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パラレルワールド・バトルロワイアル part2.5
1 ◆Z9iNYeY9a2:2012/10/25(木) 23:56:14 ID:aXBt.Dzg0
『バトル・ロワイアル』パロディリレーSS企画『パラレルワールド・バトルロワイアル』のスレッドです。
企画上、グロテスクな表現、版権キャラクターの死亡などの要素が含まれております。
これらの要素が苦手な方は、くれぐれもご注意ください。

前スレ
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/14757/1316708226/

【外部サイト】
パラレルワールド・バトルロワイアルまとめwiki
ttp://www45.atwiki.jp/pararowa/
パラレルワールド・バトルロワイアル専用したらば掲示板
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/14757/

2名無しさん:2012/10/26(金) 00:00:28 ID:3EX4S54I0
5/5【仮面ライダー555】
 ○乾巧/○草加雅人/○長田結花/○村上峡児/○北崎
3/4【仮面ライダー555 パラダイス・ロスト】
 ○木場勇治/○園田真理/○海堂直也/●菊池啓太郎
3/5【コードギアス 反逆のルルーシュ】
 ●ルルーシュ・ランペルージ/○C.C./○枢木スザク/○ロロ・ランペルージ/●篠崎咲世子
6/6【コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
 ○ナナリー・ランペルージ/○アリス/○ゼロ/○ロロ・ヴィ・ブリタニア/○マオ/○ユーフェミア・リ・ブリタニア
2/4【DEATH NOTE(漫画)】
 ○夜神月/●ニア/○メロ/●松田桃太

2/4【デスノート(映画)】
 ○L/● 弥海砂 /○夜神総一郎/●南空ナオミ

4/5【Fate/stay night】
 ○衛宮士郎/○間桐桜/○セイバーオルタ/○バーサーカー/●藤村大河

4/6【Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
 ○イリヤスフィール・フォン・アインツベルン/○美遊・エーデルフェルト/○クロエ・フォン・アインツベルン
 ●遠坂凛/●ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト/○バゼット・フラガ・マクレミッツ
5/5【ポケットモンスター(ゲーム)】
 ○シロナ/○N/○ゲーチス/○オーキド博士/○サカキ
3/5【ポケットモンスター(アニメ)】
 ●サトシ/●ヒカリ/○タケシ/○ニャース/○ミュウツー
3/4【魔法少女まどか☆マギカ】
 ○鹿目まどか/○暁美ほむら/○美樹さやか/● 佐倉杏子
3/4【魔法少女おりこ☆マギカ】
 ○美国織莉子/○呉キリカ/●千歳ゆま/○巴マミ
【残り43/57名】(○=生存 ●=死亡)

3名無しさん:2012/10/26(金) 00:01:48 ID:3EX4S54I0
【基本ルール】
 『儀式』(バトル・ロワイアル)の参加者(以下『プレイヤー』と表記)は57名。
 『プレイヤー』全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が『勝者』となる。
 『勝者』には、『どのような願いでもひとつだけ叶えることが出来る権利』が与えられる。
 制限時間は無制限。『プレイヤー』が最後の一人になるか、全員死亡するまで『儀式』は続行される。
 『プレイヤー』が全員死亡した場合は、『勝者なし』(ゲームオーバー)となる。
 『儀式』開始時、『プレイヤー』はテレポートによってMAP上にバラバラに配置される。
 『儀式』中は『プレイヤー』の行動に関する制限は特になく、後述する『術式』が発動する条件に触れなければ、どのような行動をとることも許される。

【プレイヤーの持ち物】
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品などは没収されている。
 ただし、義手など身体と一体化していたり、生命維持に関わる武器や装置(魔法少女のソウルジェムなど)はその限りではない。
 また、財布、時計、携帯電話など『ポケットに入る程度のサイズの日用品や雑貨』は没収されていない。
 上記の品々の中に仕込まれた武器類(夜神月の腕時計に仕組まれたデスノートの切れ端など)は没収されている。
 携帯電話やポケギアは常に圏外。ただし、後述する『ランダム支給品』として支給されたものなどは通話可能な可能性がある。

【デイパックと支給品について】
 『プレイヤー』は全員、以下の品がデイパックに入った状態で支給されている。
  ・デイパック … 普通の何の仕掛けもないデイパック。肩掛け式。結構大きい。
  ・水 … 1リットル入りペットボトルに入ったミネラルウォーター。2本。計2リットル。
  ・食料 … ただのパン。6個。大体1日(3食)分。大きさやパンの種類は後続の書き手次第。
  ・懐中電灯 … ただの懐中電灯。単一電池2本使用。
  ・名簿 … 『プレイヤー』の名前が50音順で載っている名簿。載っているのは名前のみ。
  ・地図 … 『儀式』の舞台の地図。
  ・デバイス … 自身がいるエリアを表示してくれる小型デジタルツール。外見はポケウォーカーに似ている。
  ・筆記用具 … 普通の鉛筆・ペンが数本と消しゴム1個。大学ノート1冊。
  ・ランダム支給品 … 『プレイヤー』のデイパックの中にランダムに支給される品。最小で1つ、最大3つ。
 『ランダム支給品』は銃火器、剣などの武器から各作品世界の品、日用品まで様々な物がランダムで入っている。
 ただし、デイパックの余剰部分に少々強引に詰め込まれているため、サイズの大きいものは中身がはみ出ていて丸見えであったり、最初からデイパックの外に出た状態で支給される。

4名無しさん:2012/10/26(金) 00:02:23 ID:3EX4S54I0
【舞台】
 ttp://download2.getuploader.com/g/ParallelWorld_BattleRoyal/20/pararowaMAP.jpg

【禁止領域】
 定時放送終了の2時間後、3時間後、4時間後に1エリアずつ進入禁止エリアである『禁止領域』が生まれる。
 『禁止領域』は『儀式』が終了するまで解除されない。
 『禁止領域』に30秒以上留まり続けてしまうと、後述する『術式』が発動する。ただし、29秒以内ならエリア内への侵入、エリア内の通行といった行動も可能。
 『プレイヤー』が『禁止領域』に踏み込むと、身体の先端部(指先など)から青白い炎が生じ、時間が経過する毎に炎の勢いは強くなる。
 29秒以内に『禁止領域』から脱出することができれば、脱出と同時に炎は消える。
 長時間及び連続して『禁止領域』へ侵入した場合、炎が生じた場所が灰化するなどの外傷を負う可能性がある。

【定時放送】
 一日6時間毎、計4回、主催者側から定時放送が行われる。
 放送が行われる時間は0:00、6:00、12:00、18:00。
 内容は、前回放送終了後から放送開始までの約6時間中に発生した『脱落者』(死亡者)の発表と、放送終了2時間後、3時間後、4時間後に『禁止領域』となるエリアの発表。

【呪術式について】
 『プレイヤー』は全員、『魔女の口づけ』を参考に生み出された呪術式(以下『術式』と表記)を身体に刻み込まれている。
 『術式』が発動した『プレイヤー』は、身体中から青白い炎を発し、やがて灰となり『完全なる消滅』を迎える。要するに死亡する。
 青白い炎は、術式が発動した『プレイヤー』の身体以外のものや他者には燃え移らない。
 『術式』が発動する条件は以下の3つ
  ・『儀式』の舞台の外へ出る
  ・24時間『プレイヤー』から『脱落者』(死亡者)が一人も出ない。この場合、『プレイヤー』全員の『術式』が発動し、『プレイヤー』は全員死亡する
  ・『禁止領域』に30秒以上留まる
 『術式』は『プレイヤー』の首元にタトゥー状に常に浮かび上がっている。
 『術式』は常に『プレイヤー』の生死を判断しており、死亡した『プレイヤー』の肉体からは『術式』は消滅する。
 主催側はこれによって、『プレイヤー』の生死と詳細な現在位置を把握している。

5名無しさん:2012/10/26(金) 00:03:29 ID:3EX4S54I0
【能力制限】
 一部『プレイヤー』や一部『ランダム支給品』には、何らかの要因によって能力を制限されている。
 一部『プレイヤー』や一部『ランダム支給品』が持つ能力には、使用そのものが禁止されている(要するに使用できない)ものが存在する。
 一部『ランダム支給品』は、能力面以外にも制限が科せられている。

 大まかな目安は以下のとおり

  ◆禁止
   オルフェノクの「使徒再生」による他参加者のオルフェノク化
   サーヴァントの霊体化
   ソウルジェムのグリーフシード化(穢れが浄化しきれなくなると砕け散る)
   C.C.の他者にギアスを発現させる能力
   暁美ほむらの時間遡行能力

  ◆ある程度のレベルまで制限
   オルフェノクの怪人態時の各種身体能力
   ゼロの各種身体能力
   サーヴァントの各種身体能力
   一部ポケモンの各種身体能力
   各種ギアス
   ポケモンの使用する技(主に威力面)
   各種回復能力(全快までに時間がかかるようにする)
   ナナリー、アリス(コードギアス取得後)、ゼロ、ロロ(悪夢版)のナイトメアフレーム召喚

 ※あくまでも目安のため、最終的な制限レベルなどについては各書き手の裁量に委ねられる。
  また、ロワ本編中において能力制限が解除される展開となった場合は、これら制限は消滅する。
  詳細な制限の内容などについては以下の項目を参照。
  ttp://www45.atwiki.jp/pararowa/pages/86.html

6名無しさん:2012/10/26(金) 00:04:36 ID:3EX4S54I0
【書き手ルール】
 書き手は事前に、予約専用スレにおいてトリップ付きで予約または投下宣言を行うこと。トリップのない予約、投下宣言は無効。
 予約、投下宣言についての詳細は予約専用スレ参照。
 作品の最後には生存しているキャラクターの状態表を以下のテンプレートを元に記してください。

【(エリア名)/(具体的な場所名)/(日数)-(時間帯名)】
【(キャラクター名)@(登場元となる作品名)】
[状態]:(肉体的、精神的なキャラクターの状態)
[装備]:(キャラクターが携帯している物の名前)
[道具]:(キャラクターがデイパックの中に仕舞っている物の名前)
[思考・状況]
基本:(基本的な方針、または最終的な目的)
1:(現在、優先したいと思っている方針/目的)
2:(1よりも優先順位の低い方針/目的)
3:(2よりも優先順位の低い方針/目的)
[備考]
※(上記のテンプレには当てはまらない事柄)

【作中での時間帯表記】(0:00スタート)
 [00:00-01:59 >深夜] [02:00-03:59 >黎明] [04:00-05:59 >早朝]
 [06:00-07:59 >朝]  [08:00-09:59 >午前] [10:00-11:59 >昼]
 [12:00-13:59 >日中] [14:00-15:59 >午後] [16:00-17:59 >夕方]
 [18:00-19:59 >夜]  [20:00-21:59 >夜中] [22:00-23:59 >真夜中]

【修正・破棄に関してのルール】
 本スレに投下した作品が、矛盾点や注意を受けた場合、書き手はそれを受けて修正作業に入ることができます。
 修正要望を出す場合、内容は具体的に。「気に入らない」「つまらない」などの暴言は受け付けられません。
 問題点への「指摘」は名無しでも可能ですが、話し合いが必要な「要求」は書き手のみが可能です。
 既に進行している(続きが予約または投下されている)パートを扱った作品に対して修正要望を出すことはできません。
 (ただし、対象となる作品の続きが、同一書き手による自己リレーであった場合はその限りではありません)
 議論となったパートは、協議が終わるまで「凍結」となります。「凍結」中は、そのパートを進行させることはできません。
 議論開始から二日(48時間)以上経過しても作品を投下した書き手から結論が出されなかった場合、作品はNGとなります。
 修正を二回繰り返しても問題が解決されなかった場合、「修正不可」と判断され、作品はNGとなります。

7名無しさん:2012/10/26(金) 13:20:56 ID:fW2qGIw60
移転乙です
さあて頑張るぞー

8名無しさん:2012/10/26(金) 16:29:45 ID:goNlbfII0
スレ立て乙

9 ◆Z9iNYeY9a2:2012/10/26(金) 20:23:58 ID:3EX4S54I0
予約分の投下始めます

10Cross point ◆Z9iNYeY9a2:2012/10/26(金) 20:26:48 ID:3EX4S54I0
「やあ、こんにちは」
「…ここは?」

気がつくと謎の空間にゼロは立っていた。
いや、謎の空間ではない。ここが何なのか、自分はよく知っているはずだ。
ルルーシュとしてではない。エデンバイタルの魔王としての記憶が知っているはずだ。

今まで叶わなかったエデンバイタルへの接続ができたということだろうか。
だとすると、この状況は何だ?目の前のこの白い謎の生き物は何なのだ?

「なぜお前のような生き物がここに干渉することができる?」
「悪いけど、君からの質問は必要なものにしか答えられない。今はそう決められているんだ」

質問はあっさりと流され、一方的に会話が進められる。本来であればルルーシュであった頃の話術を使えばどうとでもなることのはずがなぜかうまくペースを掴めない。

「今日は君にお願いがあってきたんだ」

そして目の前の生き物はこちらの意志を無視して話を進めていく。

「お願いだと?」
「うん、僕たちと契約して、宇宙の寿命を延ばすのを手伝ってほしいんだ」
「ほう?」

聞くだけならば興味を引かれないでもない内容である。
それ自体は己の使命に繋がりそうな言葉であるからだ。

「本来なら君ほどの人物はこちら側にいるはずなんだ。それほどにゼロ、君の評価は高い。
 僕達の指示に従って行動してくれるなら、きっと君の目的に沿うことは可能だよ?」
「ふん、協力者として声をかけておきながらこちらの質問には答えない。
 それでよく協力してくれなどと言おうと思ったな」
「おや、そういうものなのかい?
 それは気を悪くさせてしまったかな。いやいや、感情とは難しいものだね」
「まあいい。話してみろ」

「そうだね。君には今から今から話すことを実行に移してほしい。内容は君の返答次第で話す。それ以外は自由にしてもらって構わない。
 あとゼロ、君は何か不調のようなものを感じていないかい?」
「貴様か、エデンバイタルの接続を妨げたのは」
「君だけ特別扱いするのは難しいからね。一参加者としている限りは」
「つまりこういうことか。お前たちに協力することでエデンバイタルへの接続は自由になると」
「話が早くて助かるよ。それで返答は――「断る」」

一蹴された。意外だったのか、白い生き物は無表情の中で微かに首を傾げた。

「どうしてだい?」
「貴様らの管理下にある門を使ったところで信用することなどできない。何よりこれは私自身の役割だ。お前達のようなものの協力など願い下げだ」
「そうかい。それじゃ、この話はお終いだ。次に会うのは、君が最後の一人になってからかな?」
「一つ聞いておこう。お前たちの仲間に、あの男はいるのか?」
「君の言う『あの男』とはだれのことか判断しかねるし、そもそも質問は受け付けないと言ったはずだよ」

その言葉に何を納得したか、ゼロは踵を返して歩き始めた。
歩く先にあるのはこの空間の出口。現実の世界での戦いを続けるために。



「はぁ、やっぱり分からないなぁ。人間の感情って」
「ふん、あやつであればそうするであろうよ」
「でもいいのかい?彼にあの門からの情報を少しずつ流していって。
 結局ゼロの協力は取り付けられなかったというのに」
「どの道これを進めること自体に大きな意味がある。あやつがその気である以上、我らに不利はあるまい?」
「そうかい?ならいいんだけど。
 じゃあ僕は行くよ。これでも色々と忙しいからね」



11Cross point ◆Z9iNYeY9a2:2012/10/26(金) 20:28:07 ID:3EX4S54I0


「む…?」
「目は覚めたか」

気が付くと、そこは瓦礫の積み重なった空間。
目の前には一時的な共闘者として協力している木場勇治の姿。

ああ、思い出した。あの後この場で傷が癒えるまで休息をとることにしたのだった。

「俺は、眠っていたか?」
「声を掛けても反応がなかったようだし、しばらく放っておかせてもらった」

ゼロの顔は仮面に覆われているため、彼が動かない間起きているのか眠っているのか判断をつけられなかった。

(何か、俺に話しかけてきたやつがいたような…、駄目だ、思い出せん)

ふと時計を見ると、既に放送の時間を超過していた。
どうやら聞き逃してしまったようだ。

「放送はどうだったか?」
「もう時間は過ぎたさ。ここが禁止エリアに選ばれたからそろそろ出発するべきだろうな」

ここが禁止エリアに選ばれた。ならば木場勇治の言うとおり急いだほうがいいだろう。

「そうだな。だがその前に情報を整理しておきたい。放送の情報、教えてもらおうか」



サイドバッシャーを走らせる暁美ほむら、その隣に搭乗するアリス。
東に向かう二人の手元には2匹の生き物がいた。
一匹は小さなペンギンのような生き物。もう一匹は黒い猫。

(凄い拒絶感ね。本当に何があったっていうのかしら)

アリスがその拒絶感を感じる原因は、今手元にいるこのポッチャマというペンギンのせいだろう。
足元で猫と戯れるこのポケモンというらしい生き物。だがこの猫はほむら自身が受け取ることを承諾したのだ。生き物が嫌いなのだとは思えない。
まあそう考えはしても下手な追求はしたくないのだが。
考えを切り上げ、ふと地図に目をやる。

「ねえ、この鹿目邸ってところ、あんたの探しているまどかって子の家でしょ?ここには向かわなくていいの?」
「そうね。確かにここに行けばまどかはいるかもしれない。でも今はいい。取り急いで行く場所じゃないわ」
「?何でよ?」
「それは――…ちょっと待って」

言いかけたところで急に自身のソウルジェムを眺め始めたほむら。

「どうしたの?」
「少し急ぐわ。しっかり捕まってて」

と、バイクの速度を上げる。

「この近くにかなりの魔力の持ち主がいるわ。魔法少女では有り得ないくらいの。
 念のためにここから急いで離れるわよ」

説明しておくと、頭部の怪我の治癒に少し魔力を費やしてしまったと考えたほむらはミュウツーと別れて以降、魔法少女の服を解除していた。これは魔力節約を考えてのことだ。
しかし何かとんでもない脅威が近くにいると感じ取ったほむらは今またその姿を魔法少女のものへと変えた。
次の瞬間、

「■■■■■■■■■■■■■■■――――――!!!」

二人の耳に人のものとは思えない咆哮が届いた。

12Cross point ◆Z9iNYeY9a2:2012/10/26(金) 20:30:07 ID:3EX4S54I0



北崎にその体を灰とさせられてなお、バーサーカーは歩みを止めてはいなかった。
ボロボロと歩く度に灰を体からこぼれ落とす姿は痛ましくもあり、雄々しくもあった。

視覚聴覚触覚味覚嗅覚。それら全てを封じられてなお、歩みを止めない。
彼が狂化しているのも原因だろう。さらに狂戦士には歩みを阻むものを押しのけ粉砕するほどの力が備わっている。

そんな彼が知覚できるもの。五感に頼らずに把握できるもの。
第六感による気配。そして、魔力。

暁美ほむらの失敗は一つ。とは言ってもそれを責めるのも酷な話ではあるが。
彼女は出会ってしまった際の警戒として早々に迎撃態勢を、魔法少女の姿をとってしまったこと。

バーサーカーの魔力は膨大であり、ある程度離れた場所であってもその存在を把握することができる。
だが、バーサーカーの知覚はほぼ直感と気配頼り、逆に言えばそれらは五感が機能している時よりも精練されている。

魔法少女の姿となり、魔力を放出しながら移動する彼女達を逆に捉えることなど、造作もない。



「ポチャ?!」

それは正面から現れた。
全身を赤と黒の何かで覆われた巨人。先ほど変形したサイドバッシャーとも引けをとらない大きさの大男。

バイクを飛ばすこちらに迷わず走ってくる。

「―――!!」

それを見たほむらは迷うことなく時間を止める。
腕を振り上げたその巨体も、周囲の景色も、全てが止まる。動くのはほむら、サイドバッシャーとそれに搭乗している者のみ。

5秒。それが今止められる時間だ。だが5秒あれば充分だ。
バーサーカーを避けるのに2秒。残りの3秒を全力で走り、距離を離す。

最高速度で移動すればかなりの距離を離すことができる。
捕捉されにくいように角を曲がり、そのまま走り続ける。

3秒経過。時は動き始めた。

振り上げられた腕を空振りさせるバーサーカー。

「これで大丈夫。あとは逃げるだ――?!」

次の瞬間、目の前に砕かれた巨大なコンクリート片が降ってきた。

(対応が早すぎる!)

気配、直感のみで相手を把握するバーサーカー。そんな彼に時を止めての隠匿など、その体が魔力を放出し続ける限り何の意味もない。
加えて彼は狂化している。相手が瞬間移動やワープで突如居場所を変えたとしてもそれに戸惑うような思考などありはしない。
空振りした際に砕いた壁から作られたコンクリート片を直感的に投げた。ただそれだけのこと。

13Cross point ◆Z9iNYeY9a2:2012/10/26(金) 20:34:28 ID:3EX4S54I0

それを避けようとしてバランスを崩したサイドバッシャーは倒れ、サイドカーに搭乗していたアリス達を振り落した。

「くあっ!」
「ポチャァ!!」

中でもポッチャマの吹き飛んだ場所はよりにもよってバーサーカーの進路上。

「ポ、ポチャ!」

起き上がることもできないポッチャマに、それこそ車にも匹敵する勢いで走り抜けるバーサーカー。
アリスはポッチャマの救助にギアスを発動しようとさせ――

「え?」

それはポッチャマを跨いで走り抜けた。向かう先には暁美ほむらがいる。
この巨人は自分やこのポッチャマを無視してほむらに向かって走っていったのだ。

「ほむら!危ない!!」

はっと顔を上げたほむらは目の前で丸太のような腕を叩きつけようとするバーサーカーに気付く。

だが次の瞬間ほむらとサイドバッシャーは姿を消していた。さらにアリスの目からはまるでアニメのコマでも飛んだかのようにバーサーカーがよろけるのが目に入った。

「間一髪だったわ」

横を見ると傾いたサイドバッシャー(バトルモード)に乗ったほむら。時間を止めてバッシャーを変形させつつ巨人の足を蹴り飛ばして移動したようだ。
だが倒れたバーサーカーはすぐに起き上がりそうである。
すぐに建物の影に隠れる二人。

「少しだけ時間を稼いで。ほんの数分でいいから」
「あいつを引きつければいいならいけなくもないけど、ほむらはどうするの?」
「サイドバッシャーをまともに動くようにする。それにはまずあれを取りにいかないといけないんだけど」
「仕方ないわね」

と、バーサーカーが起き上がったと同時に水の入ったペットボトルを投げるほむら。と、次の瞬間。
それはバーサーカーの目の前で水を撒き散らしながら大爆発を引き起こした。

(まさか昔調べた知識がこんなところで役に立つなんてね)

もう遥か昔の、まだ魔法少女になり立てのころ、様々な武器を作る知識を調べている際に見た情報。
水入りペットボトルにドライアイスを入れることで爆弾となるのだ。
無論あの怪物には威嚇程度にしかならないだろうがこれに魔力を込めればそれなりの威力を持つものにもなる。
数秒怯んでくれれば充分だ。

サイドバッシャーを回収するため爆発と同時に飛び出すほむら。

しかし―――

「■■■■■■■■■――――――!!」

バーサーカーは一直線に、飛び出したほむらの元に向かってくる。
爆発で怯むこともダメージを受けることもなく。

「ほむら!危ない!!」
「ポッチャマーー!!!」

その腕がほむらを捕えようとしたその瞬間、バーサーカーの足に大量の水が叩きつけられた。
それはさっき放り投げられたポッチャマを出所としたものだった。
片足を重点的に狙われたことでバーサーカーはバランスを崩して今また倒れる。

14Cross point ◆Z9iNYeY9a2:2012/10/26(金) 20:36:53 ID:3EX4S54I0


(この怪物、もしかして――)

「ほむら!その魔力とかいうの、使うの止めて!!」

言うと同時にポッチャマをほむらの傍に走らせる。
確認した直後、ギアスを発動。

(考えが正しければこいつは私を追ってくるはず――)

一度に発動し続けることができるのはおそらく10秒ほどが限界。だがそれを一度に費やす必要はない。
まずこいつをこちらに引き付けることが重要。
今、ほむらは魔法少女の服を解除して元の制服姿になっている。
このタイミングでギアスを使用すれば間違いなくこいつの注意はこちらに向く。

まずはギアスを解除し5秒ほど走る。
加重力により超加速により、数秒とはいえ長距離の移動を果たす。
しかし巨人も見かけによらず驚異的な速度でこちらに追いすがっている。

その数秒の間に、自身の腕に薬をうつ。
支給品にあったヨクアタールという道具。撃った瞬間、視力、聴力が普段よりはっきりと知覚できるようになった。

肉薄するバーサーカーを今度はギアスを発動しつつジャンプで躱す。
が、バーサーカーは正確にこちらを向いて空中にいるアリスを手で掴もうとする。

(肉体は鋼のように硬く、銃弾を通すこともない。そこから振るわれる拳はサザーランドくらいなら余裕で破壊しかねないわね)

これがこの短時間で測ったバーサーカーの強さだ。

(でも、その体全てが硬いってわけでもないはずよ)

例えば、その恐らくは見えていないであろう眼。そして口腔内、ひいては体の内部。

(なら、そこに銃弾を撃ち込めば――)

加重力を制御しつつ空中で銃弾を命中させる。そのような芸当、よっぽどの腕が無ければできないだろう。
だが、五感を強化した今であれば――

(できる―――!!)

こちらを向いたバーサーカーの両目、口の中に合計4発の銃弾を撃ち込む。

着地と同時に背後のバーサーカーは目から血を噴出させて後ろに仰け反る。
が、すぐさま態勢を立て直した上、口に撃ち込んだ銃弾はそのまま噛み砕かれていた。

15Cross point ◆Z9iNYeY9a2:2012/10/26(金) 20:40:08 ID:3EX4S54I0


「■■■■■■■■■――――――!!」

それは痛みからか怒りからか、更に咆哮を上げて巨体が迫る。

「…駄目か」

眼や口腔への攻撃でも駄目となれば拳銃でどうにかできる相手ではない。
あとはもう逃げることで精一杯だろう。
それにこの怪物、このなりで頭もそれなりに働くようだ。同じ手を使っても成功率はぐんと下がる。加えてギアス使用中の反応速度は脅威だ。

「やっぱりこいつ、ほむらの言っていた魔力かそれに近いものに反応してる…?」

そのままこちらに駆け出すバーサーカー。しかしその体が不意に止まる。

「…?」

その視線は10メートルほど離れた場所にいる、ほむらの連れてきたあの黒猫の姿があった。

(え…。もしかしてこいつ、あの子を見てる?)

ミャー
「■■■■■■■■――――――!!」

猫が鳴いたと同時、そちらにとびかかるバーサーカー。

「な…っ、…ちょ…っとお!!」ダッ

慌ててギアスを発動させて猫の元へ飛ぶ。
掴むと同時、地面を滑らせて移動させるアリス。これで猫を逃がすことはできた。しかし――

「ぐ…っ」

自身まで守りきることはできなかった。体をその大きな手の内に捕まれ身動きがとれない。

ダン!ダン!
銃弾を撃ち込むがびくともしない。
強く握りこまれたその腕を振り上げる。

(っ…、これじゃギアスの発動は――)

ギアスをさらに使用することへの刹那の迷い。
その僅かな隙にバーサーカーはアリスを、まるで先ほどのコンクリートを投げるかの要領で投げる。

16Cross point ◆Z9iNYeY9a2:2012/10/26(金) 20:45:55 ID:3EX4S54I0
吹き飛ぶアリス。
目の前に迫る地面。激突までもう一瞬というところ。それを、

「間に合ったようね」

突如現れたほむらが受け止めた。

「…。何やってたのよ」
「ちょっとサイドバッシャーの修理をね」

といった瞬間、バーサーカーの横からあの変形したバイクがタイヤのついた腕を叩きつけた。

先ほどの戦いでダメージを受けたはずのサイドバッシャー。しかし今はしっかりと二足での直立を果たしていた。
見ると、木場勇治との戦いで切り裂かれたはずの脚部に当たる部位は、謎の発光を放っている。

「案外魔法って便利なものなのよね。少しやり方を考えてたら時間を取られてしまったけど」

と、言った後ジャンプしてその座席に座るほむら。
勢いのままに再びその腕部で殴りつけるも、今度は受け止められてしまう。
ギリギリと握られた部分から嫌な音が聞こえ始める。
脚部で蹴りつけるも、今度は倒れることはない。

恐らくこの怪力であればこのバイクごと投げ飛ばすことも可能だろう。
しかし、そうはならなかった。

なぜならこの時バーサーカーの足元に謎の渦が巻いていたのだから。
アリスが顔を上げると、座席の前に当たる場所にはポッチャマが陣取っていた。この渦を発しているのは彼のようだ。
ポッチャマのうずしおに足を取られたバーサーカーは思わず手を離してしまう。

「早く手を出しなさい。おいていくわよ?」

そんなことを言うほむらの顔が何か癪だったアリスは手を出さず、自力でサイドバッシャーの後部に上がる。

カチッ
その瞬間、またあの光景となった。
足を取られて倒れそうになるバーサーカー、しかしその姿はそこで止まっている。

「これで終わりよ」

そんな動かないバーサーカーに向け、左腕部の発射口から発射される大量の光弾。
それはバーサーカーの当たるか当たらないかという直前で止まっている。
さらに加えて、ほむらはポッチャマに先ほどの渦をバーサーカーの目の前に出現させる。

そうして追撃進路に障害物を置いたのち、バイクモードへと変形。直線に走り、50メートルは離れたかというところ。
そこまで来た辺りで時は動き始める。

次の瞬間、バーサーカーの体は大量の魔力弾の爆発で包まれた。



17Cross point ◆Z9iNYeY9a2:2012/10/26(金) 20:46:54 ID:3EX4S54I0

「死者は10人、禁止エリアはB-3、E-2、G-7か。間違いはないんだな?」
「ああ」

ルルーシュ・ランペルージ。
禁止エリアに指定されたこの場での乱戦の原因であり、ゼロの問いかけに迷うことなく答えを出したあの男。もう一人の自分。
全く想定していなかったわけではない。だがあいつならば生き残るだろうという思いもあった。

微かに胸中に苛立ちを感じるも、それを誤魔化すべく適当に掴んだ瓦礫を握りつぶす。

「傷の方は問題ないな。そろそろ出発するべきだろう。当てはあるのか?」
「当てか、最初にいた場所がここから北東のエリアだ。そこから移動するなら北か東だとは思う」
「お前の望みのものは虱潰しに当たるしかないということか。
 私にも特に向かいたい場所があるわけでもない。が、お前に支給されていたアヴァロンのキーが気がかりだ。向かうついでに付き合ってやろう」

それは情報交換の中でお互いの支給品について開示した際のこと。
木場勇治の支給品はカードキーとグリーフシードなる宝石のような石。カードキーはA-7に存在する戦艦アヴァロンにて使用するものだとか。
本当はもう一つ支給品があったらしいがそれは運搬できないため捨ててきたらしい。

「問題はここから追って間に合うのかということだが」
「その辺は心配ない」

と、木場は自身をオルフェノクの姿、さらに言えばケンタウロスのように下半身を馬としたものに変える。

「この姿で追えば追い付くのに時間はかからない」
「なるほどな」
「一つ言っておく。もし他の参加者に出会っても、情報を聞き出すまでは殺すなよ」

そう言って、木場はゼロをその背に乗せて走り出した。



「あいつ、まだ生きてるわ」

そう言ったのはサイドカーに乗ったアリスである。
あの怪物の歩く地響きは聴力の上がったアリスの耳に微かに届いていた。

「こっちには追ってきてる?」
「少なくとも追ってきてはないみたい」
「なら安心ね」

こちらの座っているサイドカーにはポッチャマ、そしていつ回収したのか黒猫も乗っていた。

「で、あれは何だったの?」
「もし名簿にあった名前から直接推察するなら、そうね、バーサーカーというやつなのかも。
 このバイクのことなら、ちょっと魔力で補強しただけよ」

元々は脚部の補修だけのつもりだったが、銃弾の節約もかねて魔力を撃ちだせるようにしてみたのだった。
しかし媒介としての優秀さが予想外だったようで、あのような威力となってしまっていたのだという。
元々ミサイルや重火器の扱いに精通していたのも馴染みやすかった理由だろう。

18Cross point ◆Z9iNYeY9a2:2012/10/26(金) 20:47:54 ID:3EX4S54I0
「まあグリーフシードがない以上、何度も使える戦い方ではないけれどね」
「ふぅん。
 そういえばさ、あんたこの子のこと警戒してたんじゃなかったの?」

さっきのバーサーカーとの戦いの最中、サイドバッシャーにポッチャマを乗せているのを見た。
正直置いていくのではないかと心配もしていたのだが杞憂に終わったようだ。
ただ、あのような近くにそのままの状態でいさせていたのには驚いた。

「勘違いしないで。まだそれを信用したわけじゃないわ。
 ただ、戦いで使えるってことが分かったから使わせてもらっただけよ」

そう、この生き物、見た目によらずそれなりの戦闘力をもっているらしい。
バーサーカーの足をとったあの水流、そして渦。
ただ、アリスとしてはあまり使ったという表現は好ましくないようにも感じたが。

「まあでも、助けられたのは確かだし、一応礼はいっておくわ。――ありがとう」
「ポチャ?」

ポッチャマを見ることもなく告げられたお礼に不思議そうに首を傾げるポッチャマ。
そのまま運転に専念するほむら。今はもう何も話すつもりはない様子だ。

(全く…、随分不器用なのね。
 …そういえば――)

と、アリスはポッチャマの隣で眠るこの黒猫を見る。

バーサーカーが魔力や気配に反応して対象を捕捉する一方で、五感のほうはほとんど失われているというのは先ほど推察したとおりだ。
無論これ自体が間違っている可能性もあるため断定することはできない。
しかし―

(確かにあの時、あいつはこの猫を認識した)

この猫がそういった生き物でないことはほむらの様子を見ていれば分かる。
ポッチャマには反応しなかった。つまりポケモンというものは魔力を持っていないのだろう。
なら、この猫は一体なんなのだろうか?
ふとアリスは、自身の胸中に一抹の不安が芽生えた気がした。


【C-4/市街地/一日目 午前】

【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:ソウルジェムの濁り(少)、疲労(中)、頭蓋骨骨折(ほぼ回復)
[服装]:見滝原中学校の制服
[装備]:盾(砂時計の砂残量:中)、グロック19(15発)@現実、(盾内に収納)、ニューナンブM60@DEATH NOTE(盾内に収納)、サイドバッシャー(サイドカー半壊、魔力で補強)@仮面ライダー555
[道具]:共通支給品一式、双眼鏡、黒猫@???、あなぬけのヒモ×2@ポケットモンスター(ゲーム)、ドライアイス(残り50%)
[思考・状況]
基本:アカギに関する情報収集とその力を奪う手段の模索、見つからなければ優勝狙いに。
1:情報を集める(特にアカギに関する情報を優先)
2:協力者が得られるなら一人でも多く得たい。ただし、自身が「信用できない」と判断した者は除く
3:ポッチャマを警戒(?)。ミュウツーは保留。ただし利用できるなら利用する
4:サカキ、バーサーカー(仮)は警戒。
5:あるならグリーフシードを探しておきたい
最終目的:“奇跡”を手に入れた上で『自身の世界(これまで辿った全ての時間軸)』に帰還(手段は問わない)し、まどかを救う。
[備考]
※参戦時期は第9話・杏子死亡後、ラストに自宅でキュゥべえと会話する前
※『時間停止』で止められる時間は最長でも5秒程度までに制限されています
※ソウルジェムはギアスユーザーのギアスにも反応します
※サイドバッシャーの破損部は魔力によって補強されましたが、物理的には壊れています

19Cross point ◆Z9iNYeY9a2:2012/10/26(金) 20:48:43 ID:3EX4S54I0
【アリス@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(小)、ドーピングによる知覚能力・反応速度の向上
[服装]:アッシュフォード学園中等部の女子制服、銃は内ポケット
[装備]:グロック19(9+1発)@現実、あなぬけのヒモ@ポケットモンスター(ゲーム)、
    ポッチャマ@ポケットモンスター
[道具]:共通支給品一式、 C.C.細胞抑制剤中和剤(2回分)@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー
[思考・状況]
基本:脱出手段と仲間を捜す。余裕があればこの世界のナナリーも捜索。
1:とにかくゼロ達のいた場所から離れる
2:情報を集める(特にアカギに関する情報を優先)
3:脱出のための協力者が得られるなら一人でも多く得たい
4:余裕があったらナナリーを探す。
5:ほむらの隠し事が気になるが重要なことでなければ追求はしない
6:ポッチャマを気にかけている
7:ミュウツーはとりあえず信用する
8:サカキを警戒
9:黒猫に嫌な不安を感じる
最終目的:『儀式』から脱出し、『自身の世界(時間軸)』へ帰る。そして、『自身の世界』のナナリーを守る
[備考]
※参戦時期はCODE14・スザクと知り合った後、ナリタ戦前
※『ザ・スピード』の一度の効果持続時間は最長でも10秒前後に制限されています。また、連続して使用すると体力を消耗します
※ヨクアタールの効果がいつまで持続するかはお任せします



アリスの言ったとおり、バーサーカーは未だ健在であった。
いや、もしあの攻撃で命を奪えたとしても、直ちには無意味だっただろう。
その命は残り8回の復活を約束されているのだから。

起き上がるバーサーカー。
両目は潰れ、魔力弾を受けた胸部から腹部にかけては大きな火傷、皮膚の抉れなど酷くボロボロの有様であった。
しかしまだ命を費やしてはいない。
そしてどれだけの痛みにさらされようと、狂化した理性は止まることを許しはしない。

アリスと暁美ほむら達を逃がしてしまったバーサーカーだが、それに悔いることも省みることもなく歩き出そうとした、まさにその瞬間であった。
狂化、黒化した精神の中に残った、ほんの僅かな安らぎの存在を近くに感じ取ったのは。



「そういえばだ。お前が回収しそこねたという支給品とは、一体何だったのだ?」
「ああ、あれか。正直俺に扱えるようなものじゃなかったからな」

「大きな剣だ。それも石でできた茶色の」



バーサーカーは”それ”を拾い上げる。

狂戦士というクラスで呼ばれたヘラクレス。
彼には宝具として使うことができる武器が備わっていなかった。
12の試練を超えた肉体、それだけでも充分な宝具ではあったものの、英霊同士の戦いに素手というのは大きな欠点であった。
そんな彼が振るった武器。それは神殿の礎である岩を削って造られた剣。
それは彼自身を召喚する触媒とされたものであり、ある意味ではマスター、イリヤスフィールとの繋がりの証ともいえよう。

その斧剣が、今バーサーカーの手にある。

―――バーサーカーは強いね。

ふと、そんな声が聞こえた気がした。
しかしその声に思いを馳せることは今のヘラクレスには叶わない。

それでも彼は戦い続けるのだろう。
小さき主を守るため、黒き剣士の、黒き影の幻影を殺すため。

「■■■■■■■■■■■――――――!!」

狂戦士は吠え、その手で全てのものを破壊するために走り出した。
その命が尽きる時がくるまで、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンの命を守るために。

20Cross point ◆Z9iNYeY9a2:2012/10/26(金) 20:49:52 ID:3EX4S54I0
【E-2/市街地/一日目 午前(禁止エリアとなるまでにはまだ余裕有)】

【ゼロ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(小)、全身に切り傷、軽度の火傷、回復中、木場勇治に騎乗中
[装備]:なし
[道具]:共通支給品一式、ランダム支給品0〜3(本人確認済み、木場勇治も把握)
[思考・状況]
基本:参加者を全て殺害する(世界を混沌で活性化させる、魔王の役割を担う)
1:とりあえず進行方向は木場に任せる
2:木場と手を組むが、いずれ殺しあう
3:ナナリー……
4:ルルーシュの死に若干の苛立ち
[備考]
※参加時期はLAST CODE「ゼロの魔王」終了時
※第一回放送を聞き逃しましたが、木場勇治から情報を得ました
※放送を超えたため、他世界の情報を得ることが可能になりました。
  既に情報を得ているかどうか、また、どの世界の情報を得たかは次の書き手にお任せします
※冒頭のあれの記憶は消されている模様です

【木場勇治@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(小)、全身に打撲、ホースオルフェノク激情疾走態に変身中
[装備]:オーガドライバー一式
[道具]:基本支給品、グリーフシード、アヴェロンのカードキー、クラスカード(ランサー)、コンビニ調達の食料(板チョコあり)、コンビニの売上金
[思考・状況]
基本:オルフェノクの保護、人間の抹殺、ゲームからの脱出
1:ファイズギアを持っていた者を追うため、北か東に向かう
2:すべての人間を殺したあと、村上を殺す。
3:ベルトを手に入れた乾巧と決着をつけたい。
4:たとえ別世界の海堂や長田であっても、自分を止めるなら容赦はしない。
5:ゼロとは組むが、いずれ殺しあう。
[備考]
※コロシアムでの乾巧との決戦の途中からの参戦です
※政庁で発生した煙を目撃したかどうかは次の書き手にお任せします


【D-3/大通り/一日目 午前】

【バーサーカー@Fate/stay night】
[状態]:黒化、十二の試練(ゴッド・ハンド)残り8、両目損傷、胸から腹にかけて大きなダメージ、灰化に抵抗可能
[装備]:バーサーカーの岩剣
[道具]:なし
[思考・状況]
0:■■■■■■
[備考]
※バーサーカーの五感は機能していません。直感および気配のみで他者を認識しています
※サイドバッシャーの攻撃を受けた部位の強度は下がっています


【ドライアイス】
二酸化炭素を固体に凍結させたもの。専用の入れ物と軍手付。
かなりの低温であり、触れると凍傷を引き起こす。基本的には保冷剤として扱われることが多い。
余談だが、これを水入りペットボトルに入れて衝撃を与えると、急激な圧力上昇により大きな爆発を引き起こす。
場合によってはコンクリートブロックを砕くとか。
よい子のみんなはマネしないように。

【アヴァロンのカードキー@コードギアス 反逆のルルーシュ】
アヴァロンにて使用可能なカードキー。
何に使われるものかは現状では不明。

【バーサーカーの岩剣@Fate/stay night】
原作にてバーサーカーが振り回していた巨大な岩の剣。
これを触媒としてバーサーカーは召喚されたとか。
宝具でこそないものの、バーサーカーの筋力と合わさることで爆発的な破壊力を得る。

21 ◆Z9iNYeY9a2:2012/10/26(金) 20:50:48 ID:3EX4S54I0
投下終了です
もしおかしなところなどあれば指摘お待ちしています

22名無しさん:2012/10/26(金) 21:06:23 ID:vynxP5vY0
投下乙です!
ポッチャマ意外と強いんだよな。バーサーカーをひるませるのに納得するくらいにはw
しかし、木場と魔王がどう絡むかと思ったら、バーサーカーが止まらねえww
GJです

23名無しさん:2012/10/27(土) 15:32:11 ID:uN8NKJGo0
投下乙でした
アカン……参加者の集まり具合がアカンでえ……
政庁また壊れてしまうん?

24名無しさん:2012/10/28(日) 01:00:41 ID:4.ASL63g0
投下乙
バーサーカーさんまた仕留められなかったか・・・

25名無しさん:2012/10/28(日) 04:11:49 ID:GFc6FNPkO
投下乙です!QBは安定の契約()、今更誰が主催側の言い分飲むかよ。あ、サラマンダーのサーヴァントさんは流石っすねw

26名無しさん:2012/10/28(日) 16:35:37 ID:MT1LNBEk0
投下乙です

QBの契約、それも主催側だと隠す気も無しに誰が乗るか…と思わなくもないがトチ狂った奴は迂闊に乗りそう?
バーサーカーに襲われて生きてるだけ御の字だとは思うし殺せなかったからってバーサーカーの怖さは変わらんと思うぞ
ポッチャマはバーサーカーをひるませたとかすげえと思うが
さて、魔王と木場も移動を開始したが行先次第で…

27 ◆eVB8arcato:2012/11/21(水) 17:19:37 ID:WPYuyzZE0
初めまして、そうでない人はお久しぶりです。
現在、投票で決めた各パロロワ企画をラジオして回る「ロワラジオツアー3rd」というものを進行しています。
そこで来る12/2(日)の21:00から、ここを題材にラジオをさせて頂きたいのですが宜しいでしょうか?

ラジオのアドレスと実況スレッドのアドレスは当日にこのスレに貼らせて頂きます。

詳しくは
ttp://www11.atwiki.jp/row/pages/49.html
をご参照ください。

28 ◆bbcIbvVI2g:2012/11/26(月) 12:51:42 ID:GQVDunc20
テスト

29 ◆bbcIbvVI2g:2012/11/26(月) 12:59:38 ID:GQVDunc20
完成したので投下します

30虚無の華 ◆bbcIbvVI2g:2012/11/26(月) 13:08:01 ID:GQVDunc20
巴マミはそこまで強い人間ではない。
人々を守るために魔法少女として戦う彼女。その心の奥には常に過去の事故で自分だけ生き延びてしまったことへの罪悪感があった。
それでも、それに心を折られずに戦い続けてきただけでも強いのかもしれない。
常に正しいことのために力を振るうべき。それが彼女の生き方だったのだから。

そのはずだったのに。
見捨ててしまった。幼き魔法少女を。
殺してしまった。ルルーシュを、白い魔法少女達を。
そして、助けられなかった。自分のせいで死なせてしまった。かつての仲間を。

「ごめんなさい…、ごめんなさい…」

うわ言のようにそう謝罪の言葉を呟き続けるマミ。
その姿はかつて杏子やさやかの憧れた魔法少女の姿ではなかった。
それでも、マミにはその生き方しかできない。思いつかなかった。
誰かを犠牲にして生き延びた命を、自分のために使うことなどできなかったから。

「たっくん…」

会いたかった。だが、会っていいのか、という気持ちもあった。
こんな血塗られた手で、彼の近くにいてもいいのかという思いが。
そして何より、自分のことも信じられなくなっていた。
こんな自分がたっくんの傍にいると、いつか彼さえも殺してしまうのではないかと。
でも、そうだとしても、会いたいという思いはまた別のものだ。
会いたい。でも会ってはいけない。そんな相反する思いが彼女の中に存在する。
どうすればいいのか、どうするべきなのか。

答えは見つからないまま、気がつけば一際大きな建物の近くまでたどり着いていた。



「戻ったぞ」

どれくらい経ったか、いや、それほど時間も経っていないだろうか。
C.C.とユーフェミアのいる部屋にゼロが戻ってきていた。
後ろにはクロと年配の男、そして手の中にはボロボロで気絶したニャース。

「ニャース?!何があったス…ゼロ」
「何者かに襲撃を受けたようだ。ゲーチスという男も負傷していた。
青髪の少女がその男を連れて襲撃者を追っていった。だから私はここへニャースを連れて戻ってきたわけだ」
「ねえC.C.。一つ聞きたいんだけど」

31虚無の華 ◆bbcIbvVI2g:2012/11/26(月) 13:09:55 ID:GQVDunc20


ふと会話に割り込むクロ。その顔からは何か警戒心のようなものを感じた。

「こいつ、あんたの言ってたゼロなのよね?信用できるの?」
「古い知り合いみたいなものだ。私の知る限りでは大丈夫のはずだ」
「…そう。私達、あの後例のビルの近くまで行ったんだけどさ。
そこにいたって話があるのよ。仮面を被ったマントの男、ゼロが」
「何…?」

C.C.は眉をひそめ、ユーフェミアは黙ってゼロを見つめていた。
そしてそれを聞いたゼロ、いや、スザクは仮面の下で無意識にユーフェミアから視線を逸らした。

「はぁ…、やはりな。だから無理があると言ったんだ。どうする?今更ではあるが」
「……。いや、できればこのままの方が望ましい」
「本当に面倒なやつだ。とりあえずこいつがそのゼロとは無関係であることは私は保証しておこう」
「ふむ…、まあ人には事情というものもあるだろうしな。こちらも直接会ったわけではないから何とも言えない。
佐倉杏子という少女がもう少しで追いついてくるはずだから、その後で話し合ったほうがいいだろうな」
「そっちの男は?」
「夜神総一郎って。C.C.、聞き覚えあるでしょ?」
「夜神…、そういえばさやかのやつが言っていたな」
「それは俺の息子だ。その件についても話がある」

人が増えるとどうしても積もる話もできる。
一つ一つ確実に出していかなければいけないことだ。

総一郎が言うには、彼の息子、夜神月の言った危険人物の話は出鱈目だという。
彼自身も知らない人物がいるとはいえ、今生存しているであろうL、メロ、ニアはそのような存在ではないという。
メロとニアに関しては少なくともメロには実際遭遇しており、Lはもし”どちらの”Lであってもそのようなことは有り得ないという。

「どちらの、とはどういうことだ?」
「メロと俺ではその、パラレルワールド、とか言ったか。どうも住んでいた世界とやらが違うらしい。
だがどちらのLであっても人を貶めようとする人間ではない」
「その月という息子さんのことは分からないのですか?」
「月は俺の知らないメロとニアという者を知っていた。俺の知る息子とは違う可能性があるから迂闊に推測することがな…」

平行世界とは予想以上にややこしいことになっている様子だ。
ともあれ、月という男が乗っているのかどうかはともかく、偽りの情報を流すことで他者を陥れようとしているのは事実の様子。
警戒は必要だろう。

「そういえばクロ、あの女はどうした?」
「シロナさんなら、あー…、ちょっとね。
それとここに来る途中で佐倉杏子と巴マミって二人見つけてて。もう少しで追いつくと思う」
「そうか。こっちにもさっきまではさやかのやつが居てな。
そういえばアッシュフォード学園にだが、お前の仲間がいたぞ。名前は確か…、ルヴィアだったか」
「ルヴィアが?そう、どっち行ったの?」
「いきなり襲ってきた女を連れて、東に向かっていった。放送で名前が呼ばれなかった以上、無事なはずだ」
「なんだ、なら大丈夫ね。差し迫って追わなきゃまずいってわけでもなさそうだし」

32虚無の華 ◆bbcIbvVI2g:2012/11/26(月) 13:12:09 ID:GQVDunc20


と、ふとその場にいた皆が銃声を捉えた。
それもかなり近く。この建物の中から聞こえる音だ。

「少しここで待っていろ」



ミュウツーは若干の困惑を感じていた。
暁美ほむら達と別れ、近くにあった建物に入ったところで一人の少女を見かけた。
あまりに虚ろな目をしていた彼女が流石に気になり、声をかけたのだ。
しかし次の瞬間、突如その手に現れた長い銃で撃たれたのだ。

「落ち着け、私はお前と戦うつもりはない」

声をかけるが銃弾と殺気は止む気配はない。
サイコキネシスで銃の向きを変え、銃弾も止める。
しかし少女はすぐさま戦法を変更し、地面から生えた大量のリボンで拘束してこようとする。
そちらに注意を向けてしまうと、今度は銃弾がかわしきれない。前面にバリアーをはることでかろうじて防ぐ。

ミュウツーからすれば巴マミを力づくで取り押さえたほうが楽な選択ではあった。
体を、銃口を抑えてこちらを拘束しにかかるリボンをサイコキネシスで操り逆に縛り上げることも可能かもしれない。
しかしミュウツーは目の前の少女と対話をしたかった。サトシを殺した少女のときとは違い、敵対する理由はないのだから。
できればどうしてこの少女は戦いを仕掛けてきたのか、それを問いたかった。
しかし銃弾とリボンを入り混ぜた戦い方はそれなりに精錬されたもので、手加減したままで取り押さえることも困難だった。

(やはり、私が人間ではないから、か?)

先にポッチャマに銃口を向けた少女、暁美ほむらを思い出す。
人間とそれ以外の存在はやはり分かり合えないのだろうか。
そんな諦めに近い思いが心の中で大きくなり始める。
サイコキネシスに篭った力が少しずつ強くなり始めた。その時だった。

「おい!何をやっている!」

戦っていた通路の奥から男が叫ぶ声が響いた。
仮面とマントの男と年輩の男。少なくともミュウツーは仮面の男は見覚えがあった。

「君は、巴マミくん?!何があった、佐倉くんは――」
「ゼロ?!!」

そして目の前の少女は仮面の男を見た瞬間、怯えと驚愕の混じった顔で銃口を向け始めた。
それも先ほどの比ではない。狭い通路に円形に8丁のマスケット銃が並べられる。

「っ?!隠れろ!!」

33虚無の華 ◆bbcIbvVI2g:2012/11/26(月) 13:14:05 ID:GQVDunc20


通路の角、銃弾の届かない場所にゼロは総一郎を押しやり、自身は前面にバスターソードを構える。
通路脇の壁を蹴り、銃弾をバスターソードで防ぐ。銃弾の衝撃で剣を取り落とすが問題ない。マスケット銃なら再装填する間に取り付く自信があった。
しかし彼にとって予想外なことに、マミは即座に、それ以上の数のマスケット銃を精製して瞬時に発射にかかる。
生きろギアスがあるとはいえ、流石に焦るスザク。しかし、それらは発射されなかった。

「私のことを忘れてもらっては困るぞ」

サイコキネシスでマスケット銃を押さえ込むミュウツー。加えて体の自由を奪う。
ミュウツーは自身のバッグから小さな木の実のようなものを取り出してゼロに投げる。

「それを食べさせろ。少しは落ち着くはずだ」

サイコキネシスに抗うマミの力はかなり強く、ミュウツーでも長期的に抑えるのは難しい。
だから自分が抑えている間にマミの精神を落ち着かせればいいだろうと、そう考えたのだ。
とりあえずミュウツーの意図は汲み取ったゼロは木の実を手に近づく。
だがそこでミュウツーにとっても予想外のことが起きる。

「っ…!!離して!!」

そう叫んだと同時に彼女の力が急に上がり、サイコキネシスすら振り切った。
さらに近づいてくるゼロの体に蹴ろうと脚を振り上げる。
だがゼロはそれをかわしてもう片方の足を払う。
そこでミュウツーは周囲のリボンでマミの腕を束縛。動きを封じる。
ゼロはすかさず、素早くマミの口にその手の木の実を押し込む。

「むぐっ…!」

そのまま口に入れたそれを無理矢理咀嚼させる。

「落ち着いたか?」
「はぁ…、はぁ…」

それを飲み込んだところで、彼女の呼吸が少し落ち着きを取り戻す。
しかしミュウツー、そしてゼロに対する敵意、警戒心は未だ保ったままだ。
マミは縛られたまま、それらを露にしたままゼロ、いや、スザクに問いかける。


「あなたは…、ゼロなの…?!」



「で、どうなったんだ?」
「ユーフェミアって人と総一郎が隣の部屋で話聞いてるって。
私さっき撃たれかけたから正直近寄るの躊躇っちゃうのよね」

34虚無の華 ◆bbcIbvVI2g:2012/11/26(月) 13:17:08 ID:GQVDunc20

その一室に集まっているのはゼロ、C.C.、クロ、ミュウツー、そして未だ目を覚まさないニャース。
あの後マミを総一郎が落ち着かせ、隣の部屋で話をさせることにしたのだ。
ミュウツーやゼロに対しては拒絶感を強く感じたことで、総一郎とユーフェミアの二人であたることになった。
クロは本人の言うとおりであり、C.C.は何かやる気が起きなかった。

「それにしても、なぜお前がここまで来た?」
「深くは考えていない。ただ、あのさやかという人間ともう少し話してみたいと感じた。それだけだ」
「あいつならさっきまではいたが、もうここにはいないぞ」
「ン…、ニャア…」

そんな会話を続けていたところで、ニャースが目を覚ました。

「目が覚めたか。何があった?」
「いきなり見たこともないポケモンに襲われたニャ…。にゃーの力じゃどうにもならにゃい強さのポケモンだったニャ…」
「そのポケモンの外見は?」
「首が三つあったような気がするニャ…」
「首が三つ?それ、私見たかも。ここにくるまでのところで空飛んでたと思う」
「お前は知らないのか?」
「俺もすべてのポケモンを知っているわけではない。むしろポケモンは未だ発見されていないような種類のものも多い。
知っているとすれば、…研究者のようなものならばあるいは、だが」

確かアッシュフォード学園にはオーキド博士と呼ばれていた者がいたような気がする。あの老人なら知っているのかもしれない。
だが、今重要なのはそれが誰のポケモンなのかということであり、種類が重要なのではない。
もしかしたらニャースは狙われたのではないか、と考える。

話し終えると、ふうとため息をついてまた何かを考え込み始める。

「どうしたのよC.C.。さっきと比べたらなんか随分と無気力に見えるわよ?」
「そうニャ、大丈夫かニャ?」
「……」

ガチャ

扉が開き、夜神総一郎が入ってきた。

「待たせてすまない。どうも事態はかなりまずいことになっているらしい」
「まずいって?そういえば杏子って子、まだ追いついてこないけど、どうしたんだろ?」
「佐倉君は、……死んだそうだ」

総一郎はおそらく事情を知らないであろう皆に聞いた話を最初から説明していく。
あまりに情報が多いため、全てを聞いた後で質問を受け付けると前置きしておく。

巴マミはあの崩壊現場でゼロという仮面の男とルルーシュという学生に出会った。
ルルーシュはビル崩壊直後気球に乗って逃げ、彼女自身もそこから離れるも、ゼロの追撃を受ける。
そこで乾巧という人物に助けられるも、逃げた先で木場勇治という人物に襲撃を受けたこと。
その後の部分は総一郎自身も佐倉杏子とメロから聞いたことも交えて説明する。
そして、問題はその先の話である。
ここから南のエリアでルルーシュと再会した彼女は、銃弾で撃たれる。
その先の記憶は曖昧らしいが、白い魔法少女と赤い包帯を腕に巻いた男を見たとか。
そして、目が覚めたとき、目の前で青い魔法少女が佐倉杏子を殺していたところだったと。
その魔法少女を殺して、今いるこの場にたどり着いた。

「これが、彼女の説明した全てだ」
「ルルーシュと会っただと…?それにさやかが?どういうことだ?」
「ゼロと木場勇治という二人組なら聞いている。さっきその崩壊現場で戦ったという二人に会ったからな」
「……」
「それと、ゼロ、でいいのか?」
「私がどうかしたか?」
「話が終わったらきてくれとユーフェミア君が言っていた」
「…そうか」

35虚無の華 ◆bbcIbvVI2g:2012/11/26(月) 13:19:50 ID:GQVDunc20
ゼロは席を外す。

「俺もその巴マミと話をさせてもらっていいか?」
「…今は彼女は不安定だ。あまり刺激するようなことはしたくないが」
「私にも付き合わせろ。聞いておきたいこともある」
「ニャ…、にゃあはここで待ってるニャ。
今はちょっと歩けないニャ…」

こうして部屋にはニャースだけが残った。





ユーフェミアが待っていた場所は昔彼女自身がそこにいたであろう部屋。
かつてゼロがスザクであった頃は何度も入った場所である。
偶然にも部屋の場所は皆の集まっていた所からそう離れたところになかったため彼女はここを選んだのだろう。

「私の知るゼロは、兄、クロヴィスを殺し、お姉さま、コーネリアを2度、殺そうとしました。
でも、ナナリーが処刑されそうになった時にはどこからか現れて助けてくれました。
もし、私の想像通りであれば、彼の正体と仮面で顔を隠さなければならない理由についてなんとなく予想がつくんです」

そう言って、ユーフェミアはゼロの方を向く。
スザクは、この仮面の下の全てを見透かされているような錯覚に陥る。
だが、たとえそうだとしても動揺するわけにはいかない。ゼロを演じることを止めてはいけない。
今の自分は、たとえ名簿に載せられた名が枢木スザクであったとしても、ゼロであるのだから。

「…すまない。騙すつもりがあったわけではないのだ」
「いいんです。あなたにもきっと、その仮面を被らなければいけない理由があるのでしょう?」

そう言って、仮面の下にあるであろうゼロの目を見据えてこう言った。

「しかし、ゼロの名を名乗り続けるということは、この場においてあるいは余計な警戒心と混乱を招く可能性があります。先ほどの少女のように。
それでもあなたは、その仮面を被り続けるのですか?」

そう問いかける。その声は心から心配しているものだ。
それでも、スザクはこう答えるしかない。

「ああ、それも私にとっての償いとなるのだろう。
皆からの憎しみや怒りも全て受け入れる覚悟がある。もし誤解を生んでしまった際には一つ一つこの身で証明していく。
だからこの仮面を外すことはできない」
「そう、ですか…」

ゼロの答えを聞いて、一瞬悲しそうな目をしたが、すぐに表情を切り替えた。

「ごめんなさい、踏み入るようなことを聞いてしまって」
「いや、誤解を生みかねない姿であることは私とて重々承知している。
そのことが君に不快感を与えてしまったのであればこちらの責任だ。すまない」

互いに謝罪の言葉を述べるユーフェミアとゼロ。
ともかく話自体はこれで終わりのようだ。
部屋を出ようとする二人。だが最後にユーフェミアはこう口にした。

「でも、あの巴マミという方には仮面を被ったまま会うのは控えた方がいいと思います。
彼女、心に大きな傷を負っているように見えました…」



36虚無の華 ◆bbcIbvVI2g:2012/11/26(月) 13:21:39 ID:GQVDunc20
部屋に入った瞬間、マスケット銃を構えての出迎えを受けてしまった一同。

「落ち着くんだ、巴くん!」
「…もう逃げないわ。私は、ちゃんと受け止めるって決めたんですから…!」

銃の向きはクロに向いたものだ。
しかしその言葉の意味は、向けられたクロにすら想像がつかなかった。

「何なのよあなた…!魔女が見せる幻影なの…?」
「…?」
「だって、あなたはもういないのよ!私が、私が…」
「何言ってるのよ?私がもういないって……。
待って、白い魔法少女…?もしかしてあんた、イリヤに会ったの?」
「えっ…?」

クロに名前を問われたことで驚く顔を浮かべるマミ。
無論彼女にそれに対する返答をすることはできない。白い魔法少女のことは名前すら知らないのだから。
ただ、殺してしまった少女と同じ顔をしたものが現れたのなら、それは亡霊としか思えなかったのだ。

「イリヤはまだ生きてるわよ。あんたさっきの放送聞いてないでしょ」
「あなた、あの子じゃないの…?」
「私はクロエ・フォン・アインツベルン。あんたが会ったのはイリヤスフィール・フォン・アインツベルンよ」

先ほどの錯乱の理由はそれか、と納得するクロ。
しかし不自然なことがある。イリヤの名前も知らず、情報交換も行わずに戦闘行為に及んでいる様子。
だがイリヤの性格からしてこの巴マミと戦う理由はあるのだろうか。
それは美樹さやかから聞いた情報からは全く想像できない。

「何があったのよ?イリヤに何したの?」
「…分からない。分からないの…。戦ったのは覚えてるし、もしかしたら死んだかもしれないって思ったことも覚えてる。
でも、そこで何があったのか思い出せないの…!」
「一つ聞くぞ。お前、ルルーシュには会ったのか?」
「ルルーシュ…?確かに会ったけど…、でも、確かに彼に撃たれたのよ…。
だからルルーシュを拘束して、動けないようにしたの…。そしたら白い魔法少女に…」
「…何やってんのよイリヤ」

ある程度の事情は把握できたが、どうも彼女の記憶の一部があやふやになっている様子だ。
正直彼女の話を聞いただけでは何があったというのかは把握しきれていない。
ルルーシュの行動の意味も、今イリヤがどうなっているのかということも。
ただ、なんとなくだがC.C.には彼女の記憶が混雑している理由に心当たりを感じた。この場では結局それをマミに聞くことはなかったが。

「まあ今は休んでおけ。邪魔したな」
「え、もういいの?」

37虚無の華 ◆bbcIbvVI2g:2012/11/26(月) 13:24:11 ID:GQVDunc20
マミの前から姿を消すC.C.、そしてそれを追って部屋を出るクロ。
今巴マミの前に立っているのは、ミュウツー。

「お前はなぜ戦う?」
「え?」
「それほどまでに傷つき、恐れを感じていながらもお前の闘争心はかなりのものだ。
何がお前をそこまで戦いに駆り立てる?」

戦う理由。それは自分が魔法少女である以上決まっている。この命ある限り守るべき人間を守るためだ。
今までも、これからもそうやって戦ってきたのだから。
そこに何か理由が必要なのか。

しかしミュウツーは納得しなかったようだ。

「ならばなぜ守ろうとする?人間にそれだけの価値があるのか?」

傍から見れば人間の価値を低く見ているような言い方であるがミュウツーにそんな意図はあまりない。
ただ、彼自身も人間の価値というものを測りかねているのだ。それを彼女に問いたかったのだ。

「え…?あ、あなた何を言って、るの?」

その問いかけに大きく心を揺さぶられるマミ。
巴マミは人間の価値がどうとか、誰を助けるべきなのか、そんなことを気にして戦っているわけではない。
ゆえに、美樹さやかにとって、佐倉杏子にとって憧れの先輩なのだから。
だが、彼女はなぜ戦うのか、どうして人間を守るのか。その答えなど持ってはいなかった。
いや、そこには触れてはいけなかったのかもしれない。
なぜなら、巴マミの戦う理由、それは―――

「そこまでにしておけ」

見かねた総一郎が会話に割り込む。

「彼女はまだ子供だ。それにようやく落ち着いてきたところなんだ。
あまりおかしなことを聞くのは流石に避けるべきだろう」
「……」

ミュウツーは少し何か考えた後、おもむろにバッグから取り出した何かを巴マミの傍に置いた。

「餞別だ。また会うことがあれば改めて話をさせてくれ」

そう言って部屋から出て行った。

「……」
「まあ、何、気にすることはない。君も少し心と体を落ち着かせた方がいいだろう?」
「その、たっく…乾巧って人は…?」
「今は少し事情があってここにはいない。まあ大丈夫のはずだ」
「そう…、ですか…」

38虚無の華 ◆bbcIbvVI2g:2012/11/26(月) 13:25:43 ID:GQVDunc20
悲しみと安心の入り混じったような声を、小さく発したマミ。
ふと視線を下にやると、そこにあったのはうんまい棒コーンポタージュ味。一本10円ほどの安くて手ごろな駄菓子であった。
いつだったか、共に戦っていた彼女がその手ごろさと味から好んで食べていたような気がする。

うんまい棒を握る手にどこからともなく雫が落ちた。

「あれ…、私、泣いて…」

魔法少女として戦う以上、いずれは訪れるであろう死。
魔女との戦いで、あるいは魔法少女同士の縄張り争いで命を落とすものも見てきた。
だが、彼女はそんな中でも唯一親密な関係になれた魔法少女だったのだ。
その彼女がもういない。
改めてその事実に気づいたとき、目から溢れる涙を堪えることなどできなかった。

「う…、あ、うああああああああああぁぁぁ…!!」

泣き崩れる巴マミの姿を見て、夜神総一郎は静かに部屋を出た。
あまり年頃の女の子が泣く姿を見るというものに心苦しいものがあった。自身も娘を持つ父親として。

(魔法少女、か。まだあんな子供じゃないか…)

部屋を出て一人、総一郎は考える。
以前佐倉杏子から聞いた彼女の印象とは随分と異なるものだった。
死の恐怖に怯え、友達の死に涙を流す少女。どこが正義の味方なものなのか。
そういえばその佐倉杏子自身も家族を亡くしていると聞いた。

「月、お前ならどうするんだ…?」

キラは家族を殺人鬼に殺され、しかし公平な裁きを加害者に与えられなかった者を救った。
なら、家族を失い孤独のまま戦う少女に対して救いをもたらすことはできたのだろうか。
そんなことは正直分からなかった。
ただ、仮にも息子だった者。本当に神になりたくてあのようなことをしたとだけは思いたくなかった。




「全く、何が正義の味方だ。ただの小娘じゃないか」

C.C.は呟く。言葉の奥には美樹さやかの人を見る目の無さを責めるような口調があった。
あいつの説明だけだと、もっとキリッとした人間を想像していたが期待外れだった。
とはいえルルーシュと会ったというなら後々話を聞いておかなければならないのだろう。
だが、それも優先事項というわけでもないが。ルルーシュはもういないのだから。

「で、クロ、お前はどうするんだ?」
「シロナさんのこともあるし、ここから離れるわ。幸い、あの巴マミって人と会って収穫もあったし」

そう答えたクロは懐から何かを取り出す。それは鮮やかな色をした宝石が数個。
かつてその手のものを所持した経験があったC.C.にはそれがそれなりに高価なものであることには気づいたが、それを収穫という意味が読めなかった。
というか、いつの間に持ってきたのだろうか。

「巴マミのバッグから魔力を感じ取ったから持ってこさせてもらったわ。これ、知り合いの魔術師の宝石なの。
これでしばらく魔力供給に関してはどうにかなりそうだし」
「ちゃっかりしてるやつだな」
「いきなり銃で撃たれたんだからこれくらいいいでしょ。それにこっちは命かかってるのよ」

39虚無の華 ◆bbcIbvVI2g:2012/11/26(月) 13:28:32 ID:GQVDunc20
なぜ魔力とやらに命が結びつくのだろうか。
戦いの最中にそれが切れたらまずいということなのかもしれない。
聞いてみようかとも思ったが長々と説明されたら面倒だと考えてあえて聞かなかった。

「でもさ、そのルルーシュって人のこと聞かなくてよかったの?仲間だったんでしょ?」
「ああ、だがそれももう過去の話だ。やつはもういない。今更聞くようなこともない。

…なあ、クロ。生きる理由を失った者はこの場でどう生きればいいんだろうな」
「はぁ?」

なぜそんなことを聞いたのか、自分には分からない。
ただ自分では見つけられない答えを他人に求めただけなのかもしれない。
だからこそ――

「何、あんた生きるつもりないの?」
「さあな、ただ生きようと思う理由が分からなくなった。それだけだ」
チャキッ

このように剣を向けられるというのはそれなりに予想外であった。
目の前で突きつけられたのは白と黒の双剣。それが首筋で交差して突きつけられていた。

「じゃあもしここで私があんたをこうやって斬りつけたとしても、何の問題も、何の後悔もなく安らかに死んでいけるっていうの?」
「それで殺せるかどうかは知らんが、殺してくれるなら抵抗はしないさ。私のこれまでを考えれば、私の命の価値など―」
シュッ

双剣は首の皮を切り裂く。

「生きようと思う理由?そんなものなければ生きられないの?
自分の命に価値がないって?なら見出しなさいよ。
私なんて生きる意味も理由も、生まれたときから無かったわよ」



そういえば以前ある人に戦う理由を聞いたことがあった。
自分達の出会いを否定し、それでも以前の生活に戻りたいと言った者のために戦う理由なんてあるのか、と。
彼女は迷わず答えた。彼女は私を友達と呼んでくれた。理由なんてそれだけでいいと。
そんな風に言える彼女が羨ましかったのかもしれない。
私には生まれたときから生きる意味などなかったのだから。
一つのとある目的のために生まれてきた私。だが、親はそれを放棄した。
記憶を、知識を封じた。まるでその存在などなかったのだとでもいうかのように。
それでも私はある奇跡のような偶然の元でこうやって生きている。何故?
自分自身で生きたいと願ったからだ。
そう思えた理由もあの時のもう一人の自分の言葉があったからだ。
この場においてもそうだ。もしシロナさんと出会わなければきっとあのオルフェノクに殺されていた。
それに何か意味があるのかは知らない。だが今こうして生きている事実ははっきりとあるのだから。
生きる理由なんて知らない。意味なんて知らない。
おめおめと殺されてやるつもりなどない、命ある限り抗ってやる。

それがクロの、この場における意思。
だから、生きる意味を失ったといって生きる意志すら無くす者を許容できなかった。



40虚無の華 ◆bbcIbvVI2g:2012/11/26(月) 13:29:17 ID:GQVDunc20
「ふん、齢2桁も怪しい小娘が私に説教か?」
「そうね、生憎現界して数ヶ月の小娘よ。
別に説教する気もないし、死にたいなら死ねばいいわ。
でもね、生きる理由とか意味とか、そんなもの私の前で語らないでくれる?」

C.C.は鋭い眼でクロをにらみつけるが、クロも引かない。
C.C.がどんな人生を送ってきたかなどクロは知らない。興味もない。
だから生きていればいいことがある、などと言うつもりはない。C.C.を導くつもりも毛頭無い。
ただ、さっきの言葉は、今のクロには聞き流せないものだった、それだけだ。

「生きる理由、か」

不意にC.C.の後ろに現れるミュウツー。
いつからいたのか、話をある程度聞いていた様子だ。

「お前はそれを持っているのか?」
「何よあんた」
「お前に聞きたい。生きる理由とはどうやって見出すことができるものなのだ?
なぜ自分がここにいるか、その理由が無くても生きていけるのか?」
「当たり前じゃない」

ミュウツーは何かを考えるようにクロを見つめ、視界から去っていった。

「……何かどうでもよくなったわ」

飽きたようにクロは双剣をくるくる回した後で腰辺りに吊り下げた。

「まあ悪かったわよ、いきなり剣向けたことは」
「気にするな。割と慣れてる」




C.C.、ゼロ、ユーフェミア、夜神総一郎、ニャース、巴マミは結局政庁に留まることになった。
近くにゼロ(マッチョの怪物の方)がいるというのも警戒しなければいけないことではあったが、逆に動きまわることで遭遇してしまっても危険だ。
特にニャース、巴マミは負傷しているため動きまわることは難しい。もしこっちに向かってきた場合は、まあ諦めるしかないだろう。

クロはシロナを待たずして出発した。
イリヤのことがやはり気がかりになったようである。シロナのことは、案外移動していれば会うこともあるだろうという考えもあった様子だ。
赤い外套を翻して政庁の窓を飛び出す。その腰に携えられているのは先ほど投影した干将莫邪。

「で、あんたどうして付いてきたのよ」
「……」

41虚無の華 ◆bbcIbvVI2g:2012/11/26(月) 13:30:05 ID:GQVDunc20
走るクロの後ろにはミュウツーがはり付いてきている。
足を動かすこともなくまるで浮遊するかのように地面を滑っている姿はなかなか面白いものではあるが。

「シロナ――シンオウ地方なるところでのチャンピオン。お前に付いて行けば会えそうな気がするのでな」
「ふーん、まあ別にいいけど」

ミュウツーは言わなかったが、彼がクロに付いていった理由はそれだけではない。
何故か彼女からは親近感を感じたのだ。
生まれたときには生きる理由も意味もなかったと言った目の前の少女。それは自分自身が知りたいと思った疑問だ。
そして今、私と似た疑問を抱えた少女はこうやって迷うこともなく生きている。
彼女がいかに答えを見つけ出したのか、生きようと思えるようになったのか、非常に興味を持った。
未だ見つからない答え、クロエ・フォン・アインツベルンという存在であれば示せるのではないかという期待。
それがミュウツーが彼女に同行した理由である。

「でも邪魔だけはしないでよね」
「分かっている」




「ったく、小娘のくせに言ってくれる…」

C.C.は走り去るクロとミュウツーの背を窓から眺めながら呟く。
クロの言わんとすることは分かった。だが納得はできなかった。
あいつはようやく得られた存在意義を失ったことなどないのだろう。
私がそれをどれほど繰り返してきたか、あいつは知らない。
だがそんなことを口にすることはない。同情でも誘う気ならまだしも実際に口に出すのは論外だ。
それにあいつが言うこともまたある意味では真実。
心の整理をつけなければいけないだろう。今後のこと、この場でのこと、その全てを。

ふと近くにいる包帯でグルグル巻きになった生き物に問いかける。

「なあニャース、お前は自分の生きる意味について考えたことはあるか?」
「にゃ、そんにゃの、知らないにゃ」

返答は特に何ということもない当たり障りのないもの。
だがそれが普通なのだろう。普通に生きていくうえでは。

「だけどにゃ、もし帰ることができても、もうヂャリボーイはいないにゃ…。
でもにゃー達はロケット団の一員としてこれまで通り生きていくんにゃと思ったらにゃ…」
「………」



「ゼロ、お前は――いや、なんでもない」

問いかけは黒い仮面を被った男に掛けられたもの。
だがこいつにそれは地雷だと気付き、問いかけるのを止める。

C.C.は一つ溜め息をついて改めて巴マミの休む部屋に足を進めた。

42虚無の華 ◆bbcIbvVI2g:2012/11/26(月) 13:31:07 ID:GQVDunc20
【D-2/政庁付近/一日目 午前】

【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:魔力減少(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、病院で集めた道具
[思考・状況]
基本:これからどうしたいのかを考える
1:心の整理をつける
2:巴マミが落ち着き次第、詳しい話を聞く
3:さやかの答えを聞きたいが、また会えることに期待はしない
4:プラズマ団に興味は無い。
5:ミュウツーは見た目に反して子供と認識。
[備考]
※参戦時期は21話の皇帝との決戦以降です
※ニャースの知り合い、ポケモン世界の世界観を大まかに把握しました
※ディアルガ、パルキアというポケモンの存在を把握しました
※桜とマオ以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)


【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:細マッチョのゼロ、「生きろ」ギアス継続中、疲労(小)
[装備]:バスタードソード、ゼロの仮面と衣装@コードギアス 反逆のルルーシュ
[道具]:基本支給品一式(水はペットボトル3本)、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本:アカギを捜し出し、『儀式』を止めさせる
1:これからどうするか考える
2:なるべく早くユーフェミアと同行してくれる協力者を捜し、政庁に行ってもらいたい
3:「生きろ」ギアスのことがあるのでなるべく集団での行動は避けたい
4:
[備考]
※TURN25『Re;』でルルーシュを殺害したよりも後からの参戦
※ゼロがユーフェミアの世界のゼロである可能性を考えています
※学園にいたメンバーの事は顔しかわかっていません。


【ニャース@ポケットモンスター(アニメ)】
[状態]:ダメージ(大)、全身に火傷(処置済み)、気絶中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3(確認済)
[思考・状況]
基本:サカキ様と共にこの会場を脱出
1:しばらくここで待つ。その間にどうするかを考える
2:C.C.の言っていることは難しくて分からんニャ
3:そういえばポッチャマはどこに行ったニャ?
[備考]
※参戦時期はギンガ団との決着以降のどこかです
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線

【ユーフェミア・リ・ブリタニア@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:健康
[装備]:防犯ブザー
[道具]:基本支給品一式(水はペットボトル1本)、シグザウエルP226(16/15+1)、スタンガン、モンスターボール(空)(ヒカリのポッチャマ)@ポケットモンスター(アニメ)
[思考・状況]
基本:この『儀式』を止める
1:今は政庁にて今後のことを考える
2:スザク(@ナイトメア・オブ・ナナリー)と合流したい
3:他の参加者と接触し、状況打開のための協力を取り付けたい
4:細マッチョのゼロ(スザク)は警戒しなくてもいい……?
5:ルルーシュ……
[備考]
※CODE19『魔女の系譜Ⅲ−コードギアス−』でゼロの乱入した戦場からロイドに連れられ避難したよりも後からの参戦
※名簿に書かれた『枢木スザク』が自分の知るスザクではない可能性を指摘されました
※『凶悪犯罪者連続殺人事件 被害者リスト』を見ました
※もう一人のゼロの存在を知りました。同時に細マッチョのゼロがゼロではないことを確信しました

43虚無の華 ◆bbcIbvVI2g:2012/11/26(月) 13:32:48 ID:GQVDunc20
【夜神総一郎@DEATH NOTE(映画)】
[状態]:健康
[装備]:救急車(運転中)、羊羹(2/3)羊羹切り
[道具]:天保十二年のシェイクスピア [DVD]、不明支給品1(本人未確認)
[思考・状況]
基本:警察官として行動する。
1:巴マミが気がかり
2:警察官として民間人の保護。
3:真理を見つけ、保護する。
4:約束の時間に草加たちと合流する。
5:月には犯罪者として対処する。だができればもう一度きちんと話したい。
6:魔法少女とは何なのだ…?
[備考]
※参戦時期は後編終了後です
※平行世界についてある程度把握、夜神月がメロの世界の夜神月で間違いないだろうと考えています。

【巴マミ@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:ソウルジェム(汚染率:中)、絶対遵守のギアス発動中(命令:生きろ)、大きな悲しみ、精神不安定
[装備]:魔法少女服
[道具]:共通支給品一式×2、遠坂凛の魔術宝石×5@Fate/stay night、ランダム支給品0〜2(本人確認済み)、不明支給品0〜2(未確認)、グリーフシード(未確認)、
     うんまい棒コーンポタージュ味@魔法少女まどか☆マギカ
[思考・状況]
基本:魔法少女として戦い、他人を守る。だけど…
1:私はどうしたらいいの…?
2:自分が怖い
3:佐倉さん…
4:たっくんに会いたい、けど会いたくない
[備考]
※参加時期は第4話終了時
※ロロのヴィンセントに攻撃されてから以降の記憶は断片的に覚えていますが抜けている場所も多いです
※見滝原中学校の制服は血塗れになっています  
※第一回定時放送を聞き逃しました。禁止エリア、死者などは把握していません
[情報]
※ロロ・ヴィ・ブリタニアをルルーシュ・ランペルージと認識
※金色のロボット=ロロとは認識していない
※蒼い魔法少女(美樹さやか)は死亡したと認識


【D-2/市街地/一日目 午前】


【クロエ・フォン・アインツベルン @Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:疲労(小)、魔力消費(小)
[装備]:戦闘服、
[道具]:基本支給品、グリーフシード×1(濁り:満タン)@魔法少女まどか☆マギカ、不明支給品0〜2、遠坂凛の魔術宝石×5
[思考・状況]
基本:みんなと共に殺し合いの脱出
1:みんなを探す。今はシロナさんとイリヤを優先
2:お兄ちゃんに危害を及ぼす可能性のある者は倒しておきたい
3:どうしてサーヴァントが?
4:9時に政庁に集合する
[備考]
※3巻以降からの参戦です
※通常時の魔力消費は減っていますが投影などの魔術による消耗は激しくなっています(消耗率は宝具の強さに比例)

【ミュウツー@ポケットモンスター(アニメ)】
[状態]:軽傷 、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]
基本:人間とは、ポケモンとは何なのかを考えたい
1:クロに非常に興味
2:プラズマ団の言葉と、Nという少年のことが少し引っかかってる。
3:できればさやかと海堂、ルヴィア、アリスとほむらとはもう一度会いたいが……
4:プラズマ団はどこか引っかかる。
5:サカキには要注意
[備考]
※映画『ミュウツーの逆襲』以降、『ミュウツー! 我ハココニ在リ』より前の時期に参加
※藤村大河から士郎、桜、セイバー、凛の名を聞きました。 出会えば隠し事についても聞くつもり
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)


※巴マミ以外の人物は政庁にておおまかに情報交換を行いました。しかし以下の情報は明かされていない様子です
 ・ルルーシュを殺したのは巴マミ
 ・ポッチャマが暁美ほむら達に同行したこと
 ・美樹さやかが生きているということ(C.C.達もその発想に至っていない可能性有)

※以下二つはミュウツーに支給されたものです

【うんまい棒コーンポタージュ味@魔法少女まどか☆マギカ】
佐倉杏子が9話にて鹿目まどかに送った食べ物。
駄菓子屋などで広く売られているスナック。1本10円。

【ラムのみ@ポケットモンスター(ゲーム)】
状態異常を回復することができる木の実。
毒、火傷、眠り、麻痺、凍り、混乱状態が該当する。

44 ◆bbcIbvVI2g:2012/11/26(月) 13:35:33 ID:GQVDunc20
投下終了です
大人数を動かすのは得意なものでないのでおかしなところがあったら指摘お願いします

45名無しさん:2012/11/26(月) 20:14:33 ID:EUNtQy6sO
投下乙です。あーあ、地雷が集団の中に…早くマミらせないと被害が広がるばかりだ(棒)

46名無しさん:2012/11/26(月) 20:47:10 ID:5Z46KckE0
投下乙です

一触即発の爆弾を抱えてしまった政庁組の運命やいかに
そしてミュウツーの一人旅はようやく終了かw

47名無しさん:2012/11/26(月) 21:19:58 ID:FaUDTpP60
おまえらクレイモア地雷さんのことマミっていうのやめろよ!(バンッ)

48名無しさん:2012/11/27(火) 18:54:54 ID:mIodRO7sO
投下乙です。

ミュウツーはクロに同行。
やっぱり、似た境遇だと何か感じるところがあるんだろうか。

地雷先輩はスザゼロと「生きろ」対決ですねわかります

49名無しさん:2012/11/28(水) 20:21:25 ID:DWTpGMzY0
まどポやスピンオフのTDSじゃ、マミさんが戦ってる理由付けは
正義のためというのは建前で本当は孤独である寂しさを紛らわすため
「誰かと一緒にいたい」願いから、というのが描かれていたな

C.C.とは誰かに愛されたかった元々で共通点があるな

50 ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:08:02 ID:vL/5Burk0
予約分投下します

51氷の魔王―ジ・アイス―  ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:09:58 ID:vL/5Burk0
「状況はいい具合に進んでいるようですね」

ロロと月との情報交換は予想外に短く終わった。
情報自体はロロ、月、そしてゲーチスの順で明かされていった。
パラレルワールド、どころか全ての参加者が別の可能性宇宙から連れてこられたという話はかなり興味深いものであった。
この仮説が正しければNのあの違和感も解消することができる。
話の中で一つ、アカギのことを話すかどうかが問題ではあった。結局自分は詳しくは知らないと言ったが。
代わりに彼について詳しく知っているだろうという者についてを教えておいた。無論シロナのことだ。

自分を最後にしておいて正解だったと考える。
なぜならロロは、政庁にいるであろう人物について話した途端、表情を鋭くして問い詰めてきたのだから。
巴マミ、C.C.なる緑髪の少女、仮面とマントに身を包んだ謎の男。
それらのことごとくが、彼の探している人物だということらしい。
話し終えると、ロロは月を伴い会話もそこそこに去っていった。
もしうまくいけば、政庁に集まったものを一網打尽にしてくれるかもしれない。殺し損ねたニャースであっても。
逆にロロ達が返り討ちにあうことがあっても問題ない。自分の手を汚すこともなく厄介者が消えてくれるだけの話なのだ。
美樹さやかは目をさましていない。それほどまでにこの情報交換が迅速に終わったのは僥倖だろう。
問題はこの後だ。


【E-3/警視庁/一日目 午前】
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:意識なし
[装備]:ソウルジェム(濁り中)
[道具]:
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない。主催者を倒す
1:????
※第7話、杏子の過去を聞いた後からの参戦
※「DEATH NOTE」からの参加者に関する偏向された情報を月から聞きました
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)

【ゲーチス@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:左腕に軽度の火傷(処置済)
[装備]:普段着、きんのたま@ポケットモンスター(ゲーム)、ベレッタM92F@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]:基本支給品一式×2、モンスターボール(サザンドラ(ダメージ小))@ポケットモンスター(ゲーム)、病院で集めた道具(薬系少な目)
    羊羹(1/4)印籠杉箱入 大棹羊羹 5本入 印籠杉箱入 大棹羊羹 5本入×4、不明支給品1
[思考・状況]
基本:組織の再建の為、優勝を狙う
1:どうするかを考えた後、迅速に行動する
2:表向きは「善良な人間」として行動する
3:理屈は知らないがNが手駒と確信。
4:切り札(サザンドラ)の存在は出来るだけ隠蔽する
5:美樹さやかは自分の駒として手元に置く
6:政庁からはなるべく離れる
7:今のところロロと組むつもりはない
※本編終了後からの参戦
※「DEATH NOTE」からの参加者に関する偏向された情報を月から聞きました
※「まどか☆マギカ」の世界の情報を、美樹さやかの知っている範囲でさらに詳しく聞きだしました。
(ただし、魔法少女の魂がソウルジェムにされていることなど、さやかが話したくないと思ったことは聞かされていません)
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)
※月、ロロにはサザンドラの存在と使う技を明かしました。しかし波乗り、大文字の存在と美樹さやかの詳細については話していません



52氷の魔王―ジ・アイス―  ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:11:36 ID:vL/5Burk0


(C.C.、それに仮面の男――恐らくゼロ。果たして本物なのかどうかは分からない。
 だが政庁に巴マミもいるというのならばそれだけでも向かう価値はあるな)

「…ロロ、先に言っておくが、僕は直接的な戦闘なんかはできないぞ」
「ああ、分かっているさ。ただ政庁に先行して少し場を混乱させてくれればそれでいい」

巴マミ――せっかくの仇を目の前で殺してくれた女。
C.C.――自分の知っているそれはウィッチ・ザ・ブリタニアの名を冠する魔女。
ゼロ――これまた自分の知っている奴は魔女の力を取り込んだエデンバイタルの魔王。
C.C.とゼロに関しては若干の不安要素もある。なにしろあの巴マミがゼロ本人に会ったと言っているのだ。それもルルーシュの前で。
もしかしたらその平行世界とやらの奴らなのかもしれない。だが会う価値はあるだろう。
それにあのルルーシュはおそらく平行世界のルルーシュと推測は付く。確信はゼロ本人に会うまで付けられないが。
だが、もし平行世界のルルーシュだとしても恐らく対応は変わらなかっただろう。そのルルーシュも、きっと母――マリアンヌに愛された事実は変わらないのだろうから。

時間を見る。最後にヴィンセントを呼び出してからかなりの時間が経っている。
ジ・アイスだけでいけるかと聞かれた場合、相手は魔法少女なる存在に魔王と魔女。最善の状態で向かったほうがいい。
この夜神月という男も利用すればいい。それこそボロ雑巾になるまで使い回して処分するもよし、捨て駒にするもよし。
ある程度聡いようではあるが問題ない。力関係はこちらの方が上なのだから。

「さて、では月、お前の駒、さっそくだが使わせてもらうぞ」



この政庁にはこれまでに多くの者が訪れた。
スマートブレイン倒壊に関わった者、アッシュフォード学園で多く者に遭遇した者。そのどちらにも関わらなかった者。
そんな中でこの場にはかなりの情報が集まっていた。

まず残った参加者についての情報。
スザク、C.C.はロロ・ランペルージ、マオについてを知っていた。ユーフェミアはナナリー、枢木スザク、ロロ・ヴィ・ブリタニアについて知っていた。
総一郎は月、L、ニア、メロについてを知って、あるいは聞いていた。ニャースはタケシ、サカキについて知っていた。
そこに加えてそれまでに会った者達、彼らから聞いた情報。それらをまとめるとある程度の形は見えてくる。
クロの言っていた士郎、大河、イリヤスフィール、美遊、バゼット、セイバー、バーサーカー。
総一郎やマミの遭遇したという乾巧、草加雅人、木場勇治や、彼らの知り合いらしい園田真理。

これらの情報をまとめると、ある程度の情報が見えてくる。
顔見知りの参加者でも平行世界から呼ばれている。また、同じ世界からでも違う時間から連れてこられている可能性もある。
<ルルーシュ、C.C.、ロロ・ランペルージ><ユーフェミア、ゼロ、ロロ・ヴィ・ブリタニア>は恐らく同じ世界であると考えられる。
また、月、メロ、ニアは同じ世界となり、総一郎とはまた別の世界。また、アッシュフォード学園で拡声器を使った女は総一郎の言から弥海砂との推測が立った。
巴マミから聞いた話から、彼女と美樹さやかはまた別の世界の存在である様子。鹿目まどか、佐倉杏子は彼女のことを知っている点から美樹さやかと同じ世界。
また、千歳ゆまという魔法少女もいて、彼女は美国織莉子という者について話していたらしい。これは巴マミ本人から聞くしかない。
それ以外については何ともいえない。
オルフェノクが存在する世界の者。乾巧、草加雅人、木場勇治、園田真理、村上峡児。そして彼らとは別にぼさぼさ髪の少年。加えてアッシュフォード学園で見たオルフェノク。
そしてクロの知り合い達のいる世界。
ニャースの世界に関してもシロナやオーキド博士、サカキといった者は有名人であり、またニャース自身知らない地方もあることから本人談だけでは判断できない。

「これが大まかなまとめになります」

ともあれほとんどの参加者についての情報が出揃ったことになる。
残った名前は間桐桜、海堂直也、長田結花、呉キリカ、アリス、北崎。
名前から察するにアッシュフォード学園で謎の強化服を纏った女が間桐桜、長田結花、呉キリカ、アリスのいずれか。
そして残りの二人はいずれにしてもオルフェノク、片方は要警戒人物となっている。

53氷の魔王―ジ・アイス―  ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:12:20 ID:vL/5Burk0

最後に忘れてはならないのが、主催者であるアカギ。
ニャースやシロナは知っている存在であることから、ポケモンの存在する世界の人間なのだろう。
ニャース曰く、神話のポケモンの力を使い、感情の無い世界を作ろうとした男。その力があればこれだけのこともできる可能性があるという。
では、何故このようなバトルロワイヤルを開催したのか。それが目的のために必要なことなのか、あるいは別の目的なのか。そして、この全てをアカギが一人で行ったことなのか。
情報量はかなりのものだが、この場にいる者達では持て余し気味のものだ。

「さっき出て行った二人にも話したほうが良かったんじゃないのか?」
「急いでいるようだったし仕方あるまい。それに彼らもそれなりに頭は回るだろう。
 分別もつけずに人に襲い掛かったりなどすることもないだろう」

彼らはおとなしく考察するような者でもないだろう、とスザクは推察する。
きっと出た先で各々に判断を下すだろう。そうでなければゼロがいるかもしれないこの付近から飛び出したりはしない。

ともあれ、これらが何をもって平行世界となっているのか。
ユフィのいた世界ではルルーシュがシンジュクゲットーで行方不明となり、どうしたことかナリタでナナリーがナイトメアフレームに搭乗していたという。
また、総一郎の聞いた世界、いた世界の話は驚くものであった。人の命を奪うノートが存在する世界。そしてそれを悪用した者こそが彼の息子だと。
Lという探偵はその月と戦ったのだという。総一郎のいた世界ではLが月に勝利、そしてもう一つの世界ではLが敗北し、彼の後継者が月と戦っていると聞いたらしい。
根本を同じ世界としながらも、何かのきっかけで分岐した世界。各々では自覚できないがこうやって比べてみると、どの世界にも何かしらの特徴がある。
ギアス、オルフェノク、魔法少女、魔術、ポケモン、デスノート。この選出には何か意味があるのだろうか。

「Lなら何か気付けるかもしれないが、俺には少し厳しいな」
「なるほど、ならばLという人物を探すことを優先するべきか。
 あとはこの魔女の口付けという呪いだが、これは確か魔法少女の世界のものであっているのだな?」
「それが、佐倉君からは特に何も聞けていないんだ。これはどうも彼女達にとっても謎の多いものらしくてな。
 魔女という存在についても、その戦うべき敵だということ以上は語ってくれなかった」
「なるほどな」
「頼りにならなくて、すまないな」
「いえ、大体のことは掴めました。この情報を、Lという方に伝えればいいのですね?」
「ああ。それとこちらは12時に流星塾という場所で待ち合わせしている者達がいるんだ、こっちにも向かわないといけないんだが」
「彼らについてはこちらでも把握している。だが間に合わせようと思うなら今すぐ出ないとまずいのではないか?」
「そうだな、少し落ち着いたら、出発させてもらおう」

ともあれ、一通りの纏まった情報の元で、ある程度の目的ができたところで情報交換は終わった。





「あなたは…何なの…?キュウべえの仲間…?」
「キュウベエとかいうのがにゃんにゃのかは知らんにゃが、ニャーはポケモンにゃ。
 さっきのミュウツーっていう奴も、同じにゃ」

C.C.は巴マミの近くで様子を伺っていた。
そこでふとあることに気付く。

「おい、そのキュゥべえとか言ったな。そいつは何なんだ?」

この質問自体はC.C.にとっては意味があまりない。その存在は美樹さやかから既に聞いているからだ。
だが一つ気になる。キュゥべえとはさやか自身も言っていた通りかなり悪質な契約を迫る生き物だと聞いた。
奇跡の代償に、その命を戦うことに特化させた形に変換する。実際さやかはかなりそのことを気にしていた。
それを、この女は知っているのだろうか。

「キュゥべえは…、私の友達よ。家族を亡くして独りだった私の傍に、ずっといてくれたの」
(やはりか)

54氷の魔王―ジ・アイス―  ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:13:05 ID:vL/5Burk0
どうやらその辺りの事情には気付いていない様子だ。
そもそも知っていればずっと傍にいる理由も想像がつくはずだ。いくらなんでもそこまで馬鹿ではないはず。
だがそれは私の説明することではなさそうだ。それに今のこいつに変な方向で追い討ちを掛けても仕方ない。
今はそれよりもっと重要な話があった。

「さて、そろそろ思い出してもらおうか。お前に一体何があったのかを」
「そ、それは…」

精神科医のようにゆっくり優しくするつもりはない。最悪ショックイメージで無理にでも思い出させることも視野に入れている。
それをはっきりさせておかなければこの娘と共にいるのは危険すぎる。

と、ここまで考えてやはりルルーシュが絡んでいるとなると冷静さを失った自分がいることに気付く。

「ルルーシュに、心臓を撃たれたのよ…。バークローバーってところで。
 それでも急所は外したみたいでどうにか生き延びて…、そう、そうよ…!
 金色のロボット、金色のロボットがいた…。4mくらいの」
「金色のロボットだと?」
「にゃーの製作したメカが支給されてたって言うにゃか?」

ニャースはニャースで何か考えているようだったが、C.C.には金色のロボットと言われて一人の人物を思い浮かべた。
ロロ・ランペルージ。ルルーシュの義弟であり、ギアス能力者。彼の乗っていた機体、ヴィンセントは金色だった。
あいつであればルルーシュの指示で他人を騙すことなど迷いなくやるだろう。だが、それならばヴィンセントはどこから持ってきたのだろうか。
いや、自分の知識だけで考えるのは危険だろう。この場では平行世界などという夢物語のようなものまで確認されているのだから。

「にゃ、思い出したにゃ。C.C.、ちょっと席を外すにゃ」

ニャースは何を思い出したか、部屋から出て行った。
ちょうどいい。これからやることは少し荒療治になるだろう。

「え…、何…?」
「少しお前の記憶、覗かせてもらうぞ」

C.C.は巴マミの頭の上に手を乗せた。




ニャースは政庁を歩き回っていた。ポッチャマを探してだ。だが、政庁内には姿はおろか気配も無かった。
もしかしたら外に行ってしまったのだろうか。もしそうならここを出たほうがいいのだろうか。
一人で行動するのは危険だが、個人的な感情でC.C.達を巻き込むのも気が引ける。
どうしたものだろうか。

そう考えて政庁内を回っていると、ふと何者かの気配を感じた。
気配というより、むしろ音。それも近くから聞こえてくる。だが姿は見えない。

「にゃにゃ、にゃんの音にゃ…?」

その音の中にはとても懐かしさを感じた。
そう、ロケット団としてムサシやコジロウと共に作戦行動に移していたときの記憶だ。
穴を掘り、罠を仕掛け、建物の柱を削り――

「にゃ?」

そういえばこの音は壁の中から聞こえてくる。
すぐ脇の壁に耳を押し当てる。

「キシャ」

と、目の前から何かが飛び出してきた。
両腕にはカッター状のクロー、頭部には巨大な刃。全身は赤いスーツとプロテクターで覆われている。
ニャースは、それが一目でポケモンだと察した。
そのポケモンは、こちらを見た瞬間その手の刃を振りかざして飛び掛ってきた。

55氷の魔王―ジ・アイス―  ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:13:56 ID:vL/5Burk0

「ニャ!どうしたニャ!?」

いきなり襲い掛かられて困惑するニャース。
どうにかかわしたものの、後ろの壁は大きく切り裂かれていた。間違いなく本気だ。
仕方なくその手の爪を持って応戦するも、先の謎のポケモンと違い、その体はとても硬い。
外見から考えると、どうも鋼タイプのポケモンのようだ。乱れ引っかきだけではどうにもならない。
両腕をクロスさせての突撃をかわす。だがその先でストーンエッジを放たれる。

「ぐ…、にゃあああ!!」

まともに受けてしまい、そのまま吹き飛ばされるニャース。
そのまま追撃をかけようとして、そこで謎のポケモンは膝をついた。
起き上がったニャースは疑問に思い、警戒しつつ近くに寄る。

「にゃ、もしかしておみゃー、怪我してるにゃか?」

ダメージなどろくに与えていないはずなのに疲労の色を表している。
もしかしてここにくるまでに何かしらの戦いでもして、そのダメージが残っているのだろうか。

「キ…、キシャン!!」
「敵の情けはうけにゃいって…、おみゃーそんなこと言って無茶して死んでみゃったら元も子もないにゃ!
 くだりゃん意地張ってにゃいで早く座るにゃ!!」」



このバトルロワイヤルに連れてこられて以降のキリキザンは幸運とは言い難かった。
最初の支給者、ルルーシュにはゼロ相手の当て馬にされ、いきなり大ダメージを負ってしまう。
その後主であるゲーチスと再会できたのも束の間、知らない男の下に渡されてしまった。
ゲーチスにはもう自分は必要ないのであろうか。そんな考えすら浮かんできた。
そしてやらされていることと言えば、また建築物への穴掘り。
生まれてくるのは、他人に対する大きな不信感。
この場では主ですら信じることはできない。そう結論付けてしまった。
故に、同じポケモンとはいえニャースの行動、それは小さなものだが彼にはとても大きかった。

「にゃるほどにゃん、トレーナーに見捨てられて誰も信じられにゃくなった、と
 おみゃーも苦労してるにゃな」

足に巻かれた包帯、脇に塗られた薬はある程度キリキザンの辛さを半減させていた。
まさか見ず知らずの相手にこうまで優しくされるとは思っていなかったのだ。
休めば楽になるだろうと言ったニャース相手に、なぜかここに来て以降の自身の身の上話などを語ってしまっていた。
そしてニャースはそんな話を真摯に聞いてくれていたのだ。

「にゃーも色々と苦労も辛いこともあったにゃ、でも生きていればそのうちいいこともあるにゃ。
 そうにゃ、おみゃーも一緒にこっちに来ないにゃ?みんないい奴にゃよ?」

そう言ってキリキザンのことを慮ってくれるニャース。
だがキリキザンには人間に対する不信感が未だ残っていたのだ。あのロロという人間の冷徹な眼を思い出すと寒気が走る。
と、そこまで考えて思い出す。
自分はここに何をしに来た?

56氷の魔王―ジ・アイス―  ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:14:48 ID:vL/5Burk0

「キ、ザンザンザン!!!」
「にゃ、どうしたにゃ?」

他の人間のことは知らない。
だがこのニャースは死なせたくない。
そう思ったキリキザンは落ち着かない口調でニャースの手を引きながら話し始めた。



夜神総一郎には今の状況というものは受け入れ難いものであり、何があっても解決しなければならないことであるというのはずっと変わらない。
ここに死んだ息子がいたとしても。この場には死神に会った自分にすら想像を絶するような存在がいる事実があっても。
部下である松田が死んだと聞いても。そして、まだ小学生や中学生の子供が巻き込まれ、死に逝くような状況であっても。
佐倉杏子。この場で最初に出会った少女。先輩である巴マミを迎えに行ったきり、そのまま帰ってくることは無くなった少女。
死は突然訪れるものであるという覚悟はあった。事実キラ対策室にいたときはいつ自分達が殺されるか分からない状況だったのだから。
しかしだからといって、佐倉杏子が死んだという事実に動揺しなかったかと言われれば否定するだろう。
それでも動揺を表に出すわけにはいかなかった。巴マミ、佐倉杏子の仲間でありその死を目の前で見た彼女のほうがずっと辛いのだ。そんな彼女の前で自分まで冷静さを失うわけにはいかない。
冷静な自分を、自分にも敢えて装うために纏められた情報に改めて歩きながら目を通す。

それでもさっぱり分からない。そもそもあのアカギという男を、法の力で裁くなど可能なのか。
自分達の常識など容易く崩れることはキラ事件で経験済みだ。それでもそう簡単に今まで生きていく中で培われた常識を壊すなどできるはずもない。
これはやはりLに知らせるべきものだろう。
だが一つ気にしてしまうことがある。他でもない息子のことだ。
この情報、月に教えてしまってよいものだろうか。
月はLやメロ達の悪評をばら撒いていると聞いた。しかしだからといって殺し合いに乗ったと結びつけるのは短絡的だろう。
ただ邪魔者を消しておこうと考えているだけか、あるいは本当に乗ってしまったか。
そんなことを考えながら歩いていたせいだろうか。

「父さん…?」

一瞬幻聴かとも思った。
だが、目の前に立っていたのは、自分の知る月とは若干顔つきの変わった、いや、成長したのだろう。
紛れも無く、夜神月だった。




「にゃ、早く逃げろ、死人が出るぞって、どういうことにゃ!」
「キザ、キシャキシャン!」

位置的には月と邂逅した総一郎のいたところとは正反対の場所だろう。
キリキザンはニャースの手を引いて出口を目指していた。
この場にいては危険だと、そう言って聞かないのだ。

「待つにゃ、ここにはにゃーの仲間もいるにゃ!皆に知らせにゃいとダメにゃ!!」
「ザン!」
「そんな時間は無いって、だからってにゃーだけ逃げるわけには――」

政庁の出口を目指すキリキザンとニャースの声は大きく、辺りの廊下一帯に声が響いていた。
キリキザンも無用心だったかもしれない。誰かが襲撃してくるというなら静かに逃げるべきだったのだ。

57氷の魔王―ジ・アイス―  ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:16:13 ID:vL/5Burk0
「使えない駒だな」
「キシャ…!」

気付いたときには手遅れだった。
ニャースとキリキザンの足は凍りついて地面から動かせなくなっていたのだから。

「そのような役割を与えた覚えはないが…、ふん、だが一応仕事はしたようだな」
「にゃ…、おみゃーは何にゃ…!!」
「褒美だ、その生き物ともども凍り付いて死ぬがいい」
「にゃ―――――」

突如現れた男が横を通りすぎるのを確認した直後、ニャースの意識は冷たい氷の中に沈んだ。



「何をしているのですか?」

手をかざした瞬間であった。その部屋にユーフェミアが現れたのは。

「こいつに少し記憶を思い出してもらおうと考えただけだ。危険だから早く出て行ったほうがいい」
「それは、何のためにするのですか?」
「この女は危険だ。先ほどゼロとミュウツーに戦いを仕掛けたのを聞いていただろう?
 可能なら放っておきたいがこいつには聞きたいこともある。ならなぜそんなに不安定なのかはっきりさせねばなるまい?」
「反対です。今彼女は落ち着いています。下手に精神状態を悪化させてどうするのです?」
「こいつはもしかしたら、…ルルーシュを殺しているのかもしれない。それでもか?」
「それを知ったところでどうするのです?あなたが彼女を裁こうというのですか?」

C.C.はここに来てユーフェミアとはある程度会話を交わしてきたつもりではあったが、ここまで我が強いとは思わなかった。
正直もし巴マミが錯乱して発砲してきたとしても、自分だけならある程度対処できるつもりだった。肉体に掛かっている制限を把握するいい機会だったからだ。
ユーフェミアがいる状態でも強行すれば不可能ではないが、もしものことがあったらスザクが何をするか分からない。
仕方ないが今は諦めるしかなさそうだ。

「トモエさん、でいいのですよね?無理して話すことはありません。
 今のあなたに必要なのは、休息です」
「でも、私がいたら…、いないと誰かが襲ってきたときには――」
「大丈夫です。ここにはゼロ―いえ、あなたの会ったほうではありませんが、彼もいますし、他の方達も信用に値する方です。
 傷付いた子供にばかり戦わせるような人はいませんよ」

傷付いた、子供。
そんな扱いを受けたのは初めてだった。
だって自分は魔法少女で、皆を守るために戦わなければいけない。ずっとそう思ってきたのだから。

話自体は他愛のないものだった。
いつごろぶりだろうか。こんな風に人と話すのは。
魔法少女として戦ううちにどんどん疎遠になってしまった友達しかいないマミにとっては、心が安らぐ時間であった。

58氷の魔王―ジ・アイス―  ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:16:42 ID:vL/5Burk0

カツカツカツカツ

ふと、廊下から足音が聞こえてきた。

「ん?この足音、ゼロのものでも夜神総一郎のものでもないな」
「ここは大きな施設ですし、人が寄ることもあるのでしょう。でもそれより――」
「ああ、今はなるべく静かに、だ」

足音はこちら側に向かって歩いてくる様子だ。そして何より気になったこと。それは、

「こいつ、部屋を一つ一つ見て回っている…?
 まずい…!お前達注意しろ」

巴マミは慌ててマスケット銃を取り出し、ユーフェミアも扱えるかどうかはさておき拳銃を構える。
部屋を一つ一つ回っている。それも足音から察するに特に警戒している様子もない。
つまり、この足音の主は高確率で乗っている。それも何かしらの力を所持して。
出ようにも出口は一つ。窓から飛び出るのはC.C.とマミならいざ知らず、ユーフェミアには厳しい。
足音は部屋の前まで近づいてきている。最悪、一瞬でも相手の対応を鈍らせれば逃げることはできる。ゆえに各々の武器を構えて迎える準備をしているのだ。
そして、足音は部屋の前までたどり着き――

ガチャッ

扉が開く。

「「え?」」

一応どのような相手であろうと、少なくともC.C.は乗っているなら取り押さえるなり迎え撃つなりするつもりであった。
しかし、扉の向こうから見えてきた姿、それはあまりに予想外の姿をしていた。
呆けた声をあげてしまったのはC.C.と、その隣にいる巴マミ。
なぜなら、その相手の姿は――

「ルルー、…シュ?」

そう、放送で死んだと聞いたルルーシュの姿そのものであったのだから。

「見つけたぞ、兄の仇、そしてブリタニアの魔女」
「…!!!!いけません!!!」

ユーフェミアが声を張り上げたときには手遅れだった。
部屋の中の温度が急激に下がり、壁を、床を凍結させ始めた。

「な、これは――」

扉に最も近い場所にいたC.C.の脚が凍り始めた。
まるで、生き物の動きを、血液の流れを、体温を、その全てを無―ゼロへとするがごとく。

「…っ!」

驚きつつも、マミは冷静にC.C.の体にリボンを飛ばし、まだ凍り付いていない場所へと引き込む。
さらに凍り付いていない場所に根を張り、宙にリボンで足場を作る。

「は、早く!」

焦りつつもC.C.を抱えてユーフェミアも持ち上げ、急遽作った足場に乗る。

59氷の魔王―ジ・アイス―  ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:18:50 ID:vL/5Burk0
「窓から飛び降ります!!私がどうにか受け止めますから早く!」

そう言ってマミはリボンの足場を戻しつつ窓から飛び出す。
少し迷った後ユーフェミアも後を追って飛び降りていった。

その姿をルルーシュの顔をした男、ロロはじっと見つめていた。
逃がすつもりはない。せっかく見つけた仇、そして魔王の力の源。
だがあの様子ではそう遠くに逃げることはできないだろう。何しろ奴らはけが人を連れているのだから。
そうタカをくくって敢えて見逃したのだ。それに、背後には興味深いやつがいる。

「ゼロというから誰かと思えば、何だ、紛い物か」
「ロロ・ヴィ・ブリタニアだな」

背後でバスターソードを突きつけているのはゼロの仮面を模したものを被ったマントの男。
巴マミからはエデンバイタルの魔人たるゼロの存在があることも聞いている。一体この場には何人のゼロ、あるいはルルーシュがいるというのだ。
最も自分もそのルルーシュの顔を持つ一人なのだが。

「早く追わねばならないのでな。邪魔しないでもらおうか」

銃を向けると同時に、バスターソードが振り下ろされる。
が、その腕は途中で止まることになる。バスターソードが凍りつくのを確認した瞬間、ギアスがスザクの動きを止めたのだ。
そのまま脚を凍らせて動けなくした後で顔を確認して殺してやろう。そんな段取りを組んでいたロロ。
しかし攻撃の特性を悟ったスザクはすかさずマントで下半身を覆う。一瞬で凍りつき内側まで冷気で包もうと入り込む。
その一瞬の隙にスザクはマントを外し、冷気への身代わりとして戦闘から離脱した。
何の備えもなく勝てる相手ではないと悟ったのだ。

「息巻いて戦いを挑んできた割には随分と大したことはないのだな。
 まあいい。今はあっちを優先するとしようか」

一応、手はずとしてはそろそろ十分だろう。
次の段階として、ロロは自身の切り札を呼び出した。



逃げてきたとはいえ、体の状態は芳しいものではなかった。
両脚はマントで防ぎきれなかった冷気によって凍傷を起こしている。
バスターソードだけでどうにかなる相手ではなかった。いや、あの様子であればまだ何か残している可能性もある。
ユフィ達が気がかりだ。早くここから離れなければ。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

と、次の瞬間、政庁の壁が、柱が崩れ始めた。
ガラスが割れ、地面に亀裂が走り始める。よく見ると崩れた柱には大きく割れているのに気付く。何者かが壊れやすくなるよう工作したとしか考えられない。
先ほどのロロが何かしたのだろう。早くここから抜け出さなければ押しつぶされる。
あの男の狙いが、奴自身の言っていたようにC.C.と巴マミにあるというのなら自分や他の参加者はこの場で押しつぶしてしまっても問題ないとでもいうのだろうか。
総一郎氏やニャースは気がかりではあるが、今はギアスが発動しかけている。下手に探しにいっていまうと逆にまずい。
出口まで一直線に走るスザク。落ちてくる瓦礫はどうにか避けることはできる。
脚力の許す限りの、全力をもって走り抜けた。

60氷の魔王―ジ・アイス―  ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:19:26 ID:vL/5Burk0


「彼はロロ・ヴィ・ブリタニア、エデンバイタル教団枢機卿にして異端審問官、ルルーシュの双子の弟です」
「ちっ、巴マミ、お前はまんまとしてやられたみたいだぞ…」
「え…、どういう、ことなの?」
「ルルーシュに実際に会ったお前なら分かるだろう。あの男は、お前にルルーシュのふりをして近づいてきたんだよ!」

地上に降りた三人は政庁内に戻って走っていた。
危険なのは承知だが、まだ中にはゼロやニャース、総一郎がいるのだ。彼らを放置できないとユーフェミアと巴マミの談だ。
C.C.は反対しようともしたが、こうやって背負われている以上、選択権はないに等しい。それにやはりニャースのことは気がかりだ。
そもそもこうやって足が凍り付いて動けないのもほとんど自分のせいだ。話には聞いていたはずなのに、いざ顔を見てしまった瞬間頭の中が真っ白になってしまったのだから。

「そんな…。それじゃあ私は、何をしてたの…?」

と、次の瞬間、突然政庁内で地鳴りが起き始めた。
地震ではない。揺れているのは政庁自体だ。
壁に走り始める亀裂、崩れだす天井。そして、落ちてくる瓦礫。
それは当然、三人の元にも降り注ぐ。

「危ない…!」

例え如何に動揺していようと、決して人を見捨てたりはしない。
巴マミはリボンを網状に編むことで頭上の瓦礫を全て受け止める。
が、そこでそれは現れた。

ドォォォォォン

瓦礫の中に混じって金色の巨人が地面に降り立つ。
サザーランドやグロースターのような量産期と違い、より人型に近づいたフレーム。それも金色という圧倒的な存在感を放つ色、そして胸部に刻まれたギアスを模した紋様。
ユーフェミアには分からなかった。巴マミはその存在の意味に戦慄した。そして、その機体の名称を知っていたのはC.C.だけだった。
ヴィンセント。ロロ・ランペルージがほぼ専用機として搭乗していたKMF。
ここまでくると運命まで感じるな、とC.C.は思った。



時を少し戻す。

月としては彼との遭遇は想定外ではあった。まさか政庁にいたとは。
果たしてゲーチスがこれを教えなかったのはわざとなのかとも勘繰ってしまった。実際のところはゲーチスと総一郎はニアミスしたため存在を把握できなかっただけなのだが。
政庁に多くの人が集まっていたことは知っている。その中に父さんがいたということが何を意味するのか。
月は父、総一郎のことは味方として信頼に値する人物であると考えていた。無論キラではない月としてではだが。
その父がいたということはここに集まった参加者には月のことは信用に値する人間であるという情報が広がっていることになる。
ロロに潰させるには惜しいことではあるが、今は数少ない味方である父のことの方が重要だ。
問題はあの自分が流してしまった偽情報だが、それについてはまあある程度ならどうとでもなるだろう。

そういうわけで、月は総一郎を連れて急いで政庁の外に出たのだった。

61氷の魔王―ジ・アイス―  ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:19:59 ID:vL/5Burk0
「本当なのか、ここに危険な殺人者が迫っているというのは?!」
「ああ、本当なんだよ父さん!僕が逃げる中であそこに入れてしまったんだ!」
「なら他の皆に――」
「いけない!今あそこに行ったら父さんも危ないんだ!後で僕が戻るから父さんにはこの近くで待ってて欲しいんだ!」

総一郎の知っている月を演じられているか、若干不安もあった。
だが最悪平行世界と言えばどうにかならないこともないだろう。信じてもらえるかどうかに不安も残るが。
政庁の外部、近くの建物の中に総一郎を潜ませる月。

「父さん、ちょっとここで待っててくれないか?父さんの仲間っていう人は僕が助けにいくから」
「…月、少し待ってくれ」

言うと同時に政庁の方から地震のような響きが鳴り始める。
どうやらロロは本格的に行動し始めたようだ。故に行くかどうかはともかく、行くポーズだけは見せておかねば月らしくはないだろう。
だからこそ、総一郎自身に止められるのは予想外だった。

「父さん?」
「彼らは俺達の想像以上に強い。もう事が起こってしまっているなら月が行ってどうにかなるものでもないだろう。
 いや、これは個人的な感情への言い訳なのかもしれないな。だがここが安全というなら、ちょうどいい。
 お前に聞きたいこともある」

月の失敗。
それは自身と父―数少ない味方たりうる存在の生存を優先してしまったあまり、情報交換も疎かに行動してしまったことだ。

「お前は、キラなのだろう?」

その声は、質問といったものではなく、むしろ確信に近い響きが含まれていた。



「巴マミ、よくも我が怨敵ルルーシュの命を奪ってくれたな。その償い、貴様の命をもって償ってもらおう」

ヴィンセント搭乗者の声はルルーシュのそれにしか聞こえない。だがその声の主がルルーシュでないことはこの場にいる一同皆が知っていた。

「ロロとか言ったな。そいつを貴様はどこから持ち出した?」
「フ、やはりお前もウィッチ・ザ・ブリタニアたるC.C.ではないようだな。
 ワイアードギアス所有者は量子シフトによってエデンバイタルより呼び出すことが可能なのだよ」

その場の誰もが理解できない用語を連発しつつ剣を構える。
相手はナイトメアフレーム。拳銃などではどうにもできない。
可能性があるとすれば、この巴マミなのかもしれない。しかし肝心の少女はロロの放った、ルルーシュを殺したという言葉、そしてその償いという言葉に身を震わせている。
ヴィンセントの剣は巴マミに向かって真っ直ぐ振り下ろされる。呆然と立つ少女がそれを避けられはしない――はずだった。
しかし彼女は避けた。
巴マミは如何に動揺しようと精神状態が悪かろうと、戦いにおいては正確に戦術を考えられるほどには戦い慣れしたベテラン魔法少女である。
これまでにも動揺や驚きの中でも戦闘面では正確に立ち回ってはいたのだから。
だがこの場合の問題は一つ。
振り下ろされた剣の傍にいたユーフェミアを完全に置き去りにしてしまったことだろう。

62氷の魔王―ジ・アイス―  ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:20:37 ID:vL/5Burk0
「ユーフェミア?!」

さすがにC.C.も驚く。今の動きはこれまでの巴マミらしからぬ動きだったからだ。

「え…?」

どうしたことか巴マミ本人も驚きの声を上げている。
ユーフェミアを放置していった結果、それが一つの事態を引き起こしてしまった。
すなわち、人質。
ヴィンセントはユーフェミアの体をその手に持ち上げ、首筋には剣を突きつけていた。

「魔女を目の前にしてあの時のような砲撃を放たれては敵わないからな。さて、ユーフェミアを放して欲しければ私の元に来てもらおうか」
「そんな……またなの…?」

マミがそう呟いたのをC.C.は聞き逃しはしなかった。

ロロにとってはこのユーフェミアは生きていようと死んでいようとどうでもいい存在である。
この巴マミという少女に彼女を見捨てることができるかと言うと、少なくともあの砲撃を行うことはできないだろう。人質としての意味はそれだけでもある。
さらにC.C.は足を動かすことはできない。彼女の動向次第では魔女を確保することも可能だろう。

と言うのに、

「構いません。あなた達はお逃げなさい」

ユーフェミアはそんなことを言ってのけたのだ。
 
「私はルルーシュを殺したあなたのことを許しはしません。ですがその命をもって償おうというのであればなお許しません。
 その命をもって、残されたものの力となるのです。ナナリーを、スザクを守り、一人でも多くの人を救いなさい」

ロロにはユーフェミアが何を言っているのか測りかねた。
だがマミは足を震わせている。人を見捨てるということに対して何かトラウマでもあるのだろうか。
どちらにしても彼女には残酷な選択となる。それをユーフェミアは敢えて選ばせようとしているのだ。
それでも、彼女は選択した。



「ユーフェミア?!」

崩れた天井の上から追いついてきた様子のゼロが驚きの声をあげる。
今までのゼロの声色と比較しても不思議なくらいに揺れているのが聞いて分かった。

「ロロ・ヴィ・ブリタニア!!ユーフェミアを離せ!」
「ふん、生憎貴様には今用はないのだよ」

ヴィンセントはゼロに向かって腰のスラッシュハーケンを放つ。
崩れかけの天井に突き刺さったハーケンは上の階にいたゼロを撃ち落とす。

「ちっ、逃げたか」

見ると肝心の二人の姿はすでに無かった。
一瞬でもゼロに気をとられたのはまずかったのか。

「私のことなら好きにするといいわ。でもあなたをこの先には行かせない。
 ナナリーを、皆を危険に晒させはしません」

ロロにはユーフェミアのことなどどうでもいい。
生きようが死のうが興味はない。逆に言えば人質としての役割を果たさなくなった彼女のことなどどうなってもいいのだ。
獲物を逃がした苛立ちもある。
握った手を空中で離し――

「さようなら、ユーフェミア」

一気に剣を突き立てた。

63氷の魔王―ジ・アイス―  ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:21:21 ID:vL/5Burk0



巴マミがルルーシュを殺したというのは本当だろう。
その事実を知ったとき私は彼女を仇と思って憎んだだろうか。
私には彼女が悪い人間には見えなかった。しかし強い人間とも思えなかった。
よくも悪くも普通の少女。そんな彼女が果たしてルルーシュを殺せるのか。
彼女の精神状態を見ているとある程度考えは付く。きっと不幸なすれ違いか何かがあったのだろう。
だからこそ、彼女には強く生きて欲しかった。きっとナナリーと仲良くすることもできるだろう。
そしてこの男、ロロ・ヴィ・ブリタニアは倒さなければいけない。絶対にナナリーの元に向かわせてはいけない。
だから、巴マミに一つ賭けてみることにした。この命をもって。

コゥお姉さま、こんなところで死ぬ妹をお許しください。
ナナリー、ルルーシュの死に囚われず強く生きて。
そして、スザク。あなたと共に歩む大望、こんなところで終わらせてしまってごめんなさい。
せめて、最後にあなたの声が聞きたかった―――

「ユフィィィィーーーーーー!!!」



「父さん、何を言ってるんだい…?」

言葉の意味を理解することに少しの時間を要した。

「メロという青年から全てを聞いている。お前がキラだと」
「メロ…?父さん何を言ってるんだ…?」
「一つ言い忘れていたな。俺はお前のいた世界とやらの夜神総一郎ではないんだ」
「…?!」

つまりメロは別世界の父親に自分がキラということを話したのか。
どこまでも鬱陶しい奴。
生前も奴さえいなければ、あのような失態を晒して死ぬこともなかっただけにその怒りは大きい。
いや、メロ。奴だからこそ父さんを説得する術を持っている。

「…父さん、メロは悪人だ。父さんは知らないだろうけど、奴こそデスノートを狙ってマフィアを操り、たくさんの人間の命を奪った男なんだ。
 そんな男のいうことを信じるのか?!」
「俺にはそのような青年には見えなかったぞ」
「本当だ。奴が粧裕を誘拐したことで粧裕の心は傷付き、父さんも命を落としたんだ!」

64氷の魔王―ジ・アイス―  ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:22:35 ID:vL/5Burk0
これ自体は真実だ。
粧裕の心に大きな傷を負わせた上、父さんを殺した。この事実には一分の間違いも無い。

「……」

父さんは僕の顔をじっと見つめている。
別世界の父さん、というのは、いや、警視庁での暁美ほむら、アリスとのやり取りからある程度の想定はしていた。
だが、父さんはキラ、と言った。そして僕に疑いの目を向けてきた。
つまりキラが存在する世界、メロと接触しなかった世界、そして、未だキラが健在であり父さん達が戦っている世界だと考えたのだ。
父さんならば信じてくれるはずだ、と考えている。

「月、今のお前は嘘を言っているようには見えなかった。メロがこれまでしたことについては信じよう。あとで彼に会ったら改めて俺が聞く。
 ならもう一つ聞かせてくれ。L達が悪人と言ったそうだが、あれは何だ?」

やはりそれか。だがそのことはある程度対処は考えている。

「父さんのいた世界では分からないけど、僕のいた世界ではLはキラという疑惑を解かず、拷問までしてキラだと認めようとしたんだ。
 後継者のニアもそんな考えで捜査を続け、他の皆も、父さん以外の誰もが信じられなくなったんだ」

平行世界という言葉を蓑にしてどこまでの嘘が突き通せるか、それが問題である。
言ってしまったことは取り消せない以上、これでどうにか凌ぐしかない。

「月」

なのに、父さんは言った。

「一つ言わせてくれ。俺は一目お前を見たとき、お前のことがキラだと確信した。何故だか分かるか?
 お前の目、俺が以前見たある男と同じ目をしていたからだ」
「ある男…?」
「夜神月。俺の世界での、俺の息子。Lに敗れて死神の手で殺された俺の息子のことだ」
「!!!!!!」

はっきり言おう。僕はその世界のことを考えていなかった。
Lは最高の探偵であり、最高の宿敵だった。だが、神である僕はその試練を常に乗り越える存在である。
そんな驕りがどこかにあったのだろう。
だから、父さんの言葉に柄にもなく大きく動揺してしまったのだ。

「あまり父親というものを甘くみないほうがいいぞ」

つまりあれか、父さんは全て知った上でこれまでの会話に付き合ってきたというのか。

「ふ、ふはははははは、Lに負けて死神に殺されたって?ははははははは!!」

笑うしかなかった。僕の世界と父さんの世界。その違いはニアに負けたかLに負けたかの違いしかないというのだ。
はっきり言おう。ここは僕の負けだ。

「そうさ。僕も、キラだよ、父さん」
「月…!」
「そして、父さんなら分かってくれる。僕はそう信じている。
 世界にキラは必要だ。キラの手で犯罪者を殺すことで世界を平和にすることができる。
 犯罪の起こらない理想の社会を作ることができるんだ」
「お前は、そのためにここでどうするというんだ」
「キラは世界に必要な象徴だ。僕は何があっても帰らなければいけない。
 それに、今更たかだか50人と少しの人間の命、惜しんでいるわけにはいかないんだよ」

65氷の魔王―ジ・アイス―  ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:23:05 ID:vL/5Burk0
そう、世界にはキラという象徴は必要なのだ。そもそも悪を許さない心、それは何よりも父さんから教えられたものなのだから。
だから、キラという存在を認められない父さんであっても、悪人を裁く僕の心は分かってくれるはずだ。
犯罪者のいない理想の社会。誰もが笑ってすごせる世界。
父さんの生きる理想と僕の道は同じはずだと。
そう、信じていた。

「月、以前息子に言った言葉、もう一度お前に言おう。
 お前は一人よがりだ」

真っ向から否定された。一寸の迷いもなく、ばっさりと。

「お前は神などではない。ただの人殺しだ」

その言葉は以前ニアに言われた言葉と同じもの。
だが何故だろうか。ニアに言われたときには感じなかった謎の感情が湧き上がってくる。
怒り?違う。苛立ち?違う。哀しみ?違う。
分からない。なぜこんな言いようもない気持ちが湧き上がるのか。

「…父さん、僕が救いたいのは父さんのように真面目で正直な人間なんだ。
 そんな人達がバカを見るような世界で、本当にいいのか?
 僕なら作れるんだよ!腐った人間を排除して、皆の理想の社会を――」
「っ!!」

バシッ

もしかしたら、月にとって父親に殴られるという経験は初めてだっただろうし、総一郎にとっても息子を殴るという経験は初めてだっただろう。
頬に拳がめり込むなどということはめったにあることではなかった。それも相手が父親であるなど。
当然受身など取れず吹き飛ぶしかない。


総一郎は考える。何があの正義感の強かった息子をここまで歪めてしまったのか。
まさか二度もこんな姿の息子を見ることになるなど、誰が思おうか。
信じていた。正義感の強い大人になって警察官として社会を良き方向に進めていく男になってくれるだろうと。
だが、息子はこんなにも歪んでしまった。Lと轡を並べられる存在にもなれたかもしれないのに。
あの時の、第三のキラの時のように。そう、第三のキラ――

(待て、まさか月は――)
「はぁ、はぁ…」

起き上がった月は剣を構える。
真っ黒な剣だった。かつては黄金に輝き、使用者に勝利をもたらすであったはずの剣。
それは、まるで今の月を象徴しているかのよう。
多くの人を

「分かってくれないというのなら、殺すしかない。僕は生きなくてはいけないんだ」

ここはそこまで開けた場所ではない。さらに月は目の前に立っている。
だから銃を構える暇もないだろう。恐らくその剣が突き刺さる方が早い。

「さようなら、父さん。できれば殺したくはなかったよ」

構えた剣でその胸を突こうと前進する月。
迷いはない。父親であろうと殺す。月は知らないが、それはかつての”夜神総一郎”の本当の息子である”夜神月”の姿でもあった。

「月、―――」

父は最期に何かを言おうとしている。
命乞いか?いや、それは有り得ないな。説得の言葉か?それとも叱責の言葉か?
それくらいは聞いてやろう。何があろうと、僕は道を変えることなど、許されないのだから――

「――済まなかった」

66氷の魔王―ジ・アイス―  ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:23:46 ID:vL/5Burk0



枢木スザクはゼロでなければならない。
それが世界への償い。かつて仕えたあの人への償い。
もう、枢木スザクという男は死んだ。あの時、紅月カレンとの一騎打ちの戦いに敗れて。
だからこそ、何があろうと枢木スザクという存在はゼロ―無でなくてはならない。
虚無の中でゼロを演じきらなければいけないのだ。
例え目の前に、かつて共に理想を追った彼女がいたとしても。



政庁内には既にヴィンセントの姿は無い。
あの後、すぐさま逃げたC.C.と巴マミを追っていったのだ。
場に残ったのは、ゼロ、巨大な剣。
そして、それに腹部を貫かれたユーフェミア。

「ユフ…、ユーフェミア!しっかりしろ!!」

声をかけるゼロ。だが、自身ももう分かっていた。彼女を助けることはできない、と。
それでも諦めたくはなかった。彼女はこんなところで死んでよい人間ではないのだから。
少し僅かでもいい。奇跡があれば、彼女を救えたかもしれない。
だが、そんなものはどこにも落ちていない。
戦場において数々の奇跡を起こしてきたゼロ。その名を継いだ彼であっても、この場においてはどうしようもなく無力だった。

「ゼ、…ゼロ。お願いが、あります」

だが、それでも彼女には、まだ意識が残っていた。
口から、刺された部位から多くの血を流しつつも、ユーフェミアには僅かに時間が残されていた。

「あの子のこと、恨まないであげて。ナナリーのこと、助けてあげて。そして、皆の力になってあげて」
「分かった。分かったから、もう喋るな!」
「それと最後に、ありがとう。―――スザク」

それに気付くには遅かった。
先のヴィンセントのハーケンによる攻撃、そして墜落の際の衝撃。それはゼロの仮面の前面、レンズで覆われた部分を破壊していた。
つまり、ユーフェミアから見れば、ゼロの中、スザクの目は丸分かりの状態であったのだ。

「ずっと、傍にいてくれたのね。私のこと、…守ってくれてたのね」
「ユフィ…」

ゼロ、いや、スザクは仮面を外す。彼女をゼロとして、ではなく、枢木スザクとして看取るために。
たとえ神が、かつて殺した友が、犠牲にしてきた人々が許さなくても、せめてこの時のこの我儘だけは、他ならぬ自分自身だけは許したかった。

「僕は、君のような気高い人とは、一緒の道を歩けない…。顔を見ることなんて、できない。
 だって、僕の顔は、手は、こんなにも汚れてしまっているんだから…。
 枢木スザクという人間は、もう死んでいるんだから…!」

そう、理想を追った枢木スザクはもう死んだ。ここにいるのは、多くの罪を犯してきたゼロという男。
だからこそ、最後に顔を晒したのは、ある種自身への罰だったのかもしれない。
血塗られた顔を見せること。それがスザクにとってどれだけ辛いことか。

「…大丈夫、あなたは、まだ生きているのだから」

なのに、彼女はそんな自分に笑みを向けてくる。
かつてのあの人と同じように。僕の全てを好きだと言ってくれた彼女のように。

「あなたは、私のために泣いてくれた。それだけで、もう、十分――よ――」

そして最後に、スザクの頬を手でなぞる。
自分ですら気付かなかった、目から溢れていた涙をなぞり、その手は力なく地面に落ちた。

「…ユフィ」

スザクは、涙を拭き取り、ほんの数秒、その亡骸の前で目を閉じる。
これが、枢木スザクの生涯最後の涙となるようにと願い。
そして、脇においた仮面を手に立ち上がり、政庁の奥に走っていった。
『魔王』ロロ打倒の切り札たりえるかもしれない、一つの希望を手にして。

67Lost Colors  ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:24:53 ID:vL/5Burk0


「一つ聞こう。さっきお前はまた、と言ったな。その言葉がどういう意味なのか、詳しく話せ」

場所は政庁から西に動いた市街地。
そこでマミとC.C.は身を潜めていた。
だが、見捨てるという行為にまたトラウマを刺激されたのか、彼女は話そうとしない。

「ユーフェミアのことは気にするな、と言っても無理だろうが。
 だがあいつはお前が死んでいい人間だとは思わなかった。それだけは肝に銘じておくんだな」

びくっと体を震わせるマミ。
そして拙いながらも、心の傷を傷めつつも、何があったのか彼女は話し始めた。

時々、自分ではない何かが体を、心を乗っ取ること。
一度目はSB社。ゼロの戦いの最中、彼の力を思い知った直後、戦いを放棄して逃げ出した。
二度目はその近くで木場勇治と戦っているときのこと。彼の変身した姿、その力を把握した時、仲間を見捨てて逃げ出した。
三度目は白い魔法少女―イリヤスフィール、そしてあの金色のロボットと戦っていたときのこと。焦りと死の恐怖の中で、何かをした。恐らくその中でルルーシュは――

聞いてC.C.はある人物を連想した。
生きるためにそれまで重視していた上の人間の命令を無視して逃走した男。
追い詰められたその時、トウキョウ租界が壊滅するのも気に留めずフレイヤを撃ち込んだ男。
あいつと同じだ、と。
ならばルルーシュはこの娘にスザクと同じ呪いを植えつけたのか。
何のために?ルルーシュは何を思ってこいつにそのギアスをかけた?
今となってはそんなこと分からない。ただ、一つだけ、言えることがある。
ルルーシュにとって、この娘はスザクと同じギアスをかけるほどの価値があったということではないだろうか?

ならば、一度だけこいつを試してみる価値はあるかもしれない。

「おい、私をどこか目に付きやすい場所に連れて行け。お前は近くに隠れていればいい」



「え?」

前進する体が止まった。
何故謝られたのだろうか。

「済まなかった、月。父親で、こんなに近くにいながら、お前の苦しみに気付いてやれなかった」

総一郎は気付いてしまった。
何が月をここまで変えてしまったのか。
第三のキラ。高田清美がキラとなったあの時。Lと月が協力してキラを探し出したあの時。
あの時の月はキラのことを決して肯定することはなかった。
おそらくデスノートを喪失したことによる記憶喪失によるもの。ならばあの時の月が演技によるものだとは到底思えなかった。
では、あの時キラとしての月とは何が違うというのか。
決定的な違いがあった。
それは、デスノートで人を殺した、という事実。

68Lost Colors  ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:25:21 ID:vL/5Burk0
死神は言った。ノートを使ったことによる代償。それは強いていうなら、そのノートを使った人間にだけ訪れる、苦痛や恐怖だ、と。
だがそれは月には無縁なものだと証した。これは総一郎の知らない事実だが。
果たしてそうなのだろうか?
月は本当に何の苦痛、苦悩もなかったのだろうか。
少なくとも、ここにいる月は最初、殺人の罪の意識に苛まれたことは事実だ。
だが、月は正しすぎた。そして強かった。
その弱さを隠し、別の形として昇華される術を見つけ出してしまった。
それこそがキラ、新世界の神。
犯罪者が悪である社会を作ることができれば、自分の罪を罪で無くすことができる。
そして、どんどん殺す中で罪に罪を重ねる。その中で止まることも戻ることもできなくなってしまったのだとしたら。

「最初にノートで人を殺したとき、どれだけ苦しんだのか、それに気付けてやれなかった。
 そのせいでお前がこれほどまでに歪んでしまった。もっと早くに気付いて、父親として止めてやるべきだったんだ」

総一郎は決してキラを、月を認めない。
しかしそれでも、彼は息子なのだ。死んで欲しいなどとは決して思わない。
可能ならば罪を償い、その上で生きて欲しいという思いがあったことは変わらない。

「月、俺を殺すのならば好きにしろ。今ならば抵抗もしない。父親として、罪に問いもしない。
 その代わり約束してくれ。これが、最後の殺人になると。これ以上罪を重ねるな…!」

もしもあの時、この言葉が言えていたら月を救うことはできたのだろうか。
キラという呪縛から。人殺しの罪の意識から。
きっと佐倉杏子、巴マミといった少女達の孤独を、罪への恐怖を見なければ気付くことはできなかっただろう。
両親を無くしたものが誰を頼るでもなく戦いに身を投じる姿。人を殺した罪への恐怖。
恐らくこれが、月を説得できる最後のチャンスだ。

「今までの罪、それはお前なら償っていけるだろう。
 頼む、お前のその頭脳、今だけでもLの力としてやってくれ!」

月は心の中に揺れ動く何かがあるのを感じてしまった。

「な、何を言ってるんだい、父さん。僕が、正義のためじゃなく、僕自身の罪を隠すために神になろうとしてたとでも、いうのか…?」

月は否定したかった。僕がキラになったのはより多くの、善良な人間を救うためなのだと。
――ならばなぜFBI捜査官を殺した?Lを殺した?――
簡単な話だ。捕まっては多くの人間を裁くことなどできない。
――本当は、自分の罪がばれるのが怖かっただけではないのか?自分の善性を維持するために殺しただけじゃないのか?――
違う、そんなことはない。そんなことはない。違う、違う違う違う!

