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【オリスタ】SHIN -朱と交わるイド-【SS】
1 ◆70nl7yDs1.:2011/10/21(金) 18:14:49 ID:kUSTX//o0
またここに戻って来ました。
元々無い文才の上、勘を取り戻すのに精一杯でございます。
おそらく気が向いた時に更新するスタンスになると思います。
二足のわらじが出来るほど器用じゃないので……。
ちなみに、U2は読まなくても全く問題ないです。
展開予想とかはこのスレで自由にしてもらって構いません。
乙米おいしいです。

2 ◆70nl7yDs1.:2011/10/21(金) 18:16:04 ID:kUSTX//o0
第一話「身代わりの羊」


記憶は罪に汚れ タナトスがつきまとう。
幽かに触れた優しさは私を苦しめた。
朱に染まった両腕抱え 斜陽の影に身を落とす。
やがて訪れる落日の朝 尽きることのない無明。

許しが欲しいわけじゃない。
この罪こそが私と現世を繋ぐ鎖なのだから。

***

―――2012年7月

有嶋祐介とブラフマーの決戦から2年の歳月が経った。
ヴェーダの残党も徐々に捕らえられていき、世界に平穏な日々が戻っていった。
政府はスタンド使いの組織『ラムダ』を認可し、一般的な犯罪捜査にも要請されるようになっていく。
スタンド能力が活用され、未解決事件も数件解決。
また、救急隊や自衛隊のサポートもしていき、2011年の未曾有の大震災でも数多くの人命を救った。

***

3 ◆70nl7yDs1.:2011/10/21(金) 18:17:20 ID:kUSTX//o0
―――見上げる天井は雲ひとつ無く、水色をしていた。
上からは降り注ぐ太陽光線、下からは肉が焼けそうなアスファルト、横からはガラス張りのビルからの反射光。
こんなところにずっと居れば身が焦げてしまいそうだが、暑さと反比例して動く気力が失われていく。
日陰にいる俺ですらこんなに参ってるというのに、元気に街を闊歩している野郎はどうかしてると本気で思う。
八雲県八雲市の駅前から店が立ち並ぶ大通りのベンチで、俺はぐったりしながら果て無き蒼穹を眺めていた。
       シン
???「おー、臣! そこにいたのか」

背の方向からやたらと野太い声が聞こえ、重い腰を上げて振り返る。
中学からずっと同じクラスの馴染みある顔がそこにあった。
無駄にデカイ図体、黒髪短髪、絆創膏だらけの顔面。
ミヤモトタツオ
宮本龍雄だ。この猛暑に負けないくらい熱い男だということを俺は知っている。

龍雄「おうおう、朝っぱらから辛気臭ェー顔してんなァ」

臣「お前は暑苦しいんだよ龍雄。気温に合わせてクールダウンしろ
ってか来るの遅いわ! 毎回待たされる身にもなってくれ」

龍雄「イッヒッヒ。そんなに怒るなよシン
それよか他の奴らはどうした? アイツらが遅れるなんて珍しいな」
         クロサキマホロ           オリハラトキヤ
他の奴らというのは黒崎莉幌と折原凍季也のこと。
同じく同じクラスメイトでよくつるんで行動している仲だ。
凍季也は龍雄と違ってルーズな男じゃない。
まほろは引っ込み思案だが、高校では一度も遅刻したことがない模範的な優等生。

龍雄「全く待たされる身にもなってみろってんだ」

臣「お前が言―――」

俺が突っ込もうとする最中に、他の声によって遮られた。

男「いやーお待たせ。銀行強盗を見つけちゃって」

女「銃持った外人がたくさんいて倒すのに時間かかっちゃったよ」

4 ◆70nl7yDs1.:2011/10/21(金) 18:17:43 ID:kUSTX//o0
二人ともよく見知った声で、振り返るまでもなく、まほろと凍季也だということが分かった。
この二人は家が近いから一緒に歩いてきたのだろう。
凍季也達が犯罪者を取っ捕まえてるのは、今に始まったことではないので、さほど驚かない。
まあ返り血を一滴も浴びずに賊を倒してきたのは流石の一言に尽きる。
         ナナミ     オツイチ
まほろ「そういえば七深ちゃんと乙一君は来なかったの?」

臣「ん、ああ。七深は塾が忙しいからって断られた
乙一は山に薬草を取りに行くってよ」

龍雄「何だよ、付き合い悪いなァ〜。夏休みだって言うのに」

凍季也「年がら年中遊んでるお前とは違うんだよ
まあ…俺も人このことは言えないけどな」

まほろ「そんなことより本題! 今日は遊びに来たんじゃなくて仕事でしょ」

あぁ―――やっと話に入れる。

臣「そうだ。『探し屋』である俺達に仕事を依頼してくれた人とは、十分後に向かいの喫茶店で会う約束になってる


龍雄「もう『探し屋』の仕事もこれで五回目だが―――
はぐれた犬探し、落とした携帯探し、入手困難なビデオ探し……果てにはハゲ散らかしたオッサンの嫁探し
しょーもないのばっかで飽き飽きだって! 今度こそデカイ仕事だろうなァ!」

臣「ああ、それは保証する。有嶋先輩に訊いたらお偉いさんの御令嬢だってさ」

有嶋祐介は二個上の先輩だ。今は大学二年生。
三年前から付き合いがあって、色々と相談しては悩みを聞いてもらうことが多い。

まほろ「貧乏くじはもう引きたくないね」

俺達は喫茶店に入って、奥の席に座る。
四人しか座れないテーブルだったので、龍雄は別のテーブルに座る羽目になった。

5 ◆70nl7yDs1.:2011/10/21(金) 18:18:27 ID:kUSTX//o0
ギギィ……。
腰を降ろすとアンティークな椅子が軋んで音を立てた。
小洒落た雰囲気の店内だが、この店は四十年も前からあるらしく、床などを見ると老朽化がはっきりと分かる。

しばらくすると店のドアが開いて、スラっとした羽振り良さそうな妙齢の女性が入ってきた。
下品な言い方だが、札束の風呂に入ってそうなくらい金の臭いがしそうだった。
こちらのほうに歩みを進めてくるので、どうやら依頼主なのだろう。
女は妖艶な笑みを浮かべてこちらを一瞥し、口を開いた。

女「あなた達が―――『アンバーグリス』さん?」

『アンバーグリス』というのは探し屋稼業をしている俺達のチーム名。

龍雄「はい! そうですッ!! お姉さんが依頼者さんですか!?
僕の名前は宮本龍雄と言います! タッちゃんとでも呼んで下さい!
リーダー的存在と言っても過言じゃないですよ! ささ、こちらにお掛けくださいッ!」

一目見て色香に惑わされた龍雄は、テンション上がりまくりだった。
空いていた席に依頼主を座らせて、龍雄は隣のテーブルから椅子を持ってきて、こちらのテーブル付近に座った。
ちなみに、一応のリーダーは俺なのだが、面倒くさいので訂正は入れない。

荻野「私の名前は荻野杏奈―――まあ知らないかもしれないけど飯屋新聞社・会長の娘よ」

芸能人やスポーツ選手の娘ならともかく、新聞社・会長の娘と言われても別に関心はないわけで。

荻野「私の大学の後輩からあなた達のことを訊いてね」

その大学の後輩とは有嶋先輩の知人。そこらへん経由して俺達のことを知ったらしい。

荻野「『アンバーグリス』という探し屋は、何でも探し出してくれるって訊いたわ」

凍季也「ハハハ、買い被りすぎですよ。お手柔らかにお願いします
徳川埋蔵金を探してこい、なんて言わないで下さいね」

苦笑いの凍季也が冗談交じりに答えた。

6 ◆70nl7yDs1.:2011/10/21(金) 18:19:12 ID:kUSTX//o0
まほろ「それで……依頼内容はどういったものなのでしょうか?」

まほろが問いかけ、しばしの沈黙。俺達はゴクリと息を呑む。

荻野「あなた達に探してもらいたいのは―――本当の私の母親」

龍雄「えっ?」

龍雄は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。
本当の母親……つまり両親が離婚をして実の母親とは生き別れになっているということだろうか。

臣「人探しをして欲しいと言うことですか?」

荻野「……摩り替わってしまったのよ。母と同じ姿をした『何か』は今も家にいるわ」

どうやら事情は複雑なようだ。
話が見えてこないが、とりあえず荻野さんに案内されて実家に行くことになった。

羽振りよくタクシー二台で移動。三十分ほど車を走らせて到着した。
噂に違わぬ立派な豪邸。荘厳な門、敷地には高級車が何台も並んでいた。
家に上がり、荻野さんの後をついていく。

荻野「ここよ……この部屋に閉じ込めてるの」

まほろ「閉じ込め……?」

荻野さんはドアノブに手を掛けてゆっくりとドアを開いた。

ゴゴゴゴゴゴ…

凍季也「―――――!!」

龍雄「う、うぉお!!」

まほろ「これは……」

7 ◆70nl7yDs1.:2011/10/21(金) 18:20:00 ID:kUSTX//o0
ンベロベロベロベロォォォ

部屋に立ち込める悪臭が鼻をつんざく。
五十代くらいの女が延々と椅子を舐め続けていた。
あまりにも不気味な光景だ。俺は思わず視線を逸した。

荻野「もうこうなって一ヶ月にもなるわ……
あらゆる病院にも連れていったけど、医者もお手上げよ」

荻野さんは儚げな目で母親を見つめて語り始めた。

荻野「私や父のことも認識できてないの
人の形をしてるけど、人じゃないのよ……
こいつの世話は大変よ? あの椅子から引き剥がしてお風呂に連れていくのも……
いつも奇声を発してうるさくてね、近所からも不審がられて最悪
だからね、こう考えることにしたのッ!
こいつは偽物で、本物の母は何者かに誘拐されてるってねッ!
すり替えられたのよォ! どうせ家の財産が目当てなのよォォォ」

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

―――何を言ってるのだろう。

凍季也「言いたくはないが……これは俺達の仕事じゃありませんね
餅は餅屋ですよ。何なら腕が立つ精神科医を紹介しましょうか?」

荻野「何よッ! 何も知らないくせにッ! どんな薬を投与しても効果なんて何も無いのよッ!?」

凍季也「いやいや……医者にかかるのはアンタだよ」

荻野「な、何言って――――」

龍雄「お、おい! 凍季也!」

やれやれ。面倒くさい。

8 ◆70nl7yDs1.:2011/10/21(金) 18:23:00 ID:kUSTX//o0
臣「うちのツレが失礼しました。見つかるかはともかく、何でも全力で探し求めるのが俺達の信条……
いいでしょう、この依頼引き受けます」

荻野「ほ、ホントに!? ありがとうッ!!」

臣「ですが―――前金として二十万円ほどいただきます」

荻野「ちゃっかりしてるのね。いいわ、払うわ、いくらでも……」

俺達は現金を受け取って荻野邸を後にした。


凍季也「オイオイ……本当に引き受けるのかよシン」

臣「ああ。大体さ……俺達は『スタンド使い』だろ?
この世の怪奇現象のほとんどは『スタンド』で説明ついちまうもんだ」

凍季也「何でもかんでもスタンドのせいにするのもどうかと思うけどね」

まほろ「わ、私は探してみる……何か嫌な予感もするし」

龍雄「俺はもちろんやるぜ!」

凍季也「…………」

臣「それじゃ早速班分けしよう
龍雄は荻野さんから情報を訊き出して、凍季也とまほろは母親と関わりがある人を徹底的に調べてくれ
俺は父親のほうを調べてみる。七深と乙一にも協力してもらおう」

凍季也「あぁ、分かったよ―――」

今日は一先ず解散して明日から行動することになった。
七深と乙一にはメールを送っておこう。

**

9 ◆70nl7yDs1.:2011/10/21(金) 18:27:04 ID:kUSTX//o0
一話分すら出来上がってないのに投下してしまった俺を許してください……。
今日はここまでです。これからの展開?もちろん考えてないです^^

10名無しのスタンド使い:2011/10/21(金) 20:13:15 ID:/lZN02yg0
新連載乙です!
虹村父を思い出してしまう展開ですね……続き楽しみにしてます!

11名無しのスタンド使い:2011/10/21(金) 20:36:04 ID:aImXy5Ko0
タイトル見て一瞬「朱と交わるメイド」に見えて「ん?」と思ってしまった……しかも読み始めるとまほろさんが居るし……これは期待せざるを得ない!

