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パワプロクンポケットバトルロワイアル Part6
1名無しさん:2013/02/20(水) 01:56:26 ID:HMbmHUX60
野球バラエティゲーム・パワプロクンポケットシリーズのキャラクターでバトルロワイアルをするリレーSS企画


パワプロクンポケット・バトルロワイアル!(例のタイトルコールの声で)


(この企画は性質上、版権キャラの残酷描写や死亡描写が登場する可能性があります。苦手な人は注意してください)



・パワプロクンポケットバトルロワイアル専用したらば
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/11574/
(予約はここにある予約スレで行ってください。予約期間は三日間です)
・まとめwiki
ttp://www33.atwiki.jp/pawapokerowa
・前スレ
パワプロクンポケットバトルロワイアル Part5
ttp://kohada.2ch.net/test/read.cgi/pokechara/1268923277/

2名無しさん:2013/02/20(水) 01:57:12 ID:HMbmHUX60
参加者名簿

3/3【パワプロクンポケット】
○進藤明日香/○平山紀之/○教頭

4/4【パワプロクンポケット2】
○二朱公人(主人公)/○荒井紀香/○凡田大介/○曽根村

4/4【パワプロクンポケット3】
○三橋一郎(主人公)/○四路智美/○たかゆき/○鋼毅

1/1【パワプロクンポケット4】
○天本玲泉

1/1【パワプロクンポケット4裏】
○プレイグ

2/2【パワプロクンポケット5】
○埼川珠子/○塚本甚八

1/1【パワプロクンポケット5裏】
○愛

4/4【パワプロクンポケット6】
○荻原新六(主人公)/○島岡武雄/○青野柴夫/○ほるひす

3/3【パワプロクンポケット6裏】
○ヘルガ/○落田太二/○メカ亀田

7/7【パワプロクンポケット7】
○七味東雅(主人公)/○倉見春香/○芹沢真央/○レッド/○ブラウン/○東優/○野丸太郎

3/3【パワプロクンポケット7裏】
○七原正大(主人公)/○黒羽根あやか/○布具里

8/8【パワプロクンポケット8】
○八神総八郎(主人公)/○白瀬芙喜子/○高坂茜/○森友子/○灰原/○リン/○上川辰也/○黒野鉄斎

4/4【パワプロクンポケット9】
○九条英雄(主人公)/○椿/○夏目准/○太田洋将

2/2【パワプロクンポケット9裏】
○エリ/○カネオ

7/7【パワプロクンポケット10】
○十波典明(主人公)/○芳槻さら/○大江和那/○神条紫杏/○越後竜太郎/○浜野朱里/○アルベルト・安生・アズナブル

2/2【パワプロクンポケット10裏】
○タケミ/○ピエロ

3/3【パワポケダッシュ】
○小波走太(主人公)/○芽森わん子/○二ノ宮金太

1/1【パワポケ甲子園】
○甲子園児(主人公)

60/60

ネタバレ名簿
ttp://www33.atwiki.jp/pawapokerowa/pages/28.html

3 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/20(水) 02:01:15 ID:HMbmHUX60
予約していた荒井紀香、曽根村、高坂茜、灰原、萩原新六、ほるひす、凡田大介、三橋一郎、八神総八郎、四路智美を投下します。

4魔弾〜Der Freischutz〜 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/20(水) 02:02:29 ID:HMbmHUX60


その日から扉は閉まったままだ。
俺たちの家には、まだ茜もリンも帰ってこない。


『人形なんだ!』


引き金に指をかけ続けたまま生きているような人生で、その暮らしだけが別だった。
硝煙の匂いからかけ離れた生活。
覚えている限りでは初めての家族だった。
俺が兄で、リンが姉で、茜が妹。
少なくとも、三人が出会った頃はそうだった。
いつ頃からそれが変わったのか、詳しくは覚えていない。
男と女が引っ付いてれば別の感情が生まれてくるのは当然だ。
愛情にも種類があることを俺は初めて知った。


茜が俺を愛して、俺が茜を愛して、リンが気づいて。


悪いのは勝手に出て行ったリンか?
悪いのは兄妹の殻を破った俺たちか?


違う。
全員が不器用だっただけだ。
家族を知らない不器用な連中が、家族に憧れて家族を真似た結果がこのザマだ。


『幸せしか見えない、人形になればいいんだ!』


あの空間にはもう誰も居なくなったことに茜は気づいていない。


あの空間が一つが欠けてしまえば全てが壊れてしまう『物』だったことにリンは気づかなかった。


あの空間が失くなったことに俺は嘆いている。


俺だけが、未だにもう戻らないものをねだっている。

5魔弾〜Der Freischutz〜 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/20(水) 02:03:21 ID:HMbmHUX60


   ◆   ◆   ◆


「茜……」
「むぅ、なんですかもう!」

茜は少し苛立ったように声を荒げる。
だが、八神は知っている。
その怒りが本当の怒りでないことを。
形だけの、心のない怒りであることを。
子供がじゃれる時の不機嫌の演技なのだ。

「なにって……その……!」

それでも八神は言葉が出てこない。
茜の虚ろな目に見つめられるだけで、言葉は消え失せる。
その奥に眠るものは、なにもない。
その目が映しているものは、実のない虚ろな世界だ。

「ッ……!」

そんなことは八神が誰よりも知っている。
茜の心が壊れてしまっていることは、誰よりも知っているのだ。
茜を壊したのは、他ならぬ八神自身なのだから。

「とりあえず……落ち着いてくれ、落ち着くんだ」

口からこぼれた言葉はそんな言葉だった。
落ち着けと口にしている八神が誰よりも動揺している。

(……くそっ、そんなことを言いたいわけじゃない!)

八神はそのことを噛み締めながら、けれども『本当』の言葉が出てこない。
茜と目が会うだけで、心が凍ってしまうのだ。

――――違うというなら、何が言いたいのだ? 殺し合いをするな、そう言いたいのか?

「違う!」
「な、なんですか? 茜、なにか悪いことしちゃいましたか?」

突然上げた叫び声に、茜は先程までの不機嫌な顔を一転して泣き顔へと変化させる。
茜が何よりも恐れているのは死の足音でも殺人への罪悪感でもない。
ただ、兄に否定されるという事象だけに怯えているのだ。

「と、とにかく、その機関銃を渡すんだ……」
「これですか? わかりました」

すんなりと機関銃を手渡してくる。
八神の想像よりも、あっさりと、簡単に。
やや呆気に取られていると、茜は言葉を続けた。


「で、次はなにをすればいいんですか? 私、お兄ちゃんのためなら頑張ります!
 殺すのは思ったより難しいですけど、お兄ちゃんの言うことなら出来ちゃいますから!」


その言葉に、銃弾を撃ち込まれたような衝撃が走った。

6魔弾〜Der Freischutz〜 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/20(水) 02:04:07 ID:HMbmHUX60


「そうだよな……そういうことに、なっちゃったんだもんな」


八神はようやく思い出させられる。
茜の瞳に映っている世界は狂気の世界だ。
狂った、優しい世界だけが映っているのだ。

「……なあ、茜」

(その世界じゃ、俺はお前に人殺しをさせる男なのか?)

そう考えながらも『それも当然じゃないか』と心のどこかで自嘲していた。
茜を壊したのは八神とリンだ。
誰がなんと言おうと、この二人以外に茜の心を壊せる人間が居るわけないのだから。

「お前は、ずっと俺のことが好きだったもんな……」
「はい、茜はお兄ちゃんのことが大好きです!」

突然に話題が変わったというのに、茜は言葉を返してくる。
その言葉が八神の心を撃ち殺していく。
その言葉は、八神の聞きたい言葉ではない。
そんな、中身の無い言葉は。

「お前は、ずっとリンのことが好きだったもんな……」
「はい、茜はお姉ちゃんのことが大好きです!」

茜が好むのはリンと八神だけだ。
八神とリンしか、擬似家族しか茜の世界には存在しないのだ。

「お前は嫌われてたもんな……そういう、世界だったんだもんな……」

茜はそういう世界に居たんだ。
愛されずに、愛したくて、愛されたくて、愛し方もわからなくて。
愛する人に愛されないのが、我慢ならなくて。
だから、自分の感情を拒絶した。
人を受け入れるだけの人形になった。

「なあ、茜……」
「はい!」
「……人はな、殺しちゃいけないんだ」
「はい!」
「だからな、もう、茜は人を殺しちゃいけないんだ」
「あっ……ご、ごめんなさい!」

謝っているが、謝っていない。
茜にはもう心がないのだから。
この後に八神が「やっぱり人を殺してもいいよ」と言っても、茜は疑問を覚えない。

「ごめんなさい! 私、その……ごめんなさい!」

茜にとっての世界とは兄と姉だけだから、それ以外のことはどうでもいいのだ。
茜が謝っているのは、殺してしまった人間にではない。
八神に謝っているだけだ。
それも、その謝罪も形だけのものだ。
兄に怒られたから謝るという、茜にとっての家族関係の定形に従っただけなのだ。

7魔弾〜Der Freischutz〜 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/20(水) 02:04:56 ID:HMbmHUX60

「こんなんじゃない……こんな……こん、な……」

八神が愛した茜は、今の茜じゃない。
八神が壊した茜は、八神の愛していた茜ではなくなってしまった。

「なあ、茜」

八神の心を傷付けられるとすれば、それは茜だけだ。
茜が八神とリンによって傷つけられたように、八神の最愛が茜である以上八神を傷付けられるのも茜だけなのだ。

「俺と死んでくれるか?」

狂気は伝染する。
最愛の女が狂った事実が、密かに八神の心にも影響を与えていた。
絶対に口に出してはいけない言葉。

「はい! 茜、死ぬのは怖いけど、お兄ちゃんと一緒なら大丈夫です!」

――――その言葉を口にした時、茜の返してくる言葉は、軽い言葉なのだから。

「お兄ちゃん、死んでほしくないけど……茜と死んで欲しいって言ってくれるのは嬉しいです!」

わかっていたことだ、殺されもいいと言ってくることは。
茜が八神を拒絶しない。
その代わりに、本当に受け入れることはもうない。

――――もう、茜は俺を見ていない。

どれだけ言葉を尽くそうとも、茜にとっての『八神総八郎』は理想の『八神総八郎』に固定されてしまっている。
『恋人』になりたい男ではなく、『兄』としての八神総八郎に。

