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変身ロワイアルその4
1名無しさん:2013/03/01(金) 22:34:43 ID:TehNQsKA0
この企画は、変身能力を持ったキャラ達を集めてバトルロワイアルを行おうというものです
企画の性質上、キャラの死亡や残酷な描写といった過激な要素も多く含まれます
また、原作のエピソードに関するネタバレが発生することもあります
あらかじめご了承ください

書き手はいつでも大歓迎です
基本的なルールはまとめwikiのほうに載せてありますが、わからないことがあった場合は遠慮せずしたらばの雑談スレまでおこしください
いつでもお待ちしております


したらば
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/15067/

まとめwiki
ttp://www10.atwiki.jp/henroy/

2名無しさん:2013/03/01(金) 22:35:07 ID:TehNQsKA0
参加者

【魔法少女リリカルなのはシリーズ】2/7
●高町なのは/●フェイト・テスタロッサ/●ユーノ・スクライア/●スバル・ナカジマ/●ティアナ・ランスター/○高町ヴィヴィオ/○アインハルト・ストラトス

【仮面ライダーW】3/7
○左翔太郎/●照井竜/○大道克己/●井坂深紅朗/●園咲冴子/●園咲霧彦/○泉京水

【仮面ライダーSPIRITS】4/6
●本郷猛/○一文字隼人/○結城丈二/○沖一也/○村雨良/●三影英介

【侍戦隊シンケンジャー】2/6
●志葉丈瑠/●池波流ノ介/○梅盛源太/○血祭ドウコク/●腑破十臓/●筋殻アクマロ

【ハートキャッチプリキュア!】3/5
○花咲つぼみ/●来海えりか/○明堂院いつき/●月影ゆり/○ダークプリキュア

【魔法少女まどか☆マギカ】1/5
●鹿目まどか/●美樹さやか/○佐倉杏子/●巴マミ/●暁美ほむら

【らんま1/2】2/5
●早乙女乱馬/○天道あかね/○響良牙/●シャンプー/●パンスト太郎

【フレッシュプリキュア!】2/5
○桃園ラブ/○蒼乃美希/●山吹祈里/●東せつな/●ノーザ

【ウルトラマンネクサス】4/5
○孤門一輝/●姫矢准/○石堀光彦/○西条凪/○溝呂木眞也

【仮面ライダークウガ】3/5
●五代雄介/○一条薫/●ズ・ゴオマ・グ/○ゴ・ガドル・バ/○ン・ダグバ・ゼバ

【宇宙の騎士テッカマンブレード】2/4
○相羽タカヤ/●相羽シンヤ/●相羽ミユキ/○モロトフ

【牙狼−GARO−】3/3
○冴島鋼牙/○涼邑零/○バラゴ

【超光戦士シャンゼリオン】2/3
○涼村暁/●速水克彦/○黒岩省吾

【33/66】

3名無しさん:2013/03/01(金) 22:35:26 ID:TehNQsKA0
ルールが長くなってしまったため、特徴的な部分だけ抜粋
詳細が知りたい方は、下記リンク参照してください

ttp://www10.atwiki.jp/henroy/pages/19.html

【変身用アイテムのデフォ支給】
基本支給品やランダムアイテムに加え、変身用アイテムがデフォルト支給されます

ガイアメモリ、デバイス、ソウルジェム等があたり、これらはランダムアイテムとは別に必ず本人に支給されます
照井竜のガイアメモリやスバル・ナカジマのデバイスのように、変身用アイテムが複数存在している場合も全て本人に支給とします
ただし、参戦時期によってはその限りではなく、例えば照井竜の場合、トライアルメモリを得る前からの参戦ならば、トライアルメモリは支給されません
また、変身アイテム以外の武装、例えば暁美ほむらの銃火器等は全てランダム支給へと回されます

固有の変身アイテムを持たない人間には、この枠でのアイテム支給はされません

※ハートキャッチプリキュアのプリキュア達には、プリキュアの種とココロパフュームを支給。妖精は支給されません。
※左翔太郎、ウルトラマンネクサスのデュナミストについて特殊ルールが存在

【特殊ルール】
・左翔太郎について

左翔太郎には、仮面ライダーWへの変身用ガイアメモリのうち、彼が使う3つのガイアメモリが支給されます
残る3つのガイアメモリと、エクストリームのメモリはフィリップが所持した状態とし、そのフィリップは主催に幽閉されている扱いになります

フィリップは、戦闘中(Wへ変身した時)のみもう一人のベルトの使い手と意志疎通でき、それ以外の手段を用いたフィリップ側からロワへの介入は禁止
フィリップが独力で脱出することもありえません。

かなり特殊ですが、ダブルドライバー自体をデバイスに代表される意思持ち支給品と同等に扱うと考えればわかりやすいかもしれません

・ウルトラマンネクサスのデュナミストについて

最初に光を持っているのは姫矢准。姫矢が死んだ場合、次の人物へと光が継承されいきます
他作品キャラへの継承については書き手任せとしますが、もちろん誰でも対象というわけではなく、姫矢と面識のあるキャラに限られます
当然、他作品キャラへ継承させず、孤門や凪に継承させるのもありです

その後の継承については、姫矢→次のデュナミストに置き換え、同様の処理を行いますが、姫矢と違い、孤門や凪との面識がないキャラならば、当然2人は継承対象にはなりません

・その他

まどかの魔女化は、原則禁止です
もしも魔女化の条件を満たしてしまった場合は、魔女化はせずにそのまま死亡扱いとなります

4名無しさん:2013/03/01(金) 22:36:25 ID:TehNQsKA0
一足先にスレを立てさせていただきました

5 ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:39:58 ID:0S72IXOs0
>>1乙です。

では、「変身ロワイアル3」に投下した部分の続きを投下します。
前スレを見てから、こちらの続きを読んでください。

6届かない、M/ Nothing Lasts Forever ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:41:10 ID:0S72IXOs0


 エターナルゲーム、第一回戦は幕を開けた。


 鋼牙は剣を振るう。
 それは鎧を纏った戦士のものではなく、白いコートの人間の姿だった。
 しなやかに剣を振るい、エターナルのナイフとぶつけ合って火花を散らす。
 右に振るえばエターナルは左へ、左に振るえばエターナルは右へ。
 互いの刃と刃はぶつかり合うしかなかった。真横から見れば、不器用なクロスが描かれている。


「なるほど。バンダナと同じ……生身で桁外れってわけか」


 鋼牙は答えない。
 ただ、長時間共に行動して一条薫を傷つけたことに対する怒りでエターナルと戦っていた。
 エターナルと会話をする気は毛頭なく、ただ守るために剣を振るうのだ。
 その心に、敵に対する甘さなどない。


(なんだ、この剣捌きは……)


 エターナルも、その無駄のない剣捌きを見て驚愕していた。
 冴島鋼牙は、あまりにもしなやかに剣を操る。身体の動きも、剣の動きもしなやかで、やはり人間離れした能力の持ち主だ。
 そして、────速い。
 何より、剣を避けてから、次の剣がエターナルのマスクを掠めるまでが速い。
 そこにエターナルエッジを持ってくる、作業的な戦いが繰り返されていた。


(アタリどころの騒ぎじゃねえ……バンダナといい、コイツといい、……NEVERに匹敵する化け物だ)


 それを認めてしまうのは、死人である彼らのアイデンティティに触れることでもある。
 死人となった代わりに得られた力と言っていい、その能力全てが彼らと同等程度だという事実。
 生きながらにして強い……というのは通常なら嫉妬させるような事実だったが、既に大道克己にそんな気持ちはなかった。


「────チッ」


 ようやく吐き出されたのがその舌打ちだ。それは、一人目から最高の素材と戦う羽目になった自分の境遇を呪った舌打ちだった。
 コイツを倒してしまえば、話にならない相手ばかりになってしまう。
 キュアブロッサム、響良牙、それにゼクロス。
 こいつはそのどれとも違う魅力にあふれた相手だった。


 ──おそらく。


 鍛えた時期が違うのだろう。
 ここ一年で強くなったと言っていいキュアブロッサム。
 数年前は購買のパン争いで負け続けていたような良牙。
 改造によって強くなったゼクロス。
 そして、NEVERの力によって強くなったエターナル。
 そんな最近のものとは違う。
 もっと幼い頃から、辛い修行や戦闘に耐えて生きてきた男なのだ。この男の力は熟練された戦士のものだった。戦い慣れしているというのだろうか。
 敵が打ち込んでくる場所を予測できるカンのようなものも研ぎ澄まされていたし、彼自身の技も冴えている。
 更に言うなら、──エターナルは知らないが、彼は歴代の黄金騎士の才覚、魂を受け継いだ戦士である。その魂すべてが、彼を強くするのに役立てていた。

7届かない、M/ Nothing Lasts Forever ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:41:36 ID:0S72IXOs0


(だが、その全てを一瞬で崩し去ってやる────)


 エターナルは、鋼牙の顔に向けて手を伸ばす。その顔を掴んでやろうと思ったが、それは鋼牙が避けた。
 その隙に足元を狙おうかと足で孤を描いて鋼牙の体勢を崩そうとしたが、鋼牙は少し飛んで回避する。
 鋼牙が剣を横に凪ぐ。
 エターナルは真下にしゃがんで避け、真上にある鋼牙の魔戒剣の刃に敢えて触れた。
 エターナルの装甲は、そんな刃を通さない。通すとすれば、この刃の勢いがもっと違った場合だ。
 エターナルは刃を掴んだまま立ち上がり、鋼牙とにらみ合った。
 その眼光は、エターナルに勝るとも劣らず、相手を強く威嚇していた。



★ ★ ★ ★ ★



「なんだよ、あの野郎……あんな凄い力持ってたのか!?」


 良牙が、観客席と貸した自分が倒した木で、そう言って驚いているようだった。
 当たり前だ。
 どことなく、オーラはあると思っていたが、生身でエターナルと渡り合える実力者だとは思っていなかった。


「……あいつは、九能に匹敵するぜ」


 その様子を驚き見守るつぼみと良牙。
 良牙が思い出したのは、乱馬の高校にいる妙な男だった。竹刀や木刀を握らせたら、敵なしというほどの剣の名手だったが、彼は変態だった。
 鋼牙が変態ではないことを祈りながら、良牙は冷や汗を垂らしてその姿を見つめていた。
 だが、一条と村雨はそれだけが本当の姿ではないことを知っている。


「あんなものじゃない……」

「ああ」


 まだ、彼が生身であるうちは弱い方かもしれない。
 彼は、確かに生身で戦うことの方が多いが、それ以上に強いのは鎧を装着した時である。


「「冴島鋼牙は……黄金騎士は、あんなものじゃない……」」



★ ★ ★ ★ ★



 対峙しながら、二人は数歩だけ横歩きする。
 エターナルがその刃を放すと同時に、鋼牙は斬りかかってきた。
 エターナルはそれも避けるが、鋼牙はもう一方の上でエターナルの顔面に拳を叩き込む。
 エターナルのマスクは何も感じなかった。
 生身の人間の力でこれを砕くことは不可能だ。
 しかし、人間の拳がその顔面に到達する様子を、この複眼ごしに初めて見た瞬間だった──その力に驚く。
 と、同時にエターナルの右腕は鋼牙の左腕を強い力で掴んだ。


「……おい、あんたもNEVERになる気はないか?」

「なんだ、NEVERとは」


 鋼牙は痛みに顔を歪めながらも問う。
 この単語は、最初に広間で訊いた単語だった。
 それゆえ、彼はその言葉の意味を気にかけていたし、彼を前に口を開くにも十分だった。
 なんとなくだが、語幹が「ホラー」に似ていたのも、彼の興味を引いた理由である。


「人の感情を忘れた死人さ。死んだ人間を再生し、超常的な力を持つ戦闘兵士にする。言ってみればゾンビみたいなものだ」

「……そんな者になるつもりはない──。第一、死んだ人間の魂が──」


 鋼牙は、大河のことを思い出す。
 優しく、強かった父。──バラゴの手で殺された鋼牙の父のことを。
 そして黄金騎士の名を受け継いだ数多の魂によって救われた自分自身の剣。
 そこに込められた、魔を絶つ意思が、鋼牙の血潮をたぎらせる。


「──死んだ人間の魂が、そんな事に利用されていいはずがない!」

8届かない、M/ Nothing Lasts Forever ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:42:02 ID:0S72IXOs0


 鋼牙は左腕を握られたまま、逆上がりの踏み台にするように、エターナルの身体に何発もの蹴りを叩き込みながら一回転する。
 そして、右手の魔戒剣を敵の右腕に向かって振り下ろす。


「魂なんかねえよ。……NEVERの生前の記憶や性格まで失われていく。俺は母親をこの手にかけたときさえ、何も思わなかったんだからな」

「何? つまり、お前は……」


 鋼牙は、目の前の男の正体を知った。


「そう、俺こそがそのNEVERの一人ってわけだ」


 エターナルは鋼牙の腕を離す。
 このNEVERであると名乗る男は、本当に感情がなかった。
 そう、これではまるで悪しき生物のようではないか。


「……貴様の名は」

「仮面ライダーエターナル」


 仮面ライダーという単語にも覚えがあった。
 広間で聞いたはずだ。少なくとも、名簿にその名前はない。


「違う……お前が人間だった時の名前だ」

「大道……克己」

「──大道克己、か」


 鋼牙をはじめ、その場にいた全員がその名前を記憶する。
 そして、間近で聞いた鋼牙は叫んだ。


「大道克己……お前の陰我、俺が断ち切る!!」


 大道克己という男がどんな人間であったかは知らない。
 しかし、本当にそんな経緯の持ち主だったというのなら、鋼牙は克己の姿を利用し、魂を汚すエターナルを許せなかった。


 空中に円が描かれる。


 金色の鎧が、鋼牙のもとに召喚される。


 黄金騎士牙狼(ガロ)が眩い黄金の光に包まれて鳴く。


「ほう、お前も変身できるっていうのか」


 エターナルは冷静沈着にガロの金色の異形を見つめていた。
 エターナルエッジを構え、姿勢を低く取る。
 生身でもそれなりに強かったが、それが変身するという。
 ただ、生身の戦闘力はエターナルに劣っていたし、実際変身後の強さがどの程度なのかを克己は知らない。


「因果でも何でも、断ち切れるものなら、断ち切ってみろよ」


 エターナルは知らないが、陰我とは人間の心の持つ闇のことである。
 結局のところ、陰我であれ、因果であれ、印画であれ、エターナルには関係ない。


「踊るぞ、死神のパーティータイムだ」



★ ★ ★ ★ ★

9届かない、M/ Nothing Lasts Forever ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:42:47 ID:0S72IXOs0



 つぼみと良牙は、黄金騎士の姿を見てあまりの衝撃に口を開いた。
 彼も変身者だったのである。
 そして何より、あれほどの実力者が、更に変身するというのが衝撃だった。
 パワーは、スピードは、防御力は、破格になるのだろうか。


「……NEVER、か……」


 村雨が呟く。
 確かに、克己は以前の自分との闘いで、その単語を口に出した。
 だが、その意味を村雨は知らなかったし、興味がなかった。


(確かに、俺と同じだ……記憶も感情も失った、人間と違う兵士……)


 パーフェクトサイボーグの彼には、どこか彼に対する同情の気持ちも芽生え始めていた。
 あらゆる感情が失われて、誰を殺しても何とも思わない人間。
 だから、彼らはここに来て一番最初に巡り合ったのかもしれない。
 同じ性質を持つ者同士、惹かれあってああして巡り合ったのかもしれない。


(……エターナル、俺は……)


 村雨は、エターナルの姿が自分と重なっていくのを感じた。


「……しかし、彼が黄金騎士に変身できる時間には限りがある……!」


 不意に、一条がそう言ったことで、村雨は意識を戻す。
 そうだ、今は彼らの戦闘を見て、データを得ながら、なるべく身体を回復するのを優先しなければならない。


「その時間って、どれくらいですか……?」

「99,9秒のはずだ……倒せるのか? そんな時間で……」


 と、一条が解説していた。
 クウガも10分しか戦えないが、ガロは僅か1分半。はっきり言って、戦いらしい戦いができる時間ではなかった。


「よし」


 良牙が嬉々として立ち上がり、右拳を左拳にぶつけて肩慣らししていた。
 どうやら、彼は次に戦うらしい。
 99,9秒とともにガロの変身が解けたら、今度は彼が戦うつもりなのだろう。
 誰も止めようとはしていなかった。


「頼んだぜ……」


 良牙が何かを握っているのが見えたが、それが何なのか見ることはできなかった。



★ ★ ★ ★ ★



 最初に動き出したのはエターナルだ。
 低く構えたまま、エターナルがその手に持つ凶器で狙うのは鎧の間接部であった。
 懐へ入るまでが一瞬。
 これは重い鎧を纏ったガロよりも早く、エターナルはすぐに右手の蝶番間接のあたりを切り裂いた。
 血飛沫が飛ぶ。
 ……が、ガロは一瞬怯んだだけでエターナルに向けて剣を振るう。
 その攻撃を予測したエターナルは、エターナルローブで黄金剣の一撃を回避し、バックステップを踏んだ。


「……はぁっ!!」


 ガロも前へと跳躍する。
 その全身から覇気を放出しながら、黄金剣を横に凪いだガロ。
 しかし、その一撃はエターナルの身体へは到達しない。
 彼は上空に向けてジャンプし、両腕で木の枝にぶら下がると、そこから真下に落ち、ガロの頭に蹴りを叩き込んだ。


「ぐっ……」


 ガロも首に痛みを感じながらも、黄金剣を自分の頭の上で一周振り回した。
 それはエターナルの足に当たり、エターナルの身体を吹き飛ばす。
 脚部で火花が散り、克己の足にも僅かな痛みを与えた。


「……流石だな、黄金狼男」

「俺の名は牙狼──黄金騎士だ!」

10届かない、M/ Nothing Lasts Forever ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:43:21 ID:0S72IXOs0


 相手が勝手につけた名前を訂正しながら、ガロは森を駆ける。
 右腕には最初の一撃により傷つけられた痛みが残るが、鎧の守りは硬く、鋼牙自体のやせ我慢もあって戦闘に致命的な支障を及ぼさない程度に済ませた。
 ガロは駆けだすと、真っ先にエターナルの方に剣を振るう。
 だが、一方のエターナルも「NEVER」であるがゆえに、その足の痛みを耐えるにも十分な力を持っていた。
 小さなエターナルエッジで、黄金剣の刃を受け止める。
 黄金剣のヒットの長さは、エターナルにとっては厄介だった。


(まずいな……こいつは)


 克己の想像を超える敵、それがガロだった。
 ガロの剣は力強い。
 エターナルエッジの刃が折れかけてしまうのではないかと感じるほど、その力は強かった。


 だが、実際に折れる前にガロの方から剣を離し、別の箇所に剣を振るおうとした。
 その剣も、エターナルの反射神経が見事に避ける。
 右。
 左。
 そして、エターナルがガロの腹部を蹴って怯ませた。
 そこから軌道に乗ったエターナルは、足を綺麗に使って何度も何度も蹴りを叩き込む。


「──はっ!!」


 だが、ガロは脇腹を蹴ろうとしたエターナルの右足を左脇で掴み、敵の動きを止めてバランスも奪う。
 ガロは更にその胸部に向けて、真っ直ぐに剣を突き出した。
 エターナルローブが身体を包むよりも先に、ガロの黄金剣が突き刺さり、エターナルの胸部の装甲が割れる。


「がはっ!!」


 ──98.9秒──


 ガロは鎧を解除し、再び冴島鋼牙の姿に戻る。
 すぐに再装着するのは不可能だ。
 連続して装着し続けることが問題なので、すぐに再装着すること自体に大きな問題はないのだが、もはや戦闘中にそんな余裕はないだろう。


「なるほど、お前のそれには時間制限があるのか」


 エターナルは察する。
 メモリの力でも、強いダメージを受ければ変身解除につながることもある。
 だが、変身時間自体は無限だ。克己は変身状態を長らく維持することができる。


「……」


 鋼牙は、そのまま剣を構える。
 右肩の上あたりに、剣を構えた両手を引いて、視界の剣がぶれないように……そして、剣の切っ先の延長線上に敵の心臓を捉えるように。
 だが……


「おい!」


 後ろでは、次にエターナルと戦う予定の男が経っていた。
 それは響良牙だった。


「俺に代われ……俺に、やらせろ!」


 それは第一回戦終了と、第二回戦開始を告げる言葉であった。



★ ★ ★ ★ ★

11届かない、M/ Nothing Lasts Forever ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:43:39 ID:0S72IXOs0



 良牙のデイパックには、当初から「あるもの」があった。
 そう、これまでその詳細を彼は知らなかったが──それはガイアメモリと呼ばれる道具であった。
 良牙には子豚以外の変身形態が存在しない。
 ゆえに、エターナルに対応しきるには、多少なりとも肉体の強化を図る必要があったのだ。
 だから、今────
 良牙はそれを手に取った。


「……ガイアメモリか」


 エターナルが呟く。
 ガイアメモリ。本来、NEVERにとっては憎むべきものだったが、今や克己の良き相棒となった兵器である。
 あらゆるものの記憶を内包するそれを使って、彼は何をしようというのか。


(あのメモリは、確か……)


 それにしても、あのメモリは見覚えがあった。
 おそらく、AtoZのメモリの一つ。エターナルがごく最近触れた26のメモリのうちの一つだろう。


 ──ZONE──


 予感は的中した。
 そう、良牙が使用しているのはゾーンメモリだ。
 地帯(ゾーン)の記憶を内包するメモリであり、敵を転送することが可能という能力特化型メモリである。
 つまり……あれは、二人で戦わなければろくに使えもしないメモリ。
 一対一の対人戦では、おそらく大した威力をなさないメモリだ。


「って、なんだこの姿はー!!」


 ゾーンドーパントへと変身した良牙は言う。
 なんと、良牙の身体はピラミッドの三角形型になっており、55cmほどに圧縮され、空中を浮遊していた。
 子豚になった時より若干大きい程度で、良牙が思うような二足歩行の人型の戦士にはなっていない。
 ユートピアドーパントをはじめ、様々なドーパントに出会ってきたが、こんなのは初めてだった。例によってそれが自分にあたっているとは、彼も思わなかっただろう。


「まあいい……こんな姿でもお前をブッ倒してやるのに不足はない」

「……」

「おい、棒立ちで見上げるな!」


 エターナルは、これは失笑モノだと思いながら、ゾーンドーパントを見上げていた。
 警戒する必要がまるでない。
 先ほどまでの怒りを忘れ、恥ずかしそうに目線を変えている良牙の姿は哀れであった。


「……でえいっ! このっ! このっ!」


 ゾーンドーパントが赤いフラッシュをエターナルに向けて放つ。
 その周囲が軽い爆発を起こしたが、全てエターナルローブが無効化していた。
 もはや、味方さえも何も言わない。
 村雨良、冴島鋼牙、一条薫、花咲つぼみ……全員が、気の毒そうな顔で良牙を見ていた。


「獅子咆哮弾!!」


 できる限り重い気を溜めて獅子咆哮弾を目から発する。
 だが、エターナルローブが無効化した。


「……くそぉっ!! なんだ、この使えないメモリは!! なんで俺にばっかりこんな目に!!」


 エターナルが「こっちの番だ」とばかりに近づいてくる。
 走って来ようという気さえ感じさせない。もはや、ゆっくりと歩いてこちらへ向かってきていた。
 とりあえず、良牙はゾーンメモリの能力を駆使して彼を遠ざける方法を考える。


 今、良牙に見えている将棋の譜面で言うなら、5三のあたりにエターナルがいて、5六のあたりに良牙がいて、その他が7九から4九あたりに並んでいる。

12届かない、M/ Nothing Lasts Forever ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:44:11 ID:0S72IXOs0


(……そうだ、こいつは将棋の盤面と同じなのか……これなら方向オンチの俺でもわかる!!)


 と、良牙は思いながら、5四あたりに近づいてくるエターナルに向けて念じた。


「2六!」


 念じると、エターナルがゾーンの視界から消える。
 なんと、エターナルは本当に盤面になぞらえて転送されたのである。


(──って! しまった…! 2六じゃなくて、6二だ!!)


 しかし、方角・方向のこととなると、良牙はダメになる。
 敵を自分たちから遠ざけるのでなく、むしろ近づけてしまっているのだ。
 はっとした良牙はどこから襲ってくるかもわからない相手を探すためにキョロキョロと後ろを向いた。


「さて、次の相手は誰だ? プリキュアか?」


 エターナルは、既に良牙を無視しており、キュアブロッサムの方に近づいていた。
 位置的には、良牙を除くとキュアブロッサムが一番近かったのである。


「ちょっと待て!! 俺を無視するな!!」


 ゾーンドーパントの怒号が鳴り響く。
 その身体のどこから声が鳴ってるのかわからないが、傍から見れば、まったく威厳のないものにしか見えないのは確かだ。


「あ、あの……良牙さんもああ言ってるんですけど……」

「構わん」

「いや、良牙さんだってせっかく貴方と戦うのを楽しみにしてたので……」


 近寄ってくるエターナルに、ブロッサムは説得を開始した。
 こんな形で一人を脱落扱いにしてしまうような真似はしたくなかったのである。
 流石に、どちらか死亡という結果を望まないブロッサムであっても、そう思うほどに、彼の姿は────言ってみれば「哀れ」であった。


「そうだ! つぼみの言うとおりだ!! 俺と戦え、エターナル!!」


 良牙としては、ここで戦い、そのうえ勝たなければプライドそのものが見事に崩れ去るのである。
 他の面子も、どことなくゼクロスが回復するまでの時間稼ぎの意味を込めて戦っている感じもあるし、これでは敵に致命傷を与えるどころか時間稼ぎにすらならないただのにぎやかしだ。
 それは、完全にここにいる意味を失っているといっていい。


「……仕方がねえ」


 エターナルも妥協する。
 元々、良牙にはそれなりに見どころを感じていたので、バカでなければちゃんと戦いたいところだった。
 ただ、何故か良牙はゾーンの変身を解除する様子さえなく、初めて使うゾーンメモリの扱いで必死に見えた。


「……サンキュー、つぼみ。つぼみのお蔭でまだ戦えるぜ」


 とりあえず、良牙はつぼみにお礼を言う。
 彼女がいなければ、このまま戦闘を放棄されて恥をかくところであった(既に十分恥をかいているが)。
 しかし、よく見るとキュアブロッサムの姿がそこから消えている。


「おい、つぼみ!?」

「こっちです!」


 ゾーンが浮遊したまま視線を変えると、3九(サンキュー)に転送されたブロッサムの姿があった。


「……お前ら、やっぱり二人で戦え」


 これには、流石にエターナルも呆れ返っていた。



★ ★ ★ ★ ★

13届かない、M/ Nothing Lasts Forever ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:44:34 ID:0S72IXOs0



「エターナルゲーム、改めて──二回戦だ」


 仮面ライダーエターナルの仲間の一人に、戦いをゲーム感覚で楽しむ男がいた。
 エターナルも、それに近い趣向の持ち主であった。NEVERの仲間にはわざわざ自分と相性のいいメモリを探させ、ほとんどゲーム感覚で戦いを行っていた。
 今回の戦いもそれと同じだ。
 ゲーム。
 これはゲーム。────優勝まで、純粋に楽しむための遊戯だ。


「……さっきので興が冷めちまった。だが、こっからが俺の本気だ。いくぞ、つぼみ」

「はい! それと……」


 ゾーンの変身を解き、改めてエターナルと対峙した良牙に、彼女は言う。


「今の私の名前はキュアブロッサムです」


 良牙はしばらくブロッサムを凝視してから、コクリと頷いた。
 まともに戦闘に使える変身能力がない良牙。
 史上最弱のプリキュアと呼ばれていたキュアブロッサム。
 二人は、協力し合うことで初めて変身能力者一人分の力を得られるのかもしれない。
 人間の素顔をした者たちがエターナルと戦うのである。
 マスクに隠された大道克己は、一体どんな顔で彼らを見つめているのだろうか。


「ゲームスタート」


 合図とともに、良牙は左へ、ブロッサムは右へ飛ぶ。相手と交差しない飛び方だった。
 上空から見た二人の軌道は、まるで円を描いているようだっただろう。
 そして、その先にあった木を蹴って、勢いよくエターナルの方へと拳を送り込む。


「はぁぁぁぁぁぁぁあだだだだだだっ!!」

「はっ! はっ! はっ! やっ! はぁっ!」


 そこから先は、連打、連打、連打だ。
 ブロッサムの一撃一撃は速い。あまりに早く、そして鋭い。
 良牙は一撃一撃は遅いが、あまりに鈍く重い一撃を繰り出している。
 右と左で、まったく別の攻撃を受けるエターナルは、少しの間、それを食らい続けていたが、両腕を広げて二人を振り払う。


「ふんっ!」


 エターナルエッジを突き出す彼の姿は、まるでフェンシングのような構えだった。
 真っ白な外形は、まさしくフェンシングの構えであったが、そのヒットは小さい。
 しかし、距離は近く、確かにキュアブロッサムの胸元や首元を狙って刃は突き出されていた。


「つぼ……ブロッサム!」


 ブロッサムはそれを避け続けていたが、エターナルの背後から良牙はその首に腕を絡めて締め付ける。
 エターナルはそのまま、左腕で良牙の脇腹にひじ打ちを叩き込んだ。


「ぐぁっ!」


 急所を突いたゆえ、打たれ強い良牙も流石にそこを押さえて怯んだ。
 エターナルローブに向かって涎を吐き散らしながら、良牙が膝をつく。
 更にそこに、エターナルは真後ろに向かって一回転して蹴りを叩き込み、良牙の身体を吹き飛ばした。


「はぁ……っ!!」


 だが、ブロッサムはそんなエターナルに向けて駆け出し、顔面にパンチを叩き込む。
 プリキュアの腕力は伊達じゃない。
 エターナルの顔面にぶつけたパンチも、確かな手ごたえがあった。
 しかし────


「ふんっ!」


 エターナルは、左手の甲でブロッサムの頬を打ちつける。
 ブロッサムの身体が、良牙の近くへと吹き飛ばされ、彼女の周囲に砂埃が舞った。


「大丈夫か!? ブロッサム!!」


 良牙は脇腹を押さえつつも、そこで倒れたブロッサムに向けて声をかける。ブロッサムとは数メートルの距離が離れていたが、良牙の声は大きかったので届いてはいるようだ。
 自分も大丈夫ではなさそうだが、今ダメージを負ったブロッサムの方が心配だった。
 その身体には砂が付着し、ところどころに擦り傷のようなものがあった。大丈夫です、と返してこないあたり、それなりに深刻なダメージだ。
 そして、彼女は弱弱しくも起き上がろうとしていた。
 絶対にあきらめない。
 これがプリキュアの最大のパワーだった。
 それで、良牙はその身体を心配し、駆け寄ろうとしたが、ふとエターナルのことを思い出してそちらを見る。

14届かない、M/ Nothing Lasts Forever ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:45:04 ID:0S72IXOs0


 エターナルは後方に向かって、回転しながら飛び、木の枝に乗っかった。
 と、同時にブロッサムが起き上がる。


「大丈夫か? ブロッサム」

「ええ、そちらこそ……」

「じゃあ、いくぞ!」

「はい!」

「「はぁっ!!」」


 傷だらけの二人だったが、戦いをやめるわけにはいかない。
 エターナルのいる高さまで二人は飛び上がり、彼に向けて同時に拳を放とうとする。


「何!?」


 だが、エターナルの姿が二人の視界から消えた。消えたとは言っても、完全にそこから何もかもが消えたわけではない。エターナルがいた場所には、黒い世界が見えた。
 ブロッサムと良牙が殴った先にあるのは、エターナルローブの軽い感触だった。
 二人に見えていたのは、このローブだったのだ。
 エターナルは、わざと足を踏み外し、木の枝から下りることで、敵の攻撃を回避したのである。その時、軽量なエターナルローブは風にあおられ、エターナルが元いた場所に残った。
 しかし、これだけではない。
 彼は、ただ落下するだけではなく、落ちる直前に木の枝を掴んでいた。
 そして、そのまま逆上がりの要領で一回転し、二人の背中を蹴り飛ばす。


「きゃあ!」

「ぐあっ!」


 回転のエネルギーがかかったキックを受けた二人の衝撃はたまらなかった。
 そのまま地面に激突し、良牙とブロッサムの全身に強い痛みが与えられた。
 先ほどの痛みと相乗して、二人の身体には更なる痛みが付随する。
 その木の枝の上に先ほどのように立ったエターナルは、冷徹な瞳で彼らを見下していた。


「そろそろ一人くらいは殺してやろう」


 エターナルは、エターナルエッジにエターナルメモリを装填する。


──Eternal Maximum Drive──


 そして、エターナルはそこから落下しながら、マキシマムドライブを発動する。
 彼の身体は、あの足場でどうしてそこまで綺麗に回転できるのか疑問に思うほど見事にひねられており、その青い焔を纏ったキックは──


(プリキュア……狙いはお前だ)

15届かない、M/ Nothing Lasts Forever ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:45:31 ID:0S72IXOs0


 ────キュアブロッサムの方を狙っていた。

 実戦経験は良牙の方が上だろうが、プリキュアの能力は未知数である。
 ダークプリキュアとキュアムーンライトの猛攻に晒されたエターナルだからこそ、真っ先に消し潰しておくべき対象を一瞬で捉えたのだ。


「……さあ、地獄を楽しみな!!」


 エターナルの姿が、ブロッサムの視界で近づいていく。
 この一撃、食らえばおそらく、死にはせずとも強大なダメージを受け、そのまま戦闘不能になるだろう。
 おそらく、必殺技のようなものだ。
 エターナルはブロッサムの視界で巨大になっていく。


「わあっ!!」


 キュアブロッサムの眼前まで迫ったエターナルの足。
 回避する術はなかった。ここからは逃げられない。


(もう駄目です……!)


 エターナルの足が一回転し、ブロッサムの視界から消えた瞬間──


「1一!」


 エターナルの姿がテレポートする。
 一瞬、ブロッサムも放心した。
 自分は今、何の問題もなく生きている。それどころか、エターナルの姿が完全に目の前から消えたのだ。


「良牙さん!?」


 ブロッサムの頭がようやく自分の死の恐怖以外の方向へ回り始めた。
 これは、ゾーンメモリの力に違いない。それに、今確かに、良牙の声とともにエターナルの姿は転送されていた。
 間違いない、と確信してブロッサムは真横を見る。


「おう」


 そこには、ゾーンドーパントに変身した良牙の姿があった。
 あの一瞬で、良牙なりに機転を利かせ、再びゾーンメモリを使って敵を転送させたのだ。
 どんなに適当に言っても、盤の端っこである1一が自分たちのいるエリアであるわけがない。
 無論、エターナルのマキシマムドライブはあのまま虚空に放たれた。


「ブロッサム! 奴の近くに転送するぞ!」

「わかりました!」


 先ほど、予期せぬ姿に変わってしまった良牙の姿は間抜けだったが、こうしてブロッサムを助けるために変身した良牙の姿は凛々しく見えた。
 プライドを捨て、ただ仲間の女の子を助けるために優しい行動をしたのだ。
 そして、今、良牙はそのままその子にエターナルとの戦いを任せようとしている。


「1三!」


 ブロッサムは、エターナルから1マス分距離を取った場所で、エターナルを睨む。
 エターナルは、マキシマムドライブが不発したことによって機嫌が悪そうにブロッサムを見据えていた。


「……大道さん、あなたは自分のお母さんを手にかけたと言いました」

「ああ」

「本当に……何も思わなかったんですか?」


 エターナルと鋼牙の会話から、ブロッサムはその事を聞いている。
 彼の名前は大道克己。
 母を手にかけ、平然とそれを語り、ゆりを殺したと言った悪魔のような男だった。
 しかし、キュアブロッサムは────花咲つぼみという一人の少女は、彼の心を救いたいと願っていたのである。

16届かない、M/ Nothing Lasts Forever ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:46:05 ID:0S72IXOs0


「……何も思わなかったな。おふくろが俺を裏切った時は心底腹が立って殺した。だが、殺した後は案外何も思わなかった……そう、何もな」

「そんなはずありません!」


 ブロッサムの堪忍袋の緒が、少しずつほどけはじめていた。


「……あなたは、お母さんの事が好きだったから、裏切られたと思って、怒ったんじゃないんですか!? それなら、あなたの心には、お母さんを好きだった心が────残っているはずです!!」

「……ハッ」


 エターナルは、ブロッサムの言葉を鼻で笑う。
 そう、ブロッサムなどにわかるはずがないのだ。
 エターナル自身が感じている。
 親への愛なんて、微塵も残っておらず、記憶も人格も……自分の中のあらゆるものがとうに崩壊しており、エターナル自身がそれに対して「何も感じていない」ということを。


「キュアムーンライトの仲間だったからな。どんな奴かと思ってみりゃ、結局ただの甘いガキ……だ」

「……」

「俺は俺を永遠に刻み続ける。そのためにはどんな犠牲が払われようが構わねえ。……仲間を殺した時も、おふくろを殺した時も、キュアムーンライトを殺した時も、俺は何とも思っちゃいないんだからな」


 その刹那、キュアブロッサムの中の何かがはじけた。
 そう、キュアムーンライトの名前が出た瞬間──つぼみの中の痛みが強まっていく。
 彼の仲間や母親の死だって、つぼみの心には許しがたい事だ。しかし、その人たちの顔も境遇も、死んだ経緯もつぼみは知らなかった。
 だが、ゆりは違う。
 彼女は大事な仲間であり、友達だった。それを倒した相手の言葉には、一切重みがなかった。まるで、ゲームの中で敵を倒したような口ぶりで、キュアムーンライトの死を語ったのだ。



「私、堪忍袋の緒が切れました!!」


 彼女の怒りは加速し続け、そして今、エターナルに向けてこの言葉が発された。


「今まで堪忍してくれてありがとよ!!」


 エターナルは、その言葉にも無感情な言葉を返す。
 敵の怒りなど、もはや関係はない。
 エターナルの目には、戦いしかなかったのである。



★ ★ ★ ★ ★



 鋼牙と一条は、二人の戦いを熱く見守っていた。
 一条は良牙が作ったベンチもどきに座り、その戦いを見守り、鋼牙は立ったままその戦いを見守っていた。


「……二人とも、やるな」

「ああ」


 一条にせよ、鋼牙にせよ、その職業や役職につくだけの努力を自分に課している。
 二人とも日々のトレーニングを欠かさなかったが、何より良牙のタフさは、どれだけのトレーニングによって培われたものなのか気になった。


「……だが」

「何だ?」

「……甘い、かもしれないな、あの子は」

17届かない、M/ Nothing Lasts Forever ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:46:33 ID:0S72IXOs0


 鋼牙は、キュアブロッサムの姿を見て、ある気持ちに気づいていた。
 彼女は、若い。鋼牙が戦いや訓練の中で培った厳しさには無く、ホラーを長らく相手にしてきた彼が忘れかけていた初心が、つぼみにはあった。


「……彼女は、敵を救おうとしている」



★ ★ ★ ★ ★



「ブロッサム・インパクト!」


 掌に込められたエネルギーが、エターナルに向けて放たれる。
 だが、その直前でエターナルローブがその視界を囲む。
 エターナルローブは、敵の攻撃を無効化するという、まさに反則技だった。
 しかし────


「3三!」


 ゾーンドーパントはブロッサムとエターナルの近くまで移動して、マスの範囲を広めていた。……いや、二人を盤の中央エリアになるように調整したのだ。
 エターナルの現在位置は3四になっており、3三に移動したブロッサムは、エターナルの後頭部にブロッサム・インパクトを叩き込んだ。


「ブロッサム・シャワー!」

「3一!」


 良牙はよく注意しながら盤面の数字を見て、キュアブロッサムを転送させる。
 ブロッサム・シャワーによって、エターナルは身体全体に桜の花弁を浴びた。


「ブロッサム・シュート!」

「1四!」


 エターナルの予期せぬ方向から、またブロッサムのピンクの光弾が、次々と放出された。
 ローブを纏うよりも先に、別の場所から攻撃が来るという、非常にトリッキーな敵であった。
 それゆえ、エターナルはブロッサムの攻撃を浴び続け、莫大なダメージを募らせる。


「……必殺技、いきます!」

「わかった、ブロッサム!」


 二人の息はほとんどピッタリだった。
 ゾーンは、ブロッサムの言葉を聞いて、ランダムでエターナルの周囲にブロッサムを飛ばす。


「集まれ、花のパワー!」

「1九! 8七! 3六!」


 キュアブロッサムの姿はあらゆる盤面に移動し、エターナルは困惑し始めた。
 こちらからの攻撃ができない。そのうえ、身動きまで取れないのだ。
 そう、このままでは、ブロッサムの必殺技を確実に受ける。


「ブロッサムタクト!」

「2四! 8八! 5五!」


 良牙の口から出るランダムな数字の所に転送されるブロッサムは、その時によって遠かったり近かったりする。
 そして、どのタイミングで技を出してくるかもわからない。
 エターナルは、エターナルエッジをゾーンに向かって投擲するが、


「必殺技がほとんど目からビームと同じだぜ、獅子咆哮弾!」


 良牙ゾーンのコンプレックスと共に発された獅子咆哮弾がそれを打ち落とす。
 エターナルは、迂闊にも武器さえ無くした。


「……花よ輝け!」

「5五! 5九! 1三!」


 ブロッサムの姿はランダムに移動した。
 ゾロ目の数字は先ほどと同じだったが、本当に良牙の頭の中に浮かんだ数字を適当に言っているため、仕方がないことだろう。

18届かない、M/ Nothing Lasts Forever ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:46:57 ID:0S72IXOs0


「7五!」

「プリキュア──」

「3三!」

「ピンクフォルテ──」

「1五!」

「────ウェイブ!!」

「3五!」


 プリキュアピンクフォルテウェイブの花のエネルギーが全て、3四にいるエターナルめがけて放出される。
 かつて、キュアムーンライトに受けた技、ダークプリキュアに受けた技にそれは酷似していた──
 が、何かが違う。
 エターナルは避ける暇もなく、それを受け続けた。


(くっ……なんだこの技は……)


 あの二人とは、決定的に違う何かだった。
 そう、憎しみのエネルギーを重ね持っていたキュアムーンライトとは違い、この一撃は、もっと違うエネルギーによって放出されていたのだ。
 それがエターナルを混乱へと招いた。
 今まで味わったことのない攻撃────しかし、どこか懐かしい感触。


「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」──ブロッサムの声が聞こえる。


 そんなエネルギーを感じた理由は簡単だった。
 失われる前の「大道克己」には存在した「感情」によって、作られた技だったのだ。
 敵を浄化する優しさ。
 世界の素晴らしさ、花の美しさ、人の心の強さ──あらゆる優しさが込められたプリキュアの“必救技”だった。


「誰だ、お前は……」


 エターナルは、ピンクの光の向こうにいる少女に向かって問いかけた。
 キュアブロッサムではない誰かが、光の向こうにいる────

 そいつが、必死で何かを語りかけている。

 ──誰だ、この女は。

 ──なんで、そんな顔で俺を止めているんだ。

 ──くそ……見たことがある、だが誰だか思い出せねえ。


「うおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!!」


 エターナルが、その力の限りを尽くして、プリキュアピンクフォルテウェイブの力を弾き返そうとする。
 今の彼には、あまりに厭な一撃だった。
 脳の底を抉られるような……あまりに気持ちの悪い一撃だ。
 予想していたものとは違う。
 大道克己が予想していたのは、肉体的な損壊を与える攻撃。敵を確実に殺害しようとする悪辣な攻撃。
 しかし、これは、もっと内面に作用する何かがある。
 大道克己の中の何かを排除し、大道克己の中の何かを取り出そうとするような……


(やめろ…………やめろ!! 俺はそんなこと望んでいない!!)


 やがて、その向こうにある女の顔が、キュアブロッサムのものへと変化した。
 キュアブロッサムが、凛々しい表情でこちらを見つめている。
 ピンクフォルテウェイブの威力を絶やすまいと、必死の形相であった。


(やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉおぉぉぉぉおおぉぉぉっ!!!)


 大道克己の意識が吠える。


「うぐぁぁぁぁぁっっっ!!!」


 人間の言葉とは思えないほどの雄叫び──野獣のような咆哮とともに、エターナルはようやく、ピンクフォルテウェイブの一撃を弾き返す。
 全ての体力を使い果たしたように、仮面ライダーエターナルは肩を落とし、息を切らし、キュアブロッサムを睨んでいた。

19届かない、M/ Nothing Lasts Forever ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:47:22 ID:0S72IXOs0


「……はぁ……はぁ……プリキュア……」


 仮面ライダーエターナル──NEVERの大道克己が戻ってきたのだ。
 傭兵。
 殺人。
 憎しみ。
 悪。
 虐殺。
 略奪。
 占拠。
 凶器。
 悲鳴。
 あらゆる記憶が、悪の克己の強い意思によって呼び戻される。
 一時は扉の向こうへと封じ込められそうになったその感覚が全て、エターナルの中で蘇った。


「うおおおおおおおりゃああああああああああっっ!!!」


 エターナルはエターナルローブを脱ぎ捨てる。
 自分の中に、とうに消えたと思っていた感情が湧き出てくるのを、彼はなんとなく……ほぼ無意識のうちに感じていた。
 それを知覚できてはいないが、「悪の大道克己」としての思いが、必死で生き残ろうとしていた。


(俺は明日が欲しい……全ての記憶を失っても生き続ける明日を、永遠を……!! だから、どこまでも足掻きつづけてやる!! あんな奴に終わらされてたまるか!!)


 危うく自分が消されそうになったのを、悪の心は悟っていた。
 大道克己の身体を乗っ取った「無感情」という名の悪。
 母を利用し、人々をNEVERに変えようとし、仲間を殺し、母を殺し……そんな男の悪しき心が、必死で生き残ろうとしていた。
 だから、心を救われることを拒み、自分が消えることを拒み、無我夢中にキュアブロッサムを殺そうとしていた。


 全てを脱ぎ捨てたエターナルが、キュアブロッサムに襲いかかる。
 右拳がキュアブロッサムの胸元へと突き出され、左の足がキュアブロッサムの脇腹を蹴る。
 キュアブロッサムは、それをガードしようとするが、ガードし切れなかった。


「9九!」


 ゾーンは、キュアブロッサムを盤面の端まで転送する。
 そこで、キュアブロッサムはむせ返っていた。
 げほっ、げほっ、と喉を押さえて、先ほどエターナルから受けた攻撃の余韻を必死で消し去っていた。


「くそっ……!」


 と、エターナルが呟き、彼は9九に向かって走り出した。
 敵の攻撃を無効化するローブを、攻撃に邪魔だからと脱ぎ捨てるような今の彼には、先にゾーンを狙おうという考えさえ浮かばない。
 本能の赴くままにキュアブロッサムを攻撃する。
 本能に赴くままに生きる。
 それが、感情をなくした男の行動だった。


「……な、なんだ……っ!?」


 更に、追い打ちをかけるようにゾーンドーパントの変身が解け、良牙の身体が地面に落ちる。
 要するに、メモリとの適合率が非常に悪かったのだ。
 方向オンチの良牙と、地帯の記憶のゾーンメモリの相性が悪いのは、もはや当然といえる。
 それで連続的に瞬間移動を繰り返していたのだから、メモリ自体が彼の身体への拒否を実行した。


「これじゃ、あいつを転送できねえ!!」


 良牙はメモリを握る。
 ブロッサムに向かっていくエターナルを止めるために、良牙は生身で走り出した。
 身体は痛む。
 だが、エターナルを止めなければ……


(間に合え……くそ……)

20届かない、M/ Nothing Lasts Forever ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:47:55 ID:0S72IXOs0


 エターナルの速さに、良牙が追いつけるはずがなかった。
 良牙のスピードは、乱馬に比べても鈍重だ。
 乱馬がスピード型、良牙がパワー型の人間であり、良牙はエターナルに追いつけるほどの走力を持ってはいなかった。
 一条や鋼牙も、流石にその瞬間は走りだそうとしていた。
 しかし、人間の足では追いつけそうになかった。


「死ね! プリキュア!」


 エターナルがブロッサムのいる区域まで達する。
 いまだ回復できないブロッサムが、恐怖のまなざしでそちらを見る。
 エターナルの拳が、ブロッサムの方へとまっすぐ向けられていく。


「そこまでだ」


 だが、エターナルの拳が、何者かによって横から掴まれ、止められた。
 銀色の腕。
 明らかな異形である、メカニックの腕。
 それは、ゾーンにもない。
 ガロにも、クウガにも、こんな色はなかった。
 それは────


「二回戦はここまで……三回戦だ、エターナル」


 BADANでも仮面ライダーでもない戦士──ゼクロスのものだった。

21Eにさよなら/仮面ライダー!あなたたちを忘れません!! ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:48:35 ID:0S72IXOs0


 ──ゼクロスとエターナルが最初に会ったのは、この殺し合いが開始されて数分が経った時のことである。
 すなわち、今から数えれば十二時間ほど前の話となる。


『ハッ……生きてる癖に、死人みたいな面してやがる』


 大道克己は、名も無い男にそう言った。
 あの時の時点で、その男には何かが引っかかっていたのだろう。
 鋼牙と克己の会話で、彼が特殊な存在であることを知り、その時のわだかまりを、村雨良は払拭した。


 そして、今再び対戦相手としてこうして互いの姿を目に宿すことになる。
 エターナルを前に、ゼクロスが口を開いた。


「お前は、不死身の怪物か……道理でな……」

「……どういう意味だ?」


 全てを死人に変えるという言葉。
 エターナルゲーム。
 キュアブロッサムに襲いかかった姿。
 全てを、ゼクロスは新たなメモリーに焼き付けていた。

 NEVER──ネクロオーバー。
 大道克己の姿を使い、悪しき心の赴くままに行動する悪の戦士だ。


「命の重みも、人の痛みも知らない。そういう化物の考えそうな事だ」

「貴様に、何が分かる……!」

「分かるさ……俺にも、似たような時期があったからな」


 BADANに利用されて、何も考えないままに人を殺していた村雨には、克己の気持ちもわかった。
 誰かに自分と感覚を共有してほしいと思う気持ちも、自分の存在を焼き付けたいと思う気持ちも……人の痛みを知らず、命の重みさえ知ることも無く、ただ暴れまわる罪人。
 BADANに属していたゼクロスは、まさにそんな存在だった。


「心を失ったとはいえ、多くの罪を重ねすぎた。だからこそ、お前はこの俺が止めてやる……!!」


 自分に似ているからこそ、倒さねばならない相手だった。
 自分の鏡だからこそ、わかる。
 こいつは倒されなければならない。
 こいつを作った組織──おそらくBADANたちも掃討しなければならない。
 そう、こいつを倒し、罪の連鎖を止めることこそ、大道克己が救われる手段であり──村雨良が救われる手段でもあった。


「……なるほど。俺もお前に出会った時から、因縁めいたものを感じていてなぁ」


 エターナルも言う。
 一目見ればわかる。
 エターナルメモリと運命を感じ合った時のような感覚とはまた違うが、この男には自分に近い何かがあった。


「お前も生きちゃいない! 死人と同じだ!!」

「……かもな」


 ここでゼクロスとして立つ男には、村雨良としての記憶もなかったし、BADANや仮面ライダーに対する怒りや憎しみしかなかった。
 親友・三影英介を“奪った”もの。
 自分の記憶を、人生を“奪った”もの。
 それに対する感情によって生きており、ゼクロスには何の目標もなかった。

22Eにさよなら/仮面ライダー!あなたたちを忘れません!! ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:48:58 ID:0S72IXOs0


 だが、何故だろうか。
 村雨良は、放送で三影英介と本郷猛の名前を聞いたときに奮い立ち、五代雄介の死には心を痛めた。
 痛みや悲しみ、あらゆるデータが更新されていく中で、彼には新たなメモリーが生まれ始めていたのである。


「……そして、同じ特性の人間が惹かれあうように」

「お前とはまた会える気がしていた」


 エターナルの手は地面に落ちている黒いナイフを拾い上げた。
 エターナルエッジ。先ほど、ゾーンドーパントを相手に投擲したものだった。
 彼はそれを拾うと、構えた。
 戦闘が開始する、という合図だった。

 だが、ゼクロスはまた口を開く。


「……最後にもう一つだけ問おう。仮面ライダーエターナル、お前にとって、カメンライダーとは何だ?」

「は? ……おいおい、そんなこと聞いてどうするんだよ!!」

「答えろ」

「……そうだな。もとは、風都を守っていた『この街の希望』とやらの名前らしいな。……俺も同じだ、俺は風都、そしてこの殺し合いの新しい希望となる仮面ライダーだ!!」


 エターナルの回答を、ゼクロスははっきりと聞き取った。
 街の希望。それが、彼らの世界の仮面ライダーの定義だった。
 ゼクロスは、そこに納得はしなかったが、彼の回答をメモリーに記憶し、また自分なりの定義を考えた。


「そうか、なるほど……わかった」


 ゼクロスは、これまで刻んだ記憶を引き出す。


「ある男が言った。俺はいずれ、人類の自由と平和を守る戦士・仮面ライダーになると」


 結城丈二は、この殺し合いで出会った時、確かにそう言った。
 彼の言う仮面ライダーの定義もまた、ゼクロスには考えがたいものだっただろう。
 しかし、これもメモリーに焼き付いている。


「ある男は言った。仮面ライダーは人を救う使命があると」


 五代雄介は、死に際に「さやかやまどかを助けてほしい」と、そう言った。
 死ぬその瞬間さえも、誰かを助けるための言葉を放つことに使った。
 これも確かに、メモリーに焼き付いていた。


 そう、その名前には幾つもの意味がある。
 それぞれが別の意味でその名前を名乗っている。
 仇の名前であるゆえ、ゼクロスは名乗るのを拒んだが──


「ならば、俺は魂を受け継ぐ者として名乗ろう────俺は仮面ライダーゼクロスだ!」


 三影、五代、本郷、さやか、スバル……。
 あらゆる者たちのSPIRITSを受け継ぎ、後に伝導する者。
 彼らの事をメモリーに焼き付け、彼らの願いを叶え、無念を晴らす者。
 彼らの思いを忘れず、この殺し合いを止め、誰かが何かを奪うことを止める者。
 その名前こそ、ゼクロスにとっての「仮面ライダー」だった。

 皮肉にも、その名前の定義を見つけたのは、エターナルの回答だった。
 それぞれ、仮面ライダーを名乗る意味は違う。
 ならば、結城丈二の望み通りに、この名前を名乗ってやろう。
 両手を右に大きく伸ばし、彼は「仮面ライダーゼクロス」のポーズを取った。


「エターナルゲーム、三回戦開始だ!」


 エターナルとゼクロスは真っ直ぐに走り、互いの拳を敵に送り込む。
 腕と腕を絡めることで回避しては、次の一撃を送り込む……。
 早くも熾烈な戦いが始まった。

23Eにさよなら/仮面ライダー!あなたたちを忘れません!! ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:49:21 ID:0S72IXOs0


「はぁっ!」


 エターナルエッジがゼクロスの頬を掠める。


「ふんっ!」


 電磁ナイフがエターナルの首元を掠める。


 ナイフとナイフ。
 短い刃を持った者同士が戦い合う。
 ブレードを起こし、エターナルの右手に電流を伝わせる。
 高速でありながら、力強いバトルが開始した。



★ ★ ★ ★ ★



「良……!」


 その様子を、四人の男女が見つめていた。
 無論、一条薫、冴島鋼牙、響良牙、花咲つぼみであった。
 エターナルの強さをよく知る者たちであったが、その戦いに手を出す気はなかった。


「……受け継ぐ、か」


 一条が呟く。
 一条薫は、五代雄介からアークルを受け継ぎ、仮面ライダークウガとして戦う決意をした。


「受け継がれた力は、更に強くなる。父から子へと受け継がれた、この剣のように……」


 鋼牙が呟く。
 冴島鋼牙は、代々黄金騎士牙狼の称号を受け継いできた。父や英霊たちの力に、何度救われてきたことだろう。


「……当たり前だ。秘伝の技は、時代が変わるごとに改良が重ねられる」


 良牙が呟く。
 響良牙が使う獅子咆哮弾や爆砕点欠といった技は、すべて昔から伝えられてきた技である。


「私がプリキュアの名前を受け継いだように、あの人も……」


 つぼみが呟く。
 花咲つぼみは、キュアアンジェやキュアフラワーといったプリキュアたちがやって来たことを受け継ぎ、こころの大樹を守ろうとしていた。


「……仮面ライダー、絶対に克己さんを止めてください!!」


 つぼみが激励する。
 大道克己の境遇にも同情的で、優しかった。
 そして、何より……彼女はある大事なことを知っている。


 先ほど、つぼみはエターナルに向けてプリキュア・ピンクフォルテウェイブを放ったが、その瞬間、光の向こうに何かが見えた。
 エターナルの仮面の下にある「こころ」。
 彼の「こころの花」が一瞬だけ、ブロッサムには見えた気がしたのである。
 残念ながら、彼のこころの花は枯れかけていたのだが、まだ完全に枯れたわけではなかった。
 その花は、かつてキュアブロッサムが出会ったある人物と同じものだった。


(……あの人にはまだ、心が少しだけ残ってる……だから……)


 つぼみは手を組んで、目を瞑り、必死に願う。

24Eにさよなら/仮面ライダー!あなたたちを忘れません!! ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:49:42 ID:0S72IXOs0


(完全にこころの花が消える前に……仮面ライダーゼクロス)


 タイガーロイドを葬った仮面ライダー2号がいた。
 だが、その記憶は、ずっと彼女にとっては悲しい記憶となっていた。
 あの行いによって、三影英介も、一文字隼人も、救われることはなかったのだから。
 だから、せめて……仮面ライダーゼクロスには、エターナルを救ってほしかった。



★ ★ ★ ★ ★



「ゼクロスパンチ!」


 ゼクロスのストレートがエターナルの顔面に叩き込まれる。
 エターナルは苦汁を舐めながら、敵の顔面にカウンターパンチを叩き込む。
 ……が、そこにあったゼクロスの顔は既に幻だ。虚像投影装置によって、ゼクロスは幻覚を作り出し、エターナルに殴らせたのである。


「電磁ナイフ!」


 ゼクロスが回ったのはエターナルの背後だ。
 その刃で、エターナルの背中を深く斬りつける。
 斬るというよりは、抉り取ると言うに相応しい攻撃だった。
 そのうえ、電撃がエターナルの全身を麻痺させるというオマケ付だ。


「あありゃぁぁっ!!」


 エターナルは、その痛みと痺れを感じながらも、背後のゼクロスに向けて回し蹴りを放つ。しかし、ゼクロスもバク転を繰り返して後方へと避け、そこからまた身体の武器を使う。


「マイクロチェーン!!」


 ゼクロスの腕から射出されたマイクロチェーンが、エターナルの腕へと延びる。
 だが、エターナルはエターナルエッジを使って、自分の手に向かってくるチェーンを切り裂いていった。


「衝撃集中爆弾!」


 ゼクロスが爆弾を投げるが、全てはまたエターナルエッジによって弾かれる。
 エターナルが過ぎ去ったあとの虚空で爆弾が爆破されていき、ゼクロスの眼前までエターナルが迫っていた。


──Eternal Maximum Drive──


 駆けながら、エターナルはマキシマムドライブを発動する。
 エターナルレイクエムを放ち、青い炎は螺旋を描く。
 その足はゼクロスの身体へと吸い込まれていくように近づいていくが、ゼクロスは両手をクロスして身体への致命的なダメージを避けた。


「……はぁっ!!」


 ゼクロスの左腕が飛ぶ。
 左腕の間接から先が、エターナルレクイエムによって吹き飛ばされ、地面に転がる。
 見ていた人間からは悲鳴もあがり、驚愕の声も聞こえる。
 しかし、当のゼクロスは人間ほど大きな痛みを感じてはいなかった。
 左腕があった場所からは、肉体組織にも似た配列で機械やコードが飛び出している。
 パーフェクトサイボーグのゼクロスにとっては、その程度の痛みはもはや慣れたものだった。


「十字手裏剣!!」


 吹き飛ぶ左腕からも、精製された十字手裏剣を取り出し、エターナルの胸元を狙って投げつける。
 そこに到達した十字手裏剣は、ゼクロスが望んだタイミングで爆発する。
 エターナルの胸の装甲が火花を散らし、彼の身体に強い衝撃がかかった。


「はぁっ!!」


 左腕のないゼクロスは、唯一残った右腕でエターナルの腹部にパンチを叩き込んだ。
 一方、エターナルはゼクロスの腹部めがけてキックを叩き込む。
 二つの身体が互いのベルトを狙って一撃与え、エネルギーを爆発させる。


「「……クッ」」


 後ろに転がっていった二人は、大道克己と村雨良の姿をしていた。
 互いの身体をボロボロにしながら、二人はパーフェクトサイボーグらしからぬ……あるいは、NEVERらしからぬ姿をしていた。
 ──二人は肩で息をしていたのだ。
 本来感じるはずのない疲労や痛み。あらゆる身体への負荷が、互いの身体を完膚なきまでに破壊していった。


「おりゃあっ!!」

「はああっ!!」


 と叫びながら、生身で殴り合う二人は、生身でありながら、まるで変身した者同士の戦いのように見えた。



★ ★ ★ ★ ★

25Eにさよなら/仮面ライダー!あなたたちを忘れません!! ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:50:15 ID:0S72IXOs0



「!? ……やっぱり、やめさせるんだ!」


 一条がそう言ったのは、彼らが生身で殴り合い始めてからだった。
 既に、つぼみにはショックが大きい映像であったゆえに、彼女は戦いを見ないように目を伏せながら泣いていた。
 だが、それでも彼女は止めることができなかった。
 そんなつぼみの姿を見るうちに、あるいは彼らの生身の戦いを見るうちに、一条は止めようと決意するに至った。


「やめさせる必要はない」


 そんな一条に対して、良牙が言う。
 生身同士の戦いというのは、良牙には慣れきった世界である。殴り合い、技の掛け合い、果し合い、全て良牙にとっては日常だったが、他の三人にはないものだった。


「駄目だ!! このままじゃ死んでしまうぞ……」


 一条は良牙に止められても、戦闘が行われている現場に向かおうとしていた。
 彼にはクウガの力はない。NEVERやパーフェクトサイボーグの戦いに乱入するなど、無茶同然だった。
 死ににいくのと同じようなものであった。


「待て!」


 良牙の声が聞こえた瞬間、一条の腕を誰かが掴む。
 良牙だと思ったが、その手は鋼牙のものだった。
 彼もまた、この戦いを止めようとはしないのだ。


「……止めるな。あれは、確かに殺し合いだ」

「なら……」

「……だが、二人はあれによって初めて生かされているんだ」


 死人と呼ばれた二人の男は、戦いによって自分の存在を証明していた。
 その気持ちは、魔戒騎士として生まれ、人の世から隔絶されたような世界で生きる鋼牙にもわかった。
 魔戒騎士である鋼牙は、ホラーを狩ることでしか自分の存在を証明できなかったのだ。


「痛み、悲しみ、怒り、そして喜び……あらゆる物が、あの二人には無かった」


 鋼牙は続ける。


「だが、二人とも、同じ力を持つものに己の力をぶつけ合うことで、それを見いだせる」

「そうだ。あいつらは、戦いながらしか生きられないんだ……だから、あいつらが生きて存在を刻み続けるのを、俺たちには止められないし、邪魔ができねえ……!」


 一条は二人の言葉に返すことができなかった。
 警察としては彼らを止めたいが、改造人間や死人は管轄外だった。
 だから、彼らを止める方法などわからない。
 どうしても止めたくても、彼はここで見ているしかなかったのだ。



★ ★ ★ ★ ★



 村雨良のパンチが克己の首を折る。
 彼の首はありえない方向に折れ曲がっていたが、彼がその程度で死ぬこと──あるいはダメージを受けることはなかった。
 しかし、直す暇がないので、大道克己は良の顔面を叩き潰す。
 彼の歯が何本か折れて飛び散るが、彼はそれを意に介さない。


「……そうだ、これだ!! この感覚だ!!」


 克己は少しずつ、痛みのようなものを感じ始めていた。
 疲労と痛み。
 NEVERである彼が感じ得ないはずのものが、同じようにそれが欠如したパーフェクトサイボーグとの戦いで感じられ始めていた。


「死が隣にあるから、全ての生物は生きている……!!」


 有能な死人を集め、NEVERの仲間を増やして傭兵活動をした事。
 全ての人間をNEVERに変え、彼が自分と同じ身体に凝った事。
 全て、自分と同じ感覚を共有する人間を欲していたからなのだ。
 死人は、死への恐怖がない。痛みもない。苦しみもない。感情もない。
 だが、万が一、それを感じた時があったとしたら……彼が唯一生きられるのはその瞬間なのだ。


「死が無い人間なんてのは、死人と同じだ……!!」


 死が隣にあるスリルが、戦いの中で芽生えてくる。
 死の恐怖を失った彼は、死ぬことさえも恐れなかった。
 だから、それこそが彼にとっての死だった。
 生きている限り、死とは恐れられるものであるべきなのだ。それを感じないのは、死んでいるのと同じなのだ。

26Eにさよなら/仮面ライダー!あなたたちを忘れません!! ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:50:56 ID:0S72IXOs0


「生きるのを諦めた……明日を諦めた人間も、死人と同じだ……!!」


 克己は良に一撃食らわせ、良は克己に一撃食らわせる。
 そのたびに人間ならば致命的であろう身体の欠損が生まれる。そして、敵にその致命的な欠損を与える。
 その繰り返しでありながら、一撃一撃に喜びがあった。


「これが俺の……唯一生きられる瞬間だ!!」


 村雨良の身体が後方へと吹き飛ばされる。
 だが、彼は上手い具合に着地し、仮面ライダーゼクロスに姿を変える。
 しかし、それと同時に彼の身体に深刻な負荷がかかり、全身に強いダメージが加えられる。
 長い間BADANのメンテナンスを受けなかったために、彼の再生機能や変身機能がダメージを受け始めていたのである。
 この戦いにおける変身時間はおそらく数十秒。
 全身の神経がそれを教えている。


──Eternal──


 一方、ゼクロスから距離を置いたところで、克己もまた、首の形を直して、エターナルメモリの音声を鳴らす。
 そして、それをロストドライバーに装填すると、克己の姿がエターナルのものへと変わる。


「……エターナルエッジ」

「電磁ナイフ!」


 それぞれの刃を手に取って、対峙したまま、互いがいる場所に向かって駆け出した。


「……ならば、教えてやろう! 人の死を!」

「ハハハハハハハ!! そんなものはとっくの昔に経験済だ!!」


 エターナルとゼクロスの二人は、空へと高く飛び上がり、それぞれの刃を突き出し、互いの身体へと触れさせる。
 エターナルエッジはゼクロスの首を、電磁ナイフはエターナルの胸元を狙い、空中で一直線に、刺し、凪いだ。


「「ゲームセットだ!!」」


 それが当たっているのか、そして、どれだけのダメージを与えられたのかは当人だけしかわからない。
 もしそれが食い込んでいれば、それはあまりに重いダメージとなったに違いない。
 傍観していた者たちは、空中で起きた出来事の勝者が、日の光と重なってはっきり見ることができなかった。



★ ★ ★ ★ ★



(そうか……)


 村雨の視界の先に、いつもの女が現れた。
 美しく、懐かしい女。
 誰だかはわからないが、その女は泣いてはいなかった。


(これで、俺は、“俺”を止められたんだな……)


 ゼクロスが、仮面ライダーとしての最初の使命を果たしたことを、女は祝福していた。



★ ★ ★ ★ ★

27Eにさよなら/仮面ライダー!あなたたちを忘れません!! ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:51:21 ID:0S72IXOs0



 がくり、と膝をついた者がいた。
 上空で刃を交えあった後、ゼクロスが強い負荷と共に足をつき、顔の変身が解除される。


「良!!」


 良牙が叫び、彼のもとに駆け寄った。
 続けて、つぼみも、一条も、鋼牙もそこへ駆け寄った。
 良の首の左側面には、先ほどまでなかった深い裂傷があり、それがエターナルの一撃がゼクロスに到達していたことを証明していた。


「ハハハハハハハハハハハハ!!!!!!」


 エターナルが嗤う。
 高笑いする。
 これまで聞いたことのない、喝采。
 両手を広げ、まるで典型的な悪役のような高笑いとともに彼は良の方を見た。
 その瞬間、エターナルの変身もまた解けたが、大道克己はそれを意に介す様子はなかった。


「ハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」


 良の方を見るということは、彼ら全員に顔を向けるということだった。
 だが、誰も大道克己の顔を見ようとはしていない。
 何故なら、もっと気になる箇所があった。
 そう、胸だ。
 ゼクロスが電磁ナイフで突けた傷が、かなり深々と残っていた。
 避けた胸元が溝となって、そこから上の身体が前のめりになっていた。
 あまりにグロテスクな姿であるが、血のようなものは一切でていなかった。


「……克己さん!」


 つぼみが叫ぶ。目を覆いたい光景だったが、彼女は目を覆わなかった。
 克己の身体が消え始めていた。
 あまりのダメージに、NEVERの身体を維持できなくなった克己は、人の形から崩れ始める。


「……行け、仮面ライダー、それにプリキュア! 財団Xの加頭どもが開いたこの殺し合い……潰したいなら、早い方がいい!」


 その顔は不気味な笑みに引きつっていた。
 死ぬことへの恐怖を失った彼は、死ぬ瞬間に笑うのだ。


「……駄目です! 消えないでください! 克己さん! あなたも一緒に、この戦いを止めるんです!!」


 つぼみは、消えゆく克己を前に叫んだ。
 その叫びに、克己は表情を変えた。不敵に笑うのを、あまりにも突然にやめた。
 驚いたような表情をして、何もないところを見つめる猫のようにつぼみを凝視し始めた。
 つぼみは、それでも必死に、克己に向かって何かを叫んだ。
 克己の足は消えかかっていた。



★ ★ ★ ★ ★



 ──ドクッ、と心臓の鼓音のようなものが克己の中で響いた。

 もはや、心臓が動くはずがない克己が、何故心臓の鼓音を感じたのだろうか。そんな疑問が浮かび上がるよりも前に、つぼみの姿が、誰かと重なった。
 それはあの時──キュアブロッサムの攻撃を受けた瞬間に感じた、あの感覚と同じだった。


 克己は、あの時見えていた者を思い出す。
 記憶が鮮明になっていく。
 それは少女だった────ヴィレッジで会った、ミーナという超能力兵士の少女だったのである。
 だから、彼女は必死に止めた。
 彼が仮面ライダーだったことを知っている彼女が、克己を止めようとしたのである。
 その少女こそが、克己にとって良心の象徴だった。
 それがまだ、心のどこかに残っていたのだ。
 だが、克己はそれを振り払った。


(ミーナ……出てくるなよ……)


 しかし、今度重なり始めた姿は、ミーナではない。
 あの時には断片的にしか見えず、「何かが変わった」としか捉えられなかった姿が、いまははっきりと見え始めた。
 つぼみの髪が黒く見え、もっと背の高い女性のものへと変わる。
 ミーナよりも、皺がある。そして、懐かしい。


(!?)


 克己はただ驚くしかなかった。
 そこにあった女性の姿が、何度も何度もつぼみになったり、その女性になったりを繰り返す。
 心配そうな顔で見つめるつぼみ。
 笑顔を見せる女性。
 交互に、一瞬ずつ、何かが変わっていく。

28Eにさよなら/仮面ライダー!あなたたちを忘れません!! ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:51:50 ID:0S72IXOs0


 そして、克己はその女性の正体を思い出す。


(そうか……)


 母だった。
 大道マリアだった。


(昔の俺には……あんたが、そんな風に見えてたんだな……)


 そこに見えた母の表情は、大道克己が人間であった時にしか見せなかった表情である。
 今までの克己には、どちらも同じにしか見えなかった。
 生前の克己と、死後の克己。どちらも、母の顔など同じだと思っていた。
 だが、違う。
 克己の幸せを願う母。克己にただ生きていることだけを望み、どんなワガママも聞いてしまう母。
 どちらも、違うものなのだ。


(懐かしい、音だ……俺が俺でなくなるくらいに……)


 どこからか聞こえ始めた不思議な音色とともに、あまりに長い一瞬が克己を衝撃させた。
 克己の身体は、斬りつけられた胸元まで消滅していた。
 ロストドライバーとエターナルメモリが、地面に落下していた。



★ ★ ★ ★ ★



 克己の身体が消えていく。
 それでも消えゆく克己を止めたいつぼみが、必死に叫んでいる。
 さやかの時もそうだった。
 本当はわかりあえるはずの人たちが、戦い合って、消えて行ってしまう。
 その感覚が、つぼみにはあまりにも悲しかった。
 救いたかった。
 一緒に、戦いたかった。
 さやかが、魔法少女として共に戦ってくれたら、心強かっただろう。
 エターナルが、仮面ライダーとして共に戦ってくれたら、心強いだろう。
 そう思いながら、克己の身体が消えていくのを、涙を流しながら……見送る。
 喉が枯れるほどに叫ぶことしかできず、その消滅を止める術はない。


「……克己さん!」


 つぼみが、克己の身体を追いかける。
 克己は逃げたりはしていないが、そう表現するのが適切だった。
 どこかへ行ってしまいそうな男の姿を、つぼみは救おうとした。
 今度は誰も止めなかったし、誰もがつぼみを暗い顔で見送っていた。
 克己は救うことができない。それどころか、許すことができない者もいるだろう。
 しかし、つぼみは必死で救おうと、手を差し伸べようとしている。
 たとえ1パーセントでも可能性があるのなら、……いや、たとえ可能性がゼロだと言われても、つぼみは克己を救おうとする。


「やめろ、プリキュア……いや、キュアブロッサム!」

「なんでですか!?」

29Eにさよなら/仮面ライダー!あなたたちを忘れません!! ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:52:19 ID:0S72IXOs0

「地獄が俺の故郷……俺はそこに帰るだけだ……」


 それが人間の克己の口から発されたものなのか、それとも地獄に住まう死神の口から発されたものなのかはわからない。
 ただ、どちらにせよ彼はつぼみに危害を加える気はなかったし、むしろ、NEVERにしてはあまりにも安らかな目でブロッサムを見つめているようだった。


「……ははは……久しぶりだな、……死ぬのは……あと、もう少し、……もう少しだけこの音を聞きたかったが……はははははは……」


 つぼみは克己に触れようとした瞬間、克己の身体は完全にこの世から姿を消した。
 つぼみは虚空を抱く形になってしまい、思わず膝から崩れる。不思議と、そこから先涙は出なかった。
 つぼみは人が死んだ場所に座っている。……そして、その死人のことを思い出す。
 つい数秒前まで、彼はここで喋っていたのに、それは遠い昔の話のようだった。
 つぼみの足に、金具が当たった。
 そこには、彼の持っていたロストドライバーとガイアメモリがあった。
 ここで大道克己が生きていた証だった。


「……克己さん、あなたのこころの花はカーネーション。花言葉は、『母への愛』、です……」


 つぼみが、克己が生きていたその場所で、悲しげに呟いた。
 彼が最後に、死から遠ざかりたいと願う、生きている人間らしい感情を取り戻したのは、あまりにも皮肉なことだった。



【大道克己@仮面ライダーW 死亡】
【残り 32名】



★ ★ ★ ★ ★



 つぼみは、克己を見送った後、すぐに村雨良のもとへ駆け出した。


「村雨さん!」


 村雨良の身体もまた、深刻なダメージを受けていた。
 その重い体重を今の彼の両足で支えることができず、良牙と一条が肩を貸すことで何とか立っていた。
 そのうえ、実際問題、彼の左腕は吹き飛んだため、左肩を担当する一条はなかなか辛い体勢だった。彼が左側に回ったのは、一定の対電機能を有するライダースーツを着ていたからである。
 謎のコードがむき出しになっている彼の左腕に触れるのは、常人では避けるべきだった。


「……クッ……」


 村雨は、やはり少し心の痛みを感じていた。
 自分に似た何かを消す感覚は、耐え難かった。
 この感覚──何かを思い出す。
 そうだ、仮面ライダー1号が言っていた言葉だ。


『苦しいか……お前はまるで……俺だ』


 彼は決して、嬉々として何かを奪っていたわけではなかった。


『もし脳改造を施されていたなら……俺も……お前のように……』


 むしろ、苦悩とともに戦っていた。
 彼が敵の命を奪うのは、敵の苦しみを止めるためでもあったのだ。


『だから、お前のその掻きむしるような苦しみ……俺が止めてやろう!!』


 ゼクロスはそのために彼らに攻撃された。
 三影英介はそのために彼らに殺された。
 それは、彼らがゼクロスとタイガーロイドを救おうとした証。
 今、ゼクロスは初めて彼らの気持ちがわかった。
 同じ境遇の者たちを殺す不快感。まるで吐きそうになるほどの痛みと苦しみ。


「……そうか。エターナル……いや大道克己、奴は最後に何かを掴めたか……」


 だが、村雨良には最後に何かを悟ったように散っていった男が羨ましかった。
 何か、彼に訴えかけつづけた音色とともに消えたことが。
 死への抵抗を取り戻しながら死んでいったことが、うらやましかった。
 そして、自分たちが彼にそれを与えられたことが誇らしかった。

30Eにさよなら/仮面ライダー!あなたたちを忘れません!! ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:52:54 ID:0S72IXOs0


「なあ、俺も奴も同じだった……だから、奴が恨まれるのは、俺にとっても……」


 村雨は、そこにいる全員に語りかけるように言った。
 その先の言葉が出てこない。
 村雨良にとって、大道克己が恨まれるのは何なのか。
 どういう感情なのか……それがはっきりとわからなかった。


「……だから、奴を恨まないでやってくれ……頼む」


 彼の視線は、どこを向いてるのかわからなかった。
 目のハイライトが消え、視覚がおかしくなったのだ。
 目で見えている景色が変わる。視界がおかしくなる。……それは彼なりの涙なのかもしれない。


「……おい、何言ってるんだよ、良。何でそんな言い方するんだよ」


 右肩を背にして歩こうとする良牙は、彼の身体が少しずつ重くなっていくのを感じた。
 そう、彼の身体からは少しずつ力が抜けているのだ。
 先ほどまでは不器用ながらも歩こうとしていた村雨良の身体は、だんだんと歩くことを忘れ、引きずられ始めていた。


「……おい! 嫌だぜ、良。乱馬の野郎に続いて、お前まで……そんなの!」

「……私もだ! 五代に続いて、君まで死んだら……彼の意思は、君も一緒に継ぐんじゃないのか!」


 良牙と一条は肩で言う。
 村雨の方を見ても、彼の視点はだんだんと下がっていった。


「五代、か……」


 村雨良が共に戦った仮面ライダーの名前を思い出す。
 五代雄介、仮面ライダークウガ。
 彼は、一条薫に対し、言った。


『………みんなの、笑顔を、守って……』


 みんなの笑顔を守れ、と。
 それが引っかかっていた。
 その「みんな」の中には、笑顔というものを忘れた村雨良も含まれているのだろうか。
 守る以前に、村雨良には笑顔というものが欠如しているのだ。
 歪んでいるか否かはともかくとして、大道克己でさえ、あんなに高らかに笑えたというのに。
 だが、ある一つの感情だけは、村雨に残っていた。


「……俺には笑顔なんていうものがなかったが……」


 その感情を、村雨良は、最後に、誰かに伝えたかった。


「…………俺は……お前たちといられて、楽しかっ、た……」


 良牙は、自分の右肩に回されている村雨良の拳が、親指を立てていることに気が付いた。
 地に突き立てているものではない。
 天に突き立てているその親指は、サムズアップというものを作り上げていた。


「良……」


 良牙は、寂しさを感じながらも、良の視界の先でそれと同じものを作った。
 良の目にはぼやけて見えないが、また誰かが指で同じ形を作った。
 四つ。
 四つの肌色が、良の視界にぼやけて映り、ようやくそれに焦点を合わせ始めた。

31Eにさよなら/仮面ライダー!あなたたちを忘れません!! ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:53:24 ID:0S72IXOs0


 サムズアップ。
 偉大なことをした人間に贈られる賛美の証であった。
 辛く過酷な仮面ライダーの使命を果たした者に、それが贈られるのは当然だった。
 あるいは、どんな逆境においても、生きることに必死だった人間にも、当然送られるものだった。
 あらゆる意味を込めて、四人はそれを村雨良に贈った。


「……何が……『俺には笑顔なんてない』、だ……」


 一条が、村雨良の横顔を見て言う。


「──……ちゃんと、笑えているじゃないか」


 だが、その言葉を聞くと同時に、村雨良の身体は崩れ落ちていった。
 良牙と一条の身体にもたれる力さえ失った彼は、もはや意思さえあるのかわからなかった。
 ただ、この時に意思があったとしても、意思がないとしても、彼は最後にこれを想って力尽きただろう。


(そうか、これが『笑顔』か……)


 無情に言えば、それは『機能停止』だった。
 しかし、ここにいる誰も、彼が機能を停止したなどとは思わなかった。
 これは、『生物の死』だ。
 必死で生きようとした人間が、何かを掴んで息絶えた姿だった。


「……また、受け継ぐものが増えてしまったな」


 鋼牙が、そう言う。


「仮面ライダー!あなたたちを忘れません!!」


 つぼみがそう言うまでもなく、二人の仮面ライダーの生と死は彼らの心に残った。
 彼らが生きている限り、二人の男の魂は胸に残り続ける。
 SPIRITSを伝える。
 仮面ライダー、プリキュア、魔戒騎士、人間……それぞれの、立場から──。



【村雨良@仮面ライダーSPIRITS 死亡】
【残り 31名】

32Eにさよなら/龍道(ドラゴンロード) ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:54:27 ID:0S72IXOs0



 花咲つぼみは迷っていた。
 彼女の心もだいぶ落ち着き始めていたが、克己の死地に残っているロストドライバーを見ると、どうもあの死の瞬間のことを思い出してしまう。
 ロストドライバーは、悪であれ仮面ライダーエターナルとしての大道克己が生きていた証だ。
 できるのなら、それを奪いたくはない。
 だが、もしあのまま放置して、誰かに利用されたら、もっと多くの人が犠牲になってしまうかもしれない。


「……何してんだ、つぼみ」


 つぼみに声をかけたのは、良牙だった。
 彼は村雨良の遺体を埋めるための穴を掘っていたはずである。
 地中を掘り進んで行動することまでできる良牙には、それを埋めるだけの穴を作るのは容易だった。

 結局、先に克己の方に気を回したために、村雨良と最後のお別れができなかったのだろうか、と思い、つぼみは心配げに口を開いた。


「良牙さん……もう村雨さんの身体は……」

「……あ、いや……………………埋めなかった」


 良牙は、つぼみが口を開いた瞬間に返した。
 それを伝えにこちらへ来たのである。


「どうしてですか……?」

「確かに俺たちもあいつを人間として葬ってやりてえよ……けど」


 良牙は辛そうに口を閉ざした。


「結局、あいつの身体はほとんどが機械でできてる。地面に埋めても土には返らないし、ましてや危険なガスや爆弾を装備してるからな……」


 そんなガスを発する地中に埋めれば間違いなく危険だし、ましてや爆弾があるということは彼の身体は地雷同然のはずだ。
 周囲の木々の栄養にもならないし、通った人間にとって危険な存在となれば、やはり埋めることはできない。
 更に言うなら、彼は原子炉で動いているのである。改造人間の身体は、人間のように埋葬されることさえ許せなかった。


「……そうですか」

「でもな、何も悪い意味だけじゃない」


 良牙、鋼牙、一条は一応、村雨の身体に他にも危険物がないか調べた。
 その際に、彼らはある不思議な箇所を見つけた。
 ベルトのバックルを開いた部分に、四角いくぼみがあったのだ。
 それは、おそらく設計上重要なものではないし、むしろ、どう考えても不自然なものだった。
 何かをはめ込めそうな小さな四角い穴。まるでそこにある何かが「欠損」したような跡だった。
 良牙は、それを見た瞬間、ゼクロスにも「欠損」しているものがあったことを思い出した。

33Eにさよなら/龍道(ドラゴンロード) ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:55:09 ID:0S72IXOs0


「もしかしたら、あそこに、アイツが本当なら持ってたはずの“記憶”ってやつが入るんじゃねえかと思ってる」

「え!?」

「だから、あいつを埋めないで、いつかあいつの人間の時の記憶を見つけたら、あそこにはめ込んでやろうって思ってるんだ」


 村雨良が生前求め続けた「記憶」というものがもし、そこに入るのなら……たとえ死後でも、そこに戻してやりたい、と良牙は思っていたのである。


「……まあ、あくまで俺の推測だから、本当に記憶かどうかはわからない。でも、あれだけの強さを持ってた良に欠損してるものって言ったら……俺には“記憶”しか思いつかねえ」


 良牙は、自分の考えがあっているのかはずれているのか……その一点には自信がないらしかった。
 当然だ。
 サイコロが入るような小さい穴に、何が入るのか、機械工学や軍事に精通しているならば、もっとイメージを膨らませることができるかもしれないが、彼らはその分野の人間ではなかった。


「……で、つぼみ。あれはどうするんだ?」

「ええ……その事なんですけど」


 つぼみは事情を説明する。
 ロストドライバーとエターナルメモリをどうすればいいのか、結局彼女には検討がつかないのである。


「……あのな、つぼみ。それは流石に考えすぎだ」


 良牙は、事情を聞いてすぐにそう返した。


「あれはあいつの力だが、誰が使っても良いと思うぜ。……仮面ライダーが人を守るための力だとか、受け継ぐ力だとか、俺には難しくてわからないけどな。力をまともに使える奴のために、技はあるし強さはある」

「でも、あれは克己さんの……」


 頑なで真面目なつぼみだったが、そんなつぼみを良牙はもう一度諭す。


「……なあ、あのベルトは、今まで人を傷つけたことしかないだろ。本当にそのために生まれて来たものだと思うのか?」


 つぼみは、少しだけそのベルトの方を見た。
 五代雄介は、村雨良は、一条薫は、どんな仮面ライダーだったか。
 そして、大道克己は、どんな仮面ライダーになってしまったのか。──あるいは、どんな仮面ライダーになれたのか。


「……思いません! 仮面ライダーは、プリキュアと同じ……誰かを守る戦士なんです」

「ああ、俺もそう思う。……あいつらを見てたらな」


 良牙もまた、あらゆる仮面ライダーの姿を見てきた男の一人だった。


「……エターナルを、本当の意味での仮面ライダーにしてやらないか?」


 それが、良牙の言いたいことだった。
 今まで、良牙は仮面ライダーエターナルが悪の仮面ライダーだと思っていた。
 悪の美学、とやらで行動しているとしても、それに巻き込まれる人間としては勘弁願いたいものだった。
 ゆえに、エターナルには良い印象がない。
 しかし……

34Eにさよなら/龍道(ドラゴンロード) ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:55:37 ID:0S72IXOs0


「……あいつは、きっとどっかで狂っただけで、仮面ライダーになれたかもしれない男だった。あのベルトも、正義のために使われたかもしれねえんだ」


 エターナルへの印象は、少し変わった。
 大道克己の最後、彼は何かに戻ったのである。
 あれは、仮面ライダーになれたかもしれない男の最後に見えた。


「……克己も、良も、エターナルのメモリってやつも……言ってみれば迷子みたいなもんだったんだ。寂しくて、心細くて、どこだかわからねえ場所で、行先がわからなくて……それで、きっと悪の道に進んでしまった」


 一歩間違えば、村雨良が敵で、大道克己が味方だったかもしれない。
 運命が違えば、エターナルと協力して、ゼクロスを倒したかもしれない。
 そう思うと、良牙はエターナルを恨めなかった。


「迷子になる心細さ……その気持ちは、誰より俺がよくわかる」


 それは当たり前だった。
 たとえ話ではなく、普通の迷子になっているのだから。


「……道を示してやる奴がいねえと駄目なんだ、きっと」


 良牙は、言いたいことを言いつくした。
 そう、彼はただただ……“道”を示してやりたかったのだ。


「……そう、ですね」


 つぼみは頷き、小走りでドライバーのもとへ向かった。
 そして、「克己さん、ごめんなさい」と呟いてから、ロストドライバーとエターナルメモリを回収する。つぼみは、そのまま良牙の前にそれを差し出した。


「……良牙さん、これを使うのは……良牙さんが相応しいと思います」

「は?」


 良牙が頭上にハテナマークを作る。


「戦える変身能力がない良牙さんには何より必要なものだと思いますし、……それに、良牙さんなら、仮面ライダーというものをよく理解していると思います」

「おいおい、俺はそれに頼る気はほとんどないぜ……」

「……でも、いざっていうときに、仮面ライダーに変身できたら役に立つと思います。とにかく、良牙さんが受け取ってください」


 良牙は確かに生身でも屈指の戦闘能力を持つが、それでも仮面ライダーたちに比べれば能力は足りない。
 まあ、変身した結果として強くなれるのなら、良牙にとってはそれでいいかもしれない。
 第一、ゾーンドーパントに変身するよりは、エターナルの姿の方が数段マシだ。


「……まあいいか。使うことがあるかはわからないが……とりあえず、受け取っておくぜ」

「はい!」


 つぼみが笑顔で良牙に笑いかけた。



★ ★ ★ ★ ★

35Eにさよなら/龍道(ドラゴンロード) ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:55:57 ID:0S72IXOs0



「バダン、砂漠の使徒、それに財団Xか……」


 一条と鋼牙は頭を悩ませていた。
 バダンのニードル。財団Xの加頭。ゼクロスとエターナルの残した情報から、その二人の人物がこの殺し合いに絡んでいる可能性が確かになった。
 ゼクロスとニードルが知り合いであり、加頭と克己がおそらく知り合いであることが判明した今、主催者の情報は更に詳しく知られ始めている。
 更には、つぼみによるとサラマンダー男爵は砂漠の使徒の人間であり、改造人間を作る組織とはおそらく関係のない存在だという。


「……私たちはこの殺し合い自体が何らかの儀式の意味を持っている、あるいは首輪にホラーが取りついていると考えていたが……」

「ああ、結局、その考えも含めて、ほとんどわからず終いだな……。二つの全く関係のない組織の人間が協力し合っているとなると……」


 一歩、考察が進むかと思ったが、また考察は滞る。
 とにかく、現状で主催側が明かしている人物全員の身元が判明していることは、彼らの大きなアドバンテージだろうか。


「……放送担当者が変わるたび、敵組織の存在は、とにかく巨大なものに見えてくる。我々に勝てるのか……?」


 一条でさえ弱気になる相手だった。
 バダン、財団X、砂漠の使徒……それらが手を取り合っているとしたら?
 それに、もっとたくさんの組織や怪物も手を貸しているとしたら?
 グロンギ族、それにホラー。
 鋼牙や一条もここにいるということは、それらの組織が絡んでいる可能性だって高まってくるだろう。


「……必ず、勝たなければならない。それが魔戒騎士の使命であり、プリキュアと仮面ライダーの使命だ」


 鋼牙もまた、闘志を燃やす。
 良牙が戦闘で倒した木の上で、ゼクロスが眠っている。顔だけが村雨良で、そこから下はまだ仮面ライダーの姿のまま、彼は眠っていた。
 その顔を見るたびに、鋼牙たちは考えさせられる。
 傍から見れば安らかに眠っているように見えるが……まだ彼は満足していないだろう、と。
 そう、この殺し合いが終わらない限り、死んだ者たちの戦いはまだ終わらない。
 彼のその笑ったような寝顔を、心から安らかなものにするためには……鋼牙たちが戦うしかないのだ。


(待っていろ……貴様らの野望は俺たちが絶対に打ち砕く!!)



★ ★ ★ ★ ★




 その後、四人は遅れながらも軽い昼食を取り、なんとかパンを飲み込んだ。
 人が死んだ直後に、人が死んだ場所で昼食をとるのは心苦しいが、膨大にエネルギーを消費したので、今後のエネルギーになるものが必要だった。
 あまり美味しくないうえに、口当たりも悪いので、特につぼみは飲み込むのに時間がかかった。


 そして──

36Eにさよなら/龍道(ドラゴンロード) ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:56:15 ID:0S72IXOs0


「さて、準備は整ったな……」


 良牙が二つのデイパックを背負って、そう言う。良牙のものは、大道克己のデイパックだった。村雨と克己のデイパックは、それぞれの所持品を分散する形で所持している。
 彼の目的地はあくまで呪泉郷だ。
 とにかく、そちらへ向かいたいのである。半日もたどり着けずにいるが……。


「……良牙さん、一条さん、これでしばらく、お別れですね」


 市街地に向かいたいつぼみには、鋼牙がそばにつく。
 彼もまた、そちらのエリアが気になっていたのである。
 というのも、先ほど放送で行われた、「なぞなぞ」が気がかりだったのだ。
 第一のなぞなぞの答えが、「警察署」と「翠屋」であるのはすぐにわかった。警察署の地図記号を一条が知らないはずがないし(良牙は地図記号というだけでわけがわからなかったが)、黄色と青を足した色が緑であることはわかった。
 それから、名前の足し算によると、二人殺せば移動でき、その条件を満たした人間が警察署か翠屋の周辺にいるという。ならば、その人間を止める──あるいは狩るのが魔戒騎士の定めである。
 それに、人が集まりそうな場所ならば、バダンや財団Xについてより詳しい人間もいるかもしれない。
 これもまた、四人の間では公表された情報の一つだった。


 禁止エリアや死亡者名、ボーナスの答えや新たなボーナス、それからバダンや財団Xのこと……それぞれの知り合い、全ての情報を伝え合ったうえで、四人のとても長い一時間が終わる。
 そして、つぼみにとっては少しさびしい時が流れた。


「……さよならは言わねえぜ、つぼみ。また生きて会えると信じてるからな」


 親しい人間を一度に何人も失った良牙は、そう言う。
 つぼみや鋼牙まで死んでしまうなんてことは、考えたくなかった。
 良牙が歩き出す。


「おい、待ってくれ、響くん!」

「あの! 良牙さん、そっちは私たちが向かう方向です!!」

「くそぉぉっ!! 俺はまたこんな……!!」


 良牙は思いっきり街に向かっていた。
 しかも、このまま良牙がまっすぐ進めば、間違いなく禁止エリアに引っかかる。
 すぐに引き戻された良牙は、一条が引率して移動することになった。
 準備よくコンパスを持ち、地図を握った一条と、それについてくだけの良牙。


「……道を示してくれる人間がいれば、迷うことはないんですよね」


 不安そうに良牙の後ろ姿を見るつぼみだった。
 実際、五代と一緒に言った時、彼は迷っているのだが、それは何かに注意を引かれたか、転んで五代を見失ったかのどちらかだと信じたい。


「さあ、俺たちも行くぞ。つぼみ」

「はい!」


 良牙と一条、鋼牙とつぼみはそれぞれ別の道を行く。
 彼らが再び会うことになるのか、それとも誰か欠けてしまうのか、誰も再会することなく死んでしまうのか……それは、結局のところ誰もわからなかった。
 それでも、彼らが死んだとしても、それを更に受け継ぐ者がいるのだと、信じて歩くのみだった。


(ダークプリキュア……あなたも……)


 もう一つ。
 つぼみの心には、まだあと一つわだかまりが残っている。
 ダークプリキュアがたとえ、キュアマリンの命を奪った張本人だとしても、キュアブロッサムはその心を……


(あなたの心の在り処も、私が絶対に見つけます!)


 それは、彼女が市街地へと急ぎたい理由の一つだった。

37Eにさよなら/龍道(ドラゴンロード) ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:57:29 ID:0S72IXOs0





【1日目/日中】
【E―6/森】

【目的地:呪泉郷組】

【響良牙@らんま1/2】
[状態]:全身にダメージ(中)、負傷(顔と腹に強い打撲、喉に手の痣)、疲労(中)、腹部に軽い斬傷、五代・乱馬・村雨の死に対する悲しみと後悔と決意 、ゾーンメモリの毒素については不明
[装備]:ロストドライバー@仮面ライダーW+エターナルメモリ、昇竜抜山刀@侍戦隊シンケンジャー
[道具]:支給品一式×2(食料一食分消費)、水とお湯の入ったポット1つずつ(お湯変身3回分消費)、秘伝ディスク@侍戦隊シンケンジャー、ガイアメモリ(ゾーン)@仮面ライダーW、ムースの眼鏡@らんま1/2 、細胞維持酵素×2@仮面ライダーW、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、歳の数茸×2(7cm、7cm)@らんま1/2
[思考]
基本:天道あかねを守る
1:天道あかねとの合流
2:1のために呪泉郷に向かう
3:つぼみと鋼牙とはいずれまた会いたい
4:いざというときは仮面ライダーとして戦う
5:良の腹部の欠損されたパーツ(メモリキューブ)も探したい
[備考]
※参戦時期は原作36巻PART.2『カミング・スーン』(高原での雲竜あかりとのデート)以降です。
※良牙のランダム支給品は2つで、秘伝ディスクとガイアメモリでした。
 なお、秘伝ディスク、の詳細は次以降の書き手にお任せします(ガイアメモリはゾーンでした)。
 支給品に関する説明書が入ってる可能性もありますが、良牙はそこまで詳しく荷物を調べてはいません。
※シャンプーが既に死亡したと知りました。
※シャンプーの要望は「シャンプーが死にかけた良牙を救った、乱馬を助けるよう良牙に頼んだと乱馬に言う」
 「乱馬が優勝したら『シャンプーを生き返らせて欲しい』という願いにしてもらうよう乱馬に頼む」です。
 尚、乱馬が死亡したため、これについてどうするかは不明です。
※ゾーンメモリとの適合率は非常に悪いです。
※主催陣営人物の所属組織が財団XとBADAN、砂漠の使徒であることを知りました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを全て知りました。

【一条薫@仮面ライダークウガ】
[状態]:疲労(小) 、アマダム吸収、仮面ライダークウガに一時間程度変身不能
[装備]:滝和也のライダースーツ
[道具]:支給品一式×3(食料一食分消費)、ランダム支給品2〜5(一条分1〜2確認済み、五代分1〜3未確認)、警察手帳、コートと背広、ランダム支給品0〜2(十臓)、
[思考]
基本:民間人の保護
0:警察として、また仮面ライダーとして人々を守る。
1:良牙と共に呪泉郷へと向かう
2:鋼牙、つぼみとはいずれまた合流したい
3:他に保護するべき人間を捜す
4:未確認生命体に警戒
※参戦時期は少なくともゴ・ガドル・バの死亡後です
※殺し合いの参加者は異世界から集められていると考えています。
※この殺し合いは、何らかの目的がある『儀式』の様なものだと推測しています。
※アマダムを吸収したため、仮面ライダークウガに変身できます。アマダム自体が強化されているため、ライジングフォームへの無制限の変身やアメイジングマイティフォームへの変身も可能かもしれませんが、今の所実践していないので詳細は不明です。
※主催陣営人物の所属組織が財団XとBADAN、砂漠の使徒であることを知りました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを全て知りました。

38Eにさよなら/龍道(ドラゴンロード) ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:57:49 ID:0S72IXOs0


【1日目/日中】
【E―7/森】


【目的地:市街地組】

【花咲つぼみ@ハートキャッチプリキュア!】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、加頭に怒りと恐怖、強い悲しみと決意
[装備]:プリキュアの種&ココロパフューム
[道具]:支給品一式×3(食料一食分消費)、鯖(@超光戦士シャンゼリオン?)、スティンガー×6@魔法少女リリカルなのは、プリキュアの種&ココロパフューム(えりか)@ハートキャッチプリキュア!、プリキュアの種&ココロポット(ゆり)@ハートキャッチプリキュア!、破邪の剣@牙浪―GARO―、さやかのランダム支給品0〜2 、えりかのランダム支給品1〜3(未確認)
[思考]
基本:殺し合いはさせない!
0:市街地に向かう。
1:この殺し合いに巻き込まれた人間を守り、悪人であろうと救える限り心を救う
2:南東へ進む、18時までに一文字たちと市街地で合流する
3:ダークプリキュア…
4:良牙、一条とはいずれまた会いたい
[備考]
※参戦時期は本編後半(ゆりが仲間になった後)。DX2および劇場版『花の都でファッションショー…ですか!? 』経験済み
 そのためフレプリ勢と面識があります
※溝呂木眞也の名前を聞きましたが、悪人であることは聞いていません。鋼牙達との情報交換で悪人だと知りました。
※良牙が発した気柱を目撃しています。
※プリキュアとしての正体を明かすことに迷いは無くなりました。
※サラマンダー男爵が主催側にいるのはオリヴィエが人質に取られているからだと考えています。
※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました。
※この殺し合いにおいて『変身』あるいは『変わる事』が重要な意味を持っているのではないのかと考えています。
※放送が嘘である可能性も少なからず考えていますが、殺し合いそのものは着実に進んでいると理解しています。
※ゆりが死んだこと、ゆりとダークプリキュアが姉妹であることを知りました。
※大道克己により、「ゆりはゲームに乗った」、「えりかはゆりが殺した」などの情報を得ましたが、半信半疑です。
※ダークプリキュアにより、「えりかはダークプリキュアが殺した」という情報を得ましたが、上記の情報と矛盾するため混乱しています。
※所持しているランダム支給品とデイパックがえりかのものであることは知りません。
※主催陣営人物の所属組織が財団XとBADAN、砂漠の使徒であることを知りました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを全て知りました。

【冴島鋼牙@牙狼─GARO─】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(小)
[装備]:魔戒剣、魔導火のライター
[道具]:支給品一式×2(食料一食分消費)、ランダム支給品1〜3、村雨のランダム支給品0〜1個
[思考]
基本:護りし者としての使命を果たす
0:つぼみとともに市街地に向かう。
1:首輪とホラーに対し、疑問を抱く。
2:加頭を倒し、殺し合いを終わらせ、生還する
3:いずれ零とともにバラゴを倒す。
4:良牙、一条とはまたいずれ会いたい
5:未確認生命体であろうと人間として守る
[備考]
※参戦時期は最終回後(SP、劇場版などを経験しているかは不明)。
※魔導輪ザルバは没収されています。他の参加者の支給品になっているか、加頭が所持していると思われます。
※ズ・ゴオマ・グとゴ・ガドル・バの人間態と怪人態の外見を知りました。
※殺し合いの参加者は異世界から集められていると考えています。
※この殺し合いは、何らかの目的がある『儀式』の様なものだと推測しています。
※首輪には、参加者を弱体化させる制限をかける仕組みがあると知りました。
 また、首輪にはモラックスか或いはそれに類似したホラーが憑依しているのではないかと考えています
※零の参戦時期を知りました。
※主催陣営人物の所属組織が財団XとBADAN、砂漠の使徒であることを知りました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを全て知りました。

39 ◆gry038wOvE:2013/03/01(金) 22:59:09 ID:0S72IXOs0
以上、投下終了です。

40 ◆OmtW54r7Tc:2013/03/02(土) 03:30:13 ID:QqFcv3Fw0
読み途中なのですが、気になったことが一つ。
クウガって、10分の変身制限があったっけ?
それって確か龍騎の設定じゃなかったっけ?

41名無しさん:2013/03/02(土) 03:44:33 ID:2s7Az8b.O
クウガが10分のち二時間変身不能な時間制限ってロワ…もっと言えばライロワでの話か?

42 ◆OmtW54r7Tc:2013/03/02(土) 04:13:25 ID:QqFcv3Fw0
>>41
ああ、二時間制限の設定はちゃんとあるんですよ
でも確かその制限を受けるのは、「膨大なダメージを受けて白のクウガになってしまった時」だったような…
ちなみに緑とか黒には時間制限が存在するみたい(黒の制限は途中から強化されてなくなった)
まあ、仮にそうだとしても、修正できるレベルだと思います

そして投下乙!
エターナルにゼクロス…ここで退場か
何も感じなかったはずの二人が、人として生きている実感を取り戻しながら戦う姿は熱くて最高だったです!
彼らが死んだあとのつぼみと良牙のやりとりもいいなあ…
他にも語りたいこといっぱいあるけど、とにかく面白かったです!

しかし良牙にゾーンとは…w
支給した奴タチ悪いなあw

43名無しさん:2013/03/02(土) 06:13:52 ID:htA6iZ1A0
お、お、お、お
投下乙です
やばい、魂が震えた
エターナルゲームはどれも読み応えあって、でもブロッサムによる浄化を拒んだくだりからが特にすごかった!
ゼクロス、遂に自分の意志で人を救うものとしてライダーを受け継いだんだな
もうゼクロスとエターナルの鏡合わせながらも生と死を取り戻していく戦いが悲しくも熱かった
それを止めない、止められない二人や、心の花とかも本当にこの話はみんなすごくよかった
GJでした

44名無しさん:2013/03/02(土) 07:15:16 ID:2s7Az8b.O
>>42
そういや白はそんな設定か…うん、耐久に定評のある一条さんならそっちの解除になっても普段の行動に支障はないなw

改めて投下乙です。鏡写しな二人はそれぞれ人間らしく…

45 ◆gry038wOvE:2013/03/02(土) 18:46:31 ID:xXcCIBFI0
了解しました。
後ほど、「3」の方に投下された「届かない、M /─僕はここにいる─」の修正版を投下しておきます。
スレ3の方はどうしましょうか。

46 ◆OmtW54r7Tc:2013/03/02(土) 19:27:04 ID:QqFcv3Fw0
>>45
いつものように埋めればいいと思うよ
後、牙狼の時間制限のとこでも10分について言及してるみたいだからそっちもお願いね

47 ◆gry038wOvE:2013/03/02(土) 22:01:37 ID:xXcCIBFI0
そっちはwikiで修正します。

48 ◆gry038wOvE:2013/03/02(土) 22:12:21 ID:xXcCIBFI0
&予約きてた!ガンバッテ!

49名無しさん:2013/03/02(土) 22:49:07 ID:kGpW7Woc0
投下乙です

ロワで生れた長い因縁に決着が付いたか
濃い、本当に濃い戦いだったぜえ
ここでプリキュアで感情が思い出し始めてゼクロスとの戦いで…
確かに二人が、人として生きている実感を取り戻しながら戦う姿は…
GJ!

50 ◆gry038wOvE:2013/03/03(日) 00:24:37 ID:47LueUzQ0
修正版をしたらばに投下しました。
向こうにも書きましたが、修正点は次の通りです。
問題とされたのは「クウガの設定」に関するミスのみですが、それを極力違和感のない形で修正したいと思ったので、少し戦闘シーンなどが増加されて印象もやや変わっているかと思います。

・戦闘シーンの増加
・修正前版未使用のフォーム、武器の使用
・一条の変身が解ける理由の変化
(×10分経った ○エターナルとの戦闘や一条の変身戦闘経験不足でクウガがグローイング化&変身解除された)


wiki収録で修正する点は、ガロの変身時間に関して「10分」の話を出すシーンと、一条の状態表に背中に傷について追加です。

51名無しさん:2013/03/05(火) 11:57:11 ID:L19tyVmwO
投下乙です。

永遠という名の地獄にサヨナラを告げた二人。

良牙はメモリを使っちゃったけど、毒素の影響がどれだけ出るか。

52 ◆OmtW54r7Tc:2013/03/06(水) 01:11:11 ID:dgZ.3Dck0
投下します

53放送と悲しみとそれぞれの想い ◆OmtW54r7Tc:2013/03/06(水) 01:12:21 ID:dgZ.3Dck0
「「「「指輪が喋ったぁ!?!?!?!?」」」」


4人の参加者が同時に声を上げる。
今彼らの目の前にいるのは…人の言葉を話す奇妙な指輪だった。


『おいおい、そんなに驚かなくたっていいだろ?傷つくぜ』
「えっと…あなたはインテリジェントデバイス?」


そんなしゃべる指輪に最初に声をかけたのはアインハルトという少女だ。
似たようなものの存在を知っている彼女が、4人の中で一番最初に驚きから解放されていたのだった。


『インテリ?デバイス?なんだそりゃあ?』


そんなアインハルトの質問に対する指輪の反応は、疑問符であった。

「あー…指輪のあんちゃん、あんたには名前があるのか」
『ああ、俺は魔導輪のザルバだ』

続けて質問してきた梅盛源太に対し、指輪――ザルバは名を名乗った。

「魔導輪?ザルバ?翔太郎の兄ちゃん、なんか知ってるか?」
「いや、知らねえよ」

ザルバの放った未知の言葉に疑問符を浮かべる左翔太郎と佐倉杏子の二人であった



『そういや、一つ気になってるんだが、聞いていいか?』
「おう、なんだ。えっと…ザルバだったか?」

質問してきたザルバに対し、翔太郎が応対する。
ザルバが、質問すべく口を開いた。



『後ろにいる女は、あんたらの知り合いか?』
「「「「!!??」」」」



ザルバの言葉に、4人は一斉に後ろを振り向いた。

「や、やあ」

そこにいたのは明堂院いつき…キュアサンシャインだった。




「いつきさん!?」


唯一その場にいた人間の中で彼女の正体を知っていたアインハルトが口を開いた。

「おいアインハルトの嬢ちゃん、何言ってんだよ?いつきっていうと、警察署で会った男だろ?どう見ても別人じゃねえか」

54放送と悲しみとそれぞれの想い ◆OmtW54r7Tc:2013/03/06(水) 01:13:27 ID:dgZ.3Dck0
一方源太もいつきに会っていたが変身前の姿しか知らず、しかもろくに話もしていなかったため男だと勘違いしていたようだ。


「あはは、驚かしちゃってごめんね」


そういうといつきは変身を解いた。


「「男に変わった!?」」


翔太郎と源太がそう叫んだ瞬間、彼らの頭を杏子がどついた。

「んなわけあるか!失礼にも程があるだろ!?」
「あ、あはは…間違われるのは慣れてるから気にしないでよ」



「聞きたいことはいろいろあるんだけど…まず、どうして梅盛さんとアインハルトがこんなところに?他のみんなはどうしたの?」
「あ、えっと…」
「それはだな…」

いつきの問いにアインハルトと源太が答えようとしたその時、



『初めまして、参加者の皆さん。』



2度目の放送が、訪れた。




『それでは、今回の放送は終了です。……みなさん、ごきげんよう』

この殺し合いが開始されてから2度目の放送。
それを、血祭ドウコクは一人憮然とした表情で聞いていた。

「…シンケンレッド。いや、影武者だったか。あいつも死んだか」

志葉丈瑠。
偽物の志葉家当主として自分たちを欺いてきたやつ。
なめた真似をしてくれた腹だたしい存在であり、この手でぶち殺してやろうと思っていたが…

「…ハッ!所詮は偽物ってことか。つまらねえなあ」

アクマロの名前も呼ばれていたが、それに関してはどうでもいい。
彼にとってアクマロは、既に一度シンケンジャーに倒されて死んだ奴、という認識でしかなかった

「これでこの場にいるシンケンジャーはシンケンゴールドだけ……いや」

ドウコクは考える。
当初自分は、戦うならシンケンジャー、それ以外の存在はどうでもいいと思っていた。
しかし…本当にそうだろうか?
ここには、シンケンブルーや偽シンケンレッドを倒すほどの猛者がいるのだ。
もしかしたら、今この場に生き残っている者たちは、シンケンジャー以上に倒す価値があるのではないか?
それにこの半日間、まともに人に出会えず、戦いに参加することもできず、鬱憤がたまっていた。


「とりあえず、動くとするか」


そういうとドウコクは――再び市街地へと足を踏み入れた。
あれから市街地では何度か戦闘音が聞こえてきた。
もしかしたら今もどこかで戦闘が行われているかもしれない。
北西の方でも爆発音――ドウコクは知らないがテッカマン兄弟のボルテッカがぶつかった音――が聞こえてきたが、禁止エリアの関係で遠回りになるし、着いたころには戦闘が終了している可能性が高い。


「だれでもいいから、俺様を楽しませやがれぇ!!」


血祭ドウコク――水切れを克服した彼は今、血に飢えていた。




「やっぱり…せつなだけじゃなく、祈里も……!」

55放送と悲しみとそれぞれの想い ◆OmtW54r7Tc:2013/03/06(水) 01:14:32 ID:dgZ.3Dck0
放送を終え、死者が読み上げられる。
そしてその中で…また一人、仲間の名が呼ばれた。

「(美希、大丈夫かな…?それにラブも…)」

せつなの死体を発見し、杏子が持ってるリンクルンにより祈里の死の可能性もあることを覚悟していた自分は、まだいい。
しかし、彼女たちは別だ。
突然の友の死に、ショックを受けているはずだ。
特に美希は、自分たちと別れたばかりであり、今は一人のはずだ。
支えてくれるはずの仲間もおらず、一人ぼっちで…彼女の心は耐えられるのだろうか?


「(そして…ゆりさん)」


もう一人呼ばれた自分たちの仲間の名に、いつきは複雑な表情となる。
自分は、最初の場所でのゆりさんの尋常ではなさそうな様子から、彼女が殺し合いに乗ってしまっているのでは…と考えた。
しかしそれは、たとえ可能性が高くともあくまで憶測に過ぎない。
そして…ゆりが死んだ今、それを本人から確かめるすべもない。


「(ゆりさん…あなたはいったい何を思い、考え、そして死んでいったんですか?)」


ともかく、プリキュアの仲間が一気に3人もこの6時間の間に死んでしまった。
せつなと祈里にいたっては、この市街地で合流できる可能性があったのにもかかわらず。
正直悔しくて仕方がないが、しかしいつきは激情を抑え、そして仲間の一人に顔を向けた。



「スバルさん…ティアナさんまで……!」

また死んだ。
自分の知っている人たちが、死んだ。
強くて頼りになる人たちが、死んだ。

「どうして…どうして……!」

なのはも、フェイトも、ユーノも。
スバルもティアナも。
本郷も、流ノ介も…そして、乱馬も。

みんな、自分より強いはずなのに。
自分より多くの戦いを、苦難を乗り越えてきているはずなのに。
それなのにどうして、自分が生き残って彼らが死ななければならない!?


「やっぱり…私は厄……!」


…その先の言葉が、続かなかった。
言葉というものは、恐ろしいほどに魔力を持っている。
口に出してそれを認めてしまえば…また自責の念に立ち止まってしまいそうだったから。

(こんなところで、立ち止まるわけにはいきません)

56放送と悲しみとそれぞれの想い ◆OmtW54r7Tc:2013/03/06(水) 01:15:42 ID:dgZ.3Dck0
まだヴィヴィオと話をしていない。
あかねを止める事だってできていない。
だから―――


「アインハルト、大丈夫?」


声をかけられ、顔を上げる。


「いつきさん…」
「一人で抱え込んじゃだめだよ。僕たちもついてるんだからさ」
「………………」


そういえば、この人とは最初の放送の時も一緒だった。
あの時も、そして今回も、放送でいつきは仲間の名を呼ばれている。
そして自分と同じく…ホテルでの戦いで多くの仲間を失った。


「ごめん、なさい……!」
「え?」


突然の謝罪に、いつきは戸惑ったような表情になった。


「いつきさんだって…放送を聞いて悲しかったはずなのに…ホテルでの戦いの事を悔やんでいたはずなのに」
「それは…」
「それなのに、前の放送でも今回の放送でも、私は一人で勝手に悲しんで…いつきさんに気を遣わせてばかりだった!」


思えば、あのホテルの戦い以降、常に自分は誰かに慰められ、励まされてきたような気がする。
しかし自分は、それに対して悲しみの壁を作っていた。
彼ら、彼女らも…きっと自分と同じように悲しみを胸に抱えていただろうことにも目を背けて。
そのことに思い至った瞬間、謝罪せずにはいられなかった。
いつきはしばらく困った表情で自分を見つめると、口を開いた。


「それは違うよ、アインハルト」
「え?」
「確かに僕自身、多くの仲間を失って悲しかったよ。今だってそうさ」
「やっぱり…」
「だけどね…それ以上に悲しいのは、仲間が、友達が、悲しい思いを抱えて苦しむことなんだ」
「友達が、悲しむ…?」
「うん、アインハルトだって、ヴィヴィオが悲しい顔してたら、元気になってほしいって思わない?」
「そう、ですね…ヴィヴィオさんには、悲しい顔は似合いません」
「それと同じだよ。僕は君に気を遣ってるなんて思ったことないよ。僕自身が、君に元気になってほしいと思っただけ、それだけだよ」
「私に…元気に……」
「沖さんや美希だって、きっと同じだと思うな」

そう話すいつきの姿は、アインハルトには太陽のようにとても眩しく、輝いて見えた。

「強いんですね…みなさん」

単に腕力だけの話ではない。
彼らは悲しみを抱えてもなお、前に進み続けることを止めず、他人を思いやる心の強さを持っているのだ。
そのような姿に、アインハルトは、


(私も…強くなりたい。みんなのような強さが欲しい…!)


そう、密かに思うのであった。




「丈ちゃん……!」

57放送と悲しみとそれぞれの想い ◆OmtW54r7Tc:2013/03/06(水) 01:16:45 ID:dgZ.3Dck0
夢の中での邂逅を果たしたときから、嫌な予感はしていた。
そしてその予感は今…真実へと変わった。


「なんでだ…どうしてだよ丈ちゃん……!」


梅盛源太にとって志葉丈瑠は、親友である。
殿様としてではなく、友として彼を支えるために、スシチェンジャーを開発し、侍としての修行もした。
しかし、守るべき、支えるべき友は…死んだ。

「結局、これのことも聞けなかったしな…」

そういって源太が取り出したのは、丈瑠のショドウフォンだ。
丈瑠はいったい何を思ってこれを手放したのだろうか。

「ん…そうだ、いつきの嬢ちゃん」
「どうしたんですか、梅盛さん」

源太に声をかけられたいつきは、アインハルトとの会話を打ち切って用件を尋ねる。

「嬢ちゃんは、流ノ介に会ったんだよな?丈ちゃんのことあいつから何か聞いてないか?丈ちゃん、ショドウフォンを手放してこんな手紙送ってきたんだよ」

そういうと、源太はいつきに丈瑠が乱馬に渡した手紙を見せた。
いつきはそれを読み、一瞬驚いた顔になったが…

「ごめんなさい…分からないです」
「お、おう。そうか…」



(流ノ介さんと話した仮説…あの手紙を見る限り当たりだったみたいだ)

流ノ介やなのはとは生前、丈瑠が殺し合いに乗ってしまったのではという話をした。
そしてそれは、たった今見せられた手紙により確信に変わった。

(源太さんには…話さなくてもいいよね?)

丈瑠本人が死亡してしまった以上、今ここで源太にそのことを話すのはためらわれた。
ゆえに、いつきはその事実を、そっと自分の胸の中にしまいこんだ。



「丈ちゃん…丈ちゃんが死んじまったら、俺はどうしたらいいんだよ」

別にすることがなくなったわけではない。
今の源太にはあかねを救うという目的もあるし、殺し合いを抜け出してからも、外道衆と戦い続ける事だろう。
しかし…その戦いに、丈瑠は存在しない。
丈瑠を侍として支えるという源太の子供のころからの夢は…潰えたのだ。
今までまっすぐ走ってきた。
自分が外道衆を倒し、丈瑠を守るんだという願いを、追い続けてきた。
それなのに…急にその道が消失し、崖に突き落とされたかのような気分だ。


『飛び続けろ……源太……落ちずに……』


夢の中での丈瑠の言葉を思い出す。
子供のころからの夢。
それを叶えるため、落ちずに飛び続けるにはどうしたらいい?
自分は…どうしたい?




「放送の内容はこんな感じだ、フィリップ」

俺、左翔太郎は今、相棒のフィリップに先ほど伝えられた放送の内容について話していた。

58放送と悲しみとそれぞれの想い ◆OmtW54r7Tc:2013/03/06(水) 01:17:41 ID:dgZ.3Dck0
『死者は15人…井坂も死んで、この半日の間に、参加者の半分が死んでしまったのか』
「ああ、あいつも…姫矢も死んじまった」

姫矢准。
ダグバやガドルとの戦いで共闘した銀色の戦士。
合流を約束したはずの仲間の名は…確かに呼ばれていた。

『あそこで別れた後、ダグバかガドルか…あるいは別の参加者に動けないところを襲われたのかもしれない』
「ちくしょう!あの時無理やりにでもあいつを一緒に連れて行ってれば…!」
『もしかしたら、姫矢准は最初からこうなることを分かっていて、僕たちを先に行かせたのかもしれないね』
「なんだよそれ…ちくしょう!」


「いつまでうじうじしてんのよ、兄ちゃん」

悔しさをかみしめる俺に声をかけてきたのは、佐倉杏子。
今の俺の、仲間の一人だ。

「いくら嘆いたところで、事実は変わらない。あの姫矢って兄ちゃんは死んだんだよ」
「な…そんな言い方はねえだろ!」

杏子の冷たい物言いに、俺は思わず怒鳴っていた。
しかし杏子は、臆することなく言葉を続ける。

「自分の行動を後悔するのは勝手だけどさ、そんなことしてる場合じゃないのは兄ちゃんだって分かってるだろ?」
「そ、それは…」
「あたし達が死んだ奴のために出来る事は、生きてる他の連中を守って、この殺し合いから抜け出す…それだけだろ?」
「杏子…」

確かに杏子の言うとおりだ。
俺は、さっきまで姫矢の死を悼むのを通り越して、自分の判断ミスを嘆いているだけだった。
しかし、そんなことはいつでもできる。
今早急にやらなければならないこと…それは仮面ライダーとして、一人でも死者を出さないことだ。

「悪い杏子、怒鳴っちまって…それと、ありがとな」
「別にいいよ。あたしに…礼を言われる資格なんて、ない」

杏子はそっぽを向いてそう言った。
後ろを向いたまま、「黙ってて、ごめん」と呟いたのだが、その声に俺が気付くことはなかった。



(美樹さやかも死んじまった、か)

これで、ここに来る前の知り合いは全員死んだことになる。
まあ、知り合いと言えるほどの仲でもないやつばかりだったが。

(あいつ…この世界でも正義の味方として戦ってたのかな)

さやかは、ある意味昔の自分と似ていた。
だからこそイライラして、ちょっかいを出したりもしていたわけだが…

(なあ、さやか、せつな、姫矢。あたしは…これからちゃんとやってけるかな?人を守って、死ぬことができるのかな?)

翔太郎に偉そうなことを言っておいて、自分はこのざまだ。
今まで散々、自分のためだけに力を使ってきた。
そしてその報いを受けるかのように、この殺し合いの中でも何人もの命が自分の目の前から消えていった。
そんな自分に本当に…この役目が務まるのだろうか。


(…何弱気になってんだ。しゃんとしろあたし!やるって決めたんだろ!)


先ほどまでの弱気な考えを振り払うべく、顔をパシパシと叩いてみる杏子であった。




『あー…重い空気の中悪いんだが』

59放送と悲しみとそれぞれの想い ◆OmtW54r7Tc:2013/03/06(水) 01:18:42 ID:dgZ.3Dck0
そう切り出したのは…しゃべる指輪こと、魔導輪ザルバだった。
彼は、ここがどこなのか、さっきの放送がなんなのか、相棒はどこにいるのか…なにもかもが分からなかった。


『そういうわけで、誰か教えてくれないか?』



『なるほどなあ、俺の知らない間に、そんなふざけたことが行われてたのか』
「これが参加者の名前を記した名簿です」

そういってアインハルトは、自分の名簿をザルバに見せた。

『ふうむ、鋼牙の奴もいるのか。それに絶狼と…バラゴだと?』
「はい、放送で呼ばれてしまった人には…印をしてあります」
『てことは、鋼牙も零も無事ってことか。まああいつらがそうくたばるわけないしな』


「放送っていやあ…あのニードルとかいうやつの言ってたなぞなぞみたいなヒント、なんだったんだ?」

そう切り出したのは、源太だった。
ニードルは先ほどの放送で、前回の放送で示したボーナスのヒントを、クイズのような形式で伝えていた。

「一つ目のヒントは…「○+×」、または、「青+黄色」の式が示す施設に存在する、でしたよね?「青+黄色」は翠屋のことだと思うのですが…もう一つはいったい」
「ああ、アインハルトは異世界の人間みたいだし、分からないのも仕方ないよね」

一つ目のヒントの答えが分からない様子のアインハルトに対し、既に答えに見当がついていたいつきが説明をする。

「これはたぶん僕たちの世界における地図記号を表していて、僕たちが数時間前に訪れ……た………」

そこまでいったところで、いつきの言葉が止まった。
そして何かを考え込んだかと思うと、次第にその表情は青ざめていった。

「…ねえアインハルト、今、警察署にまだ誰かいるの?
「え?えーと…私と梅盛さんが知る限りでは、ヴィヴィオさんと孤門さんが残ってると思いますが…」



「…大変だ!急いで警察署に戻らないと!」
「お、おい!いつきの嬢ちゃん、どういうことだ!?」

突然のいつきの言葉に、源太が尋ねた。
他のメンバーも、事態を飲み込めておらずポカンとしていた。

「まず、一つ目のヒントの「○+×」の方。これはさっき言ったように地図記号を表していて、警察署だ」

いつきは順を追って説明を始めた。
他のメンバーも真剣な表情でいつきの説明を聞いている。

「そして二つ目。『雄介−弧門−薫+隼人−結城。』この数の参加者を手にかけた人間のみが使用できること。これはこの名前の参加者の名前についている漢数字を計算するんだ」
「『五』代雄介−孤門『一』輝−『一』条薫+『一』文字隼人−結城丈『二』…5−1−1+1−2=2。つまり、参加者を二人以上殺した人が使用できるって事か?」
「うん、そう」

杏子の解答に、いつきは短い返答で肯定した。
そして再び説明を続ける。

「最後に三つ目。現在これが使用できる人間は五人。そのうち二人が、どちらかの施設の近くにおり、その参加者はいずれも“変身後”の姿の敵を倒した実績を持つこと。」
「「「「あ………」」」」

他の4人も、そこでようやく気が付いた。
この3つのヒントが意味するもの…それは『参加者を二人以上殺した危険人物が、翠屋か警察署の近くにいる』ということで…
それはつまり…


「ヴィヴィオさんたちが危ない!」
「うん、急いで警察署に戻らないと!」

事態を飲み込んだ一行は、すぐさま出発の準備を整える。
だが、そこへ……



「よお、会いたかったぜえ…シンケンゴールド!」


赤い悪魔が、現れた。

60御大将出陣 ◆OmtW54r7Tc:2013/03/06(水) 01:20:31 ID:dgZ.3Dck0
「てめえ…外道衆か!?」

突然現れた赤い異形に、源太は敵意を募らせる。
怪人の姿で、自分のことを知っているとなると、それ以外考えられない。

「おいおい、俺の事を忘れてるとは、いい度胸じゃねえか」

そこでいつきが、はっとする。
彼女には、目の前の異形の正体に見当がついていたのだ。


「まさかお前は…血祭ドウコク!?」
「なあ、こいつが!?ほんとかよいつきの嬢ちゃん!」


いつきの言葉に、驚きの声を上げる源太。
彼の時間軸では、血祭ドウコクとは、外道衆の大将として話に聞いているだけに過ぎなかったのだ。


「ああそうだ。俺が血祭ドウコクだ」




そう名乗ったドウコクの姿に、思わず源太はごくりと喉を鳴らした。
血祭ドウコク…話には聞いていたが、立っているだけですごいプレッシャーだった。
あの十臓とかいうやつも、微妙におっかない雰囲気を出してたが、そんなものの比ではなかった。


「…ん?そこにいる二人は、姫矢と一緒にいたやつか?」


と、そこでドウコクは、数時間前に遠目に見た参加者がいることに気付いた。

「な!?姫矢を知ってるのか?」

姫矢の名前に反応し、声を上げる翔太郎。

「ああ、俺が殺した」
「「!!!!!」」

ドウコクのその告白に、翔太郎と杏子は目を見開いた。

「…今、なんつった?」

杏子が、肩をわなわなと震えさせながら尋ねた。

「だから、姫矢は俺が殺した。犬のくせに、俺の命令に逆らいやがったからな」
「……けんな」
「その上、お前ら二人を殺せば見逃すと、生き残るチャンスをくれてやったってのに、拒んで死んじまいやがった。全く使えないうえに馬鹿な奴だったぜ」



「ふざけんなあああああああああああああ!!!!」



激昂と共に、杏子は魔法少女姿に変身すると、ドウコクに向かって槍を突き付け突っ込んでいった。
そして、槍はドウコクの胴体をしっかりととらえ、貫くが…


「効かねえなあ」
「なっ!?」
「これでも食らいなあ!!」
「うあああああああ!」


杏子の槍をあっさり引き抜いたドウコクは、咆哮によって杏子を吹き飛ばした。
吹き飛ばされた杏子は、翔太郎によってその体を受け止められる


「大丈夫か、杏子!?」
「ああ…サンキューな兄ちゃん」

61御大将出陣 ◆OmtW54r7Tc:2013/03/06(水) 01:21:45 ID:dgZ.3Dck0
翔太郎から離れて立ち上がる杏子。
そして、ドウコクを睨み付ける。
一方のドウコクは、そんな杏子に構うことなく口を開く。


「いっておくが、てめえら全員逃げられると思うなよ?今の俺は苛立ってるんだ」

そこで一旦言葉を切ると、持っていた剣を構え、言った。


「てめえら全員皆殺しだ」



「っ!」

ドウコクの余りの迫力に、思わず翔太郎は後ずさった。
そして確信する。
こいつは強い。
ダグバとはまた別の意味で、恐ろしい相手だ。

(だからって、退くわけにはいかねえ)

俺たち仮面ライダーは、街を守るためのヒーローだ。
そして、目の前にいる赤鬼みてえな野郎は、間違いなく街を泣かせる悪党だ
だったら…やることは一つだ

ふと、他の連中に顔を向けてみる。
杏子と梅盛はやる気充分みたいだし、いつきも香水みたいなものを握って(変身道具か何かだろうか?)、戦闘の準備はばっちりといった感じだ。
アインハルトは少し気圧されてる感じはあるが…それでも、その眼には戦いへの意志が感じられた。
なるほど、どいつもこいつも準備万端って事か。
それなら…


「あの赤鬼野郎を倒して、ヴィヴィオや孤門ってやつを助けに行くぞ!」
「「おう!!」」
「「はい!!」」

翔太郎の言葉に、一同はそれぞれの返事をする。


「武装形態!」
「プリキュア!オープン・マイ・ハート!」
「一貫献上!」
「フィリップ、戦闘だ!」
『分かった』
「変身」


―サイクロン― 

―ジョーカー―

それぞれが、掛け声と共に、変身をする。


「覇王流、アインハルト・ストラトス、行きます!」
「陽の光浴びる一輪の花! キュアサンシャイン!!」
「シンケンゴールド、梅盛源太!」
「『さあ、お前の罪を数えろ!』」



(姫矢…あんたは最後のその瞬間まで、あたしたちのために戦ってたんだな)

62御大将出陣 ◆OmtW54r7Tc:2013/03/06(水) 01:22:42 ID:dgZ.3Dck0
一方、既に変身を終えていた杏子。
彼女が手に握り、見つめるのは…姫矢から受け継いだエボルトラスター。

「ドウコクとか言ったっけ…あんたのいう、姫矢ってやつが本当に使えない馬鹿だったかどうか…」

エボルトラスターを右手で構える。
そして、左手で鞘の部分を掴むと…

「あたしがこの力で教えてやるよ!」

一気に引き抜いた!


