■掲示板に戻る■ ■過去ログ倉庫一覧■
【オリスタ】U2 -黒い森で啼く蒼い鳥-【SS】- 1 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/03(水) 00:38:50 ID:qu9R1b4U0
- 序章「真夜中の訪問者」
真夜中の深夜三時半。リビングのほうから聞こえる声に起こされる。
何事かと思った俺は二段ベッドの上段で眠っている兄貴を起こして、様子を伺いに行くことにした。
ドアの隙間から中をこっそりと覗く。俺たちの父親と見ず知らずの男二人が大声で話している。
二人の男たちは土足で上がりこみ、父さんの胸ぐらを掴み、怒声を浴びせていた。
「頼む帰ってくれ…!子どもが寝ているんだ!」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
長髪のメガネをした男とスキンヘッドで長身の男の二人組。土足で上がり込んでいる。
鋭い目付きで父を睨みつける。幼かった俺は思わず身震いしてしまった。
「はははっ……だから?俺らは上のモンに命令されてお前を始末しに来ただけだ
裏切り者の末路はよォ〜くご存知だろ?『有嶋室長』よォ〜」
「俺っちよォ〜こいつの顔見てたら無性にイラついてきたぜェ〜?」
「とりあえず2,3発殴っとけ」
「あいよー」
ドゴッ ドガッ ボゴッ
「ぐはァ……げほッげほッ」
父は長身の屈強な体格をしたほうの男に腹を殴られて倒れこむ。
おびただしいほどの血反吐を吐きながら。
「に…兄ちゃんッ!父さんが!父さんが殺されちゃう!!」
「ああ!ちょっとバット持ってくるからそこで待ってろッ!」
当時小学校高学年だった兄貴だが、いつも俺を守ってくれる存在だったので頼もしかった。
俺はうずくまる父の元へ駆け寄りたい衝動を抑え、兄貴が戻ってくるのを待った。
メキメキメキ…
長身の男が父の胸を踏みつける。骨が軋む音がリビングを響き渡り、俺は居ても立ってもいられなくなった。
俺の中で何かがプッツンと音を立てて切れる。
「うわあああああああああ」
拳を握りしめて長身の男へ殴りかかる。父を助けたい一心が俺の体を推進させた。
- 2 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/03(水) 00:42:48 ID:qu9R1b4U0
- ガシィッ
「オイオイ…ガキはおねんねしてる時間だろうがッ!躾がなっちゃねぇなァ〜有嶋家はよォォォ〜〜〜」
メガネ野郎の男に腕を捕まえられ、奇襲は失敗に終わった。
所詮は七歳児の脆弱な体による脆弱な攻撃。およそ勝てるわけがなかった。
心臓は張り裂けそうなほどに高鳴り、頭の中が真っ白になる。
「ゆう…すけ…!?何で出てきたんだ…!!」
父の声でハッとさせられ、乖離しかけていた意識が戻る。
目の前に立ち塞がる二つの邪悪。幼い頭を必死に巡らせてどうしたらいいか考える。
「有嶋ァ〜〜俺はよォ〜〜てめェのガキまでは殺すつもりは無かった…
優しいからなァ〜〜〜…だが、ガキのほうから手ェ出してくるってんなら話は別だ
全員始末するッ!!」
「堀田…俺がガキを掴んどくから殴れ」
父を殴っていた長身のスキンヘッドは堀田という名前らしい。
「ヒヒヒ…俺っちフェアな男だからさ〜ガキだろうがジジィだろうがボッコボコにしちゃいますぜェ〜」
「構わん…いいからさっさとやれ」
堀田は幼い俺の三倍も四倍もありそうな腕を高々とあげてから勢い良く振り降ろす。
グシャリ…
聴いただけで顔を歪めたくなる凄惨な音が重く低く鳴り渡る。
この一発で俺は意識が吹っ飛びかけた。父はこんな重いパンチを何発も食らっていたのか。
「おいッ!もういい…もうやめてくれ!!殴るなら俺をッ!俺を殴れ!!」
「ハッ!馬鹿かお前は…お前殴るよりガキ痛めつけてお前のリアクションを見る方がよっぽど楽しいだろうが
堀田ァ!遠慮すんな〜もっとガキを痛めつけてやれよ〜」
「俺っちが本気出したら楽しめなくなっちゃうかもよ?まっ…やるけどね」
フンッ!という掛け声とともに堀田の拳が俺の顔を目掛けて振り落とされる。
分厚い拳が視界を占拠する。スローモーションに感じられて、ああ、俺はここで死ぬんだと。そう思った。
ドグシャァアアア
血飛沫が巻き上がる。
- 3 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/03(水) 00:43:30 ID:qu9R1b4U0
- 俺は死んだのか…?
違った。血が吹き出ていたのは俺の体からではなく、堀田の頭からだった。
「ぐ…ぁ……」
強烈なバットの一撃を浴びた堀田はバタンと倒れ、地に伏すのだった。
「これは一体…!?」
辺りを見回してからようやく気づく。
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
「よォ…祐介…遅くなって悪かったな」
「兄ちゃんッ!!」
「秀彦…!!お前まで…」
そうだった。失念していた。
いつだって兄貴は俺がピンチな時に駆けつけて助けてくれた唯一無二のヒーローだったんだ。
ウルトラマンや仮面ライダーよりずっとカッコいいリアルのヒーロー。
数十秒前までは絶望に浸っていたのが嘘のように形勢を逆転出来たかのような錯覚…。
そう、それは錯覚でしかなかった。
目を離した隙にメガネ野郎の姿が消えていたのだった。
辺りを見回した次の瞬間、目を疑う光景を目の当たりにする。
「少しでも動いてみろ…この娘の生命はないぞ?」
「た…助けてーッ!いやぁーッ!!」
寝室まで行って妹の智恵を人質とするために連れてきていたのだった。
メガネ野郎は号泣する妹を左腕で押さえつけ、右手に持った鋭利な刃物を白い肌に押し当てていた。
「おい…貴様ァ!!卑怯だぞ!!娘に手を出してみろ…ただじゃおか…」
「誰が動いていいつった!?あァ!?」
ゴリゴリと父の手を踏みつぶす。
「ぐァア……」
- 4 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/03(水) 01:04:18 ID:qu9R1b4U0
- 「そこのガキィ!手に持ったバットをすぐに捨てろッ!さもないと…」
ツツ…とナイフを妹の頬に当てて血を流させる。
兄貴は言われた通りにバットを放り投げた。
「そうそう…おとなしくしてりゃ…いいんだよッ!!」
ドゴォオ
兄貴の腹をエグるかのように靴のつま先で蹴り飛ばしてきた。
腹を蹴られた兄貴を痛みに悶えながらうずくまる。
このまま俺たちはあいつにされるがまま殺されるのだろうか…。
「頼む…この通りだ!子供たちには手を出さないでくれ…!!
私を殺すのは一向に構わん!全財産を渡してもいい…だから…頼む…」
頭を地に擦り付けて懇願する父。無駄だと分かっていても頼み込むしかなかった。
「何度も何度もよォ〜同じことばっかほざいてんじゃねェ!!」
父の頭を目掛けて脚を振り降ろす。
ガツッ
父はメガネ野郎の足首を掴む。
「なにィ!?ぐ…クソッ」
体勢を崩してよろめき、妹を押さえつけていた手が緩む。
「今だァァァーーーーー!!!」
父は渾身の力を振り絞り、タックルをかまして壁に叩きつける。
「クソがッ!!油断しちまった!!」
「うおりゃァァァーーーー!!!」
兄貴のバット大根斬りがメガネ野郎の顔に命中する。砕け散るメガネ。
「こんのクソカスどもがァァァ〜〜〜」
ブチ切れたメガネ野郎が突き刺さるような殺気をこちらへ向けてくる。
メガネ野郎は壁に立てかけてあった短剣を手にとる。それは父が昔海外で骨董商から買ってきたものだった。
勢い良く父の胸を貫通する。畳み掛けるようにその手を止めない。
「や、やめろォー!!」
兄貴がバットを振るも動かなくなった父の体でガードされる。
その直後、短剣を横腹から刺されて兄貴は空気の抜けたビニール人形のようにへなへなと横たわる。
- 5 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/03(水) 01:11:30 ID:qu9R1b4U0
- ザクッ ザクッ ザクッ
既に息をしていないというのに…何度も何度もエグるように短剣を兄貴の腹に指していた。
俺は気が狂いそうだった。目の前で父と兄貴が殺されて…その殺した張本人が射るような視線でこちらを凝視してくる。
幼かった俺でも理解出来た。俺はここで死ぬんだと。
「いやァァァーーー!!パパぁーー!!おひぃひゃぁああああ!!!」
「さっきからギャーギャーうるせェんだよ!!クソガキャー!!」
ドゴォ
メガネ野郎は妹を蹴り飛ばして怒声を浴びせる。
今まで妹は泣いていたはずだったのに俺は今まで気付かなかった。
ふと俺は目が覚めた。何諦めてるんだと。父や兄貴は命がけで家族を守ろうとしたのに…!
うずくまる妹を目に焼き付けて、覚悟を決める。
死んでもいい、妹を命がけで守ろうと。
床に転がっていた兄貴のバットを握り締める。ググッ。
兄貴…俺に力と勇気を分けてくれ…。
「くらえええええええええ」
「そんなよろめいたヘナチョコスイングで俺を倒せるとでも思ったかァ!?」
ガキィィィイイイン
メガネ野郎も短剣で相殺する。
さっきのスキンヘッドほどの肉体派じゃないにしても大人である相手に七歳児の攻撃は通じなかった。
ヒュン!
短剣による攻撃が首筋を掠める。まるで反応し切れない。
「ホラ…どうしたよ?さっきの威勢はどうした?かかってこいよ!」
余裕が出てきたのか、メガネ野郎の口元は釣り上がり、挑発するかのようなステップを踏んでいる。
隙をついてそこを叩くしかない。
「死ねェー!!ガキャァーーー!!」
腕ではなく相手の足元を見る。分かりやすい動きなので次の動作が読めた。
左方向から短剣が胸を狙ってくる。
俺は避けようとしたが左腕を刺されてしまった。
だが、そんなことは何の問題もない…このまま頭をかち割らせて貰う。
「うおりゃああああああああああ」
叫びながらバットを相手の頭目掛けて振り落とす。
- 6 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/03(水) 01:12:45 ID:qu9R1b4U0
- グッシャァァァァアア
メガネ野郎はギリギリで頭を動かして避けるもののバットの軌道上から逃れることが出来なかった。
バットは肩を直撃し、おびただしい血を吹き出しながら床に平伏する。
およそ立つことが困難であろう重大なダメージを与えれた。やったぞ…!
勝った…勝ったぞ…
「……」
何なんだ…この時間が止まったかのような感覚は…
ポタリポタリと自分の足元に血が滴る。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「フハハハハ!俺の勝ちだ…!」
ゾンビかよ…そのしつこさには閉口するしかなかった。
「死ねクソガキッ!!」
ザクリザクリザクリ
胸や腹を執拗に何度も何度も短剣でエグられる。
もはや痛覚は感じられず、意識が朦朧ろしてきた。
頭を目掛けて短剣を向けられた刹那、メガネ野郎が自分の視界から消えた。
左方向から家具にぶつかる物音が聞こえ、右方向からは俺のよく知る声が聞こえた。
「祐介…今すぐ逃げろ…父さんがこいつを食い止めるッ!!」
血まみれの父親の姿。あれだけの傷を負いながらも息を吹き返してメガネ野郎と対峙する。
そして、父さんの横に立つ何者かの姿。無機質な造型をした人。
「クソ…カハッ…有嶋ァ!てめぇ今何しやがったッ!!」
メガネ野郎の右腕は有り得ない方向にグニャリと曲がっていた。
「お前みたいな末端の戦闘員は何も知らないだろうな…
今お前を殴ったのは俺の横に立つ『スタンド』によるものだ。もっとも見えないだろうが。
そして、それを発現するきっかけを与えたのが…お前が壁から取った短剣だ」
「そういうことか…あの『研究所』で調べてたものってのは…
……だったら俺もその短剣を刺して能力に目覚めるまでだッ!!」
「お前がそこに落ちてる短剣を拾うのと…私がこの『スタンド』でお前の顔面にラッシュを叩き込むのは…
どっちが速いだろうかね?」
「ほざけッ!!」
メガネ野郎は身を乗り出して短剣を拾いに行く。
「させるか!!デラララララァ!!」
父はスタンドでラッシュを放つ。
- 7 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/03(水) 01:13:07 ID:qu9R1b4U0
- 「かかったなマヌケがッ!!そのスタンドやらが見えなくても俺の顔を狙ってるってことが分かれば十分!
そして、お前のガキが持ってたバット…バットがあるってことはよォ〜そりゃ当然ボールもあるよなァ〜
ま、このリビングに転がってたのはラッキーだったがな…!!」
メガネ野郎は数歩後退り、左手でボールを握しめて父へ向かって投げつける。
父のスタンドはラッシュをしたままだったので反応が遅れてしまった。
この至近距離では一流のバッターでさえ打つことは不可能だろう。
メギャリ
ボールは父の頭部に直撃する。
「俺はかつて甲子園で準決勝まで行ったサウスポーだったのよ…
てめぇが曲げてくれた腕は右腕…天は俺に味方をしたってわけだッ!!」
「じゃあ…私も…神様に…感謝しなくちゃな…ボールが…軟球じゃなきゃ…死んでたところ…だ…」
「く…クソがァァァァ〜〜〜!!!!」
俺の意識は薄れて行き、もはや立つことも出来ず地に這い蹲る。
薄れて行く意識の中で天井に這い蹲る黒い影を目視する。あれは何だ…。
この戦いの決着を見届けること無く俺は目を閉じる。
- 8 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/03(水) 01:13:42 ID:qu9R1b4U0
- そして、翌日。
俺は病院のベッドで目が覚めた。
昨日のことは一体なんだったんだろう…あれは夢なんだろうか、などと考えていたら横から声をかけられた。
「やっと目が覚めたか?祐介」
兄貴の声だった。聞き慣れたその声に安堵する。
「兄ちゃん?ここは…?父さんと智恵は?」
「智恵は軽症で済んだから親戚の家で預かってもらってる。父さんは…
5時間前に病院で息を引き取った…」
告げられた言葉に愕然とする。
「近所の人が騒ぎを聞きつけて警察と救急車を呼んでくれたらしいんだが…
あの二人の男たちの姿は無かったらしい」
父はあのメガネ野郎に負けてしまったのだろうか…。
あの場にいて何も出来なかった自分に悔恨する。
あの天井に這い蹲っていた黒い影はなんだったのだろう。見間違いか…。
妙なことに俺たちが奴らから受けた傷は消えていて1日で退院した。
父の葬儀に立会った後は父の姉の叔母と話し合い、俺たち三人を引きとって貰うことになった。
警察は捜査をしたが結局あいつらの身元を掴むことは出来なかった。
短剣も家には無かったとのこと。
それから六年間は叔母の元で暮らしたが、兄貴が高校を卒業したのを期に三人でアパートで暮らすことに。
叔母から虐待を受けていたとかそういうことではなく、むしろ実の子供同然に扱ってもらっていたのだが。
叔母の家庭は決して裕福ではなく、高校受験と大学受験を控える子供が二人もいたので居たたまれなくなってしまったのだ。
兄貴は内定していた大手企業に就職し、俺と妹の学費や食費まで工面してくれた。
バイトで稼いだ金を貯めていたらしく、半分は叔母夫婦の家を出る際に置いていき、もう半分を生活費に当てたのだった。
しかし、新入社員だったため給料は少なく、切り詰めた暮らしを余儀なくすることに。
俺はバイトをして家計を助けたい、せめて自分の学費くらいは…と提案するが、却下された。
高校卒業するまでは俺が面倒を見る!とのことだった。兄貴にはケツを向けて寝れないね。
いつかこの恩は万倍にして返したいと心の中で誓う。
そして、三年の歳月が流れて俺は高校生になっていた。
高校でのあだ名は「ユーツー」
名付け親は忘れたが、誰かが有嶋を「ゆうじま」と読んだことで有嶋 祐介と「ユウ」が二回続くことから「ユーツー」と呼ばれることとなった。
ヘンテコなあだ名だが、呼ばれて悪い気はしない。
あだ名がつけられるってことは親しまれてるってことなのだから。
To Be Continued...