「ハ……ハ、ハハハ!」

茜は『兄』という絶対の存在に、ただ寄りかかってくるだけなのだ。
銃を構える。
今まで構えてきた銃の中で、一番重たい銃だった。

「ゥ……ッ……!」
「……お兄ちゃん?」

たっぷり五分。
引き金は絞れなかった。

――――茜の中にある『兄』は、壊れるような人間ではない。

壊れた八神なんて、きっと許してはくれない。

「嘘、嘘だよ……お前を殺すなんて……嘘だよ……殺せるわけ、ないだろ……」
「あっ……騙されちゃいました!」

もう、茜に説得は意味がない。
八神が『殺すな』と言えば茜は簡単に殺し合いに反対する。
茜にとって殺し合いとはその程度にすぎないのだから。
だから、茜に殺し合いを止めさせることは簡単だった。
ただ、それだけだ。
やめろ、と言えばいいだけなのだ。

8魔弾〜Der Freischutz〜 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/20(水) 02:06:08 ID:HMbmHUX60


「もう、駄目なんだよな」


そう考えると、涙が零れてきそうになった。
なのに、泣けない自分が哀れだった。
涙を流す資格なんてないことを、八神の心が何よりも知っているのだ。


「お、お兄ちゃん? どうしたんですか?」
「なんでもないさ……少し、歩こうか」


病院へと連れて行く。
八神の方針は決まった。
きっと守ると、人形になった今でも茜を守ってみせると。


「お前にはさ、もっといっぱい世界を知って欲しかったんだ」


茜の世界には八神しか居ないのだから、八神が守るしかない。
茜にとっては他人は敵でも味方でもない。


「俺の居ない世界や、俺の知らない世界や、俺じゃない世界で……」


病院が近づいてくる。
手には、茜の温もりだけがある。


「お前には、いっぱい幸せになって欲しかった」


八神は病院へとたどり着く。
ひとまずの難関は、智美たちにどのように説明するかだ。
許してくれるとは思わない、茜は人を殺したのだから。
それでも、八神は茜を守らなければいけないのだ。


それが、八神に科せられた呪いのような、優しい罪。

.

9魔弾〜Der Freischutz〜 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/20(水) 02:06:55 ID:HMbmHUX60

「…………茜」
「はい?」

だからこそ、ここで決着をつけて置かなければいけない。
病院の一階、智美たちは上の階で様子をうかがっているはずだ。
智美達と言葉で『戦う』前に、自分の気持ちを、捨てなければいけない。
茜との関係を、固めなければいけない。

「……好きだ、愛してる」
「えへへ、私もお兄ちゃんのこと大好きですよ!」


――――お前の見る世界に俺はもう居ない。


「お前が好きなんだ……遅すぎたけど、やっと言えた。
 あの日から言えなかった言葉だ……くそっ、クールなんて気取れなくなったぞ……!」
「やっ、そんな何度も言われると、なんだか照れちゃいます……!」


――――お前の見ている俺は俺じゃない。


「好きだ……好きなんだよ、お前のことが……」
「はい、私もお兄ちゃんのこと好きです!」


――――俺のことを『好きだ』と言ってくれる茜は、もう居ない。


「愛してるんだよ……!」
「私も愛してます!」


――――違うんだ、そんな言葉じゃないんだ。


「だから、愛してくれよ……!」


喉から零れ落ちたのは、懇願の言葉だった。


.

10魔弾〜Der Freischutz〜 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/20(水) 02:07:27 ID:HMbmHUX60










「―――――無様だな」









応えた言葉は、茜の言葉ではなかった。

光るは、陽光を反射する刃の一閃。
飛ぶは、愛しても愛してくれない人形の首。
出るは、二つの足で地面を踏みしめる猟犬の姿。

灰原が、茜を殺していた。


.

11魔弾〜Der Freischutz〜 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/20(水) 02:08:09 ID:HMbmHUX60



   ◆   ◆   ◆



四路智美は一度集団に戻り、タイミングを待っていた。
部屋を入ると、暗い雰囲気が漂っている。
出口のない迷路を延々と続けさせられるような、理不尽に対する不満と悲しみがあった。

「そんな……」

凡田が悲嘆の声を出す。
その原因は先ほど流れたばかりの放送にある。
死者の発表の中で九条の名が呼ばれていた。
智美の中では間違いなく死んでいるだろうという確信があったが、凡田は薄い可能性にすがっていたようだ。

「くじょう……あずま……くろの……」

そんな中でもほるひすは言葉を続ける。
不気味な存在ではあるが、凡田のように九条たちの死に動揺していた。
そんな動作でこの生き物も人間のように知能を備えた生き物だとようやく感じた。

「ふ、ふふーん……ふ……ふーん……」

紀香もまた動揺している。
その様子に少々後ろ暗い快感を覚えたが、すぐに気持ちを切り替える。
今大事なのは死んだ人間のことではない。
どのように死んだ人間を増やすか――――つまり、どうやって殺すかということだ。

(……とは言え、難しいわね)

今のままだと八方ふさがりだ。
重要なものは、いつ裏切るべきかというタイミングである。
ただ裏切っただけではいけない、より絶大な効果を上げるために必要なタイミングを探らなければいけない。
例えば、目の前のベッドで眠るタイムパトロールを名乗る萩原新六を殺すことは容易い。
だが、そこで終わってしまう。
凡田大介、八神総八郎、新井紀香、ほるひす、曽根村、新たに現れたサングラスの男、緑髪の少女。
残った七人を的確に殺すことができない。
ベストのタイミングを探らなければいけない。

「……このまま、居続けるんでやんすか?」
「なんの情報もなく外へ出るのも危険でしょう」

智美は凡田の言葉をバッサリと切り捨てる。
階下では茜が殺されたことをこの場の六人は知らない。
探知機を持っている智美にしても、探知機のことを秘しているためにまだ情報を手に入れていないのだ。

期せずして、そのタイミングはやってくる。
人を殺すための機会は、常に人の死によって訪れるのだ。

12魔弾〜Der Freischutz〜 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/20(水) 02:09:16 ID:HMbmHUX60


   ◆   ◆   ◆


八神の身体に染み付いた戦闘経験が咄嗟にとった行動は回避行動だった。
突然の出来事によって引き起こされる動きは反復行動が物を言う。
返す刃で八神の生命を狙っていた灰原は追撃しようとする。

「むっ……!」

だが、茜の身体、いや、茜の死体が不可解な動きを見せて灰原の動きを阻害する。
瞬時に死体を処理するが、すでに八神は十分な距離を取り直していた。

「……隊長?」

その時にようやく下手人の姿を目指する。
濃紺のスーツと黒いサングラスをつけ、手に刀を持った男だ。
この男の正体を八神はよく知っている。
灰原、違法サイボーグ対策室の実質的リーダーだ。

「……お前を殺せるチャンスだと思ったのだがな」

灰原は手に持った抜き身の刀をそのままに、無感情な声を出す。
茜とは違った、底冷えのするような声だ。

灰原が病院に潜伏して真っ先に行ったことは、病院内部を探索することだった。
この病院を拠点にする場合には内部構造を把握しておく必要がある。
また、病院内部に人が居る場合でも『狩り』の作戦を考える意味でも病院に詳しくなくてはいけない。

「貴方は、いや、アンタはやっぱり……!」
「当然、殺し合いに乗っている」
「ッ……CCRは私的機関だと思ってたが、その予想は当たったかな」
「……? まあいい、どうやらお前は殺し合いに乗っていないようだな。予想通りだが」

灰原は一瞬怪訝な表情を浮かべたが、すぐにいつもの仏頂面へと戻る。
そして、八神に疑問を投げかけた。

「そんなことをしてどうなる?」

灰原のサングラスの奥の瞳に色はなく、同時にその声にも感情というものは存在しない。
文面だけならば疑問に満ちたその言葉も、耳にする声には何も含まれない空虚な音だ。

「そんなことをしてどうなる、ですか」

思わず笑ってしまう。
やはり、灰原は決定的に違う。
白瀬ならばそんなことを聞いたりはしない。
いや、聞くかもしれないが心の底ではその理由を分かるはずだ。
馬鹿にするかもしれないが、それでも白瀬なら理解できる。
だが灰原は尋ねた、本当に不思議そうな音色で。
この人には、今の八神の気持ちなど理解できないだろう。
全部投げ出してしまいたい気持ちと、惚れた女が求める姿からかけ離れた無様を晒したくないという二つの気持ち。
今の八神を動かしているのは、茜が望まないからという一種の義務的な狂信なのだ。

13魔弾〜Der Freischutz〜 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/20(水) 02:10:16 ID:HMbmHUX60

「人殺しなんて、CCRの仕事じゃないでしょう?」
「……やはり今更だな、八神。同じやり取りを二度やるつもりはない。これはオオガミのためだ」

灰原は刀を抜き取り、茜の死体を投げ捨てる。
人外の力で投げ飛ばされた茜はバウンドをして地面を転がっていく。
八神の心に怒りが湧き上がるが、灰原はそれを無視して言葉を続けた。

「お前は今までもオオガミ製の脱走アンドロイドを間接的とはいえ手にかけた。
 そのお前が今さら何を気取る必要がある……俺には理解できん。
 それにお前は優れたエージェントだが、たった一人で我威亜党を潰せるとでも思ってるのか?」
「やってみなくちゃわからないでしょう」

八神は機関銃を手にしながら、灰原の言葉を簡単に返す。
殺されるのなら、それでも良かった。
ただ、茜の兄のまま死にたかった。
それだけが、茜を壊した罪を償う道だと思ったからだ。

「……万が一、生き残ってここを逃げ延びたとしても、お前は敵対したオオガミをどうすることも出来ない。
 何をしようが、お前は一生お前のままでしかない。
 過去の所業を消せるわけがない、お前は兵士だったことを見知らぬ誰かに恨まれ続ける。
 お前がなにをどうしようと、過去は消せん。やり直すことなど出来はしない。
 汚れたお前がヒーローになどなれはしない。
 ――――オオガミに戻って来い、お前は思想を書き換えれば優秀な兵士だ」
「…………なるほど、未来の俺はうまくやったみたいですね」
「なに?」

八神は灰原の長々とした口上を聞き終えると、鼻で笑い一刀に切り落とした。
八神は八神だと灰原が言ったように、八神が正しくないと思ったことはやるわけがない。
そんな軟弱な男は茜の兄でも、恋人でもないのだから。