12名無しのスタンド使い:2011/10/22(土) 11:38:20 ID:wBRGsZG6O
SHIN連載きたーーー!
これは期待できそうだ!

13 ◆70nl7yDs1.:2011/10/22(土) 15:15:52 ID:MGqaFnvY0
お米ありがとうございます!まだ途中なのにわざわざすみません

>>10
確かに虹村父を彷彿とさせるかもしれませんね
なるべく早く更新できるように頑張ります

>>11
メイドwww確かにまほろさんはメイドですけどwww
ちなみに、『まほろ』はとある小説家の名から拝借してたりします

>>12
だれうま!
期待を裏切らないように盛り上げたいです

14名無しのスタンド使い:2011/10/22(土) 17:18:08 ID:20eNxDXg0
新連載乙です!期待してます!
>>13 とある小説家
もしかして古野まほろさんですか?

15 ◆70nl7yDs1.:2011/10/22(土) 17:40:04 ID:MGqaFnvY0
>>14
正解ですw
どうでもいい情報ですが、宮本龍雄は梶龍雄から、折原凍季也は折原一と司凍季から、折瀬七深は若竹七海から取ってます
乙一は『きのとはじめ』って読むけど『おついち』って呼ばれてる設定

16名無しのスタンド使い:2011/10/25(火) 15:30:32 ID:4Z59vMiAO
どうでもいいんだけど、こういう詞で始まる冒頭って大好きなんだよね
飯屋新聞社とか小ネタも結構ありそうで期待

17名無しのスタンド使い:2011/11/02(水) 19:55:54 ID:UNmSjueQO
少しネットから離れてたら新連載きてた!ヒャッホーwwwwww
いきなり登場人物がいっぱいなんで楽しみッスー

乙一クンは何が出来るのか楽しみだ

18 ◆70nl7yDs1.:2011/11/15(火) 23:12:36 ID:Otz6zFyo0
>>16
今見ると厨二すぎて恥ずかしいですねww
小ネタは挟んでいきたい

>>17
一瞬「乙1クンは何が出来るのか楽しみだ」に見えて焦ったww
登場人物が無駄に多いのが俺の特徴!そして持て余す!

19 ◆70nl7yDs1.:2011/11/15(火) 23:14:05 ID:Otz6zFyo0
「て、テメェ……本気で……お、俺を……親である俺をォォォ!!」
「くそがァァァーーーーこの恩知らずめッ!! こんなことならお前なんか……
うぎゃぁあああああああああああああああああああ」

ガバッ

臣「はぁ……はぁ……夢……か……」

どうやらうなされていたようで、服やシーツは汗ビッショリになっていた。
朝からヘヴィな夢を見ちまったもんだ……。
全く忌々しい。この不快感を少しでも取り払うために服を着替えよう。

臣「もうこんな時間か……さっさと飯食って支度しなきゃな」

階段を降りて一階の居間に入ると、ジュージューと料理をしてる音が聴こえてきた。
食欲をそそる匂いが鼻孔を刺激し、よだれが垂れているのに気づいて咄嗟に裾で拭う。
台所に見える後ろ姿は紛れも無く妹だった。
こんなとこで突っ立ってるのもあれだし、妹の小夜(さや)に挨拶しよう。

臣「おはよう、それハムエッグ?」

小夜「あっお兄ちゃん! おはよう、今日は珍しく早いね
これからどっか行くの? あ、ハムエッグもう一個焼くね」

矢継ぎ早に話してくる妹に苦笑しながら答える。

臣「ん、ああ……頼む。えーと……仕事でこれから行かなきゃいけない所があるんだ」

小夜「そう……頑張ってね」

妹はなんだか寂しそうな顔をしていた。
ここのところ家に帰っても疲れて寝るだけだったからな……。

臣「ん……仕事終わったら一緒に買い物でも行くか?」

小夜「えっ……!? でも……そんな」

臣「気にするなって、金なら今回の仕事は成功報酬がたくさん入るんだ」

うちの家計が切迫しているのは事実なので、妹が気にするのも無理は無い。
だが、そのために探し屋の仕事をしてるわけで。

小夜「そこまで言うなら……うん」

臣「決まりだな。じゃあ首洗って待ってろよ」

小夜「なんか物騒な言い方ね……ありがと! 楽しみにしてる」

臣「このハムエッグもらうね」モグモグ

俺はマッハで食事を済ませ、身支度をして家を出た。
愛車のア○パンマン号……原付に跨って公道を走る。

***

20 ◆70nl7yDs1.:2011/11/15(火) 23:15:12 ID:Otz6zFyo0
臣は小走りで集合場所に座る男の元へ駆け寄った。
頭にハチマキを巻いた長身でガタイのいい男だ。

???「お前にしては遅かったな臣」

臣「いや……ちゃんと時間厳守してるんですケド……乙一が早く着すぎ」

乙一「時間前に来るのが社会人ってもんよ。なぁ、七深」

乙一と呼ばれる男が右側を一瞥すると物陰からひょっこりと勝気な表情の少女が姿を見せた。

七深「そうね。これは臣にご飯を奢ってもらうしかないわ」

臣「いや、どうしてそうなる……」

乙一「んで、俺は何すればいいんだ?
まさか俺と茶しばいてダベろうってんじゃないよな」

臣「いや、お前の『能力』でこの匂いを調べて欲しいんだ」

臣はジップが付いたビニール袋を差し出した。

乙一「これは?」

臣「依頼者、荻野杏奈の母親が身に付けていた物だ
お前なら匂いを追えるだろう?」

乙一は若干怪訝そうな顔をしながら受け取った。

乙一「うーん……あんまり頼られても困るがな……まあやってみよう」

そう言いながらカバンの中から大量の草を取り出した。

乙一「『マンドレイク』!」

ズズズズ……

手で触れた草は徐々に形を変えていき、次第に馴染みある動物の姿となった。

七深「あら、キモカワイイ。ゴールデン・レトリバー?」

ただの草が八頭の犬に変化した。

臣「オイオイ……街中であんまり能力使ってんじゃねーよ
だが、犬の嗅覚は使えるぜ……」

乙一「だからあんまアテにするんじゃないよ
こんなだだっ広い街で探し当てるなんざ無理だ」

臣「待て、今から電話する」

臣はポケットから携帯を取り出して電話をかける。

プルルル……

21 ◆70nl7yDs1.:2011/11/15(火) 23:16:14 ID:Otz6zFyo0
臣「もしもし、龍雄か? あれから何か掴めたか? ああ……」

しばらく相槌を打ちながら聞いた。

臣「――――なるほど、分かった。じゃあ引き続き調査を頼む」

七深「今のは何の電話?」

臣「一ヶ月前の6月下旬に荻野母が行ってた場所を訊き出してもらったのさ
おかしくなる当日に行っていたのは病院だそうだ」

七深「病院……きな臭いけど……とりあえず当たってみるのね?」

臣「ああ。とりあえずはな」

プルルル……

今度は逆に臣の携帯に着信が来た。

臣「はい、もしもし。そっちの首尾はどうだ?」

それから3分ほど話して通話を切った。

乙一「電話の相手は誰だ?」

臣「まほろからだ。要約すると聞き込みで得られた目撃証言だ
10時頃と15時頃にバスに乗ってるのが目撃されたという情報だな
11時頃にコンビニでパンとお茶等を購入されてるのが目撃されていたが、至って普通だったらしい
病院に入ったのが11時半前、出たのが13時半過ぎ……
問題は帰りしなでバス停から家まで帰るところを目撃した人は、すぐにその違和感に気付いたという
特に近所に住む人の証言では頭を抱えながら千鳥足でふらつきながら歩いていたとか……」

乙一「ふむ……病院内で何かされた可能性は高いな
コンビニのような人目につきやすい場所では考えづらい」

七深「あとスタンド使いである可能性も高いね」

臣「だな……じゃあそろそろ出向くか」

七深「ところで……私は何をすればいいの?」

そう尋ねられた臣は困った顔で答えた。

臣「えっ……えっと……戦闘要員……?」

七深「…………」

***

22 ◆70nl7yDs1.:2011/11/15(火) 23:16:51 ID:Otz6zFyo0
一行はバスに乗って病院のある街に着いた。
龍雄達ともここで合流を果たす。

臣「では、二手に別れて行動しよう
俺と龍雄とまほろがA班、乙一と凍季也と七深がB班」

龍雄「オッケー。んじゃ早速行こうぜ」

臣は手で龍雄を制止させる。

臣「待て。皆、怪しいやつを見つけたらまず別の班の誰かに電話をかけるんだ」

全員がコクリと頷いた。

乙一「俺の犬を四頭連れて行ってくれ
今は植物に戻してるが、袋から出して軽く叩けば反応して犬になるようにしてある」

臣は植物が入った袋を受け取った。

臣「よし、じゃあ行くぞ」

二手に別れた彼らは病院の待合ホールを通って行った。
古いながらも県内一を誇る規模の総合病院であり、だだっ広い建物である。

まほろ「ちょっとトイレに行っていいかな?」

臣「あぁ」

まほろはキョロキョロと辺りを見回し、場所を見つけてからそそくさと小走りで向かう。

龍雄「クフフフ……シンちゃんトイレ行かねーでいいの?」

ニヤついた顔で訊いた。

臣「いや? 別に」

龍雄「あらそう? もし化物でも出てチビってもらっちゃ困ると思ってさァ〜……イヒヒ」

臣「うるせぇ。お前こそ脂汗でテカった顔拭いとけよ」

龍雄「こんなもん脂汗のうちに入んねーよ! いつもよりサラっとしてるくらいでい」

そうこうしてるうちにまほろがトイレから戻ってきた。

まほろ「お待たせ臣君、龍雄君」

臣「……」

龍雄「やけに遅かったな。デカイほうでもしてきたんか?」

まほろ「全く……相変わらず下品なんだから」

23 ◆70nl7yDs1.:2011/11/15(火) 23:17:19 ID:Otz6zFyo0
龍雄「で、どうするんだ?犯人がいるとしてどうやって見分ける?」

臣「犬を使って匂いがする場所を見つけないとな
それから手当たり次第人をスタンドで殴る」

臣の発言に二人は面食らう。

まほろ「ええっ!?」

龍雄「お前らしくもないな。殴るって……俺らが捕まっちまうよ」

臣「なんてな。本当に殴るんじゃなく、寸止めする
これは犯人がスタンド使いと仮定してやるわけだが、スタンド使いであれば急に襲い掛かられたら防御するか回避するだろう?」

まほろ「なるほどね」

廊下に出て、乙一からもらった植物を犬にする。

植物犬「ワンッ」

臣は荻野母の衣服の一部を袋から取り出して犬に嗅がせた。

臣「診察室を早く見つけないとな……」

通りすがる人達を片っ端からスタンドで襲う素振りをしながら病院内を歩きまわった。

まほろ「なかなか見つからないわね……」

龍雄「さすがに疲れてきたな……」

臣「気を抜くな。いつ敵が出てくるか分からない」

と言いつつもここに犯人はいないのではないか、と一抹の不安がよぎった。
病室がある階まで上り、廊下を歩いてると急に犬がある部屋の前で吠え始める。

ゴゴゴゴゴ……

臣「ここは……倉庫?」

おもむろに龍雄がドアノブに手をかける。

龍雄「どうやら鍵はかかってないみたいだぜ」

ガチャリ

中は暗かったがすぐに異変に気づく。
異常な臭気が立ち込め、その発生源が死体だと分かるのに時間はかからなかった。
そして、そのすぐ傍に佇む白衣の男。

ドドドドドド

24 ◆70nl7yDs1.:2011/11/15(火) 23:17:57 ID:Otz6zFyo0
男はクククク……と不気味な笑みを浮かべる。

白衣の男「ようこそ……よく辿りつけたね
君達も……使えるのかい?」

ズズズ……

全身がベージュでところどころ赤い部分がある人型のスタンドが男の傍に出現する。
左腕が機械的な作りになっている。

臣「それがテメェのスタンドか……」

白衣の男「ではでは……始めようか」

指をパチンと鳴らすとドアが開いて中にぞろぞろと数人の成人男性が入ってきた。
手には鉄パイプや角材を携えている。

まほろ「たくさん入ってきた……(ここ狭いのに)」

龍雄「まさか全員スタンド使いってことはないだろうなァ〜?」

白衣の男「いやいや……クックック……全員非スタンド使い……一般人さ
善良な僕の患者達だ。本気で攻撃したら死んじゃうかもよ?」

臣「とんだ屑ヤローだな……」

男がとった賎陋な手段に怒りを覚える一同。

龍雄「まずはテメーからぶん殴ってやるぜッ!『ネヴァー・アウトガンド』ッ!!」

龍雄は青紫色を基調としたスタンドを出して男に殴りかかる。

ネヴァー・アウトガンド『ウオリャアアアアアアアア!!』

『ネヴァー・アウトガンド』の右ストレートが敵のスタンドをとらえる。

ガシィ

白衣の男のスタンドは左腕を出して攻撃を防いだ。
しかし、不思議なことにスタンドはダメージを負った様子は見受けられない。
本体の男にもダメージがフィードバックしていなかった。