その瞬間、杏子の身体は光に包まれ…


「ジュワッ!」


その姿は、異形へと変わっていた。






「は、気に入らねえ…」

一方の対峙する血祭ドウコク。
敵の中で、シンケンジャーはただ一人だけ。
しかし、そんなことは些末なことでしかなかった。
どいつもこいつも…あの憎きシンケンジャー共と同じだ。
弱いくせにあきらめだけは悪く、死を恐れねえ。
どれだけ痛めつけようとも立ち上がってきて、泣きわめくことがない。
だからこそ彼らはシンケンジャー同様ドウコクにとって苛立たしい存在であり…つぶし甲斐がある相手だ。



「さあ来いよ…絶望ってやつを教えてやる」



戦いは、次幕に続く―――

63御大将出陣 ◆OmtW54r7Tc:2013/03/06(水) 01:24:37 ID:dgZ.3Dck0
【1日目/日中】
【H-8/市街地】

【左翔太郎@仮面ライダーW】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、照井、霧彦の死に対する悲しみと怒り、仮面ライダーWに変身中
[装備]:ダブルドライバー@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式、ガイアメモリ(ジョーカー、メタル、トリガー)、ランダム支給品1〜3(本人確認済み) 、
    ナスカメモリ(レベル3まで進化、使用自体は可能(但し必ずしも3に到達するわけではない))@仮面ライダーW、ガイアドライバー(フィルター機能破損、使用には問題なし)
[思考]
基本:殺し合いを止め、フィリップを救出する
0:ドウコクを倒す。
1:警察署に向かう。
2:あの怪人(ガドル、ダグバ)は絶対に倒してみせる。あかねの暴走も止める。
3:仲間を集める
4:出来るなら杏子を救いたい
5:泉京水は信頼できないが、みんなを守る為に戦うならば一緒に行動する。
[備考]
※参戦時期はTV本編終了後です。またフィリップの参戦時期もTV本編終了後です。
※他世界の情報についてある程度知りました。
(何をどの程度知ったかは後続の書き手さんに任せます)
※魔法少女についての情報を知りました。


【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)、ソウルジェムの濁り(小)、自分自身に対する強い疑問、ユーノとフェイトを見捨てた事に対して複雑な感情、マミの死への怒り、せつなの死への悲しみ、ネクサスの光継承、ドウコクへの怒り、魔法少女に変身中、ウルトラマンネクサスアンフォンスに変身中
[装備]:ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ、エボルトラスター@ウルトラマンネクサス、ブラストショット@ウルトラマンネクサス
[道具]:基本支給品一式×4(杏子、せつな、姫矢、ドウコク)、魔導輪ザルバ@牙狼、
    リンクルン(パッション)@フレッシュプリキュア!、乱馬の左腕+リンクルン(パイン)@フレッシュプリキュア!、ランダム支給品0〜3(せつな0〜2、ドウコク0〜1)
[思考]
基本:姫矢の力を継ぎ、人を守った後死ぬことで贖罪を果たす 。
0:ドウコクを倒し、姫矢の無念を晴らす
1:警察署に向かい孤門一輝という人物に会いに行く。またヴィヴィオや美希にフェイトやせつなの事を話す。
2:自分の感情と行動が理解できない。
3:翔太郎に対して……?
4:あたしは本当にやり直す事が出来るのか……?
[備考]
※参戦時期は6話終了後です。
※首輪は首にではなくソウルジェムに巻かれています。
※左翔太郎、フェイト・テスタロッサ、ユーノ・スクライアの姿を、かつての自分自身と被らせています。
※殺し合いの裏にキュゥべえがいる可能性を考えています。
※彼女の行動はあくまで贖罪のためであり、自分の感情に気づいたわけではありません。
※魔法少女姿でウルトラマンに変身したため、魔法少女の力も使えるかもしれません。



【梅盛源太@侍戦隊シンケンジャー】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、後悔に勝る決意、丈瑠の死による悲しみと自問、シンケンゴールドに変身中
[装備]:スシチェンジャー、寿司ディスク、サカナマル@侍戦隊シンケンジャー
[道具]:支給品一式、スタングレネード×2@現実、パワーストーン@超光戦士シャンゼリオン 、 ショドウフォン@侍戦隊シンケンジャー、丈瑠のメモ
[思考]
基本:殺し合いの打破
0:ドウコクを倒す
1:警察署に向かう
2:あかねを元のあかねに戻したい。
3:警察署に戻る場合、また情報交換会議に参加する
4:より多くの人を守る
5:自分に首輪が解除できるのか…?
6:ダークプリキュア、エターナル、ダグバへの強い警戒
7:丈瑠との約束を果たすため、自分に出来ることは…?
[備考]
※参戦時期は少なくとも十臓と出会う前です(客としても会ってない)。

64御大将出陣 ◆OmtW54r7Tc:2013/03/06(水) 01:25:31 ID:dgZ.3Dck0
【アインハルト・ストラトス@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
[状態]:魔力消費(大)、ダメージ(大)、疲労(極大)、背中に怪我、極度のショック状態、激しい自責、大人モードに変身中
[装備]:アスティオン@魔法少女リリカルなのはシリーズ、T2ヒートメモリ@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式(乱馬)、ランダム支給品0〜2(乱馬0〜2)、水とお湯の入ったポット1つずつ、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはシリーズ
[思考]
基本:???????????
0:ドウコクを倒す
1:警察署に向かいヴィヴィオと話をする。その後の事はヴィヴィオに委ねる。
2:乱馬の頼み(ヴィヴィオへの謝罪、あかねを止める)を果たす。
3:いつき達のような強さが欲しい
[備考]
※スバルが何者かに操られている可能性に気づいています。
※なのはとまどかの死を見たことで、精神が不安定となっています。



【明堂院いつき@ハートキャッチプリキュア!】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(中)、罪悪感と決意、キュアサンシャインに変身中
[装備]:プリキュアの種&シャイニーパフューム@ハートキャッチプリキュア!
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1、ふうとくんキーホルダー@仮面ライダーW、霧彦のスカーフ@仮面ライダーW、須藤兄妹の絵@仮面ライダーW、霧彦の書置き、春眠香の説明書
[思考]
基本:殺し合いを止め、皆で助かる方法を探す
0:ドウコクを倒す
1:警察署に向かう
2:沖一也、アインハルトと共に行動して、今度こそみんなを守り抜く。
3:後で孤門やアインハルトと警察署で落ち合い、情報交換会議をする。
4:仲間を捜す
5:ダークプリキュアを説得し、救ってあげたい
[備考]
※参戦時期は砂漠の使徒との決戦終了後、エピローグ前。但しDX3の出来事は経験しています。
※主催陣にブラックホールあるいはそれに匹敵・凌駕する存在がいると考えています。
※OP会場でゆりの姿を確認しその様子から彼女が殺し合いに乗っている可能性に気付いています。
※参加者の時間軸の差異に気付いています。
※えりかの死地で何かを感じました。
※丈瑠の手紙を見たことで、彼が殺し合いに乗っていた可能性が高いと考えています。



【血祭ドウコク@侍戦隊シンケンジャー】
[状態]:健康、苛立ち、胴体に刺し傷
[装備]:降竜蓋世刀@侍戦隊シンケンジャー
[道具]:姫矢の首輪
[思考]
基本:その時の気分で皆殺し
0:目の前の5人を殺す
1:首輪を解除できる人間やシンケンジャーを捜す
2:昇竜抜山刀を持ってるヤツを見つけ出し、殺して取り返す
3:シンケンジャーを殺す
4:加頭を殺す
5:アクマロも殺す
[備考]
※第四十八幕以降からの参戦です。よって、水切れを起こしません。
※ザルバが意思を持っていることに気づいていません。

65 ◆OmtW54r7Tc:2013/03/06(水) 01:26:08 ID:dgZ.3Dck0
投下終了です

66名無しさん:2013/03/06(水) 10:24:10 ID:LJ00HcfMO
投下乙です。ある意味では丁度6VS1だが、そのままで終わるとも限らないのがなぁ

というか端から見たらかなぶり殺しだろこれwニート大将の実力はともかくとして

67 ◆gry038wOvE:2013/03/06(水) 16:46:59 ID:yQA.mQ9k0
投下乙です。
御大将がようやくバトルか…。
シンケンジャーみたいな集団ヒーローと戦ってきたからどうなるかわからないな…。
バトルも何もしてないからほとんど健康だし。

あと、一か所だけ修正があります。
杏子の状態表に「アンフォンス」って書いてありますが、これはアンファンスですね。

では、自分も投下します。

68第二回放送(裏) ◆gry038wOvE:2013/03/06(水) 16:47:42 ID:yQA.mQ9k0



 薄暗い闇の中で、安楽椅子にもたれながらゆらゆらと揺れている男がいた。
 欧州貴族風の出で立ちに、よく見ると周囲は多くの資料で埋め尽くされている書斎のような場所であったため、一見するとここがヨーロッパかどこかなのかと勘違いするような光景であった。
 実を言うと、ここがどこなのかはまだ判明しない。
 そもそも、我々の世界の常識で見て良い場所なのか……と考えても悩まされる場所だ。我々の住まう地球のどこかなのか、
 あるいは宇宙の果てにたどり着いた時、またそこにある大量の地球のどこかなのか。
 それとも、ここは星ですらない次元の狭間なのか。
 もしかすれば本当に欧州のどこかなのか。
 一見するとありえない例も挙げられたが、それを否定し切れる材料はない。
 とにかく、そのどこだかもわからない場所で、その男は、既に殺し合いから十二時間が経過しようというのに、妙に落ち着いた面持で本を読んでいた。
 紳士の立ち振る舞いか、あるいは数百年生きた者の余裕か、彼は「その出来事」の後でも、いやに落ち着いて見えた。


(キュアムーンライト……)


 キュアマリンに続き、また、敵が一人死んだ。
 決して、喜ばしいことではなかった。
 そう、彼────サラマンダー男爵にとっては、キュアムーンライト・月影ゆりの死は決して喜ばしいことではなかった。

 四百年という年月、己の存在を探し続けたサラマンダー男爵にとって、僅か数時間の出会いでしかなかった現代のプリキュアは、本来大して目に映るものではなかったはずだ。
 しかし、どうやらあの戦いはサラマンダー男爵にとって、特別なひと時だったらしい。
 キュアムーンライトが殺し合いに乗ったと知った時も、彼女がこうして“妹”を庇って死んだと知った時も、彼は心の中の動揺を抑えることができなかった。
 落ち着いているようで、決して落ち着いてはいないのだ。
 本人は、平然と本を読んでいるように見えても、その中に出てくる言葉を読み流しており、ほとんど頭に入ってはいなかった。
 そのうち、自分が管理している機械の方に目を向け始めた。


「お前はいいよなぁ……」


 机上の鳥籠の中で羽ばたくエクストリームメモリを見つめながら、サラマンダー男爵は言う。この籠は、特殊性でエクストリームメモリは決してこの籠から逃れられない。
 この中に更に、フィリップという少年が存在し、仮面ライダーダブルの変身を助けているというのがまた面白い。この薄暗い部屋の中に籠があり、籠の中にエクストリームメモリがあり、エクストリームメモリの中には人がいる。脱しても脱しても、その先には檻があり、決して逃れられない。
 ……だが、それでも抵抗できるだけマシに見えた。
 とにかく、この籠の中にいるエクストリームメモリやフィリップには、いま明確な目標があり、それを果たそうとしている。
 二人には、左翔太郎を助けたいという気持ちがあり、そのために必死に羽ばたくことを許されている。フィリップに至っては、変身時の協力して仲間を助けることまでも許されているのだ。

69第二回放送(裏) ◆gry038wOvE:2013/03/06(水) 16:48:11 ID:yQA.mQ9k0

 サラマンダー男爵にはゲームに干渉することは勿論、ゲームに干渉しようとすることさえできず、ゲームが終わるのを待っている。
 こうして、「エクストリームメモリが殺し合いの会場にあってはならない」というルールを管理するのが彼の仕事であり、はっきり言えば殺し合いを前にほぼ何もできないのである。
 別に殺し合いを止めたいとは思っていない。知らないところで、好きにやればいい。
 ただ、できることならプリキュアとの決着をもっとマシな形でつけたいというのがサラマンダー男爵の想いであった。


(ま、無理か……。状況が状況だからな)


 彼がこうして、ゲームの主催者に協力するのは、また特別な事情があるからであった。
 退屈そうに、資料を眺め、安楽椅子に揺られる。たまに、こうしてエクストリームメモリを見つめ黄昏る。
 時には、他の仲間に呼ばれ、先ほどの放送のように駆り出され、半ば機械的に殺し合いの扇動をする。与えられた通りの台本をおおまかに記憶し、その通りに読み上げるだけだ。


「おい、仕事だ」


 そして、その仕事は不意に訪れる場合がある。今回がそれだ。
 ドアノブが開けられ、闇の向こうから、暗い声色の女性の声が聞こえる。
 この一室に、ノックもなく入ってくる女性……といえば、サラマンダー男爵の中では決まっていた。
 主催陣と参加者に関する資料もここにあり、その中でも、男性の部屋に容赦なく入ってくるのは彼女くらいしかいまい。
 なんと呼べばいいだろうか。
 一応、彼女の名前はラ・バルバ・デ、と云う。殺戮集団グロンギの怪人の一人ではあるが、彼女は積極的な殺人をしない。
 彼らが行う「ゲゲル」という理解不能な殺人ゲームのゲームマスター──すなわち、今のサラマンダー男爵の立場にある者である。
 サラマンダー男爵の中では、彼女の額にあるバラのタトゥから、「バラのタトゥの女」と覚えられていた。彼の頭の中ではあくまで「バラのタトゥの女」という通称の後に、ふと「ラ・バルバ・デ」という名前が思い出されるようになっていたのだ。
 彼女と口を利くことになるのは珍しい。彼女はどちらかといえば無口で、特にグロンギの仲間以外に口を出すことはなかった。


「私の放送の順番は終わったはずだが?」


 サラマンダー男爵が、机上に置いてある紅茶のカップに手をかけて、それをバルバに差し出す。バルバは、白い手袋ごしにそれを受け取り、両手でカップを持って、上品に紅茶を口に入れた。
 彼女は、バラのタトゥを持つ美しい女性の姿をしていたが、サラマンダー男爵は彼女の中から感情のようなものを見出すことができなかった。
 まあ、感情がないわけではないのだろう。
 彼女の資料を見た限りでは、「クウガ」以上に「リント」に興味を示す不思議な人物らしい。特に、参加者の中では「一条薫」という者に対する執着が深く、現在のところでは彼の行動に対する動揺はほぼなさそうだと言っていい。
 彼女は、紅茶を飲みほしてカップをサラマンダー男爵に手渡すと、また呟く。


「放送ではない。戦いの準備だ」

「戦い?」


 疑問だった。
 サラマンダー男爵の知る情報では、参加者への干渉は不可能なはずである。
 だから、殺し合いにおいては傍観という立場にあり、こうして放送の準備をしているのだ。
 何故、今戦いがあるのだろうか。
 その理由はすぐに、バルバの口から語られた。


「我々の中に、裏切り者が出た」


 バルバは、ぼそっと可愛げなく呟いた。
 笑みもなく、乾いた言葉が、主催の間で出た裏切り者の存在を示した。
 そして、殺し合いを円滑に進めるため、これを討たせようとしていた。



★ ★ ★ ★ ★

70第二回放送(裏) ◆gry038wOvE:2013/03/06(水) 16:48:39 ID:yQA.mQ9k0



「放せ! 年寄をなんだと思ってるんじゃ!!」


 バルバに案内された一室に来たサラマンダー男爵の目には、汚い黒い和服を着た小さな老人が、先ほどエクストリームメモリを入れていた籠に入れられて監禁されている姿が映った。
 他には、サラマンダー男爵とバルバを除けば、彼しか見当たらなかった。ただ、誰かの気配は他にもあった。
 サラマンダー男爵は、その姿を見て呆れたようにため息を吐く。


(裏切ったのはこの老人か)


 ……何となく予想はついていた。
 彼が主催者に協力した理由は、「大量の女性モノの下着を渡された」という実にくだらないものだった。それに惹かれて殺し合いの主催者となり、それから先は彼もほとんど遊んでいたらしい。
 そんな理由で殺し合いの主催など長続きするわけがないし、その参加者に親しい知り合いがいるというなら尚更である。
 実のところ、主催陣営には、「何故連れてこられたのかわからない」者も数名いて、この老人もその一人だった。
 サラマンダー男爵は、自分もまたその一人だと感じていたし、この男に対する憐みは尽きなかった。


「よう、じいさん……なんだっけ? 白菜さん……だったかな」

「八宝斎じゃ!!」

「そうか。八宝斎さんとやら、今度は一体どうしたんだ?」


 サラマンダー男爵は、この男にも多少興味はあったし、比較的フレンドリーな風に話しかけていた。その実、サラマンダー男爵の彼に対する感情は乾いたものでしかなかったので、サラマンダー男爵の目に感情はなかった。
 人と話しているというより、猫に話しかけているようだった。


「それは、我々の口から説明しよう」


 ラ・バルバ・デとともにこの殺し合いの主催を行うグロンギ怪人──ラ・ドルド・グが、闇の中から口を出す。先ほどからこの部屋で感じていた人の気配は、彼か。
 宗教の教徒のように肌を布で覆った外見は、かなり印象深いものだった。
 確か、グロンギの「ラ」の階級の者は、高い戦闘力を誇りながらも、あくまでゲームマスターとして君臨し続ける者ばかりだったはずだ。
 ラ・ドルド・グも、コンドルの怪人でありながら、あくまでこの場ではこうしてゲームの行く末を見守るだけの存在であった。


「……そのリントは、早乙女乱馬とパンスト太郎の死を前に、気が変わったらしい」

「そして、暴力により反逆を企てようとした」


 ドルドの言葉に、バルバが付け加える。
 ドルドのゆっくりとした言い回しに、腹が立ったのだろうか。
 二人とも、日本語慣れしたのがかなり最近であるため、いずれも少しゆっくりとした口調であるのは変わらないが、バルバの方が少し聞き取りやすかった。


「……で、私に何をさせようというんだ?」


 大方、予想はついていたが、サラマンダー男爵は彼ら二人に聞いた。


「ゲゲルを侵した者をどうするかは決まっている。死だ」


 すなわち、この老人をサラマンダー男爵の手で殺せという事だった。
 時刻は12時を回った。放送が始まる時刻である。
 この状況を面白がりそうなニードルは、放送を読んでいる頃だろう。
 サラマンダー男爵としても、なぜ突然自分がそんなことをさせられるのか、状況が飲めなかった。
 他にも適任はいるはずだ。
 この時間は、ニードルや加頭順以外はほとんど開いているはずなのだ。


「待ちたまえ。事情も知らずに殺してしまうのは、私の主義に合わない」


 だが、疑問を抱きつつも、結局、彼を殺すことに抵抗はしない。
 ただ、彼の事情も聞いておきたいと思っていた。


「……好きにしろ。ただし、放送が終わるまでには確実に殺せ」

71第二回放送(裏) ◆gry038wOvE:2013/03/06(水) 16:49:18 ID:yQA.mQ9k0



「放せ! 年寄をなんだと思ってるんじゃ!!」


 バルバに案内された一室に来たサラマンダー男爵の目には、汚い黒い和服を着た小さな老人が、先ほどエクストリームメモリを入れていた籠に入れられて監禁されている姿が映った。
 他には、サラマンダー男爵とバルバを除けば、彼しか見当たらなかった。ただ、誰かの気配は他にもあった。
 サラマンダー男爵は、その姿を見て呆れたようにため息を吐く。


(裏切ったのはこの老人か)


 ……何となく予想はついていた。
 彼が主催者に協力した理由は、「大量の女性モノの下着を渡された」という実にくだらないものだった。それに惹かれて殺し合いの主催者となり、それから先は彼もほとんど遊んでいたらしい。
 そんな理由で殺し合いの主催など長続きするわけがないし、その参加者に親しい知り合いがいるというなら尚更である。
 実のところ、主催陣営には、「何故連れてこられたのかわからない」者も数名いて、この老人もその一人だった。
 サラマンダー男爵は、自分もまたその一人だと感じていたし、この男に対する憐みは尽きなかった。


「よう、じいさん……なんだっけ? 白菜さん……だったかな」

「八宝斎じゃ!!」

「そうか。八宝斎さんとやら、今度は一体どうしたんだ?」


 サラマンダー男爵は、この男にも多少興味はあったし、比較的フレンドリーな風に話しかけていた。その実、サラマンダー男爵の彼に対する感情は乾いたものでしかなかったので、サラマンダー男爵の目に感情はなかった。
 人と話しているというより、猫に話しかけているようだった。


「それは、我々の口から説明しよう」


 ラ・バルバ・デとともにこの殺し合いの主催を行うグロンギ怪人──ラ・ドルド・グが、闇の中から口を出す。先ほどからこの部屋で感じていた人の気配は、彼か。
 宗教の教徒のように肌を布で覆った外見は、かなり印象深いものだった。
 確か、グロンギの「ラ」の階級の者は、高い戦闘力を誇りながらも、あくまでゲームマスターとして君臨し続ける者ばかりだったはずだ。
 ラ・ドルド・グも、コンドルの怪人でありながら、あくまでこの場ではこうしてゲームの行く末を見守るだけの存在であった。


「……そのリントは、早乙女乱馬とパンスト太郎の死を前に、気が変わったらしい」

「そして、暴力により反逆を企てようとした」


 ドルドの言葉に、バルバが付け加える。
 ドルドのゆっくりとした言い回しに、腹が立ったのだろうか。
 二人とも、日本語慣れしたのがかなり最近であるため、いずれも少しゆっくりとした口調であるのは変わらないが、バルバの方が少し聞き取りやすかった。


「……で、私に何をさせようというんだ?」


 大方、予想はついていたが、サラマンダー男爵は彼ら二人に聞いた。


「ゲゲルを侵した者をどうするかは決まっている。死だ」


 すなわち、この老人をサラマンダー男爵の手で殺せという事だった。
 時刻は12時を回った。放送が始まる時刻である。
 この状況を面白がりそうなニードルは、放送を読んでいる頃だろう。
 サラマンダー男爵としても、なぜ突然自分がそんなことをさせられるのか、状況が飲めなかった。
 他にも適任はいるはずだ。
 この時間は、ニードルや加頭順以外はほとんど開いているはずなのだ。


「待ちたまえ。事情も知らずに殺してしまうのは、私の主義に合わない」


 だが、疑問を抱きつつも、結局、彼を殺すことに抵抗はしない。
 ただ、彼の事情も聞いておきたいと思っていた。


「……好きにしろ。ただし、放送が終わるまでには確実に殺せ」

72第二回放送(裏) ◆gry038wOvE:2013/03/06(水) 16:49:58 ID:yQA.mQ9k0


 ドルドはそう言って、しばらくサラマンダー男爵を見つめた。
 サラマンダー男爵は、また八宝斎に対して、飄々とした口調で幾つか質問をすることにした。


「……なあ、じいさん。なんだって裏切ろうなんて考えたんだ?」

「ふざけるな! お前たちが、ワシの可愛い乱馬とパンスト太郎を……!」


 八宝斎にとって、乱馬は弟子であり、パンスト太郎は彼が名前をつけた子のようなものだった。
 実際は、八宝斎の日頃の行いもあって、乱馬にもパンスト太郎にもかなり嫌われていたし、パンスト太郎に至っては、八宝斎が原因で人生を狂わされた挙句、この殺し合いに乗る結果になってしまったのだが、八宝斎は彼らが嫌いではなかったし、むしろ彼らには好意的な感情を抱いていたはずだ。
 パンスト太郎の名前も、八宝斎自身は良かれと思ってつけた名前であった。


(殺し合いに参加させるって時点で、普通は抵抗するもんだが……)


 乱馬やパンスト太郎はこの殺し合いに巻き込まれ、八宝斎はその殺し合いの主催者に嬉々として協力していた者である。
 その立場からわかるが、八宝斎には本来、今さら刃向う資格などないはずだ。


 サラマンダー男爵には理解しがたかったが、八宝斎自身は乱馬やパンスト太郎ならば問題なく勝ち進むだろうと考えていたのである。
 八宝斎も、彼らの強さはよく理解している。ともに巻き込まれている天道あかねについても同様だった。
 で、結局のところ、八宝斎は彼らに対する「修行」として、この殺し合いで戦いを架していた。
 内容の性質の悪さはわかっていたが、強者と戦う絶好のチャンスでもあり、乱馬たちが更に強くなる手助けをしているつもりもあった。
 だから、死ぬなど一切思っていなかったのである。


「シャンプーちゃんが死んだ時からずっとそうじゃ……! この殺し合いはおかしい!! 乱馬たちでは全然勝ち残れないではないか!」

「あのなぁ、じいさん……そりゃ自分の知り合いが必ず勝てるなんて保障がどこにもないだろ……だいたい、女の下着なんかで殺し合いに協力したあんたも共犯だろう」

「女の下着“なんか”とは何じゃ!! ブラジャーとパンティーにはワシの夢が」


 ズガンッ。


 サラマンダー男爵のステッキが八宝斎の頭を貫き、結果として彼らの会話──そして、八宝斎の一生はそこで終了した。
 これ以上の会話は無駄である……とはっきりわかったのだ。
 サラマンダー男爵は、八宝斎の目線があった場所に身体の高さを合わせるのをやめた。きっちりとした姿勢で、彼はバルバたちの方を向く。
 そして、血の滴るステッキを抜き、上品にハンカチで拭っていく。
 放送が終わるまで、まだ少しあったかもしれない。


「……おい。何故、私にこの役目をやらせた?」

73第二回放送(裏) ◆gry038wOvE:2013/03/06(水) 16:50:31 ID:yQA.mQ9k0


 サラマンダー男爵は問う。
 バルバとドルドは、そのまま黙っている。──彼らは知ったうえで黙っているのだろうか。
 それとも、知らないから黙っているのだろうか。
 あくまで彼らは詳しい事情を知らず、上からの命令でサラマンダー男爵を呼び寄せただけ……という可能性もあるだろう。
 グロンギは、強引に他人に殺人を強要するような集団ではないはずだ。
 純粋に殺人を愉しみ、彼らはゲームマスターとしての行動をする。
 ゆえに、サラマンダー男爵は彼らに問うても無駄だとわかり、そちらに目を向けるのをやめた。
 それと同時に、なぜ自分がこの役目を担うことになったのか、サラマンダー男爵は理解した。


「………………なるほど。オリヴィエか」


 サラマンダー男爵は悟る。
 八宝斎が裏切った理由は、要するに親しい人間の死によるものだった。
 サラマンダー男爵もまた同じように、キュアムーンライトの死に動揺をしていた。
 同じように裏切る可能性を孕み、それを生み出すか生み出さぬかの瀬戸際にあった者たちだ。
 そして、サラマンダー男爵にはそれを生み出せない理由があった。それによって、彼は忠実にゲームマスターとして行動し続けた。
 オリヴィエ……その存在が、サラマンダー男爵の行動を制限していたのである。


「私が逆らったら、オリヴィエを殺めるのは私自身……この老人が今度はオリヴィエになる……そう言いたいんだろう?」


 これだけの兵たちを集め、その強さに制限まで施す主催者には、洗脳くらい、造作もないことである。
 あるいは、もっと性質の悪いものでは、意思を持ちながら、身体が動かせずにオリヴィエの命を殺めさせられるという方法もあるかもしれない。
 それがどんな方法によるものかはわからない。
 八宝斎はサラマンダー男爵に対する見せしめであり、また、サラマンダー男爵がこの手で、オリヴィエを殺害する暗示ともとれた。
 少なくとも、「あのお方」と呼ばれる真のゲームマスターならどんな冷酷な手を使うかわからない。


「……心配せずとも、私には逆らう気はないと伝えておけ。こうはなりたくないからな」


 サラマンダー男爵は、その籠の中で息絶え、血の海を伸ばしていく八宝斎を見ながらそう言った。
 おそらく、彼は純粋に八宝斎を憎む気持ちも持っていたことだろう。そのため、突発的に八宝斎を殺した。
 彼が下着という実にくだらない目的で殺し合いの主催に回り、都合よく掌を返す姿が、サラマンダー男爵には許しがたかった。
 支え合う仲間を人質にされ、抗うこともできない彼には……。



★ ★ ★ ★ ★



「美味いか?」


 ラ・ドルド・グはラ・バルバ・デにそう訊いた。
 あの場の死体を片づけ、自分たちの部屋に戻った二人であるが、バルバは支給された紅茶を飲んでいた。
 殺し合いの現場では、桃園ラブと巴マミが飲んでいたあの紅茶を温めたようなものである。
 サラマンダー男爵に言われたとおりに報告する必要はなかった。あの場での出来事は、加頭が仕掛けた道具で撮影・録音が施されており、加頭は放送終了後にそれを回収して主催者に見せる予定だった。


「……飲むか?」

「いや、いい」


 ドルドは、バルバに差し出されたティーカップを拒否する。
 だいたい、布で口も覆われているため、彼が紅茶を口に流し込むことは困難だった。
 バルバは、この紅茶が少し気に入っているようだった。サラマンダー男爵に差し出された紅茶が、案外美味かったせいだろうか。
 ドルドはそれを無視して、自分が気になったことを口にする。


「このゲゲル、ダグバにしては調子が悪いな」


 現在、殺し合いの場ではガドルが三人、ダグバが二人を殺害している。
 しかし、グロンギの王たるダグバがこの人数でガドルに負けているとは、グロンギ族の彼らとしては考え難いことである。
 少なくともガドルは、ダグバに見合うほどの実力を持ってはいない。
 あくまでダグバから見ればガドルは格下にすぎない存在のはずだ。

74第二回放送(裏) ◆gry038wOvE:2013/03/06(水) 16:52:35 ID:yQA.mQ9k0


「……それだけ、制限の力が強力ということだ」

「制限か。余計なものがなければ、今頃ダグバが殺し合いの覇者となっていたかもしれん」

「……さあな。このゲゲルには、なかなか面白いリントも参加している」


 バルバも一通り資料は読んでいた。
 彼女が興味を惹くのは、やはりリントに関する記述だ。
 ダグバがこの短時間で全員を殺せたかという点においては、バルバも断言はできなかった。
 それだけ、この場にいるリントたちは強い。
 場合によっては、リントでない者──たとえるなら外道衆やアンノウンハンドなども存在しており、ダグバが勝ち進んでいくには障害となるものも多く見られた。


「それに、もう封印は解かれた」


 机上に広げられた革紙に、グロンギの紋章が描かれている。
 これはバルバの所持品である。
 バルバのタトゥーと同じ紋章。
 ダグバのタトゥーと同じ紋章。
 この二つが白色で描かれた下に、一つ真っ赤な紋章があった。
 それは、彼らと同様の階級の戦士であることを意味していた。


「……時が来て、奴の封印が完全に解かれれば、ダグバもどうなるかわからない」


 時が来て、バルバの指定した条件が満たされれば、ダグバと同じ「ン」の戦士が解放される──その戦士の紋章こそが、この革紙に描かれている赤い紋章である。

 そう、その条件を満たすか満たさぬか。
 それがバルバの提案した、この殺し合いの中でのザギバス・ゲゲルであった。

 それは誰も封印を解くことが無ければ、そのイベントが起きることなくゲームそのものが終了する可能性のあるものだったが、バラゴによって封印が解かれた今、特定の条件を満たせばその戦士が解放されるようになっていた。
 あとは、バルバもドルドもゆっくりとそれを待つだけだった。



★ ★ ★ ★ ★



「結局、俺は“父親”か……」


 エクストリームメモリを見つめながら、サラマンダー男爵は呟く。
 子の命を狙われた父は、身動きが取れない。
 たとえ、好敵手がこのまま全員死ぬとしても、彼はここで彼女たちの動向を眺めるスタンスはやめようとしないだろう。


(しかし、あいつも父親をああまで望んでいたとはな……)


 月影ゆりの行動を思い出す。
 彼もまた、父のために生きた子だった。
 親子──その言葉の持つ深さに、サラマンダー男爵は思わず我を忘れていたことに気づき、また別の方向に気を向けた。


「フィリップ……か」


 エクストリームメモリに監禁されているフィリップも同様だ。
 フィリップには長らく父や母がいなかった。
 彼の場合は求めたのが母だったが、そんなことはどうでもいい。
 結局、彼が見つけた父や母、姉──すべては、一時だけの幻だった。
 今はもう、ここで再び出会えるかもしれなかった冴子を含め、誰もいない。


「……」


 八宝斎には子はいなかったが、産湯につけたパンスト太郎を、彼はどう思っていたのだろう。
 その死が彼を無茶な行動に走らせた。
 また、己の力を自負するほど超人的な身体能力を有する八宝斎には、反逆しても逃げ切れるという自信があったのだろう。
 何せ、爆弾を放り込まれても死なない男だ。
 だから、ああして実行してみせた。
 そして、結果的にあの籠に捕えられ、ほとんど身動きもとれないままあっさりと逝った。


(まあいい……終わるまで、せいぜい数日の辛抱だ)


 サラマンダー男爵は、そう言い聞かせて、本棚から一冊、適当な本を取り出した。
 安楽椅子に揺られながら、彼はそのページをめくっていく。





※主催には、【ラ・バルバ・デ(バラのタトゥの女)@仮面ライダークウガ】、【ラ・ドルド・グ@仮面ライダークウガ】がいます。
※主催には、【八宝斎@らんま1/2】もいましたが、サラマンダー男爵によって殺害されました。
※1日目の昼にバラゴが解いたグロンギ遺跡の封印が原因で、ゲーム内でバルバたちが指定した条件が発動すると「ン」のグロンギ怪人が復活します。その条件は不明です。
 (バルバとドルドは、それが今回におけるザギバス・ゲゲルと考えています)

75 ◆gry038wOvE:2013/03/06(水) 16:56:07 ID:yQA.mQ9k0
投下終了です。
>>70-71が被ってしまいましたが、これはミスです。

予約スレで言ったとおり、サラマンダーのゆりの死への思いやグロンギの封印解除(こちらは書いてる途中で気付いたのですが)に関して、「第二回放送」で触れられなかったので、その点の補完をするつもりで書きました。
時系列順では、「第二回放送」の直後、「分身できると思った?残念!枯れちゃいました!」の前(第二回放送までの本編SS)に組み込んでください。

76名無しさん:2013/03/06(水) 20:11:22 ID:dgZ.3Dck0
投下乙。
八宝菜てめえwww

77名無しさん:2013/03/06(水) 20:27:29 ID:FGTBk54g0
お二人とも投下乙です!
ドウコクがついに動くか。数では勝ってるけど、みんなボロボロだよ……
杏子もウルトラマンに変身したとはいえ、戦えるかな?w

まさか八宝菜まで主催陣営にいたとはww しかもそんな下らない理由でかよww
そりゃ男爵達も怒るな。

78名無しさん:2013/03/06(水) 21:17:02 ID:QqMdMo1g0
新ジャンル:下着で主催参加

79名無しさん:2013/03/06(水) 21:18:51 ID:LJ00HcfMO
投下乙です。なにはともあれざまあw

80名無しさん:2013/03/06(水) 21:19:24 ID:/sBRw2d60
投下乙です

ドウコクと対主催組がとうとう激突か
そして杏子もウルトラマンに変身とかこのロワ特有の美味しいシチュだぜ

八宝菜ェ……
いや、原作のじいさんの思考を考えたら確かにやりそうだけど、だけど酷過ぎるぜw
ギャグ漫画キャラがここまでシリアス空間に妙な空気にさせるとかw

81名無しさん:2013/03/07(木) 13:38:55 ID:lVF1l91o0
誰か八方斎の名前を正しく書いてあげろよwww

82名無しさん:2013/03/08(金) 03:32:49 ID:9ttrS.gk0
予約来てるなあ

83 ◆gry038wOvE:2013/03/13(水) 16:59:36 ID:VA9fjViE0
では、予約した分を投下します。

84あっ人間が焦げる!電撃怪人出現 ◆gry038wOvE:2013/03/13(水) 17:01:24 ID:VA9fjViE0



 仮面ライダースーパー1、沖一也は待った。
 青年──ン・ダグバ・ゼバが何らかのアクションを示すことを。
 あそこから放たれているのは、確かに「邪気」だっただろう。
 しかし、ダグバは現状、何かをしようとはしていない。
 ダグバはいま、そこに座しているだけなのである。
 座している相手を奇襲することはできない。彼の外見は人間そのものだったし、一切何かをしようという姿がないのである。
 明確に敵と断定できる理由や根拠もなければ、悪事を働く様子もない。
 そんな相手に、攻撃をしかけることはできないし、変身を解き人間の姿で一度面会してみるのも気が引けた。


(放送まで十分……今、奴と戦えば、放送を聞きながら戦う事になるかもしれない)


 それに、彼が周囲に被害を及ぼそうとしないのは、おそらく放送を待っているからだ。
 沖も同様である。
 確かに、ここでダグバの正体を知り、戦闘に持ち込むのも良いかもしれない。
 だが、この残り時間ではたしてそれができるだろうか?
 スーパー1は、悩みながら時を待った。
 ダグバは、そんな彼の様子を気づいているのか、いないのか。
 不気味に笑いながら、名簿と地図を手に、ただ座っていた。



★ ★ ★ ★ ★



『初めまして、参加者の皆さん。私の名前はニードル』


 空中に現れたホログラフィの人物は、前回の放送とは違う人物だった。
 正反対という言葉を用いると良いだろう。その男は、サラマンダー男爵が漂わせていたどこか高貴な印象とは全く別の風体だった。
 ニードル。
 沖はまだ知らない人物だった。
 BADANなる組織の存在は知っていたが、この人物の放送ではBADANの名前が出てくることはなく、結果的に沖がその名に過敏に反応することはなかった。


『……以上、15名』


 沖は心の中で、名前を呼ばれた15名の参加者に黙祷する。
 早乙女乱馬、筋殻アクマロ、スバル・ナカジマ、園咲霧彦、月影ゆり、ティアナ・ランスター、東せつな、姫矢准、山吹祈里……知ってる名前はこれだけあった。
 そのほとんどに面識はなかった。
 警察署にいた人間では、早乙女乱馬という少年の名前を美希から聞いている。おさげ髪のチャイナ服で、妙に目立った風体の人間だった。
 彼もまた、あの警察署を離れ、そして、死んでしまった……。


「スバル……っ!!」


 スバルの名前も当然、気になった。彼女は、ノーザによる洗脳を受け、殺したくもない仲間をその手で殺させられた。……そして今、こうして死んでしまった。
 本当なら、救ってやりたかったのだが、彼女の死によってそれはできなくなってしまった。
 殺し合い。
 それは、またも悲しい人々を作ってしまった。
 アインハルトは、またも気に病んでしまうだろうか。──沖としては、すぐにでもアインハルトのいる「警察署」に向かいたかったが。


「……」


 沖一也の中にまく怒りは、とてつもなく強いものだった。
 まだ多くの人が、死に続けている。
 殺し合いを強要され、誰かがそれに乗って殺し合いを続けている。
 そう思うと、怒りと悲しみが同時に襲ってきた。

85あっ人間が焦げる!電撃怪人出現 ◆gry038wOvE:2013/03/13(水) 17:01:49 ID:VA9fjViE0


『13時に【H−9エリア】──』


 禁止エリアの放送も始まる。
 このH−9というエリアは、おそらく沖のいるエリアの付近──もしかすれば、沖が現在いるエリアそのものかもしれない。
 自分の現在地は、おそらくG−9、またはH−9のいずれかだろう。
 そして、あと僅か一時間でここを出なければ沖の首輪が爆破される。


(この首輪はたとえ人間でなくても死亡する特別なものだ……早く解除せねば)


 ただでさえ、沖の身体は首が吹っ飛んでも生きていられるような仕様ではない。
 この首輪爆弾の威力を考えるに、スーパー1に変身していたとしても爆破されるものだろう。
 スーパー1が首に巻くマフラーの下に、確かに首輪の感触が伝わってきた。
 ここに彼の命を握る爆弾が収まっている。
 そう考えると、たとえ彼が仮面ライダーであっても、恐ろしい気分にさせられた。今もこの首輪が鳴らしてくるニードルの不気味な音声が、彼を震わせる。


『それから、前回のボーナスですが……』


 ニードルの放送はまだ続く。
 ボーナス。そう、忘れてはいない。特殊な移動装置をそこに設置したという話だ。
 ヘリコプターやセスナの類だろうか。いや、下手をすると以前、宇宙で会ったあの機会な魔法陣のようなものだろうか。
 どうやら、それはまだ誰にも発見されることはなかったらしい。


(三つのヒントか……)


 沖は、その知恵を振り絞り、ニードルの出す問題の答えを解く。
 第一問の答え、これはおそらく、○の中に×を書き込むことでできる地図記号のことだろうか。ちょうど、地図上にも該当する場所があった。
 警察署。
 ここから近く、そして本来なら、孤門たちがいるはずの場所だ。
 何故、そこにいたはずの乱馬がいま、こうして死んでしまったのかも気がかりだったが、沖たちのように何らかの目的があってそこを離れた可能性もある。現に、乱馬以外の警察署にいた人物は死亡していない。
 そして、第一問のもう一つ答えは、沖の推定では「翠屋」である。これは、一つ前に比べると難易度も低い。色の組み合わせ方について知っているかというよりも、漢字が読めるか否かがカギだろうか。
 この二つの場所は、ちょうどマップの両端にあり、配置場所としてはベターである。おそらく、正解で間違いない。
 第二問の存在は、問題そのものの内容も、そこで示される意味も気がかりだった。


(隼人、結城……先輩たちの名前だ。それに、孤門という名前は……)


 これは間違いなく、一文字隼人と結城丈二、孤門一輝の名前を示していた。
 沖一也の名前にも存在するが、これはおそらく「数字」の問題だろう。
 五代雄介、孤門一輝、一条薫、一文字隼人、結城丈二。いずれもその名前に数字が入っており、それをニードルに言われたとおりに足せば式が完成する。
 答えは2になった。
 その移動手段は、二人もの人間の命を手にかけなければ使用できないのである。


(この答えと、みっつめのヒントを組み合わせるんだ……)


 沖が放送のヒントから得た事実はシンプルであった。


(そうだ……警察署が危ない……!!)


 警察署、または翠屋のいずれかの近くに、変身能力者を含む二人を殺害した人間が二人もいるということだ。
 移動手段ボーナスなど意にも介さず、沖はその危険性を疑った。


(警察署と翠屋……おそらく、人が多く集まるのは警察署の方だ!)


 警察署には、孤門が保護するたくさんの人間がいる。
 ヴィヴィオやアインハルトなど、沖も知る人物がまだ何人も残っているはずなのだ。
 そして、それだけ人が集まるのなら、危険な人物も集まる可能性がある。
 危険人物たちには何となく警察署という場所が避けられてきたかもしれないが、ここから先は違う。
 そこにボーナスがあると知った二人の人間がそこを狙う可能性があるのだ。


(奴も気になるが……今は、警察署が先決だっ!)


 スーパー1は、ダグバの方を一度は向きながらも、もっと明らかに危険な命たちのために駆け出した。
 そちらにいる人間の保護を最優先する。
 それが遅れたならば、きっと沖一也は後悔するだろう。

86あっ人間が焦げる!電撃怪人出現 ◆gry038wOvE:2013/03/13(水) 17:02:55 ID:VA9fjViE0


「ははははははっ!!」


 その時、不意に聞こえた笑い声に、スーパー1は振り向く。
 笑い声の主は、ダグバであった。スーパー1から、数メートルの距離で、ダグバは立っていた。
 何故笑っているのかはわからなかったが、突然笑いだした彼を見て、スーパー1は動きを止めた。


「君も、僕を笑顔にしてくれるかな?」


 ダグバは、物陰に隠れたスーパー1の存在に気が付いていた。
 ただ、放送を聞いて禁止エリアの場所を聞くために待っていた。
 そして、全ての放送が終わった今、そこにいるスーパー1の迎撃に向かうことにしたのである。
 白服の彼の姿は、剛健で不気味な怪物の姿へと変化していた。



★ ★ ★ ★ ★



 ン・ダグバ・ゼバは、最強でありながら、知らないことが多すぎた。
 五代雄介。その死を、ダグバはクウガの死と直接的に結び付けなかったのである。
 クウガの正体など知る由もないし、ダグバ自身はそう簡単にクウガが死ぬとは思っていなかった。
 ダグバに隙があるとすれば、こうした放送から手に入れられる情報が少ないことだろうか。


 ボーナスを使う条件を持つ者でありながら、そのボーナスの存在についてよく知らなかった。
 グロンギである彼は、そもそも地図記号や三原色などにあまり詳しくはない。
 文学を嗜む者や音楽を嗜む者もいるグロンギだったが、ダグバはただ適当にふらふらと放浪するだけだった。リントの言葉は漢字や英語まで覚えているが、その細かい知識までは知らない。
 だから、地図記号などというものは知らないし、緑色の作り方も知らない。
 更に、たとえ漢字が読めて、ニードルの計算式が人の名前を示していると知っても、リントとは全く違う計算式を用い、引算の存在すら無いグロンギには、あんななぞなぞが解けるはずがなかったのである。
 数学に関しては、グロンギとリントで、解き方や数え方に大きな開きがあった。
 それを、咄嗟に名前に含まれた漢数字と照らし合わせて考え、解き方や数え方を理解するなどできなかった。
 彼が理解したのは、ある一定の人間を殺していれば、その移動手段が手に入るということだけである。
 しかし、それも特に強い興味はなかった。


 彼はただ、付近にいる敵と戦うことだけを考えていた。
 そう、放送前からダグバには気がかりだった。


 其処にいる、銀色の戦士──仮面ライダースーパー1のことが。



★ ★ ★ ★ ★



「笑顔……? 笑顔、だと……?」


 スーパー1は、ダグバが言った言葉を反芻した。
 何故、ここで笑顔が出てくるのか。
 その意味がわからなかった。
 笑顔──それは、楽しい時に生まれる表情だ。
 戦いの中で、彼は笑うというのか。──スーパー1は、人々の死を前に、怒り、悲しんでいるというのに。


「君は、クウガと会ったかな?」

「クウガ? それは一体……」


 スーパー1の様子を見て、ダグバは、彼がクウガと出会ってないことを理解した。


「……そっか」


 スーパー1の頭上に、不意に雷が降った。
 建物の影に隠れ、周囲からは観測できないであろう、小さな雷だったが、それほど器用に彼は天候を覆した。
 あたりの空は晴れているのに、スーパー1の頭上にだけ降る雷。それは、どう考えても異常であり、スーパー1に対する攻撃的な意思を感じるものだった。
 スーパー1の触覚に、顔に、身体に、順に電撃が流れていく。


「ぐあああああああああああああっ……!!」


 全身に火花が散り、身体中の機械的な部分は軒並み、一時的なショートを起こす。
 雷がやんだ瞬間、スーパー1は立つ力を失い、膝をついて右の拳を地面につくことで体重を支えた。
 ダグバの手が、上空に掲げられている。
 その様子から、薄々、彼が今の雷鳴を轟かせた張本人なのだと感じた。


「くっ……! チェンジ! 冷熱ハンド!」


 スーパー1も、負けじとファイブハンドを緑色の冷熱ハンドに変え、立ち上がってダグバにその指先を向ける。


「冷凍ガス発射!」


 次の瞬間、ダグバの身体を真っ白なガスが包む。
 ダグバが自然の姿を操作して天候に異常を起こすのならば、スーパー1は科学の力を用いて天候を操作する。
 この冷凍ガスのほかにも、電撃、火炎なども発射できる。ある意味では、ダグバ以上に優れた能力をスーパー1は有していた。
 ただ、本来それは戦うために作られた力ではなかったが。

87あっ人間が焦げる!電撃怪人出現 ◆gry038wOvE:2013/03/13(水) 17:04:20 ID:VA9fjViE0


「ハァッ!!」


 冷凍ガスを噴射してダグバが怯んだ隙に、スーパー1は彼の懐まで飛び込み、赤心少林拳梅花の型を叩き込んだ。
 ダグバの身体は、ほとんどその威圧によって吹き飛ぶ。
 スーパー1の拳が命中したかしないかの寸前のところで、まるでスーパー1の周囲を半円のオーラが包み込んだかのように、ダグバの全身が浮き上がったのだ。
 浮き上がったダグバは、そのまま空中でひらりと身をひるがえして地上に難なく降り立った。


「チェンジ! エレキハンド!」


 スーパー1の腕は、青色のエレキハンドへと変わる。


「エレキ光線!」


 その指先から放たれたのは、3億ボルトの電流であった。
 先ほどの仕返しとばかりに、ダグバにその電流を浴びせる。
 そして、その威力は、通常のエレキ光線の比ではない。


(そう……先ほどの冷凍ガスによって凍った奴の身体にエレキ光線を送り込めば、体中に渡った水滴を通して強烈な電撃が起こる!)


 冷熱ハンドからエレキハンドに切り替えた際の利点である。
 戦闘面では、こうした活用方法もあるのだ。
 エレキ光線は、有無を言わさずにダグバに向かって放射される。光のような速度で到達するエレキ光線を、彼が避けられるはずはなかった。


「あああああああああっ……!!!」


 流石のダグバも、抵抗できずにエレキ光線を浴び続け、かなりのダメージを受けている。ダグバの口からは人のような悲鳴が出てきて、身体全体に電撃がいきわたっているようだった。
 このまま畳み掛け、怯んだ所にトドメを刺したいところだが……。


(くっ……! こんな時に……)


 エレキ光線の威力が、だんだんと弱まっていく。
 3億ボルトの強烈な電圧が、やがて弱弱しく光り始め、ところどころで光が途切れ始めた。
 まるで、電池が切れかけたような、点滅を始めているような……そんな状態である。彼の中で、何かが消え始めていた。
 そして、やがて、電池が完全に切れたように、エレキハンドから注がれる電撃が切れる。
 ダグバは、ようやく苦しみから解放されたように身体の力を抜いた。電撃によって、彼の身体は固定されたように動かなかったのだ。
 そんなダグバの様子を見ながら、スーパー1は心の中で舌打ちする。


(……もう殺し合いが始まって12時間は経つ。いや、厳密にはここに連れてこられる前の拉致されていた期間もそうだ)


 その時間のうち、沖一也は四回も仮面ライダースーパー1に変身していた。


(そして、その間中……俺はチェックマシンによるメンテナンスを受けていない……!)


 そう、ゼクロスがまだ現れていない時系列の仮面ライダーではスペック上、最強を誇るスーパー1の最大の弱点が現れ始めたのである。
 スーパー1は、確かにスペック上では、最強クラスの仮面ライダーだったかもしれない。
 だが、その一見完璧に見えるスペックを保つために、定期的なメンテナンスと調整・修復を受けなければならないのである。それを怠れば、エネルギーが落ち、最悪の場合、変身不能に陥る。
 長期戦を避け、こうして早々に畳み掛ける作戦を取ったのも、スーパー1の中に焦りが生じ始めていたからだった。しばらくは行けると思っていたが、どうやらあらゆる機能が鈍り始めているようだった。
 ファイブハンドの能力が失われたのも、これが原因だった。


(だが、ここで戦いをやめるわけにはいかない……!)


 しかし、たとえ、チェックマシンによるメンテナンスがなくとも、スーパー1には赤心少林拳がある。
 戦う術がある限りは、その身が粉になろうとも戦い続けるのが仮面ライダーの意志であった。
 赤心少林拳の構えをするとともに、基本形である銀色のパワーハンドに切り替えたスーパー1は、ダグバの方を睨んだ。
 彼はエレキ光線の停止とともに、スーパー1に向かって駆け出していた。全身の解放と同時に、攻撃を行おうというのだ。

88あっ人間が焦げる!電撃怪人出現 ◆gry038wOvE:2013/03/13(水) 17:05:42 ID:VA9fjViE0


「ははははははははっ!! ……面白いね、もっと僕を笑顔にしてよ!」


 ダグバの拳がスーパー1に向かって送り込まれる。
 が、スーパー1はそれを見切り、両腕を使ってその右腕を挟み込んだ。
 そして、左足を高く上げて、ダグバの顔にハイキックを叩き込む。
 美しいアーチを描いてから放たれるキックは、誰の目から見てもはっきりとダグバの顔に決め込まれていた。
 スーパー1にとっても、改心の蹴りだったはずだ。


「はははははははははっ!!!」


 しかし、ダグバは、それを意にも介さず、左の拳をスーパー1の顔面に叩き込んだ。
 想定外に強いダメージに、スーパー1の身体の力が抜け、両腕はダグバの右腕を離してしまった。
 その右拳が、今度はスーパー1の胸部を叩き割った。
 スーパー1の身体が後方によろよろと退いて行った。
 どうやら、スーパー1の機能の低下が著しくなっているようだ。
 しかし、それだけではないようだった。それを計算に入れても、これだけの威力を持つのは、スーパー1にとって違和感を感じざるを得ないものであった。


(な、なんだ……こいつの強さは)


 スーパー1は彼の圧倒的な能力に疑問を持つ。
 先ほど、スーパー1が今よりも充実したコンディションだった時とはまるで違う。
 メンテナンス不足による性能の低下を抜きにしても、戦力差が拡大しているように見えたのだ。
 先ほど、スーパー1がダグバの身体を吹き飛ばした時と、手ごたえがまるで違う。
 まるで、生身で鋼鉄を蹴っているかのような状態だった。ダグバが怯んだ様子も、ましてや微かにでも動いた様子がなかった。
 どうも、スーパー1の拳がダグバには効いていないようなのだ。


「……あれ? なんだか、さっきよりもっと強くなった気がするよ」


 ダグバ自身も、はっきりとはその力の意味に気づいていなかった。
 ただ、スーパー1のエレキ光線を受けた直後に、自分の身体から不思議な力が起こったので、ダグバ自身もなんとなく悟り始めていた。
 何故、スーパー1の一撃はダグバに全く効かなかったのだろうか。
 充分なヒントを持ち合わせているダグバは、少し考察を始める。
 現代ではなぜか金色のラインが入っていたクウガ。そのクウガの力は、小さな雷──電撃を起こすものだった。
 また、ガドルも何らかの効果でそのクウガに太刀打ちする力を得たというのも知った。
 ダグバの胸部は、うっすらと金色の輝きを見せていた。
 その全ての情報とともに、ダグバは全て理解した。


「……そうか、僕たちはこの力で強くなるんだね」


 ダグバは、何が自分を強くしたのかを知り、スーパー1に対して、「強くなるための儀式」を行って見せた。
 スーパー1の上空に、またも電気の柱が落ちる。
 ダグバの電撃が、スーパー1の身体を飲み込む。
 そう、これだ。
 電気、電撃、雷だ。

89あっ人間が焦げる!電撃怪人出現 ◆gry038wOvE:2013/03/13(水) 17:06:09 ID:VA9fjViE0


「ぐぁぁぁぁぁっ……!!」


 スーパー1は雄叫びが響く。
 スーパー1自身も、ダグバの様子から、自分の失策に気が付いた。
 この力──というのが、電撃のことならば、エレキハンドが当人たちの予想に反して、ダグバの強化に繋がってしまったということなのである。

 ────電気によって、強くなる。

 それは、彼らのように「アマダム」を埋め込まれた者の性質の一つだった。
 リントの戦士・クウガが電気ショックで強くなったこと、また、ゴ・ガドル・バがそれをヒントに力を得て電撃身体に進化することができたこと。それらが、その証明だった。
 超古代には、雷以外に電気などという存在はないので、知られていなかった力であった。身近に電気が作られることはないし、当然電気ショックなどを受けることは不可能である。
 雷を起こす能力を有するダグバでさえも、その力を知ってはいなかった。
 彼の起こす雷を受ける者は軒並み死亡していたし、ダグバ自身が自分の身体に雷を落とすことなどなかったからだ。
 ガドルも、「クウガから新たな力のヒントを得た」と言っただけで、身体の強化がどのようにして起こったのかは教えなかったし、よもするとダグバにとって、謎のまま終わったかもしれない。
 ダグバは、全てを悟り、ニヤリと笑いながら、電撃の威力を強める。


「ぐああああああああああああああああああああっっっ!!」


 スーパー1の叫びのボリュームは強くなる。
 しかし、それとは裏腹に、ダグバは静かに言った。


「君も、もっと強くなって、僕を笑顔にしてよ」


 ダグバは、その電撃に攻撃的な意思も込めていたが、同時に、電撃を浴びせることによって、スーパー1の強化を図ろうとしていた。
 彼は、クウガやグロンギのようにベルトを有し、まるで人間以外の生物のような姿をしている彼も、同じように電撃で進化すると思ったのだろう。
 もっと強い相手と戦い、笑顔になりたいというダグバの身勝手から出た攻撃でもあり、同時に、スーパー1にもっと強くなってほしい……と願う攻撃でもあった。
 しかし、そんなダグバの思いとは裏腹に、浴びれば浴びるほどにスーパー1の力は失われていく。


「ははははははははははっ!!!」


 ダグバは、電撃を止ませた。まあ、結局のところスーパー1は電撃によって強化されなかった。ただ、はっきり言えば、それならそれで構わない。
 そのまま、ふらふらになったスーパー1の首を掴み、その身体を強引に起き上がらせる。
 スーパー1の姿は、到底生きているようには見えなかったが、外傷らしきものを見せずに生き延び、ダグバを見据えていた。
 人間ならば、一瞬で黒焦げの姿になっていただろう。


「……何故……お前、は……戦いながら、笑う……?」


 ボロボロの身体で、スーパー1はダグバに問うた。
 戦いながらも、ずっと疑問だったことである。
 その問いに、ダグバはあまりにもあっさりと答える。


「楽しいからだよ」

「楽しい……?」

「強い戦士と戦って、強い戦士を倒す。それが楽しいんだよ」


 スーパー1は、そのボロボロの身体をなんとか動かして、ダグバの胸部を突いた。手を広げたまま、真っ直ぐに包丁を突き刺すようにその胸を突き、ダグバの身体は抉られて血を流す。
 スーパー1は、その答えに何ともいえぬ怒りを感じ始めていた。
 ドグマ、ジンドグマ……彼らのように組織で動く人間や、メガール将軍のように何らかの憎しみや人間らしい感情を抱えた人間ならば、その行動が許されなくとも、どこか理解できるところがあったかもしれない。
 だが、「楽しい」という理由で人の命を奪い、人を傷つけ、それを笑う者──ダグバはそんな愉快犯だった。
 ダグバには、情や人間味というものが感じられなかったのだ。

90あっ人間が焦げる!電撃怪人出現 ◆gry038wOvE:2013/03/13(水) 17:08:08 ID:VA9fjViE0


「……君も、強いね」


 ダグバは、スーパー1の腕を身体から引き抜き、その身体を自分の身体から突き放した。
 スーパー1の身体は、崩れ落ちるように地面に落ちた。


「もっと強くなって、もっと僕を笑顔にしてよ……」


 ダグバの姿が、スーパー1の視界から消えていく。
 ダグバは、スーパー1が先ほど向かおうとしていたところへと歩いて行ったのだ。
 そう、警察署だ。
 放送の意味を考えるか考えないかは別として、ダグバはそちらに向かうことにしていた。
 スーパー1が、先ほどダグバを見つけながらも、ダグバを無視してそちらに向かっていった。……それが気がかりだったのだろう。
 そうまでして、そちらに向かおうとしたということは、警察署の方に何かがあるということ。
 それを確かめるために、ダグバはスーパー1にトドメを刺さずにそちらに向かったのである。


 また、ダグバ自身も、スーパー1が明らかに戦闘中に弱体化したことを見抜いていた。
 あの変化する腕を途中から一切使わず、ほとんど攻撃を受け続けるだけに終わったのは、何らかの弱体化が原因だと思えてならなかったのだ。
 ダグバの強化だけでなく、スーパー1にも弱体化が起こっているように見えた。
 そんな相手と戦うのは、つまらない。
 もっと、万全な戦士と戦う方が、ダグバにとっては面白いのだ。


(……行かせない……あんな奴を行かせるわけにはいかない! 奴より先回りして、俺がみんなを守らなければ……!)


 スーパー1は、メンテナンス不足に加えて、電撃によるダメージを受けた体を起こして、警察署側に向かって走り出した。
 走れるくらいの力は残っている。
 どれくらい戦えるかはわからないが、ともかく、孤門やあそこにいる子供たちを逃がさなければならない。
 なぞなぞの意味に気づいて逃げてくれれば、それでいい。
 ただ、早々に合流した方が良いのは確かだ。


(しかし……いずれチェックマシンによるメンテナンスを修復を受けなければ……。このままじゃマズい……どこかにチェックマシンがあるのか……?)


 スーパー1は、走りながら、そんなことも考えていた。
 このまま長期戦が予想されれば、変身が解け、この場での変身が不可能になる可能性も高い。
 とにかく、ファイブハンドや変身機構に支障が出始めた点だけは、何とかしなければならないようであった。

91あっ人間が焦げる!電撃怪人出現 ◆gry038wOvE:2013/03/13(水) 17:09:02 ID:VA9fjViE0


【1日目/日中】
【G-9/街】

【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】
[状態]:全身に極大のダメージ、胸部に刺傷(回復中)、ベルトの装飾品を破壊(それにより、完全体に変身不可) 、強い電気を浴びたことによる身体強化
[装備]:なし
[道具]:支給品一式×4(食料と水は3人分、祈里:食料と水を除く、霧彦)、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、スタンガン、ランダム支給品(ほむら1〜2(武器ではない)、祈里0〜1)
[思考]
基本:この状況を楽しむ。
0:完全体に変身できなくなったことへの苛立ち。
1:このまま警察署側に向かう
2:市街地を適当に歩いて、リント達を探す。
3:強い変身能力者たちに期待
[備考]
※参戦時期はクウガアルティメットフォームとの戦闘前です
※発火能力の威力は下がっています。少なくとも一撃で人間を焼き尽くすほどの威力はありません。空中から電撃を落とす能力も同様です。
※ベルトのバックル部を破壊されたため、中間体にしか変身できなくなりました。
※スーパー1のエレキ光線によって、パワーが強化されました。完全体にはなれませんが、電撃体には変身可能です。
※第二回放送のニードルのなぞなぞを全く理解していません(地図記号について知らず、グロンギの算法もリントと異なるため)。


【沖一也@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、強い決意、仮面ライダースーパー1に変身中、メンテナンス不足により機能低下
[装備]:不明
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3、首輪(祈里)
[思考]
基本:殺し合いを防ぎ、加頭を倒す
0:ダグバより先に警察署に向かい、そこにいる人たちを助ける。また、チェックマシンをマップ内から探す
1:本郷猛の遺志を継いで、仮面ライダーとして人類を護る。
2:後で孤門やアインハルトと警察署で落ち合い、情報交換会議をする。また首輪の解析も行う。
3:この命に代えてもいつきとアインハルトを守る。
4:先輩ライダーを捜す
5:鎧の男(バラゴ)は許さない。だが生存しているのか…?
6:仮面ライダーZXか…
7:ダークプリキュアについてはいつきに任せる。
[備考]
※参戦時期は第1部最終話(3巻終了後)終了直後です。
※一文字からBADANや村雨についての説明を簡単に聞きました
※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました
※18時に市街地で一文字と合流する話になっています。
※ノーザが死んだ理由は本郷猛と相打ちになったかアクマロが裏切ったか、そのどちらかの可能性を推測しています。
※チェックマシンによるメンテナンスを長期間受けなかったため、ファイブハンド等の機能が使用不能になりました(付け替えること自体は可能ですが、各能力が全く使えません)
 また、変身自体は続いていますが、一度変身を解除すれば、再変身ができなくなる可能性もあります。
 チェックマシンがこの殺し合いの会場にあるかは今のところ不明です。
※第二回放送のニードルのなぞなぞを解きました。そのため、警察署が危険であることを理解しています。

92 ◆gry038wOvE:2013/03/13(水) 17:09:18 ID:VA9fjViE0
以上、投下終了です。

93名無しさん:2013/03/13(水) 17:38:10 ID:3MoHzxZ.0
投下乙です。
沖さん、そういえばメンテナンスを受けないといけないんだった。
でも主催者がわざわざそんなのを用意しているかどうか……
ダグバが向かう先はよりにもよってそっちかよwww孤門達が危ないwww

94名無しさん:2013/03/13(水) 20:01:31 ID:tOEtPi5cO
投下乙です。

電気による強化は霊石への影響だから、グロンギなら誰でも可能性があるんだな。

グロンギに引き算が無いのは、「なくなったもの」に対する思いが薄いからだろうな。
何人死んでも「殺した人数」とプラスに考えるし、同族が死んでもゲームのプレイヤーを数え直せばいいだけだし。

95名無しさん:2013/03/14(木) 00:12:12 ID:vElS7fIE0
投下乙です

電撃が逆に仇になるかあ
確かに電気で強化するんだよなあ
そして警察署がヤバい

96名無しさん:2013/03/15(金) 00:59:46 ID:uPxmAwGI0
マップの左上はマジで人がいないな…
むしろ、ダグバが翠屋にテレポートしたらかなり多くの命が救われるんじゃないか?

97名無しさん:2013/03/15(金) 11:07:33 ID:lBPKezwA0
村まとめ

・響良牙、一文字隼人、沖一也、バラゴ、初期位置(4人)
・良牙、離れる(3人)
・沖が離れ、三影が入る(3人)
・園咲冴子と速水達彦が入るが、すぐに死ぬ(3人)
・花咲つぼみ、石掘光彦が入る、三影死亡(4人)
・放送後つぼみ離れる(3人)
・西条凪が入るが、石掘と共に離脱。桃園ラブが入るが、一文字と共に離脱(1人)
・バラゴが離れる


そして誰もいなくなった……


村を目指していた者

・高町なのは、池波流ノ介、明堂院いつき
なのはと流ノ介の知った建物が地図上にあったため向かう予定だったが、なのはと流ノ介が死亡し、いつきも進路を市街地に変更

・五代雄介、美樹さやか
凪と共に目指していたが、さやかは溝呂木の手に落ち、五代は凪と別れて良牙達を呪泉郷に案内することに

・照井竜、相羽ミユキ
向かう途中で溝呂木に殺害される

・涼村暁、黒岩省吾
ラブと共に向かっていたが、石掘の警告を受け彼らと共に進路変更

・月影ゆり
向かう途中で幼児化し、大道から逃げる形で進路変更

・冴島鋼牙、一条薫
おそらく進路的にそちらに向かっていたのだろうが、戦闘音を聞きつけ進路変更
その後一条は良牙と共に呪泉郷に行くことになり、鋼牙はバラゴを倒すため再び村に向かおうとするが、結局再び戦闘音を聞きつけて戻ってくる

・筋殻アクマロ
志葉屋敷を目指していたのだが、寄り道した結果そこで死亡

・スバル・ナカジマ
アクマロと志葉屋敷で合流する予定だったが、いろいろあった末死亡

98名無しさん:2013/03/15(金) 13:00:52 ID:uPxmAwGI0
ソルテッカマンとかチェックマシンとかがある可能性も…!

99名無しさん:2013/03/15(金) 17:37:09 ID:HmjmYm5s0
>>97
村で3人死に、村を目指してた者も最終的に合計9人死亡…
この村には人が死ぬジンクスでもあるのか?

100名無しさん:2013/03/15(金) 17:48:19 ID:XNtpRX2YO
村に向かうのを止めるか、死ぬかか。

101名無しさん:2013/03/15(金) 19:16:36 ID:uPxmAwGI0
マップの上の方ヤバすぎだろ…
なんでそんなに悪いジンクスばっかりあるんだよ

102名無しさん:2013/03/15(金) 22:05:40 ID:7gwFh51AO
>>99
この村に名前を付けよう(提案)

103名無しさん:2013/03/15(金) 22:18:25 ID:HmjmYm5s0
>>102
じゃあ村にいたのと村に向かってたの、合計12人死んでるから…十二つ墓村?w

104 ◆gry038wOvE:2013/03/17(日) 17:28:07 ID:ILoZMHzo0
では、バラゴの予約分を投下します。

105復讐の美学 ◆gry038wOvE:2013/03/17(日) 17:28:54 ID:ILoZMHzo0

「Who are you?」


 その問い、その言語。バラゴは、それが英語圏の女性の言葉であるのをすぐに理解する。名簿には、カタカナで書かれた外国人らしき名前もあったので、バラゴは英語が聞こえたこと自体には納得していた。
 ただ、その周囲に人らしい気配はない。
 バラゴは一時、周囲に人影を探したが、そこに人の気配は一切なく、クレーターを見回すだけだった。そこには人らしいものは一切ない。
 気配を消されているとも思わないし、バラゴがそう簡単に翻弄されるわけがないと思っていた。
 バラゴは、少し荒げた声で問う。


「My name is Barago. Where are you?(我が名はバラゴ。貴様はどこにいる)」

「Plese in Japanese.(日本語で構いません)」


 それなら、何故英語で話すのか……と思ったが、バラゴはとりあえず、日本語で返した。


「わかった。……それで、お前はどこにいるんだ?」

「Plese see the center of the crater.(クレーターの中央を見てください)」


 そう言って、バラゴはクレーターの中央に目をやる。
 何かが光っている──太陽に反射して、そこに落ちている何かが赤く光り、バラゴの瞳孔を刺激していた。
 人、ではないのだろうか……?

 近づいてみると、バラゴの目に、赤と青の珍妙な宝石が映った。 
 もしや、参加者ではなく、この宝石から声が発されているのだろうか。バラゴは、クレーターの中央まで歩き、その宝石をどちらも拾い上げた。
 青い宝石には、既に罅が入っているようで、赤い方が放つ不思議な光を失っていた。
 形状は微妙に違うが、おそらく、同種のものだと思われる。


「……お前か」

「Yes.(はい)」


 バラゴは、すぐにどちらが自分に話しかけたのかを理解し、赤い宝石に顔を向けて話していた。
 一瞬、魔導具であることを考えたが、どうやら魔導具とは違うものらしい。形状や色合いは全く別物だ。バラゴやシルヴァのような魔導具とは、明らかに別種である。
 魔戒騎士の世界には、確かにこれに似たようなものは幾つもあったが、それらとは明らかに違う。
 バラゴは、そんな物体に対して、僅かな不審に思いながらも、問いかける。


「一体、ここで何があったんだ?」


 この宝石に対する興味もあるが、ここで何が起こったかがまず重要であると思った。
 この破壊跡……明らかにここで戦闘があった証である。
 流石のバラゴも、この場ではこれだけ派手な戦闘はしていない。
 しかし、どうやらここではかなり派手な戦いが行われたらしいのだ。
 バラゴは問う。


「It will be a long story.(長い話になります)」

「構わない。ここで何があったのかを聞かせてもらおう」

106復讐の美学 ◆gry038wOvE:2013/03/17(日) 17:29:30 ID:ILoZMHzo0


 バラゴは、そのクレーターに座すると、その赤い宝石の話を聞いた。
 彼女は、バラゴの返答を聞いて、数秒ほど気分を落ち着かせるように沈黙した後、語りだした。


 ──この宝石の名前がレイジングハート・エクセリオンであること。破損した青い宝石がマッハキャリバーという名前であること。いずれもインテリジェントデバイスという道具であること。

 ──自らのマスターである高町なのはや、その友人であるフェイト・テスタロッサ、ユーノ・スクライアのことや、彼女がこの会場で出会った人間や、その人物たちから得た情報。

 ──ここで起こった凄惨な戦い、そして、その首謀者でもある筋殻アクマロ、ノーザのこと。スバル・ナカジマが操り人形として戦わされたこと。

 ──レイジングハート自体も、なのはとともに吸収されてからの記憶や意思がなく、いつの間にかここに吐き出されてしまったため、流ノ介やいつきや本郷やアインハルトが一体どうなったのかわからないということ。

 これで全ての話が終わった。
 バラゴは、それを頭の中でメモライズする。特別、筆記する必要などはなかった。
 バラゴが時間を確認すると、確かにレイジングハートがそれを話し始めてから話が終わるまで、一時間もの時が経っていた。


「……なるほど」


 しかし、長い時間をかけた甲斐もあって、彼女から得た情報は、なかなか興味深かった。
 彼女は、バラゴの知らない情報をかなり多く話してくれたのである。


 まず、魔導師の情報だ。
 魔術に精通する者──というと、バラゴの世界にあった魔戒騎士や魔戒法師に少し近い。
 問題となるのは、それを扱う者である。
 レイジングハート・エクセリオンの話から考えると、高町なのはやフェイト・テスタロッサは年端もいかぬ少女だ。確かに、この殺し合いが始まった広間にも、非常に幼い少女の姿があった。
 バラゴの世界でいえば、この年齢なら、本来、魔戒法師の世界では修行をしている年齢だし、女は魔戒騎士になることさえも許されない。
 しかし、レイジングハートのいる世界では十歳にも満たぬ少女が、力を有し戦っているという。その齢と性別の幼女が力を得て戦うというのはバラゴには興味深いものだ。
 レイジングハート・エクセリオンからはまだその世界の情報を引き出し切れていないが、レイジングハートが未だにバラゴに話していないことであっても、後々重要な情報となることもあるだろう。


 仮面ライダーという存在についても、より詳細に知れた。
 本郷猛──仮面ライダー1号の話から、仮面ライダーが改造人間であり、悪の組織と戦ってきたことなども詳しく知ることができた。
 本郷、一文字、結城、沖、村雨。五人もの仮面ライダーの存在を知り、そのうち四人がバラゴと接触していたことを知った。
 すなわち、既にバラゴは本郷以外の仮面ライダー全員と会っていたのである。
 何らかのデバイスを使って変身した石堀光彦はともかく、改造人間という出生である仮面ライダーたちのことは把握できた。
 プリキュアについてもより詳しく知り、シンケンジャーという存在についても知ることができた。


(こいつの力、そして情報は後々、使えるかもしれん……)


 バラゴは思う。
 このレイジングハートの持つ魔力という力や、今彼女が持っている情報を、何らかの形で利用できるかもしれないと。
 魔力とやらも気になるし、レイジングハートも彼女の世界の全てを話したわけではない。だが、その情報が必要とされる局面も、後々出てくる可能性があるだろう。
 そして、彼女を利用する方法も、レイジングハートの話を聞きながら考えていた。

107復讐の美学 ◆gry038wOvE:2013/03/17(日) 17:29:56 ID:ILoZMHzo0


(それに、こいつは何も知らない。それだけ利用しやすい)


 彼女を利用できる隙、それはノーザ、筋殻アクマロ──この二人のことだ。
 放送は首輪を通して行われるため、首輪のない者は放送を聞くことさえできない。上空にあるホログラフィを見つめるだけに終わってしまうのだ。
 そのため、レイジングハートは、放送を全て聞いておらず、情報らしい情報を一切得ていない。
 バラゴが知っている、ノーザとアクマロの死、本郷や流ノ介やスバルの死。いずれも、彼女はまだ知らない。
 彼女がたとえ機械であっても、これだけ感情の起伏が激しいならば、ノーザやアクマロに対して何らかの恨みを抱いていてもおかしくはないだろう。
 そんな風に、彼女が把握し切れていない情報は利用しやすく、彼女を利用する良い手段となる。


「レイジングハート────」


 バラゴは、小さな宝石の名前を呼んだ。
 彼女の異世界に関する知識や経験を利用し、他の参加者への対策や罠を張るために、レイジングハートに、かなりストレートに訊く。
 言ってみれば、それは典型的な「悪魔のささやき」というやつだった。


「残念だが、高町なのはも、フェイト・テスタロッサ、ユーノ・スクライアも、スバル・ナカジマも、ティアナ・ランスターも、本郷猛も、池波流ノ介は死亡が確認された。……放送というやつで、首輪を通して教えられた」


 レイジングハートは、悲しそうに


「Oh, reary……I feel sad.(本当ですか……とても悲しいです)」


 と、呟いた。
 どの死も、まだレイジングハートが知る由もないものだったが、幾つかは予感できていた。本郷や流ノ介は、あのまま死んでしまったという。


「私の目の前で、フェイト・テスタロッサは、冴島鋼牙によって葬られ、ティアナ・ランスターは、涼邑零によって葬られてしまった」


 厄介な相手の名前を、バラゴは仇としてレイジングハートに教える。フェイトとユーノの組み合わせだと上手く行き過ぎている感じがしたので、あえてレイジングハートがよく知らないティアナの名も交えた。
 今後、彼女たちの死に際に会った人間と会えば厄介だが、しばらくはごまかすこともできるだろう。


「だが、まだ希望はある」


 希望──本来、バラゴとは「希望」という意味だったが、なんと皮肉なことだろうか。
 今の彼の口からは他人を利用するために吐き出された言葉であった。


「……明堂院いつきやアインハルト・ストラトス、高町ヴィヴィオなどは生きている。……が、またいつ奴らによって命を狙われるかはわからない」


 本来、死んだはずであるノーザや筋殻アクマロの名前も、生きているものとして明かす。
 情報の多くを事実を交えながら話し、この二人の名前だけは吐くべき嘘として残した。
 何故ならば、レイジングハートとの共通の目的を持っていた方が、やりやすいからだ。
 そう、この名を利用して、恨みを助長するのである。


「────レイジングハート。ノーザや、アクマロ、冴島鋼牙や涼邑零たちを共に倒したくはないか?」


 その言葉は、いまや戦うことができないレイジングハートの復讐心を煽った。
 誰か、協力してくれる人間がいなければ、今のレイジングハートは戦うことができない。
 しかし、悲しいことに、知り合いであるなのはやフェイト、ユーノは死んでしまったし、あの場にいた人間の多くも死亡した。
 ノーザやアクマロを倒し、主やスバルの無念を晴らすことも、当然今の彼女ではできない。
 誰かが協力してもらわなければならないのだ。
 彼女の返答は決まっていた。
 自分から、誰かに協力を願いたいくらいだった。

108復讐の美学 ◆gry038wOvE:2013/03/17(日) 17:30:28 ID:ILoZMHzo0


「Yes.(はい)」


 今更拒絶する理由はない。
 何にせよ、悪鬼であるノーザやアクマロを倒さなければならないのである。
 なのはの無念もあるし、殺し合いを止めるために絶対的に倒さなければならない存在であるためでもある。
 しかし、レイジングハートは機械ながら、少しだけ二人に対する恨みも持っていた。
 その感情が、レイジングハートに肯定を許した。


「そうか。……なら、力を貸してくれ。レイジングハート」

「Sure.(もちろんです)」


 勿論──そう答えるしかなかった。
 レイジングハートの目に、彼の邪気が映ることはなかった。


「それじゃあ、まずは幾つか契約を交わさせてもらう」


 レイジングハートが見ると、バラゴの顔は、先ほどの醜悪(といったら失礼だが)なものから、まったく別の姿に変貌していた。
 優男のようで、どこか心強い美青年。
 かつて、バラゴが御月カオルを利用するために使った偽りの姿──


「──名簿ではバラゴとなっているが、僕の名前は龍崎駆音だ。これから先は、全てその名で呼んでほしい。……あの名前は好きではないんだ」


 声色さえも全く別の──言ってしまえば、先ほどより数段綺麗なものに変わっていたが、レイジングハートはそれについて深く詮索することはなかった。


「Yes, sir──Karune(わかりました。駆音)」


 バラゴにしてみれば、こうして他人を利用する以上、人を襲撃したバラゴの姿であるのは危険だったのだ。
 もしかすれば、バラゴの名を知っている者が何人もいるかもしれない。
 レイジングハートにその名で呼ばせることを強要すれば、その危険は低くなる。
 バラゴは、元の世界ではまだ鋼牙や零に正体を発覚させてはいなかったので、心配はないだろうと思った。
 時間軸の差というやつが心配ではあったが、零の様子を見た彼は、まだ龍崎駆音の名に危険はないだろうと考えていた。。

 また、先ほどバラゴの名を名乗ってしまった以上、レイジングハートが他の参加者からその名前を聞いて全てが発覚してしまう可能性も否めない。
 早い段階で封じておかなければならない。


「……それから、僕の指示なく余計な話はしないでくれ。人前では極力、顔を出さず、話をしないほうがいい」

「Why?(何故ですか?)」

「今までのように、道具だと思われていれば、命を狙われる心配もない。だが、中にはこのように意思ある者すべての命を破壊する者もいる」


 バラゴは、破損している青い宝石を見せた。
 マッハキャリバーである。──本来、スバルがつけていたはずのものが何故ここにあるかはわからなかったが、おそらくスバルがあの後ここで死んだであろうことを告げていた。


「……物のふりをしていれば、僕が死んだとしても、君は生き残れるだろう」

「Sure. But dont die on me.(わかりました。しかし、私を残して死なないでください)」

「無論、そのつもりだ。僕が危険な時、または僕が情報を得たい時は、君に協力してもらいたい」


 これで、レイジングハートが余計な発言をするのを塞ぐ。
 それも、彼女に対する好印象を残したうえでだ。
 契約は終了……といきたいところだったが、バラゴは一つ大事なことを思い出す。


「……そうだ、それからもうひとつ確認させてほしいことがある」


 バラゴは、それだけ言ってデイパックから容器を取り出し、彼女をその中の水につけた。
 一つ試したいことがあったのである。
 この水はただの水ではなく、先ほどバラゴが回収した呪泉郷の水の一つである。
 若い女の姿になってしまう女溺泉の水だ。
 レイジングハートには、あくまでモノであってもらったほうが便利だったが、どうせお湯をかければ元に戻る。


 しかし、そこからは、一切変化がないレイジングハートが取り出された。
 困惑するレイジングハートを見つめながら、バラゴは考える。


(なるほど……これも制限か)

109復讐の美学 ◆gry038wOvE:2013/03/17(日) 17:30:44 ID:ILoZMHzo0


 参加者以外は、あくまでモノでしかないらしい。
 レイジングハートが人工知能であり、生物ではないからかもしれないが、おそらく制限の力だろうと思われた。
 呪泉郷の力がどの程度なのか実験したかったが、制限の力は相当大きいらしい。


「What?(何か?)」

「いや、なんでもない」


 バラゴはそれだけ言うと、それらをデイパックに戻し、レイジングハートを首からかけて隠した。
 自らのペンダントと共に、龍崎の首元にレイジングハートがかけられる。
 マッハキャリバーも念のために、デイパックに入れておいた。


(この辺りには、まだ幾つか道具が散らばってるな。レイジングハートのように使えるものもあるかもしれない……拾っておこう)


 バラゴは、その辺りにあったものを全て拾っていくと、トライチェイサーに跨り、どこかへ消えていった。



【1日目/午後】
【B-7/ホテル付近・戦場跡】
※バラゴの行先は不明。

【バラゴ@牙狼─GARO─】
[状態]:胸部に強打の痛み、ダメージ(中)、顔は龍崎駆音
[装備]:ペンダント、魔戒剣、ボーチャードピストル(0/8)@牙狼、レイジングハート・エクセリオン@魔法少女リリカルなのは
[道具]:支給品一式×6、バラゴのランダム支給品0〜2、顔を変容させる秘薬
バラゴ未確認物{冴子のランダム支給品1〜3、インロウマル&スーパーディスク@侍戦隊シンケンジャー、紀州特産の梅干し@超光戦士シャンゼリオン、ムカデのキーホルダー@超光戦士シャンゼリオン、『ハートキャッチプリキュア!』の漫画@ハートキャッチプリキュア!}、ビートチェイサー2000@仮面ライダークウガ、呪泉郷の水(種類、数は不明。本人は確認済み。女溺泉あり)@らんま1/2、呪泉郷顧客名簿、呪泉郷地図、双眼鏡@現実、ランダム支給品0〜2(シャンプー0〜1、ゴオマ0〜1)、水とお湯の入ったポット1つずつ、バグンダダ@仮面ライダークウガ、マッハキャリバー(破損済)@魔法少女リリカルなのは
[思考]
基本:参加者全員と加頭を殺害し、元の世界で目的を遂行する
1:冴島鋼牙と出会ったら、この手で葬る。
2:レイジングハートを利用し、力や情報を得る。
3:石堀に本能的な警戒(微々たるものです)
4:一文字隼人とキュアピーチは再び出会うことがあれば、この手で殺す。(ただし、深追いはしない)
[備考]
※参戦時期は第23話でカオルに正体を明かす前。
※顔を変容させる秘薬はバラゴの変身アイテムの一つとして支給されたようです。
※冴子と速水の支給品はまだ確認していません。
※つぼみ達の話を立ち聞きしていました
 そのためプリキュア、砂漠の使徒、サラマンダー男爵について知りました
※雷剛や閻魔斬光剣の召喚はできません。
 バラゴはこれを制限の影響だと考えています。
※零は放っておけば心滅獣身で闇に堕ちると考えています。
※呪泉郷からいくつかの泉の水を拝借しました。種類およびその数については後続に任せます
※ニードルの出したヒントによりワープ装置の場所及び使用条件を知りました。
※レイジングハート・エクセリオンから、なのはの世界やその仲間、流ノ介、いつき、本郷、アインハルトなどからの会話で得た情報、ホテルでの戦闘などを知りました。


【レイジングハート・エクセリオンについて】
※レイジングハート・エクセリオンと「これからはバラゴのことを龍崎駆音と呼び、余計なことは喋らずモノのフリをする」という契約を交わしました。おそらく滅多なことでは破らないかと思われます。
※レイジングハート・エクセリオンは、ソレワターセの体内での記憶を有しておらず、なのはより後の死者については知りません。
※レイジングハート・エクセリオンは、バラゴによって以下のように虚偽の混じった情報を得ています。
・高町なのは、フェイト・テスタロッサ、ユーノ・スクライア、スバル・ナカジマ、ティアナ・ランスター、本郷猛、池波流ノ介は死亡している。
・フェイトは冴島鋼牙、ティアナは涼邑零によって殺害されている。
・ノーザ、筋殻アクマロは生存している。そのため、バラゴは彼女たちを倒そうとしている。

110 ◆gry038wOvE:2013/03/17(日) 17:31:15 ID:ILoZMHzo0
以上、投下終了です。

111名無しさん:2013/03/17(日) 17:52:16 ID:guK0E3SA0
投下乙です

ああ、そういう風に話を振るのかあ。狡猾だわ
レイハさんが公利用されるとか、これはやっかいなあ

112名無しさん:2013/03/17(日) 21:22:00 ID:VcNzo62AO
投下乙です。つまりまさかの魔法少女リリカルb(ry

113名無しさん:2013/03/17(日) 22:47:29 ID:zgJeOi8M0
投下乙です。
レイハさんはこのままバラゴに利用されてしまうのか……?

114名無しさん:2013/03/18(月) 00:46:34 ID:sCctUGVQ0
スレが下がってきたのであげておきます

115名無しさん:2013/03/18(月) 03:04:54 ID:sCctUGVQ0
そういえばバラゴって、女体化する弟子がいたような…

116名無しさん:2013/03/18(月) 12:20:48 ID:XQCptll2O
全力全戒

117 ◆OmtW54r7Tc:2013/03/19(火) 08:58:41 ID:wL3kMz3Y0
改めて思ったけど、変身ロワって書き手的には結構な鬼畜ゲーだよなあ
作品自体が目新しいものばっかなうえに、常連作品も生き残りメンツが新規に近いやつばっかだし

なのは…まさかの常連アニメ勢が全滅、残ったのが初参戦の新規二人
まどか…かなり早い段階でラス1、ついでにその一人が他ロワで早死に気味の杏子
テッカマン…タカヤはともかく、もう一人の生き残りが見せしめ&一話死亡の常連モロトフ
W…翔太郎はいいとして、もうひとりの生き残りが(ry
ライスピ…漫画ロワ勢全滅(他の面子はライスピ参戦は初、ただ一文字も結城もそんなにロワ参戦経験が多いわけでもないが)


クウガはまあ…そんなでもないか
ダグバが中間体とかいう劇中にほとんど登場しない形態になってしまったけど

118名無しさん:2013/03/19(火) 13:02:42 ID:AYLmNtbk0
尚、ロワ的にはマイナーなうえにほぼ初参戦のネクサス、牙狼、シャンゼリオンは過半数生き残っている模様

119名無しさん:2013/03/19(火) 17:26:34 ID:3uicq4nI0
いやまあヴィヴィオは新規じゃないんだけどな。なのはロワで唯一脱出成功したのヴィヴィオだし
…Vivid版って意味なら新規だけど

120名無しさん:2013/03/19(火) 17:27:54 ID:AYLmNtbk0
kskとかにも出てたな
「高町ヴィヴィオ」では初?

121名無しさん:2013/03/19(火) 18:39:25 ID:TAcX1biUO
やっぱ若い方が人気あるのね。

122名無しさん:2013/03/19(火) 19:53:28 ID:AYLmNtbk0
ところで、wikiの更新が一人だとかなりきついので、誰か一緒にやってほしいのですが…

123 ◆OmtW54r7Tc:2013/03/19(火) 21:23:55 ID:wL3kMz3Y0
>>118
はい、vivid版って意味での新規です
実際、stsとvividじゃ別キャラに近いぐらいに立ち回りが変わるだろうし

124 ◆OmtW54r7Tc:2013/03/19(火) 21:24:44 ID:wL3kMz3Y0
間違えた、>>119

125名無しさん:2013/03/20(水) 16:04:07 ID:xjG.7seE0
予約きたああああああああああああああああああああああ

126 ◆7pf62HiyTE:2013/03/21(木) 02:30:53 ID:WmTs7Las0
天道あかね分投下します。

127運命の鳥(前編) ◆7pf62HiyTE:2013/03/21(木) 02:31:55 ID:WmTs7Las0



   ▽   ▼



『AとKとBのメモリか、人とメモリは惹かれ合うっていうから何かあるのかもね、この3つと』


――Queen――


『クイーンお前パクろうとしたな!? メモリと呼び合ってる……』



   ▼   ▽



 走る、走る、走る――
 天道あかねはひたすらに森を駆けていた。
 立ち止まれば、悲しみから何も出来なくなってしまう、そんな気がしたのだ。

 あかねは先に出会ったキュアベリーこと蒼乃美希が口にしていた禁止エリアの方角とは逆方向の道を駆けていた――

 そして森を抜け焼けた野原が広がっているのを目の当たりにした。
 無論、既に鎮火しているものの数時間前は何かしらの理由――いや、十中八九戦いによって焼かれていたのだろう。

 これからどの方向に進もうか、そう考えていたら――


「う゛ーん……!?」


 視線の先に倒れている2人の姿が見えた。あかねは何気なくその方向へと向かった――


「酷い……」


 倒れている2人の姿を間近で見たあかねが真っ先に漏らした言葉がそれだ。
 倒れている2人――自分よりも幼い10歳弱の少年と少女は既に死んでいる――
 少年の方は右腕を文字通り潰され、近くに棒を手放している少女の方は腹に大きな穴を空けられ多量の出血が見られた。
 死体を見たのは初では無いとはいえ、自分よりもずっと幼い少年少女がここまで無残な姿にされているのを見てショックは隠せない――


「うっ……」


 全身から感じる虚脱感、そして湧き上がる吐き気――思わずあかねは右手で口を塞ぐ――


 そんな中――


『ひとつ……俺は自分の無力さで幼い仲間2人を死なせてしまった……』
『フェイト……ユーノ……』


 あの時、探偵の男と赤髪の魔法少女がそう口にしていた――
 彼等の言っていた『幼い仲間2人』と目の前の幼い2人の死体が不思議と重なって見えたのだ。
 この2人がフェイト・テスタロッサとユーノ・スクライアなのでは無かろうか?
 だが、実際にそうであろうとなかろうと、それを確かめる術は無い。死人に口なしということだ。

 正直、死体をこのままにしておく事に抵抗がないではないが長居をしている余裕はない。あかねはすぐさまこの場所から離れようとした――が、


「あら?」


 そんな中、少女の手元に金色の三角形の物体が落ちているのを見つけた。


「何かしら……?」


 それが何かはわからない。だが、あかねは思わずそれを拾い上げ眺めてみる。
 その少女のものであろうそれを勝手に持ち出して良いとは思っていない。だがこのまま野ざらしにしておくのもどうかと思い何気なく拾ったのである。


「う゛ーん……?」


 一言で言えば違和感を覚えていたのだろう。だが、その金色の物体は傍目には何の変哲も無いアクセサリーでしかない。
 別に年頃の少女がアクセサリーの1つや2つ持っていてもおかしくはない。戦いに必要無いものならば没収されずそのまま所持を許されても不思議はなかろう。
 それでも何だろうか、何かが引っかかったのだ。


 とはいえ、眺めた所で答えなど出るわけもない。故にあかねはそのまま左胸に仕舞い、再び走り出す――


 違和感は消えたわけではない。だが、取るに足らない事なのだろう――だからこそ、もうその事については深く考えない――

128運命の鳥(前編) ◆7pf62HiyTE:2013/03/21(木) 02:32:31 ID:WmTs7Las0



   ▽   ▼



『仮面ライダーエターナル、お前にとって、カメンライダーとは何だ?』
『……そうだな。もとは、風都を守っていた『この街の希望』とやらの名前らしいな。……俺も同じだ、俺は風都、そしてこの殺し合いの新しい希望となる仮面ライダーだ!!』



   ▼   ▽



 結局あかねは市街地へ向かう方向とは真逆の方向を駆けていた――
 先程まで交戦した探偵と魔法少女(と言って良いのか怪しいが)、そして梅盛源太とアインハルト・ストラトス、彼等のいる市街地には戻りたくはなかったのだ――無事であるならば、という但し付きの条件がつくものの――

 駆け抜けながら状況を整理しよう――
 早乙女乱馬の遺したガイアメモリの力でナスカ・ドーパントに変身したのが大体10時から11時の間、その後探偵達と遭遇し交戦したのが大体11時過ぎぐらい――
 それから10分から20分ぐらい戦っていた覚えがあるがその後の記憶が無い――
 そして気が付いた時には市街地ではなく森の中にいた。ドーパントへの変身は解除されていて服どころか髪型など大幅に変化していた美希と遭遇していた――
 その後美希を振り切った後で時計を確認した所、12時を15分ほど過ぎていたのは把握した。
 意識が飛んでいたのは4,50分程――いや、丸1日以上経過していた可能性も否定できない為断定は出来ない。

 自身の身に何が起こっていたのだろうか?
 いや、原因自体はナスカ・ドーパントに変身する力を与えるガイアメモリによるものなのは解っている。
 問題はそこで何が起こったのかである。

 落ち着いて振り返ってみよう。
 最初にナスカ・ドーパントに変身した時はお世辞にもその力を引き出せていたとは言い難かった。
 源太の変身したシンケンゴールドは愚か探偵の変身した仮面ライダーW、そして魔法少女相手に為す術もなかった。
 あかね自身もそれなりに場数は踏んではいたと自負していたがそれでも全く足りなかったという事だ。

 その後運良く道ちゃん――伝説の道着と再会出来それを身に纏い再びナスカ・ドーパントに変身した。
 今度は道ちゃんのお陰で潜在能力を最大限に引き出せていた。そのお陰かナスカの力もスピード及びパワーの面から見ても十二分に引き出せていたのを実感できた。
 RPGゲームとかで例えて言うならば――
 最初に変身した時をレベル1、伝説の道着で潜在能力を引き出した時をレベル2と言って良いだろう。

 が、その力を以てしても追い詰められていた。実際、道ちゃんを身につけていても最終的に乱馬に破れている為、それ自体はありえなくもない。
 だが、それで諦められるわけも無かった。だからこそあかねはさらなる力を欲したのだ。
 どんな代償を支払ってでもその想いを遂げる、その為の力を――
 そして体内のメモリから力が溢れ出し全身を駆け巡るのを感じた――
 その瞬間、あかねの意識はブラックアウト――途切れたという事だ。

 その後、何かしらの方法で美希によってメモリを排出されるまでの記憶は無い。
 だが、確実に言えるのは意識が途切れる直前に感じた莫大なパワーから省みて――レベル2を遙に凌駕するパワーを発揮していたと考えて良いだろう。
 敢えて言うならばレベル3の力を発揮したという事だ――

 追い詰められたとはいえレベル2でも探偵と魔法少女に肉薄していたのだ。それを踏まえればあの場にいた4人を全滅させていたとしても不思議では無い。

 結局、放送を聞き逃した以上、それを確かめる術は――無い――

 そう、どれだけ意識飛んでいたとしても確実なのはあかねは先の放送を聞き逃していた事なのだ。そしてそれは致命的な問題でもある。
 確かに乱馬の死を改めて伝えられるのを避ける事が出来たのは幸いだったかもしれない――
 だが、新たに発動される禁止エリアを把握できなかったのは大きな問題だ。
 それに加え――


「良牙君……それにパンスト太郎……」


 まだ健在だった知り合いである響良牙、そしてパンスト太郎の安否が聞けなかったのは痛い。
 もしかしたらもう2人とも既に――
 いや、考えた所で仕方が無い。問題はこれからどうするかだ。
 勿論、乱馬を取り戻す為に優勝を目指す――それを諦めたわけではない――諦めきれないと言った方が正確だろうが――
 しかし――


『本気かよ姉ちゃん……本気で俺達を殺すつもりなのかよ!! いや、俺達だけじゃねぇ……友達の良牙の兄ちゃんもいるだろうが!?』

129運命の鳥(前編) ◆7pf62HiyTE:2013/03/21(木) 02:33:00 ID:WmTs7Las0


 優勝を目指す――それは自分以外の参加者全てを倒す事だ。それが可能かどうか、力量的な面ではひとまず置いておく。
 結局の所、乱馬を殺した凶悪な怪人やエターナル、それに今にして思えば姉の天道なびきと声や髪型が似ていた黒服の少女を倒す事を意味する。
 それだけならば別に問題は無い。

 だが、倒すべきは彼等だけではない。先に交戦した4人や美希、他に警察署で出会った高町ヴィヴィオ、孤門一輝、沖一也、明堂院いつきと言った殺し合いを打破しようとしている者達をも倒さねばならないのだ。
 善良な者達である事に加え、自分よりも幼い少女達にも手にかけなければならないという事なのだ。当然、彼女達にむざむざ殺される理由など何処にも無い。

 それどころか、仲の良い大切な友人である良牙、そこまで仲は良くは無いが知り合いであるパンスト太郎をも倒――いや、敢えて言おう、殺さなければならないのだ。
 乱馬を取り戻し日常を取り戻す為に、日常の一部分である良牙(ついでにパンスト太郎)を自ら破壊する? それをあかね自身の手でやれというのか?

 そもそもの話――理由も伝えず有無を言わさず殺し合いを強要する連中が乱馬1人取り戻してくれる確証が全く無い事ぐらいあかね自身にもわかりきっている。
 例えばの話、些か狂人的な考えではあるが、優勝して全てを無かった事にして元に戻す――それが出来るならばそれが一番良い。
 だが、そんな事が出来る保証など何処にも無い、連中が『出来ます』と言った所でそんな事全く信用出来るわけもない。仮に出来たとしても無情に殺し合いを強いる連中が素直に願いを叶えてくれる道理など無い。
 それ以外に手段が無い、だからといってその手段ですら有効とは全く言えないという事だ――


『言った筈だ……他人の都合も知りもせず勝手な願い事をしたせいで誰もが不幸になったって……願い事が叶ってその彼氏が戻ったとしても……あんたも彼氏も幸せになんてなれないって事さ……』


 そして――仮に自身の願いが叶ったとしても、それを本当に皆が喜んでくれるのだろうか?
 幾ら願いを叶える為とはいえ――何の罪も無い人々を殺す事を家族や友人達が認めてくれるだろうか?
 そんな事考えるまでもない――自分だけの日常を取り戻す為に、他の人々の日常を歪める様な事を――自身の日常を象徴する家族や友人達が認めるわけもない。
 天道かすみが自分の妹が人様に迷惑をかける事を望むか?
 天道早雲が自分の娘が(幾ら許嫁の乱馬を生き返らせる為とは言え)何の罪も無い人々を虐殺する事を求めるか?
 そんな事、絶対にあるわけがないのだ――それをした瞬間、彼等はあかねに対し幻滅するだろう。同時にそれは日常に二度と戻れなくなる事を意味する――


『姉ちゃんは本当は心優しい筈なんだ……人を殺せる様な事なんて出来るわけねぇしやっちゃいけねぇよ……
 そんな事したら姉ちゃん心から笑えなくなっちまうじゃねぇか!! 俺にはそれが耐えられねぇ!!』


 何より――例え、他の誰もが知らなかったとしても――あかね自身が多くの人々を殺したという事実は決して消えない。
 あの時魔法少女を仕留めた(実際は仕留められなかったが)と思った時は強い不快感を感じたのを今でも覚えている。
 そして意識が飛んだ間に誰かを殺したのかもしれないと考えれば強い罪悪感に苛まれる。
 願いを叶える為には直接間接問わず多くの者達を殺さなければならないだろう。当然、その重圧はこれまでの比では無い。
 仮に乱馬を取り戻し日常に戻れたとしても――そんな重圧に晒された仲で心から笑えるわけもないのだ――

 それ以前に――


『ずっと私なんかやヴィヴィオさんの事を気遣ってくれた……そして何より……あかねさんを戦わせまいと身体を張ってくれた……そんな乱馬さんがあかねさんに人殺しを望む筈がありません! それはあかねさん自身が一番知っている筈です!!』


 そんな事――誰に言われるまでも無くあかね自身が一番理解している――
 乱馬が乱馬自身の為にあかね自身の手を汚す事を望むわけがない事を――
 きっと今の自分を見たら乱馬は是が非でも止める――
 直接自分にではなくアインハルトに止めてと頼んだのかという部分に引っかかりが無いではないが(が、実際の所、乱馬自身が直接あかねの夢に現れ説得したところであかねが素直に聞く筈もないと推測できる)、実際にそうして止めようとしてくれたのだ。


 だが自身はそれを全て突っぱねた。自分勝手な願いでありながらあろうことか乱馬自身に全ての責を押しつけてだ――

130運命の鳥(前編) ◆7pf62HiyTE:2013/03/21(木) 02:33:30 ID:WmTs7Las0


『繰り返すがあたしは別にあんたが殺し合いに乗ろうが乗るまいがそんな事は知ったことじゃねぇ、あんたが決めた事ならそれは全部あんたの自業自得だ……
 けどさ……あんた自身の行動を……誰かの所為になんてするんじゃねぇってんだよ!!』


 思い返せば――他の3人はともかく魔法少女だけは殺し合いに乗った事自体は否定しなかった(その魔法少女があかねに立ちふさがったのは『友達』のリンクルンを取り戻す為)。
 しかし乱馬に責を押しつけた事に関しては全面的に否定していた。無論、他の3人もあかね自身の言動を否定しているのは理解している。
 あの時はガイアメモリの影響か頭に血が上っていたのか、あるいは売り言葉に買い言葉だったがあかね自身聞く耳持たなかったが、こうして冷静に見ればどう考えても乱馬に全ての責を押しつけて良いわけがない。

 これから全ての参加者が死ぬのは全て乱馬の所為?
 仲間達や自分を守ろうとして散った乱馬の所為?
 乱馬は皆の命を危険に晒すために散ったのか? 命を賭して戦ったのか?

 違う、それは絶対に違う――

 乱馬が命を捨てて戦ったのは自身の矜持――『格闘と名のつく勝負には絶対に勝つ』それを守る為だったのではなかろうか?
 死んでいった園咲霧彦や山吹祈里達の無念を晴らす為ではなかろうか?
 アインハルトや源太達、そして警察署で待っていたであろうヴィヴィオ達を守る為ではなかろうか?
 そして何より――許嫁であるあかねを戦いに巻き込み危険な目に遭わせない為だったのではなかろうか――


 だからこそ無謀とも言える戦いにも挑みリンクルンを取り戻したのだ。結果は完全敗北ではあったが乱馬は最後まで自身の生き方を貫いたのだ――
 きっと最期には自身の無事を願っていたのだろう――
 少し冷静に考えれば赤の他人でもわかる筈なのだ――

 だが――あかねはその乱馬の想いを踏みにじったのだ――
 乱馬の遺したガイアメモリを使い何の罪も無い他の参加者や自分を傷つける為に使い――
 リンクルンすら独占し他者に渡そうともしなかった――
 なるほど、これでは乱馬自身の生き様を自ら穢しているとしか言い様が無い。

 あろう事かそれはあくまでもあかね自身の選択であるにもかかわらず乱馬自身の所為だと言ってしまったのだ――
 あかね自身であっても客観的に見ればそれが決して肯定されない事である事は今なら理解している。

 ガイアメモリの影響? 頭に血が上っていた? 売り言葉に買い言葉? 理由など言い訳程度にしかなりえない。
 どんな理由があろうとも乱馬自身の生き方の否定、天道あかね自身が一番やってはいけない禁忌(タブー)、
 それをあかね自身が犯してしまったのだ――


『天道あかね……』
『さぁ……』
『『お前の罪を数えろ……!!』


 そう――天道あかねの一番の罪――それは早乙女乱馬の否定なのだ――


 だが――どれだけ考えようともそれで諦められるかどうかは全く別問題だ。

 例えどれだけの代償を支払う事になっても、
 例えどれだけ否定されようとも、
 例えその結末が報われるものではなくても、

 乱馬を取り戻して元の日常を取り戻したいあかね自身の願いだけは他の誰であっても、例え乱馬自身であっても絶対に否定はさせない。
 故にこのまま優勝を目指す事には変わりが無い――

 ――のだが、冷静になったが故にそれが非常に困難である事を実感する。
 たった1人で自分よりも圧倒的に強い参加者が数多くいる戦いを勝ち抜く?
 素直に負けるつもりは無いが無謀以外の何者でもない事などわかりきっている。

 仲間など当然いない。誰かと組んだ所で最終的には殺すのだ、そんな状態で協力してくれる殊勝な人などいないだろう。

 ならば自分の知り合いならばどうだろうか? この場合ならば極端な話、あかね自身が優勝する事に固着する必要は無い――

 いや、なおの事無理だ。シャンプーが相手ならば乱馬を生き返らせるという条件ならば了承してくれる(但し寝首かかれる危険性は非常に大きい)だろうが彼女自身が既に退場済みである以上それは無理。
 今生き残っている可能性のある2人――その内パンスト太郎についてはまず無理だ。真面目な話パンスト太郎にあかねの願い事を叶えてやる義理は全く無い。
 大体『オカマ野郎』及び『パンスト太郎』と呼び合い(乱馬自身は正しく名前を呼んでいるだけ)度々一触即発になっているのにそこまでやってくれるわけもない。

131運命の鳥(前編) ◆7pf62HiyTE:2013/03/21(木) 02:33:58 ID:WmTs7Las0

 だったら良牙ならば――確かに良牙から見ても乱馬は友人であるのでもしかしたら協力してくれるかも知れない。
 しかし――良牙は弱い者いじめが出来ない良い奴なのだ。乱馬が弱体化した時、他の連中は日頃の恨みを晴らすべく仕掛けて来たが良牙は決して仕掛けなかった(但し、ある意味一番乱馬にはショックが大きかっただろうが)。
 それどころか、幾ら強さを取り戻す為に必要な事ではあっても、弱体化した乱馬に全力で仕掛ける事が出来なかったのだ(最終的に仕掛けたがそれは乱馬があかねを襲ったという嘘に騙された為)。
 そんな良牙に何の罪も無い人々を殺す事など出来るのか? 出来るわけがないだろう。

 そして何より――あかね自身、大事な大事な友人である良牙の良心を利用しようとする事に強い抵抗があったのだ。そこまで嫌な女にはなりたくなかったのだ――

 きっと今も方向音痴で迷いながらも知り合いであるパンスト太郎を捜し、あるいは出会った仲間達を助け皆でこの殺し合いを打破する為に駆けずり回っている事だろう――
 そんな彼を利用する事など――あかねにはどうしても出来なかった――


 結局、全て自分自身で戦うしかないという事だ――しかし、絶大な力を与えてくれたガイアメモリを使う事に関しては抵抗がある――
 確かに絶大な力は与えてくれる――だが明らかにこれはあかね自身の精神を冒す――勿論、これはあかね自身に(ナスカとは違うが)メモリが支給されていたお陰でその説明書きでリスクについては把握していた。
 かつて(年頃の少女としては)致命的な副作用があったにも関わらず乱馬の話を信用しなかったばかりに(年頃の少女としては)酷い目に遭わされた剛力ソバの時とは違う。
 最初からデメリットがある事を把握しており同時にこうして実感しているのだ。

 精神を冒される――それ自体は全て悪いという事は無い。
 実際問題として優勝の為には多くの参加者を殺さなければならない。だが、実力的な面とは別に、心情的な問題がある。
 先にも述べた通り、多くの参加者を殺す事についてはあかね自身非常に大きな抵抗がある。凶悪な怪人や怪物ならばともかく、何の罪も無い人々を殺す事など出来やしない。
 それは武道家のすべきことでは無い、只の人殺しの所行だ。
 だが、ガイアメモリを使えばその抵抗を消すことが出来る。それは先程自分自身が身を以て体感した。

 が――一番の問題はそんなことでは無い。一番に恐れているのは――ガイアメモリによって乱馬に対する想い、そして願いが壊される、あるいは消される事だ――

 絶対にそうなるとは限らない? 強い意志で押さえ込む?
 そう考えているのなら相当におめでたい話だ、実際どうなったのかは先程の自分が証明しているではないか。
 あろう事か乱馬の生き様を否定し、最終的には自我を無くして無差別に暴走していたではないか。
 そんな醜態を晒していて大丈夫なんて言えるわけも無いだろう。
 あの時は美希の力――恐らくはプリキュアの力なのだろう、そのお陰で元に戻れたがそんな奇跡が二度も三度も起こるわけがない。

 何にせよ、乱馬を失ったショックで半ば衝動的に使ったあの時とは違う。どうしてもガイアメモリを作動させる気にならなかったのだ――

 結論が出る事も無く――あかねは一人数キロの道を駆けていた――



   ▽   ▼



『冷たい躰が嫌できっとあたしがヒートに引き合ったんだ』
『メモリと引き合う………………まさか、ここに!? ………………ここに来てたのか……最後の1つがコイツだったなんて……どうやら切り札は……常に俺の所に来る様だぜ』


――Joker――



   ▼   ▽



「え゛……」


 一体どれぐらい走り続けたのだろうか――道ちゃんのお陰で躰が軽い為、数キロの道のりであっても1時間も経過はしていないだろう。
 あかねの眼前には巨大なクレーターがあった。確かこの場所はI-5、つまりは図書館があった筈なのだ。
 にも関わらず、図書館は無く無残な破壊の跡があった――それはこの地での戦いが相当なものだったという事なのだろう。
 真面目な話、あかね自身、激しい戦いでクレーターが出来てしまうのを何度も目撃している為、それ自体は驚く事でも無いかもしれない。
 が、そんなあかね自身から見ても出来ていたクレーターは巨大すぎたという事だ。
 どれだけ強大な技をぶつけ合ったのだろうか? 想像すら絶する事だ。

 巨大なクレーターを目の当たりにし、改めて今後の事を考える.

 無論、ここに長居を為ても仕方が無いが大きな問題があった――


「禁止エリア……」

132運命の鳥(前編) ◆7pf62HiyTE:2013/03/21(木) 02:34:52 ID:WmTs7Las0


 放送を聞き逃した為に禁止エリアがわからないのだ。既に1時は過ぎていて何の反応も無い事から現在位置は禁止エリアでは無いのはわかる。
 しかし通ってきた道が禁止エリアになっている可能性は多分にあるし隣接エリアがそうなっている事も考えられる。
 誰かに聞くにしても都合良く他の参加者と遭遇しなければどうにもならない。
 下手に動いて気が付いたら取り返しの付かない場所まで来ていたという事にもなりかねない。
 格闘で負けて死ぬならばまだ諦めもつくかもしれない。だが、不用意に禁止エリアに入って自滅してしまっては死んでも死にきれない。
 正直途方に暮れていたが――


『G……six……』
「!?」


 何処かから声がするのが聞こえた。気のせいなのか? いや間違いなく聞こえた。


『C……three……』


 声の方向は自分の左胸から――それが意味するのは


「まさか……!?」
『D……nine……』


 あかねは胸に仕舞った金色のアクセサリーを手に取る。


『H……nine……F……eight……G……three……』


 声は金色のアクセサリーから響いてきた。そして、



『G……six……C……three……D……nine……』


 金色のアクセサリーは無機質にアルファベットと数字を繰り返し音声として発し続ける――


「待って……G-6、C-3、D-9……これ禁止エリアの場所よ!」


 あかねが聞き逃したのは2回目の放送であり1回目の放送は聞いている。それ故、発した音声が口にしていた前半の3つがその時の禁止エリアである事は把握できた。


「という事は……」
『H……nine……F……eight……G……three……』

 後半の3つが次の放送で伝えられた禁止エリアという事になる。更に先の3つが発動する順番だった事を踏まえこの3つも発動する順番を示しているのであれば――


「13時にH-9、15時にF-8、17時にG-3が禁止エリアになる……そういう事?」


『G……six……C……three……D……nine……H……nine……F……eight……G……three……
 G……six……C……three……D……nine……H……nine……F……eight……G……three……』


 アクセサリーはあかねの問いに応えること無く機械的に繰り返すだけだ。そして数分後、勝手に発していた音声は勝手に途絶えた。


「ねぇ……貴方……何なの?」


 あかねはそう問いかけるがアクセサリーが反応する事は無かった。
 もしかすると戦いで壊れていたのが何の偶然か作動したが今度こそ完全に壊れ動かなくなったのかも知れない。

 ともかく、禁止エリアの場所だけは把握できた。信用に値するかどうかはともかく、そのエリアに不用意に入らなければ何の問題も無いだろう。

 さて、問題はここからだ。地図に従いこのまま道なり(御覧の通りI-5は焦土と化しているが)に進んだ場合、17時に禁止エリアとなるG-3に入るあるいは急接近する事になる。
 今更、市街地方面に戻る事には抵抗がある。となると、地図から見て上方向の森を進む事となる。進む方向についてはそれで良い。
 ちなみに――先にナスカ・ドーパントに変身した時さらなる力を得る為に呪泉郷方向を目指していたが今となってはそこに向かう気にはならなかった。
 そもそもの前提として呪泉郷で力を得るという事はそこの水を浴びる事で変身体質になるという事だ。
 パンスト太郎はそれを利用しさらなる力を得たがそうそう都合良くはいかない。
 シャンプーの変身する猫、ムースの変身するアヒル、早乙女玄馬の変身するパンダの様に必ずしもパワーアップに繋がるとは言い難くむしろパワーダウンに繋がりかねない(パンダ辺りはそうでも無い気もする)。
 乱馬が浴びた女溺泉なんぞ浴びた所で元々女であるあかねには意味が無いし、元の男に戻す男溺泉を浴びて男性化しても大幅に強化されるとは言い難い。
 それこそパンスト太郎が浴びた牛鶴鰻毛人溺泉かルージュの浴びた阿修羅となる阿修羅溺泉ぐらいしかアテに出来るものが浮かばない。
 だが、呪泉郷の様子をざっと見た限り、どの泉がどんな泉かはわからなかった。よく調べればどれがどの泉かを指し示す資料があったかもしれないが既に13時間も経過している事を考えるとそれが奪われている可能性は多分にある。
 そもそも下手に変身体質を身につければ道ちゃんを身に纏う事が出来なくなる。
 どんな力が得られるかわからない呪泉郷とノーリスクで潜在能力を最大限に発揮できる道ちゃん、どっちが頼れるかなんて選択にもならないだろう。
 頭が冷えた今という状態から考えれば呪泉郷に執着する意味は低いという事だ。

133運命の鳥(前編) ◆7pf62HiyTE:2013/03/21(木) 02:35:32 ID:WmTs7Las0

 が、一方でこう考えていた――
 自分達との仲間意識が無いパンスト太郎はともかく、良牙は呪泉郷を第一の目的地と考えなかっただろうか?
 実の所、乱馬、シャンプー、パンスト太郎と違い、良牙はあかね同様呪泉郷の水を浴びていない、つまり変身体質を持っていない。(注.あかねは良牙も変身体質である事を知らない)
 しかし、友達思いの良牙の事だ、真っ先に乱馬達との合流を目指すのは想像に難くない。だとすれば共通の場所である呪泉郷を目指すのは今にして思えば当然の理だろう。
 良牙の方向音痴はあかね自身も知っている。だからといって絶対に辿り着けないというわけではないし、道案内が誰かいれば高い確率(確実と言えないのが良牙のある意味恐ろしい所)で辿り着ける筈だ。
 そう――幾ら乱馬を取り戻す為とはいえ、殺し合いに乗り人々を傷つける今の自分の姿をどうしても見られたくなかったのだ。だからこそ良牙の向かう可能性の高い呪泉郷に向かう事には気が引けたのだ。

 その為、目的地が浮かばないのだ。市街地が駄目なら村に向かうというのも考えたが少々距離がありすぎる。
 まずは適当な所から森へ――全く道案内が無いとうっかり禁止エリアに入りかねないのでもう少し道なりに進んだ所にある川から川沿いを進めば良いだろう。
 そのルートならば現状禁止エリアに入ることは無い。当面の方針としてはそれで良いだろう。

 そうして再び走り出す――だが脳裏には不安が拭えないでいる――

 目の当たりにした2人の少年少女の死体と焼けた平原、
 想像を絶する程巨大なクレーターと焦土と化した図書館があったであろうエリア、
 そして乱馬を殺した怪人――確かン・ダグバ・ゼバという名前だったか、そいつは未だに健在。同時に似た名前のゴ・ガドル・バの存在も気に掛かる。
 更には仮面ライダーエターナルや筋金アクマロといった危険人物、
 キュアムーンライトに執着していたなびきと声と髪型が似ている黒服の少女といった倒さねばならない強敵、
 そして殺し合いに乗るならば美希達プリキュアとも戦う事になる。
 繰り返すが実際に勝負になったならば負けるつもりは全く無い。しかし素直に勝てると言える程自惚れてはいない。
 だが道ちゃんの力が幾ら頼れると言ってもそれだけでは厳しいのは先の戦いで実証済――


 いや、きっと方法はあかね自身の脳裏にあったのだろう――


「!?」


 気が付いた時には手に持っていた筈のメモリが無くなっていた。


「あれ……メモリは……!?」


 走っている間に落としてしまったのか? 使う事に抵抗はあったが、貴重な戦闘手段であるメモリを失いたくは――


――Nasca――


 その音声が響くのが聞こえた。誰かがメモリを拾ったのか? しかし

「え゛え゛え゛え゛え゛〜〜っ!?」


 次の瞬間、メモリ自身があかね目がけて高速で飛んでくるのが見えた。

 あかねは高速で後方へと跳ぶ。しかしメモリも負けじと高速で迫ってくる。


「(どういう事? まさか私を……!?)」


 何者かの攻撃である事は考えにくい、だとすればメモリ自身があかねを変身させるべく勝手に動いたという事なのだろうか?
 だが只の機械部品の一種とも言えるメモリが自分の意志を持つ事など――いや、よくよく考えて見れば道ちゃんの様に自分の意志を持っている道着だってあるのだメモリがそういう意志を持った所で不思議は全く無い。


 だからといって、素直に変身するつもりはない。変身したら再び自我を失いかねない、それは同時に乱馬への想いを失う事になるのだ。
 それだけは絶対に避けなければならない。だからこそメモリの挿入だけは避けねばならない。


「!! メモリが消えた?」


 そんな中、あかねの視界からメモリが消失した。明後日の方向に飛び去っていったのか?


 だが、突如としてあかねの後頭部にメモリが急速に迫る――


 完全にあかねの死角を突いている、故にあかねはそれを避ける事が出来ない――


 だが、今のあかねはあかね1人で戦っているわけではない。


 そう、伝説の道着こと道ちゃんがいるのだ――


 例え死角に入られていても伝説の道着は気付いている。


 例え視線から消え失せても、道ちゃんの力で潜在能力を極限に高められている今のあかねにとって――


 いかに凄まじいまでのスピード、あるいはパワーでメモリが迫ろうとも――


 挿入されるより先に掴む事など――造作もない――


「はぁ……はぁ……」

134運命の鳥(前編) ◆7pf62HiyTE:2013/03/21(木) 02:36:08 ID:WmTs7Las0


 何とか、挿入を阻止しナスカ・ドーパントへの変身を避ける事ができた。
 しかし結局の所、何故突如メモリが勝手に作動したのだろうか?
 誤作動と片付けても良いがあかねにはどうしてもそれで片付ける事が出来なかった。


「もしかして……貴方、私の為に……?」


 確かにあかね自身メモリを使うべきか使わざるべきか迷っていた。
 得られるパワーは確かに強大だが、乱馬に対する想いが壊されるのは容認出来ない。
 しかし、この道のりで遭遇した惨状を目の当たりにし、無意識の内にナスカの力、それもレベル3の力が必要であると改めて認識したのだ。
 メモリはそんなあかねの無意識の内の想いを察し応えようとした――そう思えてならないのだ。
 そう考えればいきなり変身させられた事はともかくそこまで無碍にも出来ないだろう。


「そう、私に力を貸してくれるのね……Nちゃん!」
『N……chan……???』


 何処からともなくそんなツッコミが聞こえた気がした。


「ナスカ(Nasca)のNちゃん……あれ、今誰が……?」


 周囲を見回してもあかね自身、道ちゃん、そしてナスカメモリことNちゃん以外誰もいない。


 何はともあれ、今は先を急ぐべきだろう。と、


「う゛っ……」


 突如、怠さがあかねを襲ったのだ。Nちゃんの挿入を避ける為に派手に動いたからか?
 いや、道ちゃんの力で引き出される力はあかねにとっては全く負担にならない。では今のは何か――


「がはっ……!」


 そして突如、吐き気に襲われ――


「え゛……!」


 口を押さえた右手が赤く染まっていたのを見た――吐血したという事だ。
 あかねは別段そういう病気というわけではない。だとすれば考えられるのはこの殺し合いで受けたダメージによるもの――
 しかし、何度か敵に襲われてはいるが吐血するほどの深刻なダメージは受けてはいない。
 一番大きいのはWによるマキシマムドライブの直撃だったがそれにしても道ちゃんとナスカ・ドーパントの力のお陰で致命的にはならなかった筈、
 美希ことキュアベリーの攻撃もガイアメモリの毒素を浄化するものであったならばそれも吐血には繋がらない。

 だとすれば考えられるのは――


「Nちゃんの力を限界まで引き出した状態……レベル3……」


 レベル3に到達したナスカ・ドーパントの膨大な力による反動があかね自身の躰を蝕んでいた、そうとしか考えられない。
 プリキュアの力で精神を冒す毒素は浄化できた。だが膨大な力により破壊されたあかねの躰は決して治らない――
 恐らく、変身が解除された時点からあかねの躰はずっとそれを訴え続けていたのだろう。
 痛みや虚脱感といったものは不調を示すシグナル、ガイアメモリの毒素に冒されている間はそれに気づきにくくなるが、毒素が浄化されたからこそ実感できる様になったのだ。

 それだけレベル3、Rナスカ・ドーパントの力は膨大という事だ、霧彦ですらレベル2の力すら耐えきれなかった。それよりもずっとパワーが上のレベル3に耐えられるのはそれこそ冴子の様に限られた人達だけと言えよう。
 そのパワーにあかねが耐えきれる保証など最初から無かったのだ――
 そう、道ちゃんの力を以てしても――いや、むしろ逆だ、道ちゃんの力があったからこそあかねが受けたダメージはそれだけで済んだと言える。
 繰り返すが道ちゃんによって引き出されたあかねの力はあかねには全く負担になっていない。
 つまり道ちゃんはあかねの力を最大限に引き出すと同時にそれによる反動を最小限に抑えていると考えられる。
 そしてこれはナスカ・ドーパントに変身した後も変わらない。
 道ちゃんはナスカ・ドーパントと一体化しつつその力を最大限に引き出すと同時に、ナスカ・ドーパントの膨大なエネルギーによってあかねにかかる負担を最小限に抑えていたのだ。
 だからこそ短時間でレベル2の力を使いこなせ、仮面ライダーWと魔法少女の2人とやりあえたわけであり、同時にレベル3への土壌すら築き上げる事が出来たという事だ。
 しかし、その道ちゃんの力をもってしても――レベル3の力は余りにも膨大過ぎた――故にあかねへの負担を完全に抑える事は出来なかった。
 だが、逆を言えば道ちゃんの力で負担を抑えたからこそあかねが受けたダメージはそれだけで済んだという事になる。そう、道ちゃんがいなければそれこそ既にあかねは戦えなくなっていたのかも知れない――

135運命の鳥(前編) ◆7pf62HiyTE:2013/03/21(木) 02:36:42 ID:WmTs7Las0


 ここに来て再び大きな問題に直面した事になる――


「道ちゃんの力があればNちゃんの力を引き出せる……」


 道ちゃんとしては自身が好きなあかねがNちゃんなどと呼ばれるメモリ如きで苦しんで欲しくは無い。だからこそ、ナスカ・ドーパントの負荷から全力で守るだろう。


「多分、レベル2までは大丈夫……でも……」


 それでもレベル2が限界だ。レベル3のパワーを完全に抑えきる事は出来ない以上、長時間戦う事は不可能だ。当然暴走して自我を失えばそれで終わりなのは言うまでも無い。
 恐れが無いわけではない――だが、自身を変身させるべく自ら動いたNちゃんを見て考えが変わった。


「道ちゃんが私を守ろうとしている様に……Nちゃん、貴方も私の願いに応えようとしてる……そうなのね……」


 そう、例え自身の乱馬に対する想いが消える恐れがあろうとも――やはり諦めきれないのだ。
 乱馬を取り戻し元の日常へと戻る願いを――


 その一方、もう1つ果たさねばならない事があったのを思い出した――


『恐らく、ダグバの襲撃を受け彼女の許嫁……婚約者と言うべきかな、彼が命を落とした……だが何とかメモリを奪取する事に成功して彼女がそれを手に入れた……といった所だね』
『そしてアンタはその婚約者……恋人を殺された復讐をする為に……』


 仮面ライダーWはそう口にしていたのはその時のあかねは否定した。
 だが、今更ながらに考えたのだ。復讐するつもりで考えているわけではないが――


 ――あの乱馬が、格闘で負けたまま終わる事を容認出来るだろうか?――


 そう、乱馬ならば往生際悪くても再びリベンジすべく動く、そして最後には必ず勝ってきたのだ。
 しかし最早乱馬自身がダグバに対してそれを果たす事は出来ない――


 ならば、乱馬の代わりにそれをあかね自身が果たさねばならないのではなかろうか?


 勿論、こんな危険な事を乱馬が求めるわけもない。
 そう、これは完全にあかね自身の自分勝手な我が儘なのだ、
 少しでも早乙女乱馬の矜持――『格闘と名のつく勝負で負けたことが無い』
 それを守りたいと願うあかね自身の――

 このまま優勝を目指して戦い続けていれば何れダグバと再び出逢う事となる、
 奴は自身の笑顔の為だけに多くの人々の笑顔を奪ってきた、
 今更それを名乗って良いものではないが、化け物から人々を守るのは武道家のつとめ、故に奴を倒す事に迷いは無い。
 このまま乱馬が完全敗北したままで終わらせるつもりはない、運良くあるいは運悪く奴と出会えたならば――必ず倒す。

 どちらにしてもダグバを倒さなければ自身の願いはどう転んでも叶わないのだ、それについては迷う理由など何処にもない。


 そう、その為ならば――自身の生命を代価にしても――一向に構わない。
 メモリの副作用でその想いや願いが穢され消え失せるのならば――完全に消え去る前に全ての決着を着ける。


 無論、その時が今と言うわけではない、だが、その瞬間が刻一刻と近づいている――


 ――Nasca――


 静かにメモリから音声が響く――

136運命の鳥(後編) ◆7pf62HiyTE:2013/03/21(木) 02:38:09 ID:WmTs7Las0



   ▽   ▼



『……なあ、あのベルトは、今まで人を傷つけたことしかないだろ。本当にそのために生まれて来たものだと思うのか?』
『……思いません! 仮面ライダーは、プリキュアと同じ……誰かを守る戦士なんです』
『ああ、俺もそう思う。……あいつらを見てたらな……エターナルを、本当の意味での仮面ライダーにしてやらないか?』




   ▼   ▽



 川が静かに波打つ――
 先程辿り着いたあかねは既にこの場にはいない――
 川沿いを高速で移動しているのだ――

 それが人間の姿なのか――
 あるいはナスカ・ドーパントの姿なのか――

 それは、今は語らない――

 さて――ここで1つ触れて置きたい事がある――
 何故、ナスカのメモリは勝手に動き出しあかねをナスカ・ドーパントへと変身させようとしていたのだろうか?
 人とメモリは惹かれ合う――そういう仮説がある。
 その仮説通り、あかねとナスカのメモリが惹かれ合っていたと考えられる。極端な事を言えばあかねの想いにメモリが応えた――そういう可能性は考えられなくも無い――
 が、一方でこうは考えられないだろうか――

 そう、あかねがナスカのメモリと引き合うのは――運命によるものではなかろうか?

 あかねが所持しているナスカのメモリは元々ダグバに支給されていたものだ。
 さて、そのダグバがこの地で最初に出会ったのは霧彦とヴィヴィオの両名だ。
 霧彦は語るまでも無く本来のナスカのメモリの使用者だ、奇しくもダグバは早々に自身に支給されていたメモリと同じメモリを所持している男と出会えたのだ。
 そして紆余曲折を経てダグバは再び霧彦のいた所に辿り着いた、その前にガドルによって倒されてはいたがタイミングが違えば再び出逢えていた可能性は否定できない。
 これらは全て偶然なのだろうか? 偶然と片付ける事も出来るがもしかするとその時点ではナスカのメモリは霧彦を求めていたのではなかろうか?
 そして紆余曲折を経てダグバの所持していたメモリは乱馬の手に渡りその後、あかね自身が手にした。
 これは一見すると偶然の様に思える――だが、霧彦の遺志を託された乱馬の手に渡り、その想いの矛先であるあかねの手へと巡り巡ったのは本当に偶然なのだろうか?

 極論なのかも知れないが――ナスカのメモリは最初からあかねの元に来る事を願っていたのではなかろうか?
 つまり、あかねがナスカの力を手にしたのは偶然では無く必然、そうだったのかも知れないのだ。

 思い返して欲しい――伝説の道着を身につけた事で一度はメモリはあかねから離れた。
 結局、再びあかねの手に戻ったが、その状況は仮面ライダーWの片割れのハーフボイルド探偵左翔太郎の渾身の一撃で吹っ飛ばされた場所に偶然落ちていたというものだ。
 無論、あかねにしても翔太郎にしてもそこにメモリがあった事を計算しているわけがない。

 これと似た事例が存在する――

 風都にばらまかれたエターナルを除く25本のT2ガイアメモリ、その内の24本は大道克己率いるNEVERの手に渡ったが最後の1本だけは発見されないでいた。

 だが、最後の1本、それは風都を守る探偵である左翔太郎のすぐ側にあった――ジョーカーの名が示す通り、最後の切り札となったのだ。
 ジョーカーのメモリは翔太郎がWに変身する際に一番使うメモリでもある、それが翔太郎の側に落ちたのは偶然なのだろうか?
 余談だが、フィリップがWに変身する際に一番使うサイクロンのメモリ――実はそれもフィリップのすぐ近くに落ちていた。だが、フィリップがそれを確保する前に別の人物が回収していたという話があった。
 何にせよ、これら全てを偶然で片付けるのは出来すぎている――陳腐な言葉だが運命というのは的を射たものかも知れない。

 そう、あかねが吹っ飛ばされた場所にナスカのメモリが落ちていたのも――それと同じ原理だったのかもしれないという事だ。

137運命の鳥(後編) ◆7pf62HiyTE:2013/03/21(木) 02:38:38 ID:WmTs7Las0


 実の所、これと似た事例がこの地での克己にも言えるのだ。
 克己の手に合ったエターナルのメモリだが実は2度ほど克己の手を離れている。
 1度目は月影ゆりに奪取されたとき、2度目はダークプリキュア(なびきと声と髪型が似ている)の手に渡った時だ。
 細かい状況説明は省くが両名ともメモリを使い仮面ライダーエターナルへの変身を行っている。極端な事を言えばエターナルの絶大な力を手に入れたと言っても良い。
 だがそのどちらであっても、最終的には克己の元に戻ってきた。勿論、それぞれに事情、あるいは思惑はあったのだろう。
 しかし、それだけの事があってもエターナルは克己に元に戻ってきている。偶然にしては出来すぎているのではなかろうか?
 克己なりに言わせれば、克己とエターナルは惹かれ合っていた。だからこその結果なのだろう。


 さて、話も長くなった――そろそろ核心に触れよう。
 一言で言おう、この運命はメモリと人だけが惹かれ合っているだけに留まらない。

 思い返して欲しい、あかねがエターナルに襲撃された事を、何故エターナルはあかねを襲ったのか?
 実はエターナルが最初に交戦した人物は村雨良、そして良牙だ。
 その際に良牙は呪泉郷の事を口にしていた。それを耳に為たエターナルは呪泉郷へと先行、既に触れた通り呪泉郷はあかねのスタート地点、遭遇する事に不思議は全く無い。
 話はそれだけではない、その後紆余曲折を経てエターナルは約12時間の時を経て再び良牙と良(他3名)と交戦した――
 それを偶然で――いやまだ話は終わらない。
 その戦いの結果、エターナルこと克己は良と相打ちになる形で敗れた――そして最後にはエターナルのメモリとロストドライバーが遺された――が、


『……良牙さん、これを使うのは……良牙さんが相応しいと思います。
 戦える変身能力がない良牙さんには何より必要なものだと思いますし、……それに、良牙さんなら、仮面ライダーというものをよく理解していると思います』
『おいおい、俺はそれに頼る気はほとんどないぜ……』
『……でも、いざっていうときに、仮面ライダーに変身できたら役に立つと思います。とにかく、良牙さんが受け取ってください』
『……まあいいか。使うことがあるかはわからないが……とりあえず、受け取っておくぜ』


 そう、エターナルのメモリ――ある意味ではガイアメモリの頂点に立つともいえるそれが――良牙の手へと巡り渡ったのだ。
 この時生き残った4人の内、一番戦闘力に乏しいのは実は良牙(無論、並の相手よりもずっと強いがそれでもプリキュアやクウガ、そして魔戒騎士と比べると弱いと言わざるを得ない)なのでそれ自体は自然な流れだ。だが――

 ここまで来れば、読者諸兄も何が言いたいのか気付いただろう。
 あかねの手にナスカのメモリが渡った事、そして(良牙自身の思惑は別にして)大事な大事な友人である良牙の手にエターナルのメモリが渡った事――
 それどころか、良牙の今現在の同行者はある意味ではダグバと対となる力を持つクウガ、その力を五代雄介(彼もまた一時期良牙と同行していた)から受け継いだ一条薫だ。
 当然、一条薫は未確認生命体の元締とも言えるダグバをそのままにするわけもない。
 ダグバとの因縁まで含めて考えると複雑に絡み合っている事になる。


 これは本当に偶然なのだろうか? 何か途方も知れない運命の力を感じずにはいられない――
 無論、これらが本当に只の偶然で、次の瞬間にはどう転んでいるかは誰にもわからない――
 だが、それならそれで良いのだ。肩すかしではあるが別に取り立てて騒ぐ事でも無い。

 それでも――これだけは言える――

 良牙とあかねにとって――この偶然、あるいは運命はとても哀しいものだと――
 願わくば、彼等に救いがあらん事を――


「そういえば……Pちゃん大丈夫かしら……」


 あかねが考えるのは元の世界にいる黒い子豚Pちゃんの事である。
 もし自分が戻ってこなければPちゃんは一匹寂しがる事になる――
 いや、きっと大丈夫だろう――元の世界には良牙の彼女にしてブタが大好きな雲竜あかりがいる。彼女がいる限りPちゃんの事は何の心配もする事は無い。
 だが、そう考えればあかりの為にも出来れば良牙は無事に帰還させたい所だ――
 そうだろう、あかね自身にとって乱馬が大事である様に――あかりにとって良牙が大事なのだから――
 同じ悲しみを彼女に負わせられるわけもないのだ――

 今一度言おう、

 この哀しい物語を紡ぐ彼等に――救いがあらん事を――

138運命の鳥(後編) ◆7pf62HiyTE:2013/03/21(木) 02:39:10 ID:WmTs7Las0



   ▽   ▼



『ごめんなさい、ユーノ……私はあなた達の事を騙してた。母さんの為に、この殺し合いに乗った……でも、今だけはあなたの願いを叶える為に……杏子と翔太郎さんの二人を守る為に戦うよ。償いになんて、なるわけないけど
 (母さん、リニス、アルフ、杏子、翔太郎さん、ユーノ……みんな、お願いだから力を貸して!)』



   ▼   ▽



 思い返して貰いたい。ゴ・ガドル・バとの戦いによりユーノとフェイトは散った。
 その際にフェイトは渾身の力を以て、自身の相棒とも言えるバルディッシュをガドルへとぶつけた――
 が、その渾身の一撃はガドルには届かず――限界を超えた負荷により、バルディッシュの刀身は砕け散った――

 わかりやすく言えばバルディッシュはこの戦いで破壊されたという事だ、勿論その表現自体は間違ってはいない。
 真面目な話バルディッシュの武器としての機能は完全に破壊されたと言って良い。

 但し、それはバルディッシュが只の武器であればの話だ。
 そう、バルディッシュは只の武器では無い、魔術師が使う、意志を持ったインテリジェンスデバイスなのだ。
 その本来の機能は魔術師が使う魔法の補助、同時に状況判断のサポートだ。
 状況によってはデバイス自身の判断で魔法を発動させる事もある。

 そう、バルディッシュは健在だったのだ。武器としては使用不可能であり、魔法発動のサポートがどれだけ出来るかは不明瞭、一応自己修復機能は働いてはいるが魔力によるブーストが無ければ戦闘で使用出来るほど回復はしないだろう。
 それでもだ、プレシア・テスタロッサの使い魔にしてフェイトの為に全てを捧げたリニスがフェイトの為に作り上げたインテリジェンスデバイスであるバルディッシュだ、並のデバイスと一緒にしてもらっては困る。
 そこに宿りし意志は決して消えやしない。

 とはいえ、最低限の機能を維持するのが精一杯である事に違いは無い。それ故出来た事は周辺の様子を伺う事、そしてフェイトとユーノの亡骸が身につけている首輪から発せられた放送を記録する事ぐらいだ。

 だが――バルディッシュは何をすべきなのか?
 バルディッシュの目的は主人であるフェイトに尽くすことだ。しかしその彼女が散った以上それは果たせない。
 彼女の願いを代わりに果たす――といっても、フェイトの願いはプレシアの元に戻り彼女の願いを叶える事でしか無い。
 フェイト無しの状態で戻った所でそれが果たせるとは思えない――

 ならば――せめて、フェイトが最後に守ろうとした仲間、左翔太郎と佐倉杏子の力になる事が彼女の望みではなかろうか?
 だが、その為には誰かが自身を拾ってくれるのを待たねばならない――

 一体どれだけ待った事だろう、7〜8時間経過したのだろうか? やっと1人の少女が通りかかってくれたのだ。
 願わくば彼女が殺し合いに乗っておらず、出来れば杏子か翔太郎の味方であって欲しいと考えた。
 何にせよ、バルディッシュは問題の少女が来た時点で待機状態に戻り彼女の注意を惹いて拾わせるよう仕向けたのだ。

 だが、実の所彼女に拾われた事は失策だったかも知れない。
 どうも彼女の言動を聞いた限り殺し合いを打破する為に戦っているとは思えなかった。それはすなわち間違いなく翔太郎と敵対している。
 勿論、杏子も乗っていたわけだしフェイトも乗っていた以上偉そうな事は言えない。だからそれだけで敵と断ずる事は出来なかった。
 が、ある言葉がバルディッシュに彼女が敵だと判断させた。

139運命の鳥(後編) ◆7pf62HiyTE:2013/03/21(木) 02:39:55 ID:WmTs7Las0


『良牙君……それにパンスト太郎……』


 パンスト太郎、何故そんな名前なのか引っかかるがそれはこの際どうでも良い。
 パンスト――それは言うまでも無くパンティーストッキングの事だ。大人の女性が身につける下着の一種である。
 わかりやすく言えばフェイトにはまだ早く、リニスやプレシアが身につけている方が自然な下着である。

 そう――思い当たる人物がいたのだ。

 フェイトはその時気絶していたがバルディッシュは認識していた――杏子とフェイトを突然襲撃した謎の怪物がパンストらしきものを身につけていた事を――
 常識的に考えてああいう風にパンストを身につける奴はまずいない。つまりその怪物こそがパンスト太郎という事になる。
 つまり、パンスト太郎はフェイトを襲撃する敵対人物という事になる、その知り合いという事はその少女もその仲間である可能性は高い。
 少々安直すぎるが味方として信用は出来ない、現状では敵として警戒すべきだろう。

 それ故に、バルディッシュは只のアクセサリーのふりを為て少女――天道あかねと行動を共にしていた。
 だが、ここで1つ問題があった。あかねが放送を聞き逃し禁止エリアを把握していなかった事だ。
 これはバルディッシュにとっても良い状況とはいえない。
 何しろ動いてくれなければ他の参加者とは出会えず、下手に動かれて禁止エリアに入って自滅されても困る。
 そこでバルディッシュは一計を案じた――

 壊れたテープレコーダーの様に突然禁止エリアを延々と繰り返し呟くだけ呟いてあかねに聞き逃した禁止エリアを伝えたのだ。
 戦闘で破損していた事がある意味幸運だった。あかねは自身が壊れていると思いそれ以上の干渉はしなかったのだ。
 正直、察しが良い参加者ならば致命的だったが、あかねはどうやら思ったよりも察しが悪く鈍いらしい。

 とはいえ今後どうなるかは全く予測できない――突然吐血した所を見ると深刻なダメージを受けているのは見て取れる。
 だからといって表だって彼女を助ける気にはならないのも本音だ――もっとも、破損している今の状態では口出しぐらいしか出来ず、このまま胸を守る盾となって無残に破壊されるぐらいの役目しかなかろう。
 それでもバルディッシュは構わないとは思う。本来ならばあの時フェイトがガドルに破れた時点で自身の運命も尽きていたのだ。このまま何も出来ず散っても悔いは無い。

 だが――


『What ?』


 突如として――あかねの周囲に鳥が纏わり付いているのが見えた気がした。
 見えたのはほんの一瞬――きっと故障による誤認だったのだろう。

 何気なくバルディッシュは思ったのだ――

 その鳥は彼女に不吉な運命を暗示しているのでは無いのかと――

 バルディッシュが見たあかねに纏わり付く謎の鳥――それが現実のものか幻だったかは誰にもわからない。
 それは本当に彼女の不幸を暗示したものであったのかもしれないし故障による誤認だったのかもしれない。
 消えたのも只の幻、あるいは誤認だからだったのかも知れない――

 だが、不幸を暗示した鳥が消えたということは、もしかすると『そういう意味』を示しているのかも知れない――


 真相がいかなるものであっても――運命の名を持つ少女の相棒は、新たに出会った少女の運命を静かに見守り続けている――


『Do-chan , N-chan ... Possibly, is she called my Bar-chan in my case?(道ちゃん、Nちゃん……もしかして、私の場合バルちゃんって呼ばれるのでしょうか……?)』

140運命の鳥(後編) ◆7pf62HiyTE:2013/03/21(木) 02:41:07 ID:WmTs7Las0


【1日目/日中】
【I-4/川沿】
【天道あかね@らんま1/2】
[状態]:肉体内部に吐血する程のダメージ、ダメージ(大)、疲労(大)、精神的疲労(大)、とても強い後悔、とても強い悲しみ、毒素は一時浄化、伝説の道着装着中
[装備]:伝説の道着@らんま1/2、T2ナスカメモリ@仮面ライダーW、バルディッシュ(待機状態、破損中)@魔法少女リリカルなのは
[道具]:支給品一式、女嫌香アップリケ@らんま1/2、斎田リコの絵(グシャグシャに丸められてます)@ウルトラマンネクサス
[思考]
基本:”乱馬たちを守る”ためにゲームに優勝する
0:川沿いを進む。
1:ダグバと遭遇した時は倒す。
2:良牙君………………出来れば会いたくはない。
[備考]
※参戦時期は37巻で呪泉郷へ訪れるよりは前で、少なくともパンスト太郎とは出会っています。
※伝説の道着を着た上でドーパントに変身した場合、潜在能力を引き出された状態となっています。また、伝説の道着を解除した場合、全裸になります。
 また同時にドーパント変身による肉体にかかる負担は最小限に抑える事が出来ます。但し、レベル3(Rナスカ)並のパワーによってかかる負荷は抑えきれません。
※Rナスカへの変身により肉体内部に致命的なダメージを受けています。伝説の道着無しでのドーパントへの変身、また道着ありであっても長時間のRナスカへの変身は命に関わります。
※ガイアメモリでの変身によって自我を失う事にも気づきました。
※第二回放送を聞き逃しています。 但し、バルディッシュのお陰で禁止エリアは把握できました。
※バルディッシュが明確に機能している事に気付いていません。
※今現在、ナスカ・ドーパントに変身しているか、変身していた場合どのレベルかは不明です。


【バルディッシュについて】
※ガドルとの戦いで破壊されたのは刀身部分です。その為、武器としての使用は不可能です。具体的にはスタンバイフォーム(待機状態)以外はほぼ使用不可能という解釈で構いません。
※現段階で魔法のサポートがどれだけ出来るかは不明です。勿論、リンカーコア所持者でなければ使用はまず不可能です。但し対話によるサポートは可能です。
※周囲の状況をずっと把握しています。その為、放送の内容も把握しています。
※自己修復機能により自己修復は一応進行中ですが魔力によるブーストが無ければ使用出来るレベルまでへの回復はまず厳しいでしょう。
※バルディッシュはフェイトの最期の願いを叶える為、翔太郎及び杏子の力になる事を目的としています。
 但し、マスターであるフェイトが死亡している為、現状このまま何も出来ずに破壊されても構わないと考えています。
※(殺し合いに乗っている可能性が高い、フェイトを襲撃したパンスト太郎の知り合いである)あかねを信用しているわけではありません。その為、現状彼女とコミュニケーションを取るつもりはありません。
 禁止エリアは自身の為に伝えただけでしかなく、現状それ以上の情報(パンスト太郎が既に死亡している事等)を提示するつもりはありません。

141 ◆7pf62HiyTE:2013/03/21(木) 02:42:58 ID:WmTs7Las0
投下完了しました。何か問題点や疑問点等があれば指摘の方お願いします。

wikiへの収録に関しては区切りの関係で2分割収録でお願いします。名前欄にも書かれている通りですが念の為

>>127-135が『運命の鳥(前編)』
>>136-140が『運命の鳥(後編)』

以上の通りとなります。

142名無しさん:2013/03/21(木) 05:56:10 ID:K.ILdrPI0
投下乙 
ここ数回を見て、初期のなのはが参戦してたことを思い出した
何気に死亡後も首輪の機能健在確定か…
禁止エリアにある死体も爆発?
良牙はこのままだとマジでエターナルに変身するかもな
あかねはつよくなるたびに代償が大きすぎる
なにげにマーダーの中では魔改造ぶりがヤバいからな

143名無しさん:2013/03/21(木) 17:31:36 ID:Ig.Fqp8Y0
投下乙です

これは濃い、凄く濃い
ロワの中で産まれた色んな因縁、元の世界での原作設定も合さりあかねと良牙は何かに導かれてるのか?