「そう言えば理由を聞きましたね、隊長……きっと、『前』と同じ理由です」
「……くだらんな」


理由なんて。


「……けじめ、ですよ」


人が動く理由なんて、後悔はしたくない、なんてちっぽけなものでいいんだ。


「……そうか。ならば、ここで終わりだ。最後の任務として、俺に殺されろ」
「……ええ、貴方を殺して、CCRとは完全に縁を切りますよ」

そこで会話は終わりだ。
機関銃を身体で固定して引き金を思いっきり絞った。

「俺の怒りと一緒に受け取ってくださいよ、隊長!」

ここで蜂の巣になって終わってくれればいいが、そうはいくまい。
何せ八神が銃口を向けた相手は灰原だ。
違法サイボーグ取締室、CCRの実質的リーダーとして最前線に立ち続けた戦闘のプロ。
素早く階段を昇り、鋼の弾幕を難なくかわしている。

14魔弾〜Der Freischutz〜 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/20(水) 02:11:56 ID:HMbmHUX60

「ツレないな……!」

これ以上撃っても弾の無駄だと判断して機関銃の引き金にかけた力を抜く。
銃撃は止んだというのに、灰原は姿を表せない。
恐らくゲリラ戦を誘っているのだろう。
なにせ、向こうの武器らしい武器は刀一本であるため火力では圧倒的に八神が上だ。

ならば搦め手を使ってくるのは当然と言える。

(だけど、一瞬で決めてくる……)

恐らく一度だけの奇襲で仕留めるつもりで来るだろう。
そう言う男だ、隙を逃さずに確実に無駄なく動いてくる。
CCRの灰原とは吐き気がするほど丁寧で嫌らしい動きをする男なのだ。

「……」

灰原を放っておく訳にはいかない。
茜を殺したという感情的な面も大きいが、灰原を放っておけば上階にいる智美たちに危害が及ぶ。
静かに、しかし、素早く階段を登って灰原を追いかける。

(どこだ……どこから来る……)

八神は灰原の視点となって、奇襲をするのならば場所は何処にするか考える。
まず狭い場所に誘い込むだろう、機関銃を持っていると小回りが効きにくい場所を選ぶ。
広く開けた場所では機関銃を持っている八神が圧倒的に有利だ。
つまり、物で溢れかえり狭い部屋。

「……」

だが、問題はない。
危険も犯さずに勝てるような相手ではない。
無傷のまま確実に殺せるなんて考えてはいない。
肉と骨を削る覚悟なしで倒せるわけがないのだ。

(……倒すなら、一瞬だ。その一瞬を確実に物にしてみせる)

壁を背にして横歩きで移動しながら八神を灰原との戦闘をシュミレートする。
機関銃は絶大な火力を持っているが、当たらなければ意味が無い。
それを回避する術を灰原は身に着けている。
ならば、工夫が必要だ。

15魔弾〜Der Freischutz〜 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/20(水) 02:13:15 ID:HMbmHUX60

灰原の殺気が充満するフロアをゆっくりと歩き回る。
この殺気は八神の精神を削りつつ、目当ての場所に誘っている。
灰原としても八神をここで殺しておきたいと、そう考えているのだ。

一つの部屋に足を踏み入れる。
順々に、手当たり次第踏み入れていく。

「痛っ!! なにをするんじゃい!」

そんな中で突然声が響いた。

(……なんだ?)

響くのは、聞き覚えのない中年らしき男の声。
まさか、八神たち以外に人間が居たとは予想できず明らかに動揺してしまう。
しかし、それだけが隙にはならない。
八神は注意深く声のした部屋の扉を開ける。

トップエージェントである八神に隙はない。

「ったく、なんじゃいなんじゃい!」

だが、そんな冷徹さも瞬時に消え去った。
部屋の中に居たのは、いや、部屋の中には誰も居なかった。
変わりに、八神の常識を三段飛ばししたかのような超常現象が現れた。

――――ボールが喋っていた。

動揺という言葉も優しく思えるほどの精神的な衝撃が、八神に致命的な隙を作った。

「つぅ!」

腹部に激痛が走る、隣室から現れた灰原の日本刀に斬られたのだ。
つまり、ボールが喋った理由はわからないが、この状況は灰原の作戦の一つ。
そんな簡単すぎる手に引っかかった自分を殴りたくなる。
ボールが喋ろうが歩こうが、心を揺らす甘さがこの状況を産んでしまったのだ。

「まあ……いいさ……!」

だが、同時にこのシチュエーションは八神が待ち望んでいたものでもあった。

16魔弾〜Der Freischutz〜 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/20(水) 02:13:52 ID:HMbmHUX60


   ◆   ◆   ◆



「……銃声?」

智美のつぶやきに、凡田の身体がビクリと震える。
銃に恐怖を覚えている。
当然だ、トリガーを引くだけで人を殺せる武器を恐れない人間のほうがどうかしている。
ましてや、凡田はただの一般人なのだから。

「準備をしましょうか」

一方で曽根村はそれほど動揺していなかった。
いや、違う。
その手は僅かに震えていた。
恐怖か、それとも別の感情か。
それを知ることは出来ないが、とにかく曽根村は動揺を覚えている。

「じゅ、準備って……」

曽根村が漏らした準備という言葉の裏に隠されているものに智美と凡田は感づく。
殺しの準備だ。
正当防衛という言葉を使おうと、この事実は変えられない。
殺されないために殺すのだ。

「……しょうがないことですよ」

曽根村は細めた目を僅かに見開いた。
独特の威圧感があるために凡田は少しだけ後ずさる。

「生きるためです、凡田さんも自分の居場所に戻りたいでしょう?」

淡々とした言葉で、曽根村は言い放った。
凡田が眼鏡の奥に潜めた瞳を悲しみの色に染める。

(居場所か)

一方で、智美だけが違うことを考えていた。

――――自分の居場所など、この世界のどこにもない。

居たいと思った場所は、智美が自分で消してしまったのだから。

17魔弾〜Der Freischutz〜 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/20(水) 02:15:10 ID:HMbmHUX60


   ◆   ◆   ◆


「捕まえたぞ……ッ!」

八神にとって灰原の攻撃は決して不意打ちなどではなかった。
灰原が襲ってくるときは背後からだと確信していた。
訓練された頭の良い猟犬がわざわざ危険を犯すとは思えないからだ。
八神は灰原の首根っこを抱きかかえるように掴む。
腹部に刺さった刃がさらに奥へと突き刺さり、思わず苦痛に呻き声を上げる。

「正気か?」

八神には決定打となり得る手段がなかった。
機関銃は火力は申し分がないが、病院内部という地形で確実に当てられるほど灰原は甘くない。
他の武器はナイフにスタンガン、これでは確実性がない。
ガバメントも悪くはないが、6発で仕留められるかというと不安を感じる。
故に、八神は機関銃で確実に仕留めたかった。
例えその一撃で命を失うことになれどトリガーを引く覚悟を決めたのだ。

「終わりだよ、隊長。俺もアンタも、ここで終わりだ。
 糞みたいな俺の人生も、糞みたいなアンタの忠誠も、なにも残せずに終わるんだ……!」

八神は灰原と相対した時から覚悟をしていた。
最初から灰原を簡単に殺せるとは思っていない。
灰原を殺そうとすれば、必ずこちらも致命傷を負う。
それで殺せれば御の字、下手を打たなくてもこちらだけが死んでしまう可能性もある。
なにせあの灰原だ。
賢く手強い、八神が今まで会った人間で最も強い男。
不意打ちぐらいいつでもやるし、どんな卑怯な手も微塵の恥辱を覚えず使ってくる。
だから痛みを発信源とする、激しい痛みを覚えた瞬間が勝負。
そんな、死を覚悟してでの防御だ。

「……なるほど」

八神には、選択肢としてなら「このまま逃げる」と言うものもないわけではなかった。
だが、そんなことは出来ない。
心を取り戻した、人形から人間へと戻ってくれた茜を殺した灰原を八神は決して許せそうにない。
だから、確実に殺せる方法を選んだ。
広い場なら弾丸を避けられ、向かい合った状況なら刀で弾き返される。
それはこの殺し合いに連れて来られる前に行った殺し合いで経験している。
だからこそ、その二つができない状況に引きずり込む必要があった。

「やはり、お前は欠陥品だった……面倒なほどに私情を挟む。
 失敗を悔やむ暇があれば――――」


DALALALALALALALALALA!


灰原の言葉を最期まで聞かずに、八神は機関銃を零距離から撃ちまくる。
無数の銃弾が腹部に仕込まれた装甲を貫いていく。

18魔弾〜Der Freischutz〜 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/20(水) 02:15:56 ID:HMbmHUX60



DALALALALALALALALALALALALALALA!!



機関銃が凄まじい音がを立てながら灰原の胴を虫食い状態にしていく。



DALALALALALALALALALALALALALALALALALALALA!!!



それでも八神は慈悲なくトリガーを引き続ける。



DALALALALALALALALALALALALALALALALALALALALALALALALALA!!!!



――――やがて、灰原が刀を地面へと落とし、力なく背後へと倒れこんだ。


「……終わった」

八神は腹の底から振り絞るように消え入りそうな声を上げる。
目の前に転がるのは無機質な眼をさらに無機質にした灰原の死体。
肩で息をしながら、八神は機関銃を地面に投げ捨てて這うように移動する。
身体の作りはCCRの工作員としてよく勉強している。
故に、八神は自身の命が長くないことを悟っていた。
それでもまだ出来る。
茜を失っても、八神は前に進まなければいけない。
せめて四路たちに何かを残してやらなければいけない。

「なんで、生きなきゃいけないんだよ……畜生」

こんな残酷な世界でも、捨て鉢になれるほど八神は弱い人間になれなかった。
茜の兄が弱い人間であることを、どうしても我慢ができなかった。

「……首輪だな」

だが、何をすればいい、と八神が考えて、頭に過ぎったのは首輪だった。
この八神たちの命を直接に握っているこの首輪。
サンプルを持っていれば、何かしら好転するかもしれない。
幸いにも、殺した灰原の首輪がある。
八神は機関銃を構えて、灰原へと向ける。
少々乱暴ではあるが、このまま機関銃で頭を蜂の巣にして首輪をもぎ取ろうと考えたのだ。

19魔弾〜Der Freischutz〜 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/20(水) 02:16:21 ID:HMbmHUX60



「なっ……!?」



その瞬間だった、機関銃の先端が突然消え失せたのは。

何が起こったのか理解するよりも早くに、目の前に光が走る。
もはや身体に染み込んだ習慣だけで光の軌道線上から急所を外すように身体を捻る。
左脇腹に鋭い痛み走る、内臓へと至ってはいないが確実に八神に多大な損傷を与える傷だ。
状況を把握するために痛みを訴える脳を無視して周囲を見渡す。