龍雄「な……なんだと!? 全く通用してねぇ……」

臣「どけ、俺がやる。『ロス・キャンペシーノス』……奴にアタックしろッ!」

全身がガラス細工で出来たような透明の体を持つスタンドが現れた。
お世辞にも美しいとは言えないグロテスクな口元をしている。

ロス・キャンペシーノス『ニーィィィィル!』

白衣の男「君達相手ならこの左腕一本で十分だ」

またも、敵スタンドの左腕で防がれてしまう。

25 ◆70nl7yDs1.:2011/11/15(火) 23:18:52 ID:Otz6zFyo0
まほろ「嘘でしょ……」

臣「(……俺のスタンドは触れた物質の硬度を自在に変化させることが出来る。
だが、何故だ……まるで効果が無いッ! 手応えがないわけではないのに……)」

白衣の男「何をしようと無駄なのだよ……!
どうせ君達では僕を倒すことは出来ない……冥土の土産に一つ教えてあげよう」

臣「何ィ!?」

白衣の男「僕の能力は特定の人間に幻覚を見せる能力だ……
つまり僕から見れば君達の攻撃はあらぬところを空振りしてるだけ」

臣「(確かに……その能力なら依頼者の母親がああなってたのには納得が行く
しかし……何かがおかしい……)」

龍雄「うるせェ!!
ゲンカクだかインケイだかしらねーが……殴りまくれば当たんだろッ!!」

臣「一理あるか……」

ネヴァー・アウトガンド『ウオリャリャリャリャリャリャ―――!!』

ロス・キャンペシーノス『ニィールニルニルニルニルニルニル!!』

白衣の男「その程度かね?」

敵スタンドは『ロス・キャンペシーノス』の攻撃を躱し、『ネヴァー・アウトガンド』の攻撃を左腕で防いでカウンターを龍雄に食らわした。

ズギャン

龍雄「ごふッ!!」

攻撃を受けた龍雄は何とか耐えて踏みとどまる。

白衣の男「やるねェ……僕の攻撃を食らって立つなんて……そこだけは評価に値する」

龍雄「俺のスタンドは能力という能力こそ無いが……タフさには自信があるッ!」

まほろ「龍雄君大丈夫?」

背後にいたまほろが声をかける。

龍雄「ああ……すげぇ衝撃だが大丈夫だ……それより何か首裏がチクッとするんだが……ッ!?」

龍雄は首裏を手で揉みほぐす。
しかし、その刹那―――

龍雄「う……ぐッ……ぐわあああああああ」

うずくまりながら断末魔の悲鳴を上げた。

26 ◆70nl7yDs1.:2011/11/15(火) 23:19:59 ID:Otz6zFyo0
臣「おいッ! 急にどうしたんだ!?」

ザワザワザワ……

龍雄「む、虫がッ! 虫が俺の体を這って来たッ!!」

臣「虫なんてどこにも……本当に幻覚を見せる能力なのかッ!?」

白衣の男「フハハハハ! 君はその無様は姿がお似合いさ…!!
そして……次にひれ伏すのはツンツン頭ッ! ゲームキャラみたいな髪型しやがってッ!!」

敵スタンド『ヲノヲノヲノヲノヲノヲノヲノォォォ!!』

ズゴガガガガガ

人間の動体視力では捉えるのが困難と思われるほど速いラッシュが臣を襲う。
ラッシュの全打を『ロス・キャンペシーノス』はボディに受けた。

白衣の男「フフフ……ハーハッハッハ!!」

臣「オイオイ……馬鹿笑いは負けフラグだぜ……?」

臣は体勢を崩しながらも立ち尽くしていた。

白衣の男「何をやった……?」

臣「なあに……簡単なことだ
俺のスタンドの硬度を変化させたのさ。殴った時硬いと感じただろ?」

白衣の男「……確かに分厚い鉄板でも殴ってるような感じだった
なるほどね……だが、僕は諦めの悪い男でね」

男は焦りの表情を浮かべながら言った。

臣「(そうは言ったものの……何て馬鹿力なんだ……衝撃が体ン中に伝わってくるぜッ!)」

敵スタンド『ヲノヲノヲノヲノヲノヲノヲノヲノヲノヲノォォォ!!』

さらにラッシュの速度を上げ、臣に迫り来る。

臣「いくら速いと言ってもだ……予め予測していれば避けられる」

シュンッ

直前で身を躱し、多少攻撃を受けたが構わずにそのまま直進する。

臣「『ロス・キャンペシーノス』ッ!!」

ロス・キャンペシーノス『ニーィル!!』

『ロス・キャンペシーノス』の腕が白衣の男の足元、地面をえぐるように殴った。

白衣の男「こいつは硬さを変える能力……ということは―――」

男の足元は泥沼のように床がぬかるんた。

27 ◆70nl7yDs1.:2011/11/15(火) 23:20:30 ID:Otz6zFyo0
臣「さらに―――固めるッ!!」

白衣の男「ぐゥゥゥゥ!!」

一度柔らかくしてから硬くしたため、男の足はズッポリと床にはまったまま固定された。

龍雄「お……おおッ! やったか! 俺はこっちからラッシュをぶちかますぜッ!」

何とか気力を振り絞って龍雄が立ち上がる。

臣「ああ……両側から攻撃をぶちかましてやるッ!!」

白衣の男「フフフ……甘いねェ……まだ……気 付 か な い の か ?」

ゾクッ

男の不敵な笑みに寒気が走る。

その刹那だった。

まほろ「……」ニィ

バリバリバリ

両手にナイフを持ったまほろが臣と龍雄を切り裂いた。
臣は咄嗟に避けていたので切り口は浅いが、龍雄はモロに土手っ腹を裂かれてしまう。

龍雄「ぐぎゃあああああああああ」

絶叫が倉庫内に響き渡る。
龍雄は大量の血を流しながら倒れこんだ。

臣「う……ぐぐ……そういうことか……」

まほろ「今頃気付いても遅いんだよボケッ!」

ズズズ……
徐々にまほろの姿が崩れて別の容姿に変わっていく。

???「ククク……まずは自己紹介をしてやろう
俺の名は『愚宇蓄 演汚(ぐうちく やるお)』だ」

臣「ぐっ……」ギリッ

歯を食い縛りながら愚宇蓄と名乗る男を睨みつける。

愚宇蓄「お前らのことは事前に知っていた……
この街でウロチョロしていれば俺の奴隷達から情報はすぐに飛んでくる」

臣「奴隷……やはり龍雄に幻覚を見せていたのはお前……その能力で人間を操るってわけか
こっちの白衣の男はおそらく左腕で受けた攻撃を無効化する能力ってとこだろうな……
まほろに化けたお前は、龍雄がラッシュを受けた隙に背後からスタンドで……」

28 ◆70nl7yDs1.:2011/11/15(火) 23:21:01 ID:Otz6zFyo0
白衣の男「馬鹿が……全ては計算通りだ
君如きが愚宇蓄様に勝てるわァけがなァいのだァァァ!!」

愚宇蓄「ご苦労だった河西
貴様の奴隷階級をほんの少しだけ上げてやろう」

河西「はっ……ありがたき幸せッ!!」

臣「まほろに化けていたのもお前の能力か……?」

臣は愚宇蓄に訊いた。

愚宇蓄「いや……これは仲間の能力だ……
俺はある組織に属しててな。おっと……今から死ぬお前に話すようなことじゃないか
さて、まほろとかいうガキがいないということは分かるな?」

臣「トイレに行った時に入れ替わったみたいだな……
つまり……人質ってことか」

龍雄「て……テメェーーー!! 卑怯だぞッ!!」

愚宇蓄「そういうことだ。今からお前らはサンドバッグになってもらうッ! 奴隷ども……やれッ!」

愚宇蓄が指差した方向には、既に忘れ去られようとしていた鉄パイプや角材を持った男達が並んでいた。
おそらく作者も存在を忘れかけていただろう。
威勢よく臣と龍雄に襲いかかり、手に持った武器を振り下ろす。

ドガァ ドゴォ ズギャッ

二人はスタンドを引っ込めていたため、生身で攻撃を受け続けた。

臣「がッ……はッ……」

龍雄「――ーーッ」

龍雄に至っては、もう床に横たわったまま動かなくなっていた。
辺りは血反吐の海。

愚宇蓄「もう声にもならんか」

ダダッ

植物犬「ワンッ! ワンッ!」

臣が連れてきた犬達が愚宇蓄に向かって吠える。

愚宇蓄「黙れ……『エンスト・リッキーマン』」

ブスッと指先から出た針を犬達に刺した。

愚宇蓄「炎に焼かれる幻覚でも見ていろ」

植物犬「ギャウウウウウ」

犬は倉庫の中を駆けずり回りながら悶え続ける。

29 ◆70nl7yDs1.:2011/11/15(火) 23:21:50 ID:Otz6zFyo0
臣「非道いことをする……」

愚宇蓄「そろそろ飽きたな……二人共殺すか」

男は顔色ひとつ変えずに言いのけた。

臣「ちくしょう……!! こんなとこで……」

愚宇蓄「そうだな。幻覚を見せて自殺でもさせるか……『エンスト・リッキーマン』やれ」

エンスト・リッキーマン『キシャアアアアア』

ググッ……

エンスト・リッキーマン『キ……キッ?』

『エンスト・リッキーマン』の腕は赤い管のようなもので絡め取られて、動けなくなっていた。
さらに、角材を持った男達も管によって雁字搦めにされ、身動きを封じられた。

愚宇蓄「何だッ!?」

気が付けばドアが開けられ、薄暗い倉庫の中に光が差していた。

ドドドドド

臣「遅かったじゃねーか……凍季也ッ!」

凍季也「臣、あなたの探しものをこれかな?」

そう言うと背後からひょっこりとまほろが顔を覗かせた。

愚宇蓄「ぐぐぐ……手練を用意していたが貴様にやられたというのか!?」

凍季也「俺を殺したければ百人くらいは集めとくんだな」

さらに他の二人も姿を見せた。

乙一「アホ、自分だけの手柄にしてんじゃねーよ」

七深「まあ一番貢献したのは私だけどね? そりゃ臣に『戦闘要員』呼ばわりされたんだから当然よね?」

愚宇蓄「ぞろぞろと群がりやがって……卑怯者がァ……」

顔を歪ませ、恐ろしい形相で睨む愚宇蓄。

臣「いや、卑怯者はお前だろ……」

愚宇蓄「まだだ……まだこれからだ……河西ッ!!!」

両足を床に固定された男の名を叫んだ。

乙一「!?」

河西「分かってます……お望みとあらば……足の一本や二本……うおおおおおおおおおおお」

ズグシャア

河西は自らのスタンドで足首を手刀で切断した。

30 ◆70nl7yDs1.:2011/11/15(火) 23:22:48 ID:Otz6zFyo0
愚宇蓄「洗脳してあるとはいえ……大した奴だ
さぁ俺がおぶってやろう! 背中に乗れッ!!」

『バーン・マイ・ドレッド』が『エンスト・リッキーマン』の右腕に巻きついた管を手刀で叩き切った。
そして、愚宇蓄は河西をおぶって走り出す。

乙一「このまま逃げる気か!? ここは通さんッ!!」

乙一が懐から出した草は狼をかたどって、生命の息吹が吹きこまれた。

まほろ「『クララベラ』ッ! あいつを止めて!」

卵に手足が生えたようなスタンドが現れた。
パカッと体の上部が取れて、中から全く同じデザインのスタンドが出てくる。
『クララベラ』と呼ばれたスタンドは、マトリョーシカのように何重にもなっているようだ。