- 9 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/03(水) 01:41:23 ID:qu9R1b4U0
- 登場人物
有嶋祐介…本編の主人公
現在高校一年生(16歳)
兄と妹とともにY県Y市に住む
高校でのあだ名は「ユーツー」
有嶋圭史郎…祐介の父親
享年38歳
とある研究機関の研究室室長
スタンド名不明。
有嶋秀彦…祐介の兄
現在21歳
大手企業に勤める
面倒見がいいイケメン
有嶋智恵(ともえ)…祐介の妹
現在中学二年生(14歳)
森山稔子(としこ)…有嶋圭史郎の姉
夫と息子二人の四人暮らし
長髪のメガネの男…名前不明
有嶋圭史郎とは直接繋がりはないが、命令を受けて抹殺しに来た
ある組織の末端の戦闘員。出世欲は高い
元高校球児でサウスポー
長身でスキンヘッドの男…堀田
メガネの男と同じく末端の人間。長身で体格がいい
天井の黒い影…謎
- 10 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/03(水) 01:45:38 ID:qu9R1b4U0
- 推敲をしてないんで至る所がおかしいと思うw
しかもつまらないから序章は読み飛ばしておk
次でスタンド出す予定は未定
いや嘘嘘、出しますとも
確実に出るスタンド一体はスレタイでバレバレユカイですがw
- 11 :名無しのスタンド使い:2010/02/03(水) 01:54:29 ID:tWfrMr.60
- 1ついに本格始動キターーーーーーーーーーー!
ZAINみたいな感じを予想してたから意外だw乙!期待してます!
- 12 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/03(水) 02:10:55 ID:qu9R1b4U0
- topic1.「短剣」
有嶋圭史郎が18年前にエジプト旅行に行った際に骨董商から7000円で買った。
同様に色んな店を回って弓矢や短剣(ナイフ)、剣等を購入。
海外へは度々行っており、色んな古めかしいものを買い漁っていた。
>>11
㌧!
ZAINでああいうのは懲りたので地味なのやっていきますよw
- 13 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/03(水) 02:26:47 ID:qu9R1b4U0
- topic2.「野球用具」
有嶋秀彦の所有物。少年野球チームに所属していた。ポジションはセンターで四番。
野球は小学校までで中学からはバイトをするために部活動をしていない。ただし、同好会には入っていた。
野球用具は後に弟に受け継がれる。
- 14 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/03(水) 07:03:06 ID:???0
- 朝に第一章の半分を投下する予定が…
遅々として進まないとは…はぁ…
家に帰ってから続きを書くとしますか
- 15 :名無しのスタンド使い:2010/02/03(水) 11:08:24 ID:5QGRTiSwO
- なんかちょっとひぐらし思い出したわwwww
乙!1の新連載に期待
- 16 : ◆U4eKfayJzA:2010/02/03(水) 14:15:06 ID:/ZOWhc/k0
- 新作キター!
ZAINとはまた違う感じなのがいいなあ。1さん、乙です!
- 17 : ◆9X/4VfPGr6:2010/02/05(金) 13:14:46 ID:clAFTpfwO
- 乙1さんの連載キテター
頑張ってくれ!
- 18 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/07(日) 09:45:58 ID:???0
- あともうちょいで途中までだけど投下出来そうです。
- 19 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/07(日) 12:21:09 ID:XLohA.YA0
- 第一章「撒き餌」
2010年1月9日土曜 午前9時 Y県S市内
寒空の下、白い息を吐きながら俺と兄貴と妹は歩く。
俺たちが向かっているのは老舗の旅館である。
去年テレビ番組で紹介されてから半年間は予約客が絶えなかったほどだ。
今は当時ほどではないが、親切丁寧な接客に、窓から見える眺めのいい景色、効能たっぷり温泉、そして美味しい料理で固定客をゲットしたと言えるだろう。
妹がずっと前から行こう行こうとせがんでいたが、結局兄貴の都合で正月明けまで先送り。
三連休がある9日〜11日の間に行くことになった。車で1時間半とそれなりの遠出。
兄貴と妹が並んで歩き、俺はその後ろを行く。
妹は兄貴によく懐いており、いつもべったりである。
背が高く、外国人のように目鼻立ちのいい青年がうちの兄貴、有嶋秀彦。
俺と違って頭が良くて大学に行ってないにも関わらず大手企業に就職した自慢の兄貴だ。
頭も顔も良くて、スポーツをさせれば大活躍…天はニ物を与えないなんて嘘だなと俺は悟っている。
そして、この黒髪で髪留めをしておでこを出しているのが妹、有嶋智恵。
元気がウリのJCである。それなりにモテるようで悔しいがかわいいと思う。
部活動に勤しんでいるので色恋沙汰にはあまり興味がないようで、好きな人は?と聞かれると「ヒデ兄」と答えるわが妹。
変な勘違いをされそうだから出来ればやめて欲しいものだが。
「う〜寒いよ〜!」
妹はそう言って兄貴の服の中に手を突っ込む。
「コラ!冷たいじゃねーか!」
本気で冷たかったのかキレる兄貴。
「ヒデ兄の中あったかいなり〜」
怒られても何のその。妹は服の中をまさぐりだす。
「んっ…ああっ…!」
ちょっ兄貴!急に喘ぎだすのはやめてくれ。そして誰得だよ…。
「それそれ〜!!」
妹は手をズボンの中に突っ込もうとする。
「ってやめんか!」
兄貴はたまらず妹の頭をコツンとげんこつするのだった。
いつもこんなやりとりを見せられるこちらの立場を考えてもらいたいものだ。
そうこうしてる間に旅館へ到着。
- 20 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/07(日) 12:23:11 ID:XLohA.YA0
- 「ここが織星荘ね…なかなか雰囲気あるじゃない!」
この旅行を提案した妹はこの由緒ありそうな旅館を目の当たりにしてご満悦な様子。
「織星と書いてオリスタだっけか…」
DQNネームを彷彿させる名前に俺はちょっとげんなりする。
「織姫と彦星みたいで素敵じゃん」
妹のセンスと俺のセンスは全く噛みあわないなとつくづく思う。
オリスタは無いだろオリスタは。
「おい、二人とも早く中へ入ろうぜ…誰かさんのせいで体が冷えちまったよ」
「む〜〜」
頬を膨らませながらタタタと兄貴の元へ駆けつける妹。
ガラガラガラと戸を開けて中へ入る。
年数は経っているが手入れが行き届いていて、居心地の良さそうな旅館だった。
旅館の女将がいらっしゃいませ、と言い頭を下げた。
兄貴は入り口のすぐ側にあった受付へ行って名前と住所を記入して、仲居さんに客室まで案内された。
「松の間」だってさ…捻りがないね。
かといって「このざ間」とか「宝のや間」とかダジャレでつけられても寒いが。
軟らかい畳の匂いがする和室。窓からは綺麗な景色が一望出来る。
ごく普通の旅館といった感じだが、人生で数えるほどしか行ったことがない俺たちにとっては物珍しいとも言える。
妹は嬉々としてはしゃいでいた。
とりあえず畳に腰を落とし、座卓の上にあった電気ポットで茶葉を入れた急須に湯を注ぐ。
三人分の湯のみにお茶をついで渡す。誰かが決めたわけではないがこういう役割は自然と自分がするようになった。
「ぷはぁ〜美味いですなぁ」
妹は一気飲みして、おかわり!と湯のみを俺に差し出した。
確かにうちで飲む安い茶葉とは比べ物にならないほどいい茶葉ってのは俺でも感じられた。
お茶をついで渡すと今度はじっくりと味わうように飲んでいた。
旅館に来たからと言って何をするわけでもないのでテレビをつけてみる。
ブラウン管に映し出されたのはニュース報道。七三分けの男性アナウンサーが読み上げる。
- 21 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/07(日) 12:23:55 ID:XLohA.YA0
- 『きょう午前、Y県U市の路上で10代の女性が死亡しているのが見つかりました。
現場の 状況などから警視庁は殺人事件とみて特別捜査本部を設置して捜査しています。
きょう午前4時50分ごろ、U市楠町の路地裏で女性が死亡しているのを新聞配達員の男性が見つけました。
警視庁捜査一課によりますと女性はS市の丹波中学校に通う神宮慧子(14)で、路地裏にポリ袋に入れられた状態で置かれていたということです。
神宮さんは死後1日程度とみられ、顔から下の損壊が酷く、内臓が破裂しており、全身の骨が複雑骨折していたということです。
3日前から行方不明になっており、家族から捜索願が出されていました。
警視庁は神宮さんが何者かに殺害されたとみて特別捜査本部を設置して捜査しています。』
朝から胸糞が悪い。これが同じ人間の所業なのだろうか?
しかし、最近は凶悪な事件が相次いでるな…。世も末だ。
犯罪が異常性を増しているせいで並の事件ではマスコミもまともに扱わなくなってきたのだ。
最近人気の事件は「全身剥ぎ剥ぎ殺人事件」や「クラスメイト30人大虐殺事件」などである。
前者は全身の皮膚や爪を剥ぐという聞いただけでも痛みが生じそうな事件である。マジで怖い。
後者はT県の田舎の学校で起きたもので、2年3組の男子によってクラスメイト全員が皆殺しにされた事件。
たったの10分間で武器も使わず行われた犯行なので、一体どうやって短時間で全員を殺したのかという謎が議論を盛り上げている。
そんな議論は不謹慎極まりないのでやめてくれ。
ふと兄貴の方へ目を向けると真剣な面持ちでテレビを見つめていた。
「兄貴どうかした?」
「……」
返事が無い。
「兄貴?」
「えっ…あ、何だ?」
「真剣に見てたから…何か思うことでもあるの?」
「あ、いや…別に…何でも…ないよ」
妙に歯切れの悪い返事だ。こういう時は決まって何か隠し事をしている。
だが、詮索するのも無粋なので話を切り上げることにした。
お茶を飲みつくした妹はバタバタと脚を畳に叩きつけて騒ぎ始めた。
「お腹空いたよーご飯食べに行こーよー」
子供かお前は。
しかし、俺も腹が減ってきた頃なので賛同しておく。
「俺も腹減ったわ。飯食いに行こうぜ兄貴」
「そういえば何も食わずに来たっけ。じゃあ一階の食堂行くか」
- 22 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/07(日) 12:24:35 ID:XLohA.YA0
- 食堂到着。それなりに広い場所だ。
まばらだが5,6人の客が座って食べている。
「よっこらせがーる」
どすんと音を立てて深々と椅子に腰をおろす俺。
「さて何食うよお前ら」
メニューが書かれた紙を差し出して兄貴が問いかける。そりゃもちろん…
「ラーメン!」
「あたしはカニがいいな!」
「お前らは郷土料理とかを食べる気は無いのか…じゃあ俺は天丼っと」
それぞれがどこでも食べれそうな物を頼んで料理が来るのを待つ。
ふと隣の席に座っていた男が話しかけてきた。小太りのおっさんだ。
「ねぇ〜!お嬢ちゃんかわいいねェ〜〜〜どっから来たのォ?」
「えっ?あたし?」
「他に誰がいるっての〜?君タチは一体どーゆう関係なの?」
「えっと…家族…ですけど…」
「え〜そうなんだァ!?お父さんとお母さんはどうしたのか?」
「……」
「あっめんごめんご!おっちゃん気ィ利かなくてごめんねごめんねー!」
「……」
「ちょっとおっちゃんと2人で話したいなーなんてッ!ダメかな?ダメかな?」
「いや…その…ちょっと…」
「君みたいな中学生くらいの女の子が一番好みなんだわ〜」
男は執拗に妹に話しかけ続ける。やれやれ、今日は血を見るかな。
- 23 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/07(日) 12:25:28 ID:XLohA.YA0
- 「何でも奢ってあげるからッ!ねッ?ねッ?」
「……」
「こんなに頼んでるのに無視するなんて酷いよね!?」
小汚い手はすっと伸びて妹の腕を掴み自分の方へとひっぱろうとする。
「いやッ!やめてくださいッ!」
「後でお金あげるからッ!ちょっと!ちょっとでいいから触ら…」
ドゴォォオッ
男の体は派手に吹っ飛んで向かいの椅子にぶつかる。
俺らは誰も席を立ってないし、指一つ動かしていない。
「あばばばばば……一体何が起きやがったんでェ……」
「こっちへ『移動』しろ」
「うおああああああああああ」
兄貴がそう言うと男の体はこちらのほうへ引っ張られて手前で急停止する。
「はぁ…はぁ…何なんだよこりゃァ!!ちくしょォ!!」
「そりゃこっちのセリフな。警察に突き出されるか今から俺に殴られるか…どっちか選びなッ!」
「うひ…!?な…なひ…を…」
「まあ…お前の返事なんかはなっから聞いちゃいねーけどな。どっちにせよ…殴るッ!!」
兄貴の体から人の形をした塊が飛び出し、男の前に立ちはだかる。
そいつのことを俺たちは『スタンド』と呼んでいる。
何故、そう呼ばれているのかは分からないが父親があの事件の日にこの超能力のことをそう呼んでたから俺らもそう呼ぶことにしている。
「傍に立つ (Stand by me)」から由来してるんじゃないかなって兄貴は推測しているが本当のところは分からない。
この人知を超えた超能力は人の形をなしているが人ではなく、普通の人間では見ることは出来無い。
だからこのおっさんも見えてはいないだろう。このスタンドを見ることが出来るのは同じくスタンドを扱うものだけ。
俺と妹はあの事件の日以来このスタンドが発現してしまったので兄貴のスタンドを見ることが出来る。
このスタンドの名前は『ステイアウェイ』
「触れたものに平面状の『矢印』を張り付ける」能力だ。
- 24 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/07(日) 12:26:49 ID:XLohA.YA0
- 「ひィィィ…逃げろォォォーーーー!!!」
兄貴ばっかり活躍してもらうと主人公の俺涙目!になってしまうので俺も出しちゃいますよ。ええ。
「どうぞご自由に逃げてくれよ」
逃げれるもんならな。俺のスタンド『U2』が男の動きを止める。
「ぬぁ…ぬぁんだァァァこるェェェーーー!!?体が…重いィィィーーーー!!!」
そう、『U2』の能力は「触れた物質の重さを変えられる」というもの。
限りなく0にすることからロードローター並の重さ(約15t相当)にすることが出来るのだ。
ま、相手が生物なら生命維持に支障をきたさないけどね。
「さすが俺の弟だ」
褒められると照れるやい。
『ステイアウェイ』は自身の腕に矢印を貼り付ける。
矢印を貼り付けるとどうなるかって?それは見てからのお楽しみ。
「覚悟はいいか?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
「ヒィィィィィ!!」
「彼方まで吹っ飛びなッ!アロークロスッ!!」
『ステイアウェイ』のパンチが男の腹を捉える。
するとォー…
「ぶるぁああああああああああああああ」
派手に吹っ飛ぶ。
食堂を飛び出し、窓を突き破って外へ飛んで行った。
兄貴の『ステイアウェイ』の能力とは「運動エネルギーを生み出す『矢印』」である。
腕に貼りつければパンチの速度を上げることが出来るのだ。その結果がアレ。
「ゲス野郎には終点なんて必要ないね」
兄貴一仕事ご苦労様です。
「たーまやーっ!やっぱヒデ兄はあたしのことが大事だから守ってくれるんだねー」
妹は嬉々としながら兄貴の腕に抱きつく。
ええい、俺の兄貴を独り占めするんじゃない。いや、俺は抱きつかないけども。
- 25 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/07(日) 12:27:32 ID:XLohA.YA0
- 「あーあ…やっちまった…加減が出来無いからな…窓割っちまった…修理代払ってくるわ」
全く律儀な。あの変態オヤジに払わせとけばいいんですよ。
変態オヤジと言えば…窓の外へ目を向ける。
「…あれ?あのおっさんいなくね?」
見間違いか?飛んで行ったと言ってもこの飛距離なら庭らへんにいるはずだが…。
窓の外をうかがっても男の姿は見当たらなかった。
あれだけ飛ばされてただで住むはずが無い…一体どこへ…。
「まあいいじゃん?あんな奴の顔なんか二度と見たくないし」
まあそれもそうだな。兄貴が戻って来たと同時にナイスタイミングで料理がやってきた。
さあ食おう。それ食おう。ラーメンから立ち昇る湯気が俺の食欲をそそる。
スルスルと麺を吸い上げて口の中に含む。ふむ、中々に美味だ。
麺は食堂を通り過ぎ、胃へ落とし込まれる。喉越しもいいね。
ラーメン屋でもないのにこれほど上等のラーメンを作れるとはやりおるのう。
気づいた頃には目の前の器に入っていた物は消失し、代わりに俺のスカスカだった胃袋が満たされた。
だが、こんなもんじゃ足りないね。兄貴殿、おかわりを要求します!