144名無しさん:2013/03/21(木) 17:45:42 ID:lOQRnC7YO
レイジングハートとバルディッシュは、共にマーダーに拾われたのに随分と状況が違うな。
片や騙され復讐心を利用されそう。片や警戒し情報を秘匿。

145名無しさん:2013/03/21(木) 17:46:17 ID:lOQRnC7YO
忘れてました。
投下乙です。

146名無しさん:2013/03/22(金) 20:32:41 ID:uFWGDHEw0
ttp://www20.atpages.jp/r0109/uploader/src/up0214.png
ttp://www20.atpages.jp/r0109/uploader/src/up0215.png

セルフ支援コラ
拙い出来ですみません
絵ではなくコラなので、もし問題があれば消します

147名無しさん:2013/03/22(金) 22:36:06 ID:iuOAiSt60
おお、乙です

148 ◆IdwfK41Ttg:2013/03/22(金) 23:47:03 ID:yt6wmPSk0
コラ制作乙です!
こういう支援を頂ける書き手さんが羨ましいですw いつか、支援されるような書き手になりたいな〜

では予約分の投下を開始します

149 ◆IdwfK41Ttg:2013/03/22(金) 23:49:18 ID:yt6wmPSk0
 青空から降り注ぐ太陽の輝きを浴びながら、桃園ラブは一文字隼人と共に移動を再開していた。
 暗黒騎士キバとの戦いによる疲労は完全に回復していないが、これ以上は休息に時間を費やしていられなかった。先に逃がした石堀光彦達が心配だし、何よりもこうしている間にも犠牲者が増えている可能性だってある。
 休んでいる最中に誰かに襲われることがなかった。でもそれは、どこか知らない場所で戦いが起こっていることに繋がるかもしれない。
 暗黒騎士キバ以外にも、花咲つぼみ達が戦ったあのダークプリキュアや、テッカマンランスと名乗った大男だっているのだから。
 奴らは簡単に倒せる相手じゃない。もしも一人でいるときに襲われてしまったが、とても危険だった。
 みんなには無事でいて欲しい。桃園ラブはそう願っていた。
 いつものラブだったらそんな相手がいても決して希望を捨てず、真っ直ぐに突き進んでいただろう。しかし、この戦いに巻き込まれてからは、そんな想いを打ち砕く悲しい出来事ばかり経験していた。
 この島で出会った魔法少女である巴マミの力になれなかった。あの戦いで失ってしまった。
 もう、マミはこの世にいないのだ。あの優しい笑顔を奪ってしまったのは主催者でもテッカマンランスでもない。
(あたしがマミさんや一文字さんみたいに強かったら……あんなことにはならなかったんだ)
 ふと、ラブは隣を歩く一文字の顔に目を向ける。
 その精悍な表情からはとても頼りがいがある雰囲気を醸し出していた。どんな困難が待ち構えていても、みんなを守る為に決して折れずに戦っていたのだろう。
 あの強くて優しいマミのように。
(あたしが美希みたいに何でも完璧にできたら……ブッキーみたいにいつでもみんなのことを考えていられたら……せつなみたいに精一杯頑張ってたら……こうならなかったのかな。つぼみちゃん達だって、プリキュアとして戦っているはずなのに……あたしだけ何をやってるんだろう)
 離れ離れになった幼馴染や友達の顔がどんどん浮かび上がっていき、その度に後ろめたさを感じてしまう。
 誰かと比較して自分を駄目だと思っても何にもならないのはわかっている。いつものラブならこんなことを考えず、幸せな未来に向かって突き進んでいるはずだった。
 だけど、この絶望に満ちた戦いはそのエネルギーを容赦なく奪っていた。
(マミさん……えりかちゃん……ごめんなさい。考えてる暇があるのなら、みんなを助ける為に頑張らないのいけないのに……)
 マイナス思考の末に、先の放送で呼ばれてしまった二人に謝ってしまう。
 そんなラブの肩を、一文字は軽く叩いた。
「無理をするなよ」
「えっ?」
「泣きたいときは思いっきり泣いていいんだ。お前は本当なら、こんな無理をする必要なんて全くないからな」
 一文字の穏やかな囁きによって、ラブは思わず震えてしまう。
 無理をしている。それを聞いたことで、一文字は全てを見抜いているとラブは察した。できるだけ表に出さないようにしていたが、胸の中で湧き上がっていく不安はやはり隠しきれるものではない。それに、元々ラブは嘘が得意ではなかった。
 だから、一文字のような勘のいい男に見抜かれるのはあっという間だった。
「一文字さん、あたしは別に無理をしてなんか……」
「笑顔を忘れないのは大事だ。だがな、無理に作っても意味はない……お前が本当は辛いってことはすぐに見破られるからな。嘘なんてつくもんじゃないぜ」
「でも……」
 必死に否定しようとするが、言葉は上手く出て来ない。
「頑張るのはいいことだ。でもお前が無理をしようとすると、俺まで悲しくなるってことを忘れないでくれよ。それにお前にもしものことがあったら、俺はつぼみや石堀達に合わせる顔がないからな」
 それは数時間前に石堀光彦という男が口にした言葉ととてもよく似ていた。
 あの時、彼や涼村暁の制止を振り切って一文字を助けに行った。そうしなければ彼を助けられなかったが、同時に胸の奥が痛むのをラブは感じている。
 結果として一文字は助けられた。でも、石堀達はまだそれを知らない。もしかしたら、今も何処かで頑張っている彼らを心配させているかもしれなかった。
 優しい人達を不安にさせる。それがラブにとって一番嫌だった。
「わかりました……でも、一文字さんだって……」
「わかってるって、俺も無茶をする気はない。俺の助けを必要としている奴らは、たくさんいるかもしれないからな」
 一文字の頼もしい言葉が、ラブの弱々しい呟きを途中で遮った。
 そんな彼の姿が、あのマミと重なって見えてしまう。そして、彼女に決して無理をさせてはいけないという約束も脳裏に蘇った。

150悲しみの放送! 想いを忘れないで!! ◆IdwfK41Ttg:2013/03/22(金) 23:51:20 ID:yt6wmPSk0
 結局、その誓いは果たされなかったが。
(今度こそ、約束を守らないと……一文字さんの、そしてマミさんやえりかちゃん達の為にも)
 その決意は決して口から出してはいけない。そんなことをしたら一文字を心配させてしまうからだ。
 いつまでも甘えてはいられない。一歩、また一歩と進みながらラブは心の中で呟き、暗い気持ちを振り払った。
 だが、そんな彼女の思いを踏み躙る時間が、無情にも訪れてしまった。
『初めまして、参加者の皆さん。私の名前はニードル。加頭順、サラマンダー男爵と同じく、このゲームの企画に協力している者です』
 どこからともなく、そんな声が響いてきた。
 落ち込んでいたラブはハッと顔を上げて、慌てたように辺りを見渡す。すると、空には薄汚れた白衣を纏った男の姿が見えた。
『放送担当者が変わってわかりにくい……という方もいるでしょうが、私の名前など覚える必要はありません。私は企画・主催の協力者の中ではあくまで末端だと考えてください。
 我々が持つ兵力は絶大なのです。あなたたちが身を寄せ合ったところで、敵わない存在です。ですから、我々に刃向おうなどと愚かなことは考えないようお願いします』
「何だと……!?」
 首輪からニードルと名乗った男の言葉が流れる度に、一文字の表情が怒りに染まっていく。
 だが、その一方でラブはようやく思い出した。この殺し合いでは六時間ごとに放送が行われて、その間に犠牲となった人達の名前が呼ばれることを。
 六時間前、サラマンダー男爵がマミやえりかの名前を放送で呼んだ。同じように今度はニードルが放送を行うのだが、それがラブにとって不安だった。
 一文字の相棒である本郷猛のような強い人であろうとも犠牲にされてしまう。それを考えるだけで安心などできるわけがなかった。
 プリキュアや魔法少女に選ばれた女の子の名前がまた呼ばれたら? 今度は一文字さんの仲間である仮面ライダーに変身する人達の名前が呼ばれてしまうのではないか?
 そして、救えたはずの人をまた救えなかったのではないか?
 決して口に出したりしないが、ニードルが現れたことでラブの中で確実な不安が湧きあがっていた。
 いや、そんなはずはない。みんなはとても強い。今までだって、数多くの困難を乗り越えて来たのだから今回だって大丈夫だ。
 まだ希望を捨ててはいけない。そう思い込むことでラブは自分自身を守っていた。そうしなければ、この心がバラバラに崩れ落ちてしまいそうだから。
『では、サラマンダー男爵の時と同じく、まずは第一回放送からここまでの死亡者を読み上げましょう。相羽シンヤ』
 しかし、そんなささやかな抵抗など無意味だと嘲笑うかのように、ニードルの放送は続いた。
 相羽シンヤ。前の放送で呼ばれたミユキと同じ名字の男が呼ばれたことで、ラブの身体はショックで震える。しかし顔も知らない人物に対する悲しみを感じる暇もなく、次々と名前が呼ばれていった。
 一人。二人。三人。告げられていく度にラブの心臓は嫌な鼓動を鳴らし、全身の皮膚から冷や汗が流れる。もしもこのまま放送が終わるのならば、ラブが背負う罪悪感は少しだけ和らいだかもしれない。
 その名前が呼ばれるまでは。
『月影ゆり』
 ニードルがそう呟いた瞬間、全身に電流が走ったような衝撃をラブは感じた。
 月影ゆり。彼女はつぼみ達のリーダーとも呼べるプリキュアで、ラブにとっても頼れる先輩であった。彼女と過ごした時間はそこまで多くはないが、それでも確かな絆は芽生えていた。
 そんな彼女がもうこの世にいない。しかし、ゆりの死を悲しむ暇すらも今のラブには与えられていなかった。
 放送はゆりの名前が呼ばれてからも続いていく。ティアナ・ランスター。パンスト太郎。そして……
『東せつな』
「……えっ!?」

151 ◆IdwfK41Ttg:2013/03/23(土) 00:21:47 ID:J.AlvXmM0
 現実をまだ受け止められていなかったラブの耳に、その名前は容赦なく刺さってしまう。
 東せつな。彼女はラブにとって親友と呼べる少女だった。占い館で出会った日から、何度も互いの想いをぶつけあった。そして、仲間になることができた。
 それからせつなとは何度も一緒に笑った。同じ時間を過ごして、家族みんなで幸せになった。せつながいたから、みんなの幸せはもっと増えた。
 しかし、せつなはもういない。その事実を前に、ラブは何も言えなかった。
『美樹さやか、山吹祈里……以上15名』
(山吹、祈里……!?)
 そんな彼女に追い打ちをかけるようにニードルの放送が続き、知っている名前が二人も呼ばれてしまった。
 絶対に助けると誓ったさやかという少女と、幼馴染の山吹祈里。彼女達もこの戦いの犠牲となってしまったのだ。
 ニードルの放送は流れるが、今のラブに聞く余裕などない。どんな情報だろうと何の価値も持たなかった。
 こんなこと、嘘に決まっている。そう思って現実から逃げようとしたが、マミと過ごした時間がそれを許さなかった。
 人が一五人も死んだ。しかも今度は、大切な友達や守りたかった女の子もいた。
 結局、マミとの約束を果たすことができなかった。彼女は命を投げ出したのに、その想いに答えられていない。むしろ、裏切っていた。
 その直後、ラブは放送で呼ばれたみんなの姿を思い出していた。彼女達の笑顔や、共に過ごしてきた毎日が脳裏に過っていく。一緒にダンスをして、買い物に行って、たくさん遊んで幸せになった。そんな毎日が永遠に続くとラブは信じていた。
 しかし、終わりはいきなり訪れてしまった。
 彼女達がどんな想いで最期を迎えたのか。それがとても気になったけど、確かめることはできない。
 だって、みんなはもういないのだから。
『……みなさん、ごきげんよう』
 みんな笑顔は失われてしまった。そう思うのと同時にニードルの姿は見えなくなる。
 ラブの身体はふらふらと揺れて、そのまま崩れ落ちそうになるが……彼女の小さな肩はがっしりと掴まれた。
 それに驚いたラブは震えながら振り向くと、一文字の姿が見えた。
「い、一文字さん……?」
「ラブ……今は泣いていい」
「え……?」
「言ったはずだ。泣きたいときは泣いていいって……顔、隠すからさ」
 そう言いながら一文字は両手で覆ったラブの頭を体に当てる。
 一文字は何も言わずにラブの頭をゆっくりと撫でた。その心地よさと彼の温かさを感じて、ラブの瞳から涙が溢れ出ていく。
「一文字さん……あたし、あたし……!」
 マミを失った時と同じように、大量の涙が頬を伝って一文字の胸に流れる。
 彼女はそれを拭わなかった。今は一文字の胸の中で泣きたかった。
 会いたい。みんなに会いたい。祈里やせつな、えりかちゃんにゆりさん、マミさん達に会いたい。会って話をして元の日常に戻りたい。
 でもそれは叶わなかった。例え元の世界に帰れたとしても、その後に続く日常にみんなの姿はない。だからこそ、ラブは泣くことしかできなかった。
 この時、偶然にも同じ頃、キュアベリーに変身した蒼乃美希も親友の死に涙を流していた。

152 ◆IdwfK41Ttg:2013/03/23(土) 00:23:07 ID:J.AlvXmM0
 もしかしたら、それは彼女達が強い絆で結ばれていることを証明しているかもしれないが、真相は誰にもわからなかった。





 ニードルが行う放送が終わってから、一文字隼人は考えていた。
 薄汚れた白衣を纏い、ニードルと名乗った冷酷な笑みを浮かべていた男。その外見から態度、更にこちらを見下したような目つきは不快感を覚えた。
 実は言うとニードルはBADANの離反者である怪人だが、この場では村雨良以外に存在を知っている者はいない。結城丈二は対面したが、それはあくまでもヤマアラシロイドとしての姿だけ。ニードルの名と姿を知るのはもう少し先でBADANに接触した後の話だった。
(気に食わない野郎だな……だが、あの野郎ばかり気にしてはいられないな)
 新たに増えた禁止エリアはメモした。ニードルの言っていたボーナスとやらは気にかかったが、主催者の用意する物だとすると罠の可能性が高いのでそこまで気に留めていない。
 やらなければいけないのは、親友を失った桃園ラブへのメンタルケアだった。
「ラブ、立てるか……?」
 一文字は慎重に問いかける。
 目の前で俯きながらベンチに座っている少女の姿はあまりにも小さく、儚げに見えた。数時間前、勇敢な姿を見せた戦士と同一人物だと思えない程に。
 だが、どんな戦いを乗り越えていようとも、その実態は14歳の女子中学生でしかない。だから『立ち直れ』や『いつまでも悲しんでは駄目だ』などと言える訳がなかった。
 親兄弟や親友を失った子どもは今まで数え切れない程に見てきた。その度に、理不尽な争いを生む大人達や、元凶たる貧困や経済格差といった様々な現象に憤りを覚える。そんな不条理を少しでも減らす為に記者になったが、世界は変わらない。それどころかショッカ―やBADANのような悪の組織まで生まれる有様だ。
 仮面ライダーやプリキュアがいても、世界から争いが絶えることがない。必ず不幸になる人間が出てくるのだ。
「……はい、ごめんなさい。心配させちゃって」
 弱々しい声で答えながら、ラブはゆっくりと顔を上げる。
 彼女は笑っていたが、明らかに無理矢理作っているであるのが目に見えて、今にも砕けてしまいそうだった。先程まで酷く泣いていたせいで顔がぐしゃぐしゃで、目の周りも酷く赤い。
 ラブもラブなりに立ち上がろうとしている。それは空元気なのだろうが、一文字には充分だった。いつか本当の意味で親友の死を乗り越えて、心からの笑顔をみんなに見せて欲しい。そうでないと死んでしまったみんなは報われないし、何よりも生きているみんなだって喜ばないのだから。
「一文字さんやつぼみちゃん達だって頑張ってるのに、あたしだけがいつまでもへこたれていられませんから……」
「そっか。なら、行くか」
「はい……」
 そう言いながら立ち上がるラブの手を一文字はゆっくりと掴む。
 返事ができるなら予想よりも傷は深くないかもしれない。だが、ちょっとしたきっかけで壊れてしまう恐れがあった。
 この年頃の少女は明るいようでデリケートだったりする。彼女が今まで戦えたのは、共に戦う仲間や帰りを待つ人という支えがあったからだろう。一文字自身、本郷猛達がいなかったらとっくに心が折れていたかもしれない。
 放送では結城丈二、そして沖一也や村雨良の名前は幸いにも呼ばれなかった。石堀光彦達だって今は無事だが、これからどうなるのかはわからない。
 名前を聞いてないので放送で呼ばれたかどうかはわからないが、恐らくあの暗黒騎士キバやテッカマンランスは生きている。一文字は何となくそう確信していた。
 だが、奴らのことばかり考えていられない。
(そういえば、この道は確かラブがマミって娘と通ったんだったな……)
 キバとの戦いから先に離脱した石堀達の後を追うように、一文字達は当初の予定通りに南の道を進んでいる。
 ラブにとっては一度通った道をまた逆戻りする形となっているのだ。そして歩いている内に、マミが埋葬されている場所に辿り着くだろう。
 友達が眠る場所を再び通るのは、彼女にとってどんな気分なのか。マミと過ごした時間に対して郷愁を覚えるのか、それとも責任を再び覚えてしまうのか。
 マミと出会ってから過ごしたのは六時間くらいらしい。客観的には短すぎるかもしれないが、ラブにとってはどんな宝石よりも輝いていただろう。
 もしも彼女達の隣に俺がいたらマミを助けられたのか……そんな可能性を考えたが、振り払う。ただ空しくなるだけだ。
 そう考えている内に、横を歩くラブが歩みを止めるのを一文字は見た。

153名無しさん:2013/03/23(土) 00:23:47 ID:QYkcZwFc0
支援

154 ◆IdwfK41Ttg:2013/03/23(土) 00:24:37 ID:J.AlvXmM0
「今は祈ろうぜ。マミや、マミの友達達が向こうで休んでいられて、そしていつかまた生まれ変われるってことを……」
 その提案にラブは無言で頷く。
 それから二人はマミが眠る地で黙祷を捧げた。桃園ラブを救う為にその命を捧げた巴マミと、理不尽な殺し合いの犠牲になった多くの参加者達へと。
(なあ、マミって言ったか? 俺がふがいないせいでラブを悲しませることになって、すまない……謝って済むことじゃないのはわかってる)
 そんな中、一文字は心の中で想いを告げた。
(でも、ラブは俺が死なせない。それに美希やつぼみやいつき、杏子って娘も俺が守ってみせる。君がやり残したことは俺が絶対に果たしてみせるから……安らかに眠ってくれ。俺が頑張るからさ)
 魔女という怪物や、この不条理に満ちた殺し合いから人々を護る為に戦い続けた巴マミに祈りを捧げる。
 顔も知らない少女だが、ラブの話を聞くに勇気と優しさに溢れていることだけはわかった。歳はラブより一つ上なのに、決して涙を流さずに殺し合いを打ち破ろうとしたらしい。
 でも、本当はマミも辛かったのではないか? まだ大人の支えが必要な年頃なのに誰にも頼ることができず、先輩として振るわなければならない。この状況で、そのプレッシャーを背負うなんてあまりにも辛いはずだった。
 本当のことは誰にもわからない。だけど、もしもマミが心の中で泣いていたと考えたら、心が痛んでしまう。
(最期は笑えてたんだよな……ならきっと、ラブの存在がマミの支えになっていたのかもな)
 けれども、土の下にいるマミは笑顔を浮かべているらしい。
 それが正しければ、きっとマミは最期の瞬間に幸せを感じることができたのだろう。ラブという友達がいたおかげで、マミは救われたのだ。
 桃園ラブという少女は、巴マミがこの世界に遺した希望なのではないか。一文字隼人はそう思ってしまう。
「ブッキー、せつな、えりかちゃん、ゆりさん……痛かったよね? 苦しかったよね? 辛かったよね?」
 そんなラブは今、俯きながらこの世から去った友達に向かって語りかけている。
 表情を窺うことはできないが辛そうにしているのは確かだった。けれども、涙は流していない。
「あたし、みんなみたいに強くないけど……頑張るから。美希たんやつぼみちゃんにいつきちゃん、それに杏子ちゃんのことも助けるから。みんなとまた会えるのは先になりそうになるけど、ごめんね……マミさん、わがままなのはわかりますけど、もしもみんなと会えたらみんなのことをお願いします……みんな、強くて優しい子ですから……」
 それは花咲つぼみが来海えりかに捧げた言葉とよく似ていた。つぼみはさやかとえりかが仲良くなれると思ったように、ラブもまたマミと亡くなったプリキュア達と仲良くなれると信じていた。
 無論、ラブも一文字もその一件を知らないので、これはただの偶然でしかない。
「一文字さん」
「ん?」
 ラブの呼び声が聞こえてきたので、一文字は振り向く。
 彼女は笑っていた。その瞳は相変わらず儚げだったが、それでも泣いていた時に比べれば光が宿っているように見える。
「ありがとうございます!」
「……どういたしまして」
 口から出た感謝の言葉からも力が感じられた。
 桃園ラブの笑顔が嬉しく思えて、思わず一文字隼人も笑みを浮かべながら返事をした。


【1日目/日中】
【I−3】

155 ◆IdwfK41Ttg:2013/03/23(土) 00:25:32 ID:J.AlvXmM0
【桃園ラブ@フレッシュプリキュア!】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(小)、精神的疲労(中)、罪悪感と自己嫌悪と悲しみ、決意
[装備]:リンクルン@フレッシュプリキュア!
[道具]:支給品一式×2(食料少消費)、カオルちゃん特製のドーナツ(少し減っている)@フレッシュプリキュア!、毛布×2@現実、ペットボトルに入った紅茶@現実、巴マミの首輪、工具箱、黒い炎と黄金の風@牙狼─GARO─
基本:誰も犠牲にしたりしない、みんなの幸せを守る。
1:今は一文字さんと一緒に行動する。
2:マミさんの遺志を継いで、みんなの明日を守るために戦う。
3:プリキュアのみんなと出来るだけ早く再会したい。
4:マミさんの知り合いを助けたい。もしも会えたらマミさんの事を伝えて謝る。
5:犠牲にされた人達(堂本剛三、フリッツ、クモジャキー、巴マミ、放送で呼ばれた参加者達)への罪悪感。
6:ダークプリキュアとテッカマンランス(本名は知らない)と暗黒騎士キバ(本名は知らない)には気をつける。
7:どうして、サラマンダー男爵が……?
8:石堀さん達、大丈夫かな……?
[備考]
※本編終了後からの参戦です。
※花咲つぼみ、来海えりか、明堂院いつき、月影ゆりの存在を知っています。
※クモジャキーとダークプリキュアに関しては詳しい所までは知りません。
※加頭順の背後にフュージョン、ボトム、ブラックホールのような存在がいると考えています。
※放送で現れたサラマンダー男爵は偽者だと考えています。



【一文字隼人@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(小)、胸部に斬痕、左腕が全体的に麻痺
[装備]:モロトフ火炎手榴弾×3
[道具]:支給品一式(食料一食分消費)、姫矢の戦場写真@ウルトラマンネクサス、タカラガイの貝殻@ウルトラマンネクサス
[思考]
基本:仮面ライダーとして正義を果たす
1:ラブと一緒に石堀達を探しながら市街地を目指す 。
2:他の仮面ライダーを捜す
3:暗黒騎士キバを倒す(但しキバは永くないと推測)
4:もしも村雨が記憶を求めてゲームに乗ってるなら止める
5:元の世界に帰ったらバダンを叩き潰す
6:この場において仮面ライダーの力は通用するのか……?
[備考]
※参戦時期は第3部以降。
※この場に参加している人物の多くが特殊な能力な持主だと推測しています。
※加頭やドーパントに新たな悪の組織の予感を感じています(今のところ、バダンとは別と考えている)。
※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました
※18時までに市街地エリアに向かう予定です。
※村エリアから南の道を進む予定です。(途中、どのルートを進むかは後続の書き手さんにお任せします)
※つぼみからプリキュア、砂漠の使徒、サラマンダー男爵について聞きました
 フレプリ勢、ハトプリ勢の参加者の話も聞いています
※石堀の世界について、ウルトラマンやビーストも含めある程度聞きました(ザギとして知っている情報は一切聞いていません)

156 ◆IdwfK41Ttg:2013/03/23(土) 00:26:13 ID:J.AlvXmM0
以上で投下終了です

157名無しさん:2013/03/23(土) 00:35:34 ID:QYkcZwFc0
投下乙です
ラブと一文字はなかなか良いコンビになってきたな
ラブには大輔、一文字には真美さんという者がありながら、羨ましいことになりやがって…

プリキュアはいつも仲良くして、誰かが危険になっても支え合って、みんなで戦いから帰って来てたから、流石に友達死んじゃうと辛いよなぁ
美希たんと一緒に乗り越えて、幸せゲットできるか…!?

そして、前回投下されたあかねの話と距離が近いけど、進路的には合わないかな?

158名無しさん:2013/03/23(土) 16:08:02 ID:QYkcZwFc0
とりあえず、>>146以外でも良長編話全般を貼っておきますね

第66話:白と黒の黙示録
ttp://www20.atpages.jp/r0109/uploader/src/up0216.png

第94話:「親友」(キャラが多いので、これはタイトルとの関係が深い4キャラのみ)
ttp://www20.atpages.jp/r0109/uploader/src/up0217.png

第112話:牙狼三部作(カオルにちなんで、全キャラ絵画風)
ttp://www20.atpages.jp/r0109/uploader/src/up0218.png

第113話:かがやく空ときみの声(らんま視点)
ttp://www20.atpages.jp/r0109/uploader/src/up0219.png

159名無しさん:2013/03/23(土) 23:39:41 ID:J.AlvXmM0
制作乙です!
どれも素晴らしすぎる!

160名無しさん:2013/03/24(日) 02:10:31 ID:TdYhycvo0
投下&制作乙です!

仮面ライダーとプリキュアとのコラボが凄まじい
正直、ここまで良い関係になるとは思わなかった
ただ仲間や友達がどんどん死んでマーダーも健在な奴もいる状態は変わらないからなあ…

161名無しさん:2013/03/24(日) 12:31:19 ID:hPQEkpS.0
予約来てるぞ
そう動くかあ…

162人形遣いと少女 ◆gry038wOvE:2013/03/27(水) 15:50:30 ID:d8mEGUtY0
ただ今より、投下を開始します。

163人形遣いと少女 ◆gry038wOvE:2013/03/27(水) 15:51:01 ID:d8mEGUtY0


『……みなさん、ごきげんよう』


 その挨拶とともに、ニードルによる放送が終了する。
 ダークプリキュアがその放送で気にした名前は、「月影ゆり」だけであった。
 やはり、あそこで死んだのは確かに月影ゆりなのだ、そして、先ほど眠りから覚めた時も、あの出来事は夢にならなかったのだ……と、少し思いをはせた。
 それ以外の名前には興味がなかった。
 マリンとムーンライト以外のプリキュアたちも生きていたし、ここまで会った人間の名前をろくに知らないダークプリキュアとしては、それ以外の名前を気にする必要はなかった。
 問題といえば、そう……ここから先にある市街地にも禁止エリアが出たことだろうか。
 それも二か所。現在は、15時に禁止エリアとなるF-8エリアを出たあたりか。目の前に市街地は見えている。
 禁止エリアは、マップの右下あたり──市街地を囲むようにして増えている。
 誰もいないエリアを禁止エリアにしても仕方がないであろうから、おそらく、この市街地にはやはり人が集まっているのではないかと思う。
 ただ、そこにいる人間が禁止エリアを避けて逃げる可能性も否めない。
 とはいえ、折角ここまで来て後戻りというのも忍びないし、しばらくはこのエリアにいる可能性もあるので、ダークプリキュアは市街地の方に向かうことにした。


(○+×……なるほど)


 ダークプリキュアは、放送で気がかりだったことも考える。
 放送でニードルが行った「ヒントの提示」。これが、ダークプリキュアには疑問だった。
 単純に見えて難解で複雑、数字でもないもの──記号を足すという不可解な暗号。
 その本当の意味は、結局彼女にわかることはなかった。
 当然、警察署の地図記号などわかるはずもないのだ。


「風都タワーか」


 ダークプリキュアは、かつて見た支給品のことを思い出す。
 支給品は、場合によっては三つ支給される。必ず入っているが、数は1〜3と人によってまちまちで、三つ支給される場合は、あまり強すぎるものが入っていないこともあるだろう。
 ダークプリキュアは既に破壊してしまったが──彼女の支給品もまた、三つだった。

 以前確認した支給品の中には、風都タワーのパンフレットがあったのである。

 あの時、パラシュートや筋肉強化剤とともに木端微塵に吹き飛んでしまったものの一つ。そして、あの時は不要物として処理することにも躊躇いがなかった品だ。
 そのチラシに書かれていた風都タワーの姿は、「○」と「×」を組み合わせたように見えなくもない。元々、風車の形は、「○」と「×」を組み合わせたものに近かった。
 羽の数は違えど、地図記号を知らないダークプリキュアにはそれくらいしか思い当たるものがなかったのである。
 マップにある不審な建物の情報を得ることができるのは、風都タワーを知らない者にとっては情報系の支給品として役立ったかもしれないが、そこを目指す予定のないダークプリキュアも破壊するのに一切抵抗はなかった。


(殺し合いに乗った者──二人の人間を殺害した奴は、おそらく移動手段を求めてそちらに向かう)


 ふたつめのヒントでは、人間の名前を使った計算があったが、あれは式を記憶し、名簿と照らし合わせることで何とか解くことができた。そのヒントに従うなら、変身者を二人以上殺害した実績を持つ者が、風都タワーに向かう可能性が高いだろう。
 風都タワーは結構大き目な建造物で、ニードルが言うとおり、その施設の近くにいるのならば、今のニードルのヒントで風都タワーに向かってもおかしくはない。
 ならば、警察署は安全である。
 移動手段が欲しければ、おそらく警察署に向かうことはないし、ダークプリキュアと同じく安全な場所を求めてやって来た人間を葬ることもできる。
 優勝が目的であり、そのためにどんな手段でも使いたいダークプリキュアとしては、殺し合いに乗る者同士がつぶし合っても仕方がないと考えているので、その戦法は非常に楽だ。
 最後の一人になるには、殺し合いに乗る者まで殺してしまうのは、あまりに効率が悪すぎる。


(ともかく、警察署を目指してみるか……)


 そんな勘違いとともに、ダークプリキュアは警察署に向かって歩き出した。
 警察署……それこそが、いま危険人物が最も集まりそうな場所であることなど、彼女は知る由もない。



★ ★ ★ ★ ★

164人形遣いと少女 ◆gry038wOvE:2013/03/27(水) 15:51:23 ID:d8mEGUtY0



『……みなさん、ごきげんよう』


 この言葉を聞いた時刻は、彼や彼女も共通していた。
 孤門一輝と高町ヴィヴィオである。ダークプリキュアが現在、目的地としている警察署の中で、二人はショックを隠せないまま沈黙していた。


『早乙女乱馬』、『志葉丈瑠』、『筋殻アクマロ』、『スバル・ナカジマ』、『園咲霧彦』、『月影ゆり』、『ティアナ・ランスター』、『東せつな』、『姫矢准』、『山吹祈里』


 知り合いの名前、誰かの知り合いの名前。
 いろんな名前が呼ばれているが、これまでヴィヴィオを保護してくれた乱馬、霧彦、祈里の三名が死亡しており、ヴィヴィオの元の世界での知り合いがアインハルト以外全員死んでしまったという事実は、衝撃だった。
 孤門にとっても、親しい存在だった姫矢准も、死んだ。
 ダークメフィストとの戦いで行方不明となって以来、彼は死んだと思い続けていたが、ここで確かに死んでしまったのである。


「……そんな」


 死者が出るペースも、まったく落ちていない。
 このまま、どんどん死者が出ている。
 広間では誰かが、「ドッキリ撮影」などと言っていたが、本当にそうなのだと思いたくなるほどたくさんの死者が出ていた。
 しかし、ドッキリでは済まない怪我をしている少女が、ドッキリでは済まないほどに深い傷を心に負っている。
 それが、孤門一輝には無性に許せなかった。


「……っく……っく……」


 今、目の前で泣き伏しているヴィヴィオは、何を言うわけでもなかった。
 ただ、突然泣き出して、そのまま一言も口をきいていなかった。禁止エリアの情報などを耳に通しているかも怪しい。
 放送のヒントなど、少しも聞いていないだろう。
 姫矢や乱馬が死んだのはショックだったが、辛うじてそれだけで済んだのが孤門に平静を保たせてくれていた。
 孤門の母が死んだら……ナイトレイダーの人たちが死んだら……姫矢や憐が死んだら……そして、それが全て同時にきたら。
 それを考えると、孤門はあの時──斎田リコの運命を溝呂木によって狂わされたあの時のように、平静ではなくなるだろう。
 今のヴィヴィオはそれなのだ。
 孤門は大人だったが、ヴィヴィオはまだ小さい女の子である。こんな子供に、そんな辛い現実を見せるなんて、許せなかった。


『その憎しみを力に変えなさい』


 西条凪副隊長の言葉が、不意に頭を過った。
 いま、孤門は加頭やサラマンダー男爵、ニードルといった人間たちへの恨みが頭を過っていた。
 スペースビーストやアンノウンハンドという抽象的な存在ではない。溝呂木のように、人間の姿をした者たちが悪事を働いている。それを思うと、憎しみをぶつける場所があった。
 災害で家族を奪われた人たちも、スペースビーストによる死を事故や災害で片づけられた人たちも……孤門には近しい記憶だ。
 レスキュー隊時代も、ナイトレイダー時代も、そうした悲しみを持つ人たちを何度も見てきた。
 憎しみをぶつける相手が存在しない苦しみを、孤門は知っている。
 それと比べると、孤門やヴィヴィオが憎むべき対象ははっきりと決まっていた。
 自分たちには憎む相手が決まっているのだ。
 しかし、それをうまくコントロールしなければならない。憎しみだけで戦っていてもどうにもならないのは、孤門もわかっている。


「……行こう。ヴィヴィオちゃん」


 何も言わないヴィヴィオの背中に手を置く。
 孤門は、ヴィヴィオと違ってはっきりと放送を聞いていた。
 元々、警視庁に勤めていた孤門は、当然警察署の地図記号を知っているし、緑という色がどうしてできるかも知っている。
 人名の足し算に至っては、自分の名前が入っているのだ。


「ここは危険だ。……変身した人間を二人も倒した奴らが、この近くにいる」


 孤門も気が気ではなかった。
 警察署で、色んな仲間を集めて会議をしようかと思ったが、それは叶いそうにない。


「……それで、そいつらがここに来るかもしれないんだ」


 孤門は、ヴィヴィオの手を引いた。まだ顔中が涙でいっぱいになっており、右手がそれを拭っている。その顔を見ないで上げようとしたが、孤門はつい凝視してしまった。
 クリスが、その様子をしょんぼりとした表情で見つめている。
 雨に濡れた子犬よりも、ずっと可哀想な姿だった。
 大切な人たちを次々に喪い、励ましてくれた人もいなくなる。
 そんな、あまりに悲しい少女の姿に、ああして声をかけるのは、仕方がないことだけれどデリカシーに欠けた行動だろうと思った。
 しかし、ヴィヴィオのためにも、一刻も早くここから出なければならないのである。

165人形遣いと少女 ◆gry038wOvE:2013/03/27(水) 15:51:43 ID:d8mEGUtY0


「……孤門、さん……」


 泣きながら、嗚咽とともにヴィヴィオは孤門の名前を呼んだ。
 放送が行われてから、初めての会話だった。
 きっと、少し口の中に言葉を溜めてから出した、やっと口に出せた言葉なのだろう。
 放送はほとんど聞いていなかったが、今の孤門の言葉は聞いていた。はっきりと、ヴィヴィオだけに告げられた言葉だったからだろうか。
 それを聞き逃せば、誰も孤門の言葉を聞いてくれなくなる。


「……私、ここに、残ります……一人で、先に、行ってください」


 勿論、孤門は、ヴィヴィオの手を握るのをやめない。
 こういわれて、すぐに彼女の手を放せるほど半端な覚悟で彼女を連れ出そうとはしていなかった。
 ヴィヴィオの精神が錯乱し始めているのはわかったが、孤門は訊いた。


「どうしてそんな事を……?」

「たくさんの人の命を奪ってる人が……ここに来るなら、私は、それを、倒したいんです……」


 彼女の回答はシンプルだった。
 二人以上の人間を殺した者たちが、ここに来るのならば、逃げるのではなく戦いたい……というのが彼女の思いだったのである。
 孤門もまた、それと同じ気持ちをどこかに抱えていたゆえに、少し共感してしまう部分もあった。
 しかし、変身した者を葬れる実力者が本当にここに来るというのなら、孤門とヴィヴィオには到底敵う余地がないのである。
 変身ができるヴィヴィオも、いま現在はこんな状態だ。


「……僕も、できればここにいたい。あの武器が悪い人の手に渡らないように。でも、それはできないんだ……」


 第二回放送でのボーナスも、孤門にははっきりとわかっていたゆえに、ここを離れたくない気持ちは更に大きかった。
 説明書もなく、機動もしない道具……あの不思議な鎧が、おそらく第二回放送でのボーナスだろう。
 17時になれば、あれが機動可能になる。
 その時にここに悪人が来て、それを利用しないように確保しておきたいのである。
 できれば、孤門はその道具を使って戦闘に参加したいと思っていた。
 しかし、その時刻まで随分と時間が開いているし、孤門はその間中ずっとここにいることもできない。


「……早く行こう、ヴィヴィオちゃん。仮に敵が弱っていたとしても、ここは危険すぎる」

「……嫌です……」


 ヴィヴィオは、浮遊するクリスを強引に自分の胸元へと引き寄せた。


「セイクリッドハート・セットアップ──」


 ヴィヴィオの姿は、一瞬で大人の姿へと変身する。
 孤門は、その強大な力に弾かれて、手を放してしまった。後方に吹き飛んだ孤門とヴィヴィオには、それなりの距離感覚ができた。


「私は……ここで……力を、悪く使う人たちを、倒したい!!」


 ヴィヴィオが涙が伝いながらも凛々しい顔でそう叫んだが、孤門には無理をしているように見えてならなかった。
 そう、彼女は命を捨てようとしているのだ。そして、その理由はきっと憎しみである。
 もはや、失うものなどほとんど無いのである。あるのは、きっと殺し合いに乗った者に対する恨みだけだ。
 自分と関った人間が多数死んでしまっているのも、命を捨てたがる原因だろうか。
 アインハルトと同じ状態に陥っているのが、よくわかった。
 だから、今度は孤門は彼女を意地でも止めたいと思っていた。

166人形遣いと少女 ◆gry038wOvE:2013/03/27(水) 15:52:08 ID:d8mEGUtY0


「駄目だっ!」


 怒号に近い声が孤門から発された。
 どこか頼りなさげな声だが、その目は敵を睨みつけるような目で怒りに満ちていた。


「……君がまだここにいたいっていうなら、僕もここに残る!」

「それは駄目です、孤門さん! 孤門さんには、変身能力がないから……」

「……きっと、変身能力者を倒せるような相手と戦えば、僕はあっけなく負けて、何もできないまま死ぬだろうね。だから、僕はここを出ない。命を捨てるっていうことが、どんなに愚かな事なのか、僕は君の目の前で証明してみせる!」


 結局、ヴィヴィオが戦うことも、孤門が戦うことも変わらない。
 相手が変身者を二人以上葬った猛者だというのなら、孤門とヴィヴィオの二人では到底太刀打ちできないのである。
 だから、孤門は、ヴィヴィオを意地でも逃がすためにそう言った。
 これでヴィヴィオが逃げないというのなら、孤門は彼女と運命を共にするだけだ。


「……僕だって、姫矢さんを殺した奴や、リコを殺した溝呂木が憎い……だけど、ここで命を捨ててそいつらを倒したって、どうにもならない!」

「……」

「僕たちは生きるために戦うんだ、ヴィヴィオちゃん。負けるような戦いは……そんな無茶は、絶対にしちゃいけない。それじゃ、無駄に命を亡くすだけなんだ」


 ヴィヴィオは何も言わずに、変身を解いた。
 孤門の言葉の持つ説得力によって、だんだんと落ち着いたらしい。
 ヴィヴィオの姿を見て息をついた孤門は、すぐに彼女に声をかける。


「行くよ、ヴィヴィオちゃん」

「……はい」


 返ってきたのは、肯定だった。
 ヴィヴィオが残れば、孤門までここに残ってしまう。
 ここが本当に危険な場所だというのなら、せめて孤門は安全な場所に逃げてほしかったのだ。
 そう、彼も彼女も、本質は誰にも犠牲になってほしくないと願う善人だった。
 ただ、ヴィヴィオは若さゆえに引き際をわきまえることができない。
 だから、孤門が自分自身を人質にすることで、ヴィヴィオを制止しなければならないのである。


「とにかく、美希ちゃんたちは生きてるみたいだから、合流するために中学校の方に向かおう」


 気を取り直して、彼らは行動方針を考えた。
 祈里が死亡したというのが気がかりだが、そこに向かった三人はまだ生きている。
 三人とまた合流することができれば、かなり心強いだろう。


 その後、誰かが来ていないかを確認するため、孤門は窓の外を見る。
 先ほど、しばらく確認していなかったが、警察署に立ち寄った人間はおそらくいないだろう。
 今、現在ではまだ孤門とヴィヴィオ以外の来訪者はまだいないはずだ。
 しかし、付近に二人も参加者を葬った相手がいるのだから、警戒しなければならない。

 そして、孤門が目にしたのは──


「──マズい、ヴィヴィオちゃん、伏せて!」


 ────黒く染め上げられたゴシックロリータ風の衣装の少女の姿であった。
 沖たちから教えられたダークプリキュアの特徴──特に「片翼」という部分が合致したそれと目が合った孤門は、本能的に襲撃の予感を感じた。
 ダークプリキュアが黒とも紫とも言えない色の光を出すとともに、会議室のガラスが粉砕され、ものすごい音が響く。
 孤門とヴィヴィオは、伏せた状態でガラスの粉塵を浴びた。
 机もひっくり返り、ボードからチョークが吹き飛んで行った。
 アインハルトが持っていたデイパックが転がっていく。
 音や動きが止んで、窓の外を見ると、今度はダークプリキュアが跳躍して窓の外から入ってきた。
 早くも、孤門とアインハルトのもとに、悪しき戦士が現れたのだ。



★ ★ ★ ★ ★

167人形遣いと少女 ◆gry038wOvE:2013/03/27(水) 15:52:39 ID:d8mEGUtY0



「──ダークプリキュア!」


 窓から飛び込んできたその影の名前を呼ぶ。
 ディバイトランチャーを手にした孤門は、そちらに向けて引き金を引く。
 光の弾丸がダークプリキュアに到達する前に、ダークプリキュアの方が警察署の狭い天井に向けて飛び上がる。
 そして、彼女の右手が孤門の首を絞め、そのまま持ち上げる。
 距離が近すぎるうえに目線が上がりすぎたせいもあって、孤門はディバイトランチャーをそちらに向けることができなかった。


「……ほう、私の名を知っているのか」


 これまで、何度か参加者に会ってきたので、そういう者と遭遇した人間も中にはいるだろうと思っていた。
 特に、人間と比べればこの姿は特徴的だ。
 怪人の姿をした人物たちの次くらいに、その情報は伝達しやすいだろう。
 このように集団行動をしているのならば、尚更だ。
 だから、ダークプリキュアは彼に興味はなかった。


「時に──お前はこのゲームに乗っているのか?」


 彼は殺し合いに乗っているわけでもなさそうだし、見たところではプリキュアでもなさそうだ。
 つまり、ダークプリキュアとしてはひと思いに排除しても構わない相手だろう。
 ただ、念のためにそう訊いておいた。
 孤門はすぐに答える。


「僕は……乗ってない!」


 そう答えた時、ダークプリキュアの右手にはより強い力が加えられた。
 息ができない孤門は、口に溜まった唾液を垂れ流しながら、足をバタバタさせてもがいた。


「ならば私にとって貴様は不必要だ……死ねっ!!」


 ダークプリキュアの右手は、下手をすれば孤門の喉を握りつぶせるほどに強い。
 しかし、その殺し方は、かなりグロテスクで、ダークプリキュアとしても目に毒だろうと思われた。当然、血も吹き出し、ダークプリキュアの腕は真っ赤に染め上げられる。
 目にも毒だし、身体も穢れる。サバーク博士から任された任務だったならば、それも躊躇いはなかっただろうが、ダークプリキュアとして動いている彼女には、どうもそれは似合わなかった。
 そのため、ゆっくりと力を込めていく。息が、勝手に止まるまで。


「はぁっ!」


 しかし、その次の瞬間、ヴィヴィオの右手がダークプリキュアの脇腹に叩き込まれた。
 リバーブロー。
 重い一撃が、ダークプリキュアの肝臓あたりに向かって直撃する。
 その一撃が、音を発しているのが、その重みを示していたといえるだろう。
 格闘技を習った故に急所をよく知っていたヴィヴィオは、この状況から孤門を救い出す最善の方法として、これを使った。
 強烈な痛みを感じたダークプリキュアの手は放され、孤門の身体が地面に落ちる。


「はぁ、……はぁ、……」


 まだちゃんと呼吸できずに、苦しそうにしている孤門の前に、ヴィヴィオが割り込むようにして立った。
 ダークプリキュアも脇腹を押さえながら、苦汁に満ちた表情でヴィヴィオを見つめる。


「貴様……子供だったはず」


 ダークプリキュアは、大人モードになっているヴィヴィオを見て驚いた様子だ。子供だったから、抵抗の効果は孤門よりも薄いだろうと考え、彼女は孤門を先に狙った。
 ヴィヴィオは、ダークプリキュアの持った疑問に答えを与えることなく彼女に対する攻撃を開始する。
 今のヴィヴィオは、楽しそうに格闘をする余裕がなかった。
 他人を襲撃してくる者に対して楽しんで戦える精神的余裕がないのだ。もしかすれば、彼女こそがたくさんの知り合いを殺害した張本人かもしれないと思うと、怒りも現れる。


「はぁっ!」


 ヴィヴィオが、ダークプリキュアの顔や腹をめがけて、何度か拳を前に出す。
 身を乗り出さないように、ジャブやストレートを繰り返しているヴィヴィオ。


「フンッ」


 だが、ヴィヴィオの拳を見切ってしまうのがダークプリキュアであった。
 そのか細い身体は、軽やかにヴィヴィオの攻撃を回避していく。

168人形遣いと少女 ◆gry038wOvE:2013/03/27(水) 15:53:48 ID:d8mEGUtY0


「ヴィヴィオちゃん……っ!」


 孤門は、彼女を助けるべく、ディバイトランチャーの引き金を引こうとするが、射程内でヴィヴィオがなかなか激しく動いてしまっている。
 孤門は攻撃することができなかった。
 仕方がなく、周囲を見回すと、先ほどまで机上に置いていたデイパックが三つ、地面に転がっている。
 向かって右手には、ヴィヴィオと孤門のデイパックが乱雑に落ちており、向かって左手には、アインハルトが置いて行ったデイパックが落ちている。


 この状況。
 道具に頼るのも一つの手だ。
 どちらかを選べというのなら──


(僕たちの支給品はここで使えるようなものじゃなかった……確認してないけど、あの子の支給品なら、もしかしたら……!)


 孤門は咄嗟にひらめき、向かって左のデイパックを見つめた。


 しかし、ヴィヴィオの攻撃を避けきったダークプリキュアは、床を強く蹴って、高く舞い上がると、空中から両手で、孤門とヴィヴィオに向けて赤いエネルギー弾を放つ。
 その手から放たれる真っ赤なエネルギー弾は、やはり普通の攻撃には見えなかった。
 言ってみれば、燃え跡を残さない火だ。
 直撃すれば、人体には致命傷となりかねない負担がかかるだろう。


「くっ……」


 孤門は間一髪、それを避ける。めくるめく早さで身体へ到達しようとするエネルギー弾を彼が避けられたのは、偶然にも近くに落ちているデイパックへと飛びかかったからである。
 彼は、そのタイミングを見計らっていただけで、特にダークプリキュアの攻撃をよけようと言う意図はなかった。しかし、背後で椅子が煙を上げているのを見て、孤門はデイパックを見る暇なく、絶句する。
 このデイパックがここに転がっていたから……また、それを偶然取ろうとしたから、いまここに孤門の命があるというのだろう。


「きゃぁっ!」


 ヴィヴィオの背中に、ダークプリキュアのエネルギー弾が命中するが、全身が鎧のようになっている今のヴィヴィオの状態では、致命傷にはならなかった。
 ただ、結構なダメージを受けただけあって、窓枠へとぶつかり、ガラス窓を散らしながら、壁で苦しそうな表情を浮かべている。

169人形遣いと少女 ◆gry038wOvE:2013/03/27(水) 15:54:04 ID:d8mEGUtY0


 そして、ダークプリキュアが地面に降り立つ。
 会議室の中央の机に立つダークプリキュアのシルエットは、孤門には異常に大きく見えた。


「……愚かだな。そんな物に頼っても、お前たちはこの場から逃れることはできない」


 その辺に落ちていたデイパック──アインハルトのデイパックを抱きしめ、それに全てを賭けようとしている孤門を前に、ダークプリキュアは呆れたような表情をしていた。
 孤門は、デイパックを手にしたは良いが、ダークプリキュアの方を見ながら、ジッパーがどこかを探って手を震わせている。
 一瞬でも、デイパックの方に目をやることができないのだ。
 だから、ダークプリキュアの方を見ながら、自分が抱えているデイパックのジッパーがどこかを探っている。


「そんなもの……やってみなければ、わからない!」


 そう言うと、孤門の手は見事にデイパックのジッパーを抓むことに成功した。
 それを引っ張るときの快感は格別で、中に何が入っているかもわからないのに、不思議と不安が発散されるようなものだった。
 直前まで、なかなか引っかからないのに苛立っていたせいもあるだろう。
 心地のいい擬音とともに、デイパックが綺麗に開いていく。


 そして、無我夢中で、その中にあるものを孤門は握った。
 柔らかい感触と硬い感触が同時に来る。布にくるまれた何か……これは、一体何なのだろう。
 持ち上げてみると、変に重い。
 水色に近い青をした、何かが視界に入った。


「傑作だな──」


 その中から出てきたものを見て、ダークプリキュアは笑いもせずにそう言った。
 もはや、孤門をこのまま確かに殺す気で、近づいているのは間違いない。
 彼女は、机の上を土足で歩きながら、孤門の倒れている場所に近づいてくる。
 孤門は、一体自分がどんなババを引いたのかを確認しようとするが、それより前にダークプリキュアとの距離が狭まった。


「……残念だが私には、人形遊びに付き合っている暇はない!」


 ダークプリキュアが、孤門の全身をめがけて、旋風とともに回し蹴りをする。


「あがっっ!!」


 孤門は、少し間抜けな声をあげながら、自分の視界が真上に向いていくのを確認した。
 今の一撃で死にはしなかったが、一瞬何が起きたかわからないほどに見事に吹き飛ばされたようだ。
 半開きのデイパックは、中に入っている様々な道具を地面にばらまいていく。
 孤門の身体は、室内を体重を感じさせないほど綺麗に滑っていった。


「いったたたたた……」


 ペットボトルが宙を舞い、ビニール袋に入ったパンが地面を滑っていき、やがて摩擦のせいで勝手に止まる。
 孤門もどうやら、同じように地面に寝転がっているようだった。
 視界に、同じように地面に転がった様々な道具が映る。一メートルは吹っ飛ばされたので、それらの道具やダークプリキュアの姿も遠い。
 いまいち状況がまとめきれず、混乱した頭脳が、何故かダークプリキュアの言葉を反芻させた。

170人形遣いと少女 ◆gry038wOvE:2013/03/27(水) 15:54:21 ID:d8mEGUtY0


『人形遊び』


 人形遊び──?
 何故、ダークプリキュアはそんなことを言ったのか。
 孤門は自分の手元を見る。
 そこにあるのは、巨大な人形だった。


「なんだよ……コレ……本当に、人形じゃないか」


 何を考えてこれを支給したのかはわからない。
 どこの国で作られたのかはわからないが、外国人の少女をモチーフとしたような、可愛らしい人形である。
 ただ、その目は不気味に何かを見据えているように見えた。
 孤門の目を、見ているように見えた。
 無感情な人形の姿は、時として怖い。
 これなら、ダークプリキュアの方が、まだ目で感情が見えてくるぶん、マシに見えた。


(……説明書きが貼られてる……)


 人形の背中には、名前と用法が書かれた紙がセロテープで貼られていた。
 そこにある名前が、孤門の意識を覚醒させる。
 カタカナで書かれたその名前は、孤門の記憶で最も強く焼き付いている名前である。

 かつての恋人の名前であり、ある時ビーストに巻き込まれた少女の名前でもある──


「リコ、だって……?」


 この人形の名前はリコだった。
 なるほど、こんなところでもまた、「リコ」か。
 人形の名前がリコとは──何という皮肉だろう。


 孤門は、その人形を片手に持ったまま、重い身体を起こした。


 ダークプリキュアが、こちらに向かって歩いてくる。
 支給品はほとんど散らばってしまい、手元にあるのはこれくらいだ。
 しかも、最悪なのは────


「どうやら、本当に使える武器は私の方に渡ったらしいな。まあ、お前がこの剣を持ったとして、私に勝つことはできないだろうが」


 アインハルトの支給品で唯一の武器である剣がダークプリキュアの手に渡っていたことだろうか。
 その名は、稲妻電光剣という。
 アインハルトがこれを帯刀しなかったのは、彼女の体格から考えれば明らかに大きすぎる刀身や、彼女の戦闘スタイルにも合わない「剣」という武器であることからだろう。
 本来は、宇宙プラズマの力を宿した凄まじい剣なのだが、その力はある程度制限されている。
 とはいえ、孤門のような人間を刺し貫くのは造作もない。
 ましてや、ダークプリキュアのように、刺し貫く腕力の持ち主であるというなら尚更だ。


「面白い。お前はこの剣で消し去ってやろう……。運命はお前を見放したという証明のためにな」


 ダークプリキュアは刃を孤門の方に向ける。
 割れたガラス窓から漏れた日の光が、稲妻電光剣に反射し、孤門の目にはあまりに眩しい姿に目を覆いたくなった。
 孤門は、立ち上がったはいいが、どうすればいいのかがわからなかった。
 この人形を使って、どうやって戦えばいいのか。


 ボトッ。


 その時、何かが落ちる音が聞こえた。
 何の音かはわからない。
 ただ、孤門はそちらに目をやることをしなかった。
 ダークプリキュアが、剣を持ってこちらに駆けて来ようとした。
 あまりに早すぎる動きに対応できず、孤門は判断能力を忘れて、その場に黙って立ってしまう。

171人形遣いと少女 ◆gry038wOvE:2013/03/27(水) 15:55:20 ID:d8mEGUtY0


「ソニックシューター!」


 しかし、そんなダークプリキュアの真横から、高速で光弾がぶち当たる。
 一発、二発、三発。
 一撃当たればまた一撃……という風に、ダークプリキュアの身体にその光弾がぶち当たった。
 ヴィヴィオが、真横からダークプリキュアの奇襲をやめさせたのだ。
 彼女の身体は結構傷ついた様子で、少し障れば傷ついてしまうようなバランスで立っていた。


「すぐに逃げてください、孤門さん……!」


 ヴィヴィオは、孤門に向けてそう言う。


(逃げて、いいのか……? いや、そんなわけがない……)


 だが、その言葉を聞いたとき、孤門は屈んでいた。その言葉を聞いてはいたのだが、それより前に、戦う理由を見つけてしまったのである。
 ダークプリキュアがダメージを受け、隙ができた瞬間に、孤門は落ちたものを確認した。
 先ほど、人形“リコ”から零れ落ちた何かを確認し────それを拾い上げる。
 まさか、この人形にこんな武器が付属しているとは思わなかった。
 説明書きにも書いておらず、その人形のスカートの中に隠されていた物──通常ならば、おそらくスカートの中をのぞき見ると言う変態極まりない行動をしなければ見つけることができなかったであろう代物。
 それが、先ほどダークプリキュアの攻撃によって衝撃を受け、人形の足から落ちたのである。


(女の子一人にこの場を任せるなんて、大の男がやっていいわけがない……それに、僕はナイトレイダーの隊員だ)


 その道具に付属していたボタンを押す。
 眼前では、爆煙の中から生還してヴィヴィオの方を睨みつける表情があらわになったダークプリキュアがいた。
 孤門の手に持った「それ」を見ることさえ、ダークプリキュアにはなかっただろう。


 ──PUPPETEER──


 ガイアメモリ──あのポスターに載っていた道具であった。
 武器であり、同時に「麻薬」でもある非常に危険な道具である。
 そして、何より自分が自分でなくなるような気がして、極力使いたくはなかったのだが、そんなことを言っていられる場合ではない。


「僕は……逃げない!」


 孤門はこれまで、ヒトであった。
 純粋すぎるくらいに、異形に変化することがなかった。
 闇に染まる可能性も持っていたし、同時に光を得る可能性もあったが、彼は少なくともこの時はまだ、人間だった。
 しかし、このメモリを見つけた瞬間、純粋な人間のまま生きることさえも捨てる覚悟ができた。
 なりゆきかもしれないが、もう一度、ガイアメモリから音が鳴る。


 ──PUPPETEER──


 孤門の姿は、パペティアードーパントの姿に変身する。
 決して、見てくれの良い姿ではなかったが、ともかく変身という手段を使わなければ他と対等に並べないのである。


「……!? 孤門さん、ガイアメモリを!?」

「ガイアメモリ……だと!?」


 パペティアードーパントとなった孤門は、ヴィヴィオの方を向いてコクリと頷く。
 本来なら、その危険性をよく知っている孤門がそれを使おうとすることはなかっただろう。
 だが、気合で毒素をおしこめるということも、あのポスターには書いてあった。
 それができるとするなら、この状況下では、それに賭けなければならない。


(ただ、このまま戦闘をしても仕方がない……)


 何せ、パペティアーは元々、戦闘向きなメモリではない。
 多くの場合、その用途は、「人形遣い」として「操作」することにある。
 今は、パペティアードーパントの両手はリコと繋がっているが、パペティアードーパントはあっさりそれを放した。
 この人形とメモリがセットだったのは、パペティアードーパントは過去に変身されたとき、この人形を操っていたからだろう。
 だが、孤門はそれを使おうとはしなかった。

172人形遣いと少女 ◆gry038wOvE:2013/03/27(水) 15:56:36 ID:d8mEGUtY0


(リコという名前の人形……できるなら、使いたくない)


 斎田リコは、溝呂木の操り人形として散々に使われた。
 そのあまりに冷酷で陰湿な行動を思い出すと、それと同じように「リコ」を「操り人形」にするのは抵抗があった。
 まあ、それは受験生が「落ちる」という言葉を生理的に嫌うようなもので、この人形に斎田リコの魂があるわけではないのだが、何となく嫌で使うのを避けたのだ。
 しかし、この人形を使って攻撃できたとしても、せいぜい噛みつく程度の地味な嫌がらせくらいしかできない。
 おそらく、孤門以外の人間であろうと──このメモリを使った瞬間、人形など使わずに別の戦い方をする。
 そう──


「ダークプリキュア……僕は運命に見放されてなんかいなかった」


 白い糸が、ダークプリキュアの方に延びる。
 それが一体何なのかわからなかったダークプリキュアはそれを切り裂こうとしたが、手や足がそれに巻かれてしまう。
 羽までも、その白い糸が絡め取る。


「何……っ!?」


 ────次の瞬間、ダークプリキュアの意識が消え、両手はだらんと垂れ下がった。
 まるで、糸に吊られた人形のように。


「運命に見放されたのは、君のほうなんだ」


 これこそが、パペティアードーパントの真の使いどころであった。
 パペティアーは、敵の意識を奪い、操り人形にすることができる。そんな特殊能力を持ったメモリなのである。
 かつて、それにより操られた仮面ライダーアクセルが仮面ライダーダブルと戦った事があったが、その時は敵が複数であったがゆえ、パペティアーは破られた。
 パペティアー自身が攻撃されれば、この操り人形の効果はあっさり途絶えてしまう。
 しかし、この場では敵が単独だったがゆえ、ダークプリキュアを止める者はいなかった。


 意識を失い、「心のない人形」に戻ったダークプリキュアは、パペティアーの指先から放たれた糸に操られるまま、数歩動く。


「孤門……さん?」

「大丈夫。まだ僕は何ともないよ。それに、彼女を利用したりなんかしない。……今は、彼女から戦意を奪っただけなんだけど……」


 パペティアーの姿のまま、孤門はヴィヴィオに話しかける。
 ダークプリキュアはほとんど動かされなかった。
 彼女を戦闘に利用することも今の所、する気はない。
 他人を操り人形にして働かせる……という行動に、孤門はまだ抵抗があるのだ。


「しばらく、変身は解けそうにないな」


 変身を解けば、パペティアーの効果はなくなってしまう。
 そして、いま現在ダークプリキュアを解放できる状況でない孤門は、深いため息をついた。
 しばらく、この恰好のまま街を歩かなければならないのだ……。



★ ★ ★ ★ ★



「……とりあえず、ここを出る準備は万端です」


 ヴィヴィオに言われ、パペティアーは頷く。
 散らばった道具を纏めて、デイパックに入れたヴィヴィオたちは、ダークプリキュアとともにここを出ようとしていた。
 ダークプリキュアは本当に敵意が一切なく、このままなら悪事も働けない。
 ただ、ダークプリキュアの意識を完全に奪ったままにしてしまうのも、人としてどうか……という疑問も少しあった。


(確かに、無害なら放してあげたいけど、これじゃあいつ放していいのか……それに、いつまでもこの恰好でいるわけにもいかないし)


 孤門は考える。
 意識ある者の意識を奪い、操り人形として手元に置く。
 すごく人として酷いことをしているのだが、今はこれくらいしかダークプリキュアとの戦闘をやめる手立てはない。
 とりあえず、いつきのようにダークプリキュアを知っている人のもとに引き渡したいが、いまはまず、ここから出るのが先決だ。


「……さあ、急ごう、ヴィヴィオちゃん!」

「はい……!」


 パペティアードーパントの姿をした孤門に言われるのも変だったが、それを笑う状況じゃない。
 とにかく、三人は急いでここを出るべく、会議室を出た。

173人形遣いと少女 ◆gry038wOvE:2013/03/27(水) 15:56:55 ID:d8mEGUtY0


【1日目/日中】
【F-9/警察署】
※会議室が窓、室内をはじめ、かなり破壊されています。

【高町ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
[状態]:上半身火傷、左腕骨折(手当て済)、決意と若干の不安
[装備]:セイクリッド・ハート@魔法少女リリカルなのはシリーズ、稲妻電光剣@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:支給品一式×2(ヴィヴィオ、アインハルト)、ヴィヴィオのランダム支給品0〜1(戦闘に使えるものはない)、アインハルトの支給品0〜1(ヴィヴィオ、弧門、アインハルト確認済)、山千拳の秘伝書@らんま1/2、ガイアメモリに関するポスター×5
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
0:警察署を出て、中学校の方に向かう。
1:強くなりたい。その為にらんまに特訓して欲しい。しかし…
2:みんなを探す。
3:ママ達、無事だよね……?
4:スバルさん……?
[備考]
※参戦時期はvivid、アインハルトと仲良くなって以降のどこか(少なくてもMemory;21以降)です
※乱馬の嘘に薄々気付いているものの、その事を責めるつもりは全くありません。
※ガドルの呼びかけを聞いていません。
※警察署の屋上で魔法陣、トレーニングルームでパワードスーツ(ソルテッカマン2号機)を発見しました。
※第二回放送のボーナス関連の話は一切聞いておらず、とりあえず孤門から「警察署は危険」と教わっただけです。

【孤門一輝@ウルトラマンネクサス】
[状態]:ダメージ(中)、パペティアードーパントに変身中(変身前はナイトレイダーの制服を着ている)
[装備]:ディバイトランチャー@ウルトラマンネクサス、T2パペティアーメモリ+リコちゃん人形@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0〜2(戦闘に使えるものがない)、ガイアメモリに関するポスター×5
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
0:警察署を出て、中学校の方に向かう。あと、何とか変身を解きたいが…。
1:みんなを何としてでも保護し、この島から脱出する。
2:姫矢さん、副隊長、石堀さん、美希ちゃんの友達と一刻も早く合流したい。
3:溝呂木眞也やゆりちゃんが殺し合いに乗っていたのなら、何としてでも止める。
4:相羽タカヤ、相羽シンヤと出会えたらマイクロレコーダーを渡す。
5:沖さん達が少しだけ心配。
[備考]
※溝呂木が死亡した後からの参戦です(石堀の正体がダークザギであることは知りません)。
※パラレルワールドの存在を聞いたことで、溝呂木がまだダークメフィストであった頃の世界から来ていると推測しています。
※警察署の屋上で魔法陣、トレーニングルームでパワードスーツ(ソルテッカマン2号機)を発見しました。
※パペティアードーパントの糸は、現在ダークプリキュアと繋がっています。ダークプリキュアの身体を自在に操ることができますが、今のところ孤門には彼女を利用するつもりはありません。
 なお、パペティアードーパントの効果は、パペティアー本体が攻撃されればあっさり解けます。


【ダークプリキュア@ハートキャッチプリキュア!】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、右腕に刺し傷、操り人形状態
[装備]:T2バードメモリ@仮面ライダーW
[道具]:ゆりの支給品一式、ランダムアイテム0〜2個(ゆり)
[思考]
※あくまでこれは操り人形になる前の思考です。
基本:キュアムーンライトの意思を継ぎ、ゲームに優勝して父や姉を蘇らせる。
0:市街地(警察署)へ向かい、集まった参加者達を倒す。
1:もし他のプリキュアも蘇らせられるなら、ゆりのためにそれを願う。
2:つぼみ、いつきなども今後殺害するor死体を見つけた場合はゆりやえりかを葬った場所に埋める。
  ただし、プリキュアの奇跡にも頼ってみたいので、その都度生かすか考える。
3:エターナルは今は泳がせておく。しばらくしたら殺す。
[備考]
※参戦時期は46話終了時です
※ゆりと克己の会話で、ゆりが殺し合いに乗っていることやNEVERの特性についてある程度知りました
※時間軸の違いや、自分とゆりの関係、サバーク博士の死などを知りました。ゆりは姉、サバークは父と認めています。
※筋肉強化剤を服用しました。今後筋肉を出したり引っ込めたりできるかは不明です。
※キュアムーンライトに変身することができました。衣装や装備、技は全く同じです。
※エターナル・ブルーフレアに変身できましたが、今後またブルーフレアに変身できるとは限りません。
※第二回放送のボーナスについて、「○+×」は風都タワーのことだろうと解釈しています。

174人形遣いと少女 ◆gry038wOvE:2013/03/27(水) 15:57:38 ID:d8mEGUtY0



【支給品解説】

【風都タワーのパンフレット@仮面ライダーW】
ダークプリキュアに支給。
風都タワーについて書かれたパンフレット。外観や、内部の構造などが書かれており、様々な情報が載っている。
しかし、数時間前にダークプリキュアがデイパックと一緒に破壊してしまったので、このパンフレットはこの話の開始時テインでこの世には無い…。

【T2ペティアーメモリ+リコちゃん人形@仮面ライダーW】
アインハルト・ストラトスに支給。
「人形遣い」の記憶のガイアメモリ。作中でT1は小説家・堀之内慶應が変身に使用した。
パペティアードーパントに変身可能で、その能力は「両手から延びるコントロールラインで敵の意識を奪い、自由に操る」というもの。戦闘には向いておらず、一応笛を増えて超音波で仮面ライダーや亜樹子を苦しませるシーンもあったが、これも大して強くはない。
特異体質であるはずの照井や、幹部クラスの若菜も操られているので、操れる範囲は相当広い。作中ではリコちゃん人形を操りまくっていた。
リコちゃん人形は、堀之内の娘であるリカコが持っていた西洋人形で、「リコ」という名前は「リカコの妹だから」という理由でつけられた。
一応、セットなのだが、メモリは人形のスカートの中に隠されていた。
今現在、「妹」で「人形」なダークプリキュアちゃんが操られていることも、「リコ」という名前の人形を操っていたドーパントに孤門が変身しているのも、何かの運命か。

【稲妻電光剣@仮面ライダーSPIRITS】
アインハルト・ストラトスに支給。
ジンドグマの悪魔元帥が使う剣で、SPIRITSでは海を切り裂くほど凄まじい威力を持つ。宇宙プラズマを宿し、そのおかげで相当な威力を発揮している。
「仮面ライダースーパー1」では、スーパー1こと沖一也が奪って敵を倒している。スーパー1が剣を持っているフィギュアを見かけたら、たぶんそれが稲妻電光剣。
今回は、勿論あんな凄まじい威力はなくなっているが、それでも通常の剣にはない特殊な力が発揮できるかもしれない。

175人形遣いと少女 ◆gry038wOvE:2013/03/27(水) 15:57:50 ID:d8mEGUtY0
以上、投下終了です。

176名無しさん:2013/03/27(水) 18:41:11 ID:AuLv5rJ.0
投下乙です

ふう、ヴィヴィオは持ち直したしダークプリキュアを無力化出来たのは大きいぜ
それにしても支給品が皮肉が効いているというか運命じみているのかこれは上手い

177名無しさん:2013/03/27(水) 21:05:47 ID:m.2Y9BtY0
投下乙です

そういえば、パペティアーに使われた人形もリコって名前だったな。
それを孤門が使うなんて凄い運命だと思う。

178 ◆1jqTEkAk42:2013/03/27(水) 21:27:08 ID:d8mEGUtY0
感想ありがとうございます

>>177
ちなみに、どっちも「ネクサス」のリコ回も、「W」のパペティアー回も脚本が長谷川圭一さんなんですね
元から、「W」に長谷川さんが入れたネタなのかもしれません

179名無しさん:2013/03/27(水) 21:42:09 ID:LTo4MDis0
>>178
IDで◆gry038wOvE氏だってわかるけど酉がー!!

180名無しさん:2013/03/27(水) 22:27:35 ID:nxP1rrUE0
投下乙です。
まさかダクプリが無力化されるとはなあ
それにしても、孤門がパペティアーとそれに付属したリコちゃん人形を手にするって、面白いなあ

181名無しさん:2013/03/28(木) 01:03:16 ID:WtI/LWBw0
wikiの用語集にこの間の村まとめを載せました……が、一度間違えて新規ページで作ってしまったので、管理人さんが見てたら削除よろしくお願いします

182名無しさん:2013/03/28(木) 01:24:27 ID:WtI/LWBw0
ちなみに間違えて作ったページの名前は「誰もいない村」です

183wiki管理人:2013/03/28(木) 08:13:09 ID:733wn9v60
>>181-182
対応致しました。

184名無しさん:2013/03/29(金) 18:39:39 ID:SemFCYMsO
投下乙です。

とりあえずなんとかなったけど、これ端から見たら、人質をとって女の子捕まえてる怪人、ってことになるのでは。

185名無しさん:2013/04/27(土) 00:54:30 ID:6iyrSCLw0
これから代理投下を始めます

186崩落の呼び声(代理) ◇OmtW54r7Tc:2013/04/27(土) 00:55:14 ID:6iyrSCLw0
放送を前にして、モロトフことテッカマンランスは市街地へと舞い戻り、中学校へとやってきていた。
そして、参加者を倒すべく探索をしていたのだが…

「ち、誰もいないのか」

そう、参加者は一人もいなかった。
いくつかの部屋には道具類が散らばっていたり、荒れている部屋などもあったため、誰かがいた痕跡はあるのだが…

「すれ違ったか…運のいい奴らめ」

モロトフがそう考えたとおり、数十分前まではここに二人のプリキュアと一人の仮面ライダーが訪れていたのだが、彼らはみなすぐにこの場所を発っていたのだ。
むろん、当のモロトフはそんなことなど知る由も無い。

「もうすぐ放送か…」

時計を見て、つぶやく。
一通りの探索を終えたモロトフは、放送の時間まで待機することにした。



『それでは、今回の放送は終了です。……みなさん、ごきげんよう』


「…ふん」

放送を聞き終えたモロトフは、憮然とした表情だった。
そしてしばらくして、先ほどの放送を行ったニードルのホログラフが現れた上空を眺める。

「我々の兵力は絶大?かなわない存在?ふざけたことを…この世にテッカマンより絶対的な力を持ったものなどいるものか!我々テッカマンこそが最強であり絶対なのだ!」

先ほどのニードルや、加頭、サラマンダー男爵の不敵な表情を思い起こし、モロトフの中で彼らへの敵愾心が強まっていく。
彼らは、自分たちが抗う姿を、高みの見物とばかりに見下ろし、自分たちが上位であり、強者であると、勘違いをしているのだ。
真の強者が、誰であるかもわきまえず。

187崩落の呼び声(代理) ◇OmtW54r7Tc:2013/04/27(土) 00:56:01 ID:6iyrSCLw0
「最強は、真の強者は、我々テッカマンだ!加頭、サラマンダー、ニードル。貴様らの思い上がり、この私が、テッカマンランスが、叩き潰してくれる!」


主催者打倒の決意を改めて固めたモロトフは、改めて今後の身の振り方について考える。
まず先ほどの放送。
死亡者情報については、ブレードが無様にもまだ生きながらえているということ以外には関心ごとなど無い。
禁止エリアについても、近隣のエリアが指定こそされたが、特別問題は無い。
となると考えるべきは、先ほどのニードルが出したふざけたクイズだ。
といっても、答えはすでに出ている。
完璧たるテッカマンたる自分に、あんな子供だましのなぞなぞが解けぬはずも無い。
前回提示されたボーナスの場所は翠屋と警察署…使用条件は変身者の二人以上の殺害…こんなところだろう。
新たに提示されたボーナスについては…どうでもいい。
完璧たる存在であるテッカマンに新たな力など不要な存在。
というより、そのようなものに頼るなど、彼のプライドが許さなかった。
モロトフは、あくまでテッカマンの力で最強を示したかった。

「そう、証明して見せるのだ!
今のままのテッカマンの力でも、ブラスター化した不完全なテッカマンなどに負けなどしないと!」

それに、ブラスター化の弊害を知った今、新たな力など手に入れてもろくなことにならないという考えもあった。
そういうわけで、モロトフは主催者から新たに提示されたボーナスの話を、頭の隅へと追いやった。


「さて、これからどうするか…」

放送について一通り考えをめぐらしたモロトフは、改めてこれからの行動について考える。
中学校には相変わらず人など来ない。
このまま待ち続けるというのも億通だし、行動として消極的だ。
それなら、以前図書館でそうしたように、この中学校を破壊した上で拡声器を使ってみるか?
あるいは、変身者を二人以上倒したという強者が近くにいるという警察署へ向かってみるのもいいかもしれない。
ちなみにモロトフは、マミやせつなの死を直接見たわけでもなく、またせつなの名を知らないために、自分がその「変身者を二人以上倒した参加者」であることに思い至っていなかった。
そんなこんなで色々と考えているモロトフの目に…ふと、一つの施設が目にとまった。

188崩落の呼び声(代理) ◇OmtW54r7Tc:2013/04/27(土) 00:56:28 ID:6iyrSCLw0
「あれは確か…風都タワーだったか」

風都タワー。
それは自分がこの地で初めてタカヤと遭遇した場所だ。
そして、あのオカマとブレードに苦渋を飲まされる羽目になった場所だ。

「ふん…無駄に高いだけの塔……そんなものを作りたがるとは、愚かな人間どもの好みそうなことだな」

少し離れたこの場所からでもはっきりと見える風都タワーを、鼻で笑う。
馬鹿は煙となんとやらというやつだ。
あんなものを作って、自分たち人間があの塔の高さのように偉大な存在であると示したつもりなのだろうか。
だとしたら、なんともお粗末な話だ。
あんなもの、ただ無駄に高いだけで何の役にも…


「……待てよ?」


そのとき、モロトフの中で一つの考えが浮かんだ。
そうだ。どうして気づかなかったのだ。
この方法なら、拡声器以上に自分の存在を周囲に知らせることができる…!



考えをまとめたモロトフは、南下した。
目指すは風都タワーだ。
ちなみに、同エリア内には翔太郎たち一行がいたのだが、幸か不幸か彼らはすれ違ってしまい、遭遇することは無かった。
もっとも彼らも、そう遠くないうちにモロトフの存在に気づくだろう。
何故なら、彼がしようとしていること、それは―――


「たどり着いたぞ…風都タワー」


そんなわけで、道中誰にも出会うことなく、モロトフは風都タワーへとやってきていた。

「ふん、この私の役に立てることを、光栄に思うがいい…」


「テックセッタアアアアアアアアアア!!」

テッククリスタルを掲げたモロトフは、テッカマンランスへと変身。
そして、間髪入れずに…


「ボルテッカアアアアアアアアアアア!!!」


風都タワーめがけて、ボルテッカを放ったのだ。


「ふ、この至近距離からのボルテッカではひとたまりも………………何っ!?」


テッカマンランスは驚きの声を上げる。
彼の計画では、このタワーを崩落させるつもりであった。
が、風都タワーは派手に破壊こそされたが、未だにしっかりと立っていた。

「ち、思っていた以上にボルテッカへの制限は大きかったようだ…もう一度だ!」


「ボルテッカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


ガラガラガッシャアアアアアアアアアアアアン!!


2度目のボルテッカにより、今度こそ風都タワーは音を立てて崩れていった。



「これでいい…」

189崩落の呼び声(代理) ◇OmtW54r7Tc:2013/04/27(土) 00:57:14 ID:6iyrSCLw0
風都タワーが倒れたことに、テッカマンランスは満足する。
風都タワー…それはランスからしてみれば無駄に高いタワーに過ぎなかった。
しかし、だからこそ利用価値があった。
このタワーは、市街地内にいるものやその近辺にいる参加者なら誰もがその姿を目撃する。
それだけ目立ったタワーなのだ。
ゆえに…このように音を立てて崩れてしまえば、誰でもそこで何かがあったのだと気づく。
その範囲は、拡声器の比ではない。
拡声器の何倍もの範囲で、周囲に自分の存在を知らしめることができるのだ。

「さて、これで仕上げだ…」

風都タワーを破壊したランスは、デイバックから拡声器を取り出し、スイッチを入れる。
そして……叫んだ。


『愚かな蟻どもよ!この私の偉大なるショーを見てくれたかな?私の名はテッカマンランス!たった今この風都タワーを破壊してやった!』

『ふははは、驚いているか?これこそがテッカマンの力!テッカマンの前には、いかなる抵抗も反抗も無駄だと分かってくれただろう!』

『それでもなお、私に逆らおうというのなら…H-8、風都タワー跡へとやってくるがいい!』

【1日目/日中】
【H-8/風都タワー跡】

【モロトフ@宇宙の騎士テッカマンブレード】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、ランスに変身中
[装備]:テッククリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード
[道具]:支給品一式、拡声器、ランダム支給品0〜2個(確認済)
[思考]基本:参加者及び主催者全て倒す。
1:風都タワー跡にて参加者がやってくるのを待つ
2:いずれブラスター化したブレードを倒す。
3:プリキュアと魔法少女なる存在を皆殺しにする。
4:キュアピーチ(本名を知らない)と佐倉杏子の生死に関してはどうでもいい。ただし、生きてまた現れるなら今度こそ排除する。
5:ゴ・ガドル・バという小物もいずれ始末する。

[備考]
※参戦時期は死亡後(第39話)です。
※参加者の時間軸が異なる可能性に気付きました。
※ボルテッカの威力が通常より低いと感じ、加頭が何かを施したと推測しています。
※ガドルの呼びかけを聞きましたが戦いの音に巻き込まれたので、全てを聞けたわけではありません。


※2発のボルテッカによる轟音が響き渡りました
※風都タワーが崩落しました

190名無しさん:2013/04/27(土) 00:59:28 ID:6iyrSCLw0
以上で仮投下終了です。
そして◆OmtW54r7Tc氏投下乙です。ランスさん、また施設を破壊したかw
ここのランスさんは本当に自重しない。でも、死亡フラグもどんどん積み重なっていく気がするぞwww

191名無しさん:2013/04/27(土) 08:05:39 ID:/J0aoGMQ0
何をしているセイバー、アックス! 代理投下乙だ!

参加者(女子中学生)を2人殺害し、建物を破壊するなんて流石ランスさん
幼女にボコボコにされていたときとは違う!

192名無しさん:2013/04/27(土) 20:49:20 ID:jLGBSABoO
投下乙です。

それにしても、このランス、ノリノリである。

193名無しさん:2013/04/27(土) 23:04:26 ID:LmAacgpM0
投下(代理投下)乙です。が……、
まあ、いいんですかね?
某ゲームでは何発でも打てますがね……。

194名無しさん:2013/04/27(土) 23:11:03 ID:LuMgoeV20
>>193
指摘だったらはっきりと言った方が良いですよ。
恐らく、>>193の指摘したい事というのはボルテッカの設定についてですね。
確か設定で1度のテックセット中で1度しかボルテッカは撃てないという設定があった(スパロボ等では普通に撃てるけどそれをそのまま採用するのは違うのでは)ので本編中で2発打つのは矛盾しているのではという事です。
これは僕も疑問に感じていたので作者はどの様に考えているのでしょうか? 撃てないなら修正が必要だろうし、撃てると考えているなら何かしらの説明が必要ではないでしょうか?

195 ◆OmtW54r7Tc:2013/04/27(土) 23:15:37 ID:BpXGc.I2O
指摘どうもです
後でしたらばの方で修正します。

196 ◆OmtW54r7Tc:2013/04/27(土) 23:41:22 ID:BpXGc.I2O
言葉足らずですいません。
ボルテッカ一発の方向で修正します。

197名無しさん:2013/04/28(日) 00:08:09 ID:giMrXG3s0
モロトフって地図記号わかるの?
警察署の地図記号が○と×を足したようなマークなのは日本だけだし(国籍わからんけど)

198 ◆OmtW54r7Tc:2013/04/28(日) 00:29:15 ID:lnCOTzmkO
>>197
あー、どうなんだろう…言われてみれば怪しいなあ…
日本人の相羽家を中心にした調査隊の一員だし、知っててもおかしくない気もするけど…

199名無しさん:2013/04/29(月) 14:17:38 ID:la/PNDDQ0
投下乙です

修正云々は書き手に任せるとしてランスさんもやってくれるなあw
自信か、調子に乗ってるのかは次の戦いで答えが判るな

200名無しさん:2013/04/29(月) 15:35:06 ID:nhcrtWiYO
そろそろランスさんも溜まったフラグが無視出来ない量なんですがそれは、まあ生き残りのテッカマンがあの有様じゃ調子乗るのも仕方ないね。ヤンデレ妹にボコられてたのも別世界の話さw

201名無しさん:2013/05/03(金) 04:25:38 ID:KWOmeoc6O
今更だけどスバルってこのロワじゃあ

・放送前に6キル
・5人死亡話両方に登場(この点はアクマロも該当)
・死亡するまでの間に主人公死亡(まどか、なのは、五代、丈瑠)全てに関わる

とまあいろんな伝説残したよなあ

202名無しさん:2013/05/03(金) 15:11:55 ID:nwN40Evk0
スバルもばねえなあw
最初に出会った相手が悪かった
対決中に第三者に操られて…

203名無しさん:2013/05/13(月) 21:33:38 ID:pCT6F.wU0
予約キター

204名無しさん:2013/05/13(月) 22:03:15 ID:f9SwmGG.0
これに匹敵する不幸経験したのって、ロボロワの時くらいじゃね?

205名無しさん:2013/05/13(月) 23:20:52 ID:F.02BbCY0
そもそも別ロワで何度も不幸を経験するのがおかしいので……
柊かがみはやはり伝説だったな……

206名無しさん:2013/05/14(火) 05:41:30 ID:lpZtvo0oO
毎度似たような展開ばっかでマンネリ気味なキャラもいるけどな、ここのランスさんは運命に反逆してくれたがw

207 ◆7pf62HiyTE:2013/05/16(木) 12:39:26 ID:yKZzLR9k0
モロトフ、ン・ダグバ・ゼバ、沖一也分投下します。

208Uに一人だけの/ダグバの世界 ◆7pf62HiyTE:2013/05/16(木) 12:41:01 ID:yKZzLR9k0
MainScene01 天駆ける超人


 時間は少々前後するが、モロトフは先程G-8にある中学校から南下しH-8にある風都タワーへと辿り着いた。
 勿論これ自体には間違いは無い。だが、1つ冷静に考えて見て欲しい。
 その間に位置するG-8からH-8の道中の一点において数人もの参加者が集結しており今まさに戦いが起ころうとしていた、あるいは現在進行形で起こっていた。
 同時に隣接エリアであるG-9では1つの戦いが、それも雷が鳴り響く程の激しい戦いが――

 何が言いたいかおわかりだろうか? モロトフはそれに一切遭遇する事、いや一切認知する事無く迅速に移動し風都タワーへと辿り着いた。
 百戦錬磨かつ自ら完全なるテッカマンを自称するモロトフにしては些か注意が欠けているとは思わないか?

 何故か? 幾つか理由があるがここでは2つ提示しよう。

 1つはこのフィールドの広さにある。
 これに関しては何度か説明はしているものの多くの読者諸兄の中には忘れている方も多いだろうが、今一度思い出して欲しい、
 以前、モロトフはある参加者との戦いで半径数キロのクレーターを作り上げI-5エリアを崩壊させた。
 正確な大きさは明言してはいないが数キロというからには下手をすれば直径にして10キロ強のクレーターが崩壊したと言っても良い。
 最小で考えても直径で5キロ弱は確実に崩壊させたと考えるのが自然だ。

 だが、それだけの大きさであってもI-5エリアの大半に収まっている。もう、何が言いたいかおわかりだろう。

 つまり、1つのエリアは1辺の長さが数キロ(下手をすれば10キロ強)あるという事だ。
 同時にそれは1エリア強程度しか離れていない中学校から風都タワーの距離も数キロあるという事を意味している。
 同一エリアにいたとしても数キロも離れている、それならば早々都合良く遭遇しなくてもおかしくはないしむしろ自然と言えよう。
 戦いの音や雷鳴に関してもそれだけ距離が離れているならば余程感覚が鋭いか、あるいは余程注意していなければ知覚出来なくても仕方が無い――

 そしてここでもう1つの理由が重要となる。
 実はモロトフ自身、出来るだけ早く事に及びたかった。その為できうる限り迅速に向かいたかった。
 と、ここで1つ気になる事もあった。
 それはこれまで何度か戦った中で気づいた事だが――自身の能力が抑えられているらしい。
 それに憤りを感じるがこの際今は良い。重要なのはそれを失念したまま戦えば何れ足をすくわれかねないという事だ。
 そこで、自身にかけられた制限を確かめる為にも――
 モロトフは一旦、テックセットを行いテッカマンランスへと変身しとある事を行ったのだ。

 クラッシュイントルード――クリスタルフィールドを形成し、装甲を変形させた上での超高速による突撃――その衝撃波等により一度に多勢を排除する事も可能なテッカマンの技の1つだ。


「ふむ、やはり何時もよりは威力は抑えられているか……だが脆弱な人間共にはこれだけでも十分だ」

209Uに一人だけの/ダグバの世界 ◆7pf62HiyTE:2013/05/16(木) 12:42:02 ID:yKZzLR9k0


 実際に行った後、ランスはこう口にした。その言葉どおり威力は若干抑えられているのを実感した。
 それでも、並の相手ならば十分武器にはなるし、数キロの距離も極めて短時間で移動できた事に違いはない為さほど大きな問題はないだろう。
 何にせよ、風都タワーまで数百メートルの地点にまで到達した、ランスは一旦テックセットを解除しデイパックからパンと水を取り出しそれを口にしながら歩く。
 このままテックセットしたままでも良かったが、テックセットしている間は消耗が激しい。ここまでの激戦を踏まえても栄養補給は必要だ。
 かといってテックセットしたままでは食事がしにくい(というより全身を装甲で覆っているから当然と言えば当然だがまず不可能)、故に一度テックセットを解いたのだ。
 何しろこれから行う事を踏まえれば、中途半端な力しか出せなかった――ではあまりにも格好が付かない。そう考えたというわけだ。

 かくしてその少し後、モロトフは風都タワーに辿り着き、再びテックセットを行いボルテッカを放ち、風都タワーを瓦礫へと完全崩壊させたのだ――

 が、ここで1つ冷静に考えて欲しい。
 クラッシュ・イントルードはその性質上、非常に目立つ技とも言える。
 他の参加者にそれを知覚されるリスクは考えなかっただろうか?
 結論から述べよう。モロトフは別に構わないと考えていた。元々拡声器で参加者に自身の存在を知らしめるつもりだったのだ。
 自身の姿が見られているのならばむしろ好都合だ、是非来てくれ、返り討ちにしてやると言いたい所だ。

 言ってしまえば――モロトフは自身に絶対的な自信を持っていた。ラダムの中でも唯一無二の実力を持っていると――それ以外の連中など烏合の衆に過ぎないと――
 だからこそ、一見すると無謀で愚かな行動ではあってもそれを迷うこと無く実行できたのだ――

 そして物語は再び本来の時間へと戻る――





SubScene01 焦燥 疾走 振動


「はぁ……はぁ……」


 全身に激痛が奔る――
 それでも沖一也こと仮面ライダースーパー1は警察署へと走る――

 致命的な失策だった、怪人を力の持たない孤門一輝達や子供達のいる警察署方向に向かわせてしまう事になってしまった――
 件の怪人は自分の動向から目的地が警察署だと看破していた様だ。加えて放送でのボーナスを踏まえるならば向かわない理由は無い。
 (注.実際は放送の意味には気付いていないが沖にそれを知る術は無い。また、最悪を考えるならば気付いていると考えるべきである)
 ともかく、可能な限り急ぎ奴よりも先に警察署に向かわなければならない。


「(奴は俺達が考えている以上に危険な存在だ……)」


 その戦闘能力は言うに及ばない。だがそれ以上に恐ろしいのはその思考だ。
 自身の快楽の為だけに強い者と戦いそれを倒す、その為ならば手段を一切選ばない危険な思考だ。
 思い返せば先の戦い、自身の電撃攻撃で強くなった事からスーパー1にも雷を浴びせてきた。その目的はスーパー1を倒す為では無くスーパー1を強化する為――
 勿論、それでスーパー1が強くなるファンタジーがあるわけも無いが、奴は出来れば良いと考えそれを試したのだろう。
 そして自身を見逃したのも自身をより強くなる存在であると願ったからでしかない――

 では奴は次に何をする? どうやって自分を強くするつもりだ?
 心技体の3つの要素から考えてみよう。
 体……まずこれは不可能だ、短時間で肉体を強化する方法など存在しない。電撃で強化されるというのは例外中の例外、またそういう道具があるなら既に使っている筈だ。
 技……戦闘技術が一朝一夕で身につく事などあり得ない。付け焼き刃だけで強化出来るほど甘くは無い。
 となれば――心、それに働きかけるつもりなのだろう。

210Uに一人だけの/ダグバの世界 ◆7pf62HiyTE:2013/05/16(木) 12:42:35 ID:yKZzLR9k0

 そう、奴はスーパー1を精神的に追い詰める事で強化を図ろうとしているのだ。

 先の戦い、奴が『楽しい』という理由で戦う、あるいは人々の命を奪う事を聞いた時、自分は強い怒りともいうべき憤りを感じた。
 それを見て奴はスーパー1を強いと評価しつつ、もっと強くなる事を期待したのだ。

 それを踏まえて考えれば、奴は他の参加者を惨殺する事で自身の怒りあるいは憎悪へと働きかけ強化させるつもりなのだろう。
 憎しみや怒りに囚われるつもりは無いがその感情が強い力を生み出す事は否定できない。奴のやろうとしている事は理にかなっている。
 その手始めとして警察署にいる仲間達を血祭りに挙げるということなのだろう。あくまでもスーパー1といった強者に憎しみを抱かせ強化させる為に――

 その思考故に奴は何としてでも自分が止めなければならない。警察署にいる面々では到底奴には勝てないだろう。
 一応、事前の話し合いで明堂院いつきと蒼乃美希の両名が警察署に向かう手筈にはなっている(ただ、彼女達の性格上、深追いして戻るのが遅れる可能性もある――が、ここではこれ以上は考えない)。
 確かに両名ともにプリキュアでその実力は相当なものなのは沖も理解している。
 だが、彼女達を奴と戦わせるわけにはいかない。彼女達の力では奴には届かない、もちろんそれも大きな理由だ。
 しかし一番に重要なのは彼女達は戦うには余りにも優しすぎるのだ。
 人々を守るという意味では仮面ライダーとプリキュアは非常に似ている。しかしプリキュアはその名の通り、悪意を持った敵すらも癒やし浄化した上で救う、それが最大の特徴だ。
 それ自体はむしろ非常に素晴らしいことだと思う。人々を守るとはいえ仮面ライダーの力の根本は破壊でしかない。
 しかしプリキュアの力はそうではない、彼女達の力は浄化あるいは救済の力だ。
 本当の意味で必要な力はむしろ彼女達の力と言ってもよい。

 が――奴を相手に出来るかどうかは全くの別問題だ。
 恐らく彼女達は奴をも救おうとするだろう。しかし、その願いは確実に奴には届かない、そしてその甘さが――彼女達を殺す事となる。
 そう、哀しい事だが、彼女達の優しさが奴相手には完全に邪魔でしかないのだ。
 優しさが必要無いとは言わない、だが優しさだけでは何も守れない、何も救えないという事なのだ――

 何度も繰り返すがだからこそスーパー1は走るのだ。
 しかし他にも懸念はある。
 確か放送では警察署にいる筈の仲間の1人である早乙女乱馬の死が伝えられていた。
 何故警察署にいる筈の彼が?
 何かの理由で警察署を離れその先で殺されたのか? もしくは警察署で殺されたのか?
 仮に後者だとするならば――自分達が離れた後、何者かが襲撃した事になる。
 そうなると、そこにいる仲間達がそのまま警察署に留まっている保証は何処にも無い。
 いや、仮に前者だったとしても襲撃が無いという確証は何処にも無い。
 放送前に襲撃が、あるいは放送直後現在進行形で襲撃されている可能性は多分にあるだろう。
 何しろ奴の動向関係無く警察署は狙われているのだ。元々自分はそれから守る為に動いていた筈ではなかろうか。

 だからこそ今は急ぐのだ、既にもう手遅れかもしれないが――
 それでも守れると信じて――

 だが、間に合った所で守れるのか――?
 メンテナンス無しでの長時間にして連続した激闘の結果、自身の能力は大分低下している。ファイブハンドの能力は使用不能、素のスピードやパワーにしても低下は避けられない。
 今変身を解除した場合、再度変身が可能という保証すら無い状態だ。
 こんな状態で奴に挑んでも――返り討ちに遭うだけだろう。

211Uに一人だけの/ダグバの世界 ◆7pf62HiyTE:2013/05/16(木) 12:43:09 ID:yKZzLR9k0


「ぐっ……!」


 不安を振り払いながらスーパー1は走る――全身が軋むような痛みを感じながらも――
 何時しかスーパー1の眼前には川が見えてきた。警察署のあるF-9に向かう為にはこの川を越える必要がある。無論、何カ所かに橋はかかっているが――


「橋を探す時間も惜しい……」


 橋の所まで移動する余力は無い。敵は既に橋を越えているかもしれないし、素直に橋を渡る殊勝な奴とも思えない。故に――


「飛び越える……!」


 全速力で駆け高く飛び上がる――幾らスペックが低下したとは言え、十数メートル程度の川ならば十分に越えられる筈だ。



 だが、丁度飛び上がろうとした今まさにその瞬間――



 突如、大気を震撼させる轟音がスーパー1の耳に響く――



「なんだ……この音は……!?」


 音の感触から大分離れた場所から発せられたものだろう。
 それ故に例え同じ距離に他の参加者がいたとしても彼等にも同じ様に聞こえるとは限らない(スーパー1が知覚できたのは改造等によって感覚が強化されているため)。
 だが、この位置にいても大気が震えるほどの振動が響いてくることを踏まえるとその場所で何かが起こったのは確実だ。


「何かが崩れていく……何が……うっ……!」



 その時――急激に力が抜けていくのを感じた――



「そんな……まさか……!」



 チェックマシンによるメンテナンスを怠った事による身体能力の急激な低下、それが最悪のタイミングで起こったのだ。
 偶然? 違う、それはある意味必然だ。
 奴との戦いの後も、持てうる限り全力で走った。それ故にそれでなくても消耗していた体は加速度的に悪化していく。
 それに加えての全力での跳躍、これでは無理が来てもおかしくはなかろう。
 更に――轟く轟音によって一瞬程度ではあったが意識が外れていた――



 故に、崩れた体勢を整えるのにも間に合わせられず――



 そのまま川の中間へと落ちて行った――



 川の流るる音が響く――



 それ故に、直後響く『声』は仮面ライダースーパー1、あるいは沖一也に届く事は無い――





MainScene02 迫り来る闇


 そこにはほんの数分前まで風の都、すなわち風都を象徴する巨大な建造物風都タワーがあった――
 だが、それは無情にも1人のかつて人間であったテッカマン、テッカマンランスことモロトフによって崩れ去った。

 そして瓦礫に座り、テックセットを解いたモロトフが静かに食事をしていた。
 右手にパンを左手にペットボトルの水を持って。


「恐らくあと30分……いや、15分もしないうちに来るだろう」


 風都タワーの崩壊に加え拡声器による呼びかけ、それを認知出来うる範囲は非常に広い。
 市街地の大体半分に届いていると考えて良いだろう。
 同時に風都タワーの様に明らかに目立つ建物が突然消失すれば流石に異常に気付く。
 参加者はこぞって集結するだろう。

 冷静に考えて見れば、主催者共の思惑に乗っているだけの様な気もするが、集った虫螻共を一方的に蹂躙し自らの力を主催者共に示すのもまた一興。
 本当に上なのか誰なのか思い知らせようではなかろうか。

212Uに一人だけの/ダグバの世界 ◆7pf62HiyTE:2013/05/16(木) 12:43:41 ID:yKZzLR9k0


「確かにプリキュアとか魔法少女とか虫螻にしては強大な力を持つ者がいるのを少しは認めても良い……だが、我らがラダムのテッカマンには遠く及ばない」


 慢心せずに戦えば例え相手がプリキュアや魔法少女であっても負ける事は無い、モロトフはそう断言する。


「唯一の懸念はブレード……」


 最大の問題はブラスター化という高い代償と引き替えに膨大な力を得たテッカマンブレードだ。
 その力が絶大で自らを凌駕するのはモロトフ自身身を以て知っている。流石にそれに対し考え無しに勝てると思う程モロトフは自惚れてはいない。
 だが、歪な進化故に高い代償を得ているのだ。それ故にテッカマンエビルは肉体崩壊によって――死んだ。
 それを踏まえて考えてもブレードも致命的とも言える大きな欠陥を抱えているのは間違いない。
 それはエビルとの戦いの後、何も見えず聞こえない状態で只地を這い回るだけの無様なブレードこと相羽タカヤの姿からも証明されている。
 エビルのものとは若干違うだろうが、戦士としてはあまりにも不完全な状態に違いは無かろう。
 エビルから聞いた話では元々自分達の司令官であるテッカマンオメガからもブラスター化については反対しており、ブラスター化したブレードに関してもそこまで問題視はしていなかったのだろう。
 それ故に、絶対に勝てない相手――ではないとモロトフは考えていた。


「そう……勝つ方法は2つ……1つは持久戦に持ち込む事だ」


 ブラスター化のもう1つの弱点、それは長時間の変身は不可能という事だ。元々ブレードは不完全なテッカマン故に30分しか活動出来ない。
 が、ブラスター化をそれだけの時間行うのは不可能だろう。
 エビルとブレードの戦闘時間はブレードの限界時間と同じ30分、だが最初からブラスター化していたわけではなくその途中、そして戦いが終わり、ブレードは無様な姿を晒したのだ。
 それを踏まえ、ブラスター化出来る時間は10〜20分程度だろう。仮にこの読みが間違っていたとしてもどちらにせよ30分の制限時間からは逃れられない。
 要するにそれだけの時間逃げ切れれば勝てるという事だ。凶悪な力を持つボルテッカも回避すれば何の問題も無い。


「………………だが、只逃げ回る事が勝利と言えるのか?」


 勿論、不完全故の弱点を突くという意味では間違ってはいない。しかし余りにも後ろ向き過ぎるやり方は正直モロトフ自身気に入らない。


「私にも気に入る勝ち方と気に入らない勝ち方がある……となるともう1つの方法か……」


 かつてブラスター化したブレードに破れた時の事を思い返す。
 あの時は自身の渾身のボルテッカすら一切の傷を与えられず、圧倒的な力で返り討ちに遭った――正直思い出すのも忌々しい記憶だ。

 ここで重要なのは此方の最強の攻撃力を誇るボルテッカを以てしても全くダメージを与えられなかったという事だ。
 では、ブラスター化したブレードにダメージを与える事は不可能なのか?
 答えはNoだ、例えブラスター化で装甲を強化した所でそれを越える威力を持つ攻撃を放てばダメージは与えられる。
 それはブラスター化した事でパワーを強化したエビルが身を以て証明してくれた。

 が――最大の問題はそこだ、どうやってボルテッカを越える威力を持つ攻撃を放てば良いというのだと。
 ボルテッカは体内で生成されるフェルミオンと呼ばれる反物質を一斉に放つ砲撃だ、例外が無いでは無いが基本的に全てのフェルミオンを一度に放出する性格上、一度のテックセットで放てるのは一回限り。
 唯一の例外が使用者の意志でフェルミオンの起動やエネルギー量を自在にコントロールできるエビルのPSYボルテッカである、当然これは例外なのでランスには不可能である。
 つまり全エネルギーを放出するボルテッカはランス、というよりテッカマンにとっての最強の攻撃なのだ。それ以上の威力を誇る攻撃など可能なのか?


「それ以前にだ。例え幾ら威力が高くても当てる事が出来なければ意味などない……」


 そう、ブラスター化したブレードのボルテッカも回避すれば問題無いと説明した通り、幾ら強力な攻撃でも命中しなければ無意味だ。


「……いや、方法はある筈だ。方法さえわかれば、有能なるこの私に出来ない事などない……」


 だが、未だその方法を見つけ出せないでいた――

213Uに一人だけの/ダグバの世界 ◆7pf62HiyTE:2013/05/16(木) 12:44:37 ID:yKZzLR9k0



 その時――



「君がこの塔を崩したのかな?」



 その声にモロトフが振り向くと、



「ふぅん……君なら僕を笑顔にしてくれるのかな?」



 白服の優男が静かに立っていた。外見上は只の優男にしか見えない。
 それ故、何時ものモロトフならば只の虫螻の1人としか認識できないだろう。
 だが――その優男が放つ異様な雰囲気がそうさせてくれなかった――



「……!」



 口調こそ穏やかではあるが雰囲気だけで理解した。
 目の前の優男は想像を絶する程の危険人物だ。
 モロトフは見ただけでそれを理解したのだ。


 故に――


「何者だ……貴様?」


 虫螻の名を問う事などまずあり得ない。それでも問わずにはいられなかった――


「ダグバ……ン・ダグバ・ゼバ……リントからは未確認生命体第0号と呼ばれているけど……うん、好きに呼んで構わないよ」





SubScene02 転換


 読者諸兄はこの展開に少々疑問を感じている事だろう。

 電撃や冷気を操るリントとの戦いを終えた後、ン・ダグバ・ゼバは警察署方面に向かっていた。
 そのリントが最初自身に構わずそこに向かった為、その場所には何かがあると考えていたからだ。

 つまり、何故警察署方面に向かった筈のダグバが真逆の方向にある風都タワー跡に現れたのかという事だ。
 風都タワーの崩壊、そしてランスの呼びかけを聞いたから? いや、それにしてはあまりにも早すぎる――

 そう、そこにはある理由が存在していたのだ。


「あのリントが向かったのはあの方向……」


 ダグバは早足で歩きながら考える。件のリントが向かおうとした方向に何があったのか? その方向には警察署がある。
 警察署といえば、自分達グロンギのゲゲルからリントを守る為に戦うリントが集まっている場所だ。
 確かクウガもまた彼等と組んでいた筈だ。
 戦うリントやクウガが戦う理由、それはリントを守る為、それはダグバも理解している。
 そして――リントが死ぬ事で彼等はより強い力を発揮する事も理解していた。
 ゲゲルが進む度に戦うリント(警察)は新たな武器を投入し、クウガもまた新たな力を得ていた。
 更にそれを裏付ける事例があった。
 ゴ・ジャラジ・ダのゲゲルがそれだ。
 流石に冗長化する為、細かい内容についての言及は避けるが、要点を纏めると、割と力押しによる手段の多いグロンギの中でも極めて陰湿な手段を取っていた。
 その結果、比較的スマートな戦い方をするクウガにしては非常に珍しく、オーバーキルとも言える攻撃を叩き込んでいた。
 つまり、リントを守れなかった絶望がクウガに力を与えていたのだ。

 思えば、自身のベルトのバックルを破壊したリントもそれで力を発揮していた。
 それを踏まえて考えれば、警察署に集まっているリントを殺すところを見せれば件のリントもきっと怒りでより強くなってくれるのではなかろうか?
 だからこそダグバは地図を広げながら足を進めていた。


「……そういえば……どうしてあそこに僕達がいたあの思い出の場所があるんだろう?」


 今更ながらにD-6にあるグロンギ遺跡の存在が気になった。何故あそこに自分達の遺跡があるのか?


「まぁいいや」


 が、本当に少し疑問に感じただけなので深く考えるつもりはない。そんな中、

214Uに一人だけの/ダグバの世界 ◆7pf62HiyTE:2013/05/16(木) 12:46:02 ID:yKZzLR9k0


「ん?」


 ふと振り向くと何かの光が飛行しているのが見えた。中学校から飛んでいる様に見受けられる。


「あんなリントもいるんだ……」


 その光は風都タワー方面へと向かい――消えた。
 もうおわかりだと思うが光の正体はクラッシュイントルードを使用したランスの事だ。
 中学校からダグバの現在位置は大分離れていたが、ダグバの極めて鋭い感覚ならば十分に捕捉できる範囲だ。ダグバは運良くそれを捉えたという事だ。


「どうしようか……」


 このまま警察署に向かっても良かったが、今の光も気になった。
 が、ほんの数秒考え、ダグバは進行方向を逆に向け走り出した。

 確かに警察署に向かいそこにいるリントを惨殺すれば先程のリントを強化出来るかもしれない。が、それが自分を笑顔にさせるのは難しいのではと考えていた。
 それよりも先の光の方が気になった。あれは明らかに未知の力を持ったリント、先程のリント以上の力を持っている可能性も否定できない。それはすなわち、自分を笑顔にしてくれるクウガに負けるとも劣らない存在かも知れないという事だ。

 どちらを選ぶか――考えるまでもないだろう?

 ダグバにしてみれば警察署にいるリントを殺す事に執着するつもりはない。他に選択肢が浮かばないならばそれでも構わないが重要なのは強い相手と戦って笑顔になる事だ。
 その過程で死ぬリントが1人だろうが3万人だろうが大した違いは無い。
 そして目の前には先程のリントを越える力を持っているであろうリントがいた。目的地を変えるのには十分過ぎる理由だ。

 故にダグバは駆ける、問題のリントの動きは速い、見失って戦いに間に合わないのでは興醒めも良い所だ。
 だからこそ怪人態へと姿を変え、更に先程の戦いで得た電撃態へと変化し戦場を駆け抜ける。
 その速度は速い――数キロある距離であっても短時間で走破出来るのだ。

 目的地は十中八九風都タワー、そして後数百メートルの地点まで来た所でタワーが崩れ去るのを見たのだ。


「ふふふふふ……」


 ダグバは笑う、


『愚かな蟻どもよ!この私の偉大なるショーを見てくれたかな?私の名はテッカマンランス!たった今この風都タワーを破壊してやった!』


 タワーを崩した男が声を放っている。そうか、このリントが中学校からタワーまで移動しタワーを崩壊させたリントだったのか。


『ふははは、驚いているか?これこそがテッカマンの力!テッカマンの前には、いかなる抵抗も反抗も無駄だと分かってくれただろう!』


 そのリントは自身の力に絶対的な力を持っている。これは期待出来るだろう。


『それでもなお、私に逆らおうというのなら…H-8、風都タワー跡へとやってくるがいい!』


 そしてそのリントは戦いを望んでいる。願ったり叶ったりとはこのことだ。
 しかも都合良い事にその呼びかけは確実に他のリントを招く。
 わざわざ警察署に出向く必要なんて無かったのだ。


 思えば何時も自分は待つ側だった――


 だが今回は違う、出向く側なのだ。だからこそこう答えよう。一旦変身を解き――


「待っててよ」





MainScene03 前哨



「ダグバ? 未確認なんとか? 待て、その名前……貴様、ゴ・ガドル・バとかいう小物の仲間か?」
「リントはみんな僕達を仲間だと思っているのかな……まぁ知り合いである事は否定しないよ……ふふっ……」


 モロトフの問いに対しダグバは笑みを浮かべたままだ。


「何がおかしい?」
「君がガドルを小物と称した事さ、ゴオマをそう呼ぶならばまだわからないでもないけどね」
「事実を述べただけだ。有能かつ完全なるテッカマンであるこの私から見ればあんな虫螻、自信過剰の小物でしか無い」
「はっはっは……言うね」
「ほう、仲間を侮辱されて怒るかと思きや……笑うとは何を考えている?」
「いや、別に仲間ってわけじゃあない……それに別にガドルを侮辱されて怒るつもりなんてないよ……むしろ嬉しいんだ」

215Uに一人だけの/ダグバの世界 ◆7pf62HiyTE:2013/05/16(木) 12:46:28 ID:yKZzLR9k0


 その言葉の意味をモロトフは理解出来ないでいる。


「どういう意味だ?」
「そうだろう、ガドルより強いってことは、僕を笑顔にしてくれるかもしれないじゃないか。それが楽しいんだ」


 あまりにも意味不明な発言をするダグバにモロトフも戸惑う。


「その口ぶり……さぞかし貴様はあの小物よりも強いのだろうな?」
「そうだね、確かに僕はガドルよりも強い……さて、君は僕を笑顔にしてくれるかな?」
「それはひょっとしてギャグで言っているのか? 私はコメディアンでも大道芸人でもない。貴様を笑顔にする趣味も義理もない。むしろ貴様の顔を恐怖で歪ませる者だ」


 そう言ってクリスタルを構える。


「もうやるのかい?」


 ダグバとしてはもう少し待って他のリントが来てからでも構わないつもりだった。しかしモロトフはそうではないらしい。


「ふん、これからやってくる虫螻共に見せしめを用意する必要があるからな……テック・セッタァァァァァ!!」


 その意味はダグバを血祭りに挙げやってくる他の参加者共に見せつける為だ。故にモロトフはテッククリスタルを作動させ自らの姿をテッカマンとしての姿、テッカマンランスへと変える。


「……まぁいいけど」


 そう言ってダグバもまた怪人態へと姿を変える。


「ほう、それが貴様の本来の姿か、随分とみすぼらしいチンケな姿だな、そんなチンケな姿で何が出来るというのだ?」


 今のダグバはバックルを破壊された事により本来の姿への変身が不可能である。それゆえ今の姿は言うなれば中間体とも言える。


「否定はしないよ……まぁこれはあるリントにやられたからだけど」


 その言葉からランスはダグバは他の参加者によって弱体化させられた事を察する。


「ほう、どうやら貴様の底が見えたな。虫螻如きにしてやられているわけだからな」


 同時にそれは目の前の相手が自身の敵では無いと判断させるものであった。そんなランスの挑発に対してもダグバは表情を変えることは無い。


「ところで、テックセッターだったかな? そんな言葉で姿を変えるリントにさっき……大体6時間ぐらい前にこのタワーで会ったけど」
「このタワー? 6時間前? まさか貴様もあの時タワーに来ていたのか?」


 実の所、この両名が直接会うのは初ではあるが、大体6時間ほど前、彼等はこの風都タワーを訪れている。但しニアミスはしたものの直接相対したわけではない。


「君も来ていたんだ。まぁいいや。そのリントも君と同じ……テッカマン? なのかな?」


 ダグバはその時同じフレーズで姿を変えるリントと遭遇した。その時の彼等の会話から判断してそれはテッカマンと呼ぶべきものなのだろう。


「まさか貴様もブレードに会ったというのか!?」
「君の仲間だったの? 安心していいよ、殺してはいないから。でも残念だな、殺していれば君も怒ってくれただろうに」
「何を勘違いをしている。奴は裏切り者にして不完全なテッカマン、我々ラダムのテッカマンの敵だ! 仲間などでは無い!!」


 流石にブレードを同類と扱われた事について全力で否定するランスであった。


「リント同士でつぶし合うなんて変わっているね。まぁいいや、その口ぶりからすると君は完全ってことだね」
「その通りだ。私こそが完全で有能なテッカマン、そして貴様を殺す者だ」
「そう……それは楽しみだ」
「フフ……ブレードとの違いを見せてやる、貴様の命もここまでだ」
「期待しているよ、僕を笑顔にしてくれる事をね」


 その言葉を皮切りに――ランスが動いた――

216Uに一人だけの/ダグバの世界 ◆7pf62HiyTE:2013/05/16(木) 12:47:10 ID:yKZzLR9k0





SubScene03 「何も考えずに泳げ!」


「がはっ!」


 流されていく、スーパー1、いや変身を解除された事で沖一也の姿に戻った沖は川の中で藻掻く。


「ぐっ……変身が……ここまで機能が落ちていたとは……」


 変身が解除されるほどの機能の低下にショックを隠しきれないでいる。
 だが、今すべきなのはすぐにでも岸に上がる事だ。問題の奴が迫っているからだけではない。
 このまま流される事自体が大きな問題なのだ。
 流された先は海、警察署から離れてしまう事は言うに及ばない。
 しかしむしろ問題なのは河口自体はG-9にあるが、少し流れた所にあるH-9は13時に禁止エリアとなる場所だ。
 つまり、このまま岸に上がれず流され続ければ最悪禁止エリアに突入しそのまま自滅する事となるというわけだ(勿論、まだ13時ではないが時間の問題である)


「がぁっっ……」


 川の流れが強い中、何とかして岸へと向かう。しかし度重なる激闘によるダメージとメンテナンス不足による不調による悪化は酷く、体を動かしても動かしても岸に近づけないでいる。
 万全な状態であればこの程度の川などどうという事は無い。しかし今の沖には川を越える事すら難しい状態だったのだ。


「俺は……このまま……」


 諦めたくなどない。しかし身体が言う事をきいてくれないのだ。このまま流されてしまうしかないのか――


「すみません、本郷さん……貴方との約束も果たせず……」



 その時であった――



「え……」



 遙か岸の向こう側に1人の男が立っているのが見えた。それは沖がよく知る人物だ――



「本郷……さん……」



 世界で一番最初の仮面ライダー、仮面ライダー一号、本郷猛の姿がそこにあったのだ。



「どうして貴方が……死んだはずの……」



 実は死んでいなかった、確かにそういう解釈も出来なくは無い。だが、今の本郷はあの激闘から生き延びたにしては余りにも傷の痕跡がなさ過ぎるのだ。そう、無傷の状態だったのだ。


 本郷は静かに沖を凝視するだけ――
 叱咤することも助言することも手を伸ばすことも川に飛び込むことも無く――
 余りにもお粗末な自身に何かするという事も無い――


「何故……何も言ってくれないんですか……?」


 只、見ているだけの本郷に対し流されながら沖はそう口にする。
 結局、本郷との約束であるこれ以上殺し合いの犠牲者を増やさない、全ての命を守るという約束を果たせないでいたのだ。
 罵倒してくれても構わないのに――


「メンテナンス不足で限界を迎えた俺には出来なかった……もし、あの時貴方を助ける事が出来たなら……」


 正直、沖自身何を言っているのかわかっていない状態だ。
 だが、本郷の願いを裏切った故にあふれ出る言葉は止ま――


「貴方がいてくれたな――」

217Uに一人だけの/ダグバの世界 ◆7pf62HiyTE:2013/05/16(木) 12:47:33 ID:yKZzLR9k0


 だが、言葉は此処で止まる。
 ふと気が付いたのだ。何故、本郷がいるならば打開できると考えたのだ?
 冷静に考えて見よう。本郷は確かに仮面ライダー1号だ。その実力は後発のライダーに決して劣っていない。
 だがそれは何故だろうか?
 単純なスペックだけならば後発のライダーの方が、極端な話スカイライダーやスーパー1の方が上だ。
 特殊な能力面においても自在に飛行ができるスカイライダー、ファイブハンドによる多彩な能力を扱えるスーパー1の方が秀でている。
 素の姿としての能力にしても確かにIQ600にしてスポーツ万能ではあるが、体力面だけなら幼き頃から野生で育ったアマゾンの方が上であり、知識面においてはライダーマンこと結城丈二等も決して負けていない。

 つまり、本郷がここまで秀でているという事は決して無いのである。にもかかわらず、何故本郷ならばと考えてしまったのだろうか?


「待てよ……確か本郷さんはずっとその身1つで俺がドグマやジンドグマと戦う前から戦っていた筈……」


 繰り返すが本郷こと仮面ライダー1号が特別優れているという事は無い、単純ならスペックが上である沖達が苦戦していたならば、当然本郷も苦戦してしかるべきはずだ。
 本郷が一番に優れているのは経験の数。確かにそれはある。
 だがそれだけでは説明がつかない事がある。そう、本郷を改造したショッカー相手の時だ。
 当時は一文字隼人以外の仮面ライダーはおらず、日本を一文字に任せた後は世界各地のショッカーに対し本郷はたった1人戦っていた筈だ。
 頼れる味方など殆どおらず、特殊な能力も無い1号が何故その戦いをくぐり抜ける事ができたのであろうか?


「そうだ……本郷さんの一番の武器は改造された身体でも、熟練された技でも、膨大な知識でも、深い経験でも無い……一番の武器は……魂だ!」


 魂つまりはSpirit、人間の自由の為に戦うその精神の強さ、それこそが仮面ライダーの真の強さであり、本郷がここまで頼れる最大の理由なのだ。
 そして、それに気付いた時、沖は全力で川岸へと身体を進めていく。


「俺は心の何処かで頼り切っていたのかもしれない……スーパー1の改造された身体や赤心少林拳の技に……本当に重要な事はそれを扱う俺自身の精神である事を……俺自身が忘れていた……」


 身体の痛みが消えたわけではない。だが、全く動かないわけではないのだ。この命が消えていない限りは何の問題も無い。
 身体に宿るこの魂は未だ健在、それだけあれば十分だ。
 流れの強い川を渡る事は容易ではない、しかし特別な力が必要というわけではない。
 何も考えず、強き意志のままに泳げば十分に渡りきれる。


 そして――沖の手が川岸を掴んだ。





MainScene04 ダグバの世界



 大きな瓦礫が壁の様に立っている――そしてそこに、





「がはっ……」





 テッカマンランスが磔にされていた――

218Uに一人だけの/ダグバの世界 ◆7pf62HiyTE:2013/05/16(木) 12:48:10 ID:yKZzLR9k0





 恐らく、読者諸兄の中にはこう思っている方もいるだろう。





『ランスがダグバに挑んだと思ったらいつの間にか磔にされていた』





 その過程が描かれていない為、衝撃を受けた方も多いだろう。
 だが、別にこれは大した問題では無い。
 そう、金の力だけでは勝てなかったガドルに対し、さらなる電気ショックで金の力を強化し黒の金の力を得てガドルを打ち破ったクウガ、
 にもかかわらずダグバに対しては何が起こったのか知り得ないぐらいに完全敗北した様に――


 要するに、それだけ圧倒的な結果だったという事だ。


 本当に簡単に説明するならば、


 ランスの攻撃はことごとくかわすあるいは防がれ、
 空中戦を仕掛けようとも起こされた突風でバランスを崩された所に雷を落とされ、
 そのまま壁に叩き付けられ奪われたテックランサーで刺され磔にされた。


 事細かに説明する必要がないぐらい簡単な話だ。不思議なことなど何も起こっていない。


「バカな……」


 有能なテッカマンである筈の自分が何も出来ずにこの体たらく、ランスは強いショックを隠しきれない。


「ふぅ……つまらないね」


 見下した様にダグバが口にする。


「貴様……」


 睨むランスに構うこと無くダグバはランスから距離を取る。


「おい……貴様……トドメはどうした?」


 このまま殺されるのかと思いきや仕掛けてこない事に疑問を感じたランスはそう問いかける。


「後でね……君を殺す所をこれからやってくるリント達に見せつけないといけないからね、それまでは生かしておいてあげるよ」
「!?」


 ランスにはダグバの言葉が理解できないでいる。


「君が殺される所を見たらリントはどう思うかな、きっと怒りに震え……強くなってくれるだろうね……」


 どうやらダグバの目には自分も人間共も同じ『リント』にしか見えていないらしい。それがランスにとっては屈辱的だった。


「巫山戯るな、この私が虫螻共に哀れまれるぐらいなら今殺せ! そんな屈辱耐えられん!!」
「君じゃ僕を笑顔に出来ない……そんな君をただ殺したぐらいじゃ退屈なだけでつまらないよ……それに言われなくても殺してあげるよ。リント達の目の前でね、君が呼んでくれたリント達のね……」


 ダグバはマイペースに近くに落ちているランスのデイパックを拾い上げる。


「ところで……さっきガドルを小物って呼んだけど、ガドルと戦ったのかい?」
「ふん、戦う必要などない、奴程度などこの有能な私の敵では……」
「なんだ戦ったわけじゃないのか、その様子じゃクウガとも戦っていないだろうね」
「クウガだと……何者だ、そいつは?」
「僕を笑顔にしてくれる最高の存在さ、君なんかじゃ足下も及ばないぐらいのね」


 先程から目の前のダグバはランスを見下してばかりだ、


「そんな君でも、クウガやリント達の目の前で殺せば……彼等を強くするのに役立つと思うよ……そうだ、確かブレードっていう仲間のリントも来るかな」
「何を言うかと思えば……さっきも言ったが奴は裏切り者だ、仲間などではない」
「確か不完全とか言っていたけど……君が目の前で死んだら完全になってくれるかも知れないね」
「そんなメルヘンあるわけなかろうが!!」
「まぁ、実際僕も戦ったけど……でも大した事ない相手だったよ。つまらないね……」

219Uに一人だけの/ダグバの世界 ◆7pf62HiyTE:2013/05/16(木) 12:49:01 ID:yKZzLR9k0


 ダグバは風都タワーで戦ったブレードの強さを取るに足らないものだと評価していた。実際、あの場ではブレードを含めた3人の参加者と戦ったが一番興味を惹かれたのは仮面ライダーWである。


「ブレードすらも……」


 かつてのランスならばブレードを見下すこと自体に異論は無い。しかし今となってはその戦闘力だけは評価している故にブレードすらも見下すダグバに憤りを隠せない。


「でもおかしいな……」
「何がが?」
「不完全なテッカマンだから君よりも弱いってことだろうけど……その割には……君の方がずっと弱いね」
「!!」


 例えそれが現実的な事実であっても、不完全なテッカマンであるブレードよりも下に見られる事は屈辱である。


「もしかして……テッカマンって弱いのかな? 完全なテッカマンである君がこの程度だから」
「貴様ぁぁぁぁぁぁ!!」


 それがランスの逆鱗に触れた。優良種たるラダムのテッカマンが下に見られる事などあってはならない。
 それ故にランスは激昂しめり込んでいる壁から抜け出そうとしている、しかし。


 その直後、ランスに雷が落ちた。


「がばっ……」
「これで強くなってくれるんだったら良かったけど……君も違うみたいだね」
「貴様は何を言っているんだ……」
「僕もさっき偶然気付いたんだけど……どうやら僕やクウガ、それにガドルはこの力で強くなれるらしいんだ……」


 そう言って今度は自分に雷を落とす。


「うん、何となく力を感じるよ」
「この男……」


 余りにも規格外なダグバの言動に絶句してしまう。そんなランスに構うこと無くダグバはランスのデイパックからあるものを取り出す。
 それはグリーフシードと呼ばれるものだ。


「ふうん、君もコレ持っていたんだ」
「それが何だというのだ」


 モロトフ自身、支給品は確認しており、説明書きも呼んでいたが特別役に立つものでもなかったので今の今まで存在を忘れていたものだ。


「ソウルジェムの穢れをどうとか……たしか首輪の無いリントがそれを持っていたから、そのリントにとっては大事なものだと思うけど」
「首輪の無い……待てよ、確か……あの魔法少女……」


 ランスは思い返す、確か先に戦ったマミと呼ばれる魔法少女の首には首輪が付いていなかった様な気がする(至近距離で嬲っていた為、そこまで確認出来ていた)。


「ふうん、魔法少女っていうんだ、まぁどうだって良いけど……そうだね……あの時戦った黒い服の女の子のリント……彼女との戦いの方が面白かったね」
「何!?」


 ダグバの口ぶりから察するにダグバにとってはテッカマンよりも魔法少女の方が強いという事になる。
 実際、ダグバは黒服の魔法少女との戦いでは完全な奇襲攻撃を受けたこともあり、その対応に少々頭を使っている。それ故に、ランスよりも楽しめたという評価なのだ。


「それにそのリントを助ける為に現れたキラキラした鎧を纏ったリント、僕を見ても平然と笑っていたあのリントも惹かれたなぁ。
 それからタワーでの戦いの後、ガドルの所で戦った銀色のリントとの戦いも面白かった……」
「もう良い……やめろ……」


 これ以上、ダグバの言葉を聞きたくは無い。だが、


「そしてこのベルトをほんのちょっぴりだけど壊してくれたリント達……彼等との戦いの方が君との戦いよりずっと面白かったよ」
「止めろと言っているのが聞こえんのか! 優秀なるこの私が……そんな虫螻共に劣る事など断じてあり得……!!」


 次の瞬間、文字通りランスに雷が落ちた。


「えなぁぁぁ……」
「リントの言葉にこういうのがあるらしいね……イノナカノカワズ……君のことかな?」

 その言葉が聞こえたのか聞こえなかったのか――ランスは力無く項垂れた。

220Uに一人だけの/ダグバの世界 ◆7pf62HiyTE:2013/05/16(木) 12:49:24 ID:yKZzLR9k0





MainScene05 みつめてランス


「ううっ……」


 屈辱だ――
 完全なるテッカマンにして有能であるこのテッカマンランスモロトフが何も出来ず一方的に嬲られるなど――
 かつてブラスター化したブレードにしてやられた時は気が付けば一瞬でしかなかった。
 だが今は違う、真綿で首を絞めるが如く、じわりじわりと辱められている。
 本来ならばそれは自身の側だった筈だ、下等生物を一方的に蹂躙するのは――
 だが、今は完全に立場が逆転している。自分の方が見下され一方的に陵辱されている。


「この私が……この私が……」


 何より許せないのは奴が自分を虫螻共と同レベルと扱い、虫螻共を本気にさせる為だけの為に自分を生かし連中の目の前で惨殺するつもりだという事だ。
 つまり、完全に奴の都合の良い玩具という事だ。
 本当ならば、自分が奴をそう扱うつもりだったのに――これではあべこべではないか。

 最後に奴は言った、自分が『井の中の蛙』だと
 井戸の中を全て知り尽くしている蛙ではあっても、その外には広く大きな海が広がっている事を知らないという事柄から生まれた言葉だ。
 その意味はつまるところ狭い見識に囚われ、他に広い世界を知らず、自分の世界が絶対だと思う様である。

 認めたくは無いが、そうだったのだろう。
 思えば人間共を舐めていたからこそブレードのブラスター化を許し返り討ちに遭った。
 また、自分より完璧な存在などいないという思い込みがブラスター化したブレードに対する油断を産んだ。
 そして今――自分はこの有様だ。
 無論、テッカマンこそが最良という考えは変わらない。しかし、あまりにもそれに慢心しすぎてはいなかっただろうか?
 だからこそこの体たらくではなかろうか?

 余りにも無様である。

 しかし、遅かれ早かれこの結末は訪れるべき筈だったのも事実。
 先に述べた通りダグバとモロトフは約6時間ほど前にニアミスしている。様々な運命の巡りあわせから相対する事は無かったがそれは偶然に過ぎない。
 本来ならば6時間前にこの現実を突きつけられても不思議は無いのだ。
 そして、ここで出会わなくともランスが拡声器を駆使し無節操に参加者を集め蹂躙しようとしていれば何れ強者との遊びを求めるダグバとの遭遇する事になる。
 タイミングこそ偶然かもしれないが、起こる事だけは必然だったという事だ。


「情けない……あまりにも情けない……!!」


 オメガに知って貰いたかったのだ、自分の有能さを――


「私は!!」


 その時、


「無様だな、ランス」


 目の前に見知った男が現れた。


「貴様は……エビルか!」


 その男はブレードことタカヤの双子の弟、相羽シンヤまたの名をテッカマンエビルである。
 だが先に述べた通り、ブラスター化の副作用による限界を迎え死んだ筈である。


「ふん……あの世から私を迎えに来たつもりか?」
「もしくは笑いにきたとかか?」
「ぐっ……」


 目の前のシンヤはどことなく穏やかな表情だ。


「冗談だ、大体死んだ男がのこのこ現れるなんて幻想あると思うか? 大方ランス、お前自身の心が生み出した幻かもしれないんじゃないか」
「私自身が貴様を……? それこそあり得ん話だな」
「だが理にかなっているだろう、俺の性格を考えてみろよ。ランスの所なんかに行くよりもブレード……タカヤ兄さんの所に顔を出した方が自然だろう」
「そもそもいる筈の無い人間が現れている時点で不自然だろうが……」
「まぁ俺が何故ここにいるのかなんてどうでも良い話だ。あの世からやって来た死神の使者と捉えても構わない」


 そんなシンヤに対し、


「それで、貴様は私に何を求めているのだ?」
「どういう意味だ?」
「とぼけるな、原因など知ったことではないが貴様がこうして目の前にいるのには何か意味がある筈だ、答えろエビル!」
「………………まぁ、確かに言いたい事が無いわけじゃあない……」
「ならば!」
「だがランス……お前だってわかっているだろう、お前が素直に俺の言う事聞くのか?」
「それは……」

221Uに一人だけの/ダグバの世界 ◆7pf62HiyTE:2013/05/16(木) 12:49:44 ID:yKZzLR9k0


 まずあり得ない。確かにモロトフとシンヤは同じラダムのテッカマンではある。それ故に共同作戦の時は共に戦うこともあろう。
 だが、別段仲良しこよしというわけではないのだ。仲間と言えば仲間だがなれ合いの関係ではない。


「お前が何を求めているのか……そして何がしたいのか……それはお前自身の中にあって、既に決めていることじゃあないのか?」
「私自身が……?」
「まぁ俺から言わせて貰えば……奴に……ダグバに負けるなよ、ランス」


 意外な言葉だった。まさかエビルから応援をしてもらえるとは。


「気持ち悪いな……」
「失礼な事を言うな……だが本心だ。アイツは俺達の事を何も見てはいない。アイツにとっては『クウガ』以外の奴は全て『リント』とかいうものだ……」
「そうだな……」
「俺達テッカマンが何かをアイツは何一つわかっていない、それを思い知らせてやれ……いやテッカマンの力じゃ無いか……ランス……いやモロトフ、お前の力をな!」
「私の……力……」
「出来る筈だ、お前が完全にして有能なるテッカマンならな……アイツにテッカマンランス、そしてモロトフの存在を思い知らせてやれ、リントとか呼ばれる有象無象じゃないこの宇宙にたった一人の存在である事を……」
「エビル……いや、シンヤ……」
「本音を言えば……俺だって悔しいんだ……アイツが兄さんを取るに足らない存在と言った事を……兄さんがあんな奴に負けるなんてこと無いのに……だからこそ兄さんの分までアイツに思い知らせてくれないか……」


 そう言って頭を下げるシンヤであった。それに対し、


「ふん……貴様が言った事だ、私が貴様の頼みを聞く義理は無い……」


 そう答えたものの、


「だが、奴に対しこのまま終わるつもりはない……そのついでならばやっても構わん」


 再び立ち上がる事を口にした。


「感謝するよ……それから、もう1つ頼みがあるが聞いてくれるか?」
「聞くだけ聞いてやる。従うかどうかは別問題だ」
「大丈夫だ、きっと聞いてくれるさ……もし、兄さんが死んでこのままお前が生き残ったら……元の世界にいるオメガ……ケンゴ兄さんの事を頼む……」


 それはオメガことシンヤ達の兄相羽ケンゴの力になってくれという事だ。


「言われずともそのつもりだが……何のつもりだ?」


 勿論、ケンゴことオメガは司令官故に守るべき存在である事に違いは無い、それ故頼まれるまでもない事だ。
 だが、それはシンヤ自身もわかっている筈だ、何故それを今更頼むのか?


「大した事じゃ無い、家族を守りたいと思う……それだけの話さ。結局俺はタカヤ兄さんの事ばかりでケンゴ兄さんには迷惑をかけた……ブラスター化にしてもケンゴ兄さんの反対を押し切って……俺は裏切り者さ……
 だが、それでも俺にとってはケンゴ兄さんも大事な家族さ、だからこそ……モロトフ……お前に託す……俺にはもう出来ない事だから……」
「………………お前がどう思っているか知った事では無いが……オメガ様を守るのは私の使命でもあるからな、言われるまでも無い……まぁついでに貴様がそう言っていた事を伝えておいてやろう」
「すまないな……」


 そしてゆっくりとシンヤの姿が遠ざかっていく、


「もうそろそろ俺も行かなきゃならないか……さっきも言ったが負けるなよ、ランス……」
「当然だ……」
「そしてもう無様な姿を見せるなよ……それじゃ行くよ……」
「一人で行って来い……そして、もう帰って来るな……」


 その会話を最後にシンヤの姿は消えた。


 結局の所、シンヤが何故現れたのかは不明瞭だ、
 死に近づいていたモロトフの元に死後の世界から現れた幻だったのかも知れない、
 もしくは、モロトフの弱い心がシンヤという形を成して現れた幻だったのかも知れない、
 だが、どちらにしてもシンヤの言葉如きでモロトフの心が揺らぐ事は無いだろう。

 そう、答えなど最初から、モロトフの心の中にあったのだ――シンヤの言葉はその心に炎をともす小さな火だったのだろう――


 故に――

222Uに一人だけの/COSMO BLAZER ◆7pf62HiyTE:2013/05/16(木) 12:51:46 ID:yKZzLR9k0
MainScene06 COSMO BLAZER


「確かここだったかな……」


 ダグバがランスのデイパックの中を調べていたのはあるものを探す為だった。
 それは拡声器、つまりランスに此処までの深手を負わせた事を伝えリント達やクウガを招き寄せる為である。


「あったあった」


 そして拡声器を取り出しそのスイッチをオンにする。


「さてと……」


 そして拡声器のマイクに口を当て、


『聞こえるかな、リントのみんな……僕の名前はダグバ、ン・ダグバ・ゼバ、リントからは未確認生命体第0号とも呼ばれているよ……』


 拡声器がダグバの声を広げる。同一エリアはほぼ確実にその声を伝える。


『さっき、このタワーを崩壊させたリントの呼び声に従ってここに来て、そのリントを倒したばかり……でもまだ殺してはいない……』


 聞く側にしてみればランスの呼びかけから10分程度しか経過していない。関係者はさらなる衝撃を受ける事だろう。だが、聞く側の衝撃はこれだけに留まらない。


『このリントを守りたいならば早くここに来てよ、殺されたくないならね……』


 そう呼びかければリントはやって来る。ダグバはそう考えていた。勿論、ダグバの真の狙いは目の前で殺す為だから来ない限りは殺すつもりはない。


『早く僕の所に来て……僕を笑が――』


 『笑顔にしてくれないかな』そう口にしようとしたが言葉はそこで途切れる――


「……何のつもりかな?」


 ダグバの足下に拡声器とテックランサーが落ちている。振り向くと、ランスがめり込まれた壁から抜け出ようとしていた。
 刺さっていたランサーを抜いて拡声器を持つ手を狙って投げつけたのだろう。結果は御覧の通り、拡声器を落とす程度で終わった程度ではあった。


「私は忘れていた……何故我々テッカマンがこの強靱な身体を持っているのかを……」


 だが、突如ランスは何の脈絡も無く謎の話を展開する。


「君は何を言っているのかな?」
「そもそも我等テッカマンの使命は、宇宙の星々を支配すべく侵略する事だ……」
「へー」


 真面目な話、ランスの話など殆ど理解できていない。


「だが冷静に考えて見ろ、その星に住む連中が脆弱な虫螻如きならばここまで強靱な肉体は必要ない……」
「どうでもいいよ、そんな話」


 他のリントが来るまでの退屈しのぎ程度なら付き合っても構わないけど、正直ダグバはそう思っていた。


「ならばこういう事では無いのか? 我等ラダムは知っていたのではないのか、侵略するときに、想像を絶する程の強敵と戦う事を……テッカマンの力が必要だという事を……それならば説明が付く……!」


 ここまで熱弁するランスであったが、


「……何が言いたいの?」


 流石にダグバも付き合いきれなくなった様だ。もう一度雷でも落として黙らせるか? そう思っていたが、


「遺憾な事だが認めてやる……貴様が我等が倒さねばならない強敵である事を……」


 ここまでの話は、ダグバが自分達ラダムの敵として相応しい事を認める為の前振りだったのだろう。

223Uに一人だけの/COSMO BLAZER ◆7pf62HiyTE:2013/05/16(木) 12:53:34 ID:yKZzLR9k0


「ああそう」


 だがダグバにとってはそんな事などどうでも良かった。それ故に最早投げやりの返事である。


「だが……これだけは訂正して貰うぞ……私は『リント』なる有象無象の存在では無い!!」


 声を張り上げるランスに対し、


「ふうん、リントじゃなかったら誰なの?」


 そう問いかけるダグバ、その返答は――


「名前はモロトフ……所属は……ラダムだぁぁぁぁぁ!」


 その言葉と共にランスは高速で走り出す。


「私に対して……いや、我等テッカマンに対する度重なる冒涜の罪、貴様の命を以て贖ってもらうぞ、ン・ダグバ・ゼバ!!」


 バーニアを限界まで噴かせてダグバへと迫る。


「ふうん、さっきよりはやる気みたいだね」


 だがダグバは表情変える事無く突風を巻き起こし雷を落とそうとする。


「同じ手段が何時までも使えると思うな!!」


 しかしランスはスピードを落とす事無く、上下左右不規則にジグザグ動き落雷を回避する。
 パワーとスピードが最高の状態であるが故に突風如きではバランスを崩す事も無く、不規則かつ高速ジグザグ運動のお陰で落雷を回避する事が出来るのだ。

 そしてダグバの背後へと回り込もうとするが、

「でもこの程度じゃね」

 ダグバはランスの襲撃を読み拾い上げたテックランサーを突き刺そうとした。しかし、

「貴様がそう来る事など読んでいた!!」

 その言葉と共にテックランサーを高く蹴り上げる。そしてそのままダグバの足下を駆け抜け上方へと高く飛び上がりテックランサーをその手に掴む。


「コイツは返して貰う!」


 ランサーだけでは無くその手にはランス自身のデイパック、そして拡声器が握られている。すぐさま拡声器をデイパックに仕舞い。


「そして散れ!」


 肩部から無数のレーザーを下部数メートル下のダグバへと放ちながらそのまま距離を取る。しかし、


「この程度じゃまだ全然足りないね」


 鮮やかに後方へと飛びレーザーを回避する。無論、数発程度の流れ弾は受けたがこの程度ではダメージになりはしない。


「でも、あのタワーを崩した攻撃だったら届いたかもね」


 それはボルテッカを使えという挑発である。


「挑発に乗ると思うか?」
「他に方法があるのかな?」


 ダグバの指摘はもっともだろう、テックレーザーでも殆どダメージが与えられないならば、やはりボルテッカの直撃以外に方法は無い。
 しかし、それには2つ問題がある。
 1つはダグバ自身がボルテッカを耐えきる可能性だ。テックレーザーが意味を成さないほど強固なダグバの防御、それをボルテッカならば打ち破れる保証は無い。
 もう1つはどんなに強力なボルテッカであっても1発しか使えない以上、回避されればそれで終わりだ。
 そして先のレーザーにしても数メートルという決して遠くない距離からの攻撃にもかかわらず殆ど回避して見せたのだ。
 つまり、遠距離からのボルテッカは確実に回避される、故に至近距離から放たねばならないのだ。


「ただし、出来るならばね……」


 ダグバはその力を解放し周囲に暴風を巻き上げる。

224Uに一人だけの/COSMO BLAZER ◆7pf62HiyTE:2013/05/16(木) 12:54:02 ID:yKZzLR9k0


「ぐっ!!」


 その力は凄まじく空中にいたランスも大きく吹き飛ばされ距離を開けられてしまう。


「まだこれだけの力があったか……」
「これだけじゃない……」


 その時、無数の瓦礫が浮かび上がり縦横無尽に飛び回る。無数の瓦礫は至る所で衝突を繰り返す。


「何ぃ!?」


 ランスは状況が悪くなったのを察した。
 ランスのパワーとスピードならば暴風の嵐の中でもさほど問題は無い。
 但し、それは暴風だけが障害ならの話だ。
 そう、飛び回る無数の瓦礫が視界と行く手を阻んでいるのだ。
 瓦礫1つで今更テッカマンが傷つくわけがない? それは甘い考えだ。超高速で飛び回っている状態で衝突するという事は、相対的に超高速で飛んでくる瓦礫をぶつけられるという事と同義だ。
 当然、その威力は相当なもの。流石のランスもダメージは避けられない。仮にダメージを最小限に抑えられたとしても、その衝撃でスピードとパワーは大分殺されてしまう。
 しかしスピードとパワーを落としてしまえば、暴風に耐えきれなくなり、バランスを崩してしまう。
 更に言えば、限界までスピードとパワーを上げた状態だからこそダグバの攻撃を回避出来ている状況、スピードとパワーが落ちるという事はダグバの攻撃を回避しきれなくなる事を意味する。
 故に、今ダグバが展開しているのは瓦礫と暴風の結界とも言えよう――
 当然瓦礫で視界も阻まれる為、ダグバに迫る事すら難しくなる。


「だが……条件は同じ……ではないな……!」
「そう、この状況でも僕は君に仕掛ける事ができる」


 落雷がランス目がけて落ちる。しかしランスはそれを読んでいたが為、紙一重で回避する。
 が、すぐ近くに瓦礫が迫ってくる。


「ふん!」


 無論、ランスのランサーが瓦礫を粉砕する。が、その直後再び落雷が落ちてくる。無論それも回避するが――
 そう、瓦礫と落雷、そして暴風の波状攻撃がランスを襲い続けるのだ。


「この状況でも私の位置、瓦礫の動きそれら全てを読み切っている……! 何て奴だ……!!」
「さぁ、この状況……どうするのかな?」


 ダグバは楽しそうに攻撃を仕掛けている。状況的にランスは追い詰められていると言わざるを得ない――
 だが――


「瓦礫を展開した事が仇となったな!!」


 ランスは一切怯まず再びバーニアを最大まで噴かせ高速で動き始める。


「!?」


 ダグバは雷を落としランスを落とそうとするが落ちる雷はことごとく外れていく――


 だが何故だ? 無数の瓦礫が飛び回る中で何故奴はスピードとパワーを落とす事無く動けるのだ?


 そしてダグバは見た――


「なるほどね……」


 瓦礫に張り付き足場の様にして走り飛び回っているランスの姿を――
 アラスカ基地襲撃の際、ランスは重力を無視し天井や壁に張り付いて移動した事があった――
 要するにそれと同じ――言うなればランスの能力とも言える。


「リントの世界にいるニンジャみたいだね」


 故に飛来する瓦礫をランスは障害では無く足場へと変えたのだ。いや、足場だけでは無い――
 それを蹴り上げる事で別の瓦礫や雷に対する盾代わりとしたのだ――
 更に先程同様アトランダムに縦横無尽に上下左右を超高速で駆け回る動き――
 徐々に――徐々にだが確実にランスはダグバへと迫る――

225Uに一人だけの/COSMO BLAZER ◆7pf62HiyTE:2013/05/16(木) 12:54:24 ID:yKZzLR9k0


 至近距離からのボルテッカ――それが決まればダグバは倒せる――


 そしてダグバの背後にテックランサーを携えた影が――


 だが――


「そこだね」


 ダグバは裏拳を放ち影をその拳で貫く――致命傷は避けられない――が、


「な……」


 それは、テックランサーが刺さっただけの人間大の瓦礫であった。無論瓦礫は砕け散るが――


「幾ら貴様が強靱であろうと、この至近距離からならばひとたまりもなかろう!」


 ダグバの背後には本物のランスが回り込んでいた。


「ボルテッカァァァァァ!!」


 そして首からダグバ目がけて大量のエネルギーを放出する――


 が、


「遅いよ」


 ダグバはランスの動きを読み――見事に紙一重で回避したのだ。ボルテッカのエネルギーはテックランサーだけを消し去り明後日の方向へと――


「惜しかったね……今の攻撃……うん、少しは楽しめた……」



 渾身のランスの攻撃が失敗に終わった――



 ボルテッカは一度のテックセットで1発限り、故に最早ランスにダグバを倒す手立ては無い――



「だけど……まだ笑顔にはなれな……」



 ダグバの言葉が止まる――



 そう、そこにいる筈の――ボルテッカを外して放心状態になっているであろうランスの姿が無かったのだ――



「これは……」



 流石のダグバも何が起こったのか理解できないでいる――その時、

226Uに一人だけの/COSMO BLAZER ◆7pf62HiyTE:2013/05/16(木) 12:54:58 ID:yKZzLR9k0



「貴様ならば避けてくれると思っていた……」



 ランスの声が響く――



「これで私はさらなる力を手に入れた……その点だけには感謝してやる……」



 何処だ、何処にいるのだ――ダグバが振り向くと――



 何かのエネルギーが体が超高速で飛んでくる――あれは――



「まさか……」



 先程のボルテッカのエネルギーだ――そしてその内部には――ランスがいた。



 そう、ランスがボルテッカのエネルギーを纏って飛来しているのだ――



「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」



 ボルテッカのエネルギーを纏ったランスがダグバへと迫る。
 ダグバは暴風を巻き起こし、更には雷を落としランスを止めようとする。
 しかしボルテッカのエネルギーが暴風や雷如きで止まるわけも無い。
 そのまま超高速でダグバへと迫る。


「ぐっ」


 ダグバは横に飛んで回避しようとする。確かに直線的な動きしかしないボルテッカならそれで回避出来る。
 だが、今のはボルテッカのエネルギーを纏ったランスによる突撃だ。故にダグバの動きを読んで方向を修正する事は容易い。
 よって――


 ランスの拳が遂にダグバに直撃したのだ――





 ランスのいる世界で、本来ならば10年後、1人の『死』の名を持つテッカマンが、最強と呼べる1人の伝説のテッカマンを完膚なきまでに倒した。
 だが、その伝説のテッカマンは、1人の新たな世代の『冬』の名を持つテッカマンと特訓を行い、
 新たな技を手に入れてその『死』の名を持つテッカマンを打ち倒した――

 その技は――放たれたボルテッカのエネルギーに自ら飛び込みそのエネルギーを纏ったまま敵に突撃を仕掛けるという技だ。
 突撃技であるクラッシュイントルード、そして最強技であるボルテッカ、その両方の特性を持った技、
 故にボルテッカ・クラッシュイントルードと呼称する事にしようか――

 ボルテッカのエネルギーを持ったまま一点突撃、それ故に単純な破壊力だけならばボルテッカ以上と考えて良い――

 そう、ランスは奇しくも、本来の歴史ならば10年後伝説の――かつて自身を倒した『刃』の名を持つテッカマンが会得した技を考案したのだ――
 勿論、その伝説のテッカマンのそれとは若干趣は違うだろうが、ボルテッカのエネルギーを纏った上での突撃という意味では同じ事だ。

 モロトフは考えたのだ。ボルテッカ以上の威力のある攻撃を当てる事が出来ればブラスター化したテッカマンに勝てると。
 そして、ダグバが自ら雷を打ち込んで強化する姿を見て思いついたのだ。

 自らのボルテッカのエネルギーを付加した上で突撃を仕掛ければ、ボルテッカ以上の威力をはじき出せると――

 そう、ランスは最初からこの技を決め技に使うつもりだったのだ。それまでの事は全てこの一撃の為の囮、消失したテックランサーも次にテックセットしたときに生成されるので惜しくは無い。
 ボルテッカはエネルギー総量こそ大きいが範囲も広い故に威力は分散される。だがそれを一点に留めたならばその一点に注ぎ込まれるエネルギーは通常の数倍。
 元々が自身が生み出したエネルギーなのだから完全なるテッカマンならば自身が耐えきれないという事も無い。

 ランスは完全を越える最強の力をその手に掴んだのだ――





 ボルテッカ・クラッシュイントルードによる突撃により、ダグバの身体は数十メートルも吹っ飛ばされる。


「ダガー……これはダガーの分だ、貴様が侮辱した我等テッカマンの1人の名だ」


 ランスはエネルギーを纏ったままそう口にする。そしてそのまま高速で吹っ飛ばされたダグバへと迫る。
 ランスは考えたのだ、1度の突撃程度でダグバが倒せるとは限らないと。
 何しろ、ボルテッカを直撃させたにもかかわらず無傷だったブラスター化したブレードの事もあるのだ。流石にこれで倒せると自惚れるつもりは無い。
 それに何より――

227Uに一人だけの/COSMO BLAZER ◆7pf62HiyTE:2013/05/16(木) 12:55:52 ID:yKZzLR9k0


 2度目の突撃が命中するする――その一撃でダグバは更に数十メートルも空中を舞う。


「これはアックスの分だ」


 テッカマンを愚弄したダグバにテッカマンの力を骨の髄まで思い知らせなければならない。その為に連続で突撃を仕掛ける事を選んだのだ。
 さらに連続で二撃の突撃が――


「ブレード、レイピア……裏切り者ではあるが奴等も一応テッカマンなのでな……(エビル……義理は果たしたぞ……)」


 内心でエビルに対し呟きつつ、再度空中を高速で飛んでいるダグバへと迫る。
 いかに絶大的な力を持つダグバであっても、空中を飛行する能力は無い。
 故に、空中に吹っ飛ばされてしまえば流石のダグバも自由には動けない――
 だからこそダグバを空中に飛ばしながら連続で突撃を仕掛けるという事だ。
 ボルテッカ・クラッシュイントルードのエネルギーは絶大、一撃決まればそれだけで数十メートル吹っ飛ぶ、何時しか2人は風都タワー跡付近を離れていく――


「ソード!」


 さらなる突撃――それでもランスは止まらない――


「オメガ様の分だ!!」


 我等が主、テッカマンオメガの分の攻撃を決めた――


「これが……エビルの分だ!!」


 決して仲は良くはなかった――
 だが間違いなく同じラダムにおける好敵手であった――
 その男の分の一撃の叩き込んだ――


「凄いよ……まだこんな力があったなんて……」
「ふん……大した事ではない……たったひとつの単純(シンプル)な答えだ……『貴様は私を怒らせた』……それだけだ……」
「そっか……」


 冷静に考えて見れば、ダグバはリントを怒りや憎しみなどで追い込む事で強くしようとしていた。
 結果的にダグバはランスに対しそれを行ってしまったのだ。
 そう、実の所ダグバはランスには何一つ期待していなかったのだ。
 ランスを侮辱するような発言の数々は別に深い考えがあったわけではない。淡々と自身の経験に基づく事実を告げただけなのだ。
 しかしそれがランスを激怒させこの結果を招いたのだ――
 その攻撃はダグバへと確実にダメージを与えている――

 しかし――
 確かにボルテッカ・クラッシュイントルードは絶大な力を持つ――
 だが、幾ら元は自分自身が放出したエネルギーとはいえ、その奔流の中で長時間いられる道理は無い。
 その強い負荷はランスの身体に対し徐々にダメージを与えている――
 本来の使用者が使ったときも一度の突撃で済ませたのだ、長時間維持するものではない。
 だからこそ次の一撃で決めなければならない――


「そしてこれが私の分!!」


 その時、ダグバが自らに雷を落とした――自己強化を図ったのだろうがこのまま仕掛ける以外は無い――


「これで終わりだ、ダグバ!!」


 そう最後の突撃を仕掛ける――しかし、



「なっ……」



 ダグバは電撃態となり空中でその突撃を受け止める。そしてそのまま――



「このエネルギーの中に……入ってくる……だとぉ!?」



 ダグバがランスのいるエネルギーの奔流へと乗り込んで来たのだ。



「捕まえたよ……」
「ぐっ……」

228Uに一人だけの/COSMO BLAZER ◆7pf62HiyTE:2013/05/16(木) 12:56:28 ID:yKZzLR9k0


 空中を自在に動けない以上、このまま突撃を受け続ければ流石のダグバも耐えきれない。
 しかし、ダグバは弱点を見抜いていた。結局の所ランスの攻撃は突撃しか無い。
 故に、突撃した瞬間ならば組み付けると考えたのだ。

 エネルギーの奔流がダグバを灼く――それでもダグバは止まらずランスに電撃を浴びせる。
 電撃態となったダグバが放つ落雷はボルテッカのエネルギーだけでは完全に防ぎきれずランスに痺れを与える。


「がぁぁ……」
「もう逃げられないよ」


 ダグバがそのままランスを殴りつける。エネルギーの奔流故にランスの身体は吹き飛ばされる事無くその場に留まるがランス自身に強い衝撃が奔る。


「だが……このエネルギー……貴様とてそう長い時間は……」
「そうだね……でもそれは君も同じだろう……我慢比べでもしようか……実に楽しいよ……」


 笑っている――
 ここまで追い込んだにもかかわらず未だ恐怖せず楽しんでいる――


「おのれ……」


 だがこのまま終わるつもりはない。ランスもその拳を振り上げダグバの顔を殴りつける。
 しかしその直後今度はダグバの拳を連続で2回受ける。
 この状況においてもダグバの方が攻撃ペースもパワーも上、このままでは何れランスの方が先に潰れてしまう。


「さぁ、もっと……もっと僕を笑顔にしてよ!!」


 気が付けばランスとダグバはI-8の海上を飛んでいた、その中でも両名の戦いは続く――
 ダグバの猛攻は止まらない。それによりランスの装甲も少しずつ破壊されていく


「言った筈だ……私はコメディアンでも大道芸人でもない!! 笑顔になりたければ一人で勝手に笑え!! 有能なる私を巻き込むな!!」


 だがランスも負けるわけにはいかない。
 この戦いはランスだけの戦いでは無い。この戦いは自分達ラダムのテッカマンの矜持を守る戦いでもあるのだ。
 自分の敗北はテッカマンの完全否定、それは決して許されない。



「ぐっ……ダガー、アックス、ソード、オメガ様……そしてエビル……私に力を!!」



 この宇宙の中においてはラダムはちっぽけな生命体かもしれない――



 その中でもランス、あるいはモロトフという個体はとてもとても小さな存在だろう――



 だが、例え小さな存在でも、1つの心がある――



 それを今、この宇宙の中で燃やすのだ――



 だが、現実は非情である――



 無情なるダグバの拳が迫――

229Uに一人だけの/COSMO BLAZER ◆7pf62HiyTE:2013/05/16(木) 12:56:55 ID:yKZzLR9k0



 その時――



「あ……れ……」



 ダグバの拳が急に力を失った――



 ランスの身体に触れてもそれは触れたに過ぎない――



「何……!?」



 ほんの一瞬、ほんの一瞬だったがダグバの姿が元の優男の姿に戻った気がした――だが、またすぐさま元の電撃態に戻る――



「いや、関係無い……!」



 そう、理由はどうあれほんの僅かだがダグバに隙が出来た事に違いは無い。



 一瞬あれば十分、完全で有能なるテッカマンであるランスならばそれだけで十分過ぎる程だ。



「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」



 ランスは両腕を構えダグバへと狙いを定め――



「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァーッ!!!」



 心の底から溢れ出す感情を声に出しつつ全力かつ連続でダグバに拳を叩き込む――



 そして最後――



 ランスは拳を引いて構え――



「ハートォォォォ!! バァァーニィィィィングッッ!!」



 ダグバの胸をえぐるアッパーを叩き込んだ――



 そして――



 エネルギー体は海上で炸裂し巨大な水柱を打ち上げた――

230Uに一人だけの/COSMO BLAZER ◆7pf62HiyTE:2013/05/16(木) 12:57:43 ID:yKZzLR9k0





SubScene04 S1(Spirits)


「はぁ……はぁ……」


 沖は川から出る。随分と流されてしまったが結果としては警察側の対岸に辿り着けた様だ。
 何にせよ急いで警察署まで行かなければならない。


「もう……本郷さんの姿は見えない……か」


 先程まで見えていた本郷の姿はもう見えない。


「そうか……きっと本郷さんは俺に大事な事を思い出させるために……」


 本郷が現れたのは、自分に仮面ライダーとして本当に大事な事を思い出させる為、沖はそう結論づけた。


「情けないな……死んでからも本郷さんに迷惑をかけるなんて……」


 ともかく今一度構えをとり、


「変身……!」


 沖はスーパー1へと変身した。今の所はまだ変身機能が完全に死んだわけではないらしい。
 とはいえ、不調である事に違いは無くメンテナンスを受けなければ何れは限界が訪れる。それ故に次も変身出来る保証は無い。
 それでもだ、例え変身機能を失っても戦い続けよう――

 変身出来ようが出来まいがその魂だけは永遠に仮面ライダースーパー1なのだから――


「そういえば……一文字さんはもう来ているのだろうか?」


 一文字との取り決めでは18時にこの市街地で合流する予定となっている。
 しかし具体的な場所は決めていないのが問題だ。
 具体的な事は警察署に行ってからになるがそのことについても考えた方が良いだろう。


「とりあえず、中学校に風都タワー、そっちの方に一度向かった方が……」


 と、川の向こうへと振り向く。


「……!?」


 そして、見た――いや、正確には見えなくなっていたのだ。本来ならば川の向こうに建っている筈の非常に目立つ建造物が――


「風都タワーが……消えた……!」


 その代わりに雷鳴が轟くのが見えている――川に落ちる直前に響いた轟音と関係があるのだろうか?
 雷鳴と言えば先に戦った奴を思い出すが警察署に向かった筈の奴がわざわざ真逆の方向に進むだろうか?


