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変身ロワイヤルその2
1名無しさん:2012/02/14(火) 20:44:07 ID:0twAe9Us0
この企画は、変身能力を持ったキャラ達を集めてバトルロワイアルを行おうというものです
企画の性質上、キャラの死亡や残酷な描写といった過激な要素も多く含まれます
また、原作のエピソードに関するネタバレが発生することもあります
あらかじめご了承ください

書き手はいつでも大歓迎です
基本的なルールはまとめwikiのほうに載せてありますが、わからないことがあった場合は遠慮せずしたらばの雑談スレまでおこしください
いつでもお待ちしております


したらば
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/15067/

まとめwiki
ttp://www10.atwiki.jp/henroy/

2名無しさん:2012/02/14(火) 20:45:38 ID:0twAe9Us0
参加者

【魔法少女リリカルなのはシリーズ】7/7
○高町なのは/○フェイト・テスタロッサ/○ユーノ・スクライア/○スバル・ナカジマ/○ティアナ・ランスター/○高町ヴィヴィオ/○アインハルト・ストラトス

【仮面ライダーW】5/7
○左翔太郎/●照井竜/○大道克己/○井坂深紅朗/●園咲冴子/○園咲霧彦/○泉京水

【仮面ライダーSPIRITS】6/6
○本郷猛/○一文字隼人/○結城丈二/○沖一也/○村雨良/○三影英介

【侍戦隊シンケンジャー】6/6
○志葉丈瑠/○池波流ノ介/○梅盛源太/○血祭ドウコク/○腑破十臓/○筋殻アクマロ

【ハートキャッチプリキュア!】4/5
○花咲つぼみ/●来海えりか/○明堂院いつき/○月影ゆり/○ダープリキュア

【魔法少女まどか☆マギカ】5/5
○鹿目まどか/○美樹さやか/○佐倉杏子/○巴マミ/○暁美ほむら

【らんま1/2】4/5
○早乙女乱馬/○天道あかね/○響良牙/●シャンプー/○パンスト太郎

【フレッシュプリキュア!】5/5
○桃園ラブ/○蒼乃美希/○山吹祈里/○東せつな/○ノーザ

【ウルトラマンネクサス】5/5
○孤門一輝/○姫矢准/○石堀光彦/○西条凪/○溝呂木眞也

【仮面ライダークウガ】5/5
○五代雄介/○一条薫/○ズ・ゴオマ・グ/○ゴ・ガドル・バ//○ン・ダグバ・ゼバ

【宇宙の騎士テッカマンブレード】3/4
○相羽タカヤ/○相羽シンヤ/●相羽ミユキ/○モロトフ

【牙狼−GARO−】3/3
○冴島鋼牙/○涼邑零/○バラゴ

【超光戦士シャンゼリオン】2/3
○涼村暁/●速水克彦/○黒岩省吾

【60/66】

3名無しさん:2012/02/14(火) 20:46:16 ID:0twAe9Us0
ルールが長くなってしまったため、特徴的な部分だけ抜粋
詳細が知りたい方は、下記リンク参照してください

ttp://www10.atwiki.jp/henroy/pages/19.html

【変身用アイテムのデフォ支給】
基本支給品やランダムアイテムに加え、変身用アイテムがデフォルト支給されます

ガイアメモリ、デバイス、ソウルジェム等があたり、これらはランダムアイテムとは別に必ず本人に支給されます
照井竜のガイアメモリやスバル・ナカジマのデバイスのように、変身用アイテムが複数存在している場合も全て本人に支給とします
ただし、参戦時期によってはその限りではなく、例えば照井竜の場合、トライアルメモリを得る前からの参戦ならば、トライアルメモリは支給されません
また、変身アイテム以外の武装、例えば暁美ほむらの銃火器等は全てランダム支給へと回されます

固有の変身アイテムを持たない人間には、この枠でのアイテム支給はされません

※ハートキャッチプリキュアのプリキュア達には、プリキュアの種とココロパフュームを支給。妖精は支給されません。
※左翔太郎、ウルトラマンネクサスのデュナミストについて特殊ルールが存在

【特殊ルール】
・左翔太郎について

左翔太郎には、仮面ライダーWへの変身用ガイアメモリのうち、彼が使う3つのガイアメモリが支給されます
残る3つのガイアメモリと、エクストリームのメモリはフィリップが所持した状態とし、そのフィリップは主催に幽閉されている扱いになります

フィリップは、戦闘中(Wへ変身した時)のみもう一人のベルトの使い手と意志疎通でき、それ以外の手段を用いたフィリップ側からロワへの介入は禁止
フィリップが独力で脱出することもありえません。

かなり特殊ですが、ダブルドライバー自体をデバイスに代表される意思持ち支給品と同等に扱うと考えればわかりやすいかもしれません

・ウルトラマンネクサスのデュナミストについて

最初に光を持っているのは姫矢准。姫矢が死んだ場合、次の人物へと光が継承されいきます
他作品キャラへの継承については書き手任せとしますが、もちろん誰でも対象というわけではなく、姫矢と面識のあるキャラに限られます
当然、他作品キャラへ継承させず、孤門や凪に継承させるのもありです

その後の継承については、姫矢→次のデュナミストに置き換え、同様の処理を行いますが、姫矢と違い、孤門や凪との面識がないキャラならば、当然2人は継承対象にはなりません

・その他

まどかの魔女化は、原則禁止です
もしも魔女化の条件を満たしてしまった場合は、魔女化はせずにそのまま死亡扱いとなります

4名無しさん:2012/02/14(火) 20:46:48 ID:0twAe9Us0
えっと、ロワイヤルと書きましたが正しくはロワイアルです
申し訳ありません。

5名無しさん:2012/02/15(水) 18:04:48 ID:SySylkoQ0
スレ立て乙です。

6名無しさん:2012/02/15(水) 20:46:53 ID:gG68MBsg0
新スレ乙です。

前スレ>>1000
確かにDX2の時期を考えるなら知っていても……幸いまだリレーされていないし、次の話でも十分フォローは可能な範囲だと思う所だが……
まぁ、DX2の一度しか会っていないからあの時点(放り込まれて堪忍袋の緒が切れた状態)で全て伝えきれなくても……描写的にプリキュアである事を隠さなきゃいけないわけだし。

7前スレ1000:2012/02/15(水) 21:15:45 ID:OK3ACKdE0
>>6
うん、確かにフォローできると思ってる
ただ、このまま気付かれないままリレーされると後々おかしくなるので、続き書く人は注意ってことで

8名無しさん:2012/02/15(水) 21:47:50 ID:1QcJsOhU0
というかDX自体そもそも本編と繋がってるかどうかは全くわからないし、パラレルワールドって可能性もあるよ。(DX内では、現行プリキュア以外は全員本編終了後みたいだけど)
この辺は書き手次第じゃないかな。

9名無しさん:2012/02/16(木) 05:06:52 ID:2nFWwmfU0
そういうのは映画だけのお遊びってことにしとくべきじゃね
でなきゃ新シリーズになるたび前のプリキュアは何してたんだよって話になるし

10名無しさん:2012/02/16(木) 08:17:42 ID:CwSJKxlo0
>>9
といっても既にDX参戦のキャラいるからつぼみが知ってる知ってないにかかわらず把握の必要あるんだけどね

11名無しさん:2012/02/16(木) 08:24:27 ID:WWJoAAWQ0
ラブやんのほうはつぼみたち知ってるんじゃなかったっけ?

12名無しさん:2012/02/16(木) 08:47:42 ID:CwSJKxlo0
>>11
フレプリとハトプリの相互の認識状況は現在のところこうなってる

ラブ→ハトプリ勢全員(ダークプリキュアはつぼみ達から簡単に話を聞いた程度)
いつき→フレプリ勢全員(ノーザはラブ達から簡単に話を聞いた程度)
ノーザ→つぼみ、えりか

13名無しさん:2012/02/16(木) 09:05:29 ID:WWJoAAWQ0
いつきやゆりは2じゃほとんどモブ出演で、3で初共演だったくせに普通に前からいました面だったな
映画以外でも定期的に遊んでるのかな

14名無しさん:2012/02/16(木) 09:26:46 ID:CwSJKxlo0
つぼみ達から話を聞いてたとか?
2のせつなも同じ感じだったな

まあ、確かに語られない部分で遊んでてもおかしくはないけど
2でもEDでつぼみ達のところに全員そろって遊びにきてたし

15名無しさん:2012/02/16(木) 09:42:08 ID:CwSJKxlo0
とはいっても、このロワ中では「映画以外では会ってない」ってことにしないとだめだけどね
でないとややこしいしなw

16名無しさん:2012/02/16(木) 14:06:46 ID:N1CUh5fw0
◆ASmgTY.lx2氏、したらばに気付かないで投下するかもしれないのでこちらでも。
氏の予約期限は2012/02/16(木) 14:03:15です。連絡無しの期限超過なので破棄でよろしいですね?

あまり口うるさく言いたくもありませんが、予約スレのIDを見る限り以前にも無断超過しています。
また、予約スレでの指摘にも反応が無い以上、この対応もしかたないと思いますがどうでしょうか。

17名無しさん:2012/02/16(木) 19:18:41 ID:WWJoAAWQ0
別に数分のロスに気付かないで投下するならするで、構わないような気もするが…
口うるさく言いたくないって、それは冗談で言っているのかw

18名無しさん:2012/02/16(木) 22:20:34 ID:/0AmCQhI0
さすがに数分程度ならなぁ…

19名無しさん:2012/02/16(木) 22:23:44 ID:YYUKf8R60
何にせよ、このまま連絡がなかったら破棄になるんじゃね

20名無しさん:2012/02/17(金) 00:42:08 ID:m9FhybwM0
連絡も無いのはなぁ

21名無しさん:2012/02/17(金) 20:12:54 ID:ORirm97c0
とりあえず、再予約を喜ぼうぜw

22名無しさん:2012/02/17(金) 21:48:14 ID:0xtSqjPA0
うーん…
なんか、素直に喜べないな…
◆ASmgTY.lx2氏の投下、楽しみにしてたんだけどなぁ…

23名無しさん:2012/02/17(金) 22:07:03 ID:eSk6KBjUO
そんな事言うのやめようよ。
書き手さんに悪いでしょ

24名無しさん:2012/02/17(金) 23:44:53 ID:TXofPbqEO
自分で書かない人に限って他人にはうるさいからなぁ

25名無しさん:2012/02/18(土) 03:00:55 ID:Yj1MVacUO
投下でワクテカしてる読み手の期待を裏切らないように期限内に書ききるのが書き手の義務よ。
制限時間に関しては多少堅すぎなぐらいが、書き手さん方の気持ちも引き締まるんじゃないの?

26名無しさん:2012/02/18(土) 07:36:58 ID:nGszU0qo0
それはどうなんだろう……あんまりハードルを高くしすぎても新規の人が参加する気を無くすような……
まあ何にせよ、期限を守るのは大事だよね

27名無しさん:2012/02/18(土) 08:06:05 ID:3xoP0ZKw0
ほどほどでええやん(適当)

28名無しさん:2012/02/18(土) 16:11:38 ID:vD60WFzw0
さすがに読み専の人間が口煩くぐちぐち言うのはなぁ…

29名無しさん:2012/02/18(土) 18:38:04 ID:WAPmiJC.0
魔法少女ロワやりたいって言ってた人テスト版ではじめてたw

30名無しさん:2012/02/19(日) 12:13:19 ID:On93.y7.O
今朝の仮面ライダーフォーゼを見たんだが・・・Wの探偵事務所が変な奴らの溜まり場になってたwww

31 ◆gry038wOvE:2012/02/19(日) 15:22:05 ID:VYvSjgTc0
ただいまより投下を開始します。

32復讐の戦鬼 ◆gry038wOvE:2012/02/19(日) 15:23:03 ID:VYvSjgTc0
 涼邑零はグロンギの遺跡にあった柩に手をかける。
 柩にあるとめどない量の模様は、おそらく文字であるというのはわかった。
 横並びに書かれ、規則性もなく、そして同じようなものが複数書かれている。何かを伝えようと、古人が遺したメッセージというのは、なんとなく感じることはできた。
 単純な模様とも思えないし、古代の壁画には文字と思しきものがよくのこっているのである。
 だが、日本語でも、魔戒語でもない文字が書かれているが、零には短期間に独力でそれを解読するなど不可能である。言語学者でもこの場ですぐに、というのは不可能だろう。


「妙な場所だな……やっぱり」


 これは単純な勘だが、この場からはホラーのように古からの「魔」を感じ取ることができる。
 長い歴史の裏にある、ごく一部の人間しか知らないものの鼓音が、この場所から聞こえたような気がした。
 怪物。そう、ホラーと同じ怪物だ。
 どの程度ホラーと近い存在かはわからないが、ともかくここには怪異の歴史がある。
 だが、これがホラーだとしても、ホラーでないとしても、零は自分自身が感じた「魔」の気配を気のせいと思おうとしていた。元々確証のない話でもある。

 薄々と、それが気のせいでないことも、怪物がホラーでないことはわかってきた。
 ここに来る前の零なら、人間の天敵となり、人知れず生きうる怪物はホラーのみ────それ以外の存在があるならば、少なくとも魔戒騎士はそれを知らないはずがないと思えただろう。
 だが、「NEVER、砂漠の使徒、テッカマン、外道衆、ドーパント」という、加藤の教えた謎の言葉は、魔戒騎士やホラーのように人間離れした能力の持主だとは加頭の口ぶりから解釈できたし、広間ではホラーに近い怪物の姿も見えた。大多数が常人にしか見えないことから、余計に彼らの姿は目立っていたし、見間違いということもないだろう。
 少なくともあの怪物たちはホラーではない。あの場で翳した魔導火はそれを物語っていた。ホラーならばあの場ですぐに斬っただろうが、違うのならばそれは魔戒騎士の仕事ではない。
 鋼牙も同じ考えだっただろう。


(なら、この中にはホラーでない魔物のヒントがあるのか……)


 零は、一度柩の中を開こうとしたが、思いとどまる。
 これを調べれば確かに「魔」の存在についてのヒントは得られるかもしれない。
 だが、本来、これは死者の眠る場所だ。
 善人だろうが悪人だろうが、零にとって死者は皆同じだ。眠り、目覚めることのない存在である。
 それを丁重に葬り、二度と目覚めることのないよう祈るのは死者への礼儀だ。
 それに、この柩にはもしかすれば、その存在が封印されているという可能性もある。
 好奇心は猫をも殺す──迂闊に好奇心に身を任せて余計な詮索をして後悔することもあるかもしれない。
 加頭がここに零を連れてきた理由が、この柩に眠るものを呼び覚ますためという可能性も考えられる。


 どうあれ、警戒すべき場所にあるものを迂闊に動かしてはいけないだろう。


(これ以上、ここにいても仕方がなさそうだな……)


 零はそう考えた。
 用心し続ける必要がある場所に、いつまでもいるわけにはいかない。

 まずは他の参加者との接触をしたい。
 零としても、何名か気になる参加者はいたのだ。
 何も零が見た参加者は鋼牙だけではない。あの広間では名前を明かした参加者もいる。

33復讐の戦鬼 ◆gry038wOvE:2012/02/19(日) 15:24:33 ID:VYvSjgTc0
 仮面ライダー1号、本郷猛。仮面ライダー2号、一文字隼人。
 仮面ライダーとは何なのかはわからない。見たところ、彼らは仮面をしていなかった。ライダーが、バイクに乗る人の意ならば、あの場にバイクはないから確認しようもない。
 新手の暴走族か? それにしては年季もあり、落ち着いて見えたが。

 涼村。弧門一輝。
 二人はあの場で言葉を口にしたから名前を呼ばれただけで、彼らは特別気にかかる言葉を発したわけではない。
 スズムラという名前の男は少し気になったが、零の「涼邑」という名前はあくまで偽名だ。
 本当の名前は銀牙という。同じ名前であることに因果を感じることもなかった。

 怪物たち。
 参加者に紛れている怪物たちの存在も気になった。
 言語が通じるならば、剣を翳して彼らに直接聞いてみるのもいいだろう。
 とにかく、彼らの存在を知りたかった。


(周囲は森みたいだな………………ん? 向こうに街があるな)


 遺跡を出た零は、高い山の頂上から下界を見下ろす。
 周囲が木々に囲まれたこの場所でも、巨大な風車のタワーがある街がなんとか見えた。
 まだ暗闇が地上を覆っているが、魔戒騎士の目は鋭い。


(行ってみるか……他にも人がいるかもしれないしね)


 零はそう考えると、常人離れしたスピードで山を駆け下り始めた。
 まだ地図はおろか、デイパックの中身すらちゃんと確認していない零は、この地形上に仇の家があることさえ知らない。


★ ★ ★ ★ ★


「キタキタキタァッッ!! イケメンの匂いがすると思って走って来てみたらやっぱりいたー! 嫌いじゃないわ!」


 未確認生命体対策本部の一室にて、結城丈二が最初に接触した参加者は、厳ついマッチョであった。
 この場で未確認生命体なるものの資料を探ろうとしていた結城に、思考の停止を与えた。
 まさか、時間の停止とはこの事ではあるまいな。


「………………あなたは?」


 結城は突如として現われたこの男(?)に落ち着いて聞いた。
 彼がいきなり危害を加えるわけではなかったが、風貌はプロレスラーのような体格で、結城もやや戦慄した。
 京水が質問に答えようと口を開こうとしたところで、更にその近くの廊下から声が聞こえてきた。


「京水さん、待ってください! …………え? あなたは?」


 続いてやってきた少女は、結城の姿を見て、結城の質問と同じ問いをした。
 まあ、結城が質問していたのは聞こえなかったのだろう。
 仲間がいるせいか、警戒を強める様子はなく、なにやら唖然とした様子だった。
 すると更に続いて、若い青年もやって来た。どうやら、彼らは一緒に行動していたらしい。
 結城はおそらく彼が最後だろうと睨んで、自己紹介を始めた。


「私は結城丈二。君たちは?」

「私は泉京水。気軽にダーリン♪って呼んでいいわよ〜」

「こいつは無視してくれ。俺はDボゥイ。名簿には相羽タカヤの名で載っている」

「私は東せつなです」


 結城はすぐに彼らの名を覚えた。名簿に載っている名前は一通り暗記していたので、元々容姿と名前を一致させるというだけの単純な作業だった。
 京水なる人物に抱いたイメージは、名簿で見たときと大きく違っている。
 出会い頭で少し戦慄したが、結城はSPIRITSという部隊にこんな人間がいるという情報を受けている。
 まあ、珍しいタイプだが彼のような人物を認めることも、これからの時代には大事だ。ほどよく相手にしていこった。
 それよりも、結城には名前を聞いただけで、質問が増えていく。

34復讐の戦鬼 ◆gry038wOvE:2012/02/19(日) 15:25:05 ID:VYvSjgTc0
「相羽タカヤくんか。……そうだ、いきなりすまないが、君はもしかして、兄弟がここに連れてこられてるんじゃないか? 名簿には相羽シンヤ、相羽ミユキという名前があった」


 タカヤとシンヤ。苗字だけでなく、名前も似ている。兄弟に似た名前をつけるというのは珍しくない。
 結城も知り合いが呼ばれている手前、三っつの名前がただの他人とは思えなかった。
 親子でないと思った理由は、結城も広間でタカヤの姿を二人分広間で見ており、「双子がいる」と妙に印象に残ったからである。
 相羽ミユキは男性だか女性だかも曖昧な名前である。この名前に関しては説明を必要だと思った。


「ああ。その通りだ。シンヤは俺の双子の弟、ミユキは俺の妹だ」


 おおよそ、結城の予想通りであった。
 予想が当たったからといって喜ぶほど結城は子供でもないし、不謹慎でもない。
 この状況下に兄弟姉妹をつれてこられた彼の心情を察する。
 強固で心配の不要な仲間を連れてこられた結城とは違うのだ。


「それは気の毒に……。だが、安心してくれ。この戦いに巻き込まれた人間は私やその仲間が保護してみせるつもりだ」


 結城の覚悟はホンモノだ。たとえ腕一本だけが頼りであっても、彼は折れることなく参加者を守るつもりである。
 目の前の彼らもその対象である。善悪はまだわからないし、出会い頭だったが、それは彼の目的のうえでは関係ない。少なくとも、彼らは三人で行動していて、今のところ危害を加えてはこない。
 だが、その結城の重いとは裏腹に、タカヤには重過ぎる宿命がのしかかっていた。
 彼が結城の言葉に即答したのは、もしかすれば、自分の弟の身を案じてくれる彼の気持ちを、一瞬でも早く打ち切りたかったからかもしれない。


「いや、その必要はない。ミユキは俺が守るし、シンヤは俺が倒す! それだけだ」

「何!?」


 結城はタカヤの発言に驚愕する。タカヤは予想した答えを返してはくれなかった。
 いくら兄弟仲が悪くても、この状況下でこんなことがいえるだろうか。
 タカヤの目は本気であり、結城でさえ凍りつくほどの何かに囚われていた。

 いや────

 結城の記憶から、広間での光景が再生された。
 そうだ。
 アキほど言ったように、結城は彼と、そして彼と瓜二つの人物を広間で確認している。
 相羽シンヤとは彼の双子の弟なのだろう。

 それから、あの場において三人の人物が首輪によって命を絶ったときの記憶でも彼らはでてきた。
 ここにいる三人のうちの二人──京水と、タカヤはあの光景を見て動揺を見せていた。それは当然のことだろうが、彼らの場合はまた違った動揺だ。
 そう、まるであの場での犠牲者と顔見知りであったかのような……親しい人物が死んだような姿を見せていた。

35復讐の戦鬼 ◆gry038wOvE:2012/02/19(日) 15:26:02 ID:VYvSjgTc0
 本郷、一文字、沖、村雨の姿を確認したときとは違う。身構えて顔だけが怒りを見せているような姿ではない。
 女性の参加者たちの恐れた顔でも、一部の参加者の何か言いたげな顔でも、三影の奇妙な口元のゆがみでもない。
 タカヤと京水は、死んだ者たちの名前を叫ぼうとしていたのだ。 


「広間で加頭が言っていた、テッカマンという言葉を覚えているか?」


 タカヤが口を開いた時、結城は「やはり」と思った。
 加頭の死んだうちの一人はおそらくテッカマンだ。彼はあの三人のうち、テッカマンなる者と知り合いだったのだろう。


「ああ。NEVER、砂漠の使徒、テッカマン、外道衆、ソウルジェム──不可解な言葉は全て記憶している」

「あっ、それっ! NEVER! それは私よっ!」


 これを聞いても「やはり」と思ったが、話には優先順位というものがある。
 こちらの話も聞きたいが、話の重みから考えても、テッカマンの話を優先すべきだ。


「君の話は後で聞かせてほしい。まずはタカヤくん、君の話を聞かせてもらいたい。君はテッカマンなる者を知っているんだろう?」

「ああ、知っている──というより寧ろ、俺がテッカマンだ」

「……そうか。よければ、テッカマンというものについて教えてほしい」


 タカヤはテッカマンについて語り始めた。
 成り立ちや宿命、親しい人物の洗脳、これまでの戦い────辛く厳しい戦いの話であった。
 相羽シンヤ、相羽ミユキ、モロトフ、フリッツ・フォン・ブラウン。この場につれてこられた者は、死んだ者も含めて皆その関係やテッカマンとしての別名を教えられた。


 ここで結城は違和感を覚える。
 オービタルリングもラダムも、結城の知らない言葉であった。
 いや、正確にいえばオービタルリングの話は沖が一度、目を輝かせて語っていたため、聞いたことはある。
 だが、現実にまだそんなものは存在しない。
 それをタカヤは、さも存在して当然であるように語っていた。
 とはいえ、急に話題を逸らすのも問題だろう。


「……なるほど。家族と戦う道を択んだのも、君なりの考えがあってのことというわけか」

「ああ」


 結城はまず、感じた違和感を脇に置いて、話の発端となった部分に蹴りをつける。
 タカヤの考えを聞いたうえで、結城は宿命の戦士たちのことを思い出した。

 テッカマンの境遇は仮面ライダーに似ていたのである。
 仮面ライダーは、自分と同じ改造人間となった者と戦う宿命を背負っているのだ。
 言ってみるなら、同族殺しである。

36復讐の戦鬼 ◆gry038wOvE:2012/02/19(日) 15:26:47 ID:VYvSjgTc0
 本郷猛──彼は親友であった早瀬という男と戦い、そして倒した。ショッカー軍団のサソリ男となった早瀬の裏切りに、彼はどれほど辛い思いをしただろう。
 風見志郎──結城の最も親しい戦友である彼は、高木という親友との戦いを強いられた。彼はデストロンのガルマジロンであり、一度風見をデストロンに勧誘した。もしあの頃の結城が風見と親友なら、高木と同じことをしただろう。


 それでも彼らは、人類の自由と平和のために同族殺しを続けなければならない。


「相羽タカヤ、いやテッカマンブレード。私は君を止めはしない。いざという時は私も助けになろう。テッカマンエビルを、テッカマンランスを、倒すために」

「結城さんっ!?」


 せつなは、そして京水も彼の対応には驚いているようだった。
 一見すると冷酷に見えたのであろう。彼の宿命を聞いて何も感じていないように思われてもおかしくはない。
 だが、結城こそ最も、彼の辛さを知りえる人物であった。


「どんなに辛くても、その手段を使わなければ多くの人間の命が奪われるときがある。そのためには、戦わなければならない」

「その通りだ。そして、これは俺自身の選んだ道だ。誰にも止めさせはしない」


 タカヤの口調には、随分前から捻じ曲がらない決意の音がふくまれていた。
 結城は無論、止めはしないが、せつなはかなり戸惑っているようだった。
 だが、タカヤ自身が話し慣れたせいか辛気臭そうではなかったので、結城は話題を差し替える。


「これでテッカマンについてはわかった。京水、君のNEVERについても聞かせてもらおう」

「そうそう。私も話さなきゃね。私たちは──」


 と、彼が口を開いた時、またまた誰かが警察署の一室に入ってきた。
 黒いコートに身を包んだ長髪の美少年である。
 どうやら結城たちが此処にいると気づいたうえで来たようであり、自分以外の人間がいることに驚くことも、警戒することもなさそうだった。

 逆に結城たちはほぼ同時に悪寒を感じた。

 ──彼が端麗な容姿の男性であったからである。


「何何何ぃっ!? とってもイケメン! 嫌いじゃないわっ!」

「……そうかな? とっても嬉しいよ。でもゴメン、俺は変なオッサンには興味ないんだ」

「そうそう変なオッサン……変なオッサン?」


 余裕しゃくしゃくと、男は笑顔で返したが、対する京水は一気に不機嫌になった。
 人を殺さないばかりの気迫で、ようやく少しだけ女に見えかけていた顔は完全に男に戻っている。


「ムッキィィィィ!! いくらイケメンでも乙女に対してそんなこと言っちゃうなんて、心はドブスよ! ド・ブ・ス!! …………あっ、でもやっぱり男前だから許しちゃう〜!! タカヤちゃんと同じツンデレなのね〜!」


 だが、その気迫も一瞬だった。零の甘いマスクは、一瞬手前に起きた自分に対する最大の侮辱さえ忘れさせたのである。
 零は薄ら笑いとでも言うべき笑顔のまま、話を続ける。

37復讐の戦鬼 ◆gry038wOvE:2012/02/19(日) 15:29:05 ID:VYvSjgTc0
「俺は別に話せる人なら誰でもいい。この人以外で誰か、俺と話をしてくれないかな。──あ。どうせなら君がいいな」


 せつなの肩に手をかけて、彼は言う。氷のように冷たい手であった。
 見知らぬ男に突然こんなことをされたせつなは、パニックになって、思わずその手をはらいのける。
 零としてもこの年代の少女に興味があったわけではないが、ただ単純に女性だからという理由で彼女を選んだのだろう。だから、この行為に別段傷ついたりはしなかった。
 そんな零の軽い気持ちは知らず、せつなは素直に自分の行為を謝罪する。


「あの……っ、すみません! あなたは一体……?」

「俺は涼邑零。ちょっと情報が欲しくてはるばる山奥からやって来たんだ」

「え?」

「それに、こうして机があるところのほうが道具が広げやすそうだしね」


 と、零は自分自身のデイパックを広げ始めた。
 中からは地図などの全員共通の支給品も出てくる。
 殺傷に利用できそうなものはなかったが、結城たちは警戒の様子を見せた。妙に余裕があるような様子のうえに、何を考えているのかわからなかったのである。
 突然ここに押しかけたまではいいが、まるで結城たちが居ることを意に介さないように、一人で行動をしている。何故、こうして結城たちの目の前に現われたのか。


「へぇ……こんなのまで支給されてるんだ」


 零が掴んだのは武器などでなく、スーパーヒーローマニュアルと書かれた冊子であった。
 昔のテレビのヒーローのお約束を纏めたような本である。出版されたものではなく、そもそも紙の束を留めたようなものだった。
 この本に記されたヒーローの姿を真似るためか、テンガロンハットやウエスタン風の服、トランペットも付属している。
 言ってみれば不要物だ。


「これは何かな?」


 妙にグロテスクな色をした三味線を手にとって、零は首をかしげる。だが、どちらにせよ意味のあるものとは思えず、零はすぐに興味を失ったようにそれをデイパックに戻してしまった。
 結城たちの方を気にする様子は無いのだが、彼がどうしても気になってしまう結城たちは話も続けられず、迷惑でしかない。
 名簿を見始めた零は、一つの名前を見て一瞬顔をしかめたが、すぐに名簿をしまった。
 次に地図を開く。


「へぇ、あいつが来そうな場所が用意されてるんだ……」


 零は今まで広げなかったこのマップの、ある施設の存在に目を向けたのである。

 ──「冴島邸」──

 冴島鋼牙もここに向かうのではないだろうか。
 はっきりと自分の名前がマップに記されており、「志葉屋敷」のように参加者の名前と合致した施設がある以上、彼は自分の屋敷、またはその複製がここに存在すると考えるのではないか。
 どちらにせよ、彼はきっと確認のためにここに現われる。

 まあ、仇である黄金騎士を討てば、もうこれ以上殺し合いをする必要はないのだから、なるべく早くこの場所に向かいたい。
 そして、自分自身の殺し合いを終わらせたい。


「……まあいいや。まずは君たちの話を聞かせて欲しいな」

「それはこちらの台詞だ」

「私も零ちゃんの全部を知りたいわ〜!」

「お前は少し黙ってろ!!」


 ようやくまともな会話をする機会が出たか、と結城らは思った。
 零という男の目的はまったく見えないが、殺し合いに乗っている様子はおそらくない。
 だが、態度はあまり好ましいものではない。


「零。私の名前は結城丈二、彼は相羽タカヤ、彼女が東せつな、か──────のじょが泉京水だ」

38復讐の戦鬼 ◆gry038wOvE:2012/02/19(日) 15:31:05 ID:VYvSjgTc0
 結城は全員を代表して紹介を始めた。
 自分も先ほど知合ったばかりだが、零からしてみれば四人の集団に見えるだろう。
 まとめて自己紹介しても問題はないだろう。


「君が来る時、私たちは話の途中だった。その続きからでいいか?」

「構わないよ。でも、できれば俺に伝わるようにね」

「ああ。泉さんはNEVERなんだったな」

「そうよ! 私NEVERなのよぉ〜!! NEVERっていうのは私が所属してる部隊の名前で、実はみんな一度死んでるのよ!」


 と、京水は明らかに異質としか思えない内容を平然と語り出した。
 一度聞いたせつなやタカヤはともかく、結城や零が淡々としているのは、二人には不思議に思えただろう。
 結城や零は、何かしらの形で死者の複製や、冥界に精通していたのである。
 まあ、それらもNEVERの概念とはまったく違うものだが。


「君のいた部隊とは?」

「それよ! 克己ちゃんのいた部隊!」


 それから京水が語った話は少なくとも結城には理解し難いものである。
 大道克己、堂本剛三、加頭順、左翔太郎、照井竜など、この殺し合いに関連する人物たちの情報を得ることができたのは有難いが、彼らNEVERの活動を結城が認めるはずもない。
 そして、翔太郎と照井という二人の「知らない仮面ライダー」の存在も気にかかった。


「仮面ライダー……あの広間にいた本郷猛と一文字隼人のことは知っているかな?」

「知らないわ。でも、あの人たちも仮面ライダーなのよね。強い男の人は大好きよ! キュンキュンしちゃうわ〜、キュンキュンしちゃうわ〜!!」


 この口調だと、左翔太郎と照井竜の説明の時に、広間で聞いた言葉を借りたわけではないらしい。
 ならば、彼はここに来る前から「仮面ライダー」という言葉を知っていたということだ。

 オービタルリング、ラダム、テッカマン、NEVER、もうひとつの仮面ライダー、風都。

 いずれも、知らない言葉である。
 だが、知らない言葉だからこそ、結城の中で一つの仮説を作り出すのに充分な単語であった。


「────やはり、我々はまったく違う時代、または別の世界から連れてこられた可能性が高いな」

「やはり、そういうことか」


 結城はひととおりの話を聞き終え、「参加者同士は別の時空の人間であると考えられる」という結論に行き着いたのである。
 少なくとも結城の知る地球の外側にオービタルリングなど形成されてはいない。
 そして、仮面ライダーにしてもWやアクセルなどという仮面ライダーは結城も知らない。


「私のいたところにも仮面ライダーはいた。本郷猛や一文字隼人も私の知り合いだ。だが、Wやアクセルなどという仮面ライダーは聞いたこともない」

「えっ! 丈二ちゃんも仮面ライダーを知ってるの!?」

「ああ。────そして、私自身も仮面ライダーの一人だ」


 結城は隠していたわけではないが、今まで言わなかった事実を告げる。
 京水とタカヤとせつなもこれには驚きを隠せないようだった。零は相変わらず淡々としている。彼はまだ仮面ライダーの概念を知らないのだ。

39復讐の戦鬼 ◆gry038wOvE:2012/02/19(日) 15:32:01 ID:VYvSjgTc0
「なら、丈二ちゃんも克己ちゃんたちと協力して加頭を倒してくれる!? イケメンで強い上下3色に分かれた仮面ライダーが言っていたわ! 『ライダーは助け合いでしょ』! おっしゃる通りだわー!」

「……その仮面ライダーが何者かはわからないが、その申し出は断らせてもらう。少なくとも、私たちは大道克己と協力する気はない。……正直に言えば君の扱いも難しいところだ」


「なんで!? どうしてよー!?」

「君の話を聞いていると、君たちNEVERは危険な集団としか思えない。『ライダーは助け合い』──その言葉には賛同するが、それは『仮面ライダー』同士ならの話だ。私はエターナル、大道克己を仮面ライダーとは決して認めない」


 結城の知る仮面ライダーの概念と、悪の戦士エターナルはまったく別物であり、頭の中で結びつきはしなかった。
 志さえあれば、滝やSPIRITSのメンバーでも仮面ライダーと認めることはできるだろう。だが、BADANと同じように平和を乱す者を仮面ライダーとは認められない。
 結城丈二──ライダーマンは命をなげうって初めて、仮面ライダーの称号を得た戦士であった。


「──そう、君たちのやっている事を認めることはできない。君たちの行動は明らかに悪だ」

「……そうね、確かに私たちのやっている事は正しくないかもしれない。……けど、私たちだって加頭を倒したいと思ってる。だから、せめて加頭を倒すまでは、克己ちゃんも丈二ちゃんもタカヤちゃんも側にいてほしいわ!」

「……確かに、君たちの力が必要になるかもしれない。京水、君には大事な情報を包み隠さず伝えてくれた恩もある。だが、私は加頭からだけでなく、君たちからも人を護らなければならない」


 ──と、結城が言ったところで、黙り続けていた零の声が聞こえた。


「めんどくさいなぁ、そういう考え方。まどろっこしくて好きじゃない。コイツは人にとって有害で、とっくの昔に死んでる……なら、どうすればいいかは簡単だろ?」


 零は二つの剣を取り出し、それを京水に向けた。
 流石の京水も背筋を凍らせ、周囲もまたその威圧に固まった。


「──斬ればいい、だろ?」


 死人がいつまでも生きていていいわけがない。ましてや、そいつが人間にとって邪魔なものならば。
 魔戒騎士の彼は人間の敵となるホラーを狩り続けてきた。
 そんな彼にしてみれば、人間の敵を一人斬ることなど、大したことではない。


「やめろっ!! ヤァッ!」


 零が本気で前進していくのを見て、結城は慌てて止めにかかった。
 ライダーマンのヘルメットを装着した彼は、パワーアームでその剣が京水へと届くのを防いでいる。
 一瞬にしてまったく別の姿へと変わった結城を見て、慣れてるとはいえせつなとは驚いていた。
 つい先ほどまで人間だと思っていた者が見知らぬ者へと変身すると、流石に驚くものである。


「結城さん……っ!?」

「へえ、なんだか中途半端な姿だね」


 せつなの驚き、タカヤと零の冷静、京水の恐怖。
 時が止まる。
 その時を戻すため、結城は言葉を放つ。

40復讐の戦鬼 ◆gry038wOvE:2012/02/19(日) 15:32:38 ID:VYvSjgTc0
「我々は……あまり一緒に行動しない方が良さそうだな……」

「同感かな。……まあ、そのオッサンを殺すのは俺の仕事じゃないから、別にやらなくてもいいんだけど」

「それで君はもう危害は加えないと保証できるか?」

「いや、もし何かあれば勿論斬る」


 結城も、零も、京水も、タカヤも、せつなも、それぞれ考え方が少し違っていたのである。
 だから、この大人数が集まることで、互いが衝突して自滅することもある。
 今回は偶然、結城の経験ゆえ、高い反射神経があったためにその犠牲が出なかっただけだ。
 零は後退し、積極的な攻撃をやめたが、剣を離す様子はないようだった。それは言葉の通り、何かがあれば斬るということを表しているのだろう。


「──穏やかにはいきそうにない。タカヤ、京水、せつな、君たちとの話は終わりだ」

「わかった。京水のことは安心しろ。俺が監視する」

「それって愛の告白!? 君だけをずっと見つめてるよって言ってるの!?」


 京水のハイテンションにつっこみを入れる者はいない。
 凍りついた空気がどうなるということもなかった。彼らは京水の言葉を無視したまま、緊張した空気を保っていた。


 それからすぐにタカヤ、京水、せつながこの一室から去ると、寂しさが残った。
 彼らと再び会うことはあるだろうか──話を聞けなかったせつなや、途中になってしまった参加者たちの時空の問題。悔いは多いが、今は目の前にいる男をどうにかしたかった。


「涼邑零。お前は何者だ?」


 ライダーマンの変身を解いた結城が問う。


「さあね。俺はもう知りたいことは知ってしまったから、これ以上君たちと話すこともないよ」


 一方の零は、自分の説明など無駄なことに時間を使いたくは無かった。
 だから、彼は既に冴島邸に向かう準備をしていた。準備といっても、デイパックを肩にかけただけであるが。


「……人の情報だけ得て、自分は謎のままか……」

「そういうこと。それに、俺だって全員分の話は聞けてない。仮面ライダーやパラレルワールドの話くらいしか、利益のある話はなかったかな。俺はもう行くことにするよ」

「待て。私にはまだ話したいことがある」


 結城はそう言って引き止めるも、零は一瞬しか足を止めなかった。
 無視する意図で歩き出す零を見ながら、聞こえればいいとばかりに結城は話し始めた。


「君の目を見ていると、かつての自分を鏡で見たような気分になる。飄々としているように見えるが、私にはわかった。誰かを憎んでいて、そいつに復讐することを生きがいにしたような目だ。そのためには周りのことも気にはしない。そして、自分に与えられた使命さえおざなりにしてしまう」

「……」

「君を放ってはいけない。俺も君に着いて行こう」

「……あんたの力はわかった。着いて来ようが俺は一向に構わないよ。けど、俺はあんたを庇いはしない」

「無論だ。自分の身は自分で守る」


 結城は自らの右腕と、その手のひらが掴んだヘルメットを高く掲げる。
 それだけでは確かに戦っていくには弱いだろうが、何よりその心は強い力で満ち溢れている。


 かつて復讐に生きた戦鬼と、復讐を目的とする魔戒騎士。
 復讐を止める者と、復讐を求める者──彼の復讐は果たされるのだろうか。

41復讐の戦鬼 ◆gry038wOvE:2012/02/19(日) 15:34:23 ID:VYvSjgTc0
【一日目/黎明】
【F-9/警察署前】
【相羽タカヤ@宇宙の騎士テッカマンブレード】
[状態]:健康
[装備]:テッククリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード
[道具]:支給品一式、メモリーキューブ@仮面ライダーSPIRITS、ランダム支給品0〜2
[思考]
基本:主催者を倒す。
1:他の参加者を捜す。
2:俺はいつまでコイツ(京水)と付き合わなければならないんだ……
3:シンヤ、モロトフを倒す。ミユキと再会した時は今度こそ守る。
4:克己、ノーザ、冴子、霧彦を警戒。
5:記憶……か。
[備考]
※参戦時期は第42話バルザックとの会話直後、その為ブラスター化が可能です。
※ブラスター化完了後なので肉体崩壊する事はありませんが、ブラスター化する度に記憶障害は進行していきます。なお、現状はまだそのことを明確に自覚したわけではありません。
※参加者同士が時間軸、または世界の違う人間であると考えています。

【泉京水@仮面ライダーW】
[状態]:健康
[装備]:T-2ルナメモリ@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式、細胞維持酵素×4@仮面ライダーW、克己のハーモニカ@仮面ライダーW、ランダム支給品0〜1
[思考]
基本:剛三ちゃんの仇を取るために財団Xの連中を潰す。
1:タカヤちゃんが気になる! 後、シンヤちゃんやモロトフちゃんとも会ってみたい! 東せつなには負けない!
2:克己ちゃんと合流したい。克己ちゃんのスタンスがどうあれ彼の為に全てを捧げる!
[備考]
※参戦時期は仮面ライダーオーズに倒された直後です。

【東せつな@フレッシュプリキュア!】
[状態]:健康、困惑
[装備]:リンクルン@フレッシュプリキュア!
[道具]:支給品一式、伝説の道着@らんま1/2、ランダム支給品0〜2
基本:殺し合いには乗らない。
1:友達みんなを捜したい。
2:ノーザを警戒。
3:可能ならシンヤを助けたいが……
[備考]
※参戦時期は第43話終了後以降です。

42復讐の戦鬼 ◆gry038wOvE:2012/02/19(日) 15:34:48 ID:VYvSjgTc0
【1日目/黎明 F−9 警察署】

【結城丈二@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:健康
[装備]:ライダーマンヘルメット、カセットアーム
[道具]:支給品一式、カセットアーム用アタッチメント六本(パワーアーム、マシンガンアーム、ロープアーム、オペレーションアーム、ドリルアーム、ネットアーム)
[思考]
基本:この殺し合いを止め、加頭を倒す。
1:殺し合いに乗っていない者を保護する
2:零の向かう先についていく。
3:本郷、一文字、沖、村雨と合流する
4:加頭についての情報を集める
5:首輪を解除する手掛かりを探す
6:三影は見つけ次第倒す。
7:タカヤたちとはまた合流したい。
[備考]
※参戦時期は12巻〜13巻の間、風見の救援に高地へ向かっている最中になります。
※この殺し合いには、バダンが絡んでいる可能性もあると見ています。
※加頭の発言から、この会場には「時間を止める能力者」をはじめとする、人知を超えた能力の持ち主が複数人いると考えています。
※NEVER、砂漠の使徒、テッカマン、外道衆は、何らかの称号・部隊名だと推測しています。
※ソウルジェムは、ライダーでいうベルトの様なものではないかと推測しています。
※首輪を解除するには、オペレーションアームだけでは不十分と判断しています。
 何か他の道具か、または条件かを揃える事で、解体が可能になると考えています。
※カセットアームの全アタッチメントが支給されている代わりに、ランダム支給品は持っていません。
 また、硬化ムース弾は没収されています。
※NEVERやテッカマンの情報を得ました。また、それによって時間軸、世界観の違いに気づいています。






【涼邑零@牙狼─GARO─】
[状態]:健康
[装備]:魔戒剣、魔導火のライター
[道具]:支給品一式、スーパーヒーローセット(ヒーローマニュアル、30話での暁の服装セット)@超光戦士シャンゼリオン、薄皮太夫の三味線@侍戦隊シンケンジャー
[思考]
基本:加頭を倒して殺し合いを止める。
1:牙狼を見つけ出し、この手で仇をとる。
2:鋼牙が向かう可能性があるため、冴島邸に向かう
3:殺し合いに乗っている者は倒し、そうじゃない者は保護する。
4:会場内にあるだろう、ホラーに関係する何かを見つけ出す。
[備考]
※参戦時期は一期十八話、三神官より鋼牙が仇であると教えられた直後になります。
 その為、鋼牙が恋人と師の仇であると誤認しています。
※魔導輪シルヴァは没収されています。
 他の参加者の支給品になっているか、加頭が所持していると思われます。
※シルヴァが没収されたことから、ホラーに関係する何かが会場内にはあり、加頭はそれを隠したいのではないかと推察しています。
 実際にそうなのかどうかは、現時点では不明です。
※NEVER、仮面ライダーの情報を得ました。また、それによって時間軸、世界観の違いに気づいています。

43 ◆gry038wOvE:2012/02/19(日) 15:35:36 ID:VYvSjgTc0
以上、投下終了です。

44名無しさん:2012/02/19(日) 16:30:14 ID:7OQHTkN.O
投下乙です!
零と結城にとって、確かに京水は悪なんだよな……いくら対主催とはいえ。
そして二人が向かった先には、シンヤがいる……もしも出会ったら、どうなるだろ

45名無しさん:2012/02/19(日) 20:04:49 ID:.U7MaaPQ0
投下乙。
零、協調性ないなあ。
そして鋼牙と違って思考がドライだな

んで、結城と零は冴島邸に向かったか。
というか零、地図最初に見とけよ
お前初期位置が冴島邸のすぐそこだったろ
そして結城さんはなんとか場を収めたけど、メモリーキューブに気付かずタカヤと別れたのは少し痛かったな

46名無しさん:2012/02/20(月) 00:24:06 ID:IyC90bLUO
投下乙です。

頼れる対主催ライダーマン結城と漫才トリオは合流ならずか・・・・・・
零は協調性ないし、これから向かう冴島邸にはシンヤもいるし、フラグが見え隠れしてるなぁ。
そして良い意味でも悪い意味でもブレない京水www

47名無しさん:2012/02/20(月) 02:47:52 ID:u6O8yZE20
位置的に考えると鋼牙も零より先に冴島邸に来そうだよね

48名無しさん:2012/02/23(木) 03:07:40 ID:ytXPUKb.O
クウガの外伝を知ってる人いるかな。内容は古代クウガの話。
本編との矛盾や相違点がありすぎて流石にロワじゃ使えそうになさそうけど・・・・・・ちょっと話題としてあげてみる。

ちなみに相違点の例。
・ダグバの一人称が俺、そしてマッチョ。
・グロンギが集団戦を仕掛けてくる。ゲゲルはどうした。
・クウガ以外のリントの戦士がいる。リント族は争いを好まなかったハズでは・・・・・・?

49名無しさん:2012/02/23(木) 06:09:04 ID:CmCcEEdE0
グロテスクな三味線って、薄皮太夫の三味線も持ち物に含まれてるんかいな?
一応ドウコクかアクマロの所属物になるのかな

50名無しさん:2012/02/23(木) 11:38:48 ID:XrKbAAZw0
数日前にシャンゼリオン3・4話見てこれから続きを見るつもりでいるんだけど…速水面白すぎるなww
乗せられてあんなナンパするなよww
ていうか死者スレの逮捕ネタって原作に元ネタがあったのかw

51名無しさん:2012/02/23(木) 19:25:07 ID:Dy7e9iPsO
待てよ、ということはもしタカヤが変身したら……?\嫌いじゃないわ!/

52名無しさん:2012/02/24(金) 00:24:15 ID:8RuJyzqQO
>>49
太夫がいないからランダム支給でもいいんじゃない?
鈍器にはなりそうだし。

>>51
本格的テックセッター♂ですね、わかります。
個人的はタカヤの次ぐらいに、W屈指の脱ぎ魔である尻彦の尻が危なそうだな、ちょうど京水たちのいる場所よりすぐ南にいるし・・・・・・

53<削除>:<削除>
<削除>

54名無しさん:2012/03/05(月) 13:31:43 ID:Ufi6PVcQ0
せっちゃんガチでバトったら参加者中でも上位の実力と思ってるんだが
まだその状況、心境には遠そうだ

55名無しさん:2012/03/06(火) 08:43:19 ID:2Fw.oIS60
昨日シャンゼリオン11、12話を見て初めて黒岩省吾を知った
都知事時期がどんな感じなのかわからないからまだ書こうと思っても書けないんだが…
つぼみと組ませたらやばそうなキャラだなw

自分に恋した女性のラーム(精神エネルギー)を好んで食べるって面食いのつぼみにとっては天敵すぎるww

56名無しさん:2012/03/06(火) 11:09:21 ID:cBm8kX9U0
黒岩がいたからシャンぜリオン見てたようなもんやったで…

57名無しさん:2012/03/06(火) 15:51:55 ID:VPUwp1oYO
いや、ヒーローの先生ゴハットだろう

58名無しさん:2012/03/06(火) 23:17:30 ID:l69ZJSi.0
予約来てた

59名無しさん:2012/03/07(水) 14:42:27 ID:VOv4nWuI0
避難所、立て直した方がいいのかな……

60♯sinonhanon:2012/03/07(水) 14:52:13 ID:f7K9ZUvI0
まあ、管理人さんがアク禁すればそれでいいと思うけど
新しく立てたところで荒らす人は荒らすんだろうし

61名無しさん:2012/03/07(水) 14:52:39 ID:uGUkT3yc0
何かと思ったらしたらば酷いな
管理人設定でアク禁とかできんのかな?

62 ◆eQhlNH2BMs:2012/03/07(水) 14:59:55 ID:f7K9ZUvI0
くそ、トリバレした
また変えなきゃいけないのか

63 ◆OmtW54r7Tc:2012/03/07(水) 15:01:53 ID:f7K9ZUvI0
テスト

64 ◆OmtW54r7Tc:2012/03/07(水) 15:03:23 ID:f7K9ZUvI0
元◆eQhlNH2BMs、こちらにトリを変更します

65名無しさん:2012/03/07(水) 15:06:41 ID:VOv4nWuI0
了解です。
ページの一部を変更しました。

66名無しさん:2012/03/07(水) 16:10:48 ID:Ya3JOIaQO
あれって荒らしなのか?

67名無しさん:2012/03/07(水) 17:17:56 ID:R3naIdnQ0
荒らしだろう

68名無しさん:2012/03/07(水) 22:30:17 ID:VOv4nWuI0
よし、話題を変えよう!
この前テッカマンブレードを全話見たんだけど、モロトフって結構かっこいいんだな……色んな意味で愛されてるけどw

69名無しさん:2012/03/07(水) 22:35:02 ID:qick9/wo0
や、モロトフさんは格好良いし強いんだよ。
ただ、初登場したブラスターに調子乗って向かっていって瞬殺されただけなんだよ。今回は一応ブラスターの脅威知った後だからそこまで無茶は……無いと良いなぁ
そんなわけでモロトフさんに予約入っているからどうなるだろうか……マミをマミるかモロトフをモロトフるか……?

70名無しさん:2012/03/08(木) 02:37:32 ID:HwtCH2HsO
原作だけ見るとそんなにかませ犬してないんだよな・・・・・・仮面ライダーやウルトラマンでもよくあるように新フォームが手にはいると、それまで圧倒的に強かったのに瞬殺されてしまうテンプレ敵キャラってだけで。

だがモロトフさんの問題はそこじゃない。
『パロロワ』ではなぜか扱いが悪いんだw

・アニロワ2
主催者に歯向かい、見せしめとして散る。

・スパロワ3
見せしめではなく参加者として参加したのに、主催者に歯向かい、首輪を爆破されて散る。
おまえはなんのために参戦したのか。

71名無しさん:2012/03/08(木) 08:16:29 ID:y0.H5n.M0
テッカマンブレードは今12話まで見たけど、タカヤも初期は結構アレな性格してたんだな
4〜7話の出来事以降、丸くなってきてるけど
しかし4話はいろんな意味で理不尽だった

そしてこのロワの見せしめフリッツさんは、ボルテッカーさえ使えずあわれなかませだったなw
テッカマンで作中でボルテッカー使わなかったのは彼だけだって聞いてるけどw

72名無しさん:2012/03/08(木) 11:55:48 ID:sv0Uz8XQ0
聞いた話じゃ初期設定じゃボルテッカはブレードだけが使える設定だった関係で最初に出てきたダガーは使用できなかった。つまり、使わなかったのではなく使えなかったのが正解。
ところが、設定変更されボルテッカは標準装備という設定になりエビルやランスは言うに及ばず不完全なレイピアすらも使えてしまうという事になったと。
つまり、設定変更のアオリによる影響と、まぁそれでもクリスタルを砕いたという戦果は上げているけどね……結果としてペガス登場によるかませになったけど……ある意味ランスと同類。

あと、ランスがネタ呼ばわりされる理由はスパロボの影響もあるのかもしれない……スパロボでの扱いでもネタ的な意味で酷かった様な話らしいし。

73名無しさん:2012/03/08(木) 13:42:33 ID:mSto0s420
ブラスターテッカマンは異常な強さだからなぁ
素のブレードの時点で反応弾食らっても無傷な防御力。通常のボルテッカくらいなら至近距離で食らっても平気になった。
エビルとの決戦で地上と宇宙を飛び交っているから推進力は第二宇宙速度を超えている
(初期ブレードは地球脱出にブルーアース号を必要としていたので、そこまでではない)
普通のボルテッカクラスのフェルミオンビームをバンバン出せる
放てば地表がクレーターになるほどのボルテッカの威力
スパロボでも手がつけられない強さだったわ
ユミのボルテッカほどチートじゃないけど

74名無しさん:2012/03/08(木) 15:38:00 ID:y0.H5n.M0
>>73
ボルテッカクラスの通常技…!?
どんな化け物ですかそりゃww
まだ序盤しか見てないけどそんなにやばくなるのか

75名無しさん:2012/03/08(木) 15:49:29 ID:y0.H5n.M0
しかし考えてみればテッカマンってブラスター抜きでも、地球人の近代兵器がほとんど通じないラダム獣を一撃であっさり切り伏せるような奴らなんだよな
そしてモロトフさんはまだアニメで見たことないけど話を聞く限りじゃブラスター抜きのブレードがかなわない相手…
なんかそう思うと急にラブやマミさんがやばいような気がしてきた
プリキュアも結構やばい相手とは戦ってるけど、そういう相手に勝ててきたのは仲間との相乗効果が大きいからで、単体では決して強いとは言い切れないし

76名無しさん:2012/03/08(木) 17:13:08 ID:ojyewTLg0
>>75
別に敵わんわけじゃないよ
単にあの時は通常ブレードで戦えなかっただけ
ランスさんは自信家だからブレードごとき敵ではないみたいに言っちゃうけど、普通に考えて
強襲突撃型のブレードのほうが、参謀型だったっけ?のランスさんより直接戦闘力はあるはずだ

まぁもしブレードが出てきたら特殊なラダム獣でも用意して、こすく勝とうとしてたのかもしれんが…

77 ◆LuuKRM2PEg:2012/03/10(土) 09:58:20 ID:OvKRMrD20
これより、予約分の投下を開始します

78 ◆LuuKRM2PEg:2012/03/10(土) 09:59:53 ID:OvKRMrD20


 闇に覆われた森の中をモロトフは進んでいた。
 いかに周囲の視界が安定していなかろうとテッカマンたる彼にとっては何の問題もない。常人ならば恐怖を与えるような環境も、モロトフからすれば恐れるに足りなかった。
 しかし彼の表情はある感情によって歪んでいる。それは暗闇や殺し合いという現状に対する恐怖や不安ではなく、怒り。
 完璧なテッカマンたる自身を駒のように扱う殺し合いの主催者に対してもそうだが、この孤島で出会った味方にもその感情を抱いていた。

「おのれエビルめ、この私にメッセンジャーなどという下らん役を押しつけるとは……!」

 無造作に散らばる木の枝を踏みしめながら、モロトフは拳を強く握り締める。
 数時間前、たまたま通った冴島邸という場所で出会ったテッカマンエビルこと相羽シンヤから、裏切り者のテッカマンブレードを呼び出すという面倒な事を押し付けられた。
 すなわち奴は、完全無欠なテッカマンである自分を使いっ走りと見下している。それが何よりも許し難かった。
 しかしだからといって、あそこで断る事など出来るわけがない。今のエビルは自身を打ち破った進化したブラスターテッカマンの力をフォン・リーによって与えられた。
 強引なパワーアップでエビルの肉体は大いに破壊され、いつ死んでもおかしくないらしいがそれでも自身を一瞬で屠る力を持っている。だから、渋々ながら従うしかなかった。

「チッ、何が不完全なテッカマンだ。この私を超えておいて……」

 モロトフの脳裏に蘇るのは、ブラスターテッカマンとなったブレードが放った凄まじい威力を誇るボルテッカ。
 冷静に思い返すと、その威力はボルテッカを放つ前に生じたエネルギーの余波だけでも、大量のラダム獣を屠っていた。アックス、ソード、そして自分自身のボルテッカも流石にそこまでの力は持っていない。
 エビルはそれだけのパワーを手に入れておきながら、不完全なテッカマンだと自称している。だとすると、それを相手に手も足も出せず敗れ去った自分は『不完全』以下なのか?
 無理なパワーアップの反動で寿命が著しく縮んでいる。だから不完全と呼ぶ理屈自体はわからなくもないが、納得など出来るわけがなかった。

「くそっ……!」

 不意にモロトフは右足で道端に落ちていた枯れ枝を踏み潰して砕く。当然ながらそれで彼の苛立ちが紛れるわけがなく、それどころかやり場のない憤りが溜まるだけだった。
 この怒りをぶつける先がないかとモロトフは思っていたが、冴島邸を離れて数時間が経ってから誰にも遭遇していないので苛立ちが募るだけ。傍らに生えた木に思わず拳をぶつけるも、何も変わらない。
 そうして歩いている内にモロトフはようやく森を抜ける。その先には、数階建ての巨大な建物が見えた。

「ここは確かI−5エリア……だとすると、あれは図書館なのか」

 モロトフは地図を目にしながら静かに呟く。
 行くアテも無くただ進んでいたら、南に進んでいたようだ。それを認識した途端、モロトフは自身の行動に軽く後悔を覚える。もしも怒りに身を任せずに冷静に移動し、南東を目指したなら大勢の参加者がいるであろう市街地に行けたかもしれなかった。
 だが、過ぎた事を悔やんでも仕方がない。別にここからでも市街地に向かう事は充分に出来る。そこにブレードがいるとも限らないが、今は少しでも高い可能性に賭けるしかない。
 最初はブレードの気配を探そうともしたがどういう訳か感知出来ず、それどころか冴島邸から離れてからエビルの気配すらも消えてしまった。一瞬、モロトフは疑問を抱くも主催者の仕業だとすぐに気付く。
 恐らく順達は我らテッカマンに結託されて反旗を翻されると拙いと踏んだのか、何か特殊な仕掛けをこの島全域に施したのだ。小賢しい真似をする主催者に苛立ちを抱くも、こうなった以上仕方がない。
 裏切り者のブレードと自滅しようとしているエビルが潰し合っている間、この島に蔓延る蟻どもを一人残らず潰す。そして最後に有能たる自分を愚弄した主催者達も潰すだけだ。

(ブレードの気配はないが、下等な蟻どもが群がっている可能性はあるな……)

 先程までの怒りに満ちた表情が嘘のように笑みを浮かべたモロトフは、懐からテッククリスタルを取り出し、頭上に大きく掲げる。

79 ◆LuuKRM2PEg:2012/03/10(土) 10:01:32 ID:OvKRMrD20

「テック・セッタアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァッ!」

 モロトフの叫びに答えるかのように、テッククリスタルは眩い光を放った。結晶の輝きは辺りの闇を照らしながら、一瞬で彼の全身を包み込む。そのままモロトフの全身に深紅の閃光が生じて、テッカマンへの変身を始めた。
 屈強な体躯は形を変えて、甲虫類のような外骨格に覆われていく。黄緑色に彩られた鎧は硬質感に溢れ、両肩が異様に飛び出ており、胸部からは黄金色に輝く鋭い突起が天に向かって伸びていた。
 やがて彼の身体から発せられる光輝は収まり、四本角を生やした仮面の下から見える瞳が赤い輝きを放つ。それこそが、モロトフの変身を果たした合図だった。
 宇宙を飛来する高度知的生命体ラダムは種族の繁栄をする為に生み出した、他の知的生命体の肉体を利用する侵略兵器テックシステム。その産物が今ここに君臨した。
 その名をテッカマンランス。テッカマンランスへと姿を変えたモロトフは己の名を冠した長槍を左手で握り、地面を全力で蹴って高く跳び上がった。それにより背中のバーニアが火を噴き、飛行スピードを急激に上げる。
 テッカマンの脚力によって地面が砕けるのを見向きもせずに、一瞬で図書館の上空まで辿り着いた。ランスが誇る圧倒的スペックならば、この程度は造作も無い。
 彼は地面を見下ろしながら、エビルより受け取った拡声器を手に取って叫んだ。

「テッカマンブレードよ! この声が聞こえるならば出て来い! 私だ、テッカマンランスだ! この私がこうして呼び出している理由は他でもない、裏切り者の貴様に向けてメッセージがあるからだ! 感謝するがいい!」

 拡声器を使って呼びかけさえすれば、テッカマンの気配を感じられなくともブレードに届く可能性がある。そうでなくとも、テッカマンレイピアのような他の参加者が耳にするかもしれない。
 この放送を聞いて、もしもブレードがやって来るならエビルの元に向かわせて同士討ちを狙い、その他の蟻どもが群がって現れるなら駆除する。それが、ランスの狙いだった。

「恐らく貴様は下等な地球人どもを守ろうなどと、下らない事を考えているだろう! それならそれで結構だ、この私が地球人もろともブレードを潰すだけだからな!」

 ランスの叫びは夜空の元に響き渡るが、ブレードが現れる気配はないし何も返ってこない。

「言っておくが、私の言葉は嘘などではないぞ。もしかしたら貴様はかつて私を倒した力を持っているから、私がそれに怖じ気づくと高を括っているだろうがそうはいかん! 幾ら貴様が進化したといえども、私が地球人を潰す事に何ら変わりはない!」

 一応、エビルとブレードは戦わせるつもりだが基本方針を変えるつもりは無かった。例えブレードが地球人どもを守ると考えていても、そいつらを一人残らず皆殺しにする。それこそが、偉大なるテッカマンの本質なのだから。

「私の言葉が真実であると証明してやろう! 今から十秒以内に貴様が現れないのであれば、私はこの図書館を破壊する! そうなれば中にいる地球人……いや蟻どもは皆、死ぬ事になるだろうな! ハッハッハッハッハッハ!」

 口元に拡声器を近づけて高圧的に笑うランスは、仮面の下から図書館を見下ろす。
 恐らく、ここには戦いに怯えて隠れている地球人どもがいるはずだとランスは考えていた。例えいなくても、破壊の音でブレードを始めとした参加者を誘き寄せる事が出来るかもしれない。どっちに転んでも、ランスにとってプラスにしかならなかった。
 もしもそれらを聞きつけた者が何の力を持たない蟻だったら? 無言で十秒の経過を待つランスは、ふとそんな事を考える。
 何の希望もないまま絶望に震える中、ようやく聞こえた声が圧倒的実力を誇るテッカマンによる死刑宣告。それを耳にして更に絶望した蛆虫どもは、アテもなく逃げ出すだろう。だが自身以外にも殺し合いに乗った地球人がいるだろうから、そんな奴らに安息など与えられるわけがない。
 その果てに恐怖に引きつった顔を浮かべながら、無様に命乞いをする姿を晒させた後に殺す。そうやって自身を満足させる事だけが、弱い地球人が持つ唯一の存在意義だ。
 更にそれを成功させれば、あの忌々しいブレード惨苦を味わわせる事だって出来る。奴に苦虫を噛み潰したような顔を浮かべさせられるなら、万々歳だ。
 憎々しい敵を絶望に叩き落とせる事に充足感を感じ、仮面の下で笑みを浮かべているモロトフは、そうしているうちに十秒が経ったと気付く。拡声器を使った叫びはブレードに届かなかったのだろうが、それなら図書館を破壊するだけ。
 仮にブレードの元に伝わったとしても、時間内に現れなかった奴の責任なのだから躊躇う事はない。

「……貴様の答えはわかった、ここにいる蟻どもを見殺しにするというのだな! 良いだろう!」

80 ◆LuuKRM2PEg:2012/03/10(土) 10:02:17 ID:OvKRMrD20
 その宣言を最後に、ランスは両肩の装甲を図書館に向ける。左右に三つずつ付けられた発射孔にエネルギーを集中させて、放出。圧縮されたパワーは凄まじい発射音を響かせながら、無数の弾丸となって放たれた。
 テックレーザーはランスの眼下に建つ図書館に容赦なく襲いかかり、屋上から次々に破壊する。その度に爆音が響いて、それによる圧倒的な暴風が空にまで襲いかかった。あらゆる物を吹き飛ばす威力を持つ衝撃だが、ランスは微動だにしない。
 もくもくと粉塵が舞い上がるのを見て、ランスは笑みを浮かべる。これだけ撃てば、中にいる蟻どもは苦しむ暇もなく絶命しているはず。例え運良く命を保っていたとしても、それは死ぬまでの時間が延びたに過ぎない。
 助かっていようが無かろうが、死ぬ運命を変える事など出来ないのだ。

「これでもまだ現れないかブレード! ならば――」
「待ちなさい!」

 ランスが再び拡声器を使ってブレードを呼び出そうとしたその時だった。
 足元からトーンの高い声が聞こえる。一瞬、ブレードかレイピアがやってきたのかと思ったがテッカマンの気配は感じられなかったので、それはない。
 恐らくただの地球人だろう。そう思ったランスはようやくやって来た獲物に振り向いた。

「……何?」

 しかし、ランスは呆けたような声を漏らす。
 視界の先に立つのは、睨むようにこちらを見上げている十代半ばと思われる二人の少女。しかしその格好は、少女漫画に出てくるような派手で煌びやかな衣装だった。それに加えてハート型の髪飾りやペレット棒など、いささか緊張感を殺ぐような物もある。
 殺し合いというこの状況にはまるで合いそうにない格好を見て、流石のランスも目を疑ってしまった。





 見せしめのように命を奪われたクモジャキー達を助けられなかったのは、とっても辛い。人を助けられなかった悲しみは、強かった。
 でもそれは何もしなくていい事の言い訳にはならない。もしもここで何もせずに泣いていたら、助けられるはずの人達が無意味な犠牲となってしまう。やるべき事はプリキュアとして、それを一刻も早く防ぐ事だった。
 それにプリキュアのみんなや、マミさんと同じ魔法少女であるほむらちゃんや杏子ちゃんだってきっと誰かを助けるために動いているはず。だからあたしだって、やらなければならない事をしっかりと果たさなければいけない。
 罪悪感に押し潰されそうな心を、桃園ラブは自分自身にそう言い聞かせて支える。責任感や義務感も確かにあったが、その根底にあるのはみんなを助けたいという思いだった。

「結構歩いたわね……この先には図書館があるみたいだから、そこを目指しましょう。ここなら誰かいるかもしれないから」

 まともな明かりがない闇に包まれた道の中で、ラブの隣を歩く巴マミは地図を片手に前を見据えている。ラブもそちらに向くが見えるのは漆黒だけ。星空の光と懐中電灯に照らされているとはいえ、夜の前ではあまりにも弱かった。
 周囲を吹きつける冷たい風もあって、それに対して一抹の不安を覚えるがすぐにそれを振り払う。隣にいるマミの足手纏いにならないと誓ったのだから、絶対に弱音を吐いたりなんて出来ないのだから。

「そうですね。図書館にみんながいるといいけど……」
「でも気を付けて、あそこにいるのはプリキュアや鹿目さん達とは限らないんだから……この殺し合いで人を平気で犠牲にするような奴らがいる事だって有り得るわ」
「……わかってます」

 殺し合い。そんな現状を突き付けられた途端、ラブの中に悲しみがより一層広がっていく。考えたくはないが、今のこの瞬間にも誰かが犠牲になっているかもしれなかった。
 出来る事なら、誰も疑ったりせずにここに連れて来られたみんなを助けたい。でももしも、ノーザやダークプリキュアのような危険な奴らの犠牲となってしまったら、取り返しのつかない事になってしまう。

81ラブとマミ 終わらない約束! ◆LuuKRM2PEg:2012/03/10(土) 10:04:11 ID:OvKRMrD20

(……いけない、しっかりしないと! 美希たんもブッキーもせつなも、それにつぼみちゃん達だってみんな頑張ってるんだから! 
 私がやらなきゃいけないのは、マミさんと一緒にみんなを助ける事だよ! そうしなきゃ、マミさん達の力にもなれないんだから!)

 しかしラブは首を大きく左右に振って、心の中で叫びながら不安を振り払った。こうやって悲しんでいる間こそ、友達みんなが大変な事になってしまうかもしれない。
 助けられるはずの人をこれ以上助けられないなんて、あってはならなかった。だから今はマミのように強くなければいけない。

「ねえ桃園さん、ちょっといいかしら?」
「はい、何ですか?」
「えっと、そんなに大した事じゃないんだけどね。あなたには、今更言う事じゃないかもしれないから」

 一緒に歩くマミの唐突な質問によって、ラブの表情は疑問に染まる。

「もしかしたらこの先、あなたにとって辛い事が数え切れないほど起こるかもしれないわ……あなたの理想を裏切るような辛い事が。でも、そうなっても決して絶望しないで。あなたの助けを待っている人は大勢いるはずだから」
「マミさん……?」
「それにあなたは一人じゃない。桃園さんが真っ直ぐな気持ちを見失わなければ、一緒に歩いてくれる人ときっと出会えるわ……私とあなたがこうして出会えたように」

 そう静かに語るマミは、優しさと暖かさに満ちた笑顔を向けていた。
 そして偶然にも、彼女の言葉と笑顔はとても似ていた。かつて横浜を襲った闇の怪物、フュージョンとの戦いでピンチになった時に出会った夢原のぞみの励ましと。

『大丈夫! 絶対に会えるよ……だって、みんな同じ空の下にいるんだから!』

 大いなる希望の力、キュアドリームである彼女はここにいるマミのように言ってくれた。そうして絶望から立ち直り、いなくなったシフォンを見つけてフュージョンも倒した。
 自分の力で、諦めない強い気持ちを持ちさえすればみんなと出会える。落ち込んでしまった時、横浜に駆けつけてくれたプリキュアのみんなからそう教わった。それを今度はマミが教えてくれた。

「……そうですよね! ここで落ち込んだって何にもならないですから、あたしは諦める気はこれっぽっちもありません! こんな誰かの幸せを奪うような事を許すわけにはいきませんから!」
「やっぱり、桃園さんには言うまでもなかったかしら?」
「いいえ、マミさんみたいに一緒に歩いてくれる人と会いたいのは私も一緒ですから! ありがとうございます!」

 そう言いながらラブは両腕を広げながらマミの元に飛び込む。そのままマミの身体に腕を絡めて、力強く抱擁した。
 人の身体を抱きしめている感触を感じながら、ラブはマミと向き合う。目と鼻の先にいるマミは一瞬だけきょとんとした顔をするも、すぐにまた微笑んだ。

「実は言うと、前にのぞみちゃんって友達から今のマミさんみたいに励まされた事があったんです。みんなとはどれだけ離れても、同じ空の下にいるって……だから頑張る事が出来たんです」
「そうなの……とっても素敵な友達ね」
「はい! とっても前向きで明るくて、いっつもみんなの為に頑張ってた素敵な子なんです! 今度紹介しますよ!」
「ええ、私も是非とも会って話がしてみたいわね。それに、その子や桃園さんについてもっと知りたいの……特に桃園さん達のやっていたダンスがどんなのかがね」
「もしよかったらマミさんも一緒にやりませんか? その方があたしもマミさんも楽しいと思うから! 魔女との戦いだって、あたしが一緒にやりますよ!」
「……そっか、ありがとう!」

82ラブとマミ 終わらない約束! ◆LuuKRM2PEg:2012/03/10(土) 10:05:37 ID:OvKRMrD20
 はきはきとしたラブの声に答えるかのように、今度はマミの方から抱きついてくる。それはまるで母のようにとても暖かくてとても優しいものに感じられた。
 その感触には覚えがある。小さい頃から悲しくなった時、こうやって何度もお母さんが慰めてくれた。そしてその度に泣いてばかりだったあたしは、お母さんと一緒に笑顔でいる事ができた。
 考えてみればこの島に放り込まれてからだって、マミさんがいなかったらずっと一人で泣いていたかもしれない。だからこそ、マミさんのように強くなければいけなかった。
 マミの感触を感じたラブは、そう思っていた。

「ならその為にも、まずはここに連れてこられたみんなを助けないとね!」
「そうですね!」

 そうして抱き合っていた二人は互いを離し、再び歩き始める。彼女達の行く先は闇に覆われていたが、それを恐れる事はなかった。
 例え生まれた世界は違っても、こうして一緒に歩けば何も怖くなんかない。どんなに厳しい困難が待ちかまえていようとも、力を合わせれば絶対に乗り越えられる。離れ離れになったみんなとだって、また会う事ができる。この思いがある限り、止まる事も諦める事もなかった。
 彼女達の間で、穏やかな空気が生まれようとしている。

「幾ら貴様が進化したといえども、私が地球人を潰す事に何ら変わりはない!」

 しかし次の瞬間、その空気は呆気なく破壊された。
 何も見えない暗闇の中から、声が唐突に発せられる。雷鳴のように凄まじい声量で、顔を顰めたラブは思わず両耳を塞いでしまうが、容赦なく鼓膜を刺激した。

「私の言葉が真実であると証明してやろう! 今から十秒以内に貴様が現れないのであれば、私はこの図書館を破壊する! そうなれば中にいる地球人……いや蟻どもは皆、死ぬ事になるだろうな! ハッハッハッハッハッハ!」
「な、何この声!?」
「桃園さん、あれを見て!」

 この状況でも尚、平常心を保っているマミは空を指差している。それにつられてラブは見上げた先には、鎧のような物を巨体に纏った男が飛んでいた。背中から炎を吹き出している緑色の装甲は闇の中で異様な存在感を放っていて、右手に持つ槍は背丈の届くくらいに長い。
 一体あの人は何をしているのか? ようやく出会えた二人目の参加者を前に、そんな疑問を持つ事しかラブには出来ない。しかし宙を飛んだ彼の言葉からして、嫌な予感が脳裏を過った。
 この先には図書館がある。そこにはこの島に連れてこられた大勢の人達が、もしかしたらいるかもしれない。でもあの人はそこを壊そうとしている!

「……貴様の答えはわかった、ここにいる蟻どもを見殺しにするというのだな! 良いだろう!」
「駄目えええええぇぇぇぇぇぇぇ!」

 男の言葉でラブの予感は確信に変わった。何とか止めたいが、ここからでは遠い上に間に合うわけがない。
 せめてと思い彼女は叫ぶが、届く事は無かった。男の甲冑から大量のレーザーが発射されて、容赦なくその下にある建物へ降り注がれていく。
 凄まじい爆発が起こり、それによって生じた赤い光が夜の闇を一気に照らした。轟音と共に舞い上がった爆風は少し離れていたラブ達の元にまで届いて、その華奢な身体を吹き飛ばそうとする。しかし足元に力を込めて、必死に堪えた。
 熱を帯びた風を前にして、反射的に腕で顔を覆ってしまう。不意に彼女は目線を上げて、この先で起こっている破壊活動を凝視した。そこから目をそらすなんて、できるわけがない。
 爆音は止み、それによって吹きつけていた風は粉塵の流れは収まっていく。そしてラブは見てしまった。図書館があったであろう場所から火炎が生じて、黒煙が天に昇っていくのを。それはキュアルージュやキュアサニーが誰かを守る為に使う強い炎などではなく、誰かの命を奪う残酷で無慈悲な炎だった。

「ひ、ひどい……!」
「桃園さん!」

 マミの必死な声が聞こえ、思わず振り向く。隣に立つ彼女の真摯な表情を見て、その意図を察した。
 ラブは懐から鮮やかな飾りが幾つも付いた桃色の携帯電話、リンクルンとクローバーキーを取り出す。これ以上、誰かを犠牲にさせないためにも。
 
「行きましょう!」
「はい!」

 互いに強い声をかけ合い、走り出した。
 右手で握ったクローバーキーを、リンクルンの上部にある鍵穴に差し込んで捻る。それによって表面が横に開くのを見て、中央のローラーを人差し指で強く回した。するとリンクルンの画面から光が発せられ、暗闇を照らしながらラブの全身を包む。
 全身に力が漲るのを感じた彼女は、大きく叫んだ。

83ラブとマミ 終わらない約束! ◆LuuKRM2PEg:2012/03/10(土) 10:08:17 ID:OvKRMrD20

「チェインジ、プリキュア!」

 活力に溢れた声を合図とするように髪留めは消えて、ツインテールが解ける。

「ビート! アーーーップ!」

 その叫びから変身が始まった。
 一歩進むたびにラブを纏う光は変化する。右胸には桃、青、黄、赤の四色が彩られたクローバーが生まれた。先程解けた茶髪は金色に変わり、腰に届くくらいにまで長くなってから再びツインテールとなる。
 すると、華奢な体躯を包んでいた光は弾け飛び、新たに煌びやかな桃色と白に彩色されたコスチュームが姿を現した。両脇腹には赤いリボンが付けられていて、スカートにはフリルのペチコートがいくつも重なっている。
 そして弾けた光は彼女の全身に再び集まった。赤と桃と白の三色を持つブーツ、リボンが備わったリストバンド、リンクルンが収納されたケース、赤いチョーカー、最後の仕上げとしてハート型の髪飾りとイヤリングとして形を変える。
 一瞬に届くかどうかわからない出来事を果たした後、彼女は体内のあらゆる場所から力が流れるのを感じた。

「ピンクのハートは愛あるしるし!」

 力強く宣言しながら両手でハートを作り、胸の前で大きく手拍子を打つ。それは、かつて全パラレルワールドの支配を企んだラビリンスの野望を食い止めた伝説の戦士、プリキュアに変わった合図だった。

「もぎたてフレッシュ! キュアピーチ!」

 人々の愛と幸せを守るプリキュア、キュアピーチの変身を果たした桃園ラブは高らかに名乗る。その声には無意味な戦いから人々を守りたいという、揺るぎない意志が込められていた。
 ふと、キュアピーチは隣を歩くマミに目を移す。見ると彼女の服装も、変身をしていた一瞬の時間で変わっていた。黒いペレット帽、髪飾りのようになったソウルジェム、ベージュと明るめの茶色を基調としたドレス、オレンジ色のふんわりとしたスカート、スカートに似た色彩を持つロングブーツが、見滝原中学校の制服の代わりに纏われている。
 彼女の腕には、複雑な模様が刻まれた銀色のマスケット銃が抱えられていた。

「それが、マミさん達がなってる魔法少女ですか?」
「そう、これが私達魔法少女の姿よ! 桃園さんの方こそその姿がプリキュアなのね? もしかしたら、今はあなたの事をキュアピーチって呼ぶべきかしら?」
「どっちでもいいですよ!」
「オッケー!」

 魔法少女に変身した巴マミと軽く言葉を交わして、キュアピーチは前を向く。彼女の視線は遙か上空にいる、鎧を纏った男に集中していた。

「これでもまだ現れないかブレード! ならば――」
「待ちなさい!」

 そしてこれ以上の破壊を阻止するためにキュアピーチは叫ぶ。すると男は空の上から、彼女を見下ろしてきた。

「何……?」

 両目の部分が赤い光を放つ。その輝きは見る者全てを震え上がらせるような凄みが感じられるも、決して臆する事はなかった。

「……誰かと思って見てみれば、ただの小娘が二人か」
「どうしてこんな事をしたの!? あそこには、たくさんの人がいたかもしれないのに!」
「フン、貴様達蟻どもがいくら潰れたところで何だというのだ? 出来損ないの種族が少し減るだけだろう?」
「なんですって……!」

 何の躊躇いもなしに言い放ったどころか、仮面の下で男は嘲笑している。それを聞いたキュアピーチの中で怒りが沸き上がっていった。
 そして確信する。あの男はノーザやブラックホール達みたいに人の幸せを平気で奪って、みんなの不幸を嘲笑うような奴だと。そんな相手を前に、逃げるという選択肢は彼女にはなかった。
 キュアピーチが構えを取る中、マミは険しい表情を浮かべながら一歩前に出る。

84ラブとマミ 終わらない約束! ◆LuuKRM2PEg:2012/03/10(土) 10:09:09 ID:OvKRMrD20

「出来るなら穏便に解決したいけど、どうやら無理みたいね」
「何故、有能たる私が貴様ら下等種族に寄り添わなければならない? 何の力も持たない小娘の分際で生意気な」
「……そう」

 彼女は静かに頷くが、その声からは確かな憤りが感じられた。いくら温厚なマミでも、こんな身勝手な言い分は流石に許せなかったのだろう。
 宙を飛ぶ男は両腕を広げると、両肩に見える小さな穴から光が発せられた。そして、図書館を破壊した大量のレーザーが降り注いでくる。

「消えろッ!」

 男の叫びが戦いのゴングだった。
 キュアピーチとマミは素早く左右に跳躍し、迫り来る閃光の雨を回避する。レーザーが地面に着弾して爆音が響く中、キュアピーチは疾走した。
 そんな彼女を狙うかのように空を飛ぶ男はレーザーを放ち続けるが、その間を縫うようにジグザグに走って避ける。
 爆発による膨大な熱風と衝撃が襲い掛かり、耳を劈くような轟音が四方から響くがキュアピーチは揺るがない。それどころか、爆風を利用して加速していた。
 数メートルほど走った後、レーザーの勢いが止まる。急に攻撃が止まった事に対する疑問が芽生えようとした瞬間、男は叫びながら遥か上空から急降下してくるのが見えた。

「オオオオオオオオォォォォォォォッ!」

 そしてその手に持つ槍を高く掲げて、キュアピーチを目がけて突貫してくる。轟、と大気を唸らせながら振り下ろされるが、咄嗟に全身を横にずらして彼女は回避した。しかし続けざまに真横に切り払われるが、両膝を曲げた事で刃はキュアピーチの頭上を通り過ぎるに終わる。
 体制が低くなっていく中、彼女は男の懐ががら空きになっているのを見つけた。チャンスを逃す事はないと、右手を力強く握り締める。

「やあっ!」

 そして、その頑丈そうな鎧に拳を叩きつけた。鈍い打撃音が響き、中にいる男は呻き声を漏らすのを聞き取る。
 しかし彼女の拳はそれで止まらない。そのままプリキュアが持つ身体能力を生かして、勢いよく左拳を放った。そのまま三発、四発、五発と両手で鎧を殴り続ける。そうして、渾身の力を込めて六発目のパンチを繰り出した。
 その甲斐があってか、男は僅かに後退する。しかしそれだけで、決定的なダメージになっているように見えない。むしろ、痛みを感じているのはキュアピーチの方だった。
 男の身体を包む鎧の固さはそれほどまでに凄まじい。恐らく、並のナケワメーケ達を超えるかもしれなかった。
 
「ほう、蟻どもにしてはやるようだな……蟻どもにしては、だが」

 現に男は傷付いた装甲を軽く撫でながら、侮蔑したような声を出してくる。
 刹那、轟音を鳴らして男の背後から火炎が吹き出し、再び突貫してきた。凄まじい勢いで迫る男を前に、キュアピーチは瞠目する。鋭い槍の先端が、彼女に届くまで後少し。
 その直後だった。キュアピーチの鼓膜に数発の銃声が響いて、目前から迫る異形の胸部が炸裂する。それも一度までならず、先程キュアピーチが殴りつけた場所を狙うかのように鎧は何度も爆発した。

「ムウッ!?」

 十発ほど着弾した後、手応えがあったのか男の進行は一気に止まる。その隙を逃すことなく、キュアピーチは地面を蹴って飛び込んだ。

「そのまま続けて!」

 そんな彼女を後押しするかのように、マミは叫ぶ。
 数え切れないほどのレーザーの囮をキュアピーチが引き受けている間、彼女はチャンスを待っていた。
 相手は遠近両用の武器を持つのに対して、二人の戦法はそれぞれ近距離と遠距離で別れている。それぞれで力を合わせて特性を最大限に活かすことが勝利への道。キュアピーチに意識を向けさせている間、マミはマスケット銃の引き金を引いたのだ。

「わかりました!」

 そしてキュアピーチは、一瞬だけ振り向いてマミに力強く答えた。
 背後にいる彼女は、こちらを心の底から信頼しているような笑顔を浮かべている。そんな彼女の思いを裏切るのは駄目と自分に言い聞かせて、前を向いた。

「だあああああああああああああっ!」

 腹の底からの咆吼を発し、一瞬で男の目前にまで到達する。そしてもう一度、鎧に拳を叩き込んだ。
 そのまま拳を引いて反対の手を握り締めようとした瞬間、男が槍を突き刺そうとしてくるのを見る。反射的にキュアピーチは追撃を諦め、全ての神経を回避に集中させた。
 身体を横にずらしたことにより、服を僅かに掠るだけになる。しかしそれで終わりではなく、男は二度目の刺突を仕掛けてきた。キュアピーチは斜め後ろに飛んで避けるも、次の瞬間には突きを繰り出される。

85ラブとマミ 終わらない約束! ◆LuuKRM2PEg:2012/03/10(土) 10:11:18 ID:OvKRMrD20

「どうした! その程度かああああぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「くっ!」

 暴風雨のように繰り出される突きを、キュアピーチはただ回避する事しかできない。その速度は、相手を一瞬で戦闘不能に追い込むには充分だった。
 それでも彼女の中に諦めという言葉はない。ここで少しでも弱きになってはその瞬間に負けてしまうし、マミの期待を裏切る事になってしまう。だから今は、避けながら機会を窺うしかなかった。
 また一突きを避けて、キュアピーチは素早く男の横に回り込む。そんな彼女に振り向きながら、男は槍を右手で高く翳した。そのまま彼女を両断しようと、勢いよく振り下ろされる。
 その瞬間、男の動きは唐突に止まった。頭上数センチで槍が制止した瞬間、男の全身に黄色いリボンが何本も雁字搦めになっているのをキュアピーチは見る。
 これを好機と見た彼女は両手で男の右腕を掴んで一回転し、その巨体を振り回しながら力強く放り投げた。

「何――ッ!?」
「はあああああぁぁぁぁぁっ!」

 キュアピーチに投げ飛ばされた男は錐揉み回転をしながら、放物線を描くように宙を舞う。直後、数回の銃声が鳴り響き、凄まじい爆音と共に男の身体は吹き飛ばされた。
 今の銃撃も敵の動きを縛ったリボンを出したのも、全てはマミがやってくれた事だとキュアピーチは察する。
 そんな彼女に礼を言おうと振り向いたら、いつの間にか大砲のように巨大な銃を抱えていた。その口には魔力による光が集まっていくのが見える。

「ピーチ、一気に決めましょう!」
「任せてください!」

 マミは必殺技を叩き込もうとしているのを知ったキュアピーチの手元に、ピックルンが現れた。彼女は変身を行ったときのようにそれをリンクルンに差し込み、カバーを開いて現れた球体を右に回す。
 すると、リンクルンの画面から凄まじい光が再び放たれて、キュアピーチの頭上に集まっていく。それは先端で桃色に輝くハート形の宝石と、側面に色取り取りのスイッチが備わった杖、キュアスティック・ピーチロッドに変わった。
 落下してくるピーチロッドを掴み、手中で一回転させながら真っ直ぐに向ける。

「届け、愛のメロディ! キュアスティック、ピーチロッド!」

 その掛け声と共に、中指と人差し指の二つで滑らせながらピーチロッドのスイッチを押した。穏やかな音色が鳴り続けた後、先端の宝石が燦爛と輝く。

「悪いの悪いの、飛んでいけっ!」

 そして彼女は高く跳躍しながらピーチロッドを高く掲げた。そのまま着地し、杖の先端を男が吹き飛んだ方向に向ける。

「プリキュア! ラブサンシャイン――!」
「ティロ――!」

 キュアピーチはピーチロッドの先でハートの模様を描くと、ピンク色の光を放ちながら形となった。
 彼女の隣に立つマミが構える銃口から放たれる輝きも、同じように強くなっていく。

「フレエェェェェェェェッシュッ!」
「フィナーレッ!」

 そして彼女達は叫びながら、準備した必殺技を放つ。
 ピーチロッドとマスケット銃から開放された二つのエネルギーは、まだ夜明けであるにも関わらずして朝が訪れたと錯覚させてしまう程に、周囲に光を与えていた。
 プリキュア・ラブサンシャインフレッシュとティロ・フィナーレは闇の中を一直線に進みながら、男を一瞬で飲み込む。すると、ピーチロッドから生まれたハートは一気に肥大化し、そこからまた小さなハートがいくつも生まれた。

「はあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 眩い輝きを前に、キュアピーチはピーチロッドで円を描く。
 光の奔流は更に激しくなり、闇を更に照らしていった。まるで太陽のように周囲へ広がり、暗闇で見えなくなったあらゆる存在を無差別に映し出す。
 しかし彼女達の生み出す光は永遠には続かない。いかにプリキュアと魔法少女が生み出した眩い輝きであろうと、限界があった。
 されど、光はただ消えるだけで終わることはない。交わった瞬間から膨張していた光はついに炸裂し、冷たい大気を一気に震撼させた。崩れ落ちた図書館の瓦礫は一気に吹き飛び、草木や土を飲み込んでいく。
 しかし、周りにいる小さな命を奪うことは決してない。彼女達の力は誰かを犠牲にするためでなく、そんな尊い命を守るためにもある。
 男を飲み込んだ巨大な光は柱のようになり、遙か彼方の大空を目指して一直線に伸びていった。

86ラブとマミ 終わらない約束! ◆LuuKRM2PEg:2012/03/10(土) 10:13:47 ID:OvKRMrD20





 凄まじい光が収まるのと同時に、荒れ狂っていた突風はようやく収まる。空気が穏やかになった頃、夜の闇も蘇った。
 エリア一帯を巻き込む程の暴風を耐えた巴マミは、冷や汗を流しながら溜息を吐く。魔法で作ったマスケット銃は、ティロ・フィナーレの発射を終えた頃にはもう消えていた。

(……これが、魔法少女でも魔女でもない相手なのね)

 二つの光線によって暖かみの残った風を浴びるマミは、呼吸を整えながら戦慄する。
 桃園ラブが変身するキュアピーチを始めとしたプリキュアや、異様な鎧を纏った大男も自分の世界では見たことがない。
 その力は、どちらも一騎当千と呼ぶに相応しかった。キュアピーチも鎧の男も身体能力は自分を遙かに上回っている。今まで出会った魔法少女や魔女でも、これほどの実力者は見たことがなかった。
 恐らく、キュアピーチと出会わないまま男と遭遇してしまったら、今頃とっくに死んでいただろう。この二人のような参加者が他にもたくさんいる以上、一人で戦っても生き残れる可能性は限りなく低かった。
 キュアピーチには感謝しなければならない。彼女は出会って間もない自分に息を合わせてくれただけでなく、囮も引き受けてくれたのだから。

「ピーチ……」
「はい、わかってます……!」

 しかし今、ここで気を緩めて彼女を称賛するわけにはいかない。お菓子の魔女との戦いみたいな油断は許されなかった。
 そんなこちらの意図をキュアピーチは察しているのか、表情は緊張で染まっている。そんな彼女の様子を一瞥したマミは、魔法で作った二丁のマスケット銃を握り締めた。
 彼女達は前方でもくもくと立ち上る土煙を睨み付ける。そこから、機械的で鈍い足音を響かせながら、一つのシルエットが浮かび上がった。

「フッフッフッフッフ……まさか下等な蟻の分際で、この私にダメージを負わせるとは」

 煙の中から、ゆっくりと鎧の男が歩いてくるのが見える。予想はできていたが、それでも戦慄が走った。
 いくら相手が強敵だからといって、こちらの連係攻撃も決して弱くはない。それでも、相手からは余裕が感じられた。
 マミは思わず歯を食いしばってしまう中、男の足音が鼓膜を刺激する。

「有能たる私に痛みを与えるとは……どうやら、貴様らはただの蟻ではないことを認めざるを得ないようだな。光栄に思え」
「ふざけないで!」

 明らかな嘲笑に対し、キュアピーチは隠すことのない怒りが混ざった叫びで返した。

「貴方は何故、こんな事をするの……? こんな下らない殺し合いに勝ち残ったって、何かが得られる保証なんて無いのよ」

 マミの言葉はキュアピーチとは対照的に静かだったが、それでいて烈火のような憤りが込められている。
 相手は魔女やその使い魔と違って意志を持つ存在だから、何か特別な理由があるのかもしれない。そんな僅かな可能性に賭けて、対話を持ち込んだ。

「何を言い出すかと思えば……だが、まあいい。私自身、あの加頭と名乗る地球人に従うつもりなど毛頭無い。この私にこんな屈辱を遭わせた輩など、一人残らず捻り潰すつもりだ」
「それなら、どうして私達を……?」
「言ったはずだ、私に貴様ら地球人を守る義理など無いと。この宇宙に貴様らのような弱い種族など、邪魔なだけだ」
「随分と勝手なことを言ってくれるわね」

 吐き捨てるような男の答えに、彼女は確信する。例えどれだけ話し合っても、この男とは決して分かり合うことができないと。
 キュアピーチの理想は裏切ってしまうが、ここで男を倒さなければ確実に犠牲者が出る。他者の命を奪っては結局、順達から殺し合いに乗ってしまったと嘲笑われてしまうだろうが構わない。
 自身の手を汚すのを躊躇って、守りたい人達を守れなくなるなんてあってはならなかった。

「私はここで貴方を倒すわ……ここで放っておいたら、貴方はもっと多くの人達を犠牲にするでしょうから」
「あたしだって、あなたみたいな奴の好きにはさせない! 絶対に止めてみせる!」
「貴様ら如きが私を倒すだと? 面白いことを言ってくれる……」

 やがて歩みを止めた男の両眼が、より一層赤い輝きが増していく。そこから放たれる威圧感は、初めて魔女を見た時のように重苦しかった。
 しかしマミはそれに押し潰される事は決してない。隣には、同じ道を歩いてくれる頼れる仲間がいるのだから。

87ラブとマミ 終わらない約束! ◆LuuKRM2PEg:2012/03/10(土) 10:16:19 ID:OvKRMrD20

「我が名はテッカマンランス……貴様ら愚かな地球人どもに死をもたらす、完全たる存在だ!」
「テッカマン……?」

 聞き覚えのある単語の意味を反芻する暇もなく鎧の男、テッカマンランスの背中は火を噴き、大気を震撼させながら突貫してくる。

「ッ!」

 徐々に迫るランスを前に、マミは反射的に魔法でリボンを作って巨体を縛り付けようとするが、その手に握る槍の一振りによってあっさりと両断された。
 それでも少しでも動きを止める為、ランスに向けたマスケット銃の引き金を引く。一度撃つ度に銃を放り投げ、周りに浮かぶ次の銃を拾っては発砲。しかし次々に放った弾丸も、ランスは槍を横に振るって弾いた。
 瞬く間に目前にまで接近したランスが槍を振り下ろそうとするのを見て、マミは両手で握ったマスケット銃で受け止める。
 耳障りな金属音が鳴り響き、赤く煌めく瞳と目線が合った。

「くっ……!」
「小娘如きが私と力比べだと? 笑わせる!」

 頭上より襲いかかる圧力は凄まじく、今にも押し潰されてもおかしくなかった。体格はランスの方が大きい上に、純粋な腕力も魔法少女になったマミを遙かに勝っている。
 震える両腕で何とか押し返そうとするが、微動だにしない。

「マミさんっ!」

 こちらを心配しているようなキュアピーチの声が聞こえてくるが、振り向く余裕など無かった。
 このままではまずい――そうマミの中で警鐘を鳴った瞬間、視界の外から眩い桃色の光が飛び込んでくる。それは先程、キュアピーチがランスに放った必殺技の輝きにとてもよく似ていた。
 それに釣られてマミとランスが同時に振り向いた先では、キュアピーチがハートの形を作るように構えていた両手から眩い閃光が放たれ、闇を照らしている。

「プリキュア! ラブ・サンシャイィィィィィィィンッ!」

 そして彼女は両手を広げると、圧縮された光は一気に開放された。そのままランスの巨体だけを飲み込み、勢いよく吹き飛ばしていく。
 流れた光の暖かさを感じながら、急にランスの怪力から解放されてマミは思わず蹌踉めいた。
 そして、キュアピーチが慌てて寄ってくる。

「大丈夫ですか!?」
「ええ、ありがとう……おかげで助かったわ」
「よかった……!」

 安堵したような表情を浮かべるキュアピーチを見て、マミは思わず微笑んだ。しかし今は気を休めている暇など無い。
 彼女達はランスの方に振り向く。その鎧は所々に傷が生じているが、中にいると思われる男はすぐに立ち上がっていた。

「それで終わりか?」

 これだけの攻撃を受けてもなお、ランスからは余裕が感じられる。
ピーチロッドから放ったラブサンシャインフレッシュよりも劣ったかもしれないが、それでも今の光線は並の魔女なら一撃で倒せる威力を持っているはずだった。だが、あの鎧はダメージを通していない。
 どう考えても、天秤はランスの方に傾いていた。恐らく、下手な小細工を仕掛けて攻撃しても勝てる見込みはまるでない。
 ならば、ダメージをひたすら蓄積させてランスの限界を待つしかなかったが、それを簡単に許す相手ではなかった。

「吹き飛べっ!」

 そしてランスの両肩の穴よりまたしても光が生じ、音を鳴らしながらレーザーが放出されてキュアピーチとマミに迫る。
 彼女達は回避しようと反射的に跳躍するが、今は開戦時と比べて距離が縮んでおり、怒濤の勢いに巻き込まれるしかなかった。

88ラブとマミ 終わらない約束! ◆LuuKRM2PEg:2012/03/10(土) 10:17:01 ID:OvKRMrD20

「きゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ク――――ッ!」

 暴力的な光の嵐を前に、彼女達は紙のように容赦なく吹き飛んでしまう。火で炙られるような全身の痛みと共に、大きく揺れる視界が閃光に飲み込まれた。
 数秒ほど宙を舞った後、マミの華奢な身体は音を立てて地面に叩き付けられてしまい、帽子が転がり落ちる。しかしそれで止まる事はなく、受け身も取れずに何度も跳ねた。
 数メートルほど転がった後、ようやく止まる。しかしそのダメージは凄まじく、すぐに立ち上がることが出来なかった。
 それでもマミは魔法を使って全身の傷を癒そうとするが、狙ったかのようにランスが背中を踏み付けてくる。その衝撃によって、せっかく使った魔法も掻き消されてしまった。

「う……あっ!」
「弱い……まるで弱い」

 巨木のようなランスの右足は、マミの背中をひたすら磨り潰そうと動く。しかし彼女はそれに屈することなく、少し離れた場所に放置されたマスケット銃に震える右腕を伸ばした。
 しかし指先がようやく触れそうになった直後、マミの手にランスが持つ槍が突き刺さる。その上、傷口を広げられるかのように刃先が押し込まれていった。

「あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ……!」

 鮮血に染まった右手から伝わる熱と激痛が更に増し、悲痛な叫びが喉より発せられる。それを狙ったかのように槍はより沈んでいき、出血の勢いは増した。
 マミの全身から脂汗が滲み出て、痙攣したかのように右腕が震える。激痛によって表情が苦悶に満ちていくが、それでもランスを睨んだ。

「どうした、先程までの威勢は? 私を倒すのではなかったのか?」
「……まだよ。まだ、私は……!」
「何だというのだ?」

 反抗の意思をぶつけようとしたが、ランスの足から伝わる重量が増していき、呆気なく遮られてしまう。骨が軋むような音が響いてきて、すぐに折られてもおかしくない。
 このままでは一方的に嬲り殺しにされてしまうのは、火を見るより明らかだった。しかしだからといって、絶体絶命とも呼べるこの状況を打破する方法がまるで思い浮かばない。
 ランスの足をはね除ける力なんてないし、ここからマスケット銃に触れることも出来ない。魔法を使って新たに武器を作ろうとしても、そこからの攻撃が通るわけがなかった。

(このままじゃ――!)
「あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 八方塞がりとなって、思考に絶望が芽生えていくマミの耳に叫び声が聞こえる。激痛によって視界が歪む中、彼女は見上げた。そこでは、キュアピーチがランスに目がけて走りながら、拳を振るっている。しかしランスはそれを呆気なく受け止め、そのまま彼女の身体を殴り返した。
 鈍い音が響いて、キュアピーチは微かに蹌踉めく。それでも踏ん張り、ランスに強い眼差しを向けていた。

「マミさんを……離しなさいっ!」

 所々に傷が生じている身体にも関わらず、彼女は握り締めた拳を放つ。その速度は音の領域に届くほどだったが、ランスはそれを軽々と避けた。そこからピーチは矢継ぎ早に反対の拳を放ち、しなやかな足で鋭いハイキックを繰り出す。
 だが、ランスはそれらを全て捌いて、反撃とばかりに殴りかかった。レーザーのダメージが凄まじかったのか、その巨大な拳を前に為す術もなくキュアピーチは吹き飛ばされる。
 ここから少し離れた地面に転がるも、それでも彼女はすぐに立ち上がった。

「駄目よピーチ……戦っちゃ駄目! 逃げて!」

 しかしマミは、未だに立ち向かうキュアピーチの姿を見ても喜ぶことが出来ない。
このまま戦っても、圧倒的実力を誇るランスの前では一方的に蹂躙されるしかなかった。最初から、数の有利で通用する相手ではない。
 本当ならば今すぐにでも、ここから援護射撃をしてランスの意識をこちらに向けさせたかったが、そんな事は不可能。だからせめて、彼女だけでも逃がすしかなかった。

「目障りな蟻め……消え失せろ」

 だが、そんなマミの願いは叶わない。
ランスの両肩から、無慈悲にもあのレーザーが再び放射されたのだ。無数の閃光は何の躊躇いもなく彼女を食い尽くし、そして勢いよく爆発する。
 キュアピーチの立っていた場所は轟音を鳴らしながら吹き飛び、火柱が高く昇った。熱を帯びた大気がピリピリと震撼し、倒れていたマミの肌に容赦なく突き刺さる。

89ラブとマミ 終わらない約束! ◆LuuKRM2PEg:2012/03/10(土) 10:18:18 ID:OvKRMrD20

「ピ、ピーチ……ッ!?」

 燃え盛る炎を前にして、マミの中で芽生えてきた暗い感情が更に湧き上がった。
 広がり続ける紅蓮の炎がただの幻であって欲しいと切に願う。しかしそんなマミの思いを裏切るかのように、凄まじい熱気は伝わってきた。
 殺されてしまったのか?
 ようやく巡り会えた頼れる少女を見殺しにしてしまったのか?
 信頼を寄せていた彼女を支えることが出来なかったのか?
 様々な最悪の結果が脳裏を駆け巡っていき、どす黒い絶望がマミの心を塗り潰そうと迫り来る。されど、そんな彼女の心境に気遣う者は誰一人としていない。
 
「次は貴様の番だ」

 そう冷たく言い放ちながら、ランスは地面もろともマミの手に刺した槍を無理矢理引き抜く。動きを拘束していた巨大な刃から開放されるも、開けられた風穴から鮮血が吹き出した。
 しかしそれで自由になれるわけではなく、ランスは右腕だけでマミの首を掴み、軽々と宙に持ち上げる。右手から血が滴り落ち、端正な顔が更に歪んだ。

「く……っ!」

 ランスの凄まじい握力が襲いかかり、首がメリメリと音を鳴らしながら軋む。その拘束から脱しようと血に濡れた手で腕を掴んで抗うが、状況は何も変わらない。
 ただ、ランスの赤い瞳が氷のように冷たく輝いている。そこから放たれる殺気が更に激しくなった途端、マミの腹部に呆気なく槍が突き刺された。

「ヴ、グ――ッ!」

 声にならない程に悲痛な叫びと共に、口から鮮血を吐き出してしまう。串刺しにされた腹筋からも血が流れ出し、刃先が余計に赤で染まった。激痛によって全身が痙攣するが、それでも返り血を浴びたランスは離したりなどしない。

「全くもって、無様だな……」

 失血と酸欠によって命が削り落ちていく中、マミはランスが嘲弄してくるのを聞き取る。

「その程度の力で我ら完全たる存在に刃向かおうとは烏滸がましいにも程がある。貴様らが私を倒せるなどと、本気で思っていたのか?」
「……わ、私は……負けてなんか……!」
「自分が今置かれている状況を判断する頭もないとは、実に滑稽だな!」
「いいえ……まだよ……ま、まだ……戦える……! 魔法少女として、戦ってみせる……!」

 激痛で震える唇を動かし、必死に言葉を紡いだ。
 それはもう負け戦でしかないのは誰がどう見ても明白だったし、マミ自身も理解している。しかしそれでも、諦めることは出来なかった。ここでランスをみすみす逃がしてしまえば、キュアピーチを冒涜する事になってしまう。
 だから少しでもランスを倒す可能性を上げるために、右手の傷を魔法で癒した。それが焼け石に水でしか無いにしても、やるしかない。
 この命に代えてもここでランスを仕留めてみせる。そうでなくとも、少しでもダメージを与えなければならない。実力に差があるなんて理屈など関係なかった。
 マミは自らにそう言い聞かせながら、ようやく治癒した手でマスケット銃を握り締める。

「この期に及んでまだ助かろうとするとは、愚かを通り越して哀れだな……
弱者は弱者らしく、大人しく私に潰されればいいだけの事……弱いくせに身の程を弁えぬからこうなると、何故わからん?」

ランスが何かを言ってくるがどうでもいい。今は残された力を振り絞って、奴を倒すことだけを考える。どうせ死に行く命なのだから、せめて少しでも成し遂げなければならなかった。
 今の自分自身を奮い立たせる決意を胸に、彼女は震える腕に力を込める。その時だった。

90ラブとマミ 終わらない約束! ◆LuuKRM2PEg:2012/03/10(土) 10:21:10 ID:OvKRMrD20

「……ほう、まだ立ち上がるのか」

 気がつくと、ランスはこちらを向いていない。意外そうな声を出しながら、いつの間にか横を向いていた。

「……弱くなんか、ない」

 続くように聞こえた声によって、マミの意識は急激に覚醒する。それは小さくて震えるような呟きだったが、確かに耳へ届いた。
 腹部を走る苦痛を無視してマミは振り向く。すると、すぐに見つけた。

「ピ……ピーチ……!?」

 あらゆる生命を奪い取るであろう煉獄の炎を背に、蹌踉めきながらもゆっくりと歩くキュアピーチの姿を。

「マミさんは……弱くなんかないっ!」





 体中が悲鳴をあげている。いくらプリキュアの強靱な肉体でも、ランスに負わされたダメージは動きを確実に鈍らせていた。全身もコスチュームもボロボロになり、皮膚の一部が焦げていた。しかしそれでもキュアピーチは立ち上がって進む。
 テッカマンランスが繰り広げている一方的な暴力によって、頼れる先輩である巴マミが傷付いていた。彼女もボロボロなのに、決して逃げようとせずに戦っている。
 絶対に諦めないで、最後まで頑張ろうとするその姿はプリキュアと同じだった。

「弱くない……だと? ハッ、笑わせる」

 だから、そんな彼女を馬鹿にするランスは許せない。そしてそれ以上に、そんな彼女を危険な状態にさせてしまった自分が許せなかった。でも今は、それを悔やんでいる場合じゃない。
 一刻も早くマミを助け出すことが、何よりも最優先だった。

「弱くなんかないよ……マミさんはとっても強い人だよ!」
「こんな虫けらが強いだと? 何を馬鹿な――」
「強いに決まってる!」

 ランスが続けるであろう侮蔑の言葉を遮るために、キュアピーチは大きく宣言する。未だに輝きを失わないその瞳で、ランスを射抜きながら。

「マミさんは、泣いていたあたしの事を励ましてくれた! それにマミさんはここに連れてこられたたくさんの人達を助けるために戦ってる!
 今までだって、魔女って奴らからみんなの幸せを守るためにたった一人で戦ってきた! そんなマミさんが弱いだなんて……絶対に、絶対にありえない!」

 その言葉に合わせて、キュアピーチは地面を蹴って疾走する。ランスがマミの身体を槍から無造作に引き抜くのを見て、思わず拳を強く握り締めた。
 一瞬で目前にまで辿り着いた途端、赤く染まった槍で何度目になるのかわからない突きが放たれる。キュアピーチは左足を軸にして回転し、刃を回避しながら目を向けていた。
 ランスが武器を握り締めている、左手の手首を。

91ラブとマミ 終わらない約束! ◆LuuKRM2PEg:2012/03/10(土) 10:25:24 ID:OvKRMrD20

「はあああああぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「何ッ!?」

 キュアピーチは腰を深く落とし、素早く正拳突きを叩き込んだ。拳が激突する凄まじい音が鳴った瞬間、衝撃によってランスの手から槍が弾かれる。
 高速回転をしながら宙を舞い、焼け焦げた地面に突き刺さるのにキュアピーチは目を向けない。彼女は反対側の拳をランスの胴体に叩き込もうとした。

「この程度で私が、止まると思ったかぁっ!」

 しかしランスは怒号を発しながら岩のように大きな拳を握り、勢いよく振り下ろしてくる。それを前にキュアピーチは上半身を横にずらして回避するが、手元が狂ってパンチは鎧を掠めるだけになってしまった。
 それでも彼女は止まらない。続くように迫るランスの拳に抗うように、キュアピーチは力の限りに腕を振るった。

「だああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォッ!」

 叫び声と共に互いの拳は残像が残る程の速度で繰り出され、傍目からは何百本もの腕が飛び出していると錯覚させてしまう。しかし当の本人達はそんなことなど知らずに、ただ一心に打撃を放っていた。
 神速の領域に達する攻撃は時に拳同士が激突し、時に肉体を掠り、時に避けられるものの、どちらも本体には届かない。それでも相手を倒すために、ひたすら連打を続ける。拮抗が開始されて数秒経った頃には既に百発を超えていたが、それを認識する者は誰一人としていない。
 やがてキュアピーチは渾身の一撃を叩き込もうと握り締めた拳を一直線に放つ。それは同じように繰り出されたランスの拳と衝突し、周囲の大気を震撼させた。衝撃によって轟く風は荒れ狂って、燃え盛っていた火炎を容赦なく吹き飛ばす。
 辺り一帯を覆っていた熱気が吹き飛ぶ中、キュアピーチとランスは同じタイミングで背後に飛んだ。そこから休む暇もなくキュアピーチは両手を組み、力を集中させる。圧縮されたエネルギーは一秒も経たない内に、桃色の輝きを放った。
 直後、ランスの両肩が輝くのを見て、キュアピーチは両手を前に広げる。

「プリキュア! ラブ・サンシャイィィィィィィィィンッ!」
「食らえええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 二度目のプリキュア・ラブサンシャインと何度目になるかわからないレーザーは同時に放たれ、一瞬で激突した。桃と金の光線は拮抗し、接触面で爆発を起こして地表を激しく揺らす。轟音と共に生まれ落ちた衝撃は烈風となりながら、砕け散った大地が大量の土煙となって舞い上がらせた。
 瞬時に辺りの視界が遮られた途端、煙の向こう側からジェットエンジンの轟くような音が聞こえる。反射的に光線を止めたキュアピーチの前に、煙から飛び出すようにランスが現れた。
 目を見開くキュアピーチの前で、ランスはいつの間にか取り戻していた槍を振り下ろそうとする。キュアピーチは立ち向かうために構えた、その瞬間。

「ティロ――」

 ドン、と音を立てながら地面が揺れる。キュアピーチがそれを認識した瞬間、激しく吹きつける風が横に流れるのが見えた。

「――フィナーレッ!」

 そして、大砲が発射されたように凄まじい音が発せられる。次の瞬間、視界の外から現れた光がランスに激突し、一気に横へ吹き飛ばした。
 その一撃をキュアピーチは知っている。すぐに光が放たれた方へ振り向くと、巨大なマスケット銃をマミは抱えていた。腹部の傷は魔法で使ったのか既に癒えていたが、失血の影響で顔が青白くなっている。
 マミは満身創痍の身体であるにも関わらずして、ティロ・フィナーレを放ったのだ。

「マミさん、その身体で――!」
「私の事は良いから、そのまま続けて! 早く!」

 不安に駆られたキュアピーチの言葉は、いつものマミからは想像出来ないほど焦りに満ちた叱咤によって遮られる。彼女は今にも倒れそうなはずなのに、そんな素振りは決して見せずに鋭い目線を向けていた。
 ここで振り向くことは、力を尽くしてくれたマミへの侮辱でしかない。せっかく作ってくれたチャンスを逃したら、今度こそランスを倒すことが出来なくなってしまう。

92ラブとマミ 終わらない約束! ◆LuuKRM2PEg:2012/03/10(土) 10:28:14 ID:OvKRMrD20

「お願い、急いで!」
「……はい!」

 本当なら前に立って謝りたかったが、マミがそんな事を望んでいる訳がない。だから前を向いて走り出し、レーザーを食らって手放してしまったピーチロッドを拾い上げた。
 そのまま八つのスイッチを指で滑らせるように触れて、再び音色を奏でる。生死を賭けた場の雰囲気とまるで合わない優しいメロディが終わり、宝石は光を放った。

「貴様達……どこまでも完全たるこの私を愚弄する気か! 許さん、許さんぞ! その罪、死をもって償うが良い!」

 ランスの震える声からは確かな怒りが感じられる。そのまま両腕を広げて、胴体を前に突き出した。硬質感の溢れる首の装甲が左右半分に開き、埋め込まれていた三つの宝玉が赤い稲妻を放っているのが見える。
 続くように発せられた波動が肌に突き刺さって、ランスの切り札が来るとキュアピーチは確信した。恐らくその威力は、先程まで何度も発射されたレーザーとは比べ物にならないかもしれない。最悪、一歩間違えたらそのまま負けてしまう可能性だってある。
 それでも逃げるつもりはこれっぽっちもない。

(マミさんは苦しいのを我慢して、わたしの為に頑張ってくれた! だから今度は、わたしが頑張る番だよ!)

 マミは自分を逃がす為に必死に戦ってくれたのが何よりも嬉しかった。その優しさを裏切るのに後ろめたさを感じるが、今だけは彼女の言う事を聞けない。もしここで彼女を見捨てて逃げ出したりなんかしたら永遠に自分を許せなくなるし、何よりも誰かを助けることが出来なくなる。
 後ろにいるマミを救えなければ、どうやって他のみんなを救うのか。何よりもマミも自分の立場だったら、最後まで逃げないはず。

(マミさんはとっても大きいし……とっても強い! だから、誰かを犠牲にする奴らに負けたりなんかしない!)

 そんな彼女の為にも、絶対に屈するわけにはいかなかった。みんなの幸せの為に自分を犠牲に出来るマミと一緒に戦うならば、このまま進み続けるしかない。そんな思いに答えたかのように、キュアピーチが握り締めるピーチロッドはより強く発光した。
 まるでピルンも応援してくれているかのように思えて、彼女の闘志も更に燃え上がる。

「プリキュア! ラブサンシャイン――」
「ボル――」

 目前にまで迫ろうとしたその時、ランスの首に埋まっている宝玉の奥底から赤い輝きが灯された。しかしキュアピーチはそれに構うことなどせずに飛ぶ。
 そのまま彼女は、ピーチロッドを持つ腕を真っ直ぐに伸ばし、三つの宝玉の間に先端を翳した。

「フレエエエエエエエエエエエエエェェェェェェェェェェェェェェェェェェシュ!」
「テッカアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」

 そして、二つの光は零距離で放たれた。





 全ての存在を守る為に存在するプリキュアの光線と、全ての存在を破壊する為に存在するテッカマンの光線。相反する理念を抱く二つのエネルギーは開放され、ほんの一瞬で衝突した。
 極大の光同士は鬩ぎ合いながら膨張し、エリア一帯を照らす。その輝きはこれまでのとは比較にならず、一つの恒星を凝縮したかのようだった。
 それはキュアピーチとテッカマンランスだけに留まらず、当然の事ながら付近に広がる数多の存在を容赦なく巻き込む。完全に崩れ落ちた図書館の瓦礫やそこに置かれていた書籍は跡形もなく消滅し、戦いの余波によって荒れ果てた大地は数え切れない量の亀裂を生みながら揺れて、盛んに燃え盛る炎は瞬く間に飲み込まれた。
 しかしそれを巻き起こす当の本人達は、周りで起こる全ての出来事に一切目を向けていない。キュアピーチはランスを睨み、ランスはキュアピーチを睨んでいた。互いが相手を打ち破る為に、揺るがない鋭い瞳で射抜いている。
 だが、永遠には続かない。光線同士の接触面は炸裂し、近接していた二人を無理矢理引き離した。それが引き金となったかのように、猛り狂う光はより拡大していく。
 押し広げられる輝きは振動する地面を抉って、そのまま跡形もなく消滅させた。それでもまだ留まることを知らず、無差別に拡散する。
 それはとても熱く、とても大きく、とても丸く、とても眩い。まさしく、世界全てにその光を照らす太陽のように、凄まじい輝きを放っていた。




93ラブとマミ 終わらない約束! ◆LuuKRM2PEg:2012/03/10(土) 10:33:53 ID:OvKRMrD20


 数多の世界の情報が書かれている書籍が結集された、I−5エリアに建っていた図書館は既に跡形もなく消えている。代わりに残っているのは、半径数キロメートルの広さを持つクレーターだけだった。それが全て、たった三人だけの戦いによって引き起こされたと聞いても、誰一人として信じないかもしれない。
 しかし、紛れもない事実だった。

「……あ、ぐっ……!」

 そしてその中央で、テッカマンランスはゆっくりと起きあがる。しかしその瞬間、全身に激痛が走って仮面の下で表情を顰めた。ランスはその手に握るテックグレイブを杖にして、足元がふらつきながらも立ち上がる。
 すり鉢状に空いた穴の中で辺りを見渡すが、そこには誰もいない。キュアピーチと呼ばれていた小娘も、マミと呼ばれていた小娘も。
 隠れて不意打ちを仕掛けようとしているのかと思ったが、気配は全く感じられなかった。

「この私が……ここまで追い込まれただと……!?」

 地面の焼け焦げた匂いが鼻腔を刺激する中、ランスは怒りに震えた声を漏らす。完全無欠の存在と自負し、この世界に集められた蟻どもを捻り潰すつもりだった。だが実際は、たった二匹の小娘どもにあしらわれてしまう。
 それが何よりも許せず、ランスはクレーターから跳び上がって捜したが、やはり誰もいない。逃げられたか、それともボルテッカによって吹き飛ばされたか。
 だが、いなくなった以上は気にしても仕方がない。死んだのならそれでいいし、生きているのなら再び現れた時に始末すれば良いだけだ。あの傷ではどうせ長くは保たない。

「……くそっ、思いの外ダメージが大きいとは」

 クレーターの外に出て、地面に着地しながら舌打ちする。すると全身を覆う鎧が発光し、モロトフの姿に戻った。今のコンディションは再び戦う分には問題ないが、今は少しでも楽になりたい。それを怠ってまた蟻どもに舐められては、たまったものではなかった。
 思わず息を吐きながら、モロトフは戦いによって生まれたクレーターに目を向ける。普通に見れば深く、戦いの凄まじさを物語っているが結果に納得が出来なかった。

「やはりボルテッカの威力は抑えられてるか……やってくれるな、加頭よ」

 全てのテッカマンの切り札とも呼べる、反粒子物質フェルミオンを原動力とした必殺光線ボルテッカ。それを浴びたらどんな存在だろうと、対消滅してしまう。もしもそれをここで撃ったら、被害はこれだけのクレーターを生むだけに留まらない。この島全てを軽く吹き飛ばせるはずだった。
 認めるのは癪だが、加頭順が何かを施したのだろう。そうでなければ最初から戦いにはならず、一方的な蹂躙になるからだ。裏返して言えば自身を驚異的と見ているのだろうが、嬉しくとも何ともない。

「それにしても、プリキュアに魔法少女……か」

 先程戦った小娘達が口にしていた言葉を、モロトフは思い出す。意味がまるで理解出来なかったが、今になって思えば恐らくテッカマンのような存在かもしれない。
 当初は見くびっていてじっくり痛めつけてから殺すつもりだったが、そんな慢心を持っては勝てる相手ではなかった。テッカマンがこの地に五人も集められた事を考えると、プリキュアや魔法少女も何人かいるかもしれない。

「そんな愚か者どもは必ず私が殺してやろう……この手で一人残らず、な」

 そう呟きながら、モロトフは当初の目的地である市街地を目指した。憎き裏切り者たるテッカマンブレード、相羽タカヤを見つけるために。


【一日目・早朝】
【I-5/焦土】
【モロトフ@宇宙の騎士テッカマンブレード】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)、強い苛立ち
[装備]:テッククリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード
[道具]:支給品一式、拡声器、ランダム支給品0〜2個(確認済)
[思考]
基本:参加者及び主催者全て倒す。
1:市街地に移動して拡声器を使い、集った参加者達を排除。
2:ブレード(タカヤ)とはとりあえず戦わない。
3:プリキュアと魔法少女なる存在を皆殺しにする。
4:キュアピーチ(本名を知らない)と巴マミの生死に関してはどうでもいい。ただし、生きてまた現れるなら今度こそ排除する。
[備考]
※参戦時期は死亡後(第39話)です。
※参加者の時間軸が異なる可能性に気付きました。
※ボルテッカの威力が通常より低いと感じ、加頭が何かを施したと推測しています。


【全体備考】
※戦いの影響により【I−5】エリアの大半は焦土となって【I−5 図書館】は跡形もなく消滅しました。また、巨大なクレーターが生まれています。

94ラブとマミ 終わらない約束! ◆LuuKRM2PEg:2012/03/10(土) 10:36:26 ID:OvKRMrD20





「ピーチ……ピーチ……ピーチッ!」

 巴マミは来た道を逆に戻るように駆け抜けている。ぐったりと倒れてしまったキュアピーチを両腕で抱えながら。
 あの極光の中から弾き飛ばされた彼女を、これ以上傷つけたくない。もしもあそこからランスが現れたら、今度こそ殺されてしまう。だから奴の生死に関わらず、今は撤退するしかなかった。

「お願い……早く治って!」

 そして彼女は、治癒の魔法をキュアピーチに施している。彼女の焼け焦げた皮膚はゆっくりとツヤを取り戻し、傷口が塞がれた。その度に、残り少ない魔力が減っていくのを感じる。
 ランスとの戦闘でただでさえ魔法をたくさん使った上に、グリーフシードも手元になかった。本当ならマミ自身も体力を回復させたかったが、そんな余裕などない。ソウルジェムが壊れなかっただけでも、奇跡のようなものだった。
もっとも、もう長く保たないかもしれない。主催者が細工をしたのか、ソウルジェムの濁りがいつも以上に激しくなっていた。もしかしたらこのまま魔法を使うと、死ぬかもしれない。
 だから今はキュアピーチを……桃園ラブを救うためにこの力を使う。今の状態でそんな事をしたら、どうなるかは分かっていた。

(鹿目さんに美樹さん、ごめんなさい……私、貴女達の事を助けられそうにないかも……佐倉さんや暁美さんも、どうか無事でいて)

 マミはこの地に連れてこられた後輩、そして同じ魔法少女の無事を祈る。何の力も持たない鹿目まどかと美樹さやかを救って、同じ魔法少女の佐倉杏子や暁美ほむらと力を合わせたかった。でも、それは叶いそうにない。
 せめて、テッカマンランスのような悪魔と出会わず、ラブのような心優しい人間と巡り会える事を信じるしかなかった。

(青乃さん、山吹さん、東さん、花咲さん、来海さん、明堂院さん、月影さん……どうか負けないで。桃園さんには、貴女達の力が必要だから)

 ラブと共にプリキュアとして戦っている少女達に、マミは激励を送る。彼女達はまだ顔も知らない。しかしラブが信じているからには、優しさと勇気に満ちた素晴らしい人間である事は確信出来る。だからこんな不条理な殺し合いなんかで死んで欲しくないし、悪魔に屈して欲しくない。
 何よりも、誰か一人でもいなくなってしまったら、ラブは悲しみに沈んでしまうかもしれなかった。だからマミは、プリキュア達が生きてこの殺し合いを妥当してくれる事を切に願う。

(桃園さん……ごめんなさい、私の一方的なエゴを押し付けて。でも、あなたには生きて欲しいの。あなたは、ここで死んでいい人じゃないから)

 そして腕の中で横たわるキュアピーチを見て、マミの瞳から一筋の涙が零れた。
 これからやろうとしている事は人助けだが、助けられる立場にある彼女はそれを望まないはず。むしろ自責の念に捕らわれたあげく、独りぼっちにさせてしまうだけ。
 やっている事はただの自己満足でしかないのはわかっている。それでも、キュアピーチには生きていて欲しい。彼女ならばこの世界に希望を導いて、意味のわからない殺し合いを強いられた全ての人達を、救ってくれる強さを持っているのだから。

(……綺麗な太陽だなぁ、本当に)

 不意にマミは、地平線の彼方より朝日が姿を現すのを見る。その光はまだ微々たるものだったが、いつも目にしている太陽よりもずっと輝いているように思えた。
 これから闇に満ちた世界の全てを照らす輝き。それはここにいるみんなに降り注いで、今日という一日を生きる為の力にさせてくれるはずだった。その先に待つであろう、幸せな未来へ辿り着く為に。
 プリキュアのみんなも、魔法少女のみんなも、平穏な毎日を生きるみんなも――誰一人として例外ではない。そんなささやかな幸せを、加頭順達は平気で踏み躙ったのだ。何故奴らがそんな事をするのかはわからないし、理解をしたくもない。そして、人々を不幸にするどんな魔女よりも許せなかった。

95ラブとマミ 終わらない約束! ◆LuuKRM2PEg:2012/03/10(土) 10:37:31 ID:OvKRMrD20

(もしも、桃園さんと違う形で出会えたら……私達、友達になれたかしら? 魔法少女でもプリキュアでもなく、普通の女の子同士として)

 これから昇るであろう、眩い太陽の下で一緒に笑ってたかもしれない。そしてラブの友達みんなや、まどかとさやか達も誘って一緒に遊んでただろうか。
 時にはみんなで勉強会をして、時には街へショッピングに行って、時には喧嘩をして、時には恋の悩みも聞く。あの交通事故の日からもう取り戻せなくなった、普通の生活を過ごしていたかもしれなかった。
 無論、これは全て仮定の話で、いくら考えても意味がないのはわかっている。でも、最後にそんな夢だけは見ていたかった。

「キー……」

 突然聞こえた小さな声にマミは振り向くと、ピルンを見つける。それはキュアピーチの力の源となっている、鍵のような姿をした妖精だった。
 ピルンは何をしようとしているのかに気付いているのか、悲しそうな表情を浮かべながら全身を横に振っている。その仕草は一種の愛嬌を感じさせるが、それを見守っている暇はない。

「キー! キーッ!」
「……ごめんなさい。あなたを悲しませるようなことをしちゃって……でも、桃園さんを助けるにはこれしか方法がないの。桃園さんのこと、お願いね」
「キーッ! キーッ! キーッ!」

 人の言葉を話せなくても、ピルンが必死に止めているのがわかった。ピルンもまた、一緒に戦ってきた彼女のように優しさに溢れている。それだけでも、後を任せられた。

「……んっ」

 そして、求めていた声がようやく聞こえる。それこそが、最後にこの世の何よりも解決したかった疑問が、最高の形で解決した瞬間だった。
 案の定振り向くと、腕の中で眠っていた彼女がようやく瞼を開けたのだ。

「マミ……さん?」
「気がついたのね! よかった……」

 いつの間にか桃園ラブとしての姿に戻っている彼女に、マミは微笑む。無事を確認できて気が緩みそうになるが、それはほんの一瞬だけ。マミはすぐに己を奮い立たせた。
 ラブの声は掠れているので、怪我は完全に治っていないのかもしれない。ならば少しでも万全に近づける必要があった。
 そして、黄色く輝いていたソウルジェムのほとんどは黒い濁りに満ちている。恐らく、残された時間はもう少ない。ここで魔法を止めても、きっと助からないだろう。
 自分はどれだけ無責任なんだろうと、マミは思わず自嘲した。ラブを支えると言っておきながら、結局はこんな体たらく。人一人すらもまともに守ることができていないどころか、後始末すらも他人に任せている。情けなさすぎて泣きたいくらいだったが、言わなければならない。

(最後の時間だけは……きっちり残ってるのね)

目覚めた以上は伝えなければならない、別れの言葉を。





 体中の痛みが和らいできて、暖かくなってくるのを感じる。それはまるで布団の中で眠っているかのように、心地よかった。この感覚には覚えがある。小学校に入るもっと前、お父さんやお母さんと一緒に寝た時に感じた、気持ちよさだった。
 できるならこのまま眠りたい衝動を抑え、桃園ラブは瞼を開ける。周囲が穏やかな光に包まれる中、巴マミが両手をこちらに向けているのが見えた。

96ラブとマミ 終わらない約束! ◆LuuKRM2PEg:2012/03/10(土) 10:39:05 ID:OvKRMrD20

「よかった……桃園さんが目を覚ましてくれて、本当によかった……!」
「マミさん……」

 マミは瞳から止めどなく溢れてくる涙を片手で拭っている。どうやら、彼女をとても心配させてしまったようだった。
 何から何まで、マミには迷惑をかけてばかりでいる。テッカマンランスとの戦いでは彼女を傷つけてばっかりで、今だって不安にさせていた。

「……ごめんなさい。あたし、マミさんの足を引っ張るだけじゃなく、あのランスって奴とも戦えなくて……」
「そんなことないわ。桃園さんがいてくれたから、私は戦えたのよ。さっきだって、もしも私一人だけだったらとっくに負けてたわ」

 こんな時でもマミはこちらを決して責めずに、むしろ励ましてくれている。そんな彼女の優しさは嬉しかったが、素直に喜ぶことはできない。
 マミを安心させようと起きあがろうとするがその直後、ラブの全身に激痛が走る。それが動くのを許さない。

「無理をしちゃ駄目、あなたの傷はまだ治ってないから大人しくして」
「あたしよりもマミさんは……マミさんだって怪我が……!」
「言ったはずよ、私のことは良いって」
「でも……!」

 マミの手から感じられる暖かさは四肢に伝わっているから、傷を治す魔法をかけられている。そのおかげで痛みは和らいできているが、肝心のマミはダメージが残っているはずだった。
 だから何とかしてやめさせたかったが、光は収まらない。

「それよりも、あなたにはそろそろ伝えなければいけないわ」
「伝えなければいけないって……何をですか?」
「お別れの言葉よ」
「……えっ?」

 一瞬、マミが何を言ったのかまるで理解できなかった。そしてそれを言った彼女は、どことなく寂しげな笑顔を浮かべている。
 数秒の時間が経過した後、ようやく口を開いたのはラブの方からだった。

「お別れの言葉って……何です、それ?」
「魔法を使いすぎたせいで、私のソウルジェムはもうほとんど真っ黒。それにグリーフシードもないし、もしかしたら私はもう……死ぬかもしれないわ」

 すると、横たわるラブは頭を思いっきり殴りつけられたかのように、目の前が大きく揺れる。それも最初は意味がわからなかったが、波のように彼女の中を広がっていって、すぐに伝わった。

「だからお願いがあるの桃園さん……私の身勝手な我が儘だってのはわかるけど、どうかあなたは生きて」
「駄目です! そんなの駄目です! こんなこと……しちゃ駄目!」

 やがてラブは瞳から涙が滲ませながら、マミの前で必死に首を横に振る。何とか行動を止めたかったが、光が収まる気配はない。

「あたしはもう大丈夫です……だから、今すぐやめてください! このままじゃ、マミさんは……!」
「いいえ、これは私の願いなの……こうして、私の力で桃園さんの命を繋ぐことが」
「マミさんの、願い……?」
「そうよ……桃園さん、あれを見て」

 微笑むマミが指を差す方向に、ラブも振り向く。そこに見えるのは、地平線の彼方からゆっくりと昇ってくる太陽。その輝きはまだ控えめだったが、これからより強くなっていくのだ。

97ラブとマミ 終わらない約束! ◆LuuKRM2PEg:2012/03/10(土) 10:40:10 ID:OvKRMrD20

「今はまだ、太陽の輝きは弱いけど、これから強くなるのよ……でも、あの光を見られなくなった人達だっているかもしれないわ……私は、桃園さんにそうあって欲しくないの」
「でも、いくらあたしだけが助かったって、マミさんがいなくなったら意味がないじゃないですか……!」
「いいえ、意味ならあるわ」

 光を帯びたマミの両手は、ゆっくりとラブの両手を握り締める。

「私が本当に怖いのは、このまま誰も救えずに私という存在が消えてしまうこと……でも、桃園さんが生きてくれていたら、私がこの世界で生きていた証を残せるの」
「生きていた……証?」
「そうよ。私が桃園さんの命を繋いで、桃園さんが他のみんなの命を繋ぐ……そして、平和になった世界でみんなが笑っていられれば、私は何の悔いもないわ」
「マミさんはそれでいいんですか……!? 誰かが犠牲になる平和なんて、本当の平和じゃないです!」
「犠牲なんかじゃないわ。桃園さんがいてくれる限り、私の心は桃園さんの中でいつまでも生き続けるの……あなたが生きて感じる幸せが、私の幸せにもなるの。そこからあなたと私はたくさんの幸せを生んで……いつか、他のみんなに広がる時が来るはずよ。だって、みんなに幸せと希望をもたらすのが、プリキュアと魔法少女の使命だから」

 まるで泣いた子どもを慰める母親のように、マミはひたすら優しく語り続けた。

『今のあなたは誰? 桃園ラブじゃない……キュアピーチでしょ!』

 そして、かつておもちゃの国でトイマジンの中にウサピョンを見つけて、戦えなくなった時にキュアベリーとなった美希に言われた言葉を、思い出す。

『だったらプリキュアとして今すべきことをして! 中途半端は許さないから!』

 プリキュアとして、奪われた子ども達のおもちゃを取り戻すと約束した。みんなの笑顔と幸せを守りたいなら、途中で倒れるなんて絶対に許されないと美希は言ってくれた。
 あの時の美希みたいに、マミも奮い立たせようとしている。ここで我が儘を言っては、彼女の思いを無駄にすること他ならない。

「……わかりました」

 だからラブは、未だに見える星々と太陽が清楚な輝きを放つ中、約束をする。溢れ出る涙を拭って、心からの笑顔を向けた。

「マミさんの目指していた、みんなが心から幸せになれる世界……絶対に作って、その後に魔女って奴らと戦うって約束します! それにまどかちゃんやさやかちゃん、杏子ちゃんにほむらちゃんも……あたしが絶対に助けますから! だから、だから……マミさんも諦めないで! マミさんがいなくなったら、みんな悲しむから……!」

 人々に希望をもたらすのは、プリキュアも魔法少女も何一つ変わらない。マミは全ての魔法少女がそうではないと言っていたが、ラブはどうしてもそう思えなかった。だって、絶望をまき散らす魔女を倒して、誰かの幸せを守っているのだから。
 だから、そんな魔法少女の一人であるマミはここで倒れてはいけない。彼女のような気高き人間こそが、生きなければならないのだ。

「そっか。ああ――安心したわ」

 そんなラブに答えるようにマミもまた、心の底から安堵したような笑顔を見せる。
 そして、彼女の手に纏われていた穏やかな光輝は収まり、いつの間にか体中に伝わる痛みは全て消えていた。

「桃園さんがそう約束してくれるなら……私も幸せよ。その約束、絶対に忘れないでね」
「当然ですよ! だって、マミさんはわたしのことを助けてくれたから……約束は守らないと!」
「……できるならもっとあなたと一緒にいたかったけど、残念ね。でも、私に悔いはないわ。だって、桃園さんみたいな素敵な人と出会えて……最後にこうして約束を交わせたから!」
「最後なんかじゃありません! これからも一緒にいましょうよ! 今からでも急いでグリーフシードって奴を見つけて……今後はマミさんを助ける番です!」
「……その言葉だけでも私は救われたわ。あなたのその真っ直ぐな気持ち、いつまでも失わないでね……これも、約束出来る?」
「約束します! 絶対に約束しますから! だから……生きてください! マミさん!」

 ようやく起きあがったラブは、マミを再び抱きしめる。
 こんなにも立派な彼女を失って欲しくない、こんなにも強い彼女がいなくなって欲しくない。そして、こんなにも優しい彼女には幸せになって欲しかった。
 様々な思いが渦巻く中、尊敬する魔法少女と目線を合わせる。そこにいるマミの笑っている顔は、とても明るかった。

「……ありがとう!」

98ラブとマミ 終わらない約束! ◆LuuKRM2PEg:2012/03/10(土) 10:42:23 ID:OvKRMrD20

 こんなにも素敵な笑顔を犠牲になんかしたくない。だから今からでも、マミを助けるために動きたかった。平和になった世界には、マミだっていなければ駄目だから。
 しかし、そう願った矢先に、パリンと何かが割れる音が聞こえる。その音源は漆黒に染まったソウルジェムだった。
 その直後、マミの身体がぐらりと揺れる。そのまま力無く倒れていく彼女を、ラブは反射的に支えた。すると魔法少女のコスチュームはほんの一瞬で、元の学生服に戻ってしまう。

「マ、マミ……さん?」

 力なく横たわるマミはあの笑顔を保ったまま、瞼を閉じている。それはとても穏やかな顔だったが、ラブは見ても全く安心することができない。それどころか、不安しかなかった。

「ねえ、マミさん……起きてくださいよ……どうしたんですか」

 だからマミの身体をゆっくりと揺さぶって呼びかけるが、なにも返ってこない。何度も繰り返すが、結果は同じだった。
 この光景にラブは見覚えがある。ずっと前、まだせつながイースだった頃に一対一で戦って互いの思いをぶつけた。その後に、せつなも今のマミと同じように倒れてしまうが、アカルンのおかげでキュアパッションとして生まれ変われている。
 だが、今のマミに訪れる奇跡など、何一つとしてなかった。

「マミさん……マミさん……マミさん……ッ!」

 今まで必死に押さえていた感情が、胸の奥底より一気に湧き上がる。そして、先程拭ったはずの涙が再び溢れ出てきた。
 何とかしてマミの両手を握り締めるが、さっきと比べて冷たくなっている。その意味を理解できないほど、ラブは無知ではなかった。しかし、認めるのを拒んでいる。
 瞳から頬を伝って流れる涙は、まるで雨粒のようにマミの身体に零れ落ちた。もしも、この悲しみや苦しみも一緒に洗い流してくれるのなら、どれだけ楽だったか。
 しかし、現実はただひたすら彼女を責め続ける。巴マミが死んでしまったという、一切の救いのない現実が。

「――ああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 ラブはひたすら慟哭するが、それは誰にも届かない。仲間であるプリキュア達にも、信頼を寄せている魔法少女達にも、テッカマンランスのような殺し合いに乗った者達にも。誰にも届くことはなく、空しく響くだけだった。
 どれだけ泣いても涙が枯れることはなく、悲しみが吹き飛ぶことはない。そして何かが変わることもなく、世界はただそのままの形を保っていた。





 どれくらいの時間が経ったのかは全くわからず、どれくらいの涙を流したのかは全く覚えていない。しかし桃園ラブにとって、それはどうでもいいことだった。
 彼女は目の前で、不自然に盛り上がっている土をぼんやりと見つめている。どうやったのかはあまり覚えていないが、その下で巴マミが眠っているのだけはわかった。
ここで時間を取られては、その間に誰かが犠牲となってしまうのはラブ自身理解している。だからといって、マミをそのまま放置するわけにはいかなかった。
 それは墓石もなくて、墓と呼ぶには粗末すぎる代物だったが今のラブにはこれだけが精一杯。

99ラブとマミ 終わらない約束! ◆LuuKRM2PEg:2012/03/10(土) 10:43:38 ID:OvKRMrD20

「マミさん、ごめんなさい……あたしが弱いせいで……」

 彼女は項垂れながら、届かないと知っていても弱々しく謝る。
 自分にもっと力があれば、マミを失うことはなかった。今まで多くの人を助けられたように、マミだって助けられたはずだった。
 こんな体たらくではプリキュアのみんなに合わせる顔がない。

「……マミさん、改めて約束します」

 しかしそれでも彼女は立ち上がる。どれだけ苦しくても悲しくても、挫けている場合ではなかった。
 溢れ出した涙を拭って、彼女は凛然とした表情を向ける。

「例えどれだけ辛いことがあっても……あたしは絶対に諦めませんから。マミさんみたいに、マミさんの分まで立派な正義の味方として戦ってみせます。それにこんなことに巻き込まれたみんなを……絶対に助けますから! だからマミさんは……ゆっくり休んでてください」

 その誓いを支えにして、ラブは己を奮い立たせた。この命を救うために全てを尽くしてくれたマミの思いを無駄にしないためにも。
 これまで乗り越えてきたどんな戦いよりも辛くなる。そもそも、自分が生きていられるかどうかすらもわからない。それでも、諦めることも負けることも許されなかった。
 罪のない大勢の人達を、これ以上見捨てないためにも。

『もしかしたらこの先、あなたにとって辛い事が数え切れないほど起こるかもしれないわ……あなたの理想を裏切るような辛い事が。でも、そうなっても決して絶望しないで。あなたの助けを待っている人は大勢いるはずだから』

 脳裏に蘇るのは約束の言葉。それがある限り、ラブは決して絶望しない。
 どんなに辛い道が待ちかまえていようとも、どんなに高い壁が立ちはだかっていようとも、この誓いがある限りは桃園ラブは倒れなかった。



――巴マミとの終わらない約束がある限り。

100ラブとマミ 終わらない約束! ◆LuuKRM2PEg:2012/03/10(土) 10:46:37 ID:OvKRMrD20

【1日目/早朝】
【I-3】


【桃園ラブ@フレッシュプリキュア!】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(小)、精神的疲労(大)、罪悪感と自己嫌悪と悲しみ、決意
[装備]:リンクルン@フレッシュプリキュア!
[道具]:支給品一式×2、カオルちゃん特製のドーナツ(少し減っている)@フレッシュプリキュア!、毛布×2@現実、ペットボトルに入った紅茶×2@現実、巴マミの首輪、巴マミのランダム支給品1〜2
基本:誰も犠牲にしたりしない、みんなの幸せを守る。
0:マミさん……
1:マミさんの意志を継いで、みんなの明日を守るために戦う。
2:プリキュアのみんなと出来るだけ早く再会したい。
3:マミさんの知り合いを助けたい。ほむらもできるなら信じていたい。もしも会えたらマミさんの事を伝えて謝る。
4:犠牲にされた人達(堂本剛三、フリッツ、クモジャキー、マミ)への罪悪感。
5:ノーザとダークプリキュアとテッカマンランス(本名は知らない)には気をつける。
[備考]
※本編終了後からの参戦です。
※花咲つぼみ、来海えりか、明堂院いつき、月影ゆりの存在を知っています。
※クモジャキーとダークプリキュアに関しては詳しい所までは知りません。
※加頭順の背後にフュージョン、ボトム、ブラックホールのような存在がいると考えています。



【巴マミ@魔法少女まどか☆マギカ 死亡確認】
【残り59人】

※巴マミの遺体は【I−3】エリアに埋葬されました。
※ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカは崩壊しました。

101 ◆LuuKRM2PEg:2012/03/10(土) 10:48:18 ID:OvKRMrD20
以上で投下終了です。
今回は分割必須になると思うので、収録は自分で行う予定です。
問題点などがありましたら、お手数ですがご指摘をお願いします。

102名無しさん:2012/03/10(土) 11:34:40 ID:.y4iML/cO
投下乙です!なんかマミさんにしてはやたらと綺麗な最期だな……馬鹿にしてるわけじゃないけどこんなのマミさんの死に方じゃないw

で、拡声器フラグを発動させて変身により疲労も溜まったランスさんはどうなる?

