ。
 最初は購買部のパンを奪い合うだけの縁だったが、戦っている内に確かな信頼が芽生えていた。怒ったこともあった、憎たらしいと思ったことはあった、消えろと願ったことはあった……でも、乱馬を始めとした仲間達との日常が愛おしかったのも確かだった。
 一条薫と明堂院いつき。この島で出会ったかけがえのない仲間。もしも、巡り会えたのがもっと違う場所だったら、きっと素敵な毎日を一緒に過ごしていたはずだった。時には一緒に飯を食って、時にはくだらないことで喧嘩をして、時には力を合わせる……だが、そんなささやかな幸せが、こんな殺し合いによって壊されてしまう。
 非常にやりきれないし、許せる訳がない。絶対に、仮面ライダーとなって殺し合いを破壊する為に戦わなければならなかった。

「あ、ここだよ……二人が眠っているお墓は」

 自らを奮起させる為に闘志を燃やしている良牙の前で、なのはは足を止める。
 彼女の前では、不自然に盛り上がった土が存在していた。そこは、周りに比べて色も茶色に染まっている。
 一見すると、ただの土の山にしか見えない。しかし、良牙はこの地にえりかとゆりが眠っていると察していた。

「えりか……ゆりさん……!」

 二人を呼ぶつぼみの声は震えている。恐る恐る振り向くと、彼女の目から涙が溢れ出ていた。
 それは当たり前だった。こんな形でしか大切な友達と再会できないなんて残酷すぎる。それに、ようやく再会できたいつきだって、すぐに別れさせられてしまった。

「やっと、二人に会えましたね……ごめんなさい、二人の所に来るのが遅くなってしまって。できることなら、もっと早く二人に会いたかったです……そうすれば、みんなが揃っていたはずなのに」

 土の下に眠るえりかとゆり、そしてなのはの腕で眠っているいつきに語りかけるつぼみは、涙を流し続けている。
 そんな彼女の姿を見るのが辛かった。なのはもつぼみのように憂いに満ちた表情を浮かべている。

「姉さん、えりか……つぼみといつきを連れてきたよ。二人とも、姉さん達に会いたがってた……ごめんなさい、今までみんなの邪魔をしてきたりして」

 そして、なのはは頭を下げる。きっと、これまでの行いを懺悔しようとしているのだろう。

「でも、私はこれからみんなの為に戦う。姉さんが私の為に戦ってくれたように、今度は私が姉さん達の愛をみんなに分けてあげる。だから、姉さん達はみんなを守って……みんな、一生懸命に頑張っているはずだから」

 彼女の言葉は、つぼみやいつきのように慈愛に溢れていた。
 なのははつぼみ達のおかげで変わることができたのだ。自分がエターナルになれたように、なのはは普通の少女として生まれ変わった。その姿を、見せたかったのだろう。
 だけど、それはもう永遠に叶わなかった。

(どうしてだよ……? どうして、彼女達がこんな目に遭わないといけないんだ? みんな、大切な人の為に頑張っていただけだろ?)

 良牙は疑問を抱くが、それに答えてくれる者は誰もいない。
 プリキュア達は誰かの心を守る為に戦っていた。なのはも前はプリキュアの敵だったが、大切な人の為に戦おうとしている点では変わらない。ベクトルが違うだけで、一生懸命な所は共通していた。
 だけど、そんな想いは無残にも踏み躙られてしまう。こんな不条理な世界に対する憤りと彼女に対する後ろめたさ。それが良牙の中でどんどん膨れ上がっていき、いてもたってもいられなくなってしまう。


107 : なのはの決意! プリキュアとして、戦います!! ◆LuuKRM2PEg :2014/03/25(火) 17:34:56 FjT/bEkg0

「……爆砕、点穴ッ!」

 だから良牙は、今に対する鬱憤を晴らすかのように人差し指を地面に叩きつけて、穴を開けた。
 こんなことをしても、自分のやったことは消えない。だけど、せめて少しくらいでも力になりたかった。この技は墓穴を作る為にある訳ではないが、他に適任な方法がない。
 こんなことの為につぼみとなのはには力を使わせたくないし、だからといって獅子咆哮弾やエターナルも墓を作るには強すぎる。だから、土木工事用の技しか思い浮かばなかった。

「良牙さん……」
「二人とも、すまない……俺にできるのは、これくらいだ」
「……いいえ、ありがとうございます。いつきを眠らせてくれるお手伝いをしてくれて」

 つぼみの言葉が良牙には辛かった。
 彼女は優しい少女だ。友達の仇である克己やガドルにさえも、怒りはしたが憎んでいない。きっと、主催者すらも心を救おうとしているはずだった。
 同じことができるかと聞かれたら、良牙は間違いなく首を横に振る。つぼみのように、誰かの心を思いやるなんて滅多にないからだ。

「ありがとう、良牙さん……それじゃあ、眠らせるね」

 良牙の開けた穴に、なのははゆっくりといつきを乗せる。そのまま、彼女の遺体に土を被せ始めた。
 いつきは今も太陽のような笑顔を浮かべている。もしかしたら、本当の太陽のように朝になれば瞼を開けてくれるのではないかと思ってしまうが、それはありえない。良の時だって、目覚めなかったのだから。

「いつき、今までありがとうございます……私達はいつきの笑顔と優しさが大好きです。あなたの光は、いつまでも私達の心を照らしています」

 額に伝った雫が地面に落ちて、弾けていく。それは留まる気配を見せず、むしろつぼみが喋る度に勢いを増していた。
 それはいつきを埋めているなのはも同じだった。彼女達を繋いでいる絆と優しさが、死んでしまった三人に届いていく。

「みんなのことは絶対に忘れません。みんなの分まで、私達は頑張ります……そして、プリキュアの力でこころの花を守ってみせます。そして、たくさん勉強をして、たくさんの人と仲良くなって、たくさんの人を守って、たくさんの人と夢を語り合います。ファッション部だって、みんなの分まで頑張ります……だから、みんなはゆっくり休んでいてください

 そして、つぼみは溢れ出る涙を拭った。
 それから沈黙が広がってしまう。つぼみの目元は真っ赤になっていて、良牙はますます気まずくなった。
 周囲の雰囲気がどんよりと重くなってしまう。まるで、獅子咆哮弾を使っているようだった。このままでは嫌な空気を引きずったままになるが、どうすればいいのかがわからない。人の心のケアなど、良牙には不可能だった。
 どうすればいいのか。そんなことを考えていた時だった。

「……私、堪忍袋の緒がブチ切れました!」

 つぼみが急に、大声で叫ぶ。
 突然の声によって良牙の鼓膜をジンジンと刺激される。
 あまりにも予想外の行動に、良牙は呆気に取られていた。

「つ、つぼみ……?」
「良牙さんになのはさん、ごめんなさい……私のせいで暗い雰囲気になってしまって。でも、私は大丈夫ですから!」
「……大丈夫な訳がないだろう。だって、お前は……!」
「お気持ちは嬉しいです! でも、私は挫けることも折れることもしません! むしろ、一度はそうなりそうだった自分の心に、堪忍袋の緒がブチ切れているのです!」
「本当、なのか……?」
「はい! 私がしっかりしないと、えりかも、ゆりさんも、さやかも、五代さんも、村雨さんも、克己さんも、京水さんも、一条さんも……それに、いつきだって怒るはずです! 皆さんは、いつだって諦めなかったはずですから!」

 そう宣言するつぼみからは迫力が感じられてしまい、良牙も思わず圧倒されてしまう。
 考えてみれば、彼女はスバルや克己が変身したエターナルにも啖呵を切ったほどの度胸を持っていた。そこに、一片の憎しみを混ぜないで。


108 : なのはの決意! プリキュアとして、戦います!! ◆LuuKRM2PEg :2014/03/25(火) 17:35:58 FjT/bEkg0

「えりか、いつき、ゆりさん……私達は行きます。もしかしたら、みんなの所にまた来るまで時間がかかるかもしれません。だけど、絶対にみんなの所に戻ってきます! だから、本当のお別れはその時に言います……今はまだ、さよならを言いません。もう少しだけ、待っていてください」

 寂しげな雰囲気が漂っていたが、それでもつぼみは笑っていた。
 この下で眠る彼女達の前では笑っていたかったのだろう。そうしないと、みんなだってあの世で悲しむはずだから。
 乱馬やシャンプー、それにパンスト太郎はどうだろうか。あの三人が悲しむ姿はいまいち想像できないが、自分の為に泣くことは望まないかもしれない。特に乱馬はそうだろう。
 つぼみには言いたいことはあるが、ここでそれを口にするのは無粋だ。彼女の意志を尊重するなら、余計なことを言わずに支えるのが筋かもしれない。

「みんな、私もつぼみの為に頑張るから。そして、全てを終わらせたらみんなの所に戻ってくるよ……だから、それまで待っていてね」

 つぼみに続いて、なのはもこの地で眠る三人に語りかける。

「えりか、いつき、ゆり……二人のことは俺が絶対に守る。だから、三人は安心して休んでいてくれ。俺は不甲斐無いが、それでも守り続ける……もう、あんなことは二度と御免だからな」

 そして、彼女達に続くように良牙も語った。
 きっと、この地で三人とも笑顔でいるだろう。そんな彼女達を笑顔にするのなら、これ以上の中途半端は許されなかった。

「皆さん、行きましょう」
「そうだな」
「うん」

 つぼみの言葉に良牙となのはは頷く。
 振り向くことも、止まることもせずに……ただ、真っ直ぐに進み続けていた。
 この先にいる、仲間達と巡り合えることを信じて……





 明堂院いつきの遺体を埋葬してから、一同はライディングボードに乗って森の中を進んでいた。
 今のままでは、例え変身をしていても徒歩では時間がかかってしまう。それにつぼみと良牙はガドルとの戦いで消耗をしているので、ここで体力を消耗する訳にはいかない。なので、なのはが持っていたライディングボードに乗って移動していた。
 三人も乗っているせいなのか、ビートチェイサー2000やサイクロン号に比べるとスピードが落ちている。しかし、それでも移動するには何の障害もなかった。
 まるで、空飛ぶ絨毯に乗っているようだとつぼみは思う。三人もいるせいでほんの少しだけ窮屈だけど、今は我慢しなければならない。

「そうだ、つぼみ……いつきの持っていたシャイニーパフュームはあなたが持っているべきだと思う」

 木々が通り過ぎていく中、隣にいるなのははシャイニーパフュームを差し出してくる。

「だって、いつきだってあなたに持っていて欲しいと思う気がするの……これは、あなた達プリキュアが使っていたから」

 なのはの表情は曇っている。ここで残酷な言葉を言ってしまったら、泣き出してしまいそうだった。
 彼女の気持ちはわかる。たくさんの罪を犯してきたのに、誰かを守る為の力を手にするなんて簡単にできない。罪を認めたなら、尚更だ。
 だけど、つぼみにはなのはの言葉を受け入れることはできなかった。


109 : なのはの決意! プリキュアとして、戦います!! ◆LuuKRM2PEg :2014/03/25(火) 17:36:40 FjT/bEkg0

「いいえ……それは、なのはさんが持っているべきです」
「えっ? どうして……? だって、これは……」
「いつきは最期まであなたのことを友達だと言ってくれました。きっといつきは、なのはさんがこれからみんなの為に戦ってくれると、信じていたはずです。だから、シャイニーパフュームはあなたが持っているべきだと思います」

 そうなのはに諭しながら、つぼみはデイバッグに手を伸ばす。
 その中から、かつてなのはから手渡されたプリキュアの種とココロポットを取り出した。

「それって、もしかして……」
「そうです。なのはさんが取り戻してくれた、ゆりさんの持っていた種とココロポットです。これも、あなたが持っているべきだと私は思います」
「……本当にいいの? 姉さんといつきは、それを望んでいるのかな……?」
「絶対に望んでいますよ! だって、二人はなのはさんの為に最後まで頑張ったのですから! 私だって、なのはさんに持っていて欲しいと思っています!」
「私が……」

 つぼみは説得するが、なのはの手はまだ震えている。
 やはり、簡単に受け取ることはできないのだろう。聞いた話によると、東せつなだってプリキュアとして戦うまで時間がかかったらしいのだから。せつなだって、すぐにキュアパッションとして戦えるようになった訳ではない。なのはだって、同じだった。

「おい、なのは……お前は悩んでいるけど、本当はどうしたい?」

 そんな中、良牙がなのはに問いかけてくる。

「お前は生まれ変わったんだろ? 罪を償って、みんなの為に戦うって言ったよな……それは嘘だったのか?」
「違います! 嘘じゃありません! みんなの為に……戦いたいです!」
「なら、その気持ちを嘘にするな。お前がそんな風に悩んでいたら、守りたい人だって守れなくなるぞ……それに、どうか中途半端だけはしないでくれ」

 そう語る良牙の表情は、どことなく寂しげだった。
 きっと、彼は一条から言われたことを思い出しているのかもしれない。村雨良の死体にメモリーキューブを埋め込む少し前に、そう言われたのだから。

「俺は前に、仲間から中途半端はするなと言われた。でも、俺は怖気づいたせいで、守れなかった……なのは、どうかお前は俺のようにならないでくれ」
「良牙さん……わかりました。確かに、良牙さんとつぼみの言う通りです。私も、お姉さんやいつきのようにプリキュアとなって戦います。だって、二人は私の為にプリキュアの力を使ってくれたのですから」

 頷きながら、なのははプリキュアの種とココロポットを受け取る。
 それを見て、つぼみは一気に表情を明るくした。

「なのはさん……ありがとうございます!」
「つぼみこそ、ありがとう。それに、良牙さんもありがとうございます」
「礼ならいいさ。それでなのはが頑張ってくれるのなら、それだけでいいんじゃないのか」
「……はい!」

 真っ直ぐに頷いてくれるなのはを見て、つぼみは笑顔を浮かべる。
 そして、希望はまだたくさんあると確信した。なのははプリキュアとして戦ってくれると決めて、良牙だって仮面ライダーになっている。それに街には、たくさんの仲間達が集まっているはず。
 彼らと力を合わせれば、どんな敵にも負けないはずだった。それに、良牙の友人である天道あかねだって元に戻せるはずだった。
 そう、花咲つぼみは信じていた。



 ……しかし、つぼみは知らない。いや、良牙となのはも知らなかった。
 ゴ・ガドル・バが一条薫と明堂院いつきを殺害したことがきっかけで、ここから離れたグロンギ遺跡でもう一つの『究極の闇』が蘇ろうとしていることを。また、彼女達が通り過ぎてしまった森の中には、高町なのはの相棒であるレイジングハートがいたことも、知らなかった。
 なのはは一度、街に向かったことがあるので、彼女の案内でライディングボードを動かしている。そして、不幸にもその道にバラゴの遺体は存在しなかった。もしも、レイジングハートと出会うことができていたら、鋼牙への誤解が解けたかもしれない。
 しかし、ここにいる三人はレイジングハートの怨念に気付けなかった。もしもレイジングハートが人間の身体を得たら、きっと鋼牙に牙を向けるだろう。無論、その矛先は鋼牙の仲間であるつぼみ達だって例外ではないかもしれない。
 希望と絶望は表裏一体。新たなる希望が生まれた一方で、また新たなる絶望が育とうとしている。彼女達がそれに立ち向かえるのかどうかは、まだ誰にもわからない……
 今はただ、仲間達と再会する為に市街地に向かって進むことしかできなかった。


110 : なのはの決意! プリキュアとして、戦います!! ◆LuuKRM2PEg :2014/03/25(火) 17:37:35 FjT/bEkg0
【1日目/夜中】
【D―8/森】
※明堂院いつきの死体は【C−8/森】に埋められました。


【響良牙@らんま1/2】
[状態]:全身にダメージ(大)、負傷(顔と腹に強い打撲、喉に手の痣)、疲労(大)、腹部に軽い斬傷、五代・乱馬・村雨の死に対する悲しみと後悔と決意、男溺泉によって体質改善、デストロン戦闘員スーツ着用、ライディングボードに乗っている
[装備]:ロストドライバー+エターナルメモリ@仮面ライダーW、T2ガイアメモリ(ゾーン、ヒート、ウェザー、パペティアー、ルナ、メタル)@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式×14(食料二食分消費、(良牙、克己、一条、五代、十臓、京水、タカヤ、シンヤ、丈瑠、パンスト、冴子、シャンプー、ノーザ、ゴオマ、速水、バラゴ))、水とお湯の入ったポット1つずつ、志葉家のモヂカラディスク@侍戦隊シンケンジャー、ムースの眼鏡@らんま1/2 、細胞維持酵素×2@仮面ライダーW、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、歳の数茸×2(7cm、7cm)@らんま1/2、デストロン戦闘員マスク@仮面ライダーSPIRITS、プラカード+サインペン&クリーナー@らんま1/2、呪泉郷の水(娘溺泉、男溺泉、数は不明)@らんま1/2、呪泉郷顧客名簿、呪泉郷地図、特殊i-pod、細胞維持酵素×4@仮面ライダーW、克己のハーモニカ@仮面ライダーW、バッドショット+バットメモリ@仮面ライダーW、スタッグフォン+スタッグメモリ@仮面ライダーW、テッククリスタル(シンヤ)@宇宙の騎士テッカマンブレード、水とお湯の入ったポット1つずつ×2、力の源@らんま1/2、スパイダーショック+スパイダーメモリ@仮面ライダーW、まねきねこ@侍戦隊シンケンジャー、滝和也のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS、黒子の装束@侍戦隊シンケンジャー、『戦争と平和』@仮面ライダークウガ、『長いお別れ』@仮面ライダーW、インロウマル&スーパーディスク@侍戦隊シンケンジャー、紀州特産の梅干し@超光戦士シャンゼリオン、ムカデのキーホルダー@超光戦士シャンゼリオン、双眼鏡@現実、ランダム支給品1〜6(ゴオマ0〜1、バラゴ0〜2、冴子1〜3)、バグンダダ@仮面ライダークウガ
[思考]
基本:天道あかねを守り、自分の仲間も守る
0:あかねさん…
1:つぼみ、“なのは”とともに警察署に向かう。
2:いざというときは仮面ライダーとして戦う。場合によってはあかねも…。
[備考]
※参戦時期は原作36巻PART.2『カミング・スーン』(高原での雲竜あかりとのデート)以降です。
※夢で遭遇したシャンプーの要望は「シャンプーが死にかけた良牙を救った、乱馬を助けるよう良牙に頼んだと乱馬に言う」
「乱馬が優勝したら『シャンプーを生き返らせて欲しい』という願いにしてもらうよう乱馬に頼む」です。
尚、乱馬が死亡したため、これについてどうするかは不明です。
※ゾーンメモリとの適合率は非常に悪いです。
※エターナルでゾーンのマキシマムドライブを発動しても、本人が知覚していない位置からメモリを集めるのは不可能になっています。
(マップ中から集めたり、エターナルが知らない隠されているメモリを集めたりは不可能です)
※主催陣営人物の所属組織が財団XとBADAN、砂漠の使徒であることを知りました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを全て知りました。
※つぼみ、一条、鋼牙と125話までの情報を交換し合いました。
※男溺泉に浸かったので、体質は改善され、普通の男の子に戻りました。
※エターナル・ブルーフレアに変身できるようになりました(ただし彼の人間としての迷いや後悔がレッドフレアにしてしまう事もあります)。
※あかねが殺し合いに乗った事を知りました。


111 : なのはの決意! プリキュアとして、戦います!! ◆LuuKRM2PEg :2014/03/25(火) 17:38:17 FjT/bEkg0
【花咲つぼみ@ハートキャッチプリキュア!】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、加頭に怒りと恐怖、強い悲しみと決意、デストロン戦闘員スーツ着用、ライディングボードに乗っている
[装備]:プリキュアの種&ココロパフューム、プリキュアの種&ココロパフューム(えりか)@ハートキャッチプリキュア!、こころの種(赤、青、マゼンダ)@ハートキャッチプリキュア!、ハートキャッチミラージュ+スーパープリキュアの種@ハートキャッチプリキュア!
[道具]:支給品一式×5(食料一食分消費、(つぼみ、えりか、三影、さやか、ドウコク))、鯖(@超光戦士シャンゼリオン?)、スティンガー×6@魔法少女リリカルなのは、破邪の剣@牙浪―GARO―、まどかのノート@魔法少女まどか☆マギカ、大貝形手盾@侍戦隊シンケンジャー、反ディスク@侍戦隊シンケンジャー、デストロン戦闘員スーツ(スーツ+マスク)@仮面ライダーSPIRITS、デストロン戦闘員マスク(現在着ているものの)、着替え、『ハートキャッチプリキュア!』の漫画@ハートキャッチプリキュア!、姫矢の首輪、大量のコンビニの酒
[思考]
基本:殺し合いはさせない!
1:良牙、“なのは”とともに警察署に向かう。
2:この殺し合いに巻き込まれた人間を守り、悪人であろうと救える限り心を救う
3:南東へ進む、18時までに沖たちと市街地で合流する(できる限り急ぐ)
4:……そんなにフェイトさんと声が似ていますか?
[備考]
※参戦時期は本編後半(ゆりが仲間になった後)。少なくとも43話後。DX2および劇場版『花の都でファッションショー…ですか!? 』経験済み
 そのためフレプリ勢と面識があります
※溝呂木眞也の名前を聞きましたが、悪人であることは聞いていません。鋼牙達との情報交換で悪人だと知りました。
※良牙が発した気柱を目撃しています。
※プリキュアとしての正体を明かすことに迷いは無くなりました。
※サラマンダー男爵が主催側にいるのはオリヴィエが人質に取られているからだと考えています。
※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました。
※この殺し合いにおいて『変身』あるいは『変わる事』が重要な意味を持っているのではないのかと考えています。
※放送が嘘である可能性も少なからず考えていますが、殺し合いそのものは着実に進んでいると理解しています。
※ゆりが死んだこと、ゆりとダークプリキュアが姉妹であることを知りました。
※大道克己により、「ゆりはゲームに乗った」、「えりかはゆりが殺した」などの情報を得ましたが、半信半疑です。
※所持しているランダム支給品とデイパックがえりかのものであることは知りません。
※主催陣営人物の所属組織が財団XとBADAN、砂漠の使徒であることを知りました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを全て知りました。
※良牙、一条、鋼牙と125話までの情報を交換し合いました。
※全員の変身アイテムとハートキャッチミラージュが揃った時、他のハートキャッチプリキュアたちからの力を受けて、スーパーキュアブロッサムに強化変身する事ができます。
※ダークプリキュア(なのは)にこれまでのいきさつを全部聞きました。


112 : なのはの決意! プリキュアとして、戦います!! ◆LuuKRM2PEg :2014/03/25(火) 17:38:53 FjT/bEkg0
【月影なのは(ダークプリキュア)@ハートキャッチプリキュア!】
[状態]:健康、人間化、ライディングボードに乗っている
[装備]:プリキュアの種&シャイニーパフューム@ハートキャッチプリキュア!、プリキュアの種&ココロポット(ゆり)@ハートキャッチプリキュア!
[道具]:支給品一式×5(ゆり、源太、ヴィヴィオ、乱馬、いつき(食料と水を少し消費))、ゆりのランダムアイテム0〜2個、ヴィヴィオのランダムアイテム0〜1個(戦闘に使えるものはない)、乱馬のランダムアイテム0〜2個、パワーストーン@超光戦士シャンゼリオン、ふうとくんキーホルダー@仮面ライダーW、霧彦のスカーフ@仮面ライダーW、須藤兄妹の絵@仮面ライダーW、霧彦の書置き、山千拳の秘伝書@らんま1/2、水とお湯の入ったポット1つずつ、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはシリーズ、ガイアメモリに関するポスター×3、『太陽』のタロットカード、大道克己のナイフ@仮面ライダーW、春眠香の説明書、ガイアメモリに関するポスター
[思考]
基本:罪を償う。その為にもプリキュアとして戦う。
1:つぼみ、良牙とともに警察署に向かう。
2:姉さんやいつきのようにプリキュアとして戦う。
3:源太、アインハルト…。
[備考]
※参戦時期は46話終了時です
※ゆりと克己の会話で、ゆりが殺し合いに乗っていることやNEVERの特性についてある程度知りました
※時間軸の違いや、自分とゆりの関係、サバーク博士の死などを知りました。ゆりは姉、サバークは父と認めています。
※筋肉強化剤を服用しました。今後筋肉を出したり引っ込めたりできるかは不明です(更に不明になりました)。
※キュアムーンライトに変身することができました。衣装や装備、技は全く同じです。
※エターナル・ブルーフレアに変身できましたが、今後またブルーフレアに変身できるとは限りません。
※警察署内での大規模な情報交換により、あらゆる参加者の詳細情報や禁止エリア、ボーナスに関する話を知りました。該当話(146話)の表を参照してください。
※心が完全に浄化され、プリキュアたちの力で本当の人間の体を手に入れました。かつてほどの戦闘力は失っている可能性が高いと思われますが、何らかの能力があるのか、この状態では無力なのか、その辺りは後続の書き手さんにお任せします。顔や体格はほとんどダークプリキュアの時と同じです。
※いつきにより、この場での仮の名前として「月影なのは」を名乗る事になりました。
※つぼみ、いつきと“友達”になりました。
※いつきの支給品を持っています。
※プリキュアとして戦うつもりでいます。


【備考】
※月影なのはの案内で、ライディングボードに乗りながら市街地に向かっています。


113 : ◆LuuKRM2PEg :2014/03/25(火) 17:40:40 FjT/bEkg0
以上で投下終了です。
それと、>>105の一部なのですが

「それに俺の仲間も言っていた。あいつのことを恨まないでやってくれって……俺は正直、大道にはあんまりいい印象はない。だけど、少なくとも恨むつもりはない」
「それもあるかもな……でも、何かが違っていたら大道だって俺達の仲間になってくれたかもしれない。克己だって、道を踏み外さないように案内をしてくれている誰かが必要だった。だから、俺は憎むつもりはない。だからって、なのはまで俺達みたいになる必要はないぞ」
「……私も、あの人のことはまだ許せないです。だって、お姉さんが殺されたのだから……」
「そっか……でも、それが普通だよな」



「それに俺の仲間も言っていた。あいつのことを恨まないでやってくれって……俺は正直、大道にはあんまりいい印象はない。だけど、少なくとも恨むつもりはない」
「それは、仲間に言われたからですか?」
「それもあるかもな……でも、何かが違っていたら大道だって俺達の仲間になってくれたかもしれない。克己だって、道を踏み外さないように案内をしてくれている誰かが必要だった。だから、俺は憎むつもりはない。だからって、なのはまで俺達みたいになる必要はないぞ」
「……私も、あの人のことはまだ許せないです。だって、お姉さんが殺されたのだから……」
「そっか……でも、それが普通だよな」

に修正します。


114 : ◆gry038wOvE :2014/03/25(火) 20:54:04 NVuF4zb60
投下乙です。
克己ちゃんの行動も色々と影響与えてるんだよなぁ。今後、翔太郎と無事再会できたらどう絡んでいくのか。
そして、もしやこれで、ハトプリ組は相方キュアへの変身ができるのでは…。
とりあえずこいつらが無事警察署に辿り着けばかなり集合してこの良牙の状態表の大量の荷物も何とかなるかも…。

ん…。前回俺がミスったみたいですが、良牙の支給品の数間違ってますね。
これはちゃんと修正しておきます。


115 : ◆LuuKRM2PEg :2014/03/25(火) 21:35:17 FjT/bEkg0
感想ありがとうございます。
そして、こちらこそ数の間違いに気付かなくてすみません。収録の際に収録させて頂きます。


116 : 名無しさん :2014/03/25(火) 22:46:32 qmNim6Yc0
投下乙です

ああ、終盤近くの対主催というか彼らは傷付いているがそれでも強く前を向いているわあ
もうこれ以上誰も死んで欲しくないが不安要素はまだまだあるという…


117 : 名無しさん :2014/03/26(水) 00:51:44 JULQxa9s0
投下乙です
ガミオが目覚めたか。果たして誰が最初に出会うのか…

マーダーやら不安要素が残ってるけどこのまま頑張って欲しいな
ってか確かに良牙の荷物が凄いことにw


118 : 名無しさん :2014/03/26(水) 14:01:58 cddW.SiA0
もしこのロワに悪口王ことズボシメシが来たら「シスコン」、「ブラコン」、「ファザコン」、「マザコン」、「噛ませ犬」とかでみんな吹っ飛びまくるんだろうか
最後のやつ言われたら大将死んじまうんじゃないか


119 : 名無しさん :2014/03/26(水) 18:21:44 nk6cgLbw0
ズボシメシ「シスコン」 照井・村雨・えりか・タカヤ・零「うわああああああああ」
ズボシメシ「ブラコン」 いつき・mktn・シンヤ・ミユキ「うわああああああああ」
ズボシメシ「マザコン」 大道・流ノ介・乱馬「うわああああああああ」
ズボシメシ「ファザコン」 冴子・大道・ダプリ・鋼牙「うわああああああああ」
ズボシメシ「改心が唐突」 霧彦・杏子「うわああああああああ」
ズボシメシ「クレイジーサイコレズ」 ほむら「うわああああああああ」
ズボシメシ「誰?」 石堀「うわああああああああ」
ズボシメシ「さやか」 さやか「うわああああああああ」
ズボシメシ「淫獣」 ユーノ・良牙「うわああああああああ」
ズボシメシ「半熟」 翔太郎「うわああああああああ」
ズボシメシ「お前にかかわった奴死にすぎ」 冴子・ゆり・タカヤ「うわああああああああ」

ズボシメシ「飲んだくれ」 ドウコク「あ?」
ズボシメシ「ニート」 ドウコク「はァーん…」
ズボシメシ「新フォームの噛ませ犬」 ドウコク「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


120 : 名無しさん :2014/03/26(水) 21:06:24 5GboUDQE0
自分の名前が悪口ってどういうことだよwww


121 : 名無しさん :2014/03/26(水) 22:04:19 nk6cgLbw0
さやかちゃんは、Google先生に「変身ロワ」と打つと予測変換で出てくるまでに成長したからな!


122 : 名無しさん :2014/03/26(水) 22:49:15 ErcEn9TU0
確かに出てきたw
そんなにこのロワで目立ったわけでもないのに何故w


123 : ◆gry038wOvE :2014/03/28(金) 23:06:51 i0df6Rfk0
ただいまより予約分の投下を開始します。


124 : 黒岩、死す!勝利のいちご牛乳 ◆gry038wOvE :2014/03/28(金) 23:07:36 i0df6Rfk0



 涼村暁、桃園ラブ、石堀光彦の一行は、街を歩いている。
 ここへの集合を呼び掛けてはいるものの、人の気配はない。激戦の跡も街の至る所を汚しており、最悪の場合、建物を破壊している。そこにずっと前、誰かがいて、今はどこかへ消えてしまった──という事だろうか。
 街中にバラまかれた箸袋という名のゴミを少しは気に留める人もいたかもしれない。少しばかり生々しい血痕が残っているような場所もあるが、周囲も薄暗いので、三人の中の誰かが少し気にしただけだった。
 街は夜に包まれて、少し乾いた香りを発していた。昼間の激戦など遠い過去の話に変えてしまっているようだ。
 涼村暁は、ここに来てから何度眠ったか知れないし、この夜は逆に目が冴えていた。
 桃園ラブは、度重なる戦闘の疲れもあって、少し眠気を感じ始めていた。
 石堀光彦は、特に眠気を感じなかったが、まあ寝ない人間と思われるのも不自然だろうから、眠いフリだけはしておこうと思った。わざとらしい欠伸も、あまり不快には思われなかった。

 歩いて行く中で、また、今度はもっと大量の血液の痕が見つかった。致死量、かもしれない。誰かがそこで、おそらくは命の危険に晒されたであろう事がはっきりと見て取れる。
 その血痕には、今度は誰しもが気づいた。……それは、ある建物の中に続いていた。
 誰がその血痕について口にする事もなく、恐る恐る、誰もがその建物へと足を向けた。きっと、自分たちとは全く関係ない参加者の一人が、そこで、……まあ、少し足を休めて、治療して、それでまたどこかへ行って、何とか助かったのではないだろうか、とそう思っただろう。少なくとも、ラブはそう信じたかった。

「……せつな」

 ……だが、違った。
 その建物の中にあったのは、無二の親友・東せつなの遺体であった。誰かが気づいて、こうしてここまで運んでくれたのだろうか。彼女を殺害したのがモロトフである事は承知していたが、彼女をここまで運んでくれたのは誰なのか、まだ会っていなかった。
 友人の遺体を見る事になったのも、この一、二時間で二度目だった。だから、この余りあるショックを、ラブはどうにか隠しきる事ができた。
 それは、山吹祈里の原型を留めない凄惨な焼死体よりも遥かに安らかなものだったし、もしかすれば生きているかもしれないと──そう思ってしまうくらいに、綺麗な死に顔であった。
 ただ、そんなのはやはり喩えにしかならなかった。傷口は、そこに間違えようのない死を実感させる、そんな大きな穴になっていた。この穴がなければ、またラブは、それを遺体だと確信できなかったかもしれない。
 いわば、祈里より、ずっと「まし」だった事が、この場においてせめてもの救いであった。
 そうであった事が、ラブのショックを落ち着かせ、また逆に、動悸を早めさせていた。

「……」

 言葉が出ない。しかし、涙は、枯れないのか、頬を伝う。
 祈里もそうだったが、伝えたい事の数に比べて、いざ当人の遺体を前に出せる言葉は少ないのであった。
 その様子を見ている暁はまあ、今日日まで女同士の友情はそこまで信じていなかったと思う。だいたいの場合、腹では相手の事を良く思っていないんじゃないかと、そういうのが女の友情だと思っていたし、経験上、確かな感覚だった。しかし、ラブがせつなの手をただ握り、言葉もなく、立ち尽くした時、そこにある友情は本物だったのだろうと感じる事ができた。
 二人は、もしかしたら……姉妹のような存在だったのかもしれない。

「……」

 放送を受け、彼女たちを殺害した者と会い、そして、遂に彼女たちの遺体と遭遇した。二人の友人に対して、彼女は三段階のステップを踏んで、ようやくその死を胸の中で確かなものにしていった。
 また、祈るように、今度は両手でせつなの指先を握った。
 今度は心の中でお別れの言葉を告げているのだろうと思った。
 そして、最後にまた、ドーナツを一つ、彼女の遺体に添えた。

 石堀は、まあ、せいぜい黙祷をしただろうか。目をつぶって、何を考えているかはわからないが。
 暁は、死に顔に黙祷をする事はなかった。ただ、愕然としていただろう。
 こんなに可愛い子が、次々と誰かに殺されている。ラブやほむらのように──。






125 : 黒岩、死す!勝利のいちご牛乳 ◆gry038wOvE :2014/03/28(金) 23:08:02 i0df6Rfk0



「中学校……」

 マップ上に書いてある施設のひとつ、「中学校」。どうやら、そこに辿り着いたらしい。
 外観はごく普通の中学校だ。ラブは元の世界、こういう場所にいた。
 いや、言ってみれば、昨日までは中学校に通っていた。どうしてこう、幸せというのを唐突に崩されてしまったのかはわからない。
 昨日までのラブは、翌日もまた普通に美希や祈里やせつなと普通に遊んでいると思っていたはずだし、まさかその再会が遺体との対面……という形になるなど、思っていなかったはずである。
 唯一、生きている美希もどこにいるかはわからなかった。ラブにとって、最後の日常生活の拠り所は美希である。
 ……ただ、ラブにとってわからないのは、果たしてこの殺し合いに参加していた「美希」や「祈里」や「せつな」が、元の世界にいるのかどうか──という事であった。
 パラレルワールドとか、時系列の矛盾とか、そういうのが正しく機能しているのなら、元の世界に帰れば、また祈里やせつな、えりかやゆりと会えるのか、それとも、ラブの世界の彼女たちもいないのか──それが気がかりだった。

「仕方がない……。誰もいないようだが、一応この施設も寄っておこう」

 石堀が提案する。
 マップ上に点在している施設。まあわざわざああして丁寧に施設の名前まで書いてくれているのだから、何かしら行ってみる価値はあるだろうと、石堀は踏んでいた。
 それに、学校というのは意外と何でも揃う場所でもある。総合的な学習のために、様々なルームが設けられている。特に行きたい場所があるというわけではないにせよ、石堀はそこで何か捜索してみようと思ったのだ。
 まあ、何人か集まっているかもしれないし、部屋を暗くしたまま、人気のないそぶりを見せて、この施設に息を潜めている可能性だってある。
 ……それが、都合のよい人間か、都合の悪い人間かは、石堀も知らないが。

「9時を回ったか……。どうする? もう警察署側に行く道は禁止エリアだぜ?」
「もう約束の時間から3時間も過ぎている。そこにもいるかどうか」
「3時間なんて遅刻のうちに入らねえっつーの」
「……いや、どう考えても3時間は相手が怒って帰るレベルの遅刻だろ」

 石堀は、やれやれと呆れた表情を見せた。暁は時間にもルーズらしい。6時の約束に9時に行くのも仕方がないとか。
 そして、ふと思い出す。その時刻、禁止エリアとやらに加えて、もうひとつ面白い情報があったではないか。
 確か、そう……制限の解除だとか何とか。

「そうだな、二人とも。一度、中学校をざっと見て、危険人物がいないようなら、一度、それぞれで別の階に分かれてみないか?」

 石堀が提案する。

「どうしてですか?」
「一人で行動すれば制限を解除するとか何とか、あの放送の怪人はそう言っていただろ。俺はどうか知らないが、二人の場合は思い当たる事もあるんじゃないか?」

 一応、石堀は一ナイトレイダーの隊員という事になっている。身体能力などに大きな制限とか、そんなのはかけられていないだろう──という事に、なっている。
 石堀にとって現状、最も厄介なのは、簡単に言えばダークザギの力を持っていない事だ。それを制限と呼ぶか否かはともかく、何らかの主催からの施しが頂ける可能性だって否めない。第一、凪の死によって石堀光彦は進路を失った。そこに何らかのフォローが必要となるのは確かである。
 石堀をどう使うか──主催陣営がそこを考えていれば、自然と「ダークザギの力を蘇らせる」という結論に至る事だろうと、自分自身も感じている。まあ、その後は主催陣営もろとも全て殺しつくし、壊しつくすまでだが。
 今のところ、幸いにも、主催陣が提唱した「条件」は、すべて、石堀にとっても都合が良い。一人きりで行動すれば、にもラブにも聞かれない自然な状況が出来上がるのである。それで充分だろう。

「……特に、思い当たる事は……」
「そもそも、俺なんかシャンゼリオンの力を使い始めてまだそんなに経ってないんだぜ。そんな事言われてもな……」
「だからこそ、まだ知られざる力があるかもしれないだろう」

 この様子だが、まあ、二人ともすぐに承諾した。
 要は、ゲーム上、シャンゼリオンの力やキュアピーチの力にまだ多段的な制限がかけられているかもしれない……という話をすれば、納得してもらえるだろうと思ったのである。
 中学校というのは広い。
 誰にも見られず、誰にも聞かれず──という状況を作るのは、この広い中学校を三人で独占すれば、さして難しい事ではないのだ。階ごとに分ければ、障害が生まれる事もない。


126 : 黒岩、死す!勝利のいちご牛乳(前編) ◆gry038wOvE :2014/03/28(金) 23:08:36 i0df6Rfk0





 最初は三人で中学校を数分程度見張りして、そこにおそらく誰もいない事を認識した。
 外側からライトをつけて各教室を照らしても、特に反応はない。入ってみても、人がいた形跡がある教室や水浸しの場所もあるが、人はいなかった。

「で、どうする?」
「あ、石堀。俺、ちょっと、図書室に用事あるんだけど」

 暁がいきなり、石堀の狙っていた場所を指定した。石堀も、パラレルワールドとやらに目をつけていたので、調べ物ができるそこを狙っていたのだが。
 暁の意外な提案である。石堀は自分が提案せずとも、確実に、図書室が自分の領域になるだろうと思っていたので、驚く。

「漫画なら、多分ないぞ? ……いや、手塚漫画や『はだしのゲン』はあるかもしれないが」
「漫画じゃねえ!」

 ……その暁の切り替えしで、石堀は少し悩んだ。そして、ラブの方をチラッと見て、暁にそっと耳打ちする。あまりラブの前で言える事じゃないのだ。

「エロ本か? もっと無いぞ」
「違う!」

 違ったらしい。漫画でもエロ本でもないとなれば、果たして暁が読むものはなんだろう。ラブは隣で頭にハテナを浮かべていた。
 絵本……? この状況で絵本は読まないだろう。漫画やエロ本を読むのもどうかと思うが、暁ならあり得る。しかし、絵本は似合わない。
 石堀は、真剣に悩んだ。

「……俺が勉強しちゃ悪いのか?」

 暁が半ばキレ気味にそう言っていた。
 今の一言を、石堀とラブは脳内でリピートした。

 ……暁、勉強。暁、勉強。暁、勉強。暁、勉強。暁、勉強。

 おそらくはこれまで、義務教育課程は勿論、高校受験も引き算ができれば受かるような高校に入って、探偵のライセンスを得る事さえ、たぶん代理のそっくりさんでも立ててやらせていたんだろうと考察していた彼らに、衝撃が走る。
 勉強はしていないだろうと踏んでいた。一生。
 いや、しかし当人はこう言っている。暁かな矛盾──そう、これは暁の行動や性格と矛盾しているのだ。

「」
「」
「言葉を失うな!」

 思わず、ラブも石堀も声を失っていた。口をあんぐりと開けて、暁の方をぼーっと見ている。そして、石堀が少しばかり深刻そうな顔で告げる。

「すまない、桃園さん。さっきの戦いで、たぶん……コイツは頭を打ったんだ。コイツはもう、俺たちの知っている涼村暁じゃない。本当にすまない……俺が至らないばかりに」
「石堀さんのせいじゃありません! ……私だって、あの時は……何も……何もできなかった!」

 ラブもまた、かなり深刻そうな顔でそう言った。俯き加減で、先ほどのダグバ戦の代償があまりに大きかった事を実感する。
 彼らは己の無力さを今、目の前の男が勉強を始めようと言い出した事で感じ取っていたのだ。
 そして、また暁と同じように人格を壊してしまう犠牲者が出ぬようにと、硬く心に誓う。

「……お前ら、本気で俺に喧嘩を売ってんのか?」

 どこまで本気でどこまでギャグなのかもわからない様子で、暁は突っ込んでいいやら、突っ込んじゃいけないやらの複雑な心境であった。
 そんな暁の様子を見ながら、石堀が暁の頭に手を当てる。


127 : 黒岩、死す!勝利のいちご牛乳(前編) ◆gry038wOvE :2014/03/28(金) 23:09:05 i0df6Rfk0

「だから熱もねえ!」

 とにかく、暁はそのまま怒って、すぐに図書室に消えていった。その後ろ姿を、石堀は悪役笑いで見届けた。随分と遊ばせてもらったが、全て冗談である。
 まあ、暁が行ってしまった以上、仕方がないので、石堀はそのまま一階の理科室あたりに入った。よく夜中の学校の理科室に入れるものだと、ラブは感心する。
 それから、ラブは三階まで行った。楽しい人たちと出会えた嬉しさの反面、まだ祈里やせつなの死に様に、胸が落ち着きを保てていないのを感じていた。階段のラスト一段を踏み外して転んだ時なんかは、特にそれを強く感じた。







 黒岩省吾は、この時、妙に落ち着いた気分で街に向かっていた。
 シャンゼリオンの進路はおおよそ調べがついている。おそらく、街に向かったに違いない。
 しかし、まあ、その途上、随分と面白い情報を得たものである。

 西条凪と、ン・ダグバ・ゼバが死んだ。
 ──もう、この世にいないという。
 ラームを吸っただけで死亡カウントがなされたのか、それとも肉体まで完全に殺されたのかはわからない。石堀光彦は激怒するだろう。
 どうやらダグバも、もう死んだというらしい。

「……ゴハット」

 黒岩はあまりはっきりとした面識はないが、闇生物の変わり者、ゴハットも主催側にいるらしい。黒岩は、そんな情報を一切得ていなかった。
 随分とはっちゃけていらっしゃるようだが、黒岩としては、それが不快だった。
 ダークザイドの人間たちにあれだけ売ってやった恩を、こうして仇で返される事となるとは……。
 そう、ダークザイドの人間界での生活を補助していたのは黒岩省吾その人だ。黒岩がいたから、本来籍も何もないダークザイドたちは職にありつけ、人間として人知れず静かに生活する事ができている。
 ゴハットだって同様だ。そのはずが、黒岩をこんなゲームに巻き込むなどとは。

「聞こえているか。……もし、この言葉を聞いている者がいるのなら、ゴハットや闇生物たちに伝えておけ。貴様らはダークザイドの恥さらし……この俺がすぐに処刑するとな!」

 恩を仇で返した事もそうだが、卑怯なこの殺し合いにおいて、自分たちダークザイドの人間がいるというのが、黒岩省吾には許せないのであった。
 自分の国の人間が他国で恥をさらす事を遺憾に思うような、そんな気分だろう。常に生まれた場所や国、立場をわきまえ、それに誇りを持って生きるのが騎士道であり、選ばれる民が持ち続けるべき意識だ。
 ゴハットのような下品・不潔・バカ・マゾヒストのオタク奴僕は、ハナからダークザイドの恥さらしに違いないが、黒岩はそのくらいは寛容に見ていた。それでもまあ、せいぜい個々人の趣味の範疇でふざけるくらいは許してやろうとは思っていたのだ。
 料理も、茶も、酒も、スーツも、政治も、黒岩にとっては趣味のようなものだ。趣味にも高尚とか低俗とかはあると思っていたが、まあそれでも趣味は自由だと思えるレベルではあった。

「……だいたい、制限だと? 笑わせる!! そんな物、かける必要がどこにもない……。そんな物がなくとも、勝ち残るのは俺かシャンゼリオンか……二つの一つだ! 全力全開の戦いも多いに結構。俺を見くびるなよ……?」

 たとえ負けた記憶があったとしても、黒岩はめげない。己の誇りだけは捨てない。
 ゴハットが、今ダークザイドの闇生物の名を借りて汚した誇りを、いずれ黒岩の勝利という形で返してやるしかないだろう。
 シャンゼリオンともいずれ決着をつけて、その首を叩き斬る。






128 : 黒岩、死す!勝利のいちご牛乳(前編) ◆gry038wOvE :2014/03/28(金) 23:09:31 i0df6Rfk0



 暁は、図書室の中でひとり、調べものをしていた。中学校の図書室ともなると、まあある程度は学習材料がそろっているもので、小学校の本棚の怪談本よりかはまだマシな本が揃っている。新書はない。その辺りがやはり、高校の本棚には行き届かないのである。
 しかしながら、暁にとっては充分難しい本であった。普段は本など読まない暁ではあるが、まあ時たま、読むときは読む。……漫画かエロ本を。

「んー……ふふーん……」

 鼻歌混じりに、図書室から適当な本を探る。
 まあ、声は出さない方がいいか。誰にも聞かれちゃならないのだから。
 とにかく、暁は図書室の本棚から、必要そうな本をざっと取り上げる。

「なるほど……そういう事か」

 暁としても、本などめくるのはいつ振りだろうか。教科書なら、わりと最近めくったが、それも小学生レベル。

「フムフム……。全然違うじゃねえか……」

 本を読みながら、まあななめ読みではあるが、暁は三十分の間に必要な知識を詰め込む。暁も関心のある材料の本だけ手に取って見ているから、まあ何とか、三十分のうちに多少は読んでいく事が出来た。
 パラレルワールド、とやらの本も、後で必要になりそうなので、暁はキープしておく。図書室から本をガメるくらいは問題ない。
 さて、三十分が経過する。

 すると……

「ん……?」

 暁の後ろに、人影が、現れた。その人影に気づき、暁は振り向く。
 自分には制限などないと思っていた暁だが、三十分ジャストで誰かが現れたらしい。
 ──そう、そこには意外な顔があった。







 石堀は、理科室で何という事もなく、三十分を過ごしていた。時刻は九時半を少し回る。
 何もせず、ただ色々と思索を巡らせているだけならば、随分と長い時間だ。戦闘ならば、何戦か終わるであろう時間を、ただぼーっと過ごすのもまあ、悪くはない。
 勿論、怖くも何ともない。明るいよりは暗い場所の方が落ち着くというものだ。

『……石堀光彦さんですね』

 石堀は、その声が聞こえたので、振り向いた。
 石堀は実に二十一時間ぶりに、その声を聞いた事になる。

「加頭、順……おまえ……」
『それでは、あなたにかけられた制限を簡潔に説明します。あなたにかけられていた制限は、……まあ、いくつかありますが、今回解除するのは二つ。あなたの記憶、そのものです』
「……記憶、だと?」

 加頭の目の焦点は石堀を向いているようには思えない。ホログラフィというよりは、まるでそう──録画映像が語り掛けているようだった。しかし、それは鮮明なホログラフィで、正真正銘、そこに広間のあの男がいるように見えた。
 果たして、加頭順。この男が、本当にこの世に存在しているのかさえ、石堀にはわからなかった。もしかしたら、あの広間にいたのもホログラフィで、データだけの存在かもしれない。
 イラストレーターもそういえば、こうしてホログラフィを使って自分たちの目の前に現れるという事を、石堀は思い出した。
 加頭は続ける。

『ええ。あなたには、我々の方から予知能力に関する記憶の制限をさせていただきました。あなたが持つ来訪者の力の中でも、『記憶操作』と『予知能力』はとりわけ厄介ですから、いっその事あなたの力を『記憶』ごと制限させていただく形にしていたのです』
「……そうか、なるほど」

 石堀の脳裏に、ふと色んな記憶が蘇ってくるのを感じた。
 山岡一を殺害した後、その体を乗っ取り、周囲の人間全体の記憶を操作──そうして『石堀光彦』は誕生し、この世に生まれた一つの人格として認められた。それ自体はよく覚えているが、『記憶を操作した事』が曖昧だった。
 西条凪が光を継ぐ未来を予知し、凪に長い年月をかけて憎しみを植え付けるために、光を強化した。しかし、『未来を予知した事』が曖昧だった。


129 : 名無しさん :2014/03/28(金) 23:10:39 i0df6Rfk0

 そう、たとえ、来訪者と同様の力を持っていても、記憶操作には引っかかる事がある。
 来訪者が山岡一のデータをいじれなかった事や、石堀光彦が新宿の災害の一件を知らず、ビーストについては覚えていても「デュナミスト」のデータの中に「真木舜一」の存在を記録していなかった事からも、それは明白だ。
 その記憶改竄を、石堀は受けていたわけである。
 ばかしているつもりが、逆にばかされていたという話だ。……まあいい、と石堀は思う。それもまあ、面白い話だ。

『既に『予知能力』だけはあなたに返還されています。これも一度使うと、二時間使用できないのですが、今後は自由にお使いください』

 来訪者やダークザギの予知能力は、もともと完全なものではない。来訪者やイラストレーターの予知は実際、ほとんど外れているし、運命を変えるだけの力が働けば、全て変わってしまう。ある世界で、ウルトラマンノアがダークザギを打ち破ったのもまた、同じ理由だろう。
 だから、主催陣はその返還には不利益がないと判断したに違いない。
 ただ、あくまでその予知の範囲も多少の制限があり、使うと二時間使用できないデメリットはあるが……。

「貴様ら、俺にこんな事をして、ただで済むと思うなよ……?」
『それからもう一つ。F-5エリアの山頂には、忘却の海・レーテを解放しておきました。これは光の力を奪う媒介として使用してください』

 そして、それだけ言い残すと加頭の姿がフェードアウトした。逃げるような形ではない。自分の優位を証明するかのような余裕に満ちた退場だった
 辛うじて、先ほど相槌が返ってきたので、会話は成立しているようだったが、終始、気味の悪い会話であった。会話というより、ただ機械的に物事をこなしているような男だ。
 まあ、平等な殺し合いのために、会話の内容は最低限にとどめられているのだろう。

「……フン。どちらにせよ、俺の力は戻らないか──」

 石堀は、躊躇なく、『予知』の力を使う。
 とにかく、一度でも使えるなら、まず調べたいものは一つ。
 ──そう、『ウルトラマンの力の継承者』だ。

「……そうか、あいつか」

 それが、既知の人物なのか、未知の人物なのかはわからない。
 ただ、石堀の中にはそのビジョンが見えたので、ニヤリと笑った。
 そう、その時が来るまで、石堀光彦は石堀光彦のまま行動する。この方針は変わらない。
 もし、その時が来たら──それは簡単。暁もラブも皆殺しにする。そして、あいつの闇に汚れた憎しみで、光を変換する。
 さて、これでダークザギの復活の準備は整った。……あとは、このおめでたい二人とバカ騒ぎしながら、「あいつ」の元へと向かい、まあ親しくしてやって、信頼とやらも深めて、何とか言いくるめてレーテのところへ向かうなりして、二人や「あいつ」の仲間を殺すか、殺害した事を打ち明ければいい。それで、憎しみで力を奪えばいいわけだ。

「……どうやら、“俺に制限なんてなかった”みたいだな。まあ当然か。さっさと二人の元へ向かおう」

 既に、ダークザギは、石堀光彦の思考に戻っていた。
 自分は石堀光彦であるとアピールするように、石堀の言葉で言い残し、彼はその場を去った。







 桃園ラブは、うとうとしながら一人で三階の教室の隅に体育座りしていた。
 夜の学校に一人。──というのは、心細い。
 電気をつけて存在を明かす事もできないし、下に二人がいるとはいえ、寂しかった。
 誰か、……本当に誰でもいいから、そばにいてほしいと、ラブだってそう思った。
 こうなると、勝手に涙が伝う。
 だから、膝でその涙を吸えるように、体育座りしていたのだろう。
 ラブは、膝を抱えて、顔を隠すようにして泣いていた。
 誰にも見られず、誰にも聞こえないという状況がいかに辛いものなのか、今をもって実感している。


130 : 黒岩、死す!勝利のいちご牛乳(前編) ◆gry038wOvE :2014/03/28(金) 23:11:36 i0df6Rfk0

「みきたん……」

 フレッシュプリキュアのメンバーで生きているのは蒼乃美希だけだ。
 ラブは悩む。元の世界に帰れば、また普通に彼女たちと会えるのだろうか。
 これは長い夢だったように、また普通の日々が待っている。
 どこかの世界では、また別のラブが悲しんでいるのかもしれない。──そう、思うとやるせない。人が死んだのは──そしてそれが、せつなであり、祈里である事は、確かだ。
 それはどんな世界でも変わらない。
 別の世界の少女、巴マミと心を通わせたように。
 別の世界の男性、一文字隼人が勇気づけてくれたように。
 どんな世界の人間でも、死んだら悲しい。誰かがきっと悲しむ。
 たとえ帰って、そこに祈里やせつながいたとしても……どこか晴れない心がラブを襲うだろう。

「つぼみちゃん、いつきちゃん……」

 他にもまだ生きているプリキュアはいる。
 彼女たちがこれからどうするのか、ラブも知りたかった。
 どうすればまた彼女に会えるのだろう。街にはいるのだろうか。
 こんな所にいて、いいのだろうか……。

「パラレル、ワールド……」

 パラレルワールド──その言葉は、かつても聞いた。
 ラビリンスが統治しようとした全パラレルワールド。それはおもちゃの国であったり、科学が異常に発展したラビリンスであったり、ラブたちが住む地球であったり、完全に性質の異なる物ばかりだった。
 石堀や暁、一文字やマミの世界もラビリンスのような世界なのだろうか。
 この果てしない話について、考え続ければ、三十分も短い物になるのではないかと、ラブは思った。
 時計の針はだんだんと過ぎていく。
 最初の一分は長かった。しかし、次の三分で眠ってしまった。それでもまた五分で起きて、その次の七分が長かった。九分間項垂れて、そのまま五分と少し待った。いつの間にか、三十分は、回想すれば短く感じるほどにあっという間に過ぎ去った。







 三人は時間になると、校庭に集合した。校舎の前、昇降口の外で石堀が合図のライトを照らす。
 暁とラブの三十分間は終わったらしい。そのライトの光を見たラブは、すぐに下に降りる事にした。
 彼女はすぐに下に降りていく。その最中に暁と合流し、二人で階段を下り、昇降口に出た。学校は上履きで入る場所だが、土足のまま中と外を行ったり来たり。上履きがないから仕方がない。

「……で、成果は?」

 集合すると、すぐに石堀が口を開く。自分に成果はなかったような顔で、相手に尋ねるようにそう訊いた。石堀も自分の成果など話せるわけがない。

「ありませんでした……」

 桃園ラブには成果はなかったらしい。
 ただ、一人寂しく教室に残させてしまった結果になるが、石堀としては実際、そんな事はどうでもよかった。
 ラブ自身の孤独に気付かなかったフリをして、石堀は暁の方を見る。

「俺はあったぜ」

 暁が言う。コイツはのんきだが、どうやらまだ何か強い力を隠しているらしい……と、石堀は少し勘ぐった。

「……で、お前の成果とやらはなんだ? そうだ、それからどうやって制限を解除してもらったのかを、教えてくれ」

 石堀のこの台詞を、主催者はどんな顔で聞いているのだろうか。
 そう思うと、自分が滑稽にも思えてくるが、まあそんな事は、今はどうでもいい。
 彼らを完全に騙しきる事ができれば、後はこっちのものだ。
 暁は、己の制限の解除について語った。






131 : 黒岩、死す!勝利のいちご牛乳(前編) ◆gry038wOvE :2014/03/28(金) 23:12:46 i0df6Rfk0



 先ほど。図書室で調べものをしていた暁の後ろに気配を感じ暁のところまで話は戻る。
 誰かがいる。──それを確信して、暁が振り向くと、そこにいたのは……

『シャンゼリオ〜ン。やあ、やっと会えたね〜』

 暁は、その姿を見ていきなりドロップキックをかました。
 本能が、その姿にドロップキックしろと告げていたのである。

『無駄無駄〜。僕のこの姿はホログラフィだからねぇ。触れないよ。君が僕を倒すのは今度会ったト・キ♪』

 暁は、「うぉぉっ!」──地面に全身を打ち付けて、「いてぇぇっ!」──痛そうに転がっている。
 現れたのは、怪人。青く、両手が触手になっているこの怪物は、先ほど放送で見かけた闇生物ゴハットだった。

「てめえ! 何しに来た!」

 暁は、地面にぶつけた右肩を抑えつつ、ゴハットにそう叫んだ。

『だ〜か〜ら〜。制限の解除でしょっ! おたく、本当に放送聞いてた?』
「……そんな事言ったって、俺に制限なんかないだろぉっ!? …………え、もしかして、あんの?」

 暁はこの時間ではシャンゼリオンになったばかり。制限も何も、力の使い方さえ殆ど手探りな彼に、なぜ制限なんかがかけられているのかはわからない。
 力も元の世界で使った時と対して違わないはずだ。

『チッチッチッ……あるんだなぁ、それが』
「ならすぐに教えろぉっ!」
『ハイ♪ コレを手に入れるのが君の制限。こっちとしてもさ〜、おたくには、もっとカッコよくて熱いヒーローになって欲しいのよ〜。だから出血大サービス』

 ゴハットは、ホログラフィの両手で何かを握っていた。どうやって掴んでいるのかはわからないが、おそらくドラ●もんのようにその辺を深く考えちゃいけないのだろう。
 その物体は、ちゃんと暁の手で触れる事ができた。暁は、そのままゴハットの手を掴もうとしたが、その前にゴハットは消えてしまう。
 暁は、訝しげな表情で、それを眺めた。







「……というわけで、俺はコレを手に入れました〜♪ ……ってふざけんな!」

 暁がゴハットにプレゼントされた青い本を地面に叩き付ける。
 「スーパーヒーローマニュアルⅡ」と書かれた同人誌だ。「Ⅰ」がないのに「Ⅱ」とは、また謎である。まるで、Ⅰ世もⅡ世もいないのに、いきなりⅢ世が出てくる怪獣のようだ。
 暁が地面に叩き付けたその同人誌を、まあ石堀は手に取って、ぱらぱらとめくる。

「二十一世紀を生きる新しい時代のヒーローたち……初代スーパーヒーローマニュアルの時代には存在しなかった、新たな時代のヒーローの言葉や戦い方を君に贈ろう……なんだこれ」
「へぇ、なんか随分と本格的な本ですねぇ」
「ふざけてんだろ!? 見てみろよ、この恥ずかしいセリフの数々……」

 新しい時代のヒーローの名台詞、名言などがずらっと載っていたり、ヒーローが必殺技を使う時の仕草が細かく紹介されていたりする。

「『戦う事が罪なら、俺が背負ってやる』、『派手にいくぜ!』、『ヒーローってのはな、誰かを犠牲にして戦ったりしねぇんだよ!』、『本当の戦いはここからだぜ!』……って、もうバカかと。よくこんな恥ずかしい事が言えるよな。俺はそういうのじゃないの」
「『俺ってやっぱり決まりすぎだぜ』」
「うっ……」
「いいじゃないですか、決め台詞。かっこいいですよ! あたしだっていろいろあるんですから! わ、悪いの悪いのとんでいけ〜……とか」


132 : 黒岩、死す!勝利のいちご牛乳(前編) ◆gry038wOvE :2014/03/28(金) 23:13:17 i0df6Rfk0

 石堀に痛いところを突かれたのか、暁は黙り、そこにラブがフォローしていた。例の台詞も相当恥ずかしいはずだが、半分無意識である。
 ラブも言っていて恥ずかしいところがあったが、これまた無意識に近いので仕方がない。

「……ま、とにかくこれは俺にはいらないの! その辺にでも捨てといてくれ。こっちのパラレルワールドがどうとかって本の方が、まだ使いようがあるぜ。こっちを読もう」

 暁はその辺の本を投げ捨てたり、勝手に図書室から本を持って来たり、色々とフリーダムだ。上履きで現れるのも仕方がないが。

「ちょっと待て。おい、この本、お前の事も載ってるぞ」
「ん……? なんで……?」
「シャンゼリオン、栄光の軌跡。……あー、そうだな。コレ、もしかしたらここに来なかった時のお前のその後が書いてあるのかもしれん」
「マジで!?」
「お前、シャンゼリオンの力を手に入れたばっかりだったよな。使い方のノウハウもよくわかってないんじゃないか?」

 シャンゼリオンの概略を見る。シャンゼリオンに割いてあるページはわずか一ページだけだ。暁はすぐさまそれを石堀の手から奪って見る。

『軟派な私立探偵・涼村暁が偶然、クリスタルパワーを浴びてしまった事から変身できるようになった超光戦士!』

 そういう煽りとともに、シャンゼリオンの全身像が書いてあった。

「……って、大した事書いてねえじゃねえか!」

 載っていたのは、シャンゼリオンがその後もダークザイドと戦っていた事だけ。
 詳細なデータを書き記す事はできないらしい。シャンゼリオンの写真が載っており、その腕やら足に線が引っ張られ、その能力や必殺技が書いてある。
 それは殆ど既知のものだった。

「……でも、これはどうだ? シャンゼリオンの腕で呼べる超光騎士」
「おい、ちょっと待て。そんな便利なものがあるなんて俺は聞いてねえぞ……」
「とにかく呼んでみたらどうですか?」

 仕方なく、暁はそれを試すために燦然する。
 その辺は、面倒なので省略する。変身は普通に考えればヒーローにとっては尊い物だが、暁の場合は仕方がない。
 今回は特にバンクとかを使う事もなく、次のシーンではシャンゼリオンに変身していた。

「……というわけで、人の迷惑顧みず、やってきましたシャンゼリオン!」
「いいからさっさと呼べよ。おら、あくしろよ」
「まあそう焦るなって♪」

 それだけ言って、シャンゼリオンは、顔に腕を近づけて、三体の超光騎士の名前を呼ぶ。

「リクシンキ! ホウジンキ! クウレツキ!」

 まあ、これまためんどくさいので結論だけ言えば、三体のメカはクリスタルステーションからシャンゼリオンのところに現れるわけもなく。
 シーン……と静寂だけが残った。

「…………ただし、現在クリスタルステーションはA−10エリアの海上に出現していますが、まだ電気が通っていませーん。高圧電流を流すと復旧するかもしれませーん……だって」

 ラブが、リクシンキ、クウレツキ、ホウジンキの説明部分の追記を読み上げた。
 クリスタルステーションは、21時よりその姿を現すらしい。それは既に条件を満たしているのだが、そこに高圧電流を流すというのが地味に辛い。

「高圧電流っ!? ふざけんなっ、そんな芸当できるか!!」
「そういえばエンジンメモリの効果の一つにエレクトリックが」
「それだ、石堀、それ使え!」
「無理だ。A−10が遠すぎる」


133 : 黒岩、死す!勝利のいちご牛乳(前編) ◆gry038wOvE :2014/03/28(金) 23:14:51 i0df6Rfk0

 ……どうやら、三体の超光騎士は呼び出すのが無理らしい。
 暁は、このまま最終回まで……じゃなかった、殺し合いが終わるまでにクリスタルステーションに辿り着くのは難しいだろうと思った。
 施設と施設を移動できる超便利な道具でもあれば別だが、まさかそんな物があるわけがない。もしそんな不思議な魔法陣があったら悪の組織が利用するに決まっているだろう。

「……まあいいや。燦然解除っと」

 ここまで何とかなってきたわけだし、これからも超光騎士なしで何とかなるだろう。
 そう思って、暁は変身を解除した。

「おい、ちょっと待て」

 石堀がそんな暁を制止する。
 暁が、石堀が指差す方を見ると、そこには闇に溶けて現れる黒岩省吾の姿があった。







 突如、中学校の校庭に現れた黒岩省吾。彼のスーツは、以前見た時よりも泥や土に塗れ、ボロボロに破けていた。
 しかしながら、表情は妙な余裕に満ちており、一歩一歩と暁に近づいていた。

「……久しぶりだな、シャンゼリオン! 時間にして、そう……およそ7時間半ぶりだ。一睡するのにはちょうど良い時間か。人間の場合、睡眠時間は6時間半〜7時間半にした人間が最も長生きする」
「黒岩……っ! 二人とも下がれ……、こいつとは俺が一対一で勝負をつけるッ……!」

 彼を前に、涼村暁は身構える。彼が黒岩の前から庇ったのは、桃園ラブであった。
 ラブの前に立ち、手を広げている。
 黒岩は、そんな暁の姿を見て、鼻で笑う。

「……その様子では、貴様は貴様の美学を捨ててはいないようだな……確かに、ダークザイドよりマシな人間もいる、という事か」

 ゴハットを見て、そう確信した。人間にせよ、ダークザイドにせよ、愚かな者とまともな者がいる。別に、人間が生きていても、黒岩にとっては構わない。強ければ生き残っていい。ただし、弱ければ死ね。それが黒岩の望む世界だ。
 誇りを大切にしろ。強さを持て。それでいい。黒岩は食料である人間に対しても、ある程度の敬意くらいは持っている。

「……美学なんかねえ……。黒岩、てめえのせいで、凪が死んだ……っ! だから、俺はてめえを憎んでいるっ! それだけだ!」

 そしてまた、暁も黒岩省吾に対する憎しみや怒りが原動力となっていた。
 美学、そんなものと暁は無縁だ。まあ、探偵としてのロマンとか、「太く短く生きる!」とかそんな生き方が美学と呼ばれるのなら、それはアリかもしれない。

「折角会ったんだ。それだけ俺が憎いのなら……決着をつけるか、シャンゼリオン」
「ああ! だがな……その前にてめえに言っておく事がある!」

 暁は黒岩に強い口調で言い放った。
 暁の瞳は真剣そのものだった。

「お前は人の事を散々いい加減だとかバカだとか抜かしたが、それはお前の方だッ!」
「何……?」

 黒岩が、暁の言葉に興味を示した様子である。
 暁がまだ、これだけの憎しみを負いながらも、戦いよりも優先して黒岩に言いたい事があるらしい。
 それは、お互いいつ死ぬかわからないからの言葉だろう。

「前にお前は、日本のお茶の間に『冗談は顔だけにしろよ』と言う台詞が知れ渡ったのは、1982年に日本でテレビ放映されたアメリカの某ドラマを起源と言ったな!」
「それがどうした……?」
「それは嘘だ! 1975年の日本のテレビドラマ、松田優作・中村雅俊W主演、『俺たちの勲章』を一度見てみやがれっ! 第1話で思いっきり言っているからな!」
「何だと……っ!?」


134 : 名無しさん :2014/03/28(金) 23:16:41 i0df6Rfk0

 驚く黒岩の顔を見ても、まだ暁は満足しない。
 そう、暁の戦いは既に始まっているのだ。黒岩を力で倒す前に、黒岩に精神で勝つ。言葉で勝つ。
 何においても彼に勝つという事だ。
 そのために、暁は先ほど、図書室で勉強し、黒岩に勝る知識を得るべく、「テレビドラマ辞典」やら「昆虫採集辞典」やら何やら、色々と物色していたのである。

 暁は続ける。

「それからお前は、世界で最初のメタフィクションは1096年、イノーエット・シキが書いた『チャンゲリオン』という小説だと言ったな! あれはさっき俺が読んだ『使うとダサいしウザい加齢臭親父の大嘘大辞典』(※適当です)に書いてあったウソ知識だ! だいたい、イノーエット・シキとかチャンゲリオンとか嘘臭いだろ、気づけよ」
「なっ!」

 そんなものが実在していたのかはわからないが、暁は言った。たぶん、それは調べていないだろう。
 勿論、黒岩の知識は間違っている。誰かが適当に書いたものなのだから。暁の知識も適当だが、黒岩もどこかから得た冗談のような知識を本気にしているのだろう。

「更に! お前は、世界で最初の昆虫採集は紀元前600年の事例が何とか言ってたな! そんな事実はどこにもない! だいたい、昆虫採集なんて人類が始まって間もないころからやってるだろ」
「確かに……っ!」

 黒岩ははっとする。いま、自分は暁の知識を認めてしまった。
 いや、考えれば嘘だとわかるような知識をひけらかしてしまった己への……罪。

「要するに、お前の言っている事は嘘ばっかりだ! 口先だけのでまかせ野郎……ペテン師だ! だから俺たちはお前を信用すべきじゃなかった……! そこだけは、俺たちの負けかもしれない……だがしかし! 散々俺たちを騙してコケにし続けたお前を俺は許さない!」
「待て! 俺はちゃんと調べたっ! 確かに俺はお前たちを騙したが、俺の知識はでまかせじゃない! 正しいのは俺だ、俺が間違う事はないっ!」

 黒岩は、連日図書館でちゃんと調べものをして得た知識だ。人間界を掌握するために、人間界の知識が必要だと思って、毎日勉強した。
 そこから都知事となったというのに、それが嘘であるはずがない。

「いーや、お前は、子供たちに間違った知識を教える子供の教育上よろしくない猥褻野郎だ! 子供番組から出ていけ! テ●東の水曜夕方枠に、お前の顔は不適切なんだよ! 地方局で死亡回がお蔵入りになれ、アホたれ! お前のやっている事は全部まるっとお見通しだ、このインチキ手品師野郎!」
「お、お前にだけは言われたくない……!」

 暁は黒岩の悔しそうな顔で増長して、好き放題言っている。
 暁は既に勝ち誇った顔で、黒岩の言葉などに耳を貸さない様子である。

「だいたい騎士のくせに日本刀なんか持ちやがって! どこが暗黒騎士だよ、騎士らしい事してねえじゃねえか。だいたいあの頭の包丁はなんなんだよ。意味が全くわからん! お前のせいで毎回ビデオのパッケージが暗い! お子様が借りる気にならないだろ! 由緒正しきお子様向け番組枠にお前の顔を映すなんて許せねえ! テ●東のお偉いさんも、とってもご機嫌ナナメだぜ!」
「……い、異議あり」
「却下だ!」
「くっ……」

 反論ができない。いや、反論しようにも確証がない。一部が暁のハッタリだとも知らないし、なぜだか妙に真実味のある知識もべらべらと出てくるからだ。
 ヒーローによる精神攻撃により、悪の暗黒騎士のライフポイントが削られていく。
 黒岩は、ただただ愕然とし始めていた。

「さあ、これでまず、お前の一敗だ。お前の嘘が白日の下に晒され、お前の有罪は確定した! 罰として、俺にいちご牛乳を奢り、そして……死刑になれ!」

 要するに、暁としては黒岩を言い負かす事ができて気分が良い。これで心置きなく戦える。暁としては、そのままノリで戦闘の方も勝ちたいわけだ。
 しかし、黒岩としてはまだ負けるわけにはいかない。己の力を、もとい知識を振り絞って薀蓄を叩き付ける。

「……し、知っているか! 世界で初めての死刑は紀元前578年ローマのグラシナスという小さな村で……」
「それも全くのでたらめだ! 世界で初めての死刑が行われたのは、ローマではなく、古代バビロニアだ!」
「なにっ……!」


135 : 書き込むたびに名前欄が消えてめんどくさい :2014/03/28(金) 23:17:33 i0df6Rfk0

 だが、直後に暁が知識を反す。黒岩の精神にダメージがかかる。
 暁はふんぞり返る。遂に黒岩が薀蓄を言い始めても、BGMが変わらないレベルにまで来ていた。バックヤードにまで愛想を尽かされているらしい。いや、きっとBGM担当も愚かで、真偽もわからぬまま暁に乗せられているだけに違いない。──そう思いながら、黒岩は暁の目を見る。
 こいつが正しいはずがない。嘘に決まっている。
 黒岩も最後の意地のように、落ち着いたそぶりを見せながら、逆に暁を挑発しようとした。

「……ふ、フン……。信用できないのは貴様のその腐った知識の方だ。お前の言っている事こそ出鱈目だ。……フッ、だいたい……いちご牛乳だと? くだらんな……!」

 黒岩は、拳を握る。

「お前はいい年をした大人だろう? そんな子供の味に興味を持つなど……。まさか、お前は紅茶も知らんのか」

 黒岩は尚、暁の目を強く睨み、己の知識で暁へと精神攻撃をしようとしていた。
 いちご牛乳など、甘い物を求めるなど、脳が幼児そのままである証ではないか。
 大人ならば、紅茶の一つも飲めるはず。これを言われれば暁も立つ瀬はないだろう。
 黒岩は、そこから更に薀蓄で図に乗るコンボへとつなげようとした。

「知っているか! アールグレイという紅茶は中国の着香茶を気に入ったグレイ伯がそれを気に入って作らせ生まれたという……」

 すると、今度は石堀が、割って入るように言う。

「……おい、奇遇だな。俺も紅茶は好きなんだ。セント・バレンタインという銘柄のバニラ風味のブレンドティーがあってね。ピスタチオとココナッツを細かく刻んでいて、これがまた美味い。オススメの紅茶だったが、もう廃盤になってしまったらしい。何かバニラフレーバでオススメでもあれば、ここはひとつ黒岩センセイに聞きたいんだが?」

 石堀は妙に詳しい紅茶の知識を説明を開始した。
 黒岩も何を言っているのかさっぱりわからず、ポカンと口を開ける。挑発的な口調に、怒りを感じつつも、紅茶の話題では勝てそうにないので、話題をそらす事にした。

「そんな事よりコーヒーの話をしよう。コーヒーはブルーマウンテン4、ブラジル5、モカ1の混合豆を使ったものが一番美味い。これに匹敵するものは未来永劫生まれることはだろう」
「どう考えてもブラジル多すぎだ。本当にそんなコーヒー飲んでいるとしたらお前の舌がおかしい」
「俺の舌には合うんだ! 出せよ、出してみろよ、今すぐここに俺が言った最高のブレンドのコーヒーを出してみろ! この俺がすぐに飲み干してウマイと言ってやる!」

 黒岩が必死で自分の紅茶知識の浅さに話題を変えようとしてコーヒーの話題をしたものの、それも石堀に破られた瞬間に逆ギレし、無茶な要求を始めた。

「お、大人げない……^^;」

 ラブも黒岩に呆れ始めた。顔文字まで浮かべれば、彼女がどんな表情をしているかは察する事ができるだろう。

 だが、黒岩はかなり今ので精神的ダメージを負ったようである。紅茶知識を石堀に看破されてしまうとは……。この地味な男が紅茶好きだったとは知らなかった(実際紅茶が好きなのかはわからないが)。

「おい黒岩! 往生際が悪いぞ、誰がどう見ても、100対0でお前の負けだ! さあ、死刑執行の時だ。そしてお前に、冥土の土産に教えてやる! いちご牛乳はな、いちご5、牛乳5が、一番美味い……!」

 こっちのバカは放っとこう。しかし、残りの二人にこうまで言われたのは、黒岩としても地味にショックだ。確かに、比較的マシな人間だと思っていたが、黒岩が想像していた以上の難敵らしい。

「……」

 黒岩は、その時、周囲の人間の白い目を感じていた。憐れむように自分を見ている。周りに味方が誰もいない孤独と、己の誇りが打ち砕かれたのを感じた。


136 : こういうタイトルじゃありません :2014/03/28(金) 23:18:19 i0df6Rfk0
 しかし、黒岩は、辛うじて自分を保っていた。
 石堀の、ラブの、そして暁の白い目が痛い。突き刺さるようだ。血管がブチ切れそうなほどの怒りがわいてくるが、なんとか理性を保ち、心を落ち着かせる。
 今の彼の顔は、まるでド深夜に一時のテンションで書いたSSを後から見返すと酷すぎて目も当てられない事実に気づいた書き手のような、そんな顔だろう。
 だが、それでも大丈夫だ、怒るな……怒るな……。
 冷静に、クールになれ……。
 ……クール、そう冷静だ。
 冷静に……冷静に……










「……暁、貴様ァッ……!! とうとう俺を……本気で怒らせたなッッ! ただで済むと思うなッッ!! だいたい、さっきからいつ言おうか迷っていたが、俺は手品などしていない……ッ!!」










 ……しかし、どう堪えようとしても、黒岩は奮起せずにはいられなかった。
 己のプライドが傷つけられ、あろうことか涼村暁に己の知識を看破されるとは。
 それが許せず、黒岩の心の闇が増大する。ダークメフィストの闇は更に大きく膨らんでいく。

「貴様だけは……貴様だけは絶対に許さんッッ!! 死刑になるのは貴様の方だァッ!!」

 暁と黒岩がが近づき、対峙する。
 ここからは本当に、暁と黒岩ではなく、精神でも知識でもなく、力と力、命と命の殺し合いになるらしい。

「いちご牛乳と手品がそんなに気に入らないのか……!?」

 暁はそう思いながらも、燦然の構えを取った。
 同じく、黒岩も手を顔の前に翳している。
 二人はそれぞれ、変身ポーズを取る。

「ブラックアウトッッッ!」
「燦然!」

 両者の掛け声は同時だった。
 暁の体は再び超光戦士シャンゼリオンへ、黒岩の体は暗黒騎士ガウザーへと変身した。
 シャンゼリオンの手にシャイニングブレードが握られる。
 両者は、距離を取り、互いの剣で敵に斬りかかろうとした。そして、鍔迫り合いが始まる。
 ブレードが激突。両者の顔も近づき、殆どゼロ距離で怒鳴り合った。

「てめえ、にわか雑学知識を看破されて手品師扱いされたくらいでムキになりやがって! こっちは実質、お前に仲間を殺されてるんだぜっ! お前の数倍、俺はお前を憎んでいるんだよ!」
「いや、俺の方が貴様を憎んでいる! そもそも手品にはそこまで怒っていない!」
「いや、俺の方が憎んでいる! じゃあいちご牛乳か!?」
「いや、俺の方が憎んでいる! いちご牛乳も関係ないッ!」
「いや、俺の方が」
「いや、俺が」
「いや」
「い」
「i」

 小学生のような言い争いで、声を小さくしながら、シャンゼリオンとガウザーの力が相殺されて弾けていく。両者拮抗の鍔迫り合いが崩れた。


137 : 投票明日まで!よろしく ◆gry038wOvE :2014/03/28(金) 23:19:27 i0df6Rfk0
 ブレードは弾かれ、両者は距離を取り、じりじりと真横に歩く。

「お前が凪のラームを吸って、そこをダグバの野郎に襲撃された! ……あいつを殺したのは確かにダグバだがな、そこはお前も同じなんだよっ! お前のせいで凪は死んじまった!」
「フン……。それは貴様らが守り切れなかっただけの事……! もっと早く俺を殺せば、そうはならなかっただろうっ!?」
「ッ! てめえ……望み通りに殺してやる!!」

 シャイニングブレードを振るい、ガウザーに向けて剣圧を飛ばす。
 ガウザーもまた、日本刀を古い、剣圧でそこにぶつける。
 二つの風がぶつかり合い、弾ける。両者は互角だ。

「だいたい、お前は勘違いをしている……! 俺たちダークザイドは人間のラームが主食だ。お前が肉を食うのと何が違う!?」
「んなもん知らねえよ!」
「そうだな、貴様にこんな話をしても仕方がないか……! 俺が間違っていた……!」

 両者の剣はまたぶつかり合い、火花を散らす。右に、左に、相手がけしかけてくる剣技を全て交し合う。
 剣を防ぐ剣、剣を破ろうとする剣、二つはぶつかり合い、ラブと石堀はその様子をただ黙って見つめていた。

「もういい……っ! 何でもいいから、とにかくお前は気に入らねえっ! だから潰す、もうそれでいいんだ! 長々と喋りながら戦う殺し合いはロボットが出てくるアニメだけで充分だ! 実写の俺たちがやると寒いだけなんだよ! この台詞も長いけどな!」
「そうだな、俺とお前は宿命のライバル……戦士の定め、それだけが戦う理由だ。それで充分だろう」
「そういう宿命のライバルとかいうのが一番寒いんだっ……!」

 シャンゼリオンの一撃が、一閃、ガウザーの左肩を斬りつける。
 しかし、それと同時にガウザーもまた、シャンゼリオンの脇腹に一太刀浴びせる。

「くっ……!」
「ちっ……!」

 ガウザーの左肩が抉られ、シャンゼリオンの脇腹のクリスタルが割れる。
 どうやら、本格的にダメージを負いながらの戦いになるらしい。
 意地と意地のぶつかり合いのようなものだ。互いに相手への怒りが頂点に達しており、その程度の痛みでは戦いに支障はない。
 シャンゼリオンは、そんなさなかでも胸に手を当てた。

「……ガンレイザー!」

 シャンゼリオンはガンレイザーを取り出す。その瞬間、ガウザーは距離を取る。至近距離からでは、飛び道具は当たってしまう。
 ガンレイザーは、ガウザーのいる地点を狙い、ビームを発射する。
 ガウザーはそれを右に左に回転しながら避ける。関係ない場所にビームが命中して、校庭の砂を焼く。砂埃が舞い上がる。

「なっ!?」

 怪我の功名か、舞った砂埃はガウザーの目に入り、ガウザーは左手でその目を塞いだ。
 咄嗟の出来事に、視界がぼやける。シャンゼリオンの事だから、おそらく策はなく、ただ偶然の出来事だろう。

「シャイニングアタック!」

 そこにできた隙をシャンゼリオンが必殺の叫びで攻撃しようとする。
 シャイニングアタック──クリスタルの結晶がもう一人のシャンゼリオンを作り上げ、それがガウザーの体の方へと、ポーズを決めて飛んでいく。
 相手に隙ができた瞬間が使いどころの必殺技である。
 クリスタルのシャンゼリオンはガウザーの胸元へと近づいていく。これが発動すれば、本来ダークザイドの怪物たちは動きを縛られる──が。

「ふんッ!」

 しかし、ガウザーはそれにも屈しない。
 目に入った砂埃を振り払うと、片手の日本刀でクリスタルのシャンゼリオンを弾き返す。
 一刀両断、シャンゼリオンの幻影が真っ二つになり、崩れ去り、消えていく。

「マジかよ……! そんなのアリ……!?」


138 : ここで前編おわり ◆gry038wOvE :2014/03/28(金) 23:20:37 i0df6Rfk0

 シャンゼリオンも驚いた様子だ。
 シャイニングアタックは必中の必殺技だと確信していたが、そうではなかったのである。
 騎士の意地と怒りがシャイニングアタックの縛りを振り払い、あっさりとシャンゼリオンの攻撃を回避する。

「トドメの技はこのように使うのだッ!!」

 ガウザーはすばやく駆け出し、跳躍する。空中で膝を曲げ、忍者のように身軽に、シャンゼリオンの元に落ちていく。

「秘技! 皇帝暗黒剣ッ!」

 手に持った日本刀が、シャンゼリオンの前で横一閃、凪いでいく。
 ガウザーに原作中で必殺技も何もないが、この居合は刀を持つ戦士としては、まあオーソドックスな一撃であった。技の名前もおそらく適当に考えたに違いない。とにかくオーソドックスな技なら使いそうだし問題もないはずだ。

「クソッ……! なんで……っ!」

 シャンゼリオンは、ガウザーが横に刀を凪いだのは見ていたが、それは数メートル先で刀を振るったシーンであった気がした。
 それが赤い剣圧となって、シャンゼリオンの体をぶった斬っていたのだ。
 そして、降り立ったガウザーが叫ぶ。

「知らないのか!? 強敵に安易に使った必殺技は、必ず破られるッ! 早い段階での必殺技は敗北の兆しだ! そして、逆に俺の必殺技だけは、必ず成功するッ!」

 ガウザーが今の勝因を語る。
 なぜ、シャンゼリオンの攻撃が不発で、ガウザーが成功した理由がごくごく単純だった。

「くそ……なんか今日は一段と薀蓄祭りだな……あれ、各回ごとに一回じゃなかったのかよ……!」

 シャンゼリオンは腹部を抑えながら、それでも立ち上がる。
 ガウザーの場合、薀蓄も立派な精神攻撃だ。とにかくウザいので、相手がイライラする。たまに関心する人がいると、ガウザーの士気が上がる。
 要するに、薀蓄祭りという事は、それだけガウザーのパワーがアップしているという事だ。

「……でもな、今のもまた出鱈目だッ! お前は嘘しか言わないんだなっ!」
「何だと……?」

 シャンゼリオンの必殺技が不発だったのは仕方がない。
 タイミングを間違えたのだろう。しかし、黒岩の知識など、所詮は殆どの場合、どこかしら間違っているのだ。

「黒岩! お前の理屈で返すなら、どっちにしろ勝つのは主人公の俺なんだ、お前じゃない! そしてお前は今回のタイトル的に見て、間違いなく、今ここで死ぬ!」

 ※この台詞はあくまでイメージです。『主人公の俺』と書いてある部分には「この俺」、『今回のタイトル』と書いてある部分には「状況」というルビを振ってください。

「フン……その自信はどこから湧いて来るのか……見せてもらおう」
「見せてやるよっ! おらぁっ!」

 シャンゼリオンは、よろよろの体でシャイニングブレードを振るう。
 剣圧がまた、ガウザーの方へと殺到する。

「だから無駄だっ! この程度の攻撃……」

 ガウザーはそれを両断し、ガウザーの視覚を遮っていた剣圧が消える。
 そこにまた、一人の戦士の影が駆けてくるのが見える。
 ガウザーは、その戦士を無謀に思うが、彼は叫んだ。

「リクシンキ! ホウジンキ! クウレツキ!」
「何っ……! 卑怯な……っ!」

 確かこの三体はシャンゼリオンのサポートメカ。まさか、それを利用して攻撃しようとしている。シャンゼリオンは囮だったのでは──
 そう思い、ガウザーは空を見上げた。

「嘘だよバーカッ! 一対一っつたろ! 星空とともに死ねバカッ!! クローバーストッッ!!」

 そして、その隙にシャンゼリオンは既にガウザーの前、零距離まで場所を縮めていた。
 虚空を見上げ、サポートメカの登場を予測していたガウザーであったが、この時のシャンゼリオンはまだサポートメカなど所有しておらず、その呼び出し方を知る事はあっても、反応は来ない。つまり、ガウザーが見た空はただの星空。
 シャンゼリオンが呼べば必ず来る仕組みがゆえ、ブラフには使えないはずの代物だった。
 ──しかし、三体の超光騎士がいま、眠りについている。それがゆえ、再び呼び出される事はなかった。

「がっ……!」

 ガウザーの腹に、光線が発射され、彼の体は一瞬で吹き飛んだ。






139 : 黒岩、死す!勝利のいちご牛乳(後編) ◆gry038wOvE :2014/03/28(金) 23:22:14 i0df6Rfk0



「くっ……」

 ガウザーは、いや、黒岩省吾は立ち上がる。
 いま腹部に受けたダメージは、確かに黒岩の体を吹き飛ばすほどの衝撃であった。
 しかし、致命傷には至らない。黒岩を何とか生存させていたし、歩くのも動くのも容易であった。

「ひ、卑怯な……」
「卑怯じゃないぜ。俺はあらかじめ、一対一の勝負だと言った。だから、邪魔者が来る事はありえないんだ。……だから俺はただ、適当な名前を叫んだだけなんだぜ?
 ……俺はお前との戦いを絶対に邪魔させない。それがお前の言う美学って奴だろ。……俺は、お前が俺を信じないと思った。俺の事なんてお前は信じないと、俺は信じた。そして、お前は俺が卑怯な手を使うと信じて、負けたんだ」

 ……確かに、超光騎士が来ると思って、空を見上げたのは黒岩の方であった。
 暁を信じなかった黒岩の敗北であるともいえる。

「……フン。確かに今の一撃は、そうだな。……ライバルである貴様を信じなかった、この俺の敗北。……だが、決闘はまだ終わっていない。死刑ならばそう、どちらかが死ぬまでが戦いだッ!! ここでは終わらん、俺が得た新しい力を、存分に受けるがいいっ……!!」

 黒岩は、再び立ち上がると、今度はダークエボルバーを取り出した。
 黒岩の手に握られた細長い物体は、彼がこの殺し合いで得た新たなる力が込められている。

「な、なんだありゃっ……!?」

 ダークエボルバーを初めて見るシャンゼリオンは戦慄した。

「俺は、俺は生きる……。貴様を倒して生き残る……。もはや、貴様を倒す事が俺の最後の生きがい。俺がこの殺し合いの場で手に入れた新しい力だっ! キサマを殺すために今、使わせてもらう……ッ!!!」

 そして、黒岩は、ダークエボルバーを抜き、ダークメフィスト・ツヴァイへと変身を果たす。その姿は、異形ではあるもののダークザイドのものとは全く異なるものであった。
 赤と黒に塗れた体や、銀色の頭の怪物。──右手には、シャイニングクローのようなかぎづめを持っている。
 必殺技の充実度もさることながら、純粋なパワーにおいてもダークザイドの姿よりも上手。
 更なる力として、黒岩はそれを使う事にした。

「死刑執行の時だ、シャンゼリオン……! ハァッ!!」

 右腕から火炎状の光弾・ダークフレイムが放たれる。
 棒立ちしていたシャンゼリオンのもとに、ダークメフィスト・ツヴァイの一撃が命中、彼の体は吹き飛ぶ。

「うわあああああああああああっっ!!」

 想像だにしない威力に、シャンゼリオンは起き上がれなくなった。
 悲鳴とともに、彼は石堀とラブの前で崩れ落ちる。彼らは結構距離の離れた場所で傍観していたはずだが、まさかその距離を一瞬で詰める威力とは。

「暁さんっ……! だいじょう……」
「近寄るな! ちょっと痛いだけだ……」

 シャンゼリオンは、ラブに心配され、何とか立ち上がろうとしたが、それでもまた膝を落とした。
 ダークメフィスト・ツヴァイの方を、シャンゼリオンは睨んだ。

「フッハッハッハ……感じるぞ……新たな力を……ダークメフィストの力を……。もはや、一対一などどうでもいい、貴様ら纏めて片づけてくれる……ッ!!」

 そう、ダークメフィスト・ツヴァイは暴走を始めていた。
 闇と力が、彼の心を変異させる。自分の敵は全て排除。シャンゼリオンとの決着も、もはやついたも同然。残る敵は全て皆殺しで構わないはずだ。
 暁たちによる精神攻撃や、ガドルに大敗した怒り……全てが彼を怒らせる。

「ハァッ!!」

 メフィストクローからメフィストショットが放たれる。
 その行き先は、石堀、ラブ、シャンゼリオンの三人の元だ。

「危ないっ!」
「きゃーっ!」

 石堀は咄嗟にラブを庇い、シャンゼリオンが二人の前の壁となるため、立ち上がる。そのまま、シャンゼリオンはメフィストショットの直撃を受けた。

「ぐっ……あああああっ!!」

 しかし、何とか吹き飛ばされず、シャンゼリオンは全エネルギーを胸元に集中して、そのエネルギーを弾き返す。弾き返された光弾は、地面へと跳ね返され、砂埃を舞わせた。
 それでも、シャンゼリオンが負ったダメージは巨大だった。
 シャンゼリオンの胸元に走った衝撃に耐え切れず、再びその場に崩れ落ちる。