「どういうことだ……!」


 どうやら状況は自分が考えている以上に悪化しているらしい。
 警察署にいる仲間達、
 中学校で分かれた仲間達、
 18時に合流する予定の一文字、
 何処かで戦っているだろう結城丈二、
 そして敵か味方か不明瞭な村雨良、
 彼等の安否も不明瞭な状況に加えタワーの消失――


 沖一也の魂が向かうべきは――?

231Uに一人だけの/COSMO BLAZER ◆7pf62HiyTE:2013/05/16(木) 12:58:16 ID:yKZzLR9k0


【1日目/日中】
【G-9/川岸(警察署側)】

【沖一也@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、強い決意、仮面ライダースーパー1に変身中、メンテナンス不足により機能低下
[装備]:不明
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3、首輪(祈里)
[思考]
基本:殺し合いを防ぎ、加頭を倒す
0:風都タワーに何が?
1:ダグバより先に警察署に向かい、そこにいる人たちを助ける。また、チェックマシンをマップ内から探す
2:本郷猛の遺志を継いで、仮面ライダーとして人類を護る。
3:後で孤門やアインハルトと警察署で落ち合い、情報交換会議をする。また首輪の解析も行う。
4:この命に代えてもいつきとアインハルトを守る。
5:先輩ライダーを捜す。一文字との合流の事も考えておく。
6:鎧の男(バラゴ)は許さない。だが生存しているのか…?
7:仮面ライダーZXか…
8:ダークプリキュアについてはいつきに任せる。
[備考]
※参戦時期は第1部最終話(3巻終了後)終了直後です。
※一文字からBADANや村雨についての説明を簡単に聞きました
※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました
※18時に市街地で一文字と合流する話になっています。
※ノーザが死んだ理由は本郷猛と相打ちになったかアクマロが裏切ったか、そのどちらかの可能性を推測しています。
※チェックマシンによるメンテナンスを長期間受けなかったため、ファイブハンド等の機能が使用不能になりました(付け替えること自体は可能ですが、各能力が全く使えません)
 今の所変身は出来ていますが、次に変身を解除すれば再変身ができなくなる可能性もあります。
 チェックマシンがこの殺し合いの会場にあるかは今のところ不明です。
※第二回放送のニードルのなぞなぞを解きました。そのため、警察署が危険であることを理解しています。





SubScene05 大海


「ふふふふふ……」


 I-9海上にて――


「あぁぁっはっはっはっはっは……」


 ダグバは身体を仰向けに浮かべ笑っていた――


「どうやらイノナカノカワズは僕の方だったみたいだね……」


 その胸には何かにえぐられた様な大きな裂傷が広がっており今も出血を続けている。
 無論、グロンギ特有の生命力故に、この傷で死に至るという事は無い。
 だが、傷の再生が遅々として進んでいない――


 ダグバの身体には大きな異変が起こっていた――


 先の戦いにおいてダグバは突然力を失った様に見えた。
 それは一瞬の事ではあったがその僅かな隙を突かれこの有様となったのだ。
 では何故、ダグバは力を失ったのだろうか?

 繰り返すが今のダグバはバックルの破損により完全態に変身する能力を失っている。
 その代わり、スーパー1との戦いで電撃態へと変身する力を得たわけだが――
 実の所、そこに致命的な落とし穴があったのだ。

 そもそも、電撃態とは一体何かを今一度考えて見よう。

 電撃態は元々ガドルがクウガの強化を参考にして得た事が基本となっている。
 クウガは未確認生命体との戦いの最中、偶発的に電気の力で強化出来る事に気が付いた。
 それをクウガは金の力と呼称した。
 ところで、クウガは古代に存在した資料を基にその力を解明していった。
 その過程の中で赤、青、緑、紫、そしてもう1つ凄まじき戦士についての記述は見つかった。
 だが、金の力については何一つ描かれていなかったのだ――
 つまり、古代のクウガは金の力を持たなかったのである。

 さて、先程も説明したと思うがクウガがガドルを撃破したとき、赤の金の力を更に強化した、黒の金のクウガとなった。
 クウガが黒の金のクウガとなったのは何としてでも漆黒の凄まじき戦士の姿になるわけにはいかなかったからだ。
 しかし、その黒の金のクウガの力を以てしてもダグバには全く通用せず、遂に凄まじき戦士の姿、ダグバが求めるその姿を――
 要するに、金の力は所詮凄まじき戦士には遠く及ばないというわけだ。

 ここまでの説明を読んで気になった人はいないだろうか?
 赤、赤の金、黒の金と強化を進めていく内に、凄まじき戦士の姿に近づいている事に――確実に色はそうなって来ている。
 つまりこうは考えられないだろうか? 金の力というのは凄まじき戦士の力を引き出しているだけではなかろうか。
 強化ではなく、本来持っていた力の限定的な解放、そういう解釈の方がむしろ正解ではなかろうか?

232Uに一人だけの/COSMO BLAZER ◆7pf62HiyTE:2013/05/16(木) 12:58:44 ID:yKZzLR9k0

 ダグバの方に話を戻そう。
 結局の所、今のダグバはバックルの破損により完全態の前段階、中間体にしか変身出来ない。
 これはバックルが完全態の力を制御しきれない引き出せないからなのは読者諸兄もおわかりいただけるだろう。
 だが、電気の力で電撃態という強化された姿となれる様になった――
 しかしこれはクウガと照らし合わせても解る通り、完全態の力を限定的に取り戻しただけとも言える。

 おわかりだろうか?
 バックルが破損により完全態の力を引き出せないから中間体程度の力しか出せないというのに、
 そんな状態で無理矢理完全態の力を引き出そうとして――無理が来ない方がどうかしている。
 ガドルの電撃態とダグバの電撃態は違う。
 ガドルのバックルは完全な状態でありガドルはゴのその先に進もうとしていた。電撃態で究極の力の一部を引き出せてもバックルは十分に耐えうる事が出来る。
 ダグバの場合はそうではない。元々バックル自体が究極の力に耐えられない状態なのにその力を引き出そうとするのだ――

 ダグバ本人は耐えられても、バックルの方が耐えられない。
 勿論、バックルの破損はその時点ではそこまで致命的なものではなかった。その為、中間体で戦う事や、短時間の電撃態ならば十分耐えうる事が出来た。
 しかしランスとの激闘によりバックルにかかる負荷は甚大なものとなった。ダグバは調子に乗って自己強化を繰り返し電撃態のパワーを上げているのも問題だ。
 バックルの破損はダグバの知らぬ所で広がっていたのだろう
 そして最後には電撃態となった状態でボルテッカのエネルギーが渦巻く内部へと突入しランスとの格闘戦――

 遂に限界を超え、バックルの破損が致命的なものとなった。変身機能に支障が生じる程の――

 それ故に一瞬程度変身が解除され力を失ったのだ――ダグバの強靱な意志故にすぐさま再変身出来たが致命的な事に違いは無い。
 どちらにせよ、バックルの破損が広がり、変身などの機能が大分低下してしまった事に間違いは無い。

 故に――今のダグバの再生能力は大分低下している。その為、通常ならばすぐに再生されるべき筈の胸の傷が再生しないのだ。
 胸の傷以外にも全身に受けたダメージは大きい、これらが回復するのにも大分時間が必要だろう。

 そして一番に致命的なのは変身機能だ。バックルの破損は先程とは比較にならないほど大きくなっている。
 このまま変身出来るかどうかすら怪しい所だ、何の問題も無く変身出来るかも知れないが、時間をおかなくては変身出来ないかもしれない。はたまたもう二度と変身出来ない可能性すらありうる。
 仮に変身出来たとしても以前の様な無茶は効かない。電撃態を使用する事は出来ても当然使用すればするだけバックルの破損は広がり変身機能は悪化する事になる。
 いや、それどころか今のバックルの状態では中間体への変身すらもバックルにダメージを与える事になる。
 そう、今ダグバが変身しても、いつまた突然先程の様に力を失い変身が解除されるかわからない状態なのだ。

 ダグバは既に致命的な爆弾を抱えた状態と言う事だ。
 この状態を回復させるためには専門の技師に時間をかけてバックルを直してもらうしかない。しかし、そんな都合の良い話なんてあるわけがない――

 だが、それでもダグバは止まる事は無い。自らの笑顔を求め、これからも戦いを求めていくことだろう――



 人は誰もが幸福、あるいは笑顔を求めている――



 それは結局の所ダグバも同じ事だ――



 その方向が人とは違うだけの話だ――



「楽しかったなぁ……」



 海を漂いながらダグバは笑う――



 致命的なダメージを受けながらもダグバは喜んでいた――



 今暫くは動けないが何れは島に戻らなければならない――



 クウガ達との戦いが待っている――いや、それだけじゃない――



「この傷のお礼はしてあげないとね……」



 そう、大きな借りが出来たのだ、それは必ず返さなければならない。

233Uに一人だけの/COSMO BLAZER ◆7pf62HiyTE:2013/05/16(木) 12:59:22 ID:yKZzLR9k0



「テッカマンランス……モロトフ……君の事は忘れないよ……決してね」



 ダグバはここまで多くの戦士と戦ってきた――
 だが、クウガを除く者は何れも『力を持ったリント』以上の認識を持たないでいた。
 時を止める魔法でダグバを追い詰めようとした魔法少女暁美ほむら、
 全ての者を恐怖させるにもかかわらず平然と楽しそうに笑っていた超光戦士シャンゼリオン涼村暁、
 受け継がれる光の力で一時的に戦闘不能にしてくれたウルトラマンネクサス姫矢准、
 ダグバの持つバックルを破壊し完全態への変身能力を失わせてくれた覇王流アインハルト・ストラトスと無差別格闘早乙女流早乙女乱馬、
 何れもダグバを楽しませてくれたが所詮は『力があるだけのリント』の範疇を出ない。

 しかし、今戦ったあの戦士は違った――完全態だったらとかそういう事を言うつもりは全く無い。
 そう、純粋な意味でギリギリの状態だったのだ。一歩間違えればどうなっていたか――
 この傷はその証明なのだ――


 だからこそダグバは忘れない――


 自分を追い詰めたテッカマンランスに変身した男の名がモロトフであり、そして所属がラダムだという事を――


 それはこれまで他の誰にも出来なかった事だ――


 そういう意味ではモロトフは完全勝利したのだ――


 自身がリント等という有象無象では無く――


 モロトフという宇宙に一人だけの存在である事を示したのだから――



【I-9/海上】

【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】
[状態]:全身に極大のダメージ、胸部に大規模な裂傷と刺傷(回復中、但しその速度は大幅に低下)、ベルトの装飾品を破壊(それにより完全体への変身不可を含めた変身機能等に致命的な障害発生)、強い電気を浴びたことによる身体強化
[装備]:なし
[道具]:支給品一式×4(ダグバ、ほむら、祈里(食料と水はほむらの方に)、霧彦)、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、スタンガン、ランダム支給品(ほむら1〜2(武器ではない)、祈里0〜1)
[思考]
基本:この状況を楽しむ。
0:とりあえず今はこのまま海を漂う。陸に戻ったら何処に向かう?
1:モロトフには必ずお礼をする。勿論クウガにも。
2:リント達を探す。
3:強い変身能力者たちに期待
4:そういえば……どうして思い出の場所(グロンギ遺跡)が?
[備考]
※参戦時期はクウガアルティメットフォームとの戦闘前です
※発火能力の威力は下がっています。少なくとも一撃で人間を焼き尽くすほどの威力はありません。空中から電撃を落とす能力も同様です。
※ベルトのバックル部を破壊されたため、中間体にしか変身できなくなりました。またランスとの激闘と電撃態の使い過ぎによりバックルの破損が進行しました。
 その為、一時的かどうかも含め変身不能な状態に陥っている可能性があります。また仮に変身出来ても突然変身が解除される可能性があります。
 同時に、中間体への変身であってもバックルの破損を進行させる状態となったので変身機能等の機能は低下する事になります。最悪変身不能に陥る可能性があります。
※スーパー1のエレキ光線によって、パワーが強化されました。完全体にはなれませんが、電撃体には変身可能です(但し、上述の通り、バックルの破損を加速度的に進行させることになります)。
※第二回放送のニードルのなぞなぞを全く理解していません(地図記号について知らず、グロンギの算法もリントと異なるため)。





MainScene07 宇宙に一人だけの


 I-7の砂浜、1人の男が海から戻ってきた――テッカマンランスがテックセットを解除し元の姿に戻ったモロトフだ。


「はぁ……はぁ……」


 全身に受けたダメージは甚大、テックランサーで貫かれた傷もある、しまいには体力の消耗も相当なもの。
 文字通り、満身創痍、それ以外のなにものでもない。


 それでも渾身の一撃の手ごたえは確かにあった。此方も限界だった故にあの後あのまま離脱しなければ海に飲まれ兼ねなかったから仕留めたかどうかの確認は出来なかったが――
 仮に仕留めきれなかったとしても、あれだけのダメージを与えたのだ、暫くは動けないだろう。テッカマンの力を思い知らせるという最低限の目的は果たした。
 後はそれこそ他の参加者に丸投げ、あるいはつぶし合わせれば良いだろう。
 とはいえ、今にも背後から『強くなって僕を笑顔にしてよ』という声が聞こえてきそうな気がするのが恐ろしい所だ。
 一番の理想はあのまま海の藻屑となってくれれば良いが――あれだけ追い詰めたのに逆転しかけたダグバの恐ろしさを考えるとあまり期待できない。

234Uに一人だけの/COSMO BLAZER ◆7pf62HiyTE:2013/05/16(木) 12:59:54 ID:yKZzLR9k0


「それにしても奴め……最期まで笑っていた……忌々しい……」


 思い返すのはラッシュをかけた時の奴の表情だ。
 猛攻をかけられ一気に追い詰められている状況であってもダグバは笑っていたのである。
 世間では、被虐によって快楽を得るという特異な性癖を持つ者がいる。
 しかしダグバはそういうタイプとはまた違う――
 単純に今にも自分が死にそうな状況すらも楽しめる特異な存在なのだろう。
 全く理解出来ない思考だ――
 殆ど勝利したと言って良い状況なのに。全く勝った喜びを感じないのだ――


「だが……意義はあった」


 しかし高い代償を払っただけの意味はあった。
 そう、ブラスター化したブレードに対する対抗策を手中に収めたのだ。
 ボルテッカ・クラッシュイントルード、これならばボルテッカに対し無傷であったブレードを破る事が出来るかも知れない。
 そして、実際に追い詰められた事で絶対的なものではない事も知る事が出来た。
 なにしろ、以前敗れ去った時は、至近距離からのボルテッカならば耐えられないと慢心したが故の完全敗北だ。
 もし、ボルテッカ・クラッシュイントルードを使った状況で追い詰められなければ、きっとブレードとの戦いでは慢心して同じ結果へと導きかねない。
 それを知る事が出来ただけでも十分過ぎるという事だ――


「待っていろブレード、この技を得た私が貴様を倒す、必ず倒す」


 そんな中、モロトフはデイパックから拡声器を取り出しそのスイッチをオフにする。
 戦いの中でオフにしていなかった為、今までずっと声を拾っていたのだろう。
 流石にデイパック内部に入れてからは拾った声が周囲に広まったという事は無いが、デイパックに入れる前の音声は拾われている――恐らく周囲に届いているだろう。
 だが、それはむしろ好都合だ。何しろダグバによって自分が痛めつけられたという不名誉な話を広められていたのだ。戦いの音声が広がってくれればそんな汚名も大分そそげるだろう。


 そんな中――


「だが……後何回戦えるだろうか……」


 そう、高い代償というのは単純なダメージや疲労だけではない。
 モロトフの手には自身のテッククリスタルが握られている――


 僅かにヒビの入ったクリスタルが――


 かつてブレードがダガーの仕掛けた干渉スペクトル――テックシステムを阻害し拡散したエネルギーで逆に己を傷つけるそれによってクリスタルにダメージを与え最終的に砕かれた事があった――
 当然、クリスタルが砕け散ればテックセットが不可能となるのは言うまでも無い。

 そう、それと同じ事がランスのクリスタルにも起こっているのだ。
 勿論、ランスの場合は干渉スペクトルというテックシステムをダイレクトに阻害するものに晒されているわけではない。
 無論、通常レベルの戦闘ならばまず破損する事はあり得ない。
 だが、この場での戦闘は普通では無い――
 度重なる激闘そのものがクリスタルに多大な負荷をかけていたのだ――
 決定打は間違いなくダグバとの戦闘、ダグバ自身の猛攻に加えランス自身もボルテッカ・イントルードによるボルテッカエネルギーの奔流に長時間晒されていたが故に多大な負荷が掛かっていた。
 いや、それ以前から致命的なダメージを受けていた事も否定できない――勿論、これは仮説の1つレベルでしかないが――

 思い出して欲しい――そう、キュアピーチとの戦いの際にラブサンシャインフレッシュとボルテッカとの直接対決を行った時の事を――
 ここまで説明すればもうおわかりだろう、プリキュアの必殺技がクリスタルそのものにダメージを与えていた可能性があるという事だ。
 プリキュアの力は生命を守るための力、生命を脅かすラダムのテッカマンの力とは相反するものだ。
 ならばプリキュアの力が守る為に――ラダムの力を司るクリスタルへと作用した可能性は高いと言える。さながらそれは干渉スペクトルに近い力が――
 あり得ないとは言えないだろう。実際にプリキュアの力がガイアメモリの毒素を浄化した事例が存在するのだから――
 人の心を歪めているラダムのテッカマンの力の源に作用する可能性は高いと言えるだろう――
 それが確かならばその時点でクリスタルに致命的なダメージを受けた事になる。何しろ数キロ四方を焦土と化す程の激しいエネルギーだったのだ、クリスタルに影響がない方がどうかしている。
 その時は気付かないぐらい取るに足らないものであっても、その後の激しい戦闘で致命的になるまで広がったと考えられなくも無い。

235Uに一人だけの/COSMO BLAZER ◆7pf62HiyTE:2013/05/16(木) 13:01:17 ID:yKZzLR9k0

 とはいえ、それが確かなのかはデータが足りない。だが、仮に違ったとしてもその戦いもまた大きな負荷となった事だけは確実だ。

 どちらにせよ、度重なる激闘によってクリスタルが限界を超え破損した、その事実だけは確かである。
 勿論、干渉スペクトルに晒され続けた状況でテックセットしたが故にクリスタルが破壊されたブレードの場合とは若干違う。
 今の段階ならば変わらずテックセットは可能であり、戦闘を行う事も出来るだろう。
 だが、先の仮説が確かならば、プリキュアの力、つまりは必殺技を受ければ加速度的に破損は進行する事になる。
 ちなみにランスは後にキュアパッションの必殺技ハピネス・ハリケーンを受けている。勿論この時点ではクリスタルに影響は無かった――だが、これは目に見えないだけで実際は相応の負荷が掛かっていた可能性は否定できない事を記しておく。
 それでなくても、ダグバ戦の様な激しい戦闘を繰り返せばどちらにしてもクリスタルの破損が進行する事になる――
 その内、通常のテックセットや戦闘にも支障が出るようになり――最終的には砕けてしまい、二度とテックセット出来なくなるだろう――


 それでも、モロトフは足を止めるわけにはいかない。テッカマンが優秀である事を虫螻共に思い知らせなければならないのだ――
 とはいえ、今までの様に無節操に戦うというわけにはいかない。戦い所をある程度選ぶ必要があるだろう。
 特に、ブレードを倒す前に砕けてしまっては意味が無くなってしまう。それだけは避けなければならない――

 が、どちらにせよダグバ戦での消耗が激しすぎる以上は今暫く――つまりは数時間は戦えない。
 こんな状態でテックセットした所で、マトモに戦えないのはモロトフ自身が理解している。
 今必要なのは休息というわけだ。
 幸い、参加者達は風都タワー跡に意識が向いている。当初の狙いとは違うが、そこから離れ今は休むのが得策だろう。

 正直な所、ほんの30分程前は風都タワー跡に集まっていた連中を一網打尽にするつもりだった。
 だが、今は連中をつぶし合わせ自分はのんべんだらりと休んでいるつもりという有様。

 冷静に考えて見ればどうしてこうなったと言いたい気持ちだ。


 だが――これで良かったのだろう。


 そう、有象無象ではない宇宙に一人だけの存在であるテッカマンランスことモロトフ――その彼自身がその心のままに動いた結果なのだから――


「ふぅ……やれやれだ……」


【I-7/砂浜】

【モロトフ@宇宙の騎士テッカマンブレード】
[状態]:疲労(極大)、ダメージ(極大)
[装備]:テッククリスタル(僅かにヒビ)@宇宙の騎士テッカマンブレード
[道具]:支給品一式、拡声器、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、ランダム支給品0〜1個(確認済)
[思考]基本:参加者及び主催者全て倒す。
0:どうしてこうなった……
1:今は休む、市街地には近づかない。だがテッククリスタルのヒビは……
2:いずれブラスター化したブレードを倒す。
3:プリキュアと魔法少女なる存在を皆殺しにする。
4:キュアピーチ(本名を知らない)と佐倉杏子の生死に関してはどうでもいい。ただし、生きてまた現れるなら今度こそ排除する。
5:ゴ・ガドル・バという小物もいずれ始末する。ン・ダグバ・ゼバについては他の参加者に任せる。
[備考]
※参戦時期は死亡後(第39話)です。
※参加者の時間軸が異なる可能性に気付きました。
※ボルテッカの威力が通常より低いと感じ、加頭が何かを施したと推測しています。
※ガドルの呼びかけを聞きましたが戦いの音に巻き込まれたので、全てを聞けたわけではありません。
※ボルテッカ・クラッシュイントルード(Ⅱでブレードがデッド戦で使った技)を会得しました。
※度重なる激闘でクリスタルが破損しています、現状は変身及び戦闘に支障はありませんが激しい戦闘(例えばダグバ戦)を繰り返せば破損は進行し何れクリスタルが破壊する可能性が高いです。
 また、プリキュアの必殺技を受ける事で破損が加速度的に進行する可能性があります。


【共通の備考】
※ランスの拡声器使用後、H-8の風都タワー跡にて約10分後にダグバが拡声器で呼びかけを行っています。その後、ランスが拡声器をデイパックに仕舞うまでの音声が周囲に広まった可能性が高いです。
※ダグバとランスの戦闘によりH-8エリアそしてI-8に数多くの雷鳴が響きました。

236 ◆7pf62HiyTE:2013/05/16(木) 13:03:07 ID:yKZzLR9k0
投下完了しました。何か問題点や疑問点等があれば指摘の方お願いします。

wikiへの収録に関してはストーリーの区切りの関係で2分割収録でお願いします。名前欄にも書かれている通りですが念の為

>>208-221(MainScene01〜05)が『Uに一人だけの/ダグバの世界』
>>222-235(MainScene06〜07)が『Uに一人だけの/COSMO BLAZER』

以上の通りとなります。

237名無しさん:2013/05/16(木) 15:18:47 ID:uZdO32SUO
投下乙です

全員変身能力が危うい…ってそういや小杉さんだったかランスさんw

238名無しさん:2013/05/16(木) 22:22:20 ID:WknRWhS60
投下乙です

いやあ、モトロフさんがここまで燃えるとは予想外!
ダクバがそっちに行ったのも予想外ならそこから派生した戦いが濃いぜ
そして変身能力が……この状況がどう転ぶか

239名無しさん:2013/05/18(土) 19:15:49 ID:8YlkKaSk0
投下乙
もうモロトフさんが主人公でいいんじゃないかな

240名無しさん:2013/05/24(金) 13:29:59 ID:OH.xO67Y0
ランスさんには脇役出身の敵方としてこのまま奮闘してもらいたいもんだw

241名無しさん:2013/06/12(水) 00:01:51 ID:LFElBRX.0
予約来てた

242 ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 00:53:26 ID:t0EDf64.0
西条凪、溝呂木眞也、黒岩省吾、ゴ・ガドル・バ、石堀光彦、涼村暁分投下します。

243死神の祭典(第1楽章 悪魔の祝宴) ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 00:56:01 ID:t0EDf64.0
Paragraph.01 運命─ディスティニー─


「ここか……」


 F-5、深き森が生い茂る山頂に溝呂木眞也は辿り着いた。
 その理由は只1つ、約30分ほど前にこの場所にてある男が呼びかけを行ったからなのだ。


『俺は破壊のカリスマ、ゴ・ガドル・バだ! リントの戦士よ……腕に自信があるならば、鎧を纏い俺に挑戦してみろ!! 挑戦を受けないならば俺は殺戮を繰り返す!!』
『もし止めたいのならば何人がかりでもいい!! 自由に戦略を練り、戦力の限りを使い、俺の体に一つでも傷を作ってみろ!! 俺は山の頂上にいる、いつでも来い!!』


 余程自身の実力に自信があるのか、あるいは只の自殺志願者か、ゴ・ガドル・バの真意はともかくとして、その呼びかけは溝呂木のいたE-4を含めた周囲エリアに届いた。
 その口ぶりから察するに、周囲にいる参加者を招き寄せる事が目的なのは確かだろう。


 溝呂木はこの呼びかけを好機と考えた。
 勿論、ガドルの挑発に乗り奴と戦う――という事を考えているわけではない。
 重要なのはこの地に多くの参加者が集い乱戦となる可能性が高いという事だ。
 激しい戦場、溝呂木にとっては格好の遊戯の場所と言えよう。
 圧倒的強者に蹂躙され絶望する弱者達、
 多くの犠牲を以て強者を破ってもすぐさま別の強者によって天国から地獄へと叩き落とされる者達、
 溝呂木が求める光景が今にも目に浮かぶ。
 その祭典を高見の見物と洒落込もうではないか、場合によっては溝呂木自身で盛り上げてやっても構わない。

 故に近くまで向かい察知されないように気配を殺しながら様子を伺うことにしたのだ。
 幸い、サイクロン号というバイクがあるお陰で移動に手間はかからなかった。後は気付かれない様に見物――

 だが、いつまで経っても山頂で戦いが起こる気配は無かったのだ。
 向かって良いものかとも思ったが無駄に時間を使う理由も無い、一応気付かれない様に注意を払いながら山頂に向かったという事だ。


「祭りの場所は此処じゃなかったのか?」


 そして辿り着いたがその場所には人一人おらず、呼びかけに使ったらしい拡声器と双眼鏡だけが残されていた。


「どういうことだ……」


 そう零す中、ガドルが挑戦を受けないならば殺戮を繰り返す旨を口にしていた事を思い出し、いつまで待っても誰も来ないから待つのを止めて動いたのだろうと考えたが、


「いや……」


 足下に落ちている双眼鏡を拾い上げ考えた。
 恐らく、ガドルは呼びかけを行った後双眼鏡を使い周囲の様子を探った。近くを通りかかる参加者を探す為なのは考えるまでもない。
 そうして見つけたのだ。ガドルとの戦いを避けようとしている参加者を、その参加者を仕留めるべく討って出たのだろう。
 その参加者がガドルに挑むつもりならそのまま待てば良い、そうしなかったのはその参加者は戦いを避けたのだろう。
 双眼鏡と拡声器を捨てたのは戦うべき相手を見つけたから、見つからなければ捨てる理由は無い。

 何にせよ、双眼鏡と拡声器は自身で確保しておく。拡声器は参加者を――特に西条凪を呼び寄せる手段としては最適だ。
 双眼鏡も相手よりも先に目的のものを見つけるのに使える、大きさも手頃故これまた持っていて損は無い。


「となるとだ……まだそこまで遠くには行っていない筈だな……」


 そう口にし双眼鏡をのぞき込み周辺の様子を探る。
 恐らくガドルもガドルが見つけた参加者もまだ双眼鏡で視認出来る範囲にいる。
 そして拡声器が響いた範囲から考えそれ以外にも山頂近くで行動を起こしている参加者がいる可能性は高い。
 それらを掌握するというわけだ。

244死神の祭典(第1楽章 悪魔の祝宴) ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 00:56:30 ID:t0EDf64.0


「ふむ……どうやらアイツらしいな、まるで五代が変身したやつみたいだな」


 程なくカブトムシを模した怪人の姿を見つけた。恐らくそいつがガドルだろう。
 その姿は五代雄介が変身したクワガタムシを模した怪人、つまりはクウガを彷彿とさせるものであった。
 ある意味光の巨人に変身する姫矢准に対する自分とも言えるだろう。


「そういえば……五代の奴が死んだわけだが……奴の力はどうなった?」


 今更ながらに五代の死後、彼の持っていたクウガの力の行方が気になった。
 勿論、そのまま消え失せたのならばそれでも構わない。
 だが、姫矢が死んだとしても彼の光の力は誰かに受け継がれる様に、五代の持つ力も誰かに受け継がれても不思議は無い。とはいえ、


「まあいい、そのことは大した問題じゃ無い」


 そう、溝呂木にとってはそこまで重要な事項ではないのだ。誰かに受け継がれていたならばその人物を新たな遊び道具にすれば良いだけの話だからだ。
 もし五代の死に自身が関わっている事を知ればそいつはどう思うのか? そう考えると口元が緩まずにはいられない。
 だが、それは今考える事では無い。今重要なのは――問題の人物であるガドルが追跡している人物だ。バイクという都合良い移動手段があるならともかく、そうでないならばまだそう遠くには行っていない筈、
 とはいえ、見つけたからといっても具体的にどうこうする事も無いだろう。この場所からでも十分観戦できる。せいぜい高みの見物をさせて――



 だが、



「何、アレは……」


 溝呂木が見つけた人物、それは凪だ。3人の男(その内1人は凪と同じナイトレイダー隊員の石堀光彦、とはいえ溝呂木にとって凪の同僚を超える意味は無い)を引き連れている。
 溝呂木が人形にした美樹さやかの処遇を巡る対立等から五代達から離脱した事までは把握しているが考えて見ればそれ以降の事は把握していなかった。
 恐らく五代達と別れた後で石堀と合流出来、紆余曲折を経て他2人を加えたのだろう。
 とはいえ、凪がどういう行動をとっていたのかはここでは重要では無い。重要なのは――


「奴……ガドルが狙っているのは凪達か!?」


 ガドルの標的が凪達――いや、敢えてハッキリと言おう。凪ではないかと判断した。
 凪はナイトレイダーの副隊長、彼女がいるグループならば十中八九中心となるのは彼女だ、隊員である石堀もいる以上彼女主導でグループは動く筈。
 そして、山頂近くでガドルの呼びかけを聞き彼女はどう動くか?
 スペースビーストに対する強い憎悪があるとはいえ、危険人物が集う可能性のある場所に無策で近づく程彼女は愚かでは無い。その場所に自分がいる確証があるならともかくそうでないならば無謀な事はしない筈だ。
 だとすれば迅速に山頂から離れるのは明白、そこをガドルに見つけられたとしたら――


「マズイなこいつは……」


 溝呂木の表情から先程までは見て取れた余裕が消える。
 他の参加者がどうなろうが正直知った事では無い。
 だが、凪だけはそうはいかない。凪はナイトレイダー時代からの想い人、闇に染まった今であってもその想いは変わらない。

245死神の祭典(第1楽章 悪魔の祝宴) ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 00:56:50 ID:t0EDf64.0


「凪には手を出させるわけにはいかねぇな……アイツは……俺の物だ」


 そう、凪だけは他の誰にも玩具にさせるわけにはいかない。凪の心も躰も溝呂木の物なのだ。
 ガドル如きに凪を殺させるわけにはいかない。


「だが……ここで俺が出て行くべきか……」


 とはいえ、このタイミングで自身が直接出て行くのは戸惑われた。
 別に凪達が自分に攻撃を仕掛けてくる事についてはどうという事は無いが、結果として凪(他3人)を助ける事になるのは正直面白くは無い。
 凪達が自身の力でこの状況を切り抜けてくれればそれはそれで構わない(そして最後に溝呂木自身が仕掛けて台無しにする)が、推測できるガドルの能力を考えると厳しいだろう。
 例えば五代辺りや先の戦場で遭遇した村雨良等といった仲間がいるならばともかく、同行者2人が連中ほどアテになるとは思え無かった(ちなみに石堀は最初から戦力にはカウントしていない)。
 勿論、状況は刻一刻と移り変わっている為、どう動くかはわからない。しかし決断が遅れれば溝呂木自身が一番望まぬ凪の死が訪れかねない。


「ならば……コイツで決めるか?」


 と、デイパックからタロットカードを取り出す。
 別に専門的な占いをするつもりはない。単純に1枚のカードを引き、自身の決断を促すだけだ。
 運頼み――この状況では少々いい加減な気もする。
 だが、溝呂木が全てを掌握する男であるならば――その全てもまた溝呂木にとっては必然、引くカードすらも自身の闇の力に染まる筈だ。
 そう、この場で引くカードすらも溝呂木の想いのままというわけだ。

 タロットカードは大アルカナと小アルカナによって構成されており、今回使うのは大アルカナの22枚だ。
 その内の1枚を引くという至極単純なもの、難しい事は何も無い。
 十分にカードを混ぜ合わせる、これによりどんなカードを引くのかは誰にもわからない。
 そして、おもむろに1枚のカードを引く、それが溝呂木の運命を示すカードだ。
 そのカードとは――



「ふん……やはり、俺の思いのままらしいな」



 それは13番目のカード――『死神』だ。



 素人目から見ればそれは最悪なカードだ、だが今の溝呂木にとっては最良のカードであった。
 自分の好みのカードを引くことが出来たのだから――
 意味を考える必要は無い、状況は自身に向いている。それだけで十分だ。
 故にすぐさまタロットをデイパックに戻す――


 そう、その本当の意味など考える必要はないのだ――

246死神の祭典(第1楽章 悪魔の祝宴) ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 00:57:13 ID:t0EDf64.0





Paragraph.02 行軍─マーチ─


「石堀隊員、後方の様子は?」
「今の所異常はありませんよ、副隊長」


 このやり取りだけを聞けばナイトレイダー隊の哨戒に見えるだろう。しかし、


「もう大丈夫じゃないの、あのカブトムシ野郎も諦めて……」
「お前は黙っていろ」


 お気楽な声とそれを制する声が哨戒では無い事を証明する。
 凪、石堀、そして同行者涼村暁と黒岩省吾はガドルの追跡から逃れ川沿いを南下していた。


「おいおい黒岩、お前だってこんなピリピリした空気耐えられないって思っているだろう、俺にはわかる」
「お前と一緒にするな! 大体、俺が元々お前のいたお気楽な世界の住民じゃない事ぐらいバカのお前にだってわかっているだろうが!」
「何言ってんの、そんな真面目な奴がなんで東京都知事になっているんだよ」
「お前だってそれに立候補しただろうが」
「俺がぁ? 冗談は顔だけにしろよ、ね♪」


 ここにいる暁は黒岩と出会う前から連れてこられている。その為、黒岩と争った東京都知事選挙の事を知らないのも当然の話だ。
 なお、何故、ダークザイドの戦士である黒岩が東京都知事になっているのか疑問に感じている読者も多いだろうが、ここでは割愛させてもらう。
 ちなみに黒岩が都知事になっている事については石堀と情報交換を行った際に把握した。両名が異なる時間軸から連れてこられている可能性がある事を把握する為だ。


「知っているか、」


 突然ここでBGMが切り替わる、


「『冗談は顔だけにしろよ』は『アー◆◆◆坊やは△△者』というアメリカで制作されたドラマの台詞の訳だが、これは直訳ではなく本来の意味は『お前何言ってんだよ』というものだ、それが当たり日本における番組のトレードマークになったというわけだ」
(作者注.ちなみに黒岩の蘊蓄について間違いであっても作者は一切責任取らない事を此処に付記しておく)
「え、アレドラマの台詞だったの? 適当な事言ってない?」
「ふん、確かにお前が見ているとは思えんな」


 これを見て真面目に哨戒をしている集団と誰が言えるだろうか? いや、誰もいない。


「貴方達、少しは静かにしなさい!」
「え、だけどさ……」
「だからお前は黙っていろ」
「貴方もよ、黒岩省吾!!」


 流石に凪の声も荒くなってしまう。


「あのさ、なんでアンタそんなにピリピリしているわけ? 綺麗な顔しているんだからもっと笑顔にさぁ、ふんわかいこうぜ、ふんかわ、ね♪」


 だが暁は変わらずへらへら笑って凪に話しかける。


「こんな状況で笑える方がどうかしているわ!」


 無論、凪にはそんな笑顔など必要無いと思っているし、状況的にそんな余裕など皆無だ。


「落ち着いて下さい副隊長、騒いでいたら……」


 流石に石堀も荒げる凪を諫める言葉をかけてしまう。


「そうね……」
「それにしても涼村、アンタ流石だな。こんな副隊長の姿俺もあんまり見た事がない」
「それほどでも♪」
「石堀は別にお前を褒めているわけではないぞ」


 何だろう、意見の相違はあったが五代と行動を共にしていた時より苦痛な気がする。

247死神の祭典(第1楽章 悪魔の祝宴) ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 00:57:54 ID:t0EDf64.0


「あ、そういえばあのカブトムシ野郎見て思い出したんだけど……」


 と、暁が何か言いたそうにしている。


「何かしら?」


 感情が一切こもっていない声で凪が応える。下らない事をこれ以上喋るというならこっちにも考えがあるぞという無言の威圧でもある。


「これ以上このバカの戯言に付き合う必要はありませんよ」


 そんな凪の心中を察してか黒岩が口を挟む。だが凪にしてみれば黒岩もそのバカの1人なのだから黙って欲しい所だ。


「まぁまぁ、涼村、流石に副隊長も限界だ、状況が状況だから関係無い話だったら後にしてくれ」


 一応やんわりと仲裁する石堀である。


「いや、俺さ、アイツに似た奴と会っているんだよね」
「「「!?!?!?」」」


 暁の発言に3人が衝撃を受ける。


「そういう大事な事はもっと先に言いなさい!」
「どんな奴なんだ!?」
「本当だろうな!?」


 暁の言葉が事実なら暁はガドルの仲間と遭遇した事になる。つまり奴を出し抜くヒントを得られる可能性があるという事だ。


「確かアイツがカブトなら……クワガタ野郎だ、同じ様なベルト付けていた筈、間違いない」
「同じベルト……だとしたら奴の仲間の可能性が高いわね……石堀隊員」
「ええ、奴と同じ様な名前のパターンに該当する奴が1人……ン・ダグバ・ゼバがいます」


 初めて役に立ったなコイツ――凪と石堀は本気でそう思った。


「確かそいつもマントとかどうとか……白くて金ピカの悪趣味な野郎だった」
「全身がクリスタルなシャンゼリオンに変身する貴様だけには言われたくないぞ」


 外見が把握できただけでも有り難くはある。


「それで、他に何か変わった事は?」
「ああ、確か妙に『僕を笑顔にしてくれ』って迫る変質者だった」
「変質者……貴方に言われたらおしまいね」


 そう口にする中、


「ちょっと待て……暁、本当にそいつに会ったのか? そのクワガタ野郎は貴様の妄想上の存在じゃないのか?」
「おい黒岩、こんな状況で俺がそんな嘘言うと思っているのかよ?」
「思っているから言っている。大体、お前がそんな危険人物に果敢に挑むというヒーローの様なマネをする殊勝な人物だと思うか?」
「何で、俺の事そんな知っている様に言っているんだよ!?」
「知っているからだろうが!」


 また脱線して言い争いを始める2人だ、聞いた話ではこの2人本来なら敵同士らしく、暁に至っては黒岩の事を知らないという話だが異常なまでに連携が取れている様な気がする。
 本当にこいつら仲悪いのか?


「貴方達、いい加減にしなさい!」
「だが確かに黒岩の言葉にも一理ある、どういう状況でそいつに会ったんだ?」


 まぁ、恐らく襲撃してきた所を逃げたといった所だろう。


「ああ、ほむらが白いクワガタ野郎にいたぶられている所を助けたんだ」
「本当かしら……どうも貴方はそんな正義感の強い人間には見えないけど」
「ええぇ……凪まで俺を嘘吐き呼ばわりするのかよ……」


 凪にまで疑われた事に内心でショックを受ける暁であったが、

248死神の祭典(第1楽章 悪魔の祝宴) ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 00:58:18 ID:t0EDf64.0


「……確かに実際にそういう状況に遭ったのならそうだろうな」


 意外な事に黒岩は暁の証言を肯定したのだ。


「黒岩!」
「それに、お前がそのほむらという魔法少女と行動を共に為ていたのは間違いはない……」


 黒岩が暁の証言を肯定した理由は2つ、
 1つは先の放送後、暁自身が暁美ほむらの名前を口にしつつ、彼女の死の原因を作ったパンスト太郎他1名の死亡が伝えられた事を嘆いていたのを覚えていたからだ。
 それは何時ものお気楽な暁にしては珍しく真剣そのものだった。
 もう1つは――確かに暁は人間的には最低と呼べる人種だと黒岩は認識している。卑劣なマネをするし、いい加減な性格である、何故コイツがヒーローなのか本気で疑わしい所だ。
 だが、同時に知っているのだ、その暁もごく偶に、本当にごく偶に、真っ当な戦士としての姿を見せた時があるのだ。その時の状況を知るからこそ暁の証言を肯定できるのだ。


「まぁ良いわ、とにかくあのガドルと名乗った怪物と同じ様な奴がもう1人いる事は把握したわ……」


 暁が本当にほむらを助けたかはこの際問題では無い、どちらにしてもガドルクラスの危険人物がもう1人いる、それが解っただけでも暁にしては上出来だろう(ハッキリ言ってかなり過小評価しています)。


「あれ、そういや黒岩も魔法少女知っていたんだな」
「そういえば……貴方も誰か魔法少女に会ったのかしら?」
「いや、魔法少女の1人の巴マミと行動を共にしていた桃園から聞いた話だ」
「1つ確認するわ、巴マミを殺した相手については何か聞いていないかしら?」
「相手はテッカマンランスとかいう男らしい、その正体まではわからないが、図書館のあるエリアを消すほどの力を持つ相手ですよ」


 それだけ強敵だという事を黒岩は説明する。その最中、


「副隊長、どうして彼女を殺した相手を?」
「少し気になる事があっただけよ」


 凪が巴マミを殺した相手を確認したかった理由はその下手人が溝呂木であるかどうかを確認したかったからだ。
 さやかが溝呂木に操られた事から彼女の知り合い、それも友人2人は全て溝呂木に殺された可能性があった。それ故の確認だ。


「気になる事って何?」
「貴方達には関係の無い話よ」
「もしかして凪、あんたも魔法少女に会っているのか?」
「……ええ、美樹さやかという子よ、でも彼女は……いえ、何でもないわ」
「?」


 本当ならば溝呂木に殺され、その骸は人形として扱われ使い潰された、そう口にしようと思ったが止めた。
 溝呂木が凶悪な人物である事を説明する事に異論は無い。だが、今は少々タイミングが悪い。ガドルに追跡されている状況で溝呂木の事を悠長に説明している余力はない。


「今はそれよりもこの場を切り抜ける事が最優先よ」
「じゃ、じゃあもう1つだけ」


 話を切り上げようとする凪だったが暁がそれを阻む。


「何よ」
「せめて、そのさやかって子の知り合いが誰か教えてくれない?」
「は? 何言っているの? 貴方、暁美ほむらから彼女の知り合いについて聞いているでしょう」
「それがさ、ほむらの奴ほとんど自分の事を何も話してくれなくてさ……聞いた事は持っていた宝石が汚れきったら怪物になるとか、助けたい友達の女の子がいるってことぐらいだから……後はキュウなんとかに騙されたとかどうとか」
「え、それ本当に行動を共にしていたのか?」
「また俺を嘘吐き扱いして……」

249死神の祭典(第1楽章 悪魔の祝宴) ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 00:58:40 ID:t0EDf64.0


 石堀はほむらと暁がコミュニケーション取れていない事に呆れていたが凪と黒岩は神妙な面持ちで聞いていた。
 というのもさやかから聞いたほむらの情報にしろ、ラブから聞いたマミの持つほむらの情報にしろそれは決して良い印象を与える物ではなかったからだ。
 さやかが話したほむらの情報は『何を考えているのかはわからないけどマミさんを妨害して死なせた悪い転校生』、
 マミの持っていた情報は『何故かはわからないけどキュウべぇの邪魔をした人で信用できない(但し、マミは話はしてみるつもりだった)』というものだ。
 断片的故に断定は不可能だが、元の世界では敵対していた可能性が高く、同時に秘密主義な所があるのは明白。
 そんな彼女がバカな暁に素直に情報を渡すとは到底思えなかった。きっと暁のバカに振り回されたのだろう。


「「彼女に同情するな(わ)……」」
「何で!?」


 ともかく、暁がゴネる為、迅速にさやか及びマミの知り合い、つまりはほむらの知り合いを説明した。
 要点を纏めると同じ世界から連れてこられていると思われるさやか達、その仲間(便宜上こう表記する)は全部で5人、但し既に現時点で生き残っているのは1人だけである事まで説明した。


「ともかくだ、俺達の知っている事はここまでだ、後は桃園か他の誰かに聞け」
「念の為言っておくけど、その暁美ほむらが誰を守りたかったかは私達にもわからないわ。ここにいるかもどうかもわからないし、いたとしてももう殺されている可能性が高い、だから余計な事は考えない事ね」
「はいはい……あ、そうだ……なぁあんた達武器持っているよな?」


 今更思い出したかの様に暁が別の話題を切り出す。
 確かに暁以外の3人は銃系統の武器を持っている。暁にも支給はされてはいたが既に破壊され今は持っていない。


「それで?」
「俺にも何か武器くれない? 出来れば俺でも簡単に扱えてどんな強敵も一撃で倒せる様な強力な奴ね」
「専用の変身能力あるでしょうが、それだけあれば十分よ」
「だからそれとは別の武器が欲しいんだって、あんた達だって変身能力とは別に武器持っているし、ね」
「あのね、何とかに刃物という言葉……」
「この男がそんな言葉知っているわけないだろう」


 正直、バカに武器を渡したくは無いのが本音だ。


「だけどさ、あんた達そんなに沢山デイパックあるんだから俺にも1つ分けてくれたって……大体、凪に渡したスカルだって元々俺に支給されていたんだぜ、交換として何か……」


 確かに暁の言葉にも一理はある。変身能力を得る為とはいえ、結果として暁から武器を取り上げたのは事実だ。
 暁の言葉に従うというのもしゃくではあるが、この問題が後々尾を引かないとは限らない。


「わかったわ、その代わりスカルの件に関してはこれ以上文句を言わない。それが条件よ」


 と言って、手持ちのデイパックの1つを確認し、


「……これなら丁度良いわね」


 と、そのデイパックを暁に渡した。


「サンキュー♪」
「どうでもいいが、お前のデイパック、少し口が開いているぞ。ちゃんと閉めておけ」
「お前はお母さんかお父さんかっつーの、さーて中身はと……」



 そして中身を確認しようとした矢先――



 何かが撃ち抜かれる音が響く――

250死神の祭典(第1楽章 悪魔の祝宴) ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 00:59:16 ID:t0EDf64.0





Paragraph.03 狙撃─エアスナイパー─


 クウガとガドルの能力は似ている――
 パワーとスピードのバランスが取れた格闘戦の赤、
 スピードを重視した槍あるいは棒使いの青、
 索敵能力に特化した弓矢使いの緑、
 そして防御とパワーを重視した剣使いの紫、

 全身が変化するクウガとは違い、ガドルの場合は瞳の色が変化するだけだが概ね同じ能力を持っているという解釈で構わない。
 ガドルがグロンギの上級であるゴ、その中でも別格に強いのは純粋にパワーが強いというだけではない。
 状況に応じて様々な形態を使いこなす、それだけ応用力が高いという事だ。
 実際問題、グロンギあるいは未確認生命体との戦いは熾烈を極めており、クウガも苦戦を強いられている。
 だが、クウガは相手の能力を把握し時には警察と連携しつつ、状況に応じた最適なフォームへと変身しそれらを打ち破っている。

 が――ガドルに対してはそれが通用しないのだ。
 言ってしまえばクウガの戦い方は相手がチョキを出してくるからグーを出すというものだ。
 チョキを出すと解っていてパーを出すバカはいない。普通に考えればグーを出す。グーが出せるならば特に、
 そう、ガドルの場合はクウガが状況に合わせてグーを出してきてもグー、あるいはパーを出せる状態なのだ。
 つまり、有利に戦える形態で戦うという事が出来ないのだ、良くて互角までにしか持って行けない。
 そして、同じタイプ同士が戦うならば勝敗を決めるのは――純粋にパワーが強い者だ。
 故にクウガは一度は破れ、そしてさらなる強化を図りガドルを破ったのである。

 純粋なスペック勝負、それを打ち破るだけでも難儀ではあるが、それ以上に面倒なのは多彩な能力である。

 そう、例えガドルから逃走した所で、それだけで身の安全を保証されるわけではない。
 ガドルの索敵能力を甘く見るな、クウガと同じ事が出来ると説明した筈だ、クウガは遠く離れた場所を飛行、あるいは周囲の景色に溶け込み不可視状態となっている未確認の位置を正確に索敵する程の力を持つ。
 当然、ガドルも同じ事が出来るのだ。

 全身の神経を研ぎ澄ませろ――逃走方向は把握済み、そして見落とすな、僅かな動きすらも――


「!! 川沿いか」


 距離は大分離れているが川沿いを歩く音が僅かに聞こえた。地図で言う所のG-4といった所か。
 足音の数は4つ、連中に間違いない。
 瞳の色を青に変えて走り出す。逃がしはしない、どこまでも追い続けてやろう。

 そしておもむろに再び瞳を緑に変えて首飾りの1つを引きちぎりガドルボウガンへと変化させ構える。
 距離的に仕留められる距離では無い、その上森林という遮蔽物の多い場所である関係上、まず木々に阻まれ防がれるのはガドルにも理解出来る。
 だがガドルは構わず圧縮空気弾を何発も放った。
 研ぎ澄まされた感覚で狙うべきポイントは押さえている、放った空気弾は木々の間を正確にすり抜け――
 常人では視界外である凪達から数メートル離れた大木に直撃した。

 いうなればこれは無言の最後通告だ。
 逃げても無駄だ、戦えと。
 戦わないのならば何処までも追いかけて殺すと。
 只逃げる相手を殺すのは趣に欠ける、殺すならば立ち向かう相手が良い、そう考えての行動だ。


「来るが良い、リントの戦士達……来ないならば……ギベ!(死ね!)」


 そしてガドルは再び走り出す。

251死神の祭典(第1楽章 悪魔の祝宴) ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 00:59:50 ID:t0EDf64.0





Paragraph.04 臨戦─スタンバイ─


「石堀隊員!」
「副隊長、奴の姿は見えません」


 レンジ外からの狙撃、自分達では無く、すぐ近くの大木に命中したが、それは4人を動揺させるのに十分過ぎた。


「おい、今のは……」
「方向から考えてまず間違いないわね」

 狙撃者は間違いなくガドルだ。
 勿論、ガドルの呼びかけに招かれた他の危険人物が仕掛けた可能性はなくはない。
 しかし、撃ってきた方向は丁度ガドルのいた場所、
 更に何も知らない危険人物が単身行動している相手ならばともかく十分に警戒している4人の集団を狙撃するとは考えにくい。特に遮蔽物の多く狙撃に向かないならばなおの事だ。
 どちらにしても確実に言えるのは、自分達が敵に狙われているという事だ。
 何にせよ立ち止まるわけにはいかない。足を進めなければならないだろう。


「どうするつもりだ西条」


 黒岩に問いかけられ凪は考える。
 もし相手がガドルだとするならば厄介な事になる。
 相手は人間よりも優れた感覚を持ち、人間が知覚出来ない距離から狙撃を行う事が出来るという事だ。
 そして身体能力も相当なものと考えて良い、例え1キロ強離れていたとしてもごく短時間で間合いを詰めてくるだろう。

 選択肢1……応戦せずこのまま逃げる。
 却下だ、遮蔽物の多い森の中にもかかわらず狙撃してきたのだ。既に奴の間合いにいる以上、逃げ切れる可能性は低い。
 同時に先にも述べたとおり短時間で間合いを詰めてくるならば無策で逃げるのは完全な悪手だ。

 選択肢2……応戦する。
 これまた論外、相手の能力が相当なものである以上、4人がかりでも勝てる保証は無い。
 慣れない変身ツールを使わざるを得ない自分と石堀、巫山戯てばかりで実力的に信用のおけない暁と黒岩、この4人での勝率は限りなく低い。
 更に言えば状況的に他の危険人物がやってくる。それだけの不確定要素を抱えて戦うのはリスクが大きすぎる。

 選択肢3……4人バラバラで逃げる。
 ならば、敢えて4人がバラバラになりガドルの狙いをそらすという手段だ。これならばガドルに狙われた1人はその時点でアウトだが残り3人は逃げおおせ――
 これも悪手だ。ガドルの実力を考えれば1人仕留めるのにそう時間はかからない。そして仕留めた人物の武器を確保されそのまま次の標的を仕留めようとする。
 運よく逃げ切ったとしても戦力は大幅に削られるのは明白。敵がガドルだけではない以上、これも避けるべきだろう。


「(くっ……時間が……)」


 そんな中、


「なぁなぁ、俺に1つ良い考えがある」


 と暁が言い出した。


「戦いの素人のお前にどんな良い考えが浮かぶ?」
「聞くだけなら聞いてあげるわ」


 正直、この状況で不毛な言い争いをされてはかなわない。早々に暁の作戦を聞き出して流そう。そう考えて凪は反応する。


「お前達の誰かがあのカブトムシ野郎を引きつけている間に俺達が逃げるって作戦だ、どう?」


 要するに誰かを囮としてその間に残りの3人は逃げるというものだ。


「ほう、それは名案だな。その囮役はお前がやるんだろう?」
「何言ってんの、何で俺がそんな自殺行為しなきゃならいっつーの。大体お前は何か作戦考えたのかよ?」


 凪の想いはむなしくやはり不毛な言い争いを始める2人だ。


「確かに名案ね、でもそれはその囮役が十分に時間を稼げるという前提が無ければ成り立たないわ。あの怪物を相手にそれだけの時間を稼げるのかしら?」
「え、でもほら、さっき使った神経衰弱弾ってやつ……アレを使えば……」
「神経断裂弾、例え確実に仕留められる弾丸があっても、直撃させなければ意味は無いわ。それに、同じ手が使えるほど甘い相手だと思う?」
「それに涼村、お前も言っていただろう。同じ様な怪物がいるって……それを考えれば無駄弾は避けたい所だ」


 確かに此方には切り札と言える神経断裂弾というのがある。しかし同じ手が通じる様な相手ではない、加えて同タイプの怪物の存在がそれを使うのを戸惑わせた。

252死神の祭典(第1楽章 悪魔の祝宴) ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 01:00:51 ID:t0EDf64.0


「じゃあ打つ手無しじゃないか」
「大体暁、お前如きが考えつく浅知恵など既に西条も石堀も考えついている。それをやらないという事は通じない事が解っているからだろうが」
「だから黒岩は何か手を考えたのかよ!?」
「それを今考えているのだろうが!」
「あんたら、状況を考えろ……副隊長?」


 言い争いを続ける暁と黒岩、そしてそれを諫めようとする石堀を余所に凪は思案していた。


「(そう、この状況を切り抜ける一番最低限のリスクで済む方法は1つ、それは涼村暁が言った通り誰かが囮となってあの怪物を引きつけるという方法)」


 そう、先程凪が名案と言ったのは皮肉でもなんでもなく実際に名案だったからだ。
 但し、凪達がその後指摘した通り、『誰が囮を行うのか』、『時間を稼がなければ意味が無い』という問題を抱えている。
 が、逆を言えばその問題をクリアすればこれ以上無い名案という事になる。
 そして、同時に問題をクリアする条件も自ずと見える事になるそれは『時間を稼げる囮役を選ぶ』である。


「(つまり、囮役を誰がやるか、それが私達の命運を分ける事になる)」


 故に考えるのだ、この状況を切り抜けるに相応しい最適な囮役を。
 だが、答えそのものはすぐに出た。


「(涼村暁に黒岩省吾、巫山戯てばかりのこの2人に私達の命を預けるわけにはいかない……)」


 それぐらい2人の信用は地に落ちていた。


「(そういう意味では石堀隊員は信用におけるが彼では少々力不足……となると私がやるしかないか……)」


 故に囮役は凪自身が引き受けるしかないだろう。
 勿論、囮役である凪が一番危険な状況に立たされる事は明白、というより死亡確率が非常に高い。
 しかし、凪自身この戦いで命を落とすつもりは全く無い。
 いや、正確に言えば凪以外が囮役を行うとしてもその囮役の生存確率を引き上げる方法を考えるつもりだ。
 そう、この戦いの消耗を一番押さえる為には犠牲は最小限に抑えなければならないのだ。


「(だが、このスカルの力だけでどこまでやれる?)」


 手元にはロストドライバーとスカルのガイアメモリがある。これで仮面ライダースカルに変身すればある程度は応戦できる。
 しかしそれだけで切り抜けられるとは思えない。


「(こうなったら石堀隊員からアクセルを……)」


 ならば石堀の持つアクセルドライバーとアクセルのガイアメモリを交換してもらい仮面ライダーアクセルに変身して――


「(待って、そうだわ。この手があった! これならば……)」


 脳内で作戦が纏まった。故に、


「石堀隊員、アクセルは?」
「いつでも使えます……って副隊長?」
「ん、ってことは石堀、アンタが囮役引き受けてくれるのか?」
「え……副隊長、本気ですか?」


 流石の石堀も冷や汗が出てくる。


「ええ、但し……」


――Skull――


 響き渡る音声、ロストドライバーにセットされ


「変身」


――Skull――


 その言葉と共に凪の姿が仮面ライダースカルへと変化した。

253死神の祭典(第1楽章 悪魔の祝宴) ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 01:02:51 ID:t0EDf64.0


「私も行くわ」


 その言葉から凪ことスカルの真意を察した石堀も


――Accel――


「変身」


――Accel――


 エンジンの様な音を響かせながら仮面ライダーアクセルへと姿を変えた。


「なるほど、つまり、2人で囮役を行うというわけか」
「ええ、私と石堀隊員は元々同じチーム、連携は十分に取れるわ、貴方達と違ってね。それに……」


 スカルの視線に気付きアクセルは自らの身体をバイク形態へと変形した。
 そしてすぐさまスカルがそれに騎乗する。


「バイクに変形したぁ!?」


 それを見て暁が驚愕の声を挙げる。


「何を驚いている、貴様の所にもバイクに変形する奴がいるだろうが」
「そんな奴知らないっつーの、それ以前にどうやって人間が変形するんだよ」


 そんな2人を余所に。


「説明しないのによく出来たわね」
「副隊長が気絶している間に調べましたから」
「これなら奴のスピードにも十分対応出来る、貴方達はこのまま川沿いを進みなさい」


 そうスカルが口にしたのを最後にアクセルは走り出した。その速さ故にすぐに小さくなっていく。


「……おーい」
「行くぞ、暁」


 凪の作戦を理解した黒岩はすぐさま足を進める。


「……なぁ、黒岩……1つ聞いていいか?」
「何だ、下らんことだったら怒るぞ」
「いや、さっきのスカル、額にSの文字があったよな?」
「ああ確かあった、それがどうかしたのか?」
「……俺がさっき変身した時にもそれあったか?」
「一々そんな事を覚えてられるか……で、それがどうしたと?」
「いや……別にそんな大した事じゃ……」


 微妙に釈然としない表情ではあったが、暁は黒岩の後ろを歩き出す。


「貴様が真っ当な戦士であれば西条が苦労する事も無かったんだろうがな……」
「俺の事バカにしてるのか?」
「ふん……」


 本心から言えば、黒岩は暁を全く評価していないというわけではない。
 そう、黒岩は知っているのだ。暁が本当の意味で真っ当な戦士として戦った時の強さを――
 依頼人の女の子(後に秘書となる)が暁の為に弁当を作ってきた時があった。
 しかし、黒岩と同じダークザイドの1人がそれを台無しにした事があったのだ。
 その時、暁は普段のおちゃらけた姿ではなく、心から怒りの感情を出して戦った。
 この時、暁ことシャンゼリオンは黒岩クラスの実力を持つ4人の相手と対峙していた。
 しかし、それらを圧倒する程の力を見せたのだ(実際は黒岩は早々に離脱し、卑劣なマネをした1人を仕留めた為、実質的には2人を相手にした)。
 黒岩してその時のシャンゼリオンに勝てる気がしないと言わしめたのだ。
 その一件があるからこそ黒岩は暁をある程度評価しているというわけだ。
 そう、先程暁がほむらを助けたという話を信じたというのも、そういう経緯があったからなのだ。


「というかさ、なんで俺がコイツと一緒に行動しなきゃならないんだ?」
「それは俺の台詞だ」

254死神の祭典(第2楽章 戦場にて) ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 01:05:13 ID:t0EDf64.0





Paragraph.05 騎兵─チャリオット─


「はっ!」


 木々に空気弾が炸裂する音が奔る、狙撃手がスカルを狙ってのものだ。


「副隊長、やはり奴は……」
「石堀隊員は走る事だけに集中、奴への攻撃は私が引き受ける」
「了解」


 木々が生え茂る森を縦横無尽にスカルが騎乗したアクセルが奔る、
 それはおおよそ通常のバイクでは考えられない程のジグザグな動きで高速に、
 それが可能なのはアクセルがあくまでもバイクでは無く、仮面ライダーアクセルがバイク型に変形した姿だからだ。
 人を乗せて走る事も出来るが当然、単身で自走する事も可能だ。
 そう、今のアクセルはスカルが操っているわけではない、スカルの意を汲んでアクセル自身がその意のままに走っているというわけだ。


「(涼村暁達ではなく、私達を狙っているという事はあくまでも狙うのは戦う意志のあるものだけか……)」


 狙いは自分達に向いた。これにより囮作戦の第一段階は成功した事になる。
 だが、重要なのはここからだ。ここから奴を翻弄し再び戻って暁達と合流しなければならない。


「(だが、解かなければならない謎がある……狙撃手があの怪物……ガドルだった場合、あの男はどうやって空気弾を発射したのか?)」


 そう、ガドルが何を使って狙撃したのかという謎が残っている。
 思い返せばガドルの所持品は凪と石堀が全て奪取した。つまり今のガドルは丸腰の筈だ。そして躰を見る限り空気弾を発射出来そうな特異な構造は見られなかった。
 つまり、空気弾を発射するためには武器が必要なのにその武器が見当たらなかったという事だ。
 そんな都合良く、遠距離にある目標を狙撃できるライフルが手に入れられるものなのか?
 その謎を解き明かさない限り、勝機は無い。



「見えたわ……怪物(ビースト)!!」



 スカル達の視界に狙撃手、つまりはガドルの姿が現れる。だがその姿は小さくまだ大分距離が離れている事を示している。


「奴に接近しますか?」
「いいえ、石堀隊員はこのまま距離を保ったまま移動」


 だが不必要に近づくマネをするつもりはない。幾らアクセル及びスカルといえどもガドルの一撃に耐えきれる保証は無いからだ。
 しかし近づかなくても十分に対応する術はある。

 スカルは左手に構えているスカルマグナムを構えガドルを狙いエネルギー弾を発射する。
 一方で前方に木の枝が迫る。しかし右手に構えているアクセルから借り受けたエンジンブレードでそれを斬り落とす。

 そう、それこそがアクセルに騎乗した状況のもう1つの利点なのだ。
 移動を全てアクセルに依存する事により、騎乗しているスカルは操縦の事を考える必要は無く、その行動の全てを攻撃に回す事が出来る。
 この連携こそが凪の考えた最大の作戦なのだ。移動のアクセル、攻撃のスカルという最大のコンビネーションという連係攻撃こそが――
 だが、当然と言えば当然だが、これは両者の連携が成されていなければ全く意味が無い。
 結論から言えば今いる4人でここまでの連携が取れるのは凪と石堀のコンビしかいない。
 考えて見れば元々凪と石堀は同じ作戦部隊の副隊長と隊員の関係だ、連携を取れない方がどうかしている(ちなみに石堀視点で見れば別の理由あるいは思惑もあるがここではこれ以上は語るまい)。

 高速で位置を移動しつつの攻撃、さながらそれは騎兵(トルーパー)、いやむしろ戦車(チャリオット)ともいえる代物だ。
 流石のガドルもこの動きを完全に読むのは難しいだろう。いや、読めた所で次の瞬間には別の場所へと移動している。
 例え一発二発は回避出来ても、何れは限界が訪れる筈だ。
 更に言えばこの状況ならば空気弾を回避するのはそう難しい事では無い。


「(そういえば……あの怪物の目の色、何か違和感が……)」


 その最中、凪はガドルの瞳の色に違和感を覚えていた。
 それだけではなく、似た様なものを何処かで見た覚えがあるのだ。


 そう考えていると、


 突然、アクセルが急激に左右に揺れ動く。


「石堀隊員!? 何を……」
「副隊長、すぐ近くを見て下さい!!」


 突然の暴走に思わず声を荒げててしまったスカルだったが、アクセルの言葉通り周囲を見ると、


「……!」


 近くの木に槍が深々と刺さっていたのだ。

255死神の祭典(第2楽章 戦場にて) ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 01:05:43 ID:t0EDf64.0


「これは……」


 どうやらガドルが突如槍を投擲したのだろう。アクセルはそれにいち早く気付き、回避するべく、車体を回したのだろう。そのとっさの判断が無ければスカルは槍によって磔にされていたのは明白だ。


「だが……」


 しかしそれならそれで新たな疑問が浮かぶ。だが、


「副隊長、来ます!」


 その言葉と共に振り返ると、ガドルが槍を構えたまま急速に接近しているではないか。


「くっ、石堀隊員、スピードを」
「了解!」


 だが、アクセルが急速に足を進める事で間合いを極力詰められない様にする。しかし、ガドルはそんなアクセルを目がけ槍を投擲してくる。


「うおぁっ!」


 しかし自身を狙う槍を避けるアクセルの行動は速く命中する事は無い。だが、回避行動を行った事で、若干行動が遅れ間合いが詰められる結果となる。


「マズイわね……」


 今のガドルは先程よりもスピードが上がっている、それに加え投擲された槍の威力は確実に空気弾よりも上、空気弾程度ならばある程度耐える自信はあったが、投擲された槍の直撃を喰らえばそれこそ命に関わる。


「(それに……奴は何処から槍を出している?)」


 最大の疑問符はそこだ、槍はそれなりに大きく、隠し持つという事は不可能。それを使い捨てるかの様に連発しているカラクリが不明瞭だ。


「(悠長に考えている余裕は無い……)」


 しかし、考察だけに時間を割く事は出来ない。アクセルへの負担を最小限に抑えると共にガドルへの牽制も続けなければならない。
 スカルマグナムから何発もエネルギー弾を発射する。しかしガドルは巨体に似合わない俊敏な動きで回避していく。


「(!? 奴の瞳の色……また変化している……!?)」


 その最中、ガドルが再び槍を投擲する。アクセルがそれを回避しようとするが――


「そのまま速度を!」


 その言葉と共にアクセルは回避運動を止め、そのまま加速する。だがこれではスカルの真正面に槍が迫ってくる。しかし、


「はぁっ!」


 エンジンブレードでその槍を弾く。その衝撃は強く、腕に若干の痺れを感じる。


「あの槍は……消えた!?」


 しかし次の瞬間、弾いた筈の槍が完全に消失していた。それどころか、


「!? あの怪物が繰り出している槍が……何処にも無い……!」


 既に数発ガドルは槍を投擲している。それ故、本来ならば木々に刺さった槍が残っていなければおかしい。
 しかし、何とか周囲を見回しても、その槍が見当たらない。
 勿論、バイク状態のアクセルに騎乗しての高速移動中故に細かい所までは把握できないがそれでもあれだけの大きな槍が影も形も無くなっているのが明らかにおかしい。


「副隊長、来ます!」


 だが、思案している余裕はない。アクセルの言葉通り、ガドルは此方へと迫りながら再び槍を投擲した。


「ぐっ!」


 狙いは見事なまでに正確、アクセルの進路上を狙っている。このままのスピードでアクセルが進めば直撃は免れない。
 スピードを落とす? いや、この状況でスピードを落とせば一気に迫られる。
 ならば車体を揺らし進行方向を? あるいは、


「うぉぁっ!」

256死神の祭典(第2楽章 戦場にて) ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 01:07:48 ID:t0EDf64.0


 アクセルは前輪を上げてウィリー状態となった。その直後、丁度寸前で槍が地面へと突き刺さる。
 そしてそのまま、


「はぁっ!」


 刺さった槍を足場代わりに高く飛び上がる。そして丁度その瞬間、ミシミシと何かが割れる音が響く、


「!? 今の音は……」


 明らかに槍が割れる様な音では無い。そう、まるで――
 スカルはほんの一瞬だけ足場代わりにした槍に視線を――
 だが深々と刺さっていたのは槍では無く、折れ曲がった木の枝だった――


「これは……まさか?」


 そして空中にいたままガドルへと視線を向ける。そこには――



 移動しながら地面に落ちている枝を拾い、
 槍へと変化させているガドルの姿があった――



 さて、ここで一旦ガドル視点に切り替え時間を戻してみよう。


 ガドルはアクセルとスカルが動いた気配を察知し狙いをその両名に切り替えた。
 そして、両名に狙いを定めつつガドルボウガンで狙い撃とうとしたが、アクセルに騎乗したスカルの動きは速く捉える事が出来なかった。
 その一方で、スカルから砲撃が繰り出される。無論、この程度の砲撃など直撃した所で耐えられるとは考えたが、一撃で動きを封じる弾(神経断裂弾)の存在を踏まえると可能な限り避けるべきだと判断した。
 勿論、感覚が研ぎ澄まされている今のガドルには回避する事はそう難しい事では無い。容易に回避する事が出来た。
 だが、問題のアクセルとスカルは、ガドルとの距離を保ったままそれ以上接近しようとはしなかった。その距離のまま砲撃を繰り返しているという事だ。


「……時間稼ぎか」


 両名の目的は他の2人を逃がす為の時間稼ぎだと断じた。そしてタイミングを見計らい離脱して逃げおおせるつもりなのだろう。


「させると思うか?」


 無論、それを素直にさせるつもりなど無い。近づいてこないならば此方から近づくまで。
 だが、問題がある。流石にバイク状態となったアクセルに追いつける程ガドルは速くは無い。
 スピードに秀でた俊敏体ならばバイクにも対応出来るかもしれないが――もう一手欲しい所。


「ガメゴが使ったらしい方法を使わせて貰うか……」


 ここで1つ妙案を思いついた。
 そう、ガドルと同じゴの1人の男が自身のゲゲルで使ったあの方法を応用すれば良いのだ。
 そのゴとはゴ・ガメゴ・レ、自らの装飾品を無数の鉄球に変化させ雨霰のように投擲する事で多くのリントを殺した男だ。
 もうおわかりだろう、別にガドルボウガンで無くても遠距離攻撃は可能だという事だ。
 そう、俊敏体の武器であるガドルロッド(棒という名前だが槍)を武器として投擲したという事だ。
 幾らパワーが落ちたとはいえ、ゴ最強とも言うべき破壊のカリスマの名は伊達ではない。投擲された槍の破壊力は相応なものだ。空気弾を打ち出すガドルボウガンより破壊力は上だろう。
 射撃体ほど正確な射撃は出来ないが、今の間合いを少し詰めれば十分狙いを付ける事が出来る。
 そして何より――この場所が最良の場所である。
 そう、木々の生い茂る森林、ガドルロッドを形成する為に必要な棒の様な物、つまりは枝など無数に存在する。
 要するに、高速で弾数無制限の大砲を撃ち込み続けるが如く仕掛ければ良いというわけだ。

 そしてその目論見は上手くいった。

 当然、ガドルロッドを回避するため、アクセルの動きはワンテンポ遅くなる。
 その遅くなって遅れた時間で一気に間合いを詰めるのだ。
 無論、アクセルは再び間合いを開こうとするがそこに次のガドルロッドを撃ち込むという事だ。
 その最中スカルが砲撃を仕掛けてくるがスピードに秀でた俊敏体にとって回避はそう難しくは無い。


「感謝するぞ、リントの戦士……」


 ガドルは素直に感謝の意を示す。
 自身が持つ能力に甘えるだけではなく、それを応用させてくれた戦士達に対してだ。
 ガドルのゲゲルはこの戦いだけで終わるものではない。
 クウガを倒すという目標は果たせなくなったが、そのクウガを倒した戦士を倒す事、そしてダグバを倒すという目標は依然として残っている。
 それを果たす為には現状に甘えていてはいけない。
 先の呼びかけの際、『自由に戦略を練り、戦力の限りを使い』と口にしたがそれはガドル自身にとっても同じ事だ。
 使える術は全て使う、
 リント達が試行錯誤を経て自分達と戦う術を手に入れた様に、
 クウガがリント達と連携し多くの同胞を屠ってきた様に、
 数多の同胞達が死力を尽くしゲゲルをクリアしようとした様に、
 自身もまたそれを行うという事なのだ。

257死神の祭典(第2楽章 戦場にて) ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 01:08:22 ID:t0EDf64.0

 故に、最大限の戦いでリント共を打ち倒す、それがガドルの感謝の仕方である。

 そう、既にガドルは既にアクセル達を打ち破る為の攻撃を仕掛けていたのだ――



 そして再び視点はスカル達へと戻る。


「そういう事……あの男は五代雄介……いいえ、クウガと同じ……」


 スカルはようやく、ガドルの力の正体に気が付いた。
 思えば奇妙だったのだ。赤い瞳だったのが緑、そして青へと変化した事が。
 同時に瞳の色に応じて戦い方を変えた事が、
 そう、似た様なものをスカルこと凪は見ていたのだ。
 五代雄介ことクウガの戦い方がそれと同じだったのだ。
 クウガは状況に応じて超変身、あるいはフォームチェンジを行っていたのを凪は知っている。
 更に情報交換の際に五代からクウガの形態の違いについての説明は受けていた(凪にしてみれば使える戦力の把握は基本的な事柄だからだ)。
 その為、直接見ていないものも多いがクウガの能力については概ね把握していた。
 格闘に特化した基本形態の赤、
 スピードに特化した棒使いの青、
 情報索敵に特化した銃使いの緑、
 そして防御に特化した剣使いの紫、

 そのクウガと同じ事をガドルは行っているのだ。
 更に言えば、クウガが使う武器は似た様な形の物を変化させる事で生成する事も聞いている。
 例えば長い棒を使って青のクウガの使う棒や紫のクウガの使う剣を、銃を使って緑のクウガが使う銃の様にだ。


「つまり、あの男にとって、武器を奪った事は何のマイナスにもなっていない……いいえ、武器を奪う事すら不可能……」


 その通りだ、何しろ適当な棒があれば簡単に槍を生み出せるのだ。いやもしかしたらクウガ以上の力を持っていて、ボウガンすらも生み出せるのかもしれない(流石に首飾りの一部が変化した所は見ていない)。


「それで副隊長、どうします?」


 そう、問題はここからだ。ガドルの能力通りならばかなり面倒な事になる。
 何しろ、高速戦で翻弄するという作戦が難航しているからだ。


「近づいてきた所を電気で……」


 アクセルはエンジンブレードに挿入されているエンジンメモリの力の1つによる電気ショックを与え動きを封じる事を提案する。


「いいえ、それはむしろ逆効果よ」


 そう、凪は五代から電気の力で手に入れた金の力の存在も聞いていた。
 ガドルがクウガと同一の力を持っているならば、電気ショックはむしろ逆効果。強化を促してしまう事になる。


「石堀隊員はスピードを落とさず間合いを取りなさい。奴の槍は全て私が弾く」


 その言葉通り、スカルは跳んできた槍をエンジンブレードで弾き飛ばす、あるいはスカルマグナムで撃ち落としていく。
 幾ら俊敏体のガドルが素早いとはいえ、バイクならば振り切れないこともない。なんとか槍の射程外まで移動すれば――


 しかし、


「!?」


 次に跳んできたのは槍では無く――剣だった。


「石堀隊員、急回転!!」


 視認した瞬間、スカルはアクセルへと指示を飛ばした。アクセルは全身を回転させコースを変える。そして、跳んできた剣を回避した。


「何故で……」


 何故急に回避をと言おうとしたが、次の瞬間ある物をみた事でその理由を理解した。
 そう、背後で大木が折れて倒れていく有様をだ。
 そこにはガドルが投擲した剣が刺さっていた。
 紫の瞳のガドルが投擲した――


 クウガと同じ力を持っているという事は、クウガの持つ紫の力もガドルは持っているという事だ。
 スピードを代償にパワーと防御を強化し剣を使う紫の力だ。
 そのパワーで投擲された剣の持つエネルギーは槍の比ではない。
 槍ですら腕に痺れを感じる程なのだ。そんなパワーの剣を弾こうとすれば、腕の方が壊れかねない。
 だからこそスカルは剣を弾くのではなく回避する行動に出たのだ。

258死神の祭典(第2楽章 戦場にて) ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 01:08:51 ID:t0EDf64.0

 さて、読者諸兄はここで1つ疑問に感じないだろうか?
 スピードが要求される状況で、スピードを犠牲にした紫の攻撃、
 確かに強い力は得られるが、スピードを犠牲にしてしまえば引き離されてしまうのでは無かろうか?

 結論から言えば、その問題はクリア出来る。
 慣性の法則をご存じだろうが? 要するに動いているものは動き続け、止まっているものは止まり続けようとする事だ。
 そう、高速で移動しながら俊敏体から剛力体へと変化しても、俊敏体の持つスピードがすぐに0になるというわけではない。スピードはある程度維持される。
 勿論数秒程度で一気にスピードは落ちるが、その数秒の間に槍を剣へと変化させ投擲しすぐさま俊敏体へと戻れば何の問題も無い。
 4つの形態を自在に使いこなせるならばこれぐらいの事は造作もない。
 つまり、スピードロスを最小限に抑えた上で剛力体の攻撃を繰り出しているという事だ。


「くっ……一瞬だけ紫に……」


 無論、このカラクリはスカル自身もすぐに看破した。


「(だとしても……)」


 しかし、幾らロスを最小限に抑えられるとしても若干のスピードは落ちる。
 間合いを詰めた上で仕掛ける為には剛力体には短時間しか変身しない筈、
 つまり、紫の剣による投擲の連発は無いと考えて良い、数発槍を投げ込む中、1発剣を混ぜる事しか出来ないだろう。
 そして剣を投げる時は必ず剛力体への変化を行う。瞳の色でそのタイミングはスカル側にも把握できる。
 故に、ガドルに視線を一切そらさなければ対応は可能だ。
 剣を投擲した時だけ全力回避、槍の時は全て弾き落とす様にすれば対応が出来る。

 故にアクセルを再び加速させスカルはガドルへの牽制を続ける。
 跳んでくる槍をアクセルブレードで弾きつつ、スカルマグナムでの砲撃、
 無論、ガドルは砲撃をかわしながら槍、時には剣を投擲してくる。
 しかしスカルとてそれを喰らうつもりはない。槍は弾き、剣の方はアクセルの足裁きもあり確実に回避していく。

 それでも流石に消耗は無視できない。当然だ、幾ら弾く事が出来るとはいえもう何十発の槍を弾き飛ばしている。
 その上、移動に専念していたアクセルにかかる負担も大きい。
 これ以上の長期戦は難しい所だ。


「(もうそろそろ頃合いね……)」


 故にスカルはこのタイミングだと判断した。
 時間稼ぎを中止し、早々にガドルの元から撤収行動に出ることにした。

 後は離脱に入るタイミングだ。ガドルの方に視線を向けながらそのタイミングを計る。
 ガドルは次々に槍を生成しては投擲を続けていく、1発、2発、3発――
 そして青色だった瞳が紫へと変化、


「来る!」


 このタイミングだ、剣は槍と違い回避するしか無い。
 だがその一瞬だけはスピードが落ちる。それこそが最大のタイミングだ。
 スカルの意を汲んだアクセルが加速する。同時にスカルもスカルのメモリをスカルマグナムへと装填する。
 一方のガドルも生成した剣を投擲しすぐさま瞳の色を青色に戻し剛力体から俊敏体に戻る。

 だが既に回避行動は完了している、跳んできた槍は全て弾く、あるいは回避済み、剣に関してもこのペースならば十分に回避が可能。



 故に、飛んでくる剣は容易に回避出来、スカルの真横を掠めていった――



――Skull Maximum Drive――



 後はこのタイミングでスカルマグナムの最大出力によるエネルギー弾を――



 その瞬間、スカルの後方で爆ぜる音が響いて来た――

259死神の祭典(第2楽章 戦場にて) ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 01:09:20 ID:t0EDf64.0



「「!?」」



 予想外の展開に驚きを隠せない2人、そして周囲を見回し気が付いた。少し離れた先に川が流れているのを――



「まさか……」



 前方には不敵な表情を浮かべるガドル――



「翻弄されていたのは……奴では無く……私達の方だった……!?」



 ゲームを制する上で必要なのは何か?
 単純に力だけで制する事が出来るのか?
 答えはNoだ。
 無策で挑んで勝てる程、ゲームは甘い物では無い。
 それはグロンギにおける儀式ともいうべきゲーム、通称ゲゲルにおいても同じ事が言える。
 ゲゲルのルールは簡単に言えば『一定時間の間に定められた人数のリントを殺す』という事だ。
 だが、ゲームというからには当然、絶対にクリア出来るというものではない。
 グロンギにおいては神聖なもの、それ相応の難易度を誇っているのだ。
 それをクリア出来た者だけが上の位を得る事が出来るわけなのだ。
 クリアするには単純なパワーだけでは足りない。
 そう、一定時間の間に相応のリントを殺すのは簡単では無い。
 逃げるあるいは隠れ潜むリントを迅速に捉え殺す、それは一見簡単な様で難しい。
 時間が無尽蔵にあるならばともかく時間が限られている以上、効率的に行わなければならない。
 それをクリアするのは何か? 作戦を組み立てる知略に他ならない。
 といっても難しい事では無い。要するに、数手先を読んだ行動を取るというだけの話だ。
 それを成し遂げられる者こそがゲームを制するという事だ。

 ガドルの目的は自身を出し抜いた4人のリントの戦士を確実に仕留める事だ。
 仮に眼前のスカルとアクセル、2人の戦士を打ち破った後、残る2人を仕留めなければ勝利とは言えない。
 そこで、スカルとアクセルに仕掛けつつ残る2人、つまり暁と黒岩を仕留める為の布石を打っていたのだ。

 ここまで来ればおわかりだろう。
 ガドルはガドルロッド及びガドルソードの投擲でアクセルとスカルに仕掛けながら、2人を残り2人のいる方向へと誘導していたのだ。
 ガドルの攻撃は熾烈としか言い様が無い。回避するだけで手一杯だ。
 それ故に、知らず知らずの内にアクセルとスカルは離脱している筈の2人のいる所に向かってしまっていたのだ。

 つまり、完全にガドルに出し抜かれたという形になったということだ。

 そして最後に投擲したガドルソード、それはスカルを狙ってのものではない。
 スカルがガドルソードを弾くのでは無く回避する事は読んでいる。
 故に最初からガドルソードはスカルでは無く、その背後にいる2人を狙ってのものだったのだ。


「ぐっ……!」


 知らず知らずの内に引き離す所か追い詰められていた事実、仮面の下で苦々しい表情を浮かべる凪、
 だが、止まっているわけにはいかない。既にマキシマムドライブは発動している。
 スカルマグナムから最大出力のエネルギー弾がガドルのいる方向へと――

260死神の祭典(第2楽章 戦場にて) ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 01:09:48 ID:t0EDf64.0





Paragraph.06 奥義─ファイヤーワークス─


 川沿いには黒岩だけが苦々しい表情を浮かべて立っていた。そして、


「黒岩省吾!」


 アクセルに騎乗したスカルが黒岩の近くに戻ってきた。


「石堀、それに西条……奴はどうした?」


 黒岩が見た限り、大きな土煙が上がっているのが見えた。恐らくスカルの必殺技が炸裂したのだろう。となればガドルは――


「いえ、奴は健在よ……」


 そう、スカルのマキシマムドライブは最初からガドルを狙ってのものではない。ガドルのすぐ足下を狙ってのものだ。
 その狙いはマキシマムドライブのエネルギーで地面を炸裂させて大量の土煙を展開させるというもの。
 それを目くらましにして一気に離脱し、黒岩達のいる所に戻ってきたのだ。


「それで、涼村の方はどこ行ったんだ? まさか……」


 ガドルの剣の直撃を受けて……という最悪のケースを想定する。
 だが、それにしては死体が見当たらないし、何より爆発の謎が残っている。


「ふん、奴は……」





 時間は少々遡る。
 暁と黒岩は凪達の指示通り川沿いを急速に進んでいた。しかし、


「おい黒岩……なんかアレ近づいてないか?」


 後方で響く戦いの音が大きくなっている。どうやらガドル達は戦いながら暁達に接近している様だ。


「どうやら西条がしくじったらしいな」
「おいおい、散々偉そうに言っておきながら口だけじゃないか、何をやっているんだ」
「軽口を叩いている場合か、西条がしくじったという事は俺達に奴の矛先が向けられるという事だぞ」
「冗談じゃない、あんなバケモノとどうやって戦えっていうの?」
「だから俺達は早急に待避しろと言われたんだろうが! とにかく、その時に備え用意だけはしておけ」
「はいはい」


 そう言いながら暁は先程凪から受け取ったデイパックの中を探る。

 さて、ここでわかりやすく、一行の所持品について今一度整理しておこう。

 まず、凪以外の3人は共に1つのデイパックを持って行動を続けていた。
 一方の凪は自身のデイパックの他に途中で2つのデイパックを確保している。
 凪自身は知る由も無いが、その所持者は照井竜と相羽ミユキのものだ。
 そして先程、凪と石堀はガドルから彼の所持品を全て奪取している。
 ちなみにガドルはこの時3つのデイパックを所持していた。
 ガドルは一度自身のデイパックをある参加者に奪われているが、その参加者との再戦の時に結果的に奪還に成功し、更にユーノ・スクライア及びフェイト・テスタロッサのデイパックを奪取している。
 それらを凪及び石堀が確保したという事だ。

 では、ここからが本題だ。先程説明した通りガドルの所持品を凪と石堀が確保したわけだが、一体どちらがどれだけ所持する事になったのだろうか?
 まず、先に明言しておきたいのはガドルは自身のデイパックを奪還したとき、一度は奪取した相手に支給した銃と火炎杖を確保した。
 こちらの道具は共にフェイトのデイパックに入れておいた(ちなみに入れた理由はフェイトに支給されていた拡声器を確認した時に、何気なくである)
 話を戻そう、結論から先に述べればその時点で所持しているデイパックの多い凪が1つ、石堀が2つ所持する事となった。
 具体的なデイパックの所持者は凪が所持したのはフェイトの、石堀が所持したのはガドル、そしてユーノのデイパックである。

261死神の祭典(第2楽章 戦場にて) ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 01:10:12 ID:t0EDf64.0

 さて、凪が所持しているデイパック、つまり凪本人、照井、ミユキ、そしてフェイトのデイパックの内、1つを暁に譲渡する事となったが誰のデイパックを譲渡したのだろうか?
 それはミユキのデイパックである。暁は運良く可愛い女の子の所持品を確保したのである。但し、暁がそれを知る事は決して無い。もう一度言おう、決して無い。
 ここで1つ疑問が浮かぶだろう。
 ミユキはテッククリスタルを持っている。それが入っているならば見る人が見ればそれがミユキの所持品だと推測が出来る筈だ。では、何故それが無いと断言できるのか?
 簡単な事だ、ミユキのテッククリスタルはミユキのデイパックには入れていなかったという事だ。
 凪がデイパックを発見した時、クリスタルはデイパックの近くに落ちていた。この時点でミユキのデイパックに入れる事も出来た。
 だが、凪は他にも照井のデイパックも確保していた。そして支給品を整理していき、最終的に凪自身の懐に確保しておいたのだ。
 その後の動向で、凪自身別のデイパックに入れた可能性もあるだろう、どのデイパックかはさておきどちらにしてもミユキのデイパックには入っていない事だけは明言しておこう。

 そんな中、戦いの音は更に近づいていく。


「おいおい、これまずいんじゃ……」


 そう何時もの様に軽い調子で口にしていると。


「来るぞ、暁!!」


 そう叫ぶ黒岩の声、その時だった。


 暁の喉元目がけて大剣が飛んでくるのを――


「ぐっ……」


 今からブラックアウトしても間に合わない。恐らく暁が燦然する時間も無いだろう。
 そしてそれは暁自身も理解している。
 故に暁は握りしめた物をそのまま放り投げた――



 発動すべきは究極の力――



 元祖無差別格闘流究極の必殺奥義――



 その名を――





 G.S.とS.T.はR.S.にその時の事を語る――


『あの日もわしらは、いつもの修行をしておった』
『…なんの修行だ』


 転がる岩から落ちないように転がし続けていた時の事だった。
 だが前方に、


『恐ろしい罠が…われらの行く手に待ち受けていた!』


『ぶらじゃー!!』


 そう言って、岩から両名の師が降りていった。だが、


『危ない! このままでお師匠様は岩の下敷に…』


『チャンスだ天道くん!』
『このまま一気に亡き者にしてくれよう!!』


 そう、両名は師の身を案じた。その時だった――


『八宝大華輪!』


『気付いた時…われらの乗っていた大岩は粉々に砕け…八宝斉先生は…』


『わ…わしのぶらじゃーが…二度とこの悲劇をくり返さぬ為に、八宝大華輪は禁じ手とする!』


『八宝大華輪の奥義をしるした秘伝書はこうして、封印されたのだが…』


 無論、その封印は解かれその師は再び使用している。
 そして、その究極奥義が今回の殺し合いの参加者にも支給されたのである。

 では、それはいかなるものなのか?

 それは――

262死神の祭典(第2楽章 戦場にて) ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 01:10:41 ID:t0EDf64.0





「爆弾……いや、花火か?」



 暁のデイパックから取り出されたのは花火の様なもの。

 そう、それこそが八宝大華輪の正体だったのだ。すぐさま暁は付属していたマッチを擦り導火線に火を着け放りなげた。
 そして抱きかかえるように防御姿勢を取る。
 そう、投げ出された八宝大華輪はすぐ近くまで来ていた大剣の近くで――爆ぜた。
 さながらそれは岩を砕く程の――
 その衝撃により大剣のバランスは崩れそのまま地面へと激突した。
 結果として暁は自らの身を守ったのである。だが、

 そう、近く距離で炸裂した八宝大華輪の衝撃は暁にもかかる。これにより特別ダメージを受けたという事はないが、それでも暁のバランスを崩すのには十分だ。
 更に言えば今いる場所は流れの強い川の岸、下手をすれば足を踏み外して落ちかねない。


「わっ、おっ、とっ……」


 暁はバランスを取りながら八宝大華輪の入っているデイパックにマッチを仕舞い、更にちゃんと口を閉めようとする。
 そして、もう1つの暁自身のデイパックの口を閉めようとしたその時、
 暁のバランスが崩れ転倒しそうになり――



 そしてそのまま川へと落ちていった――



「暁ぁぁぁぁぁ!!」



 黒岩の叫びもむなしく、川中へと暁は消えていった。川の流れは強い、そのまま流されて言っただろう。





「というわけだ、飛んできた剣を花火でかわしたのは良いがそのまま川に落ちていった」
「あのバカ……」


 スカルは正直頭を抱えていた。
 実の所、八宝大華輪については支給されたミユキや一緒にそれを確認した照井も疑問を感じていた。
 『究極奥義なのに花火?』というある意味謎の支給品だからだ。それの何処が格闘の技なのか関係者に問いただしたい所だ。
 そして、後にそれを確認した凪も理解に苦しんでいた。格闘技の技というだけに殺傷能力は普通の爆弾以下だという推測は出来たがあまりにも胡散臭いそれを使う気にはならなかった。
 ただ、この顛末を聞く限り、暁にそれを渡した事は正しかったかどうか悩ましい所だ。実際、それがなければ暁は剣を回避出来なかった可能性が高い。
 しかしその結果川に落ちては何にもならないだろう。


「それで、涼村はどうします?」
「彼を探している余裕は無いわ。溺死さえしなければ、一人でも市街地に迎える筈よ。それよりも今は……黒岩省吾」
「いいだろう」


 スカルの意を察した黒岩は、


「ブラックアウト」


『ブラックアウトとは――黒岩省吾がダークパワーによって暗黒騎士ガウザーに変身する現象である』


 すぐさま、ガウザーへの変身を完了した。


「恐らく奴はすぐに私達の位置を捕捉して追撃に出る、それよりも速く離脱する」


 結果的に暁がいなくなった事により凪達のグループは3人となった。そしてバイク状態となったアクセルに対し2人までなら一応騎乗は可能、
 つまりスカルとガウザーが2人乗りで騎乗し一気に走り抜けるというわけだ。

 そして再びアクセルはバイク形態へと変形し、スカル及びガウザーが騎乗し急速に走り出した――

263死神の祭典(第3楽章 超光の祝福) ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 01:11:58 ID:t0EDf64.0





Paragraph.07 大戦─バドライド・ウォー─


 その後の過程を簡単に説明しておこう。
 ガドルは視界が晴れる前に感覚に優れた射撃体へと変化し森の中を駆けるスカル達の位置を捕捉。だが、狙い撃とうとした時には既に3人は移動を開始していた。
 無論、ガドルはそのまま追撃を開始、先程と同様にガドルロッドとガドルソードの投擲を駆使し3人を追い詰めていく。
 結論から述べれば、ガドルを振り切る事は不可能だった。
 先程よりも消耗した状態に加え、今度はガウザーをも乗せた2人乗りの状態なのだ。スピードも落ちる故に振り切れる道理は全く無い。


 この状況に対し、スカルこと凪はガドルを迎え討つ事を決意した。
 何かしらの方法でガドルを無力化しこの場を切り抜ける。
 無論、それについてはアクセルこと石堀、そしてガウザーこと黒岩も了承した。



 そして――場所にしてG-5とH-5の境界にて、



「……ようやくその気になったか、リントの変身戦士達」


 ガドルの前方に、3人の戦士が待ち構えていた。
 骸骨の記憶を宿した戦士仮面ライダースカル、
 加速の記憶を宿した戦士仮面ライダーアクセル、
 ダークザイドの戦士暗黒騎士ガウザー、


「ふん……リントというのは人間の事か?」


 そう問いかけるガウザー、それに対し無言で頷くガドルである。


「ここは貴様達の世界とは違う、人間共の世界だ。貴様達が人間界を脅かすというのならば人間界のルールに従い侵略しろ」
「この怪物にそんな言葉通じるわけがないでしょう!!」


 ガウザーの的外れの言葉にツッコミをいれる凪であった。
 というか人間界のルールの従い侵略ってどうやるというのだ? まさか政治家になって総理大臣にでもなるというのか(注.実際、それに近い事をやっています)


「その骸骨の戦士、貴様が俺を撃った女か?」


 スカルの声を聞き、ガドルは自分を撃った女がスカルに変身しているのを確認した。
 ちなみにいえば、戦っている時点で先程のスカルとは別の人間が変身している事に薄々気付いており、その立ち回り等から自分を撃った女の戦士ではないかという推測は立っていた。故に、これは只の確認作業に他ならない。


「それがどうかしたのかしら?」
「ならば、貴様は俺が倒そう」
「……私からも1つだけ質問させてもらうわ。お前はクウガと同じ力を持っている……クウガとは一体何だ?」
「貴様……クウガ……ゴダイの仲間か?」
「一時的に行動を共にしていた。それで、クウガとは?」
「クウガ……リントを守ろうとする戦士、そして俺は一度は奴に敗れた……故に出来るならばこの手で奴を倒したかった……」


 ガドルは本当に無念そうに口にする。
 スカルこと凪は何故、クウガの事をガドルに問いかけたのだろう?
 それは五代と行動を共にした時に見た、一瞬見えた漆黒のクウガの事が頭から離れなかったからだろう。
 それ故にクウガの事を同一の力を持つガドルに聞いたのである。
 ちなみに――自身の力について概ね説明した五代ではあったが、漆黒のクウガこと凄まじき戦士の事については一切語っていない。
 五代にとって、それは決してなってはならない姿、忌むべき姿、それ故余計な心配事をさせない為に語らなかったのである。


「そう、彼の力が失われず誰かに受け継がれている事もあるかもしれないけれど……」


 そうスカルは呟いた。銀色の巨人ことウルトラマンの光が受け継がれる様に、クウガの力も同じ事が言えるのではという意味合いの言葉だ。


「? どういう意味だ?」


 だが、その言葉の意味をガドルは理解出来ないでいる。


「貴方が知る必要はないわ」


 しかしそれに答えるつもりは無い。ガドルが抹殺すべき相手である事に変わりは無いのだ、故にこれ以上奴に対し語る言葉など無い。


「俺からも一つ聞きたい事がある。白いクワガタの姿をした貴様に似た奴に心当たりはあるか?」


 スカルに代わり今度はガウザーが問いかける。


「………………ダグバのことか?」
「やはりか……」
「貴様はそいつの仲間なのか?」
「……いや、ダグバ、奴もまたこのゲゲルの先で俺が倒す相手……言っておくがダグバは俺よりも強い。それにしても……貴様達、ダグバと戦って生き延びたのか?」

264死神の祭典(第3楽章 超光の祝福) ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 01:14:01 ID:t0EDf64.0


 そうガドルが逆に問いかけてきた。
 ダグバの事を聞くという事は、十中八九ダグバと戦った事になる。そしてこの場にいるという事はダグバとの戦いから生還した事になる。
 それ故に、興味をもったからこその問いかけなのだ。


「いや、そのダグバと戦ったのはここにはいないもう1人の……バカだ」


 それが先の戦いでスカルに変身したが真面目に戦おうとしなかった暁の事なのはガドルも理解出来る。いつの間にか奴だけは撤退に成功したのだろう。


「ほう、巫山戯たリントだと思ったがダグバとの戦いから生き延びたとはな……俺から逃げた事も含め、是非とも獲物として仕留めておきたいところだな」


 この言葉からガドルは多少なりとも暁に興味を持ったのだろう。


「つまり、貴様が新たなシャンゼリオンのライバルというわけか……だが!」


 ガウザーがガドルへを指を指し、


「知っているか!? シャンゼリオンにとっての宿命のライバルたる資格を持つ者など存在しない!
 だが、それでもなお、宿命のライバル足る者がいるならばそれは俺だ、奴とのケリは俺が着ける!!」
「いいだろう」


 かくしてそれを最後に問答は終わる。
 この僅かな問答は体勢を整える時間稼ぎ、特にバイク形態での移動を強いられ続けたアクセルのそれを整えるためのものだ。
 この時間によりアクセルも臨戦態勢を整える事が出来た。



 戦いが始まる――その時だった。



 突如、突風が巻き起こる――そして、緑色の怪人が舞い降りてきた。



「「「「!?!?!?!?」」」」



 位置関係だけでいえば、3人と緑色の怪人の間にガドルが立っているという状況だ。



「副隊長……アレは?」
「味方とは限らないわ、警戒を怠らないで」
「最悪、両方を倒す事を視野に入れろという事だな」


 無論、緑色の怪人が味方だとおめでたいことを言う3人ではない。


「ほう、新手のリントか……いいだろう」


 ガドルとしても向かってくるならば望む所である。


 最早お気づきだと思うが、緑色の怪人の正体はサイクロン・ドーパントである。
 当然それは溝呂木が所持しているT2ガイアメモリのサイクロンのメモリを使って変身した姿だ。
 ダークメフィストとバイオレンスのメモリを使って変身したバイオレンス・ドーパントの姿は凪に正体が割れている為、凪にとって未知の存在であるサイクロン・ドーパントの姿を使ったというわけだ。
 溝呂木は遠くからずっと凪の戦いの様子を観察していた。
 凪自身が自力で切り抜けられるならばまだよい、だが切り抜けられる様子も無く、そして今まさに勝ち目の無い戦いに挑もうとする状況を見て、遂に直接介入を決めたのである。
 とはいえ、サイクロン号や9つもあるデイパック全てを持ったまま現れるのは流石に目立ちすぎる。その為、自身のデイパックと2つのメモリ、そして手袋とダークエボルバー以外の道具は全て纏めて少し離れた所に置いてきた。
 最優先で果たすべき目的は凪をここで死なせない事、それは最低限果たさなければならない。
 だが、それさえ果たせるならば後は何をやっても問題は無い。この状況を大いに楽しもうではないか。

265死神の祭典(第3楽章 超光の祝福) ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 01:15:19 ID:t0EDf64.0



 かくして森に5人の参加者が集結した――



「(緑色の怪人……あの怪物の仲間では無い事は確実だけれど……この状況で現れた事が気に掛かる……まるで狙い澄ましたかの様に……まさか……)」



 脳裏に宿敵の影が浮かび上がるスカルこと凪、



「(状況は非常に厳しい……凪の生存どころか俺すらも危ないな……何とかして切り抜けられるか?)」



 従順な部下を演じきりながらも、己の目的の為に見えざる牙を静かに研ぎ澄ます石堀、



「(確かに目の前の奴を倒せる気がするわけではない……だが、俺が果たすべき野望の為に立ち止まるつもりはない……そして、シャンゼリオン、涼村暁との決着を着けるのは俺だ!)」



 野望の為、そしては宿敵との決着の為、強敵に挑もうとするガウザーこと黒岩、



「(ビガラダヂ ゼンギン ボソグ !!(貴様達、全員殺す!!))」



 ゲゲルのクリアとその先に待つ強敵の為にゲゲルに挑もうとするガドル、



「(さぁ、始めるか……祭りを……死神のな!!)」



 そして、全てを牛耳る神になったかの様に全てを弄ぼうとする溝呂木、



 丁度時刻は14時を過ぎた所、



 それぞれの思惑が絡み合う戦いが今幕を開ける――



 その運命を示すカードは、最初に溝呂木が引いた『死神』のカード、



 但し



 逆位置の――



 タロットの知識に乏しい者もいるだろうから簡単に説明しておこう。
 タロットの占いの時には引いたカードだけではなく、その向きも重要な意味を持っている。
 上下が正しければ正位置、逆さまになっていれば逆位置という事だ。
 とはいえ、ここで重要なのは逆位置になったカードは基本的に逆の意味を持つ、それだけ理解していただければ十分だ。

 そう、溝呂木が望んで引いた死神のカードではあったが、それが逆位置だったという事は――
 死神が持つ意味はおおよそ読者諸兄のイメージ通りだろう、その逆の意味も自ずと見えてくるだろう。
 溝呂木は死神が引けた事のみを重視しその事に気付いていない。当然、その意味もだ。

 それは溝呂木の行く末に大きな影響を及ぼすものなのだろうか?

 無論、占いなどというのはどうとでも取れるものでもある。それがどういう意味なのかはそれこそ解釈次第で幾らでも変わる。
 また、その占いが誰に対してのものかによってまた変わっている。
 その『死神』は本当に溝呂木に対してのものなのか、他の4人の内の誰か、あるいはこの戦いそのものに対してかも知れない――

 確実に言える事は只1つ、運命のルーレットは既に回り始めている。後はポケットに入る瞬間を待つだけである。

 赤か、黒か、はたまた緑か――


【1日目/午後】
【G-5とH-5の境界/森】
※G-5の何処かに以下のものが放置されています。
 支給品一式×8(スバル、ティアナ、井坂(食料残2/3)、アクマロ、流ノ介、なのは、本郷、まどか)、サイクロン号@仮面ライダーSPIRITS、スモークグレネード@現実×2、トライアクセラー@仮面ライダークウガ、
 東せつなのタロットカード@フレッシュプリキュア!、ルビスの魔剣@牙狼、鷹麟の矢@牙狼、京水のムチ@仮面ライダーW、首輪×7(シャンプー、ゴオマ、まどか、なのは、流ノ介、本郷、ノーザ)

266死神の祭典(第3楽章 超光の祝福) ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 01:16:04 ID:t0EDf64.0


【西条凪@ウルトラマンネクサス】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(小)、強い苛立ち、仮面ライダースカルに変身中
[装備]:コルトパイソン+執行実包(2/6) 、スカルメモリ&ロストドライバー@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式×3(凪、照井、フェイト)、ガイアメモリ説明書、.357マグナム弾(執行実包×18、神経断裂弾@仮面ライダークウガ×4)、
    テッククリスタル(レイピア)@宇宙の騎士テッカマンブレード、イングラムM10@現実?、火炎杖@らんま1/2、ランダム支給品1〜4(照井1〜3、フェイト0〜1)
[思考]
基本:人に害を成す人外の存在を全滅させる。
0:ガドル及び緑色の怪人(サイクロン・ドーパント)に対処。
1:黒岩省吾をどうするべきか(その思いは更に強力に)、涼村暁の事は……。
2:状況に応じて、仮面ライダースカルに変身して戦う。
3:孤門と合流する。
4:相手が人間であろうと向かってくる相手には容赦しない。
5:黒岩省吾の事を危険な存在と判断したら殺す。
6:溝呂木眞也、暗黒騎士キバ、ゴ・ガドル・バもこの手でいつか殺す。
[備考]
※参戦時期はEpisode.31の後で、Episode.32の前。
※さやかは完全に死んでいて、助けることはできないと思っています。
※まどか、マミは溝呂木に殺害された可能性があると思っています。
※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを知りました。
※森林でのガドルの放送を聞きました。


【石堀光彦@ウルトラマンネクサス】
[状態]:疲労(小)、仮面ライダーアクセルに変身中
[装備]:Kar98k(korrosion弾7/8)@仮面ライダーSPIRITS、アクセルドライバー@仮面ライダーW、ガイアメモリ(アクセル、トライアル)@仮面ライダーW、エンジンブレード+エンジンメモリ@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式×3(石堀、ガドル、ユーノ)、メモレイサー@ウルトラマンネクサス、110のシャンプー@らんま1/2、不明支給品2〜5(ガドル1〜3(グリーフシードはない)、ユーノ1〜2)
[思考]
基本:今は「石堀光彦」として行動する。
0:この場を切り抜ける。何とかして凪の安全を確保したいが……。
1:周囲を利用し、加頭を倒し元の世界に戻る。
2:今、凪に死なれると計画が狂う……。
3:凪と黒岩と共に森を通って市街地に向かう(ただし爆発が起こったエリアや禁止エリアを避ける)。
4:孤門や、つぼみの仲間を捜す。
5:都合の悪い記憶はメモレイサーで消去する
6:加頭の「願いを叶える」という言葉が信用できるとわかった場合は……。
[備考]
※参戦時期は姫矢編の後半ごろ。
※今の彼にダークザギへの変身能力があるかは不明です(原作ではネクサスの光を変換する必要があります)。
※ハトプリ勢、およびフレプリ勢についてプリキュア関連の秘密も含めて聞きました。
※良牙が発した気柱を目撃しています。
※つぼみからプリキュア、砂漠の使徒、サラマンダー男爵について聞きました。
※殺し合いの技術提供にTLTが関わっている可能性を考えています。
※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを知りました。
※森林でのガドルの放送を聞きました。


【黒岩省吾@超光戦士シャンゼリオン】
[状態]:健康、暗黒騎士ガウザーに変身中
[装備]:デリンジャー(2/2)
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0〜2
[思考]
基本:周囲を利用して加頭を倒す。
0:現状への対処、シャンゼリオン(暁)のライバルは俺だ。
1:あくまで東京都知事として紳士的に行動する。
2:涼村暁との決着をつける ……つもり、なのだが……。
3:人間でもダークザイドでもない存在を警戒。
4:元の世界に帰って地盤を固めたら、ラビリンスやブラックホールの力を手に入れる。
5:桃園ラブに関しては、再び自分の前に現れるのならまた利用する。
[備考]
※参戦時期は東京都知事になってから東京国皇帝となるまでのどこか。
※NEVER、砂漠の使徒、テッカマンはダークザイドと同等又はそれ以上の生命力の持主と推測しています。(ラブ達の戦いを見て確信を深めました)
※ラブからプリキュアやラビリンス、ブラックホール、魔法少女や魔女などについて話を聞きました 。
※暁は違う時間から連れて来られたことを知りました。
※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを知りました。
※森林でのガドルの放送を聞きました。

267死神の祭典(第3楽章 超光の祝福) ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 01:16:25 ID:t0EDf64.0


【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】
[状態]:疲労(中)、全身にダメージ(中)(回復中)、右脇に斬傷(回復中) 、肩・胸・顔面に神経断裂弾を受けたダメージ(回復中)、格闘体に変身中
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:ダグバを倒し殺し合いに優勝する。
1:凪を殺す。ほかの三人(石堀、黒岩、溝呂木)もついでに殺す。
2:強者との戦いで自分の力を高める。
3:クウガを継ぐ者……?
※死亡後からの参戦です。
※フォトンランサーファランクスシフトにより大量の電撃を受けた事で身体がある程度強化されています。
※フォトンランサーファランクスシフトをもう一度受けたので、身体に何らかの変化が起こっている可能性があります。(実際にどうなっているかは、後続の書き手さんにお任せします)
※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。


【溝呂木眞也@ウルトラマンネクサス】
[状態]:健康、サイクロン・ドーパントに変身中。
[装備]:ダークエボルバー@ウルトラマンネクサス、T2ガイアメモリ(バイオレンス)@仮面ライダーW、T2ガイアメモリ(サイクロン)@仮面ライダーW、城茂の手袋(着用済)@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜2個(確認済)、拡声器、双眼鏡、
[思考]
基本:より高きもの、より強きもの、より完璧なるものに至り、世界を思うままに操る。
0:この状況に対し、凪を死なせない上で最大限に楽しむ。
1:ウルトラマンの力を奪う(姫矢が死んだので、まずは凪や孤門をあたる)。
2:その他にも利用できる力があれば何でも手に入れる。
3:弱い人間を操り人形にして正義の味方と戦わせる。
4:西条凪を仲間にする。
5:冴島鋼牙、村雨良、響良牙達は今は泳がせておく。こちらから接触するつもりはない。
[備考]
※参戦時期は姫矢編後半、Episode.23以前。
※さやかをファウストにできたのはあくまで、彼女が「魔法少女」であったためです。本来、死者の蘇生に該当するため、ロワ内で死亡した参加者をファウスト化させることはできません。
※また、複数の参加者にファウスト化を施すことはできません。少なくともさやかが生存している間は、別の参加者に対して闇化能力を発動することは不可能です。
※ファウストとなった人間をファウスト化及び洗脳状態にできるのは推定1〜2エリア以内に対象がいる場合のみです。
※ダークファウストが一度に一体しか生み出せないことを、何となく把握しました。
※スバル・ナカジマから全ての情報を聞き出しました。
※第二回放送のボーナスなぞなぞは、二番目の答えしか解いてません(興味が無いため)。
※森林でのガドルの放送を聞きました。

268死神の祭典(第3楽章 超光の祝福) ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 01:16:56 ID:t0EDf64.0





Paragraph.08 祝福─マギカ─


「はぁ……はぁ……」


 ずぶ濡れになりながら森を進む男がいた。暁である。
 川に落ちた暁ではあったが別段溺れる事も無く、大分流されたものの何とか岸に辿り着く事ができた。


「いやぁ、いい男は辛いね♪ うん♪」


 とはいえ、落ちた側とは逆側なので結果的に凪達と離れた事になる。


「それにしても凪の奴大丈夫か……あのカブトムシ野郎や黒岩に何かされているんじゃ……石堀の奴はなんか頼りなさそうだしなぁ……」


 色々キツイ事言われたものの、凪が綺麗でいい女である事に違いは無い。それゆえに彼女の身を案じる暁である。
 とはいえ、無事ならば市街地に行けば合流出来る筈なので今は移動を優先すべきだろう。
 先程までは性格のキツイ凪、どこかアテにしてよいのか微妙な石堀、何か企んでいそうな黒岩が近くにいた為、思うように調子が出なかったが、一人となった事で大分軽快に足が進む。


 そして気が付けば森の出口に辿り着いた。地図で確認した所、I-3に辿り着いた模様。


「よーし、ようやく森を抜けた。さーて後は……」


 と、市街地へ向かう道を捜すべく周囲を見回す。そんな中、


「ん? なんだ?」


 ふと近くに不自然に土が盛られているのを見つけた。
 この状況ならばある程度警戒するだろうが。


「お宝お宝〜♪」


 この男にそんな事を期待するだけ無駄だろう。


「金銀財宝パラダイス〜♪」


 そして盛られた土を掘り起こす。


 そうしたら確かに金色のものが出てきた。
 そう、金髪の少女の遺体が――


「この女の子は……」


 何時も脳天気な暁も少女の遺体を掘り起こした事にある程度のショックを受ける。



 流石にテンションの落ちた暁は地面に座り暫しぼんやりと身体を休ませる。
 流石に死体を見つけた事が堪えているのだろう。見ず知らずの少女とは言え可愛い女の子の死体を見て良い気はしない。
 恐らく後5年から10年ぐらいしたら自分とも釣り合っていただろう。その時がもう来ない事が寂しく思う。

 そんな中、ふと懐からあるものを取り出す。

 それは暁と共に行動をしていたほむらの残した首輪、正確にはソウルジェムに巻かれていた輪である。言うなればジェム輪とでも呼ぼうか。
 先程川に落ちた原因、黒岩は八宝大華輪の爆発による衝撃でバランスを崩して落ちたと判断していた。
 半分は正解、もう半分は不正解だ。
 というのも、バランスを崩したもののそれが原因で川に落ちたわけではない。
 実は、バランスを崩した際に少し開いていた暁のデイパックからあるものが飛び出したのだ。
 そう、ジェム輪だ。それを見た暁の身体は思考よりも先に動いていた。そのまま川へと飛び出して行ったのだ。
 幸いジェム輪自体はすぐに掴む事が出来たので紛失する事はなかった。しかし川の流れは強くそのまま流されていったという事だ。
 以後の事は先程説明した通りである。


「なぁほむら……あの子……巴マミだったか……あの子もキュウべぇに騙された魔法少女なのか……」


 そう、暁は自分が掘り起こした遺体の少女がマミだという事に気付いたのだ。
 気付いた理由は2つ。掘り起こしたマミの遺体に首輪が無かった事、
 今更思い返した事だが、ほむらにも首輪が無かった様な気がする。ほむらのソウルジェムを暁自身が砕いた事で彼女にトドメを刺してしまった事から、ジェム輪が首輪の代わりをしていた事は推測できる。
 つまり、首輪が無い=ジェム輪がある=魔法少女、その図式に暁は気が付いたのだ。
 だからこそ首輪の無い少女が魔法少女である事を看破したのだ。
 では、何故それがマミだとわかったのか?
 これは黒岩の証言が関係している。黒岩によると、図書館での戦いでテッカマンランスと戦いマミは命を落としたとの事だった。
 その近くで黒岩はマミと行動を共に為ていたラブと合流したという話なので、その場所の近くの場所にマミの遺体が埋葬されていても不思議は無い。そして丁度この場所は(それなりに距離は開いているが)大体合致する場所である。
 更に言えばその後、暁が黒岩達と合流したF-2の教会の場所を踏まえると、I-3は図書館から教会に移動するルートの大体中間にある。
 つまり、それだけの条件が揃った場所にマミの遺体が埋葬されていた可能性は高かったという事だ。加えて話に聞いていた外見の特徴も合致している。

269死神の祭典(第3楽章 超光の祝福) ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 01:18:15 ID:t0EDf64.0


「なぁ、ほむら……お前がマミちゃんに会わせてくれたのか……?」


 今にして思えば、川を流される事になったのはジェム輪が川に落ちそうになったからだ。
 そして川を流された先でマミの遺体を見つけたという事を踏まえれば、ジェム輪が川に落ちたからマミの遺体を見つけられた事になる。
 只の偶然とは思え無い、暁はそう感じていた。


 黒岩の話ではマミから見てほむらはキュウべぇを狙っていて何を考えているのかわからない信用の出来ない人という話だった(但し、これはラブからによるまた聞きによる情報で、マミはほむらと話をしてみるという事を言っていた)。
 また、凪がさやかから聞いた話ではほむらの所為でマミが死んだという話らしい。

 凪と黒岩は何故ほむらがそういった行動に出ていたのかわかっていない。そして当事者達が退場した今となっては部外者である2人がこれ以上推察する事もないだろう。
 しかし、暁はそのことについて推測が出来ていた。
 これは『バカ』と言われる暁にしては珍しい事だが、それでも腐り果てても探偵という職に就いているのだ。小学校の知識すらなくてもある程度感覚的には理解出来る。

 暁視点でわかっている事は、『悪徳業者であるキュウべぇが魔法少女を増やしている』、『魔法少女は凄い力が使えるが最終的にダークザイドの様な怪物になる』、『ほむらはある少女を何とかして助けようとしている』、この3点だ。
 ちなみに、凪や黒岩視点では『キュウべぇが魔法少女を増やしている』、『魔法少女は人間離れした力を使える』程度にしか把握していない。
 それ故に、凪や黒岩視点ではほむらは魔法少女の力を悪用し、マミやさやかを妨害している相手だと判断したのだろう。
 凪がさやかの言葉を殆ど鵜呑みにしているのは彼女の境遇に同情していたという理由からだ(彼女を抹殺する判断をしたのはこの地で早々に溝呂木に謀殺され操り人形にされたからなので彼女自身が原因というわけではない)。
 暁は気付いたのだ、ほむらがさやか達と敵対しキュウべぇを狙い続けたのはキュウべぇの魔の手によってある少女を魔法少女にさせない為だと。
 だが、狡猾なキュウべぇを盲信するさやかやマミ達はほむらの話を理解せずに敵対したと。
 では、ほむらは一体誰を守ろうとしたのだろうか?
 これも暁は看破していた。さやか達の知り合いで、唯一魔法少女では無い人物――鹿目まどかの事だ。

 そう、ほむらはまどかを魔法少女にさせない為に全てを敵に回してでも守ろうとしたのだろう。
 誰も味方してくれるものもおらず、守る対象のまどかですらも信じてもらえない。
 暁自身がぞんざいに扱われたのもきっとそれが原因で精神が荒んでしまったからだろう。


「まったく、本当に酷い悪徳業者だな、キュウべぇって奴は」


 半分ぐらいはその通りだろうが、残り半分ぐらいは暁の馬鹿さ加減が原因ではないかと思われるがその事を指摘できる者はここにはいない。


 何にせよ、ほむらの友達なんだから当然可愛い女の子なのは決まっている。
 可能ならばほむらの代わりに守る――そこまでは言わないが捜してやりたいとは思っていた。
 しかし、まどかの名前も最初の放送で呼ばれているのを暁は覚えている。だからもうそれは叶うことはない。


 いつになくしんみりとしてしまう――


 涼村暁は人格的には余りにもアレ過ぎる。だが、その一方、非常に寂しがり屋だ。
 誰かと一緒にいるときは決してそれを感じさせずバカな言動を繰り返す。
 しかし今の暁にはそんなバカな言動に反応してくれる奴はいない。

 今、足を止めているのは疲労からだけじゃない。むしろ、孤独の寂しさから動けなかったのだろう。


 だが――


『いつまでも、自分が今までいた世界のことに縛られては前に進めない。私は誰よりもそれを知ってるつもりよ。』


 禁止エリアで眠り込んでしまった時に夢でほむらに起こされた時の言葉を思い出す。


『この先にある、もっと幸せな未来を目指して……』


 その言葉で再び暁は立ち上がった。
 そう、こんな所で燻っていたってほむらも誰も喜ばない。
 それ以上に暁自身がそれを望んでいないのだ。
 出会ったもしくは出会うはずだった女の子達が死んで寂しいのは変わらない。
 しかし、いつまでもそれに縛られたって仕方ないのだ。
 そう元の世界には大量のガールフレンドの数々がいる。
 そしてこれから出会う筈の女の子達がいる。
 そんな彼女達の為にも足を止めているわけにはいかない。

 ふと何かを思い出し、名簿を確認する。

270死神の祭典(第3楽章 超光の祝福) ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 01:20:49 ID:t0EDf64.0


「確か、ほむら達の知り合いは5人……まだ1人無事な筈だよな……」


 その人物は佐倉杏子の事だ。
 黒岩からの情報(マミから話を聞いているラブからの情報)では『魔法少女の後輩』という悪いものではない。
 だが凪からの話では、情報提供元のさやか視点の情報なので『自分の為に人々を平然と犠牲にする悪の魔法少女』という悪い情報だった。
 それ故、凪達からの心象は決して良い者では無い。





 その時のやり取りを振り返ってみよう。


「ん? でもそれそんなに悪い事か?」


 暁からみればそんなに悪い様には見えなかった。自分の目的の為に魔法を使う事が悪いとは思ってはいないからだ。


「確かに貴様と似たタイプだろうな」


 そう黒岩が反応する中、凪が拳銃を暁に突きつける。


「副隊長!?」
「一応言っておくわ。確かに美樹さやかだけの証言で全てを断ずる事は出来ない。但し、もし佐倉杏子が本当に自身の悦楽の為に人々に危害を加えているというならば、私は彼女を抹殺する。そして、それを肯定する貴方もね、涼村暁」
「わかったわかった、だからその銃降ろしてって」
「余計な問題を起こすな……」
「貴方もよ、黒岩省吾」
「あの、副隊長……」
「心配しないで石堀隊員、状況が状況だから今ここで無駄弾を撃つつもりはないわ。とはいえ、佐倉杏子が警戒すべき人物には違いないわ。そのことは決して忘れないで」


 そう言って銃を下ろす、


「助かったぁ……」
「バカか、貴様は射殺する価値もないと言われたんだぞ」
「お前だってそうだろうが!」


 再び銃を向けられる。


「撃つわよ?」
「副隊長、無駄弾無駄弾!!」


 そんなやりとりがあったのだ。





 だが、凪達がどう言おうと暁としては特別な力を自分の好きな風に使う事が悪いとは思っていない。
 人々を平然と犠牲にする(by さやかによる穿った表現)という部分は流石にどうかと思うが(注.それを暁が偉そうに言える立場では無い)、手に入れた力をどう使おうがとやかく言われる筋合いは無い。


「……捜してみっか♪」


 何となく、彼女を捜してみようかと思った。襲われるかどうかなんて全く考えていない。
 カブトムシ野郎とかクワガタ野郎とかとの戦いなんてそれこそ石堀や黒岩に任せれば良い。
 そんな事より女の子を捜して声かける方がよっぽど有意義だ。
 そして最後には優勝してパラダイスを目指すのだ――


「そういえば……今何時だ……」


 と、ふと時計を見たら既に15時を過ぎていた。
 流石にカブトムシ野郎との戦いは終わっているだろうが、凪は無事なのだろうか? 黒岩は変な事していないだろうか? そして石堀の出番はあるのだろうか? そんな事を考えてしまう。
 合流しながらも途中で一文字隼人を助けに向かったラブの事も心配だ。名前が呼ばれていないという事は無事なのはわかるがやはり心配だ。
 更に冴島邸で情報交換した涼邑零にも正直死んで欲しくは無い、似た名字の人に死なれるのについては流石に思う所があるし何より生きて再会する約束もした。一文字の仲間らしい結城丈二も大丈夫なのだろうか?

 とはいえ、気にしていても仕方が無い。彼等の目的地は市街地だという事はわかっている。無事なら市街地に向かう道中、あるいは市街地で再会出来る筈だ。
 休息はもう十分だ、先程掘り起こしたマミの遺体を再び埋めようではないか。


「向こうでほむら達と仲良くしてろよ、マミちゃん♪」


 何気ない言葉と共に埋め終わる。
 そして再び歩き出す、目的地は市街地だ。そこに向かえば別れた同行者達や女の子達に会える筈だ。そして何より――


「確か名前は……」


 名簿で捜そうと思っている残る最後の魔法少女の名前は確認した。その名は、

271死神の祭典(第3楽章 超光の祝福) ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 01:22:13 ID:t0EDf64.0


「あんこちゃーん、待っててねー♪」


 輝かしい笑顔で口にし走り出す。



 もう既に暁の思考から抜け落ちているが、実は暁は凪がスカルに変身した時、ほむらが2度変身した時の事を思い返していた。
 確か最初に変身させた時はSの字は無く、次に自分を助けるために変身した時はSの文字があった。
 そして、Sの文字があった時のほうはそれが無かった時より強かったのを覚えている。
 この違いは一体なんだったのだろうか? それが何となく気になったのだ。
 だからこそ黒岩に自分が変身した時はどうだったか問いかけたのだ。



 結局の所、その理由はほむら自身の心境の変化だろう。
 いや、変化したと言うより変容してしまったものが元に戻ったというべきか――
 そう、魔法少女になった時の想いを思い出せたのだ。
 それが出来たのは暁の存在のお陰だ、出会いこそ最悪だったし、その後に起こった事も最悪、しまいには大事な思い出すら陵辱されそうになった。
 だが――そんな暁との出会いと、そんな彼とのやり取りがあったからこそ、思い出せたのだろう。
 それはきっと、普通ならばまず起こりえない事、そう――



 奇跡、あるいは魔法がそこにはあった――



 それはある意味祝福ともいえる。ほむらは暁に救われたのだろう――



 そしてそのほむらの生き方はどのような形であれ暁の中に残っている――



 そのお陰で救われた事もあった――



 暁もまたほむらに祝福されているのだろう――





『がんばって……』
「ん? ほむらの声? ……気のせいか、さーって、待っててね、俺のパラダイスー♪」


【涼村暁@超光戦士シャンゼリオン】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(中)
[装備]:シャンバイザー@超光戦士シャンゼリオン
[道具]:支給品一式×2(暁(ペットボトル一本消費)、ミユキ)、首輪(ほむら)、八宝大華輪×4@らんま1/2、ランダム支給品0〜2(ミユキ0〜2)、
[思考]
基本:願いを叶えるために優勝する…………………………(???)
0:市街地に向かう。
1:別れた人達(特に凪やラブといった女性陣)が心配、出来れば合流したい。黒岩? 変な事してないよな?
2:あんこちゃん(杏子)を捜してみる。
3:可愛い女の子を見つけたらまずはナンパ。
[備考]
※第2話「ノーテンキラキラ」途中(橘朱美と喧嘩になる前)からの参戦です。
 つまりまだ黒岩省吾とは面識がありません(リクシンキ、ホウジンキ、クウレツキのことも知らない)。
※ほむら経由で魔法少女の事についてある程度聞きました。知り合いの名前は聞いていませんでしたが、凪(さやか情報)及び黒岩(マミ情報)との情報交換したことで概ね把握しました。その為、ほむらが助けたかったのがまどかだという事を把握しています。
※黒岩とは未来で出会う可能性があると石堀より聞きました。
※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを知りました。
※森林でのガドルの放送を聞きました。


【支給品紹介】
八宝大華輪@らんま1/2
相羽ミユキに支給、
元祖無差別格闘流究極の必殺奥義として八宝斎が使用。
その正体は花火を炸裂させるというものである。
原作中では巨大な岩を粉砕する描写もある一方、普通に小さな花火を炸裂させる程度の時もありその威力にはばらつきがある。
作中では巨大サイズのものや、アニメでは八宝大カビンという火薬の代わりにカビを炸裂させるものが登場している。
ちなみに一応マッチで導火線に火を着けてから使用する描写が成されている。
今回は5個セット、マッチを付属した上で支給している。

272 ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 01:24:57 ID:t0EDf64.0
投下完了しました。
ちなみに、前の話の状態表と比較して基本支給品の所持数が変わっていますが、
本編中でも説明している通り、最初の杏子&フェイト戦にてガドルのデイパックは奪われ(つまり『自業自得』の時点で杏子の所持基本支給品は2つになっている)
その後、杏子達との再戦(『答えが、まったくわからない』)にて自身のデイパックの奪還、そしてフェイトとユーノのデイパックを確保している描写が存在しています(つまり、この話以降のガドルの所持基本支給品の数は3つになっている)。
また、溝呂木に関しても『解放』にてアクマロの所持していた5つ、そしてスバル、ティアナ、井坂のデイパックを確保した描写があります(つまり、この話以降の溝呂木の基本支給品の数は自身の持っていたのも含めて9つ)。
本編での描写に従い、今回の話の状態表等でそこに関する部分を修正させていただきました。
他に何か問題点や疑問点等があれば指摘の方お願いします。

wikiへの収録に関してはストーリーの区切りの関係で3分割収録でお願いします。名前欄にも書かれている通りですが念の為

>>243-253(Paragraph.01〜04)が『死神の祭典(第1楽章 悪魔の祝宴)』
>>254-262(Paragraph.05〜06)が『死神の祭典(第2楽章 戦場にて)』
>>263-271(Paragraph.07〜08)が『死神の祭典(第3楽章 超光の祝福)』

以上の通りとなります。

273名無しさん:2013/06/14(金) 02:10:04 ID:sgyiSer20
投下乙!
ネクサス組の連携をものともせず逆に二人をはめるガドル閣下すげえなあ
そして逆位置とも知らず死神のカードに喜んでた溝呂木の運命は一体…w
暁はまどマギ関連のフラグが一気にここで回収されて、これからどうなるんだろうなあ
そして黒岩の薀蓄はナイスでしたw

274死神の祭典(第3楽章 超光の祝福)(状態表差し替え) ◆7pf62HiyTE:2013/06/14(金) 09:06:25 ID:t0EDf64.0
すみません、暁の現在位置の表記が抜けていたので、現在位置表記を含めた状態表を以下の通りに修正します。

【I-3/平原】

【涼村暁@超光戦士シャンゼリオン】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(中)
[装備]:シャンバイザー@超光戦士シャンゼリオン
[道具]:支給品一式×2(暁(ペットボトル一本消費)、ミユキ)、首輪(ほむら)、八宝大華輪×4@らんま1/2、ランダム支給品0〜2(ミユキ0〜2)、
[思考]
基本:願いを叶えるために優勝する…………………………(???)
0:市街地に向かう。
1:別れた人達(特に凪やラブといった女性陣)が心配、出来れば合流したい。黒岩? 変な事してないよな?
2:あんこちゃん(杏子)を捜してみる。
3:可愛い女の子を見つけたらまずはナンパ。
[備考]
※第2話「ノーテンキラキラ」途中(橘朱美と喧嘩になる前)からの参戦です。
 つまりまだ黒岩省吾とは面識がありません(リクシンキ、ホウジンキ、クウレツキのことも知らない)。
※ほむら経由で魔法少女の事についてある程度聞きました。知り合いの名前は聞いていませんでしたが、凪(さやか情報)及び黒岩(マミ情報)との情報交換したことで概ね把握しました。その為、ほむらが助けたかったのがまどかだという事を把握しています。
※黒岩とは未来で出会う可能性があると石堀より聞きました。
※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを知りました。
※森林でのガドルの放送を聞きました。


【支給品紹介】
八宝大華輪@らんま1/2
相羽ミユキに支給、
元祖無差別格闘流究極の必殺奥義として八宝斎が使用。
その正体は花火を炸裂させるというものである。
原作中では巨大な岩を粉砕する描写もある一方、普通に小さな花火を炸裂させる程度の時もありその威力にはばらつきがある。
作中では巨大サイズのものや、アニメでは八宝大カビンという火薬の代わりにカビを炸裂させるものが登場している。
ちなみに一応マッチで導火線に火を着けてから使用する描写が成されている。
今回は5個セット、マッチを付属した上で支給している。

275名無しさん:2013/06/14(金) 19:33:53 ID:Q5pWhueMO
投下乙です。

木の枝は、槍にも剣にも見立てられる。
これを利用して、槍や剣を投げまくる閣下。おっかねぇ!
やはり、虫には森が一番。
青でダッシュ→空中で紫に→槍が剣に変化→そのまま投げる→着地する時には青に
コンポ技も開発して、絶賛強化中ですな。

死神の逆位置は「死神が負ける」とも取れるが、果たして。

276名無しさん:2013/06/14(金) 21:41:28 ID:3eNEMisA0
投下乙です

ガドル閣下頑張るなあ
ほうほう、死神の逆位置かあ。どうにでも取れるが果して…
そして暁がまどマギフラグを回収したがこの先が凄く気になるぜ

277 ◆OmtW54r7Tc:2013/06/21(金) 09:16:22 ID:Ir8N.EsI0
投下します

278Another ◆OmtW54r7Tc:2013/06/21(金) 09:18:52 ID:Ir8N.EsI0
『それでは、今回の放送は終了です。……みなさん、ごきげんよう』


放送が終わった。
首輪から流れてきた音声が途切れると、零と結城は溜息をつく。


相羽シンヤ――冴島邸にて出会った相羽タカヤの双子の弟
       タカヤと戦い、死んだのだろうか

東せつな――タカヤ等と共に行動していた少女
      プリキュアという戦士だったらしいが、そんな彼女も若い命を散らしてしまった


他にも、出会ってこそいないが、せつなと同じくプリキュアであると情報を得ていた名がせつな以外にも二人呼ばれていたし、姫矢准という石堀や凪の知り合いの名も呼ばれている。
参加者はたった半日で半分にまで減っている。
殺し合いが歩みを止める様子は、依然としてない。


「……行こうぜ、結城さん」
「……ああ」


それでも、彼らは歩みを止めることはない。
なぜなら彼らは、人々を守るために戦う戦士なのだから。
戦いが終わらぬ限り、彼らの歩みが止まることは、決してないのだ。



「ふぅ、やっと森を抜けたな」
「思ったよりも時間がかかってしまったな」

放送から約1時間。
二人はようやく森を抜けたところだった。
現在地はE-2。
街へ向かうには南の教会を経由するか北の村を経由するルートのどちらかがあるわけだが…

「涼邑、寄りたいところがあるのだが…構わないか?」
「寄りたいところ?……ああ、さっきの放送の変なクイズか」

結城の提案に、一瞬きょとんとした顔をした零だったが、すぐにその真意を理解して納得した。

「村にある翠屋…ここに寄ろうってことだな?」
「ああ…先ほどのニードルという男が出してきたクイズ…あれが指し示していたのは翠屋と警察署に違いないだろう。移動に役に立つものというのがなんなのか、確かめておきたい」

結城も零も、先ほどのニードルが出してきたクイズの答えは、口に出さずとも答えをすでに導き出していた。
そこで結城は、そのボーナスの正体を確かめたいと申し出たのだ。

279Another ◆OmtW54r7Tc:2013/06/21(金) 09:19:57 ID:Ir8N.EsI0
「だけどいいのか?街の方ではあんたの仲間が待ってるんだろ?急いだ方がいいんじゃないのか?例の移動の役に立つボーナスって奴も俺達じゃ使えないみたいだし」
「彼らなら私がいなくてもなんとかやってくれるだろうさ」

石堀の話によれば、一文字は参加者をより多く保護するため沖一也と二手に分かれたらしい。
市街地には今頃二人によって集められた参加者が多くいるであろうし、それならばこちらは村という別の切り口から攻めてみるのも悪くないだろう。
なんにせよ、情報収集と探索は無駄にはならないし、彼らだって結城の行動を咎めることはないだろう。

「…分かった。それじゃ村の方へ行くとしようぜ」
「ああ、すまないな」



こうして二人は村にある翠屋を目指して北上することとなった。

「そういや結城さん、さっきのニードルって奴のこと、あんたは知ってるか?」
「いや、記憶にないな」
「そっか…」

道中の零からの質問に、結城は否と答える。
実際の所ニードルは結城たちの世界の住人なのだが、彼がニードルと会うのは本来の未来においてはもう少し後のことであった。

「一回目の放送に出てきた男は、サラマンダー男爵…だっけ?石堀って人の話によれば、プリキュアと因縁のある相手だって話だったっけ」
「ああ…そしてオリヴィエという少年を人質に取られているかもしれないという話だったな」

冴島邸で軽く行った石堀達との情報交換を思い出しながら、結城は唸る。
そして、密かにメモを取り出し何かを書いた。

『もしもこの話が本当ならば…付け入る隙があるかもしれない』

結城の筆記による会話の内容を読んだ零もまた、メモに書き込む。
ちなみに、二人とも怪しまれないようにそれらしい会話を続けていることを明記しておく。

『だけど結城さん、元々そのプリキュアとサラマンダー男爵って奴は敵対してたんだろ?参加者で時間軸がバラバラで違うみたいだし、あんまりアテにしない方がいいんじゃないか?」
『確かにそうかもしれないな。だが、例えサラマンダー男爵が黒だったとしてもだ、それでもやはり主催陣営にはどこか穴があると私は思う』
『どういうことだ?』
『これまで得た情報を照らしてみても、私達が時間どころか世界そのものがバラバラに飛ばされたことは確かだ。そしてそれは主催陣営にも同じことが言える可能性が高い』
『主催側も、バラバラの世界で構成されてる可能性があるってことか』
「そうだ。そして、そういう集団となればおそらく目的もバラバラ、決して一枚岩ではないはずだ』

結城丈二にはデストロンの幹部時代、仲間に裏切られた苦い過去がある。
単一の組織でさえそうなのだ、複数の組織の集合体ともなれば必ずどこかで綻びが出る。
そこが狙い目だと、結城は考えていた。

『まあ、仮に主催側に裏切り者がいたとしても連絡を取る方法もないしな。今は私達にできることをやっていこう』
『了解っと』

そんな筆談と会話を繰り広げながら、彼らは翠屋へとたどり着いた。



翠屋。それはすでに死んでしまった高町なのはの両親が経営するおしゃれで雰囲気の良い喫茶店である。
もっとも、客も店員もいないここにある翠屋では、殺風景で雰囲気もへったくれもないだろうが。
そして…その翠屋の店の上空に…それはあった。

280Another ◆OmtW54r7Tc:2013/06/21(金) 09:21:09 ID:Ir8N.EsI0
「これは…時空魔法陣か!?」
「知ってるのか、結城さん」
「ああ…人や物を一瞬で別の場所へ移動させてしまう魔法陣だ。おそらく移動に役に立つものというのは、あれで間違いないだろう」
「ふぅん、なるほどね」

結城の言葉を聞くと、零はずんずんと店に近づいていく。
そして、魔法陣の真下へとやってくると、


「はっ!」


その場で手を伸ばし、ジャンプする。
しかし零の伸ばした手は、魔法陣をすり抜けたまま何も起こらず、そのまま自由落下で重力に従って地面に着地した。

「ちぇ、やっぱ条件を満たさないとダメみたいだな。もし使えるなら目的地の街までひとっとびだったのにな」
「先ほどのクイズを信じるならば、使用条件は二人以上の参加者の殺害…だったな」
「なあ結城さん、あんたこの魔法陣のこと知ってるんだろ?これ使って主催者のとこに乗り込むとかって、出来ないのか?」
「少なくとも今は、厳しいな。主催側のコントロールシステムでも乗っ取れば可能かもしれないが…」

そもそもこれはBADANの兵器であり、結城も詳しい仕組みまでは把握していないのだ。
この魔法陣は、日本から月へ一瞬で移動させるほどの力を持っている。
そんなものをこの狭い舞台内での移動に使うとは、なんとも贅沢な話で胡散臭ささえ感じる。

「とりあえず結城さん、この周辺を調べてみないか?さっきの放送では新しいボーナスのことも言ってたし、何かあるかもしれない」
「そうだな、一文字達には悪いが、どうせ調べるなら徹底的にやってしまおう。私は店の周辺を調べてみるから、そっちは店の中を調べてみてくれ」



(時空魔法陣があるということは…やはりこの殺し合いにはBADANが?)