103名無しさん:2012/03/10(土) 15:12:35 ID:ahwiELOEO
投下乙です。
丁寧に練られ書き込まれハラハラさせられる死闘の描写、残酷な別れと同時に救いある最後を書き出す結末!
なんて熱くて泣ける作品なんだ・・・・・・

さぁ、まどマギ勢最初の犠牲者になったマミさん、羅武兄貴は悲しみを乗り越えられるか?
モロトフさんは多分、パロロワでは初めてロワらしい戦いができたねwおめでとうw

104名無しさん:2012/03/11(日) 00:59:29 ID:38TqFrG.0
投下乙でした。

(キル)スコアがふえるよ、やったねモロちゃん!
熱血退場できたよ、やったねマミちゃん!

もう、色々な意味でネタにされてばっかりの2人の念願が遂に叶ったのがもう。
それはさておき、バトルの方のやりとりはなんか本気でプリキュアを見ている気分になった。
考えてみたらマミの存在は(退場してからが本番なので魔まマの本筋からは浮いているし、相手がランスじゃテッカマンのシリアス系とも微妙に違うからなぁ。
でも図書館のあるエリアの数キロ四方が崩壊って……図書館近辺にいたメンバー離れて助かったな……つか、ピーチもランスも自重しろ!
しかしこうやってみるとテッカマンとプリキュアって恐るべきチートなんだなぁ……つか、制限下とはいえテッカマンのボルテッカとガチ対抗できるのか……プリキュアは……

拡声器使ったりなんかプリキュアの敵っぽい感じに(実際声的にキントレ……)なったりしたけど終わってみれば魔法少女やプリキュアに対して慢心しては勝てないと考える辺り、調子に乗ったりはしなさそうなモロトフ……強敵になりそうな気がする……けど何となく次で退場してもおかしくないのがランスクオリティ。

本当にキルスコアGET出来ておめでとうだけど……ここまでキルスコアGET出来て活躍した事が喜ばれるマーダーがいただろうか……


ラブ……いや、もう羅武兄貴(絵的にマミがヒロインっぽい反面、どう見ても漢な……女子に人気のプリキュアなのに)はマミに託されどこまで行けるだろうか(ただ、結果として市街地から逆戻りしちゃったのが……他のプリキュア勢敵味方全員遠く離れている罠)
そしてマミ……本当に良かったね、原作と違って突然バクリや錯乱状態で撃たれて退場なんて事にならずに、兄貴を助ける為に力尽き後を託して退場できて……ある意味他の4人と雰囲気違う状況で退場できる辺り原作通りともいう。

そういえば本編中にDXのネタ等プリキュア系のネタがふんだんに入っている辺り本当にプリキュア好きなのが感じるなぁ。
……そんなわけでプリキュアオールスターズNewStageは17日上映なのだと。

105名無しさん:2012/03/11(日) 01:33:44 ID:jlH0CznI0
マミさん救われて良かったよおおおおおおおおおおおおお!
闇堕ちもありうると思ったから、綺麗な最期で意外な気もするけど良かった!
ラブにはがんばってほしいなー

106名無しさん:2012/03/13(火) 01:21:46 ID:Fia9heuwO
今、ライスピでちょうど沖の主役回をやってるけど、スーパー1に隠された機能ってなんだと思う?

107名無しさん:2012/03/13(火) 11:24:18 ID:h7Tgl85k0
ライスピって全然話が進まないな
未だにJUDOの倒し方が分かってないし、何より今月号はやたら短かった気がする

108名無しさん:2012/03/13(火) 11:53:30 ID:zMUvkahU0
先日コミックス全巻売ってしまった
知名度はあるから、読みたくなったらネカフェで読めるし

109名無しさん:2012/03/14(水) 17:10:31 ID:kCqG0ENQO
コミックスで一気に読むと面白いんだけど、雑誌を待ちながらリアルタイムで追っていくと辛いタイプの漫画だなぁ。
ところで数あるライスピライダーの中でスーパー1が参加者投票に勝ち残れたのは、やっぱり同じ宇宙ライダー繋がりでフォーゼの影響もあるのかな?

110名無しさん:2012/03/14(水) 17:58:44 ID:Gns4075k0
宇宙つながり・・・その発想はなかった
でも参加者決めしたのがフォーゼ開始の1ヵ月前だからたぶん違う。
準備スレに出てた推薦理由はこんな感じだったな

・人気とカリスマがある
・まだロワ出てない
・vividなどとの格闘家つながり

ところでライスピは主人公はやっぱり村雨なんだろうか?

111名無しさん:2012/03/14(水) 19:06:31 ID:UimDS8SY0
あと、はじまった頃もスーパー1編だったっていうのが大きい
まあ、おおよその原因は格闘家だからだったような気もするけど

ロワ参戦してないって…
本郷→でまくり 一文字→ライダーNEXT、変身 風見→ロボなど
結城→ライダー 神→ロボ アマゾン→ライダーNEXT
茂→ロボ、ライダー 沖→変身 村雨→でまくり

あれ?一人足りないような

112名無しさん:2012/03/14(水) 19:25:42 ID:ZX.wlUS60
筑波「…」

113名無しさん:2012/03/14(水) 19:26:03 ID:Gns4075k0
洋・・・スカイライダーは、候補に挙がりすらしなかったな
昭和ライダーはライスピ以外はほとんど見たことないんだけど、そんなに人気ないの?

114名無しさん:2012/03/14(水) 20:01:03 ID:lA17zSEcO
何を言ってるんだ!
洋だって候補になってたじゃないか!


OP案の見せしめとして

115名無しさん:2012/03/14(水) 20:41:18 ID:.Itg.MmA0
何かスカイライダーが新たなネタキャラになりそうな・・・

116名無しさん:2012/03/14(水) 21:25:35 ID:eDrfhGYgO
この流れ……となれば

それもゴルゴムのディケイドに変身する乾巧って奴の仕業なんだ。

117名無しさん:2012/03/15(木) 01:07:27 ID:M68k95xEO
なんだって! それは本当かい?
ところで筑波洋ってどんな奴だっけ?
狂気に取りつかれた博士によって改造されて、雷に打たれて4年間眠っているうちに大地の力を吸収して、究極生命体のドラスと戦ったのは・・・・・・ZOだよな。

118名無しさん:2012/03/15(木) 01:57:01 ID:G7WpL0HkO
空が飛べるアドバンテージがロワ向きじゃないのかな?そこに制限つけると個性無しになるし。……ライスピは作者の愛の差別が露骨なんで洋の出番ほんっと無くて可哀相すぎる。
ロワと関係ないが、洋はスカイに変身すると、脚がえらい短くなるんだよなぁ……。

119名無しさん:2012/03/15(木) 07:01:34 ID:3Bb7Ti7s0
今やってる章なんて不人気ライダー結集編とか揶揄されてるもんなぁ

120名無しさん:2012/03/15(木) 17:04:28 ID:vicV0.rE0
>>119
Xも不人気なのか・・・
まあ確かにV3に比べりゃ視聴率落ちたが・・・

121 ◆LuuKRM2PEg:2012/03/15(木) 20:41:01 ID:IE3VSIig0
皆様、感想ありがとうございます。
これより予約分の投下をさせていただきます。

122願い ◆LuuKRM2PEg:2012/03/15(木) 20:42:16 ID:IE3VSIig0


 相羽シンヤは兄をひたすら待ち続けていた。
 とても大切で、とても天才で、とても強くて、とても憎くて、とても疎ましくて、とても一緒にいたくて、とても勝ちたくて、とても乗り越えたくて、とても大好きな双子の兄――相羽タカヤを。
 だけど今は、そんなタカヤに追いつこうとして無理なブラスター化をした結果、まともに動くことも出来なくなった。今だって、死んでしまいそうなくらいの激痛が全身を襲っている。
 けれどもシンヤはそれを乗り越えることが出来た。相羽タカヤと戦うという、たった一つの夢がある限り。

(ごめんよケンゴ兄さん……でも俺には、これしか無いんだ)

 不意に、シンヤは月面のラダム母艦で眠りについているであろうテッカマンオメガこと相羽家の長男――相羽ケンゴに謝った。
 ケンゴが自分のことを心配して、ブラスター化を許さなかったのはシンヤ自身理解している。それは次々とテッカマンが失って戦力ががた落ちするというラダムの意志でなく、相羽家の家族を失いたくないと言うケンゴ自身の優しさから来ているのだと。
 でもタカヤとの決着を付けないまま、タカヤが死ぬなんて事はあってはならなかった。そうなっては、シンヤは一生後悔してしまう。
 ケンゴ兄さんの事は好きで、その意志を尊重したい気持ちはある。でも、こればっかりは誰にも譲れなかった。だからフォン・リーの手によってブラスターテッカマンとなった代償で命を失おうとも、悔いはない。

(俺の身体は……あとどれだけ持つのかな)

 しかしシンヤにとって、たった一つだけ不安がある。もしもタカヤと出会える前にどちらかが死んでしまったら? 考えたくもないが、この世に絶対なんて有り得ない。
 タカヤの事だからきっとこの殺し合いに巻き込まれた地球人どもを救おうと動いているのだろう。だが、そんなタカヤの気持ちを利用してタカヤを殺そうとする愚か者もいるかもしれない。タカヤがそれで殺されるなんて無様な最後を迎えるわけがないが、少しだけ不安になる。
 またそうでなくとも、自分自身の寿命も後どれくらい保つのかがまるでわからなかった。この冴島邸に放り込まれてから四時間は経過するまで、何とか生きているがあまり呑気に構えていられない。この身体ではいつ突然死をしても何らおかしくなかった。

123願い ◆LuuKRM2PEg:2012/03/15(木) 20:42:58 ID:IE3VSIig0
 幸運にも出会えたモロトフをメッセンジャーにしたが、奴自身がタカヤと出会えるかもわからない。万が一、テッカマンを上回るような参加者と遭遇してはタカヤと出会う前に殺される可能性だってある。
 最悪、自分自身がここから移動してタカヤを探す必要だってあるのだ。

「……タカヤ兄さん、無事でいてくれるよね?」

 長年会っていない恋人を待ち焦がれるかのように、シンヤは兄の名前を呼ぶ。
 そんな彼の手には、ある物が握られていた。モロトフに渡した拡声器と、元々シンヤが持っていたスタッグとバットのメモリとバットショット以外にもう一つだけ持っていた、最後の支給品。
 付属した説明書を見てその効果は知っていたが、本当なのかはどうにも信じ難かった。しかしスタッグとバットのガジェットの効果は本当だったのだから、試す価値はあるかもしれない。
 シンヤは残された力を振り絞りながら、最後の支給品を投げつけた。全ては愛しき双子の兄、タカヤの為に。






『兄さん、タカヤ兄さん……僕だよ、シンヤだよ』

124願い ◆LuuKRM2PEg:2012/03/15(木) 20:43:35 ID:IE3VSIig0

 青乃美希の手元に握られているのは、一台の古ぼけたマイクロレコーダーだった。
 孤門一輝と合流した彼女は自分のことを出来るだけ話した後、市街地を目指すために灯台から離れる。
 その間、デイバッグに入っていたそれが気になった彼女は不意にスイッチを押すと、子供の声が流れてきた。

『これを聞いている兄さんはもう大人なんだね。なんだかそれって不思議だな。兄さんも僕もどこで何をやっているのかな?』
「孤門さん、シンヤとタカヤってまさか……?」
「多分、相羽タカヤと相羽シンヤのことかもしれない。苗字が同じだったから、やっぱり家族だったのか……」

 名簿に書かれてあったタカヤとシンヤとミユキは、みんな『相羽』という同じ苗字を持っていた。これが意味することは、三人は家族であること。
 つまり、加頭順は友達や仲間だけでなく家族同士にもこんなふざけた殺し合いを強要していた。

『仲良くしてるよね? まさか、喧嘩なんかしてないよね? だってケンゴ兄さんったら意地悪言うんだもん。大人っていうのは難しいから変わっちゃうかもしれないよって……』

 美希が順に対する憤りを抱く暇もなく、マイクロレコーダーからシンヤの声が流れていく。

『そんなことないよね? 僕らがいくつになったって絶対変わんないよ。僕が兄さんが好きだってことは……だって、僕達一緒に生まれた双子だもん。僕達、元々一人だったんだもん』
「「……ッ!」」

 その瞬間、マイクロレコーダーの声を聞く二人は絶句した。タカヤとシンヤがどんな人物なのかはわからないが、深い絆で結ばれた双子の兄弟である。
 そんな彼らが今、互いが互いを殺しあうように強制されている。それがどれだけ辛いことなのか……とても言葉で言い表すことなんて出来ない。

『僕はずーっと兄さんが大好きだよ。ケンゴ兄さんよりも、ミユキよりも、ずっと……ずっと!』

 希望に満ちたようなシンヤの言葉は、そうやって終わりを告げた。まるで時が止まったかのように、美希も一輝も何も言えなかった。
 順は実の兄妹達にこんな馬鹿げた殺し合いを強制させた挙句、彼らにとって大事な代物であるレコーダーをわざわざ盗んでいる。それは美希には到底許せる事ではなかった。

「何なのよ……」

 冷たい風が静かに流れる中、美希は口を零した。

125願い ◆LuuKRM2PEg:2012/03/15(木) 20:44:56 ID:IE3VSIig0
「あいつらはなんで、実の兄妹にこんなことを……!」
「美希ちゃん」

 そんな彼女を慰めるかのように、孤門はゆっくりと肩に手を乗せる。

「行こう、一刻も早くこんな殺し合いを止める為にも」
「……はい」

 だから美希もそんな彼の意図を察して、弱音を吐いたりなどはしなかった。
 自分はプリキュアなんだから、みんなを助けるまでは倒れることは出来ない。そしてタカヤとシンヤとミユキに出会って、これを渡さなければならなかった。
 その決意を胸に秘めた彼女の瞳に、迷いは無かった。

(兄弟か……一樹、ごめんなさい。あたし、ちょっと帰りが遅くなるかも。もしママになにかあったら、その時はよろしくね)





(双子の兄弟……だとしたら、タカヤとシンヤはあの二人のことか)

 孤門一輝は加頭順より全ての説明を受けたあのホールで、同じ顔の青年が二人もいたことを思い出す。恐らく、彼らが相羽タカヤと相羽シンヤなのかもしれない。
 この戦いに放り込まれて、一体彼らはどんな思いでいるのか……考えるまでもない、普通の人間ならば辛いに決まっている。そんな彼らを救う事こそが、ナイトレイダーに入隊した自分の使命だ。

(それにしても、パラレルワールドか)

 青乃美希という少女と出会ってから、彼女からディバイトランチャーやナイトレイダーの服装について問いただされる。本来なら黙秘しなければならないが、この状況で不振を抱かせるわけにはいかない。だから後で厳重処罰を受ける覚悟で、美希に全てを話した。
 彼女はナイトレイダーやスペースビースト、更にはウルトラマンという存在に対して最初は驚愕したが、すぐにそれを信じている。
 その理由は美希自身も、たった14歳という若さで幾度となく修羅場を潜り抜けているからだった。彼女の正体はプリキュアという名の戦士らしく、全ての平行世界を侵略しようと企むラビリンスという連中と戦っていたらしい。だからウルトラマンやビーストにそこまで驚くことはなかったようだ。

126願い ◆LuuKRM2PEg:2012/03/15(木) 20:47:07 ID:IE3VSIig0
 美希の話が真実だとしたら、この島にいる66人は別世界から集められたことになる。彼女の世界ではプリキュア達は秘密裏になっておらず、一般に周知されている存在だからだ。自分達の世界だったら、それらに関する記憶はメモリーポリスによってとっくに消されている。

(だとしたら、姫矢さんもまだウルトラマンの光を持っていた世界から連れてこられたのか?)

 何故、この場にいるのはウルトラマンの光を引き継がれた千樹憐ではなく姫矢准なのか? 一輝はそう疑問を抱いていたものの、まだ彼がウルトラマンであった頃の世界から連れてこられた可能性が強い。もしくは、憐に引き継がれないままウルトラマンとして戦い続けた世界もあるかもしれないが、その辺りは准だけにしか知らないことだ。
 同じように溝呂木眞也も、まだダークメフィストとして人々を苦しめていた世界から来たのが妥当だろう。もしもまた戦いになったら、何としてでも止めなければならない。
 最悪、美希の力を借りなければならないかもしれないのが、情けなかった。

(……とにかく、僕の力でやれることはしっかりやらないと。そうしなければ、誰も救うことは出来ない)

 相羽兄妹や美希と同じプリキュア、そして異世界から連れてこられた大勢の人達を救うためにも自分がしっかりしなければならない。そうしなければ、同じナイトレイダーである西条凪と石堀光彦に顔向けが出来ないからだ。





「……ナケワメーケか、こいつは凄いな」

 相羽シンヤは目の前に立つ怪物を見て、思わずそう呟く。
 彼のデイバッグに入っていた最後の支給品。それは管理国家ラビリンスが人々の不幸を集めるために生み出した怪物、ナケワメーケの元となるシンボルだった。
 適当な物に投げつければナケワメーケになると書かれており、半信半疑で椅子に当ててみればみれば、何とラダム獣のような魔物へと一瞬で変わる。しかもどうやら、自分の意のままに動くらしい。
 シンヤにとってナケワメーケは何よりも有り難かった。もしもモロトフがタカヤと出会えないまま殺されたりしたら、タカヤに自分の居場所を伝えることができなくなる。それに残された寿命を考えると、本当ならここでジッと待っているのも嫌だった。
 最悪の可能性をいくつも想定していたシンヤにとって、最高の当たりとも呼べる。最初はモロトフでその効果が本当かを実験しようとも思ったが、操り人形を目の届かない場所に行かせても成功の可能性は低い上に、何よりも避けられる可能性が高かった。
 もっとも、頼れる用心棒を得たからといって下手に外へ向かうわけにもいかない。いくらナケワメーケが戦えるといっても、この島にはテッカマンに及ばないにせよ強い戦闘力を誇る存在がいるかもしれなかった。そんな連中が大量にいる場所をうろついても、自殺するだけ。
 だから、ナケワメーケに乗って移動するのは最終手段と考えなければならない。モロトフが死ぬか、タカヤの到着が遅いか、何らかの事情で冴島邸に留まれなくなったときだけだ。

127願い ◆LuuKRM2PEg:2012/03/15(木) 20:49:38 ID:IE3VSIig0

「兄さん……大丈夫だからね。いざとなったら俺がそっちに行くから……それまでには生きていてくれよ」

 それでもシンヤは喜んでいる。この動くことが困難な肉体の代わりに、移動するための手段を得たことを。
 傍らで佇む巨大なナケワメーケにそっと手を触れながら、最愛の兄をひたすら思い続ける。

「とっても強く生きている兄さんを、この手で殺すこと……これが、俺の求めている願いだからさ」

 実の兄である相羽タカヤをこの手で殺すという、一切のブレがない願いが叶うのを信じながら。





 キュアムーンライトに変身した月影ゆりの瞳は、どこまでも空虚だった。長きに渡って共に戦ってきた仲間であり、親友である来海ももかの妹である来海えりかをこの手で殺したから。
 この戦いに勝ち残って最後に全てを取り戻すと誓ったのだから、その為に全てを踏み台にする覚悟でいる。しかしそれでも、罪悪感は消えなかった。
 せめてもの償いとしてえりかの遺体を埋葬した後、キュアムーンライトはその事実から逃げるように急いで灯台へと辿り着く。プリキュアの身体能力をフル活用すれば、この程度は造作もない。
 しかしそこをくまなく探して、特別な物は何も存在しなかった。屋上からもう一度灯台の周りを探すが、やはり誰もいない。

「……入れ違いになったかしら。それとも――?」

 ここから地面に着地しようとした瞬間、彼女は見た。ここから数キロメートル離れた道に、二つの人影が歩くのを。夜の闇に紛れているので詳しい姿は見えないが、変身したことで強化された視力は確かにそれを捉えている。
 キュアムーンライトは知らない。市街地に向かって動く存在が、本来ならそう遠くない未来で共に戦っていたプリキュアの一人であることを。そして今の彼女にとっては、倒すべき障害の一つでしかなかった。

(……あの二人を追うべきかしら?)

 しかしキュアムーンライトはまだ行動に移せずにいる。
ここから全速力で向かえば市街地に向かう二人に追いつけるかもしれない。しかしそれでは当初の目的地であるホテルと村を諦めてしまう上に、下手に突っ込んでは森の中から不意打ちを受ける可能性もある。何よりも、市街地は人が大勢訪れて戦いが激しくなるかもしれないので、無暗に向かっては自滅するかもしれなかった。
 だからあの二人はここはあえて見逃し、殺し合いに乗った奴らと潰し合わせる方法もある。しかしそれはあくまでも楽観的な願いでしかないし、一歩間違えればえりかを始めとした殺し合いを打倒しようとする者達と結託される可能性もあった。


 そしてキュアムーンライトの動きを縛る理由がもう一つ。来海えりかを殺したという事実が、無意識のうちに彼女の行動を阻害していた。いくら覚悟を決めたとはいえ、17歳でしかない彼女にとって殺人という行為は何よりも重かった。結局、無理をしているに過ぎない。
 しかしキュアムーンライトはまだ、それに気付かなかった。何故なら、彼女の眼はただ願いしか映していないのだから。

128願い ◆LuuKRM2PEg:2012/03/15(木) 20:50:49 ID:IE3VSIig0


【1日目・早朝】
【E-9/道路】

【青乃美希@フレッシュプリキュア!】
[状態]:健康
[装備]:リンクルン@フレッシュプリキュア!
[道具]:支給品一式、シンヤのマイクロレコーダー@宇宙の騎士テッカマンブレード、ランダム支給品1〜2
[思考]
基本:こんな馬鹿げた戦いに乗るつもりはない。
1:今は孤門と行動し、みんなを捜す。
2:プリキュアのみんなが心配(特にラブが)
3:ノーザには気を付ける。
4:相羽タカヤ、相羽シンヤ、相羽ミユキと出会えたらマイクロレコーダーを渡す。
[備考]
※本編後半以降(少なくともノーザの事は知っている時期)からの参戦です。
※ハートキャッチプリキュア!からの参加者について知っているかどうかは、後続の書き手さんにお任せします。


【孤門一輝@ウルトラマンネクサス】
[状態]:健康、ナイトレイダーの制服を着ている
[装備]:ディバイトランチャー@ウルトラマンネクサス
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
1:美希ちゃんを何としてでも保護し、この島から脱出する。
2:姫矢さん、副隊長、石堀さん、美希ちゃんの友達と一刻も早く合流したい。
3:溝呂木眞也が殺し合いに乗っていたのなら、何としてでも止める。
4:相羽タカヤ、相羽シンヤ、相羽ミユキと出会えたらマイクロレコーダーを渡す。
[備考]
※溝呂木が死亡した後からの参戦です(石堀の正体がダークザギであることは知りません)。
※パラレルワールドの存在を聞いたことで、溝呂木がまだダークメフィストであった頃の世界から来ていると推測しています。


【一日目・早朝】
【E-5/冴島邸】

【相羽シンヤ@宇宙の騎士テッカマンブレード】
[状態]:ブラスター化の副作用による肉体崩壊
[装備]:テッククリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード
[道具]:支給品一式、バットショット&バットメモリ@仮面ライダーW、スタッグフォン&スタッグメモリ@仮面ライダーW、椅子型のナケワメーケ@フレッシュプリキュア!
[思考]
基本:タカヤ(ブレード)と決着を着ける。
1:冴島邸に留まり、バットショットで周囲の様子を探りつつタカヤに呼びかけ続けタカヤが来るのを待つ。
2:タカヤと戦う時以外は出来るだけ戦いを避ける。
3:もしもタカヤの到着が遅かったり、何らかの事情で冴島邸に留まれなくなった場合はナケワメーケを使って自分からタカヤを探しに行く。
[備考]
※参戦時期はブラスター化完了後〜ブレードとの決戦前(第47話)です。
※ブラスター化の副作用により肉体限界が近いです。戦い続ければ命に関わります。
※参加者の時間軸が異なる可能性に気付きました。
※最後の支給品はナケワメーケのシンボル@フレッシュプリキュア! です。


【1日目・早朝】 
【B−10/灯台・屋上】

【月影ゆり@ハートキャッチプリキュア!】
[状態]:疲労(小)、無自覚の迷い、キュアムーンライトに変身中
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式×2、プリキュアの種&ココロポット×2、ランダム支給品0〜2、えりかのランダム支給品1〜3、破邪の剣@牙浪―GARO―
[思考]
基本:殺し合いに優勝して、月影博士とダークプリキュアとコロンとで母の下に帰る。
1:あの二人(青乃美希と孤門一輝)を追跡するか? ここからホテルを経由して村へ向かうか?
[備考]
※ハートキャッチプリキュア!48話のサバーク博士死亡直後からの参戦です。

129願い ◆LuuKRM2PEg:2012/03/15(木) 20:51:36 ID:IE3VSIig0
【支給品解説】

【ナケワメーケのシンボル@フレッシュプリキュア!】
フレッシュプリキュア! 第1話『もぎたてフレッシュ!キュアピーチ誕生!!』より登場したラビリンスが使役する怪物の元。
これを投げつけられた物は巨大怪物・ナケワメーケに変貌して埋め込んだ者の意のままに動きます。

【シンヤのマイクロレコーダー@宇宙の騎士テッカマンブレード】
宇宙の騎士テッカマンブレード 第46話『時の止まった家』に登場した、相羽家の庭に埋まっているタイムカプセルの中に入っていたマイクロレコーダー。
10歳のシンヤが大人になったタカヤに向けて、僕達の絆はいつまでも変わらないというメッセージが録音されています。


以上で投下終了です。
疑問点などがありましたら、指摘をお願いします。

130名無しさん:2012/03/15(木) 21:12:37 ID:pzTPvO4.0
投下乙です。
なるほど、レコーダーとナキワメーケが全く絡まないシンヤパートと美希パートを繋げたわけか。
しかし美希組よ……レコーダー聞いた所悪いがこいつら兄弟は殺し合い関係無しにガチで殺し合うぞ。
で、ゆりとは行き違いか、さて次は何処へ……

1点気になったんですが、美希&一輝の位置はE-9で正しいんですか?
氏の作品でもある『ラブとマミ 終わらない約束!』で1エリアが数キロ四方ぐらいの広さがある事はほぼ確実であり、
B-10にある灯台にいるゆりが視認できるには距離が開きすぎているのではないでしょうか?

131 ◆LuuKRM2PEg:2012/03/15(木) 21:24:09 ID:IE3VSIig0
ご指摘ありがとうございます。
確かに、ちょっと距離が開きすぎかもしれませんね……美希組の場所を【C-9】に修正しようと思いますがよろしいでしょうか?

132名無しさん:2012/03/15(木) 21:28:26 ID:pzTPvO4.0
>>131
その位置辺りならば大丈夫だと思います。

133名無しさん:2012/03/16(金) 11:21:14 ID:PLV/ihMo0
投下乙です

これは上手いなあ。こう捌くのかあ…
ただあの兄弟に会ってマイクロレコーダー渡しても…

134名無しさん:2012/03/17(土) 14:08:40 ID:QXO8RU4cO
投下乙です。

このSS読んで改めて相羽兄弟の悲惨さを思いしらされます。
めちゃくちゃ強いけど、デフォルトでミユキ以上にボロボロな肉体のシンヤ。
なぜか、シンヤには生きている内にタカヤと戦ってほしいと願ってしまう。

135名無しさん:2012/03/20(火) 12:57:47 ID:iLh8pZjkO
把握のためにウルトラマンネクサスを見始め、まだ最初の方だけど・・・・・・こんなに怖くてドロドロなウルトラマン見たことねぇ!
どこをどう見ても子供向けじゃねぇ!
でも、今時のウルトラマンには珍しいくらいの緊迫感があるし、話は暗いけど熱い。
不思議と続きが見たくなる。

136名無しさん:2012/03/20(火) 19:54:37 ID:0zIUct0kO
『視聴率低すぎ!もっと明るい話にしろ!方向転換しないと打ち切りだぞ!!』

◆ライブマンの場合
やりとげたいので「予定に無かったけど追加戦士を出します」→後程シナリオでフォロー
◆響鬼の場合
 「どちらも嫌だなぁ…」→スタッフ入れ替え
◆ネクサスの場合
「じゃあ、打ち切りで!」

そんなネクサススタッフが大好きです。

137名無しさん:2012/03/21(水) 21:41:30 ID:n0mPQUy.0
円谷は昔は方向転換しまくってるんだよなぁ…
帰マンやAのヒロイン下ろし、急に教師じゃなくなった80とか…
ネクサスはある意味、作品全体を見返して違和感ないための反省だったのかも

東映はごく最近の作品に至るまで、試行錯誤しながら作ってるから、見返すと多少違和感あるよね
ゴーカイジャーも序盤と中盤以降でレジェンドの扱いが全然違うし

138名無しさん:2012/03/22(木) 02:52:30 ID:AEX8CKfYO
打ち切りが決まった事で、逆に展開がスピーディーになって後から人気が出てしまった作品だそうで。
個人的にはOPは後半の「青い果実」より「英雄」が好きだったなあ。

男なら〜誰かのために強くなれ!

139名無しさん:2012/03/23(金) 10:42:44 ID:M8C3SwSQ0
まどまぎポータブルでまどかやさやか以外の魔女がでそろったみたいだ。
なんと、アルティメットまどかまで魔女化するらしい。
まとめブログ(日々なんちゃら速)↓
ttp://blog.livedoor.jp/hibinanchara/archives/3912474.htm

140名無しさん:2012/03/23(金) 11:14:36 ID:BVnHVZvAO
このロワじゃ、制限で魔女になることはできないけどね。
しかし考えてみたら、制限がなかったらマミさんもおめかしの魔女になってたんだな。

141名無しさん:2012/03/23(金) 14:03:50 ID:MhAD8Q1IO
魔法少女が魔女化しないように、使い切ったグリーフシードから魔女が孵化することもないんだよね?絶望振り撒かれたりしないんだよね?

142名無しさん:2012/03/23(金) 23:49:04 ID:Tc6bQSgA0
>>140
えっ、マミさんはぼっちの魔女じゃ(ティロフィナーレ

143名無しさん:2012/03/24(土) 01:37:02 ID:I1mcpwq2O
>>140
あの最後の感動シーンの直後に魔女化されたらラブの命とSAN値が危ないわw
でもオーズロワの方は制限がなかったハズ。
こっちは全員魔法少女だし、場合によっては登場するかも。

144名無しさん:2012/03/24(土) 10:48:51 ID:fD.GFPEIO
少なくとも魔法少女以外にも感知可能にしないとただのチート乙だがな。まあ最初から魔女なんて魔球投げてたところじゃそれさえなけりゃ余裕でボコられてたのを見るに戦力的には大丈夫かw

145名無しさん:2012/03/24(土) 11:48:26 ID:6MDb1TPs0
魔女は絶望振り撒いたり、結界内にこもってたりするのが厄介だけど、ガチバトルにさえ持ち込めば戦力的には魔法少女と大差ないよな
規格外の奴を除けばさ

146名無しさん:2012/03/24(土) 13:50:50 ID:rtzc0ap2O
『魔女のくちづけ』により対主催→マーダー化展開ですか

147名無しさん:2012/03/24(土) 13:53:00 ID:rtzc0ap2O
『魔女のくちづけ』により対主催→マーダー化展開来たりするのですか

148名無しさん:2012/03/24(土) 20:12:42 ID:fD.GFPEIO
ただでさえ洗脳が大安売り中なのにまたまたご冗談を……でもおりこのキリカとか魔法少女のまま結界とかやらかしてたし、今すぐにでも絶望にゴールしそうなさやかあちゃんにワンチャン?w

149名無しさん:2012/03/25(日) 00:43:08 ID:Omw50lpM0
そうしなくてもまどマギ勢は厳しい状況ですぜ

まどか…対主催 ガイアメモリによる精神汚染フラグあり
ほむら…まどか保護? バカと共にメタル殿と交戦する羽目に
さやか…洗脳 かわいい女の子だと思った?残念、闇落ちでした!
杏子…マーダー 彼女自身は問題ないが同行者に疑いの目が
マミ…死亡 ラブに願いを託せたのが救いか

150名無しさん:2012/03/25(日) 09:54:50 ID:izQCYEZg0
「ドラえもん あたたかい目」で画像検索したらなぜかプリキュアの画像が結構出てきた
あの目を輝かせてる描写が、あのドラえもんの目と一緒…だと……!?

151名無しさん:2012/03/26(月) 02:11:01 ID:m7gDkfeIO
>>149
今見ると、五者五様で綺麗にタイプが別れたなぁ。


そろそろwikiの用語集の横に(未)がついてるのが気になってきたけど、このロワで用語になりそうな言葉とかあったけ?
とりあえず「バカ=暁」は確定で。

152名無しさん:2012/03/26(月) 11:37:29 ID:9i//B1uM0
>>150
検索しても出てこない……
しかし こんなにライダーキックを食らわしたいドラえもんは初めてだ

153名無しさん:2012/03/26(月) 21:41:14 ID:jVHydEj60
>>151
ゆりさんや殿とか「味方側のマーダー化」かな

154名無しさん:2012/03/27(火) 03:19:35 ID:xeT70EUk0
wiki開発に支援

【シャンゼ時空】
不条理ギャグと特撮ヒーローものが融合して生まれた奇跡の作品「超光戦士シャンぜリオン」。
その作品のヘンテk……独特の雰囲気を持つ世界観がそう呼ばれている。
具体的には
・主人公の暁がダークザイトと戦う理由が、平和や愛のためではなく、金やら女やらの我欲。
しかも人妻との不倫を画策したり、敵が同士討ちで疲弊した所を狙うなど程々に外道。
・登場人物の一人、速水は梅干しで変身する。
・友の危機を救ったのは、友情や愛……ではなく「怒り」であるというテンプレブレイク。
……上記の三つはあくまで氷山の一角に過ぎない。もっと知りたいテレビの前のお友達は本編を見るべし!
このロワにおいても、徐々にではあるがシャンゼ時空の侵攻は始まっている。
序盤の内は某プリキュアの支給品がサバだったり、某魔法少女と某淑女の頭痛の種になるぐらいだが、
やがていつかは、このシャンゼ時空がロワに更なる猛威を奮うかもしれない。たぶん。

155名無しさん:2012/03/30(金) 02:30:50 ID:mYfyCBzIO
予約キタ!

>>153を文章化するとこんな感じかな

【味方のマーダー化】
正義のヒーローまたは殺し合いに乗りそうにないキャラが殺し合いに乗ってしまうこと。
別段、パロロワではそれぐらいのことは珍しくないのだが、このロワの場合は序盤からそれに該当するキャラが多い。
その理由は参戦時期の都合か洗脳アイテムによるものに別れる。
前者は殿、ゆりさん、暁。
後者はスバルなどがそれにあたる。
特にゆりさんは同僚をすでに一人殺害済みであり、登場話では真っ当な対主催だったスバルは次の回では洗脳されて敵を殺害・(正確には吸収だが)カニバリズムまでさせられる始末。
ヒーローやヒロインがドカドカ殺し合いに乗る様に、テレビの前のお友達涙目である。
また、マーダーにならずとも特定の人物の首を狙う対主催や、グレーゾーンのキャラもかなりいる。

余談だが、この変身ロワにおける序盤のマーダーの数は、なんと66人中20人!!
およそ1/3が殺し合いに乗っているである(死者やステルス、限定マーダーや洗脳組を含む)。
ここまでマーダーの比率が大きいロワも珍しいと思われる。

156名無しさん:2012/03/30(金) 09:01:44 ID:3K0LUhz20
暁のあれって参戦時期の都合だったのかw
シャンゼリオンはまだ半分しか見てないけど、言われてみればあの時の暁は他の回と比べてもかなり調子に乗ってたな
しかし暁ってなんだかんだで回が進むごとにまともに見えてくるんだよなあ
逆に速水は回が進むごとにバカに見えてくるw
2話の時点じゃまだただの堅物キャラにしか見えなかったし

157名無しさん:2012/03/30(金) 11:24:29 ID:mYfyCBzIO
>>156
悩んだけど、仲間であるはずの速水がいるのに殺し合いに乗っている時点から、やっぱり参戦時期の都合ということにしました。
ぶっちゃけ暁をマーダーの枠組みに入れていいのかも微妙だけどw

でも、改めて見てもマーダーの多いロワだこと・・・・・・

158名無しさん:2012/03/31(土) 17:54:38 ID:UvxWKYck0
>>156
2話はまんま井上キャラだもんな…

というか、後半は大事なところで結構熱血してるよ、暁

159名無しさん:2012/03/31(土) 19:39:08 ID:A35P7mkM0
用語集の流れで

【青の子】
文字通り青をイメージカラーとしたキャラのこと
変身ロワにおいてはなぜだかこの系統のキャラが不幸に遭いやすい印象を受ける
現在の状況を纏めると

スバル…熱血対主催だったが洗脳されてキルスコアをあげてしまう
さやか…三影にハートブレイクされ、スバルほど恒常的なものではないとはいえ溝呂木に洗脳される
流之介…重傷を負った上、推測レベルとはいえ殿のマーダー化に気付いてしまう
美希…今のところ不幸な目には合ってない。ゆりさんに追跡される可能性はあるが
えりか…早期退場、しかも仲間に殺される

こ れ は ひ ど い
せめて美希には頑張ってほしいものである
中の人がさやかあちゃんと一緒だけど

160名無しさん:2012/04/02(月) 02:29:28 ID:5A2Cw9LkO
>>159
あの二人、中の人一緒だったのか。
五代ーッ! 弧門ーッ! なんとかすれー!

【スカイライダー】
本名は筑波洋。本ロワ未参戦。
漫画作品「仮面ライダーSPIRITS(以下ライスピ)」に登場する8号目の仮面ライダーであり、空とぶネタライダーでもある。
変身ロワが始まる前の参戦投票では10人もいるライダーの中で「一人だけ」投票はおろか候補にも上がらなかった。
見せしめとしてOPに登場する案もあったが、こちらも不採用になる。不憫。

不幸はそれだけではなく、今までなかなか参戦できなかったスーパー1・沖も本ロワでとうとうパロロワ初参加へ。
これによりライスピのライダーでスカイライダーだけが未だにパロロワ未参戦(テラカオスロワはありそうだが)という事態になってしまった。

他作品でもパロロワで一人だけ運悪くハブかれてしまうことは稀によくあるが、スカイライダーの場合は公式すらも扱いがぞんざいなのである。
ライスピでは変身すると足が短くなる、さらに他のライダーに比べても出番が少ない。
MOVIE大戦などの映画では出オチのかませ犬になったり、必殺技をパクられたり、ボスをパクられる(しかもその映画にはスカイライダーは登場しない)など、もはやイジメのレベルである。
二次創作でも公式でも報われないスカイライダーが日の目が来る日があるのだろうか?
・・・そんなことを考えてたら自重しない何者かによって死者スレに現れた。
彼はこのまま未参戦でありながら当ロワのネタキャラになってしまうのか?!



全国のスカイライダーファンのみなさま、こんな文章でごめんなさい。

161名無しさん:2012/04/02(月) 07:54:31 ID:dc.AyRcI0
捕捉しておくと、そのOPでの見せしめは本当なら谷千明@侍戦隊シンケンジャーだったりする
果たして、ネタにされなくなった事は彼にとって幸運なのか不運なのか……

162名無しさん:2012/04/02(月) 14:54:06 ID:S7bMcoY.0
正確に言うならキャラ決めは投票でなく話し合いの末まとめの人の最終判断で決まったんだけどね
後、Xも候補に挙がらなかったな
こっちはロボロワに参戦してる分スカイさんよりはましだけど

163名無しさん:2012/04/02(月) 21:41:15 ID:fODueOLM0
放送話数は初代の次に多いのにね、スカイライダー

164 ◆7pf62HiyTE:2012/04/03(火) 00:35:45 ID:YPkBgXI.0
大変お待たせいたしました。
只今より早乙女乱馬、園咲霧彦、山吹祈里、高町ヴィヴィオ分投下します。

165街(Nasca Version) ◆7pf62HiyTE:2012/04/03(火) 00:38:25 ID:YPkBgXI.0
Section 04 山吹少女の事件簿


「ヴィヴィオちゃん……」

 保健室のベッドで今も眠り続けるヴィヴィオを看る祈里の表情はとても辛い。
 彼女を連れてきた霧彦の話によれば、白の怪人の攻撃によって霧彦共々負傷したらしい。
 ヴィヴィオの受けたダメージは上半身の火傷と左腕の骨折、もっとも手当てした限り火傷のダメージの方は外見ほどひどいものではなく、左腕の方も骨折はしている様だが骨にヒビが入った程度である。
 それでも女の子の体に刻まれた火傷の痕が痛々しく、ヒビ程度とはいえ左腕が骨折している事に違いはない。

 クリスの方もそのヴィヴィオを心配そうに見つめている。

 甘かった――そうとしか言いようがない。

 この場で殺し合いに乗る危険人物などラビリンスの幹部であるノーザ等一部程度で他のみんなは絶対に殺し合いに乗らないと思っていた。
 だが現実はどうだろうか?
 2人が遭遇した白の怪人が彼女達を襲いここまでの傷を負わせていた。幸い命に別状はないがそれは運が良かったからに過ぎない。
 更に言えば2人が元いた森が先ほどから炎上しており、霧彦がつい先ほど再び向かっていった。
 霧彦はあえて祈里に言わなかったが恐らく白の怪人によるものと考えて良いだろう。
 炎は数キロ離れたここからでも視認できる規模、そこから察するにその規模が大きいものなのは想像に難くない。
 戦いによるものだとしたら犠牲者が出ている可能性だって否定できない。

 他にもヴィヴィオが使用したガイアメモリ、霧彦によるとドーパントへの変身という強大な力を与える反面精神に強い影響を与えるという話らしい。
 聞いた程度の話なので具体的にどうなるかは祈里には想像もつかないがナキワメーケやソレワターセの様なものになると考えて良いだろう。
 そうなったら殺し合いを望まない普通の人達も他の人々を襲う事ぐらいは容易に予想が出来る。

 更に祈里自身が最初に遭遇した黒服の少女、銃を突きつけられ一方的に自身の持つ情報を引き出させられ、食料と水、そして銃が奪われてしまっている。
 幸い命に別状はなかったが今にして思えばこれも末恐ろしい話である。
 あのまま用済みと判断され殺されていた可能性だってある。
 変身していたから大丈夫という問題ではない、それこそ変身の隙を与えず撃たれていた可能性もあっただろう。
 そもそも気がつけば銃を突きつけられていた事を考えれば、気づくことなく射殺されていたかもしれない。
 それぐらい綱渡りな状況にいたのだと今更ながらに認識したのだ。


 そんな中、窓から森の方を見つめる。果たして霧彦は無事に戻ってきてくれるのだろうか?
 そして考える。もし、同じプリキュアの仲間である桃園ラブ達が燃え上がる森を見たらどうするのだろうか?

 答えなどわかりきっている。迷うことなく炎に包まれた森で動けずにいる人々を助けに向かう筈だ。
 霧彦に頼まれた為断念はしたが最初は祈里自身が森に向かう筈だったのだ、桃園ラブ達が燃え盛る森を放置する事などまずあり得ない。

 そう考えればなおの事、霧彦の静止を振り切り自身が向かうべきだったのではないか?
 傷ついた霧彦が向かうよりもプリキュアである自身の方がまだ良かったのではないか?
 そう考えずにはいられない。
 だが、傷ついたヴィヴィオをこのまま放置するわけにもいかない、そう考えればこの選択もやむを得ないものではある。
 それでも、霧彦の身を案じると歯がゆく感じる。
 今現在机に置かれている『あるもの』を見ると不思議と強く感じるのだ。

166街(Nasca Version) ◆7pf62HiyTE:2012/04/03(火) 00:39:55 ID:YPkBgXI.0


 そんな時だった、僅かに窓が震えたのは――


「え……?」


 落ち着いて外を見る。するとどうだろう、夜の闇に加え離れた場所故にわかりにくいが何かが舞い上がっているのが見えた。


「竜巻……?」


 そう、規模こそ小さいが竜巻が見えたのだ。
 だが、竜巻などそうそう自然に発生するものではない。ならば――


「霧彦さん……!!」


 竜巻が見えた方向は丁度霧彦が向かった方向だ、それが意味するのは一つ――


「誰かが霧彦さんを襲って――」


 その推測に至ったとき、やはり自分が行くべきだったと後悔した。
 いや、正直な所今すぐにでも様子を確かめに向かいたい。だが、ヴィヴィオ達を残して向かうわけにはいかない。
 それにまだ霧彦が襲われたと決まったわけじゃない、今は霧彦を信じて待つべきだろう。

 それからしばし静寂が訪れる――ほんの数分程度だったのだろうが祈里には数時間にも数十分にも感じられた。

 そして再び窓から外を見ると中国風の服を着たおさげの少年が祈里達のいる中学校に向かっているのが見えた。

 いつもの祈里ならばその少年が危険人物だとは考えたりはしない。
 だが、有無を言わさず銃を突きつけてきた少女、ヴィヴィオ達を襲い森を燃やしたであろう白の怪人の存在があり楽観的に考える事は出来なかった。
 いや、それでもいつもならば危険人物だとはまず判断しない。

 そう、その少年が『あるもの』を持っていなければ――霧彦を襲ったであろう物的証拠を持っていたのだ。

 故にその少年は今度は中学校に乗り込み中にいる自分とヴィヴィオを――そう判断するには十分だ。
 そして今、危険人物からヴィヴィオを守れるのはただ1人、他の誰でもなく祈里だけである。

「クリス……ヴィヴィオの事お願い……」
「(こくこく)」


 次々と巻き起こる状況に焦っていなかったと言えば嘘になる。
 だが、傷つき眠り続けるヴィヴィオを守る為にも向かってくる危険人物は止めなければならない。

 故に迷うことなくリンクルンにクローバーキーを差し込み回す事でそれを開き、中にあるボタンに触れ――


「チェインジ・プリキュア! ビート・アーップ!」


 自らをキュアパインへと変身させる言葉を唱えた――

167街(Nasca Version) ◆7pf62HiyTE:2012/04/03(火) 00:40:30 ID:YPkBgXI.0





Section 01 うつろうもの


 ここでG-7の森が炎上するまでの経緯を今一度振り返り整理してみよう。
 この火災はその場所で暁美ほむらとン・ダグバ・ゼバが交戦した際、ダグバの有する発火能力を切欠にして起こったものである。
 その規模は非常に大きく、数キロ離れた場所であるG-8の中学校からも視認する事が出来る。
 なお、視認こそ出来るがエリアを超越する程広がることがない事をここで付記しておく。これはG-7にある三途の池近辺に火の手が上がっていない事からも明らかである。

 さて、火災が起こった時刻は大体いつ頃か、その時刻は大体午前2時前後、その後戦闘を終えH-7まで移動したダグバが時計を確認したのが2時半過ぎだった事からも明らかと考えて良い。
 一方、そのダグバと交戦したほむらだが、彼女が交戦場所である森に移動する前、約1時間程延々と市街地を走り回っていた。
 その理由は――超光戦士シャンゼリオンこと涼村暁と延々と追いかけっこを続けていたからである。理由については割愛させてもらう。
 ともかく森への移動時間を踏まえると追いかけっこを始めた時刻は大体0時半前後、そう考えて間違いはないだろう。
 それを踏まえると、ほむらが中学校で山吹祈里から情報を一方的に搾取し拳銃等を奪取した時刻は開始早々、大体0時10分から20分ぐらいという事になる。
 一方のダグバは開始早々、高町ヴィヴィオと園咲霧彦を襲撃、その時刻もまた開始早々大体0時10分から20分、遅くても30分ぐらいと考えて良いだろう。
 その後襲撃された両名は離脱し中学校で祈里と遭遇し情報交換と手当てを行った。中学校到着は大体1時から1時半ぐらいである。
 そして霧彦達が森の火災を確認したのは2時10分から20分ぐらいのタイミングである。

 さて、ダグバとほむらの戦いはほむらの完全敗北したものの幸い暁が何とか駆けつけほむらの機転もあり離脱に成功。だが、先程触れた三途の池にて志葉丈瑠と遭遇し交戦を開始、具体的な時刻はダグバが時間を確認した2時半頃と大体同じ頃と考えて良いだろう。

 では、ここからが本題だ。
 ほむらと暁が市街地で追いかけっこしていた約1時間、両名は他の参加者と接触する事はなかった。
 そのタイミングで森から中学校まで移動していた霧彦達と遭遇する可能性はあったものの、幸か不幸か彼らと遭遇する事はなかった。
 とはいえ1つのエリアが数キロ四方である以上、そうそう都合良く遭遇するとは限らないのも仕方ない事である。

 つまり――市街地でほむら及び暁の姿を確認した参加者は他に誰もいない――

 否、少なくとも1人はいる。その人物は開始早々のタイミング、大体0時10分から20分頃H-7にて丈瑠と遭遇しある事を頼まれ、知り合いとの遭遇を目指して市街地に向かった、その人物は――


「ったくここにくりゃ誰かいると思ったのに誰もいねぇ……」


 そう口にしたのは中国風の服を着たおさげの少年、早乙女乱馬である。
 丈瑠と別れた後、知り合いを探すため市街地に向かい、一番目立つ建造物である風都タワー、その展望室までやって来たのだ。
 が、結論から言えばその道中そして風都タワーに至るまで誰とも遭遇する事はなかった。

 そんな乱馬の手にはあるものが握られていた。

「花火大会でコイツと写真を撮ったカップルは必ず結ばれる……本当かよ!?」

 真面目な話、乱馬は微妙に苛立っていた。

「……そりゃ別にあの野郎が俺達に渡した物なんて最初からアテになんかしてなかったけどよ……こんなもんどうしろっていうんだ!?」

 それは風車を模した風都を代表するマスコットキャラ――ふうとくん、そのキーホルダーである。
 説明書きにご丁寧に花火大会での伝説についても書かれていたのである。
 本来ならば限定50個の激レア品であり欲しい物は是が非でも欲しがるであろうが、この殺し合いにおいては完全なハズレアイテムと言って良い。
 勿論、ガイアメモリなる胡散臭いもの渡された方が良い――とは口が裂けても言わないが、それにしたってもう少し他になかったのかと思わなくはない。

「くそぉ……絶対に一発ぶち込んでやる……とは言ってもあの野郎が高見の見物決め込んでる限りはどうにもならねぇしなぁ……
 奴の手下か仲間を見つけて力尽くで聞き出す……って、その手下がいなけりゃどうにもならねぇよなぁ……」

168街(Nasca Version) ◆7pf62HiyTE:2012/04/03(火) 00:41:25 ID:YPkBgXI.0

 加頭に対する怒りを湧き上がらせつつ懐にキーホルダーをしまう。そして今度はデイパックから名簿を取り出し改めて確認する。
 一応最初に確認はしているものの気になる事があった為の再確認である。

「あかねに良牙、それにシャンプー……後はパンスト太郎だけか……」

 乱馬の知り合いは4人、
 現在早乙女家が居候している天道家の三女で乱馬の許嫁の天道あかね、
 前の学校での同級生で今も好敵手でありあかねに好意を持っている響良牙、
 女傑族の少女で乱馬が打ち破ったことで掟により命を狙われたり求婚されたりもしたがなんだかんだで今現在も乱馬を求愛しているシャンプー、
 腰にパンスト、つまりはパンティストッキングを巻きある目的を持って乱馬とあかねの父である早乙女玄馬と天道早雲の師匠八宝斎を付け狙っているパンスト太郎、

 さて、乱馬は知り合いとの合流を目指し最終的な目的地をC-7にある呪泉郷を目的地に定めていた。
 5人が共通で把握している場所ならば合流できるという判断だ。
 だが、それは彼らが殺し合いに乗らないという前提がなければ成り立たない。優勝狙う者がわざわざ知り合いとの合流を目指す筈もないだろう。

「あかねと良牙が乗る事はねぇと思うが……」

 とはいえ、あかねと良牙の2人が殺し合いに乗る事はまずないと考えている。
 あかねに関してはかわいくない所や不器用な所はあるものの殺し合いに乗る様な奴じゃない事は乱馬自身がよく知っている。不安要素がないではないがまず大丈夫だろう。
 良牙に関しては全く心配していない。あかねを生還させる為殺し合いに乗る? そんな事はまずありえない。
 貧力虚脱灸で弱体化した時、ここぞとばかりに九能帯刀や五寸釘光、ムースや風林館高校校長(九能の父)が襲ってきた一方、良牙だけは襲わずむしろ強さを取り戻すのに協力してくれたのだ。
 それ以前に特訓の為良牙が本気で戦う必要があったが、弱体化した乱馬に対し全く本気を出せず――

『どうやらおれは…自分で思っていたより…ずっとセンチでいいやつだったらしい…
 弱くなった乱馬に本気を出すなど、優しいおれにはできんのだーっ!!
 甘い男と笑わば笑え!!』

「……なんかすげーやな事思い出した気がする」

 ともかく、その優しい(?)良牙が自分よりも弱い参加者を皆殺しにする姿が全く想像つかないのだ。

「う゛ーん……問題は……」

 後の2人が正直問題だ。
 シャンプーは乱馬自身を生き残らせる為なら何をやってもおかしくはない。そもそもこの機に乗じてあかねを亡き者にしようとする可能性すら十分にあり得る。
 それ以前にあの場には自分達より少し幼い中学生ぐらいの少女が数多くいた。
 シャンプーがその少女に仕掛ける、シャンプーが敗北しその相手に死の接吻を行う、そしてその命を奪うべく追いかけ回す、乱馬やあかねが苦しめられた一連の流れが繰り出される可能性は多分にある。
 それ故、殺し合いに乗るあるいは危険人物になっている可能性が非常に高いといえよう。

「ていうかよ、俺が生き残ったってアイツ自身は生き残れねぇんだから意味ねぇんじゃねぇか……」

 そんな疑問を感じる乱馬である。
 最後の1人であるパンスト太郎に関してはそもそもそこまで仲が良いわけじゃない。
 むしろ、パンスト太郎は目的の為ならば何をしでかしてもおかしくはない。

「優勝したらなんだって出来るって言ってもさすがに掟は変えられねぇだろうが……」

 パンスト太郎が八宝斎をつけ狙う理由、それは自身の名前をパンスト太郎が望む名前(かっこいい太郎)に変えさせる為である。
 村の掟により産湯に漬けた者である八宝斎以外が命名、あるいは変更する事は不可能。
 加頭がどんな願いでも叶えるといっても掟は絶対だろう。
 だが、掟の方は無理でも八宝斎に名前を変えさせるのに全面協力させる事は出来るだろう。そうさせる為の手段の幾つかは乱馬も把握している。
 乱馬達ともそこまで仲も良くない以上、自分達の事などお構いなしに嬉々として殺し合いに乗る可能性は高い。

169街(Nasca Version) ◆7pf62HiyTE:2012/04/03(火) 00:42:00 ID:YPkBgXI.0

「それにしても……あかね以外はみんな呪泉郷に落ちた連中なんだよな……」

 そう、あかね以外の4人は全員呪泉郷に落ち、水をかぶると変身し、お湯をかけると元に戻る特異体質となった。
 良牙の場合は水をかぶると黒い子豚となり、シャンプーの場合は子猫となる。そしてパンスト太郎の場合は牛の頭に雪男の体、鶴の翼に鰻の尻尾の怪物となる。
 当然、乱馬も3人同様に水をかぶると変身する体質である。

「この島に呪泉郷がある事といい……そういう連中ばかりを集めているのか……けどそれならあかねがいる筈ねぇし、むしろ親父やムースの野郎の方がいなきゃおかしいよなぁ……」

 余談だが玄馬はパンダとなり、シャンプーに好意を持っているムースはアヒルになる。勿論、乱馬の知る呪泉郷関係者は他にもいるが彼らの名前は確認できない。
 そんな中、

「そういや、あの剣客の兄ちゃんから頼まれていたんだっけな」

 と、デイパックからこの地で最初に出会った丈瑠に託されたショドウフォンとメモ書きを出す。

「確か誰に渡すんだったかな……流之介と源太……ああ、こいつらだな」

 そう言いながらメモを開き渡す相手を名簿を見ながら確認する。

「しかしアイツ何を考えているんだ……?」

 気になったのはメモの中身だ。簡単にまとめればその意味合いは2つ、『ショドウフォンを持つ資格がないので2人に預ける』、そして『次に出会った時は敵だ』というものだ。
 詳しい事情は聞かなかった為知り得ないわけだが穏やかじゃない事は確かだ。
 何より、わざわざ偶然で会った何も知らない自分に頼んだ事自体奇妙な話だ、それこそ丈瑠自身で渡せば済む事の筈だ。

「ま、2人に会った時に聞いてみればいいか」

 とはいえ、それこそ運良く2人に会った時に聞いてみれば良い。優先順位としてはさして高くはないが丈瑠と約束した手前やらないわけにはいかない。

「さて、どうすっか……」

 ひとまず今後どうするかを考える。呪泉郷に向かう前に市街地を一回りするつもりではあったが、市街地は思ったよりも広い。
 あかね達がいる可能性も高い為、捜索すべきなのはいうまでもないがこの広さだと全て回るだけでも数時間はかかる。
 だからこそ風都タワーの展望室から周囲を見回したがその全てを把握しきれるものではない。

「う゛ーん……ん?」

 そんな中、展望室の窓をのぞいてみると1人の黒服の少女が歩いているのが見えた。
 急いで降りれば十分に追いつく距離、何か聞けるかもしれないと考えたが、


「!?」


 次の瞬間にはその少女が消えていた。

「見間違いか……? いや、んなわけねぇよな……」

 そう考えていると今度は白くキラキラした甲冑を身に纏った者が周囲を見回しながら何かを探しているのが見えた。

「………………」

 そんな乱馬の脳裏に浮かんだのは五寸釘が奇跡の鎧ファイト一発を着た時の事だ。
 その鎧は憎くて憎くて憎くて強いやつ(乱馬)を殴らなければ脱げない(しかも乱馬を拘束した状態でないとまともに動けない)厄介なものだった。
 だが、そのパワーと堅さは非常に強く、乱馬自身手を焼かされた。
 何より、時間制限で自爆に巻き込まれ(そのお陰で結果的には勝利したが)た事もあり良い思い出がない。
 そんな嫌な事をあの白くキラキラした甲冑を見て思い出したのだ。そして思う、アレに関わったらロクな事にならないと――


「さーて、あかねや良牙でも探しにいくかー」


 故に乱馬は見なかったことにした。かくして水をかぶる事で変身するうつろうものは風都タワーの展望室を後にした。この時、展望台の時計は午前1時20分を刺していた。

170街(Nasca Version) ◆7pf62HiyTE:2012/04/03(火) 00:42:45 ID:YPkBgXI.0





Section 02 Castle・imitation


「はぁ……はぁ……」

 風都タワーのあるこの場所は風都――否、
 適当な市街地に風都タワーを持ってきただけの全然違う場所だ。
 なによりも風が全く違うのだ、今霧彦自身に吹き付ける風は心地よさを全く感じない嫌な風だ――
 そう、この場所は都合良く作られたイミテーションに過ぎないのだ。

「(ああ……本当に悪趣味だよ、お父様……いや、園咲琉兵衛!)」

 参加者の多くに未成年がいた事実、そして参加者に支給されたドーパントに変化させる力を持つガイアメモリの存在、加頭の使用したガイアメモリとドライバーの存在、
 それらから霧彦はこの殺し合いの黒幕はミュージアム、及びその主賓である園咲琉兵衛だと考え、同時にこの殺し合いはミュージアムによる実験の1つであろうと推測していた。

「(そしてあの時死ぬはずだった僕がこうして生きて参加させられている理由……それは最後のチャンスだということか、あるいは裏切り者に対する制裁なのか……)」

 死を待つだけだった筈の自身がこうしてこの場で存命している謎、それは琉兵衛による最後の温情、あるいは制裁の可能性を考えた。

「(今一度生きるチャンスを与えてくれた事だけは感謝するよ……それでも僕の答えは変わらない、何も知らない子供達にガイアメモリを与え殺し合いを強要するお前達を僕は許さない……)」

 それでも霧彦がすべき事に変わりはない。
 ミュージアムは人間の進化を促そうとガイアメモリによる実験を繰り返している。
 霧彦自身、風都の未来の為、人類の進化は望むところ、故にミュージアムの幹部としてガイアメモリを街にばらまいていた。
 ガイアメモリの危険性は承知している、だがそれを使うのは薄汚れた大人達、彼らの犠牲で風都にとって明るい未来が訪れるのであれば小さなものだ。
 しかし子供達や何も知らない人々がその対象になる事は決して許されない。
 そもそも風都の未来はそこに住む子供達や人々のものの筈だ、それなのにその子供達や人々が犠牲になるのは本末転倒ではなかろうか。
 無論、参加者の多くは風都関係者ではない。だがそんな事は関係ない、どこの住民であろうとも何事もなく幸せに暮らせた筈の人々の未来を奪って良い理屈にはなり得ない。

『言ったよな、お前も……この街を愛してるって……もしそれが本当なら子供達にもうあんな涙は流させるな……』

 思い出すのは仮面ライダー君こと左翔太郎の言葉、

「愛しているさ……その想いの強さだけなら仮面ライダー君にだって負けていない!」

 そんな中、もし琉兵衛の長女で霧彦の妻であった園咲冴子と遭遇したらどうすべきか考える。
 霧彦にとって運命の女性である冴子、そうそう簡単に諦めるわけにはいかないので可能な限りは説得するつもりだ。
 だが、この地に来る直前にも共にミュージアムを抜ける様説得したが断られそのまま返り討ちにあった。
 恐らく、この地で説得しても聞き届けられる事はないだろう。良くてこの場での対立を避ける事が出来る程度だ。

 とはいえ、それを残念には思うものの冴子を恨むつもりは全くない。
 冴子自身、強い目的があって自身の説得を拒んだ事は理解できる、そもそもその強い意志があるからこそ霧彦は彼女に惹かれたのだ。
 裏切ったのはむしろ自分自身、それ故に拒絶した事を悪く言うつもりはない。

 そもそも、あの時点で薄々その結果はある程度予想できていたのだ。だからこそ仮面ライダー君に風都の未来を託したのだ。

「(……待てよ……もしミュージアムが黒幕ならばどうして冴子が参加させられているんだ?)」

 琉兵衛は誰よりも家族を愛しているのを霧彦は知っている。
 最終的に袂を分かつ事にはなったが、琉兵衛自身は家族を失う事を心底残念がっていた。
 その琉兵衛が目的の為とはいえ冴子を命の危険が大きい殺し合いの参加者にするだろうか?
 むしろ、この殺し合いの運営側に回す方が自然ではなかろうか?

「(考えられる可能性は2つ……1つは冴子自身もミュージアムを裏切った可能性……)」

171街(Nasca Version) ◆7pf62HiyTE:2012/04/03(火) 00:43:20 ID:YPkBgXI.0

 1つは冴子がミュージアムを裏切った事による制裁の可能性だ。
 何故自身の説得を拒みミュージアムを裏切らなかった冴子がミュージアムを裏切ったのかという根本的な疑問は感じるが、仮にそうだとするならば説得が届いたかもしれない故、嬉しく思わなくはない。
 だが、同時に責任を感じる。自身の説得が冴子を危険に巻き込んだ可能性があるのだから。

「(もう1つ……そもそもの前提が間違っていたとしたら……?)」

 もう1つ、それはミュージアムが黒幕ではない場合だ。これならば冴子を参加させようがさせまいが全く関係がない。
 ガイアメモリやドーパントとは全く異質の存在が幾つか存在する事からも可能性が無いとはいえない。

「(仮にそうだとするならば連中はミュージアムを取り込む程の力を持つ連中という事になる……)」

 園咲家しか持ち得ないゴールドメモリ及びドライバーを所持していたのはミュージアムから手に入れたと考えれば筋が通る。

「(だが、そんな連中が本当にいるのか……いや、ミュージアムが今程の組織になったのだって様々なスポンサーの協力があったからだ、絶対に無いとは言い切れない……)」

 とはいえ長々と考えても仕方が無い。優先すべき事は一刻も早く森の火災現場に駆けつけ様子を確かめる事だ。細かい事はまた後から考えれば良い。
 時計を確認する。今現在2時30分ぐらいといった所だ。

「まだ森は遠い……か」

 そう言いつつ霧彦はガイアドライバーを巻き、懐からガイアメモリを取り出し作動させる。


――Nasca――


 自身の持つナスカのメモリでナスカ・ドーパントへと変身し一気に森まで移動しようかと考えた。
 だが、メモリを持つ手が震えている。
 ナスカはゴールドメモリの1つ、その力は絶大故に使用者にかかる負担は非常に大きい。
 そして度重なるメモリの使用により霧彦の体は限界を迎えようとしていたのだ。
 それがいつかはわからない、それでも使えば死に近づく事だけは確実だ。

「迷っているのか……馬鹿馬鹿しい……」

 だが、今更霧彦が命を惜しむわけにはいかない。
 霧彦自身、ガイアメモリの力で薄汚れた大人達が犠牲になる事は納得出来ると考えているのだ。
 ガイアメモリを流通させ子供達を苦しめた自身は既にドス黒く汚れた大人、他の参加者を助けられるならば幾らでも犠牲になろう。

 そんな中、ささやかな風が霧彦の首に巻いている何かを揺らめかせた。

「(あぁ、そうか……)」

 脳裏に浮かぶのは1人の女性――冴子とは違う別の――

 無論、何かがあった時は仮面ライダー君の拠点である鳴海探偵事務所に行くに伝えてはいる。
 だから仮に自分が戻ってこなくても大丈夫だと考えていた。
 それでも――もし自分が残したものを調べたら自分に何が起こったかを察する可能性がある。
 そうなればどうするのだろうか? メッセージ通り仮面ライダー君を頼るならばまだ良い。だが単身で無茶をする可能性は否定できない。
 そう、たった1人遺される『彼女』の事が心配なのだ、霧彦にとって唯一の――

「(本当にすまない……けれど……僕が死んでも決してそれに囚われないでくれ……僕なんかと違い未来が待っているんだから……)」


 届くはずの無い伝言を内心で口にし、


――Nasca――


 意を決しメモリを作動しドライバーへと挿入、程なく霧彦の身体は青い戦士の姿ナスカ・ドーパントへと姿を変えた。


「超加ぞう゛ぁ!」


 すぐさま超加速を発動し一気に移動しようとしたが、ナスカ・ドーパントの言葉はそこで止まる。
 そう、その瞬間、頭部に跳び蹴りが炸裂したのだ。そのままナスカ・ドーパントは地へと伏せられる。
 だが、ドーパントと化した身体に届くダメージは殆ど無い。蹴りの飛んできた方向を確認しつつゆっくりと立ち上がる。


「いきなり何をする……」


 眼前には中国風の服を着たおさげの少年が立っていた。


「何をだぁ? そりゃこっちの台詞だ!」
「どういう意味だ?」
「テメェが奴らの仲間だって事はわかってんだ! 加頭の野郎の所まで案内してもらうぜ!」
「僕があいつらの仲間?何を言っているんだ?」
「テメェが使ったそのベルトとメモリ、加頭の野郎が使った奴と同じだろうが! それでもまだしらばっくれるつもりか!?」

172街(Nasca Version) ◆7pf62HiyTE:2012/04/03(火) 00:44:00 ID:YPkBgXI.0





Section03 ナスカクォーター


 その少年、早乙女乱馬は風都タワーを離れた後、市街地の散策を続けていた。

「あかねどころか人っ子一人いねぇ……おーい、あかねー、シャンプー、パンスト太郎ー、Pちゃーん、どこだー?」

 そう声を張り上げるも反応は無い。

「しょうがねぇ……あそこの学校にでも行って……ん?」

 そんな中、ふとある方向を見上げる。

「あれ……燃えてねぇか?」

 G-8の森が炎上しているのを見た。

「まさか……いやでもあそこにいる理由なんてねぇしなぁ……」

 可能性が低いもののあかね達がいないとは限らない。どうするべきか乱馬は迷う。
 そんな中、遠目に1人の男性の姿を見たのは。ようやく会えた参加者とはいえ火災の状況、それ故にすぐさま接触する思考には至らない。
 だが、その時その男性がある行動を起こしたのだ。

「な……あれは……」


 腰に巻かれるベルト、手に持ったガイアメモリ、恐らくドーパントなる存在に変身しようとしていたのは容易に予想がつく。
 だが、重要なのはそんな事では無い。
 加頭はメモリを肉体に挿入すればと言っていたがベルトの事は何も言っていなかった。つまりドーパントに変身するにはベルトは必要無いという事になる。
 しかし目の前の男は加頭が使ったのと同じベルトを使用している。それは加頭、つまりは主催者側の関係者の可能性があるという事だ。
 勿論、ベルトを使っただけで断定できるわけもない。それでもこのふざけた催しに巻き込んだ事に対する怒り、そしてようやく掴んだ主催への手がかり、
 故に迷うこと無くその男性の変身したナスカ・ドーパントに蹴りを入れたのだ。


「君の言うとおりこのベルトとメモリはあの男が使ったものと同じだ……」

 ナスカ・ドーパントは乱馬の問いに正直に答えた。

「やっぱり奴らの仲間じゃねぇか!」
「確かにミュージアムにいたのは事実……だが今は違う! それよりもこんな事をやっている場合じゃ無い、急がなきゃ……」

 ナスカ・ドーパントとしてはすぐさま森に向かいたかった。それ故に早々に話を切り上げようとしていた。

「そう言って逃げようったってそうはいかねぇよ、ミュージアムって言ったか、連中の事を知っているんなら意地でも聞き出してやるぜ!」

 だが、乱馬としても連中の仲間を見つけたのだ。ぶん殴ってでも連中の事について聞き出したい所だ。
 一方のナスカ・ドーパントは乱馬と間合いを取りつつ。

「残念だけど付き合っている時間も余裕も……無い」


 そう言って間合いを取り何発もの光弾を乱馬めがけて飛ばしていく。
 乱馬の口ぶりから主催打倒を考えていて殺し合いに乗っていないのは明らか、故に直撃させる意図は無く全て威嚇程度である。
 そして足が止まっている間に更に距離を取り超加速で離脱――そういう目論見だったが、

「猛虎高飛車!!」

 その言葉と共に気の塊を放ち飛んできた光弾を消し飛ばし、

「飛び道具を使えば勝てると思ったら大間違いだぜ!!」

 そのまま一気にナスカ・ドーパントへと迫り顔面へと拳を繰り出す。

「なっ、速い!」

 ナスカ・ドーパントは装備している剣を盾にその攻撃を防ぐ。

「(まずい……超加速を使えば離脱自体は可能だが……この様子だと森まで追いかけてくるのは明白……彼を危険に巻き込むわけにはいかない……)」

 乱馬の立ち回りから、このまま離脱しては乱馬を危険にさらす事になると判断する。

「仕方ない、相手してあげよう。すぐに終わることになるだろうけどね」

 迅速に無力化しその後で向かうのが得策、そう考えて乱馬の方へと向き直る。

「大した自信じゃねぇか」
「普通の人間の力でドーパントに勝てるとは思わない事だ」
「はっ、化け物相手の戦いなら十分慣れているぜ。相手がドーパントだろうが何だろうが俺は負けねぇよ」

 その言葉と共に両者は再びぶつかり始める。
 ナスカ・ドーパントが距離を取れば乱馬がすぐさま懐へと飛び込み蹴りを入れ、
 その乱馬の背後にナスカ・ドーパントは高速で回り込み剣を振り下ろそうとするが乱馬は紙一重で後方に飛ぶ事で回避、
 だが、ナスカ・ドーパントは乱馬へと迫り至近距離から光弾を仕掛ける。
 しかし乱馬は再び猛虎高飛車を炸裂させて相殺し再び両者は間合いを取る。そして再び――

173街(Nasca Version) ◆7pf62HiyTE:2012/04/03(火) 00:45:40 ID:YPkBgXI.0


 ガイアメモリ――地球の記憶を意味するそれは使用者に対しドーパントへと変身させる力を与えるのは既に触れたとおり。
 その力の源は地球の記憶、つまりは地球上のあらゆる事象の事である。
 事象というからには生物に限らず金や嘘、人形遣い、氷河期といった人工的な物や地球の歴史のある一時期など本当に様々な種類がある。
 一説ではかつて仮面ライダーが戦った敵幹部すら記憶しており、それを封入したメモリが存在するとも言われている。
 その特製故にガイアメモリの種類でそのメモリによって変身するドーパントの能力が概ね把握できるのはおわかりであろう。
 例えば参加者の1人が使う井坂深紅郎、彼の使うウェザーのメモリはその名の通り気象に関するあらゆる能力を扱う事が出来る。雷や風、雪などと言った気象に関する全てだ。
 例えばミュージアムの主賓である園咲琉兵衛、彼の使うテラーが意味するのは恐怖、対峙した者全てに恐怖を刻み込むという究極的に恐ろしい力を持っている。
 もしかしたらテラーなだけに地球(テラ)そのものという意味もあるのかもしれない。そういう意味ではミュージアムの帝王にふさわしいメモリともいえよう。
 そして冴子の妹にして琉兵衛の娘である園咲若菜、彼女の持つクレイドールのメモリ、つまりは土人形の記憶が封入されており、土塊で出来た人形らしく、砕かれても再生する力を持っている。
 勿論、それ自体は厄介なものではあるがそこまで強大というものではない。だが、果たして本当にそうだろうか? 永い歴史において土人形、つまりは土で作られた人形に土偶という存在がある。
 土偶は何の為に作られたのか? それを踏まえればクレイドールに隠された真の意味、つまりはそれを持つ若菜に与えられた役割も見えてくるのではなかろうか?
 ――と、説明したものの、今回の話に直接関わるわけでもないのでここまでにしておこう。

 さて、園咲霧彦が使うナスカのメモリ、これには何の記憶が封入されているのだろうか?
 読者諸兄の中にナスカの地上絵という地球に描かれた超巨大な絵の存在を聞いたことがある者も多いであろう。
 長年の研究によりかつて存在したナスカ文化の時代に描かれたものである事が概ね判明した。
 それを踏まえ考えれば、そのナスカ文明の記憶が封入されていると考えて良いだろう。
 飛行機や宇宙船等の無い故に完成した地上絵を確認がまず不可能であるにも関わらず、現代人から見ても見事としか言いようのない巨大な地上絵を描いた人々の文明――
 その文明が封入されたナスカの力は並のドーパントを凌駕するものであるのは想像に難くない。

 だが、ドーパントの戦闘力を決めるのはガイアメモリの力だけでは無い。
 それを決めるのは使用者とメモリとの相性、そして使用者の資質に他ならない。
 メモリを使うのは基本的に人間(動物に使うケースもあるにはあるが)、その人物の力量次第で大幅に力量は変わるという事だ。

 そう、いかにナスカが強大な力を持っていても霧彦が入手してからの実戦経験は仮面ライダーとの戦い数回程度しかない。
 メモリを得てから、つまりはドーパントの力を手に入れてから間もない霧彦には圧倒的に経験が足りない。
 一方の乱馬は様々な強敵との激闘や修羅場をくぐり抜けている。時に敗北や困難に遭おうともそれを乗り越えさらなる力を手に入れていた。

 つまり――スペック的には圧倒的にナスカ・ドーパントの方が上とはいえ、乱馬は十二分に対応できているのである。

「驚いたよ、まさか普通の人間がここまでドーパントに対抗できるとはね」
「へっ、ドーパントがどれだけのものかと思ったら大した事ねぇじゃねぇか!」

 幾度かの激突が繰り返された。だが双方共に致命的なダメージは見られない。

174街(Nasca Version) ◆7pf62HiyTE:2012/04/03(火) 00:46:55 ID:YPkBgXI.0

「強気なのは良いが2つ程君は間違っている」
「間違いだぁ?」
「まず1つ……」

 そう言ってナスカ・ドーパントはハチドリを模した翼を展開し飛翔、そのまま連続で光弾を放っていく、

「くっ、速い!?」

 猛虎高飛車を撃つ余裕も無く後方へと跳び回避する乱馬であったがそこにナスカ・ドーパントの首に巻かれているマフラーが飛んできて腕に絡みついてくる。

「なっ……」

 そしてナスカ・ドーパントが高速で迫り剣を振り下ろす――


「だりゃぁ!!」

 だが、斬撃が届く直前乱馬は足を振り上げナスカ・ドーパントに蹴りを命中させる。その衝撃でマフラーが外れ距離を取る事に成功した。

「……あれがナスカの全力じゃ無いという事」
「ちっ……手加減してやがったのか……」
「そしてもう1つ、ナスカよりも強いドーパントは幾らでもいる。運良くナスカに勝てた所であの男が変身したドーパントに勝てるとは思わない事だ」

 ナスカはそう言いながらゆっくりと乱馬へと近づいていく。

「(どうする……あのナスカ野郎妙に速い……このままじゃジリ貧じゃねぇか……)」

 先の攻撃も何とか回避したとはいえ流石に乱馬に焦りの表情が現れる。
 攻撃の命中数は乱馬の方が上だが肉体の強化されているナスカ・ドーパントに届くダメージはさほど大きいとはいえない。
 一方、ナスカ・ドーパントの攻撃を殆ど回避しているものの当たればダメージが大きい為油断は出来ない。
 更にスピードの方はナスカ・ドーパントの方が上、それを踏まえれば長期戦に持ち込まれれば乱馬の方が圧倒的に不利なのは明白だ。

「(弱点……奴に弱点はねぇのか……待てよ)」

 ナスカ・ドーパントの腹部に巻かれているドライバーを見る。確かそこにメモリを挿入した事でドーパントに変身した筈だ。
 ドーパントの力の源はメモリ、ならばドライバーを攻撃してメモリそのものを破壊すれば良いのではなかろうか?

「(問題は一撃でメモリを破壊できる程の……アレしかねぇか)」

 考えを纏めた乱馬はじっとナスカ・ドーパントへと向き直る。

「さぁ、そろそろ終わらせるよ。僕も急いでいるんでね」
「ああそうだな、全力で来いよ。次で終わらせてやる」


 その言葉を切欠にナスカ・ドーパントが再び翼を展開し急速で乱馬へと迫る。
 一方の乱馬はナスカ・ドーパントの方を向いたまま後方へと後ずさりしていく、
 対しナスカ・ドーパントは光弾やマフラーを乱馬の方へと飛ばすが回避しつつ後方へと下がっていく。


「逃げてばかりだけど、次で終わらせるんじゃなかったのかな?」


 そう言ってナスカ・ドーパントが挑発するが乱馬は構わず後方へと移動を続ける。
 距離が詰まりナスカ・ドーパントの斬撃が迫るが乱馬は冷静に回避を続けていく。


 一見すると、ナスカ・ドーパントの猛攻に乱馬は手も足も出ず回避するしかない状況に見える。
 だが、乱馬の動きを見るとある軌道を描いているのがわかる。
 そう、ナスカ・ドーパントは知らず知らずの内に乱馬の動きに誘導されていたのだ。
 しかし戦闘経験が足りないが故にナスカ・ドーパントこと霧彦その事に気づかない。


「(よし、後数歩……だが、何だこの妙な違和感……)」


 先ほどまで熱くなっていた頭は冷えている、それ故に今更ながらに違和感を覚えた。
 だが、既にその時は迫っている。今はこのままナスカ・ドーパントを『中心』へと――

 しかし、業を煮やしたナスカ・ドーパントが決めるべく乱馬へと急接近し剣を振り下ろす。
 乱馬の回避も今回は完全には間に合わず服の前部分が斬られた。


「(しまっ……)」


 このまま猛攻が迫れば失敗に終わる――だが、


 その時、懐から『あるもの』が飛び出していく――そしてナスカの動きが一瞬だけ鈍る。


 何故、ナスカの動きが鈍ったのかはこの際どうだって良い――
 今ならば確実に決められる――乱馬は右腕を振り上げ――



「飛竜昇天破!!」

175街(Pine Version) ◆7pf62HiyTE:2012/04/03(火) 00:52:35 ID:YPkBgXI.0





Section 06 伝説の戦士


「ったく、面倒な事押しつけやがって霧彦の野郎……」

 そう言いながら乱馬はゆっくりと中学校の校舎へと入っていく。

「そりゃ元々中学校に行くつもりはあったけどよぉ……」

 その時、前方がまばゆく光っているのが見えた。

「何だ? まさか……誰か戦っているのか!?」

 それを見て乱馬は走り出し大急ぎでその場所に向かう。そして、

「なっ……」


 眼前では――


「イエローハートは祈りのしるし!」


 黄色のひらひらとした衣装に身を包んだ少女が指でハートを作り今一度パンと手を叩く。


「とれたてフレッシュ、キュアパイン!」


 そう言ってポーズを取るキュアパインに思わず乱馬の思考も一瞬停止してしまう。が、


「レッツ、プリキュア!」


 そう言ってポーズを決めるのを見て正気に戻り、


「プリキュア……まさか……」
「え? もしかして……」


 祈里ことキュアパインは目の前の少年こと乱馬が霧彦だけではなくラブ達とも遭遇した可能性を考える、しかし乱馬の返答はキュアパインの想像を超えるものであった。


「ダークって割には妙に明るすぎるじゃねぇか!」
「えええぇぇ!? 何言ってるの!?」
「テメェじゃねぇのかよ、ダークプリキュアって奴は!?」
「ダークプリ……だから何の事? わけがわから……」


 と、躊躇している内に乱馬がキュアパインの横を駆け抜け様とする。


「(確か中にはヴィヴィオと祈里がいるんだったな……あいつら無事か!?)」


 それに何とか気づき、


「行かせない!」


 と、乱馬を全力で掴みよりそれを阻む。


「ぐっ……すげぇパワーだ……」


 乱馬は拘束を振り払い間合いを取り、


「ちっ……仕方ねぇ、テメェを倒さねぇと先には行けねぇ様だな」


 そう言いながら臨戦態勢を整えていく、その手に巻かれたスカーフを揺らしながら。


「そのスカーフ……やっぱり霧彦さんの……」
「(アイツの事知ってんのか……じゃあコイツが霧彦とヴィヴィオを襲った……白い……って白じゃなくて黄色の様な……流石に違うか?)」


 そう考えながら乱馬は懐に入り込みキュアパインへと拳を振り下ろそうとするがキュアパインは後方へと高く跳び回避しそのままキックの体勢に入り乱馬へと迫る。


「くっ」


 乱馬は後方に飛んで回避し直撃を免れる。だがキュアパインの蹴りは廊下を粉砕する程の破壊力を見せる。

176街(Pine Version) ◆7pf62HiyTE:2012/04/03(火) 00:53:40 ID:YPkBgXI.0


「なんつー馬鹿力だ……こんなもん食らったらタダじゃすまねぇ……」


 そう口にする間にキュアパインが乱馬の懐まで飛び込みストレートを打ち込もうとする。乱馬は何とかそれに気づき両腕を組んでそれを防ぐ。
 だが、その衝撃は凄まじく一撃で数メートル後方まで吹っ飛ばされる。


「しかも速ぇ……格闘はパワーだけじゃ勝てねぇがスピードまでとはな……」


 乱馬はプリキュアの力が圧倒的なものである事を察した。先に戦ったナスカ・ドーパント以上ですらとも感じている。


「けどな、それならそれでやりようは幾らでもあるんだよ!」


 そう口にし近くの教室へと飛び込んでいく。


「待って!」


 逃げる乱馬を見てキュアパインも教室へと向かうがドアを開いた瞬間、


「え!?」


 無数の机や椅子が一斉にキュアパインの方へと飛んできたのだ。突然の事に対処する事が出来ず雨の様に落下するそれらを一斉に受ける事となった。


「暫くそこで寝てやがれってんだ!」


 教室に飛び込んだ乱馬は急いで机や椅子をかき集めキュアパインが入ったと同時に一斉に投げつけたのだ。
 そう言いつつ、机や椅子の山を飛び越え教室を出て行った。


「とりあえず先に2人が無事かどうかを確かめねぇとな……」


 そうして乱馬が走り去った後、机と椅子の山からキュアパインが抜け出てくる。


「待って……」


 そうしてすぐさま乱馬の追跡を再開する。その後、物陰に潜んでいた『何者か』もまたゆっくりと動き出す――


 結論から述べれば、この戦いは本来ならば避けられる戦いである。
 乱馬はそもそも女を本気で戦い倒す事が出来ないし、祈里にしても内向的で動物が大好きな優しい少女故に本気で相手を倒す事など出来よう筈も無い。
 そして乱馬は霧彦からヴィヴィオと祈里の保護を頼まれていた、そして祈里はヴィヴィオを守ろうとしていた状況、普通に考えればまず戦いにはなりえない。
 だが幾つもの不幸な偶然が起こりえない筈の戦いへと導いてしまったのだ。

 まず祈里は霧彦の向かった方向で起こった竜巻を見て霧彦に何かあったのではと考えた。
 その後、そこから霧彦のスカーフを持った乱馬が現れる。つまり乱馬が霧彦を仕留めスカーフを戦利品として手に入れたと誤解したわけだ。
 勿論、それだけならば若干勇み足かもしれない。
 だが、いきなりほむらに銃を突きつけられそのまま道具の一部を奪取された経験もあり、祈里は知らず知らず警戒心を強めていた。
 重ねてヴィヴィオを絶対に守らなければならない状況、それ故に焦りを生み先走り誤った判断をしてしまったというわけだ。

 一方の乱馬の方はそもそもの前提として祈里がプリキュアである事を知らない。霧彦と情報交換をしたとはいえ霧彦自身がプリキュアの事を聞いていない為、それを知る事が出来なかったという事だ。
 そして、名簿にある『ダークプリキュア』という名前、闇という言葉から禍々しい悪しき者だと推測するのも当然の流れだ。
 それを踏まえてプリキュアが悪人である可能性を考えるのもあり得ない話では無いだろう。
 勿論、これは極端な話ではあるがどちらにせよ知らない人から見れば、善人か悪人かすらもわからない正体不明の存在であり警戒すべき対象であると考えても不思議は無い。
 そんな得体の知れない存在が守るべき2人のいる中学校に現れたのだ、乱馬の早計な判断も仕方ないだろう。
 加えて、霧彦からン・ダグバ・ゼバの外見情報(白と金に彩られた外見)から奴が現れた可能性も一瞬考えた事を付記しておく(冷静に考えて白と黄色だと全然違う為、それはすぐに否定はしているが)。



「はぁ……はぁ……ちっくしょう……2人は何処だ……?」

 キュアパインへの対処は2人を見つけてからと考え、彼女を振り切りつつ校内を探索していた乱馬だったがすぐさまキュアパインが追撃してくるためそれは思うように行かなかった。
 前述の通り、乱馬は女性を相手に本気で殴ったりする事は基本的に無い。それ故、乱馬自身は相手が危険人物であってもまずは2人の保護を優先したのである。それ以上に、

「それにしてもあのキュアパインの口ぶり……なんか変なんだよなぁ……」

 キュアパインの言動にどこか違和感を覚えていた。そう、どこか根本的な所で勘違いをしている様な――

 そんな中、乱馬が今現在いるのは家庭科室である。

「ここにもいね……」
「はぁ……はぁ……ようやく見つけた!」

177街(Pine Version) ◆7pf62HiyTE:2012/04/03(火) 00:54:25 ID:YPkBgXI.0

 その時、キュアパインが理科室のドアの前までやって来たのだ。


「ちっ、もう追いついてきやがったか!」
「ヴィヴィオちゃんは私が……守る!」


 そう良いながらリンクルンにキュアパインのリンクルンに宿りし精霊ピックルンキルンを差し込み回し、


「えいっ! 癒やせ、祈りのハーモニー! キュアスティック、パインフルート!」


 そう口にしてリンクルンからフルート型の武器であるパインフルートを取り出し構え、


「ヴィヴィオを守る……まさか!?」


 キュアパインの台詞から、乱馬は自身が勘違いをしていた事を察した。だが、既にキュアパインはパインフルートを奏で、


「悪いの、悪いの、飛んでいけ!!」


 そう良いながらパインフルートを振りかざす、


「俺が悪人かよ!?」


 そう叫ぶ乱馬に気づくこと無く、


「プリキュア・ヒーリング……………………フレーッシュ!!」


 パインフルートからハート型の光線が乱馬へと放たれる。


「やべぇ……今からじゃかわせねぇ……」


 今のは間違いなくプリキュアの必殺技、そのパワーから考え直撃を受ければ致命傷となるのは明白、
 乱馬は自身の危機を悟ったが――

「冗談じゃねぇ、こんな所で終われるかよ……どうする……」


 この状況を切り抜ける手を何とか考える。


「猛虎高飛車で和らげるか床をぶち抜いて穴に飛び込む……いや無理だ!」


 ナスカ・ドーパント戦で何度か利用した猛虎高飛車を使い回避する事を一瞬考えたがすぐに不可能だと判断した。
 今の乱馬の状態では大した威力が発揮できないからだ。


「くそぉ……こんな所で終わるなんて……こんなんだったら霧彦の頼みなんて聞くんじゃ……
 待てよ……猛虎高飛車は使えねぇって事は……」


 その事に気づいた乱馬はすぐさま構える――



 乱馬が度々使用した猛虎高飛車、これは元々ある技を応用し編み出した技である。
 それは乱馬の好敵手とも言うべき良牙が習得した『ある技』の謎を解明しようとした時だ。
 その威力は絶大で一度は破れた――だが、良牙に言わせればそれでも未完成という話である。
 そしてその謎自体は何とか解明した――しかし、解明したものの乱馬には完成させる事が不可能という致命的な事実が判明したのだ。

 何故、乱馬には完成させる事が出来ないのか?
 それはその技が『不幸で気が重くなればなるほど破壊力を増す』技だからである。
 基本的に(災難に巻き込まれる事は多いが)楽天的に困難を乗り越える事の多い乱馬ではそれを完全に使いこなす事は不可能である。
 とはいえ、試行錯誤を重ねる内に技の特性から乱馬はある事に気が付いた。

 『その技』が乱馬自身の気に合わないのであれば――『その技』を応用し乱馬自身の気に合う技を編み出せば良い。

 その技こそが猛虎高飛車、その技は『強気』の力を利用――つまり、強気であれば強気である程破壊力を増すという事だ。

 思い出してほしい、ナスカ・ドーパント戦の時は強気な態度で臨んでおり、更に言えば一見すれば互角の戦いを繰り広げていたが故に乱馬は内心でナスカ・ドーパントに余裕で勝てると考えていた。
 それ故に猛虎高飛車はその力を存分に発揮したのだ。

 だが、今はそうではない。キュアパインの必殺技が炸裂したことで乱馬自身最大の危機が訪れたのを察した。
 こんな状況で強気でいられるわけもないだろう? この状況では猛虎高飛車は使用不可能だ。

 が――逆に考えてみよう。
 確かにこんな状況では強気でいられるわけも無い。
 だが、何故こんな理不尽な目に遭うのかという状態だ。
 そう考えると気が重くなってくるのではなかろうか?

 もうおわかりであろう――通常であれば乱馬にとって実戦レベルでは使用不可能な『あの技』――
 それが使えるのではなかろうか――

 その技はこの地でも本来の使い手(元々、洞穴で閉じ込められた時に出会った土木修行者に教えられた技)である良牙の手によって完成版が放たれた。
 その威力は絶大――風都最強最悪の仮面ライダー、そしてBADANが神の器として生み出した改造人間をも怯ませる程の――

 勿論、この状況でも乱馬では完成版を放つ事は不可能――だが――
 この場を切り抜ける程度の威力を発揮できる筈である――故に乱馬は放つ――

 不幸を呼ぶ禁断の技を――



「獅子咆哮弾!!」

178街(Pine Version) ◆7pf62HiyTE:2012/04/03(火) 00:54:55 ID:YPkBgXI.0



 キュアパインの放ったプリキュア・ヒーリング・フレッシュ、
 乱馬の放った獅子咆哮弾は乱馬のすぐ眼前でぶつかり合う――

 確かに今の乱馬の放った獅子咆哮弾は平時の乱馬では考えられないぐらいの威力を発揮する――
 だがそれでもプリキュア・ヒーリング・フレッシュを打ち破る事は決して無い――

 まず、いくら相応の威力を発揮するとはいえ乱馬ではその力を十二分に発揮できないのは既に説明した通り。
 完成版ならいざ知らず、不完全版では到底プリキュアでも苦戦するソレワターセを撃破する程の最強クラスの技を打ち破る事は不可能だ。
 いや、完全版であっても正直厳しいかも知れない――

 その理由は技の特性にある。
 説明した通り獅子咆哮弾は不幸による重い気を扱う禁断の技、その力を求めるべく使用者は不幸のどん底へと落ちていくある意味救いの無い技である。
 対しスウィーツ王国に伝わる伝説の戦士プリキュアの力は不幸から人々を守り幸福にする為のもの――そう、不幸を源とする獅子咆哮弾とは全く真逆の性質を持っていると考えて良い。
 特にその必殺技は浄化に特化していると言えよう――

 故に――獅子咆哮弾の不幸のエネルギーは浄化され――そのまま乱馬へと押し返される結果となる――


「やった……の?」


 その結末に驚いたのは他でも無いキュアパインだ。何しろ家庭科室の床に大きなクレーターが刻まれているのだから。
 家庭科室に奔る水道管が破損し所々水が噴き出しているのが見える。
 それ故にキュアパインにとっては不可解なのだ。プリキュアの技は救い守る為のもの、対象以外に損害が出る事などまず起こりえない。
 つまり――クレーターを刻み込んだのはキュアパインでは無いという事だ――


 そして、一瞬の躊躇が最大の隙を生んでしまった――


「火中天津甘栗拳!!」


 甲高い少女の声が響く――


「はっ!!」


 キュアパインは何とか反応し繰り出される無数の拳を回避する。


「まさか……」
「今度ばかりは本当に死ぬかと思ったぜ……」


 獅子咆哮弾を放とうともプリキュア・ヒーリング・フレッシュを押し返す事が出来ない事は乱馬自身早々に気が付いた。
 このままでは獅子咆哮弾ごと押し返されて飲み込まれてしまうと考える――
 だからこそ乱馬はすぐさま発想を転換し打ち出す方向を下方に修正し、そのまま高く飛び上がる――
 そう、両者の技がぶつかり合い何とか押しとどめられていたエネルギーを全て床に叩き付け上方に飛び上がり天井に大穴を開けて力の濁流をやり過ごしたのだ。
 その為、乱馬がこの技で受けたダメージは比較的軽微――元々プリキュア・ヒーリング・フレッシュ自体殺傷能力がそこまであるわけではない為、ダメージの大半は押し返された獅子咆哮弾によるものだが――


「え? ちょっと待って? あなた……誰?」


 しかし一方のキュアパインの脳裏には疑問符しか浮かばない。
 最初は必殺技を何とか回避した乱馬が反撃に出たのだと思った。
 だがキュアパインから見てそれは違ったのだ――
 確かに相手の着ている服自体は乱馬のものだ――しかし、


「あぁ? 何言ってやがる?」


 そう口にする者の服の切れ目から柔らかな膨らみが2つ顔を出す。それは目の前の者が女性である事の証拠だ。
 ともかく、疑問を感じるものの何とか対処しなければならないと考えたが――


「あっ、フルートが……」


 キュアパインの手に握られていた筈のパインフルートが無くなっている。


「探しているのはこいつか?」


 目の前の少女がパインフルートを振りかざすのが見える。
 火中天津甘栗拳――それはその名の如く火の中にある天津甘栗を熱さを感じる前に拾う程の高速な動きで繰り出される超高速の正拳突きである。
 それ故にスピードに特化した必殺技と言えよう――少女はキュアパインの必殺技の発生源であるパインフルートを奪取しそれを封じたというわけである。

「これでもうさっきの技は使えねぇな?」
「え……まさか……」

 その口ぶりからキュアパインは気づく――目の前の少女の正体に――だがそんな事があり得るのだろうか?

179街(Pine Version) ◆7pf62HiyTE:2012/04/03(火) 00:55:30 ID:YPkBgXI.0

 読者諸兄にはもはやその正体はおわかりであろう――
 目の前の少女の正体は女性化した乱馬だ(以後、女性化した乱馬を『らんま』と呼称させていただく)――
 既に説明したが乱馬達は呪泉郷に落ちた事により水をかぶる事で変身する特異体質となった。
 では、乱馬は一体何に変身するのだろうか?
 乱馬が落ちたのは娘溺泉――娘、つまりは女性に変身するという事だ。

 先の激突により家庭科室の水道が破損し水が噴き出した――天井をぶち破る過程でその水を浴びてしまい女性化してしまったという事である。



「(とはいえ、根本的な解決にはなってねぇんだよな……必殺技を封じただけでパワーとスピードはそのままだからな……どうする……)」


 互いに緊張が奔るその時、何かが2人の間に飛び込んできた。


「何だ!?」
「クリス!?」


 それは小さなウサギのぬいぐるみ――クリスだった。


「なんだコイツは?」
「クリス、どうして来たの? ヴィヴィオちゃんは……」

 そう問いかけるキュアパインに対しクリスは全力で身振り手振りで伝えようとする。

「なんだ……」

 実の所、クリスは最初から一連の戦いをずっと見ていたのだ。
 確かに祈里からヴィヴィオの様子を見る様お願いされたが、仮に誰かが来たところでヴィヴィオが眠り続けている状況ではどうする事も出来ない。
 それ故に祈里ことキュアパインの方へと向かい乱馬との戦いを見ていたのだ。
 その過程で乱馬がキュアパインの追撃を避けつつヴィヴィオと祈里を探しているのを目の当たりにした。
 そして察したのだ、目の前の乱馬はヴィヴィオ達を襲うためでは無く保護する為に駆けつけた事を――
 だからこそ何としてでも両者の誤解を解くべく両者の間へと飛び込んだのである。


「……え、それ本当……?」
「(こくこくこくこく)」

「おーい……」

「じゃあもしかして……?」
「(こくん)」

「俺を放置して話進めるなよ……」


「ごめんなさい!!」

 と、らんまに頭を下げるキュアパインであった。


「その前に俺に何がどういう事か説明しろ!!」


 クリスが何を言っているのかわからず、突然態度を変えたキュアパインに対し思わず叫ばずにはいられないらんまであった。

180街(Pine Version) ◆7pf62HiyTE:2012/04/03(火) 00:57:41 ID:YPkBgXI.0





Section 05 Breath of Wind


 飛竜昇天破――それは、一言で言えば温度差の魔拳である。
 熱い闘気を放つ相手を螺旋のステップに巻き込む事により闘気の渦を発生させる。
 そこに冷気を送り込んだ時、熱い闘気は冷気に押される事により上昇気流となり――

 竜巻を発生させる――それはまさしく天へと昇る飛竜の如く――

 乱馬はナスカ・ドーパントの猛攻を氷の様に冷静となり回避しつつ螺旋のステップを踏み続けナスカ・ドーパントを知らず知らずの内に螺旋へと巻き込んだ――
 そしてその中心部で乱馬はスクリューアッパーを叩き込む――
 それはナスカ・ドーパントの動きによって発生した熱い渦の中心に冷たい冷気を一気に送り込み――

 飛竜昇天破は発動し竜巻を発生させる程の一撃となったのだ。

 温度差という性質上、相手の発する闘気が熱ければ熱い程その威力は倍増する――つまり、相手が強ければ強い程その破壊力は倍増するという事だ。

 そう、ナスカ・ドーパントのパワーが強ければ強い程、飛竜昇天破の威力は増す――決まればそれこそメモリをブレイクする事も可能かもしれないだろう――



 だが――



 飛竜昇天破によって発生した竜巻が止む――ナスカ・ドーパントは腰を落としながらも未だその姿を保っている。

「まさか君にこんな隠し球があったなんてね……」

 竜巻に巻き込まれたナスカ・ドーパントはその渦に飲み込まれそうになりつつも何とか翼を展開し体勢を保ち、地面に激突する衝撃を大幅に和らげる事に成功した。
 それでもその衝撃は強く未だ立てないでいる。

「何言ってやがる、コイツが都合良く飛び出なきゃどうなっていたか」

 と、乱馬は先程飛び出た『あるもの』を拾い上げる。

「そうか、風都は僕では無く君の味方をしてくれたか……」

 それは乱馬が何気なく懐に入れていたふうとくんキーホルダーである。

「お前……コイツが何か知っているのかよ?」
「ああ、よく知っているよ。実はそれ、僕がデザインしたんだよ……小学三年生の時コンクールで優勝してね」
「ホントかよ!?」

 衝撃的な事実に驚く中、

「それに……テメェ、本気で俺を倒そうなんて考えて無かっただろ」
「何故そう思うんだい?」
「放った闘気が俺が思っていたより弱かったからな、本気だったらあの程度じゃすまねぇよ」

 前述の通り、相手の闘気が強ければ強ければその威力は増す。逆を言えば闘気が弱い――言い換えれば本気で来なければ威力は下がるという事だ。
 技の発動の為、氷の心を持つ必要があり、主催側に対する怒りから熱くなりすぎていた乱馬の頭は急速に冷えていった。
 そのお陰で冷静になる事が出来、ナスカ・ドーパントの動きの違和感に気づけたのだ。
 そして想定したよりも威力が出なかった事で推測は確証に変わったという事だ。


「なるほど、僕が本気で来ていればメモリブレイクされていたかもしれないわけか……危なかったよ。それで、まだやるつもりかい?」
「連中の仲間じゃねぇんだろ? 手加減されたのが気にいらねぇけどこれ以上戦っても仕方ねぇ。
 だが話だけは聞かせてもらうぜ、連中について何か知っている事だけは間違いねぇからな」
「僕としてはこのまま行かせて欲しかったけど……仕方ないか。わかった、その代わり君からも話を聞かせてくれないかな」

 そう言って変身を解除し元の霧彦の姿に戻る。そして2人は互いに情報交換を始めた。



「なるほど君はその呪泉郷に落ちて変身する力を得たわけか」
「別に強くなるわけじゃねぇけどな……パンスト太郎は違うけどな」
「……人をパンスト呼ばわりするのは良くないな」
「仕方ねぇだろ、アイツの本名なんだからな」
「誰が何を考えてそんな名前に……」
「じじぃの趣味だじじぃの」
「しかしそうなるとますますミュージアムが黒幕かどうかはわからなくなるな……」
「何でだよ、あの加頭って野郎が使ったガイアメモリは霧彦とお前の奥さんのいた組織のものだろ?」
「ああ、だから僕もそう思ったんだけど……悪いけど呪泉郷なんてものは全く聞いた事がない。それに……地図を見た所他にも耳慣れない施設が数多くある」
「ああ、それは俺も思った」
「もしかしたら本当の敵はミュージアムすらも末端として扱う様な連中かもしれない……お父様……園咲琉兵衛はどこまで関わっているか……」

181街(Pine Version) ◆7pf62HiyTE:2012/04/03(火) 01:01:05 ID:YPkBgXI.0

 未知の存在である呪泉郷をこの島に持ってきた事から、主催がミュージアム以上に巨大な組織である可能性を霧彦は強く考えた。

「それより乱馬君、君にはガイアメモリは支給されていなかったんだね」
「支給された所でそんな胡散臭いもの使う気なんて無かったけどな」
「それは良かった、君みたいな若者がガイアメモリを使って取り返しのつかない事になっちゃいけない」
「……ちょっと待て、その言い方じゃガイアメモリって相当ヤバイ代物なんじゃねぇか?」
「ああ、過度な使用で精神や肉体を強く冒す危険なものでもある。特に子供や若者にとってはね」

 それを聞き乱馬が強い剣幕で怒り出し霧彦の胸ぐらを掴む、

「テメェ、何でそんなもんばらまきやがった!?」
「人類をよりよく進化させるため……それが風都の未来の為になると信じていたよ……だけど現実は子供達すらも泣かせるものだった……だからこそ僕はミュージアムを抜けた……」
「くっ……もしあかねがうっかりそいつを使ったら……」

 乱馬が想定した最悪の事態、それはあかねがガイアメモリを使いその力に溺れる事だ。
 かつて剛力ソバを口にしてあかねが乱馬を凌駕する程に強い力を身につけた事があった。
 だがそれは都合良い力では無く(女性にとってはある意味致命的な)副作用があった。
 それ故にその副作用の事を説明した上で解毒剤を飲ませようとした事があったが――あかねは頑として乱馬の説得を聞き届けなかった。
 またかつてあかねが伝説の道着を身につけこれまた乱馬を凌駕する程の力を身につけた事があった。
 その際に乱馬自身の本音をあかねに初めて素直に口にしたが――全く信じてもらえなかった。
 但し、これは伝説の道着を無力化する為、あかねの心を異性に奪わせる必要がありその気にさせようとした事がバレたからである。
 とはいえ、乱馬自身最初は無力化が目的だったが、途中から本気になっていた事を付記しておく。
 何にせよ、これまでにあった経緯を考えるならばガイアメモリを使った場合、厄介な事になる事だけは確実である。

「あかねちゃんがそんなに心配……そうか確か許嫁だったね」
「ちげーよ、そんなんじゃねぇ! 大体許嫁ったって親同士が勝手に……」
「君の口ぶりじゃそんな嫌々そうには見えないけどね。だけどそんなに彼女の事が大事なら何としてでも一緒にこの殺し合いから抜け出すんだ」
「お、おぅ……」
「大丈夫、参加者の中には仮面ライダー君、左翔太郎がいる。ガイアメモリの事については彼に任せれば何とかなる」
「そういや、あそこには本郷とか一文字とか仮面ライダーがいたな……そいつらと関係あるのか?」
「わからない……元々あの仮面ライダー君が仮面ライダーと呼ばれていたのは知らず知らずの内にだからね……もしかすると世界のどこかで戦っている彼らの都市伝説に習ってそう呼ばれる様になったのかも知れないね」

 ともかく大体の情報交換を終えて霧彦は再び燃え盛る森へと向き直るが――

「うっ……」

 霧彦は突然咳き込み口を手で抑える

「おい大丈夫か、もしかしてさっきの……」
「いや、これは君の攻撃によるものじゃない。気に病むことはないよ、それよりも早く……」
「そんな身体の奴を行かせられるわけねぇだろ、森には俺の方が行く、霧彦はどっか適当な所で休んでいろよ」
「僕の事が心配なのかい、さんざん連中の仲間だって言って目の敵にしていたのにね」
「けっ、自分の知らない所で死なれちゃ目覚めが悪いだけだ」

 そんな乱馬の反応をよそに霧彦は少し考えるそぶりを見せ、

「大丈夫、死にに行くつもりはないよ」

 そう言って自身の首に巻かれているスカーフを外し乱馬に手渡す。

「なんだこりゃ、いらねぇよ」
「それを預かっていてくれないかな」
「なんでこんな布きれ俺が持たなきゃいけねぇんだ?」
「それは僕の妹……雪絵が僕の婚約祝いに送ってくれたスカーフだ」
「だったらなおさら受け取れねぇよ! 何考えてんだ!?」
「わかっているよ……僕は必ずそれを返してもらいに戻ってくる。それまで預かってくれないかって事だ」
「え゛?」
「中学校には祈里ちゃんとヴィヴィオちゃんがいる。それまで2人を守ってくれないか?」
「いや俺だって呪泉……あーもうわかったわかった、あかね達も来るかも知れねぇから暫くはそこにいてやる。その代わり絶対に戻ってこいよ」
「勿論だ、様子を見たらすぐに戻るよ」

182街(Pine Version) ◆7pf62HiyTE:2012/04/03(火) 01:01:40 ID:YPkBgXI.0

 そう言って霧彦は森へと走り出す。走りながらドライバーを装着し、


――Nasca――


 ナスカのメモリを今一度挿入しナスカ・ドーパントへと変身、

「そうそう、乱馬君……君はさっき僕が全力を出していなかったと言ったけど、半分は間違っているよ」
「何?」
「君に致命傷を負わせない程度には本気だったさ……それに……僕はナスカのメモリの力を引き出せてもやっとレベル2……」
「ちょっと待て、それってつまり……」
「ナスカの本当の力はこんなもんじゃないって事さ……」
「おい、霧彦!?」

 乱馬の叫びに構う事無く、

「だから……僕を倒せる程度で調子に乗らない事だ……超……加速!」

 霧彦はここに来て超加速を発動し瞬時に乱馬の前から姿を消した。

「あれがレベル2……ちっ、最後まで手加減されてたって事かよ……」

 手加減されていた事実を乱馬は強く悔しく思う。その最中、

「ん……ちょっと待てよ……何でアイツは平然とガイアメモリを使っているんだ? まさか霧彦のあの様子……本当に大丈夫なのかよ!?」

 結論から言えば、全く大丈夫では無く非常に危険な状態である。
 霧彦の身体はレベル2の力に耐えきれず既にボロボロだ。
 乱馬との戦いで最後までレベル2を使わなかったのは乱馬に致命傷を負わせない目的もあったが、それ以上に身体にかかる負担が大きかった故使えなかったという理由が存在する。
 それ故に、このタイミングでレベル2の超加速を使用した事で(激闘のダメージも踏まえ)霧彦の身体は加速度的に蝕まれていく。


 そして、現段階では乱馬も霧彦も気づかない事実がここに存在する。
 乱馬がメモリをブレイクする為に放った飛竜昇天破、その一撃は結局メモリに届く事は無かった。
 だが、その一撃はドライバーに強い負荷を間違いなくかけた――そう、その一撃によりガイアドライバーが破損しある機能が故障したのだ。
 ご覧の通り、変身機能そのものについては全く問題は無い。今後も使用する事が可能だ。
 では一体、ガイアドライバーの何が故障したのだろうか?



 ここで井坂深紅郎の持論を紹介しよう、彼はガイアメモリの力は直差しでこそ本当の力を発揮できると考えていた。
 ミュージアムの幹部が使うガイアドライバー、それはガイアメモリの毒素を遮断し有益なパワーを抽出するフィルターの役割を有している。
 だが、井坂はドライバーを介してはガイアメモリの本当の力を引き出す事は出来ないと考えていた。
 そんなある時、ガイアメモリを使う事に難色を示していた若菜に対しドライバーを自身に預けさせた事があった。
 井坂はその際にドライバーに細工を施し直挿しと同じ状態になる様に施していた――わかりやすくいえばフィルターの役割を無力化したという事だ。
 井坂の持論は正しく、そのドライバーを使い変身したクレイドール・ドーパントは冴子の変身したタブー・ドーパントを圧倒する程の力を見せた。
 だが、その代償として、知らず知らずの内に若菜の精神はメモリの毒素に冒される事になったというわけだ。


 そう、今の霧彦のドライバーはガイアメモリの毒素を遮断するフィルターの機能が故障している。
 つまり、霧彦が今変身しているナスカ・ドーパントは直挿しの状態で変身した状態に近い事になる。
 そんな状態で変身を続ければこれまで遮断されていた毒素が霧彦を冒しそれでなくてもボロボロの身体が更にボロボロとなる。
 勿論、デメリットばかりではなく、例示した若菜の時同様、ナスカのパワーを更に引き出せる様にはなる。
 後に冴子が直挿しでナスカ・ドーパントに変身した時霧彦が変身したそれの更にその先、レベル3へと到達し井坂の変身したウェザー・ドーパントを撃破した仮面ライダーアクセルトライアル以上のスピードを発揮した。
 もしかしたら、今の霧彦ならばその領域に到達できる可能性もあるだろう――だが、そのパワーに耐えきれる保証は皆無、そのまま自滅する可能性の方が高いだろう。

 ナスカの強大な力は――現在進行形で霧彦の身体と精神を冒し続けている――

183街(Vivid Version) ◆7pf62HiyTE:2012/04/03(火) 01:06:50 ID:YPkBgXI.0





Section 08 不屈の子


 何故――彼女、アインハルト・ストラトスは戦うのであろうか?
 覇王流の強さを証明する為と彼女は語っていた――では、それは何故なのだろうか?

 覇王家直系の子孫である彼女は初代覇王クラウス・G・S・イングヴァルトの記憶を受け継いでいる。
 勿論全てというわけではないが、断片的であってもつなぎ合わせる事でその生涯を自分の記憶として思い出せる。
 つまり、彼の思い出はそのまま彼女の思い出なのだ――共に過ごした聖王家王女オリヴィエ・ゼーゲブレヒトとの大切な日々は――


『太陽のように明るくて花のように可憐で何より魔導と武道が強いお方でした』

 そのオリヴィエも乱世の最中に命を落とす――ゆりかごの運命通りに――

 皮肉な事ではあったが彼女を失った事でクラウスは強くなり一騎当千の力を手に入れた。
 だが、それでも本当に望んだものは手に入ることは無く短い生涯を終えた――

 それは『本当の強さ』、『守るべきものを守れない悲しみをもう繰り返さない強さ』――
 故にアインハルトは彼の作り磨きあげた覇王流の強さを証明する為に戦うのだ――

 全管理世界から集いし若い魔導師たちが魔法戦で覇を争うインターミドル・チャンピオンシップに挑戦する事を決めた日の夜、ヴィヴィオ達が眠る側でアインハルトはクラウスの回顧録を手に一人語っていた――

『クラウス――私はそこで戦ってきていいですか?
 いつかあなたに追いついて、いつかあなたを追い越して、あの日のオリヴィエ殿下より強くなって、
 私たちの悲願を叶えるために――』

 そんな彼女の独白をヴィヴィオは聞いていた――


 その一方、何故ヴィヴィオは格闘技をやっているのだろうか?
 勿論、格闘戦技が好きだから、ノーヴェが教えてくれたシューティングアーツで強くなりたいからというのは確かにある。
 だがそれ以上にもっと深く、譲れない理由が存在する。

 ヴィヴィオの事について今一度簡単に説明しておこう。
 有り体に言えば彼女は普通の人間では無い。
 彼女の正体はかつて起こったJS事件において人造魔導師の技術を用い巨大戦艦聖王のゆりかごを起動させる為に生み出されたある人物のコピー(クローン)である。
 その人物は約300年前においてゆりかごの所有者であった人物――そう、オリヴィエだ。
 つまり、ヴィヴィオはゆりかごを飛ばす為の只の鍵であり、玉座を守る生きている兵器として生み出されたのだ。
 それゆえ(彼女が現れた当時)幼女の姿で母親を求めていたのもその感情についても守られることで魔法データを蒐集する為の偽物の作り物でしかなかったのだ。

 その事件の折、ヴィヴィオは体内にレリックを埋め込まれゆりかごのキーとなり敵の戦闘機人の1人に支配されていた。
 とはいえ先にその戦闘機人を撃破する事で彼女は支配からは解放された――だが、制御していた者がいなくなった事で彼女は自分自身でも止められない暴走状態へと陥った。
 その彼女を高町なのはは助けようとしたがヴィヴィオはそれを拒絶、涙ながらに自身が存在してはいけないと語ったが――

『違うよ……生まれ方は違っても今のヴィヴィオは……そうやって泣いてるヴィヴィオは偽物でも作り物でもない……
 甘えん坊ですぐ泣くのも、転んでも1人じゃ起きられないのも、ピーマンが嫌いなのも、私が寂しい時に良い子ってしてくれるのも私の大事なヴィヴィオだよ。
 私はヴィヴィオの本当のママじゃないけど、これから本当のママになっていける様に努力する……
 だからいちゃいけない子だなんて言わないで。本当の気持ち、ママに教えて……』

 なのはの心からの言葉に――

『私は……私はなのはママの事が大好き……ママとずっと一緒にいたい。ママ……助けて……』

 そしてなのはは文字通り全力全開の力で一撃を撃ち込みヴィヴィオを暴走させ続けていたレリックを粉砕し彼女を解放――
 だが、それで度重なる激闘によるダメージもありなのはの身体は限界、それでも何とか爆心地にいるヴィヴィオの元へと駆けつけようとするがヴィヴィオはそれを拒絶――しかしそれは先ほどとは違う理由――

『1人で……立てるよ……強くなるって約束したから……』

 そして1人で立ち上がり母の元へと――

184街(Vivid Version) ◆7pf62HiyTE:2012/04/03(火) 01:08:10 ID:YPkBgXI.0

 この瞬間、ヴィヴィオは不屈の心を持つ高町なのはの娘、高町ヴィヴィオとなれたのだ――


『大好きで大切で守りたい人がいる。
 小さなわたしに強さと勇気を教えてくれた、世界中の誰より幸せにしてくれた、
 強くなるって約束した、強くなるんだ、どこまでだって!!』


 さて、今なお傷つき眠り続けるヴィヴィオの受けたダメージは決して小さくは無い。
 だがそれ以上に彼女の使用したガイアメモリによる精神汚染の可能性を心配する方も多いだろう。
 しかし結論だけを先に述べておこう。今後も使用を続ければ危険性は高いが現状ではその被害は無いと言って良い。
 その理由は2つ、1つは彼女がメモリを使用していた時間はごくごく短時間、ドーパントに変身してしかけたもののすぐにダグバの攻撃で返り討ちに遭い気絶。
 気絶した段階でメモリは排出された為、不幸中の幸いかメモリの毒素に曝される時間を短時間に抑える事が出来たのだ。
 もう1つはヴィヴィオの特殊な生まれが関係している。前述の通り彼女は人造魔導師の技術で生み出された存在だ。適合率が決して高くないレリックと適合できる成功例と言える。
 その彼女だからこそガイアメモリの毒素による汚染を何とか受けずに済んだのだ。勿論、長時間であれば話は違うだろうが今回は幸運にもその被害を受けずに済んだ。

 とはいえ状況は決して良くは無い。勿論受けたダメージもそうだが実の所そちらはヴィヴィオにとっては大した問題では無い。
 自分が弱い所為で他の人を守ることが出来ず、逆に守られ助けられ迷惑をかけてしまった事の方が非常に辛かったのだ。

 あの瞬間、薄れゆく意識の中でヴィヴィオは思う――
 今のままじゃ誰も守ることも出来ないと――

 当然、ヴィヴィオだってすぐにでもなのは達の所へ向かいたい、会いたいと思う。
 だが、管理局のエース・オブ・エースであるなのは達はこの殺し合いを打破する為に動いている筈なのだ。
 まだまだママ達に甘えたい感情はある。それでもなのは達に迷惑をかけるわけにはいかない。

 約束したではないか、1人で立てると、強くなると――

 むしろ逆に大好きななのは達を守りたい――

 確かに今の弱い自分では誰も守れないし助ける事も出来ない、ただただ迷惑をかけるだけだろう。
 だが、同じ状況になのはが陥った場合このまま挫けるだろうか?

 否、断じて否!

 なのはならばどんな困難に陥っても決して挫けたりはしない、必ず立ち上がりその困難を乗り越えるであろう。
 ここにいるのは誰だ? 古代ベルカにおける最後のベルカの聖王オリヴィエのクローン? 否!

 ここにいるのは管理局が誇る不屈のエースオブエース高町なのはの娘、高町ヴィヴィオではないか!

 その心を受け継いだ不屈の子ではなかろうか!?

 ならばどうする? 必ず立ち上がり強くなるしかないだろう。
 それは決して平坦な道では無い、それでも決して諦めたりはしない――
 なのはから受け継いだのはヴィヴィオ自身の中にあるのだから――

 そうしてゆっくりと意識を覚醒させていく――

 風は空に――
 星は天に――
 輝く光はこの腕に――
 不屈の心はこの胸に――

185街(Vivid Version) ◆7pf62HiyTE:2012/04/03(火) 01:10:45 ID:YPkBgXI.0





Section 07 フォーチュン・セレクションL


「なるほどな……まさか祈里がプリキュアに変身していたとはな……」

 戦闘を終えた2人とクリスは場所をヴィヴィオの眠る保健室に移し互いにこれまでの情報交換をしていた。なお、祈里は既に変身を解除している。

「けどちょっと待てよ、それじゃあのダークプリキュアってのは何なんだ?」

 その中でプリキュアに関する大まかな説明も聞いたがらんまにとってはダークプリキュアについての疑問が残る。

「さぁ……私も乱馬君に言われて初めて気づいたから……」
「ていうかよ、名簿にしっかりと書かれていたんだから最初に気づけよ……」

 今更ながらにらんまの言うとおりだ。何しろ最初から名簿にダークプリキュアとはっきりと書かれていた。
 どうやらあまりにも突然の出来事に見落としてしまったらしい。

「あ、でももしかしたら……」
「なんだ? 何か思い出したのかよ?」

 祈里はスウィーツ王国に伝わる伝説の戦士プリキュア以外にもプリキュアが存在する事を話す。

 光の里に伝わる伝説の戦士でドツクゾーンと戦った2人(後にもう1人が加わり3人)のプリキュア、
 パルミエ王国の伝説に伝わる戦士でナイトメアやエターナルと戦った5人(エターナルとの戦いの時もう1人が加わり6人)のプリキュア、
 そして泉の郷に伝わる伝説の戦士でダークフォールと戦った2人のプリキュア、
 祈里達は(東せつなが加わる前に)邪悪な者フュージョンと戦った時に彼女と共に戦った事がある事を話す。
 

「……で、その話とダークプリキュアの話が何の関係があるんだ?」
「聞いた程度だから詳しくは知らないけど、のぞみちゃん達が前にダークプリキュア5と戦った事があるって聞いた様な」

 パルミエ王国に伝わる5人のプリキュア達はある時、鏡の国にて自分達に似たダークプリキュアと戦った事がある。

「……つまり、自分達とは違うプリキュアの偽物がここにいるかも知れねぇって事だな」
「もしかしたら私達が出会った以外にもプリキュアがいるかも知れないわ……ところで乱馬君、黒い服来た女の子見かけたって本当?」

 そんな中、話題を最初に祈里が遭遇した黒服の少女に切り替える。

「ああ、気が付いたらいなくなってその代わりに妙にキラキラした鎧着た奴が現れやがった……何か知らねぇか?」
「そっちの方は見てないわ」
「ま、見てないなら別にいいけどな」
「……ねぇ、女の子なのにそんな乱暴な言葉使い……」
「だから俺は本当は男だって説明しただろが! 俺の説明どう聞いてたんだ!?」
「ごめんごめん……」
「で、あかねや良牙達にも会ってねぇんだな?」
「うん、私が出会ったのは乱馬君で4人目、乱馬君の方は他に志葉さんにしか会っていないのね」
「ああ、あの野郎に厄介な事頼まれてんだよな……霧彦にも祈里やヴィヴィオの事頼まれるしよ……」

 プリキュアの強さを体感し内心守る必要無いだろうと思わないでもないが、流石にそこまでは口にしない。

「ところで乱馬君、さっきも聞いたけどそのスカーフは……」
「ああ、必ず戻るからそれまで預かってくれって頼まれたんだ。全く妹に貰ったものなんてかえって受け取れるわけもねぇだろが……」

 その事を聞いて祈里は少し考える仕草を見せ、

「その妹さんの名前って聞いてないの?」
「ああ……そういや霧彦の奴言っていたな……雪絵が婚約祝いにどうとかって……それがどうかしたのか?」
「ううん、なんでもないの、ちょっと気になったから聞いてみただけ……あ、婚約と言えば……乱馬君もあかねさんと婚約しているって言っていたわよね」
「婚約っつーか親同士が勝手に決めた許嫁だな……ってコレもさっき説明した筈だよな」
「勝手に……って言う割にはそんな嫌そうには見えないんだけど……」
「そ、そんな事はねぇよ……俺は許嫁としてだだだだなぁ……」

 そう動揺するらんまを余所に祈里は立ち上がり、

「ん、何処行くんだ?」
「ちょっと外の様子を見に行ってくるわ、それまでヴィヴィオちゃんの事お願いできる」
「外の様子見に行くんだったら俺が……」
「乱馬君、さっきまでの戦いで疲れているでしょ、もう少し休んでていいから」
「その原因の半分ぐらいは祈里なんだけどよぉ……」

 と口にするらんまに構うこと無く祈里が保健室から出て行く。

「全く……ん?」

 そんな中、保健室の机の上に1枚の絵が置かれているのを見つけた。

186街(Vivid Version) ◆7pf62HiyTE:2012/04/03(火) 01:12:15 ID:YPkBgXI.0

「なんだこりゃ、ガキが描いた絵か……きりひこ……ゆきえ……霧彦の事か……?」

 そこには幼い少年と少女が手を繋いでいるのが描かれており、一緒に『きりひこ』、『ゆきえ』という名前も書かれている。
 特に少女――『ゆきえ』はとても良い笑顔で『きりひこ』の手を握っている。

「まさかあいつら兄妹の絵か? けどどうしてこんな所にあるんだ?」

 ふと懐からキーホルダーを出す。

「……そういやコイツも霧彦がデザインしたって言っていたな……まさかこの絵も霧彦が…?」


 その時。


「う……ううん……」


 ずっとベッドで眠り続けていたヴィヴィオが意識を取り戻した。


「あれ……ここは……?」


 ヴィヴィオの覚醒に気が付いたクリスはすぐさま全速力でヴィヴィオの側に駆け寄り、

「(こくんこくん)」
「クリス……」

 ヴィヴィオはとても嬉しそうにクリスを抱きしめる。と、

「お、気が付いたみてぇだな」
「お姉さん……誰?」
「お姉さん……俺は乱馬だ、早乙女乱馬」
「あれ……霧彦さんは?」
「ああ、霧彦の野郎はちょっと森の様子を見に行ってるぜ。そうだ、祈里ー! ヴィヴィオの意識が戻ったぜー!」

 そう言って祈里を呼びつつ、保健室のドアを開ける。と、

「ん?」

 目の前に1枚の紙切れが置かれているのを見つけた。

「何だぁ……」


『乱馬君へ、
 やっぱり霧彦さんが心配なので森まで行ってきます。
 それまでヴィヴィオちゃんの事を見ていてください。

                       祈里』


「………………!」
「乱馬……さん?」


 思い出して欲しい、何故ほむらは祈里から拳銃と水と食料しか奪取しなかったのであろうか?
 他にも支給されたものがあった筈であろう。
 まず1つ、能力の限界時間の関係上、識別が手間であるが故に選んでいる時間が無く確実に使える水と食料、そして拳銃を奪取した事、
 そしてもう1つ、識別するまでもなく明らかにハズレの道具であったから。

 そう、先ほど登場した絵――幼い霧彦達兄妹が描かれていた絵は祈里の支給品の1つなのだ。
 そんな子供が描いた絵なんぞほむらにとっては無用の長物、それ故に奪取する事無く捨て置いたのだ。

 さて、祈里としてもほむらが去った後に確認はしたもののこの時点ではそれが何かがわからずそのままデイパックにしまい込んだ。
 その後、霧彦と合流し彼が一度去った後、絵に描かれていた名前を思い出し再度取り出し机の上に置いていたのだ。
 この時点でその絵が霧彦のものである事はわかった、そこに描かれていた『ゆきえ』の存在もあり霧彦の事がとても心配に感じていた。とはいえこの時点ではまだ具体的な事はわからなかった。
 が、らんまからスカーフの話を聞いた瞬間、祈里は絵に描かれているのが霧彦達兄妹である事を察したのだ。
 そこに描かれている霧彦の手を繋ぐ雪絵の顔はとても笑っていた、そして婚約祝いに兄にスカーフを送るのだ、きっと今も兄である霧彦の事がとても大好きなのだろう。

 らんまの話では霧彦は必ず戻る約束をするために敢えてスカーフを渡したとの事だった。
 だが祈里にはそうは思えなかった。自分やらんまから聞いた霧彦の状態、そして森で起こった火災の規模を考えれば戻ってこれる可能性は高いとは言えない。
 そしてそのまま死んでしまうならスカーフもそのまま置き去りになってしまう。霧彦はそれを避けるために乱馬へと預けたのではなかろうか?
 祈里はそれを容認する事ができなかった。このまま霧彦が死んでしまえば元の世界で待つ雪絵はきっと悲しい想いをする。
 状況的に霧彦を助けられるのは自分だけ、祈里はそう考え、森に向かう選択を取ったのだ。
 ヴィヴィオの保護についての問題があったがらんまが来てくれたお陰でそれはクリア出来た。
 勿論、後ろ髪が引かれないではないが、すぐに戻ってこれれば大丈夫、だからこそ急いで学校を出て森へと向かったのである。



 祈里の選択自体はわからないわけではない。確かに霧彦の事が心配なのはらんまにだって理解できる。
 だが、結果としてヴィヴィオの事を押しつけられた状況である事に違いは無い。
 勿論、無碍に扱う気は無い。だが――らんまにだって早く知り合いと合流したいという都合がある。それ故に――


「祈里のあほー!!」


 こう叫ぶ事も仕方ないだろう。

187街(Vivid Version) ◆7pf62HiyTE:2012/04/03(火) 01:12:50 ID:YPkBgXI.0





Seciton 09 早乙女らんまのHeartful Station



 祈里の突然の行動にいつまでも叫んでいても仕方は無く、らんまはヴィヴィオにこれまでのいきさつや情報交換を行った。


「というわけで俺は本当は男なんだ」


 そう言いつつ、ポットから1杯のお湯を出しそれをかぶり元の乱馬に戻る。

「あ、本当だお兄さんになった」
「まぁこんなふざけた体質だけどよ、それなりに楽しくやって……」


 と、上かクリスがら突然水(ヴィヴィオの火傷を冷やすのに利用した)をぶっかけられ再びらんまになった。


「何しやがるこのぬいぐるみ野郎!!」
「(こくこくこくこくこくこくこく)」
「クリスは水を被ったら本当に女の子になるのか試したかっただけなんです、あんまり怒らないでください乱馬さん」
「ていうかなんでコイツの言うことわかるんだよ!?」
「え?」
「(こくん?)」
「いや、これじゃわからない俺の方がおかしいみたいじゃねぇか……」

 そんなヴィヴィオとクリスにあきれつつ話を進めていく。
 ちなみに再びお湯をかけて元に戻ろうかとも考えたが貴重なお湯を無駄遣いするのもどうかと思い暫くはこのままでいることにした。

「(それにしても加頭の野郎……このポットの水とお湯は何の冗談だ……)へー、お前らも格闘やるのかー」

 当然その過程で互いの知り合いについても話し合うわけだが、らんまにとって興味を引いたのは格闘技をするヴィヴィオ、アインハルト(加えてスバル・ナカジマ)の存在である。

「乱馬さん達もそうなんですか? アインハルトさん、とっても強いですよ」
「へっ、俺の方が強いぜ、なんったって格闘と名がつきゃ負けたことなんて一度もねぇんだからな」
「本当ですか?」
「ああ、格闘新体操に格闘スケート、格闘茶道に格闘ディナーなんてのもあったな、全部勝ってるぜ」
「………………それ本当にあるんですか? 格闘って上についただけじゃ……」

 時計が3時50分を差す中、クリスがヴィヴィオに何かを伝えようとする。


「(こくこく)」
「え? あ、うん」
「それで会話が成立するのかよ……」
「乱馬さん、お願いがあるんです」
「お願いだぁ……ってまたこのパターンかよ……ここに来て何人目だ?」
「その……私を……」
「あー先に言っておくがママに会わせてって頼んでもダメだからな。霧彦達に頼まれた手前、暫くはここにいるが俺だって行かなきゃならねぇ所があるからな」
「違うんです、私を特訓して欲しいんです!」

 ヴィヴィオはらんまに特訓を頼んだのだ。

「は? 何言ってんだ?」
「私が……私が弱いせいで霧彦さんやみんなに心配をかけてしまって……それが申し訳なくて……だから今度は強くなって私がみんなを守りたいんです」

 そのまっすぐなまなざしに対し、

「ちょっと待てよ……そりゃわからなくはねぇが……まだ怪我も治っていないのに無茶だろ……それにおめぇのママだって心配するんじゃねぇか?」
「はい……だけどママとも約束したんです、1人で立てるって……強くなるって……だから……」

 その真剣なお願いに対し、


「(ママと約束……か)」


 なのはへの想いを強く語るヴィヴィオの様子を見てらんまは自身の母親であるのどかの事を思い返していた。

 物心つく前から玄馬と2人で旅をしていた乱馬はのどかの事を全く覚えていなかった。
 だが、幸運にも彼女が天道家を訪れる事で再会する機会が訪れたのだ。
 しかし――玄馬が乱馬と旅をする前にのどかとした約束が問題だった。それは乱馬を男の中の男に育てられなければ父子共々潔く切腹すると――
 これ自体は物騒ではあっても格闘家としてはなくはない話と言えるだろうし、この話自体はそこまで問題では無い。

 そう、乱馬が呪泉郷に落ちて女にさえならなければ――

188街(Vivid Version) ◆7pf62HiyTE:2012/04/03(火) 01:13:45 ID:YPkBgXI.0

 誰がどうみてもこれでは男の中の男とは言えない。再会すればいやがおうにも変身体質はバレる、それ故切腹は確定的だ。
 その経緯もあり、玄馬は乱馬とのどかとの再会を全力で阻止したのだ(その為、のどかと会う時は基本的にらんま(のどかには乱子と名乗っている)としてである)。
 だが、その事実を知らないのどかは乱馬に会いたいと強く願っていた。
 そんなのどかの姿を見てあかねは何としてでも乱馬とのどかを会わせようとし、乱馬もあかねの後押しを受け会おうとしたがやはり玄馬の妨害に遭い(乱馬自身切腹を恐れていた事もあり)失敗に終わった。
 その後も度々のどかと会う機会があり時に大きな騒動もあったが乱馬として再会することは長らく無かった。だが――
 早乙女家の家宝を巡り玄馬と争った際に――ついに乱馬として再会する事が出来たのだ。同時に変身体質もバレたがそれでものどかは乱馬は十分男らしいと認めてくれたのであった。
 ちなみにその後、一旦は乱馬と玄馬はのどかに引き取られ天道家を出たが、のどかからあかねに指輪(実は指輪では無く薬箱)を渡して欲しいと頼まれた一件の際に、
 シャンプー達に家を破壊された事により今度はのどかを含めた3人共々天道家の居候に戻ったのだった。

 何にせよ、母親に関する話を聞いて思う所がないわけでもないらんまは、


「(ま、どうせ暫くはここにいるわけだしな、それまでなら付き合ってやっても良いか)」


 ヴィヴィオの申し出を受けることもやぶさかでは無いと思っていた。
 そんな中、ヴィヴィオが自身のデイパックを探り何かを探していた。

「おい、何探してんだ?」
「確かここに……あった」

 ヴィヴィオが霧彦と出会った時を思い出して欲しい。その時丁度ガイアメモリを出したタイミングだった。
 つまり支給品の確認をしていたという事だが実はガイアメモリを確認する前にもう1つ確認していた。


「これ、乱馬さんのですよね?」
「あ゛!!」

 そう言ってヴィヴィオが取り出したもの――それは子供の字で『らんま』、そして『バカおやぢ』と玄馬の絵が描かれた巻物だった。

「ちょっと待て……なんでコイツがこんな所にあるんだ……」
「え? どういうこと?」

 それは間違いなく乱馬に関わりのあるものだ。
 ある時、のどかの前に乱馬と名乗る謎の男が現れた。先ほどの巻物――無差別格闘早乙女流山千拳の秘伝書はその男が所持していたものだ。
 その男――公紋竜が乱馬と偽りのどかに近づいた理由――それは山千拳によって文字通り潰れてしまった公紋道場を再興する為に海千拳の秘伝書を手に入れる為だった。
 乱馬自身竜を追い出す為、乱馬は2つの技を編み出した玄馬から海千拳を教えて貰おうとした。しかし玄馬によればその2つの技は封印すべき邪拳、それ故に最初はそれを拒んだ。
 だが紆余曲折を経て玄馬は乱馬に海千拳を教え、
 図らずも海千拳の秘伝書もまたのどかから乱子に送られた封筒という形で乱馬の手に渡った(玄馬に処分しろと頼まれた巻物を封筒としてリサイクルしただけだが)。
 そして海千拳の全てを会得した乱馬は山千拳を繰り出す竜を破り秘伝書は無事に封印する事が出来たのだ。

 にもかかわらず、何故かその秘伝書が今目の前にあるのだ。

「加頭の野郎……まさかコイツの封印まで手を出すとは……けどなんであの野郎があの技を知っているんだ?」

 あまりにも衝撃的な事実に加頭のいる主催の強大さを改めて実感したらんまであった。
 いや、主催だけではない、霧彦の言葉が確かならば参加者の中にはナスカ・ドーパントを超える強さを持つドーパントが数多くいる。
 更にプリキュアの実力から考えてもダークプリキュアは想像を絶する程の強敵だろう。
 ヴィヴィオ達を襲った白い怪物の存在も踏まえると主催の所にたどり着くことすら困難かも知れない。

「上等じゃねぇか……ぜってぇにテメェの所まで行ってその面に一発ぶち込んでやるぜ……」

 それでもらんまは逃げるつもりは無い、必ず加頭を打倒する決意を強め――


「(あかね、良牙、シャンプー……それにパンスト太郎……こんな馬鹿な戦いで死ぬんじゃねぇぞ……)」


 知人達の無事を強く願う――

189街(Vivid Version) ◆7pf62HiyTE:2012/04/03(火) 01:16:20 ID:YPkBgXI.0





Section EX 街


 ――見えないものに向かう時、人は誰も孤独――


 実の所、祈里――いや、既に変身してキュアパインとなっているが――彼女は自分の選択に絶対の自信を持っているわけではない。
 もう既に霧彦が命を落としている可能性もある、学校に襲撃者が現れヴィヴィオとらんまが惨殺される可能性もあるだろう。
 それどころか既にラブ達の命すらも――そんな選択を誤り最悪の結末を導いてしまうのではと考えなくは無い――


 それでも――


 祈里はプリキュアになる前、自分に自信が持てず肝心な時に消極的になってしまう事についてカオルちゃんに言われたことがある、


『どっかしら自分に自信が無いんじゃないの? でもさ、それも全部ひっくるめて自分……誰かが代わってくれるわけじゃない、
 だから結局最後は自分を信じて結果出すしか無いんじゃない?』


 まさしくその言葉通りなのだ。今の状況を変えられる者は自分しかいない。


「私がやらなくちゃ……自分を信じて……私を信じて!」


 だからこそキュアパインは往く――例え自信がなくても他の誰も助けて来られない、代わってくれる者もいないのだ。
 このままでは誰も助けられないのならば自分を信じて――
 結果がどうなるのかはわからな――いや、きっと助けられると――


「私……信じてる!」


 そう口にするキュアパインは市街地を抜け平野へと入る――

【1日目/黎明】
【G-8/平原】

【山吹祈里@フレッシュプリキュア!】
[状態]:疲労(小)、キュアパインに変身中
[装備]:リンクルン
[道具]:支給品一式(食料と水を除く)、ランダム支給品0〜1
[思考]
基本:みんなでゲームを脱出する。人間と殺し合いはしない。
1:森に向かい霧彦やそこにいる人達を助けに向かう。その後中学校に戻る。
2:桃園ラブ、蒼乃美希、東せつなとの合流。
3:一緒に行動する仲間を集める。
[備考]
※参戦時期は36話(ノーザ出現)後から45話(ラビリンス突入)前。なお、DX1の出来事を体験済です。
※「魔法少女」や「キュゥべえ」の話を聞きましたが、詳しくは理解していません。
※ほむらの名前を知りませんが、声を聞けば思い出す可能性はあります。



 ――泣き出しそうな空、うつむけばこぼれそうな程――


 それはまさしく祈里の推測通りだった。霧彦は自身の死、あるいはそう長い命では無い事を確信していた。
 そして幸か不幸か身体の調子が妙に良い。


「いつもよりも身体が軽い気がする……まさかさっきの攻撃でドライバーに何かあったのかな?」


 勿論、それは只の推測でしかなく霧彦視点で見ればただの気のせいかもしれない。


「だが、今はありがたい……」


 それでも、ナスカ・ドーパントの表情からは読み取る事は出来ないが霧彦は笑っていた――


 何故、霧彦は乱馬にスカーフを託す事が出来たのだろうか?


 あの戦いの時、ナスカ・ドーパントは飛竜昇天破の直撃を受けた――ナスカ・ドーパントが本気では無かったが故に威力はそこまで強烈なものではなかったのは既に触れた通り。
 しかし――確かにあの瞬間強烈な竜巻が巻き起こったのは確かなのだ。そう――


 乱馬は強い風を生みナスカ・ドーパントこと霧彦にそれをぶつける事が出来たのだ――


 その風は、この地に来てから感じていた心地悪い風では無く、清々しさを感じるとても良い風――
 それを1人の少年が放ったという事なのだ――
 それ故に霧彦はスカーフを託す事が出来たという事だ。


「乱馬君……君の起こした風はとても心地よいものだったよ……それだけで僕は救われた気がする……だから、君が無事にあかねちゃんと共に脱出できる事を願うよ……」


 改めて思ったのだ、ヴィヴィオに祈里、そして乱馬。彼らの様な若い命をこんな巫山戯た殺し合いで傷ついてしまう事など決して許されない。
 彼らは十分に強くガイアメモリなんて必要無い。そんな彼らは必ず守り救わなければならない――


「そうだ……僕が守りたかったのは……彼らの笑顔だ……!!」


 そんな中、今一度遠い風都にいる雪絵の事を思い返す。


「それでも雪絵の笑顔を曇らせる事にはなるか……本当にすまない……雪絵……」


 ナスカ・ドーパントは森の中を進みG-7へと突入する――


 自らが高速で動くことで結果として立ち塞がる風は向かい風となりナスカ・ドーパントへと吹きつけてくる。

190街(Vivid Version) ◆7pf62HiyTE:2012/04/03(火) 01:19:05 ID:YPkBgXI.0


「ああ……良い風だ……!」


 ――なくせないものを、この街で見つけたよ――


【G-7/森】

【園咲霧彦@仮面ライダーW】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)、内臓にダメージ(小)(手当て済)
[装備]:ナスカメモリ@仮面ライダーW、ガイアドライバー(フィルター機能破損)@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3、T2ヒートメモリ@仮面ライダーW
[思考]
基本:この殺し合いを止める。
1:火災現場へ向かう。
2:冴子は可能なら説得したい。
3:本郷猛、一文字隼人に興味。
4:ガイアメモリは支給された人次第で回収する。
[備考]
※参戦時期は18話終了時、死亡後からです。
※主催者にはミュージアムが関わってると推測しています。
 ゆえにこの殺し合いも何かの実験ではないかと考えています。
 但し、ミュージアム以上の存在がいる可能性も考えています。
※ガイアドライバーのフィルター機能が故障しています。これにより実質直挿しと同じ状態になります。





「まさか水を被るわけじゃ無く魔法で動物に変身する奴がいるなんてなぁ」
「うん、ユーノさん小さい頃、フェレットになってなのはママとジュエルシード封印していました」
「……なぁ、まさかとは思うがそのユーノってやつと一緒に風呂に入ったとか寝床に入ったとかって話は……」
「そういえば温泉に入ったとか一緒に寝たって話を聞きました」
「Pちゃんみたいな奴が他にもいるとはなぁ……」
「Pちゃんって誰?」





【G-8/中学校】

【早乙女乱馬@らんま1/2】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(小)、女性化
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0〜2、水とお湯の入ったポット1つずつ(お湯変身1回分消費)、ショドウフォン@侍戦隊シンケンジャー、丈瑠のメモ、
    ふうとくんキーホルダー@仮面ライダーW、霧彦のスカーフ@仮面ライダーW、須藤兄妹の絵@仮面ライダーW
[思考]
基本:殺し合いからの脱出。
1:中学校で霧彦&祈里をヴィヴィオと共に待つ。ヴィヴィオにもそれまでは付き合う。
2:市街地で知り合いを探す。
3:2の後、呪泉郷へ向かう。
4:池波流ノ介か梅盛源太に出会ったらショドウフォンとメモを渡す。
[備考]
※参戦時期は原作36巻で一度天道家を出て再びのどかと共に天道家の居候に戻った時以降です。
※風都タワーの展望室からほむらとシャンゼリオン(暁)の外見を確認しています。


【高町ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
[状態]:上半身火傷、左腕骨折(手当て済)
[装備]:セイクリッド・ハート@魔法少女リリカルなのはシリーズ
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0〜1、山千拳の秘伝書@らんま1/2
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
1:中学校で霧彦&祈里をらんまと共に待つ。
2:強くなりたい。その為にらんまに特訓して欲しい。
3:みんなを探す。
[備考]
※参戦時期はvivid、アインハルトと仲良くなって以降のどこか(少なくてもMemory;17以降)です


【支給品解説】

ふうとくんキーホルダー@仮面ライダーW
早乙女乱馬に支給、
霧彦が小学生の時にデザインした風都のマスコットふうとくんのキーホルダー、
限定50個生産の超激レアもの。

霧彦のスカーフ@仮面ライダーW
厳密には支給品ではなく霧彦の没収漏れアイテム
霧彦の妹須藤雪絵が霧彦の婚約祝いにプレゼントしたもの。
霧彦の死後、風に舞ったスカーフは偶然にも彼女の元へと飛んでいった。

須藤兄妹の絵@仮面ライダーW
山吹祈里に支給、
霧彦、雪絵の兄妹が育った施設にて霧彦が幼少時代に描いた絵。
雪絵が笑顔で霧彦の手を握っているのが描かれている。

山千拳の秘伝書@らんま1/2
高町ヴィヴィオに支給、
玄馬が編み出した山千拳について記された巻物、
あまりの荒々しさに玄馬自身封印するつもりだったが公紋竜の父に譲渡、
公紋道場が潰れた後、竜が道場再興の為所持していたが海千拳を会得した乱馬に破れ封印される。

191 ◆7pf62HiyTE:2012/04/03(火) 01:23:05 ID:YPkBgXI.0
投下完了しました。何か問題点や疑問点等があれば指摘の方お願いします。

ご覧の通り、今回容量が83KBとなるので3分割となります。分割点は名前欄に書かれている通りですが念の為以下の通り、

>>165-174(Section 04,01,02,03)が(Nasca Version)(31KB)、
>>175-182(Section 06,05)が(Pine Version)(25KB)、
>>183-190(Section 08,07,09,EX)が(Vivid Version)(27KB)、

前中後編ではなくNasca、Pine、Vividとなっているのはそれぞれのパートにおいて全編登場する乱馬以外でメインとなるキャラとなっています。(Nascaが霧彦、Pineが祈里、Vividがヴィヴィオとなる)
なお、Sectionの順番が入れ替わっているのは作品上の都合で順番間違いではありません。

192名無しさん:2012/04/03(火) 10:11:30 ID:GX3kBR9AO
投下乙です!
霧彦がぁ……いや霧彦がいい人な分、薄幸そうなのはいつもの事だが。霧彦も『青い人』だな。
乱馬の多彩な技の描き方が素晴らしく、バトルの読みごたえがあり面白かったです。原作への理解と愛を感じました。

>筑波洋
ネタキャラでも注目されるようになっただけ良かったね!遥か昔コロコロボンボンで連載されていた仮面ライダー漫画でも3/3でスカイの出番は無かったなぁ。

193名無しさん:2012/04/03(火) 11:04:30 ID:AZVq392U0
投下乙です!
おお、ヴィヴィオがいい師匠に巡り会えて一安心……でも霧彦さんとブッキーが不安だなぁ。

194名無しさん:2012/04/03(火) 12:12:54 ID:42Rqc5GYO
投下乙です!乱馬の勘違いから知らず知らずの内に霧彦さんのタイムリミットが更に……つか赤ったら恐らく死亡って、何その天道キラー風な?