キラという自分の形が崩れそうになる。神という意思が保てなくなる。
決して思い出してはいけない、心の奥底に封じ込めた事実が浮上しそうになる。

今の月にできること。それは父を言い負かすことでも殺すことでもなく。
自身の精神を保つため、その場から逃げることだけだった。



69Lost Colors  ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:25:57 ID:vL/5Burk0


「月!」

自分に背を向けて走り出す息子の姿を確認する総一郎。
その直前の表情は今まで見たことのないものであり、決して忘れることができないものだった。
これがきっと最後のチャンスだ。
もしも月が、少なくともこの場においてまだ誰も殺していないというのなら、まだ間に合う。
少なくとも先の剣は血に汚れてはいなかったのだから。

「くっ…!皆、すまない!」

政庁に残してきた皆のことも気がかりだ。だが、あのような顔を見せた息子を放ってはおけなかった。
息子のことを優先して多くの人を危険に晒す自分はきっと警察官失格だろう。
それでも、今は、今だけは警視庁刑事部部長ではなく、夜神月の父、夜神総一郎として行動したかった。

走っていった向きは政庁の反対側。後ろ髪を引かれる思いを心に残し、総一郎は息子を追って走り出した。

【D-2/市街地/一日目 午前】

【夜神月@DEATH NOTE(漫画)】
[状態]:健康、精神不安定
[装備]:スーツ、
[道具]:基本支給品一式、レッドカード@ポケットモンスター(ゲーム)、エクスカリバー(黒)@Fate/stay night
[思考・状況]
基本:優勝し、キラとして元の世界に再臨する?
1:父から離れる
2:?????
情報:ゲーチスの世界情報、暁美ほむらの世界情報、暁美ほむらの考察、アリスの世界情報、乾巧の世界情報(暁美ほむら経由)
※死亡後からの参戦
※ロロ、ゲーチスにはレッドカードの存在は明かしていません
※ジャイロアタッカーをどこに停めているかはお任せします


【夜神総一郎@DEATH NOTE(映画)】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:天保十二年のシェイクスピア [DVD]、羊羹(2/3)羊羹切り 、不明支給品1(本人未確認) 、政庁にて纏めた情報
[思考・状況]
1:今だけは、警察官としてではなく父親として行動したい。
2:月を追い、説得する
3:真理を見つけ、保護する。
4:約束の時間に草加たちと合流する。
5:Lを見つけ次第、政庁で纏めた情報を知らせる
[備考]
※参戦時期は後編終了後です
※平行世界についてある程度把握、夜神月がメロの世界の夜神月で間違いないだろうと考えています。

※彼らがどちらの方向に向かっているかは、次の書き手にお任せします。

70Lost Colors  ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:27:33 ID:vL/5Burk0


駆動音を鳴らして獲物を追うヴィンセント。
その赤く光る目はさながら獲物を狩る猛獣のよう。

「時間は、おそらくまだ大丈夫だな。足手まといの魔女と手負いの魔法少女、そんなものを仕留めるのにそう掛かることはあるまい」

そういえば魔女と魔法少女、響きに何か繋がりでもあるのか、などとどうでもいいことを考えつつヴィンセントを進める。
そして、いた。
大通りの交差点、その中央に動けない足で座り込んだ緑髪の女。

「巴マミはどうした?」
「逃げたさ。私を置いて。
 奴はやっかいなギアスに掛かっていてな。私を連れていると逃げられないと知ったあいつはこんなところに私を放置していった」
「ほう?」

ギアスに掛かっている、という言葉の意味は分からない。それにこの状況はあまりにも不自然なものだ。
罠である可能性。有り得る。
だが目の前にいる魔女を逃がすという手も存在しない。

ヴィンセントの手で魔女を掴み上げる。
このKMFはその辺のものとは一線を画す。何しろエデンバイタルより取り寄せた自身の、言わば体そのもの。
その手を通してであったことに加え、ワイアードギアス所有者であったことからこの魔女の異端の力を感じ取ることができた。

「なるほど、魔王の力には程遠いがそれでも相当な力を持っているようだ。
 その力、俺が貰うとしよう」

ゼロの持つ真の魔王の力を得るためには少しでも力を得ておきたいところ。こいつから得られる力があればあの魔王に追いつくどころか追い越すことも可能だろう。
魔王に近づく喜びに心を満たされ、笑いが堪えきれなくなるロロ。
だからこそ気付かなかった。
握った拳の中で、C.C.が嘲笑を浮かべていることに。

「ふ、生憎だがな、もうこの力の先約は決まっているんだ。お前なぞに渡す力など、微塵も存在しない!」

舞い上がったC.C.の髪。その額から、ギアスの紋様が輝いた。



「出て来い、巴マミ」

ロロも一応危惧したとおり、彼女はすぐ近くに潜んでいた。
姿を現したとき、何が起こっているのか分からなかった。
C.C.はロボットに体を持ち上げられ、ロボットはそのまま身動き一つとらない。無警戒などというものではない。

「私の命、お前に預けよう。ルルーシュの残した形見であるお前に。
 お前の体には生きろという呪縛が掛かっている。だからこそ、どうするかここで決めろ。
 戦いを続けるか、戦いを止めるか」

戦いを続けることは、また同じことを繰り返してしまうかもしれない。
戦いを止めると、もっと多くの人が犠牲になってしまうかもしれない。
ならば、私はどちらを選ぶべきなの?

「実を言うとな、私も孤独が怖かったんだ」

ふと、C.C.が話し始める。

「多くの人間を巻き込んで、そいつらをことごとく不幸にしてきた。
 それでも一人は怖かった。お前と一緒だったのかもしれないな。
まあ、そんなことは今はどうでもいいか。
 巴マミ、お前が決めろ。この場で私を殺して生きるか、こいつを逃して共に死ぬか」

彼女は答えが出せない。そんな大きな選択肢に即答できるほど強くはない。
だからC.C.は答えを出せるまでの時間を稼いだ―――つもりだった。
次の瞬間、一帯に極寒の吹雪が舞うまでは。

71Lost Colors  ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:28:43 ID:vL/5Burk0


C.C.がしたことは簡単である。
ナイトメアの手で強く握り締めたロロに対し、ショックイメージを見せたのだ。
あの時ナリタでランスロットに対して行ったがごとく。
この行為によって、イメージを見せられている間は無防備になってしまう。
だがこの最中、常にその対象と接触していなければならない。それでも敢えてこの隙を作る役を負った。
この男を倒すため、そして巴マミを本当の意味で試すため。
だが、彼女の知らない事実が一つだけあった。
このヴィンセントはただのナイトメアではない。先にもロロ自身が述べたように彼自身の体の一部のようなもの。
また、彼はエデンバイタルのギアスユーザー、彼女はコード保持者。この二つには何の関連性もないものなのだろうか?
おそらくそんなことはないだろう。ゼロが平行世界として”あちら側”を観測したように、何かしらの繋がりはあるはずだ。
それを通して、何も起こらないはずがない。
何が言いたいのかというと、ここで二つの想像外のことが起きてしまったということ。
一つはヴィンセントを通して見せるイメージが予想以上に早かったこと、もう一つは、そのイメージが彼の心の奥、封じられた記憶を呼び起こしてしまったということ。



俺はルルーシュの双子の弟として母、マリアンヌの元から生まれた。
だが、双子の皇子は不吉とされてエデンバイタル教団に送られることとなった。
ルルーシュやナナリーが愛される一方、日陰暮らしを余儀なくされるこの怒り。
何があっても殺してやる。母の愛を独占するルルーシュを、ナナリーを。
見えてくるのは、そうやって母と幸せそうに笑っている兄妹の姿。
妬ましい嫉ましい憎い。俺はこんなに孤独だというのに。少し生まれるのが早かっただけというのに。
憎い、憎い憎い憎い。殺してやる、殺してや――

『そんなものが貴様の記憶だと思ったか?』

皇帝?どういうことだ。なぜ貴様が出てくる?
お前のことなどどうでもいい。俺はナナリーが、ルルーシュが――

『見せてやろう。貴様の本当の記憶を』

流れ込んでくる記憶。俺の知らない俺。

『C.C.細胞を卵子に直接注入し培養する。我々の手で魔王を生み出すのだ』
『目覚めよ、実験体C.C.―102』

そこにいたのは、長髪の男。体には謎のケーブルがつながれている。さながら実験動物のようだ。
そして、目の前に立っているのは、皇帝?!

『貴様には、ロロ・ヴィ・ブリタニアの名前と、記憶を与える』

なん…だと……?

『我が忠実なる剣となるべし』

そうしてあげられた顔、鏡に映ったのは、俺だった。

72Lost Colors  ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:29:32 ID:vL/5Burk0


ふ、ふふふ、フハハハハハハハハハハハハハ。
何だ。この母への愛の記憶も、ルルーシュ達への憎しみも、全てが皇帝に作られた紛い物だったというのか!
これは傑作だ、笑うしかない。ハハハハハハハハハハハハハ!!

ふざけるな。ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな。
俺はロロ・ヴィ・ブリタニアだ。魔王となる男だ。こんなもの、こんな世界など認めるものか。
殺してやる。ルルーシュも、ナナリーも、皇帝も、俺を操ったエデンバイタル教団も、この世界も、全部。

そのために何が必要か?そうだ、魔王の力だ。これさえあれば全てを殺せる。壊せる。
だから―――

「その力を…!俺に寄越せェェェェ!!!!!!!!!」



「なっ…!?」

C.C.の体が放り投げられ、周囲の気温が急速に下がっていく。
その叫び声と同時にロロの意識が戻ったのだ。

「バカな…、早すぎる?!」

C.C.の元にヴィンセントの拳が叩きつけられる。
動けないながらも転がることで直撃は回避したが、衝撃で体は吹き飛ばされた。

「C.C.さん!」

咄嗟にマミもマスケット銃を一斉展開して迎撃に移る。
一丁では打ち抜けない。だが大玉は放てる暇がない。
総じて80丁。今の彼女が展開できる限界数。

「パロットラ・マギカ・エドゥ・インフィニータ!」

宙に作り出した大量の魔弾がヴィンセントに射出される。
一斉に放たれたそれは、ヴィンセントの体に傷を作り、角をへし折り、間接に当たったそれは火花を散らさせた。
だが致命的な一撃は加えられていない。数撃ったとはいえ所詮は小弾。動きを鈍らせることはできても動きを止められはしない。

と、目の前にいたはずのヴィンセントは巴マミの背後に瞬間的に移動。
4メートルを超える身長を持つ脚からのとび蹴りが彼女に直撃する。

73Lost Colors  ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:30:46 ID:vL/5Burk0
「きゃあっ!!」

避けられないと確信した瞬間、リボンで編んだ盾で急遽その一撃を防ぐも、全てを相殺しきれず建物に叩きつけられる。
その先に、ダメ押しとばかりに肘に仕込まれた砲撃を撃ち込む。

「おい!巴マミ!」

動けないC.C.の声に反応したヴィンセントはこちらを向き、一瞬でこちらを掴みあげた。

「な…、今のは何だ?!」

時間を止める能力。ロロ・ランペルージのそれと同じものでこそあるが本質は違う。
一定の空間における動きそのものを凍らせることで時を止めたかのように錯覚させるもの。
しかし、その力はコード保持者C.C.であっても無効化することはできない。ギアスの能力の本質が異なるのだ。

握られた腕、今度は容赦なく体を締め上げる。

「ぐ…っ、が…―!!」

腕の骨が折れ、凍りついた両足が砕けた。
どうやら力さえ奪えれば達磨になってしまおうと構わないというスタンスのようだ。
ヴィンセントの目は機械。何かを感じるはずなどない。なのにその赤き瞳からは怒りと狂気が流れ込むようだった。

「力…、力だああぁぁぁ!!!」

手に更なる力をこめる一方で、ある事実に気付く。

(ま、まさかこいつ、コードを奪えるのか?!)

その感覚はかつてシャルルにコードを渡そうとした時のもの。
確かに彼女は死を望んだ。だがこんな形で、こんな男に殺されるのだけは嫌だ。
だったら、何ができる?
両腕両足は使い物にならない。巴マミは今起き上がったのが見えたが間に合わない。

「っく…ルルー、シュ――」

キイイイイイイイイ、バシッ

その時だった。
唐突に聞こえてきた駆動音に気付いたのは。
ヴィンセントのものではない。いや、ヴィンセントのものよりも旧式のそれだ。
そしてそれはヴィンセントの手と肘の間の部位を切断し、C.C.を抱き上げて地面に置いた。
近づいてきたそれは、青紫の配色、人間のそれとは離れたシルエットの機人――

74Lost Colors  ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:31:40 ID:vL/5Burk0
「サザーランド?!」
「無事か、C.C.」




政庁の奥に向かったスザク。その手にしていたのは、一つの鍵だった。
ユフィが巴マミから情報交換していた際、彼女の持ってきたバッグから偶然見つかったもの。
それは、政庁の鍵とあった。
巴マミに断って受け取り、そこからロロ襲撃までの間に、彼女から託されたものだった。
政庁の一室に繋がるそれ。その最新部には、格納庫からすら存在を消されたナイトメアフレームが存在していた。
サザーランドが3機。しかし銃火器類は一切オミットされており、KMF用の武器として置かれていたのは近接戦用の武器のみ。
いや、それでも十分だった。
スザクはそのうちの1機に乗り込み、かつての愛機、ランスロットにて振るった武器、MVSを持ち出し、瓦礫を強引に押しのけてロロやC.C.達を追った。



残った一本の腕で剣を振るうヴィンセント。
サザーランドは反応が遅れて左腕を吹き飛ばされる。
スザクのKMFの腕はかなりのものであり、ナイトオブラウンズにも選ばれるだけの技量を持っている。
だが、それが100%発揮されるのはランスロットに搭乗した時の話。サザーランドのスペックではスザクの腕についていくことはできないのだ。
一騎打ちであれば勝ち目など存在しない。ヴィンセントとサザーランドでは。
そう、一騎打ちでは。

スザクはギアスの呪縛を生かして、相手が剣を振り上げると同時、懐にサザーランドを突っ込ませた。
サザーランドとヴィンセント。僅かではあるがサザーランドの質量の方が上だ。
その体当たりで建物に叩きつけられるヴィンセント。
押し返そうとするヴィンセントを、スザクはハーケンで縫い付ける。
直後、肘の砲撃でサザーランドを撃ち抜こうとするが、スザクはすかさずMVSを肘に突き立てる。
爆散する左腕。
だがサザーランドもただでは済んでいない。ジ・アイスを暴走のごとく発動させているヴィンセントに密着するということは、サザーランド自体も凍結させるということ。
しかしスザクはある機会を待った。まだギアスは発動しない。
そして、その時がきた。

75Lost Colors  ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:32:44 ID:vL/5Burk0


今まで、私は一人で戦ってきた。
みんなを守りたいなんて建前。本当は、一人でいるのが怖かったから。
佐倉さんもゆまちゃんも死んでしまって、もう本当に一人ぼっちだと思っていた。
だからたっくんと一緒にいることを望んだ。でもそんな彼とも離れてしまった。
また一人ぼっち。そんな中で人殺しなんてことになったら、もう皆の傍にいられない。

でも、ユーフェミアさんはいきなさいと言った。
夜神さんはこんな私でも気に掛けてくれた。
二人とも、一般人であるのに、私なんかよりずっと強かった。
そして、C.C.さんはこんな私に命を預けてくれた。
なら、私がするべきことは何だろう?

そうだ、悲しんでいる場合ではないのだ。殺してしまったことは取り返せない。
ならば、ユーフェミアさんの言ったように、この命をもって罪を償おう。
そして、あの心優しきオルフェノクの隣に立てる魔法少女になろう。

そのために、まず目の前の魔王を、倒す。

やること自体は今までと変わらない。
だが、今彼女は自らの意思で戦うことを選択した。それまでの罪悪感や孤独への恐れ以外の願いの上で。




「ふざけるな!何故うまくいかない!すぐそこに力があるというのに!!」

今のロロの精神状態は著しく悪かった。
怒り、恨み、妬み、憎しみ。そんなものに支配されて冷静に戦えるはずもなかった。
突如現れたサザーランドごときに体の自由を奪われる事実もまた彼の怒りを増幅させていた。
怒りが慢心を捨てさせたように見えて、その実サザーランドと侮っていたところがあったのも事実。

そして気付く。
サザーランドの背後、ヴィンセントに向けて巨大な大砲を向ける少女の存在に。
先のハドロン砲に匹敵する砲撃が思い出される。
だが、まだ間に合う。
この周囲の運動全てを再度凍結させてサザーランドを破壊。そして巴マミを殺し、その近くのC.C.から力を奪えばいい。

「ジ・アイス!!!!」

それはこれまでに使ったものとは比べ物にならない威力の凍結。
ほぼ静止した運動エネルギーはもはや時間停止と同義。
これを破る術など存在しない。まさにゼロ。最強の魔王の力だ。

ロロは一つの事実を失念していた。
彼はショックイメージの中で知った。自身の出生の秘密を。存在の意味を。
つまり、彼はワイアード―つながりし者ではない。
そんな彼が、このように怒りに任せてギアスを連発してしまった場合、どうなるのか。

76Lost Colors  ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:33:47 ID:vL/5Burk0
「え――」

唐突にギアスが解除された。
何故だ、そのような意思など下していないはず――

「あ…」

それは彼自身が直感的に感じ取った危険信号だろう。
これ以上の行使は危ないと、脳が継げたのかもしれない。
だが、彼自身は腕を見てようやく自分の状態に気付いた。

――ギアスの反作用がすでに半身を覆っていることに。

「あ、ああああああああああああ…!!」


「ティロ・フィナーレ!!!」
「おのれええええええええええ!!!!」

爆発は、サザーランドを巻き込みヴィンセントを炎で包みあげた。



「全く、世話の焼ける」

地面に座り込んだC.C.はひとりごちる。
色々と疲れも落ちていなかったのだろう。巴マミはあの一撃を放った後、また意識を失った。

ニャースのことも探しに行かなければならないが、この状態ではどうにもできない。
体の再生も予想以上に遅い。せめて脚がどうにか治らなければ動けないのだが。

「ロロ、か」

ルルーシュの双子の弟。
彼はショックイメージの中で何を見たのだろうか。答えは分からないし知ろうとも思わない。
まあ、あとは余生みたいなものだ。この少女の行く末を見届けるのも悪くないかもしれない。
スザクと同じギアスを持った、魔法少女。

「生きる意味、か」

ガララララ

ティロ・フィナーレの撃ち込まれたはずの建物から、大きな物音が響く。

77Lost Colors  ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:34:40 ID:vL/5Burk0

「スザ――?!」

そこに立っていたのは、紛れもなく今倒したはずのロロ。
全身は醜く膨れ上がり罅割れ、少しずつ崩れ始めている。
そんな体で、しかし鋭い視線をはっきりとこちらに向けて歩いてくる。

「そ、その体は…――」
「寄越せ…」

――そうだ、俺は魔王だ。ロロ・ヴィ・ブリタニアだ。
他の誰でもない。俺は全てを壊す。殺す。だからこそ、生きなければならない。

左腕はもう無い。崩れた。
脚も少しずつ崩壊を始めている。もうどうでもいい。C.C.は目の前だ。
この女の力を、手に入れられれば、この場を乗り越えられる。
そうしたら次はナナリー、ゼロ、そして皇帝を殺す。そして世界も滅ぼす。
残った右腕で首を締め上げる。

「くっ……!」
「寄越せ」

何かが流れ込んできたような気がするが知らない。
今必要なのは力だ。肉体だ。だから――

「魔王の力、俺に寄越せええええええ__!!!!」

ザンッ



「ごほっ、ごほっ。やっぱり生きていたか、スザク」
「それはお互い様、だろう?」

ロロの体は胸部から真っ二つに切断され、もう身動き一つとることは無かった。
スザクはバスターソードに付いた粉を振るい、バッグにしまう。

「聞くまでも無いだろうが、ユーフェミアはどうした?」
「死んださ」
「そうか…。
 それで、別世界の姫との邂逅は、お前の生き方に何か変化をもたらしたのかな?」

78Lost Colors  ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:35:20 ID:vL/5Burk0
期待はしていない。この男は未だにゼロの仮面を被ったままなのだから。

「生き方においては、俺に選択権なんてないさ。
 ゼロとして生きる。これは変えることなんてできない」
「やはりな」
「ただ――」

「最後に枢木スザクとして、やらなければいけないことができた」

ユフィの世界。そこにはまた別のスザクが存在するだろう。彼には伝えなければいけないだろう。
彼女の死を。そして彼女から与えられたものを。
できるかどうかは分からない。だが、もし主催者の力を持ってすれば、できるかもしれない。
それが最後の、スザクの望みだ。

「つくづく面白いやつだな」
「C.C.、仮面の代わりになるものは何かないかな?」

ゼロの仮面のレンズ部は破損しており、目が丸見えである。
このまま行動するわけにはいかない、とスザクは考えた。

「そういえば、ニャースの奴が何か持っていたような気が―いや、なんでもない」

いくらなんでもあれを被るというのは無しだろう。ウケ狙いの格好にしかみえない。

「ニャースのバッグ、これか」
「おい待て、どうしてお前が持っている?」
「ニャースなら政庁内で凍り付けになっていた。幸い命はまだあるみたいだ。
 近くにいた変な生き物までは、ダメだったけど」

それは政庁を脱出する時、入り口付近で見つけたニャースを政庁から持ち出しておいたのだ。
凍っているにも関わらず、脈はあった。ポケモンとは頑丈な生き物だ。
その近くで倒れていたポケモンらしき生き物は一目でダメだとわかったが。
凍りついた体の半身に瓦礫が降り注いでいたのだから。恐らく崩れる瓦礫を見て、ニャースを庇ったのだろう。
もし凍っていただけなら助かったかもしれないが、降り注いだ瓦礫は右半身と両足を粉砕していた。

「なるほどな、なら夜神総一郎とかいう男はどうした?」
「少なくとも確認はできなかった。もしかしたら逃げたかもしれないし、逃げ遅れたかもしれない」

だが生きていればまた会うこともあるだろう、と付け加えて。

79Lost Colors  ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:37:01 ID:vL/5Burk0
そして問題の仮面の代わり、なのだが――

「おい、スザク」
「何だ?」
「そんな装備で大丈夫か?」

数世紀に渡り生きた魔女ですらも、そう聞かずにはいられなかった。
なぜなら、スザクはひょっとこのお面の上にゼロのマスクを被っているのだから。

「顔を隠す分には問題ないさ。視界が若干狭まったのは気になるけど代わりのゼロの仮面が見つかるまでの辛抱さ」
「……」

ああ、そうか。
この男は人からどう見られているか、などということはあまり気にしないたちの人間だった。
だからこそ、ブリタニアを内側から変えようなどと言い出せるし。
友を売ってナイトオブラウンズに志願することもできる。
そして、ゼロの仮面も被れる。
なるほど、ゼロはルルーシュ以外にできるやつはこいつしかいないだろう。

変声機をオンにする。ここからはゼロだ。

「ではC.C.、私は行く。いずれまた会おう」
「生きていれば、だがな」
「それともう一つ。死ぬなよ?」
「お互いさまだな」

そう言ってスザクはその場を立ち去った。



もう原型を残さず塵となっていった男を見ながら、C.C.は考える。

最後の瞬間、C.C.は図らずのうちにロロの精神の一部を垣間見てしまった。
母、マリアンヌから求めた愛。だがそれすらも偽りの記憶と知ったときの怒り、絶望。
形は違えど、この男もある意味では”ルルーシュの弟、ロロ”だったのだろう。
他者に利用され続け、それでも愛を求めて生き続けた者。

「平行世界、か」

何なのだろうな、それは。
一体、人はどれだけこんな哀しみを繰り返していくんだろうな。

C.C.はそう考えずにはいられなかった。

【ユーフェミア・リ・ブリタニア@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー 死亡】
【ロロ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー 死亡】

80Lost Colors  ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:37:29 ID:vL/5Burk0
【D-2/市街地 交差点付近/一日目 午前】

【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:疲労(大)、両腕骨折、両足粉砕(共に回復中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、病院で集めた道具
[思考・状況]
基本:これからどうしたいのかを考える
1:脚の回復、巴マミの目覚めを待つ
2:巴マミが落ち着き次第、詳しい話を聞く
3:さやかの答えを聞きたいが、また会えることに期待はしない
4:プラズマ団に興味は無い。
5:ミュウツーは見た目に反して子供と認識。
[備考]
※参戦時期は21話の皇帝との決戦以降です
※ニャースの知り合い、ポケモン世界の世界観を大まかに把握しました
※ディアルガ、パルキアというポケモンの存在を把握しました
※桜とマオ以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)


【巴マミ@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:ソウルジェム(汚染率:中)、絶対遵守のギアス発動中(命令:生きろ)、気絶中
[装備]:魔法少女服
[道具]:共通支給品一式×2、遠坂凛の魔術宝石×1@Fate/stay night、ランダム支給品0〜2(本人確認済み)、不明支給品0〜2(未確認)、グリーフシード(未確認)、
     うんまい棒コーンポタージュ味@魔法少女まどか☆マギカ
[思考・状況]
基本:魔法少女として戦い、他人を守る
1:気絶中
2:たっくんの隣に立てるようになりたい
[備考]
※参加時期は第4話終了時
※ロロのヴィンセントに攻撃されてから以降の記憶は断片的に覚えていますが抜けている場所も多いです
※見滝原中学校の制服は血塗れになっています  
[情報]
※蒼い魔法少女(美樹さやか)は死亡したと認識


【ニャース@ポケットモンスター(アニメ)】
[状態]:ダメージ(大)、全身に火傷(処置済み)、氷状態
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3(確認済)
[思考・状況]
基本:サカキ様と共にこの会場を脱出
1:?????
[備考]
※参戦時期はギンガ団との決着以降のどこかです
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線






【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:細マッチョのゼロ、「生きろ」ギアス継続中、疲労(大)、両足に軽い凍傷
[装備]:バスタードソード、ゼロの仮面と衣装@コードギアス 反逆のルルーシュ(仮面は前面割れ中)、ひょっとこのお面@デスノート(映画)
[道具]:基本支給品一式(水はペットボトル3本)、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本:アカギを捜し出し、『儀式』を止めさせる
1:移動する
2:Lを探し、 政庁で纏めた情報を知らせる
3:「生きろ」ギアスのことがあるのでなるべく集団での行動は避けたい
4:許されるなら、ユフィの世界のスザクに彼女の最期を伝えたい
[備考]
※TURN25『Re;』でルルーシュを殺害したよりも後からの参戦
※ゼロがユーフェミアの世界のゼロである可能性を考えています
※学園にいたメンバーの事は顔しかわかっていません。


※政庁武器庫奥にはサザーランドが残り2機格納されています。
 武器は近接戦用のものしかない様子です。
※政庁は崩壊しました。しかしサザーランドは頑張れば掘り出せるかもしれません。

81 ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/02(日) 20:38:28 ID:vL/5Burk0
投下終了です
推敲など、色々とまだ甘い部分もあると思うので、おかしなところ、矛盾点などありましたら指摘お願いします

82名無しさん:2012/12/02(日) 20:52:04 ID:elJvzlZY0
乙です。

>>65
『起き上がった月は〜』から始まる段落の4行目は、推敲後の消し忘れでしょうか?

83R-0109 ◆eVB8arcato:2012/12/02(日) 20:52:34 ID:Z.o7HSf.0
投下乙です!

さて、ロワラジオツアー3rd 開始の時間が近づいてきました。
実況スレッド:ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/5008/1354449008/
ラジオアドレス:ttp://ustre.am/Oq2M
概要ページ:ttp://www11.atwiki.jp/row/pages/49.html
よろしくおねがいします

84名無しさん:2012/12/02(日) 21:27:26 ID:JEEPcMUA0
おお、投下キター
乙です

マミさんはとりあえずは落ち着いた? まだまだ不安定と思える上に汚染率が…
スザクとシーツーは情報交換できたのはよかったが次に死ぬかもなw
ロロは今回はいいとこなかったが追い詰められた獣は怖いぞ

85名無しさん:2012/12/02(日) 22:14:54 ID:0dtm0K620
乙でした
マミさん再起なるか。
ひょっとこ……スザクさんそれでいいんすかw
まさに無様、月!!な状況。巻き返しはなるのかー(棒)

86名無しさん:2012/12/02(日) 22:33:59 ID:3sVeZiQ.0
したらば行ったら、更新が行われていないんだが
どこで雑談とかやってるか。わかる?

87名無しさん:2012/12/02(日) 22:40:01 ID:h7GKmMgI0
>>86
ラジオ? ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/5008/1354449008/

88 ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/03(月) 01:11:34 ID:s3zcErhw0
>>82
指摘どうもです
たぶん消し忘れですね。後ほど修正しておきます

89名無しさん:2012/12/03(月) 19:09:16 ID:Hf9CAj9QO
投下乙です。

ゼロの姿がすでに怪しいのに、その割れた仮面から覗くのはひょっとことか、即通報レベルw

90名無しさん:2012/12/03(月) 21:45:14 ID:Msp03C6s0
投下乙

そして自然にエルシャダイネタw

91名無しさん:2012/12/07(金) 00:53:42 ID:C1ZEwDyc0
エルシャダイネタに便乗して「大丈夫じゃない、問題だ!」
大問題だよほんとw

92 ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/10(月) 02:18:44 ID:IoEYUAYw0
拙作『氷の魔王―ジ・アイス―』『Lost Colors』において、若干の修正を行いました
・支給品の整理(ニャースのバッグはC.C.の手元に置きました)
・バスターソード→バスタードソードに変更
・若干の文章の加筆修正(流れそのものは変わりません)

そこまで大きなものはありませんが、一応報告しておきます

93名無しさん:2012/12/30(日) 00:37:00 ID:SXvulkjc0
予約が来てたーぜー

94 ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/31(月) 23:57:30 ID:y1j.TFVE0
投下します

95 ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/31(月) 23:58:22 ID:y1j.TFVE0
「目が覚めましたか、オーキド博士」
「う、うむ。わしは一体…」
「気になるなら僕が教えようか?あ、僕はマオ。よろしく」

目を覚ましたオーキド博士に対し、話しかける村上。
オーキド博士には気絶する前の記憶が少しあやふやになっていたため、マオが説明を行った。
無論あの騒ぎの途中通りかかっただけという嘘をついた上でだが。

「つまりあの後、黒と銀の機甲服を纏った謎の少女が現れて、皆散り散りに去っていったというんじゃな、マオくん?」
「少しよろしいですか?その黒と銀の機甲服についてもう少し詳しく教えてもらいたいのですが」
「えっと、こんな形のオレンジの目で、光線銃みたいなものを持っていたよ」
「やはりデルタギアか…」

村上の目を覗いたマオは、彼がそのベルトにそれなりの執着心を持っているのを感じた。
心を少し読みすぎて情報を整理しきれなかったのだろう。もう少しここを慎重に行っておけばよかったと後悔する。

「それで、その少女はどちらに?」
「東に、蛇のオルフェノクと金髪ドレスの女を追っていった」
「なるほど。少しその少女、追わせていただきたいのですが、構いませんか?」

オーキド博士の老体を一応気にしての村上の発言。
その発言の裏にあるものに気付いたのはマオだけである。

「うむ、ここにいても何もならんじゃろうしな」
「僕はあまりお勧めはしないけど。第一、彼女オルフェノクではないけど人間でもなかったみたいだったよ」

そう、海紗を彼女が殺す直前のほんの一瞬、マオは間桐桜の瞳から彼女の思考の一部を読み取った。
あの時もしもギアスの副作用が起こらなければもっと深くの思考を読み取れたかもしれない。だが、今にして思えばそれが幸いだったという可能性もある。
記憶の一部。虚無、妬み、嫉み、そして■■への依存。大量の蟲、そしてその奥底には黒い何か。
あれは決して触れてはいけないものだと直感で感じ取った。だからこそ、あのタイミングでの副作用はありがたかったかもしれない。

そんなマオの心中を知ってか知らずか、村上はその言葉に興味を示す。

(ほう、面白い。オルフェノクでも人間ではないものがあれを使うというのは。果たしてデルタギアの呪縛に耐えることができるのか、非常に興味をひかれますね)

あくまでそれは村上の思考内による言葉。オーキドには一応災害や救助活動のための鎧と言っているため、あまり危険性を表に出すのはあまり芳しいことではなかったのだろう。
まあ当然その程度のことでこの男を揺さぶることなどできないだろう、とマオも考えたが。

96 ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/31(月) 23:59:03 ID:y1j.TFVE0
「しかし村上君、やはり君は追うのじゃろう?」
「ええ、あれが悪用されるというのは私にとっても耐え難いことだ。可能なら急ぎ回収したい」
「僕も着いて行ったほうがいいのかい?」
「言いたいことは分かります。もしデルタギアを奪還した暁にはゼロ討伐に協力することも約束しましょう」
「…はあ、まあ仕方ないか」

村上の言葉に了承した後、この後についてどうするのかを問う。

「そうじゃな…、村上くん、わしも少し寄りたいところがあるのじゃ。少し寄ってもらっても構わぬか?」
「それはこれから向かう先にある施設ですか?」
「おお、この地図上にあるじゃろう。Nの城という施設じゃ」



オーキド曰く、そこがプラズマ団なる組織の根城になっている可能性があるということらしい。
プラズマ団自体の実態は、アッシュフォード学園がファーストコンタクトであったため多くは知らない。
しかし組織的に動きポケモンを管理しようとする者達。何かしらの研究機器がある可能性があるとのこと。
急ぎの用ではあるが、村上も何らかの資料は欲しいと思っていたところ。
少々寄るくらいなら大丈夫だろう。

元々会話を弾ませられる面子ではないため、移動中はある程度の情報交換を行った程度だった。
それにも改めて目ぼしい情報はなかったが。

そして歩くこと数十分。

「これは、また大きな建造物ですね。博士、大丈夫ですか?」
「何、このくらい大丈夫じゃ。伊達にポケモンの研究者をしとらん」

焼け崩れた教会を過ぎ、森の中を歩いた先にあったのは謎の開けた道。地図にもあったとおりのものだ。
そしてそこからでも見える、見上げるほど巨大な石造りの建物。
プラズマ団の王であるNの居城なのだろう。


かなりの広さを誇るこの城のどこを見るべきか。
そもそも研究施設があるかどうかというのも推測に過ぎない。無かったときのことも考えなければいけないだろう。

中に入る三人。
内部もかなりの広さとなっており、組織の大きさを伺わせる。

「これは、探すとなると少し手間かもしれんのう」
「では手分けして探しましょう。もし何かあれば、大声で私を呼んでください。
 私であればすぐに向かえるはずですので」

そう言って各々散開していった。

97 ◆Z9iNYeY9a2:2012/12/31(月) 23:59:36 ID:y1j.TFVE0



部屋の中には大きな机や門の前にでもありそうな石像が並べられている。
どの部屋を見てもほとんど同じものばかりだ。
当然誰かがいたような形跡はない。

一方、誰かがこの城を訪れた形跡は微かにあった。
城の廊下にはうっすらと不自然に砂や土が落ちていた。何者かがこの城の中を歩いた証だ。
だが、それは廊下にばら撒かれているのみ。おそらく城内部を深く調べることも無く出て行ったのだろう。

「ついていましたね。もし、我々と同じように情報を求めてきたのであれば、あるいは先を越されていたかもしれません」

だが、これだけ目立つ施設だ。
興味本位で寄ってくる者もいるだろうし、その者が安全である保障もない。ゼロのような参加者が来ようものなら最悪だ。
しかし拠点としては優秀な施設だ。研究施設次第で考えなくもない。

と、村上の耳にオーキド博士の声が届いた。
オルフェノクであるからこそ聞き取ることができる声。何かあったら自分を呼ぶように言った理由だ。



「どうしましたか?」
「見てくれこれを。この部屋、かなり高度な機器が揃えられておる」

村上がオーキドのいる部屋を見つけるまで1分もかかってないだろう。
その一室には様々な演算機器らしきものやコンピューターが置かれていた。
ここが何かしらの研究室であることは容易に推測できた。

「これほどの物、一般企業で作るのは難しいでしょうね。おそらく我々スマートブレインに匹敵するほどの技術力を、そのプラズマ団という組織はお持ちのようだ」
「そうじゃろうな。見たところここには多くのデータがそのままの状態で放置されているようじゃ。村上君、調べるのを手伝ってもらえるか?」
「分かりました」

そう言ってオーキドは机に置かれたノートパソコンに、村上はそれとは別の、備え付けられた機器に向かった。


村上の見たコンピュータの中には、多くのポケモンについてのデータが入っていた。
おそらく数百を超えるほどのデータが入っているのだろう。

(ポケモンか、やはり不思議で興味深い存在だ)


ふと、その中に載ったポケモンのデータを見る。
そこには様々な形の生き物がいた。
ねずみ、犬、猫、トカゲ、蟷螂、白熊、ラッコ、タコ、蝋燭、石、霊体、銅鐸。
様々な種族の生き物から、無機物、エネルギー体のようなものまで幅広く生息しているようだった。

だが、それらの生き物にもこちらの常識が通用するわけではないようだ。

例えば、ドラゴンという属性を持ったポケモンがいる。
ドラゴンといえばラッキークローバーの北崎を思い出す。
彼は自らを最強のオルフェノクと謳っているがそれに見合うだけの力を持っているのも事実。
そしてこのポケモン達においても、そのドラゴンという種族は高水準の戦闘力を持っているらしい。
しかしそんな彼らの弱点。それは同じドラゴン、そして氷の属性らしい。
ドラゴンの属性はやはり目には目を、といったところなのだろう。だが、より興味深いのは氷の方だ。
ドラゴンといえばやはり爬虫類のイメージが大きい。そして爬虫類といえば寒さが弱点。それが我らの世界の常識だ。

98 ◆Z9iNYeY9a2:2013/01/01(火) 00:00:34 ID:gAF3UkF60
しかし、そこで爬虫類という種がその氷に弱いかと聞かれるとそうではないらしい。
例えばハブネークやアーボックという蛇のポケモンがいる。
彼らは毒の属性を持っており、我らの世界の蛇と比べても強い毒を持っているようだ。
だが、戦いにおける彼らの弱点はエスパー(超能力的な力を操る属性)と地面(大地の力を操る属性)であり、氷自体には弱くはない様子。
彼らが冬眠するのかという点も気になるが、ポケモン同士を戦わせる上では寒さというのは弱点にならない。
いかなる進化をしたのか、あるいは我らの世界の蛇とは別の存在なのか。

思考を進め、他の部分を見てみる。
アーケオス、ケムッソ、マグマッグ、シザリガー、テッポウオ、
オムナイト、メガヤンマ、デスカーン、トロピウス、ウォーグル――

(全てを調べるというのはとてつもなく時間が掛かりそうですね)


どのポケモンを調べることが我々にとって有用なのか、それは今この場でやることではないかもしれない。
オーキド博士は何かに気付いただろうか。

「博士、何か見つかりましたか?」
「うむ…、気になるものを見つけたのじゃが」

そう言って備え付けのデスクトップパソコンにつく。
そこには謎のユーザー名の纏められたページ。

「オーキド博士、これは?」
「プラズマ団め、こんなものまで作っておったとは。
 これは他のポケモントレーナーの預かりシステムに侵入するプログラムのようじゃな。
 奴ら、一体何をしようとしておる…?」
「これは今使用することは可能なのですか?」
「いや、どうもロックが何重にも掛けられておる上に一部のプログラムが消されておる。これの使用は無理じゃろうな。
 …ん?これは何じゃ?」

ふと気付いたそれを起動させる。
聞くところによると、ポケモンセンターという施設には、ポケモン預かりシステムとトレーナー自身のメールボックス、図鑑登録数評価が主にできることらしい。
そしてここのパソコンはそれと同じことができるという。
だが他にもプラズマ団の物らしきデータも多数ある。当然だろう、彼等の城なのだから。

「しかし、これはそのどちらでもない。どうやら独自に組まれたネットワークらしい。
 もしかすると、何処かに繋がるかもしれん」



99 ◆Z9iNYeY9a2:2013/01/01(火) 00:02:46 ID:gAF3UkF60


マオはその頃、城の中を探索することもなく屋上で遠くを見つめていた。

「全く、何をやっているんだろうね」

村上は言った。
このギアスによる副作用も、自身の技術によって治療することが可能かもしれない。
そして、ポケモンという生き物に調査ももしかするとそれに近づく部分があるかもしれない、と。

果たしてそれが可能か、と言われたら、あくまで自身の推測でしかないが厳しいだろう。
ポケモンというもの、オルフェノクというもの、村上の持つ技術力がどれほどのものかはおそらく一部しか知らない。
だが、それらがエデンバイタルの力に勝るものかといわれれば厳しいものがある。
それでもゼロの力を得るには村上の力を借りなければならないかもしれないということもある。
今は協力関係を維持しておく必要があるのだ。

「ん?」

ふと見た時、ここからある程度離れた場所の森の木々の間に変な空洞があった。
森の樹木が不自然に消えているというか、何者かが意図的に伐採したかのような。

「何あれ?」

気にはなったがどうするべきだろう?
まあ考えるのは後でいいか、と考えを打ち切る。
そろそろ戻らないと村上に何か言われるのも面倒だ。

と、村上を探しているところである部屋に気付く。
何か他の部屋とは違う空気。
興味が沸いたマオはそこに入った。

「へえ…」

空の絵が描かれた床。
途中まで組まれたレールのおもちゃ。
ふと地面に放られたボールに手を伸ばす。
ちょうどバスケットのゴールがあるのに気付いて放ろうとすると、そこには電車のおもちゃが刺さっていた。
ボール自体に目をやると、そこにはハルモニアと書かれていた。

「ハルモニア、ね」

そういえば弥海砂から心を読んだ際に見えたNという青年の名、なんといったか。

マオはバスケットボールを数回地面についた後、ゴールに向かって投げつけたのち部屋を後にした。
ボールはゴールに入ることもなく、壁を跳ねて地面を転がった。

100 ◆Z9iNYeY9a2:2013/01/01(火) 00:03:27 ID:gAF3UkF60
【B-4/Nの城/一日目 午前】

【マオ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:魔女細胞の浸食(中)
[装備]:左目の眼帯
[道具]:共通支給品一式、魔女細胞の抑制剤、モンスターボール(サカキのサイドン・全快)
コイルガン(5/6)@コードギアス 反逆のルルーシュ、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
基本:ナナリーの魔道器を奪って魔女となり、この『儀式』から脱出する
1:村上と行動。オルフェノク化は避けたい
2:ナナリー、C.C.、二人のゼロに接触したいが、無理は出来ない。
3:『ザ・リフレイン』の多用は危険。
4:抑制剤を持つものを探す
5:この『儀式』から脱出する術を探す
[備考]
※日本に到着する前からの参戦です
※海砂の記憶から断片的なデスノート世界の知識と月の事、及び死神の目で見たNの本名を知りました。
※スザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)


【村上峡児@仮面ライダー555】
[状態]:疲労(中)、人間態
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×3、拡声器、不明ランダム支給品0〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本:オルフェノクという種の繁栄。その為にオルフェノクにする人間を選別する
 1:この場で収集できる限りの情報を集めた後、デルタギアを追う
 2:ミュウツーに興味。
 3:選別を終えたら、使徒再生を行いオルフェノクになる機会を与える
 4:出来れば元の世界にポケモンをいくらか持ち込み、研究させたい
 5:魔王ゼロはいずれ殺す。
[備考]
※参戦時期は巧がラッキークローバーに入った直後
※マオのギアス、魔女因子、ポケモンに興味を持っています
※スザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまでマオ目線)

【オーキド博士@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:ダメージ(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0〜3(確認済み)
[思考・状況]
基本:ポケモンの保護、ゲームからの脱出
1:Nの城で情報収集を行う。
2:プラズマ団の思想には賛同できない。 理解は出来なくもないが。
3:ミュウツーについては判断できる材料を持ちきれていない。
4:オルフェノクに興味
[備考]
※プラズマ団について元々知っていることは多くありません。
※スザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまでマオ目線、また全てを聞いたとは限りません)

101 ◆Z9iNYeY9a2:2013/01/01(火) 00:06:40 ID:gAF3UkF60
投下終了です
タイトルは『平穏の裏に潜む影』です
今年もよろしくお願いします

102名無しさん:2013/01/01(火) 13:47:10 ID:J5d/RTWc0
投下乙です。そしてあけましておめでとうございます
けっこう情報があるなNの城。主催的にポケモンの情報は重要な手がかりになりそうだが……
マオたんあかんで、その部屋マジキチやで

103名無しさん:2013/01/01(火) 14:40:37 ID:aQ85EuqE0
投下乙です
あけましておめでとうございます
N城はなあ…
さて、Nの部屋を見たタイガーはNに会う前に脱落したら彼らはどうなるか…

104名無しさん:2013/01/01(火) 18:31:02 ID:08RQ2RQMO
投下乙です。

ローズオルフェノクの攻撃は、くさタイプとして扱われるんだろうか。

105名無しさん:2013/01/05(土) 21:24:03 ID:lnZyJAaw0
投下乙です

N城から脱出の鍵となる情報は手に入るのか
オーキド頑張れ!

106 ◆4EDMfWv86Q:2013/01/07(月) 18:45:34 ID:q5nWMwlI0
予約分を投下します

107チルドレン ◆4EDMfWv86Q:2013/01/07(月) 18:49:16 ID:q5nWMwlI0

朝を過ぎて太陽が天上に登ろうとする時刻になっても街は静かだった。
道路を空けて平行に並ぶ住宅、現代的な日本の町並みには人の姿がない。
町といえるだけの数の家があり、整備と舗装は行き届いていながら――ここには、生活感というものが欠けている。
一夜にして住民が忽然と消えたとでも考えなければ説明しようのない、異様な状況。
見えているのは一画だけだが、ここ以外を周ったとしても一般人を見つける事は叶わないだろう。
そこを歩く者がいるとしたらそれは、意図してこの地にばら蒔かれた者だけでしかない。

「北崎さん。少し休みましょう」

靴の踵を裸足で踏み、猫背の姿勢で歩いていたLは足を止め、動向する少年へと言葉をかけた。

「もう疲れたの?だらしないなあ」

呼ばれた北崎は少しだけ鬱陶しそうな表情だけを浮かべてLを見据える。
言葉こそ返さないが、その顔は提案への拒否を如実に示していた。

Lが転送された初期位置はE-7の見滝原中学校、そして現在の場所はD-4の東の端だ。
距離にすれば約4キロ、歩き通せば運動に慣れてない体なら次の日には筋肉痛になってることだろう。
……とはいえ実際は、咲世子の操縦するジェットスライガーで半分まで進んだので、Lが歩いた距離はせいぜいが2

キロである。
それで根を上げるとしたら確かに、運動音痴の謗りは免れないだろう。

「運動、苦手なんですよ。大抵の事件は動かずに済ませてますから」
「弱いねえ、人間って。我が儘言うなら置いてっちゃうよ?」

せせら笑う北崎。人の進化の姿であるオルフェノク、その中でも最強を冠する男にすればLの脆弱さは滑稽ですらあ

る。

「それに貴方だって休息は必要でしょう?あれだけ華麗に投げ飛ばされたんですから」

しかし次のLの一言によりその表情は続かなかった。途端、北崎の顔に見る見る苦渋の色が浮かぶ。
Lにとっては衝撃の、北崎には屈辱の経験。狂気の殺戮者との戦い、否、災害との遭遇は未だ記憶に新しい。

108チルドレン ◆4EDMfWv86Q:2013/01/07(月) 18:49:48 ID:q5nWMwlI0

「大したことないよ。さっきの僕の戦いを見れば分かるでしょ」
「それにしては歩く速度が遅いですね。疲労は相応に溜まっているのではないですか」

繰り返すが、このLは運動が苦手である。前傾姿勢で歩く姿は遅々としている。
しかしそのLと北崎は互いを横に置いて移動を続けていた。
それは二人の移動速度が同じ事を意味し、たとえ無意識でもLと変わりない歩幅である状態を示していた。

「ふうん、僕を気遣ってくれるんだ」

内心の鬱積を噛み殺し、あくまで余裕を崩さずに言葉を返す。

「はい、貴方にはあの怪物と戦ってもらわなければなりませんから」
「だったら休むなんて暇あるのかな。あいつに僕を倒させたいんじゃないの?」
「勿論です。貴方はどんな手を使っても倒す。それが前提です。
 ですがね、勝ち目の無い戦いに向かわせるのは私としても気が進まないんですよ」
「……へえ?」

人の姿だった男の姿が僅かにブレる。
現実での変化はない。ただLの記憶の中でおどろおどろしい龍の爪が鎌首をもたげる。
常人なら力の片鱗をちらつかせだけで竦み震えるだけのプレッシャー。しかしこの探偵は色々な意味で常識とは遠い

人間だ。
モーションでしかないと知ってる限り恐るるに足りなかった。

「はっきり言いますが今の貴方ではアレには勝てません。
 万全の状態ですら一敗地に塗れたのです、傷を負っている現状では尚更勝率は翳ります。
 前の戦いでは草加さんのサポートあっての結果です。それを理解してない貴方でもないでしょう」

飢えで怒りを灯している猛獣に、手掴みで餌をちらつかせるにも等しい挑発行為。今すぐ心臓に白い指が突き刺さっ

てもおかしくはない。
それでもLは攻めを選ぶ。この程度で逆上するようでは逆に無様を晒すと相手の心理を読み取りながら。
物怖じせず、最強のオルフェノクへと突きつけた。

Lはバーサーカーを打倒するにおいて北崎へのサポートを惜しまないつもりでいた。
そうまでしても倒せる保証がない相手なのだ。こちらも策を凝らさねばならない。
対バーサーカー戦に限っては北崎は敵ではなく敵を共通とする同盟相手と認識していた。

109チルドレン ◆4EDMfWv86Q:2013/01/07(月) 18:50:09 ID:q5nWMwlI0

「それに追跡する手間はかかりませんよ、ほら」

指差す先には、市街地へ点々と続く黒い孔。
巨大な獣の足跡のようなコンクリートの陥没は、事実巨大な獣の足跡だった。
敵のいるなしという判別すら碌につかないのか、狂戦士は自らの痕跡をこれみよがしに塗りたくっていた。
追跡はとても容易、追うこちらを嗅ぎつけてUターンしてくる場合も十分有り得る仮想だ。

「……あぁもう、分かったよ。そんなに言うなら休んであげるよ。丁度お腹も空いたしね」

北崎とて体の不調は把握している。休憩の必要性は承知していた。
バーサーカーにあれだけ痛めつけられてなお連戦をこなせたのは、オルフェノクの頑強さと生命力、何よりも北崎の

抱く自負に支えられてのものだ。
それもファイズ、草加雅人との連携がなければ一殺もたらす事も叶わなかっただろう。本人が考えてる以上にダメー

ジは尾を引いていた。
ただそれを認め、隣の人間に告白し恥辱を見せる羽目になるのを避けていただけだ。
しかしLの方から話題を切られ、更にこうまでしつこく提案されるのであれば彼にとっても名分が立つ。
乗せられていると気づいてはいるが取り消しは利かない。ここで我を張っても益するものがないと打算する程度には

北崎の頭は冷静さを保っていた。

「けどさ――それならあいつは放ったままってことなんだけど、いいんだよね?」

それが癪なので、ふと思いついた考えを気まぐれに聞いてやることにした。
そう。ここで一息つくという行為は、バーサーカーへの対処を僅かでも止める行為に等しい。
休憩の合間に生じる空白にあの狂獣は町へ野放しにされる。
行く先に腕に憶えのある――最低でも北崎と抗し得るだけの人物がいるという保証もなく、Lのような知恵も持たない

人々が出くわす可能性もある。
何の庇護も与えられない者があんな歩く局地的災害と形容される存在に巻き込まれれば、許されるのは絶望に立ち

尽くし、恐怖に泣き叫ぶだけ。
そしてそんな声を聞く耳もなく、叩き潰され磨り潰されて殺されるだけだ。

「構いません。致し方ない犠牲というやつです」

罪のない無辜の人。塵のように殺されるいわれなど何もない者。
それをLは切り捨てた。
消え行く数人の命より、巨悪を確実に討つ算段を立つ方を優先した。
少数より多数を生かすという手段。正義を志す者であれば誰でもぶつかることになる壁。
血も涙もない冷血漢、という批判は彼には通用しない。何故ならLという男は普通ではない。
彼は人と馴れ合う社会性に欠けており、法を犯し、人道を踏み越え、命を費やしてまで事件を解決する、
悪を決して許さず捕らえる、探偵だからである。

110チルドレン ◆4EDMfWv86Q:2013/01/07(月) 18:51:51 ID:q5nWMwlI0





同意を得てから時を置かずに、Lは休憩場所を見とがめた。

「ここにしましょう」

年季の入った建築物は広い敷地を持った屋敷だった。
紛れもない豪邸ではあるが、館から放たれる暗鬱な空気は荘厳さよりも威圧に近い閉塞感を与えている。
空気だけで語れば、まるでここは刑務所だ。
地図など眺めてはいないだろう北崎に代わりLが解説をする。

「間桐(まとう)邸……いえ、マキリですか?ともかくそういう名だそうです。
 同性を持った人物が名簿にも記されています。桜という名からすれば女性でしょう、
 本人か、彼女を知る人物が訪れている可能性はあります。
 実を言うとですね、私は始めからここを調べるつもりで休憩を提案したんですよ」

Lはこの儀式の参加者は皆いずれも、ひとまとまりのグループに分けられていると考えている。
夜神月、夜神総一郎、弥海砂、松田桃太、南空ナオミ……平行世界云々は置いといてどれもLの知る人物だ。
そして藤崎咲世子の語ったランペルージ兄妹、ランペルージのロロとブリタニアの皇族、枢木スザク、
付け加えれば北崎のオルフェノク、鹿目まどかの魔法少女らもそこに含まれている。
順当に考えて、ひとつのグループでひとつの世界、そこから互いに関係がある人物を選出しているのだ。
単にまとまっていたから適当に攫ったのか、あるいはそこには意図があるのかまでは追求出来ない。
しかし、全員が全員誰かしらと知り合っているというのはかなりの情報が拡散している事になる。
一人見つけるだけでも最低、その世界に関する基本的な知識を入手できる見込みがある。

「その桜って子が強いのか君に分かるの?」

その意図に気づいてないのか、それとも興味なく無視しているのか。北崎はただ戦うに値するのかのみを聞く。
北崎の興味とは即ち強敵、倦怠さを紛らわすだけ遊べる相手かどうかだけだ。

「そこまで見通せはしません。ですから調べるんです。あるいは彼女がそうでなくても、強い人を知ってるかもしれませ

んよ」
「なんか地味だなあ」
「探偵の調査が派手でどうするんですか。忍ばないと駄目でしょう」

そういった地道な作業はワタリや警察に任せていたが……と心中で付け加え、柵を超えた先にある扉を開く。
中は外見に違わぬ豪奢な内装が出迎えていた。
だが不穏感は一層募り、巨大な生き物の胃の中にでも飛び込んだみたいだ。
先に共闘した草加雅人と鹿目まどかも訪れている施設であり、それ故に危険要素は薄いと捉えているが油断は許さ

れない。
周囲を観察し動かないLをよそに、北崎は警戒の素振りも見せず悠々と奥に進んでいく。

「へえ……いいところじゃん。雰囲気が気に入っちゃうね」

北崎もLも知る由もないが、この館は本来は霊脈と呼ばれる地点の上にある建造物である。
土地の魔力を運び、次代の魔術師を育む育成所として機能する一級の霊地だ。
その機能はこの会場においても持続しているのか、館の地下に隠されている修練場はどうなっているのか、それらの真実は誰一人として気づいてない。
明らかな"魔"の領域に立つオルフェノクにとっては相性がいいのか、北崎が不思議と上機嫌になっているのは確かだった。
どこか浮ついたまま上階への階段を見つけ足をかけたところで、唐突にその動きがピタリと停止した。

111チルドレン ◆4EDMfWv86Q:2013/01/07(月) 18:52:45 ID:q5nWMwlI0


「――覗き見なんて、よくないなあ」

そこからは、一瞬の出来事だった。少なくともLには何も見えないも同義だ。
かろうじて認識したのは北崎の体が灰色に変わったとこまで。
ドラゴンオルフェノク龍人態へと変身した北崎のスピードは人間には知覚外の超音速だった。
瞬きのつく間に階段を昇り柱の影に隠れていた人物の腕根っこを掴み取ったのだ。

「つかまえーた」
「――ッ!」

意識が現実に追いつくのは何秒経ってからか。
北崎は変身し得た身体能力で乱暴に腕を捻り上げる。日の下に晒されたのは男だった。

その男を見て真っ先に印象に残ったのは、やはりその顔面に走る傷痕だろう。
斜めに刻まれた証は傷の深さを物語り、ただでさえ人相が悪い男を殊更凶悪に見せている。
傷を抜きにしても堅気の者でないのは明らかだった。
体に纏う雰囲気にLは覚えがある。マフィアなりの闇社会に身を投じている者の匂いだ。

右手を封じられた男は、まだ自由な左の手から拳銃を抜き出して躊躇なく発砲する。
この至近距離では外しようもなく、ワルサーP38から放たれる9mmパラベラム弾の三発は灰色の体へ着弾する。
超常的な現象を伴って人知に及ばぬ異形に迫られながらにしては、その対応は素早かったといえるだろう。
その後の展開を見れば、何の気休めにもならないものだったが。

「それで終わり?」

龍の貌は男を見る。動かず、銃も取り上げず、己が撃たれた事実など存在しなかったように。
自身の躰など気にしていない。それは分かりきった結末だからだ。
打ち込まれた銃弾が北崎の体表に触れた途端、砕ける行程もないまま砂に溶けて消えてしまっていた。

「次はないの?もっと強い武器は?ファイズみたいな変身は?ボールから怪獣は出さないの?」

愕然として立ち尽くす男。の心境など気にせず、親に次々と新しい玩具をせびる子供のようにまくしたてていく。
そこに悪意はない。あるのは底の抜けた好奇心。自分を楽しませられるかという興味本位だけ。
この世の全ては北崎を楽しませる玩具の箱なのだという絶対の確信が、最強のオルフェノクの中枢だった。

「……ないんだ、なにも。つまらないなあ」

これ以上降っても落ちてくるものはない。男の狼狽ぶりを見てそう理解したらしい。北崎の声から色というものが抜け

落ちた。
とかく子供は玩具の扱いには粗雑である。興味を失くした人形などには容赦ない。
捨て置くだけならいい。だがそれが人を超越した怪物となれば、健常で済む末路である筈がない。

112チルドレン ◆4EDMfWv86Q:2013/01/07(月) 18:53:07 ID:q5nWMwlI0


「北崎さん!」

北崎が男を掴む腕に力をこめようとしたと同時に、Lの叫びがそれを制した。
参加者との接触はそれ自体が情報源となるのだ。無作為に殺されてはたまらない。北崎になんの関心も惹かないも

のであっても、だ。

「……そんなに睨まないでよ。分かってるってば、そっちで勝手にやってよね」

気を削がれた北崎は虫でも払うかのような無造作で男を投げ捨てた。
重力と人体の体重を無視して宙に浮いた体は下階のエントランスに墜落する。
Lは速やかに接近し、念のため落ちた銃は回収して男の状態を確認する。
咄嗟に受身を取ったので目立った怪我はほぼない。懸念だった右手も肉が僅かに崩れただけで骨には至ってない。

指も問題なく動かせるだろう。

「乱暴な扱いをしてすみません。今こんな事を言っても信じにくいでしょうが"私に"あなたを害する意志はありません。
 話を聞いてもらえると助かるのですが」

屈んで男を見ながら両手を挙げる。まずはこの混乱を上手く収拾する事から始めなければ。
しかし不利な態勢で武器を奪われ、あまつさえ背後には人外の怪物。思慮ある人物であれば従う姿勢以外に選択肢

はないと気づくだろう。
図らずも北崎の攻勢は交渉に優位に働くものとなったのだ。状況を見れば、脅迫と取れなくもないが。

「私はLです。あなたの名前を教えていただけるでしょうか」

なるべく事は荒立てたくない。それがLの本心だ。
友好とまではいかずとも妥協出来る関係を持ち、別行動をとってもらう。これが最良だ。
しかし裏で控える北崎はそうでは済まさないだろう。何らかの利益を見せない限り、気まぐれなこの男がただで帰す公

算は薄い。
北崎の望む情報を保有しているとなれば運び次第で上手く受け流す事もできるが……

そこまでの考えを頭で巡らせているところで、漸くLは男の変化に気づいた。
決して警戒を解こうとしない顔が崩れ、信じられないものを見るような目で自分を見ている。
そこに宿ったのは如何なる感情なのか。先の怪物を見たよりも遥かに衝撃的な体験とでもいうような。
意外な反応を疑問に思うLが尋ねるより前に、男が口を開いた。



「……メロ。
 俺の名前は――メロだ」



   #

113チルドレン ◆4EDMfWv86Q:2013/01/07(月) 18:53:25 ID:q5nWMwlI0



メロがこの間桐邸を目指したのは、夜神月の手がかりを求めてのことだ。
奴が会場に転送されて最初にいた施設。何かの痕跡でも残っていればと期待した。
ポケモンという生き物に乗り空で移動したシロナには地上では追跡が難しい。
クロエという少女からも伝聞によるものだ。追跡するには不足している。
ただ闇雲に月を探し回るよりはまだしも芽があるだろうと踏んでの決断だ。停滞は何も生まず行動あるのみだとメロ

は身をもって知っている。

道中で、地響きのような叫び声が聞こえたがすぐに遠ざかっていった。
つまり自分が移動した逆の方向、政庁へと向かっていったようだ。
今のも参加者なのだろうか。あれでは知性の欠片も感じられない、まるきり野獣のそれだ。
魔法少女だのオルフェノクだのに遭遇してはいるがそれらは人の形を取り、思考するだけの知と理を備えていた。
だがこの声の主にはそれは存在しない。身の毛もよだつほどの咆哮は、獣の野生を通り越して暴威の域にある。
言葉を理解すらしていない相手に交渉も懇願も無意味でしかない。未だあの地に留まっている総一郎達には上手く切

り抜けるのを願うしかない。

そうして一応は無事に目的地に到着したのが十数分前。
原付を正面からは見えない場所に置き中を探索を始めようとしたところで、奴らはやってきた。
後はもう流されるままだった。監視を見抜かれ、怪物に一切の抵抗も届かず取り押さえられる。
後悔する間もないまま漠然と己の死を予感したところで……その声を聞いた。

聞いたことのない声。見た覚えのない顔。
しかしその名は知っていた。鮮明に、熱烈に、一時は焦がれるほどに追い求めていた――その称号(な)を。
男は名乗る。己の目指す先、追い越すべき頂点に座す世界の探偵に。
そこに感じたのが執着なのか、憧憬なのかは、彼には理解出来なかった。





かくしてLとMは邂逅を果たす。
正しい未来では有り得ない逢瀬。それは奇跡といえるのか。
ともあれここで彼の世界は一変する。変わる先がどこに向かうかは、分からないまま。

114引かれ合うチルドレン ◆4EDMfWv86Q:2013/01/07(月) 18:55:18 ID:q5nWMwlI0




【L@デスノート(映画)】
[状態]:右の掌の表面が灰化。
[装備]:ワルサーP38(5/8)@現実、
[道具]:基本支給品、スペツナズナイフ@現実、クナイ@コードギアス 反逆のルルーシュ、ブローニングハイパワー(

13/13)、
    予備弾倉(9mmパラベラム×5)、シャルロッテ印のお菓子詰め合わせ袋。
[思考・状況]
基本:この事件を止めるべく、アカギを逮捕する
0:この男への対処。なるべく穏便に済ませたいが……
1:北崎を用いて、バーサーカーを打倒する。まずは情報集め。
2:月がどんな状態であろうが組む。一時休戦
3:魔女の口付けについて、知っている人物を探す
4:3or4回目の放送時、病院または遊園地で草加たちと合流する
[備考]
※参戦時期は、後編の月死亡直後からです。
※北崎のフルネームを知りました。
※北崎から村上、木場、巧の名前を聞きました。


【北崎@仮面ライダー555】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、使用済RPG-7@魔法少女まどか☆マギカ、虎竹刀@Fate/stay night
[思考・状況]
基本:バーサーカーを殺し、Lに見せ付けた後で優勝する
0:休息は必要と理解。
1:バーサーカーへの対抗手段を探る。
2:バーサーカーには多少の恐怖を感じている。
3:村上と会ったときはその時の気分次第でどうするか決める
[備考]
※参戦時期は木場が社長に就任する以前のどこかです
※灰化能力はオルフェノク形態の時のみ発揮されます
 また、灰化発生にはある程度時間がかかります


【メロ@DEATH NOTE】
[状態]右手首の表面が灰化(動かすのに支障なし)
[装備]原付自転車
[道具]基本支給品一式、呪術入りの宝石(死痛の隷属)
[思考]基本・元世界に戻り、ニアとの決着をつける。
0:L……?
1:今は夜神月を優先して探す。間桐邸を調べるつもりだったが……
2:死者(特に初代L)が蘇生している可能性も視野に入れる。
3:必要に応じて他の参加者と手を組むが、慣れ合うつもりはない。(特に夜神月を始めとした日本捜査本部の面々と

は協力したくない)
4:可能ならばおりこに接触したい。
5:夜神月の行動に違和感。
[備考]
※参戦時期は12巻、高田清美を誘拐してから、ノートの切れ端に名前を書かれるまでの間です。
※協力するのにやぶさかでない度合いは、初代L(いれば)>>ニア>>日本捜査本部の面々>>>夜神月
※ゆまから『魔法少女』、『魔女』、『キュゥベぇ』についての情報を得ました。(魔法少女の存在に一定の懐疑を抱いて

います)
※平行世界についてある程度把握、夜神月が自分の世界の夜神月で間違いないだろうと考えています。
※原付自転車は間桐邸の脇(正面からは見えない)場所に停めてあります。
※バーサーカーとはギリギリですれ違ったようです。

115 ◆4EDMfWv86Q:2013/01/07(月) 18:56:39 ID:q5nWMwlI0
投下を終了します。タイトルは『引かれ合うチルドレン』の方です
あばよ昨年、よろしく今年、パラロワをよろしく!

116名無しさん:2013/01/07(月) 21:46:20 ID:b5oEcPZM0
投下乙です!
おー、Lとメロの邂逅とか楽しみだ!

117名無しさん:2013/01/07(月) 22:09:07 ID:giA/lrZE0
投下乙です

確かにこの二人に邂逅は後が楽しみと言うか怖いというか

118名無しさん:2013/01/07(月) 22:20:38 ID:MHy5VHiU0
投下乙です
おお、これはまさかのメロとLの遭遇
原作じゃ有り得なかった分どうなるのか楽し……その前に北崎が問題だな

一つ指摘
現在地と時刻が抜けているようですよ

119 ◆4EDMfWv86Q:2013/01/07(月) 22:37:50 ID:q5nWMwlI0
失礼致しました
【D-4/間桐家/一日目 午前】
です

120名無しさん:2013/01/08(火) 18:43:48 ID:Lq0XgNSYO
投下乙です。

失われた筈の目標との出会い。
メロはどう動くのか。

121名無しさん:2013/01/15(火) 14:21:51 ID:z6neIlxs0
今日は月報か
パラレル 90話(+4) 41/57(-2) 71.9(-3.5)

122名無しさん:2013/01/26(土) 21:56:31 ID:lc1F1zgk0
訛りはなーw

123名無しさん:2013/01/26(土) 21:56:45 ID:lc1F1zgk0
誤爆失礼

124 ◆Z9iNYeY9a2:2013/02/03(日) 16:43:55 ID:88eOSsdM0
気がかりな点があったので仮投下スレに投下しました。確認お願いします

125 ◆Z9iNYeY9a2:2013/02/04(月) 00:09:20 ID:dIv/haDg0
投下します

126ガブリアスが見てる ◆Z9iNYeY9a2:2013/02/04(月) 00:11:05 ID:dIv/haDg0
私はガブリアス。
NNは、特に無い。

主はシロナ。シンオウ地方のチャンピオンだ。
そして私は、そんな彼女の切り札をやっている。
自分で言うのも何だが、能力や経験にはかなりの自信がある。
それまで、私の役割は四天王を乗り越えてきたトレーナーの、最後の壁として立ちはだかることだった。
しかし、今この場においてはギンガ団のボス、アカギにより、主、シロナの支給品(というらしい)として戦うことを強いられている。
その相手はポケモンのみならず、人間、あるいはそれ以外の存在とも、である。
実際、この場に連れてこられたばかりの時に、オルフェノクなる存在と戦闘を行った。結果は負けはしなかったものの、むしろ痛み分けといったほうが適切だ。
無論シロナを守るために戦うことはやぶさかではない。現在は仲間である他の5体のポケモンはいないのだ。私が守らねばならない。
だからといって殺し合いという環境を許容することはできない。この体は誰かの命を奪うためのものではないのだから。

そしてそんな私達は現在、ある人物を探して駆けていた。
乾巧。聞いた話では心優しきオルフェノクであるという。
数時間前、彼を発見した私達は気絶した少女を連れているのを見て、その少女の安全を確保するために攻撃を行った。
しかしその判断が早計だったことを、先の情報交換でシロナは知った。
そうして、彼を探すためにシロナは単身飛び出したのだ。
進む方向は、待ち合わせの場所とは正反対に位置する南の市街地。
巴マミという少女を発見し、オルフェノクに攻撃を仕掛けたあの場所である。




宙を滑空するように高速で風を切り移動する私とシロナ。
しかしその速度はいつもと比べると若干の遅さを感じる。
シロナを乗せているとはいえ、ここまでではなかったはずなのだが。
最初に会ったあのオルフェノクと戦っていたときもこの違和感は存在した。
私の力が抑えられているのかもしれない。シロナは果たして気付いているのだろうか。

市街地を抜けるか抜けまいかという地点。
もう少し移動すれば足場は砂浜となるだろう。その先には浅瀬が広がっている。
ちなみにその更に東に進んだ場所には病院がある。

「この辺りね…、彼等を見つけたのは」

そして、あの二人を発見した場所。それもこの付近だ。数時間ぶりの風景となる。
ここから西の方角に向かって去っていったはず。
故に浅瀬、砂浜の方には今は用はない。

127ガブリアスが見てる ◆Z9iNYeY9a2:2013/02/04(月) 00:12:15 ID:dIv/haDg0

「…やっぱり血を追って、というのは無理ね…」

どうやら彼は建物の間を縫うように移動したようだ。
血痕は地面だけでなく建物の壁にも這っており、追っていくのは難しいだろう。もし人間であれば探すのはまだ容易かっただろう。人間はそんなにアクロバティックな動きはしないはずだ。
匂いを追う、という手段もこうなっては厳しいだろう。まあこれはむしろグラエナやウインディのようなポケモンの方が向いているが。ルカリオがいればよかったかもしれない。

「ガブリアス、あなたは上からお願い。私は下から探すわ」

ここで少し解説しておこう。
私、ガブリアスという種族は空を飛ぶことができる。同じタイプを持つフライゴンのような翼による飛行とはまた別のものだが。
無論地面・ドラゴンタイプで翼を持たないこの体で鳥ポケモンのように自在に宙を舞うことはできない。
しかし直線を高速で移動することには長けており、空中にある程度滞在することもできる。
移動はともかく滞空を人間を乗せてするのは流石に厳しいが、私単体であれば何ということもない。

とりあえず建造物の多いこの場において、ある程度一望できる高さまで飛び上がる。
シロナはというと、地上で若干焦りつつ周囲を見回して走っている。
彼がこの付近にいる可能性は低い。あれからかなり時間が経ってしまっているのだ。
そしてそれはシロナも分かっているはずだ。
それでも万が一ということもあるかもしれない。あるいは彼のその後について何かしらの手がかりがあるかもしれない。
だからこそ無駄なことだと考えることもなくこうやって単身探しに来たのだ。

あの時の二人の判断を、私は間違っているとは思わない。
戦ったからこそ分かる。あのオルフェノクという生き物には驚異的な力を持つものがいると。
もし、あの時あの竜のオルフェノクに会わず、あの時少女を連れていたのが最初に会ったあいつだったらどうだっただろうか。
安全かどうかの確認をする前に襲い掛かられていただろう。
ただ、今回は互いの運が悪かっただけのこと。間違えてしまったとしても、今ならまだ取り返しはつくだろう。
かなりシロナ贔屓に考えてしまっているが、そこは仕方ない。私は彼女のポケモンなのだから。

しかし、シロナはそう割り切って考えてはいられないようだ。
初対面の人間には、シロナの外見、雰囲気からクールで尊大な印象を持つものも少なからずいるが、実際はそんなことはない。
むしろ心優しく、子供っぽい一面も持っている。責任感も強いが抜けている部分もある。
失敗があれば凹むし、楽しいことがあれば笑う。
ポケモントレーナーとしての実力が高くとも極端に頭がいいわけではない。策略に嵌ってしまうことも、駆け引きに負けることもある。ゲーチスの時のように。
自分のミスで人を傷つければ己を責める。今回のことで一人で出て行ったように。
だからこそ、今のような状況において冷静さだけは失って欲しくない。
一人で抱え込んで欲しくはない。

128ガブリアスが見てる ◆Z9iNYeY9a2:2013/02/04(月) 00:13:32 ID:dIv/haDg0

空から見回しても特におかしなものは見えない。探している者も、他の参加者も、見渡す限りには見つからない。
シロナも一応警戒自体はしているようで、大声を上げて名前を呼んだりはしないし、曲がり角などを通る際も慎重に進んでいる。
もちろん、もし危険人物、例えばあの時のオルフェノクのような存在がいたなら、私が真っ先に知らせに戻るのだが。
しかし見開けた場所ならともかく、建造物の多い市街地ではあまり見通しが良くない。動くものがあれば分かりやすいが、何かが動く気配も薄い。
まあ逆に言えば他の参加者、危険人物もいないということなのだが。

一旦建物の上に着地し態勢を整える。今は早く移動することではなく周囲をじっくり観察することが重要なのだが、これは意外と速く飛ぶことより疲れる。
十数秒留まって呼吸を整えた後、再び体を折りたたんで飛び立つ。今度は若干移動速度を速める。
シロナの進行方向に先行しておけばある程度離れてもどうにかなるだろう。付近に気配がないことは確認済みだ。
風を切る感覚が全身を通り過ぎる。下では様々な色の屋根が、あるいはコンクリートの屋上が視界に現れ、消えていく。
しかし建物の、コンクリートの灰色が見えても、灰色の体をした男は見えない。私達は乾巧の人間の姿は知らないのだが、あるいは人間が倒れているのであれば見逃さないように目を配る。

と、周囲を見渡した視界に、刺激の強い色が広がっているのが見えた。
黒の混じった赤い液体が広範囲に渡って固まっている。よく見れば、その近くにまるで何者かが歩いた跡のように点々と同じ色をした斑が散らばっている。
凝固した血液だ。
地面に降り立ち、その匂いをかぐ。それまで所々に散らばっていた血と同じもののようだ。恐らくはここでこれほどの血が流れる何かしらの行動を起こしたのだろう。
さらに近くを見回すと、さらにある棒状のものを発見。
先端から中腹にかけて地面に落ちたそれと同じ色に染まった武器。クロがあの時放った矢。
つまりここに広がった血はおそらく刺さった矢を抜いたときに流れたものだろう。

「ガアゥ!!」

鳴き声を上げてシロナを呼ぶ。
周囲に人の気配がないことは確認済みだ。声が聞こえる範囲は大丈夫だろう。

「ガブリアス!何か見つけたの?!」

こちらに向かって走ってくるシロナ。
そして地面に固まった血溜りと矢に気付くと、顔色を変えて近寄る。

その表情を見てやはりか、と考える。シロナは血を見ることに慣れていない。
ポケモンバトルにおいて、相手が怪我をすることはよくあることだ。しかし生死にかかわるような傷をバトルの中で負うことはまずない。
私達もいくら強いとは言ってもそこまで大きなダメージを与えるようなバトルはしない。加減を忘れることもあるがそれは相手がそれを受けられる実力を持っているという時だけだ。
さらにいえばそんな相手であればむざむざ後遺症を残すようなダメージを受けることもない。
そこまでの血を見る機会など、それこそ自然の中での災害や争いかポケモンを虐待する者と会うことでもなければそうはない。
ましてや今回のように自分のミスから流れた血であるというのなら、そのショックも大きい。

129ガブリアスが見てる ◆Z9iNYeY9a2:2013/02/04(月) 00:15:51 ID:dIv/haDg0

「っ…、周囲には、誰もいなかったのね?」

それでも、きっと私に余計な心配をかけまいとしているのだろうか。呼吸を整え、気持ちを落ち着かせるような仕草の後そう聞いてきた。
それに私は無言で頷く。
そう、と言った後、彼女は何かを考えるように矢を拾う。

「ここで矢を抜いた後で何があったのかは分からない。でもさっきの放送では名前を呼ばれてはいなかった。
 誰かに保護された、と考えたいけど希望的観測にしかならないわね…」

探すとしてもきっとこれが限界だろう。体から流れたはずの血はこの地点を最後に途絶えている。
テレポートのような手段で血の跡を残さず離れたか、第三者によって移動させられたか、あるいはこの場で死に絶えたか。
手がかりも尽きた以上、まずは今後どう動くべきか、改めて考えなければならないだろう。
このままその彼を、手がかりも無しに探すか、あるいは一度クロ達との合流を目指すか。
あの黒い少女、クロやニャース達はこの場における協力者としては信用できると、私は感じている。
あるいは戻ることで何かしらの情報が入っている可能性もあるし、彼等に探索を協力してもらうのもありだろう。
まだ生きていて、なおかつ何処かへ移動したのであれば急務ということでもないはず。人間の間では急がば回れとも言われているという。
最も、その選択にシロナが後ろめたさを感じなければ、ではあるが。

「ねえ、ガブリアス…、私はどうするべきなのかしら…?」

そしてその不安も少なからず当たった様子だ。
確かにシロナのミスで傷つけた者がいるのであるなら、自分を責めてしまうのも多少は致し方ない。それでも、私はシロナがそれに押しつぶされるほど弱くは無いと信じている。
だから、自分の思うように、後悔しないと信じる方に進めばいいと思う。後悔や後ろめたさに流されず、自分の意思で選んだ方に。

私には人間の言葉は出せない。だからそんな思いも直接伝えることはできない。
あのニャースがいればどれほど助かっただろう。

「そうよね。私がしっかりしなくちゃいけないわね」

だが、それでも私が言わんとしたことはうっすらと感じ取ってくれたようだ。

「C.C.さん達の方も気がかりだし、クロちゃん達にも一言伝える必要もあるわね。
 一旦政庁に向かいましょう。あまり待たせるのもまずいわ」

彼のことはそれから、と、そう言い足して。
私の考えとしてはそれで正解だと思う。一人で頭を巡らせて、答えが出ないなら仲間に頼ればいい。
バトルにおいてマニューラやマンムーが私の前に現れるようなら、ルカリオやミロカロスに任せて交代させるだろう。同じことだ。

そうしてシロナを乗せた私は、政庁に向けて移動を開始した。

130ガブリアスが見てる ◆Z9iNYeY9a2:2013/02/04(月) 00:17:09 ID:dIv/haDg0


先に述べたように、ここは殺し合いの場。
ポケモンバトルのつもりで戦っていてはいずれ生死にかかわることもあるかもしれない。
私に指示を出すシロナを後ろから―――ということも大いにあり得る。そしてそれはシロナも分かっているだろう。
そして、こうして私がシロナに支給された。それは私が、生き残るために必要な武器として働くことをアカギは期待しているのだろう。
確かに、私がポケモンバトルとしてではない、命のやり取りをするつもりで戦えば人を、ポケモンを殺すことも可能だろう。
だからといってそんな思惑に従うわけにはいかない。従いたくもない。
それはきっとシロナも同じことだろう。私に殺しをさせることは無い。それをしたとき、彼女はチャンピオン、いや、ポケモントレーナーではなくなってしまう。
だから私に、人を殺せと命じることはない。それは私にも言い切ることができる。

では、もしその選択に迫られたときに、シロナは迷わずにそれを選べるのだろうか。
一瞬の迷いが命を失う瞬間に陥った場合。
その時は、私が自らの意思で相手の命を奪う判断を下すだろう。
もしそれで私が傷付き、シロナを傷つけたとしても、そうやってシロナの命を救えるのであれば、私にポケモンとして掛かった制約を破ってでも。
それでもそんな時は決して来て欲しくはないと、私は願う。

私はガブリアス。チャンピオン、シロナのポケモンだ。
そして私自身、その事実を誇りに思っているのだから。


【E-3/市街地/一日目 午前】

【シロナ@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:健康、小さな罪悪感
[装備]:モンスターボール(ガブリアス)@ポケットモンスター(ゲーム)
[道具]:基本支給品、ピーピーリカバー×1、病院で集めた道具、クロの矢(血塗れ)
[思考・状況]
基本:殺し合いを止め、アカギを倒す
1:一旦政庁に向かい、皆との合流を図る
2:ゲームを止めるための仲間を集める
3:N、サカキを警戒 ゲーチスはいずれ必ず倒す
4:乾巧を探して謝りたい
[備考]
※ブラックホワイト版の時期からの参戦です
※ニャースの事はロケット団の手持ちで自分のことをどこかで見たと理解しています

131 ◆Z9iNYeY9a2:2013/02/04(月) 00:20:18 ID:dIv/haDg0
投下終了です
一応言っておきますが、ガブリアスは飛べます

132名無しさん:2013/02/04(月) 00:31:17 ID:vLhzO92wO
投下乙です。

サザンドラ「ドラゴンたるもの飛べて当然、ですとも!」
北崎「そうかなぁ?」

133名無しさん:2013/02/04(月) 17:48:51 ID:L5pACT4g0
投下乙です

ポケモン視点からかあ。こっちもこっちで思い悩んでる状態だなあ
シロナ本人もまだ大丈夫そうだが揺れているしなあ

134名無しさん:2013/02/07(木) 22:25:15 ID:CCJrcFrU0
おお来てた!投下乙。
ガブリアス視点か。嘘みたいだろ?このポケモン♀なんだぜ……?

135名無しさん:2013/02/12(火) 23:07:49 ID:eYtmKc7Q0
投下乙。
これは……良い、実に神回だ。
ただの畜生ではなく、主人を想う知性と高度な感情を持つポケモンというものを、実に上手く擬人化してありますな。
バトルは原始的な殺し合いではなく、互いに楽しむためのものであり、自分はその頂点に立つトレーナーの切り札であるということの矜持と、
一方で主人を守るためならば、それを捨てることもあるかもしれないと覚悟を決めさせるだけの絆が実に自然に表現されている。
主人贔屓な思考と、それを「シロナのポケモンだから」と自覚しているのが、何て言えば良いのかわからないけど、凄く、良い。
ニャースがいて言葉の壁を取り払ってくれれば、と読んでいて一緒に感じるもどかしさや、ポケモンバトルの補完からの「誰も一人では完璧じゃない、だから補い合うんだ」という
人間が頭ではわかっていてもなかなか自分には適用できない考えをしっかり持っているところも凄く素敵。
ただ、他に仲間がいないから、自分がシロナを守るしかないんだという彼女の決意が、自分自身のその理解と相反するのが皮肉になっていて辛い。
だから読み終えた時、彼女と思わず願いを同じくしてしまう。彼女がシロナのポケモンでなくなる時が、来ないようにと。
この先を読むのが辛いけれど気になってしまう、大変お見事な作品でした。改めて乙。

136 ◆Z9iNYeY9a2:2013/03/17(日) 17:13:34 ID:AFUFNBRA0
投下します

137招かれたもの達 ◆Z9iNYeY9a2:2013/03/17(日) 17:16:02 ID:AFUFNBRA0
「美遊ーー!」
「何やってんのよー。早くしないと学校遅れるわよー」
「今行く」

いつもと同じ日々。
イリヤ達と学校へ行き、授業を受けて、放課後は遊ぶ。
何の変哲も無い、だけど大切な時間。

「今日の体育はソフトボールだぜぇ!よし、プレイボール!」
ボガッ!!
「グホァ!!!」
「ギャー!龍子の顔面にボールがめり込んだーー!」
「ああっ!鼻血がアーチ状に吹き上がってる!」
「実況してないで早く保健室へ行ったほうが…」

なのに、何か違和感を感じる。


「あ、士郎さん」
「お兄ちゃーん!」
「あ、イリヤ達おかえり。学校終わったのか」

誰かが足りない。何かが欠けてしまったような気がする。
家に帰ると、ルヴィアさんとオーギュストさんが迎えてくれて、後は軽くメイドの仕事をして明日に繋がる。
いつもと変わらないはずなのに、屋敷の中が妙に静かになってしまったような違和感を感じる。

そうだ、家のメイドはもう一人いなかっただろうか?
自分より扱いが悪くて、そのことにいつも不満を流しながら働き、何かあるとすぐにルヴィアさんと喧嘩を始める誰か。

「美遊、どうかなさいまして?」
「ルヴィアさん、その…、凛さんはどこにいるんですか」

パキッ
その名前を口に出した瞬間、世界にヒビが入り、家にいたはずの風景がいきなり変わる―――

■■■■■■■■■■■―――!
フシュルルルルルル!!!

バーサーカーが森の木々を粉砕しつつこちらに向かってくる。
黒い狐が口から炎を吐き出してくる。
共に、狙いは自分。

そして、大質量の体と高熱の炎が体に接触した瞬間、世界は黒く塗りつぶされた。

138招かれたもの達 ◆Z9iNYeY9a2:2013/03/17(日) 17:17:25 ID:AFUFNBRA0


「やっぱりそうですのね。せめて、夢の中くらいは平穏なままでいさせてあげたかったのですけど」

ふと、真っ黒な世界の中でそんな声が聞こえた。
いつも聞いていた声。まだその声を聞かなくなって半日も経っていないのに、すごく懐かしく聞こえた。
なのに、どうしてこんなに声が遠いんだろう?

「そろそろ時間ですわね。では行きなさい美遊。
 あなたは一人ではありませんわ。あなたと共に戦ってくれる人もいます。イリヤスフィールも、クロも、サファイアもいます」

その声はとても優しくて。まるで心を包むかのように。

「それに何より、あなたはいつまでも、私の義妹(いもうと)なのですから」
「ルヴィア…さん?」

なぜかそんな声と共に、自身の義姉の、ルヴィアゼリッタ・エーデールフェルトの存在が遠ざかっていくのを感じ取った。



「ルヴィ…ア、さん…?」

意識が開く。
どこかの家のソファーの上にいるようだ。
起き上がろうとすると、腕に鋭い痛みが走った。

何が起こったのか。そうだ。私は由花さんとロロさんを追っていったはず。
その時何があったのか思い出せないが、そのまま意識を失って気絶したような気がする。
どうしてこんなところにいるのか。

『美遊様!』

声に反応して手元を見ると、そこにはいつもと変わらないサファイアの姿。
服装こそ私服に戻っているが、どうやらずっと魔力供給を続けることで傷の回復を促してくれていたらしい。

『よかった…』

安堵の声。どうやら傷はそれなりに深いものだったようだ。
部屋は特に汚れていないが、血の匂いがうっすらと空気に混じっている。

「ごめん、心配かけた。…ここは?」
「あっ…」

と、美遊がサファイアに状況説明を求めたとき、部屋の入り口から顔を出す少女の姿が見えた。

139招かれたもの達 ◆Z9iNYeY9a2:2013/03/17(日) 17:18:02 ID:AFUFNBRA0

「目、覚めたの?!傷の具合は大丈夫なの?!」
「…大丈夫」
「よかったぁ〜…」
『美遊様、こちらの家で手当てをしてくださった、鹿目まどか様です』
「えっと、美遊…ちゃん、でいいのかな?」
「構わない。ねえ、ルビー。どこまで話したの?」
『美遊様の手当てを優先したので、まだ込み入った話までは』
「そう。傷の手当のことはお礼を言わせてもらう。もう行かなきゃいけないところがあるから」

時計を見ると、あれからそれなりの時間が経過している。早く追わなければ見つけることができなくなってしまう。
こんなところであまりゆっくりしている暇はない。転身しようとサファイアを掴もうとするが、その体をまどかに抑えられた。

「だ、ダメだよ、そんな怪我してるのに!まだ応急処置くらいしかしてないんだから!」

確かに腕の傷は血こそ止まっているが、あまり激しい動きをすると再度開く可能性がある。
一般論であれば正しい。が、自分はただの人間ではない。
サファイアの力を持ってすればこの程度の治癒にはそう時間は掛からない。

『美遊様、私も反対です』
「え、サファイア…?」
『その傷の治癒にはどうも時間が掛かっています。実際これまでの時間ずっと私が治癒に魔力を費やして止血が精々でした』
「…」
『少し考えなければならないこともできました。もう少しここに留まっては』
「でも、それじゃロロさんと由花さんが―」
『美遊様』

そのサファイアの声はまるで戒めるかのように静かで、しかしはっきりと放たれていた。

『先の放送をお忘れですか?ここは凛様のような魔術師でもこれほどまでに早く亡くなられているのです』

遠坂凛との付き合いはおそらくサファイアの方が長い。つまり自分の知らない彼女も知っているはずだ。
魔術師としての腕は一級品だった。そんな人でも生き残れなかったのだ。

『もしここで休むことで結花様やロロ様に何か影響がある可能性は否定することはできないでしょう。
 それでもそれは美遊様の責任ではありません。むしろ私にとっては美遊様が傷付く姿を見るほうが辛いのです。
 もちろん私は彼等を見捨てたいとは思いません。それでも美遊様に全てを背負って欲しくはないのです』
「………」
『どうか自分を見失われないようにお願いします』

「―――――分かった。じゃあ少しだけ。
 えっと…まどかさん。ここで休憩させてもらっても構いませんか?」

140招かれたもの達 ◆Z9iNYeY9a2:2013/03/17(日) 17:19:54 ID:AFUFNBRA0


美国織莉子とサカキの二人は、黒い剣士の襲撃を退けた後、真っ直ぐに目的地である美国邸へと直行していた。
市街地を抜けて森に入って以降は道の悪さが気になるものの、そこまでの障害というわけではない。
道自体は車両走行に優しいものではなかったものの、バイクの性能にも助けられた。ある程度の荒地ならものともしないようだ。
もしかしたら後ろからあの剣士が追ってくるかもしれないということも考えられたため助かった。

だが、肝心の美国邸は。

「ここなのか…、君の家は」
「……一体何があったのでしょうか」

まるでミサイルでも落ちたのかという有様。もはや家としての体裁は保っていない。
そこにあるのはただの瓦礫の山だ。

「ここに、君の仲間は来ると?」
「そうですね…、もし来たら激怒するのではないかと思いますけど」

しかし、今この周辺にそのような声は届いてこない。少なくともこの周囲にはいないということなのだろう。
――――例えば、この瓦礫の下に埋もれているなんてことがなければ。
まあ魔力の反応もない以上有り得ない話だが。

「家としては使い物になりませんが、少し気になるところもあります。立ち寄らせていただいてもよろしいでしょうか?」
「まあ構わんよ。こっちも急いでいるわけではないし、これほどの破壊を行える者がいるなら調査は必要だろう」

バイクは家の前に停めて家の中に入る。本来なら道路交通法とかに引っかかりそうなことだがこの場では誰が咎めるわけでもないだろう。

特に何もないだろうと確信した上で、敢えてサカキと別れて元・自宅であっただろう瓦礫の山を進む。
確かに自宅は、世間一般では豪邸といえるほどの広さはあっただろう。しかし生まれてずっと過ごした自宅だ。どこに何が、どの部屋があったかなどは分かる。
寝室、キッチン、客間、、自室、書斎。どの辺りがどうだったかということぐらいは予想がつく。

そして、その周囲にはそこがかつて自分の過ごした場所であることを示すかのように、記憶どおりのものが落ちている。
寝室があったであろう場所に落ちている布団の柄、素材。キッチンがあったであろう場所に落ちている食器の破片。
椅子の破片の模様、かつては本だったであろう紙の残骸、お菓子が入っていただろう包み。
全てが記憶の中にあるものと一致する。
自宅なのだから当然となど言えない。ここにあるのは自宅ではあるが、それがあるこの場は見滝原ではないのだ。
いかにしてこの家をこの場に持ってきた、あるいはこれほどまでに再現して作ったのだろうか。
手段はともかく持ってきたというなら再現率も当然だが、作ったというのであればあまりに気味の悪い話だ。

ふう、と息をついて目をやった先にあるのは、様々な植物が植えてあった庭園。
やはり花々は崩壊の巻き添えにあったようで、根から抉り取られるように倒れている。
かつてはここでよくキリカとお茶をしたものだった。しかしその時使ったテーブルは存在しない。
当然だろう。あの日この場に突如現れた魔女が破壊したのだから。
あれ以降はキリカに大きな仕事を任せたこともあり、結局テーブルの新調などしていなかった。

141招かれたもの達 ◆Z9iNYeY9a2:2013/03/17(日) 17:21:22 ID:AFUFNBRA0

(…魔女?)



「家の中心には巨大なクレーターが出来ていた。それこそ空から大質量の物体でも降ってきたんじゃないかというほどに」

数分後、軽い調査を終えたサカキと合流した織莉子は、見たもの、気付いたことについての情報を明かしあっていた。

「念のためニドキングも出してチェックをしてみたが、特に何かを見つけられはしなかった。それ以外は収穫無しだ」

もしこれがポケモンによるものであるなら、同じポケモンなら何か気付くかと思い探らせてみたものの、何かあった様子はなかった。
あくまでポケモンによる破壊であると断言できないだけで、ポケモンが引き起こしたものである可能性も十分にある、と言った上で。

「それで、そちらのほうは何か気付いたことはあったか?」
「はい、ここは限りなく私の家、ですね。少なくとも残骸を確認する限りは」
「そうか」
「それで、少し考えたことがあるのですが―――――」




特に問題もなく、まどかは美遊の頼みを受けた。
休息の中で、美遊はバッグに入っていた弁当を開いた。この数時間の間に戦いが続いていた体がエネルギーを求めていたのを感じたのだ。

するとまどかが興味を持ったように覗き込んできたので、美遊はまどかにも弁当を分けてあげることにした。

「これおいしい…」
『ここへ来て最初に出会ったタケシ様という方から頂いたものです』
「タケシさんと真理さん、大丈夫かな?」
『少なくともあの放送で名前を呼ばれることはありませんでした。ロロ様と結花様もそうですが、無事を祈るしかないでしょう』
「え、真理さんって…、もしかして園田真理さん?」
『お知り合いですか?』
「その、私じゃないんだけど、一緒にいた草加さんって人が探してて」
「これまでに何があったか、聞かせてもらってもいい?」

そうしてまどかはそれまでにあった出来事を話し始めた。

「最初、その、オルフェノクに襲われて、草加さんって人に助けられたの」

そうして話していくまどかの話の中には、美遊の直接的な知り合いはいなかった。
ロロの言っていたゼロとユーフェミアなどといった間接的な者はいたが。

142招かれたもの達 ◆Z9iNYeY9a2:2013/03/17(日) 17:22:49 ID:AFUFNBRA0
『一つお聞きしたいのですが、まどか様は日本人ですよね?』
「? そうだけど…」
「ロロさん、私の出会った人から聞いた話だと、彼女は日本人を殺すかもしれないって」
「えっ…?でも、全然そんなふうには…」
『おそらく彼女もまたロロ様の知る彼女とは別なのでしょう』

そしてそこから話がさらに進んだ辺りで美遊の表情が変わる。

「バーサーカー…!」
「美遊ちゃん知ってるの?」

それは、Lという人物に北崎というオルフェノクと協力してあのバーサーカーと戦ったという話。
あの怪物と戦ったという事実もそうだが、何よりそれを一度とはいえ倒したという事実に驚かされた。
そしてその北崎というオルフェノクも、Lという人物が手綱を握ることでどうにか衝突は避けているものの危険人物であることには変わりないという。

「大体は分かった。じゃあこっちの話をする」

まどかの話は大まかに掴めたと感じた美遊は、こっちの話に移った。
だが、最初に出会った人物について話したところでまどかから大きな反応が返ってきた。

「真理さんって人に会ったの?!どこに行ったか分かる?!」
『ここから北で会いましたがそれ以降は。お知り合いですか?』
「…?一つ聞きたいんだけど、真理さん、草加さんについて何か話してなかった?」
『いいえ、お伺いしていませんが』
「だ、だって、草加さんは知り合いだって言っていたのに…」
『もしかして、草加様という方と真理様の世界は違うのでは?』
「世界って…?」
『平行世界というやつです。誰かからそのような話をお聞きしてはいませんか?』

言われてまどかが思い出すのは、あの時のゼロの言っていたよく分からない言葉。
あの時はその言葉が何を意味しているのか分からなかったものの、ここに来てそれがどのような影響をもたらすのか実感をもって知った。

『私達は乾巧という方がオルフェノクであることまではお聞きしていませんが』
「草加さんは、皆を騙してるって言ってたんだけど…」
「それ、本当なの?」
「え、どういうこと?」
「もしかしてその草加って人が嘘をついてるんじゃ――」
「そんなことないよ!だって、オルフェノクって怖いんだよ?!」

あの時、ホースオルフェノクに殺されかけたことは、未だにまどかの心に傷を残している。
だからこそ、オルフェノクという存在に対して心のどこかで拒否してしまうところがあった。

143招かれたもの達 ◆Z9iNYeY9a2:2013/03/17(日) 17:24:39 ID:AFUFNBRA0

「…ごめんなさい。気に障るようなこと言ってしまって」
「う、ううん。こっちもごめん、いきなり大きな声出して」

ともあれ本人達が居ない場所では判断が難しいこと。そればかり話していてもことが進みはしない。
美遊は話を進めていく。

先に述べたバーサーカーとの戦い、ロロ・ランペルージや長田結花という人物との出会い、ポケモンを連れた名も知らぬ女の襲撃。
そしてあの放送の後の顛末。

まどかには驚きしかなかった。
自分よりも年下の、こんな小さな少女があの怪物と戦っているという事実に。
実物を見たからその恐ろしさが分かった。もしあれと会ったときに自分ひとりだったら恐怖で足が竦んで動くことすらできないだろう。
なのに、目の前の少女がそれと戦ったという。

(やっぱりすごいな…。それに比べて私は…)

その後、長田結花という人物と出会い、直後に謎のポケモンという存在を連れた女からの襲撃。
女は撃退したが結花を見失い、追っている途中で放送が始まり、その中で兄が死んで錯乱したロロにより怪我をし、今に続く。

「美遊ちゃんってさ…、もしかして、魔法少女…なのかな?」
「え?」
「あ、ううん!何でもないの!分からなかったら気にしないで」

ふと、戦う少女と言われて連想した言葉を口走ってしまった。わけの分からないことを言ったかもと思われるかもしれないと思うまどか。

『まどか様ももしかして魔法少女なのですか?』
「ふぇ?」

しかし話を聞くと、美遊は実際に魔法少女という設定だと、サファイアは言っていた。(設定って何だろう…?) また、それが自分達の世界のモノとも恐らく異なるものであるだろうとも。
実際彼女達は、とある事件の中で同い年くらいで自分達よりも戦い慣れして戦闘能力を備えた別世界の魔法少女と出会う機会があったとか。

『よろしければ、そちらの魔術形態についてお伺いしてもよろしいでしょうか?』
「ま、まじゅつ…けいたい?」
『魔法少女の成り立ちや、仕組みといったものです』
「その…あ、そう、そっちから聞かせてもらってもいいかな?」

そうサファイアに問われたものの、何を話してよいか分からなかったためまどかは美遊に先に答えてもらうように聞いた。
専門的なことなど分からないし、そもそもあのことを話していいのか判断に困ってしまったのだ。

「私達は魔力回路を運用してサファイア達のような魔術兵装を用いることで平行世界からの干渉によって魔力を無限供給している。
 サファイアは第二魔法の応用で作られた魔術礼装でマスター契約により運用可能。
 戦闘においては魔力運用はあくまで魔力回路に依存するため使用者の一度に使用可能な魔力は『美遊様、まどか様の頭から湯気が上っています』

ともあれ、掻い摘んで大まかにサファイアの説明を聞いたまどか。
やはり難しかったものの、内容はキュゥべえが以前話したものとは全く異なるもののようだった。
大前提として、どうも魔法(魔術?)を使うには生まれつきの才能が必要であり、それが無ければ基本的に魔術を使うことはできないのだとか。

やはり迷いはあったが、話してみることで何か答えを見つけられるかもしれない。
あるいは人間でなくなったことを苦しんだ親友を救う術も見つけられるかも。

「それじゃあ、こっちも話すね。って言ってもそんな原理とか理屈とか、詳しいところは分からないんだけど―――」

144招かれたもの達 ◆Z9iNYeY9a2:2013/03/17(日) 17:28:15 ID:AFUFNBRA0


「なるほど、この空間は我々の記憶から作られたものであるかもしれない、と」
「はい」

織莉子とサカキは屋敷を巡回した後、壊滅状態にある敷地内の、ほんの少し空いた空間で自分達の考察について話していた。

「例えばこの家、私の家で間違いありません。おそらく崩れる前は完全に私の家を模倣していたはずです。
 ただ、本音を言うならこの殺し合いという場において、そのようなことをする必要はあるでしょうか?」
「そうならざるを得なかった、というのじゃないのか?例えば家をこの場に持ってきた、とか」
「そのようなことも可能なのですか?……それは違うかもしれません。先ほど寄った衛宮邸という家を覚えていらっしゃいますか?
 見たところ一世帯の家族が住んでいるであろう家のはずですが、生活感がまるでありませんでした。きっとこの私の家もそのようだったと考えられます」
「しかしそれだけではまだ我々の記憶から作られたものという考えにたどり着くには弱いと思うが」
「そうですわね。この地図を見ていただいてよろしいですか?」

そう言って織莉子は、支給品の中にあった地図を広げる。
孤島の島に、様々な施設が特に統一性もなく散らばっている。

「これらの施設を見て、何かお気づきにはなりませんか?」
「ふむ…。……名簿も見せてもらえないか?」

そう言い、名簿と地図を交互に見比べ、やはりと呟いて顔を上げるサカキ。

「ここに記されている施設は、他の参加者に関わりがあるものが多い、ということか?」
「はい。ここに呼ばれている参加者の苗字を持った施設だけで8軒。
 そして学校と思われる施設は3軒、いえ、この流星塾という施設もあわせれば4件でしょうか。
 他にも柳洞寺、スマートブレイン、アヴァロン、蓬莱島、さくらTVなど特定の固有名詞に当たるものも見受けられます」
「そういえばポケモンセンターやフレンドリィショップはポケモントレーナーであればまず知っているはずの施設のはずだ」
「この中で参加者との関わりがあるかどうか不明瞭なものは、警視庁、病院、美術館、政庁、遊園地でしょう」

他の施設はもしかすると誰かと関わりのある施設の可能性は高い。
古びた教会―――なぜ教会、ではなく”古びた教会”なのか。
人間居住区―――少なくとも自分達の世界では人間が住む場所などいちいち示したりはしない。何か人間の種族と共に生きている世界があるのかもしれない。

「そうなるとここへ来るまでの通り道の美術館に寄っておくべきだったかもしれませんが」
「それで、もし君の仮定が当たっていたとすれば、どのような憶測になると?」
「私達の世界には、魔女という存在があります。
 彼等は結界の中に潜み、人間に対し様々な悪影響を与えるのです。
 その中でも魔女に操られた者、意識を乗っ取られた者には魔女の口付けとよばれる印が付くのです」
「待て、魔女の口付けだと?それは――」
「はい、私達に付けられたこの呪いの元です。
 そして彼等は、時には人間の記憶に入り込んでくることもあります」

思えばその地点にはもっと早くに気付くべきだった。
まさか魔女を思いのままにする人間がいるとは思わなかった。
しかしあの時聞いた神のごときポケモンの力をアカギが持っているのであれば、あるいはあり得るかもしれない。
無論、まだ推測の域は出ない。確信するには早いだろう。
だが、指針として、可能性としては考えておかねばならない。
すなわち、

「アカギ、あるいはその協力者は魔女の力を利用している可能性があります。それもその力を完全に支配下に置いた上で」



145招かれたもの達 ◆Z9iNYeY9a2:2013/03/17(日) 17:29:08 ID:AFUFNBRA0

『それは、本当なのですか?』
「うん…」

鹿目まどかは全てを話した。
魔法少女のこと。キュゥべえのこと。それに翻弄された皆のこと。そして、魔女の存在とその真実。

「魂を固定化させ変質させる。さらにその際発生するエネルギーを回収する。サファイア、そんなこと可能なの?」
『私の使用する魔術とは根本的な分野が異なるため何ともいえませんが、少なくともそれは魔法に匹敵する奇跡であることには変わりないでしょう』

契約の代価にいかなる願いも叶えるという異星生物。
その契約をしたものは魂を宝石に変換させられ魔女という生き物と戦う運命を背負うという。
そして、魔力を使い切ったとき、その魔法少女自身がその魔女へと変化する。

「サファイア、もし宝石魔術の際使用される魔力を人間の魂そのもので定着させた場合、どのくらいの魔力を生み出す?」
『生きた人間の魂そのものとなると、前例が無いため測り知ることはできません。あるいは凛様やルヴィア様であれば知られている可能性はありますが…』
「………」

「ご、ごめんね、変なこと聞かせちゃって」
「構わない。色々参考になった」
『まどか様、そのキュゥべえという生き物ですが、もしかするとアカギに何らかの関わりがあるのではないですか?』
「えっ?」
『魔女の存在と魔女の口付け――私達に付けられたこの刻印。希望と絶望という感情からエネルギーを変換する。
 今の状況と一致させられる条件が揃っています』
「でも、それならどうして私がいるのかな…?」

まだ原理が分からないとはいえ、条件は揃いすぎているように見える。
しかしまどかはそれに対して疑問を呟いた。

「キュゥべえが言うには、私にはこれまでにない魔法少女の才能があって、今までにないほどのエントロピーを回収できるって言ってたし…。
 こんな、もしかしたら私が、…死んじゃうかもしれないところに連れてくるのかな…?」
「どういうこと?」
「キュゥべえがそう言ったの。私には神様にもなれるほどの才能があって、宇宙を救えるかもしれないって。
 そんな、多分キュゥべえにとって重要かもしれない私が死んじゃったら元も子も無いんじゃないかな?」
『確かにその部分だけを聞くと不自然に感じますが…』

確信を得るためにはまだ材料は足りない。可能であればまどかの言う魔法少女達やルヴィアと接触を図るべきだろう。
だが、得た情報は貴重なものだ。また異世界の魔法少女、魔女の存在など。


「それで、あなたはどうしたいの?」

ふと、美遊はそんなことを切り出した。
まどかは意味が分からず首を傾げる。

「どうしたい、って?」
「そんな力を持って、そんな不条理な願いを持ちかけられて、あなた自身はどうしたいの?」
『美遊様?』

それは唐突な問い。
なぜそんなことをまどかに聞くのか、美遊の心中はサファイアには分からなかった。
それに対し、まどかは少し考えた後ポツポツと話し始めた。

146招かれたもの達 ◆Z9iNYeY9a2:2013/03/17(日) 17:30:13 ID:AFUFNBRA0
「私、今まで何のとりえも才能もなくて、このまま誰のためになることも、何の役に立つこともできずに生きていくんだろうなって思ってて。
 そんな時に、街の人を守るために戦うマミさんを見て、好きな人のために魔法少女になって傷付いてくさやかちゃんを見て。
 なのに何の力にもなれなくて。でも、キュゥべえはそんな私にも力があるって言って」
「あなたは契約したいの?人間じゃなくなっても、他の人を襲う存在になるだろうって知った今でも?」
「……魔法少女になりたいかどうかは分からないけど、でも、何にも出来ずに、守られてばっかりなのは嫌だし…。
 だからもし私にもできることが、戦えるようなことがあるなら、力になりたいってそう「そんな覚悟で戦いに参加したいなんて言わないで」

その言葉に、美遊は唐突に割り込んだ。

「あなたは戦いの中にいるような人間じゃない。戦う理由を持っていない」
「そんなこと――」
「そんな、ただ何かをしなければいけないなんて理由しか持っていない人に、戦場に立ってほしくはない。あなたは、戦うべきじゃない」

そう、美遊はまどかの望みを、きっぱりと否定した。



「ここから私達は北上しこの橋から市街地へと再び入ろうと思っています」
「先に寄った学校に寄るのではないのか?」
「最初はそのつもりでしたが、ここで戻ればあの剣士に遭遇する可能性があります」

もしあの子があの剣士と会い戦った場合、勝つことは難しいだろう。そして彼女もそれくらいのことは分かるはず。
だからこそ、もし出会えば逃げてくれると信じている。
あの傷があっても、彼女の能力を持ってすれば逃げることは可能なはずだ。

念を入れて、もしキリカがここに来たときのために、目印を残しておこう。
家の残骸の中にあった一枚のハンカチ。それを森の入り口の木に分かりやすいように縛り付けておくのだ。
これが自分のものだということに、キリカならば気付いてくれるはずだ。

市街地に向かった後は、まずそこから最も近い場所にある鹿目邸へと足を運び、その後病院に向かう。
可能な限り施設は調べておきたいという考えの元だ。
というのも事実ではあるが、実際には鹿目邸に向かうことにはまた別の思惑もある。しかしそれを口にしたりはしない。

今後の指針は決まった。
あの剣士が追いついてくる様子は無いが、もたもたして追いつかれてしまうとまずい。

特に未練もなく完全に崩壊している己の家に背を向け、入り口の門をくぐった。

(そういえば、何時ぶりだったかしら。キリカ以外の人をここに通すのは)

そして特に意味もなく、ただ何となく。
そんなことを思った。

147招かれたもの達 ◆Z9iNYeY9a2:2013/03/17(日) 17:31:07 ID:AFUFNBRA0


まどかは家の中にいた。
何かを考えるように、キッチンの椅子に座り込んでいた。
しかしその表情は決して明るくない。

戦うなと。自分には自分のなすべきことがあるのだと。
散々言われてきた言葉だった。
涙を流しながらそう伝えた少女もいた。その言葉を最後に親友の成れの果てと消え去った少女もいた。

(だけど…)

でも、草加さんも杏子ちゃんもLさんも、皆それぞれの形で戦っている。
だったら、自分には何ができるんだろうか。
そのできることが、もし戦うことだったら、戦うしかないのではないか。
理由だってある。皆を守りたい。力になりたいと思っている。
それでも理由にはならないのだろうかと。
もしさっきあの少女に否定されたときにそう言えていれば何か変わっただろうか。
でも、現実にそんな術を持たないまどかには、そんなことを言うことはできなかった。



もしその存在があったとしても、おそらく嫌な顔しかできなかっただろう存在。
それでも、いつも悩んでいたときには姿を現して契約を迫ってきたあの生き物。
キュゥべえ――インキュベーター。
しかし、今この場においてはいくら悩んでいても、あの白い生き物が姿を現すことはなかった。



「………」

あの後、居心地の悪さを感じ取った美遊は、鹿目邸の庭に出て外の空気を吸っていた。
襲撃者がいたときにはこちらに注意を惹きつけつつ屋敷を離れるつもりだったが、少なくとも今はそのような気配はない。

「サファイア、彼女にそこまでの魔力があるように見える?」
『彼女の世界のものと私達とでは、同じ名称であっても根本的原理が違うようですので一口に判断することはできません。
 まどか様の世界の魔法少女に会ってみなければ何ともいえないでしょう』

これまでは一人も会ってこなかったが、会う機会があればサファイアの力をもって調べるのも仕事だろう。
腕の傷は、少なくとも動かす分には問題ないほどには治癒した。
あの時サファイアはロロを止めるために一時的に美遊の手を離れたことでバーサーカーと戦ったときと違い防壁を張ることができなかった。
バーサーカー戦でもそうダメージを受けなかった体にここまでの傷が残ったのはそのためらしい。
だが、もしあの場でサファイアが動かなければ、あの大口径の銃弾は美遊の心臓を撃ちぬいただろう。とっさの行動だったから分からないものの、あれをサファイアが防壁で受け止めることができたかと問われると分からない。
結果論なのだからあまり言っていても仕方ないだろうが。
今なら結花やロロ達を追うことを、サファイアは許してくれるだろうか。
だが、あの鹿目まどかにも若干気になるところがある。

『それにしても美遊様、先ほどの言葉は少し言いすぎでは?』
「…それは……、後で謝る」

148招かれたもの達 ◆Z9iNYeY9a2:2013/03/17(日) 17:32:47 ID:AFUFNBRA0
少し言い過ぎたのではないかと、美遊自身も思わなくもない。
彼女自身が自らの立ち位置について悩んでいるのは仕方の無いことだろう。自分がどうこう言うことではないのだ。

ただ、彼女の世界の魔法少女の真実を知り、己の力を知らされていながらなおジレンマから抜け出せず答えを出せないその姿に少し苛立ちを感じてしまった。
いつだったか似たような感情を持ったことがある気がするが、あの時とはまた異なった感情のような気がする。

ふと、遠くを見つめながら、

「―――何でも願いが叶えられるなんてこと、全然いいことじゃないから」

そう呟いた美遊。
その言葉の意味も、その心中も、サファイアには量れなかった。



二つの場所で起こった2組の、己の家への帰還。
その中で彼等は様々な考察を巡らせた。
それが果たして真実なのか、ただの思い込みでしかないのかはまだ分からない。

しかし、もし彼等2組に関して一つ言えることがあるとすれば。
本来出会うはずのない2人の少女の間にある距離が、確実に縮まりつつあるということだろう。

【D-6/鹿目邸/一日目 午前】

【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:擦り傷が少々
[装備]:見滝原中学校指定制服
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0〜3(確認済み)
[思考・状況]
1:私、どうしたらいいんだろう…
2:さやかちゃん、マミさん、ほむらちゃんと再会したい。特にさやかちゃんと。でも…
3:草加さんが追ってくるのを待つ
4:乾巧って人は…怖い人らしい
5:オルフェノクが怖い…
[備考]
※最終ループ時間軸における、杏子自爆〜ワルプルギスの夜出現の間からの参戦
※自分の知り合いが違う人物である可能性を聞きました
※美遊と情報交換をし、バトルロワイヤル開始からこれまでの出来事と遭遇者、「Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ」の世界の情報を得ました。(後者は難しい話はおそらく理解できていません)
しかし長田結花がオルフェノクであることは知らされていないため、美遊の探す人物が草加の戦ってる(であろう)オルフェノクであることには気付いていません。

【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:ダメージ(小)、左腕に大きな傷(処置済み、大体は治癒、ただし激しい戦闘を行えば傷が開く可能性有り)
[装備]:カレイドステッキサファイア
[道具]:基本支給品一式、クラスカード(アサシン)@プリズマ☆イリヤ、支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]
基本:イリヤを探す
1:出発したいが、鹿目まどかのことも少し気になる。どうしよう?
2:結花、ロロを追いかける
3:知り合いを探す(ロロの知り合いも並行して探す)
3:結花の件が片付いたら、橋を渡って東部の市街地を目指す(衛宮邸にも寄ってみる)
4:真理の知り合いと出会えたら、真理のことを伝える
5:ナナリー・ランぺルージには要警戒。
6:『オルフェノク』には気をつける
7:まどかの世界の魔法少女を調べる
[備考]
※参戦時期はツヴァイ!の特別編以降
※カレイドステッキサファイアはマスター登録orゲスト登録した相手と10m以上離れられません
※まどかと情報交換をし、バトルロワイヤル開始からこれまでの出来事と遭遇者、「魔法少女まどか☆マギカ」の世界の情報を得ました。
  しかし草加雅人が現在オルフェノク(長田結花)と戦っているであろうということは知らされていません。

[考察(まどか、美遊)]
キュゥべえがアカギに関わっている可能性はあるが、まどかを参加させる理由が見当たらないため保留。
アカギは魔女の力を何かしらの形で利用している?

149招かれたもの達 ◆Z9iNYeY9a2:2013/03/17(日) 17:34:57 ID:AFUFNBRA0
【D-7/美国邸付近/一日目 午前】

【美国織莉子@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:健康、疲労(小)、ソウルジェムの穢れ(3割)、白女の制服姿、オートバジン騎乗中
[装備]:
[道具]:共通支給品一式、ひでんマシン3(なみのり)
[思考・状況]
基本:何としても生き残り、自分の使命を果たす
1:鹿目まどかを抹殺する。ただし、不用意に他の参加者にそれを伝えることはしない
2:キリカを探し、合流する。
3:積極的に殺し合いに乗るつもりはない。ただし、邪魔をする者は排除する
4:サカキと行動を共にする
5:C-6南部の橋から市街地へ入り、鹿目邸を調査。その後市街地を巡回した後病院へ向かう。
[備考]
※参加時期は第4話終了直後。キリカの傷を治す前
※ポケモンについて少し知りました。
※ポケモン城の一階と地下の入り口付近を調査しました。
※アカギに協力している者がいる可能性を聞きました。キュゥべえが協力していることはないと考えています。


【サカキ@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:左腕に裂傷(軽度)、オートバジン騎乗中
[装備]:オートバジン@仮面ライダー555、高性能デバイス、ニドキングのモンスターボール(ダメージ(小)疲労(中))@ポケットモンスター(ゲーム)
[道具]:共通支給品一式 、技マシン×2(サカキ確認済)
[思考・状況]
基本:どのような手段を使ってでも生き残る。ただし、殺し合いに乗るつもりは今のところない
1:『使えそうな者』を探し、生き残るために利用する
2:織莉子に同行する
3:織莉子の提案通り、C-6南部の橋から市街地へ入り、鹿目邸を調査。その後市街地を巡回した後病院へ向かう。
4:力を蓄えた後ポケモン城に戻る(少なくともニドキングとサイドンはどうにかする)
5:『強さ』とは……何だ?
6:織莉子に対して苦い感情。
[備考]
※『ハートゴールド・ソウルシルバー』のセレビィイベント発生直前の時間からの参戦です
※服装は黒のスーツ、その上に黒のコートを羽織り、黒い帽子を頭に被っています
※魔法少女について少し知りました。 織莉子の予知能力について断片的に理解しました。
※ポケモン城の一階と地下の入り口付近を調査しました。
※サイドンについてはパラレルワールドのものではなく、修行中に進化し後に手放した自身のサイドンのコピーだと思っています。
※アカギに協力している者がいると考察しています。

[考察(織莉子、サカキ)]
この空間は参加者の記憶から作り出された空間、すなわち魔女の結界に類似したものである可能性がある。
アカギは魔女の力を何らかの形で利用している

【オートバジン(バトルモード)@仮面ライダー555】
現在の護衛対象:美国織莉子
現在の順護衛対象:サカキ
[備考]
※『バトルモード』時は、護衛対象の半径15メートルまでしか行動できません
※『ビークルモード』への自律変形はできません
※順護衛対象はオートバジンのAIが独自に判断します

150 ◆Z9iNYeY9a2:2013/03/17(日) 17:35:15 ID:AFUFNBRA0
投下終了します

151名無しさん:2013/03/17(日) 18:01:22 ID:RbWG4mgs0
投下乙です

うわあ、まどかと織莉子が近いぞ
しかもまどか邸に行くとか、おま
まどかと美遊は情報交換してこのまま別れるかそれとも…な状況でどうするか…

152おっぱいなんて、ただの脂肪の塊だろ:2013/03/18(月) 17:24:14 ID:8WuD/xEw0
投下乙

これは衝突避けられないかな・・・
そうなったらサカキはどう動くのかな

153名無しさん:2013/03/19(火) 22:37:48 ID:z.NBW7jA0
投下乙でした
織莉子まどか急接近……血が見えるぜえ
別方面で考察が進んだな。神視点ではキュウべえがいるのは正しいが、さて…‥‥‥

>>152
志村名前欄ー

154 ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/06(月) 21:12:23 ID:i5x5or260
投下しまーす

155蛇の道は蛇 ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/06(月) 21:15:09 ID:i5x5or260
遊園地。
目的はどうあれ、多くの人が遊びに訪れる場所。
家族と、恋人と、友達と、子供と訪れ遊ぶであろう遊技場。

しかし、この会場においてはガランとしていて誰もいない。
遊戯のほとんども動いておらず、スタッフも一人としていない。
さらにここは殺し合いの会場。遊ぼうとする人間もそうはいない。

そんな空間。
誰もいないはずのその場所に、大きな声が響いていた。

『えー、マイクテス、マイクテス。
 あー俺の名前は――、ま、いっか。
 木場ァ!!結花ァ!俺だ俺!!声聞きゃ分かるよな!?あと美遊とかいうの!お前の姉からの言伝持ってるぞぉ!
 もしここにいるなら放送室まで来い!!3分だ!3分だけ待ってやらあ!!!』

誰もいないはずの空間に響くのは大きな声。
声の主は、無論参加者の一人である。

海堂直也は、あのゾロアークから聞いた情報を元に、仲間である長田結花、そしてもしかすると木場勇治、そしてルヴィアに託された美遊。
彼らを探して走り回っているうちにこの場にたどり着いた。
場所はNが聞いたゾロアークからの情報から近い。もしかすると探し人が、あるいは木場がいるかもしれない。

なんとなく遊園地という場所に懐かしさを感じた海堂は、これを木場達も感じている可能性がある。今や数少なくなった人間は遊園地に近い場所で生活していたからだろうか。
あとはもしルヴィアの妹が10歳ほどの子供だというのであれば、こういう場所にいる可能性だってあり得る。
だから探す価値はあるかもしれないと立ち寄ったのだ。

しかし、一人で探すにはいかんせん広すぎる。
ならば放送をかけて呼び出せばいい。
単純な話だ。そう、単純な話だ。
もし他に誰かいればその時はその時だ。危険人物だったときを考えて待つのは3分だけ。

そして待った。
休息をかねてパンを齧りつつ。


誰も来なかった。

156蛇の道は蛇 ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/06(月) 21:17:14 ID:5qJihTus0


「よし、行くか」

放送室の椅子から立ち上がり、扉を開ける。
もしもの時のためにオルフェノクとしての感覚をもって視覚、聴覚を最大まで上げる。
誰か来る気配はない。

ふと遊園地の出口。
巨大な風船があった。あの時のピカチュウとか言う生き物そのものだった。。
関係はあるのだろうか。
まあいいか。こっちも急いでいる。

「待ってろよ結花ーーーーー!!」

そして出口から道に飛び出した海堂は。

―――――キィィィィィィィィィィィィィ

ドーン

「ぎゃああああああああああああ!」

飛び出したバイクに轢かれた。

【海堂直也@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト 死ぼ―――

「ってまだ生きとるわ!!!」

「大丈夫?」





「ちゅーかよ、お前ら。何で中学生のクセにバイク運転とかしちゃってんだよ。
 ドーコーホーとかあんだろ、その歳で前科者になってどーすんだよ」
「あなたには関係ないでしょ。そっちこそこんなところで大声出した後で無用心に飛び出すなんて何考えてるの?
 声、外まで聞こえてたわよ」

結局、その後遊園地の中に戻ることになった海堂は、今度は二人の少女と2匹の小動物を伴って遊園地内部に戻っていた。
バイクに轢かれこそしたが、打ちどころが良かったせいで骨も折れず、軽い打撲で済んでいた。

ともあれ、二人の少女、暁美ほむらとアリスはひとまずここでほんの少しの時間休息をとることにした。

海堂はちょっと見て気付いたのだが、二人の服は妙に汚れていた。何かと戦いでもしたのだろうかと推測をしておいた。

157蛇の道は蛇 ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/06(月) 21:20:40 ID:i5x5or260
「あまり長居はできないわね。今の声、外まで聞こえてたから誰か寄ってこないとも限らないんだから」
「嫌味のつもりかよ可愛げのないガキだな」
「…もしかして私も入ってる?」

場所は遊園地の中にあった変な施設の中。
屋内ジェットコースターというのはかなり新鮮なものではあるが、誰もいないはずのその施設は何故か普通に作動していた。
そして、そこの中にある機械室のような場所を陣取っていた。

「ところでよ、そこのペンギン」
「ポチャ?」
「お前だよ、お前。えーっと、名前何て言うんだ?」
「ポッチャマ、というらしいわ。そういえばあなたの名前は?」
「俺?俺は海堂直也だ」
「海堂―――直也…ね…」

ふと、一瞬アリスはほむらに目配せしたようにも見えた。
それをほむらも確認しているのがなんとなく察せたが、何を意味しているのかまでは海堂には分からなかった。

「あ、そうそう。ポッチャマとやら。この……えーっとな。
 おお、こいつ、この風船のネズミのやつ、知ってるか?」
「ポチャ?ポチャ!ポチャポチャ!!」

と、海堂が指指した場所にあったのは、巨大な生き物の風船。
尖った耳と赤いほっぺが印象的な、黄色いネズミのような生き物を模していた。
そして、それに気付いたところでポッチャマは何かを主張するかのように体を動かし始めた。

「一つ聞きたいのだけど、もしかしてミュウツーっていう生き物のこと知ってる?
 白くて長い尻尾を持った、ポケモンっていうらしいんだけど」
「みゅうつー?ああ、いたいた。あの何とかって学校っぽいところにいたわ」
「どうやら積もる話もありそうね。ここまでに会った人物について色々と聞かせてくれないかしら?」






学園であった出来事については、ミュウツーの口から語られたものに近い事柄ばかり、いや、若干情報量は劣っていた。
だからこそそれ以前、それ以降の話が重点的なものとなった。
知り合いこそいなかったが、その中には二人の興味を引くものも少なからずあった。

158蛇の道は蛇 ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/06(月) 21:22:18 ID:5qJihTus0
「ポチャァ」
「ポケモンと話せる青年、Nにベルトをつけて変身し影を操る少女、間桐桜、ね」
「そうそう、それでその桜ってやつはルヴィアとNのやつが追っかけて行ったんだよな。
 俺は結花と、ついでにルヴィアの妹だっていう美遊ってやつを探してたわけだ」

あのミュウツーが言っていた、ポッチャマの仲間の一団というのはおそらく彼らのことだろう。仲間の情報を得られたポッチャマは嬉しそうだ。
聞いた話だと、離れた段階ではそのピカチュウというポケモンの他に、リザードンという赤い竜のようなものやゾロアークという人にも化けられる黒い狐、あとはピンクの小さなものとも一緒に行動していたらしい。

(もし、それらが敵に回ったりしたら脅威となり得るわね)
「ナナリーっていう子には会わなかった?たぶん車椅子に乗ってるはずの女の子なんだけど」
「車椅子……。あー、覚えないわ。わりい」
「そう…」

「でよ、そっちは誰か知らねえか?結花はそっちにはいなかったと思うんだけど、木場とか、あと乾巧のやつとかとは会わなかったか?」
「………」

その海堂の期待するかのような言葉を聞き、アリスはおそらく無意識に視線を逸らした。

「あいつらのことだからこっちが心配するようなことはないと思うんだけどよー。でもやっぱ木場のやつなんかは俺がいないとダメっつーかさぁ。
 真っ直ぐすぎんだよなあいつ。だから俺が近くでちっとはバランスとってやらないとなぁ」
「木場勇治、乾巧。そうね、あと菊池啓太郎って男は知ってる?」

と、ほむらがその菊池啓太郎という名前を出したところで一瞬海堂の表情に影が落ちた気がした。

「あ…、啓太郎、ね。お前ら、あいつに会ったのか?」
「ええ、会ったわ。乾巧、そしておそらく木場勇治にも」
「本当か?!あいつらどこにいた?!」
「ほむら、やっぱり―――」

ほむらの言葉に期待を込めて問いかける海堂。そして答えようとするほむらを止めようとするアリス。
そんな彼らの様子を気に留めることなく、ほむらはこう言い放った。

「木場勇治は殺し合いに乗ってるわ」



159蛇の道は蛇 ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/06(月) 21:23:47 ID:5qJihTus0

「は?」

言った言葉の意味が理解できなかった海堂。
いや、言葉としては意味くらい理解していた。ただ、その言葉があまりに唐突で、彼の処理能力でその言葉自体の意味を受け入れることができていなかった。

「おい、ちょっと待てちょっと待て。お前それ他の誰かと勘違いしてないか?
 木場だぞ木場。
「ええ、オルフェノクであり人間との共存を目指そうとしている人なのでしょう?その情報はもう既に聞いたわ。
 だけどね、今はそんなことは問題じゃないのよ。
 そうね、順を追って話すわ」

まず、二人は乾巧と菊池啓太郎と遭遇した。
そこでの情報交換で二人の世界観のズレを把握、知り合いについて色々な情報を得た。
彼らの話の中にいる木場勇治という人間はほぼ一致しており、その辺りは海堂直也の認識と変わりはなかった。
その後警察庁で夜神月という人物と遭遇、ここはあまり今している会話とは関わりがないため省略。

問題はこの後だ。
出発した二人が見たのは、魔法少女の亡骸。
誰かが近付く気配を感じ身を隠したところで、乾巧や自分の知り合いが通りがかった。

そして彼らは言った。
その少女も、菊池啓太郎も、木場勇治に殺されたのだ、と。
そして目的地へと向かう二人は、ゼロという魔人と手を組んだ木場勇治と戦闘になった。

「あの時の彼は真っ黒なスーツみたいなものを身に纏っていたわ。
 あなたの言っていた、桜って人の使ったのと同系統のものじゃないかしら?」
「ちょちょちょちょ、待てよ。
 じゃあ木場は啓太郎のやつもそのガキも殺して、乾のやつに啖呵切ったあげくやべえ奴と手を組んだっていうのか?」
「ええ」
「ほむらの言ってることは、…その、本当よ」
「ハッハハハハハハハハハハハ!!!
 ――――それじゃ何か。あいつは人間止めてオルフェノクになったとでも言うのかよ?」

信じられるわけがなかった。
いつも人間のために一生懸命やって、人間にもオルフェノクにもいい顔をされず、それでもいつかはきっと理解してくれると信じて戦っていたあいつが、あいつが。

「あなたの見えていないところに彼の闇があった。それだけのことじゃない?」
「!!」

次の瞬間、海堂はほむらの胸ぐらを掴んでいた。
しかしどうするわけでもなく、そのままほむらを睨みつけ、ほむらは無表情にそれをじっと見返していた。

160蛇の道は蛇 ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/06(月) 21:24:49 ID:i5x5or260

「ポ…ポチャ…」
「止めなさいよ!今そんなことやってる場合じゃないでしょ!」

ポッチャマは怯え、アリスが間に止めに入る。
海堂はほむらの目を見ながら、諦めたかのように手を離した。

「説得できるとは思わないほうがいいわね。菊池啓太郎でも彼を説得できなかったらしいし。
 私は彼のことは知らないけど、あなたは詳しいんでしょう?」
「…ちゅーかよ、お前何でそんな目ができるんだよ。
 そんな全部諦めたような目しやがってよ。
 そういう奴がすげーむかつくんだわ。まだガキのくせしてよ」
「そうね、私はもう目的以外のことは諦めたのかもしれない。だけど目的だけは捨てるつもりはないわ。
 あなたはどうするのかしら?仲間が変わっていたからって自分も変わるのかしら、それともそのまま腐っていくのかしら」
「………」
「そうそう、一応言っておくわ。
 私達が彼らと会ったのは地図で言うとE-2ね。禁止エリア指定されてるしもうそこにはいないでしょうね。
 あと、西に向かうのはオススメはしないわ。重機関銃にも耐える体をもった巨人の怪物がいるから」


ほむらはそれだけ伝えると、もう話すことはないと言わんばかりに部屋の扉を開け、外に出て行った。
聞くことは聞き、言うことは全て伝えた以上もう一緒にいる理由はないということなのだろう。

アリスもその後を追おうとして、その前に海堂の前に立って一言問いかける。


「その木場って人、仲間なのよね?あなたにとって大切な」
「…そうだよ」
「だったら信じてあげればいいんじゃない?
 もしあの菊池啓太郎って人の言葉が届かなくても、ずっと一緒にいたあなたの声なら届くかもしれない。
 あなたの知る友達と変わってしまったからってそういった根本的なところには、まだあなたの知る彼が残っているかもしれない。
 だからそういった希望は捨てちゃだめだと思う」
「ったくよぉ。お前ら何なの?まだガキのクセして妙に達観したようなこと言いやがって。
 つかあいつといて疲れなくねえか、お前」
「まあ、私もあの子のことまだ理解しきれていないところあるし。それに厄介者扱いもなれてるから」

それを伝えると、アリスは立ち上がってほむらの後を追って出て行った。

残った海堂は地面に転がり、大の字になって目を閉じる。
別に寝たわけではない。
ただ、あの木場が啓太郎を殺し乾と敵対したということを受け入れる心構えが必要だった。

(本当、どうしちまったんだよ、木場)

きっとあの友人は自分にも刃を向けてくるのだろうか。もしかしたら、結花にも。

161蛇の道は蛇 ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/06(月) 21:25:39 ID:5qJihTus0
結花。
元々頼りないやつだったのに、気がついたら俺よりも強くなっていた少女。
しかしそんな結花もあの狐やおかしな人間に翻弄されて苦しんでいるという。
木場は果たして、そんなあいつを守ってくれるのだろうか。

(あんまりうかうかしてらんねえな)

そう思ったとき、海堂は立ち上がった。
まずは結花を助けなければいけない。
その後で、二人で木場を説得するのだ。
どうしてあの木場がそんなになってしまったのかは分からない。何か理由があるはずだ。
くだらない理由なら殴って目を覚まさせてやればいい。
だからこそ、まず結花を早く探すのだ。

「―――っと、そうそう。こいつのことも忘れてねえからな」

その過程で、見つけることができればついでにルヴィアの妹も迎えに行けばいい。

自分の顔をパシッと叩き、大きく深呼吸をすること一回。
そして。

「待ってろよ木場ァーーーー!!結花ーーーーー!!」

遊園地を飛び出し、海堂は駆け出した。
今度はバイクが通りすがることもなかった。



「人間なんて他人の知らないところを常に隠しているものなのよ。
 どれほど正義や理想を持った者でも、ほんの少しでもそこに綻びが生じればそれらは霧散して堕ちていく。
 アリス、あなたも気をつけることね」

飛び出していく海堂を眺めながらそんなことを呟くほむら。
別に待っていたというわけではない。アリスが追いつくのを待ち、バイクのキーを外している間に出て行っただけだ。

「言いたいことは分かるけど、そんなに割り切れるものじゃないでしょ」
「割り切るのよ。じゃないと傷付くことになるのはあなたよ」
「………、あんたも傷付いたの?」
「さあ、どうかしらね」

バイクは動き始める。
二人のポジションは依然として変わらない。
運転するのはほむら、サイドカーに乗っているのはアリス。

「結局行くの?彼の言ってた人達のところ」
「別に変わらないわ。そのポケモンとやらのことを知っている人間にはまだ会っていないのだから」
「ポチャ」
「早く仲間に会えるといいわね」
「ポチャ!!」

そうして二人もまた、遊園地を後にした。

162蛇の道は蛇 ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/06(月) 21:26:27 ID:i5x5or260
【C-5/遊園地付近/一日目 午前】


【海堂直也@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト】
[状態]:体力消耗 、軽い打撲
[装備]:クラスカード(ライダー)@プリズマ☆イリヤ
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:人間を守る。オルフェノクも人間に危害を加えない限り殺さない
1:結花と合流後、木場を急いで探す。ついでにルヴィアの妹も探す。
2:パラロス世界での仲間と合流する(草加含む人間解放軍、オルフェノク二人) 。木場と結花をとにかく優先する。
3:プラズマ団の言葉が心の底でほんの少し引っかかってる
4:村上とはなるべく会いたくない
5:結花……! 木場……!
[備考]
※草加死亡後〜巧登場前の参戦です
※並行世界の認識をしたが、たぶん『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』の世界説明は忘れている。
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました……がプラズマ団の以外はどこまで覚えているか不明。






【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:ソウルジェムの濁り(少)、疲労(小)
[服装]:見滝原中学校の制服
[装備]:盾(砂時計の砂残量:中)、グロック19(15発)@現実、(盾内に収納)、ニューナンブM60@DEATH NOTE(盾内に収納)、サイドバッシャー(サイドカー半壊、魔力で補強)@仮面ライダー555
[道具]:共通支給品一式、双眼鏡、黒猫@???、あなぬけのヒモ×2@ポケットモンスター(ゲーム)、ドライアイス(残り50%)
[思考・状況]
基本:アカギに関する情報収集とその力を奪う手段の模索、見つからなければ優勝狙いに。
1:情報を集める(特にアカギに関する情報を優先)
2:協力者が得られるなら一人でも多く得たい。ただし、自身が「信用できない」と判断した者は除く
3:ポッチャマを警戒(?)。ミュウツーは保留。ただし利用できるなら利用する
4:サカキ、バーサーカー(仮)は警戒。
5:あるならグリーフシードを探しておきたい
最終目的:“奇跡”を手に入れた上で『自身の世界(これまで辿った全ての時間軸)』に帰還(手段は問わない)し、まどかを救う。
[備考]
※参戦時期は第9話・杏子死亡後、ラストに自宅でキュゥべえと会話する前
※『時間停止』で止められる時間は最長でも5秒程度までに制限されています
※ソウルジェムはギアスユーザーのギアスにも反応します
※サイドバッシャーの破損部は魔力によって補強されましたが、物理的には壊れています

【アリス@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(小)、ドーピングによる知覚能力・反応速度の向上
[服装]:アッシュフォード学園中等部の女子制服、銃は内ポケット
[装備]:グロック19(9+1発)@現実、あなぬけのヒモ@ポケットモンスター(ゲーム)、
    ポッチャマ@ポケットモンスター
[道具]:共通支給品一式、 C.C.細胞抑制剤中和剤(2回分)@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー
[思考・状況]
基本:脱出手段と仲間を捜す。余裕があればこの世界のナナリーも捜索。
1:とにかくゼロ達のいた場所から離れる
2:情報を集める(特にアカギに関する情報を優先)
3:脱出のための協力者が得られるなら一人でも多く得たい
4:余裕があったらナナリーを探す。
5:ほむらの隠し事が気になるが重要なことでなければ追求はしない
6:ポッチャマを気にかけている
7:ミュウツーはとりあえず信用する
8:サカキを警戒
9:黒猫に嫌な不安を感じる
最終目的:『儀式』から脱出し、『自身の世界(時間軸)』へ帰る。そして、『自身の世界』のナナリーを守る
[備考]
※参戦時期はCODE14・スザクと知り合った後、ナリタ戦前
※『ザ・スピード』の一度の効果持続時間は最長でも10秒前後に制限されています。また、連続して使用すると体力を消耗します
※ヨクアタールの効果がいつまで持続するかはお任せします




※遊園地周辺に海堂の声が響いた可能性があります

163 ◆Z9iNYeY9a2:2013/05/06(月) 21:26:56 ID:5qJihTus0
投下終了します

164名無しさん:2013/05/07(火) 01:18:48 ID:O6A4v.zo0
投下乙です。
海堂いいわーw 木場のこととか危なっかしいフラグもあるんだけど、基本ブレないし。
しかし、ホムホムとアリスだと、アリスがフォロー役に回るなw

165名無しさん:2013/05/07(火) 20:35:26 ID:i6Vs2HuY0
投下乙です

こういう時に基本がぶれないキャラがいるのは心強いなあ
だがほむほむははまだ今はアリスがいるから大丈夫そうだが…
それにしてもコンビ組んでここまでアリスがフォロー役に回るとは思わなかッたなあw

166名無しさん:2013/05/13(月) 18:41:05 ID:.P559Ybc0
ほむほむコミュ障だしなあ……原作もほむほむがリア充気質だったらもうちょい楽だったろうに
複数人で行動しなきゃ間違いなくド壺にはまるだろうからアリスとの関係は維持した方がいいな

167名無しさん:2013/05/13(月) 18:42:25 ID:.P559Ybc0
おっと書き忘れてた、投下乙です

168名無しさん:2013/05/14(火) 23:34:24 ID:liz7d4PU0
ほむほむがリア充気質かあ
少なくともさやかちゃんとは反発せずにマミさんやあんこちゃんともう少し協調路線組めてたかもなあ…

169名無しさん:2013/05/15(水) 06:35:24 ID:gIUgKkHoO
そもそも周りが頼れない話聞かないだったからほむほむ自身の問題は些細な気がしないでも?そんなだから今のやり方になった訳だし

170名無しさん:2013/05/15(水) 22:03:09 ID:4xbN7pTg0
月報データです
パラレル 93話(+2) 41/57(-0) 71.9(-0.0)

171 ◆Z9iNYeY9a2:2013/07/07(日) 01:55:35 ID:6IW/hreg0
投下します

172暴君主権 ◆Z9iNYeY9a2:2013/07/07(日) 01:56:47 ID:6IW/hreg0
にらみ合ったまま膠着状態の三人。
草加雅人、長田結花、ロロ・ランペルージ。

長田結花は草加雅人――ファイズのことを乾巧と勘違いしており、それを利用したい草加としては可能な限り声を出すことは避けたかった。
しかし、目の前の少年――ロロの謎の力に警戒した草加には迂闊に動くことができなかった。
そして、結花もまた大きく疲労した精神では判断力が大きく削られ、ロロの突然の乱入にただただ動揺するだけだった。
一方でロロは特に考えを持って乱入したわけではない。
彼も彼とて放送で呼ばれた兄の名に、心ここにあらずとでもいうべき状態である。

(さて、どうしたものか…)

その中で最も冷静であった草加は、静かにこの情勢を見回していた。

最も考え、思考が読めないのは目の前の謎の少年。
能力も未知数ながら警戒必須である相手。
だが、こちらの命を狙っているにしては殺気が、敵意がない。じっとしており何か目的がありそうには見えない。
あくまで推測だが、この少年はこちらの存在を気にかけてはいないのではないだろうか。

もしそうなら、やりようはある。
が、下手に動けば何をするか分からないことは留意しておかねばならない。

どれほどの膠着状態が続いたかという頃。
草加は一か八かの賭けに出ることにした。
能力が分からないのは脅威ではあるが、少なくともその手の拳銃ではファイズの装甲は貫けないはずだ。
ベルトを奪われるかもしれないというリスクもあるが、このままずっと警戒しているよりはマシだ。


少年と長田結花は共にこちらを向いている。
つまり、彼らの背後を見ているのは自分だけ。
そこに向けて、草加は小さく、だが分かりやすく首を動かした。
まるで、そこに何者かが現れたかのように。それに視線を向けたかのように。


それを見た少年は、つられてそちらに振り向き。

その瞬間、草加は一気に駆け出した。

173暴君主権 ◆Z9iNYeY9a2:2013/07/07(日) 01:57:40 ID:6IW/hreg0

「…?!」

向かう先にいるのは、未だオルフェノクの姿を保っている長田結花。
驚く彼女は、身を庇うかのように咄嗟に羽で前面を包み込み。
そこに構わず、草加は右手でのパンチ、グランインパクトを叩き込んだ。

「っ…、あああっ!?」


赤き閃光と衝撃に羽が飛び散り、彼女の体をも大きく吹き飛ばした。
緑の原を転げ回る灰色の肉体は、やがて姿を見えなくなった。

周囲を探ってもその気配はない。どうやら逃げたらしい。
本来ならば即座にでも追撃をかけるところだが、今は逃げてくれたほうがありがたい。

振り返ると、焦点の合わない眼をしながらも驚いた表情をした少年がこちらを見ていた。
その顔を前に、草加はファイズフォンをゆっくりと外す。
スーツが消滅し生身の体が露になる。

「安心しろ。俺は君の敵じゃない」

そう、刺激をしないように告げる。
彼なりの、柔和に見える笑顔を軽く浮かべて。

「だから、聞かせてくれないか?何があったのか、君は誰なのかを」

問いかけると同時、視点は戻らないながらもポツポツと話し始めた。

「…ロロ・ランペルージ……」
「ロロ君、か」

それは聞いたことがある。
あの時会ったゼロと名乗る男から聞いた名だ。

「俺は草加雅人。なにがあったんだい?」
「…兄さんを、知りませんか?」

そう問いかけられる。

兄さん。
ふと記憶を掘り起こす。
先の放送の最中に名簿に印を付けた名前。
ランペルージ―――ルルーシュ・ランペルージ。

(そういうことか)
「残念だけど、俺は知らないんだ。
 知り合いかどうかは分からないけど、ゼロとユーフェミアという二人から君のことは聞いていた。それだけなんだ」
「ゼロ、とユーフェミア…?」

その言葉を聞いたロロの瞳に微かに光が宿ったように見えた。

174暴君主権 ◆Z9iNYeY9a2:2013/07/07(日) 01:58:19 ID:6IW/hreg0

「それは、どこの話ですか?」
「会ったのはここから西のエリアだ。そこからアッシュフォード学園って所に向かった。
 もし生きているならきっとその後で政庁に向かったはずだな」
「アッシュフォード…、政庁…」
「会いにいくというなら気をつけたほうがいい。
 向こうにはオルフェノクが、さっきの化物の仲間が―――」


草加の言葉は最後まで発されることなく、ロロの姿はその場から掻き消えた。
情報の礼も伝えることなく、足音も残さず、一瞬で。

「………ふぅ」

訳も分からない脅威が去ったことで一息つく。
あの少年、ロロが何をしたかったのかは分からない。だが何を求めたのかは大体想像がつく。
能力まで見出すことができなかったのは残念だが、今は生き延びることはできた。

「全く、気に食わないやつだったな」

あんな精神状態の者がいるなど危なっかしい話だが、真理や自分と関わらない限りどうでもいい。
向こうで木場とでも会って死んでくれればそれで終わる話なのだから。

さて、長田結花はもう姿が見えない。
だがオルフェノクを逃がす理由もない。
変な乱入もあったが殺せるオルフェノクなら可能な限り殺しておかないと。
あのダメージではそう遠くまでは逃げられまい。

そうして、偽りの仮面で周りを欺いた男はゆっくりと、その抹殺対象を探して歩き出した。




ロロは走っていた。
向かう場所は西。
アッシュフォード学園に向かっているのか、それとも政庁に向かっているのかは分からない。

それでもただ、ひたすらに西に向かい続けた。

ゼロ。
それは兄、ルルーシュの仮の姿。
本当にそれがルルーシュであるかどうかまでを測ることはできない。
だが、そうである可能性はかなり大きい。

自分の知識では知り合いの中にゼロを語れる人間などそうはいない。
せいぜい咲世子くらいだが、彼女にユーフェミアを御せたとは思えない。
いや、それ以前に兄でなければユーフェミアに近寄ることすらしないはずだ。
何せ彼女はあの”虐殺皇女”と呼ばれた女なのだから。

もしかしたら、そうではない可能性も無くはない。
だが、今のロロにはその程度の状況証拠だけでも十分な行動指針となり得るほどに冷静さを欠いていた。

政庁かアッシュフォード学園。
そこで兄であるルルーシュ――ゼロは死んだのだ、と。

(兄さん…!)