「……終わったのはお前の命だ、八神」

真っ先に目についたのは、腹部に多大な損傷を受けながらも立ち上がろうとする灰原の姿だった。
その姿を見て理解する。

「切ったのか……」

あのボロボロの身体で、刀を使い、機関銃の銃身を。
おまけに八神に対する追撃も放ってきた。

動けるはずがない、サイボーグの耐久限界は八神も知っている。
今の灰原の状態はまさにそれだ。
動けるはずがない、意識を保てたとしても動けるはずがないのだ。

「……化け物かよ、アンタ」
「まだ死ねないだけだ……利益を持ち帰るまではな……」
「っ……! ほんとに大した番犬だよ……」

オオガミへの忠誠心、灰原はそれだけで動いているのだ。
アンドロイド、人間の部分を持った機械仕掛けの存在。
人が感情で強くなるように、灰原はオオガミへの高すぎる忠誠心だけでどこまでも行ける。
たとえそれが埋め込まれたものであろうと、思いには変わりがない。

「隊長……次で本当に最後にしよう……」
「――――無駄口を叩かず、来い」

灰原は刀を構え、八神はコルトガバメントを構え。

視線が、再び交わった。

20魔弾〜Der Freischutz〜 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/20(水) 02:16:56 ID:HMbmHUX60


   ◆   ◆   ◆


鬼が歩いている。

鬼が求めているものは死だけだった。

単なる青年に過ぎなかった鬼は、友人に従って友人を殺すことで心がおかしくなりかけている。

青年は鬼を演じることしか出来ない。

鬼の振りをするためには、人を殺すしかない。


手の中に奇妙な感覚が残っている。
人を殺すということは、単なる肉を斬るということではないと初めて知った。
もっと別の、心の問題なのだ。
その心が麻痺することがどれだけ楽なのだろうか。


「……考えるな」


ポツリと言葉を漏らして、鬼は歩き続ける。

目指すは、病院。

そこでまた人を殺す。

もう、その道しか歩けないのだから。

.

21魔弾〜Der Freischutz〜 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/20(水) 02:18:20 ID:HMbmHUX60



   ◆   ◆   ◆




「……」/「……」


お互いが一切の言葉を発しない。
正確に言うならば、言葉を発する体力も残されてはいない。
全ての体力、気力は目の前の敵を殺すことに注がなければいけない。
お互いが目の前の敵を、この殺し合いにおける最大の敵だと認識する。


灰原が一歩踏み出す。/八神が銃を撃つ。


「……」/「……っ!」


灰原が銃弾を弾く。/八神が衝撃に顔をしかめながらも二発目。


「……」/「は、ぁ!」


灰原の腹部に銃弾が埋め込まれる。/八神は息を大きく吐きながらも指を止めずに三発目。


「……」/「……ぃあ!」


灰原は歩みを止めない。/八神はそれを承知しているように四発目。


「……ッ!」/「ふッ……!」


灰原は膝が抜けるように地面に倒れる。/八神は気を張った表情で五発目を。


「……なるほど」/「ふ、ぅ……!」


灰原は輝き続ける刀を取りこぼし、腕から落ちる。/八神は残弾のない銃を落とし、腰から落ちる。


「見事だ」/「もう、起きないでくださいよ……隊長」


灰原は倒れこみ、八神は最後の力で立ち上がる。

.

22魔弾〜Der Freischutz〜 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/20(水) 02:19:02 ID:HMbmHUX60


――――それで、終わりだった。


本当に本当に、これで終わり。
だが八神にはもう灰原の首輪を取る気力は残っていない。
自分はもう間もなく死んでしまうだろう、それが体の節々から上がる悲鳴ではっきりと分かった。

「お、おい……あんた……!」

ボール親父が壁越しに声をかけてくる。
だが、今の八神にはボール親父に構う余裕はなかった。

「すまない……今は、いや、もう、無理なんだ……五階に人が居るから……それを呼んでおいてくれ」

それだけを言い残して、ふらふらと八神は歩き始める。
もう自分の命がないということぐらいは分かる。
だから、最後に茜の傍に居たかった。
ようやく人になってくれた茜の側に一秒でも離れていなかった。
八神が壊してしまった少女の側に最後は過ごしたかった。

「……茜」

もう立ち続ける気力すらなくなってしまった。
まるで芋虫のように地面を這いつくばりながら、それでも動き続ける。
みっともなく思えるかもしれない、未練がましくも見えるかもしれない。

「ごめんな……ごめんな、茜……」

気づけば、茜の側へと着いていた。
目はどんよりと淀んでいて、肌はすっかり冷たくなっている。
八神は茜の瞼をおろしてやり、自身の膝を枕にするように茜の頭を寝かせてやる。
もう動きはしない茜を見下ろしながら、考えてしまう。
彼女が見た最後の世界は、どんな世界だったのだろうか。


――――茜……最後にお前はこの世界をどんな風に見えたんだ?

――――今まで見ていた世界よりも幸せか?

――――俺は約束を守れなかったけど……お前のことを大好きなのは間違いないからな。


もう満足に動かない口が憎々しい。
もしも、動くのなら何度も何度も愛の言葉を囁いただろう。
もしも、茜が泣いてくれるならば何度でもその涙を拭っただろう。
今までできなかった欝憤を晴らすように、何度も何度も。

八神はゆっくりと頭をなでながら、目を瞑っていく。


――――俺は、茜のことを……愛してるよ。


.

23魔弾〜Der Freischutz〜 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/20(水) 02:19:29 ID:HMbmHUX60



   ◆   ◆   ◆




――――こうして一つの兄妹/恋人の物語は終わりを告げた。



――――兄/男は妹/女を守れず。



――――当然のように、悲劇として終わった。



――――残されたものは血の臭いだけ。



――――それが孤独だった二人の終わり。


.

24魔弾〜Der Freischutz〜 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/20(水) 02:20:38 ID:HMbmHUX60


   ◆   ◆   ◆


「なんてことじゃ……なんてことじゃ……」

超存在である野球仙人により、ボールに転生させられたボール親父が絶望の声を上げる。
目の前に広がっている光景は灰原の死体が転がっているのみ。

「こんなことになるとは……しかし、五階になど行けんぞ……わしは、ボールなんじゃから……」

ボール親父は困惑しながら、だが、その場に留まるしか出来ない。
手もなければ足もない、ボールでしかないボール親父には移動手段がないのだから。

「なんじゃの……一人じゃと、落ち着かんの」

そんななにもない空間では思考しか出来ない。

「……走太」

その思考の大半は息子のことを考える。
血の繋がらない、けれども心の繋がったたった一人だけの家族。
走太は母親の顔すら満足に知らず、さらには残った父親である寅吉はボールになってしまった。
小学生が背負うには厳しい環境にあるにもかかわらず、真っ直ぐに育ってくれた。

「早く帰りたいの……帰れるといいのじゃが」

殺し合いが行われているということは知らないが、なにか大変なことに巻き込まれていることはさすがに気づいている。
そんな状況でボール親父はどこか呑気に構えていた。
謎のおおすぎる出来事と、日常からかけ離れた銃撃戦に頭が麻痺しているのだ。

何よりも、ボール親父は知らないのだ。
大事な息子がこの殺し合いに巻き込まれていることを。
それを知っていればボール親父はまさしく鬼気迫る様子で喚きまわっていただろう。

「むっ……?」

そんな時だった。
コツ、コツ、と廊下を叩く足音がボール親父の耳に入った。
ボール親父は声を納めて、全神経を聴力に集中させる。

――――コツ、コツ。

間違いなく、足音が響いている。

「ここじゃ! ここじゃ!」

そう判断してからは早かった。
この状況を残せば、この先ずっと一人だけということもありえる。
ここに取り残されては、命が尽きるまで
だからこそ、ボール親父は必死に声を荒げた。


――――それが、鬼の足音であることも知らずに。

.

25魔弾〜Der Freischutz〜 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/20(水) 02:21:23 ID:HMbmHUX60

「……誰だ?」

慎重に、だがどこか不用心に部屋の中へと入ってくる。
入ってきた男はおおよそ二十代前半。
体つきはがっしりしており、野球のユニフォームを着ていることも手伝ってスポーツマンであることが分かる。
手には奇妙な赤い手袋を身に着けている。

「ッ……!?」

そして、男――――三橋一郎は死体を見つけて僅かに身体を震わせた。
同時に、先ほどの声がその死体の最後の叫びだったと判断して踵を返そうとする。
当然、ボール親父は慌てて引き止めにかかる。

「違う! こっちじゃ、こっち!」
「な、なんだ!?」

ボール親父という存在を知らない三橋は瞬時に身構える。
緊迫感ばかりの目立つ、素人然とした姿だった。

「下じゃ、下! ボールじゃよ!」

その言葉に導かれるように、三橋は視線を落とす。
そこには一つのボールがあるだけだった。
ボール親父の存在を知らない三橋は訳が分からずに首をひねる。

「わしじゃい! ボールじゃい!」
「ボ、ボール……!?」
「ふぅ、助かった。いや、このまま一人だったらどうしようかと思ったぞ!」

唖然とする三橋を尻目にボール親父は言葉を続ける。
その内容の半分も耳に入らなかったが、すぐに正気に戻る。
このボールは何物だろうか?
普通の生き物でないことは間違いない。

「……そっか。野球を、殺すってことか……」

だが、三橋の脳裏には一つの考えしかない。
見るもの全てを殺すということ。
仲間である鋼を殺したのに、見ず知らずのボール親父を殺さないのかという奇妙なバランス感覚。
鋼を殺したのだから全員殺さなければいけない。
それを、亀田は望んでいる。

「野球を見ることも、俺はもう駄目なんだな……」
「……?」

断ち切れということだ。
ボールを殺せと、野球を殺せと。
もう、お前はそういう生き物なんだと。

「……ごめんなさい」
「ふん?」

野球のユニフォームを纏った男は。
目に涙を携え。
しかし、涙をこぼすことなく。
命を持ったボールを。
赤く染まった手で握りつぶした。

26魔弾〜Der Freischutz〜 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/20(水) 02:21:39 ID:HMbmHUX60



   ◆   ◆   ◆




――――だが、この物語はここでは終わらない。


――――この物語は人の数だけ主人公が存在する。


――――そして、男の死は一つの鐘となる。


――――また別の男女の物語を始めるための、一つの鐘。


――――惨劇はまだ芽を出したばかりだ。



【高坂茜@パワプロクンポケット8 死亡】
【灰原@パワプロクンポケット8 死亡】
【八神総八郎@パワプロクンポケット8 死亡】
【ボール親父@パワポケダッシュ 死亡】