周辺の探索をしながら、結城は考える。
この殺し合いが始まってすぐのころにも考えた、BADANの関与の可能性を。

(しかし、そうなるとやはり三影の存在が分からなくなってくる)

一応、BADANが関与しているにも関わらず三影が参加している理由をいくつか考えてはみた。

一つは、三影が主催者と繋がっている可能性。
だが、もし三影が主催者と繋がっているのなら、それこそ他の参加者より優遇されて、最初の6時間で死ぬようなことは無いように思える。
まあ、優遇など無意味なほどの強い参加者と運悪く出会ったというのなら話は別だが、優遇されていたなら初期位置自体が恣意的に選ばれる気がする。

二つ目は、三影が村雨同様にBADANを脱走した可能性。
この場合脱走の理由が分からないが、可能性としては決して低くない気がする。

三つ目の可能性。
別の世界、または時間軸の三影を連れてきた?
パラレルワールドの存在をすでにこの殺し合いの中で確認している以上、可能性がないわけではないが…

(そういえば、村雨は私の時間軸より過去から連れてこられているんだったな…)

数時間前に出会った村雨良を思い出す。
そう、ここにいる村雨は過去の村雨。
その過去の村雨が仮に死んでしまった場合…


(未来の…私の時間軸での村雨はどうなるんだ?)


タイムパラドックスには、主に『変更型』と『分岐型』の二つの説がある。
変更型とは、過去が変われば未来が変わるという考え。おそらく最もメジャーな考え方だろう。
この説を取った場合、結城の世界では村雨は死んでいるという事になる。
一方で分岐型とは、過去を変えても未来は変わらず、新たな別の時間軸が生まれるという考えだ。
この考えの場合、ここの村雨が死んでも『村雨良が死亡した時間軸』という結城の時間軸とは無関係な新たな別の時間軸が生まれるだけで、結城が元の世界に帰っても村雨は生きているという事になるわけだが…

281Another ◆OmtW54r7Tc:2013/06/21(金) 09:22:10 ID:Ir8N.EsI0
(……考えても分からないな。例の『時を止める』能力を持った参加者なら、何か知っているかもしれないが…)

しかし、参加者の半数が死んでいる以上、その参加者も死亡している可能性が高い。
もしも生きているなら、話を聞きたいものだが…

(そもそも何故、連れてこられた時期をバラバラにする必要があったんだ?)

零のように、参加者間での情報の齟齬による対立を引き起こす為か?
それとも他に何か理由があるのか?

(それ以前に…最初の場所で石堀や西条の同僚だという孤門も言っていたが、なぜ私達が選ばれたのか。そして、私達の命をあっさりとその手に握りながら、殺すこともなくこんなところへ連れてきて殺し合いを行わせる理由は?)

考えれば考えるほど疑問は尽きない。
とりあえず結城は、今生じた疑問をメモにまとめ、再び辺りの探索を始めた。



翠屋周辺の探索を一通り終えた結城は、翠屋店内の扉を開けた。
そして辺りを見回すが、零の姿は見当たらない。

(奥の厨房の方か?)

結城はそう思い、厨房の方へと向かった。


「涼邑、いるか……」

「……………あ」


目の前の零の口の周りには、白いクリームがついていた。
利き手にはフォークを持ち、フォークにはショートケーキの欠片が刺さっており、それを口に運ぼうとしたところで、零の腕の動きが急にピタッと停止した。
そして、フォークをケーキの乗った皿の上に置くと、バツの悪そうな顔になった。


「………涼邑」

「い、いや!サボってたわけじゃないぜ!ただ、作り置きのケーキが沢山あって、腐らすのも悪いし、休憩がてらつまもうと…」


あたふたしながら言い訳をする零に、結城は思わず吹き出してしまった。

「…まあ、せっかくだ。食事にするか」
「お、おう!腹ごしらえは大事だからな!」

時刻はまもなく3時。おやつの時間だ。


「ほう、上手いな。きっとパティシエはいい腕をしているのだろうな」
「こっちも上手いぜ!結城さん、食べてみろよ」

何故か厨房の冷蔵庫には大量のケーキが作り置きされており、二人はそのケーキで食事中であった。
零は甘いものに目が無いらしく、先ほどからとてもおいしそうに食べている。


(…こんな表情もできるんだな)


今まで結城が見てきた零は、冴島鋼牙、あるいはバラゴへの憎しみに満ちた表情や、どこか一線引いたような飄々とした態度。
そして、鋼牙に諭されて以降の、強い決意に満ちた表情。
そういうものが多かったように記憶している。
しかし、今ここにいる零は、どこか子供っぽくも見える年相応の(まだ20も越えていないらしい)青年に見えた。

「ん?どうしたんだ結城さん?俺の顔になにかついてるか?」
「…いや、うまそうに食うなと思ってな」
「モグモグ…昔は…モグモグ…そこまで…モグモグ…好きだったわけじゃ…モグモグ…ないけどな」
「…しゃべるか食べるか、どちらかにしろ」



こうして食事を終えた二人は、翠屋を出発することになった。
一応零は、探索自体は本当にちゃんとやっていたようだが、特にめぼしいものは見つからなかったそうだ。

「途中で志葉屋敷に立ち寄ってから、村を出るとしよう」
「あんたの仲間との合流は、完全に大遅刻だな」
「なあに、一文字も沖も、各々でしっかりやっているさ。村雨は少し不安だが…彼がついている限り、道を踏み外すことはないはずだ」
「鋼牙か…魔戒騎士として、あいつには負けてられないな」

どこかで戦っているであろう仲間達を想いつつ、二人は歩き出した。

282Another ◆OmtW54r7Tc:2013/06/21(金) 09:23:06 ID:Ir8N.EsI0
【一日目/午後】
【C-1/翠屋付近】

【結城丈二@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:健康
[装備]:ライダーマンヘルメット、カセットアーム
[道具]:支給品一式、カセットアーム用アタッチメント六本(パワーアーム、マシンガンアーム、ロープアーム、オペレーションアーム、ドリルアーム、ネットアーム) 、パンスト太郎の首輪
[思考]
基本:この殺し合いを止め、加頭を倒す。
1:殺し合いに乗っていない者を保護する
2:零と共に移動し、とりあえず志葉屋敷を目指す
3:一文字、沖、村雨と合流する。ただし18時までに市街地へ戻るのは厳しいと考えている。
4:加頭についての情報を集める
5:首輪を解除する手掛かりを探す。
  その為に、異世界の技術を持つ技術者と時間操作の術を持つ人物に接触したい。
6:タカヤや石堀たちとはまた合流したい。
7:また、特殊能力を持たない民間人がソウルメタルを持てるか確認したい。
8:時間操作の術を持つ参加者からタイムパラドックスについて話を聞きたい
[備考]
※参戦時期は12巻〜13巻の間、風見の救援に高地へ向かっている最中になります。
※この殺し合いには、バダンが絡んでいる可能性もあると見ています。
※加頭の発言から、この会場には「時間を止める能力者」をはじめとする、人知を超えた能力の持ち主が複数人いると考えています。
※NEVER、砂漠の使徒、テッカマン、外道衆は、何らかの称号・部隊名だと推測しています。
※ソウルジェムは、ライダーでいうベルトの様なものではないかと推測しています。
※首輪を解除するには、オペレーションアームだけでは不十分と判断しています。
 何か他の道具か、または条件かを揃える事で、解体が可能になると考えています。
※NEVERやテッカマンの情報を得ました。また、それによって時間軸、世界観の違いに気づいています。
※首輪には確実に良世界の技術が使われている・首輪からは盗聴が行われていると判断しています。
※零から魔戒騎士についての説明を詳しく受けました。
※首輪を解除した場合、ソウルメタルが操れないなどのデメリットが生じると思っています。
※彼にとっての現在のソウルメタルの重さは、「普通の剣よりやや重い」です。感情の一時的な高ぶりなどでは、もっと軽く扱えるかもしれません。
※村雨良の参戦時期を知りました。ただし、現在彼を仮面ライダーにすることに対して強い執着はありません(仮面ライダー以外の戦士の存在を知ったため)。




【涼邑零@牙狼─GARO─】
[状態]:健康
[装備]:魔戒剣、魔導火のライター
[道具]:支給品一式、スーパーヒーローセット(ヒーローマニュアル、30話での暁の服装セット)@超光戦士シャンゼリオン、薄皮太夫の三味線@侍戦隊シンケンジャー、シルヴァの残骸
[思考]
基本:加頭を倒して殺し合いを止め、元の世界に戻りシルヴァを復元する。
0:志葉屋敷の方へと向かう。
1:魔戒騎士としてバラゴを倒す。
2:結城と共にバラゴを倒す仲間を探す。
3:殺し合いに乗っている者は倒し、そうじゃない者は保護する。
4:会場内にあるだろう、ホラーに関係する何かを見つけ出す。
5:結城に対する更なる信頼感。
6:また、特殊能力を持たない民間人がソウルメタルを持てるか確認したい。
7:涼村暁とはまた会ってみたい。
[備考]
※参戦時期は一期十八話、三神官より鋼牙が仇であると教えられた直後になります。
※シルヴァが没収されたことから、ホラーに関係する何かが会場内にはあり、加頭はそれを隠したいのではないかと推察しています。
 実際にそうなのかどうかは、現時点では不明です。
※NEVER、仮面ライダーの情報を得ました。また、それによって時間軸、世界観の違いに気づいています。
 仮面ライダーに関しては、結城からさらに詳しく説明を受けました。
※首輪には確実に異世界の技術が使われている・首輪からは盗聴が行われていると判断しています。
※首輪を解除した場合、(常人が)ソウルメタルが操れないなどのデメリットが生じると思っています。
 また、結城がソウルメタルを操れた理由はもしかすれば彼自身の精神力が強いからとも考えています。
※実際は、ソウルメタルは誰でも持つことができるように制限されています。
 ただし、重量自体は通常の剣より重く、魔戒騎士や強靭な精神の持主でなければ、扱い辛いものになります。



※時空魔法陣は翠屋の真上の上空にあります

283 ◆OmtW54r7Tc:2013/06/21(金) 09:23:55 ID:Ir8N.EsI0
投下終了です

284名無しさん:2013/06/23(日) 02:27:16 ID:oFm6HKr.0
投下乙です
この二人は考察が順調に進んでるな

285名無しさん:2013/06/23(日) 04:00:13 ID:U9gZEnYc0
投下乙です

周りが微妙な時に考察できる組がいるのは心強いな

286名無しさん:2013/06/28(金) 20:14:56 ID:TCQDgUbA0
小説クウガ本日発売

287名無しさん:2013/07/16(火) 23:30:18 ID:cX5taruc0
久々に予約きた!

288名無しさん:2013/07/17(水) 21:01:49 ID:ZPD.MSWs0
予約来てるなあ

289 ◆gry038wOvE:2013/07/17(水) 21:15:41 ID:4BBi9MPo0
投下しまーす。

290街角軍記 ◆gry038wOvE:2013/07/17(水) 21:16:41 ID:4BBi9MPo0


「おい、アンコ……その姿……」

 左翔太郎──仮面ライダーダブルが驚くのも無理はなかった。
 佐倉杏子が変身したその姿は、ウルトラマンネクサス──姫矢准が変身したものと同じだったのだ。

『どういうわけか、あの力は杏子ちゃんのもとに渡ったみたいだね……翔太郎の言葉を借りるなら、銀色の巨人かな?』
「にしても、いつの間に……」
『僕が思うに、彼女は放送より、もっと早い段階で姫矢准の死を知っていた。姫矢が死に際に託した……そういう事が可能な力なんじゃないかな……おそらくね』
「……本当か? おい、なんでそれを早く言わねえんだよ!」

 しかし、ウルトラマンネクサスは背後から聞こえるダブルの声を無視して走り出した。
 ネクサス──佐倉杏子は、この場の誰よりも早く、その拳を血祭ドウコクの身体に食い込ませる。ほんの一時間も会話を交わしていない男・姫矢准に感じた不思議な共感が、彼女の気持ちを膨らませたのである。
 友情や愛情など、そうした感情を抱く暇もなく、しかし、もう少し猶予があれば信頼感は強まったかもしれない相手だった。それが姫矢だ。
 その「かもしれない」という僅かな可能性でさえ、力に変えられるほど──杏子は姫矢に対して謎の共感を持っていた。
 その男の命を奪ったのが、この禍々しき怪物である。
 名前、外形、声色、表情──全てにおいて禍々しいこの怪物の、これまた不愉快な感触がネクサスの拳を通して杏子に伝る。
 ──なんだろう、この感触は。
 彼の身体は拳の外で微かに蠢いている。腹部が萎む。怪物は息をしている──すなわち、生命を維持する活動を怠らない『生物』なのだ。
 ヒトではない。
 しかし、魔女のような存在でもない。
 杏子は槍を使って戦っていたので、これまではあまりこうした敵の感触を知る事がなかった。だが、初めて敵の生命を肌で感じた気がして、少しばかり気分が悪くなる。
 それでも、ドウコクの身体が吹き飛ぶまで、奥へ奥へとねじりこませるように拳を押し込んでいくように、殴る。一瞬のうちに、どこまで拳で敵の身体を捻らせるかが勝負どころだ。

「デュア!」

 ──そして、ウルトラマンの力を前に、ドウコクが飛ぶ。
 拳から波のように伝わった振動が、ドウコクの腹部を同じ波長で震わせ、その波が肥大化し、そこから突き放されるようにドウコクの身体が後方へ飛ぶ。
 ドウコクの足が何度か地面をかすり、小さな火を一瞬だけ起こした。そのまま足と地面との摩擦でドウコクはブレーキをかけた。
 この僅かな隙を利用して、出遅れた数名が駆け出した。

「仕方ねえ……事情は後で聞かせてもらうぜ!」

 ネクサスの後ろから、仮面ライダーダブルが、キュアサンシャインが、シンケンゴールドが、アインハルト・ストラトスが駆け出す。

「「はぁっ!!」」
「「やぁっ!!」」

 ネクサスが中央からドウコクを攻撃したのに対し、ダブルとサンシャインはそれぞれ右と左から、シンケンゴールドとアインハルトもそれに続いて攻撃した。
 攻撃した後は、駆けぬけるしかない。一塁を駆け抜けていくランナーに感覚は近いかもしれない。彼らは、駆けぬけた後に少し不格好な減速をしてブレーキをかけた。
 胸部や腰部を狙い、重く鋭い一撃が入り込んでいく。
 ドウコクは、その中に込められている力強さのようなものを悟った。彼らは、どうやら力を入れて攻撃しているらしいのだ。今の一撃には、本気でドウコクを消そうという本気が感じられた。
 しかし、ドウコクにとっては大して強いと感じられるものではなかった。

(当人にとっては快心の一撃ってやつか? ……俺にとっては大したダメージでもねえってのによ)

 ある程度の本気は感じられたものの、ドウコクはその一撃を手放しで賞賛する事はなかった。
 五人分の攻撃は、せいぜい最初の腹部への一撃が強烈に感じた程度で、他の攻撃に対する痛みというのはほとんど無かった。

291街角軍記 ◆gry038wOvE:2013/07/17(水) 21:17:26 ID:4BBi9MPo0

 ……見たところ、疲労状態の相手が多いのだ。

 こうした攻撃も、重い身体に鞭を打って、限界に近い身体で行われている。ゆえに、その拳にも全身全霊の思いが込められる。しかし、弱い。
 ドウコクにとっては、おそらく常時の彼らの攻撃も蚊に刺されたほどの痛みではないかもしれない。痛みと呼ぶのも憚られるほどの、些末な事象である。
 内臓、外部、精神──せめてそのどこかにでも痛みを与えられれば立派なものだが、この場において褒められたのは、ウルトラマンネクサスのパンチだけである。
 実際、内臓か皮膚かはわからないが、腹部の感覚に麻痺か痛みか、そんな感覚があるのがわかる。理屈抜きの強さだ。これに関しては、ドウコクに対して感じた一瞬の怒りと、この戦士そのものの強さが相乗している。
 ……一方、両腕両足は健在だ。そこに繋がる胸や腰のあたりも至って健康。目の前の敵を殺せないとは思えない。

「うらぁっ!!」

 降竜蓋世刀を構え、まずはシンケンゴールドの方へと歩み寄る。真っ先に目についたのはシンケンゴールドであり、因縁のシンケンジャーだったという理由で、ほとんど直感的にに彼を最初のターゲットとして決めた。
 ウルトラマンネクサスを選ぶのも一つの手だったが、距離感覚的にはシンケンゴールドが近かった。

「え、わ……っ!」

 シンケンゴールドの胸を、左から右へ真一文字に斬る。
 その反動で回転したシンケンゴールドの背中を斬る。
 今度は、シンケンゴールドの背中を蹴飛ばし、倒れた彼の腹に足を乗っけて、動きを封じ、刀を構えなおし、真上から垂直に降竜蓋世刀を……下ろす。
 胸部に衝撃を受け、遂にシンケンゴールドのスーツは攻撃に耐えられなくなり、一瞬だけ白い光に包まれて、元の梅盛源太の姿が現れた。
 いよいよまずい──そう直感したダブルが、真っ先にドウコクのもとへと駆けつけた。
 生身のシンケンゴールドに向けて、もう一度その刀が振り下ろされる前に、ドウコクには一撃やらなければならない。

「フィリップ!」

 ダブルの半身が叫ぶと、ダブルドライバーの右側のスロットから緑のメモリが外され、黄色いメモリが挿入される。
 具体的な指示はなかったが、「翔太郎」の呼びかけの意味を、「フィリップ」は理解した。

 ──Lunna──
 ──Lunna × Joker !!──

 ──ルナメモリである。
 ルナメモリの力によって伸縮自在となった右腕は、真っ直ぐにドウコクの右手に向かって、伸びていく。
 伸びていく……といっても、人間の腕の長さではない。
 仮面ライダーダブルと血祭ドウコクとの間にあった距離──およそ七メートルほどの距離を、動かずしてゼロに変えるほどの長さで、ドウコクの右手を掴んでいたのである。
 その姿は、まるで妖怪。────いや、外道衆の怪人の如き姿であった。
 少なくとも、ドウコクと敵対してきたシンケンジャーには、こんな風にドウコクの腕を止めた者はいなかった。
 ターゲットの変更だ。
 ドウコクは、掴まれた右腕を振り払い、地面の源太を「歩くついでに」とばかりに蹴飛ばして、憮然とした態度でダブルの方へと歩いて行った。

「おい、こっちに来るぜ」
『近接戦……。なら、こっちの方が向いてるね』

 ──Heat──
 ──Heat × Joker !!──

 ヒートジョーカーの姿となったダブルは、向かい来るドウコクに自ら向かっていき、「火」のパンチを叩き込んだ。ドウコクはその一撃を受ける瞬間だけ立ち止まった。
 火は、ドウコクにとって忌々しい元素だった。
 シンケンレッド──シンケンジャーで最も忌々しい相手の使うモヂカラが、「火」のモヂカラだった所為もあり、この一撃には嫌悪感が湧く。ドウコクの身にはダメージこそ無いものの、眉を潜ませるような素振りを見せていた。

「オラオラオラオラ!!」

 連打。

「ウラウラウラウラ!!」

 連打。

「アダダダダダダダ!!」

 連打。

 微動だにしないドウコクに向かって、ダブルは炎の一撃を浴びせ続ける。

292街角軍記 ◆gry038wOvE:2013/07/17(水) 21:18:33 ID:4BBi9MPo0

「ハァッ!!」

 トドメとばかりに、ダブルは一周回転した後でパンチを叩き込む。その姿は何かのパフォーマンスのようだった。翔太郎の性格が、一本調子な連打に飽きて少し興のあるラストをやってみせたいと思ったのだろう。
 余裕の表れかもしれなかった。
 ……が、

「効かねえな」

 当然ドウコクに効いているはずもない。
 封印の文字でさえまともに効かない身体となったドウコクである。
 外道でありながら、その身には人の身体を取り込んでいる。
 弱点の類もない。
 ただ、あえて彼を倒す方法が在るとするなら、それは一つ。
 力ずく──のみである。

「はぁーっ!!」

 ドウコクの呟きを無視して、キュアサンシャインとアインハルト・ストラトスは両サイドからドウコクに向かって飛び上がった。
 力ずく。
 そのやり方に最も向くのは、彼女たち二人だろうか。
 彼女たちの攻撃方法は、ダブルのような能力によるものではなく、文字通り力に尽きるものばかりだ。パンチとキックを繰り返し、ライダー以上に武器を使用しない。
 拳拳拳の脚脚脚……と、言ってみれば格闘少女そのものであった。
 元々、人間時でも格闘を好む二人なのだから、この時においても「力ずく」という答えはすぐに出ていた。
 しかし、当然、並みの力では「力」と呼ぶべきにも非ず──キュアサンシャインとアインハルトの一撃がドウコクにたどり着こうとも、その結果は他の仲間と同じだった。
 結局のところ──答えは単純。
 誰がやっても同じなのである。
 ここにいる誰がどんな力を使おうと──この状態では、ドウコクには効かない。ここまで多くの戦いを切り抜けてきた彼らに対し、ドウコクはあまりにも万全すぎた。
 更に言えば、ドウコクは万全なメンバーたちが挑んだところで勝てる見込みは薄い……それほどの強敵であった。
 ドウコクの言葉を借りるなら、「絶望」がこの状況である。


「効かねえ……てめえらは、俺に挑むには弱すぎる」


 左にアインハルト、前に仮面ライダーダブル、右にキュアサンシャイン……と、綺麗に並んだ三人を、ドウコクは半円を描くように斬っていった。
 斬るというほど惨たらしいものではないか。──降竜蓋世刀に弾かれるようにして、三人は後方へと飛んで行った。

「うわぁぁつ!!」

 似たり寄ったりの叫び声とともに吹き飛ばされ、全員が地面に倒れこんだ。
 アインハルトの変身がここで解ける────成人女性ほどの身長の美女だったはずのアインハルトは、人形のような美少女へと姿を戻す。……傷だらけの、と付け加えればもっとわかりやすく伝わるだろうか。
 身体機能は限界だった。精神状態も決して良いとは言えない。
 こうしたあらゆる限界によって、敗北が近づいていた。
 今の段階ならまだ、梅盛源太やアインハルト・ストラトスといった生身の相手に対して、ドウコクは何の攻撃も仕掛けないが、ここで変身している戦士が戦う理由はいずれも、「その人たちがより長く生きられるための時間稼ぎ」と同義であった。

293街角軍記 ◆gry038wOvE:2013/07/17(水) 21:18:53 ID:4BBi9MPo0
 無論、彼らは勝とうとしている。勝たなくとも、全員で撤退するくらいは絶対にしなければならないと思っている。
 ……しかし、客観的に見ても勝てる理屈が見当たらないのである。

「他愛もねえな……」

 ドウコクがそこに倒れこんだ三人を見下ろしている。
 それの姿を見て、ウルトラマンネクサスは跳ねた。
 跳ねた体勢のまま、地面と並行に宙を走る。ネクサスは、腕を引いた体勢のまま、ほとんど宙に浮いたまま前へと進んでいる。
 ウルトラマンの持つ飛行能力を使い、地面から数センチだけ身体を浮かせた状態で移動しているのである。
 ドウコクとの距離が縮まると、ネクサスの右拳は前に突き出された。

「デュアァツ!!」

 ドウコクは背中を打った鋭いパンチの存在に吃驚する。
 かなりの熱のこもったパンチで、なかなかの不意打ちであった。
 ドウコクの目の前にはダブルが倒れていたが、その真上を通り過ぎ、まるで宙に向かって吹き飛ぶように、ドウコクの身体は飛んでいた。

 ──Triger──
 ──Heat × Triger !!──

 ダブルは決死の思いで、倒れた身体でメモリを入れ替える。
 ヒートトリガーへとフォルムチェンジしたダブルは、空中のドウコクを狙い撃ちし、その身体を打ち落とした。
 いや、打ち落としたというには、ドウコクの受け身は上手であった。
 だいたい、ドウコクの力が弱まった気がしない。今ので果たして、本当にダメージを受けたのだろうか?
 ドウコクが着地しようというタイミングで、偶然その弾丸が当たったような形だ。
 そう、ドウコクは何事もなかったかのように両足で着地し、剣を構えていた。
 先ほどと違うのは、こちらを向いているという事だろうか。

「うらぁぁぁぁっ!!」

 ドウコクは、そのまま真っ直ぐにネクサスのところへ駆け出す。
 その刀の切っ先を身体の左側に構え、一瞬の躊躇いも──疲労さえ感じさせないまま、ドウコクはネクサスの左脇腹に斬りかかった。
 火花が散り、ネクサスの身体が吹き飛ばされる。
 ネクサスもまた、地面と激突した。


「今のお前らじゃ俺には勝てねえ……。わかったか? 絶望ってやつが」


 そうドウコクが呟いた時、まるで雷のような光と轟音が鳴り、地響きに身体が揺れたような感じさえした。
 地面に倒れこんでいる彼らには、ドウコクの姿がとてつもなく大きいものにも見える。
 あるいは、ドウコクの堂々たる迫力が原因だろうか。
 疲労による眩暈が起きているのだろうか。
 彼らの目には、ドウコクの後ろで何かが崩落していくようなヴィジョンさえ浮かんだ────。
 巨大なものが崩れ去っていくような……そんな不思議なヴィジョンが。


 ────いや、待てよ、これは……。


「ふ、風都タワーがぁぁぁっ!?」


 ダブルがそう叫ぶ。ドウコクの後ろに見える風都タワーが、地面へと落ちていくのだ。
 この地鳴り、あるいは、このヴィジョン。全ては現実によるものだ。
 ここから見える街エリアのシンボル的な建物である「風都タワー」。
 それが、翔太郎たちの目の前で崩れていったのである……。
 それはまるで、かつて仮面ライダーダブルと仮面ライダーエターナルがその場で戦った時の光景を、別の視点で見たような感覚だった。

 それからしばらくして、崩れる風都タワーを背にしたドウコクも異変に気づくほどに巨大な音声が耳に入る事になる。
 タワーを破壊したテッカマンランスという男による、崩落の呼び声であった。





294街角軍記 ◆gry038wOvE:2013/07/17(水) 21:19:27 ID:4BBi9MPo0



 キュアベリーは街にたどり着いた。
 端的に言えば、それだけの事だが、再びここに返ってくるまでの道中はいろいろと大変だった事は言うに及ばない。
 友人が死んだ。
 敵に襲われた。
 大変などという言い方さえ軽々しいほど、彼女の精神を強く傷つける出来事であった。
 そして同時に、彼女はこの一瞬の中でも、自分が命を落としてしまうのではないかとヒヤヒヤしていた。
 誰か……せめて、誰かがいればいい。

 誰か。
 せめて、目につくところに、敵でも味方でも、誰かがいれば蒼乃美希はそれだけで安心なのである。
 首の爆弾が。
 あるいは、耳に確かに聞こえる自分の鼓動が。
 唾を飲み込むのに息を止めなければならぬほど強張った喉が。
 寒くも無いのに勝手に冷え込み鳥肌を走らせる背筋が。
 物を握れそうもないほど震える手が。
 ──それらが命を奪う前に、せめて誰かに会いたい。
 放送の内容をちゃんと聞いた誰かに会い、禁止エリアの場所を聞かなければならないのだ。
 時間がない。
 時計を見る時間さえ惜しいし、────時計を見るのが怖い。

 街はむしろ、障害物だらけであった。
 先ほどの草原などは、何もないので見渡しやすく、余計に誰もいないのが不安だった。
 草原は、森は、あれほど広かっただろうか。
 あれほど、誰かを探すのに不都合な場所だっただろうか。
 本当に恐ろしい時に、それを分かり合える仲間がいない。
 次々とこの殺し合いが進んでいるから、こうしている間にも人は死んでいるかもしれない。
 自分が何かをする一瞬のうちに、誰かが死んでいて……自分が喜んでいる一瞬のうちに、誰かが悲しんでいるかもしれない。
 自分がこうして、死の恐怖の中で周囲を必死に探している間にも、誰かは安心して寝ているのかもしれない。────そんな人が近くにいるとしても、美希にはそれが遠い何処かのような気がしてならなかった。
 安心できる場所がこの島の中にあるとしても、彼女にはその場所がわからないのだ。
 その場所を探している。せめて、この首輪が爆発するエリアではない何処かを。
 禁止エリアがどこかわからない彼女にとっては、もはやどこも禁止エリアであるのと同じなのだ。
 このバトルロワイアルが始まって以来、初めてとなるかもしれない徹底的な孤独と恐怖に、蒼乃美希は完全に打ちのめされていた。

「誰か! 誰かいませんか!?」

 応答がない。
 敵でもいい。不意打ちや奇襲に対する覚悟はある。
 少なくとも、其処に誰かがいるという事は、おそらくその場所は禁止エリアではないと言う事なのだ。
 それだけで美希は安心できる。
 しかし、それなのに、こんな時に限って、敵さえ来ない。

 どんな形であれ、応答があればいい。
 応答。
 誰かの姿。誰かの声。──何でもいい。とにかく、美希は誰かの存在を確認できる何かが欲しかった。

「誰か!! 誰か!!」

 あまり無暗に大声を出しすぎると、声が枯れる可能性だってある。
 それでも、あと少しの間に爆発が起きるかもしれないと思うと、声を張り上げずにはいられなかった。

「誰かぁ!!!!!!!」

 その叫びの後、キュアベリーの耳に一人の男の放送が入る事になった。





295街角軍記 ◆gry038wOvE:2013/07/17(水) 21:19:54 ID:4BBi9MPo0



 ──一方、こちらはどういうわけか、あまりにも不格好な行進を始めていた。


「意外といけるじゃねえか」


 バーボンの瓶を片手にしたドウコクの後ろを、杏子が、翔太郎が、源太が、いつきが、アインハルトが……至極不満そうに歩いている。
 彼らの目には反逆心による闘志が燃え滾っている。変身を解いた状態の彼らが、いつドウコクの寝首をかこうかと策を頭で巡らせながらも、ほとんど付き従うようにその背中を追っている。


『どうやら、派手に暴れてる奴がいるらしいな』
『面白え。……そっちに行った方が楽しめるかもな』
『だが、てめえらも逃がしはしねえ。てめえらにも俺たちに着いてきてもらうぜ』


 とまあ、アバウトにドウコクの台詞だけをまとめるとこんな感じで、結局戦闘による死者もなく話は進んだ。
 変身は解除されたものの、変身アイテムや支給品の類は没収されていない。しかし、支給品はドウコクが念入りに調べ上げ、その結果、元々せつなの支給品だったこの酒だけが奪われた。
 主に日本酒を飲んでいたドウコクが、初めてこんなものを飲んだわけだが、一応ドウコクの口にはある程度合ったようである。
 ドウコクの気分は乗っていた。
 酒が手に入った所為もある。しかし、実の所、それ以上に、自分がシンケンジャーの一人や、その仲間を付き従えている現状が面白かった。
 敵を屈服させるのは殺す以上に愉快である。鼻を折るのが楽しいのだ。……それが小さくも実現している。
 ドウコクが聞きたいのは人の慟哭、苦しみ、叫び、命乞い──とまあ、そんなものばかりだ。本来、殺す前の手順として、これが欲しいところであった。
 だから、姫矢が命乞いをしなかったときなどは、ドウコクにとって何の面白みもなかったし、むしろ苛立たせていた。
 それに引き替え、今の彼らは自らの疲弊状態をよく分析し、「他人」に近い隣の仲間を庇うために付き従っている。所詮は、偶然とおりすがった人間同士の寄せ集めだ。信頼感もないので、自分が死んだ結果として隣の人間が次に殺される……という心配でもしているのだろう。
 ……何にせよ、どんな形であれ、命を惜しんでドウコクの要望を聞いてくれるのは心地がいい。

 この殺し合いの中でも、街で崩壊が起こるのを聞いて駆けつけてみれば一歩遅かった……という前例があるが、それでもそれだけ活気のある者を切り裂きたいのも外道衆の総大将の常である。場合によれば、その者がドウコクが本来持っているはずの刀を持っている可能性だってあるはずだ。
 そう、ドウコクが支給品をチェックしたのは、決して酒を探していたわけでも、彼らを警戒していたわけでもない。その刀を翔太郎たちが持っている可能性を考えて支給品を確認したのだ。
 しかし、彼らの支給品にはそんなものはなく、代わりに酒があったのでそれを飲みながら歩いているという状態だ。姫矢に預けていた自分の支給品も一応は取り返し、

(テッカマンランス……!)

 杏子は、放送で聞こえたテッカマンランスの事を知っていた。
 テッカマンランス──それは、あの時……杏子と戦った奇怪な怪物だ。
 ドウコクとはまた違い、変身を己の戦闘形態とする怪物だった。杏子やプリキュアたちのように、ほとんど素顔を晒すのではなく、どちらかといえばダブルやネクサスに近い素面を異形で隠した戦士であった。
 せつなの命を奪った悪しき怪人であり、杏子にとっては、ドウコクと同じく仇の一人であった。姫矢を殺害したというドウコク、そして、せつなを殺したテッカマンランス……いずれも杏子にとっては忌むべき存在である。
 どちらも捨てられない。
 どちらも倒さなければならない。
 その好機ともいえるのが、このドウコクの要求である。
 テッカマンランスを倒しに行くからついて来い……という要望に沿えば、杏子はテッカマンランスとドウコクの二人を纏めて相手にすることができる。

(体力も……たぶん問題ない)

296街角軍記 ◆gry038wOvE:2013/07/17(水) 21:20:23 ID:4BBi9MPo0

 体力面でも、杏子はまだ複数人を相手にするのに問題が無い程度には健康体である。
 ただ、それを差し引いても少しばかりテッカマンランスとドウコクの二人とまともに戦える状態とは言えない。
 彼ら二人の実力はわかる。
 だから、少しの恐怖はある。
 だが、それでも……杏子は倒さなければならない。せつなや姫矢が死んだのに、このテッカマンランスとドウコクが生きていてはならないのだ。

(大丈夫だ、戦える……二人がくれた力もあるんだ)

 杏子はリンクルンとエボルトラスターの二つのアイテムを授かっている。
 辛うじてエボルトラスターの力は使えるが、アカルンの力が使えるか否かはまだわからない。

──……どうしてそれを持ってるんだ? アンコ──

 変身を解除してしばらくして、エボルトラスターを見た翔太郎が小声でそう訊いた。
 しかし、杏子は答えなかった。
 ……答えるべきだったか、答えないべきだったかはわからない。
 それから、ドウコクがいる手前、あまりこちらで話し合う事ができる機会というのがなく、翔太郎が杏子にそれを訊くチャンスは巡ってきていない。
 杏子は、少しだけ、それに対する罪悪感のようなものを感じていた。

「……少ねえ」

 ドウコクの声が聞こえて、杏子はふと我に返る。
 どうやら、ドウコクは瓶の中の酒の量に満足がいかないらしく、残り少ない酒をちびちび飲んでいる。

(酔っ払いそのものだな……)

 杏子は眉間に皺を寄せながら、そう思った。
 ドウコクが酒を飲んで多少上機嫌になっているのは、一目見てわかる事だ。
 絶望と落胆の中で酒に逃げた杏子の父とはまた違う。酒を飲むのを本気で楽しみ、酒を一口飲むたびに下品になる。しかし、それでいて酒を飲むと暴力的になる。
 まるで人間の酔っ払いのようだ。
 酔っ払えば、判断力は鈍る。鈍れば判断能力を失い、隙ができるかもしれない。
 ……まるでヤマタノオロチ退治だ。同じ化け物なので、感覚としては似ているかもしれない。
 ただ、このバーボンという酒が少ししかないのが残念なところである。

「もっと酒をよこせ!!」

 などとのたまうドウコク。その望みを叶えたいところだが、残念ながらそんなにたくさんは酒がない。
 ……というよりか、ドウコクが真上を向いて舌に向けて垂らしたその一滴が、おそらく最後だ。

「おい……ええと、血祭ドウコクさんよ。酒はそれだけだ。さっき自分で出したんだからわかるだろ。……ったく……人間も怪物も……酔っ払いの性質の悪さは共通か」

 杏子の指にはまったザルバが半ばあきれたように言った。
 ドウコクはそのザルバがどこにいるのかわからなかったが、姫矢と見た指輪であるのを知って、だいたい杏子の手の辺りを見て答えた。
 彼の言うとおり、実際酔っ払いより面倒なものはないだろう。源太のように酔っ払い慣れする職業ならともかく、女子中学生陣は酔っ払いを苦手とする事が多いはずだ。

「ああ……? これだけ店だらけならその辺から持ち出してくりゃあいいだろうが。てめえらも酒くらい飲むだろ」

 一応、街の中にはコンビニやら酒屋やらはある。
 だが、これまでそこにある酒の類には手をつけようとはしなかった。未成年ゆえの抵抗感もあるが、そもそも杏子はお菓子コーナーを優先するため、全然興味がないのだ。成人は二人の男性だけだろうか。
 だいたい、この状況下で酒を飲む奴は少ないだろう。
 酒に逃げる者もいるかもしれないが、それでもなるべくなら生きたいと願うのが人間だ。殺し合いの最中に酔っ払って判断能力を失うようなへまはしたくないだろう。場合によっては、「最後に酒を飲みたい」とか「どんな状況であれ知るか」とばかりに酒ばっかり飲む人間もいるかもしれないが……。
 ドウコクのようなのは特殊で、大部分は酒を飲む余裕はない。
 ……まあ、強いて言えば、映画のように傷口の消毒には使えるかもしれないという程度の認識である。
 何にせよ、こういう状況になってみると、意外とコンビニにあるものが全て使えない品物に見えてくるのが恐ろしいところだ。頭の中で、何かとケチがつく。だから、中に入っても特に必需品になりそうなものを見つける事はできず、何もせず帰ってきてしまう。

297街角軍記 ◆gry038wOvE:2013/07/17(水) 21:20:41 ID:4BBi9MPo0

「そうだ……おい、そこの緑のガキ」
「……え?」
「お前、どっかから酒を探して持って来い」

 ドウコクが酒を持ってくるのに指名したのはアインハルトであった。
 周囲を見渡すと、酒が手に入りそうな場所は無く、飲食関連の商店自体が少ない。何だかわからないビルや、せいぜいブティックなどがあるくらいだろう。
 コンビニやら飲食店やら酒屋やら……というものがあった街並みは、とうの昔に見送ってしまった。
 適当な使いっ走りを使って、酒を手に入れようとしたのだ。

「……私ですか? ……わかりました」

 アインハルトは、何故自分にそれが任されたのかもわからないまま、頷く。
 仲間を殺せ……とかそういう命令ならともかく、大きく抵抗のある命令ではなかった。
 強いて言えば、状況がどうあれ窃盗に近い事と、未成年である自分が酒を持ってくるという事が若干グレーな気がするが、文句を言えばどうなるかわからない。

「酒が来るまで俺はここにいる。……だが」

 と、ドウコクは少しそこで言葉を止めた。
 そこから先にどんな言葉が来るのか、誰も期待はしなかった。ただ、嫌な事を言うのだろうとは思っていた。

「……長くここにいるつもりはねえ。一秒でも待ってやる寛容さも今の俺にはねえと思え。逃げてもいいが、三分経つごとにてめえの仲間を一人殺す。それまでに、何でもいいから酒を持って来い。いいな……?」

 ドウコクは言う。
 そう、ドウコクが他人を逃がすわけはない。
 酒を買わせる使いっぱしりとして利用しながらも、ここに戻ってこないとか、仲間を引き連れてくるとか、そんな可能性を消し去ったのだ。
 だいたい、三分という時間自体が結構な無茶でもある。
 しかし、アインハルトは応じるしかなかった。必死でやれば、三分以内というのも可能かもしれない。おそらく口答えは許されないだろうし、全力全開を尽くせば辛うじて三分以内にはたどり着けそうだ。
 アインハルトは、すぐに覇王形態へと変身し、痛む身体に鞭を打つように走り出した。
 アインハルトが去っていくのを黙って見送った後、ドウコクはその場に座した。
 彼は時計を見ていなかった。

「……おい。どうだ? 帰ってくると思うか?」

 ドウコクは、座ってから他の連中に問うた。三分以内に帰ってくるか、ではなく……彼は彼女が帰ってくるかどうかを疑っていたのである。
 ドウコクの耳には、風都タワー跡のあたりから聞こえる戦闘音が入っていた。
 ……いや、人間である翔太郎たちにさえ、その音は聞こえている。かなり豪快に戦っているらしい。
 先ほどから聞こえているのだから、アインハルトにも聞こえていただろう。
 ほとんど激しい戦闘ができそうにない彼らがそこに向かうのは、はっきり言って命取りだ。ドウコクが翔太郎たちを連れて行こうとしている理由もだいたいわかる。

「てめえらを連れていくのは、てめえらが逃げないように……そして、盾として使えるかもしれねえからだ。わかってんだろ?」

 そう、どちらにせよ、タワー跡に向かえば大方死の未来が決まっている。
 向こうでの戦闘も、かなり高い確率で殺し合いに乗る者同士の戦闘ではないだろうか。
 テッカマンランスなる人物が殺し合いに乗っているのは確実であり、その男は単独で風都タワーを吹き飛ばすほどの猛者だ。
 そこに連れて行かれるという時点で、死刑囚が歩くのとほとんど同義に近い。
 付き従って歩いているのは、そこにたどり着くまでに何らかの方法でドウコクのもとから撤退するやり方を閃きたいからである。
 しかし、着々と風都タワー跡は近づいていた。
 そして、その間にドウコクに隙ができる事はあっても、ドウコクの妙な余裕から近づけずにいた。
 唯一、逃げる手段があるのはアインハルトである。
 今、こうして酒を買いに行けと言われて駆り出されているアインハルトは、逃げる事も容易なはずなのだ。

「……あのガキも死にたくはねえはずだ。他人の命を犠牲にしてでも逃げるのがこの場では賢明……戻ってくる事はねえだろう」

298街角軍記 ◆gry038wOvE:2013/07/17(水) 21:20:58 ID:4BBi9MPo0

 シンケンジャーが殊勝な人間というだけで、大多数の人間は外道と人との狭間にあるような冷徹さを持っている。
 十臓や太夫のような存在がその証明でもある。十臓などは、外道以上に外道らしいとまで評されたほどだ。
 人は常に、誰かを殺し、誰かを裏切り、そのたびに自分の命だけは尊重する醜い生き物である。それはどれだけ時を重ねても同じ事のはずだ。諦め、跪き、命を乞い、必死で生きようとする姿こそが、ドウコクが見るべき人間の姿のはずである。
 ……ならば、当然、アインハルトはここへは帰ってこない。
 アインハルトを選んだのは、何よりも彼女が年齢的にも、比較的未発達な精神の持ち主であり、何よりこの面子の中では黄色い髪の子供──先ほどまでは少女? ん? 今の姿は少年? どっちだかはドウコクにもよくわからなかった──と並んで、帰ってくる見込みが薄そうな人間だからだ。

「……おいおい、まるでどっかで聞いたことのある話だな」

 そんなドウコクに対し、翔太郎が帽子の位置を直しながら言った。

「あ?」
「そんな外見で、『走れメロス』ごっこか? 似合わないぜ」

 そのドウコクのやり方が、『走れメロス』という小説のあらすじに似ているような気がして、翔太郎はそう言った。
 ドウコクがやっている事は、王様。アインハルトがメロス。ここにいるほかの連中がメロスの親友のセリヌンティウス。そう見立てるとわかりやすい。
 自分の命の危険を引き替えに、セリヌンティウスを助けるか。あるいは、自分は逃げてしまって、セリヌンティウスには死んでもらうか……その二択の中で走っているのだ。

「その走れナントカとかいうのは知らねえが……随分と気に入らねえ態度だな。上から見下ろされるっていうのが、こんなに不愉快な物だとは知らなかったぜ」

 ドウコクは座し、翔太郎は立ってドウコクを見つめる。ドウコクは彼に目を合わせようとはしないが、彼の影が自分の身体にかかるのはわかった。
 見下ろされる感覚がこんなにも不愉快だとは、ドウコクにはわからなかっただろう。
 ドウコクは座ったまま、翔太郎の反対方向を見た。背を向けているとはいえ、神経を巡らせているドウコクの背中は襲える風格ではなかった。

「……もしそれが賭博なら、俺の勝ちだぜ、ドウコク」

 次に口を開いたのは源太だった。

「……前に、俺の知り合いがとてつもなく強え敵と戦った時、あの娘は向かっていった。だから、アインハルトは逃げねえ奴なんだよ。俺はもう答えを知っちまってるんだ。あの娘にはたぶん、逃げるなんて選択肢は浮かんですらいない」

 乱馬とダグバの戦いの時、アインハルトが乱馬との約束を破ってでもダグバのもとへ向かっていったのを、源太はよく覚えている。それを考えると、やはりアインハルトはこういう場では絶対に逃げない少女なのだと思う。
 年の割に、いや、その年ゆえか──芯が強い……その一点に尽きる。
 だから、時間制限以外は心配はなかった。
 その三分という時間制限も、ドウコクがじきじきに敷いた割には、比較的寛容にみられる部分だろう。彼が試しているのは、「帰ってくるか、帰ってこないか」──その部分のみで、それ以外の部分はある程度のさじ加減で決まる。
 きっと、十分ほど待ってこなければ、興味を失って先を行き、適当に店を襲って酒を手に入れるに違いない。
 現に、もうすぐ三分という時間は経とうとしているのだ。

「わからねえな……なんでただの寄せ集めの分際で、ついさっき知り合ったような奴を信用できる? いつ殺されるかもわからねえこの状況で、そいつが裏切らねえと断言できるのか? バカそのものだなてめえらは」

 ドウコクは、一滴も絞り出せないほど飲みつくした酒瓶を地面に叩きつけた。砕け散った酒瓶に、一瞬場の空気が凍る。
 何かが逆鱗に触れただろうか。……まあ、逆鱗に触れるような事ばっかり言っていたのも事実だが。
 それでも、これだけ急にこんな事をするのだから、流石に背筋も凍る。

「……まあいい。今はまだてめえらを殺す気はない。今必要なのは酒だ。イラつく時は、人の悲鳴を聞くか、酒を飲むかしかねえ……そして幸運にもてめえらは酒を持ってた。それだけの事だ」
「悲しい奴だな」
「……それが外道だ」

 ドウコクが立ち上がると、彼の視線の先に一人の女性の影が映った。
 そのシルエットは、変身したアインハルトのものである。長い髪を揺らしながら、胸に何本も酒瓶を抱えて、こちらへ走ってくる。
 酒の種類はわからないらしく、瓶の大きさもまちまちだ。

299街角軍記 ◆gry038wOvE:2013/07/17(水) 21:21:18 ID:4BBi9MPo0

「だいたい三分か。……確かに博打なら俺の負けだ。だが、いつかは誰かが裏切り、俺に『仲間の命はやるから自分の命を助けてくれ』と命乞いをする。所詮は寄せ集めだ」
「……仮に俺たちが寄せ集めだとしても、裏切る奴はいねえ。……簡単さ。いま仲間じゃないとしても、裏切らずに一緒に過ごせばすぐに仲間になる……そんな予感があるから、俺たちは助け合うんだ」
「そうだ、俺たちは全員、何かと戦ってきた変身ヒーローに変身ヒロインだからな。一緒に過ごした時間が短くても、勝手に伝わってくるものがあるんだ」

 翔太郎と源太にはそんな確信があった。
 仮面ライダーも、シンケンジャーも、プリキュアも、魔法少女も……あらゆる敵と戦う宿命の中で、自分なりのやり方で生き抜いてきた。
 仲間がいる者もいれば、いない者もいる。
 他人を犠牲にした者もいれば、他人が犠牲になる事だけは避け続けた者もいる。
 しかし、ヒトでないモノ──ヒトに限りなく近いながら、ヒトではなく、別の物に変身してしまったモノとしての共感が根っこにあるのだ。
 姫矢や霧彦のような者もまた、そうだったのかもしれない。
 ゆえに、短い期間であれ、稀有な存在同士が巡り合うシチュエーションは、彼らに共感を与えていた。

「酒を飲み終わる頃には、向こうの戦いも終わっちまうか……?」

 ……しかし、そのあたりの台詞はドウコクとしては、イラつくだけなので、翔太郎と源太のキザな台詞は無視していた。
 会話として成立しておらず、ただ自分の意見を投げかける形になっているので、このままだと会話のドッジボールになる。
 ドウコクは、敵にボールを投げた後、そのまま悠々とその場から撤退していたのである。
 翔太郎と源太は、気恥ずかしさを感じながらドウコクを睨んだ。







 時を少し遡り、話はまた別の視点に入る。
 つい数秒前まで立ち止まっていた少女──アインハルト・ストラトスは、立ち止まって目の前の少女──といっても、アインハルトより年上だが──に声をかけていた。


「────あの」


 と、アインハルトが声をかけた瞬間、おそるべきスピードでその少女はアインハルトに抱き着いた。
 一瞬、何が起こったのか理解できず、言葉を失ったが……どうやらアインハルトを殺しに来たわけではないらしい。

「良かった!! 人がいた!!」

 ……その少女・キュアベリーが、かすれた声で、しかし嬉しそうに声をかける。
 アインハルトはこの人を知っていたし、この人もアインハルトを知っていた。
 蒼乃美希ことキュアベリーとは面識も恩もあったので、姿を見つけるなり、アインハルトは大きな声で彼女を呼んだが、その結果、この反応である。
 想定外かつ、理解不能な反応で、アインハルトは硬直していたが、とりあえずキュアベリーの方の力が抜け、勝手にキュアベリーがその場にへたり込んだ。
 時間がないのはわかっているが、唖然としたアインハルトは思わず彼女に訊く。

「……あの、美希さん、どうしたんですか?」
「話せば長くなるんだけど……」
「じゃあいいです! すみません! ちょっと急いでるんで!」
「あーっ!! 待って待って! 長くならないから!! 禁止エリア教えて!!」

 とりあえず、美希は単刀直入に聞きたいことを聞いた。
 これが唯一の生命線。
 禁止エリアがわからない限り美希は死んでしまうリスクを持ったまま歩くことになる。
 やっと、一人ここに人がいるのがわかってホッとしたのだ。しかも、幸いにも敵ではなかった。
 一人が二人になっただけなのに、ものすごく安心した気持ちである。
 ……むしろ、世界に一人取り残されたのではないかとさえ思っていたので、こうして人の温かみを感じる事が出来るのはうれしい。
 当のアインハルトも先ほどの美希並みに焦っているのだが。

300街角軍記 ◆gry038wOvE:2013/07/17(水) 21:21:46 ID:4BBi9MPo0

「……じゃあ私の支給品あげますから、ちょっとその中身を見てください」
「え? それいいの? あなたは……」
「私がここを出たら、なるべく私から離れて、私の後ろをついてきてください。禁止エリアは近いですが、私の後ろを追えば大丈夫です。出来れば、理由を話したいんですが、時間がないので」

 と言うなり、アインハルトは目の前のコンビニに入って、籠を取ることもなく、一番奥の、酒が置いてある区画に直行した。
 とりあえず、冷えているビールのようなものは冷蔵庫を開ける手間があるので、野ざらしな酒を適当に取っていく。それぞれそんなに本数もないので、手前にあるのを適当に取る。
 その姿を見て、美希は唖然としている。

「ねえ、そのお酒……」
「ちょっと必要なんです。すみませんがどいてください」
「あ、ちょっと……」

 アインハルトはベリーを押しのけて、自動ドアが開くのを待った。
 そのまま破壊した方が少しは時間が稼げるかもしれない。その僅かな一瞬の間に、アインハルトは時計を見る。
 出発時に見た時計の時間から、まだ一分しか経っていなかった。どうやら、思ったよりも距離は近かったらしい。
 自動ドアが開き、アインハルトに続いてキュアベリーがそれをくぐる。
 アインハルトは、すぐにそこで立ち止まり、キュアベリーの方に向きなおした。

「……まだ少し時間があります。簡単に説明しますから、私の言う事を訊いてください」

 余裕があるぶん、アインハルトは先ほどに比べて落ち着いて、キュアベリーに話しかける事が出来た。

「まずは、先ほどの無礼をお許しください。しかし、……私と私の仲間たちは今、少し厄介な状況に巻き込まれてて……」
「一体どうしたの……? 乱馬さんは……それに、さっきの放送……テッカマンランスって……」
「すみませんが……その辺りの事情もまた後で説明します。今、私たちはある怪人の指揮下にあり……残念ながら現状で私たちの力が及ばず、その怪人の言うことを聞くしかない状況です」
「……本当に深刻な事情みたいね」
「ええ。ですから、美希さんはなるべく、その怪物に気づかれないように私たちの後をついてきてください」
「でも、放っておけるわけがないじゃない……」
「怪人が美希さんの存在に気づいていないのはチャンスです。ですから……」

 それから少しだけ話して、アインハルトは走り出した。







 明堂院いつきは、佐倉杏子の姿に少しの違和感を感じていた。
 いつきにとって、この中で一番親しいのはアインハルトで、他の人たちはほとんど初対面だったので(アインハルトともほとんど初対面だが)、仲間の状態を見るにはまだ観察眼が発達していなかったかもしれない。
 しかし、それでも杏子という少女の異常はわかっていた。
 ドウコクに対して、並々ならぬ不快感を持っている──気持ちはわからないでもないが、それは、翔太郎や源太、アインハルトやいつきの持っている不快感の比ではないだろう。
 最も嫌いな教師の授業を聞いている不良生徒のようだ。
 杏子の性格がよくわかる表情である。

 また、それ以上に気になるのは、アインハルトの挙動である。先ほど、帰ってきてからアインハルトの姿は妙であった。
 それ以前までのように、ドウコクに屈する罪悪感のようなものを消し去っている。
 目つきが違う。
 ドウコクの命令を忠実に聞く事への負い目みたいな、そんな自信のなさそうな表情が顔から消えていたのだ。
 あの僅かな間に、何かあったのだろうか?

「ねえ、何かあったの……?」

 いつきは小声でアインハルトに訊く。
 身長差が多少あるため、少し不格好にはなったが、ドウコクは気づいていないらしい。
 それならば……と、アインハルトの反応を待つ。

「……少し待ってください。詳しい事は後で言います」
「にゃー」
「……あ、かわいい。……じゃなくて、えっと……」
「ところで、いつきさん。以前使用した、ひまわり型のバリアのような魔法はまだ使えますか?」
「え? うーん……魔法とは違うけど、変身すれば使えるはず……」
「じゃあ、いざというときに、少し手助けをしてください」

 と、それだけ言った時、ひそひそとした会話を中断させたのは、またしても先ほどと同じ場所から聞こえる音声であった。

『聞こえるかな……リントのみんな……僕の名前はダグバ────』

 マイクを使ったような音声で、まるで不慣れな日本語を使うようにゆっくりとした穏やかな口調で、何者かの放送が聞こえ始めた。
 しかし、拡声器を使って人を集めようとする人間がこうも多いと、やはり聴覚で何かを捉える事は相当大事なのだろうと思えてくる。
 こういう目立つ行為をする人間がやたらと多いのは不思議だ。

301街角軍記 ◆gry038wOvE:2013/07/17(水) 21:22:16 ID:4BBi9MPo0

「……ダグバ、だと……!?」

 翔太郎が驚愕する。
 そう、この声は明らかにテッカマンランスのそれではない。それだけは一瞬でわかった。
 その後、どこで聞いた声だったかを思い出そうとした。その矢先に、彼が名乗った名前はダグバ──それで思い出した。
 ン・ダグバ・ゼバ。
 先ほどの激戦の相手だろうか。
 その答えは、立ち止まってその声を聞いていくとすぐにわかった。

『────ここに来て、そのリントを倒したばかり……でもまだ殺してはいない……』
「……そのテッカマンランスとかいう奴は、やられたらしいな」

 あれだけ威勢よく声をあげ、風都タワーを破壊したテッカマンランスという男に興味があったが、そのテッカマンランスを倒したダグバという者は、それ以上の力を持っているらしい。
 そして、驚くべきはその所要時間。テッカマンランスの放送から、────十分足らずだ。
 まさに弱肉強食というところか。風都タワーを破壊し、おそらく多くの命を奪ったであろうテッカマンランスは、こうも早く倒された。が、上には上がいるのがこの世の理。
 ────杏子とせつなが協力しても勝てなかったテッカマンランスは、更に強力な存在によって、いともあっさり倒されたという事だ。
 その強さの程は、おそらく杏子の想像の範疇を遥かに超える。あの時──杏子がウルトラマンとなる前にウルトラマンだった男・姫矢准が戦い、勝てなかった相手でもある。
 放送は中途半端なところで途切れたが、向こうの実情がどうなっているのかは不明だ。テッカマンランスの反撃でも受けたのか、第三者による妨害か──とにかく。

「……ダグバ」

 そこにいるほとんど人間は、その戦士の名前だけで震えるほど、その戦士の恐ろしさを知っていた。
 アインハルトと源太と翔太郎は実際に戦ったが、圧倒的な戦闘力を前に何もできなかったし、直接的には交戦していないいつきでさえ、周囲からの伝承と反応だけでも充分にその恐怖が伝わってきた。
 何せ、これだけの戦士すべてが微かにでも手の震えを起こすほどの相手である。

「ダグバってのは、余程強えらしいな」

 ドウコクは、戦闘こそしていないものの、一応ダグバの姿を知ってはいた。
 姫矢の戦闘を少しでも見ていたドウコクは、ダグバの姿は見ていた。その戦闘については詳しくは見ていなかったが……。

「……まあいい。どれだけ強えかは知らねえが、てめえらと一緒に纏めて叩き潰してやる」

 ドウコクにとって、首輪を解除できない人間は邪魔だ。
 ほとんどランダムに邪魔者を排除し、気の乗るままに他人を殺す。
 暴れる時は傍若無人の限りを尽くし、休む時は謀反者を赦すほどの裁量を見せる。
 こうして敵を束ね歩くのは、此処にいる者すべてに対する憤りを使えなさを嘆いたためであり、こうしてテッカマンランスとダグバの元に向かうのは、より多くの厄介者を纏めて消し去るためだ。──放っておくのも一向だが、面倒な相手が近くにいるなら、今のうちに消しておくのがいい。
 あるいは、こうして向かった先に昇竜抜山刀の持ち主がいるかもしれない。あれを持っている参加者がいるなら、それを奪い返さなければならないのだ。

「……行くぞ」

 ドウコクが歩き出す。
 それに追従して、他の面子も歩き出す。
 その顔の多くには不満げな顔が描かれているが、付き従うしかなかった。
 何の不満もぶつける事ができないまま、彼らの耳に入る戦闘音は大きくなっていった。
 雷鳴が鳴り、雲行きさえ怪しいその場所は、まさに地獄に近づいているイメージだった。
 その光景は異様そのもの。
 そこだけ天気が歪められているかのような──集中的な落雷の数である。

 そして────

「ボルテッカァァァァァ!!」

 ────叫び声が木霊し、彼らの視界を強い煌めきが支配する。
 閃光。
 雷の一瞬の光などとは違い、前方を真っ白に染め上げ、ビルも地面も空も街も何もかもを一色に同化する巨大な光であった。
 それがこれほど巨大に見えたということは、ほとんど真ん前まで来ていたという事である。

302街角軍記 ◆gry038wOvE:2013/07/17(水) 21:25:43 ID:4BBi9MPo0

 建物を幾つ挟めば風都タワーの跡地がある……というあたりだ。
 あとは歩いて三分もかからないだろう。


「────覇王形態!!」


 と、覇王形態に変身するアインハルト。彼女は、その閃光の中にありながら、的確にドウコクの位置を捉えていた。
 戦闘にいたドウコクの姿を見間違うはずがない。
 ドウコクの手にあった酒瓶が割れ、残っていた中身が割れる。
 背後からの突然の攻撃に、ドウコクは流石に驚愕する。

 別の戦闘に大きな動きがあった瞬間──その瞬間に、アインハルトは行動する事にしていたのだ。
 タワーが崩壊する瞬間の光。
 あれがおそらく、何らかの攻撃によるものであるというのはアインハルトも理解していた。ダグバとの戦闘時に、乱馬が同じような光を起こしたからである。
 あのエネルギーに近いものが、おそらく戦闘時に出ていた。
 そして、先ほどから、雷鳴が迸っており、近づけば目をくらませる程度の光が存在していた。……遠くであれ、目を一瞬くらませるほどの雷である。
 それは目印にもなるし、当然、ドウコクはそれに向かって歩いていた。

 ……その攻撃の強大さは視覚的にも充分にわかる。もっと近づけば、明確に戦闘に乱入する前に攻撃に巻き込まれるであろうというのも予測可能な範囲だ。おそらく遠距離攻撃。それも、広範囲にわたる攻撃が繰り広げられている。
 おそらく、近づけば自分たちもとばっちりを食らう。────特に先頭を余裕しゃくしゃくと歩いているドウコクは。
 この一瞬で怯んだドウコクを、アインハルトは狙おうとしていたのである。
 しかし、もっと早く閃光による目くらましが起きた。
 何にせよ、戦闘地点とは距離が離れた場所で謀反を起こした方がいいに決まっている。

「今です! みなさん、変身を……」

 アインハルトは、仲間にそう促す。

「お、おう……」

 予期せぬタイミングでの謀反に他の全員が驚くが、言われた通りに変身するしかない。
 人間体の耐久性では、まずこのまま一撃でも浴びて生存する事は不可能だ。

「プリキュア・オープンマイハート!」
「一貫献上!」
「いくぞフィリップ……変身!」

 ──Cyclone × Joker !!──

 キュアサンシャイン、シンケンゴールド、仮面ライダーダブル、そして掛け声こそ出さなかったが、ウルトラマンネクサスが一瞬で変身を完了する。
 だが、ほとんど先ほどの閃光は消え、あまりにも見事にドウコクの怒りに振るう姿が見えた。
 何の策があってこのタイミングで裏切るのかはわからなかったが、他の四人はそれに乗るしかない。フィリップなどは、ここまでの状況をほとんど知らないため、完全に疑問顔だ。

「……てめえら、ここに来てこの俺を裏切るとはな……!!」

 アインハルトにとっては、一瞬でも隙ができて、そこを突いて変身することができれば充分であった。
 ドウコクの反撃が来る。それは誰にでも容易に予想がつく未来である。
 しかし、アインハルトはそれをある程度計算に入れていた。
 真っ先に狙われるのは自分である。

「いつきさん、お願いします!!」

303街角軍記 ◆gry038wOvE:2013/07/17(水) 21:26:03 ID:4BBi9MPo0

 ドウコクが剣を振るった時、アインハルトはキュアサンシャインの後方へとバック宙して移動する。
 ドウコクの剣と相対するのは、キュアサンシャイン……という形になった。

『じゃあ、いざというときに、少し手助けをしてください』

 つまり、これの事だ。
 キュアサンシャインも戦闘には慣れている。
 前方から剣を振りかぶるドウコクに対し、キュアサンシャインはサンフラワー・イージスを展開して対応する。
 ドウコクの身体が跳ね返された。

「────今です、美希さん!!」
「えっ!? ベリー!?」

 その瞬間であった。
 アインハルトしか知らない切り札が、キュアサンシャインとアインハルトの背後から猛スピードで走ってくる。
 それはキュアベリーである。
 ある程度の距離をキープしつつ、アインハルトたちを追っていたキュアベリーは、ここで出てくる事になったのだ。
 キュアサンシャインは驚きながらも、サンフラワー・イージスを解除し、キュアベリーが飛び上がる道を作り上げた。

「なんだ、てめえは……!!」

 イレギュラーな戦士の参戦に、ドウコクは驚愕する。
 蒼の戦士が不意に現れ、それがドウコクのペースを乱す……というのは、本来なら将来的にドウコクを死へと導く戦法だった。
 背後から現れたもう一人の戦士の存在を知らないドウコクは、身動きもとれないまま、その右腕にキュアベリーのキックを受ける。
 彼女の蹴りを受け、ドウコクの右手から降竜蓋世刀が吹き飛んだ。彼の得意武器である剣が彼の手から放たれれば、ドウコクは丸腰同然である。
 その様子を見るなり、キュアベリーはアインハルトたちのもとへと跳び跳ねながら優雅かつ華麗に戻る。近くにいたままでは危険なのは承知だ。

「……なんか知らねえが、とにかくチャンスができたみたいだぜ、フィリップ!」
『ああ!』

 ──Heat× Trigger !!──

 ダブルは即座にヒートトリガーに変身し、火炎の弾丸で次々とドウコクを狙い撃つ。
 そこで出来た隙をついて、ネクサスはエネルギーを溜めている。
 ドウコクの背後には誰もおらず、遠慮なく遠距離技を放てる状況なのである。

 ──Trigger Maximum Drive──

「「トリガーエクスプロージョン!」」
「花よ舞い踊れ! プリキュア・ゴールドフォルテバースト!」
「デュアアアアッ!!」

 突然の出来事に対応しきれないドウコクに対し、ウルトラマン、仮面ライダー、プリキュアによる攻撃の雨が降り注いだ。
 流石のドウコクも怯むほどに、その威力は強烈である。
 本来、単体で受けても強大なパワーを持つはずの必殺技の数々が、同時にはなたれ、ドウコクを射止めているのだ。

「こいつはオマケだ!!」

 ただでさえ一瞬でダメージを負い、意識が朦朧とし始めているドウコクのもとに、再び小さな閃光──。
 シンケンゴールドが持っていたスタングレネードによる攻撃である。
 ドウコクの視界は真っ白になり、攻撃は来るのかと身構えた。

 しかし、ドウコクの視界が戻った頃には、既にそこには誰の姿もなかった。

304街角軍記 ◆gry038wOvE:2013/07/17(水) 21:26:26 ID:4BBi9MPo0

 最後の一撃も含め、彼らは逃走のための策を練っていたのである。
 当然だ。このまま戦ったところで優勢にはならないし、仮にドウコクに勝ったとしてもすぐ近くに別のマーダーがいるという状況。
 ドウコクをどこまで打倒しても、次にはダグバとテッカマンランスが待ち受けている。
 そんな状況下で、まともに戦えるわけがない。撤退は良策に違いない。

「チッ……奴らの息の根を止めるのはお預けか……」

 ドウコクは心に強い苛立ちを感じつつも、彼らが一応、自分の手から上手く逃れた事を少しは心の中で賞賛している。
 ここでドウコクを倒すなどという愚かな戦法に走らない程度には、彼らも利口であるらしい。

「……まあいい。いくらでも相手はいる」

 ドウコクは先ほど吹き飛ばされた降竜蓋世刀を拾い上げながら呟き、そしてそこにいる戦士に語りかけた。

「まずは……てめえだよな」







「……はぁ……はぁ……何とか逃げられたみたいだな」
「ったく……こっちも焦ったぜ……策があるなら言えよ!」
「……言える状況がなかったので」

 策というには少し成功率も低いが、それでも賭けられるのは僅かでも可能性がある道。
 ドウコクが酒を飲んで酔っている事や、前方での戦闘がそれなりに大規模である事を考えると、アインハルトの中での成功率は70パーセント程度はあった。
 何らかの隙ができる事は、ドウコクの調子が少し変わっている事からも読めたし、キュアベリーの登場を予期していない限りは充分に対応可能な戦法であった。
 そんな事よりも問題となるのは、他の全員がどの程度アドリブに対応できるかという事。
 長々と説明できる時間もなく、また悟られないようにしなければならない……という状況だったので、少し心配ではあった。しかし、アインハルトは彼らが戦闘においてプロである事に賭けたのであった。
 集団戦では、このように一瞬でも隙をついて行動し、仲間の意図する方向に進めていくことが重要となる。

「……まあ、ひとまずは警察署に向かうか。てか、あんなところで油売ってねえで、さっさと警察署に行かなきゃならねえ……」

 向こうでまた、危険人物の対処を行う必要があるのだ。
 孤門やヴィヴィオなど、警察署に残っている人間との合流が先決である。

「ところで、アンコ。さっきから言ってるが、どうしてお前がその力を持ってるんだ?」

 翔太郎が杏子に訊く。

「……」
「……」
「……」
「……」
「にゃー」

 ……源太が、美希が、いつきが、アインハルトが、アスティオンが、きょろきょろと周囲を見回した。
 美希はアンコというのが誰だかわからないので、特にきょろきょろと見回している。
 が、翔太郎が誰に向けて話しかけているのかがわからなかった。

「……いねえじゃねえか!!」
『翔太郎……どうやら、杏子ちゃんはあの場に残ったみたいだね』
「あのバカ!!」

 あの閃光の中、源太とアインハルトの誘導を頼りに同じ方向に逃げた面々だったが、全員いるかの把握はとれていなかった。
 そう、佐倉杏子の場合──。
 血祭ドウコクに対しての、そしてテッカマンランスに対しての恨みが強すぎた。
 少し戦った程度ではない。この二人によって、この場で出会った仲間を殺されているのだ。
 その結果、彼女は撤退をしないという選択肢を選んだのである。

「くそっ……」
『どうする? 翔太郎』
「あいつ一人で敵に敵うとは思えねえ……とにかく、あいつを手助けして連れ戻さなきゃな」

 翔太郎とフィリップが言うが、一方で。

「……だが、一刻も早く警察署に向かわねえと」

 と、源太も言う。
 そちらも大事だ。全員で引き返すわけにはいかない。

「……わかった。先にみんなで警察署に向かえ。“俺達”が“二人”で引き返す」

 翔太郎は腰に巻いたダブルドライバーの事を強調するように言った。
 流石は二人で一人の仮面ライダーこと仮面ライダーダブルである。
 事情を知らない美希がひどく混乱している。いつきも詳しくは知らないのだが、放送の段階からダブルドライバーに備わった特殊な妖精(?)みたいなものがフィリップなのだと認識していた。

305街角軍記 ◆gry038wOvE:2013/07/17(水) 21:27:01 ID:4BBi9MPo0

「本当に一人……じゃなくって……二人で大丈夫なのか?」
「わざわざ危険な場所に何人も来る必要はねえ……それに」
「それに?」
「俺も丁度風都タワーをブッ壊した奴には腹が立ってるんだ。ついでにブチのめしてくる」

 翔太郎もまた、ダグバやテッカマンに対する因縁の持ち主である。
 テッカマンブレード──相羽タカヤとは一時期合流しており、テッカマンランスについても聞いている。
 ダグバをはじめとするグロンギにも敵意があったし、杏子とも親しかった。何より翔太郎はそいつらが街を荒らしている事が許しがたかったのである。

「……ってわけだ、レディの護衛は任せたぜ、寿司職人」

 翔太郎は、源太に対して気障にそう言うと、ジョーカーメモリを取り出した。

「いくぞフィリップ!」
『準備はいいよ、翔太郎』

 ──Cyclone × Joker !!──

 仮面ライダーダブルへと変身した翔太郎は、そのまま疾風の如き速さで来た道を戻っていった。
 ともかく、これでこの場にいるのは源太、美希、いつき、アインハルトになったわけだが……。

「……えっと……美希さん。デイパックを」

 アインハルトは、美希と一時的に交換していたデイパックを返す。それと同時に、美希はアインハルトに自分のデイパックを返した。
 美希がアインハルトの地図を確認するため、ともかく一時的に二人はデイパックの交換を行っていたのだ。アインハルトが美希のデイパックを受け取ったのは、ドウコクに怪しまれないためというのが大きい。
 美希はドウコクたちを追いながらデイパックを確認したため、禁止エリアに関しても把握しており、今は少し安堵している。

「……それで、一体どうなってるの? 乱馬さんたちは……? 警察署にいたんじゃないの……?」

 美希が訊くと、アインハルトがその疑問に対して答え始めた。
 乱馬の死に様やそこからのあかねの動向などを聞き、放送の内容を詳しく聞いた美希は、絶句する事になった。



【1日目/日中】
【G-8/市街地】

【梅盛源太@侍戦隊シンケンジャー】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、後悔に勝る決意、丈瑠の死による悲しみと自問
[装備]:スシチェンジャー、寿司ディスク、サカナマル@侍戦隊シンケンジャー
[道具]:支給品一式、スタングレネード×2@現実、パワーストーン@超光戦士シャンゼリオン 、 ショドウフォン@侍戦隊シンケンジャー、丈瑠のメモ
[思考]
基本:殺し合いの打破
0:翔太郎や杏子が心配
1:警察署に向かう
2:あかねを元のあかねに戻したい。
3:警察署に戻る場合、また情報交換会議に参加する
4:より多くの人を守る
5:自分に首輪が解除できるのか…?
6:ダークプリキュア、エターナル、ダグバへの強い警戒
7:丈瑠との約束を果たすため、自分に出来ることは…?
[備考]
※参戦時期は少なくとも十臓と出会う前です(客としても会ってない)。

【アインハルト・ストラトス@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
[状態]:魔力消費(大)、ダメージ(大)、疲労(極大)、背中に怪我、極度のショック状態、激しい自責
[装備]:アスティオン@魔法少女リリカルなのはシリーズ、T2ヒートメモリ@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式(乱馬)、ランダム支給品0〜2(乱馬0〜2)、水とお湯の入ったポット1つずつ、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはシリーズ
[思考]
基本:???????????
1:警察署に向かいヴィヴィオと話をする。その後の事はヴィヴィオに委ねる。
2:乱馬の頼み(ヴィヴィオへの謝罪、あかねを止める)を果たす。
3:いつき達のような強さが欲しい
[備考]
※スバルが何者かに操られている可能性に気づいています。
※なのはとまどかの死を見たことで、精神が不安定となっています。

306街角軍記 ◆gry038wOvE:2013/07/17(水) 21:27:22 ID:4BBi9MPo0

【明堂院いつき@ハートキャッチプリキュア!】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(中)、罪悪感と決意
[装備]:プリキュアの種&シャイニーパフューム@ハートキャッチプリキュア!
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1、ふうとくんキーホルダー@仮面ライダーW、霧彦のスカーフ@仮面ライダーW、須藤兄妹の絵@仮面ライダーW、霧彦の書置き、春眠香の説明書
[思考]
基本:殺し合いを止め、皆で助かる方法を探す
1:警察署に向かう
2:沖一也、アインハルトと共に行動して、今度こそみんなを守り抜く。
3:後で孤門やアインハルトと警察署で落ち合い、情報交換会議をする。
4:仲間を捜す
5:ダークプリキュアを説得し、救ってあげたい
[備考]
※参戦時期は砂漠の使徒との決戦終了後、エピローグ前。但しDX3の出来事は経験しています。
※主催陣にブラックホールあるいはそれに匹敵・凌駕する存在がいると考えています。
※OP会場でゆりの姿を確認しその様子から彼女が殺し合いに乗っている可能性に気付いています。
※参加者の時間軸の差異に気付いています。
※えりかの死地で何かを感じました。
※丈瑠の手紙を見たことで、彼が殺し合いに乗っていた可能性が高いと考えています。


【蒼乃美希@フレッシュプリキュア!】
[状態]:ダメージ(中)、祈里やせつなの死に怒り
[装備]:リンクルン(ベリー)@フレッシュプリキュア!
[道具]:支給品一式、シンヤのマイクロレコーダー@宇宙の騎士テッカマンブレード、ランダム支給品1〜2
[思考]
基本:こんな馬鹿げた戦いに乗るつもりはない。
0:市街地あるいは警察署に戻り、放送の内容を誰かに聞く。
1:後で孤門やアインハルトと警察署で落ち合い、情報交換会議をする。
2:プリキュアのみんな(特にラブが) やアインハルトが心配。
3:相羽タカヤと出会えたらマイクロレコーダーを渡す。
[備考]
※プリキュアオールスターズDX3冒頭で、ファッションショーを見ているシーンからの参戦です。
※その為、ブラックホールに関する出来事は知りませんが、いつきから聞きました。
※放送を聞いたときに戦闘したため、第二回放送をおぼろげにしか聞いていません。
※聞き逃した第二回放送についてや、乱馬関連の出来事を知りました。





307街角軍記 ◆gry038wOvE:2013/07/17(水) 21:27:42 ID:4BBi9MPo0



「……よう、存在を忘れてるかもしれないが、俺の名はザルバ。早速だがこのアンコとかいう姉ちゃんのせいで俺の命がヤバい。誰か助けてくれ」

 と、ザルバが誰に向けてか言っている最中も、ドウコクの一振りは向かってきた。
 ネクサスは、指にはまっているそのザルバという指輪を盾にして、ドウコクの攻撃を防ぐ。
 ……ザルバは、それを察知して、ドウコクが振ってきた刃を歯で受け止めていた。

「ふぁふふぇーふぁふぇーふぁ(あぶねーじゃねえか)」
「デュアデャーデュア! デュア!(戦闘中にぶつぶつ喋ってんじゃねえ! 気が散る!)」

 ネクサスは、そのままドウコクの腹部にパンチを見舞った。
 ドウコクは剣ごと吹き飛び、ザルバは歯を元の状態に閉じる事に成功した。

「……ったく、なんでわざわざ残ったんだ? 一人じゃ勝てねえ相手なのはわかるだろ」

 ザルバの問いかけを、ネクサスは無視した。
 それに見合うだけの理由が、佐倉杏子にはあったのである。
 少なくとも、せつなと姫矢が報われるには、確実に倒さなければならない相手たちが目の前にいるのだ。
 逃げられない。
 他の誰が逃げても、杏子だけは逃げるわけにはいかないのだ。

(こいつらは倒さなきゃならない……せめて、もっとデカいダメージを与えてやらねえと……)

 撃退には至らずとも、せめて後に繋がるほどのダメージを与えたい。
 それが贖罪に繋がるはずなのだ。

「わざわざ一人で残ってくれてるとは、勇気のある奴だな。命が惜しくねえのか?」
「デュア!」
「駄目だ、何を言ってるのか全然わからねえ」

 何を言っているかは全然わからないが、ドウコクはとにかくそれを殺す事にした。
 そこにいるのが意思ある人間である事だけはドウコクもよく知っている。
 ドウコクに対する反抗心むき出しだった少女である。

「……オイ、ちょっと待てよ」

 ……と、その時、ドウコクの足元に幾つもの弾丸が様々な方向から飛び交い、ドウコクがネクサスのもとに走っていくのを妨害した。
 ネクサスが振り向くと、そこにはまた別の戦士がいた。

「一人じゃねえぜ、ここにあと、もう二人いる……」

 左翔太郎とフィリップ──仮面ライダーダブルであった。
 その姿はルナトリガーへと変わっており、それがネクサスの真後ろからドウコクの足元を撃つのを成功させていたのだ。

「……うん……? 俺は無視か?」

 ザルバがぼそっと呟いた。




【1日目/日中】
【H-8/市街地】

【左翔太郎@仮面ライダーW】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、照井、霧彦の死に対する悲しみと怒り、仮面ライダーWに変身中
[装備]:ダブルドライバー@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式、ガイアメモリ(ジョーカー、メタル、トリガー)、ランダム支給品1〜3(本人確認済み) 、
    ナスカメモリ(レベル3まで進化、使用自体は可能(但し必ずしも3に到達するわけではない))@仮面ライダーW、ガイアドライバー(フィルター機能破損、使用には問題なし)
[思考]
基本:殺し合いを止め、フィリップを救出する
0:杏子を助け、可能ならドウコクやテッカマンランス、ダグバを倒す。
1:風都タワーを破壊したテッカマンランスは許さねえ。
2:あの怪人(ガドル、ダグバ)は絶対に倒してみせる。あかねの暴走も止める。
3:仲間を集める
4:出来るなら杏子を救いたい
5:泉京水は信頼できないが、みんなを守る為に戦うならば一緒に行動する。
[備考]
※参戦時期はTV本編終了後です。またフィリップの参戦時期もTV本編終了後です。
※他世界の情報についてある程度知りました。
(何をどの程度知ったかは後続の書き手さんに任せます)
※魔法少女についての情報を知りました。

308街角軍記 ◆gry038wOvE:2013/07/17(水) 21:28:32 ID:4BBi9MPo0

【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)、ソウルジェムの濁り(小)、自分自身に対する強い疑問、ユーノとフェイトを見捨てた事に対して複雑な感情、マミの死への怒り、せつなの死への悲しみ、ネクサスの光継承、ドウコクへの怒り、ウルトラマンネクサスアンファンスに変身中
[装備]:ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ、エボルトラスター@ウルトラマンネクサス、ブラストショット@ウルトラマンネクサス
[道具]:基本支給品一式×3(杏子、せつな、姫矢)、魔導輪ザルバ@牙狼、
    リンクルン(パッション)@フレッシュプリキュア!、乱馬の左腕+リンクルン(パイン)@フレッシュプリキュア!、ランダム支給品0〜1(せつな)
[思考]
基本:姫矢の力を継ぎ、人を守った後死ぬことで贖罪を果たす 。
0:ドウコク、及びテッカマンランスを倒す。
1:警察署に向かい孤門一輝という人物に会いに行く。またヴィヴィオや美希にフェイトやせつなの事を話す。
2:自分の感情と行動が理解できない。
3:翔太郎に対して……?
4:あたしは本当にやり直す事が出来るのか……?
[備考]
※参戦時期は6話終了後です。
※首輪は首にではなくソウルジェムに巻かれています。
※左翔太郎、フェイト・テスタロッサ、ユーノ・スクライアの姿を、かつての自分自身と被らせています。
※殺し合いの裏にキュゥべえがいる可能性を考えています。
※彼女の行動はあくまで贖罪のためであり、自分の感情に気づいたわけではありません。

【血祭ドウコク@侍戦隊シンケンジャー】
[状態]:ダメージ(中)、苛立ち、胴体に刺し傷
[装備]:降竜蓋世刀@侍戦隊シンケンジャー
[道具]:姫矢の首輪、支給品一式、ランダム支給品0〜1
[思考]
基本:その時の気分で皆殺し
0:目の前の2人を殺した後、テッカマンランスやダグバを倒す
1:首輪を解除できる人間やシンケンジャーを捜す
2:昇竜抜山刀を持ってるヤツを見つけ出し、殺して取り返す
3:シンケンジャーを殺す
4:加頭を殺す
[備考]
※第四十八幕以降からの参戦です。よって、水切れを起こしません。


※アインハルトがその辺のコンビニから適当に持ってきた酒は全部キュアベリーが破壊しました。破片はH-8のどっかに落ちてます。



【支給品解説】
【バーボン@宇宙の騎士テッカマンブレード】
東せつなに支給。
バーナード軍曹が飲んでいた酒。配置されているコンビニ等にも置いてあるが、バーナード軍曹が飲んでいるのと同じ瓶と銘柄はこの会場ではオンリーワン。

309 ◆gry038wOvE:2013/07/17(水) 21:29:33 ID:4BBi9MPo0
投下終了です。

>>293の「Triger」はミスです。

310名無しさん:2013/07/17(水) 21:38:41 ID:6NvZYoS20
投下乙です。
ドウコクはここでも酒を飲むかww にしてもザルバは正論を言ってくれるな、酔っ払いって決まって厄介だしww
それにしてもドウコクはやっぱり強いな。数の不利をこんな簡単にひっくり返すなんて。
で、ドウコクとの戦いを選んだ杏子とWはどうなるか……

311名無しさん:2013/07/17(水) 23:03:36 ID:9BbHfMbs0
投下乙!
ドウコクやべえなあ、全員疲労がたまってたとはいえ圧倒的じゃねえか
アインハルトの策でうまく逃げたけど、残った杏子と翔太郎はどうなるのか…

312名無しさん:2013/07/18(木) 11:30:50 ID:ro8myNkg0
あ、ちなみにスタングレネードは今回一つ消費したみたいなので所持数は1では?

313名無しさん:2013/07/18(木) 16:48:33 ID:IQDyg34.0
投下乙です

束になってもドウコクに勝てないだろうなあと思ったら強すぎだぜw
よっぱらいのおっさんはワロタw だが状況はまだまだ悪い
杏子とWは残ったが…

314 ◆gry038wOvE:2013/07/18(木) 20:08:32 ID:vVM1tAsU0
>>312
ミスです。残り1です。

315 ◆gry038wOvE:2013/07/18(木) 22:38:05 ID:vVM1tAsU0
予約分を投下します。

316A New Hero? ◆gry038wOvE:2013/07/18(木) 22:38:52 ID:vVM1tAsU0


 一条薫と響良牙は、グロンギ遺跡のある山頂まで来ていた。
 わざわざ山を登る必要はなかったが、周囲に誰かがいないか確認する意味も含めて、一条と良牙はこの遺跡を通りがかった。
 一条にとっては、一度訪れてみても良い場所だ。未確認生命体の別称であるグロンギの遺跡といえば、五代が身に着ける事になったアークルが掘り出された始まりの地に違いない。
 ……少しの間なら、思い出に浸るのも良い。勿論、あまり長い時間浸る気はない。
 それに、グロンギ遺跡があるとして、それが冴島邸にようにほとんどあの場所を再現したものであるとしたら、どの程度近いものなのか確認したかったのである。

 ────だが

「……妙だ」

 一条は呟く。
 グロンギ遺跡と名付けられたマップの施設は、おそらく九郎ヶ丘の遺跡だろうと考えていた。超古代──かつて平和な民族・リントでありながら、グロンギ族に立ち向かった勇敢な男がグロンギとともに封印されていた場所に違いないだろう、と。
 しかし、ここは────一条の知る九郎ヶ岳の遺跡ではない。
 一条も九郎ヶ岳にあるグロンギの遺跡には何度か立ち寄ったので、あの場所がどんな場所であったかはよく覚えているのだ。
 五代と最初に出会った場所でもあり、何度か調査のために訪れたのだから、忘れるはずもない。
 全く違う。
 注意して見ればよくわかるだろう。
 確かにリントの文字が点在し、棺も祀られているが、これはあの遺跡とは別物だ。

「ああ、確かにこの棺……誰かにブッ壊されてるな。先に誰かがブッ壊していったのかもしれん」

 良牙はそう言う。
 一条が妙だと言ったのは全く別の事だったが、まあ無理もないだろう。良牙は一条と同じ世界の人間でもないし、当然一条の知るグロンギ遺跡がどんなものであるかも知らない。
 それに、一条としては良牙の言う破壊跡も気になってはいた。この遺跡に荒らされた跡があり、本来戦士が眠っているはずの遺跡が破壊され、中のミイラが剥き出しになっていたのである。
 これは果たして、元からこうなっていたのだろうか……?
 何者かが破壊したのではないか……?

 ──だとすれば

 ふと一条の背筋に冷や汗が流れ、一条は闇の向こうにライトを照らした。
 グロンギが現代に復活した理由──それは九郎ヶ岳の遺跡で、棺の蓋が開けられたからではないか。
 この遺跡を誰かが人為的に開いたならば、此処に新しく復活したグロンギがいてもおかしくはない!

(……………………どうやら、誰もいないようだな」

 ……しかし、未確認生命体が現れている様子はない。一条はほっと胸をなでおろした。
 どうやらその心配は無用だったらしい。
 流石に、あれだけの敵が何体も現れてしまえば、一条としても難しいところだ。

「おい、これ……」

 良牙がまた何かに気づいたらしく、棺の中のミイラを指差している。
 一条がそこに近づいて、目を凝らした。
 良牙が指差していたのは、戦士の腹部であった。
 戦士の腹──そこには、当然の如く、それが巻かれていた。

「……クウガのベルトと同じものだと!?」

 そう、アークルが巻かれていたのである。
 アークル──古代の戦士から五代雄介へ、五代雄介から一条薫へと受け継がれたこのベルトが、何故ここにあるのだろう。アークルは一条の身体の中にあるはずだ。
 これは果たして、この世に幾つも存在しうるものなのだろうか……?
 確かに、このゲームの参加者はそれぞれが全く違う世界の出身であるため、主催者側が似通った世界からアークルを持ち出す事も難しくはないだろう。何なら、同一人物を連れてくる事だって可能かもしれない。
 ……が、

317A New Hero? ◆gry038wOvE:2013/07/18(木) 22:39:10 ID:vVM1tAsU0

「……無茶苦茶だ。こんなものが幾つもあるなんて……」

 一条は額に手を当てて、落胆したように呟く。
 古代リントがグロンギに対抗しうる術として作られたのがこのアマダムという霊石によるベルト──アークルである。
 クウガという戦士に変身する術を閉じ込めた不思議な霊石であるが、これははっきり言ってしまえば、暴力のための兵器なのである。
 これが無いに越した事はない。
 無いに越した事はないのだが、それでもグロンギと戦うためには必要不可欠なモノだった。

「……どうする?」
「……念のためだ。我々の手元に置いておこう」

 一条はすぐにそう答えた。
 どうやら、ダグバやガドルといった者はまだここには来ていなかったらしい。
 彼らが来ていたなら、かつてダグバがそうしたように、彼らはベルトの装飾品を破壊しようとするだろう。
 これが人類にとって希望となりうる事はまた間違いようのない事実である。
 ダグバたちに破壊されてはならない品なのだから、今のうちに確保しておかなければならない。

 一条たちは丁寧にアークルをその戦士の身体から取り出した。
 何故ここにアークルがあるのか。
 一条の身体の中にもアークルがあり、この右手にもアークルを持っている。……不思議な気分だ。

「帰ったらこれも調査してもらわないとな……」

 榎田や椿、桜井など、あらゆる分野の専門家が一条の周囲にはいる。
 そうした人物には、同時に五代の死も伝えなければならないのが辛いところだが、こうしてもう一つのアークルの存在を知った一条は、まず警察や彼女たちにこれの存在を伝えなければならないだろう。

 正しい歴史の中では、一条薫がもうひとつのアークルの存在を知る事になるのは、実に13年後の話である。
 このアークルは、五代雄介が装着したものとは別のアークルであり、現代においても全く別の人物が装着する事となるアークルである。
 同じくクウガの名が冠された戦士で、その外見もまたクウガに酷似しながら、彼らが知る五代雄介のクウガよりももっと前に作られたクウガ────いわば、プロトタイプのクウガが装着していたはずのものなのである。
 このアークルと五代のアークルとの違いは、「不完全なアマダム」の一点に尽きる。
 プロトタイプであるがゆえに心の闇が増幅しやすくなっており、凄まじき戦士となる時にも五代のアークルのように警告を行う事がない。
 そのため────


 ────万が一、これを装着する者がいた時、そのクウガは心を闇へと支配され、戦うための機械へと変化する可能性が高いという事である。







「……周囲には誰もいないようだな」

 この遺跡は山の頂上に作られている。
 周囲を見渡してみると、だいたい誰かがいるかどうかは簡単にわかる。
 まあ、ここから見る人間は木陰に隠れられてしまうほどに小さいので、動いていればわかるという程度だ。
 誰かがいるかもしれないが、観測できる地点で戦っている人間や動いている者はいなかった。

「とにかく、目的はこのまま呪泉郷でいいかい?」
「……ああ」

 一条と良牙は、そのまま下山を開始する。
 呪泉郷には誰もいないように見えるが、社務室があるので、その中に人がいる可能性だって否めないのである。
 あかねがそこで休んでいる可能性もゼロじゃない。

318A New Hero? ◆gry038wOvE:2013/07/18(木) 22:40:06 ID:vVM1tAsU0

(あかねさん……)

 良牙は、あかねを思い出すと同時に、乱馬の死を再び思い出した。
 乱馬が死んだと聞いて、あかねはどう思っているのだろうか。
 悲しんでいるのだろうか、それとも信じていないのだろうか。
 果たして、これまであかねを想ってきた良牙の中には、あかねの心に付け入る隙はあったのだろうか……その答えが、あかねが乱馬の死を知った反応にあるだろうと思うと、少し良牙はあかねに会いたくない気持ちが出てきてしまった。
 それでも、会わなければならない。
 あかねがどうなっていたとしても、良牙には、乱馬の友として、好敵手として、あかねを想った一人として、絶対にやらなければならない事がある気がしたのだ。



【1日目/午後】
【D―6/グロンギ遺跡付近】
※グロンギ遺跡は、九郎ヶ岳の遺跡ではなく、闇の棺がある“屈辱の丘”でした。

【響良牙@らんま1/2】
[状態]:全身にダメージ(中)、負傷(顔と腹に強い打撲、喉に手の痣)、疲労(中)、腹部に軽い斬傷、五代・乱馬・村雨の死に対する悲しみと後悔と決意 、ゾーンメモリの毒素については不明
[装備]:ロストドライバー@仮面ライダーW+エターナルメモリ、昇竜抜山刀@侍戦隊シンケンジャー
[道具]:支給品一式×2(食料一食分消費)、水とお湯の入ったポット1つずつ(お湯変身3回分消費)、秘伝ディスク@侍戦隊シンケンジャー、ガイアメモリ(ゾーン)@仮面ライダーW、ムースの眼鏡@らんま1/2 、細胞維持酵素×2@仮面ライダーW、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、歳の数茸×2(7cm、7cm)@らんま1/2
[思考]
基本:天道あかねを守る
1:天道あかねとの合流
2:1のために呪泉郷に向かう
3:つぼみと鋼牙とはいずれまた会いたい
4:いざというときは仮面ライダーとして戦う
5:良の腹部の欠損されたパーツ(メモリキューブ)も探したい
[備考]
※参戦時期は原作36巻PART.2『カミング・スーン』(高原での雲竜あかりとのデート)以降です。
※良牙のランダム支給品は2つで、秘伝ディスクとガイアメモリでした。
 なお、秘伝ディスク、の詳細は次以降の書き手にお任せします(ガイアメモリはゾーンでした)。
 支給品に関する説明書が入ってる可能性もありますが、良牙はそこまで詳しく荷物を調べてはいません。
※シャンプーが既に死亡したと知りました。
※シャンプーの要望は「シャンプーが死にかけた良牙を救った、乱馬を助けるよう良牙に頼んだと乱馬に言う」
 「乱馬が優勝したら『シャンプーを生き返らせて欲しい』という願いにしてもらうよう乱馬に頼む」です。
 尚、乱馬が死亡したため、これについてどうするかは不明です。
※ゾーンメモリとの適合率は非常に悪いです。
※エターナルでゾーンのマキシマムドライブを発動しても、本人が知覚していない位置からメモリを集めるのは不可能になっています。
 (マップ中から集めたり、エターナルが知らない隠されているメモリを集めたりは不可能です)
※主催陣営人物の所属組織が財団XとBADAN、砂漠の使徒であることを知りました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを全て知りました。
※つぼみ、一条、鋼牙と125話までの情報を交換し合いました。

【一条薫@仮面ライダークウガ】
[状態]:疲労(小) 、ダメージ(中、特に背部)、アマダム吸収
[装備]:滝和也のライダースーツ
[道具]:支給品一式×3(食料一食分消費)、ランダム支給品2〜5(一条分1〜2確認済み、五代分1〜3未確認)、警察手帳、コートと背広、ランダム支給品0〜2(十臓)、プロトタイプアークル@小説 仮面ライダークウガ
[思考]
基本:民間人の保護
0:警察として、また仮面ライダーとして人々を守る。
1:良牙と共に呪泉郷へと向かう
2:鋼牙、つぼみとはいずれまた合流したい
3:他に保護するべき人間を捜す
4:未確認生命体に警戒
※参戦時期は少なくともゴ・ガドル・バの死亡後です
※殺し合いの参加者は異世界から集められていると考えています。
※この殺し合いは、何らかの目的がある『儀式』の様なものだと推測しています。
※アマダムを吸収したため、仮面ライダークウガに変身できます。アマダム自体が強化されているため、ライジングフォームへの無制限の変身やアメイジングマイティフォームへの変身も可能かもしれませんが、今の所実践していないので詳細は不明です。
※主催陣営人物の所属組織が財団XとBADAN、砂漠の使徒であることを知りました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを全て知りました。
※つぼみ、良牙、鋼牙と125話までの情報を交換し合いました。

319A New Hero? ◆gry038wOvE:2013/07/18(木) 22:40:18 ID:vVM1tAsU0

【支給品解説】
【プロトタイプアークル@仮面ライダークウガ】
グロンギ遺跡に配置。
テレビ版の続編「小説 仮面ライダークウガ」に登場する、もう一人のクウガに変身するためのアークル。変身後の姿は作中では、変身形態がほとんど白いクウガの状態であることから、「二号」と呼ばれている。
本来、テレビ本編のクウガよりも先に作られたが、アマダムが不完全であるため容易に心の闇が増幅させられてしまう。そのため、これを装着した古代戦士は、自分が完全に暴走するのを防ぐために自ら命を絶ち、グロンギの一部を封印した。
作中では白いクウガに変身していることが多く、五代のクウガと同じように四フォームに変身する事が出来るかは不明。変身者が半人前だったために戦う覚悟が足りなかった可能性もある。
戦闘力はおそらく、五代が変身するグローイングフォームよりも高く、作中では戦闘力が高いグロンギを圧倒している。
更には、黒のクウガに変身した際には東京タワーを巨大兵器に変えるなど、プロトタイプでありながら、能力は非常に高いものと思われる。また、このクウガは黒になった場合でも角が通常のクウガに比べて短いらしい。

320 ◆gry038wOvE:2013/07/18(木) 22:40:31 ID:vVM1tAsU0
以上です。

321名無しさん:2013/07/18(木) 23:47:17 ID:w4MgEwJ.0
投下乙です。
おお、ここで小説版に出てきたプロトタイプアークルが出てくるか。確かに用意されてても不思議じゃないかも。
で、良牙はあかねを心配しているけど、あかねは殺し合いに乗ってるんだよね……二人が出会ったらどうなるだろう。

322名無しさん:2013/07/19(金) 05:50:42 ID:Vw9v1Jnk0
投下乙
小説版のアレがきましたか。どう考えても誰かが暴走するフラグだw

323名無しさん:2013/07/19(金) 20:27:46 ID:cZFWe6Ws0
投下乙です
小説版のあれかあ…
まったく今更だが悪趣味なw

324名無しさん:2013/07/21(日) 06:13:42 ID:BscDunsA0
更に次の予約キター!

325名無しさん:2013/07/22(月) 10:22:15 ID:x.WhwTlA0
マーダーが一人居るだけで怖い
更に組み合わせが…

326名無しさん:2013/07/22(月) 12:40:08 ID:hABcdxcM0
暁のスタンスはそろそろ表記を変えたほうがいいと思うwww

327 ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 22:53:33 ID:qgV9i4RM0
投下します。

328地球に生きる僕らが奇跡 ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 22:56:09 ID:qgV9i4RM0


 時刻は午後二時を回ったほどだっただろうか。

「あっ! 一文字さん、あれ……」
「ん?」
「誰かいます!」

 桃園ラブがそう声をかけた事で、一文字隼人はその一人の男の姿に気が付く事になった。
 男は、長い髪をオールバックにして後ろで纏めた、一見すると上品な印象を受けさせる風貌であった。
 何故にして、こうもあっさり他の参加者の姿を見つける事が出来たかというと、やはりここが禿げあがった土地であるからだろう。先ほどまで歩いてきた場所とは違い、草原にさえ草は生えない。焦げ茶色の草は既に煙さえあげていないせいもあり、元からこんな土地だったのではないかと錯覚させる。
 ここは桃園ラブにとっては忘れられない場所でもあった。
 そう、この場所は、かつて巴マミとともにテッカマンランスと戦った場所である。

「……話しかけてきましょう」
「待て。危ない奴かもしれないぞ」

 一文字が警戒するのは当然だった。
 改造人間のように、人の姿をしておきながら人を殺す者も多くいる。……だいたい、広間にいたほとんどが、そして加頭でさえ人間の姿をしていたではないか。
 本当の悪は常に人の姿をしているものだと一文字は思う。
 一文字やショッカーの数多なる構成員が変身する動物や器物には、善も悪もないのだ。

「……でも、話しかけてみなきゃわからないじゃないですか。もし良い人なら、一人にしておくよりみんなで一緒にいた方が……」
「まあ、確かにそうだけどな……」

 しかし、そういいながらも、一文字はやはり警戒心を失わない。
 一文字が認知する危険人物とは違うが、赤の他人である以上、話しかけるべき相手か否かはわからないのである。

「よし、じゃあ俺がちょっと行ってくる」
「待ってください!」

 一文字が向かおうとしたところで、ラブが制止する。
 ラブも、男に接触をしてみる事に異存はない。だが、その役目を一文字にやらせたくなかった。
 理由はごく簡単だ。
 この時の一文字の顔が怖かったから──。できれば、こんな表情で人と最初の挨拶を交わすような事はしたくなかったのだ。
 だから、

「やっぱり私が行きます」
「……おい、あぶねえぞ?」
「大丈夫です。いざっていう時は一文字さんがついてるし」

 ラブは一文字を頼りにしていた。

「……仕方ねえな」

 とにかく、ラブが先に歩き、その真後ろを一文字が歩く……という形で二人はその男に近づいた。その途中で相手も二人に気づいたらしいが、顔をきつく締めて歪めるだけで、特に戦意をむき出しにするような事はなかった。
 ラブも少し安心する。突然、襲撃してくるような相手ではないと思った。
 ただ、実際のところ、相手方がいきなり襲ってくるような行動をしないのは、背後の一文字がやはり鋭い眼光のまま歩いていたからだろう。

「……あの、すみません。あー…はろー? ないすとぅーみーとぅー?」

 ラブがその男に話しかける事にした。
 相手が善人か悪人か、変身能力を有する者か一般人か。それさえわからない。
 顔立ちは外国人のようにも見えるし、背も高い。結局国籍さえわからない。
 ただ、ラブはそんな隔てりを持たず、純粋にこの男性との挨拶を交わそうとしていた。
 どんな人間か、それは会話を交わした時に初めてわかる。ラブという名前自体、世界に伝わるために名づけられた名前である────尤も、ラブ自身、英会話は苦手で、異国の王子と話す時にしどろもどろになった経験があったが。

329地球に生きる僕らが奇跡 ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 22:56:45 ID:qgV9i4RM0
「……何だ? 貴様は」

 男は日本語でそう返したが、相手は友好的ではなかった。鋭い眼光に冷たい面持。その男の眼光に威圧され、ラブはしどろもどろになってしまう。
 この男の言葉づかいは、決して優しい好青年的ではないだろう。ラブは、この男の声にも少し怯えた。学校にいるなら応援団でもおかしくないほど低く男性的な声でありながら、同時に喉の奥まで冷えたような……感情のこもらない声でもあった。やはり応援団は無理だろう。
 それに、ラブはこの男の声をどこかで聞いた事があるような気もした。──どこかで会った誰かに、よく似ているような、そんな不思議な感じ。
 それが尚更恐怖を煽る。
 ラブは隣の一文字を見て、少し安心した。しかし、その一文字の表情も少し強張っていた。

「えっと……私は桃園ラブで、こっちが一文字隼人さん。あなたは……」
「……」
「えっと……あなたはこの……殺し合いに乗っていますか?」

 殺し合い、という言葉を発する時にラブは微かな抵抗感を感じたが、「ゲーム」などと言うのは余計に抵抗があった。
 戦いとでもいえば良かった、と少し後悔する。彼女の口から「殺し」という言葉が出てくるのは、やはり似つかわしくなかった。
 そんなラブの姿に我慢が行かなくなったのか、一文字が前に出た。

「……おい。ラブ、やっぱりちょっと下がってろ」
「え?」
「少しは警戒ってものを知った方がいい。こいつは何かおかしいぜ……」

 やはり、一文字はこの眼前の男の態度に対して、明らかな警戒を示している。
 殺し合いという状況にしては、淡々と乾いた表情をしており、他人の挨拶に対して一言、「何だ貴様は」と答える態度の悪さを見せる。冷たいまなざしと冷たい言葉──警戒するに充分なほど、人間的な感情からかけ離れた男であった。
 一文字は強引にラブの肩を掴んで自分の背に引き寄せた。
 その様子を見て、その男は嗤う。

「フフフ。……貴様は一文字隼人か。私の記憶によると、仮面ライダー二号という別名を持つ男だな」
「……だったら、何だ?」
「──テッカマンの名にかけて、その命を貰い受ける!」

 気づけば、男は、その右腕に奇妙な形の宝石を握っていた。
 ラブと一文字は、テッカマンという名前を聞いてぎょっとしながら、身体の筋肉を強張らせる。
 この男はテッカマンと名乗っているというのだ。
 男は笑みと共に宝石を天高く掲げると、腹の底から声を出して叫ぶ。────

「テック・セッタァァァァァァァァッッ!!」

 ────そして、男の身体はラブのよく知る異形の戦士のものへと変容させる。
 テッカマンランスである。
 半日ほど前にラブとマミが交戦した敵であり、またマミの仇とでも言うべき相手だった。
 先ほどまで目の前にいた男こそがテッカマンランスの人間時の姿だったという事に気づいたのである。一歩間違えば話しかけようと近づいた瞬間に殺されていたかもしれないと思い、背筋が凍る。
 そして、同時に怒りも沸いた。
 ラブの中に一つの戦いの記憶が蘇る。ちょうど、その戦いがこの場所での話であったのは、何の因果だろうか──。

「テッカマンランス……!」
「フン。私の名を知っているか」

 一方のランスは、ラブがあの時のキュアピーチである事にはまだ気付いていなかった。

「そうか、こいつが……。……なら、こっちも行くぜ」

 ラブから顛末を聞いていた一文字もまた、この戦士の事を知っていた。危険な相手であり、一人の少女を殺害した悪鬼である事もまた、一文字は知っていた。
 ならば、仮面ライダーが戦わねばならぬ相手に違いない。
 一文字の両腕が高く翳された。────その腕は、半円を描くように回転する。

「ライダァァァァァ…………変身!!」

330地球に生きる僕らが奇跡 ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 22:57:12 ID:qgV9i4RM0

 一文字の腹に発現したタイフーンが回転する。
 今のポーズは、一文字の体内に存在する変身スイッチを起動するための動作であった。
 このポーズを決める事によって、ライダーの体内に存在するスイッチが押され、一文字隼人は仮面ライダーに変身するのだ。

「とう!!」

 一文字が空高く飛び上がると、その姿はラブたちの目の前にありながらも、いつの間にか仮面ライダー二号のものへと変身していた。変身する瞬間というのが、はっきり視認できなかったのだろう。
 ともあれ、仮面ライダー二号──正義の名のもとにテッカマンランスを討とうという戦士が、ここに現る。
 二号は、ラブを左手で庇うように制する。

「……それが仮面ライダーとやらの姿か」

 テッカマンランスは、ニヤリと笑いながらその拳を二号の顔面へと振るう。
 ラブよりもまず、この戦闘力を有する戦士に対して戦いを挑む事で、初めてテッカマンの力というのは証明できるのである。

「まるで虫けらだな!」

 二号は、その拳を両腕で掴むと、ランスの勢いを利用して両足を浮かせ、目の前に突き出す。両足のキックがランスの腹部に命中する。
 鈍い音がするが、それでもランスは怯まない。

「虫けらねぇ……その虫けらにこれからやられるのはどこのどいつだと思う?」

 二号はその男を挑発するように言うと、すぐに一言、「ラブ!」と叫んだ。
 後方にいたラブは、その一言だけで何をしろというのかを理解した。彼女自身、言われずとも準備はできていた。
 左手のリンクルンに、桃色の鍵型の妖精・ピルンを差し込んだ。

「チェインジ! プリキュア! ビィーーーートアァーーーップ!!」

 叫びとともに、ラブの姿がキュアピーチへと変身する。キュアピーチは、プリキュアの名に恥じず可愛く純なドレスで──かつ、その華奢な体の中に巨体さえも倒す力を込めている。
 もしもテッカマンランスがただのでくのぼうであれば、マップの端まで吹き飛ばしてみせよう。
 ……ラブもここで決着をつけないわけにはいかない。
 マミと誓った平和のために、キュアピーチは戦わなければならない。テッカマンランスは、その誓いをする起源となった因縁の相手なのだ。

「ピンクのハートは愛あるしるし! もぎたてフレッシュ! キュアピーチ!」

 キュアピーチはそう名乗るとともに飛び上がると、キュアピーチはそこから斜めに風を切りながらランスへと跳び蹴りをする。
 それがどうやらいきなりのクリーンヒットだったらしく、テッカマンランスはバランスを崩して、両腕を宙に泳がせ、二三歩ばかり後退した。先ほどライダーから受けた一撃よりも重かったらしい。形としては不意打ちに近いが、今までのランスならばこの程度でひるむ事はなかっただろう。
 ラブが意外な相手であった事に気を取られてしまった事と、これまでの戦いで深刻なダメージを受けてきた事が原因の大部分を占める。

「な……キュア、ピーチだと……? 生きていたのか!?」

 キュアピーチ──テッカマンランスが最初に交戦した相手だ。
 まさか、あの後も生きていたとは思いもよらなかった。
 あれだけ痛めつけたのだから、おそらく共倒れしているものだと思っていたが……。
 それでも、驚くのは一瞬だった。その生命力にはすぐに納得し、そのまま思考を切り替える。

「……なるほど。また私に倒される運命とも知らずに向かってくるか。面白い……」

 ランスはテックランサーを取り出すと、その切っ先をキュアピーチに向ける。薙刀の刃を向けられたピーチは、少しばかり戦慄するが、怖気づくのは一瞬だった。
 プリキュアを根絶やしにしようとするモロトフと、マミをモロトフによって喪ったピーチ──そこには計り知れない因縁があったに違いない。

331地球に生きる僕らが奇跡 ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 22:57:40 ID:qgV9i4RM0

「しかし何度挑んで来ようとも結果は同じだ! 貴様もこの私が屠ってくれる! あの魔法少女やキュアパッションのようになっ!!」

 そして、その因縁を膨らませるようにランスが太い声で叫んだ。
 あの魔法少女……それはマミの事に違いない。何度も怒り尽くした分、ラブの中で一時的に魔法少女に傾ける優先順位が下がってしまう。
 いま名指しされたもう一人の戦士──その名前がここで出てくるのが意外だったために、キュアピーチは混乱し、状況を理解するのに数秒を要した。

「え……!?」

 その瞬間、キュアピーチは思わずテッカマンランスの顔へと強い視線を浴びせた。その驚愕に満ちた顔をテッカマンランスは嬉しそうに見据えた。
 ──動揺。
 キュアパッション──東せつなの名前に、キュアピーチは反射的に動きを止めたのである。何故、キュアパッションの名前が出たのか。その意味、その答えを脳内が導き出すのに、身体を止める必要があった。反射的に、脳細胞以外のすべてが動きを止め、同時に時間も止まった。
 テッカマンランスは──キュアパッションを……? 放送で呼ばれた東せつなの名前。誰によって殺されたのかも、殺されてないにしろ、なぜ死んでしまったのかもわからなかったせつなの死因──それが桃園ラブの中で、答えを出す。
 しかし、答えが出ても、ラブの中の時間が動くのに、また少しだけ時間を要した。
 それを見て、ランスは嗤った。

「動きを止めたな、キュアピーチ! フンッ!」

 テッカマンランスは、その長刀でキュアピーチと二号を同時に凪ぐようにして叩きつける。実際は、ここまでの時間自体はそんなに経っていない。ただ、キュアピーチの中で長く、静かな時が流れただけだったのであろうか。
 ランスの豪快な一撃に、二人は吹き飛ばされていく。
 それでいて、着地は非常にあっさりしており、バランスを崩す事も無く、二人とも両足で地面に立っていた。
 キュアピーチは左脇を押さえていたが、テッカマンランスを睨む目つきは変わっていた。

「プリキュアに仮面ライダー! 貴様らのような邪魔者のせいで、私はまだ二人しか殺せていない……有能なテッカマンたるこの私がな! だが……私は幾度の戦いを超え、より強く進化している……今の私を、蟻如きの止められるかな?」

 テッカマンランスの身体的な状態は非常に悪いと言わざるを得ない。
 ブラスター化したテッカマンの戦いに自ら首を突っ込んでは吹き飛ばされ、ダグバと戦っては再び返り討ちに遭い、とまあ、これでは戦闘に差し支えるレベルのダメージを受けるのも当然だろう。
 ……しかし、彼はそのたびに自信に代る何かを得た。より強い力、何事にも負けぬ強い意志、強い者に立ち向かうための策……そう、それ以前のつまらないプライドなどちっぽけに見えるほどに。
 だが、自信に代る何かを得たはずでありながら、それを得たことでまた無用な自信ができてしまい、結果的にはまた元の鞘に返ってしまった。やっぱりモロトフは身の丈に合わない自信を持ち続ける戦士なのである。
 そして、何より厄介なのは……いつの間にか、身の丈の方がモロトフの自信に見合うように姿を変えていった事だろうか。
 つまり────テッカマンランスは、度重なる強者との決戦により、この時には、かつてキュアピーチやマミと戦った時より格段強くなっていたのである。

「……あなたが、せっちゃんを……」

 キュアピーチは、なおも険しい表情でランスを睨んでいた。
 大切な友人を二人もテッカマンランスによって奪われたピーチには、ランスを許す度量を忘れていた。……無論、ランスが行った罪は許されないし、許されてはならないものだ。
 これからもランスはきっと、人の命を奪うために戦う。
 それなら────

「……許さない……絶対に許さない!!」

 ピーチが跳ね、ランスへと大きく羽ばたくように一歩近づく。
 ランスの胸部にピーチのパンチが当たり、そのまま何発ものパンチがランスのボディに繰り出される。ドスッ、ドスッと、鈍い音が繰り返しランスの装甲かピーチの拳の上で鳴り止まない。

「はぁぁっ!! どりゃああああぁぁぁっっ!!!」

332地球に生きる僕らが奇跡 ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 22:58:10 ID:qgV9i4RM0

 変身前が女子中学生とは思えないほどの荒々しい掛け声とともに、ランスの身体の節々に向かって、プリキュアのキックが繰り出される。
 ランスの装甲にその重々しい一撃が連続して繰り出されていく。
 ランスに反撃の隙がないのは、それがあまりに速い攻撃であったからだ。拳速、脚速は目くるめくもので、それでいて鋭さにおいても逸品であった。

「小蝿がっ!!」

 しかし、そんな中でパターンを見出したランスは、すぐにピーチの拳が来る位置を補足し、右腕を掴むと、ピーチの身体全体を持ち上げて地面へと叩き付ける。
 かつてのランスの攻撃によって草も枯れ果てた地で、大きな土埃が舞う。焼き尽きた草は灰となっており、ピーチの姿を土埃に隠すのに一役買っていた。
 完全に土埃に隠され、ピーチの姿は見えなくなった。

「ピーチ!」

 二号が駆け出し、その土埃の中へと消える。
 次の瞬間、ランスのテックグレイブがピーチのいた地面に突き刺された。全ては土埃に隠されて見えないが、そこに誰かが居るとすれば、串刺しになるに違いない。
 だが、ランスはすぐにそれを引き抜いた。
 ……そこには既にキュアピーチも仮面ライダー二号もいないのだ。

「ふう、間一髪か」

 ランスが自分の背後を見ると、キュアピーチを抱えた二号が膝をついている。どうやら、間一髪キュアピーチを救出したらしい。
 改造人間であるゆえに、二号の目にはキュアピーチはすぐ補足できていたのである。この程度の土埃ならば、二号にとっては透き通っているも同じである。

「……ちょこまかと逃げようと同じ事!」

 ランスはテックグレイブを構え直して、その刃を二人に向け、駆けだす。
 二つに分かれるように二号とキュアピーチは互いがいる方向と逆に飛び上がり、地面に激突したテックグレイブが次の土埃を作り出す。風が強い日のグラウンドを想像すればわかりやすいだろうか。
 二手に分かれた戦士のうち、テッカマンランスが射止めようとしたのはキュアピーチであった。
 彼女はプリキュアである。それも、かつてランスにダメージを与えたプリキュアである。
 この会場の中で生かしてはならず、ランスの手で倒さなければならない相手の優先度ではトップに食い込みかねないほど、彼女はランスの恨みを買っていた。ランスの中での敵対心は、ダグバと並ぶほどである。

「消えろっ! キュアピーチ!」

 ランスはそう叫びながら、ピーチの方に向けて飛ぶため、地面を蹴った。
 ホバー移動するほどの距離でもなく、また一歩で届くほどの距離でもない。だが、このテックグレイブのリーチを最大にして凪げば充分にピーチの腹を掠める。怯んだところにもう一撃……という算段を頭の中で思い描く。
 だが、前方のピーチは思いのほか憮然とした姿のまま、

「悪いの悪いのとんでいけ……!!」

 近づいていくランスに恐れを抱いてもおかしくなかろうに、キュアピーチは立ち止まっって構えたままだった。
 それがある技の構えに近いのを知る。
 ──あれは、マミと呼ばれた魔法少女と共謀してキュアピーチがランスと交戦した時、キュアピーチが使ってきた技だ。
 なるほど。ボルテッカを相殺できるほどの力を持っている技である。この技でランスを吹き飛ばそうというのだから、彼女が逃げないのは当然。

「プリキュア!」

 キュアピーチの手に着々とエネルギーが溜まっていき、ランスの距離も縮まっていく。
 このままいけば、ランスは確実にキュアピーチの攻撃の餌食となる。テックグレイブもおそらく発動より前には届くまい。
 だが────

「ラブ・サンシャイィィィィン!!!」

 その技が発動した瞬間、ランスは背中からエネルギーを放出し、上空へと飛ぶ。
 テッカマンの能力の一つで、背中からエネルギーを噴出して空中へと飛ぶものがあるが、ある程度制限されているとはいえ、軽い使用は問題ない。
 真っ直ぐにピーチのもとへと向かっていたランスの身体は軌道を変更し、プリキュア・ラブ・サンシャインは先ほどまでランスがいた場所へと消えていく。
 ボルテッカほどの威力があるはずなのに、その攻撃は周囲の何も破壊せず、地面の草を消し去る事さえ無かった。……無論、草など、もとよりほとんど残ってはいなかったが。

333地球に生きる僕らが奇跡 ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 22:59:06 ID:qgV9i4RM0

「……フンッ! 何度も同じ手を食うと思ったか!」

 ランスはそう吐き捨て、テックグレイブをキュアピーチに向けて放り投げた。
 長刀の刃はキュアピーチのいる足元を刺す。その直前、ピーチは咄嗟に真上に飛んでいた。
 真上に飛んだピーチの正面にあるのは、無論テッカマンランスの顔であった。

「くっ……!」
「覚えておけ、キュアピーチ! 攻撃とは、相手が避けられない状況で放つものだ!!」

 見れば、ランスの首に反物質フェルミオンのエネルギーが充填されていた。彼は、最初からキュアピーチが避けた瞬間を狙う気だったのだ。
 キュアピーチもこの技をよく知っている。
 避けなければならぬ技だが、キュアピーチは空中を自由に移動することができるわけではないので、このままでは避けられない。
 ランスの首は、エネルギーを溜めるのをやめた。それは、放出に充分なエネルギーが充填され尽くした証でもある。

「いくらプリキュアといえど、至近距離からのボルテッカではひとたまりもあるまい……食らえぇぇぇぇぇ、ボルテッカァァァァァァ!!!!!」

 そのままランスのボルテッカの眩い光が放たれた。
 テッカマンランスのボルテッカをこの距離で受けてしまえば、キュアピーチの身体はそれこそ塵ひとつ残さず消滅していたかもしれないだろう。
 何せ、タワーを消し去るほどの力であり、ダグバさえダメージを負うほどの攻撃だ。いくらプリキュアとて、無事で済むはずがない。
 しかし、それが噴射される瞬間────


「ライダァァァァァキィィィィィィック!!!!」


 ────当人にとっては実に残念な事ながら、ランスの身体は蹴飛ばされ、真横へ吹き飛ばされていた。
 ボルテッカはあらぬ方向で焼けた地面を再び焼いて、ランスの身体が転げ落ちていく。地面から反射したエネルギーが、少しばかりランスの身体へと命中する。
 仮面ライダー二号が隙を見て、キュアピーチを救うために一発お見舞いしたのである。二号のジャンプ力からすれば、この程度の高度は大した事がないのだ。
 テッカマンランスの巨体を吹き飛ばすにも充分なキック力の持ち主だった彼は、間一髪キュアピーチの救出に成功する。

「……ったく、俺を忘れるなっての」

 と、言いながら二号とキュアピーチが地面に着地する。二人は、ほとんど無傷同然であった。
 放っておいたもう一人の攻撃を受けて好機を逃すとは、多人数を相手にする意識がランスには欠けていたのだろうか。何度となく多人数との激戦を強いられてきたランスではあるが、二人の属性が違いすぎたためか、二人の連携はランスが思うほど上手くはなかったのである。
 一撃一撃に精魂を尽くしていく二号と、何発ものパンチとキックの嵐を浴びせるキュアピーチ。
 敵に直接キックを送り込む必殺技の二号と、遠距離から敵を浄化するキュアピーチ。
 二人の戦闘のタイプは大きく違うため、同時に戦えない。──そのため、片方が攻撃している間にもう一方が攻撃できる状況が作られにくいのである。
 ランスもピーチも二号も、一人ずつ相手にしなければならない形になっていたのである。
 二人が戦闘している中で、ランスか二号かのどちらかが上手なタイミングで現れなければ、一対一を繰り返す戦いになる。……タイミングを計り、上手く戦いに参入できたのが結果的に二号だったのである。
 それに、ランスは随分と強くなったとはいえ……やっぱり弱っていた。疲労極大、ダメージ極大であるこの状況下、やはり判断能力なども鈍っていたのだろうか。
 あるいは、クリスタルの破損から、戦闘への執着心も少しずつ薄らいでいるのかもしれない。

「おのれ……私の邪魔を……!」

 あと一歩でキュアピーチを消せたというところだというのに、横から邪魔をされた挙句、無様に転げまわったランスは憤怒する。
 ランスが起き上がると、キュアピーチは二号に相手を譲る事なく、前に進み出た。

「どうして…………」

 拳を引き、

「どうして、あなたは…………」

 走り、

「そんなに戦いたがるの!!?」

 拳を突き出した。
 ランスの胸の装甲へとぶち当たったパンチは、それを砕いた。連撃ではなく、一撃に魂を込めたパンチである。
 何度とない戦闘に、ランスの身体は簡単にひび割れてもおかしくないほどのダメージを受けていたのである。

「言ったはずだ。この宇宙に貴様らのような種族は邪魔なのだ!!」

 胸部に穴を作り出そうとするピーチの右腕をランスが掴み、強い力で握る。
 ものすごい力で締め付けられるピーチの腕は、ぴきぴきと音を立て、今にも折れそうなほどの圧力を受けていた。

「……違う! ……この世界に……邪魔な生き物なんて……いない……!!」

334地球に生きる僕らが奇跡 ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 22:59:30 ID:qgV9i4RM0

 ランスによる締め付けによって顔を苦痛に歪めながらも、ランスの言葉に反論する。
 その言葉の意味が、ラブの心の根っこの部分で反芻される。
 自分自身が何気なく返した言葉が、やがてラブ自身の本心から出た言葉であるという事がわかってきたのだろうか。
 頭は苦痛から解放されたい思いでいっぱいだったはずが、だんだんと強い思いになっていく。
 何も考えず、しかしラブ自身の本心はすらすらと口から出て行った。
 そして、キュアピーチは右腕を強く引く。凄まじい勢いで右腕を引くと、ピーチの腕に摩擦熱による真っ赤な跡と痛みが残った。
 しかし、テッカマンランスの両腕は虚空を掴んでいる。湧き上がる力が、ランスの腕を弾いたのだ。

「……マミさんにも……せっちゃんにも……私は何度だって……支えられてきた……! 誰かがいるから頑張れて……みんなが誰かに幸せを与えて……それが世界を作るから……邪魔な生き物なんて、いない!! 二人を邪魔だったなんて言わせない!!」

 キュアピーチは右腕に痛みを感じながらも、力強く構えてランスを睨む。

「……ほう、面白い。ならば何故、私を排除しようとする? それは貴様が私を邪魔だと感じているからだ。……所詮は自分の信念さえも偽りの貴様ら如きが、この私に勝てるはずがない!!」

 ランスはそう言いながら、その右拳をピーチに向けて突き出した。
 体格差があるゆえに、腰を折るようにして殴ろうとしていたが、そんな大がかりな動作はすぐに見破られ、ピーチが跳び、ランスの顔へとキックを放つ。

「……あなたもこの世界にとって邪魔だとは思えない。私はあなたが邪魔だから倒すんじゃない! でもあなたはマミさんとせっちゃんの命を奪った……!」
「なるほど……仲間の仇討ちか。だが、その必要はない。すぐに貴様も奴らのもとに送ってやるからな!!」

 ランスの肩から光弾が放たれ、何発も何発もキュアピーチの身体に至近距離で直撃する。
 ランスの顔の前にいたピーチはそれで打ち落とされた。身体の至るところで光弾が爆ぜたゆえ、もはや右腕の痛みなど忘れ去られていた。
 倒れたピーチの身体をランスは蹴飛ばし、ピーチの身体は地面を力なく転がる。

「ピーチ!」

 二号が駆けつけようとするが、

「来ないで!」

 今までになく強い声で、ピーチは二号に叫んだ。
 そのあまりの迫力に、歴戦の勇者・力の二号でさえ一瞬立ち止まる。
 土埃にまぎれながら、ぼろぼろの身体をピーチは起き上がる。左肩から血が出ており、右腕はそこを押さえている。他にも、全身が擦り傷を作り、結構出血しているようだった。
 そこに、ランスは再びレーザー砲撃を放つ。
 バックステップの要領で後方に跳び、ピーチはそれを避ける。ピーチの身体は二号の真隣にまで移動する。

「……この人とは、私が決着をつけます。この人は私が……私のやり方で決着をつけなきゃいけないんです!!」

 至近距離で見たピーチの目は真剣そのものだった。







(戦いの音が聞こえて来てみれば……)

 ──天道あかねの眼前で、巨大な敵と戦う二人の戦士。
 川沿いを進んでいたあかねだが、その巨大な戦闘音──おそらくはボルテッカが発射される音──が聞こえたから、彼女もこちらに来てみたのである。
 もしかすれば、蒼乃美希が追ってきたのではないかという不安などもあった。
 だが、どうやらそうではなく、全く別の戦闘らしい。巨大な装甲の戦士に対し、二人の戦士が戦っている。
 片方は、微かに記憶にあるキュアベリーの仲間と思われる。もう片方は、仮面ライダーダブルに酷似していた。

(……様子を見るべきかしら)

 仮に今乱入したとして勝てるのだろうか?
 伝説の胴着に加え、ここにはナスカメモリもある。あかね自身の戦闘力も元からそれなりに高い部類だったため、戦力としては充分なほど整っていた。
 ある程度弱っている相手ならば、問題なく倒せるかもしれない。

335地球に生きる僕らが奇跡 ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 22:59:47 ID:qgV9i4RM0
 本来、弱い者を狙うなどはしたくはなかったが、あかね自身もあまり体調面では整っていなかったし、事情が事情であるため、そんなポリシーに縛られ続けるわけにもいかない。

 しかし──

 このままでは自我の崩壊が起こるのではないだろうか。レベル3に耐えられないのではないか。そんな悩みも右手に握られていた。ナスカメモリに完全に食われれば、乱馬への想いさえも消えた完全な殺戮マシーンに変身してしまうかもしれない。ナスカメモリに耐えられなければ、それこそあかねが死んで本末転倒だ。
 もし、それが起こったらあかねは……。

(それでも……)

 あかねは右手のメモリを強く握る。
 それでも、これしかないのである。
 仮に伝説の胴着を装着としても、あかねが他の参加者に対して優位になれる力を持てるのは、これを使い変身した時のみだ。

 ──戦況を見る。

 あかねが見たところ、彼らの状況は二対一の形になっているようである。
 この場合、乱入の仕方も様々である。二人の戦士に加勢する、一人の戦士に加勢する、第三勢力として三人を同時に相手にする……。
 三つ目は効率が悪いだろう。あかねも強さという意味では自信がない。
 そして、あかねは決断する。

(まずはあの大きい奴に加勢する形で二人を襲う。二人がかりだと厄介だから、おそらく一対一の戦いを二組作る形になるわね……)

 組手のような形にしては各々の実力が拮抗しすぎているため、複数相手は辛そうだ。
 ならば、あの巨大な戦士も少し自分の負担を減らす形を望むのではないか。
 戦闘を見たところでは、巨大な戦士が積極的に相手しているのは、ドレスアップした少女のような戦士の方である。

「……この人とは、私が決着をつけます。この人は私が……私のやり方で決着をつけなきゃいけないんです!!」

 あかねの耳に、その言葉がはっきりと聞こえた。
 どうやら、実際に一対一の形を取って戦うらしい。ならば、あかねとしてはチャンスだ。これなら、あの大きな敵に協力する必要もない。
 残りの仮面ライダーの方を相手にしようと、あかねは模索する。
 あの戦士も半分こに分かれるのだろうか……? と少し考えながらも、あかねはその右手のメモリを挿す。

 ──Nasca──

 あかねの姿がナスカ・ドーパントに変身する。
 やはり、姿は青い──ナスカ・ドーパントの姿だった。メモリの力はレベル2に抑えられている。

(……とりあえず、意識はあるみたいね)

 あかねとしての意識が残っている事に安堵しながら、ナスカは仮面ライダー二号に向けて加速を始める。
 奴を倒す。
 どういう戦法を取ればいい? ……まず、不意打ちを上手く決めたいが、決められなかったら、どうする?
 いろいろと考えながら、何となくの策を頭に思い浮かべながら、ナスカは進んでいった。







「……駄目だ。戦いは子供の喧嘩じゃない。倒すべき相手はどうやってでも倒すべきなんだ。……勝てる確率は少しでも上げるべきなんだよ」

 二号はそう諭す。
 ピーチの提案に乗れるわけがない。彼女がいかに真剣であれ、彼女は中学生だ。
 本気で殺す覚悟で向かってくる相手に一人で戦わせるわけにはいかないし、それを黙って見ているわけにもいかない。

336地球に生きる僕らが奇跡 ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 23:00:08 ID:qgV9i4RM0
 大人がその判断を下すのは当然であるし、どちらが間違っているかと言われれば、ピーチの方が間違っていると言えるだろう。

「……でも、この人は何も知らないんです……人の命がどれだけ重いかも、自分がしたことがどれだけ大変な事かも……」

 人を殺すという事は、当然重い罪だ。
 もし殺人を犯した人の多くは、後できっと、ものすごくそれを悔やんでいると思う。
 しかし、テッカマンランスは違った。ランスは、命の価値も尊さも知らないように、平然と人を殺し、それを嗤う。

「……だから、この人に大切な人を奪われた私がそれを教えなきゃならないんです!」
「フン。何を言うかと思えばくだらん!!」

 ランスがそんなピーチを遠目で見ながら、鼻で笑っていた。

「ラダムこそが正義だ! テッカマンこそがこの世界の全てとなる!! 貴様ら人間など、そのための憑代に過ぎん……そして、我々が欲するのはごく一部の人間のみだ。この会場の人間が全て消え去ったところで、また元の世界で集めればいいだけの話……そんな駒のような命に価値があると思うか……?」

 テッカマンランスにとって、人の命とはその程度のものであった。
 その命を守ろうとするブレードも理解できず、ブレードの側に回ったレイピアも理解不能な存在だ。最後に人に戻ったエビルもそう……。
 何故、ラダムこそが全てであるはずの我々テッカマンが、人という枠から逃れられないのか。ラダムが人をコントロールし、支配しているに過ぎないはずではないか。
 ランスはそれを考える気さえない。
 考える余地などないほど充分に、モロトフという男にはラダムの洗脳がいきわたっていた。

「……来たまえ、キュアピーチ。貴様の同胞の仇が討ちたいのならな!」

 ピーチはぼろぼろの身体で駆け出した。力を込めるほどに痛みが突き刺さるが、それでも数歩で痛みという感覚は麻痺を始め、ピーチに力を与える。

「おい、待てピー────」

 二号が再びキュアピーチの名を呼ぶその刹那──

「────はぁぁぁぁっ!!」

 二号の背後に殺気が現る。テッカマンランスでも、キュアピーチでもない。
 それはこの戦いへの新たな参戦者──ナスカ・ドーパントであった。
 こうして、戦いは自動的に、テッカマンランス対キュアピーチ、仮面ライダー二号対ナスカ・ドーパントの二つに分かたれた。







「おぉぉぉりゃああああぁぁぁぁっ!!」

 キュアピーチが吠え、テッカマンランスに向かっていく。
 ランスは、ピーチが完全に近づく前にテックレーザーを照射してピーチが近づくのを妨害する。
 しかし、ピーチは何の問題もなく前方に進みながら、その爆煙を逃れていった。
 ピーチの足元に決まったように見えた光弾は、微かにピーチの足を掠める。土埃が舞っただけで、ピーチは瞬き一つしなかった。
 ピーチの胴体を狙った光弾は、ピーチは体操選手のように華麗にジャンプをして避ける。まるで重力をコントロールでもしたかのようなしなやかさで、的確にそれを避けた。
 一秒に幾つも降り注ぐランダムな動きの光弾を、ピーチは平然と避けていく。
 避けながらも、キュアピーチは叫ぶ。

「私は、仇が討ちたいんじゃ、ない!」
「……ならば、何故私と戦う!」
「これ以上、あなたが誰かの命を奪わないようにするため!」

 土埃と煙の中から、ランスの眼前へとピーチが顔を出す。突然の出来事だったが、ランスはもう驚かない。
 ピーチの中には、ランスを倒す覚悟があった。だから、ここまで辿り着くのは当然の事。
 一撃。ランスの肩をピーチのパンチが抉り、肩を割る。

337地球に生きる僕らが奇跡 ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 23:00:27 ID:qgV9i4RM0
 一撃。ピーチのキックがランスの腰に決まり、ランスの強固な身体が跳ね返す。
 一撃。ランスの胸をピーチのパンチが突き刺す。
 それはほんの一部にすぎない。いちいち解説できないほど、雨嵐のようにピーチはパンチとキックを繰り出した。それもまためまぐるしいスピードだった。
 ランスは、それを時にかわし、時に受ける。
 だが、話す余裕はあったようで、眼前のピーチへと答えた。

「……なるほど。私が誰かを殺す前に殺しておくという事か」
「それも違う!!」
「ならば、何だというのだ!!」

 ランスは右手で真横からキュアピーチの腕を凪ぐようにして叩き、ピーチを地面に激突させる。
 相手の思いを返すだけの隙と余裕があるのだ。ピーチを振り払えないわけがない。
 宙を舞い、肩から地面に落ちたピーチの背後には、地面に向けて堂々とテックグレイブが突き刺さっていた。

「……貴様に逃れる道はない。そこから後ろには退けないと思え、キュアピーチ」

これがまるで、ピーチの後ろにロープを張り巡らせるコーナーの役割を果たしているようであった。
 まさしく逃れる道はないように見える。これを避けるように走る事もできるはずが、奇妙な威圧に襲われた。
 ピーチはそこから後ろへは退かない。だが、それでも、その向こうを見るだけはした。

 仮面ライダー二号は、そこにはいなかった。協力してくれない。
 冷静に後ろを見直してみると、そこでは二号は新しい敵と戦っていた。
 テッカマンランスとは全く違う敵で、青い姿の怪人である。
 先ほどまで、この怪人──ナスカ・ドーパントがキュアベリーと戦っていた事など、キュアピーチが知る由もない。

(……ライダー……)

 仮面ライダー二号は、ラブの背中を守ってくれている。
 ピーチが負ければ、テッカマンランスは二号を狙うだろう。それと同じように、あの怪人も、二号が負けたらキュアピーチを狙うに違いない。
 ……それなら、倒れるわけにはいかないのだ。
 大丈夫、仮面ライダーが別の敵から背中を守ってくれている。これなら、キュアピーチは思う存分、テッカマンランスと一対一で戦えるはずだ。

 キュアピーチは立ち上がり、自分の背後にあるテックグレイブを引き抜いた。地面に深く刺さっていたためか、四角く固まった地面が一緒に抜ける。ピーチはそれを軽く蹴って払うと、そのテックグレイブを軽くランスに向けて投げた。

「……これ、返すよ」

 それはランスを串刺しにするような好戦的なものではなく、むしろ優しくランスにそれを返すような、そんな返し方だった。

「何のつもりだ……?」

 ランスは、彼女の行いが理解できずに問う。
 困惑するランスに、彼女は行動で答える。

「届けっ! 愛のメロディー! キュアスティック・ピーチロッド!」

 ピーチはリンクルンとピルンによって、キュアスティックを出現させる。
 片手にスティックを持ったピーチは、爆煙の中を駆けだす。

「……フンッ。自分が武器を使うから、相手にも武器を渡したというのか……? 理解できんな、貴様ら人間は……!」

 ランスには、キュアピーチの行動は疑問であった。自分が戦闘の中で優位になっても、それを利用しようとしない武士のような精神は時代遅れというほかない。
 まさか、どちらにせよテッカマンランスに敗れようというのだから、正々堂々の戦いで有終の美を飾ろうとしたのだろうか。……いや、そうだとしてもこんな武器で突き刺される方が遥かに辛い死となるはずだ。
 やはり、理解不能である。

「はぁぁぁぁっ!!」

338地球に生きる僕らが奇跡 ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 23:00:54 ID:qgV9i4RM0

 ピーチは大きく地面を蹴り、ランスの眼前に飛び上がると、ランスの顔面へと何発もの蹴りを放った。まるで足踏みでもするかのように……それでいて、重力の限界に放てる数を制御されているので、一撃一撃を素早く。
 ランスはそれを受ける顔にも痛みを感じたし、受けるたびに後ろへと垂れ下がる首のほうが痛んだ。息もしにくい。
 顔を上げようとしても、ピーチが蹴り続ける限りは、それは無理だ。

「どりゃぁっ!!」
「ぐっ……!」

 スティックを攻撃武器として使うと思っていただけに、ランスはその意外な肉弾戦術に困惑する。
 もともと、キュアスティックはこんな状態での武器として有能なものではないのだ。
 ランスは、以前の戦いでキュアピーチがあれをどのように使っていたかを思い出そうとする。

「貴様……!」

 ランスはピーチに向けて拳を突き出した。だが、ピーチはその拳に向けて足を突き出し、拳のエネルギーごと跳ね返して飛ぶと、宙返りして地面へと着地する。
 ランスはギリギリ足が届く箇所に着地したピーチに蹴りを放つ。
 が、それもピーチは飛び、避けた。
 ピーチは突き出されたランスの右足へと着地する。伸びた右足は、一本のルートを作り出した。

「何ぃっ!?」

 それはまるで、テッカマンランスが忍者のように壁や天井に留まる術のように奇怪な姿であった。ランスの脚は重みを感じない……それほどに華奢なピーチである。
 彼女はランスの脚の上を駆けぬける。一瞬で、ほぼ眼前まで迫った。
 ランスの身体との距離が一メートルほど。そこで、キュアピーチは二つの指でピーチロッドを鳴らす。

「悪いの悪いの飛んで行け!」

 あの技を使う気か────と、ランスは理解する。そうだ、このキュアスティックという棒は、あの技の時に使っていたのだ。
 まさしく、ランスには回避の術がなかった。先ほどピーチに向けて言ったとおり、回避不能な状況下での必殺技である。
 回避する隙さえ与えないほど一瞬の出来事であった。

「プリキュア・ラブサンシャイン・フレェェェェェッシュ!!!」

 プリキュア・ラブサンシャイン・フレッシュがランスの巨体に直撃する。
 ハートマークの光がランスへと至近距離で到達し、無数のハートがランスの周囲に浮かび上がった。ランスは、その間抜けなハートの姿に眉をしかめる。
 このあたりが不愉快な技だ。
 何がハートだ。──戦いの場に、少女趣味を持ち込むな。
 ピーチは、そのまま後方に跳び、ランスの脚から離れながらも、ランスに向けてピーチロッドを回転させ、繰り、叫ぶ。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 ピーチの叫びが終わるとともに、ランスの身体を包み込んだハートマークが弾けた。
 ランスの身体もはじけたかと思ったが、ランスの身体はそれを受ける直前から変わってはいない。

 ────この瞬間に、完全にその一撃は決まったといえよう。

 そこから先のランスの行動は、あまりにも単純であった。

「ぐあああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」

 ──慟哭。

 慟哭するのみだった。
 至近距離からのプリキュア・ラブサンシャイン・フレッシュによって、ランスは膝から倒れる。ただでさえ膨大なダメージによって倒れかけていた身体である。
 戦闘できる身体ではないにも関わらず、ランスは自分自身のプライドに戦闘を強いられていた。あのダグバに勝った自分が、ただの人間ごときに──あの時のプリキュアごときに倒れるはずがないと。

339地球に生きる僕らが奇跡 ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 23:01:15 ID:qgV9i4RM0

「はぁ……はぁ…………ぐんっ……あ……」

 それだけではない。なぜか、ランスは身体の内側から何かが弾けるような痛みを感じた。それは、必殺技による一時的な痛みを受けた先に作用する。
 しかし、かつてよりもずっと強い痛みだ。


 この痛みは何だ────


 ピキッ。


 装甲に亀裂が走る。
 モロトフのテッククリスタルにも、同様に罅が出来ていただろう。
 その亀裂はやがて大きくなる。
 ランスの左腕は、胸からはじけていくその亀裂の一か所を抑えた。
 しかし、それも無駄とばかりに、別の場所から亀裂は走る。


 ピキッ。


 トドメを刺しにか、ランスのもとへピーチが近づいてきた。
 ランスは、その身体が近づいてくる時、死の恐怖というものを実感した。
 体の自由も効かない。これほど全身に力が入らない状態に誰かが近づいてくる。
 キュアピーチは自分を殺しに来る。
 かつて、ダグバと戦った時の感覚とほとんど同じであった。


 ピキッ。


 死ねない。
 テッカマンの名誉に懸けて、プリキュアごときに倒されてはならない。
 ランスは、麻痺する身体に鞭を打ち、テックグレイブの先端をキュアピーチへと向けた。
 だが、それがキュアピーチの身体を射抜けるほど強い力で握られていない事を知っているのか、彼女はその横を平然と歩いてくる。


「く、来るなっ!! 私の命を奪おうというなら、容赦はせんぞ……!! い、いい……今すぐ、塵に返してくれる……!!」


 ランスの言葉も虚しく響く。
 ランスは肩にエネルギーを充填するほどの力もなかった。
 仮にそれを使ったとして、ランスは全身の力を使い切る事になってしまう。そうすれば、結局ランスは死んでしまうのだ。


「……わかった? それが、死の怖さ……命の重さだよ」


 見れば、ランスの身体は震えていた。
 近づいてくるキュアピーチの不気味さに、ランスはたじろいでいた。
 自分に攻撃してくる様子はない。先ほどの攻撃を使って来れば、ランスは死ぬではないか。何故、それをしてこないのか。
 ……そうか。何度も殴り、蹴り、刺し、蹂躙し、痛みを浴びせてから殺そうというほどの恨みを持っているに違いない。
 それは嫌だ。そこには相当の痛みと苦痛が伴う。どうにかして逃げられないのか。
 …………待て。……逃げる? 逃げるだと? 私が? 愚かな人間を相手に?