行かなければならない。
何があったのか、何故兄が死ななければならなかったのか、確かめなくてはいけない。

そして、もしそこに兄を殺した者がいたとするならば――――

175暴君主権 ◆Z9iNYeY9a2:2013/07/07(日) 01:59:02 ID:6IW/hreg0
「許さない…」

そいつは決して生きていてはならない。
そいつには、この世の全ての苦しみを味あわせて殺さなければいけない。


兄への愛を、殺害者への憎しみへと昇華させ、ロロは走り続けた。
ただ一人、己の兄のいなくなった世界を。



【D-5/一日目 午前】


【草加雅人@仮面ライダー555】
[状態]:負傷(中)、疲労(中)
[装備]:ファイズギア@仮面ライダー555(変身中)
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]
基本:園田真理の保護を最優先。儀式からの脱出
1:真理を探す。ついでにまどかに有る程度、協力してやっても良い
2:オルフェノクは優先的に殲滅する。そのためにLと組む
3:長田結花は殺しておく
4:鹿目家に向かった後、流星塾に向かう。その後、Lとの約束のため病院か遊園地へ
5:佐倉杏子はいずれ抹殺する
6:地図の『○○家』と関係あるだろう参加者とは、できれば会っておきたい
7:可能なら長田結花には俺(ファイズ)を乾巧と思わせておくのも面白いかもしれない
[備考]
※参戦時期は北崎が敵と知った直後〜木場の社長就任前です
※自分の知り合いが違う人物である可能性を聞きました



【ロロ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:ギアス使用による消耗(中)、精神的に疲弊
[装備]:デザートイーグル@現実、流体サクラダイト@コードギアス 反逆のルルーシュ(残り2個)
[道具]:基本支給品、デザートイーグルの弾、やけどなおし2個
[思考・状況]
基本:????
1:政庁かアッシュフォード学園へ向かい、兄の死の真相を確かめる
2:もし兄を殺したものがいるなら絶対に許さない
?:ロロ・ヴィ・ブリタニアを陥れる方法を考える?
?:ナナリーの悪評を振りまく?
[備考]
※参戦時期は、18話の政庁突入前になります
※相手の体感時間を止めるギアスには制限がかかっています
 使用した場合、肉体に通常時よりも大きな負荷がかかる様になっており、その度合いは停止させる時間・範囲によって変わってきます

176暴君主権 ◆Z9iNYeY9a2:2013/07/07(日) 01:59:53 ID:6IW/hreg0



痛い。

打ち砕かれた羽のあった場所から血が落ちる。
折れた羽では彼女を空に飛ばすことも叶わず。
必死にその足で死から逃げ続けた。

乾巧になら殺されてもいいと。
そう思った気持ちは何処へ行ったか分からない。
裁かれたいという気持ちが大きく、自己嫌悪の思いが膨れ上がろうとも。
それでも死は怖かった。

既に二人の人間を殺しておきながら、都合のいい話だろうか。

「う…っ」

やがて走り続けた足は縺れ、地面にその身を投げ出してしまう。
早く逃げなければ。そう思う気持ちとは裏腹に、焦れば焦るほど足は言うことを聞かなくなる。
起き上がろうともがくうちに、やがてその灰色の肉体は人間のものへと戻ってしまっていた。
だが、そんなことを気にも止めずに体を支え、やがてどうにかバランス感覚を取り戻した。

そして頭を上げて前を向いたとき、そこにそれはいた。


「………」

全身真っ黒で、鎧を纏い、赤い線が所々に走った少女。
彼女の周囲を渦巻くどす黒い覇気が結花の知覚を刺激する。
そこにあるのは、ただ濃厚な悪意と殺意。

その瞳は冷たく無感情にこちらを見下ろしている。
そして、その手には黒く染まっていながらも芸術的なほど整った西洋剣。

「お前に恨みはないが、死んでもらう」

そう、感情もこめずに宣告を下した。

この人には、きっとオルフェノクに変身しても勝てないだろう。
そして、逃げを選んでも折れた翼では振り切れない。
ああ、ここまでなんだな、と心のどこかで感じ取った。




しかし、それを受け入れきることがどうしてもできなかった。

177暴君主権 ◆Z9iNYeY9a2:2013/07/07(日) 02:02:11 ID:6IW/hreg0

「…い、嫌…、助けて…、死にたくない…!」

震える声を発しながら、しりもちをついたまま後ろに下がる。
その恐怖はあの時デルタに襲われたときに感じたもの。
しかしここまで明確に迫った死の気配は、今の結花には受け止めるには重すぎた。

だが、一歩ずつ近付く足音は全く変わらない。

「ごめんなさい…、私が、私が悪かったです、だから、助けてください…。
 何でもします、何でもします…!……嫌…死にたく…」

今の結花には命乞いをすることしかできなかった。
地面に這い蹲り、怯える声で懇願を続ける結花。
そんな彼女を剣士はじっと見つめ、しかし無慈悲に振り下ろされる剣。


「いやぁっ!」

しかし、それが結花を切り裂くことはなかった。


「そこまで生きたいか?」
「…えっ?」
「そうやって地を這い、誇りを、尊厳を捨ててまで、貴様は生きたいのか、と聞いたのだ」

見下ろす視線は相変わらず冷たい。
しかし、発された言葉は小さくとも生きる希望だった。
肯定の意味を込めて、首を小さく縦に振る結花。


「ならば試してやろう」

と、剣士は黒い甲冑に包まれた足を結花の前に見せる。

「舐めろ」

告げられたのは3文字の言葉。
地面に蹲った結花の前に差し出された足。そしてなめろという言葉。

178暴君主権 ◆Z9iNYeY9a2:2013/07/07(日) 02:03:09 ID:6IW/hreg0

そういうことなのだろう。

ゆっくりと、その足に口を近づける。
結花にとってはこういったことは慣れた道だ。
人間として生きていたときは、ずっと養父母や義妹、友達に虐げられてきた。
多くの屈辱的な扱いもあった。肉体的な虐めもあった。
それらに比べれば、このくらいのことは何でもない。何でもないのだ。
そう、これは生きるために必要なこと。何もおかしなことはないのだから。

鎧は目と鼻の先まで近づき、その段階で結花は舌を出す。
そして、それが冷たい鎧に触れる。

その直前、足は後ろに下げられ舌が触れることはなかった。


「いいだろう、貴様は私の奴隷となってもらおう。
 支給品と食料の所有権はすべてこちらに渡してもらう。それと荷物持ちくらいはできるな?」
「…は…はい」
「あとは、そうだな。一応言っておこう。
 変な気を起こそうとするな。お前など、いつでも殺せるのだからな」

言葉通りに受け取るのであれば、どうやら自分は助かったらしい。
だが、安堵する心はなかった。

オルフェノクとなり、仲間と過ごしてきたことで忘れられた、あの虐げられてきた日々のことを思い出したから。
ああ、私はこんな姿になっても変われないんだ、と。

そんな思いが結花の心に影を落とし続けた。




セイバーが彼女、長田結花を生かした理由。
特に深い理由があったわけではない。

本来ならば、弱った獲物など殺さない理由はない。
ただ、ほんの少し。
地を這い、己の尊厳を捨て、差し出された靴を舐めようとしてでも生きたいと思う気持ち。
それに気まぐれが働いただけのこと。

179暴君主権 ◆Z9iNYeY9a2:2013/07/07(日) 02:03:49 ID:6IW/hreg0

生前現れることなどなかった彼女の暴君としての王の属性が、一人くらいなら奴隷を侍らせてもいいなどと思いついただけのことだ。
殺そうと思えばいつでも殺せる相手。しかし従うつもりがあるのなら、無理に今殺す理由もない。
桜の指示があれば別だが、今は傍にはいない。
だから、一度くらいはこういうのもいいだろう。

それだけのこと。

彼女はただ気まぐれから生き延びているだけ。
逆にいうなら、もし彼女がセイバーを害するようなことがあれば。
その刃は彼女の肉体を灰にするだろう。
黒き騎士にとって、この人間の存在などその程度なのだから。



【D-6 町村付近/一日目 午前】

【セイバー・オルタ@Fate/stay night】
[状態]:健康、疲労(小)、黒化、魔力消費(小)
[装備]:グラム@Fate/stay night
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]
基本:間桐桜のサーヴァントとして、間桐桜を優勝させる
1:人の居そうな場所に向かう
2:間桐桜を探して、安全を確保する
3:エクスカリバーを探す
4:間桐桜を除く参加者全員の殲滅。この人間(長田結花)は雑用係として使うが使えなくなったら殺す
5:クロエ・フォン・アインツベルンを探す
6:もし士郎たちに合った時は、イリヤスフィールが聖杯の器かどうかをはっきり確かめる(積極的には探さない)
[備考]
※間桐桜とのラインは途切れています
※プリズマ☆イリヤの世界の存在を知りました
 クロエ・フォン・アインツベルンという存在が聖杯の器に関わっていると推測しています

【長田結花@仮面ライダー555】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、翼にダメージ(オルフェノク態のダメージ)、仮面ライダー(間桐桜)に対する重度の恐怖
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜3
[思考・状況]
基本:???
1:死にたくない
2:黒い剣士(セイバー)に、殺されないために従う
3:仮面ライダー(間桐桜)に言われた通り、“悪い人”を殺す?
4:木場さんの為に、木場さんを傷つける『人間』を殺す?
5:乾さんに裁かれるなら―――?
[備考]
※参戦時期は第42話冒頭(警官を吹き飛ばして走り去った後)です
※自分を襲ったファイズが乾巧だと思っています

180 ◆Z9iNYeY9a2:2013/07/07(日) 02:04:15 ID:6IW/hreg0
投下終了です

181名無しさん:2013/07/07(日) 02:41:00 ID:JM35fUDM0
投下乙です
こうきたかw
セイバーオルタ……なんでドSな子!?

182名無しさん:2013/07/07(日) 17:56:29 ID:x3eSy55sO
投下乙です
マスターの桜に続いてそのサーヴァントのセイバーにまでイジメられるとは、結花……不憫な子……
こんな調子でバーサーカーにまで遭遇した日には……

ちょっと細かい点ですけど、指摘を
作中で黒く染まった西洋剣という描写がありましたが、グラムは金色のままですよ

183 ◆Z9iNYeY9a2:2013/07/07(日) 19:50:26 ID:Z41AFwbE0
>>182
指摘ありがとうございます
wikiにて修正しておきます

184名無しさん:2013/07/08(月) 00:31:12 ID:4B0EbHDg0
ヒャッホー!黒セイバー様のドSプレイだー!……失礼、取り乱しました
投下乙です。結花よ強く生き……いやこれはもう……

185名無しさん:2013/07/10(水) 14:35:15 ID:mkeU275o0
投下乙です

これは酷いw(褒め言葉)

186 ◆UOJEIq.Rys:2013/07/14(日) 13:41:20 ID:8rLnUPJ.0
これより、予約分を投下します。

187 ◆UOJEIq.Rys:2013/07/14(日) 13:42:01 ID:8rLnUPJ.0


 片手に三ずつ、計六つの爪が所狭しと奔りまわり、室内に備えられた家具を裁断する。
 ごく一般的な民家の屋内は、長い爪を武器とする呉キリカにとって狭所なのだろう。
 本来平穏な日常をすごせる筈のリビングは、刻まれた無数の傷痕にもう見る影もない。
 とは言っても、ある程度は長さを調節できるらしく、戦闘に困っている様子はない。
 その自在に伸長する爪が、殺人には十分な切れ味を以て襲い掛かってくる。

「――――――――」
 ソレをバゼットは、右腕一本で確実に捌いていく。
 戦闘が始まってからここまでに、バゼットは掠り傷さえ負っていない。
 その理由は二つ。

 一つはバゼットの使用する、硬化のルーンの刻まれた手袋(グローブ)。
 タングステン鋼を超える硬度のそれは、切断に特化したキリカの鉤爪を以てしても切り裂く事ができない。
 まともに食らえば真っ二つにされるだろうが、バゼットの守りを破るには、その爪を振るう筋力が足りていないのだ。
 そしてもう一つは、バゼット自身の戦闘能力だ。
 確かにキリカの速さは驚異的といえるだろう。だがバゼットは、その驚異的な速度の敵を、完全に捉えていた。

 まずは様子見と、バゼットが防御に専念しているのもあるだろう。
 しかしそれ以上に、両者の戦闘技術に圧倒的な差が開いているのだ。
 いかにキリカが魔法少女となり、幾体もの魔女を屠り、幾人もの魔法少女を殺していようと、所詮は中学生の少女にすぎない。
 対してバゼットは、キリカ以上の長い年月、封印指定執行者として数多の魔術師を殲滅してきた。
 そう。技術や経験など、戦闘面の全てにおいて、キリカはバゼットに大きく劣っているのだ。

 ……しかし。
 対するキリカもまた、バゼットの攻撃を一度も受けていなかった。
 無論、バゼットが攻撃をしていないからではない。むしろ殺れる、と確信したタイミングでは、足撃によるカウンターを叩き込んでいる。
 だがその瞬間に限って、キリカはさらなる加速を見せ、バゼットの一撃を躱して距離を取り、戦闘を仕切り直してくるのだ。

「ハハハッ! さすが大恩人! ここまで完璧に凌がれたのは初めてだよ! 今までのどんな相手よりも凄い!」
「……………………」
 鉄壁を誇るバゼットの守りに、キリカのテンションが上がっていく。
 その様子を機械的に観察しながら、バゼットはキリカの能力を推察していく。

 ――呉キリカ。自称・愛の魔法少女。
 その目的は織莉子という名称の個人の生存。
 言動は極めて不安定、かつ短絡的。しかし、上記の織莉子に関することは最優先される模様。
 使用武器は両手に具現化された爪。魔力で構成されているためか、形状変化が可能。なお、変形の限界値は不明。
 使用魔術は加速に属するものであることは間違いない。しかし、現状において張られた結界との関連性は不明。
 戦闘技術は中の上から上の下。加速能力によって相手を翻弄する戦闘スタイルが主と思われるが、経験の浅さからか、動作の一部に単調さが垣間見える。

 ――結論。
 対象の魔術効果を要留意する必要はあるが、現状においても撃破は可能。
 懸念事項があるとすれば、縫合したばかりの左腕だろう。キリカを確実に仕留めるには、左腕の使用は必要不可欠だ。
 しかし、一度でも使用すれば傷は開き、大量に出血する。そしてこの戦闘中に、出血を抑えている余裕はない。
 使用するのであれば、その行動を以て戦闘を決着させるほどの精度が求められる。
 キリカの戦力分析を終え、バゼットはそう判断を下す。

「ルビー、貴女の方はどうです? 彼女の使用する魔術の解析はできそうですか?」
『難しいですねぇ。どうやら彼女の使用している魔術は、私達とは“使用している言語が違う”ようなんです。
 ですので、まず先に使用言語を翻訳しないと、術式の把握すら困難な状態でして……』

 次いでバゼットは、ついでに回収しておいたルビーへと問いかけるが、その結果は芳しくなかった。
 魔法少女、と自称したことから、呉キリカは乾巧から聞いた、巴マミという人物と同じ存在――つまりは平行世界の住人だと予測できる。
 使用言語が違う、というのも、おそらくはそのあたりに関係しているのだろう。だが。

「そうですか。では貴女はそのまま術式の解析を。魔術そのものに対する対処法は、私自身でどうにかします」
 未知の魔術を相手にすることなど、封印指定の魔術師を相手にしていればそう珍しいことではない。
 ようするに、魔術を行使する術者自身を殴り飛ばしてしまえば関係ない、ということだ。

188 ◆UOJEIq.Rys:2013/07/14(日) 13:42:31 ID:8rLnUPJ.0

『了解です。それでは頑張ってくださいね。私も可能な限りは解析を続けますので。
 それにしても、この言語と術式。似たようなものをどこかで………』
 ルビーはそう言って、本格的に術式の解析を開始する。
 自分からは動けず、他に出来ることもない以上、それは当然の判断だった。

 そうして二人(?)の方針が決まると同時に、縦横無尽に動き回っていたキリカが不意に動きを止めた。
 その唐突な間隙に、バゼットは拳を構え、キリカへの警戒を強める。

「…………あきた」
 キリカは先ほどまでのテンションとは打って変わって、実に退屈そうに呟いた。
「強いのはいいけどさ、同じことの繰り返しでつまらないよ、大恩人」
「……理解しかねますね。戦闘とは相手を打ち倒すためのもの。遊興を求める必要はないと思いますが」
「確かにそうだけどさぁ、このまま続けたって何にも変わらないと思わない?」
「そうでもありません。貴女の戦力分析はほぼ完了しました。
 結論として、貴女は撃破可能な、ただの強敵であると判断できます」
「へぇ……言うじゃん。じゃあやって見せてよ、大恩人!」

 ジャキン、とキリカは左右“八枚”の爪を展開し、高速でバゼットへと接近する。
 その顔に浮かぶ表情は凶悪な笑み。やれるものならやってみろという、絶対的な自信に満ちていた。

「同じ展開はつまらない、と言いましたね。では、今度は私から攻めましょう」
 それを迎え撃つように、今度はバゼットが、リビングの床を踏み砕いてキリカへと肉薄する。
 完璧にタイミングを合わせたカウンター。
 これまでと同じように防戦に徹すると予測していたキリカは、バゼットの踏み込みに対応できず、懐への侵入を許す。

「ヤッバ――ッ………!!」
 キリカは咄嗟に“減速”による抵抗を試みる。
 が、しかし、それよりもなお早く、バゼットの一撃が振り抜かれた。
 結果行えた抵抗は、可能な限りの“減速”と、それによって生まれた僅かな猶予を用いての、後方への跳躍だった。

「ッ――――………!」
 バゼットの誇る文字通りの鉄拳が、キリカの胴体を深く穿つ。
 肺の中の空気が、一瞬で全て吐き出される。
 捩じ込むように打ち抜かれる一撃。身体はやはり文字通り殴り飛ばされ、激突した壁を粉砕して家の外へと弾き出される。
 そしてそのまま道路へと叩き付けられ、しかし倒れ伏すことなく立ち上がる。

「ッ、ガハッ……ハッ!」
 無理矢理に絞り出された酸素を求めて息を吸い、吸い過ぎた空気に噎せ返って咳き込む。
 心臓が破裂したかのような痛みを、痛覚を遮断してやり過ごす。

 ヤバかった。
 魔法が少しでも効果を発揮していなければ、体に穴が開けられていた。
 運が悪ければ死んでいた。それくらい強烈な一撃だった。
 だが………それはいけない。
 織莉子のため以外で死ぬなんて、許されていいはずがない!

「危ないじゃないか、大恩人ッ!!」
 キリカは両腕を大きく振りかぶり、両手の八つの爪を、粉砕された家屋から飛び出してきたバゼットへと向けて投擲する。
 同時に今度は、両手合わせて“四つ”の爪を具現化し、さらなる“減速”を以てバゼットへと接近する。

「――――ッ!」
 対するバゼットは、自身に向かって飛来する爪に対処するために足を止め、その直後に加速した爪に目を見開く。
 ――が対処できない速度ではない。
 投げ放たれた八つの爪の内、自身に当たるものだけを右拳で弾き飛ばす。
 そして爪に追いつく速度で接近してきたキリカへと、抉る様な左後ろ回し蹴りを叩き込む。が、しかし。

「鈍いッ! そんな鈍間な攻撃じゃ当たらないよ!」
 キリカはさらなる加速を見せ、バゼットの左足刀を掻い潜る。
 狙いは軸となっている右脚。そこを切り裂けば、碌に動くこともできなくなる。
 これで終わりだと、戦いの決着を確信して鉤爪を振りかぶる。

「!?」
 が、振り抜かれたはずの左脚が、ズン、と音を立てて地面へと突き立つ。
 直後に迫る、頭上からの『死』を孕んだ凶悪な圧力。
 ヤバイ! と直感が叫ぶ。
 考えるより先に、鉤爪をブレーキとして道路に突き立て、全力で後方へと飛び退く。

 その瞬間。
 顔の目前、ほんの数センチ先を、豪速の鉄拳が通過した。
 鉄建はそのまま地面へと打ち下ろされ、固く舗装された道路を粉々に粉砕した。

189 ◆UOJEIq.Rys:2013/07/14(日) 13:43:52 ID:8rLnUPJ.0

「うそーん………」
 弾き飛ばされた瓦礫とともに距離を取りながら、そのあまりの威力に目を疑う。
 あの瞬間、もし直感に従って飛び退いていなければ、間違いなく自分の頭は容易く粉砕されて道路のシミになっていただろう。
 ……いや、シミの付く道路すら残っていなかったに違いない。
 その事実を前に、キリカはようやく、自身が相対した敵の脅威を理解した。


「………やはり、よく避ける」
 拳を振り下ろしたまま、バゼットはそう呟く。
 隙の大きい左足刀を囮にしての、気付いたところ避けられない筈のカウンター。
 今までで一番確信のあった一撃なのだが、キリカは寸でのところで気づき、その上で回避して見せた。

 この交戦で得た情報は二つ。
 一つは投擲後に速度の上がった八本の爪。
 通常、投擲されたものが何の支援もなく、その後加速することはあり得ない。
 呉キリカの能力を考えれば有り得ないことではないが、それでも違和感は残る。

 そしてもう一つは、キリカの速度に対する、爪によるブレーキに要した距離だ。
 物体というものは、より速く加速すればするほど、停止するのに長い距離を必要とする。
 だというのにキリカは、道路の強度、爪の長さでは止まれないはずの短距離で緊急停止して見せた。
 つまりバゼットの予測よりも、キリカが要した停止距離が短かったのだ。
 キリカが回避できないはずのカウンターを回避できたのは、それが理由だ。

 高速で動くキリカ。効果の分からない結界。投擲後に加速した爪。短すぎる停止距離。
 ……あと一つ、何かしらの違和感を見つければ、キリカが使用する魔術の正体が判明するはずだ。
 そのためには、物理的に回避不可能な状態で、攻撃を叩き込む必要がある。

「―――行きます」
 砕けた道路を更に踏み砕き、バゼットはキリカへと接近を挑む。

 いかに肉体を加速させようと、その加速力を発揮できない状態になれば、停止しているのと変わりはない。
 その隙に一撃を叩き込めば、キリカとて避けられないはずだ。
 だが、もしそれでも避けられたのであれば、キリカの加速は通常のそれとは違う法則でなされているということになる。
 故にそれを以て、呉キリカの能力を暴き出す。


    ◇


「イリヤ、大丈夫か……!?」
 あれから市街地を駆け抜け、安全と思われる距離まで離れたところで、そう声をかける。
 バゼットがあの呉キリカという少女と戦っている民家は、もう視認できない。バゼットの実よくは知らないが、自ら殿を申し出てきた以上相当に戦えるはずだ。
 仮にあの少女がバゼットを置き去りに追いかけてきたとしても、すぐに追いつかれることはないだろう。

「うん、私は大丈夫だよ」
 痛みに苦悶の表情を浮かべながらも、イリヤは気丈にもそう口にした。
 それが自分に心配を掛けまいとしての事だと悟って、自身の情けなさに歯を噛みしめた。
 その表情を見咎めてだろう。イリヤはより強く、大丈夫だと口にする。
「……ああ、そうだな。安心した」
 だからこれ以上心配を掛けまいと、そう言って無理矢理に笑顔を浮かべた。

「おい、とっとと安全な場所に行くぞ。ここもまだ安全とは言い切れねぇんだ」
 そこに巧が先を促すように声をかけてくる。
 おそらく、場の雰囲気を変えるためだろう。その不器用な心遣いが、今は正直にありがたかった。

「それで、これからどうすんだ。それほど深い傷じゃなくても、手当は必要だろ」
「ああ、わかってる」
 そう言いつつ、この会場の地図を思い出す。
 最後に確認した現在位置は、確か【G-3】だったはずだ。……なら、隣のエリアである【G-2】には、穂群原学園があったはずだ。
 そこならばまず間違いなく保険室があり、付近の民家よりも十分な手当てができるだろう。
 それにその場所は地図に載っているため、合流地点としても目印にし易い。
 同時に他の参加者――つまりは危険人物が集まってくる可能性もあるが、今それは後回しだ。
 イリヤも巧も、あの少女から攻撃を受けて血を流している。早急な手当てが必要だ。
 ……あの開戦で怪我をしていないのは、自分だけだ。

「…………。気にするなとは言わねぇけど、そんな辛気臭ぇ顔すんな。
 俺はもうオルフェノクだから、ただの人間よりは傷の治りは早い」
「わ、私も、ルビーがいればこんな傷すぐに治せるから、心配しないで、お兄ちゃん」
「そうなのか? なら早くルビーに頼んで……って。あれ、ルビーは?」
 イリヤの言葉に、早く彼女の傷を治してもらおうとルビーを探すが、あのハイテンションな杖の姿はどこにも見当たらない。

190 ◆UOJEIq.Rys:2013/07/14(日) 13:45:01 ID:8rLnUPJ.0

「わかんない。気づいたらどこにもいなかったの」
「……………………」
 考えられるとすれば、あの戦いの最中に取り残してきた、といったところだろうか。
 あの場所ではバゼットとあの少女が今も戦っているはずだ。そこへ戻るのなら、少なくともあの少女の攻撃を防げるだけの実力がいる。

 ――ルビーがおらず、転身できないイリヤは論外だ。
 垣間見た能力から、あの少女は高速戦闘が得意だと予測できる。あの場にルビーがいたとしても、転身する前の生身を狙われてしまえば一たまりもない。
 ――いまだにダメージの癒えない巧にも任せられない。
 彼の身体能力も、おそらくスピードに寄っている。なら同じく高速戦闘が得意であろうあの少女に対しては、残るダメージの分不利を強いられてしまう。
 ――となれば、残る選択肢は二つだけだ。
 バゼットを信じ、彼女に全てを任せるか、いまだダメージの少ない衛宮士郎が加勢に向かうかの二択。
 なら俺がとるべき行動は―――。

「………巧、イリヤを頼む。二人で穂群原学園に向かってくれ。
 俺はバゼットを手伝いに行く。ルビーもそこにいるはずだ」
 まっすぐに巧を見つめて、そう口にする。
 彼の事はまだよく知らないが、それでも信頼できると判断しての言葉だ。

「は? お前、何言って―――!」
「そうだよ! バゼットさんならきっと大丈夫だよ! あの人、バーサーカーみたいに強いし!」
「けど、左腕に重傷を負ってる」
「それは………っ!」

 確かにバゼットの戦いを見たことはないが、彼女の事を信頼していないわけじゃない。あのセイバーと戦い、生き延びたという時点でその実力は確かなものだ。
 だがその代償は、左腕への致命的なダメージ。応急処置こそされているが、動かすだけで精いっぱいのはずだ。

 対して、自らを魔法少女と名乗った呉キリカという少女の戦闘能力は未知数。高速戦闘が得意だと予想できるが、それだけだ。
 万全の状態ならともかく、もし左腕の傷が開き、持久戦に持ち込まれてしまえば、途端に勝ち目は低くなる。

 ならばせめて、バゼットの代わりとなって攻撃を引き受け、そして受け止める“盾”がいる。
 そして二人が戦えない以上、それができるのは俺しかいない。

「ッ、バカかお前は! テメェ一人が加わったくらいでどうにかなるとでも思ってんのか!」
「そんなことは思ってない。けど、何かの助けにはなるかもしれないだろ?
 それにイリヤの怪我だって、早く治してやった方がいいことは確かなんだ」
「そのためにテメェが死んじまったら、何の意味もねぇだろぅが!」
「死なないさ」
 更にもう一度、俺は死なない、と。繰り返し強く、覚悟を込めて口にする。

 そう、こんなところでは死ねない。なぜならやるべき事が、まだ沢山残っている。
 イリヤを守らなければいけない。セイバーを止めなければいけない。藤ねえたちを助けなければいけない。
 それに何より―――桜のもとへと、辿り着かなければいけない。

 そう簡単に、こんなところで終わるわけにはいかないのだ。

「確かにあのキリカって少女は早かったけど、決して見切れないほどじゃなかった。防御に専念すれば、対抗できるはずだ。
 そうすればバゼットだって、多少の余裕はできるはずだ。
 ………それにいざとなれば、奥の手だってあるしな」
 言って、赤布(ひだりうで)に視線を落とす。
 そこには人の身に有り余る力が、静かに開放の時を待っている。
 使えば死ぬ。、右手を左腕にそえた。
 瞬間。

「ダメッ!!」
 今までにない必死さで、イリヤが声を荒げた。

「イリヤ?」
「だめだよお兄ちゃん……“それ”だけは、絶対にだめ……!
 だって、死んじゃうんだよ……? ううん、きっと、死ぬよりひどいことになる!
 やだよ………私、そんなのやだ……。お兄ちゃんが死んじゃったら、私……!」

 今にも泣きだしそうな顔で、イリヤはそう口にする。
 大切な家族を失う予感に怯え、自分ではなく俺に迫る死に震えている。
 けれど俺には、この腕を使わないと、そう約束することはできなかった。
 ――――使えば死ぬ。
 それを解っていながら、いつか必ず、この腕を開放する時が来る。そんな確かな予感があった。
 だから、彼女の涙を止める術は、俺にはない。

191 ◆UOJEIq.Rys:2013/07/14(日) 13:45:59 ID:8rLnUPJ.0

「言っただろ、イリヤ。俺は死なないって」
 だから俺にできることは、ただ強がることだけだ。
 少しでも彼女が安心できるように、精一杯の笑顔を見せる。

「それにさ、兄貴ってのは、妹を守るもんなんだ。
 なのに妹に守られてばかりじゃ、兄貴の格好がつかないだろ?」
「お兄……ちゃん……?」
 ぽん、とイリヤの頭に右手を置いて、来た道を振り返る。

「じゃ、行ってくる。巧、イリヤの事を頼んだぞ」
 返事がかえってくるより早く走り出す。
 今は少しの時間さえ惜しい。体力の温存を考えず、最初から全速力で駆け抜ける。
 バゼットに加勢し、ルビーを見つけ、再びイリヤと合流するまでの時間は、可能な限りに短い方がいい。



「ま、待ってよお兄ちゃん……!」
「あ、おい、お前の方こそ待てって!」

 そうして走り去った士郎をイリヤはすぐさま追いかけ、それを思わず、巧がは慌てて追いかけた。
 だが元々走るのが得意なイリヤに、人間態のままの、いまだダメージの残る巧では追いつけない。
 怪人態になればすぐに追いつけるだろうが、この調子では変身している間に見失いかねない。

 しかし同時に、士郎の走る速さは異常さに、彼は本当に人間なのか、と、自分の事も忘れて驚愕した。
 追いかけだして三十秒と経っていないというのに、二人はもう士郎の背中を見失いかけている。
 目的地は分かっているため、最終的には合流できるだろうが、途中で追いつくことはできないと確信する。

 だがそれ以上に、巧は身分の行動を訝しく思っていた。
 なぜ自分は、彼女たちを追いかけているのだろう、と。

 あの二人から離れるのなら、今が絶好の機会だ。
 一応助けられたとはいえ、少女を守る義理はない。
 何より自分のような化け物は、彼らの傍に射るべきではない。

 ……だというのに、今こうして少女を追いかけている。
 それは彼女を一人にすることが危険だからか。それとも士郎に彼女を頼まれたからか。

 ―――イリヤを頼む。
 士郎はそう言って、巧にイリヤを託した。
 怪物である彼の事を、微塵も疑っていない信頼。

「……死ぬって、なんだよ……」
 士郎が死ぬと、イリヤは言った。
 それがどういう意味なのか、巧にはわからない。
 だが士郎は、それを承知で戻って行った。
 自分の家族を、こんな怪物に託して。

 ………わからない。
 どうしてそこまで、出会ったばかりの化け物を信じられるのか。
 どうしてそんなにも、まっすぐな目をしていられるのか。
 どうしてそんなふうに、誰かのために頑張れるのか。

 どうして、自分が死ぬと解っていて、それでも笑っていられるのか。

「チクショウ……! 俺は……っ」
 抑えきれない感情に、堪らず声を荒げる。
 化け物は一緒にいるべきではない。一刻も早く彼女たちとは別れるべきだと。
 そんなことは分かっているのに、それでも託された少女を見捨てられず、士郎の事も放っておけず、巧は二人を追いかけ続けた。


     ◆


 バゼットの鋼の硬さを誇る拳が、キリカの肉体を打ち砕かんと暴威を振るう。
 高速で打ち出されるジャブは、それだけで十分な威力を伴っている。
 シャープ&ヘヴィ。
 そのマシンガンのごとき連打をまともに受ければ、いかな魔法少女とて一溜りもないだろう。

“こりゃ、結構ヤバイかなぁ”
 内心でそう呟きながら、キリカは“減速”を最大限に活用してバゼットの攻撃を躱す。
 振り抜かれたバゼットの鉄拳が、髪を数本巻き込んで米神を掠めていく。

192 ◆UOJEIq.Rys:2013/07/14(日) 13:46:48 ID:8rLnUPJ.0

 牽制の一撃でさえ驚異的な威力を誇るバゼットは、その一撃を確実に決めるためにキリカへと攻め込み、
 速度では圧倒的に勝るが一撃が軽いキリカは、決してその一撃を食らうまいとバゼットから距離を取る。
 事ここに至って、両者の攻守は完全に逆転し、長期戦の様相を呈し始めていた。

 しかし、この状況のまま持久戦を続けるのはマズイ。
 何故ならソウルジェムの濁りが、すでに四割を超えて五割に達しようとしているからだ。
 ただでさえ魔力の消費量が増えているというのに、バゼットは普段以上の出力での魔法行使を強要してくる。
 もし魔力の節約なんて考えれば、その瞬間にバゼットに殴り飛ばされるに違いない。

 ――先ほどのバゼットの言葉が思い出される。
 彼女は自分の事を、『撃破可能な、ただの強敵』と言った。
 正しくその通りだ。現に今こうして、少しずつ、着実に追い詰められている。
 あと一手。バゼットの手数が増えていれば、とっくの昔に自分は倒されていただろう。

 極限まで洗練された高速のコンビネーション。
 人間業とは思えない、受ける相手に同情したくなるような右ストレート。
 もし頭部に直撃すれば、首から上はトマトか何かのように吹き飛ぶことだろう。
 そしてこの場合、相手とは自分のことで、吹き飛ぶのは自分の頭ということになる。

 ……思わず自分の首なし死体を想像して、実際に有り得そうな顛末にぶるりと肩を震わせた。
 織莉子の事がなくても、マミって飛頭蛮になるなんて死に方は勘弁願いたい。
 ところでマミるってなんだろう。

「ん?」
 ふと、バゼットの攻撃に違和感を覚える。
 現在進行で自分を追い詰めるコンビネーションの、足りない一手に気付く。
 そうだ。
 彼女はこの戦いで、右腕と両脚しか使っていない。“まだ一度も左腕を使用していない”のだ。

 突破口はそこだと、キリカの直感が告げる。
 何か、理由があるはずだ。左腕を使わない、あるいは使えない理由が。

 改めてバゼットを観察する。
 彼女と別れた時の状況、彼女の目的を思い出す。
 出会った時の彼女と、現在の彼女との差異を見つけ出す。

「ははーん。そういうことか」
 二度目となる勝利への確信に、思わず顔がにやける。
 どうやら持久戦を避けたいのは、バゼットも同じらしいと直感する。
 なら勝利は目前だ。織莉子のためにも、今すぐそこへと向けて駆け出さなければ!


「………………」
 不意に笑みを浮かべ突撃してきたキリカに、バゼットは目を見開きながらも冷静に対処する。
 回避を重視していた彼女が、唐突に接近してきた理由は分からない。
 だが接近戦を挑むというのであれば、好都合だ。彼女の能力を掴む機会が増える。

「シッ――――!」
 相手の速度に合わせたカウンター。時速八十キロを超える右ストレートは、しかし。当然のごとく避けられるだろうと予測できる。
 キリカの魔術の正体が判明していない以上、これまでがそうだったように、少女の肉体を捉えることは難しい。
 故に重要なのは、その次。
 キリカがこの一撃をいかに避けるかを見極め、それに合わせた追撃を放つかだ。

「ハハッ――――!」
 己の顔面へと正確に放たれた鉄拳を目前として、キリカはなお笑みを浮かべる。
 それはつまり、自身の能力に絶対の自信があるということの証明だ。

 ――さあ、この一撃にどう対処する。
 ほんの僅かな挙動も見逃すまいと、少女の全身を凝視する……その瞳が、驚愕に見開かれた。

 キリカの取った行動は、やはり回避。
 それも当然。少女の矮躯では、私の右ストレートは受けられない。
 しかしその回避方法は、後方への退避でも、左右への旋回でも、拳を掻い潜ってのカウンターでもない、予想外の方法だった。

「――――、な!」
 その方法に、思わず声を上げた。
 なんとキリカは、八十キロで突き出された右拳を、跳び箱でも跳ぶかのように片手を添えて飛び越えたのだ。
 その行為自体は不可能ではない。高速で動く物体にぶつかったとしても、その速度が破壊力に代わる前に受け流してしまえば、ダメージは受けないからだ。
 だが百キロ近い物体を真正面から受け止め、しかもアクロバティックな動きを加えて飛び越えるなど、これまでに把握した少女の力量では不可能なほどの技量が必要だ。

193 ◆UOJEIq.Rys:2013/07/14(日) 13:47:30 ID:8rLnUPJ.0

 しかし、そのことについて考えている余裕はない。
「ッ…………!」
 しまった。と口にする余裕もない。今の一手で、完全に背後を取られた。
 即座に後ろへと左回し蹴りを放ち、キリカへと牽制する。
 が、しかし。
 それさえもキリカは、低い柵でも乗り越えるかのように、ぽん、手を当てて跳び越えた。

 そしてキリカは、跳び越えた勢いのままにドロップキックを放った。
 その狙いは――左腕。少女は明らかに、こちらの弱点を狙ってきていた。
 されど、攻撃中の隙を狙われ、高速で放たれたその一撃を避けることはかなわず、結果―――。

「グッ、ヅ………ッ!!」
 苦痛の声とともに、数メートルほど蹴り飛ばされる。
 攻撃を受けた左腕は、早くも傷が開き、赤い血に濡れていた。

「やっぱりね! 大恩人ってば、あの魔女と戦って怪我してたんだ!」
 その結果をもたらしたキリカは、心底楽しそうに声を上げている。
 バゼットへと有効打を与えたことが、それほどまでに嬉しいのだろう。

「………油断、しましたか。ですが」
 そんなキリカを傍目に見つつ、バゼットは最後のピースを拾い上げる。
 今の攻防。少女の技量では有り得ない回避と、受けた一撃の、あまりの“軽さ”。
 それが、呉キリカの魔術の正体だ。

 キリカの一撃は、左腕の傷を開くには十分だったが、放たれた速度に対してあまりにもダメージが少なかった。
 あの速度で放たれたキックならば、少なくともこの戦闘中は左腕を使用不可能にするほどの威力があるはずだ。
 だというのに左腕は、傷こそ開いてしまったが、動かすことに何の支障も出ていなかった。
 ピンポン玉でさえ超高速で放たれればラケットを破壊し得るというのに、キリカは攻撃速度に対し、一撃の重さが合っていないのだ。

 となると、その答えは自ずと絞られていく。
 今までに出てきた違和感を統合し、自身とキリカの速度対比はそのままに、その一撃の軽さと速度の関係を正す。
 そうして出てきた答えに、バゼットは瞠目した。なるほど、それならばすべてに説明が付く、と。

 そう。キリカの魔術は、“自己の加速”ではなく、“他者の減速”だったのだ。
 おそらく効果のわからなかった結界が、その対象に“減速”をもたらす起点なのだろう。
 しかも現在に至るまでに気が付けなかったことから考えて、空間そのものに作用するタイプであると考えられる。
 効果の対象の選別も可能である事から、強力な味方がいる状況であれば非常に強力な魔術だといえるだろう。
 ……ただし、対象の対魔力を考えなければ、だが。

 更に彼女の魔術の欠点として、分かったことはもう一つある。
 即ち、キリカの使用する魔術の効果と、具現化された爪の数は反比例している、ということだ。
 爪自体が魔力で構成されているためだろう。どうやら“減速”に魔力を割けば、爪の維持ができなくなるらしい。
 それが速度において常に優位にあった少女が回避に徹してきた理由であり、先ほどのカウンターがドロップキックであった理由だ。

「……………………」
 とは言っても、その欠点だけではこちらの不利は覆らない。
 なぜなら両者の速度対比が変わらない以上、結局は加速していることと変わりはないからだ。
 しかもこちらを”減速”させるほどに減る爪も、切り裂くことに特化しているなら使い方次第でどうにでもなる。

 ――加えて左腕の出血。
 止血するだけなら問題ないが、そんな余裕はまず生じないだろう。
 故に血を失い消耗する前に、早急に戦いを終わらせなければならなくなった。

 ……そのために必要な情報は、少女の魔術の効果範囲だ。
 魔術効果が自己加速でない以上、それさえ解明すれば、少女は敵ではなくなる。
 この厄介な“減速”の範囲から逃れてしまえば、自身と少女との速度差はなくなってしまうからだ。

「ルビー」
『そちらの方の解析はとっくにできてますよ。
 どうやら結界自体は先ほどの民家を中心に張られているようですが、魔術効果は彼女を中心として発揮されているようです。
 加えて結界内から逃げ出そうにも、現状彼女の方が“速い”ですからねぇ』
「抜け出す前に追いつかれるか、新たな起点を張られるだけ、ですか」
『はい、そういうことです』

194 ◆UOJEIq.Rys:2013/07/14(日) 13:48:44 ID:8rLnUPJ.0

 ルビーのその答えに、バゼットは静かに嘆息する。
 要するに、キリカと相対する限り、彼女の魔術からは逃れられないということだ。
 無論、彼女の魔術を完全に解明したわけではないので、何かしらの突破口はあるかもしれない。
 だがそれを探っている時間は、今のバゼットには残っていなかった。
 このまま戦い続けたところで、いずれは出血によって体力を失い、こちらが不利になるだけだ。
 ならばこれ以上消耗する前に、こちらの“切り札”を切るべきだろう。しかし。

「………ラックは、対サーヴァント級用に温存しておきたかったのですが、仕方ありませんね」
 三度しか使えない奥の手を、自身のミスによって切らざるを得ないことに、バゼットは独り言ちる。
 それを聞いたルビーが、若干申し訳なさそうに謝罪を口にする。

『すみません。ゲスト登録(奥の手)を使えれば、腕の怪我くらいすぐに治癒できたんですが………。
 ま、バーサーカー女に乙女パワーなんて、望むだけムダでしょうけどね』
「……ルビー。後で殴ります」
『ブッ!? なにゆえに!?』
 ルビーへと処刑宣告をしつつ、バゼットは戦法を組み立てる。

 この“減速の結界”の影響力からして、これが呉キリカの“切り札”であることは間違いないだろう。
 だがラックが反応していないところから鑑みるに、“切り札”と呼べるほどの効力はまだ発揮させていないと思われる。
 あるいはルビーと同様、ラックの発動条件の方に何かしらの制限が掛けられている可能性もあるが、そちらは現在把握しようがないので慮外する。
 となるとラックを使用するためには、“切り札”級の効果を発揮させるほどに少女を追い詰める必要があるわけだが。

「さぁどうする? 大恩人。
 このまま我慢比べを始めるかい? それとも、諦めて織莉子のために死んでくれるかい?」
「……………………」
 キリカの挑発に、バゼットは黙して答えない。
 キリカの減速魔術に対し、後の先を取る迎撃礼装のフラガラックは相性が悪い。
 なぜならば、キリカが回避に徹すれば彼女を追い詰めることは難しくなり、結果不利な消耗戦に持ち込まれるからだ。
 ―――あと一手。彼女に対抗し得る“何か”が必要だ。そしてその何かは、

「―――無事か、バゼット!」

 彼女の予想しなかった形でやってきた。


     ◆


 ――――少し、異常だった。

 バゼットのもとを目指して走る速度は、自分の知る衛宮士郎の脚力を遥かに凌駕している。
 時速五十キロ近いオーバーランニング。イリヤ達と別れた地点に辿り着くまでの距離を、その半分の時間で駆け抜けている。

「は――――はあ、はあ、はあ、は………!」

 溺れているみたいに息が上がっている。
 心臓が破裂しそうなほど激しく脈打っている。
 当然だ。当たり前の限界を超えている。これはもう人間の出せる速度じゃない。
 何かしらの武術を学んだ魔術師あたりならおかしくはないが、衛宮士郎(オレ)はまだそこまで人間を辞めていない。

 だというのに、苦しくない。いや、苦しいと感じる機能が働いていない。
 この程度は出せて当然の速度だと、脳内の己の限界を測る器官が誤認している。
 勘違いしている。今の衛宮士郎に、そこまでの性能はない。それを可能としたのは俺ではなく、――――

「―――無事か、バゼット!」
 もはや廃屋寸前の家屋の前。
 襲撃を受けた民家のすぐ近くに、バゼットと呉キリカの二人はいた。

 両者はともに健在。
 呉キリカからは然したるダメージは見て取れず、
 対するバゼットは、やはりというべきか、左腕を血で赤く濡らしていた。

「衛宮士郎!? なぜここに!」
『あー……。もしかしたらとは思っていましたが、やっぱり来ちゃいましたか』

195 ◆UOJEIq.Rys:2013/07/14(日) 13:49:37 ID:8rLnUPJ.0

 バゼットの方から、ルビーの声が聞こえてきた。
 予想通り、襲撃の際に置き去りにしていたらしい。
 そのことに、ルビーを探す手間がかからなくてよかったと安堵する。

「なーんだ。戻ってきちゃったんだ、キミ。せっかく大恩人が足止めしてくれてたのに。
 ま、大恩人を殺したら追いかけて殺すつもりだったから、結局は些細な違いだけどさ」
「…………!」

 恩人を殺すと、至極当然のように口にされた言葉に、干将莫邪を構えて少女を警戒する。
 バゼットが彼女にどれほどのダメージを与えたのか、その様子からは察することができない。
 だがバゼット自身も、左腕を除けばほぼ無傷な様子から、少なくとも互角以上の戦いは行っていたのだろう。

「なぜ戻ってきたのですか、衛宮士郎! この場は任せるようにと言ったはずですが!?
 それと、イリヤスフィールと乾巧はどうしたんですか!?」
「イリヤたちは怪我をしていたから、二人とも穂群原に向かわせた。俺が戻ってきたのは、ルビーを探すためだ。
 それに、アンタが強いのは予想できるけど、さすがにその腕じゃ厳しいだろ」
「っ…………!」
『ふむふむ。確かに学校なら傷の処置が可能で、私がいれば治癒もできる。
 さらには私を探すついでに、半重症のバゼットさんに加勢する、と。
 なるほど、見事に論破されちゃいましたね』
「……………」
 茶化すようなルビーの言葉に、バゼットは苦々しい顔をする。
 自ら任せろといった役目を、一人で完遂できなかったことが悔しいのだろう。

「……私の不甲斐なさは認めましょう。
 ですが、あなた自身はどうなのです? 呉キリカに対抗できる自信があると?」
「そこは何とかする。倒すことはできなくても、盾や囮くらいにはなれると思う。だから――」
「その間に私が呉キリカを討つ……攻撃と防御の役割を分担するということですね」
「そういうことだ」
 呉キリカの強さがどれ程かは判らないが、片腕の使えないバゼットが互角を張れる程度なら、十分対抗できるだろう。
 ならば二人でかかれば、バゼットにかかる負担も減り、キリカを倒すこともそう難しいことではなくなるだろう。

『ま、それくらいはできるでしょうね。今の士郎さんは左腕の影響を受けて、多少は英霊の側に引っ張られてますから』
「……え? ルビー、今の、どういう」
「左腕……? なるほど、そういうことでしたか。ならば多少は当てにしても大丈夫ですね。では、戦闘を再開しましょう」
 一人納得したバゼットが両腕の拳を構える。
 会話の間も向け続けていた警戒心が、戦意となってキリカへと向けられる。
 対するキリカは、何かを悩むように頭に手を当てていた。

「ほむらはら……学校……そんな場所、この近くにあったっけ……?
 うーん……まあ、でも、その、あれだ、些細だ。君たちを殺してから地図を見れば、分かることだしね」
「ほう。先ほどまでの状況ならともかく、この二対一の状況でまだ勝てると?」
「当然! だって愛は無限に有限だからね。織莉子に無限に尽くす限り、私の力は無限に湧き続けるんだ!」

「………! ちょっと待ってくれ!」
 少女の言葉に、思わず口を挟む。
「アンタ……どうして殺し合いに乗ったんだ?」
 彼女は今、織莉子に尽くすといった。それはつまり、呉キリカは、織莉子という人物のために戦っている、ということなのか?
 もしそうなら、自分たちが殺し合う理由はないんじゃないのか?
 ……なんて、仄かに抱いた希望は、

「無駄です、衛宮士郎。彼女は説得に応じるような人間ではありません」
「そうそう。私を懐柔しようっていうんなら無駄もいいところだよ、少年。
 私は愛しい人を生き残らせるためにみんな殺して回るつもりだし、そうじゃなくても、魔法少女は皆殺しにするつもりなんだ」
「な―――!」
 それはつまり、この殺し合いとは関係なく、イリヤを殺すということか?
 いや、イリヤだけじゃない。彼女は魔法少女と呼ばれる存在なら、誰であろうと殺すつもりなのだ。
 ただ一人、彼女に織莉子と呼ばれた少女を除いて。

「それに第一、織莉子には私だけがいればいい。
 他の誰の手も借りない。他の誰の手も届かせない。
 織莉子は私が守ってみせる。そう! 死が二人を別つまで!!」
「――――――」
 少女は狂気を滲ませた声で、踊るようにそう告げた。
 言葉を失う。それが、少女の愛だというのか。
 ただ一人を救う。そのために彼女は、誰も彼をも殺そうというのか。

196 ◆UOJEIq.Rys:2013/07/14(日) 13:51:12 ID:8rLnUPJ.0

「……違う。おかしいだろそんなの!
 それじゃあアンタはどうなるんだよ! この殺し合いに乗ったって、たった一人しか生き残れないんだぞ!
 最後に二人だけ生き残ったって、結局は―――」
「その時は当然! 織莉子のために私が死ぬだけだよ。
 なぜって? そんなの決まってる。織莉子のいない世界でなんか、生きてる意味がないからね!」
「っ――――!」
 今度こそ絶句した。
 愛した人のために死ぬと、少女は胸を張って答えた。
 そうでなければ、生きている意味がないと断言した。

「キミ、愛を嘗めてないかい?」
「え………?」
 少女はつまらないものでも見るかのようにこちらを見た後、狂気を孕んだ声で自らの“愛”を語りだす。

「愛はすべてだ。
 相手に生きて欲しいけど自分は死にたくないなんて、愛の本質とは言えないっ。
 いい? 本当の愛っていうのは、相手にすべてを捧げることだよ!?
 心はもちろん、体も、命も、生きる意味さえも捧げて相手に尽くすことを言うんだ!!
 そう! 相手のために自分の在り方を作り替えるぐらいじゃないと、愛なんて決して言えない!!!
 ―――言っただろう? 愛は無限に有限だって。
 私は“愛(そ)”のために――織莉子に出会うために! 織莉子と話し合うために!! 織莉子へ無限に尽くすためだけに魔法少女になったんだからッ―――!!!」

「あ………う………」
 吐き気がする。
 狂愛。己の意志を自ら捻じ曲げるほどの激しい恋慕。
 少女の言葉が理解できなかったのではない。
 むしろその逆。心のどこかが彼女に共感しそうになった事に、理性と感情が拒絶反応を起こしたのだ。


 ―――俺は、衛宮切嗣(せいぎのみかた)に憧れてた。
 切嗣のあとを継いで、切嗣の憧れた正義の味方になろうと走り続けた。
 けれど俺は、正義の味方にはなれなかった。
 正義の味方では、桜を救えなかった。

 “―――約束する。俺は、桜だけの正義の味方になる―――”

 あの雨の中、桜を抱きしめて、俺はそう誓った。
 桜を守るために、憧れた夢(正義の味方)を諦めた。
 なのに、俺は今、迷っている。
 人々を食らう影の正体が桜だと知って、揺らいでいる。
 桜を赦すのか、それとも殺すのか、決められないでいた。

 そんな心で、本当に桜の事が好きだと言えるのだろうか――――


「しっかりしなさい、衛宮士郎!」
「―――っ!」
「あなたが何を悩んでいるかは知りませんが、それは後です。
 今は彼女の撃破を優先してください」
「あ、ああ。わかってる。……わるい、手間かけさせた」

 バゼットの叱咤に、気を取り直す。
 そうだ、今は悩んでいる場合じゃない。
 桜の事をどうするにしても、今は呉キリカを倒さなければならない。
 さもなくば彼女は、イリヤも、桜も、藤ねえも、きっとその手にかけようとするのだからだ。
 それだけは、在り方を見失っている今の俺でも見過ごせない。

「―――だから、私は織莉子に無限に尽くす!
 全ての魔法少女を殺すことも、恩人を故人にすることも、最後に私が死ぬことも、無限の中の有限だ!」

 愛しい人に無限に尽くすという、自らの“愛”を実現するために、より狂気を開放する呉キリカ。
 黒衣の魔法少女は両手に六本の爪を具現化し、俺たちへと襲い掛かってくる。

「応戦します! 決して足手纏いにはならぬよう!」
「バゼットも、無理はするなよ!」
 黒衣の少女の突撃に応じるバゼット。
 俺は彼女に遅れまいと、干将莫邪を構えて攻め込んだ。

197 ◆UOJEIq.Rys:2013/07/14(日) 13:53:10 ID:8rLnUPJ.0


     ◆


 陰剣干将を払い、魔力で構成された左の爪を弾く。すると残る右の爪が、一瞬も空かさず襲い来る。
 その一撃を受け止める陽剣莫耶。同時に穿つように干将を突き出すが、左の爪で受け止められる。
 重なり合う右の攻めと左の守りに、お互いの動きが一瞬硬直する。

 ―――その一瞬のスキをついて、バゼットが一撃必殺の回し蹴りを放つ。

「っ…………!」
 顔の数センチ先を掠めていく足刀。
 当たらないと解っていても、その威力に思わず肝を冷やす。
 それほどの思いをしていながら、標的であった少女はすでに回避している。

 まったくもって逃げ足の速い。
 その一撃の恐ろしさを身に染みて知っているためだろう。呉キリカは決して回避が遅れるほどの深い攻め込みはしてこない。
 まるでネズミをいたぶる猫のように、少しずつ、しかし着実にこちらを追い込もうとしてくる。

 ―――その狙いは正しい。
 赤く染まった左腕。血を流し続けるその傷は、加速度的にバゼットの体力を削っていく。
 だが五分、十分と時間が経つごとに、その消耗は取り返しがつかなくなっていく。
 その果てに襲い来るのは、疲弊した命を刈り取る、狂情の爪だ。

「ハッ――ハッ――!」
 逃げ回る少女へと追い縋る。
 キリカはバゼットを優先して狙っている。
 それも当然。衛宮士郎とバゼット、そのどちらが危険かなど比べるまでもない。
 手負いのバゼットは激しく動くほどに消耗するのだから、弱者の俺など後回しにしても問題ない。
 故に、そうはさせまいと自ら少女へと攻め込み夫婦剣を振るう。そうすることで、少しでもバゼットの消耗を軽減する。

「――ッ、ハ………ッ!」
 呼吸が乱れる。酸素が取り込めず行き渡らなくなり、視界が霞み始める。
 衛宮士郎では有り得ない運動性能の発露に、肉体が悲鳴を上げている。
 高速で駆け回るキリカの姿が、次第に捉えられなくなっていく。

 ―――なのに、その動きを予測できている。
 呉キリカの狙い。その動きの一瞬先を垣間見る。

「ッハ―――ハ―――ッ、はああッ……!」
 見知らぬ剣技、未知の経験が体を動かす。
 一合する度に崩壊する。一合する度に再生する。
 呉キリカの六爪を防ぐ度に、衛宮士郎の肉体が作り替えられる。

 干将莫邪(アーチャーの剣)を用いている影響だろう。
 変成は緩やかに。しかし確実に、エミヤシロウの境界が崩れていく。
 赤布(せき)はまだ解(ふら)かれていない。隙間から滲み出しているだけだ。

 ――――その一滴が、肉体(命)よりも先に精神(魂)を崩壊させていく。

「ヅ―――、ハッ………ハ、 ッ!」
 バゼットからはすでに、呉キリカの能力は聞いている。
 他者を減速する結界。相対的な高速移動。その詳細な効果範囲を見つけねば、勝算は低いと。
 あるいは、呉キリカを限界まで追い詰めれば、逆転の秘策があることも一緒に。

 故に問題は、それよりも先にエミヤシロウの限界が来ないか、ということだ。

 自身の崩壊を避けたければカリバーン(セイバーの剣)を使えばいい。
 黄金の剣なら左腕(アーチャー)の影響を受けず、また単純な攻撃力でも優っている。
 それをしないのは呉キリカの速度ゆえ。一撃の威力では勝っても、少女の手数に追いつかない。どのような必殺技も、当たらなければ意味がない。
 そのための夫婦剣。陰陽二刀での攻性防御。代償として己の意識が削られていく。

「 ッ―――、ァ ―――、……… !」
 ――――早く。
 ……早く、早く!
 早く早く早く早く!!
 まだなのかバゼット呉キリカへと追い縋る狂爪が迫り来るもう少し耐えられる一手先を予測するもう限界が近い干将莫邪で応戦するこれ以上は耐えられない赤い影が視界を過ぎる限界を超えてその先へ――――

「――――ハッ……ハッ 、っああああああああ――――――ッッ!!」

198 ◆UOJEIq.Rys:2013/07/14(日) 13:54:13 ID:8rLnUPJ.0



 気勢を上げる衛宮士郎。
 白と黒の双剣は一秒ごとにその攻撃精度を上げていく。
 振るわれる剣閃に才気は全く感じられない。鍛錬と実践によってのみ培われた無骨な技。
 本来その習得には長い時を必要とする。だというのに、衛宮士郎は、僅かな時間でその剣技を完成させていく。
 ならば、それを可能とする経験はどこから来るのか。

 考えるまでもない。赤い布に封じられた、英霊の左腕からに他ならない。
 だが恐るべきは、彼にこれほどの影響を与えておきながら、左腕は今も封じられたままだということだ。
 もしこれで封印を解けば、一体どれほどの力を得ることとなり、またどれほどの対価を支払うこととなるのか。

『バゼットさん、急いでください。このままでは士郎さんが』
「言われなくてもわかっています。条件を満たすラインもすでに掴んでいます。しかし」

 ルビーの焦りを含んだ声へと、バゼットは冷静に言い返す。
 わかっている。このままでは衛宮士郎が持たないということは。
 あれは言ってしまえばドーピングのようなもの。己が魂を代価に、自身の限界を緩めているだけだ。
 このままでは英霊の腕に侵食され、遠からず衛宮士郎という人格は破綻してしまうだろう。
 ―――それがカードを介さない英霊の力の取得。その大き過ぎる代償だ。

 その結末を避けるためには、呉キリカを早期に倒す必要がある。
 そしてフラガラックの特殊効果の発動条件は、相対した敵が切り札を使うこと。
 現状その条件を呉キリカが満たす瞬間は、バゼットの攻撃を回避した時のみ。
 だがバゼットの攻撃に対して条件を満たした状態では、フラガラックを発動しても遅すぎるのだ。
 少女の減速の結界は、それほどまでの遅延を二人に及ぼしている。
 故に、ラックを発動しようと思うのならば、衛宮士郎の攻撃で条件を満たす必要がある。

 が、しかし。
 キリカはバゼットを優先的に狙い、結果として衛宮士郎を翻弄している。
 条件自体は解明しているというのに、その条件を満たすことができないでいた。

 もしバゼットの左腕が無事ならば、もう少しやりようがあった。
 傷が開き流血した時点で、バゼットは左腕の使用に制限をしていない。
 だが重症であることに変わりはなく、どうしたって威力、制度が本来の物より格段に落ちているのだ。

「まったく、あのような子供にいいように翻弄されるとは……!」
 我が事ながら情けない、とバゼットは嘆息した。
 ―――直後。

「だ、れ、が、子供だァ!」
「ガッ―――!?」
 呉キリカが怒声を上げ、唐突に攻勢へと転じる。
 少女へと追い縋っていた衛宮士郎は、その動きに咄嗟に対応できず弾き飛ばされる。
 狙いはバゼット。少女は両手の爪を十本へと増やし、脇目も振らず襲い来る。

「……なるほど。子供扱いは嫌いですか」
 キリカが怒りを表した理由を察し、ますます子供らしい、と内心で呟く。
 どうやら呉キリカには、挑発が有効らしい。……ならば、その弱点を突かない理由はない。

「子供扱いされて怒るとは、それこそまだまだ子供ですね」
 バゼットは更に子供扱いすることで少女を挑発し、
「ッ―――、ッッ………!!」
 その狙い通りに、キリカはより怒りを露わにする。
 同時に思考が単純化され、結果として動きが単調になる。
 当然その愚行を、バゼットが見逃すはずがなく、

 猛進するキリカに合わせ、左ストレートのカウンターを放つ。
 瞬間、発動する速度低下の魔術。
 目に見える速度となった左拳を掻い潜り、キリカはバゼットの背後へと回り込み、

「はは、隙だらけだ。よし刻もう!」
 そう口にするより早く、両手の五対十双がバゼットの背中目掛けて振り抜く。
 その動きを読んでいたバゼットに、いまだに捕捉されたままであることに気付かずに。

「―――硬化(ARGZ)、」
 バゼットが振り返る。
 その視線はしっかりとキリカを捉えている。

「―――強化(TIWZ)、」
 振り抜かれる爪より早く、
 速度低下の影響かでは有り得ない速度で。

「―――加速(RAD)、」
 一瞬の、そして最大の抵抗(レジスト)。
 この瞬間、バゼットは呉キリカの速度低下から解き放たれる。

「――――相乗(INGZ)……!!」
´同時に振り被られる右腕。
 魔術によって限界まで強化された一撃が、呉キリカの肉体を粉砕する!

199 ◆UOJEIq.Rys:2013/07/14(日) 13:55:03 ID:8rLnUPJ.0

 ―――その、直前。

「――――お兄ちゃん!!」

 この場にあるべきではない声が響き渡った。
 声の主は、イリヤ。
 衛宮士郎を追いかけてきた少女が、ようやく追いついたのだ。
 そして彼女の到着によって、この戦いは一気に終結へと傾いた。

「ッ――――!!」
 イリヤの姿にバゼットは驚愕し、その動きがほんの一瞬遅れる。
 その一瞬の間に、キリカが怒りによる視野狭窄から立ち直り、目前に危機に気付く。

 今にも自身を打ち砕かんとする鉄拳が、必殺の威力を以て眼前に迫る。
 考えるよりも早く、前面に最大限の“減速”を掛け、威力を殺ぐ。
 同時にその一撃を足裏で受け止め、そのまま高く跳躍した。

「ッッッ――――っと! 危ない危ない!」
 そこでようやく、キリカは自身の置かれていた状況を理解した。
 同時に上空から、素早く現在の状況を把握する。

 まず右足首に鈍痛。バゼットの一撃を凌いだ際に、罅が入ったようだ。
 咄嗟に“減速”を集中しなければ、間違いなく右足ごと粉砕されていただろう。
 結果として助けてくれた少女を恩人認定する。が、“敵”であることが残念でならない。
 そしてどうやら、バゼットには速度低下の魔法に対抗する術があるらしい。

 さらに“敵”が二人から三人に追加。
 加えてソウルジェムの濁りは、ついに六割に迫っている。
 これ以上“敵”が増えれば、間違いなく押し負けるだろう。
 ならば選択は一つ。無限の中の有限だ。

 “敵”が“戦力”となる前に、恩人となった少女を、全力を以て刻み殺す。

 地面へと着地し、十本の爪を円形に配置、連結させ、巨大な円鋸を形成する。
 そして同時に少女へと向けて駆け出し、円鋸を回転させ加速させる。
 高速回転する爪は、鋸というよりチェーンソウを連想させる。

 大恩人と少年との距離は開いている。少女を助けようとしているようだが、その動きはあまりにも鈍(おそ)い。
 少女自身も、いまだこちらに気付いておらず、魔法少女に変身もしていない今、この一撃を防ぐ術はない。
 そして円鋸の回転が臨界点に達した、その瞬間。

「ありがとう! そしてさようなら! お礼に苦しむ間もなく切り裂いてあげる!」

 円鋸の連結が一つ外れ、鞭のように撓って解き放たれた。

「え?」
 自身が狙われていることに、今更ながらに少女が気付く。
 だが今更気づいたところでもう遅い。
 解き放たれた爪はその体を両断しようと少女へと迫り、

「ガッ―――!?」
 突如として飛来した“矢”が、呉キリカの体を貫いた。
 位置は、右腕と、胴体と、左脚の三ヶ所。貫かれた衝撃に、爪鞭はその軌道を大きく乱す。
 結果、引き裂いたのは少女ではなく、そのすぐ隣の地面。少女自身には傷一つ付けれていない。

 思わずその場からの回避よりも先に、“矢”の飛来した方へと振り返り、射手の姿を確かめる。
 するとそこには、いつの間に手にしたのか、黒塗りの長弓を構えた衛宮士郎の姿があった。


     ◆


 兄貴は妹を守るものなんだと、少年は言った。
 その際に頭に乗せられた手は、ほんの少しだけ震えていた。
 恐怖を抑えきれなかったのか、少年自身も気づいてなかったのか。
 けれど間違いなく、少年は死の恐怖に震えていた。……震えたまま、俺は死なない、と、笑って口にした。

 だから追いかけた。
 走り去る少年を、遠ざかる背中を懸命に追いかけた。
 少年の事を信じられなかったわけではない。
 信じる信じない以前に、それ以外の行動が浮かばなかっただけ。

 死んでほしくなかった。生きていてほしかった。
 だから、止める言葉も思いつかないまま、その姿が見えなくなっても、我武者羅に追いかけ続けた。

200 ◆UOJEIq.Rys:2013/07/14(日) 13:57:16 ID:8rLnUPJ.0


 ――――そしてそれが、少女の過ちだった。
 少女は少年を案ずるあまり、少年が向った場所、自身の辿り着いた場所が、殺し合いの場であることを忘れていた。
 敵は魔法少女を狙っている。その事を知っていたはずなのに、少女はそこに行く意味に気付かなかった。
 その代償は、当然のように少女自身が払うこととなり、しかし――――。


「――――お兄ちゃん!!」

 その声が聞こえた瞬間、衛宮士郎の中にあった躊躇いは弾け飛んだ。
 なぜ、という疑問も、どうして、という当惑もない。
 そんな余分は残っていない。

 “敵”が、イリヤを狙っている。
 人体など簡単に裁断する爪が、イリヤを引き裂こうしている。
 ルビーはバゼットのポケットの中。今のイリヤに、身を守る術はない。

 左腕に撹拌された意識で理解できたことはそれだけだ。
 自身が抱えた爆弾、己が死の危険性さえも、意識の内に残っていない。
 だから、それだけが、衛宮士郎にとって何よりも、自分の命よりも優先すべき事だった。

「――――投影(トレース)、」

 両手を空にし、新たな武器を作る。
 夫婦剣ではダメだ。干将莫邪では間に合わない。
 いくら魔力を込めようと、ただの投擲では敵の速度に追いつけない。

 最適な武器を摸索する。
 敵の速度に勝る一撃を検索する。
 探すまでもない。左腕(オレ)はすでに知っている。

「完了(オン)――――!」

 左手に黒塗りの弓が、右手に三本の矢が、それぞれ一瞬で創造される。
 同時に弓の弦に矢をかけ、四キロ先を視認する鷹の目が敵の姿、その動きを捉える。
 ――――正射必中。
 直後に放たれた、音速を超える三本の矢は、一つもその狙いを違わず敵を射抜く。
 その結果、敵の爪はその軌道を逸れ、視界の端でイリヤの無事を視認し          。

「            あ」

 ――――砕け散る。
 赤い左腕が脈動し、全身の血液が逆流する。
 役目を終えた弓矢とともに、衛宮士郎の意識が硝子のように破砕する。

 ――自分を見失う。
 強い風に吹き飛ばされて、強い光に漂白される。
 粉々になった我は乾いた砂漠に散らばって、自分を自分として認識できなくなって何もかもがなくなってなくなってなくなってなくなって――――――――

「――――――、            」

 使ってはならないモノを使った代償。少女を救う代価。
 限りなく死に近しい反動に、衛宮士郎の身体は、糸の切れた人形のように崩れ落ちた。


 ――――同時にバゼットが動き出した。
 最後にして最大のチャンスを一瞬で手繰り寄せる。

「イリヤスフィール!」
 事態が掴めず呆けたままのイリヤへと大声で呼びかける。
 同時にポケットからルビーを取り出し、上へと軽く弾くとともに右腕を振りかぶり、

『へ? ちょっと、バゼットさ―――ひでぶッ!?』
 殴り飛ばす。
 セイバーとの戦いの際にコツは掴んだ。
 最適な力で殴り飛ばしたルビーは、狙い違わずイリヤのもとへと届く。

『ッッと! イリヤさん転身を! 黒い魔法少女の足元へ大斬撃を放ってください!』
 同時にバゼットの狙いを悟ったルビーが、少女へと指示を出す。

「わ、わかった!」
 イリヤは言われるがままに転身し、キリカへと魔力斬撃を放つ。
 士郎の攻撃を受け動揺していたらしいキリカは、咄嗟に放たれた斬撃を高く跳躍して回避する。
 否。腕、胴、脚の三か所を射抜かれた彼女に、横に幅のある斬撃を回避する機動力は出せず、結果、より逃げ場のない上空へと追い込まれたのだ。

201 ◆UOJEIq.Rys:2013/07/14(日) 13:58:43 ID:8rLnUPJ.0

「“後より出でて先に断つもの(アンサラー)”ッ!!」
 強く。キリカの注意を引き寄せるために大声で宣言する。
 鉄の色をした球体が、バゼットの拳に装填される。
 帯電する魔力の波動に、キリカの注意が最大まで高められる。

 バゼットは地上。自身は空中。
 接近戦を主体とするバゼットに、遠距離攻撃の手段はないはず。
 ならばあの球体は、バゼットに遠距離攻撃を可能とさせる“武器”であり、
 ならばこの魔力は、この局面で発動させるのならば、必殺の魔法に他ならない!

「―――“斬り抉る(フラガ)”」

 ―――その真名が明かされる。

 球体の金属色が凝縮し、その表面に刃が形成される。
 渦巻く魔力、帯電する雷光が、刃の切っ先に収束し、解放される、
 ―――その直前。

「鈍(おそ)いッ! それじゃ私には届かないよ!!」

 ―――呉キリカが、その魔法を開放した。

 バゼットの行動、放たれる魔法、そのすべての速度を極限まで低下させる。それだけで、キリカが自ら動く必要はなくなる。
 攻撃も、防御も、回避さえも無用。
 バゼットの攻撃が命中するよりも早くキリカは地面へと着地し、己が目的を果たすだろう。
 その覆しようのない事実にキリカは己が勝利を確信し、

 ―――その瞬間、呉キリカの敗北(死)が確定した。


「“戦神の剣(ラック)”―――!!」

 ―――真名が唱(めい)じられる。
 キリカの魔法に“遅らせられた”カタチで、バゼット・フラガ・マクレミッツの宝具が発動する。

 逆光剣から、一条の閃光が放たれる。
 針の如く収斂された一撃が、呉キリカを目掛けて疾走する。
 キリカの予想を遥かに超えた、超高速を以て。

「!」
 驚愕はなかった。そんな余裕は、コンマ一秒もなかった。
 キリカはただの本能、ただの直感だけで、その一撃に魔法を集中させる。
 が、止まらない。それどころか放たれた閃光は、更なる加速を以てキリカへと迫り、
 そして。

「、ッ―――ぁ………………」
 戦神の剣が、黒衣の魔法少女の胸を貫いた。
 心臓が在るべき位置には、焦げ付いたような小さな黒点。
 その自身の胸に穿たれた小石程度のサイズの孔を、少女は信じられないモノのように見つめる。

 ……ありえない。
 と、理性が、感情が、事実を理解することを拒絶している。
 だが、それは覆しようのない現実であり、
「お……り、こ…………」
 縋るようにその名を口にして、その身体は地面へと打ち付けられた。

 そうして呉キリカは、どうしようもないほどに“殺された”のだった。



 ――――――。

 創造の理念を解明し、
 基本となる骨子を解明し、
 構成された材質を解明し、
 製作に及ぶ技術を解明し、
 成長に至る経験を解明し、
 蓄積された年月を解明し、
 あらゆる工程を解明し尽す。
 バゼットの使用した宝具に同調し、その全てを解析する。

202 ◆UOJEIq.Rys:2013/07/14(日) 13:59:39 ID:8rLnUPJ.0


 逆光剣フラガラック。
 フラガの血脈が何千年という歳月を超え現代まで伝えてきた、現存する真正の宝具。
 両者相打つという運命をこそ両断する、“切り札(エース)”を殺す“鬼札(ジョーカー)”。

 この宝具の持つ特性を前にして、キリカの魔法はあらゆる意味を持たない。どころか逆効果ですらある。
 何故なら、対象の速度を低下させる、というその効果は、フラガラックの特性が発動する条件を成立しやすくし、
 如何にキリカがフラガラックの一撃を減速させようと、魔剣はそれ以上の加速を以て少女の肉体を斬り抉るからだ。
 “後より出でて先に断つ”。
 この二つ名の通り、自らの攻撃を『先になしたもの』に書き換えるその特性が発揮された時点で、キリカの運命は決まっていたのだ。

 この必勝の魔剣の効果を、キリカは自分に支給されていながら知らなかった。
 より正確に言うならば、どうでもいいものとして切り捨て忘れていた。
 “織莉子以外の情報なんていらない”。
 彼女はその持論ゆえに、フラガラックの効果と使用法という、理解できなかった情報を消去していたのだ。

 フラガラックを封じるには、自身の“切り札”を封じればいい。
 しかしキリカは、その判断に至る知識を忘却していた。
 故にこの結果は、キリカが愛に殉じたが故の当然の結末だった。


 ―――その理解に意味は無い。そもそも、意味を求める意思がすでに亡い。
 これはただ視界に“剣”を認識したことによる、贋作者(フェイカー)としての反射的な行動だ。
 そこに、衛宮士郎の意識は介在していない。なぜなら衛宮士郎の精神は“投影”を行使した時点でとっくの昔に消え去って――――

「士郎さん、しっかりして、ちゃんと自分を見つけてください……!」

 声が聞こえた。
 イリヤがいる。
 ルビーがいる。
 俺は倒れている。
 それは解る。解るが、それだけだ。
 イリヤは今にも泣きそうな顔で、俺の体を揺すっている。
 なぜそうなっているのか。そこからどうすればいいのかに思考が発展しない。

「ルビーチョップ!!」
 ルビーが躊躇なく、俺の脳天へと羽を振り下ろす。
「――――――――!」
 痛みで意識が戻った。
 外部からの衝撃で、内界(自分)と外界(他人)の境界を取り戻す。

「ル、ルビー!? お兄ちゃんに何するの!」
「いや、いい。わるい、ルビー。助かった」
「お、お兄ちゃん! ……よかった……」
「どうやら、最悪の事態は免れたようですね」

 涙ぐむイリヤに声をかけて体を起こす。
 大丈夫、体はまだ動く。骨格筋肉関節は、どれも今のところ異常は出ていない。
 肝心なのは中身―――その中身は冷静に診察したくもないが、一応衛宮士郎の体裁は保っている。

「バゼット、やったのか?」
 立ち上がってバゼットへと声をかける。
 少女が死んだからか、張られていた結界はすでに解けている。
 加えてフラガラックの性質上、仕留めそこなったということはないと思うが、念のためにと確認する。

「ええ、手応えはありました」
 事務的にバゼットが頷く。
 敵は死んだ、と、確信をもって答える。
 いかに強力な魔術であろうと、死者にその力は振るえない。
 キリカの魔術が無効化されたことから、少女は死んだと判断したのだ。

「殺し……ちゃったの?」
 そこにイリヤが、怯えるように問いかけてきた。
 その瞳は、信じられないモノを見たかのように震えている。

 そこでようやく思い至る。このイリヤは、自分の知るイリヤではない。
 その出生はともかく、彼女は魔術師としてではなく、ごく当たり前の女の子として育ってきた。
 死ぬときは死に、殺すときは殺す。
 そんな、魔術師であれば誰もが最初に持つ覚悟を、この少女は知らないのだ。

『それが、魔術師というものですよ、イリヤさん。
 私たちの知る凜さんやルヴィアさん、クロさんも属している世界。
 本来あなたが知ることはなかった、あるいは知っていたはずの、日常の裏側です』

203 ◆UOJEIq.Rys:2013/07/14(日) 14:00:38 ID:8rLnUPJ.0

 ルビーが現実を突きつける。
 そう。少なくとも俺の知っているイリヤは、魔術師側の人間だった。
 ……いや、魔術師(こちら)側の事しか、彼女はほとんど知らなかった。

 そしてこのイリヤも、アインツベルンの姓を名乗っている。
 聖杯戦争の、始まりの御三家。
 その内の一家の名を継いでいる以上、無関係ということはあり得ない。
 むしろ魔術師側の事情を、知らない方がおかしいのだ。

 おそらく、彼女に何も教えなかったのは切嗣だ。
 俺が魔術を教えてもらうのに二年を要したように、イリヤが魔術に関わることを嫌ったのだろう。
 魔術師の本質は、生ではなく死。魔道とはすなわち、自らを滅ぼす道に他ならないのだから。

 だが、リビーがその事実を突きつけたのは、彼女の思い遣り、イリに対する優しさが故だ。
 彼女の身近にいた、信頼できる人物の名を上げることで、魔術師の非人道性を覆い隠そうとしているのだろう。
 助けたところで特にならない筈なのに、それでも俺を何度も助けてくれた遠坂のように。
 俺を殺すといいながら、迷っていた俺の背中を後押ししてくれたもう一人のイリヤのように。

「……………………」
 少し遠く、地面に横たわる、少女の亡骸を見る。
 “愛”のために死ぬと、彼女は言った。
 自らの愛しい人のために、それ以外の全ての人を殺すのだと。

 己が目的のために、他者の命を奪うことも厭わないもの。
 それこそが、本来の魔術師に近しい在り方なのだ。
 むしろ魔術師でありながら、非情さだけでなく人間的な優しさも持っていた彼女たちの方が、稀有な存在と言えるだろう。

 ―――そこまで考え、ふと違和感に気付いた。

「なあバゼット。間違いなく、彼女は殺したんだよな?」
 その疑念とともに、バゼットへと問いかける。
 イリヤへと何かを言いたそうにしていたバゼットは、若干苛立たしげに振り返る。

「ええ、その筈ですが、一体―――」
 言葉が途中で途切れる。
 彼女も気付いたのだろう。少女の死体から感じる違和感に。

 呉キリカは、間違いなく死んでいるはずだ。
 ブラがラックの一撃は間違いなく少女の心臓を破壊した。
 その傷跡は、この場所からでも見て取れる。
 ………なのにどうして、少女の死体からは、“生者の色が消えていない”のか!

「! 気を付けろ! こいつ、死んでない!」
 疑念が確信に変わる。
 解けたはずの結界が、再び張り巡らされる。
 そしてこちらが行動するよりも早く、少女の死体が飛び上がった。

「ハ――――ハハ、アハハハハハハハハハハハハ――――――――ッッッ!!!!」

 狂笑が発せられる。
 死せる魔法少女が、死に体を繰って襲い掛かってくる。
 決して傷は癒えていない。だというのにその動きは、死人のそれとは思えないくらい活発だ。
 それに応戦するために、意識を戦闘用に切り替える。

「――は、づ…………ッ!?」
 瞬間、ピシッ、と亀裂が走る。
 衛宮士郎の精神が、突如として軋みを上げる。
 魔術回路の活性化。それによって生じた波及に、左腕が脈動したのだ。

 ―――その隙を、この狂犬が見逃すはずがなく、

「隙だらけだ。さあ散ねッ!」

 両手から放たれる十本の爪。
 バゼットは余裕で対処できるだろう。
 転身したイリヤにとっても大した攻撃ではない。
 だが今の俺には、それを防ぐ術がない。

 弓を投影する際に干将莫邪は手放した。
 それ以前に左腕の影響で、体が麻痺して碌に機能していない。
 ――動けない。無様な回避という行動ですら、今の俺にとっては困難だった。

204 ◆UOJEIq.Rys:2013/07/14(日) 14:01:47 ID:8rLnUPJ.0

「お兄ちゃん、危ない!」
「っ! イリヤ、止せ!」
 そんな俺を庇うためにイリヤが俺の前に出るが、それはだめだ。
 キリカの狙いは魔法少女。その行動はむしろ、彼女にとって格好の狙いどころでしかない。

「ルビー、物理保護……錐刑(ピュラミーデ)!!」
 イリヤの前方に、星形の物理障壁(バリア)が展開される。
 投擲された無数の爪はその障壁に弾かれ、軌道を逸れて後方へと飛んでいく。
 が、その隙に、キリカはイリヤの後方へと回り込む。

「ッ………!!」
 円鋸が形成され、チェーンソウのように回転する。
 対象を削り斬る凶爪が、少女の肉体を切り刻まんと迫る。
 防げない。物理保護を前方へと集中させたイリヤでは、防御力が足りない。

 バゼットは間に合わない。
 再度フラガラックを発動しようにも、確実に仕留めたものと油断していた彼女は、キリカの魔術に完全に捕らわれている。
 無理もない。少女に魔術行使の気配はなかった。どころか、今でも死に体のままで動いているのだ。
 魔法少女とはいえ、ただの人間が死してなお動き回るなど、どうして予想し得よう。

「くっそぉ――ッ!」
 間に合わない。
 自身のあらゆる行動が鈍すぎる。
 四肢は重い鎖で囚われたかのように動かない。
 目の前でイリヤに危険が迫っているというのに、俺では彼女を守ることができない。

 ……だが。
 俺にはできなくても、できるヤツは他にもいる。

「恩人はよく頑張りました! けどばいばいさような―――ら゛ッ!?」
「させるかよッ!!」

 灰色の風が、キリカを横合いから殴り飛ばす。
 速度低下の魔法の射程外。視界の外からの完全な不意打ち。
 その一撃に気付けなかったキリカは、宙を飛びながらも体勢を立て直す。

 そこには、キリカからイリヤを庇うように、ウルフオルフェノクが立ち塞がっていた。

「はは、オオカミの化け物だ! すごいね速いねカッコいい!!」
「ッ………」
 興奮したキリカの言葉に、ウルフオルフェノク――乾巧は、苦虫を噛み潰したような声を出す。
 ……巧は自分を化け物と呼んで蔑んでいる。故に化け物の象徴であるその姿は、彼にとって嫌悪の対象なのだろう。

「………けど、四対か。さすがに私一人じゃ、これは無理だね」
 キリカはそう言うと、後方へと大きく飛び退く。
 逃げる気なのだと、その行動で察することができた。

「待ちなさい!」
「いやだね! 命令はもちろん、一切の質問も受け付けない。
 私に対するすべての要求を完全に拒否する!」

 バゼットの静止を頭から跳ね除け、キリカは一息にこの場から逃げ出した。
 その姿を睨み付けながらも、バゼットは追いかけない。
 速度低下の魔術を使う以上、逃げに徹した彼女を捕まえることは困難だと理解しているからだ。


 ……そうして戦いは終わった。
 バゼットは左腕の傷が開き、俺も投影の反動でガタがきている。
 乾にいたっては、オルフェノクからの変身を解いただけで、もう膝を突いている。
 大きなダメージを残す乾にとっては、たったあれだけの行動でさえも無茶なのだ。

 結局呉キリカを倒すことはできなかった。
 彼女の目的を思えば、安心などしていられない。
 だが、これで少しは休めると、俺は一時の休息に息を吐いた。

205 ◆UOJEIq.Rys:2013/07/14(日) 14:02:58 ID:8rLnUPJ.0


     ◇


「ハ――――――――」

 走る。走る。走る。走る
 一つの場所を目指して、脇目も振らずに駆け抜ける。
 脈拍に乱れはない。心臓はすでに停止している。
 ―――問題ない。織莉子のもとに辿り着くまで体が動けばいい。

 心臓が破壊された状態での活動。
 肉体が死んでなお動き回れる不条理。
 その理由をキリカは、織莉子からすでに聞いていた。

 すなわち、“魔法少女はすでに、人の理から外れている”ということを。

 その言葉の意味をキリカは、この状態になってようやく理解した。


 魂は肉体から抜き取られソウルジェムとして加工された。
 残った肉体はソウルジェムによって操られる生き人形でしかない。
 故にどれほど肉体が傷つこうと本体であるソウルジェムさえ無事なら戦い続けられる。

 そしてキュゥべえ――インキュベーターにとって魔法少女とは、魔女を殺す狩人であると同時に、魔女を生み出す生贄だ。
 魔法少女は感情エネルギーを得るための道具であり、魔女は感情エネルギーを得た後の粗大ゴミでしかない。
 契約とはすなわち、彼らに必要なエネルギーを獲得し、それによって生じるゴミも同時に処分できる、一石二鳥の手段なのだ。


 それらは織莉子が教えてくれた知識であるから覚えているが、そのほとんどはキリカにとって無意味な情報だ。
 現状において意味のある情報は一つ。
 自分が“殺されても動ける”のは、魔法少女になっているからだということのみだ。

 そう。あの瞬間、バゼットの宝具によって心臓が破壊された時、キリカは絶望した。
 織莉子を残して死ぬことを。織莉子のために生きられないことを。
 織莉子のために参加者の皆殺しを決めたのに、結局一人しか殺せなかったことを。

 ……ああ、それではだめだ。こんな無様さでは、何もできていないのと変わりない。
 それではダメだ。私は織莉子に無限に尽くす。こんなところで死んでいる暇はない。いや、たとえ死んでも織莉子のために尽くさなければならない。
 だから認めない。この事実を認めない。自分が死ぬなんて認めない。死んで終わるだなんて認めない。織莉子のために何もできないだなんて、そんなの絶対認めない!

 キリカはそんな狂おしい思いで、絶望する心を、沈みゆく意識を繋ぎ止め続けた。
 そうして気づいた。自分が殺されてから一分以上経っても、まだ自分が生き続けていることに。
 そうして理解した。魔法少女とはそういう存在なのだと。つまり自分は、死んでもなお織莉子に尽くせるのだと。

 ――――魔法少女……キュゥべえに騙された、哀れな少女たち。
 結構だ。たかだか利用される程度で織莉子(私のすべて)が守れるのなら、大いに結構!
 死んでもなお織莉子のために生きられるなんて、これ以上の至福があるはずない!!

「はは! やっぱり愛は無限に有限だね!」

 ―――走る。
 織莉子のための感情とは別のところ、織莉子のための理性が、織莉子のために現状を正しく把握する。
 ソウルジェムの濁りはついに六割を超えた。そしてそれは現在も急速に進行中。
 その理由は一目瞭然。魔法少女に変身しているから、というのもあるが、何より心臓に穴が開いたままだからだ。
 傷痕は焦げ付きほとんど流血していないとはいえ、死体のままで動き回るのはやはり無理があるらしい。
 いくら人の理を外れた魔法少女でも、さすがに限界はあるらしい。物理的な意味での、無限の中の有限だろう。
 このままでは織莉子のもとに辿り着くまえに、ソウルジェムが限界に達しかねない。
 織莉子のための時間を稼ぐためにも、グリーフシードを探す必要がある。

 まずは最優先で織莉子の家に向かう。
 その道中で他の参加者に遭遇したら、一に織莉子、二にグリーフシードの事を尋ねる。
 それ以外は、たとえ魔法少女であってもすべて無視だ。織莉子のための時間がもったいない。

「さあ急ごう。織莉子のための時間は、たとえ一瞬でも惜しまなきゃ」


 ―――そうして、黒衣の魔法少女は全速力で走り続ける。
    その魂の全ては、一人の愛しい人への愛のために。

206 ◆UOJEIq.Rys:2013/07/14(日) 14:03:33 ID:8rLnUPJ.0


【F-4/浜辺/一日目 午前】

【呉キリカ@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:ダメージ(大)、心臓破壊、ソウルジェムの穢れ(6割:進行中)
[装備]:魔法少女姿
[道具]:基本支給品、穂群原学園の制服@Fate/stay night、お菓子数点(きのこの山他)、スナッチボール×1、魔女細胞抑制剤×1、ジグソーパズル×n、呉キリカのぬいぐるみ@魔法少女おりこ☆マギカ
[思考・状況]
基本:プレイヤーを殲滅し、織莉子を優勝させる
1:織莉子と合流し、彼女を守る。そのために、まずは最優先で美国邸を目指す
2:他の参加者に遭遇したら、一に織莉子、二にグリーフシードの事を尋ねる
3:織莉子とグリーフシードに関すること以外は、たとえ魔法少女であっても今は無視する
[備考]
※参戦時期は、一巻の第3話(美国邸を出てから、ぬいぐるみをなくすまでの間)。
※速度低下魔法の出力には制限が設けられています。普段通りに発動するには、普段以上のエネルギー消費が必要です。
※バゼット・フラガ・マクレミッツから、斑鳩の計画とニアの外見的特徴を教わりました。
※バゼット・フラガ・マクレミッツを『大恩人』と認定しました。
※イリヤスフィール・フォン・アインツベルンを『恩人』と認定しました。


     ◇


 パン、と、乾いた音が路上に響いた。
 それは、バゼットがイリヤの頬を叩いた音だった。

「――――え?」
「ちょ、バゼット、いきなり何を……!」
 叩かれたイリヤは呆然とし、俺は思わず声を荒げる。
 だがバゼットの、静かながらも重い、責めるような声に堰き止められた。

「なぜここに戻ってきたのですか、イリヤスフィール」

 バゼットは一切の逃避を許さぬ目で、イリヤを睨み付けている。
 それは何の覚悟も持たず、無謀にも戦場に飛び込んできた少女に対する怒りの表れだった。

「だ、だって……お兄ちゃんが―――」
「衛宮士郎が危険な線上に戻ったから、と言いたいのですか?
 確かに彼があの戦闘に戻ってきたのは、私の未熟さも一因ではあります。
 ですが、ルビーのいない貴女は、はっきり言って今の衛宮士郎より弱い。端的に言えば、足手纏いです」

 イリヤの反論を、バゼットは一蹴する。
 少女が兄に責任を擦り付け様としたわけでないことは、バゼットも理解している。
 故に彼女は、少女の未熟さをこそ糾弾した。

「で、でも……」
『イリヤさん。残念ですけど、ここは私もバゼットさんに同意させていただきます。
 何故なら、イリヤさんが戻ってこなければ、士郎さんが魔術を使うことはなかったからです』
「あ―――う………」

 それでも反論しようとするイリヤを、今度はルビーが諌める。
 そう。あの瞬間、イリヤが戻ってこなければ、バゼットの一撃をキリカが回避することはなく、フラガラックも、投影も使用することなく戦いは終わっていたかもしれなかった。
 だが現実としてイリヤは戻ってきてしまい、数限りある切り札は使われてしまった。
 無論、それは可能性の話に過ぎず、キリカの魔術をもってすれば、あの状況からでも回避できたかも知れない。

『士郎さんは、イリヤさんを守るために魔術を使いました。
 今の士郎さんは、ただ戦うだけでも危険なんです。その上魔術を使えば、たとえ腕を開放してなくても命を削ることになります。
 イリヤさんも見ましたでしょう? 腕を開放していなくても“ああ”なってしまうのです。
 もしイリヤさんが今回のような無謀を続けるのなら、腕を開放する以前に士郎さんが死にかねません』
「……………………」

 イリヤは俯いて押し黙る。
 自らの行動で兄を危険に晒したことを、泣きそうになりながら悔いているのだ。
 その様子を見ていられず、思わず二人を静止した。

「二人も、もうそこまでにしてやってくれ」
「お兄……ちゃん?」
「イリヤが戻ってきちまったのは、俺がイリヤに心配かけさせちまったからだろ?
 なら、悪いのはイリヤだけじゃないはずだ」
『士郎さん、ですが……』
「そうだな。俺も、士郎に頼まれていながら、そいつを止められなかった。
 俺にだって十分責任はあるだろ」
「乾……」
『あなたまで……まったくもう』

207 ◆UOJEIq.Rys:2013/07/14(日) 14:04:13 ID:8rLnUPJ.0

 ルビーは呆れたようにそう言って口を閉じた。
 どうやら引き下がってくれたらしい。
 バゼットの方を見れば、彼女も呆れたような顔をしていた。

「……貴方達がそういうのであれば、今はこれ以上言いません。
 ですが、同じようなことを繰り返されても困ります。
 ですので、このまま同行を続けるのであれば、今後イリヤスフィールには、私かルビー、もしくは衛宮士郎の指示に従ってもらいます。
 その意味が解りますね。今の貴女よりも、衛宮士郎の方が信頼に値する、ということです」

 たとえ能力で上回っていようと、背中を預けられない人間とは協力できないとバゼットは言っているのだ。
 その様子では、場合によっては俺たちとは別行動をとることになり、最悪敵対しかねないだろう。
 イリヤもそのことを理解したのか、バゼットの言葉に肯く。

「うん……わかった………ごめんなさい………」
「結構。では一先ず、穂群原学園へ向かいましょう。
 イリヤスフィールはルビーの治癒促進(リジェネレーション)で治癒できますが、乾巧は重傷のままです」

 そう言うとバゼットは、先頭を切って歩き出した。
 無駄なことをしている時間はない、ということだろう。
 このままここに留まる理由はないので、それに続いて歩き出す。
 その際。

「乾、ありがとうな。イリヤを助けてくれて」
 巧へとそう礼を言う。
 それはバゼットから庇ってくれたことだけでなく、キリカから守ってくれたことにも関してだ。
 ただ、後者に関しては伝わらなかったらしく、

「別に。事実だしな」
 巧はそう不愛想に返してくるだけだった。
 それでも、彼の不器用な優しさを感じ取れて、やっぱりこいつは信頼できるヤツだ、と改めて思った。


「……士郎。腕を使えば死ぬって、どういうことだ?」
「――――!」
 そんな士郎へと向けて、巧は単刀直入に問いかけた。
 巧の視線は、赤い布に拘束された左腕に向けられている。

「イリヤも、あのへんな杖も言ってただろ、お前が死ぬって。あれはどういう意味だ」
「……………………」

 士郎は、その問いに答えない。
 答えられないのか、それとも答えたくないのか。
 いずれにせよ、士郎から理由は聞けそうにないと、巧は理解した。

「ま、言いたくないんならこれ以上は聞かねえけどよ。
 ………あんま、女の子を泣かすなよな」
「………わるい。それは、わかってるつもりなんだけどな」
 巧の言葉に、士郎は苦笑してそう答えた。
 わかってはいるが、やめられない、約束はできないと、言外に感じ取った。

 “正義の味方になりたいと思うのはおかしいか?”

 その言葉に、どれだけの想いが籠められていたのか、巧には推し量れない。
 けどそれは、衛宮士郎が諦めた夢は、彼にとって、とても大切なものだったのだろうと予想はできた。
 その夢を諦めた理由。その夢以上に大切な何か。それがあってなお、彼の心の中で、その夢が燻ぶっているのだ。

「………しゃあねえ、諦めて協力してやるか。お前に無茶させて、あいつ泣かせるのも寝覚めが悪いしな」
「乾」
「だが勘違いすんじゃねえぞ。所詮俺は、お前ら人間とは相いれないバケモンだ。……その事を忘れんじゃねえぞ」
「それでも、ありがとう乾。これからよろしくな」
「ふん……………」

 巧は不愛想に、士郎からそっぽを向く。
 そう。たとえお互いが、どれだけ相手を求めようと、人間と怪物は一緒には暮らせない。
 なら消えるべきはどちらなのか。そんなことは、決まりきっている。
 けどそれまでの、ほんの少しの間なら、一緒にいても許されるのではないか。
 そんな風に、少しだけ思えたのだ。

208 ◆UOJEIq.Rys:2013/07/14(日) 14:04:32 ID:8rLnUPJ.0

「そういえば………」
 と、巧は暁美ほむらの言葉を思い出した。
 確か彼女は、こう言っていた。人間でないのは魔法少女も一緒だ、と。

 心臓を破壊されても動き回った、黒衣の魔法少女の事を考える。
 ほむらの言っていたことは、ああいう意味なのだろうか。

「あいつから、話を聞く必要がありそうだな」
 ほむらが魔法少女の事に詳しいのは間違いない。
 ならば、またあの魔法少女と遭遇した時のために、その“正体”を知っておく必要があるだろう。


 そこでふと、巧は、マミは今どうしているだろうか、と思った。
 同じ魔法少女の事を考えたからだろう。なんとなく、彼女の事を思い出したのだ。

 誰かを裏切るのが怖いと、自分と同じように怯えていた彼女は、泣いていないだろうか。
 誰かを守ろうと無茶をして、大きな怪我をしていないだろうか。
 なんて、決して会うつもりはないくせに。



「――――――――」
 一方イリヤは一人、士郎の背中を見つめていた。
 先ほど聞かされた、ルビーの言葉を思い出しながら。

 “それが、魔術師というものですよ、イリヤさん。
  私たちの知る凜さんやルヴィアさん、クロさんも属している世界。
  本来あなたが知ることはなかった、あるいは知っていたはずの、日常の裏側です”

 凜さんやルヴィアさん、クロの住む世界。
 その本当の姿を私は、ルビーと関わった今でも知らなくて、
 だから私は、お兄ちゃんが抱えているもの、隠しているものの正体が分からなくて、
 せめて、お兄ちゃんが無茶しないよう頑張ろうと、ただお兄ちゃんに死んで欲しくなくて、

 “士郎さんは、イリヤさんを守るために魔術を使いました”

 “もしイリヤさんが今回のような無謀を続けるのなら、腕を開放する以前に士郎さんが死にかねません”

 けど、お兄ちゃんを助けるどころか、怖がって何もできなくて、
 私のせいでお兄ちゃんに無茶させて、危ないことをさせちゃって………

「私……どうしたらいいんだろう………」
『おや、イリヤさんどうしたんですか? そんな暗い顔をして』
「ルビー」
 ルビーがひょっこりと顔を覗いてくる。
 その雰囲気は先ほどまでとは違って、いつもの能天気そうなものに戻っていた。
 その様子を見て、イリヤはほんの少しだけ安心した。

「ううん、なんでもない。ただ、どうしたらいいのかなって思っただけ」
『どうしたら、ですか』
「うん。バゼットさんもお兄ちゃんも魔術師で、乾さんもオルフェノクだけど、私だけ、ルビーと契約しただけの一般人だから」
『なるほど……そういうことでしたか』
 納得がいったようにルビーは肯く。

 自分が魔術師として育っていたならば、もう少し何かの役に立てたかもしれない。
 自分が魔術師ならば、お兄ちゃんの問題も解決できたかもしれない。
 けど、そうじゃない私では、何の役にも立てず、何の解決もできないのだろうか。
 といったイリヤの考えを、なんとなく読み取ったのだ。

『確かにイリヤさんは魔術師ではありません。それは覆しようのない事実です。
 あ、技術的な面ではなく、精神的な面での話ですよ』

 魔術の大家、アインツベルンの血筋として生まれた以上、イリヤに魔術の才能があることは間違いない。
 だがルビーが言っているのはそこではなく、精神面、心のありようの事だ。
 普通の生、一般的な感性のもとで生きてきたイリヤでは、魔術師としての感性を理解することは難しい。

『けど、気にする必要は全然ありません!
 なぜかって? そんなの決まってます。イリヤさんは魔術師ではなく、愛と正義の魔法少女だからです!
 魔術師としての考え方なんてむしろ邪魔。あんな固い頭だから、空を飛ぶのにも苦労するんです。
 ………それに第一、』
 そこで少し言葉を切って、ルビーは言った。

209 ◆UOJEIq.Rys:2013/07/14(日) 14:05:30 ID:8rLnUPJ.0

『イリヤさんは、自分じゃ何もできないからと言って、士郎さんの事を諦めるんですか?』

 心を鷲掴みにされたような言葉だった。
 何もできない自分。助けるどころか、助けられかねない未熟さ。
 それを理由に、私は、諦めるのだろうか? お兄ちゃんを助けることを――お兄ちゃんの、命を。

「ううん、そんなのやだ……。私は、諦めたくない……! お兄ちゃんに生きていてほしい!」 

 そんなこと、考えるまでもなく、できるはずがなかった。
 そんな簡単なことに、どうして今まで気が付かなかったのか。

 平行世界の存在だからとか、同じであっても違う人物だとか、そんなの関係ない。
 私はただ、衛宮士郎(お兄ちゃん)に生きていてほしかった。衛宮士郎(お兄ちゃん)が死ぬところなど、想像したくもなかったのだ。

『はい、合格です。それでいいんですよ、イリヤさん』
「え……ルビー?」
『魔術師だとか、魔法少女だとか、ただの一般ピープルだとか、そんなものは全部些細なことです。
 要は、自分の願いのために、どれだけ頑張れるかが大切なんです』

 そうルビーは、私の悩みなどどうでもいいものだど断言して、やさしい声でそう言った。
 自分の願いのために頑張ることが、一番大事なのだと。
 ……けど私は、そうして失敗した。
 お兄ちゃんを助けようとしたのに、お兄ちゃんを危険にさらした。
 だから、どうしたらいいのかわからないのだと言おうとして、続くルビーの言葉に遮られた。

『イリヤさん。どうしたらいいのかわからない、と言いましたね。ならばせめてイメージしましょう』
「イメージ?」
『はい、イメージです。今回のイリヤさんの失敗は、な〜んにも考えずにあの場所へと戻ってきてしまったことです。
 あの場所で何が起きていたのか。あの場所で何ができたのか。あの場所に戻って、何がしたかったのか。
 そういったことを全く想像しなかったのがダメなんです。ただ誰かを助けたいという想いだけでは、結局何にもできません』

 ルビーの言葉に、イリヤはようやく、は自分の間違いを理解した。
 確かに私は、お兄ちゃんを助けたいという想いだけであの場所に戻った。
 どうやって助けるかとか、そういったことは全く考えてなかったのだ。
 だから何もできなかった。何をすればいいのかさえ、思いつかなかった。だから逆に、助けられる羽目になったのだ。

『前に美遊さんに言いましたでしょう。「人が空想できること全ては起こり得る魔法事象」だと。
 まあ要するに、いつものように理屈や工程をすっ飛ばして、結果だけをイメージすればいいんです。
 現実で不可能なことなら、想像の中で可能にし。
 イリヤさん自身が出来ないのなら、それが出来る魔法を幻想する。
 ――今のイリヤさんに出来ることなんて、それぐらいしかないのですから』

 前にも聞いた、その言葉。
 以前はバカにしているようにしか聞こえなかったそれは、最も大事なことを指していた言葉なのだと、今ようやく気付くことができた。
 そう。

『そして、その空想を現実に変えるのが、私たちカレイドステッキの機能です』

 イメージを力に変える、無限の可能性を持つ魔法少女。
 それがカレイドライナー。それが私、プリズマイリヤなのだ。

『お忘れですか、イリヤさん?』
「ううん。今、思い出したよ」

 ルビーと出会ってから、本当にいろんなことがあったけど、彼女と出会えてよかったと、そう思った。
 だからだろう。正直、魔法少女と名乗るのはかなり恥ずかしいけど、今は少しだけ、そう名乗ってもいい気がしていた。

210 ◆UOJEIq.Rys:2013/07/14(日) 14:07:40 ID:8rLnUPJ.0

『ではイリヤさん。士郎さんに謝りに行きましょう』
「うん。ありがとうね、ルビー」
『いえいえ。これくらいならお安いご用です』

 滲み出た涙を拭って、イリヤはルビーへとお礼を言った。
 そして士郎へと駆け寄り、その手を取る。

「イリヤ? どうしたんだ?」
「お兄ちゃん、ごめんなさい。それと、助けてくれてありがとう」
「べ、別にいいって。兄貴が妹を守るのは当然なんだからさ」

 少し照れくさそうに、士郎は言った。
 その言葉が嬉しくて、でもそのために彼がまた無茶をするのが悲しくて、
 強くなりたい、と、イリヤは初めて心から思った。

 ルビーと関わってから、たくさん怖い思いをした。痛い目にも合った。……死にそうにもなった。
 けど結局はルビーの力で、その時に持っていただけの力で、どうにかできていた。大切な人を……友達を、守れていた。
 けど、これからはもう、ルビーの力だけに頼ることはできない。
 そんな甘えは許されない。

 だから私は、強くなりたかった。
 大切な人を、私自身の力で、守れるくらいに―――



『にしても、やっぱり自爆ボタン押しちゃいましたねぇ、士郎さん』

 そんなイリヤを見守りながら、ルビーはそう呟いた。
 あの瞬間、衛宮士郎は何の躊躇いもなく投影を使った。
 左腕の影響もあっただろうが、それでも危険であることは知っていたはずなのにだ。

『これは一度、内心を聞く必要がありそうです』

 なぜ正義の味方に拘るのか。
 なぜ自分を危険に晒してまで他人を助けようとするのか。
 その行動の原因が分からなければ、結局のところ衛宮士郎は止められないだろう。

『ですが、その前に』
 と呟いて、ルビーはバゼットの傍へと寄る。
 たとえ士郎の内心が判明しようとも、あの左腕をどうにかしなければ、危険なことに変わりはない。
 ならば最悪の結末を避けるためにも、可能な限り手を打っておく必要はある。


『バゼットさん、気付いていましたか?』
 バゼットへと質問を投げかける。
 それは先の戦いに関しての事だと察し、バゼットは然りと肯いて答える。

「衛宮士郎の“投影”と、彼の作り出した弓の事ですか。
 あれは、“アーチャーの能力”に間違いない、そうですねルビー」
『はい、その通りです』
 士郎の語った第五次聖杯戦争におけるサーヴァントと、クラスカードで呼び出される英霊が一致していることはすでに確認している。
 そして士郎の見せた魔術、作り出した弓は、クロの使うアーチャーのクラスカードの能力と同じものだった。
 これらの情報で示されることは一つ。即ち。

「あの英霊の左腕は、サーヴァント・アーチャーのもの、ということですか」
『それもありますが、より正確に言うならば、“士郎さん自身がアーチャーの正体”だと思われます』
「な――――!」
『あの左腕による魔術と考えられないこともありませんが、聖骸布に封じられた状態で、あそこまでの精度を出せるとは思えません。
 それに第一、“霊体同士の接合は普通、絶対に成功しません”。それはバゼットさんも知っているでしょう。
 ならば、アーチャーと士郎さんは同じ存在であると考えるのが、一番無理のない答えなんです』
「それは……そうですが………」

 ルビーのその推測に、さすがのバゼットも同様を隠せない。
 クラスカードで呼び出される存在は、紛れもない英霊なのだ。
 それと同じ存在ということは即ち、“衛宮士郎は英雄だ”と言っているようなものだ。
 現代において、生きた英雄などそうお目にかかれることではない。

211 ◆UOJEIq.Rys:2013/07/14(日) 14:09:17 ID:8rLnUPJ.0

『まあもっとも、士郎さんが英雄だとしても、それは十年以上未来での事でしょうけどね。
 でなければ、あの腕からの反動ももう少し軽いはずです』
「……………………」
『そこでバゼットさん、一つ、お願いがあるのですが』
「クロエ・フォン・アインツベルンを捜すことに協力してほしい、ということですね」
『おお、よくお分かりで。はい、その通りです』
「分からない訳がありません。衛宮士郎がアーチャーと同じ存在であり、彼女はアーチャーのクラスカードを宿している。
 そう考えるのであれば、彼女ならば衛宮士郎の左腕に、何かしらの軽減処理織行える可能性があると予測するのは道理です」

 そう。クラスカードの本当の力は「人間を英霊にする」というもの。
 ならば衛宮士郎自身を、“負荷のあるアーチャーの腕ごと、負荷のないクラスカードで”、同一存在であるアーチャーへと“存在を上書き”すればどうなるか。
 その結果は、全く予想できない。だが“自分自身の力”なのだ。馴染まない筈がない。
 少なくとも“夢幻召喚(インストール)”中は、一切のリスクなく魔術行使ができることは間違いないだろう。

「いいでしょう。その申し出を受けます。
 彼が頼れる戦力になるのであれば、私としても望ましい」
『ありがとうございます』
 ルビーはバゼットに例を告げ、イリヤの元へと戻って行く。
 バゼットはそれを見届け、若干歩み速めた。


 そうして、契約を交わしたもの、理想に敗れたもの、魔術に属する者同士の会話は終わった。
 彼らのそれぞれの当面の目的は定まった。
 後はただ、その目的のために、己が意思を通すだけだ。

 たとえその先に、いかなる運命が待ち受けていようと――――


【G-2/市街地/一日目 午前】

【衛宮士郎@Fate/stay night】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(小)
[装備]:干将莫邪@Fate/stay night、アーチャーの腕
[道具]:基本支給品2人分(デイバッグ一つ解体)、お手製の軽食、カリバーン@Fate/stay night
[思考・状況]
基本:この殺し合いを止める
1:一先ず、穂群原学園に向かい、休憩をとる
2:桜、遠坂、藤ねえ、イリヤの知り合いを探す(桜優先)
3:巧の無茶を止める
4:“呪術式の核”を探しだして、解呪または破壊する
5:桜……セイバー……
[備考]
※十三日目『春になったら』から『決断の時』までの間より参戦
※アーチャーの腕は未開放です。投影回数、残り五回
[情報]
※イリヤが平行世界の人物である
※マントの男が金色のロボットの操縦者


【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(小)
[装備]:カレイドステッキ(ルビー)@プリズマ☆イリヤ
[道具]:クラスカード(キャスター)@プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本:この殺し合いを止める
1:一応バゼットとルビー、お兄ちゃん(衛宮士郎)の指示には従うけど……
2:ミユたちを探す
3:お兄ちゃんを守れるよう、強くなりたい。
4:お兄ちゃんには戦わせたくないし、あまり重荷にはなりたくない
5:乾巧の子供っぽさに呆れている
6:バーサーカーやセイバーには気を付ける
7:呉キリカに恐怖
[備考]
※2wei!三巻終了後より参戦
※カレイドステッキはマスター登録orゲスト登録した相手と10m以上離れられません
[情報]
※衛宮士郎が平行世界の人物である
※黄色い魔法少女(マミ)は殺し合いに乗っている?
※マントの男が金色のロボットの操縦者、かつルルーシュという男と同じ顔?

212 ◆UOJEIq.Rys:2013/07/14(日) 14:09:47 ID:8rLnUPJ.0


【バゼット・フラガ・マクレミッツ@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:全身裂傷、左腕重傷(骨、神経は繋がっている、応急処置・縫合済)、疲労(中)
[装備]:ルーンを刻んだ手袋
[道具]:基本支給品、逆光剣フラガラック×2@プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本:何としてでも生き残る。手段は今の所模索中
1:一先ず穂群原学園に向かう
2:とりあえず会場を回り、クロエ・フォン・アインツベルンを捜す
3:セイバーを追い詰められるだけの人員、戦力を捜す
4:障害となる人物、危険と思しき人物は排除する
5:呉キリカのような魔法少女について調べる
6:呉キリカと再び遭遇したら、今度こそ確実に仕留める
[備考]
※3巻の戦闘終了後より参戦。
※「死痛の隷属」は解呪済みです。
※フラガラックの発動条件は、通常より厳しくなっています。
※セイバーやバーサーカーは、クラスカードを核にしていると推測しています。
※魔法少女やオルフェノクについて、ある程度の知識を得ました(が、先入観などで間違いや片寄りがあるかもしれません)


【乾巧@仮面ライダー555】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、治療済み、肩から背中に掛けて切り傷
[装備]:なし
[道具]:共通支給品、ファイズブラスター@仮面ライダー555
[思考・状況]
基本:木場を元の優しい奴に戻したい
0:マミの事が少し心配
1:とりあえず、穂群原学園で怪我の治療をする
2:二人の元から離れたいが、仕方がないので協力する
3:衛宮士郎が少し気になる(啓太郎と重ねている)
4:暁美ほむらを探して、魔法少女について訊く
5:マミは探さない
[備考]
※参戦時期は36話〜38話の時期です
[情報]
※ロロ・ヴィ・ブリタニアをルルーシュ・ランペルージと認識?
※マントの男が金色のロボットの操縦者

213 ◆UOJEIq.Rys:2013/07/14(日) 14:14:53 ID:8rLnUPJ.0
以上で投下を終了します。
何か意見や、修正すべき点などがありましたら、お願いします。

タイトルは、
>>187-196が、スパークス
>>197-204が、後より出でて先に断つもの
>>205-212が、それぞれの想い
となります。

214名無しさん:2013/07/14(日) 19:52:03 ID:TBxSZV9QO
投下乙です。

大事な人だけの味方で、人間やめてる魔法少女で。
キリカは四人と対応してんだな。

215名無しさん:2013/07/14(日) 20:14:58 ID:BkuZrsQ60
投下乙です
おお、キリカ中々やるじゃん
バゼットと戦う中で乱入する士郎、ここで士郎とキリカの感情が入り混じったか
戦いの中に色々な想いが入り混じった、読み応えのある話でした

216名無しさん:2013/07/14(日) 22:27:02 ID:Jis0yJ0o0
久しぶりの投下乙です。
四対一でも生き伸びたキリカはマジで凄いな。ボロボロになったけど、織莉子への愛で立ち上がったとは……
そしてキリカと戦った四人はみんな熱かったな。とりあえず士郎はどうなるだろう……かなり消耗しただろうし。
戦闘シーンも相変わらず丁寧で、読んでてかなりテンションが上がりました!
今後とも頑張ってください。

217 ◆Vj6e1anjAc:2013/07/17(水) 13:06:30 ID:5v0w.KoE0
呉キリカ、セイバーオルタ、長田結花、美国織莉子、サカキ分を投下します

218美国織莉子、私の全て ◆Vj6e1anjAc:2013/07/17(水) 13:07:01 ID:5v0w.KoE0
「――君の友人とは、どういう奴なんだ?」
 バイクの雄叫びを轟かす中、サカキが織莉子に問い掛けてきた。
「えっ!?」
 いまいち言葉を聞き取れず、織莉子は声を張って問い返す。
 それを察したのだろう。やがてオートバジンのエンジンが止まり、元の静寂が訪れた。
「いや、君の友人のことだが……そういえばどんな奴なのか、聞いたことがなかったのでな」
 今のうちに聞いておいた方が、捜すにも便利かもしれないと、サカキは言った。
 なるほど確かに、と得心する。
 そういえばキリカと合流することばかり考えて、彼女の外見特徴やら、そういったものを、ついぞ伝えていなかった。
 自分より頭一つ背が低く、しかし同年齢の女の子。
 黒髪を短く切りそろえ、瞳は猫のように黄色い。
 おおよそそんな特徴を、織莉子はサカキへと伝える。
「荒事に長けていると言ったが、それはつまり、『殺さねばならない相手』というのを」
「ええ。共に追いかける、共犯者です」
 思えば随分と過酷な道に、彼女を付き合わせてしまった。
 こんな時にとは思いつつも、織莉子はキリカへと思いを馳せる。
 彼女の意識はゆっくりと、過去へ過去へと追想される。
 見滝原中学校襲撃作戦――否、果たして作戦と呼べるものなのか。
 恐らく次の戦いで、キリカは確実に死ぬだろう。彼女を魔女にするというのは、すなわちそういうことに他ならない。
(きっと、私と出会っていなければ)
 彼女は自分と出会ったことで、魔法少女の契約を果たした。
 自分の人格を捻じ曲げてまで、私の友でありたいと願い、戦いの道へと身を投じた。
 きっと自分がいなければ、こんなことにはならなかっただろう――どうしても、そう考えてしまう。
 言うなれば美国織莉子という女は、彼女の人生を破壊したのだ。
 自分と関わることさえなければ、キリカは戦いに身を投じることもなく、こんなに早く死ぬこともなかったのだ。
 そう考えると、己の身勝手さに、胸が締め付けられそうになる。
「何か、後ろめたいことでも?」
 どうやら黙りこくってしまっていたらしい。
 そう問われて、織莉子ははっと我に返った。
「彼女を巻き込んだのは私です。私が独りで戦えていたなら……いえ、私と会っていなければ、そんなことにはならなかった」
「だが、大切な存在ではあるのだろう?」
「……そう言われると、そうなんですけどね」
 そういうことを問われると、そう返さざるを得ないのが、自分のタチの悪いところだ。
 サカキの問い掛けに対して、織莉子は苦笑と共に返した。
 きっと独りで戦っていたなら、己は当に壊れていただろう。
 過激なことを思いつくのも、実行するのもできるのに、心の強度という一点だけが、どうしても行動に伴わなかった。
 そんな資格などないのに、奪った命の大きさに、胸を痛めてばかりだった。
 キリカが傍にいなければ、きっと耐えられなかっただろう。無駄な良心の呵責に潰され、志半ばで狂っていただろう。
 結局美国織莉子という女が、どれほど愚かで惰弱だったことか――そればかりを思い知らされる。
(キリカ)
 だが、それでも思ってしまうのだ。
 自分にとって、彼女の存在が、どれほど大きかったのか。
 自らの命に忠実に従い、誰よりも冷酷に刃を振るう、血に飢えた魔獣のような少女。
 それでありながら、戦いのない日には、誰よりも無邪気に笑う少女。
 呉キリカという娘の存在が、自分の今日までの日々のなかで、どれほどかけがえのないものであったのか。
 不謹慎だとは思いながらも、どうしても、そう実感せざるを得ないのだ。

219美国織莉子、私の全て ◆Vj6e1anjAc:2013/07/17(水) 13:08:12 ID:5v0w.KoE0


 天高く昇る太陽を見ると、彼女のことを思い出す。
 愛しき彼女のその他に、ただ一人友と呼べる者――間宮えりかを思い出す。

 かつて心の傷と共に、2つに割かれた無二の友。
 契約を跨いで再会し、膿んだ傷跡を振り払い、再びその手を取った友。
 太陽と澄みきった空のように、血の穢れを知らぬ清らかな少女。
 今の自分の姿を見れば、彼女は何と思うだろう。
 正義の魔法少女とは程遠い、殺戮の徒となった自分の姿に、彼女は何を想うだろう。

 気付けばこの手は血に染まり、この身は鬼喰らう羅刹と化した。
 闇色の服は腐肉を啜り、死神の装束へと様変わりした。
 忌まわしき人殺しの自分。
 蔑まれるべき同胞殺しの自分。
 卑しくも醜き自分、自分!

(こんな時に何を考えてるんだ、私は)
 頭の中に渦巻く思考を、首を振って振り払う。
 満身創痍の状態で、友人のことを思い出すなど、まるで走馬灯のようではないか。
 縁起でもないムードを吹き飛ばすと、呉キリカは走るペースを上げた。
 土の煙を逆巻かせ、蒼天の下を黒豹が駆ける。
 さながら漆黒の旋風と化して、キリカは荒野を疾走する。
(今更後悔なんてするもんか)
 迷うことなどあるものか。
 ジェムのリミットに追い詰められ、弱気になっていた己を、キリカは自ら戒める。
 魔法少女の汚名など、今更恐れるつもりはない。
 全ては正義を為すためだ。敢えてこの手を血肉で汚し、初めて得られる平和のためだ。
 最悪の魔女を消すことができれば、世界の寿命は確実に伸びる。
 何より彼女の屍の先には、織莉子との平穏が待っているのだ。
(そのためだったら、躊躇わない)
 迷うつもりなど毛頭ない。
 彼女の望みを叶えるためなら、この身は血塗れの牙となろう。
 彼女を守るためならば、悪鬼となって刃を振るおう。
 そのためにはまず、何よりも、彼女との合流が第一だ。
 美国織莉子を守るためには、美国織莉子の傍に立つことだ。
 彼女が行き着く場所として、最も可能性の高い、美国邸を目指さなければ――
「――ッ!!」
 その瞬間、大地が雄叫びと共に裂けた。
 本能的に身をかわし、キリカは瞳を見開いた。
 金の豹眼に映るのは、地面を貫く漆黒の波動だ。
 どぉん――と唸る破砕の音が、おぞましき魔力の刃を引き連れ、キリカのいた場所を穿ったのだ。
 この波動には、覚えがある。
 見る者をその禍々しき気配で、触れる前から射殺すような、邪悪な魔力には見覚えがある。
 もうもうと立ち込める闇黒の奥に、がちゃりと音を立て現れるのは、甲冑を纏いし騎士の姿だ。
 漆黒の鎧のその背後に、隠れるように付き従うのは、黒髪を長く伸ばした少女だ。
「……はは。まさか、ここでまみえることになるとはね」
 黒き騎士王の名はセイバー。
 冷たき闇をその身に湛え、魔剣を携えしもののふは、狂王アーサー・ペンドラゴン。
 キラ対策本部で一度見送り、遠く離れたこの大地で、再び遭遇した魔人の名である。

220美国織莉子、私の全て ◆Vj6e1anjAc:2013/07/17(水) 13:09:15 ID:5v0w.KoE0


「足音が聞こえます」
 この長田結花という下僕は、こと聴力に秀でているらしい。
 キリカに攻撃を仕掛ける数分前、セイバーは悠然と構えながら、彼女の報告を受け止めていた。
「方角は?」
「あちらの方から」
 細い指が示したのは、南西の浅瀬の方だった。
 確かに少し目を細めれば、砂浜にぼんやりと影が見える。結花はあの者の足音を、鋭敏に感じ取ったのだろう。
 さて、これをどうするか。騎士王はしばし思考する。
 あれに攻めかかるとなれば、東方に広がる市街地からは、遠ざかることになるだろう。
 殲滅戦を望むセイバーにとって、人目を引く土地から離れることは、好ましいこととは言いがたい。
 いっそ敢えてこの場で待ち、迎え撃った方がいいのではないか。
(いや)
 そこまで巡らせた思考を、セイバーは首を振り、否定した。
 そもそも東側の町では、白い魔術師や魔物使いと、あれほどの激戦を繰り広げたばかりではないか。
 あの音に反応する者もなく、静まり返っていた以上、あの町に集まっていた者の数など、たかが知れているだろう。
 であれば、徐々に近づきつつある影を攻めると同時に、西の町へ戻った方がいい。
 既に通過した箇所ではあるが、時間も経過している以上、人の出入りが発生している可能性は高いはずだ。
「行くぞ、ユカ。あの者を叩く」
「っ……はい」
 震える声の同意を聞くと、セイバーは具足を歩ませる。
 抜き身の魔剣に闇を纏わせ、迫る標的を睨み据える。
 油断はしない。出会いがしらに殺す気の技だ。
 これまでの不甲斐ない戦果とは、ここらで決別せねばなるまい。
 かの英雄王ギルガメッシュではないが、どこかで慢心があったからこそ、これまでの敵達には逃げられてきたのだ。
「フッ――!」
 短い呼吸と共に、一閃。
 切っ先から黒の魔力を放ち、人影目掛けて狙い撃つ。
 遅れて、どぉん、と炸裂音が鳴った。
 漆黒は過たず目標地点を穿ち、土煙を伴い大地をひっくり返した。
 死体を確認せねばなるまい。黒き霧を掻き分けて、なおもセイバーは歩みを進める。
「……はは。まさか、ここでまみえることになるとはね」
 それ見ろ、油断は禁物だ。
 闇と土煙の向こうから、生きていたターゲットの声がした。
「どこかで会ったか?」
「私の勝手な因縁だよ。キミが知らないのも無理はない」
 まるで黒猫のような娘だ。
 馴れ馴れしく語り掛けてくる、しかし全く見覚えのない、若い少女の姿がそこにあった。
 恐らくは結花よりも年下だろう。背の高さはだいぶ違うが、白い魔術師と同じくらいだろうか。
 黒髪黒ずくめの中で、片方を眼帯で覆われた金色の瞳が、野良猫のように光っている。
 背筋を丸めた前傾姿勢は、まさに猫背というやつだ。
「さて。じゃあ早速、キミ達に質問させてもらおうかな」
 静かに微笑を浮かべながら。
 チェシャ猫が嘲笑うかのような。
 余裕綽々といった態度で、黒ずくめはそう切り出してきた。

221美国織莉子、私の全て ◆Vj6e1anjAc:2013/07/17(水) 13:10:17 ID:5v0w.KoE0


(うーん……まずいかなぁ、これは)
 さすがにこのタイミングで、彼女に鉢合わせたことにはビビッた。
 余裕な笑顔とは裏腹に、キリカはセイバーとの遭遇に対して、内心で冷や汗を流していた。
 たとえどれほどの実力者であろうと、殺さない理由にはならない。
 それは殺し合いが始まってから、10時間以上が経った今でも、変わらず抱き続けている信条だ。
 それでも、タイミングがよろしくなかった。
 傷の回復もままならず、生命維持のために魔力を垂れ流し、魔女化一歩手前に迫った今では、どうしても弱気に考えてしまう。
 こりゃまともにやり合ったら死ぬかもな、と。
 死ぬこと自体は怖くないけど、ほとんど何もしてないうちに死ぬのもなぁ、と。
「私と同い年くらいで、私より頭ひとつ背の高い女の子……それでいて銀色の髪の子を、どこかで見た覚えはないかな」
 それでも、無視して素通りはできそうにない。
 実際、グリーフシードを持っていて、それを何かの気紛れで譲ってくれたら、それはそれで御の字というものだ。
 キリカは眼前の騎士王目掛けて、用意していた問いを発した。
「その特徴を持った者ならば、つい先ほど相対している。この私に敵わぬと見るや、無様に逃げ出した腑抜けであったが」
 びきっ、と音が聞こえた気がした。
 ほとんど条件反射的に、額に青筋が浮いたのが分かった。
 落ち着け、堪えろ呉キリカ。そりゃあ確かに奴の暴言は、即刻十六分殺モノだが、だからって飛びかかるにはまだ早い。
「ふぅーん……ん、じゃ、まぁ……もう1つの質問」
 織莉子を馬鹿にされたことに耐えるという、彼女にしては相当なレベルの頑張りを見せながら、キリカは次なる問いを発する。
「私はその他にも、グリーフシードという物を探してる。これくらいの大きさの、黒い粒みたいなものだ。持ってるかい?」
「ユカ、あれを」
 背後の少女に対して、セイバーが言う。
 長田結花は、おどおどとした動作で、手持ちのデイパックを漁り始めた。
 どうやらこの2人の娘は、主従関係にあるらしい。2人分の荷物を、彼女1人が、一手に管理させられているようだ。
 権力に怯えるような仕草は、過去のキリカ自身を見ているようで、苛立ちと苦々しさが込み上げてくる。
「……これでしょうか?」
 しばらくして、結花が取り出したのは、黒に金の縁取りがされたボールだ。
 自分がニアから奪った支給品と、どことなく似通った形をしている。
 それは要するに、グリーフシードではないということだ。非常に惜しいところではあったのだが。
 結花の問い掛けに対して、キリカは無言で首を振った。
「質問とやらは、それで終わりか」
「うん、そうだよ――」
 ああ、その通りだ。
 質問すべきことは全てした。だからそろそろ終わりにしよう。
「――上から目線の、クズ野郎殿ッ!」
 だんっと大地を蹴って走った。
 漆黒の爪を振りかぶった。
 黒き魔法少女の六爪と、黒き騎士王の携えた魔剣とが、激突し合い火花を散らす。
 茶番は終わりだ。ここからは断罪の殺戮タイムだ。
 織莉子に危害を与えた上に、挙げ句その戦いを侮辱した者には、然るべき報いをくれてやる。
 我慢の限界点を超え、怒りの炎を燃やす瞳が、傲岸なる黒王を睨み据えた。

222美国織莉子、私の全て ◆Vj6e1anjAc:2013/07/17(水) 13:11:38 ID:5v0w.KoE0


(なんなの、あの子は……?)
 飛び込むタイミングを逸した長田結花は、横から戦闘を眺めながら、困惑した表情を浮かべていた。
 恐らくはあの美遊のように、オルフェノクとはまた異なる、何らかの超能力の持ち主なのだろう。
 人知を超えた運動神経と、セイバーの反撃を鈍らせる不可解な力――それらを生身で発していることが、何よりの証拠だった。
 それでも、どうというわけではない。
 単純な戦闘能力では、むしろセイバーの方が圧倒している。
 猛烈な勢いで攻め込む眼帯の少女は、しかしそれだけの攻撃を、一度も通せていないのだ。
 それどころか、セイバーの放つ瘴気を前に、何度か吹き飛ばされてすらいる。
(勝てるわけがないのに)
 あのまま戦い続けていれば、いずれジリ貧で殺されてしまうのに。
 なのに何故、あの娘は、こんな無駄な戦いに終始している。
 何故彼女はあれほどまでに、なりふり構わず戦っていられる。
(きっと)
 恐らく、原因はセイバーの言葉だ。
 眼帯の少女の尋ね人――銀髪の少女とやらを侮辱されたことが、それほどに許せなかったのだ。
 それほどに深い愛情があった。それほどに強い情熱があった。
 彼女を傷つけ、嘲笑う者は、何者であっても許しはしないと、示し続けるだけの覚悟があった。
(私は……)
 それにひきかえ、私はどうだ。
 これまでの戦いを追想する。
 セイバーは己の目的を、生かすべきただ1人以外の殲滅だと言った。
 いずれ恩人・木場勇治であろうと、その手にかけんとするであろう危険な女だ。
 木場のためと言うのであれば、たとえ身体を張ってでも、セイバーを止めなければなるまい。
 それでも自分はそれすらできず、我が身と命可愛さに、彼女に文句も言わず従っている。
(あの子は強い)
 そして私は、どうしようもなく弱い。
 力ではなく、心の話だ。
 心に広がる劣等感の闇を、より深く重いものへと変えながら、南へ南へと移る戦場を、結花は追いかけ続けていた。



「らぁッ!」
 砂を撒き散らし、踏み込んで飛び出す。
 闇色に煌めく殺意の刃を、裂帛の気合と共に叩き込む。
 きぃん、と軽い音が鳴った。これでいなされるのは何度目か。
 騎士王を狙ったキリカの爪は、しかし目前で魔剣に阻まれ、標的を切り裂くことなく弾かれる。
「フッ――」
 迫りくる反撃の一閃。
「チィッ!」
 舌打ちと共に、速度低下を発動。
 戦闘フィールド全体を覆うような、贅沢な使い方はできない。穢れが8割に達したジェムには、それほどの魔力の余裕などない。
 身体の周囲に魔法を放ち、目前にまで迫った刃を、紙一重のタイミングで回避する。
「姦しいだけの小蠅が!」
 まるで剣先が爆発したようだ。
 怒号と共に逆巻くは闇黒。砂浜に振り降ろされた剣が、おぞましき漆黒の魔力を放つ。
 キリカはこれをバックステップで回避――されど、その反応すらも織り込み済みだ。
「ぐぁっ!」
 爪越しの圧力に悲鳴が上がった。
 追撃に振り上げられた魔剣グラムが、キリカの身体を弾き飛ばした。
 咄嗟に爪を突き出した防御すらも、お構いなしの破壊係数が、その防御ごと吹っ飛ばしたのだ。
 もうもうと砂ぼこりを立てながら、無様に地面を転がる黒衣が、砂浜の色で穢されていく。

223美国織莉子、私の全て ◆Vj6e1anjAc:2013/07/17(水) 13:13:31 ID:5v0w.KoE0
「この程度だというのなら、あの銀髪の方が善戦していたな」
 言いながら、セイバーの靴音が迫る。
 がちゃりがちゃりという具足の音が、砂を伝って耳へと届く。
 立ち上がるキリカの背後には、さざ波の音が聞こえていた。劣勢の戦いを続けるうちに、随分と後退していたようだ。
「……ォオオオオッ!」
 それでも、立ち止まる理由にはならない。
 己を奮わすように叫びながら、キリカは再びセイバーへと迫る。
 斬撃、回避、またも斬撃。
 振りかぶる爪撃がその隙を狙った。圧倒的な暴威を抜けて、その喉笛を噛み千切らんと、ひたすらに懸命に喰らいついた。
 速度低下を全開で発揮し、殺意の百烈をくぐり抜けながら、一心不乱にその腕を振るった。
(何をやってるんだろうね、私は……ッ!)
 剣風と火花の吹き荒れる中、キリカは自嘲気味に想う。
 織莉子を守ると誓った自分が、おおよそ勝ち目の見えない戦いに、何を熱くなっているのだろうと。
 セイバーの力は強大だ。
 移動速度はそこそこ留まりだが、その魔剣を振るう攻撃力は、自分を大きく凌駕している。
 そして剣士の腕力は、必然防御力をも兼ね備える。軽い鉤爪の力では、とても押し切れない鉄壁の守りだ。
 かつてバゼットに押しつけた、あの時の悪い予感の通り、相性最悪の相手と言えるだろう。
 速度低下がフルに使えない今は、達人の技量の隙も突けず、無様にも攻めあぐねているのが現状だ。
(こいつは強い)
 自信過剰と思われた態度が、分相応に感じるほどには強い。
 気をやれば、おぞましくも禍々しきオーラに、そのまま飲み込まれ喰われそうになる。
 こんな勝ち目の薄い相手に、マジになっている自分は、きっと織莉子の守護者失格だ。
 万が一コイツを倒せたとしても、グリーフシードのような見返りなど、何も得られないというのに。
「何故、このような無駄な戦に臨む」
 爪を受け止める黒騎士が、見透かしたようにキリカに問う。
 刃越しの問い掛けが、キリカの胸に突き刺さる。
「勝てもしない相手に対して」
 その言葉と共に、闇が爆ぜた。
 白昼の砂浜が宵に飲まれた。
 どうっ――と炸裂する轟音と共に、セイバーが全身から瘴気を放ったのだ。
「何故か、と聞くか……ッ!」
 押し寄せる圧力に歯を食いしばり、それでもキリカは言葉を返す。
 踏ん張る両足が、砂浜を穿ち、飲み込まれんばかりの力を込める。
「私はいつだって、彼女のために……彼女のことだけを願ってきた……!」
 漆黒の装束が赤黒く染まった。
 治りかけの心臓が破裂し、傷口から鮮血がこぼれ落ちた。
 人ならぬ身体を血みどろに染め、まさしくゾンビの有様になり果てながらも、キリカは懸命に衝撃に耐えた。
「今の私が、彼女のために……私ごときにできることなんて――」
 そうだ。
 今更変に考えずとも、答えはとっくに出ていたのだ。
 あの時セイバーに飛びかかり、戦闘を始めてしまった時点で、この結論には行き着いていたのだ。
 その点では、この敵に挑んでしまったことは失敗だった。それは素直に認めよう。
 そしてこの戦いの中で、死にかけた身体で為せることなど、きっとそれほど多くはない。
 グリーフシードも見つからず、魔力も尽きかけた今の自分は、織莉子の足手まといになるのが関の山だ。
 彼女はどこまでも優しい人だ。
 きっとボロボロの自分を気遣い、為すべき目的も後回しにして、グリーフシードを探そうとするだろう。
 そんな彼女の好意には、正直甘えたいと思う。
 それでも、それは許されない。織莉子のためにある自分が、織莉子の瞳を曇らせることなど、決してあってはならないのだから。
「お前を倒すこと――くらいだからッ!!」
 黒豹が吼える。魔獣が叫ぶ。
 八方を闇に包まれながらも、金色の瞳は鋭く輝く。
 三閃二対の六爪が、五閃二対の十爪へと変わった。
 フルパワーを込めた魔性の爪が、遂にセイバーの魔剣を弾き返した。
 こいつは強い。その上先の発言からして、明らかに織莉子と敵対している。
 であれば、生かしてはおけない。たとえ相討ちになろうとも、織莉子を揺るがす脅威であるなら、道連れに地獄へと連れて逝く。
 それが残された魔力で、呉キリカが彼女のために為し得る、唯一無二の奉仕なのだから。

224美国織莉子、私の全て ◆Vj6e1anjAc:2013/07/17(水) 13:14:20 ID:5v0w.KoE0
「うぉおおおおおォォォォ―――ッ!!!」
 吼え猛る魔力が刃を成した。
 黒豹の咆哮に呼応し、十をも超える無数の爪が、続々と掌から展開された。
 殺意の刃は縦に連なり、おぞましき姿へと変貌していく。
 速度低下が消え去ろうと、ソウルジェムが濁ろうと、お構いなしに肥大する殺意が、禍々しき姿を顕現させる。
「啜れ――その魂ごとッ!」
 脳裏に思い描くのは、旧友・間宮えりかの思い出だ。
 かつて彼女を救うため、一度だけ使った奥の手の記憶だ。
 膨大な魔力を必要とするため、ついぞ一瞬前まで忘れていた。
 速度低下の魔法とは、あまりに相性の悪い荒技であるが故に、意識の範疇外に置き去りにしていた。
 その封印を、今こそ解く。
 魔法少女狩りの中で忘れ去り、あの金色の巨人相手にも使わなかった、最強の荒技をここに放つ。
 全ては、織莉子の未来のために。
 織莉子の行く手を阻む暗雲を、一刀のもとに断ち切るために。
 鈍足のパワーファイター相手だからこそ、放つことのできるこの一撃に、全ての勝機を注ぎ込むために!