【残り29名】

27魔弾〜Der Freischutz〜 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/20(水) 02:22:17 ID:HMbmHUX60

【F-6/病院/一日目/日中】

【三橋一郎@パワプロクンポケット3】
[状態]:打撲 エネルギー70%
[装備]:鬼の手、パワーと走力の+パーツ一式、豪力
[道具]:支給品一式×2、予備バッテリー
[参戦時期]亀田の乗るガンダーロボと対決して敗北。亀田に従わされしばらく経ってから
[思考]
基本:亀田の命令に従いバトルロワイヤルを円滑に進めるために行動する。
1:参加者を積極的に探して殺す。
2:もしも相手がマーダーならば協力してもいい。
3:亀田に対する恐怖心。
[備考]
※萩原(名前は知らない)は死んだと思っています。
※大江和那と浜野朱里(名前と姿が一致しない)が死んだと思っています。
※大江和那の能力の詳細を一切知りません
※トンネルバスターは一回分です
※神条紫杏には気づきませんでした。


【四路智美@パワプロクンポケット3】
[状態]:嫌な汗が背中に伝わっている。
[装備]:拳銃(ジュニア・コルト)、バット
[道具]:支給品一式、ダイナマイト5本
[思考・状況]基本:二度と三橋くんを死なさない。
1:三橋くんが殺し合いに乗った……か。
2:十波典明の言葉を丸っきり信用するわけではないが、一応警戒。
3:亀田の変貌に疑問?
[備考]
※メカ亀田を危険人物を判断しました。
※ピンクのパーカーを着た少女を危険人物と判断、作業着を着た少女を警戒。
※探知機は呪いの人形に壊されました。


【曽根村@パワプロクンポケット2】
[状態]:右手首打撲
[装備]:ナイフ、ブロウニング拳銃(3/6、予備弾数30発)、バット
[道具]:支給品一式×3、魔法の杖@パワプロクンポケット4裏
[思考]
基本:漁夫の利で優勝を目指す
1:一先ず病院で休憩。
2:戦闘も視野にいれる。
[備考]
※タイムマシンの存在を聞かされていません。

28魔弾〜Der Freischutz〜 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/20(水) 02:22:32 ID:HMbmHUX60

【凡田大介@パワプロクンポケット2】
[状態]:全身に打撲
[装備]:お守り、バット
[道具]:支給品一式、鍵
[思考・状況]基本:ガンダーロボを救出したい
1:基本人殺しはしたくない。
2:九条の死を知って精神的なダメージ。
[備考]
※七原、真央、走太と軽い情報交換をしました。


【ほるひす@パワプロクンポケット6表】
[状態]:表面が焦げてる、悲しみ?
[装備]:バット
[道具]:支給品一式、不明支給品0〜1
[思考]基本:ころさないし、ひともまもるよ。
1:……


【荒井紀香@パワプロクンポケット2】
[状態]:全身のところどころに軽い火傷、体力消耗(小)
[装備]:バット
[道具]:支給品一式、野球人形
[思考]基本:二朱くんに会う。
1:二朱君との愛の営みを邪魔するひとは容赦しないです。
2:あの女(夏目准)が二朱君を手にかけていたら仇をとる。
[備考]
※第一回放送に気付いていません。


【萩原新六@パワプロクンポケット6】
[状態]:左腕欠損、腹部に軽度の切り傷、貧血(中)
[装備]:バット
[道具]:支給品一式 、野球用具一式(ボール7球、グローブ8つ)@現実
    野球超人伝@パワプロクンポケットシリーズ、パワビタD@パワプロクンポケットシリーズ、左腕
[思考・状況]
1:???

29 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/20(水) 02:22:44 ID:HMbmHUX60
投下終了です

30名無しさん:2013/02/20(水) 14:44:49 ID:jt1hNqlk0
投下乙です

パワフルロワはノーマークだったがこの話で興味沸いてきた
まとめ読んでくる

31名無しさん:2013/02/20(水) 23:39:07 ID:lDbgJMlY0

半年ぶりに見たけどあの過疎状態からどうやってここまできたんだ?

32名無しさん:2013/02/20(水) 23:44:10 ID:G12ItT0c0
乙です!
ところで智美の探知機が直った(正しく稼働してるかはともかく)代わりに
ダイナマイトが壊れてしまったはずだったと思うのですが

33 ◆7WJp/yel/Y:2013/02/20(水) 23:57:20 ID:HMbmHUX60
>>32
指摘ありがとうございます、コピペしてきた際に修正をしていませんでした。
正しくは下記のとおりです。まとめwikiに収録する際に修正させていただきます。


【四路智美@パワプロクンポケット3】
[状態]:嫌な汗が背中に伝わっている。
[装備]:拳銃(ジュニア・コルト)、バット
[道具]:支給品一式、探知機(エネルギー100%)、充電器
[思考・状況]基本:二度と三橋くんを死なさない。
1:三橋くんのために殺し合いにのり人数を減らす。
2:十波典明の言葉を丸っきり信用するわけではないが、一応警戒。
3:亀田の変貌に疑問?
[備考]
※メカ亀田を危険人物だと判断しました。
※ピンクのパーカーを着た少女を危険人物と判断、作業着を着た少女を警戒。
※ダイナマイト5本は呪いの人形に壊されました。また、探知機が正しく作動しているかは次の書き手さんにお任せします。

34名無しさん:2013/02/22(金) 15:41:29 ID:Qxlk26ys0
投下乙です!!

35名無しさん:2013/02/26(火) 00:07:26 ID:RpjpG5G.0
>>31
sage忘れスマソ

36名無しさん:2013/02/27(水) 12:44:51 ID:eRCM8hu20
ここでsageる必要ってあるのか?w

37 ◆7WJp/yel/Y:2013/03/02(土) 23:23:54 ID:t3PIOkrg0
遅くなりましたが
倉美春香、小波走太、七味東雅、芹沢真央、七原正大、布具里
投下させていただきます

38恐怖 ◆7WJp/yel/Y:2013/03/02(土) 23:25:39 ID:t3PIOkrg0

「八人、ね……」

七原は険しい表情のまま、布具里を除く他の四人とは離れた場所で考え込んでいた。
最初の六時間で十六人、次の六時間八人。
合計で二十四人の人間が死んだ。
まだ半分を残っているが、それでも死者の数は多すぎると言える。

「……ッ」

この場に居る人間は七原を含めて六人だ。
七原正大、布具里、七味東雅、倉見春香、小波走太、芹沢真央。
倉見春香は十代の後半、走太と真央は十代の後半とまだ未成熟な子供である。
死者の二十四人の中にも、同じような年齢の子供が居たかもしれない。
そう思うと、七原の心は怒りで煮えたぎっていた。

「どした、息子よ。なんかあるなら父ちゃんに相談しな」
「ホテルに何人集まるかと思ってな……それと、死人のことさ」

一方で布具里はと言うと、そんな七原を見ても相変わらずの呑気な雰囲気を隠そうともしない。
先ほど合流したばかりの芹沢真央の言葉を借りるならそれを超える人数が集まっていることになる。
もっとも、その中に含まれていた幾人かはすでに死んでしまったが。

「死人……って言うと、あの兄ちゃんのことか?」

死者の中には最初にであった九条英雄の名前もあった。
そこで気がかりとなるが、九条と共に行動をしていたはずの凡田大介の存在だ。

「九条さんは……残念だけど、死んだ。多分これはデマなんかじゃない。
 わざわざ我威亜党が虚報をばらまく必要性がないからな」
「嘘なら嘘で願ったりだしな」
「まあな」

布具里は茶化すように言った。
対して七原は表情を固めたまま頷き、言葉を続ける。

「ただ……九条さんは死んで、だけど凡田さんは生きている……これがどういう意味を持つものなのか。
 凡田さんだけが生き残ったっていうのが気になってな」
「単純に襲われた時に九条だけが銃で撃たれたとかそんなんじゃねえのか?」

七原が言外に含んでいた『凡田が殺し合いに乗っているのではないか』という考えを布具里は否定した。
楽観的といえば楽観的ではあるが、シビアに物事を見ている七原とちょうどバランスがとれているとも言える。

39恐怖 ◆7WJp/yel/Y:2013/03/02(土) 23:28:16 ID:t3PIOkrg0

「一度の襲撃で二人を殺すってのは、案外出来なかったりするもんだ。
 ましてや、下手人が素人ならな。
 ……ま、なんにせよだ。あの眼鏡の方の兄ちゃんとさっさと合流しねえとな。
 一人取り残されて、本気で頭がおかしくなっちまう前にな」

布具里はそう言い切ると、緊張感の欠片もなくケラケラと笑いながら水を口にする。
そして、ガラガラと大きく音を立ててうがいをし、道端に水を吐き捨てた。
無遠慮な布具里の挙動に七原は顔をしかめる。

「汚ねえな」
「ハハッ、お前はご上品だな……誰に似たんだか」

布具里が行った下品なまでに大きなうがい音に残りの四人の視線も集まる。
その顔は冴えないが、ひとまず次の行動に移れる程度には落ち着いているようだった。
七原は死者と禁止エリアを書いたメモをしまい、布具里はにこやかな顔のまま呼びかける。

「まっ、今はとりあえず『ほてる』に行こうぜ。
 一応俺たちが主賓なんだし、すっぽかすわけにはいかないだろ」
「……ですね」

布具里の提案に言葉を返した人物は七味東雅だった。
未だに青く染まっている顔色は、東や野丸などの知人の死に明確な動揺を覚えていることを伝えてくる。
それでも、その目は気丈に七原たちへと向けられている。

「今は、生き残るために頑張りましょう」

少しだけ声が震えており、七味が強がっているということは簡単にわかる。
まだ胸のうちには整理がついていないだろう。
もちろん、それはおかしなことじゃない。
人の死を、親しい人間の死を受け入れることは難しいのだ。

「しかし……これからどうするかね」
「六人を押しこむのは……少し難しいですね」

七原と七味がため息混じりに呟く。
この小さな車では六人乗りとなると少々窮屈になる。
走太はまだ十二になったばかりとはいえ、その身体はすでに中学生と大差ない。
なによりも鍛えられた身体の七味と布具里が居ては押しこむこと自体が難しいのだ。

「……しょうがない、俺と親父が歩いて行く」
「ええー……」
「女の子たちを歩かせるわけにはいかないだろ、七味さんは運転しなきゃいけないんだからな」

七原は不満気な声を出す布具里を引っ張る。
この場で離れるべきは七原と布具里だ。
車は逃げるということに長けているため、まだ子供である三人と危険に慣れていないであろう七味が車にのるべきだからだ。