195名無しさん:2012/04/03(火) 12:14:46 ID:KqJ15lVI0
投下乙!
霧彦さん…着実に死亡フラグを積み上げてるな
乱馬、良い風どころか毒素を与えちゃったよ…
同じく森に向かったブッキーともども行く末が心配だ

そして乱馬、強敵二人を相手によく頑張った
いろんな必殺技のオンパレードで楽しかった!
そういや、乱馬の飛竜昇天破ってカウンターヒッターのヴィヴィオにとってはかなりのはまり技なんだな
>>193で言われてるように本当にいい師匠に出会えたなヴィヴィオは

それにしても、

丈瑠「これを流之介か源太に渡してくれ」
霧彦「ヴィヴィオと祈里を守ってほしい」
祈里「ヴィヴィオちゃんをよろしくお願いします」
ヴィヴィオ「特訓お願いします」

乱馬、どんだけお願いされてるんだww
ただでさえ2連戦の後だってのに、(特訓とはいえ)3戦目に突入しようとしてるし、どんだけパシられてるんだこいつww

196名無しさん:2012/04/03(火) 12:43:46 ID:KqJ15lVI0
青い人って言えば、照井もトライアルのイメージカラーは青だよな

197名無しさん:2012/04/03(火) 12:51:09 ID:O.pRoQUwO
投下乙です。
らんまVS尻彦・キュアパインはコミカルでありながら熱いファイトでした!
ヴィヴィオがガイアメモリによる汚染はなくて安堵した、やっぱりなのはさんの娘なんだな・・・と思ってたら他の二人にヤバげなフラグが!?
しかしリミッターの外れたナスカなら、ダグバに勝てるかもしれないけど・・・まだ尻も見せてないのに命が危ないぞ、霧彦ーッ!!

198名無しさん:2012/04/03(火) 13:03:52 ID:x.FeHfxo0
没OPってどこにある?
まとめに没OPとか載せられないかな?

199名無しさん:2012/04/03(火) 13:15:51 ID:KqJ15lVI0
>>198
旧したらばにあるよ

200騎士vs侍 ◆5EJ71eKlNQ:2012/04/07(土) 18:59:28 ID:fQjcmvqQ0
俺は未確認生命体を……いや全ての人間を守ると決めた。
一条薫という男は人間はともかく、未確認生命体をも守るという俺の考えが気に入らないらいらしい。
暗闇の山道で気まずい雰囲気が流れる。
しかも二人きりだ。
だが俺はその考えを変えるつもりはない。
どんな人間であろうと守るのが魔戒騎士の使命だからだ。
あっちも譲れないだろうがそれはこっちも同じ事だ。

「そもそも何処へ向かっているんだ?」

「俺が住んでいる屋敷だ」

そう……俺は自然と地図にある冴島邸に向かっていた。
もしかしたら零がいるかもしれない…。
そう思ったからだ。
もう少しで住み慣れた冴島低に到着だ。
徐々に太陽が昇り、新しい朝が来た。
しかし太陽は昇っても殺し合いという暗闇は照らされないのだ。

「後、どれくらいで着く?」

「もう少しだ」

冴島低に到着するまで何事も起こらなければいいのだが……。
しかしそう上手くはいかなかった。
前方が何やら騒がしい。
よく状況を確認してみると目の前には重症を負っている少女。
そして見たことのない異形の怪人と戦いを繰り広げるクリスタルのような鎧を纏った戦士。
クリスタルの鎧を纏った奴も確かに強いがそれと戦っている怪人はさらに上をいっている。
このままではクリスタルの鎧を纏っている方が負けてしまうのは時間の問題だろう。
俺は勢いをつけ、怪人に跳び蹴りをくらわせる。
不意を突かれた怪人は背中に蹴りを受け、前方に倒れる。

「あんたは?」

「話は後だ。一条さんたちと一緒にあんた達は先に冴島低に向かってくれ。すぐに追いつく」

「え?」

「いや、しかし警察としてそれは…・・・」

俺を置いていく事に戸惑っているのだろう。

「俺を信じろ!」

「わかった!死ぬんじゃないぞ!」

一条は俺の心を察してくれたのだろう。
負傷した少女を担ぎ、怪人と戦っていた戦士を連れて冴島低へと向かった。
それを見送ると、鞘から魔戒剣を抜き出す。
だがその時、鋼牙は我が目を疑った。
すると怪人の姿から、一瞬にして人間に変わったのだ。

「お前、人間か!?」

「俺の名は志葉丈瑠……お前は?」

どうも様子を見る限り、ホラーという線はなさそうだ。

「冴島鋼牙だ……俺の名前を聞いて何になる?」

すると丈瑠は急に高笑いし始めたのだ。
こいついったい何が可笑しいのやら……。

201名無しさん:2012/04/08(日) 01:11:36 ID:WQ67Xn9E0
続きはどうしたの?

202名無しさん:2012/04/08(日) 01:26:05 ID:k0Xu4kIc0
そういえば今更な話だけど、リリカルのゲームGODにヴィヴィオやアインハルトが参戦しているからちょっと興味あるんだけどゲーム的にオススメ?

203騎士vs侍 ◆5EJ71eKlNQ:2012/04/08(日) 01:28:46 ID:TTcGdmH.0
俺は少し腹が立ったので丈瑠に問いただした。

「何が可笑しい?……」

すると丈瑠は急に笑うのをやめ、いきなり俺に剣を振り翳した。
俺は何とか頭上で剣を受け止めた。
しかし、丈瑠の攻撃が絶え間なく続く。
俺はそれをかわし、受け止め続けた。
こいつは人間だ。
魔戒騎士が人間を斬るわけにはいかない。
だから俺は攻撃を仕掛けはしない。
丈瑠はそのことを不思議に思ったのだろう。
鍔迫り合いになりながら、俺に鬼のような形相で問いただす。

「どうした冴島鋼牙!何故、攻撃を仕掛けてこない!?」

「それはお前が人間だからだ!」

「そんな甘いこといっててはこの殺し合いには生き残れない!
俺は参加者全員を斬って生き残る!それが例え昔の仲間であろうとな」

「お前は間違っている!

「黙れ!」

鍔迫り合い、睨み合う二人の剣士。
確かに丈瑠が人間であるというのが攻撃を仕掛けない理由の一つだが、実はそれだけではない。
俺は丈瑠の剣捌きにどこか迷いを感じたのだ。
丈瑠という男は外道に徹しきれない。
まだ闇から救うチャンスはある。
俺の親父である冴島大河は闇に堕ちた魔戒騎士、バラゴを闇から救うことができなかった。
でも俺はこの男を闇から救ってみせる!……見ていてくれ親父!。
俺は鍔迫り合いから丈瑠の腹部に蹴りをいれた。
丈瑠が怯む。
今だ!。
俺は剣で頭上に円を描く。
そこから眩い光が差し込み、魔天使たちが俺の身体に黄金の鎧を装着していく。
これが闇に生まれ闇を切り裂く金色の狼の姿、すなわちガロだ。
ガロの咆哮が大地に響き渡り、複眼が緑色に光る。
ガロの姿を見ても丈瑠は驚くことなくさきほどの怪人、メタルドーパントに姿を変える。

「メタルドーパント……参る!」

やはりこの丈瑠という男は外道にはなりきれてない。
もし、そうだとしたら何故、このメタルドーパントという怪人の姿で俺を攻撃しなかったのか。
その理由は簡単だ。
あの姿で人間である俺を殺すことに引け目を感じていたからに違いない。
だから俺がガロの鎧を召喚したらメタルドーパントになったのだ。
人間以上の力を持つ相手になら心置きなく戦えるということなのだろう。

【F−5 森】
【冴島鋼牙@牙狼─GARO─】
[状態]:健康
[装備]:魔戒剣
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:護りし者としての使命を果たす
1:加頭を倒し、殺し合いを終わらせ、生還する
2:再びバラゴを倒す
3:一条と共に行動し、彼を保護する
4:魔戒騎士について話すつもりはないが、隠すつもりもない
5:零ともできれば合流したい
6:丈瑠を闇から救う

【一条薫@仮面ライダークウガ】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3、警察手帳
[思考]
基本:民間人の保護
1:警察として、人々を護る
2:鋼牙を保護する
3:他に保護するべき人間を捜す
4:銃刀法違反については、今は黙認しておく
5:ほむらと暁と共に冴島邸を目指す

【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:全身にダメージ(極大・回復中)、疲労(大)、ソウルジェムの濁り(中・濁り進行中)、暁に対するイライラ、魔法少女に変身中
[装備]:ディバイトランチャー(シューター・ガンナー)、ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]:無し
[思考]
基本:鹿目まどかを守る。
0:何とかして丈瑠を排除する。
1:鹿目まどかを発見する。
2:早急にグリーフシードを確保し、バカ(暁)と離れたい。それまではやむを得ないので利用する。
3:他の参加者から情報を集める。
4:ダグバ、ガドル、ゴオマは発見次第排除する。
5:鹿目まどかを守る目的以外の争いは避ける。
6:一条、暁と共に冴島低を目指す

【涼村暁@超光戦士シャンゼリオン】
[状態]:健康、シャンゼリオンに変身中
[装備]:シャンバイザー@超光戦士シャンゼリオン、スカルメモリ&ロストドライバー@仮面ライダーW、ウィンチェスターライフル(14/14)
[道具]:支給品一式
[思考]
基本:願いを叶えるために優勝する。
1:丈瑠を鋼牙に任せ、一条とほむらと共に冴島低を目指す。
2:ほむらと一緒に行動する。
3:可愛い女の子を見つけたらまずはナンパ。

204名無しさん:2012/04/08(日) 02:17:45 ID:FfcKCkl60
残念ですが◆5EJ71eKlNQ氏のSSを認めるわけにはいきません。
まず、氏のトリップですがググってみればわかりますが酉割れしている為トリップの役目を果たしません。
同時にIDが変わる程遅いペース、数時間後に次のレスを投下するのでは本人かどうかすらわかりません、
それを踏まえて考えれば実質名無しの予約と変わらない事となり通せる道理は全くないでしょう。
また、予約スレにも予約が無く、特別断りを入れた様子も無い以上ルール的には無効となるべきです。

ルール的にも明らかに無効なのは前述の通りですが、内容についても根本的に問題があります。
まず、鋼牙と一条は元々G-5からF-4へと移動していました。この流れから方向的に冴島邸のあるE-5へ向かうのは不自然です。
ましてやE-5に向かったとなるとほぼUターンになります。リレーの流れを無視していると考えてもおかしいのではないでしょうか?

また、そのE-5に丈瑠及び暁&ほむらが戦っているというのも明らかに不自然です。
彼らが戦闘位置はG-7の三途の池です。いくら何でも数キロ、下手すれば十キロ以上先にあるE-5まで移動しているのは起こりえないでしょう。

これらについての返答を求めますがどうでしょうか?

205騎士vs侍 ◆74uNRNZ9eQ:2012/04/08(日) 02:56:32 ID:TTcGdmH.0
どうも、>>200-203を投稿した者です
酉割れしているの意味がよくわからないのですが、ダメそうなのでとりあえず変えてみました

>予約スレにも予約が無く

予約スレってどこですか?

>この流れから方向的に冴島邸のあるE-5へ向かうのは不自然です。
ましてやE-5に向かったとなるとほぼUターンになります。リレーの流れを無視していると考えてもおかしいのではないでしょうか?

これに関しては私の描写不足でした。
ふと零の存在を思い出し、来た道を戻り、冴島邸に向かうことにしたかったんです。
流れを無視したつもりはありません。

>彼らが戦闘位置はG-7の三途の池です。いくら何でも数キロ、下手すれば十キロ以上先にあるE-5まで移動しているのは起こりえないでしょう。

逃げながら戦ってきたと考えてます。
シャンゼリオンとドーパントの状態ですから数キロといえどもあまり関係ないと思うんです。
だから戦うよりほむらを守ろうと連れて逃げたものの逃げ切れず結局、応戦したということを考えてました。

206<削除>:<削除>
<削除>

207騎士vs侍 ◆74uNRNZ9eQ:2012/04/08(日) 03:37:06 ID:TTcGdmH.0
>>206
>まず投下時間がここまで伸びた釈明と謝罪が先でしょうが

すぐに投稿しろというルールがあったのを知らなかったんですいません。

>それに本当に予約スレの存在を知らなかったのかどうか疑わしいが

これに関しては何が疑わしいのかご説明いただきたい。

>それと描写不足と自己解釈の拡大解釈さがあまりにも身勝手で大きすぎます

身勝手て・・・
描写不足と自己解釈の差が大きすぎたのは認めますしすいません。
ただ身勝手というのは納得できません。
そんなことをいったら大概身勝手になってしまうと思いますが。

208名無しさん:2012/04/08(日) 04:02:47 ID:hjBl2Ztk0
>>206
ここでそのテンションはやめといたほうがいいんじゃないかと、俺は思うよ。
続きをやりたいならせめて議論スレに行きな。

209名無しさん:2012/04/08(日) 11:30:35 ID:uGeAy9wE0
議論スレで意見出てるな
書き手は反論あるなら向こうで議論したら

ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/15067/

210名無しさん:2012/04/09(月) 05:50:28 ID:CtPlqXKUO
えっと、変身ロワに参加している皆様に提案があります。


ここ最近、したらば掲示板が荒れているのにも関わらずして管理人氏は一向に対応をしません。
管理人氏にも事情があるのでしょうが、流石にこれはまずいと私は考えます。

ここは急遽、私が新しいしたらばの管理人を立候補したいと思いますがどうでしょうか
本来、ただの名無しに過ぎませんし、企画に貢献している訳ではないので、変わりに立候補すると言う方がいるのならそちらに譲ります。
しかしもしも皆様が許可してくださるのなら、急遽トリップ及びしたらばを作らせて頂きます。

211 ◆7pf62HiyTE:2012/04/09(月) 08:21:13 ID:2i6hnUSw0
>>210
これに関しては僕も考えていました。
そのため、状況によっては僕が新しいしたらばを用意した上で管理人を行う事も考えています。
というわけでしたらばの新管理人に関しては僕が立候補したいと考えています。

212名無しさん:2012/04/09(月) 08:36:50 ID:wcCQ8nlQ0
今の状況は荒れているとは違うと思う
初心者が来て手間取っているだけな様子だからそこまで深刻に考えなくても
それにそんなこと言うと◆74uNRNZ9eQが荒らし確定みたいに思えるから少なくともそういう言い回しは避けるべき

そもそもどれを指して荒れていると思ったのですか?

213名無しさん:2012/04/09(月) 10:29:17 ID:8IHN.KjA0
◆7pf62HiyTE氏が管理人になると、なんというか歯止めが効かなくなる気もするが……
まぁその辺を承知の上でやっていこうって人だけならいいだろうけど

214名無しさん:2012/04/09(月) 11:54:50 ID:MB9SLtyQ0
率直に言って、◆7pf62HiyTE氏に管理を任せるのは反対だなあ。
「ルールの厳格な適用」と言いながら、それを適用する相手は恣意的に選択する人に
生殺与奪権を握られたくはない。
>>210氏にお願いしたいよ。

215名無しさん:2012/04/09(月) 13:01:39 ID:z5c8h/Ho0
申し訳ありませんが、自分も◆7pf62HiyTE氏に管理を任せるのは否定的です。
氏はこれまで企画に貢献してくれたのはわかりますが、攻撃的な言動が何度か見られたので……
作品自体は好きですが、氏が管理人になるのは不安になります。

216 ◆7pf62HiyTE:2012/04/09(月) 13:17:41 ID:AhSNj4VI0
僕が管理人になる事で不安を覚えている方も多いのはわかります。
僕自身も思うところはあるので1つ提案を。
僕が管理人をする場合、もう1人副管理人を選びその方と連絡を取りつつ管理を行うというのはどうでしょうか。
それならば、指摘されている問題に関してはクリア出来ると思います。
なにより2人体制ならば、仮に1人が動けない状況でも対応が出来るので方向性としては悪くはないと思います。

217名無しさん:2012/04/09(月) 13:31:24 ID:wcCQ8nlQ0
氏も自覚しているのならここは他の人に管理人を任せた方がいいのでは
その方がみんなの不安も解消されるでしょう
そもそもしたらばで管理人が出張ること自体そう多くないですから

ただ現状今すぐに新しいしたらばが必要だとは思えないのですが、そこまで急ぐ必要あるのですか?

218名無しさん:2012/04/09(月) 14:14:17 ID:8IHN.KjA0
管理人さんこないだ出てきてなかったっけ?
生存は確認できてるんだし、やるべきことをしていない、みたいな状況でもないと思うけど

219名無しさん:2012/04/09(月) 14:27:00 ID:8IHN.KjA0
すまん
最初のOしか合ってなかった
管理人さん最近出てきてないね

220名無しさん:2012/04/09(月) 14:29:24 ID:wcCQ8nlQ0
最近管理人氏を呼んだのっていつだっけ

221名無しさん:2012/04/09(月) 15:26:51 ID:O0YdMTKc0
多分、結構前だったと思う。
何にせよ、このまま管理人不在の状況は良くないだろうから(この先、何か問題があった時のためにも)
交代も必要じゃないかな。

222名無しさん:2012/04/09(月) 15:30:53 ID:wcCQ8nlQ0
基本管理人は呼ばれない限り表に出てこないから一度呼んで確認してからの方がいいと思う

223名無しさん:2012/04/09(月) 16:21:40 ID:uZ5B/Es.0
たしかしたらばの下に『掲示板管理者へ連絡』があるからそれで直接メール連絡が出来たはず。
誰が管理人するにせよそれで確かめてからでも良い様な。

とはいえ、そこまで急ぐ必要も無い気もするけど。

224名無しさん:2012/04/09(月) 17:09:09 ID:GeS1DIiE0
まだ新しいしたらばが必要か疑問
ただ荒れ気味なのは確かだからこのままでいいのか疑問

225名無しさん:2012/04/09(月) 18:32:54 ID:O0YdMTKc0
う〜ん、今年の1月に議論スレで管理人氏に対する要望があっても何の反応もなかったから
早いところ交代した方が良いと思う。議論が起こるたびにまとめ役がいないんじゃ、企画が成り立たないだろうし。

226名無しさん:2012/04/09(月) 19:34:24 ID:9D.JEdX.0
誰かが『掲示板管理者へ連絡』からメールを送って、同時にここと議論スレでもう一度管理人さんに呼びかける
20日まで待って反応がなければ、21日以降に新しいしたらばが必要かどうか、
用意するなら誰が新しい管理人をやるかを話し合うってことでどうかな?
>>210さんには一応トリップつけといてもらって

>>225
荒らしに対する規制は管理人の仕事でも、議論のまとめ役は管理人の仕事じゃないだろ

227名無しさん:2012/04/09(月) 22:00:22 ID:O0YdMTKc0
いや、管理人氏がまとめも兼ねてた。
とりあえずこれ以上は、議論スレでやった方がいいかな?

228名無しさん:2012/04/09(月) 22:06:15 ID:wcCQ8nlQ0
たぶん議論スレ使っていて話題が重なるとややこしくなるからこっちで話題を振ったと思う
だからもうしばらくは議論スレじゃないスレでやった方がいいと思う

229名無しさん:2012/04/09(月) 22:26:20 ID:9D.JEdX.0
前の管理人さんがそうだったってだけで
管理人をやる人が議論のまとめ役をやらなきゃならないわけじゃないと思うが

230210 ◆U/g5UeVbAo:2012/04/09(月) 22:39:25 ID:CtPlqXKUO
皆様、ご意見ありがとうございます。
そしてこの度は自分のせいでスレの流れを悪くしてしまい、誠に申し訳ありません。

そして今回は◆7pf62HiyTE氏には申し訳ないですが、自分が管理人をやらせて頂こうと思います(可能ならまとめ役も兼ねて)
ただこれ以上は雑談や投下が難しくなるかもしれませんので、続きは議論スレで今やっている話題を終わらせてから
>>226さんが言うように現管理人氏に呼びかけて、改めて進めるという事でいいでしょうか?

231名無しさん:2012/04/09(月) 22:42:59 ID:wcCQ8nlQ0
乙です
それでいいと思います
そこまで急ぐこともないですから

232名無しさん:2012/04/10(火) 01:13:50 ID:JhYAzFA60
>>230
はい、それでよろしいのではないでしょうか。
今後ともよろしくお願いいたします。

233名無しさん:2012/04/10(火) 15:03:06 ID:TbM20Fk60
そういやなのはのゲームで思い出したんだけど
なのはやまどかのゲームで出てきたゲーム限定の技って、本編中で使っても大丈夫かな?

234名無しさん:2012/04/10(火) 15:09:01 ID:a4aAxCBU0
原作設定と比べて大幅に逸脱しなければ大丈夫だと思う。
ただ、フェイトの場合参戦時期が無印時期だからA's以降でなければ習得していない可能性が高そうなのは難しいと思う。

235名無しさん:2012/04/10(火) 19:33:55 ID:VSaK8a0g0
今レンタルでシンケンジャー見てるんだけど、流之介って速水と似たタイプのボケキャラだったんだなww
面白すぎるww
ところでもうすぐディケイドとのコラボ回になるんだけど、見る順番はシンケン20→ディケイド24→シンケン21→ディケイド25でOK?

それにしても、コラボ回があるんだからディケイドも並行してみるべきだったかもなあ
TV放送時に見てるからディケイドのキャラ把握は問題ないけど
でもTV本編の続編のMOVIE大戦2010見たことないからそれ見る前の復習としてやっぱディケイドも一緒に見とけばよかったな

236名無しさん:2012/04/11(水) 06:22:54 ID:DjhOsn52O
>>235
順番的にはそれで良いと思う。
ディケイド本編は面白くないわけじゃないが、てつを以外の昭和ライダーの扱いが微妙+設定や伏線投げっぱなしで終わるから見終わるとやきもきするかも。
しかしMOVIE大戦の時、全てのライダーの知識を持ってる門矢士はまだいいとして、なんで翔太郎たちはディケイドの事を知ってたんだろう・・・・・・
オールライダー対大ショッカーの時はなんの脈略もなく急に現れたし。

237名無しさん:2012/04/15(日) 10:15:06 ID:w3q/Pqy.0
予約来てたw

238 ◆OmtW54r7Tc:2012/04/15(日) 15:26:10 ID:GVoOXMl20
先越されたか…

239名無しさん:2012/04/16(月) 00:04:40 ID:mpjbMkoUO
おおっ、また予約だ!

240 ◆OmtW54r7Tc:2012/04/16(月) 09:46:43 ID:6LbY3EoE0
投下します

241野望のさらにその先へ ◆OmtW54r7Tc:2012/04/16(月) 09:48:18 ID:6LbY3EoE0
結局黒岩省吾は、二人を仲間にすることなく立ち去った。
その理由は…ふと地図を見て、図書館を見つけたからだ

「NEVER、砂漠の使徒、テッカマン、外道衆、ソウルジェム…」

自分のまるで知らない言葉を口に出して反復する黒岩。
この男、自分の知らない言葉を聞くと調べずにはいられないのだ。
そして、そういう時はいつも図書館で調べ始めるのだ。
数々の怪しい薀蓄の知識も多くはそこから吸収している。
そういうわけで彼は、仲間の確保よりも自らの知識欲を優先させて、図書館へと向かった。


それから何時間が経っただろうか。
徐々に図書館へと近づいていく黒岩であったが…

『テッカマンブレードよ! この声が聞こえるならば出て来い!』

図書館の方から、男の声が聞こえてきた。


黒岩が図書館に駆け付けた時には、まさに一触即発の状態であった。
テッカマンランスという男(おそらく先ほどの演説は奴のものだろう)は、まるで超光騎士のような装甲をまとっていた。その態度は尊大であり、自信に満ちている。
対するは二人の少女、服装が変わっていることを除けばランスの言うようにただの小娘に見える。しかしランスをにらむ目には強い意志が感じられ、一歩も引く気配はなさそうだった。

やがて戦いが始まり…黒岩は戦慄した。

242野望のさらにその先へ ◆OmtW54r7Tc:2012/04/16(月) 09:49:49 ID:6LbY3EoE0
「(な…なんだこの戦いは!)」

その戦いはあまりにも苛烈かつ超次元であった。
飛び交う火花、繰り出される拳や槍。
まるでヒーローショーかSF映画でも見ているかのような気分だ。
その力はダークザイドに匹敵…いや、それ以上あるかもしれない。

「フレエエエエエエエエエエエエエェェェェェェェェェェェェェェェェッッシュ!」
「テッカアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」

光が辺りを包み込むのを見て、黒岩はすぐにその場を離れた。


「これは………!」

光がやみ、現場へ戻ってくるとそこには巨大なクレーターが出来上がっていた。
黒岩が目指していた図書館は跡形もない。
辺りを見回すと、マミと呼ばれていた少女がピーチと呼ばれていた少女を抱えて西へ向かっていた。
テッカマンランスはその場に倒れていたが、やがて起き上がってきた。

「さて、どうするか…」

しばらく考えて、黒岩は二人の少女と接触することにした。
加頭が言っていたテッカマンという存在らしい男のことも気になるが、言動を見る限り殺し合いに乗っているのは明らかで、話が通じそうになかった。
そんなわけで黒岩は、二人の少女の後を追った。


「見ててくださいマミさん…絶対にこの殺し合いを止めて見せるから!」

決意の言葉を口にするその少女の名は、桃園ラブ。
たとえ傷つきぼろぼろであろうと、彼女は立ち止まらない。
巴マミとの約束がある限り彼女は止まれない。

243野望のさらにその先へ ◆OmtW54r7Tc:2012/04/16(月) 09:51:18 ID:6LbY3EoE0
「とりあえず、これからどうしよう…」

現在ラブがいるのはI−3。
どこに行こうかと思案していると…

「知っているか!!」
「え!?」

突然声をかけられた。
びっくりして振り返ると、そこには一人の男がいた。

「世界で最初の図書館は、紀元前7世紀にアッシリア王によって建てられたという」
「え…えーと、あなたは?」

突然よくわからない薀蓄を聞かせてきた男に対し、怪訝そうな表情になるラブ。

「私は黒岩省吾、東京都知事だ!」
「と、東京都知事!?」

黒岩のその自己紹介に、ラブは頭をひねる。
東京都知事の名前や顔を決して覚えているわけではないが、こんなに若い男だっただろうか。
そんなことを考えていると、黒岩が辺りを見回しながら聞いてきた。

「ところで…君のほかにもう一人誰かいなかったか?」
「あ…マミさんは」

そう言いかけてラブは、しゅんとした表情でうつむいてしまった。

「なるほど…つらいことを聞いてしまったようだな」
「い、いえ、いいんです。それより黒岩さん、もしかしてあの戦いの現場にいたんですか?」
「ああ、だが私は見ていることしかできなかった。都知事ともあろうものが情けないな」
「そ、そんなことないです。黒岩さんは悪くありません!私の力が足りなかったから…」

そう。マミさんが死んでしまったのは自分の責任だ。
それに相手のテッカマンランスはとても強力な力を持っていた。
力を持たない黒岩がそれを病む必要などないのだ。

244野望のさらにその先へ ◆OmtW54r7Tc:2012/04/16(月) 09:53:52 ID:6LbY3EoE0
「ありがとう。だが改めて誓おう。東京都知事として、君たちと共に戦うことを」
「黒岩さん…」

黒岩さんのその表情は、決意に満ち溢れているように見えた。
こんなに責任感が強くて優しい人を傷つけさせるわけにはいかない。
マミさんの二の舞にはさせない。

「黒岩さん、あなたは絶対私が守って見せますから!」
「そうか…心強いよ」


「(どうやら上手くいったようだ)」

桃園ラブの信頼を勝ち得たことにほくそ笑む黒岩。
図書館が消滅してしまったのは誤算だったが、こうして仲間を手にすることができたのだから良しとしよう。

「…私の知り合いは以上ですけど、黒岩さんは誰かに出会いませんでしたか?」
「花咲つぼみという少女には出会ったな」
「つぼみちゃんと!?本当ですか!?」

知り合いの情報に喜びの表情を浮かべるラブ。
花咲つぼみ…一見ただの少女に見えたのだが、彼女もラブのような力を持っているのだろうか。
そのことを尋ねてみると、ラブは肯定した。

「詳しくは知らないんですけど、砂漠の使徒っていう悪い連中と戦ってたらしいです」

その後黒岩は、ラブから様々な情報を手に入れることができた。
死んだ巴マミの話していた魔法少女に彼女達が戦う魔女のことや、ラブ達プリキュアや彼女達が戦っていたというラビリンスについて。

245野望のさらにその先へ ◆OmtW54r7Tc:2012/04/16(月) 09:55:09 ID:6LbY3EoE0
「(すべてのパラレルワールドを統括を目指す管理国家、ラビリンスか…)」

自分の日本征服とはまるで規模の違う話に、驚くと同時に舌打ちする。
こんな話を聞かされては、自分のやってきたことがまるでちっぽけに思えてくる。
だが、この殺し合いに関わっている可能性が高いとしてラブがあげたフォージョン、ボトム、ブラックホールの存在を聞かされた時には、さすがに仰天した。
特にブラックホールなどは、ラブ達のようなプリキュア21人を一度は一撃で戦闘不能に陥らせたというのだ。
そのあまりの強大さに、黒岩は自らが井の中の蛙であることを痛感し、絶望的な気分にさいなまれた。
だが……

「(ふん、おもしろいじゃないか)」

次の瞬間には絶望を振り切り、不敵な笑みを浮かべる。
力というのは腕力だけではない。
知略、人脈、財力…持てる全てを使い、その場の状況に応じた方法を模索する。
それが自分のやり方ではないか。
もちろんまずは元の世界に帰って日本を征服するのが先決だ。
地盤を固めずして征服など成り立たない。
だが、日本を、世界を征服し、十分に地盤が固まったその折には…

「(ラビリンス、ブラックホール…次は貴様らの番だ!貴様らがどれほどの力を持っていようと関係ない!この俺が、すべてを掴んでやる!)」

決意に燃える黒岩のその瞳は、野心に燃えてギラギラとしていた。


一通りの情報交換を終えた二人は、まずは教会へと向かうことになった。
黒岩が数時間前に出会ったつぼみがいたのはE−4。
そこから向かう可能性が高いのは冴島邸か教会か村だろう。
そういうわけで、まずは一番近い廃教会へ向かうことになったのだ。

友との約束を胸に刻む少女。
壮大な野心を抱く怪人。
それぞれの決意を胸に、二人は歩く。

246野望のさらにその先へ ◆OmtW54r7Tc:2012/04/16(月) 09:56:23 ID:6LbY3EoE0
【1日目/早朝】
【I-3】

【黒岩省吾@超光戦士シャンゼリオン】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:周囲を利用して加頭を倒す
0:ラブと教会へ向かう
1:あくまで東京都知事として紳士的に行動する
2:涼村暁との決着をつける
3:人間でもダークザイドでもない存在を警戒
4:元の世界に帰って地盤を固めたら、ラビリンスやブラックホールの力を手に入れる
[備考]
※参戦時期は東京都知事になってから東京国皇帝となるまでのどこか。
※NEVER、砂漠の使徒、テッカマンはダークザイドと同等又はそれ以上の生命力の持主と推測しています。(ラブ達の戦いを見て確信を深めました)
※ラブからプリキュアやラビリンス、ブラックホール、魔法少女や魔女などについて話を聞きました

【桃園ラブ@フレッシュプリキュア!】
[状態]:精神的疲労(大)、罪悪感と自己嫌悪と悲しみ、決意
[装備]:リンクルン@フレッシュプリキュア!
[道具]:支給品一式×2、カオルちゃん特製のドーナツ(少し減っている)@フレッシュプリキュア!、毛布×2@現実、ペットボトルに入った紅茶@現実、巴マミの首輪、巴マミのランダム支給品1〜2
基本:誰も犠牲にしたりしない、みんなの幸せを守る。
0:黒岩と行動する
1:まずはつぼみを探すために教会へ向かう
2:マミさんの意志を継いで、みんなの明日を守るために戦う。
3:プリキュアのみんなと出来るだけ早く再会したい。
4:マミさんの知り合いを助けたい。ほむらもできるなら信じていたい。もしも会えたらマミさんの事を伝えて謝る。
5:犠牲にされた人達(堂本剛三、フリッツ、クモジャキー、マミ)への罪悪感。
6:ノーザとダークプリキュアとテッカマンランス(本名は知らない)には気をつける。
[備考]
※本編終了後からの参戦です。
※花咲つぼみ、来海えりか、明堂院いつき、月影ゆりの存在を知っています。
※クモジャキーとダークプリキュアに関しては詳しい所までは知りません。
※加頭順の背後にフュージョン、ボトム、ブラックホールのような存在がいると考えています。○

247 ◆OmtW54r7Tc:2012/04/16(月) 09:57:08 ID:6LbY3EoE0
投下終了です

248名無しさん:2012/04/16(月) 10:24:08 ID:g0BFD8dw0
投下乙です!
ラブは何とか頼れる(?)仲間を手に入れたか……黒岩、戦いに巻き込まれなくて良かったね。
でも教会は教会で、やばいことになってるんだよなw

249名無しさん:2012/04/16(月) 10:24:25 ID:g0BFD8dw0
あ、出会ったか です
申し訳ありません……

250名無しさん:2012/04/16(月) 12:56:23 ID:XJ71m4FYO
まだかかるかと思ったら、もうSSキテターーーー!!
投下乙です。
都知事は、つぼみ&ザギさんと合流せずにこっちにいったか。
予約時は「え? 目の前に参加者いたのにスルーするの?」と思ったけど、本編を読んで黒岩の行動に納得。
井坂先生の次に知識欲のあるキャラだったのを思い出したわw
それにしても兄貴、間違って都知事に恋とかするなよ・・・・・・危険が危ないから。

251名無しさん:2012/04/16(月) 23:01:30 ID:sypQrtSY0
投下乙です

都知事さんは…ああ、なるほどねえ…
ザギさんらと合流するよりマシかな
ラブは…とりあえず紳士路線だから今は大丈夫かな

252名無しさん:2012/04/17(火) 00:22:08 ID:R4hVIcFU0
>>251
つぼみと一緒になったら危なすぎるしな、黒岩さんw

253名無しさん:2012/04/17(火) 20:26:30 ID:TONl.YCg0
黒岩って一応、その辺の民間人には敬語とか使って丁寧に応対してなかった?
たまにダム建設を推進して反感かったりしてたけど、基本的に本性現す前は非常に温厚で、こんな上から目線な態度じゃなかったと思う

254 ◆OmtW54r7Tc:2012/04/17(火) 22:03:33 ID:R4hVIcFU0
>>253
ご指摘ありがとうございます
一応「知っているか!!」と薀蓄の部分以外は一人称を私にして紳士な感じで書いたつもりなのですが…
「知っているか!!」と薀蓄は素で通したいと個人的には考えているんですがダメですかね?
一応民衆に対する薀蓄披露も原作で丁寧語なのは知ってるんですが、なんかそこだけはデフォの方がらしいというか…
後、そこ以外のセリフももう少し腰を低くした感じにした方がいいでしょうか?

255名無しさん:2012/04/18(水) 20:02:18 ID:1gJEZ2xg0
「知っているか!」だけなら彼の象徴的台詞だし、この口調でも別に違和感ないと思う
確かに原作でホットケーキとか凄く丁寧だったけど…

参戦時期的には、そこ以外は直した方が原作っぽいかな

256 ◆OmtW54r7Tc:2012/04/18(水) 20:36:22 ID:mjfjzavo0
修正スレにて黒岩のセリフの直しを書き込みました

257名無しさん:2012/04/19(木) 06:15:55 ID:i2c/Vj22O
修正乙です。
特に問題はないかと思います

258 ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 06:40:12 ID:CJ6NlSl.0
投下及び修正乙です!
なるほど、都知事は図書館に行こうとしたらあの戦いを見てしまうとは……巻き込まれなくて一安心です。
ラブはここからどう動いていくのかが楽しみですね。そして相変わらずの速筆が羨ましいです。


では自分も予約分の投下を開始します

259変身超人大戦・開幕  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 06:43:30 ID:CJ6NlSl.0

「グゴザ、ゴンバボド……!」

 闇に包まれた森林の中で、いきなり人間の姿に変わった怪人コウモリ男は奇妙な言葉を発しながら、力無く地面に膝をつけていた。その姿に先程までの殺意や凶暴性は感じられず、ただの怯える人間と何ら変わりない。
 普通なら、そのような男は迷わず保護するだろう。しかし相手はアインハルト・ストラトスという心優しい少女を殺そうとした凶悪な怪人だ。そんな奴を生かすという選択は仮面ライダー1号に変身した本郷猛には存在しない。
 ここで確実に仕留めなければ、犠牲者は確実に出てしまう。数え切れないほどの怪人を屠ってきた1号の選択は早かった。

「ア、ア、ア……アアアアアアアアアアアアアアアア!」

 しかし一歩踏み出した直後、コウモリ男は絶叫と共に後ろに駆け出す。こちらへ振り向くことはせずに、生い茂る木々の間に消えていった。

「待て!」
「待ちなさ……!」

 一号はすぐさま追跡して撃退しようとしたが、その瞬間に息も絶え絶えとなったアインハルトの声が聞こえる。振り向くと、前に出ようとした彼女は苦痛で表情を歪ませていた。その小さな身体が倒れそうになるも、鹿目まどかがすぐに支える。
 一方で、コウモリ男はこの僅かな時間で闇の中に姿を消している。改造人間となって強化された視力でも、捉えることができなくなった。

「本郷さん、私に構わずあいつを倒しに行ってください……!」
「そうです! アインハルトちゃんは私が見てますから」
「いや、そうする訳にはいかない」

 アインハルトとまどかの心遣いは非常に有り難かったが、それに甘える気はない。こんな状況で若い少女二人をほったらかしにするなど有り得なかった。
 そんなことをしては、彼女達に危険が襲いかかるだけ。

「今の状況でコウモリ男を深追いするのは危険だ! この森の中には、危険人物がまだ他にいる可能性がある。それに今は戦いの疲れを癒すことが最優先だ……わかってくれ」

 何者かに洗脳されたアインハルトの仲間であるスバル・ナカジマがすぐ近くにいるかもしれなかった。それにもし、彼女を洗脳した者が手練れだったら三人とも全滅する危険がある。
 悔しいが、今はこの森から抜け出して少しでも安全な場所で休憩しなければならなかった。このまま暗闇の中にいて、三影英介のような危険人物と遭遇したら元も子もない。
 スバルを元に戻す手がかりも掴めない以上、これ以上長居しても仕方がなかった。

「……申し訳ありません。勝手なことを言って」
「いや、大丈夫だ。それよりも、今は急いで森から出よう。少しでも、体制を整えないとな」

 少し表情が暗くなってしまったアインハルトを一号は励ます。そのまま彼女の傍らに立っていたまどかの方に振り向いた。

「まどかちゃん、ここは俺が先導する。だからアインハルトちゃんのことを、頼んでもいいか?」
「わかりました! それくらいなら、お安いご用です!」
「ありがとう」

 本来ならば二人を抱えて森を抜けだしたかったが、両手の使えない状態では不測の事態に素早く対応できない。不本意ながら、アインハルトのことはまどかに任せるしかなかった。
 今は一刻も早く、二人に無理をさせないペースでここから抜け出さなければならない。

(スバル……すまない、君を助けられるのはまだ先になりそうだ。どうか無事でいてくれ)

 もしも巡り会う形が違っていたら、頼れる仲間になっていたであろう少女の無事を祈りながら。
 一号は己の無力さを呪いたかったが、それでは今ここにいる少女達を守ることなどできない。仮面ライダーである以上、一切の弱音を吐くのは許されなかった。

260変身超人大戦・開幕  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 06:44:30 ID:CJ6NlSl.0





 目障りなリント達を殺せるかと思った。
 二人のクウガをこの手で潰せるかと思った。
 このゲゲルに勝ち残って、自分を見くびったゴ・ガドル・バとン・ダグバ・ゼバの二人を捻り潰せるはずだった。

「ア……ア……ア……!」

 しかしようやく手に入った『ン』の名を持つ究極の力は、急に使えなくなってしまう。何度も変身を繰り返したが、何も変わらない。最早リントと同じ、ただの駆られる対象でしかなかった。
 ズ・ゴオマ・グの脳裏に究極の闇をもたらす者の姿が浮かび上がる。奴は同族たるグロンギ達など、蛆虫程度の弱者にしか思っていない。ダグバこそが全ての頂点に君臨する、絶対なる王者なのだ。

「グゴザ……グゴザ……グゴザ……グゴザ……!」

 こんなの嘘だ。こんなの嫌だ、死にたくない。そう思ってゴオマは木々の間をひたすら走るも、周りには闇しか見えなかった。それがまるでダグバのように思えて、ゴオマの中で『恐怖』という感情が徐々に湧き上がっていく。
 もしもここで誰かに見つかったら一瞬で殺される。ダグバ以外にもクウガやリントの戦士に見つかってしまえば、自分は終わる。
 そんなのは嫌だ!

「グゴザ、グゴビビラデデス――ッ!」

 そうやってゴオマは逃げ続けたがその足は唐突に止まり、次の瞬間には脇腹に違和感が走る。不意に目を移すと、そこには一本の剣が刺さっているのが見えた。
 ゴオマから鮮血が勢いよく吹き出し、周囲に飛び散っていく。そして彼の体温が急激に下がり、激痛のあまりに膝を落とした。
 
「ア、ア、ア、ア……アアアアアアァァァァァァァァァァ!」

 ゴオマの喉から静寂を引き裂くような悲鳴が発せられ、そのまま水溜まりのようになった血の中へと倒れていく。水が跳ねるような音が聞こえ、血生臭い鉄の匂いが嗅覚を刺激した。次の瞬間には突き刺さっていた剣が引き抜かれ、出血は更に激しくなる。

「ア、ア、ア……ア……ッ!」

 いつもリントを殺すときに嗅いでいた血の臭いが、今はやけに不愉快に思える。そしてゴオマは、噴水のように溢れ出る血液を見て恐怖を抱いた。
 とても寒い。
 とても痛い。
 とても苦しい。
 とても辛い。
 とても気持ち悪い。
 とても怖い。
 様々な感情がゴオマの脳裏から鮮血と共に溢れ、やがて瞳から涙を流す。しかしそれは血によって呆気なく飲み込まれてしまった。
 もう、何が何だかわからなくなっている。今ここで何が起こっているのか、自分がどうなっているのかも。
 世界が暗くなっていく。僅かながらに見えていた木々も、見えなくなっていった。
 指を動かそうとしても身体が言うことを聞かない。

「ア……ア、ア、ア……ア……?」

 血溜まりに沈んだゴオマの瞳は、遠くより人影が近づいてくるのを捉える。赤く染まった視界はぼやけてまともに見えないが、誰かがいるのは確かだった。
 ゴオマは何とかして顔を上げようとするが、それすらもまともにできない。鼓膜に響いた足音は、すぐに止まる。

――さあ、あなたのご飯よ。たっぷり食べなさい

 次に聞こえてきたのはそんな声だった。それは吹雪のように冷たくて、全てのゲゲルを取り仕切るラ・バルバ・デのような威圧感が感じられる。
 闇の中から、太い植物の蔦のような何かが何十本も飛び出してきて、次の瞬間にはゴオマは全身に凄まじい圧迫感を感じた。絡みついたそれはうねうねと蠢き、皮膚や身に纏った衣類を次々と引き裂いていく。露わになった肉は噛み付かれ、そこから音を鳴らして血を啜られた。
 自分は喰われているのだとゴオマは思い、藻掻こうとするが縛り付けられた全身は動いてくれない。不意に、蔦の向こう側からこちらに向けられた視線を感じる。
 自分はただの獲物でしかない。そして、飢えた捕食者はその牙で自分の全てを喰らいつくす気でいるのだ。
 到底耐えられない恐怖を前に、ゴオマはただ怯えるしかできない。もう泣き叫ぶこともできなかった。
 しかし、そんなゴオマの視界はすぐに赤く染まって、次の瞬間には全てが漆黒に塗り潰された。もう痛みも苦しみも一切感じられず、恐怖や不安も抱くことはできない。
 だが、これ以上怯えることもなくなったので、ズ・ゴオマ・グはある意味では救われたのかもしれなかった。

261変身超人大戦・開幕  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 06:46:17 ID:CJ6NlSl.0





「あらあら、そんなに勢いよく飲み込んじゃって……しょうがないわねぇ」

 スバル・ナカジマの意識を浸食しているソレワターセが男の肉体を飲み尽くしたのを見て、ノーザは唇で三日月を作りながら嘲笑う。
 先程、スバルや仮面ライダー一号に変身した本郷猛という男やドーパントや魔導士に変身した少女を相手に戦っていた、コウモリのような怪人。どういう理由かは知らないが変身せずに怯えながらこちらに逃げてきたので、禍々しい形状の剣を投げてそのまま命を奪った。
 男の血に濡れた刀は元々、スバルが殺したシャンプーという少女に渡された支給品の一つ。どうやら、別の世界に存在するナナシ連中という怪人が持つ武器らしい。ただの刀がそこまで役に立つかどうかはわからないが、装備は多いに越したことはなかった。
 コウモリ男のデイバッグを手に取りながら、ノーザはスバルの方に振り向く。

「まあ、あなた達はよく働くからこれくらいは仕方ないかしら……ねえ、マッハキャリバー?」
『その通りです、ノーザ様』

 スバルの足に装着されたローラーブレードの中央に埋め込まれたクリスタル、マッハキャリバーは無機質な電子音声で答える。
 ソレワターセの支配はスバルだけに留まらず、人工知能が搭載されたインテリジェントデバイスという機械にまで及んだ。その際にノーザはスバルとマッハキャリバーに関する全ての情報を引き出し、魔導士と時空管理局のある世界の存在を知った。
 スバルと戦っていたあのアインハルト・ストラトスという少女も魔導士の一人らしい。

「確かアインハルトとか言ったわね……本当にあなたは知らないの?」
「申し訳ありませんが、存じておりません」
「そう……」

 どうやらあのアインハルトはスバルのことを知っているようだが、スバル自身やマッハキャリバーも知らないようだ。似ている他人と見間違えてるか、それとも遠くで見ていただけなのかも知らないが、今はそこまで気にすることではない。
 ノーザは、闇に包まれた木々の間に振り向く。

「ところでいつまでそうしているつもり? 言いたいことがあるなら、出てきた方が良いわよ」
「ほっほっほっほっほ……やはり、知られてましたか」

 漆黒から返ってきたのは明らかな猫なで声だった。その僅かな言葉だけでも、明らかに慇懃無礼な態度が感じられる。
 そして、鋭い視線を向けているノーザの前に現れたのは紛うこと無き怪物だった。古来日本で朝廷に仕えていた公家の衣装を身に纏っていて、まるでガイアメモリによって生まれるドーパントを彷彿とさせる。能面のように無機質な表情はぴくりとも動かないが、笑っていることだけは理解できた。

「我が名は筋殻アクマロ……この度は、貴方のご活躍をとくと見させて頂きました。ノーザさん」

 そして、筋殻アクマロと名乗った怪物は何の躊躇いもなく言い放つ。恐らくその口ぶりからしてスバルがシャンプーを殺したことや、ソレワターセの力を見抜かれている。
 こちらと同じく戦いの一部始終を目撃していて、下手人であるスバルの戦闘力を前に堂々と姿を現した。恐らく、アクマロ自身もそれなりの修羅場を潜り抜けた猛者かもしれない。

「いやはや、あなたのようなか弱そうな女性が、まさかとてつもなく腹黒いとは……まさに外道と呼ぶに相応しいですな」

 如何にも神経を逆撫でするような口調に、ノーザは思わず苛立ちを覚える。
 しかしここで激情に任せて襲いかかったとしても、無駄に消耗するだけ。今のスバルに任せたとしても、消耗した状態では得体の知れない相手と戦わせるのはいい方法とは思えない。ソレワターセを投げつけたとしても避けられるし、その後に逃げられてこちらの情報を他の参加者に伝えられる可能性があった。

「……下らない自己紹介はそこまでにしなさい。アクマロと言ったわね、望みは何なの?」

 だから今は感情を抑えて、アクマロとの交渉に持ち出さなければならない。わざわざ馬鹿正直に姿を現したのだから、何の考えもなく接触したとも思えなかった。

「望みですか……? そうですね、地獄をこの身で味わうことですな」

 しかし返ってきた言葉は、あまりにも抽象的で理解し難い単語だった。

262変身超人大戦・開幕  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 06:47:55 ID:CJ6NlSl.0

「何を言っているの、あなたは……?」
「言葉の通りですとも。人々の嘆きと悲鳴や苦痛……それらを鍵として、地獄へと通ずる扉を開く……そして地獄に染まったこの世を味わうことこそが、長年に渡る我が悲願なのです」
「嘆きと悲鳴?」
「左様ですとも。条件さえ整うのなら、この地で地獄への扉を開くことも可能かもしれませぬよ……?」

 普通に考えればただの狂言としか思えないアクマロの言葉を、ノーザは一語一句として聞き逃さなかった。
 まるで道化を演じているかのような飄々とした態度だが、一切の嘘偽りは感じられない。しかもこちらは殺気を飛ばしているにも関わらず、アクマロは平然と両腕を広げていた。
 それにその動作も、一見すると隙だらけだが実際は間逆。むしろ考えなしに飛び込んだ馬鹿者を、一瞬で肉塊に変えてしまう程の実力を持っているかもしれなかった。

「私はこの戯れを進めるにおいて、ノーザさんの力になると誓いましょう……その見返りとして地獄を味わうための手伝いをして欲しいのです」
「だいたいわかったわ……でも、地獄を見せるといってもどうするの? まさか、大勢の参加者をただ倒していくって訳じゃないでしょうね?」
「いえいえ、そんな野蛮で愚かな手段などではありませぬ。我の秘儀、裏見がんどう返しの術を使うだけですとも」
「ふぅん……それはどんな技なの?」
「人の嘆き、悲痛……それらを一直線になるように複数の土地へ植え付け、この世とあの世の間となる楔を作るのです。そこを、我が同胞たる人と外道の狭間に立つ者……腑破十臓さんが裏正という刀で楔を切れば、たちまちこの世は地獄に飲み込まれます……!」

 饒舌に語り続けるアクマロの顔は微塵にも変わらないが、その声は次第に高揚していくのを感じる。もしも人の顔面だったら、余程うっとりしていることが見て取れた。
 正直、胡散臭いことこの上ない相手だが、この世界を地獄とやらに飲み込ませる術とやらは実に興味深い。それは深海の闇ボトムから生まれた怪人達にとって、喉から手が出るほど欲しい物だ。
 このままスバルにアクマロを飲み込ませて、その方法を全て奪い取ることもできる。しかし共闘を持ちかけている以上、戦力をわざわざ潰すのも馬鹿馬鹿しい。それはアクマロが裏切った時でも遅くなかった。

「面白そうじゃない、あなたの望む地獄とやらは……いいわ、乗ってあげる」
「左様でございますか! 御心を満足していただいたようで、恐悦至極に存じます……!」
「それで、まずはこの会場の各地に参加者の不幸を植え付けながら、その十蔵という男を探せばいいのね? 地獄とやらを味わうには」
「そうですとも……ただ、できるなら十蔵さんと裏正……そしてもう一つ、薄皮太夫さんの作った三味線の確保を優先させとうございます。この三つが揃わなければ、我が悲願は達せられぬのですから」
「なるほどね。でも、十蔵という奴はともかく他の二つはどうするつもり?」
「恐らく、他の参加者の手に渡っているでしょう。厳しいですが、それを奪うしかありませぬな」
「そう、わかったわ」

 殺し合いの会場に不幸を植え付けるのは、それほど問題ではないかもしれない。一直線どころか、もうこの島全体に悲劇が広がっているといっても過言ではなかった。
 だが、最大の問題は腑破十臓という男。もしもこの男が途中で勝手に倒れたりしたら、アクマロの計画全てが水の泡となってしまう。別にそれ自体は構わないが、地獄を味わえないのは惜しい。

「なら、今はその男を探しながら会場にもっと多くの不幸を植え付けることを優先させるべきかしら? 悲しみは、多いに越したことはないから」
「でしょうな。もっとも十蔵さんとて、そう簡単にやられるお方ではありませぬ……悲しみを適度に広げながら、捜せば宜しいでしょう」
「じゃあ、まずは悲しみを植え付けることが先ね……」

 そしてノーザは、アクマロが現れてもまだ無表情を貫き続けるスバルに振り向く。

「スバル、あなたが最初に仕留めたあのシャンプーとか言う小娘に変装しなさい。そしてあの本郷猛達に取り入るのよ……プリキュア達に襲われたと言ってね」
「わかりました」

 淡々と答えるスバルの背中に植え付けたソレワターセから何十本もの触手が、空気を朔勢いで飛び出した。そのままスバルの全身を覆い尽くして、蠢きながら形を変えていく。するとスバルに纏わり付いたソレワターセは、ほんの一瞬でシャンプーの姿に変わった。
 それによって金色の瞳は青く染まり、僅かながら生気を取り戻したように見える。しかし、人形の如く無機質なことに変わりはなかった。

263変身超人大戦・開幕  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 06:48:45 ID:CJ6NlSl.0

「ほう! これはこれは……あの愚かな小娘に瓜二つではありませぬか。いやはや、ソレワターセは実に万能ですな」
「まあ、あの加頭という男が何かをやらかしたみたいだから、本調子じゃないけどね」

 後ろに立つアクマロの驚いたような声が聞こえる。
 かつてインフィニティを奪う際に桃園あゆみの姿をコピーしたときと同じように、ソレワターセの力でスバルを変装させた。本郷達に接触させるならば、こちらの方がソレワターセの触手が見えないだけ便利だった。最初は猛にも変装させようと考えていたが、加頭順が何かを施したのかそれは叶わない。
 今はスバルをただのか弱い弱者だと思わせて、不意打ちを仕掛けて集団が潰れるきっかけを作る。そこから、鹿目まどかやアインハルトがどんどん壊れていく姿が見られれば最高だった。
 もしも戦闘が起こったとしても、スバルの体力も回復しているだろうからそれほど問題ではない。

「ああ、ノーザさん。スバルを向かわせる前に一つだけ言い忘れていたことがあります」
「まだ何かあるの?」
「ええ、我に配られていた道具の中に一つだけ気になる物がありまして」

 何事かと思ってノーザが振り向くと、アクマロはその手に籠手を抱えているのを見る。それはスバルがシャンプーの頭を潰すのに使ったリボルバーナックルというデバイスと、非常に酷似していた。

「恐らくこれはスバルが使っていた物の左手用でしょう……万が一、戦闘になったときに役に立つかと」
「確かに、二つ揃えた方がいいでしょうね……で、まだ何かあるの?」
「いえ、大したことではありませぬ……ただ、悪評を広めるのはあなたの敵対するプリキュアとやらだけではなく、我が望みの邪魔となるであろう志葉丈瑠、池波流ノ介、梅盛源太、血祭ドウコクの四人も加えて頂きたいのです。こやつ等を生かしておいては、後々厄介になりますので」

 相当な策士と思われるアクマロがわざわざ戦力増強となる装備を見せびらかして、どんな交換条件を持ち出されるかと思ったら、単なる邪魔者の排除。それだけのために自分の首を絞めるような真似をする馬鹿とも思えなかった。
 しかし、ここでアクマロの真意を暴こうとしても何も進まない。スバルの戦力を増強できるのなら、邪魔者を潰す程度はお安い御用だ。

「……そう、わかったわ。いいわねスバル?」
「仰せのままに」
「じゃあ、左手を出しなさい」

 スバルは言われるがままに左腕を前に突き出し、アクマロはそこにリボルバーナックルを添える。すると掌からソレワターセの触手が飛び出て、リボルバーナックルを飲み込んだ。しかし彼女の右手はそんな痕跡を残さず、すぐに元の白さを取り戻す。

「それじゃあ、奴らを追うのよ。あなたのお芝居がどれだけ優れているのか、私達は楽しみにしているわ」
「全ては……ノーザ様のために」

 シャンプーの声で答えたスバルは勢いよく地面を蹴って、猛達が向かった方向を目指すように疾走した。本来の姿ではないので速度は些か衰えているようだが、それでも追い付くには問題ない。

「あなたも中々に酷い方だ……まあ、あれがスバルの幸せなのですから止めはしないですが……!」
「あら、見たところアクマロ君も負けず劣らずに思えるけど?」
「これはこれは……お褒め頂き光栄に存じます……!」

 余程愉快と思っているのかアクマロの声は歓喜に震えている。
 やはりこの怪物も人の嘆きと悲しみを愉悦とする、悪意に満ちた存在だ。それもナイトメアのアラクネアやハデーニャ、エターナルのネバタコスやムカーディアのように知略にも長けている。
 もしも裏見がんどう返しの術とやらを使えば、この殺し合いは一体どうなるのか? 遠ざかっていくスバルの後を追いながら、ノーザは不意にそんなことを考えていた。

264変身超人大戦・開幕  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 06:49:58 ID:CJ6NlSl.0





 この殺し合いに巻き込まれてから最初に殺したシャンプーの皮を被り、木々の間を駆け抜けるスバル・ナカジマは、ふと両手に目を移す。
 シャンプーの姿を真似たソレワターセの中には、二つのリボルバーナックルが潜んでいる。それを二つ揃えてから、スバルの中で正体のわからない蟠りが広がっていた。
 まるで大切な誰かを裏切っているようで、心が全く晴れない。偉大なる主のノーザ様とその協力者となった筋殻アクマロが望んでいるのに、どういう訳か気が進まなかった。

(高町なのは……さん)

 マッハキャリバーがノーザに情報を伝える際に呼んだその名前が、スバルは心の中で何度も反芻している。
 しかしそれが一体何を意味するのかが、彼女はまるでわからなかった。

(フェイト・テスラロッサ……ユーノ・スクライア……ティアナ・ランスター……ヴィヴィオ……)

 次々と名前が浮かび上がるごとに、疑問も湧き上がっていく。いつどこで、その名を知ったのかが思い出せない。
 けれども、彼らと共に過ごしたことがある気がした。どうしてそう言いきれるのかはわからなかったが、みんなから大切なことをたくさん学んだこともある。
 これからやろうとしていることは、そんな彼らへの裏切りだった。そう思った途端、急に胸が痛くなり、そして熱くなってくる。

『あなたのお芝居がどれだけ優れているのか、私達は楽しみにしているわ』

 しかしノーザの言葉を思い出した瞬間、湧き上がってきた疑問は一気に消えた。

『あなたの力をもっと私にみせてちょうだい……それがあなたにとっての幸せなのだから』

 そして背中にいるソレワターセによって、ノーザが教えてくれた至福の行いを思い出される。
 シャンプーの頭を潰したときの感触に、手に付着した血の臭いと味。それらを味わった瞬間、全身に酒を浴びて酔ったような快楽が脳髄を走った。

『あなたのおかげであなたも私も幸せになれるのよ……それだけは間違いないわ』

 恐怖に震える弱い相手を嬲り殺しにして、絶望のどん底に叩き落とすという行為。殺す直前、シャンプーが最後に見せた苦痛に歪む表情はこの上なく愉快だった。先程、殺し損なったあの鹿目まどかという少女も、死が間近に迫ったことで恐怖に震える。もしもあのまま殺すことに成功したらまどかは、そして周りの人間はどんな絶望を見せてくれるのか?
 そう考えたスバルは無意識の内に笑みを浮かべる。ソレワターセによって無理矢理作らされたその顔は普段の彼女が作る笑顔とはあまりにも遠くて、凄惨だった。
 しかしノーザの願いを叶えるために走り続けるスバルはそれに気付かない。ただ、ソレワターセの意志に任せて一つでも多くの殺戮を目指すだけだった。





「すると、あなたがあの広間で加頭を前に名乗り出た仮面ライダー一号……本郷猛なのか!?」
「その通りだ……しかし、異世界を渡る仮面ライダーがいるとは」
「私も最初は驚いた。だが、あなたの他にも仮面ライダーが九人もいるのか……なら、我々の知らない仮面ライダーも他に多くいることになるのか?」
「流ノ介の話を聞く限りでは、その可能性は高そうだな」

 朝日が水平線より姿を現して空に光を取り戻していく中、B―9エリアに建つホテルのロビーで本郷猛と池波流ノ介は互いに情報交換した後、驚愕の表情を浮かべている。
 数多の異世界を渡る通りすがりの仮面ライダーに、数多の秘密結社が結集した悪の組織BADAN。それは限られた仮面ライダーの知識しか持たない二人を驚かせるのに、十分な威力を持っていた。

265変身超人大戦・開幕  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 06:50:37 ID:CJ6NlSl.0

「まさか別の世界には、外道衆という組織とそれに立ち向かうシンケンジャーという集団がいるとは……争いはどの世界にもあるのか」
「……実に悲しいことだ。しかも私達が出会った若い少女達までもが、戦う世界があるなんて」
「全くだ」

 猛と流ノ介の表情は沈鬱に染まり、そのまま溜息を吐く。
 元々、彼らは争いを好むような性格ではない。できることならば、戦いを回避して平和的に解決することを願っていたが、悪はそれを許すような相手ではなかった。だからこそ、多くの人々を守るために戦うしかない。
 今までもそうだったし、この戦場でもその方針を変えるつもりはなかった。

「まさか、この殺し合いにはそのBADANという組織が関わっている可能性があるのではないか……!? 本郷、あなたの話を聞いていると、それだけの技術力と冷酷さを併せ持つ奴らなら、こんな狂った戦いを開くのもありえるかもしれない」
「その可能性も否定できないが、まだ断定は不可能だ。今は、この戦いを止めて仲間を集めることが最優先だ」
「……そうか」

 そう頷く流ノ介の身体を、猛はまじまじと見つめる。その視線に気付いた流ノ介は、思わず怪訝な表情を浮かべた。

「……どうかしたのか?」
「確か、十蔵という怪人を君は追っているんだったな。だが、見たところまだ怪我は完治していない……それで満足に戦えるのか?」
「……例えそうだとしても、こうして休んでいる間に十蔵やアクマロ……それにドウコクによって犠牲者が出るかもしれない。それを防ぐためにも、あまりのんびりしていられないんだ!」
「そうか……だが、無理をするな。君にもしものことがあっては、悲しむ人間がいるのは君だってわかっているはずだ」
「お心遣い、かたじけない。だが、例えこの身体がどうなろうとも止まるわけにはいかない……それはあなたもそうじゃないのか」
「そう言われると痛いな……」

 申し訳なさそうに頭を下げる流ノ介の言葉に、猛は思わず苦笑する。それは常日頃、緊張に張りつめていた彼がたまにしか見せない笑顔だった。




 本郷猛と池池波流ノ介から少し離れた場所で、四人の少女達が集まっている。普通ならば、同年代の少女が集まれば話に花が咲くかもしれないが、殺し合いという状況がそれを奪っていた。
 しかしそれでも、少女達は決して絶望していない。これまで何度も困難が訪れても折れなかった強い精神と、誰かを守りたいという揺るぎない思いが彼女達の支えになっている。
 四人は皆、殺し合いに巻き込まれた親しい友人達と再会するまで倒れることはできないと考えていた。

「未来の私が……管理局でたくさんの人を鍛えてるって本当なの、アインハルトさん!?」

 そして今、高町なのははアインハルト・ストラトスより告げられた事実に驚きを隠せないでいる。

「はい。なのはさんは私達の時代じゃ、数々の難事件を解決したエース・オブ・エースと呼ばれるほどの魔導師です。私も、未来のなのはさんから色々なことを教わりました」
「……そうなんだ」

 一三年後もの月日が流れた未来のミッドチルダよりやってきたという、アインハルト・ストラトスという年上の少女。彼女が生きている時代の自分は、フェイト・テスタロッサやユーノ・スクライアと力を合わせて多くの困難を乗り越え、更にはスバル・ナカジマやティアナ・ランスターという少女達を一人前の魔導師として鍛えたらしい。

「じゃあ、名簿に書いてあった高町ヴィヴィオって人は……私の娘で、アインハルトさんはヴィヴィオのお友達……なんですよね?」
「はい」
「……そうなんだ」

 あっさりとアインハルトは肯定するが、なのははそれを素直に受け取ることはできなかった。
 数分前、いつきからうさぎのぬいぐるみを受け取った際、この世界に連れてこられた友達の中には、別の時代から連れてこられた可能性があると聞いた。その時はまだ推測レベルの話でしかなかったが、アインハルトの存在が真実だと証明している。
 アインハルト曰く、未来の自分は天涯孤独だったヴィヴィオを引き取って、養子にした際に『高町ヴィヴィオ』となったらしい。あまりにも荒唐無稽で信じがたい話だが、なのはにはアインハルトが嘘を言っているようにも見えなかった。

266変身超人大戦・開幕  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 06:51:44 ID:CJ6NlSl.0

「未来のなのはちゃんは、そんな人になってるんだ……凄いね!」
「あ、ありがとうございます……」

 そしてアインハルトの話を聞いた鹿目まどかは、羨望の眼差しを向けている。しかし今のなのはにとって全く覚えのないことなので、賞賛の言葉が妙に気恥ずかしかった。
 ほんの少しだけ顔が赤くなってるなのはは、明堂院いつきが微笑んでるのを見る。その笑顔は、何やら意味有りげに思えた。

「……なんですか、いつきさん」
「なのは、もしかして照れてる?」
「照れてません!」
「はいはい、わかってるわかってる!」
「何ですか、それ!?」
「いいんだよなのはちゃん、無理しなくても」
「まどかさんまで、やめてくださいよ! もう!」

 なのははムキになって反論するが、いつきとまどかはからかい続ける。明るい声がロビーに響いて穏やかな空気が生まれつつある中、アインハルトだけが沈鬱な表情を浮かべていた。
 それを見たなのはの顔は、ほんの一瞬で羞恥から疑問に染まる。

「……アインハルトさん、どうかしました?」
「いえ……何でもありません。すみません、ご心配をかけて」

 アインハルトはそう答えるが、どう見ても大丈夫とは思えない。明らかに落ち込んだ様子の彼女の前に、いつきが出る。彼女の顔は今さっきまで見せていた笑顔が嘘のように、ほんの少しだけ暗くなっていた。

「もしかして、スバルさんのことを考えてたの?」
「……はい」

 暗い表情で俯いていたアインハルトは、蚊の鳴くような声で頷く。
 彼女は数時間前、何者かに操られたスバルに襲われたらしい。その様子は普段のスバルからはとても想像できないくらいにおぞましく、まるで殺戮兵器を思わせるほどに残酷だったとアインハルトは言う。
 それを聞いた時、なのはの中でやり切れない気持ちが溢れていった。本当は優しい人間であった未来の愛弟子が、誰かの悪意によってやりたくもない戦いを強いられている。それが一体どれだけ辛いことなのか……なのはには、想像することすらできなかった。
 もしもスバルが自我を取り戻して自分自身の罪を知ってしまったら、きっと深い悲しみに沈んでしまうかもしれない。だから、これ以上望まない戦いをさせられてしまう前に何としてでも助けたかった。

「わかった、僕もスバルさんを助けるのに協力するよ……優しい人を無理やり戦わせるなんてこと、許せないからね」

 いつきの眼差しはとても真摯で、それでいて静かな怒りが燃え上がっている。彼女の気迫は、本当に男だと思わせてしまうほどに凄味があった。
 そんないつきの怒りはなのはにも大いに理解できた。

「私も、アインハルトさんやいつきさんと一緒にスバルさんを助けたいです! だって、操り人形みたいにされるなんて……酷すぎるから!」

 もしももっと早く出会えたら、きっとわかりあえてたかもしれない。始めのうちは戸惑うかもしれないが、それでもこの殺し合いを止めるためにスバルと力を合わせていたはず。だからこそ、一刻も早く彼女を助けたかった。

「そうだな、それは私も同じだ」

 そして池波流ノ介と本郷猛もまた、アインハルトの前に立つ。

「誰かの意思を奪って、この殺し合いの片棒を担がせる輩など私は断じて許せん……見つけ次第、この手でたたっ斬る!」
「そうだ。平和を願って得た力を悪に利用する……その意思や日々の積み重ねを踏み躙る奴を、仮面ライダーは決して許したりはしない」

 彼らが握り締める拳からは、計り知れないほどの憤りと悪に対する憎しみが感じられた。恐らく、この二人はスバルを利用した者を見つけたら何の躊躇いもなく殺すだろう。
 しかしそれをなのはは止めなかった。もしかしたら相手にも理由があるのかもしれないし、可能な限りなら救いたい。だけど今回の相手はあまりにもタチが悪すぎた。もしも身勝手な理由でスバルを操ったのだとするなら、悪魔になってでも止めるかもしれない。

「アインハルトちゃん、私もできる限り協力するよ……どこまでやれるのかわからないけど」

 そしてまどかは優しく微笑みながら、アインハルトの両手を握り締めた。その姿はまるで、妹を思いやる姉のように暖かさに満ちている。
 例えるなら、泣いている自分を励ましてくれた美由希や恭也のように。

267変身超人大戦・開幕  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 06:52:53 ID:CJ6NlSl.0

「皆さん……ありがとうございます!」

 そして、アインハルトの顔に少しだけ光が戻って、感謝の言葉を告げた。それでも、まだアインハルトは笑顔を取り戻さない。
 一刻も早くスバルを助けて、アインハルトと一緒に笑い合っているところを見たいとなのはは思った。

「本郷、私達もそのスバルという子を捜そう……志葉屋敷に向かう途中で見つけたら、何としてでも救ってみせる」
「そうか。なら、俺達はここでもう少し身体を休めたら君達の後を追う。どうか、気を付けるんだ」
「ああ、言われるまでもない」

 猛に頷いた流ノ介はこちらに振り向いてくる。その視線を受けて、なのはといつきは荷物を持って、備え付けられた椅子から立ち上がった。その時だった。

「誰か、助けて!」

 ホテルの扉が乱暴に開かれて、六人の意識がそちらに集中する。
 甲高い悲鳴を響かせながらホテルのロビーに飛び込んできたのは、いつきやまどかよりも年上に見える少女だった。
 腰にまで届く青い長髪はぼさぼさになっており、スタイルのいい身体に纏われている中華風の服は乱れ、ほんの少し大人っぽい表情は恐怖に染まっている。

「君、一体どうしたんだ!?」

 膝が崩れ落ちて転びそうになる少女に反応したのは、猛だった。彼は少女の肩にそっと両手を置いて、ゆっくりと支える。
 猛に続くように、なのは達五人も急いで駆け寄った。

「そんなに慌てて……何があったんだ!」
「た、助けて……!」

 震えている少女は瞳から涙を滲ませながら、その白い手で猛が着ている上着の袖を握り締める。

「恐ろしい奴らに追われて、殺されそうになったの……!」
「殺されそうになっただと!? 一体どんな奴だ!」
「それは、それは……とても恐ろしくて卑怯な奴らだったの……! 平和のために戦うって言ってあたしの仲間みんなを騙して、殺したの……!」
「何だと……!?」

 猛の表情からは少女に対する思いやりが感じられるが、それと同時に烈火のような怒りが燃え上がっていた。
 それを見て、なのはは思わず固唾を呑む。

「まさか、君を襲った奴らというのはすぐ近くにいるのか?」
「うん……! みんなのおかげで何とか逃げ出せたんだけど、すぐに来るかもしれないの! みんなを殺した、プリキュアの奴らが!」
「プリキュアだって!?」

 少女がそう言った瞬間、猛の横を割り込むようにいつきが目を見開きながら前に出た。

「君、それは一体どういうことなの!?」
「どういうこと……って、プリキュアの奴らがあたし達を……!」
「プリキュアがそんなことをするはずないよ! みんなを守るために戦うプリキュアが、誰かを襲うなんてありえない!」
「で、でも……あたしは確かに……!」
「お願い、教えて! 君に一体何があったのかを!」

 猛から引ったくるように少女の肩を掴んで揺さぶり、必死の形相で叫ぶ。それはさっき見た冷静ないつきの表情とは大きくかけ離れていた。
 そんな彼女の肩を猛はそっと叩く。動揺していたいつきは猛と目を合わせると、すぐに落ち着きを取り戻した。

268変身超人大戦・開幕  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 06:54:25 ID:CJ6NlSl.0

「待て、落ち着くんだいつき」
「あっ……! その、ごめんなさい……本郷さん」
「いや、君の気持ちもわかる。俺だって、同じ仮面ライダーが殺し合いに乗ってると言われたら平静ではいられないかもしれない。それよりもだ……」

 いつきを冷静に諭しながら少し距離を離れさせた猛は、少女の方に振り向く。その瞳には未だに優しさが感じられるも、猜疑心が混じっていた。

「話を聞かせて貰おうか。プリキュアが君達を襲ったとは、本当なのか?」
「それは……本当です! プリキュアのせいで、みんなが……!」
「だが、いつきはプリキュアがそんなことをするような存在ではないと言っている……これはどういうことだ?」
「それは、その……あたしは……嘘なんて……!」

 猛の鋭い視線を前に、少女の答えはどんどんしどろもどろとなっていく。蹌踉めきながら後退る彼女は目が泳いで、次第に息も荒くなっていた。
 震える吐息の音がロビーに響く中、白い肌からどんどん汗が噴き出ていく。この状況なら動揺してもおかしくないかもしれないが、それにしてはあまりにも後ろめたいように見えた。
 でも、まともに話ができないほど追い詰められたのかもしれない。そう思ったなのはは話をするために一歩進んだ瞬間、少女と目があった。

「……なのは……さん?」
「えっ?」

 そして唐突に名前を呼ばれたことで、なのはは思わず呆けてしまう。

「なのはさん……なのはさん……なのはさん……なのはさん……!?」
「私の名前を、知ってるんですか……?」
「なのはさん……なのはさん……なのはさん……なのはさん……なのはさん……なのはさん……なのはさん……!?」

 なのはは問いかけるが少女は答えず、まるで壊れたテープレコーダーのように名前を呟きながら、よろよろと後退した。

「なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん……」
「君、しっかりする……ッ!」
「あたしは、あたしは、あたしは、あたしは、知ってる、知らない、知ってる、知らない、思い出せない、誰、なのはさんって、誰、わからない、なのはさん、あこがれてる、なのはさん、目標、どうして、どうして、どうして、どうして、わからない、わからない、わからない、教えて、教えて、教えて、教えて……」

 ふらつく少女を再び支えようとした猛の言葉は続かない。
 少女は両手で頭を抱えながら俯いて、壊れたように言葉を発した。常軌を逸したその行為に意味や理性など感じられず、狂っているようにも、何かに迷っているようにも見える。
 少なくとも、ただごとではないのはなのはも理解できた。何故彼女が自分の名前を知っているのかは気になるが、今はどうでもいい。
 そう思った頃には、いつの間にか少女の口は止まっていた。どうなっているのかはわからないが、これはまたとないチャンス。
 なのははもう一度声をかけようとした。

「……そっか、そういうことですか」

 その呟きと共に、彼女は勢いよく顔を上げる。
 少女が今作っている表情は、これまでとは一線を画しているように笑っていた。それも穏やかさや優しさは全く含まれておらず、薄気味悪さしかなのはは感じなかった。

「みぃんな、食べちゃえばいいんですね……楽しい、ご飯の時間だ」

 そう言ってゆっくりと立ち上がった少女の背中から大量の蔦が、音の速度で飛び出してくる。それは少女の全身にほんの一瞬で絡みついて、自分の意志を持っているかのように蠢いた。
 一体何が起こっているのか? そう思った頃には、がしりと腕を強く掴まれる。びくりと身体を大きく振るわせながら振り向くと、流ノ介が鬼気迫る表情を浮かべているのが見えた。

「ホテルの外に走るぞ、急げ!」

 答える暇もなく、腕を引っ張られながら走るのを余儀なくされた。
 なのはが足を無理矢理動かしている中、他の四人もホテルに向かって走る音が聞こえる。だからなのはも、反射的に走る勢いを上げた。
 置き去りにされた少女がいる場所から、何やら耳障りな音が聞こえてくる。肉や骨が磨り潰されてるような、鼓膜に捉えただけで吐き気を促すような音が。
 だからなのはは走る。振り向くことも止まることもしないで、流ノ介の腕を必死に掴みながら走る。
 ここで止まったりしたら、どうなるか。それはまだ短い人生しか送っていない彼女でも、容易に想像できる。
 手を引っ張ってくれた流ノ介に感謝する暇もなく、なのははホテルの外に出た。

269変身超人大戦・開幕  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 06:55:14 ID:CJ6NlSl.0





 栗毛でツインテールが作られた少女を見て、スバル・ナカジマの感情は大いに高ぶっていた。
 あの小さな少女と目を合わせた瞬間、忘れていたはずの何かが胸の奥より湧き上がってきている。けれど、その正体がまだ掴めない。
 高町なのは。
 あの少女の名前は、高町なのはであると本能が告げていた。何故、そう言い切れるのかはスバル自身わからない。
 そして、胸の高鳴りや後ろめたさの正体も理解できなかった。

――正体が知られたからには、誰も逃がすな。
「うん、わかってるよ……全てはノーザ様のためだから。ねえ、マッハキャリバー?」
『その通りですとも、相棒。我が存在意義は、ノーザ様の理想郷を作ることですから』

 しかしその疑問は、ソレワターセの声によって塗り潰される。
 ソレワターセの力で二回目の変身を行っている中、スバルは狂気に満ちた笑みを浮かべていた。蠢く蔦が人工骨格の形を変え、細胞と臓器が熱くなっていくのを感じるが彼女は気にしていない。
 全身が変わっていき、凄まじい熱が蛇のように走る。それは生きながらにして火炙りにされているに等しく、いつものスバルなら絶叫していた。だが今のスバルにとって、むしろ快楽にすらなっている。

――お前の底に潜む悪魔の心を爆発させろ。そうすればお前はもっと強くなれるぞ、タイプゼロ・セカンド。
「我が名はタイプゼロ・セカンド……ノーザ様のためだけに動く殺戮マシーン」

 地獄の底から響く程に低いソレワターセの声に頷いた頃には、既にシャンプーからスバルへと戻っていた。
 その瞳に輝く金色は、より強い禍々しさを放っている。

「全てはノーザ様のために……ノーザ様の邪魔者は、みんないなくなってしまえばいいんだ」

 それはソレワターセによって己を奪われてから、スバルに初めて芽生えた意思だった。
 気付くことはないが、言葉に込められた殺意はスバルだけのものではない。その身に取り込んだシャンプーやゴオマが抱いていた殺意も、ソレワターセによって与えられていた。

――ならば与えてやろう。お前に力を。

 そうして、全身を迸る熱が更に急上昇してスバルは歓喜の悲鳴を漏らす。彼女の皮膚は毒々しい銅色に変化し、肢体からそれぞれ突起が飛び出して、爪と歯が刃物のように鋭くなる。
 ソレワターセだけから与えられた力ではなく、ズ・ゴオマ・グの体内に存在した霊石ゲブロンとン・ダグバ・ゼバのベルトの欠片による影響だった。ゴオマはこの殺し合いの場に放り込まれてからベルトの欠片を取り込んで、膨大なる進化を果たしたのと同じ現象が今のスバルに起こっている。
 アインハルト・ストラトスが魔力を叩き込んで一時的に失われた機能は、ソレワターセによって回復し、彼女は強化体に準ずる進化を果たした。

「全ては……ノーザ様のためにっ!」

 身体に絡まっていた蔦が背中に戻り、そのおぞましい姿を周囲に晒しながら彼女は獲物達の方へ振り向く。その中の数人は姿が変わっていて、ホテルから逃げ出してからすぐに変身をしたのだろうが関係ない。
 その肉体はヒトのものとは大きくかけ離れていて、もはや怪物と呼ぶに相応しかった。
 グロンギの細胞が闘争本能を刺激し、体内で稼働する人工臓器はより激しく轟く。ソレワターセによって異世界の悪意を取り込んだことで、戦闘機人が本来必要な人を殺す能力が更に強まる結果となった。





(あれってまさか……!?)

 ホテルに現れた少女から飛び出した蔦には、明堂院いつきにとって見覚えがあった。
 前にブラックホールが復活させたトイマジンとサラマンダー男爵によって、イエロープリキュア達がおもちゃの国に飛ばされたことがあった。その時に、ゲームと称してデザトリアンを始めとしたたくさんの怪物と戦わされたが、みんなで力を合わせて脱出に成功している。
 あの少女の全身を包んだ蔦は、おもちゃの国のすごろくにいたソレワターセという怪物ととてもよく似ていた。

270変身超人大戦・開幕  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 06:56:34 ID:CJ6NlSl.0
 ただならぬ気配を察したのか本郷猛と池波流ノ介は、既に変身を果たしている。
 猛の全身はバッタを模した黄緑色の仮面と装甲に覆われ、二つの瞳が赤い光を放つ。仮面ライダー一号の首に巻かれた赤いマフラーが、夜風に棚引いた。
 胴衣のような模様が刻まれている青い鎧に包まれた流ノ介はその腰から、一本の刀を取り出す。漢字の「水」が模様となったマスクから放たれるシンケンブルーの視線は、その手に握るシンケンマルに負けないくらいに鋭かった。
 いつきも懐からシャイニーパフュームを取り出し、窪みにプリキュアの種を入れる。いつも着慣れている私立明堂学園は一瞬で金色に光り輝くワンピースに変わり、ショートヘアーが腰にまで届くほどに長くなった。

「プリキュア! オープン・マイ・ハート!」

 その魔法の言葉に答えるように、シャイニーパフュームが眩い輝きを放つ。
 いつきはパフュームの中身を全身に吹きつけると、ワンピースが形を変えた。両腕と腹部を露出させた白い上着の胸元に金色のリボンが飾られていて、ヒマワリのようなミニスカートが風に揺れる。
 長くなった髪は金色に輝きながら花形の髪飾りによってツインテールとなって、両耳にイヤリングが付けられる。最後に彼女はシャイニーパフュームを腰に添えたことで、ココロパフュームキャリーに包まれた。
 身体の奥底から力が溢れ出てくるのを感じて、変身を終えた明堂院いつきは高らかに名乗る。

「陽の光浴びる一輪の花! キュアサンシャイン!」

 キュアサンシャインは名前の通りに周囲を照らす輝きを放ちながら、太陽のように堂々と立った。
 彼女はホテルから聞こえてくる足音を耳にして、半身の構えを取る。目前から発せられる威圧感が、とても禍々しく感じられたため。
 ホテルの扉を潜って現れたのは、チャイナ服を着た少女ではなかった。青いロングヘアーはショートカットになっていて、顔立ちはさっきより少しだけ若い。しかし両目から放たれる金色の輝きが、不気味な雰囲気を感じさせた。
 服装もいつの間にかチャイナ服から露出の多い服へと替わっている。胸元を覆う黒いへそ出しシャツにデニム生地の短パン。頭部に巻かれたハチマキと、長袖ジャケットにマントのように棚引く腰布は、どれも白い。
 両手には鋼の手甲が装備されていて、両足のローラーブーツに組み込まれたエンジンが唸りをあげていた。
 その肌は人間とは思えないほど銅色に染まっていて、全身の至る所から植物の蔦が生えている。変色した瞳がそれらと相まって、怪物というイメージをその身で体現しているようだった。

「やっぱり……ソレワターセ!」
「ソレワターセ?」

 キュアサンシャインの言葉に振り向いたシンケンブルーが疑問の声を漏らす。

「君は、何か知っているのか!?」
「はい! ピーチ達が戦ってたラビリンスって奴らが生み出した敵の一種で、あれを当てられたらどんな物でも一瞬で怪物にされてしまうんです!」
「何だと! だとしたら、彼女を操っているのはノーザという奴の仕業か!?」
「きっとそうです! 多分、今も近くにいるかも……!」
「そうか……!」

 シンケンブルーが刀を強く握り締める音がキュアサンシャインの耳に届いた。水のマスクによって見えないが、その表情は激流のように穏やかでないことはわかる。

「スバルさん……!」

 そして、背後に立つアインハルト・ストラトスの震える声を聞いて、キュアサンシャインは振り向いた。
 鹿目まどかと高町なのはの間に立つアインハルトの顔は、まるでおぞましい物を見るかのように青ざめている。

「アインハルトさん、スバルさんってまさか……!」
「そうですなのはさん……あの人がスバルさんです!」

 なのはに答えるアインハルトは徐々に悲痛な面持ちとなってきて、今にも泣き出しそうだった。
 キュアサンシャインはもう一度前を向く。アインハルトの話が本当ならば、スバル・ナカジマはソレワターセによって操られていることになる。

「あの人、姿がさっきと違う……!?」
「恐らくスバルを操っているノーザという奴が、何かを彼女に施したのかもしれない……結果、あんな姿になったのだろう」
「そんな! そんなの、あんまりだよ……!」

 一号とまどかの憤慨はキュアサンシャインにも理解できた。本当は優しいはずのスバルを無理矢理戦わせる上に、怪物のような姿にさせるのは許せるわけがない。
 そのまま一号は、まどかやアインハルトより少し前に立っているなのはに振り向いた。

271変身超人大戦・開幕  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 06:57:59 ID:CJ6NlSl.0
「なのはちゃん、ここは危険だからまどかちゃんやアインハルトちゃんと一緒に離れるんだ!」
「いいえ、私も戦います! ここでスバルさんを元に戻さないといけませんから……レイジングハート!」
『Yes!』
「セット・アップ!」
『Stand By Ready!』

 なのはの手に握られているレイジングハートから桃色の光が放たれ、薄闇を照らす。輝きは一瞬で収まるが、そこに立つなのはの衣服は既に変わっていた。
 胸に大きな赤いリボンが付けられた白いドレスのような服を纏っていて、その手にはなのはの身長に届くような長い杖が握られている。

「へ、変身……!」
「武装形態!」
『Cyclone』

 高町なのはがバリアジャケットを着て魔導師になった頃には、まどかとアインハルトも変身していた。
 支給されていたサイクロンメモリを首輪に刺したことで、鹿目まどかの身体はサイクロン・ドーパントへと変わっている。右目だけが一号のように赤く輝き、左上半身は風のような装甲が備わっていた。
 アインハルト・ストラトスも力強い言葉を告げたことで、十歳以上成長したように背が伸びている。大人のようになったその身体には、黄緑色のコスチュームが包んでいた。

「な、な、な……なのは、なのは、なのは、なのは……なのは、さん?」

 三人が変身した後、スバルは変装していた時のように表情を歪ませる。敵意しか感じられなかった金色の瞳に、迷いが生まれているように見えた。

「な、なのは……なの、はさん……あたしは……あたしは、あたしは……!」
「スバルさん、どうしたんですか!?」
「あたしは、あたしは、あたしは、あたしは、あたしは、あたしは……なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん……!」
「落ち着いてください、スバルさん!」
「なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん……あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ」

 なのはは呼びかけるが、スバルはそれに答えず未だに混乱している。
 よく見ると、二人のバリアジャケットは形と色がとても似ていた。スバルは未来に生きるなのはの弟子になったから、あえて似せているかもしれない。
 今のなのははまだ小さいが、それでもスバルを呼び続けたら元に戻れるかもしれなかった。僅かでも新しい可能性によってキュアサンシャインの中に希望が芽生えるが、安心することはできない。
 金色の双眸は迷いで揺れ動いてるように見えるが、それでも凄まじい殺気が収まっていなかった。その視線を直接受けていないキュアサンシャインも、冷や汗を流すくらいに戦慄している。
 真っ向から見られているなのははもっと辛いはずなのに、それでもスバルを呼びかけていた。

「あ、あ、あ、あ、あ……あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 しかしなのはの純粋な思いに対する答えは、激情に満ちたスバルの叫びだけだった。彼女の声色は植物を震撼させる程に凄まじく、キュアサンシャインの肌に容赦なく突き刺さる。
 突風のような咆吼で葉っぱが舞い狂う中、続くようにスバルの全身からどす黒いオーラが放たれた。続けざまに迫る衝撃を前に、キュアサンシャインは何とか吹き飛ばされないように踏ん張った瞬間に見た。
 スバルが猛獣のような雄叫びを発しながら地面を蹴って、勢いよくなのはに迫るのを。

「ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「まずいっ!」

 反射的に飛んだキュアサンシャインはなのはの前に立ち、両腕を真っ直ぐに向ける。
 怒濤の勢いでスバルが接近する影響によって地面が抉れる音を耳にしながら、腕に力を込めた。

「があああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「サンフラワー・イージスッ!」

 金色に輝くヒマワリ型の巨大なバリアが現れ、スバルの拳を阻むように現れる。激突の衝撃によって轟音が響き渡り、両手に痺れが走ってキュアサンシャインは顔を顰めた。
 続けざまに連続で拳が叩き込まれるが怯まない。パンチ一発だけでも、普通のデザトリアンを軽く上回っているかもしれないが、ここで諦めたらなのはが危なかった。

272変身超人大戦・危機  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 06:59:04 ID:CJ6NlSl.0

「いつきさん!?」
「私のことはいいから、後ろから離れて!」
「……はい!」

 荒れ狂ったようなスバルの叫びを余所に、キュアサンシャインは後ろにいるなのは達に呼びかける。そのおかげか、彼女達は離れてくれた。
 高く跳び上がったなのはを追うように、スバルはパンチを止めて上空を見上げる。それが彼女にとって致命的な隙となり、一号とシンケンブルーが飛びかかった。

「ライダーパアアアアアアァァァァァンチッ!」
「はあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 一号は左から拳を叩き込もうと、シンケンブルーはシンケンマルを構えて右から迫る。しかしスバルはどちらかに振り向くことはせず、両手で彼らの攻撃を受け止めた。
 このままでは二人は投げ飛ばされるかもしれないが、その前にキュアサンシャインはバリアを消して、両手に力を込める。すると掌より眩い輝きが発せられ、目の前の三人を照らした。

「サンシャイン・フラアアアアアァァァァァッシュ!」

 キュアサンシャインが裂帛の叫びと共に放った光線はスバルだけを飲み込んで吹き飛ばし、一号とシンケンブルーを開放する。そのまま一直線に進んだ光の影響で闇は照らされていき、辺りに日光の暖かさを残した。
 世界に生きる多くの人々にとって希望をもたらし、全てのプリキュアの力となる眩い光は広がるが、キュアサンシャインは全く安心できない。
 数メートル先の距離まで吹き飛ぶ際に、スバルの身体を支配していたソレワターセにもダメージがあると思っていた。一号とシンケンブルーのおかげで、防御や回避の暇もなかったのだから。
 しかし、スバルは何事もなかったかのように上体を起こして、そのまま立ちあがっていく。彼女の全身から生えたソレワターセの根っこだって、一本も減っていない。
 ソレワターセはとても強いし、他のプリキュアと力を合わせなければ倒せないのは知っていたが、それでもまともにダメージを与えられないのは辛かった。

「まぶしい……なのはさんも、まぶしい、まぶしい、まぶしい、なのはさん、なのはさん、まぶしい、まぶしい、まぶしい、まぶしい!」

 そして光線を浴びたスバルは苦しそうに両手で顔を覆っているのを見て、キュアサンシャインは目を背けたくなるような衝動に駆られる。しかし彼女はスバルの姿を真っ直ぐに見つめていた。
 ここで少しでも躊躇ったりしたらスバルを二度と助けられなくなるかもしれないし、何よりもなのはやアインハルトが悲しんでしまう。今は心を鬼にしてでも、ソレワターセに捕まった彼女を助けないといけない。

「スバルさん、お願いだから私の話を聞いてください!」
「なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさんが、なのはさんが、なのはさんが……」
「スバルさんっ!」
「待つんだ、なのはちゃん!」

 いつの間にか地面に下りていたなのははスバルを必死に呼び続けている。彼女はそのまま前に出ようとしたが、一号によって制止された。

「さっきの戦いでもそうだが、今のスバルは呼びかけて止まるような相手じゃない! 下手にそんなことをしても、君が殺されるだけだ!」
「でも、スバルさんは私の名前を呼んでました! だから、このまま呼び続ければスバルさんもきっと……!」
「君一人で、無理をしようとするな!」

 仮面から放たれる無機質な雰囲気とは対照的で、力強い励ましの言葉が辺りに響く。
 そのまま一号はキュアサンシャインの方に振り向いた。

「サンシャイン、君が出したあの光があればスバルを元に戻せるのか?」
「一発じゃ無理ですけど、何発か打ち込めばあの人の中にいるソレワターセが消える可能性はあります!」
「そうか、わかった! なら君は彼女を元に戻すためにそれを続けてくれ! ただし、無理はするんじゃないぞ!」
「はい!」

 耳にするだけで心の底から力が溢れ出てくるのを感じて、キュアサンシャインは一号に頷く。

273変身超人大戦・危機  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:00:31 ID:CJ6NlSl.0

「みんな、ここでスバルを何としてでも助けるぞ! まどかちゃん、それになのはちゃんやアインハルトちゃんはできるだけ後ろに下がりながらスバルを呼び続けるんだ! ただし、危険になったら逃げてくれ!」
「「「わかりました!」」」
「シンケンブルー! 俺と一緒にできるだけスバルの動きを止めて欲しいが、頼めるか?」
「お安い御用だ!」
「そうか! だが傷口が開いたら、すぐにでも退くんだ……いいな!」
「かたじけない!」
「よし……行くぞ!」

 まるで頼れるリーダーのような印象が一号の声から放たれていて、この島のどこかにいるはずのキュアムーンライトを思い出させた。
 始まりの会場で加頭順に対して宣戦布告をした時からそうだったが、やはり本郷猛は信頼できるとキュアサンシャインは思う。

「なのはさんはまぶしい、まぶしい、まぶしい、まぶしい、まぶしい、まぶしい、まぶしい」

 しかしそんな希望を一瞬で台無しにするかのようなスバルの呟きが、ここから少し離れた場所より発せられていた。ようやくスバルが両手を顔から離した頃には、一号とシンケンブルーが飛びかかり、続くようにキュアサンシャインも地面を蹴って走り出す。
 呪いのような言葉と共に、スバルは一号を叩き潰そうと勢いよく振るった拳は避けられた。続くように回し蹴りも繰り出すが、一号は背後に飛んだので掠りもしない。

「ハァッ!」

 そこからシンケンブルーは斬りかかるが、スバルの背中から飛び出したソレワターセの触手が盾のようになって刃を防ぐ。シンケンブルーはそれに構わず刀を振るうも、その度に耳障りな金属音が響くだけ。
 植物にしか見えないそれは、シンケンマルの硬度を大きく超えていた。
 一方でスバルはシンケンブルーに目もくれず、一号の攻撃を捌き続けている。前方から放たれる一号の拳を避けながら、視界の外から迫るシンケンブルーの斬撃を防いでいて防御に死角がなかった。

「くそっ!」

 シンケンブルーは業を煮やしたのか、舌打ちをしながら一旦背後に飛ぶ。
 彼と交代するようにキュアサンシャインは前に出ると、スバルが振り向きながらパンチを放ってきた。容赦のない拳に対してキュアサンシャインは少しだけ体勢を低くして避けて、反撃の掌底をスバルの腹部に打ち込む。
 激突によって鈍い音が響くも、スバルはほんの少し後退するだけ。まともなダメージになってないだろうが、それなら攻撃を続けるしかなかった。
 獣のような唸り声と共にスバルは右足で蹴りを繰り出すが、キュアサンシャインは左腕を掲げてそれを防ぐ。その衝撃はデザトリアンに直接殴られたかのように重かったが、両足に力を込めて吹き飛ばされないように踏ん張った。
 腕に鈍い痛みが走って思わず表情を歪めるが何とか堪え、受け止めた足を弾いてスバルを蹌踉めかせる。キュアサンシャインはその隙を逃さずに拳を叩き込もうとするが、スバルはすぐに体勢を立て直して後方に飛んだ。
 二人の間に数歩分の距離が開いて、その両端に立つキュアサンシャインとスバルの視線が激突する。

「まぶしい、ひかり、まぶしい、たいよう、まぶしい、なのはさん、まぶしい、さんしゃいん、まぶしい、まぶしい、まぶしい……」

 両目に宿る金色の輝きからは、ダークプリキュアとはまた違う意味の強いおぞましさが感じられた。ソレワターセのせいで理性をほとんど無くしてしまったせいか、世界を砂漠にさせたデザートデビルのように見える。
 そしてもう一つ。深い悲しみがスバルの瞳から感じられて、いつ泣き出してもおかしくなかった。本当はスバルだって戦いなんかやりたくないだろうし、人を傷つけるのは辛いかもしれない。
 そんな姿を大切な人に見られるのはどれだけ苦しいのか……考えただけでも、キュアサンシャインの胸は痛む。
 だから、これ以上スバルを悲しませたくなかった。

「まぶしい、まぶしい、まぶしい、まぶしい、まぶしい、まぶしいいぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

 まるで助けを求めているようにも聞こえる声とは反対に、スバルは疾走してくる。
 花火が鳴り響くような轟音と共に地面が砕け散って、ジェット機に匹敵する程の速度で迫りながら拳を掲げていた。
 突進してくるスバルを前にキュアサンシャインは素早く構える。その時だった。

「危ないっ!」

 ややくぐもったサイクロン・ドーパントの叫びが聞こえた瞬間、凄まじい突風が視界の外より吹いてくる。その流れにスバルは巻き込まれた事で動きを阻害されたのか、足を止めた。
 サイクロン・ドーパントの方に振り向いたスバルは凄まじい風を受けても進もうとするが、重りを付けたかのように鈍くなっている。
 台風が吹き荒れるような轟音が鼓膜を刺激する中、サイクロン・ドーパントがキュアサンシャインの元に駆け寄ってきた。

274変身超人大戦・危機  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:02:27 ID:CJ6NlSl.0
「いつきさん、大丈夫ですか!?」
「ありがとう! サイクロン……で、いいのかな?」
「はい! 今の私は、本郷さんと同じ仮面ライダーですから!」

 ガイアメモリの力で異形に変わったまどかは嬉しそうな声で答える。
 しかしキュアサンシャインは素直に喜べない。ガイアメモリはあの順が怪物になるために使っていた物だから、どう考えても怪しかった。
 でも今はそれに触れている時ではない。まどかがガイアメモリを使ったおかげで助かったのは事実だから、その優しさと勇気に感謝しなければならなかった。

「そっか……でも、無理はしないで!」
「わかってます!」

 そう言葉を交わして、キュアサンシャインとサイクロン・ドーパントは前を向く。
 振り向いた先では、突風の圧力から解放されたスバルの攻撃を一号とシンケンブルーが捌きながら反撃して、時折なのはとアインハルトがソレワターセの触手を弾いている光景が見えた。
 しかし数では勝っているものの、有利な戦いとは呼べずにようやく互角にまで届く程度だった。ソレワターセが強すぎるのもあるが、それ以上に四人とも本気で戦えていない。
 ここで下手に本気を出してしまっては操られているスバルに怪我を負わせてしまうため、四人とも力を出せなくて不利な戦いになっている。
 そんな中でもスバルは一瞬だけキュアサンシャインの方に振り向いて、背中からソレワターセの触手を勢いよく出してきた。

「危ないっ!」

 サイクロン・ドーパントの前に素早く回って、両手を前に突き足して金色のバリアを張る。空気を裂きながら迫る数本の触手は、キュアサンシャインのサンフラワー・イージスと一瞬で衝突した。
 しかし触手を使った攻撃はそれで止まらず、鞭のようにしなりながらバリアを叩いてくる。その威力は今までの攻撃よりも強いように思えた。
 しかもこちらに攻撃している一方で、スバルは残りの四人を相手に応戦している。攻撃はほとんど通さず、そこから力強い反撃をしていた。

「このままじゃ……みんなが!」

 そんな彼らが心配なのか、サイクロン・ドーパントはバリアの外に出て行ってしまい、飛び交う触手を突風で吹き飛ばしながらスバルの元に走る。

「待って、いきなり前に出ちゃ駄目!」

 キュアサンシャインは呼び止めるがサイクロン・ドーパントは止まらず、ソレワターセの攻撃を風で防いでいるが、時折先端が皮膚を掠っていた。それでも、お構いなしに彼女は進んでいる。
 しかしそんなことをさせても危なくなるだけだから、サイクロン・ドーパントを守るためにもキュアサンシャインはバリアを消して走り出した。





「ほう、六人が相手でも互角以上に渡り合いますか……何とも、有能ですなぁ」
「恐らく、さっき取り込んだコウモリ男の影響もあるわね。どう見たって、パワーアップしてるもの」
「だとすると、奴はいい獲物だったということになりますな」

 冷たい風の流れる木々の間から、ソレワターセの力によってノーザの操り人形となったスバル・ナカジマの戦いを眺める筋殻アクマロは、素直にそう口を零す。
 シャンプーに化けたスバルがホテルに突入して六人を騙そうとしたが、中にいた二人の小娘が原因で失敗に終わった。その原因である高町なのはという少女を前にして、スバルは異様なまでに混乱しているが、それでも戦いは有利に見える。

「それにしても、あのシンケンブルーがここにいるとは実に都合がいい。このまま、潰してほしいものですな」
「ええ……あなたの悲願を達成するためにもね」

 ふと、アクマロはノーザの方に振り向いた。
 スバルが本郷猛達を騙す計画が狂っただけでなく、キュアサンシャインという未知のプリキュアが現れた。それにも関らずしてノーザは涼しい笑みを浮かべている。
 無論、慌てふためかれるよりは信用できるがそれにしても落ち着きすぎていた。むしろ、都合のいいように計画が進んでいるようにも見える。

275変身超人大戦・危機  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:04:59 ID:CJ6NlSl.0

「ノーザさん、あなたは悔しくないのですかな? せっかくの計画を、あのような小娘どもに潰されたのですから」
「騙せなかったのは確かに残念だけど、それ以上に面白い物があるわ……あの高町なのはとかいう小娘よ」
「ほう?」

 笑みを浮かべているノーザが見ている戦いの場に、アクマロは再び視線を移した。
 そこでは白いバリアジャケットを着ているなのはがスバルの攻撃を防ぎながら、必死に止まるように呼びかけているのが見える。しかしソレワターセの力によって、スバルが止まることはない。
 マッハキャリバーが言うにはなのはとスバルは何らかの繋がりがあるらしいが別にどうでもいい。
 アクマロは一刻も早くスバルがなのはを殺して、そこから極上の絶望が生まれるのを期待していた。

「もしや、スバルがあのなのはとやらを殺すのをノーザさんも願っておりますかな?」
「そうだけど……ただ倒すだけじゃ面白くないでしょ? ただ倒すだけじゃ」
「ただ倒すだけでは……?」

 そう語るノーザの顔と言葉にアクマロは疑問を抱く。
 彼女の笑顔からは、人々の嘆きを糧とする外道衆のように確かな邪念が感じられた。まるで、それを見るだけで弱き人間を震え上がらせることができる程に。
 十中八九、何かを企んでいるのは確実だった。

「ノーザさん、あなたは何をなさるおつもりですか?」
「今はまだ内緒よ。アクマロ君だって、楽しみは後にとっておきたいでしょう?」
「なるほど」

 そう言うからには大層素晴らしい計画なのだろうと思い、アクマロは追求をやめる。ここで無理に聞き出したところで、知った時の喜びが減るだけ。今はノーザの計画とやらが成就するのを、待てばいい。
 微かな期待を胸に抱いた頃、ノーザは前方に足を進めていた。

「おや、どうなされたのですかなノーザさん?」

 アクマロは疑問をぶつけるが、ノーザから返ってきたのは「スイッチオーバー」という単語のみ。
 その言葉が一体何を意味するのか。アクマロが考える間もなく、ノーザの姿が一瞬で変わっていく。腰にまで届く髪は黒から紫に染まって、ドレスも派手で不気味な色に変貌した。
 ノーザは戦うために変身したのだと、アクマロは知る。一見するとただの人間にしか見えないが、その身体から放たれる威圧感がただ者ではないと語っていた。

「これから、極上の絶望と悲鳴を集めるわ」
「極上の絶望と悲鳴……ですか?」
「ええ、それにこのまま戦いを長引かせたら誰か一人でも逃げられてしまう可能性があるわ。そうなる前に私も行かないとね……」

 背中を向けられているので表情は見えないが、妙に上機嫌な声だったので笑っていることが容易に想像できた。
 知略に長けると思われるノーザがわざわざ戦場に出向くとは、余程の策があるのだろう。それもあの場を更に掻き乱すだけではなく、外道衆の糧ともなる負の感情を一瞬で溜められる程の。
 それにいくらスバルとはいえ、人の域を超越した戦闘能力を持つ戦士達を六人も相手にしては誰かしら取り逃す可能性も否定できない。それで他の参加者と結託されて情報を伝えられては、裏目がんどう返しの術への道も遠くなる可能性がある。
 今後の不穏分子を潰すという意味でも、確かにノーザも戦う必要があるかもしれなかった。

「宜しい。ならばこの筋殻アクマロめも、ノーザさんにお供いたしましょう」

 そしてまたアクマロも両手に武器を携えながら、歩を進める。右手には普段愛用している削身断頭芴を、左手には三途の川に潜むナナシ連中が持つ刀が、存在意義を証明するかのようにそれぞれの刃を輝かせていた。
 ノーザが言うには、両方ともシャンプーの支給品として渡されていたらしい。あのような己の力量も弁えない小娘が持っていたのは腹立たしいが、こうして戻った以上は考えても仕方がない。

「あら、本当にいいのかしら?」
「むしろ、我が望むことですから……こうして、悲劇の中に飛び込んでいくのは」
「そう……なら、私はあなたのことを応援してるわ」

 ノーザの激励から感じられるのは、極寒の地を超える程の冷たさと隠す気のない悪意だけ。
 明らかな嘘と感じられるくらいに冷酷で、本当はアクマロのことなど何一つ心配していないのは一瞬で察することができる。
 しかしアクマロにとってはむしろそれが何よりも心地よかった。外道衆にとって絆や温かさなど、虫けらの価値すら持たない。
 裏切りと悲劇こそが、外道にとって極上の酒にも勝るくらいに美味たる代物だった。

276変身超人大戦・危機  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:08:21 ID:CJ6NlSl.0
「はは、ご心配いただき心の底から嬉しゅうございます……!」

 そんなノーザに対する恩返しとして、アクマロもまた邪念に満ちた言葉を贈る。彼もまた、ノーザを心から信頼しているわけではなかった。
 いくら数多の世界を把握する組織の幹部だからと言って、それが外道衆に勝る要因になるわけではない。所詮は地獄への扉を開くために必要な、使い捨てのコマに過ぎなかった。
 そしてそれはノーザも同じ。これはこの殺し合いの場で、どちらが先に己の欲望を叶えられるかの競い合いだった。

(さて、ノーザさん。お手並み拝見とさせて頂きましょう……あんたさんが一体、どんな悲劇を生んでくれるのかを)

 宿敵シンケンジャーの一味であるシンケンブルーへの殺意と、ノーザに対する期待。それら二つを胸にしながらアクマロは戦場へと駆け抜けていった。





 もうこれ以上、誰も死なせたくない。
 この殺し合いを開いたキュウべぇや加頭順の言いなりになんて、なりたくない。
 操られてしまった人を、この手で助けたい。
 今日を生きているはずのみんなを、一人も犠牲にしたくない。
 人を助けたいという、そんな純粋な願いだけを胸にした鹿目まどかは頼れる本郷達の力になろうと思って、サイクロン・ドーパントの力を得た。しかし現実はそんな彼女の願いを嘲笑うかのように、何も変わらない。

「ううううううう……あああああああぁぁぁぁぁぁぁ!」

 そして今も、ノーザという女の人に操られてしまったスバル・ナカジマの喉から、獰猛な肉食獣すらも震え上がらせてしまう程、凄まじい咆吼が発せられた。
 それによって空気も音を鳴らしながら振動して、サイクロン・ドーパントの肌に突き刺さる。もしもまどかのままだったら、確実に汗を流しながら怯えていたかもしれない。
 しかし今の彼女は、ドーパントに変身した影響で恐怖心がそんなになかった。誰かを守りたいという強い決意が、皮肉にも精神に影響を及ぼすガイアメモリの毒素によって増幅されている。
 同時にまどか自身の平常心も失っているが、幸か不幸かそれに気付いていない。そのおかげで、結果的には彼女の願いが叶っているのだから。

「お願いです、止まってください!」

 そして今も、スバルを止めるためにサイクロン・ドーパントは呼びかけながら両手を前に出して突風を使う。風の勢いにスバルは飲み込まれるが、両足に付いたエンジンを唸らせながら突進してくる。サイクロン・ドーパントは風力を強めるが、止まらない。

「なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、まぶしい、まぶしい!」
「ひっ……!」

 両目をギラギラと輝かせるスバルと目線があって、森の中でも抱いた恐怖がサイクロン・ドーパントの中に蘇った。心臓を鷲掴みにされているような気分になって無意識の内に力を緩めてしまい、それが致命的な隙となる。
 L字型を作るように曲がるスバルの左腕が輝いたが、サイクロン・ドーパントがそれを前に何かをすることはできない。

「リボルバー……シュートッ!」

 光はスバルの手中でボールのように圧縮されていき、弾丸のように勢いよく発射された。
 先程は狙いに入ってなかったので当たらなかったが今は違う。ターゲットとなったサイクロン・ドーパントの右肩に容赦なく激突し、周囲に爆音を響かせた。

「きゃああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 悲痛な叫び声と共に宙を舞った後、その身体は地面に叩き付けられる。まるで腕が千切れ飛ぶと思うほどの激痛が走り、サイクロン・ドーパントは恐る恐る目を移す。風のような体表は黒く焦げているが、何とか繋がっていた。
 しかしそれに喜ぶ暇もなく、突風の圧力から開放されたスバルが突進してくるのをサイクロン・ドーパントは見る。だが、その道をキュアサンシャインとシンケンブルーが防いでくれた。
 二人がスバルを止めている隙に、倒れたサイクロン・ドーパントの元へ一号が駆けつける。

「大丈夫か、まどかちゃん!?」

 そして一号に支えられながら、サイクロン・ドーパントはゆっくりと立ち上がった。

277変身超人大戦・危機  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:09:21 ID:CJ6NlSl.0

「酷い怪我だ……まどかちゃん、やっぱり君はなのはちゃんやアインハルトちゃんと一緒に早くここから――」
「いいえ、私なら大丈夫です! こんな怪我、どうってことありません!」
「しかし!」
「心配してくれて、ありがとうございます! でも私も、スバルさんを元に戻す手伝いをしたいんです!」

 一号の言葉を無理矢理遮りながら、サイクロン・ドーパントは痛む身体に鞭を打って再び走る。後ろから呼び止める声が聞こえるが、今の彼女には目の前で起こっている戦いの方が何よりも重要だった。
 戦っている四人の仲間達はスバルの攻撃によって傷付いて倒れるが、すぐに立ち上がる。心配してくれる一号には少しだけ悪いけど、誰かが戦っているのに自分は見ているだけなんてもう嫌だった。
 それに魔法少女になったみんなだって、どんなに傷付いても決して諦めないで魔女と戦っていたから、ちょっとの痛みなど耐えなければならない。

(ここにはほむらちゃん……それに死んだはずのみんなだって、きっといる! だから、みんなに会うまでは挫けてなんかいられないよ!)

 そうやって自分に言い聞かせて、湧き上がってきた恐怖を無理して勇気という感情で埋め尽くそうとする。それは鹿目まどかが元々持っていた物ではなく、ガイアメモリの毒素が精神を大いに高ぶらせた結果、生み出された感情だった。
 しかしいくら強くなったからといって、元々鹿目まどかに特別な力など何一つ持たない普通の女子中学生に過ぎない。それでガイアメモリを使ってドーパントとなっても、この世界では特筆した戦闘力を得たことにならなかった。
 キュゥべえはまどかには莫大なる潜在能力が宿っていると言ったが、だからといってドーパントとなっただけの彼女に何かをもたらすことはない。
 サイクロン・ドーパントの取った選択は勇気と呼べる代物ではなく、無謀以外の何物でもなかった。しかし、当の本人はそんなことなど微塵も考えていない。
 この力さえあればみんなを助けられると、心の底から思っていた。

「ディバイン――」
「ディバイン――」

 サイクロン・ドーパントの目前で、なのはとスバルは同じ言葉を紡ぎ始めている。
 なのはが構えたレイジングハートの先端からを桃色の光が発せられるように、腰を落としたスバルの右手から漆黒の輝きが空気を揺らしながら広がった。
 彼女たちの足元には色違いの魔法陣がゆっくりと回転していく。

「バスタアアアアァァァァァァァ!」
「バスタアアアアァァァァァァァ!」

 そして、二つの光は寸分の狂いもない同じタイミングで放たれた。二人の呼吸が完全に一致していたのは、二人が師弟だったのが関係あるかもしれない。
 鋼色の拳と黄金の杖から轟音と共に解放されたエネルギーは一瞬の内に衝突し、勢いよく爆発した。暴力的とも呼べる魔力の塊の余波は凄まじく、それだけで周囲の物を容赦なく吹き飛ばしていく。
 サイクロン・ドーパントもまた弾き飛ばされそうになったが、その直前にキュアサンシャインによって支えられた。

「あ、ありがとうございます!」
「吹き飛ばされないように踏ん張って!」
「はい!」

 激流のような光線の余波と二つの光線が放つ眩さによって、サイクロン・ドーパントは思わず目を細める。その勢いはサイクロン・ドーパントが放っていた疾風など、まるで子供騙しのように思えるくらいだった。
 拮抗する光線はやがて、雷鳴が轟くような音を鳴らしながら爆発して、辺りを極光で満たす。その衝撃によって地面は大きく揺れるが、サイクロン・ドーパントはそれに意識を向けていられなかった。
 光が収まりつつある中、吹き飛ばされた大地は粉塵となって周囲に舞い上がる。しかしそれは冷たい風に流されて、視界を遮ることはなかった。

「でぃばいん、ばすたー……」
「スバルさん……もうやめてください」

 そして、二つのディバインバスターによる輝きが消えた頃、なのはとスバルは見つめ合っている。
 スバルは拳を突き出したままぽかんと力なく口を開けているのとは対照的に、なのはは悲しげな表情で呼びかけていた。

「まぶしい、なのはさんのでぃばいんばすたー……まぶしい、とってもまぶしい」
「スバルさんお願い! 元の優しいスバルさんに戻って!」
「……やさしい?」
「私はスバルさんのことはよく知りません! でも、アインハルトさんや未来の私はあなたのことがとっても優しい人だって知っています! そして、スバルさんがたくさんの人を助けてくれたことも!」
「たくさんの人を、助けた……?」

278変身超人大戦・危機  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:10:27 ID:CJ6NlSl.0

 金色に輝く瞳から突き刺さってくる殺意が、なのはの言葉によって弱まってくるように感じる。ゆっくりと構えを解いていくスバルの顔がまたしても迷いで満ちて、息を荒げながら頭を抱えた。

「ど、どうして、どうして、どうして、あたしは、つぶす、つぶす、なのはさん、まぶしい、なのはさん、つぶす、つぶしていい、つぶしちゃだめ、つぶしていい、つぶして、つぶして、つぶして……」
「スバルさん!」
「どうして、なのはさん、どうして、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん……」

 なのはが必死に呼びかけていく度にスバルはどんどん狼狽していって、血管のように脈打つソレワターセが縮んでいくのが見える。そのおかげで、あれだけ飛び交っていた触手も止まっていた。
 これは千載一遇のチャンスだと思ったサイクロン・ドーパントは、キュアサンシャインから少し離れていく。

「あたしは、あたしは、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、たすける? たすける? なのはさん? なのはさん? なのはさん?」
「いつきさん!」
「うん、わかってる!」

 そしてキュアサンシャインも察しているのか、サイクロン・ドーパントに頷きながら前に出た。太陽のように強く光る瞳を見て、ここにいるみんなの願いがようやく叶えられるとサイクロン・ドーパントは思う。
 これでようやくスバルさんを助けて、本郷さん達と一緒に加頭やキュウべぇの陰謀を阻止することができる。さやかちゃんの時みたいに、もう救えなくなるなんてことはない。
 キュアサンシャインに希望を感じていたサイクロン・ドーパントは、スバルに意識を向け続けていた。そして彼女は気付かなかったが、一号とアインハルトも困惑するスバルに釘付けとなっている。
 その結果、襲撃者に気付くのに遅れてしまった。もっとも、それが早かったところで不幸にも数メートルほどの距離があったので、素早く反撃できた可能性は低い。
 スバルを元に戻せるという大きな希望が、皮肉にも最悪の罠となってしまったのだ。

「ぐああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 気付くことができたのは、シンケンブルーの悲痛な叫びが発せられてからだった。
 何が起こったのかを考える暇もなく、サイクロン・ドーパントはすぐさま後ろを振り向く。見ると、ここから少し離れた場所ではシンケンブルーが倒れていて、その側に別の参加者が二人も立っていた。
 おとぎ話に出てくるような魔女みたいに薄気味悪い格好をした大柄の女と、怪談の中で語られそうな妖怪みたいな怪物。それぞれの瞳からは、この殺し合いに乗っていると言わんばかりの明確な殺意が感じられた。
 サイクロン・ドーパントはすぐに突風を出そうとしたが、怪物は両手に握った刀をシンケンブルーに突き付けていて、下手な動きをすれば殺される可能性がある。それは戦いの素人である彼女でも、容易に想像できた。

「無様な姿ですな、シンケンブルー」
「お前はやはりアクマロ……本当に生きていたのか!?」
「ほう、我がこの殺し合い程度で滅ぶような輩だと? これはまた随分と、見くびられたものですなぁ!」

 アクマロと呼ばれた怪物の口調は軽剽と苛立ちが同時に感じられる。そのせいで、能面のように動かない顔の下からは怒りが放たれていると本能で察した。
 そのままアクマロは憂さ晴らしのためなのか、シンケンブルーをまるでボールか何かのように蹴飛ばす。マスクの下から発せられたと共に地面を転がる彼の元に一号が駆け付けて、その身体を支えながらアクマロ達を睨んだ。

「あなた方シンケンジャーはただでは殺しませぬ。これまで我々の邪魔をした報い……じっくりと、受けて頂きましょう」
「お喋りはそこまでよ、アクマロ君」

 アクマロが一歩前に踏み出そうとするが、隣で邪悪な笑みを浮かべている女がそれを制止する。蛇のように輝く瞳は、キュアサンシャインに向けられていた。

279変身超人大戦・イナクナリナサイ  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:12:14 ID:CJ6NlSl.0
「キュアサンシャイン……まさか私の知らないプリキュアがいたなんてね。これは驚きだわ」
「もしかしてあなたが……ノーザ!?」
「ふうん、私のことを知ってるのね。これは光栄だわ」
「じゃあ、スバルさんをソレワターセで操ってるのも、やっぱりあなたの仕業だったのね!」
「あら、わかってたんじゃなかったのかしら? 最初から私が、そのマシーンを有効活用してあげたってことを」
「なんですって!?」

 ノーザと呼ばれた女がさも当然と言うような笑みを浮かべる前で、キュアサンシャインは表情を怒りに染めながら拳を強く握り締める。
 そんな彼女と同じようにサイクロン・ドーパントも、人を人とも思わないようなノーザの言葉に憤りを感じていた。本当なら魔法少女のみんなや猛みたいに人々を守っている勇気に溢れたスバルを、よりにもよってマシーンなどと呼ぶ。
 それはあのキュウべぇみたいに感情がなければできることではない。しかもノーザやアクマロは人の不幸を嘲笑っているから、キュウべぇ以上に悪質かもしれなかった。

「あなたがスバルさんを……許さない!」

 そしてアインハルトも怒りに満ちた表情でノーザを睨んでいて、そのまま勢いよく走り出す。まるで韋駄天のように素早く、ノーザとの距離がどんどん縮んでいった。

「待つんだ、アインハルト!」
「一人で飛び出すな!」

 一号とシンケンブルーは呼びかけるがアインハルトは止まらない。二人は立ち上がって駆けつけようとするが、その前にアクマロが立ちはだかる。
 右手の刀を一号に、そして左手に握る刀をシンケンブルーに突き付けて、一瞬だがその動きを止めた。

「そこをどけ、アクマロ!」
「邪魔をするのは無粋ですぞ。シンケンブルー……そして、本郷猛!」

 シンケンブルーの怒りを前にしても、アクマロは嘲笑を貫いている。

「ならば、力尽くで通るだけだ!」

 そう、一号は拳を握り締めながら宣言する。

「やれるものなら、やってごらんなさい!」

 そう言い放ったアクマロは両手の刀を構えて二人に襲いかかり、異様な輝きを放つ刃で容赦なく斬り付けていく。一号とシンケンブルーは何とか避けようとするが、スバルと戦っていた直後だったせいで動きが鈍っていて、そのせいでアクマロの攻撃全てを対処することができずに斬られていた。

「ぐうっ!」
「ほ、本郷さん!」

 そして一号の胸板が傷つけられるのを見て、サイクロン・ドーパントは駆け付けようとするが今度はスバルによって阻まれる。キュアサンシャインやなのはも二手に分かれて進もうとしたが、ソレワターセの触手が彼女たちの行く道を塞いでいた。

「全てはノーザ様のために」
「スバルさん、そこをどいてください!」
「全てはノーザ様のために」

 なのはは必死に呼びかけるが、スバルは初めて出会った時のように表情が冷たい殺意で満ちている。輝く瞳からは、血も涙もない殺戮兵器のような冷酷さが感じられた。
 その視線に戦慄する暇もなく、彼女の背中に取り憑いたソレワターセから触手が何十本も飛び出してきて、緑色の肌を容赦なく叩いてくる。サイクロン・ドーパントが悲鳴を発して弾き飛ばされた頃には、キュアサンシャインとなのはも地面に叩き付けられていた。

「覇王――!」

 そしてここから少し離れた場所で、アインハルトが拳を握り締めながら走り、力強く宣言しているのをサイクロン・ドーパントは見る。
 その一撃が凄まじい威力を持っているのは、先程コウモリ男を叩きのめしている時に知った。だから、どんな敵が相手でも決して負けることはない。
 そう信じているのに、サイクロン・ドーパントの中で不安は消えなかった。アインハルトの前にいるノーザが余裕の笑みを浮かべながら、何も仕掛けてこない。
 このままじっとしていたら、アインハルトに叩き潰されるだけ。アクマロは一号やシンケンブルーと戦っているし、スバルはノーザに背を向けたままこちらを睨み付けている。
 今、ノーザを守る者は誰一人としていない。それにも関わらずして、何故あそこまで余裕で立っていられるのか?
 疑問が何一つ解決されないまま、アインハルトは遂にノーザの目の前まで迫っていた。

280変身超人大戦・イナクナリナサイ  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:13:17 ID:CJ6NlSl.0

「アインハルトちゃん、駄目!」
「断空拳!」

 サイクロン・ドーパントは嫌な予感のあまりに呼びかけたが、もう遅い。
 アインハルトの掛け声が発せられた次の瞬間、それを打ち消すかのような激しい音がエリアに響いた。その音はアインハルトの奥義がいかに凄まじい威力であるかを物語っている。
 だからこそ、サイクロン・ドーパントは目の前の光景を信じることができずに声も出せなかった。

「えっ……!?」
「フフッ、せっかく当てることができたのに残念でした」

 そして、アインハルトも同じように驚愕している。
 アインハルトが全力で放った覇王断空拳は確かにノーザに届いていたが、雪のように白い片手一つだけで受け止められていた。
 アインハルトは一瞬だけ愕然とした後、何とか振り解こうと動いているがノーザは微動だにしない。それどころか、笑ってすらいた。

「くっ……このっ!」
「実は言うと私、とっても強いのよね」

 明らかにアインハルトを愚弄しているノーザを見て、サイクロン・ドーパントはようやく確信する。
 何故、ノーザは覇王断空拳が迫るまでに何の動きも見せなかったのか? それは避ける必要がなかっただけに過ぎない。彼女の奥義を簡単に受け止められるくらい、ノーザは強かったという単純な理由だった。
 しかしだからといって、サイクロン・ドーパントは納得などできない。アインハルトは一号と一緒にみんなの為に戦えるくらい、勇気に溢れた強い少女だった。そんな彼女が悪意に満ちた魔女に負けるなんて、サイクロン・ドーパントは受け入れることなどできない。
 目の前の光景がただの悪夢だと思いたかったが、現実は何一つとして変わることなどなかった。

「これくらいに、ね!」
「きゃあっ!」

 そしてノーザは片腕一本だけで、アインハルトの身体を勢いよく頭上まで持ち上げる。その細い腕のどこにそれだけの力があるのかを考える暇もなく、そのまま彼女は宙に投げ飛ばされた。
 アインハルトが重力に吸い寄せられて地面へ叩き付けられると思った瞬間、その脇腹をノーザは勢いよく蹴りつけて更に高く持ち上げる。口から漏れた悲鳴は声になっていなかったので、それだけで重い一撃であることが見て取れた。
 数秒ほど宙を舞った後、今度こそアインハルトは地面に勢いよく落下する。どさり、と鈍い音を鳴らしながら一気に転がっていった。

「アインハルトちゃん、今そっちに行くよ!」

 回転はすぐに止まったが、その身体には大量の傷が見える。
 一号とシンケンブルーはまだアクマロと戦っているし、キュアサンシャインとなのはは少しだけ遠い。だからサイクロン・ドーパントはすぐに立ちあがって、アインハルトの元に走り出していく。キュアサンシャインとなのはが後ろから呼びかけてくるが、それを聞いている暇はない。
 アインハルトは身体をゆっくりと起こしながら振り向き、そして一気に目を見開いた。

「駄目! まどかさん、後ろ!」
「えっ?」

 予想だにしなかったアインハルトの答えが、サイクロン・ドーパントに一瞬の制止を余儀なくしてしまう。そして反射的に後ろを振り向こうとした直後、地面が勢いよく削れる音が耳に響いた。
 完全に振り向いた後に見えたのは、流星の如く駆け抜けてくるスバルの姿。彼女はソレワターセの触手でキュアサンシャインとなのはの接近を阻みながら、拳を振り上げてくる。
 サイクロン・ドーパントは突風を出すために両腕を突き出そうとするが、それよりもスバルの動きが圧倒的に速い。不意に、一号達の声が聞こえてくるが、それがあまりにも遠い物に感じられた。
 全てを射抜くような金色の瞳と目が合った頃、スバルの拳はサイクロン・ドーパントの腹部に到達している。ドーパントになったことで発達した感覚によって、これから吹き飛んでしまうと本能が予知した。

281変身超人大戦・イナクナリナサイ  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:14:47 ID:CJ6NlSl.0

「IS・振動破砕」

 そんな呟きが耳に届いた瞬間、サイクロン・ドーパントはまるで全身が砕け散るような衝撃を感じる。予想を遥かに上回るくらいに凄まじい威力で、サイクロン・ドーパントが耐えられるダメージではなかった。
 気がつくと、視界に映っていたのはようやく登り始めたとても美しい朝日だったが、朦朧とした意識の中ではそれを意識することはできない。
 そこからすぐに身体が揺れるのを感じて、その度に痛みが全身を蹂躙していく。ようやく振動が収まって起き上がろうとするが、急に全身は鉛のように重くなっていた。
 一体何がどうなっていて、自分の身に何が起こったのか? その疑問が解決されることもなく、彼女は自分の右手が腹部に触れていて、そこに生温かい液体が付着してるのを感じる。
 この違和感の正体を突き止めるため、何とかして腕に力を込めて手を見つめた。スバルから受けたダメージによって体内に宿るガイアメモリは首輪から排出され、元の華奢な女子中学生の姿に戻っているが、それを意識していない。
 ただまどかが認識しているのは、自分の右手が真っ赤に染まっていることだけだった。

「えっ……何、これ……?」

 新鮮なトマト以上に鮮やかな赤さを持つ液体からは、鉄の匂いがする。
 刹那、喉の奥から何かが逆流してきて、それがまどかの口から勢いよく吐き出された。そして次の瞬間には、口内に血の味が広がっていく。
 この時まどかはようやく察した。たった今、スバルから受けた攻撃によって腹に大きな穴が空いて、そこから大量の血が流れ出ていることを。
 まどかは知らないが、その一撃は戦闘機人タイプゼロ・セカンドであるスバル・ナカジマが持つIS(インヒュレートスキル)と称される特殊技能の一種で、振動破砕の名を持つ接触兵器による物だった。それは四肢の末端部から強烈な振動を標的に与えて、対象物の内部を容赦なく破壊する防御不能の機能。主な目的は機械兵器を破壊することだが、生物に対しても莫大な殺傷能力を持っている。
 本来ならその振動にはスバル自身にも伝わり、危険な諸刃の剣とも呼べる機能だった。しかし今の彼女はソレワターセの力と、その身に吸収したゴオマに宿ったアマダムとダグバのベルトの欠片によって肉体が強化されていて反動は伝わらない。結果、振動破砕はまどかに致命傷を与えられる強力な武器となったのだ。
 それは首輪による制限によって威力が減退しているにも関わらず、サイクロン・ドーパントの変身を強制的に解除させて、まどかの臓器や骨を破壊するには充分すぎた。

「あ、あ、あ……あ……ッ!?」

 手に付着した鮮血を見てようやく腹部に激痛を感じて、まどかの口から悲鳴が漏れそうになった瞬間、その身体が急激に持ち上げられる。倒れたまどかの手足にソレワターセの触手が絡みついて、そのままスバルが立つ地面の遥か上にまで登っていった。
 まるで十字架に張り付けられたかのように四肢を縛られたまどかの耳に声が響くが、痛みと失血によって意識が揺れているのでまともに聞き取れない。ただ、ぼんやりと下界を見下ろすしかできなかった。
 そんな中、この事態を引き起こした元凶たるノーザが笑いながらこちらを見上げていて、目線が合う。嘲笑うような眼からは殺意が向けられているだけではなく、まるで呪われているようにも思えた。
 自分の未来はノーザによって握られていて、この命はもう自分の物ではない。生きるも死ぬもノーザ次第。不意にまどかはそう思うようになって、背筋が凍るような悪寒を感じる。
 ノーザの冷たい瞳に宿る邪念はキュウべぇからも、これまで魔法少女のみんなが倒してきた魔女達よりも、そして先程戦ったスバルよりも強い。それほど怖いノーザによって、これから全てを壊されてしまう。
 まどかは恐怖のあまりに、そんな不安に捕らわれてしまった。


 これは誰もあずかり知らぬことだが、まどかが追い込まれたのにはもう一つだけ原因がある。それは参加者の大半に配られているはずの、T―2ガイアメモリ。
 莫大な力を得られる代償として、余程強い精神力を持たぬ人間がそれを差し込んでしまえばたちまちメモリの毒素によって精神を壊されてしまう。ただの女子中学生でしかないまどかはそれを二度も使用したことで、自分自身を抑える力が極端に弱くなっていた。
 加えて本郷猛から仮面ライダーと呼ばれたことで、彼女は慢心してしまっている。賞賛の言葉が皮肉にも、まどかを危機に陥らせるきっかけとなってしまったのだ。




282変身超人大戦・イナクナリナサイ  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:15:45 ID:CJ6NlSl.0
 スバルに植え付けられたソレワターセによって天に掲げられたまどかを助けるために、シンケンブルーは必死に刃を振るい続ける。しかしアクマロが持つナナシ連中の刀でそれを受け止められてしまい、そこから削身断頭笏で胸部を横一文字に斬られた。
 焼け付くような痛みが駆け巡り、呻き声と共にシンケンブルーは後退ってしまう。それをカバーするかのように一号はアクマロに殴りかかるがあっさりと避けられて、そこから反撃の一閃を受けてしまった。
 蹌踉めきながらもシンケンブルーは何とか立ち上がって走ろうとするが、痛みが動きを阻害している。十蔵によって負わされた傷はスバルとの戦いで開いてしまい、左脇腹から少しずつ血が流れていた。
 その上、外道衆の中でも相当の実力者であるアクマロとの戦いを強いられることとなり、動きは確実にキレを無くしている。
 もしもまどかを助けるためにどちらか一人がアクマロを引き受けたとしても、消耗した状態で一騎打ちを持ち込んでは一瞬で負けてしまい、もう一人もすぐに殺されるだけ。結果、二人で戦うことを余儀なくされていた。

「おやおや、いつもの動きが感じられませぬ。シンケンブルー……もしや、深手を負っておりますな」
「黙れ!」

 そして今も、身体の不調さえも敵に見抜かれていた。侍の誇りがそれを許すはずもなく、何とか力を込めてシンケンマルで一閃するが、すぐに受け止められてしまいそこから胸部を蹴られる。
 再度吹き飛ばされるが、地面に叩き付けられる直前に一号が支えてくれた。シンケンブルーは軽く感謝を告げながら、ゆっくりと立ち上がる。

「あんたさん達、これから始まる喜劇の邪魔をするのは無粋ではありませぬか。お客はお客らしく、ゆっくりと待てばいいのです」
「喜劇だと……!?」
「ふざけるなっ!」

 シンケンブルーのマスクの下で流ノ介が汗を流しながら怒りで表情を歪ませる中、一号は激昂した。

「キサマら……何故、まどかちゃんにあんな酷い仕打ちをする!?」
「何故と申されても……この催しは元々こういう仕来りですから、私はそれに従うまでです。それに一体、何の間違いがありますかな?」
「何だと……!?」

 一号が握り締めた拳からはメリメリと鈍い音が聞こえて、それだけでも並の怪人を震えさせるような闘志を放っているが、アクマロは微塵にも揺れる気配を見せない。

「もういい、黙れアクマロ」

 しかし一号が放つオーラは、シンケンブルーを奮い立たせる力となった。
 あの会場で加頭順に対して啖呵を切った男が隣にいるのだから、足枷にならないよう戦わなければならない。その意思はやがて、全ての人々を救うきっかけになるはずだから。

「邪魔をするなら、突破するだけだ!」
「フン、望むところです! 相手になって差し上げましょう!」

 シンケンブルーの呼吸は徐々に荒くなっていくが、それでもシンケンマルを握る力だけは緩めない。
 目の前にいる外道達をこの手で斬るために、彼は一号と共に走り出した。





 目の前にいるのは、尊敬する人から全ての尊厳を奪い取った憎むべき相手。だから、この手で何としてでも叩き潰さなければならない。
 アインハルトはスバルを何とかして元に戻すため、ノーザに拳を振るい続けるが全く当たらない。それどころか魔女は涼しげに笑いながら攻撃をかわして、アインハルトにダメージを与えていた。
 数時間前、ズ・ゴオマ・グやスバルに負わされたダメージが完全に癒えてないまま次の戦いを強いられ、消耗した状態とはいえ覇王断空拳を受け止めるような相手と戦わされる。ゴオマの時とは違って仲間がいるが、今度は更に状況が悪くなっているように思えた。

283変身超人大戦・イナクナリナサイ  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:17:35 ID:CJ6NlSl.0
 一号とシンケンブルーはアクマロという怪物を相手にしていて、なのはとキュアサンシャインはまどかを助けようとしているがスバルの猛攻がそれを許さない。
 誰の助けも期待できない状況だが、それでもアインハルトは諦めずに痛む身体に鞭を打って戦っていた。

「あらあら、弱いわね……そんなんじゃ、覇王の名が泣くわよ?」
「黙りなさい!」

 しかし現実はあまりにも残酷で、アインハルトの願いを悉く裏切っている。
 疾風の速度で拳を振るうがノーザは涼しい表情でそれを受け止めて、逆に脇腹に蹴りを叩き込んだ。その衝撃によって身体の軋む音が響いて、アインハルトは数メートルほど吹き飛んでしまう。度重なる痛みによって意識が飛びそうになるが、その精神力で何とか立ち上がった。
 徐々に呼吸が荒くなりながらも地面を踏みしめ、嘲笑うノーザを睨み付ける。

「あなた、スバルを元に戻したいんだっけ」
「なっ……!?」
「あんな戦う以外に能がない機械を取り戻したいなんて、物好きね」

 ノーザが一体何を言っているのか、アインハルトには理解できなかった。

「何を言ってるんですか……?」
「あなたは物好きって言ったのが聞こえなかったの? それに、あれは単なる冷酷な戦闘マシーンでしかないって事も」
「冷酷な戦闘マシーン……!?」

 しかし次の瞬間、アインハルトの怒りが一気に燃え上がっていく。
 もしかしたら、ノーザがスバルを操っていたのには何か理由があるのかもしれない。アインハルトはほんの少しだけ、そんな望みを持っていた。許せるわけはないが、もしかしたらノーザの凶行を話し合うことで、止めることができるかもしれないと思っていた。
 だがノーザにそんな思いなど微塵もない。この魔女にあるのは底知れぬ悪意と、平気で人々を見下せるような冷酷さだけしかなかった。

「ふざけるのも、いい加減にしてください!」

 それがアインハルトには我慢できず、感情のままに両足で地面を蹴って疾走する。
 身を低くしながら瞬時に距離を詰めて胴体を目掛けてストレートを繰り出すが、ノーザは軽々と身を翻したことで掠りもしなかった。その瞬間、致命的な死角となった右側から衝撃が走って、またしても吹き飛ばされる。
 アインハルトは短い悲鳴が喉から漏らしながら地面に衝突して倒れるが、駆けつけたなのはに支えられた。

「なのはさん、ありがとうございます!」
「アインハルトさん、無理をしないでください!」
「大丈夫です、この位……ッ!」

 口から微かに流れ出る血を拭いながら、震える足に力を込めてゆっくりと立ち上がってノーザを睨む。しかし肝心のノーザはアインハルトなどまるで歯牙にもかけていないように天を見上げていた。
 アインハルトもまたそちらに目を向けると、そこにはソレワターセの触手によって捕らえられたまどかが、腹からの大量出血によって顔面が青白くなっているのが見える。
 やがてソレワターセの触手はまどかの首にも絡み、そのまま勢いよく締め付けた。

「うう゛っ……!」
「やめなさい!」

 そしてまどかの口から苦しそうな呻き声が低音楽器のように発せられるのを見て、キュアサンシャインは跳躍する。しかしそんな彼女の足にソレワターセの触手は絡みついて、そのまま一気に遠くの地面へと叩き付けた。
 キュアサンシャインの悲鳴が聞こえた瞬間、アインハルトはこれから起こる最悪の未来を予感して全身に悪寒が走る。そして同時に思考する暇もなくまどかを助けようと動くが、その前にノーザが立ちはだかった。
 その冷たい瞳は愉悦に染まっていて、思わず吐き気を催してしまう。しかしその感情は、一瞬で塗り替えられることを知らなかった。

「これから始まるビッグイベントを、思いっきり楽しみなさい」

 ぱちん、とノーザは指を奇術師のように軽く鳴らす。その音自体はまるで大したことはなかったが、死刑宣告という意味を持っていたことに気付いた者はどれだけいたかはわからない。
 まどかの首を絞めているソレワターセの触手は急激に肥大化し、そのまま鈍い音を響かせながら頭部と胴体を強制的に分離させて、真っ赤な液体を宙にばらまかせていった。

284変身超人大戦・イナクナリナサイ  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:20:05 ID:CJ6NlSl.0

「あ、あ……?」

 一体何が起こったのか理解できず、アインハルトは呆然と口を開けている。彼女の瞳は、まどかの頭部が回転しながら落下していくのを捉えていた。すると、アインハルトの脳裏は加頭順によって見せしめにされた男達の姿が、一気に蘇っていく。
 しかしそれに対するリアクションを取る暇もなく、首から上を失ったまどかの肉体は破壊された。
 ソレワターセの触手はまどかの両腕を勢いよく引っ張ったことで、溢れ出る血によって汚れた胸部はメキメキと木が折れるような音を鳴らして、制服もろとも真っ二つに裂かれていく。脊髄と胸骨を砕いて、筋肉を次々と露出させながら鮮血が飛び散り、体内にあった臓器は零れ落ちた。そしていよいよ崩壊は下半身にまで到達して大小二つの腸や膀胱、そして子宮までもを無慈悲に引き千切った後、排泄物が血と混ざりながら降り注いでいく。
 今のまどかに……否、鹿目まどかだった肉塊と頭部に、ソレワターセの触手が飲み込むように絡みついた。そして大量の骨が砕かれるような甲高い響きと、肉が磨り潰されるような湿り気のある音が聞こえる。ソレワターセの触手が蠢く度に、生理的な嫌悪感を与えるような音は強くなって、知らず知らずの内にアインハルトは震えていた。
 赤く濡れたソレワターセの触手はスバルの背中に戻るも、空から落ちていったはずの頭部や高く掲げられた肉体は一片も残っていない。

「まどか、さん――?」

 三秒に届くかどうかわからない全ての出来事を目の当たりにしてしまったアインハルトの脳は、思考をする暇もなく結論を導き出した。
 鹿目まどかは跡形もなく、スバル・ナカジマに喰われてしまったと。
 あまりの出来事を前にまともな言葉も出せず、ただ呆然と立ちつくすしかアインハルトはできない。全身に伝わる激痛も、この時ばかりは意識の中になかった。
 されど、戦いはまだ終わったわけではなく、今のアインハルトは致命的な隙を晒していた。それを全く考えていなかった彼女の全身に、突如として凄まじい悪寒が走る。
 まどかを一欠片も残さず飲み込んだスバルが、金色の瞳をアインハルトに向けてきたのだ。その異様な輝きと目があって、次に喰われるのは自分だと反射的に予知する。
 まどかのように、五体がバラバラにされる光景が脳裏に映った。

「ひっ……!」

 悲鳴を漏らしたアインハルトの表情は恐怖に歪み、ほんの少しだけ後退る。その際に足元を滑らせて尻餅をついてしまった。
 迫り来るスバルに凝視され、アインハルトは全身から冷や汗を流してしまう。今のスバルがまるでスバルの皮を被った全く別の怪物のように見えて、震えることしかできない。
 そこから後退する暇すら与えないとでも言うかのように、凄まじい速度でスバルは突貫し始める。その最中に握られていく鋼の拳が、今のアインハルトにはまるで罪人を裁く断頭台のように見えた。
 スバルの右手が振り下ろされていくのを前にして、アインハルトは反射的に目を閉じる。せめて苦しまないように死ねることを強く願いながら。

「アインハルトさん、危ないっ!」
「にゃー! にゃー!」

 目の前が黒く染まったのと同時になのはやアスティオンの叫び声が聞こえるが、恐怖に捕らわれたアインハルトは何もしなかった。
 その刹那、肉が潰れるような耳障りな音が鼓膜に響いて、頬に熱を帯びた液体が跳ねるのを感じる。そして生臭い鉄の臭いが嗅覚を刺激したので、血が流れたのだと気づいた。
 スバルに殴られて、もう死んだのかと思ったがその割には痛みがまるでない。苦痛を感じる暇もなく死んだのかもしれないが、それも妙だった。

「えっ……?」

 恐る恐る目を開けたアインハルトは見つけてしまった。彼女とスバルの間を割って入るように、両手を広げたなのはが立っているのを。その小さな背中から拳が突き出していて、白いバリアジャケットが赤く染まっていた。

「な、なのは……さん?」

 周りから数え切れないほどの怒声や悲鳴、それに混じった笑い声が嵐のように響く。だがどれもアインハルトの耳には届いておらず、蚊の鳴くような声でなのはを呼ぶしかできなかった。
 アインハルトは震える腕をゆっくりと伸ばすが、届く直前にスバルの拳から毒々しい触手が飛び出て、そのまま一瞬でなのはの身体を飲み込むように絡みつく。
 ソレワターセの触手はまどかの時のように蠢くと、なのはの悲鳴と思われる声がくぐもって聞こえてきた。だがそれもほんの数秒で途切れ、空気を切るような音と共にソレワターセは宿主の中に戻っていく。

285変身超人大戦・イナクナリナサイ  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:20:31 ID:CJ6NlSl.0
 そこにいたはずの高町なのはとレイジングハートはアインハルトの目の前から、いなくなっていた。何処に消えたかなんて考えるまでもない。
 不屈のエース・オブ・エースと呼ばれるはずだった心優しき少女とその相棒である杖は、魔女の悪意によって闇の底に飲み込まれてしまった。
 この時、アインハルト・ストラトスは悲鳴をあげることも思考することもできなかった。憧れの人が憧れの人を殺すという現実を突きつけられて、放心状態となってしまったことによって。それ故に、気づけなかった。
 スバルの瞳が、ほんの一瞬だけ元に戻っていたことを。





 闇の中に沈んでいたスバル・ナカジマの意識は唐突に覚醒していた。
 チャイナ服を着た女の子と戦っていたはずだったのに、気がついたらこの拳はずっと尊敬してきたあの人を貫いていた。
 子供の頃からずっと目標にしてきた最強の魔導師、高町なのはの身体を。

「なのは……さん?」

 そしてスバルの声に対する答えはない。いつの間にかこの全身に生えた奇妙な触手がなのはを容赦なく潰して、彼女の血肉をスバルの中に取り込んでいた。
 彼女の全身を駆け巡る血液が沸騰するように熱くなっていって、身体の奥底から皮膚を突き破るかの如く力が溢れ出てくるのを感じる。しかしそれに苦しむ間もなく、彼女の見る世界は闇に飲み込まれた。
 それからすぐに、スバルが犯した罪の証が聞こえてくる。
 お前は……お前は一体……!? ア……ア、ア、ア……ア……? とても痛い。とても苦しい。とても辛い。何、これ……? スバルさん、もうやめて! 苦しい……! 痛い。嫌だ。スバルさん、どうして……!? 死にたくない! 助けて! 痛い痛い痛いぃぃぃぃぃ!