「――ヴァンパイアファングッ!!!」

 怒号と共に振り降ろされたのは、連鎖する爪が成す巨大な鞭だ。
 鋸を思わせる無数の刃で、血肉も骨も魂さえも、微塵に引き千切る血啜りの太刀だ。
 大蛇の体躯のごとく激烈に。
 豹の尾のごとくしなやかに。
 轟然と唸りを上げながら、見上げるほどの刃を降ろす。
 風を大気を引き裂きながら、万感の想いを刃と連ね、騎士王目掛けて叩き込む。
(織莉子――――――ッ!)
 渦を巻き唸り狂う魔力の中、キリカはひたすらにその名を叫んだ。
 声に出すことはあらずとも、心の中で叫び続けた。
 物言わぬ叫びは牙となって、暴力を伴い具現化し、セイバーを喰い殺すべく振り降ろされた。



 人の気配もないゴーストタウンでは、遠くの音すらも確かに響く。
 オートバジンを停めていたサカキが、その音を聞いたのは必然であり。
 同道する織莉子が聞いたのもまた、当然の帰結に他ならなかった。
「今のは……?」
 美国織莉子の耳に届いたのは、南方から聞こえた爆音だ。
 詳細を確かめようとそちらを向いたが、建物に遮られて何も見えない。
 どうやら音の様子からして、町の外から聞こえたらしい。
「行ってみるか?」
 気になることがあるのなら、行って確かめるのも手かもしれない。サカキは織莉子にそう提案する。
 こんな状況では、一体何が、行動の手掛かりになるかも分からない。
 あるいはこの音のする方で、キリカが戦っている可能性もある。
 であれば、僅かな可能性も見捨てず、このままバイクで町を出て、音の主を見に行くべきだろうか。
 そんな選択肢がよぎった瞬間、彼女の予知魔法は発動した。
 来たるべき未来を見通す瞳が、行動の果ての結果を捉えた。
「……!」
 瞬間、織莉子は息を呑む。
 一瞬に垣間見た未来の気配に、その目を大きく丸く見開く。
「サカキさん、急いで! 音の方へ行きます!」
 尋常ならざる様子だった。
 既に目的の鹿目家は、すぐ近くにまで迫っていたが、それすらも意に介さぬ叫びだった。
 ただならぬものを感じたサカキは、素直にエンジンを始動させる。
 オートバジンのアクセルを唸らせ、南方へと方向転換する。
(今、未来予知が伝えたものは……)
 美国織莉子の予知魔法には、大きな制限がかかっている。
 予知の内容は近未来に限られ、それも遠くになればなるほど、ぼんやりとしたものになってしまう。
 当然、これほど離れた場所だ。行き着くまでが遅くなる以上、ろくに認識できた情報などない。
 それでもただ1つだけ、確かに分かっていたことがある。

225美国織莉子、私の全て ◆Vj6e1anjAc:2013/07/17(水) 13:16:10 ID:5v0w.KoE0
 予知が告げた未来の世界――その時そこに立つ自分は、泣いていた。
 固有魔法が告げた未来は、悲しみの感情を伴う未来だったのだ。



 吹き荒れる風に煽られて、塵が天へと飛んでいく。
 黒々とした塵の数々が、黒い旋風に飛ばされていく。
 騎士王セイバーの放つ瘴気は、漆黒の爪を吹き飛ばしていた。
 宙に舞う無数の刃の中、声もなく風に煽られた人影が、静かにアーチを描いていた。
 遅れて、ばしゃん、と音が聞こえる。
 豹の苛烈さを削ぎ落され、野良猫のごとく無様な姿で。
 血塗れの黒ずくめを纏った少女が、波打ち際へと落ちた音だ。
 黒衣の狂王はその光景を、目で追うことすらしなかった。
 降り注ぐ爪が粒子と消えて、黒い粉雪と変わる中、騎士もまた無言で佇んでいた。
「………」
 恐るべきかな、漆黒の王。
 悠然たる騎士王の姿を見て、結花は改めて痛感する。
 今まさに眼帯娘が振るった、あの巨大な鋸の一撃は、さすがに凌げまいと思った。
 しかしセイバーは、持てる全ての力をもって、それすらも真っ向から迎え撃った。
 さながら竜退治の神話のように。
 のたうつ大蛇を物ともせずに。
 これまでの比にならぬオーラを放ち、真正面からぶつけることで、一刀の下に粉砕してみせたのだ。
「行くぞ、ユカ」
 もう勝負は終わったと、騎士王はその従者へと告げる。
 海水を血に染める少女を置き去りに、セイバーは西方へと歩みを進める。
 一瞬の間を置くと、結花は慌てて、黒き王の後へと続いた。
 これだけ派手にやったのだ。近くにいるファイズが、音を聞きつけ、こちらへ追いかけてくるかもしれない。
 そう自分に言い聞かせながら、結花もまた後ろを振り返ることなく、セイバーの後ろ姿を追いかけた。
 あるいは、哀れな反逆者の末路を、直視したくなかったのかもしれない。


【F-5/砂浜/一日目 昼】

【セイバー・オルタ@Fate/stay night】
[状態]:健康、疲労(中)、黒化、魔力消費(大)
[装備]:グラム@Fate/stay night
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:間桐桜のサーヴァントとして、間桐桜を優勝させる
1:人の居そうな場所に向かう。とりあえず西側の市街地を目指す
2:間桐桜を探して、安全を確保する
3:エクスカリバーを探す
4:間桐桜を除く参加者全員の殲滅。この人間(長田結花)は雑用係として使うが使えなくなったら殺す
5:クロエ・フォン・アインツベルンを探す
6:もし士郎たちに合った時は、イリヤスフィールが聖杯の器かどうかをはっきり確かめる(積極的には探さない)
[備考]
※間桐桜とのラインは途切れています
※プリズマ☆イリヤの世界の存在を知りました
 クロエ・フォン・アインツベルンという存在が聖杯の器に関わっていると推測しています

226美国織莉子、私の全て ◆Vj6e1anjAc:2013/07/17(水) 13:17:18 ID:5v0w.KoE0
【長田結花@仮面ライダー555】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、翼にダメージ(オルフェノク態のダメージ)、仮面ライダー(間桐桜)に対する重度の恐怖
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、ゴージャスボール@ポケットモンスター(ゲーム)、不明支給品0〜3
[思考・状況]
基本:???
1:死にたくない
2:黒い剣士(セイバー)に、殺されないために従う
3:仮面ライダー(間桐桜)に言われた通り、“悪い人”を殺す?
4:木場さんの為に、木場さんを傷つける『人間』を殺す?
5:乾さんに裁かれるなら―――?
[備考]
※参戦時期は第42話冒頭(警官を吹き飛ばして走り去った後)です
※自分を襲ったファイズが乾巧だと思っています

【ゴージャスボール@ポケットモンスター(ゲーム)】
セイバー・オルタに支給。
野生のポケモンを捕獲することができる、モンスターボールの一種。支給された段階では、ポケモンは入っていない。
このボールで捕獲されたポケモンは、トレーナーになつきやすくなる。内部はよほど快適な空間なのだろうか。




 もう、何も感じない。
 もう何もかも残っていない。
 身体はズタボロのはずなのに、痛みを覚えることもなく。
 波の音が心地いいはずなのに、水の冷たさも感じることなく。
 仰向けに打ち捨てられた私は、地上へ戻る気力すらもなく、波打ち際にたゆたっていた。

 分かることと言えば、魔力の気配が、急速に消えつつあることくらいだ。
 既に身体に受けたダメージは、ソウルジェムの限界を超えてしまった。
 生命維持もままならず、魔力は無駄に浪費され、穢れは全面に広まりつつある。
 かといって、魔法少女が辿る末路であるはずの、魔女化の気配すら感じ取れない。
 ああ、私は負けたのか。
 自らの力で勝つことも、魔女を置き土産に残すことも叶わず、このまま朽ち果ててしまうのか。
 諦観にも似た無力感の中、私は至極冷静に、自分の状況を分析していた。

 心残りは、ないわけではない。
 むしろ短い人生を振り返れば、未練は山のように積もっている。
 最悪の魔女の誕生を阻止し、ワルプルギスの夜とやらも追い払い、見滝原の町を守りたかった。
 何よりも、その先で待っている、織莉子との平穏な日常を、あの薔薇園で謳歌したかった。
 欲を言うことが許されるなら、えりかと会う約束をつけたりして、織莉子に紹介したりもしたかった。
 いいや、そんなことよりも、引き離されたこの大地で、せめてもう一目だけ、織莉子と再会したかった。

 全てを喪失した身体は、あまりに軽い。
 身体を動かす力すら、傷口から海へ流れ出たらしい。
 やりたいことはあるはずなのに、それを実現する体力も、それに向かう気力すらも湧いてこない。
 どころか、こうしているうちに、少し眠くなってきた。
 終わりが近いということなのだろう。いよいよ現世とサヨナラし、地の底に還る時が来たのだろう。
 心地のいい子守唄も聞こえている。ならば、これ以上の贅沢も言うまい。
 霞み始めた視界の中、天を仰ぐその瞼を、私はゆっくりと閉じようとして、

「――キリカッ!」

 聞き覚えのあるその声に、閉じかけた瞼を開き直した。

227美国織莉子、私の全て ◆Vj6e1anjAc:2013/07/17(水) 13:18:23 ID:5v0w.KoE0
 ばしゃばしゃ、と水音が聞こえる。
 こちらへ駆け寄る足音が聞こえる。
 遅れて伝わってきたのは、身体を持ち上げる腕の感触だ。
 ああ、何と懐かしいことだろう。
 この感覚は知っている。この温かさは知っている。

「ああ……織莉子か」

 愛する彼女の腕の心地を、私は何よりも覚えている。

「ああ、じゃないわよ……!」

 キリカの馬鹿、無茶をして。
 普段なら絶対に言わないような、子供じみた言葉が繰り返される。
 あれほど見たかった織莉子の顔が、見る間に涙で濡れていく。
 痛いほど抱きしめられた身体から、痛みが伝わらないのが残念だった。
 愛の証であるならば、きつい抱擁の痛みですらも、この身で感じていたかった。

「おり、こ……」

 悲しませたことを、申し訳なく思い。
 同時に、しょうがないなとも思う。
 これではいつもとあべこべだ。ワガママを言って駄々をこねるのは、私のキャラではなかったか。
 動く気配のなくなった身体を、今更に、動かしたいと思った。
 手ごたえのない身体に力を入れて、懸命に手を伸ばそうとした。
 その手が、後頭部へと触れる。
 さらさらとした織莉子の頭を、抱き寄せるようにしてなぞる。
 もたれかかるような姿勢になって、ようやく私達2人は、互いに抱き合う形になった。

「ただいま」
「ええ……」
「ごめんなさい」
「ええ……!」

 ようやくこの場所へ帰れた。
 ようやく彼女の元へ辿り着いた。
 置いて逝ってしまうことは、申し訳ないとは思うけれど、私にはこれだけで十分だ。
 短い人生ではあったものの、この15年の締めくくりとしては、これほど相応しい幕引きはなかった。
 あとは1つだけ、言葉を遺そう。
 それは罪の告白ではない。
 織莉子を欺き擦り寄ったことは、確かに正直に打ち明けたかった。
 だけど悲しいことに、この身には、そんな時間は残されていないのだ。
 だから、伝えるのはそれじゃない。
 最期に残すべき言葉は、後ろめたい謝罪の言葉じゃない。

「ありが、とう……」

 出会えたことへの感謝の言葉を、私は最期の遺言に選んだ。

228美国織莉子、私の全て ◆Vj6e1anjAc:2013/07/17(水) 13:20:07 ID:5v0w.KoE0
「……っ!」

 きっと織莉子は優しいから、自分を呪ってしまうだろう。
 責任感の強い子だから、私がキリカを死に追いやったと、自分を追い詰めてしまうだろう。
 けれども、私は望まない。
 そんな自責を求めはしない。
 何故なら、織莉子と過ごした時間は、とっても幸せだったから。
 この15年の人生が、嫌なこと尽くめだった生涯が、生きててよかったと思えるようになったのは、全て織莉子のおかげだから。
 織莉子と友達になりたいと思ったからこそ、私は変わることができた。
 あの時織莉子と出会えたからこそ、私の人生は救われたんだ。
 愛する人のために尽くし、愛する人の腕の中で死ぬ――なんと贅沢な死に様だろう。
 自分勝手な主張ではあるけど、私が迎えたこの結末を、重荷に感じることはないんだ。

「お、り――」

 ありがとう、織莉子。
 ありがとう、私の愛しい人。
 美国織莉子、私の全て。
 どうかキミの歩む先に、平穏と幸福があらんことを。
 私が誰よりも愛した、キミの笑顔があらんことを――

「――――――」

 ――ぱりん。





【呉キリカ@魔法少女おりこ☆マギカ 死亡】







 ぱりん、と響いた音と共に、呉キリカとやらの瞼は閉じた。
 ガラスの割れるような音と共に、彼女は静かに事切れて、それきり動かなくなった。
 終わりを理解した瞬間、波打ち際に座り込んでいた織莉子は、堰を切って泣き始めた。
 これまでの聡明さが嘘のように、なりふり構わず大声を上げて、子供のように泣きじゃくった。
「………」
 戦力を得られなかったのは残念だが、それ以上の感情を抱いてやる義理はない。
 サカキはその姿を傍観しながら、冷静に状況を分析する。
 結局、音のする方へ駆けつけ、織莉子の友人を見つけた頃には、放送間際という時間になってしまった。
 目的地へ戻るのが最優先ではあるが、しばらくはここにいた方がいいだろう。
 織莉子が冷静さを取り戻すのを待つため、ということもあるし、バイク音で放送を聞き逃しては困る、というのもある。
 死んで困る者などさほどいないが、禁止エリアを聞き逃すことだけは、何としても避けておきたかったからだ。
「………」
 それからどれほど経っただろうか。
 やがて遺体を抱きかかえたまま、織莉子が波打ち際から立ち上がった。
 そのまま一言も発することなく、ちゃぷちゃぷと水音を立てながら、織莉子は砂浜へと上がる。
 そしてすれ違ったその瞬間を、サカキは決して見逃さなかった。
 織莉子の海のような瞳に、暗い光が宿っていたことを。

229美国織莉子、私の全て ◆Vj6e1anjAc:2013/07/17(水) 13:21:10 ID:5v0w.KoE0
【F-6/砂浜西端/一日目 昼(放送直前)】

【美国織莉子@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:ソウルジェムの穢れ(3割)、白女の制服姿、深い悲しみと――
[装備]:なし
[道具]:共通支給品一式、ひでんマシン3(なみのり)
[思考・状況]
基本:何としても生き残り、自分の使命を果たす
1:鹿目まどかを抹殺する。ただし、不用意に他の参加者にそれを伝えることはしない
2:キリカを殺した者を――
3:積極的に殺し合いに乗るつもりはない。ただし、邪魔をする者は排除する
4:サカキと行動を共にする
5:鹿目邸を調査。その後市街地を巡回した後病院へ向かう。
[備考]
※参加時期は第4話終了直後。キリカの傷を治す前
※ポケモンについて少し知りました。
※ポケモン城の一階と地下の入り口付近を調査しました。
※アカギに協力している者がいる可能性を聞きました。キュゥべえが協力していることはないと考えています。

【サカキ@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:左腕に裂傷(軽度)
[装備]:オートバジン@仮面ライダー555、高性能デバイス、ニドキングのモンスターボール(ダメージ(小)疲労(小))@ポケットモンスター(ゲーム)
[道具]:共通支給品一式 、技マシン×2(サカキ確認済)
[思考・状況]
基本:どのような手段を使ってでも生き残る。ただし、殺し合いに乗るつもりは今のところない
1:『使えそうな者』を探し、生き残るために利用する
2:織莉子に同行する
3:織莉子の提案通り、鹿目邸を調査。その後市街地を巡回した後病院へ向かう。
4:力を蓄えた後ポケモン城に戻る(少なくともニドキングとサイドンはどうにかする)
5:『強さ』とは……何だ?
6:織莉子に対して苦い感情。
[備考]
※『ハートゴールド・ソウルシルバー』のセレビィイベント発生直前の時間からの参戦です
※服装は黒のスーツ、その上に黒のコートを羽織り、黒い帽子を頭に被っています
※魔法少女について少し知りました。 織莉子の予知能力について断片的に理解しました。
※ポケモン城の一階と地下の入り口付近を調査しました。
※サイドンについてはパラレルワールドのものではなく、修行中に進化し後に手放した自身のサイドンのコピーだと思っています。
※アカギに協力している者がいると考察しています。

[考察(織莉子、サカキ)]
この空間は参加者の記憶から作り出された空間、すなわち魔女の結界に類似したものである可能性がある。
アカギは魔女の力を何らかの形で利用している

【オートバジン(バトルモード)@仮面ライダー555】
現在の護衛対象:美国織莉子
現在の順護衛対象:サカキ
[備考]
※『バトルモード』時は、護衛対象の半径15メートルまでしか行動できません
※『ビークルモード』への自律変形はできません
※順護衛対象はオートバジンのAIが独自に判断します

230 ◆Vj6e1anjAc:2013/07/17(水) 13:21:56 ID:5v0w.KoE0
投下は以上です
まずいところなどありましたら、ご指摘おねがいします

231名無しさん:2013/07/17(水) 20:08:47 ID:8AJBgjuY0
久々に来たら投下来てた
投下乙です

ああ、上で言われてる様に大事な人だけの味方で、人間やめてる魔法少女
確かにキリカであの4人に対応してるなあ
キリカがたった一人で愛の力で大立ち回り、そして対抗した4人もよくやった

さすがのキリカも黒セイバーにはかなわなかったかあ。でもおりこの侮辱されたら勝目無くてもああ動くよなあ
でも実は魔力がかなり消費してるからこのままだともしかしたら…
そしておりこは死の間際に出会ってしまったかあ。目的はぶれてはいないがこれは…
さて、これで時間的ずれが生れたが鹿目邸のまどかにワンチャンスか?

232名無しさん:2013/07/17(水) 23:54:14 ID:9JCdlJpA0
投下乙です
黒セイバーの相手は万全の状態でも厳しかったが、瀕死ではやはり勝てなかったか……
しかしそんな状態で、キリカはよく頑張った
でも最後に織莉子に会えたのは、彼女にとって幸せだったのかな?
ただ、その代わりに織莉子が危なげに……

以下は気になった点ですけど、
まず一つ目が『移動に関して』ですね
登場キャラの前話の最終位置はそれぞれ、キリカが【F-4】、黒セイバー達が【D-6】、織莉子達が【D-7】となってますが、
おおよその経過時間的に、キリカが【F-5〜6】の浜辺にいた事はそれほどおかしくはないんですが、黒セイバー達が浜辺に移動した理由は『キリカの足音を聞いたから』となっています
しかしその理由だと、距離的に周辺にいる他の参加者の立てる音も聞き取ってないとおかしなことになります
(同じく【D-6】にいるまどかと美遊、【D-5】にいるロロと結花を追っている草加、【D-7】にいる織莉子達、おまけで【C-5】にいる海堂など)
そして黒セイバーの目的が桜を除く全参加者の殲滅である以上、わざわざ近場にいる参加者を無視してまで、遠く人気のない浜辺にいるキリカを襲う理由はないと思います

二つ目はキリカの使用した『ヴァンパイアファング』に関してです
この技は作中では今の今まで忘れていた事になっていますが、前話の『後より出でて先に断つもの』にて明言こそないですが既に使用されている描写があります
具体的には「円鋸を形成〜」のあたりですね
ピクシブ百科事典とニコニコ大百科、それぞれのキリカのページでヴァンパイアファングの説明が違いますので、その差かと思われます

そして三つめが『黒セイバーの戦闘に使用した魔力量』です
前回もそうでしたが、戦闘描写に対して消費魔力が多すぎます
作中でセイバー自身が織莉子の方が善戦したと言っている以上、織莉子と戦った時以上に魔力を消費することはないと思いますし、
雑な戦い方では上手くいかないと理解しているのなら、現状回復手段のない魔力を無駄に消費するような戦い方はしないと思います

233 ◆Vj6e1anjAc:2013/07/18(木) 00:12:36 ID:8W7vWapA0
>>232
ご指摘ありがとうございます

一つ目の指摘に関しては、了解です
遭遇時点でのキリカの位置はE-5南端、黒セイバー達は北端にいたつもりで書いていたのですが、
確かにセイバー達の初期位置だと、そこまで移動しているとは考えにくいですね
(「まぁ西の町に行けばいいか」と考えたのも、キリカを見つけてからのことだったので)

二つ目については、補足説明をしようかなと思っています
「ヴァンパイアファング」は、掲載雑誌で直接把握したのですが、
「円鋸状に並べての攻撃」は、アレとは形状も使用する爪の規模も大きく異なっていたので、
ヴァンパイアファングとは別個の発想で構築した技と見なしていたのです
もちろん、無意識にヴァンパイアファングから連想した可能性もあるので、修正の際には、その辺りを書き足そうと思います

ただ三つ目に関してだけは、ちょっと思うところがあります
魔力量が「中」から「大」までに減少したのは、主に最後の一撃が原因なのですが、
必殺技級の一撃を、受け止めなければ大ダメージ必至というタイミングで迎撃する際に、
普段以上の魔力を込めて迎え撃つという行為が、そこまで問題だとは思えないのです
(実際作中でも、「持てる全ての力をもって」と描写しており、それなりの消耗であることを示しています)
もちろん、もう少し分かりやすく書いた方がよかったのかもしれないとは思いますが、
そういうことで納得してはいただけないでしょうか
セイバーオルタのあれはそういう使い方をするような類のものではないよ、ということでしたら、修正させていただきます

234名無しさん:2013/07/18(木) 01:48:14 ID:fjK14Y1Q0
早期の返答ありがとうございます
一つ目と二つ目に関しましては、補足・修正を待たせていただきます
ただ三つ目に関しましては、大前提を勘違いされているようなので再度指摘を

まず、最終登場話時点(『暴君主権』)での黒セイバーの魔力消費は「小」です
そして必殺技級の一撃に対して、普段より強力な攻撃で迎撃するのはおかしくありませんが、問題なのは「その一撃がどれくらい強力なのか」です

黒セイバーがこれまでの三回の戦闘で使用した、魔力を多く消費した(あるいはする)と思われる攻撃は、
1.士郎に対して放った“卑王鉄槌(三回)”
2.バゼットに対して使用した鎧の魔力も用いた高速の刺突および鎧の再構成(セイバーは魔力の多くを守りの為に固定している)と、
(ソース:ttp://lab.vis.ne.jp/tsukihime/dictionary2/fate034se.html)
思わぬ反撃に激高して放った、ラックに対抗して籠めた魔力を使用したと思われる一撃
(この時点での魔力消費は「微小」)
3.織莉子達に対して放った、予知による回避が無意味なほど強力な広範囲攻撃
(ここで魔力消費は「小」になる)
の三回だと思われます
これらの「黒セイバーの強力な一撃」に対して「キリカの決死のヴァンパイアファング」が、黒セイバーが魔力を大量消費する必要があるほどに程強力なのかが、私には疑問です
黒セイバーが膨大な魔力を「小」から「大」まで一気に消費する必要があるほどの威力を、いくら決死とはいえ、攻撃系ではなく魔力も残り二割(ソウルジェムから逆算)しかないキリカに放てるでしょうか
もっと言えば、Fate(HFルート)において攻撃力は最強とされる黒セイバーがそれほどに魔力を込めた一撃を受けて、キリカの身体が残っているとは思えません
「持てる全ての力をもって」に関しましても、一応は結花の視点ですし、黒セイバー自身も相手の攻撃を迎撃するのに必要な魔力量を(多めに見積もったとしても)そうそう見誤るとは思えませんし

235 ◆Vj6e1anjAc:2013/07/18(木) 02:02:52 ID:8W7vWapA0
>>234
……あれ?
申し訳ありません、完全に誤解していました
一段階消費のつもりで書いていたことは間違いないので、「小」から「中」に修正させていただきます

また、「全力の一撃」というのを明文化するためにも、「卑王鉄槌を放った」という描写をしようと思ったのですが……
……一番目の士郎が受けた3連撃が、卑王鉄槌であると明言されている部分が、どこにも見当たらなかったのですが、
これは通常のオーラ斬撃として見なして構わないのでしょうか?

236名無しさん:2013/07/18(木) 02:10:44 ID:fjK14Y1Q0
魔力消費の修正は一応それで問題ないと思います

「士郎が受けた3連撃が、卑王鉄槌である」というのは、作中の黒セイバーのセリフから判断させていただきました
(ソース:ttp://www32.atwiki.jp/fateuc/pages/115.html#id_bb48ed53)

237 ◆Vj6e1anjAc:2013/07/18(木) 02:24:49 ID:8W7vWapA0
>>236
あ、そういうことでしたか。了解です
それでは一時投下スレの方に、修正版を投下して参ります

238名無しさん:2013/07/18(木) 18:27:11 ID:9nPKR3lE0
遅めに投下乙です。なにやら議論があったようですが解決してなにより
キリカ。散華。死にかけでセイバー相手に奮闘したがこうなるわな。けど引けない理由もわかるという、わかりやすい詰みであった
織莉子と会えたのはキリカ的には吉だったな。織莉子的には危なげなサインが……

239名無しさん:2013/07/27(土) 11:09:39 ID:qhFRYStw0
一度は過疎ってたが投下が来て嬉しい
頑張れ

240 ◆Z9iNYeY9a2:2013/09/01(日) 11:26:33 ID:8beIyw5c0
ギリギリになりましたが、投下します

241 ◆Z9iNYeY9a2:2013/09/01(日) 11:29:38 ID:8beIyw5c0
俺はLに会ったことはない。
顔を見たことも、会話をしたことも。
たとえワイミーズハウスで優秀な結果を残しL後継者の候補となり得る存在になろうとも、L本人に会うことは叶わないのだから。

だが、一度だけ、Lの声を聞いたことはあった。
キラが世に知られLが動き始める少し前くらいだっただろうか。

ワイミーズハウスに持ち込まれた、カメラのつけられた一台のPC。
そこに映し出されたのはLの文字。
つまりはPCを通しての、Lとの会話だった。
それでも多くの子供達は、好奇心のままにLに質問をし、それにLは一つ一つ答えていった。

俺は興味こそあったが、特に何を聞こうとも思えなかったから皆の後ろで静かに見ているだけだったが。
確かニアのやつもそうだったな。

そして、その時Lはこう言った。

―――正義心ではありません
―――難事件を解決するのは遊びの延長であり趣味です
―――今の法で善悪を計るなら、私も沢山の悪を犯している悪人です
―――だから私は自分が興味を持った事件しか手を出さない。そしてクリアするためなら手段を選ばない、負けず嫌いでずるい人間です

Lはあくまで、世にある正義や法ではなく、自分の興味で事件を解決するといった。
世界的な名探偵であり、多くの犯罪者を暴いてきたあのLが、である。

その時のLに、俺は羨望のようなものを覚えた。
正義感のままに法に従って悪人を裁いていくんだろうなと思っていたLも、法にも縛られることなく自分の信じる正義を貫いていたのだ。
ワイミーズハウスの子供の多くは失望したようだったが、そんな彼にも憧れた者は自分を含め僅かながらでも存在していた。
ニアもその一人だったように思う。

そのLがキラに敗北したと聞いたとき。
俺は何を思っただろうか。

今となってはよく覚えていない。
あの時の俺とは、もう色々なところが変わってしまったのだ。

だが、それでも。
Lに対してどんな思いを抱いていたかは。
はっきりと、とはいえないが覚えている。

――――――――――

242アルミナ ◆Z9iNYeY9a2:2013/09/01(日) 11:30:18 ID:8beIyw5c0


北崎は今、屋敷の一室で休息を取っている。
この広い屋敷、どこで眠っているかも分からないという空間。
もしその気になれば、逃げられる可能性もあるというのに、だ。
逆に言えば、この屋敷内程度なら、どこにいて二人を知覚することは可能、という自身だろう。

あの後、北崎が去っていったのを確認した後、Lは屋敷の探索に踏みかかった。
何でもいい、重要な情報を見つけることができるかどうかが、今囚われの身である自分にできることなのだから。

Lは当然、メロに対してここから離れるように伝えた。
北崎は休息中であり、興味を持たれるようなことさえなければ逃げたとて追うこともないはずだ。
しかし、メロは自分からLに手を貸すと言った。
自分の意思で残る以上、もうどうこうするのは無理だろう。

そして今、Lとメロの二人は大量の本が積まれた書庫にいた。
その中でも二人が探していたのは、一般的な家にはおそらく置いていないであろう本。

例えば、魔術師の本、研究書など。

「聖杯戦争、サーヴァントと呼ぶ英霊を7人呼び出して聖杯を求めて戦わせるという催し…。
 まるでこの殺し合いですね」
「セイバー、バーサーカーとかいう奴ららしき参加者についての情報はある程度は聞いている」
「そうですか。私はおそらくバーサーカーだろう参加者と遭遇しました。
 まさしく暴風とでもいうべき怪物でしたが」

どうやらこの間桐という家には、世の中でいう魔術というものを扱う家らしい。
メロの聞いていた情報と合わせると、衛宮士郎〜バゼット・フラガ・マクレミッツの11人が関わりを持っているのだろうと推測できる。
そしてあのバーサーカー。もしこれに書かれていることが事実でなおかつ推測が当たっているなら、やはり北崎だけでは荷が重いかもしれない。

「あなたの言っていた、クロエさん、でしたか。できれば彼女の話も伺いたいところですが」
「…だが、もしかするとアイツは知らないかもしれないぞ」
「平行世界、ですね。生憎私には100%といえる証拠―――実際に平行世界を示す人達とは会っていないのですが。
 まあ状況から考えれば疑う余地はないでしょうが」
「……………」

ほんの情報交換が行われた後、すぐに会話は途切れて無言の探索が開始される。
メロはLの視界から離れ、互いに背を向けて別の本棚を調べていた。

だらしない格好で、椅子の上に体操座りをする姿。
メロには超えようとしても超えられなかったあいつの姿と、ふと被った。

「一つだけ質問させてください。
 メロさん、あなたは私のことを知っているのですか?」

243アルミナ ◆Z9iNYeY9a2:2013/09/01(日) 11:31:43 ID:8beIyw5c0

突如飛び出した一つの質問。
問いかけではあるが、その答えはおそらく確信しているのだろう。
少なくともメロの知るLはそういう男のはずだ。

だからこそ、分かりきっているだろうことを答える。

「ああ、俺はあんたのことを知っている」
「そうですか」

それ以上は問いかけてこようとはしない。
だからこそ、メロ自身も多くを語ろうとしない。

夜神総一郎から聞いた、彼の世界でのLとキラの戦い。その顛末。
あえてそれらをこちらから聞くことはしなかった。
話さずとも、それはいずれL自身が辿り着く結論だ。
今必要なのはそんなことではない。

「どこかしらの共通点を持った世界による平行世界。
 しかし私にはまだ材料が少ない。確信にいたることができないのです。
 何か情報は持っていませんか?」

そう、あくまで事務的なことだ。
この情報も必要だからに過ぎない。

夜神総一郎に聞いたこと。
そして自分のいた世界との相違点。

キラの勝利、Lの勝利。
最大の違いはそこだろう。

「なるほど。そういうことでしたか」
 
そして、その自分が敗北したという世界の話にも淡々と反応していく。
一見無感情に、そして淡々と事実を確認するだけ。
それでいい。Lはそれでいいのだ。
世界一の名探偵が、事件の解決に感情を持ち込むようなことがあってはならないのだ。

だからこそ正義のために犯罪人を、死刑囚を合理的に利用できるのだから。

「では夜神月と私、どちらの勝利か否かが彼の評価を分けたということですか。
 どうやら平行世界という基準は比較的曖昧なようですね」
「というと?」
「先に一時的に行動しました篠崎佐世子という方からお聞きしました。
 この名簿から見るに、どうやらこの名簿の人間の出生、いいえ、おそらくそれ以前からの分岐の可能性もあります」

死んだはずの人間、いないはずの名前の人物。
そして、存在するはずのない兄弟。
確証は持てないが、可能性は高い。

だが、平行世界とてそれだけではない。

オルフェノク、ブリタニア、魔法少女、そしておそらくデスノート――死神。
これらの世界を、そしてこの人選をなぜ選んだのか。

何か共通点を持ってはいないか。

ダメだ。情報が少ない。

244アルミナ ◆Z9iNYeY9a2:2013/09/01(日) 11:32:38 ID:8beIyw5c0
Lも同じことを思ったのだろう。メロにこう言った。


「メロさん、少しお願いがあります。
 この屋敷から離れて様々な情報を集めてきてもらえませんか?
 あなたを逃がすくらいのことであれば、ある程度の融通を利かせることはできると思います」
「L、なぜあんたが動かない?あんたの頭脳があれば、あんな男を出し抜くなど造作もないはずだ」
「いえ、私は彼に条件付きで命を握られています。北崎の足では改造バイクを持ってしても逃げ切ることはできませんでした。メロさんも見られたでしょう?
 もし逃げるには万全の準備が必要になりますが、今の私にはそれを揃える手間も時間も取れません」
「それで、あんたは諦めるのか?」
「いいえ。彼を倒せ得る者を探します。
 北崎だけではありません、彼ほどの化物を持ってしても倒せない者もいました。
 そんな相手を倒すには、メロさんはどうするべきだと思いますか?」

まるでメロを試すかのような問いかけ。
それにLは、自分ならばこうすると考えたことを言う。

「仲間を集めるな。高い戦闘能力を持ち、なおかつ頭の回るような連中を。
 いかに強いやつであろうと、この状況下においてはどんな化物だろうと勝てる可能性がゼロだとは考えられない。
 もしやつらが求めているものが殺しあいであるなら、一方的な虐殺にはならないためのカウンターは存在するはずだ」
「合格です」

メロの答えに満足したかのように振り返るL。

「私は彼に貸しがあります。それを返すまでは離れることはできませんし、彼自身も放しはしないでしょう。
 ですから、北崎を倒す手段を見つけられるまでの間あなたに力強い仲間や、あるいは情報を集めることをお願いしたいのです」
「………」

断る理由は、メロにはない。
相手によるとはいえ、ここからの脱出する手段を探す上での協力は惜しまないつもりだ。
それがLの頼みであるというのであればなおさらである。

だが。


それがLであるからこそ、納得のいかないという思いもまた、メロには存在したのだ。

「L、あんたに聞きたい。
 あんたの仮説だと、この場にキラが呼ばれている可能性もまた存在するんじゃないのか?
 なら、もしキラがいたらあんたはどうするんだ?」

メロは、夜神月がキラであるということは確信している。そしてLは月に勝ったのであれば、その事実は認識しているはずだ。
にも関わらず、これまでの会話の中でLは夜神月の名をキラとして出すことはしなかった。
Lにとって、最も警戒すべき対象であることには変わりないはずであるのに、どうしてなのか。

「メロさん、あなたの心配は分かります。確かに平行世界がそのような仕組みとなっているのであれば考えられるでしょう。
 きっと、私に勝利して彼にとっての理想の世の中を作ろうとしている世界もあるのかもしれません。
 しかし、今戦うべき相手はキラではないのです」
「…どういう、意味だ?」
「私は、キラと戦う中で一時的に彼と協力したこともあります。その時キラの能力は別の人の手に渡っていましたが。
 もし私と彼が力を合わせられれば、ここから脱出することができる可能性は大いに高まるでしょう。
 そうですね、ここまで言えば分かってしまうと思いますが、キラもここに呼ばれています」
「正気か?そいつはあんたの敵のはずだろ?」

245アルミナ ◆Z9iNYeY9a2:2013/09/01(日) 11:34:51 ID:8beIyw5c0

メロには信じることはできなかった。
Lは、おそらく最も信用できない相手を味方として信用したいと言っているのだ。

夜神月。
メロにしてみれば、人間として最も信用できない人物だ。
あの男に比べれば、まだかつて組んだマフィアのやつらの方が信用できるだろう。

それに。

「L、あんたほどの男ならば、キラの力を借りなくても戦えるはずだ。
 世界一の名探偵なんだろ、あんたは!」

そう、世界一の名探偵。他のどの人間よりも優れた頭脳を持ったL。
ニアとメロ、その二人をも超えていたと自他共に認めさせた男。
そんな彼が、いくら優れているとはいえあのような犯罪者と手を組もうとするなど。

それではまるで、Lがキラを認めているかのようではないか。

なのに、Lはこう言ったのだ。

「買いかぶりすぎですよ。どれだけの名探偵であっても、所詮はただの人間にすぎません。
 死神を殺すことなんてできませんし、化物が目の前に立っていれば逃げるだけで精一杯の、ただの人間です。
 だからこそ、一人では戦えないからこそ仲間を作るんです。
 どれだけ優れた人間、英雄であっても一人で世界を変えることなんてできないのですから」



「で、あいつは行ったの?」
「どこから聞かれていたんですか?」
「別にどこからってこともないけどさ。意識したのはここから出て行くのが分かってからかな」

それからしばらくの間をおいて、北崎は目を覚ましLの傍に立っていた。
その頃にはメロの姿はなく、北崎の感覚をもっても知覚することはできなかった。
しかし北崎は特にそれを気にもしないし咎めもしない。

きっとメロには何の興味ももっていないということなのだろう。

「で、期待はできるのかな?」
「何がですか?」
「とぼけなくてもいいよ。僕と戦えそうな人、集めるんでしょ?」
「そうですね。期待しても大丈夫でしょう。
 彼には行動力があります。様々な情報を集め、多くの人と接触し、あなたを倒す方法を探すでしょうね」
「そう、まあどうせ僕には勝てないんだけどね」

ふわぁ〜と背伸びをして、北崎は屋敷の中に戻っていく。

「まだ休まれるのですか?」
「さあね。ちょっとこの中が気になるし、もし面白いものでもあればもう少しここにいてもいいし、なければ出ればいいじゃん?」

一通りこの屋敷の中を観察したLだが、彼が何に興味を引くかまでは分からない。
もうしばらくここにいることになるかもしれないし、何もなければもう出発する可能性もある。

そうなれば自由に動き回るメロが頼りとなる。

246アルミナ ◆Z9iNYeY9a2:2013/09/01(日) 11:35:18 ID:8beIyw5c0


最後にメロはニアという天才の存在、そして会場に流れている悪評についてのみLに伝え、屋敷を去った。

結局、Lとの会話の中で、キラやLと自分の関わりを話すことはなかった。
それを問うことに躊躇いがあったのは事実だ。

だが、それ以上にLが何故世界一の名探偵足りえたのかということを、改めて認識させられた。

かつて唯一Lとの会話をした時のことを思い出す。
彼は自分の興味を持った事件しか解決しないと、そう言った。
その意味をはっきりと認識させられたのだ。

それは自分が気に入らない、気に食わないという判断基準で見ているのではない。
もしもその辺で起きた陳腐な殺人事件であれば、その辺の警察だけでも十分解決ができる。
だが、もし相手が前人未到の天才であったり、警察の手にも余るような大きな力をもった組織などであったとしたら、Lは力を惜しみなく貸すだろう。

人間を過大評価も過小評価もせず、己の適材適所もはっきりと分かった上で事件を解決しようとする。
あくまで、探偵として。
罪人を逮捕するのは警察の役割であるし、裁くのは司法の役割。だからこそ一人で動くことはできない。しかしそれらの条件さえ満たせば無類の頭脳を発揮する。

彼は、天才でありながらどこまでも人間だったのだ。


そんな彼を見て、俺は果たしてどうするべきなのか。

(ちっ、どうにも考えが纏まらないな…)

正直、この数時間で色々なことがありすぎた。
魔法少女、ゆまとの出会い、そして死。
もう一つの世界の夜神総一郎、そしてL。

少し考えを纏める時間も必要だろう。
ではまず何をすべきか。

夜神月の探索、これは自分の中では最重要事項ではあった。
しかし、考えを纏める必要がある今は、とりあえず優先順位を下げてもいいだろう。
ただ、もし月を見つけることがあり、もう一度彼を見極めた上でLに害をなすと判断した場合。
Lには悪いが排除させてもらうかもしれない。

まずはニアを探す。これを優先事項としてもいいだろう。
あいつならば、情報を整理するのは俺より長けている。それにLと違いそこまで気兼ねする必要もない。込み入った話もできなくはないはずだ。

ニア。
あいつのことだ、きっとどこかの建物にでも引きこもっているに違いない。
虱潰しになるだろうし効率がいいとは言えないだろうが、一つずつ確実に探していく必要があるだろう。
その間に、自分の考えをまとめればいい。

アイツは俺よりずっと頭がいい。
きっと俺以上に、無感情に情報を捌いてくれるはずだ。



そうして、メロは原付自転車を走らせた。
背を向けるのは、かつて憧れた唯一の探偵。



247アルミナ ◆Z9iNYeY9a2:2013/09/01(日) 11:35:41 ID:8beIyw5c0
Lは薄々だがメロが何者なのか、仮説レベルではあるが感じ取ってはいた。

彼はとりあえず隠しているようではあったが、材料はそれなりにあった。
この場に呼ばれている面子はキラ、もしくはLと関わりをもつ人物と推察できる。
ならば彼もまた、夜神月かLと何かしらの関わりをもつ人間のはずだ。

メロ。
頭脳はかなりのキレを持ち、また行動力も高い。
さすがに自分には劣るとは感じられたが、その頭脳に高い行動力が合わさればかなりの力となりうるだろう。


自分の後継者としてどうか、と考えるほどには。
無論他にも様々な判断材料も存在したが。
ただ、そう仮定すると、なんとなくだが彼がどのような役目を持っていたのかが見えてこなくもない。

3回目、もしくは4回目放送までに病院か遊園地での合流。それは伝えてある。
彼が来るかどうかは分からない。もしかするとどこかで命を落とす可能性もあるし、時間に来られるかどうかも分からない。
そしてそれ以上に、彼と会ってよかったのか、という疑問も僅かながらに存在する。

この邂逅が、彼にどんな影響を与えるのかは神ならざるLには分からない。
あるいは本当ならば出会ってはいけなかったものであるかもしれない。そんな気もする。

だが、そうだとしても。
こんなところとはいえ出会ったことが良き方向に向かってくれれば。

Lはそう願った。


【D-4/間桐家/一日目 午前】

【L@デスノート(映画)】
[状態]:右の掌の表面が灰化。
[装備]:ワルサーP38(5/8)@現実、
[道具]:基本支給品、スペツナズナイフ@現実、クナイ@コードギアス 反逆のルルーシュ、ブローニングハイパワー(13/13)、 予備弾倉(9mmパラベラム×5)、シャルロッテ印のお菓子詰め合わせ袋。
[思考・状況]
基本:この事件を止めるべく、アカギを逮捕する
0:メロさん、ですか…
1:北崎を用いて、バーサーカーを打倒する。まずは情報集め。
2:月がどんな状態であろうが組む。一時休戦
3:魔女の口付けについて、知っている人物を探す
4:3or4回目の放送時、病院または遊園地で草加たちと合流する
[備考]
※参戦時期は、後編の月死亡直後からです。
※北崎のフルネームを知りました。
※北崎から村上、木場、巧の名前を聞きました。
※メロからこれまでの経緯、そしてDEATH NOTE(漫画)世界の情報を得ました。しかしニア、メロがLの後継者であることは聞かされていません
※Fate/stay night世界における魔術というものについて、大まかに把握しました。しかし詳細までは理解しきれていないかもしれません。

【北崎@仮面ライダー555】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、使用済RPG-7@魔法少女まどか☆マギカ、虎竹刀@Fate/stay night
[思考・状況]
基本:バーサーカーを殺し、Lに見せ付けた後で優勝する
0:休息は必要と理解。
1:バーサーカーへの対抗手段を探る。
2:バーサーカーには多少の恐怖を感じている。
3:村上と会ったときはその時の気分次第でどうするか決める
[備考]
※参戦時期は木場が社長に就任する以前のどこかです
※灰化能力はオルフェノク形態の時のみ発揮されます
 また、灰化発生にはある程度時間がかかります


【メロ@DEATH NOTE】
[状態]右手首の表面が灰化(動かすのに支障なし)
[装備]原付自転車
[道具]基本支給品一式、呪術入りの宝石(死痛の隷属)
[思考]基本・元世界に戻り、ニアとの決着をつける。
0:俺は…
1:まずはニアを探す
2:夜神月は後回し。だがもし遭遇した場合、Lと協力できるかどうか見極める
3:必要に応じて他の参加者と手を組むが、慣れ合うつもりはない。(特に夜神月を始めとした日本捜査本部の面々とは協力したくない)
4:可能ならばおりこに接触したい。
5:3or4回目の放送時、病院または遊園地に向かう
[備考]
※参戦時期は12巻、高田清美を誘拐してから、ノートの切れ端に名前を書かれるまでの間です。
※協力するのにやぶさかでない度合いは、初代L(いれば)>>ニア>>日本捜査本部の面々>>>夜神月
※ゆまから『魔法少女』、『魔女』、『キュゥベぇ』についての情報を得ました。(魔法少女の存在に一定の懐疑を抱いています)
※平行世界についてある程度把握、夜神月が自分の世界の夜神月で間違いないだろうと考えています。
※バーサーカーとはギリギリですれ違ったようです。
※Fate/stay night世界における魔術というものについて、大まかに把握しました。しかし詳細までは理解しきれていないでしょう。

248 ◆Z9iNYeY9a2:2013/09/01(日) 11:36:05 ID:8beIyw5c0
投下終了です

249名無しさん:2013/09/01(日) 13:20:11 ID:U2C8N8CQ0
投下乙です。
出会いがこのタイミングだからこその平穏な接触だったのかもなー、と思ったり。
もうすぐ放送で、その際にわかる情報があったらもっと余裕のない出会いであったのかもと。
戦闘能力的な意味合いだと決してある方ではない作品の二人だけど、やっぱどこか期待したくなる二人だなー。

250名無しさん:2013/09/01(日) 23:16:24 ID:3TRFDIfM0
投下乙でした。
LM疑似師弟コンビ仲が良さそうでなによりです。世界は違えど感慨深い
ふと、さりげにメロくんパシリ状態……?けど情報を回せるのは上手い。フットワークが軽いのは強みだな

251 ◆Z9iNYeY9a2:2013/09/01(日) 23:24:24 ID:4piCzfog0
すみません、メロの現在位置について標記するのを忘れていました
【D-4/一日目 午前】とさせてください

252名無しさん:2013/09/02(月) 21:06:04 ID:P2Zb70U20
投下乙です

これは先が期待できる上に確かに感慨深いわあ
情報を扱う対主催としては彼らは心強いわあ

253名無しさん:2013/09/03(火) 00:59:08 ID:mHWJ7BaM0
おおー投下きてるー 乙です
Lはスタンスが一貫してるから頼もしいなぁ
北崎という爆弾もLのそばにいるからおとなしいし

254 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/06(日) 18:42:19 ID:O6jMJLAY0
ゲリラ投下になりますが、完成しましたので前予約分を投下します

255空とポケモンと悪夢と囚われし姫君 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/06(日) 18:44:38 ID:O6jMJLAY0
真理は逃げるということは基本的に嫌いだった。
元々勝気な性格であることもあり、どんな相手を前にしても逃走という選択を取ったことはない。
とはいっても、例えばオルフェノクが相手であったり、あるいは銃器を持った人間であったりならば逃げるという選択は取る。
勇気と無謀は違うということは、それまでのオルフェノクとの戦いでイヤというほど思い知っている。
もし、真理が本当に逃げた時、それは彼女自身が敗北を認めてしまったときだろう。
だから、戦略的撤退は存在しても、決して恐怖心から逃げたり、相手に屈するようなことはなかった。

故に、真理はこの時ほど敗北感を、自分の無力感を感じたことはなかった。

それは、ナナリーを、桜を助けられなかったこと、そんな状況でルヴィアにナナリーを任せてしまった自分の無力感。
それらから逃げるかのように、ひたすら走った。
とにかく我武者羅に。

今はどこにいるだろうか。
ルヴィアさんは桜ちゃんとナナリーちゃんを連れて戻ってこられる場所だろうか?
きっと帰ってくると、信じても大丈夫なのだろうか?

背負ったタケシはまだ目を覚まさない。
どうやら気絶させることにおいては手加減をしてくれなかったらしい。

彼を背負い、自分達の後ろを行く青年、Nに注意を向ける。
その後ろにはタケシのグレッグルとかいうカエルの他にも、ピンク色でまん丸な体の生き物、黒いキツネ、尖った耳を持った黄色いネズミ、空を飛ぶ赤い竜がいた。
かなりの大所帯だ。しかしそれで不安が晴れるはずもない。
真理はまだこの青年について、あの黒い影から助けてもらったくらいの認識しかないのだ。
確かに助けてもらった恩はあるし、美遊ちゃんの姉であるルヴィアさんが連れてきた仲間であるのなら信用したい。
しかし、つい先ほどそれ以上には長く共にいたはずの少女の豹変を見た後となっては迂闊には信じられなかった。

「はぁ…はぁ…、もう大丈夫かな…?」
「………。リザードンは一応もう視界には見えないって言ってるね。
 少し休もう。彼らも疲れているみたいだ」

と、Nが示したのは彼の連れてきたポケモン達。
特にピンク色の丸い子は気分も悪そうだった。
タケシのポケモンであるらしく、あの時黒い影に飲み込まれていった人が連れてきていたらしき存在、ピンプク。
そう長くはないとはいえ、同行していた相手が目の前で消えていったのだ。さすがにいい気分であるはずがない。

256空とポケモンと悪夢と囚われし姫君 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/06(日) 18:45:42 ID:O6jMJLAY0

「シュー、フシュール!」

と、Nの傍にいた黒いキツネが鳴き声のような音を鳴らした。
それはまるでNに話しかけるかのような行動にも見えた。

「ゾロアーク?…いや、さすがにそれは危険だ。もしものことがあったら、君だけじゃどうにもならない」
「シュルルルルルル!」
「…分かった。なら君の意思を尊重しよう。だけど、無理はせずに絶対に戻ってくるって約束してほしい」
「フシュル」

そう最後に頷き、ゾロアークは木の上に登り、獣の外見に違わぬ身のこなしで木々を伝って離れていった。
真理にはNとゾロアークの間に何があったのかは分からなかったが、それが何かしらの意志の疎通になっていたのだということはうっすらと分かった。

「ねえ、今の…、ゾロアーク、だっけ?何て言ってたの?」
「ここから今彼女がどこまで追ってきているかを見てくるって言っていたんだ。
 本当だったら行かせたくはなかったんだけど、…それを言ってしまうとゾロアークの意志を無理やり捻じ曲げることになってしまう…。クソッ…!」
「ピカ…」

そんな彼に話しかけるように声(?)をかける別のポケモン。
真理にはよく分からなかったが、NにはNの何かしらの想いがあることだけはうっすらと分かった。
それはまるで、タケシとグレッグルの間にあった絆のようなものだろうか。

「…う、こ、ここは…」
「あ、タケシ!目が覚めたの?!」
「ハッ、さ、サクラさんは?!」

と、意識を取り戻したと同時、飛び起きて桜のことを気にかけたタケシ。
真理はそんな彼に、あの後何が起きたのかをはっきりと伝えた。

「そんな、…どうして…!」
「ごめん、私も一緒に逃げようって言ったんだけど…」

金髪の少女がルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト――美遊・エーデルフェルトの姉であったこと。
彼らにとってそう長い付き合いのあった者ではないとはいえ、知った人物の家族をあのような場所においてきたという事実が、二人の胸を締め付けた。
しかし、他にどうしようもなかったのもまた事実。
ナナリーの安否もまた不明であった以上、誰かが残ることはきっと必要だったはずだ。

「せめて、俺が残っていれば―――」
「プ、プク〜!」
「ピンプク?」

と、そう搾り出すように声を出したタケシに抱きついたのは、ピンプクだった。
小さな体を震わせて、まるで泣くかのような鳴き声をあげている。

「この子は、あなたと離れたくないって言っている。先のあの場所で、ここにきてずっと一緒にいた人に死なれたことが心に傷を負わせたのかもしれない」
「…君は、一体…?」
「僕はN。ポケモンのトモダチだ。
 はじめまして、カントー地方のニビジムのジムリーダー、タケシさん」

257空とポケモンと悪夢と囚われし姫君 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/06(日) 18:46:45 ID:O6jMJLAY0




例え、その体を泥に染めようとも、マークネモが土壇場で追わせた傷は大きかった。
ルヴィアを殺害後、桜はその場に留まり体にさらに泥を馴染ませることで肉体のダメージを癒すことに専念していた。
黒い影が蠢くその空間で。
間桐桜は肉体の傷が、行動に支障がなくなる程度には回復するのを待ち続けた。

ゆっくりと、しかし確実に、それの侵食は進みつつあった。


(うふふふふふ、待っててくださいね、皆さん)





そして、その傍に。
一匹の獣が近づきつつもあることにも、少女は気付いていた。



「そうか、サトシとヒカリは…」
「ピカ…」
「そしてリザードン達は僕が保護した。
 もうあんな扱われ方をすることがないように」

Nから、これまでの顛末を彼が話せる限りで聞いた真理とタケシ。
それは真理から見ても、彼らポケモンがかなり辛い道を通ってきたことが分かる内容だった。
自分の飼い主を目の前で殺された挙句、その殺害者に服従させられていたことといい、友の、仲間の亡骸を2度見ることになったことといい。

彼らと共にした時間が長かったタケシはなおのこと、地面を殴り彼らの死を悔やんでいる。

「くそ、サトシ…、ヒカリ…!」
「ピカ…」
「お前たちは、もっと辛かったんだな…。すまない…、何もできなくて…」

涙を流すタケシを、言葉は分からずとも彼なりの動作で慰めるピカチュウ。
もう悲しみの涙は流した。だからこそいつまでも泣いているわけにはいかない。
そうピカチュウは自分なりに耐えていたのだ。
しかし。

「ピカチュウ…、辛いなら泣いてもいいんだぞ…?」
「………」

それでも長き時を共に過ごした仲間。ピカチュウには誤魔化しきれなかった。
仲間の死が悲しくないはずがない。もう泣いたのだから大丈夫、などという理屈が通用するはずがなかった。
ピカチュウの目に、幾度目かの涙が溜まりかける。
が。

「…ピカ」

ピカチュウは耐えた。
泣くことなら後でもできる。今泣くだけの涙はもう流した。
サトシの死を知り、その亡骸を目の当たりにしたときも。ヒカリの死を知り、またその亡骸を見たときも。
だからこそ、今は強く生きねばならないのだ。
いつまでも泣いていることを、きっとサトシは望まないから。

「彼、本当に強いね」
「ええ、俺が知っている最高のトレーナーの連れていたピカチュウですから」

258空とポケモンと悪夢と囚われし姫君 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/06(日) 18:47:18 ID:O6jMJLAY0

そんなピカチュウを見て、Nはふと呟く。
タケシは言葉が通じずとも、ピカチュウの本当の気持ちを察し、それでもこのピカチュウは耐えた。
大切な人との別れを、そして悲しみを受け止めて今を生きている。
もし、これがポケモンとトレーナーがもたらす絆の強さなのだとしたら。

(本当に、ポケモンと人間を引き離すことは正しいのだろうか)


「ところでNさん、ヒカリの手持ちに、モンスターボールがあったかどうかは分かりませんか?」
「いや、彼女の支給品ならきっとあのサクラって人が持っていってたと思うけど、ポケモンはいなかったはずだ」
「そうですか…、いえ、俺のところにはグレッグルがいましたし、サトシのところにもリザードンがいて、Nさんのところにピカチュウがいたならもしかしてって思ったんですが…」
「心配だね…。彼女、どんなポケモンを連れていたの?」
「ポッチャマやヒノアラシ、マンムー達を連れていました」

この場においては、自分とピカチュウのようにトレーナーと離されて支給品に混ぜられるポケモンも存在しているのは確認済みだ。
それでもピンプクやピカチュウは運がよかったが、もしもサトシを殺した彼女やゾロアークを渡された者のような参加者の手にでも渡っていたら。
Nには考えるのも恐ろしかった。


「ところでNさん、ルヴィアさんも言っていましたけどヒカリを殺したのが桜さんだっていうのは、本当なんですか?」
「少なくとも状況から見ると、その可能性は高いみたいだね」
「そうですか…。真理さん、Nさん、俺、もう一回桜さんと話をしてきます。
 ルヴィアさんも、ナナリーちゃんも絶対に連れて戻りますから」
「ちょっとあんた何言ってるのよ!死にに行く気なの?!」
「少し話をしてくるだけです。大丈夫です。俺、人を見る目にはそこそこ自信ありますから。
 桜さんは悪い人じゃないって信じてます」

「それには賛同できないな。
 もしルヴィアさんが無事に戻ってくるなら、それはそれで問題ない。
 だけど戻ってこないなら、彼女の手にも余る相手だったってことだ。
 タケシさんには悪いけど、あなたにどうにかできるとは思えない」
「だからって!こうして何もしなかったら…!」

焦れているタケシの、仲間の死の真相が知りたい気持ちは真理にも分からなくはなかった。
しかし、それでも諦めなければならないことはあるのだ。

「タケシ、もっと慎重になろうよ…。ルヴィアさんもそんなことのために、私達に美遊ちゃんのことお願いしたんじゃないはずだしさ…。
 もっと、仲間を探せばきっと桜ちゃんもどうにかできるって」


相手に圧倒的な力の差があるのであれば、ただただ挑むのは死へと近づく道でしかない。
今は、それが逃げの選択肢であっても、耐えなければならないのだ。

オルフェノクに仲間が殺されゆく現実の中でも、ただ一人の男の生存を、帰還を信じ続けたあの時のように。
そうだ、ここには巧だって、ファイズだっているのだから。
今の真理にはそれが数少ない一つの希望だった。

259空とポケモンと悪夢と囚われし姫君 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/06(日) 18:50:24 ID:O6jMJLAY0
と、その時であった。

ドサッ

かなりの距離が開いた場所から、何か毛の塊のようなものが飛んできた。

黒き毛玉は、所どころに赤い模様をつけ、今まだその赤い液体を滴らせて、謎の唸るような音を上げている。

「ゾロアーク!?」

もぞもぞと動くそれは、先ほど送りだしたあのゾロアークだった。
傷だらけの体は黒き体毛を所どころ赤く染め、起き上がったその肉体には四肢のうち左腕に相当する場所が欠損していた。

「ふふふふふふ。愚かなキツネさん。そのまま逃げていれば逃げられたかもしれないのに、わざわざ戻ってくるなんて」

そのゾロアークが飛ばされてきた先、間桐桜がいたであろう方向。
そこから聞こえてきたのは黒い気配とあの少女の声。

「傷が治るまでは待ってあげようかと思ったのに、こうして戻ってきてわざわざ命を減らすなんて。
 そんなに死にたいなら、思い通りにしてあげましょうか」

姿を見せた少女の姿に、真理とタケシは息を呑む。
ポケモンセンターで着替えたあのナース服はすでに千切れ、肌を晒すはずの隙間は黒い布がびっしりと覆っていた。
右腕は欠損しており、体からかろうじて見える隙間には、肌色ではなく赤い液体が滴っている。
紫に染まっていたあの髪も、半分ほどは白く脱色している。

その姿を見たとき、真理とタケシの嫌な予感は完全に現実なものとなってしまったことを知った。

「くっ、ゾロアーク…!だから無理はしてはいけないと…!」
「…………」

薄目を開いたゾロアークは、一声も発することなく苦しそうにNの顔を見た。

「Nさん!はやくモンスターボールを!」
「…っ」

タケシの言葉を受け、一瞬の迷いの後懐から取り出したモンスターボールに、ゾロアークを戻すN。
ピカチュウとグレッグル、リザードンが三人の前に立ち、桜を睨みつける。


「桜ちゃん…、ルヴィアさんとナナリーちゃんはどうしたの…?」
「どうしたって、二人とも食べちゃいました」

真理の問いかけを、事もなげに恐ろしい答えで返す桜。
そこにはあの時ポケモンセンターで見た少女の顔はなかった。
あるのはただ、狂気に満ちた、見る者を怖気させるような笑みのみ。

「サクラさん…!」
「残念です。あなた達はあの方たちのように悪い人じゃなかったのに殺さなければいけないんですから」
「………その悪い人の中には、ヒカリも入っているんですか?」
「ヒカリさん?誰ですかそれ?」
「この近くで殺された、帽子をかぶった女の子だ…」
「ああ、あの人ヒカリっていう名前だったんですね。別に話すようなこともありませんでしたから知らなかったです」

260空とポケモンと悪夢と囚われし姫君 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/06(日) 18:51:42 ID:O6jMJLAY0
タケシは思わず身を強張らせる。
あの時、まるで重傷を負った一般人のように傷付いた体を引きずっていた女の子は。
ヒカリをまるで虫けらのように、名を、存在すら認識せずに殺していたのだ。

「何が、君をそこまで殺人に駆り立てるんだ?」

ふとNは問いかける。

「何だっていいじゃないですか。もう、今の私にはそれしかないんですから」
「タイガの、ことかい?」

藤村大河。
間桐桜を救おうと、一生懸命彼女に語りかけ、結果的になのかは分からないがそのせいで命を落としてしまった一人の人間。
Nの口からその名が出た瞬間、彼女の顔から薄気味悪い笑みが消失した。

「あれは、きっと君の意志ではないんだろう?
 彼女は君のことを必死で救おうとしていた。君はその想いを無為に帰すのか?」
「………」
「少なくとも、タイガは君にそんな風になって欲しくて君を救おうとしたんじゃない、と僕は思う」

共にいた時間はそう長くはなかったが、それでもあの人が救おうとした人がそんな風になるのは、大河は望まないはずだと。
Nは何となくそう思ったし、そう思いたかった。

「―――――――うるさい」
「サクラ、君は――――」
「うるさいうるさいうるさいうるさい!!
 お前なんかに何が分かる!
 大体そんな声で私の名前を呼ぶな!」

しかし、彼の言葉も既に桜の心には届かない。
むしろ彼の声が桜にとある人物を連想させてしまったことが彼女を逆上させてしまった。

腰に巻いたベルトに手を翳す。

「もっと私は悪い子にならないといけないんですよ。だから。
 皆さん、死んでください」

「――変身」


ベルトについた小型の機器に、音声での入力を行い、腰の脇に差し込む。
黒い服の上に黒いスーツが覆い、白い線がΔの形を作る。

火花を散らすベルトを気にも留めずに、本来動きづらいであろう片腕で難なくデルタフォンを構える。
グレッグルが口から針を吐き出すのと、デルタフォンがレーザーを吐き出すのは同時だった。

そのままピカチュウとリザードンが、体勢を変える前にそれぞれ鋼と化した尻尾と翼をデルタへと叩きつける。
が、次の瞬間桜の姿が影の中に消える。

「ゲゲッ!」「右だ!」

Nとグレッグルの声に反応したリザードンとピカチュウが共に後ろに跳び下がった瞬間、2匹がいた場所に火花が散った。

「くっ…!」
「Nさん?!」

そんな、ポケモンに命のやりとりを任せっきりであることに焦れたNがピカチュウとリザードンの前に飛び出した。

「もう止めろ!こんなことをして僕たちを殺して、一体君に何が残るんだ!?」

ポケモントレーナー同士でのポケモンバトルであれば、Nはそれを認めるまでにかなりの時間を要したとはいえ何かそれで得るものがあることを知っていた。 
だが、これはただの命の奪い合いでしかない。
なぜそんなことをしなければならないのか。こんな戦いに何の意味があるというのか。

―――こんなものが、藤村大河という人間が守ろうとしたものの結末なのか?


桜はそんなNの問いかけに答えることなく、その赤き眼をNに向け、静かにデルタムーバーの引き金を引いた。

261空とポケモンと悪夢と囚われし姫君 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/06(日) 18:53:28 ID:O6jMJLAY0
真理は、それが何なのかは推定レベルでしか分からなかった。
だが、引き金を引く瞬間、デルタのスーツに這った白いフォトンブラッドが光ったように見えていた。
もしそれがファイズやカイザと同じ型のものであるというのであれば、そこから射出されたのは、必殺の光。

「なっ…!タケシ?!」

と、紫色に輝く三角錐のポインターがNを縫い付ける瞬間、タケシがNの体を引き寄せ、後ろに投げたのだ。
その行動が何をもたらしたか。
Nの体をポインターの射線上から離すことには成功した。
しかし、代わりにその場に縫い付けられたのは。


「タケシさん!」
「グ、グレッグルとピンプクを…、お願いします……!」

Nを引き寄せた体勢のまま、体を動かすこともできずその場に縛られたタケシ。
すでにデルタは飛び上がっている。

もし、バッグに入っていたカイザギアを使っていれば、これを食らっても耐えられたのだろうか。
ああでもどっちにしてもそれで死んだんだろうな。
などと意味のない仮定を想定してしまうのはもう既に生を諦めてしまったことを表しているのだろうか。

グレッグルが、ピカチュウが、リザードンがこっちに走ってくるのが見える。が、きっと間に合わないだろう。
すまないな、お前達。サトシやヒカリがいなくなった矢先に。
せめて、真理さんやNさん達と逃げられるようにしてくれ―――


「プクプクーーーーー!!!!」


と、最後にタケシの視界に映ったのは。
小さな体を宙に飛び上がらせ、デルタのキックの射線上に割り込む一匹の小さな体だった。



「ピカーーーー!!」「ゲゲッ?!」
「タケシーーーー!!!」

拘束されたタケシにルシファーズハンマーを命中させる様子を見ていることしかできなかった皆。
だが、その中で唯一そこに間に合った一つの存在があった。
タケシの傍にいて、なおかつ最も体勢を整えることに時間が掛からなかった一匹のポケモン。

ピンプクはその小さな体を、ポインタとタケシの間の僅かな隙間の割り込ませたのだ。
そして同時に、何かしらの技を発動させたのかピンプクの肉体が一瞬光るのが見えた。

そして次の瞬間。
ポインタの示した場所に、デルタのとび蹴りが衝突。
膨大な破壊力を、衝撃を持った一撃が、タケシの体を吹き飛ばした。

着地するデルタ、一瞬の静寂。

「ピカピィーーーーー!」
「ダメだピカチュウ!今近寄っては!」

タケシの元に駆け寄ろうとするピカチュウを、Nが静止する。
今あそこにはデルタがいる。タケシの元に駆け寄ることは非常に危険なのだ。

タケシはピクリとも動かない。
視線を一瞬タケシに向け、そのままこちらに体を向けるデルタ。

が、彼女が一歩踏み出したところで体が膝から崩れ落ちた。

「…何、ですか…、これは…?」

膝をついて屈みこむ桜。
体を起こそうとするも、うまくはいかない。

262空とポケモンと悪夢と囚われし姫君 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/06(日) 18:55:13 ID:O6jMJLAY0

その謎の様子を見届け、咄嗟にタケシの元に駆け寄る真理。
桜は真理を追撃しようとするも、体をうまく動かせないのか立ち上がることができず、その手に取ったデルタムーバーも手から落としてしまう。

タケシに近寄り、その心肺、脈を確かめる真理。

「…!大丈夫、まだ脈はあるわ!」


ピンプクが先ほど割り込んだ際に放ったもの。
それは彼女が覚えていた、数少ない技の一つ、ひみつのちから。
至近距離から放たれたその技、そしてピンプクの体は、ルシファーズハンマーの威力を即死レベルからどうにか軽減することに成功し、さらに間桐桜の体を麻痺状態に追いやっていたのだ。

しかし、その代償。

タケシの生を確認したNが次に目を向けた先にあったのは、真っ赤に染まり真っ二つに割れた、タマゴのような形の小さな石。それを拾い上げた。
ピンク色の小さな肉体はもうどこにもない。
身動き一つとらないタケシの体には、一見すれば致死レベルはあろうかという血が付いている。これだけの出血を起こせば、人間であれば生きているはずはないだろう。
もしその血痕全てが、彼を守ろうとしたあの子のものであるとするなら。

「僕は、トモダチを助けられなかったのか……」


一方、緩慢な動きながらどうにかデルタムーバーを拾い上げた桜が、タケシに注目している彼らに銃口を向ける。

「チュウウウウウウウウ!!」

しかし、それに気付いたピカチュウが、至近距離からの電撃をデルタに対して浴びせる。
その一撃に再度デルタムーバーを取り落とす桜。
と、その時デルタギアから火花が散り、変身が解除されギアが吹き飛ばされた。

「―――、どうして…!」

先のマークネモとの戦闘で、デルタギアそのものが大きなダメージを負っていた。
その状態で、高圧の電気を繰り返し流された結果、デルタギアが限界を迎えたのだ。

素早く、弾き飛ばされたデルタギアを拾い上げるグレッグル。

「急ごう!タケシさんはまだ息はあるけど、かなり危険な状態だ!」

身動きが取れず、デルタギアも失った間桐桜だが、その危険性は変わらない。
さっきのような暴走を目の当たりにしていればなおさらだ。
真理としても気がかりではあったが、今はタケシのことが優先だ。

リザードンが、多少は無理をしてでも三人と数匹の体を乗せようとその背を差し出す。
各々がリザードンに掴まり、そのまま飛翔しようと翼を広げたとき。

263空とポケモンと悪夢と囚われし姫君 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/06(日) 18:57:24 ID:O6jMJLAY0
そのすぐ傍を鋭い何かが通り過ぎた。

ピンと張ったワイヤーのような何か。その先には鋭い大型のナイフが付いている。
その元を辿る振り返ったとき、そこには黒き巨人が立っていた。

「嘘…、ナナリーちゃん…?」
「間に合って、くれましたね…。じゃあお願いしようかしら。
 そこの皆を殺して、あのベルトを取り返して」

先に見たあの体は全身に赤い筋が走り、威圧感を備えた生物的なデザインであった体とあわせて異常なまでの禍々しさを備えている。
それはいつであったか、タケシと共にいたときに見たあの巨人のようでもあった。

その頭部から生えたワイヤー、その先の刃が一斉にこちらを向き、そのまま射出。
ピカチュウに、リザードンに、グレッグルに、Nに、タケシに、そして真理に。
巨大な刃が一斉に迫った。

その瞬間だった。

ドドドドドドドドドドドドド

マークネモの立っていた周囲の地面が、大爆発を起こす。
ワイヤーは吹き飛び、刃はあらぬ方向に飛んでいった。

「…!誰ですか?!」

状況が飲み込めず困惑する桜の元に、今度は大口径の銃弾が放たれる。
反応できない桜に対し、その元に向かって銃弾を弾くマークネモ。

銃弾が放たれたであろう先の方向を見ると、そこにはマークネモには劣りこそすれ、二足歩行で直立した巨大な何かが立っていた。
そしていつの間に近づいたのか、集まった皆の傍には金髪で学生服らしき制服を着た一人の少女がいた。


「大丈夫かしら?」
「君は、誰だ?」
「話は後。こいつは私達が引き受けるわ」

名を名乗ることもせずに巨人を見つめる少女。
その近くに先の巨大な機械が降り立つ。
真理はそれが何なのかを知っていた。しかしそこに乗っているのは紫の瞳の戦士ではなく、金髪の少女と同じくらいの年頃であろう黒髪の少女。

逃がすものか、と言わんばかりに震える手で取り出したコルトを撃ち出す。
が、それは機械―――サイドバッシャーに乗っていたはずの少女により弾かれた。

「ポチャ!?」
「ピカ?!」

264空とポケモンと悪夢と囚われし姫君 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/06(日) 18:58:30 ID:O6jMJLAY0
サイドバッシャー上に残された一匹の小さなペンギンが、リザードンの背に乗った存在に気付いて鳴き声をあげる。
が、その背に乗った、ピクリとも動かぬ男に気付いて鳴き声を失った。

数メートルはあろうという高度を飛び上がった黒髪の少女が、その脇に乗ったペンギンに声をかける。

「どうやら彼女にやられたみたいね。どうする?このまま追っていっても気にしないし、ここに残ってあの人の仇を取るのも構わないわ」
「ポチャ…、ポチャ!!」

その鳴き声は強く、逃げようという感情が混じったものでなさそうだということには、少女も察しがついた。
リザードンの背に乗ったピカチュウにほんの少し目配せをし、何も言うこともなく飛び立つその姿を見送った。



「で、アリス。あれは何なの?ゼロが呼び出したあの巨大なロボットに通じるものがあるような気がするんだけど」
「そうね。私も驚いているわ。どうしてこいつがここにいるのか」

ほむらは、アリスに対して問いかけるが特に分かったことはなかった。
唯一分かったのは、この巨人がアリスの世界に存在するものであるということだけ。

「だけど、私が知ってるこいつはここまで禍々しい姿をしていなかったわ」
「だとすると、そのヒントはあいつね」

そう言ってほむらが視線を向けた先にいるのは、憤怒と憎悪の表情を浮かべた、斑に白い髪をした黒い女。

「よくも邪魔を…。許さない、許さない…、許さない…!!」
「まずはあの女をどうにかしないとね。ポッチャマ、手伝ってくれるかしら?」
「ポチャ!」

仲間を傷つけられた義憤に駆られているのか、怒りの瞳を向けるポッチャマ。

「こいつはかなり手ごわいわ。地力ならゼロ単体にも匹敵するかもしれない」
「そう、なら逆に言えばこいつを止められないならゼロを殺すのも無理ってことね」
「こいつは私が倒す。この場で絶対に!」

身動きを取れない桜の前、巨人が一斉に頭部のナイフを射出し。
同時にほむらのサイドバッシャーの腕部から多数の銃弾が発射された。

265空とポケモンと悪夢と囚われし姫君 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/06(日) 18:59:48 ID:O6jMJLAY0
【C-5/森林/一日目 昼】

【間桐桜@Fate/stay night】
[状態]:黒化(大)、『デモンズスレート』の影響による凶暴化状態、溜めこんだ悪意の噴出、喪失感と歓喜、強い饑餓 、怒り
    ダメージ(頭部に集中、手当済み)(右腕損失、胸部に大きな切り傷、回復中)、魔力消耗(大)、ジョーイさんの制服(ボロボロ)、麻痺状態
[装備]:コルト ポリスポジティブ(6/6)@DEATH NOTE(漫画)、黒い魔力のドレス
[道具]:基本支給品×2、呪術式探知機(バッテリー残量5割以上)、自分の右腕
[思考・状況]
基本:“悪い人”になる
0:いずれ先輩に会いたい
1:“悪い人”になるため他の参加者を殺す
2:先輩(衛宮士郎)に会ったら“悪い人”として先輩に殺される
3:空腹を満たしたい
4:目の前の二人(暁美ほむら、アリス)を殺す
[備考]
※『デモンズスレート』の影響で、精神の平衡を失っています
※学園に居た人間と出来事は既に頭の隅に追いやられています。平静な時に顔を見れば思い出すかも?
※ルヴィアの名前を把握してません
※アンリマユと同調し、黒化が進行しました。魔力が補充されていくごとにさらに黒化も進行していくでしょう。
※精神の根幹は一旦安定したため、泥が漏れ出すことはしばらくはありません。黒い影も自在に出すことはできないと思われます。
※デルタギアがどの程度不調なのかは後の書き手にお任せします
 もう変身できないかもしれませんし、変身しても何かしらの変化があるかもしれません。また、時間経過で問題なく使用可能かもしれません。

【ナナリー・ランペルージ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:健康(精神)|黒化、自我希薄(肉体、ネモ)、マークネモ召喚中
[装備]:
[道具]:
[思考・状況]
1:???

【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:ソウルジェムの濁り(少)
[服装]:魔法少女服
[装備]:盾(砂時計の砂残量:中)、グロック19(15発)@現実、(盾内に収納)、ニューナンブM60@DEATH NOTE(盾内に収納)、サイドバッシャー(サイドカー半壊、魔力で補強)@仮面ライダー555
[道具]:共通支給品一式、双眼鏡、黒猫@???、あなぬけのヒモ×2@ポケットモンスター(ゲーム)、ドライアイス(残り50%)
[思考・状況]
基本:アカギに関する情報収集とその力を奪う手段の模索、見つからなければ優勝狙いに。
1:情報を集める(特にアカギに関する情報を優先)
2:協力者が得られるなら一人でも多く得たい。ただし、自身が「信用できない」と判断した者は除く
3:ポッチャマを警戒(?)。ミュウツーは保留。ただし利用できるなら利用する
4:サカキ、バーサーカー(仮)は警戒。
5:あるならグリーフシードを探しておきたい
6:目の前の巨人と女を取り押さえ、情報を引き出す。
最終目的:“奇跡”を手に入れた上で『自身の世界(これまで辿った全ての時間軸)』に帰還(手段は問わない)し、まどかを救う。
[備考]
※参戦時期は第9話・杏子死亡後、ラストに自宅でキュゥべえと会話する前
※『時間停止』で止められる時間は最長でも5秒程度までに制限されています
※ソウルジェムはギアスユーザーのギアスにも反応します
※サイドバッシャーの破損部は魔力によって補強されましたが、物理的には壊れています

266空とポケモンと悪夢と囚われし姫君 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/06(日) 19:01:20 ID:O6jMJLAY0
【アリス@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(小)、ドーピングによる知覚能力・反応速度の向上
[服装]:アッシュフォード学園中等部の女子制服、銃は内ポケット
[装備]:グロック19(9+1発)@現実、あなぬけのヒモ@ポケットモンスター(ゲーム)、
    ポッチャマ@ポケットモンスター
[道具]:共通支給品一式、 C.C.細胞抑制剤中和剤(2回分)@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー
[思考・状況]
基本:脱出手段と仲間を捜す。余裕があればこの世界のナナリーも捜索。
1:目の前のナイトメア(マークネモ)を倒す。
2:情報を集める(特にアカギに関する情報を優先)
3:脱出のための協力者が得られるなら一人でも多く得たい
4:余裕があったらナナリーを探す。
5:ほむらの隠し事が気になるが重要なことでなければ追求はしない
6:ポッチャマを気にかけている
7:ミュウツーはとりあえず信用する
8:サカキを警戒
9:黒猫に嫌な不安を感じる
最終目的:『儀式』から脱出し、『自身の世界(時間軸)』へ帰る。そして、『自身の世界』のナナリーを守る
[備考]
※参戦時期はCODE14・スザクと知り合った後、ナリタ戦前
※『ザ・スピード』の一度の効果持続時間は最長でも10秒前後に制限されています。また、連続して使用すると体力を消耗します
※ヨクアタールの効果がいつまで持続するかはお任せします



「タケシ…。大丈夫なの…?」
「まだ大丈夫のはずだ。急いで病院へ連れて行こう」

リザードンはその背に多くの人を乗せて飛び立っていた。
本来であれば限界を超えた重量となっているはずだが、それでもリザードン自身の意思でこうやって無理をしてでも飛翔していたのだ。
少しでも急いでタケシを助けたい、という思いからグレッグル、そして本来ならボールに収まることを嫌うピカチュウもモンスターボールに戻っている。

「あの二人の子…、大丈夫かな…?」
「少なくとも僕の知っている人ではないね。でも今はタケシさんを救うことに集中しよう」

中学生くらいの二人の女の子。
そんな人物は、真理も知らない。
しかし、どこの誰なのか分からぬ子であっても残してきた以上、心配であることに変わりはなかった。

ナナリーちゃんもそれで、あんな風になってしまったのかもしれないという罪悪感もあったのだから。

「ナナリーちゃん……、あれ?」

ちょっと待て。
中学生くらいの女の子―――ナナリーちゃんも中学生だと言っていた。
ナナリーちゃんは、確かその身に纏った服装は学校の制服だと言っていたような気がする―――あの子も同じ服を着ていなかったか?
そして、この場には自分の友達が呼ばれている、とも。

綺麗な、長い髪をした子だと。
だとすれば、あの場に残してきた女の子の一人は、もしかして。

「ナナリーちゃんの友達の…アリスちゃん…?」

だが、今更それに気付いてももう戻ることなどできない。
今できるのは、タケシの治療のために病院に急ぐことだけ。

あの場でどうして気付かなかったのか。どうして伝えられなかったのか。
強い後悔が真理を苛むも、もう後の祭りでしかなかった。



アリスは知らない。
目の前に立つ巨人、マークネモこそが親友のナナリー・ランペルージであるという事実を。
黒き女の胎で、未だその意識を残して囚われているという事実を。

その事実を知らず、ただ巨人を敵と認識したまま、戦い続ける。

267空とポケモンと悪夢と囚われし姫君 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/06(日) 19:02:26 ID:O6jMJLAY0
【D-5北部/空中/一日目 昼】

【園田真理@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト】
[状態]:疲労(中)、身体の数カ所に掠り傷 、強い後悔
[装備]:Jの光線銃(2/5)@ポケットモンスター(アニメ)
[道具]:基本支給品一式、支給品0〜2(確認済み)、ファイズアクセル@仮面ライダー555、スマートバックル(失敗作)@仮面ライダー555
     デルタギア@仮面ライダー555(戦闘のダメージにより不調)
[思考・状況]
基本:巧とファイズギアを探す
1:ここから離れ、タケシを治療する
2:病院に向かう
3:南にいる美遊、海堂と合流?
4:巧以外のオルフェノクと出会った時は……どうしよう?
5:名簿に載っていた『草加雅人』が気になる
6:イリヤと出会えたら美遊のことを伝える
7:並行世界?
[備考]
※参戦時期は巧がファイズブラスターフォームに変身する直前
※タケシと美遊、サファイアに『乾巧』、『長田結花』、『海堂直也』、『菊池啓太郎』、『木場勇治』の名前を教えましたが、誰がオルフェノクかまでは教えていません
 しかし機を見て話すつもりです   
※美遊とサファイア、ネモ経由のナナリーから並行世界の情報を手に入れました。どこまで理解したかはお任せします

【タケシ@ポケットモンスター(アニメ)】
[状態]:疲労(中)、背中や脇腹に軽い打撲、身体の数カ所に掠り傷、胸部に強いダメージ(重傷)、意識不明
[装備]:グレッグルのモンスターボール@ポケットモンスター(アニメ)
[道具]:カイザギア@仮面ライダー555、プロテクター@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:意識無し
1:???
[備考]
※参戦時期はDP編のいずれか。ピンプクがラッキーに進化する前
※真理から『パラダイス・ロスト』の世界とカイザギア、オルフェノクについての簡単な説明を受けました
※真理から『乾巧』、『長田結花』、『海堂直也』、『菊池啓太郎』、『木場勇治』の名前を教えてもらいましたが、誰がオルフェノクかまでは教えてもらっていません
※美遊とサファイア、ネモ経由のナナリーから並行世界の情報を手に入れました。どこまで理解したかはお任せします

【N@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:疲労(小)
[装備]:サトシのピカチュウ(体力:満タン、精神不安定?)サトシのリザードン(疲労(小)、悲しみ)
    ゾロアーク(体力:ダメージ(大)、片腕欠損、真理とタケシを警戒)、傷薬×6、いい傷薬×2、すごい傷薬×1
[道具]:基本支給品×2、カイザポインター@仮面ライダー555、タケシのピンプク@ポケットモンスター(アニメ)
     変身一発@仮面ライダー555(パラダイスロスト)、割れたピンプクの石、不明支給品0〜1(未確認)
[思考・状況]
基本:アカギに捕らわれてるポケモンを救い出し、トモダチになる
1:タケシを救う
2:タイガの言葉が気になる
3:世界の秘密を解くための仲間を集める
4:タイガ、ルヴィアさん…
[備考]
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)
※並行世界の認識をしたが、他の世界の話は知らない。


※ピンプクは死亡しました

268空とポケモンと悪夢と囚われし姫君 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/06(日) 19:02:41 ID:O6jMJLAY0
【D-5北部/空中/一日目 昼】

【園田真理@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト】
[状態]:疲労(中)、身体の数カ所に掠り傷 、強い後悔
[装備]:Jの光線銃(2/5)@ポケットモンスター(アニメ)
[道具]:基本支給品一式、支給品0〜2(確認済み)、ファイズアクセル@仮面ライダー555、スマートバックル(失敗作)@仮面ライダー555
     デルタギア@仮面ライダー555(戦闘のダメージにより不調)
[思考・状況]
基本:巧とファイズギアを探す
1:ここから離れ、タケシを治療する
2:病院に向かう
3:南にいる美遊、海堂と合流?
4:巧以外のオルフェノクと出会った時は……どうしよう?
5:名簿に載っていた『草加雅人』が気になる
6:イリヤと出会えたら美遊のことを伝える
7:並行世界?
[備考]
※参戦時期は巧がファイズブラスターフォームに変身する直前
※タケシと美遊、サファイアに『乾巧』、『長田結花』、『海堂直也』、『菊池啓太郎』、『木場勇治』の名前を教えましたが、誰がオルフェノクかまでは教えていません
 しかし機を見て話すつもりです   
※美遊とサファイア、ネモ経由のナナリーから並行世界の情報を手に入れました。どこまで理解したかはお任せします

【タケシ@ポケットモンスター(アニメ)】
[状態]:疲労(中)、背中や脇腹に軽い打撲、身体の数カ所に掠り傷、胸部に強いダメージ(重傷)、意識不明
[装備]:グレッグルのモンスターボール@ポケットモンスター(アニメ)
[道具]:カイザギア@仮面ライダー555、プロテクター@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:意識無し
1:???
[備考]
※参戦時期はDP編のいずれか。ピンプクがラッキーに進化する前
※真理から『パラダイス・ロスト』の世界とカイザギア、オルフェノクについての簡単な説明を受けました
※真理から『乾巧』、『長田結花』、『海堂直也』、『菊池啓太郎』、『木場勇治』の名前を教えてもらいましたが、誰がオルフェノクかまでは教えてもらっていません
※美遊とサファイア、ネモ経由のナナリーから並行世界の情報を手に入れました。どこまで理解したかはお任せします

【N@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:疲労(小)
[装備]:サトシのピカチュウ(体力:満タン、精神不安定?)サトシのリザードン(疲労(小)、悲しみ)
    ゾロアーク(体力:ダメージ(大)、片腕欠損、真理とタケシを警戒)、傷薬×6、いい傷薬×2、すごい傷薬×1
[道具]:基本支給品×2、カイザポインター@仮面ライダー555、タケシのピンプク@ポケットモンスター(アニメ)
     変身一発@仮面ライダー555(パラダイスロスト)、割れたピンプクの石、不明支給品0〜1(未確認)
[思考・状況]
基本:アカギに捕らわれてるポケモンを救い出し、トモダチになる
1:タケシを救う
2:タイガの言葉が気になる
3:世界の秘密を解くための仲間を集める
4:タイガ、ルヴィアさん…
[備考]
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)
※並行世界の認識をしたが、他の世界の話は知らない。


※ピンプクは死亡しました

269 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/06(日) 19:03:56 ID:O6jMJLAY0
投下終了します
>>268はミスです

270名無しさん:2013/10/06(日) 22:26:25 ID:F6ZFWtaY0
桜+デルタ+マークネモがヤバイと再確認。全部万全じゃないのが本当に救い……
ほむライダーとアリス、アリスはもちろんほむらも危ない、そして何よりタケシがヤバイ!!
投下乙です

271名無しさん:2013/10/06(日) 22:39:58 ID:kXVUsWp60
投下乙です

手負いだが強すぎるヤンデルタと黒巨人ナナリー相手にどう戦うか
そして何か生き急いでるように見えるが死んだ二人とピンプクの分まで頑張れタケシ
でも近くに草加さんいるし主従コンビ北上の可能性もあるんだよなぁ

272名無しさん:2013/10/06(日) 22:53:41 ID:igWQyT0g0
投下乙!
これ桜ちゃん泥で戦ったほうが強いんじゃないの(小声)

273名無しさん:2013/10/07(月) 16:48:31 ID:sF/IQnGs0
投下キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
気になっていた真理パートが更新されて何より

タケシは精神的にも肉低的にもヤバくなってきたな…
Nが躊躇しつつモンスターボールを使うシーンが良い。色々と変わってきてるな

274名無しさん:2013/10/07(月) 21:12:46 ID:2NIkePfs0
投下乙です

これは凄い
よくこのパートを書き切ったなあ

275 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/27(日) 17:13:51 ID:gpJgqIDg0
えー、またも予約破棄した後でのゲリラ投下となってしまいましたが
全予約分からクロ、ミュウツーを外した巧、士郎、イリヤ、バゼット分を投下します

276かつてセイギノミカタを目指した者の夢 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/27(日) 17:15:33 ID:gpJgqIDg0
あの日、彼は全てを失った。
家、家族、それまで生きていた証、そして人間としての○○。
それまでの人生で積み上げてきたもの、重ねてきた思い出。
それらを全て、あの炎の中に置いてきた。

そうして生き残った自分には何が残ったのか。
何も残らなかった。
それまで生きた証は全て灰と化し。
そして生き残った自分自身さえ、それまでの自分とはかけ離れた存在となった。

ゆえに、もう”彼ら”がそれ以前の話を語ることはおそらくないであろう。
その行動はもはや何の意味も影響ももたらさない。

ここに述べる話は、そんな者達による己の内側に対する問いかけの、ほんの小さなお話である。





『北へ向かいましょう』

黒き魔法少女の襲撃後、穂群原学園に到着した一同が、各々怪我の治療を行いながらこの先どうするかを考えているとき、そう提案したのはルビーであった。

「え、どうして?」
『ここまでの道中を考えて下さい。
 バゼットさんはここから東でセイバーさんと戦闘行為を行い、そのまま追ってくることはしませんでした。
 あの、呉キリカさんでしたっけ?彼女は逆方向、西から来ました。バゼットさんの話を聞くに、どうやらバゼットさんの会ったニアという方のところから向かって来られたのでしょうね」
「ええ、しかし彼女の言葉から察するに、もう生きてはいないでしょう。…彼には悪いことをしました」
『だとすると、この私達のいる南部周辺にはそこまで人はいないでしょうね。バゼットさんも我々とキリカさん以外とは誰とも会わなかったと言いますし。
 ならば、この場に留まっている、あるいは南下する意味はないでしょう。まだ引きこもるには情報が足りていませんし』

下手に動いて士郎さんに更なるスイッチを入れられてしまうというのも問題ですけど、とはルビーは思ったが言わなかった。
遅かれ早かれ誰かと戦うことになるのは見えている以上、戦いそのものを避けてばかりでも何の解決にもならない。

『で、乾さん。移動する上で一つ聞いておきたいことがあるんですけど。
 正直もっと早く聞いておくべきことでしたが、ゴタゴタのせいで聞き損ねてしまったことです』
「何だよ?」
『乾さん、この方に見覚えはありませんか?』

277かつてセイギノミカタを目指した者の夢 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/27(日) 17:16:48 ID:gpJgqIDg0
と、ルビーはどこから取り出したのか、映写機のようなものを体(?)から引き出し、光を壁に当てる。
明らかに質量保存を無視したもので、巧も突っ込むべきかと一瞬考えたが、そこに映し出された顔を見てその思いはどこかへ行ってしまった。

褐色の肌を持ち、イリヤのものに薄いピンクを混ぜたような色の髪をし、長い髪を後ろに縛った少女。
その顔は

「………」
「この子は…、イリヤにそっくり…いや、双子みたいに似てるけど…この子がもしかして、イリヤの言っていた――」
「うん、クロ。もう一人の私、というか妹みたいなものかな?」
『巧さん、知っていますね』
「…ああ」

あまり思い出したくないのか、声が小さく今まで以上にぶっきらぼうな答え方に見えた。

「え、ちょっと待って。何で乾さんが知ってるって分かったの?」
『正直私もあの場で気付くべきでした。
 乾さんの体に刺さっていた黒い矢、あれはクロさんのものではありませんでしたか?』
「矢って…あ…」
『無論、他の人に支給されたものを何処の誰かも分からない人が使った可能性も考えましたが、敢えてここで思い切って聞いてみました。
 ビンゴだったようですが』

視線をルビーから反らす巧。
そんな彼に、さらに追求するようにルビーは問いかける。

『そもそもおかしいとは思っていました。先の情報交換の中では随分とそのマミさんって方を気にかけていた割に、あなたは今彼女を連れていません。
 あの後、一体何があったんですか?』
「…別に大したことじゃねえよ。
 その写真のやつと変な竜みたいな動物に乗った女がマミを連れて行っただけだよ。
 俺みたいな化物と一緒にいるよりは、その方が安全だろうが」
『………。…はぁ、私の周りにいる男性はどうしてこうも面倒な方ばかりなのでしょうか……。
 さすがのルビーちゃんも男難の相を疑いますよ』

別に聞いてもいないのに勝手に言い訳じみた言葉を続ける巧に溜め息をつくルビー。
この人はもう少し人と話し合うことを覚えた方がいいのではないか、と思ったがイリヤと士郎含めて今周りにいる人は考えより行動が先に出る人ばっかりだったという事実を思い出してさらに溜め息をついた。

「乾さん、クロはどうだったの?どこか怪我したりはしてなかった?」
「パッと見じゃ何ともなかったと思う。てか怪我してたら矢なんて撃てねえだろ」
「そっか…、正直安心した…」

278かつてセイギノミカタを目指した者の夢 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/27(日) 17:17:48 ID:gpJgqIDg0
少なくとも大きな怪我をすることもなく、一緒に行動できる人を見つけられて独りで戦ったりすることなく健在というところにイリヤは安心していた。
殺し合いに乗ることはない、と信じていたけど、色々と不安なところもあったのだ。
魔力不足に陥っていないか、とか、まさかそれで初対面の人にキスを迫るようなことがないか……とか。
そんな、まさかね。

『彼女とどこで遭遇されたか、覚えていませんか?』
「詳しい場所までは覚えてねえよ。あの時は撃たれたあいつのために必死で病院に向かってたからな」
『とすると、向かった場所は東か、あるいは北西ということになるでしょうね』
「一ついいですか?その巴マミという魔法少女も撃たれた、と言いましたが、やはり心臓、あるいはそれに近い急所を撃たれたのですか?」

と、それまで沈黙を保っていたバゼットが口を挟んできた。

「…心臓かどうかまでは分からねえが、胸を撃たれたのは確かだった。
 だからまだ助けられるうちに病院に連れて行けば、って思ってな…」
「え、じゃあその子、その重傷を追った状態で俺たちと戦っていたのか?」
「それに関しては不思議はないでしょう。あの呉キリカも、私のフラガラックを受けてなおあれだけの行動ができたのです。
 しかし、もしそうであればあの生命力は彼女固有というよりは魔法少女という存在特有のものなのかもしれません」

いかなる生き物であっても、心臓を潰されて生きていけるものはいない。
強靭な生命力で知られるあの吸血鬼でさえも急所と言い伝えられる場所であり、またサーヴァントであっても心臓と脳は急所である。
ならば、魔法少女の生命力は一体どこからきているのか。

『乾さんの件はともかく、キリカさんの件はあのフラガラックを使用した以上外した可能性は無いでしょうし。
 とするとぱっと考えられる可能性は、そうですね。
 何かしらの魔術(に近いもの)をかけて心臓を即行で治癒したか。あるいは核そのものが別に存在するか。
 何にせよ完全な不死身ということはありえないでしょう』
「そうだな、俺のところには臓硯っていう化物みたいなやつがいたんだが…」

間桐臓硯。
生に執着し、その身を蟲として堕として数百年の時を生き続けた魔物。
しかし、そんな彼であっても魂の腐敗までを食い止めることはできなかった。
だからこそ聖杯を求めていたのだ。

完全な不死というものは有り得ない。きっと何か弱点があるはずだ。
ギリシャ神話に語られるアキレスにとってのアキレス腱のような、ドイツの英雄叙事詩に語られるジークフリートの背のような何かが。

『まあとりあえずこの話は実際にその魔法少女と会った際に検証すればいいでしょう。
 問題はクロさんですね。もう時間も経っているためこの近くにはもういない可能性もありますが、いる可能性もあります。
 少し遅くはなりましたが、存在を確認できた以上まず彼女と合流することを視野に入れて動こうかと思います』
「それは分かるけど、…でもクロじゃないといけないの?」

ふと、そんなルビーの提案に疑問を投げかけるイリヤ。

『え、どういう意味ですか?』
「いや、何となくだけど、美遊やルヴィアさんももしかしたら近くにいるかもしれないのに、クロのことばっかりでいいのかなって」

無論、時間経過したとはいえ確認できた存在と確認できない存在を同列に並べるのはおかしいだろう。
だが、ほんの少し、根拠はないが何となく。
イリヤにはルビーがクロとの合流を急いでいるかのようにも見えた。

『おやー、イリヤさんはクロさんと合流したくないんですか〜。
 あっ(察し)、そういうことですか。やはりイリヤさんもまだまだ初心ですねえ〜』
「その『あっ(察し)』って何?!何を察したのよ?!違うから!そういうのじゃないから!
 ああもう!人は真面目に話をしてるのにー!」

279かつてセイギノミカタを目指した者の夢 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/27(日) 17:19:32 ID:gpJgqIDg0
士郎、巧、バゼットにはそのルビーの(察し)が何を意味しているのかは分からなかった。
というかその意味が分かる人物はきっと、この会場内においても美遊、そしてシロナとC.C.くらいしかいないであろう。

『時にイリヤさん、体の具合は今は万全ですか?』
「体の具合?ルビーのおかげでもう傷とか大分楽になったけど」
『そうですか。ではただちに出発しましょう。善は急げといいますし』
「一つよろしいですか。私としては出発前に軽く食事を済ませたいのですが。
 傷を負いすぎたこともあり、さすがに体が栄養を求めているようにも感じます」
「あ、ならさっき俺が作った弁当があるんだが、食べるか?」
「いただきましょう」

数分後。
あるいはルビーが急ぐことを告げたためでもあるのか。
衛宮士郎が作ったお手製の軽食は、特にこれといって味あわれる様子もなく、ただ栄養源、エネルギー源としての役目を果たすためだけにバゼットの体内に取り込まれた。
さようなら、士郎のお手製軽食。君のことは忘れない。



「すぅ…すぅ…」

移動する道中、イリヤは士郎に背負われたまま眠りに落ちた。
いくら魔法少女をやっているなどといっても肉体はやはり小学生でしかない。
数時間の睡眠だけでやってきたことがここで一気にきたのだろう。

「士郎、大丈夫なのかよ。何なら代わってやろうか?」
「はは、これぐらい大丈夫だよ。こう見えてもそれなりに鍛えてるからな」
『巧さん、ここは気遣いよりも空気を読むところですよ。夢の中にいるイリヤさんには幸せな状態で居てもらうのが最善だと思いますよ』
「?」

まあまさか義理とはいえ兄である存在に恋心を抱く妹がいるとは、なかなか想像しづらいものですけどね。とルビーは口に出すことなく心の中で思った。


「バゼット、そういやあんたの腕のほうはもういいのか?」
「動かす分には支障はありません。治癒のルーンもかけておきました。
 もしあのサーヴァントほどの存在と会ってしまえば分かりませんが、あれほどの者がそういるとは思えませんし。
 そういえばタクミ、一つよろしいですか?」

と、ふとバゼットが思いついたように疑問を投げかけた。

「何だよ」
「あなたはオルフェノクについて、先ほど説明した以上のことを知っているのではないですか?
 あなた自身がオルフェノクなのであれば」
「……」

巧はバゼットに対しては自身がオルフェノクであるという事実までは明かしていなかった。
そんな巧にバゼットが疑問を持つのは当然といえるだろう。

280かつてセイギノミカタを目指した者の夢 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/27(日) 17:20:01 ID:gpJgqIDg0
だが、それでも巧に答えられることはなかった。

「…俺も本当によく知らねえんだよ。
 村上ってスマートブレインの社長なら詳しいこと知ってんだろうけど、俺には全然分からねえ」
「では、あなたが言っていた、人の心を失うというのは?私にはまだあなたがそのオルフェノクに完全に心を堕としたようには見えませんが」
「そうなるんだよ。オルフェノクになったやつは大抵力に溺れて人間を襲うようになる。………ちょっとだけ例外はいたけどな」
「なるほど、個人差のあるものでしたか。そしてあなたはその例外であると」
「んなことねえよ。俺だっていつ襲うようになるか分かんねえからな。気になるなら離れてもいいんだぞ」
「ご心配には及びません、腕には覚えがあります。人外との相手も慣れていますし、もし襲うようなことがあればこの手で始末させてもらうだけです」
「じゃあ、その時は頼ませてもらうぜ」

ふと、巧はそんな自信満々に言うバゼットの言葉に、一人の少女のことを思い出し、すぐに脳裏から切り離した。
もう終わったことだ。きっとあの方が自分なんかといるより良かったのだ、と。
そう自分に言い聞かせる。

「話を戻します。ではあなたはどうしてオルフェノクになったのですか?」
「何だよ、やたらと気にするな」
『兵法にもあるじゃないですか。敵を知ることは重要である、みたいなやつですよ』

問われる巧だったが、それでも答えられるようなことはなかった。

「オルフェノクに襲われてなる、と聞きましたがやはりタクミもそれでなったのですか?」
「たまに事故とかで死んだ人間もオルフェノクになったりするらしいんだよ。俺みたいにな」
「…なるほど、それでは知らないのも無理はないのかもしれませんね」

これ以上深く聞いても求めている答えは得られないと感じたのだろう。
バゼットは話を打ち切った。
その代わりに、そんな会話を聞いていると少し疑問に思ったことを士郎は聞いてみた。

「なあ、それって巧の家族とかって知ってるのか?
 事故で死んだあんたがそんな姿になって生きてるって」
「………」

しばらくの沈黙。
何の気無しに聞いてみたがさすがにまずかったか、と謝罪と共に反省する士郎。

しかし、その問いかけに目を伏せつつも、巧は刹那の沈黙の後回答した。

「家族なんていねえよ。
 俺が事故で死んだとき、皆あの火事の中で死んだ。
 俺みたいに化物になることもなく、な」
「え…」

巧自身、本来ならば言うつもりもなかった、というより語りたくもなかった過去。
だが、どうしてか、聞かれたからとはいえあまりに自然に、そんなことを言っていた。
化物として転生し、誰とも深く関わることのないように生きていく、その始まりになったあの出来事など。
あれ以来熱いものが苦手になったことなど。
なぜ話していたのか、巧も自分に少し驚いていた。

281かつてセイギノミカタを目指した者の夢 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/27(日) 17:20:51 ID:gpJgqIDg0


そして。ふと、そんな巧の返答を聞いて。
士郎の脳裏には、彼にとって原初とも言える記憶が巡った。

息を吸うだけでも熱が体を巡るあの地獄の風景。
自分にとって終わりでもあり始まりでもあった、あの光景。

ああ、そうか。
何故乾巧のことがこんなに気になったのか、こんなに歩み寄ろうとしたのか。
なんとなくだが分かった気がした。

ならば、こちらも話さなくてはならない。

「悪い、辛いこと話させてしまったな」
「………。…気にすんな。勝手に俺が話しただけだよ」
「まあ、その、何だ。
 じゃあ、俺が今から言うことも勝手に喋ってるだけだから、そこまで深くは考えなくてもいい。聞きたくなければ無視してもらっても構わない」

と、士郎は背後のイリヤに視線を向ける。
目を覚ましそうな気配はない。兄の背に完全に身を任せ、静かに寝息を立てている。
今から話すことは、このイリヤには知る必要はない。
いや、知ってほしくないことであると言ったほうが正しいだろう。

士郎はその背で眠る少女に気を払いつつ、ポツリと話し始めた。

「俺もな、昔火災に巻き込まれたことがあるんだ。
 それもただの火事じゃない、街一つ巻き込むような大災害に」
「……続けろよ」

巧も何か言いたいことがあるのだと悟ったのか、そんな士郎を止めることなく静かに話を聞いていた。
それがただの不幸自慢ではないことを悟ったのだろう。

「その時に、家族も思い出も全部なくしてしまって、正直思い出せることがないんだ。
 覚えてるのは、その火災の中で助けを呼ぶ人たちの声や、苦しみに喘ぐ人たちの声くらいしかなくて。
 俺はただ死にたくなくて、そんな彼らをただ無視して歩いていたんだ。ただ自分だけが生き残るために。
 でもやっぱり俺一人は何にもできなくて、歩けなくなって倒れてもうダメだって思ったとき、俺を助けてくれた男がいたんだ。
 それが、俺に衛宮の名前をくれた、育ての親父だった」
「………」

誰も口を挟もうとはしなかった。
イリヤは眠り、巧は沈黙を続け、バゼットは聞いているのかどうかも定かではない。
ルビーすらも、軽口一つ立てずにその話を聞いていた。

「その時の親父の顔がな、とっても綺麗だった。助けられたのは俺なのに、まるで親父の方が俺を助けたことで救われた、みたいな顔しててさ。
 だからこそ、俺もそんな風に誰かを救えるようになりたいって、そう思ったんだ。

 それから数年経って、親父が死ぬ間際にこう言ったんだ。
 僕は正義の味方になりたかったんだ、って」
『正義の味方、ですか…』
「ああ、だから俺は言ったんだ。俺がその夢を叶えてやる、って。
 親父は言ったことがあるんだ。正義の味方として全部を救うのは無理なことで、それでも救えない人は出てくるって。
 あれはきっと親父が目指したことだと思うんだ。だからこそ、俺がその正義の味方になってやるって」
「……――話は終わったのか?」
「そうだな。今のところは、これで終わりだな」

巧はふと振り返り、士郎と目を合わせた。
僅かな時間、何かを考えるように沈黙した後、静かに口を開いた。

282かつてセイギノミカタを目指した者の夢 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/27(日) 17:21:58 ID:gpJgqIDg0

「お前、さっき言ってたよな。みんなに幸せになってほしい、って」
「そうだな。確かにそう言った」
「じゃあ聞くけどよ。
 士郎の友人でも家族でも誰でもいい。回りのやつが幸せそうにしてるのを見て、嬉しいって感じたこと、あるか?」
「………」
「啓太郎のやつはな、人が幸せそうにしてるのを見ると、マジで嬉しそうに、自分の幸せみたいに笑ってたんだよ。見てるほうが恥ずかしくなるくらいにな。
 でも、お前は何ていうか、そう見えないんだよ。なんつうかよ、自分が幸せ感じると罪悪感感じてそうな、そんな気がするんだよ。
 お前さ、その火事で生き残ってよかったって思えてねえだろ」


巧の言葉は、当たらずとも遠からずだった。
己の存在は誰かを助けるためにあるものだと考えていた。
この命を捨ててでも、誰かのためにあることができればいい。そう思っていた。
そうでなければ、切嗣に助けられた意味がない。あの災害の中で死んでいった人たちに申し訳が立たない。

ずっと、そう考えてきたのだ。

あの日までは。

「鋭いな、巧は」
「その親父とか昔いたはずの家族はいないかもしれないけどよ、俺と違って今のお前にだって家族くらいいんだろ。
 背中で寝てる妹とかよ。そいつらが悲しむとは思わねえのか?」

家族。
親父が生きていた頃からの付き合いで、姉同然として共に過ごしてきた、ぐうたらな教師がいた。
最初は敵意を向けて襲い掛かってきた、義理の妹にして今背で眠る少女の別の可能性がいた。
そして。

―――――先輩

かつては守るべき日常の象徴、そして今は何があっても守らなければならないたった一人の愛しき存在がいた。

「ああ。いる。
 何があっても守りたい人が。俺はその人のために死ぬわけにはいかない」
「分かってんじゃねえか」
「だからこそ俺、聞きたいことがあるんだ」

長くなってしまった気もするが、これまでが前置き。とはいってもこの質問をして大丈夫かどうか確かめた、というのもあるが。
士郎が聞きたかったのは、この先だ。

「さっきあのキリカって魔法少女に言われたんだ。
 愛っていうのは全てを捧げることだって。心も体も命も、生きる意味さえも捧げて相手に尽くすことだって。
 あの子はそのために殺し合いに乗ったって言ってたんだ。

 俺には、好きな人がいる。彼女だけの味方になるって、何があっても守るって約束した子が」

人としての扱いを受けることもなく生きてきた少女。いつも隣に存在し、いることが当たり前になり、気がつけばかけがえのない存在になっていた。
そして、その少女は倒すべき敵だった。
放っておけば多くの人を殺す、死なせることになるであろう、それまで掲げてきた理想の中には、決して存在してはいけないであろう悪。
それに気付いた時、彼女は弱りきっており、自分になら殺されてもいいとまで言った。きっと、彼女を殺すことができる最後の機会であっただろう。

なのに、暗い夜、一人涙を流す彼女を、俺は抱きしめていた。
救うべき多くの人々、それまで信じていた理想よりも、たった一人の大切な存在を選んだのだ。
その存在が、多くの人を死に至らしめるものであると知りつつも彼女を守る道を選んだ。
世界の何が敵に回ろうと、君を守る、と。

「もし、もしなんだけどさ。ここに連れてこられて会ったのがあのキリカって子だったら、俺、どうなったか分からないんだ」

もし、かつて最も信頼した己のサーヴァントでも、自分を兄と言って慕う少女と同じ姿をした存在とも会わず。
あの少女の歪んだ愛を受け止めていたら。

きっと道を誤ってしまったかもしれない。

283かつてセイギノミカタを目指した者の夢 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/27(日) 17:22:36 ID:gpJgqIDg0
「…巧、俺、どうするべきなんだろう?
 桜を守ることと皆を死なせないこと、両方を欲しがることってそんなにおかしいのかな?」

桜は何があっても守らなければならない。
しかしその一方で、イリヤや、藤ねえにも死んで欲しくなんてない。無論遠坂にも死んで欲しくなんてなかった。

士郎には分からなかったのだ。どうすることが正しいのか。
自分が死ねば、きっと桜は悲しむ。ではもし自分の命と桜の命を、あるいはイリヤや藤ねえ達、他の誰かの命を選ぶことになったらどうするべきなのか。
呉キリカの言っていたように、己の命を投げ打ってでも愛に尽くすべきなのか、それとも偽りかもしれないこの愛を捨てて桜を殺すべきなのか。

「……なあ、士郎、お前の夢って何だ?」

そう悩む士郎の前でふと、巧はそんなことを聞いていた。
夢、それはさっき巧自身が、士郎が啓太郎と同じ夢を持っているといっていたもの。
それを巧は、再度問うたのだ。

「夢…?」
「ああ、夢だよ。例えばよ、将来何がしたいとか、どんな風になりたいとか、何だっていいんだよ。
 何か、生きることの目標みたいなのとかねえのか?」

生きる目標、どんな風になりたいか、何がしたいか。
これまでごく一般的な意味で色んな人に聞かれてきた問いかけであり、その度に士郎の答えは決まっていた。
だから、それまでと同じように自分のするべきことを述べるだけだ。

「それはもちろん、s「あ、そういや。当然の話だけどな、人のために何かしたいとかってことじゃねえからな。士郎のためになるようなことだよ。だから正義の味方だの何だのっていうのは無しな」

先手を打たれて口を噤む。
話の流れを察すれば分かることであったのだろうが、どうやら言わんとしたことは読まれていたらしい。

「んじゃあよ、例えばの話だ。お前、結構飯作るの上手いじゃねえか。
 他の人に食ってもらって美味いって言ってもらえたとき、何て感じるよ?」
「そりゃあ、嬉しいって感じるさ。俺の作ったものを食べて、みんなが笑顔になれるんならそれで――――」

笑顔。

そうだ、俺はあの雨の公園で桜が泣いているのを見て、心の底からそれが嫌だと感じた。
涙の原因である間桐臓硯に強い怒りさえ覚えた。
俺は、そんな桜の顔が笑顔で過ごせるような場所を守りたかったのだ。

桜がいて、藤ねえが騒ぎ、黙々と一人食事を進めるセイバーがいて、猫を被った凛が静かにそこにいて、そしてイリヤもいて。
もう戻らないものもあった。欠けてしまったものもあった。
だが、その光景は何より当たり前で、故に大切で。
当たり前であるからこそ、守りたいと思ったのだ。
もうこれ以上、何も欠けることがないよう。

「ああ、そうだ。俺は桜を、桜の笑顔を守りたいんだ。桜が笑顔でいられる世界を。
 それが、俺が正義の味方を諦めた、俺の夢だ」

ただ命を救うだけが、助けることではない。
その先に笑って暮らせる世界がなければ、自分と同じだ。
そして、その夢は決して桜の命と他の人間を天秤にかけて成立するものではない。
巧が教えかったのは、きっとそういうことなのだろう。

284かつてセイギノミカタを目指した者の夢 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/27(日) 17:23:19 ID:gpJgqIDg0

「ああ、それでいいんだよ、お前は」

その答えが、きっと巧の言おうとしたことに合致したのだろう。
士郎の決意を受けて、巧ははっきりとその目を見据え、静かで優しい口調でこう言った。

「なら士郎、お前はその夢を叶えろよ。お前の夢くらいは、俺が守ってやるからよ」
「そう、か。ありがとう」
「……お前は危なっかしいからな。お守りくらい必要だろ」
「はは、気をつけるさ。………なあ、巧。
 お守りついでに一つだけお願いできるか?」

と、そこで士郎はまた別の話に移る。
これは、きっと本来はお願いするべきことなどではないのかもしれない。
しかし自分の中のけじめはつけておく必要はある。だから、切り出すなら今しかない。

「何だよ?」
「俺にもしものことがあったら、イリヤを守ってやってほしいんだ。
 イリヤを守って、元の場所に帰してやることを、お願いしたい」
「お前…、こいつはお前の妹じゃねえのかよ」
「いや、このイリヤは衛宮士郎の妹だけど、俺の妹じゃないんだ。
 だから、イリヤの本当の兄もまた別に存在してる。
 そしてもしかしたら、俺にはイリヤを守りきることはできないかもしれない」

桜が笑顔で居られる世界に存在するイリヤと、衛宮切嗣の生きる世界で学校に通うイリヤは違う。
だから、もしもの時は守れなくなるかもしれない。
それでも士郎は、このイリヤのことは心から守り、帰してやりたいと思ったのだ。
あの、買い物帰りに兄と慕う存在の前で童謡を口ずさんでいた帰り道、家族もいない中で唯一残った家族からの共に暮らそうという言葉すらも断ることしかできなかった少女。
彼女が戦うこともなくただの少女として切嗣と共に幸せに暮らしている世界があるのであれば。
それもまた、守らなければならないもののはずだと、思ったのだから。

「これは夢ではないかもしれない。でも、俺の願いなんだ。
 だから俺に何かあったら、巧、頼む…!」
「……」

巧はわざとらしくも見える嫌そうな表情を作り、髪を掻きつつもやがて観念したかのように士郎の願いに返答した。

「たくよ、言っておくが俺は人間じゃねえ、オルフェノクだぞ。
 俺だっていつ人間の心を失くして襲い掛かるようになるか分からねえってのに。何でそこまで信用できるんだよ」
「どうしてだろうなぁ。何だか、巧の傍に人々の笑顔を守りたいって願いを持ってる人間がいたってのがどうしても、な。

 それと、さっきまでの会話ではっきり確信した。あんたは人間だよ。だからもっと胸を張ってもいいんじゃないか?」

少なくともその言葉は、士郎からすれば巧の、士郎なりに感じた心の枷を少しでも楽にしてやりたいと思って口にしたものだった。
しかし、それを受けた巧の表情は、暗く、どこか浮かない表情しか示していなかった。



285かつてセイギノミカタを目指した者の夢 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/27(日) 17:24:51 ID:gpJgqIDg0

(なるほど、思わぬところで聞いておきたかったことが一通り伺えたわけですが…)

と、そんな彼らの会話を影から見守っていたルビー。
別に盗み聞きしていたわけではない。ただ、彼らの会話がそこまで周囲に気をはらったものでなかったため、勝手に聞こえてしまっただけのこと。

士郎が己の命を顧みない行動をする理由。
それはきっと、士郎のかつて願ったその歪んだ正義の味方という理想からくるものなのだろう。
しかし、今の彼はそれを捨ててでも守りたいものを持っている。

(これはイリヤさん、寝ていてもらって正解でしたね)

きっとその衛宮士郎に恋焦がれる彼女にはこの話は重すぎるだろう。
少年の心の空洞、そして歪んだ理想、そして守りたいものの存在までは。

もしかしたらイリヤを守れない、というのもまた重い話だ。
そうでなくても、彼にはあの英霊の腕がある。
戦う力があるとはいえ、呉キリカ相手に怯えた彼女が進んで戦いに駆り出すというのはルビーとて避けたい。

「バゼットさん、二人の話、聞いていました?」
「別に聞こえない距離ではないでしょう」
「このこと、イリヤさんには可能な限り伏せておいてください」
「私には話す理由もありませんね」

まあそうだろう。
そもそもイリヤさんに、自分か衛宮士郎の指示に従うように言ったのはバゼット自身だ。
下手な動きに繋がりかねないことをするはずはない。
しかし、下手な動きといえば衛宮士郎自身にも通じることではある。
だがイリヤの兄への恋心を分かっていない者には彼女の無茶はワガママにも見えてしまうものだ。

最も無茶なことをしているのは士郎だというのに。

(サバイバーズ・ギルドというやつですか。
 きっと生き残った士郎さんの、空虚な心を埋めるのに、正義の味方というのは都合のいいものだったのでしょうね)

そんな彼が、守りたいと望むものを見つけ、その個人のために生きることを決意し、しかしそれは同時に彼自身が本来倒すべき悪を守るという自身の理想に反するもので。
逆にいえば、それほどまでに彼にとってその間桐桜という人が大事なものとなっていたのだろう。

衛宮士郎と乾巧。
近い境遇の中で、人としての心と体、それぞれ違うものを失っていった二人。
その存在が、互いにとって益となるものであって欲しいと。
衛宮士郎の背で眠る己がマスターを見ながら、ルビーはそう思わずにはいられなかった。

【G-2/市街地/一日目 午前】

【衛宮士郎@Fate/stay night】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(小)
[装備]:干将莫邪@Fate/stay night、アーチャーの腕
[道具]:基本支給品2人分(デイバッグ一つ解体)、お手製の軽食、カリバーン@Fate/stay night
[思考・状況]
基本:この殺し合いを止める
1:とりあえずルビーの指示に従う
2:バゼット、巧と協力して、イリヤを守る。
3:桜、遠坂、藤ねえ、イリヤの知り合いを探す(桜優先)
4:巧の無茶を止める
5:“呪術式の核”を探しだして、解呪または破壊する
6:桜……セイバー……
[備考]
※十三日目『春になったら』から『決断の時』までの間より参戦
※アーチャーの腕は未開放です。投影回数、残り五回
[情報]
※イリヤが平行世界の人物である
※マントの男が金色のロボットの操縦者

286かつてセイギノミカタを目指した者の夢 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/27(日) 17:25:14 ID:gpJgqIDg0

【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(小)、睡眠中
[装備]:カレイドステッキ(ルビー)@プリズマ☆イリヤ
[道具]:クラスカード(キャスター)@プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本:この殺し合いを止める
1:一応バゼットとルビー、お兄ちゃん(衛宮士郎)の指示には従うけど……
2:ミユたちを探す
3:お兄ちゃんを守れるよう、強くなりたい。
4:お兄ちゃんには戦わせたくないし、あまり重荷にはなりたくない
5:乾巧の子供っぽさに呆れている
6:バーサーカーやセイバーには気を付ける
7:呉キリカに恐怖
[ルビー・思考]
基本:イリヤさんを手助けして、殺し合いを打破する
1:士郎さんを助けるために、クロさんに協力を仰ぐ
2:士郎さんの話したことはイリヤさんには黙っておく
3:呉キリカの使用した魔術の術式と言語が気になる
[備考]
※2wei!三巻終了後より参戦
※カレイドステッキはマスター登録orゲスト登録した相手と10m以上離れられません
※ルビーは、衛宮士郎とアーチャーの英霊は同一存在である可能性があると推測しています。
[情報]
※衛宮士郎が平行世界の人物である
※黄色い魔法少女(マミ)は殺し合いに乗っている?
※マントの男が金色のロボットの操縦者、かつルルーシュという男と同じ顔?

【バゼット・フラガ・マクレミッツ@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:疲労(小)、全身裂傷、左腕重傷(骨、神経は繋がっている、応急処置・縫合済)
[装備]:ルーンを刻んだ手袋
[道具]:基本支給品、逆光剣フラガラック×2@プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本:何としてでも生き残る。手段は今の所模索中
1:とりあえず会場を回り、クロエ・フォン・アインツベルンを捜す
2:衛宮士郎、イリヤスフィール、乾巧と手を組む。
3:セイバーを追い詰められるだけの人員、戦力を捜す
4:障害となる人物、危険と思しき人物は排除する
5:呉キリカのような魔法少女について調べる
6:呉キリカと再び遭遇したら、今度こそ確実に仕留める
[備考]
※3巻の戦闘終了後より参戦。
※「死痛の隷属」は解呪済みです。
※フラガラックの特性の発動条件は、通常より厳しくなっています。
※セイバーやバーサーカーは、クラスカードを核にしていると推測しています。
※衛宮士郎とアーチャーの英霊は同一存在である可能性があると推測しています。
※魔法少女やオルフェノクについて、ある程度の知識を得ました(が、先入観などで間違いや片寄りがあるかもしれません)

【乾巧@仮面ライダー555】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(中)、治療済み、肩から背中に掛けて切り傷
[装備]:なし
[道具]:共通支給品、ファイズブラスター@仮面ライダー555
[思考・状況]
基本:木場を元の優しい奴に戻したい
0:マミの事が少し心配
1:衛宮士郎に手を貸してやる
2:二人の元から離れたいが、仕方がないので協力する
3:衛宮士郎が少し気になる(啓太郎と重ねている)
4:暁美ほむらを探して、魔法少女について訊く
5:マミは探さない
[備考]
※参戦時期は36話〜38話の時期です
[情報]
※ロロ・ヴィ・ブリタニアをルルーシュ・ランペルージと認識?
※マントの男が金色のロボットの操縦者

287かつてセイギノミカタを目指した者の夢 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/27(日) 17:25:55 ID:gpJgqIDg0

【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(小)、睡眠中
[装備]:カレイドステッキ(ルビー)@プリズマ☆イリヤ
[道具]:クラスカード(キャスター)@プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本:この殺し合いを止める
1:一応バゼットとルビー、お兄ちゃん(衛宮士郎)の指示には従うけど……
2:ミユたちを探す
3:お兄ちゃんを守れるよう、強くなりたい。
4:お兄ちゃんには戦わせたくないし、あまり重荷にはなりたくない
5:乾巧の子供っぽさに呆れている
6:バーサーカーやセイバーには気を付ける
7:呉キリカに恐怖
[ルビー・思考]
基本:イリヤさんを手助けして、殺し合いを打破する
1:士郎さんを助けるために、クロさんに協力を仰ぐ
2:士郎さんの話したことはイリヤさんには黙っておく
3:呉キリカの使用した魔術の術式と言語が気になる
[備考]
※2wei!三巻終了後より参戦
※カレイドステッキはマスター登録orゲスト登録した相手と10m以上離れられません
※ルビーは、衛宮士郎とアーチャーの英霊は同一存在である可能性があると推測しています。
[情報]
※衛宮士郎が平行世界の人物である
※黄色い魔法少女(マミ)は殺し合いに乗っている?
※マントの男が金色のロボットの操縦者、かつルルーシュという男と同じ顔?

【バゼット・フラガ・マクレミッツ@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:疲労(小)、全身裂傷、左腕重傷(骨、神経は繋がっている、応急処置・縫合済)
[装備]:ルーンを刻んだ手袋
[道具]:基本支給品、逆光剣フラガラック×2@プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本:何としてでも生き残る。手段は今の所模索中
1:とりあえず会場を回り、クロエ・フォン・アインツベルンを捜す
2:衛宮士郎、イリヤスフィール、乾巧と手を組む。
3:セイバーを追い詰められるだけの人員、戦力を捜す
4:障害となる人物、危険と思しき人物は排除する
5:呉キリカのような魔法少女について調べる
6:呉キリカと再び遭遇したら、今度こそ確実に仕留める
[備考]
※3巻の戦闘終了後より参戦。
※「死痛の隷属」は解呪済みです。
※フラガラックの特性の発動条件は、通常より厳しくなっています。
※セイバーやバーサーカーは、クラスカードを核にしていると推測しています。
※衛宮士郎とアーチャーの英霊は同一存在である可能性があると推測しています。
※魔法少女やオルフェノクについて、ある程度の知識を得ました(が、先入観などで間違いや片寄りがあるかもしれません)

【乾巧@仮面ライダー555】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(中)、治療済み、肩から背中に掛けて切り傷
[装備]:なし
[道具]:共通支給品、ファイズブラスター@仮面ライダー555
[思考・状況]
基本:木場を元の優しい奴に戻したい
0:マミの事が少し心配
1:衛宮士郎に手を貸してやる
2:二人の元から離れたいが、仕方がないので協力する
3:衛宮士郎が少し気になる(啓太郎と重ねている)
4:暁美ほむらを探して、魔法少女について訊く
5:マミは探さない
[備考]
※参戦時期は36話〜38話の時期です
[情報]
※ロロ・ヴィ・ブリタニアをルルーシュ・ランペルージと認識?
※マントの男が金色のロボットの操縦者

288 ◆Z9iNYeY9a2:2013/10/27(日) 17:26:42 ID:gpJgqIDg0
また二重投稿してしまいましたが投下終了します

289名無しさん:2013/10/27(日) 18:31:16 ID:cqIKUfwg0
投下乙です

ロワ内で集った集団がとりあえず今は纏まってるが…
それぞれ個性的な面々の内面描写がよく書けてると思うよ
さて、この集団が今後どうなるか気になるが…

290名無しさん:2013/10/28(月) 00:51:59 ID:JAg9.FbU0
たっくんと士郎が良い感じだな。男の友情ってやつだぜ

291名無しさん:2013/10/28(月) 02:18:01 ID:T.ACxV1Y0
『火事ですべてを失い』『人でない心/体になる』。ああ……似てるんだな、この二人

292名無しさん:2013/10/28(月) 21:00:21 ID:Eq1OUhKU0
スザクやマミもそうだが、このロワには過去のトラウマで人助けを志した奴が多いな

293名無しさん:2013/10/29(火) 23:50:24 ID:ut41cxwM0
ぶっきらぼうな巧がかわいいなぁ

294 ◆Z9iNYeY9a2:2013/11/12(火) 23:19:36 ID:5POOW2Ws0
仮投下したものの手直しが完了しましたので投下します

295Juggernaut-黒き零の魔人達 ◆Z9iNYeY9a2:2013/11/12(火) 23:23:57 ID:5POOW2Ws0
「で、あんたは一体なんなのよ?
 ポケモンって言ってもシロナさんのガブリアスとかニャースとかと比べるとかなり違って見えるんだけど」

「人間によって作られた唯一のポケモン、それが私だ。
 ミュウというポケモンのクローンとして、最強の名を与えられた」

「へー。所謂禁断の好奇心ってやつかしらね」

「私を生み出した研究者は言った。生物を生み出せるのは神と人間だけ。
 しかし試験管から生き物を作れるのは人間だけ、だと」

「うわっ、流石にその発言はエゴ丸出しで引くわ」

「もし神によって生み出されるのがポケモンであるとすれば、人間によって作られた私は何なのだ?
 試験管から生まれた私は、世界にとって異常な存在ではないのか?
 そんな考えから、人間に逆襲しようと、そんなことを考えて生きていたこともあった」

「ちなみにその方法って言うのは?」

「私は強きトレーナーたちを集め、そのポケモン達からクローンを作り出した。
 そしてそのオリジナルとクローンを戦わせ、どちらが強いかということを確かめさせた」

「……、ねえ、それって」

「ああ、私を作った人間と同じことをした。これに関しては私も同罪だ。
 だが、私は確かめたかったのだ。作られたポケモンがオリジナルに勝てるのなら、本物より優れているのなら。
 それこそが我々の…、いや、私の存在の証明にならないか、とな」

政庁出発後、クロはゆっくりしすぎもせず、かと言って変に疲労が溜まることもないような速度での移動を続けていた。
下手に体力を使うと、クロに限っては魔力残数にも関わる。
そしてミュウツーもそれにあわせた速度でクロに付いてきていた。
地面から微かに浮いた位置からの浮遊は何というか、見ていて不思議なものではあったが。

そして、その最中、雑談にしては少々込み入ってはいないかという話を二人で移動と同時にしていたのだ。

「で、見つかったの?その存在の証明は」
「いや、見つからなかった。だがある一人の少年に身をもって教えられた。
 その戦いの無意味さにも、そして私の過ちにも」

あの時の、多くのコピーポケモンがオリジナル達と同じく涙を流す姿。
それを見てはっきりと思い知らされたのだ。

その少年はもう既にこの世にいないが、と。
そう付け加えたミュウツーの心中はクロには察することはできなかった。
きっと彼自身も分かっていないのかもしれない。己の気持ちが。

「私には分からないのだ。私自身の居場所が。
 私達は世界の理から外れてはいるが、世界に存在してはいけないものではない。
 だが、我々は人間と共にあることが許されるのか?」

強い力を持ったものは人間が管理しようとする。もし管理できないならば、排除することを選ぶのが人間だ。
最強といわれるほどの力を持った自分が人と共にあるためには、人間の管理下になければならないかもしれない。
あのサカキの下にいた時のように。
だが、それはミュウツー自身望む形ではない。
では、私はどうすればいいのか。

「どこか一目に付かないところで静かに――っていうのは…ダメか」
「私もそうしようとしたところで、ここに呼ばれたのだ」

296Juggernaut-黒き零の魔人達 ◆Z9iNYeY9a2:2013/11/12(火) 23:25:39 ID:5POOW2Ws0



あの時の美樹さやかの攻撃もおそらくは自分が人間ではないからだというもの。
その事実は、ミュウツーの心を少なからず傷つけていたのだ。あの少女が、サトシやタイガのように善に位置する人間と判断できるからなおのこと。
それが多くの人間の下す判断であるとするなら、私はこの場でどうあればいいのか。

「で、それを人間じゃない私に聞きたい、と」
「……」
「案外聞かれても困るのよね、そういうの。
 確かに私は人間じゃないけど、パッと見人間と変わらないから、別に人間の中に混じるのに何の不都合もないし。
 うーん、でもあんたは納得しそうにないしなぁ、…まあいいか。ちょっとした身の上話なんだけどさ」

クロエ・フォン・アインツベルン。
そもそもこの名前自体、親につけられたという名前ではない。本当の名前は、自分もまたイリヤなのだ。
聖杯としての役割を与えられ、そして封印された記憶、人格が表出したもの。
本来ならば一般社会に生きるイリヤにとっては不要の知識、人格を揃えた存在、それがクロなのだ。

そんな自分が何故こんなところに存在しているのか。
生きたいと願ったからだ。
肉体を得た、大空洞でイリヤがアーチャーを夢幻召還したあの瞬間、そして自分の居場所がない現実に絶望したあの瞬間。
もし自分が生きたいと思わなければ、今ここに存在なんてしていなかった。

で、実際に自分の居場所そのものが見つけられたかと聞かれれば、別に見つかってはいない。
毎日イリヤと共に学校に行って、遊んで、食事して、お風呂入って、寝る。
まあ時々執行者が襲ってきたりする日常だけど、ぶっちゃけそれが本来のあり方ではないというのは自分自身分かっている。

「まあ、ぶっちゃけちゃえばさ、存在意義とか居場所とか、そんなの分かって生きてる人なんて人間でもそうはいないのよ。
 そんなの生きてりゃ後から付いてくるものだったりもするわけだし。
 だからアンタはそんな小難しいこと考えずに自分のやりたいことやってればいいんじゃないの?」
「そういうものなのか?」
「そういうものよ」

正直、クロ自身ミュウツーに回答が示せるとは思っていない。
これはミュウツー自身が見つけ出さねばならない答えだろう。
だが答えを見つけられない=己の意義がないということについては否と言っておく必要はあるだろう。
作られたものであったとしても、その存在を否定することは神にだってしていいことではないのだから。

「ところでさ、さっきタイガって名前言ってたけど、もしかして藤村大河って人?」

と、ここで話を切り替える。
先の話の中で出てきたタイガという名前にふと心当たりがあったのだ。


「ああ、知り合いか?」
「知り合いってか私達の学校の先生よ。聞いてなかったの?」
「妙だな…、私は確かにタイガの知り合いについては聞いたが、クロエ、お前の名はなかったぞ?」
「ちなみにその聞いた知り合いの名前は?」
「確か――」

衛宮士郎、セイバー、間桐桜、遠坂凛。
士郎、桜は自分の舎弟みたいなもので、凛は自分の学校の生徒だと言っていたように思う。
セイバーは、ある日突然士郎の家に引っ越してきた衛宮士郎の父の親戚の人、と。

「セイバーって…、まさか…」
「心当たりがあるのか?タイガはその4人は何か隠し事をしていると言っていたが」
「そうね、もし私の想像が正しければ、かなり厄介なことになってるわよ。その藤村先生が来た世界って」

セイバー。それは剣士を意味するサーヴァントのクラス。
もし伊達や酔狂でそんな名を名乗っているのでないとすれば、間違いなくそのセイバーは聖杯戦争の参加者であるはず。
自分達の世界と対応した平行世界、それはまさか―――

「聖杯戦争の起きた…、世界…」

だとすればこの名簿に載っているバーサーカー、そしてセイバーは本当の意味で正規のサーヴァントということになる。
かつてのあの黒化英霊とは違う、正真正銘の。
特にバーサーカー。こいつが万が一にでもあの自動蘇生の宝具を持ったあいつであったなら。

「相当にまずいわよ…」

クロは焦る気持ちを抑えつつ、速やかに移動を続けた。
嫌な予感を心に残したまま。




297Juggernaut-黒き零の魔人達 ◆Z9iNYeY9a2:2013/11/12(火) 23:26:39 ID:5POOW2Ws0
若干の時を遡る。
そんな二人の元からそう離れていない場所。
しばらく進んだ場所にはある世界を統べた組織の建造物、スマートブレイン社の跡地がある場所。
未だ市街地の体裁を保っているはずの場所。

そこに建っている建築物が一つ、轟音を立てて倒れた。

濛々と上がる土煙の中、一つの影が宙に飛び出した。
そこにいたのは人間よりも一回り巨大な、鮫のような竜。
その背には金髪の女性を背負い、空を飛びながらも振り落とすことがないように慎重にバランスを取っている。
さらにそれを追うように黒い影が布のようなものをたなびかせながらも竜に向かって飛び掛った。

高速で飛び掛るその何かを、竜はまるで飛行機がカーブを描くかのような軌跡を取りながら避け、着地する。
と、その着地した瞬間、今度はそこに灰色のケンタウルスのような魔人が大剣を振りかざして飛び掛った。
鮫竜はその持ち前の素早さで剣を紙一重で回避、後ろに下がって空中に作り出した岩の刃を飛ばしつつ、地面を踏みしめて咆哮。
降り注ぐ岩片と揺れ罅割れる地面に脚を取られてよろけるケンタウルスの魔人。
しかしもう一人の魔人、黒き仮面とマントを纏った男が光る手の平を地面に叩きつけた。

その瞬間、揺れていたはずの大地が一瞬にして静寂を取り戻す。
驚愕する竜の元に、仮面の魔人は先ほどの光を向ける。
直感的にまずいと感じた竜はその場を離れつつ、再度岩片を飛ばすもそれらは翻したマントに阻まれ魔人に到達することはない。

その後ろから馬の魔人が高速で突撃してくるのを視認した竜は、再度宙に浮き上がりそのまま二人の魔人に背を向けて飛び去っていった。


「中々に素早い。随分と戦い慣れしているようだな、あの竜は」
「言っている場合か。早く追うぞ。
 幸いやつらの向かった先は俺たちの進行方向だ。目的に支障はない」

金髪の女と竜を襲った二人の魔人。
ゼロ、そしてホースオルフェノク。
互いの目的のために一時的な共闘を申し出た彼ら二人は休息後出発したところで空を往く竜を発見、襲撃をかけることにしたのだ。
その竜の飼い主が殺し合いに乗っている可能性も考えないではなかったが、こちらを視認した女の目には敵意、警戒心がはっきりと見えたのだ。
おそらくはあのスマートブレイン崩壊跡の戦いを生き残った者から情報を得た人間だろう。それを聞いて敵意を向ける相手ならば手を組めるはずもない。
二人の行動は迅速だった。

想定外だったのは、あの竜がかなりの手慣れであったことだろうか。
まさか二人がかりで逃がしてしまうとは。


「追うのはいいがな、ここには他にも何者かの一団が近寄ってきているようだぞ。そっちはいいのか?」

追おうとするホースオルフェノク、木場勇治。しかしゼロはふと、近くに他の参加者の気配があることに気付いていた。

「一団?何人だ?」
「数は人間のものが4つ。まあ中身まで人間とは限らないが」

つまりは最低4人を一度に相手することになるのかもしれない。
ゼロとてあの時乾巧、巴マミ、佐倉杏子、村上峡児、そして木場勇治という数の暴力には押されたのだ。
ダメージこそ大分治まったとはいえ油断できる相手ではない。
しかし、見逃すのもどうだろうかと考えてしまう。

と、ゼロの感覚が一つの動きを捉えた。

「どうやら一人、集団から離れたようだな。
 向かっている先は…、あの女の向かった方だ」

集団から離れた一人分の存在。
あの竜を視認し、追ったのだろう。


「なら、俺がそっちに向かう。ゼロ、残った三人の相手は任せられるか?」
「問題などないな。お前こそ問題ないのか?
 二人がかりで逃がしてしまった者にさらに一人追加して相手取るなど」
「大丈夫だ、今度こそ確実に仕留めてみせるさ」
「そうか、なら生きていたなら3時間後までにD-5の病院で合流としようか」
「分かった」

言うが早いか、疾走態へと変化した木場勇治は女の逃げた方に向かって駆けていった。

「では、私の今すべきことは―――」

木場を見送ると同時、ゼロもそのマントを翻し、その場を立ち去った。



298Juggernaut-黒き零の魔人達 ◆Z9iNYeY9a2:2013/11/12(火) 23:27:04 ID:5POOW2Ws0


巧、士郎、イリヤ、バゼットの4人の進む先、ふと耳に届いたのは巨大な爆砕音だった。
建物一つ潰したような音、それは士郎の後ろで眠っていたイリヤが目を覚ますほどのものだった。

「な、何…?」
「どうやら、この付近で戦っている者がいるみたいですね。
 それも建造物一つを壊すほどの力を持った者が」

建物をあのような衝撃を立てて壊すような存在。
実際巧は高層ビルを潰した相手と戦ったというのだ、不思議というほどのものではないのだろう。
だが、そんな相手が近くにいるというのは、イリヤを怯えさせるには十分だった。

と、ふと空を見上げた一同の視界に、飛行機のような何かが宙を滑空している姿が目に入った。
バゼット、イリヤの視力ではそうはっきり見えたものではなかったが、巧、士郎の二人にはそれが何なのか、はっきり視認することができた。

鮫のような竜の背に乗った一人の女性の姿だった。

それを認識した瞬間、巧の顔色が変わった。

「あれって、もしかして巧がさっき言ってた?」
「………」

士郎の問いかけに沈黙で返す巧。
巧にとっては人間に拒絶された(ように見えた)という苦い記憶。進んで語りたいものではなかった。
無論、そんな相手と顔を合わせることに消極的になるのも無理からぬこと。

そんな巧をじっと見つめ(たような動作をして)、辛辣な言葉をルビーは投げかけた。


『逃げられるのですか?』
「…!」
『まあ別に止めはしませんけど。ただ問題を後回しにしてばかりでは何も進歩しませんよ?』
「止せ」

巧の心中を察してか察せずかは分からないが、そう煽るルビーを士郎が止めた。

「俺が先に行って様子を見てくる。だから巧達は落ち着いたら追ってきてくれ」
「お兄ちゃん?!」
「待てよ、何でそこでお前が行くんだよ」
「何でって、この中じゃ一番怪我とか少なくて大丈夫なのは俺だろ?」

巧は夜中の連戦のダメージを未だに体に残し、さらにあの人と対面することに抵抗を覚えている。
イリヤは戦えるとはいってもまだ子供。先のキリカ戦の時にも状況判断力においては未熟な点も見られた。
そして、バゼットは腕の傷が深く、未だ癒えてはいない。

「心外ですね。この程度の傷があろうと、あなたよりは戦える自信はあります」
「でも怪我をしているのは事実だ」
『まあ確かにこの人にコミュニケーション取らせるとなると嫌な予感しかしないものではありますが――おっと、危ない』

ルビーの軽口に拳を唸らせているバゼットだが、ある意味ではその点もあのキリカとの情報交換で浮き彫りになってしまった欠点ではある。
理には適っている。いや、適いすぎているというべきなのだろうか。

「お兄ちゃん…、待ってよ。行くなら私もいっしょに行かせて!」
「ダメだ、もし万が一戦いにでもなったらイリヤのことは守りきれないかもしれない。
 巧やバゼットと一緒に居てくれた方が俺も安心できるから、な」
「あ、あうう…」

そう優しい声で言いながら頭を撫でる士郎に、イリヤは閉口してしまう。
だが、黙るわけにはいかない理由もある。

『士郎さん、その腕のことですが、』
「大丈夫だよ、俺にはこれらの剣がある。こっちで作らなくてもどうにかなるさ」

勝利すべき黄金の剣。かつて最も信頼した少女が、己の聖剣を手にする以前に使っていた黄金の宝剣。
干将・莫耶。赤き弓兵が愛用した、扱いやすく汎用性の高い双剣。
武器としてはこれ以上のものはない。

299Juggernaut-黒き零の魔人達 ◆Z9iNYeY9a2:2013/11/12(火) 23:27:47 ID:5POOW2Ws0

「でも…」

それでも、イリヤにとっては不安なものは不安なのだ。
もしここで別れたら、もう戻ってこないのではないかという感覚を覚えるほどには。

しかし、こうしている間にも宙を飛ぶモノは視認できない場所に向かおうしとしている。

「じゃあ、急がないと見失っちゃうから、行くよ。大丈夫、すぐ戻るから!」
「お兄ちゃん!」

イリヤの声に一度振り返って手を挙げた士郎は、そのままあの女性を追って走り去った。

「…これで良かったのかよ?」
『そこは士郎さんを信じるしかありませんが、でも乾さんにも責任の一旦があることを忘れてはいけないですよ』


ここで彼らは、一つの事実を見落としていたことになる。
巧の遭遇した女性、クロと共に行動していた人がいたという事実に気を取られ、状況認識を遅らせてしまった。
そもそも、彼女達の逃げてきた方では何があったのか。
そう、戦闘から発生するであろう轟音。つまりは彼女らは戦闘行為を行っていたのだ。
戦闘をしていたということは、襲撃者がいたということ。

そして、逃げるものがいれば追うものがいる。
巧の耳に聞こえてきたのは、馬が地を蹴る嘶きにも似た音。
そう、巧はこの足音を知っている。

「…まさか…木場?!」

士郎はもう見えない。
もしあの女を追っているのが木場だとすれば、士郎の命が危ない。

どうして気付かなかったのか。
自分のことばかりに気を取られ、回りを見るのを遅らせてしまった。
万が一などではない。戦いが起こるのは必然なのだ。

「おい、士郎のやつを止めてくる!お前らは後から――」
『待ってください!何かが近づいてきています!…何ですかこの反応は…!?』




「数時間ぶり2度目の再会、かな。乾巧よ」

声がすると同時、地面を衝撃が抉り取った。

巧、イリヤは咄嗟に変身、転身し、バゼットも構える。

「てめぇ…、まだこの近くにいたのかよ…!」
「生憎連戦続きというのは私にとっても骨の折れるものでな。今しがた移動しようとしたところだ」
『乾さん、まさか彼が…』

今は既に禁止エリアとなった空間を廃墟へと変えるきっかけになった存在。
黒い魔王、ゼロ。
三人の前に立っていたのはまさしくその本人だった。



「ガブリアス…、大丈夫?」
「グゥ…」

金髪の女、シロナは物陰に身を潜め、鮫竜、ガブリアスに薬を使いながら声をかける。

力を過信していたかといわれればもちろん否だが、心のどこかに僅かにでも油断があった可能性は否めない。
ガブリアスの受けたダメージは最初に出会ったあの竜のオルフェノクとの戦い以上のものが、あの二人との戦いで蓄積されていた。

300Juggernaut-黒き零の魔人達 ◆Z9iNYeY9a2:2013/11/12(火) 23:28:47 ID:5POOW2Ws0


政庁へと向かう途中、遭遇してしまった存在。
視界に映った黒い仮面の魔人と、そんな存在と共にいる男。

佐倉杏子という少女の話ではあの魔人はゼロという、恐ろしく強力な力を持った参加者であるという情報だった。
空から見えたそんな存在を、チャンピオンとして倒すべきなのか、それとも今は引いて戦う体勢を整えるべきか。
一瞬の迷いはきっとガブリアスにも伝わったのだろう。そして、それこそが命取りとなってしまった。

こちらを発見した彼らの反応は早かった。
二人は協力してこちらへと襲い掛かってきたのだ。
あるいは一人だけならば相手をすることもできたかもしれない。しかし二人がかりというのがまずかった。
仮にこちらにもう一人、あるいはもう一体のポケモンでもいればこうはならなかったかもしれない。

これがポケモンバトルであれば2対1であってもまだ戦えただろう。ドラゴンオルフェノクの時のようにシロナが少し離れた場所で指示を出せたのだから。
しかしこれだけの力量をもった相手を二人敵に回す際それを行ってしまうと、ガブリアスが一方を押さえている間にシロナを狙われる可能性が非常に高い。
だからこそ、ガブリアスはシロナを背負ったまま戦うこととなったのだ。

そして、背負った人間がいる状態でガブリアスは接触技を使うわけにはいかない。
鋭い牙によって相手を噛み砕く攻撃も、竜の闘気をまとっての突撃も封じられた状態での戦闘。
まともなものになるはずもなかった。それでも食らいつき続けられたのはガブリアスの戦闘経験故だろうか。

今ガブリアスの全身にはホースオルフェノクの魔剣が掠った傷が多く目立ち、左胸部付近にはゼロの攻撃によるダメージが残っている。
また、それ以外にも様々な攻撃を受け止めた腕のダメージ、あまりに密度の高い戦闘からの疲労もその体を蝕んでいる。

「ありがとう…、あとは大丈夫よ。ゆっくり休んで」

と、モンスターボールを取り出したシロナ。
しかしその手を押さえてボールに戻ることを拒否するガブリアス。
まだ大丈夫だという意思表示なのだろうが、シロナとしては心配でならない。

「ダメよ、今は戻って。ポケモンセンターまでは遠いわ…。無理はさせられないのよ…」

政庁からは離れてしまった。時間も過ぎているし合流は無理になってしまったが仕方ない。
とにかく、今はここから離れることを優先しなければならない。さすがにあれだけの距離を離せばそう追いつかれることもないだろう。

そう思った瞬間、ガブリアスが顔を上げた。
何かに気付き警戒するかのような態勢を見せたその瞬間、背後にあった建築物を飛び越えて現れたのは、先に戦ったホースオルフェノクだった。

蹄が地面を叩く音を響かせながらこちらを振り向き、その魔剣をこちらに向ける。

総合的にみればその戦闘力はドラゴンオルフェノクにも匹敵するものかもしれない。
そんな相手を前に、ガブリアスはシロナの前に立って威嚇するように吼える。

「ガァァァァァ!!」
「…何故だ。お前は何故そうまでしてその人間を守る?」

何か理解できないものを見るように、ガブリアスを見るホースオルフェノク。
やがてホースオルフェノクは下半身を人間のそれに近づけたものに戻し、高速の突きを繰り出した。

それをガブリアスは腕の力で受け止める。
白羽取りのような形となったが、それでも手が小さいガブリアスが押されつつあった。

「何故、そうまでしてその人間を守る?お前にはその人間がそんなに大事か?」
「グルルルルゥ」
「ならば、お前も俺の敵だ」

剣を受け止めたことで空いた脇をホースオルフェノクは蹴りつける。
その勢いに吹き飛ばされるガブリアス。

「ガブリアス!」
「終わりだ」

と、その魔剣を引き、心臓を狙う一撃を突き出そうとしたところで。
横殴りの衝撃がホースオルフェノクを襲った。

301Juggernaut-黒き零の魔人達 ◆Z9iNYeY9a2:2013/11/12(火) 23:30:59 ID:5POOW2Ws0
吹き飛ばされたガブリアスが放ったドラゴンダイブ、
それにより組み合い縺れつつ地面を転がる一人と一匹。

至近距離で振られた剣は両腕のヒレで受け止め弾き、その腕に鋭い牙を突きたてる。
痛みに呻きつつもホースオルフェノクは腕を振り払い、ガブリアスに向けて頭部をぶつける。
頭に生えていた鋭い角がガブリアスの肩を貫き血を滴らせる。

「もう止めて!戻りなさいガブリアス!」

叫ぶシロナを見て、ホースオルフェノクはガブリアスを放り投げてそちらへと注意を向ける。
痛みからか動けず蹲るガブリアス。そんな彼にモンスターボールを向けるその手をホースオルフェノクは払う。
ボールは地面を転がりあらぬ方向へ飛んでいった。

「っ…!」

と、再度振りかざした剣で今度は斬り付けようと迫った。


その瞬間、彼の元に二振りの双剣が軌跡を描きながら飛び掛った。

「?!」

それらを盾と剣で弾いた瞬間、その向こうから黄金の西洋剣を振りかざしてくる赤髪の少年が映った。
振りかぶられた上段斬りを受け止め、オルフェノクの怪力をもって押し返す。
そのまま着地した少年は、シロナの近くに駆け寄り声をかけた。

「大丈夫か?」
「え、ええ。あなたは?」
「俺は衛宮士郎。乾巧って男に、聞き覚えはないか?」
「…!あなた、乾巧という人を知ってるの?!」
「ああ、だけど詳しい話は後だ」

と、意識をホースオルフェノクに向ける士郎。

「あんたもオルフェノク、なんだよな?」
「乾巧の仲間か」
「ああ。もしかしてあんた、木場勇治か?」

巧の言っていた危険なオルフェノクに上げられた村上峡児、北崎、そして木場勇治。
しかし巧がこの中で木場勇治の名前を上げるときの顔が、どことなく悲しそうな表情だったのが印象深かったのだ。
だからこそ、もし相手がその木場勇治ならば確かめておきたいことがあったのだ。

「人間と話すことなど、何も無い」
「巧は、オルフェノクだったけど俺なんかよりずっと人間らしいやつだった。
 優しくて強くて、でも傷付きやすくて脆い、そんなやつだった。
 同じオルフェノクなのに、何であんたは殺し合いに乗ったんだ!」
「俺は殺し合いに乗ったわけじゃない。
 薄汚い人間を抹殺する。そのために戦っているだけだ」
「何でそんな…!」
「言っただろう。人間と話すことなど何もないと。
 俺は人間を…、いや」

と、そう言った木場は地面に伏せるガブリアスに一瞬視線を向け、剣を突きつけてこう言い放った。

302Juggernaut-黒き零の魔人達 ◆Z9iNYeY9a2:2013/11/12(火) 23:31:27 ID:5POOW2Ws0
「人間の味方をするなら、誰であろうと俺は倒す!」

言うが早いか、士郎に向けて刃を振り下ろす木場。
それを士郎はカリバーンで受け止める。

(くっ、何だこの憎悪は…。あの男と同じオルフェノクだっていうのに、…どうしてそんなにも、人間を憎めるんだ…!)