40恐怖 ◆7WJp/yel/Y:2013/03/02(土) 23:28:47 ID:t3PIOkrg0

「頼んだよ、七味さん。色々と大変だと思うが……貴方が頼りなんだ」

陳腐な言葉だな、七原はそう思いながらも
これ以上、人に死んでほしくない。
そう思っている、現に九条の死に怒りを感じている。
我威亜党を、許すことはできない。

「はい……その、七原さんたちも気をつけてください」
「ああ、わかってるよ。生き汚い方だから安心してくれ」
「お前はいいけど俺はよぉ……」
「こっちはもっと汚い……だから、君は自分のことだけ考えてくれ。それが一番死ににくなる方法だからね」

銃と刀を携えて、車を見送る。
まだまだ先は長い。
出口の見えない迷路を、まだ七原は脱出できそうになかった。



【C-3/一日目/昼】
【七原正大(ななはら まさひろ)@パワプロクンポケット7裏】
[状態]:健康
[装備]:地味な色のベスト、ニューナンブM60(6/6)、オニキリ@パワプロクンポケット7裏
[道具] 支給品一式、Pカード、九条と凡田の知り合いの名前の書かれたメモ、予備弾(12/12)
[思考・状況]
基本:亀田を倒す
1:七味、春香、布具里と共に行動し、協力者or黒野鉄斎を探す
2:走太たちと情報交換を行う。
3:第3放送前後にホテルに行く
4:ほるひすに警戒心。
[備考]
※大正編のどの人物とどの程度面識があるか、メモに誰の名前が書かれたかは後の書き手に任せます

【布具里@パワプロクンポケット7裏】
[状態]:健康
[装備]:亀田幻妖斎の服@パワポケ5裏
[道具] 支給品一式、亀田幻妖斎の仮面@パワポケ5裏
[思考・状況]
基本:正大に寄生して生きる
1:七味、春香、七原と共に行動し、協力者or黒野鉄斎を探す。
2:走太たちと情報交換を行う。
3:第3放送前後にホテルに行く
[備考]
※確認済みの支給品の中に、衣服になるものは入っていません

41恐怖 ◆7WJp/yel/Y:2013/03/02(土) 23:30:02 ID:t3PIOkrg0


   ◆   ◆   ◆


「……ッ」

野丸太郎、東優、黒野鉄斎。
七味の知人である三人が死んだ。
この時になってようやく七味は、殺し合いという現実を感じ始めていた。
こうしている間にも誰かが死んでいるかもしれない。
こうしている間にも誰かが殺しているかもしれない。

「……大丈夫かい、春香ちゃん」

今にも恐怖に震えそうな状況であることを再確認しながらも、七味は必死にその恐怖を遮断しようとする。
一人なら恐怖に震えるのは七味だけの勝手だ。
だが、今の七味の周りには二人の少女と一人の少年が居る。
自身よりも立場的に弱いはずの少年少女がこんな殺し合いに巻き込まれているのだ。
大人である自身が動揺していては、三人の恐怖を煽るだけだとわかっているのだ。

「…………はっ、はい! 大丈夫です! その、先輩が、居ますから……」

言葉とは裏腹に、顔を蒼白とさせている春香。
春香もまた七味と同じく今の今まで殺し合いという現実に対する実感というものが湧いていなかった。
しかし、親しい間柄だった東の死を聞くと、とたんに恐怖が春香に襲いかかったのだ。

「……先輩」
「……春香ちゃん?」

ぎゅっと七味の服の袖を握り締める春香。
そこから確かな『震え』を感じ取り、車のスピードを落としてその手を握り締める。

「先輩……!」

未だに春香が何者なのかは七味には理解できない。
七味と春香には大きな壁があるからだ。
それでも、今にも泣きそうな春香を放っておくことはできなかった。

42恐怖 ◆7WJp/yel/Y:2013/03/02(土) 23:32:38 ID:t3PIOkrg0

「……走太くんも、ね。ショックだろうけど……」
「……大丈夫です、俺、頑張れます」

一方で走太に話しかける。
バックミラーから覗く少年の顔は、恐怖を必死に跳ね除けようとしている顔だった。
同時に、その走太の隣に座っている真央の顔をうかがう。

「その、真央ちゃんだっけ?
 君たちも、元気を出して……七原さんの言葉になっちゃうけど、とにかく今は自分のことだけに集中しようよ」
「……」
「……真央ちゃん?」

返事をしない真央を不審に思い、再び声をかける。

「……大丈夫」
「……あんまり、無理しないでね。俺にできることならなんでも手伝うから」

そんな月並みな言葉しか言えない自分に、若干の嫌悪を覚える。

「……大丈夫なの、本当に?」
「本当に、なんでもない」
「……そう。なら、いいんだけど」

走太との会話を聞く限りでは、真央は比較的無事なように見える。
ただ、七味には一瞬だけ気にかかったことがあった。
春香の腕を握りしめた瞬間、真央の顔が悲痛に歪んでいるように見えたことだ。


【C-3/一日目/日中】
【倉見春香@パワプロクンポケット7表】
[状態]:野丸が東を襲ったことによる衝撃
[装備]:麻酔銃@現実(一発消費)
[道具]:なし(七味が持っている)
[思考・状況]
1:七味、七原、布具里と共に行動し、第3放送前後にホテルに行く。
2:走太たちと情報交換を行う。
3:仲間の足手まといにならないようにする
4:あわよくば七味の記憶を取り戻す

【七味東雅@パワプロクンポケット7表】
[状態]:野丸が東を襲ったことによる衝撃
[装備]:セイラーマンサーベル@パワプロクンポケット7裏
[道具] 支給品一式×3、二朱の愛車@パワプロクンポケット2、不明支給品1〜5
[思考・状況]
1:春香、七原、布具里と共に行動し、協力者or黒野鉄斎を探す。
2:走太たちと情報交換を行う。
3:第3放送前後にホテルに行く。
4:春香を守る。
[備考]
※七味東雅の高校時代は彼女とも付き合わずまじめに野球一筋でした。
※七味東雅は記憶喪失ではありません。
※2年前のことなので春香のことを覚えてないだけです。(生徒会の時しか面識がないため)

43恐怖 ◆7WJp/yel/Y:2013/03/02(土) 23:33:10 ID:t3PIOkrg0

【芹沢真央@パワプロクンポケット7】
[状態]:疲労、腹に軽い痛み
[装備]:私服
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム1〜3個
[思考]基本:弱きを守り悪を挫く『正義の味方』を貫く。
1:……………………………
2:人を守る。
3:時間になったらホテルに向かう。
[備考]
※参加時期はEND【孤高のヒーロー】で主人公に記憶消去したままの状態から。
※八神、大江、九条、凡田と情報交換をしました。
※神条紫杏一行とは情報交換を行っていません。

【小波走太@パワポケダッシュ】
[状態]:健康、軽い擦り傷
[装備]:ガンバーズのユニフォーム、スニーカー、高出力レーザーカッター
[道具]:支給品一式(ランダムアイテム不明)
[思考]基本:生還し親父を復活させる
1:殺し合いを止める、人は殺さない。
2:七原たち話す。
3:真央、八神、和那、凡田を少し信頼。
[備考]
※参加時期は最後の大会の前から、誰ルートかは後続の書き手さんにお任せします。

44恐怖 ◆7WJp/yel/Y:2013/03/02(土) 23:33:20 ID:t3PIOkrg0
投下終了です

45 ◆7WJp/yel/Y:2013/03/02(土) 23:34:27 ID:t3PIOkrg0
失礼、>>40の状態表の【C-3/一日目/昼】を【C-3/一日目/日中】に訂正します

46 ◆YCsZPcr8k2:2013/03/03(日) 00:47:04 ID:oQAOZBv.0
投稿します

47 ◆YCsZPcr8k2:2013/03/03(日) 00:49:05 ID:oQAOZBv.0
町役場。役場と地図には書かれていたがそこは会館と言った方がいいような施設だった。
リンは手の平にある探知機で少なくとも役場の中に人がいないことを確認してから、建物の裏側に素早く回り込むと慎重にドアを開いた。リンが必要としているものは右腕の怪我の応急手当の出来るもの。具体的に言えば包帯や消毒液だ。
事務所に忍び込んだリンはその2つを探したが手に入ったのはタオルだけだった。そしてリンは機械的に傷口を水で洗い流しタオルで縛り、応急手当を終えると放送に備え用意してあった時計とメモ帳、地図帳を手に取った。
もう正午になる。


 ◆   ◆   ◆


私が放送を聞いて最初に思ったのはやはり2人が生きていてよかった、ということだった。このゲームが始まってはや12時間で半分近くが死んでいる。つまり、2人に1人が死んだということで計算上どちらか1人が死んでいるのだからこれは幸運と言っても良いだろう。
ただ、今回死んだのは7人。私が殺した2人を除けば、6時間の間に誰かを殺した人間は多くても5人だということだ。最初の6時間の間に殺されたのが18人だということを考慮しなくてもまずいことになったな、と思う。というのも死人が少ないということは徒党を組んだ連中が多い、ということでありかつ殺人者の減少は一人当たりのマークが厳しくなったということである。私の名前は学校で遭遇した2人によって広まっているかもしれない。いくら私が素人なら殺せるとはいえ相手が複数なら話は別だ。行動的なグループにはちあたったらいきなり発砲されかねない。
だから右腕は痛むが少し急がないといけないかもしれない。
職業柄、これは厳しい=リスクが高いな、と思う。
ただわたしにはより重い問題がのしかかっている。

48一歩手前“she lose” ◆YCsZPcr8k2:2013/03/03(日) 00:52:17 ID:oQAOZBv.0

「茜……」

確かに12時間後に生きた茜と再会するために私は吸血鬼と取引をした。そのために私は人を3人殺さなければならない。だが情報屋として長年生きてきた私にとって、殺すのは素人、生還第一、この2つさえ意識していればさして問題になるものでもない。事実もう私は2人殺したのだから。
このままいけばノルマの3人殺しはいけるだろう。問題は吸血鬼――黒羽根あやかだ。
彼女は我威亜党の人間を名乗った。彼女の口ぶりを見れば恐らくはったりではなく事実だろう。
だがそんなことはどうでもいい、彼女は茜を守るのかそうでないのか、それが問題だ。
彼女はゲームの円滑な進行が目的だといっていた。円滑な「進行」が目的なら私が人を殺す動機になっている茜を殺すことはないだろうし、そもそも主催側が大きな理由もなく参加者を殺すとは
思えない。
……正直なところ、茜が生きているということしか考えられない私に驚いた。
これ以上考えてもあまり有益なことは思いつかない。
だからとりあえず休もう。
一応10分ごとに探知機を見、人が近づいてきたら隠れて様子を確認し行動を決める。これが最善だろう。
私の目的はあくまで八神君と茜の生還。
私の生死など関係ない。
今私が休むのも、茜のため。
ただ、もし二人が死んでいたら、私はどうするのだろうか?
今この瞬間にも二人は死んでいるかもしれないのに。