 やめて……

 脳裏に次々と駆け巡る呪詛と絶望の言葉にスバルは耳を防ぎたくなるが、身体が言うことを聞かないし、スバルを責め立てる言葉が止まることもない。
 あなたは素敵な戦闘マシーンよ。スバルのような素晴らしい殺戮兵器がいてくれるならば、この世に地獄をもたらしてくれるでしょうな。この人殺しの機械人形め、外道と共に地獄へ堕ちろ! キサマはもはや平和の敵だ、俺達仮面ライダーが打ち砕く! 私達プリキュアは、あなたを絶対に許したりしない!

 やめて……お願いだからもうやめて!

 スバルは血を吐く思いで懇願するが、それを聞き入れてくれる者は誰もいなかった。
 こんなのってないよ……私達、スバルさんを元に戻そうとしたのにあんまりだよ! スバルさんには幻滅しました、あなたはただの血に飢えた殺人鬼だったんですね。近寄るんじゃないわよ……あんたなんかとコンビを組まされたなんて、本当最悪だったわ! お前はもう俺の娘なんかじゃねえ、とっとと廃棄所にでも失せろ。父さんと母さんはあなたを受け入れたみたいだけど、私はあなたみたいな獣を許したりしないわ。私を止める言いながら、本当はとんでもない極悪人だったネ! ボゾグ、ボゾグ、ボゾク!

 違う、違う、違う! あたしは、あたしはこんなこと望んでなんか……
 そうだね、スバルが望んでるのはまだこんなものじゃないよね
 ……えっ?

 渦を巻くように世界で暴れる呪いの中から、たった一つだけ優しい声が聞こえてくる。思わずそちらを振り向くと、尊敬している魔導師がいつの間にか立っていた。

 なのは……さん?
 よく来たねスバル。私はね、ずっとあなたを待っていたんだよ

 初めて出会ったあの日から、ずっと忘れられない慈愛に満ちた笑顔を向けてくれる。しかしスバルはそれを見ても違和感しか覚えなかった。
 つい先程、彼女の胸をこの手で貫いたはずなのにどうして生きているのか? さっき見た彼女は子どものように小さかったのに、どうして今はいつもの見慣れた姿なのか? 自分の見ている全ては、ただの幻でしかないのか?

286変身超人大戦・イナクナリナサイ  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:21:22 ID:CJ6NlSl.0
 でも、まだもうちょっとだけ足りないなぁ

 疑問が何一つ払拭されないまま、高町なのははゆっくりと歩み寄ってくる。一歩、また一歩と近づく度に辺りの闇はより濃くなりながら、赤い血が湧き上がっていった。
 凍てつく風が肌に触れて、スバルは思わず身震いする。その震えは寒さだけではなく、地獄のような世界を見せられて生まれた恐怖も含まれていた。そして、周りがこんな世界になっているのにも関わらず、未だに光に満ちた笑顔を浮かべているなのはにも違和感を感じてしまう。
 あの優しくて強いなのはが、まるで絶望と怨恨しか込められていない地獄のような闇を喜んでいると思わざるを得なかった。

 それじゃあ、スバルにいい物をプレゼントしてあげるよ

 なのはの白い両手がゆっくりと伸びて、そのままスバルの頬を撫でる。その指先はひんやりとしていて、まるで暗闇のように一切の暖かさが感じられなかった。十本の指から闇が溢れだしてくる。

 な、なのはさん……!?
 恐がらなくてもいいんだよ。大丈夫……スバルには私のとっておきを教えてあげるから

 幼子をあやす母親のように穏やかな声だったが、スバルは全く安堵することができない。この暗闇が全てを奪っていくようにも思えて、むしろ怖くなってきた。後ろに下がろうとしても、鎖で縛られたかのように足が動かない。
 泥のように粘り気のある闇はスバルの皮膚に溶け込んでいき、そこから血管や人工骨格を通じて全身を駆け巡っていく。スバルの中を徐々に蹂躙していく漆黒はなのはの身体も飲み込んだ。
 何が起こっているのか微塵も理解できずに瞠目するスバルの前で、なのはだった闇はボコボコと溶岩が流れるような濁った音を鳴らしながら、形を変えていく。気が付いた時には、スバルの頬を触れていた闇はスバルそのものとなっていた。まるで、鏡に映ったかのようにその姿には一片の違いもない。
 唯一違うと言うならば、目の前に立つもう一人のスバルが笑っていたことだけ。それもなのはとは違って、酷く冷酷な雰囲気を放つ笑みだった。

 じゃあね、本物のあたし。言っておくけど、なのはさん達を殺したからって終わらないよ!
 えっ!?
 全てはノーザ様のために……さっき、あなた自身が言ったじゃない!

 その言葉と共に、もう一人のスバルの背後から闇が勢い良く盛り上がっていって、飛沫を上げながら波のように押し寄せてくる。スバルはそれを前に抗うことも悲鳴をあげることもできず、その意識と身体はソレワターセの生み出す暗闇の中へと飲み込まれていった。

 これから、あなたの身体でいっぱい……楽しんでくるから!

 そして気付く。目の前にいるスバルの姿をしたソレワターセは、この身体で大勢の人を殺そうとしていると。この身体を乗っ取ってもう四人も殺したように。
 スバルは抗おうとするが、流れる闇の勢いを前にしてはまるで意味を成さなかった。

 やめてええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!

 そんな彼女の叫びも溢れ出る闇に呆気なく飲み込まれてしまい、誰にも届かない。同じように、スバルを救ってくれる者は誰もいない。
 ソレワターセは高町なのはの存在によってスバル・ナカジマが元に戻る可能性を減らす為、絶望と罪を突き付けた。その結果、誰かを傷つけることを好まない性格であるスバルは呆気なく闇に飲み込まれてしまう。自分の身体が自分の物でなくなり、そして人を殺めることから生まれる絶望は計り知れない。
 しかしソレワターセにとってそれはどうでもよかった。スバルが抱く絶望など、ノーザの願いを叶えるために、破壊と絶望の祭りを開くエネルギーに過ぎないのだから。





 ソレワターセによって遠くに弾き飛ばされ、その際に味わった痛みによってキュアサンシャインは動くことができず、その僅かな時間の間に悲劇は起こった。
 鹿目まどかはクモジャキー達のように首を飛ばされただけじゃなく、身体を真っ二つにされた挙げ句にソレワターセに吸収された。その次の瞬間には、ショックで動けなくなったアインハルト・ストラトスを庇った高町なのはが胸を貫かれて、まどかと同じように飲み込まれてしまう。
 一分にも満たない惨劇を目撃したキュアサンシャインは絶望し、無力感が胸中に広がっていった。プリキュアでありながら、共に戦う仲間達を救うことができずに犠牲にされたショックは大きい。
 しかし涙を流して悲しみに沈もうとした直前、ソレワターセに支配されたスバルの手がアインハルトに伸びていくのを見て、キュアサンシャインの意識は一気に覚醒した。

「アインハルトッ!」

 彼女は両足を蹴って勢いよく疾走しながら両手に力を込めて、闇を照らす輝きを放つ。一瞬の内に二人との距離は迫ってから、スバルが反応する前にキュアサンシャインは叫んだ。

287変身超人大戦・イナクナリナサイ  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:22:21 ID:CJ6NlSl.0

「サンシャイン・フラアアアアァァァァッシュ!」

 掌から解き放った光線はアインハルトに意識を集中させていたスバルを飲み込み、容赦なく吹き飛ばす。確かな手ごたえを感じるが、今はスバルに振り向いている場合ではない。
 すぐさま、地面にへたり込んでいるアインハルトの元へ駆け寄り、その身体とアスティオンを抱えて数メートル離れた先に跳ぶ。
 両足が地面に付いた頃に覗き込んだアインハルトの瞳はとても空虚になっていて、涙が滂沱と流れていた。

「アインハルト、しっかりして!」
「な、なのはさんが……まどかさんが……なのはさんが……まどかさんが……なのはさんが……まどかさんが……私のせいで、なのはさんとまどかさんが……!」
「アインハルトッ!」

 キュアサンシャインはアインハルトの肩を掴んで揺さぶりながら呼びかけるが、返ってくるのは蚊の鳴くような呟きだけ。先程のスバルのように、明らかに混乱していた。
 理由なんて考えるまでもない。まどかとなのはが目の前で立て続けに殺されては、誰だってショックを受けてしまう。いくら歴史に名を残す覇王の血を受け継いでいるからといって、実際はまだ十一歳の少女でしかないアインハルトも例外ではなかった。
 彼女のような心優しい人間が、自分のせいで誰かが犠牲になったらどうなるか……辛いに決まっている。でも、アインハルトを守るために動いたなのはを責めることはできなかった。

「私のせいで、私のせいで、私のせいで……嫌あああああああああぁぁぁぁぁ! ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、なのはさん、まどかさん、ヴィヴィオさん、リオさん、コロナさん、フェイトさん、スバルさん、ティアナさん、ユーノさん、ノーヴェさん、私が悪いんです、私が悪いんです、私が、私が、私が、私が……!」
「にゃー! にゃー!」
「アインハルト、私は……!」

 アスティオンと共にアインハルトを何とかして慰めたかったが、その為の言葉がキュアサンシャインには見つからない。目の前で大切な人を失った悲しみを癒すなんて、簡単にできるわけがないからだ。
 彼女の為に一体何ができるのか? キュアサンシャインにはまるで思いつかなかった。

「アハハハハハッ! 凄い、凄いじゃないスバル! 流石は私のしもべよ! ここまで働いてくれるなんて最高だわ!」

 しかしそんな彼女を嘲笑い、この惨劇をまるで祭りのように笑うとてつもなく不愉快な声が響く。
 振り向いた先では、人々の不幸を喜ぶあの邪悪な魔女が腹の底から笑っている姿が見えた。しかもこれまで見たどんな笑みよりも、愉悦の色が濃さを増している。

「ねえスバル、あなたの力はこの程度じゃないはずよ! まだもっと凄いことをしてくれるでしょ!? 早くそれを私に見せてちょうだい!」
「……ッ!」

 その笑い声を耳にした途端、キュアサンシャインの全身が怒りで震えた。
 まどかやなのはを犠牲にしただけじゃなく、アインハルトをここまで追い詰めた。それをノーザは『この程度』と吐き捨てている。
 ノーザはただ、自分自身がが満足したいという理由だけでみんなを絶望のどん底に叩き落して、破壊の限りを尽くした。

「許さない……あなただけは絶対に許さない……!」

 あまりにも身勝手で邪悪なノーザを前にして、この時ばかりは心の底から憎しみが湧き上がっていく。かつてデューンとの最終決戦において、キュアブロッサムとなった花咲つぼみは憎しみで戦ってはいけないと教えられた。しかし今のノーザは、そんな気持ちを忘れさせてしまいそうなほどに、憎い相手に見える。
 ここでノーザを倒さなければもっと多くの不幸が生まれるし、何よりも自分自身を許すことができなかった。キュアサンシャインは拳を思いっきり握りながら走り出そうとするが、その足は止められてしまう。
 思わず振り向くと、右足にアスティオンがしがみついていた。

「ティオ……?」
「にゃー! にゃー! にゃー!」
「お願い、その手を離して! 私は……!」
「にゃー! にゃー! にゃー! にゃー! にゃー!」

288変身超人大戦・イナクナリナサイ  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:23:15 ID:CJ6NlSl.0
 アスティオンは必死に首を横に振りながら悲しそうな声で鳴いているのを見て、怒りと憎しみに染まっていたキュアサンシャインの思考は一気に晴れる。そして、言葉を言えないアスティオンの意図を察した。
 このまま行っては負けてしまうだけで、犠牲者がもう一人増えてしまう。そしてアインハルトを余計に悲しませることになると、悲しみに潤んだ瞳が告げていた。
 アスティオンと目を合わせたキュアサンシャインは何も言うことができない。
 一号とシンケンブルーがアクマロを相手に苦戦している状況で、もしもここでノーザの元に飛び込んだら一人で戦うことになり、そこからノーザやスバルに負けてしまったら今度こそアインハルトは一人になってしまう。そうなっては、誰もアインハルトを助けることはできない。
 アスティオンの懇願を前に、キュアサンシャインは何もできずに止まってしまう。そんな迷いの後、ガシャリと何かが駆動するような音が数回だけ響いた。

『Starlight Breaker』

 そして次に聞こえてきたのが、なのはと一緒に消えてしまったレイジングハートの声。それに思わず希望を感じてキュアサンシャインは振り向いたが、そこにいるのはスバルとノーザだけ。
 しかし二人の周囲はこれまでとは違って、夜空に浮かぶ星々のように煌めく小さな桃色の光で満ちていた。その数は百を軽く超えている。

「えっ……?」

 だがそれらが綺麗な光だと思う暇もなく、一瞬の内に黒く染まった。そして光は何もない場所から次々と生まれながらスバルの頭上に集まっていき、稲妻を発しながら大きな球体へと変わっていく。
 それに伴うかのように戦いで砕けた大地が揺れて、粉塵がゆっくりと舞い上がりながら黒い塊は更に大きくなる。ようやく昇り始めた朝日の光を遮り、世界を再び夜にしてしまいそうな闇で満ちていた。
 それを生み出しているスバル本人がゆっくりと腰を落とすのを見て、キュアサンシャインの全身が警鐘を鳴らす。そして、これからスバルはとてつもなく恐ろしい一撃を放とうとしていると、本能で確信した。

「アインハルトにティオ、私に掴まって!」

 それからキュアサンシャインが取る行動は早かった。彼女は急いでアインハルトとアスティオン、そして二つのデイバッグを手にとって少しでも遠くに離れようと動く。
 その際に、一号とシンケンブルーの方に一瞬だけ振り向いて叫んだ。

「一号にシンケンブルー! アインハルト達は私が守りますから、ここから離れてください!」

 言い残せたのはそんなぞんざいな言葉だけで、返事を聞く暇もない。二人との間に開いた距離は、残された時間で行くには遠かった。無責任だと知っているが、そうしなければアインハルト達を助けられない。
 ノーザとスバルの狙いはここにいる特定の誰かではなく、このエリア全て。例え防御をしたとしても、これから来る技はそれを軽く吹き飛ばす位にまで凄まじいと、キュアサンシャインは無意識の内に確信していた。
 せめて今は、アインハルトを助ける可能性を少しでも上げなければならない。それだけがキュアサンシャインの思考を満たしていた。





 シンケンマルを何度も振りかぶるが、その度にアクマロの持つ削身断頭笏で呆気なく弾かれてしまい、そこから胸を一閃される。蹌踉めいた間に、アクマロはナナシ連中の刀をあろうことか投げつけて、刃先が傷口の開いている脇腹を掠った。
 シンケンブルーはそれに苦しむ暇もなく、アクマロが空いた方の手から電撃を放つ。凄まじい音と共に、シンケンブルーに襲いかかった。

「がああああああぁぁぁぁぁぁぁっ……!」

 耳にするのも辛い断末魔の叫びが、マスクの下から発せられる。アクマロの雷はスーツの傷口から進入し、中にいる池波流ノ介を苦しめるように暴れ回った。
 電撃はすぐに止むが、それを合図とするかのようにシンケンブルーは膝を落として倒れていく。その身体が地面を横たわった頃には、度重なるダメージによって変身が解除されていた。
 夥しい量の血が十蔵から傷つけられた脇腹より流れ、地面を赤く染める。何とかして顔を上げると、目の前にT−2サイクロンメモリが落ちているのを見た。思わず流ノ介はそれを右手に取る。
 痛みでまともに身体が動かないが、それでもゆっくりと立ち上がっていく流ノ介を一号は支えた。

「流ノ介、大丈夫か!?」
「ああ……すまない、本郷。私なら大丈夫だ……!」

 失血によって朦朧とする意識を保ちながら、流ノ介は右手で握ったサイクロンメモリを痛恨するように見つめる。

289変身超人大戦・イナクナリナサイ  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:24:35 ID:CJ6NlSl.0
 鹿目まどかと高町なのはを見殺しにしてしまっただけでなく、こうしてアクマロに遊ばれてしまった。情けなさのあまりに泣きたいくらいだったが、そんなことなど許されるわけがない。
 せめて今はアクマロだけでも倒したかったが、現実はどこまでも残酷でまともに攻撃を当てられもしなかった。

「……どうやら、ここが潮時のようですな」

 そして肝心のアクマロはこちらを見向きもせずにそう呟く。
 流ノ介も振り向いてみると、その先ではあのスバル・ナカジマという少女の頭上で黒い球がどんどん肥大化しているのが見えた。それはヤバいと、一目見ただけで本能が察している。

「巻き添えを食らうのはごめんですので、ほんの少しだけ失礼させて頂きます」

 そうやって捨て台詞だけを残して、アクマロはここから遠ざかっていった。流ノ介はアクマロを追おうとするも、痛みが身体の動きを阻害する。

「スターライトォォォォォォォォォォォォォォ――!」
「流ノ介、俺にしっかり掴まっていろ!」

 スバルの叫びを掻き消すかのように力強い声を発しながら、一号は流ノ介を背負って走り出した。その背中を見て、流ノ介は今の自分がただの足手纏いでしかないことを察する。
 恐らく一号はこんな死にかけになった自分を助けるに違いない。その気持ちは実に嬉しいが、その為に彼が犠牲になるのは耐えられなかった。背負ったままでは、スバルの攻撃を避けられるかわからない。それで二人とも死ぬことになっては何の意味もなかった。
 そして侍になったからには誰かに守られるのではなく、自らの命を犠牲にしてでも誰かを守らなければならない。だからこそ、流ノ介はサイクロンメモリのスイッチに指を触れた。

「すまない……本郷!」
『Cyclone』

 野太い電子音声を耳にしながら、まどかのようにガイアメモリを首輪のコネクトに差し込む。あの加頭順が持っていたから信用できない代物だが、今は躊躇っている場合ではない。
 首輪から風の記憶が流れるのを感じながら、池波流ノ介はサイクロン・ドーパントに変身していく。彼は全身から突風を発して、振り向いてきた一号を吹き飛ばした。

「流ノ介、何を――!」
「――ブレイカアアアアァァァァァァァァァァ!」

 風に流されて遠ざかっていく一号の疑問はスバルの叫びに遮られ、間髪入れずに地面が砕けるような轟音が背後より響く。そのままサイクロン・ドーパントの肉体に灼熱が走り、視界は漆黒に包まれた。
 サイクロン・ドーパントは……否、池波流ノ介は自分の命が燃え尽きていくのを感じるが、不思議と痛みや苦しみはなかった。彼の胸中にあるのは忠義を誓った志葉家の当主と自分と同じ家臣達に、ここで出会った仲間達の顔。

(本郷、すまない……あなたを苦しめることになってしまって。だが、どうかいつきとアインハルトを助けてやってくれ。この不甲斐ない私の変わりに……)

 誰かを守るためなら自己犠牲を決して厭わない高潔たる精神を持つ男なら、自分が死ぬことを苦しむかもしれない。だが、それでも全ての人々を守れる本郷猛に託したかった。
 家臣でありながら主君の苦悩を見抜けなかった愚かな自分よりも、ずっと強いのだから。

(源太、お前はここで死ぬな! 私が亡き後、殿を支えられるのはお前だ! どうか殿を守り、こんな下らない戦いに巻き込まれた皆を救ってくれ!)

 流ノ介は次に、お調子者だが侍としてのこれまで多くの人々を助けてきた寿司屋、梅盛源太の顔を思い浮かべる。何処か間の抜けている彼だが、それでも人を助けたいという思いは本物だ。
 だから源太には生きて、自分の分までシンケンジャーを支えて欲しかった。

(殿……私はあなたを信じております。どうか外道になど落ちず、皆を救うために戦ってください! 私も源太もそれを望んでおります! 我々シンケンジャーは、あなたを信じて今まで戦ってきたのですから!)

 そして最後に、長きに渡って忠誠を誓ってきた志葉家の当主たる男、志葉丈瑠に遺言を残す。いくら彼が殺し合いに乗る可能性があったとしても、それでも流ノ介は信じていたかった。
 これは理屈などではなく、これまで今まで共に戦ってきたことで培われた信頼から生まれる思い。何故なら、丈瑠はこれまでシンケンジャーのみんなを何度だって支えてきたのだから、きっと正しき道を歩いてくれるはずだと、流ノ介は信じている。

(殿……!)

 だから、最後の最後まで志葉丈瑠の無事を祈ることを池波流ノ介は一秒たりとも止めなかった。
 例えその肉体が闇に飲み尽くされ、命が消え果てたとしても。

290変身超人大戦・イナクナリナサイ  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:27:02 ID:CJ6NlSl.0





 暗黒色のエネルギーの結晶は池波流ノ介を跡形もなく消滅させても尚、その暴走を止めることはなかった。ドーパントの強靱たる肉体をまるで紙屑のように蹂躙し尽くした後、今度はその奥にそびえ立つホテルを標的に進撃を続ける。
 ようやく登り始めた朝日や次第に薄くなっていく星達の輝きを塗り潰すような闇は、十階以上はあるであろうホテルを一瞬で消し去り、そこから荒れ狂う烈風を無差別に拡散させながら、大地にあるもの全てを破壊した。そのまま北の海を突き進んで、地図に描かれた範囲を遥かに超えた範囲に激突し、漆黒の闇が勢いよく爆発する。
 それは本来ならば、スバル・ナカジマが会得するはずのない高町なのはが生み出した集束魔法だった。なのは自身の魔力と辺り一帯に散らばった魔力をレイジングハートと共に集めた結果、ようやく使う事が出来る星の光。
 なのはが使う最高の切り札である『スターライト・ブレイカー』は、今こうして未来の愛弟子であるスバルに受け継がれた。
 しかしここまで大規模な集束魔法の修業を行っていないスバルが会得できた理由はたった一つ。ソレワターセがなのはの肉体とレイジングハートを吸収した際に、その膨大なる魔力と潜在能力全てを一気に我が物とした。そのままカートリッジの弾薬7本を消費したことで、スバルはスターライト・ブレイカーを放って複数のエリアを吹き飛ばすことに成功する。
 本来ならばそれほどに大規模な破壊をもたらす技は、主催者の用意した首輪の効力によって威力をある程度抑えられていた。それにも関わらずしてスバルのスターライト・ブレイカーが制限を受けていないなのはを上回る力を発揮できたのは、幾つもの力が融合したため。
 ソレワターセはスバルの持つ魔力となのはの魔力を混ぜ合わせて一つにして、より強い魔力になったところでゴオマの宿らせていたアマダムとダグバのベルトの欠片が持つ力が合わさった。これだけでもエリアの大半を吹き飛ばすのに充分な威力を手に入れたが、それら全てを遙かに上回る力をソレワターセは手に入れている。
 ノーザによって戦うだけの人形にされたスバルによる三人目の犠牲者、鹿目まどかの存在だった。
 まどかとは本来、ただの女子中学生に過ぎない。しかし暁美ほむらが何度も時間逆行を繰り返した結果、彼女の中には宇宙一つを作り替えてしまう程の凄まじさを持つ、途方もない量の因果が蓄積していた。
 あまりにも抽象的で信じがたい規模のエネルギーだが、それすらもソレワターセは決して見逃すことはせずにスターライト・ブレイカーの力として変換させていた。故に、首輪の制限下にあっても幾つものエリアを一瞬で消し飛ばしている。
 本来ならば人々を守るための希望であった星の光と全ての魔法少女達を絶望から救い出すために使われたはずの因果は、こうして魔女の手によって奪われた。
 数多もの悲劇を生み出すであろう、大量殺戮兵器へとその姿を変えて。





 水平線の彼方が爆発するのを見届けた仮面ライダー一号の仮面の下で、本郷猛は愕然と立ち尽くしていた。
 鹿目まどかや高町なのはだけでなく、池波流ノ介までも見殺しにしてしまう。助けるどころか逆に助けられてしまうなんて、あってはならなかった。
 スターライト・ブレイカーによって抉れた地面には何も残っていない。数階建てのホテルもあれだけ生えていた木々も無くなり、荒れ果てた荒野に変わり果てていた。

「くそっ……!」

 しかしそんな惨状など一号の関心になく、押し潰されそうな程の後悔が胸中を満たしている。こうなることがわかっていれば、最初から無理矢理にでもまどか達を逃がすべきだった。スバルを元に戻せるという希望に釣られて、三人に無理を強いたのがそもそもの間違いだと気付かなければならなかったが、もう遅い。
 全ては絶望を生み出すために張り巡らされたノーザの罠。無様にその餌食となって始めから負けが決まっていた賭けに乗ってしまい、こんな悲劇を生み出してしまった。
 それでも一号に絶望することは許されない。せめて、まだ生きているキュアサンシャインとアインハルト・ストラトスの二人を守り抜くまでは、死ぬわけにはいかなかった。

「ハハハハハハハハハハハハハッ! やっぱりあなたは凄いわ! それでこそ、私のしもべにした甲斐があったものね!」

 しかしこの世の終わりとも呼ぶに相応しい景色を前にして、あまりにも耳障りな哄笑が確かに聞こえてくる。ノーザの愉悦はいよいよ抑えられなくなったらしい。

291変身超人大戦・イナクナリナサイ  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:29:35 ID:CJ6NlSl.0

「全てはノーザ様のために」
「そうよ! あなたの全ては私のためだけにあるのよ! 私が望む暗黒の世界を作る……それがスバルの存在理由だわ!」

 あれだけの技を放った反動で息を切らしながらも淡々に伝えるスバルと、全身を仰け反らせて両腕を広げながら笑い続けるノーザの姿はあまりにも対照的だった。
 そして一号はそんなノーザを前に、あまりにも狂っていると思うしかなかった。

「キサマ……これだけの犠牲を出しておきながら、まだ足りないと言うのか!?」
「当たり前じゃない! 全然足りるわけないでしょう!?」

 問い質してきた一号に振り向いたノーザの笑顔は、悪魔のようにおぞましい。それだけでも誰かに絶望を齎すには充分だったが、一号は決して怖じ気づくことはせずに視線を向けた。

「ノーザ……一体何が望みだ、答えろ!」
「絶望、悲しみ、悲鳴、嘆き、不幸……それが私の望みよ!」

 常軌を逸した哄笑と共にノーザは断言し続ける。

「一切の希望も光も差し込まない暗黒の世界……この戦いはその為の準備よ! だから私は加頭順に感謝すらしているわ! だって私達をこんなにも素敵なお祭りに招待してくれたのだから!」

 そしてノーザは一息ついて、遙か彼方の大空を見上げながら叫んだ。

「全ては私達を蘇らせた深海の闇、ボトム様のため! さあ、もっとこのお祭りで踊りましょう! そしてもっともっと多くの悲しみを生み出しましょう! この世界をもっと、絶望に染めてちょうだい!」





「素晴らしい……何と、素晴らしいのでしょう!」

 そして惨劇を前にした筋殻アクマロもまた、逸る感情を抑えることができずに狂喜乱舞している。もしもその醜悪な表情が動いたならば、その笑い声に伴って大きく歪んでいたはずだった。
 ノーザに操られたスバルが人を殺してから腹の底に押さえ込んでいた邪念を解き放ったことで、例えようのない開放感をアクマロは感じる。
 そのまま彼は一号を嘲笑っているノーザに目を向けた。

(流石ですノーザさん、やはりあんたさんに付いて正解でしたな! まさかここまでの地獄を生み出してくれるとは!)

 この催しの主催者たる加頭順や、数時間前に戦っていたコウモリ男に対して啖呵を切った男の信念や矜持をこうも簡単に踏みにじっただけでなく、地獄絵図とも呼べる破壊兵器を生み出した。猛の精神が潰れなかったのは少しだけ予想外だが、考えてみればむしろそうでなくては面白くない。簡単に折れない輩だからこそ、追い詰める楽しみもある。
 ざまあみろという罵りの言葉を使うのは、こういう時こそ相応しいとアクマロは思う。
 誰かを守るなどと嘯くような外道衆に背く愚か者には丁度いい罰だ。シンケンブルーが跡形もなく消えていく光景もそうだが、奴らの盲信していた平和などと言う絵空事が呆気なく崩れ落ちる様というのは、実に心地良い。
 三日三晩、三途の池に浸っていてもこれほどの愉悦は味わえるかどうか。

「一号……っ!」

 しかしその快楽に浸っている暇はもう無い。
 視界の端から掠れるような声と共に、あのキュアサンシャインが立ち上がっているのを見つけたため。その傍らで倒れているアインハルトは気を失っているせいか、既に子供の姿となっていた。
 あの砲撃の後で生きていたのは予想外だったが、それならば自らの手で叩き潰すまで。このまま逃げられてしまうのもそれはそれで面白くない。
 本当ならばここから猛の精神を潰す作業に加わりたかったが、それはノーザとスバルに任せるしかなかった。それにあの小娘はここまでの悲劇を前にしても、その瞳に希望を宿している。それをこの手で絶望に変えてしまうのもまた一興。
 削身断頭笏の刃先で左手を軽く叩きながら、更なる絶望を生み出すためにアクマロは足を進めた。

292変身超人大戦・最後の乱入者  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:30:27 ID:CJ6NlSl.0





 スバルの手から放たれた不気味な黒い闇によってホテルは消し飛び、周囲があれ晴れた荒野に変わり果てている。
 その光景にキュアサンシャインは見覚えがあった。デューンやブラックホールによって滅びそうになった世界にとてもよく似ている。
 つまり今のスバルはソレワターセによって、世界を滅ぼすほどの力を手に入れてしまったのだ。そんな強大な相手を前にしたキュアサンシャインは一瞬だけ恐怖を感じるが、すぐに振り払う。

「行かないと……!」

 スターライト・ブレイカーの余波に吹き飛ばされてから地面に叩きつけられ、その痛みとこれまでのダメージで全身に痛みが走るが、彼女はそれに耐えて立ち上がった。
 池波流ノ介が犠牲になって悲しいはずなのに、仮面ライダー一号はそれを表に出さずにノーザやスバルと戦っている。だから自分だけがここで倒れたりすることは絶対に許されなかった。
 ふと、キュアサンシャインは気を失って倒れているアインハルトとアスティオンに目を向ける。アスティオンの意思を蔑ろにするのは嫌だったが、このままでは一号が危なかった。
 心の中で彼女達にごめんと謝ったキュアサンシャインは前を向こうとするが、その途端に足音が聞こえてくる。

「おや、何処に行かれようと言うのですかな? キュアサンシャイン」

 そして声が聞こえてきたので、キュアサンシャインはそちらに振り向く。
 すると彼女は、ここから数メートルほど離れた場所より筋殻アクマロがゆっくりと近づいてくるのを見た。

「あなたは……アクマロ!」
「まだ我がいるのを忘れるとは、実に無礼ですな」

 その手に握る剣が朝日に照らされて輝く中、アクマロは嘲笑の言葉を漏らす。予期せぬ三人目の敵が再び現れたことによって、キュアサンシャインは反射的に構えた。
 しかしアクマロはそれをまるで気にしないかのように、前を踏み出してくる。

「これより、あんたさんがたには選ばせて差し上げましょう」

 そして饒舌に語りながら、アクマロは更に一歩進んだ。

「あの小娘どものように全身をバラバラにされて血溜まりを生むか」

 剣を見せつけるかのように構えながら、また一歩進む。

「全ての皮膚をゆっくり切り刻まれながら長らく地獄の時を楽しむか」

 もう一歩進んだことで、アクマロの声から感じられる喜悦が更に強くなった。

「それとも、心臓を貫かれて苦しむ暇もなく一瞬で三途の川に落ちるか」

 そう言いながらアクマロは剣の先端をキュアサンシャインに向けて、より一歩進んでくる。

「さあ、どれにいたしましょうか?」

 もしもそれが人の顔だったら、ノーザのように悪意に満ちた笑みで染まっているはずだった。それくらいまでアクマロから放たれる雰囲気はあまりにも不気味で、昔話に出てくる物の怪よりもずっと恐ろしい。
 あまりのプレッシャーを前にキュアサンシャインは額から汗を滲ませるが、それでも押し潰されたりはしなかった。アクマロの目的は自分達を倒して、一号をもっと悲しませて追い詰めること。
 相手は体力を消耗していたとはいえ、一号とシンケンブルーを同時に相手にしても有利に戦えるほどに強い。一人でそんな奴と戦っても勝てる可能性は低すぎたが、逃げることはできなかった。

293変身超人大戦・最後の乱入者  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:34:06 ID:CJ6NlSl.0

「私が望むのは……」
「望むのは?」
「あなた達から、みんなを守ることよ!」

 地を蹴って走り出しながらアクマロとの距離を詰めながら右足を軸にして回転し、キュアサンシャインは鋭い回し蹴りを放つ。アクマロは右手の剣を振るうが、白いロングブーツはそれを瞬時に払いのけた。
 武器同士が激突したような鋭い金属音が響き、衝突の影響で火花すらも飛び散っている。
 煌びやかなリボンが飾られたことで華やかさを演出させるブーツだが、その外見からは想像できないくらいの強度を誇っていた。故に、アクマロの武器だけで斬れることは決してなく、それに守られたしなやかな足も守られている。
 しかし鉄をも超えるブーツの耐久力だけで勝利に繋がるわけがなく、アクマロが後退した隙を突いて反対側の足でキックを放つが、直後に一閃された剣と衝突した。またしても鳴り響く音と共に二人はバックステップを取って、数歩分の距離を取る。
 視線がぶつかり合う中、キュアサンシャインの呼吸は荒くなっていた。それに対してアクマロはあまり戦っていないせいか、体調は万全に見える。
 もっとも、これは当然の結果だった。キュアサンシャインはスバルとの戦いで体力を消耗したのに対して、アクマロはこれまで自身が不利になるような条件で一度も戦っていない。

「クックックック……カッカッカッカッカッカッカッ……!」

 そして体調面での有利を悟ったのか、アクマロの喉から奇妙で乾いた笑い声が響いてくる。

「さぞかし辛いでしょう……さぞかし苦しいでしょう……我はそんなあんたさんの苦しみから解放させて差し上げようと思っているのに、何故そこまで拒みます?」
「例えどれだけ辛くて苦しくても、私はそれに逃げている場合じゃないの!」
「ほう、この催しに優勝してその褒美で皆を三途から蘇らせると……」
「違うわ!」

 アクマロに反抗するかのように首を大きく振りながら、キュアサンシャインは腹の底から叫びながら再び疾走した。

「私はこの世界を照らす太陽となってみんなを助けなければいかないから、絶対に諦めたりはしない!」

 目前にまで近づいたことでアクマロの剣が振り下ろされるが体制を少し右にずらすことで避けて、握り締めた拳を撃ち出す。だがアクマロは横に飛んでその一撃を軽く回避した。
 その姿は視界から消えるが、別にいなくなったわけではない。瞬時に振り向きながら回し蹴りを繰り出して、アクマロの持つ剣を弾き飛ばす。
 空中で数回転した後に音を立てて突き刺さるそれに目を向けず、素早く拳を叩き込もうとしたが、直後にアクマロの左手がキュアサンシャインの首を掴んだ。

「太陽風情が我ら外道を照らすなどとは、何と愚か極まりない思い上がり! 片腹痛いにも程がある!」

 そのまま締め付けられると思ったが、アクマロの瞳からより強い殺意が放たれる。予想外の状況に目を見開いた矢先、キュアサンシャインの全身に稲妻が襲いかかった。

「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 シンケンブルーを苦しめた技によって、今度はキュアサンシャインが凄まじい絶叫をあげる。
 激痛によって視界がはっきりせず、意識が飛びそうになるが必死に耐えた。しかしそれが精一杯で、まともに抵抗することができない。
 苦悶の表情を浮かべた後、その身体は投げ飛ばされて数秒ほど地面を転がる。それでも彼女は顔を上げて、アクマロを睨み付けた。

「実にいい、実に良いですね……輝きに満ちたその面持ち。それでこそ、踏みにじり甲斐があります」

 しかし返ってくるのは舐め回すような吐き気を催す視線と、地の底から響くような冷たい声だけ。

「決めました。あんたさん達の希望とやらを我がじっくりと崩してあげましょう。このまま地獄に落とすのも悪くないですが、それでは些か趣に欠けます……どうか、長く保ってくださいね?」





 何度殴られても立ち上がり、何度蹴られても起きあがる。その度に反撃しようとするが、どれもまともに通らなかった。
 アインハルトの奥義を受け止めるほどの力を持つノーザがいる上に、スターライト・ブレイカーの反動で動きにキレが欠けていてもまだ戦えるスバルも加わっていた。特にスバルは時間の経過と共に体力が元に戻っていくようにも見える。
 一号は装甲に守られた胴体を蹴られて後退した途端、スバルの手から放たれた黒い魔力の球が胸部に激突した。

294変身超人大戦・最後の乱入者  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:35:58 ID:CJ6NlSl.0

「があっ!」

 仮面の下から漏れる悲鳴は爆発音に飲み込まれ、スーツに守られた肉体から大量の血が流れていく。いくらショッカーの技術を結集して生まれた改造人間とはいえ、この戦いで負ったダメージがあまりにも深すぎた。加えて、ノーザもスバルもアクマロも皆、並のBADANの怪人を凌駕する実力者だから、自然に追い込まれていくのは当然の結果。
 それでも一号の闘志は微塵も揺らぐことはなく、痛む身体に鞭を打って立ち上がる。しかし明らかに蹌踉めいていて、いつ崩れてもおかしくなかった。

「一号……大丈夫ですか?」

 そしてそんな彼の肩を支えたのは、キュアサンシャインだった。
 彼女も一号と同じでボロボロになっていて、表情からは酷く疲れ果てた雰囲気が感じられる。多分、変身を維持するのがやっとでとても戦えない身体かもしれないがそれにも関わらずして、僅かに涙を滲ませる瞳からは未だに太陽のような輝きを放っていた。

「ああ、大丈夫だ……!」

 だから一号も彼女に負けないように立ち上がる。
 キュアサンシャインも本当は仲間を立て続けに失ったことで辛いはずなのに、それを表に出そうとしない。恐らく、自分やアインハルトを守るという願いがその身体を動かしているのだ。そんな彼女の思いに答えたいが、その為の方法がまるで思い浮かばない。
 もう、自分達は負けていた。認めるのは絶対に嫌だったが、もう誰がどう見てもそう判断せざるを得ない状況だった。

「お遊びはもう終わりよ」

 そして残酷な現実を突き付けるかのようにノーザは笑いながら近づいてくる。その左に立つアクマロの顔は全く動かないが嘲弄しているのは確実で、ノーザの右に立つスバルは無表情を貫いたまま。

「これ以上いたぶったところで、どうやら変わることはないようですな……まあ、余興にはなりましたな」
「余興だと……!?」
「ええ、あんたさんに残された役割は大人しく地獄に堕ちる……下手に悪あがきをせぬ方が、苦しみませぬぞ?」

 殺された者達の死を嘲笑うアクマロに一号が怒りを覚えるが、憤怒の視線を向けるしかできない。それしかできずに何も変えられない自分自身が情けなかった。
 ここで二人を守るために戦ってもすぐに負けて三人とも殺されるだけだし、逃げだそうにも逃げられるわけがない。今の自分は仮面ライダーなどではなく、ただ殺されるのを待つしかない弱者。

「例えどれだけ追い込まれようとも、俺達はキサマらのような悪には絶対に屈したりしない!」

 しかしだからといって、一号が悪に屈する理由にはならなかった。
 例えどれだけ絶望的な状況でも、それをしては散っていった者達に報いることはできないし、まだどこかにいるはずの仮面ライダーに合わせる顔がない。
 だからこそ、一号は反逆の意志を言葉にして突き付けた。

「そうよ……私だって、例えどんなことがあろうとも絶望したりしない! 最後まで、戦ってみせる……! 仮面ライダーもプリキュアも、それは変わらないわ……!」

 そしてキュアサンシャインもまた、息も絶え絶えになりながらも言葉を紡いでいる。ダメージによって揺れる身体を支え、必死に睨んでいた。
 そんな力強い姿を見て、まさに世界全てを照らす太陽のようだと一号は思う。だからこそ彼女のような希望を潰さないためにも、最後まで戦わなければならなかった。
 一号とキュアサンシャインは同時に構えるが、ノーザ達は特に何も答えずに足を進めている。まるで、お前達にはもう何の興味もないとでも言うかのように。
 両者の間で距離が縮む中、一号はひたすら睨み続けている時だった。



 突如、どこからともなくバイクのエンジン音が響いてくる。それは力強さと同時に、まるで強い風が吹きつけるかのような鋭さも感じられた。
 そして一号はそのエンジン音をよく知っていた。

295変身超人大戦・最後の乱入者  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:36:45 ID:CJ6NlSl.0

「何……?」

 幻聴かと疑ったが、時間の経過と共にエンジン音はどんどん強くなっていく。ノーザ達もそれに気付いたのか、後ろを振り向いた。
 一方で何者かが接近していると察した一号は改造人間の優れた視力で音源である西を凝視すると、一瞬で見つける。
 ここから数キロメートルほど離れた先から、白とワインレッドの二色に彩られたバイクが近づいていた。それは一文字隼人を助けるためにショッカーのアジトへ乗り込んだ際に見つけたバイク、サイクロン号。そしてそのマシンに乗っているのは一号もよく知る仮面ライダーの一人だった。
 スズメバチのような仮面は銀色に輝き、瞳とマフラーは炎のように赤く燃え上がっている。人類が生きる未来のために誕生した惑星開発用改造人間の力を、ドグマ王国を打倒するために使った男が変身する仮面ライダーが近づいていた。

「沖……いや、仮面ライダースーパー1かっ!?」

 一号の疑問に答えるのはサイクロン号のエンジン音だけ。
 今、誰も予想しなかった史上最大のイレギュラーにして、最後の乱入者がこの戦場に現れた。
 その男の名は沖一也。またの名を、仮面ライダースーパー1。





 仮面ライダースーパー1に変身した沖一也はハンドルを握り締めると、機械仕掛けの竜巻は凄まじい唸り声をあげる。秘密結社ショッカーが生み出したエンジン音は、自然に発生するどんな風よりも凄まじくて、どんな頑丈な建築物でも吹き飛ばしかねなかった。
 あの加頭順が何故、仮面ライダー一号が利用していたマシンをわざわざ自分達の近くに配置したのかが気になるが、今はそれを気にしている場合ではない。例え何らかの罠だとしても、恐れていては何も始まらなかった。
 一文字隼人と別れてからホテルを目指して走っていたら、目的地がいきなり巨大な闇に飲み込まれて消滅してしまう。これには流石のスーパー1も驚いたが、それからすぐに一号が二人の少女を守りながら戦っているのを見つけた。
 敵は三人。敵は魔女が着るようなローブを纏った大柄の女。ドグマやドーパントのような剣を構える怪人。全身より植物の根っこのような触手が生えて、皮膚がブロンズ色に染まっている青髪の少女。
 皆、只者ではない雰囲気を放っていたが、それを真っ向から受けたスーパー1は怯むどころか闘志を漲らせていた。

「スーパー1……ですと? 今更一人増えたところで、何が変わるというのですかな!?」

 怪人はこちらを侮蔑するような声と共に左手を突き出して、そこから大量の稲妻を発する。しかしスーパー1はサイクロン号のハンドルをより強く捻ってマシンを加速させながら、横に曲がって回避した。
 それだけで終わらず雷は次々と襲いかかるが、彼は決して焦っていない。サイクロン号の凄まじいスペックとそれを巧みに操るスーパー1の運転技術さえあれば、例え自然現象が相手でも回避は充分に可能だった。

「チェ――ンジ! 冷熱ハンド! 超高温火炎!」

 そしてハンドルを操る両腕に力を込めながら叫ぶ。すると、二本の腕が音を立てながら緑色に変わっていった。標準装備のスーパーハンドから、冷熱ハンドへと。
 そのまま右腕の熱ハンドを怪人に向けると、轟音と共に灼熱が発せられた。冷たい空気を焼きながら怪人の肉体を飲み込んで、ほんの一瞬で火達磨にする。

「グアアアアアアアアアァァァァァァァァッ!?」

 怪人の絶叫が耳を劈くのをお構いなしに火炎は徐々に広がるが、後の二人には避けられてしまった。しかしスーパー1にとっては丁度いい。
 超高温火炎を振り払おうと足掻く怪人を余所にサイクロン号を走らせて、一号達の目前で止まる。そのままマシンから降りて、一号の元に駆け寄った。

「大丈夫ですか、先輩!?」
「沖……来てくれたのか」

 隼人に続いてまた一人先輩と巡り会えたが、あの時と違ってとても喜ぶことはできない。一号の装甲は所々が砕け散っていて、スーツの下から血が滲み出ている。声からも疲労の色が濃く感じられて、満身創痍なのは明らかだった。
 加えて、エリアの大半を吹き飛ばす程の暗闇が発せられたからには、この場で凄まじい惨劇があったのかもしれない。サイクロン号に乗りながら間に合わなかったのが、スーパー1は悔しかった。

「……申し訳ありません、俺が遅れたせいで」
「いや、お前が現れただけでも心強い。助かったぞ」

 それでも一号はこちらを責めず、それどころか励ましてくれている。その優しさが重く感じるが、今はそれを受け止めなければならなかった。

296変身超人大戦・最後の乱入者  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:38:36 ID:CJ6NlSl.0

「沖、状況を簡単に説明する。スバル・ナカジマというあの青い髪の少女は今、ノーザという女とアクマロという怪人によって洗脳されている」
「洗脳ですって!?」
「ああ……本当は心優しい少女だったはずだが、奴らはその思いを踏みにじった。彼女だけは絶対に傷つけるな」
「わかりました」

 一号に頷いたスーパー1は、そのまま金髪のツインテールが特徴的の少女に振り向く。その衣服はやけに派手な上に露出が多く、今時の女の子はこんなのも着るのかと思ってしまった。
 しかしこんな状況で一号の隣に立っているし、その見た目からは想像できないほどに凄みも感じられる。恐らく、自分と同じで何らかの武術を嗜んでいるかもしれない。
 自分が遅れたせいで名も知らぬ少女を傷つけることになってしまったのが、悔しかった。

「後は俺に任せて、君は先輩達と一緒に少しでもここから離れてくれないか」
「仮面ライダースーパー1……一人で戦うなんて危険すぎます!」
「ありがとう、その気持ちだけでも俺は嬉しいよ」

 だからこれ以上、彼女が持つ太陽のような優しさと勇気を決して潰してはならない。その決意を胸にスーパー1は前を向いた。
 怪人、アクマロに浴びせた超高温火炎は既に消えているが、その巨体に確かな焼け跡が残っている。一方でノーザはそれをまるで構いもせずに、憤怒の目線をこちらに向けていた。

「仮面ライダースーパー1……どこの誰かは知らないけど、勝手なことをしてくれるじゃない」

 その口ぶりからは苦しんでいるアクマロを気遣う様子は微塵も感じられない。アクマロは同情の余地など欠片もない相手だが、それでもノーザにとっては仲間のはず。しかし実際はただの捨て駒にしか思ってないかもしれない。
 やはりノーザはドグマ達と同じで、ここで倒さなければならない奴だった。

(優しい人間を操って、人殺しの片棒を担がせるだと……ふざけるな!)

 そしてスーパー1の仮面を通じてスバル・ナカジマという少女を見て、怒りが更に燃え上がる。彼女がどんな人物なのかは知らないが、一号達は必死に助け出そうとしていた。
 だからこそ、自分が彼らの思いを受け取って戦わなければならない。その決意を胸に固めたスーパー1は拳を握り締め、勢いよく走り出した。

「全ては……ノーザ様の為にっ!」

 そしてスバルの背中から大量の触手が飛び出してきて、音を立ててしなりながらスーパー1に襲い掛かる。その数は十を軽く超えていて、まともに避けようとしても出来ることではない。
 だからこそ迫りくる触手に、スーパー1は左腕を真っ直ぐに向けた。

「冷凍ガス!」

 暗黒騎士キバの動きを止めた超低温の白いガスが勢いよく噴出される。しかしスーパー1は流れを上手く調整させて、触手と両足のブーツを凍らせて動きを止めるだけに留めた。
 本当なら善人にこんなことをするなんて言語道断だが、これ以上誰かを傷つけさせたくもない。後で責められる覚悟ならもうできている。
 金色の瞳が驚愕に染まらせるスバルは足掻くが、その程度で解放される代物ではない。そんな彼女を見て後ろめたさを感じてしまい、心の中でごめんと謝る。
 それからノーザの方に振り向くと、冷酷な表情が更に怒りで歪んでいるのを見た。相当頭にきているのだろうが、それはスーパー1も同じ。

「おのれ……!」
「次はお前達だ」

 スーパー1は静かだが、それでいて烈火のように怒りを滾らせていた。徐々に感情が抑えられなくなっているノーザとは対照的に。
 恐らく、ノーザを叩きさえすればスバルも元に戻るかもしれない。そう考えたスーパー1は両腕をスーパーハンドに戻した頃、アクマロがゆっくりと進んでくるのを見た。

「スーパー1……我々を虚仮にするとはいい度胸ですな。その報い、受けていただきますよ!」

 アクマロは声を震わせながらその手に持つ剣を振りかざして斬り掛かるが、スーパー1は左腕で刃を受け止める。乾いた金属音が響くのと同時に、黒く焦げた胸部を勢いよく蹴りつけた。衝撃によって嗚咽を漏らしながらアクマロが仰け反った隙を突いて、スーパー1は連続で拳を叩きつける。
 アクマロが吹き飛ぶ姿を見届けることもせずに、スーパー1はノーザがいる横に振り向いた。彼女はアクマロと戦っている隙を突いて攻撃しようと考えていたのか、その細い腕を掲げている。
 振り下ろされるそれを避けながら、スーパー1は腕に力を集中させて叫んだ。

297変身超人大戦・最後の乱入者  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:39:46 ID:CJ6NlSl.0

「チェンジ! パワーハンド!」

 彼の言葉に答えるかのようにスーパーハンドは銀から真紅へ染まり、パワーハンドに変化した。
 そのまま腰を深く落としながら拳を握り締め、こちらに再度振り向いたノーザの胴体を仮面の下から凝視する。そしてスーパー1は渾身の力を振り絞り、赤い拳に込められた1万メガトンもの破壊力をノーザに叩きこんだ。

「メガトンパンチッ!」

 ゴキリ、と何かが砕け散るような鈍い音がノーザの肉体より響く。
 スーパー1の拳を受けたノーザは声にもならない絶叫をあげて、衝撃のあまりに両目を見開きながら吹き飛んだ。
 多彩な能力を持つファイブハンドの中でも最大級の破壊力を誇るパワーハンドによるメガトンパンチを持ってしても、ノーザの肉体は貫けない。その事実にスーパー1は若干の戦慄を感じるが、それでも確実なダメージを与えられた。
 後はこの手でトドメを刺すだけ。これ以上戦いを長引かせても、ノーザ達は何か善からぬことをするかもしれない。その可能性を危惧したスーパー1は前を踏み出そうとした、その直後だった。

「ガアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァ!」

 背後から突然、獰猛な恐竜のように凄まじい叫び声が鼓膜を刺激する。
 スーパー1は思わず背後を振り向くと、先程冷凍ガスで動きを拘束させたはずのスバルの肉体からどす黒いオーラが発せられて、その姿を変えていった。
 全身の触手がより太さを増し、四肢から生えた突起が一層鋭いものとなり、青いショートカットには灰色が混じって、殺意の波動が更に濃くなる。
 そして両足と触手を凍らせていたはずのガスは溶けてなくなって、咆吼するスバルは突貫してきた。

「何ッ!?」

 予想外の出来事にスーパー1は思わず両腕を交差させてスバルの拳を受け止めるが、その衝撃によって後退ってしまう。その僅かな隙を付いて複数の触手が飛び出してきて、そのままスーパー1に襲いかかった。
 しかしスーパー1は決して焦らず、両腕をスーパーハンドに戻しながら両手で構えを取る。まるで、全てを優しく包み込む梅の花のように。

「赤心少林拳……梅花の型!」

 かつてドグマの怪人ギョトスマに敗れた際に玄海老師から修行を受け、会得した拳法でスーパー1は触手を弾く。荒々しい闘いの中にあってなおも花の可憐さを愛おしむ心を持って、全ての攻撃を確実に防いでいた。
 しかしそれでも両腕に痛みが走っていて、このままではいつ打ち破られてもおかしくない。触手の一本一本の重さが、あまりにも凄まじかった。
 その原因は、スバルに取り憑いたソレワターセが冷凍ガスを溶かすため、ベルトの欠片に宿る力を最大まで発揮させたことにある。かつてゴオマはベルトの欠片を取り込んだ末に、金のクウガをも圧倒する凄まじき力を手に入れた。今のスバルもそれと同じで、言うなれば究極態と呼ばれる進化をソレワターセによって果たしたのだ。
 しかしそんな事情などスーパー1に知る由はなく、梅花の型を構えて触手を弾くだけ。そうしている間にもスバルはどんどん迫ってきて、スーパー1の脇腹を殴りつける。

「うぐっ!」

 触手の群れを弾くのに精一杯だったスーパー1は鋼の拳を避けることができずに、呻き声と共によろめいてしまった。そして梅花の型も崩れたところに触手が銀色の肉体を叩いてくる。
 立て続けに痛みが走るものの、スーパー1は必死に耐えた。ここで少しでも崩れたりしたら、その瞬間にノーザ達の思い通りになってしまう。
 スーパー1は攻撃の嵐を避けるために、一旦距離を取った。

(まずいな……まさかここまでの相手だったとは)

 黄金色の視線を真っ向から受けながらスーパー1は考える。
 簡単に止められるとは思っていなかったが、想像を遥かに超えていた。可能なら傷つけたくなかったが、本気を出して戦わなければ逆にこちらがやられてしまう。どちらを取っても、最悪の結果に繋がるだけだった。
 しかし悩んでいる暇はない。今は一号達が逃げる時間を少しでも稼ぐためにも戦わなければならないと、スーパー1は悩みを振り払って拳を握り締めた時だった。

「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 視界の外からこれまで全く予想していなかった、一号の叫び声が発せられてくる。それに気づいたスーパー1が振り向く暇もなく、後ろから現れた一号は迫り来るスバルにしがみついた。

298変身超人大戦・最後の乱入者  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:41:14 ID:CJ6NlSl.0

「本郷さん、何を――!?」
「ここは俺に任せて、沖は一刻も早く二人を連れてここから離れろ!」

 スーパー1に振り向いて叫ぶ一号を、スバルはすぐに振り払われてしまい殴られる。一号の仮面から吐血したような濁った音が聞こえるが、当の本人はそれに構わず握り拳を振るった。
 だがスバルはそれを呆気なく避けた後に、亀裂の走った装甲を蹴って砕いた。
 すぐに助けなければと思いながらスーパー1は前を進もうとするが、その途端に一号は振り向きながら立ち上がった。

「沖、早くここから逃げろと言っているだろう! モタモタするな!」
「何を言ってるんですか!? あなたを見捨てるなんて……!」
「このまま戦いを長引かせては、お前が守ろうとした彼女達が殺されてしまう!」
「待ってください、一号!」

 一号の怒鳴り声にスーパー1は反論しようとしたが、次に聞こえてきたのは後ろにいる金髪の少女の声だった。

「私はまだ戦えます……だからあなた一人で無茶をしないで!」
「いや、ここで君がこれ以上無理をしたら永遠にスバルを助けられなくなる! だからここは逃げるんだ!」
「でも……!」
「沖、今言ったようにあの二人はスバルを救う重要な鍵になる! だから、決して死なせるな!」

 少女の言葉を無視しながら、一号はスバルの攻撃を必死に避け続けている。口元に血が溜まっているのか、その声は普段より酷く濁って聞こえた。

「早く行け、沖一也……これ以上、この殺し合いの犠牲者を増やすな! 俺達の、全ての命を守るという仮面ライダーの願いを叶えるためにも……お前は行ってくれ! 仮面ライダースーパー1!」
「……わかりました!」

 苦しげな叫びに対する悲痛に満ちたスーパー1の答えは、それ以外に何もない。
 彼はすぐさま後ろに振り向いて、瞬時に少女達の元に辿り着いた。一号の悲鳴やノーザやアクマロの怒声、更に殴打音が次々と聞こえてくるが、スーパー1は決して振り向かない。

「スーパー1、私よりも早く一号を……!」
「俺にしっかり掴まってくれ!」

 金髪の少女がその続きを言う前に、その華奢な身体を腕で抱える。そのまま走りながら、横たわるもう一人の少女とトラのぬいぐるみ、更に彼女達の物と思われる二つのデイバッグもしっかりと持った。
 サイクロン号を確保する暇はないので、両足に全力を込めて少しでもエリアから離れようと駆ける。途中、アクマロの雷が鳴り響くような音が聞こえるが、スーパー1はその脚力ですぐに範囲から離れた。
 一号を見殺しにした。その事実はスーパー1に重く圧し掛かるが、彼はそれに決して潰れなかった。
 ここで少しでも後悔して逃げるのが遅れては、一号の思いを侮辱することになる。彼から全てを託されたからには、この二人を命に代えても守らなければならなかった。それこそが仮面ライダーの存在意義で、一号が言うように戦いを長引かせては全滅する可能性もあったから、この選択は正しいのかもしれない
 だが、それが逃げ出していい理由にはならない。本当なら一号も助けなければならないのに、自分が無力だったせいで彼を切り捨てることになってしまった。
 それでも、折れることは決して許されない。罪のない人々を救うための戦士である仮面ライダーが悩んだりしては、誰がこの殺し合いを打ち破るのか。
 その為にもスーパー1は走る。これ以上、守れたはずの誰かが守れないなんてあってはならなかった。





 仮面ライダー一号はひたすらスバルの攻撃を捌き続けているが、傷ついた肉体では限界がある。もうまともに動くことすらできなかった。
 傷口を抉るように叩き込まれた拳によって装甲が砕け散り、血の混ざった破片が地面に散らばっていく。そのまま、一号は力なく地面に倒れていった。

299変身超人大戦・最後の乱入者  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:43:04 ID:CJ6NlSl.0

「行って、くれたか……」

 それでも、彼は決して絶望していない。
 キュアサンシャインとアインハルト、それにアスティオンを連れたスーパー1がこの場から見えなくなっていたので、仮面の下で本郷猛は思わず安堵の言葉を漏らす。
 沖一也には辛い決断を強いてしまったと、今更ながら後悔の思いが生まれる。もしも自分が一也の立場だったらと思うと、胸の奥が痛んだ。
 しかしこの状況で未来ある少女達を救うためにはこれ以外に方法がない。重症を負った自分が生贄となって、優れた能力をたくさん持つ頼れる後輩に全てを託せば可能性があった。
 それに一也が生きてさえいれば、悪意に囚われた目前の少女を救う希望も死なない。彼ならばこの狂った戦いを止めることもできるはずだった。

「よくも、好き放題やってくれたわね」

 最後に希望を残せたことで心が軽くなった途端、ノーザが胴体を押さえながらよろよろと歩いてくる。
 本当ならこの場でノーザを倒したかったが、それをやるだけの力すら残っていなかった。

「仮面ライダー一号……もうあんたはここで終わりよ。あんたの希望も、今ここで闇に変えてあげるわ」
「残念だが、それは不可能だ……」
「何ですって……?」

 おぞましい雰囲気を放つ魔女の顔が怒りで歪むが、一号はそれに構わずに言葉を続ける。

「例え俺が死んでも、俺の理想を継ぐ彼らが生きている限り……時代はお前達のような悪を決して許しはしない。お前達や、加頭達の陰謀は何一つ成し遂げられん……それにスバルも、いつかきっと闇から抜け出せる。俺達が一人でもいる限り、この世界が絶望に染まることは決してありえない……!」

 時代が望む限り、仮面ライダーは必ず蘇る。
 この肉体がいくら滅びようとも、この意思を継ぐものが一人でもいる限り魂は不滅だった。BADANや加頭順、それにノーザ達のような悪魔が笑う時代など永遠に来ない。
 全ての世界から正義の意思が消えることは決してなかった。

「どこまでも目障りな……ノーザさん、この男の始末は我が付けて宜しいでしょうか? 腸が煮えくり返って、仕方がありませんので」
「……好きにしなさい」
「お心遣い、感謝いたします……!」

 そして筋殻アクマロがその手に持つ刀を構えながら進んでくるのを見て、一号は自分の最後を確信する。
 しかしそれでも恐怖はなかった。代わりに心残りやまどか達を助けられなかった悔いは残っているものの、罵りはあの世で受ければいい。尤も、自分なんかが彼らと同じ場所に逝けるかどうかは疑問だが。

(一文字、結城……お前達は生きて、この殺し合いを打ち破ってみんなを助けてくれ。そして村雨、どうか復讐に身を任せずに生きるんだ……)

 一号は……否、猛は相棒と後輩達の無事を願う。そして村雨良が仮面ライダーとして生きて、この殺し合いを打破する者達の力になってくれると信じた。
 良は復讐に身を任せていたが、心の奥底には優しさがある。だからこそ、BADANの怪人達から人々を守ったのだ。
 アクマロの剣が頭上に掲げられるが、猛はそれに構わずに全てを託した九番目の後輩に激励を送った。

(すまない、沖一也……そして後は頼んだぞ、仮面ライダースーパー1。お前はこの殺し合いを打ち破る鍵を握っている男だからな……)

 その男は絶体絶命の状況を打ち破ってくれた最後の希望。
 彼が来てくれたからこそ、いつきとアインハルトを救うことができた。だから、多くの悲劇を生むこんな地獄を絶対に破壊してくれるはず。
 そう考えただけでも、本郷猛は安心してこの世を去ることができた。



 やがて砕け散った装甲に削身断頭笏が突き刺さり、男の肉体を簡単に貫く。
 一瞬だけ全身に激痛を感じるが、それでも気が楽になれた。全ての人々を救うという消えない思いだけは、この世界に残せている。
 それが男にとって唯一にして最後の救い。ショッカーによって仮面ライダー一号にされてから数え切れない地獄を見せられて、数多の嘆きと絶望を味わってしまった本郷猛の希望は、決して消えなかった。

300変身超人大戦・そして――――  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:44:36 ID:CJ6NlSl.0





 B―9エリアで繰り広げられた死闘の結果は、正義が圧倒的な邪悪の前に敗れ去った。
 そこで犠牲になってしまった者達は皆、とある世界にとっては希望の体現者だったが、邪悪によって踏み躙られてしまう。
 しかしそれでも、全ての希望が消えたわけではなかった。

「おのれ……おのれ、おのれ、おのれ! 仮面ライダースーパー1、この筋殻アクマロを愚弄した代償は高くつきます! その借りは必ず返して差し上げましょう!」

 筋殻アクマロは憂さ晴らしのために本郷猛を殺したようだが、全然晴れていないように見える。無論、それはノーザも同じ。
 当初の計画が失敗したので、鹿目まどかという小娘がガイアメモリにより壊れていく楽しみをわざわざ犠牲にしてまでこの祭りを開いたというのに、こんな結果に終わってしまった。
 キュアサンシャインという謎のプリキュアだけでなく、唐突に現れた仮面ライダースーパー1によって全てを台無しにされる。スバルをパワーアップさせたのに、自分達の存在を知る者が他にいては何の意味もない。
 戦いを終えたことでノーザの頭はある程度冷えていたが、それでも湧き上がる怒りは止まらなかった。

「アクマロ君……とにかく今は、身体を休めましょう。奴らを追うのはそれからよ」
「無論ですとも……我とて、このままでは済ませませぬ。あの仮面ライダーだけはこの削身断頭笏の錆としなければ、例え地獄を味わおうとも満足はできませぬ……その為にも、傷を癒さねば」

 激情に駆られていたアクマロがあっさりと聞き入れたことに、ノーザはほんの少しだけ驚く。感情に任せて一人で突っ走らないかと心配したが、やはり元が冷静だからそれは杞憂だったか。
 一息をつきながらノーザは、本郷猛の遺体を吸収したスバルに振り向く。ソレワターセの触手によってただでさえ不気味な外見が、戦いの前に飲み込んだコウモリ男の影響で醜悪さが増していた。
 それでも瞳だけは、変わらずに金色の輝きを帯びている。全ての感情が奪われた双眸の周りには鮮血が付着していて、重力に引かれてゆっくりと頬を伝いながら、そのまま地面に滴れ落ちた。


 その有様はまるで、血の涙を流しているかのようだった。


【一日目・早朝】
【B−9 焦土】

【備考】

※スバル・ナカジマの放ったスターライト・ブレイカーによって【B−9ホテル】は跡形もなく消滅し、エリアの大半が焦土となりました。また、スターライト・ブレイカーは【B−9エリア】から北に発射されたので、遠くからでも確認できるかもしれません。
※以下の支給品が【B−9】エリアに放置されています。

支給品一式×4、流ノ介のランダム支給品1〜3、なのはのランダム支給品1〜3、本郷のランダム支給品1〜3、まどかのランダム支給品0〜2
ヴィヴィオのぬいぐるみ@魔法少女リリカルなのは 、志葉家の書状@侍戦隊シンケンジャー、サイクロン号@仮面ライダーSPIRITS、ナナシ連中の刀@侍戦隊シンケンジャー

※池波流ノ介の肉体と首輪、ショドウフォン@侍戦隊シンケンジャー、及びT−2ガイアメモリ(サイクロン)@仮面ライダーWは跡形もなく消滅しました。


【ノーザ@フレッシュプリキュア!】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、胴体に激しい痛み
[装備]:双眼鏡@現実
[道具]:支給品一式×3、ランダム支給品0〜1個、シャンプーの不明支給品0〜1個、ゴオマのランダム支給品0〜1、水とお湯の入ったポット一つずつ、ソレワターセの実(一個)@フレッシュプリキュア!、バグンダダ@仮面ライダークウガ
[思考]
基本:この殺し合いに優勝し、一切の希望がない世界を作る。
1:まずはここで身体を休めて、次の行動を決める。
2:利用出来る参加者と出会えたら、プリキュアの悪評を出来る限りで広める。
3:ソレワターセの使用は出来るだけ慎重にする。
4:プリキュア達はここで始末する。
5:キュアサンシャインと仮面ライダースーパー1は必ず始末する。
[備考]
※プリキュアオールスターズDX2でボトムによって復活させられた後からの参戦です。
※花咲つぼみと来海えりかの存在は知っていますが、明堂院いつきと月影ゆりとダークプリキュアに関しては知りません。
※ソレワターセはある程度力が押さえられている上に、もしも首輪に憑依させたらその瞬間に爆発するかもしれないと考えています。
※DX2からの参戦なのでソレワターセの実を食べなくても変身できます。
※奪った説明書からガイアメモリの特性を知りました。
※シャンプーの不明支給品の内二つは、ナナシ連中の刀@侍戦隊シンケンジャーと削身断頭笏@侍戦隊シンケンジャーです。
※キュアサンシャインの存在を知りました。

301変身超人大戦・そして――――  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:45:05 ID:CJ6NlSl.0

【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)、ソレワターセによる精神支配、究極態に進化、シャンプー、ズ・ゴオマ・グ、鹿目まどか、高町なのは、本郷猛の肉体を吸収、ダグバのベルトの欠片とレイジングハートエクセリオンを吸収
[装備]:マッハキャリバー、リボルバーナックル(右手用)&(左手用)@魔法少女リリカルなのは、カートリッジの弾薬セット(残り7発)@魔法少女リリカルなのは
[道具]:支給品一式、スモークグレネード@現実×2
[思考]
基本:ノーザ様のしもべとして働き、参加者を皆殺しにする
0:………………………
1:ノーザ様の指示待ち
2:あの子(アインハルト)はどうして私の名前を知ってるの・・・・・・?
[備考]
※参戦時期はstrikers18話から20話の作戦開始前までのどこかです。
※シャンプーの姿を前回の任務の自分(strikers17話)と重ねています。
※『高町ヴィヴィオ』は一応ヴィヴィオ本人だと認識しています。
 また、彼女がいることからこの殺し合いにジェイル・スカリエッティが関わっているのではないかと考えています。
※ソレワターセに憑依された事で大幅にパワーアップしています。
※シャンプーの遺体を吸収し、彼女に関する情報を入手しました(首輪も含まれています)。
※シャンプー、ズ・ゴオマ・グ、鹿目まどか、高町なのは、本郷猛の肉体を吸収したことで、彼らの姿にコピーすることができます。
※高町なのはの肉体とレイジングハートを吸収したことによって、スターライト・ブレイカーを始めとした高町なのはの技を会得しました(ただし、A's時代までに限られます)
※ズ・ゴオマ・グの肉体とアマダムを吸収したことで、グロンギに近い肉体を手に入れました。またダグバのベルトの欠片を吸収したことで、究極態に準ずる進化を果たしています。
※鹿目まどかの遺体を吸収したことで、彼女が持つ莫大な因果を手に入れました。


【筋殻アクマロ@侍戦隊シンケンジャー】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、全身に大火傷、強い苛立ち
[装備]:削身断頭笏@侍戦隊シンケンジャー
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考]
基本:地獄をこの身で味わう為、十臓と共に脱出を試みる。
1:今はこの身体を休ませる。
2:裏正、太夫の三味線の確保及び十臓を探す。
3:ドウコクに関してはひとまず放置。
4:条件が揃うならばこの地で裏見がんどう返しの術を試みる。
5:仮面ライダースーパー1から受けたこの借りを必ず返す。
[備考]
※参戦時期は第四十幕『御大将出陣』にてシタリから三味線を渡せと言われた直後。
※アインハルトが放った覇王断空拳の音を聞きました。
※不明支給品の内一つは、リボルバーナックル(左手用)@魔法少女リリカルなのはです。

302変身超人大戦・そして――――  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:46:30 ID:CJ6NlSl.0




 ようやく戦いが終わって生きることができたが、明堂院いつきの心は決して晴れない。それどころか暗い表情を浮かべてすらいた。
 この世界で出会えた人達を守りきることができずに、こうも簡単に犠牲となってしまう。高町なのはも、鹿目まどかも、池波流ノ介も、本郷猛も……誰一人として助けることができなかった。
 砂漠の使徒やブラックホール達と戦った時のように、みんなをこの手で守らなければならなかったのに、逆に守られてしまう。これじゃあ、プリキュア失格だった。

「アインハルト……」

 それでもいつきは決して挫けたりはせずに、膝の上で横たわっているアインハルト・ストラトスの頭を優しく撫でる。
 仮面ライダースーパー1によってこの【C―8】エリアに到着するまで、幸いにも彼女は気絶していた。だが、このまま目覚めたら彼女は一体どうなってしまうのか……考えただけでも辛くなってしまう。

「まだ、アインハルトちゃんは目覚めないのかい……?」

 そして眠り続けるアインハルトを心配している男が、心配そうに見つめてくる。
 仮面ライダースーパー1となって自分達をここまで逃がしてくれた強くて優しい青年、沖一也だった。

「はい……でも今は、そっとしておいてあげてください……あんな酷いことがあったばかりなので」
「……すまない、俺がもっと早く君達の元に駆けつけていれば、こんなことにはならなかったのに」
「いえ、私なら大丈夫です……一也さんが来てくれたおかげで、こうして助かったんですから」
「そうか……」

 いつきは一也を恨むつもりなど最初からない。
 彼がいてくれたおかげでこうして生きていられたのだから、むしろ感謝すらしている。それに猛だって一也にこうして欲しかったのだから、責めるなんてできなかった。
 だから今は、命の恩人である一也に微笑む。不謹慎なのは理解しているが、少しでも彼を安心させたかった。
 一方で、一也の表情はまだ沈鬱に満ちていたはずだが、それでも瞳には猛と同じような力強さが感じられてきた。

「改めて君達に約束しよう……いつきちゃん達二人の命はこの俺が絶対に守る。そしてこんな殺し合いを一刻も早く終わらせて、みんなが未来を作れる毎日を守ってみせる。だから、決して無茶をしないでくれ」
「わかりました……僕も、一也さんに決して無理をさせません。アインハルトを守るためにも、この力でできることを一生懸命に頑張ります。だから一緒に、みんなを守りましょう?」
「……ああ!」

 そう言いながら一也は、ようやく笑顔を浮かべる。
 それはまるで、殺し合いという残酷な現実を打ち破れるほどに強くてカッコいい、頼りになる正義の味方が見せてくれるような、暖かい笑顔だった。
 そしていつきもまた決意を固める。こんなにも優しい人の思いを裏切らないためにも、絶対にアインハルトを守らなければならないと。もうこれ以上、無意味な犠牲を出してはならない。
 沖一也と視線を合わせる明堂院いつきは、改めて自分自身にそう誓った。


【1日目・早朝】
【C−3 森林】


【沖一也@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、強い決意
[装備]:不明
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:殺し合いを防ぎ、加頭を倒す
0:殺し合いを止める為に仲間を探すが、今はアインハルトが目を覚ますのを待つ。
1:本郷猛の遺志を継いで、仮面ライダーとして人類を護る。
2:この命に代えてもいつきとアインハルトを守り、スバルを絶対に助けてみせる。
3:先輩ライダーを捜す
4:鎧の男(バラゴ)は許さない。だが生存しているのか…?
5:仮面ライダーZXか…
6:ノーザ、アクマロは何としてでも倒す。
[備考]
※参戦時期は第1部最終話終了直後です
※一文字からBADANや村雨についての説明を簡単に聞きました
※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました
※18時までに市街地エリアに向かう予定です。
※村エリアから東の道を進む予定です。(途中、どのルートを進むかは後続の書き手さんにお任せします)

303変身超人大戦・そして――――  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:47:04 ID:CJ6NlSl.0
【明堂院いつき@ハートキャッチプリキュア!】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、罪悪感と決意
[装備]:プリキュアの種&シャイニーパフューム@ハートキャッチプリキュア!
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1
[思考]
基本:殺し合いを止め、皆で助かる方法を探す
0:今はアインハルトが目を覚ますのを待つ。
1:沖一也と共に行動して、今度こそみんなを守り抜く。
2:仲間を捜す
3:ゆりが殺し合いに乗っている場合、何とかして彼女を止める。
4:スバルさんをノーザとアクマロの手から何としてでも助けたい。
[備考]
※参戦時期は砂漠の使徒との決戦終了後、エピローグ前。但しDX3の出来事は経験しています。
※主催陣にブラックホールあるいはそれに匹敵・凌駕する存在がいると考えています。
※OP会場でゆりの姿を確認しその様子から彼女が殺し合いに乗っている可能性に気付いています。
※参加者の時間軸の際に気付いています。



【アインハルト・ストラトス@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
[状態]:魔力消費(大)、ダメージ(極大)、疲労(極大)、背中に怪我、気絶中、極度の混乱及びにショック状態
[装備]:アスティオン@魔法少女リリカルなのはシリーズ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3個(確認済み)
[思考]
基本:???????????
0:???????????
[備考]
※ スバルが何者かに操られている可能性に気づいています。
※ 高町なのはと鹿目まどかの死を見たことで、精神が不安定となっています。

304変身超人大戦・そして――――  ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:49:14 ID:CJ6NlSl.0



 空の色は血のように赤黒い。
 地面の色も血のように赤黒い。
 世界のあらゆるところに横たわる屍から流れる血も赤黒かった。
 そしてこの世界に吹く風は全身の血が一瞬で凍りつきそうなほどに冷たくて、呪われている。
 地獄と呼ぶに相応しい世界の中で、その少女はたった一人で泣いていた。

「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」

 世界のあらゆるところから響く呪祖の声は少女の身体に襲いかかり、その罪を攻め立てる。
 そのおぞましさに思わず耳を塞ぐが、そんなことなどお構いなしに呪いは少女の中を犯していく。
 お前は人殺しの怪物だ。お前はこの世界にいてはいけない化け物なんだ。お前は血に飢えた悪魔でしかないんだ。お前は破壊すること以外何もできない獣なんだ。お前は平然と人を食らう畜生なんだ。
 闇の中から聞こえてくる声は、少女がこれまで培ってきた全てを破壊していく。
 忘れもしないあの日、まだ弱かったあたしは地獄の業火に包まれた世界からあの人に助けられた。でもあたしは、あの人を■してしまった……!
 罪を犯してしまった少女の眼には涙が浮かび上がって、何もかもを見通せなくしてしまう。
 遠い日の思い出も、みんなと過ごしてきたかけがえのない日々も、これまで助けてきた人々の笑顔も、尊敬するあの人との出会いも……全てが自分から遠くなってしまった。
 愛していた日々にはもう戻れない。戻ろうとしても、この手が血に染まりすぎてしまったのだから。

「……ごめんなさい、あたしのせいで……ごめんなさい……!」

 罪悪感から生まれる慟哭によって喉が詰まるが、それでも少女は頭を垂れる。その懺悔が誰にも届かず、何の意味を持たないことを知りながら。
 ただ彼女は犯した罪に対して、謝り続けることしかできなかった。

「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……なのはさん、みんな、ごめんなさい……!」

 こんな命、すぐにでも立ちたかったがそれすらも許されない。もう少女の身体は少女の物ではないのだから。
 だからせめて少女は願う。平和を愛する誰かが、これ以上の悲劇を生む前に自分を殺してくれることを。それだけが少女に残された最後の希望だった。
 それがいつになるかはまるでわからない。ほんのすぐなのか、それとも未来永劫誰かを殺し続けてしまうのか。そのどちらなのかは、まるでわからない。
 もう償うことができない彼女は自分自身に対してひたすら怯えていた。いつどこで誰を殺してしまうのか……この手は一体どれだけの罪を重ねてしまうのか?
 ソレワターセの意識とも呼べる暗闇の中で、独りぼっちとなってしまった少女……スバル・ナカジマは涙を流しながら詫び続けるしかできなかった。


【ズ・ゴオマ・グ@仮面ライダークウガ 死亡確認】
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ 死亡確認】
【高町なのは@魔法少女リリカルなのは 死亡確認】
【池波流ノ介@侍戦隊シンケンジャー 死亡確認】
【本郷猛@仮面ライダーSPIRITS 死亡確認】
【残り54人】

305 ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 07:51:07 ID:CJ6NlSl.0
以上で今回の投下を終わります。
今回も分割確定なので、収録は自分で行う予定です。
そして今回は粗が多いかもしれませんが、もしも矛盾点などがありましたらご指摘をお願い致します。

306名無しさん:2012/04/19(木) 09:17:58 ID:F./VoLW60
投下乙です、

黒岩はザギとブロッサムスルーして図書館行って兄貴と合流か、
……しかし黒岩も一応世界征服企む悪役なのだが……流石に普通に都知事になる地道でまともで社会的なやり方されるんじゃプリキュアといえども手は出せないなぁ。

で、一方では、
うわー大量に退場者がでたかー、しかも影響大きそうな人ばかり……
それよりも恐ろしいのはその殆どを本来なら対主催になりそうなスバルがというのが……
しかも微妙に正気に戻りかけた描写があるからそれこそ正気に戻ったら……
割と関係ないかもしれないけど、某らんま作者が後に描いた某犬漫画のあのキャラ思い出したお……

しかし、洗脳、吸収した相手の外見コピー、記憶吸収、能力吸収……つか、ソレワターセって確か一応プリキュアの雑魚(というには後半出てきた為割と強敵だが)だった筈だよな。
ここまでのこと原作でやっていたのか……
……と、ここまで書いて気が付いた。ソレワターセのやっている事の殆どってある意味闇の書だよな。つまり、プリキュアは闇の書クラスを雑魚としていた事になる……なんて恐ろしいアニメなんだろう……。
しかもなんとか戻したところで、

ま だ ソ レ ワ タ ー セ 1 個 残 っ て い ま す

一応、いつき達とか生き残っているけど……大丈夫なのだろうか……特にアインハルト辺り。

取り急ぎ気になった点としては、
左手用リボルバーの支給、とはいえ意思持ち支給品じゃない普通の武器扱いだから大丈夫だとは思う。
ソレワターセのチートぶり……これちょっとよくわからないけど、まどかを吸収してその因果を力に変える事って出来るんでしょうか?
確かまどかの参戦時期的に本人自身が自身の力を把握していない筈なので知識を吸収して得られるという事でも無いでしょうし。
なのはの技自体は元々の知り合いなわけなので取り込めてもそこまで不思議じゃないですが……
後、ゴオマの肉体やダグバの欠片吸収して究極態に準ずる進化というのも今回の話だけで即座にやるには魔改造過ぎる様な……原作でもゴオマじゃダグバの力持て余していた部分あるわけですしすぐに進化したわけでもないわけですし。

これは確実に修正必要だと思いますが、サイクロンメモリを首輪に挿入とありますが、首輪にコネクタなんてありません。普通に身体に挿入出来た筈です。多分、これ平成ライダーと混同してしまっただけだと思いますけど

307 ◆LuuKRM2PEg:2012/04/19(木) 11:35:01 ID:CJ6NlSl.0
ご指摘ありがとうございます。
それでは、後ほど指摘された点を修正して修正スレに投下させて頂きます。

308名無しさん:2012/04/19(木) 12:13:15 ID:TTlhKg/AO
投下乙です。
まだ第一回放送も向かえてないというのになんという最初からクライマックス!
クオリティの高い描写に加えて救いのみえない狂気と鬱グロはまさに大戦争でした。
大量予約がきたから一人二人ぐらいは死ぬことを予測してたけど、まさかここまで豪勢に死ぬとは・・・・・・本郷さん、流さん、まどかさん、なのはさん、ついでにゴオマ。
しかもほとんどがスバルで、今までトップだった溝呂木を軽く越えてしまったぜ。
怪人スバルワターセというか、リリカルナカジマカワイソス二号というか。
気になった点と言えば>>306と同じで、スバルのグロンギ化はともかくいきなり究極体は微妙なライン、まだ契約してないまどかは因果の力を引き出せてないので食べても変化はないと思われ。
それからサイクロンドーパントの瞳は赤じゃなくて黄色だった覚えがあります。

309名無しさん:2012/04/19(木) 12:43:08 ID:ShmjmAGs0
投下乙!
うっひゃあこいつは…一気に5人とは!
前回パート&『ニアミス』で死者が出なかった反動が一気に来たなあ
まあ、あれだけ敵味方が密集してた以上いつかは起こりえた必然の結果だったのかもなあ

310名無しさん:2012/04/19(木) 15:59:37 ID:2jIo4HLE0
もしもまどかの死が放送で告げられたら……これからほむらはどうなるだろう。

311名無しさん:2012/04/19(木) 18:34:22 ID:A5J26VJ2O
投下乙です。
えーっと、ナニコレ?他の参加者やアイテムの取り込みによる能力コピーまで来ると際限無しのパワーアップに繋がりますし、流石に制限の対象になるのでは?

312名無しさん:2012/04/19(木) 18:53:16 ID:2jIo4HLE0
能力コピーに関してはゴオマとまどかが修正必須なだけで
なのはの魔法に関してはスバルも元々知ってますし、使えても問題ないのでは。
(もし制限するにしても、スバルが知らない参加者に関しては数話経たないとソレワターセが解析できないって感じで)

313名無しさん:2012/04/19(木) 19:15:59 ID:A5J26VJ2O
知ってるから使えるってのも違うような?そもそも知ってて使ってるディバインバスターからしてミッド式とベルカ式で大分違いが……まあ外野でとやかく言うよりも今は修正待ちですね。

314名無しさん:2012/04/19(木) 19:25:03 ID:0KBXcJAQ0
投下乙です!
さあ盛り上がって参りました

315名無しさん:2012/04/19(木) 19:58:17 ID:hJkbf.Xs0
投下乙です

これはえげつない大乱闘だぜ。スバル、まさか一度の洗脳でここまで行くとは…
せめてもの救いは沖さんらは生き残った事だが、他にヒーローと合流できたらまだなんとかなるのか?

さまざまな能力の扱いや制限の問題もあるが…
ん…魔改造の部分さえなんとかしてくれたらなあ。惜しいなあ
非常識なパワーアップは一つのトンデモアイテムでもなんとかなるから数段落ちるがまどかの因果の力の代わりになるのさえあれば…

316名無しさん:2012/04/19(木) 23:33:56 ID:Vqoj9AOI0
問題点としてはソレワターセの強化がやりすぎな部分、という事なんですよね。大筋の展開そのものはそこまで変わる事もないとは思う。
で、僕個人からみてもやり過ぎだと思っています。
原作でソレワターセそこまでやっていたかなという疑問もあるし、何より出来たところでこういうものって間違いなく制限対象なんですよね。
ダグバの発火能力も抑えられているし、テッカマンの能力やほむらの時間停止も大幅に制限されている以上、取り込む事はともかく全てそのまま使えるのは無しじゃないだろうと。
使える範囲としては記憶を使える、僅かながらにその力を使える程度が限界かなと。

どちらにしても確実に必要なのはゴオマの部分とまどかの部分、
ゴオマの部分を修正した場合はスバルの受けるダメージが増量し、まどかの部分に関しては単純に威力ダウンという事になるのかなと。
既に語れている通り、グロンギ食べた所でグロンギになれるわけじゃないですし、まどかのチートさは魔法少女として契約した場合の話であって、契約していない彼女ではその力は無しと判断すべきでは。

317名無しさん:2012/04/20(金) 00:30:39 ID:rXyPjI4Q0
投下乙です。
うわぁ、これは気持ち悪い(褒め言葉)
修正に関しては僕も他の人と同意見ですね。
にしても、本郷、まどか、なのはと他ロワで活躍しているorしたことのある主人公の一斉死は圧巻でした。
久々にパロロワを見たって感じでしたね。
放送後のほむら、殿、一文字などの反応が今から楽しみです。

318 ◆LuuKRM2PEg:2012/04/20(金) 21:18:17 ID:5jLHYHtM0
拙作『変身超人大戦』の修正版を修正スレに投下致しました。
ご確認をお願いします。

319変身超人大戦(修正版) ◆LuuKRM2PEg:2012/04/20(金) 21:18:41 ID:5jLHYHtM0
拙作『変身超人大戦』の修正版を修正スレに投下致しました。
ご確認をお願いします。

320 ◆LuuKRM2PEg:2012/04/20(金) 21:19:28 ID:5jLHYHtM0
……操作ミスで多重投降をしてしまいました、誠に申し訳ありません。

321名無しさん:2012/04/23(月) 10:03:29 ID:9u1WTFuQ0
しかし何度も言われてるようにこのロワってとんでもないスペックを持つマーダーが多いんだな
ダークザギ、ダークメフィスト、テッカマンエビル、テッカマンランス、ダグバ、ドウコク、バラゴ……
他にもノーザ達や三影やガドルとか……対主催、大丈夫かな

322 ◆OmtW54r7Tc:2012/04/23(月) 13:18:33 ID:zEa/XruE0
自分で書いてて思ったけど、黒岩のスタンスってどう分類されるんですかね?
一見危険対主催かステルスに分類されそうだけど、殺しをするつもりも無くて仲間を集めて脱出を考えてる辺り、一応は真っ当な対主催…なのか?

323名無しさん:2012/04/23(月) 14:50:19 ID:iPNfgyuIO
多分、それで間違いないのでは?
原作じゃ、東京征服を企む悪の怪人なのに……w

324名無しさん:2012/04/23(月) 16:40:08 ID:Z4Fk6Gq.0
悪党が主催を信じられなくて対主催をするのはよくあるからなあ
仲間集めて打倒とか知能犯としては珍しくないけどね

325名無しさん:2012/04/23(月) 20:25:14 ID:fS2CaQ8gO
確かにマーダーは多いし、今は対主催陣営はやられまくってる。
でもマーダーの敵はマーダーでもあるから、必ずしもマーダーの多さ=対主催の不利とは限らない。
ガチで手を組んでるノーザさん・アマクロ・スバルワターセの三人は例外として、基本的に優勝を狙ってる以上、マーダーは仲良くできないし(組んでる杏子とフェイトも、いつまで持つか怪しい)。

326名無しさん:2012/04/23(月) 23:01:41 ID:zEa/XruE0
ロワによって個人差はあるけど、大体どのロワでもマーダー同士の潰し合いでのマーダー減少の比率が高いからな
むしろ対主催がマーダー殺すケースがレアなとこもあるし

327名無しさん:2012/04/24(火) 10:37:50 ID:um1ggbAEO
マーダーが手を組んでるといってもここのは信頼皆無か洗脳だしなぁ、その内勝手に潰し合うだろうさ

328名無しさん:2012/04/26(木) 17:43:54 ID:ncfLYNHY0
>>321
ザギさんもさほどマーダーしてなくね?
「凪にネクサスの力が渡る」、「主催者の言葉の信憑性が確定」のどちらかの条件が満たされなきゃ対主催のままだし
最終回以前のザギって変身能力ないしそんなに強くも無い

329名無しさん:2012/04/26(木) 21:11:40 ID:r6wLEa.o0
予約来てるなあ

330名無しさん:2012/04/27(金) 04:04:04 ID:1p3rzCOQ0
ちょっと前にWの爆笑26連発見たときは、井坂さんのあのキャラは霧彦さんと同じでキャラ崩壊してるんだと思ってた
原作でも変態だったけど、あそこまで変態ではないだろうと思ってた
だから、昨日久しぶりに原作24話見て驚いたな

ま さ か あ れ が 素 だ っ た と は

確かに爆笑26連発ほどギャグってはなかったけど…
ボディに頬擦りとか原作でもやってたのかよ!
やっぱTV放送で1回見ただけじゃ内容忘れてること多いなあ
霧彦が尻彦って呼ばれてた理由もレンタルで見直すまでわかんなかったし

331 ◆7pf62HiyTE:2012/04/27(金) 12:30:04 ID:QXc/j6QU0
只今より響良牙、村雨良分投下します。

332I am ◆7pf62HiyTE:2012/04/27(金) 12:31:25 ID:QXc/j6QU0
PART.1 名前無き者


『記憶が欲しいか……その不安と寂しさを満たす想い出を……ならば汝は今よりZX(ゼクロス)と名乗れ。そして……『BADAN』に忠誠を誓うのだ、そうすれば神は汝にすべてを与えるだろう』

 その男、む――いや、その名は使うまい。
 男には殆ど全ての記憶、『名前』すらも無いのだから――
 自己を識別する『名前』とすら言えない『記号』、

 『ゼクロス(ZX)』――それが男を示す唯一の呼称である。

『おいニードル、■■■■じゃねぇゼクロスと呼ひな。こいつは生まれ変わったんだ、特別にな、もう昔の雑兵じゃねぇ』

「ミカゲ……」

 思い返すのは男の持つ数少ない記憶の1つ、自身がかつていたBADANでの同胞、あるいは友とでも言うべき男の存在。
 だがその男は数ヶ月前――

『一文字!!』
『いくぞ本郷!!』

 2人のカメンライダーが放ったライダーダブルキック――自身に炸裂する筈だったその一撃――

『クク……こいつ(ゼクロス)は真の世界を救う男だ……殺らせは……しねえ……』

 庇う形でそれを受け――散った。

 カメンライダーによって友の命を奪われたという事だ。


 さて、先ほど『かつていた』と説明したが男はBADANを抜けている。
 男がBADANで戦い続けていたのは『記憶』を取り戻す為である。
 何故男はBADANを抜けたのか――

 カメンライダーによって友を奪われた時、男は見た。

 涙を流す女性の姿を――
 それが誰なのかはわからない、だが何故か自身も涙を流していた気がする――

 その事を伊藤博士に話した際、彼は奇跡と語り更に、

『バダンを信じてはいけない!! バダンが記憶をくれるなどと……君の記憶を……『あの人』を……スベテを奪ったのはバダンそのものなんだ!!』

 そう話した上で自身に脱走を促し、日本の東京は新宿にいるらしい『海堂』に『あるもの』を渡す様に言われ組織を抜け出した。
 伊藤博士の真意は不明瞭、記憶も戻ったわけじゃない、だがバダンが記憶を奪ったのならばバダンに従う道理など全くない。そして何より――


 女が涙を流していた――
 故に男はBADANを抜けた、もう言いなりになるつもりなど無かった。


 先刻、エターナルと名乗るカメンライダーと交戦した。
 エターナルは男の命を奪うべく自身へと襲いかかってきた。
 カメンライダーは友だけではなく自身の命すらも奪うというのか、
 『記憶』、『感情』、『肉体』、『友』――奪われ続けてきた男にとってこれ以上奪われるつもりはない――
 故に男は赤い仮面の戦士となってエターナルへと挑んだ。

 だが、またしても奪われてしまった――

 偶然戦いに通りかかり乱入し結果として自身を助けてくれた男の『命』を――
 BADANの尖兵として多くの命を奪ってきた自身が今更赤の他人の命が奪われようともどうこう言うつもりはなかった。
 それ故にあの男の命を奪われようとも構わない――その筈だったのに、

「俺は……あの男を奪われたくないと……何故だ?」

 確かに男を助けようとした事を女はどことなく喜んでいた様に見えた。
 だが別に女が喜ぶから助けたわけではない。
 理由はわからない、自分を助ける為に散った友とあの男が重なったからなのか? あるいは――

 答えなど見つからない、記憶も戻らない、伊藤博士から渡された『アレ』もこの地に来た時に失った。
 だが、すべきことだけは決まっている。
 これ以上、カメンライダーには何も奪わせない――その為にカメンライダーを倒す事だ。
 奪われる前に奪う奴等を倒す、それだけだ。

 だが脱走してからのBADANの追撃、そしてエターナル戦で感じた事だが通常よりも身体の調子が悪い。
 その男、ゼクロスの肉体の殆ど全ては改造されている。その性能を最大限に発揮すればカメンライダーに負ける事など無い。
 しかし結果は不調故にあのザマだ。BADANに戻れば最良の状態に調整出来るだろうが今更そんなつもりはない。

 不調ではあっても戦えないわけじゃない。ダメージさえ回復させれば十分に戦える。

333I am ◆7pf62HiyTE:2012/04/27(金) 12:33:40 ID:QXc/j6QU0

 その為に身体を回復させるべく静かな場所を求めF-2にある教会、あるいはC-2方面にある村へと向かおうと考えた。
 E-2に到着した後、赤い仮面の姿になった上で高く飛び上空からF-2方面の様子を探った。なおこれは自身の性能を再確認する目的もある。

 だが、その時その方角に戦いの音や光が見えた。
 男が知る事は無いがその時ある闇の巨人(もっともこの地では人間大の大きさだが)がカメンライダーの1人と同行者を襲撃していた。
 男が見たのはその戦いの光と音なのだ。

 詳細は不明だが戦いになっている以上、休息には向かないと判断し見切りを付けD-2方面へと移動し同じようにC-2方面の村の様子を探った。

 だが、やはりその方面でも戦いの音や光が見えた。
 その時丁度ある怪人がカメンライダーの1人――それも友の命を奪った2人のカメンライダーの片割れが戦っていたのだ。
 ちなみにもう少し経てばその死んだ筈の友が駆けつけ――いや、これ以上は語るまい。

 万全な状態ならばいざしらず、ダメージが残っていて調整不良な状況で挑むのは自殺行為、
 カメンライダーを倒したいとはいえ、その状態では逆に奪われるだけでしかない。
 それ故、教会と村、両方に見切りを付け再び深い深い森へと戻っていった。
 元々両方危険ならば戻る事も視野に入れていたのだ、別段問題は無い。

 それに先の確認でわかった事だが飛行能力や索敵能力も大分落ちている。万全な状態ならばもう少し迅速に詳しい状況を把握でき移動も出来ただろうがそれも出来なかった。
 更に言えばどうにも消耗した様に感じる。いや、先ほど思い出したばかりの『疲れ』を感じたのか、何にせよ性能に頼り切った事は避けるべきだろう。


 かくして元の姿に戻った男は気が付くとC-3の川沿いを進んでいた。休息場所として次に想定していたのはE-5の冴島邸だった為若干コースはずれていると言えなくも無い。
 とはいえ冴島邸すらも安全という確証は無く、休むだけなら名前のある施設に固着する必要は皆無であり、同時に川沿いを道代わりにしても不思議は無いだろう。
 いや、本当の所、何故川沿いを歩いていたのか等、その男自身にすらわからなかった――川の水が流れる音に何かを感じたのか、
 そんな感情すら無い男が何かを感じる事も無い筈なのに――

 変わる事の無い川の音が響き続け――

「ん?」

 その時、上流から激しい音が響いてくるのが聞こえた。男が視線を向けると――


「ぶびい゛ぃぃぃぃぃぃ!!」


 荷物を抱えた黒い子豚が川で藻掻いているのが見えた。


「何だ……アレは……」


 何故こんな所に子豚がいるのだろうか? そんな疑問が脳裏に浮かびあがる。
 だが、このままでは子豚はただ流されていき――溺死するだろう。
 いや、客観的に言えば男で無くても子豚如きの命などどうだって良いと思うだろう。
 しかし――


「……!」


 気が付いた時には男は川へと飛び込み小豚を助け出していた。自身の性能を考えればこれぐらいなど造作も無い話だ。
 そして子豚の抱えた荷物共々岸へと戻ったのだ。
 どことなく子豚は自身を警戒している様に見える。
 それも別段不思議は無い、BADANの尖兵として多くの者を奪ってきたのだ、動物的な本能で危険を察知した所でおかしい事など何も無い。
 それでも男は何の感情も持たなかった。嬉しくも悲しくも無い――そんな状態だ。


 その時突然、子豚がデイパックから何かを取り出し男の元から走り去っていった。
 別に只逃げただけなら放っておいても良かったがわざわざデイパックから物を出してから走り去った事に引っかかりを感じた。
 故に男は子豚を追いかけた。そして何か湯気らしきものが立ち上がったのが見え、そこにたどり着いた時、


「お前は……生きて……いたのか……」


 目の前にいたのは黒い子豚――ではなく、先ほどエターナルとの戦いに乱入し、自滅した筈の男だった。

334I am ◆7pf62HiyTE:2012/04/27(金) 12:34:55 ID:QXc/j6QU0



PART.2 森をかける良牙


「ここは……どこだ?」

 深い深い森の中、響良牙がそう呟きながら地図を確認する。
 良牙がこれまで数時間に進んだ道のりを簡単に整理しよう。
 C-1の翠屋にいた良牙はC-7にある呪泉郷を目指し東へ一直線に進もうとした。
 が、途中で道に迷ったのでは無いかと考え今度は地中を進んだ。
 その後地上に出た時に赤い仮面と白い仮面の戦士が交戦している場所に出くわし良牙もまた参戦した。
 そして白い仮面の戦士の撃破を確認した後、再び呪泉郷目指し南東へと(注.本人が意図した方向とは別の方向)走り出した――

 響良牙は重度という言葉では片付けられない程の方向音痴である。
 目的地の方角や場所がわかっていてもその方向に進める事など殆ど無い。
 故に、目的地が東にあっても南東へと向かい、北東にあっても南東へと向かう事など彼を知る者にしてみれば驚く事でも何でも無い。
 何しろ『いつもの空地』で三日後に決闘の約束をしておきながら十日後に平然と待っていても全く驚かれない程なのだから末恐ろしい(ちなみにその時の果たし状の写真から長崎にいる事は明白だが良牙自身は北海道にいると勘違いしていた)

 それ程酷い方向音痴なのだ、一直線に進んでいたと思っても、本人も知らない内に全く違う方向に進んでいても不思議は無い。

 そう、南東を進んでいたのがいつの間にか北東に進んでいたという事だ。無論、本人は相も変わらず一直線に進んでいると思っている。

「東に進めば呪泉郷に……待てよ、確か俺が出た場所は……」

 先に交戦した場所を思い返す。周囲の景色から考えてD-3にある採石場だろう。ならばこのまま一直線に進んでも――

「たどり着くのはD-6にあるグロンギ遺跡……だが……」

 周囲を見回しても遺跡らしきものは何も見えず森だけしか見えない。
 それに地図の等高線を見る限り一直線に東に進んでいるのならば登っている筈なのだ。グロンギ遺跡にしろ呪泉郷にしろ最初にいた村から高い位置にあるのだから。
 だが、一直線に進んでいる割に登っている様には感じない。

「まさか……最初から方向を間違えたのか? それとも知らないうちに別の方向に……」

 仮にそうであるならば目的地にたどり着ける道理は全くない。

「まずい、シャンプーが早々に死んだことを考えれば……あかねさんが無事である保証なんて何処にも無い。乱馬やパンスト太郎すら危ないかも知れん……こんな所で迷っている場合じゃ無い……こうなったら……」

 意を決した良牙は、

「爆砕点穴!」

 先程同様地面に大穴を開けて地中をひたすらに掘り進む。常人はまず使わない手段だが良牙にとって道に迷った時に地中を掘り進むという手段は常套手であり、度々その方法で目的地にたどり着いた事もあった。

 そして掘り進んで十数分後、ふと良牙はこの殺し合いに巻き込まれる前、高原にて雲竜あかりとデートをした時の事を思い出した。
 その時、あかりによる良牙にもわかるレベルの簡単な地図があったにも関わらず迷走してしまい(本人的には至って冷静に)地中を掘り進んでいたが、

『下に掘り進んでどーするっ』

 という乱馬から当然と言えば当然のツッコミを受け上に戻った事を思い出した。

「そうだ、下に掘り進んでも今いる場所がわからなきゃどうにもならねぇじゃねぇか! ならば上かっ」

 思い返せばあの時地上に出た場所は目的地まで目と鼻の先の所である湖のほとり、それを踏まえれば目的地に辿り着けなくても目印になる場所、例えば川の近くに出られる筈だ(注.普通はそうそう都合良くいきません)。
 そう考えて進路を上にとった――

335I am ◆7pf62HiyTE:2012/04/27(金) 12:35:35 ID:QXc/j6QU0


 状況を簡単に説明しておこう。
 良牙はD-3からE-4、そしてD-4とぐるりと回っていた。そして今度は地中を北上していた。
 お手元に地図がある方はすぐさま確認して欲しい、D-4の北部分にあるものを、そうすればどのような結果が導き出されるかおおよそ予想できるであろう――

 そう、良牙の推測通りの結果――いや、それ以上に正確な結果となった。


「爆砕点穴!!」

 天井が崩れていく、これで地上に出られ――


 割れ目から水が噴き出していき――


「あ゛!!」


 そこから決壊し水が一斉に溢れ出した――


 もはやおわかりであろう。良牙の辿り着いた場所は丁度川の真下。川の流れは非常に強く――
 良牙はなすすべ無くその流れに飲み込まれていった――


 勿論、良牙ほどの実力があるならば川の流れ程度何の問題も無い。しかし、良牙の体質がそれを許しはしなかった。
 良牙は呪泉郷の1つ黒豚溺泉に落ちた事で以後水を被ると黒い子豚に、湯を被り元に戻る体質となっている。
 故に川の水を浴びた事で良牙は黒い子豚となった。その状態では何時もの様に動く事など不可能だ。
 何とか服や荷物だけは流されない様に纏める事が出来たが川の流れの強さにはどうにもできず只流されていく。

「ぶびい゛ぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 どの川を流れているかはわからない。だが1つだけ確実にいえる事は呪泉郷から遠ざかっている事に間違いはない。
 冗談では無い、溺れ死ぬつもりは無いがこのままでは間に合わなくなってしまう。
 だからこそ足掻く、絶対に岸へとたどり着き再び呪泉郷へと――

 が、気が付いた瞬間、何者かが自分を抱きかかえていた。もしや自分が会いたいと願ったあ――


「……」


 だがそれは甘い幻想だった。感情の無い無愛想な男だったのだ。
 とはいえ男のお陰で岸に戻る事が出来たのは間違いない。その意味では感謝はしている。
 しかし――良牙は感じ取っていた、自身を助けた男の放つ異様な雰囲気を――
 そう、自分達格闘家とはどこか違う殺伐とした――
 もし男が敵、あるいは危険人物だとしたら? 今のか弱き黒豚の状態では勝てる道理は全くない。
 故に男から逃れデイパックから湯の入ったポットだけを回収し迅速に距離を取る。
 そして相手の姿が見えないのを確認した上でポットに入ったお湯を自身にかける――
 そうすることで本来の人間の姿に戻――


「お前は……生きて……いたのか……」


 その瞬間、その男が既に自分の側にまで来ていたのだ。距離は十分に取った筈、なのにもう追いついてきたというのか?
 いや、その事は問題では無い――奴の発言から察するに奴は自分が死んでいたものだと思っていたという事になる。
 だが、良牙にとっては初対面の男だ、故に――



「何をワケのわからん事を……俺とお前は初対面じゃないのか?」


 そう応えた。それを聞いた男は只無言で、

「……!」
「なっ……お前は……」

 あの時遭遇した赤い仮面の戦士へと変化した。

「……なるほど、あの時のアンタだったか」

 そして元の姿に戻った男が良牙の服や荷物を投げ渡す。

「どうやらアンタに助けられた様だな」
「……」

 良牙の言葉に対しても男は表情を何一つ変えない。

「何なんだコイツ……何を考えている……」

336I am ◆7pf62HiyTE:2012/04/27(金) 12:36:10 ID:QXc/j6QU0



PART.3 『良』


 かくして良牙の着替えも終わり2人は面と向かい合う。

「そういやアンタ、あの赤い仮面の姿になっていたがアレは何なんだ?」

 今更な話だが良牙は感じた疑問をぶつける。水を被ったわけじゃないのに変身した以上呪泉郷関係者じゃないことは明白、それ故に聞いてみる。

「バダンだ……俺の身体はバダンによって奪われ……この身体を与えられた……いや、身体だけではない、記憶も何もかもを奪われた……」
「バダン……何だそりゃ?」

 男の知る限りBADANの侵攻は世間的にも話題になっている。普通に考えればバダンの存在を知らない事に違和感を覚えるわけだが男はその事に気づかない。

「よくわからんが、そのバダンとかいう連中にそんなふざけた身体にさせられたって事だな」
「お前はどうなんだ……黒豚の身体を与えられたのか?」

 そう聞き返す男に対し、

「別に与えられたわけじゃねぇ、奴のせいで……俺は……」

 良牙は早乙女乱馬によって呪泉郷に落ち黒豚に変身する体質になった事を話す。
 更に続けて自身の知り合いについても大まかに説明する。
 良牙が想いを寄せる女性である天道あかね、
 良牙にとって一番の因縁の相手であり呪泉郷に落ちた事で特殊な体質となった早乙女乱馬(なお、あかねの許嫁という事については一切説明してしない)
 そして乱馬や良牙同様呪泉郷に落ちたパンスト太郎、そして(既に死亡しているが)シャンプーについて説明した。

「……呪泉郷によって人の身体を奪われたという事か……」
「………………もっとも、悪い事ばかりってわけじゃなかったけどな、この身体のお陰であかねさんやあかりちゃんと………………」

 聞こえないぐらい小声で口にしたが男の耳にはしっかりと届いていた。

「あかり……ちゃん……?」
「ああ、あかりちゃんはこんなふざけた殺し合いに巻き込まれてないから気にしなくていい……そういやアンタ記憶も奪われたって言っていたが何も覚えていないのか?」
「ああ、名前すらもな……ゼクロス……それがバダンに与えられた今の俺の名だ」
「ちょっと待て……」

 良牙は名簿を取り出し確認する。

「おい、ゼクロスなんて名前何処にも無いぞ。アンタの本名がここに出ているんじゃないのか?」
「……」

 そう口にする良牙の言葉に今更ながら男は名簿を確認する。

「ミカゲ……!」

 感情の無い声で1つの名が紡がれる。

「ミカゲ……三影英介の事か……それがアンタの……」
「違う……バダンにいた頃組んでいた男だ……だが……」
「だが?」
「……いや、なんでもない……」

 カメンライダーによって殺された筈のミカゲの名前があった。それはつまりミカゲがあの後も生きていた事を意味している。
 普通の人間ならば喜ぶべきところなのだろう、しかし今の男はその感情すら浮かんでこなかった。ただ、何とも言えないものが渦巻くのを感じた。
 ちなみにミカゲが生きていた事についてはそこまで驚くべきことではない。BADANがミカゲの肉体を回収し再生させた所で何ら不思議は無いのだ。
 何しろ男自身一度死んでいたにも関わらず今の身体となって戻ってきたのだ、ミカゲにも同じ事が起こってもおかしくはない。
 とはいえ、今更ミカゲと再会した所で昔の様に組むという事も無いだろう。
 ミカゲは今後もBADANの為に戦うだろうが、男自身にはもはやそんな意思はないのだから。

「他に何か覚えている事は無いのか?」
「カメンライダー……俺から全てを奪っていく奴らだ……」
「仮面ライダー……確かあの場で名乗りをあげていた仮面ライダー2人の事か?」

 思い返せば最初のあの場では乱馬の他にも仮面ライダー1号本郷猛、仮面ライダー2号一文字隼人という2人の仮面ライダーが主催者らしい加頭順に向かっていた。

「そうだ……奴らに一度はミカゲの命を奪われた……」
「よくわからんがアンタはバダンや仮面ライダーに色々奪われたらしいな、待てよさっきアンタが戦っていたエターナルも……」
「カメンライダーだ……俺は二度と奴等に何かを奪われるつもりはない……奪われる前に奴等を……!!」

 良牙自身男の事情を全て把握しているわけではない。
 だが、BADANに身体と記憶、さらには名前を奪われ、かつての仲間も仮面ライダーによって奪われた事は理解できた。

337I am ◆7pf62HiyTE:2012/04/27(金) 12:36:45 ID:QXc/j6QU0

「それで……アンタ自身は乗っているのか?」
「乗っている……どういうことだ?」
「加頭の野郎が言っていただろう、優勝したらどんな願いでも叶えると……」
「……優勝して記憶を取り戻すつもりはないのか……そう聞いているのか?」

 今更ながらに冷静に考えてみる。確かに優勝する事で自身の空白を埋められるのだろうかと考えなかったわけではない。
 そして良牙の指摘を考えれば優勝する事で記憶を与えて貰うという理屈も成立するだろう。
 だが、不思議とそんな気にはなれなかった。

「そんなつもりは無い……」
「意外だな、奪われた事を恨んでいる所を見ると是が非でも取り戻しにくると思ったんだがな。記憶の方は別に良いのか?」
「そういうわけじゃない……ただ……女が……」

 理由はわからない――だが、加頭の言い方はどことなくBADANの言い方に近いものを感じていた。
 そもそもこの殺し合いに巻き込んだのは加頭達の方だろう、それを踏まえれば加頭達のやり方はBADANのそれと殆ど同じ、
 それを考えれば素直に従う気にはならないだろう。

 そして何より――


「女が涙を流すのだ」


 時折見える謎の女性――彼女が涙を流すのが見えたのだ。

「その女はあんたの恋人か?」
「わからない……ただ……お前を助けようとしたあの時……女は喜んでいた様に見えた……」
「よくわからんがその女はお前が殺し合いに乗る事を望んでいないって事だな。ま、あんたが殺し合いに乗っていないっていうならそれで構わん。それでアンタ、あかねさん……後ついでに乱馬とパンスト太郎に会わなかったか?」
「エターナルとお前以外に会った奴はいない……」

「そうか……おっとそういや自己紹介していなかったな、俺の名は響良牙だ」

 散々知り合いについての説明はしたが自分自身の名前は話していなかった事を思い出しここにきて自己紹介をした。
 もっとも良牙自身、これにはそこまで大きな意味を持たないものだと感じていた。
 だが、次に男の見せた反応は予想外なものであった。


「リョウ……今、なんと言った?」
「ん、聞こえなかったか? 俺の名前は響良牙だと言ったんだ」
「リョウ……だと……」
「だから良牙だって言ってんだろうが……待てよ……」

 今までと違う男の反応、恐らくは自分の名前に何かを感じたのだろう。
 だが何を感じたというのか? 良牙は名簿を再び取り出しそれを確認する。

「別に俺の名前なんぞパンスト太郎なんかに比べて普通だと思うが……どういう事だ……」

 そしてある名前を見つける。

「おい、もしかしてアンタ……『村雨良』って名前じゃ無いのか?」
「ムラサメ……リョウ……」

 良牙がそれに気が付いた理由、それは男が『響良牙』の『良』に強く反応していたからだ。
 そして名簿を確認し参加者66人の名前を改めて確認する。
 そして名前に『良』が入った人物は響良牙と――村雨良の2人だ。

『脅えるな……ムラサメよ……汝は……戦いにやぶれ死んだ』

『ミカゲ……ムラサメ……』
『おいニードル、ムラサメじゃねぇゼクロスと呼ひな』

『ゼクロス……いや、ムラサメ君!! バダンを信じてはいけない!!』

 思い返せば時たまではあったが『ムラサメ』と呼ばれていた様な気がする。今更ながらにそれを思い出した。

「確かにムラサメと呼ばれていた覚えはある……」
「なんだ、奪われた奪われた言っている割には結構思い出せているじゃないか。良かったじゃねぇか、名前を思い出す事が出来て」
「……」

 確かに自身は『村雨良』なる人物なのかもしれない。だが、実感が全く伴わないのだ。
 実際に名前がそれであったとしても自身の名前がそうであると完全に自分自身認識出来たというわけではないのだ。

 喜ぶ事も無く変わらぬ表情の男を見て良牙は苛立ちを募らせていく。

「ったく……1つ良いことを教えてやる、あかねさんに関する話だが……」

 良牙はここである話をする。
 ある時、あかねは乱馬の記憶だけを奪われた事があった。(ちなみに奪った張本人がシャンプーである事は伏せておく)

「とはいえ取り戻す方法はあったわけだが……」

338I am ◆7pf62HiyTE:2012/04/27(金) 12:37:20 ID:QXc/j6QU0


 しかし、結局の所そんな方法は取らなかった。
 いや、その目的を果たす為乱馬は敢えて良牙達に倒されようとはした(シャンプーとの取引でらんま(女性化した乱馬)を半殺しにする必要があった為(注.当時シャンプーはらんまと乱馬が同一人物である事を知らなかった))。
 ちなみに良牙自身は乗り気では無かったが結局の所逆上し立ち向かったが返り討ちに遭った(注.これも伏せている)。

「……詳しい事は知らんがいつの間にかあかねさんがやって来たらしい。そこで奴は……暴言の数々を……」

 この時前述の通り良牙自身返り討ちに遭い気絶していた為、間の出来事を把握し切れてはいなかった。
 実際は良牙が気絶した後、乱馬の父である玄馬、あかねの父である早雲がノリノリで乱馬をボコボコにしていた(勿論、これは乱馬とあかねがが許嫁同士なので記憶が戻らないと困る為当然の流れだが)。
 そこにあかねがやって来たわけだが事情を知らないあかねにしてみれば知らない弱い人がいじめられているだけにしか見えず、自分が相手になると言い出した。
 そんなあかねに対し乱馬は

『誰の為に黙ってやられてると……ほんっとにおめーは、かわいくねーな!』

 無論、これはあかねの為にやられているのにその心中を察してくれない故に乱馬が発した言葉である。
 だが、その言葉にあかねは反応を見せた。そして早雲が乱馬をけしかけ乱馬自身もノリノリと、

『色気がねえっ!! 凶暴! 不器用!! ずん胴! まぬけっ!!』

 ちなみに、丁度良牙が意識を取り戻したのはこのタイミングである。そして、その言葉に対しあかねは、

『な……なによ、乱馬のバカー!!』

 と、乱馬に対し平手打ちを決めたのだ。

「……思い出しただけで腹立ってきたぜ……」
「……それで何が言いたい?」
「つまりだな、何か切欠さえあれば幾らでも思い出せるって事だ。あの時のあかねさんの時の様に……別に乱馬の事など思い出さなくても良かったが……」

 良牙が何故か怒りに震えている事などお構いなしに男は考える。確かにこれまでの戦いを切欠に『痛み』や『疲れ』を思い出せた。
 そして良牙のやりとりから自身が『村雨良』と呼ばれていた事もおぼろげではあったが思い出せそうな気がする。

「……何故そのあかねはその言葉でその男の事を思い出した?」
「あの野郎がいつもあかねさんに対して吐いている暴言だからだろう……思い出させるにしても他に何か無かったのか……」

 そう怒りに震える良牙を余所に男の表情は変わる事は無い。

「ま、運良く思い出せたら良いな。それじゃ俺はこれで行かせてもらうぜ、あかねさんを守らなきゃならないからな。そうだ、あかねさんや乱馬、ついでにパンスト太郎に会ったら……」
「何処に行くつもりだ?」
「さっき話した呪泉郷だ、俺達が共通で知っている場所はあそこぐらいだからな、あかねさん達に会ったら呪泉郷に向か……」

 そう言いながら南方向(注.呪泉郷は東方向)へと足を進めようとする良牙であったが。

「……守れるというのか? カメンライダーから……」
「ふっ、あんたに心配されにゃならんほど弱くねぇんだよ、あばよ……」

 そう言って走り出す良牙であった。

 だがその直後、背後からとてつもない威圧感を感じた。
 神経を研ぎ澄ませ振り向く。すると眼前まであの男が迫り拳を繰り出していた。
 良牙は両腕を組んでその一撃を防ぐ。

「……いきなり何しやがる?」
「お前の力では奪われるだけだ……エターナルの事を忘れたのか?」
「つまりこう言いたいわけか、今エターナルに遭遇したらなすすべ無くやられるって事か?」

 良牙の問いかけに無言で頷く。確かに先の戦いでは死にかけており、何とか撃退できたのもすんでの所で獅子咆哮弾を決める事が出来たからでしかない。

「それで俺を死なせない為に俺を止めたいって所か? 無愛想な割に随分と親切じゃねぇか、だが余計なお世話だ。
 大体、テメェだってあのエターナルにやられていたじゃねぇか」
「……!」
「悪いが俺は奪われるつもりも足を止めるつもりもない、何があろうともあかねさんを守り抜いてみせる」
「守り抜く……カメンライダーにお前の力が及ぶと思っているのか?」
「だったらテメェをぶちのめして証明してやろうじゃねぇか」
「良いだろう……来い……」

 その言葉と共に男――ゼクロスは赤い仮面の戦士へと姿を変えた。

 かくして戦いのゴングは静かに鳴り響いた――

339I am ◆7pf62HiyTE:2012/04/27(金) 12:37:55 ID:QXc/j6QU0
PART.4 バトルルネッサンス


 早乙女乱馬にとって一番の好敵手といえば誰であろうか?

 乱馬はここに至るまで数多の強敵と戦い続けその殆どに勝利していた。本人自身格闘と名がつけば負けたことが無いと口にし、実際に勝利し続けてきた事からその実力が確かなものなのはおわかりいただけるだろう。
 その強敵の中でも一番の好敵手と言えるのは響良牙であると考えて良い。

 良牙は元々家族全員が重度の方向音痴である事を除けば至って普通の家庭で育った普通の人間である。
 乱馬やあかねの様に格闘家の家系であるとか道場があるという事も無く、シャンプーの様に武術に長けたある村の一族という事も無く、
 パンスト太郎の様に生まれた時に呪泉郷の水を産湯として浴びた事で怪物へと変身する力を得たという事も無い。
 つまり、ある意味で言えば上記の4人、いやそれ以外の知り合いの大半は幼少の頃から格闘家としての特異な背景を持っていたと考えて良いだろう。
 だが、良牙はそうではない。方向音痴であったお陰で旅やサバイバルに適した力を得たがそれは格闘と直接関係があるとはいえない。ある程度の力は持てても所詮はその程度レベルでしか無い。

 恐らく本人は決して認める事はないだろうが高校においての乱馬との出会いが無ければ今の良牙の姿は無かったと言っても良い。
 それこそあかねやあかりとの出会いすら無かったであろう――

 良牙が通っていた高校で2人は出会った。

『きさま……名をなのれっ!!』
『早乙女乱馬』
『早乙女乱馬、カレーパンの恨み忘れんぞ』

 その後も度々昼食のパンを巡り争い続け、ある時勝負をする事となった。
 だが、良牙は方向音痴故に約束の場所(良牙の家から一直線に500m進んだ所にある空き地)に来ることが出来なかった。
 その後中国に渡った乱馬を追い良牙自身も中国に渡ったが――
 そこで(乱馬と玄馬の所為で)呪泉郷に落ち黒い子豚に変身する体質となったのだ。
 良牙にとっては悲劇としか言い様の無い話だ。だが、幸か不幸かあかねは黒い子豚状態の良牙をとてもよく気に入り、Pちゃん(PigのP)と名前を付けて可愛がってくれた。
 ちなみにあかねはPちゃんの正体が良牙である事を知らない。また、あくまでもあかねは良牙の事を『良い人』あるいは『友達』として好意を持っている事を付記しておく(つまり恋愛感情は皆無といえばわかりやすい)。

 その経緯もあり、良牙は度々乱馬に果たし合いを挑んだり、あかねの元にPちゃんとして戻ってきたりしていたのだ。
 更に言えばあかりとの出会いに関してもブタが関係している。
 ブタが大好きなあかりが初めて好きになった男性、それが良牙だったのだ(その切欠自体は彼女の家で育てているブタ相撲の横綱カツ錦に勝ったからなのだが)。
 当初はブタ呼ばわりしていた事からからかわれている(あかりにしてみれば悪意は皆無でむしろ最大級の賛美のつもりなのだが)と思った良牙は彼女の好意を信じることが出来なかった。
 だが、切欠はどうあれ彼女が本気で良牙に好意を向けているのを理解した良牙は自身の体質を許してくれるならとも考える様になった。
 そして彼女は良牙が豚に変身する事を知っても変わらぬ――いやむしろ理想の男性と断言したのだ。その後も順風満帆とはいかないまでも2人の付き合いは続いている。
 なお、良牙はあかねへの想いを諦めているわけではない。

 だが、これらは全て乱馬との出会いがもたらしたものである。
 同時にその出会いがあったからこそ度々良牙と乱馬は勝負を繰り返していた。
 時には乱馬の圧倒的な力になすすべ無く敗れた事もあった、だがその時は良牙自身が修行し強くなった。
 時には良牙が習得した技で乱馬を打ち破った事もあった、だがその時は乱馬自身がその技を習得した上で良牙を倒した。
 象形拳を極めしジャコウ王朝のライムとの戦いの時、その力と打たれ強さに圧倒されてはいたが、

『スピードは乱馬ほどじゃねぇや! ふっ、乱馬よ……貴様との日頃の小競り合い、結構役に立ちそうだぜっ』

 そう良牙は考えていた。このことからもわかるとおり、乱馬との戦いが無ければライムに勝てる道理も無かっただろう。
 乱馬との戦いが良牙をここまで強くしたという事だ。

340I am ◆7pf62HiyTE:2012/04/27(金) 12:38:30 ID:QXc/j6QU0


 森の中を赤い影が飛び回る、その中央には良牙が身構えている。

「どこだ……どこから来る?」

 次の瞬間、良牙の背後にゼクロスが現れその拳を――

「ぐっ!!」

 良牙は今一度両腕を組み防御姿勢を取りゼクロスの繰り出す拳を受け止める――
 だが、そのまま後方数メートル飛ばされ樹木へと身体を叩き付けられた。
 一方のゼクロスは次の一撃で決めるべく良牙へと迫るが、

「獅子咆哮弾!」

 良牙の両手から気の塊が飛び出しゼクロスは僅かに後方へと押し戻された。

「まだ……戦うというのか……」
「テメェの一撃なんざ全く効いてねぇんだよ! 小学生に蹴られたぐらいのもんだ!」

 そう言いながらゼクロスの眼前に迫り、

「爆砕点穴!」

 ゼクロスのすぐ足下の地面を爆砕し土砂を吹き出させ、

「でりゃぁ!」

 すぐさまその背後に回り込みその顔面へと拳を叩き込む。だが、ゼクロスは敢えて避けようとせずそれを受け止める。

「……この程度か?」

 そのまま良牙の両腕を掴み高く放り投げた。

「がぁっ……」

 そして空中を舞う良牙にゼクロスが接近してくる。

「ちぃっ……獅子咆哮弾」

 だが、ゼクロスが仕掛けてくる前に良牙は再び気の塊を放出しゼクロスに命中させると共に体勢を立て直し地面へと着地した。
 それでもなおゼクロスが迫るが、

「爆砕点穴!!」

 完全に迫る前に地面を粉砕し吹き上がる土砂を直撃させると共にそれを目くらましにしてゼクロスとの間合いを維持していく。

「(ちっ……確実に入った筈なのに全然効いてねぇ……いや、パワーに打たれ強さだけじゃねぇ……スピードまで乱馬以上となると……)
 おい、エターナルの時に使った武器はどうした!?」
「必要無い……」
「(しかもあの野郎……一応殺す気はないらしく、あれで手加減してやがる……そして仮面ライダーは本気を出したコイツ以上……どうやらコイツに勝てなきゃどうにもならねぇのは本当らしいな……)」

 強がってはいても良牙の受けたダメージは決して軽くはない。爆砕点穴の特訓などのお陰で凶悪的なまでの打たれ強さを身につけてはいてなお全身に痛みを感じている。
 いや、むしろその逆、その特訓で打たれ強さを身につけていなければ既に気絶させられていただろう。

「お前の方もその技(爆砕点穴)を何故俺に直接打ち込まない?」
「それで倒させるつもりもねぇんだろ?」

 良牙はこう答えたものの実際は効果が無いからだ。
 爆砕点穴は万物に存在するという爆砕のツボを押す事で文字通り爆砕する技だ。だが本来は土木用の技故に人体には全く効果が無い。
 つまり(全身の殆どが人工物故に実際の所は不明瞭だが)ゼクロスに使っても効果は無いと考えて良い。
 とはいえ実際に出来てもそれをそうそうさせてくれる相手とも思えないのもまた事実。


「(やはり泣いているか……)」

 ゼクロスの視線には彼にしか見えない女性がまたしても涙を流していた。
 こんな戦いなど望んでいないかの様に――

「(……俺にもわからん……何故戦っているか……)」

 実の所ゼクロス自身も何故良牙と戦っているのかがわかってはいなかった。
 そもそも、良牙一人が生きようが死のうが今更どうでも良かった筈なのだ。
 だからこそこのまま一人行かせても別に構わない筈だった。

 だが去りゆく良牙の背中を見て思ったのだ。

 ――カメンライダーに遭遇すればなすすべ無く殺される――

 エターナルになすすべ無く倒される良牙の姿、そしてカメンライダー1号と2号によって仕留められたミカゲの姿が重なった。

341I am ◆7pf62HiyTE:2012/04/27(金) 12:39:05 ID:QXc/j6QU0

 そう思った瞬間、身体の方が勝手に動いていた。
 だが頭でも考えなかったわけではない、理由はわからないがこの男を奪われたくは無いと――
 普通の人間の身体を奪われても喜び、怒り、悲しみ、楽しみの感情を浮かべ話す男――
 自分同様奪われまいとする為に戦おうとする男――
 そして何より、自身が失った『名前』や『記憶』を取り戻す切欠を与えてくれたこの男――
 このやり方を女が望むわけがないのはわかっている。だが、他にどうすべきかわからなかったのだ――

 勿論、その命を奪うつもりは無い。故に武器は一切使わず力と技だけで良牙を無力化させるつもりだ。
 重傷を負ったとしても例の苔の力を信じるならば十分治療は可能だろう。どうせほぼ全身改造された自身には無用の長物だ。惜しくは無い。

 それに別の目的もある。調整不足故に不調のこの身体、どこまで出来るかを再確認する意味合いもある。
 後に控えるカメンライダーとの戦いで突如不全に陥っては只奪われるだけだ。
 その相手として良牙はある意味適当な相手と言えよう。

「行くぞ……!」

 木々が倒れ、地面から土砂が吹き出す音が幾度となく響き渡る――

「爆砕点穴、ていっ、爆砕点穴、でりゃ、爆砕点穴、だりゃ」

 良牙が次々と地面を粉砕、木々を折り倒してはゼクロスに投げつけていく。
 ゼクロスの猛攻を受けては勝てないと考えた良牙は爆砕点穴で吹き上がった土砂を盾あるいは目くらましにしつつ木々を投げつけゼクロスを足止め兼攻撃を仕掛けていた。

「ぐっ……これじゃ乱馬みたいな戦い方じゃねぇか……」

 思い返すのは乱馬の姿だ。
 乱馬は爆砕点穴と強靱な打たれ強さを得た自身に対抗するべく敵前大逆走を――
 要するに逃げながら反撃手段を考えようとしたという事(但し玄馬に言わせれば案外難しいとのこと)だ。
 あまりにも卑劣な手段を自分自身が似た様に使ってしまっている状況に憤りは感じるが四の五の言ってはいられない。

「だが奴を倒す方法はわかった……」

 とはいえ、あの打たれ強いゼクロスを撃破する方法は一応浮かんだ。
 勝算が高いとは言えないが十分に試してみる価値はあるだろう。

 と、そうこうしている内に良牙の背後に川の流れる音が響いてきた。

「川……水を浴びると子豚になるんだったな……逃げ場は無いという事だ」

 良牙は丁度川岸に追い詰められた形となった。
 川に落ちる、あるいは攻撃の余波で川の水が飛び散り良牙にかかった時点で子豚となり戦闘は終了となる。

「逃げる? 悪いが俺も次で決めさせて貰う」

 そう言いながら近くにあった大岩と移動する過程で確保した巨木をそれぞれ片手に抱える。

「……!」

 そんな良牙の反応などお構いなしに無言でゼクロスは叩く飛び上がる。

「今だ!」

 良牙は空高く大岩と巨木を放り投げた。

「何処に投げている……?」

 だがそれらはゼクロスから大きく外れていく。一方のゼクロスは両腕を構えポーズを取り、

「ゼクロス……キック」

 右脚を光らせた状態で蹴りを決めるべく良牙へと迫っていく。
 無論、その直撃を受ければ良牙であっても致命傷なのは明白だ。
 だが、ゼクロスは良牙自身に当てるつもりはない。良牙の足下の地面に直撃させその衝撃だけで川へと落とす算段だ。
 光るタイミングは十分に測ってある。着弾タイミングで光が消失することは無い。
 例え爆砕点穴あるいは獅子咆哮弾で迎撃しようともその攻撃ごと打ち破れるだろう。

 一方の良牙はゼクロスの右脚が光ったのを見て危機を察知する。
 普通のパンチやキックならば爆砕点穴か獅子咆哮弾で目くらましをすれば済むがあのキックではそれごと打ち破られる。

「まずい……」

 ゼクロスの力を見誤った――良牙は自身の失策を呪った。
 そしてふと考えた。もしかつて自身の腹部に描かれた拳印が描かれたままなら十分対抗できたであろう事を――

342I am ◆7pf62HiyTE:2012/04/27(金) 12:39:57 ID:QXc/j6QU0

 が――

『マヌケなラクガキ。』
『バカみたい!!』

 自身(但し、Pちゃん状態)の腹部のラクガキを見たあかねの反応を思い出し、重く沈んだ気持ちになっていく。

「! 待てよ……!」

 そして何かに気づき再び意を決し、


「獅子咆哮弾!!」


 両腕から気を塊を放出――但しその方向はゼクロスでは無く地面――


 本来、獅子咆哮弾は爆砕点穴同様の土木技である。爆砕点穴よりも大量の岩石を一度に吹き飛ばす程の力を持っている。
 そして、今良牙はかつて遭遇した自身にとって不幸な出来事を思い出し重く沈んだ気持ちとなった。
 獅子咆哮弾は不幸などといった重い気を打ち出す技、それゆえ不幸であればある程その力を増す技である。
 故に、今はなった獅子咆哮弾は先の戦いではなった完全版ほどではないものの絶大な力を発揮するということだ――


「何……!!」


 獅子咆哮弾で砕かれ舞い上がった土砂がゼクロスへと降りかかる。無論そのダメージ自体は大したものではない。
 だが、地面に着弾する直前、ゼクロスの右脚の光が消失する。大量の土砂により勢いを大分相殺され、さらに地面が崩された事で着弾タイミングが遅れてしまったのだ。これでは通常のキック程度の力しか発揮しない。

 その一方、良牙の姿が消失した事に気が付いた。まさか川に落ちて自滅したのか? そう思いながらゼクロスは周囲を見回すが


「爆砕点穴!!」


 次の瞬間、自身に石の雨が降り注いできた。


「まさか……さっきの岩は……」


 この瞬間、ゼクロスは良牙の狙いに気が付いた。
 良牙が最初放り投げた大岩、それは自身のキックを爆砕点穴などで目くらまししつつ回避した後、そのまま高く飛び上がり空中で岩を粉砕し砕かれた岩石群をぶつける為のものだったのだ。


「! だとすれば……!」


 となると最初に放り投げた巨木は何か?


「これで終わりだ、■■■!!」


 次の瞬間、胸部に強い衝撃を感じた。


「がばっ……」


 遠い視線の先に巨木が落ちていくのが見える。だが、良牙の投げた軌道からは外れている――
 そう、爆砕点穴を決めた後そのまま巨木の方へと向かい、巨木を足がかりにして再び跳んでその勢いでゼクロスに蹴りを叩き込んだのだ。
 無論、それをもってしてもゼクロスの受けるダメージは通常なら軽微である。
 しかし今のゼクロスはエターナル戦での負傷により胸部を損傷しており今現在もそのダメージを完全に回復させたわけではない。
 そこに強力な一撃を――


「だりゃ!」


 いや、更に拳を叩き込んだ。いかに強靱な肉体を誇るゼクロスといえども負傷した所に立て続けに強力な一撃を叩き込まれたのだ。ダメージが通らないわけもない。


「どうだ、思い知っ……たか……」


 と勝ち誇る良牙だったが、自身のいる位置に気が付き再び我に返る。


「あ゛!!」


 両者の攻防が繰り広げられたのは川岸、そこで相手を蹴り飛ばしてみろ。そのまま川に落ちてしまっても不思議ではあるまい。
 そう、良牙とゼクロスは既に川の真上まで跳んでしまったのである。
 ゼクロスには飛行能力があるとはいえ良牙の猛攻でほんの一瞬意識を飛ばしてしまった。





 故に――





 ぼっちゃーん

343I am ◆7pf62HiyTE:2012/04/27(金) 12:40:30 ID:QXc/j6QU0





PART.5 I am


「全く、酷い目に遭ったぜ」
「……」

 ゼクロスが意識を取り戻した後、2人は再び岸に戻り双方共に元の姿に戻り十数分前と同様に面と向かい合う。

「それで……また俺を止めるつもりか?」

 その良牙の問いに対し男は瓶を投げ渡す。

「……こいつは?」
「傷が重いのなら使え……その説明が正しいかまでは知らんが……」

 その瓶『生命の苔』と書かれた瓶の中には苔が入っている。

「まさかこいつがここにあるとはな……」
「……? 知っているのか……?」
「ああ……」

 それを語る良牙の顔はどことなく遠い目をしていた。
 流幻沢の森に沸く泉、それは生命の泉と呼ばれるものだった。
 その森にあった動物園から脱走した珍獣がその水を飲むことにより次々と巨大化し森へと棲み着いていった。
 さて、あかねはかつてその森に迷い込んだ時に巨大化した珍獣に襲われた事があった。
 その時に森を管理していた真之介に助けられたがその際に瀕死の重傷を負った。
 幸い生命の泉の水のお陰で一命を取り留めたもののそれ無しには生きられない身体となったのだ。
 そんなある時、生命の泉が枯れるという事態が起こる。これは珍獣達の危機でもあり、真之介の命の危機でもある。
 助ける方法は1つ、生命の泉の水源は珍獣中の珍獣ヤマタノオロチの巣、そのオロチの身体に生えている苔のエキスが水に溶ける事で生命の水となる――
 つまり、その生命の苔こそが生命の水の源であり真之介の命を助ける為に必要なものだったのだ。
 そしてあかね、良牙、乱馬、真之介、真之介の祖父の5人は泉の水源を塞ぎ枯れさせたオロチに挑み無事に苔を手に入れオロチの方も再び眠りについた事で泉も元に戻ったのだ。
 (注.ちなみにあかねはPちゃんが来ていた事に気付いていても良牙が来ていた事には気付いていない)
 ともかく、手に入れた苔は真之介の古傷を消し完治させたのを良牙(Pちゃん状態)自身間近で確認している。それを踏まえれば苔の効果は絶大と言える。

「……だがそれを使う程、傷が重いわけじゃない。あんたが持っていろ」

 良牙は男に瓶を投げ返す。

「……俺に効くものではない……」
「俺が動けないほど重傷負っていたら俺自身使えない、それに……」

 そこで出会った真之介、彼はあかねに好意を持っており何度も告白した。(注.何度も告白したというのは真之介のもの覚えが悪い為でしか無く、最終的には告白した事すら忘れていた。)
 一方のあかねの方も真之介の告白に対しまんざらでもない様な反応を見せた。それは決して『お友達』の域を出ることの無い良牙にとっては羨む事である。
 実際の所は助けられた時に瀕死の重傷を負い、その傷が元で死にかけていたからその責任を感じてというのが真相ではある(とはいえ好意は確実にあった)。
 そしてオロチに単身引きつけ危機に陥ったらんまを助けに行く時、

『乱馬を助けに行く!! あたしの許嫁なの!!』

 そうはっきりと言い切ったのだ。

「……それでも俺はあかねさんを守り抜くぜ、決定的にフラれてわかった……それでも後悔しないぐらい好きだって……フラれたって平気だ……平気だよぉぉ〜〜いおいおいおい」
「……大丈夫か?」

 どこか儚げかと思ったら突然泣き出す良牙に対し流石に声をかけてしまった男だった。

「……そういやアンタ、さっきの技は未完成なのか?」
「さっきの技……ゼクロスキックの事か?」
「ああ、光ったと思ったら消えたみたいだったからな。未完成の技を使ったんじゃないかと思ってな……」
「……只の調整不足だ、万全な状態ならこうはならなかったが……随分と衰えてしまったらしい……それでもまだ十分に戦える……」

 そう答える男であったが、

「調整……ああ、バダンに身体をどうこうって言っていたな」
「そうだ、もう長いこと調整を受けていない」
「だが記憶を奪った連中の所に戻るつもり無いんだろ?」

 良牙の問いに無言で頷く。

「調整のアテがないなら、修行でも特訓でもして技を完成させるしかないんじゃないのか?」
「特訓……」

344I am ◆7pf62HiyTE:2012/04/27(金) 12:41:40 ID:QXc/j6QU0

 良牙の指摘通り調整不良を解消する手段が無い以上、今後もこの不完全な状態で戦う、いやそれどころか衰えていく状態で戦わざるを得なくなるだろう。
 その上でカメンライダーを打ち破るには技、あるいは戦い方を見直す必要がある。圧倒的に戦闘力の劣る良牙が自身の意識を一瞬でも飛ばさせた様にやりようはいくらでもある。
 どのみち今のままではカメンライダーを破るのは難しい、最低でも確実にゼクロスキックを決められる様にしなければ戦い様がないだろう。

「ところで、この川に沿って上流に進めば東に進めるんだな?」
「……行くのか呪泉郷に?」
「ああ、俺の知り合いが向かうとしたらそこだろうからな、それともまた止めるつもりか?」

 勿論、良牙自身男との戦いで自身の力では厳しい事は身をもって理解した。それでもあかね(ついでに乱馬)を守るという目的に変わりは無い。
 いや、むしろ力の差を思い知らされたからこそ一刻も早くあかね(ついでに乱馬)と合流しなければならないだろう。
 その良牙の心中を察したかどうかは不明瞭だが今度は男に止める様子はない。

「じゃあな、無事に記憶が戻る様祈っているぜ」


 そう言いながら良牙は歩き出した。そして残された男は、


「『守る』か……」

 静かにそうつぶやく。あの良牙という男はあかねを何よりも守ろうとしているらしい。
 彼女の事を語る良牙は感情豊かで生き生きとしていた。
 そして良牙の話からそのあかねは乱馬という男を守ろうとしていたらしい。
 守るものがあるならば、人は生を実感できるのだろうか?
 だが――男にはそれがない。
 かつてはミカゲという友がいたが今はもう――仮にこの地で生きていても今更共に戦う事も無い以上、やはり違うだろう。

「『名前』も『記憶』も『感情』も無い俺には……」

 ふと度々姿を見せる女性の姿を思い浮かべる――だが、彼女が何者かわからない以上はそれがそうなのかすらわからない。

「俺は……」

 奪われまいとする為にカメンライダーを倒す、しかしそれはミカゲを奪われた罪の意識からに他ならない。
 それは『守る』事とはどこか違う気がする。

 どれぐらいの時が過ぎただろうか?
 1分? 2分? 3分?
 いくら考えても答えなど出るわけもなかろう――

「行くか……」

 ならば動くしかないだろう。このまま只時たま見える女性の幻に惑わされていても意味は無い。
 完全ではないもののエターナル戦で受けた傷もある程度回復した。良牙との戦いで胸の傷が開いたものの戦いに支障が出るレベルではない。
 そう思った矢先――





「おっ、アンタ……ん? 俺は確か川沿いをずっと歩いていた筈だが……」

 良牙が戻ってきたのだ。

「お前は何を言っている?」
「どうやらどこかでまた道を間違えたらしい……」
「………………何処に間違える要素がある?」

 先の激闘で出来たクレーター等川の水が流れた事により結果としてごくごく小さな川が形成され、良牙はそれに沿って歩いて行き気が付けば気付かずにUターンしてしまった。
 そして小さな川(もともと戦いで出来た穴や割れ目に流れ込んだだけなので)が途切れた後は本来の川(その流れの方向に気付かずに)にそって歩き逆走してしまったのだ。
 (余談だが高原でのデートの時も湖に沿って歩くだけの道のりであったにも関わらず、そこから流れる川に沿ってしまい全く別方向に進んでしまった事があった、要するにそれと同じ理屈である)
 男の問いかけに構う事無く良牙は向き直り再び歩き出す。

「まずいな……大分時間を……ん?」

 振り向くと男がついてくるのが見えた。

「なんだ、まだ何か用があるのか?」
「……カメンライダーを探す」
「それで俺についていくっていうのか? 大体呪泉郷に仮面ライダーが向かう保証なんて何処にもないだろう?」


 肝心な問いに対し男は答えない。


「相変わらず無愛想な奴だ。まあいいさ、言っておくがアンタを待つ気はないからな、もたもたしているなら置いていくぜ」
「……『村雨良』だ」
「……アンタ……そうか、なら勝手にしろ……良」
「ああ、そうさせてもらう……良牙」

 かくして響良牙、そして男――村雨良は川沿いを歩き出す。

 何故、男は良牙の後をついて行く事にしたのだろうか?
 あの瞬間――良牙がゼクロスに一撃を入れる時の叫び、

345I am ◆7pf62HiyTE:2012/04/27(金) 12:43:25 ID:QXc/j6QU0

『これで終わりだ、良!!』

 その叫びはゼクロスの中を大きく揺さぶったのだ。
 記憶が戻ったわけではない、それでも――何かを感じたのである。
 無論、それが何かはわからない、それでも――良牙とこれ以上戦う気など起きなかった。
 良牙が『守る』事を――自分が奪う気にはなれなかったのだ。

 そして一度は去った良牙を見た時に考えたのだ。
 このままこの男を――失った記憶などを取り戻すヒントをくれた男を、そして何より『守る』為に戦う男を死なせたくはないと思ったのだ。
 そんな事に何の意味がある? そんなことなどわかるわけがない。
 だが、良牙について行けばもしかしたら見つけられるかも知れない。
 自分が失った記憶の断片を――

 それにもしかしたらカメンライダーに遭遇する可能性もある。
 もともとアテの無い道行だ、何処に向かっても大した違いは無く、道中を1人で行こうが2人で行こうが違いはあるまい。

 その最中、ふと空を見上げる――

「……これでいいんだろう?」

 そこには例の女性が悲しみながらも笑みを浮かべているのが見えた――















 十数分後――





「おかしい、川沿いを歩いていた筈なのに今度は川が無くなっているぞ? 川は何処だ?」
「さっき……曲がらなかったか?」





【1日目/早朝】
【D-4/森】

【響良牙@らんま1/2】
[状態]:全身にダメージ(小)、負傷(顔と腹に強い打撲、喉に手の痣)、疲労(大)
[装備]:なし
[道具]:水とお湯の入ったポット1つずつ(お湯変身2回分消費)、秘伝ディスク@侍戦隊シンケンジャー、ガイアメモリ@仮面ライダーW、支給品一式
[思考]
基本:天道あかねを守る
1:天道あかねとの合流
2:1のために呪泉郷に向かう
3:ついでに乱馬を探す
[備考]
※参戦時期は原作36巻PART.2『カミング・スーン』(高原での雲竜あかりとのデート)以降です。
※現在の進行方向は不明です(また途中で方向転換する可能性があります)。
※良牙のランダム支給品は2つで、秘伝ディスクとガイアメモリでした。
 なお、秘伝ディスク、ガイアメモリの詳細は次以降の書き手にお任せします。
 支給品に関する説明書が入ってる可能性もありますが、良牙はそこまで詳しく荷物を調べてはいません。
※シャンプーが既に死亡したと知りました。
※シャンプーの要望は「シャンプーが死にかけた良牙を救った、乱馬を助けるよう良牙に頼んだと乱馬に言う」
 「乱馬が優勝したら『シャンプーを生き返らせて欲しい』という願いにしてもらうよう乱馬に頼む」です。

【村雨良@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:負傷(右肩に切り傷、左胸から右わき腹までの深い切り傷、左前腕貫通、胸部破損、いずれも回復中)、疲労(大)
[装備]:電磁ナイフ、衝撃集中爆弾、十字手裏剣、虚像投影装置、煙幕発射装置
[道具]:支給品一式、生命の苔@らんま1/2、ランダム支給品0〜2個
[思考]
基本:カメンライダーを倒す。主催の言葉に従い殺し合いに乗るつもりは無い。
1:良牙の後をついて行く(あくまでもついて行くだけ)、『守る』……か。
2:エターナルを倒す。
3:特訓……か。
4:ミカゲに対して?
[備考]
※参戦時期は第二部第四話冒頭(バダンから脱走中)です。
※衝撃集中爆弾と十字手裏剣は体内で精製されます。
※能力制限は一瞬しかゼクロスキックが出来ない状態と、治癒能力の低下です(後の書き手によって、加わる可能性はあります)。
※本人は制限ではなく、調整不足のせいだと思っています。
※名簿を確認しました。三影についてはBADANが再生させたものと考えている一方、共に戦う事は出来ないと考えています。

346 ◆7pf62HiyTE:2012/04/27(金) 12:44:25 ID:QXc/j6QU0
投下完了しました。何か問題点や疑問点等があれば指摘の方お願いします。

ご覧の通り、今回容量が45KBとなるので分割となります。
分割点は>>332-338(PART.01,02,03)が前編(23KB)、>>339-345(PART.04,05)が後編(22KB)となります。

347名無しさん:2012/04/27(金) 20:46:10 ID:1p3rzCOQ0
投下乙です
村雨は殺し合い自体には乗るつもりなしか…一文字と沖の懸念はとりあえず払拭されたな
まあ、仮面ライダーキラーだから危険には違いないけど
そして、良牙の安定した迷子っぷりww

348名無しさん:2012/04/28(土) 01:24:48 ID:ROX1ZZhgO
投下乙です。
別れてそれっきりと思いきや、二人はコンビになったか。
しかも殺意ではなく互いを納得させるために拳を合わせて戦い、解りあう様は正に男の世界!
良牙と良だけに良コンビ・・・今後は、ふたりは良キュア! になりえるかな?