オルフェノクは人間の進化系。いくら魔術師であっても未熟な士郎にはその差は容易に埋められるものではない。
力に圧し負けギリギリと後退する士郎。
しかしその剣圧を受け流し、振り下ろされた剣を回避する。

咄嗟にカリバーンを仕舞い、干将・莫耶を取り出す。
僅かとはいえ底上げされた身体能力を持って、ホースオルフェノクに斬りかかる。
しかし同時に振り下ろされた双剣は片腕の大剣で受け止められ、もう片腕に装備された盾で殴られ吹き飛ばされる。

受身を取りつつ着地した士郎は、双剣を投擲。
同時に再度構えたカリバーンを向けて斬りかかる。

カリバーン―――勝利すべき黄金の剣。約束された勝利の剣には劣るとはいえ、その神秘性、宝具としての格は上位のもの。
たとえそれで斬られればオルフェノクとて無傷ではすまない。

振り下ろされた剣を受け止めつつも、ブーメランのようにこちらに迫る双剣を知覚する木場。
咄嗟に頭部の角を魔剣の下に支え、振り上げることで士郎を打ち上げる。
その瞬間迫ってきた双剣を、剣、盾の両方で弾き飛ばした。
そして宙を舞う士郎にトドメを刺そうとしたが、士郎の姿は既に空には無かった。

見回すと、地に伏せていたはずのガブリアスが士郎を受け止め地に下ろしていた。

「ありがとう…」

一言礼を告げた士郎。頷くと同時に傷が痛むのかよろめくガブリアス。
そして士郎は、木場を見据える。

(ああ、確かにアイツは強い…。だけど…)

その身体能力、耐久力はあるいはサーヴァントに匹敵するものかもしれない。
しかし、士郎は知っている。最優と言われたかつての己がサーヴァントの剣捌きを。

(剣の扱いなら、セイバーに比べたらそこまでじゃない!)

そう、そこを突けば隙ができる。
この腕は、あのセイバーに稽古されたものなのだ。剣の戦いで負けるわけにはいかない。

双剣に警戒しつつも、その手にされたのが西洋剣だけということを確認した木場は、一気に斬りかかる。
そして振り下ろされた剣を受け止めた士郎。

剣というのは力任せに振り下ろせばいいというものではない。
もし振り下ろして空振り、受け流されてしまうのでは大振りになった分隙が大きくなってしまう。

「はぁ――…は…!」

先ほどのような受け止めをされないように、相手の様子を見据える。
木場も同じ手を使おうとは思わないのか、今度は両腕で剣を押さえている。
つまりはこの聖剣ごと、叩き切るつもりなのだ。

だが、士郎は知っている。
この剣がただの剣ではないことを。かつて国を治めた王が愛用していた武器であることを。
それを容易く破壊することなど、オルフェノクであってもできることではない。

「はぁっ!」

剣を引き、力を一瞬抜くと同時に一気に引き抜いた。
それにより重心をずらされバランスを崩した木場は、そのまま振り下ろした剣を地面へとたたきつけてしまう。

「今だ――」

その一瞬で、木場の体に大きく振りかぶったカリバーンを横切りに切りつける。

303Juggernaut-黒き零の魔人達 ◆Z9iNYeY9a2:2013/11/12(火) 23:32:05 ID:5POOW2Ws0

が、しかし。

次の瞬間、士郎に見えたのは巨大な馬の脚が自分の体を蹴り飛ばす姿だった。

「ガハッ…」

一瞬で疾走態へと変化した木場は、カリバーンが体を切り裂く一瞬前に士郎の体を蹴り上げたのだ。
馬の脚力で蹴り上げ壁へとたたきつけられた士郎は、口から血を吐く。

そのまま通常形態へと戻った木場は静かに剣を構えて迫る。
起き上がりカリバーンを構えようとするも、内臓を若干やられたのか、うまく立つことができない。

「終わりだ」

そう死の宣告を告げた木場の目の前で、衛宮士郎の姿が消え去った。

「…」

人間にはそれが一瞬の出来事であり視認もできないことだっただろうが、木場には見えていた。
ガブリアスが背にシロナを乗せたまま、そのシロナが士郎の体を掴むと同時に飛び去っていくのが。

遠距離攻撃のないホースオルフェノクには、どうすることもできない。
それを分かった上で追跡してくると踏んだ上での逃走なのだろう。確かに速度は二人連れているせいか、先よりは遅い。
だが、こちらにはまだ手はある。

木場勇治は人間の姿へと戻り、携帯を取り出してコードを入力した。




「あなた、無茶しすぎよ!」
「ぐっ…」

士郎を連れたシロナは、ガブリアスに乗って逃走を図った。
傷付いたガブリアスは、無理をしてでも飛行すると言った。もしあのまま足で逃げても追いつかれるだけだろう。
同じ、いずれ追いつかれるにしても、せめて少しでも体勢を立て直す時間が欲しい、そう思っての逃走である。

「ちょっと苦しいかもしれないけど、しっかり掴まってて!
 どこか降りられる場所を探すわ!」
「ぐ……―――あ」

と、前を向いていたシロナはそれに気付くのが遅れた。
それを最初から見ていたのは士郎だけだろう。

木場の体に閃光が走り、黒い装甲服のようなものを身に纏っていた。
さらに、その手の剣から巨大な光が発し、膨大なエネルギーを巨大な光の剣へと形作っていた。

「あ、危ない…」
「くっ、ガブリアスは…、ダメ…、避けきれない!」

二人の人間を乗せて飛ぶという行為自体が無茶なのだ。急激な回避行動など取れるはずもない。
そして光の大剣はこちらに狙いを定めている。

オーガへと変身した木場は、そのまま一気に剣をこちらに向け。
ガブリアスの離した距離を一気に詰めんという勢いで射出。

光――フォトンブラッドの刃、オーガストラッシュが放たれた。



304Juggernaut-黒き零の魔人達 ◆Z9iNYeY9a2:2013/11/12(火) 23:32:38 ID:5POOW2Ws0
「十字斬撃(クロイツ)!!」

魔力で形成した十字の斬撃がルビーから射出、ゼロを捕らえる。
しかしそれが命中したと思った瞬間、ゼロの前面で掻き消えた。

「えっ、当たったの?!」
『いいえ、おそらく当たっていません!
 何故か魔力反応が彼の前で消滅しました。これは一体…』

と、困惑するルビーとイリヤの前で、バゼットと巧が拳を振りかざして殴りかかる。
が、その腕をゼロのマントが絡め取り、後ろへと投げつけた。
成す術なく地面に叩きつけられる巧と、空中で体勢を立て直して起き上がるバゼット。
そんなバゼットの元にゼロの拳が迫っていた。

「どうやらこの中では貴様が最も手練のようだな」
「っ…!―――硬化(ARGZ)!」

ルーンを発動させ、拳を受け止める体勢を取る。
と、その時ゼロの拳が光り、まるで羽ばたく鳥をイメージするような紋様が浮かび。
次の瞬間、殴りつけられたバゼットの肉体が錐揉みしながら吹き飛んだ。

「バゼットさん!?」
「てめえ!」

吹き飛ばされるバゼットの姿を見て、巧が壁を蹴りながら空中へと跳び、そこから跳び蹴りを放つ。
しかしゼロは再度その手を光らせ、一瞬で移動した後オルフェノクとなっている巧の肉体を吹き飛ばした。

「収束放射(フォイア)!!!」

その後ろから、イリヤが魔力の砲撃を放ち狙い打つ。
が、その光も宙を静止したかと思えば一瞬で消滅した。

『イリヤさん!』
「はっ?!」

十数メートルはあったはずの距離を一瞬で詰め、その拳をまたも光らせるゼロ。
イリヤはそれを受け止めるために眼前防御壁を張り。

それは破壊されることもなく、拳の光に触れただけで掻き消えた。

『強制転移!』

それを見たルビーの瞬時の判断により、イリヤの肉体をその場から転移、ワープさせた。

「バゼットさん、巧さん!大丈夫?!」
「硬化のルーンが無効化されたとは…、一体何が…、ぐっ」
「ふん、やはりお前の心臓にこのギアスは効かないようだな」
「ちっ…」

血を口から滴らせるバゼットを尻目に、巧に向かってそう言葉を投げかけるゼロ。
対して巧は既に一度戦っていることである程度力量は把握しているのか、その能力にも戦闘力にも驚くことなく立ち上がっている。

『ゼロ、一つ伺わせて貰いたいことがあります』
「ほう、喋るステッキとはな。まるでファンタジーの国のアイテムのようだな」
『いえいえ、あなたほどファンタジー――幻想的な存在ではありませんよ。
 あなた、その力どうやって手に入れました?』
「この力が何か、ではなくどうやって手に入れたか、と問うか」
『何かという点についてはある程度の分析は可能です。
 それは光に触れたもののエネルギー、ないしは物質活動を停止、消滅させるものですね。
 転移でも分散でもなく、質量保存の法則を完全に無視しての消滅、まさしく有から無を生み出すかのような』

305Juggernaut-黒き零の魔人達 ◆Z9iNYeY9a2:2013/11/12(火) 23:33:32 ID:5POOW2Ws0
有から無を生み出す。そのような非効率な魔術を研究する魔術師などそう存在するものでもなかったが、少なくとも目の前の魔人はそれをやってのけた。
魔術を、エネルギーを、のみならず生命活動すらも無へと帰しかねない、無から有を生み出すこととは正反対の、質量保存の法則を完全に無視したその力。
おそらくそれは、まさしく神をも殺しうるほどのものだ。

では、それほどの力をどうやって手に入れたというのか。その肉体は今だ生きている人の身でど、うやってそれほどまでの神秘を宿したというのか。
心当たりはある。とは言っても、それを魔術師の前で言うと失笑されかねないものであるが。
自分の製作者が、それを目指して魔法使いとなった、まさしくその到達点。

『まさかあなた、見たのですか?根源を』

全ての魔術師が、その身どころか血筋までをかけて到達しようとしている最終目的、根源。
究極の知識、最初にして最後を記したもの、アカシックレコード。
様々な呼び名が存在するものではあるが、まさかこの男はそのいずれかに何らかの手段で到達したというのか。

「根源―――なるほど、多くの神々の名を持つエデンバイタルのことをそう呼ぶ世界もある、ということか。
 生憎だが違う。私は一人の魔女と契約をしただけだ」


と、ゼロは光をふわふわと浮かぶカレイドルビーに向ける。
その光を慌てて回避するルビーを黒いマントが捕える。

『は、離して下さい!セクハラですよ!』
「あの門に関わるかもしれないものの知識を持っている存在。
 興味深いが今の私には特に必要なものでもないのでな。悪く思うな」

マントに手繰り寄せられ宙を舞うルビーを手の光が照らした。
その瞬間、巧がルビーを受け止め、それと同時にバゼットの拳がゼロのマスクを捉えた。

「…只人にしては悪くない拳だ」
「只人かどうかは試してみるといいでしょう。私はあなたのような存在を相手にすることを生業にしていますので」

そのまま地面に拳をたたきつけ、砂埃を巻き上げる。
周囲の視界を一斉に塞いだことで視認できなくなったバゼットを警戒していると、背後から巧の鋭い爪が襲い掛かった。
腕で受け止め、そのまま回し蹴りを放って吹き飛ばした。
しかし爪を受け止めた部分には傷跡が残る。

視界を晴らそうとザ・ゼロを発動させようとしたところで、バゼットがいたであろう箇所から妙な光が発しているのを見て発動をとめる。
地面を蹴り土ぼこりの中から飛び出した先のバゼットの脇には小さく鋭い短剣が浮遊していた。

「ちっ!」

ネタに気付かれたかと言わんばかりの舌打ちと共に短剣を仕舞ったバゼットは、ゼロにその素早い拳の連撃を繰り出し、ゼロもそれを掌底で受け止め続けた。




『イリヤさん、ここは逃げましょう。あの二人にもそう伝えなければ――』

イリヤの目の前で繰り広げられているのはかつての黒化英霊の時を思い出すような戦い。
そういえばあの時は本当に命がけで、幾度となく死にかけたなと、そんなことを思い出す。
目の前で戦っているバゼットさんにも、正直命の危機まで感じたこともある。クロと美遊と、凛さんやルヴィアさんもいたのに交渉に持ち込むのがやっとだった相手を。
そんなすごい人を、あの仮面の男は乾さんとの二人がかりで圧倒しているのだ。

きっと、今の自分の魔力砲や斬撃など片手で捌くだろう。
今の私にはそれくらいの力しかない。

「逃げるの…?」
『あの能力は危険です。我々だけではどうにもなりません。
 もっと準備を整え、彼を倒しうる仲間を集めてからでなければ』
「……」

脳裏に、こんな男の存在を知らない兄の顔が思い浮かぶ。
優しく頭を撫でて笑顔でここから離れていった姿が。
もしここで逃げれば、きっと彼にも危険が及ぶだろう。
いや、もしかするともう危険が及んでいるかもしれない。

なら。私がここですべきことは何だろうか。

乾さんの灰色の体が膝をつき、バゼットも防戦一方だ。
今の私には、あの男と戦い得るような力はない。

―――本当に?

いや、持っている。
今はそのほとんどを持っていないが、最初に来たときに入手した、たった一枚のカード。

『?!イリヤさん!?それは無茶です!今までそれをやっていたのはクロさんなんですよ?!』
「ううん、できる。美遊だってできたんだから。それにやったのはクロでも、それも私なんだから―――」

人が空想できること全ては起こり得る魔法事象。
なら、イメージすればいい。己の姿を。
魔術師のクラスのサーヴァントの衣を纏う、己が姿を。

そうだ、あの日やったように。
カードの力を解き放つのだ―――

「―――――夢幻召喚(インストール)!」



306Juggernaut-ジ・アルゴノウタイ ◆Z9iNYeY9a2:2013/11/12(火) 23:34:49 ID:5POOW2Ws0


全身が痛い。
視線の先には膨大なエネルギーで固められた巨大な剣。
あれが振り下ろされれば、俺たちなん一瞬で焼き尽くすだろう。

俺は、これで死ぬのだろうか。
こんなところで死ぬのだろうか。
死にかけたことはこれが初めてというわけではない。
なのに。

(俺は桜を、桜の笑顔を守りたいんだ)
(ならお前はその夢を叶えろよ)

ああ、こんなにも命が惜しい。
まだ何も成していない。
桜の元へも辿り着いていない。イリヤのことも放ってきてしまっている。

生きていなければいけない理由が、俺にはある。
そう、生きなければいけない理由が。

ならば、どうする?
あの巨大な剣をどうやり過ごす?
考えるのではない、イメージしろ。
必要なのは、あの剣を防ぐ盾。
俺はそれを、知っている。

どこが?
―――体が覚えている。
体のどこが、知っている?
―――知っているのは、この腕―――

己の中で、もう一人の自分が叫ぶ。

止めろ。
それを外せばイリヤが悲しむ。
己の命を縮める。
お前が死ねば、桜が悲しむ。


分かっている。
だが、この腕をつけられた時には己の命が、残り少ないことなど既に把握している。
そして、今使えば、今は生き伸びることができる。


迷いは無かった。

答えを見た士郎は、咄嗟に腕の聖骸布を剥ぎ取り。


















目を開いたときには、既に剣先は差し迫っていた。
だが、大丈夫だ。

「――投影、開始」

全ては一瞬。

「I am the bone of my sword」

結果が分かっているのなら、焦らずとも間に合わせられる。

詠唱呪文を静かに口ずさみ。

迫る剣先の前、その盾の名を叫んだ。

「――――――熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!!」



307Juggernaut-ジ・アルゴノウタイ ◆Z9iNYeY9a2:2013/11/12(火) 23:35:50 ID:5POOW2Ws0
「なっ?!」

木場勇治が驚くのも無理はなかった。
あのサイドバッシャーを駆る少女との戦いでは謎の能力により外してしまったオーガストランザーによる必殺の光。
今度こそは確実に仕留めるつもりで放ったその一撃が。

突如竜の背後に咲いた謎の花弁に絡め取られたのだから。

竜と人間二人を切り裂き焼き尽くすはずだったエネルギーは、その花弁により受け止められ。
咲いた4枚の花弁の盾は数秒ごとに一枚一枚その数を減らしていったものの、その光が見えなくなるころには既にその姿は完全に目視できる場所にはなくなっていた。
無限に伸びる刀身が、防がれたことで逆に後ろから押してしまった形になったのだろう。

剣を収め、オーガフォンを外し。
人間の姿へと戻り、瞬時の思考の末に彼らの去って行った方向に背を向けた。


追うか?と一瞬考えたが、見失った相手を再度探すという気にはなれなかった。
むしろ彼らを追うより先に、ファイズギアの奪還を優先したほうがいいだろう。
あの赤髪の少年は乾巧と出会った、と言っていた。つまりはあの付近にまだ乾巧はいた、ということだろう。
ファイズでない彼と戦う気にはならない。だが彼とてファイズギアがあれば自分と戦わざるを得なくなるはずだ。

唯一気がかりなことがあるとするなら、もしゼロと遭遇して戦ってでもいた場合の話だ。
戦うだけならまだしも、それでゼロにやられてしまうのではどうしようもない。
そこは彼自身の力量を信じるしかないだろう。あのゼロと戦っても生き延びることができる、と。

そうして木場は、一人静かにその場を立ち去る。
これから起こる嵐のような激闘に、一人のオルフェノクが混じることなく姿を消した。

それだけの話である。



【E-4/市街地/一日目 昼】

【木場勇治@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(中)、全身に打撲
[装備]:オーガドライバー一式
[道具]:基本支給品、グリーフシード、アヴェロンのカードキー、クラスカード(ランサー)、コンビニ調達の食料(板チョコあり)、コンビニの売上金
[思考・状況]
基本:オルフェノクの保護、人間の抹殺、ゲームからの脱出
1:ファイズギアを持っていた者を追うため、北か東に向かう
2:すべての人間を殺したあと、村上を殺す。
3:ベルトを手に入れた乾巧と決着をつけたい。
4:たとえ別世界の海堂や長田であっても、自分を止めるなら容赦はしない。
5:ゼロとは組むが、いずれ殺しあう。 3時間後までに病院で合流する。
[備考]
※コロシアムでの乾巧との決戦の途中からの参戦です



突如発生した光に、一斉に振り向く一同。
光の元は後方支援に徹していたはずのイリヤ。
しかし、光の収まった先にイリヤの姿はない。

「イリヤスフィール…?」


あっけに取られるバゼットと巧の前で、そんな様子を気に留めることもなく距離を詰めて攻めかかるゼロ。

その時、空からゼロに向けて、ポインターのような光が点滅した。

308Juggernaut-ジ・アルゴノウタイ ◆Z9iNYeY9a2:2013/11/12(火) 23:36:20 ID:5POOW2Ws0
「?!」

状況認識より早くその場から脱したゼロ。
次の瞬間、そのゼロがいた場所に大量の砲撃が浴びせられた。

「これは…、魔術…、にしてはあまりに高等すぎる…。まさか…!」

空を見上げたバゼットの目に入ったのは、宙を飛ぶ複数の魔方陣。
そしてその中心にいるのは、ローブのような服装を着込み、長い杖を持った少女。


『イリヤさん、まさか本当にやってのけるとは…』
「これが…」

そう、これこそがクラスカードの真の能力。
己の存在に英霊の記憶を上書きする能力。
そして、今イリヤが纏ったそれこそが。


「クラスカード『キャスター』!!!」


空を飛ぶイリヤに対し、ゼロは地を蹴り接近を図る。
十数メートルはあろうかという距離を飛び上がり、イリヤに拳の光を向ける。

「危ねえ、逃げろ!」

と、思わず叫ぶ巧。しかしイリヤの姿はゼロの目の前で消失した。

「!」

次の瞬間、イリヤの姿はゼロの背後に出現。
同時に魔方陣が魔力の砲撃を放ち空を浮くゼロを撃ち落とす。

後ろからの奇襲に、砲撃の直撃を受けるゼロ。
地面に受身を取りつつ着地したところで巧とバゼットの拳が迫る。

「何だか分からねえが…」
「イリヤスフィールが万全の状態である今が――」

ゼロはその拳を、マントで己の体を弾くことで回避。
しかし回避した先には先ほどにも増してゼロを狙う魔力の砲撃。

『慣れていますねイリヤさん、初めてとは思えないほどに』
「だって、以前はあそこにいたのが私だったから」

キャスターとの初戦はまさしく負け戦だった。
空中からの魔力砲撃をいきなり受け、地上からの攻撃は魔術壁に阻まれ。
転移魔法まで備えた強敵。

逆の立場をよく分かっているからこそ、何が脅威となるかはっきり分かったのだ。

しかし、さすがに初めてで大量の魔方陣を操ることには無理があるのか、イリヤの砲撃は増えれば増えるほどゼロから逸れつつあった。
だがそれがバゼットや巧を巻き込むことはない。

バゼットは攻撃の特性を瞬時に理解、ポインターの狙いからは避けてゼロに攻撃を仕掛けるようになり。
巧もどういう攻撃なのかおぼろげには把握したようで、その持ち前の感覚と素早さで的確に魔術砲を避けていた。

ゼロは空からの砲撃と地上からの接近戦に手を焼き、特にイリヤに狙いを絞ることが困難になっていた。

が、それでも一筋縄ではいかず一斉に放った魔力砲、巧とバゼットの攻撃共に、全身をマントで包み込むことで防ぎきったゼロ。

「それなら―――」

そう、大きな一撃を撃ち込めばいい。
あの時のような巨大な一撃を。

イリヤの前面に先ほどとは比べ物にならない巨大な魔方陣が展開する。
それは魔術の域を超えた、神代の時代に存在した、現代には失われた魔術。

空を見上げたゼロは光をイリヤに向けようとするもバゼットがそれを許さない。
無論、それでイリヤは撃つことを躊躇ったりなどしない。
彼女ならそれを避けるだろうと、信じているから。

(いける―――!)

そうして魔力の収束は完了し。
ゼロへとその砲撃が撃ち込まれんとしたその瞬間だった。

「■■■■■■■■■■■■■■■――――――!!!」


彼らの耳に異形の叫び声が届いたのは。

「―――!」

イリヤも、バゼットも、巧も、ゼロですらもそちらに注意を向けざるを得なかった。
そこにいたのは、かつて一人で戦う美遊に命の危機を感じさせた存在。

コンクリートで建てられた建築物を叩き潰して現れたそれ。
クラスカードによる英霊の現象でも、夢幻召還されたものでもない。
本物の英霊―――狂戦士が立っていたのだから。

309Juggernaut-ジ・アルゴノウタイ ◆Z9iNYeY9a2:2013/11/12(火) 23:36:50 ID:5POOW2Ws0

その巨大な体はまぎれもなくかつて戦ったバーサーカーの英霊。
しかしその肉体は赤く黒く禍々しい魔力が流れており、さらにその手にあるのは巨大な岩の剣。
純粋な英霊とはとても思えぬその禍々しく恐ろしい姿に気圧されたイリヤ達の前。

「■■■■■■■■■■■■■■■――――――!!!」

バーサーカーはバゼットを、巧を、ゼロを無視してイリヤに向かって走り突っ込んできた。

『イ、イリヤさん!狙われてます!』
「な、何でこっちに?!ううん、や、やらなきゃ!」

幸いイリヤは今だに魔方陣を展開した状態。
ならば、これを持って迎え撃つしかない。
神言魔術式・灰の花嫁(ヘカティック・グライアー)。

大規模魔力砲で一気に追い払うのだ。
倒せなくとも、ダメージを与えて怯ませることはできるはずだ。

「砲門壊砲!!!」

この時イリヤは失念していた。
目の前にいるのは英霊の現象ではなく、英霊の記憶を、誇りを持ったサーヴァントそのものであるということを。
それは能力、宝具のランクだけではないということを。
だがそれはこの場の者に責めるには酷なことであったが。


バーサーカー。
真名・ヘラクレス。
本来令呪を持ってようやく言うことをきかせることのできるほどのクラスの、なおかつ大英霊のマスターを務めたイリヤ。
なぜそれが可能だったのか。
イリヤとヘラクレスの間に、深い絆があったからだ。
狂化してなお、バーサーカーの心に守る意思を植えつけるほどの絆が。


バーサーカーの意思。それは黒い剣士を撃退すること。
何故か。それがイリヤに危機を及ぼすからだ。
そう、全てはイリヤを守るための戦い。
そんなバーサーカーには、平行世界とはいえイリヤがキャスターを夢幻召喚している姿がどう映っただろうか。

思考すらまともにままならない彼にはこう感じ取ったはずだ。
主、イリヤスフィールがキャスターに囚われている、と。

ならば、何としても助けねばならない。
キャスターを撃退せねばならない。
狂化と黒化により思考力の低下したバーサーカーには、それがイリヤスフィールにも攻撃を当てかねないものであるということには気付かない。

それほどまでに強い意志を持ったバーサーカーの肉体は。
神言魔術式・灰の花嫁の直撃を受け、

「――――えっ」

驚愕に包まれたイリヤ。
焼け爛れ、焼け落ち、所々黒焦げになった肉体を晒しながらもバーサーカーはそんな彼女の目の前まで迫り。


その腕の斧剣を、その体に叩き付けた―――――



「はぁ…はぁ…」
「大丈夫?!」
「ああ、だ、大丈夫だ…」

聖骸布を巻きなおし、朦朧とする意識の中、士郎は立ち上がる。
全身に謎の倦怠感、疲労感が包み込む。
おそらく聖骸布を解いたことによる魔力消費の影響だろう。
いや、それだけではないだろうが、今はそれは考えないことにした。

「…そういえば、あなた、衛宮士郎君って言ったわよね?」
「ああ…」
「私はシロナ。クロちゃんからあなたのことは聞いているわ。大分差異があるようにも感じるけど」

クロ。それはイリヤの言っていた、クロエ・フォン・アインツベルンのことだろうか。
彼女と知り合いというのなら、自分からも聞いておかねばならないことがある。

「ああ、それならイリヤから聞いている。違いについては後で説明する。
 それと、乾巧って名前に心当たりはないか?」
「知ってるの?!」
「イリヤ達が合流してる。そう遠くはないところにいるはずだ…」
「そう…、良かった、無事だったのね…。
 彼にはいきなりひどいことしてしまったから、謝らないといけないって思ってて…」

巧に何があったかは大まかには聞いている士郎は彼女の印象を心の中で書き換える。
どうやら目の前の女性、シロナはその鋭い印象を受ける外見に反して心優しい人のようだった。
きっと、皆と会わせても大丈夫だろう。
位置的には出てきた場所、巧やイリヤ達と別れてきた方に寄った向きに移動しているのも都合がいい。

「グゥ…」
「無理をさせてごめんなさい、ガブリアス。
 もう大丈夫よ、ボールに戻って」

310Juggernaut-ジ・アルゴノウタイ ◆Z9iNYeY9a2:2013/11/12(火) 23:37:49 ID:5POOW2Ws0
と、シロナが懐からボールを取り出した、その時彼女は現れた。

ジャリッ

地面を踏みしめる音が鳴る。
そこに立っていたのは、青い髪をした少女。
服装は若干露出度は高いがマントを羽織り剣を携えたその姿は騎士を連想させるものでもある。
うつむいているため顔は見えないが、その少女は病院で会った彼女で間違いはないだろう。

「さやかちゃん!良かった、大丈夫だったのね」

ゲーチスと共に行動していたこともあり、気にはなっていたが病院では何も言い出すことができなかった相手だ。
その彼女の無事を安堵したその時、士郎が鋭い頭痛を訴えた。

「が、あああああああ…」
「士郎君!」

頭を押さえて蹲る士郎に駆け寄るシロナ。
平常時を知っているわけではないため確信することはできないが、どうもあのオルフェノクからの逃走に成功してから彼の様子がおかしい気がする。
あの光の盾を出したことといい、彼に何が起きているというのか。

「さやかちゃん、お願い手を―――」
「ガッ!」

手助けを求めてさやかの方を向いたシロナの目に映ったのは。
こちらに向かってその剣を振り下ろすさやかの姿。
一瞬見えた彼女の目には。
狂気の空洞しか映っていなかった。




痛い。
瓦礫の崩れる音が聞こえる。

一体何が起きたのか。
私は、確かバーサーカーを迎撃するために砲撃を放って。
それから……何だっけ?

頭には何だかぬめっとした液体が付いている。
思わずそれに手をやる。
赤い。

そこまで考えて、意識を取り戻してから一度も呼吸をしていなかったことに気付き、息を吸った。

「―!う…、ガッ…、ゴホッ、ゴホッ!」

瞬間、胸に、腹に激痛が走った。
まるで内側から殴りつけられ、シェイクされた後のような痛みに、呼吸すらも止まってしまう。

『イリヤさん!喋ってはいけません!今全魔力をリジェネレーションに回しています!今しばらくの辛抱を!』

目を開くと、そこにはルビーが慌てるように浮遊する姿。

そうだ、バーサーカーのあの一撃をまともに受けてしまったのだ。
とても大きく重そうなあの剣の一撃を。

そのまま勢いに任せて建築物に叩きつけられた体、すでに夢幻召喚は解除されている。
呼吸をできないまでも、どうにか体だけでも起こす。

おそらく体の骨が折れ、内臓も強い損傷を負っている様子。
もし生身で受ければ一撃でミンチと化していただろう。

まだ朝のはずなのに暗いななどと、そんなことを考えながら起きた、その目の前。


バーサーカーが立っていた。

「っ!!!!?」

内臓のダメージも忘れて息を飲み込むイリヤ。
そんな彼女の目の前で、

「■■■■■■■■■■■■■――――――!!!」

声にすらならぬ咆哮を上げ、バーサーカーはその手をこちらに伸ばした。
まるで、殺し損ねた虫の息の根を止めようとするように。

311Juggernaut-ジ・アルゴノウタイ ◆Z9iNYeY9a2:2013/11/12(火) 23:38:31 ID:5POOW2Ws0

(い、嫌、来ないで…!)

体はロクに動かず、しかし狂戦士の手は迫る。
思考が完全に恐慌状態に陥った、その時だった。

「“後より出でて先に断つもの(アンサラー)”」

バゼットの声が周囲に響き。

「―――“斬り抉る戦神の剣(フラガ・ラック)”!!!!」

バーサーカーの胸に向けて、一点の光がその身を貫いた。
赤く塗りつぶされた、爛々と光る瞳から光が消え、その体は地に崩れ落ちる。

そこへ巧が駆け寄り、イリヤの体を、衝撃を与えないように優しく抱き上げて連れ出す。

「おい、大丈夫かおい!」
『大丈夫です、どうにか命に別状はないくらいにはダメージを抑えました。
 ただ、動揺されてるのは分かりますがもう少し静かにしていただけると…』

まだ声は出せないようだが、今のところ命に別状はない。
イリヤを安静にさせられる場所まで連れて行かなければ、と巧が宙を蹴った、その瞬間だった。

ゼロがバゼットを振り切って巧の下まで迫ってきた。

「ちっ、しつこいんだよお前は!」

両腕の塞がった巧はゼロから離れるため、疾走態へとその身を変化させ縦横に素早く移動する。
ゼロの拳が今に迫りそうになったその時、バゼットの投擲した瓦礫がゼロを捉える。
マントを翻してその砲撃ともいえるほどの威力を持った瓦礫を弾くが、その一瞬が巧をゼロから引き離す。

『ゼロだけではありません!おそらくあのバーサーカーの宝具―能力は自動蘇生、おそらくまだ終わってません!』
「■■■■■■■■■■■■■――――――!!!」

ルビーの警告が終わると同時、バーサーカーの咆哮が響き、その巨体からは想像もつかない俊敏さでゼロに拳を叩き付けた。

「!?」

完全に死んだものとして数えていた存在の介入に不意を突かれたゼロは十数メートルはあろうかという距離を吹き飛ぶ。
そのままイリヤを抱えた巧の元に食らい付いてきたバーサーカー、巧はその顎を脚で蹴り上げる。

「な、何だこいつ…!」

しかし、疾走態の脚力を持って蹴り上げたにもかかわらずビクともしない。
そのまま振るわれた斧剣、しかしルビーが物理障壁を張ったことでかろうじてかわすことに成功する。
が、その風圧だけで巧の肩の刃が嫌な音を立てる。

「―――硬化(ARGZ)―――強化(TIWZ)―――加速(RAD)――――相乗(INGZ)!!」

その時、最大限まで強化したバゼットの拳がバーサーカーの体を捉えた。
衝撃波を放出するほどの勢い、それはバーサーカーの体をも受け止めた。。

「今のですら通用しないとは…!」

しかしそれだけで殺しきることまではできなかったのか、バーサーカーはすぐさまバゼットへと意識を向ける。
が、そこでゼロがバーサーカーに急接近、例の光を至近距離からバーサーカーの体に叩き付けた。
苦しむかのように咆哮を上げるバーサーカーの体から力が抜け、地面に崩れ落ちる。

そのまますかさずゼロはこちらを向き、マントを飛ばしつつ攻撃を放つ。
が、そこで背後の気配に振り返り、その手を振りかぶられた斧剣にぶつける。

ゼロにその剣を受け止められたバーサーカーだったが、そんな事実に構うことなくイリヤに駆け寄ろうと迫る。

「自動蘇生宝具であるなら、もう一度――」
『ダメです!バーサーカーには一度倒した攻撃は通用しません!』
「くっ!」

312Juggernaut-ジ・アルゴノウタイ ◆Z9iNYeY9a2:2013/11/12(火) 23:40:09 ID:5POOW2Ws0
後より出でて先に断つものを起動させかけたバゼットは、起動を止めて腕を振り上げ地面を言葉通りの意味でたたき上げ、バーサーカーに投げつけた。
コンクリートの土煙が発生し視界を塞ぐ。
そのままバーサーカーの進行方向から反れて逃走しようとしたその時、バーサーカーは正確に、真っ直ぐ向かうことなくこちらへと向かってきた。

「…ぁ……」

イリヤが治癒によって楽になった肺から声を絞り出し、死を覚悟した。

その時。

――――シュン

風を切る音と共に数百メートル先の建物から飛翔した何かが、爆発。
バーサーカーの肩から先を吹き飛ばした。

「何だよ!また敵かよおい!?」
「いえ、この攻撃は…」






「イリヤ、まさかバゼットに乾巧と合流してたなんてね。
 こんなに近くにいて気付かなかったわ」

高所、彼らの戦いから離れたビルの上にて捩れた剣を矢として放ったクロは、今度は仮面の男に向けて黒い矢で狙いを定める。
が、その手に振るえが見え、体もかなりグラグラ揺れている。

「もう動いて大丈夫なのか?」
「――大丈夫よ…。
 これはただの痛みだけで、実際の機能には何の影響もないんだから。
 それに、”妹”が体痛めて倒れてるときに休んでなんていられないで、…しょ」

ここへ近づいた先ほどのこと、突如体を押さえて倒れこんだクロにはミュウツーも驚いた。
しかし、それで何かに気付いたのか、クロは明らかに無理を押してる風な様子で、この場まで辿り着き矢をはなったのだ。

「無理だけはするな。
 それと一つ聞かせてもらうが、あの仮面の男と巨人は敵ということでいいのだな?
 お前にとっても、私にとっても」
「ええ。仮面の男はゼロ。巴マミの言っていた化物ね。
 あの巨人もかなりの相手よ―――っ…。
 喋るだけで体が痛むわね…。ちょっとあいつらの相手、お願いできない?」
「良かろう。あのゼロと巨人を無力化すればいいのだな?」
「お願い…、私はイリヤの回復を待ったら戻るわ」

そう言ってクロは体を押さえつつビルから飛び降り。
ミュウツーもまた、前面へと張ったバリアを武器に、バーサーカーとゼロへと向かって一直線に突撃させた。


「何だあの白い生き物…?」
「ほう、異形の生物よ、貴様もまた私の邪魔をするか」

バリアと共にバーサーカーを跳ね飛ばしたミュウツーは、そのまま一気に急旋回してゼロにその手に集めたサイコパワーをぶつける。
が、ゼロも光をぶつけて対抗。相殺されたエネルギーは消滅、そのまま拳をぶつけようと殴りかかるも、ミュウツーの前面に張られたバリアがそれをガードする。

一方、ミュウツーに吹き飛ばされたバーサーカーはその身を起き上がらせるも、すぐさま接近したバゼットがその地面を叩き割った。
割れた地面に脚を取られたバーサーカーは転倒、起き上がろうとするも、地面に挟まった足を引き抜くことができない。

「イリヤスフィールを早く!私もあとから追います!」

バゼットの言葉を受け、一抹の不満を感じつつも巧とイリヤはクロに伴われてその場からの離脱を決める。
イリヤや巧も思うとことはあったが、それでもこの現状で残っていても仕方ないこともある。
彼女と、乱入してきた白い生き物を信じて逃げるしか、今は道がなかった。

313Juggernaut-ジ・アルゴノウタイ ◆Z9iNYeY9a2:2013/11/12(火) 23:41:19 ID:5POOW2Ws0
【E-3/南部市街地/一日目 午前】

【バゼット・フラガ・マクレミッツ@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:疲労(中)、腹部に打撲、全身裂傷、左腕斬り傷(骨、神経は繋がっている、応急処置・縫合済)
[装備]:ルーンを刻んだ手袋
[道具]:基本支給品、逆光剣フラガラック@プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本:何としてでも生き残る。手段は今の所模索中
1:クロエ・フォン・アインツベルンの連れてきた生物の力を借り、ゼロとバーサーカーと戦う
2:とりあえず会場を回り、クロエ・フォン・アインツベルンを捜す
3:衛宮士郎、イリヤスフィール、乾巧と手を組む。
4:セイバーを追い詰められるだけの人員、戦力を捜す
5:障害となる人物、危険と思しき人物は排除する
6:呉キリカのような魔法少女について調べる
7:呉キリカと再び遭遇したら、今度こそ確実に仕留める
[備考]
※3巻の戦闘終了後より参戦。
※「死痛の隷属」は解呪済みです。
※フラガラックの特性の発動条件は、通常より厳しくなっています。
※セイバーやバーサーカーは、クラスカードを核にしていると推測しています。
※衛宮士郎とアーチャーの英霊は同一存在である可能性があると推測しています。
※魔法少女やオルフェノクについて、ある程度の知識を得ました(が、先入観などで間違いや片寄りがあるかもしれません)

【ミュウツー@ポケットモンスター(アニメ)】
[状態]:軽傷 、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]
基本:人間とは、ポケモンとは何なのかを考えたい
1:クロに協力し、ゼロ、バーサーカーを倒す
2:プラズマ団の言葉と、Nという少年のことが少し引っかかってる。
3:できればさやかと海堂、ルヴィア、アリスとほむらとはもう一度会いたいが……
4:プラズマ団はどこか引っかかる。
5:サカキには要注意
[備考]
※映画『ミュウツーの逆襲』以降、『ミュウツー! 我ハココニ在リ』より前の時期に参加
※藤村大河から士郎、桜、セイバー、凛の名を聞きました。 出会えば隠し事についても聞くつもり
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)

【ゼロ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(大)、中度の火傷、回復中
[装備]:なし
[道具]:共通支給品一式、ランダム支給品0〜3(本人確認済み、木場勇治も把握)
[思考・状況]
基本:参加者を全て殺害する(世界を混沌で活性化させる、魔王の役割を担う)
1:バゼット、ミュウツー、バーサーカーの排除
2:木場と手を組むが、いずれ殺しあう
3:ナナリー……
4:ルルーシュの死に若干の苛立ち
5:木場とは3時間後、放送を超えた辺りの時間までに病院で合流する
[備考]
※参加時期はLAST CODE「ゼロの魔王」終了時
※第一回放送を聞き逃しましたが、木場勇治から情報を得ました
※放送を超えたため、他世界の情報を得ることが可能になりました。
  既に情報を得ているかどうか、また、どの世界の情報を得たかは次の書き手にお任せします


【バーサーカー@Fate/stay night】
[状態]:黒化、十二の試練(ゴッド・ハンド)残り6
[装備]:バーサーカーの岩剣
[道具]:なし
[思考・状況]
0:■■■■■■
[備考]
※バーサーカーの五感は機能していません。直感および気配のみで他者を認識しています
※灰化、逆光剣フラガラック、ザ・ゼロの耐性を得ました


※戦闘の影響で付近の市街地が廃墟と化しつつあります



「ク、クロ……」
「喋らないで。私の体まで痛むじゃない」
「お前…」
「あんた乾巧ね。でも話は後よ。まずはここから離れるわ。
 ねえ、ちょっとイリヤを貸して」

痛みに耐えているかのように走りながら顔を顰めるクロ。
巧からイリヤを受け取ったクロは、その体を抱え上げ、ルビーに話しかける。

「イリヤの状態は?」
『骨の損傷はまだ完治に時間がかかりそうですが、内臓の方は急ピッチで治癒したため行動する上では支障はありません。
 無論骨の治癒が完了するまでは自分で動くことは控えなければなりませんが―――』
「そう、なら少しは大丈夫そうね」

と、巧より先行したクロは、後ろからイリヤの顔が見えない位置まで移動し。

314Juggernaut-ジ・アルゴノウタイ ◆Z9iNYeY9a2:2013/11/12(火) 23:41:48 ID:5POOW2Ws0
『おや』
「ちょっ!クロ、今はむぐっ―――」

そのまま少し体を前に屈めたと思ったその時、なにやら変な音が巧の耳にも届いた。
何か液体のようなものが絡まる音と、粘性のありそうな液体が混ざるような謎の効果音のようなもの。
一体何の音なのか、若干巧も気にはなった。イリヤの体の傷もあるし。
だが、何故だろうか。それを見てはいけないという直感のような何かが働いた気がして、それをすることは躊躇われた。

数十秒経過した後、クロはイリヤを巧に渡した。

「ちょっとお願い」
「あう…ぁうあぇあ…」
「………」

この白い少女の様子がさっきより何かおかしいような気がするのはきっと気のせいだろう。
そう思うことにした。
何より、今はそれよりも急がねばならないこともある。

「そういや、士郎のやつがまだ戻ってねえぞ」
「え、お兄ちゃんがいるの?!」
「ああ、さっきお前が一緒にいた、あの竜みたいなやつ連れた女追っていってその後をな…」

その彼女を追っていったのが木場だ、ということまで口にすることはできなかった。
ただ、その雰囲気からただならぬ状態にあるということは察してくれたようだ。
だが、今そちらを優先すると重傷のイリヤを連れまわすことになってしまう。
私が探しにいくべきか、とクロが思考したところで。

その耳に剣劇の繰り広げられているかのような音が聞こえた。
猛烈に嫌な予感に襲われたクロは、二人に先行して駆け抜けた。

「あ、おい!」
「お兄ちゃんはすぐ連れて戻るわ!気にしないで!」

嫌な予感。
何故か、クロにはその剣劇の音に、とても聞き覚えがあるような気がしてしまった。



しばらく時を巻き戻る。





「なるほど、それはお辛いことだったでしょう」
「………」

ゲーチスの慰めにも答えない、答えられない。
頭を撃たれた傷は既に完治したが、心の傷は未だに残ったままだ。
どうしてこうなってしまったのか。

私はただマミさんを守りたかっただけなのに。
気が付いたら杏子が死んでて。
それを見たマミさんに、有無を言う暇も与えられずに撃たれて。

どうしてなのか。
私はマミさんに嫌われていたのだろうか。
杏子と比べても、そう大した存在じゃないということだったのだろうか。

「ふむ、どうやらその辺りに関しては思うところがあります。
 あの学園でNと話したときに感じたことなのですがね。ここへ来る前、私は彼と少し大きな諍いを起こしてしまいまして。
 それ以来口も利いてくれなくなったのですが、あそこで出会ったときはそのような気配を微塵も感じさせませんでした。
 もしかすると、何かしらの力のようなものが働いているのではないですか?」
「何かしらの、力…?」
「例えば、私達とは連れてこられた時間がずれている。あるいは私達のいた世界とは違う世界にいた、所謂並行世界、というやつですね。
 さやかさんが眠られている間、さる人物と情報交換を行って得た可能性です」

315Juggernaut-ジ・アルゴノウタイ ◆Z9iNYeY9a2:2013/11/12(火) 23:43:06 ID:5POOW2Ws0
果たしてそんなことが有り得るのか、と。
だがもしそうであるなら、マミさんが生きていること、そして自分のことを知っていることにも辻褄が合ってしまう。

いや、たとえそうであったとしてもあの人はマミさんだったのだ。
そんな彼女に、私は悪い魔法少女だと認識されてしまったのだ。

私は、マミさんのような正義の魔法少女になると心に決めていたというのに。
どんな顔をしてあの憧れの先輩に会えというのだろうか。

「さやかさん、一つ伺わせていただきますが。
 あなたは間違ったことをしたと思いますか?」
「…え?」
「マミさんを助けようと思って杏子さんに立ち向かわれたのですよね?
 その自分の思いが間違っていると思いますか?」

言えるわけがない。
マミさんを助けようと思ったことは、間違ってなんかいない。
そこだけは何があっても肯定できる。

「ならば、それでいいではありませんか。
 さやかさん、あなたはまだ若い。だからこそ難しいかもしれませんが。
 大人になるとね、自分で正しいと思っていることが周りに評価されないということは往々にあるのです。
 それでも己を信じる心、それが信念を貫く上では不可欠なのですよ」
「そう、なのかな?私は、間違ったことをしてないのかな…?」
「少なくとも私は評価しますよ。あなたの、守るもののために自分より格上の相手に立ち向かう勇気。そしてその相手を守り抜いた心。
 その精神は何よりも尊いものです」

その言葉に、さやかは自分の中の何かが吸い込まれていくようなものを感じ取った。
いいようのない、何と表現すればよいのかすらも分からぬ気持ち。


その時であった。外、自分達のいるこの警察署からそう離れていないところから何者かが戦っているかのような爆砕音が響いた。
ゲーチスさんが窓の外を覗く。
と、何かに気付いたかのように目を見開いたような気がした。

「さやかさん、もしあなたが自分自身の力を、信念を信じられない、分からない、というのであれば。
 今一度戦うという選択肢もありだと私は思うのですよ。
 その中で、答えが見つけられることもあるのではないですか?」

そう言って、ゲーチスはバッグから何か試験管に入った薬のような何かを取り出した。
そういえば目が覚めたとき自分のバッグは何処かへ行っていた。あのバッグに入っていたグリーフシードも今は手元にない。
では、あれは誰のバッグだったんだろう。

「この下、この近くでは激しい戦いが起きています。おそらくは強力な殺人者がいるのでしょう。私などまるで虫けらのように殺せるほどの。
 強制はしません、しかしもしあなたにまだ戦う意志があるのであれば、これをさやかさんに託しましょう。
 さて、どうしますか?」

そう、その謎の物質を見せながら話すゲーチスさんの顔を見て。

私はそれを受け取り、己の手の内で密閉された容器の封印を解いた―――



当然の話だが、ゲーチスの渡したそれは決して美樹さやかにとって愉快なものではなかった。
美樹さやかの目が覚めるまでの間、彼女のバッグが入れ替わっていることに気付いたゲーチスは中を確めたのだ。

それは、佐倉杏子も確認したものの、それが危険なものであることに気付いて決して開かないように封印していたもの。

それが何であるかを知っているものはこの会場にはいないかもしれない。
いや、あるいはオーキド博士であれば己の知識を総動員することで推察できる可能性はある。

ハナダの洞窟の奥に潜みし者。
最強のポケモンと謳われながらもその凶暴さに恐れられたポケモン、ミュウツー。
彼のいた場所にあったとされるもの。

使用者に莫大な力を与える代わりに、その精神に破壊衝動を植え付け凶暴化させる物質。
それには誰がつけたか、「破壊の遺伝子」という名が与えられていた。


「美樹さやかさん、あなたは本当に優秀な人間でした。―――いえ、化物と呼ぶべきでしょうかね。
 そしてこれからも、私の野望のための障害となる人間を抹殺するという仕事を果たしてその命を終えてくれることでしょう」

316Juggernaut-ジ・アルゴノウタイ ◆Z9iNYeY9a2:2013/11/12(火) 23:44:09 ID:5POOW2Ws0
ゲーチスはさやかに破壊の遺伝子を渡した後、速やかに警察署から離れていた。
なるべくあれだけの戦闘の及ばないところまで行かなければならない。何しろ今この近くではあのシロナを追い詰めるほどの強力な殺人者がいるらしいのだから。

窓を覗いたゲーチスに見えたのは、傷付いたガブリアスに背負われて逃げるシロナと少年の姿。
あれが襲われた結果であるのなら一刻も早く逃げねばならない。
だが、傷付いたあの女を放っておくのも惜しい。せっかくだから一つの火種を残して去っていこうと、そう思い立ったのだ。
それこそが、破壊の遺伝子によって己の意思を失った美樹さやか。
殺せなければそれはそれで仕方ない、始末してくれていれば御の字くらいの認識だが。

そして美樹さやかは破壊の遺伝子による破壊衝動により殺戮の限りを尽くして死んでいくことだろう。
頭を撃ちぬかれて生存したといっても、完全な不死であるとは思えない。
戦い続けていれば、いずれは何らかの手段で死に至るはず。

そして、その死は自分の野望のための礎となるだろう。



そういえば、とふと思う。
思えばどうしてあのような少女一人をここまで連れて行ったのだろう。
ふとさやかを手放してみて初めて疑問に思ったことを考えたゲーチス。

「ああ、そういうことでしたか」

しばらく考えた後、何となくだが答えについての道筋は想像をつけることができた。


Nを破り自分をも倒して長年かけてきた野望を潰してくれた存在があった。
それは無名のトレーナーでありながら、ジムリーダーを倒してバッヂを集め、ポケモンリーグへと足を進めた。
のみならず、こともあろうにNの心を動かし、あまつさえ伝説のポケモンにまで選ばれたのだ。

そんな、ある男に言わせればじっくり練った戦略をたった一つのイレギュラーな戦術に破られたようなその屈辱感。
何となくだが、その存在と、己の理想を信じて愚直なまでに真っ直ぐ生きる少女の姿がどことなく重なって見えたのかもしれない。
年齢が近かったためだろうか、それとも子供のくせによく大層なことを話すものだ、とでも思ったのだろうか。

もしかしたら彼女をここまで利用し、その絶望の顔を見たかったのはただの八つ当たりだったのだろうか。

「だとしても、あなたには感謝していますよ。その、見返りを求めぬ立派な正義の心のおかげで、私は邪魔者を排除することができるかもしれないのですからね。
 フフフフ、ハハハハハハハハハハハ!!!」

ともあれ今はここから離れつつも、新たな駒とできる存在を探す。それが第一目標となるだろう。

心に大きな闇と野心を抱えた男は、こうして一人戦場から立ち去る。
一人、狂気に落ちて戦う少女には見向くことも振り返ることもせずに。


【???(E-3からE-2を除いたエリア1マス範囲以内のどこか)/一日目 昼】

【ゲーチス@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:左腕に軽度の火傷(処置済)
[装備]:普段着、きんのたま@ポケットモンスター(ゲーム)、ベレッタM92F@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]:基本支給品一式、モンスターボール(サザンドラ(ダメージ小))@ポケットモンスター(ゲーム)、病院で集めた道具(薬系少な目)
    羊羹(1/4)印籠杉箱入 大棹羊羹 5本入 印籠杉箱入 大棹羊羹 5本入×4
[思考・状況]
基本:組織の再建の為、優勝を狙う
1:ここから離れつつ、取り入ることのできそうな人間を探す
2:表向きは「善良な人間」として行動する
3:理屈は知らないがNが手駒と確信。
4:切り札(サザンドラ)の存在は出来るだけ隠蔽する
5:美樹さやか、あなたはとても便利な駒でしたよ
6:政庁からはなるべく離れる
7:今のところロロと組むつもりはない
※本編終了後からの参戦
※「DEATH NOTE」からの参加者に関する偏向された情報を月から聞きました
※「まどか☆マギカ」の世界の情報を、美樹さやかの知っている範囲でさらに詳しく聞きだしました。
(ただし、魔法少女の魂がソウルジェムにされていることなど、さやかが話したくないと思ったことは聞かされていません)
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)

※どの方向へ向かったかは以降の書き手にお任せします



317Juggernaut-ジ・アルゴノウタイ ◆Z9iNYeY9a2:2013/11/12(火) 23:44:56 ID:5POOW2Ws0
士郎はとてつもない混乱に襲われていた。
確か、自分はあのオルフェノクと戦って、その中で逃走したはずだった。

しかし、気が付いたら目の前には青い髪の少女が剣を振りかざして助けた女性に襲い掛かっている姿が見えたのだ。
彼女を庇ってその身に刃を受けた竜は倒れ、襲い掛かられた女性にも意識がなくなっている。
そして、少女が襲い掛かるその刃を、士郎は必死に守っていた。

状況も理解できないまま、少女に刃を向けることなどできない。
まず何が起こっているのか把握しなければならない。
どうして襲うのか、と幾度も問いかけたが少女は答えない。
まるでバーサーカーのようにこちらに襲い掛かるだけだ。

その少女があの時戦った呉キリカという少女に似たものを感じ取った士郎は彼女も魔法少女だと考えたが、それにしても少女の様子は異常だった。


もし士郎の記憶がはっきりとしていたなら、少女――美樹さやかを無力化することは難しくはなかっただろう。
しかし今の彼は、腕を使用して後さやかの襲撃を受けるまでの数分間の記憶が無くなっていた。
そしてその混乱を収める前に戦いを仕掛けられてしまったのだ。
士郎とてそんな精神状態でまともに戦うことなどできない。

故にどうしても防戦一方だ。

(っ、やるしかないのか…。こいつを放っておけば、イリヤや桜が――)

と、混乱は収まらずともその剣を向ける決意をしようとした、その時だった。

風を斬るような音と共に、一人の少女が士郎とさやかの間に割り込み。
地面を滑るように移動したその少女は、咄嗟にその手の双剣、干将・莫耶を振りぬきさやかへと斬りかかる。
さやかは、それを剣で受け止めつつも後ろへと下がり、その剣の間合いから瞬時に離れ。

それと同時に少女は矢を構え、さやかを狙い撃った。
矢はさやかの目前で爆発しその体を焼くと同時に視界をも奪った。

「イリ―――」

と、士郎はその少女の顔があまりにイリヤに似ていたこともあってその名を呼びかけ。
しかしその肌、そして士郎にとってあまりに馴染みのある赤い外套のような服を纏ったその姿に呼びかけた名前を止める。


「間に合ったみたいね…」
「イリ――いや、君がクロエか?!」
「大丈夫?お兄ちゃ―――」

と剣を受け止めたまま振り返ったクロは、話しかけた言葉を途中で止めて一点を見つめていた。
その視線は士郎の腕の赤い布に注がれている。


「…そういうことか」
「どうしたんだ…?」
「何でもないわ。イリヤ達ならあっちの方に移動してるわ。
 バーサーカーに襲われてかなり大きなダメージを負ってるから、早く行って!」
「な、イリヤが?!…だけど君は――」
「ちょっと野暮用。大丈夫、終わらせたらすぐに追うわ!」
「…分かった。じゃあ、後は頼む」

318Juggernaut-ジ・アルゴノウタイ ◆Z9iNYeY9a2:2013/11/12(火) 23:46:18 ID:5POOW2Ws0
クロの言葉を受け、士郎はその場から急いで立ち去る。
後々士郎は疑問に思うことだろう。どうしてこの少女に、己の後ろを預けて退くことができたのか、と。
だが、今それを思う余裕は少年にはなかった。


次の瞬間、炎の中から飛び出したさやかの高速の剣を受け流す。
その体を蹴り飛ばして、10歩分ほどの間合いを二人の間に空ける。

クロは、後ろで意識なく倒れるシロナ、体の傷から血を流し未だ起き上がれないガブリアスをちらりと見る。

「…あんた、シロナさんとお兄ちゃんに何してくれてんの?」
「うおあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

問いかけに答えることもなく、さやかは言語にすらなっていない叫びをあげながらクロへと突っ込む。

それをクロは、両手の干将・莫耶を前に向けて構え、

「喋ることすらできない、か。まるでバーサーカーね。
 いいわ、いつぞやのリターンマッチね。斬り潰してあげるわ、美樹さやか」

そう言ってその西洋剣を迎え撃った。



【E-3/警視庁近く/一日目 午前】

【衛宮士郎@Fate/stay night】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)、胸部と背中に打撲
[装備]:干将莫邪@Fate/stay night、アーチャーの腕
[道具]:基本支給品2人分(デイバッグ一つ解体)、カリバーン@Fate/stay night
[思考・状況]
基本:この殺し合いを止める
1:イリヤ―――!
2:バゼット、巧と協力して、イリヤを守る。
3:桜、遠坂、藤ねえ、イリヤの知り合いを探す(桜優先)
4:巧の無茶を止める
5:“呪術式の核”を探しだして、解呪または破壊する
6:桜……セイバー……
[備考]
※十三日目『春になったら』から『決断の時』までの間より参戦
※アーチャーの腕を開放しました。投影回数、残り四回
※腕解放の副作用により、腕解放後〜さやか襲撃までの記憶が飛んでいます。
[情報]
※イリヤが平行世界の人物である
※マントの男が金色のロボットの操縦者

【シロナ@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:ダメージ(中)、意識なし
[装備]:ガブリアス(ダメージ(中)、右肩に突傷、胸部に斬傷)@ポケットモンスター(ゲーム)
[道具]:基本支給品、ピーピーリカバー×1、病院で集めた道具、クロの矢(血塗れ)
[思考・状況]
基本:殺し合いを止め、アカギを倒す
0:???????????
1:一旦政庁に向かい、皆との合流を図る
2:ゲームを止めるための仲間を集める
3:N、サカキを警戒 ゲーチスはいずれ必ず倒す
4:乾巧を探して謝りたい
[備考]
※ブラックホワイト版の時期からの参戦です
※ニャースの事はロケット団の手持ちで自分のことをどこかで見たと理解しています


【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:精神狂化、破壊衝動、破壊の遺伝子投与
[装備]:ソウルジェム(濁り中)、西洋剣
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:?????????????
1:????
※第7話、杏子の過去を聞いた後からの参戦
※「DEATH NOTE」からの参加者に関する偏向された情報を月から聞きました
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)
※破壊の遺伝子を投与したことで身体能力が向上していますが、精神が凶暴化して正気を失っています


【クロエ・フォン・アインツベルン @Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:疲労(小)、魔力消費(小)、イリヤの傷による体の痛み(小)
[装備]:戦闘服、干将・莫耶(投影)
[道具]:基本支給品、グリーフシード×1(濁り:満タン)@魔法少女まどか☆マギカ、不明支給品0〜2、遠坂凛の魔術宝石×4
[思考・状況]
基本:みんなと共に殺し合いの脱出
1:お兄ちゃんとシロナさんを傷つけたさやかを斬り潰す
2:お兄ちゃんに危害を及ぼす可能性のある者は倒しておきたい
3:バーサーカー…まさか本当に…
[備考]
※3巻以降からの参戦です
※通常時の魔力消費は減っていますが投影などの魔術による消耗は激しくなっています(消耗率は宝具の強さに比例)
※痛覚共有の呪いはイリヤとの距離に比例して強くなっていく模様です

319Juggernaut-ジ・アルゴノウタイ ◆Z9iNYeY9a2:2013/11/12(火) 23:47:01 ID:5POOW2Ws0
【E-3/市街地/一日目 午前】

【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:疲労(大)、肋骨骨折、両腕両足の骨にヒビ、内臓にダメージ(小、優先的に治癒中)
[装備]:カレイドステッキ(ルビー)@プリズマ☆イリヤ
[道具]:クラスカード(キャスター)@プリズマ☆イリヤ(使用制限中)
[思考・状況]
基本:この殺し合いを止める
1:体が…痛い…
2:お兄ちゃん…
3:ミユたちを探す
4:お兄ちゃんを守れるよう、強くなりたい。
5:乾巧の子供っぽさに呆れている
6:バーサーカーに恐怖
7:呉キリカに恐怖
[ルビー・思考]
基本:イリヤさんを手助けして、殺し合いを打破する
1:士郎さんを助けるために、クロさんに協力を仰ぐ
2:士郎さんの話したことはイリヤさんには黙っておく
3:呉キリカの使用した魔術の術式と言語が気になる
[備考]
※2wei!三巻終了後より参戦
※カレイドステッキはマスター登録orゲスト登録した相手と10m以上離れられません
※ルビーは、衛宮士郎とアーチャーの英霊は同一存在である可能性があると推測しています。
[情報]
※衛宮士郎が平行世界の人物である
※黄色い魔法少女(マミ)は殺し合いに乗っている?
※マントの男が金色のロボットの操縦者、かつルルーシュという男と同じ顔?



【乾巧@仮面ライダー555】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(大)、治療済み、肩から背中に掛けて切り傷
[装備]:なし
[道具]:共通支給品、ファイズブラスター@仮面ライダー555
[思考・状況]
基本:木場を元の優しい奴に戻したい
0:マミの事が少し心配
1:士郎が非常に気がかり
2:二人の元から離れたいが、仕方がないので協力する
3:衛宮士郎が少し気になる(啓太郎と重ねている)
4:暁美ほむらを探して、魔法少女について訊く
5:マミは探さない
[備考]
※参戦時期は36話〜38話の時期です
[情報]
※ロロ・ヴィ・ブリタニアをルルーシュ・ランペルージと認識?
※マントの男が金色のロボットの操縦者

【破壊の遺伝子@ポケットモンスター(ゲーム)】
佐倉杏子に支給された道具。
使用者の身体機能を向上させる代わりに破壊衝動をその精神にもたらす。
とある最強のポケモンと何かしらの関わりを持つとされている。

320 ◆Z9iNYeY9a2:2013/11/12(火) 23:47:57 ID:5POOW2Ws0
投下終了です

321名無しさん:2013/11/13(水) 00:49:17 ID:CNHbx9Dg0
投下乙です
士郎は遂に腕解放しちゃったか、イリヤも重症だし今後が心配だ
ゼロだけでもかなり厄介なのにバーサーカーまで登場して更にカオスに…
そしてやっぱりさやかちゃんは転落一直線なのか(悲しみ)

322名無しさん:2013/11/13(水) 02:06:57 ID:s3aPIyng0
投下乙でした。ヒャッハー混沌だー(棒
敵は3人だが万全なのはミュウツーぐらい。他の対主催はボロボロだ!
そして……おおさやか、くるってしまうとはなさけない(悲嘆)

323名無しさん:2013/11/13(水) 03:25:51 ID:MfbAIYL6O
投下乙です

錯乱×混乱…終わったな(確信)
あとゲス親父さん、さやかあちゃんとBW主人公は全く似てませんよwまず完全な無口だし思い込みから勝手なことして絶望したりは(ry

324名無しさん:2013/11/13(水) 16:18:42 ID:eC28wmUk0
投下乙です

これは酷いぜ…
ここまで酷いのも早々無いなあ。よく考えたなあw
さて、これはもうダメかも…

325 ◆Z9iNYeY9a2:2013/11/13(水) 19:52:48 ID:jPmjZbjY0
>>323
すみません、文が下手だったせいか少々無理やりっぽくなってました
その辺りについて少し修正させていただきたいのですが大丈夫でしょうか?

326名無しさん:2013/11/13(水) 21:43:50 ID:acF53Ukk0
バーサーカーのイリヤ守りたいのに勘違いされ攻撃される行き違いが555本編の行き違いと重なってもうね…

327名無しさん:2013/11/14(木) 00:07:11 ID:sjjWoSC6O
>>325
あ、別に矛盾がどうこうじゃなくてただのさやかあちゃん弄りなので…やることなすことかーなーり空回りなだけで一応は主人公系なはず、きっと、多分

…ID変わってますけど一応

328名無しさん:2013/11/14(木) 00:17:22 ID:IBp9JAlA0
これもう(正気に戻れるか)わかんねぇな

329名無しさん:2013/11/14(木) 02:18:31 ID:pYxqizxA0
>>325
諦めるな!まだまだこんなもんじゃないから!(ゲス顔)
……叛逆補正がどう活きてくれるだろうか……

330名無しさん:2013/11/14(木) 22:12:05 ID:Dm3G2PgY0
100話達成おめでとうございます

331名無しさん:2013/11/26(火) 00:03:43 ID:mc9xFJN.0
予約きたか

332 ◆Z9iNYeY9a2:2013/12/12(木) 22:11:55 ID:D0PH7fJY0
仮投下から一晩経ったことですしこちらに投下します

333Code Alice-God Speed Love ◆Z9iNYeY9a2:2013/12/12(木) 22:16:22 ID:D0PH7fJY0
「何?気になってる子がいるって?」

いつだったか、そんな話をイレギュラーズの仲間にした覚えがある。
任務に駆り出される前の、ほんの少しの空白時間。
学校じゃどう過ごしているかと何の気はなしに雑談レベルの話に興じていたときの記憶。


「へ〜、アリスもそういうお年頃ってワケ?いいなぁ、そういう任務とはいえ学生気分でいられるっていうのは。
 で、どんな男なの?」
「…そういうのじゃないわよ。ただ、同級生に少し気になる女の子がいたってだけ」
「どんな子なんですか?」

話相手は同じイレギュラーズのダルク、ルクレティア、サンチア。
皆家族を戦争で失ったもの達で、戦場で生死を共にした家族のようなもの。
だからこそ信用できるし、彼女達に対して赤裸々な部分を相談することにも大きな抵抗はない。

「なるほどねー。目が見えなくて車椅子の、不思議な子ねぇ」
「…アリス、それはお前……」
「分かってるわ。でも妹は今は関係ないわよ。何となく気になるってだけ」
「お友達なのですか?」
「…どうなんだろう」

煮え切らないアリスの言葉に、若干もやもやするものを感じた三人。
気にしているのに、近づいていいのか迷いを感じているという、傍から見たらとてももどかしく感じるアレである。

「てかさー、そんなに気になるなら友達になっちゃえばいいんじゃないの?
 別に怪しい子だとか、そういうわけじゃないんでしょ?」
「私は学生生活をするためにアッシュフォード学園に入ったわけじゃないわ。これも任務よ?
 友達なんて作ってどうするのよ?」
「べっつにいいじゃん。任務だからって楽しんじゃいけない決まりなんてないでしょ?
 私達にはできないことしてるんだから、せっかくだし楽しめばいいと思うんだけど。別にまんざらでもなさそうだし」
「…もし任務が終わったらあの子とは会えなくなるのよ。そうなったら…あの子を傷つけるだけじゃない」
「クスッ」
「…何がおかしいのよ?」
「だってアリス、何だかんだ言ってその子のこと本当に思ってるのが丸分かりだから」

そうだっただろうか。自覚はなかったがそういう風に聞こえてしまったらしい。

「アリス、私達はブリタニアの中でもやっかいもの扱いされている部隊にいる。
 正規軍を動かすことが難しい、裏の仕事も多い。なら当然、命の危険も高い」
「そうね、それを承知でここにいるんだもの」
「だからこそ、いつ死ぬことがあっても後悔しないようにしておくべきじゃないか?」
「……」
「お前はその学生と友達になりたいと思っているんだろう?
 もし離れ離れになってしまった後で後悔してももう遅いぞ」

やらずに後悔するより、やって後悔しろというやつだろうか。

だが、それでも。
もし仲良くなって自分がいなくなってしまったら、ナナリーはきっと悲しむ。
それは、何となく嫌だった。

「別に任務が終わったところで一生会いにいけなくなるわけでもないだろ?」
「それに、アリスには私達がいるんだからね。死なせたりなんて絶対にしないっての
 あーあ、それにしても寂しいなぁ。アリスが私達のところを離れていくなんて〜」
「ふふ、そんなことはないわよ。私の居場所は、ここしかないんだから」
「本当にそうなるでしょうか?」
「どういう意味よ」
「いえ、別に。そろそろ出撃です」

私がナナリーと友達になる、ほんの少し前のとある任務の前の出来事。
結局この日も滞りなく任務は終了、アッシュフォード学園へと戻ってナナリーとの会話をした、という何ということもないオチでこの回想は終わる。

それが、ナナリーと親友になる少し前の出来事。



アリスには、その時言われた言葉の意味をはっきりと把握できていなかった。
その時は、まだ。




334Code Alice-God Speed Love ◆Z9iNYeY9a2:2013/12/12(木) 22:18:48 ID:D0PH7fJY0


爆音が鳴り響き、木々がへし折られ倒されていく。
もしこの場に自然の森に住む動物がいたなら、多くのそれが押しつぶされ、あるいは焼かれ、はたまた鳴き声を上げながら走り去ったであろうその光景。

その中心にいたのは、一機の2足歩行のバイクと黒き巨人。
そしてその足元を高速で滑る一人の少女。

頭部に備え付けられたワイヤーナイフを射出するマークネモ。
木々を穿つ威力を持ったそれらの攻撃を、バイクは紙一重で避けていく。
変幻自在の軌道で飛び交うナイフ、それを避けるバイクは一見瞬間移動にしか見えない動きを所どころで繰り出している。

ナイフによる攻撃が当たらないと見るや、その手の太刀を振りかざして木々ごと全てを薙ぎ払った。
バイクはそれを、巨大な脚で地を蹴ることで跳躍。
そのまま太刀を振りぬいた体勢を立て直す前に空中からその腕部に取り付けられた機関銃を放射した。

それを腕で庇ってガードしたとき、その足元、巨人の認識外の辺りから一人の少女が拳銃を放つ。


アリスの、関節を狙った銃撃を受けるネモ。それを受けて、火花を散らしながら一瞬その体を止める。
そこにサイドバッシャーに掴まったポッチャマから放たれた水の柱がネモを推し返した。

体勢を崩しつつも、さしてダメージもなさそうに起き上がるネモ。
ほむらはアリスに問いかける。

「アリス。あなたあれのこと知ってるんでしょ?何か弱点とかないの?」
「……ちょっと気になることがあるわね。どうも様子がおかしいのよ」
「様子がおかしい?」
「以前戦った時に比べて攻撃が大味すぎる。
 それに、あの時のこいつなら今の私やアンタの攻撃くらいは避けられるはず。
 こいつには未来予知、あるいはそれに近い能力が備わっているという考察がされてたから。
 なのに、こいつはあれを避けなかったわ」
「未来予知…ね…」

思い出すのはかつてとあるループで守るべきものを殺した存在。
あの魔法少女もまた予知能力を持っていた。
魔女と化した魔法少女の援護もあったとはいえ、こちらの攻撃を読まれるというのはあまりに厄介な力だったことは記憶に残っている。
そして目の前にいる巨人もまた同じ能力を持っているという。


ほむら自身、攻撃が直線的なものにも感じた。
仮定するとすれば何だろうか。


「あの禍々しい魔力…、かしら?」
「そうね、あれだけは私の情報にもない。あれが何かしらの影響を与えているとすれば。
 今ならあるいは…」

倒せるかもしれない。


そう思ったとき。フラフラと体をよろめかせながらも白髪、黒衣の少女が姿を見せる。

「…何を、やってるんですか…」

ネモの力を操っても殺すことにここまで時間をかけているのに業を煮やしたか。
まだ麻痺が解けていない桜は、木に手をつきとても緩慢な動きをしながら、巨人、マークネモに命じる。

335Code Alice-God Speed Love ◆Z9iNYeY9a2:2013/12/12(木) 22:20:55 ID:D0PH7fJY0
「早く、そいつらを殺しなさい!”ナナリーさん”!!」
「――――!」

桜の言葉に動きを止めるアリス。
そこで呼ばれた名は、他ならぬ自身の友の名。

「ナナリー…?アンタ、何を言っているの…?」
「あら、知らないんですか?そのロボットみたいなものに乗ってるの、ナナリー・ランペルージさんっていうんですよ?」
「嘘をつくなっ!!そんな、そんなことが…」

あるはずがない。
このナイトメアフレームは、かつて河口湖やシンジュクで戦った正体不明のギアスユーザーのものだ。
それにナナリーが乗っているはずが―――

待て。
そういえば、初めて遭遇した河口湖。あそこに、ナナリーはいた。

いや、そんなことがあるはず――――

「車椅子に乗った女の子で、お兄さんがさっきの放送で名前を呼ばれたってことでとても悲しんでましたよ。
 
 ……ああ、そういえば、あなたのその服、ナナリーさんと同じですね」
「…!!」

嘘だと否定する材料が、次々と消えていくのを感じてしまった。


アリスの視界がぶれる。
自分が何を守ろうとしたのかすら分からなくなる。


「しっかりしなさい!」
「…――!」

そんなアリスに対し、ほむらは叱責の言葉をかけて持ち直させる。

「言ったでしょ!ここにいるあなたの友達は、あなたの知ってる彼女じゃない可能性だってあるって!」
「…で、でも、…ナナリーが……」
「…あなたは…。少しそこで休んでなさい!」

と、ほむらはアリスを置いたまま盾に触れる。

カチッ

ナイトメアの挙動、黒き女の息遣い、そしてこちらを見上げるアリス。
その全てが止まる。
動くのは暁美ほむらとサイドバッシャー。そして、
「ポ…、ポチャァ…」
その席の前に必死に掴まっている一匹のポケモンのみ。
そして彼女は、迷うことなくその腕部を向けた。
マフラーに当たる部分から大量のミサイルを吐き出すサイドバッシャー。

それは分離すると同時にその動きを周りと同じく動きを止めた。

空中で静止した大量のミサイル。


そして、時は動き始める。


「!!」

驚愕する一同の前で、ミサイルが爆発していく。

爆風がマークネモの腕を、胴を破壊し、頭のブロンズナイフを吹き飛ばしていく。


その光景の中、ふとアリスの脳裏をよぎる過去。

それは、己の妹を助けられなかったあの記憶。
自分が力を求めるようになった、あのきっかけ。

また、あれと同じことを繰り返すのか?

私は、また―――


「ナナリー…、ナナリー!!!」

もはや理屈ではなかった。
気が付いたら体が動いていた。

336Code Alice-God Speed Love ◆Z9iNYeY9a2:2013/12/12(木) 22:22:11 ID:D0PH7fJY0

爆発していくミサイルの中。吹き荒ぶ爆風の中。
友の名を叫びながら走ったアリス。

体を焼く熱を気に留めることもなくその中へと走り。
全身のあちこちをボロボロにしたマークネモに触れた瞬間。

アリスの意識は反転した。



黒き泥に包まれた意識の中。
一人の少女は、そこに座り込んで耳を塞いでいた。

周りから聞こえるのは呪詛の声。
死を願う呪いの言葉。

この世のものとは思えないほどの、負の感情、想い。

ナナリーが受け止めるには、それはあまりにも大きすぎた。


『ナナリーちゃん、そろそろ苦しくなってきませんか?これを全部受け入れてしまえば、あなたは楽になれるんですよ?』
「………」

ナナリーには見えない、黒き少女が囁くように話しかける。

”これ”が自ら彼女を侵食することはない。
ネモがその身を張って泥の進行を受け止めているのだから。
しかし、ナナリーがそれを受け入れてしまった時はその限りではない。

「……桜さん、どうしてあなたは、こんなものを受け止めきることができるんですか…?」

ふと、桜の言葉を心で精一杯拒絶しつつにナナリーはそう問いかけた。

その呪いの重さは、ナナリーが受け止めれば押しつぶされかねないほどの膨大なもの。
この世のものとは思えないほどの呪詛にまみれていた。
自分自身が、人間に絶望しかねないほどの。

では、それを受け止めて平然としている目の前の存在は一体何者なのか。

『うふふ、それはね、ナナリーちゃん。
 私自身のいた世界が、こんなものばっかりだったからですよ』





『私が間桐って名前になったのは小さい頃の話です。昔は、遠坂って家にいました。
 でも、私が次女だったからって、お父様は養子に出して、そこが間桐って家でした』
『魔術師の跡取りがいなかった間桐家に送り出され、私はどうなったと思いますか?
 来る日も来る日も、体を間桐の魔術に馴染ませる訓練を受ける日々』

そこまで語った桜の声色に、何か強い感情が篭っているのを感じたナナリー。
しかしそれでも、今の彼女にはその言葉に耳を背けることはできなかった。
言葉の中に、桜の本当の想いが篭っているような、そんな気がしたから。

『ねえナナリーちゃん、私がどんな訓練されてきたか、分かりますか?
 間桐の魔術は、体に蟲を馴染ませることから始まるんです。
 来る日も来る日も、沢山の蟲が放り込まれた蔵の中で、体を中から外から、全部弄り回されるんですよ?
 分かりますか?気持ち悪い蟲に処女も奪われて体中ボロボロにされて、それでも死ぬことすら許されずに過ごしていく日々がどんなに辛いか』
『人間扱いすらされず、11年という年月をただただ道具として扱われてきた。それでも私には希望がありました。
 だって、私には姉さんがいるって聞かされてたから』

337Code Alice-God Speed Love ◆Z9iNYeY9a2:2013/12/12(木) 22:22:56 ID:D0PH7fJY0

それは、己の全てを吐露するかのように。
悪意すらも己の内に抱え込めるほどの、彼女の心の闇を明かす言葉であった。

『そうなら、いつか姉さんが助けにきてくれると信じてました。
 もしかしたら、私をこんな闇の中から救い出してくれるんじゃないかって。
 でも、来てくれなかった。
 私のことなんか知らずに、いつも綺麗なままで笑ってて、私のいた本当の家で、幸せに暮らしてた。
 そして、気が付いたらこの場で頭を割られて死んでたんですよ?』

『こんなになった私のことを気にした様子もなく!まるで虫けらのように!
 私よりすごくて頭も良くて、大事な人まで持っていこうとしておいて!』

その叫びの中に、周囲の悪意が波立ったような気配を、ナナリーは感じた。
ナナリーへ向けたものでも、その姉自身へ向けたものでもない、彼女自身のやり場のない感情そのものが言葉の中にあった。



『あの金髪の人も、所詮姉さんの偽者でしかなかったんですよ。いくら似ていても、姉さんには絶対に成り得ない。もう、姉さんはいないんですから』
「………」

『姉さんの死体を見た時から、もう私はおかしくなってたのかもしれませんね。
 あのベルトを使ったときでも、教会や森で人を殺したときでもなく』
『そして、大切な人さえも、この手で殺して』

『ナナリーちゃん、分かりますか?この気持ちが。この

己を助けてくれるかもしれない存在を永遠に失った悲しみ。
人として扱われることもなく、目的のための道具のように扱われる日々。

「―――桜さん」

それによって、受け止めきることができてしまった膨大な悪意。
そして暴走。

「桜さんがどれだけ辛い思いを持って生きてきたか、私には測ることはできません…」

親に捨てられ、全てを失くし。
まるで道具のように扱われ。

そんな彼女の想いが。なまじナナリーには理解できてしまったから。

「私も、同じです。お母様は殺され、体の自由も失って、お父様には戦争のための道具として追い出されて。
 それでもどうにか手に入れた平穏すらも、ただ一人残ったお兄様すらも」

だからこそ。

「でも、桜さん。それでも、あなたにはまだ、残っているものがあるはずです。
 あなたを想い、心から大切に思ってくれる人が。
 目を、覚ましてください…!」

その絶望全てを肯定するわけにはいかなかった。



338Code Alice-God Speed Love ◆Z9iNYeY9a2:2013/12/12(木) 22:24:01 ID:D0PH7fJY0


「う…ぅ…、ここ、は…」

そこは真っ暗な空間だった。
何も見えず、何もなく。

ただ微かに聞こえてくる風のような音が、まるで呪詛の響きにも聞こえる、そんな空間。
周囲を見回すアリス。
しかし何も見えない。何も触れられるものがない。

人の死を望むその呪詛の中。
それが、アリスにはかつて妹を失ったあの戦場での絶望の声にも聞こえて。

「私は…、また大切なものを…、守ることもできないの…?」

膝を折るアリス。

もう二度と大切なものを失くさないように誓ったのに。
そのためにこの人の手に余る強大な力まで手に入れたというのに。

またあの時と同じことを繰り返すというのか。

――お姉ちゃん

「私は…、また守れなかった…!また駄目だったんだ…!」

気が付けばその瞳からは涙が溢れ出していた。

大切なものを失ったあの時のように。
こんな闇の中、激しい炎の中から救い出すことのできなかったナナリーを。

――お姉ちゃんはここで終わるの?

ふとそんな妹の声が耳に届いた。
いるはずのない妹の声。それが聞こえた時点で、もう自分は死んだのだと思い込んでいたアリス。

「もう…、私は……」

――まだ間に合うって知ったら、お姉ちゃんはどうする?ナナリーを助けるための力を求める?

まだ、ナナリーを助けられるなら?
もちろん求めるだろう。もっと力があれば、私にナナリーを守ることができたはずなのだから―――


「まだ間に合うさ」
「―――!」

と、それまでうっすらとしか聞こえてこなかった妹の声が、急に鮮明になってアリスの耳に届いた。
振り向いたアリスの目の前に立っていたのは、かつて守れなかった妹。

しかし、その姿は次の瞬間糸を解くように崩れ落ち、小さな泥人形のような物体へと変化した。
その頭部とも言える部位には、鳥の羽ばたくような紋様だけが描かれた、小さな人形。

「アンタは…」
「時間がない。お前が何者かは今問いている暇もない。しかしお前はナナリーの親友だ。
 だから単刀直入に言う。この中からナナリーを救い出せ。これは、お前にしかできないことだ」



339Code Alice-God Speed Love ◆Z9iNYeY9a2:2013/12/12(木) 22:24:37 ID:D0PH7fJY0

まだ彼女が”間桐桜”であったとナナリーが思ったあの頃。
正確に言うなら、真理やタケシ達とも共に行動していた時の話。

ネモの警告もあって、ナナリーは桜の異常に気付いていた。
しかし、それでもナナリーは桜を拒絶しようとは、見捨てようとは思わなかった。

何故か。
後付となるが先に聞いたように彼女から自分に似たものがあると感じた。それも否定はしない。

しかしそれ以上に、ナナリーは桜との情報交換の中で気付いていたことがあった。


―――衛宮…、士郎…。私の先輩です。
―――世界で一番大切な、私の大切な人。

その名前を呟く彼女の声は、とても優しく心のこもったものだった。

ネモの言う通り、警戒は必要だっただろう。
確かに彼女の中には危険な何かが巣食っていた。それは紛れもない事実だったから。
しかし、だからと言って見捨てようとは、突き放していこうとは思わなかった。

彼女は、優しさというものを知っているはずなのだから。



「あなたのいた世界は辛いことばかりだったかもしれません。でも、それだけではなかったはずです。
 辛く苦しい世界の中にも、光はあったはずです」

いつ命の危機に晒されるか分からない世界で、自分の傍にいてくれた兄のように。
そしてその兄を失った時にも、傍にいてくれた親友のように。

だからこそ、自分も優しい世界を信じられたのだ。

「…桜さん、もう止めましょう。あなたの大切に思っている人は、あなたがこんなことをするなんて望んでいないはずです」
『ふふふ……、あっはははははははははははは!!!
 先輩は、私がどんな風になっても愛してくれるって、そう言いました!私がどんなになっても、私のことを受け入れてくれるって!』
「なぜ、そう言い切れるのですか?」
『だって、先輩が言ってくれたんですもの!いつだって私だけの、桜の味方をしてくれるって!
 世界の全てを敵に回しても、私の味方でいてくれるって!』
「それは違います!
 あなたの大切な人がどんな人なのかは存じません、でもその人はあなたが人殺しになることを望むような人ではないはずです!」

どんな風になっても愛する人を守ることと、その人がどのようになっても構わないことは違う。
ナナリー自身、同じ思いをしたことが、させたことがあるから分かる。

実の兄がゼロとして人を殺していると知ったときの悲しみ。
そして、彼が自分に言った、戦場に出てはいけないという言葉の意味。
その思いは、きっと彼女を大切に思っている彼も同じはずだ。

きっとその彼も、間桐桜という少女の幸福を望んでいるはずなのだから。

「あなたにまだ、大切な人を思う気持ちが残っているのなら、もうこんなことは止めましょう…。
 あなたを止めようとしたあの人も、そんなことは望んでいないはずです」
『そう、そうです。私はあの人を殺してしまったんです。だからもう、戻れないんですよ。
 間桐桜は、戻ることができない』
「桜さんは…?」

その言葉に引っかかりを覚えたナナリー。

大きくなる違和感。
今、私が話しているこれは、一体何なのだ―――?


「貴女は…間桐桜さんじゃありませんね…?誰なんですか?」
『ええ、”私”は間桐桜の器を得たこの悪意に過ぎません。
 だけど、この絶望も感情も、全て彼女自身のものであることには代わりはありません』

『そうですね。彼女は己の死を望んでいます。他ならぬその大切な人の手にかかることで。
 もし止めたいと思うのなら、私を受け入れなさい』

それの誘いの言葉は止まらない。
そう、ここから抜け出すには彼女を受け入れるしかない。
しかしネモを乗っ取られた様子から考えると、きっとこれを受け入れれば彼女の僕として多くの人を殺すことになるのは目に見えている。

『ほら、また一人この中に入ってきました。
 あなたと同じくらいの歳の、同じ制服を着た子です』
「え…?」

自分と同じ服を着た、同じくらいの歳の子…?

確信はできないが、一人だけ心当たりがある人物が脳裏をよぎる。

「アリス…ちゃん…?」
『ふふふふふ、どうしますか、ナナリーさん。ずっとここに篭って友達を見捨てますか?それとも友達を、桜を助けるために私を受け入れますか?』

強い迷い。
2択のうちそのどちらもが、何かを失う選択。

「私は…」

しかし、迷っている時間がないこともナナリーには一目瞭然だった。

「私は―――!」

340Code Alice-God Speed Love ◆Z9iNYeY9a2:2013/12/12(木) 22:27:22 ID:D0PH7fJY0


「まさか魔導器、ネモか…!」
「ナナリーを助けたいというなら、私に力を貸せ。
 お前の手を借りることさえできれば、ここからナナリーを、お前の友を救い出すことができる」

白い人形はそう、アリスへと問いかけた。
一見すればまるで悪魔の囁きのようにも聞こえるが、しかし人形の静かな口調の中にも大きな焦りがあるのをアリスは感じ取った。

「ふざけるな!貴様のせいでナナリーは…!」
「私はあくまでもナナリーの意志に、想いに従って彼女を守っていただけだ。
 私がいなければ、ナナリーはこの泥に侵食されて、体も心も犯しつくされて死んでいたかもな。無論、お前も」
「っ…」
「そして、お前の元にこうして来ている今、ナナリーの守りは緩まっている。
 なぜそうまでしてこんなところに来てお前にこうやって懇願しているか分かるか?」

そう、ナナリーを守るべき魔導器がこのようなところで自分と話していること自体、本来ならばおかしい。
ナナリーの守りをおろそかにしてまで、何故自分との会話などに興じているのか。

「お前が、ナナリーの友だからだ」

「ナナリーがこの中にいると聞いたお前は、あの攻撃の中ナナリーの元へと駆け寄った。
 そのお前のナナリーを想う気持ちに、私はかけようと思ったのだ」
「私が…?」
「そうだとも。私に手を貸し、ナナリーを救いたいと願うのなら決断しろ。
 だがやるというなら急げ!時間はあまり残っていない!」

そう急かすネモの声は、とても急いでいるかのようだった。
まるで今にも切れ掛かっている命綱を握っているかのような。





ネモはナナリーへと侵食する泥を抑えることに全ての力を使っていた。
それゆえに、ナナリーへと語りかける存在に気付くのが遅れてしまった。

気付いたのはアリスがここへと侵入してくる僅か前だった。
だからこそ、その存在に手を打つには遅すぎたのだ。

もし、ナナリーが己の親友がこのようなところへと取り込まれたと知ったら一体どうするだろうか。
心優しいナナリーが、この悪意を受け入れるとは到底思えない。
ならば、きっと己の命を差し出してアリスを救おうとするだろう。
それはネモとしては何があっても避けなければならないことだった。

だからこそ、ナナリーがアリスの存在に気付く前にこちらで手を撃たなければいけないと判断した上で接触したのだ。

もしここでネモに誤算があったとすれば。
ナナリーが万一その事実に気付いても、決断から結果を出すまでの間にしばらく時間があると踏んだことだろう。

だが、それも無理からぬこと。
ネモ自身知らされていなかったことなのだから。

ナナリーに眠る本当の力。
それは、未来視すらも霞むほどの強大な力。

魔王・ゼロの持つそれと同質の能力。
森羅万象全てを無へと帰すギアス、ザ・ゼロ。

それが、親友を助けたいという思いに反応し、この間桐桜の中で発動した。




341Code Alice-God Speed Love ◆Z9iNYeY9a2:2013/12/12(木) 22:28:42 ID:D0PH7fJY0


「?!ナナリー!」
「え…、何…?」

ネモの様子がおかしくなると共に、周囲の様子が変わりつつあった。
あれほど満ち溢れていた悪意が、少しずつその量を減らしはじめたのだ。
しかし、何が起こっているのかはネモすらも把握できている様子ではない。

いや、そのネモすらも少しずつ体の形を崩しつつある。

「契約が…、…強制解除だと…?そうか…、この力…、このギアスがナナリーの…。
 急げ!想定外の事態が起こった!もう時間がない!」
「―――!…私は……」

しかし、急かされて尚もアリスの迷いは晴れなかった。
アリスの中にあった一つの恐怖。
ナナリーを守りたいという思いの根源。
それが、彼女を立ち上がらせることを躊躇わせていた。

「私は…、怖いのよ…。
 また大切な人を守れないかもしれない…。それが…」
「…ナナリーは、この悪意の中心という、おそらくは最も危険な場所にいる。
 それでも今まで無事でいられたのは私が守っていたからだ。もし私がいなくなれば、ナナリーにこの悪意を受け止める術は無い」

ネモはその手の形すらも取ることができていない短い腕をアリスへと伸ばす。

「そしてナナリーもそのことは分かっているだろう。
 それでも、ナナリーは私の守りを捨てた。何故だか分かるか?」

それはナナリーと繋がっていたからこそ分かる感情。
この悪意の中でも、ナナリーの暖かい思いだけははっきりと認識できたネモだからこそ、分かるものだった。

「お前を助けるためだ。
 己の命と友の命を天秤にかけ、選んだのがお前だ、アリス」
「…!」
「このまま、お前の命を救ったナナリーを見捨てるか?!
 妹を救えなかった後悔の念に怯えるか?!」
「………」

ネモの、その弱さを責め立てるかのような言葉。
そう、アリスにはもう分かっていた。自分には選択肢などないということを。


「妖言で人を惑わすなんて、まさしく魔女ね。
 だけど、もう私には迷う資格なんてない――」

ナナリーを守ると誓ったはずの私が、ナナリーの命と引き換えに助かろうとしている。
そんなこと、許されるはずがない。

ナナリーに守られる私ではない、ナナリーを守ることができる私に変わらなければいけない。

ただの友達ではない。
ナイトメア・オブ・ナナリー
ナナリー姫の騎士に。

「結ぶわネモ、その契約―――」




その泥の中の中心地点。
周囲を蠢いていた膨大な魔力がその総量を急激に減らしつつあった。

『ナナリーさん…!あなた一体何を…!?』

驚く彼女に対し、ナナリーは答えることはできない。
一体何が起きたのか。
ナナリー自身にすらも、詳しいことは把握できていないのだから。

しかしそれでも分かることはあった。
自分とネモの中に僅かに残っていた繋がりが消えようとしている。
そして、ここにあった大量の恨みも、憎しみも、絶望も、その全てが無へと帰ろうとしている。

これを自分がやっている、というその事実。それだけは何となく認識できた。
本来ならば戸惑いが先にきたであろうナナリーだが、今はそうなることはなかった。

「桜さんの背負っているこの絶望と憎しみ。
 背負える限り、私が受け止めます。もうこんなものに飲み込まれるのは、私で最後になるように」
『…っ!ここにあるのは人類が生み出した全ての悪意…、例えナナリーさんであっても、消し尽くせるものでは―――』
「ええ、ですから私が、受け止めきれる限りの呪いを消し止めます」

342Code Alice-God Speed Love ◆Z9iNYeY9a2:2013/12/12(木) 22:30:03 ID:D0PH7fJY0

この能力を持ってしてどれだけ消すことができるかは分からないだろう。
だが、分かっていることはある。
それが成功するにしても失敗するにしても、ナナリーが生きられる可能性が低いということ。

『それじゃあ、あなたはここで死ぬということを選ぶんですね?
 間桐桜を
「それは、違います。
 私はここで死ぬかもしれません。でも、アリスさんがいます。真理さんやタケシさんも、そしてあなたの思っている人も。
 彼らがきっと桜さんを助けるでしょう。私はそう信じてます」
『結局他人にすがるのですか?』
「ええ、皆は、世界は、あなたが知っているよりももっと優しいものだって、私は信じていますから」

ナナリーの、閉じられた目でありながら見据えられたその視線は真っ直ぐと、ゆるぎないものだった。
それは、心から皆の優しさを信じている、ナナリーの言葉だった。

『いいでしょう。ナナリーさんとはここでお別れですが、あなたの言うそれが迷い事や絵空事ではなく本当のことであるかどうか、見せてもらいましょう。
 ナナリーさん、さようなら』

その言葉を最後に、ナナリーの感覚からそのドス黒い、桜を形取った何かは消滅していった。

残されたナナリーの体に、消滅しきれない泥が迫り。
黒い悪意の集合体がナナリーの体へと被さった。

呪いの声。
殺意の声。
死を願う呪詛。

様々なものが彼女へと入り込む。
あるいはこれを受け入れることができれば、例え己を見失うことになっただろうがナナリーに命はあったかもしれない。
しかし、ナナリーは優しい人間だった。
こんなものを受け入れ世界を憎むくらいならば死んだ方がいいと、そう思ってしまうほどに。
それによって生まれる斥力は、ナナリーの心を殺し、精神を殺し。
そしてその姿を溶かしつつあった。

(ごめんなさい、お兄様…、ネモ…、…アリスちゃん)

あの影に対してああ言ったのはせめてもの、ナナリーなりの強がりだった。
優しい世界を信じるナナリーは、だからこそ世界が優しさだけではないことも知っている。
友達を殺された人間が、殺した相手を恨まずにいられるかと言われれば自信はない。

結局は友達を助けるためだけに、自分の命を投げ出したに過ぎなかったのだ。
でも、後悔はしていない。

こんな命でも、友達を助けるくらいはできたのだから。
もしかしたら会うことになったかもしれない、兄を殺した何者かを顔も知らないまま憎むことなく死ねるのだから。

(ああ、でもやっぱり―――)

一人で死んでいくのは、悲しい。

(―――アリスちゃん)


同じ場所にいながら、それでもこんなに遠い。
自分がどうにかできるほどの近くにいながら、それでもその声を聞くこともできない、そんな距離。



彼女との出会いが、走馬灯のように脳裏をよぎる。
苛められていた自分を助けてくれたこと。
学園の屋上でたい焼きをくれたこと。
生徒会で色々な服を、自分と一緒にさせられたこと。

ホテルジャックで巻き込み怪我をさせてしまったこと。

(――私、また巻き込んでしまったのね…、アリスちゃん)

友達といいつつ、いつも迷惑をかけてばかりだった。
もっと私がちゃんとできていれば、こんなことにもならなかっただろうに。

(せめて最後にもう一回、あなたに会いたかったな―――)

アリス、初めてできた、私の親友―――

343Code Alice-God Speed Love ◆Z9iNYeY9a2:2013/12/12(木) 22:32:44 ID:D0PH7fJY0
















―――――ナナリィィィィィ!!!!



届け。
届け。

ナナリーはすぐそこにいる。
自分をも覆おうと迫るこの泥が鬱陶しい。

どこだ、ナナリー。
すぐ近くに存在を感じられるのに、どこにいるのか見えない。
体よ、もっと速く、もっと速く動け。

せめてナナリーを見つけ出せるくらいに速く。

速くだ。もっと速く。
こんな泥の邪魔をものともしない速度を。
ナナリーに手を伸ばせる速さを。

ほんの刹那の時間が、とてつもなく長く感じる。
だがその刹那の時間ですらも、ナナリーの命の鼓動が弱まっている、とネモは言う。

急げ。急げ――――

「ナナリィィィィィ!!!!」

思わず叫んだその時、

真っ黒な空間に、ほんの僅かに身動ぎする存在が見えた。

(―――そこか!)

「ナナリー!手を!」

ナナリーの元まであるその距離を、一瞬で詰めると同時。
弱弱しく伸ばされたその手を掴み。

「―――ザ・ ゴッドスピード!!!」

その体を抱きかかえた瞬間、己の手にした新たなギアスを発動させた。




体から魔力が消滅していくのが分かった。
外側からではない、内側から。
満たされてこそいなかったとはいえ、人が持つには過ぎたといえるほどの容量の魔力が。

嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。

このまま空っぽになってしまえば、私はもう誰も殺すことができない。
悪者になることができない。

そうなってしまえば、”彼”に殺してもらえない。

嫌だ。
それだけは嫌だ。
藤村先生を殺すような悪い子は、正義の味方によって滅ぼされなければいけないのに。


(――嫌…)

まだ死ねない。
まだ死にたくない。

ここから早く離れないと。

私が、消えちゃう――――

344Code Alice-God Speed Love ◆Z9iNYeY9a2:2013/12/12(木) 22:33:16 ID:D0PH7fJY0




「?!」

収まりつつある泥を確認したほむらが、黒い女の元に駆け寄った瞬間のこと。
どこからともなく、ソウルジェムが強く反応する何かの存在を捉えた。

魔力反応に驚くほむらの目の前で。
その一瞬の隙とでもいう間に。

黒き少女はいきなり周囲に蠢く泥の中に溶け込んだと思うと、魔力反応を完全に消滅させた。
魔法のような何かを使った反応自体はあることから、転移のようなものを使ったのだろうか。

「…何が起きたの?」

あれほど溢れそうだった魔力反応は既にここにはない。周囲に僅かに黒い魔力の残滓を残すのみだ。
脅威は去った、と考えてもいいのだろうか。

だとすればひとまず安心だろうか。
いや、

「アリス?」

彼女がいない。
まさか、あの中に飲まれて消滅したとでもいうのだろうか。

「ポチャ…」
「あなたも探すのを手伝って。もし腕の一本、髪の一房でも、見つけたら言いなさい。
 いいわね?」




ここがどこなのか、桜には判別できなかった。
自分の中を丸ごとごっそり消し去られるあの恐怖から逃げたくて、ただ夢中で願い、気がついたらこんな場所にいた。

間桐桜の中に埋め込まれた願望器。
曲りなりにも体の中に残っていた小聖杯としての役割が、彼女の強い想いに反応してその現象を引き起こし、その体を転移魔術で移動させたのだ。
しかしそれが、皮肉にも桜にあった魔力の多くを使い尽くしてしまい、結果的に彼女の望みに反するものになってしまったのだが。

体の求める強い飢え、そして全身に残った痺れが彼女の身動きを遅らせる。
デルタギア、ナナリー、魔力を失い。
さらに体に残ったダメージはその意識を遠のかせていた。


「ナナリーさん……、もういないのですね…」

彼女とはもっと仲良くなれるんじゃないかという思いもあった。
一人きりは寂しいから。
失ったものの代わりにはならないだろうが、それでもそれを埋める新しいものを求めたのだ。

だが、もういない。
今の自分に残ったのは、ほとんど魔力の残ってない空の器。


(おなかが…空きました…)

一人っきりになった虚無感、そして疲労を残したまま動き続けた影響による肉体の限界、そして強い飢え。
それらに襲われた桜は、今自分がどこにいるのかを把握することもなく、静かに意識を闇へと落とした。


【???/一日目 昼】

【間桐桜@Fate/stay night】
[状態]:意識無し、黒化(大)、『デモンズスレート』の影響による凶暴化状態、喪失感と歓喜、強い饑餓
    ダメージ(頭部に集中、手当済み)(右腕欠損・止血)、魔力消耗(特大)、ジョーイさんの制服(ボロボロ)、麻痺状態
[装備]:コルト ポリスポジティブ(6/6)@DEATH NOTE(漫画)、黒い魔力のドレス
[道具]:基本支給品×2、呪術式探知機(バッテリー残量5割以上)、自分の右腕
[思考・状況]
基本:“悪い人”になる
0:いずれ先輩に会いたい
1:“悪い人”になるため他の参加者を殺す
2:先輩(衛宮士郎)に会ったら“悪い人”として先輩に殺される
3:くうくうおなかがすきました…
[備考]
※『デモンズスレート』の影響で、精神の平衡を失っています
※学園に居た人間と出来事は既に頭の隅に追いやられています。平静な時に顔を見れば思い出すかも?
※ルヴィアの名前を把握してません
※アンリマユと同調し、黒化が進行しました。魔力が補充されていくごとにさらに黒化も進行していくでしょう。
※精神の根幹は一旦安定したため、泥が漏れ出すことはしばらくはありません。黒い影も自在に出すことはできないと思われます。

※聖杯の魔力を使い、会場のどこかへ転移しました。それにより何処へ着いたかは本人は今のところ把握できていません

345Code Alice-God Speed Love ◆Z9iNYeY9a2:2013/12/12(木) 22:34:06 ID:D0PH7fJY0



「ナナリー!ナナリー!!」



アリスの発現した新たなギアスは、ナナリーの体を覆っていた泥を弾き飛ばし。
それを確認したアリスは即座にあなぬけのヒモを使用することで、あの空間からの脱出に成功した。


しかし。

ナナリーの体を覆う黒い泥を払いのける。
本来なら手で触れられるようなものではなかったが、今のアリスはそれどころではなかった。

ナナリーの鼓動が、あまりに弱弱しかった。

「ナナリー…!」
「ア…リス…ちゃん…」

ナナリーの体が死に近づいているのが分かる。
体には傷一つないというのに。
彼女の体に、精神にかけられた呪いによる強い負荷が、その生命力を削り取っていたのだ。

「また、間に合わなかったの…!?」
「アリスちゃん…、大丈夫…?」
「私は大丈夫よ!そんなことよりナナリーが…」
「そう…、良かった…」

それでもなお、ナナリーは親友のことだけを思い、考えている。
何故こんな優しい子が死ななければならないのか。

「私ね…、怖かった…。一人であんな真っ黒な場所にいて、…そこで一人で死んでいくって思ったら…」
「大丈夫だ!ナナリーはまだ死なない!私が、絶対に―――。
 ネモ!おい、ネモ!いるんだろう!お前なら、ナナリーを助けられるんじゃないのか!?」

魔導器の名前を呼ぶアリス。しかし返答はどこからも得られない。
全てを自分に任せた、ということなのだろうが、それにしてもあまりに無責任ではないか。
いや、これは、自分の選択に対するけじめをつけろ、とでもいうことなのだろうか。

「ナナリー…!私はまた……」

また、守れなかったのか。
また、目の前で大切なものを失ってしまうというのか。
私は、何のために力を手に入れたというのだろう。

「アリス…ちゃん…、ごめんね…、あなたのこと、傷つけちゃって……」
「………!―いや、いいの、いいのよナナリー…。
 私は、ナナリーの騎士だから…。ナナリーのためならいくらでも傷付いてあげられるし、どんなことだってできる…」

それは、不意に口から出た、己を取り繕うかのような言葉。
己の悲しみをナナリーに悟られ、ナナリー自身への重荷にしてはいけない。
でも、ナナリーは鋭い。
そんな嘘に、気付かれなかったかどうかと言われれば厳しい。


だがナナリーはその嘘を気付いてか気付かずか、その顔に僅かに笑みを浮かべて、次の言葉を続けた。

「そう…アリスちゃんは、私の騎士…なのね?
 それじゃあ…、最後に、お願いがあるの…」
「…何……?」
「桜さんを、助けてあげて…。…恨まないであげて……。
 あの人も…、苦しんでいるから…。
 アリスちゃんは、アリスちゃんのままでいて…」
「うん…分かった…」

ナナリーが伸ばした手を握りながら、アリスはそう答えた。
それが本当にアリスにできるかどうかなど、今は考えることはできなかった。

「それでね…、桜さんにも見せてあげて欲しいの…。
 もっと優しい、あんな悲しみや絶望に負けないくらいに、喜びに満ちた世界を……」
「ナナリーは…優しいね」


ナナリーのその言葉に、強く握り締めたままの手を支え、頷きながらそう答えた。

すると、ナナリーの残った左手がアリスの顔に優しく触れた。

「ナナリー…?」
「―――アリスちゃん、綺麗な顔…」

その言葉にハッとしてアリスはナナリーの顔を見る。
すると、閉じられていたはずの目がうっすらとだが開いているようにも見えた。

「ナナリー、もしかして目が―――ナナリー…?」

しかし、その言葉を最後にナナリーの伸ばされた手は地面に落ち。
その開きかけた瞳も、心臓の鼓動も、二度と動くことはなかった。




【ナナリー・ランペルージ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー 死亡】

346Code Alice-God Speed Love ◆Z9iNYeY9a2:2013/12/12(木) 22:34:57 ID:D0PH7fJY0


「悪いわね。こんなことにまで付き合せちゃって」
「それで、気は済んだの?」

ほむらがアリスを見つけるのに、そう時間はかからなかった。

森の中を走っていたときに唐突に聞こえたポッチャマの大きな鳴き声。
その先に行くと、いたのは一人の少女の骸を抱えたまま歩いてくるアリスがいた。

何があったのかは、その真っ赤に腫らした目を見れば想像はつく。

その後は、その亡骸を埋葬したいというアリスに付き合い、一通りのことを終わらせて今に至っている。


ナナリーが埋められた地面の前で、アリスはふと呟く。

「私は、ナナリーに昔の自分の罪を重ねていた。それで、また同じことを繰り返しそうになった時、決断することができなかった。
 でも、私が守らなきゃいけないのは守れなかった妹の幻影じゃなくて、ナナリー自身だって気づいたの」
「それで、その守るべきだったものを守ることができなかったあなたはどうするのかしら、アリス?
 そういえばアカギが言っていたわね。優勝すれば、脱落した参加者の蘇生をすることも可能だって」

これは聞いておかなければならないことだろう。
もしそれを望むのであれば、今から目の前の少女は敵となる。

「確かに、ナナリーが死んだ今、私には守るものは何も無いものね」
「……」

親友の埋葬まで頼んでおいてここですぐさま行動を起こすとは考えづらいが、念のためにいつでも時間を止められるように構えておく。
しかし、その警戒もやはり杞憂に終わることになったが。

「でも、ナナリーの言っていた、あの子が守りたかったものはまだ残っている」
「それがその子を守ることに繋がる、とでも言うのかしら?」

いくらその子が守ろうとしたものを守ったとしても、守ろうとした存在はもういない。
アカギのいう願いとやらに縋って生きるのも愚かではあるが、だからと言ってそのような綺麗事、自己満足に生きるのもまた、ほむらには受け入れ難かった。

「まあその通りかもね。私が妹の幻影にナナリーを重ねていたように、ナナリーの願いにナナリーを重ねるのも同じことかもしれない」


「でも、私はナナリーの騎士だから」
「…騎士?」

ふとアリスの口にした単語に首を傾げるほむら。


「うん、ナナリーの騎士。ナナリーのために生きて、あの子を、あの子が守りたかったものを守っていく、そんな存在。
 私はそうあることに決めた。
  だから、ナナリーが望んだのなら私は殺し合いには乗れない」
「ナナリーって子のために、見返りも求めずに戦うっていうのかしら?あなた自身の願いを度外視してでも」
「そういうことに、なるのかしらね」
「その選択が、決してあなた自身を救うことがなくても?」
「ナナリーを救えなかった以上、あの子の望みくらいは守っていきたいもの」

己の感情、己の望み、欲望よりもナナリーの思いを汲んで生きようというらしい。それが、彼女の言う騎士だと。
どこかの誰かさんみたいだとも一瞬思った。


「ナナリーが救えなかった現実はちゃんと受け止めていかないといけないんだと思う」
「そう…」

その言葉に一呼吸置いて、少し考えた後それとなく呟く。

「それなら、せいぜい足元を掬われないようにね。
 守りたいものを失ったあなたが、そのまま理想に、その矛盾に溺れることがないように」
「むっ…」

そんな前例を知っているからこその、念のための警告だった。
一体いくつの世界で、あの青い魔法少女がそうやって自分の理想に殺されていったのかなどもう思い出せない。

と、そんなことを思っていたが、少し予想外の方に事が運んでいく。

「ねえ、前から思ってたんだけどさ。その喋り方どうにかならないの?
 いちいち他の人に突っかかってるような話し方ばっかりしてるように見えるんだけど」
「…そういう性質なのよ。気に障ったなら謝るわ」
「ちょっと今のはカチンときたのよね」

…ちょっと厄介なことになってしまったみたいだ。
口は災いの元とでもいうことだろうか。これが元で彼女からの信頼が崩れるのは問題である。

「今の言葉は取り消すわ。本当にごめんなさい。
 …そうね、気がすまないっていうなら、謝罪の意味で何か一つくらい言うこと聞いてあげるわ」
「何でもいいの?」
「私にできることならね」
「そう。それじゃあ――」

振り向いたアリスは言った。

「私が友達になってあげるから、あんたのその口の悪いところとか色々直しなさいよ」



347Code Alice-God Speed Love ◆Z9iNYeY9a2:2013/12/12(木) 22:36:19 ID:D0PH7fJY0

正直カチンときたのは本当だった。
自分のことだけならまだしも、まるでナナリーのことまで言われているような、そんな気がして。

いっそ一発引っ叩いてやろうかとも思ったが、ふと思い返せばほむらは割とずっとこんな調子だったような気がしてきた。
初対面の時も上から目線っぽくてあんまりいい印象はなかったし。
ポッチャマに銃口を向けたときもやりすぎではないかと思ったし。
海堂直也の時も、もっと言いようというものもあっただろうと思うし。

ならいっそ、自分が手綱を取るのではなく、そういった部分を矯正してやってはどうだろう、などと思い付いた。
まあ若干意趣返しという意味もあった。何というか、友達が少なそうな気がしたし。

なのに。

その時のほむらの顔は、しばらくは忘れられそうになかった。
ずっと無表情だったはずの顔が、面白いようにキョトンとしていて。
そんな顔もできるんだと思ってしまった。

数秒の沈黙の後慌てるように咳込んで無表情に戻したものの、何というか、その表情自体も妙に意識しているように見えてきて。
この状況、心境で、思わず笑いそうになってしまった。


「…………」
「何でも言うこと聞くって言わなかった?」
「……。馴れ合いならお断りよ」

何か強い警戒心のようなものが見える気がする。
というか警戒されている気がする。
何だこの反応。


「というか、どうしてそこで友達なのよ?」
「だって、あんたそんなのじゃ世渡りとか人付き合いとか苦労しそうだし。
 だから私が直してあげるって言ってるのよ」
「大きなお世話よ」
「あんたが言ったんじゃない。理想に沈むなーって。なら沈みそうになったとき引き上げてよ」
「何で私が」

そのまままるで顔を見られることを避けるかのように後ろを向いて歩き出すほむら。

「大体何?そのナナリーって子はあなたの親友だったんじゃないの?」
「どうしてあんたとナナリーの間に関係ができるのよ?」
「質問を質問で返さないで」
「いつだったか私があんたに言った言葉ね」
「………」

言い合うことを諦めたのか、そっぽを向いて傍に停めてあったサイドバッシャーに近寄る。

「そんなことより、そろそろ放送も近いわ。次は何処に向かうか、終わるまでにちゃんと考えておきなさい」
「まどかって子を探すんじゃないの?」

まるで気を取り直すかのようにそう言って、ほむらは支給品に入っていた食料に口をつけた。

348Code Alice-God Speed Love ◆Z9iNYeY9a2:2013/12/12(木) 22:37:37 ID:D0PH7fJY0


(ナナリー、ごめんね…。あなたを守ってあげられなくて…)

視線の先、即席の粗末な墓に埋められた愛しき友。

涙はもう流さない。流せない。それは彼女がその生を終えたとき流し尽くした。
今の私は、ナナリーの騎士。彼女のためにこの身を捧げた。
それは、ナナリーが死んだ今とて変わらない。

ただ、一つだけほむらには言っていない、自分の望みがあった。

アカギの言っていた、生き残れば如何なる願いも叶えるというあの言葉。
もし、あれが真実であるなら、ここで死んでしまったナナリーを生き返らせることも可能なのではないか、と。

だからと言って殺し合いに乗るわけはない。
それをしてしまえば、もう私はナナリーの騎士ではいられなくなる。
ならばどうするべきか。
その力をアカギから奪い、ナナリーを生き返らせるのだ。
この殺し合いから抜け出し、アカギの元に辿り着き、そしてその奇跡とやらを起こすのに必要な力をどうにかこの手にすることができれば。

ナナリーは怒るだろうか。こんなことを望んだ私を。
それでも、ナナリーにまだ未来を見せてあげたいという想いもまた強く心に残っていた。

この願い自体は、ナナリーの願いではない、あくまでアリスのためのものとなるのだろう。
小さな可能性だったが、ナナリーの騎士としてのアリスの中に残った、アリス自身の思い。
だからこそ、できれば他の人に知られることは避けたい願い。


(ナナリー、もし叶うなら、私がまた、あなたに光を見せてあげるから。
 だから、もう少しだけ待っていて)

あの時ゼロがふと発した言葉の意味が分かった。
きっと私がナナリーの騎士になることは定められた運命だったのかもしれない。

私は前に向かって進み続けよう。
いずれまたナナリーに会えた時に、胸を張ってナイトメア・オブ・ナナリーだと誇れるように。


【C-5/森林/一日目 昼】

【アリス@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(小)、ネモと一体化
[服装]:アッシュフォード学園中等部の女子制服、銃は内ポケット
[装備]:グロック19(9+1発)@現実、ポッチャマ@ポケットモンスター
[道具]:共通支給品一式、 C.C.細胞抑制剤中和剤(2回分)@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー
[思考・状況]
基本:脱出手段と仲間を捜す。
1:ナナリーの騎士としてあり続ける
2:情報を集める(特にアカギに関する情報を優先)
3:脱出のための協力者が得られるなら一人でも多く得たい
4:ほむらが若干気になっている
最終目的:『儀式』からの脱出、その後可能であるならアカギから願いを叶えるという力を奪ってナナリーを生き返らせる
[備考]
※参戦時期はCODE14・スザクと知り合った後、ナリタ戦前
※アリスのギアスにかかった制限はネモと同化したことである程度緩和されています。
  魔導器『コードギアス』が呼び出せるかどうかは現状不明です。

349仮面 ◆Z9iNYeY9a2:2013/12/12(木) 22:39:25 ID:D0PH7fJY0




――4


――3


―カチリ


――1


――0




少しだけ時間を戻す。

あの爆撃の中、不意に飽和する魔力と消えるアリスの気配。
その中で私、暁美ほむらはその場から離れることを選んだ。

魔力の中に消え去るアリスの反応。
気になりはしても、魔法少女である自分であっても近寄ってはいけないものであることを、直感で察した以上どうしようもなかった。

「あの子もここまで…ということなのかしら」

ナナリー、彼女の友があの巨人であることを知った彼女の行動。
それに何か思うところがあっただろうか。

しかし、今は下の魔力の泥によって逃げることは叶わない。
サイドバッシャーが飲まれることがなかったのは幸いとはいえ、しばらくはこの木の上から様子を見るしかない。
ふと下の木の枝を見ると、ポッチャマが必死にしがみつきながら下の様子を伺っている。
どうやらギリギリのところで逃げ延びたようだ。


(随分と厄介なものに目をつけてしまったようね…)

―――そうだね。それには気をつけたほうがいいと僕から警告させてもらっておくよ

「?!」

不意に、脳内に声が聞こえた。
聴覚へではなく、脳内に直接語りかけるかのような声。

魔法少女が連絡や秘密の会話をするときに使う手段であるが今ここに魔法少女はいない。
そしてその声は、言ってしまえば長年の敵とでもいうべき存在の声。

(あ、そうそう。言いたいことがあったら、今は声を出さずにこっちの念話のほうで会話をして欲しい。
 ここで話すと、そこにいるポケモンにも聞こえてしまうだろうからね)
(あれに聞かれることに不都合があるのかしら?)
(彼をただの生き物だとは思わないほうがいいよ。彼らの知能は犬やネコのような動物とは比較にならない。
 そしてこの場には彼らとコミュニケーションを取ることができる存在もいることを考えると、僕としても推奨できるやり方じゃないね)
(………)

350仮面 ◆Z9iNYeY9a2:2013/12/12(木) 22:40:15 ID:D0PH7fJY0


『それで、用件は何かしら、インキュベーター』
『君が無駄な争いを望むほど冷静さを失っていないようで助かったよ』
『…用件を言いなさい』
『ちょっと焦っているようだね。何か思いつめていることでもあるのかい?』

その言葉に一瞬銃弾を放ちそうになるその感情を抑え、冷静であることを装って言葉を続ける。

『あなたがここにいるということを、アカギは知っているの?』
『どうだろうね。知っているかもしれないけど、少なくとも彼に何かしらのアクションがある様子もないし、今のところ特に問題はないんじゃないかな?』
『そう、やっぱりあなた達も彼の協力者だったというわけね』
『まあ、そうなるね』

可能性としては、ほむら自身もそれを思うくらいはあった。
しかし、それを確信にまで持っていくには否定材料も多かった。

これまで渡ってきた多くの時間軸で魔法少女の契約を求めていたはずの鹿目まどかを、なぜこのようにいつ死んでもおかしくない状況に連れてきているのか。
それも、かつてその命を狙った魔法少女、美国織莉子と共に。
その事実があったからこそ、怪しいと感じても可能性レベルまで残しておいたのだ。

しかし、今ここにインキュベーターがいるということは考えられる可能性も絞られてくる。
連れてこられたまどかは過去の、そこまで大きな力を持っていなかったまどかであるか。
あるいは――

『まどかを失うことになってもなお、あなた達にそれに見合うだけの大きな見返りがあるか』
『その質問には答えられないね。
 そもそも、君が聞きたいことはそんなことじゃないはずだよ。暁美ほむら』

『そうね。じゃあ話を変えて。
 質問させてもらうわ。アカギの言っていた、どのような願い、奇跡も叶えるという言葉は本当かしら?』
『正直なところ僕にもどれほどのことができるのかまでは分からない。でもそうだね。並大抵の魔法少女の願いでは引き起こせない奇跡くらいなら起こせると僕は見ているよ』
『随分と正直に答えるのね』
『さっきこっちのペースで話しすぎて失敗したからね』

と、いつからそこにいたのか、足場こそあるとはいえ広いとはいえない木の上にインキュベーター、キュゥべえ。
その白い体と妙に人の気を引きそうなふわふわした毛並みの体、そして無表情な顔は相も変わらず憎らしい。

『それにしても、なるほどね。君はやはり欲している願いがあるのか。
 まどかのために多くの世界を巡ってきた君が願うのは、やはりまどかのことかい?』
『…どこまで調べたの?』
『君の素性についてはほぼ、ってところだね』

そこまでばれているのならば、まどかのことについて隠す意味は薄いだろう。
隠したところでそれ以上の情報を、相手は持っているのだから。

『そんなあなたが、私に接触を測ってきた意味は何かしら?』
『君が僕、インキュベーターの言葉に耳を貸す可能性は低いだろう。
 でも、そこに鹿目まどかを救うことができる可能性が関わってきたとしたら、君はどうするだろうね?』
『質問に答えなさい。質問で返さないで』
『じゃあ、単刀直入に言わせてもらおう。君に力を貸してほしいんだ』
『……。どういうこと?』
『言葉通りだよ。この殺し合いにはある目的がある。それは僕達インキュベーターにも大きな利益となるものだ。
 でもそれをより大きな形で成し遂げるには、少し色々とこなさなければならないことがあるんだ。
 もしよければ、君にはそれに力を貸してほしいんだよ』

奴のその目的が何かまでは分からない。
しかし、それは自分にとって愉快なものにはならないだろう。

351仮面 ◆Z9iNYeY9a2:2013/12/12(木) 22:41:50 ID:D0PH7fJY0

『あなたを私が信じると思うの?』
『信じる信じないは君の自由さ』
『願いを持った者なら他にもいるでしょう。どうして私を選んだの?』
『それは、君の存在がこの会場の中でも特異なものだからだよ。時間遡行者、暁美ほむら』


『君はこれまで、過去の可能性を切り替えることで自分が望む結末を求めて、多くの時を繰り返してきた』
『その中で君は多くの平行世界を渡り、一定の期間とはいえそこで過ごし、暮らしてきた』
『つまりは、君は平行世界の観測者でもある。そんな者は、この会場においてもそうはいない。
 君の存在は貴重なんだよ』

『…説得力がないわね。人に殺し合いを命じたのはどこの誰のお仲間だったかしら?』
『条件は揃える必要があってね、開始段階で贔屓することはできなかったわけさ。君達の同行もまだ不明瞭だったしね。
 そして君は、曲りなりにも一回目の放送を乗り越えて今ここに立っている。だからそろそろ頃合だと判断したわけだよ』

若干不服そうな仕草をしてそう答えるインキュベーター。
つまりはインキュベーターとアカギ、あるいはそれ以外の主催者。
彼らの意思、やり方が完全に一つになっているというわけではないようだ。

『こんな回りくどいことをして、一体何が目的なの?』
『僕の望みはいつだって一つだよ暁美ほむら。この宇宙のためにエントロピーを集める、それだけさ』

これまでの会話でこの催し、主催者についてある程度想像がついたことがある。
まずはこいつらの間にはおそらく利害の一致のような繋がりが存在する。
インキュベーターのように、宇宙がどうとかいうことを目的とした者か、あるいはそこから生まれる副産物を求めているか。
しかしそれは逆に言えば、互いの関係の中である程度の妥協、及第点を置いた上でこのような環境を作っているということだろう。
インキュベーターはその中に何かしらの不満を少なからず感じており、それが今この接触に繋がっているのではないか。

『さて、それじゃあこっちの質問にも答えてもらえるかな?
 少なくとも僕達からは君を悪いようにはしない。あるいはこの儀式が成功した暁には君にも奇跡の一端に触れさせることもできるだろう。
 暁美ほむら、僕と契約を結ぶつもりはあるかい?』
『――せめて具体的な内容を言いなさい。話はそれからよ』
『その受け答えということは、つまり君はこの話に興味を持っている、ということだね?』
「―――………」

考えの一部を読まれたことに若干の屈辱感を感じる。
だがそれを顔に出さないように気をつける。
別にこれくらいのことであれば不都合はない。

『内容を言いなさい』
『別に難しいことは言わないさ。この殺し合いをする上で少し不都合なことが発生しそうになった場合、それを解決してもらうために動いて欲しいんだ。
 ああ、心配しなくても他の参加者を殺せ、なんて指示を僕達からは基本的に出さないよ。それは君達の選択だからね』
『受けなければどうなるのかしら?』
『話はこれまでとして僕はここから立ち去るだけだよ』

拳銃を下げる。
しばしの思考。

『ねえほむら。君は今まで疑問に思ったことはないかい?
 どうしてまどかが、魔法少女としてあれほど破格の素質を備えていたのか』
『…?』
『魔法少女の素質は因果の量で決まってくるんだけどね。
 この会場には様々な参加者がいる。いずれ救世主になりえる者、一国の王の血を引く者、英雄とでも呼ばれるだろう者、仮にも世界を変えた者。
 魔法少女の素質はさておき、そういったもの達は大きな因果を背負っている。
 でも、彼らと比べても一般人であるまどかの因果もまた劣らない。どうしてか分かるかい?』
『どういうこと…?』
『ねえ、ほむら。 ひょっとしてまどかは、君が同じ時間を繰り返す毎に、強力な魔法少女になっていったんじゃないのかい?』
『…!』

思い当たることはあった。
だが決して考えてはいけない可能性。
もしそれに気付いてしまえばやり直すことができなくなる。まどかを救うことができなくなってしまう。

『やっぱりね』
『………』
『もしここで君が失敗し、また繰り返すことになるなら、それによって積み上げられていくまどかの因果がさらにまどかを苦しめるんじゃないかな?』
『…っ、お前がそれを―――!』
『ほむら』

『もし全てのまどかを、その因果から救える可能性があるとしたら、君は乗るかい?』



352仮面 ◆Z9iNYeY9a2:2013/12/12(木) 22:42:23 ID:D0PH7fJY0

その後、インキュベーターは去り、下で泥が消えつつあることを確認、姿を見せた黒い女の元に迫ったところで女が消え去って。
そうして今へと至る。

――――まあ考える時間が欲しいというなら待つよ。頼みたいことは早くても次の放送の後からってことになりそうだからね。

うまく騙せただろうか。
少なくとも言葉の中に決定的なミスをしてはいなかったと思う。

正直なところ、向こうからの接触があったのは幸運だった。
主催者の情勢がある程度ながら察することができたのは収穫だ。
インキュベーターとてあくまで主催陣営のただの一人にすぎないということなのだろう。


インキュベーターの語った願い。
すべてのまどかを救うことができるという可能性。
おそらくはやつはその言葉からその可能性に気付いたと考えているだろう。
そこだけは悟られてはならない。あくまでキュゥべえの言葉でそこに気付いた、とやつには思わせなければならない。
そうすることで、あいつの手の平の上で踊っているのだと、そう見せなければならない。

いずれ近いうちに再び接触してくるであろうあの生き物に対してそうやって振る舞い。
可能な限りの多くの情報を引き出す。

そう、目標はインキュベーターではない。その後ろにいるアカギ、そして彼の持つ力。
奴の下へと辿り着く術、手段を探り出さなければならない。
無論、あいつが語らない、アカギの力の源も、この会場に知っている者がいる可能性がある。もしかすれば利害で繋がっているインキュベーター以上にアカギに詳しい者もいるかもしれない。
ならばそちらの情報も、こっちで得ればいい。

全てを隠すためには、幾重もの仮面を使い分けなければならない。
だがこの程度、それまでのまどかを守れなかった事実全てを精算できるならば易いものだ。

そうして待っている時、現れたのは一人の少女を抱えたアリス。
その少女こそがアリスの言っていたナナリーなのだろうと察するのは容易かった。

「それで、気は済んだの?」

守るべき存在を失ったその姿。
とうの昔に通り過ぎた、あの過去の自分に幻視した。
だがそんなことは些細なこと。
見極めねばならない。これから主催者をも騙すためのスタンスを選ぶ上で、彼女が使える者かどうか。
守るべき者を失ったこの少女は、己の路をどう定めるのか。


それでも、アリスは優勝による蘇生を否定し、愛しき友の望む姿であろうと、ほむらの問いかけに答えた。
それでいい、と思った。
まだ、目の前の存在には使用価値がある、と。

(――騎士…、私には眩しい言葉ね)

私にはきっと、まどかの騎士になることなどできなかったし、これからもできないだろう。
まどかの傍に、ずっといられる存在となることは、今の自分には叶わないことなのだから。
自分の望みは、ある意味ではまどかの思いを踏み躙るものでもあるのだから。

この子はきっと、真っ直ぐに、強く、騎士としてあり続けるのだろう。

(―――ええ、だからこそ、彼女を利用するのはそう難しくはない)

己の中の本当の目的も、願いも悟られることなく、自分と似た存在であると勘違いさせられる。
彼女のように、想いや願いではなく、まどかの安否だけを守ろうとしているということを。

もしかすれば、この子はいずれ自分の敵となるかもしれない。
だから、今のうちに利用し尽くしてやればいい。

353仮面 ◆Z9iNYeY9a2:2013/12/12(木) 22:43:15 ID:D0PH7fJY0
彼女の存在は、まどかにとって何の関わりもないのだから。

そう、彼女はこの場で最初に出会って、目的のために手を組んだ。
それだけのはず。



―――私が友達になってあげるからさ、

そういわれたときの自分は、一体どんな顔をしていたのだろうか。
よっぽど変な顔をしていることはないと信じたいし、特に追求はなかった以上仮面の下を見せてしまったことはないと思いたい。

どう答えていいのか分からず変な受け答えをしてしまった気がするが、よく覚えていない。まあ、大丈夫だろう。
そこまでしてしまうほど、何に動揺したのかは自分でも分からない。

いや、分からないのは自分自身でもある。
何故、私は彼女のその懇願を保留したのか。

もし彼女が使えないならば断った後で置いて去ればいいし。
使えるのであればそれを受け入れた上で利用すればいい。
考える意味などないはずだ。

(………)

これまで、特にあのまどかを救う決意をし己の三つ編を解いたとき以降、基本的にほとんどの馴れ合いは避けてきた。
巴マミとはキュゥべえのことで敵対し、美樹さやかとはその繋がりで敵視され、同じく馴れ合いを好まない佐倉杏子とはワルプルギスとの戦いのための同盟程度は組むことができ。
時にはまどかすらも、自分から遠ざけて。
近くで見守るために一時的な友情ごっこに興じた結果が、あのイレギュラーな世界だ。

新しい世界に渡るたびにリセットされる関係など、あの時のように必要でもない限り求めはしない。
ましてや、今はそんな関係を作ったところでいずれ切り捨てることになるだけだった。

(まだ、迷っているとでも言うのかしらね。私は―――)

それでもただ、一つ何となく思ったこと。
第一印象で似てると感じなくもなかった目の前の少女は、自分とはこんなに違うのだなと。


放送も近い。
目の前の少女の大切な存在の名が呼ばれることになるだろう、その放送。

もし、まどかの名がその中にあったら、私はどうするのだろうか?

いや、それ以前に私は、ここにいるまどかをどうするのか―――

(―――今考えるのは止めましょう。いずれまた接触してくるであろうインキュベーターに備えて次の放送を待たないと)

ちらりと、サイドバッシャーの後部で丸まっている黒猫に視線をやる。
あの状況でどこにいたのか分からないが、全てが終わって気が付いたらそこにいた生き物。

(ねえ、そうなんでしょう?インキュベーター)
「ニャー」

黒猫は口を開いて一言、そう鳴いた。

354仮面 ◆Z9iNYeY9a2:2013/12/12(木) 22:43:44 ID:D0PH7fJY0


【C-5/森林/一日目 昼】

【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:ソウルジェムの濁り(少) 、疲労(小)
[服装]:見滝原中学の制服
[装備]:盾(砂時計の砂残量:中)、グロック19(15発)@現実、(盾内に収納)、ニューナンブM60@DEATH NOTE(盾内に収納)、サイドバッシャー(サイドカー半壊、魔力で補強)@仮面ライダー555
[道具]:共通支給品一式、双眼鏡、黒猫@???、あなぬけのヒモ×2@ポケットモンスター(ゲーム)、ドライアイス(残り50%)
[思考・状況]
基本:アカギに関する情報収集とその力を奪う手段の模索、見つからなければ優勝狙いに。
1:全てを欺き、情報を集める(特にアカギに関する情報を優先)
2:協力者が得られるなら一人でも多く得たい。ただし、自身が「信用できない」と判断した者は除く
3:ポッチャマを警戒(?)。ミュウツーは保留。ただし利用できるなら利用する
4:サカキ、バーサーカー(仮)は警戒。
5:あるならグリーフシードを探しておきたい
6:放送後インキュベーターの接触を待つ。
最終目的:“奇跡”を手に入れた上で『自身の世界(これまで辿った全ての時間軸)』に帰還(手段は問わない)し、まどかを救う。
[備考]
※参戦時期は第9話・杏子死亡後、ラストに自宅でキュゥべえと会話する前
※『時間停止』で止められる時間は最長でも5秒程度までに制限されています
※ソウルジェムはギアスユーザーのギアスにも反応します
※サイドバッシャーの破損部は魔力によって補強されましたが、物理的には壊れています


「ポチャ〜」

黒猫が横たわるその近くで、ポッチャマは特に何をするでもなく、座り込んでいた。
何をするわけでもとはいったものの、ポッチャマなりにこれからどうするかということを考えているところだったのだが。
できることなら、さっき去っていったタケシやピカチュウを追いたいが、それを伝える術は自分にはない。

ニャースがいれば、と今更ながら思いつつもどうしたものか、とその短い手を組んで首を傾げていた。

その時。

「ポチャ?」

一瞬、視界に入ったその黒猫。
ネコらしくゴロゴロ転がっているその尻尾にあたる部分に。

ふんわりもこもこした白い尾が揺れているように見えた。

「ポチャ…?」

首を振って再度目を凝らすも、そこで揺れているのは黒くて細長い尾のみ。

「………?ポッチャマ…?」

何となく気にはなったが、疲れからきた見間違いかと考え、それ以上深く考えることなくまた自分の思考に浸ることにした。


ポッチャマは気付かなかった。
そこでゴロゴロとしているときも、毛繕いをしている間も。
その視線の先には常に暁美ほむらがいたということに。

「ニャー」

355 ◆Z9iNYeY9a2:2013/12/12(木) 22:44:41 ID:D0PH7fJY0
投下終了です

356名無しさん:2013/12/12(木) 23:50:54 ID:21xhyW9Q0
投下乙です
……てめえかねこおおおおおおおおお!!(そっちかよ!)
登場話からのコンビだが、この二人仲良いのか悪いのか時々分からんw
桜は一端安定か。いいフラグも見られるがデルタの呪いが……呪いが……。

そしてナナリー……お疲れ様。桜?の説得といいザ・ゼロ発動といいよく頑張った。
ところでコレ、ナナリーの自滅死という扱いでいいんだろうか?