「お前一体何杯食えば気が済むんだ…?」
兄貴が心配そうな顔でこちらを伺う。心配なのは俺の胃袋か、財布か。どっちもか。
「ああ、ごめん…つい12杯も食べてしまったよ…」
米はそんなに食べれないけど麺類だといくらでも入っちゃうんだな、これが。
「お前の食いっぷりを見せられたせいでこっちは食欲失せちまったよ」
両手を広げてわざとらしく、肩を落とす兄貴。
「マジでごめんなさい。今から戻しますんでそれで勘弁して下さい!」
俺は器を持って吐き出す演技をする。
「バカたれ!」
ごつんとゲンコツを食らわされる。
ちょっと寒い気がするやり取りだがこれを10数年間やってきた俺たちにとってはこれが日常。
- 26 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/07(日) 12:31:05 ID:XLohA.YA0
- 「……」
むしゃむしゃと黙々と我関せずにカニを貪る妹。
カニってのは人から言葉を奪う呪いをかけやがるのですね。
「美味そうだな…どれ、ちょっとそのカニを俺に…」
差し伸ばした俺の手はバシン!と弾かれる。地味に痛い。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
無言の圧力。カニに取り憑かれた妹は邪魔をするなと呼び掛ける。空気とかで。
わかりましたよ、食いませんよ。それはアナタの物です。
「食った食ったー!さ、部屋に戻りましょ!」
「オイシソウデシタネ…カニ」
「なによ!?そんなに食べたかったら頼めばよかったじゃない」
「……」
正論なので何も言い返すことが無かった。
呆然としたままの他の宿泊客を置き去りにして俺たちは二階の部屋へ戻ることにした。
「よっこらしょたろー」
別に腰が痛いワケでも無いが口癖になっているので座るときはついつい口に出してしまう。
「よっこら○○」の○○はその場の気分で決めている。適当。
「しょたろーって何?」
妹がすかさずツッコんできた。いつもは無視する癖に。
「え?えーと…前世か何かで出会った尊敬する画家…か何かじゃね?」
「ふーん」
口から出任せに言ってしまったが、あながち嘘と言い切れないような気もしてきた。
「あ、そうだ。ちょっとジャンプ買ってくるね」
妹はこの近場に早売りの穴場があることを知っているらしい。
腐女子などではなく生粋のジャンプ読者。ちなみに俺も兄貴も子供の頃から読み続けている。
元々はオヤジがジャンプ読んでてそれに影響されて兄貴が読むようになったのだ。
ドラゴンボールやスラムダンクやピンクダークの話題で一日中話し続けることも可能さ。
- 27 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/07(日) 12:31:30 ID:XLohA.YA0
- 「いってら。車には気をつけろよ」
「子供扱いしないでよ…ってか車に三回もはねられた祐介に言われたくないんだからね?」
「ごもっともでございます…」
ダンプカーにはねられても骨折した程度で生還してる悪運の強い俺。
兄貴が言うには俺は無意識のうちにスタンドを出して防いでいるそうだ。
「車には気を付けるんだぞ」
今度は兄貴。ってかそれさっき俺が言ったから。
「はーい」
笑顔で返事を返す。何か悔しい。そしてそれを狙って言う兄貴は底意地が悪い。
さっきラーメンを12杯も平らげた俺への仕打ちなのか。
兄貴の方へ向けるとまたあの顔をしていた。ここではない、どこかを見つめるかのような目。
何か気になることでもあるのだろうか…嫌な予感しかしないので聞かないけど。
すくっと立ち上がり、「トイレ行ってくるわ」と言って部屋から出て行った。
時計へ目をやる。針は11時59分を指していた。
テレビをつけると品の悪い顔をした島田某とダンディーな石坂某が司会を務める「開運!なんたら鑑定組」をやっていた。
他にめぼしい番組をやっていないので仕方なく見ることにする。
島田某のことは顔を見るのも嫌だがこの番組自体は別に嫌いでない。好きでもないが。
二十分足らずテレビをぼーっと眺めてると「ふぅ…」と声を漏らしながら兄貴が帰ってきた。
「えらい長かったじゃん」
「ん…ああ、ちょっと今回の敵は手強かったんだ」
「それはそれは…さぞかし大きい敵だったんでしょうね」
「大きいだけじゃない、めちゃくちゃ硬かったんだぜ…って何言わせてんの!」
えらいノリノリじゃないか。さっき心配したけど杞憂だったかな?
それから1時間の間将棋やオセロで対戦をした。
結果は4戦4敗のぼろ負けである。それなりにボードゲームは強い自負があるが兄貴は全く歯が立たない。
素養は羽生氏並かそれ以上かもしれない。だって俺とたまにやる時くらいしかしないんだもん。
「そーいやあいつ帰ってくんの遅くない?」
この旅館の近くにジャンプを早売りしてる店があるのかは知らないが1時半近く経って帰ってこないのはおかしいだろう。
遠い場所なら車で連れてって貰うよう頼むはずなのだから。
「そうだな…ちょっと電話かけてみるか」
とぅおるるるるるるるるるるるるるるるるるるる…
「出ないな…」
「兄貴!俺ちょっと探してくるよ」
俺と兄貴は二階の窓から地面へ飛び降りる。スタンドを出して着地したので何とも無い。
「祐介、お前は南側を捜索してくれ。俺は北側を捜索してみる。
何かあれば俺の携帯にかけろ!じゃあ1時間後に旅館の玄関口で落ち合おう」
クソッ!嫌な胸騒ぎがしやがる。寝付けなかった9年前のあの日の夜を思い出してしまう。
頼むから無事でいてくれよ妹!
To Be Continued...
- 28 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/07(日) 12:43:44 ID:XLohA.YA0
- 登場スタンド
・弟 有嶋祐介
No.44
【スタンド名】U2
【能力】触れた物質の重さを変えられる
* 相手が生命の場合生命維持に支障はきたさない(重力などによる崩壊は別)
* 0に近づけることはできるが0以下にはできない
* 自分にも能力は使える
* 重さが変えられる物体はロードローラーくらい
破壊力-B スピード-A 射程距離-2〜3m(能力の効力は200Mくらい)
持続力-? 精密動作性-B 成長性-C
考案者:ID:Azdg7Rlm0
絵:ID:FhUUc7chO
・兄 有嶋秀彦
No.938
【スタンド名】ステイアウェイ
【能力】触れたものに平面状の『矢印』を張り付ける
・『矢印』は運動エネルギーを生み出す。
・『矢印』によって生み出される運動エネルギーの強さは『矢印』の
大きさによって設定される。
・『矢印』は対象に触れていた時間に比例して大きくなる
・『矢印』は腕に張り付けることでパンチの速度を上げる、
地面に貼り付けその上に乗ることでその方向に高速での移動が可能
・『矢印』は対象の面積を超える大きさのものは貼り付けることはできない
破壊力-B スピード-B 射程距離-C
持続力-A 精密動作性-A 成長性-C
考案者:ID:jPY6mNvA0
絵:ID:OE8h+DM9O
ステイアウェイを選んだ理由?本体の絵がこの作品の兄貴のイメージに合ったからです
あと純粋にカッコいい。服のデザインとか好き
U2は何となくです。使いようによっては強いなと
- 29 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/07(日) 13:01:02 ID:???0
- 読み直してみたら結構誤字脱字多いけど…そこは脳内で変換お願いします
たったこれだけの文章量で時間かかりすぎですね…SS作家様達は偉大だわホント
ネタはあってもそれを書き起こすだけの文章力と気力が無いw頑張ろう…
- 30 :名無しのスタンド使い:2010/02/07(日) 13:16:59 ID:MKVIJfcQO
- 乙!
妹の行方は…
そしてスタンドはなんなのか気になるなwwwwww
- 31 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/07(日) 13:42:48 ID:???0
- >>30
レスありがとう!
まだ妹のスタンドは明かせない!話にちょっと関わってくるからね
当てれる人がいれば書いてもらってもかまいませんけどw
そして本スレでキテルーしてくれた人ありがとうwやっぱ嬉しいわ
- 32 :名無しのスタンド使い:2010/02/07(日) 13:45:11 ID:E4fGgz5kC
- 面白い。妹は何処へ…
続きも期待してます!
- 33 : ◆WQ57cCksF6:2010/02/07(日) 13:48:11 ID:???0
- 乙1先生乙!
秀彦兄貴がかっこよすぎて死にたい・・・
- 34 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/07(日) 14:01:56 ID:???0
- >>32
面白いの一言が俺をやる気にさせます!
こんな地の文が汚くて読みづらいのに読んでくれてありがとー
>>33
WQ先生じゃないっすか!
秀彦兄貴は…今後の展開がおそらく予想を裏切るものだから…
織星荘編が完結したら兄貴の印象が悪くなるかもしれない…これ以上は言えないけどw
今のところかっこよく見えてるなら嬉しいです
- 35 : ◆9X/4VfPGr6:2010/02/07(日) 14:12:06 ID:QEdtW0ek0
- 来た!乙1先生の更新来た!これで勝つる!
- 36 :名無しのスタンド使い:2010/02/07(日) 19:55:35 ID:EDD86LcI0
- 乙1先生ktkr!
兄貴かっこよすぎる……と思ったら予想を裏切るだと……!?
これはwktkするしかないッ
- 37 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/07(日) 23:25:50 ID:XLohA.YA0
- >>35-36
ドーモ!
それじゃ今から投下します。二章の途中までであれですけど
- 38 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/07(日) 23:27:05 ID:XLohA.YA0
- 第二章「FFF」
「ちょっとすいませェーん!」
旅館の敷地を出て右の角を曲がったところの畑で鍬を持っていたおじいさんに声を書ける。
「はぁ?なんか用かのォ〜?」
「人を探してまして…」
携帯の画面を差し出しておじいさんに見せる。妹智恵の写真である。
「うちの妹なんですけど…見ませんでしたか?」
「う〜〜〜ん…さぁのォ…畑仕事に集中しとったから通っとたかもしれんが…どうかのォ…」
「そうですか。ありがとうございました」
「役に立てんですまんの〜」
「いえ、では…」
ジャンプを売ってるといえば本屋とか売店とか?コンビニはないよな…
祐介はとりあえず手当たり次第店を当たって聞込みをすることにした。
―――
――
―
もうかれこれ聞込みを初めて20分が経とうとしていた。有力な手がかりはゼロ。
こんなところでモタモタしてるうちに妹は…と悪い方へ考えてしまう。
「クソッ…!」
ドカッと地面を靴のつま先で蹴り上げる。自分の無力さへの怒りだ。
とぅおるるるるるるるるる
「おっと電話だ…着信は…兄貴からか」
「もしもし!祐介ッ!何か情報はあったか!?」
「いや…それが…さっぱりで…」
「そうか…俺の方も全然情報が得れなくて参ってたところだ…
そこで俺は仲間を呼んでローラー作戦を試みる…!俺ら2人で探してるんじゃ埒があかないからな」
「おお!!さすが兄貴!!ところで仲間っつーのは…?」
兄貴の交流は広く深い。期待していいだろう。
「三号室の『五十嵐君』や四号室の『吾郎さん』に声をかけてみるよ
あとツレを1人…」
ああ、あの人か…。祐介は彼を苦手としているので口を引きずりながら空笑いをしておく。
「じゃあ切るぞ。何か見つけたらすぐに電話してくれ」
プッと電話を切る。
ふと、旅館で会ったあの変態オヤジのことを思い出す。
まさかあの野郎…一応探してみる価値はあるか。
- 39 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/07(日) 23:27:44 ID:XLohA.YA0
- ―――
――
―
祐介は織星荘へ戻り、敷地内の庭を捜索することに。
あのおっさんが吹っ飛ばされたのは確か…このへんなんだよな…。
「お…うおお…」
ん?何だ今の声は…幻聴…ではないよな?
耳を済ませて聞いてみよう。
「だ…誰か…助けてくれェェェ〜〜〜…」
どこかで聞き覚えのある汚い声。
音のするほうへ寄ってみるととんでもない物を発見する。
「あちゃー…」
「おおお…お前はッ!あの時のッ!!も、もう許してくれよォォオ〜!!」
なんとずっぽりと穴へはまっていたのだ。あの衝撃で開いた穴なのか、元々あった穴なのかは分からないが。
盲点というか…確かに部屋から見てたら気づかないわな…上から見ないと。
「俺はアンタがもしかしたらうちの妹を攫ったんじゃないかって…思ってたんだが…そんなことなかったぜ」
「赦してェー!お助け下さいィィィー!!」
はぁ…無性にむかっ腹が立った。本来は自分への怒りだが、ちょうどよく当たれる物があるじゃないか。
祐介は『U2』を出して拳を男へ向ける。
「ボーノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノォォォ―――ジ・エッジ!!!」
「あぶぁぅうおあああああああああ」
ボゴッズンッズシシッズシンッ
『U2』のラッシュを全身に浴びた男はズシンズシンと音を立てて穴により深く沈むよう落ちて行く。
男の体を約15t相当に重くしたのだから能力を解除するまでは穴から出ることはおろか動くことも出来無いだろう。
「今日一日そこでじっとしてな…妹に手を出そうとした罰だ」
鬱屈としていた気分はこれで少しは晴れたような気がするぜ。
しかし、こんな下らないことで時間を食ってしまったのは痛い。
さっさと妹を探しに行かなくては。まだ行ってない場所…はっきり言って行った場所の方が少ないくらいだ。
兄貴が呼びかけた協力者を期待するしかないのか…。
とりあえず何もしないというわけにもいかないので街のほうへ行くことにした。
見渡す限り、人、人、人。何故こいつらは人混みの中にいることが出来るのだろう?
理解の範疇を超えてるね。全く持ってクレイジーだ。
この雑踏の中を掻き分けて探すのはさすがに無理がある。
それに、こんな目立つところにノコノコ出てきてるはずがない。
木は森の中に隠せと言うが白昼堂々と犯罪者が街中を通ったりはしないよな。
悪人どもは明るい所よりは暗い所を好む性質があると勝手に思い込んでいる。
「暗い場所…屋内に入られたら探しようもないじゃないか…」
- 40 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/07(日) 23:30:44 ID:XLohA.YA0
- 時計に目をやると3時を回っていた。妹が旅館を出てから3時間以上が経過していて焦らずにいられなかった。
今気づいたんだが車で移動されてたらどうしようもない。本当に見つけることが出来るのだろうか。
次第に焦燥感に苛まれ出した祐介は街中で叫び出してしまう。
「ちっくしょーーー!!!いるなら出て来いってんだーッ!!!」
ざわ… ざわ…
「…何なんだありゃ。キチガイか?」
「翔ちゃん、見ちゃいけません!こっち行きましょ…」
「うわぁ…誰か早く黄色い救急車呼べよ(笑)」
思いっきり白い目で見られてます…。何やってんだ俺は…頭冷やさないとな。
とぅおるるるるるるるるる
兄貴からの着信だ。
「もしもし!」
「祐介ッ!『五十嵐君』が妹と男2人を目撃したそうだッ!!」
「な、なんだって!?」
「どうやらそこは俺よりお前の方が位置的に近いらしい!
場所は―――」
兄貴に言われた場所を携帯のマップを見て確認する。
どうやらそこは此処から3km先にある倉庫らしい。
「五十嵐さんの『アクロース・ザ・メトロポリス』は本当に凄いぜッ!
同じアパートに住めて心の底から嬉しく思うねッ!」
「俺も今すぐそっちへ駆け付けるッ!急げ祐介ッ!!!」
「あぁ!」
祐介は即座に電話を切って、雑踏の中を駆け抜ける。
200m22秒台の脚は伊達ではなくあっという間に目的地にまで辿り着いた。
倉庫の数百メートル前に祐介と同年代と思われる少年が立っていた。
近づけば一目瞭然、よーく知っている人物だ。ホッと安堵して肩を撫で下ろす。
「五十嵐さん!」
祐介は少年に声をかける。
「ユーちゃん!待ったよッ!!」
祐介のことをユーちゃんと呼ぶ少年は祐介達が住むアパートの住人である。
通う学校は違うが一歳年上でそれなりに親しくしてもらっている。
「いきなりお前んとこの兄貴に呼び出しくらっちゃってさァ〜〜俺だって用事の一つや二つあるってのに」
「いや〜マジですんません…今度菓子折りでも持って行き…ってんなこと話してる場合じゃねーッスよ!!」
「そ、そうだな…」
臆してる五十嵐さんを無理やり引っ張って倉庫の付近にまで近づく。
- 41 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/07(日) 23:32:48 ID:XLohA.YA0
- 「鍵がかかってますね…ま、俺の『U2』ならこの程度十分破壊出来るけど」
「ボノォ!」
掛け声とともにパンチを繰り出して扉を破壊する。
「な…誰もいな…ッ!?」
「バカめ!」
カランッ!音が聞こえた瞬間、五十嵐さんが倒れこみ、俺は左手に激痛が走る。
左手がまともに動かない。
十中八九スタンドによる攻撃なのだろうが何をされたのか分からなかった。
背後を振り返ると無精髭を生やした男と無駄にイケメンな男の姿が。
「クックック…どうやら庄田の攻撃を間一髪のところでスタンドの手でガードしたようだな?