七深「『スローン・オブ・ケイオス』ッ!!」

七深は口がジッパーで閉じられ、右手にグローブをはめた人型スタンドを出す。

三人が同時にスタンドを出現させてドアの前で待ち構える。

河西「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

バーン・マイ・ドレッド『ヲノヲノヲノヲノヲノヲノヲノヲノヲノヲノヲノヲノ
ヲノヲノヲノヲノヲノヲノヲノヲノヲノヲノヲノヲヲノォォォォォ!!!』

ここを通れさえすればあとはもう死んでもいい、それくらいの覚悟で河西はラッシュを放った。
河西の雄叫びと連動するように『バーン・マイ・ドレッド』のパワーとスピードは過去最高のものとなった。

乙一「ぐわッ!!」

まほろ「キャア!!」

乙一とまほろは衝撃で壁に叩きつけられた。
七深は何とか堪えきる。

七深「速いわね……手数では負けたわ……
でもね、有効打はこっちのほうが上なのよッ!!」

次第に『バーン・マイ・ドレッド』はグルグルと回り始める。

河西「な……なんだ……!? 体が回るゥゥゥゥ」

愚宇蓄「お、おいッ!!」

七深「もう無理よ。私が解除するまで永遠に回り続けるの」

回転する河西は愚宇蓄の背中から弾かれるように転げ落ちた。

愚宇蓄「テメェらの薄っぺらい感情で……邪魔するんじゃねぇ!!」

31 ◆70nl7yDs1.:2011/11/15(火) 23:23:52 ID:Otz6zFyo0
河西「こうなれば……死なばもろともだッ!!」

河西はスタンドで自分の体をめちゃくちゃに引き裂いて血しぶきを飛ばした。
その血しぶきは七深から視界を奪う。

七深「くっ! 目が……逃げられてしまう……!」

河西「はっ……僕は……やっと解放されたのか……すまない少女……」

河西は死ぬ間際に、ほんの一瞬だが、元の自分に取り戻すことが出来た。

愚宇蓄「よくやったッ! これでこの倉庫から出ることが出来るッ!!」

凍季也「いいやッ! テメェはここで終わりだッ!!」

廊下には凍季也が待ち構えていた。
辺りは倉庫内に流れる血を利用した管で結界が張り巡らされている。

愚宇蓄「クソッ……」

凍季也「後ろには乙一達がいる……そして廊下は完全に包囲した……
お前に逃げ場ないッ!! 」

愚宇蓄「いや……まだだね……まだまだ……ククッ……」

この状況で愚宇蓄は余裕面を見せていた。

凍季也「何がおかしい?」

愚宇蓄「後ろを振り返ってみろ!」

凍季也は言われたまま振り返った。
そこには―――

愚宇蓄「ざっと二百人はいるだろう? この病院の医師・ナース・患者達だ
俺の城に踏み込んだ無法者が生きて帰れるワケがないだろゥ!」

武器を持ったおびただしい数の人間が群れをなしていた。

凍季也「こ、こいつ……」

愚宇蓄「この結界を解かずに対応出来るかな? かかれッ!!」

愚宇蓄の掛け声と共に、一斉に凍季也に襲いかかる。地響きを伴って。

凍季也「俺のスタンド自体はパワーが無い……血の管をこっちに持ってきて戦うしかないじゃないかッ!」

愚宇蓄「ハハハハハハ!! 実に愉快だッ!
スキップでもしながらこの場を立ち去るとしようかなァ〜〜〜」

凍季也「ま、待て―――」

***

32 ◆70nl7yDs1.:2011/11/15(火) 23:24:57 ID:Otz6zFyo0
―――病院付近にある公園

愚宇蓄「ふぅ……ここまで来れば」

病院から走って逃げてきた愚宇蓄は安堵した表情で地面に腰を下ろした。
閑散とした公園で、人は一人も見当たらなかった。

愚宇蓄「ったく……ひどい醜態を晒してしまった……
奴らにはいつか必ず制裁を加えてやらねば……
しかし、まずは出直して準備と算段を―――」

愚宇蓄を腰を上げようとした時、急に目の前に陰が出来る。

愚宇蓄「て、テメェらは……」

臣「ほう……どこに行くつもりだ?」

乙一「俺の犬ならお前の悪臭はどれだけ離れていても嗅ぎ分けられるぜ」

愚宇蓄「チィ……これでも喰らえッ!」

懐からナイフを取り出して、臣に切りかかる。

ズグシャリ

愚宇蓄「ヒョォォォ! 胸にぶっ刺してやったぜェェェ〜!
油断して舐めてるからいけねぇんだよッ!! クソガキッ!!」

臣「目にゴミでも入ったか? よーく見ろよ」

しかし、臣は痛そうな素振りなど全く見せていなかった。
愚宇蓄は呆気に取られた顔で再びナイフを凝視した。

愚宇蓄「これは……刺さってねぇ……ナイフがぐにゃっと曲ってやがるッ!?」

臣「もう俺の能力を忘れたのか? 鳥頭野郎」

乙一「もうやっちまおう」

愚宇蓄「ぐゥゥゥ……まだまだ……これからよォォォォ
『エンスト・リッキーマン』ッ!!」

『エンスト・リッキーマン』は何と本体の愚宇蓄に針を刺した。

臣・乙一「!?」

愚宇蓄「フゥゥゥヒィヒヒヒヒィィィィィ」

ビクビクと痙攣した後、すくっと姿勢を正した。
さらに『エンスト・リッキーマン』の体はメキメキと音を立てながら変貌していく。
異常に膨れ上がり、中学生程度の身長だった体は2m近い体躯となっていた。

乙一「こいつ……まさか自分に幻覚を!」

愚宇蓄「俺は強い……誰よりもォォォ!!」

33 ◆70nl7yDs1.:2011/11/15(火) 23:26:01 ID:Otz6zFyo0
臣「理性を犠牲にしてパワーを上げたか……
かなり無理がある方法だ……反動で二度とスタンドが使えなくなるだろう」

愚宇蓄「うるッしゅるゥァアアアアアアア」

半狂乱になった愚宇蓄の『エンスト・リッキーマン』が二人に襲いかかる。

グオオオオオ

エンスト・リッキーマン『キシャアアアアア』

臣「『ロス・キャンペシーノス』ッ!!」

『ロス・キャンペシーノス』を出して迎え撃つ。

バシィィィ

愚宇蓄「―――…………!?」

『エンスト・リッキーマン』の右腕はあらぬ方向にねじ曲がっていた。
スタンドのダメージは本体にフィードバックするものであり、当然愚宇蓄の腕もねじ曲がった。
そして、右腕はボロボロと崩れていき、勢い良く血が吹き出す。

愚宇蓄「く……クソッ!!」

臣「俺と殴り合いをしようって時点でお前は詰んでたのさ……
お前のスタンドを『ロス・キャンペシーノス』で豆腐のように脆くしてやった……」

『エンスト・リッキーマン』は枯れたようにしおれていく。

愚宇蓄「はぁ……はぁ……
こ……殺すのか……? この俺を……」

臣「……」

愚宇蓄「俺を殺すのか? それで満足か?
テメェもよ……結局俺と同類なのだろう? ハハハハハ!
スタンドとは人間を蹂躙し、自らの快感を得るためにあるものだ!」

臣「やめろ……うっ……急に視界が……」

愚宇蓄「殺してみろよッ! さぁ早く!
テメェのその両腕で俺をひねり潰せよッ!! 何事にも替え難い快感になるぞッ!!」

途端に臣は膝をつき、頭を抱えて苦渋の表情を浮かべる。

臣「な……なんなんだ……この声……どこかで……」

愚宇蓄「殺せよ……”あの時”のようにッ!」

愚宇蓄は自らの顔を手でビリビリと引き裂き始めた。
そうして中から別の顔が現れる。

臣「お、親父……!?」

34 ◆70nl7yDs1.:2011/11/15(火) 23:26:55 ID:Otz6zFyo0
臣の父「そうだ……お前の父親だ……
あの時……お前の手によって埋められた恨みを今晴らしに来た」

臣「う……嘘だッ! あ……あり得ないッ!!」

臣の父「辛かったぜェ〜……長い間暗いとこにいたからなァ
実の息子にこんな目に合わされちゃあよォォォ〜〜〜」

臣「そんな……いや……スタンド……これはスタンド攻撃……」

臣の父「あぁ!? 何ブツブツ言ってんだ……
これからテメェが何されるか分かるか?」

臣「えっ……」

臣の父「あの時と同じ目に合わせてやるぜェェェ!!
まずはその手をバキバキに砕いてやるゥゥゥゥウ!!」

父親は靴の底で思いっきり臣の手を踏み潰した。

バギィイイ

臣「うぎゃあああああ」

臣の父「オラオラオラオラオラオラァァァァ〜〜〜」

ドグシャア

臣「何で……こんなこと……!!」

臣の父「憎いからに決まってんだろッ!
テメェなんかおろしとけばよかったなァー? ヒャハハハハ!!
そういや……家族は元気にしてるか? テメェを殺しただけじゃ物足りねぇから遊びに行ってやるよ」

臣「こいつだけは……殺さなきゃ―――」

グッシャア

またも手を踏まれる。

臣の父「死ぬのはテメェだ! ボケェェェ!」

臣「うわあああああああああああ」

臣が慟哭した刹那、父親の体はさらさらと砂になって消え去っていく。

乙一「おいッ! 起きろッ!」

乙一の声に反応し、臣は現実に引き戻される。

臣「ハッ!? ここは……」

乙一「奴の幻覚攻撃を少し食らってたみたいだ
すごい汗だが……大丈夫か?」

臣「あ……ああ……それよりアイツはどこへ!?」

乙一「逃げられてしまったよ……スマン」

臣「そう……か……」

乙一「まあ野放しには出来んが、お前はしばらく休むんだな」

臣はしばらく放心状態のままその場で立ちすくんだ。

***

35 ◆70nl7yDs1.:2011/11/15(火) 23:28:22 ID:Otz6zFyo0
―――翌日

病院内にいた人間全員が集団自殺をしていたことがニュースで持ちきりとなっていた。
臣達が引き上げ、警察が駆けつけるまでの間、わずか10分足らずの時間で何かが行われたのは事実だろう。

臣達は別の病院で治療を受けることになった。
『ラムダ』に所属するスタンド使いの医者であり、腕前は非の付け所が無かった。
しかし、治療に時間がかかるため一日〜二日間は入院することになったのである。


―――饗庭家前

饗庭臣が住む一軒家。
腕にギブスを付けた男が門をくぐって歩みを進める。

愚宇蓄「グヒヒ……この腕の傷の礼はたっぷりしないとなァ……
まだ30代で美人の母親に、可愛い妹がいるそうじゃねぇか
まずは飽きるまで犯し続けて……その後は生首を玄関に飾っといてやるか
いや……ガキだけは人質に取ってアイツらを―――」

ドカッ
愚宇蓄は何かにぶつかって尻餅をつく。

愚宇蓄「ぐっ……何だテメェコラ!」

???「俺の顔くらいは見たことあるだろう?」

若い青年が愚宇蓄に訊いた。
しばらく青年を凝視して、ようやく思い出したのか、口を開く。

愚宇蓄「テメェは……あの悪名高い……『有嶋祐介』ッ!」

ドドドドドド

その名と顔は裏の世界では知らない者はいないとまで言われる。
犯罪者達にとっては天敵とも言える存在であった。
その首に賞金が掛けられているとの噂すらある。

祐介「ご名答。じゃあこれからどうなるかも分かるな?」

愚宇蓄「……俺を殺したら組織が黙っちゃいねぇぞ!?
既にあのクソガキどものデータは組織に渡してある……ククク」

祐介「生きながらにして苦しませ続ける方法だってあるんだぜ」

愚宇蓄「うるせェェェー!! 『エンスト・リッキーマン』ッ!!」

既にボロボロな『エンスト・リッキーマン』が有嶋祐介に襲いかかる。

祐介「ハエが止まりそうなほど薄鈍いパンチだな」

U2『ボノォ!!』

『エンスト・リッキーマン』のパンチが到達する前に横から『U2』のパンチが入る。

ドギャン!