357名無しさん:2013/12/13(金) 13:00:10 ID:xXWELF8o0
投下乙です
アリスとネモの契約きた!これで対主催者の戦力上がったな
けど、これからほむらがどう動くか不安だ…

358名無しさん:2013/12/13(金) 21:28:40 ID:UMDCtgfU0
投下乙です
桜が何処に転移したのか気になるな
そしてほむらが今後新たな火種になりそうな気が・・・

359名無しさん:2013/12/14(土) 14:48:23 ID:BUX7gjAQ0
投下乙です

なんていうかほむらは不安定が平常運転? やな女だなあw
気難しい相棒とか俺はやだなあw
ナナリーは…うん、よくがんばったなあ
感動した

360名無しさん:2013/12/15(日) 00:42:29 ID:XbT9Uyns0
『主催側から参加者に接触はできない(しない)』というルールの裏を抜けるために、予備の端末を支給品に偽装していたのか……
汚い流石QB汚い

361名無しさん:2013/12/19(木) 04:17:08 ID:dwG/GMMI0
投下乙です!
まさか黒猫がw

ほむらは誰も信用しないけど、ナナリーが友達になれたら緊張もとけるかな?
まあロワで緊張がとけるってのも問題かもだけどねw

362名無しさん:2013/12/19(木) 04:21:59 ID:dwG/GMMI0
ミス ナナリーじゃなくてアリスがだw

363 ◆Z9iNYeY9a2:2014/01/04(土) 19:44:46 ID:v1VwRWZw0
投下します

364始まりはZERO、終わりなら―――? ◆Z9iNYeY9a2:2014/01/04(土) 19:46:55 ID:v1VwRWZw0
その手は血塗られていた。
己の理想に生き、行動し、その結果多くのものを失ってきた。

最初には父を。次には祖国を。
そして、失った祖国を守ろうと戦い、愛しき人も、友も失い。
その末に理想までも失って。
全ての罪を精算すると同時に理想を果たすため世界の敵となって。

その男の名は死んだ。
残ったのは、ゼロ――虚無という記号のみ。
そう、その名の通り、男は有でありつつ無として生きなければならない。

それが、己の罪滅ぼし、そして己の殺した友との約束なのだから。

(―――そういえば、ロロ・ヴィ・ブリタニアもまた、ルルーシュと同じ顔をした存在だったな…)

因果だろうか、それともただの偶然か。
もし因果だとしたら、これほど皮肉なものはないだろうが。

C.C.とは別れた。
彼女とてこちらの素性を積極的に明かそうとはしないだろう。
これからは、ゼロとして行動していけばいい――――


ふと、脳裏に一人の女性の顔がよぎって。

気の迷いか、それとも思い残しか。

ゼロ―――スザクには分からない。
ただ、彼女に今際の際でもゼロではなく枢木スザク、として認識された、たったそれだけの事実が。
自分の心に少なからず風波を立てているような、そんな気がした。

365始まりはZERO、終わりなら―――? ◆Z9iNYeY9a2:2014/01/04(土) 19:48:16 ID:v1VwRWZw0



「はぁ…はぁ…」

息をつく。
今いる場所がどこなのか、その確認すらも移動中行うことはなかった。

何故ここまで動揺している。
父親とはいえあんな言葉で心乱されるなど、これまでLやニア相手にも心理戦を行ってきた自分らしくなかった。

(僕のこれまでの行動が、ただの自分への贖罪だと…?そんなことはない、僕は新世界の神となるためにやってきた、それだけだ。そんなこと、あるはずがない!)

神に迷うことなど許されない。
冷酷に、感情を込めることもなく、悪を裁く。

その先に、理想の世界がある。
善人が、あの時メロに殺された父のような者が報われるような世界でなければならない。

「――――月」

あれほど全力で逃げたはずなのに、もう父は、夜神総一郎は目の前にいた。
ふと、偶然手をついた下に備え付けられた表札を見る。

夜神。そう黒く太い文字で書いてあった。

逃げ入るようにその中へと駆け込む月。
月が冷静ならば、進んでそんな追い込まれた空間に逃げ込むなどという行動は取らなかっただろうが、今はとにかく己が父を引き離したかった。

しかし、自分の家に入ることが久しぶりであったこと、なにより急いで入ったことが原因で鍵をかけることを忘れてしまった。
当然のように、総一郎もそんな彼を追って家に入ってくる。

そのまま振り返ることもなく、月は家の奥へと逃げ込む。
が、ここで気付く。
追跡者も勝手知ったる家に入り込んだところで、逃げられる場所も隠れられる場所も存在しない。

いつもなら家に入る前に気付いたはずのこと。

(―――どこまで焦っているんだ僕は!?)

やがて息を切らしながらも、総一郎は月の目の前に姿を見せた。

「…月、どうして逃げる?いや、何から逃げている?」
「…………」

何から逃げているのか。

そうだ。今自分は一体何から逃げているのか。
ここで夜神総一郎を殺すことなど、ワケもないはずだ。彼はこれまで見てきたような異形の存在でも何でもない、ただの人間なのだから。

じゃあ、何故自分は逃げているのだろうか。

366始まりはZERO、終わりなら―――? ◆Z9iNYeY9a2:2014/01/04(土) 19:52:29 ID:v1VwRWZw0



夜神総一郎は、己の息子の正しさを全面的に信じていた。
正しく育てれば、自分のように、いや、自分以上に立派な警察として法の下に生きてくれるものだと信じていたし疑わなかった。
実際、月はまるで模範のように、正しく立派に育ってくれたように思う。

しかし、だからこそなのだろうか。
もしも過ちを犯してしまったときに、どうすればよいのかということについて、教えることができなかったのかもしれない。
それが、謝って済むようなことだったら良かっただろう。
だが、それが取り返しの付かない過ちをしてしまったというなら。

その正しさが、他ならぬ月自身を歪めてしまったなら。
それは他ならぬ、親である自分の責任なのかもしれない。


「月、お前の悪を憎む心だけは本物だと信じている。
 確かにやり方は間違っていた。しかし正しい者が報われる世界になって欲しいと思う心は、確かにあったんだろう?
 ただお前自身がやり方を間違えてしまって、だからこそ世界を変えることでそれ自体を正義であるようにしようとした。
 自分が悪となることが怖かったんだろう?」

自分が悪となってしまうのであれば、悪の定義を、正義の定義を変えてしまえばいい。

月にとって幸運、いや、不幸だったのはデスノートにそれができるだけの力があったこと。
もしそうでなかったなら、月はあるいはその人殺しの罪を認めて償うこともできたかもしれない。

「お前は神になりたかったのか?それとも前言ったように世界で虐げられる弱者を救いたかったのか?
 それとも、自分の罪を認めるのが怖かったのか…?」

それが分からなければ、きっと月と話すことなどできないのだろう。

「…俺を殺したいというのなら殺してみろ。
 ただしノートなど使わず、その剣で一突き、もしくは一太刀にするんだ。ちゃんと狙わないと、何度も何度も体をその剣で突くになるぞ」

その言葉は賭けでもあった。

月とキラ。
それはイコールであると同時に、両者の間には大きな違いがあった。

例えば月が、ノートを使わずその手で殺したとき。
刺殺、斬殺、絞殺、撲殺、銃殺、毒殺、何でもいい。
それは間違いなく月の殺人だろう。

だが、悪を捌くという大義名分とノートによる神のごとき超常の力によって殺したのであれば。
それはキラという、月ではない別の存在の殺人――いや、裁きという大義名分にもできる。
つまり、その殺人は月によるものではなく、キラという存在の起こしたものと押し付けることも可能なのだ。
おそらく月自身が自分の殺した人間と認識しているのは最初に試しか何かで殺した数人だけだろう。

だからこそ、Lを殺すにもニアを殺すにも、メロを殺そうとする際においても、全てにおいてノートを使って殺してきた。
それこそが、キラの裁きであるという証なのだから。

367始まりはZERO、終わりなら―――? ◆Z9iNYeY9a2:2014/01/04(土) 19:52:56 ID:v1VwRWZw0
では、ここで殺した人間は、果たして何者による殺人となるのか。
少なくとも、夜神月はノートを持っている様子はない。あれば剣など抜きはしないだろう。
もしその手で人の命を奪ったということをはっきりと認識してしまった時、その時は月はキラという仮面を被ることはできない。
そうなればきっと、本当の意味で彼自身に破滅をもたらすだろう。

そんな姿は、父親として見たくはなかったから。

「ただし、ここで俺を殺すならキラとしてじゃなく、夜神月として殺せ。
 それでまだキラとして生きることを選べるならそうすればいい」

月が睨みつける。
そこには様々な思いが入り混じっているようにも見えた。
迷い、決意、他にも複数の正負の感情が。

「どうした、お前は神になるんだろう。
 これまでFBIの捜査員やL達を殺したように、こんな大人一人殺すくらいわけないだろう?」
「っ…」

月は漆黒の剣を持ち上げる。
確かに月には剣の心得などない。それでもあれで斬りつければ、大人の一人くらいは切り捨てられるだろう。
無論抵抗されれば別ではあるが、そんなつもりもない。

「………」
「………」

数秒の沈黙、静寂。
それだけの時間だが、二人にはそれが数分の時間の差にも感じた。
そして。

狭い廊下の中、月は構えた剣を振りかぶった。
剣道で言えば面にあたるような、力任せの単純な振り下ろし。
だが、西洋剣のような武器ならそれが一番威力を発揮するのかもしれない。

ブゥンと風を切るような音と共に。
そのまま総一郎の眼前で振り上げられた剣は。
総一郎の姿を真っ直ぐ見据えた月によって。

真っ直ぐに振り下ろされ。

ガリガリッ―――と。
そんな、硬い何かを削り斬るような音と共に。

剣の対象を切り裂いて。
地面へと突き立った。

「…はぁ…、はぁ……」

月の顔から流れた汗が一滴、地面へと落ち。

「何をしている」

その瞬間、総一郎の立っていた後ろの玄関から、真っ黒な男が姿を現した。



368始まりはZERO、終わりなら―――? ◆Z9iNYeY9a2:2014/01/04(土) 19:53:47 ID:v1VwRWZw0
では、ここで殺した人間は、果たして何者による殺人となるのか。
少なくとも、夜神月はノートを持っている様子はない。あれば剣など抜きはしないだろう。
もしその手で人の命を奪ったということをはっきりと認識してしまった時、その時は月はキラという仮面を被ることはできない。
そうなればきっと、本当の意味で彼自身に破滅をもたらすだろう。

そんな姿は、父親として見たくはなかったから。

「ただし、ここで俺を殺すならキラとしてじゃなく、夜神月として殺せ。
 それでまだキラとして生きることを選べるならそうすればいい」

月が睨みつける。
そこには様々な思いが入り混じっているようにも見えた。
迷い、決意、他にも複数の正負の感情が。

「どうした、お前は神になるんだろう。
 これまでFBIの捜査員やL達を殺したように、こんな大人一人殺すくらいわけないだろう?」
「っ…」

月は漆黒の剣を持ち上げる。
確かに月には剣の心得などない。それでもあれで斬りつければ、大人の一人くらいは切り捨てられるだろう。
無論抵抗されれば別ではあるが、そんなつもりもない。

「………」
「………」

数秒の沈黙、静寂。
それだけの時間だが、二人にはそれが数分の時間の差にも感じた。
そして。

狭い廊下の中、月は構えた剣を振りかぶった。
剣道で言えば面にあたるような、力任せの単純な振り下ろし。
だが、西洋剣のような武器ならそれが一番威力を発揮するのかもしれない。

ブゥンと風を切るような音と共に。
そのまま総一郎の眼前で振り上げられた剣は。
総一郎の姿を真っ直ぐ見据えた月によって。

真っ直ぐに振り下ろされ。

ガリガリッ―――と。
そんな、硬い何かを削り斬るような音と共に。

剣の対象を切り裂いて。
地面へと突き立った。

「…はぁ…、はぁ……」

月の顔から流れた汗が一滴、地面へと落ち。

「何をしている」

その瞬間、総一郎の立っていた後ろの玄関から、真っ黒な男が姿を現した。



369始まりはZERO、終わりなら―――? ◆Z9iNYeY9a2:2014/01/04(土) 19:54:43 ID:v1VwRWZw0


結論から言えば、月に総一郎を殺すことはできなかった。
振り下ろした剣は、体を反れて横の壁を抉るように切り裂いて地面へと落ちていた。
それが最初からそのつもりだったのか、それとも直前でそう変わってしまったものなのかは総一郎には分からない。

いや、月にすらも分かっていなかった。
それが迷いなのか、親故の情けなのか。それ以前に、剣を構えた時に総一郎を切る覚悟はあったのか否か。

そういえば以前似たようなことを父親にされた気がした。
キラと疑われた自分に対し、弾が入っていないとはいえ銃を向けられたことがあった。
あの時は迷いもなかったし、殺意自体も本物に見えた。演技にしてはあまりに迫真だった。

ただその時と今で違ったのは。
強い決意と己の命も投げ出す覚悟で行った父に対し。
自分のそれは迷いと保身からきたものだったということ。


結局自分のその行動の答えも見当たらないまま。
今、二人は黒い仮面の下にひょっとこのお面を被るという珍妙な格好をしたマントの男をまじえて、居間の椅子に座っていた。


「どうしてここがわかったんだ?」
「玄関の扉が開いていたのでな。近づいてみれば物音も聞こえた。もし私でなければどうなったか分からないぞ」
「そうか、それは気をつけないとな…」

月にしてみれば格好からして警戒せずにはいられない格好なのだが、総一郎は一応顔見知りであるため警戒する必要もない。
流石にそのお面を見た時は一瞬怪訝そうな表情はしていたようだが。

「その格好を見るに、やっぱりあの政庁で何かあったのか?」

よく見ると、その奇抜な服のあちこちに汚れや煤けが見えた。
所どころに微かに滲んでいる赤いものは、血だろうか。


「驚異的な力を持った一人の男に襲撃を受けてな。どうにか打ち倒したが、…ユーフェミアが犠牲になった」
「…そうか」
「今動けない皆には悪いと思ったが、こちらもあまりじっとしているわけにもいかないのでな。行かせてもらうことにした」

月は目を伏せたままだ。
そもそもその危険人物、ロロを政庁に送り込む際に同行したのは月自身である。
本来の目的は、効率良く人を減らすためにあの男と手を組んだのだ。
それが死んでしまっては元も子もないが。

しかし、そのことを知っているはずの総一郎は、敢えてそれを言うこともなかった。

「一つ問いたい。そこの彼は何者だ?」
「これは、私の息子だ」
「と言うと、氏の警戒するように言われていた――」
「ああ、その通りだ。だが、月だけなら頭こそいいが、無力な一般人でしかない。
 それに、さっきのように自分の手では人一人殺すことも難しいだろうがな」

オルフェノクや魔法少女、さっきのロロのような者が跋扈するこの場では、月とて無力な一一般人に過ぎない。
むしろ他者を騙し、操ることに長けている。しかしそれも素性が知れてしまえばどうにもならない。
そういうことらしい。

370始まりはZERO、終わりなら―――? ◆Z9iNYeY9a2:2014/01/04(土) 19:55:55 ID:v1VwRWZw0
「なるほど、頭脳は人並みならぬものを持っていると」
「ああ、自分で言うのも何だが、頭の良さにおいてはLを除いて右に出るものはいないとも思っている」
「ならば一つ、私に彼を預けてはもらえないか?こう言っては何だが、彼にはまだ使い道があるだろう。
 私自身、頭脳の方にはそう自信があるわけではないのでな」

しかしゼロはそんな月の頭脳を買って連れて行きたいと言った。
総一郎としても、表面上の部分しか見ていないがそこから判断するならば息子を任せるに足る人物であるとは思う。
だが、キラを預けるとなれば話は別だ。

「言いたいことは分かる。私の知り合いにも似たような者がいたからな。
 付き合いの長い友でな。ずっと騙されてきたものだ。
 だからこそ、私が適任ではないかと考えるのだが」
「そうか…。分かった、君を信じて預けよう。
 だが、決して油断はしないようにしてほしい」

自分の今後について話している間も、月は一言も話すことはなかった。




その後はしばしの休息の後、総一郎は政庁で残された者の元へと向かっていった。
もし何者かの襲撃を受けたとて彼一人でどうにかなるものではないだろうが、動けるものが一人多いだけでも話は違うだろう。
彼らと合流後、政庁においてある救急車で草加なる人物との合流場所へ向かうとのことだった。

ただ出る前、総一郎は月に対してこう一言伝えて夜神邸を出て行った。

「さっきも言った通り、お前が夜神月であろうとするなら俺は捕まえようとは思わない。だがキラであろうとするならば、分かるな。
 次に会った時にはお前が夜神月であることを願っているぞ」


そこからしばしの時が流れた。
スザクとて政庁での戦いの直後。あの場でじっとしていたくなかったから早急に出発したとはいえ、体の疲労もあり少しの休息を取ることになった。
当然、その剣は警戒のために預からせてもらうことにしたが。

数十分の時間が流れた後、じっと座り続ける月へと声をかけた。


「行くぞ」
「……」
「特に怪我をしているわけではないだろう。動くことに不都合があるのか?」

ふぅーと一息吐いて、体を反らした後、月は目の前にいる仮面の姿を見据えた。
スザクにはその瞳が何を移しているのかは分からなかった。
しかし構わない。別にそれが初めてみるような目ではない。

「私も殺そうとするか?」
「それが可能そうな相手には見えないし、ここで無駄に抵抗するほど僕も身の程知らずじゃないさ。
 むしろそっちこそいいのか?僕はこれでも得体のしれない力で多くの人間を殺してきた男だぞ?」
「私の知っているとある男は、多くの人の心を、体を操る力を持ち、自分の持った権力と合わせて多くの人を殺してきた暴君だった。
 今更気にするほどのものでもない」
「はは、それは…頼もしいものだな」

と、月は椅子から立ち上がる。

「じゃあ、君のことは何と呼べばいいのか?
 ゼロって呼べばいいのか?」
「呼び名、か」

思い返せば、ゼロという存在が確認されている以上、自分までゼロと名乗ることは混乱を招きかねないだろう。
かと言って、今更枢木スザクの名を名乗ろうとも―――


「……そうだな。ゼロ、と言いたいが今それを名乗ると誤解を招くようだ。
 ここは―――Kとでも呼べばいい」

脳裏によぎった、自分のこんな姿でありながらその名を認めた彼女のために。
今この殺し合いの中だけでも、かつて捨てた名から一文字だけでも名乗ることを許してもらいたいと、スザクはそう思った。

371始まりはZERO、終わりなら―――? ◆Z9iNYeY9a2:2014/01/04(土) 19:56:14 ID:v1VwRWZw0
【C-2/夜神邸/一日目 昼】

【夜神月@DEATH NOTE(漫画)】
[状態]:健康、精神不安定
[装備]:スーツ、
[道具]:基本支給品一式、レッドカード@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:????
1:?????
情報:ゲーチスの世界情報、暁美ほむらの世界情報、暁美ほむらの考察、アリスの世界情報、乾巧の世界情報(暁美ほむら経由)
※死亡後からの参戦
※ジャイロアタッカーをどこに停めているかはお任せします

【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:細マッチョのゼロ、「生きろ」ギアス継続中、疲労(大)、両足に軽い凍傷
[装備]:バスタードソード、ゼロの仮面と衣装@コードギアス 反逆のルルーシュ(仮面は前面割れ中)、ひょっとこのお面@デスノート(映画)
[道具]:基本支給品一式(水はペットボトル3本)、ランダム支給品0〜1、エクスカリバー(黒)@Fate/stay night
[思考・状況]
基本:アカギを捜し出し、『儀式』を止めさせる
1:月を伴い移動する。ただし頭脳は買うが人格まで信用はしない
2:Lを探し、 政庁で纏めた情報を知らせる
3:「生きろ」ギアスのことがあるのでなるべく集団での行動は避けたい
4:許されるなら、ユフィの世界のスザクに彼女の最期を伝えたい
5:誤解を招きそうだから、とりあえず名前を聞かれた際はKと名乗っておく
[備考]
※TURN25『Re;』でルルーシュを殺害したよりも後からの参戦
※学園にいたメンバーの事は顔しかわかっていません。

【C-2/一日目 昼】

【夜神総一郎@DEATH NOTE(映画)】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:天保十二年のシェイクスピア [DVD]、羊羹(2/3)羊羹切り 、不明支給品1(本人未確認) 、政庁にて纏めた情報
[思考・状況]
1:政庁に向かう
2:月はゼロ(スザク)に任せる。月の対処は次に会った時に決める
3:真理を見つけ、保護する。
4:約束の時間に草加たちと合流する。
5:Lを見つけ次第、政庁で纏めた情報を知らせる
[備考]
※参戦時期は後編終了後です
※平行世界についてある程度把握、夜神月がメロの世界の夜神月で間違いないだろうと考えています。

372 ◆Z9iNYeY9a2:2014/01/04(土) 19:57:06 ID:v1VwRWZw0
投下終了です
今年もよろしくお願いします

373名無しさん:2014/01/05(日) 00:15:14 ID:qB4wQgLo0
新年初投下乙ですー!
まさか、まさか死者0とは……!絶対月か総一郎か死ぬと思ってたのに
スザクは月同行……確かにこういうキャラは慣れてるなwこれはどう動くか見切れない……!

374名無しさん:2014/01/05(日) 04:37:45 ID:gCzuveEE0
投下乙です
スザクはルルーシュという前例があるから月にも上手く対処できそうだな
この先月はどうなるのだろうか…

375名無しさん:2014/01/05(日) 11:22:27 ID:bQJEXeRsO
投下乙です。

親子は決着せずか。
今の月じゃ、何か言葉にしても、それが本心か月自身にも判らないだろうからな。

376名無しさん:2014/01/05(日) 11:30:06 ID:qTnTZpDw0
投下乙です

親子との対面はどうなるかな…と思ったらこうかあ
しかもルルーシュみたいなになれてるスザクもいるとかw
これは月もきつい

377名無しさん:2014/01/09(木) 00:23:44 ID:8qerokXY0
今思い出した
このスザクひょっとこ仮面つけてんだった
……月、笑わなかっただけでも流石だよ

378名無しさん:2014/01/15(水) 07:30:01 ID:nKFHIF1k0
月報用データ置いておきます
パラレル 102話(+2) 39/57(-1) 68.4(-1.8)

379名無しさん:2014/01/17(金) 18:51:36 ID:P.MVFpLc0
QBが接触したって事は、ほむらとゼロは参加者の中でも特殊な存在になるのか

380名無しさん:2014/01/18(土) 00:33:11 ID:Q2RxGtnk0
どちらも世界の外側に通じる存在だな。他に候補というと、C.C.や聖杯シリーズか

381名無しさん:2014/01/26(日) 00:11:57 ID:abSIr7/o0
あの面子の予約きた!

382名無しさん:2014/01/26(日) 22:54:52 ID:f.0bqsI20
さや……さや……

383名無しさん:2014/02/03(月) 00:00:08 ID:N4bKHxoA0
(投下来ないな……)

384 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 00:32:23 ID:8tecQJ1Y0
遅れて申し訳ありません。これより投下を始めます

385 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 00:35:06 ID:8tecQJ1Y0
巴マミを拾った直後から、放送までの間。
シロナさんと話をしていた記憶の中の出来事。

「その子、大丈夫そう?」
「傷の方は大丈夫そうね。さっきソウルジェムとかいうのはグリーフシードで魔力回復?させたんだし。
 …心臓付近に銃創あるのをみたら、たぶん心臓かその近くを撃ち抜かれてるのに、それでも生きてるなんてさやかの言った通り丈夫なものね」

あのオルフェノクにやられた、というわけでもなさそうではあるが。
ドラゴンのオルフェノクと戦った身としてはオルフェノクの強さは身をもって知っている。
もし殺すのであれば、銃器なんて特に必要なものでもないだろう。
あれとは別に敵がいたのだろうか。

それにしても、意識を取り戻さぬマミの表情は辛そうなものだ。
胸を撃ち抜かれている以上、痛みを感じているのは当然だが、それだけじゃないように見える。
何かに怯えているのか、悪夢でも見ているのか。彼女ならぬ自分には測り知ることはできないが。

「…、正直、さやかの言ってたかっこいい正義の味方には見えないわねぇ…」
「何かよっぽど怖い目にあってきたのか、それとも心の奥に何か闇のようなものを抱えているのか…、心配ね」

ふと、前方に気をつけつつ考えを巡らせるシロナ。
参加者以外の人が排除されたこの空間、多少危険な運転をしたところで咎める人などいないが、それで参加者を撥ねでもしたらことだ。
むしろ殺し合いに乗っていないのであれば、積極的に接触を図りたいところ。まだ時間は残っている以上、急ぐメリットも薄い。

「むしろ気になるのは、その子がさやかちゃんの言うようにずっと一人で戦ってきたんだとしたら、その孤独に耐えられたのかどうかってことよね」
「一人で、ね…」

一人で戦い、さやかの前では彼女の望むような正義の味方であり続ける、そんな生き方。
傍から見えばかっこいいものではあるが、それを演じてこなければならないとなると、彼女はどれだけの孤独に耐えてきたのか。

「分からないわね。本当の自分を隠して、そんな風に人によく見せたりなんてして」
「そうかしらね…?ちょっとしたことだけど、私にもその気持ち分からなくはないわ」

ふと、クロの言葉を受けてシロナはそう呟いた。

「シロナさんは元からかっこいいじゃない」
「ありがとう。でも私も、案外人には見せられないところあるのよ?
例えば、私ってこう見えて片付けとか下手で自分の部屋なんて散らかりっぱなしなところとか」
「え、嘘でしょ流石に」
「本当よ。それにかっこいいなんて言っても、ガブリアスがいなかったらクロちゃんを助けることだってできなかったんだから。
 私個人でできることなんてたかが知れてるもの」

強いといっても、それはガブリアス、そして今はいないが他のポケモン達もいてこそのものだった。
もし彼がいなければ、ここまで生き残ることができたかどうかも分からない。

「そういえばあの時もあの子の力とか、あとあの子もシロナさんのこと信じてるのが分かったけど、シロナさんとガブリアスって付き合い長いの?」


「そうね、私の切り札でパートナーで、そして大切な存在よ。この子がいなかったら、ここじゃなくても今の私はいなかったかもしれない。
 そう思うくらいには」

386 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 00:35:48 ID:8tecQJ1Y0




「イリヤ!」
「お兄ちゃ、ん!」

士郎が、巧に連れられたイリヤを見つけたのはクロと別れてしばらく経った辺りのこと。
息を切らせつつ走ってきた士郎の姿を見たイリヤは、安堵の声を上げる。
声を出しても体に響くことはない程度にはダメージは回復したものの、未だその体は自力で歩くのは難しい。

『士郎さん、クロさんは?』
「今、青い髪の少女と戦っている。多分魔法少女って子だと思うけど…」
『おや、珍しいですね。士郎さんであれば無理を言ってでも残りそうな状況だと思いましたが』
「いや、俺だって残ろうとは思ったけど、イリヤがバーサーカーに襲われたって聞いて慌てて…」
『怪我の方は現在治癒促進により急ピッチで直しています。命に支障はないはずですね。
 ですがしばらくは戦闘行為などもってのほかです、気をつけてください』
「ああ、大丈夫だ。イリヤには戦いはさせない」

ここで言うことはなかったが。
ルビーの、何故早く戻ってきたのかという疑問について、それだけが理由ではないような気がした。
あの少女の褐色の肌、そして赤い外套を見た時。
関係ないはずなのにあの男を連想してしまった。
自分に腕を託して消滅していったあの弓兵を。

この腕を使った影響だろうか。
何故かあの少女を見た時、あいつの存在を感じた気がしたのだ。



「そういえば、バゼットはどうしたんだ」
『今バーサーカーとゼロを、クロさんの連れてきた仲間と思しき生物と共に押さえています。
 相手が相手とはいえ彼女とて執行者です。頃合を見て撤退するでしょう』
「そうか、それなら…っ…!」
「お兄ちゃん?!」
「おい、どうした?!」
「な、何でもない。巧、悪いな、そんなボロボロなのにイリヤのことまで…」
「気にすんな。お前こそ大丈夫…なんだよな…?」


そう言ってイリヤの体を巧の代わりに抱える士郎。
ふと、ホースオルフェノクに蹴られたときのダメージが体に残っているはずなのに、何故か気にならなかった。
痛みが引いている、いや、既に傷やダメージの中で大きなものは直っているかのような気がした。

387 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 00:37:17 ID:8tecQJ1Y0

(クロ…、大丈夫だよね…?)

そして、士郎に背負われたイリヤは自身の分身である少女へと思いを馳せる。

ルビーがいて、お兄ちゃんがいて、バゼットさんがいて、巧さんがいて、そしてクロがいたからこそ戦うことができた。生きていることができた。
誰か一人でも欠けていたなら、きっと自分はここにはいなかっただろう。

遠坂凛の名が呼ばれたあの時のような気持ちを、もう感じたくはない。

だから。

(クロ、絶対に帰ってきてよ…。もう誰かが死んだりいなくなるのは、嫌だよ…)





市街地、バーサーカー達との戦場とは離れた、まだ比較的街としての形を保っている道の一角に響く、高速の剣撃音。

二振りの双剣、干将・莫耶を構えたクロは、さやかの隙を伺いつつ攻撃を受け止めていた。
しかし、さやかの攻撃はその理性を感じない攻撃に反して、あまりに素早かった。
まるで己の体の限界値を、いや、それ以上のものを引き出しているかのようにデタラメで、しかしそれゆえに読みづらい剣筋。

それでもその技量自体は素人の域を出ない。
本来であれば、クロとて押さえ込むことはそう難しくはなかっただろう。
だが、イリヤの痛覚共有の呪いはクロの体を痛みで蝕んでいた。
ただの痛みでしかないそれも、戦いの間ずっと響いているのであれば、それは行動を阻害しかねないものだ。

消そうと思えば消すことは容易い。だが、

(―――ここまできてこれを消せないのは、私の甘さかしら、ね!)

両側から迫る剣を受け止め受け流し、そのままさやかの顔面を蹴りつけ宙を舞うクロ。
距離が開く中、すかさず黒弓を構え、着地までの瞬間に矢を射ようとした、その時。

「―――いっ?!」

構え直すわけでもなく、無造作にこちらに向けられたように見えた剣。
その刀身が、こちらに向かって飛んできたのだ。

388名無しさん:2014/02/03(月) 00:38:49 ID:qZOhNbEI0
支援
……ここでもアリだっけ?

389 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 00:38:59 ID:8tecQJ1Y0

早急に構えを解き、黒弓でかろうじてその軌道を反らす。
左腕の皮に赤い線が走る。が、そこまで深くはない。

さらに追撃で3本の剣がさやかの手に生成、刀身が飛んでくるのを視認したクロは、即座に空中に剣を投影。
迎撃してどうにか撃ち落とすと同時に地面に着地。
その距離を一気に詰めて剣を振りぬくさやか。
構えられない隙は投影の後地面に突き立てた剣の束で防ぎきる。

(遠距離にもある程度対応は可能…、なら―――)

再度干将・莫耶を構え振りぬく。
狙うは人体で最も避けにくいとされる箇所、胴と脛。
受けることも叶わず体を斬り付けられるさやか。
しかしその傷はこれまでのように、すぐさま魔力による治癒がなされるだろう。

だが、その一瞬は刹那の斬り結びにおいては大きな隙となる。
魔力を治癒へと回している間に、干将・莫耶を剣に叩きつけ打ち砕く。
武器をなくしたさやか、しかしさきほどの傷はほとんど治っている。

「悪いけど―――先に剣向けたのそっちだから恨みっこなしよ!」

ならば、先より大きなダメージを与え、その後拘束すればいい。
さやかが剣を作り出すより早く、その脚を思い切り斬りつける。
おそらくそれもすぐ治癒されるだろうが、脚を失った今だけはバランスを崩すはずだ。
地面に倒れたときを狙う――――

が。

美樹さやかは倒れていない。
まるで未だ二本の足で立っているかのように直立している。

「――――!」

クロが体を反らすのと、さやかが剣を突き出してくるのはほぼ同時だった。
前髪が一束分くらい宙を舞っていった。

体を反らした勢いのまま数メートルの距離を取ったクロは、さやかの足元を見た。
そこにあったのは地面に転がっている彼女の左足。そして脛から下を無くし、――――その損失元の部分に青い音符のようなものをつかえ体を支えた美樹さやか。

「…なるほどね、ただ力任せに剣を振り回すだけかと思ったら、随分と芸達者じゃない」

確かに技量自体は低いが。
少なくとも、ただの剣士と戦うものだという先入観で戦えば、痛い目を見る相手だろう。
目の前の存在は、確かに剣士だが人間ではない、魔法少女なのだから。

390 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 00:40:56 ID:8tecQJ1Y0

「で、あんた、それだけのことができるのに何のつもりなのよ。
 まあ巴マミから大まかな話は聞いてるけど」
「―――」

巴マミ。
その名にさやかの体が一瞬反応したのをクロは見逃さなかった。
すると、逆にその言葉が引き金になってしまったかのように、口を開く隙さえ与えずこちらへと突っ込んできた。

「だから何やってんのよこのバカ…―――」

剣を受け止めつつ問いただすさやか。
しかし未だその瞳に光は戻っていない。

(人為的な狂化…?あるいは精神に作用する薬品?それとも魔術?一体何されたっていうのよ)

意識を思考に回そうとするが、体の痛みと目の前の少女がそれを許さない。
一撃、二撃、と剣を受け止める。

あの再生能力を相手にしては、干将・莫耶だけでは攻め切ることはできない。
しかし矢を射る暇はない。

「―――投影(トレース)、オーバーエッジ!!」

ならば、今手にある干将・莫耶自体を強化して立ち回る。
オーバーエッジ。干将・莫耶自体の刀身を投影により強化、威力とリーチを上げる。

巨大化した干将・莫耶の刀身は、それを受け止めたさやかの剣を粉砕。

一瞬その破壊力に動きを止めつつも再度剣を作り上げるさやか。
しかし一撃受け止めただけでも、それは砕け散る。
宙を破片が舞う中、振り上げた双剣はさやかの両肩を切り裂く。
剣を作り出す速さがクロの剣速に追いつかなくなっていたのだ。


今なら、この体を切り裂きそのソウルジェムを穿つのも容易いだろう。

「―――……」

しかしクロは、ほんの刹那の思考の後、剣を地面に突き立てると同時、力いっぱいさやかの体を蹴り飛ばした。
さやかがその背を壁にぶつけたと同時、その手に投影した小型の指又を2本投げつけた。
手首より少し広い程度の幅であったその金具がその両腕を壁に縫い付ける。

拘束を解こうと身動ぎするも、それができるほどの筋力はなかった。


「………はぁ。私も日常に染まりすぎたかしらね?」

そう呟くと同時、近くで倒れているシロナのバッグを拾い上げる。
その中から何かを取り出したクロは、さやかに近づき。

391 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 00:41:57 ID:8tecQJ1Y0


プスッ

さやかの首筋に何かを突きたてた。
まるで小さな針のようなものが突き立てられるという違和感に、体を暴れさせるさやか。

「はーい、ちょっとじーっとしててねー」

と、その物体、注射器の針を引き抜く。
が依然さやかの意識は戻らない。


1本じゃ不足かと見たクロは、そのままさらに3本の注射器を、さっきと同じように、さやかの首に突き刺し。
一気にピストンを押し込み、薬をさやかに注入した。

「……!ぁ…!」

うめき声のようなものをあげて俯くさやか。

さやかを解放して離れたクロは、空になった注射器を投げ捨てて言った。


「さあ、お話をしましょうか」




ミュウツーの手で練りこまれたサイコパワーの塊がゼロへと叩きつけられる。
しかしゼロもその手に紋様を光らせて迎え撃った。

サイコパワーは光と共に消滅、そして光の向こうからはゼロの拳が迫った。
咄嗟に目前にバリアーを展開しその勢いを落とし。

その隙に十数歩分の間合いを取った。

「お前は何だ?」
「迷う己の存在意義を他者へと問うか、迷い人よ。
 いや、人ではなかったな」

シャドーボールがゼロへと飛びかかるも、ゼロはその軌道を読み回避。
外れたそれは地面を、コンクリートの壁に穴を開ける。

「哀れなものだな。己の存在を他に問わねば、自身の居場所すらも認識できないというのは」
「何?」
「だが、それもまた世界の理から外れて生まれたものの業ということか」

拳をテレポートで回避、サイコキネシスで浮かせた大量の瓦礫を一斉にゼロに向けて投げつけるミュウツー。
しかし、勢いよく飛ばされたはずのそれはゼロの目の前で停止。勢いを失って地面に墜落する。

「くっ…」

サイコキネシスもシャドーボールも、あの光によって無効化されてしまう。
しかし己の攻撃には接近技がない。高い身体能力もサイコパワーで底上げしているものにすぎない。
あの光に触れてしまえばそれすらも失われてしまう可能性がある以上、迂闊に近づくことはできない。

392 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 00:43:31 ID:8tecQJ1Y0

と、次の瞬間すぐ傍で轟音と共に壁が吹き飛んだ。
その奥から飛び出したのはバゼット、追ってバーサーカー。

衝撃で吹き飛ぶその体を、ミュウツーは念力で受け止める。

「…ありがとうございます」
「気にするな。それよりあれの相手は厳しいのか?」
「ええ、あの存在には、私の攻撃のほとんどが通用しない。いかに拳を強化してもその概念武装を貫くことができません」
「ならばあれは私が引き受けよう。こっちの相手は引き受けてもらえるか?」
「いいでしょう。あのバーサーカーには生半可な攻撃は届かない。それだけは気をつけて」

そう言って、こちらに向かい来るバーサーカーに対してミュウツーはサイコキネシスで動きを止め。
同時にゼロに対してバゼットが突撃をかける。

戦闘力のほとんどをサイコパワーで賄っているミュウツーと、ありとあらゆる運動やエネルギーを無に返すことができるゼロとは相性が悪い。
人間であるバゼットでは、概念武装を宝具としているバーサーカーの撃退は不可能、虎の子のフラガラックももう通用しない。

無論バゼットだけにはゼロを相手できないことは先の戦いで自覚している。
だからこそ。
ミュウツーがバーサーカーを撃退できれば、バゼットとミュウツーの2vs1で戦うことができる。

サイコキネシスを緩めると同時、体から膨大なサイコパワーをもってバーサーカーを吹き飛ばす。
それは膨大な威力の衝撃波となってバーサーカーの巨体を穿ち、その半身を抉り取った。

しかし時をおかず再生を始めるその肉体を、ミュウツーはバゼットから引き離した。

「先は三人がかりで手こずった相手に一人で挑むか。それを勇気と呼ぶか、無謀と呼ぶか」
「あれが退くまでの時間稼ぎが私の仕事。それくらいのことは、私とて可能だ!」

節々が痛む体に鞭打って、バゼットはゼロへ向けて拳を振りかざした。




さやかに注入したのは、所謂精神安定剤というやつだ。
シロナさんが病院から持ってきたものの中に混じっていた。


ぶっちゃけ効くかどうかなど分からないし、効能自体も不明だった。
そもそも狂った原因自体もはっきりしていない以上下手なことをするのも問題なのだろうが、まあ後の祭りだろう。
そのために、武器を砕いて体を拘束しておいたのだが。

とりあえず、いつまで持つのかなどは分からないが、こうして意識が戻った辺り大丈夫ということだろう。

そして、

「―――何の、つもりよ?」

それがさやかの発した第一声だった。

「勝手に人に襲い掛かった上に斬りかかっておいて、第一声がそれ?」

目を伏せたまま、そう呟くさやかに対してクロが軽口を叩く。
第一声が未だ錯乱が抜けていないせいなのか、それとも素なのかは話してみなければ分からないだろう。

393 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 00:45:18 ID:8tecQJ1Y0

「――何でこんな余計なことするのよ。もう、私のことなんて放っておいてよ」
「私やお兄ちゃんに剣まで向けておいて、放っておけって方が無理なんじゃない?ってのはこの場合禁句かしらね」
「なら、殺せばいいじゃない。こんな風に体縛って正気戻して、何がしたいのよ」
「言ったじゃない。お話をしましょうって。理由も分からないのに人間を殺すのって案外寝覚めが悪いものなのよ」
「……人間?」

その言葉に、嘲笑するかのように笑うさやか。

「こんな体の私の、どこが人間なのよ?」
「うん?」


「私さ、マミさんって人みたいに正義の味方の魔法少女になりたくてさ。
 人のために戦うマミさんがかっこよくて、それで佐倉杏子や暁美ほむらみたいなやつとは違う、マミさんみたいな魔法少女になろうって。
 絶対に自分のために戦ったりなんてしないって、そう決めてたんだ」

暁美ほむらには会ったことはないが、佐倉杏子、巴マミとは顔を合わせたからクロは知っている。
だが、既に亡き佐倉杏子とは何があったのかは巴マミ目線でしか知らない。

静かに剣を収めるクロの前で、さやかは話す。
その瞳はクロを見ていない。理性は戻っているはずなのに、まるでどこか遠くを見ているかのように虚ろだった。

「もう、こんな体で人間じゃないって知ったときも、それだけあれば魔法少女として戦っていけそうな気がしたんだ。
 それで、さっき佐倉杏子がマミさんを襲ってるのを見て、マミさんを助けて。そしたらマミさんに撃たれて。
 もうどうしたらいいかも分かんなくなっちゃってさ。でもマミさんのあの目を見て、私は悪者なんだって、それだけは分かっちゃったんだ」
「………」

「マミさんに憧れて正義の味方として戦う魔法少女になったのにさ、そのマミさんに悪者だって思われて。
 あたしは最低な人間だから。いや、もう人じゃないんだっけ。
 マミさんに、マミさんの多分大事だった人を殺した最低な人間だって思われることに耐えられない。
 もういっそ、こんな私なんていなくなっちゃった方がいいんじゃないか、って」
「それで、殺して欲しくて破壊衝動に任せて暴れまわってたってわけ?くだらない話ね」
「そうね、くだらないわね。こんな願いをした私自身が
 皆を守る、そのために力を使おうって思った私が、一番助けたかった人を助けて後悔しそうになってるなんて、笑えるでしょ?」
「………」
「正直さ、ゲーチスさんがあの変な薬くれたとき、むしろ安心しちゃったんだよね。
 いっそ私を、正義の味方になりたいなんて思いも全部なくしちゃえば、もうこんな思いしなくても済むんじゃないかってさ」


それを油断、というにはクロには突然すぎた。
さやかは、その両手に剣を作り出したと同時、拘束されていた腕を切断し。
こちらの拘束を振り切って飛び出してきたのだ。

己の体を自分で切断するという行動に驚き呆気に取られている間に、さやかはこちらへ体当たりを繰り出す。
吹き飛び、倒れながらもさやかを見上げたところで、彼女の手は再生。元の通り五体満足の状態で剣を構えていた。

「ほらね、これぐらいの傷でも、すぐに治っちゃう。すぐに戦えるようになるんだ。
 これってさ、私に死ぬまで戦えって言ってるようじゃない?
 ちょうど頭の中でもさ、さっきみたいに何かが戦え、殺せ、って言ってくるんだ」

そのまま振り下ろされた剣を干将・莫耶で受け止める。
狂気は落ちたことで威力こそ下がっている剣技だが、一撃一撃の鋭さは変わっていない。いや、むしろ理性が戻った分増しているようにも見える。

「だから、もう殺してよ。
 もう私なんて生きてる価値がない。それならもう、人殺しの化物になる前に」


自分を殺せ、と懇願し斬りかかってくるさやか。
幽鬼のような瞳をしていながら、その太刀筋は本物だった。
おそらくは思考と体が一致していないのだろう。

「でないと、私――――」

394 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 00:47:02 ID:8tecQJ1Y0


そのまま一歩踏み込もうとしたさやかは、しかし動きを止めることとなる。
地面を蹴り上げようとした足が、まるで地面に縫い付けられたかのように動かない。
視線を下ろすと、その足にはクロの持っていた双剣が両足と地面を貫通し縫い付けていた。

ハッと気がついて前を向いたとき、褐色の少女は目の前で鎌のような武器を振りかざしていた。
今更避ける必要などない。どうせそんな傷、すぐに治癒されているのだから、と。

そう思って振りかぶられたそれは、さやかの顔を、左目を沿うように斜めに切り裂いた。

「――――?!」

顔から血が吹き出て左目の視界が真っ暗になると同時、感じたのは鋭い痛みだった。
痛覚遮断をしているさやかには、決して感じることのない感覚。

それだけではない。

(え、治らない…?)

本来ならば数秒でもあれば完治するはずのその傷は、一向に塞がる様子を見せない。

「そんなに、償いのために死にたいっていうなら、殺してあげてもいいわ。
 だけど、楽になんて殺さないわよ」

そう言って、クロはさやかの背後で不死殺しの剣、魔鎌ハルペーを回しながらそう告げた。
その声色はまるで押し殺したかのように冷たく、さやかに対して宣告していた。

「ギリシャ神話でペルセウスがゴルゴン退治に使った武器。これで斬られた傷はどんな魔術も魔法も治してはくれないわ。
 自然治癒に頼らない限りね。
 次はどこを斬って欲しいかしら?鼻?耳?それとも指を一本ずつ落としてあげようかしら?」
「っ…!?」

その殺気、言葉、そして顔の痛みに思わず後ずさるさやか。
貫かれた足を、強引に引っこ抜いたことで足が断面が見えるほどにスッパリと切断される。
骨が丸見えになるほどのその傷もしかし、再生するのにそう時間はかからなかった。

だが、顔の傷は治らない。

「痛いでしょ、それ?
 あんたが痛み無くして戦えるかどうかなんて知らないけどね、私にはその治癒能力の上から斬ることくらいどうってことないのよ」

彎曲した鎌の刃をその肩に突きつける。
軽く突き立てられたそれは、さやかの肩から一滴の血を流す。

395 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 00:52:06 ID:8tecQJ1Y0


「でもね、死ぬってもっと痛くて苦しいものなのよ。
 どこにもいなくて、誰にも会うことができず、後悔することもできない。
 たかだか14年しか生きてない小娘がそんなところに行きたいって?寝惚けたこと抜かしてんじゃないわよ」
「…っ!あんたに何が分かるのよ!」
「何も分からないわよ。あんたのことなんて分かりたくもないし分かろうとも思わない。
 でもね、そんなに一人で全部抱えこんだ挙句自己完結してるようなバカに襲われた人間の気持ちは、あんた分かるの?」

佐倉杏子は美樹さやかに殺され、そのまま動揺した巴マミは美樹さやかを殺したと思い込んでいる。
挙句、ゲーチスにいいように扱われ、シロナさんやお兄ちゃんを襲い。

「あんた、結局何がしたかったのよ?そんな風に人を殺す化物にでもなりたかったの?」
「ち、違う、私は…、皆を守れる正義の味方になるために…、でも、もうなれるわけないじゃない!」
「それでもなりたいって願って、戦おうって思ったんでしょ。なら、それを貫きなさいよ。あんたは選んだんでしょ?誰に言われたわけでもなく、自分の意志で。
 それとも失敗したことをグジグジ悩んで捨てちゃうような、そんな生半可な覚悟で夢持ったわけ?」
「私は、人を殺してマミさんを悲しませたんだよ!?それなのにそんなもの―――」
「だからちゃんと話しなさいよ。あんた達の間には結構な齟齬があるみたいだし、ちょっと話し合えば解決する…かは分からないけど。
 それでも今より悪いことにはならないわよ」

ハルペーを引き上げるクロ。
しかしそれでも、まださやかは立ち上がらない。

「…無理だよ。私はもう杏子を殺してるんだよ?
 マミさんに合わせる顔なんてないし、何より私自身が赦せない…」
「だーかーらー!そんなに変な面子気にして一人でウジウジしてるくらいならさっさと行動しろって言ってるのよ!
 話して赦してもらえるかどうかとか自分を赦すのがどうとか、今のあんたが気にすることじゃないでしょ」

ハルペーを投げ、干将・莫耶を投影するクロ。
次の瞬間、さやかの腹部に向かって×の字を書くようにそれを振りかざした。

「もういいわ。あんたここで死になさい」

向けられたのは強烈な殺気。
さやかはその覇気に思わず剣を前に構えその双剣を防いでしまった。

しかし返す手は執拗に腹部のソウルジェムを狙ってくる。
後ろに飛んで距離を取り、起き上がって再度剣を構えなおす。
体が勝手に構えてしまう。
その剣先は、まるで恐怖を感じているかのように小刻みに震えていた。

396 ◆JL/Ug/aQRI:2014/02/03(月) 00:53:07 ID:8tecQJ1Y0


「へえ、やっぱり死ぬのが怖いのかしら、何だかんだ言って?」
「…っ」
「でも、まだよ。もし生きたいって言うなら死ぬ気で避けなさい」

腰が引いてしまっているさやかに対して、執拗にソウルジェムを狙った連撃を突き出すクロ。
その太刀筋には、さやか視点では一切の手加減容赦が見えない。
必死で手を動かしてそれを防ぐことだけに専念する。

さやか自身、何故こんなに剣を繰っているのか全然分からなかった。
あれを一撃受ければ、それで楽になれるはずなのに。

気がつけばその両手に剣を持っていた。
白と黒の双剣を受け止めるために必死で受け止める。
その度に肩から、二の腕から血が吹き出るもすぐさま治癒される。

自分の体なのに自分の体じゃないかのような感覚。
しかし鎌で切られた左目の傷はそんな間も痛み続けた。

激しい突きに剣を弾き飛ばされそうになるも、その勢いを利用してどうにか背後に跳ぶ。
が、そこで襲い掛かったのは双剣の投擲。
回転しながら襲い掛かるそれを、肩を斬られつつも回避する。

しかしクロはその手に作り出した、干将・莫耶とは違う一本の剣による突きを繰り出す。
それを、顔に傷を作りながらも回避。しかし返す刃が、それを受け止めたさやかの剣に罅を入れた。

少しずつ割れるその剣を目前に掲げたまま押され続けるさやか。
と、次の瞬間、さやかの目が何かを捕らえた。

咄嗟にクロの体を蹴り飛ばし、己の体をその背の白いマントで包み込む。
さやかの体が完全に見えなくなったところで、彼女の背後から干将・莫耶が回転しながら急接近し。
白い布で覆われたさやかの体を切り裂いた――――


「合格よ」

と、干将・莫耶を受け止め切り裂かれた布の元に近づくクロ。
しかし、そこにあったのはさやかの背負っていたマントだけ。美樹さやかの肉体はどこにもない。

「はぁ…はぁ……」

見回すと、剣の軌道から大きく外れた場所で、魔法少女の姿を解除した美樹さやかが膝をついて座り込んでいた。

397 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 00:54:41 ID:8tecQJ1Y0

「わざとあれが返ってくるのが見える剣と位置まで動いてあげたんだから、もし気付かないようだったらそのまま斬り殺してたわ」
「……私を、殺すんじゃなかったの?」
「あんたがあれに気付かない、もしくは気付いても避けようともしない死にたがりだったらね。
 でも、あんたは避けたでしょ。つまり、生きようと思った。
 正直大変だったんだからね、その左目が見えてない分に合わせて切り結ぶなんて」

ああ、とさやかは気付く。
自分は最初からこの少女に試されていたのだ。

「人間なんて死ぬ気になれば何でもできるけどさ、本当に死のうとするのはバカよ。
 あんたがそんな体になってまでなりたいっていったものが本当の夢なんだったら、一度の失敗で命まで投げ出そうとかしないの。分かった?」
「でも、殺した杏子は帰ってこないんだよ…?」
「それはあんたが背負っていかなきゃいけないものね。
 ほら、日本の警察とかだって、人を一人殺したけど償おうって思いがある人をいきなり死刑にしたりとかしないでしょ?
 あとはあんたの気持ちの持ち様ってところでしょうね」

そう言ってさやかの顔を見る。
すると沈黙を続ける彼女の視線は足元に置かれた一つの宝石に注がれていた。

「…はは、そうかもね。でも今の私にはもう無理かな…。ほら、私のソウルジェムこんなに真っ黒になっちゃった…」

突き出されたさやかの命を示すらしい宝石は真っ黒に染まっている。
以前見た時にはもっと青く輝いていたその色はもう面影も感じられない。
あれだけの戦いをして、傷付くたびに回復を繰り返し続けたのだ。当然だろう。

「もうこれじゃ魔法、使えないと思うんだ…。グリーフシードもどこか行っちゃったしさ。
 どうせ魔法使えない私なんて足手まといにしかならない」
「世話のかかる魔法少女ね全く」

と、クロの手が一瞬光を放ったと同時に握り締められ、近寄ってきてさやかのソウルジェムを拾い上げる。
光を放っていたその手を開いてソウルジェムを寄せ、数秒の後さやかの手に投げ渡した。

「えっ」

驚愕するさやか。
その手に投げ渡された命の宝石の濁りはいくらか消え、元の青い輝きの面影が感じられるようになっていた。


「そもそもそれで死なせるつもりならあの後あそこまで斬りかかったりしないわよ」

398 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 00:55:33 ID:8tecQJ1Y0


投影魔術。物質を魔力により投影する能力。
それにより様々な武具、宝具を投影することができる。
クロはとりあえず自分に支給されていたグリーフシードの構成を読み取り、それを再現してみせたのだ。

無論、それは本物のそれと比べれば効果は一段落ちるものだが、この場しのぎにはなるだろう。

「見よう見真似でその濁りを取る機能だけは再現できるようにしてみたけど、やっぱり本物ほどは取れなかったわね。とりあえず本物見つけるまではそれで繋ぎなさい」
「何で私に、そこまでするのよ…?」
「さあ、私にも”分からない”のよ。ただ、どうしてかしらね。そうやって身に合わない理想に押しつぶされて壊れていく人って、何か見てて辛いのよね、私。


 さて、アンタ自身はそうやって無事で済んだわけだけど、まずやらなきゃいけないことって分かるかしら?」

と、クロは道の傍で倒れている一人の女性に目をやる。
彼女に寄り添っている竜は袈裟懸けに斬られた傷から少しずつ血が滴り落ちており未だ止まる気配がない。

「シロナさん、しっかりして」

近寄ってシロナの体を揺さぶるクロ。
怪我自体は重いわけではない。気絶したのは少し打ち所が悪かっただけだろう。

「う…クロちゃん…、士郎君は…?」
「お兄ちゃんなら大丈夫、もう行ったわ」
「そう、よかった…」

と、安心した声色を出すもガブリアスに目をやり表情を一変させた。

「ガブリアス!」

体中傷だらけで、特に片腕、肩から腹部にかけて袈裟懸けに斬られた傷が深い。
今ある薬では間に合わせ程度しかできないだろう。

だが、ポケモンセンターまで連れて行くことができれば、直すことも不可能ではない、という。

「ガブリアス、戻って!今ポケモンセンターまで連れて行くから!」
「ま、待って!私の魔法ならその傷を直すことも―――」
「止めておきなさい」

そう言ってガブリアスにソウルジェムを翳そうとしたさやかを、クロは止める。

「な、何でよ!私のせいでこの子がこんなになったんだから、その償いをしないと…!」
「その心がけは立派だけど、今それやったら、たぶんアンタ死ぬわよ」
「えっ…」
「傷が深すぎる。さっき回復してあげた魔力じゃ足りないかもしれないわ」

さやかがどれほど他人の治癒に使う魔法の効率があるのかははっきり分からない。
だが、クロから見た魔術の等価交換で考えたとき、この傷の回復にはかなりの魔力を消耗するはずだ。

「でも、何でそれが死ぬことになるのよ?」
「さっきグリーフシードを投影して気付いたわ。あれとあんたのソウルジェムには大きな繋がりがある」
「繋がり…?」
「あんたのソウルジェムは――――」

そう言いかけ、ガブリアスを戻すためにボールを取り出し。
クロがそれを言いかけた次の瞬間だった。

轟音と共に、傍のコンクリート製の建築物が吹き飛んだのは。

399 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 00:56:46 ID:8tecQJ1Y0


シャドーボールが宙を舞いバーサーカーへと炸裂する。
しかし地面を、建物をいくら穿とうとも、バーサーカーの肉体へは届かない。

先のサイコブレイクをもってその体を吹き飛ばしたはいいが、それ以降同じ攻撃が通用しない。
かといってサイコキネシスやサイコウェーブ、バリアでの体当たりをもっても決定打を与えられていない。
一方でバーサーカーの攻撃はバリアーが数秒も持たないほどのパワーを誇っている。

決定打が与えられないほどの防御にこちらを一撃で吹き飛ばす攻撃力。
だが、それもある程度は想定内。

ミュウツーとバゼットが完全に想定していなかったこと、それはこの戦士の不屈の精神だった。
攻撃が効かないのであれば、足場を失わせ、あるいは進行方向の道を塞ぎ、あらゆる手をもってバーサーカーを撤退させようとしてきた。
バゼットにできないことでも、ミュウツーならばサイコパワーをもってすれば可能だったから。

しかし、足場を失おうとそれを飛び越え。道が塞がれたなら障害を打ち壊して進み。
如何なる手を使っても、バーサーカーは撤退することはなかった。

細かなダメージを積み重ねていこうとも、行動を封じ進行を止めようとも。
狂戦士は決して退くことをせずに戦いを続ける。

やがてバーサーカーとミュウツーの戦いは持久戦へと形を変えた。
だが、その負担は、

「辛そうだな、魔術師(メイガス)よ」
「くっ…」

傷口が開いた左腕を押さえながらもゼロを睨むバゼット。
もう戦いの時間はかなり経過していたが、万全な状態ならいざ知らず、セイバー、呉キリカとの戦いの傷、そして先のゼロとの戦いのダメージの残った体では限界があった。
すでに左腕は痛みすら感じない。指を少し動かすのも動作が非情に緩慢だ。
内臓もいくつかやられているかもしれない。だがこちらはまだ無理は利かなくはない。

「狂戦士を先に撃退することで2対1に持ち込む算段だったようだが、アテが外れたようだな」
「確かに片腕は封じられましたが、私にはまだ切り札があります」

腕や体の治癒は後回しでいい。
ミュウツーからの支援が期待できなくなった今、自分一人の力でゼロを落とす必要がある。
だが、傷付いたこの体でそれが可能かと問われた場合。

それを可能にする道具が、今バゼットの手にあった。

バッグの中に眠る1本の短剣。
元々3本あったはずのそれも、今や残り1本。
最初の1本は呉キリカに使い。次の1本はバーサーカーの命を奪ったが共に倒しきることはできなかった。

こんな数時間で全て使い切ってしまうというのも予想外ではあった。
しかし目の前にいる魔人にはそれだけの必要に迫られる相手だ。

こんな短期間でこれほどまでに強力な相手に出会い続けるというのもそうないことだ。
帰ったら逆光剣の補充が優先だろう。

バゼットの背後、地面に置かれたバッグが光を放つ。

「!」

仮面のせいで表情は見えないながらも強い警戒をしているのが分かった。

400 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 00:57:20 ID:8tecQJ1Y0


「いいだろう、ならば次の一手で決着をつけてやろう」

そんなゼロもまた、その手に光を集める。
それを地面へと押し当てると、地に鳥のような紋様が出現し輝く。

同時にバゼットも、己の切り札の名を叫ぶ。

「――――後より出でて先に断つもの(アンサラー)」

その真名を叫ぶと同時、ゼロの姿が掻き消える。

しかしそれも一瞬。
次の瞬間、掻き消えたその姿は、バゼットの目の前に出現。

ここだ――――――

「斬り抉る戦神の剣(フラガ・ラック)!!!」





熟れた果実を潰したかのような、生々しく嫌な音が響いた。

「なるほどな、賭けは私の勝ちのようだ」
「ガハッ…!」

体をその腕で貫かれ、血を吐くバゼット。

「先にあの狂戦士に使用した光景を見ていて助かったな。それがなければ私が負けていたかもしれないな」
「…ッ、何故、フラガラックが」
「お前の切り札の特性は分からんが、まずそれを使用するのにはまず前段階としてあの剣を準備状態にする必要があるのだろう?
 ならば簡単だ。その準備段階での発動を止めればいい」
「…!?」

思い当たったのはあの光。
魔方陣のごとく地を輝かせたあれは、切り札発動の準備ではなかったのだ。
一定空間にあの全てを無に返す力を打ち込んだのだ。

本来ならば意識を奪うほどのそれも、元々のダメージにより大きく疲労していたバゼットには認識することができなかった。
さらには発動を焦ったことが逆光剣の起動の確認を怠らせた。
そして、発動したと確信したその隙を付かれてしまったのだ。


一つ一つのうちどれかを認識していればゼロとて分からなかった危ない橋。
それに、ゼロは打ち勝った。

拳のそれは心臓を避けた、とはいえ確実に致命傷のそれだった。
蘇生のルーンの発動も確認できない。腕を引き抜かれればそれで命は終わる。


「では、さようなら」

と、ゼロは腕を引き抜いた。
穿たれた胸から大量に噴出する血液。
それを己自身の体に浴びながら。

「…強、化!」

心臓が止まるまでの数鼓動、その刹那の時間に己の最後の魔術を拳にかけ。
最後の自身の拳を、ゼロに向かって叩き付けた。

401 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 00:57:52 ID:8tecQJ1Y0


「!」

ゼロが受け止める間もなく、その拳は黒い仮面を捉え。
鋭い音と共に、ゼロの頭部を強い衝撃が襲った。

そして、捉えると同時にバゼットの体は前のめりに倒れ。
もう動くことはなかった。
彼女の倒れた場所に、赤い色が広がっていく。
ゼロは、そんなバゼットを静かに見据え。

「いい拳だ」

そう言うと同時、その殴られた箇所に罅が入る。
それはやがて仮面全体を覆っていき、ゼロのマスクを粉々に砕き。
中からは端正な少年のような素顔が露になり、そのこめかみ辺りからは一滴の血が流れた。

【バゼット・フラガ・マクレミッツ@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 死亡】



ゼロが空間に向けて発動したザ・ゼロはバゼットのみに影響してはいなかった。
バーサーカーを見据え、己のサイコキネシスをもって今まさに迎え撃とうとしていたミュウツー。
相手の巨大な岩剣の一撃を避けつつ大量の瓦礫を持ち上げ、バーサーカーへと打ち込もうとした、まさにその時だった。

ガラガラガラ

「?!」

一斉にその瓦礫が地面へと落ちる。サイコキネシスがキャンセルされたのだ。
再度サイコキネシスを発動させようと念じたが、一向に発動する様子はなく。

「■■■■■■■■■■■■■■■――――――!!!」

そのまま走り来るバーサーカー。
それに対し、咄嗟にバリアを張ろうと念じ。

しかしバリアが生成されることはなく。
迫った剣はそのままミュウツーの体を直撃。
打ち上げられた白いその体は、一軒の民家へと叩き込まれ、瓦礫の山をまた一つ増やした。




そのままバーサーカーは残ったゼロへとターゲットを定め、その剣による大斬りを放つ。
向かい来る狂戦士に対しゼロは両腕に顕現させたギアス、その片方を持って受け止め、同時に狂戦士の息の根を止めるべくギアスを押し当てた。


が、それがバーサーカーの体を止めることはなく、空いたもう片方の手でその体を掴まれ地面へとその膨大な腕力で投げつけられた。
地面にクレーターを作るほどの勢いで叩きつけられたゼロは、再度振りかぶられた岩剣に対して、マントを全方位にまるでバリアのように展開。
バーサーカーの剣をも推し返す衝撃を発生させ。

その場にクレーターのみを残して戦場から姿を消した。

402 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 00:59:08 ID:8tecQJ1Y0


そうして残されたのは、バーサーカー、そして。

「ぐっ…」

瓦礫の山からどうにか這い出た、傷付いたミュウツー。
だがその頭から血は流れ、左腕の骨が変な向きに曲がっている。
自己再生での回復を図るも、回復量は微々たるものだった。出血が止まっただけマシだろうか。

そんなミュウツーに対して、残った敵を倒すべく向かってくるバーサーカー。
サイコキネシスで動きを止めようとするも、ダメージの影響かあの狂戦士の前進を止めることはできない。

ゼロの姿も見えなくなった今、これの相手は自分しかいないだろう。

「撤退するべき、か…」

戦略的撤退。
それは最強のポケモンであると謳われたミュウツーが選ぶ、初めての選択であった。




遠くのビルの上、撤退するミュウツーとそれを追うバーサーカーを、ゼロは遠く眺める。

不死身の魔女も、エデンバイタルの神々の門すらも殺しうるギアス、ザ・ゼロ。
しかしあの狂戦士には一度その命を奪ったに止まり、耐性でもつけられてしまったのか二度目以降は一向に効果がなかった。
これがアカギの手による力の弱体化の影響なのかどうかまでは分からない。

だとすると今の自分にはあれを倒す手段はないだろう。
それ以前にあれが現れる前ですらも、あの少女の砲撃に対処することができなかった。
数に押されたとも言えるし、もしガウェインのハドロン砲があれば相殺できた可能性はある。

「…全く、不便なものだな」

どれほどの蘇生が可能なのか、どれほどまでの攻撃に耐えられるのか。
ともかく、この制限下である以上は倒すことはできない。
あの狂戦士は他の者に任せるしかないだろう。放置して何者かに倒させるか。
木場勇治ならば倒し得るだろうか。

「フン、木場勇治、か。結局他人頼みとなるのか」

やはり一人で全ての参加者を、というのは無理があったのだろうか。
木場勇治の時のように、もう少し同じ殺し合いに乗った者と手を組むべきだろう。

「そういえば、政庁の方で何かあったようだな。それもギアスユーザーが関わった何かが」

戦っている最中、ほんの微かに感じた気配。
ナナリーか、アリスか、マオか、それとも呪われし弟か。
誰なのかまでは分からないし、もしかしたらギアスに類似した何か別の力による戦いだったのかもしれない。

木場勇治との待ち合わせに伝えた時刻まではまだ時間がある。
寄るか否か。


少し思考した後、ゼロはむき出しになった素顔に、新たに仮面を被って歩き出した。
微かに残った頭の傷はそのままに。

403 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 01:00:48 ID:8tecQJ1Y0



【E-3/南部市街地/一日目 昼】

【ゼロ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(大)、全身に切り傷、軽度の火傷、頭部に殴傷、回復中
[装備]:なし
[道具]:共通支給品一式、ランダム支給品0〜3(本人確認済み、木場勇治も把握)
[思考・状況]
基本:参加者を全て殺害する(世界を混沌で活性化させる、魔王の役割を担う)
1:政庁には立ち寄るべきか否か…
2:木場と手を組むが、いずれ殺しあう
3:ナナリー……
4:可能であるなら、今だけは木場のように同盟を組むに値する存在を探す
[備考]
※参加時期はLAST CODE「ゼロの魔王」終了時
※第一回放送を聞き逃しましたが、木場勇治から情報を得ました




瓦礫の中から飛び出してきた白い影。
白い体のところどころを赤く染め、折れた片腕を押さえている。

「ミュウツー!」
「っ…」

突如現れた存在、ミュウツーに嫌な記憶を掘り起こされたさやかは一瞬顔を強張らせる。

「バゼットは?」
「やられた…。私達の負けだ」
「嘘…、バゼットが…」

あの怪物のような女が敗れたという事実に驚きを隠せないクロ。
しかし驚いている暇はなかった。

「そしてすまん…、アレを振り切れなかった」

と、ミュウツーの飛び出した場所から飛び出す巨大な影。
全身から魔力の蒸気を立ち上らせたそれは、小さく唸るような音と地響きをを立てながら近づいてきた。

「な、何なのよあれ…」

その存在と、それから発せられる異常なまでの魔力に驚愕するさやか。

次の瞬間、バーサーカーが驚くような速度でその手の斧剣を振りかざして突っ込んできた。
ミュウツー、さやかは咄嗟に退避、クロは素早い動きができないシロナとガブリアスを庇って地面に伏せる。

勢いのままに建物に突っ込むバーサーカー。
その一撃はさらに建物を打ち崩し、クロ達の留まる場所に瓦礫の山を降り注がせた。

404 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 01:02:12 ID:8tecQJ1Y0



【E-3/南部市街地/一日目 昼】

【ゼロ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(大)、全身に切り傷、軽度の火傷、頭部に殴傷、回復中
[装備]:なし
[道具]:共通支給品一式、ランダム支給品0〜3(本人確認済み、木場勇治も把握)
[思考・状況]
基本:参加者を全て殺害する(世界を混沌で活性化させる、魔王の役割を担う)
1:政庁には立ち寄るべきか否か…
2:木場と手を組むが、いずれ殺しあう
3:ナナリー……
4:可能であるなら、今だけは木場のように同盟を組むに値する存在を探す
[備考]
※参加時期はLAST CODE「ゼロの魔王」終了時
※第一回放送を聞き逃しましたが、木場勇治から情報を得ました




瓦礫の中から飛び出してきた白い影。
白い体のところどころを赤く染め、折れた片腕を押さえている。

「ミュウツー!」
「っ…」

突如現れた存在、ミュウツーに嫌な記憶を掘り起こされたさやかは一瞬顔を強張らせる。

「バゼットは?」
「やられた…。私達の負けだ」
「嘘…、バゼットが…」

あの怪物のような女が敗れたという事実に驚きを隠せないクロ。
しかし驚いている暇はなかった。

「そしてすまん…、アレを振り切れなかった」

と、ミュウツーの飛び出した場所から飛び出す巨大な影。
全身から魔力の蒸気を立ち上らせたそれは、小さく唸るような音と地響きをを立てながら近づいてきた。

「な、何なのよあれ…」

その存在と、それから発せられる異常なまでの魔力に驚愕するさやか。

次の瞬間、バーサーカーが驚くような速度でその手の斧剣を振りかざして突っ込んできた。
ミュウツー、さやかは咄嗟に退避、クロは素早い動きができないシロナとガブリアスを庇って地面に伏せる。

勢いのままに建物に突っ込むバーサーカー。
その一撃はさらに建物を打ち崩し、クロ達の留まる場所に瓦礫の山を降り注がせた。

405 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 01:02:38 ID:8tecQJ1Y0


「くっ、熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!!」

降り注ぐ瓦礫を前に、クロはその手に花弁の盾を展開。
4枚の光の魔力の壁が降り注ぐ瓦礫を受け止める。

「シロナさん早く逃げて!」

そう叫ぶと同時、シロナが駆け出そうとして。

前を向いたクロの目に、こちらへとさらに斧剣を振りかぶるバーサーカーが映る。
向かってくる攻撃はシロナの退避より早く、あれを受け止める体勢を取ることができない。
皆で瓦礫に押しつぶされるか、自分があれを受け他の皆が瓦礫の下敷きになるかの2択。

(間に合わない…!)
「Graaaaaaaaaaa!!!」

そのこちらへと走り来るバーサーカーを、何かが殴りつけるかのような衝撃で押し返した。
青い気のような何かを纏ってバーサーカーへと突撃をかけ、巨体を後ろへと押しのけた存在。

「ガブリアス!?」

バーサーカーをドラゴンダイブで押し返したガブリアスは、フラフラになりながらも地面へと降り立つ。
しかしその状態で放った攻撃で体を痛めたのか、咳込むように血を吐き出す。

「もういいわ!戻って!」

シロナの撤退を確認し戻ろうとするガブリアス。
しかしその前で、すさまじい速さで体勢を立て直したバーサーカーが地面を殴りつけた。
それによって生まれた衝撃波がロー・アイアスを閉じ瓦礫を避けて戻ろうとするクロ、そしてバーサーカーの前に立つガブリアスと他の皆との間にあった道を塞いだ。

これを避けて向こう側へ行くのは難しくはないだろう。しかしそれをした場合、こちらを追ってあれはこの障害をものともせずにこの道を突っ切るだろう。
それは向こう側にいる皆を蹂躙し尽くすだろう。

合流は厳しい。

「やるしかない、か」

覚悟を決めたかのように、バーサーカーを見据えるクロ。

「ガブリアス、少しくらい時間稼いであげるからあんたは逃げなさい」

今の自分でも、このガブリアスが逃げるくらいの時間を稼ぐことはできるはずだ。
その短い時間をひきつけることくらいは。

しかし。

「グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

大きな声で吠えたと同時、ガブリアスはバーサーカーの方へと飛び込んだ。

406 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 01:03:53 ID:8tecQJ1Y0


「ちょっ…!あんた!!」

静止しようとするクロを尻目に、ガブリアスはバーサーカーにドラゴンダイブを放つ。
しかし先とは違ってその一撃はバーサーカーの目前で、受け止められ弾き返されてしまった。
瓦礫の山に放り込まれるガブリアス。

バーサーカーは勢いをそのままにこちらへと走り出す。
どうしたことか、バーサーカーは明らかにクロを狙っている。

それに対し、クロは剣を投影し構える。
作り出すのは己が投影し得る中で最強の、黄金に輝く宝剣。
人々の願いが作り上げた究極の幻想。聖剣の頂点。

約束された勝利の剣(エクスカリバー)。
しかし劣化複製されたこの聖剣の輝きは、本当のエクスカリバーに比べれば微々たるもの。

だがほとんどの武器が劣化品しか作れない以上、バーサーカーに通用するのはこれしかない。
真名解放が今の自分の魔力量では不可能という点だが、それでも殺せないわけではないはずだ。

戦車すらも吹き飛ばすであろう威力で放たれた一撃を回避。
地面に斧剣がめり込み持ち上げるまでの間に聖剣での突きを放つ。

ガキン

しかし、その一撃はまるで強固な鋼に突き刺した鈍な剣のように弾き返された。
そのまま横殴りの拳によって体を吹き飛ばされるクロ。

吹き飛ばされたクロのバッグから、何かが零れ落ちた。

エクスカリバーを杖にして立ち上がるクロ。

(やっぱり劣化品の劣化品じゃ届かない…、…それとも元からこの剣に耐性を持っている……?どっちなの…?)

零れ落ちたそれには目もくれずに、バーサーカーを見据えて思考する。
元よりそれはクロにも使えない、用途も全く分からなかったただの石だ。気にする必要もない。

だから、その石が僅かに光を放っていることを、クロは見逃していた。



「どうして助けないのよ!この向こうじゃまだ戦ってる人がいるんだよ!?」
「お前では無理だ。あそこに行ったところでまともに戦えはしない。
 それより今はここから離れることが先決だ」
「そ、そんなの、やってみないと…。シロナさんの子も戦ってるんだよ、アンタの仲間じゃないの?!」
「同属だからこそ分かることもある」

ミュウツーのサイコキネシスを使えば、この障害を取り除くことも可能だろう。
しかしそれをした場合、ミュウツーやさやかはともかく、体にダメージの残るシロナは逃げ切れないだろう。
それを一番分かっているのがシロナだからこそ、彼女は決断を下すことができないでいた。

そしてさやかも、そのダメージを負わせたのが自分自身であった事実、その罪悪感がなおのこと戦いに駆り立てていた。

407 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 01:06:47 ID:8tecQJ1Y0


しかし、そんな彼らの葛藤も長く続けられはしない。
破砕音と共に道を塞いだ瓦礫の山が崩れ、その奥から現れたバーサーカーがクロの体を持ち上げていた。


「クロちゃん!?
 ガブリアス!戻って!その傷じゃ―――」
「待て」

ガブリアスに戻るよう伝えようとしたシロナを、ミュウツーが止める。
体はボロボロの状態だったが、ミュウツーにはそのガブリアスの目が未だ屈していないように見えた。
守ろうとしているもののために命をかけるかのように。

「『こいつは私が引き受ける。あなた達は早く逃げろ』そう言っている」
「そんなこと…!できるわけないでしょ?!」
「『おそらくポケモンセンターにたどり着くまでこの体はもたないだろう。
 ならばせめて、あなた達が生きるためにこの命をかけよう』」

バーサーカーの腕にストーンエッジを放ちクロを掴んだその手を解放させるガブリアス。
地面に降り立ったクロは咄嗟に作り出した偽・偽・螺旋剣(カラドボルグⅢ)を至近距離からその体に射出。
しかし空間を捻じ切るそれもまた、バーサーカーの肉体に阻まれ弾き飛ぶ。

「そんなこと、できるわけが…!」
「『私は、チャンピオンのポケモン。自身の命惜しさのために他者を見捨ててまで生き延びようとは思わない。
 大丈夫だ、あなたは強い。私がいなくても戦っていける、生きていけると、私はそう信じている』」
「…!」
「『私はだれよりもあなたのことを見てきた。その私が保証する』」

ガブリアスがバーサーカーの背に食らいつくも、それを気に留める気配すら見せない。
クロは後ろに下がり地面に刺さったエクスカリバーを引き抜き、構える。
しかしそれは微かに閃光を放ったのみ。
バーサーカーの背にしがみついたガブリアスはそのままジェット機のごとく空気圧を噴射。その巨体を強引に押し上げ、壁に叩きつける。

だが、それでもロクにダメージを与えられてはいないだろう。

クロの傍まで離脱するガブリアス。その足元には、僅かながらもさっきよりも輝きを増した石。

「トレーナー、決断しろ」

まるで死刑宣告を迫る裁判官のように、冷酷にも聞こえる口調でそう問いかけるミュウツー。
迷っている時間は無いということだろう。そしてミュウツーも、その決断を見届けようというのだろう。
さやかには入り込む隙間などなく、ただ見ているしかできなかった。

「ガブリアス」

その呼びかけに、前を向いたままシロナに意識を向けるガブリアス。

「私はシンオウリーグ・チャンピオン、シロナよ。それはこれからも、私以上のトレーナーが現れるときまで変わらないでしょうね。
 だから、どんな時も正しく、強くなければならない。私も、私のポケモンも」

その言葉を言うシロナの声は小さく震え、握り締められた拳には血が滲んでいた。

「だから!何があっても勝ちなさい!それが私の、貴方に命じる最後の指示よ!!」

それでも、シロナはそれを最後まで言い切った。
己のポケモンに対して「死ね」というに等しい言葉を、ガブリアスの意志を信じて命じたのだ。


「グアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」


その想いに応じるかのように竜は吠え。
次の瞬間、その咆哮に反応したかのように転がった、輝く石がガブリアスに接触し。


ガブリアスの肉体を光が包み込んだ。



408 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 01:08:20 ID:8tecQJ1Y0

己の命を賭してでも主を守ろうとする想い。
シロナとガブリアスの間にあった、確固たる絆。
それは強大な相手を前にしても決して屈しない強い意志となった。

だが、それでも届かない。
かの大英雄、ヘラクレスを打倒するには力が足りなかった。

だから、ここで起こったそれはそんな彼らのために神様の叶えた奇跡だったのかもしれない。

クロの支給品に混じっていた、謎の石。
彼女がこの殺し合いの最初期にシロナから魔力を奪っていたこと。
そして、そのシロナの魔力が僅かにでも混じった中で作られただろう聖剣の輝き。

その輝きに反応して、謎の石が光を放ち。

彼らの、共に勝利を願う想いに答えるかのように、その石がガブリアスに接触したとき。
その輝きはガブリアス自身を包み込んだのだ。



彼らの生きる場所より遠い、とある地方において発見された、ポケモンの一つの大きな可能性。
本来もう進化することがないと思われたポケモン達が、既存の形態を超えて大きな力を得るという全く未知で新しい進化形態。

クロに支給されたその石――メガストーンは。
ガブリアスの、シロナへの強い想い、そして、その聖剣から放たれる黄金の輝きによって。
正確にいうなら、僅かとはいえその黄金の輝きの中にあった、シロナが持っていたであろう魔力の残滓に反応して。
ガブリアスに更なる力を、姿を与えた。


その姿を、その地方、カロス地方に生きるトレーナーたちはこう呼んでいた。
メガシンカ、と。




包み込んだ光が、まるでタマゴの内部から殻を割るかのように消滅し。
そこに姿を現したガブリアスの体は、先までとは異なるものへと変化していた。

全身の筋肉が膨張し先より更に巨大な体となり。
両腕のヒレは腕と一体化してまるで鎌のように巨大な刃へと変化し。
体に生えていた棘はさらに鋭く変化、その数を増やしてより攻撃的で凶暴な外見へと変化していた。

409 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 01:08:39 ID:8tecQJ1Y0

ミュウツーも、クロも、さやかも、シロナですらも驚愕したそのガブリアスの新たなる姿。
その中でただ一人こちらへと向かってくるバーサーカー。

しかし、更なる進化を果たしたガブリアス―――メガガブリアスは迫るバーサーカーに向けてその手の巨鎌を振りぬく。
すると振り払われたその腕に1本の線が走り、斧剣を持っていた右腕が地面へと落ちた。
それにより己が武器を失い攻撃の体勢を崩したバーサーカーに対し、メガガブリアスはストーンエッジを放ちその巨体を押し返す。

「グォォォォォォォォォォォ!」

それでも前に進み、残った左腕で斧剣を拾い上げるバーサーカー。
それに対しメガガブリアスは地に鎌を突き立てて咆哮。
地を揺らす衝撃が周囲に広がり、特にバーサーカーの足元を崩し足場を奪った。
片腕の損失と揺れる地面に、バーサーカーはバランスを崩して倒れこんだ。





「―――ガブリアス…?」

驚きと共にその変化した肉体を見据えるシロナ。
しかし、ガブリアスは前の巨人だけを見据えている。

バーサーカーの体からは未だに魔力の蒸気が上っている。
おそらくはそう時間を経たずして再生し、こちらへとの戦いを続けることだろう。
その命が尽きるまで。

「これは…奇跡……、いや、人とポケモンの、絆のカタチなのか…?」

呟いたミュウツーを、一瞬チラリと見たガブリアス。

「…分かった」

それだけのやり取りで彼の言わんとしたことを察した様子のミュウツーは、振り返ってシロナとさやかを見る。

「分かっているわ。行きましょう」
「一言でも何か言わなくてもいいのか?」
「もう、言うことはありません。ただあの子の勝利を信じて、ここを去るだけです」
「そんな…、それでいいの?大事な友達だったんじゃ―――」
「寄せ」

もう何もいうことはないというシロナに異議を発しようとしたさやかを、ミュウツーは制止する。
振り返る一瞬、ミュウツーには見えていた。シロナの顔に流れる一滴の涙が。

410 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 01:09:10 ID:8tecQJ1Y0

「クロ、お前も来い」
「ああ、ゴメン。私も残るわ」
「何?」
「あの子だけじゃあのバーサーカーの特性は分からないでしょ。なら知ってる私が舵とってあげないと」

肘から先の右腕を失くしつつも、立ち上がったバーサーカー。
それを、ガブリアスは急接近し両鎌で足を切り落とす。
支えを失い倒れたバーサーカーを抱え、宙へと飛び上がるガブリアス。

おそらくはここから離れた場所で戦うつもりだろう。

「待ちなさいよ…!今なら逃げられるでしょ!あんたまで残って、死ぬ気なの?!」
「それがさ、どうもあのバーサーカー、私を狙ってるみたいなのよね。この存在自体が問題なのか、その辺は全然分からないけど。
 だから私が行くとまた追っかけられると思うの」
「そうじゃないわよ!人には何だかんだ言っておいて、自分はヒーローみたいに一人残って死のうっていうの?!」

その言葉に、少し考えこむような仕草をした後、クロはこう告げた。

「ヒーローなんて気の利いたものじゃないわよ。必要だからそうするだけ。
 でもそうね、これだけは覚えておきなさい。命ってのは大事なものなのよ。
 ガブリアス達ポケモンだって、あんたみたいな魔法少女だって、私みたいな出来損ないの存在でもね」

そう言ってクロは、金色の聖剣を構え直し、ガブリアスが飛んでいった方へと体を向ける。

「あんたの悩みがくだらないとは言わないわ。
 でも、自分の命をそんな風に無駄にしようなんてことは止めなさい」
「ちょっと…、待って――!」

さやかの制止も聞かず、駆け出し、首だけを後ろが見える向きに動かし、クロは最後に言った。


「もし乾巧って人に会うことがあったら謝ってたって言っておいて!
 あと、イリヤに会ったら―――何か言ってたって適当なこと言っといて!」

駆け出したクロが見えなくなるまで数秒もかからず。
さやかの目前には、何も残ってはいなかった。

「………私は…」

自分の命を、守るもののために賭けて去っていった彼らの前では。
さやか自身には己の覚悟や悩みがとても小さなもののようにも思えてきて。

クロに浄化された宝石に見える光を見て。
ミュウツー達の去っていった方へと向かおうと走り出した。

「っ…、まだ大丈夫よね」

未だ体の奥で疼く破壊衝動を、治癒しない左目の痛みで塗り消し誤魔化しながら。

411 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 01:09:37 ID:8tecQJ1Y0




「少し魔力を消費しすぎた、かな…」

自分の手を見て、静かに、名残惜しそうにクロはそう呟く。
さっきまではそれなりに残っていたはずの魔力、しかし投影に告ぐ投影、そして魔術使用によってかなりの消耗をしてしまった。

特にエクスカリバー、そしてさやかのために作ったグリーフシード。この2つが大きい。
さらにバーサーカーから受けたダメージも合わせれば、ちょっとやそっとの魔力供給では追いつかないだろう。

「まあ、結構楽しめた方かしらね。短い間だったけど」

もう少しこれまでの短い人生についての回想にでも浸りたかったが、そんな状況でもない。
けど、こんなのでもまた自分らしいといえばらしいものではないだろうか。

追いついたときには、バーサーカーの左腕で押さえつけられた斧剣を両腕にクロスさせた鎌で受け止めているメガガブリアスの姿があった。
メガシンカによって強化された肉体であっても、体力までは戻らない。傷やそれまでのダメージが響き劣勢になっていたのだ。

しかし、クロが現れたことでバーサーカーの意識がこちらへと向かう。

膝をつくメガガブリアスを無視して走り来るバーサーカー。
クロはジャンプして避けるが、その突撃は重機が高速で突っ込むかのように民家を打ち砕いていく。

それに対してクロは干将・莫耶=オーバーエッジをバーサーカーの両側から斬りかかるように投げつける。

(もし推測が正しいなら、今こいつは五感ではなく魔力反応によって相手の存在を認識してる…。
 私を優先して狙うのもそのせいかもしれない…)

ならば、まず相手の感覚を惑わせ一瞬でも隙を作る。
建物の瓦礫より抜け出したバーサーカーはその魔力に気をとられている。

そして襲い来る巨剣が、バーサーカーに接触した瞬間それを壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)で爆発させる。
しかしそれでもバーサーカーに効果的なダメージは届かないだろう。

だから、この一瞬で。

「ガブリアス!」
「ガァァァァァァァァァァァァ!」

ガブリアスが攻撃する隙を作る。

無理を押して立ち上がったガブリアスは、宙に飛び上がり青い竜の気を纏ってバーサーカーへと突撃をかける。
それはかつて北崎に対しても披露した攻撃、ドラゴンダイブ。しかしメガシンカを果たしたガブリアスのそれは、あの時以上の覇気を放っている。

バーサーカーを覆う煙の奥、ガブリアスの放ったドラゴンダイブはその概念武装に覆われた肉体に強烈な衝撃を与えた。
ガブリアスの攻撃が、バーサーカーに届いたのだ。

強烈な一撃、しかしバーサーカーの命を奪うには至らない。
むしろ、その一撃で倒れそうになった体を倒れないように支えているほどだ。

しかしそれがバーサーカーの宝具を貫いてダメージを与えたのは事実。
そのまま押し倒すことができないと感じたメガガブリアスは宙を舞い旋回。

今度は真上から、重力を加えた状態でバーサーカーの巨体へと降下。
頭からその体を押しつぶさんと突撃をかけた。

その一撃に顔から血を噴出すバーサーカー。
しかし、まだ倒れない。

それを見たメガガブリアスは、更に衝突にかかった反作用で再度宙へと舞い戻る。
そこから休むことなく、その体へと三度目の突撃。

今度はその胸部に加えられたその一撃は、バーサーカーの体からまるで太い樹の枝が粉砕したかのような音を響かせ。
その胸部を真っ赤に染めたバーサーカーはそのまま壁に押し付けられた体勢で、活動を停止した。

412 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 01:10:53 ID:8tecQJ1Y0
ようやく打ち倒した、という安心感がガブリアスの中に生まれる。
ポケモンバトル用ではない、リミッターを外したドラゴンダイブの連続からくる負荷でその場に膝をつき。

「まだよ!そこを離れて!」
「!」

死んだと思ったバーサーカーの巨大な手がガブリアスを掴んだ。
その体の傷は胸部の粉砕跡から右腕の切断傷まで、全てが治りつつある。


握り締められたその手による握力は、ガブリアスの頭から嫌な音を鳴らしている。
悲鳴のような鳴き声を上げるガブリアス。

クロはその光景に急いでエクスカリバーを構えてバーサーカーへと駆ける。
腕を切り落とそうと振りかぶったそれはしかし、肉体に刃を通すことなく弾く。
しかしクロが接近したことで注意がそちらに向かったバーサーカーは、ガブリアスを放り投げクロへと拳を振りかぶった。

その攻撃を読んでいたクロは、転移魔術を発動。
拳が当たろうかというその瞬間に離れたビルの上に移動する。

「はぁ…はぁ…、やっぱり、効かないか…」

そろそろ魔力がレッドゾーンに入りつつあったクロは呼吸を荒げる。
隣に降り立ったメガガブリアスも各々の傷口が開き、肉体が限界へと近づいているようだ。

最強の聖剣も通用しない。おそらくはガブリアスのドラゴンダイブももう効果はないだろう。
しかしここで撤退すれば二人とも犬死にとなる。

バーサーカーが斧剣を拾い上げこちらへと向かってくるのが見える。

もし手があるとすれば、この聖剣の真名を解放するくらいしかない。
だが、今の自分にはそれほどの魔力は―――

「足りなきゃ、持ってくればいいのよ」

不可能ではない。
今ここにいる自分は、聖杯の奇跡を使っているのだ。その全てをこの奇跡に回せば。
かつてイリヤが黒き騎士王を相手に放ったあのインチキな一撃のように。

「人が空想できること全ては起こり得る魔法事象、まさかこんなときにあのバカステッキの言葉を思い出すなんてね」

バッグに残った宝石を全て魔力に還元。
エクスカリバーに、微かに光が灯る。
当然、まだ足りない。

自身にかかった、生存のリミッターを外す。
生きたいという願いを、破棄する。

その瞬間、膨大な魔力の噴出がクロの周囲で発生、
さながら嵐のごとく吹き荒れる膨大な魔力。
その全てを、この手にある聖剣に込める。

刻一刻と時が過ぎるたびに、己の存在が薄くなっていくのを感じる。
視界が薄れ、存在が曖昧になってくる。

413 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 01:12:03 ID:8tecQJ1Y0


ほんの数分分の魔力を残し、全てをエクスカリバーに込める。
だが、それでもまだ、もう少し足りない。
聖剣の輝きは先とは比べ物にならないほどに増している。
しかし。まだ、もう少し足りない。

と、横にいるガブリアスに目をやる。
すると、その体からはエクスカリバーの輝きにも似た、まばゆいばかりの光を放っていた。

(そうか、この子はこの輝きを通してこの姿になったから―――)

エクスカリバーの刀身を、カブリアスの体に触れさせる。
光の一部を聖剣は吸収。その輝きが最高潮までになった。

―――いける。
―――だけど、もう少し。もう一要素。
―――この一撃で、あの宝具を打ち破るために。

「ガブリアス。悪いけど最後の派手な一撃、付き合ってもらうわ」

そのクロの要望に。
ガブリアスは迷うことなく頷いた。

と、次の瞬間、破砕音と共にクロ達のいる屋上の入り口が吹き飛んだ。
障害をものともしない無茶苦茶な走りで、バーサーカーは一人と一匹のいる場所まで辿り着いたのだ。


それと同時に、数少ない原型を保っていたこの建物も、彼の移動による粉砕で傾きつつあった。
輝く聖剣を前にしてもまだ怯む様子も見せずに己が武器を振りかざす。

ガブリアスに乗ったクロは、バーサーカーの攻撃が届くと同時に宙へと飛び立つ。
同時にその衝撃で傾く建物。

崩壊を始めるそれの前、クロは宙でガブリアスの背を蹴り。
同時にガブリアスはバーサーカーへ向かって、幾度目かのドラゴンダイブを放つ。
それは、さっきのものとはまた違う、ガブリアス自身の体から放たれる光をも纏ったもの。

そして、宙を舞うクロは、そんなガブリアスへと向けて。

「――――――――――約束された勝利の剣 (エクスカリバー)!!!」

その聖剣の真名を叫び。
振り下ろした。



約束された勝利の剣。
              ラスト・ファンタズム
それは人々の想いを糧に星が編んだ、最強の幻想。
人の手にも神の手にもよらず、ただ思いだけで作り上げられた聖剣。

確かにここにあるそれは、あくまでクロの作り出した贋作に過ぎない。
故に本来ならば真名開放も、光の奔流による斬撃も起こし得ないもの。

414 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 01:13:16 ID:8tecQJ1Y0


だが、ここに一つの要素が混じる。
トレーナーとの絆、そしてメガストーンによる進化を果たした一匹の竜。

メガストーン、それは古代の王が発動した最終兵器の光から生まれたと言われる石。
その光は、生き物の生命を司りし伝説のポケモンの力を利用して発せられたもの。
そう言われているものだ。

そこにポケモンと人の強い絆、すなわち想いが加えられることで、ポケモンに新たな力を与える。
それがメガシンカとも呼ばれていた。


星が人の想いで編んだ幻想の光。
人とポケモンの間に生まれた強い絆という想いに反応する石。
二つの異なる、しかし人の内にある想いの結晶が合わさった。

そして今。
ドラゴンダイブに向かって放たれたその閃光を、ガブリアスの所持したメガストーンが吸収していた。

もしもの話である。
これが、本物の約束された勝利の剣であったなら、ガブリアスの肉体はあるいは耐えることができなかったかもしれない。
しかし、クロの作った贋作であるそれの光は、ガブリアスの内から発する竜の気と同調することで、ガブリアスへの負担を最小限に抑えていた。

そして、吸収したその輝きを、ドラゴンダイブのための気として、共に放出。
ガブリアスの体を、黄金の光が包み込む。

そうしてガブリアスの覇気と聖剣の光が合わさったそれは。



黄金に輝きし、光の巨竜へと、姿を変える。

ある世界では幻想種の象徴として君臨する万獣の頂点として。
ある世界でもまた、聖なる伝説の生き物として多くの象徴として。

頂点に立つ、究極の生物。

巨大な翼を広げ、その口に並んだ牙は鋭く。
バーサーカーを一飲みにしてしまうほどの、巨大な顎を開けて。

415 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 01:14:42 ID:8tecQJ1Y0


ギリシャの誇る大英雄へと、一気に突っ込んだ。

それはもはや、約束された勝利の剣でも、メガガブリアスのドラゴンダイブとも異なる。
それら二つの合わさった、勝利すべき巨竜の咆哮。
クロはその光の竜の名を、叫んだ。







―――――――ガブリアスナイト・エクスカリバー!!!!




その光の名を叫ぶと同時、巨竜の顎がバーサーカーを飲み込まんと開く。

しかし。
その黄金の竜の発する魔力を前にしても。
バーサーカーは一歩も退くことはない。

バーサーカーには願いが、望みがあるのだから。
その身に宿りしは、数々の試練を打ち破った証の命。
ネメアの大獅子を、レルナのヒュドラを、地獄の番犬であるケルベロスさえも打ち負かしてきたのだ。

今更その巨竜の何を恐れることがあるのか。

崩れゆく建物の上。
巨竜の咆哮に対抗するかのようにバーサーカーも咆哮を上げ。
その巨体を噛み砕かんと閉じる顎を、事もあろうに受け止めた。

両足を下顎に、両腕を上顎に。
その口が閉じることがないように、四肢を魔力に焼かれながらも受け止める。


言語にすらすることができない叫び声を共に上げ続ける一人と一匹。
バーサーカーの体が限界を迎え、その光の中に飲み込まれるのが先か。
それとも光の中、核として黄金の光を放つガブリアスに限界がくるのが先か。

たった数秒の均衡が、まるで数十秒にも数分にも感じられる。

416 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 01:15:13 ID:8tecQJ1Y0


そんな中。
光の中心で自身の体を焼く光に耐えるガブリアスが。


「グォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!」

最後の力を振り絞るかのように、巨大な鳴き声を上げ。

次の瞬間、バーサーカーの、顎を支えるその体が、大きく傾いた。
顎を支える腕の力が、じょじょに弱まりつつある。

四肢は既に手首、足首から先は焼き切れている。
だがそれでも決して屈することはなく。

「■■■■■■■■■■■■■■■――――――!!!」

声ならぬ叫び声を轟かせると同時。
巨竜の顎が、バーサーカーの腕を押しきり。
光に飲まれたバーサーカーの体を、竜の中の鮫竜の突撃が貫き。

その瞬間、光の飽和により限界を迎えたメガストーンが、ガブリアスの中で音を立てて砕け散った。



もう、起き上がる力もない。
というか視界すらもはっきり見えない。

まるで自分の生きる意味をなくして絶望したあの時のようだ。
だが、今はイリヤはいない。
自分を看取ってくれる誰かも、いない。

瓦礫の山に背を預け腰を落としたクロの脳裏に、走馬灯のように短い間にあった出来事が映る。
それらの一つ一つが大切で、かけがえのないものだった。

イリヤがいて、お兄ちゃんがいて、ママがいて、パパがいて、リズが、セラが、美遊が、学校の皆がいて。
この場で出会ったシロナさんやミュウツー、C.C.やバカなさやかがいた、そんな時間。

そういえば、やっぱりさっきのあの時に乾巧に謝っておけばよかったかな、などと、その罪悪感が心残りだった。

417 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 01:15:40 ID:8tecQJ1Y0



ガラガラガラ

そんな、皆への想いを考えていたクロの耳に、瓦礫の崩れる音が届く。
うっすらとしか見えない視界で、前を見据えたクロの目に入ったのは、黒い巨体。

それは、シュウシュウと蒸気を上げながらこちらへと近づいてくる。
この肉体が消滅するより早く、こちらへとたどり着くだろう。


「ハハ…」

ああ、結局あれだけの力をもっても、こいつの宝具を打ち破るには届かなかったのか。
死に瀕したせいか、もう賞賛の言葉すら出てきそうだった。

バーサーカーが、目の前でその斧剣を振り上げる。
それから目を逸らさずじっと見て。


「―――強いわね、バーサーカー」

そんな言葉を最後に、消滅しつつあるクロの体にその岩が叩きつけられた。




【クロエ・フォン・アインツベルン @Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 死亡】





『士郎さん、本当に大丈夫なんですか?
 その傷、人間だったらきっと全治何週間はかかりそうな傷ですよ?』
「大丈夫だって言ってるだろ。何度も言わせるなよ」

ルビーのしつこい追求に若干うっとおしさを感じつつあった士郎。
彼ら三人はあの戦場を離れ歩きでこそあるが早足で移動をしていた。

「ちょっといいか?」

口を開いたのは巧だった。

「何だよ?」
「さっきから何か気になってんだけど、どこかから剣、みたいな何かをこすり付けてるみたいな。
 そんな音、聞こえねえか?」
『え?』
「…!い、いや、俺には聞こえないぞ」

418 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 01:16:22 ID:8tecQJ1Y0


巧のその問いかけに、若干動揺するかのような反応を示す士郎。
ルビーはその様子がふと気になってしまった。

(士郎さん、まさかあなたは―――)

ある意味最悪の想像。
ルビーは、それを問いかけようとして。

「おい、どうした?」

士郎に背負われたイリヤに巧が問いかけていた。
どうしたのか、とルビーもそちらに意識を向ける。
すると、先ほどまで眠っていたイリヤが、その目から涙を流していた。

「イリヤ?!どこか痛むのか?!」
「ううん、違うの…。自分でも分からない。
 ただ、なんだかとても悲しくて、涙が…止まらなくて…」

理由も分からないのに涙を流すイリヤ。
その様子に、ルビーは士郎へ己の想像についての正誤を問うことを忘れてしまっていた。




その剣には血すらも残らなかった。
その存在の消滅と共に、存在したという痕跡全てが消え去ったのだ。

しかし、五感を奪われた彼にそれを確認する術などない。
狂戦士は何にも屈することなく、彼女のために戦いを続ける。それだけが己の存在理由なのだから。

あの魔力の竜には、一度に3つの命を食い破られた。
だが、まだこの肉体は健在だ。残った命のストックは一つであるが、まだ戦いは続けられる。

だから、狂戦士はその想いに体を乗せ、走り出そうとして。

ガタン

大きく膝をついた。
倒れこむことだけはないように、と咄嗟に斧剣を杖代わりに地につくも、その剣は先の巨竜の顎によって損傷していたのか、刀身の真ん中辺りから真っ二つに折れた。


バーサーカーには、何にも屈しない不屈の精神と、一つの願いがあった。

―――――バーサーカーは強いね。

あの雪景色の中、守り抜くと誓った小さな少女への想い。
幾重にも精神を冒されようとも決して忘れることの誓い。

だったはずなのに。


―――――バー※サ※※はつ※いね。

その小さな記憶の中に、謎のノイズが走った。

まるで、己の手でその大切なものを奪ってしまったかのような、謎の喪失感。
それが狂戦士の願いに、小さなノイズを走らせていた。

いかに不屈の精神があろうと、戦う意志があろうと。
戦う理由を見失えば、立ち上がることはできない。


きっとこのノイズも一時的なものにすぎない。
いずれ、それが消えたとき、狂戦士は再度戦いを続けるのだろう。

だが。
今この幾許かの時間は。ノイズが想いに走り続けるその間だけは。
バーサーカーには、立ち上がることができなかった。

419 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 01:16:58 ID:8tecQJ1Y0






そんなバーサーカーからしばらく離れた場所。
クロエ・フォン・アインツベルンが最後に存在したその地点。

彼女のいた証は、布の一切れ、血の一滴すらも残っていない。

そこにあったのは、一枚のカードだけ。
弓を構えた一人の人間の絵と、Archerという文字の書かれたカード。

静かに佇むそのカードは。
やがてどこからともなく吹いた風に乗って、どこへともなく飛んでいった。


【E-3/市街地/一日目 昼】


【ミュウツー@ポケットモンスター(アニメ)】
[状態]:ダメージ(大) 、疲労(大)、頭部打撲、片腕骨折
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]
基本:人間とは、ポケモンとは何なのかを考えたい
1:バーサーカーの戦う戦場から離れる
2:プラズマ団の言葉と、Nという少年のことが少し引っかかってる。
3:できれば海堂、ルヴィア、アリスとほむらとはもう一度会いたいが……
4:プラズマ団はどこか引っかかる。
5:サカキには要注意
[備考]
※映画『ミュウツーの逆襲』以降、『ミュウツー! 我ハココニ在リ』より前の時期に参加
※藤村大河から士郎、桜、セイバー、凛の名を聞きました。 出会えば隠し事についても聞くつもり
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)


【シロナ@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:ダメージ(中)、精神的に疲弊、大きな悲しみ
[装備]:ガブリアスのモンスターボール(空)@ポケットモンスター(ゲーム)
[道具]:基本支給品、ピーピーリカバー×1、病院で集めた道具、クロの矢(血塗れ)
[思考・状況]
基本:殺し合いを止め、アカギを倒す
0:ガブリアス……っ!
1:この場から離れる
2:ゲームを止めるための仲間を集める
3:N、サカキを警戒 ゲーチスはいずれ必ず倒す
4:乾巧を探して謝りたい
[備考]
※ブラックホワイト版の時期からの参戦です
※ニャースの事はロケット団の手持ちで自分のことをどこかで見たと理解しています

【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:疲労(大)、左目に傷(治癒不可)、破壊の遺伝子投与、精神安定剤作用中
[装備]:ソウルジェム(濁り65%)、西洋剣
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:私は…
1:ミュウツー達と共に、この場から離れる
※第7話、杏子の過去を聞いた後からの参戦
※「DEATH NOTE」からの参加者に関する偏向された情報を月から聞きました
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)
※破壊の遺伝子による破壊衝動は精神安定剤によって押さえられています。
  薬の効果が切れたとき、破壊衝動に飲まれるかどうかは不明です

420 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 01:17:23 ID:8tecQJ1Y0



【F-4/一日目 昼】

【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:疲労(大)、肋骨骨折、両腕両足の骨にヒビ、内臓にダメージ(小、優先的に治癒中)、正体不明の悲しみ
[装備]:カレイドステッキ(ルビー)@プリズマ☆イリヤ
[道具]:クラスカード(キャスター)@プリズマ☆イリヤ(使用制限中)
[思考・状況]
基本:この殺し合いを止める
1:何で…こんなに悲しいの…?
2:お兄ちゃん…
3:ミユたちを探す
4:お兄ちゃんを守れるよう、強くなりたい。
5:乾巧の子供っぽさに呆れている
6:バーサーカー、呉キリカに恐怖
[ルビー・思考]
基本:イリヤさんを手助けして、殺し合いを打破する
1:士郎さんを助けるために、クロさんに協力を仰ぐ
2:士郎さんの話したことはイリヤさんには黙っておく
3:呉キリカの使用した魔術の術式と言語が気になる
[備考]
※2wei!三巻終了後より参戦
※カレイドステッキはマスター登録orゲスト登録した相手と10m以上離れられません
※ルビーは、衛宮士郎とアーチャーの英霊は同一存在である可能性があると推測しています。
[情報]
※衛宮士郎が平行世界の人物である
※黄色い魔法少女(マミ)は殺し合いに乗っている?
※マントの男が金色のロボットの操縦者、かつルルーシュという男と同じ顔?



【乾巧@仮面ライダー555】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(大)、治療済み、肩から背中に掛けて切り傷
[装備]:なし
[道具]:共通支給品、ファイズブラスター@仮面ライダー555
[思考・状況]
基本:木場を元の優しい奴に戻したい
0:マミの事が少し心配
1:士郎が非常に気がかり
2:二人の元から離れたいが、仕方がないので協力する
3:衛宮士郎が少し気になる(啓太郎と重ねている)
4:暁美ほむらを探して、魔法少女について訊く
5:マミは探さない
[備考]
※参戦時期は36話〜38話の時期です
[情報]
※ロロ・ヴィ・ブリタニアをルルーシュ・ランペルージと認識?
※マントの男が金色のロボットの操縦者


【衛宮士郎@Fate/stay night】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)、胸部と背中に打撲
[装備]:干将莫邪@Fate/stay night、アーチャーの腕
[道具]:基本支給品2人分(デイバッグ一つ解体)、カリバーン@Fate/stay night
[思考・状況]
基本:この殺し合いを止める
1:イリヤ達に腕を解放したことは気付かれたくない
2:バゼット、巧と協力して、イリヤを守る。
3:桜、遠坂、藤ねえ、イリヤの知り合いを探す(桜優先)
4:巧の無茶を止める
5:“呪術式の核”を探しだして、解呪または破壊する
6:桜……セイバー……
[備考]
※十三日目『春になったら』から『決断の時』までの間より参戦
※アーチャーの腕を開放しました。投影回数、残り四回
※腕解放の副作用により、腕解放後〜さやか襲撃までの記憶が飛んでいます。
[情報]
※イリヤが平行世界の人物である
※マントの男が金色のロボットの操縦者


【F-3/市街地/一日目 昼】

【バーサーカー@Fate/stay night】
[状態]:黒化、十二の試練(ゴッド・ハンド)残り1、謎の喪失感
[装備]:バーサーカーの岩剣
[道具]:なし
[思考・状況]
0:■■■■■■
[備考]
※バーサーカーの五感は機能していません。直感および気配のみで他者を認識しています
※灰化、逆光剣フラガラック、ザ・ゼロ、サイコブレイク、ドラゴンダイブへの耐性を得ました



※シロナのガブリアス、及びメガストーン・ガブリアスナイトは消滅しました
※F-3からクラスカード(アーチャー)が風に乗ってどこかへ飛んでいきました
※E〜F-3にかけて、市街地がほぼ廃墟と化しました

421 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/03(月) 01:19:49 ID:8tecQJ1Y0
投下終了です
タイトルは>>398までが「HORIZONー彼らの求めたもの」、>>399以降が「HORIZON-金色の奇跡」とします
色々やらかしたと思うので問題点などあれば指摘お願いします

422名無しさん:2014/02/03(月) 01:22:44 ID:Xn4ile0A0
支援

423名無しさん:2014/02/03(月) 01:48:52 ID:5f8g8/OA0
投下乙です

まさかメガシンカするとは・・・主人の為に命を賭して放ったクロエとの合体技
それを真っ向から受け止めたバーサーカー、両者とも熱いぜ
そして精神が一応安定したさやかちゃんは不幸街道から脱出・・・できるのか?

424名無しさん:2014/02/03(月) 01:57:18 ID:N4bKHxoA0
投下乙です
クロとガブリアスの共闘が熱かった!猛威を振るったバーサーカーも命は残り一つか
初のキルスコア挙げたゼロは政庁跡に向かうか否か……ひょっとするとマミさんとの再戦あるかも?

425名無しさん:2014/02/03(月) 01:58:18 ID:qZOhNbEI0
投下乙です
………いったああああああああああああああ!!!バゼットおおおおおお!ガブリアスウウウウ!クロおおおおおお!
バーサーカーやばい、超やばい。もうこれサラマンダーとか言えねえ
燃える戦いだったが結果としては大敗だなこれ……士郎イリヤ、頑張れマジ頑張れ
……あ、さやか生きてる!?ヤッタァァァァァ

問題点、というか少し気になる点について以下に列挙しておきます
・現地入手の精神安定剤による破壊の遺伝子効果の解除(ラムの実など他の支給品でも代用可?)
・クロのグリーフシード投影(元々何でもありの能力だし、ジュゥべえ(かずみマギカ)的に考えて気休め程度なら問題なし?)
・メガシンカ(正確にはクロ経由?によるメガシンカ。メガシンカ自体は正規のものだしOK)
必ず修正が必要というわけでもないですが、他の方の意見も鑑みつつご検討下さい

426名無しさん:2014/02/03(月) 02:43:41 ID:euaAyMEw0
投下乙です

ここでメガシンカとか、おまw
クロエはよく頑張った。熱かったぞ
だが士郎とイリヤが…
ゼロはゼロで星を上げてそっちに行くのかあ…
z、さやかちゃんはまだ生きてるのねw

427名無しさん:2014/02/03(月) 09:22:13 ID:oNC8PplU0
投下乙です
ああ、人間としては最強戦力の一角であるバゼットがやられたか
流石のフラガラックも、相手を倒すための切札には対抗できても、フラガラックの発動自体を封じる切り札には対抗できなかったか

そしてさすがバーサーカー。最強のサーヴァントの異名は伊達じゃない
クロもガブリアスも、大英雄を相手に良く戦ったけど、戦えば負ける彼と戦えばこうなるのは必然か
そして黒のアーチャーのカードは、一体どこへ向かうのだろう

ただ問題点としては、やはりグリーフシードの投影ですね
アーチャーの固有結界“無限の剣製”の能力は、あくまで視認した武器を複製し、結界内にストックしておくというものです
アイアスのような盾や鎧は剣投影の2〜3倍の魔力を使えば一時的に投影可能ですが、流石に武具ですらないグリーフシードはできないかと(出来ても見かけだけの張りぼて)
クロの(というよりイリヤスフィールの)特性なら可能と思われるかもしれませんが、彼女の特性は「自分の魔力で可能な事」の範疇に限ります
この二つを合わせても、流石にグリーフシードという正体不明物質を投影することは、やはりできないと思います

破壊の遺伝子やメガシンカに関しては、把握率が低いので保留させていただきます

428名無しさん:2014/02/03(月) 16:59:47 ID:OgIyy4fg0
お、おお
バーサーカーは強いねがこんな形で実現してしまうとは……
メガガブもだけどクロを殺してしまったバーサーカーのノイズも切ない

429名無しさん:2014/02/03(月) 19:30:23 ID:xltV/RWcO
はかいのいでんしってぶっちゃけただの一時的な混乱だし別にいいんでね?

あとメガシンカってメガストーンだけじゃ無理なはずだけど、それもメガリングなりをセット支給って形にすりゃまあなんとでもなるし。

430名無しさん:2014/02/03(月) 19:43:15 ID:5f8g8/OA0
アニメでミュウツーがリング無しで進化してたから別にいいかと

431名無しさん:2014/02/04(火) 03:02:36 ID:UgzMZm660
ソウルジェムの投影の件を修正すれば大丈夫かな?

432 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/04(火) 12:35:07 ID:5SkTzfVkO
感想、指摘ありがとうございます
グリーフシードの指摘が多く見受けられるようですのでさしあたってはそこのくだりをクロ→さやかへと魔力供給をするという形に修正させていただきます
修正が終わり次第したらばの修正スレに投下します

433名無しさん:2014/02/04(火) 19:19:47 ID:ncXVz4cAO
投下乙です。

ドラゴンを倒してこそ英雄

434 ◆Z9iNYeY9a2:2014/02/07(金) 00:29:35 ID:.ZJbSacM0
修正版をしたらばに投下しておきました

435名無しさん:2014/02/07(金) 02:13:24 ID:ysXAiUDw0
修正お疲れ様です
おお、エロいエロい

436名無しさん:2014/02/07(金) 10:15:59 ID:gZFUtSkg0
おかしいな、修正前よりひどくなってるぞー(棒)

437名無しさん:2014/02/25(火) 00:42:56 ID:CdV4nzFk0
予約きたな

438 ◆Z9iNYeY9a2:2014/03/02(日) 20:09:17 ID:DjgU2U/M0
投下します

439無邪気な悪意 ◆Z9iNYeY9a2:2014/03/02(日) 20:10:12 ID:DjgU2U/M0
子供の思考とは分かりにくいものだ。
それも子供らしい、などと形容詞的な扱いをされるものではなく、本当の子供のような思考であったとすれば。

例えば。
蟻を潰し、手足をもいで分解することに一生懸命になったり。
カエルに爆竹を加えさせて弾けるのを見て喜ぶといった残酷なこともする。

無邪気に、悪意もなく。

そして多くのことに興味を持つ一方で、非常に飽きやすいという一面も、子供は持っている。


もしそんな子供の思考を完全に制御しなければならないということがあれば。
それをし得るのは同レベルの子供でなければ難しいのではないか。

それをしなければならないのが大人であるというのなら。
仮に世界一の名探偵であっても、容易にはいかないかもしれない。



メロを見送った後も、Lはしばらく間桐邸での資料漁りを続けた。
書庫にあった多くの本は興味深いものが多く、特に聖杯戦争というものはこの殺し合いにも通じるところがあるのではないかと考えさせられるものだった。

しかし当然ここで本を読んでばかりいるわけにはいかない。
必要な情報とそうでないものを、その頭脳で瞬時に振り分け選択し、殺し合いに関係のありそうなもの、参加者に関わりそうな情報だけを頭に叩き込む。
時間は無限ではない。今は北崎が体を休めているからこそのことだ。
外での行動に関してはメロを信じるしかないだろう。だから、今は自分にできることをやる。


人間とは、何事も意識していないことには敏感になることがある。
例えば物を探しているときに必死になっているときには目の前にあるものが発見できなかったり。
意識して耳を凝らしていたら逆に聞き逃してしまったり。

今、L自身が集中していたからこそその音に気付くことができた。

440無邪気な悪意 ◆Z9iNYeY9a2:2014/03/02(日) 20:11:39 ID:DjgU2U/M0

悲鳴のような声。
それなりに大声ではあるが、屋敷の中にいれば聞き逃してしまいそうな声。

まさか、この屋敷に何者かが近づいてきたのではないか。
そして運悪く北崎と遭遇してしまったのではないか。

本を放り出して、思わず走るL。
傍から見れば早歩きにしか見えないかもしれないが、運動の得意でないLにとっては彼なりに急いでいた。

声の聞こえた場所は入り口近く、いや、声の大きさから判断しておそらくは外だろうか。
玄関を開き外へ出たところの、更に門の近く。

「やあ、どうしたの?」

そう言って出迎えた北崎の足元には。
一人の少年が地面に伏せて蹲っていた。

「北崎さん、何をしているんですか」
「だってずっと待ってるだけってのも暇だったからね。
 そしたら外で彼が通りがかったから、少しちょっかい出しただけだよ」

ちょっかい、と北崎は言うが、彼にとってはちょっとしたことでも普通の人間にとっては大怪我になることもある。
現に今蹲っている少年も体中に傷が見られ、ところどころ打撲痕も見える。
おそらくは北崎におもちゃとして弄られたのだろう。

「ぅ…」
「…!あなたはもしかして、ロロ・ランペルージさんですか?」

髪の色、外見的な特徴、そして学生服らしき格好。
それらがかつてLが出会った人物から聞いたものと一致した。

「…、どうして、僕の名前を…」
「篠崎咲世子さんから聞いています。彼女とは一時期行動を共にしていました」

本来であれば警戒すべき対象だったのかもしれないが、今の彼は傷付き憔悴した少年にしか見えない。
その憔悴が、北崎によるものなのかあるいは別の要因からであることなのかは分からなかったが。
ただ、自分の名前を言ったLに対して若干の期待を感じるかのような声色だった彼が、咲世子の名を出した途端落胆するかのような表情を微かに見せたのは気のせいだろうか?


「ねえ、さっきのもう一回やってみてよ。瞬間移動なの?それともワープなの?」
「っ…」

しかし北崎が話しかけると、ロロの表情に強い怯えのようなものが見えた。
次の瞬間、ロロの姿が掻き消え十メートルほど離れた場所で背を向けて走っていた。

Lとて若干の驚きを感じはしたが、北崎は既に同じものを見たがゆえに特に動揺することもなく走る彼を捕えた。
10メートルほどの距離ならば、龍人態の素早さがあれば一瞬で詰められるものでしかない。

441無邪気な悪意 ◆Z9iNYeY9a2:2014/03/02(日) 20:12:54 ID:DjgU2U/M0

乱暴に地面に叩きつけられるロロ。

「北崎さん、彼には戦う意志はありません。手を出す必要はないのでは?」
「いいじゃん少しくらい。せっかく面白い力持ってる人見つけたんだからさ。
 もう一回やってみてよ。今度は何をやってるのか、見破ってみせるからさ」
「…北崎さん!」

思わず声を張り上げる。

その隙にロロは走り去っていった。
今度はさっきのような能力を使うこともなく、ごく普通に、しかし体をよろめかせながら。

「もうあれ使わないの?つまんないなぁ」


Lとて気がかりではあった。
しかし今は北崎を止めることが先決だ。

「あなたは、強い相手と戦うことで退屈をしのぐのではないのですか?
 弱い相手を弄ることが、楽しいのですか?」
「だって退屈してたんだから、しょうがないじゃん。
 それに、弱い相手を虐めるのも楽しいよ。だってそれができるって僕自身が強いってことだし」

Lは少し目の前のオルフェノクに対する認識を改める必要に駆られていた。

確かに彼は強い相手との戦いを望んでいるのだろう。
しかしそれ自体が彼の目的ではない。あくまでもそれは手段なのだ。

だからその目的を果たせるのであれば手段も気軽に乗り換えるし、弱者をいたぶることも躊躇いなくやってのける。
今自分を生かしているのも、その目的と自分の狙いが合致しているがゆえの気まぐれでしかない。
もっと彼にとって興味深いことがあれば、躊躇いなく自分を殺してそちらに乗り換えるのだろう。


「まあ、いいか。どうせ彼壊れかけてるし」

そう、興味を失ったように呟く。
ふとその言葉の中にあった、壊れかけているという言葉が気になったL。

「壊れかけてる?」
「彼の心臓の鼓動、何か変な感じなんだよね。あの瞬間移動見せた後が特に。
 それに、最初に会ったときも妙に様子おかしかったし。何ていうか、うーん…よく分からないけど」

北崎は分からない、と言った。
しかし何となくだが、Lには想像がつかないわけではなかった。

ロロ・ランペルージ。彼はルルーシュ・ランペルージの弟だ、と言っていた。
二人の関係がどのようなものなのかはLには分からない。そこまで詳しいことは聞いてはいない。
だが、もし彼が兄に対して何かしらの強い想いを持っていたとすれば。
先の放送でそのルルーシュの名が呼ばれたときに強いショックを受けたのではないか。

気がかりではあった。
しかし追うことはできなかった。

442無邪気な悪意 ◆Z9iNYeY9a2:2014/03/02(日) 20:13:12 ID:DjgU2U/M0

彼を追うということは、彼に興味を失った、目の前の北崎を放置していくということに他ならない。

「それで、どうするの?追うって言うんだったら止めないよ?」
「…言ったはずです。私はあなたを、私なりのやり方で倒す、と。それまではあなたの元を離れるわけにはいきません」
「あっそ」

今の言葉でLは嫌な予感を感じていた。
彼は気まぐれで移り気であり、そして飽きるのも早い、そういう性質なのだ。
そして、その飽きは自分にも少しずつであるがゆっくりと向かいつつあったということに。

ならば、尚のこと急がなければならないだろう。



(ロロさん、すみません)

結局Lがロロと情報交換をする暇すらもなかった。
だから、ロロが最初に出会った、咲世子の守護対象であったナナリーのことも。
ノートの力に操られている時から連れてこられたことで狂気に落ちた南空ナオミのことも。
結局彼は聞くことがなかった。



(痛い…、痛い…)

全身の、殴られ踏みつけられた場所が痛む。


あの屋敷は通りすがっただけだった。
まさかその中に魔人がいたなどと、誰が思うだろうか。

一目見て、その得体のしれない雰囲気に逃走を選ぶ判断を下すことが一瞬でできたのは不幸中の幸いだろうか。
しかしその逃走に思わずギアスを発動させてしまったことは間違いだったのかもしれない。

距離を広げ物陰に潜みながら発見されないように逃走しようと考えた。
まさか、その男―――北崎がその距離を一瞬で詰められる速度と高い五感を持っていることなど、想定外であった。

心臓の止まった苦しみで動きの鈍ったところで抵抗などできるはずもなかった。
人間の姿で、殺さない程度に体を殴って弄んで好奇心のままにもう一度ギアスを使うように促された。

そこで現れたL。
自分の名前を出されたときもしかしたらと思ったが、咲世子から話を聞いただけだったという。

(兄さん……、痛いよ…、助けて…)

痛みに耐えて逃げるロロ。
それまでずっと、兄を殺したであろう相手への憎しみで耐えていた、兄への想いが思わず噴出する。

負荷の上がったギアスの副作用による苦しみ、全身を蝕む痛み。
しかし、いくら助けを求めようと。

彼の依存しきったルルーシュ・ランペルージは、もはやロロを助けることはない。

443無邪気な悪意 ◆Z9iNYeY9a2:2014/03/02(日) 20:13:43 ID:DjgU2U/M0
【D-4/間桐家前/一日目 昼】

【L@デスノート(映画)】
[状態]:右の掌の表面が灰化。
[装備]:ワルサーP38(5/8)@現実、
[道具]:基本支給品、スペツナズナイフ@現実、クナイ@コードギアス 反逆のルルーシュ、ブローニングハイパワー(13/13)、 予備弾倉(9mmパラベラム×5)、シャルロッテ印のお菓子詰め合わせ袋。
[思考・状況]
基本:この事件を止めるべく、アカギを逮捕する
1:北崎を用いて、バーサーカーを打倒する。まずは情報集め。
2:月がどんな状態であろうが組む。一時休戦
3:魔女の口付けについて、知っている人物を探す
4:3or4回目の放送時、病院または遊園地で草加たちと合流する
[備考]
※参戦時期は、後編の月死亡直後からです。
※北崎のフルネームを知りました。
※北崎から村上、木場、巧の名前を聞きました。
※メロからこれまでの経緯、そしてDEATH NOTE(漫画)世界の情報を得ました。しかしニア、メロがLの後継者であることは聞かされていません
※Fate/stay night世界における魔術、様々な概念について、大まかに把握しました。しかし詳細までは理解しきれていないかもしれません。

【北崎@仮面ライダー555】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、使用済RPG-7@魔法少女まどか☆マギカ、虎竹刀@Fate/stay night
[思考・状況]
基本:バーサーカーを殺し、Lに見せ付けた後で優勝する
0:休息は必要と理解。
1:バーサーカーへの対抗手段を探る。
2:バーサーカーには多少の恐怖を感じている。
3:村上と会ったときはその時の気分次第でどうするか決める
[備考]
※参戦時期は木場が社長に就任する以前のどこかです
※灰化能力はオルフェノク形態の時のみ発揮されます
 また、灰化発生にはある程度時間がかかります
※Lに少しずつ飽きつつあります。

【D-4/一日目 昼】

【ロロ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:ギアス使用による消耗(大)、全身に打撲傷、精神的に疲弊、北崎に対する恐怖
[装備]:デザートイーグル@現実、流体サクラダイト@コードギアス 反逆のルルーシュ(残り2個)
[道具]:基本支給品、デザートイーグルの弾、やけどなおし2個
[思考・状況]
基本:????
0:助けて…、兄さん…!
1:政庁かアッシュフォード学園へ向かい、兄の死の真相を確かめる
2:もし兄を殺したものがいるなら絶対に許さない
?:ロロ・ヴィ・ブリタニアを陥れる方法を考える?
?:ナナリーの悪評を振りまく?
[備考]
※参戦時期は、18話の政庁突入前になります
※相手の体感時間を止めるギアスには制限がかかっています
 使用した場合、肉体に通常時よりも大きな負荷がかかる様になっており、その度合いは停止させる時間・範囲によって変わってきます

444 ◆Z9iNYeY9a2:2014/03/02(日) 20:14:48 ID:DjgU2U/M0
投下終了します

445名無しさん:2014/03/03(月) 00:13:17 ID:L3oXGFyg0
投下乙です。ロロが凄く……ボロ雑巾です
完全にとばっちりやんけ……そしてLもそろそろ危うい。反撃の道は険しいが負けるな探偵……!

446名無しさん:2014/03/03(月) 00:17:58 ID:0Kn8Lkbk0
投下乙です
ロロは運が悪かった…北崎じゃなくLに先に会ってたらまだ違ったのかもしれんが
政庁にゼロさんとロロ行くかもしれないとかマミさんのメンタルがまたボロボロになりそうw

447名無しさん:2014/03/03(月) 00:55:40 ID:xLa0xQW20
投下乙です
兄は死亡、陥れる相手も死亡、ネガキャン対象も死亡
そして自分は心身ともにボロボロ。ロロの明日はどっちだ

448名無しさん:2014/03/03(月) 22:10:56 ID:YvnP3zIkO
投下乙です。

雑巾のように乱雑に適当にいたぶられたロロ。
あきられ始めたL。
どうなっちゃう。

449名無しさん:2014/03/09(日) 01:26:36 ID:eSl9N4lk0
次の予約きた!

450 ◆Z9iNYeY9a2:2014/03/15(土) 01:18:57 ID:f4n8zAM60
投下します

451いきなりは変われない ◆2kaleidoSM:2014/03/15(土) 01:19:57 ID:f4n8zAM60
「しっかし何もない城だなぁ〜」

村上の呼び出しを受けたマオはしかし、結局城の中をあちこちうろつきまわっていた。
正直呼び出しなどと言ってもあの男のこと、すぐに出発するというわけではないのだろう。
なら少しくらい遅れていっても問題はないはずだ。

さっき立ち寄ったあの部屋は何もなかったとはいえその趣は色々な意味で興味深いものだった。
いうなれば、精神病院にも似たようなあの不思議な雰囲気。

もしかしたら何か面白い発見もあるかもしれない。
見つけることができればあるいは村上に貸しを作ることもできるかもしれない。

それがあの呼び出しからしばらくの間、マオのしていたことだった―――のだが。
予想外、というほどでもないがあまりに何もないというのは若干落胆せざるを得ないものだった。

「そろそろあの村上がいるっぽい部屋に近づいてきちゃったし、どうするかなぁ…」

そう思って、ふと一つの部屋に入ったときだった。

「ん?」

他の部屋と同じ、石造りの部屋。
何があるわけでもないような空間に、ぽつんと一つだけ存在感を放っている機械があった。
部屋の位置関係からして、ここは村上もまだ確かめていないだろうと思われる。

「あの男より先に見つけられたのは幸運かな?」

一見デスクトップPCのように見えるその機械。
ものは試しと軽い気持ちで、しかし最低限の警戒は怠らずに触れてみる。

「うん?…Yes、No…?何これ?」

中にあった文字はそれだけ。
何についての選択肢なのか全く記されていない。

命に関わるようなものではないと信じたいが、あまりに得体がしれない。
こういう時機械というのは苦手だ。リフレインを持ってしても読み取ることができない。

「……あとで村上に選ばせるというのもありかもしれないけど、もしこっちに得のあるものだったら……うーん…」

しばらくの迷いの後、マオはそれを選択してみた。
Yes、と。

452いきなりは変われない ◆2kaleidoSM:2014/03/15(土) 01:20:44 ID:f4n8zAM60











「え?」

一瞬体が光ったのを感じ取り。

次の瞬間にはマオは森の中にいた。
さっきまでいた城の中ではなく、その城が見える場所に位置する森の木々に、その周りを囲まれていた。


「…なるほど、妙に出入り口がややこしい場所にあると思ったら、そうやって出るのか」

しかも一方通行の。
不親切にもほどがあるだろう、と。
そう愚痴りたくもなったが、愚痴ったところでそれを聞く相手も発散する相手もいない。

まあ実用性のある情報ではあったが、流石に勝手に出て行くのはまずいだろう。
村上の戦ったというゼロのこともある。
となれば一旦離れてしまったあの城にまた戻らなければならない。


「面倒だなぁ全く」

誰もいないことは分かっていながらも、それでも流石にこの手間にはほんの少しは愚痴りたくもなる、とマオは早歩きでNの城に戻りながら思った。




開いたページの中にあったのは様々な形をしたアイコンだった。
赤と白の色で分けられたボールだったり。
ベルトを巻いた灰色の生物のようなものだったり。
金色の剣だったり。
リンゴだったり。
鳥をイメージさせる模様だったり。
宝石のような形をした石だったり。

見える限りで6つ。うちオーキドに見覚えのある絵が一つ。
赤と白の色で分けられたボール―――モンスターボールだった。

村上の見る前で、まずモンスターボールのアイコンをクリックするオーキド。


「これは…」
「なるほど、ただで見られるものではない、というわけですか」

そこに現れたのは所謂ログイン画面。
IDは見えないが書いてあるようで、後はパスワード入力をすればいいようになっている。

だが、問題はそのパスワードだ。

453いきなりは変われない ◆2kaleidoSM:2014/03/15(土) 01:21:22 ID:f4n8zAM60











「え?」

一瞬体が光ったのを感じ取り。

次の瞬間にはマオは森の中にいた。
さっきまでいた城の中ではなく、その城が見える場所に位置する森の木々に、その周りを囲まれていた。


「…なるほど、妙に出入り口がややこしい場所にあると思ったら、そうやって出るのか」

しかも一方通行の。
不親切にもほどがあるだろう、と。
そう愚痴りたくもなったが、愚痴ったところでそれを聞く相手も発散する相手もいない。

まあ実用性のある情報ではあったが、流石に勝手に出て行くのはまずいだろう。
村上の戦ったというゼロのこともある。
となれば一旦離れてしまったあの城にまた戻らなければならない。


「面倒だなぁ全く」

誰もいないことは分かっていながらも、それでも流石にこの手間にはほんの少しは愚痴りたくもなる、とマオは早歩きでNの城に戻りながら思った。




開いたページの中にあったのは様々な形をしたアイコンだった。
赤と白の色で分けられたボールだったり。
ベルトを巻いた灰色の生物のようなものだったり。
金色の剣だったり。
リンゴだったり。
鳥をイメージさせる模様だったり。
宝石のような形をした石だったり。

見える限りで6つ。うちオーキドに見覚えのある絵が一つ。
赤と白の色で分けられたボール―――モンスターボールだった。

村上の見る前で、まずモンスターボールのアイコンをクリックするオーキド。


「これは…」
「なるほど、ただで見られるものではない、というわけですか」

そこに現れたのは所謂ログイン画面。
IDは見えないが書いてあるようで、後はパスワード入力をすればいいようになっている。

だが、問題はそのパスワードだ。
「ここに置いてあるということは、何かしらの意味があるものだろうと考えられますが…」
「ふむ…」

つまりはこちらにも何かしらの意味を持ったパスワードを入れろということなのだろうか。
それもこの状況を見るに、おそらくはこちらが知っている何かであるはず。

「オーキド博士、何か思いつくものはありませんか?」
「うーむ、こういうものは設定した者の思考を読み取らねばならぬからのぅ」

設定した者がいるとすればアカギだと考えられるが、あの男の思考を読み取るのは容易なことではない。
ならば、ここでキーワードとなっている可能性のありそうなものを考える。

そもそも、このアイコンの配置が気になる。
この灰色でベルトのようなものを巻いた生き物、これはおそらくライダーズギアを巻いたオルフェノクをイメージしているのだろう。
そしてこのボールはおそらくモンスターボール、ポケモンを捕獲するのに捕まえる道具ではないかと思われる。
鳥のような模様。これはマオやゼロが似たような模様をその体に刻んでいたような気がする。

(つまり、これは各世界の特徴のようなものを示した記号、ということか?)