おそらく無意識による自己防衛…たいしたもんだよ全く」
「ま、俺の敵じゃないだろ濱元」
無精髭の方が濱元、イケメンのほうが庄田という名前のようだ。
「てめェらには色々とよォ〜聞きたいことがある…」
「あん?」
眉間に皺を寄せて恐ろしい剣幕で濱元が睨みつける。
「いい女だよなァ〜!まだ名前も教えちゃくれねぇがよォォォ〜〜〜後でたっぷり調教してやるよォ…イヒヒ」
庄田は醜く顔を歪めて気持ち悪い笑みを浮かべながら話す。
ここまでゲスだと返ってやりやすい。
「なるほどな…とりあえず妹は無事ってこが分かっただけでも十分だッ!『U2』!」
「ほう…そいつがお前のスタンドか…」
濱元はジョリジョリと髭をなぞりながら余裕面でこちらを伺う。
「ボラボラボラボラァーーーッ!!」
『U2』は祐介の掛け声と同時に至近距離で濱元へ向けてラッシュを放つ。
「ちょいと社会勉強をしてやろう!『ジプシー・ロード』!!」
矢印柄のボロ布を纏ったようなボディと、体から離れた6本の腕のスタンドが濱元の体から飛び出す。
ガシィッ!『ジプシー・ロード』は4本の腕で『U2』の攻撃を腕を掴んで止める。
「何ィィィーーー!?」
残り2本の腕の手のひらの穴から『矢印』が放たれる。
「クックック…お前の体に『矢印』を付けて庄田のほうへベクトルを変えたッ!!」
「くっ…体が勝手に…それにこの能力ッ!『矢印』だとッ!?」
「ヘイッ!カモン!!」
俺はどうやら濱元のスタンドによって庄田の方向へ体が飛ぶようにされてしまったようだ。
ヒューゥゥゥゥゥ!!
俺の体は吸い寄せられるかのように庄田の方へ加速して行く。
庄田はプラスドライバーを両手に付けたスタンドを出して待ち構えている。
ドグシャァアアアアアアア
- 42 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/07(日) 23:33:05 ID:XLohA.YA0
- 途中で恐縮ですけど…続きはまた今度で
- 43 :名無しのスタンド使い:2010/02/08(月) 08:03:29 ID:I5WZBk8U0
- 朝起きたら何も言っていないのに投下されている
あなたならどうする?最高だった…………
- 44 :名無しのスタンド使い:2010/02/08(月) 08:03:45 ID:I5WZBk8U0
- 朝起きたら何も言っていないのに投下されている
あなたならどうする?最高だった…………
- 45 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/08(月) 15:14:47 ID:???0
- 言い訳をさせてもらうと目を擦りながら書いたから至る所がおかしいw
- 46 :名無しのスタンド使い:2010/02/08(月) 16:58:29 ID:???O
- 「ボノォ」ワロタwwww
- 47 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/08(月) 17:03:55 ID:???0
- ボノを間違えてボラと書いてるとこがあって泣いたw
ナランチャじゃねーか…
- 48 : ◆U4eKfayJzA:2010/02/08(月) 22:55:44 ID:7ruiXNMQ0
- スタゲで退場したと思ったら、今度は乙1先生の方で出てきたか。
そうか、これがアクロース・ザ・メトロポリスは滅びぬ、何度でもよみがえるさ、ということかwww
乙です!
- 49 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/08(月) 23:08:39 ID:oMKWjY820
- 庄田の体が横に吹っ飛び、電柱に直撃する。
「ワリィ、遅れちまったな」
「兄貴ッ!」
「『矢印』ってのは俺の専売特許だろうが…このドグサレ髭野郎ッ!!」
確かに、被ってるもんな。怒るのも無理ない。
「てめぇ…よくも庄田をッ!!」
濱元は体を乗り出して兄貴の元へ向かう。
「っていうか俺の体を何とかしてッ!
濱元とかいう奴に付けられた矢印のせいで体が止まんねーッ!!」
「やれやれ…ほらよ」
秀彦兄貴は『ステイアウェイ』で祐介の上着ごと矢印を破り捨てた。
「助かった…でも、俺の一張羅がァ……」
俺の着る服で一番高価なジャケットが…。
これもあの髭のせいだ。全てあいつが悪い。この服の弁償代はあいつに取って貰おう。
「兄貴にみっともないとこばっかり見せるわけにはいかないね…」
祐介は鼓舞して兄貴の元へ駆け寄る。
- 50 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/08(月) 23:10:19 ID:oMKWjY820
- 「クソったれが…オイッ!庄田ッ!いつまで寝てる!!」
気絶していた庄田を揺さぶって無理やり起こす。
「う…濱…元…?」
「ぼけっとしてんじゃねーぞ!オメーは今からあのガキと殺り合うんだよ
俺はあのパクリ野郎と決着を付ける…」
「ああ…分かった…」
「沢村ァー!!この声が聞こえたらすぐに女を連れて行け!!例の場所で落ち合うぞ!!」
濱元は大声で沢村という名の者へ声を掛ける。この倉庫の周辺は工場地帯なので他の人間に声は聞かれないだろう。
倉庫の裏側から人影が出てくる。止めてあった車に妹を乗り込めて逃げるつもりだ。
俺たちが来たときには倉庫の裏口から出て待機していたのだろうか。
「兄貴ィ!」
「分かってる…既に祐介の足元に『矢印』を張り付けたッ!」
ギュイン!と祐介は足元に張り付けられた『矢印』の矢尻の方向に高速で移動する。
加速された祐介は沢村の車へ向かう。
「行かせはしないよ…『U2』!!」
『U2』で車を触れる。
ギャルギャルギャルギャルギャル…
「車が動かねぇ!!一体何をしやがったクソガキッ!!」
運転席に乗った沢村は何度も何度もアクセルを踏むが一向に車は前進しない。
「車を重くしたからなァ…車体が15tもあったら動くはずがない…それどころか―」
パンッとタイヤがはじけ飛ぶ。
「タイヤがその重さに耐えられるはずがない」
ガチャリと車のドアを開けて沢村が出てくる。
矢印の刺青がある男だ。
「クソガキ…俺ァキレちまったよ…覚悟はいいか?」
そういうと沢村は体からズズズ…とスタンドを出す。
おいおい…マジかよ…嘘だろ…。
- 51 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/08(月) 23:10:56 ID:oMKWjY820
- そのスタンドは『矢印』の形をした手を持っていた。
「あらら…また矢印ね…何の巡り合わせだか…」
チラッと倉庫の前に居る兄貴の方へ目を向けると呆れ顔で頭に手を当てていた。
「『サイン・ポスト』!!」
『矢印』の腕が地を這うようにこちらへ向かってくる。
「何となくだけど…能力の検討はつくね…」
祐介はボロボロのジャケットを脱ぎ捨てて矢印に投げつける。
ジャケットは猛スピードで遠方へ飛んで行き見えなくなった。
なるほど、やっぱりそういう能力なんだな。
「『矢印』は8本ある…お前は何本まで対応出来るかね?」
ジャケットを飛ばした腕は『サイン・ポスト』の元まで戻っていく。
車の陰からヌッと男が2人出てくる。やっとお出ましですか。
「祐介はヒデのほうを手伝ってやれ…こいつは俺らで十分だ」
「同じ屋根の下で暮らす人間が困ってんだ…見過ごすわけにはいかないね」
兄貴のツレの真嶋京輔さんと俺らが住むアパート四号室の必腑吾郎さんが登場。これで勝つる。
ヘッドフォンを着けてガムを膨らませてるのが京輔さんで七三分けの変な柄のズボンを穿いてるのが吾郎さんだ。
「ありがとうございます!コテンパンにやっちゃってください!」
この人達ほど頼もしい存在はいない。もし敵に回したら俺は速攻逃げるね。
「任せろ!こんなカス一瞬でケチらしてやるわッ!
お前はさっさとあっち行けッ!『デッド・エンド』」
京輔はハエトリグサの中に頭のある奇妙な造型をしたスタンドを出す。
「ま…あの倉庫の破壊された扉でいいか…」
そういうと祐介の体は瞬時に倉庫の前へ移動する。倉庫の扉と入れ替わって。
「ホント便利な能力だよな…」
- 52 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/08(月) 23:12:13 ID:oMKWjY820
- >>51訂正
×ヘッドフォンを着けてガムを膨らませてるのが京輔さんで七三分けの変な柄のズボンを穿いてるのが吾郎さんだ。
○ヘッドフォンを着けてガムを膨らませてるのが京輔さんで七三分けの髪型で妙な柄のズボンを穿いてるのが吾郎さんだ。
- 53 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/08(月) 23:12:58 ID:oMKWjY820
- 京輔さんはちょっと口は悪いけどお節介焼きで基本的に良い人。
兄貴と出会ってから10年以上の付き合いがあるらしいが持ちつ持たれつの関係である。
兄貴が困ってたら京輔さんは助けるし、京輔さんが困ってたら兄貴は助ける。
「な、頼もしい増援だろ?俺はこの無精髭と戦うからお前はドライバー野郎と戦ってくれ」
「あいよ」
兄貴は苦戦を強いられながらも濱元と庄田の2人を相手に戦っていた模様。
「俺の能力と被ってる輩が2人もいるなんてな…
直々にどっちも始末したいとこだが…ま、あっちはあの2人に任せるとしよう」
能力が似てるのがそこまで嫌なのか…。
「そりゃこっちのセリフな!このパクリ矢印が!!」
何か次元の低い争いになってきた気がする…。
「俺の相手がこんなガキとはねェ…舐められたもんよ俺も」
庄田は祐介のほうへ向かい合い、スタンドを出す。
「ハハ、俺もさ…お前みたいなショボイ奴とじゃつまんねーなって思ってたトコ
開始数秒でKOしちまったら観客が満足しねーだろ?」
低次元なら低次元らしく煽り合いでもしましょうか。
「言うねェ…そんじゃま…お前も倉庫の前で眠ってるガキのようになってもらおうッ!」
倉庫の前で眠ってるガキとは五十嵐さんのことだろう。そういえば起きてこないけど大丈夫かな。
っと、他人の心配してる場合じゃないね。目の前の敵を全力で排除しなくては。
「『クレイジー・ガジェット』!!」
プラスドライバーが両手にあるスタンドが祐介を攻撃する。
「なるほどね…このドライバーで俺と五十嵐さんを攻撃したのか」
シュンっと攻撃を避ける。驚いたね。だって―――
「何だ…このスっとろい動きは…笑っちまうわ」
そう…致命的に動きが遅い。遅すぎる。
五十嵐さんが一撃でやられたのを見る限りだと破壊力は申し分ないんだろう。俺の左手もこのザマだ。
感覚が戻ってきやしないが…まあこの調子なら右手だけで十分だと思える。
- 54 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/08(月) 23:13:26 ID:oMKWjY820
- 「舐めた口をほざいてんじゃぁねェェェーーーーーーーーー!!!」
ブンブンと腕を振り回す『クレイジー・ガジェット』。
祐介は脚のフットワークだけで巧みに避ける。
野球部で鍛えた肉体がこんなところで生かされることになろうとは。
これはスタンド使いとしては屈辱だろう。
「テメェー!!殺すぞゴルァァァァアーーー!!!」
全身の血が頭に昇ったような庄田の、『クレイジー・ガジェット』の動きは完全に読めた。
「取るに足らない雑魚だったようだな…お前みたいな奴と組んでる濱元とかいう奴も雑魚なんだろうなァ?」
スタンドを使わずとも勝てそうだったが何となく悪い気がしたのでスタンドで倒すことにしよう。
「うるせェェェェーーーテメェをぶっ壊してやらァァァァアアアア」
「『U2』!!」
『U2』は『クレイジー・ガジェット』の攻撃を避けて顔面に右ストレートをお見舞いする。
「ぐはッ!!イデエエエエエエーーー!!!」
それだけじゃない。
「な!?俺の体が浮かんでる…!?」
「お前の重さを限りなく『0』にした…」
ふわりふわりと庄田は空へ飛んでいく。
手放した風船のように。
「うわぁあああああああああ!!!!濱元ォォォオオオオオオオオ」
お前みたいなゲス野郎が天に近づくことで浄化されることを願うよ。
もっとも…上空の上昇気流で死ぬだろうがね。
生まれ変わったら真っ当な人間に生まれ変わってくれ。
「フン…無様な奴だ…もう少し使えるかと思ったが…雑魚はいらん」
兄貴と交戦中の濱元は飛んでいく庄田を一瞥してからまた目を戻す。
動けないサイヤ人はいらないと言ったベジータを思い出しちまったじゃないか。
「兄貴手伝おうかー?」
「大丈夫だって!祐介はそこで見学してろッ!!」
- 55 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/08(月) 23:13:53 ID:oMKWjY820
- 『ステイアウェイ』は地面に転がってる石ころに『矢印』を付けていた。
ビュンっと音を立てて濱元目掛けて飛んでいく石ころ。
「バカが…!こんなもんスタンドで弾けるわ!!」
「腕を4本使ったな?」
「ハッ…!」
兄貴は濱元に接近して『ジプシー・ロード』の残り2本の腕を掴む。
そして、両足でデカイ体躯をした『ジプシー・ロード』の腹を蹴り飛ばす。
ドカッ
「何を矢印を張り付けれるのは手で触ったものだけじゃない…脚でも可能なんだよ…!」
濱元は派手に吹っ飛んで倉庫の敷地を取り囲むコンクリートで出来た塀の壁に勢い良くブツかる。
「よぉ〜ヒデッ!あんなつまんねー雑魚を俺に当てやがって!!全然戦った気がしねーわ」
「どうやらそっちも終わったようだな…」
京輔と吾郎が無傷でこちらへ駆け寄る。沢村は電柱に縛られたままノビてるようだった。
吾郎の『セファリック・カーネイジ』が妹を抱きかかえている。
妹も外傷は見当たらなく、無事だった。祐介は安堵する。
「さて…決着をつけますかね…」
兄貴はゆっくりと壁に打ち付けられた濱元の元へ向かう。
「『ジプシー・ロード』!この壁を砕いてアイツのベクトルに放て!!」
「……」
兄貴は『ステイアウェイ』の拳で壁の破片を弾く。
「こっちへ来るなァーーー!!」
- 56 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/08(月) 23:15:40 ID:oMKWjY820
- 「俺の足元の地面に『矢印』を付けた…加速するッ!!」
ギュンッと一瞬で濱元の前まで来る。
「色々とよォ〜〜〜聞きたい事はあるッ!!だがな…とりあえず殴らせろ
アロークロスッ!!」
ドガガガガガガガガガ
『ステイアウェイ』のラッシュが濱元の体を打ち付ける。同時に矢印を付けて。
「派手に飛びなッ!」
「うわあああああああああああああ」
濱元は向かい側まで吹っ飛び、壁に打ち付けられる。
今度はあまりの勢いで濱元の体を中心に波状して壁に亀裂が入る。
当然頭を強く打ったので気絶。死んでなければいいけど。
「お疲れ様」
祐介は労いの言葉をかける。
「パクリ野郎の末路よ…それより智恵は大丈夫なんだろうな?」
「ああ…寝息が聞こえるから薬品で眠らされてたんじゃないかな」
「そうか…よかった」
「おい、ヒデ。さっさとそいつ縛り上げろよ」
「そうだな。縄まだあるか?」
「吾郎さんが山ほど持ってきてくれたぜ!吾郎さんアンタ大人しい顔してソッチ系の…」
「な!馬鹿言わないでくれよ真島君ッ!!俺がそんなことッ!!」
「冗談のつもりで言ったんすけどねー…えらい動揺しちゃってまあ…」
「まあまあ!そんなことより早く縛りましょう」
祐介は喧嘩に発展する前に話題を切り替える。
「祐介、こいつ押さえといてくれ。俺が縛るから」
- 57 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/08(月) 23:16:06 ID:oMKWjY820
- 兄貴が縄で濱元を縛ろうとした瞬間、濱元の胸を何者かの爪が貫く。
「スタンドだッ!!」
人参のような頭をした茶色のカニのような人型スタンドだった。
貫かれた濱元の体は次第に膨張していき、肉片がはじけ飛ぶ。
ブッチャァアアア
「ハイシャニハ…セイサイヲ…クチヲワラレテハコマル…」
「喋りやがったぞコイツ!!」
この謎のスタンドは一体何者が差し向けた者なんだ!?
