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プロローグ
1 ◆LglPwiPLEw:2010/11/26(金) 20:13:23 ID:???0
その少年は、ただひたすら泣いていた。
これ以上ない程に泣きじゃくっていた。

少年は幼心に、“自らが置かれた運命”を受け入れられないと感じていた。


少年の母親とおぼしき若い女性が、彼の両手を握って慰めている。
母親は我が子に対し、混じりけのない優しい笑顔で話しかけていた。

息子とはまるで対照的である。


(いやだ・・・行かない・・・で)

少年は母親にそう言いたかった。
だが、自分の涙に邪魔されて、その言葉を紡ぎ出すことはできなかった。


彼は、この場所での母との別れが永遠の別れになることを知っていた。

『信じたくないが、信じざるを得ないこと』というものは、誰の内にでも存在しうる。
彼は今、その極限に辛い状況を体験しているのだ。


母親も彼の心を察したのか、精一杯の愛情を込めて抱き締めた。

しかし、その表情には一片の悲哀さも無い。
我が子と離別する時期にしては“穏やかすぎる”表情だった。
まるで“この選択は少しも間違ってはいない”と決心しているかのように。


母親は抱擁を解くと、顔中を涙で濡らす我が子を見つめながら、

「 À bientôt. 」

と、別れの挨拶をした。


母親が離れていく。
遠いところへ行ってしまう。

去りゆく母親を追いかけようとする少年を、周りの大人は掴んで制した。


母親は待機している灰色の車へと歩いていき、
車のなかに消えた。








「・・・やれやれ」

彼は時々、こんな嫌なことを思い出す。

2 ◆LglPwiPLEw:2010/11/26(金) 20:14:54 ID:???0
すみません、こっちは間違いです
削除お願いします・・・

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