愚宇蓄「ぐおおおお……おぐふゥゥゥ……」

ズシッ ズシィッ

愚宇蓄の体は数トンもの重さになり、自らの重さに耐えられなくなって地面にキスをする。
立つことはおろか、地面にズブズブと沈んでいく。

祐介「これからお前はスタンド使い専用の収容所に移送される
そこで事情聴取をされるだろうが……死んだほうがマシと思えるほど辛い拷問が待っているだろうよ」

***

36 ◆70nl7yDs1.:2011/11/15(火) 23:29:03 ID:Otz6zFyo0
愚宇蓄は拷問に掛けられ、所属する組織について話してた最中、体に埋め込まれた爆弾が爆発した。
爆発に巻き込まれ、職員の二名が死亡、三名が負傷する事態になった。
唯一聞き出せたのは「俺と同じようなタイプのスタンド使いがいる」「連中は俺よりもっとヤバい」。

本体が死亡したことで『エンスト・リッキーマン』の能力は解除された。
後日、臣は依頼者の元へ行った。

荻野「まだ後遺症はあるみたいだけど以前の母に戻ってましたわ」

臣「それはよかった」

荻野「これ、謝礼の100万円です。受け取ってください」

臣「こんなに頂くのは……」

荻野「いろいろ巻き込まれたんでしょう?
それに……あなた達の治療費も含めて100万円です
受け取ってもらえないのならここに捨てるわよ」

手をひらひらさせて捨てるような身振りを見せた。

臣「分かりました……ありがたく頂きます」

臣は軽くお辞儀をして札束が入った袋を受け取る。

報酬はアンバーグリスの六人が山分けをすることとなった。
前金と合わせて120万、一人あたり20万円ずつ分配した。

翌日、臣は妹の小夜と二人で買い物に行くことになり、高い服を買ってやることに―――


to be continued...

37 ◆70nl7yDs1.:2011/11/15(火) 23:51:58 ID:Otz6zFyo0
文章量だけは無駄にあるけど中身はうっすい!乙1マジック


使用スタンド一覧&登場人物解説

饗庭臣 (あえばしん)
・高校3年生
・探し屋『アンバーグリス』のリーダー
・家族は母と妹がいる
・性格は真面目で普段はやや寡黙
・コンビニでバイトをしていたが、『アンバーグリス』で活動しだしてから辞めた

No.1910
【スタンド名】ロス・キャンペシーノス
【本体】ツンツン頭のイケメン高校生。前髪で右目が隠れている。
【タイプ】近距離型
【特徴】全身がガラス細工のような透明ボディのスタンド。
【能力】触れた物質の硬度を自在に変化させる。
    豆腐を鉄塊のように硬くしたり、鉄塊を豆腐のように脆くしたりしたりできる。
    硬化、軟化は人体にも可能。

破壊力-B スピード-A   射程距離-D
持続力-C 精密動作性-C 成長性-A

考案者:ID:fFaQyXM0
絵:ID:TTUuJ7so

饗庭小夜(あえばさや)
・臣の妹、多分中学生くらい

饗庭英里子(あえばえりこ)
・臣の母。未登場

饗庭敏行(あえばとしゆき)
・臣の父。臣に殺された…?

宮本龍雄 (みやもとたつお)
・臣の同級生で友人
・『アンバーグリス』のメンバー
・おちゃらけているが根は真面目で努力家
・素手での喧嘩はチームの中で一番強い

No.1503
【スタンド名】ネヴァー・アウトガンド
【本体】短髪の青年 非常に努力家で逆境や痛みに強い
     体力バカで肉体的にも精神的にも頑丈
【タイプ】近距離型
【特徴】人型 布で拳を巻き、マウスピースを噛んで歯を食いしばっている 
【能力】能力なし
     ただ本体の精神を反映して異常なほどにタフネス
     スタプラのラッシュをまともに受けても2,3回なら耐えられる
     強力な能力で一気に決着をつけるのではなく、長期戦で相手をじわじわと追い詰める戦い方
     どんなダメージを受けてもまず倒れることがないため、相手にかかるプレッシャーは相当なもの

破壊力-B スピード-C   射程距離-D
持続力-A 精密動作性-C 成長性-A

考案者:ID:aGjXK7E0
絵:ID:6pw16oSO

折原凍季也(おりはらときや)
・臣の同級生で友人
・『アンバーグリス』のメンバー
・どこか冷めた性格をしているが、やる時はやる
・勉強は出来るほう

No.1894
【スタンド名】レッド・レッド・ワイン
【本体】普通の高校生
【タイプ】近距離型
【特徴】体半分が青、半分が赤色の人型
【能力】触れた血を管のように伸ばす能力。
     本体の血、他人の血、人間の血など関係なく、全ての血を管のように伸ばせる。
     管になった血は、鉄くらいの強度を持ち、本体はそれを自由に伸ばすことができる。
     本数にも大きさにも長さにも制限はなく、直線だけではなく婉曲も可能。
     また伸びる速さも、高速からゆっくりまで調整可能である。
     血の管の中にガスや液体を流すこともできる。

破壊力-D スピード-D 射程距離-E (能力射程-A)
持続力-D 精密動作性-D 成長性-D

考案者:ID:Knc4w5Uo
絵:ID:gkxYuYSO

38 ◆70nl7yDs1.:2011/11/16(水) 00:13:27 ID:UdLc4fG60
乙一(きのとはじめ)
・臣の同級生で友人
・『アンバーグリス』のメンバー
・ミステリアスな雰囲気を持つ。自然を愛し、山で遊ぶのが好き
・塾などには通ってないが、学力は学校でも上位に入るほど

No.3847
【スタンド名】マンドレイク
【本体】頭にハチマキを巻いている男
【タイプ】無像型
【特徴】スタンドの像はない
【能力】植物を生物に変えて操る。
    範囲内の木々や花等の植物を生物に変化させ自在に操る事ができる。また、複数の植物を生物化し、同時に操る事ができる。
「植生物」の容姿は、本体の意志である程度変える事ができる(犬のような四足歩行や鳥のような羽を持ったもの等)。
「植生物」は(根を持つものであれば)標的の身体に根を張り養分を吸収する。
地面(土などの植物が育つ環境)や生物の体内に「植物の種」を埋め込む事で、そこから養分を急激に吸い取って成長し、新しい「植生物」を生み出す事ができる。

破壊力-なし スピード-なし 射程距離-B(能力射程-30m)
持続力-A 精密動作性-なし 成長性-D

考案者:ID:913HgPum0
絵:ID:hbJtZUki0

折瀬七深(きせななみ)
・臣の同級生で友人
・『アンバーグリス』のメンバー
・勝気な性格で喧嘩が強い。家はわりと金持ち
・良い大学に進学することを望んでいるので日々勉強してる

No.620
【スタンド名】スローン・オブ・ケイオス
【本体】長身の女子高生 喧嘩が滅茶苦茶強い
【タイプ】近距離パワー型
【特徴】人型。口がジッパーで閉じられている。右手にグローブのようなものを付けている。
【能力】スタンドの右手で殴ったものを「回転」させる。回転は本体が能力を解除しない限り止まらない。
    回転方向は本体が決められる。回転数は時間と共にあがっていく。

破壊力-A スピード-A  射程距離-E
持続力-C 精密動作性-C 成長性-C

考案者:ID:JF0PdTRdO
絵:ID:3eu1/ZcpO
絵:ID:Bo0OGq8D0

黒崎莉幌(くろさきまほろ)
・臣の同級生で友人
・『アンバーグリス』のメンバー
・普段はおとなしくてあまり率先して喋る方ではない。親しい人には気を許している
・自分の過去を話すのが好きじゃない

No.1914
【スタンド名】クララベラ
【本体】前髪で目を隠した少女 地味な見た目だが非常にスタイルが良い
【タイプ】近距離型 群体型
【特徴】ハンプティ・ダンプティのような体型の人型 真ん中に線が入っている 
【能力】マトリョーシカのようにからだを分割できる
     体の中には大きさの違うスタンドが何重にも重なって入っている
     スタンド発動時は全ての個体を内包した一体のみで出現、内包しているスタンドの数は全部で10体
     ひとつの個体にスタンドが集まるほどにパワーがあがり、射程距離は短くなる
     全ての個体が一体に集まることで近距離パワー型並みのステータスを得る
     逆に分裂するほどパワーが低くなり、射程距離が伸びる
     中身が空の個体のパワーは大きさに関わらず全てD評価、個体を内包した数でステータスに変化が出る
     ほかの個体を内包できない一番小さな個体はパワーをあげることはできない

破壊力-A〜D スピード-B   射程距離-D〜A
持続力-C 精密動作性-C 成長性-A

考案者:ID:zZjLeI8w0
絵:ID:CfeECUDO

39 ◆70nl7yDs1.:2011/11/16(水) 00:13:56 ID:UdLc4fG60
荻野杏奈(おぎのあんな)
・大学生
・飯屋新聞社会長の娘であるため、家は豪邸

愚宇蓄演男(ぐうちくやるお)
・外科医をやっている三十代の男
・殺人が趣味だが、近年は飽きてきた。数多くの人間を奴隷化して操っている
・下衆な性格で、他者がどうなろうと何も思わない
・とある組織に属している

No.4333
【スタンド名】エンスト・リッキーマン
【本体】楽観的狂人集団「クラウン」の一員。
自分が天才だと思っている自称外科医。手術だと言って大量の人を殺して来た。
普段は白衣を来てそこら辺の病院をふらついている。
【タイプ】近距離型
【特徴】指先が針になっている人型 中学生程度の身長。
【能力】指から幻覚を注入する。
幻覚を注入されると幻覚の中で起きた怪我等が実際の身体にも現れる。
(幻覚に殴らてぶっ飛ぶとかはできない。殴られた所に痣が出来るだけ)
生物だけじゃなく物や機械にも有効。

破壊力-C スピード-C 射程距離-D
持続力-B 精密動作性-A 成長性-E

考案者:ID:0W+WyuPDO
絵:ID:sF/o6c+Xo

河西俊三(かさいとしぞう)
・愚宇蓄に洗脳されていた二十代の青年
・元々は患者だった

No.4664
【スタンド名】バーン・マイ・ドレッド
【本体】スタイリッシュな青年 面倒事に関わりやすい質 過去に事故に遭い、左腕を失っているため義手を使用している
【タイプ】近距離型
【特徴】左腕が機械チックになっている人型スタンド。頭に、空き缶を繋げて王冠のようにした冠を乗せている
【能力】スタンドの左腕だけは、何の影響も受けない能力
左腕を攻撃されてもダメージを受けないし、例え時が止まろうと左腕だけは影響を受けない
ただし、本体の左腕の義手が破壊されると精神的な要因で、スタンド能力が発揮されなくなる

破壊力-A スピード-A   射程距離-E
持続力-C 精密動作性-C 成長性-A

考案者:ID:OCbqMrEDO
絵:ID:eOLJK1Q2o

有嶋祐介
・今は大学生で、臣の高校時代の先輩
・スタンド使いで構成された組織『ラムダ』の幹部でもある

No.44
【スタンド名】U2
【能力】触れた物質の重さを変えられる
破壊力-B→A スピード-A   射程距離-2〜3m(能力の効力は200M)
持続力-?→B 精密動作性-B 成長性-C→D
※作中では少し成長させてあります
考案者:ID:Azdg7Rlm0
絵:ID:FhUUc7chO

素敵なオリスタを使わせて頂きありがとうございました!

40名無しのスタンド使い:2011/11/16(水) 00:35:33 ID:rzUw/6hQ0
乙!ロスキャンを使っていただけるとはありがたい!!
期待してます!

そしてやはり登場した祐介!
物語がどう動いていくのか楽しみだ

41 ◆70nl7yDs1.:2011/11/16(水) 00:43:46 ID:UdLc4fG60
今回はただただ疲れました……
この分だと二話目がかなり遅くなりそうで不安だ
地味だなって書きながら思ってましたが……読み返してみて改めて地味だと思った
もっとアクションしろよ!!