「……クッ」

 気づけば、キュアピーチはテッカマンランスとの距離を再び一メートルほどまでに縮めていた。テックグレイブの真横を通り、ランスとキスを交わせそうなほどの距離で、キュアピーチはランスの頬を拳で殴る。

「ぐはぁっ!!」

 やっとの思いで膝をついていたランスの身体は、地面へと転がった。
 やはり、この女はいたぶってから自分を殺すつもりなのか。一体、どんな目に遭うのだろうか。──それを想像しながら、ランスは起き上がろうとする。

340地球に生きる僕らが奇跡 ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 23:01:32 ID:qgV9i4RM0
 逃げるためだった。
 はいつくばってでも、ここは逃げなければならない。
 逃げなければやられる。
 どんなひどい仕打ちを受けるかもわからない。
 もはや、テッカマンなどどうでもいい。
 今は、自分の命だけ助かれば……。
 そこへ、ピーチが激昂し、ランスに怒号を浴びせ始めた。しかし、怒号というにはあまりに悲しみに満ちていて、少しの優しさがあった。


「……痛いでしょ!? あなたは同じだけの事を、たくさんの人にしてきたの……。マミさんは、死んじゃうその時まで、笑ってた。せっちゃんが……キュアパッションがどういう風に死んじゃったのか私は知らないけど、……それでも、せっちゃんは諦めたりなんかしなかったはずだよ」


 ランスはその言葉を聞いて、直感的に──彼女の言葉をちゃんと聞くつもりはなかったが、それでも耳に入ったので、キュアパッションの死に様を思い出す。
 キュアパッションは死ぬ時に、何度もランスに懇願したはずだ。
 ──昔のあなたに戻って。
 元の自分とは何だ? モロトフという男は、一体どんな男だったのか。誰かそれを知っているのか?
 あの女が自分の命が消えようという時に優先されるほど、尊いものなのか?
 そんなはずはないのだ。そんなはずはない。ラダムとしての自分が至高。テッカマンとしての自分を超えるべきものなど存在しないはずである。


 ピキッ。


「……ねえ、弱いかな!? あなたがこんなに死ぬのが嫌で震えてる時……同じ状況の時に、誰かを励ましたりできる人たちが……そうやって、誰かに強さを分けてくれる人たちが弱いかな!?」


 気づけば、ランスの目の前で、ピーチは涙を流していた。──きっと、マミやせつなの事を思い出しているのだろう。ランスには、同胞の死を涙する人間を理解する事はできなかった。
 強い……? 奴ら人間が……? この有能たるテッカマンであるこの私より、強い……? そんな事があるわけがない。奴らはバカなだけだ。
 そうだ、強いわけがない。
 テッカマンであるこの私が遅れを取るほど、奴らが強いはずがないのだ。
 いや、テッカマンが人間如きに負けていいはずがないのである。

 しかし、死を恐れぬ強さというのを、ランスは理解した。……そう、ランスがこれまでの戦いに勝利した時、そこには強い者に立ち向かう勇気があったのではないか。ダグバの戦いなどはその極みだろう。
 死とは、絶対に生物が逃れる事のできない運命にして、死に際で微笑む事のできる奴らは、相当な精神の強さを持っているはずだ。
 ピーチの言っている事は、確かに一理ある。
 では、どうすれば、奴らに負けないか?
 どうすればこのキュアピーチや、マミ、キュアパッションとやらに勝利し、自分こそが完全なる生物であると証明できるのか……?
 ランスは少し考える。
 少しだけ考えて、答えを出す。


「……フフフフフフフフ。フッハッハッハッハッハッハ!!!」


 ランスは、笑う。
 その場に倒れたまま、しかし、その全身の力を駆使して、起き上がった。
 テックグレイブを杖代わりにして、そこに全身の体重を持たれかけ、テッカマンランスは立ち上がる。
 その重量を支えるというだけで、テックグレイブは折れそうになった。


「なるほど……! それが強さか! それが奴らの強さだと、貴様は言うのか!! フッハッハッハッハ!!」

341地球に生きる僕らが奇跡 ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 23:02:01 ID:qgV9i4RM0

 ランスの口調は、むしろピーチの言葉をあざ笑うかのようだった。
 しかし、あざ笑いながらも、彼自身が道化と化しているように見えるほど、その高笑いは滑稽であった。


「……だが、それならば……それが強さならば、宇宙にただひとつしかないこの私の命を貴様如きに奪わせるわけにはいかないな! そして、有能なテッカマンたるこの私を震える弱虫と思わせるわけにもいかない……!!」


 ランスの首に、肩に、全身のエネルギーが充填されていく……。
 ピーチの目にも、光が見えた。彼が何をしようとしているのか、ピーチにはわからなかった。


 ピキッ。


 ピキッ。


 ピキピキッ……ピキッ。


 その音が尽きる前に、ランスは肩と首に全身に残る微弱なエネルギーさえも寄せ集め、高笑いを始めた。
 ランスは己の身体にエネルギーの全てを蓄えなければならない。身体が全て砕ける前に。


「見ろ! キュアピーチ!! 私の残りの全ての力が充填されていく……!! 貴様に殺されるくらいならば、このまま貴様を巻き込んで砕け散ってくれるわ!!」


 そう、悲しい事だが、人一倍プライドの高いテッカマンランスにとっては、それこそが完全な強さとなってしまったのである。
 死さえも恐れず、キュアピーチを倒す。……キュアパッションやマミがキュアピーチに強さを明け渡したのなら、テッカマンランスは交戦した彼女ら全ての力を否定するために、キュアピーチを殺し、彼女によって自分の命が奪われる結末を変えようとしているのだ。


「……私にはもう立つ力などないと思ったか……? そんな私ならば拷問し殺す事が出来ると思ったか? ……そんな結末は全てボルテッカでブチ壊してやる!!」


 ランスの首や肩の光は、もはや彼の顔を隠すほど強い物へと変わっていった。本来なら一度のテックセットにつき一度しか使えないはずのボルテッカの力さえも、微かにでも残っているならば使い果たそうとしていた。
 そう、彼は既に──「死」への恐怖を消し去っていた。そして、「死」へと向かおうとしていた。
 キュアピーチが言ったように、死の間際に微笑み、誰かに影響を及ぼす事が強さだというのならば、テッカマンランスはその身を持ってキュアピーチを破壊する事で強さを証明する。
 命が尊いというのなら、その命を他人なぞにくれてやるわけにはいかない。他人に自分の最後を明け渡すわけにもいかない。
 それこそが、テッカマンランスにとっての、テッカマンとしての最後の誇りであった。
 魂の限り、力の限り、全てを振り絞って、────テッカマンランスは叫ぶ。


「宇 宙 の 騎 士 ( テ ッ カ マ ン ) を な め る な よ ! !」


 そして────


 轟音と光は全てを包み込む。ランスの身体はそのまま、内側から溢れ返す膨大なエネルギーにより爆発音を立てた。全てが、爆発する。
 キュアピーチの視界も光に飲み込まれ、消えていく。
 爆風が砂埃を作り上げる。
 遅れてキュアピーチの身体が地面に向けて吹き飛ばされ、次にキュアピーチの身体に砂嵐がぶち当たる。
 砂が跳ぶ音は、まるで波の音のようだった。

342地球に生きる僕らが奇跡 ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 23:02:47 ID:qgV9i4RM0



 ────やがて、光が消えていき、世界は色を取り戻す。



 終わってみると、それは巨大とは言えない小さな爆発であった。ピーチは自分が死んだと思ったが、負ったのは、かすり傷程度の怪我であった。
 キュアピーチを巻き込むと言って爆発したものの、キュアピーチは万全だったのである。考えてみれば、あまりにも皮肉な死に様であった。
 ピーチは、必死にランスの姿を捜したが、そこにテッカマンランスの姿などない。
 彼はキュアピーチに倒される事や、死の恐怖に震える事よりも、自らの手で壮絶な最期を遂げる事にしたのだ。
 生半可な覚悟ではない。
 そこに身体がひとかけらでも残っていたというのなら、それはランスの覚悟の弱さの分量と言えるだろう。
 その覚悟の弱さを、ピーチは願った。彼が、プライドを捨て、命を尊び、わかってくれる事を願っていた。
 しかし、彼の覚悟は本物だった。

「……そんな」

 敵が消えたというのに──キュアパッションと巴マミを倒した仇がこうして跡形もなく消えたというのに、キュアピーチは悲しそうだった。
 彼女の勝利は、テッカマンランスの死という形では果たされないのだ。
 できるだけ多くの人を救いたいし、たとえどんなに許されない罪を負ったとしても、償う事はできると彼女は思っていた。
 東せつな──彼女も、かつてはラビリンスの幹部として、人々を不幸にしていたのだ。
 彼女を知っているから、キュアピーチはどんな敵でも──せつなの命を奪ったテッカマンランスでさえ改心させようとしていた。
 命の重みを教えてあげようとした。
 ……それは、彼の解釈の違いによって、結果的にランスの自爆を手伝う形になってしまったのだが。

「……私は、あなたの命を奪うつもりなんて、最初から無かったのに……」

 ランスは死に際に、何度もピーチが自分を殺そうとしていると言っていた。
 しかし、当のキュアピーチにそんなつもりはなかったのである。
 ランスが最後まで攻撃技だと勘違いし続けたプリキュア・ラブサンシャイン・フレッシュも決して、ただの攻撃技ではない。
 それにより、彼の身体が崩壊を始めたのは、それが浄化技であった事が大きいのである。
 彼のクリスタルは、かつてのプリキュアとの戦いで崩壊していた事は、ダグバとの戦いの後にも判明している事実であるように、彼を支配する「テッカマン」の殻を破ろうとしていたに違いない。実質的に、それは死を意味する物であるが。

「くっ……」

 それでも……。
 それでも、キュアピーチは、そこで立ち止まっている時間がなかった。
 すぐ後ろでは、一文字隼人が──仮面ライダー二号が私を守ってくれているはずなのだ。
 ピーチは、彼を助けるためにそこに向かわなければならない。
 悲しい事だが、ここで割り切って動かなければならない。それは、心優しき少女にとっては苦汁の決断でもあったが、いつまでも引きずるわけにはいかなかった。
 せめて、この男の何かを見つけたいと思ったが、ここには彼の欠片すら見当たらなかった。


 キュアピーチの姿は、確かに此処に存在した。
 此処で歩いていた。
 彼女は、テッカマンランスが元はモロトフという人間であった事も、その所業のほとんどがラダムという異形の怪物による支配が原因での行いであった事も知らないままだった。

 ────そして、ここから先に記する事は誰も知らないだろう。
 実は、テッカマンランスの余力を考えれば、キュアピーチを巻き込む爆発くらいは容易だった事。
 彼が最後に一瞬でも、モロトフとしての意識を取り戻したかもしれない事。
 それが、爆発の規模を最小限に留め、キュアピーチを爆発に巻き込まないように力を緩めさせた事。
 彼がブチ壊した結末は、己がキュアピーチによって命を奪われる結末ではなく──キュアピーチの命がテッカマンランスによって奪われる結末であった事。
 結局、そんな事は今となっては誰も知らない。
 当の彼でさえ、おそらくそんな事は知らないし、既にこの世にいないのである。


 誰が見ても、これは悪が勝手に自爆し、正義の戦士が奇跡の力で生存した──そんな単純で皮肉な勧善懲悪だっただろう。



【モロトフ@宇宙の騎士テッカマンブレード 死亡】
残り30人

※モロトフの支給品は周囲に放置されているか、一緒に爆発した可能性があります。
 あるとすれば、支給品一式、拡声器、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、ランダム支給品0〜1が放置されています。





343未来予報はいつも晴れ ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 23:06:57 ID:qgV9i4RM0



(……急に襲ってきやがって……なんだ、こいつは……?)

 二号はそう思いながら、ナスカ・ドーパントの攻撃を回避する。
 ナスカのスピードは非常に速い。
 その実力はショッカーの幹部は勿論、バダンの怪人さえも軽く超越するほどだ。

「……はぁぁぁっ!!」

 ナスカの刃が突き出される。二号は、それを左肩で受けた。
 避けようとしたはずであるにも関わらず、避けきれなかったのである。
 ──強すぎる。
 それがよくわかる腕前だ。しかし、どうやら剣捌きはそこまで上手ではない。それは一般人に比べれば上手かもしれないが、剣の達人というほどでもない。
 だが、その速度が速すぎた。

(くっ……何だコイツは……?)

 まさか、仮面ライダー二号もこれが若干16歳の少女の変身した姿とは思うまい。
 幼少期からの特訓による運動神経、更に伝説の胴着による身体機能向上、そこにメモリの力によってのパワーアップ。
 もはや、歴戦の勇士たれども手におえないほどの16歳少女である。

「ライダァァァァパァァァンチ!!!」

 左肩に深々と刺さったナスカブレードに痛みを感じつつも、右手は拳を作り、的確にRナスカ・ドーパントの顔面へとストレートに突き出される。
 この拳速も並みではない。
 仮面ライダー一号に比べれば、スピードでは勝利し得ないだろうが、少なくとも避けられる技ではないのである。
 そして、その強力なパンチは確かにナスカの顔面へと命中し、ナスカも怯む。ナスカ自身が意地でもナスカブレードを握り続けたため、二号の肩から刃が抜ける。

「……くっ……」

 左肩を押さえながら、二号はナスカを睨んだ。
 闘牙を忘れてはならない。このままナスカがどう出てくるかをよく分析し、それに対応して戦うべきだ。
 敵は俊足。ならば、向かってくる際の威力も相当なものである。
 だとすれば、カウンターが有効だろうか? ……しかし、決まるかわからない。
 神経をどれだけ集中させればそれができるだろうか。第一、ナスカは剣を持っている。剣を含めたうえでのヒットがナスカの武器だ。そこにカウンターパンチを打ち込むなど、至難の業ではないか?

(奴もそれを計算したうえで戦ってやがる……)

 そう、ナスカ・ドーパントに変身する天道あかねは二号と同じように、計算した戦闘をしていたのである。
 カウンターを避け、切り込むような戦法は至近距離でしか行わない。
 遠距離からスピードをかけて挑む際は、フェンシングのように突き立てて攻撃しているのである。ナスカブレードがそういう形に適さない形であるのにそういう風に使っているあたりからも、その戦略性を感じる。

 ──と、そう分析している最中にも、ナスカは再び二号の眼前に向けて羽ばたく。

344未来予報はいつも晴れ ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 23:07:15 ID:qgV9i4RM0

 羽ばたく……?
 二号は知らなかったが、ナスカはこの瞬間、羽ばたいたのである。
 ナスカの背中に羽が生え、二号を空中から狙おうとしているのだ。
 そう、空中からの攻撃ではカウンターパンチなど使えまい。一度空高く羽ばたいたナスカは、そのまま二号に向けて斜め一直線に落ちていく。

「……空中か! 生憎、それなら、こっちにも勝機はあるぜ……」

 二号はナスカが落ちてくると予測させる場所から避難するために、バックステップで下がった後、己の足をバネにして高く飛び上がった。
 仮面ライダーは飛蝗の改造人間である。
 そのジャンプ力は、人間スケールで飛蝗ほど高くジャンプするのと同じ事。その結果、仮面ライダー二号は三十五メートルのジャンプを可能とする。
 そのジャンプから繰り出される技は勿論、一つである。

「ライダァァァァキィィィィィィック!!」

 ナスカの着地点が自分が居た場所だとわかったために、そこに向かってライダーキックを放てばいいという簡単な計算式が出来上がっていた。
 ナスカは予想通り、二号が先ほどまでいた場所に斬り込むポーズでたどり着こうとしている。ナスカもそこに斬り込んでも無駄だと理解しているのだが、自分が落ちるスピードを制御しきれなかった。
 地面へと着地しようとするナスカの胸へと吸い寄せられるように、ライダーキックが放たれた。

「きゃああああっっ!!」

 ナスカはそんな悲鳴とともに、数メートル吹き飛ばされ、転がり落ちる。彼女も、二号が空中戦が苦手だと誤解していたのだろう。
 二号は今の声を聞いて、ナスカは若い女性であるという事に気づいた。
 しかし、若い女性だからといって手加減はできない。
 蜂女、女戦闘員、妖怪王女、魔女参謀……かつての悪の組織にも、女はいくらでもいた。
 女だからといって、悪に手加減する事はできないのである。

 むしろ、敵が女性だと知ってから違和感を持ったのは、その戦闘力の方である。いくら男女平等を説いても、性差による戦闘力の違いは大きいものだ。男性が筋肉がつきやすく、女性は丸まった身体になり、戦闘力は男性の方が格段に強くなる。
 勿論、格闘家の女性と一般人の男性ならば格闘家の女性の方が断然に強いが、一文字隼人はもともと、柔道五段、空手六段という優れた格闘能力に更に改造手術を加え、その後も特訓を続けているような男だ。滅多な事では、女性に一本取られることなどありえない。
 強力な改造手術でもしているならともかく、敵の強さは強化改造によるものだけではないはずだ。並々ならぬ戦闘センスがある事にも、二号は気づいていた。

 いや──

(女が弱いってわけでもねえんだな、実際……)

 二号は後ろを見て、それを思う。
 キュアピーチが、あんな巨体の敵と戦っているではないか。彼女は若干14歳の少女で、特に格闘経験もない。それゆえの稚拙さはあるものの、やはり見どころはある。
 プリキュアの力がそうさせているのかはわからないが、戦闘ではあれだけの力をコントロールするほどである。

「……ったく、なんなんだ、一体。突然襲ってきやがって」

 戦闘中に話しかける隙がなかったので、少し遅れてナスカにそう問う。
 しかし、ナスカの返答はない。
 言葉を使わず、ただ真っ直ぐに二号に向けて駆けていくナスカである。

「……問答無用ってわけか」

 言葉を発する事はできるが、答えたくないと見えた。
 少なくとも、相手はこの殺し合いにおいて「乗っている」というスタンスである可能性が高いと思える。
 事情は不明だが、がんがんじいモドキとも、あそこにいるテッカマンランスとも違う。
 かなり切羽詰ったような様子で攻撃をしかけてくるのがナスカである。かつて戦った彼らのような余裕を感じない。
 仮にもし人間の姿があるとするなら、それは吠える獣のような面妖になっているだろう。おそらくは、一文字にも悟る事が出来ない深い事情を抱えているのだろう……。
 だが、それでも戦わぬわけにはいかない。

345未来予報はいつも晴れ ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 23:07:35 ID:qgV9i4RM0

「ならば来いっ!」

 二号は、迎え来る二号に対し、力強く構えた。
 ナスカは、再び加速を使って二号へと斬りこむ。今度は、確かに斬りこんだ。
 戦闘方法をいろいろ試しているのだろうか?

「はぁっ!!」
「ふんっ!!」

 ナスカの加速を読んだ二号である。
 一回ごとに、ナスカの加速への対策は容易になる。相手の速さに慣れ始めているのだ。
 ナスカブレードを避けると同時に、ナスカの顎めがけてアッパーを決め込んだ。
 カウンターのアッパーである。

「ぐぁっ!!」

 ナスカは、宙へと吹き飛ばされ、再びナスカウイングを発現した。
 ナスカがまた上空から、滑空するようにして二号に斬り込んだ。これはまた二号にとって苦手な図式だ。
 空中を自由に飛行する敵は厄介だ。カウンターをするにも、体積を小さくして飛んでこられては難しい。

 ナスカブレードが空中から、二号の右腕を斬り込み、折り返して左肩を斬る。
 金属と金属がぶつかるような音が耳触りだった。
 ナスカは、彼の身体がまるで鉄のように硬い事を厄介に思いながら、突然翼を消して、地面に着地した。

(くっ……なかなか強えな……)

 二号は、その攻撃への対策を難しく思った。
 どうすれば、敵に勝てるか──。
 しかし、策を生み出すよりも先に、ナスカは地面に降りる。
 どうやら、空中での戦闘にも限界を感じたらしい。あるいは、自分の戦法を見せつけているのかもしれない。

(……これまで会った敵の中でも、特に強えんじゃねえか?)

 ナスカは超加速を使わず、駆けて二号へと切り込む。
 仮面ライダーの動体視力は、それをほとんど歩行と捉えていたといってもいいだろう。素早い動作とは言い難い。
 急に彼女の動きが鈍感になったので、二号は余計に強く構える。

(遅い……? なぜあの加速を使わないんだ……?)

 その戦法は先ほどとは正反対で違和感のあるものだったが、二号はそれを案外悠々と避けた。
 剣は先も当たらない。
 斜めに切り込むナスカの剣を避けながら、ナスカの脇腹にパンチを叩き込む。

「どうした、怪人!」
「……くっ」
「来られないならこっちから行くぜ!」

 怯んだナスカの脇へと、突き上げるように蹴りを叩き込む。
 足を高く上げ蹴りが叩き込まれると、ナスカの身体は宙に持ち上がる。
 ナスカは、ナスカウイングを発動する事もなく、倒れるように地面に落ちた。

「はっ! やっ! とぅっ!」

 立ち上がるナスカを相手に、二号は殴る、殴る、殴る。しかし、ナスカの戦法に警戒したうえでの攻撃であるため、どこか頼りなさげでもあった。
 破壊には行き届かない、何らかの心配を抱えた一撃である。
 強かった敵が急激に弱くなるというのは、やはり彼のように戦闘経験のある者にとっては、不気味以上の何物でもないのだろう。

「でゃぁっ!」

 ナスカへと、二号の拳は何度も何度もぶち当たる。時にはそれは蹴りだったかもしれないし、平手かもしれない。とにかく、ありとあらゆる一撃がナスカの身体へと食い込んだ。
 それを受けつつも、ナスカは二号の胸部に剣を当てた。
 ようやくの一撃である。
 剣速も鈍い。スピードでは遅れている。
 第一に、スピードが載っていない攻撃は、改造人間の皮膚に掠っても、傷を残す事はできなかった。そのため、それが二号の身体を傷つけたとは言えない。
 斬ったのではなく、当たった……と、その程度のものだろう。

(……まさか、あの力を発動するには何らかの制限があるのか……?)

 二号は、急激に弱体化したナスカに対する疑問を戦闘の中で分析していた。
 何か身体的な特徴などで弱体化のサインが出ていればわかりやすいのだが(ショッカーの怪人には結構そんなのがいた気がする)、今の所、戦力でしかそれがわからない。

 一体、彼女は何故弱体化したのだ……?

 その答えは、推測でしか出しえない。絶対の自信が湧き出る答えではなく、どうも腑に落ちない感じもあるが、二号は決心する。

(……とにかく、スピードが緩まったらしいな。今がチャンスだ。これなら、こちらの技も使える)

 二号はそう思い、ナスカへと特別強力なパンチを浴びせ、彼女との距離を置く。先ほどまでのように警戒したパンチではなかった。
 第一に、この威力での攻撃にすれば、彼女が次の一撃を放つ事はできないはずなのだ。
 そして、再び高く舞い上がった彼は叫んだ。

346未来予報はいつも晴れ ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 23:08:01 ID:qgV9i4RM0

「いくぞ……ライダァァァァ、卍キィィィック!!!」

 かつて、アリガバリとの戦いの際に滝和也との特訓で生み出した技・ライダー卍キックであった。
 卍のような形に身体を捻り、回転させて威力を上げる技である。
 特に防御力に優れた相手ではないとはいえ、回転している二号に対して攻撃は加えにくい。これならば、ナスカがこちらに剣を突き立ててきてもライダーキックとは違い、そのカウンターを受けずに済むだろう。
 そう、この攻撃はライダーキックをしている隙に敵が攻撃してくるような事ができないのである。鋭い刃を持ち、恐るべきスピードを持ち、更には飛行する羽を持つナスカに対して、選んだのがこの技である。
 その小さな竜巻は、ナスカの首の付け根へと命中した。

「きゃああああああああああっ!!!」

 堪えたか、ナスカの身体は悲鳴とともに大きく吹き飛んだ。仮にも女性の声をしているので、あまり聞きたくない悲鳴である。
 吹き飛んだものの、ナスカはすぐに体勢を立て直した。剣を持っていない方の左手で首を押さえている。
 伝説の胴着の力か、ナスカメモリの力か、ある程度の防御は可能であった。しかし、それでもライダー卍キックは岩をも砕く強力な技である。生半可な力では破れない。

「……あぐっ……あっ……!」

 血反吐を吐くような声とともに、ナスカは二号を睨んでいた。
 そのままナスカは、またも少しのんびりとしたスピード(とはいっても、常人よりは当然速い)で駆け出す。
 どうやら、必殺とはいかなかったらしい。
 回転が足りなかったか──などと考えつつも、二号は敵が自分のもとへとたどり着くのを待った。
 待とうとした。
 そこを迎え撃とうとした。


 ──しかし


「グッ……!」


 ──どういうわけか、


 ────敵の攻撃を待とうとした待機していたはずなのに、既に”真っ赤な”ナスカの身体は二号の手の届くところまで来ていたのである。
 それは目視不可なスピードであった。
 辛うじて、二号は直前で襲い掛かる気配に気づき、咄嗟に腕を組んで敵の攻撃を防御していた。
 一瞬、何が起こったのか彼でさえわからなかった。
 何故、こいつが真っ赤になったのか……それは一体?

(……そうか、今わかったぜ。どうしてこいつが急に弱くなったのか……)

 二号は、全てを悟る。

「おまえ、わざと手を抜いてやがったな……?」

 ナスカブレードが、変身ベルト・タイフーンの前でXに組まれた二本の腕のちょうど真ん中を串刺しており、金属の破片が地面に散らばっている。。
 そして、ブレードの先端は、今にもタイフーンに触れそうなところまで来ていた。タイフーンに触れてしまえば、流石の二号といえど不味い。
 咄嗟に動かなければ、二号も不味かったかもしれない。

「そうよ。あなたには私のスピードが早い段階で見切られていた。あのスピードのまま戦っても、全ての攻撃があなたに届かない……ゴフッ」

 ナスカは、より強い力でナスカブレードを押し込もうとする。当のRナスカも弱りだしているようだった。
 二号は初めて、ちゃんと彼女が言葉を口にするのを聞いた。意外にも綺麗な声でしゃべる。
 しかし、その言葉はどこかきつい雰囲気を感じさせ、怒りや怨念のようなものに満ちていた。

「一度力を緩めれば、それに対応する程度の能力に俺の力も弱まる……。それを狙ったわけかい」
「そういう……事よ!」

347未来予報はいつも晴れ ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 23:08:17 ID:qgV9i4RM0

 ナスカは、二号が敵のスピードに適応している受け身な戦闘方法を使っていたのを利用したのである。
 得体のしれない相手であるナスカに対し、二号は戦闘方法を迷っていた。加速能力や飛行能力など、様々な能力を持つナスカだが、ショッカーの怪人のように単純にはいかない。
 まずは相手の能力を分析し、それに合わせる力で戦わなければと思ったのだ。
 そして、当初はナスカの加速に対応するように神経を尖らせて戦っていた。
 しかし、ナスカのスピードが時間をかけて弱まっていくと、そのスピードに適応するように、神経も現状のナスカのスピードに合わせるように弱まっていったのである。
 そうして二号がナスカのスピードを上手く補足しきれなくなる瞬間を、彼女は狙ったのだ。
 ねらい目は彼のベルトのタイフーンである。伝説の胴着をはじめ、この場ではあらゆる変身道具が同様の場所を弱点としていたので、あかねはそこを狙おうと最初から決めていたのだ。

「……やっぱり、そのベルトが弱点みたいね」

 二号が咄嗟に、両腕を犠牲にしてまでベルトを守った事で、ナスカもそこが弱点であるという確信を持った。
 やはり、変身機構にはある程度の共通性があるらしく、伝説の胴着も仮面ライダーも同様だったのである。仮面ライダーダブルの時もそうだったし、ン・ダグバ・ゼバも同様だったとアインハルトから聞いている。
 そう、ベルトに装飾がある敵──すなわち、仮面ライダーやダグバは、おそらくそこが弱点なのだろうと、あかねは睨んでいた。あるいは、「知っていた」という言い方が適切かもしれない。
 そこを討つために、己の身体への負担を覚悟して、一時的に赤へと変身したのである。……いや、でなければやられるという確信もあったからだろうか。

「……さあ、悪いけど死んでもらうわよっ!!」

 ナスカウイングが現れ、二号の腕を突き刺したまま、ナスカは飛行する。二号の身体は軽く持ち上がった。二号は空気の抵抗を背中で受け、身体が潰れそうな感覚を味わうとともに、マフラーがぱたぱたと耳元で音を立てるのを煩わしく感じた。
 その強力な推進力に、二号の腕により深々とナスカブレードが食い込んでいき、やがてそれはタイフーンにまで到達していった。空気の壁を背中で掘り進めているような気分と、前方からの剣の切っ先が自分の命ともいえるベルトを侵攻する不快感に押しつぶされる。
 直後────


 ────地面で謎の爆発が起きる。


 空中からはその様が見やすかった。
 何が爆発したのかはわからないが、そこはテッカマンランスとキュアピーチがいた場所だった。少なくとも、彼らの戦闘によるものであるのは間違いない。
 全ては煙が飲み込んでしまって、よくは見えない。ライダーの視力をもってしても、この距離ではそこに何が在るのかわからなかった。

「ピーチッ……!!」

 そこで戦っていたキュアピーチが心配になり、思わず二号はそう叫んだ。
 だが、真に案ずるべきは自分の身の方だった。ナスカは軌道を変更し、そのまま地面に向けて落下を始めているのだ。
 このまま地面へと落ちれば、間違いなく二号は地面に串刺しになってしまう。
 身体ごと串刺しにされれば、流石の二号たりとも、その身体機能を停止するほどのダメージを受けるだろう。

「……はあああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 しかし、二号は何の抵抗もできなかった。二号の腕は微塵も動かない。二号とナスカの身体はそのまま、地面に向けて勢いをつけて落下する。
 ナスカウイングで地面に向けてスピードを速めるナスカである。
 地面は刻一刻と近づき、そして再び爆ぜるような音を鳴らした。二号はその頭蓋骨を地面へと激しく激突させた後、ナスカブレードが突き刺さる下半身を地面へと落とした。
 二人が落下した地面にはクレーターができるほどで、轟音も鳴ったが、爆発の余韻で耳鳴りがしていたピーチには聞こえまい。

「……くっ……がはぁっ……!!」

 二号はマスク越しに吐血をする。だが、口に通じる部位の痛みは大したものではなかった。全身で受けた衝撃が、もはやどこが痛むのかさえ隠した。
 自分の腹部を見れば、やはりタイフーンに向けて真っ直ぐにナスカブレードが突き立っていた。タイフーンには巨大な割れ目ができている。
 しかし、それを防御していたはずの両腕はそこにはない。

(……く……油断しちまったかな……くそ……だが……)

 二号は、心の中で後悔しながらも、ほくそ笑んだ。

348未来予報はいつも晴れ ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 23:10:05 ID:qgV9i4RM0
 二号は己の力の限りを尽くし、己の両腕を引き裂いたのである。両腕はそれぞれ、真ん中から半分に切り裂かれ、手のひらの先端が真っ二つに裂けていた。

「へ……へへ……こっちも悪いが、お前にもついてきてもらうぜ……」


 仮面ライダー二号の引き裂かれた両腕は、倒れたまま、変身ポーズと同じ型を決め込んだ。すると、タイフーンに突き刺さったナスカブレードを巻き込み、二号のタイフーンが回転を始める。

「ライダーパワー!!!」

 おそらく、タイフーンの回転はこれが最後となるだろう。
 最初は力なく回っていた変身ベルトも、これが最後の仕事だと気づいたのか、めまぐるしいスピードで回り始めた。
 ナスカブレードはバリバリと音を立てて崩壊し始め、破片が二号やナスカの身体へと当たった。
 それだけの振動がナスカの手にも伝わり、ナスカの身体を二号の上から強引に引きはがした。

「……すまねえ、ラブ。いくぞ……これが最後だ!!」

 ボロボロの身体の二号は、何とか立ち上がる。
 ふらふらとして、目の焦点が合わないまま立ち上がっているが、それでも何とか彼は立ち上がった。
 行く……このまま。
 どこへだって。
 ただ、最後に、せめて少しでもやっておくべき仕事があった。
 仮面ライダーとしての最後の仕事となりそうである。


「ライダァァァァァァッ!! …………キィィィィィィック!!!!」


 高く飛び上がった二号は、空中で回転し、先ほどのタイフーンの回転で怯んだナスカの身体へと向かっていく。
 高い。
 本当に高い。
 ……人間、一文字隼人が生身でたどり着ける場所ではない。
 この高さは、決してただの人が跳んで味わえるものではない。
 タイフーンが今日まで回り続けたから、経験できる高さだ。
 遂にタイフーンの力が完全になくなったのか、空中で二号の変身は解け、一文字隼人の姿へと変わる。目元には、深い傷があった──それは、一文字の改造手術の傷であり、怒りとともに現れる悲しいマークであった。

 しかし────

 たとえ、人間の姿へと変わったとしても、彼は仮面ライダーだった。
 そのまま、一文字隼人は急降下し、Rナスカ・ドーパントの胸元へと、またも吸い寄せられるように蹴りを放った。一文字隼人──仮面ライダー二号の蹴りが炸裂する。
 その威力は、仮面ライダー二号が放つライダーキックと大差ないほどに強力なものであった。
 それを、一文字も感じていた。それだけの手ごたえを、一文字は全身で感じていた。


「ぐぁ…………っ…………が…………」


 それを胸でまともに受けたナスカは、声をあげる事もできなかった。
 声をあげる事もできず、辛うじて起立を維持していた。
 仮面ライダー二号のライダーキックは、Rナスカ・ドーパントへと見事に行き届き、彼女に最後の一撃を浴びせる事ができたのである。
 そう、これが一文字の最後の一撃だった。

「…………く……」

 一文字隼人は、ふらふらのナスカがこちらを少し見て、逃げていくのを目で捉えた。
 その瞬間、一文字は残念そうな顔をした。
 ……どうやら、完全に倒す事はできなかったらしい。それは心残りだったが、相手もそう暴れられる身体ではないだろう。
 ばたり、と。
 一文字の身体は力をなくして、あおむけに倒れた。
 とにかく、勝てはしなかったが、一文字は敵を怯ませる事が出来たらしい。

 それでいい、仮面ライダーの最大の目的は、勝つ事じゃない。
 一人でも多くの人の命を救う事だ。その過程として、勝つ事が必要なだけだ。

349未来予報はいつも晴れ ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 23:10:41 ID:qgV9i4RM0


「よぉ……元気か…………久し、ぶりだな…………」


 ……そんな彼を迎え入れるかのように、一人の男が彼の前に立った。
 本郷猛、仮面ライダー一号である。
 本来、既に死んだはずの英霊の本郷が、一文字の目の前で黙って立っていた。

「…………お前、言ったよな…………俺を助けなきゃ良かったって…………それはひどいまちがいだぜ。俺は満足だ、本郷…………お前のお蔭で、たくさんの人の命を救えた…………それに、お前と出会えた事は、良い思い出になった……お前がいたから、俺は生きられたんだ」

 ────そうか。

 その英霊は、そう応えた。
 それだけ聞けば、充分だった。本郷は口数が多いタイプではない。その言葉でも、ニュアンスでわかる。本郷は喜んでいる。
 ずっと後悔していたであろう、彼の負い目だった。
 それを、死ぬ直前に一文字は否定してやったのだ。

「ただ、一つだけ心残りだ……あの娘が生きてんだか、それがわからねえ……」

 キュアピーチは……桃園ラブは生きているだろうか。一文字にとっては、それが少し気がかりだった。先ほど、ラブが戦っていたあたりで爆発が起きたが、ラブは無事だっただろうか?
 いくら、これまでの人生で幾つもの命を救えたからといって、最後に、この瞬間に、もし誰かが死んでしまったとすれば、それ以上の心残りはない。


 ────いくぞ、一文字。ここでの戦いは後の戦士に任せて、俺達には新しい戦いが舞っている。こちらにも、少し厄介な奴らがいてな。


 本郷の答えは、だいたい、いつもこんなものだった。聞かれた事に答えず、自分の意見だけを言う事もあった。時にこれが冷たく見える。
 ……まあ、こればっかりは仕方がない。自分の目で確かめるしかない。


 ……しかし、あの世でも暴れている奴らがいるのだろうか。
 だとしたら、やはり────それこそダブルライダーの出番ではないか。
 再び本郷とコンビを組んで共に戦える。それは一文字にとって喜ばしい事だった。
 仮面ライダーは、不滅だ。
 永久に戦い続ける運命かもしれない。
 だが、それは悲しい事か? 人間に戻れないのは悲しい事か?
 いや、違う。
 仮面ライダーは誰かの命を救う。救うために戦う。勝利は来ないかもしれない。勝利があっても、また悪が現れ、戦いを強いられる。
 仮面ライダーは、そのたびに誰かを助ける。
 たとえ冥界であっても、人類の自由と平和を守る仮面ライダーに、休みはいらない。
 悪がある限り戦い続け、時代が求める限りそこに現れる事こそ、一文字たち仮面ライダーの誇りなのだ。


 ────じゃあ、俺は先に行ってるぞ。


 本郷は一文字の前で頷くと、サイクロンに跨り、遠くへと消えていった。サイクロンのエンジン音が懐かしい。
 サイクロンで走る本郷の後ろ姿は、仮面ライダーのそれだった。
 一文字はその姿を見て、激励する。
 走れ、仮面ライダー。これはかつてお前の名だった。そして、いつしか俺とお前の名になった。やがて、たくさんの仮面ライダーが現れた。
 時代が求め続ける限り、お前は、俺は、あいつらは、いつでも現れる。
 走れ……。走れ……。走りつづけろ……。
 俺もすぐに追いつく。お前の後を、お前の隣を、俺も走る。
 ただ、少しだけ待ってくれ。すぐに俺もそっちに行ってお前の力になる。

350未来予報はいつも晴れ ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 23:10:59 ID:qgV9i4RM0


 ……そう、俺は最後に見たい。
 もう少しだけ、見たい……。
 この殺し合いに希望があるなら、そいつを見たい。
 この殺し合いがどうなるか、その行先を知りたい。
 せめて、見たかった。もう少し先の世の中を──この殺し合いの行く末を。
 誰かがいれば確信できる。俺たちのような仮面ライダーや、このふざけた殺し合いをブチ破れる誰かが……。


 そして、一文字は、その直後に確信する。


(そうか……)


 一文字の顔から、改造手術の痕だった生々しい傷が引いて行った。
 このまま死んだら、これが浮かんだまま死んでしまうところだっただろう。
 しかし、幸いにもそんな死体になってしまう事だけは、運命が避けさせてくれた。


(未来は、いい世界になってるだろう。……そうだよな)


 意識が朦朧としていく中、一文字は微笑んだ。キュアピーチがこちらに駆けてくるのがわかったのだ。
 どうやら、彼女は無事だったらしい。
 一文字隼人はそれだけで満足だった。



【一文字隼人@仮面ライダーSPIRITS 死亡】
残り29人







「そんな…………」

 桃園ラブが、駆けつけた時、一文字隼人は既に亡骸であった。
 腕は大きく避け、腹部は鋭い刃で突き刺されたように大きな穴が開いている。そこから血が溢れだしており、見るも無残な姿であった。
 しかし、その傷一つない顔は、非常にやすらかであった。
 まるで、マミの亡骸を思わせる────眠っているのではないかと錯覚する顔である。

「一文字さん!」

 ラブは、一文字の肩を掴んで、大声で呼んだ。
 返事など来ない。来るはずもない。

「……うわあああああああああああああああ!!!!」

 ラブは、泣いた。
 また一人になってしまったのである。
 これまで、周りの人が死ぬ事なんてなかった。
 東せつな、西隼人、南瞬……といった敵との別れはあったが、彼らは最終的に命を取り戻したはずだ。
 今度はそうはいかない。
 大事な友達が死んで、もう二度と生き返らない。
 たくさんの人が死ぬ。
 そして、そのたびにラブは泣いた。
 これだけは、慣れるものではない。
 まだ一日も経っていないのが衝撃だった。
 一日も経っていない……。
 マミの死も、せつなの死も、祈里の死も、モロトフの死も、一文字の死も……これまで過ごしてきた短い一日と同じペースで流れている時間とは思えなかった。
 涙も、枯れそうになっていた。

 ……誰がこんな事にしてしまったのだろう。

 ラブは、思う。
 ラブが何をしたから、こんな悲惨な運命が来ると言うのだろうか。
 幸せ────ラブが求めるその言葉が遠ざかっていく。
 ハッピーエンド────これだけの犠牲者を出してそんな事があり得るのだろうか?


「……ごめんなさい、一文字さん……私……!」


 ラブは、そのまま駆け出した。
 その姿は見るに堪えなかったし、マミほど綺麗な遺体ではなかったから、普通の女子中学生にとっては、埋める事さえも抵抗があったのである。
 一体、誰がこんなゲームを仕組んだ?
 誰が、ラブたちを不幸にしている?
 加頭、サラマンダー、ニードル……様々な敵がいる中でも、その正体がはっきりと掴めない。
 その正体を、いつか突き止めたい。
 誰がこんなひどい事をするのか……それを、ラブは教えてほしかった。





351未来予報はいつも晴れ ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 23:11:22 ID:qgV9i4RM0



「……くっ!」

 あかねの身体はかなり痛んでいる。身体の節々が悲鳴をあげている。
 仮面ライダーが最後に放ったライダーキックが相当に凶悪だった。辛うじて、あかねも生存してはいたが、胸骨が確実に折れている。それだけの痛みがしていた。
 だが、痛みは意地で捻じ曲げる。
 それよりも、あかねが気になっていたのは……

「何よあいつ……。人間じゃなかったわ……」

 あかねに、人間を殺した罪悪感が襲う事はなかった。
 何故なら、あかねが見た一文字の姿は──あれは人が変身したものではなく、元から完全に機械である者が変身した姿だったからだ。
 腕の傷口からは、人の物とは思えない奇妙な配線が見えていた。
 あれが人間の身体であるものか。
 あれは、怪人だ。ドーパントですらない。

「……人間じゃないなんて、卑怯じゃない」

 辛うじて勝ったものの、あかねはそう憤る。
 人と人とが道具を駆使して変身して戦うから、まだあかねには勝機があるように思えたのだが、あんな怪物がいるとは聞いていない。
 あるいは、乱馬を倒したアイツも……人間じゃないのかもしれない。
 あかねがこれまで戦ってきた相手もすべて……もしかしたら。

 ふと、あかねは以前所持していた乱馬の左腕を思い出した。
 大丈夫、乱馬は人間だった。
 でも、あかねにとって唯一、人間だと認識できるのは、今となっては乱馬だけだったのかもしれない。
 他に、誰がいただろう。腑破十臓は外道衆という特殊な存在だった。最初に出会った奇妙な女性は……わからないが、人間とは異なった性質の存在だったと思う。
 人間が、いない。

 もし、周囲の全ての人間が、あかねでは遠く及ばない機械化された人間だったらば、あかねはどうすればいい……?
 そんなロボットを相手に、あかねは勝てるのか……?
 そんな不安が頭を過る。
 しかし、一方で、そのロボットである仮面ライダーを倒せた悦びがあかねの中で渦巻いていた。
 あれだけの腕力を持つロボットを、あかねはとにかく倒せたのである。少なくとも、人間と機械との間には、絶対的な腕力の壁のようなものはないだろう。

(相手が機械なら、気に病むこともないわ……所詮、人じゃない、命がないモノだもの……)

 一文字を殺したというのに、あかねには一切罪悪感がなかった。
 ただ、高級な家電製品を壊したような、その程度の罪悪感だった。
 あるいは、それはメモリの毒素が再び注入された事によるものかもしれない。
 彼女の中の倫理観が崩壊を始めているのだ。


(……そうよ。私が戦ってるのは、きっとみんな機械なんだわ。でないと、姿を変えるなんてできない……それなら、私がもっと強くなって勝たなきゃならない……!)


 ……すぐに、罪悪感からの逃避として、結果的にあかねは、全ての参加者が機械であると思い込む事にした。
 この場において、唯一の人間は乱馬だけだった。
 考えてもみろ。乱馬を倒せる人間などいない……ダグバは、十臓は、ダークプリキュアは、源太は、……すべて機械だ。
 心のない機械人形。そいつらの集団に、乱馬とあかねだけが放り込まれたのだ。
 良牙だってわからない。機械が化けているのかもしれない。
 乱馬。あの腕には、ちゃんと骨も肉もあった。コードじゃない。あれはちゃんとした血管だった。
 この場において、乱馬だけが唯一の人間だったのだ。
 そうだ、そうに違いない。


 あかねの身体は痛んだが、それでも彼女は必死に、川に向かって歩きだした。
 彼女自身が歪み始めているのか、それはメモリのせいなのか……それさえわからない。

352未来予報はいつも晴れ ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 23:14:27 ID:qgV9i4RM0



【1日目 午後】
【H-5/森】
【天道あかね@らんま1/2】
[状態]:肉体内部に吐血する程のダメージ、ダメージ(大)、疲労(大)、精神的疲労(大)、胸骨骨折、とても強い後悔、とても強い悲しみ、毒素は一時浄化?、伝説の道着装着中
[装備]:伝説の道着@らんま1/2、T2ナスカメモリ@仮面ライダーW、バルディッシュ(待機状態、破損中)@魔法少女リリカルなのは
[道具]:支給品一式、女嫌香アップリケ@らんま1/2、斎田リコの絵(グシャグシャに丸められてます)@ウルトラマンネクサス
[思考]
基本:”乱馬たちを守る”ために”機械を破壊し”、ゲームに優勝する
0:川をめざし、その後は川沿いを進む。
1:ダグバと遭遇した時は倒す。
2:良牙君………………出来れば会いたくはない。
[備考]
※参戦時期は37巻で呪泉郷へ訪れるよりは前、少なくとも伝説の道着絡みの話終了後(32巻終了後)以降です。
※伝説の道着を着た上でドーパントに変身した場合、潜在能力を引き出された状態となっています。また、伝説の道着を解除した場合、全裸になります。
 また同時にドーパント変身による肉体にかかる負担は最小限に抑える事が出来ます。但し、レベル3(Rナスカ)並のパワーによってかかる負荷は抑えきれません。
※Rナスカへの変身により肉体内部に致命的なダメージを受けています。伝説の道着無しでのドーパントへの変身、また道着ありであっても長時間のRナスカへの変身は命に関わります。
※ガイアメモリでの変身によって自我を失う事にも気づきました。
※第二回放送を聞き逃しています。 但し、バルディッシュのお陰で禁止エリアは把握できました。
※バルディッシュが明確に機能している事に気付いていません。
※殺害した一文字が機械の身体であった事から、強い混乱とともに、周囲の人間が全て機械なのではないかと思い始めています。メモリの毒素によるものという可能性も高いです。

【バルディッシュについて】
※ガドルとの戦いで破壊されたのは刀身部分です。その為、武器としての使用は不可能です。具体的にはスタンバイフォーム(待機状態)以外はほぼ使用不可能という解釈で構いません。
※現段階で魔法のサポートがどれだけ出来るかは不明です。勿論、リンカーコア所持者でなければ使用はまず不可能です。但し対話によるサポートは可能です。
※周囲の状況をずっと把握しています。その為、放送の内容も把握しています。
※自己修復機能により自己修復は一応進行中ですが魔力によるブーストが無ければ使用出来るレベルまでへの回復はまず厳しいでしょう。
※バルディッシュはフェイトの最期の願いを叶える為、翔太郎及び杏子の力になる事を目的としています。
 但し、マスターであるフェイトが死亡している為、現状このまま何も出来ずに破壊されても構わないと考えています。
※(殺し合いに乗っている可能性が高い、フェイトを襲撃したパンスト太郎の知り合いである)あかねを信用しているわけではありません。その為、現状彼女とコミュニケーションを取るつもりはありません。
 禁止エリアは自身の為に伝えただけでしかなく、現状それ以上の情報(パンスト太郎が既に死亡している事等)を提示するつもりはありません。







 ラブは走る。
 目指していた市街地とは正反対だった。
 一文字と行くと約束した場所である。だから、一人で向かう事はできなかった。ラブは、一文字と共にあそこへ行きたいと思った。
 だが、それはできない。
 どうやって市街地に向かえばいいのだろう。一人で行く? ……やはりできない。ラブはそれをしたくなかった。
 約束を破ってしまうみたいで厭だった。

(……ごめんなさい、ごめんなさい……)

 と、心の中で詫びながらラブが走っていると、ごつん、と頭がぶつかった。
 涙をぬぐえず、下を向いて走っていたラブには、それが何なのかわからなかったが、顔を上げてみてみると、そこには人がいた。
 この人は、知っていた。

「どうしたんだ、ラブちゃん」

 涼村暁という名前の、少しおちゃらけた男だった。
 どうやら、また彼は一人になってしまったらしい。黒岩省吾たちはどうしたのだろう。
 しかし、そんな事に気を回せる余裕はラブにはなかった。

「一文字さんが……一文字さんが……」

 一文字。
 その名前を、暁は知っていた。暗黒騎士キバと戦っていたはずの男で、少なくとも暁の以前の認識では村エリアにいたはずである。
 いまラブが走ってきたのは、村とは逆の方向だった。
 どうやら、あの後は一緒に行動していたらしいと、暁にでもわかった。

「……わかった。落ち着いてからでいい。俺に話してくれ」

353未来予報はいつも晴れ ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 23:14:57 ID:qgV9i4RM0

 そこから、ラブは涙交じりに、事の経緯を語った。
 キバとの戦いの顛末は聞かなかった。あの時からラブは一文字と一緒にいたはずだ。思い出させてはまずい。
 彼女が語るのは、テッカマンランスに襲われてからである。
 彼女が混乱した記憶の中で、はっきりと時系列順に話ができるのは、そこから先だけである。
 テッカマンランスという敵の死、そこから帰還したキュアピーチを待っていた一文字の死体。……それはショックだっただろう。

「……なるほど、な」

 暁は全てを聞いて、虚空を見上げた。ラブの泣き顔を見ていてはまずいと思ったのだろうか。そのあたりは、彼の女性への優しさだった。
 ほむら。
 マミ。
 そろそろ死んでるんじゃないかと思う黒岩。
 俺の為に死んでしまった人、犠牲になった黒岩……それを思えば、暁も流石に憂鬱な気分になる。涙を流すか、それとも憂鬱げに俯いた後で再び元気を取り戻せるか……そこが二人の意識の差だったが、暁も悲しい時はたくさんあったのだ。
 暁はそんな時、悲しむ顔を見られたくなかったし、怒った顔さえ見られたくはなかった。

「……どうして、……どうして、殺し合いなんてさせるんでしょう!? ……こんな事したって、悲しいだけなのに……」

 ラブは呟いた。
 言われると、暁は何故、この殺し合いが起きたのか……その答えを出す事はできなかった。いや、見当もつかない。こんな事をして、何の得があるのだろうか。
 優勝者の好きな願いを叶えるという事は、暁のような願いを持つ者が現れれば、主催陣営は大損をするに違いない。
 暁は、少し返答に迷って、……結局答えない事にした。
 答える事はできない。暁が考えたところで、答えなどでないのだから。

「……悲しい、か。まあ、そうだよな……」

 ラブの言葉の端を拾って、それで誤魔化す事にした。
 大人にはそれしかできないのかもしれない。誤魔化して、それで彼女の涙を止められるならそれはそれでいいかもしれないし、結局暁はべらべらと語り始める。

「俺にも、最初にちょっと、仲間がいて……ほむらって女の子なんだけどな。そいつが死んじまって、俺は正直言って、悲しかったよ……。……でもさ、今は笑えるんだ。悲しんだって、ほむらが帰ってくるわけじゃないし……なんていうか、ほむらに支えられてる感じが今でもするんだ」

 ほむら──きっと、暁美ほむらだ。ラブはそう思った。
 マミが言っていた。放送でも名前が呼ばれていたので、死んだのは知っている。
 でも、マミの死を悲しんでいたラブよりも、ずっと暁はその現状を強く受け止め、生きているように見えた。

「……なあ、ラブちゃん。俺が殺し合いに乗ってるとしたらさ、どうする?」
「え?」
「例えばだよ。俺が、もし殺し合いに乗っていたら。そんで、ほむらは俺に殺されてたっていうことがあったら……」

 暁は、逆にラブに訊いた。
 これだけ殺し合いに対して、一途に反逆の意思を持っているラブに、暁はどう接していいかわからなかった。
 暁がこれまで出会ってきた人は、みんな、殺し合いを受け入れ、そのうえで反逆していたと思う。ほむらも、石堀も、凪も、黒岩も、零も、結城も、冷静に殺し合いの現実と戦っていた。
 しかし、ラブのように……殺し合いの中で深い悲しみを抱えて、ただひたすらに殺し合いを止める事だけを考えて、誰かの死に涙を流す────そんな姿の少女と出会ったのは、初めてだったのだ。
 彼女には、本心を言おう。
 いっそ、自分のスタンスを……打ち明けてしまおう。そう、暁は一瞬だけ思ったのだ。そして、その一瞬が彼にそんな質問を口に出させた。
 後悔する間もなく、暁は次々と話を進めてしまう。

354未来予報はいつも晴れ ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 23:15:28 ID:qgV9i4RM0

「……それは、ありません」

 ラブは、あっさりと答えた。
 彼女は、暁を信じていた。そんなに長い時間、一緒にいたわけではないから、暁をよく知らない。暁が信頼されやすい性格だったのではなく、ラブがそういう性格だったんだろう。
 少し抵抗があったが、暁は少し息を吸った後で、正直に言った。

「……ふー」
「……」
「あるんだなぁ……それが」
「え?」

 ラブは目を丸くする。

「……俺もね、やっぱり生きたいのよ。俺の人生は、パラダイスじゃなきゃいけないの。この殺し合いを勝ち残って、願いを叶えてくれたら、一生遊んで暮らせるんだぜ?」

 思いの丈を、暁は語る。
 これは正直な思いだった。暁は生きたい。暁は楽しみたい。暁は人生の全てを楽しみたい。
 金があって、女がいて、パフェがいっぱい食べられて、好きな職業に就いて悠々自適に楽しむ。
 それがいいじゃないか。
 何故、小学校と中学校と高校と大学を出て一流企業に就職して上司にこき使われて、少しの給料で休みもなくて、結婚なんかして妻や子供のために生きて……なんていう人生を生きなきゃいけない?
 何故、こんなところで殺し合いに巻き込まれて、死ななきゃいけない?
 誰が迷惑するとしても、そんなのは知った事ではない。「一生」──それは文字通り、一つしかないのだ。誰に迷惑をかけようと、自分の人生を精一杯に楽しめればそれでいいはずだ。
 暁は探偵として生き、借金にまみれても知らんとばかりに遊びまくる。それでいい。
 ここで誰が死のうが、暁が生きられれば……関係ない。
 だから……。

「……さあ、逃げろよ。逃げないと……」

 暁は、真顔で自分の両手を、ラブの首へと近づけた。ラブは茫然としていた。
 ラブにもわかった。その手つきは、明らかにラブの首を絞めようと言う動作だった。
 ラブは、逃げようともしていたが、やはり暁の行動がわからなかった。
 暁が、どうしてこんな事を言うのか。彼は、殺し合いには乗ってないはずだと思った。
 しかし、その手はラブの首へとかかり……

 そして……





「…………頬をつねっちゃうぜ〜♪」





 と、暁は笑顔でラブの首元からスライドさせ、ラブの頬へと手を伸ばし、彼女の頬をつねった。
 ラブは、その瞬間、茫然とした。そして、自分は安心していいんだ、暁を信じていいんだと気づき、胸をなでおろした。極度の緊張感から、急に解放されたため、思わず頬が緩んだ。
 それを見て、暁は笑っていた。

「そうそう、それそれ。笑いなよ。人生は一度しかないんだ、楽しまなくてどうするの」

 暁が言う。
 しかし、それを言うと、ラブはまた顔を曇らせる。自分が一瞬でも笑ってしまった事を申し訳なく思ったのかもしれない。
 要するに、不謹慎だと思ったのだ。

「……でも」
「あのな、ラブちゃん。この殺し合いで死んだ奴がいたって、それこそ……他人の人生だろ? 誰かが死んだらさ、そりゃあ悲しいけど……それでも」

 暁はほむらの事を少しだけ思い出す。
 ほむらが死んだ時、暁はすぐに元の暁に戻った。
 それは、彼の理念……とでもいうべき何かのお蔭であった。

「それでも、そいつのぶんも楽しまないと♪ もったいないって♪」

355未来予報はいつも晴れ ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 23:16:12 ID:qgV9i4RM0

 人が死んでも、その悲しみはすぐに取り払う。彼は、すぐに立ち直って、そいつのぶんまで笑顔になろうとする。
 そいつのために悲しんだって、そいつのためにもならないし、自分のためにもならない。
 だから、彼は、笑う。人生を楽しむ。人の死を悲しむ感情がないわけじゃない。それでも、それを引っ張り続ける事こそ、人生にとって最大の邪魔だ。
 それが、彼の理念──

「……ま、俺はそう思ってるわけだよ。俺だって、俺の葬式であんまり辛気臭くされたら敵わないっての。ふんわかいこうよ、ふんわか」

 それが、涼村暁の生き方だった。
 そして、彼は他人が辛気臭い顔をしているのを見るのも嫌っていた。
 だから、彼なりに、ラブを励まそうとしていたのだ。

「ひどいですよ、さっきの冗談……」

 ラブは、ようやく自分にも喋る隙ができたと思って、暁に少し頬を膨らせて言った。
 笑っているのか笑っていないのかわからなかったが、それでもいい。
 少しは彼女の気も緩んでいただろう。

「……ひどいだろ? 俺はひどいんだ。でもな、やっぱり人間ってのはこう、冗談なのか本気なのかわらかないギリギリのところで生きてるんだよ、ラブちゃん」

 暁は、先ほどから考えていた事があった。
 自分が殺し合いで優勝する事などできないと……暁は薄々わかっていたのだろう。
 楽しく生きる──たとえ、そのためでも、目の前の少女を殺す事は出来ないという事が。
 だから、暁は一つの案を考えていた。

「そうそう、冗談っていえばさ、今考え付いた。こんなのはどうだ? 俺達があの……えっと、加山? そう、加山たちをブッ潰す。そんで、あいつらがため込んでる金を全部いただいて、あとはパーッと楽しんで暮らす」
「加頭さんの事?」
「そうそう、加山じゃなくて加頭だな。あいつら、わざわざ金かけてこんな派手な事までやって……何をしてるんだかわからないけど、きっとものすごい金持ちだ。100兆円くらい溜めこんでいるに違いない。そいつを全部俺達がもらう」
「でも、それ強盗じゃ……」
「これだけの目に遭わされたんだ、慰謝料みたいなもんさ。……ここで死んだ奴の遺族とかにも、それを分けてやってさ。ま、俺にはその人たちにはそんくらいしかできないけど。……なあ、これ、本気だと思うか? それとも冗談だと思う?」

 暁にも、それは無理かもしれないという思いが湧いていた。
 これほどの規模で殺し合いなどを催せる相手。暁や、ここにいる数多の超人を攫い、監禁した集団。……まともに戦って勝てる確率はどれくらいあるだろう?
 きっと、殺し合いに乗って勝ち残る方がずっと効率的に違いない。
 無理。
 そう、おそらく、99パーセント無理……もっと高い確率で無理かもしれない。100パーセント、無理かもしれない。
 でも、暁の目的はこれでも果たされる。
 人生を楽しむ────それだけなのだ。金が手に入れば、どちらでも良い。
 そこにあるのは、ほむらの知り合いである杏子やラブ──この殺し合いに参戦している全ての参加者を殺すか殺さないのかの違いだけだ。

「……俺はな、本気だ」

 そう、暁は────涼村暁は、もう、殺し合いに乗るのをやめていた。
 彼は気づいたのだ。自分は、ラブを殺せない。この少女を殺す事ができない。それどころか、この娘に死んでほしくない。ここにいるたくさんの人たちに、死んでほしくないと思っていたのだ。きっと、あの人たちを殺すなんて、……無理だ。
 ほむらが死んだ、あの時と同じ事が、目の前のラブにも起きるんじゃないか。そう思うと……やはり、暁は駄目だった。
 実は先ほど、暁は自分を試していたのである。
 ラブの首を絞める事ができるかできないか。
 冗談で言ったつもりだったが、少しだけ、本気も入っていた。そして、やってみてすぐにわかった。
 ……どうせ触るなら、ほっぺたの方が柔らかいしふんわりしていてさわり心地がいいと、そう思ったのだ。

「この際だ、加頭もサルモンガーも……えっと、名前覚えてないけどあの汚いメガネも……、全員まとめてブッ潰す。どうする? ラブちゃん。俺と一緒にパラダイス♪」
「……ぱらだいす」
「そう、パラダイスだ。ここで死んだ人たちの分まで楽しむんだ♪」

 暁の言い方は確かに不謹慎で、友達が死んだラブの気持ちを考えてないようだったが、暁自身も仲間の死をここで悲しんだ一人だ。
 だから、その言葉の通りにする事が決して悪い事ではないと、ラブは思った。
 ブッキーは、マミさんは、せっちゃんは、一文字さんは……どう答えるだろう。

 楽しんでいい。

 いつまでも泣いている必要はないのだ。

 笑っていい。

 笑っていいなら、ラブは……笑う。

356未来予報はいつも晴れ ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 23:16:29 ID:qgV9i4RM0

「……そうそう、やっぱりね、それが一番いいよ」

 結果、ラブは、笑った。
 これは、暁らしくもあり、暁らしくない行為だったかもしれない。
 誰かを励ます。それは暁らしくない。
 それが女の子なら、それはとても暁らしい。
 でも、下心も何もない。ただ、彼は少し彼女を放っておけなかっただけだ。
 ただ、それが彼女を笑顔にした。
 暁には、誰かを救う気とか、誰かの命が奪われて許せないとか、そんな気持ちは微弱で、ただただ自分勝手だった。
 だから、それゆえに────責任感に押しつぶされそうな娘に、そんな暁の性格をちょっぴり分けてやるくらいで、丁度よかったのかもしれない。


「……じゃ、どこ行く? ラブちゃん」
「18時に、市街地で他の参加者と落ち合う約束を、一文字さんがしていたみたいです」
「ちょうど俺もそこへ行くところだったんだ。じゃあ、決まりだな!」

 二人は行く。
 途中には、一文字の亡骸や、モロトフの死地の跡がある。
 そこに手を合わせるのも良い。でも、長居はしない。



(ほむら……俺もまた、面白いしスリルがある事考え付いただろ? 加頭たちを潰して、お前やまどかちゃんの仇も絶対に取る。────ここからの戦いを、本当の本当にお前を捧げちゃったりするぜ!)



 その時、少しだけ空が笑ったような気がした。


「ところでラブちゃん、あんこちゃんっていうコなんだけどさ、知ってる?」
「あんこちゃん?」
「そう、桜餡子ちゃん」
「……美味しそうな名前ですね!」
「あ、食べちゃダメだよ」

 まだ話していない事もあったので、二人は歩きながら情報交換を始めた。



【1日目 午後】
【I-4/平原】

【涼村暁@超光戦士シャンゼリオン】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(中)
[装備]:シャンバイザー@超光戦士シャンゼリオン
[道具]:支給品一式×2(暁(ペットボトル一本消費)、ミユキ)、首輪(ほむら)、八宝大華輪×4@らんま1/2、ランダム支給品0〜2(ミユキ0〜2)、
[思考]
基本:加頭たちをブッ潰し、加頭たちの資金を奪ってパラダイス♪
0:市街地に向かう。
1:別れた人達(特に凪のような女性陣)が心配、出来れば合流したい。黒岩? 変な事してないよな?
2:あんこちゃん(杏子)を捜してみる。
3:可愛い女の子を見つけたらまずはナンパ。
[備考]
※第2話「ノーテンキラキラ」途中(橘朱美と喧嘩になる前)からの参戦です。
 つまりまだ黒岩省吾とは面識がありません(リクシンキ、ホウジンキ、クウレツキのことも知らない)。
※ほむら経由で魔法少女の事についてある程度聞きました。知り合いの名前は聞いていませんでしたが、凪(さやか情報)及び黒岩(マミ情報)との情報交換したことで概ね把握しました。その為、ほむらが助けたかったのがまどかだという事を把握しています。
※黒岩とは未来で出会う可能性があると石堀より聞きました。
※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを知りました。
※森林でのガドルの放送を聞きました。

【桃園ラブ@フレッシュプリキュア!】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、精神的疲労(小)、決意
[装備]:リンクルン@フレッシュプリキュア!
[道具]:支給品一式×2(食料少消費)、カオルちゃん特製のドーナツ(少し減っている)@フレッシュプリキュア!、毛布×2@現実、ペットボトルに入った紅茶@現実、巴マミの首輪、工具箱、黒い炎と黄金の風@牙狼─GARO─
基本:誰も犠牲にしたりしない、みんなの幸せを守る。
1:暁とともに市街地に向かう。
2:マミさんの遺志を継いで、みんなの明日を守るために戦う。
3:プリキュアのみんなと出来るだけ早く再会したい。
4:マミさんの知り合いを助けたい。もしも会えたらマミさんの事を伝えて謝る。
5:犠牲にされた人達のぶんまで生きる。
6:ダークプリキュアとと暗黒騎士キバ(本名は知らない)には気をつける。
7:どうして、サラマンダー男爵が……?
8:石堀さん達、大丈夫かな……?
[備考]
※本編終了後からの参戦です。
※花咲つぼみ、来海えりか、明堂院いつき、月影ゆりの存在を知っています。
※クモジャキーとダークプリキュアに関しては詳しい所までは知りません。
※加頭順の背後にフュージョン、ボトム、ブラックホールのような存在がいると考えています。
※放送で現れたサラマンダー男爵は偽者だと考えています。

357 ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 23:16:46 ID:qgV9i4RM0
以上、投下終了です。

358 ◆gry038wOvE:2013/07/23(火) 23:18:27 ID:qgV9i4RM0
>>350に、一文字関連のデータを書き忘れました。
彼の支給品は、モロトフ同様、I-5に放置されているものと思われます。

359名無しさん:2013/07/23(火) 23:49:38 ID:RSuR3d.c0
投下乙です!
ランスさんがついに散ったか! 最後はピーチと戦って、そうして誇り高き死を選んだか……
原作じゃ噛ませ犬だったはずなのに、よくここまでカッコよくなれたな。
そして一文字もここで終わるか……頑張ったけど、あかねを止めることはできなかったのが残念。あかねもあかねで誤解してるしw
ただ、本郷と出会えたのがせめてもの救いかな? どうか、向こうでも二人は仲良くして欲しいです。

ラブはまた一人になるかと思ったけど、暁が来てくれて本当に良かった。
にしても暁は本当にいいキャラだなw いつだってペースを崩さないしw この二人は果たして、これからどうなるか……?

それと一つだけ指摘を。
ラブはせつなのことを「せっちゃん」とは呼びません。こう呼ぶのは確かあゆみさんだけです。

360名無しさん:2013/07/24(水) 00:14:05 ID:gFXpuPc60
あっ、そうでしたね
なんか書いてて違和感あると思った…

せつなに修正で

361名無しさん:2013/07/24(水) 08:05:43 ID:77Ewrt4A0
投下乙!
モロトフ…テッカマンランス!
結果的には自爆という形で死んだとはいえ、最後まで自分を貫いて、そしてなによりよくここまでがんばった!
そして一文字…2号……
あの世で本郷さんと仲良くな

そしてついに暁が改心!w(今までも乗ってたかどうかかなり怪しいとこだがw)
これからラブと二人でどうなっていくのか楽しみです!

362名無しさん:2013/07/24(水) 14:30:16 ID:qNjcOzH.0
投下あげ

363名無しさん:2013/07/25(木) 00:33:30 ID:VuiS//S20
投下乙です

ランスさんはここで散ったか。最後まで悪として戦って散ったかあ…
あかねが一文字さんを殺せたとか、とうとうやったかあ。しかも嫌な勘違いもしてるなあ
ラブはまた一人ぼっちになったと思ったらいいタイミングで暁が来たわあ
なんだかんだでヒーローしてていいわあw

364名無しさん:2013/07/26(金) 02:06:53 ID:sKkVFTZ.0
またも予約来てるな
早くも前回の月報を越えるスコアとは…

365 ◆OmtW54r7Tc:2013/07/26(金) 02:48:53 ID:kLURJHLI0
>>364
やっぱり◆gry038wOvE氏の存在はこのロワにとって偉大ってことですね

というわけで投下します

366Lの雄叫び/逃避 ◆OmtW54r7Tc:2013/07/26(金) 02:51:08 ID:kLURJHLI0
――それでは、今回の放送は終了です。……みなさん、ごきげんよう――


「なによ、前の放送のやつは結構いい男だったけど、今回は微妙ね。好みじゃないわ」

それが、泉京水の放送が終わった直後の第一声だった。
別にふざけているわけではない。
ただ、塞ぎ込むのは自分の性に合っていないからと、自らを鼓舞する意味も込めて軽口を叩いてみただけだ。
さすがに前回の放送のように同行者がいる場合にそれをやったらただのKYだが、今回は実質一人だ。

「タカヤちゃん…起きないわね」

背負っている同行者を見つめながら京水はつぶやく。
彼は、おそらく放送を聞いていないだろう。
敵とはいえ、先ほどまで戦っていたとはいえ、双子の弟の死を知ってしまったとき、何を思うだろうか。

「せつな…あの子も死んだのね」

東せつな。
タカヤ共々一緒に行動していた少女。
正直に言うと、京水は彼女をそこまで好きではなかったし、特にその死が悲しいという事もない。
ただ、タカヤがそれを知ったらと思うと、やるせなくなってくる。
もっとも、京水は知らないが、今のタカヤにはもはや東せつなの記憶は消去されているのだが。



「ここ……ね」

そこにあったのは、相羽シンヤの所持品に椅子の残骸、残骸の上に乗ったクリスタル。
そして…シンヤの死体。


―Luna―


ルナ・ドーパントに変身した京水は、変身によりクネクネになった手で近くに穴を掘り始める。
そして、ある程度穴を掘ったところで、そこにシンヤを埋めた。
シンヤと一緒に、近くに落ちていたボロボロの椅子(おそらくシンヤを守ろうとしたあの怪物だろう)も一緒に埋めた
クリスタルは…一応回収しておいた。
万が一という時タカヤに必要になるかもしれない。

367Lの雄叫び/逃避 ◆OmtW54r7Tc:2013/07/26(金) 02:52:01 ID:kLURJHLI0
「おやすみなさい…シンヤちゃん」

シンヤの死体はとても安らかで晴れやかな表情をしていた。
とても死んだ人間とは思えないほどに。
だが、それでもシンヤは動かない。
そんなシンヤの死体を埋めると、京水は一人黙祷した。



「これがシンヤちゃんの荷物ね」

黙祷を済ませると、これまた近くに落ちていたシンヤの荷物を回収する
荷物は3つもあった。
モロトフはこれだけ多くの荷物を回収しなかったようである
支給品など必要ないという事だろうか。
京水は一つ一つ荷物の中身を確かめ、そして…

「剛三、ちゃん……!」

荷物の一つにあったのは、最初の場所で無惨にも殺されてしまった京水の仲間、堂本剛三の遺品、メタルメモリであった。
本当ならこのメモリは剛三が手にしているはずのものだったのだ。
しかし加頭は…まるで道端の虫を踏み潰すかのようなあっけなさで、彼を殺した。

「剛三ちゃん…あなたの無念、私と克己ちゃんがきっと晴らしてあげるわ」

メモリを大事そうにギュッと握りしめると、京水はそのメモリを自分のデイバックの中に入れた。
このメモリはなるべく自分の手元に置いておきたかった。

「私も克己ちゃんも財団Xなんかに屈したりしないわ。だから…天国で私たちの幸せを祈っててよね♪あ、それとも地獄かしら?」




「これからどうしようかしら」

変身を解いた京水はこれからの行動について考える。
ここから市街地までは少し遠い。
少なくともタカヤを運びながら進むとなると危険だ。
となると、タカヤが目を覚ますか新たな同行者が見つかるまでは下手に動かない方が賢明だろうか。
市街地にいるだろう翔太郎と合流する必要があるが、先ほどのモロトフが街の方へ向かっていたことを考えるとやはり危険だ。


「そうと決まれば…そこの蝙蝠!この辺を調べてきなさい」

京水の指示に、バッドショットは逡巡した様子を見せる。
どうやら、先ほどタカヤを殺そうとしたことに対して警戒を抱いているらしい。

368Lの雄叫び/逃避 ◆OmtW54r7Tc:2013/07/26(金) 02:53:13 ID:kLURJHLI0
「…大丈夫。タカヤちゃんは殺さないわ。男と乙女の約束よ!」

そういって京水はニッと笑ってグッとサムズアップした。
メモリガジェットのバッドショットに性別なんてあるのかとか、「それを言うなら男と男の約束だろ!」とか突っ込んではいけない。
バッドショットはやはり躊躇している様子だったが、京水の言葉を信じることにしたようだ。
京水はいくつかの指示を与えると、バッドショットを飛ばした。



バン!バン!バン!バン!



バッドショットを飛ばして十数分が経過したころだろうか。
銃声が聞こえる。
方向はここから西だ。

「あの蝙蝠、向こうの方に飛ばした方が良かったかしら」

バッドショットには東にある橋の周辺の監視をさせていた。
この広い森の中をあまり漫然と探索をさせるのもどうかと思ったので、ある程度場所をしぼって指示を与えたのだ。
ともかく京水は、西で起こっていると思われる戦闘に巻き込まれた時に備え、警戒を強くした



……………


数十分が経過した。
あの銃声以降特に変わったことはなく、どうやらこちらが戦闘に巻き込まれる心配はなさそうだ。
とはいえ、警戒を緩めることはしない。
ちなみに京水は知らないが、先ほどの銃声は西条凪がゴ・ガドル・バに神経断裂弾を発砲した音である。

369Lの雄叫び/逃避 ◆OmtW54r7Tc:2013/07/26(金) 02:54:04 ID:kLURJHLI0
「こっちも収穫は無し、ね…」

スタッグフォンを見るが、バッドショットの方にも人影が写るような様子はない。
既に放送から1時間は経っている。
バッドショットの探索範囲をそろそろ広げるべきだろうか。
それとも無理をしてでも市街地を目指してみようか。
放送前に見たモロトフは好戦的な様子であったし、たとえ中学校に立ち寄ったとしてもいつまでも留まったりはしないだろう。
そんなことを考えていた時…ついにスタッグフォンに人の姿が映った。
そこに映った人の姿を見て、京水は…


「イケメンキター!」


吠えていた。
京水は意気揚々と移動の準備をする。
そして、荷物とタカヤを抱えるとテンションMAXでイケメンのもとへガンドコと走って行った。



「俺の名は冴島鋼牙だ」
「鋼牙ちゃんっていうのね!近くで見るとますますイケメンだわ〜♪」

冴島鋼牙と花咲つぼみの二人は、市街地を目指していた。
しかし真っ直ぐ市街地を目指せば禁止エリアにぶつかってしまうため、南下して橋を渡り西方から市街地へ入ろうとしていた。
そこで出会ったのが、目の前の一人の男…いやオカマだった。

「あ、あの、私は」
「小娘には聞いてないわよ!」
「はううっ!?」

鋼牙に続いて名乗ろうとしたつぼみだったが、京水に遮られて悲しそうな表情をしながら黙る。
そんなつぼみを尻目に鋼牙はともかく京水と話を続けることにした。

370Lの雄叫び/逃避 ◆OmtW54r7Tc:2013/07/26(金) 02:55:02 ID:kLURJHLI0
「…それで、後ろで背負っている男は」
「ああ、この子は相羽タカヤちゃんよ」
「相羽タカヤ…なるほど、この男が相羽シンヤの兄か」
「あら、もしかしてシンヤちゃんに会ったの?」
「ああ…兄を…その男を探していたみたいだったが、先ほどの放送で呼ばれてしまった」
「そう、ね……」

そこで京水は少し言葉を濁した。
どうやら鋼牙は様子を見る限り相羽兄弟の因縁を知らないようだ。
だが、京水の口から話すようなことはしない。
このような話は、あまり他人がべらべらしゃべっていいものではないだろう。

「それで、お前は誰だ」
「あら?私に興味ある?鋼牙ちゃんにならなんでも答えてあげるわ!」
「とりあえずまずは名前を教えてくれ」
「あら、そういえば名乗ってなかったわね」

そこでコホンと咳払いをすると、京水は名乗った。


「私は泉京水!所属はNEVERよ!よろしく鋼牙ちゃん!」


…その瞬間、空気が凍った。

「え!?」
「NEVER…だと!?」

つぼみは驚きの表情となり、鋼牙は少し警戒を含んだ表情で京水を睨む。


「あら、NEVERを知ってるの?」

そんな二人の様子をまるで気にした様子の無い京水。
が、しばらくすると二人がNEVERを知っている理由に思い当たり…


「あなた達…克己ちゃんに会ったのね!?」


期待のこもった笑みを浮かべて、叫んだ。

371Lの雄叫び/逃避 ◆OmtW54r7Tc:2013/07/26(金) 02:56:38 ID:kLURJHLI0
「どこ!?どこなの!?克己ちゃんはどこにいるの!?」

鋼牙の肩を掴んで問い詰める鋼牙。
その際に、背に背負っていたタカヤが京水の支えを失って倒れてしまい、慌ててつぼみが助け起こす。
だが、京水はそんなことに気づいた様子もなく鋼牙に向かって必死に尋ねる。
一度は克己の居所が分かると喜んだ京水だったが、二人の表情をみるにつれ、徐々に嫌な予感にさいなまれていた。
そんなわけない…克己ちゃんは●んだりなんかしない!絶対に…●んだりなんかするはずがない。
心の中で何度もそう復唱する。
そうだ!大道克己は私達NEVERのリーダー!
とっても強くてとっても素敵なイケメンなのだ!
剛三ちゃんがいなくなっても、これからも私たちを導いていく男なのだ
そんな克己ちゃんが…


「大道克己は……………死んだ」


死んだりなんか……




「あ……………」

鋼牙の言葉を聞いたその瞬間、京水の頭の中は真っ白になった。
嘘だ。嘘だ。そんなの嘘だ。
克己ちゃんが死ぬなんて、そんなの…

「ああ…あああ……」

鋼牙がそんな嘘をつく必要がどこにある?
隣にいる女も、悲しそうな顔をしている。
この場所には多くの強者がいる。
そう、克己が倒されかねないほどの…

「ああああああああぁ…」

うるさいうるさいうるさい!
黙れ黙れ黙れ!
克己ちゃんが死ぬはずなんてないんだ!
克己ちゃんが死んでいいはずがないんだ!
そうだ…克己ちゃんは……



「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
 ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁあぁぁ
 ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」



「京水さん!」

悲痛な叫びをあげた京水は、突然走り出した。
つぼみが名前を呼ぶのにも全く気付いた様子はなく、京水は駆ける。
そして、あっという間に見えなくなってしまった。

「つぼみ!俺が奴を追う!相羽タカヤのことを頼む!」
「わ、分かりました!」

つぼみの了承の返事を聞くと、すぐさま鋼牙は京水を追って走り出した。

372Lの雄叫び/逃避 ◆OmtW54r7Tc:2013/07/26(金) 02:58:23 ID:kLURJHLI0
【1日目/日中】
【F-6 川のそば】

【冴島鋼牙@牙狼─GARO─】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(小)
[装備]:魔戒剣、魔導火のライター
[道具]:支給品一式×2(食料一食分消費)、ランダム支給品1〜3、村雨のランダム支給品0〜1個
[思考]
基本:護りし者としての使命を果たす
0:京水を追う
1:つぼみとともに市街地に向かう。
2:首輪とホラーに対し、疑問を抱く。
3:加頭を倒し、殺し合いを終わらせ、生還する
4:いずれ零とともにバラゴを倒す。
5:良牙、一条とはまたいずれ会いたい
6:未確認生命体であろうと人間として守る
[備考]
※参戦時期は最終回後(SP、劇場版などを経験しているかは不明)。
※魔導輪ザルバは没収されています。他の参加者の支給品になっているか、加頭が所持していると思われます。
※ズ・ゴオマ・グとゴ・ガドル・バの人間態と怪人態の外見を知りました。
※殺し合いの参加者は異世界から集められていると考えています。
※この殺し合いは、何らかの目的がある『儀式』の様なものだと推測しています。
※首輪には、参加者を弱体化させる制限をかける仕組みがあると知りました。
 また、首輪にはモラックスか或いはそれに類似したホラーが憑依しているのではないかと考えています
※零の参戦時期を知りました。
※主催陣営人物の所属組織が財団XとBADAN、砂漠の使徒であることを知りました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを全て知りました。
※つぼみ、一条、良牙と125話までの情報を交換し合いました。



【花咲つぼみ@ハートキャッチプリキュア!】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、加頭に怒りと恐怖、強い悲しみと決意
[装備]:プリキュアの種&ココロパフューム
[道具]:支給品一式×3(食料一食分消費)、鯖(@超光戦士シャンゼリオン?)、スティンガー×6@魔法少女リリカルなのは、プリキュアの種&ココロパフューム(えりか)@ハートキャッチプリキュア!、プリキュアの種&ココロポット(ゆり)@ハートキャッチプリキュア!、破邪の剣@牙浪―GARO―、さやかのランダム支給品0〜2 、えりかのランダム支給品1〜3(未確認)
[思考]
基本:殺し合いはさせない!
0:タカヤの様子を見ながら鋼牙と京水が戻ってくるのを待つ
1:市街地に向かう。
2:この殺し合いに巻き込まれた人間を守り、悪人であろうと救える限り心を救う
3:南東へ進む、18時までに一文字たちと市街地で合流する
4:ダークプリキュア…
5:良牙、一条とはいずれまた会いたい
[備考]
※参戦時期は本編後半(ゆりが仲間になった後)。少なくとも43話後。DX2および劇場版『花の都でファッションショー…ですか!? 』経験済み
 そのためフレプリ勢と面識があります
※溝呂木眞也の名前を聞きましたが、悪人であることは聞いていません。鋼牙達との情報交換で悪人だと知りました。
※良牙が発した気柱を目撃しています。
※プリキュアとしての正体を明かすことに迷いは無くなりました。
※サラマンダー男爵が主催側にいるのはオリヴィエが人質に取られているからだと考えています。
※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました。
※この殺し合いにおいて『変身』あるいは『変わる事』が重要な意味を持っているのではないのかと考えています。
※放送が嘘である可能性も少なからず考えていますが、殺し合いそのものは着実に進んでいると理解しています。
※ゆりが死んだこと、ゆりとダークプリキュアが姉妹であることを知りました。
※大道克己により、「ゆりはゲームに乗った」、「えりかはゆりが殺した」などの情報を得ましたが、半信半疑です。
※ダークプリキュアにより、「えりかはダークプリキュアが殺した」という情報を得ましたが、上記の情報と矛盾するため混乱しています。
※所持しているランダム支給品とデイパックがえりかのものであることは知りません。
※主催陣営人物の所属組織が財団XとBADAN、砂漠の使徒であることを知りました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを全て知りました。
※良牙、一条、鋼牙と125話までの情報を交換し合いました。

373Lの雄叫び/逃避 ◆OmtW54r7Tc:2013/07/26(金) 02:59:14 ID:kLURJHLI0
【相羽タカヤ@宇宙の騎士テッカマンブレード】
[状態]:全身に大ダメージ、両肩部に刺傷、疲労(中)、ブラスター化の後遺症で気絶、一部の記憶喪失
[装備]:テッククリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード
[道具]:なし
[思考]
基本:??????????
1:????????????????
[備考]
※参戦時期は第42話バルザックとの会話直後、その為ブラスター化が可能です。
※ブラスター化完了後なので肉体崩壊する事はありませんが、ブラスター化する度に記憶障害は進行していきます。なお、現状はまだそのことを明確に自覚したわけではありません。
※参加者同士が時間軸、または世界の違う人間であると考えています(この情報は喪失)。
※自分が殺し合いに巻き込まれていることや、禁止エリアやルール、Dボウイという名前を忘れました。
※また、シンヤ、ミユキ、京水以外の参加者に関する記憶を喪失しています(加頭やサラマンダーについても覚えていません)。
※デイバックは京水に持っていかれました。クリスタルだけは懐にしまってあります



大切な人を失った人の反応は、様々だろう。
驚き、悲しみ、怒り。
ぱっと思いつく限りではこんな感じであろうか。
この殺し合いの場では、多くの人が仲間の死に驚き、悲しみ、怒った。
そして…その死をどのように受け止めるかも人それぞれだ。
主催者打倒への想いをさらに強めるもの。
死を受け入れられず主催者の思惑通りに優勝を目指そうとする者。
そして、泉京水の場合は…


(克己ちゃんは死んでない、克己ちゃんは死んでない、克己ちゃんは死んでない、克己ちゃんは死んでない、克己ちゃんは死んでない…)


死を受け入れないという以上に、その死自体を認めていなかった。
だが、京水がこう考えるのも無理もないかもしれない。
何故なら、彼…いや彼女は克己の死を実際に目撃したわけではない。
他人からの又聞き、しかも出会って間もない人物から伝えられたものだ。
勿論、鋼牙が嘘を言う理由などないし、京水だって本当は気づいているのだ。
鋼牙の言ったことが真実であり、克己は死んだのだと。


(嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ)


それでも彼女はその事実を認めようとはしない。
頑なに克己の生存を信じ込もうとする。


(…そうだ、きっと克己ちゃんったら、酵素切れで倒れてるだけなのよ!うふふ、克己ちゃんったら、うっかりさんなんだから♪)


現実を認められない時、人は時に自分を守るため逃避という道に逃げる。


(私の酵素を分けてあげればきっと克己ちゃんは生き返る!うんそうよ!そうに決まってる!そうじゃないといけないの!)


それは、人間でも、NEVERでも変わらない。


(うふふふっ♪待っててね克己ちゃん♪)


消滅して既にいない人間を、あてもなく探し続ける哀れな乙女の姿が、そこにあった。

374Lの雄叫び/逃避 ◆OmtW54r7Tc:2013/07/26(金) 02:59:58 ID:kLURJHLI0
【F-7 北】

【泉京水@仮面ライダーW】
[状態]:疲労(小)、現実逃避、混乱
[装備]:T-2ルナメモリ@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式×5(京水、タカヤ、シンヤ、丈瑠、パンスト)、細胞維持酵素×4@仮面ライダーW、克己のハーモニカ@仮面ライダーW、バッドショット+バットメモリ@仮面ライダーW、スタッグフォン+スタッグメモリ@仮面ライダーW、テッククリスタル(シンヤ)@宇宙の騎士テッカマンブレード、メモリーキューブ@仮面ライダーSPIRITS、バットショット&バットメモリ@仮面ライダーW、スタッグフォン&スタッグメモリ@仮面ライダーW、T2メタルメモリ@仮面ライダーW、水とお湯の入ったポット1つずつ(変身3回分消費)、力の源@らんま1/2、ランダム支給品0〜4(京水0〜1、タカヤ0〜2、パンスト0〜1)
[思考]
基本:剛三ちゃんの仇を取るために財団Xの連中を潰す。
0:克己ちゃんに細胞維持酵素を届ける
1:克己ちゃんと合流したい。克己ちゃんのスタンスがどうあれ彼の為に全てを捧げる!
2:仮面ライダー(左翔太郎)とは、一応共闘する。
3:後でG-7の火を消す。
[備考]
※参戦時期は仮面ライダーオーズに倒された直後です。
※克己の死を認めていません。
 頑なに克己の生存を信じ込もうとしています。


※シンヤの死体はF-6にナケワメーケの残骸と共に埋葬されました

375 ◆OmtW54r7Tc:2013/07/26(金) 03:00:46 ID:kLURJHLI0
投下終了です

376名無しさん:2013/07/26(金) 15:05:52 ID:B9uU8liA0
投下乙です
京水さんもさすがにシリアスモードに…?
加頭といい、克巳といい、京水といい、あんまり感情を失った集団ってイメージがないなぁ…
こいつらも何気に主人公軍団結成か
鋼牙が離れるのがまた少し気になるけど
てか、おい!メモリキューブ!!

そういえば、ライジェネ2やってたら、村雨と克巳の戦闘前セリフが、この二人がこのロワで戦う前のセリフと同じだった
どっからネタ拾ってきてるのか把握しきれねえ…www

377名無しさん:2013/07/26(金) 23:10:46 ID:sKkVFTZ.0
投下乙です

378名無しさん:2013/07/26(金) 23:15:50 ID:sKkVFTZ.0
↑ミスです

投下乙です
これは京水さんのマーダー化フラグ?
なんか陰りが見えてきたぞ

それと、気になったんですが、京水は凪とガドルの戦闘時の銃声を聞いてますが、ガドルの放送の方は聞こえなかったんでしょうか?

379 ◆OmtW54r7Tc:2013/07/26(金) 23:58:47 ID:kLURJHLI0
指摘どうもです
確かに聞こえてるはずですね
修正します

380名無しさん:2013/07/27(土) 00:03:07 ID:42KMFudk0
お二人とも投下乙です
ランスさんはここで落ちたか。最後は自爆した所がこのロワのランスさんらしいね。
あかねはやばい方向に一直線で救いが見えない…一文字も頑張ったけど無念
そんな中でブレない暁はさすがだw

京水さんにマーダー化フラグが…
鋼牙はどうする?

381 ◆OmtW54r7Tc:2013/07/27(土) 00:53:09 ID:62Oqx9M.0
修正SSをしたらばの修正スレに書き込んできました
ガドルの放送を絡ませた都合上、鋼牙達と出会うまでの展開が大きく変わってます

382名無しさん:2013/07/27(土) 11:06:13 ID:Pyys9jak0
投下乙です

確かにこの状況で京水ならそういう考えも沸くよなあ
危うい状況だが周りの人間はそれに気が付けるかどうか…
鋼牙、頼むぜ

383名無しさん:2013/07/31(水) 01:37:35 ID:inEs925E0
そういえば、杏子のジュネッスってどんな色になるんだろ
あれって人間ひとりひとりによって違うみたいだから、杏子には杏子のジュネッスがあるよな…
オリ要素に抵触するとか言っても、設定準拠じゃオリ要素避けられなくね?

384名無しさん:2013/07/31(水) 18:51:46 ID:r/Z86Md6O
>>383
小説で色を指定する必要は無いし。

385名無しさん:2013/08/01(木) 05:51:21 ID:s8.t6xCk0
>>383
そうはいっても既存の設定以外で新たな形態出すとかもはや設定のねつ造レベルだし
というか設定の無いものを戦わせるとか無茶だし

>>384
色によって戦い方とか技とか変わるんだからその反論は少しずれてる

386名無しさん:2013/08/01(木) 12:48:08 ID:866OehDA0
じゃあ杏子はアンファンスで戦い続けるのかな

387名無しさん:2013/08/01(木) 19:09:24 ID:G9Erkhxc0
あんこちゃん、さやか経由で悪い情報が渡ってるんだよなあ
しかも本家ウルトラマン原作組で爆弾なんだよなあ…

388名無しさん:2013/08/02(金) 00:18:51 ID:fKg..rC60
石堀もまさか黒岩や凪から聞いた少女がネクサスの光継承してるとは思いもよらないよなあw
この辺も2回目の放送で言われてた予言者としての能力が制限されてることと関係あるのかな…

389名無しさん:2013/08/02(金) 09:57:03 ID:.MAnGhcg0
その辺はパロロワの醍醐味だなあw
石堀視点では先が読みにくくて不安定要素があるが動かざるおえない

他にも爆弾はあるがきになるのはリョウガ・あかね関連かな

390名無しさん:2013/08/03(土) 17:41:39 ID:4EoZns..0
ネクサスは自由度高いから別に新しいジュネッス出ても設定の捏造にはならないと思うけど
丸山浩も色んなジュネッスを描いてはTwitterにアップしてたし

391名無しさん:2013/08/03(土) 17:57:36 ID:4EoZns..0
・変身者によって姿が全部違う
・光を闇に還元してダークザギが復活
・光は奪われたけど時空を越えて光を継承
・闇の力を失ったはずの溝呂木が謎変身

…考えただけでも結構抽象的な存在だから、書き手が自由にできそうな感じはある
議論を要するとしても、杏子の固有ジュネッスみたいなのがあってもよさそうなもんだけど

392名無しさん:2013/08/03(土) 18:31:43 ID:M2uHpISI0
ふうん、そういうもんなのか
まあ、実際に書き手がどう書くかを楽しみにしよう

393 ◆gry038wOvE:2013/08/04(日) 00:53:59 ID:8SfOfxv20
投下します。

394仮面劇のヒーローを告訴しろ ◆gry038wOvE:2013/08/04(日) 00:54:41 ID:8SfOfxv20


 涼邑零、結城丈二の二名は志葉屋敷の前まで来ていた。
 周囲には焼け跡と思しき真っ黒な痕跡が残り、ここで何らかの戦いが起きた事を示している。果たして、ここで何者が生き、何者が戦い、何者が死んだのか……それは二人が知る由もない。
 二人は、その周囲の焼け跡のある場所だけをばらばらに探索した。ここで何があったかの手がかりを見つけ出そうとしていたのである。
 多くは戦いの痕跡のみが残り、実際に手がかりが見つかる事などないだろうが、推理可能な状況も存在するだろうし、何か道具が見つかるかもしれない。

「結城さん!」

 そんな途上、零が呼びかける。
 結城が立ち止まって零の方を見ると、零は何も言わずに地面を見下ろした。そこには、偏に死体というにはあまりにもグロテスクな物体が横たわっていた。
 首から下のみが存在する、骨格の良い成人男性である。当然、そこの命の灯はない。
 頭部のみが存在せず、首元は皮膚も衣服も黒焦げである。しかし、触ってみれば熱はない。熱がないどころか、生命活動を完全に停止している証明のように冷たくなっていた。

「……なんと惨い事を」

 結城は、零の方へと歩みながら言った。その死体の猟奇性は、少し離れた場所からでもよくわかったが、やはり調査は欠かしてはならないだろう。
 結城と零はしゃがみこみ、その死体を少し調べて見る事にした。熱がないものの、やはりまだ少し焦げ臭さは残る。
 どうすればこんな姿になるのだろうか。仮にどれだけ残虐な性向の持ち主であれ、首と胴体を分かつような真似はしまい。
 ……この死体の場合は、頭部を焼いたのだろうか? しかし、妙なのは頭部の焼け跡と思しきものが無い事だ。頭を燃やされたならば、その骨や髪が少しは残っていてもおかしくはない。だが、それはまったく残ってはいなかった。
 それに、この死体の体形も非常におかしい。彼の身体は、その時もっとも熱を感じていた頭部を抱えるようにではなく、身体の前に手を翳している。まるで、そこにある何かを掴もうとするようにだ。──結城と零には、何者かによって首を掴まれた人間が、その腕を放そうとした形にも見えた。それが一番しっくりくる。
 普通の人間なら反射的に頭部の火を消そうとして頭に手をかけるだろう。しかし、それはできなかった。
 彼はおそらく誰かに首のあたりを押さえつけられていたのだ。そんな状況下で、敵の腕を掴もうとしたが、その手が敵の腕へ届く前に、彼の頭部は消し飛ばされた。そう考えるのが適当だろうか。
 敵が放ったのも、火というほどチャチなものではないだろう。炎などというものを超越した莫大なエネルギーだったかもしれない。熱を感じるほどの時間さえ与えられず、彼の頭部のみがこの世との縁を絶ったのだ。
 やはり、変身者が起こした殺人と思われる。
 この男も、何かに変身する事ができたのだろうか──? だとすれば、変身する余地すらなく殺されたという事になる。

「……うん? 首輪が、残っている?」

 調査中にあらゆる角度から死体を見ようとして、その死体をどけると、その下には鉄の輪が転がっていた。
 それもまた、少し黒い焦げ跡が残っていたが、手で擦るとそれはただの煤であるとわかった。煤を落とすと、その首輪は沈みゆく太陽の光を反射させ、綺麗な銀色を見せた。どうやら、ここでこの男を殺した人間は、この首輪の存在を見落としていたらしい。
 首輪にはある程度の耐熱・耐衝撃仕様があるようで、傷のようなものはほとんど無かった。爆弾という性質上、爆発を起こした場合は誘爆を起こす可能性もあるが、少なくともこの人物の頭部を襲った一撃は、爆弾を誘爆させるほどではなかったに違いない。爆発ではなく、炎上という形だったのだろうか。それでも充分に危険ではあるが、膨大な刺激や負担が首輪にかかったわけではないようだ。
 とにかく、この首輪がここに落ちているという事は、殺人者の目的はこの首輪ではなかったという事である。
 この首輪を手に入れ、解析する目的すら無い──おそらく、脱出を目的としない者による殺人。首輪を手に入れるのが目的であるにしても恐ろしい行動には違いないが、脱出のカギとなっている首輪を放置してこの場から去ったというのなら、殺人者には一切の人間味を感じられなくなるのだ。
 あるいは、殺人者は首輪についている爆弾を恐れたのかもしれないが、これだけの殺し方をする人間がそんな繊細な神経を持ち合わせているとも思えなかった。
 おそらくだが、この殺人者は人間らしい意思を持っていなかったか、このゲームを純粋に楽しみ、自分が首輪をかけている事さえも愉しんだのだろう。……どちらにせよ、恐ろしい人物には違いないが。
 そして、その人物が首輪をここに置き去りにした事がまた結城と零に脱出の手がかりを与える事になった。

395仮面劇のヒーローを告訴しろ ◆gry038wOvE:2013/08/04(日) 00:55:23 ID:8SfOfxv20

「まさか、首輪がこんなに手に入るなんて……」

 いま彼らの手には二つの首輪がある。
 パンスト太郎の首輪、そして、この男──彼らは知る由もないが、男の名は速水克彦といった──の首輪であった。
 一度の解析に失敗しても、もう一回分のチャンスが残っているという状況になる。これは早々に首輪の解体を行うべきかもしれない。
 結城は今拾った速水の首輪の方を、零の手の上に乗せた。

「……涼邑。これはとりあえず君に預けておこう。今後、何らかの事情で分かれた時に、お前も持っていた方が役に立つだろう」

 零は、何も言わずにそれを受け取る。
 一人で二人分の首輪を持つよりは、その方が効率が良いだろうと彼も考えていたのだ。

「この死体も、埋葬した方がいいな……」

 少し前にパンスト太郎の死体を埋葬したように、結城はその死体を埋葬する事にした。
 やはり手で掘るのは効率が悪そうだ。道具もなしに人一人分の穴を作り出すといえば、どれだけかかる作業かわからない。
 結城はライダーマンのヘルメットを取り出し、「ヤァッ」と声をあげてそれを装着する。
 そして、彼の姿は、仮面ライダー4号ことライダーマンの姿へと変身した。

「……ドリルアーム!!」

 アタッチメントをドリルアームに付け替える。ドリルアームは、轟音を挙げながら回転し、柔らかい地面をすぐに掘り出していった。
 零の顔や身体に土が飛んだが彼は憮然として速水克彦の死体を抱えて立っている。
 そして、一分とかからずに地面になかなか大きな穴が開いた。

「……」

 零が、そこに速水の死体を埋めた。
 土をかける作業はすぐに終わる。元の世界だったら、彼は火葬されたのだろうか。……しかし、火で死んだ人間の死体に対して、それはあんまりだろう。ここで土葬してやる事ができたのは、彼に対して唯一できる事なのかもしれない。
 二人は手を合わせ、その場を去っていく。
 志葉屋敷周辺の調査を行ったものの、特にそれ以上は何も発見する事がなかった。そして、調査に見切りをつけた二人は、すぐに門をくぐり、和の風格に満ちた閑静な庭を通り抜け、玄関へと向かった。





 そこは、本来志葉丈瑠が座り、家臣たちを見下ろすべき場所だった。
 常に外道衆に対抗する策が講じられる場所であり、時には伝えたくない事実が伝えられる場所であった。
 しかし、その場所はこの時、場違いな物体によって和の雰囲気を完全に損なっていた。

「どうやら、これがニードルの言ったボーナスらしい」

 志葉丈瑠が座するべき席に、機械の鎧、いや、巨大ロボットとでもいうべき代物が堂々と置いてあったのである。
 結城が少し叩いてみるが動く気配はなかった。

「ああ、ロボットか、あるいはパワードスーツというやつだな」
「結城さんでも判断できないのか?」
「……いくら何でも、外見だけではわからない。これだけ色んな装備や機械で覆われてしまってはどちらだかサッパリだ」

 ソルテッカマン1号機改。彼らは知る由もないが、それはそういう名前の機体であった。
 相羽タカヤや相羽シンヤのいた世界の機械だが、この機体の情報は彼らにはなかった。
 色は緑。やはり、ニードルが放送で言っていた「緑と青の強力な武器」だろう。まさか、こうまで高い技術による代物とは思わなかったが。

(これは、自立移動ができるロボットか? それとも、人が乗るパワードスーツか?)

 やはり、結城は自分が判別できないその物体に少しの疑問を抱いていた。
 以前、タカヤと話した際に、彼の世界には既にオービタルリングなるものが存在する事も語られた。高い技術を持つ世界には、こうしたものが作られていてもおかしくはないだろう。

396仮面劇のヒーローを告訴しろ ◆gry038wOvE:2013/08/04(日) 00:56:23 ID:8SfOfxv20
 実際、仮面ライダーの世界も、だんだんと技術は向上し、悪の組織もとうに自立型ロボットを実装しているくらいだ。
 しかし、流石に外観だけでは区別ができないのである。

「どんな機能がついてるか……とかは?」
「……どうやら、身体の各部に銃火器のようなものがあるらしいな。レーダーのようなものもついているみたいだ。見たところ、可動域も相当に広そうだな……」

 身体中には銃口が除いているし、砲撃用のバズーカのようなものまで装備されている。
 その銃器の定義をひとつひとつ語っていけば、やはり相当に時間をかけるものだろう。
 アンテナがあるところを見るとやはり電波の送受信が可能であるように見えるし、腕には照準器のようなものもある。
 本当に戦うための兵器という感じだ。

「で、この機械の名前は?」
「それもわからない。ニードルも何も言っていなかったからな。機体にも何も書いてなさそうだ」
「……じゃあ、結城さん。これに名前でもつけてみたら?」

 結城は零に問う。
 言われると、結城は少し考えた。

「名前、……名前か」
「そんな深く考えずに、適当に。何て呼べばいいのかわからないし」

 勝手に名づけるのもどうかと思うが、緑の機械というのは呼びにくかった。
 だいたい、ロボットだかパワードスーツだかも曖昧なので、「ロボット」と呼ぶことも「パワードスーツ」と呼ぶこともできないのは辛い。
 結城も、何と呼べばいいのかわからず、とりあえず直感的に出てきた名前を呟いた。何故そんな言葉が出てきたのかはわからないが──

「そうだな……私なら……ザボーガー、とでも名付けようか」

 結城は、その機体にザボーガーと名付ける事にした。
 意味のある言葉でも何でもない。ふと、ロボットと聞いて頭に浮かんだ単語が、その意味のない単音の組み合わせだった。

「ザボーガーか……わかった」

 特に零にも不服はなかった。その名称で大いに構わない。説明書が転送されるまでは、とりあえずこれはザボーガー(仮)だ。
 濁音が付く名前というのは、不思議と心地いい響きを感じる。

「で、ザボーガー(仮)の制限解放は17時かららしい。どうする……?」
「悪い奴らに利用される前に……今のうちにザボーガー(仮)をブッ壊しておこうか?」

 零はザボーガー(仮)に向けて剣を構えた。
 だが、結城はごく冷静にそれを見つめながら言う。

「……いや、俺達もしばらくここで制限が解除されるのを待とう。あと少し待っていればすぐに制限の解禁と説明書が来る。我々が使用する事もできるはずだ」
「でも、必要ないだろ?」
「これの構造にも少し興味があるからな……それに、実際これが心強い存在となるかもしれない」

 もし、これがロボットだったならば、その時は心強い仲間となるかもしれない。
 パワードスーツだったとしても、右腕以外は強化服でしかない結城や、99.9秒しか鎧を装着できない零にとっては使いようのある道具となる。
 それに結城には、この機体に対して科学者としての興味もあった。

「……よし、じゃあ俺もそれに従うよ」
「すまない。……だが、それなら、ただ待つのも退屈だろう」
「ああ、そうだな……」

 零は、その言葉に込められた結城の真意を汲み取ってか、笑顔を見せた。

『首輪をひとつ解体してみるんだろ?』

 それが、結城の振りの真意であった。
 そろそろ、思いきって首輪の解体も実践せねばなるまい。

397仮面劇のヒーローを告訴しろ ◆gry038wOvE:2013/08/04(日) 00:57:20 ID:8SfOfxv20
 首輪をここで一つ失っても、まだもう一つの首輪があるという状況になったのだ。上手くいけば、首輪のシステムについて、ある程度近づけるかもしれない

『……その通りだ。とりあえず、私の持つアタッチメントで解析をする』
『俺は何をすればいい?』
『もしかすれば、オペレーションアームだけでは解体は不可能かもしれない。とりあえず、何か使えそうな道具を捜してくれ』
『わかった』

 そんなに難しい会話ではなく、すぐに会話は終わった。
 周囲には人はいないようだし、しばらくは簡単に話が進みそうなものだ。
 結城は、解体に必要なものがこんなところには無いだろうとは思いつつも、零には何か役目を与えておくことにした。仮にも首輪は爆弾である。どれだけの爆発を起こすかはわからない。
 とにかく、筆談と同時に、表向きの会話みたいなものをしておく。

「……少し、ここでザボーガー(仮)を調べてみよう。アタッチメントを使えば調べられるからな」
「わかった。じゃあ、俺はこの家の中に、他に使えないものがないか探ってくるよ」

 二人は、アイコンタクトを取って、その場でばらばらに行動する。
 同じ志葉屋敷にいるとはいえ、室内には結城だけが残る。

「ヤァッ!」

 再び、結城丈二はライダーマンへとその姿を変じる。

「オペレーションアーム!!」

 すぐに右手のアタッチメントをオペレーションアイテムへと変えると、ライダーマンはその指先を触手のように伸ばしてパンスト太郎の首輪に触れる。
 ゲームが開始した時とほとんど同じだ。
 ドーナツ状の首輪には、一周するように繋ぎ目がある。そこがおそらく、解体の鍵となるだろう。オペレーションアームの先端のメスが、それをなぞるように円を描く。
 その後、本来首に面していたはずの内側の部分の繋ぎ目を一部の狂いもなく綺麗になぞった。
 すると、首輪はおそろしいほど簡単にパカッと半分に分かれた。

(……これはあくまでケースか)

 しかし、半分になっても、その中から首輪の本体となるべき爆弾部分が出てくる。結局、これのケースが半分に分かれただけだ。首についているケースを外したとしても、これが首の回りに残ってしまう。
 本体は、無数のコードやネジが剥き出しになった白い輪だった。コードの中には絶え間なく液体が流れていくものもある。小さな赤い光が点滅を繰り返している。とにかく、あらゆるものがせわしなく働いていて、一見すると非常に複雑な構造だ。
 中身を見るのは初めてだったが、思った以上に機械らしい機械であった。
 ソウルメタルを操れるようになったり、人の能力を制限できたり……という技術がこの中に詰まっているとは到底思えない。あまりにも人工的な物体である。
 ライダーマンの複眼はそれを多角的に見始めた。
 真上から、横から、一周するように眺め、内側も見る。

(どこから解体すべきか……この複雑な形状ではわからないな)

 おそらく、この導線の中には幾つものダミーがある。
 決まった順序で解体を行う必要がありそうだ。しかし、それを見分けるのは解体の手がかりがない現状では難しい。
 間違えれば爆破か。もしくは、本当にただの線か。
 この螺旋のどこに刃を入れればいいのか。

 迷っているうちに、時間は刻一刻と過ぎる。
 時計の針に少し目を移しつつ、結城はその回路のどこかに手を付けようとした。
 そして────

「なっ────!?」

 ────首輪の素体は、結城の目の前で光とともに爆発する。
 オペレーションアームが弾かれ、ライダーマンの身体も後方に吹き飛ぶ。結構な爆発であった。
 畳の上で、先ほどまでドーナツ状だったはずの物体が、粉々に砕け散り、周囲のものに小さな火を齎していた。その小火をライダーマンはすぐに消し、大火事となるのを未然に防ぐ。
 ……首輪の解体は、失敗だ。
 主催者側に勘付かれて爆発させられたのかと考えたが、それはないだろうと彼は結論づけた。

398仮面劇のヒーローを告訴しろ ◆gry038wOvE:2013/08/04(日) 00:58:57 ID:8SfOfxv20
 時計を見る。
 人為的に爆発させたにしては、時間がカバーを開けてから五分きっかりと非常に正確だったのだ。おそらく、五分経過と同時に爆発するというシステムだったのろう。
 しかし、それだと疑問が出てくる。
 何故カバーを外した時点で爆発をしないのか……その方が効率的なはずではないか? 少なくとも、解除する意思がなければ、カバーは外されない。
 カバーを外すような人間は、主催者にとって不利益なはずだから、早い段階で首輪という証拠を破壊すべきだ。

「おい、どうしたんだ!?」

 爆発の音を聞いて、零が慌てたように駆けつけた。その部屋のありさまを見た零は、険しい表情だった。
 見れば、その手には、ドライバーやニッパーがしっかり握られている。それもやはり大型のもので、繊細な解体には難しいかもしれない。オペレーションアームがあれば充分だろう。

「……涼邑。残念だが、今の首輪は爆発してしまった。だが、首輪の構造について先ほどより少し進んだ手がかりを得られたようだ」

 失敗ではあったものの、結城は淡々と事態を受け止めていた。
 この状況下で、どこまで情報を引き出せるか。それが重要となる。首輪がもうひとつあるぶん、まだ何とかなる余地も残っていた。
 それに、結城は先ほどの時点で、既に首輪内部の外観をほとんど記憶していたのである。

「……すまないが、何枚かA4くらいの用紙を探してきてくれるか? 少し書き留めたい事がある」

 零に雑用のような事ばかりやらせるのは気が引けたが、首輪の解体という面において、彼ができるのはそれくらいだ。
 そして、彼自身も当然それを自覚していたので、どんな雑用でもやってのける気でいた。
 筆談にも何枚か使っていたが、それとは別にまた何枚も必要となったのだろう。

「わかった」

 零は戦闘においては高い能力を誇るが、知能では流石に結城には劣る。すぐに頷き、他の部屋に向かった。もしかしたら、先ほどの時点で紙自体は発見していたのかもしれない。
 すぐに零は帰ってきた。
 その間、ライダーマンの変身を解除した結城は爆発した首輪の破片を一つ一つ拾い上げていた。やはり、コードなどが少し残骸として残っていたのである。それから、カバーも事前に取り外していたので、綺麗な状態で残っている。
 こうした失敗の痕もまた、後につなげるために重要だ。
 そんな結城の熱心な様子を見て、声をかけるのをためらったが、やはり零はすぐに声をかける事にした。

「持ってきたよ」
「……ありがとう。じゃあ、今からこの首輪の構造について、今わかった事を書きとめる事にしよう」
「ちょっ、それ言っていいのかよ!」

 先ほどまで、首輪の解除に関しては筆談をしていたはずだ。
 しかし、結城は一切気に留める様子がなかった。

「大丈夫だ。既に主催側は我々が首輪を解体しようなどという事はお見通しさ。そのうえで、遊ばせているのさ。……そうだろう? 加頭、サラマンダー、……それともニードルか? 聞いているなら、放送で返事を聞かせてもらいたいところだな」

 首輪の向こうにいる主催者に、結城は語りかける。
 それは、姿の見えない主催者側への立派な宣戦布告であった。
 しかし、零に対してはあまりにも説明不足なので、彼に対する説明を始める。

「涼邑。この首輪は、外付のカバーの部分と内部の機械の部分の二つに分かれている。これ自体は簡単に切り離すことができるが、切り離してから丁度五分で先ほどのように爆発するシステムになっていた……おそらく、主催者側の首輪解除の対策方法だ」
「なら、バレたらマズいんじゃないか?」
「本当に首輪を解除されるのを止めたいならば、五分後などでなく、カバーを外した直後に爆発するはずなんだ」

 カバーを外す方法自体はそんなに難しいものではない。
 いや、むしろ、簡単すぎるという次元だろう。首輪の外のつなぎ目を刃物でなぞるだけで、カバーは外れるのだ。ただ、それは外側だけでは外れず、内側もなぞらなければ外れないが、それでもやはりカバーを外すのが簡単であるという事実は変わらない。首と首輪との僅かな隙間を利用する事が出来れば、すぐに首輪は外れる。
 問題となるのはソウルジェムの持ち主だが、これもまた何らかの方法でカバーを外す事が出来るだろう。

「なぜ主催者側は五分という余裕を与えているのか。それを考えれば、おのずと答えは見えてくる」
「あいつらは、俺達がこの首輪を解除できるかを試してるってわけか」
「そうだ。だから、我々のように首輪を解除しようとしている人間に対しても、危ない芽を摘むような真似はしないだろう。これは、加頭たちもプレイヤーとなっているゲームなんだ」

399仮面劇のヒーローを告訴しろ ◆gry038wOvE:2013/08/04(日) 00:59:48 ID:8SfOfxv20

 この殺し合いは最初からゲームのようなルールが下敷きにされていた。
 首輪、禁止エリア、ランダム支給品、時空や時間の食い違い。
 そんなものを使わなくても充分に殺し合いをしてくれる者はいくらでもいたはずだ。たとえば、暗黒騎士キバも、タイガーロイドも、仮面ライダーエターナルもそうかもしれない。
 しかし、そこに主催者たちはわざわざゲーム性の高いルールを仕込んだ。殺し合いに乗る戦士たちの能力を最大限解放し、無制限での戦いをすればもっと早く終わるはずなのだ。こんなルールは一切必要ない。これは、殺し合い自体に大層な目的などなく、ゲームという形でこの殺し合いを行っている証ではないだろうか。
 そこまではごく簡単な話だ。おそらく、誰もが薄々勘付いている事だろう。
 しかし、このゲームは、当初は参加者対参加者という構造だと思われていた。主催側もオープニングの時点でそれを推進しているし、主催者には反逆すべきではないと普通は考えるだろう。だが、おそらく────実際は、彼らは参加者対主催者というシステムを容認しているのだ。これまでの流れを考えれば、第二のシステムは当然、主催者に疎まれ、殺されてもおかしくはないはずなのに、主催側は何のアクションも起こさない。
 それを容認している理由として考えられるのは、「それを含めたゲームだから」という可能性が高いだろう。そもそも、仮面ライダーや魔戒騎士は殺し合いに相反する態度を取るのが当然だ。
 明らかに主催者にとって不利益な存在でありながら、ただ殺すのではなく、こうして自由な行動を容認し、殺し合いに乗る者に対する牙だって立派に与えられているのだ。

 当初、結城はオペレーションアームが何故支給されているのかを疑問に思っていた。
 その他、左翔太郎という男はフィリップとの意思疎通が可能な事を疑問に思っていたし、何故敵対している相手にそんな事をしているのか……という疑念が当初、このバトル・ロワイアルの各所で起こっていただろう。
 全てはごく簡単な事だ。
 これがゲームであるから──そして、ただ参加者と参加者が行うゲームではなく、参加者と主催者が行うゲームでもあったから……それだけである。

「……ふざけやがって!」

 零も怒りを抑えられなかった。
 そのためにシルヴァは破壊され、零は悲しんだ。鋼牙やバラゴを前に怒り狂った。
 その全ての姿を誰かが監視し、「ゲーム」として楽しんでいたのである。
 気分の良いものではない。ましてや、人がこれだけ死んでいるというのだ。
 確かにずっと、この殺し合いのゲーム性は見てきた。だから、今更な怒りでもある。
 だが、改めてその現実について改めて考えてみると、何の目的もなく、人の命や感情さえも弄んでいる悪趣味なゲームである事がよくわかり、零は底知れぬ怒りを感じたのだった。

「……奴らに対して怒るのは後にしよう。それに、奴らがプレイヤーだとするなら──」

 結城は、自分の考えに対して、少し違和感も感じていた。
 ニードルはともかく、加頭は果たしてそんなにバトル・ロワイアルに対して遊戯性を持っていただろうか?
 何故、彼は協力していたのか。自分が楽しいからか? ──それを考えると、単純に彼らが遊んでいるだけとは思えなかったのだ。

「加頭順や、サラマンダー男爵、そしてニードル。奴らは、本当にこの殺し合いの主催者なのか?」
「何……?」
「もしかすると、奴らは、俺達と同じく、何者かに集められた、このゲームの参加者なんじゃないか?」

 ──加頭順、サラマンダー男爵、ニードル。
 彼らにはこの殺し合いの主催をする目的などなく、もっと上に、自分たちを監視する何者かの存在があるのではないだろうか。

400仮面劇のヒーローを告訴しろ ◆gry038wOvE:2013/08/04(日) 01:00:32 ID:8SfOfxv20
 このゲームは、参加者同士の殺し合いである以上に、そこから抜け出した参加者たちが加頭たちと殺し合い──それを眺める“誰か”がいるゲームなのではないか。
 彼らも真の主催者によって集められたこの殺し合いの参加者で、いずれ殺し合う側の参加者との戦闘も踏まえたうえで、ゲームの進行を任されている存在なのではないか?

「奴らを倒しても何にもならないかもしれない……って事か」
「ああ、あくまで推測だがな」

 放送とやらで、答えは聞かせてもらえるかもしれない。

「とにかく、首輪の話だ。首輪の構造とデータを今からここに描くから、しばらく待ってくれ。怒るのは、奴らと対面してからでいい……」

 結城は、先ほどの紙に首輪の構造を描いていた。しかし、話に集中してしまうせいで、その図は未完成だ。
 それでも、先ほど、首輪の構造を記憶していた彼は、その内容を書き表す事が出来る。途中で話題を変えたとしても、彼は記憶をぼかすことなく、はっきりと覚えていた。
 また、しばらく零が待っていると、結城は首輪の構造を描いた設計図のようなものをスケッチし終えている。

「できたぞ。……これを見てくれ」

 それはおおよそ正確な外観だった。あらゆるコードの絵が描いてあるように見えるが、それは実は一本の線であったり、ダミーと注意書きが書いてあったりする。
 コードだけではなく、首輪の中にある様々な装置や、一見すると必要なさそうなカバー部のスケッチまである。

「……一見複雑だが、ダミーの線もいくつかあった。爆発後の残骸を見たところ、中身が何もない完全なダミーも多い。色から察すると、この線はこの部分だろう。爆弾へと繋がっているのはこの線とこの線だ」

 自分の記憶と照らし合わせ、ダミー部分や一本の線となっている部分を的確に示している。おそらく、そこにはミスはない。
 IQ201の天才であり、デストロンで科学者をやってきた彼には、こうした分野は得意であった。

「爆弾も特殊な仕様らしいが、先ほどの爆発を見た限りでは、非人間に対する殺傷能力が充分ではない。周囲への被害もカバーなどのお蔭で最低限に済むようになっているのだろう。第一、至近距離で爆発を体験した俺も五体満足なくらいだからな」
「でも、それじゃあ、本当に強い奴は死なないんじゃないか?」
「……その問題点を無くすのがこの部分についている特殊な器具だ」
「……何だ?」
「この『盗聴器』と書かれている部分を見てくれ。おそらくこの器具全体が盗聴器というわけではない。盗聴器にこれほどの体積を食うはずはないし、放送情報を伝達するパーツは別の部分にある。それに、この部分にはコードも何も繋がっていないんだ。それも先ほど見つかった……これだ」

 結城の手には、点滅する器具の隣に描いてあるものとほぼ同じ、小さな長方形の器具があった。

「これは一見するとただの機械だが、中身には回路のようなものが一切なかった。つまり、機械でも何でもない。おそらく、これが制限などの特殊な能力を司る特殊な器具だ」
「……わかりやすく言ってくれよ。何でそれを使って人を弱体化させるなんて事ができるんだ?」

 その疑問に答えるのは、涼村暁、黒岩省吾の二名がいた世界の言葉であった。

「人間の生体エネルギー・ラームを吸うダークザイドの存在を覚えているな?」
「ああ」
「おそらくこれは、そういった生体エネルギーを一定値まで吸引する装置だ。強い者の首輪を爆発させる際にも、ラームを極限まで吸ってから爆破させれば、いかに剛健であろうとも爆弾の熱量や衝撃に耐えきれずに死亡する……おそらく、改造人間も、修理できないほどに……」

 魔法少女の首輪はソウルジェムなるものに備えられているらしいが、その理由もそこにあるのだろう。ラーム自体がソウルジェムにあるのかもしれない。
 死人であるNEVERに対しても、代替となる措置があると思われる。彼らの場合は、特殊な酵素を打って細胞を維持する必要があるので、細胞の制御をおこなう装置のものがかけられているのではないだろうか。
 そして、そういう形で死亡を測定するならば、本郷や三影のような改造人間の死亡者も、おそらく確実な死を迎えているだろうと──結城は認めるしかなかった。

401仮面劇のヒーローを告訴しろ ◆gry038wOvE:2013/08/04(日) 01:01:21 ID:8SfOfxv20
 この殺し合いに参戦する者たちの知る話ではないが、かつてシンケンジャーや仮面ライダーダブルが遭遇した仮面ライダーディケイドは、パーフェクターという生命エネルギー吸引装置のようなものを持つ戦士・アポロガイストと戦っていた。
 アポロガイストは本来、ライダーマンもよく知る仮面ライダーXの敵であったが、結城の知る神敬介がいる世界とは一切関係のない話だ。
 そのパーフェクターと同じ要領で生命エネルギーの吸収を行う装置が首輪にも存在しており、それがラーム──あるいは、命の炎、ライフエナジー、尻子玉でもいい──を吸引する役割を持っていたのである。

「なるほど……でも、それなら俺たち魔戒騎士の剣が使えるのは説明がつかないんじゃないか?」
「……確かに、そうなるな……」

 二人の話は行き詰る。
 首輪による制限が、このラームを吸う装置によるものだというのなら、魔戒剣を使えるようになるなどのプラス要素の存在が不明だ。
 首輪が全ての制限を強いているという前提が間違っていて、魔戒剣自体に制限が敷かれているのか? それとも、空間が制限を作っているのか?
 確かに、そのどちらかの可能性も高いだろう。

「となると、やはりソウルメタル自体に何らかの制限を施したのかもしれないな」
「……ソウルメタルに?」
「ああ。最初から首輪を解除した際にそんなデメリットが生じる事はないのかもしれない。実際は武器や支給品の方に制限がかけられていて、首輪を外してもソウルメタルは操れるのかも……」

 最初から、ソウルメタルが首輪の力で操れるというのは仮説にすぎない。前提そのものが間違っている可能性だって否めないはずだ。

「……でも、そんな事は出来ないはずだ!」

 零は反論する。
 ソウルメタルは太古の昔から存在する道具だが、一般人に操れるようになった試しなどない。そう簡単に操る技術が発達するわけがないのだ。
 特に、零のように長らくソウルメタルを操りながら戦ってきた人間にはわかる。
 簡単に操れるようになるという事実があるとしても認めたくはないが、それ以上に、やはりそれは無理だろうという諦観した考えがあった。
 機械や魔術……どんな手を駆使しても、おそらくソウルメタルは簡単に人の手に握られる事はなさそうだ。

「さあ……。その点では、俺の知識の方が不足しているかもしれない……どれも仮説に過ぎないからな。結論を出す事は難しい」

 結局、完全には答えが出せそうにない。

「もしかすれば、魔戒騎士の力を付与する役割があったのかもしれないし、空間そのものがソウルメタルの性質を無効化しているのかもしれない。とにかく、それに関しては首輪と絶対的に関係するものではない……かもしれないな」

 あらゆる説があるので、結論を出すことができないのである。

「……何にせよ、首輪解除の際のデメリットとしては微々たるものだ。ソウルメタルは君が扱う事ができるからな」
「まあ、そうなんだけどさ」

 結局のところ、結城にとってソウルメタルが操れなくなる事自体は大きなデメリットではないだろう。
 問題となるのは、手元にある首輪を解体してしまうと、放送が聞けない事などだろうか。
 上空で放送担当者が口パクをしている状態で読唇術でもできればいいが、真下からでは口の動きをはっきりと見る事が出来ないだろう。
 それだけが唯一の問題点だが、他の参加者は首輪をしているはずだから、他の参加者を見つけて聞けばいい。禁止エリアの存在も無意味になるのだから、探すのは簡単だろう。

「……おいおい、いろいろ考えてるうちに17時だぜ」
「ん……?」

 そうこうしているうちに、時刻は17時になった。これを呟いたのは零だった。
 考え込んだ結城は気づかなかったのだが、慌ててザボーガー(仮)の方に目をやる。
 すると、そこにかつて見た時空魔法陣が出現した。

 巨大な幾何学模様が光っている姿は非常に不気味で、同時に神秘的でもあった。しかし、ここにいる二人は同じものを既に見ていたし、元の世界でも同じようなものを見慣れていたので、格別驚きもしなかった。出現の仕方はそれはそれで神秘的とも言えたが、やはり元の世界での記憶は二人に冷静さを齎していた。

402仮面劇のヒーローを告訴しろ ◆gry038wOvE:2013/08/04(日) 01:03:04 ID:8SfOfxv20
 先ほどまで壁だったはずの場所から現れた魔法陣により、ゆっくりと説明書が吐き出され、ぽとっと音を立てて地面に落ちる。家電製品の説明書でも見ているのではないかと思うほど、薄っぺらい説明書であった。
 おそらく、最低限の説明を省き、使用方法や武器の使い方などを紹介しているに違いない。使用上の注意などは書かれていても、対応する法律なども書かれていないだろう。
 時空魔法陣は、そのままザボーガー(仮)を包み込むと、そのまま消え去っていき、この空間は元と同じ空間へと戻った。

 光のない空間が、かえって不気味に感じるほど濃い一瞬であるように感じた。
 とにかく、この時を待っていたので、結城は説明書を手に取った。

「……やってくれたな」

 結城は、苦笑いしながらため息を吐き出す。
 説明書の表紙には、「ソルテッカマン1号機改」と書かれていたが、それを黒い二重線で消し、「ザボーガー」と書いてあった。こうしてみると恥ずかしい名称だ。
 まあ、わかってはいたが、これもあ結城たちの会話を聞いていたという証明だろう。
 こうまでからかわれると、主催者に対して怒りも沸かない。

「なるほど……どうやら、我々も奴らに認められたらしい」

 そして、結城は最初の一ページ目をめくる。

「……これもあのニードルってやつの仕業かな?」
「いや、これが奴の一存だとしたら、奴は組織の一員としてのタブーを侵しているのと同じだ……おそらく処罰されるだろう。主催側全員の総意である可能性が高い」

 説明書の一ページ目は、目次が書いてあるが、そんなものには目もくれない。そこには書置きが挟まっていたのである。
 主催者側が即興で用意したものに違いない。
 この書置きを挟んだのはニードルに違いないが、それだけの行動が主催人物の目につかないとも思えないので、おそらく彼の独断行動ではないだろう。







【特別ボーナスの譲渡について】

下記の二名を、首輪解析功労者として認め、特別ボーナスを贈呈します。
対象者:結城丈二
準対象者:涼邑零(結城丈二が死亡した場合のみ)
※該当者がどちらも死亡した場合、ボーナスが適応される相手は死亡者(後に殺害された方)の殺害者に適応されます。

ボーナス概要:
時空魔法陣の管理権限
(適応時刻より、時空魔法陣設置場所において、管理中枢に繋がるコンピュータが設置され、一部設定の変更が行えるようになります。尚、設定の反映には数分〜十分程度の時間がかかります)

ボーナス適応時刻:
バトル・ロワイアル 1日目 21:00より

 また、同時刻より『地球の本棚』の容量拡大を行う事を宣言します(地球の本棚における異世界の知識を追加します。ただし、一部の情報には検索ブロックがかけられています。詳しくは、『ダブルドライバー』の持ち主まで)。
 『地球の本棚』は不足している情報を補うのに適切なシステムです。今後の考察に役立つものとなるでしょう。





403仮面劇のヒーローを告訴しろ ◆gry038wOvE:2013/08/04(日) 01:03:34 ID:8SfOfxv20



「なるほど……管理権限か」

 時空魔法陣を設定し直す事が出来るらしい。ニードルが宣言した使用条件は、少しばかり厄介であった。殺人者に対するボーナスであるという設定がまず、多くの参加者に利益を持たない理由となっている。
 どの程度の自由度が保障される管理権限かは不明だが、ともかくそれを譲渡されたのは不利益な事ではないだろう。

「……翠屋〜警察署間の移動というと、やはりある程度負担は解消されそうかな」

 流石に、マップの端から端まで歩くのは困難な作業である。
 特に、若い女性などは大変ではないだろうか。結城としては、両エリアを誰でも移動できるように設定できれば、多くの負担が解消されると思えた。

「でも、『地球の本棚』って、なんだ……?」

 地球、という部分には「ほし」というルビが振ってある。
 結城もそれは知らなかったが、ダブルドライバーというものが少し引っかかった。
 先ほどまで工具をいじっていたがゆえに、ドライバーと聞くと工具の方が浮かんだが、それの持ち主が何か知っているのか?
 第一、 それが道具ならば、それの持ち主は変動する可能性だってありえる。

(ダブルドライバーというモノの方に、地球の本棚とやらの情報があるのか……?)

 とにかく、それに関してはそれ以上深追いをする事ができなさそうだと感じた。

「全てはダブルドライバーの持ち主に訊けばわかる。とにかく、これをダブルドライバーの持ち主に伝えるまで、今は持っている限りの情報でできる事をしよう」

 結城は、ザボーガーの方を見た。







『……よいしょっ!』

 ザボーガーと改名されたソルテッカマン1号機改が、声を発する。
 その声は外部にいるはずの結城丈二にもはっきりと聞こえた。
 ……つまり、この中に入っているのは涼邑零なのである。
 結城が説明書を見ながら装着を手伝い、零の身体はソルテッカマンの中に入っていた。説明書をすらすらと読みながら、適切なやり方で装着を手伝えるのは結城のみだ。
 本来、結城が装着した方がよさそうなものだったが、零は孤独に生きてきたゆえ、どうもこういう補助は苦手だった。

「……ソルテッカマンというからには、テッカマンブレードと同様の世界の物だろう。どうだ、使い心地は?」

 タカヤからは、ソルテッカマンの話は受けていなかった。ソルテッカマンの話以外にも、すべき話が多かったので割愛したのだろう。彼が語った話は、実際かなり壮絶なものだったので、そんな余裕はなさそうだ。
 説明書によれば、宇宙空間でも使用できるらしいという事で、また沖が喜びそうなモノが増えた気がした。

『パワードスーツっていうのも、案外悪くないかもしれないな』
「そうか……」

 二、三歩歩いた後、零は立ち止まる。
 その二、三歩でも、床は軋み、畳が大きくめり込むほどに重量を感じさせていた。
 部屋から出るにも、結構低く屈む必要がありそうだ。

『ただ、少し狭いかな。この中も、この部屋も』

 少し屈んで、なんとか壁を破壊せずに部屋から出る事に成功する。
 アンテナが不安だったが、アンテナも上手く通った。
 そのまま、ゆっくりと歩いて、室内を出る。全高2.3メートルの巨体は、身長170後半〜180前半程度の人間が出入りするように作られている民家には辛いものがある。
 が、辛うじて大きな問題は起こらずに済んだ。

「とにかく、また翠屋に戻ろう。第三回放送も近いな……」

 気づけば、既に第二回放送から結構な時間が経っていた。
 次の放送が始まってもおかしくない時刻だ。18時までに市街地……というのは流石にもう完全に無理となったが、21時以降も一文字たちが市街地にいてくれるなら、時空魔法陣を使って向かう事も可能である。

(……次は一体、誰が放送を行うんだ……?)