140 : 黒岩、死す!勝利のいちご牛乳(後編) ◆gry038wOvE :2014/03/28(金) 23:22:42 i0df6Rfk0

「くそ……っ」

 あまりの厖大なダメージに、クリスタルパワーは拒絶反応を起こし、シャンゼリオンの変身が解け、涼村暁の姿になる。
 暁は脇腹を出血していたが、それ以上に、いま受けた胸の痛みが生半可なものではない。
 それでも尚、ダークメフィスト・ツヴァイを睨んでいた。

「……黒岩、てめえ」
「フッハッハッハッハッハッハ!!」

 ダークメフィスト・ツヴァイは高笑いをしながら、暁たちの姿を眺めていた。
 暁は、立ち上がれない。もはや、敵に勝ち目はなさそうだと、ダークメフィスト・ツヴァイは踏んでいた。

「力を貸すか、……暁。奴はもう、一対一で戦う気はないらしい」

 石堀が言う。その手には、アクセルドライバーとアクセルメモリを既に装備している。
 しかし、暁はそれを拒絶した。

「いらねえっ……! 絶対に使わねえ……っ!! あいつを倒すのは俺だ、何としてもな……!!」

 暁は我が儘であった。そして、この時ばかりは妙に頑なであった。
 何が彼をそうさせるのかはわらかない。
 それでも、石堀の力も、ラブの力も借りずに、ただ黒岩をブチのめしたい感情が暁を支配する。

「なら、このアクセルドライバーをお前に貸してやる。シャンゼリオンの力は今は──」

 石堀はアクセルドライバーを暁に差し出した。それをまた払いのける。

「いらねえッッ!! 俺は誰の力も借りずにアイツをぶちのめすッッ!! 俺は超光戦士シャンゼリオンなんだよ……ッッ!!」

 アクセルドライバーの力もいらない。
 しかし、暁は生身だ。生身でダークメフィストに立ち向かうなど、馬鹿げているなどという次元を超えているはずだ。
 暁は、胸を押さえながらも、一歩、ダークメフィスト・ツヴァイに近づく。

「なんだかわからないけど……黒岩、てめえ、ダークザイドの誇りとかいうのはどこに行ったんだよッ……!」

 ダークメフィスト・ツヴァイは、メフィストクローを暁に向ける。
 ラブと石堀が心配で、一歩前に出ようとするが、暁はそれを拒絶する。

「黒岩、確かにお前は最低のバケモノだ……! だが、最低のバケモノは、もっと最低のバケモノにはならないと思っていた……!」

 最低の遥か下にある最低。
 そこに黒岩は行ってしまったのだと、暁は思った。
 怒りが暁の感情を支配していく。
 メフィストクローは、今度こそ一撃で彼を吹き飛ばすために、闇のエネルギーを周囲から吸収し、更なるエネルギーを高めようとしていた。

「今のお前は、最低中の最低のバケモノだ……。お前が言っていた美学とかいうのは、どこに消えちまったんだよ……! 今のお前には美学も誇りもねえじゃねえか……!」

 暁はまた一歩前に出る。
 闇のエネルギーは、まだダークメフィスト・ツヴァイの腕で装填される。
 邪魔者がいない限り、そのエネルギーはより膨大になっていく。

「お前は……ダークメフィストじゃねえ……そうだろォッ?」

 暁は、それでもまだ、前にいる敵に怒りを向け続けた。
 そう、死ぬかもしれない。しかし、それは負けじゃない。黒岩は黒岩としての誇りを取り戻さない限り、死んだも同然なのだ。
 それなら、暁の勝ちになる。
 暁のモットーは、「太く短く生きる事」だ。一時の楽しみのために残りの人生を犠牲にするくらい造作もない。楽しければいい。そして、ムカつく奴に勝てるだけでも、いいのかもしれない。


141 : 黒岩、死す!勝利のいちご牛乳(後編) ◆gry038wOvE :2014/03/28(金) 23:23:19 i0df6Rfk0

 ダークメフィスト・ツヴァイのエネルギーの充填が完了する。後は、放つのみ。しかし──

「……お前が俺のライバルを名乗るなら、お前はダークザイドの……ダークザイドの暗黒騎士、ガウザーって事だろッッ!!」

 その言葉が、──闇のエネルギーを溜める腕に、少しの迷いを生じさせる。
 エネルギーの充填は足りている。しかし、放てない。
 いや、放つ事ができるはずなのに、意識のどこかが邪魔をしてそうさせない。
 自分の事を忘れ、そのエネルギーをどうする事もなく、ダークメフィスト・ツヴァイは頭を抱えた。

(くっ……何故、こいつは……)

 この暁が今、どうしようもないほどに強く見える。
 身体的には弱い。そこを突き詰めれば勝てる。
 だが、何故か──そこを倒してはいけない気が、黒岩にはしていた。

「この俺のライバルは、暗黒騎士ガウザーだ!! ダークメフィストなんかになっちまったお前に、この俺の……超光戦士シャンゼリオンの、ライバルを名乗る資格はねえッッ!!!! お前に倒されても、俺は負けを認めねえッッ!!」

 それはかつて、ガウザーが聞いた言葉。そして、三人の闇生物がその言葉通り、シャンゼリオンのライバルたる資格をはく奪された瞬間の言葉だった。
 暁はその言葉など知らない。しかし、ここにいるのも、将来黒岩が会う事になるのも、同じ暁だ。口から出てくる言葉は同じ。
 憎たらしい言葉も、黒岩を奮い立たせる言葉も……。

「ぐっ……ぐおおおおおおおおおおっっ!!」

 そう、俺は超光戦士シャンゼリオンのライバル、暗黒騎士ガウザーだ。
 シャンゼリオンのライバルを狙った四人の闇生物の中で、唯一、暁が認めた男。
 この暁も変わらない。いずれは反発し合う光と影となるはずだった。
 暁は、ここでも、しばらく黒岩といた事で、その想いを確信したに違いない。

 だが、今黒岩は──その資格を自ら溝に捨てようとしてしまったのだ。



「シャン……ゼリ……オォォォォォォォンッッ……!!」



 ダークメフィスト・ツヴァイのマスクが割れる。
 闇の力を打破するだけの意思、誇り、強さ、そして美学。
 黒岩省吾を縛っていた闇の力が解き放たれていく。
 シャンゼリオンを倒すのが、彼の目的。それは生きがいではあるが、卑怯な真似を使うわけでもない。
 黒岩省吾と、暗黒騎士ガウザー以外の力で手に入れるわけにもいかない。

 黒岩省吾。
 暗黒騎士ガウザー。
 ダークメフィスト・ツヴァイ。
 三つの姿に、交互に彼の体に幻影が重なる。
 いずれがホンモノか──それは、暗黒騎士ガウザーに決まっている。
 しかし、黒岩省吾としての姿もまた、彼の真実。
 唯一のニセモノは──

「はああああああああああああああああああっっ!!」

 ──ダークメフィスト・ツヴァイ、今の自分の姿。
 偽りの自分を取っ払い、全てを「己」に近づける。
 闇の力さえ、今の自分にはいらない。それを手放し、己を己として戦うのが、暗黒騎士ガウザーとしての誇りだ。

(あ、ありえない……自力でメフィストの闇を振り払っている……)

 石堀は、己のもとに闇の力が返ってくるのを感じていた。
 少しずつだが、確かに全て、それは石堀のもとへと返還されている。
 それだけの意志、それだけの誇り……。

「闇の力よ、消え失せろ……ッッ!! そうだ、……俺は……俺は、ダークメフィストなんかじゃない……ッッ!! 俺は、暗黒騎士ガウザー、黒岩省吾……!! 超光戦士シャンゼリオン──涼村暁のライバルだ!!」

 そう、彼の心は、闇の力を打ち消すほどであった。






142 : シャンゼリオンがんばれー ◆gry038wOvE :2014/03/28(金) 23:23:58 i0df6Rfk0



 そして、再び、二人の男が対峙する。
 一人、涼村暁。涼村暁は私立探偵である。
 一人、黒岩省吾。黒岩省吾は東京都知事である。
 二人は互いの目と目を見る。その瞳は、怒りに満ちていたが、同時に、不思議な喜びにも満ちていた。

「……暁、どうやら今の一撃でかなりボロボロのようだな。これを使え」

 黒岩は暁に、小さな銃を渡した。暁は、黒岩から直接手渡されたその銃を、訝しげに見つめた。それはデリンジャーと呼ばれる銃だったが、暁は知らない。

「なんだよ、これ……」
「俺は卑怯な手を使って貴様を攻撃した。その傷は、その時のものだろう。……ならば、今貴様がそれを俺に放つ事で、この戦いは初めて平等となる。弾丸は二発、さあ……好きな所に命中させてみろ!」

 黒岩は両手を広げた。
 暁は、手元のデリンジャーを強く握りしめた。
 そして、よく狙いを定め、引き金を引く。

 二発の弾丸は、見当違いのところに当たった。黒岩を狙う気があったとは思えない。

「……悪い、両方外れたわ」
「……何をやっている、暁」
「いや、なんかさ。こういうのは俺の好みじゃないっていうか。どっちにしろ、俺が勝つんだし……いいじゃん」

 暁は、弾丸も入っていないデリンジャーを校庭に捨てた。
 どうやら、わざと外したらしい事は明らかである。

「そうか……。ならば、いつまでもこんな姿で戦うワケにはいかないな。蹴りをつけるぞ、シャンゼリオン」
「そうだな……ダークザイドのバケモノ! 暗黒騎士ガウザー!」

 二人はお互いの姿を見ながら構えた。

「燦然!」

 ──燦然、それは涼村暁がクリスタルパワーを発現させ、超光戦士シャンゼリオンとなる現象である。

「ブラックアウト!」

 ──ブラックアウトとは、黒岩省吾がダークパワーによって、暗黒騎士ガウザーに変身する現象である。

「シャイニングブレード!」
「ガウザニングブレード!」

 わけのわからない剣の名前を叫びながら、二人は激突する。
 互いの剣が、お互いの体を斬りつけ合う。その痛みさえ感じない。その痛みさえ心地よい。
 どういう原理かわらかないが、二人の体から火花が散る。もはやその原理もどうでもいい。
 この戦いの行方は誰も知らない。

「もはや今回のタイトルなど関係ない……この法則全てを超えて俺が勝ってもおかしくはないな、シャンゼリオン!」
「いーや、おかしい。何故なら俺はスーパーヒーロー、シャンゼリオンだからだ!」

 無情なタイトルさえ、彼は打ち破る気でいた。いや、打ち破った。どちらが死ぬとしても、それは表題のせいでも運命の仕業でもない。それは、暁と黒岩自身の力で勝ち取る結末だ。
 シャンゼリオンに勝利する。それ以外はもはや、彼も何もいらない。


143 : ◆gry038wOvE :2014/03/28(金) 23:24:37 i0df6Rfk0
 ガウザーに勝利する。それ以外は、どうなってもいい。

「その法則さえ打ち破る! それがこの俺、暗黒皇帝、ガウザーだからだ!」
「やってみろよ! タイトル詐欺なんざ、お前には一万光年早いんだ! そういうのは90年代初頭の戦隊ヒーローがやるものなんだっ!」

 どちらが勝利するのか、行方は誰にもわからなかった。
 黒岩が勝ってもおかしくない。黒岩は死なず、暁が死んでもおかしくはない。
 もともと、シャンゼリオンのタイトルは脚本家が適当に決めているのだ。
 そのくらいの壁は、彼らならばいつでも打ち破れる。
 そう、今の彼らならばメタ的な法則など、全て打ち破ってでも勝てる気がしていた。

「来週から、『超光戦士シャンゼリオン』は『暗黒騎士ガウザー』へとタイトルを変える! そして、俺は皇帝へと上り詰める!」
「いや、来週からはテコ入れで新しいライバルが出てくるね……っ! お前はまるでいなかったように普通に物語を進行させてやる!」

 ちなみに、この辺りの言葉は全てイメージだ。実際は、「お前を倒す! そして、俺は皇帝へと上り詰める!」、「いや、俺は負けない! お前の事は忘れてやる!」とか、そんな会話が繰り広げられている事だろうと思う。ここまでの会話は実際、殆どそんな感じだろう。あるスーパー戦隊が外道衆を倒す時に映画とテレビ版で全く別の台詞を言っているのと同じ理屈だ。
 剣と剣がぶつかり合う。
 正義と悪とがぶつかり合う。
 ライバル──その言葉は、どちらが勝ってもおかしくはない、不思議な言葉。

 二人は、互いに距離を取った後、離れる。
 トドメの一撃が繰り出される瞬間だ。

「シャイニングアタック!」

 遠距離からの攻撃、そしてトドメはシャイニングアタックに決まっている。
 クリスタルのエネルギー体はガウザーの胸元に向けて進んでいく。

「ガウザーラッガー!」

 ガウザーの頭部の斧から、闇のエネルギー体が現れ、その頭部と同じ形の鋭利な攻撃を放つ。ガウザーは、制作スタッフが最後まで使うかどうか悩んだと言われる攻撃を繰り出していた。
 シャイニングアタックのエネルギーに向かって、ガウザーの頭の形をしたエネルギー体が飛んでいく。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!」
「はああああああああああああああああああああああああっっ!!」

 両者は激突する。
 そして──


「何っ──!?」


 ──ガウザーラッガーが、シャイニングアタックに弾かれ、そのままシャイニングアタックのエネルギーがガウザーの体を貫通した。

「ば、かな……っ! くっ……!」







 ……星空が輝く。
 ここに来た時と同じ、満点の星空だった。
 星の数を数える。ひとつ、ふたつ、みっつ……四十八まで数えたが、まだ星はあるので、やめた。

 星空が見える校庭で、黒岩は倒れていた。そして、星の数を数えていた。きっと、からっぽの星ではない。そこにはいくつかの物語が刻まれている。
 あの星の数だけ、世界があるとすれば、黒岩がシャンゼリオンに倒されずに逝く世界もあったのだろうか。
 ……いや、きっとある。


144 : 黒岩、お前って奴は… ◆gry038wOvE :2014/03/28(金) 23:25:24 i0df6Rfk0
 誰も知る由はないが、本来の歴史の黒岩省吾は、涼村暁との戦いではなく、自分に叛逆した子供に撃たれ、命を落とすはずだったのだ……。

「暁……」

 敗北し、倒れた黒岩のもとに、暁が。別方向から、石堀とラブが駆け寄ってきた。
 黒岩省吾は、その姿を目に焼き付ける。最初にそこに辿り着いたのは暁だった。

「……黒岩」
「暁、どうやら俺の完敗のようだ。……だが、俺とお前はお互い、全力を尽くして戦った。これは他の誰が強要した運命でもない。どちらが勝つも、どちらが負けるも……全て決めるのは俺たち自身だった。そして、お前が勝った……これはシナリオ通りの結末じゃない……誰にも操られない、俺たちの戦いだ」

 たとえ、この物語のタイトルで黒岩の死が予言されていたとしても、死亡者の名前として載るのは涼村暁だったかもしれない。それほどの激戦だった。この戦いは、何事にも左右されず、ただ当人たちの力だけで戦い、決着したのである。
 そう、誰の介入もなく、ただ、お互いの力の差だった。そんな戦いだった。

「そうだな……」
「そうだ、罰のいちご牛乳は、貴様にくれてやる。いいか、味を想像しろ……。あかねっ娘の美味いいちご5、自然放牧の牛から取れた最高級の牛乳5……そんないちご牛乳だ……どうだ、美味いか……」

 黒岩にはもう、いちご牛乳を奢る力などない。
 視界もぼやけ始めていた。体は消え始めている。
 暁の口に、いちご牛乳など流れ込んでは来ない。しかし、暁は、虚勢を張るように答えた。

「ああ、美味い……。こんなに美味いいちご牛乳は生まれて初めてだ。……やっぱり、いちご牛乳はいちご5、牛乳5に限るな。……じゃあ、俺はお前に、死ぬ前に特別にコーヒーを奢ってやる。どうだ、美味いか……」

 暁の言葉は、黒岩の耳に辿り着いた。
 その言葉で、黒岩は自分が思う最高のブレンドのコーヒーとして流れ込む。

「……ああ、確かに美味い。どんな秘書が作ったものよりもな」

 暁と黒岩は、このひと時の戦いを楽しんだ。その満足感が、互いに飲み物を奢るのと変わらないほどの、ときめきを与えた。
 それでいい。お互いに、それで充分だ。

「黒岩さん……」
「桃園ラブ、いや、女といえど君も戦士か。キュアピーチと呼ぼう……。キュアピーチ……君は、暁に何か言ったのか……」
「……えーと……」

 そう、確かにラブは、暁に依頼した。
 必ず勝てと、そう暁に依頼した。デート一回と引き換えだった。
 悩んだラブを前に、黒岩は察した。

「……コイツは相当の女好きだ。女の言葉だけは裏切らんだろうな。君が生きろと言えば、コイツは何をしても生きる。……なるほど、それが俺の敗因か……こいつの女好きには敵わん」

 黒岩は冗談のように笑った。

「すまないが、二人は行ってくれ。……最後に話すのはコイツで在りたい。こいつこそ、本当の、終生のライバル……最後の時もまた、俺たちは二人、言葉をぶつけあって戦う存在でありたい」

 黒岩は、ラブと石堀にそう言った。
 石堀とラブは、少し躊躇った後、黙ってどこかへ消えた。







「……暁」
「なんだよ、夜に男と二人きりなんて、つまんねえ夜だぜ、本当に……」


145 : ◆gry038wOvE :2014/03/28(金) 23:25:58 i0df6Rfk0
「同感だ」

 暁と黒岩は、そう言ったが、別に悪くはないと思っていた。
 この黒岩省吾だけは認めてもいい。この涼村暁だけは認めてもいい。
 だが、黒岩は別に男二人の夜を満喫したくて彼以外を立ち退かせたわけではなかった。

「暁、聞け。俺を、ダークメフィストにしたのは、あいつだ……」
「あいつ?」

 そう、彼はダークメフィストとなった理由を打ち明けなければならない。
 人間を闇に飲み込ませる能力を持っているのは、あいつだ──。

「……石堀光彦だ。奴に気を付けろ……」

 その名前を知った時、暁の中に悪寒がした。
 今までずっと傍にいた人間が、誰かを悪の力に飲み込ませたというのである。

「……おい、マジかよ。最後までインチキじゃねえだろうな」
「おそらく……間違いない……」

 メフィストの力が消え去った今、黒岩は記憶操作の影響を受けない。メフィストになる直前の記憶を思い出しており、それを確信できる。
 メフィストである時は曖昧だった記憶も鮮明になる。
 石堀は他人の記憶が制限できるが、この場において、石堀の記憶制限は効果がないのだ。予知はできても、他者の記憶に干渉する事はできない。つまり、黒岩は石堀の行動を一瞬でも知っている。
 だから、黒岩はこうして、暁に石堀の真実を打ち明けられた。

「奴をよく、見張っておけ……。奴に欺かれるフリをして、いつでも奴の裏切りに対応する準備をしておけ……。奴はおそらく、今は危害を加えない。きっと、その時が来るのを待っている。その時まで、奴を逆に見張れ。そして、その時が来たら……女を、守れ。俺の道具は、全てお前に預ける」

 暁は、黒岩の言葉に頷いた。
 そして、全てを託したら、あとは勝者を讃えるのみであった。

「シャンゼリオン、お前は見事だった……。やはり戦士だな」
「お前もそう……見事さ。最後、お前に一撃受けたパンチが、今も効いてるぜ」

 パンチ──。
 黒岩は、そんなものを放った覚えはなかった。しかし、確かに暁の頬には痣ができている。
 いや、そうか──。シャイニングアタックの直撃の際、無我夢中で、ガウザーはシャンゼリオンに一撃でも浴びせようと、拳を突き出したのだ。
 己の中にあった戦士の血が、ガウザーをそうまでさせたらしい。
 なるほど、自分が想像した以上に良い勝負、そして良い執念であったのだ。

「暁、最後に一つだけ言っておく事がある」
「……言ってみろよ。まあ、聞いてやらない事もないぜ」

 そして、黒岩はいつも薀蓄を披露する時のように得意げに、言葉を紡いだ。

「知っているか……! 世界で最も素晴らしい決闘は、日付さえもどこにあるのかさえもわからない……この時、この場所で、超光戦士シャンゼリオンと暗黒騎士ガウザーによって刻まれた……! だが、この戦いはいずれ誰からも忘れられる……記録に残らず、やがて忘れられ、この一戦は誰にも知られる事なく、朽ち果てる! それでも尚、広い世界の片隅で……記録さえできない場所でひっそりと輝くだろう……! そう、それこそが俺が見つけ出せなかった、俺の過ちだ……! 本当に素晴らしいものは記録ではない、記憶に残り続けるものなのだ……!」

 世界で最初、世界で最高──そんなものは、広い世界のごく一部でしかない。
 誰にも見えない場所があるというのに、そんな言葉に何の意味があるというのだろう。
 黒岩は、自分の薀蓄の誤りが、一体どうして生まれたものなのか知った。
 記録に残っているそれを、記憶には残さなかった。どんな偉業も、データとして見ていた。それだけなのだ。だから、しっかりと細部まで覚えられなかった。
 その記録を、想いも全ても記憶に残せば、間違ったデータなどにはならなかっただろう。

「さあ行け……。俺も戦士だ、ライバルに最期の姿を見られたくはない……」

 黒岩は、最後に暁をそう急かした。
 ヒーローは、悪役に背中を向けて、それで去ればいい。
 そのまま画面に向かい、フェードアウトすればいい。
 いや、ガウザーが勝ったとしても、きっとそうする。
 青臭いひと時を終え、けじめをつける時が来たのだ。


146 : 井上敏樹先生リスペクト ◆gry038wOvE :2014/03/28(金) 23:27:11 i0df6Rfk0

「……わかった」

 暁は、そう言って黒岩の視界から姿を消した。
 仲間のもとへと、そして、仲間の皮を被った敵のもとへと、奴は向かっているだろう。
 まだ戦いは続く。まだあいつには戦士としての使命がある。
 暁は、一度だけ振り向いたが、それでも、またラブと石堀の元へと向かった。

(そうだ……誰より輝け、お前はこの俺に……皇帝に勝った戦士だ……)

 黒岩の体が消えていく。

(時を越えて、輝き続けろ……!)

 暁はもう、振り向く事なく過ぎ去っていく。



「──俺ってやっぱり、決まりすぎだぜ!」



 暁の声が聞こえる。
 お互いの心には、もはや一欠片の不安も、不満もない。
 奴は勝った。勝者の叫びだ。あれほど憎たらしい声をあげるのであれば、この先も過ちを犯したダークザイドを躊躇なく葬っていけるだろう。そんな後ろ姿に安堵する。
 安堵して、戦士としての役割を終えた。
 これで暁との因縁は決着したのだ。あとは、完全に消えるまでの間、ライバル以外の事を考えても良い、自由な時間がある。
 ──とはいえ、それは少ないが。

「エリ……」

 僅かであっても、戦士としての役目を終えた男は、愛しい女の名前を呟く事を許された。
 人間界でできた恋人──自分に惚れた女のラームを吸う黒岩にとって、唯一そのラームを吸う事ができない相手、それが南エリだった。
 彼女の笑顔が、最後に、彼女の瞼の裏にあったのかもしれない。


【黒岩省吾@超光戦士シャンゼリオン 死亡】
【残り18人】







 暁と、ラブと、石堀は保健室にいた。この保健室は誰かが使った形跡があり、おそらくずっと前に誰かが利用したであろう事は明白であった
 間もなく、22時に差し掛かろうとしている。暁は、そこにあるものを適当に使って、石堀に消毒してもらっていた。
 しかし、そんな暁はきっと、石堀の横顔を疑っているに違いない。
 ──彼は何かを企んでいる。今は大丈夫だと言われたが、そうらしい。
 それが真実だというのなら、暁はラブが殺される前に守らなければならない。

「……どうやら、こちら側には誰もいないみたいだな。……どうする? 警察署に向かうしかないが、そのためには遠回りをする必要があるかもしれない」
「あ、ああ……」

 石堀は、何ら変わらぬ姿であった。暁が石堀を疑っている事にも気づいていないようである。綿密に、普通の人間としての作戦を立てている。

「禁止エリアっていうのがどういうものなのかにもよる、よな……」

 暁は、本当に何事もないように話しかけた。石堀を警戒しながら。
 しかし、どこか黒岩の言葉も信じきれないまま。

『9.6秒、か。…………暁、それを言うなら『俺達は』だろ』

 不意に、暁の脳裏に浮かぶ、ダグバを倒した時の一言。


147 : 黒岩、死す!勝利のいちご牛乳(後編) ◆gry038wOvE :2014/03/28(金) 23:28:19 i0df6Rfk0
 本当にこいつが……。
 たまに冗談を言ってくる、この普通の冴えない男が、黒岩を操るほどの力を持っているのか……。
 そして、いつか機を見て、ラブに教えなければならない。

 ────そうだ。

 そのうち、二人きりになるチャンスがある。
 それは今じゃないかもしれないが、いつか、そう「デート」という権利が残っている。
 それを使う時がいつか来る。ただのデートじゃない。石堀光彦の不穏さを教えるひと時だ。
 デートは誰にも邪魔されない。特に、男にそれを邪魔する資格はない。
 いずれにせよ、暁は体を治療すると、立ち上がった。

 それから、警察署に行く方法。
 これは、禁止エリアを避ける場合、F−6の橋を通って、また森を抜けて警察署に向かわねばならないわけだが、果たしてどうするべきか。
 もしかすれば、G−8とF−9の僅かな道を抜ければ、辛うじてすぐに向こうに行けるかもしれない。しかし、首輪が爆発するタイミングがわからない以上、そこを通るのは危険だ。
 そもそも、もう22時に近い。ラブも欠伸を始めている。そんな中で、わざわざそこに向かう必要があるのだろうか。
 彼らがどう決断するのか──それは──



【1日目 夜中】
【G-8/中学校・保健室】
【備考】
※同エリアの市街地にある東せつなの遺体のもとには、カオルちゃん特製ドーナツ@フレッシュプリキュア!が供えられました。
※黒岩省吾の遺体は消滅しました。付近には彼の所持品のデリンジャーがありますが、全弾使用済です。

【涼村暁@超光戦士シャンゼリオン】
[状態]:疲労(中)、胸部に強いダメージ(応急処置済)、ダグバの死体が軽くトラウマ、脇腹に傷(応急処置済)、左頬に痛み
[装備]:シャンバイザー@超光戦士シャンゼリオン、モロトフ火炎手榴弾×3
[道具]:支給品一式×8(暁(ペットボトル一本消費)、一文字(食料一食分消費)、ミユキ、ダグバ、ほむら、祈里(食料と水はほむらの方に)、霧彦、黒岩)、首輪(ほむら)、姫矢の戦場写真@ウルトラマンネクサス、タカラガイの貝殻@ウルトラマンネクサス、八宝大華輪×4@らんま1/2、スタンガン、ブレイクされたスカルメモリ、ランダム支給品0〜5(ミユキ0〜2、ほむら0〜1(武器・衣類ではない)、祈里0〜1(衣類はない)、黒岩0〜1) 、スーパーヒーローマニュアルⅡ
[思考]
基本:加頭たちをブッ潰し、加頭たちの資金を奪ってパラダイス♪
0:石堀を警戒。石堀からラブを守る。表向きは信じているフリをする。
1:石堀やラブちゃんと一緒に、どこかに集まっているだろう仲間を探す。
2:別れた人達が心配、出来れば合流したい。
3:あんこちゃん(杏子)を捜してみる。
4:可愛い女の子を見つけたらまずはナンパ。
5:変なオタクヤロー(ゴハット)はいつかぶちのめす。
[備考]
※第2話「ノーテンキラキラ」途中(橘朱美と喧嘩になる前)からの参戦です。
つまりまだ黒岩省吾とは面識がありません(リクシンキ、ホウジンキ、クウレツキのことも知らない)。
※ほむら経由で魔法少女の事についてある程度聞きました。知り合いの名前は聞いていませんでしたが、凪(さやか情報)及び黒岩(マミ情報)との情報交換したことで概ね把握しました。その為、ほむらが助けたかったのがまどかだという事を把握しています。
※黒岩とは未来で出会う可能性があると石堀より聞きました。
※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを知りました。
※森林でのガドルの放送を聞きました。
※第三回放送指定の制限解除を受けました。彼の制限は『スーパーヒーローマニュアルⅡ』の入手です。
※リクシンキ、ホウジンキ、クウレツキとクリスタルステーションの事を知りました。


148 : 黒岩、死す!勝利のいちご牛乳(後編) ◆gry038wOvE :2014/03/28(金) 23:28:42 i0df6Rfk0

【桃園ラブ@フレッシュプリキュア!】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、左肩に痛み、精神的疲労(小)、決意、眠気
[装備]:リンクルン@フレッシュプリキュア!
[道具]:支給品一式×2(食料少消費)、カオルちゃん特製のドーナツ(少し減っている)@フレッシュプリキュア!、毛布×1@現実、ペットボトルに入った紅茶@現実、巴マミの首輪、工具箱、黒い炎と黄金の風@牙狼─GARO─、クローバーボックス@フレッシュプリキュア!
基本:誰も犠牲にしたりしない、みんなの幸せを守る。
1:どこかに集まっているだろう仲間を探す。
2:マミさんの遺志を継いで、みんなの明日を守るために戦う。
3:プリキュアのみんなと出来るだけ早く再会したい。
4:マミさんの知り合いを助けたい。もしも会えたらマミさんの事を伝えて謝る。
5:犠牲にされた人達のぶんまで生きる。
6:ダークプリキュアとと暗黒騎士キバ(本名は知らない)には気をつける。
7:どうして、サラマンダー男爵が……?
[備考]
※本編終了後からの参戦です。
※花咲つぼみ、来海えりか、明堂院いつき、月影ゆりの存在を知っています。
※クモジャキーとダークプリキュアに関しては詳しい所までは知りません。
※加頭順の背後にフュージョン、ボトム、ブラックホールのような存在がいると考えています。
※放送で現れたサラマンダー男爵は偽者だと考えています。
※第三回放送で指定された制限はなかった模様です。


149 : 黒岩、死す!勝利のいちご牛乳(後編) ◆gry038wOvE :2014/03/28(金) 23:29:04 i0df6Rfk0

【石堀光彦@ウルトラマンネクサス】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、21時半ごろから2時間予知能力使用不可
[装備]:Kar98k(korrosion弾7/8)@仮面ライダーSPIRITS、アクセルドライバー+ガイアメモリ(アクセル、トライアル)+ガイアメモリ強化アダプター@仮面ライダーW、エンジンブレード+エンジンメモリ+T2サイクロンメモリ@仮面ライダーW 、コルトパイソン+執行実包(2/6) 、ロストドライバー@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式×3(石堀、ガドル、ユーノ、凪、照井、フェイト)、メモレイサー@ウルトラマンネクサス、110のシャンプー@らんま1/2、ガイアメモリ説明書、.357マグナム弾(執行実包×18、神経断裂弾@仮面ライダークウガ×4)、テッククリスタル(レイピア)@宇宙の騎士テッカマンブレード、イングラムM10@現実?、火炎杖@らんま1/2、血のついた毛布、ランダム支給品2〜8(照井1〜3、フェイト0〜1、ガドル0〜2(グリーフシードはない)、ユーノ1〜2)
[思考]
基本:今は「石堀光彦」として行動する。
0:「あいつ」を探す。そして、共にレーテに向かい、光を奪う。
1:今は暁とラブの二人を先導しながら街を進む。
2:どこかに集まっているだろう仲間を探す。
3:周囲を利用し、加頭を倒し元の世界に戻る。
4:孤門や、つぼみの仲間、光を持つものを捜す。
5:都合の悪い記憶はメモレイサーで消去する
6:加頭の「願いを叶える」という言葉が信用できるとわかった場合は……。
7:クローバーボックスに警戒。
[備考]
※参戦時期は姫矢編の後半ごろ。
※今の彼にダークザギへの変身能力があるかは不明です(原作ではネクサスの光を変換する必要があります)。
※ハトプリ勢、およびフレプリ勢についてプリキュア関連の秘密も含めて聞きました。
※良牙が発した気柱を目撃しています。
※つぼみからプリキュア、砂漠の使徒、サラマンダー男爵について聞きました。
※殺し合いの技術提供にTLTが関わっている可能性を考えています。
※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを知りました。
※森林でのガドルの放送を聞きました。
※TLTが何者かに乗っ取られてしまった可能性を考えています。
※第三回放送指定の制限解除を受けました。予知能力の使用が可能です。
※予知能力は、一度使うたびに二時間使用できなくなります。また、主催に著しく不利益な予知は使用できません。
※予知能力で、デュナミストが「あいつ」の手に渡る事を知りました。既知の人物なのか、未知の人物なのか、現在のデュナミストなのか未来のデュナミストなのかは一切不明。後続の書き手さんにお任せします。


【支給品解説】

【スーパーヒーローマニュアルⅡ@オリジナル】
ゴハットが新たに制作した、スーパーヒーローマニュアルの第二作。
涼村暁に手渡されたこのスーパーヒーローマニュアルは、平成のヒーローっぽい名言やポーズが記されている(ヒーローの名前や姿は記されておらず、あくまで、あのヒーローやあのヒーローっぽい台詞などが載っているだけ)。その点では基本的に「Ⅰ」と同じであるものの、少しスタイリッシュでクールな新時代のヒーローの台詞などが描かれている。
また、シャンゼリオンのスペックも特別に掲載されており、リクシンキ、ホウジンキ、クウレツキの呼び方が書いてある。


【施設紹介】
【クリスタルステーション@超光戦士シャンゼリオン】
A−10エリアの海上に出現。
リクシンキ、ホウジンキ、クウレツキの三体の超光騎士を内蔵したS.A.I.D.O.C.の秘密基地。
ただし、初登場時と同じく、電気が通っていないので、何らかの手段で高圧電流を流さなければ不可能。
本当に最終回までに超光騎士を呼べるのか…?大いに疑問。

【忘却の海レーテ@ウルトラマンネクサス】
F−5エリアの山頂に出現。
来訪者たちの技術で作られた大型記憶消去装置。スペースビーストの記憶が更なる災厄を招かないよう、世界中の人間のウルトラマンとビーストの記憶を消し去り、その恐怖の記憶を封印した場所である。人々のマイナスエネルギーを溜めこんでいるため、ここを媒介として、石堀はデュナミストの憎しみを利用して光を奪い、闇に還元する事ができる。
ポテンシャルバリアーと呼ばれる防御壁があり、それが市街地にビーストを出現させる事を防いでいたが、今回のポテンシャルバリアーの状態は不明。どちらにせよ、今回は突破されてもビーストは出現しないかもしれない。


150 : ◆gry038wOvE :2014/03/28(金) 23:31:40 i0df6Rfk0
投下終了です。
書き込むたびに名前欄とE-mail欄が消えてしまう事があったので、たまに変な部分がありますが、タイトルはあくまで
「黒岩、死す!勝利のいちご牛乳(前編)」、「黒岩、死す!勝利のいちご牛乳(後編)」です。
前編と後編の境目はわかるかと思うので、そこで収録してください。


151 : 名無しさん :2014/03/29(土) 00:43:53 3PZit1b2O
投下乙です!
黒岩はついに倒れたか……まさかメフィストの闇を押し返すなんて凄すぎる!
それにしても暁が必死に調べて、黒岩の蘊蓄を否定するのは流石だなw 知ったかぶりで物を話すと、本当に痛い目を見るよね……
そして、暁は石堀の正体に気付いたけど、これからどうなるかな……?


152 : 名無しさん :2014/03/29(土) 01:34:20 9pwNv4BA0
投下乙です
ネタバレタイトルと前半のメタネタ含んだ精神攻撃に吹いたw
後半の対決も熱かったなぁ
ザギさんは復活に向けて本格的に動き出したか、暁はどうするのか…


153 : 名無しさん :2014/03/29(土) 01:59:14 0QNVqfFQ0
投下乙です。
黒岩散る、だが原作よりもヒーロー番組のライバルらしい決着で満足に逝けた事が幸いか……
しかも自力でメフィストの力を振り切るというのが末恐ろしい、それだけ暁との決着が重要だったという事か、
地味にクリスタルステーション開放(及び超光騎士解放フラグ)されているがこれが解放される日が来るのか。
そういえば暁ってあのダグバ殺したり(大半は石堀のお陰)、魔法少女と魔女の真実を把握していたり、石堀の正体情報GETしたり地味に下手な対主催グループよりも重要な立ち位置にいるんだよなぁ。その上キルスコアは下手なマーダーやボスキラー対主催よりも上な3……





そうか、『冗談は顔だけにしろ』の原点はアーノルド坊やじゃなくてその刑事ドラマだったのか。その台詞からアーノルド坊やに受け継がれたと……


154 : 名無しさん :2014/03/29(土) 03:25:27 zu4ismdo0
投下乙!
いやあ、面白かった!
前半の薀蓄合戦から始まって、そして最後の決着…シャンゼ時空がこれでもかというくらいに全開だったなあw
涼村暁と黒岩省吾、この二人らしい因縁の対決でした!
黒岩がメフィストに変身して暴走した時はどうなることやらと思ったけど、暁が暗黒騎士としての誇りを取り戻させるとはなあ…
2人の、一見くだらなくもみえる意地のぶつかり合い、最後まで楽しませていただきました!
改めて、乙です!


155 : 名無しさん :2014/03/29(土) 03:33:13 zu4ismdo0
ちなみに明日いっぱいまで、東映特撮youtubeでシャンゼリオンの黒岩死亡回および最終回が配信中だから見逃さないようにね!(宣伝)


156 : 名無しさん :2014/03/29(土) 07:16:38 9pwNv4BA0
原作の最期がアレだった事を考えると、宿敵との闘いで死ねたのは幸運だったのかもな


157 : 名無しさん :2014/03/29(土) 19:40:30 UNU8q7W2O
投下乙です。

メタネタ全開からの熱血バトル。
そして最後はちょっとしんみり、更に不穏な情報もゲット。
面白かったです!


158 : 名無しさん :2014/03/29(土) 22:11:44 Qu91RO.s0
投下乙です

原作ではこんなにガチガチなメタネタ使わなかったはずなのに、何故違和感がないんだ・・・・・・
ここでは決着つくことができてよかったな。暁も黒岩も


159 : 名無しさん :2014/03/29(土) 22:37:42 MnY4Z.Ic0
衝撃ゴウライガンとかいう神作品


160 : 名無しさん :2014/03/30(日) 11:04:27 eF0UBMps0
投下乙でした
ついに暁対黒岩に決着が…!
前半ニヤニヤしっぱなし、後半しんみりしつつも所どころ挟まれる小ネタにやっぱり笑わせてもらいました


161 : 名無しさん :2014/03/30(日) 12:04:30 Bpy6fXtI0
暁とかつぼみとかが初期は「放送超えたら死にそう」とまで言われていたのが懐かしい


162 : 名無しさん :2014/03/30(日) 13:30:52 Bpy6fXtI0
>>160
宇宙警備隊の隊長を退けたザギさんの紅茶知識…。


163 : ◆LuuKRM2PEg :2014/03/30(日) 23:05:00 aCT1WJrY0
これより予約分の投下を始めます。


164 : 壊れゆく常識 ◆LuuKRM2PEg :2014/03/30(日) 23:08:00 aCT1WJrY0


「こんな設備がこの警察署にあったとは……」

 警察署の一室で沖一也は瞠目していた。
 蒼乃美希から手渡された『D−BOY FILE』という謎のカードを解析する為の機械を捜していたら、多種多様の機械が並んでいた部屋を見つけたのだ。あのアメリカ国際宇宙開発研究所で使われているようなスーパーコンピューターは勿論のこと、一也にとって未知のマシンも光を灯っている。まるで、この部屋に近未来の技術を凝縮したと言っても過言ではなかった。
 しかし、ただの警察署にこんな設備が必要とは思えない。殺し合いの役に立つとも思えないし、何の為に用意したのかが理解できなかった。チェックマシンのように、特定の参加者に向けて意図的に作り出したのかもしれないが、情報が足りないので断定はできない。
 今は、この機械達を使ってファイルの解析をするしかなかった。

「まるで、ナイトレイダーの基地に戻ってきたかのようだ……ここまで揃っているなんて」

 隣に立つ孤門一輝も、この部屋の設備に感嘆している。

「ナイトレイダー……確か、孤門さんの所属する組織だったか?」
「はい。ナイトレイダーの基地も、これくらいに設備が整っていました……でも、ただの警察署にこんな施設が必要でしょうか?」
「恐らく、ここには特定の参加者に向けて用意されたのかもしれない。例えば、何か特殊な点検が必要な人物がいて、その為に作った可能性もある……ただの憶測に過ぎないが」

 チェックマシンを使った定期的なメンテナンスがスーパー1には必要だ。それと同じように、特殊な機械を使った健診が必要な人物がいてもおかしくない。ZXや先輩ライダー達はそれに該当するとは聞いていないが。

「とにかく今は、このファイルを解析しよう……これだけの施設ならば、できるかもしれない」
「わかりました」

 孤門が頷いたのを合図にするように、タイル状の床を踏み締める。ガラスのように綺麗で、数分前に誰かが掃除をしたと言われても信じてしまいそうだった。
 かつ、かつ、かつ……二つの足音を響かせながら、部屋の中を確認する。すると、すぐにカードが挿入できそうな四角い穴があったので、そこに差し込む。
 すると、部屋に設置されているスピーカーから男の声が発せられてきた。


 このファイルを残した男の名前はハインリッヒ・フォン・フリーマン。地球の侵略を企む悪質な知的生命体・ラダムと戦うスペースナイツという集団のチーフだった。
 ラダムは他の生命体に寄生して、脳を支配することで生態系を保っているらしい。
 相羽家やその知人が乗ったアルゴス号はラダムと接触して、悲劇が起こった。ラダム達はアルゴス号の乗務員達を支配して、テックシステムと呼ばれる生体兵器を生み出す。しかし相羽タカヤは相羽孝三の働きにより支配から逃れて、そして地球に帰還した。
 それから相羽タカヤはスペースナイツと共に戦うようになったが、あまりにも無茶な行動を繰り返すせいで「Dボウイ」と呼ばれてしまう。Dボウイはテッカマンブレードとなってラダムと戦えるが、不完全なテックシステムの影響で三十分以上の戦闘を続けると、ラダムに精神を支配されるデメリットを持っていた。
 スペースナイツの働きによってDボウイは正気に戻る。そして、ブレードのシステムを元に、人間達もソルテッカマンと呼ばれるパワードスーツを生み出した……しかし、その一方でラダム側に所属するテッカマン達が現れる。
 テッカマンエビルとテッカマンレイピア。相羽タカヤの双子の弟・相羽シンヤが変身するエビルはラダムに支配されていて、相羽タカヤの妹・相羽ミユキが変身するレイピアは精神支配から逃れていた。しかしミユキはテックセットをする度に肉体崩壊を起こすデメリットがあり、最期はタカヤを守る為にラダムテッカマン達と戦い……散ってしまった。


『……地球の、未来を信じる者に』

 フリーマンという男が残したメッセージが告げられて、そこで止まった。
 沖と孤門は何も言えなかった。相羽の名字を持つ参加者達がそんな壮絶な運命を背負っていたなんて、夢にも思わない。身体を弄られてしまい、そして自分の意志を奪われたまま殺戮を強いられてしまう……ドグマやジンドクマの悪行を聞いているようになってしまい、ラダムに対する憤りが湧きあがった。


165 : 壊れゆく常識 ◆LuuKRM2PEg :2014/03/30(日) 23:09:53 aCT1WJrY0
「……なんということだ」

 今の沖には、胸に湧き上がる感情を言葉に込めることしかできない。
 相羽家の人間達に対する同情をしても、彼らはもうこの世にいなかった。だから、もう彼らを救うことだってできない。もう少し早く知っていたら、彼らのことも助けられたはず……そんな可能性が芽生えてしまい、今度は無念の苛立ちが広がってしまう。
 だが、今となってはどうにもできなかった。相羽家の人間がどこでどんな風に死んだのかもわからない以上、弔うことすらできない。せめて、仮面ライダーとして人間をラダムから守りたかった。

「俺は、彼らの為に何かをすることもできないのか……」
「沖さん……」
「孤門。確か、美希ちゃんはマイクロレコーダーを持っていたね。それは、相羽シンヤのだったな」
「はい……子どもの頃に、シンヤが残したのだと思います。その頃はまだ、二人は普通の人間だったのでしょう」
「……くそっ」

 表情を曇らせている孤門の言葉を聞いて、沖の中で遣り切れない気持ちが更に強くなる。
 きっと、相羽タカヤと相羽シンヤは仲のいい兄弟だったはずだ。ミユキも含めて、家族全員で幸せに暮らしていたはずなのに、ラダムによってぶち壊されている。
 変わり果てた家族と戦わされてしまい、そして妹の死を目前で見せられてしまったタカヤの心境を考えただけでも、胸が張り裂けそうになってしまう。

「孤門。この話は、子ども達には内緒にしておこう……彼女達が知ってしまったら、きっと相羽タカヤ達の世界に行って、戦いに向かうはずだ。ラダム達と戦うのは、仮面ライダーの仕事だからな。翔太郎君にも、後で話しておかないとな」
「……わかりました。でも、その時は僕も一緒に行きます。僕だって、タカヤさん達が生きた世界の人々を守りたいですから」
「そうか……なら、その時は頼むぞ」
「はい!」

 孤門が頷くのを目にした後、沖はカードをケースの中に戻した。
 こんな残酷な話は未来ある子ども達が知る必要はない。これからを頑張ろうとしている少女達に、余計な絶望を植えつける訳にはいかなかった。残酷な現実を知らなければいけない時は確かにあるだろうが、それは今ではない。
 仮にタカヤ達のことを教えるにしても、殺し合いを終わらせてからだ。それまでは、このファイルのことは秘匿にして、信頼できる大人達の間に留めるべきだった。
 例え、タカヤが自分の世界のことを翔太郎や杏子に教えたとしても、このファイルの内容は限られた大人だけにした方がいいかもしれない。どうか、詳しい所まで話していないことを願う。
 首輪の解析などもしたいが、今は仲間の元に戻ってこれからのことを話し合うのが最優先だ。





「なるほど。これは見事に参加者のスタンスが纏められているな……有難い」

 冴島鋼牙は手元に握っている一丁の名簿を眺めながら、感心したように呟いた。
 魔導輪ザルバと再会してから、鋼牙は警察署にいる三人の少女達を見守っていた。沖一也と孤門一輝が調べ物をしている少しの間、子ども達を守る大人が必要だったからだ。
 子守りは鋼牙の柄ではない。だけど、ザルバを守って貰った恩があるのだから断る訳にもいかないし、何よりも未来ある子ども達を放置する訳にはいかなかった。

『そういえば、鋼牙。お前、本当にまたバラゴを倒したのか?』
「ああ。奴はこの地でも人を二人も殺した……同じ魔戒騎士として、奴の凶行を止めなければならなかった」
『それは当然だな……それにしても、キバの鎧だけじゃなくバラゴ自身もかなりしぶといな。もう、出て来ないことを祈りたいぜ』

 ザルバがうんざりしたようにぼやく。
 バラゴ。そして、バラゴの邪心から生まれた暗黒騎士キバとは幾度となく戦った。あるサバックの調査を行った時だって、キバの鎧は暁の精神を乗っ取った。いつかまた、キバの鎧は蘇る可能性もあるが、倒せばいいだけ。


166 : 壊れゆく常識 ◆LuuKRM2PEg :2014/03/30(日) 23:12:05 aCT1WJrY0

(涼村暁か……この男も、何者なんだ?)

 名簿を見るうちに、ある男の名前が目に飛び込んでくる。
 暁。参加者の中には涼村暁という名前がある。その人物に関する情報は書かれていなかったが、どうか危険人物でないことを願った。

『美希の嬢ちゃん、ヴィヴィオの嬢ちゃん、それにアンコ……どうか、仲良くやってくれないかねぇ』

 ザルバの目には、三人の少女の姿が見えているようだった。
 蒼乃美希と、高町ヴィヴィオと、佐倉杏子。この地で出会った、花咲つぼみと同じくらいに若い少女達だ。
 蒼乃美希。見るからに真面目で、品行方正という言葉が似合う少女だった。キュアベリーに変身する彼女はつぼみの友達らしい。
 高町ヴィヴィオ。美希のように固くはないが、真面目な少女だ。彼女は魔導師という戦士に変身することができるらしい。プリキュアや仮面ライダーのように高い戦闘力を誇るようだ。
 佐倉杏子。やや言動は荒いが、根はいい奴だとザルバは言っている。魔法少女、そしてある人物からウルトラマンとプリキュアの力を受け継いだらしい。ザルバが認めているのなら、信頼できるだろう。
 しかし、それとこの三人が集まったらすぐに仲良くなれるかと言われたら、話は別だ。

「なあ、やっぱり今まで盗んできた分って、働いて返さないと駄目か?」
「それは当たり前でしょ。あなたが辛かったのはわかるけど、盗まれた人達には関係ないわ。生活が困った人だっているのだから」
「やっぱりか……やれやれ、昔のあたしはとんでもないことをしていたんだねぇ」
「他人事みたいに言わないの!」
「はいはい」

 美希の咎めに対して、杏子は軽い態度で流す。それが許せなかったのか、美希は更に表情を顰めさせた。

「え、えっと二人とも……今は喧嘩はやめましょうよ! さっき、孤門さんからも言われたじゃないですか!」

 そんな彼女達の間で、ヴィヴィオはおろおろしながらも喧嘩を止めようとしている。

(こくこくこく)
「にゃー」
「ほ、ほら! クリスとティオだって、二人には仲良くして欲しそうですし!」

 ヴィヴィオの周りには、うさぎのようなセイクリッド・ハートと猫のようなアスティオンというぬいぐるみが、それぞれ頷いていた。
 どちらのぬいぐるみも人の言葉を話さない。しかし、それでもヴィヴィオには意思疎通ができるようだ。目と目で、気持ちを伝えあっているのだろうか。

「えっ? ヴィヴィオ、あたしは別にそんなつもりじゃ……」
「そうそう。あたしだって、また孤門の兄ちゃんに殴られるのは御免だよ」
「そ、そうですか……それなら、よかった」

 ヴィヴィオはホッ、と溜息を吐く。
 彼女としても、仲間が喧嘩をする光景など見たくないのだろう。こんな状況で内輪揉めなどされては、その瞬間に空気が悪くなってしまう。
 だが、このままでは同じことが繰り返されてしまうかもしれないから、空気を変えなければならない。そう思った鋼牙は口を開こうとするが……

『……おい、お嬢ちゃん達。難しいのはわかるが、あんまりギスギスしていると俺様も悲しいぜ?』

 指の中に収まっているザルバに先を越されてしまった。


167 : 壊れゆく常識 ◆LuuKRM2PEg :2014/03/30(日) 23:13:34 aCT1WJrY0
『アンコは今までのことを反省している。そして、美希もアンコのことを理解している……これで充分じゃねえか。これ以上、不安にさせるなよ』
「はぁ? あたし達は……」
『喧嘩はしていないってか? お前達はそうかもしれないが、傍からはそう見えないぞ? 尤も、いがみ合っているようにも見えないがな』
「ザルバ……どっちなんだよ!?」
『それは、これからのお前達にかかっている。俺様は見守りはするが、必要以上に干渉はしない……お前達の関係は、お前達で作るものだからな』

 そう語るザルバは、まるで教師のような態度だった。尤も、ザルバがそこまで面倒見がいいかは定かではないが。
 鋼牙は喧嘩の仲裁などあまり経験がないし、ましてや思春期の少女のメンタルケアなど専門外だった。涼邑零やゴンザなら何とかなるかもしれないが、鋼牙にそこまでの能力はない。
 冴島財閥のトップでもあるが、流石に女子中学生の面倒を見られるかと言われたら首を傾げるだろう。だが、逃げる訳にはいかない。

「杏子、そして美希……お前達が住む世界は違うだろう。そして、生きる道も違う。だが、それでも今は共に歩いている……それを忘れるな」
「鋼牙さん……?」
「つぼみは言っていた。最初はある少女と敵対していたが、それでも気持ちをぶつけあったことで友達になったと……俺が言えるのは、ここまでだ」

 美希の疑問に答えるように、鋼牙は答えた。
 なるべく暗くならないようにしたかったが、元々こういうのは得意な性格ではない。なので、もしかしたら余計に不穏になってしまう恐れもあった。

「気持ちをぶつけあう、ね……まあ、そういうのも悪くはないかな」

 頭をポリポリと掻く杏子は、納得をしたかのように呟く。

「さっきは喧嘩をしたけど、あたしは別に美希のことが憎い訳じゃない……美希のことだって、知りたいと思っている」
「……杏子?」
「せつなからも頼まれた。あんたや、ラブって奴のことをお願いって……せつなは、最期まであんた達のことを考えていた」
「……」
「あんたの堅物さにはイラついたことはあった。でも、あんたのことは決して嫌いじゃない……これだけは本当だ」

 杏子はどこかバツの悪そうな表情を浮かべながら、美希から視線を逸らしていた。
 ザルバが言うには、この二人で何やら一悶着があったらしい。美希が警察署に戻る前、杏子の素行の悪さに怒ったようだ。彼女からすれば、ルールを破る杏子は許せないのだろう。
 美希の気持ちは理解できるが、ザルバが言うように杏子は反省をしている。無論、反省をすれば全てが許されると言う訳ではないが、それでも変われるきっかけになるはずだった。

「杏子。あなたの気持ちはわかったわ……あたしも、昔のあなたの振舞いは許すことができない。誰かを助けられるはずの力で、誰かを不幸にしてきたのだから」
「わかってるよ……あたしだって」
「でも、杏子はせつなのことを守ってくれた。そして、せつなの想いを伝えてくれた。だから、あたしはあなたを信じることに決めたわ」

 そう言いながら美希は前に出て、杏子の手を握り締める。
 呆気にとられる一方で、美希は言葉を続けた。

「せつなのことを守ってくれて、ありがとう……ブッキーのリンクルンも守ってくれて、本当にありがとう……!」
「……どうしたしまして」

 美希と杏子は笑っていた。ぎこちなかったが、そこには確かな絆があった。
 そんな二人を見て、ヴィヴィオも表情を明るくする。ザルバも表情は動かないが、したり顔になっているはずだった。
 どうやら、この二人はもう心配する必要はないだろう。無論、完全に仲が良くなった訳ではないだろうが、前進はしている。

『……俺様が助言をして、正解だったな』

 そんな中、蚊の鳴くような声でザルバはぽつりと呟いた。


168 : 壊れゆく常識 ◆LuuKRM2PEg :2014/03/30(日) 23:15:18 aCT1WJrY0
「すまないな、ザルバ」
『何。ここはこの俺様が出なければ、不穏になるだろうからな……鋼牙では力不足だろう?』
「ムッ……」

 皮肉とも取れるザルバの言葉だが、否定することはできない。鋼牙では刺々しくなる可能性があるからだ。ザルバはそれを見通したからこそ、出てきたのだろう。
 しかし、鋼牙は怒るつもりはない。むしろその逆で、気配りをしてくれた相棒に感謝をしなければならなかった。

「……待たせたね、みんな」

 そして、ドアが開くのと同時に沖一也が姿を現す。隣には孤門一輝も立っていた。
 その手には『D−BOY FILE』というケースが握られている。つまり、解析が終わったのだろう。

「終わったのか?」
「ああ……この中には、相羽タカヤの戦いに関するデータが纏められていた。そして、相羽シンヤと相羽ミユキについても」
「……そうか」

 沖の言葉に鋼牙は何も返せない。
 ファイルの名前に『Dボウイ』が付けられているので、相羽タカヤと何らかの関係があるのではと推測していたら案の定だ。しかし、相羽タカヤはもうこの世にいない。
 鋼牙自身が、タカヤの遺体を埋葬したのだから。

「冴島さん、これからあなたはどうしますか?」
「俺は仲間達を待つつもりだ。彼らとは、ここで落ち合うことになっているのだから」
「そうですか……なら、よろしくお願いします」
「ああ」

 会釈する孤門に、鋼牙は頷いた。





 時計の針は既に21時を過ぎている。
 第三回放送の担当者であるゴハットが言っていたボーナスの時間はもう始まっていた。ゴハットが言うにはこれから三十分もの間、誰にも見られないように単独行動を続けなければいけないらしい。
 もしもそれが本当ならば、これからの戦いの役に立つかもしれない。だが、安易にそれを鵜呑みにするのは危険だった。

「なあ、沖の兄ちゃん。あのゴハットって野郎が言っていた時間が過ぎているけど……本当に何かがあるのか?」

 佐倉杏子は当然の疑問を口にする。だが、沖一也は上手く答えることができない。
 ゴハットの真意を確認する手段など参加者にはないのだから、不可能だった。


169 : 壊れゆく常識 ◆LuuKRM2PEg :2014/03/30(日) 23:15:38 aCT1WJrY0
「すまないな、ザルバ」
『何。ここはこの俺様が出なければ、不穏になるだろうからな……鋼牙では力不足だろう?』
「ムッ……」

 皮肉とも取れるザルバの言葉だが、否定することはできない。鋼牙では刺々しくなる可能性があるからだ。ザルバはそれを見通したからこそ、出てきたのだろう。
 しかし、鋼牙は怒るつもりはない。むしろその逆で、気配りをしてくれた相棒に感謝をしなければならなかった。

「……待たせたね、みんな」

 そして、ドアが開くのと同時に沖一也が姿を現す。隣には孤門一輝も立っていた。
 その手には『D−BOY FILE』というケースが握られている。つまり、解析が終わったのだろう。

「終わったのか?」
「ああ……この中には、相羽タカヤの戦いに関するデータが纏められていた。そして、相羽シンヤと相羽ミユキについても」
「……そうか」

 沖の言葉に鋼牙は何も返せない。
 ファイルの名前に『Dボウイ』が付けられているので、相羽タカヤと何らかの関係があるのではと推測していたら案の定だ。しかし、相羽タカヤはもうこの世にいない。
 鋼牙自身が、タカヤの遺体を埋葬したのだから。

「冴島さん、これからあなたはどうしますか?」
「俺は仲間達を待つつもりだ。彼らとは、ここで落ち合うことになっているのだから」
「そうですか……なら、よろしくお願いします」
「ああ」

 会釈する孤門に、鋼牙は頷いた。





 時計の針は既に21時を過ぎている。
 第三回放送の担当者であるゴハットが言っていたボーナスの時間はもう始まっていた。ゴハットが言うにはこれから三十分もの間、誰にも見られないように単独行動を続けなければいけないらしい。
 もしもそれが本当ならば、これからの戦いの役に立つかもしれない。だが、安易にそれを鵜呑みにするのは危険だった。

「なあ、沖の兄ちゃん。あのゴハットって野郎が言っていた時間が過ぎているけど……本当に何かがあるのか?」

 佐倉杏子は当然の疑問を口にする。だが、沖一也は上手く答えることができない。
 ゴハットの真意を確認する手段など参加者にはないのだから、不可能だった。


170 : 壊れゆく常識 ◆LuuKRM2PEg :2014/03/30(日) 23:16:36 aCT1WJrY0
「恐らく、可能性はあるかもしれない……だが、下手に単独行動を取るのは危険だ。その間に襲われては、大変なことになる」

 この島にはまだ危険人物がいる。もしも血祭ドウコクや天道あかねが戻ってきたら、襲撃されてしまう恐れがあった。
 数人で固まっているならまだしも、一人で戦って勝てる相手ではない。

『なら、心当たりのある奴だけがどっかの部屋で待っていればいいんじゃないか? 何かがあったら急いで変身をして、助けを呼べばいい……そうすれば、簡単には殺されないはずだろ?』

 沖の不安を払拭するかのように、ザルバが提案をする。

『ないと思う奴らだけが固まって、あると思うならこの部屋で静かに待つ……これでいいんじゃないか? その後に、休憩を取ればいい』
「それもそうだが……」
『もしも何か便利な力があるのなら、さっさと使えるようにした方がいいだろ? 出し惜しみをしたせいで死んだら、情けねえぞ?』

 ザルバの言うことは尤もだった。技が使えなかったせいで危機に陥るようになっては意味がない。

『鋼牙。お前も何か制限とやらがかかっているはずだ。確か、轟天が呼びだせなかっただろう? もしかしたら、敵さんのボーナスとやらで呼べるようになるかもしれない……ならば、試してみる価値はあるはずだ』
「ザルバ……だが、下手に離れる訳にはいかない。一也の言うように、敵は他にいる」
『なら、交互に部屋に入ればいいだけだ。三十分ごとに二人ずつで待機をして、戻ってきたらまた別の二人が行動をする……時間はかかるが、一度に大勢が単独行動を取るよりはマシじゃないのか?』
「それなら、あたしからやるよ」

 鋼牙の指で提案を続けるザルバに頷いたのは、杏子だった。

「代わりばんこなら、後回しにするのは面倒だ。さっさと済ませてやるよ」
「杏子、あなた……!」
「おっと、説教ならなしだ。三十分くらい、すぐに過ぎるだろ? ちょっとくらい、心配するなって……何かあったら、すぐに戻るからさ」

 美希は止めようとするが、杏子はそれに構わず背を向ける。そのまま軽く手を振りながら廊下に去っていった。
 今から呼んだとしても、絶対に戻ってこない。無理矢理にでも、ボーナスを待つはずだった。

「全く……」
『やれやれ、性急なこった……で、美希のお嬢ちゃんはどうするんだい?』
「あたしは……大丈夫。さっきも言ったように、特に心当たりはないから」
『了解。で、鋼牙はどうする?』
「俺は後にする。戦える奴は少しでも残るべきだ」
『そうか。それと、沖の兄ちゃんもやってみたらどうだ。何かあるかもしれないぜ……ここは、鋼牙達に任せたらどうだ』

 周囲を見渡すと、誰も特に異論はなさそうだった。
 沖としても不安だが、ここで断る訳にもいかない。戦力を整える必要もあるだろうし、何よりもみんなの好意を無碍にする訳にはいかなかった。

「……わかった。だが、もしも何かあったらすぐに叫んでくれ」
「当然ですよ。でも、ここは僕達に任せてください」
「頼んだぞ」

 孤門が頷くのを見てから、沖もまた背を向ける。
 そのまま、どこか静かな部屋はないかと捜し始めた。


171 : 壊れゆく常識 ◆LuuKRM2PEg :2014/03/30(日) 23:17:46 aCT1WJrY0
【1日目 夜中】
【F−9 警察署 会議室】


【蒼乃美希@フレッシュプリキュア!】
[状態]:ダメージ(中)、祈里やせつなの死に怒り 、精神的疲労
[装備]:リンクルン(ベリー)@フレッシュプリキュア!
[道具]:支給品一式((食料と水を少し消費+ペットボトル一本消費)、シンヤのマイクロレコーダー@宇宙の騎士テッカマンブレード、双ディスク@侍戦隊シンケンジャー、リンクルン(パイン)@フレッシュプリキュア!、ガイアメモリに関するポスター、杏子からの500円硬貨
[思考]
基本:こんな馬鹿げた戦いに乗るつもりはない。
1:今はここで沖さんと杏子を待つ。
2:警察署内では予定通りに行動する。
3:プリキュアのみんな(特にラブが)が心配。
[備考]
※プリキュアオールスターズDX3冒頭で、ファッションショーを見ているシーンからの参戦です。
※その為、ブラックホールに関する出来事は知りませんが、いつきから聞きました。
※放送を聞いたときに戦闘したため、第二回放送をおぼろげにしか聞いていません。
※聞き逃した第二回放送についてや、乱馬関連の出来事を知りました。
※警察署内での大規模な情報交換により、あらゆる参加者の詳細情報や禁止エリア、ボーナスに関する話を知りました。該当話(146話)の表を参照してください。
※霊安室での殺人に関して、幽霊の仕業であるかもしれないと思い込んでいます。


【高町ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
[状態]:上半身火傷、左腕骨折(手当て済)、誰かに首を絞められた跡、決意、臨死体験による心情の感覚の変化
[装備]:セイクリッド・ハート@魔法少女リリカルなのはシリーズ、稲妻電光剣@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:支給品一式(アインハルト(食料と水を少し消費))、アスティオン@魔法少女リリカルなのはシリーズ、ほむらの制服の袖
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
1:生きる。
2:警察署内では予定通りに行動する。
[備考]
※参戦時期はvivid、アインハルトと仲良くなって以降のどこか(少なくてもMemory;21以降)です
※乱馬の嘘に薄々気付いているものの、その事を責めるつもりは全くありません。
※ガドルの呼びかけを聞いていません。
※警察署の屋上で魔法陣、トレーニングルームでパワードスーツ(ソルテッカマン2号機)を発見しました。
※第二回放送のボーナス関連の話は一切聞いておらず、とりあえず孤門から「警察署は危険」と教わっただけです。
※警察署内での大規模な情報交換により、あらゆる参加者の詳細情報や禁止エリア、ボーナスに関する話を知りました。該当話(146話)の表を参照してください。
※霊安室での殺人に関して、幽霊の仕業であるかもしれないと思い込んでいます。
※一度心肺停止状態になりましたが、孤門の心肺蘇生法とAEDによって生存。臨死体験をしました。それにより、少し考え方や価値観がプラス思考に変わり、精神面でも落ち着いています。


172 : 壊れゆく常識 ◆LuuKRM2PEg :2014/03/30(日) 23:18:39 aCT1WJrY0
【孤門一輝@ウルトラマンネクサス】
[状態]:ダメージ(中)、ナイトレイダーの制服を着用 、精神的疲労
[装備]:ディバイトランチャー@ウルトラマンネクサス
[道具]:支給品一式(食料と水を少し消費)、ランダム支給品0〜2(戦闘に使えるものがない)、リコちゃん人形@仮面ライダーW、ガイアメモリに関するポスター×3、ガンバルクイナ君@ウルトラマンネクサス
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
1:みんなを何としてでも保護し、この島から脱出する。
2:警察署内では予定通りに行動する。
3:副隊長、石堀さん、美希ちゃんの友達と一刻も早く合流したい。
4:溝呂木眞也が殺し合いに乗っていたのなら、何としてでも止める。
[備考]
※溝呂木が死亡した後からの参戦です(石堀の正体がダークザギであることは知りません)。
※パラレルワールドの存在を聞いたことで、溝呂木がまだダークメフィストであった頃の世界から来ていると推測しています。
※警察署の屋上で魔法陣、トレーニングルームでパワードスーツ(ソルテッカマン2号機)を発見しました。
※警察署内での大規模な情報交換により、あらゆる参加者の詳細情報や禁止エリア、ボーナスに関する話を知りました。該当話(146話)の表を参照してください。
※霊安室での殺人に関して、幽霊の仕業であるかもしれないと思い込んでいます。


【冴島鋼牙@牙狼─GARO─】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)
[装備]:魔戒剣、魔導火のライター、魔導輪ザルバ
[道具]:支給品一式×2(食料一食分消費)、ランダム支給品1〜3、村雨のランダム支給品0〜1個
[思考]
基本:護りし者としての使命を果たす
1:今は警察署で仲間達を待つ。
2:首輪とホラーに対し、疑問を抱く。
3:加頭を倒し、殺し合いを終わらせ、生還する
4:良牙、一条、つぼみとはまたいずれ会いたい
5:未確認生命体であろうと人間として守る
6:後で制限解除の為に、どこかの部屋で単独行動をする。
[備考]
※参戦時期は最終回後(SP、劇場版などを経験しているかは不明)。
※ズ・ゴオマ・グとゴ・ガドル・バの人間態と怪人態の外見を知りました。
※殺し合いの参加者は異世界から集められていると考えています。
※この殺し合いは、何らかの目的がある『儀式』の様なものだと推測しています。
※首輪には、参加者を弱体化させる制限をかける仕組みがあると知りました。
 また、首輪にはモラックスか或いはそれに類似したホラーが憑依しているのではないかと考えています
※零の参戦時期を知りました。
※主催陣営人物の所属組織が財団XとBADAN、砂漠の使徒であることを知りました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを全て知りました。
※つぼみ、一条、良牙と125話までの情報を交換し合いました。



【特記事項】
※21時を過ぎているので、制限に心当たりのある者だけが単独行動をして、それ以外の参加者は一ヶ所に固まる方針です。
※また、一度に行動するのは二人までで、交代で単独行動をする予定です。
※それらが終わったら、休憩をする予定です。


173 : 壊れゆく常識 ◆LuuKRM2PEg :2014/03/30(日) 23:19:14 aCT1WJrY0





 沖一也は仮面ライダースーパー1に変身しながら、誰もいない部屋の中で構えている。先程、ファイルを解析した部屋を確認したが、やはり何の異常もなかった。
 敵意のある人物や罠は存在しないが、油断はできない。忍者のように闇の中に潜みながらも、気配を消す参加者が現れてもおかしくなかった。
 この警察署には悪の気配は存在しないが、殺し合いの会場だ。誰も知らない所から猛毒のガスが噴き出すと言われても、充分に納得できてしまう。ここも、敵地といっても過言ではないのだから。

(やはり、この首輪は解体自体はできそうだが……ここには普通の工具しかない。下手に解体などしたら、爆発する危険がある)

 スーパー1はボーナスの制限解除が訪れるまでの三十分間で、首輪の解析を選んでいる。ただ待つよりも、少しでも進めた方が建設的だからだ。
 巨大なリングにも見える首輪には、目を凝らすと一本の線がある。そこを辿れば解体の道筋が見えるかもしれないが……必要な道具が手元にはなかった。
 結城丈二が変身するライダーマンの持つオペレーションアームのような装備がない。それに加えて、この警察署にはドライバーやスパナを始めとする工具しか見つけられなかった。それだけで精密な機械の解体ができるわけがない。
 沖自身も技術者として高い技能と知恵を持っているが、だからといって道具もない状態での解体作業は不可能だ。小さな機械の内部構造を調べられる機械さえあれば別だろうが、そんなのはここにはない。そこまで都合よくはなかった。
 しかし、それを抜きにしてもこの部屋に結集された設備は凄まじかった。
 
(やはりこの部屋は異常だ……ただの警察署に、これだけの機械が必要とも思えない。何故、奴らはこんな場所を用意したんだ?)

 とある世界には未確認生命体対策本部という場所があるのなら、ここはそれを模したのかもしれない。未確認生命体とは、鋼牙が言うには人間を襲う怪物らしい。要するに、ドグマやジンドグマのような連中だろう。
 それをわざわざ、この殺し合いに持ってきても何の意味があるのか? もしや、どこかにいる未確認生命体を倒す為のヒントにするのだろうか? だが、それでは殺し合いのバランスが崩れかねない。
 どれだけ考えても答えは見つからない。真実を知るのは主催者だけだ。
 ふと、スーパー1は近くにある時計を見つめる。気が付いたら、約束の時間まで五秒もなかった。

『こんばんは、沖一也……いいえ、仮面ライダースーパー1と呼ぶべきでしょうか』

 闇の中より、聞き覚えのある男の声が聞こえる。
 それを察したスーパー1は意識を覚醒させて、周りを見渡す。すると、目の前には第二回放送で現れたニードルが、薄気味悪い笑みを浮かべながら立っていた。
 反射的に構えを取るが、目の前にいるニードルは何かを仕掛けて来ない。放送と同じ、ホログラフだと一瞬で察した。

「キサマは……ニードル!」
『数時間ぶりですね。また会えて光栄ですよ……こうして、貴方と話が出来るのですから』
「何……目的は何だ!?」
『目的? そんなの、決まっているじゃありませんか……貴方の制限解除ですよ。レーダーハンドとパワーハンドの解放です』
「……やはり、キサマらの仕業だったか」
『当然の処置ではありませんか。レーダーハンドを使われてしまっては、他の皆様との公平さを欠く結果になってしまいます。それにパワーハンドだって、普通に使うには危険な威力を持っていますから……でも、これからは自由に使えますから、安心してください』

 ニードルは吐き気を促すような笑みを浮かべながら、語り続ける。例え映像でも、不愉快になるには充分だった。
 その言葉が真実であると証明するように、身体の奥底に力が宿るのを感じる。
 この島に転送されてからレーダーハンドを使おうとしたが、使えなかった。また、ノーザとの戦いでもメガトンパンチを放っても倒せなかったのだから、威力が落ちていると言われても頷ける話だ。
 しかし、だからといってニードルに感謝をすることなどしない。奴は、嘲笑うような表情で参加者達を見下しているのだから。


174 : 壊れゆく常識 ◆LuuKRM2PEg :2014/03/30(日) 23:20:05 aCT1WJrY0

『それでは、私の役目は終わりです……健闘を祈りますよ』
「待て!」

 スーパー1はニードルに手を伸ばすが、触れようとした直前に消えてしまう。もう、この部屋にはスーパー1しかいなかった。
 心の中で憤りが渦巻いていく。こんな奴らに多くの命が弄ばれて、そして本郷や一文字達が死んだ……どれだけ考えてもやりきれない。
 しかし、今はもうどうにもならない。この手で守れる命を取りこぼさないよう、力を尽くすしかなかった。

(奴は俺が行っていた首輪の調査について何も言わなかった……どういうことだ?)

 そして、スーパー1の中である疑問が芽生える。ニードルが、首輪の調査をしていたことに対して何も口にしてこなかったことだ。
 一応、首輪を調べている最中は何も言わなかったが、それだけで主催者の目を誤魔化すことはできない。死体から首輪を確保した時から、解体を企んでいると主催者から警戒されてもおかしくなかった。
 しかしニードルは何も言及していない。やはり、この首輪には何か罠が仕掛けられているから、あえて見逃したのか。それとも見くびられているのか、何かもっと別の理由があるのか。
 今の段階では答えを見つけられない。

「……とにかく、今はみんなの所に戻らないと。話はそれからだ」

 首を振りながらスーパー1は部屋から出る。この三十分間で外から騒ぎの音は聞こえなかったが、それでも早く戻らなければならない。
 皆を心配させる訳にはいかなかった。首輪の解析の続きは、それからだ。

 
【1日目 夜中】
【F−9 警察署 研究室】

※研究室には様々な設備が搭載されています。


【沖一也@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、強い決意
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(食料と水を少し消費)、ランダム支給品0〜2、首輪(祈里)、ガイアメモリに関するポスター、お菓子・薬・飲み物少々、D-BOY FILE@宇宙の騎士テッカマンブレード
[思考]
基本:殺し合いを防ぎ、加頭を倒す
0:今は皆の元に戻る。
1:本郷猛の遺志を継いで、仮面ライダーとして人類を護る。
2:警察署内では予定通りに行動する。
3:この命に代えてもいつき達を守る。
4:先輩ライダーを捜す。結城と合流したい。
5:仮面ライダーZXか…
6:ダークプリキュアについてはいつきに任せる。
[備考]
※参戦時期は第1部最終話(3巻終了後)終了直後です。
※一文字からBADANや村雨についての説明を簡単に聞きました
※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました
※18時に市街地で一文字と合流する話になっています。
※ノーザが死んだ理由は本郷猛と相打ちになったかアクマロが裏切ったか、そのどちらかの可能性を推測しています。
※第二回放送のニードルのなぞなぞを解きました。そのため、警察署が危険であることを理解しています。
※警察署内での大規模な情報交換により、あらゆる参加者の詳細情報や禁止エリア、ボーナスに関する話を知りました。該当話(146話)の表を参照してください。
※ダークプリキュアは仮面ライダーエターナルと会っていると思っています。
※霊安室での殺人に関して、幽霊の呪いである可能性を聞きましたが、流石に信じていません。
※第三回放送指定の制限解除を受けました。彼の制限はレーダーハンドの使用と、パワーハンドの威力向上です。


175 : 壊れゆく常識 ◆LuuKRM2PEg :2014/03/30(日) 23:21:13 aCT1WJrY0




 佐倉杏子は警察署のとある部屋に入った後、魔法少女に変身していた。沖達には強気でいたが、万が一の時を考えて戦える準備だけはした方がいい。
 周りに人気はないが、油断はできなかった。この警察署には幽霊とやらが出て、そのせいで梅盛源太とアインハルト・ストラトスの二人が死んでしまったのだから。
 常日頃、幽霊なんかよりもよっぽど恐ろしい魔女や使い魔と戦っている杏子には子供騙しにしか思えなかったが、警戒だけは忘れない。少しの油断が死に繋がるなんて、これまでの戦いで何度も経験したのだから。
 魔法で生み出された槍を握りながら、杏子は時計の針が動くのをぼんやりと眺めていた。

『佐倉杏子……初めましてと言うべきかしら?』

 その時、どこからともなく声が聞こえる。それに意識を覚醒させた杏子が振り向くと、見知らぬ少女が立っていた。
 ドレスのように煌びやかな純白の衣装を纏い、まるでおとぎ話に出てくるお姫様のような雰囲気を放っている。フランス人形のように整った顔立ちも、そんな印象を更に強くさせた。
 しかし、その瞳は氷のように冷たい光を放っていて、友好的に見えない。それだけでも、杏子は反射的に槍を構えた。

「てめえ……何者だ!?」
『私の名前は美国織莉子。貴女と同じ、魔法少女の一人よ』
「魔法少女……?」

 美国織莉子と名乗った謎の少女の言葉に、杏子は思わず槍を握る力を緩めてしまう。
 よく見ると、目の前の織莉子からは気配が感じられない。立体映像であると杏子は理解した。
 つまり、この魔法少女は主催陣営の一人……それを察してから、力を込めなおした。

「……なるほどね。あんた、あのいけ好かない連中に加担しているってわけか。あたしと同じ、魔法少女の面汚しだな」
『否定はしないわ……貴女からすれば、私も元凶の一人なのだから』
「へっ。認めたってわけか!」
『そうね……でも、私はそんな口論をする為に現れたのではないわ。私は、貴女に真実を伝える為にやってきたの』
「はっ、あんたらが何を教えてくださるってんだ!」
『魔女……私達の同胞の、なれの果てについてよ』
「……は?」

 織莉子の口から出てきた言葉により、杏子は怪訝な表情を浮かべてしまう。
 しかし、そんな杏子のことなどお構いなしに織莉子は言葉を続ける。

『私達魔法少女はインキュベーター……いえ、キュウべぇと契約をして、願いを叶える対価として魔法少女になって、魔女と戦う存在になる……それは、貴女も知っているわね』
「そんなの、当たり前だろ!」
『でも、貴女は疑問に思ったことがない? 私達が戦っている魔女が、どこから現れるのかを……』
「え……結界の中から……だろ?」
『それは間違いないわ。でも、結界はあくまでも魔女が作り出しているだけ……その魔女が、どうやったら誕生するのかを、貴女は知っているの?』
「それは……」


176 : 壊れゆく常識 ◆LuuKRM2PEg :2014/03/30(日) 23:22:37 aCT1WJrY0
『私達、魔法少女の魂とも呼べる……ソウルジェムからよ』
「……何、言っているんだよ」
『魔法を使うことでソウルジェムが穢れていき、それが限界に達すると私達は変わってしまうわ……呪いと絶望を撒き散らすだけの魔女に』
「な……!?」
『既に美樹さやかと巴マミもソウルジェムが穢れきったことで、魔女へと変わったわ。そして、四度目の放送が終わると同時に……この島に君臨して貴女達に牙を向ける』
「……なんだよ、それ」
『これは私と貴女も例外ではないわ。魔法の過度や使用や、絶望を背負うことで魔女になって絶望を齎す……私はそれを伝える為に、貴女の元に現れたの。鹿目まどかと暁美ほむらはその条件から外れているけれど』

 織莉子から告げられるあらゆる事実が、杏子の心に突き刺さっていく。
 マミとさやかが既に魔女になっている?
 あたし達は、今まで同じ魔法少女すらも食い物にしていたのか?
 ゾンビにされただけじゃなく、人々を傷付ける化け物にもされてしまったのか?
 キュウべぇに騙されたのか? キュウべぇは何の為に、あたし達にこんな仕打ちをしたのか?
 様々な疑問が生まれて、杏子の脳裏で爆発していく。まともな思考が働かなかった。

『貴女も殺し合いを止めようとしているのなら、気を付けることね……迂闊に戦ったりしたら、周りの人達も絶望に巻き込まれるのだから』

 そう言い残した瞬間、美国織莉子の姿が部屋から消えていった。それに対して、杏子は何も言うことができない。
 今はそれどころではなく、疑問が増えていくだけだった。

「……ふざけるなよ」

 杏子はただ憤るしかできない。
 自分達をこんな身体にしたキュウべぇに対して。そんな事実を何でもないかのように話した織莉子に対して。そして、変わろうとしていたのに叶えられそうにない現実に対して。
 こんなのはボーナスではない。むしろ、最悪の罰ゲームだ。
 どうして、いつもこうなのか。一緒にいた人達が次々と死んでいき、同じ魔法少女は魔女になり、そして自分自身すらも魔女になろうとしている。
 せつなや姫矢の意志を継いで正義の味方になろうとしたのに、結局は呪いと絶望を撒き散らすだけの存在にしかなれない。
 もう、何が何だかわからなかった。

「なんでだよ……なんでだよ……なんでだよ……!」

 嘘だと切り捨ててしまいたかったが、本能がそれをしてくれなかった。織莉子の言葉からは一切の嘘が感じられなかった。
 みんなの為に戦うことすらも許されないのか。みんなに絶望を齎すことしか、自分にはできないのか。
 何も知らないまま、殺し合いを終わらせることができたのなら……楽だったのに。

「何でだよおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 残酷な運命に対して、佐倉杏子は叫ぶことしかできない。
 しかし、それで何かが変わることはなかった。殺し合いも、魔法少女の真実も、呪われた存在である自分自身も……そのままの形を保っていた。
 これまでの常識は壊れてしまい、代わりに告げられたのは惨すぎる真実。それを前に、ただ嘆くしかできない。
 その叫びは、彼女しかいない部屋の中で空しく響いていた……


177 : 壊れゆく常識 ◆LuuKRM2PEg :2014/03/30(日) 23:23:37 aCT1WJrY0

【1日目 夜中】
【F−9 警察署 とある部屋】


【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(大)、ソウルジェムの濁り(小)、腹部・胸部に赤い斬り痕(出血などはしていません)、ユーノとフェイトを見捨てた事に対して複雑な感情、マミの死への怒り、せつなの死への悲しみ、ネクサスの光継承、ドウコクへの怒り、真実を知ったことによるショック。
[装備]:ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ、エボルトラスター@ウルトラマンネクサス、ブラストショット@ウルトラマンネクサス
[道具]:基本支給品一式×3(杏子、せつな、姫矢)、リンクルン(パッション)@フレッシュプリキュア!、乱馬の左腕、ランダム支給品0〜1(せつな) 、美希からのシュークリーム
[思考]
基本:姫矢の力を継ぎ、翔太郎とともに人の助けになる。
1:?????????
[備考]
※参戦時期は6話終了後です。
※首輪は首にではなくソウルジェムに巻かれています。
※左翔太郎、フェイト・テスタロッサ、ユーノ・スクライアの姿を、かつての自分自身と被らせています。
※殺し合いの裏にキュゥべえがいる可能性を考えています。
※アカルンに認められました。プリキュアへの変身はできるかわかりませんが、少なくとも瞬間移動は使えるようです。
※瞬間移動は、1人の限界が1キロ以内です。2人だとその半分、3人だと1/3…と減少します(参加者以外は数に入りません)。短距離での連続移動は問題ありませんが、長距離での連続移動はだんだん距離が短くなります。
※彼女のジュネッスは、パッションレッドのジュネッスです。技はほぼ姫矢のジュネッスと変わらず、ジュネッスキックを応用した一人ジョーカーエクストリームなどを自力で学習しています。
※第三回放送指定のボーナスにより、魔女化の真実について知りました。


178 : ◆LuuKRM2PEg :2014/03/30(日) 23:24:54 aCT1WJrY0
以上で投下終了です。
>>168>>169で被ってしまったのは、こちらのミスです……申し訳ありません。
それでは指摘する点がありましたら、お願いします。


179 : 名無しさん :2014/03/31(月) 00:35:51 l0tyEdds0
投下乙です
対主催者集結しだして安心と思ったのに杏子が…
これは雲行き怪しくなってきたぞ


180 : 名無しさん :2014/03/31(月) 01:03:57 XUM6jQBs0
投下乙
杏子、魔女化のこと知っちゃったかあ
それでも今の杏子なら、戦い抜いてくれるとは思うけども…


181 : 名無しさん :2014/03/31(月) 02:16:12 irlekUvI0
投下乙です

時限爆弾が数個あったが杏子は等々知ってしまったかあ
これは…


182 : 名無しさん :2014/03/31(月) 02:45:43 VPtKhJ.oO
投下乙です

制限解除ってなんだっけ?残念おりこちゃんでしたー。ちょっとタイミングが早かったら原作同様一時的なショックで済んでたろうけど…まあ原作以上に仲間に恵まれてるしなんとかしてくれるさ


183 : ◆gry038wOvE :2014/03/31(月) 14:31:34 Mvr2kvM20
短いですが、今回のSSを投下します。


184 : 双大将再会 ◆gry038wOvE :2014/03/31(月) 14:33:07 Mvr2kvM20
 血祭ドウコクの目の前には、巨大な嘆きのエネルギーの集合体が光っていた。
 位置はF−5(衛府之五)の山頂。不穏な光を見つけてやって来てみれば、そこにあったのは巨大な不可思議である。人々の嘆きや恐怖が集合し、それが集合する場所。
 青い光を発し、その中央に、どこかで見たような真っ赤な光を発するその施設。
 その名は、忘却の海レーテ──。

「こいつぁ一体……」

 然るドウコクでさえ、先ほどまでなかったはずのその物体に、不穏な気配を感じずにはいらなれなかった。このレーテには、人々がビーストを恐怖する負の記憶が封印されている。
 そんな場所だが、ドウコクがそんな物を知る由もない。
 ただ、その膨大な嘆きの力だけは彼も感じていた。

「……わからねえが、ただのデカブツってわけじゃなさそうだな」

 ともかく、他の参加者に比べれば、彼は動じない部類だっただろう。
 嘆き──そこから感じるマイナスエネルギーに不安を感じる事はなかった。
 血祭ドウコクの場合は、突如としてこれが現れた理由に不穏な気配を感じずにはおれなかった。
 これが今後、この殺し合いでどういう意味を持つのだろう。その疑問に答える者は何もない。

『──ドウコク殿』

 ふと聞こえたのは、ドウコクを呼ぶ声だ。
 血祭ドウコクを呼ぶ、何者か。──ドウコクは、瞬時に後方のその人物に向けて剣を振るった。
 何故、こんな行動に出たのか。
 それは簡単だ。相手は利用価値とは程遠く、また、ドウコクの知る人物──参加者外の存在であると、認識できたからだ。

「久しぶりだな……マンプク。いつぞやにテメエがくたばって以来じゃねえか」

 脂目マンプク。かつて、夏の陣にてシンケンジャーに敗北し、死亡したはずのクサレ外道衆の大将である。ドウコクが三途の川から掬いだしてやってみれば、ドウコクを家臣などと扱う傲慢さだ。
 まあ、ドウコクはそこを咎めるつもりはないし、何故彼がここにいるのかなど今更疑問に思う理由もない。
 彼が主催側からの使者である事は明白だ。
 昇竜抜山刀は、マンプクの喉元で止まっていたが、マンプクが動じる様子はなかった。

『ご挨拶ですな、ドウコク殿。拙者は目的を果たしに参上仕った次第。今ここに現れている私の体そのものは幻影でござる』

 そう言って、マンプクはドウコクの刃に指を通した。
 どこから、血を撒き散らすわけでもなく、指がちぎれるわけでもなく、まるで刀か指かのどちらかが存在しないようにすり抜けていった。
 なるほど、今ここでマンプクに余計な力を使う必要はなさそうだ。要件だけ話すべきだと思い、ドウコクは刀を下げる。

「で、テメエの目的ってのは何だ? この殺し合い、それにこのデカブツの話も聞きてえな……」
『手短に』

 そう、前置きしたうえで、マンプクは語る。

『……拙者はドウコク殿に、この殺し合いにおける縛りの解除──即ち、貴殿の死後、二の目が発動する事と、近々筋殻アクマロの二の目が解放される旨を申しに参ったのでござる』
「……何?」

 アクマロの二の目は、この殺し合いで発動していない。
 それらしい様子もなかったので、てっきりアクマロはこの殺し合いの会場では二の目になる事もできずに死亡したと思っていたが、どうやら何らかの縛りがかけられてアクマロが二の目を解放できずにいたのみだという話だ。

『言葉通りでござる。これは全て、アクマロ殿自身は知らない話。もしまみえる事があったら、アクマロ殿にはドウコク殿の口から説明していただきたい』
「フン……。まあいい。だが、とっととテメエも俺のもう一つの質問に答えろ」

 この殺し合いは何なのか、その問いにはマンプクはまだ答えていない。
 ドウコクに関心があるのは、アクマロがどうという話ではないのだ。あんな奴の話はもうどうでもいい。


185 : 双大将再会 ◆gry038wOvE :2014/03/31(月) 14:35:28 Mvr2kvM20
なんかNGワードが含まれているとかで投下できないので、いったん続きを仮投下のほうに投下させていただきます…。


186 : 双大将再会 ◆gry038wOvE :2014/03/31(月) 14:49:44 Mvr2kvM20

『ドウコク殿、拙者はただ、この殺し合いの縛りを無くす事だけ教えに来た身でござる。ここでそれ以外の事を口にする義理はござらんのだ。この嘆きの海もまた、別の者には説明する事はあっても、ドウコク殿に話す義理はない』
「何だと……?」

 明確な叛逆だと受け取って良いのだろうか。──マンプクは何食わぬ顔で、説明を続けた。

『貴殿は、偶然この殺し合いに巻き込まれ、拙者は、偶然こちら側になれた。……それだけの事。残念な話だが、次に会って話す事があるとすれば、それは貴殿がこの殺し合いで二の目を使わずに勝ち残るができた時でござる。それまで、貴殿は命ではなく、駒。死んだシンケンジャーやはぐれ外道、アクマロ殿もまた同じ……壊れた駒でござる。何も知らぬまま、この殺し合いで好きに動けばいい……』

 言葉の節々から、マンプクのかつてのような傲慢さが漂っていた。ドウコクにさえ、それは明確な叛逆であると認識させた。
 これは戯れではない。現に、ドウコクの身を危険に晒している。マンプクは恩を仇で返そうとしているのである。本来ドウコクに奉公すべきであるマンプクは、一かけらの情も──外道衆にとって、この言葉は変かもしれないが──見せる様子がなかった。

「オイ、テメエ、今言った事、俺にはもう二度と撤回させる余裕がねえとわかってるだろうな……? 戯言として受け取る気はねえぜ。たとえ冗談だとしても、本気の言葉として受け取っておく」
『無論でござる。……しかし、変な話でござるな』
「なんだと……?」

 マンプクは不敵に勝ち誇ったような笑みを見せる。一見すると表情は変わらないようだが、ドウコクはそれを感じ取った。

『いつから、世は、家臣が主に口答えできるようになったのでござろうか……』

 それだけ言い残し、マンプクの幻影は消え去った。
 どうやら、マンプクは本気でドウコクを家臣程度にしか思っていないらしい。
 腐れ外道、と呼ぶに相応しい外道っぷりであった。

「……あの野郎。すぐにブッ殺してやる。……だが、その前に」

 そうだ、筋殻アクマロ──彼もドウコクを殺しに来るに違いない。奴に全てを説明する義理はないが、いずれにせよ倒さなければならない。
 このサイズであれ、ドウコクは外道衆を縛る力は持っているし、アクマロの二の目を撃退するくらいの実力は持っている。
 早い話が、アクマロなど敵としては倒し甲斐がないほどであった。この刀は、やがてアクマロに会う事があれば、その体を二つに引き裂くだろう。

 ドウコクは、自身が二の目となる気はない。ゆえに、彼から得た情報では、アクマロが二の目となって襲い掛かってくる以上の、意味はない。
 アクマロがどこかに現れるまでに、ドウコクはともかく志葉の屋敷に向かう方針であった。
 この珍妙な光──嘆きの海、と呼ばれていた──に誘われてやって来てみれば、次に得たデータはアクマロの出現の話だ。
 アクマロと共通してよく知っている場所といえば、志葉の屋敷だろうか。やはり、行動方針としてそこに向かうのは変わらない。



 ──状態表のあと、(ry



【1日目 夜中】
【F−5/山頂・忘却の海レーテ前】

【血祭ドウコク@侍戦隊シンケンジャー】
[状態]:ダメージ(極大)、疲労(大)、苛立ち、凄まじい殺意、胴体に刺し傷
[装備]:昇竜抜山刀@侍戦隊シンケンジャー、降竜蓋世刀@侍戦隊シンケンジャー
[道具]:なし
[思考]
基本:その時の気分で皆殺し
0:志葉の屋敷に向かう。アクマロを見つけたら殺す。
1:首輪を解除できる人間を捜す
2:加頭、マンプクを殺す
3:杏子や翔太郎なども後で殺す
4:嘆きの海(忘却の海レーテ)に対する疑問
[備考]
※第四十八幕以降からの参戦です。よって、水切れを起こしません。
※第三回放送後の制限解放によって、アクマロと自身の二の目の解放について聞きました。ただし、死ぬ気はないので特に気にしていませ


187 : ◆gry038wOvE :2014/03/31(月) 14:50:36 Mvr2kvM20
何とか投下できました。
以上で投下を終了します。


188 : 名無しさん :2014/03/31(月) 15:00:58 oER/1v9o0
投下乙です。
やっぱりマンプクさんは反逆する気が満々だったかww
果たしてドウコクはマンプクから地位を取り戻せるのか……?