「サワムラコウジ…ミツケタ」
庄田の元へ走っていく。
「追いかけよう!」
兄貴の言葉に頷き、皆で謎のスタンドの後を追う。
スバッと電柱に縛られた沢村の体を切り裂ける。
そして、切りつけられた沢村の体は膨張を始めて、さっきの濱元のようにはじけ飛ぶ。
俺たちは驚愕した。何なんだこのスタンドは…味方なのか敵なのか…と。
人参頭のカニみたいなスタンドだからこいつは『カニンジン』と呼ぶことにする。
「ショウダヒトシ…ミアタラナイ…」
カニンジンはキョロキョロと辺りを見渡す。
「庄田…?ああ、あいつなら俺が始末したけど…」
「ソウカ…ナライイ…デハ、ワタシハカエル」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!お前は一体何者なんだ?」
「イズレ…マタアウコトニ…ナルダロウ…イマハ…ソノトキデハナイ」
「待ちなッ!俺はあの男たちに聞かなくちゃいけないことがあったんだ…
代わりにお前に聞かせてもらうぞ…言わねぇってんなら力づくで聞くまでだッ!!」
兄貴は身を乗り出してカニンジンの前に対峙する。
濱元らに聞きたがってたこととは一体何だろう?
- 58 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/08(月) 23:16:49 ID:oMKWjY820
- 「ナンドモイワセルナ……
タダヒトツ…イッテオコウ…ワレワレノスヲツツク…レイギシラズナトリハ…シマツスル」
「何だと!?」
「デハマタ…イズレ」
そう言い残してカニンジンは場を去ろうとする。
「逃がすもんか…せっかく掴んだのに離してたまるかッ!!」
兄貴は『ステイアウェイ』でカニンジンを攻撃する。
カニンジンはバッと猿のように電柱の上に飛びつく。
電柱の上まで登って塀の向こうへ飛び降りる。
兄貴はスタンドを飛ばして塀の向こう側を調べるも既にカニンジンの姿は無かった。
「クソッ…逃げられた…!!せっかく…親父の仇に辿りつけると思ったのに…」
「兄貴…それは一体どういうことだ!?」
親父の仇…それは9年前のあの夜に父親を殺した男たちのことだろう。
しかし、一体どういうことだ?今回の奴らと関係があるのか?
「それは私から話そう、有嶋祐介君」
後ろから声が聞こえ、振り向くとメガネをかけて顎に髭を蓄えたスーツ姿の男が立っていた。
- 59 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/08(月) 23:19:05 ID:oMKWjY820
- ここまで書いた…続きはまだです…
あともう少しで第二章は完結する…
読者がいるか分からないけど待たせるのは悪いと思って見切り発車的に投下しちゃいました
- 60 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/08(月) 23:24:41 ID:oMKWjY820
- またしても至る所が日本語でおk状態w
第二章が終わったら自分でwikiにまとめるんでその時に修正しますわ
- 61 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/08(月) 23:27:00 ID:???0
- あと展開を変更したせいで妹のスタンドは出せずじまい…いつか出す!
- 62 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/08(月) 23:42:26 ID:???0
- >>57の「庄田の元へ走っていく。」は庄田じゃなくて沢村の間違いだ…
文章がおかしいどころか名前を間違えてるとか終わっとる…
- 63 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/09(火) 04:36:17 ID:hpEIIz/.0
- 「何から話していいものか…そうだな、この事件は計画されたものなのだよ」
「え…?」
唐突の告白に俺は理解が追いつかなかった。
「奴らがここに来ることは見当がついてたってことだ
そして…君の妹は囮…奴らを誘き出す撒き餌だったのだよ」
「スマン…お前を騙すつもりはなかったんだが…」
兄貴が頭を下げる。
「2日前にこの久坂さんと会ってな…奴らが現れる日付や場所などを教えてもらった
奴らが起こした時点は目星がついててその被害者は皆若い十代の女の子…つまり…」
「じゃあ智恵を利用したって言うのかよォ!!もしものことがあったらどうしたんだよォ!!」
祐介は激昂して兄貴の胸ぐらを掴む。
「それは…最初から京輔たちに奴らを張っててもらって…」
「じゃあ何で俺が来る前に奴らを押さえなかったんだよ!」
「君を戦いの渦へ巻き込んでいいのか、お兄さんは悩んでいたんだ」
久坂は祐介の手をそっと兄貴の胸ぐらから離させる。
「祐介君のスタンドが強力のはわかっている…だが、まだ若く戦闘経験に乏しい少年を、弟を巻き込んでいいものかとね
そこでお兄さんは君が戦うよう仕向けたのだよ」
「ああ…スマン…確かめさせてもらった」
「悪いな祐介君…騙すつもりは無かったんだが…」
吾郎は申し訳なさそうに謝る。
「だからって…」
まだ納得しきれなかった。
- 64 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/09(火) 04:36:39 ID:hpEIIz/.0
- 「しょうがなかったんだ…許してくれ…親父を殺した仇を見つけるにはこれしかなかった」
「さっきもそれ言ってたけど…一体奴らとどういう関係があるんだ?」
久坂はコホンと咳払いをし、語り始める。
「単刀直入に言うと君たちの家を襲った者と今回の3人は同じ組織の人間だ
そして君のお父さんもその組織に所属していた…研究所の研究員としてね
私もその研究所の研究員として君のお父さん…圭史郎と共に『スタンド』を発現させる素となる『ウイルス』について研究していたんだ
様々な分野の学者や医者などが組織に引き抜かれた。圭史郎は組織に入る前にウイルスの研究でいくつか論文を書いていたな」
「『ウイルス』…!?」
「祐介君の家にあった短剣…あれは剣の部分に『ウイルス』が付着していたんだ
それに感染することによって君たちはスタンドに目覚めることが出来た…」
ふとあの事件の日の父親の言葉を思い出す。
「お前みたいな末端の戦闘員は何も知らないだろうな…
今お前を殴ったのは俺の横に立つ『スタンド』によるものだ。もっとも見えないだろうが。
そして、それを発現するきっかけを与えたのが…お前が壁から取った短剣だ」
何故今まで気付かなかったんだろう…そうか、俺たちは短剣に刺されたからスタンドに目覚めたのか。
父親を殺したのは組織の末端戦闘員…今はどの程度の地位にいるかは分からないが、久坂の口ぶりから察するにまだ組織に属しているのだろう。
父がその研究所でスタンドの『ウイルス』を研究してたとは…研究員だというのは知っていたが…。
「その『ウイルス』を研究してた組織が何故犯罪に及ぶんだ?」
祐介は当然抱くであろう疑問を投げかける。
「9年前の事件は圭史郎が組織を裏切ったことが発端だ
事件の数年ほど前から組織の者共は一般人を攫って人体実験を始めだした…
組織の創設者が暗殺されたせいで歯止めが効かなくなったのだ
派閥が出来て勢力は二分三分されていき…それぞれが組織の中で有利に立つには武力を得るしかない
そうして奴らは拐ってきた一般人をスタンド使いにしてそれぞれの戦闘部隊を作っていった
悪人のほうがスタンド使いに目覚めやすいという研究結果があったから組織の者共もこぞって悪人を攫った
悪人どもが集まった組織だ…犯罪も自然と起きてしまう。組織の統率が行き届くほど飼い慣らされた連中ではない
この県の犯罪の5割は奴らが起こした犯罪と見ていいだろう。現に10年前と比べて犯罪が倍近く増えた」
「なる…ほど…」
- 65 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/09(火) 04:37:11 ID:hpEIIz/.0
- 「圭史郎はそんな組織に嫌気が差して組織を抜けようと考え始めた…
私は怖くてその時は見ているだけだったが…
それを嗅ぎつけた組織の幹部どもは末端の戦闘員に圭史郎を殺すことを命令したわけだ
組織の創設者が殺したのは急進派や過激派の者共だろうと私は考えている
奴らは穏健派や裏切り者を抹殺して組織を乗っとろうと画策し、まず圭史郎が目を付けられた
圭史郎が殺されて私たち研究員は組織から逃亡しようとしたが、私以外は皆殺されてしまった…」
「そんなに詳しいんならよォ〜…今その組織の母体がどこにあるのか教えてくれよ!」
「いや、それが奴らの足取りは掴めないんだよ…
月に数回集会をするそうだがその場所は毎回変わるため特定が困難だ
研究所は既に閉鎖しているしな…
それに組織は相当大きいものになっている。元からいる連中に加えてテログループや宗教団体、ヤクザ等も傘下にあって…
資金提供者もついているらしく、また、企業や政治団体、警察幹部とも繋がりがあるようだ
先程犯罪が増えたと言ったが検挙数自体は高い…組織は一般人に犯罪を犯させているからで、その見返りとして組織の犯罪は見逃してもらっている
組織の構成員は末端の者も含めて五百人を超えると見ていいだろう。宗教団体の信者の数まで含めると数千人は下らない」
「マジっすか…」
そんなオオゴトに巻き込まれちまったのかよ…。
「奴らは狡猾だ…警察も発見に至ってない事件は数あるだろう…
いや、見て見ぬふりをしてる事件も多い。警察は腐っているんだよ
だが、今回の3人は稚拙な犯行で証拠も多く残していた
3ヶ月ほど前から女を攫ってはここの倉庫で犯行に及んでいたようだ
攫って来た女に興味が無くなると殺して捨てていたと思われる」
祐介はこの街に蔓延る闇に戦慄する。
確かに犯罪は増えて街行く人々の顔も暗くなっていた。
祐介の学校の生徒の身内が殺されたと言う話しも何度か聞いたことがある。
そんな身近に奴らが潜んでいると思うとゾッとする。
兄貴は正義の人だ…この話を聞かされたら心も動いてしまうだろうな。
父親の仇という問題だけじゃなく、この街でのうのうと殺人を行っている奴らがいれば見過ごせない性格。
この世界でもっとも妹を大事にしてるのは誰でもない、兄貴ただ一人だろう。
この決断に至ったまでには相当悩んだに違いない。
旅館で時折見せた思い詰めた顔はこのことを考えていたからだと思える。
- 66 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/09(火) 04:38:50 ID:hpEIIz/.0
- 「現在の組織の目的は…簡単に言うと日本をひっくり返すことだ
私や圭史郎がいた頃はまだそんな力は無かったが今はその力がある
スタンド使いと言えども十人程度なら完全武装した機動隊やSATには到底勝てないだろう
だが、スタンド使いが百人もいるとなれば別だろう?」
スタンドを持つ身としては分かる話だった。
真正面から来る弾丸ならスタンドで弾くことも可能だがあらゆる角度から同時に飛んでくれば対応出来無い。
ましてや閃光弾や火炎放射器などもあればものの1時間もあれば制圧されるだろう。
しかし、百人もいれば…。
「なんスかソレ!!マジパネェー!!」
京輔が若者らしいリアクションで応える。
「他にも聞きたい事はある…あの濱元達を殺した爪を持ったスタンドは何者なんだ?
それに…9年前の時も天井に黒い奴がいた…おそらくスタンドだと思うんだけど」
祐介は久坂に問いただす。
「さあな…正体までは分からんが、奴らから情報が漏れることを恐れて始末しに来たんだろう
どこかで何らかの手段を使って組織の人間を監視しているんじゃないかな
そして、あのスタンドは『遠隔自動操縦型』だと思う
この敷地内で数十メートルはあるから近距離型は有り得ないし、逆にただの遠隔操作型ならあのパワーは有り得ないからだ」
「なるほど…そうだとしたら俺たちを攻撃しなかったのは妙だな」
「いくら何でも俺たち4人を相手に戦うのは厳しいだろ」
兄貴が答える。
あのスタンドはいくら自身が強くても4人相手では勝てないと踏んだのか。
そうだとしたらいずれ強いスタンド使いを俺たちに仕向けるかもしれないな…。
いやー困った困った。
「へっ!そりゃそーよ!!」
京輔は得意気に振舞う。
- 67 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/09(火) 04:39:09 ID:hpEIIz/.0
- 「そこで…私から君達に…頼みたいことがある」
久坂は神妙な面持ちで俺たち全員を一瞥してから口を開いた。
「目には目を。組織に対向するなら組織をだッ!
私は奴らに対向するために組織を作った
私と同じく組織を抜けた者や正義の心を持つスタンド使いを集めている…
そして、君達は十分戦えるし、正義の心も持っている!
どうか私に力を貸してくれないだろうか!?」
やめろよ…そんなこと。
決まってるじゃないか。
「面白そうじゃねーか!ちょうど日常に退屈してたとこッスよ!」
「真島君…」
「目の前に困っている人がいれば助けるのが私の信条ですよ」
「悪人どもは許せない…それに父の仇…」
「必腑君…秀彦君も…」
あー俺待ちですか。分かりましたよ…言えばいいんでしょ。
「怖いけど…俺もそんな組織があると知った以上は見過ごせないですよ…
悪人どもが巣食う街なんざ胸クソ悪くて空気も吸えないッ!この手で壊滅してやる!!」
「その言葉を待ってたよ祐介君…君の力は必ず役に立つ
初めて君の顔を見た時から大物になると確信してたよ」
久坂はニコッと笑って祐介の方を見る。
「あ…」
今頃になって思い出した。
- 68 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/09(火) 04:40:25 ID:hpEIIz/.0
- 「もしかして…昔家に来てた父さんの知り合いの…ガンプラのおじさん!!」
「ハハハ…よく覚えてるね
そうそう、圭史郎の家にお邪魔してはプラモを持っていってたっけ
ユウ君はまだ幼かったから10数年ぶりに会って私のことを思い出せなかったのも無理ないよ
ヒデ君は年上だから2日前に会ったときはすぐに気づいてもらえたけどね」
まるで我が子のように久坂は祐介の頭を撫でる。
とても懐かしい感じだ。最後に会ったのは3歳か4歳の頃だろう。
父も母もいた頃を思い出して少し涙ぐんでしまった。
「いやぁ…気づくの遅くてごめんなさい…」
「ハハハ、全然気にしなくていいよ!よく影が薄いって言われるから!
えーと…」
久坂は祐介の左手を凝視する。
「そっちの手…敵にやられたの?」
祐介は久坂に左手をやられたことを教えていない。
会話をしながら祐介のことを観察しながら様子に気付いたのだろう。
ただものじゃないなと思う。
「凄いですね…ご明察の通り左手は全く動かせません…指も全部」
「ふふふ…大丈夫大丈夫!凄腕の医者がうちの仲間にいるからね
もう少ししたらここに駆けつけてくれるよ」
「よかった…」
「他に傷ついた人はいるかな?」
「俺らは大丈夫ッスよー」
何か大事なことを忘れてるような気がするけど…思い出せないや。
「それじゃ…また会おう!これ電話番号とメールアドレスね」
すっと名刺を取り出して4人に手渡す。
「何かあったら連絡してね。あ、君達の連絡先はもう知ってるから心配ないさー」と言って道路に面してる方へ歩いていった。
ちょうどいいタイミングで黒塗りの車が道路に止まってそれに乗り込んで去っていく。
- 69 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/09(火) 04:41:05 ID:hpEIIz/.0
- 「ふぅ…一度にたくさんのことを聞かされたせいで頭がショートしそうだよ」
「よっしゃ、皆旅館に戻って食いまくろうぜ!パーッとさ!」
「ヒデ、ちゃんと奢れよな?」
「当たり前だろ!そこまでケチな男じゃねーよ!」
「こう見えて俺は大食漢ですけど…行っていいのかな?」
「うちの弟に加えて吾郎さんも大食い…いや!助けてもらったお礼はキッチりしますよ!」
兄貴がこちらを目で牽制する。お前はホドホドにしとけよと。
分かってますとも…。怖い怖い。
程なくして今度は白いワンボックスの車が止まる。
車の中から出てきたのは白衣が似合う美女だった。
モデルのような体型でポニーテールをしている。
メガネとキリッとした眉が知的な感じを醸し出す。
こういうお姉さんめっちゃタイプなんですが。
「私は白河由衣…ま、見ての通り医者よ」
白河は端的に自己紹介をしてから「誰か怪我したの?」と聞いてきた。
「あ、はい!僕です!この左手が超超超痛いです!!」
いや、痛いどころか麻痺してるんだけどね。
兄貴に「このお調子者が!」と頭をドつかれる。
「ちょっと袖を巻くってちょうだい」
白河は『ホワイト・メディスン』とスタンド名を口から発してスタンドを体の横に出す。
巨大な注射器を持ったナースのようなスタンドだ。
「うおお…」
あまりの恐怖から情けない声を出してしまった。
「男の子だからこのくらい平気よね?」
クールな女医はニコッと笑顔を見せる。
祐介の中から恐怖が薄れていく。こんなの全然余裕ですよ、と。
ズブリ…と左手を注射器で刺される。痛くは無かったが不思議な感じ。
- 70 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/09(火) 04:42:17 ID:hpEIIz/.0
- 「えーと…祐介君だっけ?左手に生命力を与えたわ…これであなたの左手は治癒する」
「治っていくのが分かります…」
1分で指が動かせるまでに回復した。
「大丈夫のようね。それじゃ私はもう帰るわ」
「はい!ありがとうございました!