 加頭、サラマンダー、ニードル。
 これまであらゆる人物が出てきたが、次の放送の人物も変わるのだろうか。
 少し気にかけながら、結城とソルテッカマン1号機改“ザボーガー”は歩いていた。

『……結構動かせるもんだな。魔戒騎士やめて、これ動かそうか』
「冗談はそれくらいにしておけ」
『はは……』

 銀牙騎士の鎧を操る零としては、やはり絶狼の鎧の方が操りやすいだろう。
 しかし、ソルテッカマンの上から魔戒剣だけはしっかり装備しているため、いざというときはソルテッカマンの装備を外して鎧を召喚する事も出来る。
 その他の荷物は、結城が持っていた。

「……とにかく、戦いにくいと感じたら、すぐに装備を脱いで戦え」
『わかってる』

 二人はそのまま歩き出した。

404仮面劇のヒーローを告訴しろ ◆gry038wOvE:2013/08/04(日) 01:04:38 ID:8SfOfxv20



【一日目/夕方】
【B-2/志葉屋敷付近】

【結城丈二@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:健康
[装備]:ライダーマンヘルメット、カセットアーム
[道具]:支給品一式、カセットアーム用アタッチメント六本(パワーアーム、マシンガンアーム、ロープアーム、オペレーションアーム、ドリルアーム、ネットアーム) 、パンスト太郎の首輪のパーツ(カバーや制限装置、各コードなど)、首輪の構造を描いたA4用紙数枚(一部の結城の考察が書いてあるかもしれません)
[零の道具](ソルテッカマン装着中の零が持てないために持ってあげてます):支給品一式、スーパーヒーローセット(ヒーローマニュアル、30話での暁の服装セット)@超光戦士シャンゼリオン、薄皮太夫の三味線@侍戦隊シンケンジャー、速水の首輪、調達した工具(解除には使えそうもありません)
[思考]
基本:この殺し合いを止め、加頭を倒す。
0:再び翠屋に向かう。
1:殺し合いに乗っていない者を保護する
2:一文字、沖、村雨と合流する。ただし18時までに市街地へ戻るのは厳しいと考えている。
3:加頭についての情報を集める
4:首輪を解除する手掛かりを探す。
  その為に、異世界の技術を持つ技術者と時間操作の術を持つ人物に接触したい。
5:タカヤや石堀たちとはまた合流したい。
6:また、特殊能力を持たない民間人がソウルメタルを持てるか確認したい。
7:時間操作の術を持つ参加者からタイムパラドックスについて話を聞きたい
8:ダブルドライバーの持ち主と接触し、地球の本棚について伝える。
[備考]
※参戦時期は12巻〜13巻の間、風見の救援に高地へ向かっている最中になります。
※この殺し合いには、バダンが絡んでいる可能性もあると見ています。
※加頭の発言から、この会場には「時間を止める能力者」をはじめとする、人知を超えた能力の持ち主が複数人いると考えています。
※NEVER、砂漠の使徒、テッカマン、外道衆は、何らかの称号・部隊名だと推測しています。
※ソウルジェムは、ライダーでいうベルトの様なものではないかと推測しています。
※首輪を解除するには、オペレーションアームだけでは不十分と判断しています。
 何か他の道具か、または条件かを揃える事で、解体が可能になると考えています。
※NEVERやテッカマンの情報を得ました。また、それによって時間軸、世界観の違いに気づいています。
※首輪には確実に良世界の技術が使われている・首輪からは盗聴が行われていると判断しています。
※零から魔戒騎士についての説明を詳しく受けました。
※首輪を解除した場合、ソウルメタルが操れないなどのデメリットが生じると思っています。 →だんだん真偽が曖昧に。
※彼にとっての現在のソウルメタルの重さは、「普通の剣よりやや重い」です。感情の一時的な高ぶりなどでは、もっと軽く扱えるかもしれません。
※村雨良の参戦時期を知りました。ただし、現在彼を仮面ライダーにすることに対して強い執着はありません(仮面ライダー以外の戦士の存在を知ったため)。
※時空魔法陣の管理権限の対象者となりました。

405仮面劇のヒーローを告訴しろ ◆gry038wOvE:2013/08/04(日) 01:05:10 ID:8SfOfxv20

【涼邑零@牙狼─GARO─】
[状態]:健康、ソルテッカマン1号機改を装着中
[装備]:魔戒剣、魔導火のライター、ソルテッカマン1号機改(+ニードルガン)@宇宙の騎士テッカマンブレード(ザボーガーと名付けています)
[道具]:シルヴァの残骸
[思考]
基本:加頭を倒して殺し合いを止め、元の世界に戻りシルヴァを復元する。
0:再び翠屋に向かう。
1:魔戒騎士としてバラゴを倒す。
2:結城と共にバラゴを倒す仲間を探す。
3:殺し合いに乗っている者は倒し、そうじゃない者は保護する。
4:会場内にあるだろう、ホラーに関係する何かを見つけ出す。
5:結城に対する更なる信頼感。
6:また、特殊能力を持たない民間人がソウルメタルを持てるか確認したい。
7:涼村暁とはまた会ってみたい。
[備考]
※参戦時期は一期十八話、三神官より鋼牙が仇であると教えられた直後になります。
※シルヴァが没収されたことから、ホラーに関係する何かが会場内にはあり、加頭はそれを隠したいのではないかと推察しています。
 実際にそうなのかどうかは、現時点では不明です。
※NEVER、仮面ライダーの情報を得ました。また、それによって時間軸、世界観の違いに気づいています。
 仮面ライダーに関しては、結城からさらに詳しく説明を受けました。
※首輪には確実に異世界の技術が使われている・首輪からは盗聴が行われていると判断しています。
※首輪を解除した場合、(常人が)ソウルメタルが操れないなどのデメリットが生じると思っています。→だんだん真偽が曖昧に。
 また、結城がソウルメタルを操れた理由はもしかすれば彼自身の精神力が強いからとも考えています。
※実際は、ソウルメタルは誰でも持つことができるように制限されています。
 ただし、重量自体は通常の剣より重く、魔戒騎士や強靭な精神の持主でなければ、扱い辛いものになります。
※時空魔法陣の管理権限の準対象者となりました。

406仮面劇のヒーローを告訴しろ ◆gry038wOvE:2013/08/04(日) 01:05:27 ID:8SfOfxv20



【結城丈二によって判明している首輪のデータ】
・首輪のカバーは背面の繋目を刃物等でなぞるだけで開きます。
・カバーを外してから五分以内に解除しなければ、首輪は爆発します。
・内部にもダミーとなるコードが幾つも張り巡らされています。
・盗聴器・放送を発信する機械の他、用途不明な器具が取り付けられています。結城たちはその用途について考察しましたが、真偽は不明です。
・内部構造は結城が記憶しており、それを基にしたメモが書かれています。

【結城丈二によって考察された首輪のデータ】
・首輪内の用途不明の器具によって、参加者のラームが吸引されており、それが制限や首輪の強化を行っていると考えています。
・NEVERにラームがないとするなら、代替として細胞の維持を狂わせるもの等が取り付けられていると考えています。
・ソウルメタルを操る事ができる理由についてはまだ結論が出ていません。

【結城丈二によって考察された主催者の正体】
・主催者は、仮にこちらが反抗し、主催者の真実に辿り着きかけたとしても、実際には攻撃を仕掛けてこないと考えています。
・また、自分たちは「参加者対参加者」のプレイヤーであり、主催者は「主催者対参加者」のプレイヤーの一人であると考えています。彼ら自身が自分たちと同じく、何者かにゲームを強制された存在である可能性も考慮しています。

【時空魔法陣の管理権限】
下記の二名を、首輪解析功労者として認め、特別ボーナスを贈呈します。
対象者:結城丈二
準対象者:涼邑零(結城丈二が死亡した場合のみ)
※該当者がどちらも死亡した場合、ボーナスが適応される相手は死亡者(後に殺害された方)の殺害者に適応されます。

ボーナス概要:時空魔法陣の管理権限
(適応時刻より、時空魔法陣設置場所において、管理中枢に繋がるコンピュータが設置され、一部設定の変更が行えるようになります。尚、設定の反映には数分〜十分程度の時間がかかります)

ボーナス適応時刻:バトル・ロワイアル 1日目 21:00より

【地球の本棚の容量拡大】
1日目 21:00より『地球の本棚』の容量が拡張され、異世界に関する資料がエクストリームメモリの内部にいるフィリップの情報が拡大されます。
この事実は、左翔太郎(またはダブルドライバーの持ち主)やフィリップに主催を通して伝えられるかは不明。少なくとも、結城丈二と涼邑零は知っています。
また、すくなくともどこかの異世界に関する資料の閲覧は可能となりますが、参加者たち全員分の世界の地球の本棚が解放されるかは不明です。解放された情報の中にも、ブロックされる記録はあるかもしれません。

407 ◆gry038wOvE:2013/08/04(日) 01:05:43 ID:8SfOfxv20
投下終了です。

408名無しさん:2013/08/04(日) 01:18:58 ID:G961eSSc0
投下乙です。
おお、ここで首輪解除か……と思ったら、爆発した上にそんな仕組みになっていたとは!
で、結城は主催陣営も参加者という仮説を立てたけど、どうなんだろうな。
もう一個あったソルテッカマンは零が操縦するみたいだけど、操縦して戦う以前に村に来る人って他にいるかな……?w

409名無しさん:2013/08/04(日) 07:10:39 ID:esWiZiXY0
投下乙です
今回かなり考察進んだな
主催者陣よりも上の黒幕っていったら三神官とか?
そしてボーガーで吹いたw

410名無しさん:2013/08/04(日) 08:11:07 ID:c8QJRGMU0
投下乙!
結城さんすげええ!
今回かなり考察進んだ上に、特別ボーナスまで主催者から付加されるなんて!
首輪の構造がわかったのはかなりでかいな!
だがしかし、ザボーガーと命名するセンスは…w
そして悪乗りしてそれを正式名称にする主催サイドwww

411名無しさん:2013/08/04(日) 16:49:23 ID:hqG16eIc0
投下乙です

結城さんも凄いが頭のいいキャラの言動を書き切った書き手さんも凄いと思う
考察がかなり進んだ上にボーナスとは
それにしても主催者陣営は余裕あるなあw

412名無しさん:2013/08/05(月) 13:43:10 ID:geTKoQi2O
何故ウィキに飛影の記事が…w

413名無しさん:2013/08/05(月) 22:50:35 ID:8vYkFfasO
>>412
余所でもやってるみたいだしただの荒らし。

414名無しさん:2013/08/06(火) 03:13:55 ID:X5dpI9hY0
ここ最近の予約ラッシュがすごいw

415名無しさん:2013/08/06(火) 03:53:46 ID:5Yr87PEc0
ていうかトップさんの執筆ペースがやべえ

416 ◆gry038wOvE:2013/08/07(水) 23:02:04 ID:R/yAe.bg0
投下します。

417Jなき戦い/殺戮者─ジェノサイダー─ ◆gry038wOvE:2013/08/07(水) 23:03:24 ID:R/yAe.bg0


 突如として出現した緑の怪人・サイクロンドーパントの登場を合図に戦闘を開始した者たちは、見たところ三つの陣営に分かれていた。
 ただ単純に強き者を挫き、敵を殲滅する以上の感情を有さない戦士──ゴ・ガドル・バ。彼は共通の敵以外の何物でもない。彼自身が此処にいる全員を敵視し、また、同時に他の全員から敵視される存在だ。
 仮面ライダースカル──西条凪、仮面ライダーアクセル──石堀光彦、暗黒騎士ガウザー──黒岩省吾。彼らは一応チームで行動しており、特に凪と石堀は元の世界の仲間であった。……本来、相対する者であるのは確かだが、それぞれの事情があって味方のつもりでいるのは間違いない。
 そして、突如として現れたのはサイクロンドーパント──溝呂木眞也。凪を守るという意思を持ちながらも、それは屈折した感情による意思である。かつて凪を想い、その感情が今や悪しき執着と変じてしまった彼にも、一応少しは凪を想っていた感情は残っていたのかもしれない。
 戦う敵は三様だが、目的もバラバラ。
 何より、ここに善意ある判断ができるのは凪のみで、その凪も戦いの中での犠牲を辞さない精神の持ち主であった。──凪を除外すれば、悪と悪と悪の戦い、そして、凪を含めてもまた、仁義なき戦いであった。

「ハァッ!!」

 最初に攻撃を仕掛けるのはサイクロンドーパントであった。
 乱入者というのは兎角有利なもので、状況の混乱に応じて攻撃ができる。
 茫然とする、思考する、対策を練る……などと言った、乱入者が現れた際の行動すべてを省いたうえで、思考中の敵を攻撃する事ができる。相手が混乱した状態を通り越し、思考を練る最中でも、次に起こす「策」という段階までには攻撃が可能となるのである。
 ゆえに、この場では少しの間を置いてでも、真っ先に攻撃するのはサイクロンドーパントに決まっていた。
 更に厄介なのは、サイクロンドーパントは高速の戦士だった事だろうか。
 優れたスピードを持ち、まさに疾風のように場を攪乱させるのが彼の戦法だ。彼が通れば、木の葉が舞い、木の枝がいつ浮上したのかも忘れさせたままに落下する。
 先ほどまでサイクロンドーパントの姿があったと思っていたはずの場所は、既に砂吹雪を起こしている。──そして、そんな状況が今まさに、誰も知らぬ間に起きていた。
 サイクロンドーパントは既にある戦士の眼前まで距離を詰めていた。
 しかし、その“相手”はそれに対応する事が可能な怪人────俊敏体へと変化する戦士・ガドルであった。

「フン」

 ガドルはサイクロンドーパントの動きを察知し、防御の体勢へと変わっていた。
 サイクロンメモリは純粋な格闘戦に向いたメモリだ。優れたスピードを活かし、風を起こして敵を殴る。それが最強の攻撃方法であった。
 その攻撃は時として風を通り越して、小さなトルネードを起こすのである。この時、まさにトルネードは起こっていた。拳は渦巻上の風を巻いて真っ直ぐにガドルを突く。ガドルはそれを抑え込もうとしたが、ガドルの腕がサイクロンドーパントの腕を掴もうとしたのを風が妨害する。
 腕を風に弾かれて、ガドルの体勢は乱れた。ガドルにもなかなか予想外の風圧である。
 次にその胸へと走る衝撃は、なかなかに強固なものであったが、ガドルがそれを痛みと捉えるほどでもない。ガドルの胸板は、そんなもので崩されるものではなかった。
 一撃はこの程度の手ごたえであったが、次にもう一撃、ガドルの腹部へと左腕の一撃が到達する。

「ハァァッ!」

 サイクロンドーパントの掛け声と同時に、ガドルはもう一度、痛みとは呼べない些末な攻撃を受けた。──そう、やはりこの程度では感じないのだ。
 風は冷たく、鳥肌さえ立ちそうなほど、肌寒い。しかし、それに輪をかけて寒いのはこのパンチである。ガドルの脳がそれを「痛い」と思うには、あまりにも敵が弱すぎた。戦いですらない、これは遊戯か何かに思えた。
 ガドルはサイクロンドーパントの足を弾いた。
 足を払うように蹴りあげると、その身体はまた宙を舞う。サイクロンドーパントは、自分が何故宙を舞っているかにも気づかなかっただろう。地面の落ち葉や砂を巻き込んで、まるでどこかに向かうようにサイクロンドーパントの身体は浮き上がる。

「弱すぎる」

 ガドルは、その中で舞った木々の中に、他と比べて一層太く大きい木の枝を見つけ出し、その手に握る。
 今の彼は、青い目の俊敏体だったのだから、それを握った理由はごく簡単なものである。
 その枝は、一瞬で形を変じ、ガドルロッドという巨大な槍に変じる。

418Jなき戦い/殺戮者─ジェノサイダー─ ◆gry038wOvE:2013/08/07(水) 23:03:55 ID:R/yAe.bg0
 ガドルは、その大槍──ガドルロッドを一切の躊躇無しに、空中のサイクロンドーパントへと放り投げる。
 サイクロンドーパントは、それを視覚で捉え、風を起こしてそれを弾いた。辛うじて、自分の元へと飛んでくる槍を弾き返す程度には、自分の状況を確認する能力が備わってきていたのである。
 槍は地面に突き刺され、やがて元の木の枝へと形を変えていく。そこには、先ほどの無骨な太槍の姿など微塵もない。ただ、弱弱しく、少しの力で捻じ曲げれば割れるような木の枝があるのみだった。
 サイクロンドーパントは、それを見てほっと胸をなでおろす。

 しかし──

「何っ!?」

 サイクロンドーパントは、もう一方の別の戦士によって打ち落とされた。突然の出来事に流石に驚愕したが、彼もすぐに理解と納得を行った。
 遠距離攻撃ができる戦士は、ガドルの他にもう一人いたのである。
 スカルマグナムを持つ仮面ライダースカル──西条凪である。
 弾丸は的確にサイクロンドーパントの身体に吸い込まれていった。
 ガドルとの戦闘に気を取られていたサイクロンドーパントだ。その攻撃は予想外のものだっただろう。

(凪……お前らしいな)

 地面へと落ちていく中で、サイクロンドーパントこと溝呂木眞也はそう思う。
 彼女は、突然現れた戦士には一切の信用を置かない警戒心の持ち主だ。彼女にとっては、ガドルもサイクロンドーパントも倒すべき敵に違いない。サイクロンドーパントは味方とは思えないから、迎撃対象となってしまうのは間違いないだろう。初めてウルトラマンネクサスを目撃した際には、ビーストとして撃った彼女である。
 敵同士のつぶし合いは、彼女にとっても当然喜ばしい事であるはずだが、ガドルが一切のダメージを受けていないように見える以上は、サイクロンドーパントはつぶし合いさえ期待できない相手だった。言ってみれば、利用価値がない存在だ。
 それを切るのは当然だ。──溝呂木は、凪の迷いのない判断に笑みを浮かべつつも、一抹の面白くなさを感じていた。
 彼女の成長の中で、自分は利用価値のない存在だと判断され、こんな目に遭っている。複雑な気分になるのは間違いないだろう。

「……石堀隊員!」

 と、凪の高い声が聞こえる。スカルは石堀ことアクセルに呼びかけた。アクセルはエンジンブレードを持って駆け出す。
 射撃体勢に入っていたスカルよりも、落下したサイクロンドーパントに対する攻撃を行いやすいのはアクセルだ。呼びかけるだけで行動できるあたりは、やはりナイトレイダーの卓越したチームプレイによるものだろう。
 スカルはこの場からの支援攻撃が適切だろうか。綺麗なコンビネーションであった。銃と剣が武器なのだから、自然と後方支援がスカルになる。それは当然であったが、この殺し合いの現場においても、屈指の連携プレイができるのはこの二人だろう。敢えて言えば、石堀は平木詩織隊員、凪は孤門一輝とのチームで戦う時が最も連携が取りやすかったが、それでもナイトレイダー同士なのだから、戦闘のイロハについては同じように教育されていた。
 同じような状況下で戦闘を教わったのだから、当然二人の戦闘に対する考え方もある程度統一されてくるに決まっている。
 落下するサイクロンドーパントはアクセルの斬撃をその身に浴びる事になる。
 アクセルの斬撃とスカルの射撃。その両方を受け、サイクロンドーパントは顔を歪めた。







 一方、相手がいなくなったガドルに対して駆け出したのは暗黒騎士ガウザーである。ガドルが槍を捨て、格闘体に戻ったのを見て、好機と感じたのか。
 先ほど、シャンゼリオンとの戦いを行う戦士の座をかけ、二人はこの場で戦う事となった。サイクロンドーパントというイレギュラーさえなければ、最初に剣を交えたのはこの二人だろう。
 兎角、ガウザーはガドルを最優先すべき標的と考えていた。
 ガドルとサイクロンドーパントの二人を標的と考えているアクセルやスカルと異なり、ガウザーの標的はガドルのみであった。
 ガドルの方はスカルを最優先に倒す敵と認識したが、向かってくる相手を倒す事に異存はない。

419Jなき戦い/殺戮者─ジェノサイダー─ ◆gry038wOvE:2013/08/07(水) 23:04:55 ID:R/yAe.bg0
「最初の相手は貴様か」

 ガドルは、敵の外形を見て、紫の目の剛力体へと変身する。
 装飾品もガドルソードへと変身し、更に強固な体へと変身する。この姿ならば、サイクロンドーパントの風によって体勢を崩す事もなかっただろう。それだけ剛健で、敵の攻撃を無力化する力が強い形態である。
 何故この形態に変化したのかを、ガウザーは理解した。

「……目には目を、剣には剣を、か」

 目には目を、歯には歯を。目を抉られれば敵の目を抉り、歯を抜かれれば敵の歯を引き抜く。剣で襲い掛かる敵には、剣で応戦せよという事だ。
 ガドルは、得意気だった。敵の武器に合わせ、自分の武器を変える。これで条件が五分の争いが期待できるのである。
 剣の形状は随分と違ったが、どちらも不服は無さそうだった。ガウザーが剣を構えて駆けだしたのがその証拠である。これを同条件での戦いと認めたのだ。

「ハァッ!!」
「フンッ!!」

 ガウザーの剣とガドルソードがぶつかり合った。
 華奢なガウザーの剣は、真横に構えたガドルソードに防がれたが、両腕のエネルギーが互いのエネルギーを相殺しているうちに、ガウザーはガドルの下半身を蹴る。
 体のバランスを崩して、手にかかるエネルギーを弱めようとしたのである。

「──その程度か」

 しかし、剛力体の身体は、その程度で後退するほど柔ではない。逆に、ガウザーの身体の方が壁を蹴ったように後ろに退いた。それは、ガウザーにとっても想定外である。
 バランスを崩したのが自分の方であったと知った頃には当然、もう遅い。
 ガウザーの左肩から右腰にかけて、一瞬で斬撃の痛みが走った。まるで身体を強く抉るような一撃であった。

「がはぁっ──!!」

 一撃。たった一撃である。
 しかし、そのたった一撃が、ガウザー史上、かつてない痛みと言っていいほどに体に堪える攻撃だったのである。
 ガドルは純粋なパワーにおいても、最強であった。攻撃をものともせずに立ち続けるほどの重量と防御力を持ち、これほど豪快にガドルソードを操る敵に、一抹の恐ろしさを感じる。
 更に言えば、ガドル以上に強いとされるダグバという戦士も気がかりであった。

「弱い!!」

 ガドルは、面白くなさそうにガウザーの体へと左手でパンチを浴びせた。
 剣を使わない事に理由はない。ただ、左腕を動かさないのが寂しかったとか、その程度の理由だろう。通常は片手で操る事はできないが、ガドルが片手で剣や槍を扱う以上、左腕はあまり使わなくなる。
 左手が訛っていないかの確認か、左腕を久々に動かしてみるのも悪くないと感じたか。そんな気まぐれで突き出された拳であったが、これがまたガウザーの鼻を文字通りへし折るには丁度良かった。

「ぐあっ!!」

 真っ直ぐにガウザーの顔へとぶち当たったそれは、首の骨が折れるのではないかと自身の身を案じた程強烈であった。
 顔だけではなく、頭を支える首の部分まで軋む音を鳴らすほど、ガドルのパンチは強力なのである。
 ガウザーは思う。

(何故、シャンゼリオンはこんな相手に生き延びる事が出来たんだ……?)

 と。
 シャンゼリオンとガウザーは、甘く見て互角。基本的にはガウザーがおそらく少しばかり彼より強く、また、過去の彼ならば余計に強さから遠い状況下にある……という状態であるはずだ。しかし、シャンゼリオンはガドルより強いダグバと見え、何故かほぼ無傷で生きている。
 ガドルの強さは勿論、シャンゼリオンと比較した時の自分の体たらくによって、ガウザーの確固たる自信が折れかけている所に、もう一度ガドルはソードを振るう。
 左腰部から凪ぐようにして振るうが、それは斬るというほど繊細な作業ではなかった。
 ソードの重みと圧力を利用して、ガウザーの身体を吹き飛ばしたのである。あまりにも大雑把すぎる攻撃であった。

420Jなき戦い/殺戮者─ジェノサイダー─ ◆gry038wOvE:2013/08/07(水) 23:05:28 ID:R/yAe.bg0
 驚くべき事に、ガドルは、それを片手で行った。ガドルソードもガウザーの身体も十二分に重みをもっているはずだというのに、その圧倒的な力で吹き飛ばされたのである。

「……クッ!」

 ガウザーの身体は、空を舞い、木の幹にぶち当たった。
 飛距離は数メートルといったところだろうか。おそらく、こうした障害物にぶつかるまで、百メートル以上、ガウザーの身体は並行に跳び続けただろう。加速する前に木にぶち当たったのは幸いかもしれない。
 ここがどこを見ても木で生い茂る森であったがゆえに、その飛距離は数メートルに終わった。
 ガウザーの身体が、その幹から、滑り台を滑るように、力なく落下する。落下したはいいが、目の前にいるガドルに対する恐怖を感じ始めた彼は、もっと長く滞空していたかったと感じた。

(な、……なんだこの力は…………これが奴らの力……)

 闇生物の中では腕っぷしの強い部類であるガウザーも、ガドルの圧倒的な力を前には手も足もでなかった。
 これは埋めがたい実力差だ。
 強き者が生き、弱き者は朽ち果てろという黒岩省吾の考えに基づけば、己は負け犬──ここで消えても良いはずの存在となってしまう。
 負け犬。
 その言葉を、脳内で反芻する。弱い者、力なき者など不要である筈だ。同情する価値もなく、目にする価値さえ無い筈の存在だ。
 そして、それは自分とは永久に無縁と思われた言葉だ。
 目の前にいる怪人の圧倒的な力に、彼の自信は瞬く間に喪失されていく。
 ……自分は、彼と互角の戦いを期待して挑み、何も与えずに負け、こうして木から滑り落ちているほどに弱かったのである。

「グァハッ!」

 攻撃を受けたわけではないが、思考の真っ最中にガウザーの口から大量の血が吐き出された。吐き出す予兆さえ感じず、突然に血が吐きだれた事に彼は驚愕する。しかし、それでいて、血を吐き出すほどのダメージを受けていた事には納得していた。
 今受けた攻撃の強固さを考えれば当然だ。内臓が動きを早めているのがわかる。むせ返りそうなほど、喉の感覚が悪い。血液が喉に絡んでいる。
 剣を握ったままの右腕で口元を拭い、背に木の幹を置いた事で、彼は起立を許されている状態だった。
 この木が脆ければ、立っていられただろうか? ──いや、立っていられた筈がない。ガウザーの体重は、この木が支えているのだ。他人を支配する事さえもできないような生物に。

(……フン……。だが、このまま負けるわけにもいくまい。この程度の敵にやられているようでは、この俺も負け犬と呼ばれて当然だ)

 剣を構え直すと、ガウザーは背後の木を強く蹴った。
 それが、彼が走り出すのを手助けする動作であった。直立状態から突然走り出せただろうか。
 むしろ、今の走りは、ただ前に倒れていきそうな身体を支えるために足を出しているような走り方だった。それがだんだん慣れていき、しっかりとした走りへと変じている。

「ハァァァァァァァッ……!!」

 掛け声というよりか、雄叫びに近い。喉に絡みついた血が、彼がより強い声で叫ぼうとするのを妨害する。
 そんな声にならない声をあげながらガウザーは駆け、それをガドルは憮然と待っていた。どれだけの力で挑んでくるか、ガドルは期待していただろう。
 しかし、結果は実にあっけないものである。
 ガウザーの剣はガドルソードに弾かれる。弾かれたガウザーの剣は空中で回転し、ガウザーの右腕は何も持たなくなった。
 剣なき騎士。それは、もはや敗北の枕詞に使ってもいいほどに哀れで情けない姿であった。
 ガドルは、その身体をガドルソードで再び吹き飛ばす。
 ガウザーの攻撃自体が、特攻といってもいいほどに無謀だったのだ──やはり、何もできていなかった。

「──温いな。これでは戦いをしているとは思えない」

 ぼそりと呟いたガドルの台詞は、そのままガドルの率直な感想を示していた。
 暗黒騎士ガウザーは、他人にこんな言葉を許すのは初の経験となる。

421Jなき戦い/殺戮者─ジェノサイダー─ ◆gry038wOvE:2013/08/07(水) 23:06:11 ID:R/yAe.bg0
 どんな闇生物よりも強く、闇将軍ザンダーにさえ匹敵する能力を持ち、超光戦士シャンゼリオンにさえ遅れを取らなかった男だ。
 敗北を知らず、ゆえに敗者を徹底的に見下した男が、この言葉を聞いて何を思っただろうか。
 ガドルソードはガウザーの腹部を突き刺し、そのままガウザーの身体を持ち上げる。
 ガドルソードはその身体を貫かない。ガウザーが辛うじてその切っ先を両手で握っていたのである。そのまま貫く事もできたが、かえって趣のある姿と思い、その身体をゆっくりと持ち上げた。
 ガドルソードの切っ先は上空を向き、ガウザーの足が宙を泳ぐ。

「ぬぁぁっ……!!」

 彼の体重を片手で支え、何もないかのような鉄面皮を崩さないガドルは、改めて化け物だと感じる。上空から見える景色は不思議だ。高いところにいるにも関わらず、見下ろされているような感覚である。

「……フンッ!」

 しかし、それを感じた時には、暗黒騎士ガウザーの身体はその剣の上から振り落とされ、気づけば泥を身体に含みながら山の斜面を転がっている。
 ガドルは、ガウザーの体を棄てたのである。
 ガドルはこれを戦いと認識しなかった。虐殺とも思わなかった。敵は、一定の防御力を持ち、リントならば確実に死んでいるであろう攻撃を受けても死なない相手だ。もっと執拗に弄り殺さなければならない相手であるのはわかっている。
 しかし、息の根を止める価値のある相手だろうか。
 ガドルが倒すべきは、「戦い」ができないほどに弱い相手ではない。ガドルが今行ったのは、戦うべき相手の「選別」──そして、これはその結果の「破棄」だった。

「がはっ……ぐぁっ……!!」

 あまりの衝撃でブラックアウトが解け、人間としての黒岩省吾の姿が山道を転がり落ちる。転がり落ちるスピードは速い。そのスピードで木に頭をぶつけ、地面から突き出した石にスーツを破られ、腹を突き刺されるのだから、黒岩もたまったものではないだろう。
 スーツとシャツは血まみれだ。頭からも血を流しているし、唇は切れている。
 吐血の痕が下唇の真下を一直線に流れ、そこには砂や泥や枯れ葉が付着し、あまりにも汚らしい恰好を作っていた。

「なっ……げあっ……げほっ……うぇ……!!」

 まともに言葉を発する事さえできないほど強くむせ返り、そのたびに口からは泥や血が飛び散る。なかなかそれが喉から消えなかった。どれほどの距離を落ちたのかはわからないが、とにかくまずは目が回り、まともに立つ事さえ難しかった。
 両手に力も入らず、起き上がる気力もわかない。

「……ぐっ…………こんな筈が……」

 やっとまともな言葉を発する事が出来ると知ると、黒岩は自分が口に出した言葉を後悔する。そのまま本心だったのだが、これがまた情けなく感じた。
 こんな筈が──という言葉は、すべてを思い通りに進めていた黒岩の口から出るには、あまりにも不格好な言葉であった。

「こんな筈がない……こんな筈が……くそっ!!」

 自分はあの強敵に勝てる筈だ。──いや、勝てないにしても、おそらく互角の戦いを繰り広げる事が出来た筈だ。それだけ自分は圧倒的な力の持ち主である筈なのだ。
 しかし、勝てなかった。それどころか、敵にはこれを戦いと認識させる事さえできなかったのだ。勝敗以前の問題であった。
 何故、勝てない。
 シャンゼリオンはダグバとの戦いであれだけ元気に生きているというのに……? あの男が平然と戦えて、何故自分は勝てないのだ?
 あの男がある程度平然としていたから、黒岩には一定の自信があったのだ。
 それはあまりにも簡単に打ち砕かれた。黒岩は、ガドルと「戦う」ことさえできなかった。

「くそ……くそぉっ……クソォォォォォッ!!」

 皇帝となるべき自分の目が、涙を流している事実に気づく。汗か血かと思っていたが、それは確かに涙であった。
 涙────弱者が流すはずのものである。辞書にはそうは載っていなかったが、黒岩の脳裏では既にそれと同義になっていた。黒岩はこれまで涙など流した事もない。
 皇帝は周囲に笑顔を振りまき、愚民の醜態を高くから笑えばいいはずなのだ。愚民を見下ろし、その姿を嗤う。その目に涙などいらない。愚民が流すべきが涙だ。

422Jなき戦い/殺戮者─ジェノサイダー─ ◆gry038wOvE:2013/08/07(水) 23:06:54 ID:R/yAe.bg0
 心や体を傷つけた者が流すもの。悩んだ末に答えが見いだせない者が流すもの。成功とほど遠く、何もできないままに失敗を繰り返す人間が流すもの。他人に勝手に共感し、感動などという名目で流すもの。弱者にとって、自己を洗い流すための細やかな宝──それが涙に違いない。
 ──何故、俺が涙を流している?
 俺は強者の筈だ。この殺し合いにおいても、主催を打倒し、シャンゼリオンと決着をつけ、元の世界で皇帝となるべき筈の男なのだ。
 こんなところで、敗北する運命なのか?
 それどころか、敵に「温い」などという感想を許していいのだろうか。

「何故だ……俺は、最強の闇生物……シャンゼリオンのライバルの……皇帝となるこの俺がぁぁ……!!」

 乱れた髪、涙ににじむ目、血と泥に汚れた体、皺だらけになって破れてしまったスーツ。高貴である筈の自分のイメージとは全く違う今の自分の外見に、黒岩は慟哭する。まるで乞食のようだ。
 黒岩は、文字通り転落者なのだ。これまで成功し続け、敗北を知らなかった筈の男が、たった数分の戦い──いや、敵による廃棄で、自身を喪失し、何もできなくなる。
 あまりにもみすぼらしい姿。高級なスーツは泥に塗れて乱雑に引き裂かれている。本来なら、今すぐにでも脱ぎ捨てたいものだが、それさえできない。この場では、これに替えがないのだ。
 セットした髪も乱れ、ほとんど土が混じっている。そのうえ、出血しているのだから、土を払い落とす事もできない。顔はもはや、血まみれで拭く事もできないだろう。身体は節々が痛み、常人なら立ち上がる事もできないほど痛めつけられていた。
 プライドを挫かれるような醜態だが、むしろ、今の自分ほどこれがお似合いな人間はいないとさえ、感じ始めていた。

 そう、これはもはや──どうしようもないのだ。

 あのガドルという敵の力は圧倒的である。──それは、暗黒騎士ガウザーの想像を遥かに超えていた。
 独力で勝てる相手ではなかったし、仮に凪や石堀と協力しても勝てる相手ではないのではないだろうか。たかだか数名で対処できる相手とは思えない。単身で挑むというのも、あまりに無謀な話であった。
 ガウザー自体、はっきり言えば、この殺し合いの中では強い部類とは言えまい。
 技の多彩さ、攻撃力・防御力の高さ、スピード、能力──何かにおいて、ガウザーに突出した力はなく、ガドルのように総合力という部分で突出してしまった相手にはろくな対処ができないのである。
 ふと思い出す。

「……そうだ! 奴らは……!」

 黒岩は、自分が転がり落ちた山の上を見上げた。
 そこには、仮面ライダーアクセルに変身した石堀光彦や、仮面ライダースカルに変身した西条凪、そしてサイクロンドーパントがいるはずなのだ。
 ガドルが次に狙うのは彼らに違いない。そして、彼らがおそらくこの後軒並み殺されるのも想像に難くないものだ。
 当然、黒岩には彼らを助けに行く義理は無く、今すぐにでも逃げ出すのが得策に違いない。ガウザーとて自分の命は惜しい。少なくとも、ガドルと戦うならばそれ相応の力を蓄えてから挑むべきだ。
 ……無論、この狭い島では、強くなる前にガドルと再会してしまうだろうし、どれだけの猶予があればあのガドルに勝てるのかもわからない。更に、ガドルには上がいるというのだ。
 そんな相手に勝てる筈がない。仮に、シャンゼリオンがそれに勝てるというのなら、ガウザーはシャンゼリオンに勝つ事さえできないのではないだろうか。

(……奴ら)

 黒岩が冷静に真上を見上げてみると、はっきりと彼らの戦いの姿が見えた。
 黒岩は、自分が視認可能な場所で戦いが行われていると確認すると、すぐに木の影に隠れてその様子を見る事にした。
 どちらにせよ、このままでは走って逃げるような事もできない。
 これだけ全身が壊れ始めているのだ。逃げる元気など無い。木の影に隠れると言うより、木にもたれて立っているというのが適切な姿かもしれない。
 とにかく、黒岩はそこから真上での戦いを観戦する事にした。





423Jなき戦い/殺戮者─ジェノサイダー─ ◆gry038wOvE:2013/08/07(水) 23:07:28 ID:R/yAe.bg0



 サイクロンドーパントの身体に、エンジンブレードの刃が伝わる。その攻撃によって走る痛みは、胸から指先まで伝播するほどである。
 仮面ライダー対ドーパント。
 風都においてはあまりにも自然な姿だっただろうが、変身するのは全く別世界の人間である。照井竜や大道マリアのいた世界を「仮面ライダーWの世界」と呼ぶのなら、これは彼らのいた「ウルトラマンネクサスの世界」の人間たちの戦いである。

「……らぁっ!!」

 エンジンブレードは、サイクロンドーパントの身体を二度も三度も斬りつける。
 最早、火花が散ったくらいではその勢いを形容できないだろうか。荒々しく振りかぶり、サイクロンドーパントの肩を、腹を、胸を斬る。その姿は、飛び散る火花よりも荒れていた。
 一見すれば、未知の敵に対する恐怖感から荒々しい戦いをしているかのように見える。しかし、その変身者である石堀光彦の心は妙に冷めていた。
 どうにも、相手の正体が自分のよく知る人物である気がしてならないのである。

「フンッ!」

 一方のサイクロンドーパントも決して弱いわけではない。
 変身者である溝呂木眞也は、生身でも超能力を有するダークウルトラマンの適能者である。闇の力に魅入られた彼は、闇を自在に操る。
 その闇の力を使わないのは、正体を知られるとまた厄介な事になるから、だろうか。
 特に西条凪。彼女が死なないように支援するのが彼の役割だが、彼女にはこうして真っ先に目を付けられ、ガドル以上に撃退を優先された存在である。
 サイクロンドーパントはまずガドルを潰そうとしたのだが、その余地さえ与えられない。
 それに対する苛立ちもあってか、サイクロンドーパントは右腕をアクセルの胸部へと叩きつけた。なかなか強固な一撃である。

「がっ!!」
「ハァッ!!」

 敵が怯んだところで、サイクロンドーパントは高く跳ぶ。
 跳び上がったまま、アクセルの胸部に二段蹴りを叩きつけ、宙返りして地面に着地する。
 ピュンッ、とスカルマグナムが自分の身体へと発射されるのを感じた。
 だが、サイクロンドーパントも、この時はそれを直前で避けるに至った。もはや、二度も同じ手は食うまい。
 スカルマグナムは二度、三度と攻撃を仕掛けるが、その軌道は全て外れ、時にはサイクロンドーパントが操る風に跳ね返された。

「……溝呂木!」

 スカルの口から、その言葉が発される。
 サイクロンドーパントははっとして、一瞬動きを止めた。すると、その体に向けてもう一発スカルマグナムの弾丸が飛ぶ。
 サイクロンドーパントは、我に返ってその弾丸を避ける。風を切り、スカルマグナムは後方の木に当たる。弾丸は全てその木に当たっていた。
 凪のもう一つの狙いはその木であった。
 木は、みしみしと音を立て、サイクロンドーパントの背中に向けて倒れていく。木の根元の辺りに、何発も弾痕が残っていた。

「副隊長、どういう事ですかっ!?」

 アクセルが訊く。
 スカルが先ほど、サイクロンドーパントを「溝呂木」と呼んだ事に対してだろう。
 スカルとて、別に敵が溝呂木だと見破っていたわけではない。

「このタイミングで私たちの前に現れた謎の敵。一番その正体として在り得そうなのは溝呂木眞也に違いないわ」

 ただ、この疑念だけあれば充分だった。
 その名を呼びかけ、少しでも反応すれば、それは溝呂木だ。
 反応しなければ、溝呂木でないか、あるいは、ただの反応しない溝呂木である。──こちらの場合は疑い続けるだけで、反応した場合は、確信へと変わるだけだ。
 サイクロンドーパントの正体は溝呂木。
 これは、凪の中では確信へと変わった。やはり、溝呂木眞也との因縁は断ち切れないらしい。

「……バレてたわけか」

 木が持ち上がり、サイクロンドーパントであった筈の物体がそこから現れた。
 だが、その外形は緑の意匠を消し、全く別の怪物へと変じていた。凪や石堀にはなじみ深い姿である。

424Jなき戦い/殺戮者─ジェノサイダー─ ◆gry038wOvE:2013/08/07(水) 23:07:57 ID:R/yAe.bg0
 ダークメフィストだった。
 彼はサイクロンドーパントの変身を解き、多彩な武器や技を持って扱いやすいダークメフィストへと姿を切り替えたのである。

「あなたを溝呂木と呼んで反応するか試しただけよ」
「……なるほど。そんな手があったか」

 思わず、溝呂木は納得する。
 てっきり、サイクロンドーパントの正体を溝呂木と結びつけて答えられたのかと思ったが、そんな事はなかったらしい。はっきり言えばあてずっぽうだが、それでも効果があっただけに、溝呂木の目から見ても優秀な頭脳プレイだったと言える。
 それに、それが一瞬の隙を作り出し、サイクロンドーパントを木の下敷きにしたのだから、手放しで賞賛しておくべき戦法だろう。

「……感謝するわ、涼村暁。こうして溝呂木と互角で戦える力をくれた事に」

 仮面ライダースカルは、ここにいない男への感謝を呟いた。
 ダークメフィストは、生身の凪ではどうしても戦い難い相手だった。しかし、今は違う。
 ロストドライバーとスカルメモリによって、仮面ライダーとなった凪は、ダークメフィストとも戦える力を持っているのだ。
 これで、かつてナイトレイダーを裏切り、凪の信頼を裏切った罪人と決着をつける事ができるのである。
 凪は、きっと溝呂木を憎んでいたのだ。かつて尊敬していた目標の副隊長だったからこそ、凪は溝呂木の裏切りが許せなかった。そして、共にビーストと戦ってくれると信じていた人間が、憎むべきビーストの側に立った事が、凪には悲しかった。
 ならば、倒すしかない。
 仮面ライダースカルの力を極限まで使い、ダークメフィストを討つ。──自分自身の手で。
 だから、仮面ライダースカルの力を与えた涼村暁や加頭順に、この時ばかりは感謝した。

「俺と戦うのか? 凪」
「そうよ……」
「戦うべき相手は他にもいるはずだぜ?」

 ダークメフィストの視線の先には、ゴ・ガドル・バが憮然と立ちすくんでいた。
 ふとスカルが背後を見れば、そこにはガウザーの姿がない。
 ガドルだけが立っており、こちらへと歩み寄っていた。

「……どういう事!? 黒岩は!?」

 暗黒騎士ガウザーこと黒岩省吾がどこへ行ってしまったのかも認識できないまま、凪と石堀は強敵二名の近くに取り残されてしまったのである。
 メフィストだけならまだいい。凪の強い憎しみが力となり、戦う事ができる相手のはずなのだ。しかし、凪の邪魔をするかのように、ガドルは歩み寄る。
 それはゆっくりとした歩みだったが、かえって恐怖を際立たせた。
 メフィストとは正反対の方向を向いているだけに、すぐにメフィストの方に向き直らなければ危険だというのに、ガドルの歩みに視線は固定され、夢中になってしまったように目線の先は変わらない。

「次は貴様らだ……骨のある奴から来い」

 次。ガドルはそう言う。
 次に戦う相手、という事だろうか。しかし、違うように思えた。
 次に殺す相手ではないか──? つまり、黒岩は凪と石堀が目を放した僅かばかりの時間でガドルに息の根を止められたという事ではないか?
 それを思い、凪は息をのむ。
 メフィスト以上の強敵に違いないが、どうすればいいのだろうか。
 仮に溝呂木が協力したとして、三人で勝てる相手か?

「……はああああああっっ!!!」

 其処へ駆け出したのは、仮面ライダーアクセルであった。
 アクセルは、スカルのもとへ向かうガドルの体へとタックルをする。ガドルは格闘体の状態だったので、辛うじてそれによってバランスを崩した。
 だが、大きくは崩れない。ガドルの肘がスカルの顔面に叩き込まれる。

「副隊長!」
「石堀隊員! どういうつもり!?」

 ガドルに突っ込むなど、無茶の極みである事は重々承知の筈だ。

425Jなき戦い/殺戮者─ジェノサイダー─ ◆gry038wOvE:2013/08/07(水) 23:08:32 ID:R/yAe.bg0

「副隊長は溝呂木をお願いします!」

 アクセルは声を張り上げ、必死でそう叫んでいるように見えた。──彼の本心はともかくとして。
 スカルは彼の姿を見て頷くと、メフィストの方へと向きなおした。
 ガドルというのがどれほどの強敵か、スカルもわかっている。わかっているつもりなのに、溝呂木だけは放ってはおけないのだ。
 このまま放っておけば被害が拡大するからなどではない。
 凪自身が、何より倒さなければならない相手であるからだ。

「フンッ。どうやら俺達は俺達だけで遊べるようだな、凪」
「クッ……」
「その方がいいだろ、凪?」

 メフィストが呼びかける。
 次にどんな言葉を発するのかと構えて待っていると、凪の手にはガイアメモリが投げられた。
 緑色のメモリ──Cと書いてあるメモリだ。おそらく、先ほど溝呂木が変身したドーパントのものだろう。この場で彼が持っていても全く違和感のないメモリだ。

「そいつにやるといい」

 そいつ、というのは石堀隊員の事で間違いないだろう。
 他に、このメモリと関連して呼ばれる人間はいない。アクセルのエンジンブレードは、様々なメモリの能力で戦う優れものの武器である。
 要は、石堀隊員に力を貸してやれという事だ。
 しかし、警戒心が芽生えるのは仕方のない話で、スカルは怪訝そうにメフィストを見るのみだ。

「どういう風の吹き回し?」
「……何、俺がお前を手に入れる手伝いをしてくれた礼だ。それに、このガイアメモリという奴は面白い。ただ単純に体に挿して使うだけじゃなく、お前たちのようにベルトに挿して使う事も、武器に能力を付与して使う事もできる。このメモリはどう使えるのは見たくてな」

 溝呂木の本心ではなかった。
 確かに、メモリがこうしてさまざまな用途で使えるという事を知れたのは興味深いが、実際はこのメモリの有害性をよく知っているからである。
 凪たちが知らない筈もないが、状況に応じて使用しなければならない武器だ。凪が状況に応じてそれを使おうとするのは知れた話。
 今はその毒素を受けないロストドライバーを巻いて戦っているが、それを失えば彼女はどうなるか────ごくごく簡単な話だった。
 彼は、彼女たちが闇の奈落へと落ちていくのが見たいのである。

「石堀隊員! これを使って!」

 ガドルを食い止めるアクセルに向けて、スカルはサイクロンのメモリを投げた。
 エンジンブレードでガドルを引き離していたアクセルは、サイクロンメモリをキャッチする。しかし、左手でそれを握ったはいいものの、使える好機を待たずして、ガドルはアクセルの腹に一撃、パンチをお見舞いした。

「ありがとうございます、副隊長!」

 痛みに耐えながら、アクセルはお礼を言い、再びガドルと戦う。
 その様子を見て、やはり石堀に対して申し訳なく思いながらも、凪は結局、溝呂木を倒したい衝動を抑えきれなかった。

「さて、そろそろ俺達もゲームを始めるか。凪……」
「……そうね。長い長いこのゲームの終わりを、始めましょう」

 スカルは、スカルマグナムの引き金を引く。
 それが、凪と溝呂木の因縁を絶つゲームの始まりの合図だった。
 スカルマグナムの攻撃を真横に回転して避けたダークメフィストは、その鍵爪・メフィストクローから緑色の光弾・メフィストショットを発射する。
 スカルに向けてではなく、スカルの周囲の地面を連続して撃ち、スカルの視界を攪乱させた。砂埃の柱によって視界を遮られたスカルは、次の攻撃を躊躇う。
 敵の位置が補足できずに迷っているスカルの眼前に、メフィストが現れ、メフィストクローは凪の胸を引き裂いた。

「うあっ!!」
「この程度じゃないだろ? 凪……俺を憎んでいるなら、どこまでも強くなれるはずだ!」

426Jなき戦い/殺戮者─ジェノサイダー─ ◆gry038wOvE:2013/08/07(水) 23:09:52 ID:R/yAe.bg0

 まるで、溝呂木は凪の強さを引き出そうとしているようだった。
 いや、彼が引き出そうとしているのは凪の憎しみや負の感情かもしれない。しかし、彼らの常識では、憎しみは力となり、強さに直結する。
 憎み合うほど強くなる筈なのだ。
 凪は、敵の言う事を聞くのも癪だと思ったが、それでも溝呂木を憎まずにはいられない性だった。

「うわああああああああああああああ!!!!」

 スカルは、右足を挙げてメフィストの体を蹴りあげようとする。
 だが、メフィストはそれを左腕で受け、微動だにしない。
 次に、スカルは右腕を突き出し、メフィストの体へと攻撃をぶち当てた。
 その攻撃に合わせるようにメフィストは己に右腕を突き出し、メフィストクローを再び凪の胸へと突き刺した。
 カウンターとなり、痛み分けするように二人は後退し、激痛の悲鳴を上げた。
 しかし、それでも二人は互いに対して語りかける。

「……もっと強い力が欲しいのなら……俺のようになれ、凪! 闇の力は無限だ!」
「いいえ……。あなたはいずれ、光に敗れるわ……ウルトラマンの光に!」

 このダークメフィストが、ウルトラマンネクサスに敗北を喫する前のダークメフィストなのだろうと睨んでいた凪は、そう答えた。
 姫矢准。
 この場にもいたが、既に脱落した男が、溝呂木眞也に打ち勝った瞬間を、西条凪はかつて間近で見た。そして、凪はその手助けをした。
 闇への抵抗はより強まり、凪を光へと近づけたのである。

「光!? ……笑わせるなよ、凪。光が闇に打ち勝つなら、どうして闇に染まる人間の方が圧倒的に多いんだ?」

 メフィストの方が、先ほどのカウンターから立ち直り、戦闘体勢を整えるのが早かった。
 前に一歩踏み出したメフィストは、凪の心の隙間を探し出すように語りかけながら、そのまま何歩も進んでいく。

「……人は誰でも光と闇を心に持つ。だが、大多数の人間は生きていく中で光を心から消し、闇を選択する。それは闇の力が絶対的に強いからだ! 光など……闇に消される運命だ!」

 メフィストクローが真っ赤なハイパーメフィストショットを繰り出し、スカルの両手、両足、胸部、そして頭へと、計六発全て命中する。
 スカルには避ける術がなかった。
 スカルの反射神経は今の攻撃を回避できるほど発達しておらず、体も弱っていたのである。

 西条凪の変身した仮面ライダースカルの額には罅割れも無く、また、透けたクリスタルのような頭部になっていた。戦いに対しての迷いも、メモリを使う事への迷いも振り切れていない彼女の屈折した気持ちが、スカルの姿からもわかるだろう。
 仮面ライダースカルといっても、厳密には二形態ある。
 迷いを捨てた完全なスカルと、迷いを捨てきれない不完全なスカル。不完全なスカルは、スカルクリスタルと呼ばれる。
 いま現在の凪は、スカルクリスタルの状態だった。

 戦いを知っているはずの凪が迷っているのは何故だろうか。
 ガドルとの戦いのときは、まだガイアメモリの使用に対する迷いがあったのかもしれない。強大な戦力とは知りつつも、やはりガイアメモリというものの危険性を説明書で知っている凪には、使用の抵抗が起こりうるシステムだ。
 それは当然に違いない。銃を持つよりも遥かにリスクのある武器なのである。
 だが、溝呂木眞也を倒すためにも、凪のメモリへの迷いは振り切れないものなのだろうか。──それは否だ。憎しみのためならば、人の心は迷いを振り切れる。凪ほど強い憎しみならば、尚更だろう。
 しかし、溝呂木に対して、凪は憎しみだけを抱いているわけではなかった。
 かつて溝呂木がナイトレイダーの副隊長だった事実が、凪の実力を弱めていたのである。当の溝呂木が自分の凪への愛を極端な形へと変えたのに対し、凪はその段階へは入っていなかった。
 人間でいられるかいられないかの違いである。

 ダークメフィストは、膨大なダメージを受けたスカルの胸部にダークグレネードを放つ。

「がああああああっっ!!」

 スカルは何度とない攻撃の果てに変身を強制解除される。
 ドライバーが弾かれ、凪はその反動で後ろへと吹き飛び、倒れた。落ち葉が舞い、凪の胸に落ちる。落ちていた小さな木の枝は、凪の装備に潰されて心地いい音を鳴らしていた。

427Jなき戦い/殺戮者─ジェノサイダー─ ◆gry038wOvE:2013/08/07(水) 23:10:18 ID:R/yAe.bg0
 凪が立ち上がれずにもがいていると、ダークメフィストは間近に歩いてくる。
 そこに溝呂木眞也の姿はないはずだというのに、凪は完全にその相手に対して力を引き出す事はできなかった。
 当人さえ、自分が溝呂木に対する迷いを捨てきれていない事には気づいていなかった。







 アクセルは攻撃しつつも、ほぼ効果がない状況に悩んでいた。
 ガドルには正攻法の攻撃が通じなかった。
 サイクロンドーパントに対して行ったように何度も何度もエンジンブレードで斬りかかったところで、ガドルの体はそれを弾き返してしまう。
 生半可な力技では、ガドルの鍛え上げられた体躯は攻撃を弾いてしまうのだ。それは鋼の壁に剣を突き立てる事に等しい。
 ガドル自身も己の強さを自覚している。だからこそ、ガドルは自信満々とばかりに胸を張り、アクセルの攻撃を防いでいた。逆にエンジンブレードの方が罅割れてしまいそうだ。
 向かってくるガドルにできる攻撃はこれしかない。半端ない威圧感によって、アクセルの方も圧迫されつつあるのだ。斬り方はだんだん荒っぽくなる。
 そして、ガドルのパンチが真っ直ぐに突き出されると、遂にアクセルは後方に十メートルほど吹き飛ぶ事になった。辛うじて両足のバランスは保っている。

「ギベ……!」

 死ね──。
 ガドルは、いよいよ死の宣告を下す事とした。
 強くなる事も期待できず、ただ煩わしい攻撃を仕掛けてくるだけの相手だ。殺す事も当然辞さない。
 クウガのように見込みさえあれば、生かして強くなるのを待つのも良い。だが、先ほどの男やこの男は違った。見込みがないのだ。先ほどの男を投げ捨て、その結果、ガドルの手の届く場所に落ちたのならば、そこで葬っただろうが、この男は近くに落ちた。だから、トドメを刺すにも丁度良い。そういう意味で、黒岩は運が良かったのかもしれない。
 疲弊を始めたアクセルの姿は、ガドルの瞳に、既に消すべき獲物として映っていたのである。──その瞳は、電撃体の金色へと変色する。

「くっ」

 舌打ちをするようにそう声を出しながらも、アクセルは先ほど投げ渡されたメモリを使う事にした。これだけ距離が離れれば、メモリを挿入する隙もできる。
 死の宣告とは知らないものの、相手が構えだしたので、隙のある動きをしているのがわかったのである。おそらくは、トドメを刺しに来るだろうとみていた。
 ガドルは攻撃のたびに瞳の色を変えて戦法を変える──それは先ほどからわかっている話だ。ならば、こちらが戦法を変える時には、何をすれば良いか。

──Cyclone Maximum Drive!!──

 サイクロンメモリをエンジンブレードにはめ込むのだ。
 音声が鳴り、アクセルの身にも想像だにしない力が湧き出る。どうやら、このメモリはアクセルとの相性が良いらしい。
 複数のメモリを組み合わせて戦う場合は、このあたりにも気を使わねばならないので大変だが、どうやらサイクロンとアクセルは呼び合っている力らしいのだ。石堀は、仮面の裏でその運命を歓迎した。
 さあ、来い。
 この剣が貴様を切り裂いてやる──。

「ゼンゲビ・ビブブ──」

 一方のガドルは高く跳び、その足に電撃を帯びる。大量の電気を吸収し、フォトンランサーファランクスシフトを受けて更に強化されたガドルが持つ金の力は、もはやクウガさえ超えるかもしれない。
 アクセルが選択したメモリが先ほど与えられたサイクロンであったのは幸いな話だろう。エレクトリックなどを使った日には、それこそガドルが凄まじき戦士に一歩近づこうとも不自然ではない話だ。
 しかし、アクセルがサイクロンを選択した事実など、それこそ不幸中の幸いに過ぎない。どちらにせよ、アクセルを滅するだけの力を持ったキックである。
 ガドルは、空気抵抗の壁を蹴り破り、真っ直ぐにアクセルの体へと足を近づけていく。
 さあ、来い。
 その剣ごと蹴破ってやる──。

428Jなき戦い/殺戮者─ジェノサイダー─ ◆gry038wOvE:2013/08/07(水) 23:10:57 ID:R/yAe.bg0

 上空から落下するガドルと、地上でエンジンブレードを構えるアクセルが一秒ごとに近づいていく。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」
「るぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!

 ガドルはただ真っ直ぐに近づいていき、アクセルは真後ろに構えたエンジンブレードをタイミングよく前に突き出した。
 緑の風がガドルの体に久々のダメージらしいダメージを与える。
 金色の雷がエンジンブレードからアクセルの全身へと一瞬で駆け抜ける。
 電撃が走る音が周囲に鳴り響き、また同時にその周囲の空気が逃げ出すように放射状の大風が起こったので、誰が見ても異常気象が起こったように感じただろう。
 どんっ! ──巨大な鉄球でも地面に落ちたかのような音とともに、二人の姿が弾かれる。それはまさに、鉄球と鉄球がぶつかったに等しい膨大なエネルギーと重さの相殺であった。

「ぐぁぁっ!!」
「ぬぁぁっ!!」

 互いの勢いがあまりに強力であり、互いに受けたダメージがあまりに凶悪だった。
 その直後に互いが地面に立つという事は物理的に不可能だっただろう。
 アクセルによるサイクロンマキシマムドライブと、ガドルのゼンゲビ・ビブブはいずれも、最強の矛と最強の盾のぶつかり合いのようなものだった。
 一瞬、当人たちでさえ何が起きたのかは理解できなかっただろう。

(……ちっ……! 俺の力が元に戻ればこの程度……)

 アクセルは今度こそ、完全に仮面の下で舌打ちをした。
 ここで凪のためにこんな相手と戦うのも、全て自分がダークザギへと変身できないのが悪いのだ。ダークザギへの変身能力さえあれば、もはやこの殺し合いの全てを消し去るほど途方もない力が引き出せる。
 アクセルやガドルなどは本当に一ひねりに終わるであろう最強の闇の巨人である。
 それは、かつて遠い宇宙でウルトラ族の長老・ウルトラマンキングを倒したほどの腕前だ。ウルトラマンキングは、ダークザギを除くこの場の全員を統べるほどの実力を持ち、ウルトラ戦士全員が束となっても実力の追いつかない次元にいるウルトラ戦士である。
 それを倒すというダークザギの力は、もはや人類にとって絶望というほかない存在となるだろう。しかし、このままでは石堀はダークザギとしてでなく、ナイトレイダーの一隊員・石堀光彦として終わってしまうかもしれない。
 それもこれも、全てこの馬鹿げた殺し合いで目的を妨害され、ザギが計画していたシナリオを破壊されたのが原因だ。

「……それが貴様の力か、面白い」

 厄介なのは、敵が先ほどのぶつかり合いの直後に平然と立っている事だろうか。
 ガドルという戦士は、おそらく同じ規格で戦えば、ウルトラ戦士に匹敵するだけの実力を持つ。ウルトラ戦士自体が、ダークザギにとっては小さな存在であったが、この際、強さの象徴として引き合いに出すのも認めよう。
 ダークザギとしての力を使える状況にない今では、そのウルトラ戦士とさえ渡り合えるか微妙なのだ。……まあ、人間体でも一応、ある程度の能力は使えるものの、正体の発覚を恐れてそれを使わないだけでもあるのだが。

「望みなら、もう少し面白そうなものを見せてやるよ」

 仮面の下で少し息を切らしつつもニヒルにそう言い、アクセルは立ち上がる。彼が次に取り出したのは、トライアルメモリであった。
 アクセルメモリをアクセルドライバーから外した後、そのトライアルメモリをアクセルドライバーの同じスロットに差し込む。これがエンジンブレードに差し込むものではないのは形状を見てわかる。
 だが、これまではそうそう使う機会がなかった。
 あくまで、手元にあるメモリの一つに過ぎず、使う気もなかったが、敢えてここで使ってみるのもいいだろう。強力なメモリとも限らないし、この場でこの力を知る者はいない。そういう意味で一つのギャンブルじみていた。しかし、この場面でこれを使うのは、サイクロンメモリの強力さを知ったが故に、このトライアルメモリとやらの性能も試してみる必要があるだろう。
 これによって強化されるという確証はないが、やってみる価値はありそうだと思えたのだ。

 ──Trial!!──

 ブルルゥゥゥン…………ブルルゥゥゥン……
 バイクのハンドルを握ったような音を鳴らし、アクセルはフォームチェンジの準備を整えた。

429Jなき戦い/殺戮者─ジェノサイダー─ ◆gry038wOvE:2013/08/07(水) 23:11:45 ID:R/yAe.bg0
 ガドルは、黙ってそれを見ていた。果たして、彼が見せる力とやらはどんなものなのか、見てみたくなったのだろう。石堀の言い方も、ガドルの興味を惹かせるには巧い言い方だったかもしれない。

 ──Trial!!──

 もう一度音が鳴ると、「プ」という音が音階を変えながら三つ、カウントダウンを始める。

「なるほど、それが貴様の新しい力か」

 アクセルの体色とベルトのシグナルは、紅蓮から黄色へと変じた。体色が変化するのはクウガと同じであると思い、ガドルはその変わった特性に喜びを感じた。どんな能力に特化した力だろうか。
 そして、その姿が青くスマートなアクセルトライアルの姿へと変わった時、その姿は高速の青い影へと変わった。構えていたガドルは突然の出来事に驚愕する。
 空中へと放り出されたエンジンブレードが地面に落ちていく姿はあまりにスローモーションである。鈍器のように重い剣が落ちるスピードよりも、速く──トライアルはガドルの懐まで辿り着く。

(なかなか速いな。これなら案外、楽しく戦えそうだ)

 超高速移動。
 これが「挑戦」の記憶を有したトライアルメモリの能力である。攻撃の刃と防御の装甲を完全に消し去り、最速のタイムへと挑戦する力。真の姿が、マッハ3のスピードで走るウルトラマンキングさえも凌駕するダークザギには、最早このメモリの使用は挑戦でも何でもなかった。
 照井竜がこのメモリを使いこなすのにいかに苦労したかは知らないが、所詮は人間の努力の結晶に過ぎない。石堀光彦は超スピードには慣れている。
 トライアルを使いこなすのは至極当然ともいえる事だった。

「フンッ! ハァッ!」
「なっ──!!」
「デャァ!」

 高く上げられた足が、ガドルの体へと三発ぶち当たる。強力とはいえない三発だった。むしろ、先ほどのエンジンブレードの斬撃の方が強いだろうか。
 それに対応すべく、ガドルは俊敏体へと変身し、アクセルトライアルに向けて巨大な槍を突いた。だが、アクセルトライアルはそれを身軽な体で回避した。
 同じように俊敏さに長けたフォームチェンジであっても、アクセルトライアルのそれはガドルの俊敏体には超えられぬものであった。
 何発もの蹴りと拳をガドルの身体にぶち込み、何発もの攻撃を回避したところで、アクセルトライアルは呟く。

「……それじゃあ、振り切ってみるか」

 トライアルメモリを引き抜き、マキシマムモードへと変形させ、放り投げると、まるで照井竜が変身した仮面ライダーアクセルのようなセリフを吐き捨てた。
 音声こそ鳴らないものの、マキシマムドライブは始まっている。

「何っ!?」

 それから次の瞬間は、ガドルにも視認できない必殺の十秒間であった。
 青い風はガドルの体へと近づき、何度どない攻撃を浴びせた後、その全身をTの字型に蹴り倒す。ガドルの体が後退するほどの時間ですらなかった。
 膨大なエネルギーを一度に受けたのでなく、小さなエネルギーが何度も何度も己の体へと吸収されていくのは、ガドルにとっても不思議だっただろう。
 それが、本当に残像そのものでしかないのなら、尚更不思議なものに違いない。

──Trial Maximum Drive!!──

 十秒の終わりとともに、ガドルの体は大きな音を立て、土のベッドへと倒れた。
 クウガの持つ封印エネルギーのように、幾つもの跡がガドルの体に刻まれている。それは、このマキシマムドライブ──マシンガンスパイクの壮絶さを表していた。耐え抜いたはずが、意識は既にどこかに飛んでいたのである。
 彼は自分自身がいつ記憶を失ったかさえ、定かではないだろう。

 このマシンガンスパイクの威力は、当事者が何発の蹴りを叩き込んだかにもよる技で、その能力は未知数だ。では、石堀光彦が変身した仮面ライダーアクセルトライアルは何発の蹴りを叩き込んだのか──。
 その数字をカウントする事はおそらく、誰にもできない。照井竜が変身したアクセルトライアルの蹴りの数値はまだ数値化する事ができるだろうが、石堀光彦が変身したアクセルトライアルは、人間ではありえない数値を引き出していたのである。

430Jなき戦い/殺戮者─ジェノサイダー─ ◆gry038wOvE:2013/08/07(水) 23:12:15 ID:R/yAe.bg0
 正真正銘の自分の力を引き出せてはいないとはいえ、彼は非人間だった。
 しかし、このトライアルの速さの中では、どんな攻撃も同じようにしか見えまい。彼が非人間である事など、動体視力に優れた正真正銘の格闘の達人でもない限りは判別不可能だ。
 石堀は、トライアルの圧倒的な速さの中に、自分が非人間であると発覚するリスクを隠していたのである。

「……正確には9.6秒。まっ、こんなもんか」

 アクセルトライアルは、放り投げたトライアルメモリに書いてあったタイムを読み上げる。その仮面の裏の表情はあまりにも淡々としていた。今後もこのトライアルメモリは重宝しそうなものである。
 ガドルが受けたダメージは膨大だ。彼にはこれが、何時間にも及ぶ拷問に匹敵する痛みと感じただろう。僅か9.6秒の出来事とは誰も思うまい。そして、これでは彼が起き上がる事もしばらくはできない。
 しかし、この倒れたガドルをどうしたものか。──おそらく、この怪人の体にダメージを与えたとはいえ、致命傷となるほどではなかった。先ほど神経断裂弾を埋め込んだ時のように、そう時間もかからないうちに起き上がるだろう。それほど、彼の傷の治りは早い。どうにかして、こんな状態の時に留めを刺さなければならなくなる。
 この倒れたカブトムシの怪人に、どんな制裁を加えるか。……それを考えたが、やはりやめる事にした。早々に消しておくべき厄介な相手には違いないが、それよりもまずやるべき事があるだろう。
 そう、凪の方に行かなければならない。
 溝呂木との戦闘の中、彼女が無事かどうか確かめなければならないのだ。おそらく、溝呂木の事だからトドメを刺す事は無いと思うが……。

(とにかく、命拾いしたな。……もう二度と俺たちを襲わなきゃ、後は自由にやっていいぜ)

 再びアクセルのメモリを挿入して、トライアルの強化を解除した石堀は、先ほど邪魔だったので放り投げたエンジンブレードを拾い上げる。その時、彼はそういえばもう一つ妙な装備があった事を思い出した。
 そう、メモリ関連で一つ、面白い支給品があったはずだ。
 おそらく、ここで倒れているガドルの支給品だったはずだ。それは、ガイアメモリの強化アダプターであった。説明書を探し出す事はできなかったし、行軍の際に多くの事ができる時間はなかった。
 ……なるほど、トライアルが思いのほか役に立ったので、これを使ってみるのも良いだろう。
 普通は一回の使用で大きな負担がかかるマキシマムドライブを二度も使用し、トライアルで常人ではありえないほどの記録を叩きだしたというのに、石堀は大して息切れる様子もなく、強化アダプターを使用した。

──Accel!!──
──Upgrade!!──

 ガイアメモリの力を三倍に引き出すと言うその道具を、石堀は知らずに使ってみる事にした。迎撃対象はこの森の何処かに居るであろう溝呂木眞也──ダークメフィストだ。
 つい先ほどまで自分たちが戦っていた場所に向かえば、おそらく其処に彼がいるだろう。

 ──Booster!!──

 その音声とともに黄色い装甲に包まれたアクセルは、自分の両掌を見た。
 視界には、黄色い装甲に包まれた自分の両腕が映る。これがアクセルブースターの色か。
 赤、青、黄色。メモリの組み合わせによって、己の力の形はどこまでも変わる。
 アクセルブースターは、背中の丸いブースターユニットに熱を溜め、放射する。トライアルとは違い、自分が動かされている感覚とともに、アクセルは前へ前へと爆発的な加速度で進み、その果てに────飛翔した。







「はぁぁぁあああぁぁぁっっっつつつっっっ!!!」

 ダークメフィストが倒された凪に近寄った瞬間、熱い雄叫びが響き渡る。
 黄色く体色を変化させた仮面ライダーアクセルの姿である。
 かつてメフィストが戦ったアクセルは、赤色と青色の二種類の姿に変身したはずだが、ここにいるアクセルは黄色。初めて見る姿だった。
 複数の色に形態を変える戦士だったという事か。
 とにかく、メフィストはその姿を見て、折角、凪を闇へ誘うのを邪魔する厄介者が現れた……と気分が萎えたようだった。

431Jなき戦い/殺戮者─ジェノサイダー─ ◆gry038wOvE:2013/08/07(水) 23:13:26 ID:R/yAe.bg0

「……まさか、そいつがそんなに面白い力だったとはな」

 しかし、純粋にアクセルの力に対する興味関心もあった。
 照井竜を殺害した時に拾っておけば良かっただろうか。向かい来るアクセルブースターの攻撃を、メフィストはダークディフェンサーという小さなバリアで防御する。
 攻撃を受ける箇所だけこうして防げば充分だろう。
 エンジンブレードで突撃してきたアクセルブースターも、このバリアに弾かれて空中を回転する。
 だが、ブースターのジェット噴射によってほぼ自在に空を駆け巡る事ができるアクセルブースターは、バランスを整え、近くにあった木の幹へと“着地”すると、そこを蹴り飛ばして更に加速をつけてダークメフィストのもとへと飛んでいく。

「だが、俺の邪魔をするのは感心しないな。……ハァッッ!!」

 闇の弾丸がダークメフィストの手から放たれる。
 倒れた凪は、なんとか手と尻を突いて後ろに下がりながらそれを見送るしかない。
 ダークメフィストの放つ攻撃は、アクセルブースターの体を目指して空中を泳ぐ。アクセルは闇の弾丸と弾丸の隙間を全身のジェット噴射で己の体を激しく動かす事で回避していく。
 アクセルブースターの回避性能は高く、それゆえにその弾丸の全てを回避しながら、エンジンメモリをエンジンブレードに挿入するという行動を可能とした。

──Engine!!──

 そのまま、アクセルブースターが加速する。

──Engine Maximum Drive!!──

 マキシマムドライブの音声が響き、アクセルブースターは更に加速する。全身のジェット噴射が真っ直ぐに彼の進ませその刃がメフィストの体へと到達する。アクセルブースターは、躊躇なくメフィストの体を真横に斬り捨てた。

(溝呂木……悪いが、ウルトラマンの力を出会う事が出来ないお前に、利用価値はない)

 メフィストの体は、かつてアクセルと戦った時とは違い、マキシマムドライブが自らの体に到達した事に驚愕を隠せない。
 ……これが、マキシマムドライブとやらの痛みか。
 照井竜が変身した仮面ライダーアクセルトライアルとの戦いの際、メフィストクローでアクセルの装甲を貫かなければ、メフィストはこれだけのダメージを負う可能性があったという事だ。

(だから、少しの間だけ俺達の前から、消えろ────)

 ダークメフィストはメフィストクローを体の前に突き出していたが、その鍵爪がアクセルブースターの体へと届く事はなかった。ただ虚空を掴むように、メフィストクローは何もない場所へ向けていた。
 アクセルブースターがそれを避けた瞬間は、まるで身体をすり抜けたように見えただろう。

「な……なに…………?」

 この勝負は一瞬の稲光のようなものだった。

「ぐ……ぐああああああああああああああああっっ!!」

 ダークメフィストは遅れてきたその苦痛に膝をついた。
 アクセルブースターの力は、やはり、なかなかに強い。
 ダークザギが生み出したダークメフィストの体にこれだけのダメージを与えているのだ。マキシマムドライブというものの強さに、改めて感心する。
 アクセルブースターは、その男の悲鳴を背に受けながら、すぐに凪の元へと駆け寄った。

「────副隊長、今のうちです!」

 茫然とする西条凪の手を引き、アクセルブースターは強化アダプターを取り外す。
 アダプターを取り外すと、アクセルは元の赤い姿へと姿を変える。
 だが、今度はドライバーを外して、バイクフォームへと変身する。

「溝呂木は!?」

 凪は、溝呂木を仕留められない事に未練があるようだった。
 これだけ圧倒的な力を持っているのだから、溝呂木を倒す事も可能だったのではないか。──そんな疑問と共に。
 しかし、そう思われるのも承知だった石堀は、非常に緊迫した声で呼びかける。

432Jなき戦い/殺戮者─ジェノサイダー─ ◆gry038wOvE:2013/08/07(水) 23:15:45 ID:R/yAe.bg0

「いつまでもここにはいられません……早く!」

 この形態になってまで逃走を良しとする石堀の判断を、凪は信じる事にした。
 アクセルブースターの実力を試した事は、凪にはまだない。
 ならば、アクセルブースターの力がどの程度ダークメフィストに対応できるものなのかは、凪にはわからないのだ。
 仕方がないので、凪はアクセルが変身したバイクに乗るしかなかった。
 この状態になってしまった以上、このまま戦えというのも酷な話だ。
 だが、やはり少しためらった。

「…………」
「早く!」

 凪はまだ少しだけ迷っているようだったが、やはり仲間に迷惑をかける事はできないと思ったのだろう。

「………………わかったわ!」

 凪はアクセルの背にまたがる。

「溝呂木とは、いずれまた!」

 石堀は、現状では利用価値がないとはいえ、ダークメフィストを無暗に殺す事はしたくなかった。ダークメフィストは、ウルトラマンの光を強めるために存在するウルティノイドだ。
 レーテを介して凪から光を奪うそのために、彼には石堀と代ってウルトラマンネクサスと戦い、ウルトラマンの力を強める役割がある。
 だから、ここでトドメを刺すには勿体ない相手だ。
 とにかく、今の石堀の目的は、何よりもそのための凪を生存させる目的があった。凪とこの殺し合いのフィールドでも出会えたのは都合が良い。

「……待て! 待て、凪!!」

 膝をついて叫ぶダークメフィストのその声をよそに、仮面ライダーアクセルと凪は走っていく。アクセルはガイアメモリというものへの興味をより強く持ちながら、土の上にタイヤの跡をつけていった。





433Jなき戦い/夢想者─デイ・ドリーム・ビリーバー─ ◆gry038wOvE:2013/08/07(水) 23:16:27 ID:R/yAe.bg0
 ガドルが起き上がった時、彼の眼前には、体を引きずっている黒い服の男がいた。
 何者かは知らない。
 これまでに会った者ではない。しかし、何故自分がここで意識を失っていたのか──ガドルは男への興味を持ちつつも、自分が如何にしてこの状況に陥ったのかを思い出す事にした。
 すぐに、ガドルの中であらゆる記憶が思い出された。
 同時に怒りも沸く。
 あの赤から青へと変化する戦士により、ガドルは打倒されたのである。

「バスホゾ」

 あの青い戦士は、ガドルがこれまで出会った戦士の中では、特にトリッキーな戦闘方法を使った。高速、いや音速に近い速度で何度とないキックを行うという攻撃──その仕組み・構造を、ガドルはすぐに理解した。
 青い戦士への恨みを持ちながらも、ガドルは目の前の男に標的を変える事にした。
 あの戦士への恩讐もある。だが、それよりもまずは、近くにいる戦士と戦い、もう一度確かな勝利を手に入れておこうと思った。
 その方が戦意という奴は高揚する。負けたままのモチベーションで戦ったとして、勝利は遠ざかるのみだ。

「そこのリント……」

 森に放置していたサイクロン号のハンドルに手をかけていた溝呂木眞也は、声をかけられてそちらを向いた。その瞬間、彼の表情は、怪訝そうなものへと変わる。
 当然だ。そこに居るのはカブトムシのような角を持った奇怪な異形の怪人なのだから。
 先ほど出会った相手だが、やはり一対一で見ると威圧感はあまりに強かった。

「……貴様は戦士か?」

 ガドルは問う。
 しかし、溝呂木がこのサイクロン号に手をかけたのは、こんな怪人に声をかけられる為ではない。逃げた凪たちを追うためだ。

「……後にしてくれ。俺は今、忙しい」
「もう一度問う。貴様は戦士か?」

 ガドルは溝呂木の言葉など、聞く気も無かった。
 その様子を見て、溝呂木は厄介そうに顔を曇らせながら、ダークエボルバーを懐から取り出した。このままでは、埒が明かない。
 すぐにこの敵を倒せばいい。
 先ほどまでこの戦士が倒れていたのは、おそらく石堀が──仮面ライダーアクセルが倒したからに違いない。ならば、メフィストが勝てない道理はないはずだ。ここで負けたとはいえ、一度はアクセルに勝っているし、石堀隊員がそう強い隊員とは思えない。

「……仕方がない。少しだけ構ってやる」

 ダークエボルバーを引き抜いた溝呂木は、再びダークメフィストへと変身する。
 その姿を見ても尚、ガドルは憮然としていた。
 この殺し合いの場には、面白い戦士がいくらでもいる。彼は、そう──かつて戦ったウルトラマンネクサスに酷似していた。

(グッ……)

 だが、思った以上にマキシマムドライブの威力が強かった事に、溝呂木は変身してから気づく。脇腹の辺りの痛みを隠せなかった。
 それでも、こうなった以上、敵は確実に襲ってくるだろう。

「ハァッ!!」

 ダークメフィストは先制攻撃を仕掛け、早々にガドルを葬る事にした。
 メフィストクローから発射される赤い光弾は、目視できないほどのスピードでガドルに向かって飛んでいく。
 だが、ガドルはそれを辛うじて目視していた。アクセルトライアルとは違い、形が捉えられる程度のスピードだ。あの攻撃はむしろ、ガドルの神経を研ぎ澄ませていた。
 何発もの光弾は、すべてガドルが突き進むと共に、ガドルソードが地面に叩き落とす。

「……その程度か!」
「くそっ!」

 ガドルは一瞬で間合いを狭め、ガドルソードを振りかぶる。
 しかし、高く振りかぶればガドルの体はのけぞり、胸などの急所ががら空きになるのはもはや当然の話。
 メフィストは、メフィストクローをガドルの胸部に向けて真っ直ぐに突き刺す。

434Jなき戦い/夢想者─デイ・ドリーム・ビリーバー─ ◆gry038wOvE:2013/08/07(水) 23:17:00 ID:R/yAe.bg0
 ガドルの胸部の硬い皮膚を砕いて、メフィストクローがガドルの体を貫いていく。メフィストクローの先端からはガドルの真っ赤な血が滴っていた。
 好機ととらえ、メフィストはこの零距離でメフィストクローの先端にエネルギーを溜める。

「はぁぁぁぁぁっ!!!」

 真っ赤な光弾が、何発も何発もガドルの体に向けて放たれる。
 反動はものすごい。メフィスト自身の体も大きく前後に触れるほどだ。右腕に己の発したエネルギーの熱が伝わる。
 しかし、そんな事は敵が受けているダメージに比べれば些細な事には違いない。ガドルの胸部に突き刺さったメフィストクローは引き抜く事もできないままに、何度も何度も揺れ動いていく。
 七発──メフィストクローから放たれたハイパーメフィストショットは七発だ。
 流石にガドルの体も弾き飛ばされ、好機と思ったダークメフィストは、宿敵・ウルトラマンのように両腕を組んだ。
 ダークレイ・シュトローム。
 そのエネルギーを溜めるだけの時間の余裕はある。

 そして、

 ダークメフィストの両腕から、ダークレイ・シュトロームは予定通り放たれた。
 その強力な破壊光線は、的確にガドルの胸部を狙い、光のような速度で突き進んでいく。

「……グァッ……」

 と、その時に聞こえるのは小さな慟哭。
 それはガドルの口から放たれたものか。いや、違った。己自身の口から漏れた声にならない声だった。
 何故、こんな痛みが頭に走ったのか。
 視界に影が出来、次の瞬間、ある巨大な物体によって視界は遮られた。巨大な物体がぼたりと眼前を通過し、落ちる。それは胸の前で組んでいたダークメフィストの両腕の重りとなった。
 これは何だ。

「……頭が……」

 それは、ガドルソードであった。
 ガドルは、ハイパーメフィストショットの攻撃に耐えながら、ダークメフィストの頭へとガドルソードを振り下ろしていたのだ。
 メフィストは、その激痛に今更気づき、攻撃を中断して己の頭を抱える。
 額を割るほどの激痛であった。エネルギーを射出する事ができなくなったダークレイ・シュトロームは、ガドルの手前で威力を弱めて消え去る。
 これはガドルの計算か、それとも偶然か。
 しかし、ガドルは偶然だとしても喜ぶ事もなく、ただ淡々と次の行動に移った。
 その姿を電撃体へと変じたガドルは、助走のための構えをする。そして、高く跳んだ。

「ゼンゲビ・ビブブ」

 それは実質上の死刑宣告だった。
 ガドルは電撃を帯びた己の全身を激しく回転し、ダークメフィストへと向かっていく。
 メフィストは痛みに頭を抱えながらも上空を見上げ、自分に向かってくる殺人キックに何の抵抗もできないまま、ただ自分の現在地から逃れようと立ち上がった。
 しかし、うずくまっていた体勢から立ち上がってみせようと、立ち上がった瞬間にはダークメフィストの胸部へとゼンゲビ・ビブブの電撃と衝撃が轟いたのだから、結局は無駄な抵抗に過ぎなかった。

「うぐあああああああああああああああああああああああああああああっっっッッッ!!」

 爆裂音や光とともにダークメフィストは激しく後方に吹き飛ばされ、その変身も解かれ、背後の大木に頭を強く打ちつけた。
 溝呂木眞也の姿に戻った彼が立ち上がろうとする。頭からは今の衝撃でより一層血が流れ、激痛がする。胸の骨は折れ、脇腹もまた裂傷を負っていた。
 しかし、何故こんな事になったのか──今、彼はそう考えるようになった。

「ギベ……!!」

 何故、カブトムシの怪人が大剣を持って自分の方へとゆっくり歩いてくるのか。
 そいつは何者なのか。
 いや、それ以前に自分は誰なのか。
 その全てを、溝呂木が思い出す事はできなかった。

435Jなき戦い/夢想者─デイ・ドリーム・ビリーバー─ ◆gry038wOvE:2013/08/07(水) 23:18:06 ID:R/yAe.bg0

「やめろ……やめろ……頼む……なんなんだ、お前は……」

 とにかく、今、何者でもなくなった彼ができるのは、命を乞う事だけだ。
 言葉だけは幸いにも口から発する事ができる。しかし、何の記憶もない彼は、その言葉を使ってどうこの怪物に接すればいいのかもわからない。
 ただ、同じ言葉を連呼するだけだ。

「やめてくれ……やめろォォォォォォォォッ!!!!!!!」

 死への恐怖。得体のしれない怪人への恐怖。その思いは、周囲にも大きく響く絶叫となり、凪たちの耳にも届いた事だろう。
 今、溝呂木にあるのはそれだけだ。ダークエボルバーも、ガイアメモリも、自分の罪も、西条凪も、殺し合いの事さえも、溝呂木眞也は知らなかった。溝呂木眞也があらゆる衝撃から、戦士ですらなくなっていた事など、ガドルは当然知らなかった。
 だから、ダークメフィストという“戦士”のなれの果ての、その胸に向けて、ガドルソードは無情にも突き刺された。血の勢いは弱い。既に全身の出血量が高かったが故に、血は血を隠し、どこからの出血かもわからなかった。
 やめろ──そんな説得は、最初から無駄だったのだ。グロンギの戦士に慈悲はない。あるのは、戦いか殺しへの執着だけで、むしろ多くのグロンギは命乞いを愉しみとする。ガドルはそういう性向はなかったが、戦いの果てに敵の死があるのは至極当然の事であった。
 目を開けたまま、いまだ驚きを隠せぬまま、口から血を吐き出す彼は、このまま眠りについたとしても、永久に夢を見る事はないのだろうか。
 そこから先、その黒服の男が口からも胸からも血を噴き、死んでいくのを、ガドルは見る事もなく、先ほどこの男が手をかけていたバイクの方へと歩いて行く。その男の死体には、既に興味を示す事はなかった。

「……鉄の騎馬か」

 サイクロン号に手をついたガドルは、変身を解く。バダーが駆るバギブゾンを彷彿とさせる鉄の騎馬──リントの言葉で言うところのバイクは、ガドルにとっても重宝する武器となっただろう。
 溝呂木が持ち歩いていた武器や支給品の数々も、その場にあった。
 ガドルも丁度、デイパックを失った身なので、其処にあった支給品の数々を頂く事にした。適当なデイパックから水と食料を抜き、ガドルは豪快にそれを飲み干し、乱雑に野性的に食糧を貪る。
 これだけ沢山のデイパックがあるのだから、デイパック一つから食糧と水が消えたところで、困らないだろう。

(首輪……これは奴が手に入れたのか?)

 溝呂木のデイパックからは、幾つもの首輪が見つかる。それを数えると、七つ──。
 この男は、もしや七人を殺し、その首を狩ったのだろうか? まあ、ガドルのようにデイパックを拾った可能性もあるが……。
 ともかく、それはこの男のスコアの証であると好意的に見る事にした。
 七つの首輪を溝呂木の亡骸に向けて投げ捨てる。この男が殺したかは知らないが、この男の殺害の結果ならば、せめてもの手向けとしてこの首輪を返してやってもいいのではないだろうか。元々、ガドルは首輪などに興味はない。

「……これは」

 ガドルは、あらゆるリントが描かれている奇怪なカードを発見する。
 カードはケースに入っていたが、その向きや順番はばらばらだ。中には、拷問を受けている人間にしか見えないカードもある。幾つかのカードは、リントの死を彷彿とさせる絵である。
 なるほど、仲間たちの遊びのひとつとなっていた“トランプ”とは意味合いの異なるカードらしい。ガドルはそのカードの山が持つ個々の意味こそ知らなかったが、絵柄で想像できるものも少なくなかったため、溝呂木の死にざまに似たカードを寄せる。

(このカードの通りにリントを倒す……それもまた面白い)

 完全な後付だが、ゲゲルにもう一つの趣向を凝らしてみようと思ったのだ。
 この男や、先ほどガドルがあっさり撃退した男のように、ゲゲルの相手としては物足りない存在も幾らかいる。他のグロンギたちは、様々な遊戯性を持たせてゲゲルを行っていたが、純粋に強い相手を殺すだけのガドルには、遊戯性などいらなかった。
 だが、確かにガドルのやり方は──面白味がないかもしれない。

 正義──。

 ガドルが溝呂木の亡骸へと寄せたカードの意味は8番目のカードである。そのカードでは、玉座に腰かけた人物が剣を持つという物だったのである。
 正義とは無縁な彼らであったが、ガドルはその意味など知る由もないし、そのカードは何かの暗示があるわけでもない。

436Jなき戦い/夢想者─デイ・ドリーム・ビリーバー─ ◆gry038wOvE:2013/08/07(水) 23:19:13 ID:R/yAe.bg0
 剣。その一点だけが共通すれば、この男の死因に近いだろうか。
 後付だが、とにかくこれからもタロットカードの絵柄に合わせた死を見せる事で、このゲゲルを楽しむのも一つのやり方だろうか。

 首輪と「正義」のカードを残し、ガドルはサイクロンのハンドルを握る。
 バイクの乗り方もおおよそ覚えている。
 ブルルゥン……と音が鳴り、ガドルはアクセルの事を思い出した。いずれ、アクセルや凪とは決着をつけなければならないだろう。
 ガドルは、少しバランスを崩したが、すぐに再びサイクロン号を立て直す。乗り慣れるまでは早かった。短期間で日本語を覚え、人間の文化を吸収したグロンギらしいと言えるだろう。
 そのうち、彼は一つのタイヤ跡を見つけ、サイクロン号を止めた。
 振り返れば、自分のサイクロン号の跡が残っており、それとはまた違ったタイヤ跡であることに気づく。これはごく最近、誰かが走り去った跡ではないだろうか。一人しかいまい。
 ガドルは、再びサイクロン号に跨ると、その跡が向かったであろう方角に向かう事にする。


 ────真下だ。



【溝呂木眞也@ウルトラマンネクサス 死亡】
【残り 28人】
※亡骸はG−5エリアに放置されています。
※首輪×7(シャンプー、ゴオマ、まどか、なのは、流ノ介、本郷、ノーザ)、「正義」のタロットカードが遺体の上に放置されています。
※T2ガイアメモリ(バイオレンス)、拡声器、双眼鏡、支給品一式、ランダム支給品1〜2個なども溝呂木の遺体の付近に放置されています。
※ダークエボルバーは────

【1日目 午後】
【H−5/森付近】

【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】
[状態]:疲労(中)、全身にダメージ(大)(回復中)、右脇に斬傷(回復中) 、肩・胸・顔面に神経断裂弾を受けたダメージ(回復中)、胸部に刺傷(回復中)、サイクロン搭乗中
[装備]:サイクロン号@仮面ライダーSPIRITS、スモークグレネード@現実×2、トライアクセラー@仮面ライダークウガ、京水のムチ@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式×8(スバル、ティアナ、井坂(食料残2/3)、アクマロ、流ノ介、なのは、本郷、まどか)、東せつなのタロットカード(「正義」を除く)@フレッシュプリキュア!、ルビスの魔剣@牙狼、鷹麟の矢@牙狼
[思考]
基本:ダグバを倒し殺し合いに優勝する。
0:バイクの跡を追う。
1:凪、石堀を殺す。
2:強者との戦いで自分の力を高める。その中で、ゲームとしてタロットカードの絵に見立てた殺人を行う。
3:クウガを継ぐ者……?
※死亡後からの参戦です。
※フォトンランサーファランクスシフトにより大量の電撃を受けた事で身体がある程度強化されています。
※フォトンランサーファランクスシフトをもう一度受けたので、身体に何らかの変化が起こっている可能性があります。(実際にどうなっているかは、後続の書き手さんにお任せします)
※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。







 走るアクセルと凪の真後ろで、突然爆音が鳴り響いた。雷のような音とともに、雷に打たれた男のような絶叫が耳を打つ。
 何事かと思い、アクセルは強制的にブレーキを起こし、凪とともに今自分たちが下ってきた道を見上げた。一体、何があったのだろうか。
 何があったか……それよりも先に、あの声の主が誰だったのか。それが気になった。
 それを考えていると、先に凪がその男の名を呟いた。

437Jなき戦い/夢想者─デイ・ドリーム・ビリーバー─ ◆gry038wOvE:2013/08/07(水) 23:19:40 ID:R/yAe.bg0

「溝呂木……」

 そう、溝呂木だ。あの声は溝呂木眞也のものである。
 なるほど、ガドルが起き上がり、溝呂木と交戦しているのだとアクセル──石堀は納得していた。ガドルの意識は既に戻ったのだ。そして、ガドルが見つけたのは溝呂木だった。おそらくそんなところだろう。
 どちらも、アクセルが先ほど交戦した相手だが、おそらくぶつかりあえばガドルが勝利するであろう事は間違いないと思った。
 ゆえに、もう溝呂木の命は無いだろう。

「……行きましょう、副隊長。溝呂木は……」
「ええ。きっと、もう……」

 凪もわかっていたようである。
 だが、浮かべる顔は悲しそうだった。ナイトレイダー時代、ずっと目標としてきた男は、既にいないのである。
 溝呂木眞也はダークメフィストとなって、闇に落ち、闇に消えた。
 その事実は、人間であった頃の溝呂木を誰よりもよく知る凪には、悲しいものに違いない。せめて、彼が最後の瞬間だけでも人間に戻れたら、幸いだっただろうが、凪はそんな最後には立ち会えなかった。
 石堀にはどうでも良かったが、とにかく凪を気遣う様子を少しは見せた方がいいだろうかと考える。
 しかし……やめた。

「奴が次に追うのはきっと、俺達です。……行っていいですか?」

 重苦しいトーンで、石堀は言う。
 その姿は、他人を気遣いつつも非情に徹する男性そのものであった。彼がダークザギであるなど、最後の最後まで誰も気づくまい。
 この方が、ナイトレイダー隊員らしいかもしれない。

「……行って、石堀隊員」

 凪の悲しそうな声を聞きながら、仮面ライダーアクセルは自分の手元に闇の力が戻るのを感じた。“ダークメフィスト”の力の継承者であった溝呂木眞也が完全に死んだのである。
 その力は、それを生み出した石堀光彦のもとへ還る。ある意味当然であった。
 しかし、此処に誰か、それを植え付けるのに適当な者はいるだろうか──そう石堀が考えた時である。

「待て!!」

 アクセルが走ろうとした目の前の道に、一人の男が現れる。
 その男は、まるで二人の行く道を妨害するように両手を広げて立っていたが、体は前に倒れそうなほど傷つき、壮絶な攻撃の痕を感じさせていた。
 誰だか判別するのに少し時間がかかったが、それは黒岩省吾であった。

「黒岩……」

 おそらく、ガドルによる攻撃の証だろう。
 凄まじい姿になったものである。よく生きていたものだ。つい先ほどまで、ここにいる二人は黒岩は死んだのではないかと思っていたが、辛うじて一名はとりとめていたようである。
 自分もつれて行け、とそういう話か。
 何にせよ、黒岩を乗せない理由はない。先ほどまで共に行動していた相手で、特に裏切る理由もないのである。

「……どうした、その姿は」
「何でもない……少し痛めつけられただけだ……!」

 黒岩は怒りを表情に出している。
 相当プライドが高いのだろう。深入りはしない方がいいだろうか。とにかく、それよりも石堀は彼に呼びかける事にした。

「乗れ、すぐに奴が来る……」
「ああ……」

 黒岩は、ふらふらと歩きながら、アクセルへと跨った。凪との二人乗りの形になる。凪の背に黒岩は凭れたが、仕方のない事だろうと思い、凪はその行動には目を瞑る。
 凪も、ここまで疲弊し、傷ついた男に追い打ちをかけるほど鬼ではない。その姿を見ず、まるでいない者のように扱うのがせめてもの慈悲だ。プライドの高かった男のなれの果てだと思うと、尚更彼に話しかけられるのは躊躇われた。

438Jなき戦い/夢想者─デイ・ドリーム・ビリーバー─ ◆gry038wOvE:2013/08/07(水) 23:20:01 ID:R/yAe.bg0
 だが、黒岩はアクセルが走り出すと、自分から凪に話しかけた。

「西条、何か悲しい事でもあったか……?」

 凪の耳のすぐ近くに黒岩が凭れかけているため、アクセルの鳴らすエンジン音の中でも、黒岩の声はよく聞こえる。
 黒岩も凪の様子のおかしさを理解していたのかもしれない。
 アクセルの耳にも、そのやり取りはよく聞こえた。

「ええ……」
「どうやら……親しい人が死んだ。……恋人ではないな」
「ええ……」
「だが、きっと大事な男だ」

 面倒なやり取りを始めやがったな、と石堀は思いつつ、石堀は一言も口を出さない。
 だいたい、逃げながらでもこんなやり取りをするなんて、随分と余裕のある奴らだ。アクセルにはとてもできない。
 それに、まるで自分の存在が無視されているように思えるのも面白くなかった。
 しかし、当の本人たちはアクセルが走っている間でも充分に休めるために、平然と会話ができる。

「……どうして、そんな事がわかるのかしら?」
「俺にはわかるんだ。……女心というやつがな」
「不思議ね。目に見えないものがわかるはずがないのに」
「……だが、俺には君の悲しみがよくわかる」

 ────と、次の瞬間

 凪の体から、不思議な光が飛び出した。黒岩は大きく口を開け、その光を口いっぱいに飲み込んでいく。
 次の瞬間、凪の体は動かなくなった。あまりにもあっさりと、凪の身体は力を失った。
 その様子は、二人を乗せるアクセルの目には見えなかったが、やはり違和感だけは感じた。突然、凪が喋らなくなったのである。それは黙っているからではない。そのハンドルを握っていたはずの手からも、完全に力が抜けている。
 このままでは凪が落ちてしまうのではないかと思い、アクセルは声を強くした。

「副隊長! どうしましたか……副隊長!!」

 アクセルが必死に呼びかけるが、反応がない。
 そうか、やられた! ──石堀は、自分の判断の甘さを呪った。ナイトレイダーとしても、ダークザギとしても、やってはいけない失態を犯してしまったのだ。
 石堀は忘れてはならない事実を思い出す。……そう、黒岩は、ダークザイドだ。
 ラームという生態エネルギーを吸わなければ生きられないのが彼らだ。この瞬間、ラームが吸える死角に黒岩と凪を取り残してしまったのである。
 彼はラームというものを吸収したに違いない。

 キキィッ……と音を立て、仮面ライダーアクセルは、己の体にブレーキをかける。それと同時に、形態を二足歩行の戦士のものへと変えた。
 先ほどまでバイクモードのアクセルに乗っていた凪は、お姫様抱っこのような形で抱かれるが、息がなかった。

「……黒岩!!」

 アクセルの目の前には、淡々とそこに立つ黒岩省吾の姿があった。
 それを見て、石堀は心から憤怒する。感情をここまで表に出したのはいつ以来だろうか。ほとんどの時を石堀光彦として生きてきた彼がダークザギのものとほぼ共通する感情をさらけ出すのは久々だった。

「……貴様!! 裏切ったな!!」
「裏切った? ……俺はラームを吸わせてもらっただけだ。腹が減っていたんでね」

 あれだけの傷を負っていただけに、黒岩もまたエネルギーを必要としていたのだ。
 全身を動かすには、やはりラームを吸うほかない。黒岩は、自分に惚れた人間のラームを好む。ゆえに、凪が少しでも黒岩にときめいた瞬間、彼は凪のラームを貪ったのである。
 状況が転じればあっさりと他人を裏切る恐ろしさを誰もが持っていたが、ここでの黒岩の裏切りの何より厄介な部分は、凪のラームを吸い、身体機能を完全に奪った点である。石堀には死んだように見えてもおかしくないだろう。
 凪はこれからダークザギの復活に必要な存在だったというのに、余計な事をしてくれる。

「少しは体力も回復したか……薬代わりにはなったらしい」

 黒岩は、凪のラームを吸収した事で、少し回復を見せている。

439Jなき戦い/夢想者─デイ・ドリーム・ビリーバー─ ◆gry038wOvE:2013/08/07(水) 23:20:33 ID:R/yAe.bg0
 ただ、完全ではなかった。あれだけの状態になってしまえば、人間のラームを吸うくらいしかできないだろう。

「貴様……!!」
「そう怒るなよ。俺は別に殺したわけじゃない」
「何……?」

 激昂する黒岩の表情に、少し余裕が生まれ始めていた。黒岩のダメージは大きかったが、ラームを吸った事である程度の回復はしているのである。それゆえに、相手に対して強気に出る事も可能だった。
 一方の石堀も、死んだわけではないと聞き、少し安堵していた。

「知っているか! 俺達が吸うラームは命そのものじゃない。吸う事もできれば、元に戻す事もできる。今は俺の回復のために利用させてもらったが、俺が元に戻せば、西条凪は再び立って歩き、自分の言葉を話す事ができるようになる」
「……」
「……あるいは、俺が死ねばな!」

 敵に明け渡すべき情報ではないが、黒岩はそう言った。その言葉には自信に満ちており、彼自身の体力の回復がある程度確かなものになっているのを証明していた。
 それに、当人が元に戻せると言っている以上、その手段を選ぶ方が堅実だろうと思っているに違いない。黒岩はしばらく協力者として近くにいた方が良いはずなのだ。
 しかし──仮面ライダーアクセルはマスクの中でニヤリと笑った。

「……なら、俺も聞こう。お前は知っているか?」
「──何?」
「強さに溺れ、強さを求める者、心に闇がある者……お前のような奴に、闇の力は答え、ダークウルトラマンの力を与える! だが、その力に溺れた者は、いずれ闇へといざなわれ……命を落とす!」

 そう、溝呂木が失ったダークメフィストの力は、石堀光彦の手にあった。
 それを植え付けるに丁度良い存在が目の前にいるではないか。
 ここで無暗にこの男と戦う必要はない。
 この男には、闇の魔人となって、戦ってもらい、その果てに死んでもらえばいいのだ。強さを求めている黒岩省吾は、他の戦士と戦うに違いない。
 放っておいても、いずれ死ぬはずだ。
 ならば、闇の力を植え付ければいい。闇の戦士となってもらえばいいのだ。

「何っ!!?」

 ────次の瞬間、黒岩省吾の視界は、本当の意味でブラックアウトした。
 深い闇が黒岩の視界を遮断する。彼の心の中の闇は増幅され、やがて彼は完全なダークザギのための人形になってしまった。







「……さて」

 黒岩省吾は、完全に魔人へと代り、どこかへ去っていったしまったようだ。誰が見ているわけでもないが、石堀は不思議そうな顔でそれを見送るフリをした。
 そして、石堀光彦はアクセルの変身を解いた。
 凪は動かないようだし、凪の持っていたロストドライバーやガイアメモリの力を試してみたかったのだ。石堀は、アクセルの変身を解いたところでロストドライバーを巻く。

「変身!」

──Skull!!──

 まずは、仮面ライダースカルだ。
 今は戦闘中ではない。涼村暁のように、“試着”するにも悪くないだろう。確かにガドルという追跡者はいるものの、アクセルという力がある。逃げるに越した事はないが、来たら来たで迎撃する事もできるだろう。
 石堀の体はすぐに仮面ライダースカルの姿へと変身し、スカルマグナムを構えた。
 スカルがスカルマグナムの引き金を引くと、その弾丸は近くの木を見事に貫いて見せた。どうやら、通常の銃と比べると随分高い威力のようである。
 だが、すぐに変身を解く。

「次はコイツだな……変身!」

440Jなき戦い/夢想者─デイ・ドリーム・ビリーバー─ ◆gry038wOvE:2013/08/07(水) 23:20:55 ID:R/yAe.bg0

 戦いのために使わないとしても、変身をする事自体は悪くない。
 次に石堀が手にしたのは、サイクロンのメモリだ。これは、石堀が単体で使用していたはずだし、エンジンメモリやスチームメモリと違い、変身をする事も可能なはずである。ただ、やはりドライバーを介してでないと変身する気は起きなかった。

──Cyclone!!──

 石堀は緑色の疾風の戦士・仮面ライダーサイクロンへと変身した。
 両手を見ると、それは溝呂木が変身したサイクロンドーパントとは全く違う姿である。
 それでは、どれほどの力があるのだろうか。
 サイクロンは、一瞬で目の前の木との距離を狭め、その木に向かって疾風を帯びたパンチを浴びせる。内側で弾けるような音がするとともに、木は真横に罅割れ、そこから上下を分かつように倒れた。
 なるほど。サイクロンもなかなかの力を引き出せるメモリのようである。
 だが……

「そうだな……やはり、アクセルが一番か」

 二つの強化フォームを持ち、石堀が最も使いこなせるのはアクセルだった。
 エンジンブレードとの相性も良く、サイクロンメモリもエンジンブレードに挿入して使用する事ができる。状況的にも、自分自身の力を最大限に引き出したいのならば、アクセルが良さそうだ。
 サイクロンの変身を解き、再びアクセルドライバーに巻きなおす。あのドライバーはロストドライバーとは違う。アクセルが変形する際にも、トライアルへと変身するにも丁度良い形状をしているのだ。

「……それじゃ、いきますか────変……身!」

 アクセルドライバーへと、アクセルメモリを挿入する。

──Accel!!──

 石堀は仮面ライダーアクセルへと変身し、ロストドライバーとスカルメモリを凪のデイパックへと入れた。
 バイクモードに変身するの面倒だし、バイクモードになってしまっては、凪を乗せる事もできない。そのため、ここからはまるでお姫様を抱えるナイトのように、アクセルは凪を抱えて走る事にした。
 エンジンの音がアクセルの耳に聞こえていた。どうやら、ガドルが近づいてきているようである。
 アクセルはそのまま、ガドルから逃げるために走り出した。


【1日目 午後】
【H−5/森】

【西条凪@ウルトラマンネクサス】
[状態]:ラーム吸収による意識不明状態、身体的ダメージ(小)
[装備]:コルトパイソン+執行実包(2/6) 、スカルメモリ&ロストドライバー@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式×3(凪、照井、フェイト)、ガイアメモリ説明書、.357マグナム弾(執行実包×18、神経断裂弾@仮面ライダークウガ×4)、
    テッククリスタル(レイピア)@宇宙の騎士テッカマンブレード、イングラムM10@現実?、火炎杖@らんま1/2、ランダム支給品1〜4(照井1〜3、フェイト0〜1)
[思考]
※あくまで意識不明となる前の思考です。
基本:人に害を成す人外の存在を全滅させる。
0:溝呂木……。
1:黒岩省吾をどうするべきか(その思いは更に強力に)、涼村暁の事は……。
2:状況に応じて、仮面ライダースカルに変身して戦う。
3:孤門と合流する。
4:相手が人間であろうと向かってくる相手には容赦しない。
5:黒岩省吾の事を危険な存在と判断したら殺す。
6:暗黒騎士キバ、ゴ・ガドル・バもこの手でいつか殺す。
[備考]
※参戦時期はEpisode.31の後で、Episode.32の前。
※さやかは完全に死んでいて、助けることはできないと思っています。
※まどか、マミは溝呂木に殺害された可能性があると思っています。
※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを知りました。
※森林でのガドルの放送を聞きました。

441Jなき戦い/夢想者─デイ・ドリーム・ビリーバー─ ◆gry038wOvE:2013/08/07(水) 23:21:48 ID:R/yAe.bg0
※黒岩省吾によってラームを吸収されました。そのため、黒岩省吾がラームを吐き出すか、死亡しない限りは意識不明のままです。

【石堀光彦@ウルトラマンネクサス】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、仮面ライダーアクセルに変身して走行中(バイクモードではなく、凪を抱えています)
[装備]:Kar98k(korrosion弾7/8)@仮面ライダーSPIRITS、アクセルドライバー@仮面ライダーW、ガイアメモリ(アクセル、トライアル)@仮面ライダーW、エンジンブレード+エンジンメモリ@仮面ライダーW、ガイアメモリ強化アダプター@仮面ライダーW、T2サイクロンメモリ@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式×3(石堀、ガドル、ユーノ)、メモレイサー@ウルトラマンネクサス、110のシャンプー@らんま1/2、不明支給品1〜4(ガドル0〜2(グリーフシードはない)、ユーノ1〜2)
[思考]
基本:今は「石堀光彦」として行動する。
0:凪の身体を守りながら、ガドルに見つからないよう逃げる。
1:周囲を利用し、加頭を倒し元の世界に戻る。
2:今、凪に死なれると計画が狂う……。
3:凪と黒岩と共に森を通って市街地に向かう(ただし爆発が起こったエリアや禁止エリアを避ける)。
4:孤門や、つぼみの仲間を捜す。
5:都合の悪い記憶はメモレイサーで消去する
6:加頭の「願いを叶える」という言葉が信用できるとわかった場合は……。
[備考]
※参戦時期は姫矢編の後半ごろ。
※今の彼にダークザギへの変身能力があるかは不明です(原作ではネクサスの光を変換する必要があります)。
※ハトプリ勢、およびフレプリ勢についてプリキュア関連の秘密も含めて聞きました。
※良牙が発した気柱を目撃しています。
※つぼみからプリキュア、砂漠の使徒、サラマンダー男爵について聞きました。
※殺し合いの技術提供にTLTが関わっている可能性を考えています。
※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを知りました。
※森林でのガドルの放送を聞きました。

442Jなき戦い/夢想者─デイ・ドリーム・ビリーバー─ ◆gry038wOvE:2013/08/07(水) 23:22:40 ID:R/yAe.bg0







 ──力が……

 ──力が、沸き起こる!!


 黒岩省吾は、川辺で己の手に渡ったダークエボルバーを見下ろしていた。そして、その中にある闇に涎を垂らしそうになっている。彼は、ダークザイドだけでなく、ダークメフィストとしての力を得た事による戦意の高揚を感じていた。
 己の中の闇が拡大されていき、その闇が手からあふれ出してしまいそうなほどの力を落としているのがよくわかる。
 これは、全てを支配する事ができる力だ。
 まさに皇帝の力。──そう、人の上に立つべき皇帝の力が己の中で強くなっていくのがわかる。

「フハハハハハハハッ!! これこれならば、シャンゼリオンはおろか、ガドルも! ダグバも! ウルトラマンさえも超えられる!!」

 戯曲のようにわざとらしく、高らかな笑い声をあげながら、彼は言う。水場ではその高笑いは少し反響する。バイクの音が真後ろを通過したが、そんなものは気にも留めない。
 誰かが来ても知らない。俺はそいつを倒すのみだ。
 これならばネクサスの力を持つ者を屠り、黒岩を敗北させた戦士たちも次々と潰す事ができるだろう。シャンゼリオンも、ガドルも、ダグバも……このまま戦えば勝てるような気がして来る。
 元の世界に帰って皇帝となるべきは自分──そう、黒岩省吾を置いて、他に無い。

「…………………………そうだな」

 だが、すぐに先ほどまでの高笑いを嘘のように黙り、顔を顰めた。
 水辺に映った自分の姿を見たのである。そこにあるのは、髪を乱し、血まみれになり、ぼろぼろのシャツとスーツを来た乞食のような男だったのである。あまりにも世界を統べるにはふさわしくない人間の姿だっただろう。
 そう、黒岩省吾はいずれ皇帝となるべき男だ。そのためには人間のやり方でのし上がっていくのが人間界への礼儀。そして、黒岩にとっては最大の遊びなのだ。
 だが、この姿の黒岩に誰がついてくるだろうか。
 気品がなく、高貴さを失った黒岩省吾に、ついてくる者などいない────。
 ならば、また別のやり方もある。自分の誇りを捨て、完全な闇の戦士へと堕ちる事だ。気の向くままに敵を葬り、この殺し合いを生還。綺麗なスーツを着るのはそれからでいい。

「まずは、この力を適当な相手で試すか」

 そのやり方をするにも、やはり実験をするための相手は必要だった。それは誰でもいい。
 それこそ、実力で負けたガドルでもいいのだが、残念ながらガドルは先ほど黒岩の後ろを過ぎていったバイクの爆音の正体であった。シャンゼリオンがこの川を流れていったのは結構前の話なので、既に彼はどこまでも流されていってしまっただろう。
 ……まあいい。
 黒岩は、水辺を辿り、適当に歩く事にした。そこで最初に会った敵を殺せばいいではないか。
 まさしく、今の彼は暗黒騎士と呼ぶに相応しい殺戮の魔人であった。
 ただ、その手に握った野望だけは、更に加速していく。



【1日目 午後】
【G−4/川沿い】

【黒岩省吾@超光戦士シャンゼリオン】
[状態]:頭部・腹部を中心に全身に裂傷(ラーム吸収や闇の力によりある程度回復)、凪のラーム吸収、メフィストの闇を継承
[装備]:ダークエボルバー@ウルトラマンネクサス、デリンジャー(2/2)
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0〜2
[思考]
基本:周囲を利用して加頭を倒す。
0:現状への対処、シャンゼリオン(暁)のライバルは俺だ。
1:とりあえず、新しい力を使う実験台となる相手が欲しい。
2:涼村暁との決着をつける ……つもり、なのだが……。
3:人間でもダークザイドでもない存在を警戒。
4:元の世界に帰って地盤を固めたら、ラビリンスやブラックホールの力を手に入れる。
5:桃園ラブに関しては、再び自分の前に現れるのならまた利用する。
6:ネクサスの力を得る。
[備考]
※参戦時期は東京都知事になってから東京国皇帝となるまでのどこか。
※NEVER、砂漠の使徒、テッカマンはダークザイドと同等又はそれ以上の生命力の持主と推測しています。(ラブ達の戦いを見て確信を深めました)
※ラブからプリキュアやラビリンス、ブラックホール、魔法少女や魔女などについて話を聞きました 。
※暁は違う時間から連れて来られたことを知りました。
※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを知りました。
※森林でのガドルの放送を聞きました。
※西条凪のラームを吸収しました。吐き出したり、死亡したりすれば凪にラームが還ります。
※ダークメフィストの力を継承し、ダークメフィストツヴァイとなりました。そのため、ウルトラマンネクサスの光への執着心も生まれています。溝呂木が使ったような生身での特殊能力も使えるようです。

443 ◆gry038wOvE:2013/08/07(水) 23:23:20 ID:R/yAe.bg0
以上、投下終了です。

444名無しさん:2013/08/07(水) 23:45:21 ID:xGLC8nPw0
投下乙です。
溝呂木さんはここでリタイアか。最初に殺した照井が変身するアクセルが死ぬきっかけなんて、ある意味運命だな。
そして副隊長のラームを奪ったせいでメフィストツヴァイになっちゃった黒岩……でも、自業自得かw
ザギさんはこのまま副隊長と一緒に逃げられるかな……?

445名無しさん:2013/08/08(木) 00:19:14 ID:vMFemLdI0
投下乙です
順調だった溝呂木も遂に散ったか。閣下は相変わらず強いなー。
ザギさんは照井よりもアクセルを使いこなしてるんじゃね?
そして黒岩ww調子に乗ってるとドンデン返しくらうぞw

446名無しさん:2013/08/08(木) 00:50:56 ID:i7wvQiGI0
投下乙
ザギさん本気出してきたなあ
石掘も黒岩も(思考はともかく)これまでそんな物騒な感じじゃなかったけど、ここにきてどっちもやばい感じになってきた
しかしアクセルを照井以上に使いこなしてるあたり、ダークザギに変身できなくてもやっぱザギさんすごいんだなあ
溝呂木さんは…死神の逆位置はやっぱフラグだったかw
ガドル閣下はアクセルへのリベンジ果たせるのだろうか…

447名無しさん:2013/08/08(木) 18:09:43 ID:W7pHsZJc0
投下乙です
マーダーだろうが対主催だろうが順調な奴がけつまずくのがロワの醍醐味
だが状況の危うさは下がってないのがまたなあ…w
石掘も黒岩もここにきて変化したしあんこちゃんとのフラグもあるから出会ったらどう転ぶか判らない怖さがあるからなあ

448 ◆gry038wOvE:2013/08/08(木) 23:24:10 ID:OvgD6G9w0
投下します。

449 ◆gry038wOvE:2013/08/08(木) 23:24:48 ID:OvgD6G9w0



 ダグバの全身の傷はひりひりと痛んでいた。
 回復は進んでいるものの、海水が傷口になだれ込むようだった。口の中にも海水の味が広がり、それは彼にとって敗北の味として刻まれるようになった。
 しかし、それさえも彼にとっては悦びだった。
 強い敵がたくさんいる。そう、ダグバが戦いを楽しめる相手が幾らでもいる。たとえどんなに弱く見える相手でも、同じだ。
 強い悦びを感じながら、彼は波に揺られた。

「────そろそろ、泳いだ方がいいかな」

 ダグバは、呟く。
 そう、このまま街の方向へ揺られていけば、ダグバは禁止エリア──【H-9エリア】を横切る可能性があったのだ。
 禁止エリアというのはダグバにとっても非常に厄介なシステムである。
 13時という言い方がまたダグバには厄介で、九進法で考えているダグバにはわかりにくく、そのうえ、時計が12時までしかないゆえにその意味がよくわからなかった。
 とにかくわかるのは、近寄ってはいけないエリアが近くにあるという事。
 リントには、「8」と「10」の間に、「9」という不思議な数字があるのだ。その「9」が今回の禁止エリア。ダグバの言葉なら、バギンに値する部分である。
 マス目が10×10というのも、彼にとっては中途半端だったし、それをまた「10」としているのが非常に厄介である。ダグバの頭も混乱しそうだ。
 とにかく、そのあたりは文化の違いとしか言いようがないだろうか。

「……ふう」

 空を見上げていたダグバは、少し息を吐いた後、うつ伏せの体形に向きなおす。
 海の色は暗い。既に太陽も東から西へと沈む準備をしているようだ。南東に位置するこの海は、太陽の光をあまり綺麗には映さない。
 向き直って思ったのは、やはり衣服というのが邪魔臭いという事だろう。衣服は水を吸い、完全な重りと化している。シャツが身体にしがみついてきて、ダグバの身体を鎮めようとして来るのだ。
仰向けならば、ズボンの中にシャツの袖を入れてベルトを締めれば、そこに空気が溜まり、辛うじて浮いている事はできるし、両腕に持っている四つのデイパックが浮かせてくれるのだが、このまま禁止エリアに向かってしまう可能性があるとなれば、このまま漂うわけにもいかない。
 だいたい、岸まで数キロあるというのだから、このまま漂っていては本当に日が暮れてしまう。こんな場所に敵はいないので、早々に上陸したいのである。
 そして、ある程度待ったところで、ダグバは決断する。

「……仕方ないな」

 ダグバは、己の身体に絡みつく真っ白な衣服を強力な力で引きちぎった。脱ぐよりも手っ取り早いのは、この異質そのものとしか言いようがない方法だ。上半身はただでさえダメージを負っていた事もあって、あっさり脱ぐ事に成功する。もう着る事もないだろうし、邪魔なのでそれはそのまま近くに投げ捨てた。

 次はそう、────下半身だ。

 戦闘民族グロンギも、普段は衣服を着ている。上半身を着ていない奴も結構いるが、基本的に衣服は来ていて当然の代物である。
 羞恥はない。だが、やはり常識はずれな行動には違いない。少なくとも、人間社会の裏を歩いていくうちにも、それは当然の事として認識され始めていた。

「でもまあ、戦いには変えられないか」

 ダグバがベルトを下ろすと、ズボンはダグバの身体に執拗に絡みつくのをやめ、遂にダグバの身体から離れる。ダグバは海中にあるズボンをとりあえず捕まえて、先ほど引きちぎった上半身の衣服と共に海上に捨て去った。
 革靴も水に沈みやすく、先ほどから非常に邪魔だった。靴下もそうだ。それらもあっさりと海に捨て去る。
 とりあえず、それは不要物と判定される。



 ──さて、問題は次だ。

 ダグバには、そう、───

450素敵なタイトル募集中──感想に付記してください ◆gry038wOvE:2013/08/08(木) 23:25:47 ID:OvgD6G9w0

 ────あと一枚、リントの言葉でいうところの“パンツ”が残っていた。


 ブリーフなのか、トランクスなのか、はたまたボクサーパンツなのか。
 現代に甦ったグロンギの王のセンスは想像に任せるとして、果たして、彼はそれを脱ぐのか。
 その一点だけが、この状況において問題だった。
 もし、ダグバに向けて誰かが声をかけられるならば、誰かが必死に止めなければならないだろう。

 ──グロンギの王・ダグバよ、そこに残っているは最後の希望だ。それを脱いでしまっては、君の股間が海とザギバスゲゲルを始めてしまうではないか。

 かつて、リントが栄えた時代よりももっと以前、人は確かに全裸だった。服を着る文化はなかった。パンツ自体、人類の歴史から見ても、そんなに昔からあったものではない。
 ……しかし、現代は違うのだ。
 既にダグバはパンツ一丁だというのに、それまで脱いでしまったら、良識あるリントによって通報され、リントの戦士(ガドルが言ってたような意味で)が集まってくるかもしれない。
 ……いや、殺し合いが行われているこの場所にはリントの戦士(要するにおまわりさん的な意味で)はいないかもしれない。
 いるといえば少しいるけど、そんなにたくさんはいないし、逮捕もできない。
 守るべき治安はない無法地帯──それが過酷なバトルロワイアルだ。


 ……だが、女性の参加者はたくさんいる。


 それも、結構な数いる。
 そのうえ、それを見せちゃいけない純真無垢な年齢の子がたくさんいる。というか、ほとんどの女性参加者が純真無垢な年齢の女の子なのである。18歳というのが一つのセーフラインであるなら、そのラインを超えてない少女がめちゃ多いのだ。
 その子たちに見せるのはヤバい。どれくらいヤバいかというと超ヤバい。ヤバいドヤバいではなく、ヤバいグヤバい。
 なんかヤバいところからヤバい電話が来るかもしれないくらいヤバい。たぶん来ないが、来る可能性を軽く上げてくるくらいヤバい。全国でダグバの真似をするお友達が流行したら、それこそ超ヤバい。さて、ここまで何回ヤバいと言ったでしょうか? 今のヤバいとこのヤバいはヤバいに含みません。正解はバギンドドググ回です。
 ちなみに、ヤバい部分はそれだけじゃない。

 ──一番ヤバいのは、外見は男性だが、心が乙女な人の存在だ。

 あの人なら、きっと、ダグバの持つライジングドラゴンロッドを見てときめくだろう。
 前か後ろが危険だと思わなければ、この先、本当にザギバルゲゲルが始まってしまう可能性があるのだ。ダグバがそれを「面白いね」と答えた日には、正真正銘の「究極の闇」が始まってしまう。
 ヤバいところからヤバい電話が来るどころか、主催者がドン引きして殺し合いを中止してしまうくらいにヤバいかもしれない。













 さあ、どうするダグバ……。


 決断の時は刻一刻と迫っている。


 パンツを脱ぐのか──!?


 脱がないのか──!?

451素敵なタイトル募集中──感想に付記してください ◆gry038wOvE:2013/08/08(木) 23:26:30 ID:OvgD6G9w0
















「……いや、流石にコレは残しておこうかな」





 脱がなかった。







 四つのデイパックを腕にかけ、バタ足で泳ぐというのが、この状況におけるパンツ一丁のダグバの泳ぎ方だった。
 デイパックは極力手元に残しておきたい。デイパックのベルトをきつく締め、腕に絡めると、デイパックは浮き上がった。ある程度の重みはあるものの、中身の量がどうあれ、重さはほぼ一定だ。
 だからこそ、幾つものデイパックを持って歩く事が出来るし、こうして水の中でも肌身離さず持っている事ができた。とても、中で幾つものペットボトルが揺れているとは思えない。
 おそらく、何らかの特殊な仕様もあるのだろう。でなければ、どう考えてもデイパックから出てこないようなものがよく出てくるので、おそらく何かあるのだろう。
 パンツ一丁のダグバ含め、この殺し合いの参加者はこれまでそんなに深く考えなかったが、とにかく、こういう時も水泳で腕につける小さい浮き輪のようにして使う事ができる優れものである。
 ズボン代わりにならないのが残念だ。
 ズボンは先ほど、上陸後の事を深く考えもせずに捨ててしまったのである。
 仮に、ズボンを残しておけば、上陸後も上半身裸の割と軽度な変態で済む。若干古いセンスのロックシンガーか、カンフーも達人とかそういう系統の人か、江≪ピーッ≫2:50と勘違いされる程度だろう。それならまだいい。──あ、やっぱりエ≪ピーッ≫ちゃんは駄目かもしれない。
 だが、ズボンがあるか否かで随分と印象は変わる。ズボンを履かない上半身裸は変態だ。ズボンを履いてたらまだ避けられる程度だろうが、ズボンを脱いでいたら即通報だ。……というと、小島≪ピーッ≫しおに失礼かもしれないが、やっぱり江頭2:≪ピーッ≫も駄目だと言ったし、お笑い芸人はそういうお仕事なので、とりあえず失礼とかは承知の上で、まあここで言うところの「変態」としておく。

 パンツ一丁──言うなればそれは変態仮面である。ン・ダグバ・ゼバはン・オイナ・リサに改名した方がいい。「ン・オイナ・リサ」を早口で何度も何度も、繰り返し繰り返し読んでみると、「おいなりさん」になるのだ。つまり、おいなりさんとは、要するにアレのことである。詳しい説明は省く。
 残念ながら、現状パンツ一丁のオイナは、……じゃなくて、現状パンツ一丁のダグバは、ズボンを海の藻屑にしてしまった。後先考えて行動すればこんな事にはならなかったのだが、全裸のダグバ……じゃなくて、パンツ一丁のダグバは後の事など考えていなかったに違いない。
 考えてみれば、デイパックを常備しているのだから、その中にズボンを入れればいいだけの話ではないだろうか。それを、パンツ一丁のダグバは一切考えなかったのだ。
 あのズボンを捨てた事が、まさか今になってパンツ一丁のダグバに致命傷を与える事になるとは思うまい。ゆくゆくはこの判断がダグバの命を奪う結果になるかもしれないという事である。

 たとえば、ここでズボンを失った事で、パンツ一丁のダグバが上陸するとしよう。
 すると、そこに、良識ある参加者が現れ、ズボンを貸してくれる。その人の温かい心と温かいズボンに心を打たれたダグバは人というものの優しさに触れ、改心して自らもみんなを笑顔にする心優しい戦士になる。
 やがて、軽く殺し合いの主催者をブッ殺したダグバはみんなと一緒に脱出し、元の世界でその人と親しくなり、結婚する。
 しかし、グロンギの文化とその人の文化の違いは大きく、やがて生活に摩擦が起きる。
 そのうえ、戸籍もないうえに三万人殺害と放火の前科があるダグバを雇ってくれる企業はどこにもなかった。アルバイトさえもできないまま、家計はだんだん厳しくなっていく。
 そんな折、遂に二人の間に子供が生まれてしまう。だというのにダグバには収入がない。
 そして、遂に堪忍袋の緒が切れた嫁(つぼみじゃないよ!)がパチンコ漬けになり、浮気を始め、ダグバと離婚。金持ちな浮気相手と結婚する事になり、ダグバは親権も奪われ、慰謝料を請求され、裁判で敗訴。
 莫大な借金を背負ったダグバは、遂に家も、家族も、衣服も奪われ、パンツ一丁となって夜の街を彷徨い、あの時のズボンの温かさをもう一度感じたいと思いながら、同時に涙を流しながら遂に富士の樹海で首を吊る────。
 という結末になったら、それこそダグバは「ズボンを笑う者はズボンに泣く」という感じで因果応報な死に様を辿るのではないだろうか。
 みんなもズボンは大切にしよう。


 そして、気づけば話題が完全に反れてた。

452素敵なタイトル募集中──感想に付記してください ◆gry038wOvE:2013/08/08(木) 23:27:31 ID:OvgD6G9w0

「……もうすぐ着くかな」

 パンツ一丁のダグバの泳ぎは早かった。
 泳いでいる間、特にサメに襲われる事などはなかったし、サメに襲われたとしてもズボンがない事に比べればどうでもいい話なので、とりあえず岸が見えてきたあたりまで飛ぶ。
 時刻は夕方だ。16時〜18時ごろだろう。午後4時〜午後6時。バギンドゲズン時〜バギングドググ時(グロンギ語とかマジイミフ)。そのくらい時間も飛ぶ。
 マップ上では、「主要道路」とか「砂浜」とか線の説明が書いてあるような部分を泳いできたのだから、これでも相当早いのではないだろうか。禁止エリアを回避して泳いだ結果、それくらい時間がかかったのだ。
 ちなみに、その「主要道路」とか書いてあった部分は特に何もなかった。超デカい白い板が浮いてるとか、そういう勘繰りをした人もいたのではないだろうか。そんなもんねーよバーカ!! ……じゃなくて、ご期待に添えず申し訳ありませんが、そんなものはありませんでした。
 とにかく、そんな場所を横切ってまで泳いできたとすると、軽く十キロ以上は泳いできたんじゃないだろうか。ぶっちゃけバケモノである。波が時にパンツ一丁のダグバの背中を押してくれたとはいえ、相当なものだ。


「……やっと着いた」


 流石のパンツ一丁魔人──別名ダグバも疲労困憊という様子である。
 歩くよりも、全身運動の水泳のほうが百倍疲れるのはおわかりだろうか?
 パンツ一丁のダグバも人間体なので、流石に危険なくらい疲れていた。身体中の傷がピンク色のぷにぷにになっている。リントの諸君は、子供の頃、プールとかで作った傷がピンク色のぷにぷににならなかっただろうか。剥がしてもそんなに痛くないけど、妙にグロいあのぷにぷにだ。あれが身体の色んな傷にできていた。
 このくらいユルい表現描写が通るなら今後も超ウルトラハイパーメガトン級に楽だが、たぶん、この一回限りだろう。


「……あれ?」


 と、パンツ一丁のダグバは大変な事に気づく。
 そう、────これは非常に大変な事であった。


「……なくなってる?」


 I-7の砂浜に降り立ったパンツ一丁のダグバの下半身から、いつの間にか──────パンツが消えていた。つまり、先ほどからパンツ一丁のダグバと形容され続けていたダグバは、パンツすら履いてないダグバだったのだ。


『男はいつ死ぬか分からない。パンツだけは一張羅を履いておけ』


 ──誰かがそう言っていたが、その男はパンツすら履いていなかった。
 おそらく、泳いでいるうちに、パンツはダグバの身体から離れてしまったのだろう。ダグバの泳ぎが早いだけに、水の抵抗は大きかった。
 子供の頃、プールの壁を蹴って勢いをつけて泳ぐ時、海パンが脱げた事がなかっただろうか。アレと同じ感じである。いい年なのにこれをやらかす人も珍しくはない。
 パンツは必死でダグバの腰に掴まったかもしれない。海パンのようにユルユルな紐で繋がっているわけではないのだ。ダグバのパンツのゴムはおそらく、かなり頑張った部類ではないだろうか。

(ご主人様……もう限界です……。私は……パンツは、あなたのもとを……離れるしか……ああっ……!)

 と、おそらくこんな想いがパンツにもあったと思う。
 しかし、パンツのゴムが耐えられなくなるほど、水の抵抗は強く、ダグバの泳ぎは早かった。だいたい、両手が塞がってるダグバに、パンツを腰に上げながら泳ぐ余裕などない。
 そして、今はパンツもない。

(──ご主人様に履いていただいて幸せです♪)

 パンツが、無いのだ。

(──グロンギって普段、洗濯とかどうしてるんですか? えっ!? わわっ……聞いちゃダメだったかな……どうしよう……)

 そう、

(──もっとご主人様を笑顔にできるように頑張ります♪)

 パンツが、


(────私、ずっと……ご主人様と一緒にいられたらなって、えへっ♪ 何でもありませーんっ♪♪♪)


 ──無いのだ。

 変な台詞のせいで、地の文を読めなかった人のために、もう一度まとめて言おう。



 そう、パンツが、──無いのだ。


「まさか……泳いでる時に……?」

453素敵なタイトル募集中──感想に付記してください ◆gry038wOvE:2013/08/08(木) 23:28:23 ID:OvgD6G9w0


 ダグバは海を見返す。その広大な海は、暗く淀んでいる。たとえ、この広大な海に、ゴミが浮かんでいたところで、誰も気づかないだろう。パンツとか。
 要するに、ダグバは、何も着ていなかった。
 何度も言うが、ダグバはパンツや靴下や靴を含め、何も着ていなかった。
 そうだ、デイパックさえあれば支給品として何かの衣服があるかもしれない……と思ってデイパックを開けて中を見てみたが衣類がなかったので、やっぱり何も着ていなかった(コイツに小太刀のレオタードが支給されなくて良かった)。
 なんかDボゥイのクリスタルとかも主催者の計らいか何かで変身後に服着せるようになっているっぽいというのに、彼は何も着ていなかった。
 え? 変身後も何も着てないように見える? ……たぶんそれは気のせいだ。あれは服をモーフィングパワー(棒切れをドラゴンロッドに変形させるクウガとかガドルとかの変な力)で皮膚と一体化させているのだろう。公式な情報はないので不明だが、おそらくそうだろう。
 ダグバは、全裸だった。

 ……ところで、急に話題が変わるが、頭を切り替えて思い出してほしい。

 先ほど、ダグバの描写で

『残念ながら、現状パンツ一丁のオイナは、……じゃなくて、現状パンツ一丁のダグバは、ズボンを海の藻屑にしてしまった。後先考えて行動すればこんな事にはならなかったのだが、全裸のダグバ……じゃなくて、パンツ一丁のダグバは後の事など考えていなかったに違いない』

 という部分があった。

 ────この文章をよく見てみろ(見てください)。

『全裸のダグバ……じゃなくて、パンツ一丁のダグバは後の事など考えていなかったに違いない』

『全裸のダグバ……じゃなくて』

『全裸のダグバ』

『全裸の』

『全裸』

 そう、なな……なんと、これは伏線だ!!
 ここには、みんなが大好きな“伏線”が、あまりにも大胆に横たわっていたのである(擬人法)。

 つまり、この段階で実は既にダグバのパンツは脱げていた……。こういう伏線は二回三回読んで気づいて面白いんだろうけど、気づかれなかったら寂しいので言っておく。超察しが良く、もはやエスパーとかそういう次元に入っている人ならわかっただろうが、あのあたりで既にダグバはパンツを履いていなかったのである。
 この段階とかあのあたりと言われても、ダグバがその時、どの辺を泳いでいたのかは曖昧な話で、結局どこで脱げてようがよく伝わらないだろう。とにかく、結構早い段階でダグバは全裸だった。

 と、コロコロと話題を変えてみたものの、はっきり言って、それはどうでもいい話である。ここまでの経路は、かなり長い文章だが、特に道中変わった事はなかった。ズボンとパンツが脱げたくらいだろうか。本当にどうでもいい話だ。
 むしろ、ものすごくわかりにくい話になっていくだけである。それでもいい。

 ダグバは長い水との格闘の果てに、遂に砂浜にたどり着いた。その途上で波に巻き込まれたか、ダグバの下着は水に流されていた。しかし、ダグバは憮然と砂浜に立っていた。──と、文部省推薦のクソ真面目な小説風な書き方をしてしまうのもアリである。普段はだいたいそんな感じで話が進んでいる。

 これは、「ダグバが全裸上陸した」──と言えば、一瞬で終わる話である。仮にこれがネット小説だったとして、その容量でいうところの云十KBかかるような話ではないだろう。たったこれだけの事実を、ネット小説で云十KBに仕立て上げたら、それは水増しの達人として表彰でもしたらどうか。いっそ神と崇めたらどうか。
 だが、ダグバの体感した苦労は小説ではない。「は?」じゃねえよ、事実なんだよコレは。子供の夢を壊すなよ。


 ──これはこの殺し合いにおける現実である。


 しかし、ダグバの全裸上陸──それは多くの参加者にとって、そして、その参加者に共感する人々にとって、途方もない絶望と恐怖に満ちた事実だ。──こんなに怖い事があるだろうか? これを丁寧に描写すれば、その事実を知った人間の半径五キロメートルから小動物や虫たちが逃げ、暗雲が空に広がり、すぐに雷と嵐が起こり、街にモヒカンの暴徒が侵入し、トイレットペーパーが買い占められ、あらゆるカップルが破局し、郵便局の全ての手紙の内容が悪口に書き換えられ、掲示板とSNSのサーバーが落ち、一瞬で心臓麻痺の死体の山が構築されるほどの衝撃的事実である。
 その絶望感をあんまり深刻に受け止めてほしくなかったので、明るく楽しく元気よく、そしてごくたま〜に……全体の3パーセントくらいだけ下ネタを交えながら、「たまにはいいよね」って気分でお茶目な感じに話が進んでいっただけである。

454素敵なタイトル募集中──感想に付記してください ◆gry038wOvE:2013/08/08(木) 23:29:06 ID:OvgD6G9w0

 決して、真面目に書くのが面倒になってきたわけではない。
 午前1時57分のテンションで書いたわけではない。
 なんかとにかく話題になる事をやってみたかったわけではない。
 酔っ払ってイカレてるわけでも、田代≪ピーッ≫さしや、のり≪ピーッ≫のように、薬を使ってラリってるわけでもない。


 ……ダグバが全裸で上陸した。
 もう一度だけ、刺激のないようにソフトに言う。
 ダグバが上陸したのである、“全裸で”。(反復法&倒置法)
 一体、何度繰り返せば気が済むのだろうか。さっきから同じ事をテイストを変えて文章の水増しをやってるわけではない。ここまで何回全裸と言ったでしょうか。カウントしてる人いますか?
 ……そう、ダグバは全裸なのだ。全裸とは何も着てない事なのだ。それは大変な事なのだ。反対の賛成なのだ。バカボンのパパなのだ。
 ダグバはどんな男か。
 ──普段から自然と笑みをこぼし、どう見ても青年なのに子供言葉で喋り、不完全体がどう見ても毛むくじゃらの変態で、他人に「僕を笑顔にしてよ」と声をかける事案を発生させる究極のHENTAIが、それに輪をかけて──全裸なのだ。
 それが真面目に描写したら、色んな意味で、怖い事この上ないだろう。既に力を失いつつあるダグバの一番怖いところは、仮に力を失ったとしてもダグバが変態であるという事だ。
 やはり、全裸であるという一点が最上級に怖いのである。そこは否定すべきではない。



 ……ダグバは、こんな時も案の定、笑っていた。
 これまでどんな攻撃を受けても笑っていたこの男は、たとえ己の全てを無くしても笑っていた。
 生まれたままの姿で、強い潮風を浴びながら、笑っていた。
 夏休みを迎えたバカな男子大学生たちのように、笑っていた。
 常人なら泣きたくなってもおかしくないような状況で、彼は笑っていた。
 傍から見たらいかに変態であっても、彼は笑っていた。


「……ふふふふ」


 ──ダグバは果たして、あっちの方も「ン」なのか、それとも「ズ」なのか。それは、想像に任せる。


「……はははははははは!!」


 ──ダグバは果たして、あっちの方も「究極の闇」なのか、それとも「不完全体」なのか。それもまた、想像に任せる。


「ははははははははははははっ!! まあいいや、このくらい」


 重要なのは、ダグバのあっちの方の話ではない。あっちの方の話が気になるとしても、原作で描写されてない以上、捏造レベルになってしまうので、描写できない。
 さらっと、勝手に一瞬だけ擬人化されたパンツの想いを無視して、パンツがなくてもいいやと割り切ってるダグバの非情さが垣間見えたが、それもまた重要ではない。
 重要なのは──

──ダグバが上陸したという事。

──究極の闇を齎す者が、この夕方に砂浜へと降り立った事。

──彼が海の藻屑と消えなかった事(衣服は全部海の藻屑だが──)。


──ダグバは、変身できなくとも次の力を何とか得ようとするであろう事。


 そして、

455素敵なタイトル募集中──感想に付記してください ◆gry038wOvE:2013/08/08(木) 23:29:37 ID:OvgD6G9w0

「……次は誰が僕を笑顔にしてくれるのかな?」



 パンツが無くても気にする様子がない彼は、全裸でも尚、ニヤニヤしながら近寄ってくる事─────────ではなくて、



「そうだ、プリキュアとかがいいかな? そんなに強くなさそうだし」



 変身能力が使えない彼は、何らかの戦闘能力を奪うため、この恰好で、プリキュアに凸ろうとしている事だ。



【※よいこのおやくそく】
・服を着たまま水場で溺れてしまった場合は、服を脱ぐよりも、シャツをズボンの中に入れて仰向けになり、極力動かず助けを待ちましょう。焦って服を脱ぐよりはマシです。
・立ち泳ぎは浮力を失ってしまう上に、体力の消耗が激しいため、極力避けましょう。
・ただし、溺れている人を助ける時は服を脱いでから助けに向かいましょう。詳しい救助方法は調べてください。近くに専門家がいる場合は、ライフセーバーなどに任せましょう。
・重い物を持ちながら泳ぐのはとても危険です。もし中に殺し合いの道具が入ってるとしても、浮き輪代わりにならない場合は捨てましょう。
・スニーカーなどのゴムを使用した靴は浮力を保りますが、革靴やハイヒールは沈みやすいので、溺れた際はすぐに脱いでください。
・危機的状況でもない限りは、海で全裸になるのはなるべくやめましょう。
・海やプール、川などで遊ぶ際は事前にいろいろ調べてから、安全面での対策をよく行ってから行きましょう。
・ダグバにできても、リントにはできない事・犯罪となる事があります。ダグバの真似はしないでください。
・水場でのいろいろについて知ってる方、このおやくそくが間違ってたら修正してください。間違ってるのに信じて実行する人いたら怖いんで。
・この話に苦情を入れないでください。



【1日目 夕方】
【I-7/砂浜】
※ダグバの衣服や靴はすべて広大な海のどこかにあります。たぶんもう見つかりません。

【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】
[状態]:全身に極大のダメージ、胸部に大規模な裂傷と刺傷(回復中、但しその速度は大幅に低下)、ベルトの装飾品を破壊(それにより完全体への変身不可を含めた変身機能等に致命的な障害発生)、疲労(大)、強い電気を浴びたことによる身体強化、全身びしょ濡れ、全裸
[装備]:正真正銘なし
[道具]:支給品一式×4(ダグバ、ほむら、祈里(食料と水はほむらの方に)、霧彦)、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、スタンガン、ランダム支給品(ほむら1〜2(武器・衣類ではない)、祈里0〜1(衣類はない))
[思考]
基本:この状況を楽しむ。
0:プリキュアを探し、戦闘能力を得る。変身できないから誰かから上手く奪いたい。
1:モロトフには必ずお礼をする。勿論クウガにも。
2:リント達を探す。
3:強い変身能力者たちに期待
4:そういえば……どうして思い出の場所(グロンギ遺跡)が?
5:衣服が欲しいかもしれない。
[備考]
※参戦時期はクウガアルティメットフォームとの戦闘前です
※発火能力の威力は下がっています。少なくとも一撃で人間を焼き尽くすほどの威力はありません。空中から電撃を落とす能力も同様です。
※ベルトのバックル部を破壊されたため、中間体にしか変身できなくなりました。またランスとの激闘と電撃態の使い過ぎによりバックルの破損が進行しました。
 その為、一時的かどうかも含め変身不能な状態に陥っている可能性があります。また仮に変身出来ても突然変身が解除される可能性があります。
 同時に、中間体への変身であってもバックルの破損を進行させる状態となったので変身機能等の機能は低下する事になります。最悪変身不能に陥る可能性があります。
※スーパー1のエレキ光線によって、パワーが強化されました。完全体にはなれませんが、電撃体には変身可能です(但し、上述の通り、バックルの破損を加速度的に進行させることになります)。
※第二回放送のニードルのなぞなぞを全く理解していません(地図記号について知らず、グロンギの算法もリントと異なるため)。
※服を着ていません。

456 ◆gry038wOvE:2013/08/08(木) 23:30:29 ID:OvgD6G9w0
以上、投下終了です。
誰かタイトルを考えてください(汗)
一番良さそうなのを採用します。

457名無しさん:2013/08/08(木) 23:33:37 ID:.2l5XNw60
投下乙です!
だwwwぐwwwwばwwwwwwwww まさか彼がこんな所で全裸になるとはwwwwww
そりゃ海に放り込まれたら、そうなるかも……w いくらグロンギでもあんな状態になったら、死ぬかもしれないし。
ていうかプリキュア逃げてー!ww 特にベリーとサンシャイン!

タイトルはストレートに『全裸』はどうでしょうか?

458名無しさん:2013/08/09(金) 00:11:15 ID:ji.Mxq860
投下乙です。

な ん だ こ れ は ?

ダグバが生まれたままの姿で上陸しただけの話でどうしてここまでギャグ話になるのだろうか(多分普通ならそれこそ数行で済ませる程度の話、それどころか何の脈絡も無く上陸した所から話を始める)……しかもこれすら本編で説明されている罠。

タイトルはどうしましょうかね、敢えてEDの歌詞を改変し『君と過ごした思い出を海に残して、僕は、僕は全裸になる』、
後はOPの歌詞を改変し『No Wear No Pants 着ている物は何もない』
というのを考えましたがどうでしょう? 参考にしていただければ幸いです。

459名無しさん:2013/08/09(金) 01:45:27 ID:.iMmTprA0
投下乙
え、何この展開は(困惑)
弱体化だけならまだしも全裸とか株が急降下してるんだよなぁ…
こんな話を書くなんてやっぱホモなんすねぇ〜(言い掛かり)

460 ◆gry038wOvE:2013/08/09(金) 02:11:41 ID:mRHL/Zxk0
とりあえず苦情ありがとうございます。

>>458
No Wear No Pants 着ている物は何もない
今のところこれが自分の中で一番いいかな…

>>459
祈里のシャワーシーンも描いたんだからバイと呼ばなきゃ駄目ですよ

461名無しさん:2013/08/09(金) 09:37:01 ID:MObGW.h20
wikiで後から読む人のことを考えると、あえてシリアスを思わせるようなタイトルを設定しておいて、中を開けて見ればギャグ回じゃねーか!とギャップを楽しんでほしい想いがある。
ここ最近はずっとシリアス続きで、まさかこんな唐突に、しかもラスボスクラスのマーダーの話でウケを狙ってくるとは思うまい。だからこそタイトルで釣って転ばせたい。

ということで個人的には「凄まじき戦士」か「解放されしライジングドラゴン」はどうでしょう(迫真)

462名無しさん:2013/08/09(金) 15:06:33 ID:KSdNcC2w0
投下乙です

いい意味で裏切られたwww
シリアス続きがここにきてギャグとか、おまwww
タイトルは他の人に任せますがタイトルで釣って転ばせたいは同意w

463名無しさん:2013/08/09(金) 15:13:24 ID:48m5owKw0
なんだこのギャグ回はwwww

464名無しさん:2013/08/09(金) 19:28:59 ID:WsyGXBbkO
投下乙です。

トライアルにスピード勝負を挑むのは、ガドル調子に乗っちゃったな。
緑なら、カウンターできたかもしれないのに。



見た目は性犯罪者、頭脳は快楽殺人鬼。
その名は、全裸のダグバ!
タイトルは、『藻屑』とかどうでしょう?

465名無しさん:2013/08/09(金) 19:31:20 ID:/LkNGZuY0
かっこいいバトル物を書いた後にこんな斜め上に飛びまくった話を書く…
この作者の発想力は凄いと思いました(粉みかん)
タイトルは「進撃の悪魔」とか

466名無しさん:2013/08/09(金) 19:45:43 ID:wCp7PilUO
弱体化したラスボスが能力の代わりにギャグ補正、ザト・・・?シャンゼリオンなら問題ないな(すっとぼけ)

467 ◆gry038wOvE:2013/08/09(金) 20:34:54 ID:mRHL/Zxk0
とりあえず、二十四時間経ったら自分で収録しますから、その時に決定タイトルを収録してみます。

468 ◆gry038wOvE:2013/08/09(金) 23:33:44 ID:mRHL/Zxk0
投下します。

469金の心を持つ男 ◆gry038wOvE:2013/08/09(金) 23:34:12 ID:mRHL/Zxk0



 ここは風都の名を冠した巨大なタワーの名が在った、風都ではない街。そのタワーさえも今や消え、もはや風都の面影はほとんど無くなりつつあった。
 ────その街の何処かで立ち止まった仮面ライダースーパー1・沖一也は、少しの間だけ頭を動かした。
 さて、どうする。
 スーパー1は周囲から狙われたら対応しきれないほど無防備に立ち止まった姿をしっかり正して、決断する。

(……向かうべきは警察署だ。これ以上寄り道はできない……)

 スーパー1がこれから調べるべきは、当然警察署である。
 仮に其処に誰もいなかったとしても、沖はそこで誰かがいた痕跡を調べに行く必要があるのだ。
 これは合理性を考えるなら当然の判断であったが、やはりスーパー1は感情の面で少し割り切るのが厳しかった。
 しかし、やはりまず真っ先に向かうべきは、警察署である事んは間違いなかった。

 仮面ライダースーパー1は、風都タワーのあった場所に背を向ける。風都タワーを破壊するだけの力を持つ敵にスーパー1が対応できる方法は、今の彼にはまるで無いのだ。能力が封じられ、変身機能自体が怪しくなりつつある今、赤心少林拳だけでは心細い。今すべきは、警察署を第二の風都タワーにしないために走る事だ。
 もしかすれば、警察署には何人か、力なき人たちが残っているかもしれない。残っていないとしても、移動したならばそのための痕跡があるはずだ。あそこでは本来、主催に敵対心を向ける者たちで会議をする予定があったのだから、後から来る人のために何かを残している可能性が高い。警察署に真っ先に向かうのは堅実な判断のはずである。

 しかし、背を向けながらも、若干の後ろめたさがスーパー1の中にあった。
 風都タワーでも何かがあった事は間違いない。
 風都タワーは巨大な建物だが、それが倒壊するだけのエネルギーというのは相当である。
 仮に其処に誰かがいたとして、それだけのエネルギーを使い切ってまで、無意味にタワーを倒壊させる必要があるだろうか。おそらく、あの風都タワーの崩壊は戦闘の結果と考えるのが自然である。
 周囲への被害も半端なものではなく、そこに倒れている人がどれだけいるかも、今はわからない。
 だから、そこに背を向けて走っていく必要があるというのは、沖としても心が痛むものであった。

(……願わくは、一文字さんや、正義の魂を持つ人が風都タワーの近くにいる可能性だ)

 一文字隼人が風都タワーの方向から風都タワーに向かい、そこにいる人たちの救出にあたっている可能性や、プリキュアやシンケンジャーなどの他の戦士たちの活躍を、願いながら、スーパー1は遂に走り出す。
 風都タワー付近にいる人たちを助けるのは、この街エリアにいるほかの戦士たちが共通して出来る事。
 しかし、警察署に向かうのは、警察署に危険が起こっている事も、そこに誰かがいるかもしれない可能性がある事も知っている沖の役目だ。仮に一文字がこの街に来ていたとしても、彼は警察署での約束を知らない。
 だから、沖やいつき、美希など、数少ない人々にしか警察署に向かうなどという事はできないのである。



 スーパー1は走る。
 見知らぬ街を走る。
 わき目も振れず、無人の街を走り続ける。
 やはり、この街の姿は異常であった。──本来、どこまで活気づいてもおかしくない街が、この殺し合いのためにゴーストタウンと化している。
 いや、最初からそこに人など住んでいないのかもしれない。
 誰かがそこに住んだ事など、今の今までなかったかもしれない。
 だが、この街が壊され、それによってこの殺し合いに招かれた人々が傷つくのなら、模造の街であっても仮面ライダーは守らなければならない。
 それが仮面ライダーの使命だ。

 何百メートル、何キロ。それをスーパー1はヒトではあり得ないスピードで駆け抜けていく。だが、その中でも彼は見落としはしなかった。
 そう、周囲に感覚を研ぎ澄ませながら走ると言う、人間離れした行動により、彼には周囲全体──その全てが見えていた。
 ここにある全ての商店やビルの名前を言える程度には、彼の脳内は活動されていた。
 そして、その感覚が一つの見覚えのあるマシンを発見させた。

470金の心を持つ男 ◆gry038wOvE:2013/08/09(金) 23:34:27 ID:mRHL/Zxk0


「…………待て!」


 猛スピードで駆け抜ける己自身に、仮面ライダースーパー1は喝を入れるかのように叫んだ。あまりにも唐突な出来事だったので、彼は自分自身の身体をすぐに止める事はできなかった。
 己の身体にブレーキを踏み、緩い駆け足で先ほど「それ」があった場所へと戻る。
 スーパー1自身が自分の身体に制止を訴えかけたのか。
 そう、其処には────


「チェックマシン……!!」


 あまりにも豪快に、街中に設置されたチェックマシンがあった。
 先ほど美希やいつきと歩く事がなかったG−9沿岸の道端に、何度もスーパー1の身体を直してくれたチェックマシンの姿があったのである。
 それは、変身機能の衰退が起きていたスーパー1にとっては、神の恵みに等しいものだった。
 どうやら、殺し合いの主催者側は、ちゃんとチェックマシンを設備の一つとしてマップ内に設置していたのである。確かにチェックマシンは機械的で先進的なシステムではあったが、街中に置いてあれば少しは違和感のある代物だった。
 しかし、安心はできない。
 殺し合いの主催者がチェックマシンをよく模造した全く別のシステムを用意し、スーパー1に対する攻撃を行おうとしているのかもしれない。

 まず、スーパー1はチェックマシンの外観をよく調べた。
 元々が高い知能を持った科学者であるうえ、体内にあらゆるシステムが組み込まれている沖一也である。そのうえチェックマシンには愛着があり、少しでも外観が違おうものならば、彼はそれに気づく事ができるのだ。
 機械工学には当然詳しく、チェックマシンにプログラムされているデータを見直す事もできる。

(軽く見たところでは、これは本物のチェックマシンだ……)

 時間がないので、さっと必要な箇所だけ見てみたが、やはりチェックマシンは間違いなく沖がよく知るチェックマシンだった。
 チェックマシンは、多少苦労すれば秘密基地からも運び出せるシステムである。
 そのため、ここにあってもおかしくはない。だが、何故主催者はこんなにも丁寧にこのチェックマシンをここへ運び出したのか。

(……この殺し合いの主催者は妙に親切だな)

 彼は思う。
 仮面ライダースーパー1が主催者に協力的になる事も、殺し合いを積極的に行う事もない。本郷猛、一文字隼人、結城丈二……彼らもそうだ。仮面ライダーが敵に寝返る事は無いと沖は断言しよう。ここに来てからも、多くの良識ある人々や戦士たちを見てきた。ならば何故招かれたのだろうか。
 ……主催者の目的はそうした者の排除にはないのだ。排除のためでなく、もっと幅広い立場の者たちを集めているのではないか。

 いや、おそらく──

(『変身』する者の代表を集めているのか……? 主催者はそんな風にさえ見て取れる。その意図はわからないが……)

 本郷猛、一文字隼人、結城丈二に村雨良など、沖の知る者(村雨は知らないが)たちは全て仮面ライダーへの変身能力を持っている。
 それに加えて、いつき、アインハルト、ダグバなど、ここにいるほとんどの戦士が変身している。暗黒騎士キバやアクマロのような相手も、よもすれば変身後の姿である可能性だって否めない。
 孤門はそうではないようだが、彼自身が気づいていないだけで、何らかの力や素養を持っている可能性もあるだろう。
 そう、少なくとも一般人はいない。ごく普通の人間というのは、この場で一度もあった事がない。戦闘能力を有する者同士が殺し合いをしている。それだけは明らかだ。
 ならば、主催者側はむしろ、ここで沖が変身機能を取り戻す事を望んでいるのではないか? 沖が仮面ライダーでなくなる事を、主催者側は望んでいないから、こうしてチェックマシンを島内に配置しているのではないか?