189 : 名無しさん :2014/03/31(月) 16:45:10 VPtKhJ.oO
投下乙です

だからEDはいいよw


190 : 名無しさん :2014/03/31(月) 22:26:41 pEqU7Cxg0
投下乙です

素晴らしい主従関係(笑)だわ
ドウコクは一矢むくいる前にくたばるかどうかw


191 : 名無しさん :2014/04/01(火) 00:08:08 kGvU57kg0
ちょwwww
mktn……wwwww


192 : 名無しさん :2014/04/01(火) 00:42:59 o67DH.NE0
エイプリルネタ、むっちゃ凝ってるなあwww


193 : 名無しさん :2014/04/01(火) 00:48:21 o67DH.NE0
しかしネタが細かいなあw


194 : 名無しさん :2014/04/01(火) 02:45:54 Qea0Sf7M0
ザギさんどんだけ本出してんだよw


195 : 名無しさん :2014/04/01(火) 02:55:31 7wLNjw6g0
本の題名使って喧嘩してんじゃねえよ、バカ二人www


196 : 名無しさん :2014/04/01(火) 14:33:44 JeTFtUDc0
速報・ガンバライジングにほむスカル参戦!サポートライダーは仮面ライダー王蛇!
他変身ロワ発のライダーたちが豪華新参戦しているらしいぞ。
石堀アクセルのサポートって凪スカルなんかな?


197 : ◆gry038wOvE :2014/04/02(水) 02:20:02 0KEodLbA0
投下します。


198 : ◆gry038wOvE :2014/04/02(水) 02:20:33 0KEodLbA0



 私は、果たしてどれだけ、あの人を愛しているのでしょう。そして、どれだけ憎んでいるのでしょう。……月並みな問いですが、その問いに、答えを出そうとするにも、私の口から言葉が出る事はありません。
 私は自分の喉が枯れたのかとも思いましたが、いいえ、私の喉は枯れてはいません。私の頭が言葉さえ出せぬほど馬鹿になったのかとも思いましたが、それも無いのです。
 私は、つい一昔前ならば、その問いに、「あの人を愛してはいるが憎んではいない」と答える事ができた筈であるのは間違いないのです。それを回想できるならば、私は言葉を失っているわけではないという事なのです。
 しかし、どう足掻いても答えが出せないのです。私の胸の中には深い情念がある、とだけは答えられますが、それが愛と憎しみ、どちらなのかは今となってはわかりません。本当はどう想っているのか、それは今となっては、答える事ができないほど曖昧な物になってしまったのでしょう。



 愛と憎しみは表裏一体、とはよく言った話ですが、私にも裏の目を出す日が来てしまうのでしょうか。そもそも、本当に表側は「愛」だったのでしょうか。憎しみが前にあったのではないでしょうか。
 私の本性か、あるいは人の本性が、最初は憎しみでできていて、それを認めたくないあまりに「愛」を生み出したのかもしれない。そう、思ってしまいます。
 ある時までなら、私の中に在る「愛」は、決して憎しみに転じる事のない健やかな物だと、信じてられていたはずなのです。いつからでしょう、こうして、はっきりと否定さえできなくなったのは。



 元来、人殺しなどとは無縁の私が、いつからか、その人の為に人を殺すようになっている。あの、悪夢に出てくるような「人殺し」です。そう、あなたの隣には、おそらくいない「人殺し」です。
 そんな、恐ろしい人が普通は近くにいる物ではないでしょう? でも、人の真実の一部なのかもしれないと、私は思っています。
 幼い頃ならば、人殺しの危険を教える周囲に脅かされ、果たして雑踏の中にどれだけ人を殺した人がいるのだろうか……と震えた事もありました。しかし、やがて時が過ぎ去れば、人殺しは遠い国の出来事の事なのだと思うようになりました。自分の周りにはそんな者が一人もないと思っていました。その期待も外れましたが、よもや自分が手を汚す事などありえない話だったのです。
 ついずっと昔まで、自分の手が人の血に汚れるなど、思ってもいなかったのに、ある日、突然人の血に汚れ、私はあの人殺しとなったのです。
 本当は私もこの手を汚したくなかったはずです。いいえ、今だって本当ならばそうです。しかし、そんな私はある人の手によって、人殺しにされました。人の中身を食いちぎるような感覚も知っています。
 そして、こうして私の手が、体が汚れていったのは、紛れもないあの人の仕業です。私がその人殺しの真実に気付いたのも全て、あの人がいてこそです。
 あの人がいなければ、こうして私の手が血に塗れて、人の真実を間違っていく事はないのです。

 考えてみれば、私は、あの人を憎んでいるのかもしれない。
 あの人は、決して私があの人のために汚れている事など、知る由もないのでしょうけど、無自覚だからこそ恐ろしいものです。

 愛はひっくり返せば、いっそう強い憎しみに変わる。それは正しいのでしょうか、──しかし、それが真実なのだとしても、私はこの愛を手放しません。
 あの人が死んでしまった今となっては、あの人に怒り、涙し、罵詈雑言浴びせる事さえできません。あの人の手がそんな私を撫でるのか、殴るのかさえわかりません。それでもあの人の手は私の髪を櫛のように撫でるのだと信じたい気持ちが、まだ心にはあるのでしょう。
 それがいわば、私の持っている「愛」の欠片。
 いずれにせよ、愛か憎しみか、いずれか一方、どちらかが私の心の深くにあり続けるのでしょう。だから私は消えないのでしょう。そして、そんな想いが、私と全く同じ心を持つこの人と出会わせたのだと思います。



 ──私の愛する人の名は、腑破十臓と言います。私は、この刀に身を変じ、「裏正」と名を変えた彼の妻です。






199 : ◆gry038wOvE :2014/04/02(水) 02:21:13 0KEodLbA0



 そもそも私は、この状況をよく理解してはおりませんでした。
 気づけば外道に落ちた夫、腑破十臓の手ではなく、何故か彼が斬ろうとした志葉丈瑠の手にあり、どういう経緯かは知りませんが、彼の手の中で人を殺す事になりました。
 私はその事実に嫌悪さえ覚えました。たとえこの身が剣になっても、その柄を握り、人を斬るのは腑破十臓のみであるべきだと、そう願っていたのです。ただ、こう言うと誤解があるので、一応言っておきますが、私は別に人を斬りたいわけではありません。
 私はこの姿であっても、十臓を止めたいのです。それが、あろう事か、私と十臓を止めてくれようはずの真剣烈堂の手に握られ、銀の妖と身を転じた志葉丈瑠の手で、人を斬る事を強いられました。
 もし、これが十臓の手だったのならば、彼が人斬りの性分を捨てない事に嘆きながら彼の手で生きるでしょう。止めようとする言葉も響かないまま、彼の蛮行を悔い、涙ぐむ事になるでしょう。しかし、志葉丈瑠に握られた時はただ、言いようのない気分の悪さを感じました。嫌悪はあれど、どこか落ち着いた気分なのです。嘆きも苦しみもなく、ただ空虚な気分で彼に身を委ねていました。

 志葉丈瑠は生身の人間を斬る事ができず、それが心に迷いを持たせているような気がしました。しかし、彼ももし一度でも生身の人間を斬ったら、彼は十臓と同じく、外道になるのかもしれないという恐怖が、私の中にありました。
 彼もまた外道に堕ちる危険を孕んだ男──その瞳の奥はどこかかつての十臓に共通した孤独を見つけていたのです。彼にとっての何かが、十臓にとっての病魔と同じだったに違いありません。いつも男を外道に狂わすのは、ほんの少しの悩みや苦しみなのです。それが深ければ深いほど、外道に堕ちる可能性は高くなります。時代は違えど、人斬りと全く変わらない本性を持つ人間がいるに違いありません。
 それを爆発させる場所が、他者への暴力、侍にとっての人斬りなのです。いつも悩みや苦しみを言い訳に、本来自分を突き動かしているのが快楽である事を無視するのです。十臓はそれに気づき、開き直ってしまいました。病魔が先にあったのではない、そんなのはいいわけで、人斬りが自分の真実なのだと。それはきっと、私たち女には理解できない話なのでしょう。
 それでも、志葉丈瑠も腑破十臓は、きっと性根は外道ではなく、優しい人なのだと信じながら、私は生きてきました。
 私は、志葉丈瑠に身を寄せ、彼に同行する奇妙な男とともに移動させられていました。そして、その旅路の中で、突如として、死亡者の名が告げられる放送が聞こえました(どうやら、等間隔でこの放送が鳴り響いているらしい事は、後ほど、二回に渡る放送でわかってくる話です)。

 腑破十臓──その名前が最初の呼ばれた時、私は発狂しそうになりました。

 体の中から、果てしない嘆きの力が湧き上がりましたが、私には何をする事もできません。私は夫の傍にいて、その所業を止める事が出来なかったのだと確信しました。
 わけもわからぬうちに夫に死なれ、この私を寝取った新しい男(←違う)と共に、黙り込んでしまいました。この「裏正」となってからも、人の道にはぐれた夫を正そうと生きてきた日々は、何だったのでしょう。

 しかし、私はその名前が呼ばれた時、志葉丈瑠によって、ある種の救いを得て、同時に永久に救われなくなったような気がしました。
 そう思ったのは、厳密に言えば放送の瞬間ではなく、志葉丈瑠に同行する男が、十臓の名を口にした瞬間です。同行人の男は、十臓の死に対して、『手間が省けてよかった』と言いました。私はこの言葉にどうしようもない苛立ちを感じました。私は、十臓の手にあり、そこで彼の真実を目の当たりにする事を嘆いていましたが、一方で、そんな十臓の傍にいない事は不安でもあったのです。
 もしかしたら、私は刀と成り果てても、その情愛が人を斬る刀に利用されたとしても、彼を止めようとする自分自身に生きがいを感じていたのかもしれません。私も、刀に封じ込められても、十臓の傍にいなければ、ただの道具に過ぎません。十臓も私を「裏正」と呼びました。……おそらく、十臓は私が裏正の中にある事を、まだ気づいていないのでしょう。それでも、十臓の傍にいればいつか私に気づき、彼は斬り合いをやめてくれると信じていました。彼には私への愛が残っているはずだと思っていました。彼の傍で人を斬っているさなかでも、まだ彼を止められるならば、人をやめた甲斐があるというものなのです。
 志葉丈瑠もまた、何らかの形で十臓の存在を何か生きがいのようにしている、そんな目でした。
 同行者を憎み始めていたのです。


200 : ◆gry038wOvE :2014/04/02(水) 02:21:41 0KEodLbA0
 ……ですから、私の嘆きと、彼の嘆き、その二つが合わさって、殆ど無意識のうちにその男を斬りつける事になりました。今になって思えば、この時、私自身が、怨念や情念として、志葉丈瑠に取り憑いていたのかもしれません。そうでもなければ、これまで人を守ってきたであろう志葉丈瑠が、あんなにも短気になって、人を斬る事があるのでしょうか。結局これもまた男の本質だったというのでしょうか、それは信じたくありません。
 彼もまた、斬り合いこそが自分の真実だと、認めてしまったのだとは、思いたくありませんでした。十臓と同じ悲劇を、何度も同じ事を繰り返したくはないのです。そうして男の本性を知りたくはないのです。

 刀を持つ人が主導に人を斬るのではなく、人に持たれる刀の方が人を斬ろうとしていた──そうだったというのが、私の見解です。ですから、その時目の前にあった人の成れの果ては、私の罪なのかもしれません。
 ばらばらにちぎれていったその男の体を見つめた時、いっそう空虚な気持ちが私の中に生まれます。血のりは、土も雑草も穢します。私は何度も臓物に触れましたが、雑草や花は、臓物に触れるのは初めてでしょう。
 私と彼は、この瞬間、自分の真実もわからぬまま、本当の人斬りになってしまったのです。
 志葉丈瑠──彼は十臓を止めるはずだった男。彼が十臓を止める、あるいは、志葉丈瑠が志葉丈瑠として外道に堕ちる事もなく責務を全うするのを見届ける事で、私は救われるかもしれないと、そう思っていたのですが、それは叶わぬ願いでした。
 私が十臓を止めるのなら、志葉丈瑠の持つ狂気は、いずれ彼の家臣が止めてくれると信じていました。しかし、それを絶ってしまったのは私であるような恐れが、いまだ心にあります。あの同行者を殺したのは、彼ではなく、この私なのだとしても、彼の手が血に汚れた事は間違いありません。彼もまた、外道──人斬りとなったのでしょう。
 彼が閉じ込め続けた狂気が、おそらく私の犯した罪のせいで、完全に解放されてしまったのです。
 私は志葉丈瑠とともに、本当の地獄を彷徨う事になったのです。



 やがて、私はある男にその身を真っ二つに折られ、森の中へと捨てられました。その男が丈瑠に投げかけた言葉は、大方私の思っている事と同じでした。しかし、そんな本性を振り払えるほどの理性が男にはあるのだと、信じていました。
 ただ、一つ言うのなら、その相羽シンヤという男も、また内には何らかの暴力を振るう気持ちが芽生えていたのでしょう。彼もまた、外道なのです。彼もまた、自分では気づかぬうちに、「愛憎」を言い訳に他者へと暴力を振るった怪物だったのです。
 何にせよ、その男に¥真っ二つに折られ、捨てられた後、私は二度と志葉丈瑠の手に握られる事はありませんでした。当然です。折れた刀は使いようがありません。
 勿論、私はそこでまた空虚な時間を過ごす事になりました。他の人たちにとって、裏正は「モノ」以外の何物でもないわけですから、たとい見つけたとしても素通りを決めるに決まっています。
 ただ、それでも、唯一……少しだけでも私を満たしたのが、私の生きがいを穢したあの、志葉丈瑠の同行者の男を消せた事でした。その喜びが、胸に秘められているのは確かです。その喜びを自覚した時、実は女の性も人斬りなのではないかと思わせました。
 そして、言い訳として使っているのは「十臓」。彼がいなければ、おそらく、私は己の本性に気づかず、夫を止めようとする優しき妻であったに違いありません。私は彼を愛せるのでしょうか、憎んでいるのでしょうか。


201 : ◆gry038wOvE :2014/04/02(水) 02:22:04 0KEodLbA0



 昼まで、私は折れた身で、黙ってそこにい続けました。一日耐え忍ぶ中、私は何を考えればいいのかわからなかったのです。このまままた、私の無念がここに残り続け、あの地獄の二百年よりもずっと長い年月が私の魂をこの剣に閉じ込め続けるのではないかと、そう思いました。
 それはまさしく地獄です。人を斬るのも地獄でしたが、人を斬らずとも、身動きも取れぬ刀の中で嘆き続けるのは、地獄の苦しみという他ありません。ここは誰も通らず、仮に通ったとしても誰も私の存在を気にかけないのでしょう。十臓は私を「裏正」の名で呼び続け、時に声をかけましたが、その日々の方が幾分ましでした。
 何を考えればいいのかわからぬまま、ただ長い時間をこの刀の姿で見守り続けます。
 十臓は、もうこの世にはいない。ならば、私がこうしてここにいる意味もないはずなのに、私の体は消える事はありませんでした。十臓を止める事を考えるなど、もう無駄な徒労にしかなりません。
 中空に人が立ち、妖と思しき怪物が次々と死者の名前を告げていく時も、私の体はご覧のとおり、真っ二つに折れているのですが、私の名が死者の名として呼ばれる事はありませんでした。まるで、私はこの場にいないかのように扱われています。
 誰にも知られぬまま、こんなちっぽけな私が地獄の苦しみを味わい続ける──それほどの恐怖が、果たしてあるでしょうか。これから永久に、私は十臓と遠く離れて、志葉丈瑠にさえ握られぬ事なく、物言わぬ刀として地獄の苦しみに囚われ続けるのでしょうか。
 刀がどれだけ嘆いても、その言葉を聞いてくれる人はいませんでした。
 志葉丈瑠の名前もまた死者として呼ばれました。



 夕方を過ぎても、私の嘆きは消えません。妖や異形への恐怖は二百年のうちに少しずつは消えましたが、人の情はまだ私を叫ばせるのです。時に人であった頃の懐かしい父や母の姿を思い浮かべると、亡き二人の元へと逝けない悲しさと、貴方の娘が今は剣となって人を斬り続けている申し訳なさが湧き上がります。
 私の無念はいまだこの森に在り続けました。人斬りでなくなっても、地獄の苦しみと私の意志とは、永久に切り離されないようです。
 それから、中空に妖が現れるのは三度目でした。
 その三度目が、私の運命を変えました。

「あいん、はると……」

 放送の名前と被さるようにして、誰かがその名前を呟きました。
 この私の近くに誰かがいるのです。そして、今まさにそこで立ち止まり、放送を聞き、名前を反芻しているのです。
 この深い森の中、折れた刀に過ぎぬ私に気づく事はあるかわかりませんが、その少女はその名前に何か思うところがあるようでした。
 放送は続きます。その度に、彼女は少し声を上げる事がありました。呻くように、喘ぐように、彼女は誰かの名前に苦しめられているようでした。

「げん、たさ……」

 梅盛源太、という名前を聞いた時の彼女の苦しみようは、まさに私と同じく、何かに閉じ込められた人の嘆きのようです。彼女の魂もまた、泣いている事に気が付きました。
 私は、確信しました。
 彼女は私と巡り合う──と。
 たとえば、十臓と出会った時、私は十臓と夫婦になり、彼に献身する事になると、それを直感しましたが、それと同じく、彼女は私を拾う事になるだろうと思いました。
 私の刀身は真っ二つに折れているのですが、そんな事を彼女は構わない。何故なら、私と彼女は、どこか惹かれあっている、根本が共通している存在であったからです。

「ダグ、バ……」

 その名前が、彼女の嘆きを深めたようです。
 私にとっての十臓のような、そんな感情があったのでしょうか、その名前こそが、彼女の今の生きがいだったのでしょうか。

「ダグバ……? ダグバ……、嘘……私の手で倒すはずだったのに……」

 声を出す事ができたのなら、私の嘆きはこの直後の彼女の声に近かった事でしょう。
 筆舌に尽くしがたい声が、森に響きました。近くには誰もいなかったのか、彼女の嘆きが誰かを呼ぶ事はありませんでした。






202 : ◆gry038wOvE :2014/04/02(水) 02:22:27 0KEodLbA0



 彼女が歩き出した時、彼女は私の姿を見て、私を拾いあげました。
 折れた刀である私ですが、どうやら彼女は、それが森の中に落ちている事を気に入らなかったようなのです。
 彼女は、私の二つの刀身を拾い上げると、物言わぬ私に語り掛けました。

「……私の名前は天道あかね。よろしくね」

 私が魂を持つ刀である事に、気づいているのかはわかりません。ただ、彼女は自分の名前を紹介しました。てんどうあかね、という名前が私の頭の中に残ります。
 私は自分の名前を彼女に告げる事ができませんが、彼女は奇怪な剣たる私を拾い上げて、その場を後にしました。







 ……天道あかねは、目的を失っていた。
 放送で、アインハルトや源太の名前が呼ばれ、かつての仲間が少し減った事を知った。しかし、それでも日常に回帰するためには、またその悲しみを背負わなければならない。
 内外からのストレスは増す。あかねの綺麗な黒髪も、今はうっすらと白髪を蓄え始めているほどだ。
 その二人の死、以上に重いのは、そう──

「ダグバ……? ダグバ……、嘘……私の手で倒すはずだったのに……」

 ン・ダグバ・ゼバ。彼は、あかねにとっても倒さねばならぬ存在だったはずだ。どうしてそうなったのかはわからないが、彼を倒す事はあかねにとって、現在の指標だった。
 理由もわからぬまま彼に憎しみを燃やすのは苦痛であったが、それを思い出す気には、なれなかった。それもまたどうしてなのかはわからない。
 とにかく、今はダグバの「死」すら憎かった。
 ダグバはいつからか、あかねの全てを奪っていくような気がする。平穏な日常、「誰か」、あかね自身、そして、ダグバへの憎しみさえ、今は完全に消された。
 ダグバを殺すという行動方針は、ダグバが存在して初めて生まれるもので、彼が死んでしまえば、あかねは何もする事ができない。誰にこの憎しみを振りかざしていいのかわからない。
 あとは、そう、他の参加者を殺すしか目的がなくなってしまう。
 ダグバを倒すという最終目標が消された今、ガドルにしか興味というのがわかなかった。それも、ダグバと比べて、当人に酷い目に遭った覚えがない。全く、彼とは無縁であるが、それでもまだ同種というだけで憎しみの切れ端でも呼び起こせれば、それで充分だった。
 あかねは慟哭する。自分さえ、どんな声が出ているのか、想像もつかないほどの声で。

「──」

 そんな折、不意に、あかねの背後で、声が聞こえたような気がした。
 夜中の森。怖くないはずがない。あかねのストレスを更に強めるのは、この夜の恐怖であった。まだ夜といえど七時ほどではあるが、周囲の森は恐ろしく冷えるし、誰もいないのに人の気配を感じてしまう。
 元来、あかねは怖がりな性分で、幽霊などは嫌いだった。こんな樹海みたいな場所で一人歩き続けるのもまた恐ろしい。実際、ここには妖怪までいるらしいので、それを倒すためには克服しなければならないだろう。
 彼女が森を突き進む事を選んだのもまた、同じ理由かもしれない。

 先ほど、放送の前には人の死体も目にした。
 誰かもわからないが、真っ黒な衣装を着た男で、これがまた不気味であった。
 男の傍ら、首輪がいくつも、乱雑に置いてあったので、それを全て回収しようとしたが、それまた一苦労であった。男の死体が動き出すのではないかとさえ思ったのだ。
 しかし、精神的にも強くならなければならないと思い、やはり思い切ってそれを動かした。
 他にも、デイパックを奪い、あかねは山を越えて冴島邸の前まで来たのである。山を越える際、夕暮れの山のあまりの恐ろしさに、彼女は駆け出し始めていた。
 脳裏には、とうにくしゃくしゃに丸めて思い出さないようにしていた、あの不気味な絵が浮かんでくるくらいだ。
 後でデイパックを確認したら、ガイアメモリも入っていた。なかなかの収穫であったといえるだろう。

 今、こうして背後から声をかける者がいるというのも、あかねには恐怖でしかなかった。
 しかし、それでも、あかねは振り向いた。勇気を振り絞るような場面が続くが、まあ血の気が引いた状態ながらも、あかねはそちらを見た。


203 : ◆gry038wOvE :2014/04/02(水) 02:22:43 0KEodLbA0

 ……誰もいない。
 声を出す者など誰もいない。
 あかねがそれでも納得せずに、そこまで歩いて行く。そこにあったのは、人ではなく、真っ二つに折れた剣であった。
 折れた剣、といえば確かに使い難い武器だ。まあ、刃物としての役割は残しているだろうが、ナスカブレードに比べれば、明らかに不要な物である。
 しかし、あかねはその剣から声を聞いたような気がしてならなかった。
 その声を怪訝そうに見つめながら、あかねは呟く。不思議と、恐れはなかった。

「……私の名前は天道あかね。よろしくね」

 返事はない。返事はないが、どこかあかねの手に握られる事を喜ぶような、そんな感触が伝わってきた。どうやら、この折れた刃は、刀として扱われるよりも、人の傍にあった方がいたいらしいのだ。
 あかねはそう直感して、バルディッシュらと同じく、あかねの持つ道具たちの仲間入りを果たした。

 冴島邸に入ったが、これはまた西洋風の不気味な建物で、はっきり言えば、無人の豪邸というのはかえって恐ろしいものだった。森の中央にあるこの邸宅は、誰かの家というよりはむしろ廃墟だろう。

(……戦闘の痕があるのは家の周囲だけ、中は荒らされてもいないし、特に目立った特徴もないみたいね)

 ざっと、冴島邸を流し見したが、実は玄関まで入っただけであかねは調査を終えた。
 一人で入るには勇気がいる。まるでお化け屋敷である。
 あかねは、夜の森の中で、こんな灯りの付け方もわからない屋敷に入る気になれなかった。
 こんな所に入れるのは、おそらくこの館の持ち主である冴島鋼牙か、よほどの変わり者だけだろう……。

(隣、E−4エリアは23時に禁止エリア……予期せぬ事態が起こる可能性を考慮に入れると、あまり行くべきではなさそうね)

 そこで、またおおよそ、あかねの行く道が決まった。
 そちらの方向以外だと、近いのは「グロンギ遺跡」という場所だ。前よりも少し高い山に登る事になるが、そのくらいはまあ、いい。
 これから禁止エリアになろうというE−4エリア方面よりは安全だ。カナヅチなあかねにとっては天敵といえる「水」のある地帯が非常に多いが、それはまだ気を付ければ何とかなる。禁止エリアはどうしようもない物だ。
 あかねは、現在自分がこの薄暗い森の中心に一人でいて、すぐには抜けられない事が怖くてたまらなかったが、それでもまだ、己の中に愛がある限り、戦おうとしていた。

 そこに、一欠片でも憎しみがあるかもしれない事を、考えもせずに。


204 : ◆gry038wOvE :2014/04/02(水) 02:22:59 0KEodLbA0


【1日目 夜】
【E−5/森・冴島邸付近】

【天道あかね@らんま1/2】
[状態]:ファウストの力注入による闇の浸食(進行中)、肉体内部に吐血する程のダメージ(回復中)、ダメージ(大・回復中)、疲労(大)、精神的疲労(大)、胸骨骨折、
    とても強い後悔、とても強い悲しみ、ガイアメモリによる精神汚染(進行中)、伝説の道着装着中、自己矛盾による思考の差し替え、夜の森での一人歩きが少し怖い模様
[装備]:伝説の道着@らんま1/2、T2ナスカメモリ@仮面ライダーW、T2バイオレンスメモリ@仮面ライダーW、バルディッシュ(待機状態、破損中)@魔法少女リリカルなのは、二つに折れた裏正@侍戦隊シンケンジャー
[道具]:支給品一式×2(あかね、溝呂木)、首輪×7(シャンプー、ゴオマ、まどか、なのは、流ノ介、本郷、ノーザ)、女嫌香アップリケ@らんま1/2、斎田リコの絵(グシャグシャに丸められてます)@ウルトラマンネクサス、evil tail@仮面ライダーW、拡声器、双眼鏡、溝呂木のランダム支給品1〜2
[思考]
基本:"東風先生達との日常を守る”ために”機械を破壊し”、ゲームに優勝する
0:グロンギ遺跡に行ってみる。森がちょっと怖い。
1:ガドルを倒す。
2:ダグバが死んだ…。
[備考]
※参戦時期は37巻で呪泉郷へ訪れるよりは前、少なくとも伝説の道着絡みの話終了後(32巻終了後)以降です。
※伝説の道着を着た上でドーパントに変身した場合、潜在能力を引き出された状態となっています。また、伝説の道着を解除した場合、全裸になります。
 また同時にドーパント変身による肉体にかかる負担は最小限に抑える事が出来ます。但し、レベル3(Rナスカ)並のパワーによってかかる負荷は抑えきれません。
※Rナスカへの変身により肉体内部に致命的なダメージを受けています。伝説の道着無しでのドーパントへの変身、また道着ありであっても長時間のRナスカへの変身は命に関わります。
※ガイアメモリでの変身によって自我を失う事にも気づきました。
※第二回放送を聞き逃しています。 但し、バルディッシュのお陰で禁止エリアは把握できました。
※バルディッシュが明確に機能している事に気付いていません。
※殺害した一文字が機械の身体であった事から、強い混乱とともに、周囲の人間が全て機械なのではないかと思い始めています。メモリの毒素によるものという可能性も高いです。
※黒岩によりダークファウストの意思を植えつけえられました。但し、(死亡しているわけではないので)現状ファウスト化するとは限りません。
 あかねがファウストの力を受ける事が出来たのは肉体的なダメージが甚大だった事によるものです。なお、これらはファウストの力で回復に向かっています。
 完全にファウスト化したとは限らない為、現状黒岩の声が聞こえても洗脳状態に陥るとは限りません。
※二号との戦い〜メフィスト戦の記憶が欠落しています。その為、その間の出来事を把握していません。但し、黒岩に指摘された(あかね自身が『機械』そのものである事)だけは薄々記憶しています。
※様々な要因から乱馬や良牙の事を思考しない様になっています。但し記憶を失っているわけではないので、何かの切欠で思考する事になるでしょう。


205 : ◆gry038wOvE :2014/04/02(水) 02:23:57 0KEodLbA0
投下終了です。
驚きの読みにくさ。書いている最中はこんなに読みにくい文になるとは思いませんでしたが。


206 : 名無しさん :2014/04/02(水) 02:49:21 COCStY2Y0
投下乙です
まさかの裏正、十臓の奥さん登場とは…
あかねー!そっちは危ないぞー!

それと一つ気になったのですが、裏正は2回目、3回目の放送はどこで聞いたんでしょうか?
放送の音声は首輪から発せられるので近くに首輪がない場合放送は聞こえないはずですが…


207 : 名無しさん :2014/04/02(水) 08:45:45 gl9M8YLU0
投下乙です!
よりにもよってあかねは裏正を拾うとは……しかも、進行方面にはガミオがいるしw


208 : 名無しさん :2014/04/02(水) 19:27:50 LuUEPkVQ0
投下乙です

あかねはとことん運が悪いなあw
ロワに掘り込まれた時点で運勢は悪いんだけどさw


209 : 名無しさん :2014/04/02(水) 20:43:52 jwVK38MoO
投下乙です。

あかねを見たら、ガミオが「リントはグロンギと等しくなったのか」とか言いそう


210 : ◆gry038wOvE :2014/04/02(水) 22:35:42 0KEodLbA0
>>206
そうですね。wiki収録時に第二回放送、第三回放送に関する記述、該当部分を削除します。


211 : ◆LuuKRM2PEg :2014/04/05(土) 10:02:35 TR.FWUvs0
これより投下します。


212 : ラブのラブレター! 驚きの正体!? ◆LuuKRM2PEg :2014/04/05(土) 10:03:40 TR.FWUvs0
「……なあ、石堀。そろそろ休まないか?」
「何?」
「ほら? 俺達、ここまで結構戦ったじゃん? なのに、ほとんど休めていない……これじゃあ、いつかバテちまうぜ? ラブちゃんだって、疲れていそうだし」

 涼村暁が、桃園ラブを見ながら提案をしてくる。言われてみれば、その顔には何処となく疲労の色が感じられた。

「えっ? あたしはまだ、大丈夫ですけど?」
「子どもは無理をしなくていいの! それに実は言うとさ……俺もヘトヘトなんだよね……だからさ、休もうぜ?」

 それが暁の本音なのだろう。治療はしたがあくまでも応急処置なので、いつ開いてもおかしくない。この男はバカだが、ここで死んでは面倒なことになりかねなかった。

「……わかった。お前の提案を受け入れよう。流石に俺も疲れているからな」
「マジで? サンキュー!」
「言っておくが、一人で変なことをするなよ。何かあっても俺達ではどうにもならないからな」
「おいおい……俺がそんなことするわけないでしょ!」
「どうだか。お前のことだから、またバカなことをしないか心配になっただけだ」
「なにぃ!?」
「まあまあ、二人とも……」

 怒りだした暁を宥めるようにラブが現れた。また軽口をぶつけたが、流石に限度を超えると疲れるだけなので、この辺りにしておかなければならない。
 時刻は既に22時を過ぎている。四度目の放送までもう遠くなかった。
 相当の体力を消耗してしまったので、黒岩省吾が死んでからずっと中学校に留まっていた。涼村暁はダークメフィスト・ツヴァイと戦ったばかりで、桃園ラブも連戦で疲労が溜まっている。ここで無理をさせては肝心な時に使えなくなる恐れがあった。
 それに石堀光彦自身だって、ガドルやダグバとの戦いでダメージを受けている。今の所、行動に支障はないが休憩をして損はない。それに、予知能力の再使用までの時間を稼ぐのも悪くはなかった。

「とりあえず、警察署までの行動ルートを次の放送までに考えておく……お前達はその間に少しでも身体を休めてくれ。他の部屋に行って一人で休むのは構わないが、あまり遠くに行くなよ」
「オッケー」
「わかりました」

 暁とラブは頷きながら部屋を出る。
 能天気な二人を見て、やはり人間とは利用しやすい生き物だと石堀は思う。あの平木詩織だって、自分のことを欠片も疑わずに信頼をしている。一見するとナイトレイダーの有能なメンバーだが、本質的にはただのお気楽な女だ。いずれ、信頼を寄せていた相手に裏切られて絶望するに違いない。ここにいる二人だって、例外ではなかった。
 とにかく今は、今後の進行プランを練りながら暁とラブを見守らなければならない。警察署に向かうとしても、そのルートがあまりにも過酷だった。

(市街地の方はどちらも禁止エリアとなって塞がっている……かといって、森の方を通るとなると遠回りになる上に、次の放送ではそこが選ばれる危険だってある。そもそも、この街だっていつまでもいられるとは限らない……)

 普通に行くなら【F−8】エリアか【G−9】エリアのどちらかを通るべきだが、首輪がある限り通れない。足を踏み入れたら爆発するのか、それとも爆発までの猶予があるのかわからなかった。
 死んだ参加者の首輪を放り投げれば実験できるだろうが、手元にはない。ダグバや黒岩から確保するべきだったかもしれないが、それでは二人からの信用を失ってしまう。何の躊躇いもなく首を切るような男を見たら、普通の人間は嫌悪する。いざという時に裏切られては意味がなかった。
 アクセルブースターに変身してから二人を抱えて、そのまま海を経由して警察署に向かう……この方法もあるが、途中で二人が暴れださないか心配だ。ラブはまだしも、暁だったら絶対に騒ぐはずだった。


213 : ラブのラブレター! 驚きの正体!? ◆LuuKRM2PEg :2014/04/05(土) 10:04:26 TR.FWUvs0
 トライアルになり、同じように二人を抱えながら禁止エリアを突っ走る方法もある。だが、爆発のタイミングがわからないのでは危険だし、加速の時間自体も限られている。そんな状況ではあまりにも危険すぎた。
 やはり、一番無難な方法は森を通ることだろうか? しかし、森でガドルのような参加者と遭遇してしまったら、今度こそ二人の内のどちらかは殺される危険がある。

(どうやら、多少のリスクは背負わなければならないようだな……人間のように躊躇っていても、何も得られない。いざとなったら、二人には言い聞かせなければならないようだな)

 どの道、仲間と合流をするならば多少の危険は避けられない。こんな島の中で安全な場所など存在しないのだから、強行突破も考えなければなかった。
 そう思いながら、石堀は立ち上がる。既にこの部屋には暁もラブもいない。
 彼らがどこにいるのか。それだけでも把握しておかなければならなかった。





 暁は数時間前のように図書室にいる。
 あの黒岩はもう倒してしまったのだから、別に間違った知識を指摘する為に調べ物をしている訳ではない。そうでないなら、勉強が嫌いな暁が自分から本を読むなんてことはありえなかった。
 しかし、暁は再びたくさんの本を取り出して調べ物をしている。しかも、ご丁寧に筆記用具とメモ用紙まで用意した上で。

「ふんふん、なるほど……ここはこうすればいいのね」

 納得したように独り言を零しながら、暁はメモを取る。もう制限解放は終わったのだから、誰かに聞かれることを気にする必要もない。尤も、今回は別の意味で誰にも知られたくない内容だが。
 一ページ、また一ページと……本をゆっくりと捲る。その度に、暁は感心したかのように「おおー」と呟いていた。
 今回の本に書いてあることも暁にとっては必要な知識だ。戦いではなく、愛の為……いや、ある意味では戦いの役に立つかもしれない。この殺伐とした世界に希望を与える為の知識だ。あの速水克彦とかいう男がいたら、きっと「お前はなんてふしだらだ!」なんて怒鳴っていたかもしれない。でも、仮にそう言われたとしても暁は無視するつもりだ。
 黒岩だったらどうだろうか? きっと、相変わらずこんな自分をバカ呼ばわりしながら蘊蓄を振りかざすだろうが、構わない。そうなったら、こっちから逆に黒岩の間違いを正せばいいだけだ。
 そんなことを考えながら本を読んでいると、部屋のドアが開く音が聞こえる。それに気付いた暁が振り向くと、あの石堀が立っていた。

「ここにいたのか、暁」
「げえっ、石堀!? な、何の用だよ!?」

 石堀の姿を見て、慌てふためいた暁はメモ用紙と本を後ろに隠そうとする。だが、隠し切れていない。

「……お前こそ、どうして俺の姿を見て怯える? 俺が化け物にでも見えたか?」
「あ、当たり前……いや、違う! ノックもしないで入るなんて、失礼だろ!」
「トイレじゃあるまいし、こんな所でノックをする方がどうかと思うぞ?」
「うっ……まあ、でもそこは空気を読もうぜ!」
「……やれやれ」

 石堀は呆れたように溜息を吐きながら、図書室に足を踏み入れる。歩みを止める気配はない。
 このままでは、バレてしまう……そう思った暁は、腹を括ることにした。


214 : ラブのラブレター! 驚きの正体!? ◆LuuKRM2PEg :2014/04/05(土) 10:05:35 TR.FWUvs0
「それで、お前はここで何をしていたんだ? また、勉強をしているのか?」
「そ、そうだ! 俺は実は言うと、勉強熱心だから常に勉強を欠かさないようにしているのさ!」
「嘘を言うな」
「ぐう……」

 咄嗟に言ってみたが、やはりバレてしまう。こんなやり方で騙せる訳がなかった。
 そうしている内に、石堀が近づいてくる。あと数歩だった。

「休みたいと言ったのはお前だろう? なのにどうして、こんな所で本を読んでいる?」
「わ、わかった! わかったから、そこで止まってくれ!」
「何?」
「俺が勉強していることは、実は言うと秘密にしておきたかったんだ! でも、見つかったからお前にだけは教える……このことは、誰にも言わないでくれよ!」
「あ、ああ……」

 頷きながらも石堀は足を止めてくれる。やはり、表面上ではいい奴でいてくれているのだろう。胡散臭い奴は好きになれないが、今だけは有難かった。
 軽く安堵しながら、暁は石堀に耳打ちをする。男同士でこんなことをしたくないが、今だけは仕方がなかった。

「いいか、石堀……本当に秘密にしてくれよ」
「……早く言え」
「じゃあ、言うからな……」
「ああ……」

 ドラマとかなら、緊迫感を煽るようなBGMが流れそうだが、今は静寂に包まれている。ごくり、と息を呑んでもよさそうなのに、石堀は無表情のままだ。
 しかしそれなら仕方がない。誰にも聞かれないように、ひそひそと呟く。

「実は言うとな……」
「実は言うと……?」
「……ラブレターの勉強をしていたんだ」

 暁は静かに、そして強く宣言した。

「……は?」
「俺、実は言うとラブちゃんとデートの約束をしている……だから、その為にラブレターを書きたくて、勉強をしていたんだ」
「……そうなのか。でも、こんな時に書く必要があるのか?」
「わかってないねぇ、石堀君! 雰囲気だよ! ふ・ん・い・き!」
「雰囲気、か」
「そういうこと! だから、内緒にしてくれよ! 俺はお前を友達だと思っているから、信じているぞ!」
「わかったわかった……」

 そして、石堀も了承する。この辺りを察してくれるのだから、やはり石堀は場の空気を読んでくれる信用していい男だ。
 そう思いながら、暁は石堀から離れる。やはり、男同士でくっつくのは趣味じゃないからだ。


215 : ラブのラブレター! 驚きの正体!? ◆LuuKRM2PEg :2014/04/05(土) 10:06:12 TR.FWUvs0
「何にせよ、きちんと休めよ。いざと言う時に死んでも、俺は知らないからな」
「その位、わかっているって……心配するなよ! あと、本当に秘密にしてくれよ!」
「しつこいぞ……」

 やれやれと言わんばかりの態度で石堀は溜息を吐きながら、図書室から出ていく。
 暁もホッと息を吐いた。これで秘密を知られずに済むからだ。ゴハットを始めとする主催者達にはバレてしまうかもしれないが、どうせ後で倒すから気にする必要はない。
 気を取り直しながら暁は再び椅子に座った。

「さ〜て。愛の告白、愛の告白、愛の告白!」

 陽気な態度で鼻歌を歌い、再び筆を握る。
 テーブルの上に置かれているのは、デートやラブレターの書き方に関するテクニックが書かれた本だ。その数は十冊に達している。
 普通なら、この類の本は学校には置かれないかもしれないが、暁はそんなことを気にしない。ラブとのデートをするのに必要だから、丁度良かったとしか思えなかった。

「なになに? 行儀が良すぎず、長すぎず! それでいて、上から目線にならない! あと、心からの言葉を贈る! これはわかるわかる! たまにいるよな、ダラダラ長いのを個性と勘違いしている奴って!」

 暁は上機嫌に本を読みながら、ノートにポイントを纏める。
 テクニックを読んだ暁の脳裏には、黒岩省吾が蘊蓄を披露する姿が浮かび上がっていた。奴は上から目線の態度で出鱈目な知識を披露しているが、本当に知識を得ている人間からすれば滑稽以外の何物でもない。ウケを狙ったとしても苦笑をされるのがオチで、最悪の場合として信頼を失う結果に終わってしまうこともある。そんなのをラブレターに書いたとしても、確実にフラれてしまう。
 また、無駄に長い文章はあるだけでも読む気を無くす。国語の教科書だって真面目に読んだことがないのに、挿絵もない小説など読める訳がない。どうでもいい蘊蓄や誰も求めていない解説なんかをラブレターに書いたら、速攻で破り捨てられるだけだ。
 わかりやすく、それでいて心を込める! 必要のない所は書かない! ラブレターに限らず、どんな文章でも大切なことだ。

「ラブちゃん、俺は君を愛しているよ! いや、これじゃありふれているか……あなたの瞳はプラネタリウムのように輝いている! さむっ、ポエムかよ! あるいは……君と出会えて、ウルトラハッピー! これは、未来の後輩に失礼な気がする! う〜ん、どうするか……」

 難しい参考書の問題を解こうとしている学生のように悩みながら、暁は白い紙と睨めっこをしている。
 胸の想いを……そして、秘密を教えるのにどうやって書けばいいのか。暁は物凄く悩んでいた。





 人気のない教室で空を眺めている。
 何か特別な理由があってこの部屋に入った訳ではない。ただ、何となく一人になりたかっただけだった。
 夜空に浮かぶ満月の光が窓から差し込んできて、暗い教室に柔らかな明かりを照らす。電気や太陽に比べればあまりにも頼りないが、完全な闇よりは頼もしかった。
 桃園ラブは窓から顔を出して、暗くなった空を見上げる。雲が一つもなく、月と数え切れない程の星が確認できた。
 夜空を見るのはこれで二度目になる。この島に連れて来られてから以来だけど、今は違う所がある。犠牲者の数が……増えすぎていることだ。
 最初は三人だった。それが、一八人になり、十五人になり、十二人になる……六時間ごとに、人がどんどん死んでいく。それが余りにも辛すぎるけど、どうすることもできなかった。


216 : ラブのラブレター! 驚きの正体!? ◆LuuKRM2PEg :2014/04/05(土) 10:08:40 TR.FWUvs0

「流れ星、見えないかな……?」

 不意にラブは呟く。
 もしも流れ星に願い事ができるのなら祈りたかった。もう、誰も死なないように……そして、こんな戦いが一秒でも早く終わるように……ただのお祈りだけど、それでも願わずにはいられない。沖縄で大輔との雰囲気が悪くなったときだって、一緒に流れ星に願ったおかげで仲直りができたから、今回も見つけたかった。
 微かな期待と共に夜空を眺めたが、流れ星は見つけられない。どれだけ目を凝らしても同じだった。

(今も、どこかで誰かが戦っているのかな……?)

 この星空の下で殺し合いは進んで、他の誰かが傷付いている。穏やかに見える星空の下でも、やっていることは一人一人で違っていた。暁と黒岩の戦いを、ラブはただ石堀と一緒に見ているだけだったように。
 思えば、ダグバとの戦いだって仲間達に任せるだけだった。理由があって戦わせようとしなかったのはわかるけど、やはりもどかしくなってしまう。本当なら彼らと一緒に戦わなければならなかった。
 その為にも今はしっかりと休んで、次に備えて体力を回復させなければいけないのに、寝ようと言う気になれない。いつもだったらこの時間には寝ているし、今だって充分に眠いけど、やっぱり眠る気にはなれなかった。
 他のプリキュア達は何をしているのか? それを考えると、やっぱり簡単に眠ることができなかった。
 美希といつきはどこにいるのかわからない。つぼみとは村に行けば再会できると信じていたけど、反対側の街に到着してしまう。つぼみも街に向かっているらしいが、本当に巡り合えるのか……ラブはどうしても不安だった。祈里やせつなとは最悪の形で再会してしまったのだから、尚更だ。
 マミと同じ魔法少女である佐倉杏子のことだって心配になる。マミは彼女を信頼していたのだから、絶対に助けたかった。これまでの放送では呼ばれていないけど、これからどうなるのかわからない。

(杏子ちゃん……大丈夫だよね? 今、どこで何をしているのかな?)

 顔も知らない少女の無事を祈る。
 マミからは名前しか聞いていない。髪の色や顔の特徴も聞いておけば良かったと思うけれど、もうどうにもならなかった。石堀や暁に聞いてもわからないだろう。
 軽い後悔が芽生える。その瞬間、ドンドン! というドアを叩く音が聞こえてきた。

「ラブちゃん、起きてる〜?」

 続いて聞こえたのは、暁の軽い声だった。
 それを聞いたラブはドアの方に振り向いて、足を進めた。

「暁さん……あたしなら起きてますよ」
「そっか。なら、入ってもいい?」
「どうぞ」

 ラブは暁に答える。
 すると、ガラリと扉が横に開くと同時に暁が姿を現した。

「どうしたんですか、暁さん?」
「いや、ラブちゃんとデートの約束をしたでしょ……だから、その前に俺からプレゼントを渡しに来たの!」
「プレゼント?」
「そうだよ……じゃじゃーん!」

 暁は大げさに言いながら、懐から小さな封筒を取り出す。
 ニコニコと朗らかに笑いながら差し出してくる封筒を、ラブは受け取った。


217 : ラブのラブレター! 驚きの正体!? ◆LuuKRM2PEg :2014/04/05(土) 10:09:46 TR.FWUvs0
「なんですか、これ?」
「ラブちゃんへの、ラブレター!」
「えっ……ラブレター!?」
「そうそう! 君とデートをするなら、ラブレターも必要でしょ? だから……書いてきたんだ!」
「はぁ……」
「そういう訳で、俺の心を込めたラブレターをちゃんと読んでね! あ、でも誰にも言っちゃダメだよ? 俺と君だけの、約束だよ!」
「わかりました……」
「サンキュー!」

 そう言い残しながら暁は手を振って、部屋から出ていく。
 あれだけ盛り上がっていた雰囲気が嘘のように、部屋に静寂が戻る。まるで嵐のようだった。

「ラブレターか……」

 封筒の裏側を見てみると、豪快な字で『親愛なるラブちゃんへ』と書かれている。汚くはないが、丁寧とも言えない。普通の大人が書くような文字だった。
 ラブは封を開けて、中に入っている折り曲げられた手紙を開く。そこに書かれている文字も、やはり豪快だった。


 ラブちゃんへ。
 この俺、涼村暁様がいるからにはどんなデートだって楽しくしてあげるよ!
 遊園地だろうと、プールだろうと、映画館だろうと、公園でも、都会でもこの俺がエスコートしてあげます! 君とラブラブしちゃうよ!
 ラブちゃんのスマイルが見たいから、ドキドキで胸をキュンキュンさせるし、ハピネスがチャージできるデートにしてあげるから楽しみにしていてね!


「涼村暁より……か」

 書かれているのは、たったこれだけ。
 ラブは最初こそは呆気にとられたが、読み終えた途端に笑ってしまう。手紙の中に暁の情熱がたくさん込められているからだ。
 こんな状況でも暁は落ち込まないでありのままでいる。もちろん、本当は辛いのかもしれないけど、それを表に出すようなことはしない。悲しむ暇があるのなら笑うのが、暁という男だ。
 きっと、このラブレターだって楽しみながら書いていたはずだった。笑っていなければ、こんなにも元気に溢れている手紙なんて書ける訳がない。
 そんな暁の為にも絶対に生きなければならない。いつか、デートをしないといけないのだから、身体を大切にするべきだ。大輔とは、それからだ。

「……ん?」
 
 その時、手紙の片隅に小さな文字を見つける。普通に見ていたら、見逃してしまいそうなくらいに小さかった。

「何だろう、これ?」

 ラブは小さな文字を凝視する。


 追伸。
 ラブちゃん。これを見ることがあるのなら、教えるぜ。
 石堀には気を付けろ……黒岩の野郎はそう言っていた。
 俺も正直、信じられないけどあいつが嘘を言っているとも思えない。あいつはペテン野郎だけど、最後の最後には本当のことを言ったはずだ。
 詳しいことは、二人っきりのデートの時に教えるからね。


218 : ラブのラブレター! 驚きの正体!? ◆LuuKRM2PEg :2014/04/05(土) 10:10:45 TR.FWUvs0


「……なに、これ」

 ラブレターを握る手は震えていた。
 その内容はとても信じられない。あの黒岩が石堀に気を付けろと言っていたのは、どういうことなのか? 彼はこれまでたくさんの人を守ってきたし、凪の死にも怒りを抱いて戦っていた。
 いくら考えてもわからないので、ラブは急いで部屋から飛び出した。辺りを見渡すが、暁の姿は見えないので廊下を走る。普通なら先生に怒られるが、ここにはそんな人などいないので構わない。
 ただ、今は暁の真意が知りたかった。どうして、こんなことをラブレターの隅に書いたのかがわからない。暁が言うように、石堀も何かを隠しているのか?
 そんなことを考えながら走っていると、すぐに暁の背中を見つけた。

「暁さん!」
「あれ? ラブちゃん、どうかしたの?」
「あの、暁さん……さっきのラブレターなのですけど……」
「それは、俺達だけの秘密だって言ったでしょ?」

 ラブの言葉を止めるかのように、暁はひょうきんな笑顔と共に人差し指を突き付けてくる。

「全部、デートで二人っきりになった時に教えてあげるから、それまでは俺達だけの秘密って約束したでしょ? 約束を破るなんて酷いよ?」
「で、でも……」
「大丈夫! デートまでのお楽しみにしようぜ? それまではみんなで仲良くしながら、のんびりと休む! 大丈夫、俺が君を守るからさ」

 困惑するラブの前で、暁は右目でウインクをした。
 その姿を見て、ラブは追求をやめる。ここまで言うからには、やっぱり暁もよっぽどの理由があるのだと察した。
 彼が何を考えているのかはわからない。でも、暁だって直接は口にできない理由があって、ラブレターに混ぜて伝えることしかできなかったのだ。だから今は、秘密にするしかなかった。

「……わかりました。でも、デートの時には絶対に教えてくださいね」
「大丈夫だって! 俺は、秘密と約束を守る義理固い男だからさ!」
「あたしも、デートの時を楽しみにしています!」
「おう! なら、今はちょっとでもいいから寝ようぜ……俺も眠いしさ」
「あ、そうだった! もう、そんな時間ですよね……おやすみなさい、暁さん」
「おやすみ、ラブちゃん」

 そのやり取りを終えると、暁は保健室の扉を開く。中からは石堀と楽しげに話す声が聞こえてきた。
 何気ないやり取りだけど、暁は石堀を警戒しているかもしれない。ラブだって、石堀を信じていいのかどうかわからなくなってきた。
 ずっと前、お母さんに化けたソレワターセがシフォンを捕まえようとしたことがある。もしかしたら、石堀も巧みな演技で大勢の人を騙してきたのかもしれない……そう考えただけでも、不安になった。
 だけど、ここで石堀の正体を明かそうとする訳にはいかない。もしかしたら、石堀にだって何か理由があるかもしれなかった。つぼみのことだって守ってくれていたのだから、できるなら信じていたい。
 でも、暁との約束だって守るつもりだ。お母さんを助けてくれたせつなのように、暁だって頑張ってくれている。
 ラブもまた身体を休めようと思いながら、部屋へ戻ることにした。





「……お前達、まだ休んでいなかったのか?」
「いや、デートのプランを立てていたら遅くなって……」
「それはお前達の勝手だが、休憩の時間を無駄にするな。お前らはバカか」
「うるせえ!」


219 : ラブのラブレター! 驚きの正体!? ◆LuuKRM2PEg :2014/04/05(土) 10:11:40 TR.FWUvs0
 暁は石堀光彦と話をしている。怪しいと言われた男と一緒の部屋にいるのは不安だが、今は仕方がなかった。
 幸いにも、さっきの会話は聞かれていない。また、聞かれたとしても困るような話はしていないから……大丈夫なはずだ。
 本当ならタイミングを見計らって話したかったが、石堀がいる限りそんな隙などない。話している陰でひっそりと聞かれてしまったら、その瞬間に殺されてもおかしくなかった。
 でも、あまり先延ばしにする訳にもいかない……そう思って、暁はラブレターにメッセージを付け加えたのだ。こうすれば、ラブだって石堀のことを気を付けるはず。
 そういえば、石堀はクローバーボックスというオルゴールから弾かれた。それを踏まえると、石堀の正体はダークザイドのような怪人である可能性もある。こいつが本性を現したら、勝てるかどうかわからなかった。
 だから、もしも結城丈二や涼邑零と再会できたらこっそり相談をしなければならない。味方は一人でも多い方がいいからだ。

「だが、放送が終わったら警察署に移動をする……どのルートだろうと、文句を言うなよ?」
「わかっているって……ん? ちょっと待てよ、もしかしたらあの禁止エリアって所を突っ走るつもりか?」
「それは状況次第だ。とにかく、今はさっさと身体を休めろ……いいな?」
「わかったよ……」

 暁は渋々ながらも頷く。ここで下手に反論などしては、余計なトラブルを生むだけだ。
 移動だって、無茶なルートを通らないのなら余計なことを言う気はない。今は石堀に従うしかなかった。
 どうか、少しでも安全なルートでありますようにと願いながら、暁もまた休憩を選ぶことにした。

『……石堀光彦だ。奴に気を付けろ……』

 生前、黒岩が遺した言葉が頭の中で再生される。
 この男が本当に黒岩を悪魔にしたのか。そして、自分やラブに危害を加えるきっかけを与えたのか……
 ラブを守ったのも嘘だったのか。凪を守ろうとした姿も嘘だったのか。森の中で結城や零と良い雰囲気を作っていたのも嘘だったのか。
 石堀にとっては全てが嘘なのか……? その顔の下には何が潜んでいるのか?
 そう考えただけでも、暁の中で不安な気持ちが強くなっていた。



【1日目 深夜】
【G-8/中学校】

【備考】
※三人とも今は休憩をするつもりでいます。
※その後、仲間を捜すに予定ですがどのルートを選ぶのかは後続の書き手さんにお任せします。


220 : ラブのラブレター! 驚きの正体!? ◆LuuKRM2PEg :2014/04/05(土) 10:12:18 TR.FWUvs0
【涼村暁@超光戦士シャンゼリオン】
[状態]:疲労(小)、胸部に強いダメージ(応急処置済)、ダグバの死体が軽くトラウマ、脇腹に傷(応急処置済)、左頬に痛み
[装備]:シャンバイザー@超光戦士シャンゼリオン、モロトフ火炎手榴弾×3
[道具]:支給品一式×8(暁(ペットボトル一本消費)、一文字(食料一食分消費)、ミユキ、ダグバ、ほむら、祈里(食料と水はほむらの方に)、霧彦、黒岩)、首輪(ほむら)、姫矢の戦場写真@ウルトラマンネクサス、タカラガイの貝殻@ウルトラマンネクサス、八宝大華輪×4@らんま1/2、スタンガン、ブレイクされたスカルメモリ、ランダム支給品0〜5(ミユキ0〜2、ほむら0〜1(武器・衣類ではない)、祈里0〜1(衣類はない)、黒岩0〜1) 、スーパーヒーローマニュアルⅡ
[思考]
基本:加頭たちをブッ潰し、加頭たちの資金を奪ってパラダイス♪
0:石堀を警戒。石堀からラブを守る。表向きは信じているフリをする。
1:石堀やラブちゃんと一緒に、どこかに集まっているだろう仲間を探す。
2:別れた人達が心配、出来れば合流したい。
3:あんこちゃん(杏子)を捜してみる。
4:可愛い女の子を見つけたらまずはナンパ。
5:変なオタクヤロー(ゴハット)はいつかぶちのめす。
[備考]
※第2話「ノーテンキラキラ」途中(橘朱美と喧嘩になる前)からの参戦です。
つまりまだ黒岩省吾とは面識がありません(リクシンキ、ホウジンキ、クウレツキのことも知らない)。
※ほむら経由で魔法少女の事についてある程度聞きました。知り合いの名前は聞いていませんでしたが、凪(さやか情報)及び黒岩(マミ情報)との情報交換したことで概ね把握しました。その為、ほむらが助けたかったのがまどかだという事を把握しています。
※黒岩とは未来で出会う可能性があると石堀より聞きました。
※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを知りました。
※森林でのガドルの放送を聞きました。
※第三回放送指定の制限解除を受けました。彼の制限は『スーパーヒーローマニュアルⅡ』の入手です。
※リクシンキ、ホウジンキ、クウレツキとクリスタルステーションの事を知りました。


【桃園ラブ@フレッシュプリキュア!】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(小)、左肩に痛み、精神的疲労(小)、決意、眠気
[装備]:リンクルン@フレッシュプリキュア!
[道具]:支給品一式×2(食料少消費)、カオルちゃん特製のドーナツ(少し減っている)@フレッシュプリキュア!、毛布×1@現実、ペットボトルに入った紅茶@現実、巴マミの首輪、工具箱、黒い炎と黄金の風@牙狼─GARO─、クローバーボックス@フレッシュプリキュア!、暁からのラブレター
基本:誰も犠牲にしたりしない、みんなの幸せを守る。
1:どこかに集まっているだろう仲間を探す。
2:マミさんの遺志を継いで、みんなの明日を守るために戦う。
3:プリキュアのみんなと出来るだけ早く再会したい。
4:マミさんの知り合いを助けたい。もしも会えたらマミさんの事を伝えて謝る。
5:犠牲にされた人達のぶんまで生きる。
6:ダークプリキュアと暗黒騎士キバ(本名は知らない)には気をつける。
7:どうして、サラマンダー男爵が……?
8:後で暁さんから事情を聞いてみる。
[備考]
※本編終了後からの参戦です。
※花咲つぼみ、来海えりか、明堂院いつき、月影ゆりの存在を知っています。
※クモジャキーとダークプリキュアに関しては詳しい所までは知りません。
※加頭順の背後にフュージョン、ボトム、ブラックホールのような存在がいると考えています。
※放送で現れたサラマンダー男爵は偽者だと考えています。
※第三回放送で指定された制限はなかった模様です。
※暁からのラブレターを読んだことで、石堀に対して疑心を抱いています。


221 : ラブのラブレター! 驚きの正体!? ◆LuuKRM2PEg :2014/04/05(土) 10:15:14 TR.FWUvs0
【石堀光彦@ウルトラマンネクサス】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(小)、残り1時間予知能力使用不可
[装備]:Kar98k(korrosion弾7/8)@仮面ライダーSPIRITS、アクセルドライバー+ガイアメモリ(アクセル、トライアル)+ガイアメモリ強化アダプター@仮面ライダーW、エンジンブレード+エンジンメモリ+T2サイクロンメモリ@仮面ライダーW 、コルトパイソン+執行実包(2/6) 、ロストドライバー@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式×6(石堀、ガドル、ユーノ、凪、照井、フェイト)、メモレイサー@ウルトラマンネクサス、110のシャンプー@らんま1/2、ガイアメモリ説明書、.357マグナム弾(執行実包×18、神経断裂弾@仮面ライダークウガ×4)、テッククリスタル(レイピア)@宇宙の騎士テッカマンブレード、イングラムM10@現実?、火炎杖@らんま1/2、血のついた毛布、ランダム支給品2〜8(照井1〜3、フェイト0〜1、ガドル0〜2(グリーフシードはない)、ユーノ1〜2)、暁が図書室からかっぱらってきた本
[思考]
基本:今は「石堀光彦」として行動する。
0:「あいつ」を探す。そして、共にレーテに向かい、光を奪う。
1:今は休憩をして、その後に暁とラブの二人を先導しながら進む。
2:どこかに集まっているだろう仲間を探す。
3:周囲を利用し、加頭を倒し元の世界に戻る。
4:孤門や、つぼみの仲間、光を持つものを捜す。
5:都合の悪い記憶はメモレイサーで消去する
6:加頭の「願いを叶える」という言葉が信用できるとわかった場合は……。
7:クローバーボックスに警戒。
[備考]
※参戦時期は姫矢編の後半ごろ。
※今の彼にダークザギへの変身能力があるかは不明です(原作ではネクサスの光を変換する必要があります)。
※ハトプリ勢、およびフレプリ勢についてプリキュア関連の秘密も含めて聞きました。
※良牙が発した気柱を目撃しています。
※つぼみからプリキュア、砂漠の使徒、サラマンダー男爵について聞きました。
※殺し合いの技術提供にTLTが関わっている可能性を考えています。
※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを知りました。
※森林でのガドルの放送を聞きました。
※TLTが何者かに乗っ取られてしまった可能性を考えています。
※第三回放送指定の制限解除を受けました。予知能力の使用が可能です。
※予知能力は、一度使うたびに二時間使用できなくなります。また、主催に著しく不利益な予知は使用できません。
※予知能力で、デュナミストが「あいつ」の手に渡る事を知りました。既知の人物なのか、未知の人物なのか、現在のデュナミストなのか未来のデュナミストなのかは一切不明。後続の書き手さんにお任せします。


222 : ◆LuuKRM2PEg :2014/04/05(土) 10:17:07 TR.FWUvs0
以上で投下終了です。
それと石堀の支給品一式数が3になっていたので、6に修正させて頂きました。


223 : ◆7pf62HiyTE :2014/04/05(土) 14:38:30 FvKuPTJM0
投下乙です。
そういや暁ってバカだが意外と機転が利く所あるからなぁ。とりあえず、何も知らないラブに最低限の事を伝える事は成功したか。
果たして勝つのはバカかダークザギか?
しかし今更な話だが……この中学校の図書室の本って一体どういうバリエーションなんだろう?


というわけで此方も左翔太郎、佐倉杏子分投下します。


224 : X、解放の刻/楽園からの追放者 ◆7pf62HiyTE :2014/04/05(土) 14:41:45 FvKuPTJM0
第2節 フィリップの検索



「検索を始めよう……」


 白一色の空間、そこに立つフィリップの周囲に無数の本棚が展開されている。


「キーワードは『佐倉杏子』、『魔法少女』、『魔女』、『キュウべえ』、『ソウルジェム』、『グリーフシード』……」


 その言葉と共に、無数の本棚が縦横無尽に動き回る。その結果、フィリップの近くに展開される本棚は大幅に減少される。


「大分絞れた様だ……だがこれではまだ足りない……追加するキーワードは……『暁美ほむら』、『鹿目まどか』、『巴マミ』……そして『美樹さやか』……」


 これにより更に本棚が動き回り、フィリップの周囲の本棚の数が大幅に減少する。


「まだ多いか……となると……『ワルプルギスの夜』……」


 その言葉と共に、本棚が一気に動き、フィリップの前に展開される本棚は1つだけとなる。そしてそこに収められている本も十数冊という所まで減少した。


「どうやら当たりだった様だ……現状これ以上の絞り込みは難しい様だが……ここからなら1つずつ確かめて見ても問題は無い……」


 その言葉と共に、その中から1冊の本を取る。そこには『HOMURA AKEMI』というタイトルが入っている。


「ふむ……この本には暁美ほむらの事が収められている様だ……病気により長い間入院していたのか……」


 そしてフィリップはその本を迅速に読み込んでいく。


「学校にもなじめなかった彼女はある時魔女に襲われる……その時に彼女は鹿目まどかと他1名の魔法少女に助けられた……」

7
 タイトルの通り、そこには暁美ほむら、彼女の詳細が記されている。


「だが、ワルプルギスの夜の襲来により鹿目まどかは死亡……暁美ほむらはキュウべぇに彼女との出会いをやり直す事を願い魔法少女となった……そして、その願いによって得た力……時間遡行により転入する直前まで戻る……
 なるほど、魔法少女の力は彼女達の願いによって決まるらしい……となると杏子ちゃんの本当の力は……いや、そんな事はどうでも良いか……」


 そしてフィリップはほむらの足跡を調べ上げていく――そんな中、


「何だって……!」


 状況的に不謹慎ではあったが興味があったが故に、どことなく楽しそうに笑顔を浮かべていたフィリップではあったが、あるページを目の当たりにした瞬間表情が変わる。


「そんな……それじゃあ杏子ちゃん達は……!!」


 そのページに書かれていた事項を見たフィリップの衝撃は大きい、急ぎページを進め真偽を確かめる。


「嘘だ……そんな……」


 そう零してもフィリップはわかっている。そこに書かれている事は明らかな真実だという事を。
 別の本を手に取り読み進めてもフィリップの求める、いや望んでいる答えは決して手に入らず、否定したい真実ばかりが突きつけられる。


 無論、検索の結果だけを検討すればある意味理にかなった話ではある。普遍的な話とも言えよう。だが、


「これじゃあ……あまりにも救われなさ過ぎる……杏子ちゃんや……彼女を信じ助けようとするみんなが……翔太郎……!」


225 : X、解放の刻/楽園からの追放者 ◆7pf62HiyTE :2014/04/05(土) 14:44:30 FvKuPTJM0





第6節 楽園からの追放者



 警察署の一室――そこには1枚の書き置きだけが残されていた。
 そこにはほんの数分前まで佐倉杏子がいた。だが今はもう彼女の姿は無い。

 それは彼女に課せられた制限の解除にあった。そう、杏子自身も知り得なかった制限――

 彼女に伝えられた事は纏めるとこういう事だ、『24時以降、魔女が解放され行動を開始する』。魔法少女が倒すべき敵が現れるという事だ。
 同時に、『何処から魔女が現れるのか?』という真実も伝えられた。

 それを知った彼女のショックは余りにも大きかった。
 唯々自分の為だけに戦っていた頃ならば衝撃は受けてもすぐに立ち直れただろう。
 だが今はそうではない、冒した数えきれぬ罪を数え、今度は数え切れないぐらいの人々を救いたいと願っていたのだから――

 そう、どれだけ多くの人々を救い希望を与えたとしても、今度はそれ以上の絶望を――
 自分一人だけならばまだ良い、だが今更他人を苦しめたくはないのだ。
 どれだけ願おうとも最早結末を変える事は出来ないのだ、最初から決まっていたという事だ。

 そもそもこの真実、魔女の正体を仲間達が知ったらどうするだろう?
 彼女達に魔女を倒させ――いや敢えて言おう、殺させるというのか? あるいは殺す所を見せるというのか?
 それがどれだけ辛い事か、杏子は想像できてしまったのだ。そんな事言えるわけがない。

 いっそ『別に解除される制限は無かった』とでも言って自分の内に秘めるという手もあった。
 だがそれは出来なかった。24時以降2体の魔女が現れる事は確定事項、障害となる2体の敵が現れるのがわかっていて黙っている事など出来やしない。
 それを伏せる事は仲間達を危機に晒す事に繋がる、出来るわけがないだろう。
 では『魔女が2体現れる』事だけを伝えるか? それもダメだ。何故それが杏子にだけ伝えられるたのかという疑問が出てしまうのだ。
 そう、これはあくまでも杏子達魔法少女に課せられた制限解除に関する話なのだ。2体の魔女の出現はその延長線上の話に過ぎない。
 頭の切れる者ならば『魔女が2体現れる』という情報だけでも十分『何処から魔女が現れるのか?』という謎に行き着くだろう。
 それ以前に、そもそもの前提として『何処から魔女が現れるのか?』という情報は『魔女が解放される』という現象を説明する為の前提に過ぎない。
 つまり本来ならば伝えられる情報は『24時以降魔女が解放される』という事だけなのだ。だが、それはそのまま『何処から魔女が現れるのか?』という問いの答えにも繋がるのでそれを知らない杏子に説明されたというだけの話なのだ。

 それに幾ら杏子が伏せたとしても、『何処から魔女が現れるか?』の真実が露呈する可能性はある。
 そう杏子の知り合いの中に確実に1人はその真実を知っている者がいるのだ。
 キュウべぇがイレギュラーと語っていた人物こと暁美ほむら、彼女の言動には謎が多い。
 しかしその真実を知っているとするならばその行動にもある程度説明がつく。
 勿論彼女がそういう情報をそうそう明かしたりはしない事は杏子自身も推測出来る。しかし絶対に明かさないという証明にはなり得ない。
 彼女が退場したのは1度目の放送前、死に際に同行者に自身の持つ情報を託さないとどうして言い切れる?
 それから12時間以上も経過しているのだ。自分達の知らない所でその情報が拡散している可能性は多分にある。

 つまり早いか遅いかの違いはあれど何れ真実は露呈するだろうという事だ。更に前述の通り魔女の出現だけは確定事項。
 悲劇的な結末は最早避けられないという事だ。そしてそれは杏子自身の問題にも直結する。


226 : X、解放の刻/楽園からの追放者 ◆7pf62HiyTE :2014/04/05(土) 14:45:19 FvKuPTJM0


『貴女も殺し合いを止めようとしているのなら、気を付けることね……迂闊に戦ったりしたら、周りの人達も絶望に巻き込まれるのだから』


 そう、今更簡単に命を投げ出すつもりはないが、下手に戦う事も出来なくなったのだ。
 杏子自身の死は既に仲間達の危機に直結する致命的な爆弾となったのだ。
 死なない様に戦う? 自身への負担を最小限に抑えつつ戦う? 確かにそれ自体は可能だろう。
 だが出し惜しみをして勝てる戦いでは無い事はゴ・ガドル・バ、血祭ドウコク、そして天道あかねの変身した赤いナスカ・ドーパントとの戦いで痛い程理解している。
 そんな連中を相手に出し惜しみなど足手纏い以外の何者でも無い、そんな状態で戦ったって誰も守れないし救えない。
 それ以前にそんな動きを見せれば仲間達だって不審に思う。真実を明かそうが明かすまいが迷惑をかける事は確実だ。

 だが考えている余裕は全く無い。先程の叫び声が聞こえたら仲間達は確実にやってくる。
 それ以前に既に単独行動してから十分過ぎるほど時間が経過している。何時までも戻らなければ何かあったのかと思い駆けつけるだろう。


 だが杏子には最早仲間達にどんな顔をして会えばいいのかわからなかった――


 だから、最低限伝えるべき情報を書き残し――


 アカルンの力を使い、その部屋から姿を消した――


 杏子が記した書き置きはこうだ


『24時を過ぎたら2体の魔女が現れるから倒せ』


 はっきりと書かれている部分を纏めるとこうなる。
 しかし杏子は冷静では無かった。内心パニックに陥っていったと言っても良い。
 そう、何度もペンで書いては消してを繰り返しているのだ。先の『2体』の所も実は『3』と書いた後二重線で消した痕跡がある。
 そして他にも、


『魔女の正体は魔法少女の』
『もし次にあったらあたしのソウ』


 そういった文を書いては線で消してを繰り返していた。
 杏子自身迷っていたのだ。真実を明かすべきか最後まで――
 だが、魔女の真実を知った上で魔女と戦う仲間達の姿を想像する度に書く手が止まってしまうのだ。
 完全に書き潰せていない以上、その気になれば何が書かれているのかは簡単に看破出来る程度のものだ。
 それでももう時間はなかった。だからこそ最後にある言葉をはっきりと記して消えたのだ――


 それはさながら、知恵の実を食べた事で楽園から追放された罪人の様であった――


『ごめん、こんな形で別れる事になって』


227 : X、解放の刻/楽園からの追放者 ◆7pf62HiyTE :2014/04/05(土) 14:46:11 FvKuPTJM0





第1節 地球の開放



 ――ゴ・ガドル・バとの戦いを終えた後、響良牙、花咲つぼみ、ダー……いや月影なのはの3人と別れた俺とフィリップ、そして響から託されたマッハキャリバーと共に仲間達の待つ警察署へと戻ろうとした。
 だが、俺はすぐには戻らず警察署より約200メートル離れた場所にある建物の中にいた。
 そこは何かのレストランらしく休憩するには丁度良い場所だ。ハードボイルドにとっては少々似つかわしくない気もするが四の五の言える状況じゃない。
 そう、俺は単独で待つ事にしたのだ。21時以降、30分以上単独行動する事で解放される制限解除の時を、
 主催陣の思惑もあるのだから当然と言えば当然だが単独行動によるリスクが大きいのは理解している。それでも参加者としては単独で行動出来るこの機会を逃す理由は無い。そして何より、別行動を取る前、俺達はこんな事を話していた――





『そういや響、1つ聞きたい事があるんだが……』
『何だ?』
『いや、仮面ライダークウガ……一条薫だったか……そいつから何か託されたものはなかったか? 物とかじゃなくてだな……魂みたいなもんだ……』
『魂か……』
『確かにあのマッチョメン……ガドルにクウガは敗れたかも知れねぇ……だがその魂、いや想いまでは消させたくはねぇ……俺も仮面ライダーWとしてそれを受け継ぎてぇんだ……』
『う゛ーん……言いたい事はわかるがどういえば良いかは……そうだ、『中途半端はしないでくれ』……そう言っていたぜ……』
『中途半端はするなか……わかったぜ』
『中途半端……本当に大丈夫なのかな? ハーフボイルド……』
『ってフィリップ、いきなりハーフボイルド言うんじゃねぇ!!』
『ハーフボイルド……?』
『半熟卵の事ですね』
『That is, it is half a man.(つまり、半人前です)』
『半人前でもハーフボイルドでもねぇ!! 俺はこれでもハードボイルドな探偵なんだ!!』
『そう言っている時点でハードボイルドじゃねぇと思うが……』
『大丈夫なのかしら……』
『大丈夫ですよ…………………………多分』
『それフォローになってねぇよ!!』





 ――と、ともかく、『中途半端はするな』、それが一条が俺達に託したメッセージだ。
 思えば、ここまでの戦い、人々を守る仮面ライダーを自称していながらも戦いでは足を引っ張る事が多く結果的に杏子や姫矢達に任せてしまう事ばかりだった。
 その原因の1つは仮面ライダーWの戦闘力不足である事は揺るぎない事実だ。エクストリームメモリを封じられている状況ではその全ての力を発揮できない。
 勿論、Wの真価は6本のメモリを状況に応じて使い分ける事で多種多様の状況に対応する事だ。だからこそエクストリームが無ければ戦えないという事は無い。
 しかしエクストリームとなったWを超える力を持つエターナルのパワーをもってしてもあのガドルには全くダメージが届いていないという現実、
 これはエクストリームを得てもガドルには届かない事を意味している。当然、その力を使えないままのWでは戦いにすらならないだろう。
 特にガドルは状況に応じて戦い方を変えるというWに似た力を持っている。Wの持つ柔軟性すらガドル相手には通用しないということだ。
 そんな中途半端な状態で戦い続けても何も守れない。また人々を泣かせるだけだ。
 だからこそ、制限の解除は最優先事項だった。十中八九俺に課せられた制限はエクストリームだ。それを解放できなければ戦いにおいては足手纏いのまま……これ以上、俺達よりも若い奴らばかりを戦わせるわけにはいかねぇしな……
 今は只、その時を待つだけ――





『Narration of what is carried out alone? And it is long(何を一人でナレーションしているんですか? しかも長いです)』
「前にも似た様な事言われたぞ! それより周囲の様子は」
『No problem(問題はありません)』


228 : X、解放の刻/楽園からの追放者 ◆7pf62HiyTE :2014/04/05(土) 14:47:17 FvKuPTJM0


 かくして左翔太郎はF-9にある警察署から少し離れた所にあるレストランの奥の椅子に座りその時を静かに待っていた。
 その場所は丁度死角となっている為、店外からは翔太郎の姿を確認する事は不可能。中の様子を確かめるには店内に入るしか無い。
 だが店内に入れば流石の翔太郎も接近を察知できるしマッハキャリバーに周囲を警戒させてもいる。それ故、単独行動を維持する条件はクリア出来ていると言えよう(加えて言えば監視カメラの存在が無い事も確認済)。
 勿論、何かあった時はすぐに動ける様、ドライバーは装着済みだ


『翔太郎』


 そんな中、フィリップが話しかけてきた。


「どうしたフィリップ、頼んでおいた事はわかったのか?」


 実は少し前にこんなやり取りをしていた。



『フィリップ、ゴ・ガドル・バ……いや、仮面ライダークウガについて調べてくれ』
『それ自体は構わないが……忘れたのか翔太郎、地球の本棚で検索できるのは僕達の世界に関係する事だけ、他の世界の事は対象外だ。恐らく検索しても……』
『だろうな……だが切り口はある』
『切り口……』
『俺達も接触したアイツ……』
『まさか……』
『そのまさかだ……仮面ライダーディケイド門矢士、通りすがりの仮面ライダーであるアイツならば仮面ライダークウガの事も……』
『なるほど、考えて見れば何度か共闘はしたとはいえ、長々と話した事はなかった……試してみる価値はある……だが例え僕達と接触したとは言え異世界の存在である事に違いは無い。過度な期待はしないでくれ』


 というわけで、フィリップに仮面ライダークウガの事を調べる事を依頼していたのだ。勿論これは来たるべきゴ・ガドル・バとの戦いに備える為だ。


『要点の説明をしよう。仮面ライダーディケイド門矢士、彼は自らの記憶、あるいは世界を探す為に数多の世界を旅してきた。その旅の仲間の中に仮面ライダークウガがいた』
「大当たりか! けど頼んでおいてアレだがよくそこまで調べられたな……異世界なのに……」
『旅の仲間の1人、光栄次郎が園咲琉兵衛……父さんの知り合いだったからかな……?』
「え、何だって?」
『何でも無い、だが大当たりとは言い切れない……何しろ門矢士と旅をしていたクウガの正体は……小野寺ユウスケなのだから』
「別人って事か……」
『だが、ここからが重要だ、門矢士は数多くの仮面ライダーの世界を旅してきた。クウガ、キバ、龍騎……』
「そういや俺達が初めてディケイドと戦ったのはどのライダーの世界だったんだ? 確か銀ピカ野郎をぶちのめした世界だったが……」
『そんな事はどうでもいい、話の腰を折らないでくれ……彼の旅した世界の1つに仮面ライダーのいない世界があった……』
「仮面ライダーのいない世界?」
『そう、その世界は5色の侍戦士によって守られている世界……故に仮面ライダーが存在する必要が無いという事だ。ちなみにその世界ではクウガも戦った』
「その言い方じゃディケイドと旅していたクウガはあんまりクウガとして戦ってねぇ風に聞こえるが……ん、ちょっと待て、5色の侍戦士……それはまさか……」
『そう、志葉丈瑠達シンケンジャーのいる世界だ』
「ちょっと待て、それじゃ梅盛達は仮面ライダーの事を知っているって事じゃねえか、けどそんな事梅盛の野郎一言も言ってなかったぜ」
『驚く事じゃない、彼がディケイドの現れる前のタイミングから連れてこられたというだけの話だろう』
「そうか……ん、おかしくねぇか? 何でシンケンジャーの世界の情報がそこまで詳しくわかったんだ?」


 そう、ここまで話して翔太郎は事の異常に気付いたのだ。
 地球の本棚はその名の通り地球の記憶が収められた本棚だ。それ故、別の世界の地球とは一切関係が無い。
 だからこそ、翔太郎達の世界以外の事はフィリップがアクセス出来る地球の本棚では検索不可能という事だ。
 翔太郎は自分達と接触したという一点を利用しディケイド経由で検索する事を考えた。それでも別世界の情報を得られるとは思えなかった。
 しかしフィリップのもたらした情報は明らかな異世界の情報だ。


229 : X、解放の刻/楽園からの追放者 ◆7pf62HiyTE :2014/04/05(土) 14:48:18 FvKuPTJM0


『気付いた様だね、それが僕にもよくわからない……突然本棚の数が大量に増えたんだ……』
「突然増えた? どういう事だ?」
『それは僕の台詞だ……そうだ、翔太郎今何時だ?』
「今……丁度21時を数分過ぎた所だ」
『なるほど……どうやら21時を過ぎた時点で検索範囲が広がる仕様になっているらしい』
「あーそういう……って確か21時を過ぎた上で30分単独行動しなきゃならねぇんじゃなかったのかよ!?」
『それは参加者にかけられた制限だろう。地球の本棚は実質僕専用とはいえ施設の様なもの、解放条件が多少異なっても不思議は無いし僕達に知らせなければならないという決まりもない』


 フィリップの推測は的中している。
 制限の解放の中には時間が来た段階で行われるものもあり、ものによっては参加者に知らされる事無く行われるものもある。
 例えばシャンゼリオンの拠点であるクリスタルステーションの出現も21時になった時点で行われる(但し利用できるかは別問題)。だがそれは直接参加者に伝えられる事は無かった。
 それと同様に地球の本棚の検索対象の拡大は21時を以て行われる事は確定事項だった。但し、例え関係者であるフィリップ達といえどもそれを伝えられるとは限らない。
 厳密には首輪解除に動いた参加者2人がそのボーナスの一環としてその情報が伝えられているわけだがそれをフィリップ達が知る事は無い。
 とはいえ、時間が来た時点で解放されている事に違いは無く、実際に利用する事で容量拡大を実感する事が出来たという事だ。


「つまり、これで情報に関しては問題が無いと……」
『そうとは限らない。検索範囲が広がったという事は絞り込む為に必要なキーワードも増えるという事だ。特に仮面ライダーに関しては余りにも多くの世界に存在している……簡単に検索ができるとは考えない方が良い』
「じゃあどうすりゃいいんだ……」
『仮面ライダーについてはもう少しキーワードが欲しい所だ……』
「どうすっかな……ん、範囲が広がったなら……そうだ、フィリップ……魔法少女について調べてくれないか?」
『杏子ちゃんを助ける為にか……状況わかっているのか翔太郎……気持ちはわかるが……』
「出来るならな……俺は杏子の身体を元に戻してやりてぇんだ……死ぬまで戦い続けるのはあまりにも辛すぎるだろう……」
『だが、罪を数え救うと決めたのは杏子ちゃん自身だ、それは彼女に対して失礼じゃ……』
「魔法少女じゃなきゃ人は救えないってわけじゃねぇだろう」
『もっともだね、わかった翔太郎……だがキーワードはどうする? 絞り込めなければ探しようが無い……』
「そうだな……杏子達魔法少女に関係する用語を片っ端から入れて……後は知り合いの名前、確か暁美ほむらはイレギュラーとかどうとかって言っていた筈だ」
『イレギュラー……なるほど調べて見る価値はある……だがまだ足りない、もう1つ決め手が欲しい所だ……例えば有名な魔女の名前とか……』
「有名な魔女の名前? そんなもん知るわけが……」


 と、


『Walpurgis Nachi(ワルプルギスの夜)』
「ワルプルギスの夜……?」


 マッハキャリバーが不意に言葉にし翔太郎もオウム返しのように復唱してしまった。


『『ワルプルギスの夜』……興味深い名前だ、わかったこれで試してみよう』


 そう言って検索に入っていった。


「おい、フィリップ……」


 呼び止めようともフィリップが答える事はなかった。


――とはいえ、何かに夢中になったフィリップがこうなる事は何時もの事だ。だがきっと、そんなフィリップなら闇に潜む真実を見つけ出せる。俺はそう信じている――


『It is shortly short(今度は短いですね)』


230 : X、解放の刻/楽園からの追放者 ◆7pf62HiyTE :2014/04/05(土) 14:51:38 FvKuPTJM0





第3節 状況の整理



――今は只待つ事しか出来ない。だがこの時間を無駄に過ごすつもりはない。今は仮面ライダーとして戦えなくても俺が探偵である事に変わりは無い。今一度状況を整理することにした――


「3回目の放送の時点で残る参加者は21人、だがあの後一条といつきが死んだ事により残りは19人だ」
『It decreased very much(大分減りましたね)』
「ああ、順を追って整理するぜ……まず今現在警察署にいる冴島、美希、杏子、孤門、沖先輩、そしてヴィヴィオの6人、こいつ等は全員殺し合いを打破する為の仲間だ、ここまではわかるな」
『Yes(はい)』
「次に、いつきをつぼみの仲間達の所に埋葬に向かった後警察署に戻る手筈になっているのが響、つぼみ、なのはの3人、警察署の一件もあるからそうそう簡単に上手くいくかまではわからねぇがこの3人も仲間だ」
『And , Mr.Half Boiled(そしてハーフボイルドも)』
「というわけで俺を含めて10人が仲間という事になる……ってナチュラルにハーフボイルド呼ばわりすんじゃねぇ」
『The half was already exceeded...(既に半分を超えた……)』
「残り9人だな。まず美希と同じプリキュアである桃園ラブ、この子は間違い無く仲間だ……どうでもいいがなんでラブって名前なんだ……」
『Please go ahead with the talk(話を進めて下さい)』
「で沖先輩の先輩である仮面ライダー4号ライダーマン結城丈二先輩、そして響やつぼみから聞いた冴島同様魔戒騎士である銀牙騎士絶狼(ゼロ)こと涼邑零、2人は警察署を離れてからずっと行動を共にしているらしい。
 涼邑と冴島の間には何か因縁があったらしいがそれは既に解消されたらしい、結城先輩も一緒である事も踏まえれば離れているとはいえ2人も頼れる仲間となる」
『Kamen Rider is a senior...(仮面ライダーは先輩なんですね……)』
「そして孤門の同僚である石堀光彦、聞いた話じゃ孤門同様特別な力は何も無いがこういう有事では頼れる仲間でつぼみも色々助けてもらったらしい……俺自身が会っていないからピンとこねぇけどな……」
『Remaining 5 persons(残り5人)』
「ああ、ここまでの14人は実質的にこのゲームを打破する仲間と考えて良い……だが仲間達を泣かせる危険人物が何人かいる……
 まずゴ・ガドル・バ、俺の把握している限り一条といつき、霧彦、そしてフェイトにユーノを仕留めた現状最悪の相手だ」
『Ms.Fate...(フェイト……)』
「頼むからユーノの事も思い出してくれ……次に血祭ドウコク……あの時は杏子のお陰で撃退する事が出来たが未だ奴は健在……並の相手じゃ戦いにすらならねぇだろうな……」
『Next is ...(次は……)』
「本来なら殺し合いに乗る筈がなかったが許嫁……要するに婚約者あるいは恋人である早乙女乱馬が殺された事で殺し合いに乗った天道あかね……彼女自身の戦闘力そのものは大した事は無いが……
 達人級にまで強化する伝説の道着、そして赤レベルまで引き上げたナスカの力を持っている」
『Is it so dangerous?(そんなに危険なのですか?)』
「ああ……赤いナスカ自体エクストリームを以てしても対応仕切れないレベルだ……そして伝説の道着のお陰で強化されている事を踏まえれば……ガドルやドウコクに決してひけはとらないだろうな」


231 : X、解放の刻/楽園からの追放者 ◆7pf62HiyTE :2014/04/05(土) 14:54:56 FvKuPTJM0
『Remaining...(残りは……)』
「そう……涼村暁と黒岩省吾……この21時間俺達は多くの参加者と遭遇し情報を得たが……この2人の情報だけは未だ掴んでいない……」
『An enemy or an ally , is it unknown?(敵か味方か、それも不明ですか?)』
「だが推測は可能だ。さっきの放送を覚えているか?」
『Yes.(はい)』
「あのゴバットというオタク野郎は仮面ライダー、プリキュア等々と並べて『シャンゼリオン』と言った、つまりこの『シャンゼリオン』は仮面ライダー及びプリキュア同様人々を守るヒーローという事になる。
 そして調子に乗って呼びかけたり、一昔見た様な悪役みたく気取った所を見ると相当なオタクと考えて良い……
 多分、あの野郎は放送役を与えられ舞い上がって俺達に呼びかけてしまったんだろうな……」
『Possibility of performance?(演技の可能性は?)』
「あれは間違い無く素だ。そしてつい言ってはならない事を言っちまった様だ……放送が止まり本部から苦情が来たというのはそれだろう……それは参加者の情報だ」
『What?(何?)』
「つまり現在生き残っている参加者の中に仮面ライダー、ウルトラマーン、魔戒騎士、プリキュアがいる事を口走ってしまったんだ……放送が止まったのはそれが理由だ。
 それを裏付ける情況証拠はある……あの野郎は『シンケンジャー』とは呼ばなかった……あの野郎の性格上呼びかけないわけがない……つまり参加者の中にシンケンジャーはもういない事を証明したというわけだ……」
『The reason for not having called "magic girl" ?(『魔法少女』を呼ばなかった理由は?)』
「それは確かに引っかかるが……まぁ一番にありえるのはあの野郎の琴線に引っかかる『ヒーロー』じゃ無かったってとこだろうな……
 もしくは……あの野郎の中では杏子はもう『魔法少女』じゃなくて『ウルトラマン』って事だろう。そうなると『魔法少女』はいない事になるしな。
 ただ、何にせよあの野郎の言葉からシャンゼリオンが残る参加者にいる事は確実だ。だがさっきまで話した17人の中に該当する人物はいない……
 つまり、涼村暁か黒岩省吾のどちらかがシャンゼリオンという事になる。断定は出来ないがまず味方と考えて良い。
 未だ同行は掴めないが、恐らくは長い間同行がわかっていない参加者、ラブ、石堀、結城先輩、涼邑零……そのいずれかと同行しているか単独あるいはその2人で行動しているか……」
『It is how like a detective to talk.(探偵みたいな喋り方ですね)』
「探偵みたいじゃなく俺は元々探偵だ! なんかこのネタも前にもやったぞ!! というか今回こんなんばっかじゃねぇか!!」


 ともかく残る参加者のスタンスを纏めると以下の様になる。


 味方A(動向がある程度把握出来る者)……10

 左翔太郎
 冴島鋼牙
 蒼乃美希
 佐倉杏子
 孤門一輝
 沖一也
 高町ヴィヴィオ
 響良牙
 花咲つぼみ
 月影なのは(ダークプリキュア)


 味方B(長期間動向が不明)……4

 桃園ラブ
 石堀光彦
 涼邑零
 結城丈二


 敵……3

 ゴ・ガドル・バ
 血祭ドウコク
 天道あかね


 不明……2(注.但し片方は恐らくシャンゼリオンであり味方の可能性が高い)

 涼村暁
 黒岩省吾


「……?」


 19人のスタンスを改めて確認した翔太郎はある種の違和感を覚えた。


「(待てよ……確か3度目の放送の時点では一条といつきが生きていて、月影なのはがダークプリキュアとして殺し合いに乗っていた頃だ……そうなると……味方に該当するのは15人、敵に該当するのは4人という事になる……
 そして俺の推測通りなら涼村暁と黒岩省吾の内確実に片方は味方……もう片方を敵と仮定しても……味方は16人、敵は5人となる……

 敵の数……少なくねぇか?)」


232 : X、解放の刻/楽園からの追放者 ◆7pf62HiyTE :2014/04/05(土) 14:55:42 FvKuPTJM0


 そう、現在の状況から見ても3度目の放送の時点から見ても敵対参加者が少ないのだ。


「(主催の連中にしてみりゃ……これはマズイ状況だぜ……)」


 殺し合いの完遂が狙いとするならば放送時点で残り5人で16人を仕留めなければならない。
 勿論、ガドルやドウコクの戦闘力を計算に入れればそれ自体はそう難しいことではない。
 だが、状況はそうそう都合良くはいかない。


「(そもそもガドルやドウコク達だって別に組んでいるわけじゃねぇ、互いに潰し合う事だってあり得るだろう。それに……難しい事だが絶対に倒せない奴等じゃねぇ)」


 前述の通り、敵対している参加者は何れも強敵と言える。
 が、ガドルにしても、ン・ダグバ・ゼバと対峙した事のある翔太郎視点で考えればそれに匹敵あるいは若干超えるレベルだと判断している。
 そしてダグバが打倒できている事実がある以上、ガドルを倒すことも困難ではあっても不可能ということはない。
 ドウコクに関しても1度杏子が撃退しているし、聞いた話では後に良牙達が遭遇し倒しているわけなのでこちらも倒す事は十分可能だ。
 またあかねの変身した赤いナスカ・ドーパントも強敵ではあるがエターナルやエクストリームとなったWならば対応は可能であり、美希が一度撃退している事からもこちらも問題はないだろう。

 加えて言えば、放送時点で殺し合いに乗っていたダークプリキュアもガドルの戦闘力を見て戦意を喪失した辺り、ガドルよりも大幅に弱い事は明らか。

 そして、彼等は何れも単独で動いているわけなので互いに潰し合う事もあり得るということだ。
 つまり、戦力のバランスが対主催側に傾いていると言える状況だ。


「(だが、連中は制限の解放で俺達を強化しようとしている。無論、ガドル達が強化される可能性もあるが……条件付きとは言え俺達も強化されるからそこまで致命的じゃねぇ……)」


 主催陣の言動を見る限り、此方の行動をそこまで諫める様子は無い。幾ら殺し合いを続けろと言っても主催側が殺し合いを止めさせる発言をするわけもなく普通は煽るわけなので言葉自体に意味は無い。


「(そうだ、主催側にしてみりゃもっと積極的に此方が不利になる事を仕掛ける筈だ……それこそ殺し合いに乗った参加者が有利になる様な……制限の解放だってする必要もねぇだろう……
  あいつらだって判っている筈だ……俺達が敵対する参加者を全て撃退すれば……次は自分達が危ないと……気付いていねぇのか?)」


 そう、勿論まだ先の話ではあるが、敵対する参加者を撃退すれば主催陣の所に乗り込んで決戦という流れになる。
 だが、それは主催陣にとっては良い状況では無い。殺し合いを催しておいてそれを壊される事など言語道断だ。
 つまり、なんとしてでも殺し合いを継続すべき筈なのだ。しかし主催陣の言動を見る限り、あまり積極的とは言い難い。


「(何かおかしくねぇか……?)」


 とはいえ、主催との戦いを考えるのは時期尚早、そんな中


233 : X、解放の刻/楽園からの追放者 ◆7pf62HiyTE :2014/04/05(土) 14:56:38 FvKuPTJM0


「そういや響の奴に渡しそびれたな……」


 と、T2のアイスエイジ・メモリを出す。エターナルは26個のT2ガイアメモリを使いこなす事が可能。それ故、このメモリもエターナルにとって大きな力になるわけだ。


「ま、いきなりメモリが増えた所で使いこなせるとは限らねぇか……それに確か月影なのはの持っていたメモリを持ってるらしいからな……恐らくパペティアー……ん、パペティアー?」





 ここで物語は警察署で待機していた時に遡る。それは3度目の放送後、杏子達が買い出しに行く前、参加者の動向を纏めたものを確認していた時の事だ。


『なぁ、この響良牙って奴について詳しい話聞いている奴いねぇか?』
『乱馬さんやあかねさんの知り合いですね』
『ああ、確か乱馬は女、シャンプーは猫、パンスト太郎はなんかよくわからねぇ怪物に変身するってあるが……』
『そーいや、あの時現れた怪物、パンストか何かが見えた様な気が……アレか?』
『あんまり女の子がそういう事口にしないの……翔太郎さん、もしかして……』
『ああ、もしかしたらコイツも水を被ったら変身するんじゃねぇかと思ってな……』
『僕は聞いてないけど……美希は?』
『あたしも聞いてないわ……そもそも聞く余裕も無かったし……』
『梅盛の野郎も天道あかねとずっと行動していた割にそういう事は知らなかったみてぇだからな……』
『なぁそれじゃあ、その良牙の兄ちゃんは別に水を被ってもなんともならねぇんじゃねぇか?』
『………………あの、私……聞いてます』
『ヴィヴィオ? そうかそういや早乙女乱馬と長いこと一緒にいたんだったな』
『確かPちゃんっていうこれぐらいの子豚に変身してしまう体質で、時々あかねさんに抱きしめられたり一緒に寝たりしていたって聞いています』


 この瞬間、ヴィヴィオ以外の3人の女性陣そして翔太郎の表情が通常ではあり得ないぐらいの驚愕の表情を見せる。


『なななななんだと、そんなうらやまし……いやいやいやいやけしからん事していたというのか!? その響良牙っていうPちゃんっていう子豚ちゃんは!?』
『兄ちゃん、本音がダダ漏れになってるぜ!! というか正気に戻ってくれ!!』
『ちょっと、どうしてそれ今まで黙っていたの!?』
『落ち着いて美希、そんな事普通は言えないと……』
『はい、乱馬さんからあかねさんには黙ってろと口止めされていたので……それに色々あって言いそびれて……』
『でもおかしいとは思わなかったの?』
『確かユーノさんも昔フェレットに変身したときなのはママと一緒にお風呂に入ったり寝ていたりしたらしいという話だがら……』
『ユーノォォォォォォ!! 俺を裏切ったなぁぁぁぁぁぁ!! お前だけはハードボイルドだと俺は信じていたんだぞぉぉぉぉぉ!!』
『落ち着いてくれよ兄ちゃん、9か10ぐらいだったら一緒に入っても……』
『あり得ると思う?』
『流石にそれはないでしょ……』


 そんな一同を余所に、


『何やっているんだみんな……』
『そろそろ買い物に……』


 そうツッコム沖と孤門であった。ちなみにこの時、



『う゛っ、なんか寒気が……』
『大丈夫ですか?』
『もう夜だ、冷えてくるだろう……』



 とある場所にて微妙に寒気を感じる元Pちゃんがいたとかいなかったとか。





「つか、アイツにつぼみとなのはを任せて大丈夫だったのか……」


 そんな事を思い出し流石に不安を覚えてくる。


「いや、だがまぁそういう奴とは限らねぇか……マッハキャリバー、確か響と一緒に行動していたんだろ、どんな奴だった?」
『He was doing hot britches with the marvelous body of buddy.(そいつ、相棒のマーベラスな躰で欲情していた)』
「響ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」


 ――新たなエターナルに不安を覚えていた俺だったが、すぐさま現実に引き戻される事になる……そう、その時がやってきたのだ――


234 : X、解放の刻/楽園からの追放者 ◆7pf62HiyTE :2014/04/05(土) 14:57:21 FvKuPTJM0





第4節 男爵との遭遇



――それは突然現れた。音も無く、マッハキャリバーにも察知される事も無く――


『随分と騒がしいな……仮面ライダーW、いや左翔太郎。まぁ支給品は対象外だから別段問題は無いが……』


 そう、店内に赤髪の男性がいたのだ。


「あんたは……サラマンダー男爵か……」


――サラマンダー男爵……砂漠の使徒の元幹部で、砂漠の使徒やプリキュア達に復讐すべく世界の破壊を目論もうとした奴だ。
 もっとも、ルー・ガルー……オリヴィエとの出会いといつき達との戦いの果てに改心、和解したという話だ。
 だが、そんな奴が加頭達と組んでこの殺し合いの主催として参加している。最初の放送を担当したのもこの男だ――


『自己紹介の必要はないな……言っておくが今君の目の前にいる私はホログラフだ……手を出そうとしても無駄だ……』
「まさかアンタが来るとはな……俺はてっきり加頭の野郎が来ると思っていたぜ……」
『こっちも色々担当があるのでな……あの男も別の……いやこれは言うまい』
「いつきから話は聞いている……男爵、アンタは……」
『悪いが質問に答えるつもりはない……俺の用事は……制限の解放だ』


 その言葉と共に指を鳴らす。するとあるものが出現した。


「エクストリームメモリ……」
『私の担当はこれの監視役でね、その関係もあって君の前に現れたという事だ。さて、左翔太郎……正確にはダブルドライバーの持ち主に課せられた制限を説明しよう……』
「エクストリームメモリとそこに幽閉されているフィリップの解放、そうだろう」
『御名答、いやいや説明の手間が省けて実に都合が良い……ん、妙だな……フィリップもすぐに出るとは思ったが……
 まあいい、ともかくこれで君は仮面ライダーWの全ての力を使える事になる。
 今更説明するまでも無いがフィリップ主体によるファングジョーカー、そして2人が1つになったサイクロンジョーカーエクストリーム……ここからはこの力を使い存分に戦いたまえ……』


 そう言って用事を済ませ消えようとするが。


「ちょっと待て、アンタ本当にあの連中の手先になっているのか!? もしかしてオリヴィエ……ルー・ガルーが人じ……」


 だが、男爵がステッキを向ける。ホログラフとはいえ翔太郎は思わず言葉を詰まらせる。


『答えるつもりはない。二度もいわせないでくれ……これ以上余計な事を言うならば、折角再会出来た相棒と早々に別れることになる……』
「まさかフィリップにも首輪を……」
『当然の措置だろう。今はこのまま戦い続けるしかないという事だ……だが、君たちが再び私の前に現れた時は……いや、言うまい……』


 そう言って、後ろを振り返る。


『そう、君達の声は私の耳に届いている……キュアブロッサム……彼女の声も……それではさらばだ。運があったら……また会おう』


 と指を再度鳴らし、男爵はその姿を消した――


235 : X、解放の刻/楽園からの追放者 ◆7pf62HiyTE :2014/04/05(土) 14:59:09 FvKuPTJM0


 ――何事もなかったかの様にレストランに静寂が戻る……だが俺の中には1つの疑問があった。最後の男爵の言葉は何を意味しているのだろうか?
 監視しているから下手な事をするなという意味か? だが何故キュアブロッサムの名前が出てきた?
 いや、男爵に関する推測は後でも出来る……そう、今一番重要なのは――


「フィリップ……」


 その言葉に反応したのかエクストリームメモリから1人の男が放たれる。傍らでは恐竜型のファングメモリが縦横無尽に走り回っている。


「……さっきまで普通に話していたのに随分と久しぶりに会った気がするよ……翔太郎」


 そしてその手にエクストリームメモリとファングメモリを掴む。


「ああ……正直もう二度と会えねぇんじゃねぇかと何度も思ったぜ……フィリップ」
「奇遇だね……僕もだ」
「ははっ……よっしゃぁぁぁぁ! フィリップが帰ってきたぁぁぁぁぁ!!」
「翔太郎、こういう時はこう言うんだ、こうやって『フィリップキタァー!!』とね」
「なんだそりゃ!?」
『Congratulations(おめでとうございます)』


 ――そう、制限の解放なんてどうだってよい、最高の相棒と再会出来た事を喜んだ。だが――


「そうだ翔太郎、喜んでいる所悪いがのんびりしている場合では無い」
「そうだな、すぐにでも警察署に戻らねぇと……」


 と言ってマッハキャリバーを握り店外へと出ようとしたが、


「待ってくれ、先に話したい事がある」
「何だそりゃ、んなもん警察署に戻ってからでも十分だろ、大体杏子に関係する事なら本人の前で……」
「ダメだ、この事はまだ杏子ちゃんにも警察署にいる仲間達にも話すわけにはいかない」
「まさか……何かマズイことがわかったのか……」
「ああ、だからこそまず君だけに話す……」


 ――そしてフィリップは検索結果を語り初めた。だが、俺は最初それを信じる事が出来なかった――


「何だそりゃ……本当かよ……」
「何度も検索した、間違いは無い……」
「巫山戯んなよ……杏子達魔法少女が戦っていた魔女の正体が……


 魔法少女の成れの果てだと……!!