またケガしたらよろしくお願いします!!」
「おい…お前ら誰か忘れてないか…ホラ…誰だっけ?」
兄貴は顎に手を当てて頭の中を搾り出すかのように考える。
「お…おぉー…い」
どこからか声が聞こえる。
「俺を…わす…ぇ……な…」
確かに声が聞こえる。どこだ?
倉庫の方に目を向けてから気づく。
あ…。
「あ〜〜盲点だよな〜〜」
兄貴…本人聞こえてるのに失礼だろ。
「ハハハハハ!!ザ・空気だな!!」
京輔さんは大笑い…この人達と来たら。
「……プッ」
とうとう釣られて吾郎さんまで吹き出してしまった。
お前ら自重しとけ。
「あのーすいません白河さん…あそこに倒れてる五十嵐さんも診てやってもらえませんか?」
「あー…来たときに倒れてるのが目に入ったから敵かと思ったんだけど…誰も気づいてあげないなんて…かわいそうに」
本気で憐れむのもやめてあげて下さい白河さん。
五十嵐さんの目に殺気がこもってきましたから。
―――
――
―
旅館に戻ってからは大宴会となった。
俺と兄貴と妹、京輔さん、吾郎さん、五十嵐さんの6人で朝まで飲み明かした。
もちろん妹には久坂さんの話は内緒。というか誘拐までされてるというのに妹はあっけらかんとしていて逆に驚かされた。
女は強いなとしみじみ思うのだった。まあ京輔さんが酒を飲ませたせいで夜の9時には寝てたんだけどね。
To Be Continued...
- 71 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/09(火) 04:47:51 ID:hpEIIz/.0
- 第二章終わったぞコンチクショー!!
あー疲れた!!俺にしては結構頑張って書いた…はず!
ちょっとエネルギーを補充してから使用スタンドまとめとあとがき書きます
wikiにまとめるのは後日からにします…推敲しないといけないしね
- 72 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/09(火) 05:06:06 ID:hpEIIz/.0
- 使用スタンド
・弟 有嶋祐介
No.44
【スタンド名】U2
【能力】触れた物質の重さを変えられる
考案者:ID:Azdg7Rlm0
絵:ID:FhUUc7chO
・兄 有嶋秀彦
No.938
【スタンド名】ステイアウェイ
【能力】触れたものに平面状の『矢印』を張り付ける
考案者:ID:jPY6mNvA0
絵:ID:OE8h+DM9O
・アパート住人 五十嵐心太郎
No.293
【スタンド名】アクロース・ザ・メトロポリス
考案者:ID:Qpm+pi0FO
絵:ID:EsQWtgj40
・アパート住人 必腑吾郎
No.1036
【スタンド名】セファリック・カーネイジ
【能力】状態を留める能力
考案者: ID:Kqs0x3QI0
絵:ID: ID:XtDeOiJLO
・兄貴のツレ 真嶋京輔
No.976
【スタンド名】デッド・エンド
【能力】対象をデッド・エンドと瞬時に位置を入れ替える能力
考案者:ID:CB6rV4v+0
絵:ID:a8j9uyds0
・女医 白河由衣
No.468
【スタンド名】ホワイト・メディスン
【能力】巨大な注射針でスタンドに注射されるとそれぞれ変化がおこる。また、巨大な注射器は鈍器にもなる。
考案者:ID:9Gh0CIaUO
絵:ID:DarMMkFfO
・敵 濱元恭雅(きょうが)
No.248
【スタンド名】ジプシー・ロード
【能力】手の穴から、円錐と円柱を組み合わせたような形の「矢印」を放つ。
考案者:ID:0RRbfy5U0
絵:ID:+Fs3PsXH0
・敵 庄田斉(ひとし)
No.386
【スタンド名】クレイジー・ガジェット
【能力】人体の機能を損傷させる
考案者:ID:lRAYFOlG0
絵:ID:IjPgGiknO
・敵 沢村晃次(こうじ)
No.485
【スタンド名】サイン・ポスト(道しるべ)
【能力】矢印を敷くことができる
考案者:ID:ptjB8pJcO
絵:ID:GWE40Qd/0
・カニンジン
No.170
【スタンド名】ワイルドライフ
【能力】切り裂いた物を膨張させる
考案者:ID:m1Xec9dsO
絵:ID:IrCNkYIy0
- 73 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/09(火) 05:45:14 ID:hpEIIz/.0
- 登場人物紹介
・五十嵐心太郎(いがらししんたろう)
オンボロアパート「悪門荘」三号室に住む男子高校生。
祐介より一個年上。頼りない感じだが勉強はそれなりに出来る。
趣味は校舎の屋上で空を眺めること。クラスでは空気。
家族から疎ましく思われていたせいで逃げるように一人暮らしを始めた。
スタンドは「アクロース・ザ・メトロポリス」
・必腑吾郎(びっぷごろう)
オンボロアパート「悪門荘」三号室に住む二十代の男。
多分兄貴より年上。何の仕事をしてるかは不明。いや、色々と謎多き人物。
困ってる人がいれば迷わず手を差し出すのが信条。慈悲深い。
スタンドは「セファリック・カーネイジ」
・真嶋京輔(まじまきょうすけ)
兄貴のツレ。10年来の親友。喧嘩最強。
高校時代は有嶋秀彦と真嶋で「嶋嶋コンビ」と言われていた。
口は悪いし喧嘩っ早いけど実は良い人でお節介焼き。自称・お節介焼きの京ちゃん。
好きな女のタイプはボイン。おっぱいは正義。
スタンドは「デッド・エンド」
・久坂知己(くさかかずき)
有嶋圭史郎とは某K大学ウイルス研究所の同期。そのため組織に引き抜かれる前から面識がある。
中学時代から優秀で高校三年の頃はテストで1位か2位しか取ったことがなかった。
圭史郎が殺された1年後に組織から逃亡を図る。未だに独身。有嶋家には12年前を境に行っていなかった。
スタンドは不明。
・白河由衣(しらかわゆい)
大学病院に勤務する医者。かなり多忙を極める。
クール美女で病院の顔である。白河を見たくてわざとケガをしてくる者までいるくらい。
スタンドに頼らずとも腕前は一流で知識量も凄い。
スタンドは「ホワイト・メディスン」
・濱元恭雅(はまもときょうが)
無精髭を生やしたフリーター。組織に属する。
スタンドを悪用して犯罪を起こしていた。前科は無し。
若い女に目がない。矢印マークが大好き。
スタンド「ジプシー・ロード」
・庄田斉(しょうだひとし)
一連の誘拐殺人事件の首謀者。
組織に入る5年前にレイプを犯して捕まっている。
かわいい女子中学生には手を出さずに入られない。
しかし、すぐには犯さずにまずはトークから始める。
飽きてしまうと人ではなく物としか見えなくなり壊してしまう。
スタンドは「クレイジー・ガジェット」
・沢村晃次(さわむらこうじ)
お調子者で矢印の刺青がある。
矢印マニアで濱元とはどっちが矢印好きか言い争いになる。
好きな女のタイプは黒髪。あまり顔にはこだわりがない。
スタンドは「サイン・ポスト(道しるべ)」
・山下三郎(やましたさぶろう)
旅館で智恵に手を出そうとした変態オヤジ。独身。
祐介によって地面に沈められたが忘れられて結局帰る直前に気付かれて救出される。
その後は心を入れ替えて三十代の女性とお見合いして交際、1年後に結婚する。
- 74 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/09(火) 06:19:27 ID:hpEIIz/.0
- あとがき
とりあえず疲れました。ええ。
今すごく眠いです。でも、朝から学校あります。
まず、秀彦が妹を利用する展開にしたのは情報提供者・久坂を出したかったからです。
ここまで久坂にペラペラ喋らせる予定はなかったんですがこのSS自体が長引くのを危惧して喋っていいことは喋ってもらうことにしました。
最初は妹が連れ去られて祐介が妹が残したジャンプの切れ端を見つけてそれを辿って、途中で途切れるけど妹が能力で場所を知らせて発見!みたいな展開にしようと思ってた。
まあ…どっちがどうなんて考えませんけど…だって眠すぎて頭が回らない。
誤字脱字、あるいは日本語でおkな部分が多々あったのは反省しないといけませんね。wikiに載せる際に推敲しますけど。
満足した点は思ったよりスタンドを出せたこと。
連載SSどころかSSなんてZAINしか人生で書いたことが無かったのでどうなることやら…と思ったけどどうにかなりましたかね。
地の文を考えるのは苦手だけど、これがないと何をやってるのか分からなくなるから最低限は書かないといけないんですよね。
あと下手な一人称視点で書いたから陳腐だってとこが…ね。悪い点を言い出せばキリがない。
暗い話を書きたかったのに蓋を開けてみればギャグっぽくて…。セリフとか深みがない。
妹もかわいく書けないし。バトルは自分で書いてて混乱する始末。
今気付いたけどデッド・エンドが倉庫の扉と祐介の位置を入れ替えたけど、本来デッド・エンドと位置を入れ替える能力なんですよね…。
既にパワーアップしてたと解釈していただければ幸いです…。ええ。
自分が考案したスタンドなのに能力間違えるなんて終わってる。
敵は元々、庄田…クレイジー・ガジェットしか出さない予定でしたけど当て付けで矢印スタンドも出すことにしました。
バトルは一人称視点だと主人公が戦ってると他の同時進行バトルが書けないのが辛い!
あっさりやられたのは今回は主人公たちの能力お披露目会だったからです。それにしても祐介強すぎる。
五十嵐さんは敵を見つけるために派遣されたようで実は既に情報で知ってたんだから意味ねーじゃん、みたいな。
兄貴も五十嵐君には教えてなかったと言う感じですね。
祐介を騙すために五十嵐君まで利用されてましたと。兄貴ひどいじゃん。
兄貴のことカッコいいと言ってくれたWQ先生はどう思うのだろうw
変態オヤジは完全にミスリードキャラですね。消失してたように見せてスタンド使いか!?と思わせといて穴に落ちてただけとか。
カニンジンという呼称は…見て思った感想が人参っぽい!だったんで…まあ直感的に決めました。
いつまでも「謎のスタンド」と呼んでたら面倒くさいので。
名前といえばキャラの名前も付けるときに頭を悩ませてます。センスないんで。
本編第一章、第二章を最後まで呼んでくれた皆様方ありがとうございました。
次はいつ更新するか決めてませんが、なるべく速く届けれるように努めます。
理想は一章で完結させることだけど、今回のように前編後編にわけないと端折りすぎてしまいそうですね。
それでは、よい一日を!
- 75 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/09(火) 06:55:32 ID:???0
- >>73
間違えた、必腑吾郎は四号室です…
そのままコピペしたからか…
書かなきゃ誰も気付かないだろと思ったけど神経質な性格なんで書かないと気が済まないぜ
- 76 :名無しのスタンド使い:2010/02/09(火) 09:50:27 ID:1/hImpoMO
- 乙!
女医さんに俺の悪いとこ全てを治してもらいたいグヘヘ
- 77 :名無しのスタンド使い:2010/02/09(火) 10:41:26 ID:LDDyLfFwO
- 乙!
妹にイタズラしたい…フヒヒ
- 78 : ◆WQ57cCksF6:2010/02/09(火) 15:34:20 ID:2tN8MKyE0
- いや、この兄貴はむしろ逆に惚れ直すだろjk・・・
身内を囮にしてでもなんて、秀彦兄貴正義感強すぎてわたくし失禁しそうですわ
乙!続きに期待だゼー!ハァーッ!
- 79 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/09(火) 20:22:26 ID:???0
- 一人称視点の使い方間違えてた…鬱だ氏のう
今からwiki用に推敲しますので、今から読もうって人がいればwikiのほうを読んでもらえればなと
>>76
別人になるぞw
>>77
変態だー!
好きなスタンドスレの住人かなw
>>78
WQ先生にそう言ってもらえると有り難き幸せ!
もっと正義の人だと思わせられる描写を書けるように頑張りたいです
あと勝手に悪門荘とかアパートの名前に使っちゃってすんませんw
- 80 :名無しのスタンド使い:2010/02/09(火) 22:01:51 ID:YtmmK5KIC
- 乙1!
U2更新速くていいな!面白い。
- 81 : ◆U4eKfayJzA:2010/02/09(火) 22:35:56 ID:BbG77Vlc0
- 兄貴策士だな……。そして、変態オヤジはお後がよろしいようで。
なんか、感想がカオスになってるけど、がんばって! 乙ッ!
- 82 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/10(水) 18:31:00 ID:???0
- >>80
ありがとうございます!
やっとネタが浮かんできたから三章のプロットでも書こうかな
>>81
ありがとうございますU4先生
兄貴が頭の回転が速いキャラにしたいんだけど中々難しい…
他の作品で使われてるスタンドもイメージにとらわれずに使っていきたいな
- 83 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/17(水) 03:24:07 ID:???0
- 朝には…朝までには…
- 84 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/17(水) 07:54:47 ID:RosQkYcM0
- 全然書けてないけど投下します
- 85 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/17(水) 07:56:43 ID:RosQkYcM0
- 第三章「目覚め」
2010年1月12日火曜 午前6時 Y県Y市内 悪門荘
早朝の冷たい空気で肺をいっぱいにして深呼吸をする。
昨日旅行から帰ってきたところだ。今日は冬休み明けの初の学校。
三学期の始業式がある日だった。
「ユウスケおはよー珍しく早いじゃん?」
寝ぼけた顔で口にパンを挟んではむはむと食べている妹の智恵が玄関を開けてこちらを伺う。
「おう。ちょっとバットの素振りでもしようかと思ってね」
俺は立てかけていたバットを手に取って素振りを開始する。
オンボロアパートだがそれなりに敷地があるのでバットを振るくらいは出来た。
「あ、俺の分のパンも焼いといてくれない?後10分で切り上げるから」
「りょーかい」
妹は踵を返して家の中へ戻って行った。
ブオンッブオンッと豪快に音を立ててバットをスイングする。
体を前に突っ込みやすいと監督から指摘されていたので体重移動が課題だった。
理想的なバッティングをする橋本先輩が打ってるとこを想像して動きを合わせてみる。
「お前は脚が速いんだから長打は狙わなくていい」と先輩からも云われていたので今年はブレを無くしてミート率を上げたい。
『那由他高校』野球部のリードオフ・マンになるにはまだまだ課題が山積みだった。
そして、橋本先輩の後釜争いは同じ一年の川崎昂太や二年の高津迅などライバルが多い。
去年は代走要員としてしか起用されなかったので今年は奮起したいところだ。
- 86 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/17(水) 07:57:09 ID:RosQkYcM0
- ひとしきり振り終えた俺は首に巻いていたタオルを手に取って顔の汗を拭う。
ガチャリと一号室のドアが空き、上半身裸の男と黒猫が現れた。
アパート管理人の藤原とKという名前の黒猫だ。
「こんな朝早くから頑張るねェ〜」
「いえ…っていうか藤原さん上半身裸で寒くないんですか?」
帽子を被って上半身裸という奇異な格好をした藤原に視線を向ける。
腹筋はかなり鍛えられており、軍人だと云われたら信じてしまうだろう。
「にゃー」
ふと視線を落とすと黒猫のKが地面に爪で文字を書いていた。
「40…?」
「なはは!ユウスケ君のバッティングは40点だってさ!」
「いやはや…手厳しいですねぇ…」
俺は肩をすくめて苦笑する。
「そういえば吾郎君から訊いたんだけど…旅行先で一悶着あったみたい?」
「ええ…そうなんですよ」
「困ったことがあったら気楽に云ってくれよォーぶっ飛んで駆けつけるからさッ!」
「はは、ありがとうございます」
「俺もね…あの久坂って男と接触してね」
「え!?」
「組織に入らないかと勧誘されたよ。もちろん二つ返事でOKしたけどね」
「藤原さんの所にも話がいってたとは…」
- 87 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/17(水) 08:01:42 ID:RosQkYcM0
- このアパートには引き合わされたかのようにこぞってスタンド使い達が居住している。
俺らや五郎さん、五十嵐さんだけじゃなく管理人の藤原さんや他の住人もスタンド使いなのである。
ということは…今まで一度も顔を見たことがない六号室の山本さんにも話がいってるのだろうか。
『開かずの六号室』として有名だったので興味はあるが、恐怖のほうが大きかった。
一体どんなモンスターが住んでいるのやら…。
「それで近々集会するからスケジュール空けといてくれってさ」
「了解です…えーと…それで…」
「ん?何だい?」
「藤原さんその格好で寒くないんですか?」
さっきから気になってしょうがなかったので訊くことにした。
ていうか数分前にも訊いたのにスルーされてたな…。
「鍛えてるからねッ!これぐらい何ともないよッ!!