ならば、オーキド博士の選んだ、おそらくは彼自身の世界であるだろうそれの特徴とは何だ。

「オーキド博士、ポケモンに関して何か思いつくキーワードを入れてみてもらえませんか?あるいはポケモンとそのまま打ち込むか」
「うむ、やってみよう」

その後いくつかのパスワードを入力してみた結果、画面がログイン表示から切り替わった。

「まさかそのまんまとはな…」
「ちなみに何と入力されたのですか?」
「ポケモン、と。まるっきりそのまんまじゃ。まさかこんな簡単なものとは」

一旦開いたウィンドウを下げ、今度は灰色の生き物のアイコンを選択する。
おそらくはこれが自分達の世界を記したものだろう。

村上は思いつく限りで、オーキド博士に入力を頼んでみた。
さっきの法則になぞらえれば、そう難しいものがパスというわけではないだろうと、そう考えて。

だが。

「む…、どうやら違うようじゃ」
「おかしいですね、先ほどのパスワードになぞらえたはずだったのですが…。
 博士、少し私に入れさせてみてください」

村上が席を代わり、パスワードを打ち込む。
入力したのは、候補の中で最も簡単であり、それゆえに怪しさも持っていた単語。
オルフェノク。

カチッ

「入れたようです」
「むむ?おかしいのう。その単語なら間違いなく入れたはずなのじゃが…」
「…博士、少し確かめたいことがあるので、先ほど開いたページを一旦ログアウトして、もう一度入ってみてもいいですか?」
「構わんぞ」

454いきなりは変われない ◆2kaleidoSM:2014/03/15(土) 01:23:42 ID:f4n8zAM60

先のページをログアウトし、村上は再度モンスターボールのアイコンのパスを入力してみる。
間違えようがない、正確に入力したはずのもの。
しかし。

「入れませんね…。博士、今度はあなたがもう一度入力してみていただけませんか」

再度席を代わり、入力するオーキド。
するとページは先に入ったはずのところに繋がった。

「これは…」
「おそらく何かしらの認証装置のようなものが働いているのでしょう。
 入力するのはその世界の人間でなければならない、という縛りでしょうか。簡単なパスワードの代償、といったところですかね」

より多くのページを見るにはそれだけ多くの人を集めなければならないということだろう。
まあその辺りに関してはマオが戻ってきてから考えるとして、今は見られる部分に関しての考察を進めるべきだろう。

「それで、ここに書いてあるのは何か分かりますか?」
「ふむ、かなり色々な情報が載せられておるな。
 人間が作り出したポケモン、ミュウツー。
 ディアルガとパルキア、ギラティナの神話。
 これは……ゲノセクト?これは知らぬポケモンじゃな」

特定のポケモンやその関係する用語を示した言葉がずらりと並ぶ。
そんな中で、ふと村上の興味を引いた言葉があった。

「博士、このメガシンカ、というのは何なのですか?」
「メガシンカか。これはわしらの研究とは別分野のものじゃから大まかなことしか分からぬが。
 ポケモンがその成長に合わせてその肉体を進化させる、ということはさっき言ったと思うが」

成長に合わせて、あるいは環境や特定の道具によってその形態を変えるというのがポケモンにおける進化。
そう村上は聞いている。

「じゃがこのメガシンカというのはそれとはまた異なる進化なのじゃな。
 特定の石を持たせることで、戦いの時などに一時的な形態変化をすることができるというらしい」
「なるほど、我々オルフェノクの中にも感情の昂ぶりなどでその姿を一時的に変える者がいます。それと近いものなのでしょうか」
「ふむ、そちらの事情はよく分からんがそうなのじゃろうかな。
 こっちも未だ詳しいことは明かされておらんからのぅ。カロス地方のプラターヌという者が専門しておるらしいが」
「よろしければ聞かせてもらってもよろしいでしょうか?私としても知的好奇心に触れるものですし」

もう進化するはずのない存在が更なる力を発揮するというその能力。
村上にも気になるものではあった。

「まずメガシンカ、というものには二つのものが必要となる」
「ほう」
「メガストーンという石、これはポケモンに応じて別々のものを準備する必要があるらしいのじゃ」
「なるほど、それを触媒としてポケモンの力が引き出されるというわけですね」
「それともう一つ重要となるのが、ポケモンとトレーナーとの絆じゃ」
「トレーナーとの、絆…?」

予想していなかっただろうものが必要と言われて困惑を浮かべる村上。

「驚くのも無理はないかもしれんな。このメカニズムは本当によく分かっておらん。
 ただ、人間とトレーナーの絆というのは思わぬ力を発揮するものなのじゃな。さっきゲーチスという男には否定されてしまったが」
「そのような不確かなもので、力を得ることができるものなのですか?」
「絆というものは目には見えないかもしれんが、確かに存在するのじゃよ。特に人間とポケモン、という異なる種族の間であればなおのこと、な」

いや、むしろ異なる種族だからこそ、互いに足りないものを補うことで力とすることもあるのだ、とオーキドは続ける。
力を持ったポケモンと、非力ながらも様々な経験と判断力、知力を持ったトレーナーは無限の可能性を秘めたものなのだ、と。

「君たちのようなオルフェノクと人間とて、そうやって共存しておるのじゃろう?」

そしてそう、オーキドが村上に問いかけるために振り返った、その瞬間だった。

455いきなりは変われない ◆2kaleidoSM:2014/03/15(土) 01:24:35 ID:f4n8zAM60


後ろにいた村上の姿が人間の姿ではない、白い体と透明な頭部を持ったローズオルフェノクへと姿を変え。
その指から伸びた触手が、オーキド博士の胸を貫いていたのは。



「なるほどな。村上君、やはりオルフェノクと人間が共存しておるというのは嘘だったのじゃな」
「話を円滑に進めるための嘘でしたが。私としてもあなたにこれを行うのはもう少し後かと思っていました」

壁に背を預けて座り込むオーキド。
その顔色はじょじょに生気を失い、灰色に染まりつつあった。

使途再生がならなかったことに若干の落胆をする村上。
しかし村上には、そんな自分とは対照的にオーキドはその事実を驚くこともなく自然なこととして受け止めているようにも見えた。

「何が琴線に触れたか…やはり人間との絆、か」
「我々オルフェノクには人間との絆、共存など必要ありません。あるのは食うか食われるか、弱肉強食の生存競争のみです」
「そうか……」

そう告げた村上に、オーキドは何か悲しげな顔を村上に向ける。
何かを哀れみ、惜しんでいるかのような表情は決して失われつつある自分の命に向けたものではなかった。

むしろ、下手人である村上に向けたもの。

「その体になって相当辛い目にあってきたようじゃな。どれほどの迫害を受けてきたのか、わしには測り知れん」
「ええ、しかし恨みは持っていません。ただ人間という種の愚かしさというものを、はっきりと認識することができただけ幸せだったのかもしれません」

灰色に染まった体からサラリと、灰が零れ落ちる。
それは全身を覆い尽くし、崩れ落ちるまでは時間の問題、といったところにあった。

「なら、せめてこれだけは伝えておこうかの。まあ老人のおせっかいじゃと思って聞いておきなさい」
「何でしょうか」

「わしらの世界の人間とポケモン、二つの種族は今では共に生き、過ごしておる。
 もはや互いに欠かすことのできるものではないほどにな。
 じゃが、これほどまでに共存していくことにも、何もなかったわけではない。
 人間の争いに巻き込まれたポケモンも、それに立ち向かって人間と戦っていったポケモンというものも歴史には確かに存在するのじゃ」

人間の戦争に巻き込まれるポケモンを守るため、その聖なる刃を血に染めてでも戦った三闘士がいた。
理想と真実、異なるものを追い求める二人の英雄のために戦わされた2匹のドラゴンポケモンがいた。

そして、今でもポケモンと人間の間には僅かとはいえひずみを持った者たちもいないわけではない。

「それでもここまでこれたのは、先人達の積み重ねがあってようやく成り立ったものなのじゃ」

オーキドの顔の形が崩れる。

「君たちと人間の間にある歴史がどれほどのものかを知らんわしが言うのもあれかもしれんがな」

手が、足が灰となって消滅していく。

「人間というものは、いきなりは変われんよ」

そういうと同時、オーキド博士の顎が崩れ落ち。
それに追随するかのように顔が崩壊し。

オーキドの着ていた白衣を残して、全てが灰となった。


【オーキド博士@ポケットモンスター(ゲーム) 死亡確認】





456いきなりは変われない ◆2kaleidoSM:2014/03/15(土) 01:25:14 ID:f4n8zAM60
「いきなりは変われない、ですか」

村上にはそれが皮肉のようにしか聞こえなかった。

人間が変わることにそれだけの時間がかかるというのなら、急激な進化を遂げた自分達オルフェノクは何なのだろうか、と。

まだ人間だというのか。

それともその代償がこのオルフェノクの寿命だとでもいうのだろうか。

「その言葉が私に影響を与える、ということはありえないですが、それでもこの場で出会った縁です。
 記憶の片隅くらいには留めておきましょう」

そう告げた村上は、そのまま振り返ることもなく未だ点きっぱなしのPCに向かって手を動かした。




「………」
「おや、随分と長かったようですが、何か見つけられたのですか?」

城に戻ったマオだったが、彼女とて困惑せざるを得ない状況がそこには広がっていた。

積み上げられた灰に被さった、見覚えのある白衣と。
それを意に介すこともなくデスクトップPCに向かい合った村上。


何があったのかというのは彼の目を見て思考を読み取ったことで大体理解することができた。

「…やったのか?」
「ええ。ですが彼には資格がなかったようです。非常に残念だ」

そう呟く村上は、本気で残念がっているようだった。
それが、逆にマオには恐ろしかった。

「それで、何を見つけられたのですか?」
「え、…ああ、この階に機械があってね。それに触れると一方通行だけどこの城を出られるみたいなんだ。
 位置にすると、この地図に書いてある教会が近かったように思うよ。焼け落ちてたけど」
「なるほど、そこから戻ってくるのに時間がかかった、ということですか」
「そうなるね。それで、そろそろ出発したほうがいいんじゃないかと思うんだけどさ」

マオの中には焦りがあった。
早くナナリー、あるいはゼロから魔女の力を奪わなければという焦りが。

しかしそれを押すのは自分の命のカウントダウンだけではない。

目の前にいる男から本能的に感じる、強い危険信号からもくるものだった。

「そうですか、あなたにも付き合ってもらいたかったのですが、致し方ありませんね。
 私はもう少しここで作業を続けてから向かいます。ここから西と東、どちらに向かわれるのですか?」
「東だね。何やら一騒動あったみたいだし、ムラカミの探し物もそっちにあるかもしれないんだろ?」
「分かりました。では先に向かっていてください」

そう言って己の作業に戻る村上に。

マオは背を向けて走り出した。

457いきなりは変われない ◆2kaleidoSM:2014/03/15(土) 01:25:50 ID:f4n8zAM60




結局さっき通ったはずの場所と同じ道を通ることとなったマオ。

「…あいつやっぱり想像以上にやばいやつだったみたいだね」

オーキドを殺したこと自体はどうでもいい。
だが、彼を殺したことが彼自身のため、ひいては人類のためになると、村上は本気で思っているようだった。
だから、彼の傍にいたら殺意も悪意もなく、まるで本を開くかのように殺されるかもしれない。

しかし彼自体はゼロに対抗し得るという点においては非常に貴重なものだ。

では村上のあの魔手から逃れるにはどうするべきなのか。

「魔女の力、一刻も早く手に入れなければ…」

せめて彼がその気になった時にも逃げられるように。
もしゼロと彼を相打ちにできることがあったとしても、その際の生存率を上げられるように。


早くナナリーの中の力を、奪わなければいけない。


マオは知らない。
魔女の力を宿したナナリーは既に亡く。
今その力を持っているのが、彼女の親友であるアリスであるということを。

しかし、マオがナナリーの死を彼女が知るにはそう時間はかからないだろう。



【B-4/古びた教会傍/一日目 午前】

【マオ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:魔女細胞の浸食(中)
[装備]:左目の眼帯
[道具]:共通支給品一式、魔女細胞の抑制剤、モンスターボール(サカキのサイドン・全快)、コイルガン(5/6)@コードギアス 反逆のルルーシュ、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
基本:ナナリーの魔道器を奪って魔女となり、この『儀式』から脱出する
1:村上と行動するために、一刻も早くナナリーから魔道器を奪う。
2:C.C.、二人のゼロに接触したいが、無理は出来ない。
3:『ザ・リフレイン』の多用は危険。
4:抑制剤を持つものを探す
5:この『儀式』から脱出する術を探す
[備考]
※日本に到着する前からの参戦です
※海砂の記憶から断片的なデスノート世界の知識と月の事、及び死神の目で見たNの本名を知りました。
※スザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)

【B-4/Nの城/一日目 午前】

【村上峡児@仮面ライダー555】
[状態]:疲労(小)、人間態
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×3、拡声器、不明ランダム支給品0〜2(確認済み)、不明ランダム支給品0〜3(オーキド)(確認済み)
[思考・状況]
基本:オルフェノクという種の繁栄。その為にオルフェノクにする人間を選別する
 1:この場で収集できる限りの情報を集めた後、デルタギアを追う
 2:ミュウツーに興味。
 3:選別を終えたら、使徒再生を行いオルフェノクになる機会を与える
 4:出来れば元の世界にポケモンをいくらか持ち込み、研究させたい
 5:魔王ゼロはいずれ殺す。
[備考]
※参戦時期は巧がラッキークローバーに入った直後
※マオのギアス、魔女因子、ポケモンに興味を持っています
※スザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまでマオ目線)



※Nの城内には転送装置が置いてあります。使用することで古びた教会の近くまで転送されますが一方通行となっています。
  また、城内のPCには様々な世界の情報についてのせられたページにアクセスできるものがあります。パスワードは簡潔ですが選択した世界の人間が入力しなければログインはできません

458いきなりは変われない ◆2kaleidoSM:2014/03/15(土) 01:27:13 ID:f4n8zAM60
投下終了…ですが時間帯をそのままで投下してしまっていました
一日目 午前を共に一日目 昼とさせてください

459 ◆Z9iNYeY9a2:2014/03/15(土) 01:28:46 ID:f4n8zAM60
そして今気づくトリップミスorz

460名無しさん:2014/03/15(土) 04:53:40 ID:gDOTS8nQ0
投下乙です
最後の瞬間も潔い博士は流石年長者だなぁ…
原作でも勝てなかったアリスにマオはどうでるのか

461名無しさん:2014/03/15(土) 11:34:13 ID:BdQOYFOE0
投下乙です

博士がいったかあ…
村上からしたら、原作の世界観の違いからしたら埋められない溝かもしれないが後に引くなあ
やっぱりこのロワは人間と非人間が重要な要素の一つだわ
それがよく書けてるぜ
そしてマオはどうなるのかなあ…
ナナリーはもう…

462名無しさん:2014/03/30(日) 01:16:49 ID:1do34YaQ0
予約きたぞ

463 ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/01(火) 00:38:18 ID:81SLjZqQ0
投下します

464彼らの探し物 ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/01(火) 00:39:28 ID:81SLjZqQ0
「やべえ」

暁美ほむらやアリスとの情報交換を終え、ゾロアークが言っていた場所へ向けて走っていた海堂。
だが、ふと気付いた。

「ここどこだ?」

深く考えることもなく、きっとこっちだろうという勘に任せて走っていった結果、自分がどこにいるのかすらも分からなくなってしまっていたことに。

「えーっと…、あっちがさっき来た方だから多分遊園地ある方だろ?それで、今いるのは、…街が近えな。えっと、地図地図…」

今まであまり開かなかった地図を開き、現在地を確かめる。
遊園地を基準として、とりあえず近くに街が見える場所を探してみた。

どうやらD-6周辺にいるらしいことが分かった。
確かゾロアークが言っていた(らしい)場所もこの辺りだろう。
もうかなり時間が経ってしまっているとはいえ、この辺を中心として探し回っていけば何か見つかるかもしれない。

例えば、結花のいた痕跡とか、あるいはその時結花と一緒にいた誰か――ルヴィアの言っていた妹、とか。


まあ、どうやっていけばいいのかはまだ分からない。
虱潰しに探していっても、もう誰もいなくなっている可能性だって有り得るのだ。
そうなれば時間の無駄だ。

「よっし、ならこっちから出て行ってやればいいか」

さっき遊園地でもやったことを、もう一度やっていけばいいのだ。
もし結花が近くにいるなら、きっと気付いてくれるだろう。彼女の耳のよさはよく知っている。

「おーい!結花ーーーーーー!!」

さっき暁美ほむらに注意されたことは何処吹く風と言わんばかりに、大きな声を上げて走る。
自分の危険より、今はともかく結花を探したかった。
もしも自分の声が結花に届けば、と。

例えば、空を飛んでいたりする結花の耳に声が届いたら。

そう思って晴れた空を見上げたその瞬間だった。

465彼らの探し物 ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/01(火) 00:40:15 ID:81SLjZqQ0
目の前から少女が降りてきた。

「うおっ?!」

オルフェノクのようには見えない、しかしまるでコスプレのような格好をした少女。
それはまるで地面を蹴るように降りてきていた。
そして顔を上げたときにはその距離はもう目と鼻の先。

そして地面に足を下ろしたとき、はっきり顔を視認した際に汗に濡れた焦る少女の顔がはっきりと見えた。

「結花さんを、…知ってるんですか?!」



結局美遊とロロが気になって仕方なかった美遊は、まどかをおいて出てきてしまった。
休息は数時間に及び、放送も近づきつつある。

もし次の放送でロロや結花の名前が呼ばれることがあれば自分の責任だ。
なんとしても、手遅れになる前に二人を探したかった。

空からの探索に移ってみたものの、魔力循環が今までのようにスムーズにいかず探索と合わせると移動自体もかなりの遅れを取っていた。
腕の傷はほぼ治っているとはいえ無理ができるほどではない。

何もかもがもどかしい。そう思っていたその時だった。

―――おーい!結花ーーーーーー!!

(ユカ…、結花さん…?!)

突如響き渡った、長田結花を呼ぶ叫び声。
思わずその声に駆け寄っていった結果、そこにいたのは一人の男だった。

服装は若干軽そうな印象を受け、しかし浮ついているような感じではない。

だがそんな印象のことより結花のことだった。

「結花さんを、…知ってるんですか?!」
「な、何だおめえ!………あ、お前もしかして美遊とかいうやつか?」
「え、どうしてそれを…」
「よかった。今ルヴィアから言伝預かってたんだよな」

と、そう言ってポケットの中をまさぐり何かを取り出す。
乗り物を駆る人の絵が描かれた一枚のカード。

「これは…、クラスカード?」
「ルヴィアのやつから頼まれてたんだよ。これ渡せって」
「私を探してきたんですか?」
「いや、まあ、そっちはついでで結花を探しにきたんだけどな。真っ黒なキツネの…えーと、ポケモン?だったかがこの辺であったこと教えてくれてな」
「キツネ…、あの時の」

あの時長田結花にあの女性を殺させるように動いたポケモン。
彼のおかげでこの青年と引き合わせてもらえたと考えると複雑な気分でもあった。

「そういや名乗ってなかったっけな。海堂直也だ。結花とは…、まあ、なまかだと思ってもらっていい」
「仲間、ですか?」
「…おう、そうそう」
「それで海堂さん、結花さんは…」

466彼らの探し物 ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/01(火) 00:42:09 ID:81SLjZqQ0

美遊は話した。
ゾロアーク経由では聞くことができなかった様々なことを。

出会ったときの憔悴した結花の様子。
そして戦いの中、ゾロアークの手によって手を汚させられたこと。
人殺しとなったことにショックを受けて一人去っていったこと。

ゾロアークからは語られなかった結花の心中を受け、怒りを露にする海堂。


「あんのキツネ野郎……!今度会ったらどうしてくれようかなぁおい…!」
「それで、結花さんは…」
「ああ、気にすんな。俺が今から追っかけてやるからよ!
 あー、あとルヴィアのやつは、確かフレンドなんとかって所から東に向かうってよ。多分橋の近くだと思うから、早く行ってやれよ」
「私も手伝わなくて大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫。んなに気にしなくても俺と結花は深ーい繋がりがあるんだ、運命が引き合わせてくれるさ」
「好きなんですね」
「そうそう、あいつのことが好き……って!そういうわけじゃねえよ!
 なんつーか、俺が傍にいてやらなきゃ寂しそうにしてるからってだけで」
「それじゃあ、結花さんをお願いします。あと、もしかしたらロロ・ランペルージっていう人も、余裕があればでいいので気にかけてもらえませんか?」
「あー分かった分かった。いいぜ、任せとけ。
 俺は何しろただの人間じゃねえ、人間の進化系だからな。それくらいのことちょちょいのちょいだからな!」

そう言って、美遊の指した方に向かって去っていく海堂。
二人の状況そのものも慌しかったとはいえ、結局最低限の情報交換くらいしかできなかった。

『おそらく美遊様の焦りと疲労を見抜かれたのではないでしょうか』
「サファイア?」
『いえ、根拠があるわけではないのでなんとなくですが。
 しかし美遊様、私としては彼に任せるのは大丈夫だと思いますが、美遊様自身は大丈夫だったのですか?』
「……、あの人は長田さんのこと、本気で想っているみたいだから、きっと私より長田さんを守ってくれそうな気がしたから」

サファイアの言うことにもそう根拠があったわけではないが、美遊の考えにも根拠が大きかったわけではない。
ただ、彼に長田結花を任せることで美遊自身の心残りだった出来事を一つ楽にすることができた。
それは大きな収穫だったとサファイアは考えていた。

『それで美遊様、ルヴィア様のことですが』
「うん、それは―――」
「美遊ちゃーーーん!」

と、思考しようとした一人と一本の元に名を呼ぶ声が響いた。
見ると、こっちに向かってくるのは先ほど別れたはずのまどかだった。

「まどかさん?もしかして追ってきたの?」
「はぁ…はぁ…だって、…やっぱり気になっちゃって…」
「でもそれだとあなたの待ち合わせてる人と会えなくなるんじゃ」
「え、だってここ、まだ私の家からそう離れてないよ?」
「えっ」

そう言われてバッグの中にあったデバイスを取り出す。
そこを見ると、どうやらまだまどかの家があったエリア自体から離れていないようだった。

『やはり空からの移動だと効率が悪いのかもしれません』
「………」
『ルヴィア様の元に急がれますか?』

467彼らの探し物 ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/01(火) 00:42:38 ID:81SLjZqQ0

美遊としてもそうしたいのは山々ではあった。
が、しかしと時計を見ながら美遊は言う。

「放送が近い。彼女を家まで送った後、放送を聞いてから判断する」
『了解しました』
「…もしかして、私、邪魔だったかな…?」
「気にしないで。こっちのやらなきゃいけないことにも少しキリがついたから、今なら大丈夫」

そう、今なら自分にもある程度の余裕はできた。
だから、ある程度は鹿目まどかのことに気を配る余裕もできたと思う。

まずは一旦放送を聞いてから全てを判断しよう。
長田結花とロロ・ランペルージの無事を願って。



そうして放送を待つ少女二人。
しかし彼女達が放送によって受ける影響はどうなるのか、今はまだ分からない。
片やかつて一時的とはいえ心を通わせ、この場で再会を約束した少女が。
片や義姉、友、先生、かつて拳を交えて戦った魔術師の名が。
その放送によって同時に呼ばれることになるのだから。


【D-6/市街地/一日目 昼(放送直前)】


【海堂直也@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト】
[状態]:体力消耗 、軽い打撲
[装備]:無し
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:人間を守る。オルフェノクも人間に危害を加えない限り殺さない
1:結花と合流後、木場を急いで探す。
2:パラロス世界での仲間と合流する(草加含む人間解放軍、オルフェノク二人) 。木場と結花をとにかく優先する。
3:プラズマ団の言葉が心の底でほんの少し引っかかってる
4:村上とはなるべく会いたくない
5:結花……! 木場……!
[備考]
※草加死亡後〜巧登場前の参戦です
※並行世界の認識をしたが、たぶん『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』の世界説明は忘れている。
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました……がプラズマ団の以外はどこまで覚えているか不明。


【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:擦り傷が少々
[装備]:見滝原中学校指定制服
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0〜3(確認済み)
[思考・状況]
1:私、どうしたらいいんだろう…
2:さやかちゃん、マミさん、ほむらちゃんと再会したい。特にさやかちゃんと。でも…
3:草加さんが追ってくるのを待つ
4:乾巧って人は…怖い人らしい
5:オルフェノクが怖い…
[備考]
※最終ループ時間軸における、杏子自爆〜ワルプルギスの夜出現の間からの参戦
※自分の知り合いが違う人物である可能性を聞きました
※美遊と情報交換をし、バトルロワイヤル開始からこれまでの出来事と遭遇者、「Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ」の世界の情報を得ました。(後者は難しい話はおそらく理解できていません)
しかし長田結花がオルフェノクであることは知らされていないため、美遊の探す人物が草加の戦ってる(であろう)オルフェノクであることには気付いていません。

【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:ダメージ(小)、左腕に大きな傷(処置済み、大体は治癒、ただし激しい戦闘を行えば傷が開く可能性有り)
[装備]:カレイドステッキサファイア
[道具]:基本支給品一式、クラスカード(アサシン)@プリズマ☆イリヤ、支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]
基本:イリヤを探す
1:鹿目邸にて放送を聞いた後、ルヴィアと合流するかどうか考える
2:結花、ロロは海堂に任せる
3:知り合いを探す(ロロの知り合いも並行して探す)
3:結花の件が片付いたら、橋を渡って東部の市街地を目指す?(衛宮邸にも寄ってみる)
4:真理の知り合いと出会えたら、真理のことを伝える
5:ナナリー・ランぺルージには要警戒。
6:『オルフェノク』には気をつける
7:まどかの世界の魔法少女を調べる
[備考]
※参戦時期はツヴァイ!の特別編以降
※カレイドステッキサファイアはマスター登録orゲスト登録した相手と10m以上離れられません
※まどかと情報交換をし、バトルロワイヤル開始からこれまでの出来事と遭遇者、「魔法少女まどか☆マギカ」の世界の情報を得ました。
  しかし草加雅人が現在オルフェノク(長田結花)と戦っているであろうということは知らされていません。

468 ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/01(火) 00:44:41 ID:81SLjZqQ0
投下終了です

そして一つ意見をいただきたいのですが、そろそろ放送に入ってもいい頃ではないかと思うのでしばらく後になりますが次辺りに第二回放送を予約しようと思うのですが
大丈夫でしょうか?

469名無しさん:2014/04/01(火) 01:58:27 ID:rWtygozg0
投下乙です
今の長田さんはセイバーと一緒に居るんだが海堂大丈夫だろうか…
自分は放送行っても大丈夫だと思いますよ

470名無しさん:2014/04/01(火) 20:34:25 ID:Gi67xNd.0
投下乙です!
美遊は今回の放送聞くのキツイな
海堂は結花に会えれば必然的にセイバーと戦うことになるんだな…一人で

私も放送は行ってもいいと思います

471名無しさん:2014/04/01(火) 21:17:41 ID:1BFEYy9k0
投下乙です

海堂はいいムードメイカーだと思うが結花に会いに行くのは…
せめてもう少し早ければ…
まどかもおりこがまだ近くにいた様な…

放送の件は書き手に任せます

472名無しさん:2014/04/02(水) 03:04:43 ID:NlXaUzKI0
昼時間行ってないのは、C.C.、マミ、メロ、草加、ゲーチス、タケシ、真理、N
即時行動が必要というわけではない、かな?

473名無しさん:2014/04/02(水) 09:37:51 ID:ZtAMEEbQ0
タケシ真理Nはいってるよ

474名無しさん:2014/04/04(金) 04:17:05 ID:nBiGMvHM0
投下乙です。

結花の元に急ぐ海堂。しかし、その周りにはマーダーのセイバーや情緒不安定のロロに知り合いで同じ対主催なのに確実に敵対するであろう草加さんが待ち受けている。
…死亡フラグが立ったな海堂。

475 ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/16(水) 23:43:34 ID:0GI0f5Gw0
したらばに放送案を投下してきました

476 ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/17(木) 23:45:28 ID:j55JeAyY0
放送投下します

477第二回定時放送 ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/17(木) 23:47:03 ID:j55JeAyY0
カタカタカタカタ

明かりも最低限にしかつけられていない、薄暗い空間に。
高速でキーボードを叩く音が響き渡った。

カタカタカタカタ

その音を鳴らす主は、部屋の暗さにも殺風景な様子にも全く気を払うこともなく。
ただ一心不乱にコンピュータの前でキーボードを叩き続けていた。

薄暗い部屋の中で、コンピュータから漏れる光の反射する眼鏡と汚れのない真っ白な白衣が異様な存在感を放っている。
その眼鏡の反射による光のせいで、奥の瞳の様子を窺い知ることはできない。
が、もとより今この部屋にいるのは彼一人だけ。たとえそうであっても彼の顔を気にするものは一人として存在していなかった。

たった今、そこに一つの侵入者が現れるまでは。

真っ暗に近い空間に、ほんの少し濃い影が形成されたかと思うと、そこから真っ赤な瞳と白衣にも劣らぬ純白な体毛を持つ一匹の生物が、姿を現した。

インキュベーター。多くの者はキュゥべえと呼ぶ存在。
黒き猫に擬態していないということを除けば会場にいるそれと全く同一な存在の一端。

それが、その空間で作業を続けるその男に静かに話しかけた。

「さて、作業の調子はどうだい?ドクター・アクロマ」
「おや、インキュベーター、…いえ、キュゥべえ君ですか。何か御用ですか?」

問いかけるキュゥべえに、眼鏡と白衣の男、アクロマはキーボードから目を離すこともなく答えた。

「いや、そろそろ放送だからね。作業はどうかなと思って声をかけさせてもらったよ。ちょうど君に聞きたいこともあったし」
「ほう、聞きたいこと、ですか」
「うん。作業の調子はどうだい?」

ピョン、とアクロマのいじるキーボード近くの机の上に乗りながらキュゥべえは再度問いかける。
無感情な顔とピョコピョコ動く尻尾がかなりの鬱陶しさを感じさせるはずだがそんなことを気にも留めずアクロマは答えた。

478第二回定時放送 ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/17(木) 23:48:14 ID:j55JeAyY0

「ええ、ポケモン強制制御装置、そして例のものも全て滞りなく動いています。
 この前のテッシードに続きこの放送までの間に幾匹かのポケモンが散ったようですが、それらに大きな影響を与えるものはありません」
「そうかい、それはよかった。じゃあ、君自身の目的のデータは集められたのかな?」
「それはもう!散っていったポケモン達の多くは特に大きな影響を与えるものがいません。
 しかし一匹、チャンピオン・シロナの持つガブリアス、彼は素晴らしい!まさしく奇跡としか呼び様のないデータを私にもたらしてくださいました!」
「なるほど、じゃあやっぱりあれを支給したのは君だったんだね」
「ええ、正直私自身あれの情報を収集しきれたわけではありませんでしたが、あれ、メガストーン自体はガブリアスのものに限らなければ他にも資料としては所持していますしね」

キュゥべえが問いたかったのはまさしくそれだった。
この殺し合いのために各世界の情報を集めた際、一つ一つの世界の大まかな情報は一様に把握したはずだった。
しかし、完全に進化しきったポケモンがあのように形態変化を引き起こす現象など、キュゥべえは知らなかった。

「あれはポケモンと人間の絆に反応し、絆を持った者が何かしらの信号をメガストーンに送ることでポケモンに対して一時的な進化を与えるものなのですよ。
 本来であればメガリングという道具が最も使われているものなのですが、まさかあの偽の聖剣を介してメガストーンを反応させるとは、いやはや」
「まあすごいものだったとは思うよ。そのせいであのバーサーカーが一度に3回も命を失ったんだからね」
「ええ!それですよ!
 ポケモンの主を守りたいという思いが、あの一瞬の命の素晴らしい輝きへと変換され、あのバーサーカーを打ち破るほどの戦闘能力を引き出したのです!
 惜しむらくは、その結果ガブリアス自身が消滅してしまい再度あのデータを得ることは不可能になってしまったことですかね。もう少しであの力の源に気づけそうだったのですが、残念です」

元々彼が協力者に選ばれたのは、ポケモンに対する各方面での様々な知識を買われてのものだった。
ポケモンに詳しい研究者の中で、彼ほどポケモンに対し純粋で、だからこそ狂気に満ちた扱いをすることができる者はいない。
自分の欲望に正直であり、そのためならばポケモンを慈しむことも傷つけることも同時に行う。
その内面はどこまでも度し難く、しかしそれ故に利害さえ一致するならば協力させるのも容易い、とはアカギの談だった。

「はぁ…、まあいいや。ポケモンに関しての扱いは完全に君に一任していたからね、仕方ない」
「それを言うなら、君のあの行動も問題ないと言えるのですか?」
「おや、気付いていたんだね」
「ええ。あの場所にはポッチャマがいましたからね。監視装置を通してあなたの存在を確認させてもらいました。何を話したか、まではこちらから聞き取ることはできませんでしたが」

それは失念だった、とキュゥべえは思った。ポケモン自身が認識することに関しては一応警戒しておいたが、ポケモン自体についていた監視装置までは盲点だった。
興味のあることに関しての探究はつくづく尽きない男だ、ある意味では油断ならない。

参加者自体の監視は自分が担っていることが救いになったというところだろうか。

「まあ私の仕事はあくまでもこの殺し合いを通じてポケモンの可能性を研究することです。あなた達の思惑には特に興味がありませんので。
 無論、アカギさんに伝えるつもりもないのでご安心を」
「そうかい。それは助かったよ。ところでアクロマ、君はこの殺し合いの中で気になる存在はいるかい?」
「気になる存在、ですか。そうですね…、やはり多くのポケモン達の存在が気になっていますが、今気になっているのはポッチャマでしょうかね?」
「どうしてだい?」
「彼は今、誰の支配下にもおかれていないからですよ。あのモンスターボールはユーフェミア・リ・ブリタニアの持っているものでした。
 しかし彼女はポッチャマに何を命じることもなく、その結果ポッチャマは彼女の元を離れ、今は暁美ほむら、アリスの両名と行動を共にしている。
 そしてその間にユーフェミアは死亡した。では今彼を縛っているものは、一体何なんでしょうかね?」
「僕に聞かれても困るよ」
「あとは参加者であるミュウツー、彼もまた興味深い状況にありますね。
 ポケモンの中でも上位に君臨するほどの潜在能力を備えていながら、今の彼の力は過去のものに遠く及ばない。
 もしその迷いを振り切ることができれば、彼もまた新たな段階へと進むことができるのではないかとも思うのですよ」

479第二回定時放送 ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/17(木) 23:48:59 ID:j55JeAyY0


彼の研究に対する興味が大きすぎるというのも考え物だ、とキュゥべえは思っていた。
殺し合い当初はポケモンでありながら参加者でもあるニャース、ミュウツーに対して大きな興味を持っていた。
しかしニャースが人間とのコミュニケーション能力を得ることと引き換えに進化する力、ポケモンとして新たな技を得る学習能力を失ったと知って以降そうニャースに対して大きな興味を持つことはなくなったようだった。

好奇心というほどでもないが、キュゥべえが少し気になったのは、彼がNに対して如何なる思いを持っているかだった。
人間でありながらあまりにポケモンに偏った思考を持ち、ポケモンとコミュニケーションを取ることができる存在。
アクロマならば放っておく存在ではないはずだが、彼に対する思いがキュゥべえから見て表に出てこないというのが若干気にはなっていた。

「まあ何事もなく進行するなら君に一任するけどさ、何にしてもあまりイレギュラーなことは困るよ?」


そう告げて、キュゥべえはアクロマの作業する部屋から退出しようとして、一度振り返った。

「そういえば、あの時にポケモンに進化を引き起こしたあの石、他にも支給しているのかい?」
「フフフ、どうでしょうかね?それは教えられません。まあ、これからの進行でのお楽しみですね」


「全く、彼にも困ったものだよ。一応こっちでも手を打っておく必要があるかな。っと、そろそろ時間か」

こちらとも特に何か話をすることもなく一人静かに篭っているアカギが唯一表に現れる定時放送。
それが今、鳴り始めていた。





「12:00、定刻通り死亡者、並びに禁止領域の発表を始めよう」

その言葉はとても無感情に、そして事務的に始まった。
正午ぴったりの時間。アカギの声が、殺し合いの会場に平等に鳴り響く。


「死亡者は
 ナナリー・ランペルージ
 ロロ・ヴィ・ブリタニア
 ユーフェミア・リ・ブリタニア
 ニア
 藤村大河
 クロエ・フォン・アインツベルン
 ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト
 バゼット・フラガ・マクレミッツ
 オーキド・ユキナリ
 佐倉杏子
  呉キリカ
 以上の11名」

480第二回定時放送 ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/17(木) 23:49:26 ID:j55JeAyY0

人数は先より一人多い11人。しかしそのことに特に感慨をもらすこともなく、アカギは淡々と、事務的に放送を続ける。

「次に禁止エリアだ。
 13:00よりA-6、
 15:00よりF-2、
 17:00よりD-7が禁止領域となる。以上だ」

そう告げるのを最後に、短く、しかし参加者にとっては大切な放送が終了した。

死者に関しては特に思うところはない。

禁止エリアに関しては先はとある参加者にも一応気を配った配置にしたはいいが、にも関わらず彼は今その禁止エリアのすぐ近くにいる。
そのような小さな気遣いをしたところであの大英雄には無駄に働くと分かってしまった以上、配置に気を使うこともしなくなったのだ。
まあ2時間もあればさすがに移動はするだろうし、もしそれで死ぬようならばその時はその時だ。

「それで問題はないのだろう、キュゥべえ?」
「そうだね、先のことを想定しておいてもそれがその通りにいくとは限らないのははっきり分かったからね」
「お前としてはそのようなイレギュラーも起こってくれたほうが助かるのではないか?」
「確かに、エントロピーを回収する上である程度の刺激はあったほうがいいけど、今の僕は静観寄りさ。特に何か大きなことをしようとも思わないよ」
「そうか」

去っていくアカギ。
次に彼が出てくるときは6時間後の放送か、あるいは何かよほどのイレギュラーが起きたときだけだろう。

そう、彼は静かに時を過ごす。
無感情で静寂な時を好んでいる。

「人間でありながら、人間の感情を否定する。じゃあ、それを願う君自身の感情は、一体何なのかな、アカギ?」

ふと呟いたそんな問いかけを、答えるものも聞き届けるものもその場にはいなかった。



アクロマのいる部屋ともアカギの篭る空間ともまた違う場所に一人佇む男。
その背からは歳から想像することはできないほどの威厳を発し続けている。

そんな背に、声をかける者が一人。

「ねえ、シャルル」

桃色の髪をした14、5くらいの少女。
しかし彼女の彼、シャルル・ジ・ブリタニアの呼び方は、もし彼の世界であったならば不敬罪で殺されてもおかしくないだろうもの。

そんな言葉に顔色一つ変えることなくシャルルは応える。

481第二回定時放送 ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/17(木) 23:49:56 ID:j55JeAyY0

「アーニャか。何用だ?」
「今は誰もいないわ。マリアンヌで大丈夫よ」

シャルルが振り返ると同時に、如何なる魔法か少女の外見は黒髪の美女へと変化する。
ドレスのような服に身を包んだその女の名をマリアンヌ・ヴィ・ブリタニア。
シャルルの妻であり同士でもあり、そして魂を加工するギアス、ザ・ソウルを備えたギアスユーザーでもあった。

しかし彼女は、瞳を悲しそうに伏せてシャルルに問いかけた。

「ねえ、これでよかったのかしら…?私達のやってること、本当にこれで…」

それは、この殺し合いに力を貸す自分たちに対するものだった。

「もうその質問には答えたはずだ。今の我々にできるのはこれくらいのことしかないのだと。それが我々の目的に繋がるものだというのは既に言ったはずだ」
「ええ、私も一度は納得したわ。だからこそ、今更こんなことを言う刺客はないのかもしれないわ。
 でも、あの子達の最期を見ていたら、本当に私達が今こんなところに存在してこんなことに協力しているのが正しいのか、分からなくなってしまったのよ」

一度の放送前に10人、その中には別世界の存在とはいえ己の息子であったルルーシュの名が呼ばれた。
そして今度。11人の名が呼ばれた放送の中には、本当の娘が、そして偽りの記憶を植えつけて利用した偽者の、しかし彼もまた大切な息子であった者の名が呼ばれることとなった。

本来ならば自分が看取るはずだった彼は全てを呪い、力に蝕まれながらもなお魔女の力を欲しながら死んでいった。
そして未来を望み生きるはずだった娘も、この世全ての悪に蝕まれ衰弱して死んでいった。

今更言うようなことではないのだろう。そもそもアカギ達に力を貸すと決めたときから覚悟しておくことだった。
しかし、実際に彼らの最後を目の当たりにして。
本当に彼らに協力するのが正しいことなのか、マリアンヌは己の心に迷いを感じてしまった。

「全ては覚悟していたことだ。エデンバイタルに消えた我らが、悲願を叶えるための希望を得たあの時から。
 今更戻ることなどできぬ」
「でも、本当はシャルルも――――」
「話はこれまでだ。もし嫌だというならばマリアンヌ、お前だけでもここから去るがよい。
 もはや我らにとっては余生のようなもの、引き留めはしない」

その言葉を最期に、シャルルは振り返ることなくマリアンヌの前から歩き去っていく。
まるでもう過去を振り返ることはしない、という意志を示しているかのように。

「シャルル、あなたは…」

シャルルの視界から離れたその姿はもうマリアンヌのものではなく、アーニャのものへと戻っている。
マリアンヌには、彼の心を窺い知ることはできない。
だからこそ、今この状況から離れることなど、選択することはできなかった。



様々な思惑を入り交えたまま、殺し合いというゲームは続いていく。
一つの節目を通ったこの殺し合いが新しい段階へと進んでいくのか、それともこれまで通り予定調和を歩んでいくのか。
それはインキュベーターにも、シャルル・ジ・ブリタニアにも、アクロマにも、そしてアカギにも分からない。

482 ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/17(木) 23:51:33 ID:j55JeAyY0
投下終了です。
ところで放送後の予約はどれくらい間を空けたほうがいいでしょうかね?

483名無しさん:2014/04/18(金) 01:49:40 ID:43pGcBm.0
放送投下乙です
アクロマにマリアンヌ、役者は揃ったというとこだろうか。
全員の目的にある微妙なブレ、今後果たしてどうなるか……

予約についてですが、1日か2日、長くても3日の間で十分だと思います。そのあたりは氏が判断して頂ければよろしいかと

それと仮投下で指摘し忘れてましたが、死者放送で佐倉杏子が下から2番目になってるのは時間的にも矛盾してますので修正願います
(呉キリカは時間順的に一番最後になるので合ってますが)

484名無しさん:2014/04/18(金) 01:51:45 ID:3jxBgBQs0
投下乙です
主催側にアクロマがいたかー
でもこいつ好奇心で動くから参加者の動き次第で裏切りそうな気も

予約の間は1日ぐらいでいいと思います

485名無しさん:2014/04/18(金) 11:15:56 ID:tFqaco3o0
投下乙です

こいつらもいたというか主催向きな連中だからいてもおかしくないなあ
さて、放送後が楽しみだ

486 ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/18(金) 12:40:52 ID:2x5BJwbc0
では予約は明日中にでもさせてもらおうと思います

>>483
死亡者は前の放送で名簿順でしたのでそちらに合わせました

487名無しさん:2014/04/19(土) 11:10:55 ID:kWMfQ/bw0
おお、予約が一気に二つもきたか

488 ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:18:23 ID:cr.u7jC.0
投下します

489I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:20:17 ID:cr.u7jC.0

―――――体は剣で出来ていた




「それで、いつになったら僕を楽しませてくれるのかな?」
「………」

北崎の退屈の理由は何となく察しはついている。
彼の望みは自分が最強であるということを示したいという、子供のような自己顕示欲を満たせる戦いをすること。

確かに彼のその望みを自分が満たせているとは思っていない。
バーサーカーとの戦いにしても、彼自身が倒したとはいっても草加雅人の協力があってこそだったし、それにあの直後で復活してしまって倒しきれたともいえない。
それからしばらくは、北崎が休息に入っていたこともあり、北崎の望みを叶えられているとは言えなかった。

まあ、あそこで自分がいなければあるいは草加雅人と鹿目まどかが危機に陥っていた可能性もあるのだが。

ただ、北崎を満たすことができているわけではないというのが彼の退屈の理由ならば少し急がなければならなかった。
あわよくば、彼を殺し合いに乗った者と戦わせ、同時に協力してくれるであろう者を探し、北崎を打倒する。

北崎を倒すことはあくまで通過点、その先にあるものも見据えた上で動かなければならないのだから。
できることなら、力になってくれ得る者と戦わせたくはない。

「分かってるの?さっきのメロって子も敢えて見逃してあげたんだよ?
 君のお気に入りの子らしいからね、もしかしたら君を助けるためにもっと凄いやつを連れてきてくれるかもしれないし」
「彼は私を助けるために戻ってくることはないでしょう。あくまで彼自身のために戦いを続けると、そういう人だと思いますから」

ロロを痛めつけた時とその時の心境の違い、それは彼の興味を引いたかどうかだろう。
あの彼の持っていた瞬間移動のような能力、それに気を引かれた北崎が遊んだだけ。
一方でメロは、身体能力的にも一般人だった。捕えられたら銃で応戦するしかないような、そんな存在に興味を持つ確率は低い。
それが救いといえば救いだったのかもしれない。

「でもさぁ、流石にそろそろもうちょっと自由に動いてみたいなぁってそう思ってきたんだよね」
「それは、どういう意味でしょうか」
「言葉通りの意味だよ。当然君には君で期待してるけど、僕は僕でもう少し色々やりたいからね。
 例えばさ、ここに近づいてくる人達に遊んでみる、とかさ。先に行ってるからすぐに追いついておいでよ」

そう呟いて、北崎はLの額にデコピンを放つ。
ただのデコピンでしかなかったが、予想以上の衝撃を額に受けたLは後ろに仰け反り倒れこんでしまった。

額を押さえながら起き上がったL。
しかしその視界に北崎の姿はない。

あくまでも想定内の、しかし決して喜ばしくない事態に焦りながらもLは北崎を探して、激しい運動に慣れていない体に鞭打って走り始めた。

490I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:21:45 ID:cr.u7jC.0


涙を流しながら士郎の体にギュッとしがみ付いたイリヤ。
士郎の背が涙で濡れるがそんなことを今気にする者はその場には誰一人としていなかった。

「イリヤ、どうしたんだ?」
「分かんない…、分かんないけど、何かすごく悲しくて…」

士郎と巧は困惑して、イリヤ自身もわけが分からないといった状態。
ただ一人、いや、一本。ルビーだけがその理由に想像をつけていた。

(まさか、クロさん…)

さっきすぐに追いつくといっていたクロの合流が妙に遅い。
士郎曰く、青い髪の少女と戦っていたらしく、士郎の目からはクロであれば大丈夫だろうという根拠のはっきりしない、よく分からない保障をされていた。

むしろそういう意味では危険なのはバゼットだろう。相手はあの魔王と最強の英霊。執行者という人間視点であれば上位に入るような者でもどうにかできる相手ではないはずだから。
ではもし、そこでバゼットが敗れ、他の皆が彼らの追撃を受けたのだとしたら。

何かきっかけがあると、事態が事態なだけに思考がどうしてもマイナスな方に行ってしまう。
いや、ある意味ではそれ自体は正しいものなのだろう。最悪の事態を想定しておけば、もしもの時に大きな動揺をせずに済むのだから。
それに、その想定が正しいのかどうかはすぐに分かること。

時刻は、もうしばらく待てばあの定時放送が始まる時間。

もしその放送で心を乱されているようなことがあった際、落ち着けることができる場所が必要となる。
ただでさえ皆傷だらけの状態、そのままの状態でもし殺人者に襲われればそれこそ一網打尽となってしまう。

幸いにして移動する時間くらいは残っているようだ。早く落ち着ける場所へとたどり着いて放送へと備えなければならない。

『士郎さん、ここから病院か、あるいは間桐邸が近いです。今はどちらかに向かうべきだと思いますが、どうしますか?』
「間桐邸…、桜達の家か…。休むならそっちの方が落ち着けるだろうけど、病院ならイリヤの治療ができるな…」
『しかし同じ考えで行動する人がいないとも限りません。むしろそれを逆手にとって殺し合いに乗った者が来てしまう危険性もあります』

ルビーとしてはイリヤの治療自体は急務ではないと考えている。
こうしている今も、ルビーはイリヤを転身させた状態で治癒を続けているのだ。
病院に向かう必要があるとすればむしろ士郎と巧の方だ。

とはいっても、この二人が自分の体に対しての気の使わなさはつくづく見ている。
ここは少し無理やりにでも連れて行くべきかもしれない、とルビーは思考した。

「…お兄ちゃん、病院に行こう」
「イリヤ?」
「お兄ちゃんの体、怪我だらけで痛そう…。私よりお兄ちゃんの怪我を見て」
「俺も同感だ。お前自身だと大丈夫だって言ってるけど、かなりガタが来てるようにしか見えねえぞ」
「巧には言われたくないな。てゆうかそっちの方が重症に見えるぞ」

ともあれ、病院に向かえばいいということはここにいる皆の共通認識となったようだ。
バゼット達もあの戦いではさすがに大きなダメージを負っているはずだ。そうなれば自然と病院に立ち寄るだろう。合流も難しくはないはずだ。

無論、彼女たちが生きていれば、の話だが。

『では士郎さん、急ぎましょう。できれば放送までには到着しておきたいところです』
「?何で放送までに…?まあ、分かった」
「待て」

と、進もうとした士郎を巧は引き止めた。

『誰か近づいてきますね』
「………お前ら、逃げろ」

ルビーが近くに来ている何者かの存在をキャッチし。
それより早く近寄る存在に気づいていた巧は、険しい顔をして士郎達に逃走を促す。

491I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:23:01 ID:cr.u7jC.0

「へえ、久しぶりじゃん。乾巧クン」

若干薄ら笑いを浮かべた、だらしない格好の少年がこちらへと近づいてきていた。

「お前、北崎…」
「そう構えないでよ、君と僕は今は別に戦うような仲じゃないでしょ?同じラッキークローバーなんだからさ」
「…俺はお前らの仲間に入った覚えはねえよ」
「そうなの?へえ〜。まあ村上くんなら怒るんだろうけど、僕にとってはどっちでもいいかな?
 あ、でもさ。ってことは今ここで君と戦ったりしても何の問題もないんだよね?」

北崎はそう言いながら笑みを深め。
その顔に灰色の紋様が走ったところで、その姿は巨大な角を携えた龍のような魔人へと姿を変えた。

「こいつも、オルフェノクか…?」

その灰色の体、そして節々に構成されている要素には巧のオルフェノク態との共通点が見られる。
しかし、その身から感じるのは怖気の走るような真っ黒な邪気。
士郎はそれだけで、この目の前の存在が話の通用する者ではないということを察した。

まるで処刑人のようにゆっくりと歩み寄る北崎――ドラゴンオルフェノク。
あえてゆっくりと歩いてくるところが返って不気味だった。

「士郎、逃げろ!」

そう一言叫ぶと同時、巧もウルフオルフェノクへと姿を変えてドラゴンオルフェノクへ向かって走った。

全力でその体に拳を叩きつけるもドラゴンオルフェノクは動じることもなく、逆に返しの手甲の振り上げで吹き飛ばされる。
衝撃で地面に転がりこむ巧。

「巧!」
「君はまあ、面白くはあるんだけど戦ったことあるからある程度はどれくらい力あるか分かるんだよね。
 じゃあ、そっちの君ならどうかな?」

そう言ってドラゴンオルフェノクは、その手に青い炎を作り出し、士郎の元へと投げつけた。

「!」

反応の遅れた士郎、そして周囲を覆う熱と爆発音。

しかしそれが士郎達に届くことはなかった。

爆風の通り過ぎたところで目を開くと、目の前で巧が士郎達を庇うように立っていた。
その体を包んでいるのは灰色の肉体、しかし先ほどとは違う点が随所に見られる。
全身に生えた刃は巨大化し、申し訳程度に生えていた白い体毛はその背中一面を覆っている。
更にその人間離れした脚部はこれまで以上にオオカミのそれに近づいた形を形成し。
その顔はまるで怒りを表すかのように吊り上がった面へと変化している。

「早く行け。こいつ相手だとお前を守りながらじゃ戦えねえ」
「――――っ」

体のダメージはまだ大きいだろうに、そう逃げるように促す巧。

士郎とてあるいは戦うこともできただろう。
巧と共に目の前の魔人を倒すという選択肢も存在しただろう。

しかし、今その背には未だ動けないイリヤがいる。

「分かった、先に行く。
 だけど約束だ。絶対に追い付いてきてくれ」

2秒ほどの迷いの後、士郎は決断し走りだした。

その間も、巧は振り返ることもなく、目の前の敵を睨み続けていた。

「へえ、力入ってんじゃん。昔戦ったときはすぐに終わっちゃったからね。
 だけど今の君なら楽しめるのかな?」
「…?昔戦った?何のことだ」
「教えてほしい?僕に勝ったら教えてあげるよ」

そのまま離れた場所から青い炎を投げつける北崎。
それを回避した巧は、後ろで上がる炎には目もくれずに北崎に向かって拳を振りかざして走った。

492I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:23:56 ID:cr.u7jC.0


イリヤの心中には、ふつふつと罪悪感が湧きつつあった。
もし自分がこんな体でなければ、士郎にそんな負担をかけるようなこともなかったのに。

『イリヤさん、あなたが何を考えているのかの想像はつきます。しかし今は体を治すことに専念してください』
「………」

ルビーの言葉にもイリヤは何も答えない。
ただ、やりきれない思いだけが、その心の中に溜まっていくのを感じていた。

実際、今の自分に戦いができるのかといえば、おそらくはできないだろう。
あの時のバーサーカーから受けたダメージは、魔法少女でなければおそらくはミンチになっていただろうほどのもの。
制限下では完治まで数時間はかかるだろうというのがルビーの見立てだった。

それだけではない。
あの時のバーサーカー。
極大の魔力砲を食らい、体を焼かれながらも攻撃に耐えきりこちらへと攻撃を放ってきたその気迫。
それにイリヤは恐怖していた。

呉キリカから受けた恐怖が理解できない狂気からくるものであるなら。
バーサーカーから感じたそれは、圧倒的な力、超えることができないといえるほどの強大な力に対する恐怖だった。

おかしいと思った。
バーサーカーとはかつて一度戦ったことがあった。
あの時はここまで怯えることはなかったはずなのに。

美遊や凛、ルヴィアと共に戦ったクラスカードの英霊と何が違うのか。

(…………。違う、違うのはバーサーカーじゃない)

確かにバーサーカーの力は強大だった。
クラスカードによる現象と本物の英霊の力の違いもまた大きなものだ。
だが、違うのはそこではない。

怖いのは、そういった者達によって大切なものを失うこと。
共に戦う仲間が、死んでいくこと。
死なないと思っていた凛の名が放送で呼ばれてしまったように。
クロが、バゼットが、ルヴィアが、藤村先生が、乾巧が、――そしてお兄ちゃんが。

イリヤの中には、士郎と共に戦うなどという選択肢はない。
むしろ士郎は守らなければいけないものなのだから。
そして今は、バゼットも巧も近くにいない。自分は戦うことができない。

今のイリヤは、士郎と共にいながらどこまでも一人ぼっちだった。

493I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:24:43 ID:cr.u7jC.0

カシャン


カシャン


カシャン


そんな、イリヤの耳に届いた金属音。
まるで甲冑を着込んだ騎士が、その身の鎧から音を打ち鳴らしながら歩いているかのようなそれに、イリヤは聞き覚えがあった。

かつてイリヤ達を追い詰めた最強の敵であり。
そしてまたこの場においても、イリヤを狙って襲いかかったその足音の主。

「また会いましたね。士郎」
「……セイバー…!」

黒き騎士王、セイバー。
それが、士郎の見据える先にいた。



ドラゴンオルフェノクに対してその拳を、その手の刃を幾度となく打ち付けてきた。
それに反応するかのように、北崎も近づくたびにその手甲を振りかざしている。

今の巧、ウルフオルフェノク激情態の戦闘能力は普段のそれよりも大きく強化されている。
その拳は打ち付けるたびにドラゴンオルフェノクの硬い装甲に少しずつヒビを入れ。
巨大な足から繰り出さえる蹴りもまた装甲の内側に大きな衝撃を与えて北崎に少しずつだがダメージを加えている。

その素早い動きは北崎の攻撃では捉えるのが難しい。
しかし逆に北崎のその一撃が当たれば今の巧は動けなくなるだろう。幾度となく行われた強大な敵との戦いのダメージ、それが大きなハンデともなっていた。
だからこそ、一撃も受けることなく北崎を倒さなければならないのだから。

なぎ払うように振るわれた手甲の爪を体を逸らして避け、その胴体に拳を突き入れる。
体が揺らいで、一歩後ろに下がる北崎。
そのまま追撃を加えようとしたところでカウンターのように突き出された爪を、今度は腰を落として回避。
ドラゴンオルフェノクの腰にしがみつくような形で、巧は北崎に取り付く。

「ずいぶん必死になっちゃってさぁ。そんなにさっき逃げた人間が大事なの?」
「ああ、大事だよ!」

振り払おうとする北崎に対し、巧はその反動を利用して後ろに下がり、逆に北崎の体を蹴りつつ飛び上がる。

「俺はあいつの夢を守るって言ったからな!」

そのまま落下の勢いにまかせてその頭に蹴りを叩き込む。
さしものドラゴンオルフェノクも、頭部への強い衝撃に体をふらつかせる。

地面に着地したウルフオルフェノクは、そのまま片足を地面についた状態で回し蹴りを放つ。
さらに間髪いれず空中からの振り下ろし。
幾度となく、ドラゴンオルフェノクの体に連撃を加えていく。

「だから、お前のようなやつらを、あいつに近寄らせはしねえ!あいつの、士郎の笑顔は、夢は、俺が守ってやる!」

幾度となく振り下ろされる蹴りの速さは北崎をもってしてもその手甲で防ぐのが精一杯。
反撃する暇すらも与えられず、受け止め続ける北崎。

10に届いただろうかという数の蹴りを受け止めたところで、北崎の手甲が砕け散る。

494I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:25:26 ID:cr.u7jC.0

「うおおおおおおお!!」

そのまま北崎の体に飛び膝蹴りを打ち込み、体を数メートル後ろに吹き飛ばし。
さらにそこから追撃をかけようと拳を振りかざしたところで。


「調子に乗るなよ」

子供のようにゆったりしていたはずの声がいきなり低くドスの利いた口調へと変化し。

拳をその胸に叩きつけると同時、ドラゴンオルフェノクを覆っていた硬い外骨格が砕け散った。
これまでに比べてあまりにあっけない手応えに違和感を感じた巧は、次の瞬間傍を高速で通り過ぎた何かにその体を吹き飛ばされる。

「!」

動揺しつつも何かが通りすがった先に視線を移した巧。しかし、

「どこを見てるの?こっちだよ」

その声は背後から届く。
反応して思わず振り向いた巧。

その瞬間、一秒足らずという時間に10発の拳が巧に襲いかかった。
反応することすらできず、まるでかつて自分が使ったファイズのアクセルフォームのごとき速度で繰り出された攻撃をまともに受けてしまう。

よろめいた先でさらに追撃をかけるドラゴンオルフェノク・龍人態。
裏拳を叩きつけ、大きく振りかぶってなぎ払い、雷を纏った正拳を打ち付ける。

それらの動作が、巧視点では一瞬の出来事。
いくらウルフオルフェノク激情態であっても反応しきることはできない。

そのまま膝蹴りが胴体を捉え宙に打ち上げられ。
数メートルほど巧の体が浮き上がったところで、雷を纏った北崎の足が思い切り振り下ろされ。
地面に叩きつけられたところで、まるでそのタイミングを狙っていたかのように北崎の手から作り出された巨大な青い炎が巧の体に投げつけられた。

「ぐ!ああああああああああああああああああ!!」

青い炎が爆発し、巧の体を包み込む。
巧の絶叫と共に、広い浜辺のまっさらな砂地に青い火柱が上がる。

手応えとその絶叫から攻撃の命中を確認した北崎。
その巧の様子が見える位置まで近寄る。

「あーあ、もう終わりかぁ」

そこに倒れ伏していたのは、人間の肉体に戻った乾巧。
息はあるようだが意識はなく、これ以上の戦闘続行は無理そうだった。

「この前の時よりはまあ楽しめたけど、やっぱり僕の方が強いんだよね。
 そうだなぁ。じゃあせっかくだし、君の守るって言ってた彼らを追いかけてみようかな。じゃあね」

そう言って巧に背を向けて去る北崎。
彼の興味はもはや巧にはなく、むしろここから逃げていった二人に向いてしまっていた。

495I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:26:29 ID:cr.u7jC.0

それから数分くらいの時間。
動く者もなく静寂に包まれた空間。
ピクリとも動かずクレーターのように抉れた地面の中心に伏した巧の元に。

「大丈夫ですか?」

静かに駆け寄る男が一人。

「…あ、いて…」

そんな声に反応するかのように、小さく痛みを訴えながら意識を取り戻す巧。
薄く目を開いたところにいたのは、猫背で姿勢の悪い、見るからに不健康そうな男。

「北崎さんはどちらに向かったか、分かりませんか?」
「…あ、あんたは…?」
「私はLです、殺し合いには乗っていません。
 北崎さんを抑えておくことができなかったのは私の責任です、早く彼に追いつかなければいけません」
「あいつなら…、士郎達を追って、たぶん向こうだ…」

と、巧はLにその方向を指さす。

「ありがとうございます。あなたはここで休んでいてください。私が何としても彼を止めますので」
「おい…、待て…!」

巧に背を向けてその方向に走ろうとしたLを呼び止める。
声を出すのも辛そうなほどにダメージを受けているようだが、その痛みに耐えて絞りだすかのような声だった。

「俺も、連れて行け…!」
「…あなたはしばらく休むべきです。北崎さんのことは私がなんとかします」
「知るか…、早く行かねえと、士郎が…!」

よろめきながらも立ち上がろうとする巧。
きっと、彼は自分が連れて行かなかったとしても北崎を追うのだろうと、Lの目にはそういう男に見えた。

足元もおぼつかない巧に、慣れないことではあるがLは肩を貸す。

「もし何かあっても私はあなたを守れません。私にできるのはあなたを連れて行くだけですよ」
「構わねえよ…」

重傷を負った怪我人ではあるが、意志がある以上自分ひとりよりはマシだろう。

さっきよりも随分と移動速度も落ちてしまったが、一歩ずつ、巧を担いだLは北崎を追って歩き出した。




士郎の目の前に立っているのは、深夜に出会い、戦ったセイバー。
その体中には細かなキズ、汚れこそあるが、連戦続きでボロボロのこちらと比べてもコンディションの差は歴然だった。

何故かセイバーの後ろには自分と同じくらいの歳であろう少女の姿が見える。
その挙動不審な様子から見て、彼女に無理やり従わされているのではないのかとも思わなくもないが、セイバーと比べれば敵意は感じないのが救いだろうか。


「夜の別れ際に言いましたね、次に会うことがあれば、イリヤスフィールを貰い受ける、と」
「………」

一方でセイバーの敵意は本物だった。
たとえ自分であっても情け容赦などしてくれないだろう。

加えて、今背負っているのは動けないイリヤ。
そのイリヤも、セイバーのその様子に恐れるように震えている。

『士郎さん、逃げましょう』

ルビーははっきりとそう言った。
今の士郎が戦っても、セイバーに勝ちうる可能性がどれほどあるかと言われれば恐ろしく低いだろうと。

それは士郎自身はっきりと自覚していることだ。

しかし。

496I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:27:49 ID:cr.u7jC.0


震えるイリヤが、士郎の背で服の裾をぎゅっと掴む。
回復のために転身しているイリヤのその握力は士郎の服を握りつぶさんばかりのもので、だからこそ彼女の恐れが士郎にも伝わってくるようだった。

「ルビー、今のイリヤは一人で逃げることはできるか?」
『激しい動きはできませんが、空を飛んで逃げるのであれば何とか。しかし回復に回した魔力を使うことになるためイリヤさんの怪我の完治が遅れます』
「今は仕方ない…。イリヤ、俺がお前を下ろしたらとにかく逃げろ。俺が時間を稼ぐ」

セイバーの歩みはそう速いわけではない。といっても、もしここで背を向ければ彼女の発する黒い霧が飛ぶ斬撃となってこちらに襲いかかるだろう。
だから、イリヤを逃がすなら今しかない。

しかし、イリヤは動かない。

「イリヤ?」
「ダメ…、行かないで」

その背にしがみついたイリヤは、士郎の言葉を受けてもそこから離れようとしなかった。

「大丈夫だ、頃合いを見てすぐ俺も追いつくから」
『イリヤさん、ここは離れましょう。というか私達が一緒にいては士郎さんも逃げることができません』
「嫌…、離れたくない…」
「……イリヤ、これ以上ワガママを言うようだと、お前のこと嫌いになっちゃうぞ」

士郎としてもそんなことは言いたくはなかったが、ここは心を鬼にしてでも逃さなければならない。
するとその言葉が予想外に効いたようで、イリヤは握っていた士郎の服を手放した。

「ルビー、頼んだぞ。俺もすぐに追いつくから」
『了解しました、あと士郎さん、くれぐれもその腕は使われないように』

と、イリヤはルビーの先導の元で低速ながらも空を飛んで移動していった。

背後からイリヤの気配が感じなくなった辺りで、張り詰めていた気を少しだけ緩めてセイバーへと向かい合う。

「…待っていてくれたんだな」
「彼女を捕らえたければあなたを倒してイリヤスフィールを単独で追った方が都合がいいですから。
 二人同時に相手をすればさっきのようなことになりかねませんし」

セイバーの手の魔剣がキラリと煌く。
片手で無造作に構えられた剣は、しかしいつでも振りかざせるような体勢だ。

「ユカ、ここで近づく者がいないかどうか見張っていろ」
「は、はい」

傍にいた少女にそう命じるセイバー。

そして士郎もまた、剣を構える。
手にしたのは陰陽の双剣、干将・莫耶。

目の前にいるのは、最優のサーヴァント。今は宝具を持ってはいないがその技量に衰えはないだろう。
鍛錬であっても彼女に一本も取ることができなかった自分でどこまで食いつくことができるか。

497I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:28:32 ID:cr.u7jC.0

いや、それは違う。
食いつくことができるか、ではない。食いつかなければいけないのだ。
もし自分が負けるようなことがあれば、イリヤに被害が及ぶのだから。


重厚な鎧の音を立てながらこちらへと走り来るセイバーに向かって。
士郎は双剣を構えて迎え撃った――――




浮遊する体は、空を飛ぶ心地よさとは裏腹に最悪の気分とコンディションだった。
というか、移動するたびにこれまでは感じることがなかった魔力消耗による気分の悪さが体を蝕む。
体の内側の痛みは収まってはいないのにこの状態が続くというのが最悪な気持ちだった。

『イリヤさん、もう少しの辛抱です。大丈夫、士郎さんも追い付いてきてくれますって』
「………」
『ほら、昔言ったじゃないですか。魔法少女は笑顔が武器ですって。
 イリヤさんにはそんな暗い顔は似合いません、もっと明るく笑顔になりましょうよ!』

キラキラという効果音を立てながらイリヤに元気を出してもらおうと、ルビーは魔力の小さな光を撒く。
が、しかし、イリヤの表情は晴れることはない。

「ねえ、ルビー」
『何ですかイリヤさん?』
「もしあそこで、私がバーサーカーとちゃんと戦ってたら、こんなことにならずにすんだのかな?」

バーサーカーの一撃を受けたあの瞬間。
もしもあの一撃に慢心せずにちゃんと対応していたら。こんな状況にはならなかったのではないのか。

クロとバゼットを残し、巧を置いていき、そして士郎をも一人戦わせて自分一人逃げ残り。

「こんなふうに、皆の足手まといにならなくてすんだのかな…?」
『それは結果論でしかありません。そもそもバーサーカーがあの砲撃を受けきったのだって私にも想定できませんでしたし』
「………」
『まあ、今回は運がよろしくなかっただけですよ。そう悪いことなんて、ずっと続きはしませんってきっと―――』





「へえ、君空飛べるんだ。気持ちいい?」

ふとそんな声が、空を飛んでいるはずのイリヤの耳にはっきり聞こえたその瞬間。

数メートル上空を移動していたイリヤの視界が衝撃と共に反転した。

498I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:30:07 ID:cr.u7jC.0





双剣の振り下ろしを、防ぐ必要もないと言わんばかりに躱され。
相手の素早い一閃がこちらをとらえた。

どうにか受け止めたものの、その衝撃は両腕に伝わって、その手を痺れさせる。

だがそれに動きを鈍らせている暇はない。

返すその剣が狙うのは、こちらの首筋。

「っ―――!」

本来であれば避けられないと思っただろうその一撃を、しかし士郎はどうにか防ぎきった。

逸れた剣は顔の皮一枚を切り裂くに留まり、そのままセイバーは一気に後ろに後退。体勢を立て直す。


「ぁ…はぁ、はぁ…」

互いの剣の軌道から離れたところで、士郎は息を切らせる。



そもそも、勝てる戦いではなかったのだ。
ここで最初に会った時は、セイバーの今持っているグラムの補助を受けていて。
なおかつそれごと吹き飛ばされそうになった時にイリヤが攻撃を防いで。
その隙を突いてどうにか一撃を入れることができたのだ。

一対一の戦いではどうにかなるような技量の差ではない。
たとえそれが時間稼ぎであっても。

「無駄なことを。あなたが稼いだ時間程度で、私がイリヤスフィールを見逃すと思うのですか?」


だが、それでも。
諦めるわけにはいかない。


イリヤをセイバーに渡すわけにはいかないのだから。


「何故そのような体で、勝てない戦いにこうも挑むのですか?」
「そんなもの…、決まってるだろ…。イリヤを守るためだ…!」
「イリヤスフィールを守る、ですか。ですが士郎、あなたとて気づいているはずだ。
 あのイリヤスフィールはあなたの知る彼女ではないことに」
「………」

ああ、そうだ。確かにあのイリヤは俺の知っている彼女とは全く違う存在だ。
そんなことにはとっくに気づいている。

「それが、どうしたって言うんだよ」
「あなたの守らなければならない者は他にいるはずだ。
 凛亡き今、彼女を、間桐桜を救えるのはあなただけだ。
 そんな、どこの誰ともしれない者のためにあなたは命を投げ出すつもりか?」
「それ――――は―――」
「今一度だけ問います。そこを退きなさい、士郎。
 そうすれば今はあなたを見逃してあげます」

セイバーはそう告げると、構えていた剣を下ろす。

おそらくは見逃す、というのは本当だろう。
これがもし騙し討ちをするための策であるのだとしたら彼女らしくない。
いや、そもそも彼女はそんな卑怯な策など使わずとも自分を一瞬で斬り伏せることもできるだろう。

だから、ここで通せば自分は生き残れる。
桜のためには、それが最善だと。

499I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:31:06 ID:cr.u7jC.0



「――――――断る」

だというのにその申し立てを、俺はきっぱりと撥ねつけていた。

「そうですか。そういえば元よりあなたには他者より己を優先するという考えはありませんでしたね」

今の言葉が最後の、セイバーなりの情けだったのだろう。
グラムを構えるその姿には、もはや鋭い殺気しか残っていない。

「ではシロウ、覚悟を」

こちらも干将莫耶を構え、次なるセイバーの手に備えた。
たとえ打ち勝つことはできなくても、受け止め、退くことくらいはできるはずだから。


と、その時だった。


「楽しそうだね、君たち。僕も混ぜてよ」

そんな言葉と共に現れたのは、一人の少年。

セイバーはこちらの後ろにいる少年を見据え、大きく目を見開いていた。
そのただならぬ様子に、不用意ではあったが思わず振り向き。

「――――――っ!」

10メートルほど離れた場所にいる少年。
それはさっき巧が相手をしていたはずのあのオルフェノクの少年。
巧と戦ったというはずなのにその体はピンピンしているようで。


そしてその少年の手には。
左手には、首を掴まれたままじっと動かないイリヤがいて。
右手にはジタバタとその手から逃れようと動くルビーが握られていた。


巧はどうしたのか、とか。イリヤが何故そこにいるのか、とか。
色々と問い詰めなければならないことがあったはずなのに。
それら全てが、その光景を見ただけで吹き飛んだ。


「ユカ!」
「え、あ、はい!」

一方セイバーの反応もまた早かった。
後ろの少女の名を呼びかけると、混乱しつつも少女はその少年に突撃をかける。
走りながらその姿は鳥をイメージする白い姿へと変化。
彼女もまたオルフェノクであったということを知るが、それに意識を裂くことはできなかった。

おそらくあの呼びかけはイリヤを取り返せという意味だったのだろう。
それを知ってか知らずか結花は北崎に挑みかかるも、鎧袖一触、変身すらしていない北崎の蹴りを受けて弾き飛ばされる。

「まあ、そんなに熱くならないでよ。この子とはちょっと遊ばせてもらっただけで、まだ生きてるからさ」

と、そう言って無造作にイリヤを掲げる北崎。
よく見ると意識を失っているわけではなさそうで、しかし体の激痛と北崎に対する恐怖で息を乱すことしかできない様子だ。



頭が沸騰しそうになった。
何も考えられなくなりそうなほど、その光景に怒りを覚えている自分がいた。

500I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:31:58 ID:cr.u7jC.0


「貴様、イリヤスフィールに何をした」
「ああ、この子?珍しいからちょっとちょっかい出してみたんだけど、全然面白くなくってさ。
 せっかくだからこっちに来た方が面白そうかなって連れてきてみたんだ。こっちの変な道具はちょっとうるさかったけどさ」
『ぐぬぬ、離せー!!』

と、じたばたもがくルビーを意に介すこともなく、北崎は話す。

「それで来てみたら、何か楽しそうなことしてるみたいだし。
 まあ邪魔するのも悪いし続けてよ。それで勝った方が僕と戦うんだ。
 見た感じ二人ともこの女の子が大事って風だし、それで勝ったやつがこの子を好きにできるって、そういうのでどう?」
「―――――てめぇ…!」

ふざけるな、とか。今すぐその手をイリヤから離せ、とか。
そんな言葉も出てこないほどに、今の自分は怒りの感情に支配されていた。

「ほら、続けて続けて。二人同時にってのもいいんだけど、ちょっと面倒だし今は観客になるのもいいかなって思ったからさ」
「………」

カシャ、と。

セイバーは剣を構え直す。
焦りこそ微かに感じるが、その剣に迷いはない。

イリヤを確保するための、一つの障害にすぎない、と。
そう見方を変えたのだろう。
急がねば、イリヤの命が危ないのだから。

だが、こちらもおいそれと命をくれてやるわけにはいかない。
彼女を守らなければいけないという想いは同じ、いや、セイバー以上に強いのだから。

もしこの場で問題があるのだとすれば。
イリヤが捕らえられたことで、退路を失ったということ。


一閃を全力で受け止める。
返す刃でセイバーの脇へと剣を振りぬき。
しかし届かない。

いくら剣を振るったところで、最優とも言うべきセイバーの技能と、化け物じみた直感を越えて攻め立てることはできない。
それは、他でもない俺自身が一番よく知っているはずだ。


しかし、退路を絶たれた以上、今はセイバーを倒すために剣をふるうしかない――――!


『12:00、定刻通り死亡者、並びに禁止領域の発表を始めよう』

何か声が響く。
だが無視。
今そんなことに気を取られている暇はない。

己の感覚の全てを、セイバーに対しての攻撃に集中させる。
まだだ。まだ感覚を研ぎ澄ませろ。
一瞬でもいい。動きの中にセイバーを倒せるだけの隙を見つけろ。

501I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:33:26 ID:cr.u7jC.0


『死亡者はナナリー・ランペルージ、ロロ・ヴィ・ブリタニア――――』

旋風を越え、暴風のように矢継ぎ早に繰り出される剣撃を受け止める。

ああ、そうだ。今は戦うことだけを考えろ。
今だけは、桜のことも、イリヤのことも頭から離して戦わなければ、彼女には勝てない。

『―――ア、藤村大河、クロエ・フォン・アインツベルン、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト、バゼット・フラガ・マクレミッツ―――――』

今だけは、この時だけはこの体だけではない。
心も刃として戦わなければ、セイバーに届かせることはできない。

手にした干将莫耶が幾度にもなる打ち合いで悲鳴を上げている。
だがもう少しだ。もう少しだけでいい。持ってくれ。

それで、彼女に一撃を入れることができれば―――――――――――













―――――――藤村大河。


「えっ」

そんな名が呼ばれた気がした。
戦いのみに心を委ねていたはずの自分の中に、そんなあまりに馴染みの深い名が呼ばれて。

何故その名がここで出てきたのだろうと思考して。
その意味を理解した瞬間。

セイバーとの戦いの最中という、一時も手を抜くことなどできないというこの状況の中で。

思考が完全に漂白した。


―――――――――ザシュッ

502I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:34:38 ID:cr.u7jC.0


イリヤは、その光景から目を離せないでいた。

今しがた放送で呼ばれた名前。

クロ、ルヴィアさん、バゼット、藤村先生。
多すぎる、知った者達の名が呼ばれたことに衝撃を受けているイリヤの目の前で。

いきなり消滅したかのようにその手に込めた力がふわっと抜けたように見えた士郎が。
セイバーの一閃を受けて地に伏したのだから。

「え…」

舞い散る赤い何かを目にし、虚ろだった意識が一気に覚醒する。

何かの間違いではないか、もしかしたら夢なのではないかと心のどこかで否定しているのに。
その目の前で起きていることは、紛れも無く、あまりにも現実で。

「…嘘」

セイバーが士郎から視線を外してこちらを向くことも気にならない。
そのまま倒れて動かない士郎から、視線を離すことができない。

「嘘…でしょ…」

いくら頭の中で否定しても、現実は全く変わらない。
そのまま倒れたままでいると、本当に動くことが無くなってしまいそうな予感があって。

イリヤは、思わず声を張り上げて叫んでいた。

「――――お兄ちゃん!!!!!」






「…クソッ」
「………」

一歩ずつ、ゆっくりと移動を続ける巧とL。
そんな彼らの元に放送が聞こえてきたのはつい今のこと。

Lは呼ばれた名の中に、夜神月やメロや夜神総一郎、草加雅人や鹿目まどかといった知った名がいないことにひとまず胸を撫で下ろし。
それとは対照的に、巧は悔しそうに顔を歪めていた。


佐倉杏子。
ほんの短い間だったがゼロと戦うために共闘した、気に食わなかったけど悲しい瞳をした魔法少女。

バゼット・フラガ・マクレミッツ。
バーサーカーとゼロから逃げる際、殿を務めた女。

クロエ・フォン・アインツベルン。
確かイリヤの姉妹で、自分に矢を仕掛けた少女の名だったと思う。士郎を助けるために一人あのバゼットの戦う場所近くに残っていた子だ。

呉キリカ。
あの時自分たちに襲いかかってきた黒い魔法少女。重傷を負っていたため長生きはできないだろうと思っていたが、実際に名前を呼ばれることとなった。


他にも幾つか人づてで聞き覚えのある名が聞こえた気がしたが、今はそれらに思考を裂くことはできなかった。

「辛い気持ちは分かります。しかし今は私達は立ち止まっているわけにはいかないのです」
「誰が…立ち止まってるってんだよ」

503I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:35:56 ID:cr.u7jC.0
ゆっくりとだが一歩ずつ、北崎の去っていったであろう方向、士郎達も逃げただろう場所へと足を進めていく二人。

追いつくことができるかと言われたら、正直厳しいと言わざるを得ないほどにゆっくりとした歩みだ。
焦る気持ちとは裏腹に、蓄積したダメージで満足に動かない体に苛立ちを覚える。

そんな時だった。


―――――――――お兄ちゃん!!!!!

周囲に響いたのは大きな叫び声。
その声の主を、巧は知っている。

そして、その声はそう遠くない場所から響いている。


「何かあったようですね。急ぎましょう」
「ぐ、おい、俺から一旦離れろ」

巧はそう言って、Lを密着した自分から引き離した。

よろめき、膝をつきながらも一人で起き上がった巧は、気合を入れるかのように吠えた。

その瞬間、体を灰色の肉体が包み、人ならざる姿へと変化させる。

その変化に若干驚いていたLに向かって巧が声をかける。

「掴まれ」
「巧さん、体の方は大丈夫なのですか?」
「ああ、大丈夫だ」

そうは言ったが、実際のところこうして変身しているだけでも意識が消し飛びそうな状態だ。
それでも変身できたのは、痛みに耐える精神力、そして仲間への想いがあってのものだろう。

Lはその全身に刃の生えた体の中で、それが少ない場所を掴み。
そのまま狼の脚力を持って走りだした。

生身で車にでも縛り付けられたかのような速さにしがみつくのが精一杯のL。
しかし巧はまた、肉体の疲労とダメージで想像以上の速度が出ないことに焦れていた。


風に髪をボサボサにされつつも、しがみついて移動すること数十秒。
たどり着くことができた目的の場所。
体が限界を迎えた巧は、人間の姿に戻って倒れこみ。


「へえ、追い付いてきたんだ。まさかL、君も一緒なんてね。
 今おもしろいものやってるからちょっと見てみなよ」
「北崎さん…!」

それでも意識を保ったまま、前を見た巧の目に映ったもの。
北崎に抑えられたイリヤとルビー。

こちらを見据えた黒い騎士。

そして。


「士郎!!!!」


肩から胴にかけて袈裟懸けに斬られた士郎が、血を流しながらも立ち上がろうとしている姿だった。

504I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:36:49 ID:cr.u7jC.0




不思議と痛みはなかった。
それでも斬られたのだと気付いた時、俺はもう死んでしまったのだと感じた。

なのに、耳に聞こえてくるのはこちらから離れていくセイバーの足音。
それが知覚できるということは、まだ生きているということだろう。
あの挙動はセイバーにとっても予想外だったようで、それ故に剣筋がはっきりとしたものではなかったのが救いだったのかもしれない。


だというのに。
痛みを感じなかったのが不思議だった。

いや、一番不思議なのは、彼女の名が放送で呼ばれたことに対して、ここまで驚いていることだ。


藤村大河。

例えばの話、名が呼ばれたのがイリヤスフィールでも、間桐桜であったとしても、こうはならなかっただろう。
ここまで、傷の痛みすらも感じないほどに、彼女の死に動揺している自分がいた。

つまるところ、自分は藤村大河という存在が死ぬことを、完全に想定していなかったのだ。
彼女が殺しても死なない、のではない。
彼女が死ぬはずがない、という固定概念を、自分の中に持っていたのだ。

それほどに、藤村大河の存在は日常になくてはならないもので。
衛宮士郎という存在を支えていたものだったのだから。

そして、その衛宮士郎という存在を支えていた柱が無くなったと、そう認識してしまった今。
正義の味方、桜の味方という以前に。

衛宮士郎として、立ち上がることができなくなっていた。



そして、立ち上がることもしないこんな自分をしばらく見据えたセイバーは、そのままこちらから視線を外し。
イリヤを、そして彼女を捕まえ離さない北崎の方に向いた。

ああ、その判断は正解だろう。
きっと、衛宮士郎という男はここで死ぬ。
斬られた傷は深く、気を抜けば意識を落としてしまいそうになっている。

そして、ここで意識を落とせばもう二度と起き上がることはないだろう。

そのまま、漂白した状態から回復することもなく、士郎の意識は闇へと沈んでいくのを感じ。
何もない、深い無の中へ――――――――――――――

505I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:37:53 ID:cr.u7jC.0




―――――――――お兄ちゃん!!!!!



沈むはずだったのに。
そんな、イリヤの叫び声を聞いて、意識が浮かび上がるのを感じた。

(―――――――っ)

それと同時に、自分の痛覚が痛みを訴えているのを感じ取り。
まだ生きている、という認識を覚まさせた。

ああ、そうだ。
俺には、まだやらなければいけないことがある。

もう、この命は俺一人のものではないのだ。
例え”衛宮士郎”としての支えがなくなったとしても。

今俺が背負っているのは、自分の理想だけではない。

今の俺には、衛宮士郎として守らなければいけないものがある。

桜が、そして、イリヤが。

だから。

「――――――ぉ」

体を無理やり起こす。
血が流れるのを気にもとめず、立ち上がる。


こんなところで。

「――――――――おおおおおおぉぉぉぉぉ!」

くたばってなど、いられないのだから。




「別に君が戦うっていうんなら構わないけどさ、まだ後ろの彼やる気のようだよ?」
「何?」
「何か面白いものが見られそうな予感があるから、戻ってきなよ。今だけは待ってあげるからさ」

そう言ってニヤニヤと笑みを浮かべながらこちらを眺め続ける北崎。


思わず振り返り。
そこで士郎が起き上がっていたことに、最も驚いたのはセイバーだった。

あの一撃は、即死ではなくとも致命傷に間違いのないものだったのだから。

そして、振り返ったセイバーの目に映ったのは。
傷口から血を流しながらも、立ち上がろうとしている衛宮士郎の姿。

506I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:38:48 ID:cr.u7jC.0

肉体は満身創痍のはずなのに、その目の戦意は衰えるどころか先よりも増している。


「士郎、今のあなたの傷は命に関わるものだ。しかしおとなしくしているのであれば、早急の手当で延命はできる可能性はある。
 それなのに、まだあなたは起き上がるのですか、?
 まだ、私と戦おうというのですか?」
「―――――ああ、そうだ」
「イリヤスフィールを守るために?」
「ああ」
「…何があなたを、そうさせるのですか?」

セイバーには分からなかった。
今の衛宮士郎を、何がそこまで奮い立たせるのか。

彼には、あのイリヤを守る理由はないはずなのに。
何故そこまで傷ついてまで、守ろうとするのか。


「――――昔、世界の皆が幸せになってほしいって、そんな願いを持って戦った男がいた。
 そいつは、自分の大切なものを全部切り捨てて、それでも一人でも多くの人が幸せになれるように戦ってた、らしい。
 たくさんの人を救うために、少しの犠牲を切り捨てる、そんな、…正義の味方になろうとした男が」

それは、小さな少女と一人の男への追想。
まるでそれが自分のことのように。
遠い過去を思い出すかのように。
静かに語る。

「そのために、その男は自分の最も守りたかったものを、守ることができなくて。
 今でもその子は、その男のことを恨んでる。自分を捨てた、と。
 要するに、自分の信じた道を往くために、自分の大切なものを選ぶことができなかったんだ、その男は」

前を向く士郎。
その先にはセイバーがいる。しかし見ているのはさらにその先。
今にも泣き出しそうな顔をした、銀髪の少女。

「だけど、俺思ったことあるんだよ。もしそんな親と子が、幸せに暮らしてる世界があったら。
 蟠りも何もなく、親は親として子供を愛して、その子供も親の愛情を受けて幸せに暮らしていけたら、それはどんなに幸福なことなのか、って」
「…………それは、キリツグとイリヤスフィールのことか?」
「ああ」

息子なのだから。父親の幸せを願うのは当然だろう、と。
そう言って、士郎は続ける。

「桜の笑顔も、俺が守らなきゃいけない。だけどイリヤも守る。
 桜の味方としての俺、衛宮切嗣の息子としての俺、どちらかを取ることなんてできない。
 ―――それなら俺は、両方を選ぶ。二人とも、死なせはしない」

だから、その理由さえあれば。エミヤシロウはまだ戦うことができる。
立ち上がることが、できる。


「………あなたの覚悟は分かりました。
 これで本当に最後です。この戦いが終われば、共に立っている、ということは有り得ないでしょう」
「ああ」
「もしあなたの持っている、2つの”聖杯”を得る、という望みが本気であるのなら。
 ―――――私の屍を越えて進むがいい」

507I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:39:41 ID:cr.u7jC.0


士郎は思考する。
この体はあとどれくらい動けるか。
セイバーに打ち勝つには、何が必要か。

可能性はもはや絶望的なもの。
だが、そこにほんの僅かだが、光を見いだせるものがある。

「―――お兄ちゃん…っ!ダメ…!」
『士郎さん!いけません!』
「止めろ!士郎!」

そんな士郎を止めようとする声が3つ。
彼の耳に届く。

イリヤ、ルビー、そして巧。

(無事だったん、だな。巧)

あの北崎が追い付いてきた時、巧がどうなったのか、気がかりではあった。
無論、肉体的には無事ではないだろう。しかし、まだ生きて自分の身を案じてくれている。

それが嬉しくて、同時に申し訳無さもあった。



ここから先は、もう彼らのことを考えることなどできないだろう。
だから、最後に彼らに会えて、良かった。


そんな感謝の気持ちを心の中で述べ、セイバーをまっすぐ見据えた士郎は。

肩に手をかけ。

―――――――赤き聖骸布を、一気に剥ぎ取った。




これは2度目だった。

己の中で世界が崩壊するのは。

生命の存在を許さないだろうこの突風のような流れ。

ボロボロの肉体が、まるで高質量の液体の激流に揉まれていくかのような衝撃。

一度目は無意識であった。だからこそ、流されてしまった。

だが、今は。

耐える。この肉体を、精神を破壊するようなこの激流に。

前に進む。一歩ずつ。

今度は、耐えなければならない。


そうだ、例え他の誰に負けることがあっても、自分にだけは負けられない。
だから、決して屈しはしない。

無理にでも前に出ようと進み。
しかしその度に体をすり減らされ押し返され。
それでも、諦めることなく前進を続ける中で。

ふと、赤い外套が見えた気がして。

その瞬間、思考が完全にクリアになった。


俺では立っていられないような突風の中で。
ただ一人、じっと立ち続けるその男は。

こちらに目をくれることもなく。
こう問いかけてきたのだから。


――――――――ついてこれるか?

静かに脳裏に響くその声に。
思わず叫び返していた。

「――――――――――――――――――――――ついてこれるか、じゃねえ」
「てめえの方こそ、ついてきやがれ――――――!!」

508I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:40:17 ID:cr.u7jC.0


地を踏みしめる。
風はもう途絶えた。


騎士王、アルトリア・ペンドラゴン。
今は黒きイングランドの王との距離は数メートル。

思考し、分析する。

今必要なものは何か。

今彼女の手にあるのは魔剣グラム。
アーサー・ペンドラゴンの宝具、約束された勝利の剣ではない。

しかしその技量は健在。

弓による攻撃は不可。隙があまりに大きすぎる。

今必要なものは、彼女の剣とまともに打ち合うことのできる剣。

いや、彼女に”隙”を作りうる攻撃。

構えるは、干将莫耶。
まだ投影する必要はない。
この宝具は、双剣は、まだ戦う力を残しているのだから。

こちらの武装を確認したセイバーもまた、片手に構えた剣を両手に持ち直す。
そのままの体勢で、ほんの数秒ほど時間も世界も止まったかのような静寂に包まれる。

ほんの数秒だった静止した時、しかしそれが永遠に近い時にも感じられた。


そして。


「「―――――――!」」


駆け出すのはほぼ同時だった。


―――――!

激しい金属音を奏でながら全力で叩きつけられる魔剣。

正面から受け止めるにはあまりに大きすぎる一閃。
それを、この腕は防いでいた。

腕、正確にはこのアーチャーの持っていた記憶が、経験が受け継いだ中に存在したセイバーが。
それが俺の知るセイバーの技量と合わさり、彼女の攻撃のクセをかろうじて掴んだのだ。

しかし、そんなもの初撃の数度を受け止めることができれば幸いという程度のもの。
いくら相手の技量を知っていようと、その程度で対応できるならば彼女は剣の英霊などと呼ばれてはいない。

509I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:40:48 ID:cr.u7jC.0


だからこそ、次の一手を思考する。
せめて一撃を入れる、決定的な隙さえ作れればいいのだから。

グラムを払い、軋みを上げる干将莫耶。
それを、セイバーの目の前で、投擲した。

不意打ち、というにはあまりにも雑なそれを、セイバーは難なく回避。
手に武器のなくなった俺に向かって容赦なく剣を振るい。


――――――ガキィン


その一撃を、俺は咄嗟に肩に未だ持ち続けていたバッグで防ぐ。
バッグの中身が散乱する中、グラムを受け止めたのはその中から姿を現した一本の黄金の西洋剣。


「―――!私の剣…!」


勝利すべき黄金の剣(カリバーン)。
かつてアーサー王が持っていたとされる、選定の剣。


何という皮肉だろうか。
かつてアーサー王が所持していた選定の剣を自分が振るい。
今セイバーが持っているのは、自身にとって天敵となる竜殺しの特性を備えた、そのカリバーンの原点でもある最強の魔剣。
本来であればこの戦いで互いに持つべきは逆であるべきだろうというはずの2本の剣が、こうして主を違えてぶつかり合っているのは。


だがしかし。例えカリバーンであっても、相手はその原典である魔剣。
加えて干将莫耶によって受けていた、僅かながらもステータスアップの効果も今はない。

だからこそ、セイバーの一閃を正面から受け止めきることなど、不可能。

だが逆に言えば。
この咄嗟に近い一撃だけは、受け止めることができる。

そしてそれだけの時間があれば十分。

「――――――!!」


セイバーはそれで俺の狙いに気付いたのか。
引くこともなく、思い切り剣を振るい、こちらを吹き飛ばす。

後退する体、隙だらけのその体勢に、セイバーは追い打ちをかけることもなく。

―――――!!


そのまま背後から迫った2本の剣を弾き飛ばす。
それは今しがた俺の投擲した、干将莫耶。

弧を描く軌道に放たれたそれは、互いを引き合う性質によって引き寄せられ、セイバーの立っていた場所へと旋回し舞い戻ったのだ。

だが、セイバーの直感もまた化け物。

剣の投擲とカリバーンで受け止めたという事実だけで、こちらの狙いに気付いたのだから。

弾き返された干将莫耶は砕け散り、精錬された双剣はただの鉄クズへと成り果てる。

しかし、それもまた予想範囲内。
この程度のこと、彼女ならば難なく対処してくれる。

振り返ったセイバーは、後退した士郎へと更なる追撃を駆けるために跳ぶ。

アーチャーの腕を持った自分が、距離を空ければ何をするか。分からないわけがないのだから。

だからこそ。
ここで弓を穿ちはしない。そんな暇は、今はない。


「投影――――開始(トレース、オン)」

510I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:41:52 ID:cr.u7jC.0

使う魔力は最小限、かつ弓を射ずとも離れた相手に攻撃できる武器。
元より剣に特化した体。剣でなければ魔力の消費は上がる。
その中でも射ることなく瞬時に射出可能な、魔力消耗の少ない剣。


そう、俺は知っている。
相手の切り札に反応して因果を逆転させる、飛翔する魔剣の存在を。

それは、衛宮士郎が本来の歴史では決して会うことのなかった執行者の持つ、神代の魔剣。
その存在をこの目で見た。


そして、それを使う持ち主、バゼット・フラガ・マクレミッツの姿も、脳裏に焼き付いている。
ならば作れる。それが剣であるのならば。
使用法、効果、形、それら全てを模して、つくり上げることができる。

パキン

その瞬間、何かが割れるような感覚が脳内に走った。

しかし、問題はない。
戦うことに、支障はない。壊れた箇所は、腕が補強する。

後より出て先に断つ者(アンサラー)の軌道詠唱。不要。
作り出しさえすれば、後は放つだけだ。

投影すると同時に浮遊した短剣に拳をつがえ。

「――――斬り抉る戦神の剣(フラガラック)!」

手が焼ける感覚と共にその名を開放、閃光となって飛翔する一本の短剣。

それは相手の切り札に反応して、相手を穿つ光線を放つ迎撃宝具。
エクスカリバーを持たぬ彼女に、因果を逆転させる効果を発動させることはできない。

しかしそれでも、セイバーに迫るその光線は低ランクとはいえ宝具の光。
例え彼女であっても、受けていいものではない。

咄嗟に後退し、直線に走る光を避ける。
目標を穿ちもしなかった短剣は、それだけで役目を終えるように消滅し。

その瞬間、次の一手の布石が揃った。


「―――――――投影、装填(トリガー・オフ)」

フラガラックの射出と同時に、その手に持った黄金の剣から全ての情報を読取る。

真名開放直後の、投影魔術。
魔術回路の酷使にも近い行為を、体内に眠る27の魔力回路を、そしてこの腕を総動員して成し遂げる。

セイバーはそのただならぬ様子に気付き、距離を詰めようと一気に駆け出そうとしたところで。
間に合わないと悟り、逆に一歩下がり彼女もまた剣を構える。

そして、この剣に蓄えられた全ての知識を、情報を読取ったこの体で。
この聖剣の真名を、開放する―――――

511I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:42:43 ID:cr.u7jC.0
「全工程投影完了(セット)――――是・勝利すべき黄金の剣(カリバーンブレイドワークス)」

読み取るは聖剣の記憶。騎士王の戦いの記録。
基本骨子を、構造を、経験を、魔術構成を。その全てを読み取り、その真名を開放する。

聖剣に収束していく魔力が、カリバーンに黄金の光を纏わせ。

「―――はあっ!」

そのまま振り下ろした聖剣は、黄金の波を放ちながら、セイバーへと迫った。

対してセイバーも、その様子を目にしながら。
退くこともなく、素早い動きで剣に魔力の霧を渦巻かせる。

それは、エクスカリバーを、そして風王結界を喪失した彼女の持つ、切り札には届かずとも最大の攻撃である技。

そう、あの光は己の所持していた聖剣の光。
故に、ことあの聖剣のことであれば彼女以上に知っている者などいない。

だからこそ、あの剣にだけは、敗れるわけにはいかない。
それがあの剣の所有者としての誇りだ。

そう言わんばかりに魔力を魔剣につぎ込み。
渦巻く黒い魔力は、巨大な剣のように形作り。
黄金の光を迎え撃つ―――


「卑王鉄槌(ヴォーディガーン)――――!!」


巨大な波動の刃は一瞬、黄金の光を打ち止め。
しかし直後に光に押されて崩壊させる。

その光を前に、セイバーは再度瞬時に魔力を剣に集中させる。
纏っていた黒き鎧、その魔力を剣に集め。

「――――ハッ!」

振り下ろした剣を再度、同じ形で打ち上げた。

鎧を魔力へと変換し再度放った卑王鉄槌。
それをもってしてなお、黄金の光は止まらない。
今のセイバーが持ちうる最大の攻撃を持ってしても、その光を破ることはできない。


しかしセイバーは、その様子に動揺することもなく、振り上げた剣を流れるような動作で地面に突き立てた。

光が彼女を覆い尽くすと同時に、濃密な霧がセイバーの周囲を守るように防壁へと形を変える。
防壁ごと光に覆い込まれるセイバー。

512I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:43:29 ID:cr.u7jC.0
――――シュン

一瞬の後、閃光を一閃するかのように剣風が走り、光が消滅。
奥から現れたセイバーは、前進を魔力に焼かれ纏った服はボロボロに焼け焦げている。


2度の卑王鉄槌、そして魔力の霧による防御。それらは確かにカリバーンの光を打ち消すことはできなかったが、決して意味がなかったわけではない。
幾度の障害を通じ、その威力はセイバーの対魔力と耐久力を持ってすれば耐えられるほどまでに威力を相殺されていた。


そして、目の前の士郎を見据えたセイバーは、今度こそ目を見張ることとなった。

「なっ?!」


構えているその武器は弓。
アーチャーの持っていた黒弓。それはいい。

問題は、そこに矢として構えられている武器。
黒い弓とは対照的に、その手に構えられた黄金の剣。


矢から手が離れると同時に一歩前に出たセイバーは、射出されたそれを咄嗟に全力で弾き飛ばして。
その直前、目の前でそれを見て、セイバーの驚愕は決定的なものとなる。

士郎はこともあろうに、勝利すべき黄金の剣を、自分の宝具を使い捨ての矢として射出したのだから。


そう、あのカリバーンですらも、ただの一手にすぎない。
セイバーがカリバーンを耐えぬくことなど、想定していたのだから。

カリバーンを最も知っているのがセイバーであるなら、―――――セイバーを他の誰よりも知っているのは俺なのだから。

だからこそ。彼女の直感はこの攻撃を予知し得ない。
予知できたとしても、起こり得ることとして捉えることができない。この一撃は、英霊に対する一つの冒涜でもあるのだから。



ぶつかり合った衝撃で軋みをあげ、ヒビを入れた魔剣グラム。
それにより弾いたカリバーンは、上空へと打ち上がり大爆発を引き起こす。
ランクにしてAクラスの宝具の、壊れた幻想(ブロークンファンタズム)。
そんなものが爆発すれば周囲に振りかかる熱は、爆風は膨大となる。

轟音と共に吹き荒れる爆風。
あまりに予想外の事態に、乱れるセイバーの直感。
そしてそんな現象の至近距離に近い場所に位置し、先のカリバーンに勝るとも劣らぬ強烈な爆風に覆われながらも、セイバーは笑っていた。


士郎は本気だと。
自分の武器を打ち捨ててなおも、自分と戦っているということに。

あの、鍛錬では自分に一本も入れることが出来なかった少年が、こうまで自分を越えようとしている事実に。
喜びと楽しみを感じている自分を、セイバーは感じ取っていた。
それこそ、今この時だけは現マスター、桜のことも、イリヤスフィールのことも忘れられるほどの。

ああ、だからこそ惜しい。

次の士郎の一手が、この戦いに決着をつけてしまうだろうことを、直感していたから。

513I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:44:50 ID:cr.u7jC.0

魔力の混じった爆風で周囲の状況もロクに掴めぬ空間。

そんな中で、視界の端に何かが映る。

「来るか、士郎―――――」

視界の端に映った剣を、瞬時に受け止め。

(――――違う!)


それは、干将莫耶の片割れ、陽剣・干将。
しかし、剣の担い手はそこにはいない。

これはあくまでも投擲されたものに過ぎない。

思考より先に体が動く。
これが投擲されたということは、もう一方も自分に食らい付こうと迫ることは火を見るより明らかなのだから。


それを知っていたからこそもう一方、逆側から飛来した陰剣・莫耶をギリギリのところで受け止めることができた。

迫った剣にグラムを振るい粉々に砕く。
爆風の中であってもその直感をもって的確に対処し、干将莫耶による一撃を完全に回避し。

「―――――!」

それ故に、目の前に迫ってきた彼の次なる手を、防ぐ機会を失うことになる。

目の前で光るその手を見据えながら、その一撃を避けることができない、と見たセイバーは。


「っ!はああああああああああああ!!」

それでも退くこともなく、その一撃を、正面から迎え撃ち。

「セイ、バー――――――――…………!!!!!!」

その衝撃は周囲に一陣の風を巻き起こし。

爆風が完全に晴れた先にあった光景は。

互いの体が交差し、背を向け合う二人。
セイバーの振り下ろした剣と、士郎の投影した武器が、共に互いの体を捉え。


胸から腹にかけて、深く斬られて血を流す士郎と。
胸に一本の刃を刺されたセイバー。

その二人が、共に倒れる姿だった。



514I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:46:02 ID:cr.u7jC.0

「――――――お兄ちゃんっ!」

イリヤ自身、どこにそんな力が残っていたのか分からない。
ボロボロでロクに力も入らないはずの体だったのに、その光景を見ただけで北崎の拘束を振りほどいて走りだしていた。

「お兄ちゃ…ゴホッ」

体の中で、治りかけていた傷が開きかけたのを感じ取る。
口の奥からせり上がってくる鉄の臭い。体の内側から走る、鋭い痛み。

なのに、その足は止まることなく士郎の元へと駆け出していた。

『い、イリヤさん!』

叫ぶルビーの声にも。

「あーあ、相打ちかぁ。面白くないなぁ」

あくびを出す北崎の声にも反応することなく。

「お兄ちゃん…、お兄ちゃん!」

よろめきながらも走るが、体は正直だった。
傷ついた内臓の発するは身体機能を大きく低下させ、たった数十メートルの距離を満足に走らせない。

やがて足がもつれ、地面に転がり込む。

「つっ…、お、お兄ちゃん…」

それでも、地を這うように動かぬ兄の元にたどり着くイリヤ。

「目を開けて!お願いだから!お兄ちゃん!お兄ちゃん!」

揺らそうと呼びかけようと、倒れた兄は反応しない。

「嫌…、嫌だよ…、こんなの…。嫌ああああああああああああ!!!」

絶叫するイリヤ。


そんな様子を見ながら、北崎はゆっくりと立ち上がる。
嫌な予感を感じたLは、咄嗟に北崎を静止する。


「北崎さん…!」
「……」

しかしそんなもの、彼にとって何の障害にも成り得ない。
腕の一振りで跳ね飛ばされるLの身体。

ゆっくりと、倒れた二人と泣き叫ぶイリヤの元に、オルフェノクの身体へと変化させながら近付く。

「士郎!おい士郎!しっかりしろ!」

未だ起き上がることができない巧は、必死で士郎の名前を呼び続ける。
それが、無駄なことだと分かっていながら。

「クソッ、動け、動けよ俺の脚!!」

起き上がろうとしても、脚に力が入らない。
ボロボロの身体でオルフェノクの力を酷使したこの身は、まだ一人で起き上がることもままならない。


「お前、そこから逃げろ!!速く!」

せめてもの行為として、イリヤにそこから逃げるように叫ぶ。
しかし、イリヤは士郎の傍を、離れることはなく。


やがてドラゴンオルフェノクは、3人の元へと辿り着く。

じっと二人の身体を見渡し。足で軽く揺さぶって。
何の反応もないことを確認した北崎は。

「相打ちかぁ…。このパターン正直イラつくんだよねぇ。僕の関われないところで楽しそうなことしてさ」

士郎の身体にすがりついたイリヤに目を向ける。
その視線に、そして今の状況にようやく気付いたイリヤは。


「ひっ…!」

小さく怯える声を上げ。
それを楽しそうに北崎は眺め。

「それじゃあ、この戦いは僕の勝利ってことで、この子を好きにしてもいいんだよね?」

そう言って、手をイリヤへと差し伸ばし。

「じゃあね。運が良ければ生き返れるかもしれないけど。さよなら、白いお人形さん」


その手から、細い触手を彼女の心臓めがけて打ち出した。


―――――――ザクッ

515I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:47:19 ID:cr.u7jC.0


投影するたびに大切なものが消えていった。

思い出が、記憶が、大切な人達への想いが。
何故戦っているのか、遠くで俺の名前を呼んでいるのは誰なのか。

俺がなりたかったもの、守りたかったもの。

それが、少しずつ零れていった。


傷口からは刃が擦れる音を鳴らし。
ああ、俺はもう人間じゃないんだな、と思いながら。
それでも死を迎えようとしている自分を、とても冷静に見直しているやつがいた。

確か、誰だったかな。さっき、自分の大切な誰かの名前が呼ばれたような気がする。

ダメだ、名前が出てこない。
だけど、とても大切な人だったんだとは思う。

(………---、ごめんな、俺、もうすぐそっちへ行くと思う)

誰なのかは分からないのに、きっと怒られるんだろうなって感じた。
だから、たぶん先に待っているその人に対して何て謝ろうかなんて、そんなことを考えていた。



俺の名前を必死で呼んでいる少女の声が聞こえる。

確か、名前は―――そうだ、イリヤだ。

何となく、その声に涙が混じっているようですごく申し訳ない気持ちになっていた。

妹を泣かせるなんて、兄として最低の行為じゃないかと思った。
だけど、この涙のあとは、きっと彼女はそれを埋めるような笑顔を浮かべられるだろうと。
今はその悲しみに泣くことがあっても、いずれきっと、その数十倍の笑顔を浮かべられるようになるから。そう信じてるから。
だから、君は生きてほしいと。
彼女には届かないと思いながらも、そう願いを込めた。

あと、他に名前を呼ぶ男がいる気がする。
名前は―――――出てこない。
だけど、何となく覚えている。
ぶっきらぼうだけど本当は優しい心を持ったやつ。
人を傷つけるのを恐れて、人を自分から遠ざけようとする、自分と比べてまっすぐにみんなの笑顔を守れるだろう、そんなやつ。

俺の夢を守ってくれると言ってくれた時は本当に嬉しかった。
なのに肝心の俺がいなくなってしまうというのは、謝罪する言葉も見つからない。

それでも。あんたならきっと。
俺の夢を、守ると言ってくれた、桜の笑顔を含む、皆の笑顔を守ってくれるって、信じてる。



そして――――桜。
俺が守らなきゃいけない、大きな罪を背負った女の子。
彼女のことだけが、俺にとってほぼ唯一の心残りだった。

俺がいなくなって、---もいなくなって、--もいなくなって。
彼女は笑顔を浮かべられるようになるのか。
きっと、とても悲しむだろうなと思った。

だから、せめてあの子を一人にしないために。
もう生きていることができない俺の代わりに悲しむ彼女を、支えてやれるように。

だから、俺は

516I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:48:06 ID:cr.u7jC.0



最も守りたかったものを。守るべきものを。その全てを。
最も信頼した存在に、託す。

だから桜を――――


「頼んだぞ、セイバー」

もはや声も出ないはずの身体で、それだけはっきりと、口にできた気がした。



―――――――ザクッ

鋭い音とともに、突き出されたそれはその肉体を貫いていた。

目を見開くイリヤ。
じっと動かないドラゴンオルフェノク。

いや、動かないのではない、動けなかった。

イリヤに伸ばした触手は、その数ミリ前で停止し。
触手の主の首からは、後ろから貫くように鋭い一本の剣が生えていたのだから。

北崎には、何が起こったのか理解することもできず。
もはや声を出すことも、身動き一つとることも叶わなかった。

ただ、自分のすぐ後ろに何者かの気配を感じ。

「――…その穢れた手で、彼女に触れるな。下郎」

その存在が震えるような声を、こう発したような気はした。

そしてその言葉を最後に。
首に刺さった刃が動かされ。

浮遊感に包まれて飛び上がったような感覚に包まれた北崎は。
何か大きな身体のようなものが青い炎で燃え上がっているのを見て。

それが、闇に落ちる北崎の意識が最後に見たものとなった。




イリヤの目の前で、ドラゴンオルフェノクの頭が飛んでいき。
青い炎に包まれてその身体が崩壊していくのを見届けたイリヤ。
それと共に、まるで竜を殺したことで役目を終えたかのように根本から折れ飛んでいく刃。

そんな彼女の視界に入ったのは。
胸に刃物を突き立てられた金髪の女剣士だった。

彼女は柄だけになった剣を投げ捨て。
胸に刺さった刃を引き抜く。

それは剣ではなく短剣程度の大きさの刃物。
なのに、その刃の部分はギザギザな線を描いた奇妙な形をしている。

517I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:49:51 ID:cr.u7jC.0

そして、イリヤはそれを知っている。

「ルールブレイカー…?」

そう、ここに来たばかりの時、呪術刻印を消すために使った宝具。
それが、セイバーの胸に突き立っていた。

その歪な刃が抜き取られると同時、セイバーの肉体から発されていた黒い魔力が消失。
ボロボロな黒いドレスの色は青く変わっていき、真っ白だった肌は生きている人間のそれと大差ない色へと変わる。

その変化に驚くイリヤの目の前で。
セイバーは静かに士郎に近づき、その肉体を返して顔を上に向ける。

「……っ、あなたは…、どうしてこんなものを、私に…!
 あなたを殺した私に、生きろというのですか…!?」

あの最後の一撃。
あそこで投影していたのが干将莫耶だったなら、その双剣でもってこの身を切り裂いたのだったなら。
間違いなくこっちの刃は士郎に届かず、彼に勝利をもたらしただろう。

なのにこの刃を、彼はこの身に刺した。
結果、負けたはずの自分が生き、衛宮士郎はその生命を終えた。

例え届かなくても、何故そんな選択をしたのか。
問い詰めようと思う心がはやり士郎へと詰め寄った。

なのに。
士郎の顔は、まるで何かをやり遂げたような顔をしていた。

「何故あなたは…、悔いを残したはずなのにそんな顔で死ぬことができるのですか」

そんな顔を見せられたら、怒るに怒れなくなってしまうではないか。

「桜やイリヤスフィールを、あなたの代わりに私に守れ、というのですね…?」

もう、答える者のいないはずのない問いかけ。
なのに、その言葉に頷かれたような感覚を、どこからともなく感じ取っていて。

「あなたと、いう人は…」

今の自分に涙を流す資格などない。
だからこそ、そんな心を切り離すかのように、士郎を地面に横たえ。

「…分かりました。これより私は、あなたの剣として、イリヤスフィールを、桜を、必ず生きて連れ帰りましょう」

黒き泥の呪縛から解き放たれた騎士王は、かつての主へと一つの誓いを立て。

自分が離れると同時に士郎に近付くイリヤを見送りつつ、離れた場所で倒れた者達へ向けて、歩みを進めた。

518I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:50:36 ID:cr.u7jC.0


自分には何もできなかった。
何となくあの黒い騎士に従うことは間違いだと思っていながら、最後まで逆らうことができず。

なのに目の前では、ただの人間に見える少年が、あのとても強い騎士さんと戦って死んでいった。
勝てないはずの相手に、一歩も退かずに立ち向かって。

自分は、あのオルフェノクに立ち向かうことも、騎士に従わずに立ち向かうこともできなかったのに。

何となく、そんな自分の理想のために真っ直ぐ、強くあった少年の姿に。
一人の、心優しく強く、それでいて理想を願うオルフェノクを連想していた。



「ユカ、大丈夫ですか?」
「え、っと…、セイバーさん、ですよね…?」

セイバーからそんな優しい言葉をかけられたことのなかった結花は、戸惑いを隠し切れない。

「…はい。安心してください。今の私はあなたを力で縛ろうとは思いません」

そう言って手を差し伸ばし、結花を起き上がらせたセイバー。

そして周囲を見回し、二人の男を見つけた。
傷ついた一人を、もう一人が肩を貸して起こしているようだ。

「えっ、乾…さん?」
「知り合いですか?でしたら話は早い。一緒に来てくれませんか?」




『士郎さん…、あなたは…』
「な、何だ、どういうことだよ…?!」

何かを悟ったようにつぶやくルビーに対し、混乱する巧。
無理もないだろう。目の前で士郎と戦っていた剣士が、いきなり起き上がったと思ったら北崎の首を刎ね、そのままイリヤに何をすることもなく士郎の死体に問いかけていたのだから。


「…………」

そしてLもまた混乱こそしていたものの、頭は状況把握に努めようときわめて冷静だった。


咲世子の仇も取れず、一人の危険人物の手綱を握ることに失敗し、こうして死人まで出す事態になってしまった。
しかし、だからこそLは今するべきことをしなければならない、と。

519I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:51:19 ID:cr.u7jC.0
そんな中、未だ状況の掴みきれない二人と一本の元についさっきまであの少年と剣を交えていた少女が、こちらへと向かって歩いてきた。

「大丈夫ですか?」
「ええ、私は大丈夫ですが、彼が重傷です。せめてどこか休める場所へ移動したい」
「…おい、待てよあんた。こいつのことを信用するのかよ」

信用するかのようにセイバーに話しかけるL。
そんな様子に意義を申し立てたのは巧だった。

「今の彼女からは敵意を感じません。それに、私の見立てでは彼女は騙して人に取り入り、闇討ちするような人にも見えません」
「信用できると思ってんのかよ」
『少なくとも彼女の言葉に嘘はないでしょうと私は思います』
「間違っていた時は私が責任を取りましょう。
 …すみません、今は色々なことが立て続けに起きて私自身状況の整理ができていません。一旦どこかの施設に移動する、ということでよろしいでしょうか?」

そう言ったLの言葉に、巧は顔をしかめつつも反論はせず、セイバーもまた頷いていた。

問題は、士郎の傍から動こうとしないイリヤだったが。

「反論は、ありません。ただ、その前に一つだけお願いが」
「何でしょうか?」


と、セイバーはかすかに迷うように顔を伏せ。
その願いをLへと告げた。

「…シロウを、埋葬させてください」



【E-4/一日目 日中】

【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:疲労(大)、肋骨骨折、両腕両足の骨にヒビ、内臓にダメージ(中、優先的に治癒中)、悲しみ
[装備]:カレイドステッキ(ルビー)@プリズマ☆イリヤ
[道具]:クラスカード(キャスター)@プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本:?????
1:お兄ちゃん…!
[ルビー・思考]
基本:イリヤさんを手助けして、殺し合いを打破する
1:イリヤさんを落ち着かせつつ、まずは目の前の人達と話をする
[備考]
※2wei!三巻終了後より参戦
※カレイドステッキはマスター登録orゲスト登録した相手と10m以上離れられません
※ルビーは、衛宮士郎とアーチャーの英霊は同一存在である可能性があると推測しています。
[情報]
※衛宮士郎が平行世界の人物である
※黄色い魔法少女(マミ)は殺し合いに乗っている?
※マントの男が金色のロボットの操縦者、かつルルーシュという男と同じ顔?



【乾巧@仮面ライダー555】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(特大)、肩から背中に掛けて切り傷、全身に重度の打撲+軽度の火傷
[装備]:なし
[道具]:共通支給品、ファイズブラスター@仮面ライダー555
[思考・状況]
基本:木場を元の優しい奴に戻したい
0:マミの事が少し心配
1:士郎…、何でだよ…
2:二人の元から離れたいが、仕方がないので協力する
3:暁美ほむらを探して、魔法少女について訊く
4:マミは探さない
5:セイバーに対して警戒心
[備考]
※参戦時期は36話〜38話の時期です
[情報]
※ロロ・ヴィ・ブリタニアをルルーシュ・ランペルージと認識?
※マントの男が金色のロボットの操縦者


【L@デスノート(映画)】
[状態]:右の掌の表面が灰化、疲労(中)
[装備]:ワルサーP38(5/8)@現実、
[道具]:基本支給品、スペツナズナイフ@現実、クナイ@コードギアス 反逆のルルーシュ、ブローニングハイパワー(13/13)、 予備弾倉(9mmパラベラム×5)、シャルロッテ印のお菓子詰め合わせ袋。
[思考・状況]
基本:この事件を止めるべく、アカギを逮捕する
1:目の前の少女、セイバー達と情報を共有するために移動する
2:月がどんな状態であろうが組む。一時休戦
3:魔女の口付けについて、知っている人物を探す
4:3or4回目の放送時、病院または遊園地で草加たちと合流する
[備考]
※参戦時期は、後編の月死亡直後からです。
※北崎のフルネームを知りました。
※北崎から村上、木場、巧の名前を聞きました。
※メロからこれまでの経緯、そしてDEATH NOTE(漫画)世界の情報を得ました。しかしニア、メロがLの後継者であることは聞かされていません
※Fate/stay night世界における魔術、様々な概念について、大まかに把握しました。しかし詳細までは理解しきれていないかもしれません。

520I was the bone of my sword ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:51:50 ID:cr.u7jC.0

【セイバー@Fate/stay night】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、全身に切り傷と軽い火傷(回復中)、魔力消費(大)
[装備]:無し
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:シロウの願いを継ぎ、桜とイリヤスフィールを守る
1:まずは目の前の参加者と話す
2:シロウ…
[備考]
※破戒すべき全ての符によりアンリマユの呪縛から開放されセイバーへと戻りました


【長田結花@仮面ライダー555】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(中)、翼にダメージ(オルフェノク態のダメージ)、仮面ライダー(間桐桜)に対する重度の恐怖
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×3、ゴージャスボール@ポケットモンスター(ゲーム) 、穂群原学園の制服@Fate/stay night、お菓子数点(きのこの山他)、
    スナッチボール×1、魔女細胞抑制剤×1、ジグソーパズル×n、呉キリカのぬいぐるみ@魔法少女おりこ☆マギカ、不明支給品0〜3
[思考・状況]
基本:???
1:私は、どうしたら…?
2:え、乾さん…?
[備考]
※参戦時期は第42話冒頭(警官を吹き飛ばして走り去った後)です


【衛宮士郎@Fate/stay night 死亡確認】
【北崎@仮面ライダー555 死亡確認】

※干将莫耶、勝利すべき黄金の剣、グラムは破壊されました。








そこは、月が綺麗な夜の、静かな庭の縁側。
座った自分の隣には、一人の男が静かに佇んでいた。

「なあ、爺さん」

呼びかけても、隣の男は静かに目を閉じたまま動かない。

「俺さ、正義の味方にはなれなかった。それどころか、妹も、守るって決めた女の子も守れなかった。
 優しくしろって言われてたのに、結局泣かせちまったんだ」

「………」

「まだ、やらなきゃいけないことも後悔も沢山あったけどさ。
 それでも、やらなきゃいけないことは、俺なりにやり切ったと思うんだ」

父親の希望は、小さな妹に。
夢は、一人の男に。
そして、守りたい大切な存在は、最も信頼した少女に。



風が静かにそよぐ。
庭の草花がそれに揺らされ、小さく音を立てる。

しばらくの沈黙をもって、隣の男に問いかけた。


「爺さん、俺、間違ってなんてなかったよな?」
「………」


男は答えない。沈黙を保ったままだ。

小さな不安に包まれる心。
そんな時、微動だにしなかった男は、静かに俺の頭に手を乗せ、クシャクシャと乱雑に、しかし優しく撫でた。

その意味が分かった時、俺はなんとなく、心からの笑みを浮かべられたような気がした。

521 ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/21(月) 22:52:54 ID:cr.u7jC.0
投下終了します
問題点などあれば指摘お願いします

522名無しさん:2014/04/21(月) 23:35:13 ID:v5siiIj60
投下乙
ここでセイバーが対主催になったか!士郎はよく頑張った、お疲れ様
桜はどうなるんだろう…

523名無しさん:2014/04/22(火) 00:32:20 ID:osv8C/I20
投下乙です!
士郎・・・よく頑張った
セイバーをこの世全ての悪から解放し、間接的にだけど北崎を脱落させることもできたし
後イリヤ・・・大丈夫であって欲しいなぁ
セイバーも今後大変だろうけど、士郎の分まで頑張って欲しいなぁ

524名無しさん:2014/04/22(火) 00:48:11 ID:SqCil8d60
投下乙です
士郎お疲れ様
セイバーがキレイになったから何気に結花も助かったかな
しかし全員見事にボロボロだw

525名無しさん:2014/04/22(火) 00:55:47 ID:RzJFjG0M0
というかこのまま病院行ったら木場さんと…

526名無しさん:2014/04/22(火) 00:57:55 ID:lLvckPRE0
投下乙です。まさか、こうなるとは……
セイバーとの決着と解放、イリヤに藤ねえに桜、巧への思い
まさしく「衛宮士郎」が総動員された話でした。

527名無しさん:2014/04/22(火) 01:34:11 ID:at1E9wsA0
…それはオイシイ

528名無しさん:2014/04/22(火) 02:30:51 ID:3MofEAf60
投下乙です。
既に言われていますが改めて
士郎、お疲れ様です

ただちょっと気になったのが、セイバーの黒化解除ですね
セイバーが黒化したのは「この世全ての悪」の影に囚われたことによるものです
マスターを同じとするライダーが黒化していなかったように、桜との契約だけが理由ではありません
(桜の場合はアンリマユとの契約による汚染と、自分がバケモノであると受け入れて適合したのが理由)
なのでルールブレイカーで契約解除しただけで黒化がとけるのは、個人的にちょっと疑問でした

ただ多くの二次創作でも契約解除で黒化がとかれているように、ここら辺は明言されていないので、
絶対に修正が必要とも言えないんですけど。あくまで自分は気になった、と言うだけですので

話の展開的には黒化解除をしなくても問題ない(契約解除で桜のサーヴァントでなくなった+士郎に最後に頼まれた)ので、
一考していただけると嬉しいです

529名無しさん:2014/04/22(火) 09:08:48 ID:vjBBNrDI0
まあ、その点は書き手さんの裁量次第ということで

530名無しさん:2014/04/22(火) 09:26:54 ID:T2QPLePM0
まぁルルブレじゃオルタ解除できないってのは結構言われてることではあるんだよね
でないとHFトゥルーがセイバー見殺しとも取られかねないし

531名無しさん:2014/04/22(火) 10:15:36 ID:lLvckPRE0
そこは投影回数の制限とか、他にも互いの心情や単に展開面な話で色々解釈が分かれる。今回もそういう例のひとつとして見ている。
だからこそ真偽がはっきりせずなんですが。「気になるが、間違えてるとも言い切れない」という扱いの難しい問題には違いないですね…。

532名無しさん:2014/04/22(火) 13:48:33 ID:old145zAO
投下乙です。

悪魔に囚われた女王様を奪還。
立派な英雄だぞ、士郎。

セイバーは、おりことどう決着つけるかか。

イリヤは綺麗なセイバー知らないし、どうなるかな。

533名無しさん:2014/04/22(火) 15:44:46 ID:qrEA5hyQ0
投下乙です

言いたい事はもう上で言われてるがとりあえず一言
士郎、お疲れ様

534 ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/22(火) 21:27:02 ID:DUxbqICs0
感想、指摘ありがとうございます
ルールブレイカーによる黒化解除は、とりあえず本ロワにおいては可能、ということにさせていただきたく
桜とのパスが切れていたり受肉していたりと本編とは色々と違う状態でもありますし、可能ならこのままで通させてください

535名無しさん:2014/04/22(火) 21:35:41 ID:3MofEAf60
わかりました
個人的には残念ですが、このまま通しという事で
あと受肉は、本編中で黒化した時点でしていますよ

しかし黒化解除しても、桜の影に飲まれたらまた黒化しちゃうんですよね
しかもセイバー自身には、逃げる以外にそれを防ぐ方法がないという……

536名無しさん:2014/04/22(火) 22:12:48 ID:K7QQ4Fd60
大きな矛盾が無ければ書き手の自由でいいかと
それに原作とロワ内では状況が違いますし

537 ◆Z9iNYeY9a2:2014/04/22(火) 22:49:42 ID:DUxbqICs0
すみません、忘れていました
>>501までを前編、以降を後編とさせてください

538名無しさん:2014/04/23(水) 00:39:11 ID:kFwVmVRI0
マーダー少なくなってきたけど、残ってるのは一騎当千できる奴ばっかだし
対主催者同士でもイザコザが発生しそうなんだよなぁ

539名無しさん:2014/04/23(水) 06:57:59 ID:y8DXgtpk0
修正乙です。
それと、あまり残念とかは言わない方がいいかと。氏にも氏の考えがあるのでしょうが、気分を悪くする人もいるかもしれないので。
上から目線の言葉になって申し訳ありませんでした。

540名無しさん:2014/04/23(水) 15:41:31 ID:kFwVmVRI0
残念なのは>>535の態度なんだよなぁ…

541名無しさん:2014/04/23(水) 16:36:29 ID:.P5L72UYO
もう引き摺るのはやめましょうよ……それよりも、話題を変えて。

もう一つの予約はどうなるだろう……

542名無しさん:2014/04/23(水) 20:00:56 ID:y8DXgtpk0
キリカが死んでから、織莉子はどうなるのか本当に気になるw

543名無しさん:2014/04/23(水) 23:17:17 ID:1fKDdFGU0
息つく間もなく次の予約だー!?

544名無しさん:2014/04/27(日) 06:55:19 ID:ocs7Ya2k0
投下来なかったけど書き手さん大丈夫?何かあった?

545名無しさん:2014/04/27(日) 09:34:55 ID:vWtjpdps0
もしも何かあったのなら報告をお願いします。
投下自体は大丈夫だと思いますが、住民の皆様が心配すると思いますし。

546名無しさん:2014/04/28(月) 13:40:06 ID:szozUdCY0
破棄宣言も来ないのは不安
だが大丈夫だと思いたい

547 ◆HOMU.DM5Ns:2014/04/30(水) 13:55:36 ID:LU4xnCiA0
悪い子です。連絡を断ってしまい、誠にすみませんでした
再度予約の後、したらばの仮投下スレに投下をしました。検証をお願いします

548 ◆HOMU.DM5Ns:2014/05/01(木) 01:38:13 ID:iaf2QIKA0
本投下を始めます
待たせて大変すみませんでした

549わたしの世界を守るため ◆HOMU.DM5Ns:2014/05/01(木) 01:41:17 ID:iaf2QIKA0



 ☬                    ☬





「私が生きる意味を知りたい」





願ったのは、多くの人は考える事もなく終わるような、取るに足らない希求。

今までの人生が誰かの一部、服飾のひとつとしてしか他者に見られてないと知った時。
私はそれを見失った。
自分が何の為に生きていたのかが、分からなくなった。



魂を代価として知った、新たな意味。
世界の滅亡を食い止め、救う為にひとりの少女を探し出し、殺すこと。
使命を受け入れた。
命を奪う覚悟を決めた。
瞳に映って見えた未来の中に、意味はあるのだと信じていた。



目指した未来をひた走る中、見向きもしなかった方向から、ある少女がやって来た。
何も残ってないと思っていた自分に、手を貸すと約束してくれた。
障害を切り屠る爪牙として血を流す事を厭わず、常に惜しみない献身を捧げ。
年が近いとは思えないぐらいに気紛れで、日頃から甘えてきて。

初めて、名前を呼んでくれた。
一人の個人(ひと)として、曇りない思いで自分の全てを肯定してくれた。





私が生きる意味。
それは世界を守る為。
けどひょっとしたら、守りたいと願ったのは今立っている大きな惑星(ほし)の話ではなくて。
もっと小さな、すぐそこに感じられる―――

550わたしの世界を守るため ◆HOMU.DM5Ns:2014/05/01(木) 01:41:52 ID:iaf2QIKA0






 ■     R     ■






機械のアナウンスと大差のない声が止み、サカキはメモを書き留めていたペンを置く。
時刻までの死者の公開、追加された禁止領域の提示。
一度目と同様、流れされた放送の内容は実に簡素なものだった。

殺し合う者を嘲るでもない、只々整然と並びたてられた文字の波。
あるのは、実験の成果のみに注視している科学者のそれだ。
多様な化合物が詰められたフラスコの変化を無感動に眺める気分で、アカギはこの儀式を見ている。
確信する。アカギは、この儀式に娯楽性を見出してはいない。
過程に起きる惨劇ではなく、最終的に残る成果のみに着目している。

「それ」は最後に一人残った優勝者―――「最も価値のある魂をもつ者」を意味するのか。
儀式の完遂そのものによって得られる「何か」を見ているのか。
奴の求める結果とはどのようなものなのか。
知ることが出来れば、状況の打開への一石を投じることが出来る
そして自分は少なからずそこに指がかかっていると、サカキは判断していた。
ポケモンすら知らないようなプレイヤーもいる中で、アカギと同等の世界の出身である己のアドヴァンテージは決して軽くはない。
加えて、体に刻まれた呪術式なる印についての知識も同行者が掴んでいる。
真実の一端にまで至る材料は揃っている。後はピースを並べるだけだ。



「弔いは、済んだのかね?」

サカキの前に姿を見せたその同行者、美国織莉子の姿をを確認して、サカキの思考は彼女へと向かれる。

「はい。時間を取らせて、申し訳ありません」
「気にするな。友人の死に部外者がとやかく言うつもりはない。
 無理に干渉したところで不利益しか生みはしないからな」
「……ありがとうございます」

腕の中で命を落とした少女、呉キリカの死にさんざ泣きはらした後、
彼女を弔いたいという織莉子の申し出をサカキは許可した。
恩を売っておくに越したことはないし、どうせ放送で得た情報の咀嚼にも時間を使う。

「あなたにも、お礼を言わなくちゃね」

背後に立つニドキングに対しても織莉子は謝意を述べた。
埋葬の穴を掘るのに少女の手を煩わせさせるのもいちいち面倒と思い、サカキが自分から貸し与えたのだ。
砂浜から少し離れた地面に僅かに離れていた木々の下。
そこに空いた人間大の穴に身を清めた遺体を寝かせて祈りの手を握る少女は、一葉の聖画のようでもあった。

改めて、サカキは様子を窺う。
翡翠の瞳には、さっきまで号泣していた少女と同じとは思えない、大人びた理性の光が宿っている。
既に元の冷静さを取り戻し、一見では前とは変わりない怜悧な顔立ちのように見える。
だが短くはない時間を共にしたサカキは、織莉子の纏う雰囲気の変化を見逃さない。
長年組織の長の座を治めていた者にこそ分かる、触れる大気を凍りつかせる張り詰めた空気。
亡骸との関係を知り、末路の場面に居合わせたのなら、尚更にだ。

551わたしの世界を守るため ◆HOMU.DM5Ns:2014/05/01(木) 01:42:31 ID:iaf2QIKA0




「さて、美国織莉子。
 仮初とはいえ我々はこれまで目的を共通とし、行動してきた間柄だ。
 共同している以上は、ここで君の意志を確認する必要がある。」

見極める必要がある。
話のさわりだけを聞かせられても解かった、相当に心を寄せていた友人の死に、織莉子はどう動くかを。

「固めた思いに揺らぎはないか?
 未だ己の使命、目的を為し遂げんとする心は残っているか?
 その時までに、如何なる障害が待ち構えていようとも突き進み、粉砕するだけの覚悟が残っているのか。
 今ここで、君に問いたい」

サカキには、己の意志を曲げるという気は皆無だ。
誰の死を聞かされようと、前回を凌ぐ十一名の死者を知ろうとも。
自らでは及ばない数々の敵と見えても、宿した信念に罅が入る事は決してない。
己の死さえも、我が道を往く果てにある結末ならば受けれて見せる。
そうでなければ、ポケモンマフィアの頭目など務まるわけもない。
そう在ったからこそ、多くの部下に恵まれ、自分抜きでロケット団の再興を叶えるまでに至ったのだ。



織莉子の決断。それはこの組の行方を直接左右することになる。
折れるようならば、遠慮なく切り捨てる。
時と人が限られる環境で、使えない人材を排除するのに躊躇はない。
最悪の想定として、ここで殺し合う未来も織り込んである。
織莉子の背に控えるニドキングに密かに目配せする。
疎意、殺意を見せるようならば、即座に腕を振り下ろせる準備に入っている。


「……私は――――――」


瞼を閉じ、黙考していた織莉子が口を開く。
開かれた目に映るのは、迷いの失せた、毅然とした碧い焔。


「―――進みます。
 傷も痛みも、全てこの使命を背負った時から覚悟は決めていました。
 どれだけのを失おうとも、それが変わることはありません
 何より、あの子が信じた私が自らを疑ってしまえば、あの子そのものが無為と消えてしまう。
 だから―――この道の先に世界に救いの光が降るその時まで、私は戦い続ける」


虚偽も傲慢も感じられない、譲れない芯の通った声。
予想通りだった答えに、サカキも杞憂を振り払う。

552わたしの世界を守るため ◆HOMU.DM5Ns:2014/05/01(木) 01:43:23 ID:iaf2QIKA0



やはり、美国織莉子は使える娘だ。
拠り所を失った人間がその欠落に耐えられなかった場合は、生存の意欲をも失うのは往々にしてある。
だが織莉子は独力でそれを乗り切った。
自らの中に喪失した穴を自覚しつつも、それを埋め合わせられる整然性と論理的な思考を働かせられる。
こうした経験を積んだ人間は強い向上心を持つようになる。より強く在ろうとする気持ちを抱くようになる。
それはサカキにとってプラスにこそなれ、マイナスには働かない変化だ。

「そうか。ならば、この協力関係は続けられると了解していいのだな?」
「ええ。異存はありません。互いの道が交差し衝突するまでは、私達は協力し合えるものと思っています。
 ……それで、早速なのですが」

言葉を途中で切り首を虚空へと向け、常人には届かない遠い場所を眺める。
その時にわかに、織莉子の表情から普段見せていた優雅さがかき消えた。
代わりに表層に出るのは、凄烈さを纏わせる貌―――。

「ここよりさほど離れてない場所に、誰かがいます。
 数は単独。性別は男性。顔は仔細に読み取れませんが、恐らくは高校生から大学生ほどの年齢。
 差支えがないようなら、接触をしてみたいのですが」

視線だけをこちらに向けて、これからの指針の提案した織莉子。
近くにプレイヤーがいるのは、実はサカキも知っていたことだ。
自分に支給された高性能デバイスに備わった術式探知の機能。
織莉子が呉キリカを埋葬している傍ら、サカキは密かにこれを使って周囲に誰かいないかを検知していたのだ。
安定した精神状況とは言い難い織莉子に危険予知を託すのも浅慮と断じたが為の、当然の自衛行動といえた。

サカキは織莉子へこのデバイスの情報を口外していない。
織莉子の能力があれば危険への対応も他者の接近も図れるし、織莉子自身からも言質を取っている。
ならば、デバイスは予知の裏付けとして個人で密かに使用すればよく、共有する利益はない。
これは場面によっては戦局をも左右する切り札だ。
織莉子と離れた時、織莉子の予知の届かない情報を入手した時、その効果は発揮されるだろう。
向こう側から言及されない限り、このデバイスの存在は極力隠匿するつもりだ。

その時点でのエリアにあった反応は三つ。
二つはサカキと織莉子、そしてここから遠ざかっていく第三の反応。
別のエリアへと移ったことで反応は消えたが、移動速度は徒歩と大差ないもの。
今からバイクを利用すれば接触も可能だろう。
そして、積極的に接触を図る理由についても、とうに当たりはついている。

「成る程な。しかし、そうまでして急ぐものなのか?」

しかしそれは伏せた上で会話を進める。
今はまだ、主導権をあちらに握らせておくべきだ。

553わたしの世界を守るため ◆HOMU.DM5Ns:2014/05/01(木) 01:46:34 ID:iaf2QIKA0


「これまでの私達の道のりを考慮すれば分かっていただける筈です。
 この儀式の始まりから今までの十二時間、私達が直接見えたプレイヤーはただ一人しかいません。
 魔女のくちづけを知る私。ポケモンとアカギについて知るあなた。何かを守らせるようにポケモンが揃えられたポケモン城。
 肝心要になる儀式の主催者についてこそ情報を持ちますが、会場での人物については全くと言っていいほど無いのです。
 アカギと、恐らくはいるであろう協力者の狙いも重要ですが、上ばかりを見えていればいつか足元を掬われかねません」
「だから、迅速かつ早急に他のプレイヤーとの接触を行うべきと?
 多少の危険を犯すリスクを踏まえてでも」
「ええ。いつまでも臆病に命のみを守るだけでは何も変えられない。
 失うものも少ないけど、得るものもまた微少なもの。
 むしろ時の浪費は取り返しの利かない負債を背負う羽目にもなるでしょう。
 私の力を以てすれば、最悪の状況に至る前に対処も出来ます。
 ―――何よりも、あなたがそんな安寧な生き方に傾倒するお方だとは私には思えません」

こちらを挑発しているかのような、優艶な微笑み。
淫靡にすら見えてしまう仕草も、この少女が持てば即座に雅な淑女のそれへと早変わりしてしまう。

織莉子の論理は、なるほど理に適っている。
時間経過と共に減っていくプレイヤーは貴重な情報源でもある。
プレイヤー間での交流、施設の調査、主催者達や儀式の構造についての考察も一通り済んでいると見ていい。
可能な限り取れるものは取っておきたいのは同意するところだ。方針そのものに異議を唱えることはない。

「随分と強気に出るな。その心意気は買うが……
 私には君こそ、下を疎かにしかねないように見えるがね」

だがやはり、弱みを握られまいと饒舌に語り出すあたりは、まだ青い。
わざわざ自分から必要以上に得た情報を喋り、自分の優位を見せつける。
利口で互いの領分を弁えていた織莉子の、らしくもない真似は、行動の主導権を握る為に他ならない。

「……自覚はあります。ご心配は無用です」

織莉子は焦っている。
己の目的を早急に達成しようと、躍起になりつつある。

予知にしても、これまで全く付近に範囲に「引っかかる」人物がいなかったのとは考えにくい。
現に呉キリカの死を察知した時は、倒れていた場所までかなりの距離があったのだ。
恐らくは、意図して未来を知るには、何らかの消耗があるのだろう。
ポケモンの持つ技にも使用できる回数がある。それは総じて、強大な技であるほど消耗が大きい。
常時能力のチャンネルを開いているには相当の負担がかかるから、積極的な未来視は戦闘に限定していたのだ。

554わたしの世界を守るため ◆HOMU.DM5Ns:2014/05/01(木) 01:47:15 ID:iaf2QIKA0


その戒めを払い、「当たり」に含むかも分からない対象に片っ端から接触しようとする意味。
それは瞭然としている。
大切な友人を、共犯者として巻き込んでまで殺さねばらないと執心している者の居場所の特定。
そしてもうひとつ。闇組織を率いていれば当然目にする、あるいはサカキ自身が火種を生み出してもいる相貌。
その共犯者を死に至らしめた者への、然るべき報復。
口に出しはしないものの、織莉子が内に秘める感情は手に取るように読み取れる。
憎悪に振り回されないだけの克己心は、向けるべき相手に解放するまでのトリガーでしかない。

これまでの二人は、意思を確認し、共闘を重ね、情報を共有しながらも、互いに一線を引いた関係を貫いてきた。
力量を認める「信頼」はしても、仲間意識を抱く「信用」に至ろうとは考えもしなかった。
サカキがロケット団の元ボスという立場を隠しているように、織莉子もまた他者に打ち明けられない秘密を持っている。

公にすれば、主催の目的が明らかになるかもしれない。儀式の根幹が明かされるかもしれない。
だが重要な秘密であればあるほど、それは自らの弱みを見せる諸刃の剣となる。
弱所を晒すに値する見返りが本当にあるか。その相手は信任するに足るか。
そもそも明かすことに後悔はないか。
単なる情報の遣り取りでは済まされない、難解な心理の鍵が幾重にもかけられている。

だがここでも、織莉子はその枷を破った。
守るものを失ったためだろう、身を守る消極的姿勢を放棄して積極的な行動に移っている。
保身を捨てた人間は、普段なら二の足を踏むような決断にも、損得を顧みず実行に移す強さがある。
自己保存を切り捨てて得られる収支は、他の者よりも遥かに大きいものとなる。



「だが言う事はもっともだ。敵にしろ味方にしろ会えずじまいであれば戦略の立てようもない。
 構わん、その相手に連れて行ってもらおうじゃないか」

戦力を失ったのは痛かったという、先の感想をサカキは取り下げる。
呉キリカの死は実に有用だった。戦力の代価として余りあるほどに。

今はいい。好きに動かさせておく。
使命と定めた何者かの抹殺にサカキは邪魔も干渉もしない。自由にすればいい。
これから先、織莉子は頼まれずとも儀式攻略に必要となる情報をサカキに提供するだろう。
展開を前倒しにし、順序を省略して、目的遂行に最短の道を進み続けるだろう。
その度に、自らの背を丸裸にさせるのを厭わずに。

如何に織莉子に才覚があろうとも、サカキにはこれまで培ってきた膨大な経験がある。
それは地層のように時を重ねて積み上げなければ絶対に手に入らない、特権を超える主権だ。
小娘一人に体よく扱われるほど、築かれた礎は脆くはない。
利用しようとするならば、こちらが先だ。

「では急ぐとするか。
 この先にいる者が、君の望む人物であればいいな」

果たして、その事実に本人は気づいているのか。
織莉子は柳眉をほんの少し苦々しげに潜ませて

「……ええ、そう願いたいです」

一瞬、暗い貌を滲ませて、そう答えた。

555わたしの世界を守るため ◆HOMU.DM5Ns:2014/05/01(木) 01:48:00 ID:iaf2QIKA0






 Χ   Ⅸ Ⅰ Ⅲ   Χ






草加雅人は苛立っていた。
最近の彼にとっては特段珍しくもないが、今回のそれは中でも特に機嫌が悪い部類に入っていた。

こうした気分に草加がなるのには、大別して二通りの理由がある。
ひとつは、オルフェノクが関わってくるもの全てに関してだ。
自分と、流星塾の仲間―――仲がいいといえるのはごく僅かだが―――の未来を灰色の地獄に変えた亡者まがいの化物共。
奴らの報いに相応しいのは徹底した根絶のみ。
人類の進化系という、烏滸がましい妄想ごと砂塵にし、この世から跡形もなく消し去る以外にあり得ない。

ここで見えた長田結花についても例外はない。
ファイズ―――乾巧の真似をしていたからなのか碌に抵抗もせず、
一方的にこちらの攻撃を享受する姿は草加の機嫌を逆撫でした。
そうじゃないだろう。貴様は、貴様らはもっと怯えなくてはならない。
苦しめられた俺達の分の、その何十倍も苦しむべきだ。
痛みに震え、死に恐怖し、絶望の中で火にくるまれて死ななければならない。

そうした鬱屈した感情が、逃げた長田結花の後を追走させた。
先ほど翼に痛手を与えて遠くへ逃げられはしない。実際に補足は容易く済んだ。
問題だったのは、居合わせていたのは長田結花だけではないことだった。



黒と黒の輪舞。
嵐が巻き起こり、砂浜に斬裂の轍を残す。
それを生み出す二人の少女の戦いは、ファイズに変身していなければ残像しか捉えられないほどだった。
やがて決着が着き、ひとり立つ勝者は、結花を伴い西の方角へ消えて行った。

敗北した眼帯をつけた少女は、鹿目まどかの話にあった魔法少女であろうか。
彼女から聞いた仲間の情報とは一致しない部分が多い。
海面に漂着し、それきり動かないことから既に死亡している判断して、こちらは無視することにした。

では勝ち残った騎士甲冑を着込んだ少女もまた同類か。
直感的に違うと、草加は断定する。
あの矮躯から放たれる、遠目から眺めても分かるほどに凄絶で殺気に満ちた気配はむしろオルフェノクに類する類だ。
粗暴な振る舞いの見られた佐倉杏子でさえ最低限の義侠心は持ち合わせていた。
あれにはそれさえ備わっていない。目に映るものは有象無象の区別なく破壊していく、大型台風の如き意思持つ災害だ。

556わたしの世界を守るため ◆HOMU.DM5Ns:2014/05/01(木) 01:48:36 ID:iaf2QIKA0



与り知らぬ場所で関係のないプレイヤー同士で潰し合った。
それだけなら草加をここまで不快にさせはしなかっただろう。むしろ邪魔が勝手に消えて清々しくすらあった。
草加がこの戦いを観察して最も気に喰わなかったのは、長田結花が棒立ちになって何一つ行動しないままでいたことだ。

援護など必要なかったといえばそれで終いだ。
だがその後の行動から、結花があの騎士に恭順の姿勢を取っていると理解した時、草加の内に激情が雪崩れ込んだ。
長田結花が、オルフェノクが、死人の化物が―――更なる化物に庇護されようと尻尾を振っている。
衝動に任せて背後から飛びかかろうとした体を、まだ冷静さを残していた理性が必死に止めた。

敵の実力の程は今知ったばかりだ。
驚異的なスピードを誇る眼帯の少女を歯牙にもかけない圧倒的なパワーと耐久力。
かの怨敵北崎にすら抗し得る、あるいは凌駕するかもしれない強大な存在。
自分と黒騎士との戦力分析は、オルフェノクへの偏執的狂気を抑えるだけの結果をもたらしていた。
あの騎士が付いている限り長田結花には手を出せない。オルフェノクを滅ぼせない。
ここは引くしかないという適格な選択肢を、草加は屈辱と共に受け入れねばならなかったのだ。


"真理は呼ばれていない。無事ていてくれたんだな……"


放送を聞いたのは、ひとまずは鹿目家へと戻る帰路についていた時期だった。
冷めやらぬ激情のまま、しかし死者や禁止領域などの重要事項だけはメモに纏めていく。
死者の中に特に思い入れのある人物はいなかった。
強いてあげれば佐倉杏子が死んでくれたのが僥倖といえば僥倖だが、喜び勇むには値しない。
乾巧を始め、自分が知る限りのオルフェノクの名が呼ばれなかったのは、この手で引導を渡したい相手も少なからずいるため微妙な気分だ。

だが何においても、園田真理が生存していることだけは、心を解きほぐす一因だった。
客観的に見るなら、厄介ごとを招きやすい勝気な性格な為そこだけは心配だったが、この様子では杞憂に終わってくれたらしい。
草加にとって真理という女の存在は唯一、最優先で守るべき対象だ。
この際オルフェノクの殲滅は棚上げにして、彼女の捜索を進めていく頃合いなのかもしれない。
その過程であの騎士に対抗できる戦力を確保する機会も得られるだろう。



ただひとつ気がかりなのは、向かう予定だった流星塾が禁止エリアとして指定されてしまったことだ。
当てもなく真理を探すしかない現状で、数少ない互いに向かう可能性のあった場所が封じられたのは痛い。

しかし……自分から用意した施設を近寄れないようにするのは解せない。
完全に倒壊したスマートブレイン社なら解かるが、どれもこれも同じ惨状になっているとは思えない。
考えられる仮説は幾つかある。
例えば、主催にとって立ち寄られたくない場所を締め出す意味で指定されている場合。
そして、こちらの行動をコントロールする意図で仕組まれている場合。