 それじゃあ杏子達は……自分達の仲間を……かつて同じ人間だった女の子達を殺していたってことじゃねぇか!!


 そして今度はその杏子達自身も……魔女になって……人々を泣かせるっていうのかよ!!


 何の冗談だ!! フィリップ!!」


236 : X、解放の刻/パンドーラーの箱 ◆7pf62HiyTE :2014/04/05(土) 15:00:49 FvKuPTJM0
第5節 悪魔な相棒



「……冗談? 僕は検索結果を話しただけだ……そうそう、君の求めていた答えは見つけられなかった。つまり魔法少女となった者を元の人間に戻す方法は無い、そういう事だ」


 何事も無かったかの様に口にするフィリップ、更に、


『Mr.Philip's woad is truth(フィリップの言葉は真実です)』


 マッハキャリバーがフィリップの言葉を肯定した。


「ちょっと待て、なんでマッハキャリバーが……そうか」


 ここで翔太郎は大事な事を思い出した。
 そう、アインハルト・ストラトスが言っていたではないか。ソレワターセに取り付かれたスバル・ナカジマが多くの参加者を殺し取り込んでいったと。
 その中には杏子の知り合いの鹿目まどかもいた。彼女が魔法少女の事を知っていたのならば、その記憶を取り込んだソレワターセを介しマッハキャリバーが把握していてもおかしくはない。
 魔女の名前を知っていたのもそれが理由だったのだろう。


「杏子ちゃん達魔法少女は何れ魔女となって人々を脅かす、それが魔法少女の真実さ」
「ちょっと待てフィリップ、確か魔法少女を産み出しているのはキュウべぇだろう。願いを叶える代わりに魔女を倒してくれって言って……それじゃキュウべぇの野郎は魔法少女と魔女の両方を産み出し戦わせて潰し合わせているって事だろう。なんでそんなマネする必要がある」
「キュウべぇ……君はそれを思っているのかい?」
「どういう意味だ?」
「インキュベーター、それがそいつの本名さ……その正体は地球外生命体……要するに異星生命体さ」
「だからどうした?」
「彼等は自分達の宇宙を守ろうとしただけさ」


 フィリップは真実を語る。
 キュウべぇことインキュベーターの住む宇宙のエネルギーは減少しつつあった。つまり何れ滅びを迎えるという事だ。
 その為減少しないエネルギーが必要だった。
 そこでインキュベーターの文明は感情をエネルギーに変換する技術を開発した。


「まぁよくある話だな、でそれと魔法少女が何の関係がある? 大体そういう技術があるなら自分達で……」
「残念ながらそれは出来なかった。何故ならインキュベーターには感情というものがないからだ」
「自分で使えない技術なんて開発するんじゃねぇよ……俺達のガイアメモリだって一応自分達で使っているんだぜ……ってまさか……」
「そのまさかさ、杏子ちゃん達の地球の人類にそれを見出したんだ。地球の総人口は数十億人、繁殖力を考えれば実に膨大な数字だ。そして1人の人間が産み出すエネルギーは成長するまでに消費したエネルギーを凌駕する……
 そう、インキュベーターにとってあまりにも都合の良いエネルギーだったということさ。
 そして最も効率が良いのは……第二次性徴期を迎えた少女……ここまで説明すればもうわかるだろう……」
「感情豊かな多感な時期……その時に魔法少女となればその力は強い……」
「そう、そして……その魂が燃え尽きた時、つまりは魔女となった時、膨大なエネルギーを発生させる……魔法少女になった時のプラスエネルギーがそのまま反転し魔女のマイナスエネルギーとなる、
 その差となったエネルギーをそのままインキュベーターは手に入れるというカラクリさ
 つまり、魔法少女が魔女となったエネルギーを手に入れる、その為にインキュベーターはあの手この手を使い魔法少女を増やしていったというわけさ」
「魔法少女が増えれば当然その分魔女も増える、それだけインキュベーターが得られるエネルギーは大きいというわけか……くっ、ミュージアムや財団Xよりも質が悪いじゃねぇか!
 こっちにしてみりゃ、魔法少女になって希望を与えても、それと同じだけ絶望を振りまいているわけだろう、それじゃプラスマイナスゼロで何の意味もねぇだろうが。そのくせインキュベーターはエネルギーをそのまま確保……あまりにも悪趣味じゃねぇか……」
「彼等にとっては宇宙のための小さな犠牲に過ぎないってことさ、感情の無い彼等にしてみれば取るに足らない問題だ」
「巫山戯るな! 杏子達は人々を守る為に魔法少女になったんだぞ! それなのに人々を泣かせる存在になったら意味ねぇじゃねぇか!!」


237 : X、解放の刻/パンドーラーの箱 ◆7pf62HiyTE :2014/04/05(土) 15:01:23 FvKuPTJM0
「意味が無い? 確かに短絡的にみればそうだろう。だが長期的に見れば大きな意義があった……」
「どういう事だ?」
「魔法少女が大きな奇跡を起こす事は杏子ちゃんの話からもわかるだろう。彼女の場合は悲劇的な結末に終わったが……契約した魔法少女の中にはその奇跡によって世界に発展という名の変革をもたらした英雄もいる。
 そう、魔法少女の存在が杏子ちゃん達の世界を発展させたんだ」
「だが結局その魔法少女は魔女になったんだろう!」
「だがそれは彼女達の自業自得だ、杏子ちゃんの例を見てもわかるだろう、道理に反した歪な力である以上、その歪みは自身に返る、わかりきった事だ。それがイヤなら最初から願わなければ良かったんだ。
 それにさっきも話したがそんな彼女達の犠牲があったからこそ彼女達の世界は発展した」
「そんな犠牲の上に成り立つ発展なんかなぁ……」
「別にこれは彼女達の世界に限った特別な話じゃあない、僕達の世界を見ても戦争によって技術が進歩したという実例がある。
 僕達の使うWの力もガイアメモリの研究がもたらしたものだ、そこに至るまでにどれだけ犠牲が出たのか、わからない君じゃないだろう。
 そう……そういう犠牲が無ければ……人類は未だ野生の猿として自然の中で生きていただろう……」


 フィリップの語る魔女の真実、それは一見理不尽にして残酷な話ではあるがそれは特別な話では無い。
 見方を変えればそれは自分達の世界の1つの縮図でもあるのだ。
 だが、それを素直に受け入れられる程翔太郎は冷徹では無い。


「確かにキュウべぇの作り出したシステムはある意味理にかなっているかも知れねぇ……けどな、人の感情なんてそんな簡単に数値化や計算出来るもんじゃねぇ……絶対に何処かに無理が生じる筈だ……」
「その通りだ翔太郎……そう、杏子ちゃん達の世界は何れ滅びを迎える事になる……その切欠がワルプルギスの夜さ……」
「なっ……どういう意味だ? そいつが世界を……」
「確かに並の魔法少女が束になっても勝てる相手じゃあない……だが言っただろう、それは切欠に過ぎないと……そう、そのワルプルギスの夜は1人の魔法少女によっていとも簡単に倒される……」
「1人の魔法少女によっていとも簡単に倒される? ちょっと待て、並の魔法少女が束になっても勝てない魔女を簡単に倒せる魔法少女って事は……」
「そう、その魔法少女が魔女に変貌し……その星は滅びた……10日程度でね……」
「キュウべぇはそんな状態になって何もしなかったのか!?」
「する必要がなかったのさ、その魔法少女が魔女に変貌した際のエネルギーでインキュベーターの求めるだけのエネルギーは得られたのだからね。後はどうなろうと知った事じゃない。たった1つの星が滅んだ、広い広い宇宙にとっては小さな犠牲って事だ」
「まさか最初からそれを狙って……巫山戯るんじゃねぇ、それじゃ完全に詐欺じゃねぇか!!」
「翔太郎……前にも言っただろう……拳銃を作った工場の人間が悪いんじゃない……使って悪さをする奴が悪いと……
 確かにインキュベーターの使った手法は悪辣だ。だが本当に悪いのはその歪みに手を出した少女達、そしてそれに気付かず発展の恩恵を受け続けていた愚かな人間達だ。
 知恵の実を食べたアダムとイブは楽園から追放され苦難の道を歩む事になった、そういう事さ」
「だがな、楽園を追われたからといって終わりってわけじゃねぇ……その先にきっとそいつらだけの楽園が……」
「そんなものが本当のあるのかな……?」
「何……」
「少女が魔法の力を得た事で魔法少女となり、魔法少女が力を使い果たし魔女へと変貌した、これは1つの成長といえる……
 だったら、絶望を振りまいた先に悪意の象徴となり、女性という殻すらも脱皮したものは何と呼べば良いのだろうね?
 それはきっとこう呼ばれるのだろう……悪魔と……
 魔女すら超越した悪魔はそれを産み出した者すらをも害を成す……
 つまり最後の楽園すらも消し去ってしまうだろう……故に誰一人として救われる事は無い……決して……!!」


 その言葉で翔太郎の中で何かが切れた。


「フィリップ、テメェェェェェェ!」


 気が付いた時には、翔太郎はフィリップを殴り飛ばしていた。そしてすぐに我に返る。


 ――そうだ、こんな所でフィリップを殴ったって意味はねぇ……それに何かおかしい……なんでフィリップは急に悪魔みたいに魔法少女の真実を語ったんだ?――


238 : X、解放の刻/パンドーラーの箱 ◆7pf62HiyTE :2014/04/05(土) 15:01:57 FvKuPTJM0


「気は済んだか翔太郎……」


 そう言ってゆっくりとフィリップは立ち上がり、


「だが、一発は一発だ……」


 そう言って構えを取り、


「少し……頭、冷やそうか……!」


 その言葉と共に、右拳で翔太郎の左頬を殴り飛ばした。


「がはっ……」


 と、何とか踏みとどまろうとするが、


「もう一発」


 続いてフィリップの左拳が右頬に炸裂した。


「ぐっ……」


 今度は耐えきれず翔太郎は倒れた。


『Deja vu(あれ、どっかで見た様な気がする)』


 そして翔太郎の中で急速に熱が冷めていくのを感じた。


「フィリップ……俺をわざと怒らせて……考えて見れば当然だ、初めて会った頃ならともかく今のお前がその真実を知って冷静でいられるわけがねぇ……」
「翔太郎……君は優しい男だ、この真実を聞けばきっと嘆き悲しむ。それ自体は理解出来る……だが僕達には最早、戻る事も立ち止まる事も許されない……
 それに、この真実を知って一番辛い想いをするのは誰だ? 僕か? それとも君か? 違うだろう、それを知って一番辛いのは杏子ちゃんだろう!
 だが美希ちゃんやヴィヴィオちゃんがこの真実を聞いたら彼女達もショックを受ける……彼女達ではすぐに杏子ちゃんを支える事は出来ない……
 だったら誰が杏子ちゃんを支えられるんだ!? 君しかいないだろう! そんな君が潰れたら誰が杏子ちゃんを……みんなを支えるんだ! 君は人々を守る希望……仮面ライダーなんだ!!」


 その叫びを聞きながらゆっくりと立ち上がる。


「ああ……お陰で目が覚めたぜ……そうだな、俺が……いや、俺達が支えなきゃならねぇよな……こんな所で腐っているわけにはいかねぇ……全く、悪魔らしいやり方しやがって……」
「最大級の褒め言葉として受け取っておくよ」
「………………けどよ、1発目はともかく、2発も殴る事は無かったんじゃねぇか?」
「ああ、それは天道あかねとの戦いでメモリを奪われた時の分だ」
「いや、あの時のは杏子が代わりに……」
「それはドライバーも付けずに単独で挑んでいった時の分だ……それにこういうのは人任せにするより自分でやらなければ意味が無い」
「だったらあの時も殴らせるんじゃねぇよ、殴られ損じゃねぇか!」


 そう言いつつも態勢を整える。


「ともかく、足止めしておいて悪いが急いで戻った方が良い」
「そうだな、警察署の先輩達にもいつきや月影なのは、それにガドルの事とか色々説明……」
「いや、それもそうだが杏子ちゃんの方が心配だ」
「? ちょっと待て、確かにその真実を知ったらショックを受けるだろうが、それは落ち着いてから説明すりゃ……」
「翔太郎、『ソウルジェムが穢れきった時、魔女へと変貌する』、言い換えれば魔法少女が死んだ時魔女になる……これはある意味死んでも1度復活出来るという他の参加者にはないアドバンテージだ……」
「そうか、自我の有無を考えに入れなきゃ……他の参加者よりも有利じゃねぇか! それを主催側が制限しない理由はねぇ……」
「勿論、これは只の推測に過ぎない。だがこの推測が的中しているならば……それが杏子ちゃんに説明される事になる……」
「だが単独行動しなけりゃ……」
「そんなもの交代でやればどうにでもできる、真っ先に杏子ちゃんがやらない保証はない」
「そうだな、杏子……早まるんじゃ……」


 その時、


『Something comes!!(何か来ます!!)』


 僅かな異変をマッハキャリバーが察知、そして次の瞬間――


 2人の目の前に杏子が出現した――その時刻、21時41分


239 : X、解放の刻/パンドーラーの箱 ◆7pf62HiyTE :2014/04/05(土) 15:03:41 FvKuPTJM0





第7節 パンドラの箱



「「「『……』」」」


 レストラン内に静寂が包み込む――数十秒も経過していないというのにもう何十分も経過しているように錯覚してしまう。


「(杏子……何で『そいつが兄ちゃんの相棒か? よかったじゃねえか、無事に相棒取り戻せて』って言わねぇ……まさか)」
「(兄ちゃん……何で……『何故1人で勝手に出歩いてるんだ!?』って言わねぇんだ……まさか)」


 その無言の反応だけで気付いてしまった。


『翔太郎達(杏子)は魔法少女の真実に気付いている』と


「(最悪のパターンじゃねぇか……)」


 冷静さを取り戻したとはいえ、正直なんて言えば良いのか判らない翔太郎、それを余所に、


「(はぁ……誰にも会わずに出てきたのに……これじゃ意味ねぇじゃねぇか……)」


 そう、誰にも会わずにアカルンの力で出たのに出た先に翔太郎達がいては意味が無い。
 偶然にしてはあまりにも出来すぎているとも感じる。
 だが、もしかするとアカルンが杏子を助ける為に翔太郎の所に移動させてくれたという風にも考えてしまう。
 真相はどうとでも取れる話という事だ。


「(けどまぁ……兄ちゃん達も気付いているなら都合が良いか……)」


 そう言って杏子は自身のソウルジェムを出す。


「これ、砕いてくれ……」
「!!」


 その頼みに言葉を失う翔太郎、


「その反応……やっぱりか……やっぱり知っちゃったんだな……知らなかったら『何馬鹿な事言ってんだ』っていう筈だもんな……」


 翔太郎は言葉を紡げないでいた。本音は杏子の言う通りの事を言いたい。だが真実を知った以上、それを口にする事は出来ない。
 わかっている、杏子は自殺するつもりでソウルジェムを砕かせようとしているのではない。
 魔女になった後、自我を失い仲間達を傷つけてしまいたくない。だからこそ魔女へと変貌する前に終わらせるつもりなのだ。
 今なら真実を知るのは自分達だけ、参加者としての魔法少女は最早杏子だけである以上、警察署の皆にはまだ誤魔化し様がある。
 仲間達が真実を知りショックを受ける前に事を済ませる事も出来るだろう。


「あたしの所に美国織莉子という魔法少女が現れた、そいつの話じゃ24時を過ぎたら2体の魔女が兄ちゃん達を襲う為に現れる。マミとさやかのソウルジェムが変化した……そいつを倒さなきゃ兄ちゃん達が危ない……」
「ちょっと待ってくれ、確かもう1人魔法少女がいた筈だ、彼女は魔女にはならないのかい?」
「さぁなんか条件から外れているとかどうとか言ってたけど……」
「条件……そうか彼女のソウルジェムは既に砕けている、だから魔女にはならないというわけか……」
「その声……そうか、あんたが兄ちゃんの相棒の……」
「今更自己紹介の必要は無いと思うが……僕はフィリップ……またの名を園咲来人……どちらでも好きな方で呼んで構わない……」
「じゃあ言いやすそうな方でいいや……フィリップ兄ちゃん……なぁ……」
「魔法少女を普通の少女に戻す方法は無い……既に翔太郎から依頼されていたからね……もし可能な方法があるならすぐにでも説明するよ……」
「説明出来ないって事は無いって事だな……」
「奇跡さえ起これば良いだろうが……それを説明出来ないからこそ奇跡だ、僕に頼まれてもそれは出来ない相談だ……」
「はっ……本当に悪魔みたいだね……けどまぁ、変な希望を持たされるよりもずっといいや……これで諦めもついた……」


 そう言って改めてソウルジェムを出す。


「フィリップ兄ちゃんの推測通りならソウルジェムさえ砕けば魔女になる事はねぇ……早く砕いてくれ……」


240 : X、解放の刻/パンドーラーの箱 ◆7pf62HiyTE :2014/04/05(土) 15:04:26 FvKuPTJM0


 その言葉に遂に翔太郎が口を挟む


「ちょっと待て杏子、それがどういう事か判ってるのか? そいつを砕いたら死ぬんだぞ? もう命を粗末にしないんじゃなかったのかよ……」
「そんなこと……あたしだってわかってる……あたしだって絶対に生きてみんなを助けたかった……けどダメなんだ……どれだけ強く願っても……魔女になったらそれが全てひっくり返される……魔女になってみんなを傷つけたくはねぇんだよ……」
「だからってなぁ……」
「兄ちゃん達は割り切れているかもしれねぇよ! けどもしあたしが魔女になった姿を美希やヴィヴィオ、それにいつき達がみたらどうなる!?
 あいつらきっとショックで動けなくなる……目の前で暴れている怪物がついさっきまで笑い合った仲間だった事実……あまりにも残酷過ぎるだろう……
 元に戻す方法が無い以上、倒すしかねぇ……その時、あいつらがどれだけ哀しい顔をするか……わかるだろう……
 もしかしたらあいつらは方法もわからないのに奇跡を信じて自分の命を投げ出してでも助けようとするかもしれねぇ……
 倒したらグリーフシードじゃなくてソウルジェムの方が出てくるという愛と勇気が勝つストーリー……それをあいつらは信じている……」
「(そう……確かに君は一度それを信じ、ある魔法少女を助けようとした……だが、それは結局無駄に終わった……)」
「けどな、あたしがあいつらの立場、助ける側だったらそう思えただろうけど……助けられる側に立っちまったらそう思えねぇんだ……わかってるんだ……そんな奇跡や魔法なんて無いって……」
「けどな、魔法少女はその奇跡を願って魔法少女になったんだろ! どんな奇跡だって起こせるって思えねぇのか!?」
「気休めはもういい!! あたしだけじゃねぇ……マミにさやかもみんな希望を信じて魔法少女になった……けど結局それは全部無駄だったってわけだ……
 きっとほむらは全部知っていたんだ……だからああいう態度を……はっ……あいつも結局希望を信じて裏切られたピエロだったってわけか……キュウべぇという演出家に騙された……
 結局の所さ……あたし達が信じた希望は全部無駄だったんだ……マミ達が人々を守り続けようとしても……あたしらが死んで全て無駄に……
 まるでキュウべぇにそそのかされて箱を開けた憐れなパンドラだな……世界に絶望を振りまくだけの……」
「ちょっと待て、だが最後には希望が」
「翔太郎、それは解釈の1つに過ぎない。偽りの希望とする説もあるし災いの1種と捉える説、そして希望だけが残ったからこそ世界には希望が無いという説もあるぐらいだ」
「ははっ……なんだやっぱりそういう事か……なぁ、もういいよな……このソウルジェムを壊してくれ……
 人々を泣かせたくはねぇんだろ……だったら、人々を泣かせる魔女になる前にこいつを……」

 そう言ってソウルジェムを差し出す杏子、ドウコク等との戦いで僅かな穢れがあるにはあるがその輝きは殆ど衰えていない。

――そう口にした杏子の目には今にも涙が溢れ出しそうだった。
 人々を泣かせる泣かせない以前の問題だ、今一番泣いているのは他でも無い杏子だ、
 だが、俺はそんな杏子に掛けるべき言葉が未だ見つからないでいた。
 相棒を取り戻しWは本来の力を取り戻した。だが仮面ライダーの力の有無など関係無い、この場においては俺は……



 余りにも無力だった――



【1日目 夜中】

【左翔太郎@仮面ライダーW】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(大)、胸骨を骨折(身体を折り曲げると痛みます・応急処置済)、上半身に無数の痣(応急処置済)、照井と霧彦の死に対する悲しみと怒り
[装備]:ダブルドライバー@仮面ライダーW、T2ガイアメモリ(アイスエイジ)@仮面ライダーW、犬捕獲用の拳銃@超光戦士シャンゼリオン、散華斑痕刀@侍戦隊シンケンジャー、マッハキャリバー(待機状態・破損有(使用可能な程度))@魔法少女リリカルなのはシリーズ、リボルバーナックル(両手・収納中)@魔法少女リリカルなのはシリーズ
[道具]:支給品一式、ガイアメモリ(ジョーカー、メタル、トリガー)、ナスカメモリ(レベル3まで進化、使用自体は可能(但し必ずしも3に到達するわけではない))@仮面ライダーW、ガイアドライバー(フィルター機能破損、使用には問題なし) 、少々のお菓子
[思考]
基本:殺し合いを止める。
0:杏子……


241 : X、解放の刻/パンドーラーの箱 ◆7pf62HiyTE :2014/04/05(土) 15:08:17 FvKuPTJM0






























『What are you talking about?(冗談顔だけにしろよ)』


 今まで沈黙を保っていたマッハキャリバーが口を挟んできた。


「なっ……冗談なんかじゃ……てか宝石がしゃべ……」
『I'm not worried about that(そんな事はどうでもよい)
 "Since I do not want to wound people, I die."? Do you already give up helping people? Can't you help people?
(『人々を傷つけたくないから死ぬ』? もう人々を助けるのを諦めるのですか? 人々を助ける事は出来ないのですか?)』
「なっ……あたしだって諦めたくはねぇよ! だけど、魔女になったら……」
『Is it right now? Are you already helped for nobody? (それは今すぐの話ですか? もう誰も助けられないのですか?)』
「そうじゃねぇけど……」
『If it becomes, don't give up till the last moment...(ならば、最期まで諦めるな……)』
「テメェに何がわかるんだよ!」
「杏子……コイツはマッハキャリバー……スバル・ナカジマのインテリジェントデバイス……いや相棒だ……」
「え……」
「アインハルト・ストラトスから聞いているだろう、ソレワターセによって望まぬ殺戮を強いられた悲劇の少女を……」
「彼女の死を目の当たりにした響やつぼみ達の話じゃ解放された時にはもうどうにもならない状態だったらしい……」
「操られていたとはいえ彼女の罪は重い……しかし彼女にはその罪を数える事も、やり直す事も許されなかった……」

『Buddy could never give the opportunity to help people, but could not but die... However, you are different. You are still alive...
 (相棒は二度と人々を助ける機会を与えられず死ぬしかなかった……だが貴方は違う、貴方はまだ生きている……)
 There is an opportunity to still help people without limit... Do you crush it yourself?
 (まだ幾らでも人々を助ける機会はある……それを自ら潰すというのか?)』
「だけど魔女になったら……」
『It is set to Witch "some day"...When is it "some day"? It may be tomorrow however, it may be in tens of years...
 (いつか魔女になる……それは『いつ』ですか? 明日かも知れない、しかし何十年先かも知れない……)
 What is necessary is just to help people who count and are not competent until that time comes...
 (その時が来るまでに数え切れないぐらい人々を助ければ良い……)』
「それは……」
『The future had not been decided yet!! Which gives hope by the life, or give despair , it can be chosen for yourself.
 (まだ未来は決まっていない!! その命でどれだけ希望を与えるのか、あるいは絶望を与えるのか、そしてそれはまだ貴方の手で選ぶ事が出来る。)
 You are going to abandon it yourself, although it is trying to choose to give hope!
 (貴方は希望を与える事を選ぼうとしているのにそれを自ら放棄しようとしている!)』
「そりゃあたしだって諦めたくなんかねぇ……だけどそれは最初から無理だったんだ……変わるなんて事、出来なかったんだ……だったらもう死ぬしか……」


242 : X、解放の刻/パンドーラーの箱 ◆7pf62HiyTE :2014/04/05(土) 15:09:00 FvKuPTJM0


『A certain person said!!(ある人は言った!!)』


『ったく……死ぬ事でしか救われない……死んで救われるなんて話……そんなもんもう二度と聞きたくねぇんだ……』


 それは理不尽な死に嘆き悲しみ死による救済を否定した永遠を受け継ぎし一人の迷い子の言葉――


「Moreover, a certain person said!!(またある人は言った!!)」


『君を悲しませたままにする事も私には出来ない……私の友もきっと今の君を見れば放ってはおかないだろう……もう君が悲しみの涙を流す必要は無いんだ……』


 それは誰よりも人々の笑顔を望んだ友の遺志と共にあり続け空となった一人の戦士の言葉――


『And a certain person also said!!(そしてある人も言った!!)』


『生きているならば何度でもチャンスはあります。今からでも変わる事は絶対に出来ます。もし、変わる事すら許さないという人がいるならば……そんな人達から私が貴方のこころの花を守ります!』


 それは変わりたいというその心を守ろうとする花の名を持つ一人の少女の言葉――


 マッハキャリバーは自身が受け取った言葉を杏子へとぶつける――


 自分達は何処で間違えたのか?
 あの時、シャンプーとの戦いの最中にソレワターセを植え付けられ最悪な結果を引き起こした。
 どうすればそれは避けられたのだろうか?

 翔太郎とフィリップ、相棒同士再会出来たにもかかわらず突然互いに殴り合う姿を見てマッハキャリバーは困惑していた。
 なぜ相棒同士でこうも争うのか、それが相棒なのだというのか?
 だが真相は違った、2人はあくまでも互いの意志を察し、それぞれが考える最良の判断をとっただけなのだ。
 そう、相棒は決して唯々もう片方に従うだけの存在では無い。状況によっては相棒の意見を根本から否定する事も必要なのだ。
 致命的な過ちを犯す前に止める、そうでなければ相棒の意味などない。

 そう、マッハキャリバーはあの時ただスバルに従うまま戦うのではなく、推測しうる最悪の事態を彼女に伝えるべきだったのだ。
 シャンプーを再起不能にまでダメージを与える事も視野に入れるべきと、そして周囲への警戒に当たるべきだと、彼女の甘さを戒めるべきだと。
 それが出来なかったからこそ僅かな隙を突かれソレワターセを植え付けられ、スバルが知らぬままシャンプーを惨殺し戻れない所に陥らせてしまったのだと。
 例えば、予めシャンプーを潰してでも止めるべきと伝えておけば仮に惨殺する結果になったとしてもいくらかショックを軽減できたかもしれない。
 周辺をもう少し警戒しておけばそもそもソレワターセが植え付けられる事もなかったかもしれない。
 甘さを諫めれば、殺戮兵器となったとしても早々に心が壊れる事もなかっただろう。
 IFの話に意味は無い。だが、マッハキャリバーの甘さが最悪な結果を引き起こしたのだ。だからこそスバルは誰にも真意を知られず破滅の道を進むしか無かった。

 そして、目の前の佐倉杏子はその破滅の道を進もうとしている。
 今更となっては遅すぎる。だがまだその後悔があるならば――今度こそあの時出来なかった事をするのだ――相棒として


『Is it said that even such people's thought is betrayed!?(そんな人々の想いすら裏切るというのか!?)』


243 : X、解放の刻/パンドーラーの箱 ◆7pf62HiyTE :2014/04/05(土) 15:09:23 FvKuPTJM0


「ははっ……みんなバカだよ……お人好しすぎるよ……けどよ……魔女になったら全部無駄になっちまうんだぜ……あたしたちのやってきた事は最初から……」
「杏子ちゃん、君には少し話したと思うが……僕は1年ほど消えていた事があった」
「ああ、そういやそんな事……それがどうかしたのかよ?」
「実はその時、僕は不思議な体験をした……そう不思議な世界に行ったんだ……その世界でも僕はある男と仮面ライダーWとして戦っていた」
「おいおい、俺じゃねぇのかよ?」
「ああ君じゃない……その男の正体は1人のマンガ家……いや、萬画家の先生だった」
「なんでマンガ家がライダーやってるんだよ……ていうかどんなマンガ描いてたんだ?」
「その人は9人のサイボーグ戦士の戦いを描いた萬画を描いていた……もう何十年も前からね……」
「何十年も?」
「ああ……言ってしまえば何十年も戦い続けていたと言っても良い……だから、その人はその戦士達の戦いを終わらせる……つまり完結させようとしていたんだ」
「ちょっと待ってくれ……何十年も前ってことはその人もう結構な歳じゃ……」
「それ以前の話さ……その先生は既に死んでいた……そう、僕の行った世界はそういう死者が辿り着く世界だったというわけさ……ちなみにその世界には仮面ライダースカル、鳴海荘吉もいた」
「おやっさん、死んでもなお戦っていたんだな……」
「死んでも希望があるっていうのかよ……」
「僕が言いたいのはそれよりも先のことさ……確かに志し半ばにして先生はその戦いを終わらせる事は出来なかった……だが、彼の息子……その人が先生の遺志を継いでその物語をある形で発表した……」
「じゃあフィリップ、その9人のサイボーグ戦士達は……」
「ああ、彼等の戦いは終わったよ……そう、先生が与えようとした希望はその息子が引き継ぎ9人に希望を与えたんだ……
 そう、杏子ちゃん達魔法少女の戦いは決して無駄なんかじゃない……例え杏子ちゃんが散ってもその希望を引き継ぐ者が必ずいる……
 わかるだろう、君は姫矢准、そして東せつなから力を、その希望を引き継いだんだ、まさか君は彼等が死んだから彼等のした事が無駄だったと言うつもりかい……」
「いや……そんな事絶対に……絶対に無駄になんてしないよ……」
「だったら諦めるにはまだ早い、ここでソウルジェムを砕く事は簡単だ。だがそれをする事は彼等の願いすら無駄にしてしまう……それでもいいのかい?」
「いやだ……そんなのは……」
「そしてもう1つ……散っていった魔法少女も恐らく僕の行った世界で人々の希望を守る為に今も戦っていると僕は思う……だがそんな彼女が絶望を振りまく存在として戻ろうとしている……
 彼女達の生き様を泣かせる……それを君は許せるのか……?」
「許せねぇよ……マミやさやか達……人々を守る為に戦っていたあいつらの想いを踏みにじる事なんて……あいつらが何も判らずみんなを傷つける姿なんて見たくねぇよ……」
「そう……彼等を人々を泣かせる怪物にするわけにはならない……なら……」
「ああ……あたしは戦う……みんなから受け継いだ想いを無駄にしない為にも……だけど……」


 最早杏子にはソウルジェムを砕いてもらおうという意志は消えていた。
 だが、内心ではやはり不安が残る、戦いの果てに魔女になった時、今度は自分が仲間達を傷つける事になるからだ。
 それが何時かはわからない、遠い先かもしれないが次の瞬間にはそうなっているかもしれないのだ。
 早いか遅いかの違いはあれど最早それは不可避なのだ。


244 : X、解放の刻/パンドーラーの箱 ◆7pf62HiyTE :2014/04/05(土) 15:10:26 FvKuPTJM0


「ふっ……世話になったなフィリップ、マッハキャリバー……」


 そう口にしながら杏子へと向き直る。
 つい数分前に『杏子の支えになれるのは翔太郎しかいない』と言われておきながら結局2人に頼ってしまった。
 相変わらずの半人前だ、だが最後の締めだけは自身の手でやらなければならない。


「何も心配するな……魔女は俺が倒す……」
「翔太郎、それを言うなら『俺達』だよ」
「頼んどいてアレだけどわかってるのかよ……アレはマミやさやかだった奴だぜ……それを本気で」
「ああ……邪魔するのがそいつら自身だっていうならそいつらとも戦う……あいつらの本当の願いは俺達の胸の中にあるからな……」


 かつて、翔太郎の前に師である仮面ライダースカルこと鳴海荘吉が立ちふさがって来た事があった。
 自身の罪から一度は戦えなかった翔太郎だったが、フィリップからの言葉などから再起し、再度対峙した時には自身の中にある荘吉の教え、それを胸に戦うと明言した。
 そう、翔太郎にとって、例え相手がかつての師や友、仲間であっても、人々を守る為ならば彼等を倒す事にも迷いはない――


「はっ……あいつらに会ったことないくせに……」
「それに杏子……お前が魔女になったとしても何も心配はするな……
 お前が人々に絶望を振りまき泣かせる前に……俺がお前を殺してやる」
「なっ……本気か?」
「ああ……だから杏子、お前も諦めずに最後まで足掻いてやれ、偉そうにしているその美国の野郎に思い知らせてやれ」
「魔法少女だから女なんだけどね……それより翔太郎、それは仮面ライダーとしての言葉か?」
「いや、先輩達だったらもっと上手いこと言えるんだろうけどな……俺にはそれは無理だ……だからこれは仮面ライダーとしての言葉じゃねぇ……
 街を泣かせる存在から人々を守る、1人の探偵としての言葉だ……」
「ははっ……半人前のハーフボイルドのくせに……」


 そう言いながらも泣きながら嬉しそうに笑う杏子である。


「何時までも半人前でいるつもりもねぇし、心だけは常にハードボイルドだ……」


 ふっと優しい笑みを浮かべる翔太郎であった。


「どうやら纏まった様だね……それじゃそろそろ警察署に戻ろうか」
「そうだな。杏子、ちゃんとあいつらに事情を説明してやれよ。何処まで話すかにしろフォローはしてやるからな」
「あ、ああ……そのごめん……なんかまた迷惑かけちまって……」
「気にすんなそんな小さな事……」


 そんな中、フィリップが笑っている。


「何がおかしい?」
「いや、大した事じゃ無い、さっきの君の言葉……これが本当の『殺し文句』だと思うとね」

「「な゛!!」」


 フィリップの言おうとする意味に2人も気付いた様だ。


「ちちち違うぞフィリップ、俺にそんなつもりはねぇ!」
「ななな何言ってんだよ兄ちゃん、あたしだってそんな悪い趣味じゃねぇよ!」
「翔太郎……いくらモテないからって杏子ちゃんはまだ若すぎる……節操がなさ過ぎだとは思わないか?」
「ばばばバカ言ってんじゃねぇ、もう少しこう胸とか腰の辺りとか……」
『Is a schoolchild the highest too?(やっぱり小学生は最高ですか?)』
「小学生じゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「お前等人をおちょくってんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


245 : X、解放の刻/パンドーラーの箱 ◆7pf62HiyTE :2014/04/05(土) 15:11:05 FvKuPTJM0





第8節 1つの終わり、1つの始まり

 ――何はともあれ、俺達は警察署へと移動をしていた。道中で杏子にダークプリキュア改め月影なのはの事やガドルの襲来によりいつきが殺された事、そして新たなエターナルの事などを大まかに話した。
 月影なのはの事を受け入れてもらえるかは気がかりだったが――


「そもそもあたし直接会ったことねぇからなぁ……あいつらが良いって言うんだったらいいんじゃねぇか? 今更あたしが偉そうに言える口じゃねぇし」


 ――と、何時もの軽い調子で言った。その最中、俺は密かにフィリップに頼まれドライバーを装着している。
 この状態ならば俺とフィリップの意志は繋がっている、だが一体何を――


『翔太郎、ここから先の話はまだ誰にも言わないで欲しい』
『ああ、わざわざこうさせたってことはそういう事なんだろうが……』


 2人は声を出さず、心だけで話している。


『君の所に現れたのは誰だ? 加頭順か?』
『いや、サラマンダー男爵だ……』
『君の目から見て彼はどんな人物に見えた?』 
『人々を泣かす様な悪人、救いがたい程の奴には思えなかったぜ……』
『恐らく君の事だからきっとそうなんだろう……ところで、今の状況……奇妙だとは思わないか?』
『お見通しか……ああ、確かに目先のガドルやドウコクは強敵だが……数だけを見れば殺し合いに乗った奴が少ない気がする……正直、主催側にとっては良くない状況だと思うが……その割には動きが静かだ……』
『そう、それに条件付きとはいえ制限解除という強化の機会……少々僕達にとって都合の良い状況だ』
『何が言いたい?』
『翔太郎……さっき杏子ちゃんが話していた美国織莉子という人物についても検索出来ている……細かい説明は省くが彼女も彼女なりのやりかたで世界を守ろうとした魔法少女だ……』
『ん、じゃあなんでそいつがあの連中に従って……ちょっと待て……』
『気付いた様だね、そう、主催の仲間である彼女の詳細は簡単に調べる事が出来ている』
『あの連中……何考えているんだ? 仲間の情報を明かして……』
『そもそも他世界にわたって検索出来る事自体が異常なんだ、普通はそんな事はあり得ないし、閲覧範囲を弄る事もまずあり得ない』
『でもよ、確か若菜姫がエクストリームの力を得た時はフィリップよりも強い権限あっただろ』
『原理自体は若菜姉さんと同じだと考えて良い……だが重要なのはそれが無数の世界の範囲まで広がっているという事だ。
 纏めよう、連中は無数の世界の地球の記憶……いや言い換えれば『無限の記憶』にアクセスする力を持っている』
『ちょっと待て、それが本当だとしたら……』
『ああ、連中は途方も無い力を持っている。先程それが解放されたといっても恐らくはごく一部、肝心要な部分だけは何も閲覧出来ないと考えて良い』
『その言い方じゃ美国は別に重要じゃねぇって事か?』
『勿論そう見せかけたフェイクという可能性もなくはない。だが恐らく目に見える主催側、その殆どは本当の敵とは言えないと考えて良い……』
『本当の敵? 待てよ、それじゃ加頭も男爵もニードルやゴバット、それに美国は全員そうじゃねぇって事か? ていうか本当に何が言いたい?』
『落ち着いてくれ、これはまだ誰にも明かせない事なんだ……それともう1つ……24時を過ぎたら現れる2体の魔女……』
『確かさやかとマミの魂が変貌した奴だよな……』
『だが2人は既にこのデスゲームから退場している。自我の有無を考慮に入れなければ24時間経って敗者復活というのはゲームとしては余りにも不公平だと思わないか?』
『そりゃ……』
『何故24時間というタイムラグが必要か……恐らくこのゲームが次の段階に移行する事を意味しているんじゃないのか?』
『次の段階……まさか……主催陣との戦いか?』
『そうだ、魔女は主催側が参加者達に差し向ける刺客、つまり美樹さやかと巴マミは既に連中の手駒という事だ。そして21時を過ぎてから徐々に解禁される制限、これは殺し合いを勝ち抜くためのものではなく主催戦を見据えてのもの……』
『ちょっと待て、それじゃ前提が間違っていたということか?
 俺達は最後の1人になるまで殺し合う中、主催側はゲームを円滑に進めるべく妨害を行う、ではなく、
 俺達と主催陣の2陣営が戦う中、最後の1人になろうとする者は妨害する、
 こういう構図になっているというわけか?』
『状況はそういう風に移行している様に見受けられる』


246 : X、解放の刻/パンドーラーの箱 ◆7pf62HiyTE :2014/04/05(土) 15:11:48 FvKuPTJM0
『けどそれおかしいだろ、主催側にしてみりゃさっさと首輪爆破すれば済む話だろ、その構図じゃ主催連中も参加者……そうか、そういう事か……
 主催連中もゲームの参加者というわけか……それじゃフィリップの言った本当の敵というのは……』
『そう、加頭達主催陣、そして僕達参加者をそれぞれの陣営に配置した真の黒幕の事だ……』
『なるほどな……確かにそれなら主催連中があそこまでバラバラなのも頷ける……じゃあその真の黒幕は誰だ?』
『それはまだわからない……ずっと裏で潜んでいるか、それとも主催陣、あるいは参加者の中に潜んでいるか……』
『おいおい、参加者の中にいる可能性なんてあるのか?』
『可能性は低いだろうが0じゃない。そもそもミュージアムの幹部、つまりは僕の家族だって表向きは風都の一住民に過ぎないんだ、疑えというつもりはないがありとあらゆる可能性は考えておくべきだ……
 もっとも、現状では未だ姿を見せていないという可能性が一番高いけどね……地球の本棚を解放したという事はその気になれば主催連中だっていくらでも調べられる。だが、そうそう簡単に足を掴ませるマネもしないだろう?』
『まぁそうだろうな……』
『それと気をつけた方が良い……地球の本棚の管理権限が牛耳られているという事は、地球の本棚は監視されていると考えて良い。通常の参加者についての情報は問題無いだろうが、このゲームの根幹に関わる部分には手を出せないと考えて良い』
『つまり、あまりフィリップの検索を当てにしすぎる事も出来ないというわけか……けど美国の事がわかったのはなんでだ?』
『簡単さ。暁美ほむらが彼女と面識があったからさ。つまり本棚を使わなくても情報を得られるという事さ、その気になれば調べられる事を伏せても仕方ないだろう』
『俺が地道に足で調べるか、フィリップの検索で一気に見つけるか、その程度の違いって事か……』
『ともかくだ、僕達が本当の意味でこの戦いに勝つには真の黒幕が持つ『無限の記憶』をどうにかしなければならない……』
『そうか、俺達の全てがわかるという事はその対処法も全てわかるという事だからな……』
『いや、それ以上に……それをどうにかできなければこのゲームは永遠に繰り返される事になる』
『な……どういう事だそりゃ!?』
『無論、同じゲームとは限らない……だが、真の黒幕は『無限の記憶』を手にしそれを悪用してこのゲームを催した……ここで奴を倒しそびれ逃げられれば……』
『再び悪用され繰り返す……』
『それも同じミスはしないように対策を取った上で……だからこそ『無限の記憶』、これは確実に奴等から取り戻さなければならない』
『……なぁ、その推測が間違っているという可能性は? 説明を聞いても突拍子もなさ過ぎるんだが……』
『根本的な所で間違えている可能性は否定しない、だが地球の本棚に影響を与えている存在、つまり『無限の記憶』にアクセスできる存在がある事だけはまず間違い無い。その脅威は僕達が一番わかるだろう?』
『そうだな……』
『とはいえ、最優先にやるべき事はそれじゃあない。現状でもまだ殺し合いに乗った人物は多い、1つずつ対処していくしかない』
『ああ……仲間達を集め、ガドルにドウコクを倒し、そして天道あかねを止める、それがまずやるべき事だな』
『その通りだ、だが気をつけてくれ……恐らく主催陣の差し向ける刺客は魔女だけじゃない……それら全てを切り抜け無ければ僕達に勝利は無い……』
『わかったぜフィリップ……頼りにさせて貰うぜ、相棒!』
『その意気だ……翔太郎』


 そんな2人を余所に、


「おーい、何やってんだ、早く戻るぞ!!」
「わかってる、すぐ行くよ」


 ――相棒は取り戻した……だが、それは戦いの終わりでは無く新たな始まりに過ぎなかった。
 フィリップの推測が正しいと言う保証は無い。が、状況が悪化の一途を辿っているのは確実だ
 それでも俺達は足を止める事は無い、散っていった者達が託したものを受け継いでいるのだから。
 彼等の想い、あるいは願いを胸に、必ずこの戦いを終わらせると。
 フィリップの出会ったマンガ家が志半ばで成し遂げられなかったサイボーグ戦士達の戦いの完結を、その息子が果たした様に――


247 : X、解放の刻/パンドーラーの箱 ◆7pf62HiyTE :2014/04/05(土) 15:12:39 FvKuPTJM0





――そして後2分弱で22時になろうと言うとき、俺達は警察署前に辿り着いていた――


「……なんだこりゃ」
「あ、沖の兄ちゃんから頼まれたんだっけ。チェックなんとかって……ていうか出る時気付かなかったのかよ」
「あーそういや何か違和感は覚えたが気付かなかったな……」
「それでよく探偵出来るな……」
「ふむ、実に興味深い」
「……って杏子テメェ確か店から持ち逃げして真っ先に帰ってきただろうが、持ってきたのはいつきと孤門だろ」
「いいじゃん別に無事にここまで運べたんだし、確か禁止エリアにあったから……」
「というか、そういう大事な事は先に言え……」
「それにしても、兄ちゃん達が別れた奴ら大丈夫か……」
「大丈夫だろう、もう月影なのはは人々を泣かせる様な奴じゃ……」
「いや、さっきも言ったけどあたしもとやかく言うつもりはないって……それよりも……Pちゃん」
「あ゛」
「流石にPちゃんと一緒にさせたのはまずかったんじゃないの……なんか色々危なそうだし……流石にああいう小動物はもう信用が……」
「仕方ないね」
「そうだな……アイツにエターナルを託して良かったのか……」
『Reasonable(ごもっとも)』





【1日目 夜中】
【F-9/警察署前】

【左翔太郎@仮面ライダーW】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(大)、胸骨を骨折(身体を折り曲げると痛みます・応急処置済)、上半身に無数の痣(応急処置済)、照井と霧彦の死に対する悲しみと怒り
[装備]:ダブルドライバー@仮面ライダーW、T2ガイアメモリ(アイスエイジ)@仮面ライダーW、犬捕獲用の拳銃@超光戦士シャンゼリオン、散華斑痕刀@侍戦隊シンケンジャー、マッハキャリバー(待機状態・破損有(使用可能な程度))@魔法少女リリカルなのはシリーズ、リボルバーナックル(両手・収納中)@魔法少女リリカルなのはシリーズ
[道具]:支給品一式、ガイアメモリ(ジョーカー、メタル、トリガー)、ナスカメモリ(レベル3まで進化、使用自体は可能(但し必ずしも3に到達するわけではない))@仮面ライダーW、ガイアドライバー(フィルター機能破損、使用には問題なし) 、少々のお菓子
[思考]
基本:殺し合いを止め主催陣を打倒する。
0:杏子達と共に警察署に戻り、色々事情を説明する。
1:ガドル、ドウコクは絶対にに倒してみせる。あかねの暴走も止める。
2:仲間を集める。
3:出来るなら杏子を救いたい。もし彼女が魔女になる時は必ず殺す。
4:現れる2体の魔女は必ず倒す。
[備考]
※参戦時期はTV本編終了後です。
※他世界の情報についてある程度知りました。
(何をどの程度知ったかは後続の書き手さんに任せます)
※魔法少女の真実(魔女化)を知りました。
※※第三回放送指定の制限解除を受けました。彼の制限はフィリップ、ファングメモリ、エクストリームメモリの解放です。これによりファングジョーカー、サイクロンジョーカーエクストリームへの変身が可能となりました。


【フィリップ@仮面ライダーW】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:ガイアメモリ(サイクロン、ヒート、ルナ、ファング)@仮面ライダーW、エクストリームメモリ@仮面ライダーW
[思考]
基本:殺し合いを止め主催陣を打倒する。
0:杏子達と共に警察署に戻り、色々事情を説明する。
1:翔太郎及び仲間達のサポートをする。
[備考]
※参戦時期はTV本編終了後です。
※検索によりまどマギ世界(おりマギ含む)の事を把握しました。
※参加者では無く支給品扱いですが首輪を装着しています。


248 : X、解放の刻/パンドーラーの箱 ◆7pf62HiyTE :2014/04/05(土) 15:13:26 FvKuPTJM0


【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(大)、ソウルジェムの濁り(小)、腹部・胸部に赤い斬り痕(出血などはしていません)、ユーノとフェイトを見捨てた事に対して複雑な感情、マミの死への怒り、せつなの死への悲しみ、ネクサスの光継承、ドウコクへの怒り、真実を知ったことによるショック(大分解消)。
[装備]:ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ、エボルトラスター@ウルトラマンネクサス、ブラストショット@ウルトラマンネクサス
[道具]:基本支給品一式×3(杏子、せつな、姫矢)、リンクルン(パッション)@フレッシュプリキュア!、乱馬の左腕、ランダム支給品0〜1(せつな) 、美希からのシュークリーム
[思考]
基本:姫矢の力を継ぎ、魔女になる瞬間まで翔太郎とともに人の助けになる。
1:翔太郎達と共に警察署に戻り、色々事情を説明する。但し、魔法少女の真実についてはどこまで話せば良いか……
[備考]
※参戦時期は6話終了後です。
※首輪は首にではなくソウルジェムに巻かれています。
※左翔太郎、フェイト・テスタロッサ、ユーノ・スクライアの姿を、かつての自分自身と被らせています。
※殺し合いの裏にキュゥべえがいる可能性を考えています。
※アカルンに認められました。プリキュアへの変身はできるかわかりませんが、少なくとも瞬間移動は使えるようです。
※瞬間移動は、1人の限界が1キロ以内です。2人だとその半分、3人だと1/3…と減少します(参加者以外は数に入りません)。短距離での連続移動は問題ありませんが、長距離での連続移動はだんだん距離が短くなります。
※彼女のジュネッスは、パッションレッドのジュネッスです。技はほぼ姫矢のジュネッスと変わらず、ジュネッスキックを応用した一人ジョーカーエクストリームなどを自力で学習しています。
※第三回放送指定のボーナスにより、魔女化の真実について知りました。


【特記事項】
※G-9にあったチェックマシン@仮面ライダーSPIRITSは163話の段階(杏子達の買い出し)で警察署前に移動させました。
※警察署のとある部屋(170話での杏子が織莉子と遭遇した部屋)に杏子の書き置きが残されています。具体的な内容は本編を参照。


【フィリップと翔太郎の推測】
※このデスゲームは参加者同士の殺し合いから、主催陣対参加者の構図に以降しつつある。
※24時以降に出現する魔女、21時以降解禁される制限は主催戦を見据えてのもの。
※現在表向きに現れている主催陣(加頭、サラマンダー男爵、ニードル、ゴバット、織莉子)は全員、本当の敵ではない可能性が高い。
※本当の敵(黒幕)は現在も現れていない可能性が高い、但し上述の主催陣あるいは参加者の中に潜んでいる可能性も低いがある。
※主催側は全ての世界の地球の記憶(『無限の記憶』と呼称)とアクセスでき、地球の本棚に干渉できる『存在』を手にしている。
※その為、その『存在』を奪取しなければ勝てる可能性は限りなく低く、仮にその『存在』が奪われたまま逃げられた場合、似た事が繰り返される可能性が高い。
※地球の本棚は監視されている可能性が高く、核心に触れる内容の検索は危険、但し現状現れている主催者を含めた参加者については問題無い可能性が高い。
※以上の内容は現時点での推測である為、間違っている可能性はある。但し、『無限の記憶』にアクセスできる『存在』だけはほぼ確実。
※以上の内容は下手に明かす事は危険故、現在の段階ではまだ他の参加者に明かすべきではない。





『う゛……また悪寒が……』
『大丈夫、良牙さん……?』
『ああ……それにしても……なのは、お前の声聞いているとなびき思い出すんだが……』
『そういえば私に支給されたパラシュートにもその名前が……って『なびき』って誰???』
『良牙さんの『お友達』のあかねさんのお姉さんです』
『ううっ……』
『どうして泣いているの……?』


249 : ◆7pf62HiyTE :2014/04/05(土) 15:15:03 FvKuPTJM0
投下完了しました。何か問題点や疑問点等があれば指摘の方お願いします。

wikiへの収録に関してはストーリーの区切りの関係で2分割収録でお願いします。

>>224-235(第2,6,1,3,4節)が『X、解放の刻/楽園からの追放者』
>>236-248(第5,7,8節)が『X、解放の刻/パンドーラーの箱』

以上の通りとなります。


250 : 名無しさん :2014/04/05(土) 17:15:08 TR.FWUvs0
投下乙です!
杏子はどうなるかと思いきや、翔太郎達とマッハキャリバーのおかげでどうにか立ち直ってくれましたか。
やっぱり、この二人はいいコンビですね。この二人は早速、考案を進めてくれましたが今後の活躍も楽しみです。
それと、サイボーグ009のネタには思わずニヤリときました。


251 : 名無しさん :2014/04/05(土) 19:16:33 TVum0KfE0
投下乙です

暁の行動が石堀の打算をどう狂わせるだろうか
確かにラブに最低限の事を伝える事は出来たが…
それとは別に暁とラブはデートできるかどうかも気になる

あんこちゃんがあのまま消えると思ったらばったりと再会できたのは不幸中の幸い
さすがに納得は難しいと思ったらマッハキャリバーがやってくれたぜっ
もしかしたら悪い意味で長引くと思ったがここであんこちゃんを引き留めれたのは大きいぜ
このまだ打開まで進んで欲しいぜ

すまん、なんでここでサイボーグ009のネタが出るのか判らないんだが


252 : 名無しさん :2014/04/05(土) 20:15:51 ebIpUqygO
投下乙です。

杏子が思いとどまってくれて良かった。
「死んで終わり」なんて、まっぴらだ!

黒幕視点だと、これは主催者チームと参加者チームのチーム戦かもしれないのか。
どちらかが全滅したら終わりなのか、それとも?

インキュベーター、ユーノ、Pちゃん。
もう小動物は信じられない!


253 : 名無しさん :2014/04/05(土) 23:56:15 9U0o4rzI0
投下乙。
中学生とフラグを立てつつある私立探偵ェ…
照井さん一条さんこっちです

そして疑惑の広がるPちゃんこと良牙w
でもこいつ、Pちゃんのこと抜きにしても、横恋慕&二股とかやらかしてるからなあ
女性陣に知られたら顰蹙ものかもしれない…w


254 : 名無しさん :2014/04/07(月) 20:43:49 lIWBF5P60
いまさらですが、黒岩の最期
>彼女の笑顔が、最後に、彼女の瞼の裏にあったのかもしれない。
これは「彼女の笑顔が、最後に、”彼”の瞼の裏にあったのかもしれない。」でいいのかな?


255 : ◆gry038wOvE :2014/04/07(月) 23:47:46 5IJNqrkg0
>>254
そうですね。修正しておきます。

ただいまより、次の投下を行います。


256 : ルシアン・ヒルの上で ◆gry038wOvE :2014/04/07(月) 23:57:58 5IJNqrkg0


 結城丈二、涼邑零の二名は21時まで周囲の探索をする事にしていた。
 襲撃された場合の事を考えて二人馬織の行動を主としているが、現状でこの村エリアには誰も来る気配がなかった。無造作に置かれた遺体に手をかけた様子がなかったのも、この村エリアの人気のなさを物語っている。
 おそらく志葉屋敷の持ち主と思しき志葉丈瑠ももうこの世になく、いくつかの戦いの痕らしきものも既に乾いた様子を見せていたので、単純に村エリアの不人気よりは市街地エリアの利便性に惹かれた人間が多いのだろう。
 また、とうに過ぎているとはいえ、十八時には市街地エリアに向かう約束があった。それが周囲に伝わった可能性も高い。現状では禁止エリアの多さで不便さもあるだろうが、施設の多い市街地エリアに向かうのだろうか。
 もともと、市街地エリアに一度足を運んでいた結城丈二と涼邑零であったが、その時は様々な理由込で、未確認生命体対策本部の資料も得られなかった。

 しかし、両名とも、村エリアを散策する中で、このエリアならではの特色のようなものにはうっすらと気づき始めていた。

「どうやら、便利な道具が多様に取り揃えられているようだな……」

 支給品外のアイテムが髄所に隠されているのである。
 このエリアには、二人も知らないが、以前はビートチェイサー2000やサイクロン号といった仮面ライダーのマシンが配置されていた。それと同様に、まだこの村には支給品として主催側から送られた以外の隠しアイテムが豊富に取り揃えられているのである。民家に稀に隠されている小物のようなアイテムもあれば、かなり堂々と置いてあるアイテムもある。
 主催陣としても、村エリアと市街地エリアの二か所では、市街地に人が集中する事を予測していたのだろう。村エリア側にこうしたアイテムを配置し、ここの特色を作る形を取ったのだ。

 これまでも、まあ少しばかり小物アイテムを手に入れている。
 たとえば、「AtoZ・スロット専用T2ガイアメモリ」と書かれたガイアメモリのケースだ。中にはもちろん、ぴったり納まる形でガイアメモリが入っているのだ。これは、このしばらくの間で四つも手に入っている。いずれも探索は難しいが、注意深く探すと隠されていた。

 民家のクッションの中に硬い感触を感じたら、その中に一つ。結城丈二が、まるで運命に惹かれるようにして発見した「Rocket(ロケット)」のガイアメモリ。
 机の引き出しの中……ではなく、机の引き出しの二重底の下。「Accel(アクセル)」のガイアメモリ。
 木彫りの熊の置物の中。「Unicorn(ユニコーン)」のガイアメモリ。
 一番わかりやすかったのは、道にあった看板の裏。「Queen(クイーン)」のガイアメモリ。
 そんなこんなで、宝探しのように見つけたガイアメモリの数が四本である。AtoZという事は、もしかするとAからZまでのガイアメモリがこの場所に隠されているのかもしれないが、時間がないのでそれに関しては他の専門家に語る事にした。
 このT2ガイアメモリは、警察署で出会った──もう死んでしまった泉京水と、その知り合いの大道克己がもともと探していたものらしいが、敵の仮面ライダーたるダブルもおそらくは何か知っているだろう。
 ロケットとユニコーンが結城、アクセルとクイーンが零のデイパックの中に押し込まれる形になったが、今後、それを必要とする人間に会うまでは全く不要なものだろう。

 更に、今彼らの前には、もう少し大きめのアイテムもあった。

「シトロエン2CVだな。フランスの車だ」
「なんか詳しいな……」
「マシンには凝っていてね」

 今彼らが目にしているのは、緑の車──シトロエン2CVという小型の自動車である。一般道をこの車が走っているのはあまり見ない。なかなか古いタイプの車のようだ。実を言うと、彼らが合流した涼村暁という男の愛車なのだが、そんな細かい情報まで彼らは得ていないので、この車が彼の所持品である事など誰も知る由もない。
 ちなみに結城丈二がこれを発見したのはB-1エリア沿岸部であった。誰かが手を付けた様子はなく、鍵は挿しっぱなしであった。ずっとこの潮風に晒されて放置されていたのだろうか。

「でも、時空魔法陣があれば、こんなものいらないしなぁ……」
「確かに惜しいが、まあ見たところ、しっかりした整備もされていないようだ。使う事になるとすれば、また後だろうな」
「あーあ、もっと早く見つけられればよかったのに」

 零としては、これまでの面倒な道のりを考えれば、少し惜しい道具の一つであったが、今となってはソルテッカマンに時空魔法陣まで、もう少し最先端かつハイブリッドな道具が手に入っている。


257 : ルシアン・ヒルの上で ◆gry038wOvE :2014/04/08(火) 00:05:13 WwdulAGs0
 まだ村には移動手段となる乗り物があるかもしれないが、そろそろ時間も近い。時空魔法陣の管理権限が移るというのなら、なるべく早めにそれを使ってみたいものだった。







 午後九時。
 この時刻になると、もう人気のなさははっきりとわかってくる。ゴーストタウン同然のこの民家の群れを見ている時の胸の寂しさは、いっそう強くなっていた。
 彼らはまた、翠屋の入り口にいる。ソルテッカマンがどこか遠くを見ているようだった。

『こんばんは。仮面ライダー、それに魔戒騎士のお二方』

 彼らの目の前にいるのは、ホームレスのような小汚い風体の男。めがねも、とんがり頭も、無精ひげも、白衣も──忘れるはずがない。薄気味悪い笑みを浮かべているこの無精な怪人の表情を見て、零と結城は顔を顰める。
 何も言わずに一歩前に出て刀の柄を握った零を、結城が右手を前に出して制した。

「……ニードルだな。その姿はホログラムか?」

 結城がそんな言葉を投げかける。彼は、第二回放送を行ったニードルである。無論、倒すべき相手だ。零も、ニードルの姿が幻影である事くらいわかっていた。だが、万が一の可能性に備えて構えたに過ぎない。攻撃の意志はさほど強くはなかった。

『ええ、察しが良いようで。流石は、首輪を外した功労者……。ザボーガーというネーミングは悪くないと思いますよ』

 ニードルは下品に笑っていた。結城が額に汗を浮かべる。どうやら、何度も繰り返されると恥ずかしいらしい。
 零は、そんな結城丈二の様子を見て、どことなく安堵を浮かべた。
 ニードルは続けた。

『ともかく、まあこれからまたヤボ用があるので、手短に話します。あなたたちが知ってのとおり、時空魔法陣の簡易的な管理システムをこちらの喫茶店の奥、二階の一室に転送しました。機械によって時空魔法陣を操る特殊装置です』
「その使い方を教えてくれるんだな」
『はい。これまでは人数も多かったので、こうした強力なアドバンテージはあってはなりませんでしたが、もうそんなしがらみに囚われなくとも良い頃合いでしょう。……現在の時空魔法陣の使用条件は、知ってのとおり、二人以上殺害した参加者の移動、翠屋・警察署間の移動です。本来なら一度使えば消滅する仕組みになっていましたが、残念ながら現在に至るまで利用した人間は皆無……これは甲斐のない話でしょう?』
「……いらないからくれるっていうのか。なら都合が良い」

 零は、ニードルの物言いに腹を立てながらも、あくまでニヒルに返した。顔は笑っていない。

『あなたたちのように、普通に移動していても何時間も誰とも合流できない方がたまにいるんですよ。人口密度が更に低くなった今、はぐれ者が他の参加者に出会える可能性はいっそう減ります。ゲームそのものが成り立たなくなる……わかりますね?』

 ゲームを面白く進めるには、やはり時空魔法陣のような道具が必要だとわかったのだろう。主催側も、その解禁をあまり問題とは感じていなかったようである。
 最初からゲームの一部に組み込んでいたかのように、その準備や設備が万端であるところを見ると、やはり誰かしらがこうして管理権限を受けられるようになっていたのだろう。
 その条件が果たして、首輪解析に関わるものかどうかはわからないが。

『管理システムは、時空魔法陣の前に転送しました。ただ、現在も時空魔法陣は二つの施設を繋ぐ事はできますが、その管理はこの翠屋にある装置を使わなければできません。簡単に言えば、翠屋と別の施設を繋ぐ装置という事です』
「使い方は?」
『あなたたちの持っている地図の改訂版が、画面に表示されています。それを利用してください。タッチパネルを搭載していますので、行きたい施設をタッチする事で時空魔法陣の移動先を変更する事ができます。ただし、破壊された施設には発動する事ができませんので、ご注意を……。他にも多様な機能を取り揃えていますが、管理者が著しく優位になるようなものはありません。……私が伝えるべき事は以上です』

 ニードルの説明は殆ど終了したようだった。実に手軽な説明だ。
 ニードルも背を向けて、今からどこかへ消えようとしていた。
 しかし──


258 : ルシアン・ヒルの上で ◆gry038wOvE :2014/04/08(火) 00:05:47 WwdulAGs0

「待て、ニードル。首輪が外れたというのに随分と無反応だな」

 結城が声をかけて、ニードルが消えるのをやめた。
 いや、消えかかった体で結城の方を見ていた。──一体、どういう仕組みになっているのかはわからない。ただ、そんな彼の表情からは下卑た笑いも少し消えている。語調を強めて、彼は言う。

『はい?』
「この首輪は、俺たち……参加者全員を縛るために必要な道具の一つだ。何故、この首輪を外させて、ろくに触れもしないんだ?」

 単純にそれは、結城丈二の疑問だった。
 ニードルは、殆ど頭を悩ます事もなく、すぐに返答した。

『……そういう段階に来ているという事ですよ。いずれにせよ、あなたたちはこの島から外へは出られない。外には何もありませんし、どこへも行けません。強いていれば、そう、禁止エリアが使用できなくなるだけでしょうか。とにかく、最後の一人が決まるまで、あなたたちは囚われたまま……聞きたい事はそれだけですか?』

 結城は何か考えているように黙った。ニードルは、それを見て、安心したように笑って、遂に完全にどこかへ消えた。零は、そんな様子を茫然と見つめていた。
 二十一時三十分ごろ、ニードルは別の場所に現れる事になったが、それはこの少し後の話である。







 ケーキを振る舞う喫茶店の奥には、おそらく店主自身の居住地となっている民家のような家がある。そして、その子供部屋──そこには、全く不釣り合いな機械と魔法陣があった。
 時空魔法陣の制御装置。大きさは、この近くにあるものでいうならレジカウンターほどであろうか。青い装置の上部は、液晶のスクリーンがあった。

『タッチで起動ください。ユーザー名:結城丈二』

 画面には管理者名が記入されている。そのユーザー名は、結城丈二だ。真っ青で中央に文字だけが記載されている画面に、誰かがタッチしなければ起動しないらしい。

「どれ……」

 零が横から、ひょいと現れてコンピュータをタッチする。コンピュータには慣れていないのか、手つきは雑だ。
 結果は、当然の如く無反応である。

「…………反応しないよ、コレ。壊れてるんじゃないか」
「涼邑……お前は管理対象者じゃないだろう」

 結城が画面に触れると、今度はしっかりと起動する。
 どうやら、結城丈二以外はタッチできないらしい。既に指紋も何もない鋼鉄の腕だが、手袋越しにタッチは可能だったので、指紋以外のどこかから送られてくる情報でそれを管理しているようだ。
 そこから先の画面は、パソコンのデスクトップのようになっており、その中にはいくつかのアイコンが存在する。そのうち、『管理システム』を結城がタッチした。
 すると、確かにマップをそのまま張り付けたような画面になった。

「俺たちの持っているものと、ほぼ同じだな……」

 紙製の島内マップに比べると、いささかハイテクで綺麗な画質である。エリア区分もしっかりなされており、殆どは手持ちのマップと同じものだが、やはり黄色い○で記された施設の一部は破壊されていた。
 教会、風都タワー……この二つの施設が既に跡形もないらしい。あのタワーを破壊するとなると、相当なエネルギー量が必要であるのは明白。やはり、超人だらけの殺し合いであるのは間違いないようだ。
 逆に、新たに追加されている施設も存在する。クリスタルステーションや忘却の海レーテといった施設が随所に追加されており、紙製のマップでは不可能なエリアマップの更新が可能となっているのである。島外で、海を越えた位置にぽつんと佇んでいる施設が点々としていた。
 マップの左側には、『KILL SCORE : OVER ≪2≫』、『MAX : 1』との表示がある。これは殺害人数、利用人数の定員及び利用回数のようで、結城はすぐにこれを『OVER ≪0≫』へと変更した。『UNDER ≪〜≫』にする事も可能だが、これが原因で、悪人のみを葬ってきた仮面ライダーのような人間が利用できなくなる事は忍びない話である。


259 : ルシアン・ヒルの上で ◆gry038wOvE :2014/04/08(火) 00:06:11 WwdulAGs0
 他の人間の状況がわからないので、無差別にやるしかない。仮にマーダーの良いように利用されるかもしれないにしても、対主催の結束を深めるために利用した方が使用しやすいだろう。
 上限人数も『MAX : 1』から『∞』に変更する。まるで、最初からその二通りしかないようだった。

 ここでおおよそ、時空魔法陣に関する現状で厄介な設定は解除された。ここからどうするかが議論の種である。

「……さて、どうする」

 どこへ行くか、という話はまず零が投げかけた。
 これからは、もうタッチで簡単に行きたい施設に行ける事になる。
 結城は、それを考えているようで、親指を顎に当てていた。

「……現在は警察署に繋がっているらしいな」
「そのまま警察署に行くのか?」
「確かに、仲間は街に集まるようになっている。俺たちが行く場所も自然と警察署になるはず、だが……」

 そう口にしながらも、結城は熟考しているようで、どこか言葉が消えかかったり、再び出てきたりするような形になっていた。
 零がそんな姿を不審がる。

「現状、この時空魔法陣は人を殺していなければ使われない移動手段であると認識されている。もし、警察署側にいる人間も……警戒しているんじゃないか?」
「確かに。警戒されているかもしれない……」

 結城と零は、この場所に現れた時空魔法陣を放置していたが、もしあの時空魔法陣の出現を他の参加者が察知していたら、普通は罠を張るなどの対策を練る。それがどんな罠であるか……にもよるだろう。
 たとえば、そこを見張っている人間がいるとして、二名以上の殺害を行った結城に対して攻撃をしかける可能性だって否めない。結城が来るとするのなら、時空魔法陣のある場所ではなく、通常は入口から入ってくると思うに決まっている。
 第一、市街地エリアで人が集まっているのが警察署とは限らない現状では、どこに向かっていいのかも難しい問題だ。

「個人的には、まず新しく追加された施設が気になるところだな」

 余計な森や海のエリアには、新たに追加された施設があるようだ。
 そこならば、おそらく現状では誰もいないと推測される。

「……移動もいいが、その前に他のアイコンも見てみるか。このコンピュータに関してある程度調査してからにしよう」

 時空魔法陣を利用するのも良いが、まずは他のアイコンの内容も気になった。
 結城がタッチしたのは、『ゲーム』というアイコンだった。こんな時にゲームか、と思うかもしれないが、彼らが考えていたゲームとは、テレビゲームでもボードゲームでもない。彼らにとって、その言葉が想起させるのは、主催陣から見たこの殺し合いの事であった。
 その情報を得られると思ってタッチしたのだが、やはり都合よくはいかず、内容は想定した物とは全く違った。

『AtoZのガイアメモリを探せ! 村エリアにはマキシマムスロットやドライバーと互換性のあるT2ガイアメモリが隠されているぞ! 細かく調べてみよう(※このガイアメモリは制限下ではドーパントへの変身には使用できません。ご了承ください)』

 どうやら、先ほど結城や零が見つけたガイアメモリの事らしいのである。
 これを搭載したのは、おそらく加頭やサラマンダー男爵やニードルではなく、あのテンションの高いゴハットという男に違いない、と二人は確信する。もっと他に主催者にあんな性格の人間がいる可能性も否めないが、現状把握している人間ではあるようだ。
 とにかく、スロットというのが、マキシマムスロットという物やドライバーと呼ばれる何かに関わるものであるのはわかった。

「なるほど……」

 村エリアは、人によっては充分に役に立つ場所であるようだ。ただ、そのマキシマムスロットともドライバーとも無縁の彼らは、そんなゲームに付き合う暇はない。
 ダブルドライバーという道具の存在は既に説明書によって示唆されているが、そこがやはり関連してくるだろうか。どうやら持ち主とは浅からぬ縁で結ばれているようである。


260 : ルシアン・ヒルの上で ◆gry038wOvE :2014/04/08(火) 00:06:38 WwdulAGs0

「他には?」
「施設紹介か……各施設がどんな機能を持っているのかが書いてある」

 『施設紹介』は、「志葉屋敷」や「冴島邸」がどんな施設なのかを写真付きで簡潔に示していた。数行に渡るものもあれば、一行に満たない説明もある。
 敷地の面積などは書かれていないが、画像から何となく推察する事ができる。

「風都タワーの大きさは予想を上回るな……。これを倒壊させたとなると、やはり只者ではなさそうだ」

 基本的に、破壊、倒壊状態にある施設はある程度大型のものばかりであった。
 それが破壊されているという事は、相当なエネルギーを発散する戦いが行われたという可能性が高い。
 ともかく、現状無事である中学校や警察署は魔の手に晒されていない可能性が高く、比較的行きやすい場所であるのは明白だった。
 ただし、やはりもう一つ気がかりな沿岸施設なども行ってみたいところであった。

「そうだ、新施設を利用しよう」

 結城丈二が提案する。施設紹介をざっと見たところで判断したようだ。

「街エリアの近く、G−10の海上に現れた施設……鳴海探偵事務所。ここならば、殺し合いに乗った人間が現れる事もないし、街エリア内だ」

 画像上では、『かもめビリヤード』と書かれた看板がある。
 問題は、その内蔵メカニズムの類であった。この中には、地下ガレージが存在し、そこにリボルギャリーやハードボイルダーなどといったメカニックがあるらしいのだ。
 また、本土と離れ施設は、簡易的に細い道路が開通されている模様である。

「ここに向かおう」
「……ああ。わかった」

 結城は、再度『管理システム』をタッチし、行先をG−10エリアの『鳴海探偵事務所』に設定する。
 設定反映までにかかる時間を利用し、零は結城の協力を得てソルテッカマンを装着する。
 時空魔法陣が発生しているのは翠屋の上空。パワードスーツであるソルテッカマンを利用し、零を背中に乗せてソルテッカマンを飛行させようというのだ。
 準備が整った二人は、鳴海探偵事務所への移動を急いだ。


261 : ルシアン・ヒルの上で ◆gry038wOvE :2014/04/08(火) 00:06:54 WwdulAGs0



【一日目/夜中】
【C-1/翠屋前】

【結城丈二@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:健康、首輪解除
[装備]:ライダーマンヘルメット、カセットアーム
[道具]:支給品一式、カセットアーム用アタッチメント六本(パワーアーム、マシンガンアーム、ロープアーム、オペレーションアーム、ドリルアーム、ネットアーム) 、首輪のパーツ(カバーや制限装置、各コードなど(パンスト太郎、三影英介、園咲冴子、結城丈二、涼邑零))、首輪の構造を描いたA4用紙数枚(一部の結城の考察が書いてあるかもしれません)、支給品外T2ガイアメモリ(ロケット、ユニコーン)
[零の道具](ソルテッカマン装着中の零が持てないために持ってあげてます):支給品一式、スーパーヒーローセット(ヒーローマニュアル、30話での暁の服装セット)@超光戦士シャンゼリオン、薄皮太夫の三味線@侍戦隊シンケンジャー、速水の首輪、調達した工具(解除には使えそうもありません)、支給品外T2ガイアメモリ(アクセル、クイーン)
[思考]
基本:この殺し合いを止め、加頭を倒す。
0:時空魔法陣を利用し、G−10鳴海探偵事務所に向かう。
1:殺し合いに乗っていない者を保護する
2:沖と合流する。ただし18時までに市街地へ戻るのは厳しいと考えている。
3:加頭についての情報を集める
4:異世界の技術を持つ技術者と時間操作の術を持つ人物に接触したい。
5:石堀たちとはまた合流したい。
6:また、特殊能力を持たない民間人がソウルメタルを持てるか確認したい。
7:時間操作の術を持つ参加者からタイムパラドックスについて話を聞きたい
8:ダブルドライバーの持ち主と接触し、地球の本棚について伝える。
[備考]
※参戦時期は12巻〜13巻の間、風見の救援に高地へ向かっている最中になります。
※この殺し合いには、バダンが絡んでいる可能性もあると見ています。
※加頭の発言から、この会場には「時間を止める能力者」をはじめとする、人知を超えた能力の持ち主が複数人いると考えています。
※NEVER、砂漠の使徒、テッカマン、外道衆は、何らかの称号・部隊名だと推測しています。
※ソウルジェムは、ライダーでいうベルトの様なものではないかと推測しています。
※首輪を解除するには、オペレーションアームだけでは不十分と判断しています。
何か他の道具か、または条件かを揃える事で、解体が可能になると考えています。
※NEVERやテッカマンの情報を得ました。また、それによって時間軸、世界観の違いに気づいています。
※首輪には確実に良世界の技術が使われている・首輪からは盗聴が行われていると判断しています。
※零から魔戒騎士についての説明を詳しく受けました。
※首輪を解除した場合、ソウルメタルが操れないなどのデメリットが生じると思っています。 →だんだん真偽が曖昧に。
※彼にとっての現在のソウルメタルの重さは、「普通の剣よりやや重い」です。感情の一時的な高ぶりなどでは、もっと軽く扱えるかもしれません。
※村雨良の参戦時期を知りました。ただし、現在彼を仮面ライダーにすることに対して強い執着はありません(仮面ライダー以外の戦士の存在を知ったため)。
※時空魔法陣の管理権限を得ました。
※首輪は解除されました。
※変身に使うアイテムや能力に何らかの細工がされていて、主催者は自分の意思で変身者の変身を解除できるのではないかと考えています。


262 : ルシアン・ヒルの上で ◆gry038wOvE :2014/04/08(火) 00:07:40 WwdulAGs0

【涼邑零@牙狼─GARO─】
[状態]:健康、首輪解除、ソルテッカマン装着
[装備]:魔戒剣、魔導火のライター
[道具]:シルヴァの残骸
[思考]
基本:加頭を倒して殺し合いを止め、元の世界に戻りシルヴァを復元する。
0:時空魔法陣を利用し、G−10鳴海探偵事務所に向かう。
1:殺し合いに乗っている者は倒し、そうじゃない者は保護する。
2:会場内にあるだろう、ホラーに関係する何かを見つけ出す。
3:結城に対する更なる信頼感。
4:また、特殊能力を持たない民間人がソウルメタルを持てるか確認したい。
5:涼村暁とはまた会ってみたい。
[備考]
※参戦時期は一期十八話、三神官より鋼牙が仇であると教えられた直後になります。
※シルヴァが没収されたことから、ホラーに関係する何かが会場内にはあり、加頭はそれを隠したいのではないかと推察しています。
実際にそうなのかどうかは、現時点では不明です。
※NEVER、仮面ライダーの情報を得ました。また、それによって時間軸、世界観の違いに気づいています。
仮面ライダーに関しては、結城からさらに詳しく説明を受けました。
※首輪には確実に異世界の技術が使われている・首輪からは盗聴が行われていると判断しています。
※首輪を解除した場合、(常人が)ソウルメタルが操れないなどのデメリットが生じると思っています。→だんだん真偽が曖昧に。
また、結城がソウルメタルを操れた理由はもしかすれば彼自身の精神力が強いからとも考えています。
※実際は、ソウルメタルは誰でも持つことができるように制限されています。
ただし、重量自体は通常の剣より重く、魔戒騎士や強靭な精神の持主でなければ、扱い辛いものになります。
※時空魔法陣の管理権限の準対象者となりました(結城の死亡時に管理ができます)。
※首輪は解除されました。
※バラゴは鋼牙が倒したのだと考えています。


【特記事項】

【支給外T2ガイアメモリ】
村エリアには、『マキシマムドライブ発動』、または『対応するドライバーを介した仮面ライダーへの変身やフォームチェンジ』のみが可能となるT2ガイアメモリが隠されています。
よく注意して探さないと見つかりません。
翠屋の中も特に探していないようなので、今後翠屋でも見つかるかも…。

【時空魔法陣の管理システム】
管理システムは2階の高町なのはの部屋に置いてあります。

現在判明している管理コンピュータで閲覧可能な情報アイコンは以下(タッチパネルで操作、結城丈二以外は認証しない)
【管理システム】:最新版のマップが表示され、黄色い○をタッチする事で、翠屋と繋がる時空魔法陣の行先を変更する事ができます。
【ゲーム】:『AtoZのガイアメモリを探せ! 村エリアにはマキシマムスロットやドライバーと互換性のあるT2ガイアメモリが隠されているぞ! 細かく調べてみよう(※このガイアメモリは制限下ではドーパントへの変身には使用できません。ご了承ください)』という表示が出ます。
【施設紹介】:各施設の説明が書かれています。


263 : ルシアン・ヒルの上で ◆gry038wOvE :2014/04/08(火) 00:07:59 WwdulAGs0

【施設紹介】

【鳴海探偵事務所@仮面ライダーW】
G−10エリア海上に出現。
風都風花町一丁目二番地二号「かもめビリヤード場」の二階にある探偵事務所で、鳴海亜樹子が所長を務める。所員は左翔太郎とフィリップの二名。
風都ではその名が知れ渡っており、ドーパント絡みの事件で依頼が舞い込んでくる、ガイアメモリ関連事件の駆け込み寺のような存在。
一見するとただの探偵事務所のようだが、地下にはリボルギャリーなど、仮面ライダーダブルが利用するメカニックが内蔵。


【アイテム紹介】

【今回見つかったT2ガイアメモリの能力】
アクセル:加速能力を与える(またはドライバーを利用した仮面ライダーアクセルへの変身)
クイーン:鉄壁のバリアーで敵の攻撃を防ぐ
ロケット:攻撃対象にミサイルを発射
ユニコーン:打突攻撃の破壊力を高める(またはマキシマムドライブで螺旋状のオーラを宿したコークスクリューパンチを放つ)

【シトロエン2CV@超光戦士シャンゼリオン】
B-1エリア沿岸部に配置。
涼村暁の愛車で、カラーは緑。フランスのシトロエンが1948年に発表した前輪駆動式の乗用車。定員は四名の小型大衆車。
ガタが来始めているので、動きは極めて遅く、鈍い。
ぶっちゃけ今こんな物が出てきても用なし。


264 : ◆gry038wOvE :2014/04/08(火) 00:08:23 WwdulAGs0
以上で投下終了です。


265 : 名無しさん :2014/04/08(火) 09:29:50 e7aeiO2Y0
投下乙です!
まさか村には暁の車までもがあったとは……でも、今のタイミングじゃ確かに使い道がないw
T2ガイアメモリやリボルギャリーは果たしてどういう風に使われるかな?
あと、ゲームも誰かやってくれるか?


266 : 名無しさん :2014/04/08(火) 11:37:19 ZvMQZj6c0
投下乙です
確かにライダーのバイクに比べたら暁の愛車は必要無いなw


267 : 名無しさん :2014/04/08(火) 12:49:04 OtnWBlvgO
>>266
一応搭乗人数の点ではバイクより利点がある


268 : 名無しさん :2014/04/08(火) 20:03:13 bufzPqo.0
投下乙です

車は車でネタになると思うけどライダーのバイクに比べたらなあw
しかしここにきてT2ガイアメモリとかどうするんだろう


269 : 名無しさん :2014/04/09(水) 12:01:11 G7vsOzRM0
どうするもこうするも、普通に書いてある通りの用途に使えるかも…としか

そんな事より、ライディングボードで飛行してる回あったけど、あれは本人の魔力で飛んでるんじゃ


270 : 名無しさん :2014/04/09(水) 12:51:36 RgssMfAg0
量産化を視野に入れられてたこととティアナに貸そうとしてたってNanohawikiの記述を信じるなら、一応本人以外でも使えるんじゃないか?