>>40
早速お米ありがとうございます……!
まさかロス・キャンペシーノスの案師さんがまだいらっしゃるとはww
実は結構前に挑戦状のほうで使わさせてもらったんですよね
あの頃に漫画で使いたいって思ってたんですけど、ネームまで描いたものの実現出来なかったので……
でも、このまま終わらせるには勿体無いと思ってSSのほうで連載してみました
ロス・キャンペシーノスの能力はとても魅力的で一目惚れでした!
祐介はいろいろ絡んでくるかもしれないですが……主人公はあくまでも臣です

42名無しのスタンド使い:2011/11/16(水) 08:24:14 ID:WbeLnGVQO
クララベラたんきたきたきたきたきたきたきたきたきたきたッー!
まほろさんのスタンド……まほろさんはクララベラたんだったぁッ!

フフフ……フフ、フハ、フハハ、ハァーッハハハ!クララベラたんの新世紀がやって来たァーッ!

43 ◆70nl7yDs1.:2011/11/18(金) 00:34:24 ID:GR/YFFbI0
>>42
お米ありがとうございます!
クララベラ活躍させたいですね……

今から投下するのはU2の番外編です。
U2で書ききれなかったことなのでいつか短編でやりたいなと考えていました。
読まなくてもSHIN本編は問題ないと思いますが、一応SHINともつながっているので。
誰だこの登場人物!?って感じだと思いますけども……。

44 ◆70nl7yDs1.:2011/11/18(金) 00:35:24 ID:GR/YFFbI0
これは有嶋祐介の父、有嶋圭史郎とヴェーダにまつわる話である。

―――1988年

有嶋圭史郎は某K大学ウイルス研究所に研究員として在籍していた。
若干26歳ながらいくつもの論文を発表し、世界的にかなりの評価を得る。
多岐に渡るウイルス学、分子遺伝学、分子生物学、細胞生物学等の知識を持ち、将来的に世界一の研究者になれるとの呼び声も高かった。
同期で妻である有嶋澪子は免疫学、久坂知己は遺伝子に関する総合的な研究を専攻していた。

そんな折、有嶋圭史郎の前に、天戸來間(あまどくるま)と名乗る謎の男が現れた。
天戸はヴェーダという組織を三年前に創設し、優秀な研究者を募ってるということだった。
つまり、引き抜きだ。

圭史郎が「何のためにそんな組織を作ったんです?」と尋ねる。
天戸は「世界を救うために必要なのだ」と答えた。

組織の研究所では、スタンドと呼ばれる超能力を発現させるウイルスについて研究が行われていることを聞かされた。
スタンドを世界の役に立てるという理念に賛同し、有嶋圭史郎、有嶋澪子、久坂知己の三名は組織に加入した。
研究所では、圭史郎が室長に就いた。

研究所・所長の東雲広明は新たに加わった圭史郎達に挨拶をする。

「やぁ、ようこそ我が研究所へ。君達のような有能な研究者が来てくれて頼もしいよ
私達と共に切磋琢磨しあいながら、相互扶助の精神で研究に励もうではないか」

三人はガッチリと熱い握手を交わした。


―――1992年

圭史郎は妻と3歳の息子、秀彦を連れてエジプトへ海外旅行へ行った。
仕事ではなくプライベートでの旅行である。
日頃の疲れが溜まっていたこともあり、エジプトでは各地を回って漫喫した。
最終日、ふと立ち寄った露天の骨董屋である物と出会う。
店に並べられた品を手に取った。

「これは良いな……」

相当古い物と思われる短剣であった。
しかし、中々に保存状態は良い。
骨董品集めが趣味だった圭史郎は、それが安いこともあって十本ほど購入を決めた。

後日、日本に帰って短剣を眺めていたが、誤って自身の手を切ってしまう。
しばらく発熱を伴って倒れた後、奇跡的に回復し、ある能力を身につけた。
それは『スタンド』だった。

圭史郎はすぐに短剣を研究所に持ち込んで研究を始めた。
これをきっかけにスタンドウイルスの研究は加速的に進むことになるのである。
ウイルスの抽出に成功し、動物を使った実験は成功を収める。
人間への臨床実験も東雲所長の一声で決定した。

45 ◆70nl7yDs1.:2011/11/18(金) 00:36:32 ID:GR/YFFbI0
まずは職員自らが被験体となり、スタンドウイルスに感染させることとなった。
しかし、一部の者は耐えられずにそのまま命を落とす結果に。

「全ての人間がスタンドを得れるわけではない……死ぬ者もいる……違いは何だ?」

次に圭史郎は澪子と協力し、ウイルスではなく人間のほうを研究し始める。
翌年、ある仮説を打ち立てた。
生物の中にはスタンドを覚醒させる遺伝子が存在しているということ。
そして、この世の生物は以下の三通りに分類出来るということだ。

A.スタンド遺伝子a'を持つ。
B.スタンド遺伝子a'を持たない。
C.先祖がスタンドウイルスに感染しており、遺伝によってスタンド遺伝子aを持っている。

Aの場合は、そのままではスタンドを発現させる可能性は極めて低い。
そこで、Sウイルスに感染させることでS遺伝子a'がS遺伝子aに変異し、スタンドが発現する。
S遺伝子a'がS遺伝子aに変異する際に発熱を伴う。
スタンドに目覚めた生物はSウイルスに対する抗体を持つようになる。
S遺伝子を持たないBはSウイルスに抵抗する術を持たないため、死んでしまう。
Cの場合は、生まれつきスタンドを発現させることもあるが稀であり、長年の修行や近親者の肉体からの波長による自然発生、もしくはSウイルス感染等、発現のきっかけは様々である。
S遺伝子aを持っていても休眠状態であることが多く、何らかのきっかけが必要だと思われる。
また、以上のことからSウイルスには、S遺伝子a'をS遺伝子aに変異させる機能と、さらにそこからスタンドを引き出す機能の二つが存在するとされる。


それから、短剣は地球上の物質ではないことが明らかとなった。
宇宙から飛んで来た隕石の一部を加工して作ったものではないかと推察されている。

「スタンド……この未知なる力は恐ろしいが……人類のために使えばきっと役立つ……」

圭史郎はそう呟いて研究室を後にした。


―――1994年

圭史郎・澪子夫妻は第二子を授かった。
祖父の秀祐(しゅうすけ)から一字を取り、祐介と名付けた。
ちなみに長男の秀彦も同様に祖父の名前から一字貰った。

ヴェーダは急激に人員を増やした影響で過激派や急進派を生んでしまう。
各勢力が独断で行動をすることが多くなり、犯罪に手を染めてしまう者も多々現れた。
組織の創設者でリーダーの天戸來間は手を焼いていた。

圭史郎は天戸に尋ねた。

「何故見過ごしておくんですか?」

返事は至ってシンプルなものだった。

「今は少しでも力が必要だからだ」

圭史郎はそれがどういう意味か理解出来ないまま、6年もの歳月が経った。

46 ◆70nl7yDs1.:2011/11/18(金) 00:37:59 ID:GR/YFFbI0
―――1997年

組織が慌ただしくなっていた時期である。
圭史郎もそれは感付いていたが、全容を把握することは出来なかった。

幹部連中は「見つかった」「回収できた」等と口を揃えて言っていた。


―――2000年

ヴェーダは過激さがさらに増し、一般人を誘拐しては人体実験に利用するようになっていた。
けれども、その成果もあってか、スタンドについての研究は幾分捗った。
スタンドが行き着く先……レクイエム化を発見する。
さらに、血液を採集することでスタンドの才能があるか否か判別することも可能となった。

内部の軋轢はひどいもので、抗争がいつ起きてもおかしくない状況である。
そして、同じ研究室に配属されている磯部明博という男が辞めたいと志願した。
上の連中は猛反対したが、それを押し切って出て行ったのだ。
しかし、情報を漏らされることを危惧した幹部達は、磯部を殺害し、さらし首とした。
見せしめでもあり、他の研究員が抜けるのを防ぐ抑止にもなったのだろう。

天戸は激怒し、殺した者を探し処分しようと動いた。
だが、ある三人の帰国者によって、それは阻まれる。
結成時から所属していた初期メンバーである夢野柩錯、綾辻征人、浦賀和弘……現在はシヴァ、ブラフマー、ヴィシュヌと名乗っている。
天戸は彼らによって暗殺され、表向きでは事故死と発表した。
まもなくして三人がニューリーダーとなり、組織を掌握することとなる。

既に辟易としていた圭史郎に追い打ちをかけるように、東雲所長が研究所とは離れた場所にある施設に招いた。

「有嶋君には同志として協力してもらいたい」

機械や液体の入ったカプセルが並ぶ薄暗い部屋を抜けると、広いホールに通された。
そこでは、数百人もの子供達が整列している。
子供達の顔つきは恐ろしいほど似通っていた。

「これは一体どういうことだ?」

圭史郎が問いただすと誇らしげな表情で東雲は答えた。

「私の研究の賜物だ。遺伝子工学によって生み出したスタンド使いのクローンやスタンド使い同士に産ませた子供達だよ
遺伝子が近い個体は近似したスタンドを発現させることが研究で分かった……そして、世界の優秀なスタンド使いを誘拐して遺伝子を頂いたのだ
まあ……かなりいじくってあるがね……」

「東雲……貴様ッ……!!」

「これから戦わせて生き残ったものだけを教育していく。劣る者は淘汰されて然るべき世界なのだよ」

「そんな人道に反することは絶対に許さんッ!! 『スレイプニル』ッ!!」

圭史郎は美しい装飾が施された八本足の馬のようなスタンドを出す。

「やれやれ……君の力が必要だというのに……今は眠っておけ」

ドカッ

背後に潜んでいた男が後頭部を殴打したことで、圭史郎は失神して床に倒れ込む。
翌日、施設内にあるベッドの上で目が覚めた。
急いで施設を抜け出て、研究所に戻り、澪子と久坂に事の顛末を教える。

47 ◆70nl7yDs1.:2011/11/18(金) 00:38:31 ID:GR/YFFbI0
さらに翌日、澪子は単身で東雲所長に立ち向かったが、あえなく殺されてしまう。
死体は処理され、失踪したという扱いになった。
しかし、圭史郎は組織に殺されたのだと気付き、久坂をと共に組織から離反を決意する。
対抗すべき組織を作って『ヴェーダ』を潰そうと。澪子の弔いでもあった。

だが、そんな思惑は上層部には筒抜けであった。

「有嶋にはまだ利用価値があります。事実彼のおかげで研究は多大な成果を得れましたが……」

「黙れ。我らに楯突くものは何人であろうと消さねばならん
その代わりに優秀な学者を引き抜いておいた。ウイルス学では四條茂、物理学では菊地英之」

東雲は圭史郎の有能さを買っていたため、引きとめようとしたが、シヴァの一声で抹殺が決まった。

そして、ついに事件は起きた。
末端戦闘員二人が有嶋家に襲撃してきたのだ。
抵抗むなしく圭史郎は殺されてしまう。
後に組織を潰されることになるとはつゆ知らず、『ヴェーダ』は子供達だけは見逃した。


―――2005年

「東雲君、例の研究はどうだね?」

ムキムキマッチョジジイのヴィシュヌが東雲に訊いた。

「順調でございます。これなら2013年には間に合うかと」

「うむ。そうか……何としてもこの世界は守らなければならぬからのう
だが、時間がかかりすぎる……今は優秀な人材をかき集めて精鋭部隊を作るのじゃ」

「はっ……承知いたしました」

***

久坂は『ヴェーダ』に対抗すべく『ラムダ』を立ち上げ、各地の正義感溢れるスタンド使いを勧誘した。
敵の動向を探りながら水面下で力を蓄えていった。

48 ◆70nl7yDs1.:2011/11/18(金) 00:39:07 ID:GR/YFFbI0
―――2010年

『ヴェーダ』の研究は佳境に入っていた。

「素晴らしい……全く異常がなくここまで……」

東雲はソレを見つめながら呟いた。

「所長……私にだけ教えて頂いたのは非常に光栄ですが……
未だに信じられません。本当に3年後に起きるんですか?」

部下の男が眉間にシワを寄せながら尋ねた。

「もちろんだ。何でも今は亡き天戸様の御友人が予言者だったらしい
その方は既に亡くなっておられるが、全ての予言が当たっていたという
そして、神から力を授かった現リーダーの方々も預言されている……その日は"確実に来る"」

自動ドアを開け、ブラフマーが入ってくる。

「ほう……いい目になってきたな。これは真実を見つめる目だ……
そうだ……こいつは『真(シン)』と名付けよう」

***

4月。三神は夢半ば有嶋祐介達に敗れ、『ヴェーダ』は壊滅に追い込まれた。

ブラフマーは出掛ける前に、信頼する部下にこう言い残しておいた。

「もし私達が敗れるようなことがあったら……その時は誰にも見つからない場所で『真』を匿え
金なら天城肇という男がいくらでも出資してくれるだろう
最後の希望を絶やしてはならない……決してな」

***


―――2012年

『ヴェーダ』が滅びた今もなお、その意志は途切れていなかった。

そして、刻々と時間が過ぎていき、その日が差し迫っていくのである。
果たして、人類の未来はどうなってしまうのだろうか―――


to be continued...