いずれも可能性として候補に挙げられても、確定にまで導ける物証が欠けている。
望む結果を得たいというのに、手が届かないのがもどかしい。

557わたしの世界を守るため ◆HOMU.DM5Ns:2014/05/01(木) 01:49:25 ID:iaf2QIKA0


一度、鹿目まどかから深い事情について聞きだす必要があるか。
今一番魔女や魔法について詳しいのは彼女だ。利用しない手はない。

"もう、俺への信頼も十分に高まっている。少し押せば簡単に教えてくれるだろう"

思いがけないところで、これまでの行為が実を結んできたのに草加はほくそ笑む。
そうと決めれば、早速鹿目家へと戻るとしよう。
名前も呼ばれてない以上、自分の家で引き籠ってそれっきりのはずだ。

足早に踵を返し道を歩き始めた頃、耳に聞き覚えのある排気音が聞こえてきた。
近付いてくるバイクのエンジン音。明らかに、自分を目指して進んでくる。
ファイズの変身コードを入力してバックルに倒さないまま挿し、いつでも変身可能な状況に備える。

丁度こちらの進行方向、つまり鹿目家への道を塞ぐようにしてバイクに跨った二人組が姿を現した。
メットを外した壮年の男が、草加を阻むように対峙する。

「……何か用かな?
 見ての通り独り身でね。そんな風に立ち止まれると咄嗟に何をするか、自分でも確証がないんだけどな」
「恐がることはない。話をしに来ただけさ。
 無論、そちらの対応次第でする話の内容は変わってくるだろうがな」

口調には敵意こそないものの、隠す気のないとしか思えない威圧的な空気を纏わせている。
はっきり言ってこの時点で気に喰わない部類であり、男への警戒の念は強まる。
剣呑さが取り巻く中、仲裁するように前に躍り出たのは、同行していた銀髪の少女だった。

「驚かせてしまったのならすみません。
 ですが私も、そして彼も、あなたを害為す意思はありません」

いずこかの学生服に身を包んだ少女。
鹿目まどかより少し年上ぐらいだろうが、醸し出す気品のせいかそれよりも年かさに感じる。

「そしてそれはあなたも同じ筈……なら共有できる情報(もの)は分かち合うべきではないでしょうか。
 知るという事自体、それがあなたにとっても新たな道標となることもあるでしょう」
「……ああ、 分かった。話し合いに応じよう」

どうやら、向こうの望みは情報交換らしい。
それはこちらにとっても願ったりだ。丁度、新しい情報源も欲しかったところだ。
敵対の意思がないのは確かだし、ここで突っぱねるのは上手い手ではない。
だがどちらも、自分に素直に靡く人間ではないだろう。男の方は見るからに油断ならない。
搾り取れるだけ搾って、後は放置するのが吉だろう。

558私の世界を守るため:2014/05/01(木) 01:50:33 ID:iaf2QIKA0



     ○



「つまり、会場の何処かにいる魔女を倒せばこの呪術式―――魔女の口づけとやらも消える。
 と、いうことでいいのかな?」
「はい。草加さんのおっしゃった灰化……オルフェノクの死因のように多少の加工は施されてるようですが、
 わざわざ『参考にした』と明言してる以上、最低限のシステムは模倣されて然るべきです。
 この会場そのものも魔女の結界であれば、魔女の消滅と同時に解放される見込みもあります」

あくまで希望的観測ですが、と付け加えて少女、美国織莉子は自己の推論を説明した。

罠の可能性も見越して草加から指定した路地裏に移動し、まずは互いの簡略的な自己紹介をする。
魔法少女の美国織莉子に、ポケモントレーナーのサカキ。
今は共に進んで殺し合う気はないという。
言い方に含みがあるものを感じるが、今それを気にしても話は先に進まない。
出会った人物、経験した出来事。危険と思われる、実際に襲われた人物の情報。
互いに情報を持ち込み検証を重ねた結果、収穫は草加にとって予想以上のものといえた。

中でも重要だったのは、厄介な呪術式の詳細が憶測混じりとはいえ判明したことだ。
人を限定空間に隔離してその身を食らう魔女なる存在。自殺衝動を植え付ける魔女の口づけ。
まどかからの証言と一致するし、この殺し合いの儀式そのものと符号する部分も多い。
これらが全て事実だった場合、魔女さえどうにかできれば事態が一挙に解決する事が出来る。
無論、鵜呑みにするのは危険だ。思い込みは視野を狭める温床に変わりやすい。

「……けど、全てを魔女に結び付けるのは早計だな。
 君も言ったようにオルフェノクの能力、いや生態が組み込まれているし、スマートブレインの手も伸びているかもしれない。
 奴らオルフェノクなら、こんな非道な真似も容赦なくやるからな」

その場合、社長である村上峡児も参加しているのが疑問となるが、奴らの社会構造など知りもしない。
いざこざに巻き込まれて切り捨てられたとしても、別に不思議ではあるまい。
アカギが強硬に技術のみを奪ったという線も捨てがたい。
その末路は大いに痛快である一方、与り知らぬ余所の手で復讐がご破算になったというのには忸怩たる感情も抱いていた。

「それは承知しています。
 サカキさんの知るポケモンのように、私達魔法少女とは別の世界の要素がここにはある。
 ですが、魔女あるいはそれに相当する存在が、式の構成の根源を担っているという確率は高いと見ていいでしょう」
「別の世界、ね。
 確かにアカギもそんな事を言っていたが、まさか本当にそんなものがあるとはな」

アカギの発言に、サカキの話した神とも形容されるポケモン。
荒唐無稽な話だが、ニドキングというポケモンも見せられた上では無視するわけにもいかない。
願いを叶える対価に、魔女と戦う使命を背負う魔法少女。
オルフェノクに魔女。考えて見るとこの二要素にも類似した点は多い。
これらが同じ場所にひしめき合うというのも流石に無理がある。
なら別々に区切られた同士ということにすれば、草加にも折り合いが付けられた。

559私の世界を守るため:2014/05/01(木) 01:51:01 ID:iaf2QIKA0


「となると、次は魔女の潜む場所か。
 そっちに心当たりはないのかい?」
「おおよその見当は。
 もっともこの仮説が正しい場合、我々は八方塞がりとなってしまうわけですが」
「……やはり禁止領域か。連中にとって都合の悪いものを隠すにはうってつけだからな」

会場の行動範囲を狭めさせ、殺し合いというシステムを滞りなく進行させる措置である呪術式。
しかしそこに魔女という『儀式の核』が紛れ込んでいるとすれば、また別の意味を加えることが出来る。
つまり、禁止領域には核を守る障壁としての役割もあるということ。
織莉子の言う通り、この説を完全に認めるとほぼ詰みの形に入ってしまう。
最悪のパターンも想定しつつ、別の切り口を探していくのが懸命だろう。

「織莉子。君は既に魔女が会場内にいると断定しているようだが、その根拠は何だ?
 魔女がこの儀式の核であるなら、安全な場所に隔離していた方が奴らにとって万全だろうに」

合議の結論を待ったをかけるような、重く低い声が耳に届いた。
このように、サカキは普段会話に参加せず傍観の立場を取っているのに、時折こうして声を挟んでくる。
それも決まって、こちらの意見が出揃い煮詰まった頃にまるで計ったようなタイミングにだ。
ここぞという時に、婉曲的にこちらの求めている答えを差しに来る。
もし正面きって話していたとしたら、上手いように誘導されていたかもしれない。
織莉子よりもよっぽどやりにくい相手だ。会話の主導を彼女に任せているのもその自覚があるからなのか。

「それは―――先程も伝えたように、結界とは魔女が効率よく人を襲う為の狩場のようなものです。
 人が多く行き交う場所の隙間から獲物を誘い込み、外からの邪魔もなく逃げ場もない空間に閉鎖する。
 だから魔女は、基本的に自分のテリトリーから出る事はない。
 というよりは、結界そのものが魔女の一部ともいえるものです」

結界の維持に魔女の力が使用されているのなら、外部と切り離す事は出来ないのではないか。
直に魔女と戦ってきた経緯を持つ魔法少女としての見地だけに、否とは言い切れる材料はない。
それを抜きにしても、理屈は筋が通っているものだ。

「魔女は人を喰らうもの。絶望を糧とし肥え太る負の化身。
 そんな人外の物の怪を、完全に支配下に置けることが果たして本当に出来たとして―――
 この式などの維持にも必要なエネルギー、即ち餌が必要となる」
「つまり―――。
 核が魔女の性質を備えているのなら、人間への食欲という本能も残っているかもしれない。
 自らの領土内で死者が出れば、そいつが空腹に耐えかねて暴れ出すリスクも減ると」

締めくくるサカキの言葉に織莉子も頷く。
つまりは、魔女による「自殺死」を「他者同士の殺し合い」の形に置換しているわけだ。
そしてこの説は、アカギは魔女の全てを制御してるわけではない事実を示すものだ。

「……これ以上は仮定の上塗りです。
 私の偏見に寄る部分も多くなりますし、ひとまずの結論はこれでいいでしょう」

560私の世界を守るため:2014/05/01(木) 01:51:23 ID:iaf2QIKA0


「となると、次は魔女の潜む場所か。
 そっちに心当たりはないのかい?」
「おおよその見当は。
 もっともこの仮説が正しい場合、我々は八方塞がりとなってしまうわけですが」
「……やはり禁止領域か。連中にとって都合の悪いものを隠すにはうってつけだからな」

会場の行動範囲を狭めさせ、殺し合いというシステムを滞りなく進行させる措置である呪術式。
しかしそこに魔女という『儀式の核』が紛れ込んでいるとすれば、また別の意味を加えることが出来る。
つまり、禁止領域には核を守る障壁としての役割もあるということ。
織莉子の言う通り、この説を完全に認めるとほぼ詰みの形に入ってしまう。
最悪のパターンも想定しつつ、別の切り口を探していくのが懸命だろう。

「織莉子。君は既に魔女が会場内にいると断定しているようだが、その根拠は何だ?
 魔女がこの儀式の核であるなら、安全な場所に隔離していた方が奴らにとって万全だろうに」

合議の結論を待ったをかけるような、重く低い声が耳に届いた。
このように、サカキは普段会話に参加せず傍観の立場を取っているのに、時折こうして声を挟んでくる。
それも決まって、こちらの意見が出揃い煮詰まった頃にまるで計ったようなタイミングにだ。
ここぞという時に、婉曲的にこちらの求めている答えを差しに来る。
もし正面きって話していたとしたら、上手いように誘導されていたかもしれない。
織莉子よりもよっぽどやりにくい相手だ。会話の主導を彼女に任せているのもその自覚があるからなのか。

「それは―――先程も伝えたように、結界とは魔女が効率よく人を襲う為の狩場のようなものです。
 人が多く行き交う場所の隙間から獲物を誘い込み、外からの邪魔もなく逃げ場もない空間に閉鎖する。
 だから魔女は、基本的に自分のテリトリーから出る事はない。
 というよりは、結界そのものが魔女の一部ともいえるものです」

結界の維持に魔女の力が使用されているのなら、外部と切り離す事は出来ないのではないか。
直に魔女と戦ってきた経緯を持つ魔法少女としての見地だけに、否とは言い切れる材料はない。
それを抜きにしても、理屈は筋が通っているものだ。

「魔女は人を喰らうもの。絶望を糧とし肥え太る負の化身。
 そんな人外の物の怪を、完全に支配下に置けることが果たして本当に出来たとして―――
 この式などの維持にも必要なエネルギー、即ち餌が必要となる」
「つまり―――。
 核が魔女の性質を備えているのなら、人間への食欲という本能も残っているかもしれない。
 自らの領土内で死者が出れば、そいつが空腹に耐えかねて暴れ出すリスクも減ると」

締めくくるサカキの言葉に織莉子も頷く。
つまりは、魔女による「自殺死」を「他者同士の殺し合い」の形に置換しているわけだ。
そしてこの説は、アカギは魔女の全てを制御してるわけではない事実を示すものだ。

「……これ以上は仮定の上塗りです。
 私の偏見に寄る部分も多くなりますし、ひとまずの結論はこれでいいでしょう」

561私の世界を守るため:2014/05/01(木) 01:52:22 ID:iaf2QIKA0




『呪術式』は、『魔女、あるいはそれに相当する存在(以下、魔女と呼称する)』によって作用している。
『呪術式』は、オルフェノクの灰化等、多数異世界の技術によって加工されている。
また、会場の構築も『魔女の結界』に分類される可能性がある。
その場合、『魔女』を倒す事でそれらを全て消失できる見込みがある。

『魔女』は、この会場のいずれかに潜んでいる可能性が高い。
『禁止領域』は、それを隠匿する意味も込められている。

アカギは、『魔女を操る術』を備えている。
アカギは、『時間と空間を操るポケモン』を捕獲、所持している可能性がある。
『魔女』とは、このポケモンである可能性もある。
それ以外に、オルフェノクに関する技術も保有している事から、『技術、資金的な協力者』を抱えている。



「こうして揃えてみると……殆どが憶測だな」
「想像できた、という時点で十分な進歩だ。
 こうなれば後は、そこから何が真実かを見極める検証の時間になる。
 そうやって虱潰しに選択肢を絞り、残った事実を法則として定める。人間の歴史はそうやって続いている」

不確かといえど、何の手がかりも得られなかった以前からすれば比べ物にならない前進といえる。
なら次は、推論を如何に正論に変えていくかの行程に進んでいく。



「判明している時点で、この儀式の根幹を成していると思われるのはのは三つ。
 魔女。
 シンオウ地方に伝わる、時間と空間を操るポケモン。
 オルフェノク、ひいてはスマートブレインの技術。
 これらについてより深く知悉している者と接触するのが、目下の課題となるだろうな」

奇しくも、この場に集った三人は主催の保有する力とそれぞれに関係のある世界の人間だ。
この短時間に一定の仮説を揃えられたのもそれが理由だ。
同じことを、より広い範囲、広い関係で行えば、自ずと見えてくる答えがあるに違いない。

「オルフェノクの秘密、癪だが村上という男なら何か知ってるかもしれません。
 しかし決して隙は見せないように。奴も乾巧同様卑劣なオルフェノクだ。
 倒すという前提の元、あくまで機会があれば聞いてみるようにして下さい。」

草加が提示するのは、現スマートブレイン社長の村上峡児。
素直に情報を渡してくれるとは思えないが、どうせ殺すべき敵だ。
さんざん痛めつけた上で白状させるのには何の抵抗もない。

「シロナというトレーナー……アカギと同じ同じシンオウ地方出身でポケモンの歴史にも詳しい人物だ。
 彼女なら詳しい話を聞けるかもしれないが……私の名は出さないでいた方がいい。
 あまり良い関係とは言えないものでな」

サカキからは、アカギと直接関わりがあるかもしれないトレーナーが挙げられた。
この中では一番に会いたい相手といえる。
名を出さないよう忠告しているのは敵対した過去があるのかもしれないが、むしろ草加にとっては都合がいい。
やり用次第では、この男を追い詰める口実にも使える材料だ。

562私の世界を守るため:2014/05/01(木) 01:53:15 ID:iaf2QIKA0


「織莉子ちゃん、君の他に魔女について詳しい人はいるのかい?」
「……残念ながら、他の魔法少女が知るのは、私が知るそれと似たり寄ったりでしょう。
 私達以外に魔女を感知できる者がおらず、戦いにのみ専心するので精一杯なので、そういった核心に迫る事は難しいのです」

目を伏せて、申し訳なさげになる織莉子。
その仕草を見て、草加ははっきりと胡散臭いものを覚えた。

なぜなら草加は、魔法少女の秘密の一端を知っている。
自らの魂を肉体と切り離してソウルジェムなる宝石に加工する。
そして、契約と称してその処置を執り行うキュゥべえなる使者。
この秘密を聞いたのは鹿目まどかからもたらされたもの。
しかし織莉子は、会議の際この話題について一切触れることはなかったのだ。

ここにきて情報を渋むつもりか?
だが事態解決に対しての織莉子の対応は積極的だ。
にも拘らず出し惜しみをするのは、弱みを見せて出し抜かれる懸念を抱いているからか。
それとも、本当に何も知らないのか。
キュゥべえに騙された、とまどかは嘆いていた。
つまりキュゥべえは始めからその真実を隠したまま契約を迫ったことになる。
とんだ詐欺まがいの行為だが、今攻めるべきは別の点にある。
織莉子は魔法少女についてどこまで知っているのか。
如何によっては、自分の中での彼女の評価を決めざるを得なくなる分水嶺だ。

全てをまとめて暴露してもいい。そうすれば結果ははっきりとする。
しかしまどかの友人はこの事実を知った時大層ショックを受けたと聞いている。
織莉子が知らなかった場合、自分が騙された事を知り同じ状態に陥る危険性もあった。
まかり間違って錯乱でもされようものなら被害を受けるのはこっちだ。
始末するのならともかく、今されても要らぬ手間が増えるだけだ。

「織莉子ちゃん。少し聞きたいんだけど―――」

密やかに算段を立てる草加の前で、織莉子が突如、あらぬ方向へと首を向けその先を食い入るように見つめた。
周囲に物音はしない。誰かそば耳を立てている者を見つけたと思ったが、そうでもないらしい。

「草加さん。
 あなたが捜していると仰っていた、園田真理さんですが―――」

そういえば、と彼女が言っていた事を思い出す。
魔法少女はその願いに応じて固有の魔法が使えるようになると。
織莉子自ら申告してきた、その魔法は確か―――

563私の世界を守るため:2014/05/01(木) 01:54:07 ID:iaf2QIKA0




「今、その人と思しき女性の姿が視えました。
 場所は、施設から見てこの先、D-5の病院内に立ち入っているようです」



「なに……!?本当なのか、それは!?」

予見と予知の魔法少女の発した言葉は、草加の思考を染め上げるのに十分な衝撃だった。
今まで考えてた全てが頭から吹き飛んで、織莉子に激しく食ってかかった。

「ええ。あなたからの外見特徴が正しければ、それと一致した方の顔が映りました。
 ですがどうやら……彼女は今危険な状況に置かれているようです」

目を伏せて申し訳なさげの織莉子だが、草加に渦巻くのは信用ならないという疑念だ。
予知のタイミングは突発的だと聞いていても、このタイミングは都合がよすぎる。
真に受けるにはあまりに危険と勘繰るのも無理からぬことだった。

「……私の言葉が疑わしいと思うのは当然でしょう。
 奸計に陥れんとしてるのかと見做されるのも仕方のないことです。
 ですが―――」

細い指に嵌められた指輪から出現した、装飾の施された宝玉を草加へと見せる。
美しい銀色の内部には、澱むような濁りが混ざっていた。

「魔法には、対価がある。
 魔力を使う度ソウルジェムには濁りが生じ、疲労のように蓄積され、私達の負担となる。
 私の魔法は範囲が広い反面、常時機能させておくには消耗が激しすぎる。
 それをあなたのご友人のために使用した―――この意味をもって、今は納得して頂けないでしょうか」

しかし、何よりも守るべき相手と誓った人が目に見え、手に届く場所にまでいると知れば。
避けれる危険を冒してまで、急ぐ意味がある。
草加雅人にとっての園田真理こそ、その価値を求めるだけの愛の姿だ。

「―――ッ!済まない、そのバイクを使わせてもらう!」

返事を待つことなく、停めてあったバイクに駆け走る。
キーは奇襲を想定してか、繋がったままなのが幸いした。エンジンをかけグリップを握り締める。
元々このオートバジンはファイズのために宛がわれたサポートメカ。
ファイズを所持している自分こそが、一番の性能を引き出せる。手元を離れた所有物を取り戻すのは当然のことだ。

路地裏の出口に振り向きざま、持っていた最後の支給品を置いていく。
まどかから聞いたこれの用途が、魔法少女に必要なものであるのは分かっている。運賃代には十分釣り合うものだ。

アクセルを上げ、路面を疾駆する。
真理がいるとされる病院とはせいぜい2キロもない。バイクという高速で移動する手段がある今ならば僅かな時間で到着できる。



予言が真実であるならば、いい。
真理の救出に繋がり、織莉子自身にも利用価値を見いだせる。
心から善意で援助をしてくれたとすれば、役に立つ駒として協力してもらいたいものだ。

だがもし自分を利用するために真理の名を出汁に使い、偽の情報を渡したとすれば……。
そうなればあの二人は草加にとってただの障害だ。オルフェノク同様始末する対象に決定される。
悪評を広め、孤立させ、当て馬をぶつけてじわじわと嬲り殺す。
自分を好きにならない人間は、全て邪魔でしかないのだから。



真理―――。
今すぐ会いたい。笑顔を見たい。声を聞きたい。
優しく甘美な手で、子をあやす母親のように触れて欲しい。
その為に―――君を害する奴は全て滅する。
人も化物も区別なく、謂われなく死に目に会わせる。

全ては、君という存在を護る為。
俺という存在を守る為。
己の内を占める我心(エゴ)を膨らませ、銀の車体は直進を続けていく―――

564私の世界を守るため:2014/05/01(木) 01:55:05 ID:iaf2QIKA0






 ☬          ☬






止める声をかける暇もなく、草加雅人はこちらの所有していたバイクに乗り込んで路地の影に消えて行った。
尤も、始めから止める意思など美国織莉子は持ち合わせていなかったが。
運賃代わりとばかりに置き捨てられていったグリーフシードを拾い、自らのソウルジェムに重ねる。
度重なる予知魔法と感情の濁りで、穢れは五割に達しようとしていた。
その溜まった穢れを吸収させ、制服のポケットに仕舞う。

もたらされた情報のおかげで、検証の余地がある推論も立てられた。
……まあ、一部の方に随分偏見的な意見も見られたが、差し引いてもお釣りが出るほどに価値はあっただろう。
サカキは勿論、織莉子にも、特に。

「行かせてしまって、よかったのか?」

問いただすサカキは、今まで移動に使ってきたバイクを横取りされて、些か不機嫌そうに見える。

「替わりのない大切な人を救わんとする……彼のその思いだけは本物だと思いましたから。
 彼が間に合い、犠牲が出ないのであればそれが一番望ましい形です」
「ほう、するとあの予知は本当だったわけか。
 私はてっきり、あの男を余所に飛ばす為の方便かと思ったが」

嘘ではない。
園田真理と思われる人物が予知に映ったのは本当のことだ。
ただ。実際に危機的な場面に直面してるかについては、真実ではかったといえる。
視えたのは『憔悴した様子の園田真理』のみ。
傷を負った姿を視たのでも、襲撃されたのでもない。
それでも、まるきり嘘にはなり得ないだろう。
ここは既に死地、いつどこで戦陣が切られても不思議ではない場所なのだから。

「……サカキさんは、人が悪いのですね」

言外の意味を込めたのでもない、率直な感想だった。
なのにそれを聞いたサカキは、堪え切れないとばかりに吹き出し、愉快そうに忍び笑いをした。

「……クハッ!いや失礼。馬鹿にしたつもりはないんだ。
 しかし、そうだな……仮に私が悪い人だったとして、君は私をどうする。
 正義の名を立てて罰するかね?」
「いえ。それには及びません。
 法の裁きとは、それが機能しない場でない限り効力は持ちません。
 ここはアカギ個人が支配する無法の地。まして次元の異なる世界に住まう人同士が邂逅している。
 あなたの過去の罪業に対して、私が裁く権利は持ち合わせておりません。
 あり得るのは、この場において私に害をもたらす行為をあなたが起こした時になるでしょう」
「ありがたい限りだな、それは。
 ではここでは慎ましく自重してるとしようか」

565私の世界を守るため:2014/05/01(木) 01:58:46 ID:iaf2QIKA0


この男は、少なからず犯罪に手を染めているのだと織莉子は直感した。
汚職を犯した父、本家の傲慢で冷徹な叔父達とは隔絶たる違いのある、より大きな野望を掲げる大志。
それは、初めて対峙し、言葉を交わした頃から察していたものだ。
相互に協力し合える「味方」ではあっても、背を預けられる「仲間」には、決してなれない。

「それより、元より了解は得ていましたが、私が先導する形で本当に宜しかったのでしょうか」
「寂れた中年より、可憐な少女に頼まれた方が色よい返事も貰えるというものだろう?」
「お上手な事を」

この関係を、不満とは思わない。
むしろ現環境では最上と言ってもよいだろう。
ポケモンの知識を持ち、サカキ自身にも優れた判断力、統率力がある。
直に草加と話して中心に立っているつもりでも、その実背中から手綱を取られている気すらある。
裏を取られるのは危険。本当ならもう少しの間、腹の探り合いに終始していたかもしれない。

けれど、その結果もたらしたのが、彼女―――呉キリカの死だ。
因果関係はないものだとしても、消極的に動いていたのが恨めしい。
キリカの死を、その直前まで予知出来なかった自身が許せないでいた。
この自責に押し潰されてはいけない。故に、為すべきは使命の完遂だ。

焦りはあるだろう。
心に気づかぬ隙が生まれ、油断ならない同行者につけこまれるのかもしれない。
リスクを承知し、危険があるのは予知せずとも考え付く。
それでもなお、手にする未来が視えているのなら。
伸ばして指にかかる所まで、近付いているのなら。

草加雅人を誘導したのもそのためだ。
友人に会わせたかった心も確かにある。しかしそれは表面上の理由。
真の狙いは、「壁」をひとつ取り除くこと。
過たず狙い撃つのに邪魔な障害を穏便に退かすことこそが肝要。



「遅れましたが、ここからは予定通り鹿目邸へと向かいます。
 幸いバイクがなくとも近い距離です。徒歩でも時間はかからないでしょう」
「―――仇を討ちには、いかないのか」

断層で生まれたばかりの亀裂の隙間に差し込むような、サカキの鋭利な一言が胸を刺した。

脳裏に浮かぶ黒い騎士。
自分とサカキを圧倒した魔女を凌ぐ魔王。
草加からの目撃で判明した、呉キリカを殺した者。
湧きあがる黒々とした情感。
煮えたぎる溶岩のような気持ちを、決然とした意思で掻き消した。

「………………いずれ、打倒しなければならない相手なのは変わりません。
 ですが今は、その時には遠い。
 斃すと決めた限り、万全を期さなければ意味がないのですから」

ここで我を忘れ躍起になり、勝算のない復讐を優先するのは、キリカの望む私ではない。
自惚れでなく、彼女を深奥まで理解しているからこその、感情値への折り合いだった。

「確実に始末するのに十分な戦力を確保するか。
 冷静な判断だな、実に結構」

……やはりこの男は、人が悪い。
少しばかりの不満を溜め込みつつ、サカキの後を追い暗い路地裏を出ていく。
陽は天上に昇り、燦々と照らしている地上を、白と黒の男女は緩やかな足取りで歩いて行った。

566私の世界を守るため:2014/05/01(木) 01:59:21 ID:iaf2QIKA0




     ◆ 



美国織莉子は抱えている。
呉キリカへの愛を。
それを奪った黒い騎士への殺意を。
それらを制御できるほど強靭な、自己の存在の意義を。
そして自分だけが秘め持つ、真実に辿り着く一片を。



ソウルジェムの秘密。
魔女を生み出す孵卵器という本来の役割。
それを仕組んだ全ての元凶、インキュベーター。

これらの公開に踏み切るのはまだ早い。
鹿目まどかという極上の魔女がいるためその可能性を否定してきたが、
儀式の構築に魔女が大きく関わってるとなると、その考えにも迷いが出てくる。
その疑念を決定的にしたのが、キリカの死を目にした瞬間だ。

魔力を浪費し、感情を疲弊させ、ソウルジェムの濁りが臨界に達した瞬間。
ソウルジェムという卵の殻を破って、魔女という雛は誕生する。
あの時のキリカのジェムの濁りは、魔女が生まれる直前まで溜まり切っていた。
なのに魔女は生まれず、宝石が砕けてキリカが絶命するだけに終わった。

これだけなら、単に制限の一環と見落としていただろう。
殺し合いをさせる隔離させた場所で、更に隔離させる結界が出来るのは許すわけがないと。
だが間近で砕け散る瞬間に立ち会った織莉子は、それだけでは説明できない現象を見つけていた。
罅割れ、亀裂を深めるキリカのソウルジェム。
完全に割れる直前、それは姿を変じ、グリーフシードへとなろうとしていた。

つまり、正確には割れたのはソウルジェムではなく、グリーフシードなのだ。
ソウルジェムのまま砕けるのとでは、これは雲泥の差がある。
そして新たな疑問が出てくる。その際に生まれた筈の魔女は、いったい何処に消えたのか。

そのヒントこそが、草加とサカキとによって練られた考察だった。
呪術式、それに結界が魔女を源として機能しているという仮説。
この説を正解と取るならば、プレイヤーと魔女は式を媒介にリンクしているのを意味している。



だとすれば、だ。
グリーフシードから漏れ出た魔女を、外界に現出するよりも前に、その魔女が式を通じて吸収したという説は成り立たないだろうか。

567私の世界を守るため:2014/05/01(木) 02:00:06 ID:iaf2QIKA0



グリーフシードが支給されるにおける問題点も、これなら解決できるのだ。
穢れを取り込んだグリーフシードはまた新たな魔女を生み出す。
アカギが望むのはあくまでプレイヤー間による殺し合いだ。
参加者ですらない、自律的に暴走した支給品が介入するのは避けたいに違いない。
それも会場が魔女の結界の範囲内だとすれば、グリーフシードごと魔女を取り込むという芸当も可能かもしれないのだ。
魔女を喰う魔女など聞いたこともないが、もし可能ならこれほど強大な結界を築けるのにも理屈が立つ。



この仮説は、儀式の核心に迫る真実であると同時に、魔法少女にとっては災厄になりかねない諸刃の剣だ。
最悪、敵意を向けてくる者もいないとは限らない。
あの草加雅人も、人外のものへの異常な敵愾心を見せていた。
味方になり得るかもしれない人をも敵に回す仲間割れは、可能な限りは避けたいものだ。

だから、この考えはまだ公にするべきではない。
参考に編まれた考察自体、穴の多い不十分な出来だ。
ありもしない空想に不安を抱き、迷走の果て自滅するなど、それこそキリカに向ける顔がない。
それに考えが正しく、本当にインキュベーターが関わってるとすれば、絶対に知られてはいけない。



以上の思考は、織莉子が殺し合いの儀式を破る為に巡らせているもの。
それとは別の、織莉子自身が果たさなければならない使命。
全ては、その使命を果たす方にこそ優先すべきだ。
邪魔の入りづらい特殊極まるこの環境を利用して、己が大望を叶えてみせる。

砕けた魂の欠片を握り締める。
掌に伝わるのは心の温もりではなく、硬く冷えた肉に食い込む感触。
こんな小さなカケラの中に、かつて自分に全てを奉じてくれた少女がいた。
人格すらも投棄して変換して、何もかもを捨ててでも守ると誓った、傍から見れば哀れにも見られる命。
無意味な犠牲になるなど、無価値な石くれになるなど、絶対に赦さない。

歩く先にあるのは、遠からず見えてくるだろう一件の家。
千里を透かす未来(め)に映った、幼い一人の少女。
破滅の引き金。
悲劇の温床。
絶望を救済に変える路は、あと僅かで終着を迎えようとしていた。

568私の世界を守るため:2014/05/01(木) 02:00:49 ID:iaf2QIKA0







 ☬☬






"織莉子の魔法少女の衣装ってさ。可愛いよね。
 白くてヒラヒラしてて、まるで蝶々みたいだ"


汚れを払い清め終わった顔は、膝の下を占拠して眠っているのと変わりない、安らかな寝顔。
頬を撫で、腕を通して急速に胸まで迫ってくる冷たさを感じなければ、これが死体とは思えないほど、綺麗な有様だった。

 
"そのままでも十分、有り余るほど綺麗で可愛らしくて美しいけど、
 月夜で踊る様なんかは、それはもう輝くほど素敵なんだろうな"


少し待てば唐突に瞼を開き、跳ねるように飛び起きてお茶とお菓子を催促してきそうな、そんな夢想をしてしまう。
砂糖三個にジャム三杯。甘い甘い、シロップの思い出。


"ねえ織莉子。君の使命が終わったらさ。
 そうじゃなくても、魔女の出ない夜があったらさ、二人で一緒に公園にでも出かけない?"


あなたは知っているだろうか。
共に過ごした生活に、あなたという友達がいてくれたことに、私がどれだけ救われていたか。


"ん?何をするかって?月の光だけに照らされて、夜の公園で踊るのさ。
 そこらの有象無象のアイドルなんかとは比べ物にならない、ヲタクとやらが視たら腰砕けものだよ。私が保証する"


あなたは私(おりこ)を見てくれた。
私を個人(おりこ)として扱って、とても大切な人だと言ってくれた。
無邪気にじゃれ合うあなたと同じくらい、私もあなたに甘えられていた。


"―――え?踊るなら私も? 
 む、無理無理無理無理!私、踊ったことなんかないし―――え、織莉子もないの?ホントに?
 ブルジョワって休日は夜な夜な社交パーティーとかしてるもんじゃないの?"


あなたと過ごした時間は、短い人生においてさらに短い秒針に過ぎないけれど。
あなたがくれた思い出は、装飾だった私の人生と比べてもより重く、光り輝いた宝石のようだった。

569私の世界を守るため:2014/05/01(木) 02:01:17 ID:iaf2QIKA0



"う……君からの頼み、ときたか。
 困った。それは、断れない。
 ええい、こうなりゃヤケだっ、誘ったのは私なんだし腹はくくる!
 だからその―――ヘンテコな動きでも、笑わないでくれよ?"


あなたが―――私の、希望(ひかり)だった。



"笑ったら莉子のお手製ケーキだからね!
 約束だよ―――"


呉キリカという希望が持っていた思い。叶えたい願い。
最後まで信じてくれた美国織莉子こそが、その結晶だ。
それを忘れない限り、私の中には希望が生き続ける。
あの頃のように絶望するコトなんて、ない。


"織莉子"


キリカ。
たったひとりの、私の友達。

私(あなた)の世界を救うためなら、私はどんな罪を背負う事になろうとも、構わない。

570569修正 私の世界を守るため ◆HOMU.DM5Ns:2014/05/01(木) 02:03:25 ID:iaf2QIKA0



"う……君からの頼み、ときたか。
 困った。それは、断れない。
 ええい、こうなりゃヤケだっ、誘ったのは私なんだし腹はくくる!
 だからその―――ヘンテコな動きでも、笑わないでくれよ?"


あなたが―――私の、希望(ひかり)だった。



"笑ったら莉子のお手製ケーキだからね!あれ、これじゃ私が罰ゲー、なんでもありません!
 とにかく、約束だよ―――"


呉キリカという希望が持っていた思い。叶えたい願い。
最後まで信じてくれた美国織莉子こそが、その結晶だ。
それを忘れない限り、私の中には希望が生き続ける。
あの頃のように絶望するコトなんて、ない。


"織莉子"


キリカ。
たったひとりの、私の友達。

わたし(あなた)の世界を救うためなら、私はどんな罪を背負う事になろうとも、構わない。

571私の世界を守るため ◆HOMU.DM5Ns:2014/05/01(木) 02:06:26 ID:iaf2QIKA0
【E-6/市街地東部/一日目 昼】
【美国織莉子@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:ソウルジェムの穢れ(0割)、白女の制服姿、深い悲しみと揺るがぬ決意
[装備]:グリーフシード(濁り:5割)、砕けたソウルジェム(キリカ)
[道具]:共通支給品一式、ひでんマシン3(なみのり)
[思考・状況]
基本:何としても生き残り、自分の使命を果たす
0:鹿目邸に向かい―――
1:鹿目まどかを抹殺する。ただし、不用意に他の参加者にそれを伝えることはしない
2:優先するのは自分の使命。そのために必要な手は選ばない。
3:キリカを殺した者(セイバー)を必ず討つ。そのために必要となる力を集める。
4:ポケモン、オルフェノクに詳しい人物から詳しく情報を聞き出す。
5:積極的に殺し合いに乗るつもりはない。ただし、邪魔をする者は排除する
6:サカキと行動を共にする。隙は見せないが、事態打開に必要であれば情報手助けもする。
[備考]
※参加時期は第4話終了直後。キリカの傷を治す前
※ポケモン、オルフェノクについて少し知りました。
※ポケモン城の一階と地下の入り口付近を調査しました。
※キュゥべえが協力していることはないと考えていましたが、少し懐疑的になっています。
※草加に伝えた予知は正確には『ひどく憔悴した様子の園田真理』です。
 今後の状況には変化の可能性もあります。


【サカキ@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:左腕に裂傷(軽度)
[装備]:高性能デバイス、ニドキングのモンスターボール(ダメージ(小)疲労(小))@ポケットモンスター(ゲーム)
[道具]:共通支給品一式 、技マシン×2(サカキ確認済)
[思考・状況]
基本:どのような手段を使ってでも生き残る。ただし、殺し合いに乗るつもりは今のところない
1:『使えそうな者』を探し、生き残るために利用する
2:織莉子に同行する。暫くは自由にさせるが主導権は渡さない。
3:織莉子の提案通り、鹿目邸を調査。その後市街地を巡回した後病院へ向かう。
4:ポケモン、オルフェノク、魔女に詳しい人物から詳しく情報を聞き出す。
5:力を蓄えた後ポケモン城に戻る(少なくともニドキングとサイドンはどうにかする)
6:『強さ』とは……何だ?
7:織莉子に対して苦い感情。
8:高性能デバイスの存在は伏せておく。
[備考]
※『ハートゴールド・ソウルシルバー』のセレビィイベント発生直前の時間からの参戦です
※服装は黒のスーツ、その上に黒のコートを羽織り、黒い帽子を頭に被っています
※織莉子の予知能力について大凡明確に理解しました。
※ポケモン城の一階と地下の入り口付近を調査しました。
※サイドンについてはパラレルワールドのものではなく、修行中に進化し後に手放した自身のサイドンのコピーだと思っています。


【草加雅人@仮面ライダー555】
[状態]:負傷(中)
[装備]:ファイズギア@仮面ライダー555(変身中)、オートバジン@仮面ライダー555
[道具]:基本支給品、
[思考・状況]
基本:園田真理の保護を最優先。儀式からの脱出
0:病院に急ぎ、真理を助ける。
1:ついでだがまどかには有る程度、協力してやっても良い
2:オルフェノクは優先的に殲滅する。そのためにLと組む
3:織莉子とサカキは今の所信用する。だが織莉子が嘘言を弄していた場合は……
4:ポケモン、オルフェノク、魔女に詳しい人物から詳しく情報を聞き出す。
5:Lとの約束のため病院か遊園地へ
3:長田結花は殺しておく。……が、今は手出し出来ない。
6:地図の『○○家』と関係あるだろう参加者とは、できれば会っておきたい
[備考]
※参戦時期は北崎が敵と知った直後〜木場の社長就任前です
※自分の知り合いが違う人物である可能性を聞きました

【オートバジン(ビークルモード)@仮面ライダー555】
現在の護衛対象:草加雅人
現在の順護衛対象:
[備考]
※『バトルモード』時は、護衛対象の半径15メートルまでしか行動できません
※『ビークルモード』への自律変形はできません
※順護衛対象はオートバジンのAIが独自に判断します

572私の世界を守るため ◆HOMU.DM5Ns:2014/05/01(木) 02:07:44 ID:iaf2QIKA0





[情報(織莉子、サカキ、草加)]
考察(織莉子、サカキ、草加)
ポケモン、オルフェノク、魔法少女と魔女についての基本的な知識
危険人物の開示(バーサーカー、黒い騎士(セイバー)、乾巧、北崎、木場、結花、海堂)
(織莉子、サカキは一部人物情報に懐疑的)



[考察(織莉子、サカキ、草加)]
『呪術式』は、『魔女、あるいはそれに相当する存在(以下、魔女と呼称する)』によって作用している。
『呪術式』は、オルフェノクの灰化等、多数異世界の技術によって加工されている。
また、会場の構築も『魔女の結界』に分類される可能性がある。
その場合、『魔女』を倒す事でそれらを全て消失できる見込みがある。

『魔女』は、この会場のいずれかに潜んでいる可能性が高い。
『禁止領域』は、それを隠匿する意味も込められている。

アカギは、『魔女を操る術』を備えている。
アカギは、『時間と空間を操るポケモン』を捕獲、所持している可能性がある。
『魔女』は、このポケモンである可能性もある。
それ以外に、オルフェノクに関する技術も保有している事から、『技術、資金的な協力者』を抱えている。

以上の説の検証の為、ポケモン、オルフェノク、魔女に詳しい人物から詳しい事情を聞き出す。
オルフェノクについて:村上峡児(強硬手段を前提)
ポケモンについて:シロナ(比較的穏健に接触可)
魔女について:該当者なし?



[考察(織莉子のみ)]
ソウルジェムから生まれる魔女は、この儀式を構成している『魔女』に吸収されている。
グリーフシードから生まれる魔女も同様である。

裏付けが取れるまで、この考察はなるべく秘匿しておく。

573 ◆HOMU.DM5Ns:2014/05/01(木) 02:11:32 ID:iaf2QIKA0
以上で投下終了です。
途中タイトルがバラけてすみません。正式タイトルは「私の世界を守るため」、
分割は>>557までが全編、>>558からが後編です

最後に改めて、度重なる予約超過に音信不通、企画の妨げになりかねない行為を犯して誠にすみませんでした

574名無しさん:2014/05/01(木) 02:21:43 ID:qhkAzIYE0
投下乙です
織莉子は覚悟を決めたか。結構考察すすんだな
そして草加さんまで病院行くとか嫌な予感しかしないw

575名無しさん:2014/05/01(木) 10:29:52 ID:CykutVTsO
投下乙です。

魔女を吸収する魔女、まど神ですねわかります
まどかを殺そうとしてる織莉子が、最終まどかと同じ発想をするのは面白い。

576名無しさん:2014/05/01(木) 13:37:45 ID:bDe9Id4s0
投下乙です
かなり考察が進みましたね。この情報をどれだけの対主催が知ることができるのか
草加さんと真理組、対主催同士が合流するだけなのに不安なのは何故だw

577名無しさん:2014/05/01(木) 19:46:20 ID:GI5k/XM60
投下乙です。
これは実に凄い考案ですね。織莉子は果たしてこれからどう出るか?
そして草加さんも何かやらかしそうw

578名無しさん:2014/05/01(木) 21:25:18 ID:KRmxEio60
投下乙です
カイザギアを渡せる!強い戦力が仲間になる!考察情報も手に入る!
いいことずくめのハズなのに某氏が終了する未来が見えてしまう不思議

579名無しさん:2014/05/02(金) 02:27:43 ID:0qz1ZFpw0
もう一つの投下来ないけど忙しいのかな

581 ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/02(金) 11:10:16 ID:hq1mAxHg0
遅れて申し訳ありません。これより投下します

582君の銀の庭 ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/02(金) 11:13:11 ID:hq1mAxHg0
タタタタタタ

銃声が鳴り響く。

その合間に爆音と熱風が轟く。

一発ずつ、拙く放たれる銃声、爆発音はやがて周囲にうごめく何かを吹き飛ばす。

その先にいるのは、巨大な影。

「行くわよ!暁美さん、鹿目さん!」
「はいっ!」

桃色の衣装を纏った少女は、マスケット銃を構えた少女の後ろに続き。
さらに離れた場所からそんな彼女から伸びた黄色いリボンをその手にした、盾を構えた灰色の衣装の少女。

影は近付く少女に気付き巨大な腕を振り回し、大量の小さな影を飛ばす。


「今…!」

暁美と呼ばれた灰色の衣装の少女が盾をひっくり返すと同時、射出された影も振りかざされた腕も完全に静止する。

そんな空間で動くのは、時を止めた彼女本人と、その手にリボンを結びつけた少女達。

「これで決めるわ!」

飛び上がった黄色い少女の手から巻き取られたリボンは、巨大な砲台へと形を変える。
さらにその後ろからは手にした弓を構える桃色の少女。

灰色の少女の制御外へと離れ止まった彼女達を前にして、彼女はまた盾をひっくり返し。

動き出す時。
そして桃色の少女の放った矢が射出された影を撃ち抜き。

「ティロ・フィナーレ!!」

砲台から撃ちだされた弾丸は巨大な敵を捉え、大爆発と共にその体を粉砕した。



「やったあ!やったね、マミさん!ほむらちゃん!」
「か、鹿目さん…!く、苦しいです…」

消えていく結界を眺めつつ、思わず喜びの声を上げて抱きつくまどかに、メガネで三つ編みの少女、暁美ほむらは困惑する。
彼女なりのスキンシップなのだということが分かっていながらも、どうしても戸惑ってしまうのだ。

583君の銀の庭 ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/02(金) 11:16:06 ID:hq1mAxHg0
「なかなかあなたの魔法、形になってきたんじゃないかしら?」
「いえ、そんなこと…、二人に比べたらまだまだです…」
「もっと自分に自信を持ってもいいのよ?あなたの魔法はすごいものなんだから」

褒められるほむら。しかしそれに甘んじてはいけない。
もっと強くならなければいけない。
もう少しでやってくるであろう災厄、ワルプルギスの夜に立ち向かうためには、もっと強くならなければいけない。

「さて、もう魔女の反応はないし、今日はこの辺りでお茶にしましょう。この前いいお茶っ葉が手に入ったのよ」
「やったあ!」


そういってマミの誘いに乗るまどか。無論ほむらもその後に続く。

と、皆の最後尾。後ろにはもう誰もいないはずの空間。
ふとほむらが振り向いた先には、謎のモヤモヤとした黒い影があった。

いつもそうだ。
こうやって自分が楽しい、幸せだと感じた時にあれは現れる。
魔女の反応は無く、しかも自分にしか見えないらしい。以前二人に相談をしてみたが、疲れているのだろうという結論に達してしまった。

不気味でこそあったものの、それに触れることに強い恐怖がほむらの中にはあった。

「ほむらちゃん?どうかしたの?」
「もしかして、この前言っていた…?」
「う、ううん、何でもないんです。早く行きましょう」


そうしてほむらは、不気味に佇むその黒い影に背を向け、二人に続いて走っていった。




「…まさか佐倉杏子が最初に落ちるとはね」

放送を聞いて最初に思ったのはそんなことだった。

巴マミ、美樹さやか、自分、そして佐倉杏子。
この中でもし生き残ることに長けた者がいるとしたら佐倉杏子だと、ほむらは考えていた。

何だかんだで自身の絶望にも耐え、一人で長期間生き延びることができた彼女が、こうして巴マミや美樹さやかよりも早く脱落したというのは、それなりには意外であった。
もし彼女が落ちうることがあれば、あるいは美樹さやかの時のように情に絆されたか。

そういえば確か彼女は巴マミと共に行動しようとしていたと思う。
彼女はどうしたのだろうか。

「………」

一方でアリスもまた、死んだ名の中に刻まれた友の名に、改めて口を噤んでいた。
その心中はほむらには計り知れないが、それで悲しみに落ちるということはないだろう。

584君の銀の庭 ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/02(金) 11:16:48 ID:hq1mAxHg0

「そういえばさ」

と、ふと沈黙を破って口を開いたアリス。

「あの呉キリカっていう危険な魔法少女も死んだっていうけど」
「そうね、脅威は一つ消えたとも言えるけど、この放送を聞いた美国織莉子がどう動くか、それが問題ね」

呉キリカ。ほむら自身彼女の人となりを知っているわけではない。
戦ったのは一度だけ、それも魔女化した状態となれば織莉子以上にほむらにとっては不明瞭な存在だった。
まあ、死んだ今となっては関わりのない話ではあるが。

「それで、私達はどこへ向かってるのかしら?」
「目的地ね、とりあえずまどかの家に向かいたいところだけど、その前にどうしても気になるところがあるのよ」
「気になるところというと?」
「このNの城ってところね」





「ナナリーが…死んだだと…!」

放送に顔を歪めている一人の少女。
その表情は苦悶に満ちており、その放送、ナナリーの死に対する感情を伺わせる。
しかしそれは決して悲しみなどというものではない。

「くそ…、何てことだ…!これでは村上に対等な力を得ることができない…」

魔女の力を得ることで、このギアスの力の副作用を克服する。それがマオの目的だった。
ゼロから力を奪うには、やはり自分だけの力では困難を極める。ならばまず狙うはナナリーであり。
魔女の力により強化されたギアスをもって村上に対して、こちらを殺すには重くつくと見せることであいつの力に怯えることもない対等な協力関係を築きゼロからも力を奪う。

その手はずだったのに。

「魔女め…、ヤツは何をやっていたんだ…!ナナリーをむざむざと殺させるなんて…」

いくら叫ぼうとも、ナナリーが死んだという事実は変わらない。
しかしそれでも叫ばずにはいられない。

「僕には、誰よりもナナリーから救いを受ける権利があるはずなのに…」

想定外の事態に考えがまとまらない。
このまま追い付いてくるだろう村上からの死の恐怖に怯えながら行かなければならないのだとすると、それはあまりに屈辱。

やり場のない思いだけがマオの中に蓄積されていく。


そんな時だった。

マオの耳に届いたバイクの音。

抑えきれない苛立ちを残したまま、その方向を向いたマオに見えたのはバイクに搭乗した二人の少女。
本来であればそれに惹かれるものなどなかっただろう。しかし、そのサイドカーに乗っているのは。


「アリス…、やつか…」

元イレギュラーズである自分にとっても因縁ある相手であり、あのナナリーの友人。
能力の相性がいいとは言えないものの、今の自分にはギアスに並ぶ武器がある。
八つ当たりをするにはうってつけだった。


「少し遊んでもらうよ。このムシャクシャする思いを発散するためにさ」

585君の銀の庭 ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/02(金) 11:17:48 ID:hq1mAxHg0




森を走っていたはずの二人のバイク。
そこに。

「ポチャ?!」
「―――――?!」

ポッチャマの声が聞こえると同時に空を見上げたアリスとほむらの元に。
巨大な岩が降り注いだ。

「ほむら!」
「くっ」

カチリ

砂時計が回転すると同時に、宙に浮いた状態で重力に従うはずの岩が停止。
バイクの速度を上げ岩石群を抜けたところで岩が地面に墜落。
激しい音を轟かせながら岩が地面に突き刺さっていく。

「ポチャ!ポチャポチャ!!」
「どういうこと?あなたあれを知ってるの?」

ポッチャマにそう問いかけた瞬間だった。
森の木々を粉砕しながら、灰色の巨体がこちらへと迫ってきたのは。


「ポチャ!」

灰色の怪獣はその巨体を唸らせながら、頭頂部に生えたドリルを回転させ突きを繰り出す。

「アリス、こっち!」

サイドカーに乗ったアリスに声を掛け自分の後ろに移動させたほむら。
そのまま咄嗟にバイクを変形、サイドバッシャーバトルモードへと変形させ、その頭を押さえつける。
そのまま巨体を脚部で蹴り飛ばし、ミサイルを打ち込もうと構えたその時――――


「ポチャ!ポッチャマチャマ!」

砲口を向けたほむらの前にポッチャマが立ちふさがった。

「邪魔よ」
「チャマ!」

起き上がるサイドンに対してミサイルを発射しようとするほむらの前で、ポッチャマは譲らずに立ちふさがってスイッチを押させない。

「あの怪物は障害よ。おそらくけしかけてるやつは近くにいるわ。一刻も早くそいつのところにいかなければ危険なの。
 それとも何?あなたがあいつの相手をしてくれるとでも言うの?」

若干の苛立ちを交えつつポッチャマにそう問いかけたほむら。
あの巨体を相手にこの小さな生き物単体でどうにかできるものとは思えない以上、それで引き下がると思っていた。
が、しかし。

「チャ!」

ポッチャマは強く頷いた。
つまりはあれの相手が単独でできる、というのだ。

「強がりかしら?それとも勝算があって言ってるのかしら?」

そう問うほむらに対し、ポッチャマはその小さな羽をまるで親指を立てるような形にして突き出す。

「そう、それなら任せるわ。助けには入れないけど、構わないわね」
「チャマ!」

その鳴き声を最後に、ポッチャマはサイドバッシャーを飛び降り、サイドンに向かってかけ出した。
そしてサイドンも、そんなポッチャマへと注意を移して攻撃を始めていた。

586君の銀の庭 ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/02(金) 11:18:42 ID:hq1mAxHg0
「もしかしてあの怪獣もポッチャマやミュウツーの同族なんじゃ…?」
「なるほど、餅は餅屋というわけね」

サイドンを引き離しつつあるポッチャマを前に、アリスとほむらは周囲を探る。

「ソウルジェムが反応してる。おそらくはあれをけしかけてきた何者かね」
「こそこそしちゃって、イライラするわね。さっさと姿見せなさいよ!その臆病な面拝んであげるから!」

声を荒らげてその主に向かって挑発する言葉を投げるアリスの声が森に響き。


「ふん、言ってくれる。ボクの手の内を知っていながら臆病者なんてね」

それに答えるかのように頭上から声が二人の元に降り注ぐ。

見上げたアリスとほむらの視界に入ったのは、そう高くもない木の上に直立している一人の少女。

「マオ…!」
「久しぶり、と言ったところかな。アリス」

黒を基調とした特殊服のような衣類に身を包み腕に包帯を巻いた少女、マオ。

「全く、あれも使えないな。あんな小さな生き物に気を取られるなんて。
 正直君たちに用があるわけじゃないんだけどね。ちょっと機嫌が悪いんだ。少し付き合ってもらおうか」

そう言って銃口を向ける。

カチッ

それに対してほむらは時間を止め。
一発の銃弾を彼女に向かって静かに放つ。

彼女の直前で停止したそれは、時間が動き出すと同時にマオの顔へと命中―――

「ぐっ…!」

する直前、顔を逸らしたことでマオの頬を若干掠めるに留まっていた。

(避けた…?)
「なるほど、まさか本当に時間を止められるとはね…。驚いたよ」
「ほむら、あいつのギアスは心を読み取る。だからあいつの目を見てはダメよ」
「そういうことは先に言ってくれないかしら」

頬を掠めた銃弾の痛みに顔を歪めるマオ。
垂れる血を拭いながら元々苛立っていたというその様子がみるみるうちに不機嫌になっていっているのが分かった。

「フン、いいだろう。それじゃあせいぜい幸福の監獄に囚われるといい」

そう言ってマオは銃口をこちらに向けながら片目を覆った眼帯に手を掛け。

「――――ザ・リフレイン!!」

発砲と同時にそう叫ぶと、その瞳から光の紋様が現れ―――



「えっ」

驚きの声の主はマオ自身だった。

たった今発動させたザ・リフレイン。それがアリスとの相性が悪いことは分かっている。
それを目の前で発動させては、アリスがそれに囚われるより前に接近を許してしまうだろう。
だからこそ、移動するのにある程度の時間を要する、なおかつこちらからは視野に入りやすいこの場所から使ったというのに。

なぜ、今彼女は自分の背後を取っているのだ?

「言わなかった?あんたのギアスじゃ私には勝てないって」
(バカな…。アリスにしても今の動きは速すぎる…!)

背後から銃口を向けるアリスに、身動きが取れなくなったマオ。

587君の銀の庭 ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/02(金) 11:19:22 ID:hq1mAxHg0

これほどまでにアリスのギアスを強化しているのは何故か。
混乱する頭で必死に可能性を探る。

「無駄よ。如何にあんたが思考を読み取ろうと、私はその時には既に行動を終えているわ」
「―――アリス、何故ここまでギアスを………。――――!
 まさか、魔女の力を継承したのか?!」
「…なるほど、あんたがナナリーを狙っていたのはそれが狙いだったのね」

結局かつては聞くことができなかった疑問の一つを解決させたアリスは納得するようにそう呟き。


「―――――は、ふふふふふ、アハハハハハハハハハハハ!!!」

対照的にマオは、まるで歓喜の声を上げるかのように笑い始めた。

「ハハハハハハ!ボクはついているな!ナナリーが死んだ時にはもうダメだと思っていたのに、まさかその継承者が目の前に現れてくれるなんて!」
「喜ぶのは勝手だけど、あんたの幸運もここまでよ」

引き金に指をかけたアリス。
後は人差し指をわずかに動かすだけで、銃弾は目の前の彼女の頭を撃ちぬくだろう。

「それは、どうかな?」

と、そう言ったマオはアリスに振り向くことなく銃口を構えたまま、アリスを見ることなく前を見据えている。
そういえば後ろを取って以降ずっとその体勢であった。身動きが取れないにしては不自然。

ふとアリスはその銃口の先に視線を向けた。

「―――!」

そこには、サイドバッシャーから落ち地面に倒れこんだほむらの姿。

「まさか…、リフレインが…?!」
「君が銃口を引いて頭を吹き飛ばしても、その瞬間にこの引き金を引くことくらいはできるだろうね。どうするかい?」
「くっ…!」

挑発するかのように銃口を揺らしたマオの大きく動揺したアリスは、咄嗟にその銃口を掴み腕を締めあげ。

「――――引っ掛かった!見たね、ボクの左目を!」
「!!」

その瞬間、彼女の外気に晒された左目を視界に収めてしまった。

「君も、永遠の幸福の中に囚われるといい!」

その瞬間、マオの左目が更に輝きを放ち――――――――――――




588君の銀の庭 ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/02(金) 11:19:49 ID:hq1mAxHg0
つのドリルで木々が粉砕されていく中、ポッチャマは小さな体を活かして身軽に攻撃を避けながら逃走を続けていた。
岩が降り注ぎ、接近されすぎれば素早い連続の突きがポッチャマを襲う。その一撃一撃がどれもかなりの破壊力を持っている。
直撃を喰らえばひとたまりもないだろう。

「ポッチャーーー!」

それを避けつつ、ポッチャマは迫り来るサイドンに対して大量の泡の光線を吐き出す。
その身に着弾して弾けるそれを受け、サイドンは大きく体を仰け反らせる。

ほむらやアリスはポケモンに対しての知識を持っていなかったゆえに知らなかったこと。
サイドンのタイプは岩、地面タイプである。物理耐久には優れる代わりに特殊攻撃に対する守りは高くない。
そしてその複合タイプは水、草といったタイプの攻撃には相性が非常に悪い。

ポッチャマのバブル光線はサイドンには驚異的な攻撃となるのだ。

しかし。

「ポチャ?!」

本来であれば今の一撃で体力を大きく削られるだろうはずの攻撃だったにも関わらず、サイドンはそこから更に岩雪崩を繰り出してきた。
慌てて降り注ぐ岩石群を避けるポッチャマ。

もしも、相手にしているのがただのサイドンであれば今の一撃だけでも勝敗が決まっていただろう。
しかし今ポッチャマの前にいるのはただのサイドンではない。ロケット団のボスであり、カントー地方において最後のジムリーダーとしても立ちふさがる男のポケモン。
その実力は、相性こそあれサトシのリザードンをして苦戦させるほどのもの。

加えて今のサイドンは、マオによってある道具を持たされていた。
その身に備えた、小さく輝きを放つ石。それはまだその身を進化させる余地のあるポケモンに持たせることでその耐久力を向上させる道具。
その石の名を進化の輝石ということを、ポッチャマは知らない。

「ポチャァ!」

羽を掠めた岩がポッチャマの体のバランスを崩させ、逃げる足を遅らせる。

そこでサイドンは巨大な咆哮と共に己のエネルギーを地面に向けて解き放つ。

それは大地を揺らす衝撃と化し、ポッチャマの蹲った地面を揺らし。

身動きのできなくなったその体へと、サイドンはその頭部のドリルを、狙いを定め突きつけた。


「チャマッ―――――――――?!」



589君の銀の庭 ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/02(金) 11:22:25 ID:hq1mAxHg0



二人が夜神邸を出発して以降一時間強が経過していた。
しかしその間も、二人の間に会話などない。

あくまで利害からなる繋がりの中に信頼関係など不要、どころか信頼したところで裏切りの危険性を持った相手と友好的にしたいとはスザクにも思えなかったし。
月にとっても、素顔すら見せないような相手に話すようなことはなかった。

他の者が見れば恐ろしく空気の悪い二人だったが、この二人にはそれが特に心苦しいものとも思ってはいないようだった。


そして、そんな時に届いたのはあのアカギの声だった。




ニア。
夜神月にとっては新世界を築く上では邪魔となる存在であり。
ここに来るまでの時点では自分を負かした憎い相手であり。
何としても始末しておきたかった人間の一人だった。

Lが死んだ時、見る者がリュークしかいなくなったあいつの墓前で笑い尽くしたように。
本来であればあいつの死も笑って喜ぶところのはずなのだろうに。

何故だろうか。そんな気にはなれなかった。
目の前にこの男がいるから、というわけではない。きっと自分一人でいたとしてもこの気持ちは変わらなかっただろう。




一方でスザクもまた、その心中が穏やかではなかった。

ユーフェミアとロロ・ヴィ・ブリタニアの名が呼ばれることは、今更思うところはない。既に知っていることなのだから。
しかし。

(―――ナナリー…)

既にこの場でも亡く、そしてかつて己の手でその生命を終わらせた友の妹、スザク自身にとっても大切な存在であった少女。

彼女の名が呼ばれた時自分がどんな顔をしていたのかは分からない。
しかし、ゼロの仮面を被っていてよかったと心から思えるような表情をしていたような気はした。

「それで、K…、どこへ向かうんだ?」

それまでずっと口を開くことがなかった月がそう問いかけてくれた時は、スザクも心境的には助かったと思った。

「とりあえずはまず他者との接触をして情報を集めつつ、危険人物との接触を避け北へと向かおうと思う」
「北、というとこのアヴァロンや蓬莱島とかいう施設か?」
「ああ、私にとっては何かと馴染みのある場所だ。あるいは何かが見つけられるかもしれない」
「そうか」

月はその返答に対して肯定も否定もすることなく、ただその指示に付き従うだけだった。


やがて市街地を抜け、森の中に入った時だった。


木々をなぎ倒すような音が響き、周囲に爆発音のようなものを打ち鳴らしている。
さらに猛獣の鳴き声のようなものと、落石にでも遭遇したかのような爆砕音。

スザクの行動は早かった。

「ここで待っていろ。もし付いてくるなら止めはしないが、命を守ることはできない」
「…分かったよ」

静かにそう告げると、スザクはその明らかに激しい運動には適していないだろう格好をしていながら恐ろしい速さで走り去っていった。

590君の銀の庭 ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/02(金) 11:23:42 ID:hq1mAxHg0



「ポチャ…?」
「何が戦っているのかと思ったが、君だったか」

サイドンのつのドリルを受けそうになり、そのまま倒れてしまうことを覚悟していたポッチャマ。
だったが、突然の浮遊感と共に体が浮き上がり、気がつけばその射程範囲から逃れていた。

見上げたポッチャマの目に入ったのは、ロケット団やギンガ団のような悪の組織の連中の胡散臭さをはるかに超える外見をした、とてつもない不審者。
そして、そんな彼に会うのはこれで2度目だった。
最初に会ったのは確か12時間ほど前。ここに来てすぐだった頃に呼び出されたと思う。
その時はあまりの怪しさとヒカリが不在であったことの不安感で大声をあげそうになったことでボールに戻されてしまったが。


「ユフィのところに預けたはずだったのにな…。どうしてこんなところに」
「ポチャ!」

暴れるポッチャマの目の前で、体勢を立て直して起き上がるサイドン。
ポッチャマ視点だと先と比べて動きは鈍っているようだが、その戦意は衰えてはいない。

そして、その敵意は自分にも向けられつつあることをスザクは感じ取っていた。

と、ポッチャマは自分を抱えていたスザクの手を振りほどいて、目の前にいる巨体の前に立つ。

「ポチャ!」
「君だけで大丈夫なのか?」
「ポッチャマ!」

ポッチャマは目の前の怪獣に勝とうという意志はあるが殺そうというつもりはない様子だった。

「なるほど、なら何かできることはあるかい?」
「ポチャポチャ!」



「グガャアアアアアアアアア!!!!」

そうして吠えるサイドンに対し、ポッチャマは駆け出し、スザクはその後を追って走りだした。




キャンプファイヤーのまわりでフォークダンスを踊っているアッシュフォード学園の生徒達。

学園祭の締めを括る、最後のイベントだ。
特に興味があるわけでもなかった私は、屋上で一人佇もうと思い。

そこで彼女を見つけた。


「アリスさん…でしたっけ?先週転入してきた」
「あら、よくわかったわね」

目の前にいたのは、車椅子に乗った一人の少女。
誰だったか、よく覚えている。転校した初日に虐められているところを助けた子だった。

同じ(とは言っても気持ちの問題なだけの自分と身体的な障害ゆえの彼女では大きく違うが)踊れない者同士の他愛もない会話。

踊れない事実に過去を思い出し、涙を流す彼女に励ましというわけでもない、まあ何となく思ったとおりのことを言ってみたりして。
タイヤキの話とかをしたような気がする。

そんな、取り留めのない会話。
何かあったというわけでもないのに、この時間は何故か心に刻みついていた。






「お、おぼえてらっしゃい!」
「はいはい」

別の日。
虐められていたナナリーを助けた私は、放課後に屋上で二人で話していた。

この時ナナリーにお茶に誘われたのだが、任務とかち合いになってしまったせいで断ることしかできなかった。

その時何気なくナナリーに対して言った、「親友」という言葉が、心の中にしばらく沈殿していた。

591君の銀の庭 ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/02(金) 11:24:37 ID:hq1mAxHg0
「親友、か」

私はあくまでもこの学校には潜入捜査として入っていただけにすぎないというのに。
まるでこれでは一端の女子学生のような姿だった。

それでも、ナナリーの傍にいる時が一番落ち着いていられた。楽しくいられた。



バチッ

頭にノイズが走る。
何か大切なことを忘れている、忘れさせられていると告げるように。

一瞬頭を押さえうずくまる。しかしそのノイズの原因が浮かばない。

ただ。
ナナリーと共に過ごしている、ただそれだけの時間のはずだったのに、何か非常に罪悪感を感じている自分がいるような。
そんな気がしていた。



「ハハハハハハハ!!魔女の力も形無しだね!」

笑うマオの目の前にいるのは、地面に倒れ伏したアリス。
マオから受けた外傷など何もないはずなのに、その体は全く動かず。

そんな彼女へと、マオはゆっくり歩み寄る。

「なるほどね、君の同行者もなかなか面白い少女のようだ。そしてその願うものも非常によく似通っている。
 二人仲良くその記憶の檻ににとらわれているといいさ。その間に――――」

あの魔女が何を思ってアリスに対して己の力を託したのか。それは分からない。
しかしナナリーが死んだのは先の放送時点でのもの、それ以前に魔女の力を託したわけではないだろう。
ネモが同化して、そう時間は経っていないはず。奪うのなら、おそらくはナナリーよりも容易いだろう。

今はまだ魔道器が耐えている様子だが、それも時間の問題。

「君には色々と因縁もあるしね、魔道器を奪った後は苦しむ暇も与えずに殺してあげるよ!」

ガサッ

「―――!誰だ?!」

と、突如背後から感じ取った気配。
魔道器を前に油断していたこともあり、思わず声を上げて振り向くマオ。


「なるほどな、お前か。あの巨大な怪獣をけしかけてきたのは」
「ポチャ…ポチャ?!」

振り向いた先にいたのは、二人の男と先ほどサイドンが追っていった水色の小さなペンギン。
様子を見るに、どうやらあのポケモンは敗れたらしい。

こんな小さな相手に負けるなんて、つくづく使えないやつだ、などと思いながらその相手を見据え。

うち一人の格好に思わず注意を奪われた。

「君、その格好は何のつもりなのかな?」
「何のことだ?」
「…、ああ、君は確かアッシュフォード学園にいたゼロか」

よく見ればゼロの格好だけはしているがゼロではない。
あの時は遠目だった上にゼロが二人いるという事実を知らなかったことで気付けなかったが、こうして近くで見ると一目瞭然だった。

「そんな格好までして、どういうつもりなのかな、枢木スザク」
「―――!!貴様、何者だ!」

後ろにいた男、月からしても驚くほどにゼロ――スザクが取り乱しているのが見て取れる。

まあ、お面で隠しているとはいえ前面のレンズを割っていたことが彼の不幸だろう。

ゼロでないのならば、マオとしても興味はない。しかし今の自分は上機嫌だ。
少し遊んでやる余裕くらいはある。

「ボクはマオ、ギアスユーザーであり、君たちに”幸福”を与えるものさ」

と、マオは髪をかきあげる仕草をしながら二人の目を見て。
構えるスザクの前で静かに、――――ギアスを発動した。

592君の銀の庭 ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/02(金) 11:25:13 ID:hq1mAxHg0


「おいで、エイミィ!」
「ニャー」

まどかの元に近寄ってきたのは、黒い子猫だった。
まどかによく懐いているようで、自分に対しても警戒心を見せていない。

そこで私は、まどかが魔法少女になったきっかけを知る。
車に轢かれたその子猫を生かしたいという願いを対価に魔法少女になったのだと。

「ワルプルギスの夜も近づいているみたいだし、いつ会えなくなるか分からないからね。
 できるだけこの子の傍にいてあげたいって、そう思うんだ」
「鹿目さん…」

そう言ってエイミィを抱きしめるまどか。しかしその目にはワルプルギスの夜がくることに対する恐れは感じられなかった。
むしろ、それを倒せないことで周りの人々が傷つくことを何よりも恐れているかのよう。

「もし私に何かあったら、この子のことお願いしたんだ」
「何かあったらって、不吉なこと言わないでください!」
「あはは、そうだよね。ごめん、ほむらちゃん。
 ちゃんとワルプルギスも倒して、ほむらちゃん達のところに帰ってくるから、安心してて」

そんなやり取りをしつつ、分かれ道に辿り着いた私達は別れ際に何の変哲もない挨拶で道を分かれ。

「それじゃほむらちゃん、また明日」
「また明日」


そして次の日。

「暁美ほむらです。よろしくお願いします」

そこにあった光景は過ぎ去った日のもの。しかし暁美ほむらにとっては地続きの時間。
そして、その間にあった何かを飛ばした時間。

「鹿目さん、私も魔法少女になったんだよ!二人でがんばろう!」
「…ふぇ?!」

そんな不自然な状況に気付くこともなく平穏な日々を過ごしている。

しかし時折。
後ろを振り返る度に、あの黒い影はじっとこちらを見ているかのように佇み続けていた。



ザ・リフレインを発動したマオ。
その効力に飲まれた後ろの男、夜神月は蹲って動かなくなり。

ペンギンには効き目がなかった様子だ。まあ仕方ないだろう。
人間とは脳の構造が違う生き物の思考までは制御できないのだろう。

しかし。

この状況で最も肝心なはずの枢木スザクは。
己の目に該当するだろう場所に、手にした黒い剣をかざしていた。


「―――は?」

行動の意味がマオには理解できなかったし。
そもそもそれでザ・リフレインを防いでいるという事実もまた理解できなかった。

「マオ、と言ったな。その名前には聞き覚えがある。同じ名を持った者にかつて心の奥を読まれたことがあったからな。
 そして目をわざと晒すようにしながらこちらを見たが、こっちはそういう仕草をしながら目で見ることで相手にギアスをかける存在を知っている」

スザクにしてみれば、上げた全てはほとんど後付のこじつけにすぎない。
しかし、それだけの情況証拠でも。
目の前にいる存在がギアス能力者であるというなら己の経験則と直感からこの身に植え付けられた生存の呪縛を発動させるほどの危険信号を感じ取るには充分だった、ということだろう。

「ちっ、対した勘だよ枢木スザク!」
「その名前で俺を呼ぶな!」

ゼロではない、封印したはずの名前で呼ばれたことに激情するスザク。
しかしマオは彼には用はない。
今必要なのはあくまでもアリスの中の魔道器。つい邪魔になりそうだったことで遊んでしまったが、深入りする理由もない。

銃口を向けるのは目の前の男ではない。
この男の身体能力、かかっている呪縛を掻い潜って動きを止めるのは容易というにはあまりに程遠い。
だから、狙いを定めるのは今彼の足元にいる小さな生き物。

「ポチャ?!」
「―――?!」

咄嗟にスザクは剣をポッチャマの前に翳し、銃弾を弾き飛ばす。
そして、その一瞬の隙にマオはアリスへと駆け寄る。

その胸のブラウスを開くと、そこから姿を現しているのは白く巨大なキノコのような形をした物体。
それは、魔道器ネモの本来の姿。そして魔女の力の一端。リフレインを受けたアリスの元から、同化が解除されようとしているのだ。

どうやら枢木スザクと遊んだことでタイミングとしてはちょうどいい感じになったようだった。

「お前さえ手に入れられれば、ボクは魔道器と同化し、本物の魔女になることができる――!」

そうすれば、村上侠児だろうと枢木スザクだろうと恐るるに足りない。
この場にいる全員を殺し、生き延びることが可能になる。
これまで多くの人間に幸せを与えてきたのだ、それだけの資格が自分にはある。

「さあ、魔道器よ!このボクのものとなれ!」

593君の銀の庭 ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/02(金) 11:25:51 ID:hq1mAxHg0


「ほむらちゃん、もしかして私ほむらちゃんの傍にいて迷惑、かな?」
「え、う、ううん。そんなわけないじゃない。どうしてそんなこと…?」
「だってさ、最近ほむらちゃんずっと何か思い詰めたような顔してるから…」

赤い夕焼けに染まった空。
私は家へと向かう通学路を、まどかと二人で歩いていた。

最近は魔女の出没数こそそこそこあるものの、巴さんを含んだ3人でのコンビネーションによってそんなに苦戦することもなく倒せるようになった気がしていた。
最初こそ魔法の使い方もイマイチだったが、戦っていくうちにどういうタイミングで使うのがいいのかというのも読めるようになってきたし。
そして鹿目さん達の動きに合わせて時間を止めることでのサポートもそれなりにこなせるようになってきた。

だというのに、何故か私の中からは変なざわつきが止まらなかった。

「その、ワルプルギスの夜が近づいているっていうから、やっぱり不安…で…」
「それ嘘でしょ」
「う、嘘じゃないです!」
「だってほむらちゃん、嘘つくときいつも眉間にシワ寄ってるもん」
「え?!」
「あ、やっぱり嘘だったんだ」
「え、あ…か、鹿目さん!」

乗せられてしまったことへの恥ずかしさと隠し事がバレてしまったという気持ちで思わず引っ掛けた鹿目さんへと抗議の声を上げる。
顔に熱が集まっているようにも感じる。きっと今の自分の顔は真っ赤だろう。

追いかける自分に対し、鹿目さんは笑いながら小走りで逃げるように離れ。
それを笑いながら追いかける。顔はまだ熱を持っている。



そして、またあいつが現れた。

「………」

最近ではそれはまるで人を模っているかのような形にも見えるようになってきた。
一見すれば魔女の使い魔のようにも見えるが、しかし依然として魔力の反応は感じられない。

「ほむらちゃん…?」
「………」

そう、それが私のざわつきの理由だった。
きっと、あれをどうにかしなければこの不安は収まることはないのかもしれない。

これまでずっと先延ばしにしてきたが、今こそがその時だろう、と。
それに触れようとした瞬間、何かが体の動きを止めさせた。

これに触れてもいいのか、と。触れさえしなければ、このまままどかと過ごす日々の中で生きることができるのだ、と。
それを、捨てるのか。何かが心の中でそう告げていた。

「鹿目さん…」
「どうしたの、ほむらちゃん?」
「鹿目さんは、私がどうなっても私を暁美ほむらとして、見ていてくれますか?」

その質問は、何故口から出たのか自分でも分からなかった。
それでも、心のなかで何かがこれだけは聞いておきたいと、そう思ったのだ。

全てを知ったら、きっと今までの私ではいられなくなるだろう。そんな直感があったから。

「ほむらちゃん…」
「………」
「もちろんだよ。ほむらちゃんは、どんなに変わってもほむらちゃんのままだって、私信じてるから」
「鹿目さん、…ありがとう」

その一言だけで、決意することができた。

私は、静かにその影に手を触れた―――――――

594君の銀の庭 ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/02(金) 11:26:51 ID:hq1mAxHg0


――――――――何…?どうして…?なんで、こんな…?

――――――伝えなきゃ……みんなキュゥべえに騙されてる!

――――――――約束するわ。絶対にあなたを救ってみせる。何度繰り返すことになっても、必ずあなたを守ってみせる!

――――――私の戦場はここじゃない

――――――――同じ時間を何度も巡り、たった一つの出口を探る。あなたを、絶望の運命から救い出す道を

―――あなたの…あなたの為なら、私は永遠の迷路に閉じ込められても、構わない


そこにあったのは、ある存在への、私自身の戦いにかける想いだった。
多くの救えなかった彼女がいた。助けられなかった彼女がいた。
そして、そんな彼女を救うために、出口の無い迷路に足を踏み入れた私がいた。

一人ひとり、その全てがかけがえのない存在で。
なのに道を進めば進むほどその屍は増えていく荊棘の道。
それでも、引き返せる道など既になく。
彼女――――鹿目まどかの最期を見ていくだけ、自分の中にある想いは募っていき、それとは対照的にまどかとは離れていく。

それでも。


――――――鹿目まどかを救う。それだけが今の自分に残された希望。



「ほむらちゃん!」

突如流れ込んできた膨大な情報に思わず頭を抑える。
そんな私に駆け寄ってくるまどかは、こんなにも優しく、暖かく。

だけど、違う。

「……大丈夫よ、まどか」
「ほむらちゃん…?」

そう、違うのだ。
これは過去の幻影でしかない。
この温もりも、まどかの優しさも、全て打ち捨ててきたもの。
そんな微温湯に浸かり続けることは、これまで救えなかったまどかに対する冒涜でしかない。

「思い出したの、全部。
 私が何を願って魔法少女になったのか、誰を救うために戦ってきたのか。その全てを」

眼鏡を外す。
三つ編みの長髪を解く。

あの頃の暁美ほむらはもういない。

「私のいるべき場所は、ここじゃない。そしてあなたの隣にいるべきなのも、今の私なんかじゃない」

あの頃のまどかの隣にいるには、今の自分は屍を築きすぎた。


「そっか。気付いちゃったんだね、ほむらちゃん」
「まどか…?」

なのに、まどかは悲しそうな表情を浮かべてこちらを見ていた。
引き止めるでもなく、説得しようとするでもなく。
前に進もうとする私を、まるで見送るかのような表情で見ていた。

「当然だよね、私のことをお願いしたのは、他でもない”私”なんだから」

今ここにいるまどかは、魔法少女の真実も知らない、最も幸せだった頃のまどかのはず。
だというのに、その中にかつて自分が殺したはずのあの彼女の意識も混じっている。
どうやら全てを思い出したことで、まどか自身に何かしらの変化が起こっているのだろう。

「そうね、確かにあなたは私の記憶が生み出した虚像なのかもしれない」

心に最も焼き付いたまどかの記憶、それが集まり形作ったのがこの鹿目まどかなのだろう。

「もう行くわ。私にはやらなきゃいけないことがあるから」

だけどそれでも。

「でも、あなたが例え虚像だとしても、あの頃のあなたとこうしてまた話ができてよかった。
 それだけで、私は幸せだったわ」

その言葉だけは、嘘偽りのない私の本心だった。

「ほむらちゃん…、さようなら」

無理やりっぽく笑顔を作り、そう別れの言葉を告げてくる”まどか”。

「無理かもしれないけど、私のこと、少しでも覚えていてくれたら、嬉しいな」

「大丈夫よ。私は絶対忘れない。今まで救えなかったまどかのこと、その一人ひとりを、絶対に」

そう、約束のようにまどかに対して告げ。
そしてここで言うべき言葉、それは別れの挨拶ではない。

「それと、さようなら……では、ないわね」

そうして、まるでずっとそこにあったかのように手元に現れた拳銃を、手の甲に突きつける。
そこにあるのは、己の魂の宝石。

そのまま、引き金を構え、引く直前、振り返った私は。

「―――また、会いましょう。必ず」

そう、過去のまどかに再会を誓って、己のソウルジェムを撃ちぬいた。

595君の銀の庭 ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/02(金) 11:27:29 ID:hq1mAxHg0
―――――――――――――――――――

同化を解除されかけ、そのまま露出しようとしたネモを掴もうとしたマオの手。
しかしそれがネモに触れることはなかった。

一発の銃声が鳴ると同時。
強い衝撃を感じたマオの腕が大きく吹き飛ばされたのだから。

腕を大きく反らし体勢を崩しつつも、マオは何が起きたのかを確かめるために衝撃のあった場所、手の平に視線を移す。
掌の真ん中に、銃弾で撃ちぬかれたような穴が開いていた。

流れ出る血と、貫通した手の中の肉や骨を認識した瞬間、遅れてその手に激しい痛みを感じ。

「―――ッ!!!!」

手を抑えながらも、衝撃を感じた、おそらくは銃弾の飛んできた方であろう場所を見ようとした。
その瞬間だった。

目のすぐ上辺り、眉毛の辺りを銃弾が掠っていき。
肉の抉れた部位から流れ出た血が、マオの目を赤く染め上げた。

「ガ―――!だ、誰だ!」

動揺しながらも、残った右目で状況を把握しようとしたマオ。
そして一つの事実に気付く。

(―――――!さっきの黒髪の女は何処に行った!?)

リフレインを受けた、アリスの同行者、その姿がどこにも見えない。
村上でもあるまいしあれを受けた以上、動けるはずなどないというのに。

その事実を認識した瞬間、今度は頭部に衝撃が走った。
まるで何者かに蹴り飛ばされたかのような、その痛みと衝撃を受けてマオは地面に倒れ伏す。

振り返ろうとしたマオの体、その背に感じた何かを突きつけるような音と感覚。
それが何なのかを理解した頃には、一発の銃声と共に体を突き抜けるような感触がマオを襲っていた。



その背に一発の銃弾を撃ち込んだほむらは、咄嗟にアリスの傍に駆け寄る。

「…あんたがアリスに力を与えてる存在ね」
『………』

きのこのような物体は何も喋らなかったが肯定するかのように身動ぎする。
単体で力を発揮できる存在ではないようで、じわじわと力を弱らせているようだった。


「なら、早くアリスの中に戻りなさい。そのままだとその子出られなくなるわよ」
『…いや、ギアスの効果が予想外に強い。アリスに対してはかなり念入りにギアスを使用したようだ。
 アリスの思考がループに入っている。今戻ったところで再度同化することは難しい』

596君の銀の庭 ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/02(金) 11:27:51 ID:hq1mAxHg0

緊急事態だと判断したのか、まるで脳に直接語りかけるようにそう受け答える白い人形。

「対処法は?」
『アリス自身の脳に直接刺激を与えるしかない。それも物理的なものではない、脳の働きに刺激を与えるような何かが必要だ』
「なら私がどうにかするわ。あなたは自分の思うようにやってみなさい」

その言葉を受け、白い人形はゆっくりとアリスの中へと還っていく。

自分が見せられたあの光景から考えるに、アリスが何を見せられているのかはある程度は察することができる。

ただあの人形が言うように衝撃を与えることができれば、目覚めるかどうかは本人次第だろう。

「そっちの変な格好をした男!あんたもそっちの男をどうにかしてあげなさい。
 その男はこっちよりは起こすのは容易いはずよ!」

後ろでポッチャマを連れた男にもそう指示を出しておく。
すると、慌てるポッチャマの横で男を抱え上げているらしい音が後ろから聞こえてきた。

それでいい。この作業には若干の集中力を要する。
だから、今ここで気を散らされては成功率が下がる。何しろ初めてのことだから。
他者に対して魔法を使うことなど。

だが、あの人形がいうようにアリスの思考が本当にループを始めているのであれば。
あの記憶の迷路から抜けだした今の自分であれば、あるいは。

「―――――――――」

アリスの頭に手を翳し。
その先に意識を集中させる。
魔力が少しずつそこに集中していくのを感じる。

当てるのは頭ではない。その頭蓋の奥、骨の鎧に包まれた、人間の記憶、体の働き、全てを司る器官。
アリスの血管の一部に魔力を送り、詳細な場所を探り取り。



そして。

一気に手に集中させた魔力を流し込んだ―――――――



アッシュフォード学園の廊下をゆっくりと、ナナリーの車椅子を押しながら歩くアリス。
放課後、今日は特に予定もない。久々にナナリーと一緒の時間を過ごせるだろう。

そう思って歩いていた。

その時だった。
体がブレるような感覚が頭から全身に走って。

その瞬間、目の前が真っ暗になった。

597君の銀の庭 ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/02(金) 11:28:23 ID:hq1mAxHg0

そこに写っていたのは。
右側に車椅子に座りこちらへ微笑みを投げかけるナナリー。
そして左側に、黒い泥に包まれ動かないナナリー。

それを見て、アリスは全てを思い出した。
自分の手の中で死んでいった親友。
彼女のことを託して自分に力を与えた魔道器の存在。
そして、あの時彼女のために誓った想い。

きっと、右を選べばこの記憶のループの中で永遠に近い時を過ごすことになるのだろう。
そして左を選べばナナリーのいない現実を生きていくことになる。その先には、微かな希望に全てを託した戦いしかない。

だが、アリスには迷いはなかった。

「そうね、私の幸せはナナリーの幸せ。私だけが幸福の迷路に留まるなんて、何より私が許さないわ」

そう、ここにナナリーの笑顔は無い。あるのは自分の見た過去の幻影だけ。
私の望むのは、本当のナナリーの笑顔。

だから過去に振り向いている暇はない。

「助かったわ、ネモ」

答えなど期待していない、そんな言葉に。

――――礼などいらん。お前は責任を果たせ

そう答えられた気がした。

フ、と微笑を浮かべて。
アリスは、左のナナリーを抱き上げた。



(クソ…!もう少しだったというのに…、何故だ!)

手と背から感じる激しい痛みに耐えながら、地面を這うようにマオは逃げていた。
暁美ほむらは自分のことを死んだと思ったこと、そして彼女とスザクは共にリフレインにかかった者へと掛かりっきりになったおかげで逃げることができたのだ。

もう少しで、魔道器を奪い魔女へとなって生きることができたのに。
眼中になかったはずの、アリスの同行者にこのような辛酸を舐めさせられるとは思わなかった。

腕はC.C.細胞による侵食が進み、ほとんど使い物にならない状態だ。

「まだ、死ぬわけには…。ボクには幸福を受ける権利があるはずなんだ…!」

地面を這いながら、バッグから抑制剤を取り出そうとする。
これからどうするか、など今はそこまで考えが及ばない。
まずはC.C.細胞の侵食をどうにかしなければ。

598君の銀の庭 ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/02(金) 11:29:15 ID:hq1mAxHg0





「あら、どこへ行こうというのかしら?」

そんな声を聞き届けると同時に、這っていた手が何かに触れた。と、同時に手に持っていたはずのバッグが消失する。
顔を上げたマオの目に入ったのは、紫と黒を基調とした学生服のような衣装に身を包んだ、盾を構えた少女。
睨むような視線でこちらを見下ろす彼女は。

「――暁美、ほむら…!アリスを看ていたんじゃないのか…」
「あの子はもう大丈夫よ。そのギアスとやらを破るきっかけを得られるように刺激を与えれば、後は勝手に目覚めるでしょうね」

まるで、アリスが幸福を選ばないことが分かっているかのようなその発言。
だが、しかしマオには今の言葉でそれ以上に気になったことがあった。

「…アリスですら、魔女の力を持った彼女ですら、一人じゃ打ち破れなかったボクのギアスを…何故お前は破ることができた…?!何故ボクのギアスに、打ち勝った…!?」
「さぁ、どうしてかしらね」

真っ赤に染まりロクに開く事もできない左目を、激痛をこらえながら無理やりこじ開ける。
逸らすこともなく、その目を見返すほむらからは、その疑問の答えを読み取ることはできなかった。分からないというのは本当らしい。

「君は、その愛しい友との日々を求めているはずだ!なのに何故、その幸福を捨てることができる!?」

アリスにしろ、目の前の少女にしろ。
彼女達の求めたものはもう過去にしか無いはずだ。
未来に希望などないはずなのに。
何故、その幸福を迷わず捨てられるというのか。

「簡単な話よ。私の望むものは、かつて見た私の幸福なんかじゃない。今を、未来を生きる鹿目まどかの幸せよ。
 過去に善がって自分だけ幸せに生きるなんて、そんな幸福は求めていない」

銃口を向けるほむら。
そこには情けも容赦も、一辺たりと感じることはできない。

「だけど、そうね。一時の夢とするなら、悪くはなかったわ。おかげで私は、迷わず自分の道を歩んでいける。それだけはお礼を言わせてもらうわ」
「―――――!」

開いた目で、ほむらの思考を読み取ったマオ。
そこに映ったのは、彼女の願い、どこまでも傲慢で、果てしなく、そして限りなく純粋な想いだった。


「――――ハ」

もう自分は逃げられない、とマオは悟る。
ここで死ぬのだろう。
よりにもよってこんなとんでもない女に、とんでもないものを与えてしまった自分を恨むしかない。

だから、

「―――――――――ハハハハハハハハハハ!!」


「ならば予言してやる!お前の願いは、決してお前自身に幸せをもたらさない!
 その先にあるのは、お前の破滅しかないだろう!
 その屍の山の上で、自分のエゴに押しつぶされていけばいいさ!」

それは、予言というにはあまりにも粗末な雑言。
せめてこの女に対して、一矢でも報いて死んでやろうと思った、マオの精一杯の抵抗だった。

「せいぜいあがけばいいさ!ボクはその姿を笑ってみていてやるよ!
 ハハハハハハハハハハハハハハハハハハ―――――――――――――!」

パンッ


額に銃痕を作ったマオは、その笑った表情のままバタリと体を完全に落とし。
そのまま、二度と動かぬ骸となった。

発砲したことで熱を持った銃を下ろし。
死体を顧みることもなく、静かにアリス達の元へと歩き去った。

「そんなこと、とっくの昔に覚悟しているわ」

そう一言、誰に言うともなく呟いて。



【マオ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー 死亡確認】




599君の銀の庭 ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/02(金) 11:29:57 ID:hq1mAxHg0

「う、ん…。ナナリー…?」
「残念ね。私よ」

目を開いたアリスの目の前に入ったのは、特徴的なほどの黒い長髪をした少女。

「…手間をかけさせたわね」
「いいのよ、私だって同じことになったわけだし」
「貸一つ、ってところかしら」
「貸しなんていいわ。私達は友達なんでしょ?」

そう言ってほむらは手を差し出し。
立ち上がったアリスは、それと同時に目をパチクリさせ。
少し驚いたような表情を浮かべていた。

「…何よ?」
「いや、あんたからそんな言葉聞けるなんて思わなかったから」
「嫌なのかしら?言ったのはそっちからなのに」
「ううん」

「それじゃ改めて、ありがと。それとこれからもよろしく」
「こちらこそ」

出会って12時間ほど経ったが、こうして目の前の存在を友好的な者として見たのは今がようやくだったように思った。



「目は覚めたか?」
「……ああ」
「気分はどうだ?」
「不思議な気分だよ。すごくいい夢を見ていた気がするのに、だからこそ変な胸くその悪さを感じてる」
「そうか」

一方月のほうも、リフレインの効果は消え、その意識は元に戻っている。
精神的な疲労はあるのか、顔色はそうよくはなさそうではあったが。

「ポチャ!」
「大丈夫だったのねポッチャマ。よかった」
「さて、お互い落ち着いたようだし色々話したいことはあるけど、一つだけ質問するわ。
 その格好は何のつもりかしら?」

不審感と警戒心を表しながらゼロ―――スザクに銃を向けるほむら。
目の前にいる男がゼロではないということは、実物を見た二人が判断するには難くなかったものの、それでも不審者であることには変わりないだろう。
しかも、割れたマスクの下にひょっとこのお面をかぶるという、周囲の目を憚らない、しかし顔は見せないその謎の徹底ぶり。

「あら、そっちにいるのは夜神月…?」
「…数時間ぶり、と言ったところか」

その男はアリスとほむらは数時間前に出会った存在。
しかし、だからといって警戒を解く理由にはなっていないのだが。

(どうしたものか…)

スザクはこの状況をどう説明したものか、と思考を巡らせ。
ふと、ある事実に気付く。

「ん…?君のその服装は…、アッシュフォードの…?」

600君の銀の庭 ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/02(金) 11:30:22 ID:hq1mAxHg0

それは、アリスの服装。
アッシュフォード学園の中等部の女子の制服だ。
かつて親しかった者が身につけていた服装だからよく知っている。

「それがどうかしたの?」

アリスとしても、その発言だけで警戒を解く理由とするには弱い。
しかし、スザクにしてみればその服装は大きな意味を持っている。
つまり、目の前の少女はナナリーと何かしらの関わりがあるかもしれないのだから。

と、その時だった。


パチパチパチパチ

手を叩くような音が鳴り響く。
皆が一斉にそっちに目を向けると、そこにいたのはスーツを纏った、おそらくは30代くらいであろう男。
一見ただの人間にも見えるが、皆の直感が、彼の危険性に近いものを感じさせていた。

「素晴らしい。過去を振り返ることなく、そして幸福の檻に囚われることもなく、ただひたすらに未来を求めるその意志。
 そして、人間でありながら持っている動物的な勘と身体能力。
 人間としておくには惜しい逸材達ばかりです」
「誰?」
「申し遅れました。私は村上峡児と申します。
 スマートブレイン社社長にして、そうですね。言葉よりこちらの方が分かりやすいですか?」

と、村上はその顔に灰色の紋様を浮かび上がらせた。

「――――オルフェノク…?!」
「じゃあ、あんたは乾巧の言っていた…」
「ほう、彼と会っておいででしたか。まあ、何と言われたかは想像はつきますが。
 しかし安心してください。私は戦いにきたのではありません」
「どういうことだ?」
「あなた達とイザコザを起こそうという気はないのですよ。――――今のところは、ね。
 まあ私としても振りかかる火の粉くらいは払わなければなりませんが」

そう告げる村上。
それでも皆の警戒は容易く解けはしない。
むしろ、そのあり方になおのこと不気味さを引き立てられている。

そんな中、ほむらは一人前に出る。

「ほむら…?」
「つまり、私達と情報交換がしたい、と。そういうのね」
「ええ、今のところはそう受け取ってもらっても構いません。
 こちらとしても、たった今事故により同行者を失ったばかりですので」
「いいわ、付き合ってあげる。その代わり、そっちの持っている情報も可能な限り開示すること。
 情報は等価交換よ。いいわね?」
「ええ、いいでしょう。それでは、場所を移しましょうか」


そう言って先を歩く村上。

「ほむら、大丈夫なの?」
「いざとなったら逃げるわよ。それに、あんたも顔色少し悪いんじゃない?」
「む」

「そこのゼロもどきさんも。少なくとも敵意はないんでしょ?」
「ああ、顔と名前はわけあって明かせないが、敵対するつもりはない」
「なら構わないわ。行きましょう」

そう言って、ほむらは村上の後に続いて、サイドバッシャーを押して歩き始めた。

「…あそこまで積極的な子だったかな、ほむらって?」

ちょっとだけ疑問に思いつつ、その後ろにアリスとポッチャマが続き。
遅れてスザクと月も歩き始めた。


【C-4/森林/一日目 昼】

【アリス@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(小)、ネモと一体化
[服装]:アッシュフォード学園中等部の女子制服、銃は内ポケット
[装備]:グロック19(9+1発)@現実、ポッチャマ@ポケットモンスター
[道具]:共通支給品一式、 C.C.細胞抑制剤中和剤(2回分)@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー
[思考・状況]
基本:脱出手段と仲間を捜す。
1:ナナリーの騎士としてあり続ける
2:情報を集める(特にアカギに関する情報を優先)
3:脱出のための協力者が得られるなら一人でも多く得たい
4:ほむらが若干気になっている
5:村上やゼロ(仮)達と情報交換をする
最終目的:『儀式』からの脱出、その後可能であるならアカギから願いを叶えるという力を奪ってナナリーを生き返らせる
[備考]
※参戦時期はCODE14・スザクと知り合った後、ナリタ戦前
※アリスのギアスにかかった制限はネモと同化したことである程度緩和されています。
  魔導器『コードギアス』が呼び出せるかどうかは現状不明です。


【夜神月@DEATH NOTE(漫画)】
[状態]:疲労(大)、精神不安定
[装備]:スーツ、
[道具]:基本支給品一式、レッドカード@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:????
1:?????
情報:ゲーチスの世界情報、暁美ほむらの世界情報、暁美ほむらの考察、アリスの世界情報、乾巧の世界情報(暁美ほむら経由)
※死亡後からの参戦
※ジャイロアタッカーをどこに停めているかはお任せします

601君の銀の庭 ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/02(金) 11:31:25 ID:hq1mAxHg0

【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:細マッチョのゼロ、「生きろ」ギアス継続中、疲労(中)、両足に軽い凍傷
[装備]:バスタードソード、ゼロの仮面と衣装@コードギアス 反逆のルルーシュ(仮面は前面割れ中)、ひょっとこのお面@デスノート(映画)
[道具]:基本支給品一式(水はペットボトル3本)、ランダム支給品0〜1、エクスカリバー(黒)@Fate/stay night
[思考・状況]
基本:アカギを捜し出し、『儀式』を止めさせる
1:月を伴い移動する。ただし頭脳は買うが人格まで信用はしない
2:Lを探し、 政庁で纏めた情報を知らせる
3:「生きろ」ギアスのことがあるのでなるべく集団での行動は避けたい
4:許されるなら、ユフィの世界のスザクに彼女の最期を伝えたい
5:誤解を招きそうだから、とりあえず名前を聞かれた際はKと名乗っておく
6:まずは村上や少女達(ほむら、アリス)と情報交換をする
7:あの少女の制服は、アッシュフォードの……
[備考]
※TURN25『Re;』でルルーシュを殺害したよりも後からの参戦
※学園にいたメンバーの事は顔しかわかっていません。

【村上峡児@仮面ライダー555】
[状態]:疲労(小)、人間態
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×3、拡声器、不明ランダム支給品0〜2(確認済み)、不明ランダム支給品0〜3(オーキド)(確認済み)
[思考・状況]
基本:オルフェノクという種の繁栄。その為にオルフェノクにする人間を選別する
 1:目の前の彼らと情報を交換する
 2:ミュウツーに興味。
 3:選別を終えたら、使徒再生を行いオルフェノクになる機会を与える
 4:出来れば元の世界にポケモンをいくらか持ち込み、研究させたい
 5:魔王ゼロはいずれ殺す。
[備考]
※参戦時期は巧がラッキークローバーに入った直後
※マオのギアス、魔女因子、ポケモンに興味を持っています
※スザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまでマオ目線)

【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:ソウルジェムの濁り(少) 、疲労(小)
[服装]:見滝原中学の制服
[装備]:盾(砂時計の砂残量:中)、グロック19(15発)@現実、(盾内に収納)、ニューナンブM60@DEATH NOTE(盾内に収納)、サイドバッシャー(サイドカー半壊、魔力で補強)@仮面ライダー555
[道具]:共通支給品一式、双眼鏡、黒猫@???、あなぬけのヒモ×2@ポケットモンスター(ゲーム)、ドライアイス(残り50%)
[思考・状況]
基本:アカギに関する情報収集とその力を奪う手段の模索、見つからなければ優勝狙いに。
1:■■■■■■■■■■■■■■■
2:■■■■■■■■■■■■■■■
3:■■■■■■■■■■■■■■■
4:■■■■■■■■■■■■■■■
5:■■■■■■■■■■■■■■■
6:■■■■■■■■■■■■■■■
最終目的:“■■■■■■■■■■■■■■■。
[備考]
※参戦時期は第9話・杏子死亡■■■■■■■■■■■■■■■と会話する前
※『時■■■■■■■■■■■■■■■度までに制限されています
※ソウルジェ■■■■■■■■■■■■■■■アスにも反応します
※サイドバッシ■■■■■■■■■■■■■■■強されましたが、物理的には壊れています

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

602君の銀の庭 ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/02(金) 11:32:18 ID:hq1mAxHg0



それは、ほむらがマオに止めを刺し、アリスと合流するまでのほんの十数分の間の話。

マオの支給品を回収したほむらは、その中身をチェックしていた。
中に入っていたのは、赤と白のボール。そして何の変哲もないリボン、そしてよく分からない球だった。

『その赤と白のボールはモンスターボールだね。さっき君たちに襲いかかったポケモンがいただろう?彼らを持ち運び制御するための道具なのさ』
『じゃあ、これがあればさっきの怪獣も言うことを聞かせられるということなのかしら』

少し歩くと、そこにはあの時ポッチャマが請け負ったあの怪獣、サイドンが目を回していた。
首の辺りに土がついているのを見るに、ポッチャマを連れてきたあの男に蹴り飛ばされ意識を失ったのだろうと判断する。

ともあれ、現状ではどうすることもできないだろうが仕舞っておけるなら連れて行っておいても損はないだろう。
ボールへとサイドンを戻す。

『それにしても、お手柄だよ。ちょうどこのポケモンは君に回収してもらおうと思ってたからね』
『この子、そんなに大事なのかしら?』
『そうだね、まあこちらとしては下手に失うことは避けたい戦力ではあったからね』

元々ほむらがこの方向へ来たのはこいつのそういう指示があったからだった。
無論強制力こそなかったものの、何かしら重要なものがあるというならほむらとしてもぜひとも拝んでみたい、とそう思っていたのだ。

まあ、来てみればそう重要そうなものでもなかったが。

『しかしすまないね。とりあえずのお礼として彼の持っていた支給品、全部君にあげようって思ったんだけど、ロクなものが入ってなかったみたいだ。
 荷物になるなら捨てていくかい?』
『別に構わないわ』

この程度、別に荷物になる、というほどでもない。
特に、このリボン。これは捨てていいものではない。

まあともあれ、武器が若干心もとない現状、何が役に立つかは分からない。


『うーん、でもそれだけじゃあまりにも悪いし。そうだ、何か今聞きたいことはないかい?
 答えられる範囲だったら、何でも教えてあげるよ』
『随分と熱心ね、ただ一匹のポケモンとやらを回収しただけだっていうのに』
『僕達にとってそれだけの価値があるものだっていうことさ』
『何でも、と言ったわね?』
『当然、答えられないことはあるよ。そしてその答えは、教えられない、で終わりだ。
 それも踏まえた上で、一つだけ何か質問するといい』
『そう、それじゃあ……』

10秒ほど考えるように黙りこんで、決意を決めたように、暁美ほむらはインキュベーターに問いかけた。

『美国織莉子。やつの居場所を教えなさい』

603君の銀の庭 ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/02(金) 11:32:41 ID:hq1mAxHg0

【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:ソウルジェムの濁り(25%) 、疲労(中)
[服装]:見滝原中学の制服
[装備]:盾(砂時計の砂残量:中)、グロック19(14発)@現実、(盾内に収納)、ニューナンブM60@DEATH NOTE(盾内に収納)、サイドバッシャー(サイドカー半壊、魔力で補強)@仮面ライダー555
[道具]:共通支給品一式、双眼鏡、黒猫@???、あなぬけのヒモ×2@ポケットモンスター(ゲーム)、ドライアイス(残り50%)、
     モンスターボール(サカキのサイドンwith進化の輝石・戦闘不能)、まどかのリボン@魔法少女まどか☆マギカ、はっきんだま@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:アカギに関する情報収集とその力を奪う手段の模索、見つからなければ優勝狙いに。
1:全てを欺き、情報を集める(特にアカギに関する情報を優先)
2:協力者が得られるなら一人でも多く得たい。ただし、自身が「信用できない」と判断した者は除く
3:ポッチャマを警戒(?)。ミュウツーは保留。ただし利用できるなら利用する
4:サカキ、バーサーカー(仮)は警戒。
5:あるならグリーフシードを探しておきたい
6:放送後インキュベーターの接触を待つ。
7:村上、ゼロ(仮)と情報交換をする。しかしいつでも逃げられるようにしておく
8:美国織莉子を―――――――――
最終目的:“奇跡”を手に入れた上で『自身の世界(これまで辿った全ての時間軸)』に帰還(手段は問わない)し、まどかを救う。
[備考]
※参戦時期は第9話・杏子死亡後、ラストに自宅でキュゥべえと会話する前
※『時間停止』で止められる時間は最長でも5秒程度までに制限されています
※ソウルジェムはギアスユーザーのギアスにも反応します
※サイドバッシャーの破損部は魔力によって補強されましたが、物理的には壊れています
※アリスは”友達”として信用できる存在と認識しました



(やれやれ、助かったよ)

キュウべえとしては思い通りに動いてくれるなら、例えある程度何かしらの思惑があっても構わないと思っていた。

もしほむらがNの城方向に向かってくれなかったどうしようと考えていたのは割と本気だった。

まあ、アリスとほむらの二人がかりでまさかマオのギアスに取り込まれてしまうというのは少し想定していなかった事態だったが。

(嘘は言っていないよ、ほむら。あのポケモンが戦力として重要な存在であることは確かだからね)

ポケモン城にいるクローンのサイドンの話だが、と思考の中で続けて。

あとは、ほむらのソウルジェムも気になっていた。
マオのギアスに取り込まれた際、若干濁ってしまうのではないか、と危惧したが、一度濃厚な濁りがドクリとソウルジェムに表出したように見えたもののそう大きな消耗にはなっていなかったようだ。
その一度表出したという濁りも、それっきり影も形もなく消滅した。特に気にする問題でもないだろう。


(さて、まず一つの仕事をほむらには終えてもらったわけだけど、次は何処へ向かってもらうかも調べておかないとね)

質問したということは、おそらく美国織莉子の元へ向かう可能性もあるわけだから頼むとすればその後だろうか、と。
静かに思いつつ、キュウべえ―――黒猫はほむらの後ろに続いていった。








インキュベーターは気づかなかった。
ほむらのソウルジェム。その、一度表出した濃厚な濁り。
もしそれをよく見ていれば、何かしら気付くことがあったかもしれない。
だが、そのまま特に気にすることもなくやり過ごしてしまったから。


もしもほむらが見ていれば、ある事実に気付いただろう。
その色が、リフレインの中で見たあの黒い影のような色をしていたことに。
しかし、ほむらは見ていなかったし、インキュベーターは見過ごしてしまった。

だから、誰も気づいていない。
ほむらのソウルジェムで胎動したその濁りが。
絶望とはまた違う、いや、もっとおぞましい色をしていたということに。

604 ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/02(金) 11:35:34 ID:hq1mAxHg0
投下終了です。それと時間帯を直し忘れました。
昼→日中でお願いします

605名無しさん:2014/05/02(金) 13:57:55 ID:0qz1ZFpw0
投下乙です
マオたんはここで落ちたか。まぁ相手が悪かったな
というかサイドンを蹴り飛ばすとか何気にスザクがすげぇw

606名無しさん:2014/05/02(金) 19:15:31 ID:/1afNW.o0
投下乙です

決着ううううっ
もしかしてマオが…と思ったが上で言われてる様に相手がなあ…
マオは相手を舐めすぎw
さて、このコンビは自分の原点を見つめ直したというか演出がいいわあ
ここからどうなるか凄く気になる

607名無しさん:2014/05/02(金) 20:56:48 ID:g6o21mYA0
投下乙…って、あれ、ちょ、まさかの悪魔化フラグ?

608名無しさん:2014/05/02(金) 20:59:55 ID:ls/t6E9wO
投下乙です。

幸せな夢のおかげか、積極的になったほむら。
でも、織莉子の居場所が判ったなら急がないと手遅れだぞ?

609名無しさん:2014/05/03(土) 01:01:59 ID:nuP9VUJA0
投下乙です。

希望よりも熱く、絶望よりも深いもの…

610名無しさん:2014/05/03(土) 08:06:49 ID:g8sjxgCA0
何故そこで(ry

611名無しさん:2014/05/03(土) 20:35:35 ID:vCFMg7iUO
だが愛を超越すれば、それは(ry

612名無しさん:2014/05/04(日) 02:58:33 ID:IOiBQVQg0
愛などいら(ry

613名無しさん:2014/05/08(木) 00:15:44 ID:DSot8ptw0
予約きたぞ
マミさん逃げてー!

614 ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/14(水) 22:03:24 ID:.xmhWRyE0
投下します

615ConneCt ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/14(水) 22:05:45 ID:.xmhWRyE0
「………う、ん」

瓦礫の山が周囲に散らばる、かつて市街地であった廃墟。
巴マミは身動ぎしながら目を覚ました。

「起きたか、かれこれ一時間半だな。
 まあここに来る前も寝ていたようだし、睡眠時間は足りているだろうな」
「C.C.…さん?
 ハッ―――――、あの人は――――!?」
「落ち着け、もう終わっている。
 というかアイツが生きていたら一時間以上も眠っていられるわけがないだろう」
「そう…なの……」

ホッと胸をなでおろすマミ。
それは戦いが終わった事による安心感なのか、それとも守るべきものを守り切れたことに対する安堵なのか。

「…あの時政庁にいた皆は……?」
「ス……ゼロなら去っていった。ユーフェミアは……お前のせいじゃない。気を強く持て。
 夜神総一郎は分からんが、まあおそらくは無事だろう。ニャースはこの通りだ」

ユーフェミアのことは本人も薄々感じていたのだろう。ショックは少なからずあるようだったが、それでもマミはそれをまだ受け止めきれたようであったことにC.C.は一安心する。
そしてニャース。彼は凍りついた状態を少しずつ直しつつあり、目を覚ますまではもう少しといったところかもしれない。
暖があれば回復も頗るとは思うのだが。

「まあ、とりあえず差し当たっての問題だが―――――」

と、ニャースを膝に乗せたC.C.は、起き上がったマミを見ながら。

「―――…少し手を貸してくれないか?」

未だ動かすには支障の残った脚に視線を移しつつそう懇願した。

616ConneCt ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/14(水) 22:07:18 ID:.xmhWRyE0


「南へはあまり向かいすぎるなよ。あそこはもう禁止エリアだ」
「分かってますよ」

そんなやり取りを繰り広げながらとりあえずまだ形を残した民家の中へと入った一同。

暖房器具は心もとなかったものの、湯沸かし器や暖を取る機材は動くことを確認できた。
ニャースは暖の近くで休息を取らせながら体温が元に戻るようにほどほどの温度の湯を取り込ませる。
ほどほどの温度の湯を飲ませたのは、まあ猫だから猫舌じゃないのかという配慮だ。
ちなみに逆にそれをすれば起きるのではないかともC.C.は思ったがマミに止められた。

「C.C.さん、それで…、お体の方は?」
「まあ、ぼちぼちだな。少しは動けるようになってきたが激しい動きは無理そうだ。よっこいしょ、っと」

よろめきながら体を起こすC.C.。
ニャースは体温が戻ってきたこともあり今はソファーで寝かせている。

「それにしても、腹が減ったな…」
「あ、そういえばバッグの中に………」

と、ふと思わず呟いた言葉に反応するように、マミはバッグに手を突っ込む。
そういえば政庁に来た時彼女はバッグを複数持っていた。
確かめていなかったが、一つは美樹さやかのものだったのだろうと思う。
一応何が入っていたのかもこの機会に聞いておいたほうがいいかもしれない。

「う…、と。これです。時間もお昼みたいだし食べませんか?激しく動いちゃってますから中は大丈夫か不安ですけど」

そう言って取り出されたのは、面積は広いが高さはない四角い箱。
見覚えがある。というかそれはいつも見てきたものだ。
ちょうどバイクの後ろの宅配ボックスに幾つか積み重ねて並べられそうな感じの、その箱の中身は。

「――――ピザか」
「お嫌いでした?」
「今すぐ温めて持ってこい」

まあ、話は後でもいいか。

空腹を訴える腹にそんなことを考えながら、C.C.はレンジの前に立つマミを急かした。



チーン

「ニャ……いい匂いニャ…」

数分後、室内に立ち上ったチーズとケチャップの匂いに釣られるかのようにニャースが目を覚ます。

「体も栄養を欲している、か。ならその体も大丈夫のようだな」

ピザを前にして、寄ってくるニャースにそう声をかけるC.C.。
机についた一人と一匹の前に、マミは皿を並べている。

が、C.C.はそんなものにお構いなしとでも言わんばかりにピザを手に取っていた。

「あっ、ちょっと!まだこちらは準備中なのに!」
「細かいことを気にするな。というかこっちは腹が減って死にそうなんだ。待たせてるのはお前の方だろう」

マミの言葉より早くピザに貪りついていたC.C.に、怒っても無駄だと感じ取ったのかマミも席につく。

617ConneCt ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/14(水) 22:08:09 ID:.xmhWRyE0

「ふむ、なかなかのものだこれは。どうやら手作りのようだな。冷凍ピザを焼いてるだけのチェーン店のものとはまた異なる味わいだ。
 しかも丹精に作られている。一枚一枚にピザに対する深い愛情を感じられるな。
 もし機会があるならぜひともまた食べてみたくなる、そんな味だ」
「すごい…、そこまで分かるんですか?」
「伊達にピザで生活などしていないのでな。ちなみにこれを作っているのはどこのピザ屋だ?箱を見せろ。
 ふむふむ、ピザハウスか。覚えておこう」
「フーフー」

支給されていたピザはサイズにしてLほどのものが2箱あったが、3名(主にC.C.)の手にかかれば無くなるのにそう時間はかからなかった。

「でも、いつもピザで生活って…、それって体に悪くないですか?」
「何、こんな体なのでな。悪くしようもないのだよ。むしろ悪くなるというならそれはそれで面白い」
「そうなんですか…。私も一人暮らしをしてますけど、そんなにピザばかり食べるとお金もかかるし体にも悪いじゃないですか。だからあまり食べる機会もなくて」
「ニャーも金はないのニャー。食事がビスケット一枚だった、なんてことも珍しくないニャー」
「それは……さすがにすさまじいな…」

C.C.が言うにはまだこれだけの量を食べても物足りなかったらしいが、こんな状況でピザを食べられたことの方がありがたいのだから口にはしない、とはっきり口にしていた。
そしてマミが食後にと、どこから出したのかティーカップに注がれた紅茶を啜って一息ついていた。
ちなみにニャースは本当に猫舌だったようで、一旦入れた紅茶をしばらく冷ましてから口をつけていた。

「ニャー…、まだ熱いニャ…」
「氷入れればアイスティーにできるけど…どうしましょう?」
「ニャー、でもまだ体が寒いからニャー。少しは体温めにゃ」

紅茶に口をつけるC.C.。
同時に口の中に紅茶の香りが広がり、砂糖を入れていないにも関わらずその味が体に染みこむようにも感じられた。

「お前、なかなか紅茶を入れ慣れているようだな」
「そうですかね…?まあ、確かに趣味って言えそうなものっていうとこれぐらいしかなかったですし、一緒にお茶できるような人も、私にはいませんでしたから…」
「…そうか」

さすがにからかうにはデリケートな話だと考え、C.C.は話を止める。

そうこうしているうちに、お茶もなくなり。
ふう、と一息ついたところで本題に入る。

「さて、気付いているか、お前たち」
「え、気付いてるって…」
「何の話ニャ?」
「そりゃ、お前達、今何時だと思ってる?」

時間を忘れていたようであった一人と一匹に、時計を差し出す。
刻一刻と秒針を刻む時計は、あと数秒で12時を指し示そうという辺りまで迫っていた。

「放送の時間だ」

そして時計が12:00を指し示すと同時に、周囲にアカギの声が響き渡った。



618ConneCt ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/14(水) 22:09:59 ID:.xmhWRyE0

最初、放送で最もショックを受けるのは巴マミではないかと危惧していた部分もあった。
少なくとも佐倉杏子なる魔法少女の名が呼ばれることは確実であり。
状況は不明ながら美樹さやかの名が呼ばれるなら、彼女はその罪に押しつぶされるのではないか、と。

しかし、放送を聞いた彼女はC.C.にとって予想外に―――とまではいかないがいい方向に予想内なほどには、冷静に放送結果を受け止めていた。

むしろ、放送で若干とはいえ心を揺さぶられたのは自分だったようにも思える。

「バカが…」

ナナリー・ランペルージ。
クロエ・フォン・アインツベルン。


片やこの場では結局会うことはなかったがそれなりの縁があった少女。
ユーフェミアの言っていたナナリーだったのか、それとも自分達の側のナナリーだったのか。
それがついぞ分かることはなかったが、しかしその死に何も感じないほど、今のC.C.は心を捨てることができてはいなかった。

そして片や、短時間とはいえ共に行動したこともあった少女。
つまりアイツはあの後出て行った先で死んだということになる。
あの時斬られた首の皮の感覚を思い出す。あれだけのことを言っておきながら、あれから数時間も生き残れなかったのか。

いや、むしろだからこそ死んでしまったのだろうか。とも思った。

「…ニャア」

ニャースもまたその放送に呻いている。
確かオーキド博士、と言ったか。あの時アッシュフォード学園にいた白衣の老人。
しかし前の放送では呼ばれなかったところから考えるに、放送後に何者かに襲われたのか、あるいはあの後何かしらの事故があったのか。
まあ、今となっては確かめようとも思わない。ただ、ポケモンについての情報においてその男の右に出るものはいない、と言われるほどの男が死んだというのは損失だろう。


(………何を考えてるんだろうな、私は)

そう考えてふと、自分の考えのおかしさに気付いて自嘲する。
まるでこれではここからの脱出を前提に動いているようではないか。
別に今の自分に、そんな情報があったとしてもどうしようもないはずなのに。

「…ふぅ、ともあれ、マミよ。放送で呼ばれた名前だが、どうやらお前が撃ったという魔法少女はまだ生きているようだぞ?」

とりあえず、それらの思考を全て隅に追いやった後、気になったのはそこだった。
頭を撃ち抜かれて生きている、と思わないのはまあ普通だろう、とその普通じゃない魔女は思いながら。

「そう…だったんですか。………よかった…」

その言葉に安堵するように胸をなで下ろしていたマミ。

「それで、そいつが生きていたとしてお前はどうするんだ?その杏子とかいうやつの仇を取りに行くのか?」
「それは、いいえ、そんなことはしません。でも…、どうして佐倉さんを殺したのか、それだけは彼女から聞きたいです」
「もしその答えがロクでもないものだったら?本当にお前が許せないって思うような理由で殺したのだとしたら、どうするんだ?」
「その時は、――――私がその子を更生させます。絶対に。それが、佐倉さんに対する私なりの罪滅ぼしだから…」
「そうか」

その答えを聞いたC.C.は静かに席を立ち上がり歩き出す。
向かっている先は部屋の外、それも玄関に通じる扉だ。

「C.C.さん?」
「ちょっと風に当たってくるだけだ。すぐ戻ってくる」

ガチャリ、と玄関の扉を開く音を聞きながら、嫌な予感を感じつつもC.C.を信じて待ってみることにしたマミ。

「…そういえば、あなたは何なの?」
「ニャ?」

ずっと先延ばしにしていた疑問を、この機会に解消しておこう、と。
そう思い、ニャースに話しかけていた。

619ConneCt ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/14(水) 22:11:29 ID:.xmhWRyE0







「出会った時は泣いていたあの小娘が、言うようになったものだな。
 いや、むしろ強くあるべきと自分を律しているのか。案外さやかが本質に気付かないのも道理かもしれんな」

それに比べて、私はどうだろうか。
ルルーシュの死を聞いて以降、依然としてどうするべきなのか定まっていない。

例えばスザクのように時間軸の違うルルーシュであったとか、あるいは自分の世界のルルーシュ自体でもなかったか。
なんていうそんな僅かな望みにかけるにも不確定要素があまりにも多すぎる。

死ぬ理由もないが、生きる理由も見出だせない。
ルルーシュと同じ顔をしたあのような男に殺されることはゴメンだが、かといって積極的に生きようとは思えない。

今の自分はそんな不安定な状態だった。


「…………」

ふと一陣の風が舞ったような気がした。
長い緑髪をたなびかせながらも、誰もいないはずの市街地を静かに見つめるC.C.。

「………いつまで見ているつもりなのか?」

そのまま、振り向くことなく後ろの建物、巴マミとニャースがまだ中に残っている民家の屋根の上にいる何者かに声をかけていた。


「いつから気付いていた?」
「さあな。まあ気付いていたと確信できるのはたった今だが、それ以前はそもそもどこにいたのか、何がいたのかも把握できていたわけではないさ」
「そうだろうな。一応言っておくと、ここに私がいるのはほんの1分前からだ。お前とて気付かなくても無理はない」
「随分と私のことを知っているような口を効くのだな」
「ああ、私は何でも知っているからな。お前のことも、ルルーシュのことも」
「なるほど、お前はそういう存在なのか」

その強大な気配に臆しもせず、振り返ったC.C.の視界に入ってきたのは。
鋭い切れ目に黒髪の少年。あまりに彼女にとって馴染みのあるその顔の存在は、スーツのような服を纏ってそこに佇んでいた。

「初めまして、かな?C.C.」
「そうだな、初めまして。ゼロ」

C.C.とゼロ。
限りなく同一の存在でありながら果てしなく異なる2つの力。
決して出会うことのなかった者は、ここに邂逅した。





「それで、何故その格好で私の前に現れた?情けでもかけたつもりか?」
「下には魔法少女とやらがいるのだろう?ゼロの姿でここにいれば、この距離なら存在を感知されないはずがないからな。
 お前の存在を確認して、少し話をしてみようと思っただけだよ。それなのに今ここに来られるのも邪魔だ」

C.C.の前に静かに歩み寄るゼロ。
その顔はどう見てもルルーシュのものだった。
それも、ロロ・ヴィ・ブリタニアのような顔を模しただけのものではない。
C.C.自身の知る男と、限りなく近く、だからこそ決定的に異なる表情。

620ConneCt ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/14(水) 22:13:06 ID:.xmhWRyE0

と、その顔を見ていたC.C.はふとそのこめかみの辺りに付着した僅かな赤い色に気付く。

「戦いの傷か?」
「ああ」

疑問から出た問いかけに、ゼロは静かに答える。

「巴マミの言っていたように、やはりお前も乗っているのだな」
「ああ、殺し合いがどうなどという理由ではない。それが私の役割だからな」
「役割、か。やつと同じことを言うのだな……、いや、お前もルルーシュだったか」
「フン、奴もまた私のように、自分の役割に殉じようとしていたな」

まるで見てきたようなことを口にするゼロ。
そういえば、と思い出せば巴マミはここに来て当初、ルルーシュとゼロの争う中に乱入していったという話だったことを思い出す。

「何をしようとしていたんだ、ルルーシュは?」
「己の過去の幻影を殺す、と。そう言っていた。未来を生きるために、ナナリーを、ユフィを、ロロを、全ての過去を切り捨てて現在に死んでいく、とな」
「なるほどな」

予想外というほどでもない。
それが、過去を望んだシャルルを否定した自分の責任だとでも思ったのだろう。
もしユーフェミアと会っていたら、スザクとはどうなっただろうな、などと意味のない仮定を考えてみる。

「だが、それでも6時間という時を生き残ることすらできなかったというのもまた、同じ俺としては笑える話でもあるが」
「その下手人が下にいると言ったら、どうする?」
「何?」

さすがにそれは想定していなかったようで、さしもの彼も驚きを混じえたような表情を浮かべている。
あの少女がまさか、とでも言いたげな顔をして、しかし次の瞬間には何か納得したようだった。

「なるほど、あいつ自身のかけたギアスに飲まれたか」
「まあ、概ねそんなところだろうな。それでどうする?もう一人のお前を殺したというあいつを」
「別にどうもしないさ。別にルルーシュを殺したという少女がいたとしても、ゼロとしての俺には関わりはない。
 あの魔法少女も殺すが、そこにルルーシュを殺したという事実が関与することはない」
「そうか、では私も殺すのか?」
「そうだな」

そう言ってゼロはその手を掲げる。
かつてルルーシュが、絶対遵守のギアスをかける時の動きにかなり近い仕草をし。
直後にその身を黒いスーツが、マントが、仮面が全身を覆っていく。
同時に細身だった体には筋肉が隆起していき、威圧感をも携えた魔人へとその身を変化させた。

「それがお前の姿か」

そして、そんな存在を目の前にしてなお、C.C.は驚くこともなくゼロを真っ直ぐ、表情一つ変えることなく見据えていた。

「私も殺すのか?」
「ああ。言っただろう、元よりそれが役割だ、と。
 私のザ・ゼロならば君のコードを無効化することができるだろう。最もこの場ではその不死性も制限されているようだが」
「そうか。なら殺すといい」
「抗わないのだな」

その変化しない表情は、ゼロがC.C.に対して殺意を向けても全く変わることなく。
むしろそれは、目の前にある死を覚悟した者の表情。
ここへ連れてこられる前のC.C.のことは知っているだけに、ゼロは少し意外にも思った。

「ルルーシュが死んだと知って以降、死ぬ理由は見つけられなかったが、生きる理由もまた見つけることができなかった。
 それに―――」

そして一息、C.C.は間を空けてこう言った。

「――――”ルルーシュ”に殺すと言われて、私が抗えるわけがないだろう」

621ConneCt ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/14(水) 22:14:29 ID:.xmhWRyE0


巴マミがその存在を感じ取ったのは今しがただった。
ニャースと、ポケモンなる存在について色々と聞いていた最中。
その姿に、かつての自身の唯一とも言える友だった生物を連想していたその時。

ソウルジェムがとてつもなく強力な魔力反応を示したのだ。
この反応をマミは知っている。
第1回放送より前、あの崩壊現場で戦った魔王。
しかも、その存在はかなり近くに感じる。

(――どうして気付かなかったの!)

言うなれば、目の前に魔女結界があったのにそれを見逃してしまったようなもの。
元々、存在をマミに気取られないようにゼロなりの工夫があったのだが、マミにそれを知る由はない。

外にはC.C.がいたはずだ。もしものことがあったら。

「ニャ?!どうしたニャ!」

驚くニャースが追ってくるのに気を止めることもできないまま、マミは玄関を開け外へ飛び出し。
その身を魔法少女の衣装へと変化させマスケット銃を構えながら出て行くと。


そこには。

「C.C.さん!」

ゼロがC.C.の前に立ちはだかっていた。
その威圧感、存在感は数時間前と変わらず。

恐怖で身がすくんでいるのか、C.C.は全く動いていない。

「お前達か」

そんな自分達に、C.C.は静かに一瞬視線を寄越し、すぐにゼロを見据える。

「ゼロ!C.C.さんから離れなさい!じゃないと私が――――」
「ゼロ、一つだけ頼みを聞いてくれないか?」

マスケット銃で狙いを定めながら警告を発するマミの言葉を遮り。
C.C.は淡々と、ゼロへと話しかけていた。

「ほう?それを叶えるかどうかはともかく、聞いてやろうか」
「私を殺すというのなら好きにしろ。その代わり――――こいつらは見逃してやってくれないか?」
「えっ…」

何を言っているのだろう、とマミは一瞬ゼロへ向けていた敵意が薄れる。
それほどに、彼女の言葉は予想外だった。

「自分の命を望まず、しかし出会って数時間ほどの者の命を案ずるか」
「…………」

「や、やめるニャー!」

呆気に取られていたマミの背後から、ニャースが叫び声を上げながらゼロに飛びかかる。
その手の爪は鋭く伸び、切り裂かれればかなりの痛みを伴うことになることは想像に難いものではない。

622ConneCt ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/14(水) 22:15:26 ID:.xmhWRyE0

だが。

「待って、ダメ――――」

それは目の前の魔王に通用するものではない。

ガシッ、と。
飛びかかったニャースが爪の攻撃範囲に届く前に、ゼロはニャースの首を捕える。

「グ…ニャ…!」

息を漏らしながらもニャースはその爪を振り回す。
しかしゼロの体には届かず、腕を切り裂こうと爪を立てても軽い痕が残るだけ。
その間にもゼロはニャースの首を掴んだ手に力を込め、締め続ける。

「――ッ、止めろ!!」

苦しむニャースの姿に、思わず声を荒げたC.C.。
それまでの淡々とした口調ではなく、悲痛を感じさせるほどの声色だった。

その声にゼロはC.C.へと振り向いて、同時にその手の力を緩める。

「―――そんなにこいつらのことが大事か?」
「……大事、というものではない。だが、少なくとも私などよりは遥かに生きる意味を持っている」
「そうか。――――――1つだけ条件がある」

ニャースを握った手を離さず、しかし力を抜きながらそう話しかける。

そんな光景を前にしても、マミには何もできなかった。
何かをするにも、ニャースが、C.C.があまりにも近すぎる。銃弾は当たりかねないし、リボンでは間に合わない。

着々と進んでいく会話を前に、じっと構えていることしかできなかった。

「お前の持っているコード、それを俺に譲渡しろ。そうすればこいつらは見逃してやろう」
「コードを…だと?」
「私のギアスとお前達のギアス、それは同じ神より生まれながら異なる力へと移り変わっていったもの。できなくはないだろう」
「それで、本当に見逃してくれるのだな?」
「ああ、この場で、だけだが。もし次に会うことがあれば容赦はしない」
「…ああ、それでいいさ」

嫌な予感を感じ、思わず飛び出そうとしたマミ。
しかしゼロは、大きく腕を振りかぶりこちらへと向けてニャースの体を思い切り投げつけてきた。

「――――!?」

受け止めなければニャースは大怪我をすることになる。
リボンの網を壁と壁の間に張り、受け止めようと構えたマミ。
しかし想像以上に力いっぱい投げられたようで、張ったリボンをぶち破ってニャースはこちらへと衝突。
どうにか受け止めることはできたもののあまりの衝撃に、踏ん張りきれず後ろに数メートル吹き飛ばされる。

「…っ!だ、大丈夫?!」
「ニャー…」

問いかけると、投げられた時の衝撃で頭を揺らされたのか、かなりクラクラしていたものの命に別状はなさそうだった。
そのままふらつきながらも起き上がるニャースを前に、ゼロとC.C.のいた場所へと目を移す。

623ConneCt ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/14(水) 22:16:39 ID:.xmhWRyE0

「…いない?!C.C.さん!?」

そこには何者もいない。まるで最初から誰もいなかったかのように、二人は姿を消していた。
周囲を見回しながらもマミは魔力を、ニャースは音と気配を読みながら消えた二人を探して走り始めた。





正直、我儘を言ったような気はした。
マミにはあんなことを言っておいた手前、こんなところでまた消えるというのも。

この男が何故コードを欲したのかは分からない。
しかし、この魔王はおそらくこれからも他の者達を殺していくだろう。

ふとあの放送を思い出して、一つだけ問いかけてみた。

「なあ、ゼロ。お前がそんな力を手にし魔王となろうとするのは……ナナリーのためか?」
「ああ」
「ナナリーが死んだらしい今でも、それは変わらないか?」
「元よりナナリーのために、ナナリーの生きる道とは反対を進んだ身だ。今更止まることも迷うこともない」
「そうか。どこの世界でも変わらんな、ルルーシュは」

全く、こいつらは変わらんな、と。
そう思いながら、光を放つ体から何かが奪われていくのを感じた。

あの時のシスターも、こんな感覚を味わったのだろうか。


光が収まった時には、何かを奪われたような感覚は消え何の変化もない、元通りの体になっている。そんな風に感じた。

「コードは頂いた」
「移せたんだな」
「何か言い残すことはあるか?」
「………」

その言葉で数秒だけ思考する。
まず思い立ったのは、巴マミとニャース。
今頃きっと探しているであろう一人と一匹の姿。

だが、あいつらへの言葉を下手人であるこいつを介して伝える、それほど残酷なこともないだろう。

次に思い付いたのは、ルルーシュの友であり目の前の男に近い運命を背負った男。
しかしこちらにも言い残すことはない。
あいつが生き続けるなら、いつかこの魔王と衝突する時は必ず来るはず。
それでもあいつは、ゼロの強大な力に屈することなく立ち向かっていくだろう。
なら、今更あいつに伝えることなどない。


「……そうだな、それじゃあ―――いや、やっぱり止めておこう」

最期ということで頼もうかと思ったことがあったが、思い止めた。
目の前にいるのはルルーシュではあるが、あのルルーシュではない。
おそらくは目の前のルルーシュも知っているだろうが、それはこの存在に頼むころではない。

結論として、言い残すことは思いつかなかった。

「今更、言い残さなければならないこともない。立つ鳥跡を濁さずだ」
「そうか。では、さようならだな。魔女よ」
「ああ、さようならだ。ル…、いや、ゼロ」



624ConneCt ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/14(水) 22:18:16 ID:.xmhWRyE0
「見つけた…!C.C.さ――――――」

魔力反応を追って走ること数分。
視線の先にC.C.とゼロの姿を捉え。

ゼロを引き離すために警告を発しようとしたその時だった。

目の前で、その黒い手がC.C.の体へと突出され。
ズブリ、と嫌な音を鳴らしながらC.C.の体を貫き、大量の鮮血と共に引きぬかれたのは。

「ニャッ!?」

驚きの叫び声を上げるニャースの前。
真っ白になる思考。何が起きたのかの把握に数秒の時間を要し。

引きぬかれた手に、何かが握られていることに気付き。
ドクッとポンプのように動いたそれから血液が流れ出ていることを認識し。
たった今グシャリという音と共に握りつぶされたそれが彼女の心臓なのだということを、己の脳が受け入れた瞬間。

恐ろしいほどに冴えきった、しかし一つの激情に支配された頭で。
いつの間にか、マスケット銃を宙に5丁生成していた。

一発一発は使い捨ての、しかしそれを補うかのように並べられた銃。
その一丁一発ずつを連射する形でタイミングをずらして撃ち出す。

マスケット銃の弱点である単発式であるという点を克服するかのように発される弾。
しかしそれがゼロに届くことはない。
発射と同時にゼロが前に手をかざした瞬間、一発一発がその直前で運動エネルギーを失い静止、地面に落ちる。

しかしそれに動じることなく、直後に四方からリボンを投射。
黄色いリボンはゼロの全身に絡み縛り上げ、そのゼロの動きを止める。
が、しかしゼロをそんな拘束では縛りきれない。
一瞬で引きちぎられ、その黒い腕を向かい来るマミへと振り向け。

そしてその胸を穿った瞬間、ゼロの腕に不自然な手応えを感じさせた。
直後、マミの体はまるで布細工のように細く靭やかに解け、ゼロの全身を覆い込み。

同時にその背後から姿を見せたマミが、その手のマスケット銃を鈍器のごとく思い切り振り被った。

が、直後にリボンの中から突き破るように現れたゼロの手がそれすらも受け止め。
謎の光と共に魔力を失ったリボンは地に落ち、姿を見せる黒い仮面。

そのまま、銃を手放す暇も与えられず、首を掴まれ地面に組み伏せられるマミ。

「ぐ……ッ」

しかしマミは、一片の怯えさえも見せることなくゼロを睨みつける。

「無駄なことだ。少なくとも今のお前では私には勝てん」
「うるさい……、あなた、よくも……!」
「勇気と無謀は異なるのを覚えておくことだな。
 私がお前の命をこのまま終わらせることが、どれほど容易いことか分からないほど愚かではあるまい」

ギリギリ、と首を押さえるゼロに抵抗するかのように足で蹴り付けるも、ゼロの体はビクともしない。
しかし首にかけた手に力を込めようとすると、マミの抵抗力も上がるのをゼロは感じた。

もう一方の手でマミの顔を掴み、その額に限定して手の光、ザ・ゼロを収束させて押し付ける。

「―――!」

マミはそれを警戒し抵抗を強めるも、ゼロを振り払うには至らず。
光が収まった頃にはマミの抵抗力が幾分か弱まっているようにも思えた。

当然だろう。今、ゼロはその力を持ってマミにかかっていた一つの呪縛を解いたのだから。

「お前にかかっていたギアスを解除した。以降はお前に死が近付こうとも、不自然なほどに体が生を求めることはない」
「…何、を…!」
「もう一度だけ言おう。
 今お前を殺すのは容易い。だがC.C.とは一つの取引をした。それを私とて進んで破りたいとは思わん。
 このまま私に挑むことを諦めるというのなら今回だけは見逃してやろう。しかし尚も挑むと言うなら―――」

625ConneCt ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/14(水) 22:19:03 ID:.xmhWRyE0
マミの体を地に押し付けながらゼロは告げる。
だが、マミはそれに屈することもなく。

「ふざけないで…、あんたが…あんたなんかがいるから…!」
「私のせい、か。だがな、今お前がこうして生きていられるのは、一体誰のおかげだと思っている?」
「………」

だからこそゼロはそれを口にする。

「あの時私から一時的とはいえ逃げ切れたのはルルーシュのおかげだろう。
 そして今、お前はC.C.のおかげでその生を許されている。
 お前の命は、多くの人間の上に成り立っている。それを分かって私に挑むというのなら止めない」

それまで怒りしかなかったはずのマミの瞳に僅かな揺らぎが見え。
同時にその身の抵抗が一気に薄れ。

「さて、どうする?正義感と怒りに任せて戦いC.C.の願いも無為にして死ぬか、それとも抵抗を諦めて生き延びるか」

その問いを言い放った時には、マミには抵抗する意志を失っていた。

先ほどの敵意は完全に喪失し、その眼から一筋の涙が頬を伝っていくのを見た時。
ゼロはその手を放し、マミに背を向けて歩き出した。

その姿は隙だらけであり、もしそこで銃を撃てばあるいは命中したかもしれない。
しかしマミは銃を構えることもなく、その場に顔を伏せて座り込んでいるだけ。

しばらくした後、ニャースがC.C.に歩み寄っていく姿が見えた。

「…起きるニャ、もう朝はとっくに過ぎたニャ…」

横たわって動かないC.C.に、その胸に空いた穴と周りに撒き散らかされた赤が見えないかのように話しかける。

その光景が、マミには辛かった。
誰よりもその死を受け止め、ニャースにも諭さなければならない立場にいながら。
誰よりもその死を否定したいと思っている自分がいたから。

地にボロボロになって落ちたリボン。
人の命を一人でも多く繋ぎ止めたいと願った証。
なのに、誰の命を繋ぐこともできずすり抜けていくばかり。

千歳ゆま、菊池啓太郎、ルルーシュ、佐倉杏子、ユーフェミア、そして、今目の前で命を奪われたC.C.。

「ねえ…、どうしてよ…。何で、みんな……」

ゼロに言われた、C.C.に助けられたという事実。
それもマミ自身の弱さを見せるものでしかなかった。

誰一人として守ることもできず。
目の前では一つずつその命が消えていく。
それらに対する後悔か、あるいは己の無力感からか。
マミの目からは、自然と涙が溢れだしていた。

【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュ 死亡】

【D-2/市街地/一日目 日中】

【巴マミ@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:ソウルジェム(汚染率:中)、深い悲しみ
[装備]:魔法少女服
[道具]:共通支給品一式×2、遠坂凛の魔術宝石×1@Fate/stay night、ランダム支給品0〜3(本人確認済み)、グリーフシード(未確認)、
     うんまい棒コーンポタージュ味@魔法少女まどか☆マギカ
[思考・状況]
基本:魔法少女として戦い、他人を守る
1:どうして…
2:たっくんの隣に立てるようになりたい
[備考]
※参加時期は第4話終了時
※ロロのヴィンセントに攻撃されてから以降の記憶は断片的に覚えていますが抜けている場所も多いです
※見滝原中学校の制服は血塗れになっています


【ニャース@ポケットモンスター(アニメ)】
[状態]:ダメージ(大)、全身に火傷(処置済み)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、
[思考・状況]
基本:サカキ様と共にこの会場を脱出
1:C.C.…、嘘ニャ…
[備考]
※参戦時期はギンガ団との決着以降のどこかです
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線




626ConneCt ◆Z9iNYeY9a2:2014/05/14(水) 22:21:12 ID:.xmhWRyE0


「ザ・ゼロの使用に問題はない、か。こちらのギアスとあちらの力は別物として見られている、ということか」

マミ達から離れたゼロはC.C.から受け継いだコードの存在を己の中に確認しながら思考する。

先にマミが攻撃した時に使用したギアスには何の問題も感じられなかった。
強いて言うなら普段よりも出力は落ちているがそれはここへ来た時からずっとそうだった以上コードとの関係はあるまい。

あれを受け継いで以降、体に負ったダメージも、少しずつ和らいでいるようには感じる。

正直なところ、己の肉体を使っての実験のようなものではあった。

コードの継承。
ギアスを最大レベルまで増幅させたものだけが受け取ることができる不死の力であり、C.C.はそれを強制的に引き継がされたもの。

だが自分のギアスとあちらのギアスの性質はかなり異なっている。
こちらが己のギアスを最大限に使える状態にあるとは言っても、コードの継承など可能だとは思えなかった。

しかし今こうしてC.C.から継承したそれはこの身に確実に宿っている。

だとすれば、考えられるのは。

異なる2つのギアスは、反発し合わないより近いものと、”あれ”には扱われているか。
あるいは――――

「――――俺が、”ルルーシュ”であるが故か」

彼女と契約を交わしたルルーシュ・ヴィ・ブリタニアと同一の存在である自分。
あいつと同一異性体である自分だったからこそ、コード継承を許されたのか。

後者の考えは思考する中で思い付いただけであり、詭弁である可能性が高い突拍子もない話だが。



だが、取り立ててゼロ自身はコードがそこまで欲しかったわけではない。
体の傷もなければ無い方がいいとは言っても自力でどうにかできないものではない。

では、何故わざわざ巴マミ達を見逃すという約束を飲んでまでこんなことをしているのか。

「……俺にまだルルーシュとしての部分が残っていた、か」

C.C.。
異なる起源を持ちながら2つの世界でルルーシュという男と契約をした少女。
しかし自分は彼女の願いを叶え、その消滅を見届ける一方で、あの少女は逆に契約者の最期を見届ける定めを背負っていた。
それ自体が彼女の望みであったことは重々承知している。
だが、かつて同にして異なる者と契約していた者としてそこに何も思うところがなかったというわけではない。


要するに、まだルルーシュである部分を完全には捨て切れていなかったというだけの話。

「やはりナナリーの死が、私にとっても思いの外堪えたということか…」



だからそう。

例えば視線の先にいる一人の男。
その存在もまた、思うところがある者ではあった。