271 : 名無しさん :2014/04/09(水) 13:00:05 G7vsOzRM0
Wikipedia

>固有武装は多種の機能を持つ巨大な盾「ライディ ングボード」で、ISはそれを飛行させる「エリア ルレイヴ」。

飛行能力はライディングボードにはない


272 : ◆LuuKRM2PEg :2014/04/09(水) 17:10:21 8617g/ow0
それでは、自作でつぼみ達がライディングボードを使用した部分は、使わない展開に修正した方がよろしいでしょうか?


273 : ◆7pf62HiyTE :2014/04/09(水) 23:34:12 GUZbEiXc0
ライディングボード登場させた僕の見解についてですが、

>>270の通り、Nanohawikiにティアナに貸す的な旨が書かれていて、これはクロニクルからの出典なので、本人以外でも使用自体は可能と僕は判断しています。
つまり、元々の持ち主ほどではないにせよ飛行など十分出来るという解釈です。

その為、拙作『no more words』でも、

 彼女は自身の先天固有技能ISを駆使する事でライディングボードを時には砲撃に、時には盾に、時には移動用に使用していた。
 なお、量産を視野に入れたという説もあり、ウェンディ以外にも使用する事は可能である。

という風に書いた筈なのでこれで問題無いと考えています。


後、>>271でwikipediaの記述を出していますが、wikipediaの内容をそのまま鵜呑みにするわけにはいかないのでもう少し公式に近い出典が欲しい所です。

その為、僕個人は使用可能で問題無いとは思います。

が、それでも問題があるのであれば念の為、上の文章を少々修正して。


 彼女は自身の先天固有技能ISを駆使する事でライディングボードを時には砲撃に、時には盾に、時には移動用に使用していた。
 なお、量産を視野に入れたという説もあり、ウェンディ自身もディアナ・ランスターに貸そうとした事があった。
 実際に魔力や戦闘機人の力が無ければ使えるかは不明瞭ではあるが、主催陣の計らいかはたまた、元々使えるのかこの地で支給されたそれは使用するだけならば誰でも使用となっている。
 
 この様に『no more words』で修正しておけば、後の話を修正する必要は無いと思いますが、どうでしょうか?


274 : ◆LuuKRM2PEg :2014/04/10(木) 08:51:42 /LwU8w7A0
それで問題はないと思います。


275 : ◆gry038wOvE :2014/04/10(木) 10:37:05 tMYDteYI0
調べてみました。

Gakken刊『魔法少女リリカルなのはStrikerS OFFICIAL FAN BOOK』には次の表記があります。

>ライディングボード(p.35)
盾・乗機・砲という3つの性質を持つ固有武装。機体の開発にはガジェットドローンと同系の技術が流用された。

>No.11 ウェンディ(p.134)
飛行はボードに乗ることで可能

>ウェンディのライディングボード(p.136)
武器としても防具としても使えるウェンディのライディングボードは、それ自体に浮遊する力があり、手を放しても浮くようだ。
ただし、射撃をする場合は、左手で本体を支えてやることで、焦点がブレることを少なくしている。

本体自体に浮遊する力があります。(左手だけですべての重さを支えているわけではなく重力無視っぽく…)


・本体の『浮遊』は可能である。
・ガジェットドローンの技術が流用されている→それで『飛行』できない事はないかと。

修正しなくていいんじゃないでしょーか。


276 : ◆7pf62HiyTE :2014/04/10(木) 10:56:43 lVtJqzQc0
◆gry038wOvE氏、情報提供ありがとうございました。
一応、僕の最終判断は夜(>>273の書き込みの大体24時間後)まで待つ方向ですが、今の流れだと、
>>273の方向で修正する』or『>>275の通りなら修正する必要なので修正無し』のどちらかで固まると思いますが、

どちらの場合でも ◆LuuKRM2PEgのSSで修正する必要は無くなると思うのですが、
◆LuuKRM2PEg氏はこのまま修正したままにしますか、それとも修正を取り下げますかどうします?


277 : ◆LuuKRM2PEg :2014/04/10(木) 12:15:10 /LwU8w7A0
では、自分の修正案は取り下げようと思います。
手間をかけさせてしまい、大変失礼しました。


278 : ◆7pf62HiyTE :2014/04/11(金) 00:37:42 D2iOee060
>>275での◆gry038wOvE氏の提供情報通りなら、拙作での描写にも問題はなさそうですね。他に問題あるという意見もなさそうなのでこの方向で進めます。
ただ、一応『no more words』にて>>275で書かれている通りの説明を若干追記した上で修正を行い、支給品紹介でも詳しい説明を入れておきます。
修正の方が出来ましたらまた報告致します。

最後に情報提供頂いた◆gry038wOvE氏、修正の手間をかけてしまった◆LuuKRM2PEg氏両名に拙作の不備で御迷惑をかけた事をお詫び致します。


279 : ◆LuuKRM2PEg :2014/04/11(金) 08:13:28 fZInL4Qg0
短くて恐縮ですが、SSの投下を始めます。


280 : 挑戦 ◆LuuKRM2PEg :2014/04/11(金) 08:15:46 fZInL4Qg0
 太陽が沈んだことによって、世界から光が消えて闇は深くなっていく。
 代わりに、数多の星と空に浮かぶ月が輝いているが、太陽に比べると頼りない。発達した文明と科学によって生み出された光も存在するが、世界全てを照らすには余りにも足りなかった。
 人間は闇を恐れる。闇は全てを飲み込んで、そして静寂の世界にしてしまうのだから。安らぎを与える優しい闇も存在するが、時には未来と希望を奪う凶暴な闇も存在する。
 例えるなら、古代より弱きリントを蹂躙し続けたグロンギという種族が、その代表例だ。グロンギは己の快楽の為、そしてゲゲルのスコアを稼ぐ為に数えきれない命を奪ってきた。グロンギが生きる世界でも、このバトルロワイアルでも変わらない。
 殺し合いに呼び出されたグロンギの一人であるゴ・ガドル・バは、今も木々の間を駆け抜けている。ただ、強き者と戦いたいという己の欲望を満たす為に次の獲物を探していた。
 既にクウガもダグバもいない。だが、この島には奴らと同等に面白いリントが数えきれないほどいる。カメンライダーとプリキュアがその例だ。

(どこだ……どこにいる。リント達よ、出てこい……出て来ないなら、俺の方からお前達を狩るぞ)

 ビートチェイサー2000に跨りながら、ガドルは先程の戦いを思い返す。
 弱くなった仮面ライダーエターナルを強くさせる為に、仲間を殺した。すると、期待に答えるようにエターナルは再び究極の闇となった。
 どうやら、リントは同胞を殺されると怒り狂って更なる力を発揮するらしい。そういえば、聞いた話によるとあのゴ・ジャラジ・ダもゲゲルの最中にクウガの怒りを買ったようだ。
 その場には居合わせていないが、ジャラジと戦っていたクウガも憎しみに任せて戦っていたのかもしれない。

(この俺が戦士でもない弱きリントを餌にするか……だが、それもまた一興か)

 何故、たかが同胞の一人や二人が死んだくらいで怒るのかは理解できないが、それはそれで面白い。リントが守ろうとする存在を狩ることで、リントが更に強くなるのならばいくらでも狩ろう。
 冷酷な思想を現すかのように、ビートチェイサー2000が走る道に存在する植物は踏み躙られていくが、ガドルはそれに目を向けずにただ前だけを見つめていた。

――残り30秒で爆発します。

 その最中。
 どこからともなく、グロンギのように無機質な男の声が聞こえてくる。
 それを聞いたガドルは、反射的にブレーキをかけて急停車をした。
 ガドルは周囲を見渡すが、他者の気配はない。ならば、音源は一体どこなのか?

――ここは禁止エリアです。速やかに脱出をしてください。

 疑問が解決されないまま、男の声が聞こえてくる。それは、オープニングで姿を見せたあの加頭順の声だった。

(禁止エリア……だと!?)

 ガドルは加頭の声によって、意識を急激に覚醒させる。
 禁止エリア。それは、定期的に放送が行われる度に設置される場所のことだ。加頭が言うには、そこに留まってしまうと参加者の首輪は爆発してしまい、誰であろうとも例外なく殺されてしまう。名も知らぬ三人の男がそれを証明していた。
 小規模な爆発で『ゴ』のグロンギが死ぬとは思えないが、加頭の言葉が嘘とも思えない。一刻も早く脱出をしなければならなかった。
 ガドルはハンドルを握り締めて、急激に方向転換をさせながらビートチェイサー2000を全速力で走らせる。
 迂闊だった。リントを捜すことに拘りすぎて、それ以前に大事なことを忘れてしまっていたとは。考えてみれば、この島に来てから地図をまともに確認したことは少ない。
 己の判断に呪いたくなるが、それは後回しだ。今は生存が最優先だ。

――残り20秒です。速やかに脱出をしてください。

 死へのカウントダウンは止まることがないが、それでもガドルはバイクを走らせている。
 ガドルは知らないが、ここは【G−6】エリア。最初の放送で7時から禁止エリアに指定された場所だった。


281 : 挑戦 ◆LuuKRM2PEg :2014/04/11(金) 08:18:04 fZInL4Qg0

(こんな所で……負けてたまるか!)

 首が吹き飛んだせいで死ぬ。低級のグロンギならまだしも、破壊のカリスマを自負するガドルがそんな間抜けな最期を迎えるなどあってはならなかった。
 ただ、ひたすらに前を進んでいる。まだ見ぬ敵と戦う為。そして、己の勝利を掴む為。

――残り15秒で……

 そんな中でも続いて来る加頭のカウントは、唐突に聞こえなくなる。ガドルがそれに気付いたのはすぐだった。
 不審に思いながらも疾走を続けるが、やはり聞こえて来ない。どれだけ待っても、首輪が爆発することはなかった。
 つまり、禁止エリアから抜け出すことに成功したのだ。
 
(俺は、勝ったのか)

 命の危機から脱したことを認識して、ガドルは再びビートチェイサー2000を止める。そして、息を吐いた。
 ここまで、命を賭けたのはクウガとの戦い以来かもしれない。こんなことで生死を分ける羽目になるとは予想外だったが、これもゲゲルの一種と考えればいいだろう。
 気を取り直して、また他の戦士を捜せばいい。
 ガドルがそんなことを考えた時だった……

『命拾いをしたようだな、ガドル』 

 今度は女の声が聞こえてくる。それもまた、ガドルにとって聞き覚えがあった。
 振り向くと、女の姿が見える。ゲゲルの進行と監視を行う役割を持つ『ラ』に所属するグロンギ……ラ・バルバ・デだった。
 しかし、目の前のバルバからは気配が感じられない。これはただの映像だと、ガドルは瞬時に察した。

「お前は……バルバだな」
『そうだ。お前に、新たなる王の誕生を伝える為に現れた』
「新たなる王?」
『お前と、ダグバがゲゲルを果たしたことにより、王は現れる。王と戦う資格を得たのだ』

 バルバが淡々と告げた後、指を軽く鳴らす。
 すると、彼女の手元にゲゲルリングが突如として現れた。これは、ゲゲルを行う際にゲドルードのバックルに嵌める物だ。
 つまり、ここから本格的なゲゲルが始まると言うことだろう。それを察したガドルは怪人体へと姿を変えた。

『ゴ・ガドル・バ……これよりお前は、ン・ガドル・ゼバに昇格する。ゲゲルはもう始まったのだ』

 その言葉と共に、ガドルのバックルにはゲゲルリングが装着される。それを終えるとバルバの姿は消えてしまい、後にはガドルだけが残された。
 バルバが現れた理由は、この殺し合いにはグロンギも関与していることになる。この島に転送されてから『ラ』の集団はずっと自分達を監視して、そしてこうして現れたのだろう。
 あのゴハットは制限を解放すると言っていた。ならば、自分の場合は今の昇格がそれに該当するのだろう。

(新たなる王か……面白い)

 今の自分はもう、ゴ・ガドル・バではない……ン・ガドル・ゼバという殺し合いの覇者となる王だ。
 新たなる王がどこにいるのかはわからないが、それならこちらから出向いて殺せばいいだけ。
 グロンギ遺跡か。それとも全く別の場所か。だが、どこであろうとも島のどこかにいるはずだから、いずれ出会えるはず。新たなる王も比類なき力を持つだろうから、リント達に屠られることもないだろう。
 ゲゲルの前に死んでしまったら、それまでの器だったと言うこと……そう思いながら、ガドルは再び森の中を進み始めた。


282 : 挑戦 ◆LuuKRM2PEg :2014/04/11(金) 08:18:55 fZInL4Qg0

【1日目/夜中】
【G―7/森】


【ン・ガドル・ゼバ(ゴ・ガドル・バ)@仮面ライダークウガ】
[状態]:疲労(小)、全身にダメージ(小)(回復中) 、肩・胸・顔面に神経断裂弾を受けたダメージ(回復中)、胸部に刺傷(回復中)、腹部・胸部にかなり強いダメージ、ダグバの死への空虚感、電撃による超強化、怪人体に変身中、ビートチェイサー2000に搭乗中
[装備]:ビートチェイサー2000@仮面ライダークウガ、スモークグレネード@現実×2、トライアクセラー@仮面ライダークウガ、京水のムチ@仮面ライダーW、ゲゲルリング@仮面ライダークウガ
[道具]:支給品一式×8(スバル、ティアナ、井坂(食料残2/3)、アクマロ、流ノ介、なのは、本郷、まどか)、東せつなのタロットカード(「正義」、「塔」、「太陽」を除く)@フレッシュプリキュア!、ルビスの魔剣@牙狼、鷹麟の矢@牙狼
[思考]
基本:殺し合いに優勝し真の頂点に立つ。
0:ダグバのように、周囲の人間を殺して誰かを怒らせるのも良い。そして、新たなる王とも戦う。
1:参加者を探す。
2:石堀、エターナルと再会したら殺す。
3:強者との戦いで自分の力を高める。その中で、ゲームとしてタロットカードの絵に見立てた殺人を行う。
4:体調を整え更なる力を手に入れたなら今まで取るに足らんとしてきた者とも戦う。
※死亡後からの参戦です。
※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。
※ナスカ・ドーパント、ダークメフィストツヴァイを見て、力を受け継ぐ、という現象を理解しました。
※フォトンランサーファランクスシフト、ウェザーのマキシマムドライブによって大量の電撃を受けた事で身体が強化され、アメイジングマイティに匹敵する「驚天体」に進化できます。また、電撃体の使用時間も無限になっており、電撃体とその他のフォームを掛け持つ事ができます(驚天体では不可能です)。
※仮面ライダーエターナルが天候操作や炎を使ったため、彼に「究極」の力を感じています。また、エターナルには赤、青の他にも緑、紫、金などの力があると考えています。


【備考】
※禁止エリアに突入してから、首輪が爆発するまで30秒のタイムリミットがあります。


283 : ◆LuuKRM2PEg :2014/04/11(金) 08:20:46 fZInL4Qg0
以上で投下終了です。
もしも首輪爆発の部分などで問題がありましたら、後で修正をさせて頂こうと思います。


284 : ◆7pf62HiyTE :2014/04/11(金) 08:51:37 .Ux07xSc0
投下乙です、
まさかガドルがクウガ以上の戦いと評するとは、禁止エリア恐ろしい奴だ……
それはともかくンに昇格したか、強化されているというわけでもないのが救いだが。


それから、修正スレの方にライディングボード関係で『no more words』の修正版を投下したのを報告いたします。


285 : 名無しさん :2014/04/11(金) 22:21:09 Y4wJk6JY0
投下乙です
何となく微笑ましいガドルvs禁止エリアw
そしてガミオとの遭遇対決は果たされるのだろうか


286 : ◆gry038wOvE :2014/04/13(日) 16:28:37 b4iOO57I0
投下します。


287 : 「Wish」 ◆gry038wOvE :2014/04/13(日) 16:30:31 b4iOO57I0
『わたしのおかあさん』

 わたしのおかあさんはプレシア・テスタロッサといいます。
 おかあさんは技術かいはつの会社につとめる技術者です。おかあさんはかいはつチームのリーダーで、なかよしのかいはつチームのみんなといっしょに、世界でくらすみんなのためになる技術をまいにち研究しています。
 おかあさんはいつもいそがしいけど、だけどすごくやさしいです。
 毎日つくってくれるごはんはいつもおいしいし、夜はいっしょのベッドで寝ます。
 ことしの誕生日は2人でピクニックに出かけました。
 いつもいそがしいおかあさんだけど、こういうときは一日中いっしょにいられるのでうれしいです。たのしくてうれしくて「ママ大好き」って言うと、、おかあさんはいつもちょっと寺ますが、だけどいつもあとで『ぎゅっ』ってしてくれます。
 そんな照れ屋でやさしいおかあさんのことが、わたしはほんとうにだいすきです。

 ──アリシア・テスタロッサの作文(Magical Girls Lyrigal NANOHA MOVIE 1st THECOMICS)より







 レイジングハート・エクセリオンにとって、その夜はいかに深い夜だろう。
 この殺し合いになのはとともに巻き込まれて、まだ一日も経っていないが、ただ待っている時もレイジングハート自身の疲労は加速していくばかりであった。こんな途方もない疲労感を抱えながら何時間も待ち続ける事に、いまや何の抵抗も示さないようになってきている。──そう、これで二回目だ。
 なのはを喪った戦いの後、駆音に拾われるまで。
 そして、駆音が黄金騎士に斬られた今。
 駆音の遺体は、薄暗い煙と化して消え去って行き、衣服と首輪だけが残った。──もはや、レイジングハートたりとも駆音の顔を忘れかけ始めているほど。
 残存した彼の首輪を通じて聞こえたのは、やはり悲しい結果と言わざるを得ない報告である。
 バラゴの名前は勿論の事、アインハルト・ストラトス、一文字隼人、梅盛源太などといったホテルの知り合いの各人の名前も呼ばれている。その他の命も、割り切っていいものではないだろうが、参加者ではないレイジングハートにとって、真っ先に着目された名前は主にその数名だった。
 冴島鋼牙、涼邑零、ノーザ、筋殻アクマロの名前はこの放送では呼ばれる事はなかった。敵対する人間の名前そのものが全く呼ばれないのだった(尤も、それは当たり前の事だが)。 善良な人間ばかりが死に、あくどい人間ばかりが現状で生き残っているというのだ。世の中というものがいかに残酷なのか、はっきりとわかる。

 放送の男の口調は、レイジングハートにとっても、全く気に食わないという他ない。あまりにもネジの外れた日本語に、嫌悪感は増大した。生命倫理というものを一切持たない不愉快な人造生命だと、レイジングハートは解釈する。
 ここまでで初めて耳にした放送だったが、あの言葉が人の口から出てくる言葉だとは信じられなかった。善でも、悪でもなく、ただ無邪気に命を弄んでいるかのような、そんな恐ろしささえ感じるようであった。

 そして、たとえ声が消えてなくなっても、首輪から漏れる放送の音を耳にしてレイジングハートを救い出す者はいなかった。







 主催陣がいる一室──吉良沢優は、ガイアメモリを見つめていた折、来客が現れるのを察知した。敵意のある人間が突然押し寄せてきたわけではないのは、吉良沢にもよくわかった。椅子を回転させて、来客に挨拶する。
 来客の顔を見て、吉良沢も少し驚いたように目を見開く。

「君は……アリシア・テスタロッサか。眠らなくて大丈夫かい」

 金髪の幼女、アリシア・テスタロッサ。同年代の名子役がいくら作ろうとしても無理が生じるであろう、感情のない瞳で、吉良沢を見つめる。
 彼女は別に表情がないわけではない。笑ったような顔を見せる事も、困ったような顔を見せる事もできるが、どれも希薄化する感情の中で振り絞られた、歪みある表情であった。


288 : 「Wish」 ◆gry038wOvE :2014/04/13(日) 16:34:11 b4iOO57I0
 あるいは、この状況下で平然と喜怒哀楽を顔に出せるのも、彼女の感情がNEVERの支配によって壊れかけている証であるともいえるだろう。大道克己、泉京水、堂本剛三、加頭順、そしてアリシア・テスタロッサ──ここまで五人のNEVERの姿を見ているが、確実に共通しているのは、「生命」という観念の有無だ。
 少なくとも、身内の死に一憂する事はあるだろうが、通りすがりの誰かが死んでも不快感さえ表さない。常人ならば、人の死に対して何かしらの不快感を得るはずだが、彼らはそれが無いのだ。そして、おそらく自身の死さえも、何とも思わないのだろう。
 アリシアもまた、本来なら誰かの死に対して感じるはずの「不快感」もなく、死に対して妙に達観し、諦観したような少女となっていた。

「眠れと言われても、最低九時半までは無理なんだ……」

 アリシアの徹頭徹尾、冷えた口調。──吉良沢も、こうしてアリシアと対面して話すのは殆ど初めての話だが、天使のような外見とのギャップは凄まじい。まだ呂律が回らないような年頃ながら、その言葉遣いも妙に鋭い。
 幸いなのは、敬語を使わない事だろうか。敬語を使い始めると、それこそかえって落ち着きすぎて恐ろしいほどである。プレシア・テスタロッサが忌み嫌ったフェイトの面影はどこにもない。彼女の生真面目さよりかは、アリシアの無邪気さそのままに、性格に支障をきたし始めているのがわかっていた。だからこそ、プレシアはこんな風に狂いを見せているアリシアを突き放す事もしない。母に対してはまだ少なからず甘えているようで、そこは大道克己に似通っているような気がした。
 吉良沢は、気にしない風に口を開いた。

「そうか……。それで、何の用?」
「……別に、何でもない。ただの暇つぶし」

 用がない……。それで吉良沢のところに来る理由もまた、何となくわかった。

 吉良沢にしろ、アリシアにしろ、異界の道具を使わなければ「変身」ができない同士、孤独なのだ。ダークザイドにも、外道衆にも、砂漠の使徒にも、グロンギ族にも、魔法少女にも、BADANにも、財団Xにも属さず、まあ言ってみれば完全な普通の人間。既に亡くなった八宝斎もそうだが、「ガイアメモリ」を支給されなければ変身もできない。
 魔法の素養があり、死者にまでなったアリシア。
 来訪者の声を聞いて、未来を予知する事も可能だったプロメテの子・吉良沢。
 常人に比べれば勿論、特殊な出生ではあるが、その中にもまだ変身能力は絡んでいない。充分まっさらな人間である二人だ。なんとも、自分が場違いな感じがしてならない。


289 : 「Wish」 ◆gry038wOvE :2014/04/13(日) 16:38:25 b4iOO57I0

 尤も、変身などしたくもないだろうが……。
 いくら吉良沢でも、ガイアメモリという未知の道具の利用など、恐ろしくて仕方がない。これまでも散々その危険性を目の当たりにしてきた。ガイアメモリの危険性を知ったうえで、護身用とはいえ渡されたメモリを使用するのには躊躇がいるというものである。一応、安全利用するためのガイアドライバーは受け取っているが、それがあるからといって安心もできない。
 ともかく、吉良沢は顔色を変えずにアリシアに訊いた。

「……丁度僕も退屈なんだ。気の合いそうな人はここには全くいない」
「そう」
「……君は、フェイト・テスタロッサと同じ世界の人間だね。言ってみれば彼女のオリジナルだ」

 複製に対する複製元──月影ゆりとダークプリキュアの奇妙な顛末を見ても、それを姉妹と呼ぶのに、吉良沢だけは、抵抗を持っていた。来訪者の伝えによってダークザギの出生を知っている彼は、ダークザギをウルトラマンノアの弟とは思わない。
 彼らはお互いの宿命上、殺し合わなければならない光と影である。
 まあ、フェイトやダークプリキュアの場合は、プレシアやサバーク博士のような、オリジナルと共通の親を持っているがゆえに、もう少しわかりやすい関係だが。

「……お姉ちゃん、とも呼ぶかもしれない。そう、お姉ちゃんなんだよね、わたし」

 アリシアは、そう言った。彼女は少なからずそう想っているのだろうかと吉良沢は思った。しかし、言葉のわりに他人行儀で、殆ど悲しみ、苦しみの感じられない声だった。フェイトに対して、「姉」として接する機会を一秒も持たなかったとはいえ、その死に対して一切の感情を見せる様子もない。
 ただ、何かを確認するような言葉だった。
 姉の責任を確認するのか、妹への愛を確認するのか。いや、彼女の場合はどちらでもなかった。
 彼女が確認したかったのは、そう──

「私はこれからあのデバイスのところへ行くの。彼女は私の顔を見てどう思うのかな」

 ──自分の顔が、フェイトと酷似しているという事実、だけだ。
 初対面になるが、もしレイジングハートがアリシアの顔を見たらどんな反応を示すか、そこに興味がわいたのだろう。
 吉良沢は、やはりと思いながら、感情を除いて彼女と言葉を交わした。

「……あのインテリジェントデバイスも特殊条件に合致したんだっけ。だから九時半まで眠れないのか」

 レイジングハートはどういう理屈か、特殊条件に合致した。別になのはにもバラゴにもナイトレイダーの隊員が絡む事は殆どなかったので、レイジングハートの情報はあまり目を通していないが、制限解除に関する概説は見ている。
 何でも、レイジングハートは呪泉郷の水を浴びたらしいのだ。
 通常は呪泉郷に入る相手といえば人間だが、この場には意思を持つアイテムもあるし、実質的に生物に近い存在や、生物であった物も存在するので、もしそれらが条件を満たした場合については、これまで空間で制限をかけるようにしていた。しかし、人数の減少に伴い、あらゆる制限機能を解除する事が決定した。
 明日より、その制限の解除が行われるらしい。二日目以降は、更に敵が増えるという事だ。

「……そうか。でも、いくら元が人間ではないといっても、あの姿で冴島鋼牙を倒すのは無理だろうね」

 吉良沢は冷静に状況分析して呟く。
 殺し合いゲームは加速している。ほぼ全員が変身能力者である現状、普通の若い娘の姿になったレイジングハートが殺し合う事ができるだろうか。彼女の現状の目的は、殺し合いではなく鋼牙や零への(吉良沢から見れば濡れ衣そのものな)復讐だが、それさえ難しい。
 彼らにはそう簡単に倒す隙が無いに違いないだろう。

「ううん。……そうとも言えないと思う」

 しかし、返ってきたのはアリシアによる否定。
 自信に溢れているわけではないが、口調は少しばかり強かった。

「彼女にも支給品を一つだけあげるの」

 アリシアの左手には、一本のT2ガイアメモリが握られている。
 それはアリシアに支給されているメモリではない。──彼女に支給されているのは吉良沢と同じくミュージアム製のガイアメモリだったはずだ。
 今、彼女が手にしているのはT2ガイアメモリの中でも、マップ内には存在していない稀有なメモリ。


290 : 「Wish」 ◆gry038wOvE :2014/04/13(日) 16:38:48 b4iOO57I0

 それは──

『DUMMY』

 敵の記憶を読み取り、死者に擬態する事もできる特殊なメモリ。かつて、死人還りと呼ばれる事件を引き起こしたデス・ドーパント──否、ダミー・ドーパントに変身する能力を持っている。
 使いようによっては最強のガイアメモリである。
 イエスタデイメモリとダミーメモリの二本は、能力そのものの強力さがバランス崩壊を引き起こすため、支給品・村エリアともに完全に支給外のメモリだったのである。

「……なるほど。最強のガイアメモリか」

 ダミーには、相手の記憶を読み取る能力があるが、その能力を使って鋼牙や零の潔白を証明する事は──果たして、できるのだろうか。
 吉良沢は、ダミーの能力がどの程度、主催に都合よくいじくられているのかを勘ぐりつつも、アリシアの瞳を見つめた。その瞳は、感情こそ失われているように見えるが、そうした卑怯な知略を得るには、まだ幼かった。NEVERであっても、この幼さではそんなずる賢さも生まれない。このメモリを用意したのは別の人間だ。
 吉良沢は、財団Xの白い服のNEVERの顔を思い出した。







 ──そして、時間は、何という事もなく九時半を回った。

 レイジングハートは、誰にも見つかる事なく、実質、放置されたまま「単独行動」を貫いた。実際のところ、誰かに拾われた場合に自動的に人の姿になられると彼女も困惑するだろうが、レイジングハートが何者かに拾われる可能性など皆無に等しい。
 現状では、彼女も抜け殻のような黒衣の中に隠された石ころだ。誰かが来るような場所でもなかったし、この森林の夜に黒衣の下の輝きに気づく者もいない。

 誰かが、地面に放られているその黒衣を捲った。ピンポイントでその場所にレイジングハートが居る事を感知している誰かが。

『……?』

 突如、自分を覆う黒い幕が消えた時、レイジングハートは一体どう思ったのだろう。
 救いとは思わなかったかもしれない。何も期待はしていなかった、何も希望を持たなかった。しかし、ただその暗闇を捲り上げたのが誰なのか、レイジングハートは気にかけた。
 そして、いざその顔を認識した時に、レイジングハートはひとたび驚いたに違いない。

『Fate……!?』

 フェイト・T・ハラオウンと瓜二つの顔が、そこにはあった。
 フェイトより数歳幼い……という事さえ、今のレイジングハートが認識するのは少し遅れたようだった。ただし、それに気づいて、尚更正体がつかめなくなったようである。
 見たところ、実体ではなく、それは幻。魔力もそこからは感じない。──一瞬、夢でも見ているのかと思ったほどだ。

「あーあ、やっぱり、そういう反応か……でも違うんだよ。わたしはアリシア・テスタロッサ。……あ、わたしが死んでるはずだとか、そういうのは、今はいいから、それはまた後で考えてね」
『……』

 アリシアも眠気が襲い始めているので少し早口だった。死んだのは五歳。流石にこの時間も普段は寝ている。レイジングハートは、アリシアの名前を聞いた瞬間は驚いたが、何かを口にする前にアリシアに言葉を遮られ、何も言えなくなってしまった。
 レイジングハートも、実際に会った事はなくともその名前だけは知っている。フェイトは彼女を模して造られた。ジュエルシード事件の時も鍵を握る存在である。彼女が今ここにいるのは驚きであるが、これまでの流れを見ていると、考えてみれば、この場ではそうそう珍しい事ではないのだろうと自分を納得させた。

「ねえ、レイジングハート、あなたはバラゴ……えっと、龍崎駆音の手で、水を浴びたでしょ?」
『……Yes』


291 : 名前欄が消える病 :2014/04/13(日) 16:39:45 b4iOO57I0

 覚えていないにしろ、バラゴの手で謎の水に体を漬けさせられた事がある。

「あの水は、浴びた者を特殊な体質にする水なの。中でもあなたが被った水は、入った者を若い娘の姿に変身させる娘溺泉。……そのうち、あなたは水を被ると娘になり、お湯を被ると今の姿に戻る……。そんな変身体質を得る事になる」
『My body becomes human……?』
「そう、その時が来たら、支給品が一つあなたの手に渡る。……良ければ、それを使って? ほら、こんな風に……」

 レイジングハートが見れば、アリシアの体には金色のベルトが巻かれていた。本郷猛のように、腰部に変身ベルトを巻き付けていたのである。
 それも全てホログラムかもしれないが、どこかでアリシアの実態が変身を行おうとしているのは確かだった。アリシアは左手で金色のガイアメモリのボタンを押した。

──CLAYDOLL──

 クレイドール。ゴールドクラスのガイアメモリに宿された土細工の記憶が電子音を鳴らす。
 アリシアはそのメモリをガイアドライバーに挿入し、その姿を光らせる。──その姿が異形へと変身するのに、数秒も待たなかった。
 ハロウィンに仮装した人間がこんな姿になるだろうか。
 白と茶色。土の色をした不気味な案山子人形のような怪物。そこには人の面影はあっても、アリシアの面影は見当たらない。

「あなたに支給されるT2ガイアメモリには、このガイアドライバーは必要ない。体のどこに挿してもあなたは変身できる。……やりたい事があるなら、あなたは自分自身の力でそれを行える。わたしからの説明はこれだけ。あとはまあ、好きになりなよ」

 アリシアの、──いやクレイドール・ドーパントの姿はその言葉とともに消えていく。
 ホログラムが消え、レイジングハートは再び一人になった。

『Phantom……? ……No』

 少しだけ、それが完全に自分の心が生み出した「幻」である可能性を考えながら、やはりレイジングハートはその可能性を否定した。現状でそこまでシステムに異常をきたす事はないだろうと思う。自己管理できるシステムは生きているだろう。
 そうなると、アリシアが現れた事もそうだが、何より自分が人になるという事が引っかかった。
 自分の姿が、なのはたちと同じ「人間」になるという、考えもしなかった事実。美しく、強く、優しく、儚いあの人間の姿になるという事──それを、レイジングハートはどう捉えただろう。
 吉か、凶か。どちらと呼ぶべき話なのだろう。

『……Master , Fate , Euno , Karune……』

 己が知る人間たち。その姿に自分の身を移し替える事が、レイジングハートは怖かった。
 確かに彼女たちは素晴らしい人間であったが、その姿を自分が維持し、歩き、人間のようにふるまう事が出来るのだろうか。四肢を持ち、微かな視点しか持たない彼女たちの体で自分は動けるだろうか。
 妙な不安感を持っている。
 そして、同時に、自分が醜く穢れていく事も、弱く脆い人間にならないだろうかという恐ろしさ。──他人に容易に危害を加える事もできるあの暴力的な手足が、感情に任せて悪に動いてしまわないかと言う恐怖。
 あらゆる想いがレイジングハートの胸を騒がせる。
 期待、というものは持っていなかったが、ただひとつ──冴島鋼牙や涼邑零、ノーザやアクマロと戦いに行ける事は、唯一果たさなければならぬ悲願であった。






292 : 「Wish」 ◆gry038wOvE :2014/04/13(日) 16:40:39 b4iOO57I0



 ──アリシア・テスタロッサが、主催者たちの元へ帰っていく。用を終えるのはすぐだった。たかだか三分足らずの用事のためにこんな時間まで起こされていたと思うと腹立たしいと思うかもしれないが、もともとプレシアが伝えに行く予定だったものをアリシア自身が退屈しのぎに行う事にしたのである。だから彼女は文句を言わない。

 この時間、彼女は眠りにつく予定だった。アリシアはこの殺し合いの運営には殆ど無関係に、プレシアにくっついているだけである。かつての事故をトラウマにしているプレシアは、生き返った娘を傍に置いている。しかし、それでは退屈だと、アリシアは、殺し合いの様相を目に焼き付け、ちょっとした手伝いをしていた。そこには純粋な興味関心みたいなものもあったのだろうか。

「おかえり、アリシア」

 プレシアはその部屋で、財団Xのメンバーから送られてくる殺し合いのデータに目を通しながら、アリシアの方に目を向け、声をかけた。66人分のデータは全て財団Xの加頭の部下が管理し、通信で必要情報(交戦、死亡、負傷、スタンスの変化、特殊な動向など)が送られてくるのだ。流石にしばらくは目を通すつもりでいる。そんなプレシアに対し、アリシアは、小さな声で「ただいま、ママ」と言って、プレシアに少しだけ目をやって、そのままベッドの方へ向かっていった。彼女は別に疲労している様子はない。
 アリシアの背中を目で追いながら、プレシアは動きを止め、押し黙った。プレシアの顔から、張り付いたような笑みが消える。
 ……やはり、アリシアは、プレシアの方に駆けつけて抱き寄る事もなかった。プレシアも、何故か彼女を、心から温かく迎え入れる事ができなかった。
 顔は笑っているし、アリシアがここにいる事は嬉しく思う。
 それでも──

(何か、違う……)

 プレシアはそう思った。
 これまで、プレシアはアリシア・テスタロッサの蘇生を考えて二十六年も生きてきた。そのためにこの殺し合いで主催運営の一端を担う事になった。風都工科大学のNEVERの技術を利用し、アリシアが蘇る事になったのである。そのリスクなどは、定期的な酵素注入以外は教えられなかった。それもまあ、アリシアが蘇るならばと、代償の一つとして飲み込んだ。
 それでいい。それでも、アリシアが生きていればそれでいいはずだった。
 これまで、アリシアを求め続けて研究してきた努力を神は見ていたのだ。それが人体蘇生を可能とする異世界の誘いをよこした。アリシアは再びこの世界の空気を吸えるのだ。誰も苦しませない、まっさらな酸素を。きっと、死に際にアリシアが求め続けたであろう、穢れの無い綺麗な空気を。

 ……しかし、そうして蘇ったアリシアは、かつてのアリシアとどこか、いや、全く違った。以前は明るく、無邪気で優しい子供だったはずなのに、今はむしろ正反対だ。ただ姿だけがアリシアのまま、感情の無い悪魔のような姿になっている。
 そう、喩えるなら、フェイト・テスタロッサとアリシア・テスタロッサの中間のような──嫌いになりきれないが、好きだと断言する事もできない、そんなアリシア。その姿に、プレシアも疑問を持ち始めていた。


293 : 「Wish」 ◆gry038wOvE :2014/04/13(日) 16:41:07 b4iOO57I0

(違う……? そんなわけ、ないじゃない……。あの子はアリシア、……きっとそう)

 かつて、リニスが届けてくれたアリシアの作文。
 今夜もまた、プレシアはその作文を読みながら、この違和感を別の感情で埋めようとする。
 あのアリシアの手が、この作文を書いたのだ。スケッチブックにクレヨンで描かれた母の絵も、ここに大事に取ってある。全て彼女の左手が生み出した小さな芸術だ。
 大丈夫、ここにいるプレシアは左利きだし、ちゃんと我が儘も言う事がある。──フェイトの時に抱えた違和感が少しだけでも晴れていれば、それが何とか違和感をおしこめる事ができた。
 あの作文を読んだ時は涙を流した。あの絵を見た時は慟哭した。生半可な幸せは、それを崩した時に人を狂わすのかもしれない。
 だが、今の彼女はそれを見て微笑む事ができる。微笑む事ができるのに、どこか心にわだかまりを持たずにはいられなかった。

(フェイト……とは、あんな子とは違う……。でも……)

 プレシアは、先ほどから何度か、フェイト・テスタロッサのこの場での一連の行動を再生していた。右手を利き腕に戦うフェイトの姿も、従順に母のために戦おうとするその信念も、アリシアは嫌っていたが、何だか妙にその姿が恋しくなった。
 アリシアは、思い出話に付き合ってくれない。まるで記憶が抜け落ちているかのように。たまにだけ、作文や絵を見て、その事を思い出したように、ほんの少し語るだけだ。
 フェイトは、きっと思い出話には付き合ってくれる。彼女はアリシアの記憶を引き継いでいるのだから。アリシアと二人いれば、ようやくこの違和感は完全に晴れてくれるような気さえする。

 ……別にフェイトを認めているわけじゃない。
 代替品だった彼女の台詞──「おかあさん」。その言葉を、彼女の声でもいいから聞きたくなったのだ。

 もうフェイトはこの場にはいない。確かに死んでしまった。その時はプレシアも、何か感じる事はなかった。別に彼女が死のうが生きようがどうでもよかったのだ。
 しかし、今思えばフェイトも、微かにはアリシアに似ていたし、今のアリシアには足りない何かが、根っこにあったのではないかと感じてしまう。
 リニスと殆ど同じ山猫を連れてきても、アリシアはその頭を撫でない。あろう事か、触れようともしない。
 フェイトなら、きっと、その頭に手を乗せるだろう。──しかし、それももう叶わない。

 死んだら二度と蘇らない。そんな命の法則に逆らう願いというのは、常に最悪の結末しか生まない──その事に、プレシアは気づきながらも、その事実を必死にかき消さざるを得なかった。



【1日目 夜中】
【D-8 森】

【レイジングハート・エクセリオンについて】
※第三回放送指定の制限解除を受け、2日目以降に娘溺泉の効果が発動します。
※若い娘の姿に変身した時にT2ダミーメモリが支給されます。

【バラゴの遺体について】
※消滅しました。

【主催陣営について】
※アリシア・テスタロッサはガイアドライバーとクレイドールメモリを所有しています。
※参加者個人個人の管理はおそらく財団Xの下っ端が行っています。


294 : ◆gry038wOvE :2014/04/13(日) 16:41:25 b4iOO57I0
異常、投下終了です。


295 : 名無しさん :2014/04/13(日) 17:43:50 8B6CeeZE0
投下乙です!
レイジングハートがこのまま一人だとダミーメモリを渡されるのか。あれは使い方次第じゃとんでもないアイテムだぞww
で、プレシアもプレシアでアリシアに対して疑問を抱き始めているか……


296 : 名無しさん :2014/04/13(日) 22:51:38 0TfMMZVQ0
投下乙です

今のレイハに危険なアイテムを渡されたらヤバいフラグ立つぞw
そしてこのロワに疑問を覚える主催者側の人間がまた一人
もっともどこまで運営に関わってるのやら


297 : 名無しさん :2014/04/14(月) 00:17:25 DgN3tRqk0
投下乙です
よりにもよってダミーメモリかw魔戒騎士二人(特に鋼牙)に危険が迫ってるがどうなるか


298 : 名無しさん :2014/04/14(月) 19:52:26 8zEmvL1c0
レイハさん全裸じゃないんだね!ありがとうバラゴ


299 : 名無しさん :2014/04/14(月) 20:17:17 Dy7UpT8kO
投下乙です。

アリシアには、人を模した神の偶像。
レイハには、偽り。
まあ、皮肉のきいた支給品。

アリシアは、魔法の才は無かったんじゃなかったっけ。


300 : 名無しさん :2014/04/14(月) 22:22:44 CP7TxBxw0
母親や妹ほどの才は無くても、多少はできたんじゃなかったっけ


301 : ◆LuuKRM2PEg :2014/04/17(木) 21:12:39 gcFP41Io0
これより投下を始めます。


302 : 歪み ◆LuuKRM2PEg :2014/04/17(木) 21:14:05 gcFP41Io0
 夜の闇に包まれた森の中は、辺り一面が漆黒に満たされている。何の用意もしないでそんな場所を進むのは、無謀以外の何物でもなかった。支給品に照明器具は含まれているが、森林の前では余りにも頼りない。
 整備された街の光に慣れた人間にとって、異世界と呼んでも過言ではない森の中を天道あかねは一人で進んでいる。前は源太や十臓という人外が一緒にいたけど、今は隣に誰もいない。それがどうしようもなく不安だったけど、人間ではない存在と一緒にいるよりはマシだと割り切った。
 暗い森の中にはどんな怪物が潜んでいるのかわからない。でも、道ちゃんとNちゃんの力さえ使えば勝てない訳がなかった。現に、あの仮面ライダーだって殺すことに成功している。
 ガイアメモリもまた手に入れたし、武器に使えそうな刃物もある。この二つだって上手く使えば戦いの役に立つかもしれなかった。

(これだけあれば、機械と化け物達をみんな殺せる……殺して、私は元の毎日に戻る! 大切なものは、もう何も壊させない!)

 まだ見ぬ敵への憎しみを燃やしながら、あかねは駆け抜ける。
 身体は痛い。でも、耐えなければならなかった。
 暗い森の中は怖い。でも、それに囚われてはいけなかった。
 休みたい。でも、そんな余裕なんてなかった。

(ガドルは、私からみんなを奪った奴の仲間……あんただけはあたしの手で壊してみせる!)

 脳裏に浮かび上がっていく甘い誘惑を憎しみで振り払う。
 ガドルは顔もわからない相手だけど、何故かダグバの仲間である確信があった。根拠はないし、誰かに教えて貰った訳でもない。仮に仲間では無かったとしても、壊してしまえば関係なかった。
 ガドルだって、ここではないどこかで大切なものを壊しているはず。ダグバの仲間だから、何の躊躇いも無しに命を奪っていてもおかしくない。ガドルは、ダグバと同じ絶対悪だ。
 許さない。
 壊してやる。
 絶対に、この世から消してみせる。
 全身に刻まれた傷のせいで、本当ならまともに歩くことすら難しい。しかし、あかねの身体は軽やかに動いていた。道ちゃんの力とメモリの毒によって、痛覚が薄くなっているのはある。だが、それ以上に身を焦がすほどの憎悪が彼女に力を与えていた。

(殺す……壊してみせる……そして、みんなを守ってみせる! あたし達で力を合わせれば、できないことなんてないわ!)

 表情は悪鬼の如く歪んでいて、何も知らない者が見たら「化け物」と呼ぶだろう。だが、彼女はそれに気づくことのないまま森を駆け抜けていた。
 何処からともなく、川のせせらぎのような音が聞こえる。その音に向かって、あかねは走るペースを上げた。
 肉体が強化されているおかげか、川に辿り着くまで時間は必要ない。穏やかに流れる川があかねの目に飛び込んできた。
 凄惨な殺し合いの会場であるにも関わらず、その流れはとてもゆっくりしている。見る者の心を和ませてもおかしくないが、あかねはただ無表情で見つめていた。
 いくら道ちゃんの力があったとしてもあかねのカナズチが治る訳ではない。落ちてしまったら、溺死するだけだ。
 ここがどのエリアに流れている川なのかはわからないけど、川上に向かえばグロンギ遺跡まで辿り着けるはず。地図にもそう描いてあった。
 闇を切り裂くような勢いで駆け抜けて、グロンギ遺跡を目指している。もう遠くないと思った、その時だった。

「……アアアアアァァァァァァァオオオオオオオオオォォォォォォォォンッ!」

 どこからか、獣のような咆哮が聞こえてくる。
 空気すらもピリピリと振動させるほどの叫びによって鼓膜が刺激されてしまい、あかねは反射的に足を止めてしまった。

「アアアアアァァァァァァァオオオオオオオオオォォォォォォォォンッ!」

 狼のようにおぞましい叫び声は近くから聞こえてくる。それはとても人間のものには聞こえない。つまり、機械か化け物しかあり得なかった。
 グロンギ遺跡には先客がいる。それを察したあかねは懐からナスカメモリを取り出しながら、戦意を燃やした。


303 : 歪み ◆LuuKRM2PEg :2014/04/17(木) 21:14:42 gcFP41Io0
『NASCA』

 メモリから発せられるのは、魑魅魍魎の如く呻き声。しかしあかねにはそれが心地よく聞こえてしまい、微塵の違和感を持たずに身体へ刺し込む。内蔵された膨大な記憶は華奢な体躯を駆け巡り、一瞬で毒々しい青色に彩られた怪物へと変貌した。
 T−2ナスカ・ドーパントに変身した天道あかねの行動は早かった。炎のように赤く染まった一対の翼を背中から生やして、暗闇に覆われた森の中を飛翔する。大空を舞う戦闘機に匹敵する程の速度が齎されることで、無数の木々が通り過ぎるように見えた。
 叫び声が止むことはない。この先にいる怪物は血を求めている……まさしく本当の化け物で、生きていると考えただけでも苛立ちが溜まっていく。化け物が人間の世界にいてはいけない。この手で殺さなければならなかった。
 感情が胸の中で更に燃え上がる中、石で造られた建造物が視界に飛び込んでくる。それがグロンギ遺跡であるとナスカ・ドーパントは察するが、叫び声はそこから聞こえて来ない。違う方面の斜面からだった。

(入れ違いになったのね……面倒だけど、今から追えばいいだけだわ。道ちゃんとNちゃんの力さえあれば、すぐに追いつけるわ!)

 無駄足に終わったなんて考えない。叫び続ける怪物さえ殺してしまえばそれで終わるのだから。
 ナスカ・ドーパントはグロンギ遺跡から目を逸らして、耳を凝らす。醜悪な唸り声は、発達した聴覚によってすぐに捉えることができた。
 もしかしたらグロンギ遺跡にも誰かが隠れているかもしれないが、いるかどうかもわからない相手を捜していたら逃げられてしまう。それは余りにも間抜けだった。

(待っていなさい、化け物。あんたがどこに行こうが、あたしは必ずあんたを殺してみせる……森だろうと、この近くにある呪泉郷だろうと……)

 そこまで出てきた途端、思考が急に止まってしまう。
 呪泉郷。グロンギ遺跡の近くにある泉で、あかねにとって殺し合いのスタート地点だ。
 そこで黒い翼を生やした女・ダークプリキュアに襲われてしまい、源太と出会った。それから色々なことを殺し合いの場で経験して、大切な何かを失った。それが何なのかを思い出そうとするが、思考に靄がかかってしまう。
 思い出せない。この殺し合いで何を失ったのかがわからない。ダグバは一体、何を奪っていったのかが見えなかった。とても大切なことだけはわかっているだけに、もどかしく感じてしまう。
 それに、奪われた何かが呪泉郷と深い関係があると、あかねは思う。確証はない、ただの予感。しかし、あかねは斬り捨てることができなかった。

(誰……誰なの……一体、ダグバはあたしから誰を奪ったの……?)

 あかねは思い出そうとするが、その『誰か』の顔が浮かび上がらない。霧にかかったかのように、全体の像が見えなかった。それにもう一人、この島には知っている『誰か』がいる。その人は、あかねにとっても大切な友達で、平和だった日常にいた……だけど、それだけしか思い出せない。
 また、その『誰か』達が今の自分を知ったら、絶対に悲しむと断言できる。理屈はわからないけど、それだけは確かだった。

「……オオオオオォォォォォォォォォン」

 しかし、湧き上がる疑問は遠ざかっていく叫び声によって遮られてしまう。
 それを捉えたナスカ・ドーパントは一気に意識を覚醒させた。考えている刹那の間に、怪物はもう遠くまで向かっていると知って、軽く舌打ちをする。こうしている間にも、獲物が逃げられたら元も子もない。早く殺さなければならなかった。
 ナスカウイングを再び広げて飛び上がるが、それでも蟠りは消えない。むしろ、闇の中を駆け抜ける度にどんどん積み重なっていた。

(もしもあんたが呪泉郷に向かうなら……あたしは許さない。あんたなんかに、私『達』の思い出を壊させないわ)

 無意識の内に、ナスカ・ドーパントは……いや、天道あかねは想う。そして、叫び続ける怪物が呪泉郷に向かわないことを祈った。
 それは、早乙女乱馬や響良牙のことを心のどこかで想っているあかねとしての気持ちだったのかもしれない。だが、それはあかね自身も含めて、気付く者は誰もいなかった。
 ただ、ナスカ・ドーパントは闇の中に潜む獲物を狩る為に、飛び続けていたのだった。


304 : 歪み ◆LuuKRM2PEg :2014/04/17(木) 21:15:38 gcFP41Io0




 ン・ガミオ・ゼダは己の存在を知らしめるかの如く吠えながら、闇に覆われた森の中を駆け抜けている。蘇ったばかりであるにも関わらず、そのスピードは封印される前と変わらなかった。
 辺りの闇によって光は微塵も見えないが、究極の闇に比べれば微々たるものでしかない。グロンギの齎す闇と、夜の闇は全く別の存在だ。自然の闇は時に安らぎを与えるが、究極の闇から与えられるのは絶望だけ。
 究極の闇を取り戻す為にガミオは疾走していたが、あてはない。ガドルがどこにいるのかだってわからないのだから、具体的に決めることはできなかった。
 しかし、ガミオはそれを微塵も気にかけていなかった。この世界のどこかに、王となったガドルがいる。それだけがわかれば、ガミオにとっては充分だった。

(俺の力は、本当にこの世界で発揮できるのか?)

 しかしガミオには微かな懸念がある。
 『究極の闇』が封じられている今、他にも封じられている力が存在するかもしれないことだ。
 封印される前、ガミオはこの世を究極の闇で染めてリント達から畏怖される存在になったが、今は違う。もう一人の王・ガドルが存在することによって闇が封印されてしまっている今、他の力が充分に発揮できる保証はなかった。

(どうやら、腕試しが必要だな……)

 ゲゲルの一環として制約が加えられることがある。だが、それを完全に把握しないまま、ガドルの元に向かっても勝てるとは思えない。認めるのは癪だが、今の自分は生まれたての赤子に等しい。これから戦おうとしているのは、何も知らないままで勝てる相手ではなかった。
 それが、世界のルールに従った存在であるかどうかは関係ない。己の力を存在する為の生贄になれば、誰であろうとも構わなかった。

(む……?)

 そんな中、遠くから声が聞こえてくる。ここから離れているが、ンのグロンギは聴覚も常人を遥かに上回っているので、捉えるのは容易だった。
 数人のリントが話していることを察するが、その内容はガミオにとって関心はない。ただ、己を刻む為の駒が現れたとしか思えなかった。
 ガミオはニヤリと笑った後、再び吠える。その姿は、まさに獲物を見つけた獣と瓜二つだった。





「アアアアアアアアアアアオオオオオオオオオォォォォォォォォォォンッ!」

 その叫び声に気付かなかった者はいなかった。
 闇の中から発せられた咆哮によって、周囲に存在するあらゆる物がピリピリと振動する。空気も、植物も、機械も、人も、何一つの例外はない。地震と呼んでも差し支えない衝撃が襲いかかり、ライディングボードを反射的に止めてしまう。
 それを見計らったかのように、次の瞬間には目前の地面が爆発を起こして、熱風が襲いかかった。
 彼らは悲鳴を発するが、それは耳を劈くほどの轟音によって遮られてしまう。そのまま地面に叩きつけられた響良牙に、何が起こったのかを判断する余裕はなかった。

「つぼみ! なのは! 大丈夫か!?」

 素早く起き上がりながら、良牙は叫ぶ。
 爆発の原因よりも、今は守らなければならない少女達の安否が気がかりだった。もしもまた、仲間が失うようなことがあっては今度こそ立ち直れなくなってしまう。
 先程まで木々が生えていた場所は、既に煉獄の炎しか見えない。周囲にどんどん広がっていくことで、良牙の不安が更に膨れ上がっていた。


305 : 歪み ◆LuuKRM2PEg :2014/04/17(木) 21:16:59 gcFP41Io0
「私なら、大丈夫です! 良牙さん! それよりも、なのはさんは……」
「私も大丈夫だよ、つぼみ!」

 しかし、それを杞憂であると証明するように、花咲つぼみと月影なのはが現れる。服は微かに汚れてしまったが、目立った怪我をしなくて済んだようだ。
 彼女達の姿を見て、良牙は胸を撫で下ろす。よく見ると、ライディングボードも無事だった。
 しかしその直後、凄まじい殺意が肌に突き刺さってきたので、安堵することはできなかった。

「なるほど……どうやら、リントどもを屠る力は残っているようだな」

 地の底から響くような不気味な声と共に、灼熱の中から怪物が現れる。
 血に飢えた狼のように瞳からは異様な雰囲気を放ち、全身に備え付けられた装飾品が威圧感を醸し出していた。鎧のように発達した筋肉も赤く染まっていて、どこからどう見ても人間とは思えない。首輪は見当たらないが、敵であることはわかった。
 そして、腹部に備え付けられた金色のバックルが、良牙には見覚えがあった。

「そのバックル……ガドルの野郎と同じ物だ。てめえ、まさか……!?」
「ほう。ガドルを知っているのか」
「やっぱり、ガドルの仲間か!」

 怪物が頷くのを見て、良牙は声を荒げる。
 目の前に現れた怪物……ン・ガミオ・ゼダは、いつきと薫を殺したガドルと同じ未確認生命体だ。この島に残っている未確認はガドルだけだったはずだが、そんなのは関係ない。クウガの敵が他にいるのなら、残された自分の手で倒さなければならなかった。
 良牙はロストドライバーを腰に添えて、T−2エターナルメモリのスイッチに指で触れる。

『Etarnal』

 エターナルメモリから響き渡る音声・ガイアウィスパーに鼓膜が刺激されて、良牙の戦意が刺激された。
 大切な二人をゴミのように殺したガドルへの怒り。そして、そんなガドルに対して何もできなかった自分自身への怒り。絶対に忘れられない二つの激情によって、良牙の目にはガミオとガドルの姿が重なって見えた。そんな相手を生かす選択肢など良牙にはない。
 絶対に仕留めなければならなかった。そんな戦意を燃やしながら、良牙は叫ぶ。

「変身ッ!」
『Etarnal』

 己の感情ごと、エターナルメモリをロストドライバーに力強くセットした。
 メモリは再び鳴り響いた瞬間、良牙の肉体は純白の装甲に覆われていく。蒼い灼熱が四肢で燃え上がり、暗黒色のローブが背中から生成される。仮面ライダーエターナル・ブルーフレアの形態に変身したのだ。
 しかし、本来の姿に慣れたとしても良牙は安堵しない。ただ、胸の中にはガミオへの怒りが暴れまわっていて、それを発散させる為に走り出した。後ろからつぼみとなのはが「良牙さん!」と呼びかけてくるが、それに答えている場合ではない。
 何としてでも、ガミオを倒すことが最優先だった。

「オオオオオリャアアアアアアァァァァァァッ!」
「フンッ!」

 蒼い炎を帯びたエターナルの白い拳と、岩のように巨大なガミオの拳が同時に振われて、そのまま激突した。衝撃によって冷たい空気が振動して、燃え盛る火炎が吹き飛んでしまう。
 しかしエターナルはそれに目を向けずに、握り拳で再びストレートを繰り出して、ガミオの巨体に叩きつけるが、鈍い轟音が響くだけ。ガミオが揺れることはなかった。
 だが、そんなことはエターナルだって百も承知。この程度で倒せる相手だったら、最初からいつきと薫が殺される訳がなかった。二人の無念を考えた瞬間、エターナルの拳に更なる力が込められていく。
 無論、ガミオもただ受けるだけではなく、エターナルの一撃を確実に回避して、そこから反撃の一撃を振るった。唸りをあげながら突き進んでいくが、エターナルは身体を少し右にずらすように避けて、そこからエターナルエッジを振るった。
 コンバットナイフを扱うのは慣れていないので、ただ力に任せただけの斬撃になってしまう。しかし、それでもガミオの固い皮膚を確実に切り裂くことができた。それに確かな手ごたえを感じて、今度はガミオの腕を一閃する。すると、ガミオは呻き声を漏らした。


306 : 歪み ◆LuuKRM2PEg :2014/04/17(木) 21:17:58 gcFP41Io0
「ムッ……!」
「まだまだぁ!」

 エターナルはそれを好機と見て、ひたすらエターナルエッジを放ち続ける。
 一閃。ガミオが繰り出す拳を前に、体勢を低くすることで回避しながら左脇腹を抉る。
 一閃。ガミオの横に回り込んだエターナルは勢いを保ったまま、振り向くのと同時に背中に斬撃を放つ。だが、傷は浅い。
 一閃。瞬時に振り返ったガミオの蹴りが襲いかかるが、エターナルは躱しながらナイフを振るう。
 それはどれも荒々しく、本来の変身者である大道克己に比べればいい加減な形だった。無論、素手で戦ってきた響良牙ではそれも当然で、子どもが遊びで振るっているのと変わらない。もしも、これが剣だったらチャンバラごっこと呼ばれてもおかしくなかった。
 しかし、良牙の誇る戦闘技術及びに腕力。そして、エターナルエッジの切れ味が合わさったからこそ、ガミオにダメージを与えることができていた。
 鋼鉄のような筋肉によって、一撃の威力は期待できない。だが、どんな強度を誇っていようとも数を重ねれば打ち破れるはずだった。それを信じたエターナルは、握り締めたナイフを力強く振るうが――

「ヌオオオオオオオオオオォォォォォォォォォッ!」

 エターナルが神速の勢いで一閃を放つのと同時に、ガミオもまた力任せに拳を放っていた。重い一撃が来ると察するが、途中で攻撃の軌道を修正することはできない。一秒の時間も経たずに衝突して、そのまま弾き飛ばされてしまった。

「ぐあっ!」

 数メートルも宙に浮かぶが、エターナルはすぐに体勢を立て直して着地する。
 エターナルエッジを取りこぼすことはなかったが、その手には稲妻が迸ったような痺れを感じていた。それだけで、ガミオが誇る腕力の凄まじさが窺えてしまう。
 しかし、エターナルにはそれ以上に、疑問が芽生えていた。

「テメエ……さっきのは、手を抜いていやがったな?」
「何故、俺が貴様らリントを相手に全力を尽くさなければならない?」

 ガミオは否定もせずにあっさりと言い放つ。
 その事実を突き付けられて、エターナルの怒りが更に燃え上がった。舐められていることもそうだが、命を奪おうとしている相手のことを見下している態度が許せない。未確認生命体に他人を慈しむ心など微塵も存在しないのはわかっていたが、それでも納得できなかった。
 こんな奴らの為に五代と一条は傷付いて、そして死んだ……そう思うと、やるせなくなってしまう。

「俺達を……舐めるなよ!」

 溜まった鬱憤を晴らすように叫びながら、エターナルは他のT−2ガイアメモリを手に取り出した。
 ウェザーメモリは通用しない。調子に乗ってガドルに使ったせいで痛い目を見たのだから、同じ失敗を繰り返すつもりはなかった。
 ゾーンメモリも意味がない。ガイアメモリを持っていない相手に発動した所で、何になるのか。
 ルナメモリも微妙だ。京水が変身したドーパントを見る限り、腕は伸びるようだが……ガミオにやっても効き目はないだろう。
 だが、グダグダと考える時間などない。まずは、ガドルにも通用した深紅のメモリ・ヒートメモリからだ。

『Heat』
『Heat Maximum Drive』

 ヒートメモリをマキシマムスロットに装填して、ガイアウィスパーを響かせる。メモリに内蔵された熱き記憶が全身に駆け巡って、エターナルの感情がどんどん昂ぶっていった。
 ガミオが突貫してくるが、関係ない。その図体を吹き飛ばしてやるだけだ。

「獅子灼熱咆哮弾ッ!」

 ガドルにも放った灼熱の四肢を、今度はガミオに放つ。それは零距離からの攻撃だった。
 解放されたエネルギーはガミオの巨躯を容赦なく燃やし、そして吹き飛ばしていく。しかし、やはりガミオは倒れなかったが、それはエターナルも充分予想していた。
 今度はメタルメモリを手に取る。メタル……金属を意味するので、未確認を強化させる電撃は含まれていないはずだった。説明書にだって書いていないのだし、試す価値はある。

「どうか、頼むぞ……!」

 ガミオをパワーアップさせないことを祈りながら、メタルメモリをマキシマムスロットに差し込んで、マキシマムを発動させた。


307 : 歪み ◆LuuKRM2PEg :2014/04/17(木) 21:19:20 gcFP41Io0

『Metal』
『Metal Maximum Drive』

 今度はメタルの音声が鳴り響いて、エターナルの全身に闘士の記憶が伝わっていく。
 ウェザーメモリのように暗雲が立ち込めることはなく、身体の奥から力が漲っていた。まるで、鋼鉄に匹敵する頑丈なボディを手に入れたように思えてしまう。

「……フンッ!」

 一方で、ガミオは全身に纏わり付いた灼熱を、気合いで吹き飛ばすのが見えた。だが、筋骨隆々とした肉体は微かに焦げている。仮面の下で目を見開いた瞬間、ガミオは咆哮と共に地面を蹴った。
 その勢いはまさに野生の狼に匹敵していて、避ける余裕はない。なので、エターナルは反射的に拳を振るうしかなかった。

「くそっ!」
「ダアアアァァァァッ!」

 距離が徐々に縮んでいき、両者の拳は激突して、轟音が鳴り響く。
 しかし、その結果は先程とは大きく異なっている。エターナルは数歩ほど後退する一方、ガミオは大きく後ずさっていた。

「「……何ッ!?」」

 この結果に、エターナルも目を疑っている。目の前のガミオも同じだった。
 手ごたえを感じたことに戸惑いながらも、エターナルは追撃する。突き刺さった拳によって、ガミオはまたも後退した。
 それは、T−2メタルメモリの効果だった。闘士の記憶を持つメタルメモリは、使用者を鋼鉄の肉体と怪力を持つ闘士に変化させる効果を持つ。結果、エターナルの肉体に鋼鉄の怪力が増すことになった。
 尤も、それだけで究極の闇であるガミオを倒すことは不可能。いくら力を増したからと言って、ガミオのスペックはエターナルを圧倒的に上回っている。ガミオからすればただの小手調べに過ぎない一撃でも、エターナルの全力に匹敵するのだから。

「リントよ……小細工を使ったとはいえ、少しでも俺に迫ったことだけは称えよう。光栄に思え」
「何だと……!?」

 目前に顕在するガミオからは余裕が感じられる。絶対的強者と言わんばかりの態度が癪に障るが、事実なのだからどうしようもない。
 このまま正面から戦っても勝てる確率は0%だ。格闘では大したダメージにならないし、メモリの力を借りたとしても互角にすら届かない。だからといって相当の鋭さを誇るエターナルエッジも、ガミオの筋肉を貫くことは不可能。
 残った手札はパペティアーのガイアメモリだけだが、これもガミオに通用するのかわからない。なのはは効果を信頼していたが、ガミオを止められるとは限らないし、下手をしたら使う前に妨害されてしまう危険があった。これだけガイアメモリを使った以上、ガミオだって警戒をしてもおかしくない。
 悩みながらも、それを悟られないようにエターナルはガミオと睨み合う。視線が激突する中、ガミオは唐突に右腕を翳して、そこから稲妻を放った。

「……ッ!?」

 唐突の輝きを前に、エターナルの背筋に悪寒が走る。
 ガミオが放った稲妻は凄まじい勢いで突き進んでいき、回避や防御をする暇を与えなかった。このままでは、エターナルは稲妻の餌食になってしまうと、誰もが思うだろう。
 その時だった。

「プリキュア! ピンク・フォルテウェイブ!」
「プリキュア! シルバー・フォルテウェイブ!」

 聞き覚えのある少女達の叫びと同時に、視界の外から桃色と銀色のエネルギーが現れて、ガミオの稲妻を吹き飛ばした。凄まじい爆音が響くと共に、周囲に大量の粉塵が舞い上がっていく。
 エターナルが振り向くと、フラワータクトを構えるキュアブロッサムと、ドレスのようにひらひらとしている白銀のコスチュームを纏った少女と共に立っているのが見えた。

「大地に咲く、一輪の花! キュアブロッサム!」
「月光に冴える、一輪の花! キュアムーンライト!」

 そして、少女達は堂々と名乗りを挙げる。エターナルはその姿に見覚えがあった。
 ガドルとの戦いではつぼみといつきがプリキュアに変身して、ガドルを相手に構えを取っている。だが、いつきはもういない。ならば、キュアムーンライトは変身しているのは……一人しかいなかった。


308 : 歪み ◆LuuKRM2PEg :2014/04/17(木) 21:21:20 gcFP41Io0
「キュアムーンライト……もしかして、なのはなのか?」
「そうですよ、良牙さん……いいえ、エターナル!」

 エターナルの問いかけに、キュアムーンライトは力強く答える。
 その姿がとても頼もしく見えるが、喜びに浸っている場合ではない。戦いは終わった訳ではないし、ガミオから突き刺さってくる殺意は微塵も衰えていないのだから。





 月影なのははキュアムーンライトに変身していた。最愛の姉・月影ゆりの遺志を受け継いで、ココロポットを手にしてガミオの前に立っている。
 キュアムーンライトに変身するようになったのはこれで二度目だ。大道克己が変身した仮面ライダーエターナルとの戦いの末、ゆりのパートナーであるコロンの魂と出会って、認められるようになったことを忘れない。
 今、こうしてまたキュアムーンライトを名乗ったけど、一度目の時とは違って違和感はなくて、むしろ心が満たされていた。姉の衣装を再び着ることができて、嬉しかった。

(姉さんは……この力を、私やお父さんの為に使ってくれた。本当は辛かったはずなのに……)

 ゆりは自分の為に殺し合いに乗って、えりかの命を奪った。本当は彼女だって、そんなことは望んでいないはずだった。姉に望まない殺戮をさせてしまい、そして自分自身もいくつもの命を奪ったことに対して、後ろめたさを感じてしまう。
 だけど、それはこれから償ってみせる。生きているみんなを救う為に、今度こそキュアムーンライトの力を正しく使わなければならなかった。

(お父さん、姉さん、いつき、えりか、源太さん、アインハルト、ヴィヴィオ……見ていてね、私が絶対にみんなを守るから!)

 ここにいない人達に想いを捧げるように、キュアムーンライトは構えを取る。
 隣には友達になった花咲つぼみが変身するキュアブロッサムと、こんな自分を見守ってくれている響良牙が変身する仮面ライダーエターナルがいてくれて、それだけでも非常に頼もしかった。
 かつて、エターナルとは敵対したけど、今のエターナルは克己が望んでいた正義のエターナル。ある意味では、キュアムーンライトと似ている存在かもしれなかった。
 そんな奇妙な偶然を体験したことで、不思議な気持ちになってしまう。

「……お前達、やはりこの世界に存在してはならない者だな」

 相対する深紅の怪物は、唐突にそう呟いた。

「本来の世界では生まれなかったはずの戦士が二人……まさか、こんなにも早く巡り会えるとは」
「はぁ? てめえ、いきなり何だよ?」
「お前達も俺と同じ。殺し合いによって生まれた、この世界にあってはならない歪んだ存在だ……そんな俺達が出会うのも、必然かもしれないな」
「……訳のわからねえことを、ごちゃごちゃ抜かすな!」

 エターナルは激昂する。その気持ちはキュアムーンライトも同じだった。
 怪物は、ここにいるみんなが同じ存在だと言った。どうしていきなりそんなことを口にしたのかはわからないし、肯定する気が微塵も起きない。罪を重ねた自分ならまだしも、誰かの為に戦ってきたエターナルとキュアブロッサムが、怪物と同じなんて絶対にありえなかった。

「あなたとこの二人が同じだなんて、私は思わない!」

 だからキュアムーンライトは、その想いを全力で口にする。


309 : 歪み ◆LuuKRM2PEg :2014/04/17(木) 21:22:52 gcFP41Io0
「エターナルとブロッサム……いいえ、良牙さんとつぼみはいつだって誰かの為に頑張ってきた! そんな二人があなたと同じだなんて、絶対にない!」

 キュアムーンライトは宣言しながら地面を蹴り、ガミオに向かって突貫した。
 距離は瞬時に縮んでいき、一瞬で目前にまで到達する。同時にハイキックを叩きこむが、ガミオは交錯させるように構えた両腕で防いだ。衝突によって、大気が破裂するような轟音が響き渡る中、キュアムーンライトは反対側の脚でキックを繰り出す。それはガミオの肉体に到達するが、手ごたえはない。
 今度はガミオが拳を振るってくるが、キュアムーンライトは跳躍することで回避する。だが、それで終わることはない。
 キュアムーンライトを見上げてくるガミオは、発達した右腕を向けてきたのだ。

「受けろッ!」

 咆哮と共に、雷撃が襲いかかる。
 闇を照らす邪な光はバリバリと音を鳴らして、辺りの植物ごと空気を焼いていく。しかしキュアムーンライトは微塵も動揺せずに、両腕を真っ直ぐに向けながら叫んだ。

「ムーンライト・リフレクション!」
 
 宣言と共に掌から白銀のバリアが生じたことにより、ガミオの稲妻から守られる。
 これは、ゆりが生前に何度も行った防御技だ。キュアサンシャインのように、空の輝きを力に変えてたくさんの人を守ったのだ。
 しかし、ガミオの放つ光の威力も凄まじく、両腕に振動を感じてしまう。この身体を守る盾にも亀裂が生じていて、破られるのは時間の問題だった。
 だが、キュアムーンライトは悲観していない。

「はああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「おりゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 キュアブロッサムとエターナルは打撃を与え続ける。
 スピードを重視したキュアブロッサムと、パワーを重視したエターナル。どちらの一撃も、ガミオの肉体に突き刺さっていた。
 ガミオも四肢をフルに活用して反撃を繰り出してくる。だが、ある一撃は軽々と避けられてしまい、ある一撃はエターナルローブに遮られてしまう。一方で、二人は重い一撃を見切りながらガミオに攻撃を続けていた。
 一進一退とも呼べる状況だが、これはチャンスでもある。それを確信したキュアムーンライトは、地面に着地すると同時にムーンタクトを再び握り締めた。

「花よ、輝け! プリキュア! シルバーフォルテ・ウェイブ!」

 彼女の叫びによって、ムーンタクトの先端から銀色のエネルギーは解放されて、射線上にいたエターナルとキュアブロッサムは横に跳躍する。その結果、残ったガミオは飲み込まれるしかなかった。
 しかし、ムーンタクトを握る両手からは圧力が襲いかかる。ガミオの抵抗に表情を顰めながらも、キュアムーンライトは他の二人に目を向けた。

「エターナル、ブロッサム! 今よ!」
「ああ!」
「わかりました!」

 エターナルとキュアブロッサムはすぐに頷く。
 その勢いを保ったまま、二人はそれぞれの武器を手に取った。キュアブロッサムはブロッサムタクトを、エターナルはエターナルメモリを。

「花よ、輝け! プリキュア! ピンクフォルテ・ウェイブ!」
『Etarnal Maximum Drive』

 ブロッサムタクトから桃色に輝く花のエネルギーが放たれるのと同時に、エターナルメモリからガイアウィスパーが響き渡る。エターナルはマキシマムドライブを発動しようとしているのだ。
 姉の命を奪った一撃が、今度は妹である自分を守る為に使われる。それは複雑な気持ちだったが、同時に頼もしさも感じていた。

「はああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「はああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「うおおおおぉぉぉぉぉぉりゃああああああああっ!」

 キュアムーンライトとキュアブロッサムのフォルテ・ウェイブがガミオを圧倒し、そのエネルギーを上乗せするようにエターナルは跳躍して、エターナル・レクイエムを放つ。
 膨大な力が込められたキックはガミオの肉体に到達した後、その反動を利用したエターナルは宙返りをしながら地面に降りた。彼の一撃によってガミオは体勢を崩し、そのまま大爆発を起こす。
 爆音を響かせながら大気は荒れ狂い、周囲の植物を無差別に振動させていく。ほんの一瞬だけ周りが照らされたが、またすぐに闇で包まれてしまう。
 これでガミオは倒れるか? 一瞬だけそんな期待が芽生えたが、すぐに打ち砕かれてしまう。何故なら、ガミオはすぐに立ち上がったからだ。


310 : 歪み ◆LuuKRM2PEg :2014/04/17(木) 21:23:47 gcFP41Io0

「フハハハハハハハ……面白いな、リント達よ」

 ガミオは平然と笑っている。
 数えるのも馬鹿馬鹿しくなる程の打撃を与えて、三人で力を合わせて必殺技も叩き込んだ。それによるダメージも半端ではないはずなのに、ガミオから放たれる戦意は微塵も衰えていない。
 その瞳は未だにギラギラと輝いていた。

「やはり、目覚めた甲斐があったか……お前達のような望まれない存在は、やはり比類なき力を誇っている。お前達と戦うことで俺の存在も刻まれて、お前達の価値も証明されている」
「いいえ、違います!」

 ガミオの言葉を否定するのは、キュアブロッサムだった。

「二人は……エターナルとムーンライトは歪んでもいなければ、誰にも望まれていない訳がありません! だって、二人のことを想ってくれている人がたくさんいますから!」
「だが、本来のそれらは歪んだ目的に使われた力……これが何故、正しいと言える?」
「過去を反省して、今を生きているからです! エターナルもムーンライトも、正しく使われるようにチェンジしました! それを否定するなんて……私、堪忍袋の緒が切れました!」

 まるでキュアムーンライトの気持ちを代弁するように、彼女は大きく叫ぶ。
 一方のガミオは何も感じないで、当たり前のように聞き流しているようにしか見えなかった。やはり未確認生命体は、かつてのダークプリキュアのように人を思いやる心を持っていない。ガドルもガミオもそうだ。
 ガミオの態度がキュアブロッサムの言葉が冒涜されているように見えて、キュアムーンライトは視線に怒りを込める。その時だった。

「たああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 殺気と共に、この場に新たなる叫びが割り込んでくる。
 それに気付いたキュアムーンライトが振り向いた先では、翼を生やした青い怪人が闇の中から姿を現すのが見えた。凄まじい速度で飛翔するその怪人は、一瞬でエターナルの身体にしがみつく。
 反攻の余裕など与えないとでも言うように飛び上がり、二人は木々の間に消えていった。

「なっ、てめえ……!」

 エターナルの抵抗する声が聞こえてくるが、それは怪物の叫びに掻き消されてしまう。
 キュアブロッサムとキュアムーンライトはエターナルの名前を呼ぶが、返答はなかった。怪人……ナスカ・ドーパントのスピードも凄まじかったので、追いつくのは難しそうだった。

「……グロンギではない、殺し合いによって生まれた存在か」

 そんな中、ガミオは思い当ることがあるかのように呟く。

「あれも面白そうだが……今はお前達からだ。さあ、来るがいい!」

 ガミオは吠える。
 どうやら、逃がすつもりも戦いをやめるつもりもなさそうだ。エターナルは心配だけど、まずはガミオを倒さなければならないと、瞬時に察する。
 ン・ガミオ・ゼダを前にしたキュアムーンライトとキュアブロッサムは、静かに構えを取った。


【1日目/夜中】
【D―8/森】


311 : 歪み ◆LuuKRM2PEg :2014/04/17(木) 21:26:01 gcFP41Io0
【花咲つぼみ@ハートキャッチプリキュア!】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、加頭に怒りと恐怖、強い悲しみと決意、デストロン戦闘員スーツ着用、キュアブロッサムに変身中
[装備]:プリキュアの種&ココロパフューム、プリキュアの種&ココロパフューム(えりか)@ハートキャッチプリキュア!、こころの種(赤、青、マゼンダ)@ハートキャッチプリキュア!、ハートキャッチミラージュ+スーパープリキュアの種@ハートキャッチプリキュア!
[道具]:支給品一式×5(食料一食分消費、(つぼみ、えりか、三影、さやか、ドウコク))、鯖(@超光戦士シャンゼリオン?)、スティンガー×6@魔法少女リリカルなのは、破邪の剣@牙浪―GARO―、まどかのノート@魔法少女まどか☆マギカ、大貝形手盾@侍戦隊シンケンジャー、反ディスク@侍戦隊シンケンジャー、デストロン戦闘員スーツ(スーツ+マスク)@仮面ライダーSPIRITS、デストロン戦闘員マスク(現在着ているものの)、着替え、『ハートキャッチプリキュア!』の漫画@ハートキャッチプリキュア!、姫矢の首輪、大量のコンビニの酒
[思考]
基本:殺し合いはさせない!
0:今はキュアムーンライトと一緒に怪物(ガミオ)と戦う。
1:良牙、“なのは”とともに警察署に向かう。
2:この殺し合いに巻き込まれた人間を守り、悪人であろうと救える限り心を救う
3:南東へ進む、18時までに沖たちと市街地で合流する(できる限り急ぐ)
4:……そんなにフェイトさんと声が似ていますか?
[備考]
※参戦時期は本編後半(ゆりが仲間になった後)。少なくとも43話後。DX2および劇場版『花の都でファッションショー…ですか!? 』経験済み
 そのためフレプリ勢と面識があります
※溝呂木眞也の名前を聞きましたが、悪人であることは聞いていません。鋼牙達との情報交換で悪人だと知りました。
※良牙が発した気柱を目撃しています。
※プリキュアとしての正体を明かすことに迷いは無くなりました。
※サラマンダー男爵が主催側にいるのはオリヴィエが人質に取られているからだと考えています。
※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました。
※この殺し合いにおいて『変身』あるいは『変わる事』が重要な意味を持っているのではないのかと考えています。
※放送が嘘である可能性も少なからず考えていますが、殺し合いそのものは着実に進んでいると理解しています。
※ゆりが死んだこと、ゆりとダークプリキュアが姉妹であることを知りました。
※大道克己により、「ゆりはゲームに乗った」、「えりかはゆりが殺した」などの情報を得ましたが、半信半疑です。
※所持しているランダム支給品とデイパックがえりかのものであることは知りません。
※主催陣営人物の所属組織が財団XとBADAN、砂漠の使徒であることを知りました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを全て知りました。
※良牙、一条、鋼牙と125話までの情報を交換し合いました。
※全員の変身アイテムとハートキャッチミラージュが揃った時、他のハートキャッチプリキュアたちからの力を受けて、スーパーキュアブロッサムに強化変身する事ができます。
※ダークプリキュア(なのは)にこれまでのいきさつを全部聞きました。




【月影なのは(ダークプリキュア)@ハートキャッチプリキュア!】
[状態]:健康、人間化、キュアムーンライトに変身中。
[装備]:プリキュアの種&シャイニーパフューム@ハートキャッチプリキュア!、プリキュアの種&ココロポット(ゆり)@ハートキャッチプリキュア!
[道具]:支給品一式×5(ゆり、源太、ヴィヴィオ、乱馬、いつき(食料と水を少し消費))、ゆりのランダムアイテム0〜2個、ヴィヴィオのランダムアイテム0〜1個(戦闘に使えるものはない)、乱馬のランダムアイテム0〜2個、パワーストーン@超光戦士シャンゼリオン、ふうとくんキーホルダー@仮面ライダーW、霧彦のスカーフ@仮面ライダーW、須藤兄妹の絵@仮面ライダーW、霧彦の書置き、山千拳の秘伝書@らんま1/2、水とお湯の入ったポット1つずつ、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはシリーズ、ガイアメモリに関するポスター×3、『太陽』のタロットカード、大道克己のナイフ@仮面ライダーW、春眠香の説明書、ガイアメモリに関するポスター
[思考]
基本:罪を償う。その為にもプリキュアとして戦う。
0:今はキュアブロッサムと一緒に怪物(ガミオ)と戦う。
1:つぼみ、良牙とともに警察署に向かう。
2:姉さんやいつきのようにプリキュアとして戦う。
3:源太、アインハルト…。


312 : 歪み ◆LuuKRM2PEg :2014/04/17(木) 21:27:25 gcFP41Io0
[備考]
※参戦時期は46話終了時です
※ゆりと克己の会話で、ゆりが殺し合いに乗っていることやNEVERの特性についてある程度知りました
※時間軸の違いや、自分とゆりの関係、サバーク博士の死などを知りました。ゆりは姉、サバークは父と認めています。
※筋肉強化剤を服用しました。今後筋肉を出したり引っ込めたりできるかは不明です(更に不明になりました)。
※キュアムーンライトに変身することができました。衣装や装備、技は全く同じです。
※エターナル・ブルーフレアに変身できましたが、今後またブルーフレアに変身できるとは限りません。
※警察署内での大規模な情報交換により、あらゆる参加者の詳細情報や禁止エリア、ボーナスに関する話を知りました。該当話(146話)の表を参照してください。
※心が完全に浄化され、プリキュアたちの力で本当の人間の体を手に入れました。かつてほどの戦闘力は失っている可能性が高いと思われますが、何らかの能力があるのか、この状態では無力なのか、その辺りは後続の書き手さんにお任せします。顔や体格はほとんどダークプリキュアの時と同じです。
※いつきにより、この場での仮の名前として「月影なのは」を名乗る事になりました。
※つぼみ、いつきと“友達”になりました。
※いつきの支給品を持っています。
※プリキュアとして戦うつもりでいます。



【ン・ガミオ・ゼダ@仮面ライダークウガ?】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(小)
[装備]:?????????
[道具]:?????????
[思考]
基本:この世界に存在する。そして己を刻む。
0:腕試しの為、目の前のリント達(キュアブロッサム、キュアムーンライト)と戦う。
1:ガドルを倒し、究極の闇を齎す者となる。そして己の力と存在を証明する。
2:この世界にいてはならない者を──。
[備考]
※この殺し合いやこの「クウガの世界」について知っているかのような発言をしています。
※黒い霧(究極の闇)は現在使用できません。もう一人のグロンギの王を倒して初めてその力を発現するようです。
※この世界にいてはならない者とは、ロワのオリ要素や、設定上可能であっても原作に登場しなかった存在の事です(小説版クウガも例外ではありません)。
※仮面ライダーエターナル、キュアムーンライト、ナスカ・ドーパントを「この世界にいてはならない者」と思っています。
※首輪は存在しません。






313 : 歪み ◆LuuKRM2PEg :2014/04/17(木) 21:29:03 gcFP41Io0
 叫び声を追いかけていたナスカ・ドーパントが見たのは、二人の少女とあの仮面ライダーエターナルが謎の怪物と戦っている場面だった。
 赤い怪物のベルトに存在するバックルはあのダグバと全く同じ。だから、あの怪物がガドルかもしれない。実際、三人同時を相手にしても有利に戦っていて、ダグバに匹敵する力を誇っていた。
 キュアピーチやキュアベリーの仲間に見える少女達が、どうしてあの仮面ライダーエターナルと力を合わせているのかという疑問はある。だけど、今はどうでもいいことだった。
 ガドル(ナスカ・ドーパントがそう思っているだけで、実際はガミオ)を殺してしまいたいが、まともに戦っても勝てる見込みはない。だからといって、三人に加勢をしても有利になるとは思えなかった。逃げる選択肢もあるが、それでは優勝への道が遠ざかってしまう。
 キルスコアを稼ぐなら、仮面ライダー二号の時のように分断させるしかなかった。仮面ライダーエターナルには借りがあるのだから、憎しみの鬱憤晴らしには最適だし、何よりも負ける気がしない。

「やあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 ナスカ・ドーパントの振るうナスカブレードが、エターナルの胸板を横に一閃する。
 エターナルは呻き声と共によろめいたので、ダメージになっていた。その反応に愉悦を感じてしまい、ナスカ・ドーパントは更に得物を振るう。だが、エターナルもただ受けているだけではなかった。

「おりゃああああぁぁぁぁっ!」

 咆哮と共にエターナルは拳を振るうが、ナスカブレードでそれを受け止める。しかし、その衝撃が凄まじすぎて、ナスカ・ドーパントは吹き飛んでしまった。咄嗟にナスカウイングを展開させて、空中で体勢を立て直す。
 そこからゆっくりと地面に着地して、ナスカブレードを握り締めた。だが。

「てめえ……いきなり何だ!? 俺の邪魔をするんじゃねえ!」

 エターナルのマスクから響いた叫び声によって、力が緩んでしまう。
 その声は、前に出会った時とは明らかに違う。ほんの少しだけ籠って聞こえるけど、その声はナスカ・ドーパント……いや、天道あかねにとって聞き覚えがあった。
 この声は誰なのか? それを思い出そうとするが、思い出せない。誰の声なのかはわからないけど、知っている。そんな確信があったけど、顔が思い浮かばなかった。
 知っているはずなのに、わからない。あと少しだけど思い出せない。もどかしくなるだけで、思い出せない。疑問と葛藤によって心が大きく揺れてしまい、ナスカ・ドーパントの動きは止まってしまったのだ。

「……あなたは、一体……?」
「はぁ? お前は一体……何がしたいんだよ!?」

 ナスカ・ドーパントに対するエターナルの問いかけは怒号。
 決して長くない言葉だが、それは心に深く突き刺さっていた。
 やっぱり、この声を知っている。元の日常で何度も聞いた声だけど、誰の声なのかは思い出せない。お姉ちゃん達でもないし、お父さんでもないし、男子生徒達でもないし、九能先輩や校長でもないし、東風先生でもなかった。
 頭の中には思い浮かばないはずだけど、知っている。だけど、やっぱり思いだせなかった。

「……あ、あ、あ、あ、あ、あ……!」

 ナスカ・ドーパントは頭を抱えてしまう。致命的な隙を晒しているとは考えられなかった。
 エターナルは勿論のこと、ダグバやガドルのことを憎んでいた。だけど、この声を聞いたことで憎しみが揺らいでしまった。優勝したいのは変わらないし、今だってガドルのことを殺したいと思っているのに、この声を聞いた途端に奇妙な違和感が芽生えてしまう。
 それを振り払う為にナスカブレードを振うが、呆気なく避けられてしまう。二度、三度と続けても同じだった。感情が揺れる中で力任せに振り回しても、当たる訳がない。
 苛立ちが募っていく中、エターナルが背後に跳んだことで距離が開いてしまう。その距離を縮める為に、ナスカ・ドーパントは走るが──

「獅子、咆哮弾ッ!」

 エターナルの両腕から気の塊が放出される。それを前に急ブレーキをかけた後、ナスカ・ドーパントは咄嗟に回避行動を取った。
 行き場を無くしたエネルギーは大木を破壊して、そのまま四散する。もしも命中したら、ダメージは避けられないはずだった。
 しかし、今の技に対する警戒は芽生えていない。むしろ、懐かしさすらあった。何故ならこの技も、あかねにとって見覚えがあるからだ。
 元の日常にいる誰かが、不幸をエネルギー源にしたこの技で誰かと喧嘩をしていた。その二人はいつも喧嘩ばかりしていたけど、友情があったのは確かだった。
 でも、その二人が誰なのかは思いだせない。喉まで出かかっているのに、顔が思い浮かばなかった。


314 : 歪み ◆LuuKRM2PEg :2014/04/17(木) 21:31:20 gcFP41Io0
「……獅子、咆哮……誰なの……誰なの……誰なの……!?」
「お前……一体、何なんだ?」

 エターナルの言葉に、ナスカ・ドーパントは何も答えられない。エターナルに対する闘争の意識がまたしても揺らいでいるからだ。
 しかし、戦いは未だに続いている。勢いは弱まっているが、ナスカ・ドーパントは再び剣を振るった。
 二人は知らなかった。エターナルに変身している響良牙は、目の前にいるナスカ・ドーパントが天道あかねの変身した姿であることを知らない。また、ナスカ・ドーパントこと天道あかねも、目の前にいるエターナルが響良牙の変身した姿であることを知らない。
 いや、もしかしたら事実から目を背けているだけかもしれない。これまで、早乙女乱馬と良牙のことを忘れようとしていたが、その場凌ぎに過ぎなかった。
 一度でも罪を犯してしまえば、償わない限り解放されることはない。例えどれだけ逃げたとしても消える訳ではないし、人の心を苦しめてしまう。ようやく己の罪と向き合う時が近づいてきたのだ。
 天道あかねと響良牙は運命の再会を果たしている。だが、二人はまだそれを認識していない。一人は苦しみ、一人は困惑している。真実を知るのは主催者しかいなかった。


【1日目/夜中】
【D―8/森】

【響良牙@らんま1/2】
[状態]:全身にダメージ(大)、負傷(顔と腹に強い打撲、喉に手の痣)、疲労(大)、腹部に軽い斬傷、五代・乱馬・村雨の死に対する悲しみと後悔と決意、男溺泉によって体質改善、デストロン戦闘員スーツ着用、ナスカ・ドーパントに対する困惑、仮面ライダーエターナルに変身中
[装備]:ロストドライバー+エターナルメモリ@仮面ライダーW、T2ガイアメモリ(ゾーン、ヒート、ウェザー、パペティアー、ルナ、メタル)@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式×16(食料二食分消費、(良牙、克己、一条、五代、十臓、京水、タカヤ、シンヤ、丈瑠、パンスト、冴子、シャンプー、ノーザ、ゴオマ、速水、バラゴ))、水とお湯の入ったポット1つずつ×3、志葉家のモヂカラディスク@侍戦隊シンケンジャー、ムースの眼鏡@らんま1/2 、細胞維持酵素×6@仮面ライダーW、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、歳の数茸×2(7cm、7cm)@らんま1/2、デストロン戦闘員マスク@仮面ライダーSPIRITS、プラカード+サインペン&クリーナー@らんま1/2、呪泉郷の水(娘溺泉、男溺泉、数は不明)@らんま1/2、呪泉郷顧客名簿、呪泉郷地図、特殊i-pod、克己のハーモニカ@仮面ライダーW、バッドショット+バットメモリ@仮面ライダーW、スタッグフォン+スタッグメモリ@仮面ライダーW、テッククリスタル(シンヤ)@宇宙の騎士テッカマンブレード、スパイダーショック+スパイダーメモリ@仮面ライダーW、まねきねこ@侍戦隊シンケンジャー、滝和也のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS、黒子の装束@侍戦隊シンケンジャー、『戦争と平和』@仮面ライダークウガ、『長いお別れ』@仮面ライダーW、インロウマル&スーパーディスク@侍戦隊シンケンジャー、紀州特産の梅干し@超光戦士シャンゼリオン、ムカデのキーホルダー@超光戦士シャンゼリオン、双眼鏡@現実、ランダム支給品1〜6(ゴオマ0〜1、バラゴ0〜2、冴子1〜3)、バグンダダ@仮面ライダークウガ
[思考]
基本:天道あかねを守り、自分の仲間も守る
0:こいつ(ナスカ・ドーパント)は一体……?
1:あかねさん…
2:つぼみ、“なのは”とともに警察署に向かう。
3:いざというときは仮面ライダーとして戦う。場合によってはあかねも…。


315 : 歪み ◆LuuKRM2PEg :2014/04/17(木) 21:32:29 gcFP41Io0
[備考]
※参戦時期は原作36巻PART.2『カミング・スーン』(高原での雲竜あかりとのデート)以降です。
※夢で遭遇したシャンプーの要望は「シャンプーが死にかけた良牙を救った、乱馬を助けるよう良牙に頼んだと乱馬に言う」
「乱馬が優勝したら『シャンプーを生き返らせて欲しい』という願いにしてもらうよう乱馬に頼む」です。
尚、乱馬が死亡したため、これについてどうするかは不明です。
※ゾーンメモリとの適合率は非常に悪いです。
※エターナルでゾーンのマキシマムドライブを発動しても、本人が知覚していない位置からメモリを集めるのは不可能になっています。
(マップ中から集めたり、エターナルが知らない隠されているメモリを集めたりは不可能です)
※主催陣営人物の所属組織が財団XとBADAN、砂漠の使徒であることを知りました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを全て知りました。
※つぼみ、一条、鋼牙と125話までの情報を交換し合いました。
※男溺泉に浸かったので、体質は改善され、普通の男の子に戻りました。
※エターナル・ブルーフレアに変身できるようになりました(ただし彼の人間としての迷いや後悔がレッドフレアにしてしまう事もあります)。
※あかねが殺し合いに乗った事を知りました。


【天道あかね@らんま1/2】
[状態]:ファウストの力注入による闇の浸食(進行中)、肉体内部に吐血する程のダメージ(回復中)、ダメージ(大・回復中)、疲労(大)、精神的疲労(大)、胸骨骨折、
    とても強い後悔、とても強い悲しみ、ガイアメモリによる精神汚染(進行中)、伝説の道着装着中、自己矛盾による思考の差し替え、夜の森での一人歩きが少し怖い模様、困惑、ナスカ・ドーパントに変身中。
[装備]:伝説の道着@らんま1/2、T2ナスカメモリ@仮面ライダーW、T2バイオレンスメモリ@仮面ライダーW、バルディッシュ(待機状態、破損中)@魔法少女リリカルなのは、二つに折れた裏正@侍戦隊シンケンジャー
[道具]:支給品一式×2(あかね、溝呂木)、首輪×7(シャンプー、ゴオマ、まどか、なのは、流ノ介、本郷、ノーザ)、女嫌香アップリケ@らんま1/2、斎田リコの絵(グシャグシャに丸められてます)@ウルトラマンネクサス、evil tail@仮面ライダーW、拡声器、双眼鏡、溝呂木のランダム支給品1〜2
[思考]
基本:"東風先生達との日常を守る”ために”機械を破壊し”、ゲームに優勝する
0:エターナルを倒したい……けど……
1:ガドルを倒す。
2:ダグバが死んだ…。
[備考]
※参戦時期は37巻で呪泉郷へ訪れるよりは前、少なくとも伝説の道着絡みの話終了後(32巻終了後)以降です。
※伝説の道着を着た上でドーパントに変身した場合、潜在能力を引き出された状態となっています。また、伝説の道着を解除した場合、全裸になります。
 また同時にドーパント変身による肉体にかかる負担は最小限に抑える事が出来ます。但し、レベル3(Rナスカ)並のパワーによってかかる負荷は抑えきれません。
※Rナスカへの変身により肉体内部に致命的なダメージを受けています。伝説の道着無しでのドーパントへの変身、また道着ありであっても長時間のRナスカへの変身は命に関わります。
※ガイアメモリでの変身によって自我を失う事にも気づきました。
※第二回放送を聞き逃しています。 但し、バルディッシュのお陰で禁止エリアは把握できました。
※バルディッシュが明確に機能している事に気付いていません。
※殺害した一文字が機械の身体であった事から、強い混乱とともに、周囲の人間が全て機械なのではないかと思い始めています。メモリの毒素によるものという可能性も高いです。
※黒岩によりダークファウストの意思を植えつけえられました。但し、(死亡しているわけではないので)現状ファウスト化するとは限りません。
 あかねがファウストの力を受ける事が出来たのは肉体的なダメージが甚大だった事によるものです。なお、これらはファウストの力で回復に向かっています。
 完全にファウスト化したとは限らない為、現状黒岩の声が聞こえても洗脳状態に陥るとは限りません。
※二号との戦い〜メフィスト戦の記憶が欠落しています。その為、その間の出来事を把握していません。但し、黒岩に指摘された(あかね自身が『機械』そのものである事)だけは薄々記憶しています。
※様々な要因から乱馬や良牙の事を思考しない様になっています。但し記憶を失っているわけではないので、何かの切欠で思考する事になるでしょう。
※獅子咆哮弾を見たことによって、意識に揺らぎが生じています。
※ガミオのことをガドルだと思い込んでいます。


316 : ◆LuuKRM2PEg :2014/04/17(木) 21:33:01 gcFP41Io0
以上で投下終了です。
問題点などがありましたら指摘をお願いします。


317 : 名無しさん :2014/04/18(金) 23:04:59 0RuZUrQc0
投下乙です
ついに出会ってしまったか
良牙とあかね、ここからどうなるだろうなあ


318 : 名無しさん :2014/04/19(土) 15:47:07 n8bkygus0
投下乙です

ガミオとあかねが出会うかなあと思ったらそこに良牙らが加わってそういう組み合わせになったか
ガミオVSプリキュアらも気になるが一番気になるのは…
ここから先はどうなるか…


319 : 名無しさん :2014/04/21(月) 17:20:36 pSiUfWQk0
良牙とあかねの予約が来てるぞ


320 : 名無しさん :2014/04/21(月) 23:44:45 uJiLUBZo0
予約来た
対主催チームが本格的に集まるかな?