349名無しさん:2012/04/29(日) 10:09:53 ID:SRsY15PI0
加頭の所属する財団X、思った以上にライダーシリーズに出張ってくるな
ガイアメモリやNEVERにとどまらず、オーズのコアメダルやフォーゼのホロスコープスにまで接点あるとは…

350名無しさん:2012/04/29(日) 11:06:00 ID:a7/Nmc/YO
エクストリームでチートしたWでも倒しきれないほどらしいから、財団Xはかなりの組織力と技術力を持ってると思われ。

351名無しさん:2012/04/29(日) 18:30:08 ID:oOC4rUdE0
投下乙です

言いたい事は既に言われているがよく書けてるぜ

352名無しさん:2012/05/05(土) 17:23:33 ID:IT1vp6f.0
シンケンジャーについて質問だけど、外道衆の二の目ってこのロワではどういう扱い?
あと源太のスシチェンジャーってモヂカラの素養がなくても使えるんだっけ?

353名無しさん:2012/05/05(土) 17:56:38 ID:eupJPSaM0
モジカラ修練しなきゃ使えないよ

354名無しさん:2012/05/05(土) 22:03:45 ID:429hwgFoO
とりあえずショドウフォンはシンケンジャーしか使えないとして、モヂカラを使う者同士で
殿がスシチェンジャーを使ってゴールドになったり、源太がショドウフォンを使ってレッドになったりとシンケンジャー間での互換はできる?

355名無しさん:2012/05/05(土) 23:23:39 ID:IT1vp6f.0
>>353 >>354
でも源太のスシチェンジャーってショドウフォンと違って電子モヂカラ使ってるから使用者のモヂカラの能力は関係ないんじゃ
それと確か源太自身にはモヂカラの能力がないからショドウフォンは使えないのではと思うんですが

356名無しさん:2012/05/19(土) 12:31:05 ID:YGSsNp2o0
暁初登場回で「バッタみたいなやつ」がどうのこうの言ってるけど、本郷さんたち変身してなくね?

357名無しさん:2012/05/21(月) 19:14:42 ID:mgH5qLF60
改めて確認してみたら、

「マーダー探偵」での
>>「つまり俺もさっきのバッタみたいな奴になれるってことか」
っていうセリフ

本郷と一文字はタイフーン出しただけだったからおかしいぞ

358名無しさん:2012/05/22(火) 21:38:22 ID:BDncjIo.0
予約来てるね

359 ◆OmtW54r7Tc:2012/05/23(水) 10:04:32 ID:.hBybxgk0
投下します

360未知のメモリとその可能性 ◆OmtW54r7Tc:2012/05/23(水) 10:06:45 ID:.hBybxgk0
「確か光っていたのはこのあたりだったはずだが…」


彼、井坂深紅郎が現在いるのはF−4。
黄金の魔戒騎士の光を目指してここまでやってきたのだが…


「どうやら既に移動してしまったようですね」


しばらく歩き、辺りを見回した井坂はそう結論付けた
まあ、移動したといってもそこまで遠くまで行ったとも思えないが、光の主が向かった方向が分からなければ追いかけようがない


「まあ、生きていればそのうち会えるでしょう。それよりも…」


捜索を打ち切った井坂は、後ろを振り向く。
そして、目の前の茂みをじっと見つめる。


「いい加減出てきたらどうです?」


茂みに向かってそう言い放つ井坂だったが、返事は返ってこない。


「出てきませんか…それなら無理やりにでも出てきてもらいましょうか!」


―――ウェザー!―――


井坂は自らが持つ気象の記憶を内包するガイアメモリ、ウェザーメモリをコネクタに差し込む。
すると井坂の身体は姿を変え、ウェザー・ドーパントとなった


バチバチバチバチバチバチバチバチ!!


変身した井坂は茂みとその周辺に向かって落雷を落とす。
すると、茂みから一人の少女が飛び出してきた。
少女…ティアナ・ランスターは殺気のこもった表情でウェザーを睨み付けていた。


―――トリガー!―――


茂みから飛び出してすぐ、ティアナはトリガーのメモリを取り出し、トリガー・ドーパントへと変身する。


「ほう、戦うつもりですか。穏便に行きたかったとこですが仕方ありません」
「いきなり攻撃してきといてよく言うわ」


井坂の白々しい言葉に、ティアナは呆れたように言い返す。

361未知のメモリとその可能性 ◆OmtW54r7Tc:2012/05/23(水) 10:08:48 ID:.hBybxgk0
『マスター!戦うのですか!?』
「しかたがないでしょ、見つかっちゃったんだから」

それに、逃げているだけでは優勝などできない。
いつかは戦わなければいけないのだ。
幸いにも光の主はどこかに移動したようで、相手は一人だ。


バン!バン!バン!


3発の銃弾が井坂めがけて放たれる。
対する井坂は竜巻を発生させた。
竜巻は3発のエネルギー弾を押し返し、ティアナに向かっていく。

「ちっ!」

舌打ちしつつ向かってくる竜巻を回避するティアナ。
そして再び銃弾を放つ。

「無駄ですよ」

今度は冷気のような煙が銃弾を打ち消し、ティアナを襲う。

「正面から攻撃しても防がれるだけ…それなら!」

次の瞬間、ティアナの姿が複数に増えた。
フェイク・シルエット。
ティアナの得意とする幻惑魔法による分身だ。

「ほう、面白いことをしてきますねえ」

感心の声を上げる井坂だが、すぐに気を取り直して行動に移る。
彼は腰に巻かれたチェーン武器、ウェザーマインを手に取ると、数体のティアナ達に向かって攻撃した。
ティアナ達は鞭で攻撃を受けるとあっさり姿を消し、一人残らずいなくなった。

「全て偽物…本物はどこに?」


バン!バン!バン!バン!バン!


「ぐうっ…!そこですか」

井坂がその方向を向くと誰もいなかったが、しばらくしてティアナの姿がゆっくりと現れた。
彼女は、井坂が分身に気を取られている隙にオプティック・ハイドで不可視化し、彼の側面に回り込んでいたのだ。


「分身に透明化…良い手ではありますが、次は通用すると思わないことだ」
「くっ!」


井坂の言うとおり、彼の実力ならこのような奇策は2度も通用しないだろう。
また新しい手を練る必要がある。
しかし対峙する男は、作戦を練る暇もなく、すでに行動に移っていた。

362未知のメモリとその可能性 ◆OmtW54r7Tc:2012/05/23(水) 10:10:15 ID:.hBybxgk0
「メモリの能力とあなたの実力は大体わかりました、そろそろ終わりにしましょう」

そういって井坂が繰り出してきたのは…雨。
酸性だったり毒性があったりするわけでもない無害な雨が、ティアナの周囲半径数メートルに降り注いでいた。

「こんな雨、大したことないわ!」

トリガー・ドーパントは顔面に有するスコープにより正確無比な射撃を可能とする。
この程度の雨では目くらましにもならない。
ゆえにティアナは気にしないことにしようとしたが、

「いいんですか?早くそこから逃げないと大変なことになりますよ」
「え?」
『マスター!早くこの場から離れてください!』

クロスミラージュが警告するが、遅かった
井坂の降らせた雨がさらに強くなり、やがてそれは水の渦となってティアナの身体を拘束しようとしていたのだ。

「な…に……これ!うご…けない……」

水渦に閉じ込められ、身動きの取れないティアナ。
何とかもがいて脱出を果たそうとするが、無駄であった。

「いき…が……でき、ない」
「苦しいですか?すぐに楽にしてあげますよ」

ニタニタと笑いながら井坂は…ティアナを閉じ込めた水渦に向かって雷を流し込んだ。


「ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!!」


水の中での電撃攻撃は、絶大な効果を上げた。
ティアナは悲痛な絶叫を上げた。

「が……ぐ……」

水渦から解放されても、ティアナは動けなかった。
雷によるダメージと痺れで、立ち上がることができないでいた。

「雨に打たれて寒かったでしょう?今暖めてあげますよ」

その言葉にびくっとしてティアナが顔を上げると、井坂は彼女の首を掴み、身体を持ち上げると…
高熱を彼女に浴びせかけた。

「…………………………」

もはやティアナには言葉を吐くことさえできなかった。
井坂の攻撃から解放されるのと同時に、彼女の身体は崩れ落ち、変身が解除された。



「これで終わりですか。もう少し手ごたえのある相手かと思いましたが、見込み違いでしたね」

変身を解いた井坂は、戦闘不能となり同じく変身の解けた少女を見下ろしながらつぶやいた。
虫の息とはいえ、まだ死んではいないようだ。

363未知のメモリとその可能性 ◆OmtW54r7Tc:2012/05/23(水) 10:12:14 ID:.hBybxgk0
「おや?」

そのとき、ティアナの身体を…正確には彼女がメモリを刺した右手を見て彼はあることに気付いた。

「これは……!」



「(ここまで…か)」

ティアナはすでに自らの生を諦めていた。
身体を動かそうにも動かせない。
自分はあの男に殺されてしまうだろう。
彼女は顔を上げると、井坂を睨み付ける。
こんなやつのために、自分の夢は壊されてしまうのか。
やっぱり自分のような凡人には、こんな場所は不釣り合いだったのだ。

「殺すなら…さっさと殺しなさいよ」

生気のない目で、ティアナはそう言い放つ。
対する井坂は、こちらを笑顔で見ている。
勝者の余裕のつもりだろうか。見ていて腹が立ってきた。
井坂が口を開いた。


「私と手を組みませんか?」


ティアナは驚きで目を見開いた。




「とりあえず、戦いでの消耗が激しいだろう。放送までじっくりと休むとしよう、ティアナ君」
「ええそうね、井坂先生」

ここはF−4。
井坂深紅郎とティアナ・ランスターは休息を取っていた。

『マスター、本当にあの男と手を組むつもりですか?』
「あそこであの申し出を断ったとしても、殺されるだけだったはずよ」
『それはそうかも…しれませんが』
「それに、あの男…井坂先生についていくのは、決して悪いことばかりでもないわ」

ティアナは手を組むことを提案してきた際に言ってきた井坂の言葉を思い出す。

『こう見えても私はガイアメモリ専門の医者でね。私についていけば君をさらに強くさせることができるはずだ』

強さ。
それは今のティアナが求めずにはいられないものだった。
それが手に入るなら、この明らかに井坂に手綱を握られている不平等な同盟も、悪くない。

「私は強くなる。なのはにも、スバルにも、誰にも負けない強さを手に入れて見せる…!」



あの時、井坂がティアナの右手を見て驚いたこと…それはメモリを刺した箇所にコネクタがなかったことだ。

364未知のメモリとその可能性 ◆OmtW54r7Tc:2012/05/23(水) 10:13:48 ID:.hBybxgk0
「(ティアナ君に見せてもらった説明書にも書いてあったが、本当にコネクタ無しで変身が可能なのか…)」

正確に言えば、コネクタ無しでも変身は出来る。
しかしその場合、身体にかかる副作用が尋常でないのだ。
メモリは直挿しに限るが持論の井坂でさえ、コネクタ無しでの変身などしたことがない。

「(園咲琉兵衛…こんなメモリをひそかに開発していたとはやってくれますねぇ)」

実際にはこのT2メモリを開発したのはミュージアムではなく、加頭の所属する財団Xなのだがそんなことを彼が知るわけもなかった。


「(しかし、コネクタ無しでの変身……いいですねえ♪)」


コネクタを介さない変身。
それはつまり、コネクタを使うよりもさらに純粋な意味での直挿しということだ。
きっとかなりの力を引きだすことができるだろう。


「(ティアナ君…君には存分にそのメモリで戦ってもらいますよ)」


彼女、ティアナ・ランスターと手を組んだ理由もこのメモリだ。
彼女はこのトリガーメモリの実験台としてはこれ以上ない逸材だ。

その理由としてまず第一に、メモリとの相性がいい。
戦いで井坂は彼女を軽くあしらっていたが、実際その射撃センスはかなりのものであることは井坂も気づいていた。
おまけに彼女の話によれば、初めてこのメモリを使ったとき、まるで吸い寄せられるようにメモリの方から彼女の身体に入って行ったというのだ。
これは非常に興味深い話だ。
もしかしたら彼女は異常適合者なのかもしれない。

第二に、彼女が未成年であるということだ。
かつて園咲琉兵衛が園咲霧彦に語ったように、大人になりきれていない年頃の子供は、ガイアメモリの成長の可能性を持っているのだ。
霧彦はその話を聞いて激怒したが、この男にそんな情などあるわけもなかった。

惜しむべくは、彼女が心に闇を抱えており、メモリが成長する前に毒素にやられて精神が保たなそうなところだろうか。
まあ、人の精神というものは時にガイアメモリに突然変異をもたらすこともある。
これはこれで一興ということにしておこう。

ともかくそういうわけで、井坂は協力という名目で彼女と行動を共にすることになった。
メモリを使用させるために参加者を襲うことになるが、まあ仕方ない。
もっとも、殺し合いの打破という目的も放棄するつもりはない。
実際、井坂が首輪解除のための情報を集めていることを話すと、ティアナも協力するといってくれた。
おそらく彼女もこの首輪が戦闘能力を抑えている可能性に気づいているのだろう。


「(ティアナ・ランスター君…君には協力してもらいますよ。私の…欲望のために!)」


木陰で休息を取っている彼女を見据えながら、井坂はシュルリと舌なめずりした。

365未知のメモリとその可能性 ◆OmtW54r7Tc:2012/05/23(水) 10:15:37 ID:.hBybxgk0
【一日目・早朝/F-4 森】


【井坂深紅朗@仮面ライダーW】
[状態]:ダメージ(微小)、疲労(小)、腹三分
[装備]:ウェザーメモリ@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式(食料残2/3)、ランダム支給品1〜3(本人確認済)
[思考]
基本:殺し合いを打破して、主催者を打倒する。
0:ティアナと行動し、トリガー・ドーパントを観察する
1:首輪の解除方法を探す
2:手駒を見付ける
3:リスクのある戦闘は避ける
4:空腹に備えて、できるだけ多くの食料を確保したい。
[備考]
※仮面ライダーW第34話終了後からの参戦です。
※首輪により能力が制限されているのではないかと考えています



【ティアナ・ランスター@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:ガイアメモリによる精神汚染(小)、疲労(大)、魔力消費(大)、ダメージ(大)、断髪(スバルより短い)、下着未着用
[装備]:ガイアメモリ(T2トリガー)、クロスミラージュ(左4/4、右4/4)@魔法少女リリカルなのは、小太刀のレオタード@らんま1/2
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0〜1(確認済)、機動六課制服@魔法少女リリカルなのは、下着
[思考]
基本:優勝する事で兄の魔法の強さを証明する。
1:井坂と行動を共にする
2:引き際は見極める。
3:スバル達が説得してきても応じるつもりはない。
[備考]
※参戦時期はSTS第8話終了直後(模擬戦で撃墜後)です。その為、ヴィヴィオ、アインハルトの事を知りません。
※首輪により能力が制限されているのではないかと考えています

366 ◆OmtW54r7Tc:2012/05/23(水) 10:16:31 ID:.hBybxgk0
投下終了です

367名無しさん:2012/05/23(水) 12:00:04 ID:iQEodq8IO
投下乙です!
ティアナ、何てヤバい相手に目を付けられたんだww
このままじゃ、井坂先生の玩具で終わってしまいそうだ……w

368名無しさん:2012/05/23(水) 12:39:12 ID:QnJzOlKIO
投下乙です!
ティアナオワタwやっぱりどこまで行ってもリリカルはカワイソスなのかなって・・・
にしてもここの井坂先生もロワ充してて何よりですw

369 ◆OmtW54r7Tc:2012/05/23(水) 12:50:31 ID:.hBybxgk0
>>367 >>368
感想ありがとうございます。

状態表の方をちょっと修正します

【一日目・早朝/F-4 森】


【井坂深紅朗@仮面ライダーW】
[状態]:ダメージ(微小)、疲労(小)、腹三分
[装備]:ウェザーメモリ@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式(食料残2/3)、ランダム支給品1〜3(本人確認済)
[思考]
基本:殺し合いを打破して、主催者を打倒する。
0:ティアナと行動し、トリガー・ドーパントを観察する
1、他の参加者に出会ったらティアナと共に戦う、ただしリスクの高い戦闘は避ける
2:首輪の解除方法を探す
3:手駒を見付ける
4:空腹に備えて、できるだけ多くの食料を確保したい。
[備考]
※仮面ライダーW第34話終了後からの参戦です。
※首輪により能力が制限されているのではないかと考えています



【ティアナ・ランスター@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:ガイアメモリによる精神汚染(小)、疲労(大)、魔力消費(大)、ダメージ(大)、断髪(スバルより短い)、下着未着用 、全身火傷
[装備]:ガイアメモリ(T2トリガー)、クロスミラージュ(左4/4、右4/4)@魔法少女リリカルなのは、小太刀のレオタード@らんま1/2
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0〜1(確認済)、機動六課制服@魔法少女リリカルなのは、下着
[思考]
基本:優勝する事で兄の魔法の強さを証明する。
1:井坂と行動を共にし、他の参加者を倒す
2:引き際は見極める。
3:スバル達が説得してきても応じるつもりはない。
[備考]
※参戦時期はSTS第8話終了直後(模擬戦で撃墜後)です。その為、ヴィヴィオ、アインハルトの事を知りません。
※首輪により能力が制限されているのではないかと考えています

370名無しさん:2012/05/23(水) 22:49:03 ID:mindFTTY0
投下乙です

よりにもよって相手が悪すぎるぜw
運が悪い所じゃないわw

371名無しさん:2012/05/24(木) 01:35:21 ID:cpa5xDYEO
オーズロワで言うところの龍之介ポジションにティアナは立ったな。(向こうはガチガチに意気投合してるけど)
死者スレで冴子さんが歯ぎしりしてそうだw

372名無しさん:2012/05/25(金) 15:03:53 ID:Hk8DkG920
おお!
予約が2つも!

373名無しさん:2012/05/25(金) 15:06:44 ID:Hk8DkG920
しかし2つ目の予約、ガドルやばいなww

374名無しさん:2012/05/25(金) 19:59:05 ID:bfOe/4G.O
どっちも凄いメンツだ……つか閣下が早速四面楚歌な件w魔法少女二人も下手な事したら詰むな

375 ◆gry038wOvE:2012/05/25(金) 20:39:49 ID:Eg4MeAxw0
すみません、本日中に投下できる筈だったんですが、USBに保存したデータを今見たところ文章全部が完全に文字化けしており、修復方法がわかりません。
どなたか、修復する方法がわかる方いませんか…?

376 ◆LuuKRM2PEg:2012/05/25(金) 20:40:40 ID:TauxDPes0
◆OmtW54r7Tc氏 投下乙です!
ティアナはここからどうなっていくんだろう……強くなりそうだけど、井坂先生のモルモットにされそうで怖いですね。
そして井坂先生も、相変わらずのロワ充ぶりですねw

それでは自分も予約分の投下を開始します。

377答えが、まったくわからない ◆LuuKRM2PEg:2012/05/25(金) 20:41:43 ID:TauxDPes0

 あたしはずっと昔、誰よりも正直で誰よりも優しかった親父の事を憧れていた。
 あの人は世の中が良くならないのをいつも悲しんでいて、泣いてばかり。それでも親父は決して諦めないで、世界が少しでも良くなるように正しい道を歩き続けた。
 でもそんな親父の正しい話を誰も全く聞いてくれない。それどころか、邪魔者扱いすらしていた。
 あたしはそれが我慢できなかった。どうしてみんな、正しい事をしている親父の事を受け入れてくれないのか。親父は何か間違った事をしていたのか?


 そんな時だった。キュウべぇがあたしの前に現れて、どんな願いを叶えてくれるっていう契約を求めたのは。
 その時のあたしはとんでもない馬鹿で、裏に隠れている罠に気付かないで迷わず首を縦に振って魔法少女という名のゾンビになった。最初は親父の話を聞いてくれる人が増えて大喜びして、その裏であたしは人々を苦しめる魔女を倒す正義の味方を気取っていた。
 それからすぐにマミと出会う。マミはあたしよりも魔法少女としての経験が長くて、一緒に魔女と戦いながら色んな事を教えてくれた。
 一緒に戦ってくれる先輩がいてくれた事で、その時の心の底から喜んでいた。だけど、からくりはすぐにばれてしまう。
 契約の事が知られたきっかけはもう覚えてない。ただ、切れた親父はあたしを罵倒し、何もかもに絶望して酒に溺れた事だけは鮮明に記憶に残っていた。しかも、挙げ句の果てにはあたしだけを一人を残して無理心中を起こした。


 みんなあたしのせいだ。あたしが願ったせいで、みんなの幸せを壊してしまった。だからあたしはもう、この力をあたしの為だけに使うって決めてマミとも別れた。
 そして、生きる為に数え切れないほどの盗みを行った。親父の事を分かろうとしなかった奴らを見殺しにして、魔女の餌にした。まあ、不可抗力で助かった奴もいたみたいだけど……正直、あたしにとってはどうでもよかった。
 あとやった事と言えば、ずっと前のあたしみたいに正義の味方を気取る魔法少女を叩きのめした位。これも全てあたしの意志でやったはずなのに、あたしの心はちっとも晴れてこない。
 この世界の法則は、強い者が弱い者をひたすら潰す弱肉強食の仕組みで出来ている。だからあたしは生きる為にとことん強い者の立場にいるつもりだった。だからこの殺し合いでも、周りの奴らを利用してあたしは優勝する。例えその途中で死ぬ事になっても、そうなったら自業自得として運命を受け入れるしかない。
 今までそうして生きてきたし、これからもそうやって生きていくつもりだ。それなのに、この心が晴れた事は一度だってない。一人で生きていくと決めた日から、いつだって心のどこかで変なモヤモヤを抱えていた。


 何でだろうな……本当、あたしでも何でスッキリしないのか全然わからない。まあ、ウジウジと考えるのはあたしの性に合わないし、とことんまで戦うしかなかった。
 この蟠りの正体が掴めないままだとしても。

378答えが、まったくわからない ◆LuuKRM2PEg:2012/05/25(金) 20:42:51 ID:TauxDPes0





 分かり切っていたが、目の前の怪人は強すぎた。全身から放たれる威圧感は凄まじく、当たっているだけで全身の毛孔から汗が滲み出ていく。
 しかし佐倉杏子は雑念を振り払いながら高く跳躍し、迫りくる矢を回避。背後から響く爆音がピリピリと大気を震撼させるが、それに構わず突き進んだ。
 後ろから吹きつけてくる衝撃を追い風にして一瞬で怪人の脇に潜り込み、両手に持つ槍を振るう。槍の先端は右手に激突し、鈍い音を鳴らしながらボウガンを叩き落した。
 そこからもう一度振るおうとするが、すぐに止めて回避行動を選ぶ。怪人は反対側の腕を振り上げるのを見て、杏子は背後に飛んだ。しかしそれで怪人の攻撃が止まる事はなく、反対側の拳が振り下ろされていく。

「チェーンバインド!」

 鋼すらもあっさりと砕きかねないその一撃は杏子の頭を潰そうと迫るが、その瞬間にユーノ・スクライアの叫び声が聞こえた。その刹那、怪人の全身に勢いよく鎖が絡みついて、動きを止めた。

「でかした、ユーノ!」

 杏子はユーノにそう叫びながら、お返しとばかりに槍を振るう。
 何重にも絡みついた魔法の鎖によって拘束された怪人に回避行動など取れるわけがなく、容赦なく叩き付ける事に成功した。それによって凄まじい衝突音が響くも、怪人の巨体は僅かに揺れるだけだった。恐らく、ダメージもそこまで深くないだろう。

(畜生……やっぱりこれくらいじゃ、駄目か)

 先の戦いからわかりきっていたが、やはりこの怪人はちょっとやそっとの攻撃では傷を付けられない。やはりでかい必殺技を放たなければ意味はないだろうが、同じやり方がそう簡単に通じる相手とも思えなかった。

「フンッ!」

 その予想通り、怪人はユーノの鎖を呆気なく引きちぎっている。それを目にした杏子は攻撃が来ると本能で察して、反射的に後ろへ飛んだ。

「下がってろ、杏子!」

 怪人と睨み合う中、杏子の耳に仮面ライダーWへと変身した左翔太郎の叫びが聞こえる。その直後、視界の外から赤と銀に染まったWがその背丈程の長さを持つ棍を握りながら、怪人に飛びかかっていった。
 しかし怪人はそれを片腕だけで受け止める。ガキン、と耳障りな金属音が響いた瞬間に怪人は棍を振り払うが、体制を崩す前にWも後退。それでも怪人の拳は尚も迫るが、Wは上手く回避をしながら棍を振るい続けた。
 無論、これはただの牽制でしかない。先程から何度も攻撃してもまともなダメージにはなっておらず、それどころか身体に傷すら付いていなかった。どういう訳かは知らないが、そんな相手を前に戦いを長引かせても負けるだけ。
 そう思いながら杏子は、こちらの勝利の鍵を握るであろうフェイト・テスタロッサの方に振り向いた。

「アルカス・クルタス・エイギアス――」

 先程も紡いだ言葉と同時に、彼女の周りに雷の球が浮かび上がっていく。それも一つだけでなく、二つ三つと次々に増えていった。

379答えが、まったくわからない ◆LuuKRM2PEg:2012/05/25(金) 20:43:23 ID:TauxDPes0
「ザルエル・ブラウゼル――フォトンランサー・ファランクスシフト!」

 続くフェイトの言葉と同時に、光球はほんの一瞬で三八個にまで増えていく。
 これが戦いの中で四人が立てた策だった。今回は数の有利を利用して、杏子とWとユーノの三人は怪人の気を引きつけて、その間にフェイトは必殺の魔法を用意する。たったそれだけの単純な作戦だが、効果は大きい。
 無論、向こうもそれを黙って棒立ちしているだけでなく、いつの間にか取り戻したボウガンの銃口をフェイトに向けている。

「ガゲスバ!」

 怪人は一度食らっている以上、こうして生きているとはいえその恐ろしさを経験している相手だ。やはり、一番の脅威であるフェイトを潰しにかかるのは当然かもしれない。

「させるか!」
『METAL MIXIMUM DRIVE』

 怪人を食い止める為に飛びかかろうとした杏子の耳に、屈強な男が発しそうな野太い電子音声が響く。
 それに驚いて思わず足を止めた杏子は、Wの持つ棍の両端から凄まじい程の炎が噴き出すのを見た。Wはそれをブンブンと音を鳴らして力強く振り回しながら、怪人に向かって走り出していく。

「「メタルブランディング!」」
「ムッ!?」

 Wに変身している翔太郎と、翔太郎の相棒であるフィリップという男の言葉が重なる。杏子は詳しい事情を知らないが、どうやらフィリップはこの殺し合いを開いた連中に囚われの身となっているらしい。そんな事をしている主催者がWの変身に必要なフィリップの力を使わせる理由は分からないが、今はどうでもよかった。
 怪人はボウガンの標的をWに変えて引き金を引く。轟音と共に風で出来た矢は勢いよく放たれるが、Wは横に飛ぶ事でそれを軽々と避ける。それだけで彼らが相当の修羅場を乗り越えているのだと分かった頃には、既に怪人の目前に到達していた。

「はああああぁぁぁぁぁぁっ!」
「グゥ……ッ!」

 そして翔太郎の叫び声が発せられると同時に、Wは灼熱を帯びた棍を勢いよく振るう。耳障りな衝突音が周囲に響いて、その音源である怪人は呻き声を漏らしながら微かに後退していく。
 棍に纏われた全ての炎は怪人に燃え移るがWはそれに気を止める様子を見せず、フェイトに振り向いた。

「フェイト、今だ! でかいのを叩き込め!」

 数時間前に杏子が言ったのとよく似ている叫びを発するWは、怪人とは逆方向に走り出す。それに頷くフェイトの周りでは、三八個の光球がバリバリと凄まじい音を鳴らしながら輝いていた。

「ファイアーッ!」

 そしてWが射程圏外にまで逃れたのを見計らったフェイトの号令と共に、槍の形へと変わった全ての光は一斉に発射される。それはまるで死刑囚を裁くギロチンのようだった。
 エリアのほとんどを巻き込む程の威力を持つ魔法は、まさに閃光の如く怪人を貫きながらその光で辺りを照らしていく。数秒ほど輝きが薄い闇に包まれたエリアを照らした後、戦場の爆撃音以上に凄まじい轟音が響き渡った。
 二度目のファランクスシフトによって大地は揺れていき、ほんの一瞬だけ太陽にも匹敵する輝きが辺りを飲み込んでいった。




 フェイトの放ったフォトンランサーファランクスシフトが炸裂した事により、炎が勢いよく燃え上がっていく。前に【I―5】エリアの森林を容赦なく飲み込んだ時のように。
 地獄のような炎に巻き込まれれば、どんな生物だろうと一瞬で灰も残らず消えてしまう。普通ならば、誰だってそう思うはずだ。
 しかし熱気を浴びる杏子は、決して気を緩める事はできなかった。

380答えが、まったくわからない ◆LuuKRM2PEg:2012/05/25(金) 20:44:29 ID:TauxDPes0
「嘘、だよな……」

 彼女の口から出てきたのは、そんな言葉だけだった。
 あの戦いのように、牛のような巨大な化け物がまた出てきたわけではない。それとは違う原因で、彼女はこの状況を信じるのを拒んでいた。
 何と、灼熱の中を掻き分けるようにあの怪人がゆっくりと歩を進めながら、その姿を現したのだ。

「その程度、か」

 その巨体から放たれる圧倒的な威圧感を保ちながら、ゆっくりと口を開く。さっきとは違ってWの必殺技も受けているのに、ダメージがまるで感じられなかった。

「マキシマムドライブの上にあんな凄ぇ魔法を受けて、まだ動けるのか……!?」

 怪人が近づいてくる中、Wも同じように驚愕の言葉を漏らしている。きっと仮面の下では翔太郎も表情が歪んでいるに違いない。

「まさか……奴に電気は通用しないのか!?」

 そしてWの左目が輝きながら、フィリップの声が耳に響く。

「おいフィリップ、それはどういう事だ!?」
「詳しい原理は分からないが、恐らくあの怪人に電気の特性を持つ攻撃は通用しない! でなければ、あれだけの破壊力を持つフェイト・テスタロッサの魔法を受けても立ち上がれるなんて考えられないからだ!」
「何だと……!?」
「マジかよ……!」

 仮面から聞こえてくるフィリップの推測に驚いたのは翔太郎だけでなく、杏子も同じだった。生きる為に必死に考え、この身に穴を開けてまでやった策だったが、それは全くの無意味だった事になる。
 ふとフェイトの方を一瞥すると、あれだけの魔法を使った反動で息を切らしていた。しかも彼女の十八番と思われる電気が通用しないのがショックだったのか、今にも倒れそうに見える。

「そんな……ッ!」
「フェイト、しっかりして!」

 しかしそんなフェイトが倒れそうになった途端、ユーノがその小さな身体を支えた。それから問いかけてくるユーノにフェイトは「大丈夫」と答えるが、どう見たって痩せ我慢にしか思えない。
 それが見てられなかったのか、ユーノは回復魔法を使ってフェイトの疲れを癒した。

「おい杏子、ここは俺が引き受ける! その間にお前は二人を──」
「逃げられると思ったか?」

 一方でWは叫ぶが、怪人の冷酷な呟きによってあっさりと遮られる。
 その刹那、地面が揺れる轟音が聞こえて杏子の本能が警鐘を鳴らす。咄嗟に前を振り向くと、あの怪人が凄まじい勢いで突貫してくるのが見えた。





 殺し合いの舞台に用意されたエリアの一角に、風都を模した町が存在する。そこで吹きつける風はとても穏やかだが、浴びる彼女の心中は決してそうではなかった。

『────やはり、我々はまったく違う時代、または別の世界から連れてこられた可能性が高いな』

 数分前に訪れた警察署で出会った仮面ライダーの一人である結城丈二の言葉が、東せつなの脳裏でずっとリピートしていた。
 テッカマンやNEVER、それに仮面ライダーを始めとした未知の存在がこの島に集められている。そんな事が出来るのは、全パラレルワールドの統制を目的とした生みの親、メビウス以外に考えられなかった。
 考えてみればこの殺し合いの目的自体が、ラビリンスが人々の不幸を集めてシフォンを再びインフィニティにする可能性がとても高い。その事を、丈二に伝えられなかったのを今更になってせつなは後悔する。

381答えが、まったくわからない ◆LuuKRM2PEg:2012/05/25(金) 20:45:02 ID:TauxDPes0
(それにしても、何者だったんだろう……あの涼邑零って人)

 そして彼女は涼邑零と名乗った謎の青年の事を思い出す。彼は決して悪人ではないのかもしれないが、泉京水を容赦なく斬ろうとしたから完全に信用していいのかどうか分からない。
 そもそも零のせいで、丈二との話も中途半端な形で終わる事になってしまった。別に彼を恨むつもりは全くないが、それでもせつなは引っかかりを感じている。
 しかし、過ぎた事をいつまでも考えたって仕方がない。

(まあ、次に会えた時に話せばいい……かな? 結城さんに涼邑さんも、無事でいてくれるといいな……)

 今はやるべき事をしっかりやりながら、みんなを探すのが最優先だ。そう言い聞かせながら心のモヤモヤを払い、せつなは二人の無事を祈る。色々とあったので二人についてよく知る事が出来なかったが、そのままで終わってしまうなんてあまりにも悲しすぎるから。

『どんなに辛くても、その手段を使わなければ多くの人間の命が奪われるときがある。そのためには、戦わなければならない』

 京水と共に少し前を歩く相羽タカヤの背中を見て、丈二の言葉が再び脳裏で蘇る。
 タカヤ達の世界で危害を加えているテッカマンエビルとテッカマンランスを倒さない限り、罪のない人々が犠牲になってしまうのは理解している。それでも、出来るなら相羽シンヤやモロトフをラダムの支配から解放したかった。

『君の話を聞いていると、君たちNEVERは危険な集団としか思えない。『ライダーは助け合い』──その言葉には賛同するが、それは『仮面ライダー』同士ならの話だ。私はエターナル、大道克己を仮面ライダーとは決して認めない』

 NEVERは元の世界で多くの事件を起こしていると聞いて、丈二はリーダーである大道克己を真っ向から否定した。
 仮面ライダー。せつなにとっては未知の存在だが、丈二や京水の話を聞く限りプリキュアと同じで人々の幸せの為に戦っている戦士である事は分かる。だから丈二は仮面ライダーの力で人々を傷つける克己が許せないのかもしれない。

(でも、人は何度でもやり直す事ができます……もしかしたら克己さんだって、きっといつか昔の心を取り戻してくれるかもしれません)

 京水が言うには、克己は戦いを望まない人を傷つけるような事を絶対にしないらしい。それがどうして今に至ったのかは分からないけど、それならまた昔を思い出させれば丈二も克己を認めてくれるはず。
 困難は多いが心の底から真剣にぶつかっていけば、絶対に分かりあえるかもしれなかった。何故なら、桃園ラブ達だってかつての自分と向き合ってくれたからこそ、今の自分がある。

(今度は私がシンヤさんや克己さん達と向き合う番だよね、みんな)

 この島のどこかでみんなを助ける為に頑張っているラブ達に向けて、せつなは心の中でそう告げた。

「ああ、丈二ちゃんも零ちゃんもとっても素敵だったわ……特に零ちゃんはあのミステリアスな瞳がたまらなかったわ! あ、でも勿論タカヤちゃんだって負けてないわよ!」

 新たなる決意を固めたせつなの耳に、突如として甲高い京水の声が響く。それによって彼女の意識は現実へと引き戻された。

「何がだ」
「やだあもう! わかってるくせに……」
「……いい加減にしてくれ」

 そしてまた、タカヤは京水の言動によって溜息を吐く。考え込んでいた少しの間にまた何かあったようだ。せつなとしては京水を止めたいが別に悪い事じゃないので、タカヤには悪いがどう止めればいいのか分からない。
 今はタカヤと京水が喧嘩をしない事を祈るしかなかった。

382答えが、まったくわからない ◆LuuKRM2PEg:2012/05/25(金) 20:45:45 ID:TauxDPes0





 今この場で繰り広げられているのは戦いなどではなく、ただの一方的な蹂躙でしかなかった。闘争を求める一人の怪人が、異世界に存在するリント達をひたすら嬲っている。
 無論、四人のリントもただでやられるわけにはいかず、必死に抵抗を続けた。Wはガイアメモリの力から生まれる武器を手に戦い、杏子とフェイトは使い慣れた得物をひたすら振るって、ユーノはそんな三人を必死にサポートしている。しかしそれでも、誰一人として怪人に決定打を与えられなかった。

「ちくしょう!」

 そして杏子は今も渾身の力を込めて槍を振るうが、怪人はあっさりとそれを避ける。それに構わず連続して振りかぶるも、どれも怪人は呆気なく回避した。
 これまで何体もの使い魔や魔女を屠ってきた一撃だが、怪人にとっては何の脅威にもならない……そう思った途端、見下されてるような気がして怒りを感じるも、彼女は堪える。下手に突っ込んで返り討ちにされるのは嫌だった。
 反撃のように振るわれる怪人の拳を避けながら、杏子は一旦背後に下がる。彼女の意識は、巨体に刻まれている傷口に集中していた。
 それは二度に渡る戦いによって生まれたと思われる傷。いくら屈強な体躯とはいえ、ほんの僅かにせよダメージとなっているのだ。そこを一点集中すれば、もしかしたら勝機があるかもしれない。
 ようやく活路を見出した杏子は、傷口を目がけて素早く槍を突き出す。その先端が肉体に届くと彼女は確信した。
 だが次の瞬間、怪人は杏子の突きを呆気なく受け止めていた。

「何……!?」
「ハアッ!」

 そのまま怪人は杏子の身体ごと槍を頭上にまで持ち上げて、勢いよく地面に叩き付ける。衝撃によって激痛が全身を蹂躙し、思わず槍を手放してしまった。
 それでも怪人の進撃が止まることはない。何とか立ち上がろうと動く杏子の脇腹を、怪人は蹴りつけてきたのだ。

「――ッ!」

 肺に溜まった酸素と共に、声にすらならない悲鳴が杏子の口から無理矢理吐き出される。彼女の華奢な身体はまたしても宙を漂い、重力によって地面に落下した。

「杏子! 大丈夫か──」

 Wの声がするが、それは次の瞬間に聞こえてきた鈍い打撃音によって掻き消される。
 節々に痛みが走る身体が熱くなっていくのを感じる中、杏子は顔を上げた。見ると、こちらが吹き飛んでいた僅かな間に怪人はターゲットを他の三人に切り替えたらしい。その証拠として、怪人に殴られたのかWは地面に倒れていた。しかし自分に活を入れながら、すぐに立ち上がる。
 しかし怪人はそんなWに目を向けずに、あのボウガンの先をユーノに向けていた。

「おい、ユーノ! 避けろ!」

 魔法で新しく作り出した槍を支えにして立ち上がった杏子は思わず叫ぶが、その瞬間に銃声が鳴り響く。
 発射された矢はユーノの命を奪うと杏子は思ったが、次の瞬間にはその小さな身体が突如として消えてしまった。それによって標的を失ったボウガンの矢は地面に衝突し、盛大な爆発を起こるだけに終わる。
 一体何が起こったのかと杏子が思う暇もなく、少し離れた位置でフェイトがユーノを抱えているのを見た。

「フェイト……?」
「大丈夫、ユーノ!?」
「……うん、大丈夫だよ! ありがとう!」

 ユーノは一瞬だけ怪訝な表情を浮かべたが、すぐに笑顔になった。この状況を考えていないのかと思わず言いそうになったが、笑うだけの余裕があるならまだ期待できるかもしれない。
 しかし、だからといってそれが勝利に繋がるとは思えなかった。体調が整って人数も先程より増えて有利になったと思っていたが、実際は逆。それどころか、いつ負けたっておかしくなかった。
 仮にここで三人を囮にして逃げたとしてもこの傷ではまともに動ける訳がないし、すぐ殺されるに決まってる。例え逃げ切ったとしたとしても、その直後に別の敵と遭遇したら終わりだ。
 生き残りたいのなら戦うしかない。単純だがあまりにも困難な道しか、杏子には残されていなかった。

(あたし達はジリ貧で、あの怪物は余裕ありまくりかよ……)

 ユーノを抱えたフェイトを目がけて怪人が矢を放ち続けているのを見た杏子は、心の中で舌打ちする。フェイトはその凄まじい機動力で怪人の攻撃を避け続けているが、ユーノがいる以上いつ撃たれてもおかしくない。そして心なしか、一発撃つ度に怪人の動きが素早くなっているように見えた。

「野郎、させるか!」

 サイクロンジョーカーに戻ったWは二人を守ろうと怪人に殴りかかるが、当然のことながらあっさりと殴り返されてしまう。ふらつきながらも何とか体勢を立て直して拳を振るい続けるが、結果は同じだった。
 その繰り返しを見て、杏子は槍を握りながら怪人を睨み付ける。一瞬でもいいから、彼女は隙が出来るのを待っていた。

383答えが、まったくわからない ◆LuuKRM2PEg:2012/05/25(金) 20:49:35 ID:TauxDPes0
(まともに戦ったって勝てるわけがねえ……一か八かやってみるか)

 杏子の狙いは怪人ではなく、銀色の輝きを放つ首輪。参加者全員に巻かれたそれが爆発すれば、どんな奴でも一撃で死ぬと加頭順は言っていた。ならばそれを破壊さえすれば、いくらあの怪人だろうと一溜まりもない。
 奴を倒すなら、もうこれ以外に方法がなかった。

(一瞬だ。一瞬だけでもいい……)

 怪人の攻撃を避けながらWはハイキックを叩き込むが、肝心の相手は全く揺るがない。ユーノに回復されたフェイトもバルディッシュで怪人の皮膚に傷を刻んでいくが、結果はWと同じ。
 そこから怪人はWに拳を振るうが、すぐに空振りで終わる。ユーノの時のようにフェイトがWを抱えて距離を取ったからだ。それを見て、チャンスが出来たと確信した杏子は瞠目する。

(今だ!)

 そして両足で地面を蹴って疾走しながら、彼女は槍を構えた。
 このまま小技を続けたとしても消耗するだけだから、この一撃に全てを賭ける! 確実に距離が縮んでいく中、渾身の力を込めて杏子は握り締めた槍で一直線の突きを放った。
 深紅の煌めきを放つ刃と首輪という名の死神の鎌。それらの距離が確実に縮んでいくのを見て、勝利の二文字が杏子の脳裏に浮かび上がった。
 だが。

「通ると思ったか?」

 槍が首輪を貫くまであと一歩だと思った直後に聞こえてきたのは、そんな冷酷な言葉。
 その刹那、杏子の腹部に凄まじい衝撃が走る。殴られたと彼女が思った頃には、彼女の身体は既に地面を転がっていた。

「ぐ、あ……っ!」

 ようやく回転が止まったが、彼女はすぐに立ち上がる事が出来ずに呻き声を漏らしている。ゾンビに近い魔法少女の肉体だが、痛覚が完全に消えたわけではなかった。
 それでも必死にあがくが、そんな彼女の意志などお構いなしに怪人は迫り来る。

「ボセゼ、ゴパシザ……」

 何を言っているのか相変わらず分からないが、それが死の宣告である事は本能が察していた。
 思わず歯軋りをする杏子は、怪人の腹部から電流が音を立てて流れるのを見る。その直後、全身が金色に染まった怪人は走り出した。一歩進むごとに、その足から電流が地面に流れていく。
 そして助走を付けた怪人は高く跳躍して両足を杏子に向けながら、その巨体はドリルのように高速回転を始めた。夥しい程の電流が流れる巨体を見て、杏子は身体を動かそうとするがあまりにも遅い。
 そうしている間にも、回転する怪人の蹴りは確実に迫っていた。

(もしかして、あたしはここで終わりなのか……?)

 ユーノとフェイトの声が聞こえる中、彼女はそんな事を考える。
 自分はここで死ぬ。このまま何も出来ずに、何の願いも叶えられないまま終わる。この勢いではフェイトのスピードでも間に合わないし、ユーノの鎖でも止められるわけがない。
 つまり、喰われる側の弱者として死んでしまうのだ。

(……もしかしたら、これも自業自得なのかな。だったら、しょうがないか)

 しかしそう思った瞬間、杏子が常日頃信条としている四字熟語が頭の中に浮かび上がる。こうして負けるのも、所詮は見極めを誤った自分の責任なのだ。最初から逃げれば良かったのに、こうして馬鹿正直に戦ったのが間違いだった。冷静に考えてみれば、例え首輪に攻撃が当たったとしてもフェイトの魔法を二回も受けて何とも無かったから、意味はないだろう。
 でも、そんな事をいくら考えたってもう遅いしどうにもならない。

(一度くらい幸せな夢って奴を見てみたかったけど……まあいいや、ここで終わるみたいだし。それにこのまま待っていればみんなにも会えるかも)

 自分が魔法少女になったせいで壊してしまった家族と会える。もしも向こうでみんなに会えたら、なんて謝ればいいのか? こんな堕落した自分を見たら、親父はなんて言って怒鳴るか? そもそも、みんなと同じ所に逝けるのか?
 様々な考えが頭の中を駆け巡っていって、杏子は身体が楽になっていくのを感じる。これまで全身を支配していた痛みも、まるで嘘のように消え去っていた。

384答えが、まったくわからない ◆LuuKRM2PEg:2012/05/25(金) 20:51:43 ID:TauxDPes0

「杏子ッ!」

 徐々に意識がぼんやりとしていく中、怪人の蹴りが叩き込まれようとしていた杏子の耳はそんなWの声を聞き取る。
 次の瞬間、立ち尽くしていた彼女の身体は勢いよく横に押し込まれていった。

「えっ……?」

 あまりにも予想外だった突然の衝撃によって思わず声を漏らす中、杏子は見る。自分と入れ替わるかのように、Wが迫り来る怪人の射程範囲に入った事を。
 そして、電撃を伴った怪人の蹴りがWを吹き飛ばすまで、それほどの時間はかからなかった。

「兄、ちゃん……?」

 Wに突き飛ばされてからすぐに体勢を立て直した杏子は思わず呟いてしまう。その直後、倒れたWの装甲が崩れ落ちて左翔太郎の生身を晒した。
 それが意味する事は、翔太郎は自分を庇って代わりに攻撃を受けた。ただそれだけ。

「翔太郎さんっ!」

 そんな翔太郎の元にユーノがすぐに駆け寄り、フェイトにもやった回復魔法をかける。ユーノの手が光り輝いていく中、翔太郎は杏子に振り向いた。

「……杏子、無事か?」

 その声はとても掠れていて、聞くだけでも苦しんでいることが簡単に窺うことが出来る。しかしそれでも、彼はしたり顔で笑っていた。

「何、やってるんだよ……?」

 そんな翔太郎に対して杏子が言えるのは、ただそれだけしかない。

「何で……何であたしを助けたんだよ……?」
「俺が、仮面ライダーだからだ……」
「はぁ!?」
「仮面ライダーは、みんなが生きる街を守るヒーローだからだ……」

 翔太郎は震える声で答える。ユーノは「喋らないで!」と制止するが、翔太郎の答えはまだ終わらなかった。

「俺は……いや、俺達は加頭の野郎からみんなを守らなきゃならねえからな……ユーノやフェイト、それに杏子だってそうだ。こんな下らねえ殺し合いで、死んでいいわけがないからな」
「何だよそれ……そんな理由であたしを庇って、兄ちゃんが──!」
「構わねえさ……それでお前を守る事が出来るなら……な」

 そう言い残して杏子の言葉を遮った翔太郎の瞳は閉じていき、ガクリと項垂れた。

「なっ、兄ちゃん!?」
「まだ気を失ってるだけだよ! でも、今すぐにでも安全な場所に連れて行かないと!」

 焦燥に駆られたユーノの言葉通り、あんな攻撃を食らった翔太郎をここから離れされないと危険なのは杏子とて分かる。いくらユーノが回復を続けても、こんな場所にいさせたままではまずい。一刻も早く逃がす必要があった。
 そう思った途端、杏子の中で疑問が芽生える。何故、いつかは切り捨てる男に対してそう思うのか? 何故、翔太郎が倒れただけでこんなに胸騒ぎがするのか?

「キャア!」

 しかしその疑問を掻き消すかのように、フェイトの悲鳴が聞こえる。
杏子は思わず振り向くと、全身を金色に輝かせるあの怪人の前でフェイトが倒れているのを見た。彼女は何とかしてその小さな身体を起こすも、戦いの疲れが溜まっているのか息切れを起こしている。

385答えが、まったくわからない ◆LuuKRM2PEg:2012/05/25(金) 20:54:18 ID:TauxDPes0

「仮面ライダーとやらはこの程度だったとは……下らん」

 一方で怪人はさもつまらなそうに吐き捨てると、杏子は眉を顰めた。
 その声には確かな侮蔑と失望、そして威圧感が含まれている。それだけでもただの弱者を震え上がらせる事が出来そうだった。

「……うるせえよ」

 しかしそんな事など杏子には関係無い。杏子もまた、怪人に張り合うかのようにその瞳に確かな怒りを込めていた。

「傷の舐め合いか、実に下らん」
「ゴチャゴチャうるせえんだよ!」

 憤怒の感情をそのままに杏子は弾丸を上回りかねない勢いで突貫する。一瞬で肉薄した彼女に怪人は拳をぶつけようとするも、体制を低くした事で長髪を掠めるだけに終わった。
 懐に潜り込んだ杏子は怪人を目掛けて槍を薙ぎ払うも、鋭い金属音が響くだけで微塵も揺るがない。それにも構わず得物を振り上げ続けるが、無情にも結果は同じだった。
 それでも杏子は攻撃を避けながら、ただひたすら槍を振るい続けていく。その一撃に正体のわからない怒りを乗せながら。

『仮面ライダーは、みんなが生きる街を守るヒーローだからだ……』

 その翔太郎の言葉が頭の中で反芻していく度に、杏子は怒りを感じていた。
 正義の味方。かつて佐倉杏子も憧れたが、そのせいで家族みんなを壊してしまった。他人の都合を考えもしないで一方的な奇跡を起こしても、それだけの絶望が周囲に広がっていくだけ。だから杏子は魔法少女の力を自分の為だけに使うと誓った。
 だけど、その身を犠牲にして自分を庇った翔太郎を見ていると何故か思い出してしまう。最後に愛と勇気が勝つストーリーにひたすら憧れていた、理想に燃えていた頃の自分を。
 だから杏子の中で怒りが湧き上がっていた。尤も、それが一体誰に向けられた怒りなのかは彼女自身理解できていない。忘れたかった理想を無理矢理思い出させた翔太郎に対してなのか、過去の理想を下らないと切り捨てた怪人なのか、それとも何も変える事が出来ない自分自身に対してなのか。
 苛立ちと共にこの槍を何度も怪人に叩き付けるがまともなダメージにはならず、何よりも湧き上がる怒りの正体が全く分からなかった。

「フンッ!」
「ぐあっ!」

 疑念が広がっていく中、迫り来る怪人の拳を槍の柄で防御しようと構えるが衝撃は凄まじく、その身体が紙屑のように吹き飛ばされてしまう。直撃は避けられたものの、この槍は使い物にならない程に砕け散ってしまった。
 しかしそれならまた作り直せば良いだけ。すぐさま立ち上がった杏子は魔力を集中して新しい槍を生み出そうとするが、その直前にユーノが傍らにやってきた。

「落ち着いて、杏子!」
「何だよユーノ! 邪魔するんじゃ……」
「フィジカルヒール!」

 憤りをぶつけようとしたユーノはその手を杏子に翳す。すると光り輝く手から、エネルギーが湧き上がっていき、痛みが和らいでいくのを感じる。それに伴うかのように、先の戦いで空いた身体の風穴も塞がっていった。
 流石にソウルジェムの濁りばかりはどうしようも無かったが、それでもユーノの回復魔法のおかげで身体が確実に軽くなっている。

「あ……悪い」
「杏子、僕は君を信じるよ。君は翔太郎さんが傷つけられたのを見て、一生懸命戦ったから」
「はぁ?」

 杏子はようやく頭が冷えたものの、いきなりすぎるユーノの言葉で怪訝な表情を浮かべてしまった。

「何を言ってるんだよ、お前」
「よく聞いて、僕は君達を助ける為の策がある。でも、それをやるには君の力も必要だ」
「だから何を言って……」
「お願いだから聞いて!」

 当然の事ながら杏子は疑問をぶつけるも、穏和な印象を持つユーノからは想像できない程に必死さが感じられる声によってすぐ遮られてしまう。それを前に、杏子は反論することをやめてしまった。

「わかったよ……で、何をするつもりだ?」
「君は確か、前の戦いであいつの動きを止めたんだよね。それをもう一度やって欲しいんだ」
「ちょっと待てよ、そこからどうするんだ? あのフェイトのどでかい魔法もあいつには効かないんだぞ」
「そこからは僕に任せて! 大丈夫、君達を絶対に助けてみせるから」

 そう力強く語るユーノの瞳からは絶対の自信が感じられた。まるでこれさえあれば、確実に成功するとでも言いたげのように。
 だがここでそれを疑っても仕方がない。このまま戦ってもどうせ何一つの案も思い浮かばないし、今はユーノに任せるしかないだろう。仮に策が失敗して全滅しても、それならそれで諦めるしかない。

386答えが、まったくわからない ◆LuuKRM2PEg:2012/05/25(金) 20:54:51 ID:TauxDPes0

「わかった、あんたの策に乗ってやるよ。どうせこのままやったって、あたしらみんな終わるからな」
「……ありがとう!」

 ユーノは力強い笑みを浮かべるのを見て、彼もまた翔太郎のようなお人好しであると改めて杏子は思う。そして、かつての自分みたいに誰かを守りたいという理想に燃えているのだ。普段なら下らないと嘲笑するかもしれないが、今はどういう訳かそうする気にはなれない。
 だがそんな事を考えても仕方がないと思いながら、杏子はフェイトの横に立った。

「そういう事だ、フェイトも頼むぞ」
「うん!」

 彼女達は互いに顔を向けた直後、左右に分かれながら空高く跳躍した。それを追うように怪人が顔を上げた直後、フェイトはフォトンランサーを放つ。その一撃は硬質感溢れる皮膚に掠り傷を負わせただけだが、電気が効かない以上仕方がない。
 そして杏子は急降下しながら、フェイトが負わせた傷を抉るように運動エネルギーを利用した一撃を放つ。すると、流石に疲労困憊となっていたのか怪人は微かに後退った。

「今だ!」
「チェーンバインド!」
「ライトニングバインド!」

 その絶好の機会を逃すまいと杏子が長槍を振るうと同時に、ユーノとフェイトも詠唱する。すると、杏子が生み出した無数の槍が怪人の肉体を雁字搦めにして、その上から更にバインド魔法が連続で絡みついた。
 それはあまりにも強力すぎて最早拘束とは呼べず、圧殺する為の行為に似ている。しかしそれでも、怪人はまだ生きていてその怪力で引き千切ろうとしていた。
 あまり考えたくはないが、このままではいつ脱出されてもおかしくない。だから次はどうするのかを聞こうと思って、杏子はユーノに振り向いた。

「おい、ユーノ――」
「杏子、ここは僕が引き受けるから君は翔太郎さんとフェイトを連れて逃げて」

 しかし続くようにユーノの口から出てきたのは、予想を大きく外れた言葉だった。そんな返事を前に杏子とフェイトは呆気に取られる中、彼は続ける。

「このままじゃ、あいつはすぐに僕達の拘束を破ってもおかしくない……だから君達には行って欲しいんだ。翔太郎さんを助けて、この殺し合いを打ち破る仲間を集める為にも」
「……ふざけるな、ふざけるんじゃねえ!」

 しかし杏子は素直に受け入れる事は出来ず、ただ大声で怒鳴り散らすしかできなかった。

「そんなの……そんなのてめえでやればいいだろ! あたし達にそんな事を押し付けて、てめえは英雄を気取って逃げるつもりか!?」
「僕だって、何か策がないか考えた! でもこれ以外に君達みんなを助ける手段がまるで思いつかないんだ! それに、あいつの脅威を一人でも多くに伝えないと犠牲者はもっと増える!」
「じゃあてめえはどうする気だ! あんな化け物を相手にてめえ一人で戦えるとでも思ってるのかよ!?」
「でもこのままここに残ったって、君達二人が犠牲になる! 君達はそれでもいいの!? 僕は……僕はそんなの嫌だ!」

 槍とバインドの拘束を打ち破ろうとする鈍い音が響き渡る中、そんなユーノの叫びを返されて杏子は何も言えなくなる。
 君達を助ける策がある。その言葉の意味は、ユーノが人柱となって他の三人を逃がす事だった。確かに今の状況ならば拘束を打ち破った怪人に対して、誰か一人を囮にすれば他の三人は逃げ切れるだろう。
 本来ならば利用できる相手をここで切り捨て、優勝までの近道を作れるので喜んで受け入れたのかもしれない。しかし杏子は不思議とその選択を取る気にはなれなかった。逃げようとしても、ダメージを負ってないのにこの身体が全く言うことを聞いてくれない。
 その一方で、フェイトも驚きを隠せないのかユーノに詰め寄っていた。

「ユーノ、あなた一人じゃあいつには……」
「大丈夫、すぐに君達の後を追うから! だから早く行って!」
「でも、あなたはどうするの!? このままじゃ、あいつにやられちゃうよ!」
「お願いだから行って!」
「でも……!」
「とっとと行くぞ、フェイト!」

 フェイトの悲痛な言葉を、杏子は無理矢理遮る。

「杏子……!?」
「これ以上ここにいたって、あたし達じゃあいつには勝てねえ! このままじゃあたし達みんな殺されるだけだ!」
「でも、それじゃあ……!」
「いいから早くしろ、死にたいのか!」

 これ以上の反論をさせないかのように、杏子は気絶した翔太郎と二つのデイバッグを抱えた。ふと気がつくと、戦いの最中に零れ落ちてしまったのか支給されたイングラムM10と火炎杖、それに怪人のデイバッグが遠くに放置されていたが、取りに行っている暇などない。
 動揺するフェイトを尻目に、杏子はユーノに振り向いた。

387答えが、まったくわからない ◆LuuKRM2PEg:2012/05/25(金) 20:55:12 ID:TauxDPes0

「ユーノ、あんたの力はあたし達には必要だ……もしもここでくたばったりしたら、あたしはあんたを許さない」

 いつの間にか、そんな言葉が口から出ていた。
 殺し合いに乗ったはずなのに、どうしてこんな事を言うのか? もう切り捨てるはずの相手に、何でこんな事を言えるのか? 何より、どうしてあたしは左翔太郎を見捨てようとしないのか? そしてこの胸の奥から伝わる痛みは何なのか?
 次々に疑問が湧き上がっていくが、やはり答えは見つからない。殺し合いに勝ち残る為、あえて演技をしているのだと自分に言い聞かせようとするが、そんな理由では納得が出来なかった。

「うん、わかったよ……ありがとう!」
「……ッ」

 そしてユーノは心の底から信頼しているような笑顔を向けた事で、杏子の痛みは更に強くなっていく。向けられた彼の視線から目を逸らしそうになったが、それも出来なかった。

 だが、このままここにいてもユーノの決意を無駄にしてしまう。突然そんな考えが芽生えた杏子は、フェイトと共に市街地を目指して走り出した。
 ユーノから逃げ出すように、無理矢理体を動かして。




 戦場からそこまで距離が離れていなかったおかげか、町に到着するのにそこまでの時間はかからない。市街地の何処を目的地にしているかなんて考えてないし、怪人から少しでも離れる為に走るしかなかった。
 この腕の中で眠り続けている左翔太郎はまだ目覚めないが、考えてみればその方が都合はいい。もしもこんな時に彼が起きたりしたら、それはそれで面倒だ。
 ただ、ユーノの事をどう伝えればいいか。新たなる悩みが生まれた杏子の前に、突如としてフェイトが回り込んできた。

「杏子」
「何だよ、フェイト!?」
「私はユーノを連れてくるから、あなたは先に行って」
「はぁ!?」

 フェイトの言葉は、先程のユーノのように信じられる内容ではなかった。

「あんた、何考えてるんだよ!?」
「やっぱり、これからの事を考えると三人よりも四人の方がいいかもしれないから……それに杏子だって、くたばったりしたら許さないって言ってたでしょ」
「あれは……咄嗟に出た言葉って言うか……とにかく、今更戻ったところでどうなるんだ!」
「大丈夫、逃げたりしないから心配しないで」
「そういう問題じゃねえ! フェイトは母親の為に殺し合いに乗ったんじゃなかったのかよ! ここでお前が死んだりしたら、あんたの母親はどうなるんだ!?」
「……ごめんなさい。でも、やっぱりユーノがいた方が杏子も私も助かるかもしれないから」
「てめぇ……何だよそれ、答えになってねえだろ! ユーノみたいに正義の味方を気取って死ぬつもりか!?」
「そうじゃない! そういう訳じゃないよ……私でも、よくわからない……!」
「じゃあ、何で……!?」
「……とにかく、私は行くから。ありがとう、杏子」

 悲しげな表情を浮かべるフェイトは、納得のいく答えを返さないまま背を向ける。それに怒りを覚えて杏子は怒鳴ろうとするが、フェイトは一瞬で空の彼方へと飛び去ってしまった。
 杏子は止めようと思ったが、そのスピードによって少女の姿はすぐに見えなくなってしまう。例え翔太郎を放置して追おうとしても追いつけるわけがないし、何よりそんな事をしては今度こそ怪人に殺されるだけだ。

「何だよ、どいつもこいつも……ああいいよ! それなら勝手にしろ!」

 そう叫びながら、杏子はフェイトから背を向けて再び走り出す。どうせフェイトを追ったとしても何にもならないし、わざわざ殺されるリスクを犯す気はないからだ。
 生きる為ならそれが正しいのはわかってるし、今はこの選択を取るしかない。だけど、どういう訳か怪人から逃げ出した時から心の中に変なモヤモヤが溜まっていく。自分から選んだ判断なのに、まるでスッキリしなかった。

(何で、何であたしは……この兄ちゃんを切り捨てないんだ? 何で、あいつらはあたしに『ありがとう』なんて言ったんだ? 何で、あたしの気持ちは晴れないんだ? 優勝するって決めたんだろ? なのに、何で……!?)

 その答えを杏子は渇望するが、当然の事ながら得られない。
 どうしてみんな、そこまでして誰かの為に動こうとするのか? 他人の都合を考えないで何かをあげようとしても、その分の不幸が広がってしまうだけなのに。
 何一つの疑問も晴れないまま、杏子は力任せに走り続けていた。今の彼女は何処を目指しているかなんて全く考えていない。ただ、佐倉杏子は答えが知りたかった。
 どうして、フェイト・テスタロッサとユーノ・スクライアの二人を見捨てる事で、こんなに胸が苦しくなってしまうのかを。

388答えが、まったくわからない ◆LuuKRM2PEg:2012/05/25(金) 20:55:54 ID:TauxDPes0





(やっぱり、駄目だ……どう考えても逃げられない。みんな、ごめん……)

 二人にはああ言ったけど、正直な話この状況を一人だけで打破する方法なんてまるで思いつかなかった。フェイトのようなスピードはないし、Wや杏子のように強力な攻撃技を持っていない。あくまでもバインドや治癒のような補助魔法がメインだから、前衛に立つべきではなかった。
 ユーノ・スクライアはそれを強く理解している。四人でも勝てなかったのに、たった一人で立ち向かってもただ殺される未来しかない。しかしそれでも、ここで自分が囮にならなければみんなを守る事なんて出来なかった。
 こんな意味の分からない殺し合いを打ち破ってみんなを守ってくれるであろう翔太郎達こそが、生きなければいけない。彼らならばなのは達の力になってくれると信じているから。

「オオオオオオォォォォッ!」

 そして、ユーノの前で怪人は咆吼と共に三重の拘束を打ち破った。化け物じみた怪力を前にユーノは戦慄するが、今更怖がっていても仕方がない。

「その小さな身体で、たった一人俺に立ち向かうとは……見事だ」

 称賛するような言葉だが、誰かを傷つけるような相手から言われても全く嬉しくなかった。それどころか、嫌悪感すら湧き上がる。
 しかしユーノはそれを振り払って、今は一秒でも多く時間稼ぎをしなければならないと自分に言い聞かせた。三人の姿はもう見えなくなっているが、少しでも遠ざけなければならない。
 心の中で意気込むユーノの前で怪人は拳を振り上げながら、獲物を猛獣の如く凄まじき勢いで突貫してきた。それを前にユーノは生存本能が一気に働いたのか、反射的に腕を前に突き出していく。

「ラウンド……シールドッ!」

 そして、残り少ない魔力を搾り取りながら息も絶え絶えに詠唱した。彼の目前に眩い輝きを放つバリアが展開されて、怪人の拳と激突する。
 轟音と共に腕が強く痺れるが、まだラウンドシールドは破られていない。だが、怪人はそれをお構いなしに反対側の拳をぶつけてくる。元々防御力に一番優れた魔法だが、相手の怪力はそれだけでは防げない程に凄まじかった。
 案の定、怪人の拳はユーノのラウンドシールドを硝子のように甲高い音を鳴らしながら、あっさりと砕く。しかしそれで勢いが止まるわけが無く、そのまま一瞬でユーノの右腕全てを容赦なく潰していった。

「――ッ!」

 灼熱で地肌を直接炙られるような激痛と共に大量の血が流れ出し、ユーノは声にならない悲鳴をあげる。並のグロンギすらも一撃で殺せてもおかしくない拳は、ただの人間でしかも少年である彼には耐えられる攻撃ではない。
 そのままユーノから流れ出る血飛沫は地面に容赦なく散らばり、体温を奪い取っていく。一瞬で地面に倒れるが、それでも彼は意識を保っていた。
 例え少年であっても魔導師として数多もの戦いを乗り越えてきた結果、強い精神力を得られるようになっている。尤も、皮肉にもそれが彼を余計に苦しめる事になっているのだが、既に痛みの感覚すら無くなっていた。

(ごめん、みんなを悲しませるような事になっちゃって……でも、お願いだからどうか生きて。僕は、みんなを信じているから)

 自分はもうすぐ死ぬ。極寒の地に放り込まれたかのように寒気が全身を蹂躙する中、ユーノはそう思うようになった。
 しかし彼の胸中を満たしているのは死への恐怖ではなく、残された仲間達の事。もしも自分が死んだ事を知ったら、みんな悲しむだろうか。フェイトも、杏子も、翔太郎も、そしてなのはも。

(フェイト、お願いだからどうかみんなの力になって……君なら出来るはずだから)

 この地で最初に再会したかけがえのない友人の一人であるフェイトは、翠屋の事を知らないと言っただけでなく、バリアジャケットの形状やカードリッジシステムの搭載されていないバルディッシュを持っているなど、不審な点がいくつもあった。
 もしかしたら主催者によって記憶操作をされている。または偽者なのではないかと戦いの最中で疑ってしまう。現に戦闘スタイルなど、自分の知るフェイトのそれとは全く違っていた。
 だけど、自分が囮になると知った時の表情は、決して真似や演技なんかで出来る訳がない。それに彼女は戦いの最中で、怪人の攻撃から自分を庇っている。その時の姿は、自分がよく知るフェイト・テスタロッサ・ハラオウンと同じ。
 だから、何か理由があるはずだった。本当なら直接聞いて、フェイトに何かがあったのなら一緒に解決したかったが、もう叶いそうにない。ユーノに出来るのはフェイトの無事を祈り、元に戻ってくれるのを信じるしかなかった。
 無念を感じる一方で意識がどんどん薄くなっていき、視界がどんどん闇に覆われていく。それでも何とかして抗おうとユーノは全身に力を込めた……その時だった。

389答えが、まったくわからない ◆LuuKRM2PEg:2012/05/25(金) 20:56:24 ID:TauxDPes0

「はああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 闇の中より少女の叫び声が発せられ、金属同士が衝突するような甲高い音が響く。ユーノがそれを察した瞬間、身体が一気に浮かび上がるのを感じた。
 天国からのお迎えが来たのか? 誰かに抱えられる感触によって一瞬だけそう思うも、薄れゆく視界の中でぼんやりと映る少女の姿を見て、即座に否定する。

「フェ、フェイト……?」

 そこには、つい先程この身を犠牲にさせる覚悟で逃がしたフェイトがいた。心配そうな表情で見つめてくる彼女は夢や幻かと思ったが、ツインテールから放たれる金色の輝きは異様なまでに現実味を放っている。
 つまり、ここにいるフェイトは偽者なんかではない。正真正銘、本物のフェイト・テスタロッサだった。





 愛する母の為ならどんなに苦しい事でもやってみせるし、この手がどれだけ汚れようとも躊躇う訳にはいかない。その為なら利用できるものは何だって利用するし、どれだけの犠牲が出ようが止まっていられなかった。
 それはわかっていたはずなのに、フェイト・テスタロッサはその心にいつだって痛みを感じている。誰かを騙している度に後ろめたさを感じていて、時には涙も流していた。
 そして今も、自分達を助ける為にその身を犠牲にしたユーノを抱えて怪人の元から離れながら、フェイトは声を荒げている。

「ユーノ……しっかりして、ユーノ!」

 自分よりも少し大きな身体を揺する度に、腕を無くした右肩から流れ出る血の勢いは激しくなっていた。ユーノの身体は時間と共にどんどん冷たくなっていくが、回復魔法を会得していないフェイトにはどうする事も出来ない。
 ユーノの運命は、ただ死を待つだけ。優勝を目指すならば、杏子の言うようにそんな相手など早く切り捨てなければいけないのに、今のフェイトにはそれが出来なかった。

「フェ、イト……なんで……?」
「どうして! ねえ、どうして!? どうしてユーノは私達を逃がす為に、そこまでしてくれたの!?」
「どうしてって……決まってるじゃないか」

 青白くなった唇から発せられる息は震えているが、それでもユーノはにっこりと笑っている。

「君は、僕を助けてくれたからだよ……」
「えっ!?」
「君はあいつの攻撃から、僕を庇ってくれた……それも一度だけじゃなく、何度も……だから僕は君を信じる事が出来た」

 一言紡がれる度に、フェイトは心が締め付けられていくような感覚に襲われた。
 確かに怪人の攻撃からユーノを助けたが、その真相はあくまでも今後の戦力を失いたくなかっただけ。しかしユーノはそれだけで、自分を信頼していた。
 しかし自分はその好意を冷酷に裏切ろうとしている。それによってどんな罵りでも受ける覚悟を決めていたはずなのに、心が痛んだ。

「……たった、それだけで?」
「ごめん、君に何があったのかをわかってあげられないだけじゃなくて、わざわざこんな危険な所に戻らせて……だから、一刻も早く……逃げ、て」
「それよりもユーノは……このままじゃ、ユーノは……!」
「ありが、とう……心配して、くれて……やっぱり、君を信じて……本当に、よかった……!」

 最後にそう言い残して、ユーノ・スクライアの瞳は完全に閉じてしまう。その顔に、心の底から安堵したような笑顔を保ったまま。

390答えが、まったくわからない ◆LuuKRM2PEg:2012/05/25(金) 20:56:56 ID:TauxDPes0

「ユーノ……? ユーノ、ユーノ、ユーノッ!?」

 フェイトはひたすら呼びかけるが、ユーノがその声に答える事は無い。何故なら、彼の命はもう燃え尽きてしまったのだから。
 ユーノの死を前にして、フェイトの瞳から涙がポロポロと零れ落ちていく。そのまま泣き喚きそうになったが、直後に彼女の耳は足音を捉えた。思わず振り向いた先では、あの怪人が凄まじい威圧感と殺気を放ちながら、近づいてくるのが見える。

「見つけたぞ……」
「まだ、あなたがいたんだったね……」

 怪人から感じられるオーラが肌に突き刺さるが、それに怯まずフェイトは涙を拭ってバルディッシュを構えた。

「ごめんなさい、ユーノ……私はあなた達の事を騙してた。母さんの為に、この殺し合いに乗った……でも、今だけはあなたの願いを叶える為に……杏子と翔太郎さんの二人を守る為に戦うよ。償いになんて、なるわけないけど」

 無意識の内にフェイトはそう呟くようになる。
 プレシアの為、殺し合いに乗る気持ちは変えるつもりはない。やっぱり、何があっても母の笑顔を取り戻す為に戦わなければならないのだから。だけど、今だけはユーノの為に戦いたいと思っている。
 勝ち目なんてあるわけないのは、フェイト自身理解している。これからやろうとしている戦いは無謀の言葉で収まるものではない。そもそもどうして逃げずにこんな事をしていて、ユーノの死に涙を流したのかは彼女自身わかっていない。
 それでも、どういう訳か迷いや躊躇いはなかった。それにどうせ今から逃げ出そうとしても、あの怪人ならば動く前に仕留めることだって簡単に出来るはず。ならば、勝つ以外に道はない。

(母さん、リニス、アルフ、杏子、翔太郎さん、ユーノ……みんな、お願いだから力を貸して!)

 この世界に連れてこられる前に大切と願っていた人達と、殺し合いの中で出会った仲間達の顔を思い浮かべながらフェイトは疾走する。相手も相当戦って消耗しているだろうから、もしかしたら勝機があるかもしれないと信じて。
 結局の所、彼女もユーノと同類だった。いくら非常に徹すると決めていても、その心の奥底には優しさが残っている。だからこそ、誰かの為に戦うことが出来た。
 それに、本来の未来に生きる彼女は贖罪として多くの命を助けている。無論、ここにいるフェイトにそれを知る由などないが。
 彼女は全ての力を振り絞ってバルディッシュを横薙ぎに振るって、魔法で輝く刃を怪人の傷口にぶつけていく。だが、結末はあまりにも無常で、金属音が空しく響くだけだったが、それでもフェイトは諦めずに必死にバルディッシュを押し込もうとした。

「見事だったぞ、リントの戦士」

 そんな中、聞こえてきた怪人の言葉。
 次の瞬間には怪人の拳はフェイトの腹部をあっさりと貫いていた。しかしすぐさま引き抜かれた事で、今度は噴水のように鮮血が飛び散っていく。彼女はスピードを特化しているが、その分杏子に比べて防御力は落ちている。
 そのまま力無く倒れていくフェイトは、この光景にデジャブを覚えていた。数時間前、フォトンランサーファランクスシフトを放つ為の時間稼ぎとして杏子は自分自身を囮にしている。あの時の彼女は、こんな痛みを感じていたのかとフェイトはぼんやりと考えた。
 しかしそれももう関係ない。何故なら、すぐにユーノの後を追うのだから。

(……ごめんなさい)

 思わずフェイトは心の中で謝罪したが、それが誰に向けられた物なのかはわからない。
 最愛の母プレシア・テスタロッサなのか、色々な事を教えてくれたリニスやアルフなのか、こんな自分を信じて力を貸してくれた佐倉杏子や左翔太郎なのか、最後の願いを裏切ったユーノ・スクライアなのか。
 それとも、特定の誰かではなく全員に向けられたのか。その答えを知っているのは、フェイト・テスタロッサただ一人だけだった。





 未だに炎が燃え上がっている【I―7】エリアで繰り広げられた激闘の勝者となった怪人、ゴ・ガドル・バは無言で佇んでいた。
 彼は決してこの勝利に酔いしれていない。最初の戦いで自分を打ち破った少女の一人を倒したが、それに浮かれていてはあのズ・ゴオマ・グと何も変わらなかった。何よりも自身の雪辱を与えたもう一人の少女、佐倉杏子はまだ生きている。
 戦いの最中に逃げ出すようなゴオマと同じ軟弱者だが、それでも倒すべき相手である事に変わりはない。また現れたならば、今度こそこの手で打ち破れば良いだけだ。

391答えが、まったくわからない ◆LuuKRM2PEg:2012/05/25(金) 20:58:07 ID:TauxDPes0

「この俺を前に一歩も退かなかったとは……誇りに思うが良い、リントの戦士達よ」

 そしてガドルは、たった今倒した少年と少女に目を向ける。
 その身体はあまりにも小さかったが、放たれる気迫は一流の戦士と呼んでも過言ではなかった。恐らく、並のグロンギであれば歯が立たなかったかもしれない。故にガドルはそんな二人を称えた。
 辺りに散らばった全ての支給品を回収して、最後にフェイトという少女の相棒だったバルディッシュに目を向ける。しかし次の瞬間、刀身はピキピキと音を鳴らしながら亀裂を走らせていき、そのまま欠片となって崩れ落ちていった。恐らく、主人と同じ世界に旅立ったのだろうとガドルは考える。

(ゲゲルはまだまだ続くな……)

 しかしいつまでも敗者にばかり拘るわけにもいかない。もうこの世界にいない以上、次なる強者を捜すしかなかった。
 杏子達はこの先にある街に逃げている。そこならば、あの二人以外にも新たなる強者がいるかもしれない。もしかしたら、あのン・ダグバ・ゼバすらも訪れている可能性だってあった。
 それならば、いつまでもこんな場所にいるわけにはいかないと思って、破壊のカリスマの名を背負うゴ・ガドル・バは歩き続ける。自身が最強のグロンギとして、君臨する為にも。


【1日目/早朝】
【I−7 草原】


【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】
[状態]:疲労(中)、全身にダメージ(大)(回復中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式×2、ガドルのランダム支給品1〜3(本人確認済み、グリーフシードはない) 、フェイトのランダム支給品1〜3、ユーノのランダム支給品1〜2個 、イングラムM10@現実?、火炎杖@らんま1/2
[思考]
基本:ダグバを倒し殺し合いに優勝する
0:市街地に向かい、強者を探す。
1:クウガ(五代)と再び戦い、雪辱を果たす。
2:強者との戦いで自分の力を高める。
※死亡後からの参戦です
※フォトンランサーファランクスシフトにより大量の電撃を受けた事で身体がある程度強化されています。
※フォトンランサーファランクスシフトをもう一度受けたので、身体に何らかの変化が起こっている可能性があります。(実際にどうなっているかは、後続の書き手さんにお任せします)


【備考】
※バルディッシュ@魔法少女リリカルなのはシリーズは破壊されました。





 ようやく昇り始めた朝日によって名も知らぬ街に光が照らされ、それに伴って電灯の輝きが消えていく。朝になれば見滝原のように人通りが盛んになるのかもしれないが、それにしては生活の気配が一切感じられず、ゴーストタウンのようだった。
 しかし佐倉杏子にとってそんな異質さなど、まるでどうでもよかった。少しでも遠くに行きたいと思いながら無茶苦茶に走っていたので、ここがどのエリアなのか全くわからない。今更地図を確認した所で、具体的な場所がわかるとも思えなかった。
 彼女は地べたに座って、体を休めていた。いくら魔法少女として凄まじい体力を誇っていたとしても、戦いの直後にデイバッグ二つと男一人を抱えながら全力疾走したのでは、流石に疲れてしまう。
 とにかく今は体を休めて今後の事を考えたかったが……どうするべきなのかまるで考えが纏まらない。

「ちくしょう……何で、何であいつらは……!」

 頭の中に溜まるモヤモヤを晴らすために拳を地面に叩き付けるが、無意味な痛みを感じるだけで何も解決しなかった。
 あれから大分時間が経ったのに、フェイト・テスタロッサもユーノ・スクライアも一向に現れる気配がない。それが意味するのは、あの怪人に二人が殺されてしまった。
 合流場所を決めてないから二人が姿を見せていないと一瞬だけ考えたが、それはあまりにも楽観的な解釈だった。

392答えが、まったくわからない ◆LuuKRM2PEg:2012/05/25(金) 20:58:44 ID:TauxDPes0

「何でだよ、何でなんだよ……何で、何で、何で!?」

 杏子は感情任せに叫び続けるが、空しく木霊するだけだった。

「何で……何であんたらは勝手に死ぬんだよ!? そんなの、あたしが許さないって言ったよな!? 何でなんだよ!? 何で、あんたらが死んで……あたしなんかが生きてるんだよ!? 教えろよ!」

 その問いに対する答えを何よりも見つけたかったが、当然の事ながら疑問は晴れずに葛藤が続く。
 好き勝手にやって優勝を目指し、その為ならば何でも利用するつもりだった。だが実際はフェイトとユーノを見捨てた事でこんなにも苦しくなり、今が絶好のチャンスであるにも関わらずして左翔太郎の命を奪えない。
 フェイトとユーノが殺されたのは、勝てるわけがないのに特攻した彼らの責任だ。そんな馬鹿な奴らの事はとっとと忘れて先に進まなければならないのに、忘れることができない。
 それに、命を捨てて自分達を逃がしてくれた彼らを侮辱する事が杏子にはできなかった。

(みんな、誰かの為に戦ったんだよな……フェイトもユーノもこの兄ちゃんも。でも、それに引き替えあたしは何だ? あたしは、あたしだけの為にしか戦ってないよな……?)

 詳しいことは知らないが、フェイトは母親の為に殺し合いに乗った。翔太郎とユーノは、この殺し合いに巻き込まれたみんなを救う為に戦っている。手段こそは正反対だが、三人とも誰かの為に一生懸命戦っていたのは同じだった。
 でも自分は彼らと違って、自分の為だけにしかこの力を使っていない。昔は彼らのように意気込んでいたが、今はこの有様だ。

(もしかしたら、あたしもあの胡散臭いおっさんと同じ……いやそれ以下なのかも。ハハッ、笑えねえな……まあこれも自業自得なのかな)

 どうして今更こんな事を考えてしまうようになったのかもわからないし、本当は何がしたいのかもまるでわからない。
 全身から全ての力を失ってしまったかのように、脱力感に支配された杏子はただぼんやりと考えるしかできなかった。

「あっ、あの時の仮面ライダー!」

 そんな中だった。迷いと疑問によって何をすればいいのかわからなくなっていた杏子の鼓膜を、女のように甲高い男の声が響いたのは。
 それによって霧のようにぼんやりとしていた意識が急激に覚醒して、杏子は素早く振り向く。振り向いた先では、黒いレザースーツに身を包んだ屈強な男が驚愕の表情を浮かべながらこちらを見つめていた。その後ろには、赤いジャンパーと右目に刻まれた古傷が特直的な男と、杏子とほぼ同年代と思われる少女がいる。

「あの時の仮面ライダー? だとすると、あいつが……」
「そうよタカヤちゃん! あたし達の世界で風都を守っていた二人で一人の仮面ライダーの一人よ!」
「そうか」

 女のような口調で喋るレザースーツの男からタカヤと呼ばれた男は頷くと、こちらに歩み寄ってきた。杏子は思わず身構えるも、タカヤの後ろにいた少女が「待って」と声をかけてくる。

「私達はこんな戦いに乗ってないわ。だから、話を聞いて」
「乗ってない……のか?」
「ええ」

 その言葉を聞いた杏子は警戒心が緩み、構えを解いてしまう。
 一方でタカヤという男は翔太郎の様子を一瞬だけ窺った後、杏子に振り向いた。

「一体どうしたんだ? それに、何故この男は倒れているのかも聞かせてくれないか」
「それは、その……」

 タカヤの問いかけを、杏子はどう答えればいいのか悩んでしまう。思い出すだけでも嫌なのに、上手く説明するなんてできるわけがない。
 自分のせいで翔太郎が傷付き、フェイトとユーノが死んでしまった。その忌々しい出来事が杏子から冷静な判断力を奪っている。
 しかしそれでも、彼女の口が勝手に動き出すのに時間は必要なかった。

「……あんたら、殺し合いに乗ってないんだよな」
「ああ、それがどうしたんだ」
「だったらさ……頼むよ」

 それは明確に考えた上で出てきた言葉ではない。言ってしまえば、本能で口にした言葉だった。
 どうしてこんな事を言ってしまうのかわからないが、言わなければならない。そんな思いが杏子の中に広がっていた。

「この兄ちゃんを……兄ちゃんを……助けてやってくれないか?」

 佐倉杏子が口にした言葉は弱々しかったが、現れた三人の耳に確かに届いていた。

393答えが、まったくわからない ◆LuuKRM2PEg:2012/05/25(金) 20:59:06 ID:TauxDPes0

【1日目/早朝】
【H−9 市街地】



【左翔太郎@仮面ライダーW】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、気絶中
[装備]:ダブルドライバー@仮面ライダーW (腰に装着中)
[道具]:支給品一式、ガイアメモリ(ジョーカー、メタル、トリガー)、ランダム支給品1〜3個(本人確認済み)
[思考]
基本:殺し合いを止め、フィリップを救出する
0:…………(気絶中)。
1:この怪人(ガドル)を倒す。
2:まずはこの三人を守りながら、市街地に向かう
3:仲間を集める
4:出来るなら杏子を救いたい
[備考]
※参戦時期はTV本編終了後です
※他世界の情報についてある程度知りました。
(何をどの程度知ったかは後続の書き手さんに任せます)
※魔法少女についての情報を知りました。


【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)、ソウルジェムの濁り(中)、脱力感、自分自身に対する強い疑問、ユーノとフェイトを見捨てた事に対して複雑な感情
[装備]:槍@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]:基本支給品一式
[思考]
基本:????????????
0:????????????
1:自分の感情と行動が理解できない。
2:翔太郎に対して……?
[備考]
※魔法少女まどか☆マギカ6話終了後からの参戦です。
※首輪は首にではなくソウルジェムに巻かれています。
※魔法少女の身体の特性により、少なくともこの負傷で死に至ることはありません。
※ユーノ・スクライアのフィジカルヒールによって身体に開いた穴が塞がれました。(ただし、それによってソウルジェムの濁りは治っていません)
※左翔太郎、フェイト・テスタロッサ、ユーノ・スクライアの姿を、かつての自分自身と被らせています。

394答えが、まったくわからない ◆LuuKRM2PEg:2012/05/25(金) 20:59:29 ID:TauxDPes0
【相羽タカヤ@宇宙の騎士テッカマンブレード】
[状態]:健康
[装備]:テッククリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード
[道具]:支給品一式、メモリーキューブ@仮面ライダーSPIRITS、ランダム支給品0〜2
[思考]
基本:主催者を倒す。
0:目の前の二人から話を聞く。
1:他の参加者を捜す。
2:俺はいつまでコイツ(京水)と付き合わなければならないんだ……
3:シンヤ、モロトフを倒す。ミユキと再会した時は今度こそ守る。
4:克己、ノーザ、冴子、霧彦を警戒。
5:記憶……か。
[備考]
※参戦時期は第42話バルザックとの会話直後、その為ブラスター化が可能です。
※ブラスター化完了後なので肉体崩壊する事はありませんが、ブラスター化する度に記憶障害は進行していきます。なお、現状はまだそのことを明確に自覚したわけではありません。
※参加者同士が時間軸、または世界の違う人間であると考えています。


【泉京水@仮面ライダーW】
[状態]:健康
[装備]:T-2ルナメモリ@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式、細胞維持酵素×4@仮面ライダーW、克己のハーモニカ@仮面ライダーW、ランダム支給品0〜1
[思考]
基本:剛三ちゃんの仇を取るために財団Xの連中を潰す。
0:あの時の仮面ライダー!?
1:タカヤちゃんが気になる! 後、シンヤちゃんやモロトフちゃんとも会ってみたい! 東せつなには負けない!
2:克己ちゃんと合流したい。克己ちゃんのスタンスがどうあれ彼の為に全てを捧げる!
[備考]
※参戦時期は仮面ライダーオーズに倒された直後です。


【東せつな@フレッシュプリキュア!】
[状態]:健康、困惑
[装備]:リンクルン@フレッシュプリキュア!
[道具]:支給品一式、伝説の道着@らんま1/2、ランダム支給品0〜2
基本:殺し合いには乗らない。
0:目の前の二人から話を聞く。
1:友達みんなを捜したい。
2:ノーザを警戒。
3:可能ならシンヤを助けたいが……
4:克己やシンヤ、モロトフと分かりあいたい。
5:結城丈二や涼邑零とまた会えたらもう一度話をする。
[備考]
※参戦時期は第43話終了後以降です。
※大道克己達NEVERが悪で、テッカマンエビルとテッカマンランスを倒すという結城丈二の言葉は正しいと理解していますが、完全に納得はしていません。
※この殺し合いの黒幕はラビリンスで、シフォンを再びインフィニティにする事が目的ではないかと考えています。


【フェイト・テスタロッサ@魔法少女リリカルなのは 死亡確認】
【ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのは 死亡確認】
【残り52人】

395 ◆LuuKRM2PEg:2012/05/25(金) 21:08:21 ID:TauxDPes0
以上で投下終了です。
もしも矛盾点などがありましたら、お手数ですが指摘をお願いします。

そして◆gry038wOvE氏の質問に気付くのが遅れて、拙作の投下を優先させてしまい誠に申し訳ありませんでした。
文字化けの修復に関してはあまり詳しくないので恐縮ですが、専用のソフトがあるみたいです。
今回は◆gry038wOvE氏に失礼な事をしてしまい、この場でお詫び申し上げます。

396名無しさん:2012/05/25(金) 21:29:33 ID:eED.CLTE0
>>375
とりあえずPC上にデータ戻して、文字コード変えてみたら?

397名無しさん:2012/05/25(金) 21:31:36 ID:h7b2HLHY0
お二方投下乙です。

未知の〜>
井坂……対主催でも自重しない。とりあえずティアナを実験台にするか……ティアナは利用されるわけだが利用されなきゃ退場確定である事を踏まえると……ベストとは言えなくてもベターな選択肢ではあるのかなと。
まぁ、もう一言あるけどそれは後述。

答えが〜>
ガドル……マーダーでも自重しない。フェイトへのリベンジ完了で一気にユーノもフェイトも退場か……というかリリカル涙目過ぎだろと。まぁ放送聞く前に退場できた分むしろ幸運と言えなくもないのかなぁ。
ただ、良くも悪くも杏子への影響が強いのが救いか。まぁ、このまま優勝狙いにするとしてもこのままじゃどうにもならないのが……
あと一言、京水とタカヤはいつまで漫才を続けるつもりなんだろうか……ずっと続けても良いのだよ?

最後……
ティアナ……散々考えている所悪いけど、なのはもフェイトもユーノも退場し、相方は堕ちた。もうこれある意味道化じゃねーのと。
ついでにアインハルトも精神面ヤバイこと踏まえると……最後の希望はヴィヴィオという事になるのか……どうにもならないよな。

398名無しさん:2012/05/25(金) 21:36:33 ID:h7b2HLHY0
◆gry038wOvE氏>
ご自身でもある程度調べられているとは思いますが、既に出ているとおり、文字コードを切り替えるといった方法、専用ソフトを使っての修復を試してみたらいかがでしょうか。

399名無しさん:2012/05/25(金) 21:43:32 ID:Hk8DkG920
投下乙。
フェイト、ユーノーーーー!!
うおお、まさか魔法少女リリカルなのは、前期組が一気に全滅するとは…
心境が変化しつつある杏子はこれからどうなるんだろうなあ…
後、なにげに同作品同士のWと京水の絡みも気になるな

400 ◆gry038wOvE:2012/05/25(金) 22:40:29 ID:Eg4MeAxw0
皆さん、ありがとうございます。
何とか周囲の人物に補助してもらって、データの修復に成功しました。
今日中に推敲して、今日か明日にでも投下したいと思います。
迷惑をかけてすみませんでした。

>>答えが、まったくわからない

投下乙です。
杏子にも少し変化が見られるなぁ…。
ユーノやフェイトも死亡し、ガドルという強力なマーダーは相変らず野放し。
さて、こいつをどうするか。
京水さんたちが翔太郎と合流し、どう行動するのかも楽しみです。
しかし、翔太郎は数に恵まれるなぁ…。

401名無しさん:2012/05/25(金) 23:42:40 ID:9486ZIqU0
投下乙です

あんこちゃんは…これはきついなあ
ガドルさんはフェイトへのリベンジを終えてユーノも殺害、そして野放し状態…
京水さんらはどうするんだろう…

402名無しさん:2012/05/26(土) 10:09:57 ID:trDvfdNY0
1つ気になった点があるので指摘しますが、
杏子の現在位置がI-7の平原からH-9の市街地まで移動したとあるのですが、
1つのエリアが数キロ四方である事を踏まえるといくら魔法少女とはいえ気絶した成人男性である翔太郎を抱えてあの短時間でそこまで移動するのは無茶ではないでしょうか?

403 ◆LuuKRM2PEg:2012/05/26(土) 10:23:08 ID:/VECKqG20
感想及びご指摘をありがとうございます。
それでは杏子達の位置を【H-8】に修正させて頂きますが、よろしいでしょうか?

404名無しさん:2012/05/26(土) 10:40:52 ID:trDvfdNY0
>>403
それだと今度は変身していないタカヤ達3人がF-9からH-8まで2エリア強である数キロ移動した事になる事に、移動だけならともかく参加者捜しながらという事を考えるとこれも難しいのでは?

405 ◆LuuKRM2PEg:2012/05/26(土) 11:15:45 ID:/VECKqG20
わかりました。
それでしたら今回の話の最後は杏子達とタカヤ達は合流しない方面で修正して
後程、修正SSスレで投下させて頂きます。

406名無しさん:2012/05/26(土) 11:45:04 ID:.5ImoVds0
>>404
ちょっと待って
F−9→H−9とF−9→H−8にほとんど距離的な差はないんじゃない?
地図上でまっすぐ進んだか少し斜めに進んだかの差しかなくないか?

407名無しさん:2012/05/26(土) 12:38:19 ID:.5ImoVds0
とりあえず、地図を見る限りでは順路通りに進めばH−9はほとんど時間かけずに抜けられそうだけど…
でも、杏子と出会うとなるとそこからH−8を半エリアくらいは進んでそうだからやっぱ厳しいのか?
うーん、まあ修正するみたいだしいっか
うん、自分の書き込みはスルーして修正作業頑張ってください

408名無しさん:2012/05/26(土) 15:51:25 ID:bzWsk6ggO
投下乙です!
絶望が魔法少女のゴールだ……まああんこに希望を託せただけ無駄死にもいいところな今までよりマシな方か?

409 ◆LuuKRM2PEg:2012/05/26(土) 19:08:31 ID:/VECKqG20
修正スレに拙作の「答えが、まったくわからない」を投下させて頂きました。
お手数ですが、ご確認をお願いします。

410 ◆gry038wOvE:2012/05/27(日) 00:38:04 ID:XC9D38qU0
予告より少し遅れましたが、ただいまより投下します。

411血染めのライダーパンチ ◆gry038wOvE:2012/05/27(日) 00:40:16 ID:XC9D38qU0
 仮面ライダー2号とタイガーロイドの戦いは続く。
 一対一でありながら、仮面ライダー2号──一文字隼人の分は悪かった。
 鎧騎士戦の身体の傷は癒えない。この傷を持ちながら、2号は接近戦を強いられる。
 そのうえ、眼前の虎は背中に大砲を背負い、遠距離からの攻撃にも対応している。


(さて……どうやってやるか……)


 燃え滾る炎の中においても、ライダーは冷静に眼前の敵の分析を始める。
 三影は無差別な砲撃はしてこないだろう。おそらく、確実に狙いを定めてくる。
 砲台を発射する際、少し前に屈んで頭を垂れ、やや視界を崩して隙を生む。それがタイガーロイドの弱点だ。
 無論、それは常人にとっては不十分な、一瞬の隙であって、ライダーだからこそ隙と思うだけの余裕があるだけの話である。
 タイガーロイドもそれを重々理解しているため、これらの行動は隙が生まれないよう、最短で行う。


(……なんだかんだで、実戦経験なら俺の方が上だ。負ける気はしない……)


 本来、旧型の改造人間である彼がBADANとやり合うには、圧倒的な性能の差が存在する。
 それを埋めてきたのは、経験と、それによる自信だ。それはこの瞬間も確かに彼の胸に抱えられていた。
 どの位置ならば避けやすいか、どう跳べば狙い難いか。
 考えずとも、それは身体が覚えている。これ以上、分析に時間を割くのはやめることにした。
 ブルース・リー曰く、「考えるな、感じろ」だ。

 ライダーが右方に跳ぶと同時に、タイガーロイドは一発発射する。
 更にそれを避けて前方に跳んだライダーが、確かに一歩、タイガーロイドへと近付いた。
 木に当たった大砲は、一瞬でそれを木っ端微塵に吹き飛ばした。その残骸が炎の雨を降らす。
 ライダーの背中にその雨がぶつかるも、彼は全く意に介さなかった。


(一歩一歩確かに……だ。あいつに近付くまで、一度だってあの弾に当たれない。そのうえ、近付くにつれ避け難いときた)

412血染めのライダーパンチ ◆gry038wOvE:2012/05/27(日) 00:40:54 ID:XC9D38qU0
 時には一度の砲撃に二歩、三歩と近付く。
 それらの動作も、次の動作も僅か一瞬で終わる。
 後ろには退けない。後方では炎がメラメラと上がっているからだ。
 前に、前に、確かに、確かに。
 力の二号の戦法としては、泥臭く、地味ではあるが、それは確かながら一定のスピードとリズム感を持っていった。
 まるで、最初から決まった動きを演じているかのように、二人の戦いは素早かった。


(一文字隼人……ただ近付いてライダーパンチやライダーキックを狙うだけか……?)


 タイガーロイドもまた、思考する。
 あまりにも的確に近付いてくるライダーを前に、タイガーロイドの身体は緊張する。
 ライダーキックをするに充分な間隔が、そろそろ埋まる。その前に仕留めればそれに越したことはないが、彼としては「ライダーキック」を繰り出してくれても一向に構わなかった。
 あの技は身動きがとり辛い上空からの技であるがゆえ、角度さえ見誤らなければ簡単に砲台で仕留められる。
 むしろ、地上の敵より撃ちやすいのである。


ドゴンッ!


 もう一度の砲撃を間一髪避け、ライダーとタイガーロイドの間隔は非常に狭いものになっていた。
 成人男子の歩幅にして、おそらく十歩前後というところ。──それは、ライダーキックを放てる、限界の短さだ。
 短距離からの攻撃の方が隙は生まれない。
 ライダーはニヤリと笑い、叫んだ。


「ライダァァァァァアキィィィィック!!」


 タイガーロイドは、反射的に上空を向く。
 上空に跳んだライダーに照準を合わせ、クレー射撃のように狙い打つためであった。
 彼ならば、ライダーが落ちるまでに最大で二度は砲弾を撃ち込むこともできる。
 それが成功すれば、落ちてくるのはただの部品──人間で言うところの死体だ。


「……と見せかけて、ライダーパァァァァンチ!!」


 と、その瞬間、タイガーロイドの読みを無視して、虚空を見上げていたタイガーロイドの顔面に紅蓮の拳がぶち当たる。
 一切の回避行動をとらず、受身もしなかったタイガーロイドの顔面を強すぎる一撃が命中した。
 タイガーロイドは吐血しながら、後方に吹き飛び倒れた。
 一文字は最初からライダーキックなどするつもりはなかったのだ。わざわざ必殺技の名前を叫ぶライダーの性を、逆手に取ったのである。

413血染めのライダーパンチ ◆gry038wOvE:2012/05/27(日) 00:41:29 ID:XC9D38qU0
「……引っ掛かったな、バカめ!」

「おのれ……!」


 やや卑怯な手ではあるが、効果は抜群だった。
 喧嘩や戦闘の際、顔は殴られてはならない弱点となる部位である。
 それを、無防備な形にしたタイガーロイドが血を吐く目に遭うのは当然ともいえる。


 タイガーロイドはすぐに起き上がり、怒りのままに砲台をライダーへと向ける。
 あまりにも短い距離と、素早すぎる反撃のせいで、ライダーに避ける暇などない。
 絶対に回避ができない状況であるにも関わらず、ライダーは焦る様子を見せなかった。


「……死ねぇっ!」


 この近距離で砲撃を食らえばひとたまりもない。
 ましてや、避けることなど絶対に不可能だ。
 真っ直ぐに近付いてくる砲丸。


ドゴォォォォンッッ!!


 ライダーとタイガーロイドの身体は、いずれも後方に吹き飛んだ。当然である。
 しかし、それによって倒れ付したのは肉塊ではない。
 ライダーの身体の状態は思ったほど酷くはなかった。


 ──ただ一つ、手袋を本当の血に染めた左腕を除いて。


「痛ぇなちくしょう……。流石に痛ぇ」


 タイガーロイドの砲弾はライダーの身体に衝突する前に、一文字の左腕が放ったライダーパンチによって、跳ね返されたのである。
 直後に砲弾は空中で暴発し、双方の身体は吹き飛んだ。ライダーは左腕に、タイガーロイドはその全身に傷を負う。跳ね返された砲弾は、位置的にはタイガーマスクのまん前で爆発したのである。
 タイガーロイドの前面が火傷で焦げて、黒色に染まっていた。煙の臭いが彼にはどれほど不愉快だっただろう。
 しかし、口を聞くにも顔の火傷が酷く、口もろくにきけなかった。腕の力も抜け、立ち上がり反撃することもできない。反論・反撃は既に封じられたのである。


「……まあ、これで一勝だ。肉を切らせて骨を断つ……ってな……。まあ、どっかの仮面ライダーみたいに腕にアタッチメントつけるのも悪くないかもな」


 先ほどの胸部の傷など目ではないほど、一文字の左腕は熱く、痛む。
 血が出るほどの強い打撃と、爆発の衝撃、火傷。彼の左の拳は、あのライダーパンチの時のまま止まったように、閉じたままだった。
 偉人・野口英世の持病のように、彼の左の拳は開かなくなってしまったのだ。
 しかし、それでも彼は自分のことより目の前の相手に止めを刺すことを優先しようと前に出た。


「三影。俺はお前を許すつもりはないぜ。このまま放っておくわけもない。……今、トドメを刺してやる」


 悪のBADAN戦士・タイガーロイド──三影英介。
 今、その男に仮面ライダー2号が止めを刺そうとしていた。
 ライダーパンチ、ライダーキック。どちらの技も、今の彼を仕留めるには充分だろう。

414血染めのライダーパンチ ◆gry038wOvE:2012/05/27(日) 00:42:09 ID:XC9D38qU0
「ライダァァァァァッ!! ……」


 彼が地面に転がるタイガーロイドへと技を繰り出そうとしたとき、一文字は後方から来る気配に気が付いた。

 ──弾丸!

 弾丸が接近していたのである。
 ライダーは銃口から弾丸が飛び出した音を聞き分けたのだ。
 まだ間に合うと判断したライダーは咄嗟に左に跳び、弾丸を避ける。


「……誰だっ!?」


 弾丸が炎の中で燃え尽きる音と共に、ライダーは後ろを振り返る。
 そこには、黒い装束で顔と骨格を隠した怪人が立っていた。
 あの弾丸の軌道と、その手に握られた銃は、彼が一文字を狙ったことを示していた。


「……」


 その怪人はただ無言で立ち尽くす。
 淡々と彼の姿はあまりに不気味だった。「殺さなければ生き残れない」と思い、切羽詰って撃った風ではない。
 ただ、まるで当然のように人に銃を向け、撃った。それに気づかれでも一切の動揺を見せていない。


(こいつ……一体何なんだ? 不気味なヤツだ……)


 タイガーロイドに止めを刺そうということさえ忘れ、そいつのことを考えた。
 次の瞬間、彼は残弾の無くなった銃を地面へと投げ捨て、剣を上空で回し、一文字にも「見覚えのある姿」へと変わった。
 暗殺という術をやめ、直接的な殺害方法へと開き直ったのだ。


「なるほど……いつだかのがんがんじいモドキかい……くだばったかと思ってたが、随分元気そうだな」


 それは、少し前に見た狼の鎧──暗黒騎士キバだったのだ。
 この禍々しく邪悪な外形を、一文字は忘れないだろう。
 そのうえ、あの確かな実力も胸に残っている。
 彼はやはり、変身した人間だったか……と思いながら、ライダーは構えた。


「──傷の恨みは晴らすぞ、仮面ライダー」


 左腕の痛みを抑えながら、ライダーは彼の方へと走り出そうとした。
 敵は既に走り出している。その俊足は、ライダーは走ろうとする前に、既にライダーの眼前にまで迫っていた。

 ──いや、キバが圧倒的に速いのではない。

 何かがライダーの足を押さえつけ、走行しようとする体を妨害していたのだ。
 呻き声とも喘ぎ声とも似つかない、不気味な声が足元から響く。
 声にならない声。ただ、改造人間の耳には何とか感知できる程度の声。

 タイガーロイドの──いや、既に三影英介の姿になった改造人間の手が、ライダーの右足を掴んでいたのである。

415血染めのライダーパンチ ◆gry038wOvE:2012/05/27(日) 00:42:58 ID:XC9D38qU0
(邪魔しやがって……!)


 必死で足を振り払おうとするライダーの身体に、暗黒騎士キバの斬撃が走る。
 食らったのは、先ほどと同じく胸部だ。傷は胸部に出来たが、その痛みは身体全体にも及んだ。
 と、同時に左腕の麻痺が一瞬解けた。痛みによって走った、電撃のような間隔が左腕の麻痺を解いたのである。


(痛ぇ…………が、退けねぇ!)


 剣道で言う「胴」の動作の後、ライダーの真横から通り過ぎようとするキバの腕を、ライダーの左腕は掴んだ。
 そして、離さなかった。否、離しようがなかった。
 既に再び麻痺が起こり、拳は握られた形になってしまったのだ。
 足は三影に捕まれて動かず、手もまたキバを掴み離れない。かなり身動きはとり辛い状態である。

 思わぬ静止に戦慄するキバを自分の身体の前まで引き寄せ、その顔面に近距離からライダーパンチを浴びせる。
 簡単に吹き飛んだ三影と違い、彼のデスメタルの鎧は重く、砕けない。


「離せっ……!」

「離れたくても離れられねぇんだよっ!」


 幾度となく、キバの顔をライダーは殴る。
 キバも剣を握ったまま、ライダーの顔を殴る。剣を突き立てにくい距離になってしまったのだ。
 片手だけの殴り合いが始まり、動きは小さくも激しくなる。

ボカッ。ボカッ。

 汚く、幼稚な音が響く。この幼稚な擬音が、今彼らの間に聞こえる音を表すのに最も相応しいのだから、字面が汚いのは仕方がない。
 分はキバにある。彼の鎧と能力はあまりに優れていた。
 本来鍛え上げた戦士であるはずの魔戒騎士たちを幾人も葬り去ってきた彼は、あまりに強すぎたのである。


(ヤバいな……こいつ、がんがんじいのクセにバカみたいに強ぇ……)


 彼の知っているがんがんじいはもっと弱かったような気がする。がんがんじいのクセに強いとは生意気だ。と、まあがんがんじいに失礼だが、それくらいイメージとのギャップが大きい。よく見れば、がんがんじいのくせになかなかハンサムだ。
 コイツにどう対抗すればよい? ──とにかく、考えてる間も殴り続け、殴られ続け、時に上手い具合に避けたりカウンターをしたりしながら、何かを待っていた。
 パンチ、パンチ、パンチの嵐。
 一文字があらゆる武術や体術に優れていたのは、この持久戦において重要なパーツであった。
 下手をすれば、本郷ですら意識が危ういレベルの攻防である。ライダーたちの中でも、一文字のように純粋な身体能力と頑丈さによって攻撃を耐えられるのは希少だろう。


(とはいえ、流石に俺もヤバい……)


 ライダーの意識も朦朧としていた。


(……魔戒騎士でも無いのに、どうしてこんなに強い……)


 キバもまた、新鮮な驚きを感じる。

416血染めのライダーパンチ ◆gry038wOvE:2012/05/27(日) 00:43:49 ID:XC9D38qU0
 その地味な戦いに終始符を撃ったのが、また次なる「第三者の一撃」であった。
 ──再びの弾丸である。
 発射音が聞こえようが、今の二人が回避するのは難しかった。ゆえに、それは命中した。
 キバの鎧に吸い込まれるように嵌った弾丸は、彼の鎧から小さな煙を出させている。


「……やっぱり、このくらいじゃ効かないか」

「誰だっ!!」


 ライダーとキバは新たなる参戦者に顔を向け、攻撃を止める。
 そこには、ただの人間がライフルを構えた姿で立っていた。
 大の大人の男が一人、中学生ほどの少女が一人。それは、この殺し合いの場ではあまりに弱弱しく見えた。
 しかし、こうも余裕しゃくしゃくと異形の戦闘の前に出られるあたり、男の方は肝が据わっている。
 それでもやはり、女の子の方は、少し怯えた様子を見せていた。


「自己紹介の前に説明してやる。これはkorrosion弾という弾丸が装填されてる。どんな金属でも腐食させる弾丸だ。……たとえば、刃、鎧、サイボーグとかな」


 彼の名は石堀光彦という。彼のkorrosion弾の説明は、半分が嘘で半分が本当というところであり、少しハッタリも交じっていた。
 キバの鎧は、少なくとも現状では腐食していなかったのだ。
 彼には、それが効いているのかさえわからないが、ともかく適当な事を口にする。


「ちょっとの時間差はあるかもな。まあ、とにかく撃たれたくなかったら大人しくしてもらおう」

「……なんで、お前がそれを持ってる」


 一文字は問う。あのライフルと弾丸には、悪い思い出があったのだ。
 遠い過去のこととはいえ、今の自分が誕生するうえでの一つのポイントに、あれの存在があった。
 忘れるはずもない。あの弾丸がショッカー製であることも。


「支給品っていうやつだ」

「皆さん、戦うのはやめてください!」


 こちらの少女の名は花咲つぼみ。本来、戦いを好まない彼女は、石堀のやや乱暴な方法にも眉を潜めたが、あちらの戦いを止めるため、仕方がなく石堀の方法を肯定した。
 とにかく、彼女は戦いを止めたかったのである。この灼熱の地獄の中であっても。


「……この子の言うとおりだ。今すぐに武装を解除しろ」


 そう言われてはいるが、誰も武装を解除しようとはしない。
 石堀を警戒するというよりは、手をつながれた相手への警戒である。
 変身を解除すれば、相手に攻撃してくださいと言っているようなものだ。


「話がわからないようだな。……まあ、どちらにせよ、まずあんたはやられるぜ」


 キバに向かい、石堀が破棄捨てるように言う。
 見れば、キバのデスメタルの鎧はkorrosion弾により腐食し始めていた。どうやら、これは一応彼の鎧にも効いたようである。石堀としても一安心だ。

417血染めのライダーパンチ ◆gry038wOvE:2012/05/27(日) 00:44:47 ID:XC9D38qU0
 これは、魔戒騎士にとっても、予想外の事態である。


「さあ、武装を解除しろ」


 まず、キバが鎧を解いた。今はむしろ、腐食する鎧を身に纏っているほうが、戦いにくいだろう。
 鎧が纏っていた分、キバの左腕にはゆとりができており、ライダーに握られていた左腕は解放される。
 つまり、彼は自由になってしまったのだ。
 だが、魔戒剣を使ったところでkorrosion弾がある限りは腐食の可能性を考え、彼も行動はしない。
 彼が攻撃の様子を見せないことから、石堀は次にライダーを見る。


「そっちもだ。早くしてくれ」


 一文字はすぐに変身を解いた。
 石堀もつぼみも、その姿には見覚えがあった。


「あ! 広間にいた方です!」

「一文字隼人。仮面ライダーとか呼ばれてたな」

「覚えてくれてて光栄だね」


 一文字は黒装束に対する警戒で笑ってはいなかったが、一応つぼみと石堀を見て一定の信頼を置いていた。
 無論、初対面でありながら完全に信頼しているというわけではない。あくまで、バラゴと比べてみればそちらに甘んじようという程度である。
 ましてや、彼女は戦闘に対して強い否定を見せている。
 仲間として引き入れるのはアリだ。──こんな子だからこそ、仮面ライダーは守らなければならない。


「さて、あんたたちが一体何をしていたのかを教えてもらおうか。あんたたちが何者なのかも」


 石堀はライフルの銃口を向けながら、彼らの方に寄って行った。
 前方へ、前方へ。相手は一切動揺しておらず、石堀も銃口も恐れてはいないようだった。
 彼の陰に隠れて、つぼみも近付いてくる。


「……!」


 黒装束の男は、銃口が一文字に向いた瞬間、ここぞとばかりにバックステップを踏む。
 装束が風に靡く音に驚き、咄嗟に石堀はそちらに銃を向けた。
 ……が、装束の男は攻撃の意思などもっていない。ただ、後方に向かって石堀の手から逃れようと退いたのである。
 魔戒騎士の脚力により、すぐに彼の姿は三人の視界から消えてしまう。


「……逃げたか。まあいいさ。あんたは逃げるなよ?」

「わかってるわかってる。一から百まで、聞きたいことを教えてやらぁ」


 一文字は両手を上げる。左手は、不自然な形に握られていた。
 キバの手を握ったときの型が残ってしまったため、アルファベットのCの字の形になっている。
 右手はしっかりと伸ばしているのに、左手は不器用に上げている。非常に滑稽な様子だった。


「その左腕は?」

「ちょっと、さっき火傷でね。離れなくなった」

「足元の男は?」

「いい加減、足を離してくれてもいいと思うんだがねぇ……。元はといえば、こいつのせいで手がこんなになっちまったんだ」


 三影は、大分前から意識がないようだった。
 喋ることもままならない彼が、いつ意識を失ったのかは誰にもわからない。
 しかし、彼は一文字の足を握り続けている。彼を道連れにしようという執念があるのだろう。

418血染めのライダーパンチ ◆gry038wOvE:2012/05/27(日) 00:47:28 ID:XC9D38qU0
「それより、ここは熱いだろ。場所を変えよう。さっきの事は、そっちで俺から全部話す」


 周囲は炎がまだ少し燃えている。
 これはまた大火事になりそうなトンデモない光景である。
 もう燃え尽きてしまっただろうか、つい先ほどまで怪人の死体が燃えていた辺りは、非常に焦げ臭くなっていた。
 つぼみも、臭いには気づいているようだが、それが人の死体の燃える臭いだとは知らないだろう。
 一文字は、彼女が気づかないうちになるべくここから離してやりたかった。


「確かに、ここは風も吹いてないから火が大きく広がることもなさそうだな。放って行っても火は消える」


 加頭の用意した空間は、強い風は吹いていない。
 行動しやすく、快適な場所であった。
 石堀は火災など気にはしないが、建前として言っておく。


「……おし。決まりだ」


 一文字は強引に三影の手を引き剥がし、彼を家の前に放置されたビートチェイサーに乗せた。
 虫の息であろうと生きている限り、彼を野放しにするわけにはいかないし、少女の前で人の姿をした三影を殺すわけにもいかない。
 一応、監視という名目でこの危険人物も連れて行くしかないのだ。
 彼を乗せたバイクを押し、先頭を切るように、一文字は歩いていく。

 石堀は一文字に銃を向け、連行しているようにゆっくりと進んで行く……。



★ ★ ★ ★ ★




(利用価値の有無に関わらず、仮面ライダーの存在は面白いな……)


 石堀は村の民家の中で一文字から、先ほどあったことの全てを聞き出した。
 どうやら、嘘を言っている気配はないようだったし、少なくとも彼が広間で言ったとおりに「加頭に仇なす」というスタンスで進んで行くようだった。


 ある意味で、それは石堀も同じである。
 彼はアンノウン・ハンドでありながら、今はあくまでナイトレイダーの隊員だ。
 この場においても、イレギュラーな出来事が起こらない限りは、ナイトレイダーであり続ける。
 もし今、弧門や凪に正体がバレてしまえば色々と面倒だ。
 ウルトラマンの力が凪に渡るか、或いはこのゲームの勝者の商品が本物であるか……それが石堀が現状で殺し合いに乗る条件である。


 何にせよ、このつぼみという少女も、一文字という男も、しばらくは味方なのである。
 加頭を倒し、元の世界に帰るという願いに関しては共通だ。
 この制服を纏っている限りは、必要かぎりの善は行い、周囲の信頼を得る。
 時にはその偽善に命もかける必要があるだろう。どうせそう簡単にはくだばらない。
 ナイトレイダーとしての行動は欠かしてはならない。


 反面、石堀はあくまで「対主催」であり「ステルス」である。
 ゆえに、彼は自ら進んで危険な場所に首を突っ込んだりはしない。たとえば、先ほど──ここに来て少しした頃、巨大な爆音が聞こえたことがあった。
 見ればまるで地上から巨大なビームを見たかのような気柱が立っており、間違いなく戦闘か爆発の光景だと思った。つぼみも流石に気づいており、何かあったのだと決め付けていた。
 しかし、その時に石堀はあくまで、「つぼみを守るため」という名目で無視をしているのである。

 そこに行っても仕方がない、君が危険になるだけだ、と──。

 そう言って、善人を装いながら危険を回避しようとしていた。
 ましてや、それが起きた頃にはもうそんなエリアを通り過ぎていて村に近付いていたのである。また戻るというのは正直言って面倒臭い。
 先ほど、彼らの戦いに介入したのだって、korrosion弾の効果を試すためと言ってよかった。
 つぼみはあの時から、しばらく、どことなくぼうっとしている。少し後悔しているのだろう。


 石堀は意に介さない。
 そんな冷酷さを持ちながらも、ここで常識ぶって言う。

419血染めのライダーパンチ ◆gry038wOvE:2012/05/27(日) 00:48:11 ID:XC9D38qU0
「……で、そこの男はどうするんだ?」


 焦げ臭い臭いを発しながら倒れている黒ずくめの男に、石堀は目をやった。
 一応ソファーに寝せているが、その寝せ方は非常にぞんざいである。
 まるで、一文字は投げ捨てるかのように三影をソファーに寝せていた。
 話を聞く限りでは、救いようのない悪人であり、「改造人間」という非人間らしいが、それでも流石にこの場で殺すわけにはいかないだろう。


「……この人も、今は悪い人かもしれませんが、もしかしたら、心を入れ直してくれるかも……」


 つぼみが口を開く。
 どうやら、彼女の願いはひたすら一途に本物らしい。
 人を助けることには強いこだわりがあると見える。
 だが、帰ってきた答えは冷酷ともいえるものだった。


「残念だが、そいつは無理だな。コイツは、もう何人も人を殺した。根っからの悪人だ。こんなところに野放しにしてちゃ、犠牲者が増えるだけだぜ」

「でも……」

「お嬢ちゃんの言うこともわからなくはない。それに、俺はそういう考え方の方が好きだ」


 言いながらも、一文字の顔はこわばっていた。
 一文字も、三影のような悪になっていた可能性があったのだ。
 だからこそ、彼らを葬らねばならない。
 つぼみの考え方は、一文字たち仮面ライダーにとっても最大の理想である。
 しかし、それに甘んじてはいけない。
 多くの人を救うためには……。


「勿論、コイツは俺がお前たちに見えないところで決着をつける。……わかってくれ。俺たち改造人間は、死ぬことが救いなのかもしれないんだ」


 一文字は、乱暴に三影の体を抱えた。
 大の男を持っている姿にしては、あまりにも軽々としていた。
 三影の体格は、日本人離れしている。つぼみならば、おそらくどんなに頑張っても持上げることはできないだろう。
 それを、改造人間一文字隼人はあっさりと持上げたのである。


「……じゃ、ちょっと、コイツを見送ってくる」


 一文字は、三影をお姫様だっこしたまま、ドアを開ける。
 外は、先ほどより明るくなっていた。
 その光は、つぼみや石堀にも降り注ぐ。


 悪人・三影を葬るには、似つかわしくない時間帯だった。



★ ★ ★ ★ ★

420血染めのライダーパンチ ◆gry038wOvE:2012/05/27(日) 00:48:52 ID:XC9D38qU0
「……殺せ、カメンライダー」


 民家から少し離れたところで、一文字の腕の中から声が漏れた。
 もはや、その声は微量で、悲観的に全てを見たような弱弱しさを持っていた。
 一文字も、三影が起きていたことには気が付かなかった。いつ、どこから起きていたのかは一文字もわからない。
 流石に驚きを隠せなかったが、少し冷静ぶって答える。


「なんだ、起きてたのかい」

「……改造人間の体は自然に治癒される」

「治ってからリベンジしようって言う気はないのか?」

「貴様ら偽善者が、それをさせてくれるとは思えんな」

「……そうかい。ま、そうなんだけどな……」

「……早く殺れ。こんな状態では、もうこの場で勝ち進むことはできない」

「………………んじゃ、お望み通り」


 三影はタイガーロイドに変身しない。いや、まだ戦える状態ではないのだ。
 ゆえに、タイガーロイドにはなれない。彼の体は今、朽ち果てる過程にあるのである。
 変身する気力などないし、生きるのも面倒になっていた。


「ライダー……変身!」


 ────ドゴッ


 その瞬間、仮面ライダーは悪魔のように見えただろう。
 完全に弱りきった人間を、圧倒的な腕力で殺害する。

 悪を倒す──そのやり方は、必ずしも綺麗ではない。
 この瞬間、仮面ライダーはヒーローではなかった。
 しかし、これから三影に殺されるはずだった幾つかの命を、彼は救っていた。


「悪かったな、あんたの願いを完全に叶えてやれなくて」


 一文字には聞こえたのである。
 殴られる直前に彼が漏らした、声になっていないような小さな言葉を。


 「どうせならお前に倒されたかったぜ、ゼクロス」と。


 気づけばもう、志葉邸の前でごうごうと燃えていたはずの炎は消えている。
 彼が作った炎は、もう消えたのだ。



【三影英介@仮面ライダーSPIRITS 死亡】



★ ★ ★ ★ ★



「ただいま」


 民家のドアが開いた。
 一文字は、てっきり二人はもうこの民家から逃げてしまったものだと思っていた。
 改造人間とこれからしばらく行動しなければならない……それは恐怖が付きまとうだけだろう。
 だから、その言葉に返事が返ってきたことが素直に嬉しかった。


「おかえりなさい」


 つぼみは、作り笑いを浮かべようとしていた。
 一文字の表情は、三影を確かに葬ったことを意味していたから、素直な笑みは浮かべられなかったのだ。
 しかし、悲しいかな、少しの優しさを持っていた彼女は、彼をできる限りの笑みで迎えたいと思ったのだろう。
 それと同等に不出来な笑みを返して、一文字は洗面所に向かう。


 一文字は、ただ自分の顔に妙な傷がついてないかを確認しただけだ。
 つぼみたちの反応で、少なくともあの傷が浮かび上がっていないと示すものだったが、それでも不安だったのだ。
 ただ自分の顔を見に来たというのも変なので、水を出して顔を洗う。


「……さて、本郷たちはどうしてるかな」


 彼は気を取り直して呟く。
 長きにわたる戦友である彼が、どうしているのかが素直に気になったのだ。
 おそらく、今も彼は誰かを護るために戦っているのだろう。
 一文字もそのつもりだ。
 三影を殺したあの一瞬も、もう慣れてしまった感覚だ。後を引くほどの苦味はない。


 ましてや、まだ彼には次の使命が残っている。


 あのがんがんじいモドキ──。
 あいつだって、ブッ飛ばさないといけない。



★ ★ ★ ★ ★

421血染めのライダーパンチ ◆gry038wOvE:2012/05/27(日) 00:49:30 ID:XC9D38qU0
 一文字隼人──その男に、バラゴは苦汁を舐めていた。
 体が思うようには動かず、そのうえ毎回あの男にはしてやられる。
 最後の魔弾も避けられ、ヤツをホラーにすることは失敗した。


 ──だが


 バラゴは、一文字が三影を殺す姿を見ていたのである。
 あの男は、ホラーなどにならなくても、充分に他者を傷付ける可能性を持っている。
 鍛え上げたはずの魔戒騎士の心が脆くも崩れ去ったように、一文字の心も崩れるかもしれない。

 人は常に、ホラーと等しくなる可能性を持っている。

 だからこそ、バラゴは一文字に対して焦る必要などないと思った。


 本来、バラゴはここに来なければ、冴島鋼牙さえも闇に落す可能性を持っていた。
 その時の人身掌握力は、この場でも変わらない。


 最初の狙い目は、同行者の花咲つぼみ。
 いずれも、バラゴにとっては名前を知らない相手だが、バラゴは彼女を脆弱な人間として見ていた。
 もう一人の石堀光彦という男は──。
 ……今は干渉することさえ、やめたほうがよさそうだ。

 彼は、人間とは違う何かを持っている。
 そう、バラゴは彼に自分と似た何かだ。まるで、彼は人間ではないかのようなオーラがある。
 人間ならば、多少勘が良くても石堀の異変には気づくことはないだろう。暗黒騎士のバラゴですら、多少の違和感としか感じないほどだ。


(まあいい……。あの男も最終的には殺す)


 フードに隠れたバラゴの目は、ビートチェイサーの泊められた民家を遠くから覗いていた。



【1日目/早朝 C−2 民家】
※民家前にビートチェイサー2000@仮面ライダークウガが設置されています
※B-2周囲の建物は壊滅しました(どの程度の規模かは、後続の書き手さんにお任せします)

【一文字隼人@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:疲労(大)、胸部に斬痕、左の拳が開かない、左腕も全体的に麻痺
[装備]:不明
[道具]:支給品一式、姫矢の戦場写真@ウルトラマンネクサス、ランダム支給品0〜2(確認済み)
[思考]
基本:仮面ライダーとして正義を果たす
1:今はつぼみ、石堀を守る
2:他の仮面ライダーを捜す
3:暗黒騎士キバを倒す(但しキバは永くないと推測)
4:もしも村雨が記憶を求めてゲームに乗ってるなら止める
5:元の世界に帰ったらバダンを叩き潰す
6:この場において仮面ライダーの力は通用するのか……?
7:バイク(ビートチェイサー2000)に乗って南から市街地に向かう
[備考]
※参戦時期は第3部以降。
※この場に参加している人物の多くが特殊な能力な持主だと推測しています。
※加頭やドーパントに新たな悪の組織の予感を感じています(今のところ、バダンとは別と考えている)。
※園咲霧彦、園咲冴子が園咲来人の関係者である可能性が高いと考えています。
※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました
※18時までに市街地エリアに向かう予定です。
※村エリアから南の道を進む予定です。(途中、どのルートを進むかは後続の書き手さんにお任せします)


【石堀光彦@ウルトラマンネクサス】
[状態]:健康
[装備]:korrosion弾@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:支給品一式、メモレイサー@ウルトラマンネクサス、110のシャンプー@らんま1/2
[思考]
基本:今は「石堀光彦」として行動する
1:周囲を利用し、加頭を倒し元の世界に戻る
2:今、凪に死なれると計画が狂う……
3:表面上はつぼみを保護し、一文字と協力
4:弧門、凪、つぼみの仲間を捜す
5:都合の悪い記憶はメモレイサーで消去する
6:加頭の「願いを叶える」という言葉が信用できるとわかった場合は……
[備考]
※参戦時期は姫矢編の後半ごろ。
※今の彼にダークザギへの変身能力があるかは不明です。
※ハトプリ勢の名前を聞きましたが、ダークプリキュアの名前は知りません。
※良牙が発した気柱を目撃しています。

422血染めのライダーパンチ ◆gry038wOvE:2012/05/27(日) 00:51:19 ID:XC9D38qU0
【花咲つぼみ@ハートキャッチプリキュア!】
[状態]:健康、加頭に怒りと恐怖、やや精神的疲労と後悔
[装備]:プリキュアの種&ココロパフューム
[道具]:支給品一式、鯖(@超光戦士シャンゼリオン?)
[思考]
基本:殺し合いはさせない!
1:仲間を捜す
2:石堀、一文字と一緒に行動する
[備考]
※参戦時期は本編後半(ゆりが仲間になった後)。
※溝呂木眞也の名前を聞きましたが、悪人であることは聞いていません。
※良牙が発した気柱を目撃しています。

【1日目/早朝 C−2 民家付近】

【バラゴ@牙狼─GARO─】
[状態]:胸部に強打の痛み、顔は本来の十字傷の姿に
[装備]:魔戒剣、魔弾(1発)+銃@牙狼
[道具]:支給品一式×3、ランダム支給品0〜2、冴子のランダム支給品1〜3、顔を変容させる秘薬、インロウマル&スーパーディスク@侍戦隊シンケンジャー、紀州特産の梅干し@超光戦士シャンゼリオン、ムカデのキーホルダー@超光戦士シャンゼリオン、『ハートキャッチプリキュア!』の漫画@ハートキャッチプリキュア!
[思考]
基本:参加者全員と加頭を殺害し、元の世界で目的を遂行する
0:一文字の監視
1:つぼみを殺し、一文字に復讐する
2:今のところ顔を変容させる予定はない
3:石堀に本能的な警戒(微々たるものです)
[備考]
※参戦時期は第23話でカオルに正体を明かす前。
※顔を変容させる秘薬を所持しているかは不明。
※開始時の一件で一文字のことは認識しているので、本郷についても認識していると思われます。
※冴子と速水の支給品はまだ確認していません。
※つぼみ、石堀の名前は知りません。

【共通備考】
※三影の支給品は、民家内の誰かが所持しています。
※志葉家の前の火はほぼ消えました。

423 ◆gry038wOvE:2012/05/27(日) 00:51:46 ID:XC9D38qU0
以上、投下終了です。

424名無しさん:2012/05/27(日) 00:58:05 ID:bXtKkSbE0
投下乙です!
三影、まさかここでリタイアとは……最後の最後までゼクロスを思っているのは流石と言うべきか。
ただ村雨も、もしもこの事を知ったらどうなるだろうなぁ。
そして一文字達は上手くチームを組めたけど、まだバラゴが近くにいるし!
あとバラゴ、その推測は当たってるぞw もしも石堀の正体を知ったら……驚くだろうなぁ。

それと状態表で魔弾が一発だけ残っていますが、もしや書き間違いでしょうか?
本文中で二号を目がけてバラゴは魔弾を発射したように見えたので。

425名無しさん:2012/05/27(日) 01:18:26 ID:vH2ZaMtM0
投下乙。
三影…今回も短命で終わったか
村雨からすれば同じ相手に二度殺されたわけだから、やりきれないだろうなあ
しかも戦闘現場に気付いていながら見逃してしまってるし
そして、バラゴさんのストーキングは続く…と
とりあえずつぼみは状況を考えようか
変身渋ってる場合じゃねえぞ

426 ◆gry038wOvE:2012/05/27(日) 01:21:00 ID:XC9D38qU0
>>424
状態表のミスです(汗)
そこの修正に加え、korosion弾の弾数もマイナス1にしときます。

427名無しさん:2012/05/27(日) 01:28:27 ID:E9D6stEsO
投下乙です!
三影はスタンスから決して長生きするタイプじゃないわな・・・

にしてもヒーロー組に比べて魔法少女組は大分日和ってるなぁ、ガチやってる連中もいるにはいるけど個々の認識の甘さが目立つ

428名無しさん:2012/05/27(日) 11:27:47 ID:/MGoRF6A0
用語集に追加キター
青の子とスカイライダーさんの不憫さに泣いた

429名無しさん:2012/05/27(日) 11:31:37 ID:ZWQzl/xoO
もう青の子は美希たんが最後の希望だな

430名無しさん:2012/05/27(日) 20:01:19 ID:vH2ZaMtM0
各キャラの現在地見てて思ったけど、プリキュアの主人公二人、敵味方含めて思いっきり他のプリキュア勢からはぶられてるなw
ハトプリなんてえりかがつぼみ以外の同作キャラと出会うくらいに(つぼみ以外が)近かったというのに
というかえりかの場合同作キャラ三人以外に遭遇者がいないってある意味すごいなw
とりあえず、つぼみもラブも仲間との再会が当分期待できそうになくてドンマイw

431名無しさん:2012/05/27(日) 20:11:39 ID:Qi7GZUSA0
投下乙です

三影、もう少し粘ると思ったがここで脱落かあ
村雨が放送聞いたら…
そしてつぼみはそれでいいのかよw

432 ◆gry038wOvE:2012/05/28(月) 00:08:17 ID:S3mYfTz.0
読み直したところ、>>413に誤字がありました。
タイガーマスクじゃなくてタイガーロイドです…。

あと、現在位置のページを編集しましたが、画像は流石に紛らわしいだけになると判断し、削除しました。
現在位置を編集できるやつが作れたらなぁ…。自分では技術的に無理かと思うんですが、どなたかできる方いませんか?

433名無しさん:2012/05/28(月) 10:58:46 ID:C6KKj2w2O
>>432
投下乙です。
ダメージ的にヤバいと思ってたけど、一文字は持ち前の技量とガッツで乗り切ったか。
三影の最後は悪役でありながら渋くてかっこいいと思ってしまった。
それにしてもタイガーマスクの三影、想像したらフイタw

434名無しさん:2012/05/28(月) 12:28:31 ID:f1mJrsXUO
仮面タイガーとでも呼ぼうか?w

435名無しさん:2012/05/28(月) 22:57:04 ID:MSg4mvvM0
予約来てるね。
そして死者スレに行った仮面タイガー……まあ実際、洋と三影は直接出会ってないしなぁw

436名無しさん:2012/05/28(月) 23:27:48 ID:f1mJrsXUO
またほむほむはロクな奴と予約されないなぁw

437名無しさん:2012/05/29(火) 00:10:00 ID:cUrSI4do0
しかも放送でまどかの名前呼ばれるんだぜ
そういやまどかを仕留めたスバルもほむほむと中の人が一緒だな

438名無しさん:2012/05/29(火) 00:46:25 ID:iaJxqCqo0
ここしばらくのSSでだいぶ火種が回収されてるが、放送行くまでに他に描写が必要なパートってどこかな?
今予約されてるほむほむパートはその一つだろうが

439名無しさん:2012/05/29(火) 17:47:27 ID:B7DyxurM0
仮面タイガーが用語集に載りそうな気がしてならないw

440名無しさん:2012/05/29(火) 18:51:16 ID:zEzAheqs0
まだ1回しか進んでないキャラやもう一波乱あるかもなキャラがいるけど
特に1回だけのキャラはさすがに移動だけで誰にも会わずに放送を迎えたは不自然

441 ◆gry038wOvE:2012/05/29(火) 20:19:15 ID:qJ6GVrtA0
ただいまより、投下を開始します。

442ASTRY ◆gry038wOvE:2012/05/29(火) 20:20:02 ID:qJ6GVrtA0
 シャンゼリオンとほむらは、決して単純に行く協力関係ではなかった。
 性別は勿論、年齢も、性格も、変身の性質も、力の差も、何もかもが二人は正反対で、共通点が無かったのである。
 いま現在、こうして目の前に怪人が現われ、自分たちの命を護るために協力しろと言われても、二人はすぐにはできないだろう。


「──!」


 ほむらは、何も言わずとも威嚇には充分なほどの剣幕で、ディバイトランチャーをメタルドーパントに向ける。だが、彼女の戦法はただ撃つだけではない。
 誰も認識できない止まった世界の中で、相手の意表をつくような形で敵を撃つ。
 ──現実に、銃口がメタルドーパントに向いた瞬間を誰も認識していない。
 魔法少女としての能力と、輪廻の中で培った経験が、彼女の戦力であった。

 ほむらは引き金を引く。現状で使える唯一の武器がコレだ。
 せめて、もう少し重火器が欲しいと、何度となく願ったが、あるだけあり難い。

 その弾が当たった瞬間、メタル・ドーパントは驚愕する。二発、三発、四発……撃った分は、全て当たった。
 丈瑠も、弾斬りくらいは造作もないと思っていたのに、自分の体にビームが何発も当たったのだ。
 メタルドーパントの体表で、光は破裂する。衝撃波が、彼の体を吹き飛ばした。一瞬、何が起こったのか理解できないようだった。


「さすがっ!」


 暁はほむらを素直に褒めた。
 まだ互いの戦法を上手く理解してないとはいえ、暁も先ほどほむらをギリギリで助けた身だ。ほむらが超常的な能力を持つことはわかっている。
 とはいえ、戦闘中にこうして手を弾いて相手を褒めるというのもどうか。
 こうした様子が、ほむらを脱力させる。この男は、どこまでお気楽なのだろう。生死をかける戦いでさえも、冗談を言うかのように軽く行っていた。

443ASTRY ◆gry038wOvE:2012/05/29(火) 20:21:27 ID:qJ6GVrtA0
「──俺もちょっとは頑張らないとね! シャイニンっぶぇっ!!」


 ただし、暁は自分自身の戦い方と能力を知らない。
 丈瑠の熟練された剣技は、容赦なくシャンゼリオンの体を切りつけた。まるでガラス片が飛散したかのように、綺麗な体表がきらきらと舞う。
 暁に格好をつける暇があるか……? そんなもの、あるわけがない。
 変身後のスペックよりも、変身前の能力が戦闘に投影されていると思っていい。
 暁にシャンゼリオンの力は不釣合いであった。ほむらもそれを間近で見て、思わず呟く。


「……どうして、貴方にそんな力が宿ったのか……不思議だわ」

「俺だって別に好きでやってんじゃないの!」


 メタルドーパントは裏正を真っ直ぐに前へと突き出す。
 確かにそれは俊敏な動きだったが、シャンゼリオンは本能的にそれを掴んだ。
 百度に一度の偶然が来たとでもいうべきか。常人ならば避けたりなどできないはずの動きを、シャンゼリオンは偶然にも回避してしまったのである。
 それは、彼が「超ラッキー」だからだろうか。おそらく、そうだろう。
 メタルドーパントも別に驚きはしなかった。何度も戦えば、このくらいのことはある。ましてや、相手はシンケンレッド以上の武装を持っているかもしれない相手だ。


「おりゃぁっ!」


 裏正の切っ先を抱えて、シャンゼリオンはメタルドーパントの腹に蹴りを入れた。
 後方に吹き飛ぶが、裏正は離さない。その辺りが、侍の覚悟を感じさせる。刀と命は同一と考えているのだろう。
 シャンゼリオンの腕から、裏正の切っ先は離れていく。前方にあるのは、裏正を掴まれて攻撃できないメタルドーパントではなく、次の一撃を繰り出そうとするメタルドーパントである。


「ひぇぇっ!」


 思わずシャンゼリオンが頭を抱えて座り込んだが、これが効いた。
 シャンゼリオンの頭が下がった瞬間を逃さず、ほむらが前方から敵を撃つ。
 今回は時を止める必要もない。これだけで充分な不意打ちだ。もし、シャンゼリオンが頭を下げるのが一秒遅れていたら彼の頭に当たっていたが、それならそれでまあ仕方ないだろう。
 だが、そこまで上手く行ったそのビームは裏正が両断する。

ブォンッ

 両断された光線が裏正に弾かれ、軌道をずらして地面に落ちた。
 ここにきて、改めて彼が常人離れした相手であるということがわかった。
 弾丸を弾く……? 刀で……? ──ほむらの常識を遥かに凌駕する眼前の剣豪に、彼女は恐怖を抱いた。
 時を止めなければ、おそらくは勝てない。だが、あれは使い続けるとソウルジェムのにごりを加速させるだけだ。だから余計な戦いは避けたかった。
 なら、シャンゼリオンこと暁を置いて逃げるか……?
 そうしたとして、彼以外に味方はいるのか……?