それじゃ俺は仕事があるからこれで!!」
藤原は足早に角を曲がって去っていった。
朝から脂こってりのステーキを食べてしまったかのような感覚に陥る。
「さて…家に入るか…」
長い間外にいたせいで指先がかじかんでしまった。
俺はファンヒーターの前を陣取り手を温める。
「ユウスケ、早く着替えて支度しろよ。朝飯は玉子焼きでいいか?」
エプロン姿で左手にフライパンを持った兄貴が台所から顔を覗かせて云った。
矢印マークがプリントされたエプロンだ。
「2個でお願い」
「2個も欲しいのか?このいやしんぼめ…」
そう云うと台所のほうへ首を引っ込める。
ジューッという音とともに食欲をそそる匂いが伝わってきた。
- 88 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/17(水) 08:02:03 ID:RosQkYcM0
- 時計を見ると時刻は6時半を回っていたので急いで制服に着替える。
「ユウスケ!邪魔!そこどいて!」
唐突に現れた妹によって俺のリラクゼーションスポットを占拠される。
せっかくぬくぬくしてたのに…。
足蹴に追いやられた俺は仕方なく冷たい床の座ることにした。
テレビをつけると相変わらず陰惨な事件を取り上げていてうんざりする。
朝は朝らしくもっと爽やかなことを報道するべきだろうと常々思うのだが。
目玉のニュースは一家バラバラ殺人事件にY県で起こっている神隠し事件。
自分が住んでいる県で起こっているのだから気持ちのいいものではない。
捜索願を出されている行方不明者が今月で30人にも及んでいるので警察がやっと重い腰を上げたところだ。
証拠は何も掴めずにいたが先日目撃者が現れた。
「化物に友人が攫われた」と云う証言は信憑性は低かったが警察は藁にもすがりたいところだろう。
相次ぐ異常犯罪に警察は無能のレッテルを貼られているのだから…。
「目玉焼き出来たぞーご飯は自分でついでくれ」
「待ってましたッ!!」
芸術的なまでに美しく整った目玉焼きが皿に盛り付けられていた。
俺は炊きたてのご飯を茶碗についで食べ始める。
「何これ!おいしそう!あたしの分はないの?ねぇねぇ〜」
妹が顔を突っ込んで羨ましそうに目玉焼きを凝視する。
俺は皿を自分の方へ寄せて死守。盗られてたまるか。
「お前はパン食べてただろ!!」
「そんな大昔のこと覚えてないもーん」
「あーはいはい…智恵の分も作りゃいいんだろ」
兄貴は冷蔵庫から卵を取り出して目玉焼きを作り始めた。
「さっすがァ〜ヒデ兄だね!」
破顔させて喜ぶ妹。食器棚から茶碗を取り出して盛々とご飯をいでいる。
- 89 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/17(水) 08:02:20 ID:RosQkYcM0
- 妹は料理が一切出来ないので、この家の料理担当は兄貴。
今ではプロも顔負けの腕前になっていた。
兄貴自身も料理をするのが好きなので文句の一つも垂れずに腕をふるう。
ましてや苦労を笠に着たりもしない。
ちなみに俺は食器洗い・掃除担当で妹は洗濯担当。
最近は寒さを鎌に掛けて妹はサボリがち。
洗濯物が滞ってるので何とかしてもらいたいものだが。
「それじゃ俺はもう会社行くから。お前らも早く家出ろよー」
いつのまにかスーツ姿に着替えてた兄貴は足早に家を出る。
飯を食い終わった俺たちも次いで学校へ行くことにした。
玄関から出るとちょうど学校へ行こうとしていた女の子がいた。
「ユーツー君!遅刻魔なのにこんな早くに起きてるなんてどゆこと?
明日は雪でも降るのかしら」
俺を『ユーツー』と呼ぶこの凛とした少女の名前は橘楓。スポーツ万能で何事にも負けず嫌いだ。
そして、俺と同じ高校へ通うどころか同じクラスにいる。このアパートの住人。
別に普段から遅刻してるわけじゃないが、楓は真面目に朝練に出てるのでいつもすれ違っていた。
というか今日は楓にしては遅いくらいだろう。朝6時には家を出てるくらいなのだから。
「おはよう楓さん」
妹はひょっこりと出てきて楓に挨拶をする。
「おはよう智恵ちゃん!相変わらず可愛んだからァ〜!もォ〜!」
楓はギュゥウウと妹の体に抱きつく。
年下の女の子を見ると抱きついてしまう習性があるようだ。
- 90 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/17(水) 08:02:44 ID:RosQkYcM0
- それではまた家に帰ってから続きを書きます…
- 91 : ◆U4eKfayJzA:2010/02/17(水) 08:45:29 ID:2I/VtM9g0
- スタンド使いは引かれあうにせよ、アパートの住人のキャラ濃いなぁw
乙です!
- 92 :名無しのスタンド使い:2010/02/17(水) 12:34:54 ID:iqIg0blsO
- なゆた高校だと…?
関係ないとはわかっていても胸が躍らずにはいられないネーミングだ
- 93 : ◆70nl7yDs1.:2010/02/18(木) 07:09:52 ID:???0
- 書いてたのに消えたw
- 94 :名無しのスタンド使い:2010/02/18(木) 18:56:41 ID:???O
- 乱堂さん出張お疲れ様です
- 95 :名無しのスタンド使い:2010/03/09(火) 15:44:22 ID:???C
- 更新待ってますぜ〜。
- 96 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/09(火) 21:56:46 ID:???0
- どうもです
今描いてる集合絵が終わり次第とりかかりますね
- 97 :名無しのスタンド使い:2010/03/10(水) 00:24:27 ID:???O
- 集合絵…だと…
期待せざるを得ない
- 98 :名無しのスタンド使い:2010/03/22(月) 15:54:03 ID:???O
- なにがクニだよ 更新しろオラァァ
- 99 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/23(火) 08:03:57 ID:hBM8Mtj20
- 楓はギュゥウウと妹の体に抱きつく。
年下の女の子を見ると抱きついてしまう習性があるようだ。
「く…くるひぃ…」
加減を忘れて抱きつかれたため、妹は顔を歪めて苦しそうに悶える。
「おい!」
俺は楓の頭をチョップする。
「はうっ!!」
「や り す ぎ だ!!」
「えっ…!?あ!ごごごごごめんッ!!」
我に帰った楓は慌てて妹の体から手を離してから頭を深々と下げる。
「やれやれ…」
*
しばらく歩くと駅が見えてきた。こじんまりとした古めかしい無人駅である。
他人を半径5m以内に寄せ付けない短髪の男が仁王立ちして電車を待っていた。
不良っぽいオーラを放つ男はこちらの気配に気づき、ダダダと走って近づいてくる。
「ユウスケ…!?何でてめェがよォ〜こんな速い時間にいんだよッ!!?」
男の名は鍛冶 鉄也。俺の幼馴染で何度も殴り合いの喧嘩をしては仲直りをした関係である。
なんといっても硬派。むしろ鋼派といってもいいレベル。
喧嘩はメッポウ強くて荒くれ者だが、酒もタバコもダメ。さらには女に免疫がなくて未だ童貞。
- 100 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/23(火) 08:04:17 ID:hBM8Mtj20
- 「明日雨でも降るんじゃないだろうな、オイ!万年遅刻ギリギリの野郎がどうしち…ん!?」
鉄也はようやく俺の後ろで妹とダベってた楓の存在に気がついたようだ。
口をあんぐりと開けて、後5分でこの世が終わるんじゃないかというような失望と悲観がこもった顔を浮かべる。
俺は奴の腕で首を絞められて人気のいない所まで連れていかれるのだった。
「ててててて…てめェーーー!!ど、どういう了見だコラァアアアアア!!」
グググと音を立てて俺の首が絞まる。
「ぐ…痛ェよ!一体何なんだよ!」
「か、楓さんと一緒に並んで歩いてるってどういうことだよッ!?まさかてめェ〜…」
「いやいや!勘違い、勘違いだってば…」
すっかり失念してた…。こいつは楓のことを片思いしてたんだっけか。
しかし、一緒に歩いてただけでこの慌てぶりとは…うぶすぎるだろ。
俺は一通り説明をして何とか鉄也を説得させるのだった。
「む、むぅ…要するにお前と楓さんは何にも無いんだな?お前も何とも思って…」
「だからさっきからそう言ってんだろ!俺にも好きな人はいるしな!」
「えっ!?初耳だぞコラァー!!親友に詳しく聞かせろやユウスケェー!!」
あ、しまった…つい口を滑らせてしまった。
さてどうしようね…。
「おーい!あんたたちそこで何やってんのよー!もう電車来ちゃうわよー!?」
駅のホームの中央にいる楓が大声でこちらへ呼びかける。
「はいぃッ!!今行きますッ!!」
ドカドカドカッとぎこちない大股歩きで鉄也は楓の方へ駆け寄っていった。
鉄也は楓の前では借りてきた猫のようにおとなしくなってしまうのだ。
普段は自分から話しかける勇気が無いらしく、四六時中俺の傍にいて隙を狙っては俺と楓の会話に入ろうとしてくる。
勘弁願いたいものだが…気持ちは分からなくもなかった。
俺たち一行は黄色い鉄の塊に乗り込み、学校へと向かう。
妹はこの駅から二駅先で降り、俺たち那由他高校の一年はさらに二駅先で降りるつもりだ。
*
- 101 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/23(火) 08:04:35 ID:hBM8Mtj20
- 俺たち三人は余裕を持って学校へ着き、教室のドアを開けて入る。
鉄也は隣のクラスなのでここでお別れ。寂しそうな顔を浮かべて去っていった。
「うわっ!ユーツーじゃないか!チャイム前に来るなんてどうしちまったんだ」
この失敬な物言いをするのは長瀬 一馬(カズマ)。ワックスで前髪を後ろに流したようなヘアスタイルをしている男。
顔もそれなりによくて女を寄せ付けるが、熱しやすく冷めやすい性格なのでヤリ捨て上等なようだ。
「ユーツーちゃァ〜ん!お久じゃん!」
俺の肩へのしかかって耳の傍で話しかけてくるこの男は原田 大和(ヤマト)。
いわゆるヤンキーでこのクラスの顔役でもある。
ヤンキーではあるが情に厚く弱い者の味方であり、いじめっ子を制圧している。
何故か俺の周りにはヤンキー系の人間が集まってくるようだ。
「よォ〜何かあっちで盛り上がってるようだぜェ〜」
カズマが指さした方向に数人の人溜まりが出来ていた。
その席に座るは内藤 敦史。ロン毛で童顔の男だ。
根暗な性格で俺とは普段あまり接点がない。
「何か携帯をみんなして覗き込んでるみたいね」
首を傾げながら楓は云う。
「お前ら何見てんだ?エロ動画か?」
ヤマトは遠慮無しに輪の中に首を突っ込む。
「おわっ!原田かよ…脅かしやがってッ!」
「何ビビってんだよ内藤…何見てんのか気になっただけだよ」
「あ、ああ…これね…ククッ。面白いぜこれ…見るか?」
「私にも見せてッ!」
「俺にも見せろッ!」
好奇心に駆られた楓とカズマは内藤の元へと寄っていった。
やれやれ…と呟きながら俺も人溜まりの中へ歩み寄る。
携帯の画面に映されるは動画のようだった。
廃ビルか何かか?暗くてよく見えないが…。
- 102 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/23(火) 08:05:05 ID:hBM8Mtj20
- 「よォ〜く眼を凝らして見ろよお前らッ!」
内藤が口頭を釣り上げて発破をかける。
30秒過ぎたあたりでようやく人間が登場する。
スーツ姿の若いサラリーマンと云ったところだろうか。
ただ、異常だったのが血まみれで逃げるように這いずりばっていた点だ。
スーツの男は助けて、助けてと反芻しながら壁のほうへ行こうとしている。
次なる刹那、動画を視聴する俺たちは眼を疑う光景を目の当たりする。
「おいおい…何なんだこりゃ…化物!?」
カズマが絶句する。
「ハハ…よく出来た3Dとか?特撮か?」
ヤマトも苦笑しながら内藤に問いかける。
「さあ?ネットで拾ったモノだから分からないよ」
内藤が嘘をついてるようには見えなかった。
そして、その人ではない何かはスーツの男のほうへのそのそと近づいていった。
男は為す術も無く化物に捕まった。まず、腕を安々と千切り、ガツガツと貪りだした。
『ギャアアアアアアア』
男の断末魔が聞こえてくる。
化物は腸まで綺麗に完食し、満足したようなのか横になってイビキをかきながら眠りについた。
「マジかよこれ…」
「気持ちワリィ…」
一同絶句である。楓にいたってはあまりの恐怖で体が震えているようだった。
「どうよ?すげぇだろこれ…俺は本物だと思うねッ!!」
内藤は誇らしげに応える。
- 103 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/23(火) 08:06:08 ID:hBM8Mtj20
- 「んなこたぁどうでもいいんだよッ!さっさとその気色悪ィモン消しやがれッ!!」
カズマが内藤の携帯に掴みかかる。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
俺はカズマを制する。
まだ、その動画は終わってないからだ。後1分ある。
「んだよッ!テメー…こんなグロイモン見て面白いってのかよユーツー!!」
「いや…ん!?もう一人出てきたぞ…!!」
若い二十代くらいの白衣を着た女だった。
『フフ…良い子ね…髪の毛一本残さず食べれたみたいね…でも、まだ仕事は終わってないの』
その女が何を喋っているかはっきりと聞き取れた。
まさかこの化物はスタンドか!?
『そこにいるのは分かってるわ…出てきなさいッ!!』
女は体から猿のようなものを出した。
今度ははっきりと分かる…スタンド使いだ。
女の後ろに眠る化物がスタンドじゃないのか?この猿がスタンドだとしたら一体あの化物は何なのだろうか。
残念ながらここで動画は切れている。
これを投稿したのはこれを撮影した人間なのだろうか…様々な疑問がまとわりつく。
「内藤…これはどこで落とした動画なんだ?」
「さあなぁ…俺は2チャソって掲示板に貼られてたのを拾っただけだ」
「それは何日前だ?」
「2日前かな。解析した時は落とした時の5時間前だった。すげぇネタ見つけたと思って学校に来たくてしょうがなかったぜ」
「そうか…ありがとよ」
「それにしても有嶋が俺に話しかけてくれるなんて珍しいねェ…クック…」
「……」
内藤は不敵な笑みを浮かべていた。
こいつは普段はオタク仲間としか話さないからどんな形であれ注目を浴びたのは嬉しかったのかもしれない。
- 104 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/23(火) 08:06:27 ID:hBM8Mtj20
- 「いつまで話してんだユーツーよォ〜〜〜」
不機嫌そうにしてるカズマはとっくに自分の席に戻っていた。
俺も席に戻ることにする。
俺の席は左端の列で後ろから1つ前だ。俺の後ろにカズマ、前にヤマト、右に楓といった具合である。
ちなみに内藤は右端の列の前から三番目なのでこちらから近づかなければ一切コミュニケーションは取れない。
俺は内藤の席が羨ましかった。何故かと云うと俺の想い人である東雲 雪華(しののめ・せっか)さんが内藤の横の席だからだ。
ちくしょう…内藤の野郎ッ!