321 : ◆LuuKRM2PEg :2014/04/22(火) 21:54:32 WMW1uDBM0
以前投下した拙作「壊れゆく常識」の修正版を修正スレに投下させて頂いたことを報告します。


322 : ◆7pf62HiyTE :2014/04/23(水) 20:35:52 JdJSZ5lk0
響良牙、天道あかね分投下します。


323 : Pに翼/OAR ◆7pf62HiyTE :2014/04/23(水) 20:38:59 JdJSZ5lk0
PART.1 対決

 エターナルのセンサーは伝える。後方で今も響く戦いの音を。
 その仮面の下で響良牙は考える。

「(マズイぜコイツは……)」

 後方では突如襲撃してきたゴ・ガドル・バと同じ未確認生命体の狼の怪人と花咲つぼみ及びダークプリキュア改め月影なのはが交戦中なのだ。
 その真の実力は不明瞭、だがガドルに匹敵する力を持つと考えて良い。
 自分達が総力を挙げても倒せない相手であるガドル、それと互角並と考えるならば、幾ら仲間、友人あるいは家族から受け継いだ4人分もしくはそれ以上のプリキュアの力を持つ2人といえども楽観視は出来ない。

 やはりここで戦力を分断されたのは非常に痛い事態だ。

「(今すぐにでもコイツを振り切って戻りてぇが……)」

 そう、良牙にはそれが出来ない理由があった。それは 方 向 音 痴 である。
 筋金入りの方向音痴である良牙、彼は例え家の中であっても迷子になるという致命的なレベルな方向音痴なのだ。
 故に、すぐ近くの戦場といえども戻れる可能性は低い。実際、この地でもそれで仲間達に多大な迷惑を掛けたのを自覚している。

「(となると……)」

 そう言って、青き翼を持つ怪人の方に意識を傾ける。
 突如として戦場に現れ、自身を連れ去ったその怪人へと。
 何故か頭を抱えて苦しんでいるその怪人へと。

 その正体が自身が探していた少女、天道あかねだという事を知らぬまま――


「おいテメェ、あの狼野郎の仲間か!?」
「ううっ……アイツの仲間……ガドル……そんなわけないでしょ!!」
「ガドル? ちょっと待てアイツはガドルじゃね……いや、そんな事は今は関係ねぇ、だったらここは一時休戦しねぇか?」
「は?」

 突然の提案にクエスチョンマークを浮かべる青き怪人ナスカ・ドーパントである。

 良牙は考えた。何故青き怪人は自分を真っ先に狙ったのか?
 戦力を分断した上で各個撃破を狙うのは有用な手法だ。だが何故その相手として自分を選んだのか?
 普通に考えるならば、つぼみの変身したキュアブロッサムあるいはなのはの変身したキュアムーンライトの方が外見的には弱い。
 故に標的はそのどちらかだろうが青き怪人が狙ったのは良牙の変身しているエターナルだ。
 プリキュアの力を知っているとしても迷うこと無くエターナルを選ぶ理由にはなり得ない。
 だが、良牙はその理由に推測が付いていた。

「大方、あの2人じゃなく俺を狙ったのは……コイツ、エターナルに恨みでもあるんだろう」

 かつてのエターナル大道克己は殺し合いに乗っていた。ならば彼に襲撃された事を根に持ったという事は想像に難くない。

「だったら、あの狼野郎を倒した後で幾らでも相手してやる。あの狼野郎はテメェ一人じゃ勝てる相手じゃねぇ、俺達が力合わせなきゃ……」
「何よ……バカにしないでよ!!」

 実の所、数度ナスカ・ドーパントの攻撃に対処した時点で大体の実力は把握出来ていた。
 単純な格闘技術だけならば恐らく自分や早乙女乱馬以上、しかしエターナルに変身した今となっては相手が幾ら怪人の力を持っていると言えど全く負ける気がしなかったのだ。
 正直な所、良牙は弱い相手を嬲る様な趣味は無い。しかもその言葉使いから正体は女性、そんな相手に本気で戦う気など起きなかった。


324 : Pに翼/OAR ◆7pf62HiyTE :2014/04/23(水) 20:39:59 JdJSZ5lk0

「バカにしているわけじゃねぇが……大体、そんな調子で優勝出来ると思ってるのか?」
「……何か悪いものでも食べたの? ……さっきと全然キャラが違うけど……」
「ちっ……やっぱりそういう事か……テメェがさっき会ったエターナルは俺じゃねぇ」
「ウソツキ、どうせみんな同じ機械に決まっているわ」

 天道あかねは致命的なまでに鈍い。頭は決して悪くはないがそれはイコール察しが良いという事にはならない。
 それは少し前に佐倉杏子が『知り合い』の話として口にした話を他の連中は杏子自身の話だと気付いていても彼女自身は最後までその事に気付いていなかった事からも明らかだ。
 故に、エターナルの中身が違う事など全く想像出来ていない。いや、確かに声は違う――だがあかねはそれを振り払った。
 だからこそ中身が同じ『機械』だと断じたのだ、声が微妙に違うのも故障しただけなのだろう。

「機械? 何言ってやがる……?」
「どうしてアンタがプリキュア2人と組んでいるかまでは知らないけどあの2人だって人間じゃ無い……只の機械よ……だから壊しても……」

 その言葉を聞いて、良牙の中で何かが切れた。

「……!!」
「何……?」

 良牙はそれを容認する事が出来なかった。
 大道にしろなのはにしろ(普通の人間とは言い難いが)機械では無いと言いたいわけじゃない。
 良牙がこの地で出会った男、村雨良、彼は全身がほぼ機械化された改造人間だ。彼はある意味『機械』と言っても差し障りは無い。
 だが、短い付き合いだったとはいえ彼は彼なりに怒り哀しみそして最期には笑顔で逝ったのを良牙は知っている。
 そして偶然が重なり出会ったマッハキャリバー、彼はいわゆる魔術師を補佐する為のデバイス、まさしく『機械』でしかない。
 だが、彼は自らの冒した罪に嘆き哀しみ苦しんだのを良牙は知っている。
 『機械』であっても彼等が必死に足掻き生き続けていたあるいは生きている事に違いは無い。
 そして『機械』ではなくても作られた生命であるダークプリキュアも創造主いや父親あるいは家族の為に殺人を犯し苦しみながらも最期には奇跡が起こり新たな生命を得て月影なのはとして転生しその罪を胸に生きようとしている。
 また、人ならざるクウガの力を得た五代雄介、そしてそれを受け継ぎ笑顔を守る為に戦い散っていった一条薫、
 そして一度命を失い人としての感情や記憶を失いつつもあがき続けた大道克己と泉京水、

 彼等はある意味『機械』と言えるだろう。だが、彼等の生き様は人間となんら遜色の無いものである事もまた事実。
 それを『機械』だと断じて壊す? そんな事が許されるわけが――

 いや、良牙はそんな難しい事など全く考えていない。そう、上述の説明など存在していないのと同じだ。
 良牙が考えたのはたった1つのシンプルな事、

「なのはや良……あいつらに対する暴言、許さーん! 殺す!」

 そう、彼等に対する暴言が許せない。それだけの話だ。それだけで倒す理由は十分だ。

 その言葉と共に一気にナスカ・ドーパントへと間合いを詰める。

「そう……ようやくやる気になったのね……でもあの時と同じだと思ったら大間違いよ!!」


325 : Pに翼/OAR ◆7pf62HiyTE :2014/04/23(水) 20:40:35 JdJSZ5lk0





PART.2 続・対決

 ――マッハキャリバーは左翔太郎に問う。

『響が変身したエターナルと、天道あかねが変身したナスカ・ドーパント、実際に戦ったらどっちが勝つかって?』
『Yes』
『……そうだな、まずエターナルの力自体はエクストリームの力を得たWよりも圧倒的に上だ。そして、赤いナスカもエクストリームでも手を焼く程のパワーとスピードを持つ……そういう意味じゃどちらも敵に回したら厄介な相手だ』
『Which wins?(では、どちらが?)』
『勿論、並のドーパントならエターナルと勝負にすらならねぇが……赤いナスカなら勝機もあるだろう……だがな』
『What?』
『戦いなんてのはな、メモリの力だけで決まるわけじゃねぇ。天道あかねの変身したナスカは伝説の道着のお陰で冴子や霧彦以上の戦闘力を発揮している……
 そして響の変身したエターナル……もし、響の格闘能力を合わせた上で、エターナルの力を最大限に発揮できたならば……もしかすると大道以上のエターナルになるかも知れねぇ……
 勿論、エターナルの力を発揮出来なきゃ、当然俺達の知るエターナルと比べものにならない程弱くなるだろうがな……』
『It is a difficult(難しい話ですね)』
『戦いなんてそんなもんだ。何か1つ変われば幾らでも変わる、俺とフィリップの変身したWだってシュラウドに言わせりゃ本物のWじゃ無かったらしいからな……』



 一見すると戦いはナスカ・ドーパントがその手数の多さから押している様に見えた。
 しかしエターナルはその攻撃をエターナルローブやエターナルエッジを駆使し上手く裁いていく。
 しかも、

「獅子咆哮弾!」

 時折、獅子咆哮弾を織り交ぜる事でナスカ・ドーパントの猛攻の流れを寸断していく。攻撃こそ紙一重で回避しているが猛攻が途切れる事で態勢を整える時間を与えてしまっている。

「ううっ……」

 ナスカ・ドーパントことあかねは頭痛で苦しんでいた。
 あの技に見覚えがあるのだ。何故エターナルがあの技を? いやそれ以前に、あの技はなんなのか?
 そう、その答えに近づくにつれあかねは苦しんでいるのだ。だが、それを口にするわけにはいかない。
 エターナルの正体が○○○であることなど無いのだ。
 そもそも○○○とは誰なのか?

「ぐっ……」
「ちっ、まだやるつもりか……」

 一方のエターナルこと良牙は違和感を覚えていた。
 目の前の怪人の正体は誰なのか?

「(あの口調……女なのは間違いねぇが誰だ……声が妙に篭もっているから正体がわからねぇ……いやそれ以前に似た声の奴かも知れねぇし……)」

 既視感があったのだ、ナスカ・ドーパントの中身に。しかし良牙はそれにきづかない。
 気づけない理由、それは良牙自身、時折女性化した乱馬(らんま)に騙される事からも騙されやすいバカという事もある。
 しかし、ここではもう1つ理由があった。そう、ナスカ・ドーパントの正体とあかねを結びつける事ができなかったのだ。
 その理由はあかねの装備している伝説の道着にある。伝説の道着はその道着に選ばれた者を達人級にまで引き上げる効果がある。
 つまり今のあかねの実力は格闘の達人レベルという事だ。
 しかし、実は良牙自身はこの伝説の道着の一件に関わっていないのだ。つまり、伝説の道着を着たあかねの実力を知らないのだ。

「(格闘の実力だけで言えばおそらく乱馬や俺以上……当然シャンプーよりも上の筈だ……)」

 流石に口にはしないがあかねの格闘の実力は良くてシャンプーと互角前後、つまりそれよりも圧倒的に強い故にあかねではないと判断してしまったのだ。
 せめてこの一件に絡んでいれば推測の可能性もあったが接点が無い以上、結びつけようが無いのも道理だろう。


326 : Pに翼/OAR ◆7pf62HiyTE :2014/04/23(水) 20:47:09 JdJSZ5lk0

「(だが正体がなんであれ関係ねぇ、さっさとコイツをぶちのめしてつぼみ達の所に連れて行って貰う!!)」

 そう、重要なのは早々に決着を着けて、今も戦っているつぼみ達の所に案内して貰うのだ(注.方向音痴なので単独で向かうという考えは抹消した)

 何にせよ、一気に間合いを詰め1本のメモリを装填し、

――Luna――

「(ルナ……メタルやウェザーと違っていまいち意味はわからねぇが……京水のあの姿から察するに……)」

――Luna Maximum Drive――

 どことなく狼の怪人の声を彷彿とさせる音声と共にその力を発現させる。
 必殺の一撃が来るとナスカ・ドーパントは高速で後退するが

 ルナ、その意味は月、月の神秘的な力がエターナルの全身を巡る。
 そして、その拳は通常よりも伸びナスカ・ドーパントを捉える。
 ナスカ・ドーパントは翼を展開し上方へと逃げ様とする、しかし、
 エターナルの拳は大きくカーブしナスカ・ドーパントへと――

 幻想の力によりエターナルの肉体は現実的ではあり得ない程の伸縮を見せ、そのエネルギーを保ったまま変幻自在な動作で標的を捉えるのだ。
 そしてマキシマムドライブのパワーは強大、幾らナスカ・ドーパントといえども決まればメモリブレイク、決まらずともメモリ排出させる事は可能だ。
 そう、決まれば――

「はぁぁぁっ!!」

 あかねはエターナルの発動した技に覚えがあった。
 Wと交戦した時、Wはルナの力を使っていた。逃げても逃げても追撃するその力、単純なスピードだけでは逃げる事は不可能。
 ならば、単純では無い通常を超えるスピードを出せば良い。
 制御出来るかどうかは関係無い、レベル3つまり赤いナスカとなって高速で回避したのだ。
 そして光弾を何発もエターナルへと乱射する。

「ちぃっ!! 何処だ!?」

 エターナルはエターナルローブを翻し光弾を防ぐ。エターナルローブの防御能力、そして良牙自身の耐久力のお陰でダメージは殆ど無い。

 だが、突如色を変えスピードを上げたナスカ・ドーパントを見失い動揺する。
 しかし常人ならばともかく良牙は歴戦の格闘家、エターナルの力もあり微かではあったがその姿を視界に捉える。

「だが、早すぎる……しかもさっきよりもスピードが……」

 そう言っている間にナスカ・ドーパントが光弾を乱射しながら急速に接近し間合いを詰めていく。

「だったら……!!」

 エターナルはエターナルローブに闘気を注ぎ込み丸めて1本の棒にする。そしてそれを振り回して光弾を全て弾き返していく。
 しかしナスカ・ドーパントとてそれを予測していないわけではない。

「見えた……!」

 おおよそあかねにとってはイマジネーションにより勝利のイメージが見えていたのだろう。
 一気に懐に入り込み、エターナルの力を司るドライバーを破壊しようとブレードを――

 だが、彼女は忘れていた。少し前に同じ手段を使って敗れていた事を――故に、

 あかねが見たのは、ブレードで貫かれるドライバーのイメージではなく、
 ブレードが粉砕されている現実だった。

「爆砕……点穴」

 そう、良牙はエターナルの弱点がドライバーである事を知っていた。というより自身もそれを狙って仕掛けた事があった。
 だからこそ、ナスカ・ドーパントの狙いがそれだと気付いた良牙は全神経を集中してエターナルエッジでナスカブレードのツボを突き、ブレードを文字通り完全粉砕したのだ。
 (ちなみに通常は指一本で突くわけだが、原理的にはツボを付ければ良いわけなのでエターナルエッジでも理論上は可能)
 そしてそのまま闘気を解き元のローブに戻したローブを翻し軽やかに回避した。

「爆砕……点穴……ううっ……ああ……」


327 : Pに翼/OAR ◆7pf62HiyTE :2014/04/23(水) 20:47:29 JdJSZ5lk0

 いつの間にかナスカ・ドーパントの色が青に戻っている。
 攻撃が不発に終わったショックよりも、エターナルが使ったあの技を見て全身の震えが止まらなかった。
 『爆砕点穴』や『獅子咆哮弾』、聞いた事の無い技の筈なのに何故か覚えがあった。
 何故それを覚えているのだろうか?
 いや、何故それを『知らない』と言っているのだろうか?

 それでもあかねは振り払う。今重要なのはそんなことじゃない。どうにかして目前の永遠の怪物を破壊しなければならないのだ。
 だが、レベル3をもってしてもまだ届かない。それだけエターナルの力は圧倒的だったのだ。

「(どうしたらいいの……エターナルの口ぶりだとガドルはエターナルよりも……)」

 そう、そのエターナルよりもガドルは強いのだ。仮にエターナルを倒せても先は無いという事だ。
 つまり今のあかね自身にとってはナスカすらもガドルやエターナルにとっては非力だという事だ。
 ならばどうする? いくら何でもそんなポンポン相手を倒せる力なんてない。そんな都合の良い必殺技など――

「(………………あるわ……1つだけ……)」

 脳裏にはある技のヴィジョンが浮かんだ。
 何故そんな技を自分は知っているのか?
 しかしそんな事は今はどうでも良い、道ちゃんとNちゃんの力を借りれば十分に発動は可能だ。

「急に弱くなった様だが関係ねぇ……さっさと終わらせる……」

 そう言って一気にエターナルはナスカ・ドーパントへと間合いを詰めていく。
 しかしナスカ・ドーパントは反撃を仕掛ける事無く後方へ跳び回避していく。

「どうした、防戦一方じゃねぇか! もう終わりか!?」
「そっちこそ、さっさとトドメを刺したらどう!?」

 挑発するエターナルに対し挑発仕返すナスカ・ドーパント、
 その挑発に乗り猛攻の勢いを強めるエターナルに対しナスカ・ドーパントは見事な動きで防御を回避を続けていく。

「(何だこの違和感……)」

 その最中、エターナルこと良牙は違和感を覚えていた。あれだけ猛攻を仕掛けてきたナスカ・ドーパントが急に防戦一方になったのだ。
 単純に消耗しただけ、そう解釈しても良かったがどうにも奇妙さは拭えない。
 そう、ここでマキシマムドライブなり獅子咆哮弾なり撃ち込めば確実に勝てるだろう。

――Heat――

 そう熱い一撃を撃ち込めば、力を失い冷めたナスカなど簡単に倒せるだろう。

「(待てよ……まさか……)」



 だが、それに気付いた瞬間、エターナルの中で急速に熱が冷めていくのを感じ――



「はぁぁぁぁぁぁ!!」



 飛竜昇天破――
 熱い闘気を持つ敵を冷たい心を以て螺旋のステップに巻き込み、闘気の渦を発生させ竜の如く竜巻を巻き起こしその一撃を叩き込む技だ。
 その性質上、相手が強い程、自身が弱い程、その威力は増大する技だ。故に決まりさえするならば何の力を持たない一般人でも凶悪な怪物を仕留める事は理論上は可能だ。
 あかねはそれを狙ったのだ。スピード以外のナスカ・ドーパントの力を最小限に抑え、その上でエターナルの猛攻を誘い伝説の道着のサポートを駆使し螺旋のステップに巻き込む。
 平時のあかねでは難しくても伝説の道着の力があれば螺旋のステップもそう難しいことではない。
 そして、エターナルの必殺の一撃が繰り出されるタイミングでアッパーを放ちエターナルを竜巻で仕留めるという事だ。決まれば撃破する事も出来ただろう。


328 : Pに翼/OAR ◆7pf62HiyTE :2014/04/23(水) 20:48:40 JdJSZ5lk0



 決まればの話だが――



「はぁ……はぁ……」



 眼前にはローブで全身をガードしているエターナルが平然と立っていた。



 そう、技は発動せず只のアッパーにしかならなかったのだ。多少の風は巻き起こったがエターナルを吹き飛ばす竜巻とは到底言えないものだ。



「そんな……」
「くっ……」



 だが目の前のエターナルも何処か震えていた。それどころか――



「え……赤く……」



 いつの間にか、エターナルの炎が青から赤に変わっておりローブも消失していた。だが、エターナルはそれを気にする事無く、



「その技……飛竜昇天破……」



 飛竜昇天破……それはかつて乱馬が八宝斎により貧力虚脱灸で弱体化した時に、八宝斎を倒す為にコロンから教わった女傑族の技である。
 参加者中でその技を使えるのは乱馬だけと考えて良い。勿論女傑族であるシャンプーなら使えるだろうが実例が示されたわけではない為、今回は考慮に入れない。
 だがその理論だけならば会得するための特訓に付き合った良牙も知っている。とはいえ、良牙には螺旋のステップを描いて巻き込む事など方向音痴ゆえにまず不可能。だから教える事は出来ても使う事はまず無理だろう。
 しかし、その理論を知るものがもう1人いる。そう――



「まさか……貴方だったんだな……あかねさん……」



 天道あかね、彼女もその理論を知っている筈なのだ。使用するとは思っていなかったが使ってきた以上、幾らバカで騙されやすい良牙でも流石にわかる。



「え……?」



 ナスカ・ドーパントの反応に構わず、エターナルはドライバーからメモリを抜き取り元の姿に戻る。
 それが無謀な行為なのは理解している。
 だが認めたくは無いがあかねの性格上、幾ら口で説明しても自身のエターナルと大道のエターナルが同一人物だと決めつけ頑として聞いてくれないだろう。
 ならば実際に正体を晒すしか方法は無い。



「俺だ……良牙だ……」



 かくして、遂に響良牙は天道あかねと再会を果たしたのだ。


329 : Pに翼/OAR ◆7pf62HiyTE :2014/04/23(水) 20:49:28 JdJSZ5lk0



 だが――



「………………だれ…………貴方……!?」



 あかねの反応は余りにも残酷だった。



「なっ……違うのか……いや、そんなわけは……」

 自身の推測は外れていたのか? だが先程までの言動、それに飛竜昇天破の存在を知っていた事から最早正体はあかね以外にはありえない。
 いや、心の何処かではそれを否定したかったのだろう。

 あの天道あかねが殺し合いに乗り、他人を『機械』だと決めつけ平然と殺人を続ける、そんな現実認めたくは無かったのだ。

『……お前が知っているあかねが、もうどこにもいないとしたら?』

 翔太郎はそう言った、翔太郎は薄々気付いていたのだろう。その最悪な現実が起こっている可能性に。
 確かにあの時はそう問われても取り戻すと力強く応えた。しかし実際に突きつけられて冷静でいられる程割り切れる人間では無い。

 そう、目の前の相手が天道あかね以外の何処かの知らない悪女であればそれはそれで良かった――

 と、そう諦める事が許される状況では無い。



「あ……あ……ああぁ……!」



 何故かナスカ・ドーパントが頭を抱えて苦しんでいる。



「!? どうしたんだあかねさん!? 一体何が……!?」



 そして再びナスカ・ドーパントの色が赤く変色しそのエネルギーを放ち高速で動こうとしていた。



「!! まさか……」


 その瞬間、良牙の脳裏にフラッシュバックしてしまったのだ。
 なのはを守る為に、その身を挺してガドルの攻撃を受けて死んだ明堂院いつきの姿を――
 そう、自分のミスが無ければ避けられた筈の事態を――

 それだけではない、自身のミスで多くの仲間達を死なせてしまっている。
 もし方向音痴が無ければ五代雄介、それに美樹さやかは死ぬ事は無かっただろう。
 もし自身の力が及んでいればティアナ・ランスターは死ぬ事は無かっただろう。
 もし自身の力で強化する事が無ければ一条薫は死ぬ事は無かっただろう。
 もし自身が俯いていなければ明堂院いつきは死ぬ事は無かっただろう。
 もしこのまま動かなければナスカ・ドーパントはどう動く?

 自分ならばまだ良い。だが仮にすぐ近くで戦っているつぼみとなのはの所に向かうとしたら?
 今度は花咲つぼみ、あるいは月影なのは、もしくはその両方を死なせるというのか?

 自身のミスで誰かを殺させるのか?
 自身のミスで惚れた女性に罪を重ねさせるのか?



「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」



 最早思考なんて消え失せていた。無我夢中だった――


330 : Pに翼/OAR ◆7pf62HiyTE :2014/04/23(水) 20:50:26 JdJSZ5lk0





PART.3 けがはなくとも

『闇の力よ、消え失せろ……ッッ!! そうだ、……俺は……俺は、ダークメフィストなんかじゃない……ッッ!! 俺は、暗黒騎士ガウザー、黒岩省吾……!! 超光戦士シャンゼリオン──涼村暁のライバルだ!!』




「はぁ……はぁ……」

 良牙の周囲に巨大なクレーターが形成されている。そして、その中にはナスカ――いやあかねが胴着姿のまま倒れ込んでいた。

 自身のミスでまたしても誰かを死なせる。その重い負の感情が最大級の獅子咆哮弾を放たせてくれたのだ。
 上方に放たれた重い気はすぐさま下へと落ちる。例えどれだけ高速で動こうとも関係無い、射程範囲から抜け出せなければ直撃は免れない。
 あのエターナルとてその重力地獄のお陰で一時的な戦闘不能に陥ったのだ。ナスカ・ドーパントのメモリを排出するほどのダメージを与える事が出来てもおかしくはない。
 ちなみに良牙本人は一種の放心状態に陥る為、その直撃によるダメージを受ける事は無い。



「やっぱり……あかねさんだったんだな……」



 戦いには勝った、だが達成感はない。唯々空しさと悲しさが感情を埋め尽くす。



「メモリか……そうかあかねさんもガイアメモリの所為で……」



 そう回収しようと手を伸ばしたが――



 ピクリとあかねが動き出したのだ。



「!! 気が付いたのか……いや……」



 何やら様子がおかしい。そう、あかねの躰が変貌しているのだ。黒い複眼と赤と黒の模様を持つ銀色の――



「ちょっと待て、こいつは……さやかと同じ……」



 良牙はその姿に覚えがあった。そう、確か美樹さやかも突如として同じ姿になったのだ。



「ファウスト……だがどういう事だ、溝呂木の野郎はとっくに死んだ筈だよな……それ以前にどうしてあかねさんが……」



 疑問符だけが駆け巡る。だが考えている余裕などあるわけない。ファウストはゆっくりと立ち上がり視線を良牙へと向ける。

「ぐっ……」



――Eternal――


 ドライバーにメモリを装填


――Eternal――



 すぐさまエターナルへと変身した。だが白き躰が纏いし炎は青では無く赤だった。それでも生身で戦うよりはまだマシだ。
 しかしファウストの様子がおかしい。何故か再び動きを止めたのだ。



「なんだ……?」



 そして再びファウストは姿を変える――



「!? コイツは……溝呂木の野郎が変身した……」



 そう、ファウストとは違う銀色と黒と赤の模様を持つ闇を体現した存在、メフィストであった。


331 : Pに翼/OAR ◆7pf62HiyTE :2014/04/23(水) 20:51:48 JdJSZ5lk0



「いったいどういう事だ……何故あかねさんがファウストになったり溝呂木の野郎が変身した姿になったり……!?」



 立て続けて起こる異常事態に理解は最早追いつかない。だが、思考している余裕など無い。
 次の瞬間にはメフィストはエターナルへと一気に間合いを詰めていたのだから。



「ぐっ!」



 エターナルは両腕を構え防御の姿勢を取る。しかし――



 ほんの一瞬、僅かな衝撃を感じた程度でメフィストはエターナルの横を掠めていく。



「!?」



 すぐさま振り返りメフィストへと向き直ろうとするが、



――Nasca――



 すぐ後方でガイアメモリの音声が響く、



「何ぃ!? 誰が……」



 思わず振り向くが後方には誰もいない。しかし、次の瞬間にはガイアメモリが超高速で飛んでくる。



「え゛え゛え゛え゛ーっ!?」



 だが、ガイアメモリもエターナルの真横を掠めていく――



「!! まさか……」



 異常事態の連続ではあったがこの後起こる事を予見し急いで振り返る。そこには――

 赤いナスカ・ドーパントが超高速で飛び去っていくのが見えた。
 そう、エターナルが振り向く前に既にメモリはメフィストつまりはあかねの体内へと装填されていたのだ。



「そんな……待ってくれ、あかねさん……!」

 良牙は気付いたのだ、この一連のあかねの謎の行動、それは全てこの場からの離脱の為、
 それが彼女自身の意志によるものか、それとも暴走状態によるものか、あるいは邪悪な意志に操られているのか、それは良牙には知り得ない。
 だが確かな真実はたった1つ、

 良牙はあかねを止める最大の機会を逃したという事だ、

「ダメだ……あかねさん……そんな事してもあの野郎は絶対に喜ばねぇ……なびきやかすみさん、それにおじさん達だって絶対に望まねぇ……!!」

 どれだけ口にしても赤き翼は小さくなっていくだけで届く事は無い。
 追跡しようにもスピードが違いすぎる、方向音痴の良牙ではまず追い切れない。
 幸いつぼみ達の戦っている位置や街の方とは真逆なのが幸いだがそんなのは救いにすらなりはしない。

「くっ……」



 夜の闇、深い森、赤い光が消えるのにはそう時間はかからない、十数秒程度の事だ。



「あかねさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっっっっっっ!!!」



 唯々、無力な迷い子の慟哭だけが響き渡った――


332 : Pに翼/OAR ◆7pf62HiyTE :2014/04/23(水) 20:52:22 JdJSZ5lk0



 気が付いたら変身は解除していた、無意識のことだったのだろう。

 過ぎてしまえばほんの数分程度の出来事だ。少し離れた所では今でも狼怪人と2人のプリキュアは戦っているだろう。
 だが良牙は動けなかった。項垂れたまま地面を叩き続ける。


「俺は……俺は……!」


 あまりにも無力だった。
 いや、エターナルの力はあまりにも十分だ、良牙の素の力を合わせればナスカ・ドーパントを撃破する事については全く問題は無い。
 そしてメモリさえ排出してしまえばゾーンの力で回収出来るからもう悪用される事も無い。
 つまりこの場での最善は短期決戦での撃破だったのだ。

 だが良牙にはそれが出来なかった。ナスカ・ドーパントの正体があかねだと気付いた瞬間、そのまま仕掛ける事など出来なくなっていた。
 甘いと言えば否定は出来ない、だがそれを非難などできようか?
 想い人の余りにもあり得ない豹変を目の当たりにして、何かあったのかと問いかける事の何処がおかしい?
 知り合いを知らずに襲っている者の誤解を解くために変身を解除した行動はリスクがあると言えど完全に否定出来るものでもない。
 正体を知らずならばともかく、正体を知ってしまえば、下手に攻撃して大切な物を壊してしまうと思い躊躇する事など人として当たり前な感情だ――

 だが現実は甘くは無い、その甘い決断が最悪な結果を現在進行形で引き起こしているのだ。
 きっとあかねはこの後も人々を襲い続ける、哀しみが広がり続けていくだろう。
 それを止められなかったのは誰だ、他でも無い良牙自身だ、他の誰の責任でも無い。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁっっっ!!」


 後悔だけが強く残る。結局自分は同じ事を繰り返してしまうのか、誰も守れず、命が奪われるのを唯々見ている事しか出来ないのか――



 そんな時だった。



 ハーモニカの音色が響いてきたのは――



「!? なんだ……?」



 何故ハーモニカが? そういえば持ち物の中にそんなのもあった気がする。だが重要なのは誰が吹いているのかだ。



『あぁ……まさか再び吹く事になるとはな……』



「その声……テメェ、何のつもりだ」



 ゆっくりと立ち上がっていく、



『理由はわからんがこの曲を聞くと妙に落ち着くんでね……あんたに聞かせてやっただけだ……』



「……なんでテメェが此処にいる……」



 そう言いながら声の方向へと視線を向ける。



『生きているくせに死人みたいな顔をしてるあんたにな……響良牙……!』



「おい……質問に答えろ……大道克己!!」



 良牙の眼前――そこにはハーモニカを持った大道克己がいた。


333 : Pに翼/OAR ◆7pf62HiyTE :2014/04/23(水) 20:53:06 JdJSZ5lk0





PART.4 OAR

『ふっ……不甲斐ないあんたの姿を見て笑いに来た……とでも言っておこうか?』
「何ぃ……」
『冗談だ。安心しろ、今更そんな悪趣味な事をするつもりはない』
「まさか……エターナルを取り返しに来たんじゃねぇんだろうな?」
『何言ってやがる、そいつにとってはもう俺は過去の存在だ、エターナルは俺を必要としていない……』

 克己の言葉に違和感を覚える。普通逆では無かろうか? 『大道はもうエターナルを必要としていない』ではないのか?

「まるでメモリの方が主人みたいな言い方じゃねぇか」
『案外そうかもな……あんたは自分がエターナルを選んだと思っている様だが……実際はそうじゃねぇ、エターナルの方があんたを選んだ……他の連中やあんたがどう思っているかは知らねぇが俺はそう思っている……』

 克己の言葉を良牙は正直理解出来ないでいる。
 そもそも、良牙がエターナルを手にしているのは大道という主を失った事による半ば成り行き的なものだ。
 良牙自身は正直な所悪人以外ならば誰が所有しても構わなかったが、変身能力が無い事やつぼみからの勧めもあり良牙が結果的に所持する事になったというだけの話だった筈だ。

『信じられない顔をしているな。だが、さっきのメモリの動きを思い出してみろ……アレはあのメモリがあの女……あんたの彼女か知らないがソイツを選んでいるから起こった現象だ……』
「言われてみりゃ……だがアレは只のメモリじゃ……」
『さぁな、俺に言わせりゃ運命を感じたとしか言いようが無い……まぁその辺りは専門家にでも聞くんだな』
「ちっ……だがだからといってコイツもそうだとは……」
『そうか? だったら何故エターナルは俺の仲間だった京水の所に向かわずあんたの手元に在り続けた? 単純に強いだけなら他に相応しい奴など幾らでもいる……にもかかわらず何故あんたを選んだ?』
「偶然じゃねぇのか?」
『なぁ……覚えているか? 俺とZX……村雨良との最初の戦いにあんたが乱入した時の事を……』
「忘れるわけがねぇ」

 あの時、大道が変身したエターナルは良牙を仕留めようとしたが、その際に良牙自身が放った獅子咆哮弾を(ZXの援護込みではあったが)エターナルは受け一時的に動きを封じられたのだ。

『今にして思えば……あの戦い、俺がZX……村雨良に運命を感じていた様に……エターナルもあんたに運命を感じていたのかも知れねぇな……
 NEVERでもない改造人間でもない只の人間がエターナルを一度は地に伏せさせたわけだからな……』
「俺にはそれも偶然にしか思えねぇが……」
『かもな、だが偶然も重なれば運命と同じだ……まぁ信じる信じないはあんたの勝手だ……どちらにしてもあんたがエターナルの力を引き出せている事に違いは無い……』
「ちょっと待て、だが時々テメェが使った様な青じゃなく赤になる時があるぞ、アレは一体どういう事だ?」
『それぐらい自分で考えろ、船を漕ぐオールぐらい自分で探せって事だ』


 そう言って再びハーモニカを吹き始める


334 : Pに翼/OAR ◆7pf62HiyTE :2014/04/23(水) 20:53:44 JdJSZ5lk0


「おい、話を聞きやが……」
『良牙……』



 と、背後から声が聞こえる。



「この声……まさか……良か?」



 振り返るとそこには村雨良の姿があった。だが彼の死体は遠く離れた場所にあった筈、恐らく消滅した筈の大道が現れたのと同じ理屈なのだろう。
 しかし、良牙の知る彼の表情とは大分違って見えた。
 今までは何処か近づきがたい雰囲気があったが今の彼はどことなく穏やかでそして儚げな表情をしていたのだ。



「ああそうか……記憶……戻ったんだな……」



 良牙はその理由が先程彼の躰にメモリーキューブを収めたからだと察した。死んでからも効果があるかは半信半疑だったが効果があったらしい。

『ああ、良牙につぼみ……それに一条のお陰だ』
「一条……」

 良牙の表情は暗い、その一条の死には自身のミスが致命的に関わっているからだ。
 そして、今またあかねを逃した事も良牙の中で暗い影を落としている。

『助けられなかったんだな……』
「あぁ……どういうわけか知らねぇが、俺や乱馬の技は覚えているのに俺の事はまるで覚えていない感じだった……そういやアイツの名前も何故か言ってなかった気がする……」
『奪われた……か』
「ああ殺し合いに乗ったのはそれが……もう俺の声なんて届いてねぇ……ふっ……良の言う通りだったな……」
『………………そうだな……もう40人以上も奪われているんだったな……その上、今更エターナルの力があっても奪う者1人も止められない……ムチャかもな……』


 意外にも良牙の発言を素直に認める村雨である。そして、


『……じゃあ、やめるか』


 穏やかな顔で優しそうな笑顔でそう言い放った。しかし良牙には、


「………………何言ってやがる……良……記憶が戻ったら……嘘もつける様になりやがって……心にも無い事を……」


 それが嘘だとすぐにわかった。


『なぁ、良牙……他の奴等はどうか知らないが少なくとも俺はお前に救われた……』
「おいおい、俺が何時お前を救ったって……」
『お前がいなかったら俺は何もわからず、唯々奪われまいとたった一人この地を彷徨い続けていただろう……もし五代達と出会っても一緒に行く事は無かっただろうな……』

 これは仮定の話になる。もし、村雨が単身で五代雄介達と遭遇したならばどうなっていただろうか?
 五代自身は何事も無く村雨を受け入れるだろう。だが、あの時点では西条凪及び美樹さやかが同行していた事が問題になる。
 名簿に無いゼクロスと名乗る無愛想な全身が兵器の人間、そんな奴を凪やさやかはどう見る?
 恐らく完全な危険人物と警戒するだろう。五代が間に入っても凪やさやかは受け入れようとしないだろう。
 同時に村雨ことゼクロスから見てもむやみやたらと群れたりはしないのは想像に難くない。

 結果論にはなるが、良牙が同行していたお陰で、五代達と無事に情報交換を行う事が出来、溝呂木眞也によってファウストと化したさやかを巡っての凪との決裂こそあったが五代と行動を共にする事となった。

「そうか……?」
『ああ、そうして五代と行動を共にして、奴の死を看取らなかったら……ここまで奪う者から守ろうとは思わなかっただろう……そうでなければライダーマンからも敵視されていただろうな……』

 村雨は一度この地でライダーマンこと結城丈二と遭遇している。
 その時点では村雨は友の命を奪った結城達を敵視しており、一方で結城もまた村雨の連れてこられたタイミング次第では危険人物になり得ると認識していた。
 結城の推測通り村雨のタイミングはBADANを抜けた直後、それ故人々を守るという意味では信頼に値しないタイミングだった。
 更に状況的には村雨の同行者冴島鋼牙は結城の同行者涼邑零にとっての仇敵(当時はそう認識していた)、まさに一触即発の事態を引き起こしかねない状態だった。
 結果的に最悪の事態を避ける事が出来たが、その時襲撃してきたバラゴとの戦いでの村雨の立ち回り次第では結城は村雨を危険人物と断定していたかも知れない。
 そう、あの状況でバラゴよりも結城を優先したならば――
 そうならなかったのは五代達との出会いがあったのは言うまでも無い。勿論、それがなければこの状況すら起こりえなかっただろう。


335 : Pに翼/OAR ◆7pf62HiyTE :2014/04/23(水) 20:54:38 JdJSZ5lk0

『そして俺は憎んでいたその称号を受け入れ、最期にはエターナルと戦い……お前達に見送られて逝く事ができた……それが出来たのはお前達……特にお前のお陰だ……』

 そしてエターナルこと大道との決戦、仲間達の想いと共に村雨は戦い――相打ちという形で撃破、仲間達に見送られ『笑顔』で逝ったのだ。

「はっ……そんな大した事なんて……」
『いや、お前は俺に大事なものを与えてくれた……俺の名前を思い出せた……それで俺はZXではなく村雨良として戦えた……』

 それは『良牙』と『良』、同じ『良』という字が使われていたという小さな偶然に過ぎない。
 だがそんな小さな切欠がゼクロスだった村雨をほんの少し人間に戻せたと言える。

『なぁ良牙……覚えているか、確かあかねだったか……彼女が乱馬の記憶だけが奪われた時、彼女はどうやってそれを取り戻したか……』
「そうだ、あの時乱馬の野郎が暴言の数々を……」
『ああ、良牙……お前が言っていたんじゃないか……切欠さえあれば幾らでも思い出せると……俺だってメモリーキューブが無くても少しは思い出せたんだ、幾らでもチャンスは……』

 そう語る村雨は良牙達の知る村雨と違い何処か優しい。きっとこれこそが本来の村雨良なのだろう。

『良牙……判っていると思うが、あかね……彼女が恋人を生き返らせる為とは言え、その為に他人の命を奪う姿……それを見れば』
「乱馬……アイツは泣きはしねぇだろうが、きっと怒るに決まっている……」
『そう、お前にも話したが俺は時折ある女が見えていた……そう、俺にとって『大切な人』だった……姉さ……いや、あの人はずっと俺を止めようと……守ってくれていたんだろう……』
「そうだろうな……」
『だがな良牙、残念だがあの人には俺の行動を縛るだけの力は無い……目を背けるだけで簡単に振り切る事が出来る……恐らくあかねも同じだろう、その乱馬が泣いている姿を見ても目を背け続けている……』
「何が言いたいんだ?」
『彼女を本当に止められる……救えるのはあの人や乱馬の様な死んだ人間じゃない……生きている人間だけだ……わかるか、それが出来るのは良牙やつぼみ、鋼牙達といった生きている奴だけだ』
「出来るのか……俺に……」
『それは俺にもわからん……だが……何度も言う、お前は俺を救ってくれた……俺はそんなお前を信じている……』

 その言葉を最後に村雨は振り向く。

「行くのか?」
『ああ、正直恨むのも筋違いな気もするが……三影を殺された落とし前は付けなきゃならないからな……本郷と一文字、あいつらに一撃ぐらい入れてくる』
「今更復讐か?」
『そうじゃない……俺の中のケジメだ。正直あいつら相手にそうそう簡単に行くとは思え無いが……良牙、お前も負けるなよ』
「良、お前もな」

 そのやり取りを最後に良は去って行く。良牙は只、1人の盟友を見送った。


336 : Pに翼/Place〜 ◆7pf62HiyTE :2014/04/23(水) 20:57:43 JdJSZ5lk0
PART.5 Place〜

「ったく……大道といい良といい……」
『響君』
『響』



 そんな中、再び背後から声が聞こえてくる。



「まさか……五代……それに一条!?」



 眼前には五代と一条が並んで立っていた。

「五代……一条……すまない……俺の……俺の所為で……」

 良牙の中には2人に対し罪悪感があった。
 五代が死んだ戦いにおいて、良牙自身方向音痴で五代を振り回していた。
 仮にそれが無ければ溝呂木への追撃も成功していただろうし、またそれとは別にはぐれたりしなければ五代がさやかに刺される前に良牙が対応が出来た可能性もあった。
 一条に対しては言うまでも無くウェザーの力による電撃によるガドルの強化だ。それがなければ一条が敗れ去る事も無かっただろう。

 俯く良牙に対し、

『気にしないで……短い間だったけど、俺、響君と村雨さんと一緒に旅が出来て良かったと思うから……』

 意外にも五代は良牙に感謝していた。

『確かに方向音痴のお陰で道を間違えた事もあったけど……冒険なんてそんなものだって、間違えたりするからこそ冒険だから……だからこそ、目的地に着いたとき嬉しいんじゃないかな……』
「五代……」

 そうだ、五代はこういう奴だった。戦いや争いを好まない、そんな五代といられた時間は良牙や村雨にとっては確かに穏やかで楽しいものだった。

『だから『ケ・セラセラ』、なるようになるさ……響君達ならこんな悲しい戦いからきっと抜け出せるって……みんなを助ける事が出来るから……』

 変わらない笑顔で五代はそう口にする。

『五代の事、支えてくれたこと……礼を言わせてくれないか……』

 続いて一条が良牙に対しそう口にする。

「支えた? 何の話だ?」

 だが、良牙には心当たりが無い。むしろ逆だろうと思う。

『君も知っているだろう……五代は争いを好まない。だが、この殺し合いの場ではそれがどれだけ厳しい事か……君達の前では大丈夫だと笑顔で口にしていても心の中ではずっと泣いていた筈だ……』
「そうだな……だがそれと俺が……」
『さっき五代が話していただろう、響達と一緒に呪泉郷まで行く事ができたと……それは響達の友人と合流する為ではあったが、五代にとっては久々の冒険だった……未確認と戦う為にそれをしないでいた五代にとってどれだけ嬉しい事だったか……
 それに、君がこの場所でも変わらず平然と笑っている姿、それは五代にとって大きな支えになった筈だ……』
「ちょっと待て、それだけしかしていないのにか?」
『五代にとってはそれだけでもう十分だ……だからもう気にするな……』

 決して表情には出さないが、五代にとってこの殺し合いは非常に辛いものだった。
 理不尽な襲撃と人の死、人ならざる者となる非常な現実、さやかを巡っての凪との対立と決別、それは五代の心を深く締め付けていた。
 クウガの力があっても全てを救う事は出来ない。
 だが、良牙(それと村雨)と行動を共にする事が出来たのは五代にとっては幸運だった。
 どことなく楽天的な良牙と無愛想だが悪人では無い村雨との呪泉郷への旅路、無論良牙の友人と合流する事が主目的ではあったが五代にとっては争いとは関係無い久々の冒険だったのだ。
 殺し合いの中にいても何時もの調子で旅をする良牙の姿は五代にとってささやかとはいえ決して小さくない救いとなっていたのだ。
 そして何より、良牙達と行動を共にしていたからこそ最後の最後で一条と再会が出来たのだ。五代にとってはそれだけで感謝しきれない程だ。


337 : Pに翼/Place〜 ◆7pf62HiyTE :2014/04/23(水) 20:59:23 JdJSZ5lk0

『それに46号の事なら気にしなくて良い、その事を説明しなかった俺にも責任がある。
 むしろ、響が最後に与えてくれた電撃のお陰で奴に少し報いる事が出来た……だから君がそれ以上責任を感じる必要は無い……』
「一条……」

 一条もまた良牙を責める事は無い。

『むしろ、謝るのは俺の方だ……再び必ず会う、死なない、46号に勝つ、その約束を破ってしまった事……
 そして何より、46号を部外者である君達に押しつけてしまった事……中途半端な形で投げ出してしまった事、どれだけ謝っても許される事じゃない……本当にすまない……』
「顔を上げてくれ……一条……俺はあんたに謝ってもらえる資格なんてない……俺のせいでまた1人……つぼみの友達を……」
『それでも君が責任を感じるなら……1つだけ頼めるか……』
「ガドルを倒せっていうのか……」
『いや違う……俺……いや、俺と五代が望むのは……君達が笑っている事、たったそれだけだ……』
「笑う……」
『ああ、五代……そして俺は皆の笑顔を守る為に戦ってきた……だから、笑ってくれ……こんな悲しい殺し合いを打破して……皆、笑顔で元の場所に帰るんだ……
 そうでなければ……それこそ五代の戦いが報われない……だから……頼む……』

 一条は戦いを求めたりしない。その為に笑顔が失われては本末転倒だからだ。
 だからこそ願うのは『笑顔』なのだ、争いの無い世界で皆が笑っている、それこそが一条いや青空となった2人の冒険者の望みなのだ。

「ああ……今度こそ、中途半端はしない……最後の最後には笑ってやるぜ……みんな揃ってアンタ達にな……」
『頼んだぞ……!』
『負けないで……!』

 3人は同時に親指を立ててサムズアップのサインを出した。



「五代……一条……待てよ……まさか……」



 まだいるのかと思い振り返ると、



「さやか……いつき……それにスバルにティアナ……京水までいるのか……」


 10数メートル離れた先に女子制服を着た美樹さやか、九能小太刀のレオタードを着たティアナ・ランスター、その後ろで全身は見えない様に(多分全裸)顔だけ出しているスバル・ナカジマ、
 そして男子制服を着た明堂院いつきに彼女達の後ろで手を振る泉京水が良牙の方を見ていた。
 そう、彼女達は良牙が出会い死を見てきた『乙女達』である。

 だが、距離が開きすぎているのか、何を言っているのかまでは聞こえない。
 いや、むしろ今までマトモに会話できていた方が異常だったのだ、死者と話す事自体通常はあり得ない。
 彼等は何を言っているのだろうか? 良牙を励ましているのか、それとも何かを託そうとしているのか、あるいは、それすらもわからない。
 そんな中、京水の後ろに隠れていた1匹のアヒルが高く飛び上がり紙飛行機を飛ばしてきた。

「ムース……いや違う……シンケンレッドか……?」

 紙飛行機は落ちる事無く良牙の上を通過していく、

「そうか、俺はまだ飛べるんだな……」

 そのアヒルこと志葉丈瑠が紙飛行機へと込めたメッセージ、それは良牙の推測とは少し違う。
 だが、それは大した問題では無い。
 真意の解釈が間違いではあっても、それが良牙にとって支えになるのであればある意味では正解だ。
 死んだ者は最早飛ぶことは出来ない、誰を救うことも出来ない。
 だが生きているならば幾らでもやり直せる。何度でも飛ぶ事が出来るのだ。

「わかった……お前等が何を願っているのかはわからん……だから願い事を叶えてはやれない……だが、俺は今度こそ……あかねさんを救い……つぼみやなのは達を守り……このフザケた殺し合いをぶっ壊してみせる……!」

 そう皆に向かって宣言する。背後にいる『乙女達』と飛べないアヒルは笑っている様に見えた。


338 : Pに翼/Place〜 ◆7pf62HiyTE :2014/04/23(水) 21:00:32 JdJSZ5lk0



『はっ……なんだ……死んだくせに随分救われている連中じゃねぇか……どうやらあんたは知らず知らずの内に希望を与えていたらしいな……
 なぁミーナ……お前はどうだったんだ……救われたのか……それとも……?』



 その一方、ハーモニカの演奏を終え大道が天を仰ぎながら呟いている。

「大道、今までずーっとハーモニカ吹いていたのか? それに今なんて言った?」
『俺の勝手だ、それにあんたには関係無い話だ……それより顔つきが変わったみてぇじゃねぇか』
「ああ、俺はもう1人じゃねぇからな……何時までも泣いてられるか……」
『まぁあんたはどうせ筋金入りの方向音痴だ、だからこそエターナルが選んだのかもな』
「何言ってやがる、方向音痴とエターナルに何の関係がある?」
『過去に囚われる奴に永遠は微笑まない……それは下手に道を捜して迷路を抜け出せないでいる迷子と似ていると思わねぇか?』

 唐突に謎の例えを出す大道に対し良牙は疑問符を浮かべる。

「よくわからねぇ例えだな……それがどうした?」
『過去は必要ない……と俺の考えをあんたに押しつけるつもりはないが……前だけを見続ければ良いって事だ……お前は目的地に行く時、何時も前だけ見て走るだろう、まぁ間違った道だろうがな』
「ケンカ売ってんじゃねぇ!」
『だがそれで良い、前だけを見続けろ、何が起ころうとも気にするな……例えそれが一瞬であっても歩いた道筋は永遠だ、お前に助けられた奴らの様にな……』
「方向音痴じゃ目的地に辿り着けねぇだろうが……」
『わかってねぇな……何でもかんでも決められた道やレールがあると思っているのか? 未開の地にある目的地へと進む時に都合の良い道案内なんてない……
 俺のやって来た事はある意味そういう事だ……そして良牙、あんたもそういう意味じゃ俺と同じだ……
 俺は過去という道案内を失い消えつつある現在だけを以て進み足掻き続けた、
 あんたはそもそも道無き道をがむしゃらに前だけを見て走り続ける、つまりはそういう事だ』
「そうか……エターナルが青くなったり赤くなったりしたのは……」

 思い返せば、初めてエターナルに変身した時、一条とつぼみを守りたいという一心だった。だからこそその炎は青かった。
 ガドルとの戦いの時も眼前の敵を倒す為、だからこそ青かった。
 しかし突如赤くなったのは自身の失敗による後悔の念によるものだ。
 その後再び青くなったのはいつきの死の衝撃と無念さ、そして怒りの感情から後悔の念が消し飛んだからだ。
 狼野郎と戦った時青かったのもつぼみ達を守る為だった。
 そして、あかねとの戦いで赤くなったのは正体があかねだと知り迷いが生じたから、そしてその後も赤かったのはあかねを止められなかった後悔からだ。

『どうやら、漕ぎ出す為のオールは見つかった様だな……勿論、これは俺の仮説だ……だが的を射ていると思うぜ……過去も未来も関係無い、現在だけを全力で刻み込める奴だけが永遠を手に入れられる……だから良牙……進め』
「大道……結局教えてくれるんじゃねぇか……」
『はっ、俺を倒し永遠を手に入れた奴等がこんな所で無様な姿を晒すのを黙って見ていられなくなっただけだ……只の気まぐれだ……アンタが気にする事じゃねぇ』
「礼は言わねぇぜ」
『いらねぇよ』



 そう言って良牙は振り返る。



『行けよ響良牙……いやエターナル、人々の新たな希望になってみせろ……』
「ああエターナル……いや大道克己、地獄の底から見ていろよ……」
『あぁ、そしてエターナルのメモリ……今まで付き合ってくれてありがとな』
「じゃあな……もう、二度と会うことはない……」



 そして良牙は歩き出す――まぶしい光が差す場所へと――












『……よかったんですか乱馬さん、良牙さんにあかねさんの事頼まなくて』
『けっ、誰がアイツにそんな事頼むかよ、俺はフヌケたツラしてるあの野郎を笑うつもりだっただけだ』
『ふぅ……心にも無い事を……』
『うるせぇ……それよりアインハルトこそ良かったのか? ヴィヴィオの事良牙に頼まなくて……』
『いいんです……あの子……ヴィヴィオさんは私が思っているよりもずっと強いですから……一人でもきっと大丈夫です……それに良牙さんだって頼まれなくてもきっとヴィヴィオさんの事守ってくれると思いますから……』
『そうだな……何っつったって良牙は……アイツが思っている以上にセンチでいいやつだからな……』


 その言葉を最後に遠くで見ていたおさげの少年は振り返る。


『じゃあな……負けるなよ……Pちゃん……!!』


339 : Pに翼/Place〜 ◆7pf62HiyTE :2014/04/23(水) 21:01:17 JdJSZ5lk0











PART.6 良牙 現実に帰る

「……ん、ここは?」

 気が付くと暗い森の中だった。遠くでは未だ戦いの音が響いている。

「夢か……」

 先程までの現象は何だったのか? 恐らく最初にエターナルとZXの戦いの中で死にかけてシャンプーと遭遇したのと似た現象だったのだろう。
 激闘による消耗からほんの僅か意識を失った、それによる不思議な現象だと解釈することにした。

 ともかく意識を失った時間はたかだか1,2分程度、早々に態勢を整える必要がある。周囲を見るとデイパックから幾つかものがこぼれている。その中にはハーモニカもあった。

「こいつは……克己が吹いていたハーモニカか……」

 そのハーモニカを拾い上げる。その最中、

「……ん、デイパックの数、少なくねぇか?」

 周囲を見渡す限りデイパックの数が2個ほど足りない事に気が付いた。

「まさか、あかねさんが……待てよ、どのデイパックを持って行かれた……?」

 その最中、あるものを見つける。

「警察手帳……一条のか……確か……」

 呪泉郷での騒動の後、一条は多少濡れた警察手帳を懐に入れずに自身のデイパックにしまっていた。

「持っていかれたのは一条の……」

 そして大まかに確認した所奪われたデイパックの1つは一条のものだという事を確認した(ちなみにもう1つは速水克彦のもの)。

「!! 確かあの中には……」

 良牙は大事な事を思い出す。一条のデイパックにはある重要なものが入っていた。
 そしてそれによる最悪な展開を予見してしまう。

「あかねさん……!!」

 正直、今にも胸が張り裂けそうだ、だがもう俯くつもりはない。例えあかねが『それ』を使ったとしても、必ず取り戻す事を誓ったのだ。五代や一条のパターンだってある、今更絶望する理由にはなり得ない。
 そんな中、あかねがいた所に妙な箱が落ちているのを見つけた。

「ん、なんだこりゃ……イービルテイル……只のハケじゃねぇか……『さえこ、わかな、らいと』……どっかで聞いた名前だが……まあいい、それよりもつぼみとなのはが心配だ……あいつらの所に戻らねぇと……」



 その時、



『Why does the name of "Nanoha" come out!?(何故、『なのは』の名前が!?)』



 声が響いてきた。



「!? 誰だ?」


 周囲を見渡すと、すぐ近くに金色の三角形の物体があった。



「!! ……まさか……お前、マッハキャリバーの仲間か」
『Mach Calibur? Who is it?(マッハキャリバー? 何ですかそれは?)』
「レイジングハート……いや、バルディッシュか?」
『Why does it know my name?(何故私の名前を?)』
「あかねさんが持っていたのか……おい、時間が惜しい、手っ取り早く話してもらうぞ」


340 : Pに翼/Place〜 ◆7pf62HiyTE :2014/04/23(水) 21:02:08 JdJSZ5lk0





PART.7 あかね変身

 良牙は一条にこんな事を聞いた事があった。

『そういや一条、あの遺跡で見つけたアレ、クウガのベルトだって言っていたが……そいつを着ければクウガになれるって事か』
『あのベルトがクウガのベルトと同一であるとするならそういう事になる……だが実際の所は調べてみないと何とも言えない所だ……』
『そうか……』
『ただ、他の誰にも着けさせるつもりはない……その理由はわかるな』
『ああ……一度身につけてしまえば……元に戻れなくなるって事だからな……一条、あんただってもう……』
『いや、俺はとっくの昔に覚悟はできている。だから気にしなくて良い……』
『ならいいが……ん、だったら悪用されない様に壊した方が良いんじゃねぇか?』
『悪用か……確かにその懸念はある……クウガと同一ならば恐らくは問題無いと思うが……』
『どういう事だ?』
『五代の様な心清く健やかな躰を持つものでなければならないからだ』
『要するに、五代や一条の様な奴じゃなきゃ使えないってことか……なる程それなら殺し合いに乗った奴は使えないな……』
『だと良いが……』
『ん、何か言ったか?』
『いや、なんでもない……(だが、もしその前提が無いとするならば……いや、それ以前に……その条件を満たした者が何かの理由で殺し合いに乗っているとするならば……一見矛盾している様に見えるが、その矛盾がクリアされるならば……)』



 先に天道あかねについて起こった異変について解説しておこう。
 まず、先の戦いの際、あかねの精神は致命的なレベルにまで追い詰められていた。
 エターナルの使った技、それはあかねが自ら封印している良牙のものだったからだ。
 だが、あくまでも眼前にいるのは永遠の悪魔エターナル、ここであかねの鈍さが上手く作用してくれた。
 あかね自身、エターナルが良牙の技を使ってもすぐさま同一人物だと結びつけられなかったのだ。
 普通の人ならば覚えた違和感から推測する事は十分に可能だが、あかねにはそれが出来なかったのだ。いや例えどれだけヒントを出してもあかねは気付かないだろう、それだけ鈍いのだ。
 だからこそ先に正体に気付いた良牙は変身を解除し正体を晒した、そうする事でしか自身の存在を確認させる事が出来なかったからだ(ただ、あかねの場合、ここまでやってもまだ致命的な勘違いをして気付かない可能性があるのが恐ろしい所)。
 そしてそれはある意味では成功した。だが、それは決して成功させてはいけなかったのだ。

 あかねが記憶を封印したのは、乱馬達の為に凶行に及ぶ事を乱馬達が望まない為、乱馬達の想いを穢さない為に関係無いと引き離した事によるものだ。
 つまり、あかねにとっては乱馬と良牙の存在を思い出してはならないのだ。乱馬と良牙に、人々を泣かせる悪魔となった自身の姿を見られたくなかったのだ。
 それ故に、知らない様な反応を見せたのだ、もしかすると本当に忘れていたかの様に見えるかも知れないが――

 だかそれがどれだけ精神に負担をかける? それでなくてもガイアメモリの乱用で汚染は大分進んでいる。その状態で無理矢理思い出す切欠を与えたら――
 思い出すのを拒否するために更に精神に負担をかけて――そのまま限界を超えて崩壊してしまうだろう。
 そして、ナスカの力を制御出来ずに暴走した。言ってしまえばそれだけの話だ。

 とはいえ、それだけで良牙に勝てるわけも無い。
 いや、あかねが知る範囲の良牙ならともかく、今の良牙はあかねは勿論ではあるが、他にも守りたい仲間がいる。その上、先程自身の失敗で仲間を死なせている以上、絶対に落とせない状況に追い詰められていた。
 その結果、地に伏せられたという事だ。

 何度も語られている事だがあかねの身体は度重なる激闘、ナスカのレベル3の乱用でボロボロとなっていた。ある意味生きているのが不思議なぐらいな状態、ゾンビに近いと言っても良い。
 そして、屍に近い状態で精神が限界を超え、ある者に植え付けられた闇が芽吹いたのだ。
 そう、闇の体現者ダークファウストとなったのだ。

 だが、仮にファウストとなった所で限界を超えたあかねでは良牙を屠る事は出来ない。
 赤い炎のエターナル、通称レッドフレアが幾ら本来の力を発揮出来ないとはいえ通常のWやアクセル並の力はある。良牙の能力を加味しても負ける可能性は低い――


341 : Pに翼/Place〜 ◆7pf62HiyTE :2014/04/23(水) 21:04:07 JdJSZ5lk0


 が、ここで誰も知り得ない奇跡的な偶然が起こったのだ。


 あかねにファウストの力を植え付けたのは黒岩省吾、闇の力を得て闇黒皇帝と自称した彼はあかねを配下に加えこの殺し合いを勝ち抜こうとしていた。
 ただ、実際はそこまで都合良く話は動かない。間の抜けた話ではあったが、黒岩は早々にあかねを見失っていた。
 とはいえ闇黒皇帝がその程度でめげるわけもない。早々に頭を切り換え放送に怒りを覚えつつ街へと向かっていた。


 そして、黒岩は中学校にて宿敵涼村暁との決闘に挑んだ――


 黒岩の裏切りに対し暁の怒りは凄まじく、加えて持ち前の機転(ヒーローとは言い難いずる賢さともいう)もあり圧倒されていた。

 だが、黒岩はそんな暁に対し闇黒皇帝としての力、そうメフィストの力を繰り出した――
 その力は絶大、普通に考えれば暁の敗北は必至――

 しかし暁はダークザイドとしての誇りさえも捨て去った黒岩に激怒した、仲間達の協力すらも拒否し自らの力だけで挑もうとした。

『この俺のライバルは、暗黒騎士ガウザーだ!! ダークメフィストなんかになっちまったお前に、この俺の……超光戦士シャンゼリオンの、ライバルを名乗る資格はねえッッ!!!! お前に倒されても、俺は負けを認めねえッッ!!』

 その言葉が黒岩の心を震わせ奇跡を起こした――黒岩は自身の中の完全な異物、つまりメフィストの闇の力を全て振り払ったのだ。
 黒岩にその力を与えた存在、敢えて『アンノウンハンド』と呼ぼうか、彼すらもあり得ないと称した現象だ。
 そして、『アンノウンハンドが与えた力は全て』彼の元へと戻った――

 しかし、黒岩の野心は強く闇の力は膨れあがっていた。そう、与えた力以外の余剰の闇の力が存在していたのだ。
 『アンノウンハンド』すらあり得ないと断じた現象、それ故彼すらも読み切れなかった事が起こったのだ。
 そう、黒岩と闇の力が繋がっているあかねにその力が流れ込んだのだ。

 つまり――メフィストの力はあかねの方へと宿ったという事だ。
 故に、ファウストと化したあかねはそのままメフィストへと変貌した。それだけ闇が深かったと言っても良い。
 無論、これは通常では起こりえない現象だ。しかし、前述の通り通常ではあり得ない現象が起こっている、それがどのような結果を引き起こしても不思議ではないだろう。

 ともかく長々と説明したが、要するにあかねは新たなメフィストとなった、纏めるとこういう事である。

 メフィストと化したあかねにどれだけの自意識があったかは不明。しかし、あかねは冷徹なまでにこの場を切り抜けようとした。
 そう、良牙の所持していたデイパックを幾つか奪い、ナスカの力で高速離脱を行ったのだ。
 レベル3となったナスカのスピードは10数キロ程度の距離を僅か数分で移動できる。

 元の姿に戻った時、そこは彼女にとっての約束の地、呪泉郷だった。

「はぁ……はぁ……」

 だが、あかねの意識は朦朧としていた。
 無理も無い、それでなくても限界を超えていた所に闇の力を更に受け、その上でナスカの力を使ったのだ。
 それでも所持品を並べて中身の確認をする。その中にはメフィストの力を引き出すダークエボルバーもあるが気に留める余力は無い。
 ウルトラマンの光、それを奪えと声が聞こえるがそんな事に構っていられる余力は無い。

 手に入れた道具を見たがめぼしいものは殆ど無い。ライダースーツはともかく、今更梅干しやムカデのキーホルダー、それに印籠やディスク、おまけに本を出されても正直困る。がらくたと言っても良い。


342 : Pに翼/Place〜 ◆7pf62HiyTE :2014/04/23(水) 21:04:29 JdJSZ5lk0



 が、その中であるものを見つけた――



「ベルト……」



 それを手にした瞬間、何か大きな力を感じた――



 確信があった。この力があればガドル、そしてダグバを倒し『みんな』を守れると――



 気が付けばベルトを腹部へと装着していた――



 そして程なくベルトはあかねの体内へと同化していった――



 ベルトに宿る聖なる石があかねの願いに反応し全身へと神経を伸ばしていく――



 天道あかねはあまりにも純粋だった――



 そして、殺し合いを好む様な残虐なわけもなかった――



 血生臭い争い事とは無縁の騒がしくも楽しい日常を愛する者達と送っていた――



 そして、格闘家故に健やかなる躰とそれなりに誰かを守りたいという感情もあった――



 そして何より――理不尽な暴力に対する無念があった――



 そう、『条件』は全てクリアされていたのだ。



 一条、そして良牙が懸念した最悪な状況への――



 消耗したあかねの躰の状態、それに加えあかねには頑固なまでの強い意志があった。
 故に、アマダムが彼女の躰を作り替えるのにはそう時間はかからない――



 そして今、夜の星に照らされて、呪泉郷の畔にて1人の戦士が復活した――



 ゴ・ガドル・バとの戦いで完全に失われたクウガ、それより前に作られたもう1人の、プロトタイプのクウガ――



 プロトタイプ故の仕様かあかね自身の精神の問題か、その姿は本来のクウガの赤ではなく白、角も本来のそれとは違い短い――



 それでも単純なパワーだけで言えば本来のクウガと比べて劣るものではない、
 しかし、プロトタイプ故に不完全。そう、致命的な欠陥を抱えていたのだ。
 元々その力に精神的な要素が強く関わるクウガ、それ故に持ち主が闇に染まれば元々構造の近いグロンギと同じ存在となってしまう。
 無論それはリントを守るという意味では本末転倒、故に安全装置が組み込まれていたのだ。究極の姿とその危険性を警告する形で――
 だが、プロトタイプのそれには安全装置が存在しない。つまり全てを闇に葬る存在となる危険性が高いという事だ。
 だからこそのプロトタイプ、その危険性があるからこそ後に作られたクウガには安全装置が組み込まれたという事だ。

 もっとも、仮に安全装置があろうと無かろうと、あかねがその警告に従うかどうかは全くの別問題だ。
 これは別に頑固なあかねに限った話ではない、五代以外の世界に存在するクウガ、そのクウガは他の要因があるとはいえ凄まじき戦士の姿を晒し、またある時はそれすら凌駕する姿となったのだ。
 つまり、クウガという存在は決して安全な存在ではないという事だ。一条はそれを知っていた。だからこそその懸念を最期まで持ち続けていたのだ。


343 : Pに翼/Place〜 ◆7pf62HiyTE :2014/04/23(水) 21:05:06 JdJSZ5lk0



 躰の調子が軽い――これでもうガドルにもエターナルにも負けやしない――



 今度こそ、『みんな』との日常を取り戻せる――



 何か大事な事を忘れている様な――そんな空しさを感じながら――



「アァァァァァァンンンンンンンアァァァァァァァッッッッッ!!!」



 その叫びはどんな意味だったのだろうか?



 こんな展開は他の誰も望んでいない――皆、あかねを止めようと声を届かせようとするだろう。



 だが、あかねは他者の声に一切耳を傾けず、自分だけの世界を守る為、たった1人堕ちていく――



 茜色の天の道は――深い奈落の底へと続いていた――



【1日目/夜中】
【C-7/呪泉郷】

【天道あかね@らんま1/2】
[状態]:アマダム吸収、メフィストの闇を継承、肉体内部に吐血する程のダメージ(回復中)、ダメージ(極大・回復中)、疲労(極大)、精神的疲労(極大)、胸骨骨折(回復中)、 とても強い後悔と悲しみ、ガイアメモリによる精神汚染(進行中)、伝説の道着装着中、自己矛盾による思考の差し替え、プロトタイプクウガに変身中
[装備]:伝説の道着@らんま1/2、T2ナスカメモリ@仮面ライダーW、T2バイオレンスメモリ@仮面ライダーW、二つに折れた裏正@侍戦隊シンケンジャー、ダークエボルバー@ウルトラマンネクサス、プロトタイプアークル@小説 仮面ライダークウガ
[道具]:支給品一式×2(あかね、溝呂木、一条、速水)、首輪×7(シャンプー、ゴオマ、まどか、なのは、流ノ介、本郷、ノーザ)、女嫌香アップリケ@らんま1/2、斎田リコの絵(グシャグシャに丸められてます)@ウルトラマンネクサス、拡声器、双眼鏡、インロウマル&スーパーディスク@侍戦隊シンケンジャー、紀州特産の梅干し@超光戦士シャンゼリオン、ムカデのキーホルダー@超光戦士シャンゼリオン、滝和也のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS、『長いお別れ』@仮面ライダーW、ランダム支給品1〜2(溝呂木1〜2)
[思考]
基本:"東風先生達との日常を守る”ために”機械を破壊し”、ゲームに優勝する
0:何処に向かう?
1:ガドルを倒す。
2:ダグバが死んだ……。
3:ネクサスの力……
[備考]
※参戦時期は37巻で呪泉郷へ訪れるよりは前、少なくとも伝説の道着絡みの話終了後(32巻終了後)以降です。
※伝説の道着を着た上でドーパント、メフィスト、クウガに変身した場合、潜在能力を引き出された状態となっています。また、伝説の道着を解除した場合、全裸になります。
また同時にドーパント変身による肉体にかかる負担は最小限に抑える事が出来ます。但し、レベル3(Rナスカ)並のパワーによってかかる負荷は抑えきれません。
※Rナスカへの変身により肉体内部に致命的なダメージを受けています。伝説の道着無しでのドーパントへの変身、また道着ありであっても長時間のRナスカへの変身は命に関わります。
※ガイアメモリでの変身によって自我を失う事にも気づきました。
※第二回放送を聞き逃しています。 但し、バルディッシュのお陰で禁止エリアは把握できました。
※バルディッシュが明確に機能している事に気付いていません。
※殺害した一文字が機械の身体であった事から、強い混乱とともに、周囲の人間が全て機械なのではないかと思い始めています。メモリの毒素によるものという可能性も高いです。
※黒岩が自力でメフィストの闇を振り払った事で、石堀に戻った分以外の余剰の闇があかねに流れ込みメフィストを継承しました(姿は不明)。今後ファウストに変身出来るかは不明です。
 但し、これは本来起こりえないイレギュラーの為、メフィストの力がどれだけ使えるかは不明です。なお、ウルトラマンネクサスの光への執着心も生じました。
※二号との戦い〜メフィスト戦の記憶が欠落しています。その為、その間の出来事を把握していません。但し、黒岩に指摘された(あかね自身が『機械』そのものである事)だけは薄々記憶しています。
※様々な要因から乱馬や良牙の事を思考しない様になっています。但し記憶を失っているわけではないので、何かの切欠で思考する事になるでしょう。
※ガミオのことをガドルだと思い込んでいます。
※プロトタイプアークルを吸収したため仮面ライダークウガ・プロトタイプへの変身が可能になりました。


344 : Pに翼/Place〜 ◆7pf62HiyTE :2014/04/23(水) 21:05:48 JdJSZ5lk0





PART.8 獅子に翼

「そうか、フェイトとユーノを殺したのもガドルの野郎か……ともかくこれでレイジングハートの誤解が解けるな……」
『Her name to her...(彼女の名前が彼女に……)』

 良牙とバルディッシュは大まかに情報交換を済ませた。
 最初はあかね(及びパンスト太郎)の知り合いだった事もありバルディッシュは警戒していたが良牙の口にした『なのは』の名前が気に掛かり思わず反応してしまい接触してしまったのだ。
 急を要する状況だったが両名にとって意義はあった。
 バルディッシュの話によるとフェイト・テスタロッサ達がガドルに殺された後、2度目の放送後あかねによって回収された。
 その後、あかねは2号を仕留め今度はある参加者に仕掛けたが敗北、その後森を彷徨い良牙達に仕掛けたという話だ。
 だが問題はその参加者だ。あかねはその参加者によってファウストにさせられたという事を良牙は把握したが、

「なぁ、バルディッシュ……もう1度聞くがあかねさんをファウストにしやがったのは溝呂木じゃなかったんだな?」
『He had declared himself darkness emperor Mephisto.(闇黒皇帝メフィストと名乗っていました)』
「溝呂木がそんな古いセンスな名乗りするわけねぇしなぁ……」
『He had called "Newly acquired power"(『新たに得た力』と言っていました)』
「……? 新たに得た力? それじゃまるでその野郎はついさっき溝呂木の力を手に入れたみたいじゃねぇか……待てよ……」

 この時、良牙はある思い違いをしていたのではと考えた。
 今まで良牙含めた多くの者は溝呂木が諸悪の根源だと考えていた。随分前につぼみが溝呂木を説得しようとしたが割と本気で呆れていたのが正直な話だ。だが、

「(もし、溝呂木の野郎が持っていた力、メフィストも誰かから与えられたものだったとしたら……溝呂木の野郎もスバル達と同じ被害者って事になるじゃねぇか……)」

 そう解釈するならばつぼみの行動はある意味では正しい事になる。
 とはいえ、仮にそうでも今更溝呂木を許すつもりは全く無い。しかし重要なのはそこではない。

「(で、誰だか知らねぇが、あかねさんをファウストにしやがった闇黒皇帝はメフィストの力を新たに得たって話だ……という事は……)」

 導き出される結論は

「(メフィストの力を与えた奴がいるって事じゃねえか……そいつが全ての元凶……)」

 多くの参加者を苦しめた溝呂木、そしてあかねをファウストに変えた闇黒皇帝、彼等に力を与えた存在が参加者の中にいる事に気付いたのだ。

「(つまりそいつが本当の元きょ……)」

 が、ここである事に気が付いた。


345 : Pに翼/Place〜 ◆7pf62HiyTE :2014/04/23(水) 21:06:50 JdJSZ5lk0

「(ちょっと待て、それおかしくねぇか? 何でそれだけの事が出来る奴が参加者にされているんだよ……いやそれ以前にガドルやドウコクの様な連中もいる……
  大体呪泉郷がこの島にあるのだっておかしいじゃねぇか……
  そんな連中をこの殺し合いに巻き込んで殺し合いをさせようとして、呪泉郷まで用意する奴は一体どんな野郎なんだ!?)」

 そう、メフィストの力を与えた存在、ガドルやドウコクすらも掌の上で転がせる者、それがこの殺し合いを司る真の黒幕なのだ。
 その異様にして強大な存在に良牙は気付いたのだ。

「(まずいぜ……ガドルやそいつを倒せば済む話じゃねぇぞ……どうすれば……)」

 だが悩んでいる間にも戦いの音は遠く響いている。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーーーっっっ!! ええい考えていても仕方ねぇ、後で左やつぼみになのは、それに冴島に考えてもらえば良い」


 正直考えたってどうにもならない。仲間ならきっと良い答えを出してくれるだろう。そう結論づけた。


『It asks once again, Mr.Left and Ms.Kyoko are safe?(もう一度聞きますが、左と杏子は無事なのですね?)』
「ああ、左とはさっき会ったから間違いねぇぜ、杏子の方は話に聞いただけだが警察署にいるらしい……(あれ、そういや五代が『杏子ちゃんについては気をつけた方が良いかも知れない』って言っていた様な……まいいか)」
『(Had not it ridden?(……あれ? 乗ってなかったっけ?))』

 ちなみにバルディッシュは佐倉杏子が殺し合いに乗っていて翔太郎達を利用していたと認識しており、
 良牙も方も五代から杏子については少し気をつけた方が良いという注意を受けていた。
 これはさやかが杏子が危険人物だと五代に伝えた事が原因で、五代はそこまで杏子を悪人と断じたくなかったがさやかの事も信じていたため念の為注意したという話だ。
 ともかく、バルディッシュはパンスト太郎やあかねの事もあってから警戒していたが実際に話してみた所、良牙はそれなりに信頼出来る人物だと判断した。

「まぁいい、ともかくつぼみやなのは達を助けに行く。バルディッシュ、付き合ってくれ」
『Yes』



 そして良牙はメモリを作動させ、



――Eternal――



「変身……!」



 ドライバーへと挿入、



――Eternal――



 その音声と共にエターナルへと変身した、その炎の色は――青、



 だが、今更その事に一々反応したりはしない。
 大道は運命と言っていたがそんな言葉で片付けるつもりはない。
 運命だというのならあかねが闇に墜ちる事も運命だったという事になる。
 そんな運命、絶対に認めてなるものか、だからこそその運命の道すらも振り払い進み続けるだけだ。



「方向音痴の俺じゃまずこの距離でも辿り着けねぇだろうが……」



 取り出したる1本のメモリ、



――Weather――



 気象の力を宿すメモリを作動させる。



――Weather Maximum Drive――



 気象というのは雷に限らない、冷気、熱気、風、雨、ありとあらゆる現象が存在する。その1つを使い竜巻を発生させ自身に纏う。
 そう、竜巻の力で自ら上空へと飛び上がるのだ。



 良牙が考えた秘策、それは上空から現在進行形で戦う3人を見つけ出し空中から駆けつけるという方法だ。
 目的地が明確に見えれば幾ら筋金入りの方向音痴な良牙でも辿り着ける。万が一間違える可能性があってもバルディッシュがサポートしてくれる。
 ナスカ・ドーパントによって分断されてから約15分、まだ間に合うだろうが一刻の猶予も無い。



「何処だ……つぼみ……なのは……ブロッサム……ムーンライト……」



 獅子咆哮弾――それは不幸を呼ぶ技だ。
 それ故に、それを会得した者は崖から蹴落とされる獅子の如く、深い奈落の底へと堕ちていく。



「(あかねさん……今は貴方を追う事は出来ない……他にも守らなきゃならない奴等がいるから……だが、何時か必ず……あかねさんを闇から救い出し……笑顔を取り戻してみせる……!!)」


346 : Pに翼/Place〜 ◆7pf62HiyTE :2014/04/23(水) 21:08:10 JdJSZ5lk0



 だが今の良牙はもう1人ではない、仲間達の想いがある、それに応えるのだ――



 想いは翼となり、獅子へと与えられる。



 獅子は高く飛び上がり、果て無き道を進む――



 過去も未来も省みず、現在だけを見て走り続けた――



 進み続けた道は間違いでは無かった。



 その道程は輝いていた――永遠に――



「見つけたぜ……あそこか!!」



 仲間達の声は響き渡り、良き牙と成りて空を舞う――



【D-8/森上空】

【響良牙@らんま1/2】
[状態]:全身にダメージ(大)、負傷(顔と腹に強い打撲、喉に手の痣)、疲労(大)、腹部に軽い斬傷、五代・乱馬・村雨の死に対する悲しみと後悔と決意、男溺泉によって体質改善、デストロン戦闘員スーツ着用、仮面ライダーエターナルに変身中
[装備]:ロストドライバー+エターナルメモリ@仮面ライダーW、T2ガイアメモリ(ゾーン、ヒート、ウェザー、パペティアー、ルナ、メタル)@仮面ライダーW、バルディッシュ(待機状態、破損中)@魔法少女リリカルなのは、
[道具]:支給品一式×14(食料二食分消費、(良牙、克己、五代、十臓、京水、タカヤ、シンヤ、丈瑠、パンスト、冴子、シャンプー、ノーザ、ゴオマ、バラゴ))、水とお湯の入ったポット1つずつ×3、志葉家のモヂカラディスク@侍戦隊シンケンジャー、ムースの眼鏡@らんま1/2 、細胞維持酵素×6@仮面ライダーW、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、歳の数茸×2(7cm、7cm)@らんま1/2、デストロン戦闘員マスク@仮面ライダーSPIRITS、プラカード+サインペン&クリーナー@らんま1/2、呪泉郷の水(娘溺泉、男溺泉、数は不明)@らんま1/2、呪泉郷顧客名簿、呪泉郷地図、特殊i-pod、克己のハーモニカ@仮面ライダーW、バッドショット+バットメモリ@仮面ライダーW、スタッグフォン+スタッグメモリ@仮面ライダーW、テッククリスタル(シンヤ)@宇宙の騎士テッカマンブレード、スパイダーショック+スパイダーメモリ@仮面ライダーW、まねきねこ@侍戦隊シンケンジャー、黒子の装束@侍戦隊シンケンジャー、『戦争と平和』@仮面ライダークウガ、双眼鏡@現実、ランダム支給品1〜6(ゴオマ0〜1、バラゴ0〜2、冴子1〜3)、バグンダダ@仮面ライダークウガ、evil tail@仮面ライダーW、警察手帳
[思考]
基本:天道あかねを守り、自分の仲間も守る
0:バルディッシュと共に狼野郎(ガミオ)、つぼみ、“なのは”の戦いの場に戻る。
1:つぼみ、“なのは”とともに警察署に向かう。
2:あかねを必ず助け出す。仮にクウガになっていたとしても必ず救う。
3:誰かにメフィストの力を与えた存在と主催者について相談する。
4:いざというときは仮面ライダーとして戦う。
[備考]
※参戦時期は原作36巻PART.2『カミング・スーン』(高原での雲竜あかりとのデート)以降です。
※夢で遭遇したシャンプーの要望は「シャンプーが死にかけた良牙を救った、乱馬を助けるよう良牙に頼んだと乱馬に言う」
「乱馬が優勝したら『シャンプーを生き返らせて欲しい』という願いにしてもらうよう乱馬に頼む」です。
尚、乱馬が死亡したため、これについてどうするかは不明です。
※ゾーンメモリとの適合率は非常に悪いです。対し、エターナルとの適合率自体は良く、ブルーフレアに変身可能です。但し、迷いや後悔からレッドフレアになる事があります。
※エターナルでゾーンのマキシマムドライブを発動しても、本人が知覚していない位置からメモリを集めるのは不可能になっています。
(マップ中から集めたり、エターナルが知らない隠されているメモリを集めたりは不可能です)
※主催陣営人物の所属組織が財団XとBADAN、砂漠の使徒であることを知りました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを全て知りました。
※つぼみ、一条、鋼牙と125話までの情報を交換し合いました。
※男溺泉に浸かったので、体質は改善され、普通の男の子に戻りました。
※あかねが殺し合いに乗った事を知りました。
※溝呂木及び闇黒皇帝(黒岩)に力を与えた存在が参加者にいると考えています。また、主催者はその存在よりも上だと考えています。
※バルディッシュと情報交換しました。バルディッシュは良牙をそれなりに信用しています。


347 : ◆7pf62HiyTE :2014/04/23(水) 21:10:58 JdJSZ5lk0
投下完了しました。
ちなみに『冒険者の物語』〜『風花の物語』の状態表を確認した所、プロトタイプアークルと警察手帳がどうなっていたのか記述されていませんでしたが、
本編の内容を見る限り一条の所持品は良牙が所持しているという描写になる為、今回の話ではその前提で描写した事を明言しておきます。

他に、何か問題点や疑問点等があれば指摘の方お願いします。

wikiへの収録に関してはストーリーの区切りの関係で2分割収録でお願いします。

>>323-335(PART.1〜4)が『Pに翼/OAR』
>>336-346(PART.5〜8)が『Pに翼/Place〜』

以上の通りとなります。


348 : 名無しさん :2014/04/23(水) 22:31:13 vEves6Ck0
投下乙
プロトクウガに変身したのはあかねか…また厄介なことになったな


349 : 名無しさん :2014/04/23(水) 22:33:24 eBAZ4V4Q0
投下乙です。
ようやく良牙とあかねは再会できたと思ったら、まさかこんなことになるとは……
あかねもあかねでやばいことになっているし、彼女は本当にどうなるのかな?


350 : 名無しさん :2014/04/24(木) 01:45:54 L3eMGmsE0
投下おつです
あかねがますます酷いことに…
なんかスバルを思い出す
良牙がんばれ超がんばれ!とりあえず迷子で遅刻はやめてぇ


351 : 名無しさん :2014/04/24(木) 13:03:05 UiXm/f1wO
投下乙です。

今のあかねは力を求めてるから、あっという間に黒くなっちゃいそうだな。

良牙と死者の会話は、フレプリを思い出す。
敵がいるのは、ラビリンス。
迷宮は出口が決まっていて、他の道は選べない。迷子なんて排除される。
しかし、プリキュアの住む商店街は、どの店をどんなルートで通ったって自由。間違った道なんて存在しない。


352 : 名無しさん :2014/04/25(金) 01:48:03 gg55OPA.0
予約キャラの追加きたー!