「謝りはしない……。怨め! 外道の俺を!」


 斬る。つまり殺す。──彼はそれを謝罪しないと言ったのだ。
 許されることとは思っていないし、謝罪を行うことで善人ぶろうともしなかったのだ。
 その瞬間、メタルドーパントは常識外の速さで間合いを詰めた。
 ──半分の距離を越えた瞬間、ほむらに危害を加えさせまいとシャンゼリオンが起つ。

444ASTRY ◆gry038wOvE:2012/05/29(火) 20:22:05 ID:qJ6GVrtA0


「シャイニングブレード!」


 ほむらを庇う剣が、再び召喚される。
 それはシャンゼリオンの頭上へと真っ直ぐと突き立てられ、そこより前に来る者へ、縦に振り下ろすぞと誇示していた。メタルドーパントはそれを見て斬る動作を中止して、立ち止まる。
 シャンゼリオンはそのまま立ち上がり、まるでついさっきまで座り込んでいたことなど忘れたかのように、胸を張る。


「……あんた、ほむらには甘くないか?」

「何? ──」


 シャンゼリオンは、自信満々に胸を張り、自分が戦闘の中で見つけた発見に、小さな喜びを感じていた。
 メタルドーパントは、どう見ても本気でほむらを斬ろうとはしていなかったのである。
 装甲を持つシャンゼリオンに対しては、体表が割れるほどの斬撃を見舞った。だが、ほむらに対しては、素人が突き出したシャイニングブレードに妨害されて攻撃するのをやめた。
 そこには、適当な妨害が来れば斬らない言い訳ができる……という甘さがあるように思えたのだ。


「もしかしてあんた、生身の人間に攻撃すんのに抵抗あるんじゃない?」


 そこに暁は本能的に気がついたのである。
 最初は、「自分にだけ厳しくないか?」という不平不満だったのだが、相手の甘さだと気づく。


 丈瑠の戦意が本能的にピタリと止まった。──それは、図星ということなのである。本人も、不意の戦意喪失の本義に気づいてしまったらしい。
 ──俺は、殺し合いにまだ躊躇っている?
 自分の中で、そんな疑問が生まれ、それを振り払うために再び戦意をわきあがらせる。
 だが、一度萎えてしまったものはなかなか取り戻ってこなかった。

 この試練に臨むには、自分は未熟すぎたのではないか。
 だとするのなら、これまで自分がやってきたことは何なのか。
 この様で、流之介や源太にであったとき、己はどうすることができるのか。
 この先々、殺し合いの中でやっていくことに不安が芽生えてくる。
 誰もが抱く将来への不安が、彼にはこの時、嵐のようにやって来た。
 思考だけがせくせくと走っているが、体は全く動かない。頭が働きすぎて、動くということを忘れているのだ。


「……よし、ほむら……なんかあいつが止まってる隙に逃げよう!」


 シャンゼリオンは、そんなメタルドーパントを見て、小声でほむらに言う。
 目の前で戦意を失い、黙って立ちすくむメタルドーパントは、隙だらけだ。
 今ならば、逃げても追ってこないのではないか。
 だが、ほむらはその提案を聞いて、呆気にとられる。──これは所謂、悪が自分の迷いを見出す良いシーンではないか?
 無論、ほむらはそんなことを意に介さないタイプだったが、暁はほむらの上を行く「非王道」だったのだろう。それゆえに、彼の行動には拍子抜けした。


「あんなの適当だって! ああいう糞真面目なタイプは、ちょっと言われるとバカみたいに悩むんだよ!」


 暁は、確かに丈瑠に迷いがあるとは考えていたが、確信ではなく、どちらかといえば、本能的に思ったことを口に出しただけと言ってもよかった。
 勿論、100パーセント適当に言ったわけではない。一応考えがあってのことだが、わざわざそれを言うのは気恥ずかしかったから、「適当」という言葉をあてはめただけだ。確かに、その言葉は今の彼の考えに近い。
 結果として、丈瑠にも多少のダメージは与えられている。


「……いいわ。行きましょう……」


 ほむらは小声で返した。その言葉には呆れも交じっている。
 視界に何が映っているのかさえ、よくわからないくらいにぼうっと立ち尽くしたメタルドーパントの目線の先から、少しずつシャンゼリオンの姿は消えていく。
 ほむらなどは、すぐに逃げたのだが、シャンゼリオンはいやにゆっくりと視界から消えていた。
 なるべく自然な形で消えることで、相手に気づかせまいとしたのだろうが、逆に不自然である。


 しかし、視界で動くシャンゼリオンに気づきながらも、メタルドーパントは動くことができなかった。
 自分のこれからの行動方針に疑問が出てしまったのである。
 スタンスを変えるつもりはないが、それでも果たして、そのスタンスに殉じることができるのかという思い。
 自分は意志薄弱なのではないかという自責。


 ────メタルドーパントは、変身を解除した。

445ASTRY ◆gry038wOvE:2012/05/29(火) 20:23:07 ID:qJ6GVrtA0

 志葉丈瑠。──かつて志葉家の当主と名乗った美青年が、その姿を現す。
 その表情がはっきりと見えたいま、彼の苦悩が強いことはメタルドーパントの時よりも、はっきりとわかるだろう。
 立っているだけにも関わらず、その姿は疲弊しきって、まるで三日間睡眠をしなかった人間が、ふらふらと立っているような印象を受ける。


「……ぐふっ。何故追わなかった?」


 そんな彼に、木陰から何者かが声をかけた。
 腰にパンストを巻いて腕を組んだ不気味な男が、丈瑠を見ていたのである。
 男の名はパンスト太郎という。


「……誰だ、貴様は」

「俺は早乙女乱馬(の知りあい←小声)だ」

「嘘をつくな。俺はもう早乙女乱馬に会っている」

「…………」


 パンスト太郎は、先ほどのポーズのまま冷や汗をかいて立ちすくむ。
 要するに、名前を名乗りたくなかったのである。知り合いの名前を借りて、ともかく場を誤魔化そうとしようとしたのだが、それは一瞬で見透かされた。
 完全に乱馬の名前を名乗ることができず、小声で知りあいと付け加えたのは、中国の掟で「パンスト太郎」以外の名前を名乗れなかったからである。
 何にせよ、今のやり取りで「乱馬が近くにいる」というのはわかった。今、おそらく協力関係にはなれないであろう乱馬とパンスト太郎では、会っても意味はないが……。


「……まあいい。今の戦いを見ていたのか?」

「ああ。お前が変身したあたりからな」


 パンスト太郎は、彼らの戦いをほぼ最初から見ていたのである。
 気配を殺し、木陰に隠れて……。
 その意図は簡単であった。彼が充分な戦闘力を有しながら、彼らの戦いに割り込まなかったことも含め、ただの監視だったのだ。
 そして、その監視から得た情報から、一つの提案を口にする


「……俺と協力しないか? お前がある程度、腕の立つ人間だというのは見てわかる」

「……何?」

「お前は敵に止めが刺せない。だが、俺には躊躇はない。お前が敵を半殺しにして、残りの半分の命を俺が貰う。そうすれば、殺し合いは優位に進む」

「……断る。これは、俺一人の試練だ」


 丈瑠は、頑なに断ろうとした。
 この男は、要するに漁夫の利を拾いたいだけだと思えたのだ。いつ裏切るかもわからない、不利な契約を担わされようとしている。とにかく、丈瑠を利用して殺し合いを楽に進めたいのだろう。
 無論、丈瑠はそんなものに簡単には引っ掛からない。
 彼は、人一倍自分に厳しかったのである。たとい、堕ちるときであっても。


「……そうして、誰も殺せずに死んでいく気か」

「お前の言葉に耳を貸す気はない」

「……そうか、わかった……。ならば交渉決裂か」


 パンスト太郎はそう言いつつ、丈瑠にパンストを伸ばす。気で硬化されたパンストが、丈瑠の右腕の裏正に絡みついた。
 そして、侍として手放してはならないと決めた裏正を、あっさりとパンスト太郎が引き寄せてしまったのである。
 それは僅か一瞬の出来事で、丈瑠としても不測の事態である。諦めたふりをして、油断させ、その一瞬の隙にパンストで刀を奪ったのだ。
 まさか、パンストで刀を奪われるとは思うまい。


「貴様は刀を使って戦う。これがなければどうだ? 刀なしで戦うと、実力は半分も出せないんじゃないか?」

「……!」

「……ぐふっ。最初に言っておくが、俺は強い。貴様を、このパンストだけも殺してやれる。それをわざわざ仲間にしてやると言ってるんだ」

「……その刀を返せ」

「仲間になれ」

「ぐっ……」


 確かに丈瑠は体術だけでも、常人よりは強い。
 だが、彼が重点的に磨いてきた能力は、あくまで剣である。
 ゆえに、その武器が奪われると、パンスト太郎の言うように、能力が半分も出せない。
 下手をすれば、シャンゼリオンにも負けるかもしれない。

446ASTRY ◆gry038wOvE:2012/05/29(火) 20:24:21 ID:qJ6GVrtA0
「仲間になるといえば、これは返す。何も下僕になれとは言わない。俺たちは平等だ」

「……」

「ぐふっ……あるとすれば、力の差のみだ」

「……わかった。お前の仲間になろう」


 強い者と共に行動することも、また修業だ。
 そう考え直し、丈瑠は、敢えてこの男と共に行動することにした。
 この男が言ったように、平等な関係というのはおそらく嘘だろう。この男は、自分より上に立つものを寄せ付けようとはしない。
 だが、裏正を取り戻すという意味でも仲間になる必要はあるだろうし、彼と組んでも大きな損はない。あくまで試練の一つとして、彼と同盟を組むのも悪くないだろう。


「……ぐふっ。そういうことなら、これは返すぞ」


 パンスト太郎は、不適に笑いながら裏正を差し出した。
 丈瑠は素直にそれを受け取るが、パンスト太郎に対して睨むような視線を浴びせる。
 何も、彼を斬ろうというわけではない。最後の瞬間まで、彼と仲間であることをやめるつもりはない。そういう約束をしてしまった以上は、そうしていくしかないのだ。


 ここに、志葉丈瑠とパンスト太郎の不思議な同盟が誕生することとなった。


 ……ちなみに、丈瑠は彼の武器と名簿から、既にパンスト太郎の本名をなんとなく察していた。
 呼ばれるほうも嫌なのだろうが、口に出すのも何となく恥ずかしいため、それを言う気はないが……。
 それに、丈瑠もまた、志葉という名前にコンプレックスがあったのである。
 だから、彼の名前を呼ぼうとはしない……。


★ ★ ★ ★ ★


 暁とほむらはゆっくりと森の中を歩いていく。


 暁は、一応殺し合いに乗っている身でありながら、丈瑠の心の矛盾をついた。
 では、彼には矛盾はないのか?
 殺し合いに乗っているのに、ほむらという仲間を守り、丈瑠の心に迷いを埋めた。

 彼の心は、明らかに矛盾しているのだ。
 問題は、その矛盾をどう受け止めるか。
 彼──涼村暁の場合は、矛盾にさえ気づかず、思考などは気分で変わってしまう。

 元々、女子供を殺す殺気など、彼は有していないのだろう。
 本人もそれに気づいているはずだが、彼は優勝を狙っている。
 優勝、女……どちらの欲望も捨てきれないのだ。
 だから、それが相反するものであっても両方手に入れようとする。


 要するに、彼の行動は、全てノリだ。

447ASTRY ◆gry038wOvE:2012/05/29(火) 20:24:48 ID:qJ6GVrtA0

 優勝を目指すというスタンスも、飾りでしかないのだろう。
 彼の最重要願望は優勝だが、目の前に美女・美少女がいれば、そんな最終目標よりも目の前の欲が彼を行動させる。
 純粋で、邪心はない。
 優勝するということを重く考えたこともない。
 殺人も、もしかすれば出来るかもしれない。自分のために他人を犠牲にすることもできるかもしれない。現実に、彼は世界の平和より自分の事を優先した。彼にとって、自分以外の命とはそこまで重くないのかもしれない。
 だが、今のところほむらに対して危害を加えていないし、これまで誰も殺していない。

 彼をただのクズと思っている人は、彼がダグバからほむらを守ったことを思い出して欲しい。
 彼がヒーローになりうるという人は、彼が当初殺し合いに乗るという方法を選んだことを思い出して欲しい。
 まだ彼は、そのどちらでもない。まだ、どういう風にもなりうる──。


「ほむら、大丈夫か? なんだか辛そうだけど……」


 暁は、少なくとも今は無害だった。だから、ほむらの異常に気づき、一応は声をかけた。
 ほむらは、グリーフシードの消耗が進行していることに気づき、焦りを感じていたのである。
 グリーフシードが支給されていれば……。この場に魔女がいれば……。
 そう思いながら、彼女は表情を直す。暁に察されるほどでは、まだまだだ。


「大丈夫よ。……でも、早く何とかしないといけないわ」


 彼女は、もうこれ以上迂闊に戦闘できそうにないということを感じはじめる。
 もし、万が一にでも、誰かが戦闘を仕掛けてきたとしても、暁にどうにかしてもらうほかない。
 本当にどうするか……。先行き不安だ。
 彼女は自分の心配をすると同時に、まどかが生きているのかどうかも不安だった。
 一つの不安からネガティブになった思考は、更なるネガティブを引き起こす。
 まどかが死ぬのは、もう見たくない。何度見ても、慣れるものじゃなかった。
 だから、毎回本気で彼女を救う気で戦っている。
 もし今回死んでしまったら、巻き戻すことはできるのだろうか……。
 彼女は不安だった。

 もし彼女が死んでしまうことがあれば────。
 ほむらだって、まだどうなるかわからない。
 暁もほむらも、まだ不安定だった。丈瑠も、パンスト太郎もそうなのかもしれない。
 彼らの本気がどの程度なのかは、まだわからなのだ。

448ASTRY ◆gry038wOvE:2012/05/29(火) 20:27:02 ID:qJ6GVrtA0
【早朝】

【G-7/森】
※G-7の森がダグバの攻撃により炎上しています。

【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:全身にダメージ(極大・回復中)、疲労(大)、ソウルジェムの濁り(中・濁り進行中)、暁に対するイライラ、魔法少女に変身中?
[装備]:ディバイトランチャー(シューター・ガンナー)、ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]:無し
[思考]
基本:鹿目まどかを守る。
1:鹿目まどかを発見する。
2:早急にグリーフシードを確保し、バカ(暁)と離れたい。それまではやむを得ないので利用する。
3:他の参加者から情報を集める。
4:ダグバ、ガドル、ゴオマは発見次第排除する。
5:鹿目まどかを守る目的以外の争いは避ける。
[備考]
※参戦時期は第11話キュゥべぇとの会話シーン後〜ワルプルギスの夜戦前。
※制限をある程度把握しました。一度に止められる時間は数秒程度、ソウルジェムの消耗がいつもより激しいです。
※プリキュアに関しては話半分に聞いていますが、「特別な力を持つ存在」だとは解かりました。
※未確認生命体及びクウガについてある程度把握しました。
※ディバイトランチャーは認証解除されていますが、怪獣を仕留めたりできるほどの能力はなくなっています。

【涼村暁@超光戦士シャンゼリオン】
[状態]:胸部に軽い痛み
[装備]:シャンバイザー@超光戦士シャンゼリオン、スカルメモリ&ロストドライバー@仮面ライダーW、ウィンチェスターライフル(14/14)
[道具]:支給品一式
[思考]
基本:願いを叶えるために優勝する。
1:ほむらと一緒に行動する。
2:可愛い女の子を見つけたらまずはナンパ。
[備考]
※第2話「ノーテンキラキラ」途中(橘朱美と喧嘩になる前)からの参戦です。
 つまりまだ黒岩省吾とは面識がありません(リクシンキ、ホウジンキ、クウレツキのことも知らない)

【G-7/三途の池付近】

【志葉丈瑠@侍戦隊シンケンジャー】
[状態]:健康
[装備]:裏正@侍戦隊シンケンジャー、T2メタルメモリ@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式
[思考]
基本:殺し合いに乗り、戦う
0:人斬りに対する躊躇や抵抗が拭えない
1:パンスト太郎と協力する
2:十臓は最優先に探し出し、決着を着けたい。
3:流ノ介や源太が相手でも容赦はしない
[備考]
※参戦時期は、第四十六、四十七幕での十臓との戦闘中です
※流ノ介や源太と戦うことに、迷いがあります

【パンスト太郎@らんま1/2】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:水とお湯の入ったポット1つずつ(変身一回分消費)、支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:殺し合いに勝利し、主催も殺す。奪った技術を用いて自分の名前を付け替える
1:適当に参加者を殺して回る
2:丈瑠と協力する
[備考]
※参戦時期は不明です。
※乱馬が近くにいることを知りましたが、特別興味はないようです。

449 ◆gry038wOvE:2012/05/29(火) 20:28:31 ID:qJ6GVrtA0
以上、投下終了です。

450名無しさん:2012/05/29(火) 20:54:45 ID:J.e8qrek0
投下乙です!
殿は何だかんだで、やっぱりまだ甘いんだな……それにしてもまさかパンスト太郎と手を組むなんてw
この二人、これからどうなるだろう。
そしてほむら、この場を何とか切り抜けたけどもしもまどかの死を知ってしまったら本当にどうなるのか不安だ。

451名無しさん:2012/05/29(火) 22:52:50 ID:zEzAheqs0
投下乙です

殿は手を血に染めずにまだ猶予ができたがなんでそこでそいつと組むんだよお
そいつは名前の為だけに殺戮の道に乗ったんだぜw
ほむほむは……放送後が判らん。暁が上手いフォローして…無理かw

452名無しさん:2012/05/29(火) 23:17:54 ID:hylLKhZkO
投下乙です!
仮初の同盟が二つ……正直バカ二匹が放送後殺られる末路しか見えねえw

453 ◆gry038wOvE:2012/05/30(水) 20:30:27 ID:rZ5HjGC.0
ただいまより、投下を開始します。

454椅子 ◆gry038wOvE:2012/05/30(水) 20:31:08 ID:rZ5HjGC.0

 ────あれから少し時間が経った。


 鋼牙は、自分が歩いている森にだんだんと既視感を覚え始めていた。
 彼が日常的に帰る夜道──その時の光景と、どこか似ている。
 彼は戦闘能力が高い一方で、その思考能力や記憶能力も一般人と比べると抜群であった。だからこそ、黄金騎士とは常に他の魔戒騎士から賞賛される立場として君臨し続けたのだ。
 何もかもが卓越した黄金騎士。ただでさえ魔戒騎士という存在自体が超常的であるのに、その最高位といえば、それだけの能力を持ち合わせているのだろう。
 鋼牙は、これまでのルートを無視し、本能的に別方向へと歩き出した。


「おい、君! どこに行くんだ!」


 一条薫が彼の後を追いながらも、彼の行動の意図を掴めずに、顔を顰めて呼びかける。
 鋼牙は一緒に行動しにくいタイプだ。寡黙で、何を考えているのかわからない。
 だが、それは強い意志があるがゆえだというのも理解できる。一条たち警察も同じだからだ。彼らが顔を顰めるのは、悪人や犯罪者に軽く見られたり、見透かされたりしないためでもある。
 何らかの使命と責任を負わされた人間の共通点だ。
 しかし、あくまで「寡黙な理由」がわかるだけであって、彼が何を考えているのかは一条にも理解できない。


「……」


 答えずに歩く鋼牙は非常に早足だ。彼の前に出ようとすると、必要以上の運動を強いられる。一条も彼と行動していて、随分疲れた。
 ──警察として身に着けた会話術も、おそらく彼には通じない。
 全国に幾らでもいる警察より、魔戒騎士の方が上の存在なのだ。あらゆる面において……。
 だから、静止を求める様子を見せながらも、ただついていくしかなかった。


(この複雑な森を、まるで木の並びでも理解してるかのように歩いている……)


 鋼牙の姿に、思わず一条は心の中で感嘆した。
 流石に、一条も早足で歩き続けると心臓も足も痛む。しかも、鋼牙の歩速に合わせて歩いているのだ。
 つかず、離れず、ただ白色が揺らめくのを見つめながら。
 背広に汗が溜まるのを肌で感じ、一条は歩きながらコートと背広を脱いだ。シャツのボタンを一つ外す。ネクタイも下げる。
 本来、一条がここに来たのは冬であったはずなのだが、ここでは季節も関係なく、誰にとっても程よい季節のように感じる。だから、過敏な防寒着はとにかく邪魔だった。


(これだけ歩いて暑くないのか……)


 鋼牙は、汗ひとつかかずに、淡々とした表情をしていた。
 あの格好では、一条の倍は体を温めてしまうのではないか。
 彼にとって、常人の普段の運動は、止まっているのと同じなのだろう。
 日夜鍛える格闘家や一条ら警察も、彼が暴れれば手に負えまい。
 ……まあ、未確認ですら保護の対象と考える彼ならば、暴れることなどなさそうだが。

455椅子 ◆gry038wOvE:2012/05/30(水) 20:31:53 ID:rZ5HjGC.0

 そうこう考えているうちに、鋼牙の歩みはぴたりと止まる。
 一体どこに到着したのかという疑問よりも、ただ止まって休めることが一条には嬉しかったのだが、すぐにそちらの疑問にも思考を切り替える。
 眼前にあったのは、恐ろしく豪奢な屋敷だ。一条の一生分の給料でも、これは建てられそうに無い。


「────なんだ、この屋敷は」

「……ここは、俺の家だ」


 一条は、ぎょっとして鋼牙の方を向いた。この男、こんな大豪邸に住んでいたのか。というか、何故その家がこんなところにあるのか。
 自分の家が殺し合いの場にあるというので、流石に鋼牙も少し口を開けている。
 眉は相変らず顰めている。


「……どうして、君の家がこんなところに」

「わからない。……それに、これはおそらく本当の俺の家じゃない」

「何?」

「ホラーは時として、人間に幻想を見せる。おそらく、これを壊してもこの空間から抜け出せば、本物の俺の家はあるはずだ」


 未確認生命体のように、ただ動物的な能力で戦うのでなく、ホラーは精神攻撃も行う。
 魔戒騎士をここに呼び寄せた加頭やその仲間ならば、ホラー程度の能力は有していてもおかしくないだろうと思える。それに、ホラーでなくとも、こうした単調な精神攻撃はできるのかもしれない。
 だいたい、この殺し合いの空間自体が、彼にはまやかしであるように思えてならなかった。


「中を見るのか?」

「ああ。だが、お前はここにいろ」

「何故だ?」

「何らかの罠という可能性も考えられる」


 仮想された「冴島邸」。わざわざそんなものを鋼牙の前に用意したのだから、そこには何らかの意図があるとも考えられる。
 中に無数のホラーがいる可能性も否定できない。
 ザルバがいないこの状況では、自分の腕に100パーセントの自信があるとは言えないのである
 細心の注意を払う必要がある。


「──わかった。私はここで待つ。必ず帰ってきてくれ」

「ああ、わかっている」


 そう言って魔戒剣に手をやり、隙のない構えで自宅に入っていく鋼牙を、一条は見送る。
 自分の剣道に、彼の動きを取り入れたいと、彼は少し思った。
 かつて五代と剣道で特訓したことを思い出したのだ。
 彼にもあれだけの動きができれば、未確認も簡単にひれ伏すのではないか……と少し考えたが、野暮なのでやめる。
 冴島鋼牙には冴島鋼牙の、五代雄介には五代雄介の良いところがあるだろう。

456椅子 ◆gry038wOvE:2012/05/30(水) 20:32:57 ID:rZ5HjGC.0

 ところで、五代と鋼牙が会ったらどうなるのだろうか。あの鋼牙を、五代は笑わせようとするのだろうか。……彼ならばやりかねない。
 五代が何か芸を見せて、それを腕を組み顰め面で見ている鋼牙を一条は想像し、思わず一人で苦笑した。
 少なくとも一条には、鋼牙の笑う姿など想像もできない。五代にとっても強敵だろう。
 何にせよ、鋼牙は鋼牙で人を護るために戦っている。
 彼は紛れもなく、人々の笑顔を守り続けた騎士だ。
 二人とも人を守る思いは同じ──一条は全力で、彼らのサポートをするだけだ。


(おっといけない……余計なことを考えている場合じゃないな……)


 一条は、思わず一人で気が緩んでしまったが、すぐに気を引き締めて構える。
 この家の様子、また、その周囲の様子に常に気を配り、身の安全を保証しなければならない。
 鋼牙が来るのを、彼は待ち続けた。



★ ★ ★ ★ ★



 鋼牙は、この静かな冴島邸が自分の家ではないように思えた。
 確かに、普段からこの家は閑静で豪華だ。自分の家にこう言うのも何だが、かなり品の良い家であると思う。
 しかし、そこに何よりの異変がある。
 ゴンザがいない。カオルもいない。指にはザルバがいない。
 自分の仲間、そして家族。どちらもここには気配すらない。彼らがいた証というのを感じない。
 それだけで、やはりこの家は偽物なのだと実感する。この家に染み付いた何かが、この偽物には再現されていない。
 黄金騎士の安息の地と似るのは、形だけだ。不完全にも程がある。
 ゆえに、彼はこの家にいる時、妙に他人行儀だった。


(罠の気配はないな……)


 鋼牙は周囲に気を配るが、何か矢が飛んで来たり、ホラーが現われるということは全くなかった。
 つまりは、ただこの家を再現させただけだ。
 何故、そんなことをしたのかは鋼牙にもわからない。鋼牙を少しでも惑わすためか? そんな手が効くと思っているのか?


「……!」


 ────刹那。

 鋼牙は、背後から迫り来る不気味な影に気がつき、振り返り剣を抜いた。
 剣を盾にその相手の攻撃を防御する。
 眼前に在るのは、椅子の形をしたヘンテコな怪物だ。鋼牙と比べるとやや大きく、その姿はややメルヘンチックである。あのおぞましいホラーの姿とは、どこかズレていると思えた。

457椅子 ◆gry038wOvE:2012/05/30(水) 20:33:47 ID:rZ5HjGC.0

「何だ、こいつは……!」


 思わず、指先に問うた。そこに、答えてくれる魔導輪はいない。
 ともかく、ホラーではないと直感する。そもそも生物にさえ見えないのだ。
 椅子に取り憑くホラーはいるかもしれないが、おそらくこんな外形ではないだろう。


(こいつ……何かを隠している……!)


 椅子の怪物は、背後にある何かを見せようとはしない。
 あからさまに背後にある何かを隠していた。
 この怪物の背後に何があったか…………そうだ、鋼牙の部屋へと続く階段だ。
 この家の主であるがゆえ、そこになにがあるのかはわかったが、何故隠すのかはわからない。
 ……と、すると


(こいつの後ろに、こいつを操る者がいる!)


 ──鋼牙は、そう結論づけた瞬間、人外とも言える跳躍力で椅子の怪物の頭の上を跳び越した。


「〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!?」


 人間なめてた。   ────怪物はそう言いたげに、声にならない驚愕を発する。
 生身の人間がこんな行動をできるとは、この怪物も思っていなかったのだろう。
 特別な修練を積んだ魔界騎士でなければ、こんなことはできまい。その姿はワイヤーアクションの如き、現実味の無さだった。
 そのまま、目くるめく速さで階段を上っていき、ドアを開ける。


「……そこにいるのは誰だっ!」


 そこに座る人物に剣を向けたまま、鋼牙は怒鳴った。コウモリの玩具を手で弄んでいるように見えるが、よく見ればコウモリの方が自立して中空を飛んでいる。
 若い男がベッドに座っている。……彼があの怪物を操っていたのだろう。何にせよ、見知らぬ男にベッドに座られるのは鋼牙とて良い気分はしない。
 念のために、鋼牙は間近まで近付き、魔導火を彼に翳してみたが、ホラーではないらしい。ただ、只者とも思えない。
 彼は、眼前に迫った鋼牙を鬱陶しそうに見つめた。突然こんなことをされて驚かないのは、大概はホラーだったのだが、このように憮然と睨んでいる人間は初めてだ。


「何だ……騒々しいな……」


 男は、弱弱しくも冷静だ。
 その声は落ち着きのあるもので、鋼牙とはまた違った意味で超然としている。
 飄々としているというのだろうか。鋼牙の存在を全く意に介していないようだった。


「……お前は何者だ?」

「……名乗る義理はないよ」

458椅子 ◆gry038wOvE:2012/05/30(水) 20:34:35 ID:rZ5HjGC.0
「俺はこの家の家主だ。答えてもらう」


 ──ここは冴島邸と名のついた場所だ。ここの家主といえば、自然と冴島鋼牙となる。相羽と違い、冴島という名は一つしかないようだった。彼は、それに気づいたらしい。
 ゆえに、相手の名前を知った以上は、まあ言い返してもいいと思ったらしく、彼は答えた。


「俺は相羽シンヤ……」

「あの怪物は?」

「ナケワメーケというらしい。変な名前だよね」

「……」

「……あんたが何を言っても、俺はここを出る気はないよ。ここで約束をしてるんだ」

「別に構わない。おそらく、この家は本当の俺の家とは違う……」


 鋼牙は、シンヤに不気味なオーラを感じながらも、彼に敵意がないように見えたので、剣を向けるのをやめる。
 それは油断ではない。間違いなく、彼が攻撃を仕掛けないのを、鋼牙は確信していた。

 ──彼は、どうやら衰弱しているようだったから。

 魔戒騎士にはそれを治すことはできない。守りし者とはいえ、それぞれの使命がある。ちょっとした一件が原因で、医者というものに対し鋼牙はそこまで強い信頼を抱いていないが、人間にとって必要なのは確かだ。
 それに、こうして殺し合いと無関係な形で患っている男に、何をしてやれようか。寿命や病気には、人は勝てない。必ず、死は来る……そういう風にできているのだ。

 もしかすれば、約束というのは、医者との約束なのかもしれない。
 何にせよ、あの椅子は、彼の言う約束の時まで彼を守り続けるための番人だったということだ。


「……そうだ、冴島鋼牙……相羽タカヤという人に会わなかったかい?」


 相羽タカヤ。相羽シンヤ。二人が血縁関係であることはすぐにわかった。──いや、更に言えば彼は双子の兄弟だと考えられる。
 鋼牙は、シンヤの姿があのホールに確かに二つあったと記憶している。
 約束の相手というのは彼だろう。医者ではないのだろうか。もしかしたらタカヤが医者なのかもしれないし、本当のところ、どうだかはわからない。死に際に会いたい……そんな切実な願いなのかもしれない。
 とにかく、彼はここで彼を待っているのだとわかった。
 鋼牙は、何もわからないことを申し訳なく思いながらも、正直に答えた。


「会っていない」

「──そうか」

459椅子 ◆gry038wOvE:2012/05/30(水) 20:35:37 ID:rZ5HjGC.0
 シンヤは、やはりと思いつつも、少し落胆したようだった。
 少しは期待していたのだろう。
 ともかく、鋼牙は彼に対して、自分ができることをしたいと思った。


「……もし会ったら、お前がここで待っていると伝えればいいのか?」


 鋼牙は問う。待っているのでないにしろ、とにかくシンヤはタカヤと会うことを求めているのを察した。
 その問いに、シンヤは静かに頷く。
 もう何も言う気が起きないようだ。ともかく、肯定があったことで鋼牙は答える。


「──わかった。会えば伝える」


 鋼牙は、ただそれだけ言って静かに立ち去った。
 後ろを向くと、ナケワメーケが一瞬構えたが、シンヤの「何もしなくていい」という言葉を聞き、ナケワメーケは黙る。その姿は、ほっとしているようにも見えた。
 あんな化け物と戦わなくて良いのだ……と。





 それから、鋼牙は居間に向かった。
 居間というにはあまりにも豪華すぎるその場所に、綺麗な暖炉がある。
 しかし、彼が見たのはその上にある絵だ。


 この絵が、全ての始まりだった。
 この絵が、鋼牙の心を変えた。
 この絵が、鋼牙の全てだった。


 これまでの戦いが妙に懐かしい。
 御月カオルが描いた、鋼牙の故郷に似た絵。
 本来、芸術にそこまで興味のなかった鋼牙の心にも、この絵だけは響いたのだ。


 鋼牙は、その絵に手を触れようとして────やめた。


 ここにある全ては、本物ではない。この絵もよく似た贋作だ。
 鋼牙にとって、最も許しがたい贋作だったが、それでもこの絵を見るとやはり妙に落ち着く。
 一つの戦いでの疲れやストレスは、カオルの絵を見れば癒えてしまう。
 たとえこの屋敷が吹き飛んだとしても、この絵だけは守りたい。それくらい、彼にとっては大事なものだった。


(俺がこの絵に触れるのは、ここから帰ってからだ)


 ────そう誓った。



★ ★ ★ ★ ★

460椅子 ◆gry038wOvE:2012/05/30(水) 20:36:13 ID:rZ5HjGC.0



「……何かあったか?」


 淡々と玄関から戻ってきた鋼牙に、一条は問う。
 少なくとも一条の方には、何もなかった。ただ警戒して突っ立っていただけである。
 滑稽に見えただろうが、警官という職業上それは慣れていた。


「何もなかった」


 と、鋼牙は答えた。シンヤのことを言っても仕方がないだろう。彼と関わることはもうないだろうと鋼牙は思った。
 強いて言えば、重要になるのはタカヤの話くらいだ。


「もうここには用は無い。……ここは俺の家じゃない」

「そうか。なら、先に行こう」


 一条は鋼牙を促したが、それをする必要もなかったようで、鋼牙はまた、すたすたと行ってしまった。
 こんな豪邸に住んでいるのが、こんな気難しい男だというのか。
 まあ、ともかく彼は偽物の自宅に用は無いと思っているのだろう。一条も、おそらくここに自宅があったら同じ思いだ。


(──相羽タカヤか)


 鋼牙は、記憶を反芻する。
 シンヤと同じ外見の男だから、見つければすぐにわかるはずだ。
 もし会ったら、彼のことを話してやろう。
 鋼牙は、歩きながらそう思った。


【一日目・早朝】

【E-5/冴島邸・鋼牙の部屋】

【相羽シンヤ@宇宙の騎士テッカマンブレード】
[状態]:ブラスター化の副作用による肉体崩壊
[装備]:テッククリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード
[道具]:支給品一式、バットショット&バットメモリ@仮面ライダーW、スタッグフォン&スタッグメモリ@仮面ライダーW、椅子型のナケワメーケ@フレッシュプリキュア!
[思考]
基本:タカヤ(ブレード)と決着を着ける。
1:冴島邸に留まり、バットショットで周囲の様子を探りつつタカヤに呼びかけ続けタカヤが来るのを待つ。
2:タカヤと戦う時以外は出来るだけ戦いを避ける。
3:もしもタカヤの到着が遅かったり、何らかの事情で冴島邸に留まれなくなった場合はナケワメーケを使って自分からタカヤを探しに行く。
[備考]
※参戦時期はブラスター化完了後〜ブレードとの決戦前(第47話)です。
※ブラスター化の副作用により肉体限界が近いです。戦い続ければ命に関わります。
※参加者の時間軸が異なる可能性に気付きました。
※最後の支給品はナケワメーケのシンボル@フレッシュプリキュア! です。

461椅子 ◆gry038wOvE:2012/05/30(水) 20:36:44 ID:rZ5HjGC.0
【E-5/冴島邸付近】

【冴島鋼牙@牙狼─GARO─】
[状態]:健康
[装備]:魔戒剣
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:護りし者としての使命を果たす
1:加頭を倒し、殺し合いを終わらせ、生還する
2:再びバラゴを倒す
3:一条と共に行動し、彼を保護する
4:零ともできれば合流したい
5:未確認生命体であろうと人間として守る
6:相羽タカヤに会った時は、彼にシンヤのことを伝える
[備考]
※参戦時期は最終回後(SP、劇場版などを経験しているかは不明)。
※魔導輪ザルバは没収されています。他の参加者の支給品になっているか、加頭が所持していると思われます。
※ズ・ゴオマ・グとゴ・ガドル・バの人間態と怪人態の外見を知りました。
※殺し合いの参加者は異世界から集められていると考えています。

【一条薫@仮面ライダークウガ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3、警察手帳、コートと背広
[思考]
基本:民間人の保護
1:警察として、人々を護る
2:魔戒騎士である鋼牙の力にはある程度頼る
3:他に保護するべき人間を捜す
4:未確認生命体に警戒
※参戦時期は少なくともゴ・ガドル・バの死亡後です

462 ◆gry038wOvE:2012/05/30(水) 20:37:16 ID:rZ5HjGC.0
以上、投下終了です。

463名無しさん:2012/05/30(水) 21:06:16 ID:BjFOwseM0
投下乙。
鋼牙達は少しの探索で冴島邸から離れたか
自分の屋敷を偽物と割り切る鋼牙がかっこいいなあ

464名無しさん:2012/05/30(水) 21:47:41 ID:81ZjoAUY0
投下乙です!
おお、鋼牙の迫力はナケワメーケすらも黙らせるとは……考えてみたら、何体ものホラーを倒してきたから当然か。
にしても>>463さんが言ったように、偽物を偽物と割り切るのは凄いなぁ。

465 ◆gry038wOvE:2012/05/30(水) 22:25:43 ID:rZ5HjGC.0
修正
鋼牙の装備に魔導火のライターを追加です。
零にも常備されていたので、こちらにも必要かと思い追加しました。

466名無しさん:2012/05/30(水) 23:25:51 ID:rD4X0SQM0
投下乙です

鋼牙、凄くてかっけいいぜ
シンヤはタカヤ狙いだからこれなるよなあ

467名無しさん:2012/05/31(木) 00:44:09 ID:iog3XmuM0
投下乙!ストイックな強い奴だな鋼牙。
…でも疑問に思ったんだが、シンヤとタカヤの容姿がそっくりだって扱いだけど、そうだったっけ?
双子だから似てるってことなのかもしんないけど、ブレード本編の方じゃそんなに、つか全然似てなかったような。

468名無しさん:2012/05/31(木) 06:16:02 ID:qacNdpOs0
設定上では双子だけど、視聴者が区別しやすいように違う顔として
スタッフは書いたって話を前に聞いたことがある。
メタな話な上に、うろ覚えだけど。

469名無しさん:2012/05/31(木) 08:33:53 ID:yPZwXi4Y0
一応双子には二卵性というものがあって、一卵性と違って普通の兄弟姉妹と同程度の違いが容姿にもでる
らきすたのかがみとつかさがその一例だ
ただ、アキが街ですれ違った時にシンヤをタカヤと勘違いしてたのを見ると、この二人は一卵性っぽい

470名無しさん:2012/05/31(木) 12:07:55 ID:OJqCECmMO
視聴者に分かりやすく実際とは違う見た目に、ってのはクウガやアギトみたいな生物系ライダーもそうだっけ?

471名無しさん:2012/05/31(木) 13:43:09 ID:yPZwXi4Y0
ウィキの参加者動向表で、もうすでに修正したんだが、とんでもない記述ミスを見つけた

泉京水
支給品 涼邑零

零、貞操の危機!?

零「アッーーーーーー!」

472 ◆gry038wOvE:2012/05/31(木) 16:10:26 ID:UvcR/O860
>>467
他の方も既に言ってますが、タカヤとシンヤが作中で全然違う顔なのは区別のためだそうです。
アキは作中何度かタカヤとシンヤを誤認してますね。二人が同時に現われたときは、「Dボウイが二人!?」と言ってたとおもいます。
まえにシンヤの登場した話でもそういう扱いでしたし。

クウガとかも結構グロい容姿(SICみたいな)かもしれませんが、これはまあ作中通りのイメージのほうが書きやすいかと。

473 ◆gry038wOvE:2012/05/31(木) 22:37:48 ID:UvcR/O860
ところで、牙狼二期ってロワではどういう扱いなんでしょう。
流石に鋼牙の参戦時期は破滅の刻印を意識してない関係で、劇場版までだと思いますけど、二期では魔戒騎士は毒が効かないとかいう設定も出てます。
支給品や設定を二期から流入していいかとかについても、意見を聞かせてくれたら嬉しいです。

474 ◆LuuKRM2PEg:2012/05/31(木) 23:37:20 ID:qacNdpOs0
自分としては、MAKAISENKIから新しく出てきた能力に関しての流用はなしですが
毒が効かないなどの基本設定や『同胞』で出てきた鋼牙の過去エピソードなどの流用に関してはOKだと考えてます。
支給品も個人的には認めたいですね。

475名無しさん:2012/05/31(木) 23:41:08 ID:wVdmAOb.O
シンみたいなグロいクウガは想像したくないな・・・・・・
逆にアニメ出身の奴らはリアルにするとどんな見た目になってるんだろう?

>>473
魔戒騎士になる過程で手に入れた能力(耐性?)と思うので、毒が効かないとかはありだと思います。
支給品はどうなんだろ・・・大半が法師(もしくはシグマ)にしか使えないものばっかりだった気がする。

476 ◆gry038wOvE:2012/06/01(金) 01:52:24 ID:i.q/p0y.0
>>475
らんまは二人ほど実写化してて…

支給品……ぱっと思いつくもので、いちごタルトとか毒薬とか、そんな一話限定系が多いですね。
特定の魔戒騎士しか使えないものを出しても意味がないので…(そうすると別に牙狼じゃなくても良いような気がするけど)。
そういえば、いちごタルトで思い出したけど涼村暁と涼邑零って名前だけでなく、甘党とか女好きとか色んなところで共通してるんですね。
二期で出るんなら、候補に挙がってた山刀翼とか出しても良かったかな〜と今になってちょっと後悔(小説版でも結構出てくるし)。
このロワ開催直後、魔戒騎士の数は倍くらいに増えたんじゃないかと思う。

477 ◆gry038wOvE:2012/06/01(金) 22:41:30 ID:i.q/p0y.0
私が執筆した「ASTRY」についてですが、少し訂正を加えます。
「街(Nasca Version)」ではほむらと丈瑠の交戦は2時半ごろだそうですが、そうすると話のラストで数時間近く丈瑠やパンストが三途の池にいることや、ほむらや暁の移動距離も短いことに違和感があります。
なので、後ほど修正スレに「ASTRY」から数時間の移動内容について補足し、状態表を書き換えたものを投下します。
現在の予約に関しては、霧彦が暁たちと遭遇していないことへのフォローの部分を同時に書きたいので、一応予約の継続を希望しておきます(破棄の希望が出た場合には予約を破棄します)。

自分の注意不足によるもので、まとめに収録されてから問題点に気づく形となってしまい本当に申し訳ありません。

478 ◆IdwfK41Ttg:2012/06/02(土) 13:24:55 ID:M/jIQCAs0
短くて恐縮ですが、これより投下します。

479進撃 ◆IdwfK41Ttg:2012/06/02(土) 13:26:10 ID:M/jIQCAs0
(この街はとっても広いね)

 先程から歩き続けているが、誰とも出会えていない。
 広い街に行けば大勢のリントが集まっていると考えていたが、まだ誰も見つけていない。
 暁美ほむらや涼村暁、それに園咲霧彦や高町ヴィヴィオとまた会えるかと思ったが、それは叶わなかった。
 だが見つからないなら、見つかるまで歩き続けるしかなかった。

(結構歩いたけど、まだ誰も見つからないな……)

 究極の闇を齎す者、ン・ダグバ・ゼバはぼんやりと市街地を歩いている。別にどこを目指しているかなんて考えてはないし、行くあてがあるわけでもない。
 ただ、歩いている内に参加者と出会えればそれでよかった。
 例え地図を確認して特定の施設を目指してもそこにリントがいるとも限らないし、無駄足に終わるかもしれない。
 それならそれで別に構わないが、だったら勘に頼って歩きながら探す方がずっと有意義だ。
 宿敵クウガや、未知の存在に変身する面白いリント達とゲゲルをする。それがダグバにとって、唯一の愉悦だった。
 もしかしたらこの島には自身や究極の闇となったクウガすらも、上回る存在もいるかもしれない。そう考えている内にダグバの表情は自然と笑みで染まっていき、足取りも速くなっていく。
 それはリントや並のグロンギが走る際の速度を遥かに上回っていたが、彼にすれば歩いている程度に過ぎない。ダグバにとって、数キロメートルという距離など数歩と変わらなかった。

(クウガ、君は今どこで何をやっているのかな?)

 不意にダグバはこの世界のどこかにいるであろう、宿敵のことを考える。
 一体彼は今、どこで何をしているのか? 
自身に笑顔を齎してくれている存在になっているのか? 
 ゴオマやダグバのような存在と、どこかでゲゲルをしているのか?
もしかしたら、究極をも超えた力を持つ者になっているのか?
 もしクウガが頑張っているのなら、その思いに答える為にもゲゲルを続けなければならない。そうする事で、究極の闇がもっと楽しくなるのだから。

(あのほむらってリント達が持っているソウルジェム……もしも、この剣で貫いたらどうなるのかな?)

 魔法少女達の首には首輪が無く、代わりにソウルジェムという宝石に輪が付けられている。
 それを砕いたら、一体どんな死に様を見せてくれるのか? それを考えると、面白くて仕方がない。
 彼のデイバッグに眠る一本の剣は、見せしめにされたクモジャキーが持っていた武器だった。本当ならこんな剣など必要ないが、あえてクウガを真似て使うのも面白いかもしれない。
 それに暁というリントが纏った鎧の鎧も、これでじっくり壊していくのもいいだろう。あるいは魔法少女の目の前で、グリーフシードを壊して絶望させるのも一興か。

(それにしてもガイアメモリか。これもとっても面白そうだよ)

 他にも、あの加頭というリントが見せてくれたガイアメモリというアイテムもある。これを使えばグロンギやクウガとはまた違う、人知を超えた力を持つ怪人になれるのだ。
 その名はナスカ。確か、最初に戦った霧彦というリントも使っていた気がするが、別にどうでもいい。同じ物が二つあっただけなのだから。
 これまでの戦いでこの二つを使わなかった理由は、単純に自分の力だけで謎のリント達と戦いたくなっただけ。要するに、気まぐれでしかないのだ。
 これからの戦いでも使うタイミングは、ダグバの気分次第で決まる。次の戦いで使うのか、それとも一度も使わないまま殺し合いが終わってしまうのか、まだ誰にもわからない。
 ただ、そろそろ使ってみるのも悪くないかとダグバは思っていた。

(本当に面白そうだね、クウガ)

 登り始めた太陽によって夜の闇が薄くなる中、ダグバは空を見つめる。
 あの太陽も、究極の闇の前ではすぐに葬られる運命しかない。この町に集まったリント達も一人残らず滅びるのだ。
 そしてそこに凄まじき戦士となったクウガが現れて、最高のゲゲルを始める。
 ああ、何て面白いのだ。それを考えただけでも、こうしてまた蘇った価値がある。

(さあ、リント達。早く僕の所に来てよ……そうしないなら僕の方から君達の所に行くだけだからさ)

 そんな事を考える王の笑顔はとても穏やかだったが、とてつもなく恐ろしかった。

480進撃 ◆IdwfK41Ttg:2012/06/02(土) 13:27:25 ID:M/jIQCAs0

(期待してるからね、クウガにリントの戦士達)

 心の中でそう呟きながらダグバは歩く。
 その道がどこに続いているのかは、彼にもわかっていない。
 ただ、面白い相手を見つけられればどこだってよかった。

(そうだ、建物を見つけたら燃やすのもいいかな? クウガやリント達をおびき寄せる為に)

 この身体には世界に存在する全ての物を塵に変える、超自然発火能力の力が宿っている。
 もしもこのまま歩いている内に、目立つ建物を見つけたなら自身の力でそこを火の海にするのも悪くない。
 その近くで待っていれば、クウガや強きリント達と会えるかもしれなかった。
 炎に警戒して逃げ出す弱者もいるかもしれないが、そんな奴らなど用はない。
 発火能力の威力はどういう訳か下がっているが、連続でやれば問題ないだろう。

(早く見つかるといいなぁ……)

 建物が先か参加者が先か。
 そのどちらを見つけられるのかは、王ですらもわからなかった。


【一日目/早朝】
【G-8/市街地】
【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】
[状態]:健康
[装備]:クモジャキーの剣@ハートキャッチプリキュア!、T−2ガイアメモリ(ナスカ)@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式×2(食料と水は3人分)、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、ランダム支給品(ほむら1〜2(武器ではない))
[思考]
1:市街地を適当に歩いて、リント達を探す。
2:この状況を楽しむ
3:クウガ(五代)、ヴィヴィオ、ほむら等ソウルジェムの持ち主(魔法少女)、暁のような存在に期待
4:どこかの建物を燃やして、リント達をおびき寄せようかな?
5:そろそろこの剣やガイアメモリも使ってみたい。
[備考]
※参戦時期はクウガアルティメットフォームとの戦闘前です
※発火能力の威力は下がっています。少なくとも一撃で人間を焼き尽くすほどの威力はありません。

481 ◆IdwfK41Ttg:2012/06/02(土) 13:27:52 ID:M/jIQCAs0
以上で投下終了です。

482名無しさん:2012/06/02(土) 22:27:43 ID:Qn5u3Uuc0
投下乙です

火を付けるのは物凄く目立つからやったら来そうな奴が数人いるなあ

483名無しさん:2012/06/02(土) 23:58:19 ID:gcgiUaIY0
投下乙です。
とりあえずモロトフがダグバの魔の手から助かった件。
いつまで生きる気だアイツ…。
ほむら、暁、丈瑠、パンストも街から遠ざかったから、尚更一部の参加者が詰んでる。

484名無しさん:2012/06/03(日) 16:44:10 ID:MEiSqXkI0
投下乙です。
相変わらずダグバはヤバいな。こいつに対抗をできそうな奴は…

ドウゴク、テッカマン勢、レベル3ナスカ、エターナル最終形態、強化ガドル、スバルワターセ、ダークザギ

見事にマーダーばっかりだ…。

485名無しさん:2012/06/03(日) 16:47:53 ID:6f0kexrE0
ダークメフィストやキバも普通に対抗出来そうな気がするけど……
どっちも遠いけどさ。

486名無しさん:2012/06/03(日) 17:25:33 ID:MEiSqXkI0
満呂木、ノーザ、アクマロがチーム組んだらとんでもないことになりそうだ

487名無しさん:2012/06/03(日) 21:12:43 ID:vHxo7uM6O
スバルの圧倒的なまでの浮きっぷりw

……いや、素の状態でも玉砕覚悟で霊石に振動破砕ぶち込めばギリギリ?

488 ◆gry038wOvE:2012/06/03(日) 21:31:22 ID:Q2WE7cBk0
ノアやアルティメットクウガや牙狼や絶狼なら勝てるかも…。
テッカマンもタカヤならマーダーじゃないですし。

ともかく、書き終わったので投下します。
予約延長しましたが、何とか元の期限に間に合いました。

489風が私を呼んでいる ◆gry038wOvE:2012/06/03(日) 21:36:16 ID:Q2WE7cBk0
 ──彼の一秒は、全てを飲み込む速さだった。
 たとえ無数に連なった竜巻が彼を襲おうと、それを避けていくのではないかといくらいに。
 縦横無尽。
 進路を木々が邪魔しても、そのひとつひとつを的確に避けていき、あっという間に炎の前に近付いていく。

 今まで感じたことのないような速さだった。
 通常の精神状態だったらば、逆に違和感を感じるほどに。


(待っていろ、私が貴様の野望を止める……)


 そんな願いを胸に、ナスカは走り続けた。
 そして、すぐに眼前には何かの影が、見えてきた。
 人だ。
 誰かが対峙している。
 あの白と金の怪物だろうか──。
 ならば、倒す! ──そんな思いで、更なる加速を試みた。


 ────しかし、その瞬間、体がふわっと浮くような、あるいはガクンと沈むような感覚がナスカを襲った。
 襲撃のような外敵にその感覚をもたらされたのではないということは、霧彦自身がよくわかっていた。
 それは、体の中からナスカを傷付ける何かによるものだったのだ。


 ガクッ。


 彼は、そのままゆっくりと膝を落とした。
 片手の剣が、地面にずり落ちる。
 彼には、その瞬間、妙にゆっくりと時間が流れたような気がした。


(──こんな、時に)


 あんなにも近くに、彼らはいるのに……。
 救いようの無い絶望がナスカの中を駆け巡る。
 炎がごうと燃える音、戦いの音が、ナスカが落つ音を掻き消している。
 誰よりも、そこにいなければいない人物だけ、そこから意図的に外されているように。


(神よ……)


 ────霧彦の指先から、数十メートル。
 そこで、彼が介入すべき戦いは行われていた。
 炎の在り処。彼が止めるべく炎は、その眼前にある。
 森の木々や、炎が遮ってはっきりと見えないが、そこから聞える声だけは、そこで戦いが行われているのを確信させた。


『おりゃぁっ!』

『ひぇぇっ!』


 彼は今、ナスカの変身に耐え得るような体ではなくなっていた。
 全身を覆ったうえに、内側からも響いてくる雷の如き疲労と痛みは、彼のそれ以上の加速を許さなかったのである。
 霧彦は、ナスカの変身が解けた後、ふっと糸が切れたように地面に倒れた。
 まるで、この絶望を背負わせるために、神が仕組んだかのように、最も不幸なタイミングで体の調子が急激に悪化したのである。
 悲しいかな、意識だけはあった。目の前の「命の取り合い」を、止めることさえできず、ただ一秒一秒を、誰かがそこで死ぬ恐怖と己の無力を感じ、生殺しに合う。それは、正義感の強い人間ほど精神ダメージの大きいものだった。


 死────すらも、彼は覚悟したはずだった。彼が既に一度の死を経験していたことや、命よりも大事な街があったことが、その一因だった。
 しかし、何も成し遂げられないまま死ぬのは厭だった。それだけは死んでも。

 生きるべきか、死すべきか──それは重要なことではない。
 大事なのは、その中で何を成し遂げるかだ。それは、臨死のような体験をした霧彦の場合、尚更だ。

 だから、一秒の踏ん張りが一年の寿命を削るほどの苦痛の中で立ち上がろうとしていたのだ。

490風が私を呼んでいる ◆gry038wOvE:2012/06/03(日) 21:37:09 ID:Q2WE7cBk0
(どうして……、どうして、こんな時に……っ!)


 あと数秒だけ、風を感じさせてくれればいい。
 その数秒あれば、火を消すにも、彼らを制止するにも充分だ(おそらく無理だが、彼の中の虚勢がそう思い込ませた)。
 目的まであと一歩というところなだけに、余計にもどかしさが募った。


『謝りはしない……。怨め! 外道の俺を!』


 誰かを殺さんと進んで行く声がする。ダグバではないようだが、その声には震えがあった。
 ダグバのような生粋の狂人ではない。人を殺せば悩み苦しむかもしれない、健常な人間が、誰かを殺そうとしている。
 状況が状況だ。戦わなければ生き残れない。そう思うのは仕方ないかもしれない。しかし、殺す方も辛いのだ。


(だから……止めなければならないんだっ……!)


 霧彦は地面の土を握る。その力を使うのが、やっとだった。
 眼前で行われる戦いに介入したとしても、土を握るような力しかないのなら、おそらくはすぐに死ぬだろう。
 だが、それは根気で何とかするしかない。


『シャイニングブレード!』


 一体、何だかはわからないが、そんな声が聞えた。
 シャイニングブレード──直訳すれば、輝く剣。英語の発音のような言い方ではなく、ドーパントの名を呼称するように、日本人が固有名詞を言ったような感じだ。
 つまるところ、それは何らかの武器の名詞であったと思われる。

 おそらく変身者同士の戦いだろうとは思う。だから、剣はもしかすれば効かない。
 例によって、仮面ライダーのような装甲を纏った者ならば尚更だ。


(急に声が途絶えた……)


 そこから先は、はっきりとは聞えない。
 ぶつくさと呟いた会話のようなもので、先ほどまでの叫び声とは空気が違った。
 人が死んだような様子はなさそうだったが、流石に霧彦もそれを気にした。


(……戦いは、終わったのか……? だが……)


 火は消えていないし、霧彦の視界では何が起きたのかが全くわからない。
 和解か取引か──そんなところだろうと霧彦は考える。人が死んだにしては淡々としていたし、戦闘中にありうる話といえばそれくらいしか思いつかなかった。


(……実際に見てみなければわからない……。交渉が決裂すれば、また何かが起こることもありえる……)


 霧彦は、ただそんなことを気にしながら、意識が霞んでいくのを感じた。
 思考能力が衰え、何となく眠くなった。意志すらもねじ伏せるほどの、強い眠気は、眠いと感じて間もなく、霧彦を眠りへと誘った。
 彼の体は、眠ってもいいくらいに疲労していたのだ。
 誰も彼をとがめてはならない。



★ ★ ★ ★ ★

491風が私を呼んでいる ◆gry038wOvE:2012/06/03(日) 21:37:55 ID:Q2WE7cBk0


 キュアパイン──山吹祈里が霧彦を発見したのは、既にそこから霧彦以外の人間が去った後であった。
 炎の中で倒れている霧彦を見かけた時、祈里は思わず涙ぐんだ。
 それがもう、命の灯火を失っているように見えたからだ。
 しかし、近付いてみれば、それが周囲の炎の影響でかなりの寝汗をかいているということに気がつき、生きているのではないかという希望を見出した。


(熱いけど……私がやらなくちゃ……)


 炎はかなり勢いを増している。炎を消したいが、周囲に道具が一切ないのが問題だ。
 彼女は確かにこの火を消したいと思っている。
 だが、それ以上に、その先にいる霧彦を助けたかった。


 ──雪絵──


 その名前や、彼が幼少期に描いた絵を、祈里は思い出す。
 彼の可愛い頃──まだ死など遠かったはずの希望溢れる時代や、彼のことを大事に想う人間のことを考えると、やはり絶対に助けなければならないな……と祈里は思った。
 彼は死んでもいいと思っていても、それを許したくない人たちは幾らでもいる。
 祈里だって、その一人なのだ。


(私は死にに来たんじゃない……絶対みんなで生きて帰れるって……私、信じてる!)


 それがここではただの理想主義で、甘い考えであるのは承知だ。
 この戦いで死ぬほどの致命傷を負った人間は、祈里の周りだけでも二人いるほどである。
 本当なら、霧彦やヴィヴィオは死んでいたかもしれない。運が良くて、奇跡的に助かっただけだ。それに、こうした出来事は、何もここだけで起こっているわけじゃない。もう既に手遅れな事例も幾つかあるだろう。
 だから、信じたところで絶対全員が生きて帰れるはずはない。それでも、彼女はそれを一途に信じた。それが彼女だからだ。


「熱っ!」


 霧彦を助けようと前に出て、思わず、キュアパインは叫んだ。
 地獄の業火が、霧彦の周囲を囲んでいる。よく起きないものだと、思ってしまうほどにそこは熱そうだった。それは天然サウナと呼べるほどの温度だろう。
 あまりの熱さに、蜃気楼で霧彦の体が歪んで見えてしまう。


(これくらい、耐えられるわよね!)


 ボァッ!

 意を決して、祈里は炎の壁の向こうへと飛び込んだ。
 火の弱いところを一瞬で過ぎ去ると、腕と顔が少し熱いと感じる程度で、案外平気だった。しかし、やってのけた今の一瞬を思うと、体から汗が止まらなくなる。

 すぐに祈里は、霧彦の体に触れた。
 彼の脈動と鼓動は、確かに祈里の腕を通して感じられた。彼の体は湿っていたが、既に祈里も同じような状態だったせいか、あまりそれに対する不快感はない。

 さて、問題はここからだ。
 霧彦の体重は、まあプリキュアとなった今の祈里なら問題なく抱えられる。もう一度火の中を飛び込むのも、このままここにいれば死ぬかもしれないことを考えれば、やってのけるだろう。
 しかし、霧彦の体が火傷する可能性が出てくるのが問題だ。


「ゲホッ! ゲホッ!」


 煙が喉へと張り込んできて、不快な味に咽る。
 当然、ここには長くいられない。
 霧彦の体がこれ以上傷ついてしまうのは問題だが、それも止むを得ない。ここで死ぬよりはマシだ。
 躊躇いつつも、炎の弱いところを狙い、祈里は高く跳んだ。プリキュアとしての跳躍力は、一般人のそれを大きく凌駕する。
 炎には触れた。それは熱いが、来たときよりもマシに感じた。

492風が私を呼んでいる ◆gry038wOvE:2012/06/03(日) 21:38:26 ID:Q2WE7cBk0

(──何とか戻れた……)


 適温が、酸素が、はっきりとした意識が、嬉しい。
 不幸から這い上がってきた、久々の快感である。体が汗だくであるのを気持ち悪いと感じたのは、今になってである。


(このまま帰らないと……)


 祈里は、腕の中の霧彦をチラッと見る。
 お姫様だっこ。男の彼からしてみれば、少し屈辱的かもしれないと考え、祈里はその持ち方を変える。
 ……おんぶ。これなら、運びやすいし彼のプライドも傷つかない。


(他に人はいないわよね……)


 一応、祈里は炎の周りを一通り確認した。
 特に人の気配は感じなかったし、霧彦がいる以上は念入りに調べることもできない。
 助けを呼ぶ声などが聞えない以上は、この火災にこれ以上の被害者はいないのだろう。霧彦のように突っ伏している人間を捜してみてもいなかったくらいなので、たぶんもう誰もいない。


 火を消せないのは不安だが、それでもまず優先すべきは霧彦だ。
 彼を乱馬やヴィヴィオのところに送り届けるのだ。それまでに悪い人間に会わないよう、気をつけなければならない。
 もし、会ってしまったらどうする……? そうすると、プリキュアに変身している自分はともかく、霧彦が心配だ。殺害が目的なら、狙うのはおそらく霧彦となる。


 色々と不安だったが、ここにいても仕方がない。
 祈里は、すぐに霧彦を背に、進み出した。



★ ★ ★ ★ ★


(──何とか戻れた……)


 適温が、酸素が、はっきりとした意識が、嬉しい。
 不幸から這い上がってきた、久々の快感である。体が汗だくであるのを気持ち悪いと感じたのは、今になってである。


(このまま帰らないと……)


 祈里は、腕の中の霧彦をチラッと見る。
 お姫様だっこ。男の彼からしてみれば、少し屈辱的かもしれないと考え、祈里はその持ち方を変える。
 ……おんぶ。これなら、運びやすいし彼のプライドも傷つかない。


(他に人はいないわよね……)


 一応、祈里は炎の周りを一通り確認した。
 特に人の気配は感じなかったし、霧彦がいる以上は念入りに調べることもできない。
 助けを呼ぶ声などが聞えない以上は、この火災にこれ以上の被害者はいないのだろう。霧彦のように突っ伏している人間を捜してみてもいなかったくらいなので、たぶんもう誰もいない。


 火を消せないのは不安だが、それでもまず優先すべきは霧彦だ。
 彼を乱馬やヴィヴィオのところに送り届けるのだ。それまでに悪い人間に会わないよう、気をつけなければならない。
 もし、会ってしまったらどうする……? そうすると、プリキュアに変身している自分はともかく、霧彦が心配だ。殺害が目的なら、狙うのはおそらく霧彦となる。


 色々と不安だったが、ここにいても仕方がない。
 祈里は、すぐに霧彦を背に、進み出した。



★ ★ ★ ★ ★

493風が私を呼んでいる ◆gry038wOvE:2012/06/03(日) 21:39:27 ID:Q2WE7cBk0


「勝手に出て行くんじゃねえ! あほー!」


 祈里はそれまで敵に会わなかったが、学校に戻るとらんまの怒声が待っていた。
 勝手に出て行ったことは謝ろうとしていたが、──それでもらんまからすれば気が気ではなかったらしい。
 勿論、勝手に出て行ったことによりらんまが迷惑してしまったり、ヴィヴィオを押し付けられる形になってしまったことも、彼が怒った一因だ。
 しかし、彼は、チンピラや不良のような口調や態度をしているが、それでも人を放ってはおけない心配性でもあった。
 だから、彼は自分が心配した分、──自分でも気づかないうちに苛立っていたのだ。


「乱馬さん! 怒らないで!」


 ヴィヴィオは、彼を制止するが、らんまはそれで止まるような性格ではない。
 たとえ女になっても、性格そのものは変わらず、その威圧感は女性らしからぬものである。
 らんまは殴ったりこそしなかったが、祈里はかなり申し訳なさそうにうなだれている。


「ごめんなさい……心配かけて、ごめんなさい……」

「うっ……」


 泣きそうな祈里の表情に、らんまはようやく怒る気が失せたらしい。
 こんなに素直に謝られると、らんまも弱い。そういえば、こんな素直な女性はかなり久々に見たような気がする。
 ──だから、こんな相手にどう対処すれば良いのか乱馬はわからないのだ。
 あかねがたまにこうして謝ると、早乙女乱馬は何もできなくなる。


「わ……わかればいいんだ。とにかく、お前も凄いことになってるからシャワーでも浴びて来い」


 祈里の体は、すすだらけで、汗まみれだった。
 火災現場に行った人間の姿なのだから、当然といえば当然だ。
 らんまとヴィヴィオに比べると、その様子がおかしいのは一目瞭然。
 霧彦の分も大きいが、焦げ臭さと汗臭さと熱気によって、女三人と男一人の部屋とは思えないほどになっている。
 祈里自身も、シャワーを浴びに行きたかった。
 ただ、彼女の居る私立中学ならともかく、ここにシャワーがあるかはわからない。


「シャワーなんてあるの?」

「うちの高校はある」

「ここは中学校ですよ」

「探してみれば、どっかにあるんじゃねえか?」

「この学校、プールがあるみたいですから、シャワーだけなら浴びれるかも」


 軽い会話を交わし、校舎や校庭とは別にプールがあることをヴィヴィオが指摘する。
 保健室に、プールでの注意点の張り紙が張ってあったのだ。実際には、ヴィヴィオはほとんどここにいたため、プールが本当にあるのかどうかは知らない。あくまで、プールがある可能性が高いというだけで、そこにシャワーがあれば最高というだけだ。


「……じゃあ、行ってみるわ」

「気をつけろよ。校舎とは別みたいだからな」

「うん。……あ、そうだ。タオルになるものない?」

「ここは保健室だからな。そこら辺を探せばあるだろ」


 言いながら、らんまが適当にその辺りを探し、一緒に探し出した祈里がちょうどタオルを見つけ出す。
 バスタオルほどの大きさは無い、顔を拭くようなタオルだったが、何枚か取り出して持っていけば足りそうな気がした。


「……ふぅ」


 らんまは溜息をつく。
 次は霧彦だ。彼の汗の量は祈里を遥かに越えている。男性であり、あれだけの長時間炎の中にいたのだ。当然である。
 濡れタオルを用意し、彼の服を捲り上げて体を拭く。
 隣のベッドのヴィヴィオとはカーテン一枚を挟んでいただけである。幼い少女に霧彦の体を見せるわけにもいかない。
 体こそ女だが、らんまは一応男だ。霧彦もらんまが体を拭いていることくらいなら容認してくれるはずだろう。

 さて、すぐに前面は拭き終わった。
 体を霧彦の体をひっくり返して、首の裏を、背中を、足を、……そして尻を拭く。
 (一応)男性のらんまでも抵抗がある行為だ。女同士ならともかく、男同士でこういうのは極端なまでに気持ちが悪い。
 男性と女性の両方を経験した乱馬は、余計にそう思った。

494風が私を呼んでいる ◆gry038wOvE:2012/06/03(日) 21:40:26 ID:Q2WE7cBk0
「──拭き終わったぞ」

「……はい」


 ヴィヴィオは、らんまの言葉に少し恥ずかしそうに答えた。
 デリカシーを考慮せずに言ったわけではなく、ただ無言というのも逆に恥ずかしいからだった。
 らんまも恥ずかしい気分になったが、まあその気分は一蹴し、カーテンをがらっと開け放った。


「○△※□☆&%〜!!?」


 そちらを見るなり、ヴィヴィオは声にならない声を発しながら、顔を押さえた。その顔は赤面しており、らんまにはどうしてそんな風になっているのかがわからなかった。
 らんまはヴィヴィオの目線の先にあるものを確認するために、再び後ろを見直す。


 そうだ、らんまは拭き終わっただけだったのだ。
 服を着せなおすことを忘れていた。
 そのため、ヴィヴィオは霧彦の尻を間近で見てしまったのである。
 ……まあ、仰向けでなくうつ伏せだったことや、男性でも滅多にいない美尻だったのが不幸中の幸いだった。


「あっ、悪ぃ悪ぃ!」


 らんまは慌ててカーテンを閉じ、それを隠す。
 気をつけていたはずが、ついやらかしてしまった。
 彼(女)は何故、こんな過ちをしてしまったのだろう。
 やはり、心配な人の事を考えていたからだろうか。



★ ★ ★ ★ ★



 プールには確かにシャワーがあった。
 だが、それは生徒がプールの前に通り過ぎねばならない、あの雨のような冷たいシャワーである。
 最大の問題点は、それが野外に設置されていることである。通常、生徒たちは水着でこれを通るのだが、彼女はそれを持っていない。
 つまり、野外で丸裸にならなければならないのだ。
 ……まあ、幸いにも、周囲がある程度囲われているため、わざわざプールに入ってこない限りは覗いたりすることはできない。学校の外からでは、シャワーの音すら聞こえないだろう。
 それでも、野外で体を露出するという行為は、当然恥ずかしさが伴うものであった。


「〜♪」


 ──しかし、今は無視だ。

 祈里は少し迷いつつも、シャワーの栓を回す。周囲は充分確認したが、誰もいないし、おそらくいたとしても祈里の姿は見えない。
 シャーッという音とともに、小さい水流が幾つも真下に落ち始めた。
 いつもプールに入るときに少し浴びるだけで、これで風呂場のように体を洗うのは初めてだ。
 再度周囲を確認し、やや不安ながらも服を全て脱ぎ捨て、そのシャワーの中に向かっていった。


「ひゃぅっ!」


 あまりにも冷たかったので、思わず声があがる。
 やはり、このシャワーは冷たい。なんでプールの前のシャワーはこんなに冷たいのだろう。久々なので油断した。
 しかし、すぐに慣れた。
 彼女は全身に水を浴びながら、髪をしゃかしゃかと指ですく。
 それから下に手を下げ、顔を洗い、すすを擦り落とした。
 気づけば、ここが一応野外であることを忘れ、心に余裕ができる。よく考えれば、覗けるとすれば、鳥だけか。それなら露天風呂と同じようなものだ。


(えっと……セッケン、石鹸……)


 石鹸は、手洗い用の石鹸を保健室から拝借して、それを使っている。
 体を洗うものと変わらないので、それは充分にあわ立ち、自分の体から出る不快感を拭ってくれた。髪は軽く流すだけだったが、それでも冷たい水が通っていくのは気持ちが良い。
 祈里の体は、だんだん来る前の清潔な状態に近付いていく。彼女はそれにほっとして、全て洗い流した。
 霧彦やヴィヴィオの傷や怪我も、洗い流せればいいのに……と彼女は思った。

495風が私を呼んでいる ◆gry038wOvE:2012/06/03(日) 21:41:05 ID:Q2WE7cBk0
 シャワーは止まらないうえに、色んな方向から出てくるので、体の泡はすぐに流れ落ちる。
 洗いにくさもあったが、何とか彼女は耐えて全身を洗った。
 もうちょっとシャワーを浴びたい気もしたが、このままだと風邪を引いてしまうし、目的が終わると急に恥ずかしさもやって来たので、すぐに彼女はシャワーを止めた。
 体に、冷たい風が吹いているような気がした。
 

 それから、すぐに更衣室に戻って祈里はデイパックを整理する。


(……着替えは確保できたし、何とかなるわよね)


 着替えといっても、この学校の体操服だが、ぐっしょり濡れたあのシャツより遥かにマシだ。
 本来、あれは今すぐにでも洗濯したいのだが、流石にそれはここでは無理だ。仕方がないので、彼女は服を着るときはその体操服を着て、それまで着ていたシャツは一度袋に入れ、更にそれをデイパックに入れて持ち歩くことにした。


(ブレザーとスカートは何ともないけど……体操服にブレザーっていうのは……)


 流石にダサい。シャツが着られるのならともかく、中途半端な格好はしたくないだろう。
 下着もシャツと同じくらい汗まみれだったが、これは仕方ないので着用した。
 その上から、体操服を着る。案外、さっぱりとしていた。


(ピッタリみたいだわ)


 体操服は祈里の体に丁度合うサイズである。まあ、多少の差異はあれど、彼女にはそう思えたのだろう。元々、体操服などピッタリ合ってるのか合ってないのかわからないものだ。
 彼女は更衣室に忘れ物がないことを確認してから、プールを後にした。



★ ★ ★ ★ ★



「よぅ。シャワーはあったか?」

「うん。ちょっと冷たかったけど」


 体はともかく、髪が乾いていない祈里の姿を見て、らんまは彼女がちゃんと体を洗い流してきたのだと認識する。彼女の姿は、制服から体操服に変わっていた。学校には一応、こういうものも置いてあるのだろうか。


「冷たかった……か。ってことは、お湯は出ないんだな」

「うん」


 らんまは、早くお湯を被って男に戻りたいと思っていた。以前、ムースと戦ったときに実感したが、女の時では体のリーチが短く、技が決まりにくいのだ。
 体そのものも弱弱しく、いざ交戦した時にも動きづらい。
 そして、何より彼自身のプライドとして、男でいたかった。この姿によって母親に殺されるかもしれないのも一因だ。
 ともかく、らんまは支給されたポッド以外でお湯を確保できるところにいたほうが良いように思っている。ポッドのお湯は有限だ。

496風が私を呼んでいる ◆gry038wOvE:2012/06/03(日) 21:41:55 ID:Q2WE7cBk0

「そうだ……忘れてた。これをこいつに返さねぇと」


 乱馬は、突然、自分がまだ霧彦のスカーフを所持していたことを思い出す。
 霧彦が生きて帰って来たのだ。これは本人に返さねばなるまい。
 他にも、絵やキーホルダーも彼の枕元に置く。
 ここには、霧彦を象徴する物々が揃いすぎていた。

 らんまは彼の顔を覗いたが、霧彦の顔が先ほどより緩んだような気がする。
 彼は一体、どんな夢を見ているのだろうか。
 まあ、そんな事は考えなくてもわかる。


 この風都バカのシスコンが、一体何を夢見ているのかくらい──。


 もうすぐ放送だ。
 乱馬は放送が終わったら、すぐにここを去るだろう。
 あかねや良牙たちを探すために。


(大丈夫だよな……頑丈なお前らなら、生きてるはずだよな……)


 乱馬は、良牙やシャンプーに関して大きな不安を抱かなかったが、あかねについては不安であった。死ぬところなんて想像できないのに、なんだか無償に不安なのだ。
 ──それが愛しているからだと、彼はまだ気づいていない。


 ここを去る時が、不思議と乱馬には待ち遠しくなかった。
 折角出会った彼らと別れるつもりでいるのが、少し惜しいのだ。キュアパインの力だって、どの程度通用していくのかはわからない。
 良牙たちのことはよく知っているからまた会える気がしているだけで、彼女たちとまた会えるかはわからない。


(状況が状況だからな……いつもなら、もっと軽い気持ちで別れられんのに)


 ヴィヴィオは乱馬に教えて欲しいことがあった。だから、もしかすれば乱馬はここから去ることができないかもしれない。
 ……それを、乱馬はまだ知らないし、どう対応するのかもまだわからない。


 実は、彼らは知らないが不安要素はまだある。
 究極の闇の進路が、図書館側ではなく、街へと決まったことである。 
 目立つ建物を焼くというのが彼の目的だが、それが中学校なのか風都タワーなのか、はたまたもっと遠くへ行って警察署なのか、地図に載っていない別の建物なのか、そもそも彼の目的が本当に成功するのか──それはまだわからない。
 しかし、その少年の歩みが近付くたびに、ここが禁止エリア以上の危険区域と化しているのは確かだった。


(ヴィヴィオや霧彦の傷はいつ治る……祈里はこいつらがいる状態で戦えるのか?)


 様々な疑問を抱えつつ、放送の時間が来ないよう、らんまは願った。
 目の前に広げられた地図、名簿、筆記用具。
 これらに書き込む前に一度時が止まって、彼らの傷だけでも治せたら……。
 そんな無茶苦茶なことさえ考えた。
 自分がいなくなったらどうなってしまうのか。──自意識過剰な考え方と思われるだろうが、乱馬はそう思うくらいに自分の強さを自覚して、プライドを持っていた。



★ ★ ★ ★ ★

497風が私を呼んでいる ◆gry038wOvE:2012/06/03(日) 21:43:27 ID:Q2WE7cBk0



 ──良い夢を見ていた。

 ──夢であることさえ忘れて。

 ──その夢の中で、彼は幼かった。

 ──風の中で、明日を夢見ていた。

 彼が今、子供たちを守ろうとしているのは、こうして明日を夢見ながら子供時代を生きてきたからなのかもしれない。
 妹がいた。友達がいた。彼がいた。


 そこには、必ず風都があった。
 幼少を過ごし、良い思い出に溢れた、良き故郷である。
 いや、今の彼には故郷というより、現在の居場所だ。子供の頃の彼には、それくらい、身近な場所であると思える。



(この街が平和でありますように……)



 彼はそう願い続けた。
 その願いはきっと、変わらない。
 たとえ、



 ─────ガイアメモリの力で精神が荒み始めたとしても、そうなのだろう。



 そんな強い男だからこそ、頼む!
 起きろ、霧彦! 寝ている場合じゃない!
 近くに魔の手が迫っている!


 ──風がお前を呼んでいる!




【1日目・早朝】
【G−8 中学校】

【早乙女乱馬@らんま1/2】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(小)、女性化
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0〜2、水とお湯の入ったポット1つずつ(お湯変身1回分消費)、ショドウフォン@侍戦隊シンケンジャー、丈瑠のメモ
[思考]
基本:殺し合いからの脱出。
1:放送まではヴィヴィオ、祈里、霧彦とここで待機。
2:放送後、市街地で知り合いを探す。
3:2の後、呪泉郷へ向かう。
4:池波流ノ介か梅盛源太に出会ったらショドウフォンとメモを渡す。
[備考]
※参戦時期は原作36巻で一度天道家を出て再びのどかと共に天道家の居候に戻った時以降です。
※風都タワーの展望室からほむらとシャンゼリオン(暁)の外見を確認しています。

【高町ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
[状態]:上半身火傷、左腕骨折(手当て済)
[装備]:セイクリッド・ハート@魔法少女リリカルなのはシリーズ
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0〜1、山千拳の秘伝書@らんま1/2
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
1:今は乱馬や祈里と霧彦の様子を見る。
2:強くなりたい。その為にらんまに特訓して欲しい。
3:みんなを探す。
[備考]
※参戦時期はvivid、アインハルトと仲良くなって以降のどこか(少なくてもMemory;17以降)です


【山吹祈里@フレッシュプリキュア!】
[状態]:疲労(小)、体操服姿
[装備]:リンクルン
[道具]:支給品一式(食料と水を除く)、ランダム支給品0〜1 、制服
[思考]
基本:みんなでゲームを脱出する。人間と殺し合いはしない。
1:今は乱馬やヴィヴィオと霧彦の様子を見る。
2:桃園ラブ、蒼乃美希、東せつなとの合流。
3:一緒に行動する仲間を集める。
[備考]
※参戦時期は36話(ノーザ出現)後から45話(ラビリンス突入)前。なお、DX1の出来事を体験済です。
※「魔法少女」や「キュゥべえ」の話を聞きましたが、詳しくは理解していません。
※ほむらの名前を知りませんが、声を聞けば思い出す可能性はあります。


【園咲霧彦@仮面ライダーW】
[状態]:気絶、疲労(大)、ダメージ(中)、内臓にダメージ(小)(手当て済)
[装備]:ナスカメモリ@仮面ライダーW、ガイアドライバー(フィルター機能破損)@仮面ライダーW 、 ふうとくんキーホルダー@仮面ライダーW、霧彦のスカーフ@仮面ライダーW、須藤兄妹の絵@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3、T2ヒートメモリ@仮面ライダーW
[思考]
基本:この殺し合いを止める。
※あくまで気絶前の思考です。
1:火災現場へ向かう。
2:冴子は可能なら説得したい。
3:本郷猛、一文字隼人に興味。
4:ガイアメモリは支給された人次第で回収する。
[備考]
※参戦時期は18話終了時、死亡後からです。
※主催者にはミュージアムが関わってると推測しています。
 ゆえにこの殺し合いも何かの実験ではないかと考えています。
 但し、ミュージアム以上の存在がいる可能性も考えています。
※ガイアドライバーのフィルター機能が故障しています。これにより実質直挿しと同じ状態になります。

498風が私を呼んでいる ◆gry038wOvE:2012/06/03(日) 21:45:43 ID:Q2WE7cBk0
投下終了です。
>>492で繰り返しコピーしてしまうミスがあったみたいで申し訳ありません。
反映すべき文は途中の「★」までです。そこから先はカットでお願いします。

499名無しさん:2012/06/03(日) 21:51:44 ID:6f0kexrE0
投下乙です!
ああ、霧彦さんはどんどんボロボロになっていくなぁ……そしてヴィヴィオに大切な所を見られるなんて凄く災難だなw
ブッキーの体操服姿、本編では見られなかったから新鮮だな。
そしてダグバは近くにいるけど、この4人はどうなるだろう……

500名無しさん:2012/06/03(日) 22:22:52 ID:eH6NAGmQ0
投下乙
中学校から離れるのをどこか惜しむ乱馬
霧彦を放っておけないブッキー
体を酷使し続けボロボロな霧彦
うっかり彼のお尻を見てしまい赤くなるヴィヴィオ
4人が良く描写されているいい話だわ

……近くにあれがいることを除けば

501名無しさん:2012/06/03(日) 23:27:50 ID:aAQ4Syww0
投下乙です

そうだよ、近くに奴がいるんだよなあ…
四人ともいい奴らだからこのまま続いて欲しいけど誰が死んでもおかしくない状況なのが…
四人が四人とも描写がよく書けてましたよ
さて、放送知人の名前を呼ばれて動揺してどうなるやら

502名無しさん:2012/06/04(月) 19:42:37 ID:ZuJGjgc20
ディバイトシューター
射撃を7回行うと点滅を始め、12回目で点滅が早くなり、15発目で消灯(この時点で弾切れ)

ディバイトガンナー
射撃を3回行うと点滅を始め、5回目で点滅が早くなり、8発目で一つ消灯(16発で弾切れ)

ディバイトランチャー
射撃を2回行うと点滅を始め、3回目で点滅が早くなり、4発目で一つ消灯(12発で弾切れ)

って今知った。
状態表に弾数表示ないけど、ほむほむはどれくらい使ったっけ?

503名無しさん:2012/06/05(火) 01:33:01 ID:aBGREUIg0
連続での投下乙です

>血染め〜
三影はここで退場か。しっかり仮面ライダーが仕留めた以上、村雨との敵対が……
しかし一文字よ、その腕は何とかしておいた方が良かろうて。

>ASTRY
とりあえず、暁の口八丁で何とか切り抜けた……のは良いけど殿とパンストが組むとは……しかも最初に乱馬に出会っていたが為に、乱馬と名乗った(わけではないがそう思わせる)作戦が全く通じないとは……
で、逃げたの良いけど、なんか予約されているのですが……

>椅子
鋼牙はそちらに向かうか……上手く立ち回れば五代と再会できただろうに……でもその分零と遭遇する可能性が……
後、シンヤ……状態はわかるがいつまで引きこもるのだろうか……

>進撃
ダグバ警報発令、ダグバ警報発令、市街地の皆様はみんな伏せやー!!
いや、真面目な話、杏子以外のマーダー誰もいないから本当にヤバイ(しかもその杏子も微妙な状態)。
真面目に勝てそうなのがタカヤちゃんだけな罠(但し、記憶が飛びます)

>風が私を〜
前回で不安視された霧彦と祈里は無事に戻ってきました……てっきりダグバ辺りに遭遇して……と思ったのに……
が、そのダグバが来た分状況は悪化している不思議。いや、ダグバ分別にしても対主催集結していたら逆にヤバイからあんまり変わらないからなぁ。
でも、安定している様に見えて、放送後の反応、近くの杏子(ユーノとフェイトと行動を共にしていた)、霧彦自体の不安要素、等々不安要素に事欠かない罠。

504 ◆F3/75Tw8mw:2012/06/05(火) 22:29:08 ID:bBwjXSNY0
皆さま、ご無沙汰しております。
私用につき長い間顔を出せず、申し訳ありませんでした。

これより涼邑零・結城丈二パート、投下いたします。

505Avenger ◆F3/75Tw8mw:2012/06/05(火) 22:31:22 ID:bBwjXSNY0

「涼邑……一つ、確認したい事がある」


結城丈二と涼邑零。
二人はタカヤ達三人が警察署を後にした後、目的地を目指し―――正確には零が向かう先に結城が着いていっているだけだが―――歩みを進めていた。


──「冴島邸」──


零にとっては最大の仇敵、冴島鋼牙の邸宅。
それを模した何かがここにある以上、彼にとってそこへ向かうのは必然であった。
その行動に、一切の迷いはなく……故に。
同行者は、気づくことができた。


「君の憎む相手……倒そうと思うべき相手は、冴島鋼牙か?」


涼邑零を復讐に走らせた、その男の名に。


「……そうだよ、それがどうかしたかい?」


零には別段、それを指摘されたからといってどうという事はない。
自分の向かう先と地図とを照らし合わせ、且つ名簿に一通り目を配らせていたならば、当然導ける答えだ。
気付かれるだろう事は承知の上……寧ろ、気付かれない方がおかしいだろう。


「まさか、あいつを殺すのは止めてくれ……とでも?」


口調は飄々としたまま、しかし確かな殺意を孕ませ、零は結城に問い返す。
この男は、復讐に走る自分を放っておけないなどと口にした。
ならば、その阻止に回るのは十分ありえる事であり、零からすれば絶対に許せない行為だ。
もし、そうだとするなら……邪魔はさせられない、させるわけにはいかない。

506Avenger ◆F3/75Tw8mw:2012/06/05(火) 22:32:03 ID:bBwjXSNY0
返答の如何によっては、抜刀も辞さない。
そんな思いのまま、零は結城の次なる声を待つ。


「……その答えは、まだ返せないな」

「何だって?」


しかし、返ってきたのは意外すぎる言葉だった。
彼は、復讐を良しとしないと言っておきながら、それを止める意思も見せなかったのだ。
これには零も面食らい、唖然とした表情をしてしまう。

それはどういう意味だ。
ややあって、そう問いかけようと口を開こうとするが、それを察してか、結城は先に言葉を紡いだ。


「私は、冴島鋼牙がどういう人間なのかを知らない。
 何せ出会ってもいない、話に聞いたことも無い相手だからな」


答えは簡単だった。
結城は、零が憎む冴島鋼牙がどの様な男であるかを、知らないのだ。
人物像がまるで分からぬ相手を相手に、打倒すべきか否かの判断など、付けられる筈が無い。


「そして……涼邑零という男が何者なのかもまた、私は知らない」
 
「…………!」


そして何より、結城はまだ涼邑零という男の事を殆ど把握していないのだ。

507Avenger ◆F3/75Tw8mw:2012/06/05(火) 22:32:48 ID:bBwjXSNY0
「もし、冴島鋼牙が力なき人々の為にその牙を振るえる戦士であり、君が血を好む悪鬼羅刹であるならば、私は君を止めねばならない。
 逆もまた然りだ……冴島鋼牙が悪と断じられる存在であるならば、確実に討たねばならない。
 無論、復讐心に駆られる事を良しとするつもりは無いがな」


確かに結城は、零の復讐心を咎める発言はした。
だが、その相手を「倒すな」ともまた、口にはしていないのである。
何故ならば、例えばバダンの様な人に害成す存在が仇だったならば、それは倒さねばならぬ敵だからだ。
復讐する事と討つべき敵を討つ事とは、また別問題だと、結城はそうはっきりと区別をつけているのである。


「……なるほど、ね」

聞き終わると同時に、零は殺意を収めた。
自分を非道の類と例えられた事は癪だが、彼の言うことは正論に違いない。
つまり彼は、己と冴島鋼牙がどんな男であるかを、その目で見極めるつもりなのだ。


「あいつを殺す事、止められるかと思ったけど……案外、話が分かるじゃないか」


零は僅かながらではあるが、結城への評価を改めた。
冴島鋼牙の殺害を止めるというなら、容赦をするつもりは無かったが……
彼は、それが倒すべき悪だというなら止めるつもりは無いと言いきった。
ならば簡単な話だ。
冴島鋼牙は決して、正義と呼べる存在ではない……罪無き命を、大切な人々を殺めた男が、正義であってたまるものか。


「結城さん……だったね。
 心配は要らないよ、奴はどうしようもない悪党だ……魔戒騎士の恥曝しだよ。
 ま、あんたが俺を大嘘付きの悪人だって思ったりしてたら、話は別だけどさ」


勿論これは、結城が自分を信用していればの話だ。
出会って間もない間柄、素直に受け入れてもらえるとも思ってはいない。
しばらくは彼がどういう判断を下すか、様子見と言うところだが……
そんな零の何気ない一言に、結城は苦笑しながら答えたのだった。

508Avenger ◆F3/75Tw8mw:2012/06/05(火) 22:33:22 ID:bBwjXSNY0
 
「さて……少なくとも今の時点じゃ、君自身が悪だとは思ってはいないがね」


零の行動には思うところこそあれど、悪人だとは思っていないと。


「……へぇ、どうしてだい?」

「何、簡単な話さ。
 君は京水を斬ろうとした……それが判断材料だよ」


根拠は、彼が京水を斬り捨てようとした事。
『人にとって有害』な存在と断じ、動いた事にあった。
それにより、零自身が人の為に動く人間である……少なくともそう言える一面があると、一応の証明はされたのだ。


「尤も……あの行動自体は、決して褒められたものではない」


とは言うものの、結城はその行動を肯定するつもりは毛頭なかった。
それは、零の刃を自ら止めに入った事からも明白だ。
目的の為ならば、例え何者―――それが善であろうとも、立ち塞がる全てを切り捨てる……それは決して、正義と呼べる行いではない。


「分かっているだろうが、もしもまた同じ事を繰り返すつもりならば、私もまたお前を止めよう……例え力ずくでもだ」


だからこそ、それを正す為にこうして自分は側にいる。
かつての自分と、同じレールを歩もうとしているこの哀しき男を、止める為に。


「……いいさ、勝手にしなよ。
 ただし……俺も状況次第じゃ、容赦するつもりはないよ?」


揺らぎなき強き決意を秘めた結城の視線に、零もまた真っ直ぐに言葉を返す。
止めたいのなら好きにすればいい、しかしその時はこちらも力ずくだ、と。
彼にもまた、譲れぬ一線はあるのだ。

509Avenger ◆F3/75Tw8mw:2012/06/05(火) 22:34:00 ID:bBwjXSNY0




◇◆◇




「……ところで涼邑、冴島鋼牙以外の知り合いはこの殺し合いには参加していないのか?」


しばしして、歩みを再開しようとした後。
不意に結城は、それまでとはまるで違う話題を零へと振ってきた。
随分と唐突な質問だが、どうしたのだろうか。
零としては、あまり根掘り葉掘り己の事を探られるのは、好ましくない。


「また質問かい?
 確かにあいつの事は少し話してしまったけど、俺はあんたに気を許した訳じゃ……」

「頼む、答えてくれ。
 これは重要な問題なんだ」


しかし。
断りを入れようとした零に対して、結城は極めて真剣な様子で懇願してきた。
流石にこうなると、零も何事かと気にせざるを得ない。
怪訝そうな面持ちで、結城へと振り返る。


「…………!」


直後、零はその理由を察した

510Avenger ◆F3/75Tw8mw:2012/06/05(火) 22:34:28 ID:bBwjXSNY0
視線の先では、結城があるものを指差していたからだ。
それは、己の首にもまた嵌められている爆弾。
参加者に等しく与えられた、『首輪』だ。


「……悪いけど、期待する様な答えは持ってない」

「そうか……」


しかし残念ながら、結城が求める様な人材―――この首輪を外しうる知識のある人物を、零は知らなかった。
その返答に結城は残念そうな様子をするが、無理もあるまい。
確かにこの首輪は、参加者の大半がどうにかしたいと考えている代物だ。


(こいつを外さない限り、殺し合いを止めるも何も無い……か)


こればかりは流石の零も、情報を惜しもうとは考えなかった。
殺し合いを止める為には、まずこの首輪を外すのは第一条件になる。
いや、それ以前に……首に爆弾を巻きつけたまま戦う事自体が、危険すぎる。
例えば冴島鋼牙が、戦闘中にこの首輪を狙い仕掛けてきたらどうなる?
切っ先が掠めた程度であったとしても、爆発して命を奪われるかもしれないのだ。
そんなリスクは御免被る。


「俺にそれを聞くって事は、あんたにも宛はないのか?」


もし解除する宛があるなら、こんな事を聞いたりはしないだろう。
故に返事は分かっているものの、念の為に零は結城へと尋ねてみた。
それに対して結城は、やはり首を縦にふり、静かに答える。


「ああ、残念ながらな。
 私ではどうにかする事は出来ない……お手上げだ」


口から出たのも、予想通りに諦めの言葉だった。
零は小さく溜め息をつき、肩をすくめる……が。

511Avenger ◆F3/75Tw8mw:2012/06/05(火) 22:34:54 ID:bBwjXSNY0

「……ん?」


直後、彼はすぐに気がついた。
結城は言葉を返しつつ、デイパックから取り出したメモ帳へと、何かを書いている事に。
何よりその言葉とは裏腹に、彼自身からはまるで諦めの様子が感じられない事に。

そして……しばしした後。
彼から手渡されたメモを見た事で、その真意が分かった。


『ここから先、重要な話は筆談で行いたい。
 参加者の会話は、ほぼ確実に盗聴されていると見た方がいい』


結城は主催者を欺く為に、敢えて諦めの言葉を口にしたのだと。


「…………!!」


零はハッとした表情で、己の首元に手を伸ばした。
言われてみれば、それはもっともだ。
参加者として殺し合いに放り込んだ以上、運営にはその行動を監視する必要がある。
そして、その為に最も適した道具は……この首輪に他ならないではないか。


『分かったよ、忠告してくれて感謝する。
 それで、本当のところはどうなんだ?』


零も同様にメモ帳を取りだし、筆談を開始する。
結城が何かを掴んでいるならば、情報を逃す訳にはいかない。


『もしこの首輪が私の知る範囲の技術で作られている物ならば、解除は私でも可能だろう。
 それなりの設備を発見した上で、首輪の構造さえ分かれば、恐らくどうにかできる』


まず結城の考えだが、首輪が己の技術の範囲内であるならば、解除出来るというものだった。
その為には首輪の構造をまずは解析し、解体用の設備を発見する必要がある。
後者に関しては、オペレーションアームだけでは完全な解除が難しいだろうと予測を立てているが為の判断だ。

512Avenger ◆F3/75Tw8mw:2012/06/05(火) 22:35:37 ID:bBwjXSNY0

『しかし、それはまずありえない。
 先程京水達の話を聞いて確信したが、この首輪には私が知らぬ未知の技術が使われているからだ』


だが、それはあくまで『結城の知る技術』のみで首輪が構成されているという事が大前提だ。
そして京水達との会合で、参加者が全く異なる世界・或いは時代から集められているという事実が分かった以上、この前提は脆くも崩れ去った。
十中八九、この首輪には結城の知らぬ道の技術が用いられている……そう断言できる。
そうでなくば、解除があまりにも簡単に出来てしまうからだ。


『だったら、その技術を知ってる人を探せばいいのか?』

『ああ、理想は私と同じ技術者と会う事だ。
 それと出来れば、時間操作を行えるという人物とも接触したい』


故に結城が考えたのは、その未知を埋められる人物と。
そして、時間操作の術を持つ参加者との接触だ。
加藤はこの首輪を、時間操作の影響を受けずに作動する代物だと言った。
ならば、構造を把握する鍵はそこにあるのではないだろうか。


「……時間が経ってしまったな。
 とりあえずはこのまま、君の望み通りに冴島邸へ向かおう。
 冴島鋼牙がいるいないに関わらず、ここは会場の中心点だ。
 この施設には、人が集まる可能性がある」


筆談を止め、結城は今後の行動について口を開く。
どうやら筆談をしている内に、少しばかり時間が経ってしまったらしい。
そろそろ動かねば怪しまれる頃だろうと、彼は零に行動を促す。
目的地は依然、冴島邸だ。


「ああ、分かっているさ」


二人は歩みを再会する。
一人は復讐の為に。
一人は復讐を止め、その仇を見定める為に。
そして両者共に、殺し合いを打破する鍵を得る為に。

513Avenger ◆F3/75Tw8mw:2012/06/05(火) 22:36:08 ID:bBwjXSNY0

……ちなみに、だが。
もしこの二人が筆談を交わす事無く冴島邸に向かっていたならば、冴島鋼牙とは邸宅内で鉢合わせをしていた可能性は極めて高かった。
皮肉にも、主催者を打ち倒したいという二人の想いが、彼等に時間を使わせてしまったのである。
尤も、まだ冴島鋼牙もその近辺にいる以上、どうなるかは分からない。

果たしてこの展開は、彼等にとって幸か不幸か……




【1日目/早朝 F−8 山道】


【結城丈二@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:健康
[装備]:ライダーマンヘルメット、カセットアーム
[道具]:支給品一式、カセットアーム用アタッチメント六本(パワーアーム、マシンガンアーム、ロープアーム、オペレーションアーム、ドリルアーム、ネットアーム)
[思考]
基本:この殺し合いを止め、加頭を倒す。
1:殺し合いに乗っていない者を保護する
2:零と共に冴島邸へ向かう。
3:本郷、一文字、沖、村雨と合流する
4:加頭についての情報を集める
5:首輪を解除する手掛かりを探す。
  その為に、異世界の技術を持つ技術者と時間操作の術を持つ人物に接触したい。
6:三影は見つけ次第倒す。
7:タカヤたちとはまた合流したい。
[備考]
※参戦時期は12巻〜13巻の間、風見の救援に高地へ向かっている最中になります。
※この殺し合いには、バダンが絡んでいる可能性もあると見ています。
※加頭の発言から、この会場には「時間を止める能力者」をはじめとする、人知を超えた能力の持ち主が複数人いると考えています。
※NEVER、砂漠の使徒、テッカマン、外道衆は、何らかの称号・部隊名だと推測しています。
※ソウルジェムは、ライダーでいうベルトの様なものではないかと推測しています。
※首輪を解除するには、オペレーションアームだけでは不十分と判断しています。
 何か他の道具か、または条件かを揃える事で、解体が可能になると考えています。
※NEVERやテッカマンの情報を得ました。また、それによって時間軸、世界観の違いに気づいています。
※零の狙う仇が冴島鋼牙である事を知りました。
 彼が復讐心に捉われる様ならばそれを力ずくでも止めるつもりです。
 ただし、鋼牙を討つ事そのものに関しては全否定をしておらず、もし彼が倒すべき悪であったならば倒すべきだと考えています。
※首輪には確実に良世界の技術が使われている・首輪からは盗聴が行われていると判断しています。

514Avenger ◆F3/75Tw8mw:2012/06/05(火) 22:36:50 ID:bBwjXSNY0
【涼邑零@牙狼─GARO─】
[状態]:健康
[装備]:魔戒剣、魔導火のライター
[道具]:支給品一式、スーパーヒーローセット(ヒーローマニュアル、30話での暁の服装セット)@超光戦士シャンゼリオン、薄皮太夫の三味線@侍戦隊シンケンジャー
[思考]
基本:加頭を倒して殺し合いを止める。
1:牙狼を見つけ出し、この手で仇をとる。
2:鋼牙が向かう可能性があるため、冴島邸に向かう
3:殺し合いに乗っている者は倒し、そうじゃない者は保護する。
4:会場内にあるだろう、ホラーに関係する何かを見つけ出す。
[備考]
※参戦時期は一期十八話、三神官より鋼牙が仇であると教えられた直後になります。
 その為、鋼牙が恋人と師の仇であると誤認しています。
※魔導輪シルヴァは没収されています。
 他の参加者の支給品になっているか、加頭が所持していると思われます。
※シルヴァが没収されたことから、ホラーに関係する何かが会場内にはあり、加頭はそれを隠したいのではないかと推察しています。
 実際にそうなのかどうかは、現時点では不明です。
※NEVER、仮面ライダーの情報を得ました。また、それによって時間軸、世界観の違いに気づいています。
※もしも結城が自分の復讐を邪魔するつもりならば、容赦はしないつもりでいます。
※首輪には確実に異世界の技術が使われている・首輪からは盗聴が行われていると判断しています。

515 ◆F3/75Tw8mw:2012/06/05(火) 22:37:17 ID:bBwjXSNY0
以上で、投下終了となります。

516名無しさん:2012/06/05(火) 22:55:21 ID:BbsVNp1k0
投下乙です!
おお、流石は結城さん。やっぱり、首輪についてここまで考案してくれるとは……
そして結城さんに察してくれる零も、結構落ち着いてるな。復讐に身を任せてるから不安だったけど。
さて、果たして本当の敵がいる事に気づいてくれるかどうか……

517 ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:00:31 ID:6jh7jg6M0
投下乙です、
さすがは過去に復讐に堕ちた男、零に対する対応も万全。並の善人じゃこうはならないか。
で、首輪解除に関する準備も進めていくと……時間操作出来る人物……ピンポイントで思い当たる人物がいるのだけど……この人の協力を取り付けるのは難しいと思うが……

というわけで、それでは当方も暁美ほむら、涼村暁、志葉丈瑠、パンスト太郎分投下します。

518白と黒の黙示録(夜明けの鐘) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:02:48 ID:6jh7jg6M0
無名 Does not give his name.


 森の中を2人の男が進む――
 片方は刀を、もう片方はパンティストッキング、通称パンストを持った――
 名簿上の名は、刀を持った方は志葉丈瑠、パンストを持った方はパンスト太郎――
 だが彼等はその名を名乗るつもりは無い――

 パンスト太郎にとってその名はあまりにも巫山戯たとしか言い様の無い名でしかないが掟故に変える事が叶わない――
 それ故に、それを変える事こそが彼の行動指針となっている――(それならばパンストを持ち歩くなと言いたい方も多いだろうが、そこは敢えて触れないで欲しい)
 読者諸兄にしてみれば他の人の行動指針と比べあまりにも巫山戯ている、馬鹿げている、下らない、冗談は所持しているパンストだけにしろ、真面目な行動方針を持った者に失礼とお思いの方も多いだろう。
 だが、果たして本当にそうだろうか?
 もし、貴方が清く正しきうら若き女性だったとしよう。仮に貴方が危機に瀕した時、運良く通りかかった良い人に助けられたとしよう。だがその者の名前がパンスト太郎と名乗ったら――
 あまりにも破廉恥きわまりない名前、それ故に幻滅する可能性が大いにあると言えよう。そんな事は無い? 果たして絶対にそれが言い切れるのであろうか? 余程の聖人でない限り、大なり小なり衝撃を受けると考えて良い。
 同時に名乗る側としても、そういう名前を自分から口に出す事など容易ではない。
 パンスト太郎はその経験を幾度となくしてきたのだ、周囲から見れば下らぬ理由かも知れない。だが彼にとっては死活問題なのだ。故に、名を変える事こそが彼にとっての最優先事項なのだ――
 この殺し合いを制し、主催側の技術を使い唯一名前を変える事を許された奴、無差別格闘流創始者八宝斎に――

「(――必ずじじぃに名前を変えさせてやる――今度こそかっこいい太郎にな――)」

 念の為に言っておこう、本人にとってはそれが望みなのだ。その結果がどうなるかともかく、本人の望みである以上現状これ以上とやかく言う必要は無い。

 一方の丈瑠――彼にとって志葉は自身の本当の名(この場では姓とでも言う方が正確だろうが)ではない。
 丈瑠は志葉家の本当の殿あるいは姫が表舞台に現れるまでの影武者でしかなく、姫が現れた時点でその役目は終わり残ったのは只の抜け殻でしかない。
 名簿上では『志葉』とはなっているが最早その名を名乗る事など本来であれば許されない事であろう。
 丈瑠は幼少の頃より志葉家の殿の役割を演じ続けてきた、真実を知る僅かな者を除き誰にも――同じシンケンジャーの家臣達にもそれを悟られる事は無かった。
 その時が来るまで丈瑠は紛う事無き『殿』以外の何者でもなかった――影であろうとも気付かれなければ本物と何も遜色の無い――
 故に――それが無くなるという事は全てを失うという事と同義なのだ。
 丈瑠の中に唯一残っているのは影を演じる中で鍛え続けられた剣の腕だけ――それだけこそが丈瑠の存在意義なのだ。
 それを証明すべく丈瑠は殺し合いに乗った。一人の剣士として戦い続ける、それすら失えば本当に何も無くなってしまうのだ――

「(そう、俺にはもう剣しかない――)」

 それが愚かしい選択なのは丈瑠自身が理解しており、決して平坦な道では無い。だが、このままそこにいるだけの抜け殻になるぐらいならば剣士として散りたいと思う――それが外道であってもだ。

 奇しくも両名は手を組む事となり森を進んでいる。
 だが明確な目的地があるわけではない、それ故にいつの間にか進行方向が変わっているかも知れないし、あるいは変わっていないかも知れないだろう。
 その最中、同盟を結んでから殆ど会話の無かった両名だがついにパンスト太郎の方が口を開く。

519白と黒の黙示録(夜明けの鐘) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:03:28 ID:6jh7jg6M0


「おい、侍野郎」
「……何だ?」

 丈瑠自身、最早侍とすら言えないと思っている為そう呼ばれる事にすら抵抗はある。だが事情を知らない者に一々説明する気も無かった故特別言及する事は無い。

「確かオカマ野郎に会ったらしいな。俺の事について何か言っていなかったか?」

 今更ながらにパンスト太郎は丈瑠が早乙女乱馬と遭遇した事を思い出し、あのオカマ野郎が自分の事――というより本名について話していたのでは無いかと考え問いかけたのだ。
 もし奴が自身の本名を話していたら――最早同盟を続けるわけにはいかないだろう。だが、

「一方的に俺の方が頼み事をしただけで何も聞いていない……だが、オカマ野郎とはどういう事だ? そんな風には……」

 パンスト太郎は何時もの調子で乱馬の事をオカマ野郎と呼んだが、その事を知らない丈瑠にとっては疑問符が浮かぶ事項だ。故に逆に問いかける事となったのだ。
 そう返され内心でパンスト太郎は迂闊な事を言ったと一瞬考えた。それを説明するには自身や乱馬の特異体質を説明する必要が出てくるからだ。
 とはいえ、それを話す事については別段困る事でも無く、手を組んでいる以上、最低限の説明はした方が良いだろうと思い直した。上手く名前の話題にさえ誘導しなければ何の問題も無い――

「ふっ……」

 おもむろにデイパックからポットを取り出しそこから一杯の水を――

「なっ……これは……アヤカシ……」

 変貌するパンスト太郎の姿を見て丈瑠は驚愕する。そのままパンスト太郎は上空へと舞い上がりしばし周囲を見回す。

「お前もはぐれ外道だとでもいうのか……?」

 そう言う丈瑠を余所にパンスト太郎は地上に戻り別のポットから一杯のお湯を被り元の姿に戻る。

「そのアヤカシやはぐれ外道が何かは知らんがこういう身体なんでな」

 そう言いながらも自分達が呪泉郷の水を浴びた事で水を被ればその呪泉郷に応じた動物に、お湯を被れば元の姿に戻る特異体質となった事を説明した。

「水を被る事でアヤカシにか……はぐれアヤカシ……いや、半妖とでも言うべきか……」
「半妖……ぐふっ……悪くはないな」

 丈瑠は水を被った時だけアヤカシの姿になる事から半分アヤカシ、つまりは半妖と何気なく呼称したがパンスト太郎はどことなくそれを気に入っていた。

「どうせならかっこいいを付けて欲しかったが……(←小声で)」
「? 何か言ったか? だが……」

 しかし丈瑠としては異形へと変貌してしまう体質を憐れに思っていた。もしかすると目の前の男が殺し合いに乗ったのはそれが目的なのではと――そんな心中を察したか、

「……誤解するなよ、オカマ野郎達はどうかは知らんが俺は変身後の強い体は気に入っているんだ」

 パンスト太郎は丈瑠にそう応えた。
 パンスト太郎が呪泉郷を浴びたのは生後間もなく、産湯という形である。つまり物心つく段階からその巫山戯た体質と付き合わされている事になる。
 とはいえ、それ自体は全く気にしてはいない。彼自身が語る通り変身後の身体そのものは非常に強く気に入っているからだ。
 むしろ重要なのはじじぃ――八宝斎が産湯を浴びせた事で生じた事が問題なのだ。とはいえ、それについてまで話すつもりはない。

「ならば俺がとやかく言うつもりはないが――」

 殺し合いに乗っているのは全く別の理由なのか? 丈瑠は気にはなったものの――

「いや、これ以上は聞くまい……お前にとっては何よりも大事な事なんだろう」

 これ以上の追求は止めた。パンスト太郎にとって重要な事項なのは確かである事に違いは無いだろうし、現状は組んでいるものの何れは敵味方に分かれて死合う以上そこまで互いの事情に踏み入る必要は無い。
 だが、一方的にパンスト太郎の事情だけを聞いた事について思う所はある。共闘している事を踏まえても最低限の説明はしておくべきだろう。

520白と黒の黙示録(夜明けの鐘) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:04:01 ID:6jh7jg6M0

「礼というつもりはないが俺からも少し話しておく」
「何をだ?」
「優勝を目指しているんだろう。なら知っておいた方が良い……」

 それは優勝するにしろ脱出するにしろ障害となるであろう強敵――丈瑠がシンケンジャーとして戦っていた連中である外道衆、血祭ドウコク、筋殻アクマロ、そして腑破十臓の存在についてだ。

「何故倒した筈のアクマロがいるのかが気になるがこの際どうでも良いだろう。だが奴等は強敵だ、特にドウコクは俺達が束になってかかっても勝てるかどうかわからない相手だ」
「ぐふっ……そいつは良い事を聞いた」

 もっとも、丈瑠にとってはアクマロとドウコクの情報は単純に強敵だから気をつけろ以上の情報はない。むしろ重要なのは――

「それから……十臓には手を出すな。奴とは俺が決着をつける……」

 十臓との決着だけは自身の手で着けねばならない。例え他者と組んでこの戦いに望むとはいえどその一点だけは譲るつもりはない。

「そうか……なら、奴がテメェを倒してボロボロになった所に仕掛けるというのは?」

 パンスト太郎としては自身が手を出す事無く強敵が倒されるならばそれでも構わない。もし丈瑠が倒されたとしても疲弊した所で仕掛ければ消耗は抑えられる。

「奴との決着が着いた後ならば構わん。奴も外道だからな、卑怯である事を責める事は無い……だが、それでもそう簡単に十臓は倒せるとは思うな……」
「ぐふっ」

 そう呟きパンスト太郎は静かに頷いた。それを余所に丈瑠は

「(まだまだ甘いか……)」

 丈瑠はかつての家臣である池波流之介、そして幼馴染みであった梅盛源太の事については一切話していなかった。
 若干踏み込んだ事情ではあったがシンケンジャーの能力を含めた上で説明すれば有利に進められるのは理解している。
 それを語らなかったのは――

『もしかしてあんた、生身の人間に攻撃すんのに抵抗あるんじゃない?』

 先の戦いで暁に指摘された通りの自身の甘さだろう。
 頭では幾ら理解し割り切っていても心の何処かでは迷い割り切れていないのだろう。
 今両名の事について話さなかったのもきっとそれが理由だろう。
 こんな事ではこの殺し合いを戦い抜くことは無論の事、十臓からも死合う価値無しと断じられる可能性だってある。

「(わかっている……だからこそ俺は……その迷いを断ち切る為にも……)」

 手元には裏正が握られている、その刃先がほんの一瞬煌めいた気がした。

 惨劇が続くのを哀しむかの様に――

 その最中、

「そういや、さっきあの姿になったついでに周囲の様子も見ておいた」
「誰かいたのか?」
「ああ、侍野郎……さっきお前が戦ったあの2人だ――」

521白と黒の黙示録(夜明けの鐘) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:04:33 ID:6jh7jg6M0





理由 His reason and her wish.


 川の音だけが止む事無く耳を突く――そのすぐ側に立つ木を背にし、暁美ほむらは腰を落としていた。

「はぁ……はぁ……」

 身体が言うことを利かない――誰にも見られない様に自身の中枢とも言うべきソウルジェムを確認する。

「もうこんなに……」

 本来ならば透明であるそれは最早そんな面影など全くないぐらい濁っていた。
 ソウルジェム――魂の宝石とも呼べるそれはほむら達魔法少女にとって生命線そのものであり本体でもある。
 魔法少女となった時点で本体はソウルジェムとなり、その特性故に肉体が潰されても決して死ぬ事は無いが、逆を言えばソウルジェムを潰されれば終わりという事になる。
 同時にソウルジェムは魔法少女にとって力の源、その力を使い切って限界を超えても同じ事である。ソウルジェムの濁り――あるいは穢れはそれを示すバロメーターと言えよう。
 それを解消するには魔女を倒す事で確保できるグリーフシードに穢れを移す事、つまりグリーフシードを確保しなければどうにもならないという事だ。

 ほむらの身体は度重なる激闘――森で遭遇したン・ダグバ・ゼバに一瞬で身体の表面を焼かれ、応戦する際に燃え盛る森の炎に炙られ、しまいにはダグバの一撃で全身の筋肉と骨はズタズタに砕かれている。
 痛覚そのものをカットしている故に激痛で動けないという事は無い。だが傷を負った状態には違いなくその状態で無理矢理身体を動かせばそれだけで傷が広がるのは当然の帰結だ。
 無論、魔法少女の力で傷の回復自体は可能だがダグバへの逃走やその直後に交戦した丈瑠への対処に負われ殆ど回復できていない状態である。
 それに加え自身の能力とも言うべき時間停止を連続して使用した事もあり加速度的にソウルジェムの穢れは進行していた。

 なんとか丈瑠から逃げる事は出来たとはいえ、最早ほむらの身体はまともに動く事が出来ないぐらい消耗しきっていた。
 ソウルジェムを限界まで使ってもギリギリ届くかどうか、仮に届いたとしてもその後は殆ど何も出来ないといっても良い。
 つまり、一言で言うなれば追い詰められていたという事だ。大至急グリーフシードを確保しなければ本当にどうにもできなくなると言って良いだろう。

「ほむら、本当に大丈夫か? 病院行った方がいいんじゃないか?」

 と、涼村暁が何時もの様に軽い調子で話しかける。

「大丈夫よ……少し休めば動ける様になるわ……」

 嘘だ――もう少し休めば済むというレベルでは無い。それでも必要以上に暁をアテにするつもりは無かった故にほむらはそう応えた。

「あのな、最初会った時から思ってたけど、どっか無理しすぎなんだよ。もっと気楽ふんわかいこうぜ、ふんわかとさ、ね♪」
「ふんわかと……ってそんな余裕なんてどこにも無いわ」

 そんな真意などお構いなしに暁は軽口を叩く。

「そういえば……貴方の力……アレは一体なんなの?」

 今更ながらにシャンゼリオンの力が気に掛かり問いかけた。自分達の様にキュウべぇつまりはインキュベーターと契約して力を得たのだろうか?
 だが、先の戦いの時、

『俺だって別に好きでやってんじゃないの!』

 その言葉から察するにその力は暁自身にとって望まぬ力ではなかったのだろうか?
 ちなみに言えば本来ならば暁の事情に踏み込むつもりなど全く無かったが、黙っているだけで辛い状態で今後に不安を感じてしまうのだ。それ故に気を多少でも紛らわせる為に敢えてほむら側から話題を振ったのだ。

522白と黒の黙示録(夜明けの鐘) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:05:03 ID:6jh7jg6M0

「あーシャンゼリオンね。いや、俺もあんまり詳しくは知らないんだけどね」
「知っている所だけで良いわ、キュウべぇかその類と無理矢理契約させられたというわけじゃないの?」

 そう問いかけるほむらに対し暁は自分達の世界に存在するダークザイドと呼ばれる人類の天敵の怪物について説明し、
 それに対抗する為にS.A.I.D.O.Cが開発した新種のエネルギー、クリスタルパワーを偶然浴びた事でシャンゼリオンに変身する力を得てしまった事を説明した。

「そういえばさっき私の事をダークザイドかどうか聞いていたけどそういう事……魔女みたいなものね……で、そのダークザイドと戦ってと言われたわけね」
「運命に選ばれたとか、地球を救う為とか言われてね」
「何処も似た様なものね……」
「ま、俺はそんなことどうだって良いんだけどね。そういうの勝手にやってちょうだいって、俺としてはさ人生を楽しみたいんだよね。速水の奴には俺の身体は俺のものだけじゃないんだぞって熱い事言われたんだけどね」
「一方的に人の人生を奪っておいて随分と勝手な話ね」

 暁の人格については今更語るまでも無いぐらいイライラを感じているが境遇そのものについては同情の余地が多少はあると感じている。
 自ら望んで契約したわけでもないのに、一方的に戦えと強要するのはある意味インキュベーター並に質が悪い。その一点だけでいうならば暁と同意である。

「まー本当だったらアイツがシャンゼリオンになるはずだったらしいけどね」
「つまり本当ならその速水がシャンゼリオンとなる契約をする筈だったと?」
「平和を守る戦士になる為に血の滲む様な訓練がどうとか言ってその気持ち継いでくれって頼まれたけど、そういう暑苦しいの嫌いなんだよね」
「まったくもってその通りね……」

 その速水という奴がどんな奴かなんて別に興味は無い。だが暁の話を聞く限り美樹さやかと似た様なタイプの人物だと感じた。
 何も知らずに生半可な覚悟で契約して力を得て、そして救いが無いという真実を知り勝手に絶望し朽ち果てる――そういうのが透けて見えた気がした。
 恐らく、速水がシャンゼリオンになっても何も救われる事はないだろう。もしかしたら暁がシャンゼリオンになった方がマシといえるぐらいに――

「あ、ほむらもそう思う? 俺達ってどっか気が合うと思わない」
「それだけは絶対にないわ」

 この男と気が合うなんて事は絶対に思わないし認めたくは無い。
 こんな何も考え無しに自分の享楽と欲望のままに生きる奴と気が合うなんて身の毛がよだつ想いだ。
 自分の為に――という意味では佐倉杏子を連想するが彼女だってそこまで酷くはない。
 というより彼女にしても様々な経験があってそういう考えに至ったであろう(むしろ本心はそうではないだろう)、それ故彼女と一緒にするのは彼女に対する侮辱以外の何者でもない。

「待てよ……もしかしてほむらのその力ってそのキュウべぇって奴と契約したからなのか?」
「……!」

 と、暁が話題を切り返しほむら自身について問い始める。

「全く何処にでも勝手な事言う奴はいるんだなー。でもその力があれば好き勝手出来るから超ラッキー♪ って思わない?」
「そんな事思った事なんて一度も無いわ……こんな呪われた魔法少女の力……」

 魔法少女の力があるからこそ『彼女』が苦しむ事となり、それを救う為にずっと苦労してきたというのに――理解を求めるつもりはないが苛立ちは募る――

「おいおい、ちょっと待てって。呪われた力って望んで契約したんじゃないのかよ?」
「騙されたのよ……人間の価値観が通用しないあの悪魔……キュウべぇ……インキュベーターに……」
「つまりこういう事か、そのキュウべぇだかインキュベーターだが知らないがほむら達を騙して一方的に魔法少女の力を与えて何かをやろうって事か」
「ええ、信じられないっていうならそれでも構わないわ」
「別に信じないってわけじゃないって。まぁ銀行から返せない程の金を借りたと思って踏み倒してしまえばいいじゃないの」

523白と黒の黙示録(夜明けの鐘) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:05:35 ID:6jh7jg6M0

 暁にしてみれば、返せない程の借金の契約をして苦しんでいる程度のレベルしか感じなかった。
 だがそれがほむらの逆鱗に触れていた。

「そんなどうでも良い借金なんかと一緒にしないで! 何も知らないあの子が騙されて苦しんでいるのを救う為にどれだけ……それを踏み倒せば良い借金と一緒にしないで!!」

 勿論、自身が馬鹿を見ただけならば暁の言い分もわからないわけではない。だが、ほむらがここまで戦ってきたのは自分の為では無く『彼女』の為なのだ。
 何もしなければ『彼女』が苦しむ事となり、救おうとしても未だに救えずにいる。そして今もなお苦しんでいると言うのに――

「貴方は人の痛みなんてわかりはしない……自分の事しか考えてない脳天気な馬鹿……」
「なっ……」

 激昂したほむらのその言葉は――


「貴方は誰も愛せないし誰からも愛されない……そういう愚かな半端者でしかないわ……そんな貴方が偉そうに私達の事に口を出さないでくれる……」

 少し前に暁が速水克彦に言われた言葉に似ていた。それに多少なり思う所はあったのだろうか――


「……ほむらが魔法少女になったのってその子の為なのか? もしかして捜しているのは……」
「……!」
「あのさ、あの時も言ったけど人捜しだったら俺が協力するって」
「必要ないわ……」
「さっきはともかくそんなまともに動けない状態で捜せるわけないだろ。遠慮しないでさ、ね」

 無遠慮にほむらの心に踏み込もうとする暁に対しほむらにも限界が来た。

「それ以上口を開いたら撃つわ」

 そう言ってディバイドランチャーを向ける。

「ちょ! 俺を今殺したらそれこそまずいだろ!」
「愚か者が相手なら私は手段を選ばない……警告はしたわ……静かにしてくれる……傷に響くわ……」
「わかったわかった……ていうか最初に話題ふったのほむらじゃないか……まったく……」

 そう言いながら暁はほむらに視線を向けたまま距離を取る。

「ふぅ……」

 暁に会ってからというもの完全にペースが乱されっぱなしだ。暁にはああ応えたがここで暁と事を構える事が愚行以外の何者でもない事はほむら自身が理解している。
 それでもこれ以上、自分と『彼女』の事に首を突っ込んで欲しくは無かった――その最中、

『ほむらが魔法少女になったのってその子の為なのか?』

 その暁の問いが強く心に響いた――

「そんな遠い昔の事なんてもう――」

524白と黒の黙示録(夜明けの鐘) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:06:04 ID:6jh7jg6M0





襲来 The metal raid returns.


 そんな時だった――あの時と同じ様に刀を持った丈瑠が現れたのは――


「あんたは……なんだっけ?」
「し……丈瑠だ……」

 丈瑠の様子を見てまた自分達を襲うのかと考えほむらはゆっくりと立ち上がり警戒を強める。

「涼村暁だったな……お前の言うとおりだ。俺は心の何処かで未だに迷っていた……だが……」

 そう言いながらガイアメモリを作動させ、

 ――Metal――

「その迷いを断ち切る為にもお前達を……斬る!!」

 放り投げたメモリは丈瑠の体内へと入りその身体を銀色の怪人メタル・ドーパントへと変貌させる。

「ドーパントメタル、参る!!」

 時刻的に既に夜明けというタイミングに――戦いの鐘の音が鳴り響く。

「ちょ、ちょっと待てって……燦然!」

 暁の方もその言葉と共にシャンバイザーを装着しシャンゼリオンへと燦然する。

「はぁっ!」
「ぐっ!」

 裏正による一撃を腕で弾き間合いを取る。

「シャイニングクロー」

 そう言いながら胸部の円盤へとその手をかざし右腕に爪を装着する。

「はぁっ!」

 シャンゼリオンがその爪をメタル・ドーパントへと振り下ろす。
 しかしメタル・ドーパントは左手に握られたかぎ爪でそれを難なく受け止める。

「なっ……刀以外にも武器があったの?」

 そう言いながらシャンゼリオンが動揺する。
 そう思うのも無理は無い。先の戦いの時、丈瑠はメタル・ドーパントの元々の武器であるかぎ爪を一切使っていなかった。
 先の戦いで裏正だけを使っていたのは侍としての拘りがあったのだろう。
 だが――

「言った筈だ、迷いを断ち切ると――その為ならば――」

 手段を選ぶつもりは無かった――それにこれにはもう1つ狙いがある。

「はぁっ!」

 自由になっている右手だけで裏正を振るう、その方向にシャンゼリオンがいるというわけではない――が、

「な……」

 ディバイドランチャーを向けたまま驚愕しているほむらの姿があった。
 僅かに出来た隙を狙いディバイドランチャーを発射したが先の戦いと同様に光線が弾かれたのだ。
 やはりこの男相手に生半可な攻撃は通用しない。出し惜しみして勝てる相手ではない。

525白と黒の黙示録(夜明けの鐘) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:06:31 ID:6jh7jg6M0

「おい、俺の事を忘れるなっつーの」

 そう言いながら胸部からディスクを出現させ


「ディスク装填」

 とシャイニングクローへと装填する。その様子から恐らくは威力を強化するものだと判断し身構えるが。

「はっ!」

 メタル・ドーパントの推測に反しクローから出てきたのは光線だった。完全な不意打ち故に直撃を受けてしまいその衝撃で後ろへと後ずさる。
 それでもメタル・ドーパントの強靱な肉体故にダメージは殆ど通っていない。

「くっ……」

 自身の油断を呪った。それでも幸運にもダメージを殆ど受けなかった。最早油断などない、メタル・ドーパントはそう考えつつ間合いを取る。

「よし、距離さえ取れれば刀は……」

 そう言いながら再び胸部に手をかざし

「ガンレーザー」

 そう言って光線銃ガンレーザーを出現させ、更に先程同様ディスクを出現させて、

「ディスク装填」

 そう言って光線銃を発射する。しかしメタル・ドーパントはかぎ爪を盾代わりにしてそれを弾く。そして再びシャンゼリオンへと向かっていく。

「くっ、このぉっ!」

 シャンゼリオンはガンレーザー、そしてシャイニングクローから次々に光線を発射していく。しかしメタル・ドーパントはそれらを全て防いでいく。
 時にはかぎ爪を盾にして防ぎ、時には裏正で切り返し、運良く通った光線すらメタル・ドーパントの防御を破る事は出来ず――

「おい、来るなって!」

 そうシャンゼリオンが口走るもののメタル・ドーパントは止まらない。そして遂に裏正の射程内に入りその刃がシャンゼリオンへと――

 だがシャンゼリオンも只やられるつもりはない。シャイニングクローを構えその一撃を防ぐ――
 しかし次の瞬間、かぎ爪による突きがシャンゼリオンに命中した。裏正に遠く及ばないがその力は強くシャンゼリオンは後方へと飛ばされ木へと叩き付けられる。

「がはっ……」

 その衝撃からシャンゼリオンは動けない――その隙を見逃す事無くメタル・ドーパントが迫る。
 だが、この場にはもう1人ほむらがいる。ほむらはシャンゼリオンにトドメを刺そうとするメタル・ドーパントに狙いを定めディバイドランチャーを――
 しかし、メタル・ドーパントがそれを読んでいないわけがない。すぐさま向き直り放たれた光線を弾き飛ばす。
 そしてそのままシャンゼリオンへと裏正を――


「うわー!」


 シャンゼリオンが気の抜けた叫び声を上げる。


 その直後衝撃音が走る――

526白と黒の黙示録(夜明けの鐘) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:07:06 ID:6jh7jg6M0





悪魔 Devil of pantyhose.


 だが、シャンゼリオンには何の変化も見られない。

「なんだ……」

 メタル・ドーパントが仕掛けようとするその直前、何者かがメタル・ドーパントを横から殴り飛ばしたのだ。

「なっ……あれは……」

 ほむらが驚きからその声を上げる――

「おい……なんだコイツは……」

 体勢を整えようとするシャンゼリオンの方も現れた『それ』をみて驚愕する――


 『それ』は紛う事なき異形と言えよう――

「魔女……」
「新手のダークザイド……」

 双方が知りうる異形の類いとしか思えない。そう――

 牛の頭部に鶴の羽根、鰻の尻尾を持った雪男など異形の怪物としか言い様が無い――

「ぐふぅ」

 そう声を上げる怪物に対し警戒を一切解こうとしないほむらに対し、

「誰だか知らないが助かったぜ♪ パンスト男」

 シャンゼリオンは脳天気にその怪物が何故か所持しているパンストを見てそう口走ったが、
 次の瞬間、怪物の一撃がシャンゼリオンに直撃しシャンゼリオンの身体が宙を舞った

「ちょなんで!? 味方じゃないのかよ!?」
「こんな状況で味方だと考えられる方があり得ないわよ! 大体、そうでなくてもいきなりパンスト男だなんて呼んで逆上しない方がどうかしているわ! 貴方だってパンティ男とかブラジャー男なんて言われて良い気はしないでしょ!?」
「ほむら、俺の事そう見ていたのかよ!?」

 馬鹿な発言をするシャンゼリオンに思わずほむらもそう返してしまった。
 それを余所にパンストの怪物、パンスト怪物の背後にメタル・ドーパントが迫る。
 メタル・ドーパントは全力でかぎ爪による突きを繰り出す――
 だが、パンスト怪物はその突きを弾き防ぎ空中へと舞い上がる。

「おい、空が飛べるなんて卑怯だぞ!」

 パンスト怪物は三者へと狙いを定めたまま空中を舞い続ける。

「どうやら隙を見せた所を仕掛けるみたいね……」

 それを余所にメタル・ドーパントが再びシャンゼリオンへと向かっていく。裏正の斬撃をシャイニングクローで何とか防ぐが、

「なぁあんた、ここは一時休戦して3人であのパンストの怪物を倒さないか?」

 そう共闘を持ちかけるが。

「そのつもりはない。奴が向かってきたならば返り討ちにするだけだ」
「さっきやられたのは誰だっつーの」
「二度も遅れを取るつもりは無い……それに、そんな余裕などお前にあるのか?」

 メタル・ドーパントの猛攻に対し防ぐ事しか出来ないシャンゼリオン。
 一方、ディバイドランチャーを構えたままほむらはどうするかを思案する。

「(状況から考えてあの怪物は隙を見せれば容赦なく仕掛けてくる……だったら)」

 ほむらが自らの能力を発動し自分だけの時間へと突入する。

527白と黒の黙示録(夜明けの鐘) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:07:43 ID:6jh7jg6M0

 パンスト怪物は自身のディバイドランチャーを警戒している。当然至近距離から直撃を受ければ大きなダメージを受けるのは言うまでも無い。
 それ故にリスクの大きいほむら自身に仕掛ける可能性は高いとは言えないだろう。
 状況から考えて互いの相手への対処に集中しているシャンゼリオンかメタル・ドーパントに仕掛ける可能性が高いだろう。
 故に、この状況では自身は完全にフリー。ならば仕掛けるべき好機は今と言えよう。
 もし、シャンゼリオンかメタル・ドーパントのどちらかが倒されたならば一転して自身が狙われる可能性が高まる。
 シャンゼリオンが倒された場合は強敵2人を単身で相手にせねばならなくなる。だがこれまでのダメージや消耗を踏まえ切り抜ける事は不可能といえる。
 一方、メタル・ドーパントが倒された場合は2人でパンスト怪物に応戦できる。しかしメタル・ドーパント戦で疲弊したシャンゼリオン、そして度重なる激闘で消耗しきっている自身で殆ど万全なパンスト怪物に対応出来るだろうか?
 何より、メタル・ドーパントが倒されるというのは状況が自分にとって都合良く動いたという前提の上に成り立ったものでしかない。そんな都合の良い話が起こりうるとは思えない。
 そして何より――他の誰かに頼り切る事をほむら自身良しとしてはいない――

 だからこそ今というタイミングでパンスト怪物を自身の手で仕留める。それがほむらの選択である。

 上空目がけてディバイドランチャーを発射する――確実に仕留める為に狙いを定め、一発、また一発――

 何故、奴を仕留めるのか。それは言うまでも無く危険人物を排除し『彼女』の安全を確保する為――
 それだけではなく、この殺し合いを脱し元の世界へと戻り『彼女』守る為――
 そしてワルプルギスの夜から『彼女』に魔法少女としての契約をさせることなく守り抜く――
 もう何度となくそれだけを目的に繰り返し続けてきたのだ、何としてでも――

 だが、パンスト怪物は墜ちる事無く時間停止の限界時間を迎えた。

「くっ……」

 仕留められなかった原因は3つ、
 ディバイドランチャーの威力が抑えられていた事、
 パンスト怪物との距離が離れすぎていたが故に思う様に威力が出せなかった事、
 そして、パンスト怪物がほむらの想像以上に打たれ強かった事。

 とはいえ、これ自体は全く予想していなかったわけではない。パンスト怪物がある程度距離を取っていた事から容易に推測できた事だ。
 しかし、次の瞬間にはほむらの眼前にメタル・ドーパントが迫っているのが見えた。

「あ、まさか……」

 迂闊だった。先の戦いから何度時間を止めてメタル・ドーパントに仕掛けている? こちらの力がある程度推測される可能性はおおいにあり得る。
 それでなくてもパンスト怪物の襲撃を考えるならば周囲への警戒を続けていてもおかしい事は全く無い。
 僅かな異変を察知し狙いをこちらに切り替える事など造作も無い事だろう。

「くっ……」

 何とか後方へと動きメタル・ドーパントへと距離を取ろうとする。時さえ止める事さえ出来れば至近距離からのディバイドランチャーで仕留めるとまではいかなくてもダメージを与える事は出来る。
 だが、メタル・ドーパントもそれを警戒してか身構えながら接近している。防御姿勢さえ取れればある程度はダメージを軽減できるだろう。

「あと少し……」

 そう言いながらディバイドランチャーを僅かに動かそうとした。だが、その時、


「ぐっ……」

 手に鈍い衝撃が奔った――同時に空中を舞うディバイドランチャー。
 メタル・ドーパントはディバイドランチャーによる砲撃を読み、仕掛けられる前に急速に踏み込み限界まで腕を伸ばし裏正の峰でディバイドランチャーをはじき飛ばしたのだ。
 そして更に猛攻を――


「まずい……」

 焦るほむらは一瞬だけ時間を止めてその攻撃をかわし更に距離を取る。だが、それでもメタル・ドーパントの猛攻は止まらない。

528白と黒の黙示録(夜明けの鐘) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:08:08 ID:6jh7jg6M0





骸骨 Skeleton soldier.


「おい、俺の事を忘れるなって……ってそれにしてもほむらの奴どうしてあの力使わないんだ?」

 シャンゼリオンは自身を放置された事に若干憤りながら、ほむらが自身の力を使う事を渋っている事が妙に気に掛かった。
 流石に何度となくその力を目の当たりにしている以上、ほむらの力が時間を止める事だという事はシャンゼリオンこと暁にだって概ね推測は着く。
 同時にその力があれば好き放題出来る事だって考えつく。(ちなみに、その力を利用すれば暁も簡単に仕留められてしまうだろうが、暁がそんな事に気付く事は無い)
 だが、今回の戦いは先の戦いを見てもその力を使う頻度が明らかに減っている様に感じる。いや、先の戦いにしても多用していたわけではなかった。

「まさか……使えないほどに消耗して……まずいんじゃないのこれ?」

 もし、消耗しすぎで力が使えないのであれば、彼女は口が悪いだけの只の女の子だ。そんな彼女が無残に惨殺される姿を見る趣味など暁にはない。

「こうなったら……」

 と、ガンレーザーを構える。
 その時、背後に何者かが迫って来て、

「んー……がばっ!?」

 次の瞬間、パンスト怪物の一撃で宙を舞うシャンゼリオンの姿があった。

「だからなんで俺を狙うんだ、あっちの銀ぴか狙えっつーの」

 どう考えても隙を作ったシャンゼリオンの方が悪いのだろうが、シャンゼリオンはそんな事など全く考えていない。
 一方のパンスト怪物はシャンゼリオンへと猛攻を仕掛ける。流石に猛攻を喰らうつもりは無い為、シャイニングクローを駆使し防いでいく。

「こりゃまずいっ!」

 口調こそ軽いもののシャンゼリオンは内心で焦っていた。このままではほむらを助けに向かう事は出来ない。

「どうすりゃいいんだ……待てよ、確か……」

 シャンゼリオンはある事を思い出しデイパックからあるものを取り出す。その間にもメタル・ドーパントのかぎ爪による突きがほむらへと迫る。

「ほむら!!」


 そう言ってほむらへとあるものを投げつける。それはほむらの腹部へとまっすぐに飛んでいき、腹部に装着された瞬間、ベルトが伸びてほむらの腰へと巻かれ、


 ――Skull――


 それはかぎ爪による突きとほぼ同時だった。
 その音声と共に漆黒の粒子が纏わり付く様にほむらへと付着しその姿を変貌させる。

「今のは……」
「ぐふっ」

 突然の出来事にメタル・ドーパントそしてパンスト怪物の動きが一瞬止まる。だが次の瞬間、
 漆黒の拳がメタル・ドーパントへと直撃した。

「よっし!」

 歓喜の声を挙げるシャンゼリオン、眼前に現れたのは漆黒の服に身を包んだ魔法少女――ではなく、
 骸骨の顔を持つ黒と銀の戦士――

「ドーパント……いや……まさか……」
「これが私の身体……暁……これは何?」
「感謝しろよ、俺の支給品をほむらに貸してやるんだからな……確かなんとかダーって名前だったよな……あ、スカル、そいつはスカルっていうらしいぜ」

 今ほむらが変身したのはスカルと呼ばれる戦士である。

「けど……なんだ……俺のシャンゼリオンに比べて随分と弱そうな……がばっ!」

529白と黒の黙示録(夜明けの鐘) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:09:01 ID:6jh7jg6M0

 スカルの姿に違和感を覚えている隙をつかれパンスト怪物の一撃を喰らい、またしてもシャンゼリオンの身体が宙を舞った。

「ぐふっ」
「だからなんで俺ばっかり狙うんだっつーの、少しはあっちの方をこのパンスト野郎」

 シャンゼリオンは自ら地雷を踏み抜いている事に気付く事無く、パンスト怪物の猛攻に曝されていく。
 一方のメタル・ドーパントはスカルを見て身構える。

「……いや、違うな」
「何の話?」

 スカルはメタル・ドーパントの謎の反応が気になり問いかける。

「こっちの話だ、参る!」

 意を決したメタル・ドーパントは再び右手に裏正、左手にかぎ爪を構えスカルへと向かっていく。
 対するスカルは先程とは一転し上手くかぎ爪及び裏正の連続攻撃をいなしていく。
 暁に支給されたスカルのガイアメモリに内包されている記憶はその名の通り『骸骨』の記憶、それが示す通り故に骨格を中心に肉体を強化する力を持つ。
 そう、スカルに変身した事でほむらの身体能力は強化されメタル・ドーパントの動きに対応するだけの力を得たのである。
 更にスカルは間合いを取りつつ携行武器であるスカルマグナムを連射する。格闘能力が強化されたとはいえ、やはりこちらの方が自身には合っている。そう思うスカルであるが、
 だが、メタル・ドーパントは裏正振り回し、時にはかぎ爪を盾代わりにして銃弾の殆どを防ぎつつスカルへの間合いを詰めていく。

「思った通りか……」

 何の話をしているのだろうか? 気にはなるものの考えている余裕は無い。スカルはメタル・ドーパントの両腕を掴み攻撃を封じようとする。

「ぐっ……」

 その時、スカルの胸部の肋骨が開こうとし紫色の光のエネルギーが飛び出そうと――


「何……」

 だが、程なく光は収まった。そして起こった出来事に一瞬躊躇した隙を突きメタル・ドーパントがその拘束を振り払いスカルを投げ飛ばした。

「今のは……」

 あの光は何だったのだろうか? そう考えていたが、そんな余裕など与えてくれるわけもなくかぎ爪による突きが迫る。

「ぐっ!」

 スカルはなんとかかぎ爪を掴んだ。だが――メタル・ドーパントはそのまま振り回し遠心力に任せてほむらを放り投げた。
 そしてその方向にはシャンゼリオンとパンスト怪物がいる。

「わぁぁぁ、なにぃぃぃぃぃ!」

 それに驚いたのはパンスト怪物の猛攻を防ぐ事しか出来ないでいるシャンゼリオンだ。だが驚く隙などパンスト怪物が与えるだろうか?
 否、断じて否。パンスト怪物はその隙を突きシャンゼリオンを殴り飛ばした――丁度スカルが飛んできた方向に。
 するとどうなるであろうか? 答えは簡単だ。
 空中で両者は激突する、シンプルな回答だ。

530白と黒の黙示録(暁の決戦) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:16:45 ID:6jh7jg6M0
危機 Crisis time.

「いたたたた……」
「ぐぐっ……」

 いつの間にかほむらの姿が元の魔法少女の姿に戻っている。今の攻撃の衝撃でドライバーが外れたらしく地面の上に落ちている。

「この程度だなんて……使えないわね……」
「とか言いながら回収してんじゃねぇ」

 そう言いながらロストドライバーとメモリを回収するほむらにツッコミを入れる暁――

「暁……貴方……」
「わっ、まさか今の衝撃で……」

 度重なる攻撃によるダメージが蓄積し先の一撃が決めてとなりシャンゼリオンの燦然が解除され元の姿に戻ったのだろうか――

「やはりこの程度か……お前は違う様だ……」

 それを余所にメタル・ドーパントが口を開きつつゆっくりと近づいていく。

「さっきから何をワケのわからない事を……」
「それよりどうする、そうだ。川にわざと落ちて逃げ……」

 そう口走る暁を制するかの様に川を指さすほむら、その先には、

「パンスト野郎……」

 川の上にはパンスト野郎が舞っていた。川に落ちた所でそのまま攻撃する用意はあるという事だ。

「何か他に武器は?」
「そうだ、俺のデイパックにライフルがあったんだ、こいつを使えば……」
「それがあるならもっと早く出しなさい!」

 と、デイパックの中を探ろうとしたが。

「あれ? 見当たらないぞ? 何処だ?」
「探し物はアレのことか?」

 メタル・ドーパントが裏正でパンスト怪物の方を示す。
 その手にはウィンチェスターライフルが握られていた。そして、

「ぐふっ」

 パンスト怪物は力尽くでライフルを折り曲げ使用不能にしそのまま川へと投げ捨てた。

「ちょっとー! いつの間に……」

 先程ロストドライバーとメモリを投げ渡す際にライフルも一緒に飛び出してしまっていたのだ。それをパンスト怪物が回収したという話だ。
 パンスト怪物にとって敵が使うと厄介ではあるが自身ではいまいち扱いにくい道具、それ故に早々に破壊して処分したという話である。

「一体何度言わせるの、どこまで貴方はバカなの」
「バカって……」
「そのライフルの方をもっと早く私に渡してくれれば良かったのに……こんな事になるんだったらさっきこっそり回収すれば……」

 そうこう言っている間にメタル・ドーパントが迫る。

「こうなったら仕方ないわね……暁、私を……」
「了解♪」

 そう言いながら暁はほむらをお姫様だっこで抱える。

「何のつもりだ?」

 と、次の瞬間、後ろを振り向き暁は走り出した。

「!!」

 暁の謎の行動に動揺しつつメタル・ドーパントは追撃を始める。普通に考えるならばメタル・ドーパントに女子中学生を抱きかかえた普通の人間が逃げ切れるわけがない。だが――

「くっ……」

 次の瞬間には暁の姿が数メートル離れた場所まで移動している。折角差を詰めてもこれでは意味が無い。

「大丈夫かほむら?」

531白と黒の黙示録(暁の決戦) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:17:12 ID:6jh7jg6M0

 最早語るまでもないが、ほむらと彼女に触れている暁の時間を止める事でメタル・ドーパントの追撃を逃れていた。
 だがほむらにかかる負担を軽減する為一度に2,3秒程度しか止めていない。それでもほむらの表情は苦しそうである。

「気遣う暇があるなら足を動かしなさい、早くあそこに……」
「それが狙いか!」

 メタル・ドーパントも暁達の目的地に気が付いた。彼等の目的地はディバイドランチャーの落下地点。ほむら自身の武器を取り戻す事でこの状況を打開しようというのだろう。

「もう遅いわ」

 そして再び時が停止する。
 暁の身体に触れたまま暁の身体から降りてディバイドランチャーを回収、そのままメタルドーパントの両手へと発射する。無論、殆どダメージを与えられない事は理解している。
 だが、衝撃を与えて一瞬でも麻痺してくれれば良い。その僅かな一瞬の間に。

「どりゃ!」

 暁が裏正、そしてかぎ爪に蹴りを入れて落とそうとする。しかし落ちたのはかぎ爪だけで裏正は堅く握られたままだ。

「ほむら!」
「そっちの方だけ回収して、もう時間が……」

 かくして時は動き出す。
 メタル・ドーパントの眼前にはかぎ爪を握りしめた暁、そしてディバイドランチャーを構えているほむらの姿があった。

「どうだ」

 勝ち誇る暁であったが、

「俺には刀一降りあれば十分だ」

 一方のメタル・ドーパントは表情を崩していない。再び3者が間合いを取ろうとする――
 その時だった、一陣の風が飛び込んできたのは――

「なんだ……?」

 別段暁の身体に異常は無く、眼前のメタル・ドーパントにも変わった様子は見られない。ならば――
 空を見上げる、そこにはパンスト怪物に首筋を捕まえられたほむらの姿があった。

「ぐっ……まさか……」

 あの状況でずっと仕掛ける隙をうかがっていたのだろうか? パンスト怪物がほむらを確保し高く飛び上がったのだ。

「ほむら!!」
「俺の事を忘れるな」

 ほむらの事を気遣おうともそんな余裕などメタル・ドーパントが与えてくれるわけもない。メタル・ドーパントは裏正を構え暁へと仕掛けていく。

「させるか!」

 そう言いながら暁はかぎ爪を盾代わりにして振り回し裏正の斬撃を弾こうとする。だが、何とか防げたものの暁の腕にかかる衝撃は大きい。

「ぐっ……」
「変身しないで俺に勝てると思うな」

 暁は全力で後ろを振り向き走り出す。だが逃がすつもりの無いメタル・ドーパントは一気に間を詰めて裏正を一降りする。

「ハズレ♪」

 しかし命中はしなかった故に余裕の表情を浮かべる暁であったが、
 ――次の瞬間、一本の木が倒れ出す。裏正の斬撃は暁のすぐ側の木を斬っていたのだ。斬られた木はそのまま断面にそって滑り落ち――倒れていくだけだ。

「なっ……アンタ何やってんの?」
「運が良いな、だが次は……」
「冗談じゃ無い、こんな奴まともに相手にしていられるかっつーの」

532白と黒の黙示録(暁の決戦) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:21:38 ID:6jh7jg6M0





磔刑 X is crucifixion.