49 ◆70nl7yDs1.:2011/11/18(金) 00:40:55 ID:GR/YFFbI0
登場人物一覧

有嶋圭史郎…ヴェーダ研究所室長。かつては某K大学ウイルス研究所に在籍していた。有嶋祐介の父親。スタンドは『スレイプニル』。死亡。
有嶋澪子…研究員。某K大学ウイルス研究所では圭史郎と同期。有嶋圭史郎の妻。スタンド使いであったとされるが、殺される。
久坂知己…研究員。某K大学ウイルス研究所では圭史郎と同期。有嶋圭史郎の盟友。スタンドは『ハーフライフ』。死亡。
東雲広明…所長。東雲雪華の父親。スタンドは『アヴァスト』。死亡。
磯部明博…研究員。幹部に殺される。
天戸來間…組織の創設者。シヴァらに暗殺される。
天戸の友人…予言者。2013年に起きることを予言した。病死。
夢野柩錯…インドでの修行で『シヴァ』の力を授かった。死亡。
綾辻征人…インドでの修行で『ブラフマー』の力を授かった。死亡。
浦賀和弘…インドでの修行で『ヴィシュヌ』の力を授かった。死亡。
四條 茂…2000年に入ったウイルス学の研究者。スタンドは『ノートン』。死亡。
菊地英之…2000年に入った物理学の研究者。スタンドは『シレラスリー』。死亡。
天城肇…天城グループの代表取締役。ヴェーダに多大な出資をしてきた。

スタンドの戦闘はほぼありませんが、使わさせて頂きありがとうございました。

50 ◆70nl7yDs1.:2011/11/18(金) 00:57:00 ID:GR/YFFbI0
書き忘れ
夢野柩錯…インドでの修行で『シヴァ』の力を授かった。スタンドは『ビヨンド・ザ・バウンズ』。死亡。
綾辻征人…インドでの修行で『ブラフマー』の力を授かった。スタンドは『シング・ライク・トーキング』。死亡。
浦賀和弘…インドでの修行で『ヴィシュヌ』の力を授かった。スタンドは『The Agony and the Ecstasy』。死亡。

何気にこの話はSHINのネタバレなんですよね……。
勘がいい人はヴェーダが何をしようとしていたのか分かるかも。

51 ◆70nl7yDs1.:2011/11/18(金) 03:28:04 ID:GR/YFFbI0
一応風呂の中で2話の構想は考えた……多分今度はちゃんと物を探すのではないかと思います。

52 ◆4aIZLTQ72s:2011/11/22(火) 11:12:18 ID:X3q5cQuE0
更新乙です!こういう組織ものの背景というか外伝は熱いですね。
かなり昔から陰謀が渦巻いていたことが発覚しました。
『真』とは一体…2013年になにが起こるのか……?

53名無しのスタンド使い:2013/02/19(火) 23:10:07 ID:8lKshzo60
全く面白くない。まさにオリスタSSの面汚し。
このSSはウンコ
              )
             (
         ,,        )      )
         ゙ミ;;;;;,_           (
          ミ;;;;;;;;、;:..,,.,,,,,
          i;i;i;i; '',',;^′..ヽ
          ゙ゞy、、;:..、)  }
           .¨.、,_,,、_,,r_,ノ′
         /;:;":;.:;";i; '',',;;;_~;;;′.ヽ
        ゙{y、、;:...:,:.:.、;:..:,:.:. ._  、}
        ".¨ー=v ''‐ .:v、,,、_,r_,ノ′
       /;i;i; '',',;;;_~⌒¨;;;;;;;;ヾ.ミ゙´゙^′..ヽ 
       ゙{y、、;:...:,:.:.、;、;:.:,:.:. ._  .、)  、}
       ".¨ー=v ''‐ .:v、冫_._ .、,_,,、_,,r_,ノ′
      /i;i; '',',;;;_~υ⌒¨;;;;;;;;ヾ.ミ゙´゙^′.ソ.ヽ
      ゙{y、、;:..ゞ.:,:.:.、;:.ミ.:,:.:. ._υ゚o,,'.、)  、}
      ヾ,,..;::;;;::,;,::;):;:;:; .:v、冫_._ .、,_,,、_,,r_,ノ′

54名無しのスタンド使い:2013/02/19(火) 23:24:25 ID:8lKshzo60
やっと投下できそうです。
このSSを待ってた人は一人もいないだろうけど、お待たせしました。
>>51の時点で考えてた構想は3話以降になりそうかな…。

それと真似してウンコAA貼ってみただけで、あっちのスレとは関係ないでし!

>>52
コメントありがとうございます。2年越しの返事をしてしまったことをお許し下さい。
物語の根幹に関わってくるんじゃないかなぁと思います。

55名無しのスタンド使い:2013/02/19(火) 23:25:52 ID:8lKshzo60
第2話『スティグマの翼』


―――奪う者と奪われる者。彼は前者だった。

 汗が滲む蒸し暑い夜。
鉄格子に囲まれた狭い部屋に彼がうずくまっていた。
彼の腹部には異物が刺さっており、辺りは赤色の水溜りと化している。
かすれた呻き声が僅かに響く。

 そして、暗い部屋の隅にもう一人、黒い影が佇む。
「君には此処は些か狭すぎるようだな」
朦朧とする意識の中で不気味な悪魔の囁きに耳を傾けた。
「此処を出たくば力を望め。純然たる力は生命に呼応する―――」

「闘争心こそがスタンドの原動力だ」

 その刹那。
彼は生まれて初めて体内から何かが分離する感覚を味わった。

 気が付けば黒い影は闇に溶けて消え、彼もその場を後にした。
 代わりに置かれたのは歪な粘土細工。役目を終えた物体。

 一羽の鳥が羽ばたいた静かな夜。
ようやく彼の夏が始まりを告げる。

「カカッ」


***

56名無しのスタンド使い:2013/02/19(火) 23:27:20 ID:8lKshzo60
―――7月28日

 俺と龍雄は行きつけの喫茶店『楠の木』に来ていた。
いつものお気に入りの席に向かい合って座る。

臣「おい、何で喫茶店に来て水飲んでんだ」

龍雄「気にすんなよ。ダイエットってやつだ」

臣「むしろカフェインのほうが脂肪細胞を分解する酵素を作ってくれて脂肪細胞が消費しやすい状態になるぞ」

龍雄「うるせぇ。カフェインが入ってると水分補給にならねーんだよ! 俺みたいなスポーツメンは水に限るぜー」

 そう言いながら龍雄は豪快に水を飲み干した。
確かに龍雄はサッカー部だったが、今年の春に部活は辞めている。
何でも父親が重い病で、多大な治療費を稼ぐために辞めざるを得なかったそうだ。

臣「いや、カフェイン入りの飲料を飲んでも健康に影響が出るほどの流動性の電解質平衡異常は起きないぞ。
それどころか習慣的に摂取することで流動性の電解質平衡異常を縮小する働きが―――」

龍雄「あぁ!? カイ・シデンが何だって? さっきからマジレスうっせェーンだよッ!」

臣「……つまるところ金欠ってとこか」

龍雄「悪いかよ! 俺だって色々あんだよォ〜色々よォォォ〜」

臣「まあ今日は俺が奢ってやるよ」

龍雄「フン……」

俺は『楠の木』のマスター、楠木さんにアイスコーヒーを頼んだ。

楠木「はいよ、アイスコーヒー。あ、お代はいいよ。
そのかわり―――『スタンド』ってやつを見せてもらえないかな?」

 スタンドを見せる……? 一体どういうことだろう。
マスターもスタンド使いなのだろうか。

臣「スタンドを知ってるんですか?」

楠木「んー……実際に目にしたことは無いけど、この界隈で生きてると嫌でもスタンドのことは聞くね。
それにいつも君達の会話は駄々漏れだから」

龍雄「へぇ〜」

臣「分かったぜ。とりあえずスプーン借りていい?」

57名無しのスタンド使い:2013/02/19(火) 23:28:12 ID:8lKshzo60
楠木「あっ……よくある超能力のスプーン曲げってやつだね。
分かったよ、ちょっと取ってく―――えっ!?」

 スプーンが浮遊しながらこちらのほうにゆっくりと進んでくる。
一般人が見たら確実にマジックの類だと思うだろう。
しかし、ここにはマリックもレオンも居ない。居るのは二人のスタンド使い。
そう、俺のスタンド『ロス・キャンペシーノス』でスプーンを掴んで運んでいるのだ。

臣「そんじょそこらのスプーン曲げと一緒にしてもらっちゃ困るな」

楠木「俺には見えないが……そこに居るんだね? スタンドが……」

臣「ああ。じゃあスプーンを手にとってみてくれ」

 マスターはスプーンを手にとってすぐに表情が一変した。
軽く掴んだだけでグニャリとスプーンは変形し、何とも形容しがたい形状へと変化したからだ。
よくある手品番組で見かけるスプーン曲げと違うのは一目瞭然だった。

楠木「こ、これがスタンド……! 柔らかい……まるでゴムのような感触だ。
紛れもなくこれはウチのスプーンだし、君達が仕込んでるとは考えられないな」

臣「まっ……能力を解除すればこのとおり元通りだぜ」

 スプーンはみるみると元の硬い金属に戻っていく。

楠木「で、龍雄クンはどんな能力なのかい?」

龍雄「へっ? ……俺?」

 龍雄のスタンド『ネヴァー・アウトガンド』はめちゃくちゃタフというだけで固有の能力は特に持ってない。
いざ能力を見せてくれと頼まれても困るのが難点だな。

龍雄「お、おー……じゃあこのスプーンを引きちぎってやるぜーッ!」

 宙に浮いたスプーンが一瞬の内に真っ二つに引きちぎれる。
人間では到底ムリだが、スタンドならそれはいとも容易い。

楠木「スゴイスゴイ。はい、弁償代はきっちり払ってもらうよ」

龍雄「な、何でだよォ〜! 見せてくれって言ったのはそっちだろッ!」

―――
――


58名無しのスタンド使い:2013/02/19(火) 23:28:51 ID:8lKshzo60
 それから十分後、黒崎まほろが遅れてやってきた。

まほろ「遅くなってごめんなさい」

龍雄「またどうせ面倒なことに首突っ込んでたんだろ?」

まほろ「うーん……ええと……ここに来る途中のことなんだけどね。
人だかりが出来てたから覗いてみたら……変な死体……があったの」

臣「変な……?」

まほろ「とにかく人の形をしてないのよ。脚が肩やお腹から生えてたり……ううっ」

 よほど気持ち悪いものを見たのか、嘔吐きながら手で口を押さえる。

臣「まあ十中八九スタンド使いの仕業だろうな」

龍雄「ま、マジかよ!」

臣「それはどこで見かけたんだ?」

まほろ「佐仁連峰へ行く道の前にある大きい家あるでしょ? そこの庭先」

龍雄「あの家は地主として有名だよな。金目の物を盗むために殺したのか……許せんッ!」

楠木「ああ。それね、一週間くらい前からこの町で連続して起こってるみたいだよ」

 ひょっこりとマスターが顔を覗かせて云った。
どうやら今回の犯人と同一人物が俺達が住む町で暴れ回ってるようだ。

楠木「スタンド使いがみんな君達のような人間だったら平和でいいんだけどねぇ……」

龍雄「よっしゃ! そのクソ野郎を退治しに行こうぜッ!」

臣「勘違いするなよ。俺達は依頼を受けて人や物を探すことを生業にしてる探し屋だろ。
餅は餅屋。そーいうのは警察とかに任せとけばいいんだよ」

まほろ「だからって……このまま見過ごすって言うの?
スタンド使いにはスタンド使いしか対抗出来ないって……臣君も分かってるよね!?」

臣「ああ。だが、俺達はスーパーヒーローじゃねぇ。ただの人間だ。
いちいち首突っ込んでたら命がいくつあっても足りやしねぇよ。もう少し損得勘定で行動したらどうだ?」

59名無しのスタンド使い:2013/02/19(火) 23:29:56 ID:8lKshzo60
龍雄「この臆病者め! そういうことなら俺一人でも犯人捕まえてやるわ」