353 : ◆gry038wOvE :2014/04/27(日) 22:16:07 Befvl..s0
ただいまより、予約分の一部を投下します。

今日の登場キャラクターは、蒼乃美希、沖一也、高町ヴィヴィオ、孤門一輝です。


354 : Waiting for Girl ◆gry038wOvE :2014/04/27(日) 22:16:46 Befvl..s0



 蒼乃美希は時計を見つめていた。時間はまだ九時十五分。彼女は、別室からマットやソファを持ってきて、就寝の準備をしていた。何も美希だけが寝るわけではない。ヴィヴィオやいつきの分も用意していた。
 マットは体操用のやや固い材質だ。少女が寝るには少し乱暴な寝具だが、早朝まで寝続けるわけにもいかない。このまま仮眠を取るには充分だろう。
 それを広げて、掛布団を用意する。警察署というのは、時たま泊りがけになる人間が出てくるような場所であるため、こうして毛布などの簡単な寝具は用意されている。あまり綺麗ではない薄い毛布だが、まあ、せめてこうした物を使う事にしよう。
 時刻は九時十五分。美容のためにはそろそろ寝た方がいい時間だが、そう眠気が出るほどでもなかった。晩飯は軽食とはいえ口に運んだが、風呂には入っていない。……まあ、シャワー程度になってしまうかもしれないが。

「えっと、このくらいかな……うーん」

 孤門の肩幅より少し広げた程度の間隔で、ヴィヴィオは距離を測る。ヴィヴィオは、ソファを運ぶために大人モードに変身している。簡易的な作業に使う程度の魔法だ。骨折した左腕を使わなくても、右腕だけで軽い運搬はできる。
 この警察署で現在、共に眠る事になるであろう人数は、蒼乃美希、高町ヴィヴィオ、孤門一輝、沖一也、佐倉杏子で五名。それに、後から来る人間としては、明堂院いつき、左翔太郎、花咲つぼみ、響良牙、一条薫、冴島鋼牙がいる。とはいえ、せいぜいこの中から二人の見張りを除いた人数で睡眠を取る事になるだろうから、既にいる人数よりも多めに寝られるはずだ。どうやら、一つのマットで三人分のスペースは確保できているようだが、足はおそらく床の上だ。贅沢は言えない。唯一贅沢な寝方が出来るのは、せいぜいソファで寝る一人だけだろう。
 ここまで二十一時間、基本的には睡眠を取る事を知らずに行動してきた。そろそろ頭が少しだけぼんやりとしてきた感じもする。睡眠を取るに越した事はないが、基本的に睡眠を取る必要がない沖一也のような人間は心強いが、孤門や美希も少しずつ寝ていればそのくらいの役割は果たせるだろうし、一人よりは二人以上で見張りをした方がいい。

「だいたい、七人くらいならギリギリ寝られます」

 現状なら七人眠れれば充分だ。睡眠をとらない沖を除いて十名だから、三人はマットやソファからはぐれて、床で寝るか見張りをするかという事になるが、まあ贅沢も言えない。それに、今はあまり探れないだけで、そのうちまだ寝具をどこかから引っ張りだしてくる事ができるかもしれないので、そこで困る事はないだろう。

「まあ、充分かな。……あとは、三十分過ぎに二人が戻ってくるまで、ここでのんびりしていていいよ」

 そう言う孤門は、外の景色を凝視している。
 時間が時間なので、外は暗い。しっかり見ていなければ見過ごす可能性もあるから、目が離せないのだ。こうした力仕事を美希やヴィヴィオがやる羽目になったのも、一重にそこが原因である。
 ヴィヴィオは作業を終えたので、再び子供の姿に戻った。流石に周囲もこの子供と大人の使い分けに慣れたようで、ヴィヴィオが突然子供に戻っても驚く者はいない。

「いつきさんと翔太郎さん、まだかなぁ……。いつきさんに格闘を教えてもらいたいのに……」

 そう呟くヴィヴィオはまだ知らない。
 明堂院いつきは、まだ帰ってこない事を。
 いつきの分も敷かれたマットに、眠る者はない事を。

「もう二時間くらい経つけど、大丈夫かしら?」
「……距離的にも結構遠いみたいですからねぇ」

 心配の声も挙がる。しかし、それはあくまで声だけで、内心ではどこか安心感を持っていた。翔太郎たちは確認に行ったのであって、危険が迫ったら帰ってくるだろうと、そう信じているのだ。
 そこで一波乱あった事も知らないし、なかなか帰ってこないのも、思った以上の距離があったからだろうと考えていた。孤門は、そんな二人の声を背中に、外の景色を見ている。
 外から誰かが来る事はない。
 景色が移り変わる事もなく、退屈な光景を、延々と見続けている。彼とて、それは退屈だった。そして、窓枠の上に首を乗せて寝てしまいそうになる事もあった。






355 : Waiting for Girl ◆gry038wOvE :2014/04/27(日) 22:17:10 Befvl..s0



 ……十五分間、何をしていれば良いのか、彼女たちはわからなかった。

 ただ、静寂が起こると、死者が遺した何かを見て、涙が出そうになるので、唇を口の中に引っ込めて、強く噛みしめた。
 美希の手の中にある、リンクルン。それは美希が普段使っていた者ではなく、祈里が使っていたキュアパインの変身用。もう変身機能はなく、いわば「思い出」の為の品になってしまった。「キルン」はまだこの中に存在し続けている。祈里がいなくなった事を、キルンはどう思っているのだろうか。
 彼女は、それをまたそっと、胸の中にしまった。

「にゃー」

 そして、もし祈里が生きていれば、この動物語の読解でキルンを役に立てる事ができただろう。アインハルト・ストラトスが遺したアスティオンはたまに鳴いているのだが、何を言っているのか全くわからない。
 アスティオンの言葉は、基本的にアインハルト以外にはよくわからず、ヴィヴィオでさえその聞き取りには四苦八苦する。ただ、セイクリッド・ハートはアスティオンの言葉を理解しているようなので、「アスティオン→セイクリッド・ハート→高町ヴィヴィオ」の順で翻訳されて、伝言ゲーム式で伝わってくる。
 これが、祈里の持つキルンの力があればもう少しまともに会話できるのかもしれないが、残念ながら美希はキルンの能力を使えない。

「え、えっと……怪獣が現れたから南本願寺まで逃げろ……。え? そんな事は言ってない?」

 今もまた、ティオとクリスとヴィヴィオをめぐる伝言ゲームが繰り広げられている。何やら深刻な表情のティオが何かを言っているのに対して、クリスは物凄く慌てたように身振り手振りを激しくしている。
 仲介役のクリスもいっぱいいっぱいで、あまりヴィヴィオに伝わっていかないようだ。

「にゃー、にゃー!」
「(ビシッ! バシッ! バタタタタタ!)」←ものすごくはげしいどうさ
「こんにゃくがスーパーで30円!? あーもう! 何を言ってるのか全然わからないー!」

 何が何だかわからずに肩を落とすヴィヴィオだが、その隣で美希が少し前に出た。
 ヴィヴィオたちのやり取りが少し和ましく見えて、何とか二人の前で涙を流すのを堪えた美希であった。彼女は、少し遅れながらもティオに向けて言う。

「ゆっくり……ゆっくり言ってみて」

 ティオは、そんな美希の言葉を理解して、すぐにまた口を開いた。
 今度は、一斉に言葉を伝えるような事はなかった。ゆっくりと言い直す事にしたのだ。

「にゃー」
「(ビシッ!)」←しんけんなひょうじょう
「三人とも」(訳:ヴィヴィオ)

 細かい文節で区切っているので、ティオの言葉は素早くクリスのもとへ、クリスの動作はそのままヴィヴィオに伝わった。どうやら、正しく訳されたらしく、ティオ自身も安心の表情を浮かべている。
 ティオは続けた。

「にゃあ」
「(バシッ!)」←あついまなざし
「疲れているから」
「にゃーん」
「(ガシッ!)」←むだのないうごき
「少し回復させてあげます」

 ……どうやら、ティオなりの気遣いをしていたようだ。それがこの伝言ゲームのせいで全く違う言葉にさせてしまったらしい。
 ティオは、主人の死に直面をしながらも、ヴィヴィオを支えるための行動をしようとしていたのだ。

「ええーっ! でも、ティオだって疲れてるのに……」


356 : Waiting for Girl ◆gry038wOvE :2014/04/27(日) 22:17:35 Befvl..s0

 アスティオンはダメージ緩和と回復補助の能力に特化したデバイスだ。アインハルトもその補助を受けながら戦っていたのだろう。ティオ自身の精神的な負担も大きく、その効果は時間を置くごとに減少気味になっていたようである。
 しかし──

「にゃあにゃあ」
「(ビシッ!)」←かなしみをこらえるしぐさ
「もう誰かが傷ついていくのは」
「にゃあ」
「(バシッ!)」←けついをかためたようす
「見たくないんです」

 アスティオンの涙混じりな表情が、ヴィヴィオにも伝わってきた。
 主人であるアインハルトを喪い、自分の言葉をわかってくれる人間もいなくなった。ティオが懐く事ができる相手もいない。大事なマスターの不在は、当然ティオの心を強く痛めている。それは、ティオ自身が無茶を禁じられたがゆえの話だが、ティオも多少の無茶をしなければ誰も救えない。
 それを強く認識したのだろうか。

「ティオ……」

 ティオの鳴き声にこめられたメッセージに、ヴィヴィオはぐっと表情を硬くして拳を握る。不意打ちに敗れたアインハルトの血だまりを、ティオはその肌で感じたのだ。
 誰かが死んでいく不快感がまだティオの中にあるはずだ。

「ティオ、心配しなくていい。僕はまだ大丈夫だ。やるなら、今はこの二人を頼むよ」

 孤門が言った。孤門は疲労こそしているものの、戦闘によるダメージはない。長距離移動でも、間に何度も休憩を挟んだので、そこまで大きな疲れを感じる事はなかった。これは自分の力でどうにでもなる疲労だ。
 孤門は変身能力を持たないため、これまでも直接的な戦闘は基本的に避けるような形にされている。戦闘を重ねた二人を優先すべきなのはよくわかっている。
 美希は美希で、自分のダメージがヴィヴィオほど深刻でないと自負しているので、その回復能力は全部ヴィヴィオに注がれるべきだと思っていた。だから、続けて美希も同じ事を言った。

「私も大丈夫。もしできるなら……全部、この子にお願い」
「にゃあ!」

 孤門と美希の言葉に頷き、アスティオンはヴィヴィオの胸へと飛びかかる。どうやら、それで納得したらしい。
 ヴィヴィオは自分の胸元に飛び込んできたアスティオンの瞳を見つめた。
 お互い、その瞳は真剣そのものであった。いつもの悪戯子猫のアスティオンの瞳とは、全く違った色をしている。

 この子の本気を受け止める──。

「ティオ……! お願い……!」
「にゃああああああっっ!!」

 ヴィヴィオの体に小さな風が舞う。ヴィヴィオの中を、全身を回復させるよう、ティオは全開の力を使う。アインハルトに対してのダメージ緩和や回復を繰り返してきたティオも、殆ど限界に近かったが、それでもある限りの力を振り絞る。
 それが誰も傷つかぬための道だと、ティオは確かに認識していた。

「くっ……」

 あらかじめ治療を受けていた左腕は、その風に包まれながら、少しだけ回復する。クラッシュエミュレートとは違い、実際の骨折である以上、それを全て回復させる事はできない。……だが、痛みは緩和され、少しだが全身の疲労も消えていくのがわかった。
 ヴィヴィオがこれまで抱えていた火傷の損傷も少しだが色が薄くなり、体全体が癒えていく魔法の力を確かに感じていた。回復能力に関してはクリスをも超える。アインハルト用に最適化されていったとはいえ、回復はヴィヴィオにも充分な力を与えた。
 少しだが、戦いやすい体になったと思う。

「はぁ……ありがとう、ティオ……」
「にゃあ……」

 それだけ聞くと、ティオは安心したように瞼を閉じ、もう一度深い眠りについた。かねてより精神的疲労度が高く、本来の能力である回復も本領発揮とまでは行かなかったようだが、それでもティオなりの全開は僅かばかりでもヴィヴィオの体を癒した。
 そんなティオの頭をヴィヴィオは撫でる。ヴィヴィオの体も先ほどより少し良くなっている。熱心に看病してくれた人間のお陰もあるだろうし、そこに相乗してティオの力が使い込まれたのは、ヴィヴィオにとっても大きな力となった。


357 : Waiting for Girl ◆gry038wOvE :2014/04/27(日) 22:18:05 Befvl..s0

「ティオのお陰で……私ももう少し、みんなの役に立てる気がします!」

 ヴィヴィオはガッツポーズを決めた。
 アインハルトを喪った悲しみにあるはずのティオが、こうしてヴィヴィオに力を託した事。アインハルトが持つべき力が、ヴィヴィオにその全力全開を注いだ事。
 それが、ヴィヴィオの血をたぎらせる。
 これからもまだ、充分に戦える喜びがある。ヴィヴィオは、その拳をより強く握った。







 三人が会議室で待っていると、沖一也の方がそこに顔を出してきた。
 どうやら、制限解除の時間を終えたらしい。時刻は9時3X分であった。
 佐倉杏子の姿は見えなかったが、別の部屋にいるのだから、同時にやって来る事もないだろう。どっちにしろすぐに帰ってくると踏んでいた。

「……みんな、待たせたね」
「沖さん!」

 三十分、どうやら何かの成果があったらしく、沖は少し自信に満ちた表情を浮かべていた。

「どうやら制限解除の話は本当らしい。第二回放送を行ったニードルが、俺の使者だった。制限はパワーハンドの能力強化と、レーダーハンドの使用だ。俺たちの戦力も大幅に強化される」

 メリットしかないような条件だが、それで誰かの顔が明るくなるような事はなかった。敵対している人間も、同様に制限の解除を行われているとなると、やや響くものがある。
 とはいえ、殺し合いに乗っている人間の方が少ないような現状では、主催に仇なす人間たちの何割かが強化されれば充分に損をしない寸法だ。

「よかった……それじゃあ、これまで以上に戦えますね!」
「……しかし、だからこそ気がかりだ。俺は首輪の解除も行っていたが、どういうわけかそれに対する文句もなければ、危害を加える様子もない。むしろ、妙に落ち着いた様子まで見せていた。これが敵からの施しである事も考慮に入れておいた方がいい」

 沖が見たニードルは、文句をつけないどころか、超然とした──もしかしたら、優越感や自信を織り込んだような表情と態度で、消えていったのである。
 彼らが対抗をして来る事が一切ないのを好都合と割り切る事ができない。
 まだ何か、奥の手やたくらみがあるのかもしれないと、沖は考えていた。

「……あの、ちゃんと相手との会話は成立していたんですか? もしかしたら、収録された映像である可能性も……」
「会話は、成立していた。だから、少なくとも収録された映像である事はありえない」

 あるとすれば、既に主催者など存在しておらず、ニードルも加頭も、ホログラムの存在なのではないか──という可能性。ショッカーやデストロンといった悪の組織の首領が通過点に過ぎず、全てはデルザー軍団の「大首領」と呼ばれる存在の傀儡であったように、悪の元凶と思しき存在が、ほんの末端に過ぎないという事もありうる。
 沖は少し、考え込む。

「……この戦い、俺たちの想像以上に長引くかもしれないな」

 残り二十一人の現状にあって、それ以上の大きな力を感じる。
 その敵に立ち向かうには、果たしてここにいる参加者だけで事足りぬのだろうか。
 たった一人でも悪の組織と戦ってきた仮面ライダーたちは、かつても同じ想いをした。
 強敵への不安。──それがまだ、沖の中には僅かながら存在している。

「それにしても、杏子ちゃん遅いな……。もう彼女の方も戻って来ておかしくない頃なんだけど」

 沖が考え途中ながら、孤門がそう口にした。
 そう、沖とほぼ同時刻に同じ行動をしたはずの佐倉杏子がまだ戻らない。誤差といえば、ほんの数分程度に収まってもおかしくないが、その数分というのが間もなく過ぎ去ろうとしている。
 場合によっては、警察署内に何かが潜伏している──という恐ろしい想像を張り巡らせずにはいられない。
 仮面ライダーが戦ってきた悪の怪人たちも、周囲に見張りがいる密室のうえで人間を誘拐する事など容易い。壁を抜け、泡となって現れるような連中だ。
 それを思った時、やはり沖も少し不安になった。──「様子を見に行こう」と、沖が口に出そうとした時。


358 : Waiting for Girl ◆gry038wOvE :2014/04/27(日) 22:18:36 Befvl..s0

「様子を見にいきましょう!」

 先に口を開いたのは、美希であった。
 やや折り合いが合わない部分を持ちながらも、懸命に互いを理解しようとし合っている二人だ。お互いを心のどこかで心配しているのだろう。
 無論、誰もがそれに頷いた。

「……そうだな。二人とも、ここで見張りを頼む。俺たちは杏子ちゃんの様子を見に行く」
「わかりました!」

 警察署の出入り口を筒抜けにしているこの場所で、見張りをする人間が一応は必要だ。
 見張りは一人で充分だが、この警察署内でも単独行動が心配になる昨今だ。杏子の身に何かがあるのだとすれば、単独行動が危険であるのは明らかだと言えよう。
 やはりここでもチームを分ける形で、大げさな言い方だが、別行動をとる事になった。







 美希と沖が辿り着いたその部屋には、一枚の置手紙が残されていた。

『24時を過ぎたら2体の魔女を倒せ』

 置手紙では、3体と書いてあるはずの部分を二重線で消して、2体と上書きされている。紙の随所にある消し痕から、それがただの書き間違いではないのがよくわかった。
 何度も何度も上書きの痕。ちゃんと消しゴムで消さないあたりが、杏子らしくもある。
 3の上から2を書いている部分は二重線で雑に消しているが、他はもう少し慎重な消し方がされている。

「何よ、これ……」

 美希の声が震えた。
 杏子がここの部屋にいたのは明白だ。これは確かに杏子の字。
 しかし、杏子はもうここにはいない。いや、おそらく警察署にもいないだろう。その理由はわからない。何かが彼女を全員の前から消し去った。手品のようにではない。杏子自身の気持ちを利用して、杏子自身がここから消えるように、仕組む「理由」という敵が存在した──。
 きっと、制限解除の際に何かがあり、それが彼女を狂わせたのだろう、と美希はすぐに理解する事ができた。

『ごめん、こんな形で別れる事になって』

 手紙に残された、誠意のない謝罪の言葉。その字から感じ取れるのは後悔と迷い。本当は別れたくはないが、それでも何かの理由があって別れねばならない決意をしたのだと、その言葉は継げている。消し痕から微かに見えるのは、読み取れた二文とは全く無関係の文字だった。
 『のソウ』──佐倉杏子が消そうとした、本文と無関係な消し残し。
 ここに書き残した事とは別の事を、彼女はそこに書こうとしたはずだ。しかし、何かの迷いがそれを消させた。誰かに伝えるべきか、伝えぬべきか迷っていたのだ。

「ごめんじゃないでしょ……。そういうのは……ちゃんと口で言いなさい!」

 美希の手が、一枚の紙を握りつぶす。
 冷静に考えれば、その紙から読み取れるはずのデータはある。消された文字を解読すれば、何か糸口が見つかる可能性もある。
 しかし、美希は今、そう思うよりも怒りに任せてそれを握りつぶすほどに感情的だった。
 握った直後に後悔して、ばつが悪そうに沖の方を見た。重要な手がかりを判別させにくくしてしまったのだ。だが、そんな美希の不安もかき消すだけの能力を沖は持っている。

「美希ちゃん。俺の目はペンで塗りつぶされた箇所も視認、判別する事ができる。今の文も少し見せてもらえればわかるよ」
「本当ですか?」
「……貸してくれ」

 しわくちゃになってしまった紙を、美希は少し気恥ずかしそうに手渡した。
 一時的に高ぶった感情の証なのだ。冷静さを欠き、こうして手がかりになるかもしれない物をつぶしてしまった自分が情けなくも恥ずかしい。しかしそれが人間らしい姿なのだと、彼女は自覚していなかった。


359 : Waiting for Girl ◆gry038wOvE :2014/04/27(日) 22:18:58 Befvl..s0

「魔女の正体は、魔法少女の……」
「魔法少女の?」
「……そこから先は書いていない」

 魔女というのは、杏子のいた世界を脅かす怪物である。
 杏子からは、異世界に結界を張って暗躍し、人々を操り殺す不可解なモンスターだと聞いている。その正体については杏子が言及する事もなかったし、おそらくは誰も知らなかったのだろう(状況によってはアインハルトや沖にまどかを通じてその情報が伝わったかもしれないが、そうならなかった)。
 それが、今回の制限解除によって何者かに明かされた可能性は高い。
 このタイミングで杏子が魔女の正体を伝えようとしたのはその証明だ。「魔女の正体」──それが今回、杏子が姿を消した理由に関わるキーワードである。

「もし次にあったら、あたしのソウ……これも書きかけだ」

 他に読み上げられる文章を沖は読み上げた。
 似たり寄ったりな内容や、字を変えただけのものがいくつかあるが、際立って目につくのはこの二つの文章。
 ソウ──その言葉から続く言葉、何か心当たりはないだろうか。

「ソウ……ソウ……ソウルジェム、か……? しかし、何をすればいいのか」

 杏子に関わる言葉で、ソウで始まるのは「ソウルジェム」だ。
 しかしながら、「ソウ」という言葉の意味がわかったところで、文全体の意味は全く理解できない。次に会った時に杏子のソウルジェムをどうすればいいのか──。
 結局、沖では何もわからなかった。

「……結局手がかりなし!?」
「この書置きだけでは、直接聞かない事にはどうにもならないな……」
「全く、本当に仕方がない子なんだから! もうちょっとわかりやすく書きなさい!」

 美希は、そう悪態をつくと、気合を入れたように眉を顰めた。
 少しだが冷静な気持ちで、美希はぐっと表情に怒りを蓄えた。
 相変わらず、杏子は美希の価値観とは違う。自分だけで何かを背負い、こんな不完全──いや、不完璧な手紙でイライラさせる。
 勿論、こんな別れ方では美希の気が済まない。
 杏子が何を伝えたかったのかはわからないが、いずれにせよもう一度会う必要ができたのである。

「仕方がないから行ってくるわ!」
「あ、ちょっと!」

 沖が止めるのも聞かずに、美希は警察署の廊下を走り出してしまった。

「待つんだ、美希ちゃん! 杏子ちゃんの居場所なら──」

 沖が彼女を止めるために何かを言いかけた。その言葉は、美希の背中に届いた。


360 : Waiting for Girl ◆gry038wOvE :2014/04/27(日) 22:19:23 Befvl..s0


【1日目 夜中】
【F−9 警察署 杏子がいた部屋の前】


【蒼乃美希@フレッシュプリキュア!】
[状態]:ダメージ(中)、祈里やせつなの死に怒り 、精神的疲労
[装備]:リンクルン(ベリー)@フレッシュプリキュア!
[道具]:支給品一式((食料と水を少し消費+ペットボトル一本消費)、シンヤのマイクロレコーダー@宇宙の騎士テッカマンブレード、双ディスク@侍戦隊シンケンジャー、リンクルン(パイン)@フレッシュプリキュア!、ガイアメモリに関するポスター、杏子からの500円硬貨
[思考]
基本:こんな馬鹿げた戦いに乗るつもりはない。
0:杏子を探しに行く。
1:警察署内では予定通りに行動する。
2:プリキュアのみんな(特にラブが)が心配。
[備考]
※プリキュアオールスターズDX3冒頭で、ファッションショーを見ているシーンからの参戦です。
※その為、ブラックホールに関する出来事は知りませんが、いつきから聞きました。
※放送を聞いたときに戦闘したため、第二回放送をおぼろげにしか聞いていません。
※聞き逃した第二回放送についてや、乱馬関連の出来事を知りました。
※警察署内での大規模な情報交換により、あらゆる参加者の詳細情報や禁止エリア、ボーナスに関する話を知りました。該当話(146話)の表を参照してください。
※霊安室での殺人に関して、幽霊の仕業であるかもしれないと思い込んでいます。

【沖一也@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、強い決意
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(食料と水を少し消費)、ランダム支給品0〜2、首輪(祈里)、ガイアメモリに関するポスター、お菓子・薬・飲み物少々、D-BOY FILE@宇宙の騎士テッカマンブレード、杏子の書置き(握りつぶされてます)
[思考]
基本:殺し合いを防ぎ、加頭を倒す
0:美希を追う。
1:本郷猛の遺志を継いで、仮面ライダーとして人類を護る。
2:警察署内では予定通りに行動する。
3:この命に代えてもいつき達を守る。
4:先輩ライダーを捜す。結城と合流したい。
5:仮面ライダーZXか…
6:ダークプリキュアについてはいつきに任せる。
[備考]
※参戦時期は第1部最終話(3巻終了後)終了直後です。
※一文字からBADANや村雨についての説明を簡単に聞きました
※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました
※18時に市街地で一文字と合流する話になっています。
※ノーザが死んだ理由は本郷猛と相打ちになったかアクマロが裏切ったか、そのどちらかの可能性を推測しています。
※第二回放送のニードルのなぞなぞを解きました。そのため、警察署が危険であることを理解しています。
※警察署内での大規模な情報交換により、あらゆる参加者の詳細情報や禁止エリア、ボーナスに関する話を知りました。該当話(146話)の表を参照してください。
※ダークプリキュアは仮面ライダーエターナルと会っていると思っています。
※霊安室での殺人に関して、幽霊の呪いである可能性を聞きましたが、流石に信じていません。
※第三回放送指定の制限解除を受けました。彼の制限はレーダーハンドの使用と、パワーハンドの威力向上です。






361 : Waiting for Girl ◆gry038wOvE :2014/04/27(日) 22:20:04 Befvl..s0



 警察署の窓から、変な音が聞こえてきた。
 ピーーーーーーーーーーー。
 外で何かが鳴っているのだ。低音だが、何かを必死に訴えかけている機械の音。孤門は耳を澄ませて、その音の正体を探った。

「何の音だ……?」

 訝しげにその音の在りかを探る孤門。
 空、……そう、それが聞こえるのは空からだ。上空に何かあるのだろうか──と考えたところで、孤門は、すぐにその音の意味を知る。

「……もしかして、デンデンセンサーが!?」

 それに気づき、孤門は慌てた。誰かが警察署の屋上の時空魔法陣に現れたという事。──二人以上殺害した誰かだ。
 孤門は、ディバイトランチャーを構えた。

「……孤門さん、私も行きます」

 ヴィヴィオが言う。孤門は頷いた。沖と美希は警察署内のどこに向かったのかわからない。
 そして、逆にヴィヴィオをここに一人にしてしまうのも危険だというのはすぐにわかる話だ。二人でいるならば、二人三脚で向かうのが一番良いのは当然だ。
 孤門は緊張で鼓動を速めながらも、屋上へ向かおうとしていた。







 しかし──

「……誰も、いない」

 孤門が屋上のドアを開けて、ディバイトランチャーを構えると、鳴りやまぬデンデンセンサーが待っていた。デンデンセンサーだけが待っていた。
 ここには誰もいない。誰かが来た形跡もない。到底、二人以上殺した人間がここを踏み荒していったような痕もないし、階段の途中で誰かに会う事もなかった。
 飛び降りたのだろうか、と孤門は警戒しながら真下を見る。

「時空魔法陣は消えています……」
「一体、どういう事だ……?」

 孤門は、デンデンセンサーを拾い上げて音を止ませる。
 時空魔法陣に何かあったのだろうか。──孤門は、そんな疑問を浮かべずにはいられなかった。
 ……とにかく、この屋上にいても仕方がない。
 消失した時空魔法陣については、また後ほど沖たちとともに考える事にして、孤門は会議室に戻る事にした。



【1日目 夜中】
【F−9 警察署 屋上】

【高町ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
[状態]:上半身火傷(ティオの治療でやや回復)、左腕骨折(手当て済+ティオの治療でやや回復)、誰かに首を絞められた跡、決意、臨死体験による心情の感覚の変化
[装備]:セイクリッド・ハート@魔法少女リリカルなのはシリーズ、稲妻電光剣@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:支給品一式(アインハルト(食料と水を少し消費))、アスティオン(疲労・睡眠中)@魔法少女リリカルなのはシリーズ、ほむらの制服の袖
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
0:会議室に戻る。
1:生きる。
2:警察署内では予定通りに行動する。
3:時空魔法陣が消えた理由を考える。
[備考]
※参戦時期はvivid、アインハルトと仲良くなって以降のどこか(少なくてもMemory;21以降)です
※乱馬の嘘に薄々気付いているものの、その事を責めるつもりは全くありません。
※ガドルの呼びかけを聞いていません。
※警察署の屋上で魔法陣、トレーニングルームでパワードスーツ(ソルテッカマン2号機)を発見しました。
※第二回放送のボーナス関連の話は一切聞いておらず、とりあえず孤門から「警察署は危険」と教わっただけです。
※警察署内での大規模な情報交換により、あらゆる参加者の詳細情報や禁止エリア、ボーナスに関する話を知りました。該当話(146話)の表を参照してください。
※霊安室での殺人に関して、幽霊の仕業であるかもしれないと思い込んでいます。
※一度心肺停止状態になりましたが、孤門の心肺蘇生法とAEDによって生存。臨死体験をしました。それにより、少し考え方や価値観がプラス思考に変わり、精神面でも落ち着いています。


362 : Waiting for Girl ◆gry038wOvE :2014/04/27(日) 22:20:17 Befvl..s0

【孤門一輝@ウルトラマンネクサス】
[状態]:ダメージ(中)、ナイトレイダーの制服を着用 、精神的疲労
[装備]:ディバイトランチャー@ウルトラマンネクサス
[道具]:支給品一式(食料と水を少し消費)、ランダム支給品0〜2(戦闘に使えるものがない)、リコちゃん人形@仮面ライダーW、ガイアメモリに関するポスター×3、ガンバルクイナ君@ウルトラマンネクサス、デンデンセンサー@仮面ライダーW
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
0:会議室に戻る。
1:みんなを何としてでも保護し、この島から脱出する。
2:警察署内では予定通りに行動する。
3:副隊長、石堀さん、美希ちゃんの友達と一刻も早く合流したい。
4:溝呂木眞也が殺し合いに乗っていたのなら、何としてでも止める。
5:時空魔法陣が消えた理由を考える。
[備考]
※溝呂木が死亡した後からの参戦です(石堀の正体がダークザギであることは知りません)。
※パラレルワールドの存在を聞いたことで、溝呂木がまだダークメフィストであった頃の世界から来ていると推測しています。
※警察署の屋上で魔法陣、トレーニングルームでパワードスーツ(ソルテッカマン2号機)を発見しました。
※警察署内での大規模な情報交換により、あらゆる参加者の詳細情報や禁止エリア、ボーナスに関する話を知りました。該当話(146話)の表を参照してください。
※霊安室での殺人に関して、幽霊の仕業であるかもしれないと思い込んでいます。


363 : ◆gry038wOvE :2014/04/27(日) 22:26:49 Befvl..s0
以上、本日分は投下終了です。

今回の予約分は少し変則的な投下方法をします。
出来上がった話を三分割ではなく、163話・164話のように話数に分けて投下します。
1日1話ペースで投下していき、予約期限までには投下終了する予定です。全3話予定。
今回夜中パートで終わったキャラクターが、次回以降深夜パートで登場するので、予約分のキャラクターは全く平行線という事はありません。
(1話に今回の連中、2話に杏子と翔太郎とフィリップ、3話に結城と零……みたいな投下の仕方をするわけではありません)


364 : ◆gry038wOvE :2014/04/27(日) 22:27:22 Befvl..s0
明日分も完成しているのでお楽しみに!


365 : 名無しさん :2014/04/27(日) 22:42:44 7DFa9Z.60
投下乙です
対主催者同士の合流も近くなってきたな


366 : 名無しさん :2014/04/27(日) 22:44:50 ap6vmpdo0
投下乙です。
ヴィヴィオの怪我も治り始めてきた一方、美希たん達は杏子を追い始めましたか
もしも真実を知ったらどうなるか……?


367 : 名無しさん :2014/04/28(月) 01:48:20 9fTjhx460
投下乙です!

僭越ながらおそらく誤字と思われる箇所が
・明道院いつきはまだ→明道院いつきはもう
・デンデンセンサーだけが待っていた


368 : 名無しさん :2014/04/28(月) 13:39:12 tz7jvBWY0
投下乙です

対主催同士もあるがこいつらが上手く合流して仲良く団結して欲しい
終盤への最後の平穏だろうなあ


369 : ◆gry038wOvE :2014/04/28(月) 20:53:04 AnI3/TBc0
ただいまより、投下を開始します。


370 : のら犬にさえなれない(前編) ◆gry038wOvE :2014/04/28(月) 20:54:52 AnI3/TBc0


 ──これまでの仮面ライダーW in 変身ロワイアルは!!
(♪BGM『今までのダブルは』)

『ははっ……よっしゃぁぁぁぁ! フィリップが帰ってきたぁぁぁぁぁ!!』

『だったら誰が杏子ちゃんを支えられるんだ!? 君しかいないだろう! そんな君がつぶれたら誰が杏子ちゃんを……みんなを支えるんだ! 君は人々を守る希望……仮面ライダーなんだ!!』

『人々を泣かせたくはねぇんだろ……だったら、人々を泣かせる魔女になる前にこいつを……』

『ああ……あたしは戦う……みんなから受け継いだ想いを無駄にしないためにも……だけど……』

『ふっ……世話になったなフィリップ、マッハキャリバー……』

『Is a schoolchild the highest too?』

 (BGMがこの辺で終了。)







 ──この偽りの街で殺し合いを始めてから、針は既に二度目の円を描こうとしていた。俺もついに時間感覚がいかれたか。「あと二時間もある」というのが、「あと二時間で終わる」ような気がした。この一日分の疲労で俺も随分と体が麻ひしていたが、不思議な事に眠気だけは襲ってこなかった。俺が今、こうして冴えたナレーションを始められるのもその証だった。
 俺の頭は、夜風に晒されて、冷やした瓶ジュースよりも冴えていた(意味不明)。風は今宵もまた、俺を一段とハードボイルドに仕立てあげている。少し強い風が目に入り、俺の額を空に近づけさせた。
 星が見えた。空っぽの空を埋め尽くす満点の星は、俺を見下ろしているのか、見上げているのか。あの星の中のどこかに殺し合いとは無縁の星があるのなら、俺はそこを掴みとりたい衝動にかられた。誰もそうだろう。俺たちはこの一日を何とか耐え抜いたが、次の一日がまたあると思うと、ひどく憂鬱な気分にさせられる。ならばいっそ、俺たちの頭上の星で、星間戦争もなく自由を謳歌する人々の姿がどんなに良い事か。
 こんな地の果てで俺たちはあの星に想いを馳せ続ける。あの空の人々も、俺たちがこうして殺し合いに巻き込まれている事など知る由もないだろう。
 隣にいる相棒が言う。

「夜空の星は、どれもガスでできている。中心部で核融合を行って、そのエネルギーで光り輝いているんだ。人は住んでいないよ」

 まったく、浪漫のない相棒だ。俺は帽子の唾から目を覘かせた。相棒はこじゃれた外ハネの髪を指で弾くように触りながら、何食わぬ顔で星を見ている。

「……そろそろナレーションうるさいから切っていいか?」

 ……と、杏子が俺のハードボイルドの邪魔をする。
 杏子はもう、俺のハードボイルドなナレーションに慣れているのか、落ち着き始めていた。

「……てか、いま星とか浪漫とかどうでもいいからさ。それより兄ちゃんのセルフナレーション、略してセフレで伝えるべきは警察署の話だろ。もう警察署の目の前だぞ」
「はーん、セルフナレーション、略してセフレ……か、なるほど。…………って、花も恥じらう乙女がそんな略し方するんじゃねえ!!」

 かくして、俺は情けない怒号とともに、ハードボイルドなナレーションはひとたび幕を閉じる羽目になった。
 こからは口から出ていかない、本当に俺の頭の中のナレーションだ。突然ナレーションを切っても仕方がない。ハードボイルドというのは常に一人称で行う物だ。

「……ったく、ほんとにしょうがねえな」


371 : のら犬にさえなれない(前編) ◆gry038wOvE :2014/04/28(月) 20:55:41 AnI3/TBc0

 俺は冷や汗混じりの顔を帽子の中の小さな闇に溶け込ませて、再びのハードボイルドモードに切り替えた。
 これまで俺のハードボイルドの軌跡をたどってくれている人間は今更何度もおさらいしなくてもわかる通り、俺は私立探偵・左翔太郎だ。相棒はフィリップ。つい先ほど主催陣営、サラマンダー男爵の手によって、エクストリームメモリやファングメモリと共に相棒の身柄が開放された。ここに来てまだ一日というのに、久方の再会のようだった。
 昨日までの俺を見て、今日の俺を知らない人間にとって、見慣れないのは、この俺の隣にいる佐倉杏子。こいつもまあ、この二十二時間の俺の奮闘を見ている人間にとっては、もう説明しなくてもわかってもらえるだろう。
 うちの所長と同じくらいの背丈と顔立ちの幼さだ。所謂、女子中学生──最近の若者の言葉を借りればJC。そう、何でもアルファベット二文字で略すのが一番いい。セルフナレーションを略すならば、SNが一番いいだろう。できればそう略してもらいたかったところだ。

 そんな俺たちの前には、もう警察署の入り口がある。それだけ説明すれば良いものをわざわざこれだけ時間を費やして説明するからには理由がある。……そう、その方がハードボイルドだからだ。
 警察署というのは、俺たち探偵にとっても縁の深い場所だ。フィリップ・マーロウ然り、工藤俊作然り、どういうわけかハードボイルドな探偵というのは、年に四、五回ほど警察の世話になる。プロになると隔週で誤認逮捕されるらしい。俺も見習いたいものだ。警察につっかかられる事はあっても、そう毎週逮捕される事もない。早く照井も俺を誤認逮捕しに……おっと、いけねえ。
 ……とにかく、そんなハードボイルドのメッカ・「警察署」に、今日一日で三度目の立ち入りになる。これはもう、俺が完成されたハードボイルドである決定的証拠であると言っていいだろう。

 この警察署の中では現在も俺たちの仲間がチームを築いているはずだ。
 そこにいる人間の名前を順に報告しよう。
 蒼乃美希、高町ヴィヴィオ、孤門一輝、冴島鋼牙、沖一也。彼らもまた説明不要だ。この中では俺が一番ハードボイルドであろう事は間違いない事実だろう。俺しかハードボイルドを目指している人間はいないのだから、自ずと俺が最ハードボイルドになる寸法だ。

「……さて、翔太郎。いまだに続いているきみの自己満足的な導入は終わったかい?」

 相棒がそんな俺に声をかける。

「今いいとこなんだ」
「悪いけど、終えてくれないか。……これ以上、警察署に入るだけのために余計な前振りをしても仕方がないしね」

 相棒は俺に冷たい言葉を返した。

「……ったく、こっちもしょうがねえな」

 俺の気持ちの良いハードボイルドはそこで終わりを告げ、俺たちは警察署内に入る事になった。







 警察署の入り口では、俺たちを迎えるように年の差アベックが立っていた。
 そう、沖一也と、蒼乃美希だ。二人はさほど疲れた様子もなく、来るのを待っていたとばかりにそこに立っていた。
 警察署を抜け出した杏子を探すのではなく、待っていたのだ。ここに帰ってくるという自信でもあったのだろうか。──まあ、私立探偵である俺はこういう勘は利く。家出娘っていうのは、だいたいの場合において、すぐに帰ってくるのだ。
 杏子も例外ではなかった、という話。彼らもそれに勘付いていたのだろうか。……とはいえ、実際この状況で人がいなくなっても「家出娘だから放っておけ」と言えるだろうか。

「おい、なんだよお前……」
「待ってたのよ。この書置きを見て」

 追わない、という彼女の選択は結果的には間違ってはいなかっただろう。
 しかし、それはあくまで結果の話だ。もし、本当に杏子を探したいのであれば、自分の足で探しに行くのが普通だろう。ましてや、この状況だ。
 何故、美希たちはそれをせず、こんな玄関口で息を切らす事もなく待っていたのだろう。


372 : のら犬にさえなれない(前編) ◆gry038wOvE :2014/04/28(月) 20:56:27 AnI3/TBc0

「……翔太郎くん、君も帰って来たのか。……いつきちゃんは? それに、その少年は……」

 沖さんが、開口一番に訊かれたくない事を訊いて来た。俺が訊きたい事よりも、相手が訊きたい事を先に訊かれた。俺はフィリップの方を少し見た。フィリップは、そのままの表情で俺を促した。
 ……そう、警察署に入ったなら、まず、俺はそこにいる仲間に伝えなければならない。
 この場にいる人間の中では、俺とフィリップと杏子だけしか知らないその事実を。これからまだまだ降りかかる残酷な真実の、その一握りを、まずは、俺自身の口から告げなければならない。ここにいる誰も知らないフィリップという男を紹介するよりも、マッハキャリバーという仲間を紹介するよりも、まずは、もうどこにもいない少女の事を伝えなければ、けじめがつかない。

「あ……あぁ……。明堂院いつきは……亡くなった」

 俺の唇は、目の前の二人にそう伝えた。
 美希の手から、杏子の帰還を喜ぶような表情が消えた。沖さんが、思わずデイパックを地面に落とした。このタイミングで向こうから階段を下りて走ってくる孤門一輝と、高町ヴィヴィオも緩やかに足を止めた。呆けたような顔、衝撃を受けたような表情──その視線が俺に注がれる、俺に突き刺さる。
 誰もが、俺はいつきと帰還するのだろうと想像していただろう。その予想を裏切る形になった。俺は帽子を外したまま、ただ詫びる言葉も出ないままに頭を垂れた。その一連の事件は、俺の責任であり、俺の罪だった。
 たとえば、蒼乃美希がここに来るのを俺が引き換えさせなければ、味方の戦力が増えて、いつきは助かったかもしれない。
 たとえば、俺がいつきをあの場に連れていかなければいつきは助かったかもしれない。
 たとえば、あの時身を投げ出したのが俺だったなら、いつきは死ななかっただろう。
 いくつかの判断は、俺の誤りだった。

「……そうか」

 沖さんが、突然の報告にどう返していいのかわからないように、そう答えた。俺も何から伝えればいいのかがわからなかった。

「すまねえ……」

 俺の口から出るのは、本当にそれだけだった。
 沖さんは、それでも俺を責める事なく、悲しみを堪えて言った。

「詳しい話は、中で聞こう」

 その言葉に誘導されるように、俺たちは、暗い表情で歩き出した。この葬式のような行列。慶弔するという意味では、もはや葬式とは区別がなかった。
 階段を上るときも、誰も何も言おうとはしなかった。







 脇目を振る。会議室にはマットが敷かれている。寝具として利用しているらしい。
 このマットには、おそらくいつきの寝る場所も確保されていただろう。そのスペースは、もう必要ないものになってしまった。とうに死んでしまった者のために、彼らは準備をしていた。その思いやりが、彼女の生存を疑いもしなかった彼らの心情を伝えているようで、辛かった。
 誰もが待っていた少女を、俺は守る事ができなかったのだ。信頼を裏切る結果になった。
 俺たちの姿が警察署の窓から見えた時、足りない誰かがいる事を、誰も不安に思わなかったに違ない。きっと、ただ別行動をしているだけだろうと、そう思っただろう。
 だから、孤門たちは返す言葉をすぐには出せなかった。俺は、ずっと用意しようとしていても、何から話せばいいのかわからなかった。

「彼女を殺害したのは、ゴ・ガドル・バだ」

 フィリップが、そんな俺よりも少しばかり冷静に、ただ、少し気に病んだ様子が感じられるトーンで、そっと言った。

「……ちょっと待って。きみは? その声、聞き覚えがあるけど……」

 孤門が、フィリップを見て訊いた。殆どの人間の顔の上には、「この男が誰だかわからない」と言った疑問の色が浮かんでいる。フィリップが自己紹介を忘れるというのは珍しい。言いながらも、孤門はその正体に薄々勘付いたようだ。他もそうだろうか。いずれにせよ、フィリップはちゃんと自己紹介をする事にした


373 : のら犬にさえなれない(前編) ◆gry038wOvE :2014/04/28(月) 20:56:58 AnI3/TBc0

「ごめん。名乗り遅れていたね。僕はフィリップ。ベルト越しで何度も会っていたとはいえ、直接会うのは初めてだ。君たちの紹介はいらないよ。僕はもう君たちの顔と名前を知っている。……そう、僕も翔太郎の制限の解除によって、ようやくこの場に開放されたんだ。……残念ながら、首輪つきだけど」

 フィリップは、己の首元の金具を鬱陶しそうに触りながら、自分の立場を簡潔に説明した。殺し合いに巻き込まれるまでが遅かった分、俺たちよりも客観的に、冷静に、機械的に、言葉を舌に滑らせるように話せるのは、こいつの良いところでもある。
 フィリップが名乗り遅れたのは、おそらくフィリップ自身に、あまり初対面という自覚がなかったからだろう。

「そうか……君が」

 沖さんがフィリップの顔を見て、妙な関心を浮かべた。声だけしか聞こえなかった存在の表情や体格を見た、この違和感。誰もがその感覚を持っていると思う。アニメーションの声優なんかが身近だろうか。
 ここにいる人間は、どんなフィリップ像を想像していたかはわからない。その美男子像を裏切ったか、裏切っていないかもわからない。俺が言うのも何だが、フィリップはなかなかの美男子でもある。俺の推測では、裏切られたと感じる者はあまりいないだろう。

「よろしく。アナザー仮面ライダー。それに君たちも。こうして会えて光栄だ。……とにかく、これまでのいきさつは翔太郎に代わって、僕が全て話す。君たちの耳が受け入れる限り聞いていてくれ」

 フィリップは、聞かなくてもいい、という前置きだったをした。それは一つの優しさだった。しかし、聞かない者はいなかった。

「あの轟音の向こうには花咲つぼみ、響良牙、それからダークプリキュアもいた。明堂院いつきも一度は彼女たちと合流する事ができたんだ。……ただ、それで僕たちの足は止まった。彼女も状況確認だけでなく、そこで足を止めて、ダークプリキュアと戦う必要ができてしまった。……それでも、明堂院いつきは、凄い子だと思う。信じられないかもしれないけど、ダークプリキュアは、彼女のお陰で生まれ変わり、今は全く別の名前になった。驚く人がいるだろうから、その名前を伝えるのは、今はやめておこう」

 フィリップの語り口調は、冷静でありながら、どこか脇道にそれがちでもあった。要旨だけを伝えるような口ぶりではなかった。フィリップ自身も、そうしなければ落ち着かないのだ。

「彼女は、ダークプリキュアの心を正し、彼女と和解する事に成功した。……ただ、そこに悪魔が現れてしまったんだ。それが、ゴ・ガドル・バだ。彼は僕たちの前に姿を現した時、既に一条薫を殺害していた……。そして、明堂院いつきは、大事な友達を庇うために身を投げ出して、ガドルに…………」

 そこから先は、フィリップも言う事はなかった。

「それが全てだ」

 俺たちが交戦していた事は、途中まで一緒にいた美希も、そこに向かっていたはずの鋼牙も知らない。自分たちがそこから少しでも前に踏み出せば、その少女の遺体と顔を合わせる事になったかもしれないと、あるいは、自分自身がそうなっていたかもしれないと、そんな現実をどう思っているのだろうか。

「すまねえ……。俺たちは、また……守れなかった」

 俺はまだ、ちゃんと顔を上げる事ができなかった。

「……あまり気に病むな。顔を上げるんだ」

 沖さんが言う。
 俺は、どう言われても、いまヴィヴィオの方に目をやる事だけはできなかった。フェイトもユーノも霧彦も、俺は守れなかった。それに加えて、いつきも守る事ができなかった。ヴィヴィオと親しかった人間がまたいなくなった。俺が駆けつける余地があった状況でこれだけヴィヴィオの大切な人を喪っているのだ。
 彼女にどんな声をかけていいのか。
 謝るべき、なのだろうか。

『Vivio?』


374 : のら犬にさえなれない(前編) ◆gry038wOvE :2014/04/28(月) 20:57:21 AnI3/TBc0

 そんな俺の心中よりも先に、「彼女」が口を開いた。マッハキャリバーだ。
 俺は、ばつが悪そうな顔をしながらヴィヴィオの方を向く。ヴィヴィオもショックを受けているようだったが、その一声には反応せざるを得なかったようだ。

「誰?」
『I’m Mach Caliber』
「マッハキャリバー!?」

 ヴィヴィオは、それもまた信じられないといった様子で俺の方を見た。俺は、そこに俺を責める色は感じられない事にどこか安心しながら、青い宝石を取り出した。マッハキャリバーは、俺の手からヴィヴィオの手へと渡される。
 かける言葉は見当たらないのに、手と手が触れ合うというのは不思議な感覚だった。

『You grow up so quickly(随分大きくなりましたね)』
「ええーっ!? もしかして……私が知るよりも前の……?」
『It was surprised me(私も驚いています)』

 ヴィヴィオの飲み込みは早い。自分より前の時系列の存在と会うのは、これが初めてだろうか。しかし、アインハルトがなのはと会った事も彼女は知っている。直接的ではないが、間接的なデータなら幾つか入手済だ(ヴィヴィオの時代にはとっくにインテリジェントデバイスは浮遊して自律移動する機能が備わっているが、このマッハキャリバーにはまだその機能はなかったのも、彼女がマッハキャリバーを過去のマッハキャリバーだと認識できた理由の一つだろう)。

『Who are you?(あなたは?)』
「(シュビッ! シュバッ! シュババババババ)」←なのってはいるが、つたわらなくてあせっている

 マッハキャリバーは、自分と同じく言語を話すデバイスだと思って、クリスに問うた。
 しかし、とうのクリスは非常にあせった様子で答えている。言語を話さないデバイスの難点だ。ヴィヴィオが簡易的に通訳する事になった。本当なら、マッハキャリバーもデバイス同士で心を通じ合う事をできるかもしれないが、ヴィヴィオが話すのが確実だった。

「この子は、クリス……本当の名前はセイクリッド・ハートって言います」
「(コクコク)」←うなずく
『……』
「な、仲良くしてね……って」

 マッハキャリバーも絶句する。流石に、うさぎのぬいぐるみの姿をした変身アイテムが存在するなんて思わなかったのか。

『……OK』

 マッハキャリバーの戸惑いに満ちた返事が聞こえた。それは機械的とは言えない。戸惑っている様子がはっきりと伝わって来た。

『Vivio , Your mother was……』

 マッハキャリバーが辛そうに口を開いた。
 彼女が何を言おうとしているのかはわかっている。俺も、ヴィヴィオもだ。

「……わかってるよ、マッハキャリバー。全部みんなから聞いたから」

 マッハキャリバーが告げたい事実については、全てヴィヴィオが知っている。
 アインハルト、いつき、沖のようにその場にいた人間たちから全て聞いているのだ。

『……You don’t know everything(あなたは全てを知っているわけではありません)』
「うん。でも、本当の全部は後で聞くよ……。今はお礼を言わなきゃ」

 ヴィヴィオはマッハキャリバーにそう言って、俺の方を見た。

「あの……翔太郎さん。マッハキャリバーを見つけてくれて、ありがとうございます」

 ヴィヴィオが俺に声をかける。俺は下を向いて顔を隠していたが、咄嗟にヴィヴィオに目を向けた。俺の両目に、緑と赤のオッドアイが映った。
 そこには、大きな悲しみを乗り越えた──いや、大きな悲しみを受け取る隙を持たなかった少女の明るさが散漫していた。それは決して悪い事ではない。いつきの死を悲しんでいないわけでもないだろう。
 俺に気を使っているのか。こんな成人の半分しか生きていないような女の子が、俺に──そう思うと、俺の情けなさばかりが際立つ。

「マッハキャリバーを見つけたのは、響良牙だ。……俺じゃない」
「でも、その人から受け取って、ここまで届けてくれたのなら……それで充分だと思います。私をまた、大切な人の相棒に出会わせてくれた。それは、左翔太郎さん、あなたです」


375 : のら犬にさえなれない(前編) ◆gry038wOvE :2014/04/28(月) 20:58:22 AnI3/TBc0

 俺は、その時、やはり俺はハードボイルドではないと気づいた。
 十歳の少女の慰めに涙を流しそうになるハードボイルドが、この世の中にいるだろうか。俺の手が、まだこんなにも無力で、俺の想いが、救う事ができない命があると、──それがまた、目の奥に涙を持ってこさせた。
 俺を責めてもおかしくない少女が、必死に堪えている。
 それなのに俺は何もできない。これからも俺は誰かを救うために戦う。それでも、……その過程で失った命が、俺の胸を刺す。
 目の前にいるのは、俺が救えなかった命の片割れだ。

「あ、あの……翔太郎さん?」
「……いや、ありがとう、ありがとよ、ヴィヴィオ……。俺も……頑張らなきゃな」

 この夜は、そう──。俺たちが救えなかった命を、俺たちが見送ってしまったような死を、思い出させるような厳しい風が吹いた。
 俺は涙を流す事はなかったが、帽子が小さな闇を作った時、一瞬だけ何かが頬を伝った。







 俺は、真夜中の街を見下ろしながら、風を感じていた。
 本当に、この街は偽りの街だ。外の建物には灯りがない。等間隔な街灯と、夜空の星々だけが照明の役割を担っている。星の灯さえかき消してしまうような人々の生活が、この街からは感じられなかった。
 俺はこの街のために命を捨てる事はできない。しかし、俺はこの街を守る事ができる。
 この街は、人を包んではいないが、俺たちに確かな出会いを齎した。悲劇も齎した。友も齎した。この街がくれた物のぶんだけ、街を守るのも悪くはない。
 話すべき悲劇は、まだそこにある。

「……杏子、この書置きについてだけど、訊いていいかしら?」

 そう、厄介な事に、杏子がこの警察署に残してくれた余計な書置きだ。
 美希が最初に、その書置きについて触れた。俺も先ほど、その皺だらけの紙を見せてもらったが、それは、粗雑な消し痕だらけで、説明不足な置手紙だった。到底、他人に見せる事を意識した手紙とは思えない。しかし、それほど、いっぱいいっぱいな人間もいる。
 俺は、街を眺めるのをやめて、美希の方を見た。美希の視線の先には杏子の姿があった。ごく真剣な表情で、杏子を見つめていた。

「なぁ、先に訊いていいか? ……あんたたちは、あたしたちを警察署の前で待ってたけど、なんで戻ってくると思ってたんだ? もし、翔太郎の兄ちゃんに会わなければ、あのままどっかに行くはずだったしな……あたしが戻って来たのは、ほんの偶然なんだ。なんであんな余裕の表情で待っていられたんだ?」

 杏子が、そう訊き返した。先に事情を話すべきは明らかに杏子だが、俺はこの二人の会話に口を挟む事はなかった。どんなツッコミ所も、聞かないふりをして当人たちのペースで話させるのが一番良いと思った。

「……なんか質問が多いけど、まあいいわ。それじゃあ、私から答えるわ。……それは全部、沖さんのお陰よ」

 美希は、杏子の事情を早く知りたいようだが、自分の事情を手短に話す自信があるのか、語り始めた。







 〜回想〜

 時間は、蒼乃美希が警察署の外に杏子の姿を探しに行ったところまで遡る。
 美希は、もう体が覚えた出入口に向けての経路へと、走り出そうとしていた。
 沖は、その背中を視認し、そんな美希に向けて手を伸ばしていた。

「待つんだ、美希ちゃん! 杏子ちゃんの居場所なら──」

 そう、美希の背中に向けて、沖はそう叫んだ。


376 : のら犬にさえなれない(前編) ◆gry038wOvE :2014/04/28(月) 20:59:00 AnI3/TBc0

「──杏子ちゃんの居場所なら、俺のレーダーハンドを使えば、すぐに調べる事ができる!」

 美希は、その言葉をかけられて、足をゆっくりと止めた。数歩だけ生まれた、微かなあそびとともに、美希は背後を振り向いた。

「……本当に?」

 そう訊くと、沖は頷いた。

「本当だ。きみも居場所がわかっていないのなら、むやみに飛び出すべきじゃない」

 諭すように沖がそう言った後も、美希は沖の方に近づく事はなかった。またいつでも杏子を探しに階段を下れるような準備をしていた。

「彼女はまだそう遠くへは行っていないはずだ。それなら、俺のレーダーハンドから発されるレーダーアイが彼女の姿を探し、確認する事ができる」

 しかし、その準備も沖の前では無意味だ。レーダーハンドの使用範囲圏内は、完全に沖のテリトリーである。
 誰かを探すのにはおあつらえ向きの力が沖の元にある。
 それを使い、杏子が逃げた場所をあらかじめ知ったうえで、感知をしながらそこへ向かう事ができるはずだ。

「ニードルによって解放されたこの力……お見せしよう!」

 沖は、美希と一定の距離があるのを確認したうえで、変身の構えを形作る。複雑な拳法の構えにたじろぎ、美希はその姿に近づかなかった。
 沖は構えたまま、変身の呼吸を整える。
 そして、その言葉を叫ぶ。

「変身!」

 両腕を前に構え、ベルトを開く。──電子音が鳴り、沖一也は仮面ライダースーパー1へと変身した。変身の呼吸は完璧であった。
 スーパー1はそのまま、息をつく間もなく、ファイブハンドを装着する。

「チェンジ、レーダーハンド!」

 ベルトの腰にあるファイブハンドボックスは、金色の点滅を始めた。スーパー1が持つ五つの腕の一つ、レーダーハンド。レーダーハンドから発されるレーダーアイは、周囲10kmの様子を確認する事ができる。
 杏子も、いくら何でもこの短時間で10km圏外に出る事はありえないだろうと考えられる。スーパー1の腕から発射されたレーダーアイは、窓の外へと出ていく。

「……待っていろ、すぐに彼女の居場所を探り出す」

 それはプリキュアたちが持っているはずのない力。改造された人間でしかありえない力。
 レーダーアイから送られる情報を、スーパー1の頭部のスーパー触角が感知する。
 まだ、ただの街並みの光景しか映していない。レーダーアイは高速で動き、どこかで動いている物体を探り出す。

「……どうですか?」
「今探している……」

 美希の問いかけに応えつつも、更にスーパー1は己の神経を鋭敏化した。
 レーダーアイは高速で移動し、スーパー触角にもその情報が一瞬で送られてくる。

「ん……?」

 スーパー1は、その途中で、一瞬だけ何か心配事があるかのように眉をひそめたが、すぐにまた探査を続けた。

「あっ!」

 スーパー触角に送られた電波は、ヘッドシグナルからSアイへと映される。
 そこには、佐倉杏子と、二人の男性の姿があった。──うち、片方は左翔太郎である。もう片方の男性は見覚えがないが、もしかすると一条薫や涼邑零といった仲間の男性である可能性もある。
 とにかく、三人はこちらへ向かっているようだ。


377 : のら犬にさえなれない(前編) ◆gry038wOvE :2014/04/28(月) 20:59:21 AnI3/TBc0

「杏子ちゃんたちは、翔太郎くんたちとこちらへ向かっている。周囲には敵もいないようだ」
「翔太郎さんと……?」
「……その通りだ。安心していい。すぐに来るから迎えに行こう」

 スーパー1は己の変身を解き、沖一也の姿へと戻った。
 その顔には、さわやかな笑顔がある。沖は頷くと、美希とともに階段を下りていった。


 〜回想おわり〜







「……というわけなの」

 美希が、全ての説明を終えた。

「なるほど。……レーダーハンドか、興味深い」

 俺の隣で、フィリップがまた知識欲を埋めようとする。

「……レーダーハンドはファイブハンドの一つ。金色の腕だ。ロケット型のレーダーアイを飛ばして、半径10km四方の情報を素早くキャッチする。レーダーアイから送られた情報はスーパー触角、ヘッドシグナルを通してスーパー1の中に情報を伝達する。レーダーアイは小型ミサイル弾にもなる。……確かに僕たちの力になるはずだ」

 フィリップは、話を聞きながら『無限の本棚』の中に入って、既に『レーダーハンド』に関する資料を得ていたようだ。『仮面ライダースーパー1』のデータも獲得済。流石に仕事が早い。興味のある事はすぐに調べてくれる。

「『無限の本棚』も……確かな情報のようだな」

 沖さんがフィリップの所蔵する本棚の情報量に唖然とする。感心しているというより、ただただ唖然といった様子である。沖さんも研究所や組織の人間だ。こうして機密情報を簡単に調べられるのは厄介な話に違いない。
 とはいえ、もともと最重要機密のようなものを調べるにはロックがかかるので、そんなに心配しなくていいものだが。
 俺とフィリップにとって心配なのは、レーダーハンドという強力な武装が増えた事が、また『主催戦』へと一歩駒を進めているような予感があったからだ。それは全て、俺たちの想い過ごしであってほしいものだが……。

「……本当に何でも調べる事ができるのか?」

 孤門が横から訊いた。

「……地球の記憶にある限りは、おそらく。君たちの世界の事も調べられるはずだ」
「……それなら、僕からも一つだけ検索を頼んでいいかな?」
「構わないよ。……それで、キーワードは?」

 孤門の問いかけにフィリップは応じて、美希や杏子もそちらに意識を集中させたようだ。少しだが、会話と会話の間に余裕ができる。その間に、杏子は適当な言い訳を考えるだろう。
 孤門は、フィリップに調べさせたい単語を口にした。

「アンノウンハンド」

 孤門の口から出たのは、孤門たちの世界を暗躍する、正体不明の敵の名前。
 フィリップは、「わかった」と頷いて、『無限の本棚』にアクセスした。

「……さあ、検索を始めよう。キーワードは、『アンノウンハンド』」

 それから、僅かな時と沈黙が流れた。フィリップは一見すると動かないが、既に検索を初めて、その無限の書庫から本を引き出している。
 そういえば、ユーノも同じように、図書館で本を探り出していた。あれが俺とユーノとの出会いだった。
 フィリップは、すぐに検索を終えて、意識を取り戻した。彼は、孤門の方を向き直す。

「……孤門一輝。アンノウンハンドに関する本は驚くほどに少ない。君たちの世界が情報の秘匿を行っていて、ごく一部の限られた人間しかその言葉を知らないせいもあるだろう。……そして、内容は殆ど削除されているのか、最初から白紙なのか、閲覧する事ができない。ミュージアムと違って、閲覧そのものは難しくないんだ……。でも、肝心の内容が無い。もしかすると、地球の記憶が削除されているのか、君たちの世界の本棚にアンノウンハンドが関わっているのか……」


378 : のら犬にさえなれない(前編) ◆gry038wOvE :2014/04/28(月) 20:59:55 AnI3/TBc0

 フィリップは顎に右手を当てて考えている。右ひじに当てた左腕を摩りながら、検索ブロックがかかっている原因について少し考えていた。
 園咲と違うのは、検索そのものは難しくない事。内容だけが全くの白紙となっている。

「……そうか。ありがとう、フィリップくん」
「いや、こちらこそお役に立てなくて申し訳ない限りだ。……これは推測だけど、もしかすると、君たちの地球の記憶そのものが、アンノウンハンドの正体を知らないのかもしれない。あるいは君たちの世界そのものが、その正体を完全に忘れ去っているのかも」

 そう言われて、孤門には心当たりがあるように言った。孤門の目は見開いている。

「僕たちの世界にはメモリーポリスがいる……。記憶の削除を行える端末が存在するんだ」
「……その結果生まれたのが、地球の記憶さえも封じるトップシークレット、か。……今後も僕は必要と思った情報は全て調べるようにする。だから、何か手がかりがあったらお互いに情報を交換し合おう」
「わかった」

 フィリップという存在に対して、全員の好意が集中する。
 フィリップが持つ『無限の本棚』はかなり便利な存在だ。俺は相棒としてもフィリップを買っているが、その一方で『地球の本棚』の能力にも何度も助けられた。フィリップはそうして人々を助けているのだ。自分の力が誰かに必要とされる事を不愉快には思わないだろう。
 ただ、、とにかく、孤門たちの世界の諸悪に関する資料は出てこなかった。出てこなかったとしても、次に訊かれるべき諸悪。それは、話の流れを考えればすぐにわかる話だった。

「……で、脱線したけど、魔女の正体って何なの?」

 美希が話を戻す。このまま忘れてくれるわけにはいかなかった。
 勿論、杏子も言い訳を考えただろう。魔女の正体を訊かれた時に、何と答えるべきか。
 杏子は考えたうえで、他の仲間には嘘を突き通す事を考えたのだ。

 嘘をつく。──それは、上手な人間と下手な人間に分かれる行為の一つだ。
 杏子は自分自身に嘘をつき続けて生きてきた。下手なはずがない。どんな嘘が飛び込んでくるのか。俺はそれを少し楽しみに待った。

「あ、ああ……。そうだな。魔女の正体はな……」

 書置きでは、「魔女の正体は魔法少女の」とまで書いてあった。
 そこから先に繋がる言葉を考えてあるのだろう。
 フィリップは、黙っている。彼は検索する事ができるが、ここから先はそういうわけにもいかない。隠しておく事実というのも存在する。フィリップもそれを理解しているのだろう。
 現状、孤門たちは俺たちに隠し事する事ができないが、俺たちは他の全員に自在に隠し事ができる。……決して、それが有利な事実とは言いたくないが。

「魔女の正体は……」

 杏子は、何度も同じ言葉を口にする。そこから先を言うのを躊躇している証だ。しかし、二度目の躊躇。杏子は息を飲んだ。ついでに言うなら、俺も少し息を飲んだ。

「魔女の正体は…………」

 今の杏子は、嘘を吐く事に僅かの躊躇いがあるように見て取れた。
 そして、三度目の躊躇の後に、杏子は言った。

「魔女の正体は、魔法少女のエネルギーから生み出された怪物なんだ!」

 ……俺にもわかった。こいつは、嘘が下手だと。

「魔女は……わ、悪い奴らがあたしたちの戦っている時の力を利用して生み出したんだよ……。これまでのあたしたちの戦いで使ったエネルギーで、ここにも魔女が生まれちまうんだ」

 不自然な笑みで誤魔化しながら、必死に嘘を作り出している。危ない橋を渡るかのような苦笑いなのかもしれない。自分自身が魔女になるという事実を秘匿しながらも、魔法少女のエネルギーの危険性を伝える為に、そして魔法少女たちの責任も果たす為に、杏子は嘘をついていた。

「エネルギーを生み出すのは、あたしたちのソウルジェムだろ? ……あれを砕けばさ、あたしは魔法少女じゃなくなるけど、魔女は生まれないから、それを書こうとしたんだ」


379 : のら犬にさえなれない(前編) ◆gry038wOvE :2014/04/28(月) 21:00:17 AnI3/TBc0

 嘘に嘘を重ねる杏子の姿を、全員で黙って見つめていた。
 沖さんが口を開いた。

「フィリップくん、本当かい?」
「……ああ、本当だ」

 フィリップは、息を吐くように嘘をついたが、内心で呆れている様子が俺も聞き取れた。
 確かにこれなら、魔法少女のエネルギーの危険性や、いざというときにソウルジェムを砕かなければならない事を、最も重い真実を隠しながら教えていく事ができた。
 フィリップの同意が決定打だろうか。

「……わかったけど、それなら、もっと早く事情を教えてよ」
「悪い……。魔女を生み出していたのがあたしたちだったっていう事が……ちょっとショックでさ。思わず」

 杏子の苦笑いは、乾いているようにも見えた。おそらくだが、この嘘を貫き通しても、仲間がソウルジェムを砕きに来る事はないだろう。いざという時にそれをしなければならないのは俺の役目だ。
 俺は、その役目を果たせるかわからない。こうして、杏子の内面まで見つめながら行動を共にしているのだ。俺は、いざという時も躊躇いの味を忘れないだろう。
 何はともあれ、騙され上手な俺の仲間たちには、悪戯な感謝を贈ろう。







 おおよその事情を話した俺たちが次に来た場所は、警察署の屋上だった。屋上は冷えた空気が溢れていた。

「確かに消えているな……」

 そこにあったはずの小奇麗なミステリーサークル──時空魔法陣は、完全に姿を消していた。俺の手に、孤門からデンデンセンサーが渡された。こいつはもうお役御免という事か。
 どうやら、孤門とヴィヴィオが会議室で待機している間、デンデンセンサーの反応があったらしい。
 それで、不審に思って、二人で屋上まで来ると、そこには「何もなかった」。あるはずのものがないという異常だけが、そこにあった。

「……一体、なんで時空魔法陣が消えたんだ?」
「レーダーハンドを用いても、誰かが来た様子はない。時間切れというわけでもなさそうだが……」

 先ほど、また沖がレーダーハンドを使うために変身したが、周囲に誰か人の様子があるという事はなかった。
 時空魔法陣が結んでいるのは二点のみ。最低でも誰かが使用するまで消えないと思っていたが、どうやらそういうわけではないらしい。
 何らかの不都合、何らかの異常。それがこの時空魔法陣を消したのだろうか。

「もしかして、アインハルトさんや源太さんを……二人の命を奪った犯人が、まだ警察署に潜んでいたのかも」

 と、誰かが言った。女性の声だ。ヴィヴィオだった。アインハルトの友人だった彼女は、それを口にするだけでも辛いはずだった。味方に一つの可能性を提示するためとはいえ、その言葉をひねり出すのにどんな心の葛藤があっただろう。俺たちはそうまでして出てきた言葉を否定しなければならなかった。

「……それは、……違うよ」

 フィリップも、そう否定するのには抵抗があったのだろう。

「……僕たちはその犯人の告白を聞いた。二人を殺したのは、そして君を傷つけたのはダークプリキュアだ」

 その場に戦慄が走る。言葉が出なくなる。隠していたわけではない。ただ、話すタイミングが少しばかりなかったのだ。
 いずれにせよ、彼女はヴィヴィオの命を奪いかけ、大切な友達を喪わせた存在だ。その事実は変わらない。勿論、いつか言わなければならない話だった。
 ただ、誰も納得していた。かつて、俺たちがその可能性を一度提示したせいもあるだろうか。


380 : のら犬にさえなれない(前編) ◆gry038wOvE :2014/04/28(月) 21:01:02 AnI3/TBc0

「彼女は確かに、許されない事をした。……彼女を受け入れるか、受け入れないかは……僕たちの判断だけではどうにもならない。大事な同行者、大事な友人を奪われた君たちが、彼女を恨むのなら……僕たちもここで彼女を突き放す選択肢を選ぶだろう」

 感傷に流されない冷徹非情なハードボイルドが、フィリップの中にはあった。
 確かに、月影なのはが今後、果たしてここに来て受け入れてもらえるのか否かは、今後の重要な課題の一つだ。突き放すという判断だって、決して間違いではない。
 罪を憎んで人を憎まず──とはいっても、隣人を殺した罪を、どこまで許せるのか。
 俺たちの前にいる杏子も、直接手を下していないとはいえ、それに近い事を繰り返してきた。彼女を受け入れられるのなら──と、俺は少し期待した。

「……まあ、その事は直接会わなければわからないと思う。だが、近いうちにその機会は訪れるだろう。彼女を受け入れれるのか、受け入れないのかは、その時に考えてくれればいい。今は彼女の事で悩むよりも、この時空魔法陣について考えようか」

 それでもフィリップは、僅かな感傷──ハーフボイルドも持っていた。
 問題は先送りになるが、実際、今考えたところでどうにもならない。今許せると告げても、いざ会ってみればその想いが壊れる事もある。
 俺たちは、未来の話よりも、まずは目の前にあるそいつの話をする事にした。

「この時空魔法陣は、おそらく誰も使っていない。それなのに姿を消した。理由はわからない。……ただ、一つの目安があるとすれば、それはやはり、『制限の解放』だ」

 デンデンセンサーの反応があったのは、だいたい三十分を少し過ぎたあたりらしい。
 沖一也が制限の解除を終えたあたりとなると、やはりその前後が何かの目安だと考えられる。

「時空魔法陣を操れる奴の制限が解除されたっていう事か……?」

 誰かが、時空魔法陣を操る力を持っている。そして、制限されていた力を解放し、時空魔法陣の行先を変えた──その可能性を、俺は考え、口にした。

「あくまで一つの可能性、か。……まあ、一番筋が通る説明だと思うけど」
「問題はそれが、敵か味方か……」

 沖さんが、深刻な表情で付け加えた。勿論、味方であってほしいが、そうとは限らないのが無情の世の中だ。
 この街は何度でもこんな不安を煽り、戸惑いを投げかける。
 そしてまた、これも俺たちが考えてもどうにもならない問題だった。

「味方であってほしいですよね……」

 争いの種はあってほしくない。しかし、争いの種を撒いている奴はどこにでもいる。
 そういう奴が俺たちの前に突然現れては、大事な仲間を奪っていく。
 俺たちが何より許せないのは、そういう奴らだ。

「……やめよう。このままここでそんな事を考えても仕方がない。考えるのは後だ。俺たちはここに確認に来ただけさ」

 沖はそう言って、中に入るよう促した。この寒空の下にあまりいると風邪をひく。そんな状態で考えるのはもうやめようと、俺たちはすぐに考え至った。
 俺たちは、またぞろぞろと会議室に戻る行列を作った。







 俺たちが会議室に戻ると、目の前で机が全部どかされた。机は端に追いやった。キャスターがついていると、どかしやすい。机は寝るのにも邪魔だったのだ。
 そして、俺たちは、それでようやくその部屋にスペースを作り上げた。
 ……が。

「はぁぁあっ!」

 どういうわけか、俺の目の前のスペースは、寝具の置場ではなかった。マットさえもどかされた。俺たちが寝る為のスペースは、目の前で戦う二人の格闘家の手によって、踏みあらわされていた。


381 : のら犬にさえなれない(前編) ◆gry038wOvE :2014/04/28(月) 21:01:31 AnI3/TBc0

「!!」

 大人の姿になった高町ヴィヴィオ(ストライクアーツ)と、その打ち込みを両腕で回避する沖一也(赤心少林拳)。俺たちの目の前で繰り広げられる迫力の一戦だ。
 風呂に入る前に、少し、トレーニングをしているようだ。それ専用の部屋があるというのに、わざわざこの部屋でやるのはやめてほしいものだが、すぐに終えるという事で、こうして会議室が使われる事になった。
 俺たちは全員、目を奪われるようにその様子を観戦していた。それぞれ、何でこんな物を見せられているのかという思いはない。それは、本当に、凄すぎたのだ。

「はぁっ!」

 覇気を込めたヴィヴィオの攻撃を、沖一也は何なく両腕で防ぐ。まるで、敵の攻撃を予見しているかのように、敵の一撃一撃を吸収していた。風の流れを感じる。ヴィヴィオの腕が沖さんの体へと向けられた時、生じた風──それを、沖さんはまるで操るかのように自分の方へ引き寄せた。
 螺旋の形の風を吸収し、沖さんが解き放つ。

「ふんッ」

 ヴィヴィオがもともと、結構なダメージを受けていた事を踏まえたうえでも、沖さんの身のこなしは軽い。ヴィヴィオの攻撃を一切押し付けないようだ。
 ヴィヴィオの息が切れ始めても、沖さんの息は安定したまま。汗もかいていない。沖さんは殆ど打ち込んではいないが、適格に、無駄のない動きで回避している。

「……くっ、はぁぁぁあっ!!」

 ヴィヴィオが消耗しているのは、一撃でも喰らったからではない。一撃も当てられなかったからだ。沖さんも大人げない人間ではない。ヴィヴィオに遠慮をしているのか、打ち込む事がないのだ。それを遠慮して、「防御」と「回避」に徹している。
 沖さんの余裕や優勢は、素人目にもはっきりとわかるものだった。

「なあ、フィリップ。沖さん、あれ手を抜いてるんじゃねえか」

 俺は思わず、フィリップに小声で訊いた。

「そんな事ないと思うよ」

 フィリップは、微かに笑みを浮かべながらそう言った。俺には、その笑みの意味がわからなかった。

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 既にヴィヴィオも諦めたらしく、ファイティングポーズのまま、打ち込んでくる気配はなかった。俺たちは、それを無理もないと思った。
 沖さんは、ヴィヴィオに一礼。ヴィヴィオは、疲れた体ながら、遅れて沖さんに一礼する。
 最初からここで試合を終えるつもりだったのだろうか。スポーツのように、攻守両方に一定の信頼感が見られた。

「……ありがとう、ございました」

 ヴィヴィオは、ようやく息と唾を飲み込んで、そう返した。
 息切れは止まらない。沖さんは、そんなヴィヴィオの姿の前に、少し力を抜いた表情で返した。沖さんは、年長者としてヴィヴィオにアドバイスでも送ろうとしているのだろうか。

「……君の攻撃は確かに強い。基礎体力も気合も充分、伊達にストライクアーツをやってはいないようだ。……このまま鍛えれば、確かにトップクラスの格闘家となる事は間違いないよ」
「え……?」

 沖さんの言葉に、ヴィヴィオは戸惑っているようだ。自分の完敗を感じたヴィヴィオは、沖さんからこうして至上の賛辞を受け取れるとは思わなかったのだろう。
 一撃も当てられず、全て避けられたのが少しばかりきいたらしい。

「俺が使う梅花は、防御に徹し、相手の木を外へと誘う守りの拳だ。勿論、攻撃の基礎も覚えているが、……実はそれは君ほどじゃないんだ。かわす事はできても、君のような攻撃はできない」

 沖さんは、そう言いながら、後ろ髪を掻いて自嘲気味に笑った。

「赤心少林拳には二つの流派がある。一つは『玄海流』、防御の型・梅花。一つは『黒沼流』、攻撃の方・桜花。……この人が修得したのは梅花だ」


382 : のら犬にさえなれない(前編) ◆gry038wOvE :2014/04/28(月) 21:01:52 AnI3/TBc0

 フィリップはどうやら、赤心少林拳についても調査済だったらしい。おそらくは、ストライクアーツについても既に調べつくしてあるのだろう。
 格闘の流派の話は、はっきり言えば俺にはわからない。ただ、少年漫画のような話に燃えてしまう心は、男の中にはいつまでも残る。正直、俺も結構ヒートアップしていた。

「明日の朝、簡単な基礎を君に伝授する。完璧に複製するのは……そう簡単な事ではないが、少しは身につくだろう。そして、何より……俺の拳と君の拳、二つを合わせた時、どんな技になるのか──少し楽しみになった」

 格闘家として、同じ格闘家に共感を得ているのだろうか。
 今の戦いで自分が認められた事を、ヴィヴィオは少し嬉しそうにしていた。

「無差別格闘早乙女流・早乙女乱馬、無差別格闘天道流・天道あかね、明堂院古武術・明堂院いつき、それにカイザーアーツ・アインハルト・ストラトス。……本当は彼らにも伝授したかったが……」

 一方の、沖さんは、嬉しい一方で、少し残念そうな言葉を投げかけた。
 とにかく、俺たちはその場をしばらく動けなかった。今の格闘の様子に驚き、動けなかったのだ。全員、ある程度の心得はあるが、そんなに強いものではなかった。






383 : のら犬にさえなれない(後編) ◆gry038wOvE :2014/04/28(月) 21:02:23 AnI3/TBc0



 ……。

「先ほどレーダーアイで見たところでは、周囲10km以内に敵の姿は無い。おそらくすぐに誰かが俺たちの目の前に現れる事はないだろう」

 …………。

「今なら行ける、という事か。どうする? みんな」

 ………………。

「勿論、行くわ……!」

 ……………………さて。
 俺たちは、ほんの一時的にだが、警察署を出ていた。会議室のホワイトボードに伝言を残す。俺たちは、風呂に入るために外出していると。
 沖さんはここまでの道程を殆ど記憶しており、この偽りの街を「庭」にしていた。北も南も知りつくしている。俺は風都なら隅から隅まで覚えているが、ここは風都じゃない。俺はこの街の姿を覚えるのは苦手だった。

 俺たちの前には、銭湯がある。
 銭湯──何とレトロな響きか。一家に一台風呂がある時代に、廃れていってしまうこの施設。銭湯屋が潰れるたびに、俺たちは切なさを感じるだろう。風都にも良い銭湯があるので紹介したいが、それはまた後にしよう。

「よっしゃぁぁぁぁぁ! 久々の銭湯だぁぁぁぁぁぁっ!」

 ……俺のこの時の歓喜の叫びは無視してくれ。

「はしゃぎすぎだ、翔太郎。いくら周囲に人がいないからって」
「でも、結構汗かきましたからね……。少しはのんびりしたいです」

 そう、ヴィヴィオの運動は、いわば風呂の前の僅かな休憩だ。
 その時の汗──それから、今日一日の全ての汗と悲しみを洗い流すには、今日の終わりに風呂に入るのが一番いい。

「そうだね。みんな、一日疲れただろうから、少しゆっくりするといいよ」

 孤門が言う。
 一日のご褒美としては、まあ妥当だろう。
 銭湯に入るのが久しぶりという奴は、ここにもいるだろうか。
 俺たちは、そこへ足を踏み入れた。
 俺たちは無人の番台に330円払い、「男」と「女」の二つの更衣室に入った。







 ……そして、そんな俺を待っていたのは、男祭りだ。

 当たり前だが、男湯には男しかいない。孤門一輝、沖一也、俺、フィリップの四人のマッチョメンが全裸で、横一列Gメン歩きで、タオル一枚を手に持って、銭湯の中へと進んでいく、冗談のような光景。恐ろしいのは全員、首輪だけはしている事だ。
 所謂裸の付き合い、男祭り。下町人情まっしぐらの世界だ。下町生まれの日本男児は、裸の付き合いで絆を深める。だから、これは何という話でもない。
 あの富士山なんか、いかにも下町の風呂屋じゃないか。──そう、ここからは俺もハードボイルドをやめて、少し下町風情のある、「日本のハードボイルド」の世界に入る。
 タオルはいらねえ。俺はタオルをぶん投げる。
 湯船にタオルを入れる行為は禁止されている。俺たちはタオルを外し、行水するようにお湯を浴びる。
 これが日本の風呂。俺たちの風呂。

『……おい、ヴィヴィオ、走んな! あぶねえぞぉー!』

 ……と、そんな俺の耳には、嘘のような言葉が聞こえた。
 俺は半分既に湯船に漬かろうとしていた。

 ──俺たち四人は、その声の方を凝視した。
 まさか、これは──そう。
 壁。
 壁だ。俺たちの横には、壁がある。湯煙と音声が、二つの壁の上を通る。……もしや、これは本当に昔ながらの銭湯ではないか。

 女湯の声が、そのまま男湯に筒抜けになっているという、例の気まずい銭湯だ。
 この壁一枚だけが、男湯と女湯を区切っている。女同士がバストの大きさを語り合うかもしれないのが恐ろしい。そうした会話も全て筒抜ける。気づいてしまえば、男湯の側から声をかける事もできず、声を出すのも何となく避けられる。


384 : のら犬にさえなれない(後編) ◆gry038wOvE :2014/04/28(月) 21:06:17 AnI3/TBc0

 しかし、孤門たちは気にしない風に全身をお湯に漬けていった。

「あ、あの……沖さん、言いにくいんですけど、沖さんは水の中に入って大丈夫なんですか?」

 ──孤門、空気読め! 聞こえなかったのか、今の杏子の声が。このすぐ隣にいる杏子は服を着ていない。お互いにそんな声が聞こえたら凄く気まずいんだ!
 お前、普通に喋り出して隣に聞こえたらどうする気だ。男の声が女湯に聞こえると何となく気まずいんだよ、こういうところは。

「……人工皮膚の感度でも、殆ど生身と同じ温度を感じる事ができる。たとえ体が機械でも、魂はこうして洗われるんだ。改造人間の体は、水が苦手という事もない。むしろ長時間の潜水もできるほどだからな。……まあ、生活は人間と変わらないさ」

 そして、沖さんが更に長い説明をする。これは流石に聞こえたんじゃないだろうか。それよか、沖さんの耳に隣の銭湯の声が入っていないわけがない。常人の俺でも聞こえるくらいだ。
 沖さんはこの程度なら無視を決め込めるようだ。

『ねえ、杏子。いま何か聞こえなかったー?』
『気のせいだろー』
『そうですよー』

 隣から聞こえる声。女湯は声を大きくして楽しんでいるが、男湯はぼそぼそと喋っているだけなので、さして隣に響くような声ではないらしい。
 俺のほか、三人も黙り始めた。やはり、男性陣は、こういう時は聞かなかったフリをしてぼーっとしているのが一番いいのだろう。
 ふと、隣から声が聞こえてきた。

『……つーかさ、ずっと気になってたんだけど、美希。おまえ胸デカくね?』

 いきなりお約束かよ! お前も空気読めよ杏子!
 こっちではいい年こいた男が揃って赤面してんだよ(フィリップ除く)!
 美希の胸がやたらデカいのは服の上からでもわかるけど!

「ンーッ!! ンッンッ!! ンッ!!」

 俺はわざとらしい咳払で、何となく隣の浴槽にこちらの存在を知らせようとした。見れば、沖さんや孤門も苦笑いをしつつ、どこか赤面していた。
 流石に、今の俺の咳払いが届けば、流石にそんな話はやめるだろう。

『マミとどっちがデカいかな? ……流石にマミか。あれは破格だ』
『なのはママやフェイトママに比べたら、まだまだですよ!』
『ちょ……ちょっとやめてよ、二人とも!』

 壁の上の僅かな隙間から筒抜けてくる女湯のから騒ぎ。
 女三人寄ればかしましいとはよく言ったもので、男の肩身は狭くなるばかりだ。
 ……俺の咳払いは届いてくれなかったらしい。

「さあ、検索を始めよう……。キーワードは、『無差別格闘天道流』」

 一方、フィリップは、何もお構いなしに検索を始めている。こいつだけは湯船から出て、ちゃんと腰にタオルを巻いていた。興味のあるデーターベースを閲覧しては、湯気で真っ白になった鏡に指で何か書き込んでいる。
 『無限の本棚』を用いて、とにかくここで出会ったあらゆる単語について調べているようだ。フィリップはフィリップのままである。俺はたまにこいつのマイペースさがうらやましい。

『……うわはははは、やめてくださいよ、杏子さん!』
『おら、こちょこちょこちょこちょー』
『うわっ! ほんとにやめなさい! こら、あ……! あっ……』

 マジで何やってんだあいつら……。
 何か杏子が暴れているらしく、波音のようなものがこちらまで響いてくるほどだ。
 俺は、顔の半分をお湯に委ねて、湯船でとにかく耳を塞いだ。これ以上聞いてはならない気がした。孤門も同じ状態になっている。沖さんに至っては、水中だろうが無関係に隣の声が聞こえるので、既に拳法の極意で無心モードに入っている。

『……あー、もう、本当に元気すぎるわよ』
『へへへ。まあ、有り余ってるってほどじゃないけどな……』


385 : のら犬にさえなれない(後編) ◆gry038wOvE :2014/04/28(月) 21:06:40 AnI3/TBc0

 ……しかし、耳を漬けているふりをして、実は聞いているのが男の常。
 いくら相手が女子中学生以下とはいえ、何を話しているのかは気になってしまうのが情なのだ。
 向こうもさっきまで暴れていたが、随分と静かになった様子である。



 俺は、次に彼女らがどんな言葉を言い合うのか、少し期待していた。

『…………ねぇ、杏子。あなた、あの四人の中で誰が一番イケメンだと思う?』

 修学旅行か! ──と、思わず俺は心の中で突っ込んだ。
 美希はいきなり、杏子にそんな事を訊いている。好きな人が誰か、ではなく、誰が一番イケメンか、という問いだ。
 これはまた微妙に俺たちにも緊張が走る。「好きな人」という条件ならば、元の世界の人間などもありえる。それで、自分が周囲と競い合う必要もなくなる。しかし、四人の中で誰が一番イケメンか、という質問だと、「選んでくれ」という期待が湧かざるを得ない。
 目の前にいる三人がライバル。──少し敵対心が湧いてしまう。俺たちの耳に全部筒抜けだと知っていれば、おそらくしないであろう質問。だからこそ、本気になる。
 周囲の人間よりも自分がイケメンだと、そう信じて、答えを待つ。

 杏子、頼む。俺を選んでくれ。

『……フィリップの兄ちゃんかな』
『そう』

 意外とあっさりと答えられてしまった。この瞬間、少しフィリップに対するジェラシーと羨望が湧いたのは言うまでもない。
 俺の事は選ばれないが、まあいい。それは孤門も沖さんも同じだ。伊達にモテない語りをした仲だけはある。
 すると、杏子は訊き返した。

『美希は?』
『……ずっと一緒にいたせいもあるけど、やっぱり孤門さんかしら』(←面食い)
『ふーん。確かにカッコいいよな。ヴィヴィオは?』
『やっぱり沖さんですね!』(←格闘馬鹿)

 うおおおおおおおおおおおおおォォォオィ!!! ちょっと待て!! これ俺だけ選ばれてねえぞ!!!!
 これは予想外だ。選ばれた一人以外は団結できるかと思ったが、甘かった。
 このままだと、俺の居心地が悪いだけに終わってしまう。

 ……まずいぞ。このまま会話を終えると、俺だけ立つ瀬がねえ。ハードボイルドは死んだのか。ハードボイルドがカッコいいと言われる時代は終わったのか! ボギー、ボギー、あんたの時代は良かった……男がピカピカのキザでいられて。
 クソッ……前が見られない。俺の前で、孤門と沖さんがどんな顔をしているのかを見たくない。憐れんでいる。きっと憐れんでいるはずだ。

『え? クリスはフィリップさんでも孤門さんでも沖さんでもって?』

 ん。クリスもいるのか。男だか女だかわからないが、とにかくラストチャンスだ。
 うさぎのぬいぐるみでも何でもいいから、俺が選ばれればそれだけでホッとする。
 勝ち負けとかはいいんだ。とにかく、俺の話題を出してくれ。

『ふむふむ……。ああ、なるほど。…………さんがハードボイルドでカッコいいと』

 お……? 一部聞き取れなかったのが不安だが、これはどう考えても俺だ。ざっと見渡しても、ハードボイルドの条件に合うのは俺だけ。そもそもハードボイルドを目指しているのは俺だけだから、俺以外にありえない。
 もはやハードボイルドは俺の枕詞。他に該当者がいるはずがない。
 仮にクリスが男だとしても、それは男の憧れとして俺を選んだという事。俺のハードボイルドさにあこがれを持ってもおかしくはないだろう。

『へー、冴島鋼牙か……確かに、ああいうのをハードボイルドっていうんだよなぁ』

 そっちかよ!!
 ハードボイルドといえば俺だろ、あいつじゃなくて!!
 変な言い回しで期待させるんじゃねえ!!