 その一方、パンスト怪物に捕まったままのほむらは何とか身体を振り回し、抜け出そうとするが。
 元々魔法少女の中でもそこまで力が強くなく、それでなくても度重なるダメージで疲弊した今のほむらにパンスト怪物の拘束を脱する事は厳しい。
 時を止めるわけにはいかない。パンスト怪物に捕まっている状態ではパンスト怪物も動ける事になり何の意味も無い。
 しかし逆を言えばこういう事だ、パンスト怪物の拘束を抜け出しさえすれば時を止め至近距離からの攻撃が可能だと。
 地面に激突するリスクもあるが、上手く木の上、あるいは川の上に落下すればダメージは最小限に抑えられる。
 後はなんとかしてパンスト怪物が自分を手放させるだけだ。
 そう考えほむらはパンスト怪物に見えない様にディバイドランチャーを弄りハンドガン形態にする。
 ディバイドランチャーはパーツを組み替える事でハンドガン形態、マシンガン形態、そしてビーム砲形態といった状況に合わせて使い分ける事が出来るのだ。
 そしてハンドガン形態となったディバイドランチャーを自らの首筋に当てる。そこはパンスト怪物が自身を掴んでいる箇所でもある。

「私を只の人間と同じと考えた、それが貴方の敗因よ」

 そして引き金を引くという事だ。パンスト怪物が手放さなければ至近距離からのビーム砲によりパンスト怪物の手は焼かれ自身を手放し、それを避けるならばやはりそのまま手放す事になる。
 もう片方の腕の動きには十分気を払っており、下手な動きを見せるなら一発当てれば良い。
 パンスト怪物の身体から離れる事が出来れば後は時を止めてほむらのペースに持っていける。

 かくしてほむらは引き金を――
 だが、次の瞬間ほむらの視界が真っ黒に染まった。

「何……」

 何が起こったのだろうか? 今一瞬、パンスト怪物の手から何かが発射された様な気がした。
 だが、同時に首筋にかけられていたパンスト怪物の拘束が解かれた。状況はわからないがこれならば時を止められる。
 迷う事無くほむらは時を止めた。身体を振り向かせパンスト怪物の方へと向き直りディバイドランチャーを可能な限り連射する。
 視界は回復してはいないがこの至近距離だ、外す事などまずありえない。

「これで……」

 だが、次の瞬間、ほむらの身体に強い衝撃が奔った。何者かの一撃がほむらに直撃したのだ。
 同時に視界が僅かに回復する。そして最初に見えたものを見てほむらは驚愕する。

「何故……何故動いているの……?」

 眼前では平然と動いているパンスト怪物の姿があった。

「あり得ないわ……あの瞬間、確かに拘束から抜け出せ……」

 と、足下を見る。

「なっ……これは……」

 ほむらは見た。靴の先端部にタコの足の様なものが巻き付いているのを――それはパンスト怪物の背中から生えていた。

「まさか……そういう事だというの……」

 読者諸兄には今更語るまでも無いだろうが今一度説明しておこう。
 ここまでパンスト怪物と呼称していた者の正体はパンスト太郎だ。
 パンスト太郎は生後間もなく産湯という形で呪泉郷の水を浴び、牛の頭部に雪男の身体、鶴の羽根に鰻の尻尾を持った怪物へと変身する特異体質となった。
 もっとも丈瑠に語ったとおり、パンスト太郎自身その身体自体はその強さ故に気に入っている。だが、産湯を浴びせたのが八宝斉であった事が彼にとっての大きな悲劇の引き金となっている。
 とはいえ、この事についてはこの場ではあまり関係無い為これ以上は省略させてもらう。
 さて、パンスト太郎は丈瑠にはあえて語らなかった事がある。別に語る事に抵抗があったわけではないが、手の内を全て曝す義理も無い故に伏せていた程度のレベルの話だ。
 実はパンスト太郎はさらなる力を得る為ある呪泉郷の水に浸かった。それにより更に背中にタコの足が生える様になり、手からはタコ墨を吐く事が可能となったのだ。

「ぐふっ」

 つまり、拘束を抜け出そうとタコ墨でほむらの視界を封じると共に密かに背後のたこ足をほむらの靴の先端部に巻き付かせ密着させる。
 そうすることによりほむらが拘束から抜け出せたとしてもたこ足が密着している事に気付かないままなので、時を止められても一緒に動く事が可能となる寸法だ。そうして攻撃を仕掛けようとした瞬間を狙って一撃を入れたという事だ。

533白と黒の黙示録(暁の決戦) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:21:59 ID:6jh7jg6M0

「という事は……この怪物は私の力、そしてその弱点に気付いている……」

 ほむらは安易に自身の力を語ったりはしない。だが連続で使った事により遭遇した参加者の殆どがほむらの能力の正体に気付いている。
 ダグバ、暁、丈瑠、そしてパンスト太郎、彼等にはその能力と弱点が割れてしまったと考えて良い。
 割れていないのは最初に遭遇した山吹祈里ぐらいなものだろう(なお、ほむら自身気付いていないが実は乱馬もほむらの存在に気付いているが彼も現状ではほむらの能力には気付いていない)
 とはいえ、それを今悔やんでも仕方が無い。例え能力が割れた所で発動さえ出来れば回避が難しい事に違いは無い。
 どちらにせよ、何とかして拘束から抜け出し反撃の一手を打たなければならない。そう考えながらディバイドランチャーを元のビーム砲形態に戻す。

 その最中、

「わぁー!」

 暁がバカの一つ覚えの様にメタル・ドーパントの猛攻から逃げ続ける。

「少しは真面目に戦え!」
「バカ言ってんじゃないの! 生身でそんな剣受けたら真っ二つになるっつーの」
「当たり前な事を言うな」

 そう言って、メタル・ドーパントは裏正を暁へと振り落とす。暁はかぎ爪で何とか防ぐがその衝撃に耐えきれずかぎ爪を落としてしまう。

「しまった!」

 回収する余裕は無い。ならばこのまま距離を取って逃げるしかない。

「問題はほむらは……ん?」

 ふと上空のほむらの様子を見る。見るとほむらがディバイドランチャーをパンスト太郎に向けたままだ。

「おいおい、何考えているんだほむらの奴……もしあのパンスト野郎が手放したら地面に……」

 だがほむらの真下は丁度川となっている。それを見て。

「なるほど、そういうこと。だったら……」

 暁はほむらの狙いを察し走り出す。恐らく至近距離で狙いを定めたままパンスト太郎からほむらを手放させるという寸法だろう。
 手放したならばその直後に時を止めディバイドランチャーを連射すれば良い。手放さなければ川の真上に来たタイミングで連射し手放させるという寸法だ。無論、下手な動きを見せればその場で連射するだけの話だ。
 至近距離からの連射を受ければさすがのパンスト太郎も只では済まない。後は落ちてくるほむらを助けるべく川へと向かえば良い。メタル・ドーパントへの対応はその後で考えれば良い。

 一方のほむらはディバイドランチャーを構えたままパンスト太郎を見据える。

「(さぁ、パンストの変質者……貴方はどちらかしら……?)」

 パンスト太郎が相当の手練れという事は理解している。だが、ほむらとて長き戦いの中で重火器の扱いについて数多の経験を積んでいる。
 抜き打ちでの対決ならば負けるつもりは全く無い。
 暁がこちらの動きを察して動いている様だが当てにするつもりは全く無い。地面に激突するリスクはあるがこのままの状況でいても好転しない以上大きな違いは無い。
 ここがある種の正念場――


 そしてその瞬間は訪れる――


 手放したのはパンスト太郎の方――


 奴の身体が自身から離れたのを確認したほむらは時を止める。


 ほむらだけの時間が始まればほむら以外の者は誰も手を出す事が出来ない。


 ディバイドランチャーを連射すれば全てが――

534白と黒の黙示録(暁の決戦) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:22:26 ID:6jh7jg6M0


 だが――


 次の瞬間、ほむらは自身の左胸に強い違和感を覚えた――


 見ると、刀の切っ先が深々と生えているではないか――


「え――」


 ほむらの思考が止まる――


 何故、自身が刺されているのだ?


 時を止まった自身が敵の攻撃を受けているのだ?


 疑問符だけが彼女の頭を埋め尽くす――


 ディバイドランチャーの引き金を引こうとも腕に力が入らない――


 ダメだ、意識が遠のいていくのを感じる。心臓と肺を潰されたのだろう。頭に血液が回らなくなっていく――


 そして何も出来ぬままほむらだけの時間は――終わりを迎えた。


 強い激突音が響いた――


「なんだ、今のは……」


 上空を見上げるがそこには誰もいない事がわかる。


「だとしたら……」


 暁は地面の方を見る。しかし川にも地面の上にもほむらが落ちた様子はない。


「じゃあ今のはなんだったんだ……」


 暁は周囲を見回す――そして、


「なっ……なんで……なんでほむらが……」


 ほむらはそこにいた――


 左胸を裏正で貫かれたまま木の幹に磔となった形で――


 その傍らにはパンスト太郎が平然とした姿で立ち尽くしている。


「まさか……そういうことか……銀ピカ野郎にパンスト野郎……お前ら組んでいたって事か……!」

535白と黒の黙示録(暁の決戦) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:22:48 ID:6jh7jg6M0





対策 Trend and step.

 時間はパンスト太郎がほむら達を見つけた事を丈瑠を伝えた時に遡る。

「で、どうする?」

 丈瑠にとっては先程逃した相手である。聞いたところ川辺で休んでいるらしく、急いで行けばそう時間はかからず十分に追いつける範囲だ。
 だが、丈瑠はどうするべきか迷う――いや、すぐさま迷いを振り払った。このまま躊躇してはそれこそ何も出来ずに終わってしまう。そんな中途半端な者など何も残せぬまま終わるだけだろう。
 むしろ、自身の迷いを断ち斬る為にも今度こそあの2人を仕留めねばならない。
 それに、丈瑠の精神的な問題を別にしてもあの2人――いや正確にはほむらを放置するわけにはいかないと感じていた。

「あの戦いをずっと見ていたんだったな」
「ああ」

 丈瑠はパンスト太郎に、先の戦いを見ていた事について今一度確認した。

「だったらあの少女……暁美ほむらが何をやっていたかわかるか?」

 丈瑠が気にしたのはほむらの行動についてだ。ほむらはこちらが反応する間もなく、ディバイドランチャーの光線を当ててきたのだ。
 いや、正確に言うならば当たったという結果だけを突きつけられていたのだ。
 わかりきった事だが、いかなる早撃ちといえども全くのノータイムで銃弾を当てる事など不可能。
 銃を構え、狙いを定め、引き金を引き、銃弾を放ち、命中させる、一連の動作を限界まで短くしてもその時間を0にする事など誰にも出来やしない。
 僅かでも時間がある、銃口の方向さえ分かれば丈瑠ならば十分に対応が可能だ。しかしそれすらもさせてもらえない、それが丈瑠には奇妙だったのだ。

「限りなく短い時間で銃弾を当てた、そんな所だろう」
「やはりお前もそう思うか……」
「そういやあの時、加頭の野郎が言っていたな。この首輪は時間操作の影響を受けないとな……」
「!! つまりそれは……」
「おそらくあの女はその時間操作が出来る……いや、時間を止める力を持っているんだろう」
「そいつは厄介だな……」

 時間を止める能力、それは使い方次第で無敵の力を発揮する。時さえ止められれば誰も認知する事無く暗殺を行う事が出来る。
 その気になればどんな強敵でも倒す事ができるだろう。

「それともう1点気になった事がある。あの女――首輪をしていなかった」
「それは本当か!?」

 丈瑠は精神的に迷いがあった為かほむらの首輪にまで意識を回す事ができなかった。とはいえ、全員が首輪をしているという先入観を持ってしまえば、首輪の無い人物がいてもそれに気付かないでいる事はよくある話だ。

「実はもう1人首輪をしていない女を見た」

 パンスト太郎は丈瑠達の戦いに遭遇する前に、2人の少女が1人のカブトムシ野郎と戦っている現場を見た事を話す。
 その2人の少女の内の赤髪の少女が首輪をしていなかったのだ。
 そして何より重要なのは――

「あの女、身体に大穴を開けられても平然と生きていやがった」
「何……外道衆の様に命を2つ持っている様なものか……?」

 それを踏まえて考えるならば、ほむらもその赤髪の少女と似たタイプと考えて良い。だとするならば、生半可なダメージでは倒し切る事は出来ないと考えて良い。
 丈瑠が遭遇した時点では疲弊しきっていた様だったが回復してしまえばその能力と生命力で一方的な勝負にもっていかされてしまう。
 故に、疲弊したこの状況こそほむらを仕留める為の好機と言えよう。

「お前……俺が彼女を仕留める事に反対するつもりはないか?」
「何故反対する必要がある? お前がやらないなら俺がやるつもりだ」

 パンスト太郎も仕留めるつもりで考えている。何しろ強敵と言える相手が今にも倒れそうなぐらい疲弊しているのだ。ここで潰さない理由など何処にもなかろう。

 だが問題はほむらの持つ時間停止能力だ。その対策は考えねばならない。
 わかっている事としては止められる時間は僅か、そして一度時間を止めた場合一呼吸置かないと再び時間を止める事が出来ない事だ。

「後は……あの女が触れているものはその対象外……といった所だな」
「難しいか……」

 これは厄介な相手だろう。何しろ基本の武器が遠距離攻撃である以上、近づくという愚行を犯すわけも無い。
 かといって無策で接近しても時を止められそのまま返り討ちに遭うだけでしかない。
 また何とかチャンスを作ったとしても時を止めて逃げられれば全く意味が無い。
 それ以前に時を止められればどんな防御も対策も無意味だ。

536白と黒の黙示録(暁の決戦) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:23:42 ID:6jh7jg6M0

「ぐふっ……ならあの女の方が自分から斬られる様に仕向ければ良い」

 と、パンスト太郎がそう呟く。
 元々パンスト太郎は変身後の実力だけではなく、相手を罠に嵌める事にかけても得意分野だった。
 最初に乱馬達と交戦した時は水の砦という地形で罠に嵌め、自身が変身する前に乱馬やその仲間達に水を浴びせ乱馬以外を無力化させた事があった。(注.とはいえ、罠だけが原因というわけではない。)

「何か手があるのか?」

 と、パンスト太郎がその策を説明する。

「……!」

 丈瑠は難しい顔をしていた。確かにパンスト太郎の行動が全て行くならば後は自身の行動さえ上手くいけば何の問題も無い。
 だが、それを実行しきる事ができるであろうか? それは侍としては許されざる事項もある。
 しかし、迷いを振り切る為にもやりとげねばならない。故に、

「1つだけ頼みがある……もし、俺が一瞬でも迷い策が失敗に終わるならば……迷わず逃げてくれ」
「いいだろう」


 かくして両名は暁達に仕掛ける事となった。
 まず丈瑠が2人の元へ行き交戦開始、まずはメタル・ドーパントとなった丈瑠1人だけで相手をするという事だ。
 その間にパンスト太郎は様子を伺いながら水を被り変身してその時を待つ。
 その後頃合いを見計らい3人が戦う戦場へ乱入する。
 この時、丈瑠と組んでいる事を悟らせない為、無差別に参加者を襲撃する怪物を装う必要があり、丈瑠にも仕掛けておく。
 当然、応戦する丈瑠も手加減無しで本気で対応する。この辺りは両名が互いの実力をある程度信頼した上での行動だ。
 そして混戦で疲弊して生じた隙を突き、パンスト太郎がほむらを確保し上空に。
 こうする事でパンスト太郎と密着状態となり時止めを封じる事が出来る。
 なお、一方で丈瑠は暁に対応しつつほむらとある程度の距離を取る。

 最後に――パンスト太郎への対応に夢中になり距離の離れた丈瑠へのマークが甘くなったほむらの隙を突き――
 丈瑠が裏正をほむらの真下へと投擲し、タイミングを計りパンスト太郎もほむらを解放。
 ここでほむらの性格を考えてみよう。至近距離で確実に仕留められる相手がいるならば――時を止めて仕掛けるのは容易に推測できる。
 また、相手が空中戦を得意としているならば解放しても追撃を仕掛けてくる可能性が高く、それに対応する為にも時止めは有効だ。
 つまり、限りなく高い確率で時を止めてくると読んだのだ。
 だが、このタイミングで時を止めた場合どうなる?
 時止めの対象外となるのはほむら自身とそれに触れている物体のみ。
 まず、ほむら自身は重力に刃向かう事が出来ない故にそのまま落下する。
 一方真下にある裏正は時間停止により止まった状態だ。
 その結果――ほむらは真下にある裏正の上に落ちてしまいその刃をそのまま受けてしまう事となったのだ。

 ちなみにパンスト太郎はそこまでややこしい説明はせず、要するに『時間停止により空中で停止した裏正の上にほむらを落とせば良い』という風に説明した。
 とはいえ、これは丈瑠とパンスト太郎が連携できていなければ成立しないが、連携していればこの策が読まれる可能性が高い。それ故に一見は組んでいない様に見せる必要があったという事だ。

 とはいえパンスト太郎の猛攻はここでは終わらない。
 ほむらを落とした後、成功するにせよ失敗するにせよ、地面へと落下する事は確実。
 故に落とした直後高速飛行で移動し地面に向かう。
 その後、裏正が刺さったまま地面に激突したほむらを捕まえそのまま運び――
 近くの木へと叩き付けたという事だ――丁度裏正が木に刺さる形――

 さながら、木に磔となった罪人の姿の様に――

537白と黒の黙示録(暁の決戦) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:24:56 ID:6jh7jg6M0





激昂 Frenzied rage.


「ぐふっ」

 暁の声に応える事無く、パンスト太郎はほむらへと刺さった裏正を乱暴に抜きメタル・ドーパントへと投げ返す。

「言った筈だ……謝りはしないと……恨め、外道の俺を……」

 そう言いながら裏正を掴むメタル・ドーパント、侍としては手放すつもりはなかった刀だが、その拘りと甘さで何も出来なければ意味は無い。
 故に、パンスト太郎の策に乗ったのだ。

「ほむら……」

 暁はメタル・ドーパントの返答を待つ事無く地面に倒れ込むほむらへと駆け寄ろうとするが、

「!?」

 暁は見た、心臓を潰されている筈のほむらが手を伸ばし何かを掴もうとしているのを――その近くにはディバイドランチャーがある。

「そうかそうか、まだ諦めてないんだな……」

 だが、次の瞬間、パンスト太郎の足が振り下ろされる。
 まずはディバイドランチャーを踏みつぶして粉砕――
 次に伸ばされたほむらの手を踏みつぶす――
 そして無造作に蹴り飛ばす――
 その身体は血を流しながら地面を転がり、それきり動かなくなった――

「ぐっ」

 その時、暁は突然振り返り、パンスト太郎とメタル・ドーパントに背を向ける。

「逃がすと思うか?」

 そう口にするメタル・ドーパント、一方のパンスト太郎も一丁あがりとばかりにほむらに向けていた視線を外し暁へと向ける。

「俺の……俺の怒った顔を見られたくないんだ!!」

 それは何時ものお調子者で脳天気な男のものではない――その拳は硬く握られている。


 暁とほむらの仲は決して良好といえるものではない。
 また、暁自身ほむらの人を寄せ付けない言動に憤りを多少なりとも感じていた。
 しかし、切欠こそ可愛い女の子だったからという不純なものではあったが暁が彼女の身を案じていた事に違いは無い。
 これまた不純な動機(ほむらの友人なら可愛い女の子に間違いない)ではあったが彼女の人捜しにも付き合おうと思っていた。
 だが、切欠はどうあれほむらがキュウべぇという悪徳業者に騙されながらも同じ様に騙されている『あの子』を助けようと必死になっている事はなんとなく把握している。
 そんな一生懸命な彼女を大の大人2人(パンスト太郎もそうだと考えている)がよってたかっていたぶりその想いを踏みにじり自らを外道と言って悪びれもしないのを見て暁の中で何かが弾けた。


「やってくれたなお前ら……乙女の想いを踏みにじりやがって……!! 絶対に許さねぇ!!」
「許しを請うつもりはな……」


 そう向き直った暁の表情は真剣そのものだ。それ故にメタル・ドーパントも思わず言葉を詰まらせる。


「燦然!! シャンバイザー!!」


 その言葉と共にシャンバイザーを出現させ装着する――


『燦然――それは涼村暁がクリスタルパワーを発現させ超光戦士シャンゼリオンとなる現象である』


 そこにいるのは脳天気探偵涼村暁ではなく――超光戦士シャンゼリオン――


「かかってこい、雑魚共が!!」

538白と黒の黙示録(暁の決戦) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:25:21 ID:6jh7jg6M0


 最初に動いたのはメタル・ドーパント、メタル・ドーパントは間合いを詰め裏正を振るうが、

「シャイニングブレード!」

 胸部から出現させたシャイニングブレードでそれを受け止める。だがメタル・ドーパントは構わずかぎ爪で突こうとするが、

「シャイニングクロー!」

 再びシャイニングクローを装着しかぎ爪をはじき返す。

「何……このパワーは……」

 驚愕したのはメタル・ドーパント、先程と違い明らかにパワーも反応速度も上がっているのだ。

「ぐふっ」

 そんな中、背後からパンスト太郎が迫り背中にその拳を振るう。拳は確かにシャンゼリオンの背中に入った――だが、シャンゼリオンは僅かに動いただけでそれを耐えきり、

「はぁっ!」

 と、振り向きパンスト太郎の頬に拳を叩き込む。パンスト太郎はよろめきながらもシャンゼリオンから距離を取る。その間にもメタル・ドーパントがシャンゼリオンへと迫るが、仕掛ける前にシャイニングブレードを振るい裏正による斬撃を受け止める。

「ガンレーザー! ディスク装填」

 再びガンレーザーを出現させディスクを装填した上で銃口をパンスト太郎へと向け連射する。
 パンスト太郎はその砲撃を的確に回避しつつタコ墨を発射しシャンゼリオンの視界を封じようとするが、

「はぁっ!」

 シャイニングクローを盾代わりにそれを防ぎパンスト太郎へと間合いを詰め、

「だりゃ!」

 高く飛び上がりパンスト太郎の背中に飛び乗る。

「ぐふっ……」

 対するパンスト太郎は何とかシャンゼリオンを振り落とそうと高速飛行しつつ振り回す。

「はぁっ!」

 シャンゼリオンはなんとかバランスを取りつつ背中に一撃を入れる。打たれ強いパンスト太郎といえどもこの一撃は効いている様だ。

「奴の怒りか……奴の怒りが強化をもたらしたというのか……」

 そう呟くメタル・ドーパント、先程までのとは違い今のシャンゼリオンはまさしく強敵と言えよう。仕掛けようにもパンスト太郎と共に空中を飛び回っている以上手出しは出来ない。
 だが、パンスト太郎も只やられるつもりはない。パンスト太郎は全身を振り回し遂にシャンゼリオンを振り落とす。
 しかし一方のシャンゼリオンはシャイニングブレードとガンレーザーを接続し

「スクラムブレイザー!」

 2つを合体させる事で完成する光線銃スクラムブレイザーをパンスト太郎へと構える。この射程ならばある程度のダメージは――
 だが、パンスト太郎はパンストをスクラムブレイザーの銃身へと絡みつかせる。このまま武器を奪うという算段だ。

「ぐっ……」

 しかしシャンゼリオンはスクラムブレイザーを手放さない。だが、パンスト太郎のパワーで振り回されスクラムブレイザーを放つ事が出来ないでいる。
 そして振り回されたシャンゼリオンは巨木へと叩き付けられそうに――

「だりゃ!」

 計算があったわけじゃない。シャンゼリオンは何とか体勢を整え、木の幹に何とか着地する。そして投げつけられた時のパワーの反動を利用してそのまま跳び――

 パンスト太郎へとドロップキックを決めた――
 そのままパンスト太郎は脳震盪を起こし川へと落下――

 かつてパンスト太郎が乱馬と戦った際、パンストが絡みついた乱馬を岩壁へと叩き付けようとした。
 しかしそれこそが乱馬の狙い、岩壁に上手く着地しそのまま跳ね跳び、パンストの伸縮による反動でパワーとスピードを強化した蹴り、パンスト流星脚をパンスト太郎に叩き込みノックアウトしたのだ。

 そう、奇しくも今シャンゼリオンが決めた蹴りはそれとよく似ていたのだ。
 その時よりも絡みついたパンストが短い故、反動による強化は弱いがその分シャンゼリオンにはパワーがあり、何より距離も短い。
 パンスト太郎をノックアウトするには十分と言えよう――

「はぁ……はぁ……どうする、残ったのはお前だけだぞ」

 流れゆくパンスト太郎から視線を外しメタル・ドーパントへと向き直る。

「聞くまでもないだろう、参る!」

539白と黒の黙示録(暁の決戦) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:25:53 ID:6jh7jg6M0

 裏正とかぎ爪を構えメタル・ドーパントが迫る。シャンゼリオンもまたシャイニングブレードとシャイニングクローを構え迎え撃つ。
 振るわれる裏正――シャイニングクローで受け止める――
 対しシャイニングブレードが振り下ろされる――かぎ爪で弾かれる――
 そのままかぎ爪による突きが――シャイニングクローで防ぐが双方のパワーで両者の武器が外れ宙を舞う――
 それでもシャイニングブレードを横薙ぎに――裏正の縦の動きで防がれる――

 つばぜり合う2本の剣――それは両者が互角である事を意味するのか――

 否――互角では無い、メタル・ドーパントの裏正がシャンゼリオンのシャイニングブレードをはね除け返す刀で次の一撃を――
 何とか防ごうとするもすぐさま次の一撃が――
 僅かな隙を突きシャンゼリオンが一撃を入れようとも即座に裏正で防がれカウンターの一撃が――

 メタル・ドーパントの指摘通り確かに怒りによってシャンゼリオンはパワーアップしたと言えよう。
 その結果、単純なパワーと反応速度が上がったといっても良い。
 それだけではなく、今のシャンゼリオンこと暁はほむらを過剰なまでにいたぶった丈瑠達を倒すべく集中している。それ故に従来よりも動きが良くなっているといっても良い。
 更に言えば、熟達した丈瑠やパンスト太郎、そしてほむらとの命のやり取りは知らず知らずの内にシャンゼリオンになったばかりである素人の暁に大きな経験を与えた。
 つまり、比喩でも錯覚でも妄想でもなんでもなく、暁は知らず知らずの内にパワーアップしていたという事だ。そしてそれは現在進行形で進んでいるとも言える。

 だが――それでも届かない――

 長年外道衆と戦い続け、影武者とはいえシンケンジャーの長である殿を演じ続けていた丈瑠と渡り合うには足りない――
 幾ら成長し、気持ちの上でパワーアップしたとはいえそれだけで勝てる程甘い相手ではない――
 丈瑠とて長年戦い続けてきたのだ、少しばかりパワーアップされた程度で崩れるわけもなかろう。
 むしろ、強化されたからこそ丈瑠は気を引き締めているとも言える。慢心を捨ててかからねば足下をすくわれかねないと――
 そう思わせた以上、なおの事倒せる道理もないだろう。

 故に状況はシャンゼリオンが防戦一方という状態に陥っていく――
 何とか防げてはいるが、少しずつメタル・ドーパントの攻撃がシャンゼリオンにも届いていく――
 現状は装甲を僅かにかする程度で防げてはいるが何れは限界が訪れる――


 一人では決してシャンゼリオンは勝てないであろう――


 そう、一人では――


 ならば――


 その時、不意に強風が吹き込んだ――


 シャンゼリオンもメタル・ドーパントも思わず風が吹いた方向に視線を移す――


「何……」
「え……」


 2人は信じられない様な声を挙げる――それもその筈、そこに立っていたのは――


 心臓を貫かれ致命傷を負い地に伏せられまず生きていないであろう――


 暁美ほむら、その人だったのだ――

540白と黒の黙示録(円環の理) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:31:05 ID:6jh7jg6M0
円環 Philosophy of annulus ring.

 身体が動かない――
 当然だ、それでなくても回復させる事も無く酷使し続けてボロボロな上に心臓を貫かれたのだ。未だマトモな方がどうかしている。
 いや、心臓だけでは無い。骨も筋肉も血管も神経もズタズタでこれで僅かでも動かせるというのが奇跡というレベルだ。
 確かに魔法少女の魂は元の身体から離れソウルジェムに変化している。
 それ故元の身体なんぞPCにおける外付けのハードウェアの如く幾らでも修理が利くだろう。
 だが、PCにしてもそのハードウェアが故障していてはマトモに使う事など出来ないやしない。
 実際問題、『修理すればまた動く』と言われてもその修理が出来なければ動かし様が無い。

 そう、僅かに残った魔力で何とか表面上の傷だけは塞いではいる。だが抜け落ちた血が戻るわけじゃないし、内部は殆ど回復していない。
 繋いだ所でほんの少しの衝撃ですぐに切れるか折れる程頼りないというレベルでは片付けられない程無意味なレベルだ。

 故に――状況は既にチェックメイトがかけられたとしか言い様が無い。
 いや、もうとっくの昔にそれはかかっていたのかもしれない。それを認められず足掻いていただけだったのだろう――

 これ以上の回復は不可能、時間を止める事ももう無理、戻す事だって出来やしない。
 都合良くグリーフシードがあれば良いだろうがここまで酷いと1個や2個じゃ最早焼け石に水レベルだ。
 なるほど、八方ふさがりとはまさしくこのことだ。

 いっそ全てを諦めて魔女――怪物になって世界全てを滅茶苦茶にしてしまおうか?
 嫌な事も悲しい事も無かった事に出来るぐらいに壊して壊して――
 もう、その条件はクリアしているんだ――

 どうせ、自分の行動は全て裏目裏目に出て望まぬ結果になってしまうのだ――
 そういう結果しか突きつけない世界なんていっそのこと――ブッコワレッタッテカマワナイダロウ――


 なのに――


 それなのに――


 何故この魂は未だに『暁美ほむら』のままで在り続けるの――


 何故魔女へと変貌しないの――


 まだ希望があると思っているの――


 それとも――


「◇◇◇◇◇ん」

 声が聞こえた気がした――


「◇◇◇ちゃん」


 いや、違う――気がしたんじゃない――


「ほむらちゃん」


 確かに聞こえた――聞き間違えるわけがない――この声は――


「まさか……その声……」


 すぐ側にいたのは桃色の魔法少女服に身を包んだ少女――
 永遠に時を繰り返してでも救おうとした少女――
 鹿目まどかではないか――

 彼女が魔法少女の姿でいることについては不思議にも思わず疑問すら感じなかった――
 何しろ、理屈など関係無しに一目見ただけで理解してしまったのだ、
 今目の前にいる彼女はあの日約束をした彼女――
 自身の手で彼女のソウルジェムを砕いた彼女であると――

 わかっている、今自身がいるのは現実ではない――
 夢か幻かあるいは走馬燈の変種バージョンかもしくは全く別の――
 気が付けば今までいた森とは違う不思議な空間にいる――
 都合の良い幻想だったのかも知れない――
 とはいえ、そんな事は些細な事だ――

 口を開こうとも声にならない――
 肺が潰れているから? 違う、これが現実で無いならばそれは全く理由にはなりえない。
 そうだ、何を言えばいいのかわからないのだ。何か言おうとしても何処かでブレーキがかかって声として出せないでいるのだ。

 いや、言うべき事は既に決まっている。
 そう、目の前にいるまどかがあの日約束をしたまどかならばまず言わなければならない事がある。
 あの日、キュウべぇに騙される前のまどかを助ける――つまり魔法少女にさせる事無く救う事――それを必ず果たすと約束したのだ。
 だが、結局その約束は果たされなかった――いや、それだけで済むレベルの話じゃ無い。
 何度となく時間遡行を繰り返したお陰でまどかの潜在的な力が増大し、キュウべぇにとっても是が非でも契約すべき対象となり、想定外のイレギュラーすらも呼び込む事ともなった。
 何より、魔女化した時の強さが最初とは比較にならない程強大化してしまい、余計にまどかの望まない状態にしてしまったのだ。
 つまり――自身の行動の結果、まどかを余計に苦しめる結果になってしまったのだ。
 諦めずに足掻けば足掻くほど状況は更に悪くなる――あまりにも救いようがなさ過ぎるだろう。

541白と黒の黙示録(暁の決戦) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:31:26 ID:6jh7jg6M0

 そして、結局自身の見極めの甘さで勝手に力尽き、後に残ったのは最強最悪な結末だけをまどかに突きつけた結果だけ――
 あまりにも酷くお粗末な道化人形劇ではなかろうか。

 別に許されたいとか救われたいとは思わないしそんな資格などそもそもないであろう。
 だが、そんな事問題では無いのだ。
 至極単純な理由、自身の過ちで取り返しのつかない迷惑をかけた事を――

「ご……ごめ……」

 だが、

「ごめんね、ほむらちゃん――こんなになるまで苦しめちゃって……」

 何故だ? 何故彼女の方が謝っているのだ、どう考えたって謝るのは逆だろうが、

「どうして貴方が謝るの!? 約束を守れていないのは私の方なのよ! それだけじゃない……私の所為で貴方が余計に苦しむ事になったのよ! それなのにどうしてまどかの方が謝るわけ……」

 いや、そんな理由なんてわかっている――彼女は優しい子だ。誰かが苦しんでいたらその苦しみを背負おうとする様な子だ。
 自身の為に傷つく人がいたならば、それに責任を感じるのは推測するまでも無い話だ。
 だが、そんな事など耐えられない――

「それにわかっているの!? 私のした事のお陰でまどかが余計に苦しむ事になったのよ!? 私のやった事が全部無駄だったのよ!?
 過去に戻れる、歴史を変えられるなんて甘い希望を持たせたばっかりに余計に絶望させる事になって……
 そんなこともうとっくの昔にわかっていた筈なのに……
 いつの間にか貴方が魔女になっても何も感じず見切りをつけて過去に戻って繰り返す様になって……
 どうせ信じてもらえないから最初から誰も信じず誰にも頼らずに自分一人だけで戦って……
 希望なんて何処にも無いなんて本当は最初からわかっていたのよ……それを認められなかっただけ……
 全部無駄で……無意味だったのよ……」

 そんな言葉で諦めたくなんか無い。だが、全ては自身の過ちなのだ。
 最初から全部無駄だったら、出過ぎた真似はせず自身が魔法少女にならなければ良かったのだ。

「無理だったのよ……何も出来ない……人に迷惑ばかりかけて恥かいて……ずっと変われなかったのよ……
 最初に出会った貴方が死んだ時に守られる私じゃなく守る私になりたくて魔法少女になりたかったのに……
 こんな事になるんだったらいっそ最初から魔法少女にならなきゃ良かったのよ!!」

 自分でも何を言っているのか正直わかっていない。だが、吐き出さなければ今にも押しつぶされそうな気がしたのだ――

「無駄なんかじゃないよ……ほむらちゃんのやってきた事は……」
「え……?」
「ほむらちゃんが信じて走り続けてきた事はきっと何処かの私に届いているよ……それに気付いた何処かの私がほむらちゃんを……
 ううん、それだけじゃなくさやかちゃんも杏子ちゃんもマミさんも救ってくれる筈だよ……」
「そんな……そんな奇跡起こるわけが……」


 いや、1つだけ方法がある。


「ほむらちゃんがここまで頑張らなかったら誰も救えなかったと思う――」


 自身が繰り返し続けた事で究極的に因果が集ったまどかの力ならば――
 インキュベーターが当初想定すらしていなかった程の力――
 全ての絶望をひっくり返せる程の奇跡を起こせるだろう――
 だがそれは結局の所――


「ダメよそんなの!! それじゃ結局はまどかが……」


 しかし、それ以上言葉にはならずうつむいてしまう――
 わかりきっている事じゃないか。まどかの性格を考えれば全てを救おうとする事ぐらい――
 自分を犠牲にしてでも他人を救う――それが鹿目まどかであろう。

『私ね、あなたと友達になれて嬉しかった。あなたが魔女に襲われた時間に合って、今でもそれが自慢なの。だから魔法少女になって本当に良かったって』

 自身が魔法少女となる直前に彼女に言われた言葉だ。魔法少女の真実を知らないが故の愚かな発言だったかも知れないが、それ自体は混じりっけのない本心からの言葉に違いない。
 いや、例え愚かな発言だとしてもその言葉を否定したくなんてない。

「私が貴方をそんな運命から助け出したかったのに……」

 勿論、納得なんてしてない。
 だが、最早この身体は限界を超えている。
 いつ世界を呪うだけの存在とも言うべき魔女になるのかもわからないのだ。

542白と黒の黙示録(暁の決戦) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:31:58 ID:6jh7jg6M0

 が――ここまで考えて気が付いた――何故魔女にならないでいられるのか――
 勿論、全てを諦めて魔女になればそれこそまどかを救えなくなる、それが主な理由だろう。
 だが、壊すだけの存在になる事をまどかが望むのだろうか?
 悲しみをもたらすだけの存在になる事をまどかが望むだろうか?
 まどかが守りたかった世界を壊す事をまどかが望むだろうか?

 わかりきっているでは無いか、そんな事絶対に望まない――

『嫌な事も悲しい事もあったけど守りたいものだってたくさん……この世界にはあったから……』

 まどかが守ろうとした場所を壊すなんて事、絶対に出来るわけがない。
 そんなまどかに対する最大級の裏切りなど出来るわけがない。


「……!」


 うつむいたままだったほむらは振り向きまどかへと背を向ける。


「何処に行くの?」
「私が自分の名前を変だって言った時、すごく格好良いって言ってくれた女の子がいたの……」
「それって……」
「名前負けしているって応えたらその子なんて言ったと思う……折角素敵な名前なんだから格好良くなっちゃえば良いって言ってくれたのよ……」


 そしてゆっくりと歩き出す。


「その彼女の為にも……もう一度だけ燃え上がってくるわ……あの日、魔女に襲われた時の私を助けた時に彼女が口にしていた言葉と全く同じ言葉で私を助けに入ったバカな男を助ける為に……
 あんなバカでも貴方だって助けられるなら助けられるでしょ?」


 返答なんてわかりきっている。

「うん!」


 気が付けば元の場所に立っていた。未だ戦いは続いている――
 両手は自身の髪を編んでいた。両サイドを三つ編みにすべく――


『ほむらが魔法少女になったのってその子の為なのか?』


 魔法少女になった時の最初の気持ちを思い出せ――
 無論、それは彼女を守る為だ。そして魔法少女になった時どう思った?
 これで彼女を守れると思っていただろう、一緒に彼女と戦えると考えただろう、彼女と一緒にまどかの守ろうとしたものを守れると喜んでいただろう。
 結局はキュウべぇに騙されただけだったが、それでもその時思った気持ちだけは嘘なんかじゃない。

 だからもう一度だけあの時の気持ちを思い出すのだ――眼鏡はなくてもあの時の髪型にしてその気持ちを――

 どの時間のまどかであってもみんなを守る為に戦い続けているのはわかりきっている。
 だったら、遠く離れていても気持ちだけは一緒に頑張ろうと――

 髪を編み終わった時、不意に風が吹くのを感じた――それが何を意味しているのかはわからない――
 こうやって動くだけでも全身が軋むのを感じる。表面上の傷は防げても回復には全然足りていないのだ。当然、時を止める事など不可能――
 だが、戦う術はある――


 ――Skull――


 ガイアメモリを作動させ音声を響かせる――


「変身……」


 そう口にして無意識下で巻いていたベルトのスロットにメモリを挿入し斜めに倒す――


 ――Skull――


 その音声と共に自身の身体に先程同様漆黒の粒子が纏わり付く様に変容させる――
 先程と同様にスカルへと変貌しているのだろう――
 いや、1点だけ違う――
 額が熱い――何かが刻まれている様だ――

 いや、この際そんな事はもうどうだって良い。
 風が巻き起こる――
 今ならばわかる、先程とは比べものにならないぐらいの力を発揮する事を――


「救い様の無い世界だとしても……あの子が守ろうとする世界を傷つける事は……私が許さない……」

543白と黒の黙示録(暁の決戦) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:32:28 ID:6jh7jg6M0





焔上 Flame burning.


「まさか……あれだけの傷で……」
「よそ見をしてんじゃないの!」

 ほむらの復活、そしてスカルへの変身に気を取られ。横から来るシャイニングブレードへの反応が一瞬遅れる。
 それでもメタル・ドーパントはその斬撃を難なく弾く。
 だが、すぐさまスカルが間合いを詰め突きを繰り出し当てていく。

「ぐっ……」

 先程のスカルと違いパワーが上がっている。高い防御力故に殆どダメージは通らないがそのパワーで僅かながらも身体が押される。

「はぁっ!」

 かけ声と共にシャイニングブレードが振り下ろされる。防御が間に合わず思わず後方へと後ずさる。
 無論、そんな隙を逃すわけも無くシャンゼリオンは間合いを詰めていく。
 応戦しようとするメタル・ドーパントだったがスカルがスカルマグナムを連射しメタル・ドーパントだけを撃っていく。
 銃器の扱いはほむらにとっての十八番、シャンゼリオンに当てずにメタル・ドーパントだけに当てる事など造作も無い。

「はっ!」

 無論、メタル・ドーパントとて只撃たれるつもりはない。放たれた銃弾を裏正を振るうだけで薙ぎ払っていく。それ故、スカルの銃撃によるダメージは殆ど無い。
 だが、迫り来るシャンゼリオンへの対応を同時にやらなければならない。
 スカルの銃弾を防いでばかりでシャンゼリオンへの斬撃への対処が遅れるわけにも、
 シャンゼリオンへの斬撃に注意しすぎるあまりスカルの銃弾を受けるわけにもいかない。

 無論、シャンゼリオンとてこの好機を逃すわけもない。スカルが銃弾に対処している間に間合いを詰め次の一撃、次の一撃を繰り出していく。
 スカルとてただ動かない砲台でいるつもりはない。動きながら狙いを定め、できうる限りメタル・ドーパントが対応しにくい銃弾を繰り出していく。

 一方で、メタル・ドーパントは驚愕していた――明らかに先程よりも強化されたスカルの力にだ。
 シャンゼリオンが強化されたのは怒りによるもの、それはわかっている。
 だが、スカルはどういう理由で強化されたのだろうか? 先程は無かった『S』は何を意味しているのだろうか?

「……お前は……仮面ライダーだとでもいうのか……」


 風都には街を泣かせるドーパント等から人々を守る為にガイアメモリを使って変身するダブル(W)とアクセル(A)、2人の仮面ライダーがいる。
 だが、Wが現れる前にも仮面ライダーがいた――
 それがスカルである。その変身者はWの変身者の片割れ左翔太郎の探偵としての師とも言うべき鳴海荘吉だ。
 しかし、荘吉とて最初から仮面ライダーであったわけではない。いや正確にいえばスカルの力を出し切れていたわけではない。

 ドーパントの事件が起こり始めた段階で、荘吉は幼馴染みである文音――シュラウドから対抗するには荘吉自身もメモリを使うしか無いと言われていた。
 しかし荘吉自身は自身の拘りから自らガイアメモリを使う事を拒否していた。言ってしまえば戦いの決断が鈍っていた状態である。
 それでもドーパントに追い詰められそれを助けるべくシュラウドが変身させたのが最初のスカル――だがそれは不完全な状態、それ故全力が発揮できない状態である。
 不完全な状態とはいえ荘吉自身の素の戦闘力が高い故にある程度は戦えていたが、本来の力を発揮できない事に違いは無くドーパントを撃破するには至らなかった。
 だが、それ故に決して取り返しのつかない被害を出す事となったのだ――街に大きく泣かせた事は言うに及ばず荘吉自身、正確には自身とその娘にとってとても大きな――
 そして遂に荘吉は決断し真のスカルとなったのだ――

 さて、以上の事を踏まえてもスカルのその真の力を引き出す決め手は使用者の心理状態である事はおわかりであろう。

 これを踏まえ使用者であるほむらの心理状態を振り返っていこう。

544白と黒の黙示録(暁の決戦) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:33:16 ID:6jh7jg6M0

 ほむらはその経緯から魔法少女の力を忌むべきものだと考えていた。
 いや、それだけではなくダグバにクウガなら対抗できると言われても、そのクウガもダグバと同等であると考えそれを実力を別としても信頼する事は出来なかった。
 そんなほむらが怪物とも言うべきドーパントへと変貌させるガイアメモリの力を信用できるわけなどないだろう?
 また、度重なる時間遡行の影響か、失敗してもまた繰り返しやり直せばと冷め切っていた節がある。まどかが魔女になった時点で見切りをつけた所からもそれは明らかであろう。
 そしてこの地においてもこの殺し合いの行く末がどうあれ脱出後にやり直せば良いと心の何処かで思っていたのかもしれない。

 甘い考え――とは言わないが、そういう考えでいてガイアメモリの――スカルの力を十二分に引き出せる道理も無いだろう。

 だが、今のほむらは違う。
 やり直しがきかなくなる程負傷したお陰で、崖っぷちまで追い込まれている。逆をいえばもう一度きりしかないという事だ。
 そして、魔法少女になった時の気持ちを思い返し、今一度まどかが守ろうとするであろうものを守る、その為に戦う事を決めたのだ。
 魔法少女の力があればまどかを守れる――今にして思えば愚かながらであっても喜んだあの日の気持ちで――

 だからこそ今スカルはほむらにその真の力を与えたと言っても良いだろう。
 スカル――骸骨の記憶故に肉体は動ける状態だ。十二分に戦える、ほむらの願い通り今ならば守る為に戦えるだろう――


 スカルの銃撃、シャンゼリオンの斬撃、その波状攻撃によって徐々にだがメタル・ドーパントが押されていく。
 メタル・ドーパントこと丈瑠とて歴戦の戦士、そうそう簡単に倒されるつもりはない。

「くっ……俺は……」


 だが、その脳裏にはある男の事が浮かんでいた――

 それは影武者、シンケンレッドとして戦っていた頃――何時もの様に外道衆を倒し何時もの様に源太の一本締めで締める所であったのに何故か締めている暇無いと足早に去って行った事があった。
 その時点では謎ではあったが今にして思えば既に事は起こっていたのだろう。
 その直後、突如として現れた謎の男に

『この世界は侵食されている、ライダーに、ディケイドに、ディケイドは世界を破壊する、排除しなければ』

 そう一方的に丈瑠に伝えオーロラに消えていった。いや、それだけではなく黒子の1人――妙な動きを見せていたから何かあると思い問いただしたが黒子見習いとはぐらかしたあの男が――

『シンケンジャーか、確かにこの世界では仮面ライダーは必要無いらしいな』

 そう言って黒子の服を脱ぎ捨てた男――通りすがりの仮面ライダーが現れた。

 どうやら源太の折神がもう1人の仮面ライダーに盗まれ、その仮面ライダーもアヤカシに何か盗られたものがありアヤカシに異変が発生したらしい。
 世界が破壊される――その言葉に踊らされ仲間達がパニックに陥る中、丈瑠自身は何を思っていたのだろうか――

『そんなにダメですか、仮面ライダーがいたら。ディケイドが……士君がいたらダメなんですか? 何処の世界にいってもこんな風なら……じゃあ士君は何処に行けば……』

 その男は何処の世界でも拒絶され続けていたのだろう。しかし危機に陥った時駆けつけたあの男はこう言った。

『ライダーは必要なくても、この俺門矢士は世界に必要だからな』

 そう言い切ったのだ。そして自身に、

『殿様、ここは勝って帰らないとジイさんが泣くぞ。多少の無理はさせてやれ、ジイさんなりの戦いなんだろ、お前らの帰る場所守ってんだからな』

 あの時、腰を痛めながらも無理をし続ける日下部彦馬に対し戦いに関わらせないと言い放った事がある。無論、気遣ってのものだが感情的になり言い過ぎた事は理解している。
 この辺りの事情を何故あの男が知っているのかは知らないが、気遣ったあの男が謎はあっても気遣いの出来るある意味では優しい男だという事は理解できた。

545白と黒の黙示録(暁の決戦) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:33:38 ID:6jh7jg6M0

『士、俺はお前が破壊者だとは思っていない』
『根拠は?』
『無い………………強いて言えば侍の勘だ。世界は知らないが俺達はお前を追い出す気はない』

 果たしてそれは侍の勘だったのだろうか? 俺『達』の言葉だったのだろうか?
 心の何処かで重ねていたのではなかろうか? 影武者故に侍の世界にいられなくなる自分自身と、何処にも自分の世界が無く果てなく通りすがり続けるあの男の姿を――

 あの男は今も仮面ライダーのいる世界を通りすがり続けているのだろうか?
 様々な世界で戦い続ける仮面ライダーに時には拒絶されながらも助けに入っているのだろうか?

 スカルのいる世界にもあの男は現れたのだろうか――?

 目の前の仮面ライダーを見てそんな男を思い出したのだ。
 今の自分をあの男が見たらどうするのだろうか? あの時助けに入った時の様に、外道に墜ちようとする自分を止める為に助けに入るのだろうか?
 いや、きっと助けに入るだろう。あの男はああいう男なのだから――

 だが、もう引く事は出来ない――例え全ての世界を通りすがり続ける仮面ライダーであってももう止められない。

「俺は……もう退くつもりは無い!!」

 だからこそ裏正を振るい続けるのだ――
 あの男が自分の世界を探し続ける様に――
 自分もまた剣士としての自分のまま生き続けるのだ――
 誰に拒絶されようとも、決して止まったりはしない――


 いつの間にか川岸まで追い詰められていた。
 未だにシャンゼリオンとスカルの波状攻撃は続いていく。
 この状況を打ち破る手段は1つ――捨て身の覚悟で挑む事だ。
 振り落とされるシャイニングブレードに対し――

「はぁっ!!」

 渾身の力を込めてそれを裏正で跳ね返す。文字通りの全力でシャンゼリオンを飛ばし腰を地に着けさせる。
 勿論、スカルマグナムによる銃弾に対処できず数発受ける事になるがまだ立っていられる。
 シャンゼリオンが立ち上がり体勢を整える前にスカルを仕留めるのだ。

 一気に間合いを詰め裏正で袈裟切りに――
 だが、スカルは逃げるどころか一気に踏み込み――その腕で裏正を持った腕を押さえたのだ。

「ぐっ……」

 それ故にこれ以上動けないでいる。これがスカルの――いや、仮面ライダーの強さなのだろうか?
 だがまだだ、このまま押し切れば――

 その時突如スカルの胸部から紫色の髑髏のエネルギー体が出現した。その衝撃を受け拘束が外れ数メートル後方の川岸へと追い詰められる。出現したエネルギー体は上へと――
 それでもまだ戦え――

「はぁっ!」

 体勢を整え直したシャンゼリオンがシャイニングブレード構え仕掛けてきた。
 剣士として剣の勝負には負けるわけにはいかない、裏正を全力で――

「一降り!!」

 宙を舞ったのは――

 ――裏正だ。裏正は程なく川へと落ちる――
 スカルに手を全力で押さえられていたが為にその時の痺れがまだ残っていたのか――握りが若干甘くなりシャンゼリオンの全力の一撃に耐えきれず手放してしまったのか――
 それとも全く別の要因があるのだろうか――


 いや、理由はどうあれ真実はたった1つ――裏正をはじき飛ばされた時点で剣士として自分は敗北したという事だ。


「こいつでトドメだ」


 そう言いながらシャンゼリオンが構える。一方のスカルもメモリを横のスロットに移し高く飛び上がる――


「シャイニングアタック!」
――Skull maximum drive――


 シャンゼリオンの胸部から自身を模したエネルギー体が放たれる――
 一方、スカルがメモリを作動させそのまま先程生み出したエネルギー体を蹴り飛ばす――


 放たれた2つのエネルギー体は真っ直ぐにメタル・ドーパントの元へと――


 白く輝く戦士シャンゼリオン――
 漆黒に煌めく戦士スカル――

 白と黒の戦士が織りなす2つの一撃は――

 銀――いや、白にも黒にもなれないくすんだ灰色の愚者の元へと――

 2つのエネルギーは同時に炸裂し川が大きな水しぶきを上げた――

546白と黒の黙示録(暁の決戦) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:34:21 ID:6jh7jg6M0





終焔 Hers flame come to a close.


 メタル・ドーパントの姿は何処にも無い。シャンゼリオンとスカルの必殺技を同時に受けて身体すら残らず消滅したのだろうか?
 だが、1つだけ確かな事がある。今この場に立っているのはシャンゼリオンとスカルの2人だけ、襲撃者は撃退した事になる。
 つまり、紛れもなく暁とほむらの完全勝利と言っても良い。

「決まった……」

 いつの間にやらシャンゼリオンこと暁の中の怒りは消え失せていた。それもその筈だ、無残に嬲られ殺されたと思ったほむらが無事で戦ってくれたのだ。
 怒るべき理由など最早何処にも無い。
 嬉しそうに身体を一回転させて――


「俺達って……超決まりすぎだぜ!!」


 そうポーズを決めた――


 だが、その時。何か倒れる音がした――


「!? ほむら!?」


 それに気付き振り向くと――スカルへの変身が解除されたほむらが倒れているではないか。


『私、鹿目まどか。まどかって呼んで』
『えっ……そんな……』


 元々筋肉も神経も骨も血管もボロボロの状態だったのだ。幾らスカルの力で強化できたからといってそんな状態が身体に良いわけがない。
 それにドライバーを介しているとはいえガイアメモリのエネルギーは非常に強大だ。
 通常の状態ならいざ知らず全身がボロボロのほむらにかかる負担は無視できないレベルだ。当然負荷が大きいマキシマムドライブを使うなど言語道断だ。
 精神力だけでずっと戦い続けていたが、マキシマムドライブ使用直後、つまりメタル・ドーパントを撃破した時点で遂に緊張の糸が切れ変身が解けたのだ。
 ガイアメモリによるダメージは普通の医学では治療が出来ない――魔法少女である彼女にはあまり関係無い事ではあるが、何度も語った通り最早ほむらの力は完全に枯渇状態だ。
 故に――既にほむらの身体は指一本マトモに動かす事が出来ない状態である。痛覚だけはカット出来る為、痛みを最小限に抑える事が出来るのはある意味では幸運といえ不運とも言えるだろう――


『良いって、だから私もほむらちゃんって呼んで良いかな?』


「ぁ……ぁ……」

 声が出せない――肺が潰れて声になっていないのだろう。それでも、残された僅かの力を振り絞れ――

「おいほむら、大丈夫か? ってなんじゃこりゃ、こんな状態で戦っていたのかよ」

 燦然を解いた暁が抱きかかえながら口にする。暁から見てもほむらの状態はあまりにも酷いのだ。

「……ょ……ぃ……」
「そうかそうか、もう喋るな、すぐに病院に行こうな」

 やはり声にすらならない――だが、

(暁……聞こえるかしら……)

 ふと暁の頭の中にほむらの声が届いたのだ。

「ほむら!? なんだこりゃ!?」
(念話よ……)
「魔法少女ってこんなすげぇ事も……って、それ使える状態じゃ無いだろ!」
(だったら黙って聞きなさい……)

 ほむらとて今の状態で魔法少女の力の1つである念話を使う事がどれだけマズイのかは理解している。だが、まともに話す事しか出来ない以上、こうするしか手段が無いのだ。

(助ける方法が1つだけあるわ……私だけじゃなく、暁も助ける方法が……)
「俺ぇ? 何言ってんだ?」
(魔法少女の力が呪われた力という事は話したわね……)
「ああ、確かにそんな事も言っていたな」
(その理由を話すわ……服の中を探ってもらえるかしら……)
「服の中……」
(……この状況で変な所触らないでくれる? ちょ、そこは違う、もっと上、いやもっと下)
「おい、何処にあるんだ?」

547白と黒の黙示録(暁の決戦) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:34:55 ID:6jh7jg6M0

 そして、ほむらの懐から汚れきった宝石の様なものを取り出す。

「なんだこりゃ? 随分汚い宝石じゃないか」
(私達が魔法を使う度に、その宝石が穢れていくわ……そして穢れきった時に魔女……貴方の知るダークザイドと同じ様なものだと考えて良いわ……それに姿を変えるわ)
「魔女? 魔法少女の親戚か?」
(ええ、魔法少女が祈りを叶えた分と同じだけ呪いを与える存在となるのが魔女……)
「……もっとわかりやすく言ってくれない?」
(つまり、私達魔法少女はただ壊すだけの怪物になってしまうのよ)
「よし、わかった。つまり、コイツをこのままにしたらほむらが怪物になるって事だな。で、コイツをどうすれば良いんだ?」
(簡単よ……それを砕けば私が魔女になる事は無いわ……)

 その言葉を聞いた暁は、

「なんだ、そんな簡単な事で良いのか、だったらもっと早く説明しろって……」

 と、嬉々としてその宝石を地面に置き、今一度燦然しシャンゼリオンとなりシャイニングクローを構える。が、

「……? まさか……」

 何か引っかかりを感じる。だが、

(早くして……早くしないと……あの子の為にも……)
「わかったわかった、後であの子の事についても話してくれよ? 探さなきゃならないのに名前すら知らなきゃ捜しようがないからな」
(ええ……それが終わったら……)

 そう言いながらゆっくりとシャイニングクローを振り上げ降ろそうとする――


 その動きはあまりにもスローに感じられた――


『私……その……あんまり名前で呼ばれた事ってなくて……すごく変な名前だし……』
『えーそんな事ないよー、何かさ燃え上がれーって感じで格好良いと思うなー』


 そう間もなくほむらのソウルジェムは砕け散ると共にグリーフシードへと変貌し魔女へと姿を変えるだろう。
 そうなれば、目の前にいる暁は無論の事、この地にいる他の参加者を呪うだけの存在となる。
 いや、実の所それだけなら大した問題じゃ無い。
 それをまどかが望む事では無いという事が問題なのだ――だからこそ、ほむらは魔女へと変貌する前にソウルジェムを砕く事を暁に頼んだのだ――
 ソウルジェムの名前等一部の事柄については意図的に伏せておいた。正直キュウべぇのやり口に近いのが気に入らないが全てを説明したら事に及んでくれないだろうと思い、敢えてそうした。
 だが、自分でも感じていたが他人とのコミュニケーションが不得意分野だったが為、説明が甘く、暁に気付かれた様に思えた。
 あのバカなら気付かないと思っていたが流石にそこは自称探偵というだけの事はあるらしい。
 それでも暁はそこまで疑いはせず従ってくれた。その事については正直感謝している。
 何にせよ後はその瞬間を待つだけである――

548白と黒の黙示録(暁の決戦) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:38:50 ID:6jh7jg6M0


 結局の所、まどかはあの時何故ほむらにキュウべぇに騙される前の自分を助けてと最後のグリーフシードを託したのだろうか?
 勿論、それは言葉通り自身が魔女になりたくないという事もあるのだろう。
 しかし同時にそれ以上に、魔女になる事よりも魔女となって世界を滅茶苦茶にする事の方が嫌だったのだろう。どんなに悲しい世界であっても守りたいものもある世界なのだから――
 そして何より――まどかはほむらを助けたかったのではなかろうか?
 あの時、ほむらは半ば自暴自棄になり全てを忘れ一緒に魔女になって世界を滅茶苦茶にしようかと口にしていた。
 だが、これも無理からぬ話だろう。純粋な祈りから魔法少女になり過去に戻ったのにその結果最悪にして残酷な真実。
 そしてそれを伝える為に戻ろうとも誰にも理解される事無く、事が起こってからその事実を突きつけられ結局惨劇が繰り広げられる現実。
 そして何も救えず最悪な結末を迎えるのだ、これで希望を持てというのは無茶ではなかろうか? 自身の力に何の意味も無ければ絶望するしかないであろう。
 まどかはそんなほむらを助けたかったのだろう――ほむら自身が助けたいと願うまどかを助けるという目的を与え、それを希望にすると――

 勿論、真相は誰にもわからない。だが、真相がどうあれ、まどかが自分を犠牲にしてでもほむらや世界を救いたいと願っている事だけは間違いない。

 本音を言えば、こんな結末など欠片も満足していない。
 結局まどかを救う事が出来なかったのだから、彼女に何度となく助けられた命をこんな形で終わらせてしまうのだから、彼女との約束を破ってしまったのだから、

 だが、魔女となって呪いを振りまくだけの存在となる事も彼女は望まないだろう。だからこそ自らの命をここで終わらせる事にしたのだ。
 暁には多少は迷惑をかけたと思わなくもないが、今までの分を考えればそこまで良心の呵責はない。
 正直な所、違う形で出会っていればもう少し違う印象もあったのだろうが――今更考えても仕方のない事だ。

 何にせよ自業自得と言えばそれまでだ。もう少し違う立ち回りをすればもっと違う結末もあったであろう――


『………………名前負けしてます……』


 空を仰ぐ――


『そんなの勿体ないよ、折角素敵な名前なんだからほむらちゃんも格好よくなっちゃえば良いんだよ』


 既に朝日は昇り明るい空が広がっている――


「ねぇ……」


 それは念話ではなく最後の力を振り絞っての肉声――


 伝える相手は遠い遠い先にいる彼女――


「私……名前負けせずに……格好良くなれたかしら……?」



 ――――パリーン――――



「ん、何か言ったか?」


 丁度宝石を砕き終わったシャンゼリオンが元の姿に戻りほむらの方へと振り向く。
 しかし、ほむらはピクリとも動かず、最早念話も聞こえてこない――


「ほむら……」


 暁はすぐさまほむらへと駆け寄る。いつの間にかほむらの服が魔法少女のものから何処かの制服に変化している。


「ほむら……」


 全く予想していなかったわけではない――それでも驚愕は隠せないでいる。


「ほむら!」


 どんなに呼びかけてももう彼女が応える事は無い――その魂は砕けてしまったのだから――


 だが――


 顔だけは何処か穏やかで笑みを浮かべている様に見えた――


【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ 死亡確認】
【残り50人】

549白と黒の黙示録(微笑みの出発) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:41:53 ID:6jh7jg6M0
旅路 Journey through the Sinkenred.


「……ここは?」
「ぐふっ……」

 丈瑠が意識を取り戻すとすぐ近くにパンスト太郎が上半身裸でいた。

「お前……無事だったのか?」
「あの程度でやられると思ったか?」

 言われて見れば蹴りを一発受けて川に落ちただけでしかない。意識さえ戻り溺れさえしなければなんの問題もないだろう。

「ぐっ……何故俺は生きている?」

 流石にこれまでの戦いでダメージを受けたか身体に痛みが奔る。だがそれ以上に、五体万全である事の方が不可解だ。
 確かあの瞬間、シャンゼリオンとスカルの必殺技が迫っていた筈だ。その直撃を受ければいくらメタル・ドーパントといえどもひとたまりもない筈である。
 実際問題、マキシマムドライブクラスの破壊力を受ければ戦闘不能に追い込まれ場合によっては致命傷となりかねない。
 では、何故丈瑠は健在なのであろうか?

「俺に感謝しろよ」

 そう言って、パンスト太郎は丈瑠に裏正を投げ渡す。

「これは……」
「拾っておいてやった」
「なるほど、そういう事か……」

 シャンゼリオンの蹴りを喰らい川に沈んだパンスト太郎は数百メートル程流された程度で意識を取り戻した。
 その後、すぐさまシャンゼリオンに反撃をかけようと動いたが背中を受けたダメージの影響か上手く飛べず川を泳いで進まざるをえなくなった。
 そうしてなんとか戦場近くまで来た時、何かが落ちてくるのを見た。
 それは丈瑠が所持していた筈の裏正である。そしてすぐ近くの戦場を見たらメタル・ドーパントが完全に追い詰められている状態では無いか。
 パンスト太郎は水中に潜り裏正を回収し、その後すぐさまメタル・ドーパントの近くまで接近――

 そしてシャイニングアタックとスカルのマキシマムドライブによるエネルギーがぶつかり合った瞬間、タコ足でメタル・ドーパントを絡め取りそのまま川の中へと引きずり込んだのである。

 実の所、運良くメタル・ドーパントの眼前で2つのエネルギーがぶつかり合わなければメタル・ドーパントはどちらか、あるいは両方の直撃を受け致命傷を負っていたと考えて良い。
 つまり、2つのエネルギーがぶつかり合ったお陰でメタル・ドーパントに直撃するのがほんの僅かに遅れ、パンスト太郎が回収する機会を与えたという事である。
 無論、2つのエネルギーがぶつかった所でエネルギーそのものが消えるわけではないし合わさったエネルギーはそのままメタル・ドーパントに直撃したであろう。
 だが、回収が間に合ったお陰で全くのノーダメージでは無いが、ある程度抑える事が出来た。おまけにメタル・ドーパントが川に落ちた音を直撃の音と偽装する事が出来た。
 それ故、暁達は自分達の必殺技で撃破したと錯覚し、丈瑠もパンスト太郎も未だ健在である事を知らないだろう。

「助けて貰った事については感謝している……裏正の事も含めてな……だが、何故俺を助けた?」
「この殺し合いを有利に進める為に協力を持ちかけたのは俺の方だからな。それになによりお前の力はアテに出来る」

 実際、パンスト太郎が川に落ちてから戻ってくるまで1人でシャンゼリオンとスカルと渡り合っていたのは事実だ。
 敵に回しては厄介だが、味方にしておくには頼れる存在に違いない。
 それに流石に言及はしないが自身の名前を聞こうともせず、パンスト呼ばわりもしない丈瑠をこのまま手放したくはないと考えていた。
 勿論、優勝する為には何れ敵対する事になるだろうが、強敵も数多くいる以上、不用意に敵を増やす必要は無い。今というタイミングでは共闘を続けるべきだろう。

「そうか……」

 そう応えたものの丈瑠は難しい顔をしている。
 重傷を負い殆ど死に体であったほむらと、戦闘経験の足りない素人クラスの暁、この2人を実力者であるパンスト太郎と共に仕掛けたにも関わらず惨敗したのだ。
 無論、シャンゼリオンのパワーアップ及び仮面ライダースカルの出現という想定外の事態があったというのはある。
 しかし、自惚れるつもりはないが、それだけで自身が後一歩の所で破れる程にまで追い詰められたのは信じがたい事だった。

550白と黒の黙示録(微笑みの出発) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:42:21 ID:6jh7jg6M0

 未だ迷っているのか――いや、今更そんな言葉で言い訳をするつもりはない。
 勝敗を決めたのは――それこそ覚悟の差だったのだろう。

 暁の方は何処までも巫山戯ているようだったが、それこそが暁の本質なのだろう。
 何処までもキラキラと白く輝く笑顔を絶やさず楽しそうにしている。
 そして激昂した時あの男は怒った顔を見られたく無いと言っていた。
 つまり、あの男が本気で怒る事など殆どなかったのだろう。
 その男があそこまで怒る――それがどれほど凄まじい事であり、どれだけ本気になったかなど考えるまでも無いだろう。

 一方のほむらの方は最初見た時から、何処が達観――ある意味では冷めた様な雰囲気があった。その上で何かを刺し貫く様な視線――
 やはり彼女の中には何よりも達せねばならない目的、あるいは信念があるのだろう。
 それこそ自身が瀕死の重傷を負っても果たさねばならない程の――全てを捨てて漆黒の闇に堕ちてでも成し遂げようとする何かがあるのだろう。

 一方の自身はどうだろうか?
 幾ら覚悟を決めていても未だにかつての家臣、仲間、幼馴染みへの想いを断ち切れないでいる。
 かと言って、やはり何処か甘い所があり外道になりきれているとは言い難い。
 言ってしまえば白にも黒にもなりきれない灰色の中途半端な未熟者なのだ。

 こんな半端者が勝てる道理など何処にもないだろう。

「(門矢士……ディケイド……お前はずっとこんな想いを抱えて旅を続けていたのか……)」

 思い返すのは通りすがりの仮面ライダーと名乗った男――
 あの男は世界の破壊者と罵られる一方、訪れた世界の人々を助けていた。
 だが、あの男は自分自身を知らないと言っていた――
 つまり、あの男も白にも黒にもなりきれない半端者だったと言えよう――

 あの男は旅の果てにどんな結末を迎えるのだろうか――

 全ての仮面ライダーの世界を、それだけではなくシンケンジャーやかつて共闘したゴーオンジャーの様な戦士のいる世界をも巡り続けたのだろうか――

 と、空を見上げると紙飛行機が飛んでいるのが見えた。

『忘れるな、今日からお前がシンケンレッドだ、外道衆からこの世を守れ……』

 だがそれは程なく丈瑠の眼前へと落ちて消えた――只の幻だったのだろう。

『志葉家十八代目当主、どんなに重くても飛び続けろ……落ちずに飛び続けろ……』

 その言葉を胸にずっと飛び続けてきた――しかしその役目を終えた時点で何も無い――
 どれ程の重荷を背負っても飛び続けられたのに、その重荷を下ろしたとたんに飛ぶ事すら出来なくなる――

「俺は……」

 ふと裏正を見つめる――

『シンケンレッド……いや、違うらしいな……そんな事はどうでも良い……俺と戦う……お前はそれだけで……十分だ……』

 十臓の言葉が繰り返される――そんな事はわかっている。こんな事を考える事など無意味だろう――
 だが、こんな半端な状態の自身と戦う事をあの男が望むとは思えない。

「十臓……わかっている、だが少しだけ待っていてくれ……」

 問題を先送りしているだけなのは理解している。それでも最早退路はない――

「……大丈夫か?」
「ああ、少し休めば問題無い、それよりこれからどうする?」
「ぐふっ……決まっている、森の中にいる参加者を捜す……」

 今後の方針としては、このまま森を歩き参加者を襲撃する方向で考えていた。
 参加者が集うであろう市街地などに向かわないのは市街地には知り合いと遭遇する可能性が高いからだ。丈瑠にしてもパンスト太郎としても出来れば流ノ介や乱馬などといった知り合いには会いたくは無い。
 なお、丈瑠が流ノ介達に会いたくないのはかつての仲間と顔を合わせたくないという理由だが、パンスト太郎にとっては自身の名前を呼ばれるのが嫌だからという事に他ならない。

「だが……その前にあの許せねぇキラキラ野郎をぶちのめしてやる!!」
「キラキラ野郎……涼村暁の事か?」
「あぁ……」

 何故、パンスト太郎は暁に対し怒りを向けているのだろうか? いや、丈瑠にはその理由が容易に推測できた。

「(恐らく、パンスト野郎呼ばわりされた事を相当根に持っているんだろうな……やはりこの男は自身を名前で呼ばれたくはないのだろうな……)」

 それを察したからこそ敢えて追求するつもりもなく、今後も丈瑠自身は名前で呼ぶつもりはない。

551白と黒の黙示録(微笑みの出発) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:43:01 ID:6jh7jg6M0

「(だが……それならパンストを持ち歩くのを止めれば良いだろう……結局奴がパンスト野郎と呼んだのはパンストを使ったからだと思うが……)」

 とはいえ、その事については黙っておく事にした丈瑠である。

「しかし、本気になったあの男は厄介だ、勝算はあるのか?」
「さっきのは油断しただけだ……それに俺には“力の源”がある」
「何?」

 その言葉に丈瑠は驚きの表情を見せる。その呼称から力を強化する道具といった所なのは明白、
 それで無くても強いあの男が更に強くなるというのか?

 そんな丈瑠を余所にデイパックから“力の源”を取り出す。

「……ちょっと待て、それが“力の源”か?」

 だが、丈瑠の頭には疑問符しか浮かばない。

「ああ、ドドンパ娘はコイツを身につけたら強くなった」

 パンスト太郎が言うドドンパ娘、それは阿修羅呪泉に落ち阿修羅へと変身する体質を身につけたルージュの事である。
 古代インド魔神阿修羅、その性格は戦闘的にして名実ともに最強の戦いの神といえる。
 その戦闘力は凄まじく、あのパンスト太郎ですらも倒される、あるいは苦戦すると言えばそれがどれだけのものか理解できるだろう。
 だが、彼女は“力の源”が無ければその無限の力を発揮できないという弱点があった。
 パンスト太郎はその“力の源”を使いさらなるパワーアップを図ろうという事なのだ。

「……見せてくれないか?」
「貸さんぞ」
「いや、見せてくれるだけで良い」
「まあいい、特別に貸してやる。すぐに返せよ」

 丈瑠はその正体に薄々気付いたものの確証を得る為にパンスト太郎からそれを借り受ける。

「(間違いない、こいつの正体は……)」
「どうした、お前もコイツを使って強くなりたいのか?」
「いや、必要無い」

 そして推測通りだという事を確信した丈瑠はパンスト太郎にそれを返す。

「(だが……これは何の変哲も無い……ジイが持病の腰痛に使っていそうなものでしかないぞ……何故これが“力の源”だと……待てよ)……その娘も呪泉郷の?」
「ああ、頭が3本に腕が6本になりやがった。それがどうかしたのか?」
「頭が3本に腕が6本……そういうことか」

 パンスト太郎の言葉を聞いて“力の源”が何故パワーアップに繋がるのかを理解した。

 前述の通り、ルージュは阿修羅に変身する。そして阿修羅は頭を3つ持ち、腕を6本有している。
 だが、その身体的な特徴故に致命的な弱点があった。
 腕を6本有すが故に、肩にかかる負担が大きい――つまり肩凝り状態に陥るという事だ。
 そしてその“力の源”はそれを解消するのに使われるということだ――


 ここまで説明すれば最早おわかりであろう、“力の源”の正体は――


 何の変哲も無い普通の磁気絆創膏である――


「ぐっふっふっふっふっ」


 背中に“力の源”を装着したパンスト太郎が笑みを浮かべる――


「これで世界征服も夢じゃねぇ」
「世界を征服するのは無理じゃないのか……」


【1日目/早朝】
【F-7/川岸】

【志葉丈瑠@侍戦隊シンケンジャー】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(中)
[装備]:裏正@侍戦隊シンケンジャー、T2メタルメモリ@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式
[思考]
基本:殺し合いに乗り、戦う
0:人斬りに対する躊躇や抵抗が拭えない
1:パンスト太郎と協力する、休息後森を探索。
2:十臓は最優先に探し出し、決着を着けたい。
3:流ノ介や源太が相手でも容赦はしない
[備考]
※参戦時期は、第四十六、四十七幕での十臓との戦闘中です
※流ノ介や源太と戦うことに、迷いがあります

【パンスト太郎@らんま1/2】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:水とお湯の入ったポット1つずつ(変身3回分消費)、支給品一式、力の源@1/2、らんまランダム支給品0〜2
[思考]
基本:殺し合いに勝利し、主催も殺す。奪った技術を用いて自分の名前を付け替える
0:休息後、森を探索。
1:適当に参加者を殺して回る
2:キラキラ野郎(暁)は必ずぶちのめす。
2:丈瑠と協力する
[備考]
※参戦時期は原作32巻ルージュ戦後以降です、その為変身後タコの力が使えます。
※乱馬が近くにいることを知りましたが、特別興味はないようです。

552白と黒の黙示録(微笑みの出発) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:43:25 ID:6jh7jg6M0





出発 Departure of smile , bask morning glow.


 朝日が暁とほむらを照らしている――
 そう、ほむらの亡骸を抱えた暁を――
 ほむらの表情はずっと見せ続けていた冷めたものではなく何処か笑みを浮かべたまま――
 一方の暁は何時ものお気楽さはなりを潜め真剣そのもの――

 暁とて気付いていなかったわけじゃない。いや、気付いたのは本当に直前になってからだが――
 ほむらが暁の手で自身を殺させようとしていたのを――
 意図的に説明を省いていた様だが穢れきった宝石が魔法少女の力の源である事は暁にもわかる。
 要するに、その宝石が壊れれば魔法が使えなくなるという事も――
 勿論、ソウルジェムの名称を聞いていない為、それが魂であるという事まで確証を得ていたわけではない。
 だが、ほむらの状態は酷く、魔法少女の力で保たせていた事は暁にもわかる。ここで魔法少女の力が失われればそのまま死亡する事も含めてだ。

 だが、ほむらの説明通りなら、もう間もなくほむらは魔女となり無差別に人を襲う怪物になっていただろう。
 ほむらの説明が真実という確証は無い? いや、暁はほむらの説明を疑ってはいない。
 まず、巫山戯ているかもしれないがほむらが可愛い女の子だったからという事もある。
 勿論それだけではなく、ほむらの力が確かであり疑う要素が無かったという事、
 暁自身、ダークザイドという異形の存在を目の当たりにしているという事、
 そして何より――ほむらが『あの子』の為に何処までも真剣に戦っていた事、
 そこまで暁は理解していたのだ、暁がその事に深く関わるつもりはなかったとしても、その事を疑うつもりなんて全く無い。

 砕く事に葛藤が無かったわけではない。
 だが――思ったのだ、このままほむらが魔女になればほむらは無差別に人を襲い続ける。
 それは同時にほむらが守ろうとした『あの子』を傷つける事にすらなる。
 そうなる事が良くない事は暁にだってわかるし、何よりそれをほむら自身が望んでいない事を暁は知っている。

 だからこそ――暁はほむら願い通り、ほむらのソウルジェムを砕いたのである。


「さよなら……ほむら……」


 そっとほむらの亡骸を川に流す――川の流れは強くすぐに流されていった――

 暁の手元には彼女のソウルジェムに巻かれていた首輪の様なものがある。
 唯一彼女が遺してくれたものと言えよう。


「燃え上がれ……暁の空に……」


 そして一人歩き出す――何処に向かうかもわからずに――


「なぁ……」


 誰に問いかけるかでもなく一人口を開く――


「何だって神様はインキュベーターや魔法少女に魔女なんて作ったんだろう……」


 もし、インキュベーターがいなければ、インキュベーターが魔法少女や魔女を生み出さなければ、ほむらの様な悲劇は起こらなかったのかも知れない――


 だが、その問いに答える者は誰もいない――


「どうして俺を……シャンゼリオンなんかにしたんだろう……」


 もし自分がシャンゼリオンでなければ――自身の手でほむらのソウルジェムを砕かなかっただろうし、
 別の男――例えば速水辺りがシャンゼリオンであれば全く違う結末もあったのではなかろうか?


 しかし、やはり問いに答える者は誰もいない――


 だが、そんな事暁自身にだってわかっている。暁は首輪をデイパックに仕舞い再び歩き出す。


 いつまでも落ち込んでいるなど暁自身のキャラと全然違う、暁にはすべき事があるのだ。

553白と黒の黙示録(微笑みの出発) ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:44:12 ID:6jh7jg6M0


「待っててねー♪ 俺のパラダイスー♪」


 そう、この殺し合いに優勝しパラダイスを満喫するという事を――
 ほむらが想像を絶するぐらい重い宿命を背負っていた事は理解している。
 ダークザイドが人間社会を侵略しようとしているのも理解している。
 この殺し合いで大量の参加者が犠牲になろうという事も――恐らくは理解しているのでは無いかと思われる、多分。

 仮面ライダーといったヒーローならばそれを救う為に戦うのが筋であろう。

 だが、暁はそんな世間一般的なヒーローとは全然違う。
 そんな大げさな話など勝手にやってくれと今でも思う、暁自身はこのまま自身の享楽の為に進むだけだ。

 もっとも、可愛い女の子や美人の女性を襲ったり殺したりする事など全く無い。
 だが、いけ好かない野郎がいたらきっと襲う可能性は高いし、危険人物同士をつぶし合わせ漁夫の利を狙う事は考えるだろう。
 結局の所根本的な部分は何も変わらないのだ。それが涼村暁という人物と言えよう。


 それでも――


 ほむらがある少女(女の子かどうかまでは聞いていないが暁はそう確信している)を守る為に走り続けていた事は理解しており思う所もある。
 結局その子の名前を知らない故に探し様は無いが彼女に変わって捜したいとは思っている。
 優勝したいという目的とは矛盾している様に見えるが暁はそんな事など考えていない。
 だからこそ、空を見上げ微笑みを浮かべながらこう口にした――


「見てろよほむら、ここからの戦い、お前なんかに捧げちゃったりするぜ♪」


【F-6/森】

【涼村暁@超光戦士シャンゼリオン】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(中)
[装備]:シャンバイザー@超光戦士シャンゼリオン、スカルメモリ&ロストドライバー@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式、首輪(ほむら)
[思考]
基本:願いを叶えるために優勝する………………(?)
1:何処に行こうかな?
2:可愛い女の子を見つけたらまずはナンパ。
[備考]
※第2話「ノーテンキラキラ」途中(橘朱美と喧嘩になる前)からの参戦です。
 つまりまだ黒岩省吾とは面識がありません(リクシンキ、ホウジンキ、クウレツキのことも知らない)
※ほむら経由で魔法少女の事についてある程度聞きました。但し、まどかの名前等知り合いの事については全く聞いていません。



[全体備考]
※ディバイトランチャー(シューター・ガンナー)、ウィンチェスターライフル(14/14)、ソウルジェム(ほむら)は破壊されました。
※ほむらの死体はF-6の川に流されました。



【支給品解説】

力の源@らんま1/2
パンスト太郎に支給、
阿修羅に変身するルージュが真の力を発揮する為に必要な物、その正体は
普 通 の 磁 気 絆 創 膏 で あ る。

554 ◆7pf62HiyTE:2012/06/06(水) 09:46:10 ID:6jh7jg6M0
投下完了しました。何か問題点や疑問点等があれば指摘の方お願いします。

ご覧の通り、今回容量が101KBとなるので4分割となります。分割点は以下の通りとなります。

>>518-529(無名、理由、襲来、悪魔、骸骨)が(夜明けの鐘)(31KB)、
>>530-539(危機、磔刑、対策、激昂)が(暁の決戦)(27KB)、
>>540-548(円環、焔上、終焔)が(円環の理)(28KB)、
>>549-553(旅路、出発)が(微笑みの出発)(15KB)

>>541-548まで手違いでタイトルが(暁の決戦)になっていますが、こちらは(円環の理)です。

555名無しさん:2012/06/06(水) 10:05:50 ID:t8VtE5Ts0
投下乙!
うわああ…ほむらまで死んじまうとは!
これでまどマギ勢はさやかと杏子だけか。
いやあ、それにしても熱かった!
暁美ほむら、名前通りの熱い戦いだったよ本当に!
暁も怒りパワー炸裂でかっこよかったよ
彼女の死に彼がどう動くのかが見ものだな
そして殿は…あいかわらず迷走してるがこっちはこっちでどうなるんだろうなあ
最後にパンスト…あいかわらずアホだww

556名無しさん:2012/06/06(水) 11:33:21 ID:hThyhu9AO
投下乙です!
ほむほむ、仮面ライダーとして燃え尽きたか……殿も覚醒したスカルを見てもやしを思い出したりで熱い、熱すぎるぜ

つーか馬鹿二匹はシリアスやってんのかやってないのかはっきりしてくれw

557名無しさん:2012/06/06(水) 15:16:54 ID:Ek26A41M0
投下乙です

ほむほむまでここで脱落だと!?
いやあ、確かに燃え尽きたなあ…
暁がそれで珍しくかっこよかった…と思ったら最後はw
殿は殿で迷走し出したが放送聞いたらどうなるやら
そしてパンストはもうねえ…w

558 ◆gry038wOvE:2012/06/06(水) 16:34:19 ID:bhTD1QvM0
お二方とも投下乙です。

>Avenger
結城と零は案外バランス良くいってるなぁ。鋼牙たちとはすれ違ってしまったものの、遭遇することはあるのか…。
何にせよ、色々と気づけたのは対主催組にとって大きなプラス要素ですね。
他に技術者って誰がいたっけ…。

>白と黒の黙示録
なんだかんだで今のところ熱い活躍しまくってるのは暁ではないか…というくらいシャンゼ愛、暁愛を感じる一作です。
今思うと二人とも凄く良いコンビだったんだなぁ、ほむらの最期も凄く良い。
ラストの暁が、決して本心からチャラけてるわけじゃないのが何となく伝わってきて感慨深いです。
パンスト太郎は間接的にほむらの死に関わってるのに相変らずアホだ…。


さて、この話の次に繋ぎや補完みたいな話を投下するのも躊躇われるんですが、姫矢准、血祭ドウコクの一人リレーを投下します。

559彼等早朝迄─ロングナイト─ ◆gry038wOvE:2012/06/06(水) 16:35:04 ID:bhTD1QvM0
 彼──姫矢准は現在、どういうわけか街中で血祭ドウコクの後ろを歩いていた。
 先ほどまでのように、こっそりと後をつけているわけではない。
 同行とでも呼ぶべき形になって、彼の斜め後ろを歩いているのであった。
 勿論、姫矢とて、何も彼に付き添いたくてこうしているわけではないのだ。
 ただ単純に、ドウコクは、まるで存在そのものが姫矢一人を拘束しているかのように、猟奇的に思えたからだ。
 ここでドウコクから背を向けて逃げることはできない。──それは、挑戦せずとも明白な事実だ。
 ドウコクの威圧は、ただ姫矢が反旗を翻す理由を奪うように鋭い。
 ウルトラマンの力を持つ姫矢であっても……。





 ──さて、話は随分遡る。





 未明の森で、ドウコクは後方の「虫」を疎ましく思っていた。
 今のドウコクに、そいつは興味対象外。ただ適当に真っ直ぐ進み、シンケンジャーを付け狙うが主な目的である彼には、それ以外の存在は何でもないのだ。
 ゆえに、斬ろうとはしなかった。
 殺すのも一向。何も、手を煩わすような出来事ではない。そのくらいはまるで日常の一部であるかのように平然と行ってみせる。そう、一切の苦労もなく。
 永年の屈辱を果たすことだけを一途に考えているドウコクは、その日常の行為すら無駄な時間の浪費に思えたのだ。
 だが、流石にあの存在は煩わしい。覗かれ、追われて良い気分がする者などいないだろう。ましてや、ドウコクは参加者の中でも屈指の短気さを誇る。
 そこで、ドウコクはすぐにその考えを殺しに直結させた。


 ────苛立ちを加速させるくらいならば、あの男を殺して少しマシにしてしまおう。



 そんな、強くは無いが本能的な意思によって、

 ──ドウコクは、「虫」に対し、振り返り睨んだ。
 ──同時に、虫こと、姫矢准は「ビースト」に対し、咄嗟にブラストショットを向けた。

 ある程度の距離が開いており、飛び道具を持つ姫矢が有利と思えるはずなのに、その威圧に姫矢は自分の劣勢を感じる。

560彼等早朝迄─ロングナイト─ ◆gry038wOvE:2012/06/06(水) 16:35:48 ID:bhTD1QvM0
 


「……誰だか知らねえが、そんな物が、俺に効くと思うか?」

「────わからない。だが、これ以外に俺には大した武器がない」


 姫矢は、そのグロテスクな怪物が人語を解することに一瞬驚いたが、それならばそれでやりやすいと思って素直に応答する。
 ネクサスの力は迂闊には教えられない。この状況では切札ともなりうるのだろう。
 おそらく、ネクサスにさえなればある程度は力の差が埋まると思ったのだ。ゆえに、それは絶妙のタイミングでこそ使おうと隠していた。
 ドウコクは、ブラストショットしか武器がないと言っておきながら、ドウコクへの恐怖を感じる様子のない姫矢に多少の疑問を抱いたが、それでも姫矢の言葉を素直に呑む。


「……まあいい。どういうつもりで、俺をつけた?」

「……その姿の人間が堂々と歩いているのを見かければ、誰だって気になる」

「違ぇねぇ。だが、テメェは俺を見て驚きもしねえし、怯えもしねえ。一言で言えばつまらねえんだよ」


 外道衆は怯える者や悲しむ者を見るのを愉しむ。 
 ゆえに、姫矢のような鉄面皮には一切の面白味を感じなかった。
 だが、笑わない分不快感は小さい。……まあ、この状況で笑ってるような人間は稀有だろうが。
 何にせよ、姫矢はこんなことを言われてどうすればいいのかわからなかった。
 面白いだの、面白くないだの。そんなことを言われても困る。


「で、テメェはどっちだ? 殺し合いに乗るか、乗らねえか」

「……こんな馬鹿げた行為に乗る気は無い」

「そうか。俺とは少し違うみてぇだな」

「何?」

「殺りたいように殺る。加頭とかいうヤツの言葉に従うまでもなくな。
 だから、別に殺し合いに乗ってるわけじゃねえ。ただ、普通通りにしてるだけだ。
 ……俺にこんな首輪をつけやがった加頭も殺す。テメェは──」


 姫矢に緊張の一瞬が走った。
 この時、ドウコクがどう答えるかにもよって、姫矢の運命は微妙に違ってくることになる。
 ウルトラマンに変身して、ドウコクと一戦交えるか、はたまたドウコクの答えによって誰も血を流さず小奇麗に終わってしまうか。


「────人間にしてはまだ面白そうだ。今は殺さねぇ。
 だが、殺さないのは、テメェが俺の下僕になるなら、だ。どうする?」


 ドウコクは問うた。
 姫矢はブラストショットを構えた肩を崩さない。
 彼は殺し合いに乗っていないと言ったが、姫矢には乗っているのと同じに思えた。

 ──彼に協力するということは、殺しの加担をさせられるかもしれないということだ。

 迂闊な判断はできない。

561彼等早朝迄─ロングナイト─ ◆gry038wOvE:2012/06/06(水) 16:36:46 ID:bhTD1QvM0
「何をすればいい」

「この首輪を外す手伝いだ。全員殺して加頭に外させるのもアリだが、あいつがどれほど信用できるのかもわからねえ。
 首輪を多少弱らせれば、後は俺の力でどうにかなる」


 意外にも、殺人の加担はない。
 それは、ドウコクが自らの手で他人を殺せるからであった。
 水切れを起こさない体になった今、敵に対するハンディはなく、ドウコクは一方的に敵を殺し続けることができる。
 わざわざ姫矢に殺させる意味はない。
 まあ、「殺しの黙認」という、姫矢ならば到底果たせそうに無い条件も、ドウコクの中にはあったのだが、姫矢はその暗黙の了解にすぐには気づかなった。


「俺に首輪を外すような技術はない」

「だろうな。誰しもがこんなものをどうにかできるわけはねえ。
 だが、少なくともコイツをいじるには誰かしら協力者が必要だ」

「……」

「そいつを探すのを手伝え。それから、シンケンジャーも探してもらう」

「……シンケンジャー?」

「知らねえか? まあいい。俺について来れば顔くらいはわかる」


 名簿にはシンケンジャーなどという名前はない。
 姫矢も全員の名前を覚えているわけではないが、そんなに目立つ名前ならわかるだろう。あの名簿の中の、誰かの二つ名と考えた。
 やはり、ウルトラマンや仮面ライダー(広間でそう呼ばれた男がいた)と同じようなものだろうか。──そういうニュアンスであると思われる。
 ドウコクは、堂々と街中を戦うシンケンジャーを知らない姫矢に多少の疑問は抱いたが、それも払拭する。彼の超然とした様子は、常識外なものを感じさせた。
 ただの人間とは、やはり少しズレているように思う。


「わかった。お前に協力しよう」


 ドウコクは下僕と言ったはずだったが、姫矢はそれを協力関係と変換したらしい。いや、厳密には聞き流したのだ。
 彼はあくまで平等な関係で行動しようとしているようだ。下僕という言葉は、認識してはいるものの、無視しているらしい。
 まあ、ドウコクも彼をそこまで縛り付けて行動するつもりはない。……いざとなれば、剣でわからせることもできるのである。今はその時ではない。
 ブラストショットを、少し警戒しつつも下げて、姫矢はドウコクの元に歩いていった。
 すると、ドウコクはすぐに姫矢に聞いた。


「……で、聞き忘れてたがテメェの名前は?」

「姫矢准だ。お前は?」

「血祭ドウコク」


 姫矢は、「やはりな」とさえ思うくらいにイメージ通りな名前だった。
 この男の外形に見合う名前は、血祭ドウコクだった。印象的な名前であるために、パンスト太郎の次くらいに頭に入った名前だ。
 そして、この怪物を見たとき、「血祭り」、そして「慟哭」の持つ悪や恐怖のイメージを感じたのである。──頭の中にあった、名簿の名前をそのままこの怪物に投影したのだ。
 やはり、名の通りであった。

562彼等早朝迄─ロングナイト─ ◆gry038wOvE:2012/06/06(水) 16:38:06 ID:bhTD1QvM0

「血祭ドウコク、俺は確かにお前に協力する。
 ……だが、人を殺す気はないし、お前が人を殺すのを黙って見ているつもりもない」


 名を聞いたところで、姫矢はドウコクとの同盟に関し、言いたかったことを口にした。
 気が緩んだのではなく、あらかじめ自分のスタンスを公表しておくことで、後から余計な対立を生まないようにしたのだ。
 姫矢は、自分はあくまで人間の味方であり、人間に闇をもたらす者の敵であるというのを誇ってきた。
 犠牲者は出さない。────かつて、姫矢の目の前で爆撃に死した少女・セラのような犠牲者だけは。
 しかし、対するドウコクは、決して穏やかではない。それを姫矢はある程度覚悟したが、この男がすぐに殺してくることはないだろうと思った。


「あ? 面白えことを言うじゃねえか。
 ……まあいい。そん時は──もし止められるものなら、止めてみろ。止められるものなら、な」


 ドウコクは、やや不機嫌そうな顔になったが、すぐに戻る。
 姫矢ごときに、自分のことを止められるはずはないと思っているのだろう。
 今の実力差からしてみれば、それも確かと言える。ドウコクはシンケンジャー六人を圧倒するだけの腕前の持主なのだから。
 下手をすれば、姫矢はこうして突っかかってくるだけで、実際に行動しない「偽善者」なのかもしれない。それはドウコクにはわからない。
 姫矢がドウコクを止められるなら──という仮定は、まるで現実とは別次元なものである。


「……わかってると思うが、テメェじゃなくても、もっと駒になりそうなヤツは幾らでもいる。
 たまたま目についたからテメェを選んだ。それだけだ。
 だから、もしテメェが俺をあんまり苛立たせるようなら


 ────殺す」


「……わかった」


 姫矢は、そのドウコクの言い方に一瞬だけ、恐怖に顔をゆがめる。
 流石に今のは恐ろしかった。この距離で言われると、なかなかの迫力である。
 戦場カメラマンとして兵器や兵士の前に立ち、ウルトラマンとしてビーストと戦ってきて、大概のことには慣れたと思ってきたはずが、まだ恐怖を感じる余地があったらしい。
 まあ、それも一瞬だった。
 本当なら、大の男でも泣き出すかもしれない。それを一瞬で済ませてしまうだけ、姫矢は優秀だったのだ。
 ドウコクは、この姫矢という男の中にも少しの見所は感じたが──無論、情は投げかけては居ない。
 今、この場で唐突に殺すことだって辞さないが、それでもやはり同盟を組んだ以上は、迂闊に手を出す気はない。明確に実害をもたらす形で、ドウコクに逆らわない限りは。

563彼等早朝迄─ロングナイト─ ◆gry038wOvE:2012/06/06(水) 16:38:57 ID:bhTD1QvM0



 ──それから、姫矢たちは暫く真っ直ぐに歩き、街へと出て、今に至る。





 その後、数時間にも渡ってドウコクが姫矢と行動し続けられた理由は二つだ。

 まず、支給品の公開時に、ドウコクにとって不都合なものや、姫矢にとって不都合なものが見つからなかったことである。
 彼の支給品の中に、自らの武器が無いか──それを、ドウコクは確認した。


 姫矢の支給品は二つだった。
 一つは、ケースに収められたドクロの指輪だ。ドウコクら外道衆の外形にも似つかない、珍妙不可思議な指輪である。まあ現実的には不良がつけるようなものであり、別にドウコクにとって実害あるものではない。
 それからもう一つは、アタッシュケースに収められた大量の箸の袋である。ただのゴミだろう。
 それらに加えて、ドウコクはブラストショットも姫矢の支給品であると認識している。


 まあ、実際の支給品のどちらも、ドウコクには縁のないものだった。期待はずれともいえる。
 この男が昇竜抜山刀を持っていたならば、問答無用でそれを奪っただろうが、これでは奪うものもない。
 ゆえに、ドウコクのそうした行為で関係が乱れることはなく、彼らの同盟関係は問題なく進んだ。


 もう一つの理由は、ここまで参加者に一切会っていないことである。
 シンケンジャーにも、昇竜抜山刀を持つ者にも、十臓にも、アクマロにも、それ以外の者にも、一切会っていない。
 だから、ドウコクが殺しを行う現場を見ることもなく、姫矢は彼の傍らにい続けられた。


 これはドウコクの対する相手にもよるだろう。
 もし、戦う相手が十臓やアクマロならば、姫矢も暫くはドウコクと行動できるのかもしれない。悪と悪の戦いならば、姫矢も積極的に止めはしない。相手の言うことが正しいのならば、ドウコクよりも敵を庇うだろうが、姫矢としてはビーストと等しい悪鬼を更正させる術は持たないし、溝呂木と再会したら、彼のことを倒すつもりでいる。
 救いようのない悪ならば止む無しとも、少しは考えてはいた。──ドウコクもその範囲の中に収まるのだろう。
 何にせよ、誰とも会することなく進んだのは、彼らの関係を安定させてくれた。

564彼等早朝迄─ロングナイト─ ◆gry038wOvE:2012/06/06(水) 16:39:35 ID:bhTD1QvM0


「──誰にも会わねえじゃねえか、姫矢」



 ……とはいえ、姫矢も多少彼の様子に敏感になっていた。
 誰にも会さない──それは、確かに今の状況を穏健に保たせてくれているかもしれない。
 ドウコクが暴力や殺傷を振るう相手がいないのだから。
 だが、一方で破壊者たる彼のストレスを助長してもいるのだ。


「そろそろ、一暴れしたいところだが、この街は随分と静かだ」


 ドウコクは、この街やその近辺で行われた戦いを知らない。
 森に火が上がるのが、彼が通り過ぎ去った後でなければ、彼は喜んでそこに参加しただろうし、シンケンレッドとも戦うことになったかもしれない。
 また、逆方向に進めば、シンケンブルーやシンケンゴールド、昇竜抜山刀を持つ十臓にアクマロと、数多の殺害対象の誰かと出会えただろうということは言うまでもない。
 ある意味、最も安定した「つまらないルート」をドウコクは歩んでいたのだ。


「姫矢、いい加減こんなつまらねえ場所にいるのに飽きるだろ?」


 姫矢は答えなかった。
 つまらないも、面白いもない。彼にとって面白いのは暴力や戦いだ。
 自分の意思に反して肯定することも、ドウコクを刺激する否定の選択肢を選ぶことも、躊躇われた結果、無言を返したのだ。
 確かに、何事も起きずにドウコクとの行動時間を延長され続けるのは、なかなかストレスが溜まる。……いつ殺されるかわからない場所にいる、『戦場』と同じストレスだ。清涼剤もない。
 だから、できれば何らかの形で解放されたいと思っていた。


 ……しかし、姫矢の無言を崩して、ドウコクの口から出た解消法は、彼には受け入れがたいものであった。





「壊すか」





 予想されていた言葉である。しかし、賛同しがたい言葉だ。
 誰もいないとはいえ、街が壊されれば、かなりの被害が出るし、もしかすれば近くに人がいて、怪我人・死人が出るかもしれない。
 日が登りかけ、目を覚まそうという街の中で、ドウコクは苛立ちを解き放ってしまおうとしたのである。


「──待て。もうすぐ放送だ」

565彼等早朝迄─ロングナイト─ ◆gry038wOvE:2012/06/06(水) 16:40:07 ID:bhTD1QvM0


 放送まで、あと三十分もあったが、姫矢はそう言って制止した。
 なるべく明確な理由を提示したうえで、彼を制止せねばなるまい。
 ただ、感情的になって止めようとすれば、彼を刺激するだけなのだというのはなんとなくわかっている。
 だから、いつもの鉄面皮でドウコクに制止の言葉を投げかけて落ち着かせようとした。


「……そういえば、あったなそんなモンが」

「街が崩落する音や、周囲が騒ぐ音に隠れて、放送を聞き逃せば禁止エリアに踏み込むことになるかもしれない。やるならばもう少し待つべきだ」

「チッ。仕方がねえ……」


 そう言って、ドウコクはその場に座り込んだ。
 どうやら、ちゃんと止まったらしい。苛立ってはいるようなので、おそらく放送後に街を壊してしまうだろう。
 まあ、その前にこの街で何かが起これば別だろうが。


(放送までに、また何かコイツを止める方法を考えなければならない……。
 ……いざとなったら、あの力を使うか……)


 ネクサスの力が、彼にはある。だから、今もそれを使うことも思慮に入れている。
 この怪物をどうするべきか……。ネクサスの力で対抗できるのならば、──いや、できないとしても、いざという時は力を使って止めるしかない。 
 比較的温厚なうちはまだ、無闇な刺激をしないが、こうして破壊や殺傷を行う時なら、姫矢は向っていかねばならないのだ。
 確かに、無人の街を壊しても、人は死なないかもしれない。しかし、そこに在る何かを守る──それも立派な光を持つ者の使命である。


 戦場では幾らでも見ることができた。
 焼け払われた家屋、そこに住む人たちの慟哭、瓦礫の下敷きになった子供──。


(まだ三十分ある……。それまでに、あの力を使う以外の形で、こいつを止める方法を考えたい)


 しかし、簡単には思い浮かばなかった。
 残り三十分──彼は、ドウコクをどうすべきかをゆっくりと考えていた。



★ ★ ★ ★ ★

566彼等早朝迄─ロングナイト─ ◆gry038wOvE:2012/06/06(水) 16:40:45 ID:bhTD1QvM0



(まったく……なにがどうなってるんだ? 一体……)


 姫矢の支給品────魔導輪ザルバ。
 それは、意思を持つ指輪なのだが、彼はまだいまいち状況を把握していない。
 何故なら、支給品としてここに入れられたザルバは、その状況を一切伝えられていないからだ。
 広間でも、彼は鋼牙の指にはいなかった。
 彼がケースの中から取り出され、光を見たとき、そこにあったのは見知らぬ男と見知らぬ怪物の姿である。


 怪物はホラーではなかった。
 ザルバにはそれがわかる。元々ホラーであったザルバゆえの能力だ。
 ホラーならば姿や名もわかるし、特性もわかる。ゆえに、彼を様子見にした。
 どんな相手だかもわからない。それに、彼はザルバを見て「指輪か」と言った。彼もザルバを知らないのだ。


 今はやむを得ず指輪のフリをして、婚約指輪でも入れるようなケースの中にいるが、さっさと状況を把握して鋼牙のところに戻りたいものである。
 しばらく、彼は闇の中で我慢して息を潜める。


(鋼牙に質にでも入れられたか……?
 ……そんなわけはないが、まあ良い状況じゃなさそうだな。
 あいつら二人も状況を把握してないらしい。あいつら、一体何者だ……?)



 彼は、再びケースが開けられるときを待っているようだった。
 いっそ、彼らとお喋りして状況を確認するのも悪くなさそうだ。
 だが、ケースの外の声は一切聞こえない。大問題だ。口の軽い魔導輪には、それが特にきつかった。


(……せめてここから出してくれよ。これじゃあ状況も確認できないぜ)


 デイパックが姫矢の背中で揺れる。それに合わせて、ザルバも自分の体が揺れているのを感じた。
 自分はどこに向っているのだろうか。
 鋼牙に近付いているのだろうか。……まあ、少なくとも自分は鋼牙にとって必要だろう。
 魔戒騎士にとっては、魔導具は立派なパートナーだ。


(鋼牙……さっさと会いたいぜ)


 ザルバは、悪い予感を感じつつも、自らの相棒の下への帰還を願っていた。




【1日目/早朝 G−9 市街地】

【姫矢准@ウルトラマンネクサス】
[状態]:健康
[装備]:エボルトラスター@ウルトラマンネクサス、ブラストショット@ウルトラマンネクサス
[道具]:支給品一式、魔導輪ザルバ@牙狼、箸袋コレクション@超光戦士シャンゼリオン
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
0:放送までにドウコクを止める方法を考える
1:人や街を守り、光を持った者としての使命を果たす
2:ドウコクと共に行動する(ただし、場合によっては同盟を破ることも辞さない)
3:弧門やTLTの者と合流する
4:溝呂木を倒す
[備考]
※参戦時期はダークメフィストとの最終決戦直前です。
※制限によりストーンフリューゲルの召喚、メタフィールドの発現は禁止されています。
※ドウコクを自分が戦ってきたビーストと同種とは考えていませんが、未知の生物の総称としてビーストと考えることにしました。
※ザルバが意思を持っていることに気づいていません。
※ザルバを入れているケースは、耐水・耐衝撃・耐爆などの特殊加工がされています。

567彼等早朝迄─ロングナイト─ ◆gry038wOvE:2012/06/06(水) 16:42:03 ID:bhTD1QvM0


【血祭ドウコク@侍戦隊シンケンジャー】
[状態]:健康、少し苛立ち
[装備]:降竜蓋世刀@侍戦隊シンケンジャー
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0〜2
[思考]
基本:その時の気分で皆殺し
0:街でも壊すか
1:姫矢と行動し、首輪を解除できる人間やシンケンジャーを捜す
2:姫矢も邪魔をするようならば容赦はしない
3:昇竜抜山刀を持ってるヤツを見つけ出し、殺して取り返す
4:シンケンジャーを殺す
5:加頭を殺す
6:アクマロ、十臓なども殺す
[備考]
※第四十八幕以降からの参戦です。よって、水切れを起こしません。
※ザルバが意思を持っていることに気づいていません。
※ブラストショットは姫矢の支給品だと思っています。


【支給品解説】

【魔導輪ザルバ@牙狼】
冴島鋼牙から没収されていた支給品で、彼の相棒の魔導具の指輪(鋼牙は左手の中指にはめている)。ホラーの探知や、戦闘時のアドバイスなどに非常に役立つ。
ソウルメタルで構築されているものの、今回は誰でも持てるような細工はされており、魔戒騎士や鋼牙が心を許した相手でなくとも扱えるようになっている。
口調は皮肉屋で威勢が良く、兄貴分のような感じである。CVは影山ヒロノブ。

【箸袋コレクション@超光戦士シャンゼリオン】
第15話「超まぼろしのアレ」に登場。シャンゼリオンを知る者の間で「箸袋」は、「鯖」、「ヒーローオタク」と並んで有名なキーワードである。
闇生物ドゴッチが人質と引き換えに要求した箸袋の束で、一般人からすればただのゴミ。
しかし、箸袋マニアにはたまらないようなレア箸袋がアタッシュケースの中に詰められており、その価値はコレクターたちには計り知れない。

568 ◆gry038wOvE:2012/06/06(水) 16:42:51 ID:bhTD1QvM0
以上で投下終了です。

569名無しさん:2012/06/06(水) 17:10:42 ID:Ek26A41M0
投下乙です

なるほど、そうなったかあ
歪で危うい同盟関係のまま放送直前かあ…て市街地だと?
次に出会う相手次第で地獄だろうなあ
それとザルバ…イキロw

570名無しさん:2012/06/06(水) 20:35:43 ID:icBJ0RTs0
投下乙

究極の闇についで外道衆の長も市街地入りか…
こりゃ血の雨が降るぜ

571名無しさん:2012/06/07(木) 02:44:52 ID:cIHw96QkO
投下乙です。
ほむほむの脱落にドウコウの市街地入り・・・おまけにダグバまでいて本当に市街地とその周辺は地獄だぜw

用語集が追加と更新されていたけど、えりかの項目が悲惨だぜ(褒め言葉)。
元々ひどかったスカイライダーの項目はさらに悲惨になったぜ・・・・・・

572 ◆LuuKRM2PEg:2012/06/07(木) 08:20:26 ID:lso74qKQ0
皆様、投下乙です!

>Avenger
零と結城、最初はどうなるかと思いましたが結構纏まってますね。それに首輪解体への道も少し進みましたし。
とはいえまだまだ遠い事に変わらないですが……

>白と黒の黙示録
おお、まさかほむらまでもここで死亡とは……スカル覚醒には燃えましたよ!
暁も何だかんだでおちゃらけてる事に変わりはないのは流石と言うべきか。
殿とパンストも、これからどうなるだろう。

>彼等早朝迄─ロングナイト─
姫矢さんはまたとんでもない相手と同盟を組まされたなw しかも放送後、また一波乱ありそうな市街地に突入なんて……
そしてザルバも登場したけど、生きていられるかな……鋼牙とはいる場所が正反対だし。

それでは自分も投下を開始します

573悪魔は笑う ◆LuuKRM2PEg:2012/06/07(木) 08:22:09 ID:lso74qKQ0

「お前は、誰でもない……お前はただの人形だ」

 夜よりも遥かにどす黒い暗闇の中で、美樹さやかはその声を聞いた。
 辺りを見渡してみるが、そこにあるのは闇だけで他には何も見あたらない。
 肌に触れる空気は鉛よりもとても重く、氷以上にとても冷たかった。
 声の主を捜すようにさやかは闇の中を見渡すが、そこには誰の気配も感じられない。しかしそれにも関わらず、あらゆる場所から視線を感じていた。それがあまりにも怖くなってこの場から離れようとするが、足が全く動かない。

「誰……誰なの……!?」
「お前は俺の生み出した、美しい人形だ」
「人形……!?」
「そうだ、ファウストという名の素晴らしい人形だ……お前は、俺だけの為に戦う魔人だ」

 闇の中から響いてくる声は、笑っているように聞こえる。

「魔人……一体、何を言っているの? あたしは――」
「お前は光を飲み込む闇だ。お前はこの世界に絶望をもたらすだけの存在だ……ただ、それだけを考えていれば良い」
「何よそれ、どういう事……!?」
「お前がそれを知る必要なんか無い。お前はただ、人形として動いていればいい……それで充分だ」

 一句一句紡がれる度に、さやかは胸がどんどん締め付けられていくような苦痛に襲われ、呼吸が苦しくなった。魔女が生み出す結界のど真ん中にいても、これほどの苦しみは感じた事が無い。
 このままでは、この闇の中に全てを飲み込まれてしまう……本能でそう察した彼女は必死に足掻こうとした。

「ふざけないで! あたしはそんなことの為に生きてきた訳じゃない……! あたしは、あたしは……!」
「だがお前は、闇に心を委ねていた……だからお前はファウストとして選ばれた。見ろよ、今のお前の姿を」

 その声と共に辺りの闇が更にどす黒くなりながら、一気に歪んでいった。足元の暗闇はどんどん盛り上がっていき、やがて人の形を作っていく。
 やがてほんの一瞬で、鹿目まどかへと変わっていった。この手で守りたいと願っていた大切な友達の姿へと。

「ま、まどか……!?」

 しかしまどかが現れても、さやかは喜ぶことなど出来ない。彼女は死人のように虚ろな表情で倒れていたのだから。
 さやかが駆け寄ろうとしたがその直後にまた闇が盛り上がっていき、人の姿へと変わっていく。巴マミ、佐倉杏子、暁美ほむら、志筑仁美、上條恭介……全員、表情から一切の生気が感じられず、瞳から光を失っていた。

「な、何よこれ……どうなってるの……!?」
「これは、みんなお前がやった。ファウスト、お前自身の素晴らしい力でな」
「あ、あたしが……嘘よ、あたしがこんな事するはずない……!」
「そうかな? さっきのお前の姿、最高に生き生きとしていたぞ」
「さっきの、姿……!?」

 その直後、闇の中から足音が聞こえてきた。それに思わず顔を上げた瞬間、さやかは目を見開く。
 暗闇の中から魔人が現れた。血のような赤と、周囲に溶け込みそうな漆黒に染まっている不気味な魔人。ゆっくりと近づいてくる魔人を前にさやかは言葉を失ってしまい、背筋が恐怖で震える。
 しかし、どういう訳かその魔人が他人のようには思えなかった。まるで、初めて会ったような気がしない。そんな疑問に答える者は誰もいなくて、足を進める魔人はゆっくりと腕を伸ばしてきた。

「さあ、闇に身を任せろ」

 そして、魔人の指先はさやかの頬をゆっくりと撫でていった。

574悪魔は笑う ◆LuuKRM2PEg:2012/06/07(木) 08:22:57 ID:lso74qKQ0


「嫌あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 
 絹を裂くような悲鳴を発しながら、美樹さやかは目を覚まして勢いよく起き上がる。
 制服を纏った身体は酷く汗で濡れていて、風邪でもひいたかのように頭痛がした。
 息も絶え絶えなままに辺りを見渡すと、そこは殺風景で荒れ果てた部屋だった。長年手入れがされてないのか、至る所に埃が見える。そして、そんな部屋の中に設置されていた白いベッドの上に横たわっていたようだった。
 一体、何がどうなっているのか……そんな疑問がさやかの中で芽生えた途端、木製のドアが勢いよく開かれる。

「えっ!?」
「君、大丈夫!?」

 思わず身体をピクリと振るわせたさやかの前に現れたのは、見知らぬ一組の男女だった。





 西条凪と共に訪れた教会で五代雄介が見た光景は、凄惨の一言に尽きた。
 壁や窓は無茶苦茶に破壊されているだけでなく、血塗れになった男性や普通の中学生にしか見えない少女が倒れている。男性の方はもう息を引き取っていたが、少女の方はまだ息があったので奥のベッドに寝かせた。
 それから男の人を埋葬した後、少女は悲鳴と共に目を覚ます。
 美樹さやかと名乗った彼女に雄介は何があったのかを尋ねている。彼女は随分と酷い目に遭っていたのかその表情はあまりにも暗く、聞き出すのに時間がかかってしまった。

「それじゃあ、さやかちゃんはその虎の化け物に襲われてからの事はあんまり覚えてないんだよね?」
「……うん」

 雄介の問いかけにさやかは弱弱しく頷く。
 詳しい事はわからないが、魔法少女という存在である彼女はこの殺し合いに巻き込まれた人達を助けようと頑張っていたが、その矢先に出会った虎の怪人に変身する男に理想を否定されたようだ。
 この世界にいる人間は皆、自分達にとって都合の悪い『悪』という存在を排除する為に『正義の味方』という存在を生み出したとその男は騙る。そして、その『悪』が消え去ったら『正義の味方』は切り捨てられてしまう……要するに、正義の味方とは都合のいい生贄でしかない。
 信じていた理想をこうも残酷に切り捨てられてしまうのは、どんなに辛いことか。それもこんなにも若い少女が背負うなんて、とてもやりきれない気持ちが胸に広がってしまう。
 虎の怪人を許すことが出来ない。だがそいつへの怒りを沸き上がらせる前に、やらなければならない事があった。

「あたしって、何の為に戦ってたのかわからないの……あたしみたいなゾンビ、みんなから必要されてないのかな……あたしってただの都合の良い、生け贄なのかな……」
「いいや、そんな事はないよ」

 幽鬼のように生気が感じられない淡々としたさやかの言葉を、雄介は己の言葉で遮る。その顔に、いつもみんなに向けている朗らかな笑顔を作りながら。

「その怪物の言ってたように、確かに世の中には悪い事をする人はたくさんいるかもしれない……でも、みんながみんなそうじゃないと思うよ。君を生んでくれたお父さんとお母さんは、さやかちゃんが生け贄だなんて言ったことがあるかい?」
「それは、ないけど……でも、そんなの綺麗事じゃないの!?」
「確かに綺麗事かもしれない。でも、だからこそ俺は現実にしたいと思ってるんだ。だって、その方がみんな幸せになれるよね。さやかちゃんも、さやかちゃんの友達みんなも!」
「だけど、あたしは幸せになる権利なんてないのよ! だってあたし、化け物なんだもん!」
「さやかちゃんはゾンビなんかじゃない!」

 悲痛なさやかの叫びを、雄介は無理矢理遮った。

「確かに君の身体は普通の人とは違っちゃったかもしれない。でも、君の心は君のままだ! もしもさやかちゃんが本当に化け物だったら、俺達とこうして話していないからね」

 魔法少女の身体はゾンビだとさやかは言っていたが、雄介にはそう思っていない。
 ソウルジェムという宝石が砕かれない限り、どれだけの傷を受けようが戦うことが出来る。確かにそんな身体にされたら誰だって嫌になるだろうが、それでも元々の心だけは変わらないと信じたかった。
 雄介が希望を取り戻させようとする一方で、凪がさやかの前に立つ。

575悪魔は笑う ◆LuuKRM2PEg:2012/06/07(木) 08:23:26 ID:lso74qKQ0
「美樹さやか。私はあなたがどんな存在であろうと、誰かに危害を加えるならば容赦をしないわ」
「えっ……?」
「ただし、その力で人類に牙を向けないのであれば私はあなたを保護するわ……それを肝に銘じておきなさい」

 鋭い目つきと高圧的な声は相変わらずだが、さやかに銃を突きつけていないから雄介は安心する事ができた。
凪は厳しいのだろうが、その根底には人を思うが故の優しさがあるからこそ、敢えてこのような態度を取っているのだろう。だから、雄介も凪を信頼する事ができた。
 思わず礼を言いそうになったが、凪はすぐさま踵を返して纏めていた荷物を手に持つ。その中には異様に重そうな剣――エンジンブレード――も含まれていたが、たくさんの訓練をしてきたらしい彼女はそれを何の苦もなく持っていた。

「あまりここでのんびりしていられないわ……そろそろ北の村に向かいましょう。そこなら、誰かいるでしょうから」
「わかりました、西条さん! さやかちゃん、もう大丈夫?」
「……うん、何とか大丈夫」
「そっか、でもあんまり無理をしないでね」

 ゆっくりとベッドから立ち上がるさやかの手を、雄介は優しく支える。彼女はこれまで魔法少女として精一杯頑張ってきたのだから、これ以上無理をさせたくはない。それにさやかと同じ魔法少女だって、危険な目に遭わせたくなかった。
 もう、ここで殺されてしまった男の人や見せしめにされた人達のような犠牲は出したくない。その決意を胸に雄介は足を進めるのだった。





(まどか達まで、こんな事に巻き込まれる……それにどうして、マミさんの名前が書いてあるの?)

 五代雄介や西条凪の二人と共に歩きながら、美樹さやかはぼんやりと考えていた。
 参加者全員に配られた名簿の中には、大切な友達の鹿目まどかや知っている魔法少女達の名前が書かれている。しかもその中には、あの巴マミの名前もあった。
 同姓同名なのかと一瞬だけ思った直後、加頭順は優勝したらどんな願いでも叶えると言っているのを思い出す。もしかしたらそれは本当なのかと思ったが、死人が生き返るなんてあり得るわけがない。あのキュウべぇと契約でもしない限り出来るわけがないだろう。

(……とにかく、あたしの知っているマミさんにせよ同姓同名の他人にせよ、守らないといけないよね……)

 ここに書かれているみんなが、自分の知っているみんなであって欲しくないとさやかは願う。みんな、こんな事に巻き込まれていいわけがないのだから。

(五代さんや西条さんだって、あたしを励ましてくれたから……頑張らないといけないよね……?)

 何の為に戦えばいいのかはわからないが、それでも二人はこんな自分を諭してくれたのだから力を尽くさないといけない。半分自棄になってしまい話してしまった、一般人から見れば現実味が感じられない魔法少女の事を全て信じていた。だから、今はグリーフシードを使う。
 正直、変な化け物が出てくる悪夢に魘されてしまうくらいに辛いけど、まだ倒れてはいけない気がした。雄介と凪の二人がいる限り。

(あんな化け物は、ただの夢よ……そうよ、ただの悪い夢なんだから)

 自分自身にそう言い聞かせているが、美樹さやかはまだ気づいていなかった。彼女の背後に生まれている影が、不気味に笑っている事を。
 そして、彼女の中に宿る魔人(ファウスト)という名前の闇は、ようやく生まれた微かな希望や光も飲み尽くそうとしている。それに気付く事の出来る者は、ただ一人しかいなかった。

576悪魔は笑う ◆LuuKRM2PEg:2012/06/07(木) 08:24:03 ID:lso74qKQ0





(人類に牙を向けるなら、か……やっぱりお前は面白いな、凪)

 既に三人が去った廃教会の中で、溝呂木眞也は凄惨な笑みを浮かべている。
 やはり、どれだけ綺麗事を言おうとしても、西条凪の心からは溢れ出んばかりの憎しみを感じた。それでこそ、仲間にする価値がある。
 凪はあの美樹さやかとかいう小娘を守ると嘯いているが、もしもその中にいるファウストの存在に気付いたら、一体どうなるか? そして、自身が諭した少女が化け物であると知った五代雄介はどんな闇を見せるのか? 考えれば考えるほど面白くなってしまう。
 あの三人はこれから北にある村に向かおうとしている。もしもそこに別の参加者が居るなら、このデスゲームは更に面白くなるはずだった。しかも、先程殺した二人組の荷物をわざわざ回収してくれたのだから、かさばる事もない。何から何まで都合が良かった。

(そしてファウスト、お前は俺の人形だ……だからもっと多くの希望を持ってくれよ)

 二人に支えられた事でさやかの瞳に希望や光が宿っている。
 今はまだ、それが生きる力となっているだろうが再び絶望に触れれば、強い暗闇へと変わるに違いない。その時が来るのを待っている方が、ファウストとクウガで潰し合わせるよりずっと面白かった。既に完成されている暗闇だろうと、使い方次第ではどうにでもなる。

(俺がお前を面白くしてやったから、その期待に応えてくれよ……待っているからな)

 そんな期待を胸に宿らせながら、悪魔は誰にも気付かれないように足を進めたのだった。


【一日目・早朝】
【F-2/山間部】
※照井竜の遺体は五代雄介によって埋葬されました。
※また、照井竜と相羽ミユキの支給品は西条凪が回収しています。


【溝呂木眞也@ウルトラマンネクサス】
[状態]:健康
[装備]:ダークエボルバー@ウルトラマンネクサス、T2バイオレンスメモリ@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜2個(確認済)
[思考]
基本:より高きもの、より強きもの、より完璧なるものに至り、世界を思うままに操る。
0:西条凪達を追跡する。
1:姫矢准からウルトラマンの力を奪う。
2:その他にも利用できる力があれば何でも手に入れる。
3:弱い人間を操り人形にして正義の味方と戦わせる。
4:西条凪を仲間にする。
5:ファウスト(さやか)の様子を見るのも面白い。
[備考]
※参戦時期は姫矢編後半、Episode.23以前。
※さやかをファウストにできたのはあくまで、彼女が「魔法少女」であったためです。本来、死者の蘇生に該当するため、ロワ内で死亡した参加者をファウスト化させることはできません。
※また、複数の参加者にファウスト化を施すことはできません。少なくともさやかが生存している間は、別の参加者に対して闇化能力を発動することは不可能です。
※ファウストとなった人間をファウスト化及び洗脳状態にできるのは推定1〜2エリア以内に対象がいる場合のみです。

577悪魔は笑う ◆LuuKRM2PEg:2012/06/07(木) 08:25:09 ID:lso74qKQ0
【西条凪@ウルトラマンネクサス】
[状態]:健康
[装備]:コルトパイソン+執行実包(6/6)、T2ガイアメモリ@仮面ライダーW、アクセルドライバー@仮面ライダーW、ガイアメモリ(アクセル、トライアル)@仮面ライダーW、エンジンブレード+エンジンメモリ@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式、ガイアメモリ説明書、.357マグナム弾(執行実包×18、神経断裂弾@仮面ライダークウガ×8)、照井竜のランダム支給品1〜3個、相羽ミユキのランダム支給品1〜3個、テッククリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード
[思考]
基本:人に害を成す人外の存在を全滅させる。
1:五代雄介、美樹さやかと共に教会に向かう。
2:バイオレンスドーパントを倒す。
3:孤門、石堀と合流する。
4:相手が人間であろうと向かってくる相手には容赦しない。
5:五代雄介、美樹さやかの事を危険な存在と判断したら殺す。
[備考]
※参戦時期はEpisode.31の後で、Episode.32の前
※所持しているメモリの種類は後続の書き手の方にお任せします。


【五代雄介@仮面ライダークウガ】
[状態]:胸部を中心として打撲多数
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3個(確認済)
[思考]
基本:出来るだけ多くの人を助け、皆でゲームを脱出する。
1:西条凪、美樹さやかと一緒に北の村へ向かう。
2:西条凪と共に協力者を集める。
3:バイオレンスドーパントを止める。
4:人間を守る。その為なら敵を倒すことを躊躇しない。
5:虎の怪人(タイガーロイド)を倒す。
[備考]
※参戦時期は第46話、ゴ・ガドル・バに敗れた後電気ショックを受けている最中


【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、裏にファウストの人格があります
[装備]:ソウルジェム
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0〜2
[思考]
基本:自分の存在意義が何なのかを教えてほしい
0:今は五代さんや西条さんについていく。
1:とにかく今は二人と一緒に頑張りたい。
2:どうして、まどか達の名前が……?
[備考]
 ※参戦時期は8話、ホスト二人組の会話を聞く前です。
 ※『癒し』の魔法の効果で回復力が高まっており、ある程度ならば傷の自然回復が可能です。
 ※正義の味方として戦う事が本当に正しいのかと絶望を覚えていますが、少しだけ和らいでいます。
 ※溝呂木によってダークファウストの意思を植えつけえられました。但し、本人にその記憶はありません。
 ※溝呂木が一定の距離にいない場合、彼女がファウストとしての姿や意思に目覚めることはありません(推定1〜2エリア程度?)。ただし、斎田リコのような妄想状態になる可能性はあります。

578 ◆LuuKRM2PEg:2012/06/07(木) 08:27:09 ID:lso74qKQ0
以上で投下終了です。それと現在位置は【F−2】の間違いです、失礼致しました。
今回もお手数ですが問題点などがありましたら、指摘をお願いします。

579名無しさん:2012/06/07(木) 10:16:21 ID:DTYI4W2oO
投下乙です。ダメだ、放送聞いて即円環、狂気の残念さやかちゃんでした!になって三人ポカーンな未来しか……w

580名無しさん:2012/06/07(木) 17:56:20 ID:5muiQTz.0
投下乙です

これは放送後がどうなるか気になるw
しかもその時に傍にいるのがこの三人なのがまたw

これで放送前で残ってるのは天道あかね、梅盛源太、腑破十臓のパートだけかな?
黎明から早朝までじっとしてる連中とは思えないし別れるにしても行動を共にするにしても理由いるぞ

581名無しさん:2012/06/07(木) 18:26:23 ID:ncrKh5qg0
投下乙ー
さやかちゃん立ち直ったんですか、やったー!
放送でまどかとマミさんの名前呼ばれるじゃないですか、やだー!
しかも別人格が潜んでるじゃないですか、やだー!

後、大道パートも必要だぜ

582名無しさん:2012/06/07(木) 20:01:12 ID:BBrln/iMO
それでも、五代さんがいてくれるだけまださやかちゃんは救いがあると思う。
地獄に突き落とされたスバルと比べれば……

583名無しさん:2012/06/07(木) 21:30:31 ID:DTYI4W2oO
>>582
仮にノーザ倒して浄化しても間違いなくロボロワの二の舞だしなぁ、マジカワイソス

584名無しさん:2012/06/09(土) 03:54:46 ID:YvxwomdAO
最後まで救いのないままだったら、このスバルワターセは本気でロボロワと並ぶかそれ以上のスバルカワイソスになれるかもしれん・・・・・・

関係ないけど今、このロワで人気投票とかやったら、誰が一番になりそうかな?

585名無しさん:2012/06/09(土) 13:01:36 ID:MmH13qGs0
マジレスすると暁じゃね?

586名無しさん:2012/06/09(土) 13:57:10 ID:wN.i30cY0
この人しかいないだろー

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´: : : : ` ヽ、        , -─'`ヽ、_     |  |           ノ / / |
、: : : : : : : : ヽ , - ‐ ' ´‾`l      _二ニヽ'ー‐'---、______ , |  |/`ー- 、            ,-‐,
ノ,r、: : : : : : : \: : : : : : : : :',-‐'l´‾             |  |    ‾` 'ー‐- =_ヽー─- 、    ィ´: ': : : l
/ : l: : : : : : : : : : \: : : : : :l  |                   |  |           ‾`l: : : : : `ヽく: /: : : : l
スカイライダー

587名無しさん:2012/06/09(土) 18:16:10 ID:MmH13qGs0
>>587
突っ込まんぞ…
それはレンゲルだっていうことは絶対に突っ込まんぞ…

588名無しさん:2012/06/10(日) 11:44:02 ID:qx0BNb9QO
レンゲルも宙に浮けたり、公式(二次創作も?)からの扱いが酷いのは似ているんだけどねw

個人的にはスバルに1票。
このロワの鬱の代表格にして、今後も大暴れしてくれることに期待アリ。あとは同情のため。

589名無しさん:2012/06/10(日) 13:00:50 ID:lrD.jh920
俺は票を入れるのならスバルだが今後に期待してるのはティアナだな
メモリの汚染もあるがどこまで堕ちるのか気になる

590名無しさん:2012/06/10(日) 13:16:10 ID:31w2SiXAO
現時点なら最期の熱かったほむほむかなぁ……って中の人スバルと一緒だw

591名無しさん:2012/06/10(日) 13:45:46 ID:NZqGN.36O
ラブ、沖さん、杏子みたいに後を託されたキャラ達の今後が気になるな
みんな、死んでいった人達の願いを叶えられるかが楽しみだ

592名無しさん:2012/06/10(日) 14:48:53 ID:HSURJb420
いっそ放送終わったら人気投票しようぜ

593 ◆gry038wOvE:2012/06/10(日) 15:50:31 ID:SS15e7Vc0
ただいまより、投下を開始します。

594 ◆gry038wOvE:2012/06/10(日) 15:53:07 ID:SS15e7Vc0


 月影ゆり──キュアムーンライトは、只一人で歩いていた。
 先ほど灯台から見えた二人の男女の事を少しだけ考えながら──。




 そう、彼女はあれから──二人を追わない、という決断をしたのである。




 彼女も一度は彼らの下に向おうとした。当然、その判断の場合、彼らへの殺傷意思が伴っていた。殺す気概も覚悟もあるつもりだったし、己の願いを叶えようという思いは確かに強かった。
 ただ、それを目に付くもの全ての殺害という形に変換するのは、彼女らしくなかったのだ。もっと計画性のある判断をしていくのが彼女である。
 当初の予定を狂わせると、後々ろくなことにならない……。
 眼前の光景にいちいち左右されているようでは、目的は遠のくのみだと、彼女はここで判断したのだろう。


 更に、彼女自身も薄々気がついているだろうが、精神面での理由もあった。
 先ほど気概や覚悟などとは言ったが、あれから何となく気疲れのようなものがあり、できるのならああして数秒でも生きている姿を凝視した相手を殺したくはなかったのだ。もっと、情の移る時間すら無いほど一瞬で殺してしまうのが、彼女にとっても理想だった。
 彼女とて、血の通った人間である。生きているものを見てしまうと、迷いや躊躇いが出る。生きた姿を曝した相手が何も言わず、何も感じず、何も考えぬ死体となるのを見ることに、少なからずトラウマが生まれてしまうだろう。


 ──いや、そんなトラウマは小一時間前にえりかの死によって、植えつけられていた。それは彼女自身も心のどこかでわかっている。


 何にせよ彼女は、彼らを殺すには少し長く彼らを見つめすぎた。彼らの思い、彼らの目的、彼らのこれまでの生き方を、無意識のうちに……少しずつ想像してしまったのだ。
 あの男もあの女も、誰かの子に生まれ、父母に愛され育てられた。姉妹、兄弟がいるかもしれない。立派な夢があるかもしれない。楽しい思い出を数多く抱えているかもしれない。
 そんな彼らを────殺す。
 そうすれば血が出る。体は氷のように冷たくなる。目から生気はなくなる。土に埋められて、這い出ることもできなくなる。
 
 彼女たちの生活が勝手な想像であっても、何かがゆりを躊躇わせる。
 そのせいで、少しだけ彼らから遠ざかりたい気分になったのである。

 それは「逃げ」、かもしれない。 
 だが、体面上は「逃げ」ではなく、「当初の計画に従っただけ」であった。
 もっと、突発的に……思いっきりなら、まだできる気がした。

595 ◆gry038wOvE:2012/06/10(日) 15:53:34 ID:SS15e7Vc0

 ……先ほど行った「殺人」という行為には、不快感しか残っていない。
 「何故あんなことをしたのだろう」、「あそこまでするほど父親が大事だっただろうか」と、頭の中で願いが希薄になったような感覚にも陥った。
 色々と考えすぎたのだ。後悔の念と譲れない願いの二つを両立するのは、彼女のストレスを加速させる。
 だから、あそこにいた男女の方に真っ直ぐ向かいたくは無かった。だが、向わないと決めても尚、それが正しい判断かどうかわからずにストレスは溜まる一方だ。
 後悔の念が走り出せば、願いの念が必死になる。それが焦りを生む。逆もまた然り。どう判断しようと、彼女の精神は蝕まれていくのだ。



(余計なことを考えては駄目ね……何も考えずにやるしかない……)



 勿論、覚悟を失ったわけではない。これからも機会があれば、次々と殺すだろう。ただ、それは間近で、会話一つ交わさないような相手に限りたかったのかもしれない。
 
 あの時──ダークプリキュアを撃退した直後。
 深く息を吸い、深く息を吐くような感覚でないと、えりかは殺せなかった。これからもきっと、それと同じような、気合の入れ方が必要になる。何も考えない一瞬を作らないと、彼女に人は殺せない。
 やる時は、「月影ゆり」でない何かになる……そんな一瞬が必要で、それを作るのは少し思い切る必要があった。
 彼女はこれからも狂うことはできないだろう。毎回のように、このような気持ちを持って殺さなければならない。
 だから、一人一人の命の重みを背負いながら、しかしその重さに潰されず、感情を殺したフリをしながら、人を殺さなければならない。


 自分がもっと冷酷だったらば……と思う。


 或いは彼女が冷酷だったらば、彼らを騙し味方に引き入れるというのも良かっただろう。先刻のダークプリキュアの一件でも、独力で勝ち残る厳しさを思い知らされている。えりかがいなければ、ダークプリキュアに殺されていたかもしれないので、仲間を作ることも、場合によれば必要だとは思っていた。
 それでも完全に冷酷ではない彼女には、「裏切りの痛み」をわざわざ負いたくない気持ちがあった。


 確かに彼女には今、他人を犠牲にしても叶えたい願いはあったが、その為にわざわざ殺される相手に辛い思いをさせたくはない。信じていた相手に裏切られて死ぬ人間の気持ちは、感じさせたくなかったのである。
 できるのなら、死んだと気づかないくらいに、一瞬で殺してしまうのが良い。そうすれば、相手は痛み苦しむことなく、死ぬことができる。
 それは、ゆりの精神衛生の面でも重要なことだ。

596 ◆gry038wOvE:2012/06/10(日) 15:54:14 ID:SS15e7Vc0


 現に、ゆりはえりかの死には多少の心の揺らぎを感じていた。


 えりかという少女を見てきた。えりかを愛する彼女の姉の姿も見てきた。
 幸せな家庭の姿を、彼女は知っていた。
 その明確なビジョンが、先ほどの二人にも投影されたのだろう。だから、一瞬が行動を躊躇わせ、彼女に全く逆の方向を向かせた。



(──早く、忘れないと)



 どういうわけか、願いが希薄になる感覚が襲うことはあっても、えりかという友人への執着が希薄になることはなかった。いや、むしろ彼女の在りし日の姿は、えりかの中で増大し続ける。
 それくらいに、彼女の良心は生を保とうとしていたのだろう。本人は必死で、それを殺そうとしているのだ。
 だからこそ、「願いのために人を殺す」────その行動方針は、彼女の深く深くにインプットされ、目的が希薄になろうと、ロボットのようにその行動だけを果たすように動いていた。
 そうしたのだ。この殺し合いが始まったときに。
 殺しはやめない。やめられない。何があっても。


 キュアムーンライトは強くなりつつある日の光を浴びて道を歩いていく。
 隣を、亡霊が歩いているような感覚がする。


 真横を見た。何もいない。
 しかし、そこに何かがいる気がする。
 人じゃないし、敵じゃない。
 そこにあるのは空気の塊だったが、人の形を辿ったように見えてしまう。



『ユリサン……』



 声が聞こえる気がする。
 いや、厳密には念のようなものだ。
 耳に響いてくる感じではなく、頭に響いてくるような感じだ。
 だから、耳を塞いだところで、声が縮まることはないだろう。
 それは自分を責め続ける。



『酷イヨ……ユリサン……私ヲ……殺スナンテ……』



 早朝の道で、亡霊が語りかける。
 来海えりかの声。────とはまた違い、喉でもひしゃげたかのような声がゆりの頭に直接語りかける。だが、それはえりかなのだろう。正しくは、ゆりの中のえりかだ。
 ゆりは亡霊の声を聞いても動じなかった。
 仮面でも被ったかのように冷徹だった。
 それが精一杯のやせ我慢で、このえりかこそが自分の弱い部分なのだというのは気づいているだろうが、それを無視し続けた。
 心の中で、再び「ごめんなさい」と謝ろうとしたが、その直前に、遮るかのようにえりかは言う。



『…………許サナイヨ?』



 そうだ。
 謝ったって、許してくれるはずがない。
 信じたのに、一緒に戦ったのに……そんな思いを無視して殺すなんて、ゆりならばやりきれない。
 だから、願わくば、つぼみやいつきは、ゆりの知らないところで勝手に死んでいてほしい。
 そうすれば、彼女らを殺す必要も、謝る必要もない。

597 ◆gry038wOvE:2012/06/10(日) 15:54:58 ID:SS15e7Vc0


 みんな、勝手に死んでしまえばいい。
 そうすれば、ゆりにも殺す痛みを背負わない。
 毎日、何人も人が死んでいるが、それを知らなければ笑顔で生きていける。それと同じだ。
 目の前で死ななければ、感慨を抱くのはより短い時間で済む。
 つぼみも、いつきも、ダークプリキュアも、先ほどの男女も、このままゆりの知らないところで死ねば、ゆりは憂鬱な気分にならない。


 考えてみれば、えりかがゆりに殺されるというのは最悪のパターンといえる。
 えりかだって、あのまま他の人間に殺されることができたら幸せだろう。同じ死にしても、それならばまた重みが違う。
 ゆりだって、「仲間を自分の手で殺した」……という事実を背負わずに、少しはマシな気持ちで優勝を狙うことができる。


 だが、それでもゆりは現実にえりかを殺してしまった。
 その手に握った剣は、えりかの血を吸って真っ赤に染まっていた。
 この事実は決して消えない。
 そして、戻ることはできない。


 だから────


 
「あなたに会わなければ、最高だったわ」



 眼前の空気を振り払うように、ゆりは気配を感じる場所を破邪の剣で突き刺した。
 周りの空気が、ボワッと吹き飛ぶようだった。
 同時に、ゆりの中で、何かが吹っ切れたような気もする。どこか心地よかった。


 ────やるしかない。



 そう、つぼみやいつきであっても…………。
 自分の中の弱さが、あらぬ妄想や考えを生み出してしまった。
 それに、ゆりははっと気づいたのである。
 だから、それがもっと大きくならないうちに……殺した。
 さっきまでの考え方は、全部雑念だ。ただの甘えだ。
 これがある限り、前には進めない。後には退けないので、同じ場所に突っ立っているだけになってしまう。
 前に進むために、迷いは断ち切るしかない。

598 ◆gry038wOvE:2012/06/10(日) 15:55:30 ID:SS15e7Vc0


 ゆりは、これからこの「えりか」が何度現れようと、殺すだろう。 
 また何度か迷うたびに、彼女が現れる。それを、ゆりは許さず殺してしまう。
 もし、これからつぼみを、いつきを殺してしまったら……今度は彼女たちもえりかと一緒にゆりの前に現れるだろう。


 それが現れたら、ゆりはもう躊躇わない。躊躇うことさえできなくなる。


 より強い覚悟で、それをねじ伏せ殺す。
 来海えりかはゆりの中では二度死んだ。
 二度殺した。
 こうして慣れていけばいいのだ。


 ……もう間もなく放送だ。禁止エリアが報じられ、えりかの名前が呼ばれる。それに加え、他の知り合いの名前が呼ばれたら最高に安心できるのだが、そんな願望に甘んじるつもりはない。


 理想の形を捻じ曲げる。
 つぼみやいつきを自分の手で殺す────それが、本来の理想なのだと信じ込む。
 もし、彼女たちに会わないのが理想だと思い続けて行動したらば、彼女たちに出会ったときに、今までの思いがゆりの行動を停止させるだろう。
 だから、会った時の保証として、「つぼみやいつきは自分の手で殺す」と信じこみ、願いながら行動していく。
 勿論、それは彼女自身の本心ではない。
 ただ、もし彼女たちに会った時、それを不幸と思わないための理由を作りたかった。



 ──私は、会いたくなかったわ


 あの時、えりかに向けて放った言葉がゆりの本心だった。そして、その時はそれを表に出していた。
 だが、もうそうやって甘い考えにその身を浸すことはしない。
 積極的に、仲間を殺す気持ちを持っていなければ、願いなんて遠のくだけだ。
 もし、またこの感情が現れるようなら、何度だって……。


 まあ、何にせよ、あと数分経って、放送でえりかの名前が呼ばれれば、またゆりは何かしら動揺するかもしれない。
 だが、そうして迷いが生まれれば、それを打ち砕いて進む。
 そんな迷いは、しらみつぶしに消し去り、優勝へと近付いていくしかない。


 そうすれば、願いはゆりを迎えてくれるはずなのだ。





★ ★ ★ ★ ★

599 ◆gry038wOvE:2012/06/10(日) 15:56:17 ID:SS15e7Vc0




 一方、その頃──。


「────美希ちゃん、一度休もう」


 弧門が言う。その提案は、何も疲れたから、というわけではない。
 彼はただ、時刻を見て判断したのだ。時計は、間もなく定時放送の時間がやってくるということを示していた。加頭により教えられたルールは、しっかり弧門の頭の中に残っていたので、先ほどから彼は時計をみながら行動していたのだ。
 放送が近付いたということは、デイパックの中から筆記用具やマップや名簿を出し、与えられた情報にチェックをつける必要があるということである。彼はすぐに名簿を取り出し、座り込んでチェックの準備をした。


(死んだ人の名前にチェックをつけるのか……)


 彼は、少し厭な気分になる。ただ、情報は多い方が良い。
 死者の名前の上から線を引いたりはしない。ただ、名前の横に○をつけるだけだ。
 ──その行為ですら、良い気分はしないだろう。
 人の生死を、○で片付けてしまうのだから。


「荷物を出して」


 弧門は、呆然と立っている美希にもそう指示した。そこで、弧門の様子を見てようやく美希は放送のことを思い出したらしい。失念していたのだろうか。慌てて名簿を取り出す。
 マップは、ポケットに入れてあったのだが、名簿は使わないと思ってデイパックの方に入れていた。
 彼女は、それを地面に広げた。ここは土の道で、そこに紙製の名簿を置くのはやや不安定といえる。まして、エンピツなどで書けるのだろうか。
 だが、屋外で行動している以上は止むを得ない。こういう時に行動しやすいから、人は市街に向うのだ。


「放送か……。死んだ人の名前なんて、呼ばれなければいいですね……」

「うん。誰の名前も呼ばれないと良いよ」


 人が死ぬ────それは悲しいことだ。
 弧門は仕事柄何人もの人の死を目撃してきたし、その遺族の嘆きも目撃してきた。
 動物園で出会った家族。弧門自身の恋人。戦いの後、姿を消した(はずだった)姫矢と溝呂木。身近なところだと、そんな人たちの顔が浮かぶ。
 特に、弧門自身も、斎田リコという恋人とは特別な関係だったから、その死に慟哭した。
 あの死を乗り越え、自分は成長したのだと思うが……それでも人の死は防がねばならない。人が人の手で殺されるなんてあってはならないことだ。

 「死んだ人」というキーワードのせいで、リコという女性のことを思い出す。
 ……あの時、リコが死んでいなかったら、と弧門はいまだに思うことがある。
 何度、彼女との未来を想像したことだろうか。
 妄想だといわれるかもしれないが、彼はそれくらい彼女を愛しく想っていた。
 あの幸せが打ち砕かれた時────幻想なのだと思い知らされた時、絶望の淵で溝呂木と等しくなりかけたこともある。
 あそこから乗り越えられたのは奇跡だと思った。一歩間違えば、いや、髪一本間違えば、弧門はナイトレイダーに仇なす存在となり、おそらく消されていた。
 弧門は、その時のことを思い出すと──ここで死んだ人の死から乗り越えられなくなって、壊れてしまう人もいるのではないかと心配する。
 美希もまた、同じだ。彼女だって、そうなる可能性はあるだろう。


「……大丈夫?」


 弧門が美希の方を見ると、彼女の手はこれ以上ないくらい肩が震えていた。手先も、エンピツを持つことさえできなくなった。
 出会った時ですら、彼女は平静を保っていたのに、こうして放送が近付いて、彼女は突然に震えだしたのだ。
 弧門はその光景に驚いたが、無理もないと思った。
 彼女はまだ年端もいかない少女だ。──まだ30にも満たない弧門ですら、「若い」と感じる年代である。友達が三人もここにいるのに、彼女たちを心配しないはずがない。

 要するに、緊張しているのだ。
 友達の名前が、加頭の声で呼ばれる──そんな「厭な未来」を想像してしまう。
 そして、場合によってはそれが現実になってしまうのだ。
 だから、それが怖くて怖くてたまらない。────それで、泣きそうなくらい震えていた。

600 ◆gry038wOvE:2012/06/10(日) 15:56:56 ID:SS15e7Vc0


「へ……平気、です……」


 歯もガタガタと音を立てていて、あまり平穏そうではなかった。
 変に放送などを意識させてしまったことを、弧門は後悔する。
 彼女が平静を取り戻すのは、あと数分後に、「彼女の知り合いの名前が呼ばれなかったとき」だ。
 弧門としても、姫矢や凪や石堀の名前が呼ばれれば辛いだろうが、こうなるほどではない。
 ……あらゆる経験を詰み、彼はよくも悪くも大人になったのだ。
 だから、純粋にこういう風に仲間の心配をして震える美希を、多少羨ましくも思った。なんだか、自分が鉄にでもなったような気がしてしまう。
 ナイトレイダーとして、ある程度合理的な判断ができるようになってしまったのだ。
 それを悪いことだとは思わないが、少しだけ寂しい気もした。


(姫矢准、西条凪、石堀光彦……溝呂木眞也)
(桃園ラブ、山吹祈里、東せつな、ノーザ)
(相羽タカヤ、相羽シンヤ、相羽ミユキ)


 ここに来てから、どういう形でも縁のある名前を思い出した。
 彼女には、この中の三つの名前が際立って光っているのだろう。
 同じように命は重いが、身近な人間はまた特別である。そういう風に思うことは、何も悪いことじゃない。それが人を思い遣るということなのだから。


 弧門は、彼女の様子をまたチラリと見る。様子が好転したようには見えない。彼女は名簿に視線を向け続けるが、先ほどから同じ場所を見続けているような気がした。
 凄く虚ろだった。彼女の頭の中には、三つの名前が駆け巡っているのだろう。それで、彼女は本当に涙目だった。
 仕方がないので、弧門は少し息を吸う。
 こうして言うのも恥ずかしい気もするが、それでも彼女をどうにかしてあげようと、強く言ってみた。


「諦めるな!」


 彼女は、突如として発せられた弧門の言葉に、驚愕の色を隠せない。
 弧門の温和な口調とは、少し違っているように見えたからだった。
 しかし、それは弧門にとって、最も印象深く残っている激励なのである。
 弧門は、戸惑ったような顔の美希を見て、少し表情を崩し、言う。これからお互い辛い現実に直面するかもしれないので、笑ったりはしなかったが、それでもその表情は美希を少し安心させた。


「……僕が昔、川で溺れた時、誰かが助けてくれて、そう言ってくれたんだ」

「誰か……?」

「その人が、誰なのかはわからない。でも、僕はその人を目指してレスキュー隊に入って、今はナイトレイダーにいる。そして、僕はその人の言葉を今も胸にしまっているんだ。
 すごく、単純な言葉だけど、だからこそ僕の胸に残り続けた……どんな時も」


 その「誰か」の正体に彼が気づくのは、もう少し後の事になる。
 だから、彼の幼少の記憶の中では、その男の姿はぼかされていた。
 それでも、彼の中では、ずっとその男の言葉こそ生きる指針で、その男のようになることこそが彼の目的だったのだ。
 その男がどうしているかはわからないが、今も弧門の中で、その男の行動は生き続けている。
 その男のように、弧門は多くの人に希望をあげたいのだ。


「……これから友達の名前が呼ばれるかもしれないっていうのは、どうにもならないかもしれない。もう決まったことかもしれない。
 でも、まだはっきりとわからないことを諦めて、絶望しちゃいけないと、僕は思う」

601 ◆gry038wOvE:2012/06/10(日) 15:58:27 ID:SS15e7Vc0

 弧門は諭すように言った。
 自分自身への督励を、彼女にも分け与えたかった。
 少しでも彼女への希望となってくれれば……という思いで、弧門は言った。
 もう彼女の友達が死んでいるのなら、それは覆らないが、まだそれは彼女たちの耳に届いていない。ならば、希望はあると思う。……強引と思われるかもしれないが、自分の中にない情報で絶望するなど、不毛だと思ったのだ。
 それをわかってくれるかはわからないが、直後に彼女が返答してくれた。


「……そうですね」


 彼女の心のしこりが消えたように、彼女は返す。
 その顔は、弧門の先ほどの遠慮とは違って、笑顔に近かった。
 自分たちは大人と子供なのだ、と改めて思う。
 なんだ、笑顔を受けるのは気持ちがいいじゃないか────。
 不謹慎だから、配慮が要るから、と表情を崩せなかった先ほどの自分は、随分大人になってしまったのだな……と思う。
 そうだ、これでいいんだ。


「どんな時でも、希望は忘れない。……それを、少しだけ忘れてました」

「そうだよ、希望は捨てちゃいけない。希望を捨てずに、少し待ってみるんだ」


 放送が始まる秒読みの段階に入った──。
 弧門と美希には、まだその先に何があるのかはわからない。
 二人にとっては、知り合い全員の名前が呼ばれるかもしれなければ、知り合いの名前が誰も呼ばれないかもしれないのだ。
 死人をまだ見ていないので、死人が一人も出ていないかもしれない。逆に、二人は他に誰にも会っていないので、六十四人の名前が呼ばれることもありえなくは無い。
 彼らは、ここでようやく現状を知る事になるのだ。
 開始から六時間経ち、ようやく人が何人も死んだことを知ることになる──。


 呼ばれないのがわかっているのは、目の前の相手の名前だけだ。


 弧門一輝────「カズキ」、その名前は、美希にとっては愛する弟と同じ名だった。
 わざわざ話すほどのことではないし、カズキなんていう名前はいくらでもいる。字も全然違うので、運命とかそういうものではないと思っていた。だから、弧門はその事実を知らない。
 だが、放送の存在で「名前」というものを意識してみると、彼と出会ったのは、何らかの因果があるようにも思えた。
 もし彼と出会わずに、放送で「死者」としてその名前を聞いたらば、「カズキ」が死んだことに相当な不快感が残ったに違いない。


 青乃美希────その名前は、弧門にとっては、純粋に「良い名前だ」としか思わなかった。ナイトレイダーに入ってから、そんな名前の人には会っていないし、深い縁もない。
 だが、本当に美しい名前である。
 希望の「希」の字が入っている、その名前と、希望を捨てない彼女の姿はマッチしていた。
 青という色は、千樹憐が変身したウルトラマンの体色と同じだ。前向きな人間の色なのだろうか。少し、彼と美希の姿が重なる。



 二人が少しだけお互いの名前のことを考えていると、不意を突くように放送が始まった。

602 ◆gry038wOvE:2012/06/10(日) 15:59:17 ID:SS15e7Vc0


【1日目・早朝】
【C-9/道路】

【青乃美希@フレッシュプリキュア!】
[状態]:健康
[装備]:リンクルン@フレッシュプリキュア!
[道具]:支給品一式、シンヤのマイクロレコーダー@宇宙の騎士テッカマンブレード、ランダム支給品1〜2
[思考]
基本:こんな馬鹿げた戦いに乗るつもりはない。
0:放送を聞く
1:今は孤門と行動し、みんなを捜す。
2:プリキュアのみんなが心配(特にラブが)
3:ノーザには気を付ける。
4:相羽タカヤ、相羽シンヤ、相羽ミユキと出会えたらマイクロレコーダーを渡す。
[備考]
※本編後半以降(少なくともノーザの事は知っている時期)からの参戦です。
※ハートキャッチプリキュア!からの参加者について知っているかどうかは、後続の書き手さんにお任せします。

【孤門一輝@ウルトラマンネクサス】
[状態]:健康、ナイトレイダーの制服を着ている
[装備]:ディバイトランチャー@ウルトラマンネクサス
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
0:放送を聞く
1:美希ちゃんを何としてでも保護し、この島から脱出する。
2:姫矢さん、副隊長、石堀さん、美希ちゃんの友達と一刻も早く合流したい。
3:溝呂木眞也が殺し合いに乗っていたのなら、何としてでも止める。
4:相羽タカヤ、相羽シンヤ、相羽ミユキと出会えたらマイクロレコーダーを渡す。
[備考]
※溝呂木が死亡した後からの参戦です(石堀の正体がダークザギであることは知りません)。
※パラレルワールドの存在を聞いたことで、溝呂木がまだダークメフィストであった頃の世界から来ていると推測しています。


【1日目・早朝】 
【B−9/道路】

【月影ゆり@ハートキャッチプリキュア!】
[状態]:疲労(小)、キュアムーンライトに変身中
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式×2、プリキュアの種&ココロポット×2、ランダム支給品0〜2、えりかのランダム支給品1〜3、破邪の剣@牙浪―GARO―
[思考]
基本:殺し合いに優勝して、月影博士とダークプリキュアとコロンとで母の下に帰る。
1:ここからホテルを経由して村へ向かう
2:つぼみやいつきであっても、積極的に殺す覚悟を失わない
3:もし、また余計な迷いが生まれたら、何度でも消し去る
[備考]
※ハートキャッチプリキュア!48話のサバーク博士死亡直後からの参戦です。

603 ◆gry038wOvE:2012/06/10(日) 16:03:37 ID:SS15e7Vc0
以上、投下終了です。
タイトルはちょっと迷いましたが、「三つの思い! 光と闇の生き方」でお願いします。

あと、状態表では弧門のランダム支給品が1〜3となっていますが、ディバイトランチャーが最初に「支給品」とされているので、おそらく0〜2ではないかと思います。
前の書き手さんにはまだ確認をとっていないので、そのまま投下しましたが。

604名無しさん:2012/06/10(日) 18:10:43 ID:lrD.jh920
投下乙です

ゆりは…殺し合いに乗った人間の心理描写が読んでて物悲しくなるよ
もう戻れないのかな…

そしてこの二人は放送直前まで出会いはあったが戦闘に巻き込まれず無事にすんでるが…
まあ、フレッシュとウルトラマンの勢力はみんな無事だけどな

605 ◆LuuKRM2PEg:2012/06/10(日) 19:24:24 ID:sGLYcY660
投下乙です!
確かに、友達の名前が呼ばれたら誰だって不安になるだろうなぁ……特に美希たんは責任感が強いし。
そんな彼女を、孤門はどうにか支えて欲しいですね。
あとゆりさんも、とっても辛そうだな……ここで二人を追わなかったのは、果たしてよかったのかどうか。

そして指摘された点に関してですが、孤門のランダム支給品数を確かに勘違いしておりました。
後程、修正させて頂きます。

606 ◆OmtW54r7Tc:2012/06/10(日) 22:55:15 ID:uLSjTWpQ0
投下乙!
自分の書いたえりか殺しが思った以上にゆりに影響与えてて書き手としては嬉しい…かもw(ォィ
美希たんは放送後の反応でハトプリ勢への認知状況がはっきりするな
果たして彼女はえりかを知ってるのか知らないのか…

607名無しさん:2012/06/12(火) 23:53:17 ID:V2w5vc5YO
投下乙です。
ゆりさんは覚悟完了で修羅の道をいくのか。
これは弧門+美希と放送終了後に交戦確定なのか?


wikiの動向表見てみたけど、無差別マーダーだったハズの三影のスタンスが対主催になってました。
タイガーロイドの三影じゃなくてタイガーマスクの伊達さんなら対主催でも違和感なさそうだけど。

608名無しさん:2012/06/13(水) 23:10:19 ID:aGvjABjo0
編集してきたけど、wikiは誰でも編集できるから間違いに気づいたら自分で編集したら?
最近は最新話の収録もしばらく経ってからっていうことが多いし、wiki編集する人が少ない気がする
その辺りは住民全員がサポートしていくべきだと思うんだけど

609名無しさん:2012/06/14(木) 01:33:26 ID:gTdYZ/MIO
編集できるのをたった今、知った。
たしかにできる限りは住人みんながwiki作りに手を貸すべきというのは賛成です。
・・・・・・自分、wiki編集なんてやったことないけど。

610 ◆OmtW54r7Tc:2012/06/14(木) 01:54:20 ID:BHhpQF6c0
誤字とかの修正ぐらいならできるけど、新規ページ作ったりリンクはったりとかよく分からないんだよなー

611名無しさん:2012/06/15(金) 08:27:12 ID:AoTTrJOs0
予約二つ来てたー!