 ハァ〜〜っと長いため息をつく。
これ以上訴えても無意味と悟った俺は、コーヒーを一口含み、喉を潤してから龍雄にこう告げた。

臣「残念だけど既に仕事の依頼が入ってる。
単独で行動するのは勝手だが、この仕事が終わってからにしてもらおうか」

龍雄「ちっ……分かったよ」

 鞄から取り出した資料を二人に配る。
今回の仕事は人探しで、その人の写真や情報が記載された紙。

臣「名前は田辺謙介。年齢は60歳。背は小柄で特徴は白髪混じりの髪型と黒縁眼鏡……
町工場を切り盛りしていたが、円高の影響もあって大赤字。それで2年前に置き手紙を残して失踪」

まほろ「何か手がかりがあればいいけど」

龍雄「こんなのァとっとと俺が終わらせてやるぜ」

 ふとガラス越しに外を眺めると、どんよりとした雲が立ち込めており、空は一面が灰色になっていた。
不吉、という単語が瞬時に過る。

楠木「一雨ありそうだな……うちにある傘貸してやるぞ」

臣「あぁ……助かる」

楠木「……」

 恐ろしく思い詰めたような表情で彼方の空を見つめていた。
その表情は、俺達が知ってる人当たりのよい喫茶店のマスターのそれとは違って見えた。
楠木さんの裏の顔を垣間見たようだった。

 ドアに手を掛け、外に出ようとする間際に呼び止められる。

楠木「何かあったら知らせてくれ」

臣「……ああ」

 カランカラン


***

60名無しのスタンド使い:2013/02/19(火) 23:30:14 ID:8lKshzo60
―――佐仁連峰前 金山章蔵邸

 閑静な山間の一軒家。東京ドーム一個分はゆうにある敷地だ。
閑静なとは言っても、散歩やジョギングする人はちらほら見受けられ、通学路としても利用される。

 金山氏は普段庭にいることが多いのだが、今日は姿は見えない。
代わりに警察官が数人ほど庭先に集まっていた。

??「槙野課長……何なんですか……この塊は……」

 若い警察官の男が血相を変え、眼の前にある物体について質問した。

槙野「狼狽えるな山本。人間には違いねぇよ」

 槙野と呼ばれた年配の男は、所構わずライターに火を着け、口に咥えたタバコを火に近づける。
ジジ…という小気味いい音を立て紫煙を宙にくゆらせた。

山本「しかし……」

 動揺する山本に対して槙野は落ち着き払っており、にべもなく言い返す。

槙野「マルS関連にはこういう不可解なことも日常茶飯事だ」

山本「なンですか? マルSって」

槙野「マルSつーのはな……」

間を開けて「ふぅー……」と多量の紫煙を吐き出した。

槙野「スタンドつー超能力を使う奇怪な連中の隠語だ。
最近配属されたお前は知らんだろうが、ここいらじゃこの手のヤマは珍しくない」

山本「そ、そんなことが……」

槙野「しかし、ここのところ立て続けに同様のヤマが起きているな……。
いずれも変死体にタタキ……金品が盗まれているのが共通してる」

山本「ホシの手がかりは無いんですか?」

槙野「それがだな―――」

 一度地面に視線を落としてから、再び山本へ顔を向けた槙野。
その鋭い眼光に山本は堪らずゴクリと生唾を飲み込んだ。

槙野「実は二週間前に刑務所を脱走した男がいるんだが……
その際に刑務官13人をこのホトケみたいな姿にしてるらしい」

山本「じゃ、じゃあそいつで決まりじゃないっすか!」

槙野「あぁ……脳図猫助(のうずねこすけ)という男だ。
以前にタタキで捕まったようだが、マルSと思わしきところは一切無かった。
つまり能力を会得したのは服役中……ということになるな」

山本「素性もバレてるのに! この町に居続けるって……」

槙野「警察に対する挑発もあるだろうな。だが……それだけでも無さそうだ」

山本「このままだと滅茶苦茶になっちゃうっすよ。この町だけの騒ぎじゃ無くなる……」

 たじろぐ山本を尻目に槙野は、一瞬ニヤリと口頭を上げてから口を開いた。

槙野「今日から家に帰れなくなると覚悟しとけよ。さて、ここは鑑識に任せて地取り行くぞ」

山本「は、はいっ!」


***

61名無しのスタンド使い:2013/02/19(火) 23:30:51 ID:8lKshzo60
―――8月3日 喫茶店『楠の木』

 いつもの特等席で臣と龍雄とまほろが待ち構えていた。
還暦を迎えていてもおかしくない容姿をした男がドアを開け、ふらりと店の中に足を踏み入れる。
臣はおもむろに身を乗り出して男に話しかけた。

臣「田辺謙介さんですね?」

田辺「そうだが……何故私のことを?」

 田辺は虚を衝かれた表情で問う。
何の用があってこの青年は名前を呼び、話しかけたのか、田辺には皆目見当も付かなかった。

臣「実は―――」

―――
――


田辺「そういうことですか……家族が……
でもねぇ、私は家族を捨てて卑しくも一人で逃げた身……戻れるわけが無い……」

龍雄「オッサンよォ〜家族が会いてぇーつってんだから意固地になる必要はねーだろォ〜?
それに誰も一緒に住めなんて言っちゃいねェー! まずは会うだけ会ってみてもいいんじゃねぇか?」

田辺「……」

まほろ「特に娘さんのほうが田辺さんとお会いするのを熱望されてました。
どんなことがあってもたった一人の父親に変わりないですよ」

田辺「そうか……そうだな……」

 田辺はしばらく沈黙した後、「分かった」と言葉短めに返事をした。
その表情はどこか安心したような、曇っていた空が徐々に晴れ渡っていくようだった。

田辺「しかし、何故私がここに来ると分かったのかい?」

臣「失踪者の大半は、懐かしんで馴染みある場所に戻ってくると聞いたことがあります。
奥さんから昔この喫茶店に家族でよく訪れていた、ということを教えていただきまして……。
ここは田辺さんにとって思い出の場所だったのではないでしょうか」

田辺「うむ……娘が幼い頃はよく家族三人で来たものです。この店の薫りが好きでね……」

コトッ、田辺が座るテーブルにグラスが置かれる。

楠木「どうも。このアイスコーヒーは僕からのサービスです。毎年この季節になると顔を覗かされてましたね」

田辺「ハハハ、次来る時があればまた……三人で来れたらいいですけどねぇ」

まほろ「それにしても奇遇ね。私達がよく来るお店とおじさんの思い出のお店が一緒なんて」

龍雄「これも何かの縁だぜ。ゆっくりして行きな」

田辺「ああ、そうさせてもらうよ」

―――
――


 それから、30分ほど談笑をした。
田辺はアイスコーヒーの礼をし、「ではまた」と別れを告げて店を後にした。


***

62名無しのスタンド使い:2013/02/19(火) 23:33:30 ID:8lKshzo60
 夜半、そこは閑静な住宅街。
老年の男は手に菓子折りを持ち、確かな足取りで歩を進めていく。
しかし―――男は目的地に着く前に足を止めなければならなくなった。

ぐちゃ……ぐっちゃ……。

 無視できないほどの異様で異常な音が静かすぎる住宅街に響き渡る。
音もそうなのだが、臭いのほうも常軌を逸していた。
 その音は目と鼻の先にある豪邸のほうから鳴っている。

 聞かなかったことにして通り過ぎたい。誰だって怖い。
だが、もしもあらぬことが行われているのならば―――使命感が男を突き動かす。

 ゴゴゴゴゴゴゴ……

「―――!?」

 男の嫌な予感は的中してしまった。
いや、想像の斜め上を行く光景と言ってもいいだろう。
例えば、電車の人身事故を余すこと無く、特等席で目撃したとしよう。
それを10とした場合、これは1000にも値するほどの衝撃と言える。

 端的に言おう、何者かがドロドロに溶けた人間を丸めている。
何のことだかさっぱり分からないだろうが、実際にそれが行われてるのだから仕方ない。
暗くて目視しづらいが、犯行に及んでる者は二十代の男だということは辛うじて認識可能。
 一方のドロドロに溶けて丸められた人間は、人間というより、肉塊と形容したほうが伝わりやすい。

 ブルブルブル
 老年の男は、その残虐極まりなく、また、理解もしがたい光景にただただ戦慄した。
殺人鬼の行いは何もかもズレているのだ。人の道からズレている。

 「そこから出てこい」

 殺人鬼は振り返り、隠れている男の姿が分かっている口ぶりで言葉を発した。
老年の男は脚が震え上がり、その場から離れることが出来なくなっている。

 「カカッ……俺を見た奴は殺さなきゃいけないんだ」

 瞬間。気が付けば殺人鬼はすぐ側まで迫っていた。
慈悲の欠片も残されてない冷徹な表情に、老年の男は背筋が凍り付く。

「げに恐ろしき化け物め……」

63名無しのスタンド使い:2013/02/19(火) 23:33:54 ID:8lKshzo60
「逃げまわったりしてくれるなよ? 面倒臭いからな」

 生物としての直感が、老年の男に死を覚悟させた。
抵抗したところで敵うはずがない、と。

 「ま、待ってくれ……一日、いや、一時間でいい。
私の目的地は此処から目と鼻の先にある……目的を果たした後ならいくらでも―――」

 老年の男は命乞いをしない。望むのは僅かな死の延期。

「ダメだな。今殺す。すぐに殺す」

 すぐに却下された。
言葉は通じる。しかし、話は通じない。

「私はまだ死ねないのだよッ……うおおおおおおおおお!!」

 老年の男は拳を握り締め、目の前の邪悪に向かって飛びかかった。
しかし、その拳が殺人鬼の体に到達することはなく、腕の動きが静止する。
 得体の知れない何かに掴まれる感触。

「ぐっ……くそッ! なんだ!?」

次第に腕がぐにゃりと曲がっていく。目に見えない力が働いているようだ。

「お前は運がいい。俺の奇跡を無料体験して逝けるんだからな。カカッ」

「ぐああぁあァああアアぁあああぁあっああッあァあッあァぁッッッ」

 閑静な住宅街に断末魔の叫びが反響した。
長い叫びは徐々に薄れていき、人が生物から静物になっていく瞬間を目の当たりにする。

 結果、32個に分解された肉片が無残に転がり、悪臭を振りまくのだった。

「カカカッ」


 to be continued...


***

64名無しのスタンド使い:2013/02/19(火) 23:57:31 ID:8lKshzo60
駄文失礼しました。
バトルは次に持ち越します。話数が稼げるので。

簡易登場人物紹介

楠木次郎…喫茶店のマスター。30代後半。店は引き継いだものなので二代目。情報通。
脳図猫助…泥棒。2年前に捕まって服役していた。現在は全国指名手配犯。
謎の黒い影…他人にスタンドを与えるブツを所有している。
槙野…階級は警部。叩き上げの刑事課長。過去に臣と接点があるらしい。
山本…若手の刑事。経験が浅い。
田辺謙介…60歳のおっさん。現在はホームレス。

65名無しのスタンド使い:2013/02/20(水) 21:23:18 ID:n1BYrDpA0
更新乙!待ってた!待ってたぞおおおお!

66名無しのスタンド使い:2013/02/21(木) 02:24:58 ID:th2gQ0NU0
久々の更新乙!
なんか凄いグロテスクな事件が起こってますね・・・なにこれ怖い

67 ◆70nl7yDs1.:2013/02/21(木) 07:54:56 ID:HhpBXlUg0
>>65
ありがとうございます。嘘でも嬉しいです。
多分数日の内に3話投下出来ると思います…。

>>66
ありがとうございます。
俺がSS書くと毎回血生臭くなって仕方ないですね。

68g:2013/03/07(木) 17:46:06 ID:Udow9qLU0
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