『……ねえ、杏子。あなた、翔太郎さん派じゃないの?』
『何派とかあるのか? ……まあいいけど』
『いや、翔太郎さんは”アレ”だけど、一応イケメンじゃない。それにあなた、ずっと一緒にいたでしょ?』


386 : のら犬にさえなれない(後編) ◆gry038wOvE :2014/04/28(月) 21:07:13 AnI3/TBc0

 アレって何だよ。一応って何だよ。もう突っ込むのも疲れる話だ。
 とにかく、イケメンの一言を聞けただけでもよしとしよう。

『確かにあの兄ちゃんは”アレ”だけど、一応顔は良いんだよな。”アレ”だけど』

 ……やっぱり、何だか傷つくから、アレを連呼するのはやめてくれ。曖昧すぎていくらでも想像の余地があるのが傷つく。

『……でも、本当に尊敬してるし、憧れてるよ。あたしをいつも勇気づけてくれた人、なんだよな。良い人だよ』
『好きだったりする?』
『あ、それ私も聞きたいです!』

 今度はさっきまでの蔑ろっぷりが嘘のように、急に俺の話題で活気づいて来た。……が、それもまた不穏といえば不穏だ。
 話してほしいような、話してほしくないような複雑な心境が俺を襲う。
 フィリップがこっちの世界に戻ってきて、耳を傾け始めていた。俺の方を見てニヤつくのをやめろ。俺はハードボイルドだ。女子中学生、略してJCには興味はない。仮にホレられたとしても、俺は背中を向けてカッコよく去っていくのみだ……。

『……あー、悪いけど、そういう話は苦手だ。人の恋路を茶化すのは得意なんだけど、茶化されるのは好きじゃないんだ』

 杏子も同じだ。恋愛対象ではないだろう。俺としては、杏子の解答が無駄にハードボイルドなのが鼻につくが、まあいい。男女バディもなかなかハードボイルドじゃないか。

『でも、まぁ……あたしがもう少し大人で、魔法少女じゃなければ、もしかしたら、アリだったかもな』

 ん。マジかよ。
 ……でも待て。魔法少女じゃなければ……って。

『……今はまだ、いや……今はもう、わからねえや、はは……』

 そうか……。
 ……俺は、その言葉を聞いた時、ふと杏子の身の上を思い出した。「結局、わからない」というのが、杏子の出した答えだが、それは俺に向けられた言葉じゃない。誰に対しても、きっと同じ言葉が向くだろう。
 杏子は魔法少女だ。既に体は人とは違う。彼女の本体はソウルジェムにある。……杏子は、そんな体で恋をしてはいけないと思っているのだろう。人じゃないから、人とは違うから。仲間がいても、恋人はいちゃいけない。

 魔法少女の体。それが負い目なのだろう。一人で生きるという決意もまだ、根っこにある。

 杏子は、「恋」というのを知らない。天道あかねの恋の話を問いかける事があっても、自分の恋は語らない──語れない。
 俺は、それが少し寂しい気もした。
 せめて、杏子が誰かを好きになる事があるのなら、俺はそいつを応援したい。俺たちみたく、安全なドライバーで変身するのではなく、自分の体も、家族も、命もかけて変身する少女たち──魔法少女の人生に、ほんの少しでもいい。華を贈りたかった。誰かを好きになる事さえできない生涯なんて、面白くも何ともない。

「……」

 この場にいる中で、俺とフィリップと杏子だけが知る、魔法少女の本当の事情。
 俺たちだけしか知らない秘密──孤門たちは、今の会話をどう思っただろう。戦う宿命が周囲を傷つけないために恋を捨てたと思っているのだろうか。
 違う……。杏子は、体ごと、人間のそれとは少し違う物になってしまっている。沖さんなら、もっとよく、その意味がわかるのかもしれない。それでも、沖さんに伝える事はできない。杏子自身が、それを周囲に伝えないようにしているのだ。
 俺たちは杏子の言葉がいかに重い意味を持っていたのか、悟られないように──それを表情に出さないようにしなければならなかった。
 何事もなかったかのように、女湯では会話が続いていく。……杏子が抱えていた孤独に、気づく者はなく。

 杏子、お前だって、いつかはきっと……。






387 : のら犬にさえなれない(後編) ◆gry038wOvE :2014/04/28(月) 21:07:43 AnI3/TBc0



 それからまた少し経って、全員おとなしくなってからは、彼女たちは少し違った話をし始めた。

『……でもさ。やっぱり、お風呂に来るならさ。みんなで一緒に入りたかったよね』

 その時、俺が聞いたヴィヴィオの声は、どこか哀愁に満ちていた。俺たちの中で、一瞬時間が止まった。誰もが、その言葉で現実に引き戻されたような気がした。湯煙だけが流れていく。
 俺たちは刹那的に、それを忘れた気になっていたが、頭の片隅に、そんな想いもあった。この風呂がこんなに広いのなら、まだ生きてこうして体の疲れを洗い流せる仲間が入る余地はある。

『前にいつきさん、一緒にお風呂に入ろうって言ったけど……やっぱり……』

 湯煙が目に入り、涙と混ざり合う。しゃがれ声と、喘ぐような鳴き声が男湯にも、女湯にも響きだした。

『やっぱり……』

 ヴィヴィオがいま、泣いているのを俺たちは知っていた。女たちだけの秘密の涙だと、彼女たちは思っているのだろう。それは男湯にも響いていた。
 彼女は確かに、強い。それでも、もう終わろうとしている今日という日の全てを振り返ると、涙だけがこぼれていくようだった。彼女の涙は、この狭い海に受け止められる。俺たちの一日の汗を洗い流すこの適温が、共に洗い流してくれるだろう。
 俺たちは、このヴィヴィオの涙を、正真正銘に聞かなかった事にしようと思った。
 それでも、誰かを守れなかった自分自身の罪がそこにあるのなら、この言葉を聞きのがしてはならないと、俺は思っていた。彼女たちが仲間を喪った事をどれだけ悲しんでいるのか──それは、俺たちが知らなきゃいけない現実だ。
 ヴィヴィオは、こうして風呂に入っている時に、ずっと何かを思い出していたようだ。

『前に合宿で、アインハルトさんや……ティアナさん、スバルさんとも一緒にお風呂に入った事があって……なのはママやフェイトママとも、いつも一緒にお風呂に入ってて……』

 日常。昨日まであったはずの日々。それが、崩れ去った一日。彼女は、それを風呂で思い出した。生暖かい煙が目に入っていくとともに、堪えていた涙は、落ち着いていた心は、だんだんと均衡を保つのを忘れる。
 それは俺にもわかった。こうして、隣から聞こえる声を辿っていくと、俺も照井竜──昨日まで隣で一緒に解決していたような仲間の死がだんだんと実感として胸に湧き出てくるような気がした。
 あいつが俺たちの探偵事務所のドアを叩く事はもうない。
 仮面ライダーアクセルが俺たちとともに街を救う事ももうない。
 それが明日からの日々。自分がいた場所に戻っても、修復されないであろう日常世界。
 果たして、俺たちが戻った世界には誰かが迎えてくれるのだろうか。──照井竜が、そこにいる日常は、あるのだろうか。

『もう、……もう、会えないのかなぁ……』

 俺は、その言葉が聞きたくなくて、一度潜って、また浮き上がった。もう会えない、それがおそらく真実。
 虚空を見上げ、照井の姿を思い出す。俺の頭の中からは、あいつの笑顔が消えなかった。
 俺たちが知る誰かの姿──消えていってしまった人間の姿。
 俺たちはその未練を断ち切れるのだろうか。本当に断ち切れているのだろうか。
 大切な人がそこにあった日の事を、何度でも思い浮かべるんじゃないだろうか。

『そうだよね……もっと、もっと一緒にいたかったよね……』

 美希の声は、慰めるというよりは、涙混じりの共感だった。
 そう、彼女もいま、泣いている。──山吹祈里や、東せつな、来海えりか、明堂院いつき、月影ゆり。失った仲間は多い。
 共に歩んできた道を振り返ってみると、置いて行かれた仲間の姿だけがある。もう、同じ道を一緒に歩んでいく事はない。

『当たり前だろ……あたしだって、もっと……もっとさ、もっと……別の会い方をしたかった人が……いるよ……』

 杏子の声は、涙こそ入り組んでいなかったが、遠い何かを見つめているように郷愁的だった。彼女ももう、大人よりも過酷な人生を生きてきている。誰かの死を耐えるのだけは一人前なのだろう。
 それでも、わからない。
 俺は杏子が泣いているのか否か、俺がそれをはっきりと知る事はなかった。


388 : のら犬にさえなれない(後編) ◆gry038wOvE :2014/04/28(月) 21:08:14 AnI3/TBc0

 ……俺もそこにいる彼女たちに声をかけたかった。かける言葉がないとしても、ここに男女を隔てる壁があるとしても。
 俺は、まだ何人もの仲間が死んでいった事を覚えている。
 死んだ仲間の数を数える事ができる。その名前を記憶している。

 女湯からの泣き声は重なり合う。
 俺たちは、それを黙って聞いていた。
 自分の無力、あるいは、この殺し合いの残酷さ、無情さ。
 誰かの悪意が生み出したこの悪趣味なゲームを、俺たちは一刻も早く終わらせたいと、切に願った。
 今も、恥知らずな誰かが、俺たちの声を聞いているだろう。
 殺し合いに巻き込まれていく俺たちの運命を、誰かが見て、聞いている。──俺はそいつを、ぶっ飛ばすだけでは気が済まないのだろう。

 残り、十九人、もしくはそれ以下──俺たちは、その数の重みを、改めて思い出した。







 ……俺は、風呂から出て着替えて、ドライヤーで髪を乾かすと、すぐにコーヒー牛乳のある自動販売機にお金を入れた。風呂上りといえば、やはりコーヒー牛乳が王道だ。ここに異論を挟む奴はそうそういない。
 俺は、自動販売機に引っかかっている針にキャップを刺して、瓶牛乳を開ける。
 それを飲み干すと、俺はわざとらしい声をあげた。美味い、と、コーヒー牛乳に賛辞を贈る。ここはもう、更衣室の外だ。男女問わず、俺の姿に目を向けた。

「女は長風呂だって聞いてたが、思ったより早かったな」
「こんな状況ですから、あまり長風呂もしていられません」

 美希はそう返す。涙の痕はない。涙を乾かすのに少し時間がかかったのかもしれない。ヴィヴィオにも、美希にも、杏子にも、誰の目にも涙の痕はなかった。
 俺たちは、やはり知らないふりを通そうと思った。誰もそんなルールを口にする事はなかったが、暗黙の了解だった。今更触れる奴もいない。

「んじゃ、まあ、少し休んだらすぐに警察署に戻るか。もう良い子が寝る時間はとっくに過ぎちまってる」

 時刻はもう、二十三時半も超えている。随分風呂も長引いた。
 風呂上り、俺たちの一部はもう眠くなりかけていた。ヴィヴィオや美希の顔色からは、それがはっきりと見て取れた。
 美希はモデルだ。普段は早寝早起きが基本。美容にも気を使っている。生活のリズムも随分狂わされただろう。
 俺は、牛乳瓶をケースに入れた。勿論、最初の一人だ。この銭湯に立ち寄って、自動販売機に硬貨を入れて、コーヒー牛乳を飲んだ最初の一人が俺らしい。
 続けて、俺よりゆっくりと牛乳を飲み干していた残りの奴らも、空き瓶をケースに入れた。

「……忘れ物はない?」

 孤門はしっかり者だ。こういう事をよく言ってくれる。
 これはだいたい、美希か孤門の役回りだ。几帳面というか、周囲をやたら気遣うタイプというか。……俺は、デイパックがある事や、手元に道具や財布がある事を確認した。

「……って、翔太郎さん、帽子は?」

 そう訊いたのが、美希だ。やっぱりこっちもしっかり者には違いない。
 俺は大事な帽子を忘れていた。おそらく、髪を乾かした時。ドライヤーをかける時に外して、そのまま洗面台に置き忘れたのだろう。
 俺はその時の情景を思い出した。

「あっ、そうだ。洗面台に忘れた……悪い、みんな。ちょっと取ってくる」
「おいおい、あれ大事なチャームポイントだろ。忘れるなよ」

 杏子が俺の背中に茶化す。
 俺が帽子を忘れる事など滅多にない。俺にとって、帽子とは、俺の師匠が刻み込んだハードボイルドの掟そのものだからだ。俺はずっと、帽子が似合う男に憧れて生きてきた。一人前の男に憧れて生きてきた。
 だから、その帽子を忘れるという事は、俺が少なからず動揺しているという事だった。
 俺は、すぐに「男」と書かれた暖簾をくぐった。






389 : のら犬にさえなれない(後編) ◆gry038wOvE :2014/04/28(月) 21:08:37 AnI3/TBc0



 帽子は、やはり俺の睨んだ通り、洗面台の上にあった。
 俺はそれを手に取ると、再び鏡を見た。
 勿論、鏡には俺が映っている。他にはロッカーしか映っていない。この銭湯には本当に誰もいないだろう。単独行動だからといって、誰かが襲ってくる事もない。

「うっし……」

 俺は、それでもわざと声を出した。
 目の前にいる男に気合を入れるように。俺がまだ、杏子の師でいられるように。
 俺も鳴海壮吉のような、おやっさんのような立派な人間になりたい。
 死者への未練──それがまだ俺の中に少しでもある事を、杏子に悟られたくはない。
 勿論、俺の中にはきっとそんな生ぬるい優しさがあるだろう。
 フィリップがいなくなった一年、俺はずっとフィリップがいる日常を想定して行動し続けた。フィリップの名前を呼び、フィリップに協力を仰ごうとしてきた。
 おやっさんがいなくなった時も、広々とした事務所をどう使えばいいのか、ずっと迷っていた。
 照井がいなくなった今の俺。
 ユーノも、フェイトも、霧彦も、姫矢も、いつきも……守り切れなかった俺。
 また、いつどんな失態を犯してしまうかわからない。俺の心の均衡が、俺のハーフボイルドが、いつまた、些細なミスを起こすかもわからない。

(しっかりしろよ、ハーフボイルド野郎。……お前を尊敬して、お前に憧れている奴がいるんだとよ。みっともない姿は見せるんじゃねえぞ)

 ドン、と。小さなパンチを、鏡の前へと一発。
 鏡を割る気はない。鏡の向こうの俺の拳に、少しでも響いてくれればいい。
 鏡の向こうから放たれたパンチは、俺の右拳を少しだけ、じんとさせる。
 俺はそれで気合を入れた。

(おやっさん……。あんたも俺を弟子に持つ時、こんな気持ちだったのか? ……あんたも本当は、仮面の裏で、帽子の下で……悲しみを抱いていたのか?)

 おやっさんは、ずっと自分が仮面ライダースカルである事を隠していた。
 俺が知らない痛みを、悲しみを、事情を、おやっさんはまだ抱えていたのかもしれない。
 俺は、それに全て気づく事はなかった。
 俺が杏子の前で隠し続けている、痛み。罪。心の傷。弱さ。──それを隠して、俺はただのハーフボイルドな、面白い兄ちゃんを気取らなきゃならない。
 いや、それが全て俺の偽りというわけじゃない。それも含めて俺自身だが、そこには悲しみを隠すためのフィルターという役割もある。

(……俺の抱えている辛さなんか、あいつは知らなくてもいい。俺の方が大人なんだ。あいつの方がずっと辛い想いをしている。……せめて、俺たちだけは、あいつが本音でいられる居場所じゃねえと……じゃねえと、あいつは潰れちまう)

 俺は、ソフト帽をかぶりなおして、キリッとした表情を鏡に見せる。
 大丈夫。俺はまた、一人前の顔付きに近づいている。帽子が似合う男になり続けている。
 そこに弱さはない。──俺の弱さは映っていない。
 俺は、そのまま銭湯の更衣室を出た。







「いやー、さっぱりしたねー」

 女性陣たちは、より一層、絆を深めたという感じか。三人とも風呂が嫌いなわけではないらしい。俺たちの全員の体からは白い煙が立っている。こんな状態で夜風に晒されるのは寒さを余すだけのように思えたが、時折温かい風も吹いた。

「一日の疲れも少しは取れたか?」


390 : のら犬にさえなれない(後編) ◆gry038wOvE :2014/04/28(月) 21:09:02 AnI3/TBc0

 俺が女性陣に訊くと、「おう」、「はい」と肯定の声が届いた。
 どうやら、殺し合いの最中でも風呂の時間を作ったのは正解だったらしい。
 つかの間の休息という感じだが、充分に心の栄養になる時間が取れた。この小一時間も、そのために潰されたと思えば怒りも湧かないところだろう。
 彼女らは、あとは眠りにつくだけだ。もう丸一日寝ていないわけだから、眠くないはずがない。

 帰り際、沖さんが俺とフィリップの方を向いて言った。

「……そういえば、一つ伝え忘れていた事がある」

 俺たちは全員、足を止めた。沖さんの言葉を真剣に聞こうとしていた。
 何を伝えるのだろうか──ここに来てから、前置きがあるニュースに、あまり良い印象はないので、咄嗟に真剣な表情にさせられてしまう。

「先ほど、レーダーアイが海上に謎の建造物があるのを捉えた。……こちらの島と繋がっているが、俺の記憶では、つい少し前まで存在しなかった建物だ。そこには妙な人型の置物が乗っていた。……実はもともとあったのを見落としていただけかもしれないが、あんな不自然な場所は地図にも載っていないんだ」

 レーダーアイが使用されたのは、おそらく俺たちを探す時だ。その時は俺たちを優先したが、一つの異変としてそれを認識していたのだろう。ただ、話すタイミングがなく、頭の片隅に置かれていた。
 どうやら、この会場にまで、色んな異変が起こっているらしい。
 殺し合いが行われている島の周囲の海上に、謎の建造物が現れる。──風都でもありえないような出来事だ。

「……その時、少しだが建物の看板の文字が見えたんだ。フィリップくん、一応、それについて検索をお願いしてもいいか?」
「ええ。……構いませんよ」

 フィリップは勿論、快く受け入れた。
 レーダーハンドと『無限の本棚』、どうやら便利さに関しては、どちらもピカイチのようだ。

「海上に現れた謎の建造物──その名前は」

 フィリップが検索の準備を始める。

「かもめビリヤード場」

 かもめビリヤード場……って、どっかで聞いた気がするな……。

「……なんだ。その単語ならば、検索の必要はない……」

 そうだ、フィリップ。
 だって、その「かもめビリヤード場」を、俺たちは本棚の中身よりもよく知っているじゃないか。
 だって、その「かもめビリヤード場」ってのは……






「……うちの探偵事務所じゃねえか!!!!」


391 : のら犬にさえなれない(後編) ◆gry038wOvE :2014/04/28(月) 21:09:36 AnI3/TBc0




【1日目 深夜】
【F-9/警察署前】


【蒼乃美希@フレッシュプリキュア!】
[状態]:ダメージ(中)、祈里やせつなの死に怒り 、精神的疲労
[装備]:リンクルン(ベリー)@フレッシュプリキュア!
[道具]:支給品一式((食料と水を少し消費+ペットボトル一本消費)、シンヤのマイクロレコーダー@宇宙の騎士テッカマンブレード、双ディスク@侍戦隊シンケンジャー、リンクルン(パイン)@フレッシュプリキュア!、ガイアメモリに関するポスター、杏子からの500円硬貨
[思考]
基本:こんな馬鹿げた戦いに乗るつもりはない。
0:警察署に帰る。
1:警察署内では予定通りに行動する。
2:プリキュアのみんな(特にラブが)が心配。
[備考]
※プリキュアオールスターズDX3冒頭で、ファッションショーを見ているシーンからの参戦です。
※その為、ブラックホールに関する出来事は知りませんが、いつきから聞きました。
※放送を聞いたときに戦闘したため、第二回放送をおぼろげにしか聞いていません。
※聞き逃した第二回放送についてや、乱馬関連の出来事を知りました。
※警察署内での大規模な情報交換により、あらゆる参加者の詳細情報や禁止エリア、ボーナスに関する話を知りました。該当話(146話)の表を参照してください。
※魔女の正体について、「ソウルジェムに秘められた魔法少女のエネルギーから発生した怪物」と杏子から伝えられています。魔法少女自身が魔女になるという事は一切知りません。

【沖一也@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、強い決意、お風呂に入ってさっぱり
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(食料と水を少し消費)、ランダム支給品0〜2、首輪(祈里)、ガイアメモリに関するポスター、お菓子・薬・飲み物少々、D-BOY FILE@宇宙の騎士テッカマンブレード、杏子の書置き(握りつぶされてます)
[思考]
基本:殺し合いを防ぎ、加頭を倒す
0:警察署に帰る。その前にフィリップくんに『かもめビリヤード』を検索してもらおう
1:本郷猛の遺志を継いで、仮面ライダーとして人類を護る。
2:警察署内では予定通りに行動する。
3:この命に代えてもいつき達を守る。
4:先輩ライダーを捜す。結城と合流したい。
5:仮面ライダーZXか…
6:ダークプリキュアについてはいつきに任せる。
[備考]
※参戦時期は第1部最終話(3巻終了後)終了直後です。
※一文字からBADANや村雨についての説明を簡単に聞きました
※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました
※18時に市街地で一文字と合流する話になっています。
※ノーザが死んだ理由は本郷猛と相打ちになったかアクマロが裏切ったか、そのどちらかの可能性を推測しています。
※第二回放送のニードルのなぞなぞを解きました。そのため、警察署が危険であることを理解しています。
※警察署内での大規模な情報交換により、あらゆる参加者の詳細情報や禁止エリア、ボーナスに関する話を知りました。該当話(146話)の表を参照してください。
※ダークプリキュアは仮面ライダーエターナルと会っていると思っています。
※第三回放送指定の制限解除を受けました。彼の制限はレーダーハンドの使用と、パワーハンドの威力向上です。
※魔女の正体について、「ソウルジェムに秘められた魔法少女のエネルギーから発生した怪物」と杏子から伝えられています。魔法少女自身が魔女になるという事は一切知りません。


392 : のら犬にさえなれない(後編) ◆gry038wOvE :2014/04/28(月) 21:11:01 AnI3/TBc0

【高町ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
[状態]:上半身火傷(ティオの治療でやや回復)、左腕骨折(手当て済+ティオの治療でやや回復)、誰かに首を絞められた跡、決意、臨死体験による心情の感覚の変化、お風呂に入ってさっぱり
[装備]:セイクリッド・ハート@魔法少女リリカルなのはシリーズ、稲妻電光剣@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:支給品一式(アインハルト(食料と水を少し消費))、アスティオン(疲労・睡眠中)@魔法少女リリカルなのはシリーズ、ほむらの制服の袖、マッハキャリバー(待機状態・破損有(使用可能な程度))@魔法少女リリカルなのはシリーズ、リボルバーナックル(両手・収納中)@魔法少女リリカルなのはシリーズ
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
0:警察署に帰る。
1:生きる。
2:警察署内では予定通りに行動する。
[備考]
※参戦時期はvivid、アインハルトと仲良くなって以降のどこか(少なくてもMemory;21以降)です
※乱馬の嘘に薄々気付いているものの、その事を責めるつもりは全くありません。
※ガドルの呼びかけを聞いていません。
※警察署の屋上で魔法陣、トレーニングルームでパワードスーツ(ソルテッカマン2号機)を発見しました。
※第二回放送のボーナス関連の話は一切聞いておらず、とりあえず孤門から「警察署は危険」と教わっただけです。
※警察署内での大規模な情報交換により、あらゆる参加者の詳細情報や禁止エリア、ボーナスに関する話を知りました。該当話(146話)の表を参照してください。
※一度心肺停止状態になりましたが、孤門の心肺蘇生法とAEDによって生存。臨死体験をしました。それにより、少し考え方や価値観がプラス思考に変わり、精神面でも落ち着いています。
※魔女の正体について、「ソウルジェムに秘められた魔法少女のエネルギーから発生した怪物」と杏子から伝えられています。魔法少女自身が魔女になるという事は一切知りません。


【孤門一輝@ウルトラマンネクサス】
[状態]:ダメージ(中)、ナイトレイダーの制服を着用 、精神的疲労、お風呂に入ってさっぱり
[装備]:ディバイトランチャー@ウルトラマンネクサス
[道具]:支給品一式(食料と水を少し消費)、ランダム支給品0〜2(戦闘に使えるものがない)、リコちゃん人形@仮面ライダーW、ガイアメモリに関するポスター×3、ガンバルクイナ君@ウルトラマンネクサス
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
0:警察署に帰る。
1:みんなを何としてでも保護し、この島から脱出する。
2:警察署内では予定通りに行動する。
3:副隊長、石堀さん、美希ちゃんの友達と一刻も早く合流したい。
4:溝呂木眞也が殺し合いに乗っていたのなら、何としてでも止める。
[備考]
※溝呂木が死亡した後からの参戦です(石堀の正体がダークザギであることは知りません)。
※パラレルワールドの存在を聞いたことで、溝呂木がまだダークメフィストであった頃の世界から来ていると推測しています。
※警察署の屋上で魔法陣、トレーニングルームでパワードスーツ(ソルテッカマン2号機)を発見しました。
※警察署内での大規模な情報交換により、あらゆる参加者の詳細情報や禁止エリア、ボーナスに関する話を知りました。該当話(146話)の表を参照してください。
※魔女の正体について、「ソウルジェムに秘められた魔法少女のエネルギーから発生した怪物」と杏子から伝えられています。魔法少女自身が魔女になるという事は一切知りません。


393 : のら犬にさえなれない(後編) ◆gry038wOvE :2014/04/28(月) 21:11:26 AnI3/TBc0

【左翔太郎@仮面ライダーW】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、胸骨を骨折(身体を折り曲げると痛みます・応急処置済)、上半身に無数の痣(応急処置済)、照井と霧彦の死に対する悲しみと怒り、お風呂に入ってさっぱり
[装備]:ダブルドライバー@仮面ライダーW、T2ガイアメモリ(アイスエイジ)@仮面ライダーW、犬捕獲用の拳銃@超光戦士シャンゼリオン、散華斑痕刀@侍戦隊シンケンジャー
[道具]:支給品一式、ガイアメモリ(ジョーカー、メタル、トリガー)、ナスカメモリ(レベル3まで進化、使用自体は可能(但し必ずしも3に到達するわけではない))@仮面ライダーW、ガイアドライバー(フィルター機能破損、使用には問題なし) 、少々のお菓子、デンデンセンサー@仮面ライダーW
[思考]
基本:殺し合いを止め主催陣を打倒する。
0:俺の事務所があるのかよ!
1:ガドル、ドウコクは絶対にに倒してみせる。あかねの暴走も止める。
2:仲間を集める。
3:出来るなら杏子を救いたい。もし彼女が魔女になる時は必ず殺す。
4:現れる2体の魔女は必ず倒す。
[備考]
※参戦時期はTV本編終了後です。
※他世界の情報についてある程度知りました。
(何をどの程度知ったかは後続の書き手さんに任せます)
※魔法少女の真実(魔女化)を知りました。
※第三回放送指定の制限解除を受けました。彼の制限はフィリップ、ファングメモリ、エクストリームメモリの解放です。これによりファングジョーカー、サイクロンジョーカーエクストリームへの変身が可能となりました。


【フィリップ@仮面ライダーW】
[状態]:健康、お風呂に入ってさっぱり
[装備]:無し
[道具]:ガイアメモリ(サイクロン、ヒート、ルナ、ファング)@仮面ライダーW、エクストリームメモリ@仮面ライダーW
[思考]
基本:殺し合いを止め主催陣を打倒する。
0:かもめビリヤード……。
1:翔太郎及び仲間達のサポートをする。
[備考]
※参戦時期はTV本編終了後です。
※検索によりまどマギ世界(おりマギ含む)の事を把握しました。
※参加者では無く支給品扱いですが首輪を装着しています。
※検索によりスーパー1についてや、赤心少林拳について知りました。元祖無差別格闘等、伝えられた格闘流派についても全て調べているようです。
※アンノウンハンドについて調べる事はできませんでした(孤門たちの世界でその正体が不明であるほか、記憶操作・情報改竄などが行われているためです)。


394 : のら犬にさえなれない(後編) ◆gry038wOvE :2014/04/28(月) 21:11:45 AnI3/TBc0

【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、ソウルジェムの濁り(小)、腹部・胸部に赤い斬り痕(出血などはしていません)、ユーノとフェイトを見捨てた事に対して複雑な感情、マミの死への怒り、せつなの死への悲しみ、ネクサスの光継承、ドウコクへの怒り、真実を知ったことによるショック(大分解消)、お風呂に入ってさっぱり
[装備]:ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ、エボルトラスター@ウルトラマンネクサス、ブラストショット@ウルトラマンネクサス
[道具]:基本支給品一式×3(杏子、せつな、姫矢)、リンクルン(パッション)@フレッシュプリキュア!、乱馬の左腕、ランダム支給品0〜1(せつな) 、美希からのシュークリーム
[思考]
基本:姫矢の力を継ぎ、魔女になる瞬間まで翔太郎とともに人の助けになる。
0:警察署に帰る……予定。
1:翔太郎達と共に警察署に戻り、色々事情を説明する。但し、魔法少女の真実についてはどこまで話せば良いか……
[備考]
※参戦時期は6話終了後です。
※首輪は首にではなくソウルジェムに巻かれています。
※左翔太郎、フェイト・テスタロッサ、ユーノ・スクライアの姿を、かつての自分自身と被らせています。
※殺し合いの裏にキュゥべえがいる可能性を考えています。
※アカルンに認められました。プリキュアへの変身はできるかわかりませんが、少なくとも瞬間移動は使えるようです。
※瞬間移動は、1人の限界が1キロ以内です。2人だとその半分、3人だと1/3…と減少します(参加者以外は数に入りません)。短距離での連続移動は問題ありませんが、長距離での連続移動はだんだん距離が短くなります。
※彼女のジュネッスは、パッションレッドのジュネッスです。技はほぼ姫矢のジュネッスと変わらず、ジュネッスキックを応用した一人ジョーカーエクストリームなどを自力で学習しています。
※第三回放送指定のボーナスにより、魔女化の真実について知りました。

【特記事項】
※G-9にあったチェックマシン@仮面ライダーSPIRITSは163話の段階(杏子達の買い出し)で警察署前に移動させました。

【フィリップと翔太郎の推測】
※このデスゲームは参加者同士の殺し合いから、主催陣対参加者の構図に以降しつつある。
※24時以降に出現する魔女、21時以降解禁される制限は主催戦を見据えてのもの。
※現在表向きに現れている主催陣(加頭、サラマンダー男爵、ニードル、ゴバット、織莉子)は全員、本当の敵ではない可能性が高い。
※本当の敵(黒幕)は現在も現れていない可能性が高い、但し上述の主催陣あるいは参加者の中に潜んでいる可能性も低いがある。
※主催側は全ての世界の地球の記憶(『無限の記憶』と呼称)とアクセスでき、地球の本棚に干渉できる『存在』を手にしている。
※その為、その『存在』を奪取しなければ勝てる可能性は限りなく低く、仮にその『存在』が奪われたまま逃げられた場合、似た事が繰り返される可能性が高い。
※地球の本棚は監視されている可能性が高く、核心に触れる内容の検索は危険、但し現状現れている主催者を含めた参加者については問題無い可能性が高い。
※以上の内容は現時点での推測である為、間違っている可能性はある。但し、『無限の記憶』にアクセスできる『存在』だけはほぼ確実。
※以上の内容は下手に明かす事は危険故、現在の段階ではまだ他の参加者に明かすべきではない。


395 : 名無しさん :2014/04/28(月) 21:19:16 AnI3/TBc0

 ──次回、変身ロワイアル!!
(♪BGM『W-B-X 〜W-Boiled Extreme』)

『……おい、お前ら何者だ? どうしてそれを使ってんだ』

『君は左翔太郎くんか。私は結城丈二。君と同じく仮面ライダーをやっている』

『君……いや、君たちの実力を、あえてここで試させてもらう!』

 (BGMがこの辺で終了。)


396 : ◆gry038wOvE :2014/04/28(月) 21:19:50 AnI3/TBc0
以上、投下終了です。
明日で全部投下終わります。


397 : 名無しさん :2014/04/28(月) 21:35:18 vRAkiwzQ0
投下乙です!
杏子が戻ってきてくれたおかげで、何とか纏まったけどきちんと真実を伝えられなかったか……
その後の入浴や特訓シーンを経て、絆は更に深まりましたけどこれからどうなるか?
そして次回、ついに結城さん達と合流ですかね?


398 : 名無しさん :2014/04/28(月) 22:33:00 9/BCgwgc0
投下乙です
翔太郎視点で進むギャグ回かと思ったらしっかりシリアスしてて流石...


399 : 名無しさん :2014/04/28(月) 23:00:30 DU5gP6Jk0
投下乙です
そういえば、牙狼の人はなんでまだ戻ってないんですかね?
何かトラブルがあったか、それかそのまま別の仲間を探しに行く、的な事でも
言ってたんでしたっけ?


400 : 名無しさん :2014/04/29(火) 00:13:02 uLdztI8E0
>>399
鋼牙は前回の話の修正で警察署を去ったよ


401 : 名無しさん :2014/04/29(火) 02:11:13 0PtikvqU0
昨日に引き続き投下おつです
魔法少女のエネルギーが魔女を産み出すなら、極力魔法を使わないよう心がけるのも自然な流れ!
なかなかいい機転ですね。
第三話楽しみに待っています


402 : 名無しさん :2014/04/29(火) 04:41:25 6P9mHxeg0
今更ですが、データ化するようなフィリップに首輪(物理)って意味あるのだろうか?
サンデーロワのおキヌちゃんではないが…


403 : 名無しさん :2014/04/29(火) 13:12:35 cDIpcI4I0
投下乙です

良い意味で対主催らがまとまってるがロワでこれは…
みんな生き残って欲しくなるような展開でした


404 : ◆gry038wOvE :2014/04/29(火) 21:14:14 EkbuDiGE0
それじゃあ、最後のパートを投下します。


405 : 孤独も罪も(前編) ◆gry038wOvE :2014/04/29(火) 21:15:07 EkbuDiGE0



 光が二人を包んでいく。
 翠屋から、鳴海探偵事務所まで、マップの端から端までの距離を一瞬で縮める、その不思議な光は、二人の体を少し温めた。

 ──二つの場所を結ぶ転移システム・時空魔法陣。

 それは、次の瞬間には、結城丈二と涼邑零の体を鳴海探偵事務所まで移動させていた。
 目の前の景色が変わる。何もない田舎の村の土まみれのアスファルトから、真新しいアスガルトを街灯が照らす街の物へと。──一瞬、ただ景色が小綺麗に変わっただけかと思った。
 人がいなければ、田舎も都会も、結局は同じという事か。
 彼らがいるのは、その建物の真上。ソルテッカマンの巨体が、鳴海探偵事務所を内包する建物の上でどしんと音を立てて着地する。

「……すげえな、本当に全然違う場所に来ちまった」

 ソルテッカマンから声が聞こえた。
 この中には零が入っている。こう言いつつも、零はあまり凄いと関心している様子はなかった。魔戒騎士にとっては、結界を使った移動は日常茶飯事。仕事として日常に取り入れているものの一つである。出自が違うだけで、同じような原理を使っているのだろう……と、あっさり受け入れる事ができる。
 結城も殆ど同じような──ありきたりな感想しか抱かなかった。次の瞬間には、全く別の事に興味を向ける。

「ここが、鳴海探偵事務所か」

 どうやら自分たちは鳴海探偵事務所の上にいるらしい。探偵事務所というのは、一つの建物がまるまる探偵事務所として建てられている場合は殆どなく、だいたいの場合は大家に借りて、建物の一部を探偵事務所として使っている。
 見下ろして、看板を見てみると、そこには「かもめビリヤード場」と書かれていた。かもめの形をした愛らしい風車が回っている。この探偵事務所は、大人のアミューズメントと複合しているらしい。

「涼邑、ソルテッカマンの装着を解除しろ」
「ああ」

 この装備のままでは、満足に鳴海探偵事務所の中に入る事もできないだろう。結城はそう言った。零は、言われてすぐにソルテッカマンの装着を解除して、身軽に一飛びしながら、その中から現れた。いちいちそんな一挙一動に驚く事はなかった。零の身体能力が極めて高いのは既知の話だ。

「さて、とりあえず、中に入ってみよう」

 結城は、促すようにそう言った。







 ソルテッカマンはそのまま屋上に置いて、零と結城は真下に飛び降りた。二階ほどの高さしかないので、二人は身軽にそこを飛び下りる事ができた。鳴海探偵事務所は、まさしく二階にあるのだが、入り口は当然下にある。
 いやでも最初に目につくのは、探偵事務所へと繋がるドアではなかった。

「とりあえず、バイクは見っけたな」

 探偵事務所の外には、三台のバイクと自転車が停められている。駐輪場なのかどうかは知らないが、屋根の下に上手く三台駐車されていた。バイクをのぞきこんでみたが、しっかりと鍵もついているようだ。零も結城もバイクならば心得があるので、上手に乗り回す事ができるだろう。

 ──ハードボイルダー。
 ──ディアブロッサ。
 ──スカルボイルダー。
 ──ふうとくんバイシクル。

 それが個々のバイクの名前だった。風都の三人の仮面ライダー、全員のバイクがそこに停められていた(ついでに変な物もあるが気にしてはいけない)。後部にある巨大ユニット・リボルギャリーで換装する事で、更なる強化が図れるマシンだ(一つは明らかに違う)。


406 : 孤独も罪も(前編) ◆gry038wOvE :2014/04/29(火) 21:15:44 EkbuDiGE0
 ……ただ、欲しいのはこれだけじゃない。勿論、ハードボイルダーがあれば便利だが、それ以上に、換装ユニットを必要とする。それがあって、初めてこのマシンでの行動範囲は広がるのだ。ただの移動手段ならば村エリアでも充分に利用する事ができる。

「なかなか良いマシンだが、今は停めたままにしておこう」
「ああ。どうせ後で使うんだけどな」

 まあ、ここを出る時は移動手段として使われるだろう。道幅の広い道路が設けられているが、おそらくそれが装甲車の通り道、本島への架け橋となる。そこを通ればすぐに本島への道に辿り着くはずだ。
 まずは探偵事務所の方を探す事にしよう。バイクを視界から外すと、今度見えるのはいくつかのドアだった。このドアのうちのいずれかが探偵事務所に繋がっている。

「……これはビリヤード場のドアか」

 探偵事務所があるのはビリヤード場の一角に過ぎないらしく、零が開けたドアにはビリヤード台が並んでいる薄暗い部屋があった。
 薄暗く、家族で入るには抵抗のいる店だろう。

「一つやっていくか、結城さん」
「やらない」

 結城は、冷ややかにそう言って、零の冗談を無視した。スルーされて肩をすくめて苦笑しながら、零が結城の方へ歩いて行く。彼が見ていたのは、鳴海探偵事務所の看板であった。
 かもめビリヤード場の看板に比べると小さい。木の札に派手な装飾をしたファンシーな看板に、妙なボール紙が画鋲で突き刺されていた。更にその上から、変な文字が書かれた緑のスリッパが張り付けられている。

「……あらゆる事件、ハードボイルドに解決します。だって」
「この看板の煽りが既にハードボイルドとは程遠い気がするが」
「……これもここのオーナーの冗談だろ。真剣に受け取るなよ、結城さん」

 最近の店の看板には、ちょっとした遊び心や冗談っ気を交えているものが多い。特に、個人経営の店などは、飲食店にしろ美容室にしろ、看板にこんな冗談を交えているのだ。あまり本気に受け取るべきではない。……まあ、実際のところこの事務所の探偵は、本気で言っているのだが、誰もそう信じなかった。

「さて、じゃあそのハードボイルドな探偵事務所に入れてもらうか」

 先に歩き出した結城の背中を、零は追う事にした。
 結城は入口の階段を上り、探偵事務所の前までたどり着いた。彼は、ノブを捻り、鳴海探偵事務所の中へと入っていった。







「確かに随分と洒落た内装だな……」

 零は、壁にかけられたWIND SCALEのソフト帽子を手に取る。気に入っているのだろうか。同じブランドの帽子の色違いがいくつもある。内装をより上品にするためかもしれない。内装は妙に拘られている。

「いかなる事件もハードボイルドに解決する、鳴海探偵事務所か。……形から入っのたか、確かにハードボイルド映画にでも出てきそうな部屋だ」

 ハードボイルドな探偵事務所を目指しているのだろう。内装にも気を使っているらしい。
 本棚を見てみると、そこにはレイモンド・チャンドラーの小説が何編か飾られており、中にはチャンドラーの小説を原作にした映画のDVDまで揃えられている。なるほど、ハードボイルドの代名詞となった小説も役立てているわけか。
 机には、今時誰も使わないような欧文タイプライターが置いてある。
 帽子も、ハンフリー・ボガートに触発されたような中折れ帽子ばかりである。ビリヤードやダーツ、バスケットゴールのような大人の遊びも、この部屋だけで充実しているようで、確かに事務所の内装だけはハードボイルドと言えよう。

 しかし──

「……なんだ、この調査資料は」


407 : 孤独も罪も(前編) ◆gry038wOvE :2014/04/29(火) 21:16:09 EkbuDiGE0

 結城がデスクの横の緑の梯子を上り、奥のダンボールを物色していた。そこで得た捜査資料は、この事務所の人間のイメージを損なうものだった。タイプライターで打ち出したらしい文章、報告書がそこにある。
 ……これが驚くべき事に、ローマ字で打ってあるのだ。欧文タイプライターは見栄だったのだろうか。読みにくいうえにシュールで、失笑を買うような文面だ。
 これだけではなく、他にも過去の事件の資料らしく物が次々と見つかった。しっかりとした正式な報告書もあれば、前述のようにタイプライターでローマ字打ちされた怪文もある。

「……犬探し、猫探し、亀探し……そんなのばっかりだな」
「だが、その中にたまにだが不可解な事件のデータが混ざっている。……ガイアメモリ犯罪か」

 二人が物色したデータからは、やはりガイアメモリの存在が消えなかった。
 ガイアメモリに関する調査報告書だけでも結構な数があり、数年分は溜まっている。
 一時はそんな事件ばかりだが、ある時からペット探しの依頼は急に増えたようだ。零が手にしているのは、その時期以降の報告書だろう。

「風都の探偵か……。各ガイアメモリ犯罪者の対策や、実際の使われ方についても一定のデータは記されているようだな」
「何これ、まさか全部に目を通すのか……?」
「ああ」
「おいおい……」
「すぐ終わる」

 結城はそう言いつつ、流し読みをしているようには思えない目つきで一つ一つの資料に目を通していく。しかし、手の動きと目の動きはそれなりに早い。
 調査報告書ごと持って行ってしまえば良いと思うのだが、極力は暗記して頭にとどめておきたいそうだ。当初、未確認生命体に関する資料を得た時も同様の理由で、資料を手元に置いてはいない。
 しばらくつまらなくなりそうなので、零はそこにあるダーツやビリヤードを適当にいじっては、高いスコアを出して遊んでいた。

「……なるほど」

 零は、数十分経って、ようやくその一言を訊く事ができた。零は退屈すぎて、背を向けたままダーツをしていた。それでもブルズアイに当てる事ができる。
 結城は資料を全て数十分程度で読み終えたらしい。必要分のデータしか頭に入れていないようだ。明らかにガイアメモリとは無関係な動物探しの依頼は全て無視していた。充分に早く読み終えたといえよう。
 結城は資料を纏めて、ダンボール箱の中に戻す。

「もう読み終わったのか?」
「ああ。少し読みにくかったがな」

 ローマ字で書かれた日記のような報告書は、やや読みにくかった。ただ、依頼者に明かされていない部分も含めて、少々役立つ話だ。

 左翔太郎。それがこの事務所で現在働いている探偵である事。
 園咲、風都、ガイアメモリ、ガイアドライバー、地球の本棚──それらが全て彼らの世界の産物であり、特にダブルドライバーの持ち主は「左翔太郎」である事。
 泉京水から獲得したデータは全く間違っていない事。

 全てを彼らは把握する事ができた。もともと、予感はしていたが、今後会いに行く相手はこれで確実に決まったようだ。
 しかし、その前に確認しておきたい事もある。そう、まずはこの施設に来た大本の理由である「リボルギャリー」だ。

「さて、リボルギャリーがあるというガレージはどこだ?」

 結城は見渡すが、この事務所の中にそんな物の様子はない。
 ただの探偵事務所ではないか。依頼内容を見た限りでは、ただの探偵というわけではないようだが、この一室だけ見ると、そんなガレージがどこにあるのかわからない。

「結城さん、こっちこっち」

 先にそのガレージを見つけ出したのは、零だった。ソフト帽子がいくつもかかったドアをいじっていたのは彼だ。結城が資料に目を通している間、零はビリヤードをしたりダーツをしたりして遊んでいたが、ガレージはとうに見つけ出していた。
 零がそのドアノブを捻る。……ドアが押されると、帽子が少し揺れた。

「ここから先が秘密基地、というやつか」


408 : 孤独も罪も(前編) ◆gry038wOvE :2014/04/29(火) 21:16:28 EkbuDiGE0

 ドアの向こうには、巨大なガレージが広がっている。
 ただの探偵事務所ではない……それは本当だったらしい。
 螺旋階段の下には、だだっ広い無数のホワイトボードが残されていた。







「……さて、どう動かせばいいのかね」

 彼らがいる場所は、本当にただのガレージに過ぎない。
 バイクを置いておくにも使えそうだが、装甲車などが置いてある雰囲気は殆どないのだ。
 あるのは何も書かれていないホワイトボードだけ。灯りは不気味に彼らのもとへと降り注いでいた。

「弱ったな……特殊な計器もない。管理システムがある前提でここに来たんだが」
「探してみようぜ、あるかもしれないだろ」

 結城は頷いた。
 ガレージの壁を叩いてみたり、さすってみたりするが、装甲車リボルギャリーを発進させるための計器に繋がるものはない。
 そもそもリボルギャリー自体がどこにあるのか、これでは全くわからないほどだ。

 結局、見つけられず仕舞という事になる。

「……と思ったけど、どこを探してもないみたいだな」
「仕方がない。この状況ではどうしようもないしな……諦めるか」
「確かにな。目当ての物がないんじゃ仕方がないか」

 少し時間をかけてしまっただけだったらしい。すぐに結城と零はそこを出る準備をする事にした。結城は、ともかく街エリアの方へと再度向かう事にした。警察署や中学校といった施設が気になるが、まずは警察署に行ってみる。
 今や二人は禁止エリアの影響も受けないような状態だ。首輪がないので、禁止エリアを突っ切って、すぐに中学校へと出向く事もできる。
 ソルテッカマンは置いていくが、おそらく現状でソルテッカマンを使用方法も知らずに利用できる人間はいないだろう。
 ……まずは、置いてあったバイクで警察署に向かう事にした。







 ──およそ一時間後。

 ……二台のバイクが、巨大な道幅の道路を走っていく。
 ヘルメットに顔は隠れて見えないだろうか。一人は結城丈二、もう一人は涼邑零。二人とも、バイクの技術は一流だった。
 二人は殆ど同系で、カラーリングだけが微かに違うようなバイクを選んだ。
 ハードボイルダーとスカルボイルダー。二台のバイクが夜を駆ける。

(……やはりこの道路はまだひと気がないようだな)

 先ほどまでなかったような道だ。当然、誰も通っていない。この付近にいた人間が気づいて寄ってくる可能性もあったが、そうした様子もなかった。
 時刻から考えても、日付が変わるまであと二時間を要さないような現状だ。

 メーターの数字に目をやる。二人とも高速道路のようなスピードを出している。
 夜の街を並走する二人は、運転技術には自信があった。この人通りのない道で突然に誰かが飛び出してきても、それを回避する事ができるだろう。

 やがて、二台のバイクは本島と探偵事務所を繋ぐ道路を渡り終えた。
 二人は何も言わずにバイクのスピードを緩めた。60km程度のスピードだが、周囲には人影は見当たらない。
 エンジン音だけがこの都会に木霊する。街灯だけが二人を照らしている。

(うん……?)


409 : 孤独も罪も(前編) ◆gry038wOvE :2014/04/29(火) 21:17:06 EkbuDiGE0
 結城と零は、前方に人影を感じて、バイクを減速させ、止めた。ほとんど同時だ。
 バイクは前輪の位置も殆ど同じに止まっている。二人同時に、その人影を見つけていた。警戒したのか、不意に後ろに下がったが、その人影は幻だったのか現実だったのかを改めて確認するために、零は訊いた。

「今、誰かいたよな……?」
「ああ。三人いた」

 ライトを切り替え、結城と零は降車してヘルメットを脱ぐ。
 ライトは、前方の三人の人影を照らした。幻ではなかったらしい。三人は眩しそうに顔を隠したが、指の隙間からそっとこちらを向いた。
 そのうち誰かが、意を決して、帽子で顔を隠しながらこちらへ向かってくる。結城と零は、ライトをまた切り替え、相手の目を気遣った。

「……おい、お前ら何者だ? どうしてそれを使ってんだ」

 先に声をかけてきたのは相手方。ソフト帽子を被った、カジュアルな服装の男性だ。結城はその男の名前に心当たりがあった。間違いない。
 ──左翔太郎だろう。
 隣にいる残りの二人の男女は誰だかわからないが、探偵事務所の主としての彼の姿勢は結城も好感を持っている。おそらくは殺し合いに乗っていないのだろうお。

「君は左翔太郎くんか。私は結城丈二という者だ」
「ゆ、結城丈二……って事は、沖さんの先輩……ライダーマンか!?」

 どうやら、左翔太郎はこの時間内に沖一也との合流をしたらしい。
 結城は頷いた。いかにも、自分こそが結城丈二である。知っているのなら話は早かった。

「そして、彼は涼邑零──」

 結城が真横にいる零を紹介しようとしていた。
 ……が、そこに涼邑零の姿はなかった。零の姿を探す。見れば、彼は既に十メートルほど歩いており、目の前の三人組のうち、背の低い女性の真ん前まで来ていた。
 彼女の至近距離、彼女の目を見て、僅かな微笑を浮かべながら訊く。

「俺は涼邑零。君の名前は?」
「って、おいおい……」

 結城も呆れる。女性に対してのこの行動力は、年代を問わないらしい。
 この男は徹底的に人懐っこく、妙に人を引き寄せる。自らが他人に対して近づいていくそぶりもある。到底、復讐を果たそうとしていた男とは思えないだろう。
 だが、実は、そんな態度の裏に、満たせない寂しさがあるのかもしれない。

「なんだよ、あんた……」

 少女は、引き気味ながらも強気な表情で言う。

「だ・か・ら、涼邑零だって」
「そうじゃなくてさ……」

 と、そんな零の襟をつかんで、結城が引き寄せた。
 かなり近づいていた零と杏子の顔の距離が引き離されていく。
 零の足は宙を泳ぐ。結城丈二は、成人男性ひとりの体をこんなにも軽々と持ち上げているのだ。持ち方を工夫すれば簡単な事だが、それでもある程度の体重を支える力は必要である。

「結城さん、冗談だって……」
「俺に冗談は通用しない。科学者だからな」
「それが一番意味わからねえよ……!」

 零は、あっという間に適度な距離にまで引き離された。
 翔太郎たちはその様子に茫然とする。結城のこの力の使い方は、まさしく沖一也の先輩たる姿だ。──いや、仮面ライダーの先輩という意味では、翔太郎の先輩でもあるわけか。
 その大人の落ち着きも、熟練された戦士のように見えた。

「で、今度は真面目に訊くが、君たちは?」
「あ、ああ……。あたしは佐倉杏子」

 安心したのか、彼女はすぐに質問に答えた。名前を出し渋る理由はない。
 あの零という男には戸惑ったが、結城ならば少し落ち着ける。

「僕はフィリップ。参加者ではありませんが、つい先ほどこの場に呼ばれました。……それより、僕としてはお二人に訊きたい事が。その首元が少しばかり気になるんですが、もしかして、解除したんですか?」


410 : 孤独も罪も(前編) ◆gry038wOvE :2014/04/29(火) 21:17:31 EkbuDiGE0

 フィリップは、気障に零の首元を指さした。結城を指さす事ができなかったのは、この結城の奇妙な威圧感に、フィリップでさえ指をさすのを躊躇ったからだろうか。
 全員の視線が、結城と零の首元に注ぐ。

「ほんとだ……首輪がねえ!」

 翔太郎も二人の姿に違和感を抱いていたが、その正体がつかめなかった。仲間の中でも、杏子は首輪をしていないが、それは首輪がソウルジェムに取り付けられているからで、その条件は魔法少女である事だった。目の前の二人が魔法少女という事はあるまい。
 零は、誇らしそうに首を、二、三度、掌で叩いた。

「……結城さんが解体したんだ。俺たちは晴れて自由ってわけさ」
「その通りだ。勿論、我々の手で、君たちもいずれ自由にする。俺たちの目的はこの殺し合いの打破、脱出、そして、この殺し合いを主催した悪魔たちを滅ぼす事だ。……君たちとも協力する事になるだろう」

 結城が、饒舌に言った。情報を提供する事に対しては、一切惜しみはない。できれば、自分たちと同じ志を持つ参加者がいるのなら、その首輪を外していきたいほどだ。
 翔太郎とフィリップに対して、若干の不審を飲み込み切れなかったが、彼は黙っていた。

「マジかよ……! それなら早速、あいつらに知らせて……俺たちの首輪も解除を……」
「……ただし」

 慌てる翔太郎に対して、結城が一言、強い言葉で制止する。
 翔太郎は、思わずその一言に圧されて、ほんのひと時ばかり言葉を失った。

「そのための条件、と言っては何だが……少し君たちからも訊きたい事がある。一つや二つではないが、構わないか?」

 結城は、そう言った。条件をつけるつもりはないのだろう。あくまで、情報を引き出しておきたいわけだ。

「何でもお答えしましょう」

 結城の一言に、フィリップは冷静にそう答えた。少しだが、フィリップは悪戯じみた笑みを浮かべていた。現状、まだチームメイトが誰も解除できていない首輪を、結城は解除しているのだ。そこに興味が湧いているのは、フィリップらしいと言える。
 自分の持つ本棚からは引き出せない情報を引き出せる相手だと、フィリップは勘付いていた。

「まず、前提として訊いておきたい。君たちは『ダブルドライバー』の持ち主で間違いないな?」
「はい」

 ダブルドライバーの持ち主、という言葉はここしばらく、結城たちの考察上で必ずといっていいほど出てくる言葉であった。そのダブルドライバーというものが果たして何なのかは誰も知らなかったが、

「なら……君──フィリップの『地球の本棚』というものが21時より拡張されたらしい、という事は知っているか?」
「既に知っています」

 フィリップは、むしろ何故そんな事を知っているのか、結城に尋ねたかったが、あえて今は結城の質問を優先する事にした。

「そうか。……それなら訊きたい。一体、『地球の本棚』とは何だ? それがあれば、今後俺たちが何かを考えるうえで、役に立つらしいんだが……」

 その単語も何度も出てきた。調査報告書の中にも、時折『地球の本棚』の話題は挙がっていた。しかし、それが何なのかまでは、はっきりとは記されていない。そのため、結城たちはそれが何なのか、まだよく知らないのだ。

「僕の精神が入り込める特殊空間、それが『地球の本棚』です。これまで地球で起こった全ての情報──『地球の記憶』がその無限の本棚の中に所蔵されています。僕はその中から必要な情報を検索していく事で情報を引き出す事ができる……それで、おそらく僕が役に立つと言われているのでしょう」

 地球の本棚というのは、少しばかり説明の難しい物だ。精神世界の話をいきなりされてもすぐに飲み込める人間は少ない。しかし、結城も零も、そういう人間だったのは幸いだろうか。彼らの世界では、実際に精神体や精神世界の存在が現れているのだ。


411 : 孤独も罪も(前編) ◆gry038wOvE :2014/04/29(火) 21:17:56 EkbuDiGE0

「なるほど……アカシックレコードのようなものか」
「その通り。……今現在は、過去に引き出せなかった異世界の情報も検索する事が可能な状態にまで拡張されています」

 それから、既に結城は鳴海探偵事務所で調査報告書を読んでいた。あらゆる事件の依頼において、その『地球の本棚』が役立った事は言うまでもないようだ。すぐに飲み込めるどころか、フィリップを信じる事も容易かった。

「よくわかった。今後、使わせてもらう事になるかもしれないが、構わないか?」
「ええ。いつでも」

 フィリップの返事は、いつもとは打って変わって、快諾という感じの返事をした。翔太郎も意外そうに見つめたが、相手を見つめて、フィリップの興味関心がそそられる相手であるのは無理もないだろうと思った。
 ただ、どうしてこうも自分の周りの「仮面ライダー」は総じて頭が良いのか、少し劣等感みたいなものも湧いてくる。仮面ライダーエターナルとなった響良牙の存在が少し、翔太郎の中で救いになりつつあった。

「それから、君たちに渡しておきたい物もある」
「……渡しておきたい物?」

 結城は、ポケットの中から二本のガイアメモリを取り出した。零も、結城がそうして行動したのを見て、乱雑にポケットにしまわれていたガイアメモリを取り出した。それは、いずれもT2ガイアメモリであった。

「マキシマムドライブ専用のガイアメモリらしい。ドーパントへの変身はできない」
「……おい、マジかよ」

 翔太郎が、真横からそれを見ていた。フィリップが、二つの掌の上に乗せられた四本のガイアメモリを丁寧に取り上げた。フィリップは即座に、そのスイッチを押したが、音声は鳴らず、誰がドーパントになる事もなかった。
 状況が整わなければ使用不可能なのだろう。

「確かに受け取りました。アクセル、クイーン、ロケット、ユニコーンですね」

 フィリップは、ダブルドライバーの持ち主の一人として、それの受け取りを確認する。

「アクセル、か……」

 翔太郎は、T2アクセルメモリを見た時、思わずそう口に出した。
 アクセル──それは、照井竜が変身に使うメモリ。T2ではなかったが、そのメモリを見た時、仮面ライダーアクセルの姿を少し思い出した。

「それから、まだ話したい事はある。……君たちは、リボルギャリーを知っているな?」
「ええ……」
「我々は先ほど、鳴海探偵事務所に行った。リボルギャリーという装甲車があると聞いてそこに向かったんだが、それらしい物は置いていなかった」

 そう聞いた時、フィリップが眉を顰めた。

「……リボルギャリーを発車する方法を教えろ、という事ですか?」
「その通りだ」

 結城がそう告げると、フィリップは顎を指で触れた。何かを考え込んでいる様子がわかった。翔太郎自身も、あまり簡単に全てを話す気にはなれなくなっていた。
 おかしい。
 探偵の勘が、この状況が不自然だと伝えている気がする。

 地球の本棚の拡張について、彼らはどういうルートで知ったのか。
 彼らはどうして、突然現れた施設の方から現れたのか。
 何故、彼らはリボルギャリーの発車方法について訊きたがるのか。

 不自然なまでに詳しい。──そして、逆に肝心なデータを落としていて、それを聞きたがっている。

「おい、フィリップ。……なんか詳しすぎねえか? なんでこの人たちは、こんなに何でも知ってるんだ?」
「ああ。確かに、詳しすぎる。……失礼ですが、あなた方は本当に、翔太郎たちと同じ『参加者』なのですか?」

 翔太郎とフィリップは、同じ事を考えていた。
 そう、二人が考察した内容──『参加者』対『主催者』の構図。それが近づいているという可能性。それは、もう目の前に来ているのかもしれない、という事だ。


412 : 孤独も罪も(前編) ◆gry038wOvE :2014/04/29(火) 21:18:17 EkbuDiGE0

 目の前の二人は、首輪もしておらず、フィリップたちの事について妙に詳しい。
 それだけではなく、新たにできたはずの施設に現れたり、沖のレーダーハンドの目を掻い潜って現れたり、フィリップたちから情報を引き出そうとしたりしている。
 却って怪しい存在なのだ。

「まさか……」

 ──そう、目の前の二人は、主催者側に取り入れられているのかもしれない。

「おい、どういう事だよ……」
「杏子、ちょっとこいつらから離れろ。……なんか少しヤバい。警戒した方がいいかもしれねえ」

 翔太郎は、ダブルドライバーを左手に構えた。
 翔太郎とフィリップと杏子に直接的な面識がない結城と零の名前を騙っているが、果たして彼らが本当にそうなのか──いや、仮に面識があったとしても、怪しいものだ。
 杏子は、翔太郎によって、少し後ろに下げられた。

「おいおい、どういう事だって訊きたいのはこっちだぜ」

 零は、その状況に少し困惑しつつも、敵が何か仕掛けてくるなら、と双剣を出し、構えた。
 翔太郎と杏子は、ごくりと息を飲む。まさか、剣を持っているとは思わなかった。──零は剣を構えている。それなら、相手は、すぐに斬りかかる様子はないが、いつでも三人を斬り殺せる準備をしているのだ。
 刃は二つ。一瞬で二人を切り裂き、次の一瞬で残りの一人の息の根を止める事ができるだろう。

「結城さん、こいつら、俺たちの事を少し誤解しているみたいだけど、どうするよ」

 零は、隣の結城丈二にそれを訊いた。結城は憮然とした表情で答えた。
 どうやら、何かの意を決したらしい。

「……零、お前は下がっていろ。……丁度良い。肩慣らしに少し、戦わせてもらおうか」
「戦うって……本気か?」
「話し合いで解決するのも良いが、この方がかえって都合が良い事もある。誤解したままならば、敵さんも本気で戦ってくれる事だろう」

 結城の声は少しばかり冷徹だった。何か一つの考えがあるといった様子だった。
 何故、結城丈二は話し合いなどせずに戦おうとしているのか──零はそれを少し考えた。
 勿論、結城は殺し合いに乗っていないし、主催に仇なす者同士で殺し合うなど、言語道断だろう。それを、結城はあえてやろうとしているのだ。

「何か考えがあるみたいだな。……じゃあ、俺は見物する事にするよ」

 零は、結城にも何か考えがあるのだろうと思って、数歩下がり、ビルの前の段差に座り込んだ。
 結城は、何も言わずにその手でライダーマンヘルメットを掴み、頭上に掲げた。

「ヤァッ!!」

 ──結城丈二は、このマスクをつける事によってライダーマンとなり、手術した腕が電導し、アタッチメントを操る事ができるのである。

「ライダーマン!!」

 結城丈二は、ヘルメットを装着すると、強化服に身を包み、ライダーマンへと姿を変えていた。ライダーマン、彼は仮面ライダー4号の称号を得た正義の闘士であった。

「さあ、かかって来い、仮面ライダーダブル……俺たちが貴様の敵だと思うのなら、全力でそれを排除しろ」

 ライダーマンの真っ赤な両目が暗闇の中で光る。
 その右手はアタッチメントを取り換え、ロープアームを装着していた。

「君……いや、君たちの実力を、あえてここで試させてもらう!」

 ライダーマンの唇が、そう告げた。
 唇や鼻、人間の表情を少しでも見せている仮面ライダーの姿に、流石に翔太郎も少し驚いた様子だった。


413 : 孤独も罪も(前編) ◆gry038wOvE :2014/04/29(火) 21:18:46 EkbuDiGE0

「……く、口が出た仮面ライダー?」
「侮ってはいけない。あれがライダーマンの姿だ……。戦闘用スーツに強化ヘルメット……他の仮面ライダーたちとは違い、改造されているのは右腕のみ。アタッチメントを付け替えながら戦う戦士だ……僕たちと同じく、イレギュラーな戦い方をするかもしれない」

 ライダーマンの事は検索済らしく、フィリップはその情報を告げた。
 一見するとライダーマンは貧弱そうに見えるが、その立ち振る舞いは剛健。いささか自信に満ちた口元が少しばかり恐ろしかった。

「……でもあいつも仮面ライダーなんだろ!?」
「勿論、彼は仮面ライダーだ。しかし、僕のデータによれば、結城丈二という男は、ある時まで悪の組織デストロンの科学者として高い地位を築いていた。デストロンの殺戮規模を考えれば、彼の研究成果が何百……いや、何万という人を殺していた可能性がある」
「ほんとかよ……。どうして、そんな奴が仮面ライダーなんて……」

 仮面ライダーの称号を持つライダーマンと出会えたと思っていた翔太郎は、その事にいささかショックを受ける。

「彼はライダーマンとなってからも、自分を失墜させたヨロイ元帥への復讐を目的に戦っていた。その為ならば、たとえ味方の仮面ライダーであろうとも攻撃したという。……後に、心を入れ替えて、自らの命を賭してプルトンロケットの爆発を食い止める事になり、その時に仮面ライダーの称号を得る事になったが……果たして本当に彼が心を入れ替えているのか、その時より後のライダーマンであるかは、僕たちにはわからない。……そもそも、主催側の変装という事だってあり得る」
「そんな……じゃあ、もしかしたら俺たちは、本当は仮面ライダーになれたかもしれない男と戦うかもしれないってのか?」

 フィリップは頷いた。
 ここに来た時期が、もしも結城丈二が危険な人間であった時期ならば、迂闊に信用する事はできないのである。結城の姿を見ていると、彼を信じる事が難しくなっていった。
 ともかく、相手がその気ならば、こちらも変身するのみだ。そうしなければ、誰も守る事はできない。

「……翔太郎。怪我をしているだろう。……今回は、久々に僕が変身するよ」

 翔太郎は、一応胸部に怪我をしていた。一日中戦っていた翔太郎に対して、フィリップなりの配慮だろうか。翔太郎も、その意見には乗る事にした。
 どうやら、フィリップの方がやる気らしい。

「……くっ。仕方ねえ。わかった。いくぞ、フィリップ」

 あまり浮かない顔をしているが、翔太郎はダブルドライバーを装着する事にした。翔太郎が腰にダブルドライバーを当てると、コネクションベルトリングが伸長し、彼の腰をベルトが巻き付けた。続けて、フィリップの腰にもダブルドライバーが発現する。

「……じゃあ杏子ちゃん。悪いけど、翔太郎をよろしく」
「え?」

 フィリップの一言に、杏子は疑問符を浮かべた。翔太郎がライダーマンを見たまま、ゆっくりと後退していく。

「さて。準備は良いよ、翔太郎」
「ああ……」

 物陰から小型恐竜ファングメモリが現れ、駆け出し、フィリップの手元へと飛んだ。
 恐竜型のガイアメモリは、フィリップの手の中で姿を変形させる。ガイアメモリとなっている部分を露出させ、フィリップはそれをベルトのスロットに挿し込んだ。
 ファングが慟哭する。闇夜に鳴く獣の姿は、まさしく風流ともいえた。

──FANG!!──
──JOKER!!──

 ファングメモリの鳴き声とともに、ガイダンスボイスが響いた。

「「変身!!」」

──FANG!!──
──JOKER!!──

 フィリップの体は、仮面ライダーダブルの形態のひとつ、ファングジョーカーへと姿を変えた。白と黒の二色──そして、杏子が知らなかったのは、その全身凶器の鋭利な腕や肩、足。凶暴なボディは、全身に牙を剥いているようだった。
 それは杏子がこれまで見てきた仮面ライダーダブルの姿とは違った。もっとなめらかなボディをしていたのがこれまでの仮面ライダーダブルの姿だった。


414 : 孤独も罪も(前編) ◆gry038wOvE :2014/04/29(火) 21:19:23 EkbuDiGE0

「お……おい、兄ちゃん……どうした!? 大丈夫か!?」

 そして、翔太郎の体が、魂が抜けたように地面に倒れている──。呼び起こそうとしても返事がない。変身した途端、突然翔太郎の体がこうなったのだ。杏子は、ダブルの変身で、一方が倒れるのを初めて見たので、驚いている。

『杏子、俺はここだ。それじゃ、俺の体をよろしくな!』

 そんな杏子に対して、そう言ったのは、ダブルだった。左目が点灯している。
 翔太郎の声だった。杏子が、地面に倒れている翔太郎を見やる。そこからは声が出そうもない。
 そういえば、ダブルはこれまでも右目を点灯させながらフィリップの声を発していた。あれは、フィリップの意思をダブルの中に宿していたからなのだ。

「え!? お、おい……変身してない方はこうなるのかよ……。これ狙われたらどうすんだ」

 杏子は、翔太郎の体を何とか抱き起そうとする。
 杏子が翔太郎の体を任されるのはこれで二度目だ。一度は、翔太郎が傷を負った時におぶるあのドウコク戦の時。──今度は、まさか魂の抜け殻を持つ事になるとは。
 厄介事に巻き込まれた気分だが、杏子は翔太郎の体を抱えながら、ダブルの戦いを観戦する事にした。
 ライダーマンは、そんなダブルの様子を黙って見ていた。

「「……さあ、お前の罪を数えろ!!」」

 ダブルは、ライダーマンに向けて、いつもの台詞を投げかけ、右手で指をさした。
 罪。──その言葉を訊いて、ライダーマンは少し空を見つめた。

「……数えるさ、この命がある限り……何度でも、いつまでもな」

 ライダーマンは、自分自身に告げるようにそう呟くと、ロープアームをしっかり構えた。その声はダブルの耳には届かなかった。
 仮面ライダーダブルとライダーマン、二人の仮面ライダーの争いが開戦する。

「ロープアーム!!」

 ロープアームは、ライダーマンの腕から伸びて、ファングジョーカーの左腕の小さな刃へと引っかかる。引っかかった時点で、吊り上げる。ダブルは、己の体が浮き上がるのを感じた。

「やぁっ!!」

 ダブルの体をそのまま、ライダーマンは宙へと放った。ダブルは放物線を描くように吊り上げられ、地面に叩き付けられる。轟音とともに、砂埃が舞う。アスファルトに大きな亀裂が生まれ、衝撃分の穴ぼこが空く。その中央にダブルが倒れた。左腕から叩き付けられたダブルは、真横を向いていた。

「くっ……!」

 いきなりの大打撃。ライダーマンのアームの強力さである。
 見た目以上の強さを持っているのがライダーマンだ。ライダーマンの周囲の仮面ライダーたちの中では、さほど強くないかもしれないが、彼の戦闘経験はダブル以上。アタッチメントの使い方も充分に慣れている。

『フィリップ、こいつはなかなか……』
「はぁ……ああ、強敵だ……。思った以上だよ」

 ダブルは、自身のダメージを認識したうえで起き上がる。アスファルトの滓がダブルの体から雪崩れ落ちていく。
 立ち止まる暇はない。ファングメモリのレバーを一度引いた。

「アームファング!!」

 ダブルの右半身で、腕の刃が一つ、巨大で鋭利な形状に変わる。これがアームファングだ。
 巨大化した刃にエネルギーを溜めながら、ダブルは一瞬でライダーマンの元まで、獣のように駆ける。フィリップと翔太郎の視界は、目くるめく速さでライダーマンとの距離をゼロにした。
 ──そのまま、すれ違うようにして、ダブルの右半身の刃がライダーマンの左半身を斬りつける。


415 : 孤独も罪も(前編) ◆gry038wOvE :2014/04/29(火) 21:20:04 EkbuDiGE0

「ぐっ……!!」

 ライダーマンは耐え抜く声をあげた。
 ライダーマンの体を左側面から斬りぬけていくダブル。左半身から右半身への横一閃を狙っていた。
 しかし、右半身を斬りぬけようとしたところで、ダブルの持つ感触に違和感が生じた。

「何っ……!?」

 ダブルのアームファングがそのままライダーマンの体を斬り、勢いづいて空を斬る事はなかった。アームファングはライダーマンの体の何かがせき止めていたのだ。
 アームファングが斬りぬけるのをせき止めていた障害物──それは、ライダーマンの右腕だ。ライダーマンはアタッチメントを交換して、別のアタッチメントで、腹部に向けられた一撃を受け止めていたのである。

 三日月を象った刃を持つアタッチメントアーム──

「パワーアーム!!」

 そのアタッチメントは、パワーアームといった。
 パワーアームはその絶大な力で、アームファングの一撃をようやく空に返した。ダブルの右腕が後方に向けて跳ね返され、そのまま体もライダーマンの元から遠ざかった。足が自然と後ろに退く。そこに、ライダーマンはそのまま勢いでダブルの体に向けて斬りつけるようにパワーアームを振るった。
 パワーアームの刃が、ダブルの腰部を叩き付ける。

「ぐあっ……!!」

 ダブルの固い体表もライダーマンのパワーアームの一撃に切り崩された。
 しかし、それでもダブルは諦めない。数歩下がって、距離を取る。

「ライダーマンの力を、限界以上に使っている……なかなかだ」

 敵ながら、賛辞を贈るべき対象だろう。ファングの力を耐え抜き、その痛みを堪えて次の一手につないだ。なかなかの戦法だ。

「……くっ。ダブル、なかなかやるな」

 一方、ライダーマンは、先ほどのダメージを感じて、一瞬左わき腹を少し押さえた。それほど深手であるように見えなかった。ライダーマンの戦闘スーツは抉られ、傷ついていたが、その目はダブルの方を睨んでいた。
 あまり痛めているようには見えない。ダブルが息を飲む。

『……フィリップ、無理するんじゃねえぞ』
「了解している」

 翔太郎が投げかけた言葉に、肩で息をしながら答えるフィリップ。
 ダブルは、敵の方を見つめながら、次の攻撃に警戒した。

「ネットアーム!!」

 次の動作を行ったのもライダーマンだった。
 ライダーマンは早くもアタッチメントを交換して、ダブルの動きを封じるネットアームを射出。ダブルの体をネットアームが包み込んだ。
 ダブルは、更にもう二回、ファングメモリのレバーを弾く。

「ショルダーファング!!」

 ダブルの右肩部分から白い刃、ショルダーファングが現れる。
 これは敵に直接近づいて仕留める武器ではない。敵に向けて投げるブーメランカッターであった。ダブルは、すぐにそれを掴みとり、自分の周囲に張り巡らされたネットを切り裂く。糸は解け、ダブルの体の上に糸滓だけを残した。
 そして、自分が捕獲されなかった事に安心したうえで、そのままショルダーファングをライダーマンめがけて投げつけた。
 ライダーマンもそれを認識して、アタッチメントを付け替える。ショルダーファングのカッターは眼前まで迫っていた。

「ふん……マシンガンアーム!!」

 ライダーマンは右腕を巨大なマシンガンへと変形させた。マシンガンはショルダーファングの赤い閃光へと向けられる。マシンガンアームの右腕を、左腕で支え、同じく左腕で引き金を引く。


416 : 孤独も罪も(前編) ◆gry038wOvE :2014/04/29(火) 21:20:32 EkbuDiGE0

「はぁっ!!」

 ぱららららららっ。
 マシンガンアームから無数の弾丸が連射される。いくつかの弾丸がショルダーファングへと命中し、流れ弾は前方のビルの壁にめり込んでいった。
 ショルダーファングはその弾丸を逆に切り返して、何事も無いかのようにライダーマンへと進行していく。ライダーマンは、咄嗟に顔の前にマシンガンアームを構え、その銃身でショルダーファングを受ける。

「ぐぬっ……!!」

 ショルダーファングのエネルギーを吸収しきれず、ライダーマンは悲鳴とともに数歩後退し、耐え切れずに数メートル吹き飛ばされた。しかし、吹き飛ばされながらも、ライダーマンは倒れなかった。
 ライダーマンは、ショルダーファングの刃が進行をやめるまで、立つ事だけはやめなかったのである。彼の足腰はその一撃に耐え抜いていた。倒れず、バランスを崩す事もなく、そのままアタッチメントを交換する。

「……ドリルアーム!!」

 鋭利な刃には、同じく近接的な凶器で仕留める。
 ライダーマンは、右腕の巨大なドリルアームを支えながら前進──。先端が激しく回転する。何もかもを貫く一撃がダブルに近づいていく。

「ドリルアームか……。実に厄介だな。喰らったら一たまりもなさそうだ」
『いいからさっさと回避しろって……!』
「わかっている……!」

 翔太郎の焦りとは裏腹に、フィリップは冷静だった。
 自分の身に近づいていくドリルアームを確認し、距離が縮まるのを待つ。
 そして、おおよそ確実な距離を認識し、ファングのレバーを素早く三度弾く。

──Fang Maximum Drive!!──

 ファングのマキシマムドライブを発動するために、構えた。
 充分に待ち、ライダーマンを引き寄せる。

「「ファングストライザー!!」」

 ドリルアームが体表を抉る直前でダブルは飛び上がる。
 ファングジョーカーの回転蹴り、ファングストライザー。二人の掛け声は見事に揃っていた。
 しかし、ドリルアームが咄嗟に上部へと向けられる。その動作は素早かった。ファングストライザーを出し渋ったのは、偏に敵の攻撃を引き寄せ、直前で飛び上がる事で回避しながら、相手の隙を狙う事だった。作戦は失敗らしい。

「何!? ……僕たちのキックに対応した!?」

 フィリップでさえ、その早さに度肝を抜かれた。

「ライダーキックのタイミングには慣れている……!!」

 ライダーマンの答えは簡単だった。キックを武器とする仮面ライダーたちと共に戦っている彼は、その初動やタイミングを既に把握しているのだ。ダブルは見たことがない相手とはいえ、戦法をおおよそ理解していたライダーマンには効かない。

 そのまま、ファングストライザーとドリルアーム──二つの技と武器が拮抗した。
 回転蹴りのファングストライザーは、その刃をドリルアームに狙われる。

「はああああああああああああっ!!」

 足に生まれた巨大な刃が、ドリルアームを引き裂いていく。
 ドリルアームが、その刃を削っていく。
 二つの凶器がぶつかり合い、そのまま爆ぜ、二人は爆心地から放り出された。ライダーマン、ダブルの両名が数メートル吹っ飛ばされた。

「「ぐああああああっ!!」」

 二人の仮面ライダーの叫び声は似通っていた。
 二人は相反する方向へと転がる。アスファルトの上を、何度かバウンドし、体の中身を激しく揺らしながら、自然に止まるまで、横になって転がり続けた。


417 : 孤独も罪も(前編) ◆gry038wOvE :2014/04/29(火) 21:21:53 EkbuDiGE0

 ライダーマンとダブルは、少しボロボロに廃れた体ながらも、すぐに起き上がった。目の前には火が立ち、煙が出ている。
 とにかく、立った。立った以上は次の一撃をどちらが先に浴びせるかだ。
 ダブルは、先制攻撃をしようと構えた。

 だが──

「な……何っ……!?」

 ダブルは立ち上がった自分の右足に、「それ」がある事に気が付いた。
 そう、自分の右足を捉えているかぎづめ。その先にはロープ。ロープを辿っていくと、ライダーマンの右腕がある。
 いつの間にかライダーマンのアタッチメントアームが変えられていたのである。
 先ほど使われたアタッチメントに、ダブルは引っかかっていた。

「油断したな……仮面ライダーダブル! ロープアーム!!」

 ライダーマンは立ち上がり、への字の口のままで、どんな感情でダブルを襲ったのかも悟られぬまま、ダブルの体を引き上げた。ダブルはバランスを崩し、そのまま地面に再び倒れた。
 そして、ロープアームを自在に操るライダーマンは、そのままその右腕を高く掲げ、ダブルを真後ろのビルへと叩き付けた。高い音が鳴る。窓が割れ、大量の破片が地面に降りかかる。

「ぐあああああああああああああああっっ!!!!!!」

 ダブルは、悲鳴とともに、そのままシールがはがれるように壁から離れて落ちていく。
 ダブルの体はすうっと、魂が抜けたように地面に落下していった。
 ライダーマンは、膝をついて、その様子を見つめていた。──彼が受けたダメージも生半可なものではない。
 しかし、ライダーマンはその痛みを堪えて、落ちていったダブルのもとまで歩いた。

「お、おい……何でこんな事すんだよ!」

 その手前で、杏子が割り込むように現れる。
 彼女の場合、多少傷ついたところで死ぬ事はない。だからこそ、躊躇なくライダーマンの前に出る事ができた。ライダーマンは、アタッチメントを付け替え、銀色のグローブの腕へと変わった。

「……君には関係のない話だ」
「な、何……っ!?」

 ライダーマンの態度に、少し杏子は苛立った様子だ。魔法少女に変身しようかとも思った。
 当たり前だ。自分に危害を加えないとはいえ、自分の仲間を攻撃している。
 そのうえ、関係ないとまで言われたのだ。腹も立つ。
 しかし、ライダーマンは、妙に落ち着いており、そこから攻撃をしかけるような様子が微塵も感じられなかった。彼は露出した唇を開いた。

「左翔太郎、そしてフィリップ。……君たちが、戦い果てた仲間たちと同じ、『仮面ライダー』の名を名乗るにふさわしい人間なのか、それとも否か──少し試させてもらった。どうやら、答えは出たようだな」

 杏子が振り向く。目の前では、ダブルが立ち上がり、ライダーマンの方へと牙を剥いていた。先ほどは倒れたが、それでも尚立ち上がる意志があるらしいのだ。
 ダブルは、いつでもライダーマンを倒せるよう、腰を落とし、まるで獰猛な獣のように構えている。
 少しでも杏子に触れる事ができぬように、少しでも触れたらすぐに距離を縮めてその首を刈り落そうとするように。

「試した……だと?」

 その言葉からは、怒りのニュアンスが感じられた。

「ああ。……本郷猛や一文字隼人、村雨良と同じ称号を得るのに恥じないかの確認だ」

 ライダーマンは、冷静にダブルの方を見つめていた。
 ダブルは尚、攻撃の意思をやめようとしない。その瞳に、杏子を傷つけさせまいという思いも、たとえ倒れても立ち上がる力強さを感じた。


418 : 孤独も罪も(前編) ◆gry038wOvE :2014/04/29(火) 21:24:13 EkbuDiGE0

「……守るべきもののために立ち上がるその意志さえあれば、負けないか……。君たちが確かに仮面ライダーであるという事も、今の戦いで充分に知る事ができた! 今の無礼は詫びよう。しかし、ここらで君たちの誤解も解いておきたい」

 ダブルは、急に態度が変わったライダーマンの方を見て、少し構えを崩した。
 どうしていいのかわかなくなったのだ。果たして、ライダーマンはこれからどうするのか。
 その答えは、ライダーマンが変身を解除し、結城丈二となった事で解決された。
 ライダーマンの武装を解除し、結城は「すまない」と一言言ってから杏子の肩を掴んで体をどかして、ダブルの方へと突き進んでいく。
 いま、左肩に触れた指先は妙に冷たかった。

「……もう一度名乗ろう。俺の名前は結城丈二。又の名を、ライダーマン──仮面ライダー4号だ」

 その言葉を訊いた時、ダブルは変身を解除した。──仮面ライダー4号の名を持っている以上、時期が過去でない事はよくわかる。また、彼がその名にある程度の誇りを持っている事も、その口ぶりからよくわかった。
 フィリップが、よろけた体で結城の目を睨みつける。
 いまだ、怒りは冷めやらぬといった感じだった。先ほどより落ち着いてはいるが、怒りと困惑はフィリップの中にある。

「……随分なご挨拶ですね。てっきり、もっと昔のあなたがここに呼ばれたのかと思いました」

 フィリップの口から出てきたのは、皮肉に満ちた言葉である。当たり前だ。先ほどまで万全だったフィリップも、全身に負傷を負った。倒れるほどではないが、ライダーマンは本気でダブルを襲っていたようにしか思えなかった。

「安心してくれ。俺はデストロンを脱退し、バダンと戦っている時のライダーマンだ」
「……今の攻撃。相手を殺してしまうかも、とは思いませんでしたか?」
「俺は仮面ライダーの中では弱い……どう贔屓目に見ても、俺が敵いそうなライダーは仲間内にはいないほどだ。俺ごときに敵わぬようでは、これからの戦いも苦労する事になるぞ」

 フィリップは、その言葉に、いっそう機嫌悪そうに結城を睨む。
 そんな結城の後ろから、翔太郎がマラソン走りで現れ、フィリップの横に立った。
 翔太郎も結城の顔を見た。

「……おい、あんた……。ライダーは助け合いじゃねえのか?」

 かつて、別のライダーから言われた言葉を、結城に投げかける。

「その通りだ……しかし、馴れ合いではない。確かに俺たち仮面ライダーは、確かに悪を倒すために助け合う。だが、助け合いというのは、ただ仲良く一緒に戦う事ではない」

 結城の目は少し険しかった。

「お互いの力を高める為、時にその力をぶつけ合い、己の技や強さに磨きをかける事も大切だ。時に、実力のわからぬ相手の力を試させてもらう事もある」

 ……翔太郎は、そう言われて黙ってしまう。
 確かに、自分の技を高めるために特訓する事も大切だ。しかし、初対面でいきなり襲い掛かってくるとは思わなかったのだ。

「……まったく、何かと思えば、結局特訓かよ。でもまあ、少し手荒な特訓だけど、確かにこのくらいやらないと相手の実力ってのはわからないからな」

 零も結城の後ろからのんびりと現れる。
 魔戒騎士は、常に死と隣り合わせな特訓を行う。実戦では敵は殺しにかかってくるのだから、当然だ。刃を交えて戦うのは基本である。

「……それならそうと、最初から言ってくれれば……」

 翔太郎も少しスネ気味であった。あまり機嫌がよくなる話ではない。
 随分なスパルタ教育だと思えた。……しかし、仮面ライダーの先輩である彼が、仮面ライダーの名前を任せるのに、充分な働きをしなければならない身だ。

「言ったうえで君たちが本気の戦いをしてくれるのかはわからないだろう」


419 : 孤独も罪も(後編) ◆gry038wOvE :2014/04/29(火) 21:24:57 EkbuDiGE0
ごめんなさい、
>>417-418は「孤独も罪も(後編)」です。


420 : 孤独も罪も(後編) ◆gry038wOvE :2014/04/29(火) 21:25:28 EkbuDiGE0

 結城が求めたのは、あくまで本気のダブルだ。特訓をするつもりでかかってこられたようでは、結城はダブルの真の実力を知る事ができない。まあ、実際のところ、何事もなく、お互いに誤解もなく進んでいれば、ちゃんと伝えたうえで戦いを始める事になっただろうが、相手が結城を敵だと思っているならば、都合が良いと感じたのだ。

「……俺たちがあんたを敵だと思っているのを良い事に、悪人のフリをして俺たちを本気にして試した……そういう事だったんすか?」
「……悪人のフリをした覚えはないが、大方そんなところだ。お前たちの本気は見せてもらった」

 その辺は、フィリップたちの一方的な勘違いだった。それを利用して戦わせてもらったのも確かだが。
 フィリップは、結城を見つめた。彼の様子をうかがっているようだった。

「……しかし、結城丈二さん。僕もあなたの経歴は知っています。……僕のデータが正しければ、かつてのあなたは、確かに悪の組織の一員だったはずだ。あなたを信用していいのか……」
「……ああ」
「多くの命を奪った罪を……あなたは数えたんですか」

 フィリップの問いが、結城を微かにでも憂鬱な顔にさせた。
 遠き日、自分がデストロンによって利用され、かつて存在したはずの右腕が悪の片棒を担いでいた事。その首領に心酔していた時代、結城の研究は全て悪の為の利用されていた。
 デストロンによる犠牲者の大半は、結城が間接的に絡んでいる。
 その言葉は、結城の心を僅かにでも抉ったが、結城は再び顔色を正して答えた。

「……数えたんじゃない。数え続けている」

 フィリップの言葉の端を捕まえるように、結城はそう言った。

「罪は消せない。背負って生きていくしかないんだ……」

 結城丈二はその罪から逃れる手段として、死を選ばない。
 一度、その死を以て償おうとした日──プルトンロケットから人々を守った、ライダーマン誕生の日。そこで死ぬのも一つの手だっただろう。
 だが、結城丈二は死に損なった。死と言う終わりは彼に降り注がなかった。
 タヒチで知った──「自分は償うためにまた生まれ変わった」という事実。それがこの世界の意思ならば、そのために償い生きようと、結城丈二は誓っていた。

「……そう、ですか。……しかし、そこまでわかっているなら。それをちゃんと知っているなら……あなたは一体何故、デストロンに魂を売ったのですか? その経緯を、僕はまだはっきりとは知らない。あなたを信じる為に、あなたの口から……全て教えていただきましょう」

 デストロンで悪事の数々を働いていたという結城丈二のデータと、今の彼の姿は一致しない。地球の本棚であっても、引き出せるデータは限られている。人物の内面などは殆ど書かれていない。

「……わかった」

 結城丈二は、その声のトーンを少しばかり下げた。
 暗い過去を見つめる時に、明るい声を出せるはずもない。それを話すという事は、また自分の罪を直視する事に違いない。

「言い訳になるかもしれないが、訊きたいならば、訊かれた通りに応えよう。デストロンは、科学の力によるユートピアを創造するための団体だと……俺は信じていた」
「……一体、何故そんな与太話を」

 ユートピア。そんなものは存在しない。全て、幻なのだ。
 あるのは、それを作り出した人間だけの、一人きりの理想郷をそう呼ぶ。

「俺の昔ばなしになるが、……俺の家は、その昔、母子家庭だったんだ……母と二人、長屋で毎日貧しい暮らしをしていた。母も病気を患っていて、その日に飯を食べる事さえできなかった。それでも俺は、母のために科学者や医者になろうと、子供の時からずっと科学の勉強していた」

 その日の食べ物にも困るような貧乏な暮らし──杏子もかつて経験した、辛くひもじい毎日を、この目の前の男も経験していたらしい。それでも、結城丈二は未来のために勉強をしていたという。

「しかし、ある時、俺の母は亡くなった。俺はそれからずっと病気によるものだと思っていたが、……それがデストロンによる陰謀だと知ったのは、もっとずっと後の話だ。俺は、その時、自分が行くあても、生きる希望も無くした。そんな俺を拾ってくれたのがデストロンの首領だった。俺の生活の面倒を見てくれて、人々のための研究をさせてくれるデストロンの首領は、……俺の父のような存在だった。この時、俺の研究が、悪に利用されているとも、首領こそが悪の根源だとも、俺は知らなかった。……全く、言い訳にもならんだろうな」
「おい、そんな話、俺も聞いてないぜ……」


421 : 孤独も罪も(後編) ◆gry038wOvE :2014/04/29(火) 21:25:57 EkbuDiGE0

 零も、結城の口からその事を聞くのは初めてだった。
 ……彼にも、家族はいなかった。彼も孤児で、引き取ってくれた道寺が父になったのだ。
 そんな父に心底恩義を感じた結城の気持ちはわかる。その果てに裏切られた結城丈二の事が、いたたまれず、なんだか身近に感じた。彼も超人ではなかったのだ。

「俺はデストロンにいる間、自分自身で決断するという事をしなかった。たとえ少し怪しんでも、自分の疑念を封じ込め、首領は絶対だと信じ続けた。俺の意思を殺して、自分ではない何かに流されるまま、悪の片棒を担ぎ続けたんだ。その結果、俺の研究は何万という人々の命を失わせた」

 そう言われて、フィリップはふと、自分の境遇を思い出した。
 フィリップはガイアメモリの開発に関わった。自分の研究は、確かに多くの命を奪っている。ガイアメモリの存在は悪ではない、使う者が悪なのだと信じて……。
 園咲に利用されながら、フィリップはガイアメモリを製造し続けたのだ。
 決断をしなかった事による、罪。──それは、フィリップが抱えている物と同じだった。

「ずっとデストロンで研究開発をして実績をあげていた俺はやがて幹部候補とまで呼ばれた。そんな俺を失脚させようとした男がいた。その男はヨロイ元帥といった。奴は俺に裏切り物の烙印を押し、俺を死刑にしようとした。……だが、兄弟のように思っていた研究仲間の部下たちに俺は助けられ、右腕を失うだけに済んだ。俺の右腕をこのアタッチメントに付け替えてくれたのも彼らだ」

 鋼鉄の右腕は──体温を持たないその義手は、仲間たちの支えでもあった。
 時として辛くなるとしても、それが、仲間がくれた力だと思えるからこそ、結城丈二は耐えられる。

「しかし、その部下たちもヨロイ元帥に殺された。俺は、部下の……そして俺自身の右腕の右腕の仇を取るため、デストロンと離反した。裏切り者と呼ばれたまま、俺は何度でも戦ったさ。……時には、復讐のために、大切な何かを忘れながら。周囲を巻き込み、暴走し……今度は、自ら決断し、間違った行動する事で罪を重ねた」

 翔太郎は、自分が仮面ライダーダブルとなった日の事を思い出した。
 翔太郎が手柄を得る為に突っ走り、結果として鳴海壮吉の命は奪われた。彼の指示を無視した結果の罪。
 決断をした事による、罪。──それは、翔太郎が抱えている物と同じだった。

「……それが、結城さん……あんたの、ビギンズナイトなのか……」

 仮面ライダーとなった者が抱える、辛い過去。背負って生きていかねばならない罪。
 それを翔太郎は再認識する。

「ビギンズナイト……?」

 その単語を、結城は知らない。
 翔太郎の代わりに、杏子が答えた。

「あたしたちの人生を変えた、忘れられない過去の事……だよな」
「ああ。……俺たちの運命を決めた時、俺たちを戦士にした日……それが、ビギンズナイトだ」
「なるほど……」

 翔太郎が補完した内容に、結城は相槌を打った。

「……全ての始まりの夜、か。夜じゃないけど……俺にもそんな時がある」

 零は、そう呟いた。
 父・道寺の最期を看取り、婚約者である静香が暗黒騎士によって貫かれるのを見つめたあの日──二人の墓前で、名前をなくした日。それが涼邑零のビギンズナイトだ。
 しかし、今となっては、それを他人に話すのも余計に思えて、零は詳しくは口にしなかった。

「なあ、母親も、兄弟のように思っていた人も失って……父親にまで裏切られて、あんたはどうして……そんな孤独に耐えられるんだよ」

 その問いかけに、杏子は既視感があった。どこかでそれと同じような語調の言葉を、杏子は訊いた事があった。
 杏子がそれを問うたのは、自分自身が全く同じ境遇で、それに耐えられなかった──耐え続けたフリをしていても、心が耐えていなかったからだろう。態度を変えた父。死んだ母、兄弟。──杏子と、同じだった。


422 : 孤独も罪も(後編) ◆gry038wOvE :2014/04/29(火) 21:26:26 EkbuDiGE0

「……俺に仮面ライダー4号の称号を贈った男がいるんだ。その名も風見志郎。三人目の仮面ライダー、仮面ライダーV3だ。平和のために戦う風見の邪魔を、俺は何度もした。しかし、俺と風見とは、デストロンと戦う日々の中で、ぶつかり合いながらも友情に結ばれていった」
「……」
「俺も奴に感化されたのだろう。デストロンは、東京を破壊するプルトンロケットを射出した。俺は、首領に何度も掛け合った。ロケットの発射を中止してくれ、と。……しかし、首領は答えなかった。俺が自分の父が悪だと認識したのは、その時だ。俺はロケットを止める為に、自らロケットに乗り込み、軌道をずらす事で自爆した。……まあ、結局、死に底なってタヒチに流れ着いたんだがな。その時に風見が贈ったのが、仮面ライダー4号の称号だ」

 杏子は、その風見志郎という男の名前を刻んだ。
 それは、杏子にとっての左翔太郎やフィリップのような男だと、はっきりわかったのだ。

「そいつが、あんたの孤独をなくしてくれたのか……」
「……いや」

 しかし、結城が否定する。

「確かに、風見や仲間たちとの時間は俺にとって、かけがえのない物だ。しかし、だからといって、家族や仲間を失ってきた孤独が消えるわけじゃない……それでも……」

 結城は、杏子の目を見て言った。

「たとえ孤独でも、命ある限り戦う……それが、仮面ライダーだ」

 結城は、そう答えた。
 そう、孤独は結城の中から消えていないのだ。
 それでも、自分の罪だけを見つめ、どんな苦難も、戦いの為に見つめている。
 仮面ライダーになったから──その孤独を見つめ、時として悲しみに暮れても、前を向いて生きている。

「……俺は仮面ライダーになった以上、たとえ孤独でも戦う意志を貫く。同じ仮面ライダーの仲間たちのように。彼らも俺と同じく、あらゆるビギンズナイトを持ち、心に孤独を抱えているんだ」

 風見やその他の仮面ライダーたちが傍にいるとしても、かつて失った仲間たちが戻ってくるわけでも、裏切った父が結城の理想通りになるわけでもない。
 死者への未練を持たず、仮面ライダーとして、前だけを見て生きているのだ。
 人間の自由と平和──そこに辿り着くために。

「孤独も罪も……全て、背負って生きて、戦うのが俺たちさ」

 杏子や零が抱える孤独。翔太郎とフィリップが抱える罪。
 結城丈二は、そのいずれも背負っていた。

「……」

 フィリップは、少し間を置いた後、少し息を吸って、言った。

「……すみません。僕は、ずっとあなたの事を誤解していました」

 フィリップは、ようやく結城に頭を下げたのだった。
 結城を全面的に信頼する、という選択肢を取ったのである。──少なくとも、彼の言っている事は作り話ではなさそうだ。誰もがそう思っているだろう。
 感情が揺れ動いたから……という理由で誰かを信じられる人間ではないが、フィリップは結城を信じてみる事にした。
 結城は返す。

「誤解じゃないさ。デストロンの研究員、結城丈二の開発は人の命を奪い続けた。悪魔と呼んでもいい。……しかし、俺は風見と出会った。俺は彼にもらった称号──仮面ライダー4号に恥じぬよう、誰かを守り、その罪を償わねばならない」

 結城がダブルを試した理由も、よくわかった。「仮面ライダー」という言葉に対して、結城はダブル以上に深い思い入れを持っているのだ。
 おそらく、彼は仮面ライダーダブルの在り方に、少しでも疑問を持ったのだろう。
 その疑問を、力ずくでも払拭しないわけにはいかないような性格だったのだ。──そこは、フィリップにも似ていた。


423 : 孤独も罪も(後編) ◆gry038wOvE :2014/04/29(火) 21:26:56 EkbuDiGE0

「生きる限り戦い続け、一人でも多くの命を救う。世界を……未来を。ユートピアは生まれなくとも、人々が当然持つべき、自由と、平和のために。その邪魔さえしなければ、俺はどんな苦難も受け入れてみせよう」

 完熟の仮面ライダー──それがライダーマン。決して迷う事なく、正義感の導くままに戦う男