49一歩手前“she lose” ◆YCsZPcr8k2:2013/03/03(日) 00:53:15 ID:oQAOZBv.0


――奇しくもリンがそう考えたその瞬間、二人は死んだ。

【F-3/一日目/日中】
【リン@パワプロクンポケット8】
[状態]右腕裂傷(応急処置済)
[装備]グロッグ19(5/15)、ナイフ
[道具]支給品一式×3、劣化版探知機、充電器、ヒヨリンセット(化粧品中消費)、支給品一覧表、島岡・二朱の両眼
[思考]
基本:一先ずノルマの三人殺しはクリアしておく。
1:とりあえず怪我の回復を待つ。1〜2時間は探知機の充電もかねて休憩。
1:八神と茜は何としてでも生き残らせる。
2:劣化版でない探知機が存在するのなら入手しておきたい。
3:第五回放送の前に役場へと向かう。

50一歩手前“she lose” ◆YCsZPcr8k2:2013/03/03(日) 00:58:07 ID:oQAOZBv.0
投下終了です
◆7WJp/yel/Yさんの作品は5年前から読んでいて
こうして後に作品を投稿するのがとても不思議なんですよね
まだまだ初心者ですが今後もよろしくお願いします

51 ◆7WJp/yel/Y:2013/03/03(日) 01:08:41 ID:YyP.idVc0
投下乙です!
ちょうど放送の後に死んだからリンはまだ二人が生きてると判断してるんだよな……
タイトル通り、リンは本当に失っちゃったんだ……しかも、それでもまだ別の人間を殺しちゃうかもしれないという……

52名無しさん:2013/03/03(日) 01:08:56 ID:YyP.idVc0
トリ消し忘れ、失礼

53 ◆YCsZPcr8k2:2013/03/03(日) 15:22:57 ID:oQAOZBv.0
失礼、lose→losesでお願いします

54名無しさん:2013/03/15(金) 00:31:12 ID:QMYegqfw0
月報集計お疲れ様です
パワポケ  104話(+ 6) 29/58 (- 5) 50 (-8.6)

55名無しさん:2013/03/17(日) 02:11:41 ID:wdJlPw.c0
粗いですが現在地です。

A-2
C-8
H-4

B-4
F-4
G-1

が禁止エリアとなっています。

ttp://www20.atpages.jp/r0109/uploader/src/up0211.jpg

56名無しさん:2013/03/19(火) 08:45:12 ID:65jrQUp.0
うひょおおお投下乙です!

57 ◆YCsZPcr8k2:2013/03/21(木) 23:45:37 ID:qaAQU7ew0
投下します

58Shall I show you my plan?〜逃亡〜 ◆YCsZPcr8k2:2013/03/21(木) 23:47:01 ID:qaAQU7ew0
とてもさりげなかったが萩原は効果の高さには定評のあるスーパーパワピタDを飲んでいて、貴重な支給品を消費しても成功率が50%というとても条件がシビアな治療に成功し、さらに八神の適切な手当てを受けている。
つまりベッドの上で1時間も休めば、積極的に動き回るまではいかないが日常生活が出来る程度には回復していてもなんの不思議もないのだ。
事実、八神の前で眠りに落ちた後、ちょうど神条紫杏が病院を出ていったときに萩原は目覚めていた。
それからはこの立場でいたほうが便利なので寝たふりをしつつ(時々本当に寝つつ)時間をすごし、智美たちの情報を集めていた。

そして彼はついに重い首、そして軽くなった左腕をかかげて立ち上がった。
事態が急変していた。


   ◆   ◆   ◆


智美がしなければならないことは一刻も早く探知機を見ることだった。
多少リスクを負ってでも得られる情報は大きい。
だから智美は探知機のことを教えて情報を共有し全員でこの場を切り抜け彼らの信頼を得るか、全員殺すことを視野にいれ隠れて探知機を見るか、を判断する必要が合った。
そして、智美は後者を選択した。智美の行動方針は殺し合いに乗ったという三橋一郎の手助けだ。
自分の生死ではない。
ただ、問題はこの集団からはなれるタイミングだ。曽根村をはじめとした一行はすでに戦闘準備を終わらせている。いつ―――

DALALALALALALALALALALALALALALALALALALALA!!!

59Shall I show you my plan?〜逃亡〜 ◆YCsZPcr8k2:2013/03/21(木) 23:51:23 ID:qaAQU7ew0

「銃声でやんすっ!」

先ほどよりも大きくなった銃声に堪えきれなくなったのだろう、凡田の身体がビクリと震え、叫んだ。
銃に恐怖を覚えているため凡田はバットしか持たせていないが、この様子だと下で戦っている人間にどう接しようとしても役に立たないだろう。むしろこれは足を引っ張る可能性しかない。
冷静に考えてもこの場には一般人が多すぎる。この方たちは生きるすべを見つけられそうにない。

「ひとまずここは危なすぎるし脱出しましょう、タイミングは今しかないわ」
「お、オーナー?」
「二組に分かれるの。具体的には、私とそれ以外ね」
「どういうことでやんすか?」

すぐに凡田が突っ込んでくる。当然だ。今の私の様子が神条紫杏が団体を抜けたときの感じにかぶっているのだろう。

「私が下の人間をひきつけているからその間にあなたたちは逃げなさい」
「そんな!オーナーはどうするでやんすか?」
「私には銃があるわ。曽根村さんにそっちのグループに入ってもらうからそちらにも銃はあるわ」
「……萩原さんはどうするんです?」
「放って置くしかないわよ。彼、当分起きそうにないし」
「もし襲われたらどうするんでやんすか?」
「そうね……。もし彼が死人なら誰も襲わないでしょう?顔に布でもかけましょうか」
「……だいじょうぶなんでやんすか?」
「ほかに何も尾もいつかなし、これが最善の策だと思うわ」
「まあ、そうでやんすね。ところで、オーナー。本当に大丈夫なんでやんすか?」
「私もこの世にもう未練はないわ。たとえ生き残って元の世界に返ったとしてもそこに私の居場所はないの」
「ふむ……。いいと思いますよ。彼女が危険な役を買ってくれるというのならそれに越したことはないでしょう」
「だ、大丈夫でやんすか、オーナー」
「ええ」

だから私は私がおとりになるという大義名分で単独でこの場所から逃亡を選んだ。
負傷者の萩原、謎の生物ほるひす、不気味な曽根村、使えない凡田。
このグループにはもう価値はないだろう。
ダイナマイトのない今、ホテルで殺人もできない。
探知機と友達になっていたほうがよさそうだ。

DALALALALALALALALALALALALALALALALALALALA!!!

60Shall I show you my plan?〜逃亡〜 ◆YCsZPcr8k2:2013/03/21(木) 23:52:41 ID:qaAQU7ew0

「急ぎなさいっ!」
「分かったでやんす」

音はさっきより近づいている。
「さようなら」と小さく私はつぶやいて階下に向かった。


   ◆   ◆   ◆


3人が逃げ、顔に布をかけられた後。
俺も立ち上がり単独行動をとることにした。
理由は2つある。1つ目は俺が邪魔だからだ。ただでさえ逃げるグループの中でまともに交戦できそうなのは曽根村という男ぐらいだ。それに対して戦えなさそうな人間は3人。戦いになれた人間に会えばかなりやばいことになるだろう。それこそ、アルベルトを殺した三橋に会えば誰かが殺されかねない。そこに足手まといをこれ以上増やすわけにはいけない。
そう、三橋一郎だ。彼は俺がこの島に飛ばされてから見た一番の危険人物だ。そして彼は主催者のことについて知っている口ぶりをしていた。しかも、彼は殺し合いに乗らない人間は殺すといっていたのだ。つまり彼はそういった人間の集まりそうな病院へ、ゲーム開始からだいぶ時間がたった今来ていてもおかしくない。
俺は恐らく三橋にもう殺されたと思われているだろう。だから俺が何もせず、ここにとどまっていれば俺の安全は保障されるはずだ。それでも俺は動く。
なぜなら俺は見てしまったからだ。
そう、二つ目の理由。忘れるはずもない。赤いつばのある帽子をかぶり禍々しい手袋をした体格のよい男つまり三橋一郎が、本当にこちらに向かっていたのを。

大急ぎでパワピタDをあおる。これで準備完了だ。
これまでサボっていた分、残った命を守らなければいけない。
俺がタイムパトロールだ。つまり、警察なのだから。

彼の足は、智美の歩いていたほう。つまり正面玄関へ向かっていた。


【萩原新六@パワプロクンポケット6】
[状態]:左腕欠損、腹部に軽度の切り傷、貧血(小)
[装備]:バット
[道具]: 支給品一式 、野球用具一式(ボール7球、グローブ8つ)@現実、左腕
[思考]: 三橋一郎を生け捕りにする=アルベルトの敵討ちをする
1:とりあえずこの場を切り抜ける。
2:第1回放送のことを知りたい。
3:元の世界に戻って犯人を捕まえる。

61Shall I show you my plan?〜逃亡〜 ◆YCsZPcr8k2:2013/03/21(木) 23:55:08 ID:qaAQU7ew0
4:野球超人伝がない。
※名簿の存在を知りません
※神条紫杏が出て行った後の子は本当に全部覚えています

   ◆   ◆   ◆


そして裏口から脱出しようとしている四人。みなが一刻も早く病院を出たいと思う中、一人違うことを考えている人間が一人いた。曽根村だ。彼もそもそも誰も信頼していなかった。
当たり前だ。優勝を狙うような人間が誰かを信頼するはずがない。
だから、智美が敵を引き付けると言ったときそれも全く信用していなかった。
「どうしましょうかね……」
進藤明日香を殺したときに思いついた皇帝に気に入られる優勝のためには智美をどう対処すべきか、という難題。
それについて考えながら二階までたどり着き一回に続く階段に足を掛けた途端。

BAN!