612名無しさん:2012/06/15(金) 09:08:01 ID:aXxzTWvw0
この予約が投下されたら放送に行けそうだな

613 ◆7pf62HiyTE:2012/06/15(金) 14:06:25 ID:NL4PoLkA0
皆様投下乙です、

>彼等早朝迄
5時間半もドウコクと姫矢は同行し続けていたと……
というか市街地は危険だ、みんな伏せやぁー!!
あ、ザルバいたんだ……

>悪魔は笑う
とりあえず、五代がフォローしたは良いけど……放送後が怖いなぁ。
何しろさやか視点で見ればマミもまどかも退場済み、あんまり仲良くないけどついでにほむらも退場済み、残ったのはあんまり仲の良くない杏子だけ……
みんな伏せやぁー!!
って、北行くということはラブ達とは行き違いになるな……

>三つの思い
すっかり忘れていたけど孤門の名前って美希の弟繋がりだったんだね。
放送が迫り美希が冷静でいられるのか……知り合いが無事であれば……まぁえりか退場しているわけだが……
とりあえずゆりが追撃しないでホテル方面に向かうみたいだが……あれ、そっちはマーダー軍団がいた様な気が。


というわけで当方もノーザ、筋殻アクマロ、スバル・ナカジマ分投下します。

614Lの季節/I don't know the truth ◆7pf62HiyTE:2012/06/15(金) 14:07:31 ID:NL4PoLkA0
Act 0 魔女の終焉 〜I don't know the truth〜


 ジュルリ――


 ジュルリジュルリ――


 クワレテイク――


 彼女の全身に無数とも言うべき植物の蔓の様なものが絡みつく――


 直にこの身体は全てその蔓――


 ソレワターセによって取り込まれるのだろう――


 それは同時に彼女の命が終わる事を意味している――


 だが、それは仕方の無い事だ。既に彼女の肉体の半分以上が失われているのだから――


 どちらにしても助からない――


 ならばこの身体と記憶、情報とも言うべきか、それをソレワターセの一部となって最大限に活かせば良い――


 それが世界を絶望と不幸で満たす為――


 憎きプリキュア達を倒す為――


 そして何より――


 ◇する彼の望みを――


 地獄を味わうという――


 彼の長年の野望を叶えさせる為――


 ◇する◇◇◇◇君の為に――


 そして全てが飲み込まれた――


 かくして魔女の物語はここで閉じられる。


 だが彼女に悔いは無い――


 何しろ◇する彼の為にその命を使えたのだから――


 だが――彼女は知らない――


 彼女自身が抱いた感情――


 本来ならばまず抱く事の無い感情を抱いていた事を――


 彼女自身の意志が歪に歪められていた事を――


 彼女はその真実を知らず――そしてその真実を知る事も無い――

615Lの季節/I don't know the truth ◆7pf62HiyTE:2012/06/15(金) 14:08:00 ID:NL4PoLkA0





Prologue


 実に唐突ではあるがある少女の話をしようか。
 その少女はこの殺し合いの舞台から一番最初に退場した少女、名前は――いや、この際それはどうでも良いか。
 読者諸兄ならば今更説明する必要も無いであろうが彼女がある男性に恋愛感情を抱いていた事はご存じの通りであろう。
 だが、その切欠は彼女の一族の掟によるものである。
 その掟とは、女戦士がよそ者に敗北した場合、相手が女だった場合は殺す、男だった場合は夫とする、というものである。
 ということは、その彼女がその彼を愛したのは掟によるものという事になる。
 そんな掟……とお思いの方も多いであろうが彼女の国の村の掟は基本的には絶対なのだ。別の参加者の話になるがその者もその掟の為に難儀する事により行動方針を決めた理由にもなっている――のだが、これ以上は関係無いのでここまでにしておく。
 実際、彼女が唐突に恋に落ちた流れだけを見たら掟によるものとしか思えない。
 何しろ、当初はある少女を殺すつもりでやって来たのだが、会えたのはその少女に似た少年。で、問題の少女を捜すべく騒ぎになったらその少年に結果的に倒されて、いきなり愛してる言い出す流れ見れば大抵の者はそう思わざるを得ないだろう。

 では本題、その少女がその少年を愛しているのは本当に掟によるものだったのであろうか?

 答えだけを先に述べておこう、Noである。
 実はある時唐突に一転してその少女はその少年を嫌う様になってしまった事があった。
 少年的には度々迫り来る少女にうんざりしている部分があった故に、少年的には万々歳――というわけにはならなかった。
 流石に男のクズ扱いまでされた故にその少年の心に火がつき、意地でももう一度好きにさせてやると躍起となった。
 その後の話の詳しい流れについては割愛させてもらうが、その為の手段として掟が絶対である事を利用し少年は少女に勝利した――のだが、

『たとえ私の体奪っても、魂までは奪えないあるぞ!!』

 と、ハッキリと言い切ったのである。つまり、その少女が元々その少年を好きだったのは切欠こそ掟によるものではあったものの、魂レベルで好きだという事である。どんな状況に陥っても――

 ――のだが、実の所その時の少女は少女の一族の秘宝の1つの効果により、愛情が憎しみに変化してしまっていたのである。
 思いっきり魂が変換させられているのではなかろうか? そう口に出して言いたい所である。
 とはいえ、そこまでのレベルで強い憎しみを抱いているという事は逆を言えばそれだけ強い愛情を抱いていたという証明でもあるわけなのでその辺はご理解いただきたい。

 長々と説明したが、実の所その一族には他にも色々な秘宝がある。見据えられただけで泣いて謝らずにいられなくなる眼鏡など使用された相手の感情をねじ曲げる道具は数多く存在するという事だ。
 一族の秘宝――とは違うがそもそもその少女、少年の許嫁に対し特殊な漢方液でシャンプーしてその少年の記憶を消し去った事もある事からもその多彩さはご理解いただけるだろう。
 読者諸兄も興味があるならば一度調べて見てはいかがであろうか?

616Lの季節/I don't know the truth ◆7pf62HiyTE:2012/06/15(金) 14:08:25 ID:NL4PoLkA0





Act 1 糧となる者


 想定外の自体があったとはいえ、経過は順調と言えよう。ノーザはそう考えていた。
 何しろ、自身の作戦が破れる事など、ラビリンス時代においてプリキュア共に度々やられていた事故に慣れている。
 むしろこちら側が得たリターンに比べればそこまで気にする所でも無いだろう。
 勿論、このまま放置するつもりは毛頭無いが元々そのつもりだった為、そこまで気にする事も無い。
 今は身体を休めつつ情報を整理、具体的に動くのは放送後からで良いだろう。

 情報の整理と言えば先の戦いでスバル・ナカジマに憑依させたソレワターセに仕留めた参加者共を取り込ませてはいるがまだ詳しい情報は引き出していない。
 いや、厳密に言えばズ・ゴオマ・グから情報を引き出しているが実の所詳しい事はあまり引き出せていない。
 引き出せているのはダグバ、ガドル、クウガ、それにゲゲルと言った断片的な固有名詞が中心だ。
 ダグバとガドルが参加者であるン・ダグバ・ゼバ、ゴ・ガドル・バを示しているのは流石にわかる。しかしクウガやゲゲルというのは何を意味しているのか?
 もう少し引き出した上で検証したかった所だが、他にもすべきことがあった故に先送りにしたというのが現状だ。

「機を見て引き出しておきたい所ね……」

 とはいえ、引き出すタイミングも選んでおきたい所だ。理想を言えば筋殻アクマロが近くにいないタイミングが良い。
 何故か? それは取り込んだ参加者の中にアクマロの知り合いである池波流ノ介がいたのだ。
 つまり、密かにアクマロに関する情報を確保しておく事が狙いなのだ。
 アクマロ自身が直接口で話す情報、ソレワターセによるダイレクトな情報、どちらが信頼に値する情報かなど考えるまでもないだろう?
 何より、あの戦いの時、流ノ介の口ぶりではアクマロは既に倒されている様な口ぶりだった。アクマロは特別気にするでも無く軽く流していたがノーザとしては聞き捨てる事は出来なかった。
 いや、ラビリンス時代のノーザであれば一蹴していただろうが、一度は倒されボトムによって復活し、数多のプリキュアと対峙した経験を持つ彼女だからこそ引っかかりを感じていたのだ。
 先の戦いでは自身にとって未知のプリキュアであるキュアサンシャインがいた。いや、今更プリキュアが他に何人いようがそれについてはどうでもよい。
 重要なのは自身の情報を知っていたという事だ。自身の情報などそれこそキュアピーチや裏切り者であるイースことキュアパッシュン等といった直接対峙した者達からしか得られない筈だ。
 知っていたならばあの戦いの場に一緒にいなければおかしいだろう。あの場にはプリキュアが勢揃いしていたのだから。
 つまり、あの時点ではプリキュアではなかったという事なのだろうか?
 だがプリキュア共の性格を考えれば自分達の正体を無関係な者達に明かしてはいない筈、つまりあの時点でプリキュアでは無いならばプリキュアに関する事、つまりはノーザ自身の情報も知らない筈なのだ。
 (実際の所、ノーザがプリキュア達と戦ったあの現場に後のキュアサンシャインこと明堂院いつきは見ている。つまり、ノーザの事を何処まで把握していたかは不明瞭だが全く未把握という事は無い)
 ともかく、不可解なのだ。この殺し合いに巻き込まれていなければ確実にプリキュア共は倒している筈なので、絶対に自身の事は知り得ない。にもかかわらずそれを知っているという異常現象。
 それでなくてもアインハルト・ストラトスが何故かスバルを知っていたという謎、そして本来なら19歳であった筈の高町なのはが何故か10歳前後だった件、
 これらを踏まえて考えても、流ノ介のあの発言には何か重要なヒントがあるのではなかろうか? それもアクマロにとって致命的になりかねない情報が――
 だからこそ、これについてはアクマロに知られるわけにはいかない、少しでも自身が有利な状況を維持し続けなければならないのだ。

617Lの季節/I don't know the truth ◆7pf62HiyTE:2012/06/15(金) 14:09:14 ID:NL4PoLkA0

 とはいえ、散々長々と説明したものの実の所自身の優位が崩れるという事は絶対にない。
 何しろ仮にアクマロが何か仕掛けてきてもソレワターセとの2対1ならばまず負ける事は無いし、隙あらばアクマロにソレワターセを憑依させれば済む話だ。
 いっそ早々にソレワターセを憑依させれば手っ取り早いが貴重な最後の1個なのだ、使い所を選ぶ事に何の問題もなかろう。
 何より手札に抱えていればアクマロも下手な動きは見せまい、持っていて嬉しいコレクションというわけでは無いが、アクマロの行動を抑制できるならば多少は使えるだろう。
 アクマロさえ油断せずに仕留める事さえ出来れば不幸で満たす事はそう難しい事では無い、自分達以外でも悲劇が起こっているのならばそちら側の努力次第で簡単にひっくり返せるのだから――
 逃してしまったキュアサンシャインなどの方は放置で良いのか? 懸念がないわけではないが、そこまで気にしなくても良いと考えている。
 そもそも幾らプリキュアの悪評を伝えるといっても自身と有用な手下数人分を用意できるわけも無し、同じ手に何度も何度も引っかかる程のバカでも無いだろうと。
 一方のプリキュアの方は単純に人数が多い。ノーザ1人が悪評を伝えようとしても複数を相手取る事はできないだろう。

 そんな中、周辺の見回り件、道具の回収に向かっていたアクマロが戻ってきた。

「あら、それで回収できたのは全部かしら」
「仮面ライダースーパー1が乗っていたと思われる機械の馬、バイクとでもいいましょうかそれ以外は概ね」
「バイクねぇ」

 バイク――単純に移動手段としては有用ではあるが、3人が固まって移動するには適さない。
 とはいえ放置して他の参加者に奪われるのは面白くなく、ここで破壊するのも少々惜しいとは思う。

「それについては後々考えましょう、それよりそろそろ食事にでも致しましょうか?」
「それもそうね」

 かくして2人は食事の用意を始める。思えばこの殺し合いが始まってからゆっくりと休む暇すらなかった。良い機会だ、ここで休むのも良いだろう。

「……ところで、スバルさんの分はどうします?」
「必要無いわ、それにさっきまで散々食べさせたでしょう」
「それもそうでございますな……しかし大丈夫でしょうかなぁ?」

 そう言いながらアクマロはデイパックから何かのクッキーを取り出す。

「どういう意味かしら?」
「流石にあれだけの攻撃を繰り出して彼女の身体も随分とくたびれてはいないかと」

 そう言いながらアクマロはデイパックからバナナパフェを出しノーザに渡す。

「あら、どうも。別に気にする事でもないわ、アレの代わりを捜せば済む話よ」
「いえいえ。それもそうではございますが……貴重な手駒を唯々消費するだけというのも少々勿体なく感じますが」

 アクマロの言い分についてもわからないわけではない。幾ら捨てても構わない手駒とはいえ、貴重な戦力を無駄にする愚行を犯す必要も無かろう。

「そこまで言うからには何か考えでもあるのかしらアクマロ君」
「ええ、私の支給品に治療に使える薬があります故、それを使いましょうと」
「まぁ、貴方の支給品をどうこうしようが私の知った事じゃないから別に構わないわ……ただし」
「わかっております、下手な事は致しません」

 そう言って、アクマロは立ち上がりスバルの所に向かう。
 アクマロの言葉を全面的に鵜呑みにしているわけではないが、下手な事をしようものならそのままソレワターセに襲わせれば済む話だ。
 流石にアクマロもそれは理解しているだろうから早まった真似はしないだろうし、この場でむやみやたらに戦力を削る真似もしないだろう。
 そう言いながらノーザは共通支給品のパンをほおばる。

「紅茶でもあれば良かったわね……血の様に赤い……」
「パンを肉、紅茶を赤い血という例えですかな?」
「あら、上手い事言うわね」
「案外他の誰かに支給されているかも知れませんなぁ、そのばななぱふぇなる甘味の様に」
「こんなもの支給されて喜ぶ人がいるのかしらね」
「ごもっとも」

618Lの季節/I don't know the truth ◆7pf62HiyTE:2012/06/15(金) 14:09:42 ID:NL4PoLkA0

 そう言いながらパフェを一口ずつ口に含み始めるノーザであった。

「それにしても変わった味ね」
「私めはこういったものは食べた事ないのですが」
「なんとなくわかるわ」
「確か涼村暁なるものの好物という話らしいですが……」
「涼村暁……あぁそういえば、あの場で馬鹿な発言した男がいたわね、ドッキリとかどうこう言い出した」

 状況を考えず馬鹿な発言を繰り出した男の存在をノーザは覚えていたのである。不思議とかつての同僚(ノーザ視点から見れば配下とも言うべきか)ウェスターをほんの少し思い出した気がする。

「流石に彼もあそこまで馬鹿じゃないわよね」
「ああいう男が長生きするやも知れませんなぁ」
「世も末ね」
「我々はある意味それを望んでいますが」
「そういう意味じゃ無いわ」

 そう言っている間にアクマロが戻りクッキーを食べ始める。

「あら、アクマロ君。そのクッキー変わっているわね」
「わかります? これはシンケンジャーの5人を象ったものらしいでして」

 その5つのクッキーはシンケンジャーの5人の顔を模したものである。

「何を考えて支給したのかしらね、理解に苦しむわ」
「シンケンジャーを喰え……という意味でしょうかなぁ、ノーザさんも1枚いかがでしょうか?」
「遠慮するわ」
「何故かシンケンシルバーがおりませんのが気になりますがそれはまぁいいでしょう」

 かくして食事も順調に進んでいた。その間もスバル、そしてノーザは一切アクマロから視線を外してはいない。

「ソレワターセ、アクマロ君の方は私が見ているから周囲を見張っていなさい」

 そんなソレワターセの様子を察してかノーザは的確に指示を出していく。そんな中、

「それにしてもソレワターセというのは随分と便利なものでございますなぁ」
「あら、わかるかしら?」
「ええ、私の手元にもあれば容易に事を進められたと思う程に」
「でしょうね」
「しかし、それだけ便利な代物だと、かえって使うのが難しいのではないでしょうか?」
「そんな難しいものじゃないわ」

 そう言いながらノーザはデイパックからソレワターセの実を取り出す。

「これを投げつけて『ソレワターセ、姿を現せ』……これだけで済む話よ」
「ちょっと貸してもらえますかな?」
「え、ええ……」

 と、アクマロはノーザからソレワターセの実を借り受け立ち上がりしげしげと見つめていく。時には朝日の光に照らし入念に確かめるかの様に。

「こんな小さき物があれだけの事を成すとは……いやはや世界は広いとでもいいましょうかなぁ」
「お褒めいただき光栄ね」

 そう応えるノーザを余所にアクマロは未だにソレワターセの実を見つめている。アクマロは随分と気に入っている様だ。
 もう少し手元の数があるならば1つぐらいは渡しても良いと思ってはいる。とはいえ、最後の1つである以上そうするわけにもいかない。

「アクマロ君、そろそろ返してもらえるかしら?」
「すみませんなぁ、少々はしゃぎすぎてしまいまして……」

 と、ノーザも立ち上がりアクマロの側へと近づいていく。

「いやはや、本当に感謝しています。これは何れお礼をしなければなりませんなぁ」

 と左手でソレワターセの実をノーザに返そうとする。

「お礼ならこれから存分に――」


 ノーザもそれを受け取るべく手を伸ばす。


「働いてくれれば十ぶ……」


 が、腹部に違和感を覚えると共に手の動きが止まった。


「……!」


 いつの間にか自身の腹部にナナシの刀が刺さっていた。


「え……?」


 その瞬間、ノーザの思考が停止する。

619Lの季節/I don't know the truth ◆7pf62HiyTE:2012/06/15(金) 14:10:08 ID:NL4PoLkA0


 だが、この状況で動き出す者がいた。


「ガァァァァァァ!!」


 スバルに憑依したソレワターセが動いたのだ。
 当然のことであろう、ほんの一瞬視線を戻した時には主であるノーザがアクマロに刺されていたのだ。
 命令があろうとなかろうとソレワターセのすべき行動は決まり切っている。
 ノーザを仕留めようとしたアクマロを返り討ちにする、至極シンプルな事である。
 マッハキャリバーを起動し一気にアクマロまで距離を詰めていく。
 無論、アクマロの強さは流ノ介を取り込んだ事で理解している。並の一撃であれば仕留めきれないであろう。
 だからこそ文字通り全力全開で仕留めるのだ。戦闘機人モードによる振動破砕、そしてその後からの所持しているカートリッジを全て使った上でのディバインバスター、
 至近距離からの連続攻撃ならばさすがのアクマロといえども仕留められる筈だ。
 無論そこまでの攻撃を受ければソレワターセすらもただでは済まないだろう。だがそんな事など問題では無い。この身は最初から最後まで全てノーザのものなのだ、ノーザの為ならば朽ち果てる事など惜しくも何ともない。


 故に、目標まで急接近する――仕留めるべき対象はすぐ近く、外したりなどしない。


 一方のノーザも少し遅れてからソレワターセの接近に気付いていた。


 ソレワターセを止める理由など皆無、先に仕掛けたのは◇◇◇◇なのだから――


 だからこそここでノーザのすべきことはソレワターセの攻撃に巻き込まれない様に急速に待避する事である。


 距離さえ取ればソレワターセが自身に攻撃が及ばない様に◇◇◇◇だけを仕留めるべく動いてくれる筈なのだ――


 だが――


 何故かノーザの足が動かない――


 何故、攻撃から逃げようとしないのか?


「……!」


 口が何かを言葉を発しようとも声にならない。ほんの一言発すればソレワターセに命令が届く筈なのだ。
 何が阻害しているのだろうか? それはノーザ自身にすら理解できない――


 故に――


 理屈も思考も関係無しに――


 気が付けば身体が動いていた――


 丁度アクマロとソレワターセの間に割り込む形で――


 それは誰にとっても予想外の出来事――


 あまりにも突然の事にソレワターセも判断が追いつかず――


 その時には既にソレワターセの攻撃は始まっていた――



「いやはや……これは随分と……」


 轟音と衝撃が止み土煙が晴れる頃、アクマロが静かにそう呟いた。


 アクマロの身体には外傷が全く無い、だがその代わり、1つのクレーターが生成されていた。


 その中央にはソレワターセが身体を震わせながら立ち尽くしていて――


 身体の大半が失われた魔女――ノーザが静かに倒れていた。


「アク……マロ……君……無事だったのね……」
「ええ、あんさんが身体を張ったお陰で」
「そう……」

 ノーザはその瞬間の記憶を辿る――何故自身はソレワターセの攻撃から――
 だが、すぐに考える事を止めた。何故ならそれは別段おかしな事でもなんでもないのだから。

620Lの季節/I don't know the truth ◆7pf62HiyTE:2012/06/15(金) 14:10:32 ID:NL4PoLkA0


「しかし、この有様ではもう助かりませんなぁ。我々外道衆であればそうでもありませんが」

 そんな事など言われなくてもわかっている。この状態でもノーザが即死していないのはノーザが人間では無いからだ。
 元々ノーザはラビリンス総統メビウスの護衛として植物のDNAから作り出された人工生命体なのだ。
 更に言えばこの身体すらボトムによって蘇生されたラビリンス時代とも違う特殊な状態だ。
 だからこそ身体の大半が消し飛んでも存命してはいるがそれももう限界、あと1,2分でこの命も尽きるだろう。

「こんな所で終わるのは悔しい……そう言いたそうでございますかな?」

 アクマロがどことなく嬉しそうにそう口にしている。
 そうだ、彼はこういう男なのだ、他者の嘆きや悲しみを至極の悦びとする。
 いや、それは自身が言えた事ではないだろうし、不思議と悪い気はしていない。
 勿論、アクマロの指摘通りこんな所で終わりたくないとは思っている。

「ふむ……あんさんの野望、私の野望のついでという形になりますが、私めが叶えないこともありませんが?」
「え……?」
「プリキュア共や世界に絶望を与える……それを私が叶えても構わないという意味ですが?」

 ある意味ではノーザにとって願ったり叶ったりの提案だ。
 どのみちこの身体は朽ちてしまうがこのままプリキュア共を放置したまま終わりたくは無い。
 ならば、アクマロの提案を受け入れ、彼にプリキュアを倒して貰おうではないか。
 その為に自身がすべきことは――


「ソレワターセ……命令よ……最後の……私を取り込みなさい……」


 自身をソレワターセの糧としてその知識をアクマロに最大限に利用して貰うのだ。
 ソレワターセは一瞬躊躇する様な仕草をみせるが、


「命令に……従いな……」


 ダメージが酷くこれ以上言葉を紡ぐ事が出来ないでいる。
 だが、命令は届いた――
 ソレワターセから放たれる無数の蔓が残されたノーザの身体に絡みつく。
 そしてその身体を分解していきソレワターセの一部と化していくのだ――

 もうすぐノーザという存在はこの世界から消滅する。
 だが、全てなくなるという事では無い――
 その記憶はソレワターセの一部となって存在し続けるのだ――
 そして――ある人物の為に使われるだろう――


 だからこそ悔しくはあっても悔いは無い――◇するあの方の為に使われるのならば――


 その人物とは――


 メビウス――否、


 ボトム――否、


「後は……任せたわ……アクマロ……君……」


【ノーザ@フレッシュプリキュア! 死亡確認】
【残り49人】

621Lの季節/I don't know the truth ◆7pf62HiyTE:2012/06/15(金) 14:11:02 ID:NL4PoLkA0





interlude


 さて――
 かくしてノーザの物語はここで幕を閉じた事になる。
 だが、恐らく読者諸兄の皆はこの展開に疑問を感じている事だろう。
 おわかりだろうか? ノーザの言動にどことなく違和感を覚えなかっただろうか?
 無論、ノーザ自身はそのたった1つの真実に気付く事無く舞台から退場している。
 果たして、ノーザの身に何が起こったのか――ここからはアクマロ視点で物語を振り返っていこう。





Act 2 外道の策謀


「しかし正直困りましたなぁ……」

 実の所、アクマロは今後について頭を悩ませていた。
 確かに都合良くノーザと組む事が出来た事については良い。
 厄介な相手とも言うべき仮面ライダー1号やシンケンブルー等といった者達をこの早い段階で退場させる事が出来たのは行幸と言っても良いだろう。
 最終的には仮面ライダースーパー1の妨害にはあったがそれを抜きにしても大きな成果を上げたと考えて良いだろう。

 だが、それはアクマロにとっては通過点に過ぎない。

 アクマロの最終目的は裏見がんどう返しの術でこの世に地獄を顕現させる事、それ故それ以外の事など俗事といっても過言では無い。
 確かに外道故に嘆きや悲しみは大きな糧であり悦びだ。それでも地獄をこの身で堪能する事に比べれば些細な事でしか無い。
 第一、その目的の為に二百年も前から準備してきたのだ、今更こんな些細な事で躓くつもりなどない。

 そう、その大きな障害が目の前にあったのだ。
 それはノーザである。

 前述の通りノーザは自身の目的に興味を示し、一時的とはいえ共闘する事が出来たし、結果的に彼女のお陰で目の上のたんこぶとも言うべきシンケンブルーや障害になるであろう仮面ライダー1号を排除出来ている。
 だが、だからといって今後も彼女と共闘を続けて良いという理屈にはなりえない。

 わかりきった事ではあるが、彼女は自身を完全に信用しているわけではない。
 確かに裏切り等は外道衆の糧故にそれを咎めるつもりは毛頭無い。だが、それでは困るのだ。
 そう、彼女自身が自身の障害になるとしか考えられないのだ。

 まず、第一の理由として、彼女はアクマロの話を最初から全面的に信用しているわけではないという事。
 勿論、そもそもああいうタイプの人物が全面的に信用するとは欠片も思っていないからそれは別段構わない。
 だが、全面的に信用していないという事は裏を返せば、その目的を果たす事に全面的に協力する気はないという事に他ならない。
 言い方を変えれば、その目的を最優先にする気は無いという事だ。
 とはいえ、これは別段驚くべき事では無い。なにしろこの目的自体外道衆においても異端扱いなのだから、自身以外に乗り気な人物がいないほうがむしろ当然なのだ。
 勿論、ノーザが気に入ったとしてもそこまで執着する確証も保証も無いだろう。状況次第ではすぐさま切り捨てると考えて良い。
 だが、アクマロにしてみれはそれでは困るというわけだ。その目的が果たせなくては意味が無いという事だ。

 もう少しわかりやすく説明しておこう。
 アクマロにとっては腑破十臓が最重要人物で、是が非でも確保せねばならない人物ではあるが、ノーザは恐らく場合によっては彼を排除しても構わず、執着するつもりはないという事だ。
 アクマロの話がいくら魅力的に聞こえても全面的に信用していないならば当然固着する義理も無いだろう。何しろノーザ視点では絵空事にしか聞こえなくても不思議はないのだから。

622Lの季節/I don't know the truth ◆7pf62HiyTE:2012/06/15(金) 14:11:25 ID:NL4PoLkA0

 仮に信用したとしよう。それでも他にも理由がある。ノーザ視点では別にアクマロがどうなろうとも構わないという問題がある。
 繰り返す事になるがアクマロがこの世に地獄を顕現させるのは、あくまでもこの身で地獄を堪能する事に他ならない。
 つまり、地獄を顕現させてもそのアクマロ自身がいなければ何の意味もないという事だ。
 だが、ノーザから見ればそんなアクマロの事情など知った事では無い。地獄を顕現させる為にアクマロすらも犠牲にしかねないだろう。
 繰り返すが外道衆にとっては望む事であり悦びであるが、それとこれとは話は別、アクマロが犠牲になっては困るのだ。
 アクマロ自身簡単な説明しかしていないから大丈夫だ――などと楽観視するつもりは毛頭無い。
 先程も述べた通り、ノーザにとっては別に潰れても構わないのだ。
 それ以上に――いざとなればアクマロをソレワターセに取り込ませればアクマロが意図的に伏せている情報すら簡単に割れてしまう。
 言うまでも無いがそんな事をされればアクマロは死んだと同じ、そんな事などさせるつもりはない。
 だが、少しでもノーザにとって都合の悪い自体が起こったならノーザは嬉々として寝返るだろう。
 アクマロにしてみれば十臓が犠牲に、あるいは自身が犠牲になっては駄目なのだ。そういう条件でみればあまりにも分が悪い話ではある。

 そもそもの前提として、この共闘が純粋に対等な同盟であれば何ら問題は無かった。対等であれば駆け引きも成立し十分に共闘を続ける事が出来たであろう。
 勿論、アクマロは下手に出ていたであろうがそれはあくまでもアクマロの性格上の話、それでも同盟自体はほぼ対等レベルになっていた筈だ、どちらが上という事もどちらが下という事も無いまともな同盟だ。
 だが、この同盟は全くもって対等でも何でも無い。どう見てもノーザがアクマロを下に見ているとしか思えない。
 その最大の理由はソレワターセの存在である。ソレワターセ自体がノーザの最重要戦力であり、倒した相手や周囲の物体を吸収する事でさらなる力を得る厄介な存在だ。
 勿論、どこまで強化されるかは未知数だが確実の取り込んだ物の情報は得られる。それをノーザが独占できる事を考えれば大きなアドバンテージとなってしまうだろう。
 先に触れた通り、ノーザにしてみればソレワターセでアクマロを取り込めば済む話なのだ。それ自体はそこまで難しい事では無い。
 何しろ四六時中警戒し続けるには限界がある。幾らアクマロとて隙が出来る時は必ずある。その隙を逃さなければ容易な事であろう。

 わかりやすく言えば、逆らったてもソレワターセに取り込まれ、少し疲弊してもソレワターセに取り込まれる状況と考えて良い。こんな状態の何処が対等だ、まともに付き合っていられる道理もないだろう。
 また、むやみやたらと別行動を提案するわけにもいかない。何しろ、ノーザが十臓を仕留める可能性すらあるのだ、それをさせるわけにはいかないだろう。

 そもそも、別にアクマロは優勝するつもりなど全く無い。幾らこの地で裏見がんどう返しの術が出来るかもしれないと言ってもそれは余程上手く事が運ばなければまず不可能レベルの話だ。それぐらいアクマロにだって理解している。
 第一、そんなわけのわからない場所で事に及ぶより、元の世界に戻って事に及んだ方が確実だろう。
 つまりあくまでも最優先事項は十臓と共にこの殺し合いの場から脱出する事なのだ。
 その為に必要なのはこの殺し合いを脱出する為に利用できる存在でしかない。勿論、仮面ライダーやシンケンジャー等といった障害は排除するがそれは脱出の為でしかないのだ。

 一方のノーザはそういうわけではない。アクマロの策に乗ったのはアクマロの策がノーザの性格に合ったからでしかなく、それがなければ十中八九、優勝目的で行動していただろう。
 つまり、それを踏まえて考えてもノーザは障害以外の何者でもないのだ。
 その証拠にノーザは脱出を見据えた行動を全く取っていない。アクマロが考えている事を全く実行に移そうともしていないのだ。恐らくは考えもついていないだろう。

623Lの季節/I don't know the truth ◆7pf62HiyTE:2012/06/15(金) 14:12:39 ID:NL4PoLkA0

 と、長々と説明したが要するにノーザもアクマロの障害となるという事だ。
 少々短絡的かもしれないが先の戦いで確信した。ノーザはあの戦いで散った者達をソレワターセに吸収させたのだ。
 その力はソレワターセの力となる、それは同時にノーザの力になると考えて良い。
 それを踏まえて考えて今後遭遇する参加者も倒せばそのままノーザの力になると考えて良いだろう。
 確かに場合によっては血祭ドウコクを倒す切り札になり得るかもしれない。だが同時にそれは自身にとっての最大の障害となり得る。
 無尽蔵に強化される危険性のあるソレワターセとまともにやりあうつもりなどアクマロには無い。

 だからこそできうる限り早いタイミングでノーザに対処しなければならないという事だ。
 先の戦闘で放置された物資の回収と称して自然に別行動を取っているこのタイミングである程度方針を固めねばならないだろう。

 だが、直接戦闘をするわけにはいかない。流石にソレワターセとノーザの2対1でやりあうのは少々分が悪いし、いつソレワターセに吸収されるか分からない戦闘を行うつもりはない。
 それに散々ソレワターセを警戒してはいるが、ソレワターセ自体は魅力的ではある。出来うるならばそれを自身の戦力にしておきたい所ではある。

「しかしそんな方法などありますかな」

 だがその方法が未だ固まらないのだ。
 そう頭を悩ませつつ、先の戦いで散った者達のデイパックの中身を確かめながら思考を進めていく。
 ちなみにシンケンジャーの志葉家の書状らしきものがあったが一々確認する余力もないのでそれについてはひとまず放置することにしている。

「それにしても……ぱふぇなる物体にシンケンジャーを模したクッキー……主催の加頭なる者は何を考えてこれを支給したのか理解に苦しみますなぁ……」

 今更な話だが、バナナパフェは鹿目まどかに支給されたものである。またクッキーについては高町なのはに支給されたものである。
 今まで触れられなかったのは確認した所で何の意味もないからである。
 クッキーに関してはなのは視点で見れば早々に流ノ介と遭遇したという意味では無意味ではないかもしれないが、現実レベルとして一々『クッキーの人だ』なんて初見で口にするわけもないだろう。
 というより、出会った段階でいきなり戦っていて、その後は手当てなどしなければならない事を考えればそんな事に触れる余力なんて無いだろう。

「で、これが仮面ライダー1号本郷猛なるもののデイパックと……何がありますのやら……」

 とはいえ、あまり長々と時間をかけるわけにもいかない。それ故に迅速に確認を進めていく。

「これも外れですかなぁ……」

 と諦め気味に説明書きを確認するが、

「……これは……? 少々待ってもらえますかな……」

 その内容を確認し思案を進めていく。
 アクマロは考えたのだ、この状況をひっくり返す程の方法があると――
 勿論、その方法自体は確実性は低いと言える。だが、この内容を信用するのであれば恐らく限りなく高い確率で上手くいくだろう。勿論、事が都合良く進めばという話ではあるが。

「しかし少々危険かつ分の悪い賭けになりますなぁ……」

 とはいえ答えなどとっくに出ている。何しろ現状のままでは何れは八方ふさがりなのだ、多少は無茶でもここは勝負に出るべきだろう。

 かくしてアクマロはここでノーザに仕掛ける決意を固めた。





Interlude


 さて、今回の仕掛け人であるアクマロは『何』を仕掛けたのだろうか?
 本郷猛の支給品に『何』を見つけたのであろうか?
 ヒントは2つ、バナナパフェとクッキーの存在、
 そして――当方が最初に話した話――


 解決編をどうぞ――

624Lの季節/手ごたえのない愛 ◆7pf62HiyTE:2012/06/15(金) 14:14:02 ID:NL4PoLkA0
Act 3 一つの真実


 ここで読者諸兄にアクマロが見つけたものが何かを明かそう。
 それは女傑族の腕輪と呼ばれるものだ。だが、腕輪自体は別段何の意味も無い。重要なのは腕輪に嵌められた3つの丸薬である。
 それは惚れ薬となっており、飲んだ者が最初に見た異性に惚れてしまうという強力なものだ。
 どれぐらい強力か――て早乙女乱馬が服用した時、どう考えても恋愛対象外ともいうべき老婆であるコロンを見てしまった事で彼女に一目惚れをしてしまった。
 無論、正気に戻った後、ショックのあまり気絶したのは言うまでも無い。
 なお、異種族に聞くのかという疑問に関しても答えておこう。結論から述べれば有効と考えて良い。
 というのも、その辺のタコが飲んでしまった事で一応人間の範疇に含まれるであろう八宝斎に恋に落ちてしまったという事例が存在するのだ。
 それぐらい強力な惚れ薬なのだ、この状況をひっくり返す一手としてはこの上ないだろう。

 余談だが、本郷は早々に確認はしているが、その効果を信用していたわけではないし、仮に信用できるものであっても人の心を歪ませる薬など使うつもり等皆無であったのは言うまでも無い。


 では、以上を踏まえアクマロが何を仕掛けたのかを改めて見ていこう。
 頃合いを見てノーザの所に戻るがその前にあらかじめバナナパフェに丸薬を『2つ』仕込んでおく。何故『2つ』なのかは後で説明しよう。
 その後、早朝というタイミングを利用して食事休憩を持ちかけ、何とかして食事させる状況へと持っていく。時間的にも今までずっと戦っていたことからもそういう話に持っていく事自体は問題無いだろう。
 そのタイミングを利用しごくごく自然な流れでノーザにパフェを、自身にシンケンジャーのクッキーを食べる状況を作り出す。
 なお、シンケンジャーのクッキーを自身が食べるのはその流れからノーザが自然にパフェを食べる状況を作る為だ。
 そして何食わぬ顔で食事を勧めていく。ノーザがパフェに違和感を覚えてもそういう変わったパフェであり、バカとも言うべき涼村暁の好物なんだからと説明すれば何の問題もないだろう。
 勿論、その状況に違和感を覚えさせない為に世話話でもして自然に事を進めるのも忘れない。
 だが、これにはもう1つ狙いがある。確実に自身に惚れているのを確認する為だ。
 ノーザが自身に惚れるのであれば、今までとは違うリアクションを取る。それを確かめる為の世話話というわけだ。

 実際にノーザがどうしたのかは前述の会話の通り。途中からノーザはアクマロに協力的となっている。そして確定的なのはソレワターセの実をアクマロに渡した事だ。
 ノーザの性格上、切り札とも言うべきソレワターセの実を渡す事などまずあり得ない。それはアクマロ自身もよく理解している。
 だが、もしアクマロに惚れていて彼に尽くすのであればほぼ確実に渡してくる筈だ。だからこそその指針として利用したのである。

 さて、ノーザに惚れ薬の効果が効いている事を確信したアクマロは機を見計らい、ノーザを負傷させる。これについては先程拾ったナナシの刀を刺す事で容易に実行できた。
 あまりにも簡単に事が進んだので若干拍子抜けだが、それだけ惚れ薬の効果が強力でノーザの警戒心も消えていたという事だろう。
 だが、それで済まないのがソレワターセだ。主であるノーザが負傷して逆上するのは明白だ。そして確実に下手人であるアクマロを消すべく動く筈だ。
 しかし、それもアクマロは計算に入れている。というよりそう来る事を確信していた。
 当然だがアクマロは自身が返り討ちに遭わない様に距離を取る――だが自身がすべきなのはそれだけで良い。
 後は勝手にノーザが愛するアクマロを守るべく行動を起こすのは明白だからだ。
 そう、ノーザが間に入り庇う可能性が限りなく高いと考えていたのだ。

 そしてアクマロの計算通りにノーザもソレワターセも動いてくれた。全てはアクマロの掌の上で踊らされていたというわけだ。
 後は、致命傷を負ったノーザをソレワターセに吸収させれば全ての事が済む。

625Lの季節/手ごたえのない愛 ◆7pf62HiyTE:2012/06/15(金) 14:17:03 ID:NL4PoLkA0

 なお、ノーザに惚れ薬が効くのかという疑問を感じている者もいるだろう。
 結論から言えば効くと考えて良いだろう。ノーザが幾ら人工生命体とはいえ、植物をベースにしている。そして植物にだって性別は存在している。
 つまり、外見から考えてもノーザは女性であるという事だ。
 また、アクマロは人間とは違う外見ではあるがこちらは男性と考えて良く、ノーザ自身も『アクマロ君』と君付けで呼んでいる事から男性と認識しているだろう。
 人間で無くても効果があるのは先に説明した通り。故に――ノーザに惚れ薬が作用したという事だ。

「いやはや……ここまで上手く事が運ぶとなると少々後が怖いですなぁ」

 ソレワターセがノーザを完全に取り込んだのを確認しそう呟く。
 その言葉の半分は嘘であり同時に半分は本音である。
 自身の計画通りに事が運ぶ事については殆ど疑いはなかったものの、絶対という確証もなく、不確定要素がどう作用するかも未知数であった。
 それ故に、ここまで成果を上げられた事に半ば驚愕していたという事だ。

 そんな中、ノーザを取り込んだソレワターセは未だに震え立ち尽くしたままである。
 よく見れば彼女のバリアジャケットは消え失せ全身はどこもかしこも機械部分が露出する程ボロボロとなっていて所々は火花すら飛んでいる。
 当然、ソレワターセ自身もボロボロなのは言うまでも無い。
 同時に彼女の顔を見ても表情といえるものは本当に何も無い。ソレワターセが持っていた筈の主人に対しての忠誠心すらも――

「ふむ……やはり全て思いのまま……とはいきませんでしたか……」

 ソレワターセの様子を見る限り、自身の攻撃によるダメージが相当に酷いのは見てとれる。
 このまま放置してはソレワターセ自体永くは保たないだろう。
 だが、それはアクマロの望む所では無い。折角ノーザすら取り込んだ手駒をこの手に出来るのだ、是が非でも手に入れなければならないだろう。

「少々勿体のぅございますが……早速使わせてもらいましょうか」

 そう口にしてある物を投げ込む。

「ソレワターセ、姿を現せ……これでよろしいのですかな?」

 投げ込んだのはノーザから渡されたこの地にある最後のソレワターセの実、これを既にボロボロとなり使用に耐えられないソレワターセを今一度蘇らせるというのだ。

「ァァァァァァァ……」

 ほんの僅か抵抗するそぶりを見せたものの、新たなソレワターセは既存のソレワターセを取り込みボロボロだった身体をほぼ元通りの状態とする。
 とはいえ、素体となっているスバルの身体のダメージが治療されるわけではない。それでも新たに投入された実により震えが止まるのを確認する。

「さて、誰に従うべきかはおわかりですかな? スバルはん」
「ハイ……アイスルアクマロサマ……」

 アクマロの問いに恐ろしい程素直に答えるソレワターセである。

「では、まずは取り込んだ者共の首輪を出してもらえますかな?」

 そのアクマロの指示に従い、取り込んだ参加者の首輪――合計7個あるそれらを出す。

「ほぅ、こんなに取り込んでましたとは……」

 脱出の為には首輪解除が必須、その為に首輪のサンプルは欲しいところではあった。それをこうまで簡単に7個も確保できた事は都合が良い。

「ノーザはんもこういう使い方をすべきだったと言うのに……さて、次の指示でございますが……我を守る……これは言うまでもございませんが、十臓はんを守る為にも動いてもらいましょうか」
「ハイ……」
「十臓はんの姿形に関しては説明しなくても構いませんな」

 何しろ、十臓の情報は流ノ介を取り込んだ事で確保している。説明の手間が省けたのはありがたい。
 余談だが、スバルが取り込んだ情報を引き出す事に関しては完全に失念していた。事が上手くいきすぎた事に加え、迅速に動くべきと判断した事によるミスである。

「ならば結構、それでは他の参加者共を襲い、この地を嘆きと悲しみに満たして貰いましょう……特にシンケンジャー、血祭ドウコク、仮面ライダー共、そしてプリキュア共に対して……」
「ハイ……」
「移動にはその機械の馬をお使い下され……」

626Lの季節/手ごたえのない愛 ◆7pf62HiyTE:2012/06/15(金) 14:17:35 ID:NL4PoLkA0

 と、ここまで口にして気付いた。今のスバルを見たところ手持ちの武器も防具も失っている。幾らソレワターセの力があるとはいえこのままではすぐさま倒される可能性もある。

「お待ちなされ……コレを……」


――Cyclone――


 そう音声を発生したガイアメモリをスバルへと投入する。
 先の戦場より回収したT2ガイアメモリが1つサイクロン、その中に内包された疾風の記憶が全身を巡り――
 その身体をサイクロン・ドーパントへと変貌させたのだ。

「後はスバルはんのお好きな様に――そうですなぁ……夕刻17時頃、志葉家の屋敷で落ち合いましょうか」

 その言葉を聞いた後、サイクロン・ドーパントはバイク――奇しくも自身と同じ名を冠したバイク、本郷猛の愛機サイクロン号にまたがり走り――いや、
 自身が持つ疾風の力で空へ高く舞い上がり――空中に道を形成しながら大空を走り出した――

「行きましたなぁ……さてと……」

 最後にデイパックから全ての丸薬が抜き取られた腕輪と説明書きを取り出し、自身の持つ削身断頭笏で瞬時にバラバラに切り刻んだ。事が済んだ以上、証拠を残す必要は無いというわけだ。

「そういえば、ノーザはんの所持品どうなりましたかなぁ……全部は消し飛んでいないとは思いますが……捜す余裕は流石にありませんなぁ」

 その通り、こうしている間にも一連の騒ぎを聞きつけた連中が駆けつけてくる可能性が高い。
 消耗した今という状況で連戦は避けたいところ、早々にこの場から撤収すべきである。

 それ故に、足早に移動を始める。当面の目的地は志葉家の屋敷、
 十臓の目的がシンケンレッド志葉丈瑠との決着であるならば高確率でそちらに向かうだろう。
 道中短くは無いが休み休み移動しつつ首輪を調べながら行けば良い。

「さて、プリキュア共も仮面ライダー共もどう動きますやら……」

 実の所、ノーザをここで退場させた事については全く別の狙いもある。
 ほぼ確実にキュアサンシャイン、仮面ライダースーパー1は自分達に反撃を仕掛けスバル奪還を狙う事は明白だ。
 だが、ここで彼等の視点となって考えてみよう。
 恐らく放送でノーザの名前が呼ばれる事は確実、それを聞いた段階でどう思うだろうか?
 あの状況からのノーザの退場、それを踏まえれば自分達の勢力が何かしらの理由でボロボロになったと推測する筈だ。
 言い換えればこの機を利用すればスバル奪還の可能性すら高まるのだ、何しろ主人であるノーザが既にいないのだからだ。
 恐らくは絶望の中から希望を抱く事となる。
 しかしそれはすぐさま絶望に変わる。周知の通り、今のスバルの主人はアクマロとなり未だ健在だ。
 それだけではなく、運良く浄化できた所でスバルが元に戻りはしないだろう。
 そう、スバルにも『アレ』を仕込んでいるのだから――それが解除されない限りスバルは自分を裏切る事は決して無い。説明書きを信じるならば最低でも待ち合わせの時間まではまず大丈夫だろう。
 無論、想定より早く解除された所で救いにはなりはしない――何故なら、

「望まぬ殺戮を強いられ、愛する者までその手にかけたスバルはんがその重みに耐えられるとは思えませんからなぁ……シンケンジャーも仮面ライダーもプリキュアもそんな彼女を本気で救えると思っているのですかな?
 もう、今の彼女は十臓はんや太夫はんと同じ――はぐれ外道と同じなのですからな」

 そう口にしつつ歩き出す――

 クレーターの中心に残されたものに気付く事無く――

「それにしても……何故スバルはんはあの方向に向かったのでしょうかな?」


【1日目/早朝】
【B-7/森】

【筋殻アクマロ@侍戦隊シンケンジャー】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、全身に大火傷
[装備]:削身断頭笏@侍戦隊シンケンジャー
[道具]:支給品一式×5、ランダム支給品2〜10(アクマロ1〜2、流ノ介1〜3、なのは0〜2、本郷0〜2、まどか0〜1)、首輪×7(シャンプー、ゴオマ、まどか、なのは、流ノ介、本郷、ノーザ)、
    ヴィヴィオのぬいぐるみ@魔法少女リリカルなのは 、志葉家の書状@侍戦隊シンケンジャー

[思考]
基本:地獄をこの身で味わう為、十臓と共に脱出を試みる。
1:休みながら志葉家へと向かいつつ、首輪について調べて見る。17時頃に志葉屋敷でスバルと合流する。
2:裏正、太夫の三味線の確保及び十臓を探す。
3:ドウコクに関してはひとまず放置。
4:条件が揃うならばこの地で裏見がんどう返しの術を試みる。
5:仮面ライダースーパー1から受けたこの借りを必ず返す。
[備考]
※参戦時期は第四十幕『御大将出陣』にてシタリから三味線を渡せと言われた直後。
※アインハルトが放った覇王断空拳の音を聞きました。

627Lの季節/手ごたえのない愛 ◆7pf62HiyTE:2012/06/15(金) 14:18:04 ID:NL4PoLkA0





Interlude

 御覧の通り、これがこの殺人劇の真実である。
 纏めてしまえばなんてことは無く、アクマロが惚れ薬を駆使しスバルとノーザの行動を誘導しノーザを謀殺したというだけの話なのだ。
 しかし、読者諸兄はそれでも疑問に感じている事だろう。あまりにもアクマロに取って都合の良い展開だと。
 これについては1つ捕捉させて欲しい、
 そもそもノーザとアクマロの方向性は一見似ているが決定的に違う部分が存在している。
 それは愛情についてのスタンスについてだ。
 ノーザは元々管理社会ラビリンス出身故に愛情などのプラスの感情を全く考慮していない。それが元でプリキュア共にしてやられているのだが殆ど学習していなかったと考えて良い。
 一方のアクマロは外道と称していながらも愛情の感情をちゃんと考慮している。
 元々同じ外道衆の1人である薄皮太夫自体がそういう愛憎が元で外道になっている事からも愛情も方向を変えれば嘆きや哀しみを引き出す1つのスパイスであるのはよく理解している。
 いや、それを別にしてもアクマロのスタンス自体が特殊ではあるのだが――これについては後で説明しよう。

 話を戻すがノーザは惚れ薬を服用した事でアクマロに惚れてしまった――のだがここで1つ問題がある。
 前述の通り、ノーザにはそういう愛情という感情が存在していない。それ故に自身の中に湧き上がった感情が何か全く気付いていなかったのだ。
 そう、知らず知らずの内にアクマロに愛情を抱いていたという事に気付かずに――
 そして恋は盲目という言葉もある通り、自身がおおよそあり得ない言動をしていてもその異常性に気付く事は決して無い。

 さて、ノーザ視点で今一度あの瞬間を振り返ってみよう。
 自身が刺された事でソレワターセがアクマロを仕留めるべく動く、これ自体は本来のノーザにとっては望む行動の筈だ。
 しかし一方でその時のノーザは正常では無い、アクマロを仕留めさせる事は決してあってはならないのだ。
 それ故に2つの行動が明らかに相反する事は明白だ、
 ここから待避してソレワターセにアクマロを仕留めさせるべきか、
 ソレワターセに止める命令を出しアクマロを守らせるか、
 そのどちらが最善なのかがノーザにはわからなかったのだ。
 更に言えばソレワターセの行動はあまりにも早く一瞬の遅れが命取りとなっていた。

 判断が遅れたノーザは思考する間もなく――唯々湧き上がる衝動のまま――本来の姿に戻らずそのまま飛び出しソレワターセの攻撃を受けたのであった。

 その時点での彼女は何を思っていたのだろうか――?

 これはもう既に触れている通り、アクマロが無事だった事に安堵していた。
 無論、これは惚れ薬によって根底から歪められた感情だ、その感情を知らず理解も出来ないノーザにとっては決して知る事の無い真実ではあるが――
 他人の心を歪め続け弄んだ魔女の結末としてはあまりにも皮肉が効いている、その魔女自身の心が知らず知らず歪められていたのだから――

 真偽はどうあれ真実はたった1つ、ここでノーザは退場した、それだけは間違いない。

 だが――それでもアクマロに都合の良い展開だとお思いだろう。
 実際問題その通りなのだ、この作戦には穴が幾つもある。

 まずそもそもの前提としてノーザが都合良く惚れ薬を飲んでくれるのかという根本的な問題がある。
 実際は御覧の通りだったが、ノーザにしては油断しすぎな展開でもある。
 勿論、ノーザとてアクマロが下手に動く事は無いとタカをくくっていた部分はあったし、毒薬程度など通じないと確信していたという事情はある。
 まさかあのタイミングで恋愛感情を抱かせる惚れ薬で惚れさせるなんて事ノーザに予想など出来ないだろう。
 漠然と洗脳する薬ならまだわかる、しかし惚れさせるなんて展開を愛情を理解できないノーザに予想出来るわけもなかろう。
 だが、仮にそうだとしても少々油断をしすぎていた部分はある、とはいえこれまでノーザに都合良い展開が続いていた事を踏まえ慢心していた以上これも仕方ないだろう。
 それでも慢心せず、アクマロの思考を入念に推察し迂闊な行動を取らなければ違う結末もあったであろうに――

628Lの季節/手ごたえのない愛 ◆7pf62HiyTE:2012/06/15(金) 14:20:07 ID:NL4PoLkA0

 もう1つの問題が惚れ薬が確実に効くという保証があるのかという問題だ。
 実は先程は説明を省いたがその惚れ薬が作用していなかった事例が存在する。
 天道あかねがその薬を服用した際、女性化した乱馬ことらんまには反応しなかった事例が存在するがそれを言いたいわけではない。
 そう、実はその時に雄豚であるPちゃんをその目で見ている――のだが、これまた反応しなかった。
 Pちゃんの正体が響良牙なのは読者諸兄には語るまでもないが、あかねはその事実を知らない。つまりあかねにしてみれば愛玩動物レベルの扱いでしか無いのだ。
 つまり、例え異性であっても愛玩動物じゃ反応しないという事になるわけだ――まぁその一方で先に述べた通り雌タコが八宝斎に惚れているという事例もあるから実際の所はいまいち不明瞭なのだが――

 ともかく、そういう事例もある以上、本当にノーザがアクマロに惚れるという確証など何処にもなかったのだ。
 ノーザ自身外見が女性とはいえ植物から作られた人工生命体に過ぎず、アクマロに至っては只の化け物なのだから――
 知性のある生命体だからそういう感情を抱けた――という推測も出来るがここまでくると妄想の域に入ってしまう。

 実際、作用したのが現実とはいえ、都合が良い展開では無いかと思うだろう。
 何故、アクマロはその惚れ薬を頼ったのか?
 それはアクマロが外道であるにも関わらず、人の情を頼ってしまう傾向があったからだ。
 そもそもの裏見がんどう返しの術自体、十臓の家族に対する情を利用したものでしかない。
 察しの良い方ならわかると思うが十臓が本気で外道に墜ちているなら今更家族に対する情で動くわけもないだろう。
 そんな十臓を信じたい者もいるだろうが、それは楽観視しすぎな話ではある。
 要するにアクマロはその時点で楽観視してしまっているのだ。そんなアクマロだからこそ今回も確実に上手くいくと判断し事に及んでしまったという事だ。

 それに――実の所、アクマロの策が都合良く行ったのにはもう1つ理由がある。勿論、それもある程度はアクマロの机上の空論通りではあるが――
 そして同時にそれはノーザの犯した最大の失敗でもあるのだ。

 それを語るのは――もう1人の登場人物について触れていこう。





Act 4 もう一つの真実 〜手ごたえのない愛〜


 まず、最初におことわりしておきたい事がある。
 今現在のスバル・ナカジマの状態についてだ。
 ソレワターセに憑依されていこう種々様々な参加者を取り込み強化されている。
 恐らくはグロンギ、仮面ライダー、シンケンジャーの力を取り込んでいるとお考えの方も多いだろう。
 更に言えば鹿目まどかを取り込んだ事により世界を書き換える程の力を得てしまったと危惧する者もいるだろう。

 結論から先に言っておこう。それはない。

 そもそも当然だろう、安易に他の参加者の思考を歪め洗脳するは言うに及ばず、無尽蔵に取り込む事で無限の強化を行うなどゲームバランスを崩しすぎである。
 当然、制限がかけられてしかるべきポイントであろう。

 と、これだけで終わらせるのもどうかと思うのでそれとは別の視点で振り返ってみよう。
 まず、勘違いしている方も多いが取り込んでいるのはあくまでもソレワターセであってスバルそのものでは無い。
 つまり、強化されるのはあくまでもソレワターセであり、スバルはその宿主状態でしかないという事だ。
 わかりきっている事だが、スバルの肉体が変貌する事などまずあり得ない、例え外見が変化してもそれはソレワターセの変化であってスバル自体の変化ではないという事だ。
 ソレワターセとスバルの神経がリンクしているわけだが肉体を決定的に変貌させるという事はないのである。
 浄化さえしてしまえばスバルの身体は元通り、そんな単純なレベルなのだ。まずそれをご理解いただきたい。

629Lの季節/手ごたえのない愛 ◆7pf62HiyTE:2012/06/15(金) 14:22:26 ID:NL4PoLkA0

 では、前述のものを取り込んで強化されるかどうかについて触れていこう。
 結論から言えばやはりない。まず、肉体を取り込んだだけでその肉体になるなんてファンタジーなど無い。
 多少は強化されるだろうが、ソレワターセ自体がプリキュアの攻撃にも耐えうるのだから決定的なまでに強化される道理もないだろう。
 つまりグロンギの肉体を取り込んでもグロンギになりはしないという事だ。また説明は後述するがアマダムやダグバのベルトの欠片で変貌する事もない。
 それから仮面ライダーを取り込んだからといってその力を手に入れられるという事も無い。
 まず、仮面ライダー1号は最初期の改造人間だ。それ故に単純なスペックだけならば下の方とも言える。むしろ単純なスペックだけで勝負するならばまだスバルの方が強いだろう。
 そんなものを取り込んでも大した力になどなりはしないという事だ。
 ちょっと待て、仮面ライダー1号は強いだろう。そうお思いの方も多いだろう、だがそれは単純なスペックでの話では無い、ショッカー等の様々な悪の組織と戦い続け時に敗北しても何度となく特訓をして強くなったのだ。
 そして何より――それを支えていたのは正義の心、あるいは魂なのだ。
 つまり、仮面ライダーの力の源はその心であり魂なのだ。
 だが、そもそもそういうプラスの感情を下に見るラビリンスのソレワターセがそれを力にすると思うか? それ以前に特訓すら無駄だと断じる連中なのだ、そんな力を取り込めるわけもなかろうて。
 同様の理由からシンケンジャーのモジカラも得られはしない。モジカラ自体は血筋によるものではあるがその力を最大限に発揮するには特訓や精神的な要因が必要だ。
 それを踏まえればソレワターセがその力を使いこなせないのもご理解いただけるだろう。
 説明が遅れたがグロンギのベルトの力による強化も外的要因よりも精神的な面によるものが強い、それ故に操られていて自我を失っているスバルが変貌する事も無い。
 唯一例外的なのはなのはを取り込んだ事による膨大な魔力だ。これはそれをよく知るスバル自身が宿主になっている事もあり十二分に扱う事が出来る。
 もっとも、その魔力も先程ノーザを仕留めた事で完全に使い切った。既になのはの肉体が存在しない以上、その魔力が回復する事は決してあり得ない。
 そしてまどかについても触れておこう。確かに彼女が契約して魔法少女になったならば膨大な力が得られるだろう。
 だが、それは暁美ほむらが何度も同じ時を繰り返し彼女に因果を集中させたからに他ならないし、その真実は契約主であるインキュベーターですら気付くのが遅かったのだ。
 話を戻すが、幾ら契約後の彼女の力が膨大でもこの時点のまどかは何の力も無い普通の少女だ。
 9歳のなのはを取り込んでも19歳時点の彼女の力を得られるわけではないのと同様に、その時点のまどかを取り込んでも大した足しにはなりはしないだろう。
 インキュベーターの契約システムが無いのに彼女の因果を力に変換できる道理など何処にもない。
 また、魔法少女あるいは魔女のシステムは思春期の少女の純粋な祈りあるいは希望、つまりはその魂を力に変えたものである。
 インキュベーターは感情を持たないからこそそれを冷徹なまでに客観的に捉える事ができそういうシステムを構築できた。
 しかし、何度も繰り返すがソレワターセはマイナスの感情はともかくプラスの感情がもたらす力を全く考慮していない。これではまどかの魂に宿る力を解放する事など不可能だ。
 先に何かしらの方法でそのシステムを取り込めたなら万に一つの可能性もあっただろうが、もう時既に遅し、今更取り込んでも彼女の魂などもうどこにもないのでどちらにしても不可能なのだ。

 そういうわけなのでここまで多くの参加者を取り込んでもそこまで大きな力にはなっていないのである。そして今後についても概ね同じであろう。
 ちなみに先程取り込んだノーザに関しては元々ソレワターセに近い存在故に高い融和性を誇るがそれでも強化レベルとしてはそこまで大きくはない事を付記しておく。

 むしろ取り込んだ事による影響は、精神的なものが大きいだろう。
 つまり取り込んだ肉体がもつ情報、あるいは記憶ともいうべきか、それが大きな影響を及ぼしているという事である。

 シャンプーの持つ乱馬への愛情、
 ゴオマの持つ凶暴性と狂気、
 まどかの持つ救済の精神
 なのはの持つ不屈の心、
 本郷の持つ正義の魂、
 流ノ介の持つ殿への忠誠心、
 そしてノーザの持つ不幸に導く悪意、

 これらを全て取り込んでいる事がむしろ問題なのだ。

630Lの季節/手ごたえのない愛 ◆7pf62HiyTE:2012/06/15(金) 14:22:53 ID:NL4PoLkA0

 ここでスバルの精神状態を振り返っていこう。
 シャンプーに対し望まぬ殺戮をさせられた事でスバルの精神は大きく摩耗した。
 止めたいとも願おうとも決して叶わず操り人形として戦わされる状態だ。
 そこにゴオマの持つ凶暴性と狂気を取り込んだのだ。
 自己を破滅に導いても破壊をもたらす狂気――それは不幸にもスバルに適合していた。
 自身が壊れても構わないわけなのだからその狂気はスバルにとって都合が良かった。
 ソレワターセ及びノーザにしてみればそれはあまりにも都合が良すぎた。
 そのお陰で運良く、不幸とも言うべきかなのはを取り込む事に成功した。

 だが、それこそが最後のスイッチだ。スバル・ナカジマにしてみれば高町なのはは何よりの恩人であり全ての希望とも言える存在なのだ。
 それを自身の手で摘み取り、あまつさえ取り込んでしまい同一化してしまったのだ。
 支配への抵抗を放棄し、狂気に身をゆだねてしまったばかりに最悪の結果を導き出した――
 どんなに願おうとももう取り返しのつかない致命的な失敗だ――

 スバルの精神は完全にぶっ壊れてしまった。既にスバル・ナカジマという精神など残骸でしかない。
 残ったのは氾濫した記憶情報だけでありそれをソレワターセが操作しているだけである。

 と、流ノ介を取り込んだ所まではご理解いただけただろう。ではここからアクマロの動きを振り返る。
 とはいえそれ自体は簡単だ。実はあのときアクマロはスバルにも惚れ薬を飲ませていたのだ。
 先程ノーザに2つ飲ませたと説明したがその理由は確実に一日玉以上を飲ませる為だ。
 1つだけの場合効果が一瞬しか保たない一瞬玉しか飲まない可能性がある。
 だが、最大の問題としてコロンすら素で判別がつけられない物である以上、誰にもどれがどれかを鑑別する事が出来ないのだ。
 そこでアクマロは考えた。2つ飲ませれば確実に最低でも一日玉を飲ませる事が出来ると。
 そして余ったスバルに最後の1つを飲ませたと。こちらが一瞬玉の可能性もあるがこちらはある意味上手くいけば良かった程度のものでしかない。

 さて、シャンプーを取り込んでいるわけなのでスバルはそれが惚れ薬である事に気付いていた。愛情という物を知らないソレワターセが毒薬で無いと判断したならば飲む流れに不思議は無い。
 そしてアクマロをその目で見た事でアクマロに惚れてしまったというわけだ。
 その後アクマロがノーザを刺すという凶行、彼女を主とするソレワターセは彼女を守るべく動く――
 が、ここで取り込んだ記憶が大きな力となる。
 元々ソレワターセの支配力が強くてもプリキュアの精神力で破れる存在だ。取り込んだ者達がそうそう簡単に屈すると思うか?
 取り込まれた6人はそれぞれ思考するベクトルは若干違うが皆ノーザを仕留めるべく動く筈だ。
 シャンプーにしてみれば乱馬の障害であり、本郷達4人にしてみればスバルを狂わせ哀しみをもたらす存在であり、ゴオマにとっても只の敵でしかないのだ。
 要するに無計画に参加者を取り込むと共に彼等の心の強さを甘く見た事がノーザの最大の失敗というわけだ。
 それに加え、惚れ薬の効果でアクマロに対する愛情により彼を守ろうとする状態だ。
 そう、スバルの矛先はアクマロへの被害を最小限に抑えノーザへのダメージを最大限に発揮する方向に向けられたのだ。

631Lの季節/手ごたえのない愛 ◆7pf62HiyTE:2012/06/15(金) 14:25:20 ID:NL4PoLkA0

 それがその結果でありもう1つの真実なのだ。そしてノーザを取り込み、新たに植え付けられたソレワターセにより愛するアクマロを主人として彼女はさらなる戦いに赴くという事だ。
 ちなみにノーザを取り込んだからといってそれが行動に大きな影響を及ぼす事は無い、彼女の悪意がスバルを支配しようとしても、同じ様に取り込まれた本郷やなのはがそれを阻止するからだ。
 逆を言えば今のスバルを支えているのは惚れ薬による歪められた手ごたえのない愛でしかないのだが――

 そしてアクマロの推測通りスバルを救う事は限りなく不可能に近い。浄化しても惚れ薬の効果が消えない限りアクマロへの忠誠は消えないからだ。
 ちなみにスバルが服用したのは一日玉(必然的にノーザが残り2つを服用した事になるがこれ以上は触れない)、その持続時間は効果を信じるならば丸1日、
 無論制限により短くはなるが最低でも――その効果が切れるのは2度目の放送以降である。
 が、実の所それとは別にしてもスバルは救えない。何故なら先の攻撃でスバルの身体は生命活動に支障を起こす程のダメージを受けている。
 つまり、今の彼女が生き長らえているのはソレワターセのお陰なのだ。そんな状態でソレワターセを浄化すれば――スバルは死ぬ。
 更に言えば戦闘機人である彼女に普通の治療は使えない。
 そういう技術が無ければ彼女を治療する事は不可能――どちらにしても八方ふさがりという事だ。

 唯一の救いは先の攻撃と首輪を出した際にいくつかのものを排出したという事だ。
 彼女のデバイスであるマッハキャリバー、先の攻撃でリボルバーナックル共々破損状態となり使えないと判断され排出された。当然ソレワターセの支配からは脱却している。
 次になのはのデバイスであるレイジングハート、こちらはカートリッジこそ消費済みだが破損は無い。
 そして――ダグバのベルトの欠片とアマダム、但しこちらは激闘により排出された時の衝撃で粉々に砕け風と共に散った――
 もしかすると、スバルの凶行をこれ以上繰り返させたくない彼女達の願いがそれらを解放したのかもしれない――

632Lの季節/手ごたえのない愛 ◆7pf62HiyTE:2012/06/15(金) 14:31:12 ID:NL4PoLkA0


 それでも彼女達の愛など手ごたえの無い愛に過ぎない――


 物語の決着を着けるのは舞台を降りた者ではなく舞台上にいる者――


 自分でカタを着けるしかないという事だ――


「……ティア……」


 それが彼女に残った最後の――


【B-7/上空】

【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:疲労(極大)、ダメージ(極大)、全身に生命活動に致命的なダメージ、
    ソレワターセによる精神支配、シャンプー、ゴオマ、まどか、なのは、流ノ介、本郷、ノーザの肉体を吸収、惚れ薬によりアクマロに惚れている、サイクロン・ドーパントに変身中

[装備]:T2ガイアメモリ(サイクロン)@仮面ライダーW、サイクロン号@仮面ライダーSpirit
[道具]:支給品一式、スモークグレネード@現実×2
[思考]
基本:愛するアクマロ様のしもべとして働く。
1:アクマロ様に従い、十臓を守ると共に他の参加者(シンケンジャー、仮面ライダー、プリキュアを主に)を仕留める。その為に南西に移動中。その後17時に志葉屋敷でアクマロと合流
2:ティア……
[備考]
※参戦時期はstrikers18話から20話の作戦開始前までのどこかです。
※『高町ヴィヴィオ』は一応ヴィヴィオ本人だと認識しています。
 また、彼女がいることからこの殺し合いにジェイル・スカリエッティが関わっているのではないかと考えています。
※ソレワターセに憑依された事で大幅にパワーアップしています。
※シャンプー、ゴオマ、まどか、なのは、流ノ介、本郷、ノーザの肉体を吸収したことで、彼らの情報を得ると共にその姿にコピーすることができます。但し、その力までは得られません。
※一日玉の効果でアクマロに惚れています、最低でも12時以降までは解除はされません。同時にソレワターセを浄化してもこちらは解除されません。
※生命活動に致命的なダメージを受けており、その命をソレワターセで繋いでいます。つまりソレワターセを浄化しただけではスバルはそのまま死にます。

633Lの季節/手ごたえのない愛 ◆7pf62HiyTE:2012/06/15(金) 14:33:36 ID:NL4PoLkA0





Epilogue


 最後にもう1つだけ――
 スバルの向かった方向は丁度南西――何故彼女はそこに向かったのか?
 偶然と言えばそれまでではあるが――果たして本当にそうだろうか?
 そこには彼女の相棒ともいうべきティアナ・ランスターがいる。彼女に惹かれているのではなかろうか?
 もしかするとサイクロンメモリとティアナの持つトリガーメモリの運命的な力で引き合っているのかも知れない。
 運命論はともかくとして、スバルとしてはティアナに自身の命を終わらせてもらう事を望んでいるのかも知れないのだろう――
 恩人すら手にかけた自身を断罪する者として――

 だが、ティアナもまた修羅の道を進んでいる――

 しかしスバルとティアナには決定的に違う所がある。
 スバルは唯々流されるままに堕ちていっただけだが――
 ティアナは自ら堕ちる事を選んだのだ――

 堕ちる事が正しいと言うつもりはない。だが、唯々流されて全てを諦めた者が強い決意で諦めず道を歩む者の前に立つ資格などあるのだろうか――

 相棒に対する愛情すらも――手ごたえはない――





[全体備考]
※ダグバのベルトの欠片@仮面ライダークウガ、ゴオマのアマダム@仮面ライダークウガ、女傑族の腕輪@らんま1/2、ナナシ連中の刀@侍戦隊シンケンジャーは破壊されました。
※バナナパフェ@超光戦士シャンゼリオン、彦馬のクッキー@侍戦隊シンケンジャー、カートリッジ@魔法少女リリカルなのは、ソレワターセの実@フレッシュプリキュア!は全て消費しました
※マッハキャリバー(破損状態)@魔法少女リリカルなのは、リボルバーナックル(右手用、左手用共に破損状態でマッハキャリバーに収納中)@魔法少女リリカルなのは、
 レイジングハート・エクセリオン@魔法少女リリカルなのはがB-7に生成されたクレーター中央に放置されています。何れもカートリッジ残量は0です。
※支給品一式×3、双眼鏡@現実、ランダム支給品0〜3(ノーザ0〜1、シャンプー0〜1、ゴオマ0〜1)、水とお湯の入ったポット1つずつ、バグンダダ@仮面ライダークウガがB-7の何処かに散らばっており、破損している可能性もあります。



【支給品紹介】

バナナパフェ@超光戦士シャンゼリオン
鹿目まどかに支給、
涼村暁の好物。


彦馬のクッキー@侍戦隊シンケンジャー
高町なのはに支給、
ディケイドシンケンジャー編(第二十一幕と第二十二幕の間)で登場、
戦いに出た丈瑠達の帰りを待つ彦馬が光栄次郎に誘いを受け作ったシンケンジャー5人(源太以外)の顔を模したクッキー

女傑族の腕輪@らんま1/2
本郷猛に支給、
かつて八宝斎が女傑族より盗んだ秘宝。
腕輪に嵌められている丸薬は惚れ薬となっていて、飲んだ後最初に見た異性に惚れてしまうという強力なもの。
嵌められた丸薬はそれぞれ『一瞬玉』、『一日玉』、『一生玉』と呼ばれ持続時間はその呼称通りである(つまり一瞬玉は一瞬、一日玉は一日、一生玉は一生)。
但し、この地においては制限により一日玉、及び一生玉については持続時間が短くなっている(それでもすぐに解けるという事は無い)。

634 ◆7pf62HiyTE:2012/06/15(金) 14:35:19 ID:NL4PoLkA0
投下完了しました。何か問題点や疑問点等があれば指摘の方お願いします。

ご覧の通り、今回容量57KBとなるので分割となります。分割点は名前欄に書かれている通りですが以下の通りとなります。

>>614-623(Act0〜)が前編(事件編)『Lの季節/I don't know the truth』(27KB)、
>>624-633(Act3〜)が後編(解決編)『Lの季節/手ごたえのない愛』(30KB)

635名無しさん:2012/06/15(金) 15:26:16 ID:AoTTrJOs0
投下乙です。
ここに来てまさかの裏切りか…。
アクマロ君リア充ハーレムでビックリ。女傑族の腕輪は、もしかすれば更正アイテムとか洗脳アイテムだったな…。
本郷さんの行動によってはスバル止まったかな。
一体、ばななぱふぇなるものはどうやって支給されたのか。

>>618
「シンケンシルバー」じゃなくて、「シンケンゴールド」では?

636名無しさん:2012/06/15(金) 15:39:38 ID:aXxzTWvw0
投下乙!
ってええええええええ!?
まさかのノーザ退場…っていうかいろんな要因が交じり合っててややこしい!
しっかしアクマロ、偶然の要素も多分にあったとはいえすごいことしてくれたな…
確かにソレワターセ保有されてる時点で対等な同盟なんてありえないわな
それにしてもソレワターセ談議はマジでややこしかったがスバルの内面のぐちゃごちゃぶりが異常だw

637 ◆7pf62HiyTE:2012/06/15(金) 15:39:48 ID:NL4PoLkA0
>>635
間違えてしまいました。誤字レベルの修正なので、wiki収録時に修正いたします。

ばななぱふぇは……グラスに盛ったパフェをそのままタッパーに入れて……いや、まぁその辺はご想像にお任せします。

638名無しさん:2012/06/15(金) 18:04:25 ID:1a7Ij3ak0
投下乙です

アクマロ、ここにきて裏切りとは
ここでらんまの世界からの支給品が大きく動くとは…あの世界のアイテムはぶっそうなの多いぜw
それにしても言われてみれば穴だらけの計画だわw
そしてスバルは…ほぼ詰みの上でそっちに行くのかあ…

639名無しさん:2012/06/15(金) 19:21:16 ID:AoTTrJOs0
タッパーに入れただけだとグチャグチャになると思われるので、おそらくばななぱふぇは特殊な入れ物に入れられてたんでしょう…。
本作はデイパックは四次元式じゃないと聞きましたし、その入れ物こそが四次元式なのかも…。

640名無しさん:2012/06/15(金) 19:54:11 ID:aXxzTWvw0
容量に限りがある四次元バッグとか…
裏正とか明らかに入れるの無理そうなのもあるし
源太の屋台は源太のすぐそばに置いてあったんだろうけど

641名無しさん:2012/06/15(金) 20:10:08 ID:aXxzTWvw0
どうやって入れてるといえば、ポケモンとかテイルズとかのRPGのアイテム容量って現実的にありえないよねw

642名無しさん:2012/06/15(金) 20:31:57 ID:AoTTrJOs0
バイオハザードならギリギリ…

643名無しさん:2012/06/15(金) 21:46:42 ID:ULClt/3YO
これでスバルに出会ったとしてティアナは修羅の道を行くのか錯乱・ザラもといL5るか・・・ど う あ が い て も カ ワ イ ソ ス

644 ◆LuuKRM2PEg:2012/06/16(土) 06:17:59 ID:y..rgw0M0
投下乙です!
おお、まさかノーザもここで脱落とは。
スバルもどんどん壊れていくなぁ……もしティアナと出会ったら果たしてどうなるか。
そしてアクマロは順調のようで果たしてこれからどうなるだろう。あとアクマロ……ごめんなさい。

それでは自分も、予約分の投下を開始します。

645 ◆LuuKRM2PEg:2012/06/16(土) 06:20:28 ID:y..rgw0M0
 D−6エリアにそびえ立つグロンギ遺跡の来訪者が、涼邑零の他にもう一人現れた。
 時間の経過と共に薄くなっていく闇に覆われた森林の中を駆け抜けて、既に死人となったその男がここに辿り着いている。何十本の枝や数え切れないほどの葉っぱによって星空の輝きはまともに差し込まなかったが、そんなのは男にとって何の障害にもならない。実の母親すらもその手で殺しても、何の感情も湧き上がらない悪魔となった彼が今更恐怖に支配されるなど有り得なかった。
 古代文字と思われる模様が刻まれた棺が多く存在するが、大道克己は一切の興味を示さない。その中には死人が眠っているのかもしれないが、それなら地獄を生み出すまで放置するだけ。たった一人だけ連れてこられた仲間すらも踏み台にして優勝すると決めた今の克己には、そもそも死人をNEVERにして連れ出そうなんて発想が無い。
 尤も、仮に仲間にしようとしてもNEVERにする為の方法がない以上、どうしようもないが。

「呪泉郷とやらはこの近くか」

 数時間前に仮面ライダーと思われる異形に変身した男や途中から乱入してきたバンダナ男と交戦した後、C−7エリアに存在する呪泉郷を目指して進んでいたら、克己はこの遺跡に辿り着いた。地図によるとここはグロンギ遺跡というらしく、念の為参加者がいないか調べてみたが、やはりこんな辛気臭い場所には誰もいない。
 だが別段落胆する事などなかった。いないならいないで他を探せばいいだけで、その程度に落ち込んでいるようでは戦いで生き残るなんてできない。死人が『生き残る』なんて話など、奇妙かもしれないが。
 とにかく、これ以上誰もいない遺跡などに留まっていたとしても何も得られない。それに古い時代の産物に目を向けるなんて、全ての過去を捨てた克己にとっては無駄以外の何物でもなかった。
 克己は地面に放置していたデイバッグを拾って遺跡を後にする。
 それから数分ほど経った瞬間、遠くから複数の足音が響くのを察知する。風によって揺れる木の葉や塵の音に掻き消されてしまいそうな程に小さかったが、NEVERの常人離れした聴覚ならば捉えるのは容易。

「この音は……近いな」

 耳を澄ませてみれば、三人分の足音の他にはカラカラと台車を引くような音も聞こえてくる。恐らく、荷物を運ぶ為にリアカーのような物でもあるのだろう。そんなのが殺し合いの役に立つのかどうかはまるでわからないが、考えても仕方がない。
 方角から考えて、音の主達は呪泉郷から離れていくのだろうが逃がすつもりはなかった。全てのメモリの王者であるT−2エターナルメモリを握り締めた克己は、すぐさま走り出す。NEVERの身体能力と数多の戦場を切り抜けてきた経験によって、その脚力は数キロもの距離を瞬時に駆け抜けられるほど優れていた。
 その姿はまさしく、生きている者全てを闇の中から引きずり込もうと企む、悪魔のようだった。





 呪泉郷から離れてから時間が大分経ったのか、木々の間から光が差し込んでくる。ぼんやりと地図を確認してみたが、具体的な場所はわからなかった。
 天道あかねに出来るのは、のんびりと寿司屋台を引く梅盛源太と一緒に南東の市街地を目指すしかない。肝心の源太は今、奇妙な格好をした無精髭の怪しい男にさっきから声をかけているが、まともな答えは返ってこなかった。名前を尋ねようとしても、適当に流されてしまう。
 まるで、一人になる為にわざとぶっきらぼうな態度を取っているかのようだった。

「なああんた、本当に戦いしか望んでないのか? そんな人生、寂しくね?」

 今だって源太は、これから周囲を照らしてくる太陽のように明るく訪ねるが。

646 ◆LuuKRM2PEg:2012/06/16(土) 06:21:08 ID:y..rgw0M0

「それが俺の全てだ……寿司屋、邪魔をするというならお前も容赦しない」

 と、怪しい男は淡々とした返事をするだけ。
 詳しい事情は知らないが、この男はただひたすら強い戦士との戦いを望んでいるらしい。そんな奴と一緒に行動するのはあかねにとって不安以外の何者でもなかったが、客を一人にするわけにはいかないと源太は言っていたので、こうして歩いている。
 無論、あかねとて誰も犠牲になって欲しくないと願っているが、それでも行動する相手は選びたかった。今は源太の作った寿司のおかげで落ち着いてはいるが正直な話、早く離れたいとすら思っている。

「おいおいおい、待ってくれ! 俺に客を斬るなんて趣味はねえよ!」
「なら、黙っている事だな……そもそも、お前たちは何故俺に付いて来る?」
「何でって……そりゃあ、一緒に寿司を食った仲だからに決まってるだろ! な、姉ちゃん!」
「う、うん……」

 朗らかな源太の問いかけに対してあかねは断る事など出来ない。もしもここで下手な事を言ってしまっては、あの巨大な刀で斬られてもおかしくなかった。
 それに全身から漂う雰囲気から考えて、男が只者とは思えない。源太もそれなりに強いのだろうが、もしも戦いになった時に勝てるかどうかわからなかった。それにあかね自身、無駄な戦いなんて避けられるなら避けたいと考えているので、相手の神経を逆撫でしない方が得策だと考えている。

「そうか……なら、勝手にしろ」
「ああ、勝手にするさ!」
「だが気をつけろ。もしも邪魔をするのなら……」
「わかってるって、あんたの邪魔はしねえよ! 強くなりたいってのは、男ならだれでも持ってる願いだからな!」

 仏頂面な男とは対照的に、源太はどこまでも光を放っていた。
 強くなりたい。無差別格闘天道流の主、天道早雲の娘に生まれてからずっと鍛えてきたあかねにも理解できる願いだが、無精髭の男から感じられるのは少し違う気がする。まるで、強くなる為なら人殺しも躊躇わないような目つきだったが……そんな失礼な事、口に出来るわけがない。
 それはただの気のせいだと思ってあかねは不安を振り払った、その時だった。

『ETERNAL』

 何処からともなく、そんな無機質な音声が鳴り響いてくる。
 その声はあかねには覚えがあった。何もすることが無くただぼんやりと支給されたT−2バードメモリのボタンを押してみたら、聞こえてきた声ととてもよく似ている。そんな一瞬の思考の後、自然の物とは思えない蒼い輝きによって闇が照らされた。
 一体何事かと思ってあかねが振り向くと、そこには人ではない異形が立っていた。額からは三本の角が真っ直ぐ上に伸びていて、∞の形をした複眼が黄色に輝いている。純白に彩られた装甲と周囲の闇に同調しそうな黒いローブが、あまりにも対照的だった。
 あまりにも予想外すぎる訪問者を前にあかねは呆気に取られながらも、無意識の内に訪ねる。

「えっ、あなた……誰?」
「仮面ライダー……エターナルだ」

 淡々と名乗った異形、仮面ライダーエターナルは腰から取り出したコンバットナイフを手中で数回転させてから、その切っ先を向けてきた。

647Kは吠える/永遠という名の悪魔 ◆LuuKRM2PEg:2012/06/16(土) 06:23:32 ID:y..rgw0M0





「仮面ライダー……だとぉ!?」

 闇の中より突如として現れた仮面ライダーエターナルを見た途端、梅盛源太の表情は一気に険しくなる。
 その理由は、かつて仮面ライダーと名乗った泥棒野郎に大事な烏賊折紙を盗まれそうになったからだった。丈瑠達はまだマシな仮面ライダーと出会えたから信頼しているようだが、源太には苦い思い出がある。あの加頭順といういけ好かない男から仮面ライダーと呼ばれた男達も悪い奴らでは無さそうだが、信じていいのかどうか悩んでしまう。
 だが、目の前のエターナルとかいう奴は信頼する余地がまるで無かった。いきなり現れて刃物を向けてくるような相手は、あかねを襲った女と同じで敵としか思えない。
 だから源太は懐からスシチェンジャーと寿司ディスクを取り出して、あかねと無精髭の男を庇うように立った。

「そうか、お前が最初に地獄へ行きたいのか。面白い」
「させるかよ!」

 鼻で笑うエターナルに力強く啖呵を切りながら、スシチェンジャーの中央に位置するボタンを指で押す。軽快な和風の音楽が響くのを耳にしてから本体を畳んで、寿司ディスクを折り曲げた。
 そして、源太は寿司を握るかのように、寿司ディスクをスシチェンジャーの上にセットする。

「一貫献上!」

 悪を倒すという揺るぎない信念を乗せた言霊を発した瞬間、スシチェンジャーから電子モヂカラが溢れ出して、眩い光のように辺りを照らした。漢字の『光』の形となったそれは源太の顔を覆い尽くした瞬間、一瞬で変身が果たされる。
 光が収まった頃、その身体は『光』の文字が大きく書かれたマスクと金色に輝くスーツで覆われていた。侍戦隊シンケンジャーの六人目の侍、シンケンゴールドへと梅盛源太は姿を変えていた。

「シンケンゴールド……梅盛源太!」

 腰からサカナマルを構えながら、シンケンゴールドは威勢よく名乗りを上げる。これまでは二度も邪魔されたので、ようやく最後まで名乗れた事に心が晴れるが、その直後にエターナルが飛び込んできた。
 その手に握られたコンバットナイフが縦に振るわれるのを見て、シンケンゴールドは素早くサカナマルを鞘から引き抜いて、激突させる。二つの刃から火花が飛び散りながら金属音が響くが、シンケンゴールドはそれを気にせず後ろに振り向いた。
 あかねもそうだが、無精髭の男も表情が驚愕に染まっている。ただの寿司屋がいきなりこんな姿になっては当然かもしれないが、事情を説明するのは後だ。

「お前は……?」
「なああんた、その姉ちゃんを連れて少しでもここから離れてくれ! こいつは俺が引き受けるからよ!」

 そう言いながらエターナルの方に振り向いて、ナイフを押し返そうと両腕に力を込める。しかしエターナルはびくともせず、すぐにしびれを切らしたシンケンゴールドは拮抗状態から抜け出す為に横へ飛んだ。
 数メートル離れた地面に着地した瞬間、エターナルが再び突貫してくる。思わずサカナマルを振るうも、風に棚引くマントによって受け止められてしまい、逆にナイフの一太刀を浴びてしまった。衝撃はスーツの下まで簡単に届き、シンケンゴールドは呻き声を漏らした瞬間、再びナイフで斬りつけられる。
 痛みによって数歩ほど後退するが、それでもシンケンゴールドはサカナマルで斬りかかった。しかしエターナルが右足を軸に身体を回転させた事で、刃の軌道にマントが割り込んでくる。サカナマルの刃先はマントに到達するが、金属音が響き渡った後に呆気なく弾かれるだけに終わってしまった。

「何だ、この邪魔なマントは!」
「お前如きが打ち破れる物ではない、諦めて大人しく地獄に堕ちろ」
「なんだと……!?」

 余裕満々といった様子で嘲笑するエターナルを前に、シンケンゴールドの怒りが更に燃え上がっていく。
 馬鹿にされた事が耐えられず、湧き上がった感情に任せて腹部から寿司ディスクを取り出した。鍔とするようにサカナマルに取り付けて、勢いよく横回転させる。電子モヂカラが両手から全身に駆け巡るのを感じて、シンケンゴールドは勢いよく前進した。

648Kは吠える/永遠という名の悪魔 ◆LuuKRM2PEg:2012/06/16(土) 06:25:26 ID:y..rgw0M0

「サカナマル・百枚下ろし!」

 モヂカラの影響で身体能力が格段に上がったシンケンゴールドは、一瞬でエターナルの懐にまで潜り込んで、サカナマルを振るって鎧に叩き付ける。一太刀を浴びせた事でエターナルが蹌踉めき、そこからマシンガンのように刀を振るい続けた。
 あのマントは鋼鉄を遥かに上回る硬度を誇っているから、防がれる前に速攻で叩きのめすしかない。この島に放り込まれてから最初に経験した戦いから、シンケンゴールドはそう判断していた。
 シンケンゴールドは知らないが、エターナルを守っている漆黒のローブはあらゆる攻撃を無力化する性質を誇っている絶対防御の盾。それに防がれる前に、最大の防御とも呼べる攻撃を続ける以外に、勝機はなかった。

「クッ……!」
「うおりゃあああぁぁぁぁ!」
「調子に乗るな!」

 しかしエターナルもただ棒立ちになっているままではなく、ナイフを振るってサカナマルを弾くが、シンケンゴールドはお構いなしに斬撃を続ける。時折、エターナルはマントで百枚下ろしを防ぐが、激突の衝撃を殺す事は出来ずに後退していた。ほんの僅かだが体制を崩すのを見逃さずにシンケンゴールドは抜刀する。
 やがてシンケンゴールドは最後の一撃をエターナルの胸板に叩き込むと、甲高い金属音が周囲に響き渡った。白い装甲から火花が飛び散り、エターナルは左手で胸を押さえながら後退するが、すぐに立ち上がる。

「まだ立てるのか!?」
「何かと思ったらその程度か……つまらん」
「何!?」

 蔑んでくるような言葉に再び怒りを覚えたシンケンゴールドは、感情任せにサカナマルを振るうが、刃が触れようとした瞬間にエターナルが跳躍した事で空振りに終わった。
 予想外の行動に驚愕する暇もなく、シンケンゴールドは反射的に目で追う。跳び上がったエターナルは一回転した直後、その拳に蒼いオーラを纏っていた。あれはヤバいと本能で察するがもう遅く、シンケンゴールドはサカナマルを盾にするように構えるしかできない。
 だがそんなのは関係ないとでも言うかのようにエターナルの拳は叩き込まれて、シンケンゴールドはなす術もなく吹き飛ばされてしまい、そのまま背中から屋台に突っ込んでいった。
 あまりの衝撃で全身に激痛が駆け巡っていくものの、何とかシンケンゴールドの変身は保っている。しかしその代償なのか、長年苦楽を共にしてきたゴールド寿司の屋台が粉々に砕け散ってしまっていた。暖簾も寿司のネタも滅茶苦茶になっていて、使い物にならない。

「お、俺の屋台が……! てめえ、よくもやってくれたな! 俺がこの屋台で何年生きてきたと思ってやがる!」
「知るか」

 わなわなと身体を震わせながら立ち上がるが、その間にエターナルがナイフを構えながらつかつかと歩み寄って来る。シンケンゴールドは立ち向かう為に駈け出そうとするが、身体の痛みがそれを邪魔していた。
 その時だった。エターナルが武器を掲げた瞬間、シンケンゴールドを庇うかのようにあの無精髭の男が前に出てきたのは。

「何だ、今度はお前が遊ぼうと言うのか?」
「お前、中々面白そうだな」

 背を向けているので見えないが、声からして男の表情は笑みを浮かべているのが想像できる。しかしそれに反して、シンケンゴールドは笑顔を浮かべる事など出来なかった。

「な、何をやってるんだあんた! 姉ちゃんと一緒に逃げろって言っただろ!」
「寿司屋、まさかお前がシンケンジャーの一員だったとは」
「えっ……? あんた、何でシンケンジャーの事を……」

 予想外の言葉にシンケンゴールドは尋ねた瞬間、男の全身を凄まじい炎が覆っていく。シンケンゴールドが驚愕する暇もなく、その姿は一瞬で変わった。
 燃え盛る炎は男の身体に溶け込むように消えた瞬間、そこにいるのは既に無精髭の男ではない。まるで外道集やドーパントのような白い異形に変わり果てていた。しかも、シンケンジャーの一員になった際に聞いた、腑破十臓という敵の特徴と一致していた。

「その姿……まさか、外道集なのか!?」
「お前も中々面白そうだが、後回しだ」

 異形となった男はほんの一瞬だけ振り向きながら、静かに呟く。しかしすぐに、その腰に下げた剣をエターナルに向けた。

649Kは吠える/永遠という名の悪魔 ◆LuuKRM2PEg:2012/06/16(土) 06:26:56 ID:y..rgw0M0

「仮面ライダーエターナルか……どうやら、斬り合うに相応しい相手のようだな」
「外道か……なら、外道は外道らしく地獄に送ってやろう」

 確かな殺意が込められた言葉を互いにぶつけた彼らは、同時に地面を蹴って疾走した。
 異形とエターナルは一瞬で肉薄した後、同時に得物を振るう。一見すると武器の大きさから異形の方が有利に思えたが、エターナルはあの黒いマントを翻して上手く防ぎながらナイフを確実に突き刺していた。しかし異形もその程度でやられず、マントによる防御を潜り抜けてエターナルの装甲に傷を付けていく。
 斬り合いと共にけたたましい金属音が鳴り響いて、その度に火花が飛び散った。ナイフと大剣の激突は既に十合を超えていて、彼らの技量が如何に高いかがわかる。

「オオオオオオォォォォォォッ!」
「ヌッ……!」

 しかし、エターナルの持つナイフは確実に異形の肉体を捉えて、次第に押していった。その勢いは、直前にシンケンゴールドと戦ったとは思えない程に凄まじい。
 シンケンゴールドは知らないが、仮面ライダーエターナルに変身している大道克己という男は死人に等しいNEVERという存在。定期的に細胞維持酵素を注入している限り、どれだけ肉体が傷付こうが再生し続ける上に疲労する事もない。肉体の稼動に関しても四肢を直接吹き飛ばされない限り、支障を及ぼさなかった。
 対するにはぐれ外道である白き異形、腑破十臓は凄まじい戦闘経験を誇っているものの体力には限界があり傷も付けば怯んでしまう。攻撃もほとんどがエターナルローブに遮られ、エターナルエッジによる反撃が来ては消耗するのに時間は必要なかった。

「ハァッ!」

 やがてエターナルの突きは異形の胸部に到達し、力任せに倒す。巨躯の至る所に刻まれた傷口は、ダメージが如何に深いかを物語っていた。異形は何とか起き上がろうとするが、それよりもエターナルの方が早い。

「さあ、今度こそ終わりだ……」
「させるかあああああぁぁぁぁぁぁ!」

 だからシンケンゴールドはエターナルが行動に出る前に、全力でサカナマルを振るった。エターナルは振り向いてくると同時に、シンケンゴールドの一太刀が仮面を叩き付ける。
 予想外の一撃だったのか、仮面の下から男の呻き声が聞こえてくる。その手応えが嬉しく感じるも、今はそれに酔っている場合ではなかった。
 シンケンゴールドは急いで駆け寄って倒れた異形に手を伸ばすも、肝心の相手はそれを取らずに立ち上がってくる。そんな反応にショックを受けそうになるも、その前に異形が尋ねてきた。

「お前、何のつもりだ? 何故、外道である俺に手を貸す」

 シンケンゴールドに向けられたのは、そんな問いかけだった。
 異形の疑問は当然だろう。人々の平和を脅かす外道衆を倒す為のシンケンジャーが、外道を助けるなんて本末転倒。シンケンゴールド自身、今やっている事は間違っていると理解している。
 だけどシンケンゴールドは……否、梅盛源太は異形を助ける事に躊躇いはなかった。

「確かに、俺も外道衆は許せねえ……あんたの言うように、倒すのが当然だ」
「なら、何故だ」
「けどな、それ以前にあんたは俺の客だ! 客が危険な目に遭いそうなら、助けるってのが俺のポリシーなんだよ! 何たって俺は寿司屋だからな!」

 目の前にいる奴は作った寿司を上手いと言って全部食べてくれた。それがシンケンゴールドの行動原理となっている。
 もしも本当に嫌な奴ならばゴールド寿司でのんびり食事もしないだろうし、何よりもあかねに危害を加えていたはずだった。だから、シンケンゴールドは異形を信じている。

「変わった奴だ……お前、侍には向いてないな」
「かもしれねえ……」
「だが、面白い奴だ。やはり、お前の寿司を食って正解だったな」

 異形となっていた男は静かに呟きながら、人の背丈ほどの長さを持つ大剣をエターナルに向けた。

「エターナルと言ったか、寿司を食えなくした借りは返して貰うぞ」
「馴れ合いは終わりか? なら、仲良く終わらせてやるよ」
「させねえよ!」

 異形とエターナルの視線が激突する中、シンケンゴールドが割り込んでくる。そのままサカナマルを構え直し、異形の横に並び立った。

650Kは吠える/永遠という名の悪魔 ◆LuuKRM2PEg:2012/06/16(土) 06:28:15 ID:y..rgw0M0
「おいあんた、確か腑破十臓って言ったっけ? 俺はあんたに色々と言いたい事はあるけどよ、まずはこの気に入らない野郎から片付けようぜ!」
「そうだな」
「よし、行くか!」





 呉越同舟という、普段は仲の悪い者同士でも利害が一致すれば力を合わせる例えとして用いられる言葉がある。シンケンゴールドに変身した梅盛源太と白い異形に変身した腑破十臓の間に何があったのかは、天道あかねは知らない。だけど、敵対するよりはこうして仲良く手を取り合っていた方が良いに決まっている。
 そのまま、誰の犠牲も無しに戦いが終わって欲しいとあかねは願ったが、仮面ライダーエターナルはそれを踏みにじってしまう程に強かった。二対一になったから少しは有利になるかと思ったが、数の差を簡単に埋めている。
 何で出来ているのかわからないあの黒いマントで全ての攻撃を防ぐ上に、戦闘が始まってから大分経ったはずなのに一向に消耗する気配がない。そうしている内に、エターナルはその短いナイフでシンケンゴールドを勢いよく斜めに斬り付けた。

「うわあああああぁぁぁぁぁっ!」

 耳にするだけでも苦痛になるような絶叫と共にシンケンゴールドは吹き飛ばされ、地面に叩き付けられる。その際の衝撃によって遂に限界が来たのか、金色のスーツが消滅して梅盛源太の姿に戻ってしまった。
 あかねはすぐに駆け寄って、彼の身体を抱き起こす。

「梅盛さん、大丈夫!?」
「姉ちゃん、逃げろって言っただろ……」
「そんな事、出来るわけ無いでしょ!」

 苦悶の表情を浮かべる源太の声はとても掠れていて、ダメージが如何に深いかを物語っていた。幸いにも血は流れていないが、いつまでもここにいさせる事が出来ない。
 覚悟を決めたあかねはゆっくりと源太を放して、T−2バードメモリを手にしながらエターナルを睨み、左の袖を捲った。
 その一方で、十蔵と戦っていたエターナルも振り向いてくる。

「ガイアメモリ……だと?」
「あんたの相手は私よ!」

 加頭順が変身したような不気味な化け物になるのは嫌だったが、我が身可愛さで二人が犠牲になるのはもっと嫌だった。このまま生身で戦って勝てるとも思えないし、可能性を少しでも上げる為にもやるしかない。

『BIRD』

 バードメモリのボタンを押した瞬間、音声があかねの鼓膜を刺激する。それを希望と信じた彼女は勢いよく差し込もうとしたが――

「させるか!」
「キャアッ!?」

 振り下ろそうとした右手に突如として強い衝撃が走って、思わずバードメモリを手放してしまう。反射的に手を押さえながらも、落としたメモリを目で追おうとするが、途端に首を掴まれて身体を持ち上げられた。
 エターナルの握力は凄まじく、首がメリメリと嫌な音を鳴らして軋んでいくのに伴って、あかねの表情は歪んでいく。それでも必死に振り解こうと両手でエターナルを叩くが、まるでビクともしない。

「まさかお前みたいな小娘がメモリを持っているとはなぁ……だが、残念だったな」
「くっ……!」

 嘲笑うエターナルを余所に、あかねは零れ落ちたバードメモリに手を伸ばすが、当然ながら届くわけがない。
 よく見ると、メモリの傍らには小石が転がっていた。恐らくエターナルがそれをぶつけたせいで落としたのだろうが、今はそんな事どうでもいい。
 この場を切り抜ける為にどうすればいいのか必死に考えるが、あかねには手段がまるで思い浮かばなかった。このままでは、乱馬や良牙達と出会えないまま殺されてしまう。その思考に思い至ったあかねの視界は、徐々に闇で覆われていく。
 しかし次の瞬間、彼女の背後で凄まじい轟音が大気を揺らして、眩い光が全てを飲み込まんと広がっていたが、それをあかねが認識することは出来なかった。

651Kは吠える/永遠という名の悪魔 ◆LuuKRM2PEg:2012/06/16(土) 06:30:08 ID:y..rgw0M0





 黒い女との戦いで使う余裕の無かった支給品、スタングレネードの効力は凄まじかったが、それを知っていた梅盛源太は目を瞑りながら両手で耳を覆っていたので、そこまでの被害はない。
 本当ならこんな卑怯な手段を取るのは嫌だったが、相手が相手だからそんな事は言ってられなかった。
 一方で流石のエターナルもこれには耐えられなかったのか、呻き声と共にナイフを持つ方の腕で顔を覆っている。凄まじい防御力を誇るあの仮面も、光ばかりは防ぎきることは出来なかったようだ。
 その隙に源太はエターナルにタックルを仕掛け、解放されたあかねを抱えて離れる。十蔵とあかねを巻き込むのは心苦しかったが、ここで投げると言ってはエターナルに気付かれてしまうので、使うしかなかった。

「おい姉ちゃん、しっかりしろ!」
「……う、梅盛さん……?」

 必死に揺さ振りながら呼びかけてみると、ゆっくりとだがあかねは瞼を開ける。どうやら、致命傷は負ってないようだが、目が心配だ。あんな眩い光をいきなり見ては、失明の危険性ががある。
 しかし、あかねには悪いが今はエターナルも何とかしなければならない。あれで倒れてくれれば助かるが、そんな都合の良い相手だったら今頃とっくに勝っている。
 スシチェンジャーを手にして振り向いたが、そんな源太の前に十蔵が立った。

「やってくれたな、寿司屋」
「わ、悪い……でも、こうするしかなかったんだ」
「だが、まあいい」

 スタングレネードの使用を責められるかと思いきや、十蔵は溜息混じりの言葉を返すだけ。それに拍子抜けしつつも、次に突き付けられたのは源太にとって信じられない宣告だった。

「寿司屋、お前は邪魔だ。その娘を連れてさっさと離れろ」
「はぁ!? あんた、何言ってるんだよ! そんな事……できるわけねえだろ!」
「なら、その娘は巻き添えとなって死ぬだろう……お前がそうしたいのなら、俺は別に構わないが」

 ぶっきらぼうにそう言い残して、十蔵はエターナルとの斬り合いを再開する。源太は声を荒げて十蔵を止めようとするが、それを無視するかのように大剣を振るっていた。
 シンケンゴールドに変身して加勢しようとしたが、その手は震えている。痛みや恐怖が邪魔しているのではなく、十蔵の言葉が枷となっていた。先程、二体一で戦ってもまるで歯が立たなかったのに、今更加勢したところで何になるのか。かといって、腕っ節の強い人間でしかないあかねも加えさせても、勝てる見込みなど無い。それ以前に守らなければならない人を戦わせるなんて言語道断だ。
 だから、あかねを連れて逃げなければならないのは正しいかもしれないが、客を放っておくなんて有り得ない。しかしあかね一人だけを逃がしても、考えてみればその後に他の危険人物に襲われたら目も当てられなかった。
 でもこのままここにいたって、十蔵が言うように巻き添えになってしまう。

「おい、十蔵の旦那!」

 だから源太は決心をして、十蔵の名前を力強く呼んだ。
 当の本人はエターナルとの戦いに没頭しているのか振り向いてこないが、それでも彼は続ける。

「俺はあんたを待ってる! あんたは俺の大事な客だからな……だから、絶対に死ぬなよ! あんたがまた来てくれるなら、俺はとびっきりに美味い寿司をたらふく食わせてやるからよ!」

 そう言い残して、彼は全ての装備を急いでデイバッグに纏めて、あかねの手を取って立ち上がらせた。恐らく、目は見えているのかもしれないがそれに安堵している暇なんてない。

「姉ちゃん、行くぞ!」
「でも、十蔵さんが……!」
「いいから、行くぞ!」

 あかねの反論を無視した源太は痛む身体に鞭を打って、手を引いて急いで走り出す。黒い女との戦いに負けた時みたいに助けられるのは、流石に嫌だった。
 あかねが落としたバードメモリや壊れた屋台も何とかしたかったが、どっちも遠いので諦めるしかない。今は少しでも、エターナルから離れなければならなかった。
 引っ張っているあかねの十蔵を呼ぶ声が、源太の胸に鋭く突き刺さる。本当なら十蔵も助けたかったが、それだけの力が自分にはない。もしも丈瑠や流ノ介達だったら逃げずに済んだかもしれないと、走る源太は思ってしまう。
 客を見捨てて逃げる俺は卑怯者だ。外道衆よりも、ずっと汚い奴だ。侍も寿司屋も、名乗る資格なんて無い半端な奴だ。
 自分自身を責める言葉が次々と思い浮かんでいくが、それでも源太は走る。そうして、彼とあかねは戦場からの離脱に成功した。

652Kは吠える/永遠という名の悪魔 ◆LuuKRM2PEg:2012/06/16(土) 06:31:04 ID:y..rgw0M0





 仮面ライダーエターナルという未知の戦士の力量は凄まじく、一度斬られる度にこの心が疼く。シンケンレッドと斬り合っている時に味わえるそれと同等、あるいは上回っているかもしれなかった。
 もしかしたら、あの血祭ドウコクと互角に渡り合う程の実力を誇るかもしれない。そう思った腑破十臓は昇竜抜山刀を振るい続けているが、エターナルは小さなナイフだけで軽く受け止め、そこからこの皮膚に傷を付けていた。
 またしても身体に痛みが駆け巡って、十蔵の感情は高ぶっていく。だが、十蔵もただでやられるつもりはない。
 時々、エターナルの黒いマントに斬撃を止められるも、それに構わずひたすら剣を振るっていた。大地を砕く刃すらも通さない盾だが、だからこそ砕く価値がある。

「お前如きが一人で残って良かったのか?」

 そんな中、背後に飛んで距離を取ったエターナルより問いかけられた。

「この至高の感覚を、誰にも邪魔させたくないだけだ」

 しかしそれは十蔵にとって愚問以外の何者でもない。
 エターナル程の強者は一騎打ちで戦ってこそ、価値がある。あの寿司屋と小娘を逃がしたのは、戦いに水を差されたくないからに過ぎない。
 そもそも、エターナルが現れた時から戦う事も出来たが、寿司屋はシンケンゴールドとなって立ちはだかった。故に、まずは力量を計るために静観を決める。どちらもそれなりの実力者だったから、勝った方に勝負を挑もうと考えた。

(それに、お前には寿司を食えなくされた借りもある……その借りは、俺が返さなければならない)

 だがエターナルはゴールド寿司の屋台を潰して、あの美味い寿司を台無しにしていた。それが逆鱗に触れ、十蔵を戦わせるきっかけとなる。とはいえ、一時的とはいえシンケンゴールドと共闘する事になったのは予想外だったが。
 しかし数で有利になっても、エターナルが崩れる事はない。気に入らないが、同時に面白い相手でもあった。
 やはりエターナルは十蔵一人では勝てる相手ではない。だからこそ、斬り合う価値がある。それを邪魔するであろう二人を追い払えたのは、正解だった。

「ぬあああああぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 高ぶる感情と共に昇竜抜山刀を振るったが、エターナルはそれを軽々と避けてしまい、地面を砕くだけに終わる。しかしそれでも諦めずに刀を振るおうとした瞬間、手首を切り裂かれてしまい、反射的に昇竜抜山刀を落としてしまった。

「せりゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 直後、叫び声をあげるエターナルの左手にあの蒼い炎が纏われているのを十蔵は見たが、もう遅い。その拳は十蔵の胸部に強く叩き込まれ、衝撃に耐える事が出来ずに吹き飛ばされていく。
 声にならない悲鳴を発しながら彼は地面に叩きつけられるが、何とか痛みを堪えて立ち上がったが、その僅かな時間が致命的な隙となった。

「オオオオオオオォォォォォォォッ!」

 十蔵の鼓膜を刺激したのは、殺意に満ちたエターナルの咆哮。
 それに誘われるように十蔵は空を見上げると、空中で螺旋回転を行っているエターナルの足に炎が燃え上がっていた。それを見て、とてつもない一撃が来ると十蔵は察するが、今の彼には防御も回避も出来ない。
 やがて仮面ライダーエターナルの蹴りは、再び十蔵の胸部に辿り着く。その凄まじいエネルギーは十蔵の全身を一瞬で蹂躙して、そのまま盛大な爆発を起こした。

653Kは吠える/永遠という名の悪魔 ◆LuuKRM2PEg:2012/06/16(土) 06:33:53 ID:y..rgw0M0





 辺りで激しく燃え盛る炎からは、まさに地獄絵図と呼ぶに相応しい雰囲気を放っている。
 他者を地獄に引きずり込もうとする仮面ライダーエターナルらしい、粋な計らいかもしれないと、腑破十臓はぼんやりと考えた。
 これこそ斬り合うに相応しい舞台かもしれないと思ったが、身体が言う事を聞かない。はぐれ外道の姿に変身しようとしても、何も起こらない。
 エターナルから与えられた傷が、それだけ深かったのだ。

「あの二人には逃げられたが、丁度いい退屈凌ぎにはなった」

 そして、灼熱の間を掻き分けるようにあのエターナルがゆっくりと姿を現す。その手には、昇竜抜山刀は握られていた。

「お前のような妖怪が本来いるべき世界に戻してやる、有り難く思え」

 その言葉からは侮蔑しか感じられなかったが、エターナルの全身からは地獄の業火より凄まじい殺気が放たれている。しかし、十蔵は全く臆する事などせず、それどころか笑みすら浮かべていた。

「恐怖のあまりに狂ったか……哀れだな」
「やはり、斬り合いこそが俺の真実か……」
「何?」
「この斬り合いで果てる事が出来れば、俺も本望……仮面ライダーエターナル、続きを楽しみにしているぞ」

 目の前の戦士は、外道と呼ぶに相応しい男だ。恐らく、あのシンケンレッドを遥かに上回る程に見込みがある。
 シンケンレッドとの決着を付けられず、裏正がこの手にないまま本当の地獄に堕ち、あの寿司がもう食えない。心残りは微かにあるが、それを簡単に吹き飛ばしてくれる期待を胸に秘めていた。
 いずれ自分の後を追うであろう、仮面ライダーエターナルと再び骨の髄まで斬り合える。それだけでも十蔵は満足だった。

「悪いが、俺はお前如きの戯れに付き合う気はない……お前だけ、地獄で楽しんでいろ」

 エターナルの持つ昇竜抜山刀が振り下ろされて、一瞬で十蔵の身体を貫いていく。しかしそれでも、彼は笑みを浮かべていた。
 例えこの身が滅びようとも、魂ばかりは永劫に斬り合いを続けている。腑破十臓はそんな絶対の確信があるからこそ、最後の最後まで笑う事が出来た。





 この殺し合いが始まってから、ようやく仮面ライダーエターナルは勝利を果たす。しかし大道克己の心には何の感情も芽生えてこなかった。人を殺めた事による罪の意識も、優勝に一歩近づいた事による喜びも、勝者として君臨出来た達成感も……何一つとして克己の中には生まれてこない。
 しかし、それは当然だった。ドクター・プロスペクトとの戦いの末に悪魔となった頃から、克己からあらゆる感情が消えてしまっている。だから、望んでいたはずの勝利を手にしても何とも思わない。
 ただ、邪魔者が一人減った程度にしか考えられなかった。

654Kは吠える/永遠という名の悪魔 ◆LuuKRM2PEg:2012/06/16(土) 06:35:24 ID:y..rgw0M0
「さて、どうするか……」

 エターナルの変身を解いて細胞維持酵素を注入しながら、克己は今後の事を考える。
 ここから呪泉郷までの距離は近いだろうが、今から向かった所で参加者と遭遇できるかはわからない。逃げた二人を追ってもいいだろうが、あんな雑魚どもは直接手を下さなくても勝手に殺されるだろう。
 とはいえ、あまりのんびりと考えたとしても始まらない。T−2バードメモリと十蔵の支給品を回収した克己は、再び動き出した。


【1日目/早朝】
【D−7/森】
※寿司屋の屋台@侍戦隊シンケンジャーの残骸が辺りに散らばっています。


【大道克己@仮面ライダーW】
[状態]:健康
[装備]:ロストドライバー@仮面ライダーW+エターナルメモリ、エターナルエッジ、昇竜抜山刀@侍戦隊シンケンジャー、T2バードメモリ@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式×2、細胞維持酵素×3@仮面ライダーW、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、命の闇の種@超光戦士シャンゼリオン、十蔵のランダム支給品0〜2
[思考]
基本:優勝し、自分の存在を世界に刻む。
1:これからどうするか?
2:T2ガイアメモリを集める。
3:京水と会ったら使ってやる。もしくはメモリを奪う。
[備考]
※参戦時期はマリア殺害後です。
※良牙を呪泉郷出身者だと思ってます。








 あれから源太に手を引かれたまま、あかねはずっと走り続けてきた。
 あかねも源太も人並み以上の身体能力があったおかげで、戦場から大分離れる事に成功している。その結果、二人とも当初の目的地である市街地に近付く事が出来た。
 しかしだからといって、ここにいるあかねはそれを喜ぶ事などできない。彼女の胸中には、とても拭いきれない後悔が広がっていた。
 彼らは今、D−8エリアにある岩の上で身体を休めている。

「ちくしょう……俺がもっと強ければあんな野郎に負けなかったのに……!」

 そして、源太も同じ後悔を背負っているようだった。
 もっと強ければ、十蔵にエターナルの事を押しつけて無様に逃げ出す事もなかった。誰かの力になりたいと願っていたのに、出るのが遅かったせいで手段すらも奪われてしまう。
 これじゃあ、何の為に今まで格闘技を学んできたのかがわからなかった。

655Kは吠える/永遠という名の悪魔 ◆LuuKRM2PEg:2012/06/16(土) 06:36:47 ID:y..rgw0M0

「姉ちゃん、すまねえ……俺が弱いせいで、こんな事になっちまって」
「そんな! 悪いのは梅盛さんだけじゃないわ! 私だって、もっとしっかりしていれば十蔵さんに全てを押し付ける事なんてなかったのよ……」

 腑破十臓がやってくる気配はない。その意味は一瞬で理解できたが、受け入れる事をあかねは拒んでいた。
 考えてみれば、源太みたいに真っ直ぐにぶつかっていればいつかはわかり合えたかもしれない。ほんの少し怪しいからって避けていた事実が、あかねの後悔を更に強くする。

「……梅盛さん、行きましょう。今はあのエターナルって奴の事を一人でも多くに伝えないと」

 しかしこのまま悲しみに溺れていては十蔵の思いを無駄にするだけ。彼の為に出来る事は、せめて一人でも多く犠牲者を減らす為に頑張るしかないと、あかねは自分に言い聞かせた。

「ああ、そうだな……悪いな、俺がしっかりしないといけないのに」
「いいえ、私の方こそ梅盛さんには無理をさせてばかりだから……」
「街に着いたら、乱馬って兄ちゃんと会えるといいな」
「……そうね」

 普段なら乱馬の事になるとムキになってただろうが、そんな元気など今のあかねにはない。
 ただ、源太と一緒に市街地を目指す事しか彼女には出来なかった。


【1日目/早朝】
【D−8/森】


【天道あかね@らんま1/2】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(中)、とても強い後悔
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム0〜2個
[思考]
基本:乱馬たちと合流して殺し合いから脱出する
0:十蔵さん……
1:源太と行動し、首輪を解除する
2:今は市街地に行きたい。
3:自分が役に立ちそうに無いので落ち込み中
4:仮面ライダーエターナルの事を多くの人に伝える
[備考]
※参戦時期は37巻で呪泉郷へ訪れるよりは前で、少なくともパンスト太郎とは出会っています



【梅盛源太@侍戦隊シンケンジャー】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、とても強い後悔
[装備]:スシチェンジャー、寿司ディスク、サカナマル@侍戦隊シンケンジャー
[道具]:支給品一式、スタングレネード×2@現実、ランダムアイテム0〜1個
[思考]
基本:殺し合いの打破
0:今はあかねを守りながら、市街地に向かう
1:より多くの人を守る
2:自分に首輪が解除できるのか…?
3:ダークプリキュア、仮面ライダーエターナルへの強い警戒
[備考]
※参戦時期は少なくとも十臓と出会う前です(客としても会ってない)


【腑破十臓@侍戦隊シンケンジャー 死亡確認】
【残り48人】

656 ◆LuuKRM2PEg:2012/06/16(土) 06:37:29 ID:y..rgw0M0
以上で今回の投下は終了です。
矛盾点などがありましたら、お手数ですが指摘をお願いします。

657名無しさん:2012/06/16(土) 07:32:23 ID:apcdr2uY0
投下乙!
十臓さん死んだあああああ!
アクマロざまああああああ!

いやあ、それにしても十臓さんまでここで敗退とは…
放送後の殿、いろんな意味でフルボッコだろ…
とりあえず十臓、ロワ充乙!

指摘点としては、この源太はまだディエンドと出会ってないです
この源太は本編で十臓と未遭遇で、十臓と出会ったのは二十幕途中、ディエンドと出会ったのは二十幕終了直前なので

そういやこれで、初期ホテル組が全滅したことになるのか…

658 ◆LuuKRM2PEg:2012/06/16(土) 09:48:41 ID:y..rgw0M0
ご指摘ありがとうございます。
指摘された部分の修正版を修正スレに投下致しましたので、お手数ですがご確認をお願いします。

659名無しさん:2012/06/16(土) 14:21:10 ID:nx7cpRYY0
投下乙&修正投下乙です。
十臓は最後までキチカッコいいな…。
完全な悪人にも関わらず、結果的に人を救ってる分、何気に殿よりも凄いんじゃないか。
ライバルキャラなだけに、序盤での死は色々と意外。

まあ、参戦時期も序盤で、殿やドウコクが後半参戦な分、活躍の余地が低かったとは思うけど。
アクマロはこれを知ってどう動くか。ノーザ殺害は完全にやらかしたとしか(ry

しかし、源太ようやく名乗れたか。
代償は屋台に十臓と結構デカかったけど。

で、そのうえコイツらも市街地か…。
ちょっと待て。殿もキュアパッションも近いぞ。

660名無しさん:2012/06/16(土) 19:42:46 ID:ESX70UeA0
投下乙&修正投下乙です

十臓もここで脱落か。放送後の殿がどう動揺するか楽しみw
かっこいいライバルキャラだったぞ…

こうなるとアクマロのノーザ殺害は早まったなあ。これで危険でも対主催は止めてとっとと優勝狙いだろうなあ
源太とあかねも命の恩人の死亡に加えて市街地かあ…
そっちはまずいって

661名無しさん:2012/06/18(月) 18:37:10 ID:SxDFv51E0
予約来てたなw

662名無しさん:2012/06/18(月) 19:42:20 ID:cneLGL7kO
心身ボドボドな二人抱えてダクプリとか詰みゲー過ぎるw

663名無しさん:2012/06/18(月) 20:00:57 ID:mOpHDeoo0
それでも沖さんなら……沖さんなら何とかしてくれるはず……!

664 ◆LuuKRM2PEg:2012/06/20(水) 12:37:49 ID:6LJJQmAs0
皆様、感想ありがとうございました。
これより、予約分の投下を開始します。

665優しさを思い出して  ◆LuuKRM2PEg:2012/06/20(水) 12:38:33 ID:6LJJQmAs0
 殺し合いの舞台に用意されたエリアの一角に、風都を模した町が存在する。そこで吹きつける風はとても穏やかだが、浴びる彼女の心中は決してそうではなかった。

『────やはり、我々はまったく違う時代、または別の世界から連れてこられた可能性が高いな』

 数分前に訪れた警察署で出会った仮面ライダーの一人である結城丈二の言葉が、東せつなの脳裏でずっとリピートしていた。
 テッカマンやNEVER、それに仮面ライダーを始めとした未知の存在がこの島に集められている。そんな事が出来るのは、全パラレルワールドの統制を目的とした生みの親、メビウス以外に考えられなかった。
 考えてみればこの殺し合いの目的自体が、ラビリンスが人々の不幸を集めてシフォンを再びインフィニティにする可能性がとても高い。その事を、丈二に伝えられなかったのを今更になってせつなは後悔する。
 だけど、簡単にそうだと決めつけたくなかった。ラビリンスが殺し合いを開いたのだとしたら、ウエスターやサウラ―も協力している事になってしまう。ノーザやクラインならまだしも、彼ら二人がこの状況に嬉々しているなんて考えたくなかった。

(それにしても、何者だったんだろう……あの涼邑零って人)

 そして彼女は涼邑零と名乗った謎の青年の事を思い出す。彼は決して悪人ではないのかもしれないが、泉京水を容赦なく斬ろうとしたから完全に信用していいのかどうか分からない。
 そもそも零のせいで、丈二との話も中途半端な形で終わる事になってしまった。別に彼を恨むつもりは全くないが、それでもせつなは引っかかりを感じている。
 しかし、過ぎた事をいつまでも考えたって仕方がない。

(まあ、次に会えた時に話せばいい……かな? 結城さんに涼邑さんも、無事でいてくれるといいな……)

 今はやるべき事をしっかりやりながら、みんなを探すのが最優先だ。そう言い聞かせながら心のモヤモヤを払い、せつなは二人の無事を祈る。色々とあったので二人についてよく知る事が出来なかったが、そのままで終わってしまうなんてあまりにも悲しすぎるから。

『どんなに辛くても、その手段を使わなければ多くの人間の命が奪われるときがある。そのためには、戦わなければならない』

 京水と共に少し前を歩く相羽タカヤの背中を見て、丈二の言葉が再び脳裏で蘇る。
 タカヤ達の世界で危害を加えているテッカマンエビルとテッカマンランスを倒さない限り、罪のない人々が犠牲になってしまうのは理解している。それでも、出来るなら相羽シンヤやモロトフをラダムの支配から解放したかった。

『君の話を聞いていると、君たちNEVERは危険な集団としか思えない。『ライダーは助け合い』──その言葉には賛同するが、それは『仮面ライダー』同士ならの話だ。私はエターナル、大道克己を仮面ライダーとは決して認めない』

 NEVERは元の世界で多くの事件を起こしていると聞いて、丈二はリーダーである大道克己を真っ向から否定した。
 仮面ライダー。せつなにとっては未知の存在だが、丈二や京水の話を聞く限りプリキュアと同じで人々の幸せの為に戦っている戦士である事は分かる。だから丈二は仮面ライダーの力で人々を傷つける克己が許せないのかもしれない。

(でも、人は何度でもやり直す事ができます……もしかしたら克己さんだって、きっといつか昔の心を取り戻してくれるかもしれません)

 京水が言うには、克己は戦いを望まない人を傷つけるような事を絶対にしないらしい。それがどうして今に至ったのかは分からないけど、それならまた昔を思い出させれば丈二も克己を認めてくれるはず。
 困難は多いが心の底から真剣にぶつかっていけば、絶対に分かりあえるかもしれなかった。何故なら、桃園ラブ達だってかつての自分と向き合ってくれたからこそ、今の自分がある。

(今度は私がシンヤさんや克己さん達と向き合う番だよね、みんな)

 この島のどこかでみんなを助ける為に頑張っているラブ達に向けて、せつなは心の中でそう告げた。

「ああ、丈二ちゃんも零ちゃんもとっても素敵だったわ……特に零ちゃんはあのミステリアスな瞳がたまらなかったわ! あ、でも勿論タカヤちゃんだって負けてないわよ!」

 新たなる決意を固めたせつなの耳に、突如として甲高い京水の声が響く。それによって彼女の意識は現実へと引き戻された。

「何がだ」
「やだあもう! わかってるくせに……」
「……いい加減にしてくれ」

 そしてまた、タカヤは京水の言動によって溜息を吐く。考え込んでいた少しの間にまた何かあったようだ。せつなとしては京水を止めたいが別に悪い事じゃないので、タカヤには悪いがどう止めればいいのか分からない。
 今はタカヤと京水が喧嘩をしない事を祈るしかなかった。

666優しさを思い出して  ◆LuuKRM2PEg:2012/06/20(水) 12:40:26 ID:6LJJQmAs0
 警察署を出てからせつな達は、H−8エリアにある風都タワーを目指して歩いていた。
 いくら他の参加者を探すとしてもこれだけ広い街を全て探すのは骨が折れる上に、誰とも遭遇しなかったら時間の無駄になってしまう。
だから三人は風都の中でも一番目立ち、広い範囲を探せる展望台がある風都タワーから探して、それから中学校に向かう事にしていた。それらの場所に必ず参加者がいるとも限らないが、当てずっぽうに探すよりは遥かにマシ。


 現在時刻は午前三時三十分。
 これから二時間後、G−9エリアには姫矢准と血祭ドウコク、それと魔導輪ザルバが現れる事になる。しかし風都タワーに向かって歩いていたせつな達が、まだ彼らと出会う事はない。
 その入れ違いが、吉と出るか凶と出るかはまだ誰にもわからなかった。





 ユーノ・スクライアとフェイト・テスタロッサの二人を見捨てて逃げてから大分時間が経っているが、佐倉杏子はずっと茫然自失となっている。
 これから一体どうすればいいのかと、身体を休めていた彼女は考えていたが答えが全く見つからない。隣でまだ寝ている左翔太郎を殺す気にも見捨てる気にもなれないし、だからといって叩き起こそうとも思えない。

「フェイト、ユーノ……」

 すぐ近くにある名前も知らないタワーをぼんやりと眺めながら、杏子は二人の名前を呟く。
 呼んだところで二人が現れるわけがない。もう、とっくに殺されてしまっているからだ。いくらフェイトが素早いからって、あんな化け物を前に振り切れるとも思えない。やはり、腕ずくでも止めるべきだったのか。
 仮定の話をいくら考えても何も変わるわけがない。そんな事わかっているはずなのに、杏子は考えてしまう。

「あっ、あの時の仮面ライダー!」

 そんな中だった。迷いと疑問によって何をすればいいのかわからなくなっていた杏子の鼓膜を、女のように甲高い男の声が響いたのは。
 それによって霧のようにぼんやりとしていた意識が急激に覚醒して、杏子は素早く振り向く。振り向いた先では、黒いレザースーツに身を包んだ屈強な男が驚愕の表情を浮かべながらこちらを見つめていた。その後ろには、赤いジャンパーと右目に刻まれた古傷が特直的な男と、杏子とほぼ同年代と思われる少女がいる。

「あの時の仮面ライダー? だとすると、あいつが……」
「そうよタカヤちゃん! あたし達の世界で風都を守っていた二人で一人の仮面ライダーの一人よ!」
「そうか」

 女のような口調で喋るレザースーツの男からタカヤと呼ばれた男は頷くと、こちらに歩み寄ってきた。杏子は思わず身構えるも、タカヤの後ろにいた少女が「待って」と声をかけてくる。

「私達はこんな戦いに乗ってないわ。だから、話を聞いて」
「乗ってない……のか?」
「ええ」

 その言葉を聞いた杏子は警戒心が緩み、構えを解いてしまう。
 一方でタカヤという男は翔太郎の様子を一瞬だけ窺った後、杏子に振り向いた。

「一体どうしたんだ? それに、何故この男は倒れているのかも聞かせてくれないか」
「それは、その……」

 タカヤの問いかけを、杏子はどう答えればいいのか悩んでしまう。思い出すだけでも嫌なのに、上手く説明するなんてできるわけがない。
 自分のせいで翔太郎が傷付き、フェイトとユーノが死んでしまった。その忌々しい出来事が杏子から冷静な判断力を奪っている。
 しかしそれでも、彼女の口が勝手に動き出すのに時間は必要なかった。

667優しさを思い出して  ◆LuuKRM2PEg:2012/06/20(水) 12:41:01 ID:6LJJQmAs0

「……あんたら、殺し合いに乗ってないんだよな」
「ああ、それがどうしたんだ」
「だったらさ……頼むよ」

 それは明確に考えた上で出てきた言葉ではない。言ってしまえば、本能で口にした言葉だった。
 どうしてこんな事を言ってしまうのかわからないが、言わなければならない。そんな思いが杏子の中に広がっていた。

「この兄ちゃんを……兄ちゃんを……助けてやってくれないか?」

 佐倉杏子が口にした言葉は弱々しかったが、現れた三人の耳に確かに届いていた。





「……うっ、ここは?」

 身体の節々に感じる痛みによって、左翔太郎は呻き声を漏らしながらその意識を取り戻す。
 瞼を開けて身体を起こした先に見つけたのは、彼がよく知る風都タワーの展望台だった。

「ここは、風都タワーの展望台……?」
「あら、目が覚めたのね」
「あ……?」

 思考がはっきりしない翔太郎の耳は、男の声を捉える。
 女のように甲高いが、何処かドスの利いているその声を翔太郎は知っていた。
 思わずそちらに振り向いた瞬間、彼は目を見開く。そこには、かつて風都を絶望のどん底に叩き落としたNEVERの一員がいた。

「お前はNEVERの……!」
「そう、泉京水よ。まさかこんな所であなたと再び出会うなんてね」
「てめえ……!」
「待て!」

 起きあがって京水を掴みかかろうとした瞬間、翔太郎は自分を制止する声が響くのを聞いて、思わず振り向く。
 そこにいるのは翔太郎の知らない男だった。

「誰だ、あんたは……?」
「俺はDボゥイ。名簿では相羽タカヤと書かれているがこう呼んでくれ……左翔太郎、だったな」
「ああ、そうだけど……あんた、こいつの仲間なのか?」
「今は仲間だ。左、あんたとこいつらNEVERの間に何があったのかは大体聞いた……そして、こいつらがやっていた事も。だが、少なくともこいつはあの加頭という男を倒そうとしている」
「加頭を……倒そうとしてる?」
「あんたは信じられないかもしれないが、現にこいつはNEVERや財団Xという奴らの情報を教えてくれた……それにこいつが殺し合いに乗っているのなら、俺もあんたもとっくに殺されている」

 Dボゥイ……いや、相羽タカヤという男の話は翔太郎にとっては信じられる内容ではない。風都のみんなを追い詰めて支配しようとした奴らが、いきなり仲間だと言われても信じる方が無理だ。
 だが、タカヤが嘘を言っている気配も感じられない。照井竜を彷彿とさせる真摯な表情は、殺し合いに乗るような奴が作れる顔ではなかった。
 半信半疑のまま、翔太郎は京水に振り向く。

668優しさを思い出して  ◆LuuKRM2PEg:2012/06/20(水) 12:41:37 ID:6LJJQmAs0

「……本当なのか?」
「私は少なくとも、あなたやタカヤちゃんの力になってあの気に入らない男を叩き潰すつもりよ。あなたが信じないのは勝手だけど」
「タカヤちゃん……って」

 あまりにも胡散臭いが、タカヤのように嘘は感じられない。だからと