471金の心を持つ男 ◆gry038wOvE:2013/08/09(金) 23:35:25 ID:mRHL/Zxk0

「……わかった。そうまで言うなら、俺は……やるしかない」

 主催者側にどんな目的があるのかはわからない。もしかすれば、変身させて戦う事で何か特別な儀式を遂行しているのかもしれない。ならば、仮面ライダースーパー1の変身能力を再び完全な物にするのは主催者の思惑通りの行動でしかない。
 だが、今は──彼らの思惑通り行動するしかないだろう。このままでは、仮面ライダースーパー1としての変身機能も解除され、悪魔たちと戦う手段がなくなってしまうではないか。それでは、力無き者たちを守る事さえ、できなくなってしまう。

 仮面ライダースーパー1は、意を決してチェックマシンへと入る。

(大丈夫か……?)

 修復光線が向いた時、少し心臓に悪いと思ったが、そのレーザーは何事もなくファイブハンドを修理し、変身機能を修復していく。どうやら、破壊光線などに切り替える姑息な手は使っていないらしい。
 だが、何故か、沖の身体に行われた「修理」はそれだけだった。全てを終えた電子音は何パーセントのメンテナンスを行ったかも告げず、修理を中止する。
 チェックマシンから出た仮面ライダースーパー1の身体は、殆どがボロボロのままであり、戦いの傷を残していた。
 レーザーシャワーによる全身のダメージの修復は行われなかったのである。

「……そうか、戦闘による傷は回復しない……そういう仕掛けか」

 仕掛けの中ではマシな方である。
 修復光線が攻撃をしてこないかヒヤヒヤしたものだが、そんな気配はなく、ファイブハンドはほぼ正常に修復されたようである。
 ただ、やはり変身機能とファイブハンドの修理だけというのは、物足りなかった。スーパー1の外見は傷ついており、到底チェックマシンが見逃すはずのないほどのダメージを受けている。
 しかし、それでも変身機能が回復するだけでも随分と心強いには違いなかった。

(普通なら、そう簡単に身体の傷は治らない。そんな苦痛を抱えている人もたくさんいる。……それに比べれば、俺なんてずっと良いか)

 ──この殺し合いで傷ついた人たちは、チェックマシンでは治らない。その事を沖は頭に入れる。
 そんな人たちを守るべき沖が、そんな高望みをしてどうするのか。


 彼は、チェックマシンから出るとまた、すぐに自分を制し、気合を入れ直す。
 先ほどから気づいていたが、チェックマシンの隣にはコンビニがあった。別にコンビニ感覚でメンテナンスを受けたわけではないが、実際それと同じようなものだったので、何となく沖は妙な気分になる。入れすぎた肩の力は少し抜けた。
 それで丁度良いくらいに意気高揚した仮面ライダースーパー1は走る準備をする。


 銀色の戦士は、再びこの街を走り出した。



【1日目/午後】
【G-9/街エリア(警察署側)】

【沖一也@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、強い決意、仮面ライダースーパー1に変身中
[装備]:不明
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3、首輪(祈里)
[思考]
基本:殺し合いを防ぎ、加頭を倒す
1:ダグバより先に警察署に向かい、そこにいる人たちを助ける。
2:その後、風都タワー跡地へ向かう。
3:本郷猛の遺志を継いで、仮面ライダーとして人類を護る。
4:後で孤門やアインハルトと警察署で落ち合い、情報交換会議をする。また首輪の解析も行う。
5:この命に代えてもいつきとアインハルトを守る。
6:先輩ライダーを捜す。一文字との合流の事も考えておく。
7:鎧の男(バラゴ)は許さない。だが生存しているのか…?
8:仮面ライダーZXか…
9:ダークプリキュアについてはいつきに任せる。
[備考]
※参戦時期は第1部最終話(3巻終了後)終了直後です。
※一文字からBADANや村雨についての説明を簡単に聞きました
※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました
※18時に市街地で一文字と合流する話になっています。
※ノーザが死んだ理由は本郷猛と相打ちになったかアクマロが裏切ったか、そのどちらかの可能性を推測しています。
※チェックマシンによるメンテナンスを長期間受けなかったため、ファイブハンド等の機能が使用不能になりました(付け替えること自体は可能ですが、各能力が全く使えません)
 今の所変身は出来ていますが、次に変身を解除すれば再変身ができなくなる可能性もあります。
 チェックマシンがこの殺し合いの会場にあるかは今のところ不明です。
※第二回放送のニードルのなぞなぞを解きました。そのため、警察署が危険であることを理解しています。

472金の心を持つ男 ◆gry038wOvE:2013/08/09(金) 23:35:39 ID:mRHL/Zxk0

【チェックマシン@仮面ライダーSPIRITS】
G−9エリアに配置。初出は「仮面ライダースーパー1」。
仮面ライダースーパー1がメンテナンスを行うための機械。スーパー1の身体を透視して異常を確かめるための八角形の装置で、故障した箇所やダメージを受けた部分をレーザービームやレーザーシャワーで修理する。
普段は谷モーターショップがある町の秘密基地に設置されているが、「新・仮面ライダーSPIRITS」では、山奥に運び込まれたので、移動も可能。
今回は、スーパー1の変身機能とファイブハンドの機能など、戦闘機能に関する修復は可能であるものの、ダメージの回復は不可能であるように制限されている。

473 ◆gry038wOvE:2013/08/09(金) 23:36:24 ID:mRHL/Zxk0
以上、投下終了です。
「仮面ライダースーパー1」は東映が毎週2話ずつ無料配信中なので、気が向いたら見てみてください。

474名無しさん:2013/08/09(金) 23:38:24 ID:WFrEYxSo0
投下乙です。
おお、まさかチェックマシンまで会場にあるとは。これでスーパー1も再び戦えるかな?
でも近くにはまだ危険な奴らがいるんだよね……

475名無しさん:2013/08/10(土) 00:23:12 ID:syiFX.b6O
投下乙
沖さんはなんとか戦闘能力取り戻したか…

ちなみに、沖の状態表のチェックマシン関係の注記は消していいのではないでしょうか
沖さんも既に機能低下修復されてるし

476名無しさん:2013/08/10(土) 11:43:28 ID:HB2QF5.I0
二作品の投下乙です
DGB兄貴なにやってんですか!?(ラスボスの威厳が)マズいですよ!
このタイミング、しかもダグバでギャグ回とはたまげたなぁ…

沖さんは能力取り戻せてよかった
さすがに傷の回復までできたら贔屓になっちゃうか

477名無しさん:2013/08/10(土) 15:51:24 ID:3K6H7S3.0
投下乙です

これは沖さんにとってはありがたい
だが強マーダーはまだまだ残ってるからなあ

478 ◆gry038wOvE:2013/08/10(土) 23:42:40 ID:Auy9nON.0
>>475
ありがとうございます。
wki収録時に修正しておきます。

479名無しさん:2013/08/11(日) 05:34:43 ID:4bnGa.zI0
死者スレの溝呂木の扱いワロタw

480名無しさん:2013/08/14(水) 04:55:38 ID:5ohcqARQ0
今生きてるマーダーじゃドウコク大将が一番強いのかな?

481名無しさん:2013/08/14(水) 16:07:40 ID:Vhn6l.mQO
他が現状ダメージ負ってたり本調子じゃなかったりで相対的にはそうなるんだろうけど、いかんせん本気で戦ったこと一度もないから実感はないなw

482名無しさん:2013/08/14(水) 16:58:59 ID:Z9jLEC8E0
ここまではキルスコア高い連中はことごとく死んでるな
でもマーダーやその候補だけは無駄にたくさんいる…

483名無しさん:2013/08/14(水) 19:21:23 ID:1ucZWCC60
ヤバい奴が未だに多いんだがそれでもあかねが気になる
色んなフラグ立ってるし

484名無しさん:2013/08/15(木) 00:45:08 ID:m1XW/AQkO
投下乙です。

コンビニの横にチェックマシンが鎮座してると、なんか自販機で10秒チャージする感覚w

485名無しさん:2013/08/16(金) 10:21:40 ID:eEmBeQYc0
予約来てたな
その場面か

486 ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 02:14:04 ID:0jYmc6CU0
予約パートを仮投下しました。

予約キャラ:佐倉杏子、左翔太郎、血祭ドウコク
タイトル:『赤く熱い鼓動』
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/15067/1319122806/169-203

意見を貰えると助かります。

487名無しさん:2013/08/19(月) 05:43:55 ID:LTZP4EKw0
仮投下乙です
特に問題は無いと思いますよ

488 ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:40:44 ID:0jYmc6CU0
それじゃあ本投下してみます。

489赤く熱い鼓動(前編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:41:40 ID:0jYmc6CU0

「……寄せ集めが二人。この俺に勝てると思ってるのか?」

 血祭ドウコクは、眼前の仮面ライダーダブルとウルトラマンネクサスへと言い放った。

「だから三人だって言ってんだろ!! ……ったく」

 二人しかいないように見えるが、仮面ライダーダブルは左翔太郎とフィリップの二人の意識を内在する戦士である。一方のウルトラマンネクサスは佐倉杏子が変身しており、彼女自身も、ダブルの登場にはまだ驚愕しているようであった。
 だが、ドウコクを倒す仲間としては、やはりダブルの存在は心強い。心強い一方で、折角逃げたのだから逃げ切ってほしいという複雑な心境でもあった。ここに来てしまった以上、引き返せというのもナンセンスな話だが。

「どうするか、フィリップ。逃げ場は完全になくなっちまったみたいだぜ」
『どうするもこうするも……これで倒す以外の選択肢、あるかい?』

 フィリップは呆れたように、しかし頬を浮かしながら答えた。
 翔太郎が無茶をする事にフィリップは慣れていた。

「そうだな、それが唯一にして……」
『そう、完璧な答えだね』
「『ハァッ!!』」

 仮面ライダーダブル・ルナトリガーは声を合わせ、再び何発もの弾丸をドウコクに向けて放つ。
 一発一発が不思議な軌道を描き、ドウコクの身体の表面で爆ぜる。ドウコクはそれを全て全身で受ける。
 避ける隙がなかったわけではない。避ける“意味”がなかったのだ。
 その弾丸を受けながらも、ドウコクは平然としながら前進する。走るような素振りは見せず、威風堂々、全身を揺らしながらゆっくりと歩いている。
 そのあまりの豪快さと身体の硬さに、やはり強敵の貫禄を感じ、ダブルは息を飲んだ。

(……ただ、その完璧な答えを通用させるには、少し難しい相手かもな)

 二人は鳴海壮吉の死から数えて三年戦い続けたとはいえ、翔太郎はまだまだハーフボイルドだ。
 しかし、目の前の敵は違う。どれだけの時を戦い続けているのかわからない。生まれた時から戦ってきたかのようにさえ見える。──果たして、日常生活というものを経験した事がある相手だろうか?
 昼夜を問わず依頼人のために働く体力のいる仕事・探偵を選んだ翔太郎も、所詮は人間のスペシャリスト並みの体力でしかなく、それを仮面ライダーとしての戦闘力と戦闘経験で補っているに過ぎない。


 ──だが、ダブルに向かって駆けてくる、このドウコクなる者は、そんな程度の力ではない。


 ヒトですらなく、ヒトらしい心さえ持たない外道衆。しかも、その総大将だ。縛る力の存在がその所以とはいえ、単純な戦闘力においても外道衆では最強と言える。これまで仮面ライダーダブルが戦ってきた相手は殆ど人間が変身した敵であったが、それらとはまた違った次元の敵であった。
 それが歩いてくるとなれば、それはやはり────恐怖を増幅させる能力の持ち主であるテラー・ドーパントの時に匹敵する恐怖が翔太郎の中にあったかもしれない。
 それでも、仮面ライダーである以上、ダブルは当然それに立ち向かわなければならなかった。

 その意思をより強くするため、再びメモリを変える。
 このまま遠距離攻撃をしていても、おそらくは何も効かないままに距離を詰められる。それより前にメモリをチェンジせねばなるまい。
 まず、防御の力も引き出しておいた方がいいだろうか。

 取り出したのはメタルメモリだった。

──Metal !!──

──Lunna × Metal !!──

490赤く熱い鼓動(前編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:42:00 ID:0jYmc6CU0

 ルナメタルへとハーフチェンジしたダブルは、メタルシャフトの先端を鞭のように伸ばし、ドウコクの身体へと届く。この攻撃はこの殺し合いに来て以来、誰にも使った事はない。つまり、ドウコクもこの戦い方を知らない。
 それが一瞬の翻弄へと繋がる。
 イレギュラーな攻撃に、ドウコクは一瞬対応に困ったようだが、対応はごくごく簡単な話──右手の剣を振るい、それを身体の手前に翳して攻撃を弾く。降竜蓋世刀の刃渡りは微かに少なく、それを受け切る角度としてはやや物足りないものだったが、仮に身体にメタルシャフトが届いたとして、小さな火花を散らす程度だ。ドウコクには効かない。

「ハァッ!」

 そんな攻撃の隙間に、近くにいたネクサスは高く跳び、ドウコクの頭を目がけて足を突き出しての落下を開始していた。ネクサスは、遠距離戦以上に肉弾戦を一つの武器としている。アンファンスキックである。
 ネクサスの攻撃に気づいたダブルが、メタルシャフトを引っ込め、ネクサスの身体にメタルシャフトが当たらないようにする。
 直後、ネクサスのキックは確かにドウコクの頭に命中した。それはある程度ドウコクに効いたようで、ドウコクの身体は自然と数歩後ろに下がった。

「ああ……?」

 だが、大きなダメージには至らなかった。むしろ、着地したネクサスの身体こそ、攻撃を受けた直後のドウコク以上に隙がある存在だったがゆえ、降竜蓋世刀がネクサスの身体を横凪に襲う。

「デュアッ!」

 辛うじてネクサスは身を翻す。それを避けたつもりだったが、胸元に微かに刃が命中した。
 胸元から小さな火花が散り、ネクサスの目が反射的にそちらに向いた。この火花は、ヒトならば真っ赤で膨大な血液だっただろう。避けきったつもりだったのに攻撃が届いていた。そのため、ダメージの程度がわからなかったのである。身体にどんな痕ができてしまったか──その確認のようなものを、本能が求めた結果かもしれない。
 しかし、そうして自分の傷跡を見た瞬間、更にドウコクの左拳がネクサスの頭部へと放たれる。
 これは避ける事さえもできない。見事に命中し、ネクサスは下半身が前に向きながらも上半身が殴られた方向に捻られる形になった。
 そこからドウコクは再び、降竜蓋世刀で左下から右上へと豪快に斬り捨てる。それは具体的にネクサスの身体の何処を狙ったわけでもない。ただ、その斬撃がどのくらい派手にネクサスの身体を仕留めてくれるかという楽しみがドウコクの中にあった。

「調子に乗るなよ?」

 大雑把な攻撃でありながら、効果は絶大だ。
 ネクサスの腹部から胸にかけて、今度こそ巨大な傷が残る。
 黒く焦げ、抉られたような傷が、アンファンスの銀色の身体では非常に目立つ。これこそ、ヒトならば骨まで見える大怪我……相当な致命傷だろう。

「デュァァァァァ……!」

 その呻き声は、痛みを訴えながらも堪えようという努めが見られた。
 ネクサスは地面に膝をついて、胸を抑える。
 二度目の変身とはいえ、初めて使う力には違いないのだ。突然その力を与えられ、まだ使い勝手に苦しんでいる杏子である。
 だが、ネクサスは顔をあげ、ドウコクを見上げる。
 距離、ゼロ。
 降竜蓋世刀は、真上からナタでも突き刺すかのように振り下ろされる。しかし、それに気づいたネクサスは、己の力の限りを尽くし、すんでのところで真横に転がって回避する事に成功した。

「フィリップ、俺達もチャンスだ……!」
『ああ……!』

 次の瞬間、ダブルとドウコクの間にいたネクサスが消えた事で、ダブルにも攻撃の隙が出来た。二人が攻防を行っているうちにダブルはサイクロンメタルへとハーフチェンジしており、メタルシャフトから旋風が放たれる。何度も何度もメタルシャフトを回転させながら、風を巻いた一撃がドウコクへとぶち当たる。
 しかし、俊敏であるように見えて愚鈍なその風は、あっさりと見切られ、降竜蓋世刀が跳ね返した。

「弱ぇな」

491赤く熱い鼓動(前編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:42:15 ID:0jYmc6CU0

 ドウコクが呟く。
 やはり、弱い。手ごたえがない。
 シンケンジャーの方がよほど戦い慣れをしていただろうか。そんな思いが巡る。
 モヂカラを持つ者たちが世襲していくシンケンジャーは日々の修行を欠かさず、シンケンレッドなどは非常に長い期間戦ってきた。
 だが、彼らはどうか。モヂカラも持たず、戦い慣れもない。多少は慣れているとは言っても、せいぜい戦っていた期間はダブルが四〜五年、ネクサスに至っては一年程度に見える。それはドウコクの中では戦い慣れとは呼ばれない。
 そんな敵に、人の一生より長い期間を戦い続けたドウコクが負けるわけがないではないか。……しかし、もはや手ごたえなど、ドウコクは求めていなかった。

「ハァッ!!」

 不意に、真横からドウコクに向かって、鋭い刃が向けられる。それは剣の形をしていない。ネクサスの腕の側部を覆うアームドネクサス──そのエルボーカッターであった。
 アームドネクサスは低い位置からエルボーカッターを使い、ドウコクの首筋を狙う。
 おそらく身体構造は同じ。ならば、急所も同じだと考えたのだろう。
 だが、降竜蓋世刀はそれを平然と防ぐ。今度は刃渡りも角度もドンピシャである。ドウコクの身体には刃が当たる事さえもなかった。
 これだけの姿になりながらも、余程の勇気をもっての一撃と見える。

「グァァァァァァッッ!!!」

 ドウコクは咆哮する。
 それは身体の痛みから来るものでも何でもない。ドウコクの攻撃の一つであった。
 咆哮は衝撃波となって、ネクサスの身体を遠く吹き飛ばす。ある程度の距離をキープしていたはずのダブルでさえ、左足が下がり、両手を体の前で組み耐えているほどである。
 再び、近距離にあったはずのネクサスとドウコクの間が広まった。
 ネクサスは後方に倒れ、本人の意思を無視して衝撃に転げた。


 その様子を見て、ダブルが呟く。

「……クソッ。なんて奴だ」

 てっきり近距離攻撃のみを武器とするのかと思っていたが、衝撃波を操るなど、もはや反則だろう。ダブルほど多彩ではないものの、ダブルが持つ全ての姿の力を超える圧倒的な力をドウコクは持っている。
 近距離の斬撃。遠距離の咆哮。
 かなり難しいところだ。翔太郎は考えていたが……

『……翔太郎。さっきから気になってるんだけど』

 不意にフィリップが突然に口を挟んだ。

「おい、なんだフィリップ。まさかこんな時に桜餡子について調べたいとかいうんじゃねえだろうな」
『それもいいかもね。……だけど、翔太郎は杏子ちゃんの姿に疑問に思わないのかい?』

 ──疑問。
 一口にそう言われても、翔太郎には、思い当たる節が多すぎて一体、どの疑問なのかわからない。
 だいたい、戦闘中には仮にどんな疑問が出たとしても、それは全てフィリップに任せる方針だった。この身体が翔太郎のものである以上、ダブルの今の戦いは翔太郎の命がかかった戦いでもあるのだ。

「なんの疑問だよオイ。いろいろありすぎてわかんねーよ」
『あの銀色の巨人の姿、前に戦った時は確か、別の色になってガドルたちを圧倒した……』
「ああ、そうだな」
『じゃあ、今の彼女の姿を見てごらんよ』

 ダブルはネクサスの方へと目を移す。
 確かに、考えてみれば、以前姫矢が変身するウルトラマンネクサスと共闘した際、ネクサスは肩に装甲を拵え、全く別の体色の姿へと変わった。
 赤を基調とするボディラインへと変化した事はよく覚えている。ヒートメタルとは配色こそ異なるものの、基調となる二つのカラーは同じだったはずだ。

「今の杏子は……全身銀色だ」
『そう。本当は別の色に変身する力があるはずなんだ』
「……そうか、俺達のハーフチェンジみたいに……」
『ああ。おそらくそれは、あの戦士の力を引き出す鍵なんだ。でも、杏子ちゃんはそれに気づいてない』
「……なんだって?」

492赤く熱い鼓動(前編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:42:30 ID:0jYmc6CU0

 そう、以前フィリップが言ったとおり、あの力が引き継がれていくものだとすれば、彼女が力を引き継いだのはつい数時間前。まだ彼女が使い方を知らない可能性だってあるはずだ。
 いや、可能性なんかじゃない。ほぼ確実にそうだろう。先ほどから、ネクサスは非常に単調な攻撃しかできていない。魔法少女の姿の方がトリッキーで様々な攻撃ができていた。
 それは彼女がネクサスの力の使い方をよく知らない所為もあろう。

「そうか。ならとにかく、それを杏子に教えてやらねえと……」

 ……と、翔太郎が言った瞬間である。





「……何を教えるって?」





 ドウコクはダブルの近距離に迫ってきていた。
 翔太郎とフィリップは普段、会話しながらも周囲に気を配るくらいはできた。だが、ドウコクの咆哮が耳鳴りを起こさせており、何より会話のために聴力をフル稼働させる必要があったのだ。
 そのため、視覚に気を配るのを一瞬でも忘れさせていたのである。その一瞬が、ドウコクを近距離まで歩かせていた。ドウコクのマスクは喜怒哀楽の怒の表情のみを拵えたような恐ろしい外形である。
 やはり、近距離で見れば鼓動が高鳴り、翔太郎の中で一瞬、時が止まるほど恐怖に満ちていた。

「くそっ!!」

 ドウコクは降竜蓋世刀を振り下ろす。幸いにもサイクロンメタルの姿をしていたがゆえに、左半身に力を込めてそれを防いだ。硬質化したメタルの左半身は敵の攻撃を簡単には受けないほど硬い筋肉に覆われている。確かに、多少は衝撃を感じたものの、防御に関してはサイクロンメタルは卓越している。
 ダブルは左手で攻撃を防ぎつつ、右手でサイクロンメモリをヒートメモリに入れ替えようとしていた。

 しかし──

「しゃらくせえ!」
「何っ!?」

 そんな右手とベルトのやり取りは、ドウコクの蹴りによって防がれる。
 ドウコクの蹴りはダブルの右手へと命中し、その手に持っていたメモリを弾いた。腹部にこの蹴りがぶち当たれば、かなり膨大なダメージを与えたかもしれないが、ドウコクの目的はダメージを与える事ではない。
 ただ、ダブルの小細工を防ぎたかっただけである。

「あっ……くそっ……ヒートメモリが……!!」

 ヒートメモリが宙を舞い、ダブルからは数メートル離れた地面にぽとりと落ち、少し跳ねた後、動かなくなった。たかが数メートルの距離とはいえ、そこまでの間にはドウコクがいる。こうしてハーフチェンジを防がれるのでは、ルナメモリも使えない。
 ヒートメモリはソウルサイドのメモリだ。仮面ライダーダブルに変身した事でこちら側に実体化していたメモリなので、おそらく壊されない限り、変身を解けばフィリップの元へと帰るだろう。しかし、今はそんな暇がない。変身を解くなど自殺行為だろう。
 ドウコクには特に有効であるヒートメモリがダブルの手を離れてしまったのは痛手であった。
 それに、現状変身しているサイクロンメタルというのは、ダブルが持つ九つの形態の中でも、二つのメモリの相性が特に悪い最悪の組み合わせなのである。戦えない事もないが、使用はだいたいの場合一瞬の翻弄に終るのである。



 ドウコクは、サイクロンの側からメタルの側を斬りつけるように横凪ぎに刀を振るう。

「ぐああああああっっ!!!」

493赤く熱い鼓動(前編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:42:45 ID:0jYmc6CU0

 ダブルの身体にもまた、深い傷跡が刻み込まれた。
 防御力が高いメタルの身体を持ちながらも、やはりドウコクの魂のこもった一撃は違う。真の闘士はドウコクであった。
 同じ闘士であっても、彼は数百年来の闘士なのである。

『大丈夫かい!? 翔太郎!』

 痛む翔太郎の身体の身を、フィリップが案じる。
 そのフィリップの弱弱しい心配の声を聞き、ドウコクはニヤリと笑った。

「一人の体に二人の頭。煩わしいだけだと思ったが……最高じゃねえか、一人で二人分の悲鳴を挙げてくれるんだろ?」

 そう、もう一人の人格はこの状況下では戦えないらしい。ダブルに変身して戦っている限り、彼はもう片方の男が死ぬのを見続けるに違いないのである。
 前々から翔太郎もドウコクを悪趣味だとは思っていたが、尚更それが憎く感じる。彼に対する反発心は充分だった。
 ともかく、もとより死ぬ予定はないとはいえ、死ねない理由は更にもう一つ出来たというところだろうか。自分が死んでフィリップが悲鳴をあげるのなら、それは相棒として事前に食い止めていくべき話だろう。

「違うね……そんな悲鳴をあげるのはお前の方さ……」

 ダブルは、ドウコクの真後ろを見てそう言う。
 立ち上がったネクサスが、ドウコクの両肩を後ろから掴み、自分の方へと寄せた。ダブルには、ネクサスがドウコクに向かって駆けてくるのが見えていたのである。
 次の瞬間、ドウコクの胸へとネクサスのアンファンスパンチが繰り出される。

「……バカな野郎だ」

 しかし、それは予測済だったのだろうか。それと同時にネクサスの体を剣が凪ぐ。タイミングは見事なほどに合っていた。ネクサス自体が、半ば捨て身で向かってきた所為もある。

「危険が迫ってるのをわざわざ教えてくれてありがとよ……!」
「くそっ……!」

 翔太郎の台詞こそが、ドウコクに直前でもネクサスの攻撃を予測させる原因になったのだ。

(ちくしょう……すまねえ、杏子)

 我ながら余計な事を言った、迂闊だった、と後悔し、杏子に申し訳なく思う。
 戦略的に無意味な恰好付けにしかならなかったのだ。いつもの癖で言ってしまったが、そんな余裕のある相手ではなかったらしい。

「グァァァッ!!」

 直後に聞こえるのはネクサスの雄叫び。
 再び体に深い傷を負ったネクサスは遂に膝をつき、肩で息をしていた。肩で息をする姿というのがこれほどまでにわかりやすいものだとは誰も思わないだろう。呼吸をしているかもわからないネクサスだったが、明らかにゼェゼェと息をしているようである。

 ピコン…ピコン…ピコン…ピコン…ピコン……

 そして、そうして大きく息を吸い、大きく吐いていると、奇妙な音が鳴り始めた。
 まるでタイマーの点滅のような変な音であった。
 どこから鳴っているのかと思えば、それはネクサスの胸にあるY字型のエナジーコアからである。

「おい、杏子。なんかヤバいみたいだぜ……!」

 ザルバが言う。
 ネクサスは己の胸元で点滅を始めた光にぎょっとしたように目をやった。
 エネルギーの限界とダメージの蓄積が来ている事の証明である。それを教わったわけではないが、自分の状態が限界に近いのは理解していたため、何となくそれがウルトラマンとしての限界を表しているのだろうと理解できた。
 ウルトラマンネクサスの活動時間に特に制限はない。メタフィールドを展開した場合、メタフィールド内での活動時間は3分に限られるが、この場所では枷となるものはなかった。しかし、エネルギーの消費が激しい場合や、身体的に膨大なダメージを受けた場合の話は別である。

494赤く熱い鼓動(前編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:43:00 ID:0jYmc6CU0


 続けて、ドウコクは先ほど向いていた方向へと向き直り、ダブルの体へと斬りかかる。
 頭の上で真一文字に斬りかかろうと言う姿勢だった。

「その身体……真ん中から真っ二つに引き裂きたくなるのが情って奴だよなァ」

 笑ったような声とともに、サイクロンとメタルの狭間の線をなぞるように、ドウコクの剣はダブルの身体を斬る。稲妻か業火か、ダブルの身体に光が迸る。
 無論、ここから翔太郎の悲鳴が聞こえないはずがなかった。

「ぐあああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!」
『翔太郎ぉぉぉぉぉぉぉッッッ!!!』

 ぷすぷすと身体の狭間から仄暗い色の煙が昇る。
 ドウコクの目的とする悲鳴の連鎖は、まだまだ終わらない。これだけ敵が巨大なダメージを負っている今、その隙は一秒前より確かに大きいものとなる。
 痛みに倒れるダブルの身体に、二度三度とドウコクの刃は通る。
 火花はあまりにも巨大だ。
 翔太郎とフィリップの悲鳴は止まない。

 ドウコクは笑いもせず、極めて冷徹にその悲鳴を耳に通した。高笑いなどはしない。冷徹に追い詰めながらも、当人はその慟哭の中に悦びを感じている。
 翔太郎が憧れるハードボイルドから優しさを消せば、これと似ているかもしれない。無論、優しさのないハードボイルドはハードボイルドに非ず……ハードボイルドの定義からも外れる。翔太郎は、この宿敵を認めないだろう。
 数度の攻撃の後、ドウコクはその場に倒れる二人の戦士に攻撃を加えるのをやめた。

「……ぐっ! ………………あがっ………」

 ダブルは立ち上がろうとするも、全身の力が出し切れず、そのまま地面に身体を打ちつける。ドウコクは憮然と立っていた。
 ネクサスは立ち上がり、数歩よろよろと歩いて近づこうとして、また倒れた。ドウコクはそれを冷淡な目で見つめていた。

「さあ、どっちが先に死ぬ? 先に死にてえのは、どっちだ?」

 しかし、冷淡に見つめながらも、ドウコクは敵を散々痛めつける快楽の中にあった。
 これほどまでに長い時間を殺しながら楽しむ悦びなど、これまであっただろうか?
 ドウコクをはじめとする外道衆は、三途の川の水を身体に残さなければ、水切れを起こして三途の川へと帰らなければならない宿命を持っていた。
 そう、ついこの間まではドウコクは少しでも人間界に出れば、すぐに水切れを起こしてしまう厄介な体質だったはずだ。

 しかし、今は違う。
 薄皮太夫の身体をその身に宿したドウコクは、完全無欠の外道衆と成った。人間界でどこまでも暴れられる。敵を殺し、人の苦しみを聞く事で三途の川の水も増える。
 いや、それだけではない。
 三途の川を増水させて人間界に向かわせるよりも、ドウコクはこの戦いを愉しんでいた。
 今は、怒りを感じれば何処まででも敵を殺せるのだ。

「……いや、もう声も出せねえか」

 ダブルは小さな声を上げたが、それでもドウコクには聞こえなかった。ネクサスの言葉はドウコクには伝わらないため、ドウコクが向かったのはそちらになるのは必然だ。
 ネクサスは自分のいる場所から遠ざかっていくドウコクに近づこうとしたが、無意味に少し這うだけだった。
 エナジーコアはだんだんと点滅を早めている。
 もうすぐネクサスの変身が解けてしまいそうであった。耳触りなアラームは、更に音を加速させ、ネクサスの胸元で鳴りつづける。

「おらっ!!」

 ドウコクはダブルのメタルシャフトを取り上げ、ダブルの身体を蹴飛ばし、仰向けの体形に転がす。翔太郎の小さなうめき声がそこから漏れたが、ドウコクはそれに耳も貸さない。
 ドウコクはダブルの身体を両足でまたぐようにして立った。
 次の瞬間、垂直に突き立てられたメタルシャフトは、何度も何度もダブルの胸を、腹を、叩きつけるように振り下ろされる。身体を潰し、突き破るような一撃が真上からダブルの身体へと何度も繰り出された。
 ドウコクとしては、さながら餅つきでもするような感覚だっただろうか。

495赤く熱い鼓動(前編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:43:14 ID:0jYmc6CU0
「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッ!!!!!!!!!」

 翔太郎の身体の皮膚を、骨を、内臓を、突き破る気なのだろうか。
 ドウコクは、精一杯の力と体重を込め、メタルシャフトでダブルの身体を突く。突くたびに、地震でも起きたかのような小さな轟音がネクサスの耳にまで入ってきた。

「うらっ!! おらっ!!」
「ぐあああああああああああああああああああああああああああああッッ………!!」
「でかい声が出せるじゃねえか……!」

 先ほど、小さなうめき声しか出せなかったダブルとは思えないほど、その声は大きかった。どんなに口を閉ざそうとしても、痛覚がある限り絶対にその声を止ませる事はなかったかもしれない。あるいは、声が枯れない限り……永遠に。
 ドウコクはもはや、先ほどの問いの答えを知る気さえなかったかもしれない。
 ダブルの悲鳴は、三途の川へとどれほど響くだろう。

『やめろ……やめてくれ!!』

 魂のみが宿っているフィリップは、その時、翔太郎の叫び声と重ねながら、彼より大きい声で必死に訴えかけた。
 相棒を失いかけているフィリップの声は涙さえ混じっているように聞こえる。結局、ダブルの状態では彼が泣いているか否かなど、わかるはずもないが。

『やめてくれえええええええええッッッ!!!!』

 ドウコクの身体がメタルシャフトを振り下ろす直前に、フィリップは絶叫した。
 翔太郎が大声で叫ぶのが、一瞬でも止んだ隙に、ドウコクの耳に入るよう訴えたかったのだ。
 ドウコクは、その声を合図に、メタルシャフトを振り下ろすのを突然やめる。メタルシャフトがダブルの身体の上で少し跳ねた。

「……やめろ? それはどういう意味だろうな」

 実際、攻撃を止めてはいるものの、すぐにでもまた攻撃を仕掛けようと言う姿だった。
 一時的に止めただけで、フィリップの言葉を素直に聞き入れたわけではないらしい。
 かえって嫌な予感がしたので、二人はその静寂に冷や汗を流す。

「それは『殺すならあっちの小娘にしろ』って意味か、それとも『今すぐコイツを殺して息の根を止めてくれ』って意味か……二つに一つしかねえだろ? ……決めてみろよ。はっきり叫べば、俺はその通りにしてやる」

 ドウコクの提案──それは翔太郎たちにとって、最悪の二択だった。予想はしていたが、やはりドウコクの残虐性は翔太郎たちの次元からは遠く離れたものである。
 どちらであっても、ドウコクにとっては嬉しい言葉に違いない。
 ドウコクは殺し合いに乗っているが、無暗に殺しまくるというより、その悲鳴を聞き、人間の底の浅さに満足したかったのである。

(さあ、どうする……。さっさと見せろよ、人間の本性って奴を……)

 ドウコクがこれまで戦ってきたシンケンジャーは、自分の命を他人のために平然と捨てる連中だった。他人のために道衆と殺し合い、自分たちが命を落とす可能性があるとしても、それを頭の片隅にさえ入れず、誰かを守ろうなどと考える愚か者だった。
 ドウコクの仲間である骨のシタリはその姿を「外道衆よりも命を粗末にしている」と形容する事になったが、それは事実だろうとドウコクも思っていた。
 ドウコクたち外道衆は仲間の死にさえ冷淡で、感情らしいものは欠如していると言えるかもしれない。元々人であった太夫などを除けば、ドウコクのように真正の外道となる者が大半だ。
 しかし、どういうわけかシンケンジャーは、人の死にいちいち反応する。自分の命より他人の命を大切にする不可解な存在だった。
 それがドウコクを苛立たせる。

 他人の命は自分の命を賭してでも助ける価値がある? ──そうじゃないはずだ。そんなはずがない。
 自分の命のために他人を捨てられる──それだけ大切な命を消し去ってこそ、ドウコクは満足なのだ。
 その人間にとって何より尊い命を奪ってこそ、悲鳴は上がり、不幸は生まれる。
 だが、シンケンジャーたちはどれだけ痛めつけても何故か、絶対に他人を捨てようとはしなかった。そんな人間を殺しても絶望などは生まれないし、幸せそうに……満足そうに、非生産的に死ぬだけだ。
 ここにはそんな人間が何人もいる。
 それが、ドウコクには許せないのだ。

496赤く熱い鼓動(前編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:43:42 ID:0jYmc6CU0
 ドウコクは認めない。
 それは絶対にありえないはずだ。ドウコクにだって命は大切なものだ。他人の命を犠牲にしてでも生きたい。
 本性はそうであるはずなのだ。
 それを確かめたい。そうであると信じているドウコクの思想を、絶対に塗り替えてはならない。

『翔太郎、僕は──』
「やめろ……フィリップ…………こんな奴に…………俺達は…………」

 ──俺達は負けない。
 そう言おうとした瞬間に、翔太郎の右胸をメタルシャフトが打つ。
 その一撃は、装甲の上からでも翔太郎の体の骨を折るほどではないだろうか。
 ドウコクは、とにかく何か口を挟む相手の妨害をしたかった。

「ぐあああああああああああああああああッッッ!!!」

 これでもそんな事が言えるか? と、まるでそんな事を言っているようだ。ドウコクは、彼が勝つ希望など無いというアピールをしている。
 それがまた、フィリップの迷いを強めさせる。実際、フィリップはいま一瞬、翔太郎に答えを乞おうとした。それは、彼が少しでも迷っている証だ。
 ここでドウコクが強いている答えは、時が経つにつれ重くなっていった。

「……答えが出ているみてえだな」

 しかし、その一方、ドウコクは彼は迷いなく、自分の意に沿った決断をしているだろうと思っていた。
 このフィリップという男は、ドウコクがどれだけダブルを痛めつけても痛みを感じてはいないようなのである。ならば、ここで悲鳴をあげる仲間を取り、ネクサスの死を望むに決まっているだろうと思っていた。
 ここで殺せというのは、相棒の苦痛を知り、安楽死を望んでいるという事だろうが、それはどちらかといえば可能性としては低い。
 他者を蹴落とし、自分の身を取るのが当然の局面だとドウコクは思っていただろう。

『…………』

 フィリップは、少し悩んだように黙った後、答えた。

『血祭ドウコク……すまないが、君の望む答えは、僕達からは出せないようだ』
「……何だと?」

 答えを出さない。それは即ち、苦しみから逃れる決断も、他人を蹴落とす決断も下さないという事。それは、ドウコクにとっては有りえない筈の決断だ。
 ドウコクの眉間に皺が寄る。

『……僕と翔太郎は、お前のような悪を討つ仮面ライダーだ! 僕たちは命を簡単には捨てないし、他人も犠牲にしない!』
「フィリップ……!」

 実はフィリップは一秒も悩まずにこの決断を下していたのだった。
 悩んでいるように見えたのは、少しでも翔太郎が痛めつけられる時間を伸ばそうと、悩んでいるフリをしていただけに過ぎない。
 苦しいが、フィリップは残念ながらそれしかできなかった。
 この決断は、翔太郎の意思でもあるだろうとフィリップにはわかる。これまで仮面ライダーとして戦ってきた彼が杏子を犠牲にして生き残るわけはない。
 たとえフィリップがその判断を望んだとしても、それを口に出したら、二人は永久に相棒でなくなるだろう。かといって、翔太郎を殺させる事もできない。
 二人は、二人で一人の仮面ライダーなのだ。
 どうあっても、犠牲は作らない。もし、犠牲が出来てしまう決断を選ぶ時があるとしても、今はその時ではないはずだ。

「……なるほど。てめえらも本当に不愉快な大馬鹿野郎だ……!!」

 目の前の敵もまた、シンケンジャーや姫矢と同じだった。
 彼らはこの状況でもまだ、命が助かるかもしれないとか、きっと何とかなるとか、そんな幻想を抱いているのだろうか。他人の命が自分の命より大事だと考えているのだろうか。だとすれば、それはまさしくドウコクを不愉快にさせる考え方だった。
 ドウコクはメタルシャフトを辺りに捨て、降竜蓋世刀を右手に握る。その刃を左手で一度なぞり、刃こぼれがないのを確かめる。
 強く、強く握った。
 まだチャンスはある。
 直前になればもっと巨大な悲鳴で喚き、「俺達じゃない、あいつを殺せ」と騒ぐはずに決まっている。
 ドウコクはそれを信じて、刀を真上に掲げる。
 次の瞬間、その刃はダブルの身体に向けて振り下ろされる事になった。





497赤く熱い鼓動(前編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:43:58 ID:0jYmc6CU0



 ウルトラマンネクサスは、這いつくばったまま右手を前に伸ばした。必死に地面を掴み、右手に力を込め、少しだけ前に進む。うつ伏せに倒れたネクサスは、己の身体にある僅かな力を前へ前へと少しずつ出すしかなかった。
 顔を上げて見てみれば、ドウコクは倒れた仮面ライダーダブルの身体に、何度も何度もメタルシャフトを振り下ろし、体を突いている。────それは、彼女の身体から数十メートル離れた位置の出来事だった。
 歩くよりも遅く這って、そこまで辿り着く筈がない。日を浴びたアスファルトは、ネクサスの身体を少しずつ焼いている。

「……オイ、あんたも……あんたの仲間も……ヤバいんじゃないか?」

 指に嵌められたザルバは、少し焦りを見せながら言った。
 ヤバい──そんな状況なのは、一目瞭然だろう。翔太郎の絶叫はここまで聞こえている。
 結局、ほとんど赤の他人で状況すらよく掴めていないザルバにはわからないだろうが、ネクサスはかなりの焦りと絶望を感じながら、必死に身体を前へと出しているのだ。
 自分が死んでしまうからではない。
 このままでは、何もできずに死んでしまうからだ。何かを成し遂げて死ねるならいい。でも、このままでは、何もできない。
 翔太郎を助けられない。
 これから幾つもの命を救って行けるかもしれない翔太郎が痛めつけられているのに、彼を助けられないのだ。
 せめて、その命くらいは助けたい。
 ネクサスの身体はボロボロだ。

 ピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコン……

 エナジーコアの点滅はだんだんと早くなる。
 このまま這っていては、やはりあそこへたどり着く前にネクサスとしての活動は停止されてしまうだろう。

(ちくしょう……なんで……なんで助けられないんだよ……)

 杏子は思った。
 自分が死ぬわけではないが、その瞬間、まるで自分が死ぬ瞬間のような感覚に陥る。景色の全てがスローモーションで無音に感じ始める。
 そして、全身の疲労のせいもあってか、走馬灯というものが流れ始めてきた。
 まるで自分自身が死んでしまったかのような、長い映画が始まる。

 本当は助けるつもりだったのに、崩壊させてしまった自分の家族。
 父を、母を、妹を、救うための行動が、逆に自分の家族の命を奪ったあの時のことも。

 殺し合いに乗るつもりで一緒に行動し、時に敵と戦った仲間。
 フェイトやユーノを騙すつもりだったのに、いつの間にか二人の死が胸を刺したあの時のことも。

 杏子が魔法少女となって間もない頃に出会った友達。
 別れた後で、巴マミの死を聞かされたあの時のことも。

 それから翔太郎を運んで、出会った同じくらいの年齢の少女。
 杏子を諭し、許してくれたせつなが死んだあの時のことも。

 己の罪と向き合い、敵と戦う事を誓ったあの放送の男。
 杏子が駆けつけた時にはその男は敵に倒され、灰となり消えてしまったあの時のことも。

 それから先、杏子と少しだけ会話を交わして、不思議な共感を抱いた男。
 この力を明け渡し、杏子たちを守ってくれた姫矢の死を知ったあの時のことも。

 全てが罪悪感を伴った悲しい記憶として思い出された。
 こういう時、普通ならば自分の人生を呪うだろうが、彼女は少し違った。

(なんで、あたしはいつも……こう人を巻き込んじまうんだ……)

498赤く熱い鼓動(前編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:44:18 ID:0jYmc6CU0
 杏子の家族は、きっと杏子が何も願わなければ死ななかった。
 マミは、杏子があのまま友達として傍に居続けていれば死ななかった。
 フェイトは、杏子が共闘を提案しなければ死ななかった。
 ユーノは、杏子が殺し合いに乗るために利用しなければ死ななかった。
 せつなは、杏子があの時逃げ出さなければ死ななかった。
 姫矢は、杏子が勝手に放送の男のもとへと駆けつけなければ死ななかった。
 そして、翔太郎は杏子がここでドウコクと戦おうとしなければ、こうして死の危険を受ける事もなかった。
 杏子の行動は常に裏目に出て、誰かを傷つけつけてしまう。
 自分の人生の理不尽ではなく、自分自身の存在の理不尽を呪った。自分の人生がどれほど荒んだ物なのかはいいのだ。ただ、自分が存在するだけで他人の人生が失われていく恐怖が増幅する。

(……なあ、神様…………たまには、あたしの願い通り、誰かを助けさせてくれよ……助けようとするたびに人が死ぬなら、償う事もできないじゃねえか……こんな酷い事ってあるのかよ……)

 誰かを助ける心が、世界に一度でも受け入れられた事があっただろうか。
 全て裏目に出て、杏子や周りを不幸にしてしまう。
 誰かを助けたいと思ってしまう心が罪なら、その罪を償う方法など最初からあるはずもない。誰かを助けようとするたびに誰かが死に、誰かが傷つく。
 誰かを救おうとする心が、必ずしも誰かを救う結果にたどり着くわけではないが、彼女の場合は状況を悪化させてしまうのだ。

(……やっぱり、あたしがあの兄ちゃんを助けようっていうのが間違いなのかもな)

 ────そう思った瞬間、ネクサスは這うのをやめた。全身の力が抜けたのである。月並みな言い方なら、一本の糸が切れたような瞬間だった。
 翔太郎には申し訳ないが、このまま助けようとする事こそが、また新しい罪を生む。
 杏子にできるのは、そうならないために「助けない」事であるように思えたのだ。
 そうすれば、きっとドウコクは翔太郎を殺した後、杏子を殺す。
 それでいいじゃないか。
 それで……全ては丸く収まるじゃないか。
 それで、あたしも楽になるじゃないか。

 エナジーコアが点滅を早めていく。今にも消えそうなほどに、その光は闇へと近づいていく。光の力が弱まり、ネクサスとして変身できる力がだんだんと失われつつあった。
 このまま眠ってしまうのも、悪くないかもしれない。
 いや、悪くないというより、それが最良の判断なのかもしれない。










「……オイ、アンコ。何で向かうのをやめるんだ?」










 指輪が、杏子にそう言った。
 そういえば、ザルバを嵌めていたのを忘れかけていた。こいつにも謝らなければならないだろうか。ドウコクについでとして破壊させるかもしれないザルバに謝罪の言葉をかけたいところだったが、そんな気力さえわかなかった。
 もうこのまま、何も聞かず、何もせず、何も考えないのが丁度良いと思えたのだ。
 それこそ、何もかもが裏目に出る人間の最期に相応しいではないか。

「……諦めるのか? お前にもあの悲鳴が聞こえるんだろ? お前には戦う力があるんだぜ? それなら、あの悲鳴を止める事だってできるはずだ」

 ザルバはそう言う。
 確かに、どんなに聴覚をシャットダウンしようとしても、簡単に消せる感覚ではなかった。杏子の耳には、いまだはっきりと翔太郎の悲鳴が聞こえる。エナジーコアの点滅音や、ザルバの言葉とともに、ひたすら生々しく翔太郎の声が届いた。

499赤く熱い鼓動(前編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:44:35 ID:0jYmc6CU0
 だんだんとガラガラ声を交えているのは、声が枯れている証拠だろうか。
 それがまた、杏子の罪悪感を掻き立てる。
 お菓子でも食べて食欲を満たさなければ苛立ちで心がパンクしそうになる。

「……なあ、俺はあんたとはほとんど初対面だが、あんまり見ていられないんで、この際はっきり言わせてもらうぜ。──アンコ、お前は弱すぎる」

 どんな怒号が飛び込んでくるかと思えば、かなりバッサリと斬り捨てられた。
 怒号を期待していたせいもあってか、少し気が抜けてしまった。

(うるさい指輪だとは思ってたけど…………………やっぱり本当にうるさいな)

 杏子は苦笑する。
 このまま生きるのを諦めたというのに、ザルバはやたらと冷静だった。
 杏子が生きるのを諦めれば、ザルバも死んでしまう。だが、それにしてはザルバは冷静に杏子に語りかけていた。

「……でもな、どんなになっても、どんなに自分が弱くても、どんなに強い敵が相手でもな……誰かを救おうっていう意志がないと、誰も守れない。……俺はそんな強い意志で、自分より強い敵と戦った男を何人も知ってる。あいつらに比べて、今のあんたにはあの兄ちゃんを救う意志ってのが感じられないぜ」

 そこはやはり、冴島大河や冴島鋼牙など、あらゆる魔戒騎士──その最高位たる黄金騎士の相棒をやってきたザルバである。
 多くの戦士たちと出会い、ザルバは彼らがどうあってもホラーから人を守ろうとしている姿を見てきた。
 それに対して、こうしてすぐ諦めようとする杏子には、憤りも感じている。だが、それを口に出したところでどうにもならない。冷静に、なだめるようにそれを言う。

 そもそも、杏子は先ほどまで、ネクサスとして立派に誰かを救おうとして戦い、倒れてもなお這っていたではないか。あんなに必死で這って、誰かを助けようと進める彼女を、ザルバは応援したくなった。
 それを、何故諦めてしまうのか。それがザルバには理解できなかったのである。

(……確かに、助けようと思わなかったら、兄ちゃんは死んじまうだけかもしれない……)

 このまま放っておけば翔太郎は死ぬ。
 助けようとして死んでしまう事があるかもしれないが、仮に助けなかったとしても、翔太郎は死んでしまう。

「……まっ、まともに戦ったところで勝算はゼロだと思うがな。あのドウコクって奴、なかなか強い……鋼牙でも勝てるかどうかってところだ。だから戦うのはやめといたほうがいいな。助けてやるなら、それ以外の方法で助けるといい」

 実はザルバの知る鋼牙は、ここに来ている鋼牙より少し前の鋼牙である。
 本来、バラゴを倒した後のザルバならばバラゴの事など知る由もない。戦闘で破壊され、記憶を失って修復された新しいザルバなのだから。
 しかし、実際問題、ドウコクは十臓などと渡り合える剣の達人であり、場合によれば鋼牙とも充分に渡り合える相手に違いなかった。

(戦って勝つ以外……? 一緒に逃げるってのか?)

 そういえば、杏子は先ほどまで、ドウコクがどこまでも追ってくる相手であると思っていた。
 だから、戦うしかないと思っていたが、戦ったら確実に負ける。
 そもそも、逃げきれる可能性を切り捨ててはならなかったのではないか。
 戦って勝つ可能性なんかよりも、逃げ切る可能性の方が何倍も高いのではないか。
 杏子は考える。
 そうだ。確かに、戦って勝つ以外にも、逃げるという方法はある。
 だが、この距離があるし、たどり着けるだけの力もない。
 しかし、まずは立ち上がらなければならないだろう。
 どうする。
 立ち上がらないでこのまま倒れるか、あるいは、力を出し惜しみして這いつくばるか。
 立てるくらいの力があるかもしれないと考えて、全身の力を体に込めるか。
 そのまま走ろうとできるのか。

 すぐに答えは出た。

 全身の力を両腕に込める。
 起き上がろうと立ち上がる。

500赤く熱い鼓動(前編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:44:55 ID:0jYmc6CU0
 身体はふらふらだが、両腕に力がみなぎり、足にも力を送る。
 前にふらっと揺れたが、何とかネクサスは立ち上がった。
 エナジーコアが音を加速し、更なるエネルギーの消耗を示している。
 時間はない。

(──走れるか?)

 見れば、ネクサスの目の前で、ダブルに向けて剣が向けられ、振り下ろされようとしていた。ダブルは動けないようで、その攻撃に抵抗もできずに仰向けに倒れていた。
 やっぱり、ドウコクをあのまま放っておけない。
 ドウコクがダブルを殺すのを、ネクサスは止めなければならない。

(────いや、走るんだ!!)

 ネクサスは、身体の全エネルギーをかけて、走り出す。
 間に合うかはわからない。
 いや、間に合う確率は絶望的だ。この距離が空いていて、既にネクサスはよろよろと走るしかできない。ドウコクの腕はもうダブルに向けて振り下ろされようとしている。
 間に合え。
 間に合え……。
 必死に前へ前へと身体をふらつかせるように、手を振る事さえもできずにネクサスは走る。走るたびに、ネクサスは加速する。
 ゴールは近い。
 あの一撃をネクサスは防げるのか?
 それとも、防ぐ事もできず、ただ疲れたうえにドウコクとの距離を縮め、少し死期を早めて死んでしまうのか。


(……間に合え!!)





501赤く熱い鼓動(中編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:45:15 ID:0jYmc6CU0


 ──其処は、真っ白な空間であった。

『────どうして、力を貸してあげないの?』

 突然聞こえた彼女の声に、少女は驚いて顔を上げる。そこには覚えのある顔があった。
 しかし、彼女の問いに、少女は悲しい声を返す。少女には、彼女に返すべき言葉もない。
 少女は、かつて彼女と会った時とは考えられないほど無口に俯いていた。

『あなたの力があれば、彼女はあの人を助ける事ができるはずよ』

 そう、それは少女にもわかっている。
 わかっているけど、できないのだ。
 力を貸す事を、心のどこかがまだ拒否しているのだ。やらなければならないのはわかっているはずなのに、どうしてもできない。心が邪魔して、どうしても少女を突き動かす事ができなかった。
 迷い────そう、これは少女にとって最大の迷いだ。“彼女”にはもう悪い力はなく、近づくのを邪魔する物もない。だから、少女は“彼女”に力を貸してやる事ができる。そして、少女が抱える苦難を消し去る事もできるはずだ。
 少女は、ただ、自分の意思で“彼女”を遠ざけているのだ。
 その理由を、彼女もまた知っていた。

『……あなたの気持ちはわかるけど、それは私のためにはならないわ。そして、あなたのためにも』

 ……やっと出会えた大切なパートナーと離れたくない。彼女以外をパートナーとして認めたくない。──そんな思いが少女にはあったのだろう。
 ここにいる彼女が少女を見つけるまで、少女はずっと彼女の傍にいた。しかし、少女は彼女に近づく事ができなかった。
 やっとの思いで彼女をパートナーにする事ができた。
 彼女以外の人をパートナーとして認めたくないのだ。そんなプライドが、邪魔をしている。

「それだけじゃない……もう大切な仲間がいなくなるのは嫌だ!」

 それに、仮に“彼女”を新たなパートナーとして認めたとしても、少女にはまた別れが待っているかもしれない。──そんな恐怖もあった。
 大切なパートナーを失うのはもう嫌だ。
 もう二度と、パートナーを失いたくない。
 彼女が死んでしまったら、また少女は悲しむ事になる。

『……ねえ。彼女は今、必死に戦ってる。それでも彼女があの人を助けられるかわからないの。……だけど。あなたなら、私の友達の背中を押してあげられるでしょ?』

 少女の幼心が揺れ動く。
 自分にしかできない使命──そう、これは他の誰にもできない事だ。
 この少女に全ての責任がある。
 この先に起こる出来事が、少女の行動で大きく変わるのだ。

『迷わないで。あなたは私の立派なパートナーだった。……でも、次はあなたの意思で、新しい仲間を作るの。それに、私たちはいつまでも一緒よ』

 パートナーの激励が、少女の胸を打つ。

『……精一杯、頑張って。……アカルン』

 彼女のパートナー────東せつなは、最後にそれだけ言って、再びどこかへ消えた。

「……せつな」

 少女・アカルンは寂しそうに名前を呼んだ。
 せつなはもういない。アカルンは、キュアパッションとなる人間を選ばなければならない。
 だが、“彼女”こと佐倉杏子にせつなほど高いプリキュアの資質を感じてはいなかったし、次のパートナーとして選ぶには少し頼りなくも感じた。
 ただ、アカルンの力で手を貸す事くらいはできる。



 ────アカルンは、現実に戻る。
 目の前には、傷つける人と、傷ついている人がいた。

502赤く熱い鼓動(中編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:45:30 ID:0jYmc6CU0
 そして、アカルンを持っているのは、それを助けようとする人だった。
 目の前で剣が振りあげられている。……それを助けられるのは、一瞬で距離を縮める瞬間移動の能力を持っているアカルンだけだ。
 アカルンの力さえあれば、ネクサスは一瞬でドウコクたちの目の前に瞬間移動する事ができるのだ。
 自分にしかできない。
 その使命感が、彼女の判断を後押しさせた。



「キィィィィ!!!!」



 ──彼女は、大きな声で叫ぶと、ウルトラマンネクサスとともにそこから姿を消した。









「………………なんだ?」





 ────ドウコクと仮面ライダーダブルの間に、謎の人影があった。
 いや、人の形ではないし、人の色ではない。
 不思議な三角形の頭に、銀色。────これはウルトラマンネクサスだ。
 ネクサスは、ダブルを庇うように現れ、ドウコクが振りおろした剣を左手で握っていた。
 どう走ってきたわけでもない。いや、そもそも走ってきたのかどうかさえわからない。突然、ネクサスがドウコクの目の前に現れたのだ。
 何もなかったはずの空間を、ネクサスが埋めていたのである。

「アンコ……俺は……信じてたぜ……」

 ボロボロのダブルは、半分笑いながらそう言う。心から笑っているのではなく、虚勢であるのは言うまでもない。
 しかし、その虚勢こそが、仮面ライダーダブルらしかった。どんな時でも笑える余裕くらいは持っておくべきものだろうか。ダブルは敵を茶化しながら戦う事もあったが、それは翔太郎が見せた虚勢であっただろう。

「……てめえ、どうして……」

 ネクサスの声がドウコクに伝わるわけもないので、ネクサスは無視してドウコクの腹に右手の拳でアンファンスパンチを見舞う。
 予期せぬ攻撃にドウコクは対応できず、数歩後退し、ダブルの身体から離れた。そんなドウコクに向けて、ネクサスは刀を投げ捨てた。

「……なんだか知らないが、今のはそいつのワープ能力か?」

 ザルバが訊く。
 ザルバも、こうなるとは予想していなかっただろう。
 ウルトラマンネクサスの身体は突然に瞬間移動をしたのである。

(いや、違う……これは……)

 杏子はこれがネクサスの力ではないのを感じている。
 この能力が覚醒したのは、そう────

(……ありがとう、せつな)

 杏子はその力を貸してくれた人の名前を思い出し、薄く笑った。
 これはせつなが杏子を追うために使った「アカルン」の力である。一瞬で別の場所に移動させる能力を持ったピックルンは、杏子を一瞬でこの場所まで移動させたのだ。先ほど聞こえた高く大きな声も、そのアカルンが杏子に発した声なのだろう。
 制限がかかっているとはいえ、少なくとも、アカルンは目に見える距離くらいは移動可能になっている。

503赤く熱い鼓動(中編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:45:50 ID:0jYmc6CU0
 杏子自身も驚いていたが、アカルンの力を感じ取っていた。
 その暖かさに甘えながら、もう一度キリッと前を向き、ドウコクを凝視する。距離は充分離れていた。

──もう一回だ……行くぜ、兄ちゃん──

 杏子は念話を使って、翔太郎に言う。フィリップにまで通じたかはわからないが、とにかく翔太郎へとその言葉は届いた。
 翔太郎はここまで、ネクサスに何を言っても無視されてたので、「しゃべれるのかよ!」とツッコみたくなったが、声は出ない。
 ネクサスはダブルの手を握る。

「逃がすかよ……!」

 だが、ドウコクはネクサスの手を握った。
 ネクサスがダブルの手を握っていたのを見逃さなかったのである。
 おそらく、複数人の移動をする場合、こうして手でも握る必要があるのではないかとドウコクは睨んだのだ。

(……チッ)

 エナジーコアの点滅は、一秒に何回もという次元に達した。
 活動限界はあと数秒。このままでは杏子は生身の杏子に戻ってしまう。

「……デュア!!」

 ネクサスは必死でドウコクの手を振り払おうとした。
 だが、外れない。ドウコクは手をあまりにも強く掴んでいた。
 当然、ここまで痛めつけられ疲労したネクサスにはそれを放す術はない。
 限界は十分の一秒ごとに確かに近づいていく。

「……フィリップ。いくぞ」

 ダブルは、左手で、ドウコクが先ほど地面に投げ捨てたメタルシャフトを力強く握り、風を纏わせながら、ドウコクの腹を突いた。

「おらっ!」
「何っ!?」

 その風の勢いが思いのほか強かったのか、ドウコクは手を放して数歩分吹き飛んだ。
 これでドウコクの身体はネクサスから離れた。これでドウコクを巻き込まずに瞬間移動する事ができる。

「いまだっ!」

 ダブルに言われるまでもなく、アカルンは己の力を使う。
 エナジーコアの点滅が終わるまで、残り一秒というところの瀬戸際の攻防であった。
 そして、二人分の人影は、再びその場から消え去った。

 ドウコクが手を伸ばせば、そこにはもう誰もいない。

「……くそっ。三人まとめて消えやがったか……」

 ドウコクの苛立ちは尽きない。
 いや、むしろ水増しされていく一方だった。
 またも逃がした。……これで敵を逃がすのは何度目だろうか。
 今すぐにでも叫びたい気分になった。







 ある建物で、変身を解いた杏子と翔太郎は身体を休めていた。
 窓から杏子が覗いて、そこに居るドウコクの様子をよく注意して見てみる。……ドウコクはいつまでも風都タワーの跡地の周囲をウロウロしていた。

「……なんだよ。この距離が限界かよ」

 アカルンの力で移動した杏子は、そう嘆いた。アカルンは、少し萎れたように、申し訳なさそうにしていたが、制限があるので仕方がないだろう。

504赤く熱い鼓動(中編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:46:07 ID:0jYmc6CU0
 これでは所詮時間稼ぎにしかならない。殺風景で何もなく、窓から辛うじて外を眺められるくらいのビルだが、風都タワーの跡からはそう離れていなかった。距離にして二百メートル程度。それも、おそらく二人分の移動で、連続でもあったため、移動できた距離は通常の四分の一か五分の一分程度ではないだろうか。
 放送を行ったモロトフもここからは見えない。彼は戦いの場を変えたのかもしれない。今はドウコクに注意を払いながら、身体を休めて対策を練るのみだ。

「せめてもう少し遠くなら気づかれずに逃げられたかもしれないが」

 ザルバも半ば絶望しているようだった。
 ドアがある場所は窓と同じ側だ。ドアを開けた瞬間にドウコクがこちらを見れば、彼もすぐに気づいてしまうだろう。
 素早く逃げる事など、二人がこの身体では困難。一瞬で距離を詰められ、殺される運命しかない。

「……このまま逃げるなら、結構辛抱強くアイツがいなくなるのを待たないと駄目そうだな。それも、アイツがこっちに来ない条件付きでだ」

 ドウコクはかつて風都タワーだった瓦礫に剣を向け、雄叫びを上げながら破壊している。
 獲物に逃げられた怒りが見て取れた。その怒りで我を忘れていてくれれば幸いだが、不意にでもこちらを向く可能性があるのなら、やめておいた方がよさそうだ。
 あの場から立ち去ってもらえれば、杏子たちはその時に出ようと思えるのだが。

「ドウコクが近くにいる、か……。少しでも声を抑えないとマズいみたいだな。フィリップ、わかったか?」
『ああ。それが一番心配なのは翔太郎だけどね』

 変身を解いた翔太郎は、フィリップにそう言うしかなかった。壁に寄りかかって座る彼の身体は全身にあらゆる傷を作っていた。傷のない場所も、強く圧迫されているので、少し服を脱げば紫色の痣だらけである。
 ダブルドライバーを巻いてはいるが、ダブルに変身する気力は湧かない。
 体の全身が痛むので、痛む部分を自分の手で摩りたいのだ。装甲に包まれた傷を装甲に包まれた手で触るのは、やはり気持ちが良いものではない。

「………………おい、杏子」

 翔太郎が、杏子の名前を小さく呼んだ。
 彼の眼は、どこを向いているのかもわからない。ただ、名前を呼べば気づいてくれるだろうという程度のものだろうか。

「……何だい?」

 何を訊きたいのかはおおよそ検討がついているが、杏子は真顔で惚けた。
 翔太郎が訊きたいのは、ネクサスの力の事に違いない。それは杏子がつい先ほどまで隠し通した話であった。
 翔太郎が顔を上げると、杏子と目が合う。
 お互い、相手の身体のあまりの痛ましさを見ても目を逸らさないのは流石というところだろうか。
 しかし、会話をできるくらいには息も声帯も落ち着いてきただろうか。

「単刀直入に訊かせてくれ……その力は何だ?」
「……それは……」

 言いかけてから、一度止まる。
 その後、またゆっくりと次の言葉を口に出した。

「あたしもはっきりとはわからない。とにかくこれは、姫矢の兄ちゃんが死んじまった後、あたしに回ってきた力だ」

 杏子はこの力を、あくまで自分自身の解釈でしか捉えていない。デュナミストが戦う意味を知った時に回っていく力であるのは事実だった。フィリップの推測も当たっている。
 以前、おおよそ自分で考察した能力だったので、そこから先は杏子もすらすらと話す事ができた。

「なんでこの力があたしを選んだのかはわからない……。でも、一つだけわかる。きっとこれは、罪を持つ者に回ってくる力なんだ」

 翔太郎とフィリップは、この『罪』という単語を聞いて、以前杏子が語った『ビギンズナイト』を思い出した。
 それに、殺していないとはいえ、殺し合いに乗っていたのも事実だろうか。
 杏子が抱えていた罪はそれだけではなかったが、翔太郎たちが知る杏子の罪とは、おそらくそれだけだった。

505赤く熱い鼓動(中編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:46:24 ID:0jYmc6CU0
 そうした罪にネクサスの光が宿るというのだろうか。

「……この力はさ、たぶん使っていくたびに人の命を吸っていくんだよ。人間の力じゃあ扱いきれないほど強い力なのかもな」
「……」
「でも、だからこそ……ああいう奴らを倒す力にもなる。そうして罪を洗い流す…………きっと、そのためにある力なのさ」

 そう言う杏子は、自嘲したように笑う。
 使う度に死に近づく力など、普通は受け入れる事が出来るわけもない。
 自分の力を使えば使うほど、自分の身体には疲労と消えない傷が残っていく。
 しかし、力を手放す事もできないし、力を手放すわけにもいかない。……ならば、笑うしかないではないか。

「…………ふざけんなよ」

 そんな杏子の様子を見て、わなわなとふるえていた翔太郎は、感情を抑えられそうではなくなっていくのを感じた。彼の怒りの言葉が吐き捨てられる。

「なあ、杏子! おまえそんな力を姫矢が渡したって、本気でそう思ってんのかよ! 犠牲になるとか、そんな考え方……まだ捨てられねえのかよ!」
『翔太郎! 声を抑えるんだ! 敵に気づかれるんだろう!』

 何もない部屋に、翔太郎の怒号が響く。
 フィリップが必死にそれを制する。エクストリームメモリの中にいる彼も、当然翔太郎の声の大きさが危険なレベルである事は気づいていた。
 翔太郎の声は部屋中に反射し、寂しい余韻が残っていた。
 杏子は、黙って窓の外の様子を見た。ドウコクが気づいている様子はなかった。

「……」

 翔太郎も、自分自身で一瞬ヒヤッとしたものの、杏子の様子を見て安心する。特に挙動におかしいところはなく、ドウコクがこちらに気づいてない事をわかってるようだった。
 少し感情を落ち着けた後に、翔太郎は彼女を冷静に諭す事にした。……これが普通にできればハードボイルドも近づくだろう。

「……なあ、杏子。前に姫矢が変身したそれを見たとき、俺にはなんつーか……デカいモンが見えたんだよ」
『……翔太郎は、あれを銀色の巨人って言ってたね』
「そうだ。俺は姫矢が変身した戦士を見て、思わず『銀色の巨人』って呼んだんだ」

 あの時、既にウルトラマンネクサスはジュネッスに変身していたが、全身のほとんどは銀色を残している。
 しかし、巨人ではなかった。
 巨人ではないのに、大きく見えたのだ。
 杏子は、この力が自分に渡った時に現れた銀色の巨人の事を思い出した。そう、翔太郎にはああいう風に見えていたのかもしれない。
 実際に見た杏子とは違い、精神面がそう思わせたのだろうが。

「……でもな、お前が変身したら、急にデカく見えなくなったんだよ。なんていうか、お前は……その……本当に小さかった」
『翔太郎も人の事言えないけどね』
「何ィッ!? 俺のどこがちっさいって……」

 と、思わず大きく声をあげてしまった事に気づいて再び口を塞ぎ、咳払いして話を戻す。

「……あー、とにかく、俺にはそいつがさ、お前の言うように人の命を吸う力とかそういうものには見えねえんだ。それに、姫矢がそんな力をお前に託したとも思えない。きっと、お前がいつまでもそうやって自分を責めてるから、巨人の本当の力が出せないんだ」

 翔太郎の中でウルトラマンネクサスが『銀色の巨人』から『銀色の戦士』へと降格した理由──それを、翔太郎はそのように解釈した。
 ネクサスの力は、決して自責の念にかられるためのものではない。
 むしろ、ネクサスはどんな辛い状況でも絶対に生きる希望を捨てない人たちに受け継がれていく力なのである。

「それに、前に戦った時、杏子が変身した銀色の戦士の色は、姫矢が最初に現れた時と同じ……全身銀色だった。でも、姫矢はそこから別の姿に変わったはずだ」
『でも、さっきの戦いで杏子ちゃんは銀色から別の形態にはなれなかったね』

 杏子は確かに、姫矢が銀色だけでない姿に変身していたのを思い出す。
 しかし、杏子はそのやり方がわからなかった。どうすれば、そんな姿になれるのか──そして、どうすれば巨人の力はそれを教えてくれるのか。

506赤く熱い鼓動(中編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:46:42 ID:0jYmc6CU0

「……どうすりゃ、そんな風になれるんだよ」

 素直に翔太郎の怒号を胸に仕舞って、反省の色をした顔で訊いた。
 彼の言葉は確かに胸に響いたが、それでも実際に杏子自身が自分のやり方を変える気はなかった。

「……どうすりゃなれるか……か。それはわからねえな」
「無責任な事言うなよ……」
「……それなら、推測でいいか?」
「ああ、推測でも何でもいい」

 推測でも何でも、とにかく手がかりなら何でもいい。
 あれより強くなれる方法が知れるのなら、杏子は大歓迎だった。

「誰かを助けたい気持ち……そして、助けた誰かがお前を支える気持ち……ってのはどうだ?」

 翔太郎は、そう口にした。
 かつて翔太郎とフィリップは、たくさんの人の声援を受け、街の思いが風となり、サイクロンジョーカー・ゴールドエクストリームへと変身した事がある。
 その時と同じく、人の意志が関るというのを、翔太郎は考えたのだ。
 あの時の姫矢は、ハーフチェンジのように特殊な動作をせず、ただ自然と新しい姿に変わった。その感覚を掴むのが難しいのかもしれない。
 ただ、翔太郎がそういう感覚で変身できたのはあの一回だけだ。
 人々の声援を受け、人々の送った風が翔太郎たちを新たな姿に変えたのである。

「そんなんでなれるわけねえだろ!」
「……なれるさ。誰かを助ければ、それだけ感謝されるし、誰かを助けた見返りってのがきっと来る」

 翔太郎は「あの時の事」を。
 そしてまた、杏子も彼女にとっての「あの時の事」を思い出す。

「……じゃあ聞かせてくれよ。あたしがもし、魔法少女になんかならなければあたしの家族は死んでなかったと思うか?」

 しかし、杏子は納得できなかった。
 人を助けたい気持ち──それが、必ずしも助けられる事に繋がらないのを、杏子はよく知っているのである。

「……え?」
「前に話したよな。あたしが魔法少女になったから、家族は死んじまった……」
「それ、お前の知り合いの話だって聞いたぜ」

 杏子ははっとする。
 そう、前に翔太郎にこの話をした時、杏子は『知り合いのバカの話』と言って、その話が誰の話であるかは暈したのであった。
 翔太郎も杏子の話である事に気づいてはいたが、杏子は認めなかった。
 しかし、この時ばかりは口が滑ってしまったのだろうか。
 こうなっては認めざるを得ない。

「もういい……。そうなんだよ、あたしがバカなんだよきっと……。あたしが誰かを助けようとしたり、誰かのために何かをしようとすると、いつも誰かが死んじまう……誰かを助けるなんて、あたしの柄じゃないんだよ」

 少なくとも、彼女の家族や姫矢はそうだった。
 杏子が良かれと思ってやった行動が原因で巻き込んで、死んでしまったのだ。
 それは計れないほどに重い罪だった。自分のせいで人が死んでしまったのである。彼女にかかった重圧も大きかった事だろう。

 それでも、翔太郎は彼女の言葉に納得ができなかった。誰かを助ける事が裏目に出続ける人間なんて、いてはならない。人と人とは助け合うものだと思っている彼の世界から、杏子が外れてしまうではないか。
 それは認めない。
 それに、彼女は必ずしも誰かを助けられないわけじゃない。──翔太郎は覚えている。つい先ほどの出来事だ。

「……だけど、お前はさっき俺達を助けてくれたじゃねえか!」
「それも元々あたしが勝手な事しなければあのまま全員逃げられたんだ!」

507赤く熱い鼓動(中編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:47:03 ID:0jYmc6CU0
 今度は杏子の感情が爆発する。

「アンコ、そこの兄ちゃんみたいにデカい声を出すと、ドウコクに気づかれるぜ」

 熱の上がったこの場を今度冷ますのはザルバである。
 冷静に場を見られるフィリップとザルバがいなければ、この二人は結構危険な組み合わせかもしれない。ザルバはやれやれ、と半ば呆れたようにその会話を聞いていた。
 フィリップもまた、この会話が聞こえていたならば同じように呆れていただろう。

「……違うぜ、杏子。俺は、別にお前に無理やり連れてこられたわけじゃない」
「だって……!」

 杏子が向かったから、翔太郎がここに来る事になったのではないか。
 そういう事を言おうとしたが、先を言う前に翔太郎が返した。

「あれはなぁ、俺が勝手に向かっただけだ……風都タワーを破壊した奴もムカついたしよ」
『ねえ翔太郎。僕には翔太郎の声しか聞こえないから、ちょっと話がわからないんだけど』
「杏子の奴が、自分の勝手な行動に俺達を巻き込んだとか言ってるんだよ。ドウコクに煙玉ぶつけた時に!」
『ああ、あれは翔太郎が悪いね』
「……」

 あまりにもあっさりとフィリップに言われたのが、かえって真実味を持たせたが、翔太郎は開いた口が塞がれない状態になってしまった。
 翔太郎としては、ストレートに言われてしまったのがショックだった部分もあるのだろうが、否定もできない。

「……とにかく、あれは俺達の勝手な行動だ。……いや、むしろ勝手な行動をした俺達を助けてくれて、ありがとう……。俺が言うのは、そういう言葉の方が正しいんだ」
『それに、はっきり言って、僕達はドウコクとの戦いでは足手まといだったみたいだしね……それは、ゴメン』

 そう、ダブルはドウコクとの戦いに参戦したものの、ほとんどの場面で彼らは何の役にも立てなかったのだ。
 とにかく、こうして謝られ、感謝されては杏子も何を言う事もできなかった。
 まさか、自分の勝手な行動を怒られもせず、謝り、感謝されるなど……そんな事があるとは思ってもみなかったのだ。


 翔太郎は、これまで全ては打ち明けられなかった杏子の気持ちをよく知って、自分の経験を思い出した。
 彼女は、そう……かつての翔太郎に少しだけ似ていた。
 あの時──そう、ビギンズナイトの時と、その少し後。あの時の出来事が、どれだけ翔太郎の胸を締め付けたかはわからない。

「……こう言っちゃ何だけどな、杏子。人生っていうのは……本当に何が起こるかわからないゲームなんだ」
「え?」
「……俺だって、杏子と同じさ。俺にも、俺が勝手な事をしたから大事な人が死んじまった事が……確かにある」

 鳴海壮吉の事だった。
 翔太郎の慢心が原因で死なせてしまった、彼の大事な師匠である。
 それから先も、翔太郎には幾つもの辛い出来事や思い通りにいかない出来事があった。
 しかし、それでも翔太郎は仮面ライダーとして街を守る事はやめない。守ろうとした結果、何かを失う事があっても、きっともう迷わない。

『……良かれと思ってやった事は、必ずしも望んだとおりの結果を生むわけじゃない。それは誰にでもある事なんだよ』
「そうだ。俺達はそのたびにその罪を乗り越えて、新しくやり直して、それでも街を守る事だけは絶対にやめねえ……俺達は、街を守り続けると同時に、守れなかった命を……自分の罪を数え続ける」

 仮に医者が一人いたとして、その医者は一度、少しの怠りで人を死なせてしまって、医者をやめるだろうか。
 確かに、賠償があったり、自責の念があったり、そういう理由で医者を辞める事はあるかもしれない。
 だが、人を救う術と経験を持つ彼らは決して一度のミスで、人を救う事をやめられない。
 誰かを助けるために医者になったのなら、何度でも誰かを救うために、オペを行うはずだ。
 仮面ライダーも同じである。

508赤く熱い鼓動(中編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:47:18 ID:0jYmc6CU0
「でも……あたしは自分の罪なんて、……もう数えきれない」

 父。母。妹。見滝原の人々。フェイト。ユーノ。マミ。せつな。霧彦。姫矢。さやか。
 一体、どれだけの人を傷つけた罪があるのだろう。
 杏子は何度数えても、今更数えきれなかった。今数えようとしても、彼女の中には幾つもの罪が渦巻いている。

「……罪が数えきれないって? ……なら、数えきれないだけ誰かを助けりゃいいんだ。俺だって、何度もあんな台詞を言ってはいるが、自分の罪なんて……もう数えきれないさ」
『そう。それに、罪だと気づいてない罪もあるかもしれない。それでも、数えきれないほど、人の罪を洗い流せばいい』
「お前が誰かを救うなら、その思いはきっといつか、風になる」
『何にも変え難い、黄金の風となって、君の背中を押すはずだ』

 仮面ライダーエターナルとの戦いの日。
 あの時、罪を背負った人たちも含め──風都中の人が仮面ライダーを応援した。
 仮面ライダーダブルは、自分たちが守ってきた街に救われたのだ。
 黄金の風。そう呼ぶのは確かに相応しい。──奇しくも、ザルバが知る絵本のタイトルは『黒い炎と黄金の風』であった。

「……アンコ。どうやら、この変な兄ちゃんの言ってるところは正しいみたいだぜ」

 ザルバも、鋼牙がかつて父とバラゴの決闘に顔を出した事で、父を死なせ、バラゴを野に放ってしまった罪を持っている事をよく知っている。その戦いの時、大河の腕にはまっていた彼は、今は鋼牙の相棒として立派に戦っていた。
 そう、これからも何度でも鋼牙は戦う。
 ホラーと戦い、暗黒騎士と戦い、人を守っていく事こそが鋼牙の贖罪なのだ。
 それは決して、戦いの果てに無様に死ぬためではない。

(どうして……)

 杏子の心に風が吹く。
 これまで自分を縛ってきた根っこを揺れ動かす黄金の風。
 それが揺れ動き始めた。
 誰かが教えた心が、杏子の中で動かされる。

「くそっ……ここに来てから……あたしの周りはどうしてこう……変わった奴らばっかりなんだよ」

 ここにいる人たちは変わってなどいない。言ってる事は、正しいのだ。かつて、自分が正しいと思う事をたくさんの人に訴え続けた父のように。
 だが、正しい事を言える人が、この世の中には少なかった。そして、その正しい事を杏子は長らく忘れていた。
 せつなや翔太郎が……たくさんの人が、いつも励まし、誰かを守る強い意志を持ち続けてくれている。
 杏子は決して、それを否定したくはなかった。
 でも、否定するしか生きる術がなかったのだ。──彼女が生きてきた世の中では。
 それでも、否定をしてきた心が揺らぐ。

「……でも、あたしもやっぱり……変わり者になりたいよ……」

 杏子の瞳から涙が伝う。
 この罪は、自分だけが抱えているものじゃない。
 多くの人が罪を抱えている。
 佐倉家の教会に来た人たちが少しでもいたのは、彼らが罪を洗い流そうとしたからだ。
 見滝原を通るたくさんの人々が、それぞれ幾つもの罪を抱えている。
 風都の人々が善と悪の風を吹かせ続けるように。
 ラビリンスが人々に不幸をもたらしてきたように。

「……安心しろよ、杏子。お前は充分変わり者さ」

 翔太郎は優しい声で言った。
 翔太郎は顔をあげ、少し自分の体に注意を払いながら立ち上がった。やはり、体に激痛が走ったようで、一瞬だけ苦痛に顔を歪めたが、それでもバランスを保つ。

「……そう……かな?」
「ああ。……お前が俺達を助けようとしたのは、紛れもない事実だ。今思えば、俺達が出てこなければ、ある程度は杏子にも分があったかもしれない。そんな足手まといな俺達を、何度も何度も助けようとしてくれたのは、どこの変わり者だろうな」

 ダブルの体に寄りつくドウコクを引きはがそうとしたネクサスを、ダブルの迂闊な一言で傷つけさせてしまった。

509赤く熱い鼓動(中編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:47:34 ID:0jYmc6CU0
 それが彼女に膨大なダメージを与える一撃を作ってしまったのだ。
 あれは戦略面では最低の「余計なひと言」であったと思う。……それを翔太郎は、今も自分の『罪』のひとつとして反省していた。

「……」

 黙って下を向いて涙を堪える杏子の手が、わなわなとふるえている。
 特に右手は強く握られていたので、翔太郎はその右手をちゃんと見てみた。
 その右手に握られた物を見ながら、翔太郎は薄らと笑う。

「……行くのか? 杏子」

 翔太郎には杏子がエボルトラスターを握っているのがよく見えた。
 彼女は、また戦いに行くつもりだ。ずっと、そのつもりだったのだ。……彼女は、まだ姫矢の死がドウコクによるものだった事実が振り切れないのだろう。
 でも、きっとわかってくれたと翔太郎は思っていた。彼女は決して、己の命を捨てにいくわけじゃない。
 それならいい。それなら、翔太郎たちがいつも風都で繰り広げている戦いと同じだ。
 杏子は返事をする。

「……ああ」
「大丈夫だ。今のお前なら、あんな奴ブッ潰せる」
「……そうかな……」

 翔太郎は杏子の頭へと、帽子を深くかぶせた。翔太郎の位置からは、もう彼女の目元など見えない。目元に流れる涙は、翔太郎からは見えない。
 これは翔太郎が憧れた“男”の帽子である。

“帽子が似合う男になれ”

 鳴海壮吉の姿にあこがれた翔太郎が、その帽子を頭に乗せつづけたワケ。
 それを考えれば、決して彼はこの帽子を手放すべきではなかっただろう。
 女子中学生である杏子に、翔太郎が好む男の帽子が似合うわけはない。杏子が帽子を着用している姿はあまりに不格好だった。
 しかし、彼の優しさはそこに確かにあった。杏子の涙を帽子の下の世界に隠し、その世界で少しだけ、涙を止める時間を与えた。

「そうだ。これも教えとかないとな、杏子。変わり者にもルールがある。……命を粗末にしない事。それから、人からもらった物はなくさない事だ」


 翔太郎はルールを決める。
 それは、杏子に絶対に守ってほしいルールだった。命を粗末にする事も、また、この帽子を無くす事も許さない。
 戦うのなら、生きて帰って来い。勝たなくてもいいから、必ずここに帰って来い。そういう意味だった。

「……」

 杏子は自分で帽子を少し上げる。杏子の涙は消えていた。この帽子を貸してくれるというのだろうか。余程大事なものであるはずなのに。
 しかし、杏子はそんな大事な物をどうしても返して欲しがるルールとやらに便乗する事にした。

「なあ。それ、今決めたあんたの創作だろ」

 キリッとした瞳で、杏子は窓の外を見つめる。
 ドウコクは、風都タワーの積み上げられた瓦礫の上に憮然と立っている。剣を構え、当て所のない方向を見ていた。
 背後には破壊されたタワーの先端にあった風車が傾いている。地面に面している半分が折れ、もはや二度と回る事はないが、それでも巨大な外形は、周囲の建物を圧迫していた。
 こんなにも綺麗に、悪の根城のような絵は出来上がるだろうか。
 まるで、狙ったかのように恐ろしい背景だった。

「ああ、俺の創ったルールさ。でも、ずっと昔からみんな言ってきた、当たり前のルールだ」
「それでも守れる奴が少ないんだ。……借りた物が返ってこないのはよくある」
「ああ、お前それ返せよ」
「……あたしも当たり前のルールを一つ追加していいよな?」
「……構わねえけど」

 杏子はエボルトラスターを体の真横で構え、ニヤリと笑ってから言った。

510赤く熱い鼓動(中編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:47:55 ID:0jYmc6CU0

「食い物を粗末にしない事!!」

 エボルトラスターを刀のように引き抜くと、杏子の姿は帽子ごとウルトラマンネクサスへと変身した。
 変身した直後はアンファンスの姿である。
 アンファンスの姿だが、彼女が別の色になれるかは翔太郎にもわかっていた。

──どうかな? 大きく見えるかな?──

 念話を使い、翔太郎の耳に杏子の声が聞こえた。
 翔太郎は、鼻の頭を掻いてから、帽子の位置を直そうとした。そこに帽子はない。今は杏子が持っているではないか。
 恰好はつかなかったが、ポーズだけは取って、言った。

「……行けよ、“銀色の巨人”!!」

 身長、体重で言えば、全く先ほどと変わらないはずなのに、ネクサスの姿は全然違った。
 ウルトラマンネクサス・アンファンスは次の瞬間、翔太郎の前から姿を消した。
 アカルンが、ネクサスの体をワープさせたのだ。
 ドアから出て行ってしまっては、翔太郎の居場所もわかってしまうから、そのための配慮だろう。
 翔太郎が窓の外を見ると、ネクサスは血祭ドウコクと対峙していた。
 遠く、遠くにいるはずなのにその背中はいつまでも大きい。

「フィリップ、こんな部屋に二人だけになると、少し心が寂しくなるな」
『さよならを言うのは、わずかの間死ぬ事だ……ってやつ?』

 翔太郎が愛読し、フィリップもかつて壮吉に渡された本の台詞であった。
 フィリップ・マーロウという男の中の男が主人公である『長いお別れ』というハードボイルド小説だ。

「……あっ! くっそ〜! それを言うチャンスだったか! 俺とした事が見逃した!」

 と、翔太郎は自分の今抱いている心境が、その台詞に似たものだと気づいた。いつも読んでいる本で、いつもどこかで使おうとしているのに、何故気づかなかったのだろう。案外、こういう事はあるものだ。
 その台詞だけでは共通性はわからないかもしれないが、さよならを言うと、心のどこかが少しだけ死ぬ……という意味だった。日本語の訳自体が正確ではないので、余計に意味が通りにくい部分もある言葉だが、二人は──あるいは、鳴海壮吉も──この台詞が好きだった。

『……大丈夫さ、翔太郎。すぐにまた、生き返れるよ』
「……そうだな」

 翔太郎は笑った。
 そして、そのまま、外を見た。
 外では、ネクサスが戦っている。自分たちも出来る限りの戦いはしたいが、元気に戦える体ではなかった。
 しかし、自分たち無しであっても、彼女が負けるとも思わなかった。







「……またてめえか」

 ドウコクは、また突然目の前に現れたネクサスに苛立ちを隠せない様子である。

「俺の目の前に現れたり、消えたり……面倒な奴だ。相手にする気にもならねえ」

 ドウコクはすねたように言った。
 彼からしてみれば、ネクサスの行動は卑怯そのものだろう。肝心な場面になると、いつも逃げてしまう。
 またそうなるのだろうと思い、彼は相手を面倒がった。
 彼自身は、殺し合いに乗る気はない。ただ、時折気分で人を襲うだけだ。気分が乗らないならば、戦っても仕方がない。

──そいつは困るな、血祭ドウコク──

511赤く熱い鼓動(中編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:48:11 ID:0jYmc6CU0
 自分の脳に直接聞こえたかのような少女の声に、ドウコクは困惑する。
 彼女が使ったのは、魔法少女の念話だ。

──相手してくれよ、今度は逃げない──

 ドウコクは、ネクサスの方をより強く睨むと、黙って降竜蓋世刀の刃を向けた。
 杏子の言葉を信じたのか、はたまた、何度気が変わったのか。それはわからない。
 とにかく、ドウコクは、あっさりと、ここで戦いを行う事を決めたのである。

「……来るなら来い」

 ドウコクは重たい声でそう言う。



──行くさ。だけどその前に……さあ、お前の罪を数えろ!!──



 鳴海壮吉が相棒に放った言葉。
 左翔太郎とフィリップがそれを真似て、いつまでも敵に突き付ける言葉。
 それを今度は、佐倉杏子が真似た。
 自分に道を示してくれた人の言葉なのだ。その人のお蔭で生きられる。だから、自分自身のオリジナルでなくていいから、これが言いたかったのだろう。


「ガァァァァァァァッッッ!!!」


 ドウコクは以前のように咆哮を放つ。
 ネクサスは地面を蹴り、空中へと移動した。
 敵が対応できないほどの滑空は不可能とはいえ、少しならば空中浮遊も可能である。
 魔導師やテッカマン、仮面ライダーゼクロスのように、空中へと飛ぶことが出来る参加者が多いからだろうか。

「……チッ!」

 咆哮の範囲外へと消えたネクサスに、またドウコクは舌打ちする。
 これでは戦えない。やはり卑怯ではないか。
 しかし、ネクサスは咆哮の余韻が消えるとともに、ドウコクの前まで飛んだ。

「自ら来やがるか……」

 降竜蓋世刀を持ち、駆けだしていくドウコク。
 空中からこちらへ降りてくるネクサスとすれ違う時に斬りかかろうというのだ。
 ネクサスは、空中でエルボーカッターを出した。
 接近していく……。
 距離、三メートル。二メートル。一メートル。
 ──ゼロ。

「うおらぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 鬼神の如く剣を振るうドウコクであったが、その切っ先はネクサスへは届かなかった。
 あまりの飛行速度に対応しきれなかったのだ。
 遅れて、ドウコクの左肩からエルボーカッターによる切れ痕が生まれる。そこから液体が噴き出た。

「……何っ!?」

 先ほどとは動きの違う敵に、ドウコクは驚きを隠せない。
 敵は既に地面に着地していた。
 ドウコクは、そこがねらい目だと感じたのか、そこに向かって駆け出していく。
 しかし、斬りかかった瞬間に、ネクサスの体は消える。
 そう、アカルンの力であった。
 アカルンが杏子を認め、杏子を手伝うと決めた以上、杏子はその身体をワープさせ続ける事が出来る。ある程度の制限はあるものの、軽微な瞬間移動ならば問題はない。
 たとえば、敵の後ろに立つ程度の瞬間移動ならば。

「ぐあぁぁっ!!」

 ドウコクの背中に、ジュネッスパンチが繰り出される。
 ネクサスの体は傷だらけのはずなのに、それを感じさせない一撃だった。

512赤く熱い鼓動(中編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:48:28 ID:0jYmc6CU0
 体の捻りを抑え、斬りつけられた胸や腹の傷が噴き出さないようにしたのだ。

「やるじゃねえか、アンコ。いい調子だぜ」

 ザルバが、ネクサスの戦いぶりを囃し立てる。
 うるさいとは思いつつも、杏子はそれを言われたのが嬉しかった。気持ち次第でこんなにも戦いが変わるのだろうか。
 久々に爽快な戦いであった。罪を重ねながら戦うストレスに比べれば、何と心地よい戦いだろう。
 ザルバに杏子は、一言返す。

──見てな、まだこんなもんじゃない──

 そう、ネクサスはまだアンファンス。
 ウルトラマンネクサスは、それぞれの命の色を映すジュネッスという力があるのだ。
 その姿は十人十色。それぞれが全く別のジュネッスを持つ。
 生きる希望を捨てずに戦い続ける者に、ウルトラマンは力を貸し続けるのだ。


(……せつな、姫矢……みんな……あたしに力を貸してくれ……)


 杏子が思う。
 杏子にはまだ、生きたい……そんな希望があった。
 生きて、誰かの助けになれるのなら、本当はそれがいい……。


 ネクサスの体が発光する。光は強くなり、彼女の身体を真っ白に包む。
 かなり強い光で、ネクサスに何が起きているかは周囲からでは見えないだろう。
 しかし、当のネクサスは自分の体を見下ろすと、自分に何が起きているかよくわかった。体のシルエットが変わり、肩に姫矢のジュネッスと全く同じように装甲が生える。
 銀一色だった体に光の色が走っていく。
 赤く光る体。それは、誰かの姿に似ていた。


『俺はこの少女に……俺と同じように何かの原因で自責し続けるこの少女に、光を託す!』


 知らなかった筈の姫矢の想いが光が流れるとともに伝わっていく。
 赤く熱い光が、まるで血の流動のように杏子の体を駆け巡る。
 これは姫矢が託した光。その光は、決して罪を持つ者に向けられたものじゃない。
 それが姫矢の口調と言葉で伝わった。


『アカルンは……きっと、あなたの力になってくれるはずだから……』


 不意に、せつなが最後に言ってくれた言葉が杏子の脳裏をよぎる。
 アカルン。それはせつなの持っていた不思議な携帯電話とその鍵だろう。
 そうだ、アカルンは確かにこの戦いで何度も杏子に力を貸してくれた。
 だが、それはずっと、ワープ能力を使わせてくれた事だと思っていた。


(ありがとう……力を貸してくれるんだな……)


 しかし、アカルンが本来の力を貸せば、キュアパッションとなる変身能力が芽生えるはずなのだ。認めたならば、当然キュアパッションとしての戦闘力を付与する。
 だが、それは杏子自身が使わなかった。少し使うのが恥ずかしい気もしたし、幾つもの力を持っている杏子がわざわざそれを使う理由もなかった。
 これは、その代わりなのかもしれない。──もはや、キュアパッションの力を使う必要はないのだろうと杏子は悟った。


(姫矢の兄ちゃんとは、違う……)


 ネクサスの色は、赤だった。しかし、より濃度の濃い赤であり、ボディラインも微かに違っていた。
 かつて、杏子は今の自分のボディカラーの配色を見た事があった。
 それは杏子の友達。
 既にこの世にはいない杏子の大事な友達の変身した姿の色だった──そう、キュアパッションの配色に似ていたのである。黒、赤、銀色の三色から成る杏子たちの命の輝きの色。


(これが、あたしに繋がれたみんなとの絆……これが、あたしの生きる希望……!)


 姫矢から受け継いだウルトラマンの力に、せつなから受け継いだプリキュアの力が重なり、彼女へと生を与えた人々の光が結集する。彼女が背負ってきた『罪』とそれを乗り越えた力、これから背負っていく『優しさ』、そして戦い続ける『情熱』のカラー。
 この世界に存在している色ならば、パッションレッドと呼ばれる色が近いだろうか。


(あたしの……赤く熱い鼓動だ!)


 名づけるならば、ジュネッスパッションであった。





513赤く熱い鼓動(中編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:48:47 ID:0jYmc6CU0



「おい、あれが……杏子かよ」

 窓の外から漏れる強力な光が止むと、そこには全く別の色へと変わったネクサスがいた。
 この遠距離からでもその姿はよく見えている。ネクサスの色はかつて翔太郎たちが見たジュネッスとは少しばかり違っていた。
 かつての姫矢とはまた違った、『命の光』。
 同じ赤でありながら、それは微妙に違った色の輝きを示している。

 そう、命の色はそれぞれ違う。
 十人十色。誰もが違った色を持ち、誰もが違ったものに運命を惹かれるのだ。

「……すげえ」

 翔太郎は幾つかの感想を口に出そうとしたが、そうとしか言いようがなかった。語彙が無いのではない。本当に素晴らしいものを見た時、人はそれを上手く形容する文句など考えようともせず、ただ目の前の出来事に心惹かれるのだ。
 それはまさに彼女が築いてきた絆の姿だった。
 姫矢のジュネッスと同じ力。せつなのキュアパッションと同じカラー。あらゆる人が繋いだ彼女の命。それが全て、あの光の中に在る。
 翔太郎自身もまた、彼女の命を繋いでいた一人だから、より強い感動があったのだろう。

『翔太郎、僕にも見せてくれないか』
「ああ……ちょっと待ってな」

 翔太郎はジョーカーメモリを取り出した。
 戦うわけではないが、それでもこの姿をフィリップに見せてやろうと思ったのである。
 メモリの電子音が鳴る箇所を少し抑え、なるべくドウコクに聞こえないようにしながら、翔太郎はメモリのボタンを押す。

──じょぉかぁ……(←小声)──

「『変身(←小声)』」

──Cyclone × Joker!!──

「こらっ、ちょっ、うるせえ!」

 翔太郎は電子音とBGMにキレてドライバーを軽く叩いた。しかし、どうやら向こうは向こうでネクサスに気を取られているようで、辛うじてこちらに気づいていないようである。ともかく、仮面ライダーダブルとなった二人は、再び窓の外を見る。
 その景色は、すぐにフィリップにも伝わった。ネクサスはパッションレッドの光を放ち、ドウコクと対峙している。

『……翔太郎』
「どうだ? あれを見た感想は?」

 翔太郎は、おおよそフィリップがどんな感想を述べるか、予想がついていた。
 翔太郎はフィリップが薄く笑ったのを感じた。

『ゾクゾクするねぇ』







 ドウコクは目の前の戦士を見てどう思っただろうか。
 薄皮太夫の三味線の音に惹かれた彼ならば、少しは何か心を動かされるものがあっただろうか。
 敵の姿がより強力なものへと変わったというのに、そこに脅威を感じるというより、むしろ骨抜きにされたように見つめていた。

 それは戦うためだけの姿ではなかったのである。

 確かに逞しく進化し、豊富な技を持つ戦士であったが、同時にその姿は一人の人間の生を表現した芸術であった。体を駆け巡る血流のようなラインは、哺乳類の血管だけでなく、万物の体に流れる繊維や、あるいは各々の感情でも体現しているかのようだった。
 彼女はあらゆる生を食らい、今ここに生きている。
 彼女の命を繋いできた糧も、命を賭して彼女に生を与えてきた人々の思いも、或いはこの体の中にあったかもしれない。それが彼女と、彼女を支えてきた人たちの絆だ。

「……なんだよ、それは」

 少なくとも、ドウコクから発された言葉は、翔太郎と同じく簡素なものだった。
 感動したようには見えなかった。
 この光には、ドウコクが望む感情はなかった。孤独がなく、恨みもない。太夫の三味線とは違ったのだろうか。

──これは、あたしたちの絆……あたしたちのウルトラマンだ……──

 その名を、杏子は初めて呼んだ。

514赤く熱い鼓動(中編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:49:14 ID:0jYmc6CU0
 かつて、孤門がこの姿を見て、思わずウルトラマンと呼んだように、杏子はいま、この巨人に自然とウルトラマンという名前があるのだと感じたのだ。
 しかし、あまりにも自然に言葉が出たため、杏子自身が、自分の呼んだ名前に気づいているかも曖昧だった。

「……ウルトラマン? そいつはそんな名前なのか。まあいい。……ここからは、戦いを愉しませろよ。敗走は無しだぜ」

 ネクサスはドウコクの言葉に頷き、右手を前に突き出し、腰を落として構えた。
 二人の距離は約二十メートル。
 二人は同時に駆け出し、その距離は一瞬にしてゼロになる。
 ドウコクが右上から、ネクサスに向けて剣を振るう。ネクサスはそれを右に避け、ドウコクの顎を砕くジュネッスパンチを放った。
 ドウコクの身体が吹き飛び、瓦礫の山へと堕ちていく。何かの角がドウコクの身体へと突き刺された。ガラス片の数も多く、ここに落ちるという事は、もし人間ならば危険極まりない話だった。

「デュアッ!」

 ネクサスはその場からドウコクを引きはがすようにして起こした。
 しかし、ドウコクを助けるためではない。乱暴に放り投げ、後退したドウコクに向けてネクサスは何発ものパンチを決めた。
 その痛みや衝撃は、無論アンファンスパンチの比ではない。
 再び、ドウコクは二三歩後退した。よろよろと後退しながらも戦闘の意思は消えず、左手はネクサスの身体目がけて大量のガラス片を投げた。さきほど倒れた時に掴んでいたのだろう。

「デュアァッ!」

 ネクサスの身体は、不意の攻撃に目をくらませる。
 ガラス片など、ネクサスの身体に効くはずもないが、本能的に避けたのだろう。杏子自身、その時ばかりは「危ない」と思ったに違いない。顔の前に両手を掲げて、目にガラス片が入らないように構えたのである。

「やってくれやがったな!」

 その瞬間を狙い、ドウコクはこの距離からネクサスを斬る型を取る。
 刃を振るった瞬間、降竜蓋世刀の先から衝撃が発生し、ネクサスの身体に深い一撃を与えた。
 斬れるはずもないのに斬れる──それは、鎌鼬(カマイタチ)というやつに酷似していた。それはまるで、至近距離で鋭利な刃物で斬られるのと同じほどの威力を持っていた。衝撃波か鎌鼬か……厳密にはわからないが、それは風に乗るように真っ直ぐに進み、ネクサスの身体を傷つけるのである。

「デュアァァァ……!!」

 <痛み>の声を発しながら、ネクサスもまた何歩か後退する。手の上に少し残っていた粉々のガラス片が落ちていく。
 真後ろには風都タワーの跡があったが、ネクサスはその数歩前で動きを止めた。

「……俺の番だ!!」

 再び、ドウコクは刀を虚空で振るう。今度は二度──×印を描くように刀を振るい、×印の衝撃がネクサスへと高速で進行した。常人ならば避ける術はないかもしれない。
 それでも、ネクサスは既に超人である。
 地面を強く蹴り、高く跳ぶ。
 ドウコクの鎌鼬は、後方で風都タワーの残骸の中を深く掘り進め、×印の穴を作り出した。そして、最後には真後ろにあった風車の欠片を四つに裁断して衝撃は消え去る。
 風車は大きく音を立てて崩れたが、ドウコクはそんな事を気にも留めなかった。

 ネクサスは上空から、まるで仮面ライダーのように蹴りを放とうとしていた。
 仮面ライダーダブルから着想を得た両足での蹴りは、真っ直ぐにドウコクの身体に向かっていく。無論、身体が半分に避けるような事はないが、それでも右足を曲げて、左足から順に蹴飛ばそうとしていた。
 滑り台でも降りるかのように下降していくネクサスであったが、ドウコクがそれに気づかない筈はない。
 刀を構え、真正面からそれを抑え込もうとしていた。

 しかし────


「何ィッ!?」

515赤く熱い鼓動(中編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:49:32 ID:0jYmc6CU0


 ────ドウコクの背中で、何発かの弾丸が爆ぜ、バランスが崩れた。
 何事かと咄嗟に後ろを見る。すると、数百メートルほど離れた建物の窓から仮面ライダーダブル・ルナトリガーが顔を覗かせていた。
 いないと思っていたら、あんなところにいた。彼が弾丸を放ったのだ。

「折角俺たちの技をやってくれようっていうんだ。邪魔されちゃ困るからな」
『……杏子ちゃん版ジョーカーエクストリーム。ゾクゾクするねぇ』

 ここにいるネクサスとドウコクには聞こえないが、建物の中で二人はそう言っていた。
 それに気を取られてしまった自分を嘆きながら、ドウコクはまた正面を向く。
 次に後ろから攻撃を受けるとしても、無視を決め込む覚悟を決めながら──
 だが、時、既に遅し。
 振り向いた瞬間に、ドウコクの右胸をネクサスの左足が押し出し、すぐに左胸を右足が突き出した。タイミングが難しいところだが、上手い具合にネクサスの両足はドウコクの身体にヒットする。

「デュアアアアアアアアアッッッ!!!!!」

 ジュネッスキックにジョーカーエクストリームのエッセンスを交えた一撃に、ドウコクは何歩も後退する。ふらついただけではなく、距離を置きたいと思ったのだ。
 それはまたネクサスの怒涛の攻撃の好機を作り出した。

 ネクサスの右手が身体の前へと突き出される。
 それに交差させるように左手が突き出される。
 それを崩して両手を上げ、身体全体でY字を作り出す。

「……くそっ!!」

 ネクサスへと刀一本で向かっていこうとするドウコクであったが、野望は叶わなかった。

 その一歩手前で、ネクサスの両腕は、あらゆるウルトラマンたちが使う光線技のように、L字型に組まれたのである。

 それは、姫矢のジュネッスと同じく──杏子のジュネッスパッションがオーバーレイ・シュトロームが放つ瞬間であった。

 光のエネルギーがネクサスの両手から放たれる。

 その攻撃は自分に向かってきたドウコクを、どこまでも押し出していく。まるで、川の流れに巻き込まれたように、ドウコクは声にならない声を発しながら後ろに向かって流れていく。







「……なあ、フィリップ。ちょっと待ってくれ。……これはどういう事だ?」

 名もなき建物で、仮面ライダーダブル──というより、翔太郎は状況が飲み込めずにいた。
 ドウコクがこちらに向かってきている。──いや、ネクサスが放った光線がこちらに向かってきている。
 まるで増水した川があらゆるものを巻き込んでこちらに流れてくるように。
 しかし、あまりの出来事に翔太郎はキョトンとしてしまい、冷静にフィリップに訊いた。いや、冷静というより、混乱しているのだろう。一方フィリップは冷静だった。

『待てないよ、翔太郎』
「だよな?」

 危険であるのを再確認する。

『早く逃げないと、この建物ごと消えてなくなるよ。ドウコクと一緒にね。あっ、後ろにはドアがないから、あのドアから逃げるといい』
「だよな、だよなだよなだよなだよな……!? 逃げろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
『いいから早く逃げてよ、翔太郎』

 ダブルは、身体の節々の痛みさえ忘れて、ドアを蹴破ってすぐに右に飛んだ。火事場の馬鹿力という奴か。

516赤く熱い鼓動(後編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:50:25 ID:0jYmc6CU0
>>513から先が後編です。ミスです。

517赤く熱い鼓動(後編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:50:49 ID:0jYmc6CU0
 ドアに向かうという事は光線が出ている方向に突き進んでいくという事だったが、フィリップの冷静な判断によってうまい具合にそこから飛んだ。光線から逃れようとして逆方向に逃げたら、それこそ逃げ場がない。
 かなりギリギリのタイミングで飛んだらしく、ダブルが先ほどまでいた場所はあっさり光線に飲み込まれた。
 ネクサスが発したオーバーレイ・シュトロームはそのまま濁流のようにドウコクを巻き込んで真っ直ぐ進み、翔太郎が先ほどまでいた建物を飲み込んでいく。あの中にいたら、光に巻き込まれる。
 しかも、翔太郎がかなり重い怪我人である事を考えれば、大ダメージ。そこに建物でも倒壊すれば偉い事になるだろう。
 少し、我を忘れて放心した後──

「杏子このやろおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 ──翔太郎が杏子に対する恨みの念を叫ぶ。
 一方のドウコクはどうやらそこで背中を打ったらしく、壁にぶつかるたびに「ごぇっ!」とか「ぐぇっ!」とかそんな声を発していた。流石にドウコクも不憫に思えてきたが、自業自得というやつである。
 そのまま、あっさりと先ほどまでの建物は突き破られ、ドウコクは既に視界の果てに消えた。小さな悲鳴も聞こえないほど遠くへと消えると、そのまま建物も音を立てて、予想通り倒壊した。
 ダブルは地面に転がり、起き上がろうとするが……。

「……って、痛えええええええええええええええええええええええっっ!!! 死ぬ、死ぬ! ギブッ!! ギブッ!! 胸ェェェェ!! 胸ッ!! 胸ッ!! 胸ェェェェェッ!!」

 どうやら胸骨のあたりに罅でも入っていたらしい。
 それが、地面に派手にダイブしたせいもあって、罅を大きくしたのだろうか。
 起き上がろうとした瞬間、かなりの激痛が走ったようだった。

『翔太郎。無理に起き上がらない方が良さそうだね』
「起き上がるなって……そんな事言われても……」
『……じゃあ、胸って叫び続けるかい? 探偵事務所より刑務所がお好みなら、それでもいいと思うけどね』
「……くそっ……杏子のやつ……。痛ぇ……」

 すぐにダブルは変身を解いて、胸を抑える。
 身体を曲げるとかなり痛いようだった。……これは、折れてる。間違いない。







「……ハァ……ハァ……」

 ネクサスの変身を解除した杏子も、肩で息をしているような状態だった。
 実際、ネクサスへの変身は結構な負担がかかるもので、特にオーバーレイ・シュトロームの使用には多大な負担がかかる。
 しかし、杏子は久々に誇らしい事をした気分になっていた。
 多くの人の支えが、自分の中に在るような気がしたのだ。自分を支えるたくさんの人々の事を思い出すと、やはりその助けのお蔭で自分が生きていると実感できた。

「……あー、あの兄ちゃん無事かな?」

 終わってみると、やたらと冷静に頭が回った。変な虚無感もあったが、とにかくやり遂げた悦びも胸にあった。
 ふと、目の前の建物が派手に倒壊している事に気づき、杏子はてくてくとそちらに歩いていく。これもまあ、先ほどまで戦っていたとは思えない姿だ。彼女自身、微かに混乱しているのかもしれない。
 風都タワーと同じく、根っこのバランスを保ちきれずに倒壊。何階建てだったかはわからないが、最上階が一階か二階あたりの位置にまで落ちて、原形がなくなっていた。

「あちゃー……あーあ、こりゃ完全に死んだな。あんたは本当に良い半熟兄ちゃんだったよ。安らかに眠れ。アーメン」

 杏子は久々に胸の前で十字を切って目を瞑り、両手を重ねる。
 ちょっと悲惨な墓だが、遺体を掘り出す事はできない。

518赤く熱い鼓動(後編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:51:06 ID:0jYmc6CU0
「ちょと待て、杏子! あちゃー……じゃねえよ! 生きてるから! 俺、生きてるから! って胸ェェェェェ!! 痛ェェェェェッッ!!!」

 杏子が横を向いてみると、面白い人が倒れていた。
 左翔太郎だ。杏子は、流石に翔太郎を殺すつもりではないので、翔太郎が生存している事くらいは気づいていた。それを見越したうえでのお茶目な冗談である。
 ある程度の信頼を向けてオーバーレイ・シュトロームを打ったので、翔太郎は避けているだろうと思ったのだ。多少痛いのは我慢してほしい。

「……なんだ、生きてたのか」

 口から出たのはわざとらしい言葉だったが、翔太郎は先ほど胸を地面に打ち付けたのが相当こたえたらしい。
 胸を下にして倒れたまま、右手を開いて、杏子の前に向けている。さながらゾンビのようである。

「はぁ……はぁ……胸……胸……胸…………」
「……」
「胸が……」
「……」
「杏子……胸……胸が……」
「……やっぱ死んだ方がよかったかもな」

 哀れ翔太郎。胸が痛いだけだというのに、突然変質者になったと勘違いされ、愛想を尽かされた。
 杏子としても、自分の胸が狙われているような気がしてならなかったのだ。
 そういえば、彼の知り合いに井坂とかいう変態風な紳士がいたが、彼も仲間だったのだろうか。
 杏子は翔太郎を見るのをやめ、プイと後ろを振り向いて歩き出した。

「あーっ!! ちょっと待て! 杏子! 胸が痛くて起き上がれねえんだよ! お前の水平線じゃない、お・れ・の・む・ね!! 力を貸してくれ、杏子! ……痛ェェェ!!」
『……翔太郎。ちゃんとそう言わないと伝わらないよ』

 流石にフィリップも呆れたらしいが、それで杏子には伝わった。一瞬、失礼な事を言われた気がしたが、無視する。

「……ったく」

 杏子は仕方がなさそうに、翔太郎の身体をひっくり返し、お姫様抱っこする。
 体格は大きく違ったので、流石に重く感じたが、辛うじて可能だった。すぐに腕が釣りそうになったものの、三秒で下してしまうのも意地が許さない。

「……これで大丈夫か?」
「ちょっと待て……プリンセス・ホールド? いくらなんでもこれは無えだろ!! げほっ!」
『……翔太郎。いま、お姫様抱っこされているのかい? ウルトラみっともないよ』
「ウルトラは余計だ! ……っつーか、みっともないも余計だろ!!」

 しかし、当の翔太郎が自力で起き上がれないのだから仕方ない。
 これでも胸が曲がっているので多少は痛むが、最も安定した姿勢である。背中に背負ってしまうと、翔太郎の胸は杏子の背中にぶつかり、場合によっては相当痛む可能性がある。
 杏子は、かなり意地になって歩き出した。ものすごく重いと感じつつも、その重みに歪んでいる顔を帽子が隠している。

(重っ……! どうすんだよコレ……!)

 前にも運んだ事があったが、あの時は背中におぶって翔太郎の足を引きずりながら歩いた分マシかもしれない。
 今は、翔太郎の全身が杏子の両腕に支えられている。魔法少女にでも変身しない限り、この体制はキツいように思えた。

「……てか、オイ杏子。あの赤鬼野郎どうした?」
「わかんねえ……! わかんねえ……! けど……!」
「流石に死んだか?」
「死んでない……! と思う……! でも……! 流石に……! これ以上……! 追うのは……! 無理だわ……! それに……! 向こうも……! 限界だろ……!」

 ドウコクは倒壊した名もなき建物の向こう側にいる。確認は不可能だ。
 それはそれとして、杏子がかなり辛そうな様子なのが感じられた。文節ごとに根性を振り絞るみたいな声を出している。むしろ、それが気になって杏子が何を言ってるのか聞き取るのさえ億劫だ。

519赤く熱い鼓動(後編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:51:32 ID:0jYmc6CU0
 明らかに無理をしているのが、他の全員に伝わる。

「……」
「……」
『……』
「……ふんぬっ! ……はぁっ……!」
「……」
「……」
『……』
「……はぁ……! ……ぐっ……!」

 押し黙った状態で、荒れ始めた杏子の息を聞きながら、彼らは歩いている。
 翔太郎、杏子、フィリップ、ザルバ……それから、一応その他もろもろ。
 それなりに頑張っているものの、やはり辛そうなのが感じられる。
 杏子自体、戦った後に成人男性をお姫様抱っこは相当きついだろう。

「あー、杏子」
「何ッ!?」
「ちょっとどっかで休まねえ?」
「……休み……! たい……! のか……!?」

 杏子の息はだんだん荒くなっている。

「……いや、俺じゃなくて…………あーん……まあいいや。どっかで休もう」
『杏子ちゃん、その方がいいよ』
「……わかった」

 ともかく、彼らはお姫様抱っこをやめてアカルンで近くのゲームセンターまで瞬間移動した。
 何故ゲームセンターだったのか──おそらく彼女が好きだったからではないかと思う。







 血祭ドウコクは、いままさにその名に相応しい血に濡れた体を起こしていた。それはいつものように敵の血ではなく、自らの血であったが。

「……畜生」

 オーバーレイ・シュトロームで何メートル吹き飛ばされただろうか。
 ドウコクは、あのままオーバーレイ・シュトロームによって目の前の瓦礫──その時はまだ壁だったはずの瓦礫──を突き破ると、更に次の建物の壁に叩きつけられた。そこに全身がめり込んで、しばらく動けなくなっていた。
 全身に強い痛みが走っている。ぶつけられた背中も特に痛む。直撃を受けた表面中もまた痛んでいる。力もろくに入らない。
 だが、ドウコクは立ち上がった。

「ちっくしょおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 ドウコクの咆哮は、真後ろの建物にできた罅を巨大にしていく。
 それはやがて、建物を支えきれないほどの罅ができると、その建物はドウコクの真後ろで、目の前の建物と同じく瓦礫に変わっていった。
 これで風都タワーから三つ連続で瓦礫ができたわけだ。
 この近辺は他にも、瓦礫と化した建物があった。
 どうやら、戦いはドウコクがいま体験したものだけではなく、幾つもあったようである。

 腹の底から怒りがわき上がる。あの娘に敗北するなど、あってはならないはずなのだ。
 自分は外道衆の総大将であるというのに、何故あんな小娘にやられてしまうのか。

(……やっぱり、あれが無えと力が出ねえか……)

 どうも、小刀である降竜蓋世刀では、ドウコクは弱かった。
 刃渡りの短さゆえ、ドウコクもあれを使って衝撃を起こすのは非常に難しく、また、敵との距離も詰めなければ戦えないのが少し問題であった。
 昇竜抜山刀──それが、ドウコクが真に力を発揮するのに丁度良い刀なのだが、あれの持ち主はどこにいるのだろうか。

(先にそいつを探すか……? こんな場所で小さく暴れてても仕方がなさそうだ)

520赤く熱い鼓動(後編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:51:48 ID:0jYmc6CU0
 ドウコクはもう一度、今度は冷静に思考を巡らせる。
 怒りの咆哮を上げる時間は終わりだ。
 残るシンケンジャーはシンケンゴールドのみ。これは放っておいても何とかなる。
 あそこにいた数名分のデイパックは確認済だが、そこに昇竜抜山刀はなかった。
 そうなると、街にいても仕方がないような気がしてくる。

(志葉屋敷……あそこに向かってみるか?)

 ドウコクの次の狙いは、マップの端にある志葉屋敷だった。
 I-8エリアにいるドウコクからしてみれば途方もない距離であるが、まあ構う事はないだろうと思った。ドウコクはそう簡単には疲れない。
 街にいる連中──特にあの銀色の戦士の相手をするには、今のままでは力不足な感じは否めない。

 二の目になれば戦えるだろうが、二の目になるのも惜しいところである。

(……二の目? そういえば、アクマロは二の目にはならなかったのか?)

 よくよく考えれば、アクマロは死亡しているものの、二の目になったのだろうか。
 外道衆には、二つの命がある。今のドウコクは一の目──つまり最初の命で生きており、等身大の戦いを繰り広げる。
 だが、その命が尽きたとき、アヤカシとしてのもう一つの命である二の目が始まる。二の目が発動すれば、数十メートルの巨大な体となり、自由自在に暴れ回る事ができるのだ。
 これだけ広い島なので、ドウコクが知らないどこかでアクマロが二の目となった可能性はある。しかし、それを倒せる相手が果たして存在するのだろうか?
 シンケンジャーが二の目を倒せるのは、シンケンオーを初めとする巨大戦用の装備があるからだ。しかし、ここにはそれらしきものはない。シンケンジャーも揃っていなければ、あの力は出せない筈だ。
 アクマロは果たして、二の目になったのだろうか。

「……なるほど。ここで死んじまったら、二の目は無えって事か」

 ドウコクは自分の首輪を弄んだ。
 二の目になるのを封じているのは、この首輪だ。
 おそらくだが、巨大化してしまえば、この首輪は耐えられなくなるのだろうとドウコクは考えた。
 首輪の爆発は強力なものらしく、テッカマン、NEVER、砂漠の使徒など……おそらく外道衆と同じく戦闘に長けた者であっても死に至ると話していた。
 死んで二の目になろうとした瞬間、首輪がはじけ飛べば、外道衆たりとも死んでしまうという事だろうか。

「まあいい……さっさとコレを外せる人間を捜せばいいわけだ……」

 とりあえず、昇竜抜山刀を探すついでに、この首輪を解体できる人間を捜しておきたい。
 そうすれば、ドウコクも本来の能力を発揮する事ができるし、禁止エリアや二の目の妨害などの様々な弊害から逃れる事もできる。
 少なくとも、マイナスはないはずだ。

(ともかく、今は志葉屋敷とやらに向かうか)

 かつて、ドウコクが先代のシンケンジャーと戦ったあの屋敷だろうか。
 ともかく、村エリアにはそれはそれで参加者が集まっていそうな予感もする。
 昇竜抜山刀を誰かが持っているのなら、そいつをさっさと奪い、使いやすい刀を使った方が暴れるにも楽だ。
 初心に帰り、暴れるより先に「暴れる準備をする」。
 それが、今のドウコクの最優先事項だった。



【1日目 午後】
【I−8 市街地】

【血祭ドウコク@侍戦隊シンケンジャー】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、苛立ち、胴体に刺し傷
[装備]:降竜蓋世刀@侍戦隊シンケンジャー
[道具]:姫矢の首輪、支給品一式、ランダム支給品0〜1
[思考]
基本:その時の気分で皆殺し
0:志葉屋敷へと向かう
1:首輪を解除できる人間を捜す
2:昇竜抜山刀を持ってるヤツを見つけ出し、殺して取り返す
3:シンケンジャーを殺す
4:加頭を殺す
5:杏子や翔太郎なども後で殺す
[備考]
※第四十八幕以降からの参戦です。よって、水切れを起こしません。





521赤く熱い鼓動(後編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:52:02 ID:0jYmc6CU0



「……しっかし、便利だなぁ、コイツ」

 カードゲームか何かの機体に備え付けられている椅子を勝手に幾つも並べて寝転がっている翔太郎は杏子から返された帽子の位置を直すと、杏子が持っているリンクルンとアカルンを手で弄んでいた。
 アカルンはピックルンの一つで、瞬間移動に使えると杏子が教えていたのだ。
 一キロ以上先には行けそうにないほか、参加者複数人での移動は、参加者の数だけ移動可能な距離が減少するものの、便利である事には違いない。連続使用も問題がないので、ゾーンメモリのような戦い方もできるはずだが、これはまた長距離での連続使用は難しそうだった。

「キィ?」
「うわっ! 喋った! なんだコレ……喋ったぞオイ! フィリップ!」

 アカルンが喋った事に驚きながらも、テンションを上げすぎて胸を抑える。
 やはり、胸骨が折れたのだろう。

『……もう今更、何が喋っても驚かないよ。何が喋ったんだかもよくわからないし……はぁ』

 多少興味があったようだが、フィリップは見られなくて残念そうにため息をついていた。
 無暗やたらと変身するのも問題なので、変身する気は起きなかったが。

「……」

 一方、杏子は、いつもの如く、ダンスのように楽しめるリズムゲームをやりながら、ひとり物思いに更けていた。
 エボルトラスターがその手にある。……これの使い方、あるいはあの巨人と一体化する事の重さもよくわかったが、やはり姫矢以外の人間にも会うべきなのだろうか。
 特にそう……孤門一輝という男が、杏子はずっと気になっていた。
 一応、広間にいた孤門という男の事は杏子も知っている。しかし、杏子の記憶の中で、孤門という男の顔はだんだんとはっきりしないものになってきた。
 茶髪だったような気もするし、黒髪だったような気もする。ハンサムだったような気もするし、普通だった気もする。その辺を捜せばいそうな普通の人で、はっきり言えば、すれ違った人のように、彼の事は忘れかけていた。
 まあ、警察署の方に向かえば会えるという事だが、生きているかが不安にもなってくる。

「どうした、アンコ」

 ザルバが杏子の様子を気にかけて、話しかけてきた。
 杏子は話しながらでも、画面に集中してゲームをする事が出来た。多少ミスが増えるが。

「この力の事だよ。……まあ、これの使い方はわかったし、何であたしに回ってきたのかもわかった。でも、この力は永遠にあたしの物なのかな?」
「……さあ、それは俺には少しわからないな」
「だから、孤門って奴を捜しに行きたいんだ。姫矢の兄ちゃんが、前に『不思議な力を授かったら孤門って奴に会いに行け』……って言ってたからさ!」

 姫矢准が自分たちと離れる時、その名前を出したのをよく覚えている。
 その男が協力してくれる……彼はそう言った。
 おそらく、姫矢の知り合いだったのだろう。姫矢を支えてくれた仲間かもしれない。
 とにかく、この光に詳しい人間がいるとしたら、その孤門一輝の他にいないだろう。

「……孤門一輝か。確かあの広間にいた、えーっと……あの青い服の」
「青い服? あ、そういえば青い服だったな!」
「へー、そんな奴がいたのか」

 ザルバは広間での出来事など知らない。

「警察の特殊部隊みたいな恰好してたよな。もしかして、それで警察署にいるのか?」
「そんなに仕事熱心なわけ……」

522赤く熱い鼓動(後編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:52:18 ID:0jYmc6CU0

 と、言いかけてから、翔太郎は照井の事を思い出した。
 あの男は流石に、警察署には立ち寄らない気がするが、警察という単語で思い出すのは彼だ。
 それでまた、どうも嫌な気分になって、曖昧な言い方になってしまう。

「……まあいっか。警察署に向かえば、他の奴らとも合流できるだろ」

 と、翔太郎が言った瞬間、ゲームが終わる。
 スコアはまずまずといったところだろうか。いろいろと話しながらゲームをするのはやはり大変である。身体も動かしたので汗が出る。
 ともあれ、これで翔太郎の心配をするにも問題がないというわけだ。

「身体は大丈夫なのか?」
「……ん。ああ、何とか……」

 翔太郎は、腹筋を使って身体を折り曲げ身体を起こす。
 ……と、同時に胸骨から激痛が走る。

「ぎゃあああああああああああああーー!!! ヘルプ! ヘルプ!!」
「……駄目じゃねえか」
「んな事言ったって、これたぶん骨折だぞ!! 骨折が放っといて治るわけねえだろ!!」

 体中に痣ができた状態とはいえ、やはり胸が一か所だけ、ものすごく痛むらしい。やはり、そこだけ痣の紫色がやたらと濃かったので、怪しい。
 殺し合いの場では、致命的な弱点が一つ出来てしまったといえるだろう。
 骨折など、ただでさえ安静にする必要がある状態だ。しかし、翔太郎はそんな事は無視する。

「ここで立たなきゃ男が……俺のハードボイルドが廃る! 行け……左翔太郎!! 立て、立つんだ翔太郎……うおおおおおおりゃああああああああ!!!!!!」

 ともかく、翔太郎は男の意地でゆっくりと起き上がり、半分涙目になりながら立ち上がる。

「……はぁ……はぁ……どうだ。立ち上がってやったぜ」
「いや、それは良いけど。歩けるのかよ」
「……はぁ……大丈夫……立ち上がれば歩けるはずだ」

 翔太郎は、立ち上がって数歩歩いたが、どうやらちゃんと歩けるらしい。
 足の方は、上半身に比べて痛みが少なく、辛うじて歩く時に足が痛むような事はない。
 胸が痛むのは、身体を深く折り曲げたとき。胸部に刺激があった場合だろうか。

「スゲーだろ……どうだ……杏子……記念に……プリクラでも……撮るか……」
「……いいよ別に。何の記念だよ」
「そうだな……俺が、動けるなら、……プリクラとか……やってる場合じゃねえしな」
「……んじゃあ、とにかく、このまま二人で警察署まで向かうか」

 二人の目的地はこのまま警察署だ。
 そこに行けば、孤門に会えるかもしれないし、他の様々な仲間たちにも会える。
 一つの目標地点としては間違ってない判断のはずだ。

「二人じゃねえ、三人だぞオイ、杏子」

 と、翔太郎。

『……この場合、僕は含めなくていいんじゃないかな』

 と、フィリップ。

「ちょっと待てよ。俺が入ってないぜ」

 これがザルバ。

「キィ」

 アカルン。ついでに、キルンも同じような事を言ったが、耳に入ってない。

「あー、人数の話はやめだ。ややこしすぎる。とにかく、全員で向かうぞ」

 ウルトラマンの光もたぶん、人格を持ってるような気がする。
 そうなると、本当に何人だかわからない。

523赤く熱い鼓動(後編) ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:52:32 ID:0jYmc6CU0
 杏子は混乱するので、人数を数えるのをやめて警察署に向かう事にした。



【1日目 午後】
【G−8 市街地(ゲームセンター)】

【左翔太郎@仮面ライダーW】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、胸骨を骨折(身体を折り曲げると痛みます)、上半身に無数の痣、照井と霧彦の死に対する悲しみと怒り、ダブルドライバーを一応腰に巻いてます
[装備]:ダブルドライバー@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式、ガイアメモリ(ジョーカー、メタル、トリガー)、ランダム支給品1〜3(本人確認済み) 、
    ナスカメモリ(レベル3まで進化、使用自体は可能(但し必ずしも3に到達するわけではない))@仮面ライダーW、ガイアドライバー(フィルター機能破損、使用には問題なし)
[思考]
基本:殺し合いを止め、フィリップを救出する
0:警察署へと向かう。
1:風都タワーを破壊したテッカマンランスは許さねえ。
2:あの怪人(ガドル、ダグバ)は絶対に倒してみせる。あかねの暴走も止める。
3:仲間を集める
4:出来るなら杏子を救いたい
5:泉京水は信頼できないが、みんなを守る為に戦うならば一緒に行動する。
[備考]
※参戦時期はTV本編終了後です。またフィリップの参戦時期もTV本編終了後です。
※他世界の情報についてある程度知りました。
(何をどの程度知ったかは後続の書き手さんに任せます)
※魔法少女についての情報を知りました。

【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、ソウルジェムの濁り(小)、腹部・胸部に赤い斬り痕(出血などはしていません)、ユーノとフェイトを見捨てた事に対して複雑な感情、マミの死への怒り、せつなの死への悲しみ、ネクサスの光継承、ドウコクへの怒り
[装備]:ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ、エボルトラスター@ウルトラマンネクサス、ブラストショット@ウルトラマンネクサス
[道具]:基本支給品一式×3(杏子、せつな、姫矢)、魔導輪ザルバ@牙狼、
    リンクルン(パッション)@フレッシュプリキュア!、乱馬の左腕+リンクルン(パイン)@フレッシュプリキュア!、ランダム支給品0〜1(せつな)
[思考]
基本:姫矢の力を継ぎ、翔太郎とともに人の助けになる。
1:警察署に向かい孤門一輝という人物に会いに行く。またヴィヴィオや美希にフェイトやせつなの事を話す。
[備考]
※参戦時期は6話終了後です。
※首輪は首にではなくソウルジェムに巻かれています。
※左翔太郎、フェイト・テスタロッサ、ユーノ・スクライアの姿を、かつての自分自身と被らせています。
※殺し合いの裏にキュゥべえがいる可能性を考えています。
※アカルンに認められました。プリキュアへの変身はできるかわかりませんが、少なくとも瞬間移動は使えるようです。
※瞬間移動は、1人の限界が1キロ以内です。2人だとその半分、3人だと1/3…と減少します(参加者以外は数に入りません)。短距離での連続移動は問題ありませんが、長距離での連続移動はだんだん距離が短くなります。
※彼女のジュネッスは、パッションレッドのジュネッスです。技はほぼ姫矢のジュネッスと変わらず、ジュネッスキックを応用した一人ジョーカーエクストリームなどを自力で学習しています。

524 ◆gry038wOvE:2013/08/19(月) 15:52:59 ID:0jYmc6CU0
以上、投下終了になります。

525名無しさん:2013/08/19(月) 16:05:19 ID:fT72Xp.c0
投下乙です!
杏子のネクサス新スタイルキター!
ジェネッスパッションかあ
いろんな人の絆を受け継いだ杏子の新たな力、まさしくネクサス―絆―ですね!
改めて、投下乙です!

526名無しさん:2013/08/19(月) 18:37:38 ID:M38vDgUg0
投下乙です!
杏子、新しいジュネッスになっただけじゃなく、アカルンにも認められたか……
あのドウコクすらも倒すなんて、凄いな!

527名無しさん:2013/08/19(月) 21:50:45 ID:yorz1Yqs0
投下乙です

あんこちゃんかWのどちらかの死亡かと予想してたがいい意味で裏切られたぜw
まさかあんこちゃんがこうなるとは…
だが原作ウルトラマン組と出会ったらこれは…

528名無しさん:2013/08/20(火) 00:02:05 ID:hmb4vgewO
投下乙です。

食べ物を粗末にしない。
それはつまり、糧を、過去を粗末にしないという事。
死なせたもの、殺したもの、支えてくれるものを粗末にしないという事。

それから大将。
村に向かうのは死亡フラグだぞ!

529名無しさん:2013/08/20(火) 05:57:20 ID:IQ1ozkS6O
最強マーダーと言われた途端にこの大転落である

530名無しさん:2013/08/20(火) 07:28:12 ID:S/8fSYJ60
投下乙です
姫矢さんとせつなの二人の力でパワーアップとか熱い展開だな
後はこのまま上手く孤門と出会えるかだが…

>>529
本来の得物が無くて実力を発揮できてないから(震え声)

531名無しさん:2013/08/20(火) 08:31:44 ID:3kT2d3tc0
普通に現状だとガドル、バラゴ、ドウコクで三強じゃね
てか、ドウコクって原作でも他の敵キャラや人間側のドラマに尺食いすぎて、水切れ克服後はあっさりやられてた気が

532名無しさん:2013/08/20(火) 16:27:50 ID:Sl0IrALI0
あっさりとはいっても、最終回でも一度シンケンジャー倒してるんだけどな
ドウコクは基本飲んだくれのニートだけど、終盤はむっちゃかっこよくて好き

533名無しさん:2013/08/20(火) 17:35:15 ID:FLW69myQ0
前にディエンドライバーを使って変身したアヤカシがいたけど、こいつらがドライバー奪って変身したらあんなヤバい外見になるんだろうか

534名無しさん:2013/08/20(火) 21:42:54 ID:IQ1ozkS6O
>>533
それって普通にドーパントになるだけでね?

535名無しさん:2013/08/21(水) 09:27:45 ID:YEAtrJEs0
スカルの頭をドウコクの耳が突き破ってるのが思い浮かんだ

536名無しさん:2013/08/21(水) 15:39:22 ID:R.QAiS620
あの巨漢でベルト巻けるのか?>ドウコク大将

537名無しさん:2013/08/21(水) 18:28:49 ID:sPNjER1YO
>>532
門限が厳しいから(水切れ)、「じゃあもう出かけねえよ!」ってなってるんだよ。

538名無しさん:2013/08/22(木) 00:13:19 ID:kXZ3tB9o0
>>536
ダブルのドライバーとかは、なんかバックルの部分をお腹にやるとシャーーーーって巻かれるから大丈夫じゃね

それはそうと、ジュネッスパッションのイラスト描ける人いねえかな

539名無しさん:2013/08/22(木) 23:16:53 ID:uDZUHAQU0
やってない展開の話は書き手にとってアレだから、たまには過去の話でも
前にやった人気投票は人来なかったけど、感想は来てるし代わりに何か過去の作品についてを語ったらどう?

540名無しさん:2013/08/24(土) 02:21:14 ID:1uOFS33s0
作品語りは苦手かなあ
好きな作品は多数あるけど一人で脳内で反芻するのが好きだし

541名無しさん:2013/09/02(月) 16:10:43 ID:k.eRTMZQ0
予約キター!

542 ◆gry038wOvE:2013/09/08(日) 22:58:48 ID:IOxj67F60
それでは、予約分を投下します。

543Bad City 1 : Shape of my Heart ◆gry038wOvE:2013/09/08(日) 22:59:19 ID:IOxj67F60

 仮面ライダースーパー1となった沖一也は駆ける。
 この広い街を、ただ己の足で駆ける。行き先は警察署だ。改造人間である彼には、地図通り正確に最短距離を導き出し、それに伴った走りができるので、着々と警察署までの距離は縮まっていく。
 その速さは、アスリートが代わる代わるバトンタッチをしながら走っても、追いつけないどころか最初の一人以外がその姿を見られないほどである。
 そんな速さで駆けながらも、周囲の景色全てに目を通して記憶しているのだから、驚くべき“性能”である。

(距離はおそらく残り数千メートル……!)

 警察署までの残りの距離は既に数えるほどになっていた。数千メートルといっても、六千〜九千メートルほど開いてはおらず、二千〜四千メートル程度だろうと推測される。おそらくスーパー1自身はこう思った直後には、ほぼ正確な距離を導き出していたに違いない。
 地図が正確ならば、これまで歩いてきた距離からだいたい計算できる。現在地、警察署、中学校を点とした三角形が出来上がっているのである。その距離も歩きながら計測していた。残りの一辺がどの程度の長さなのか求めるのは、あらゆる数式が幼少期から刻み込まれた沖一也の脳には、それは容易な事だったし、感覚が発達した事でより正確に思考を模索する事ができた。

(──いや)

 しかし、そこで導き出した計算結果を次の瞬間には否定した。
 彼が否定したのは、自分が導き出した計算結果そのものではなく、そもそも「警察署までの距離を計算せねばならない」という前提であった。計算する必要性が消えたのである。
 何故ならば、彼の眼前には既に“それ”が映っていたからだ。

(──距離、五十メートル! ヴィヴィオちゃんだ!)

 スーパー1は己の身体にブレーキをかけた。
 彼の眼前には、アインハルトの友人であり、沖とも面識のある高町ヴィヴィオと、かつて交戦した強敵・ダークプリキュア、そして白いスーツを着た異形の怪人が歩いていたのである。
 その中でも、真っ先にヴィヴィオに気づいたスーパー1は足を止める。
 それと同時に、ダークプリキュアや、彼女を引き連れた怪人に対して警戒したので、赤心少林拳の構えのまま、地面を滑った。
 警察署にいたはずのヴィヴィオがここにいる。──ひとまずは彼女に事情を聞く事ができるだろうから、急いで警察署まで向かう必要は消えてきた。

 しかし、相手方もまた不可解な事情を抱えているように思えた。

 敵であるダークプリキュアとヴィヴィオが一緒にいる意味と、目の前の怪人の姿は嫌でも気になった。ヴィヴィオはさほど嫌そうな顔もしていないが、やはり怪しい。
 それに、ダークプリキュアの方に目をやれば、彼女はこちらの登場に一切反応する事なく、まるで置物のように虚空を見上げている。彼女の様子も気がかりだが、それよりもまずは動いて喋る標的に訊かねばならない。

「……なんだ、お前は!?」

 スーパー1は相手の怪物にそう問おうとしたが、最初にそれを訊いたのは、ダークプリキュアたちを引き連れた怪人の方であった。。
 相手も異形の戦士・仮面ライダースーパー1の姿に戦慄したようである。
 豪奢な白いスーツの人間がグロテスクな甲虫のマスクを被ったような怪人は、まさしく「怪しい人物」という言葉には近い存在である。

 少なくとも、スーパー1が戦った改造人間に比べれば、遥かに人間に近い外見であったと思う。首から下だけの写真を見せれば、おそらく誰もが普通の人間と錯覚する。
 むしろ、スーパー1の方が人間から遠ざかった姿であるといえよう。身体のどこを映しても人間には見られない存在である。……だからこそ、相手の怪人はこのように驚愕しているのだ。
 しかし、だからといって弱みを見せるわけにはいかない。

「俺は仮面ライダースーパー1だ! お前こそ何者だ! 何故、ヴィヴィオちゃんたちを連れている!」

 仮面ライダースーパー1はその名を相手に名乗り、同時に相手の名を訊く。
 彼がどんな人間であれ、おそらく名前くらいは存在するだろう。名簿が支給されている以上、この怪人にも名前は存在する。偽名や異名であっても良い。とにかく、初対面の怪人など、名前だけが正体だ。

544Bad City 1 : Shape of my Heart ◆gry038wOvE:2013/09/08(日) 22:59:47 ID:IOxj67F60

 しかし、返ってきたのは、

「かめんらいだーすーぱーわん………………えっ!? 沖さん?」

 という少し間の抜けた返事だ。
 その返事で、スーパー1はその構えを解き、腕を下した。

「何ッ!?」

 沖さん、と呼ばれたのは少しばかり意外だった。相手はスーパー1と名乗っても、絶対に反応しない相手だと思っていたのだ。
 しかし、沖さん──と呼ぶからには、彼は顔見知りだろう。声質は曖昧でわからないが、「彼は一体……?」と思いつつ、スーパー1は自分の記憶を探る。
 相手も名乗っていないので、結局正体はわからないが、顔見知りならば自分の推測でわかるはずだ。

(この怪人は……一体、誰だ?)

 この怪人は何者か──ダークプリキュアを絡めず、とにかく自分の記憶上にいる人間から考えようと、記憶を探る。
 仮面ライダースーパー1と名乗り、それと沖を結び付け、沖を「沖さん」と呼ぶ人間であるとすると、誰だろうか。
 いつきやアインハルト、美希はスーパー1の姿を見ているので違う。一文字や結城ならば「沖さん」とは呼ばない。乱馬も違いそうだ。そもそも、乱馬やあかねといった人物には、沖が仮面ライダーであるという情報そのものが行き渡っているかもわからない。沖も彼らについてあまり知らないのだ。……まあ、孤門が話した可能性はあるだろうが。

 そう、孤門一輝──彼だ。

 この挙動や喋り方は、孤門のそれに近い。

「孤門……? 君は孤門一輝か!?」
「ハイ。孤門一輝です」

 マスク越しに孤門が答えた。言われてみれば、この怪人──パペティアードーパントの声は、孤門の声にも聞こえてきた。
 警戒する必要などなかったのだ。
 とにかく、孤門とヴィヴィオの二名は無事だったようだ。
 スーパー1は、ほっと胸をなでおろす。
 それから、また精悍な顔つきで、ヴィヴィオの名前を呼ぶ。

「ヴィヴィオちゃん」

 ダークプリキュアと一緒にいたので、もしかするとヴィヴィオはあの怪人たちによって自由を奪われ、従わされているのではないかと思ったが、それは杞憂だったらしい。ヴィヴィオは「はい」とだけ答える。
 彼女も、別に沖が何かの要件があるために名前を呼んだのではないと理解していた。

「孤門」
「はい」
「……二人とも、驚かせてしまってすまない」

 スーパー1はそう謝罪すると、変身を解除し、沖一也へと姿を戻す。
 その姿は確かに沖一也のものだったので、二人の顔に安心が灯った。見るからに肩の荷が下りたという感じである。実際に肩の力が抜けていくのが見て取れた。
 やはり、人間としては、目の前にいるのが人間であった方が安心する。そういう意味では、怪人のままの孤門と歩いていたヴィヴィオは大変だろう。
 久々に人間を見たという表情だ。

「……ところで、二人とも何故警察署を離れているんだ? それに、ダークプリキュアは……」

 沖はすぐに思考を切り替え、ダークプリキュアに目を向ける。先ほどから気になっていたが、彼女は「殺意がない」というよりか、「生気がない」というほどに人間らしさが消えていた。
 沖に向けて何かを言う事もなく、顔を上げる事さえない。
 ダークプリキュアの様子に関して、沖としてはぜひ訊きたいところだった。
 一度襲われたとはいえ、ダークプリキュアの身を案じるほどにダークプリキュアは生気を失っているのである。襲われた方がかえって気味の悪さは感じなかっただろう。

「……それが、突然襲撃されたので、ガイアメモリの能力で、ダークプリキュアを鎮めているんです。そのせいで、僕自身もドーパントの変身を解除できないんですけどね」

545Bad City 1 : Shape of my Heart ◆gry038wOvE:2013/09/08(日) 23:00:38 ID:IOxj67F60

 孤門は要点だけを話した。
 これだけでは、ガイアメモリに関する知識のない沖には伝わりにくいかもしれない。
 彼はここまで戦ってきたとはいえ、ガイアメモリという道具に