再び銃声が鳴り響いた。

「また銃声でやんす!」
「そうですね」
(ふむ……先程とは音が違いますね)

銃声に少しも動揺を見せない曽根村はしっかりその違いに気づいていた。
この銃を撃った張本人である八神は機関銃で灰原を傷つけ、コルトガバメントでトドメをさした。つまり、一人の人間が二種類の銃をあつかったということだ。
だが、最初の時点で銃声が一種類しかなかったということが曽根村を勘違いさせた。一般的に銃弾を刀剣で受けるなど考えられない。そして曽根村はまだ智美を疑っている。
だから、曽根村は智美が殺し合いに乗っていたのだと。そう勘違いした。
真意は分からないが、意図は気になる。
曽根村は、1人で階段を下りることにした。
智美との距離は。80m。

「それじゃあ、私が銃を持っているので様子を見ますね」
「わかったでやんす」


【凡田大介@パワプロクンポケット2】
[状態]:全身に打撲
[装備]:お守り、バット
[道具]:支給品一式、鍵
[思考・状況]基本:ガンダーロボを救出したい
1:基本人殺しはしたくない。
2:九条の死を知って精神的なダメージ。
3:
[備考]
※七原、真央、走太と軽い情報交換をしました。

【ほるひす@パワプロクンポケット6表】
[状態]:表面が焦げてる、悲しみ?
[装備]:バット
[道具]:支給品一式、不明支給品0〜1
[思考]基本:ころさないし、ひともまもるよ。
1:……

【荒井紀香@パワプロクンポケット2】
[状態]:全身のところどころに軽い火傷、体力消耗(小)
[装備]:バット
[道具]:支給品一式、野球人形
[思考]基本:二朱くんに会う。
1:二朱君との愛の営みを邪魔するひとは容赦しないです。
2:あの女(夏目准)が二朱君を手にかけていたら仇をとる。
[備考]
※第一回放送に気付いていません。
※二朱の死について理解したか、していないかは次の書き手さんにお任せします。

62Shall I show you my plan?〜逃亡〜 ◆YCsZPcr8k2:2013/03/21(木) 23:58:02 ID:qaAQU7ew0
【曽根村@パワプロクンポケット2】
[状態]:右手首打撲
[装備]:ナイフ、ブロウニング拳銃(2/6、予備弾数30発)、バット
[道具]:支給品一式×3、魔法の杖@パワプロクンポケット4裏
[思考]
基本:漁夫の利で優勝を目指す
1:とりあえず四路智美のスタンスを判断。
2:四路智美は殺し合いに乗っている?
[備考]
※タイムマシンの存在を聞かされていません。


   ◆   ◆   ◆


一方。一階へと続く階段を下りていく智美は目の前の探知機の動きに戸惑いを隠せないでした。
「灰原」を表す赤い点と「八神総八郎」を表す赤い点が交わりあっていたからだ。
本人をも恐れていたような人物、灰原になぜ八神は交戦しているのか?全く意味が分からない。

DAN!

そう考えた途端さっきとは明らかに違う銃声が私の耳をつんざく。ここは病院の二階だ。つまりこの下で激しい戦いが行われている。さすがにこの場面で階下に突っ込むのは無謀だろう。
智美は落ち着いてそばにあった椅子に腰を下ろし息を整えた。
足元にはプラグがある。少し震えている手を押さえつつ智美は落ち着いて手元の探知機を覗き込んだ。
様相がかなり変わっていた。
まず、灰原と八神を表す赤い点が画面から消えている。これはゲーム開始直後に森友子を表す赤い点が消え、彼女は死んでいたことから彼らが相打ちになったと判断してなんの問題もないだろう。正直かなりやばそうな二人だったので正直、ありがたい。

「三橋一郎」

そんな時、その名前は画面の下から現れた。そしてその点は探知機の中心に存在する

「四路智美」

この点に向かってまっすぐ向かってくる。
その二つの赤い点はやがてピッタリ重なり、シンクロした。
たまらず私は駆け出した。
まるでそこに私の居場所があった様な気がしたから。


   ◆   ◆   ◆

63Shall I show you my plan?〜逃亡〜 ◆YCsZPcr8k2:2013/03/22(金) 00:02:22 ID:g5yAM64U0


その鬼は形のつぶれたボールをじっと見つめていた。
三橋はなぜかボールの縫い目に沿ってボールをつぶしていたのだ。
それはフォーシームの握り。昔やっていた野球の握りを無自覚でやってしまったということだ。
ただでさえ「野球」という存在を無理して排除した、と思い込んでいた矢先。それが完全にはできていなかったということを知り、三橋は亀田との約束も忘れて「野球を本当の意味で汚してしまったんだ」という思いに駆られていた。

がたがたがた。



「・・・・・・三橋君」
「!」

【F-6/病院/一日目/日中】

【三橋一郎@パワプロクンポケット3】
[状態]:打撲 エネルギー70%
[装備]:鬼の手、パワーと走力の+パーツ一式、豪力
[道具]:支給品一式×2、予備バッテリー
[参戦時期]亀田の乗るガンダーロボと対決して敗北。亀田に従わされしばらく経ってから
[思考]
基本:亀田の命令に従いバトルロワイヤルを円滑に進めるために行動する。
1:!
2:参加者を積極的に探して殺す。
3:もしも相手がマーダーならば協力してもいい。
4:亀田に対する恐怖心。
[備考]
※萩原(名前は知らない)は死んだと思っています。
※大江和那と浜野朱里(名前と姿が一致しない)が死んだと思っています。
※大江和那の能力の詳細を一切知りません
※トンネルバスターは一回分です
※神条紫杏には気づきませんでした。

64Shall I show you my plan?〜逃亡〜 ◆YCsZPcr8k2:2013/03/22(金) 00:05:56 ID:g5yAM64U0
【四路智美@パワプロクンポケット3】
[状態]:嫌な汗が背中に伝わっている。
[装備]:拳銃(ジュニア・コルト)、バット
[道具]:支給品一式、探知機(エネルギー100%)、充電器
[思考・状況]基本:二度と三橋くんを死なさない。
1:三橋くんのために殺し合いにのり人数を減らす。
2:十波典明の言葉を丸っきり信用するわけではないが、一応警戒。
3:亀田の変貌に疑問?
[備考]
※メカ亀田を危険人物だと判断しました。
※ピンクのパーカーを着た少女を危険人物と判断、作業着を着た少女を警戒。
※ダイナマイト5本は呪いの人形に壊されました。また、探知機が正しく作動しているかは次の書き手さんにお任せします。

投下終了です
決着つけたかったんですが実力不足ですみません

65名無しさん:2013/03/22(金) 01:05:05 ID:xAO7cbwk0
投下乙です!
全員が病院内に居て智美と三橋が出会って、けが人の6主とステルスマーダーの曽根村が単独行動。
まだまだ波乱が残っていそうな……
しかし「私の居場所があったような」ってのがいいなーw

66名無しさん:2013/03/25(月) 15:00:07 ID:fOWnNEbA0
本当に面白いです!投下乙です!!

67名無しさん:2013/05/17(金) 16:10:38 ID:8NVLWsP.0
2ヶ月近く投下来てないけどもう見てる人いないのかな?

パワポケ好きな自分としては、最近まで存在を知らなかった自分が憎い…
もっと早くから参加したかった…


wikiにあるのを読み終えて、とりあえずリンクがおかしかったのを
勝手ながら直しておきました(wikiの事もこのスレでいいのだろうか)

68名無しさん:2013/05/18(土) 00:30:37 ID:.3LgBb/60
>>67
ウィキ編集乙です

69名無しさん:2013/05/21(火) 00:24:09 ID:FgdVcArA0
>>67
乙です

70名無しさん:2013/05/25(土) 06:24:32 ID:uD4uJ2GU0
誰もいないね

71名無しさん:2013/05/30(木) 23:25:01 ID:GMRxGaLE0
編集乙

72名無しさん:2013/08/05(月) 20:28:22 ID:a1AarBXA0
保守

73名無しさん:2013/09/30(月) 18:24:39 ID:CxH9PYBk0
ほしゅ

74名無しさん:2013/10/15(火) 02:17:44 ID:xijBpA5o0
保守

75名無しさん:2013/11/03(日) 23:11:46 ID:iwTY9gYY0
巨人が負けてしまったので保守

76名無しさん:2014/02/26(水) 22:39:37 ID:Ajrq6taI0
(・_・)

77名無しさん:2014/03/29(土) 21:35:59 ID:SK5LxOUc0
ほす

今更追いついた

78名無しさん:2014/04/25(金) 01:07:36 ID:MiK5CoKo0
始まった時期が10発売時点なのが痛かったな。
今からでも11以降のキャラを投入すれば、まだワンチャンあるかもしれない(これから増えることはないんだし)。
他にもレッドと9主みたいな設定上の矛盾も出ちゃってるし。

79名無しさん:2014/04/28(月) 21:52:20 ID:qB1Z27FE0
しかしシリーズが続いてくれていたら新規の参入が見込めたんだがなぁ

80名無しさん:2014/05/12(月) 06:27:27 ID:i0O.0FbM0
もう再試合しようよ!

81名無しさん:2014/05/16(金) 05:04:16 ID:k7.C0URE0
亀田「飛び入り参加させるでやんす!最初から参加してた奴が不利?運も実力のうちでやんす!」

11以降のキャラ追加

亀田「9主人公とレッドは今まで記憶を操っていたでやんす!記憶を解除してレッドも9主人公時代を思い出すでやんす!」

レッド、9主人公の記憶を思い出す


こんな感じなら全然矛盾なく追加できると思う

82名無しさん:2014/05/19(月) 00:09:01 ID:RPm6117A0
(アカン)

83名無しさん:2014/09/20(土) 23:20:31 ID:X7ru9e3c0
過疎過ぎィ!

84名無しさん:2014/09/23(火) 17:15:48 ID:X9sPy0mA0
パロロワ全体が過疎ってる

86名無しさん:2014/11/25(火) 00:06:17 ID:3dn6jPzc0
どうやって過疎から脱するかだな

87名無しさん:2015/05/19(火) 19:27:10 ID:WYFs6PxQ0
復活してほしい

88名無しさん:2015/05/19(火) 22:32:11 ID:A8SX2/7U0
上がってると思ったけど、投下無いのか

89名無しさん:2015/10/11(日) 05:05:00 ID:IBl.9mtQ0
もう投下する人は居ないんだろうけど楽しかったです
今まで本当にお疲れ様です

90ミスターX:2015/10/11(日) 05:38:31 ID:7TrVPKqM0
ワイが投下してもええで

91名無しさん:2015/10/12(月) 00:56:35 ID:ZfbeXyo60
キチガイは帰れ

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