東雲 雪華は無口で無表情なメガネっ娘。話しかけなければ誰にも話さない。
はっきり云ってクラス内での人気は低い。
美人でメガネっ娘だからカルト的な人気こそあれ表立って注目されることはないのだ。
コクる勇気なんて無いけどその横顔をチラ見出来るだけで幸せだった。
では、このクラスで人気の女子は誰かと云うと…
まず名を挙げなければならないのが古森 芹香(こもり・せりか)。
とある男子に聞くと落ち着きのある大人っぽさがたまらないらしい。小麦色の肌が印象的だ。
それから、久世 美琴(くぜ・みこと)。ショートカットの可愛らしい女の子だ。
月曜になると「憂鬱な一週間の始まりだ」と嘆くのが常となっている。
そして最後に紹介するのが結城 未早(ゆうき・みはや)。
ど天然で空気を全く読めないが、逆にそこが可愛いと評判の女子である。
おとぼけな性格と可愛らしい顔で人気を博している。
楓も美少女という部類には入るのだろうが、この3人の人気には及ばない。
というかこのクラスは全体的にレベルが高いのでそれぞれの女子に固定のファンは付き物だ。
楓のことが好きな鉄也、雪華のことが好きな俺のように。
- 105 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/23(火) 08:08:01 ID:hBM8Mtj20
- ごめん書けたのここまで…
最近筆が全然進まなくてさ…どうしようね
待っている人に申し訳ないので見切り発車的に書いた分だけ貼りました
今から頑張って書きます
- 106 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/23(火) 08:11:54 ID:hBM8Mtj20
- >>103の「解析した時は落とした時の〜」を「動画を解析したら落とした時間の〜」に訂正します
- 107 : ◆U4eKfayJzA:2010/03/23(火) 08:58:02 ID:D6avV3xU0
- 平穏な生活と動画のギャップが良かったです。
にしても、この白衣の女のスタンド、心当たりがあるなぁ……。まさか、これも俺が考えたやつか?!
乙でした!
- 108 :名無しのスタンド使い:2010/03/23(火) 10:32:14 ID:AeXBLCpkO
- 久々の更新乙!
いいよいいよぉ、面白いぜ!
忙しくて大変だろうけど、ゆっくりやってこーぜ
- 109 :名無しのスタンド使い:2010/03/23(火) 13:28:14 ID:???O
- 東雲雪華ちゃん可愛い!!
登場人物全員スタンド使いになるのかな?
楽しみだwwwww
乙!
- 110 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/23(火) 14:22:38 ID:hBM8Mtj20
- *
あの動画のことを考えていたら何時の間にやら昼休みになっていた。
「どうしたの?授業中ずっと怖い顔してたよユーツー君」
楓がこちらへ席をくっつけて弁当を出し始めた。
「いや、ちょっとね…」
鏡を見てないから分からないが、応えた時の俺はおそらく硬くてぎこちない顔だっただろう。
「気にすんなよ!飯ン時ぐらい忘れようぜ」
ヤマトは気遣ってポンと俺の肩を叩いた。
「あんなモン見せやがった内藤がワリィんだよッ!」
カズマも俺と同様にあの動画が脳裏に焼き付いてるようだった。
ただし、皆はスタンドは見えないはずなのでただ化物に恐怖してるだけだろうが。
いつも通り俺たち四人は席を合わせて朝食を食べる。
楓は手作り弁当、カズマは母親が作った弁当、ヤマトは焼きそばパンとコロッケパン、俺は兄貴お手製の弁当である。
「いいよなァ〜ユーツーはそんなウマそうな弁当でよォ〜〜〜」
親が仕事で忙しくめったに帰らないヤマトはいつもパンを食べているので弁当が羨ましいようだった。
それにウチの弁当は美味いのでたまにおかずをあげると「ほっぺたが落ちるゥゥゥ〜」と絶賛する。
具材こそ質素だがそれを上手く料理出来る兄貴はさすがだなとつくづく思う。
「あのよォ…落ち着いて訊いて欲しい…」
さっきまで切れてたカズマが神妙な面持ちでこちらを伺う。
「俺あのビル知ってるんだ…」
- 111 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/23(火) 14:22:57 ID:hBM8Mtj20
- 「ホントかッ!カズマ!!」
俺はつい身を乗り出してカズマのほうへ迫ってしまった。
「オイ…顔がちけぇよ…」
「あ…すまん…」
「んでその場所って何処なんだ?」
顎に手を当てたヤマトが訊く。
「えーと…確かここからそう遠くねぇ場所だ…
中学ン頃にツレと肝試しに行ったことがあるかもしれねェ
あの動画のさ…壁にあった落書きを見覚えあんだ…飯食って落ち着いたら思い出せた」
「じゃあ…そこ行ってみっか?」
ヤマトが真面目な顔で俺たち三人を見回して尋ねる。
「本気で云ってるの?」
楓が訊く。
「ああ…だって人が一人死んでんじゃん?俺はこういうの見過ごせないたちでね
場所もわかってんだし俺たちで解決してみるってのはどうよ」
ヤマトが応えたのを訊いてからカズマは一考したのち口を開く。
「そうだな…てめェの地元で化物がいるってのも胸糞悪い話だわな…行ってみるか」
「そうこなくちゃ!で、二人はどうなんだ?」
「わ、私は遠慮しとくわ…怖いし…」
「行くよ…二人だけじゃ不安だしね」
「どういう意味だコラ…」
「ま、女の楓に行かせるには危ないしな!野郎三人組で探索と行くか」
「足引っ張んじゃねーぞヤマト!」
「てめーこそなカズマ!」
やれやれ…。
間違いなくスタンド使いが関与した事件なのは明白だからこの二人だけで行かせるのは危険。
そして一度エンジンの入ったこいつらを止めても言う事を訊くはずも無いので俺も行かざるを得ないだろう。
しかし、奴らの手がかりをカズマが知ってたのはGJだった。
- 112 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/23(火) 14:23:12 ID:hBM8Mtj20
- *
そして、放課後。
俺たちは楓と別れを告げてバスでその目的地まで行くことになった。
「もしもよォ〜本当に化物がいたらどうするよ?」
「なんだカズマビビってんのかァ〜?んなモン俺の拳でフルボッコにしてやらぁ!」
シュッシュとジャブを出しながら笑うヤマト。気楽なもんだ…。
「おいお前ら…もし化物が出てきてもおとなしくしてろよ?間違っても手なんか出すな」
「あん?何様だよユーツー…真っ先に殺されそうなのはお前だから俺の後ろに隠れてろよな」
えらく威勢のいいカズマ。頼むから余計なことはしないでくれよ…。
「ま、んなこともあろうかと野球部からバットを三本くすねてきたぜ」
カズマは持っていたバッグからバットを覗かせる。
いつの間に盗ったんだか…。後で返しておけよ。
「まさに鬼に金棒!ガハハハ!」
公共の場で馬鹿笑いは勘弁してくれ。
などと話してるうちにバスは目的地へと着いた。
カズマによるとここから三分も歩けば廃ビルへ着くらしい。
「よっしゃ!野郎ども乗り込むぞ!!」
カズマさん脚震えてますよ。
俺たち一行はビルの中へ入っていく。
中はかなり荒れており、カズマのような奴がよく肝試しに来るのかゴミだらけであった。
「この現場は一体何階なんだ?」
俺は内藤から貰った動画を見せてカズマに訊いた。
「うーん…そうだなァ…多分三階か四階かな?」
「ま、行ってみようぜ」
ヤマトは先頭に立ち、階段を登り始めた。
こういう時のヤマトは頼もしいのだが、相手が化物やスタンド使いなら話は別だ。
いつでもスタンドを出せるように気を引き締めなくては。
- 113 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/23(火) 14:23:29 ID:hBM8Mtj20
- ギギギ…ビルの軋む音が恐怖を煽る。
あれほど威勢の良かったカズマはヤマトの背中に張り付いていた。
いざという時に逃げ遅れかねないからまともに歩いて欲しいものだが…。
「三階着いたぞカズマ」
ヤマトが足を止める。
「うーん…多分ここじゃねぇな」
「じゃあ四階か…じゅあ行くぞ」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「こ…此処だッ!」
蒼褪めた顔のカズマが口を開く。
「間違いねェ…あの落書き…一緒だ!」
確かに動画のモノとも一致している。
「お前ら気を付けろッ!バットを構えろッ!!」
俺は二人に警戒を促す。
「云われなくても!お前こそバット持ってろよ!!」
ギシ…ギシ…
「…何も出てこないな」
「ああ…そうだな…」
時計を見ると中へ入ってから五分が経過していたが、まるで化物が現れる気配は無かった。
男が喰われたと思われる場所にも血痕すら見当たらなかった。
「ハハ!やっぱあれCGだったんだよ!!」
「何ホッとしてんだよカズマ…俺の背中に抱きついてた癖によォ〜小便漏らしてんじゃねェだろうな〜?」
「ああン!?」
「おいおい…お前ら喧嘩すん…」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
- 114 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/23(火) 14:25:40 ID:hBM8Mtj20
- 「君達そこで何してるのかしら?」
「あ…あ…!!」
俺たちはこの女を知っている。
この女は…
あの動画の白衣の女だ!!
「ここに来たってことは…そういうことよねェ〜?」
「いや…俺たちは!たまたま肝試しに来ただけ…ははは」
カズマは硬直した顔の筋肉を無理やり動かして笑顔を作る。
「まあいいわ…ケイシー!マックス!」
女は大声で名前を呼ぶ。
すると隣の部屋からこちらへ何者かがやってくるのが音でわかった。
「GARURUUUWWW…」
「GISYAAAAAAH…」
動画で見た化物そのものが俺たちの目の前へ現れた。
動画より鮮明に見えるので姿形がはっきりと分かる。
色んな生物のパーツを繋ぎ合わせたような化物である。
カズマとヤマトのほうを見ると汗を大量にかき、息遣いを荒くしていた。
無理もない…現実にいるはずの無い化物だ。俺も気がどうにかなりそうだ。
「何なんだ?その化物はよォ…」
俺は白衣の女に訊いた。
「何って…私の可愛いペットよ」
「ペットねぇ…ペットっていうと普通犬とか猫じゃん?なんだよそれ」
「犬ゥ?猫ォ?はァ〜?何で私がそんな下等な物ペットにしなくちゃいけないのよ。この子はれっきとした人間よ」
人間…!?一体どういうことだよ…。
- 115 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/23(火) 14:26:37 ID:hBM8Mtj20
- 「今から餌になる君達に説明するの面倒だけど…まあ冥土の土産に教えてあげるわ
この子はねェ…私の手で昔の記憶を呼び戻してあげたの」
「記憶…?」
「人間が人間である前は魚類や爬虫類だったのはご存知?
人間の遺伝子は未だに進化の過程である魚類や爬虫類だった頃の記憶を持ってるのよ
私は眠っていた遺伝子を起こしてあげただけ…」
この様々な生物のパーツを繋ぎあわせたような化物の正体はそういうことだったのか…。
しかし、そんなことが出来る人間がいるとは…。
「このケイシーは脳が人で、口はサメ、体はエオティタノスクス、四肢がプラケリアス、帆がディメトロドン、尾はコティロリンクス、皮膚は―」
「さ、さっきからこいつは何を云ってるんだ…」
ヤマトとカズマは話についていけず唖然と立ち尽くしていた。
「つまり…人間をさらってきて実験したっつーことか?」
「まあそういうことね」
女は平然と云いのけた。駄目だこいつは…あまりにも異常だ。
「馬鹿どもに話すのもつかれたわ…ケイシー!マックス!こいつらを食べてあげなさいッ!」
「GUWOOOOOOOOOOOOOOH!!」
「チッ…恨むならあいつを恨んでくれよなッ!!」
俺は『U2』を出してこいつらの胴体を殴る。
化物二体へそれぞれ15t相当の重さへ変えた。
- 116 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/23(火) 14:27:14 ID:hBM8Mtj20
- 「GAAAAAAAAAAH…」
当然動けなくなり、床が重さに耐えられなくなって落っこちていった。
「ご自慢のペットたちもあのザマだな…さぁてどうするよ?」
U2の拳を女のほうへ向ける。
「くゥゥゥ…よくもやってくれたわねェェェ〜!!」
美人だった女の顔は形相を変え、眉間や口元にシワを寄せて鬼のような顔へと変貌した。
「おやおや…アンタは鬼の遺伝子をお持ちだったかな?」
「(ピクピクピク)許さない…絶対に逃がさないわよ!!」
ざわざわざわざわ
「おいッ!ユーツー!どういうことだよ!!お前何した!?」
カズマが慌てて俺に訊いてきた。
「後で全部話すよ…だから今は逃げてくれ…邪魔だ」
「何云ってんだ!お前を置いて逃げれっかよ!」
「アンタたち…誰が逃げていいって云った!?」
ピィイイイーーーー!!
女が指笛を吹くとゾロゾロと似たような化物が数十体集まってきた。
「またそれかよ…アンタは高みの見物ってか?」
「そうよ…お前らみたいな下等生物ごときに『スタンド』は使うまでも無いわッ!」
「ふぅん…こんな奴らじゃ準備運動にもなんないんだけどね…」
「一人足りとも逃がさないッ!!まずは後ろの奴らをお食べッ!!」
「GYAUUUUUUUUUUUUUUH!!」
- 117 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/23(火) 14:27:37 ID:hBM8Mtj20
- 「ヘッ…なめてんじゃねーよ!こっちは金属バットがあんだぜ〜?」
「お、おい!やめろ!」
俺の制止を振りほどき、ヤマトとカズマは持っていたバットを化物に叩きつけた。
「GARURURU…」
「ありゃ…あんまり効いてないみたいね…」
化物は尻尾で反撃の一撃を繰り返してきた。
「だから云わんこっちゃない…お前らは逃げろ!」
ガシィ
『U2』で尻尾を掴んで防御する。
「わり…俺らは役に立てそうにないみたいだな」
「後でちゃんと全部話せよッ!…死ぬなよッ!」
「ああ…俺がこいつらを相手にしてる間にビルから出てくれ」
「逃がさないよッ!!ジェイク!チャーリー!」
「BUOOOOOOOOOOOOOH!!」
「やれやれ…人の脳を持ってる癖に人語を話せないとはねェ…」
『U2』で天井全体を重くするッ!
「天井の下敷きになりなッ!!」
チッ…時間が無いな…急いで俺らもここを離れないと!
「お前たちこの部屋から出るぞッ!!」
「お、おうよ!」
- 118 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/23(火) 14:28:00 ID:hBM8Mtj20
- グワッシャァーーーン
何とかギリギリで部屋から出ることに成功した。
もう少し逃げ遅れてたら今頃潰れたトマト状態だろう。
5分後、土埃も収まったようなのでどうなったのか確認しに行くことにした。
「お前らは外で待っててくれ」
そう言い残して俺はまたビルの中へ赴くのだった。
瓦礫の下を探るとさすがに化物たちは死んでいた。
ひどい罪悪感に苛まれたので手を合わせて侘びを入れることにした。
「あーら…そこで何をやってるの?」
声に反応し振り返る刹那、メカニックなチンパンジーが攻撃を繰り出してきた。
動画で見たあのスタンドだった。そして、女は生きていた…!
俺は反射的に『U2』で防御をしていたらしい。
防御していなければとっくにお陀仏だろう。
「それで安心したつもりィ?アハハハハハ」
女はビル全体に響くくらいに高笑いを始めた。
「グッ…スタンドが消えていく…これは一体!?」
「退化よ退化ァ!私のスタンドで退化させたのよォォォー!!」
「つまり…スタンドを会得する以前に…」
「そういうことよ!これでアンタは5分間スタンドが出せないッ!!」
不味いな…おそらく奴の攻撃を生身で喰らえばどうなるかは想像がつく…。
「まあいい…お前如きこのバットで十分だよ」
「強がるなよ…ガキィ!『ファンキー・モンキー・ベイビーズ』!!」
- 119 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/23(火) 14:28:24 ID:hBM8Mtj20
- F・M・Bのパンチがこちらを捉える。
俺は顔面すれすれのところを金属バットでガードする。
金属バットはみるみるアルミの塊へと『退化』していった。
もう今の俺にこいつをどうしようも出来ない…。
残された手はひとつのみ。
「逃げるが勝ちだッ!」
「…!?ま、待てッ!!」
逃げれる自信はあった。脚には自信があるし、相手は近距離型のスタンド使い…。
俺は三階、二階と軽快に階段を降りていく。
「よしッ!追ってこれてない!」
「ここは行き止まりだよー…」
「何だテメェー!!」
パンキッシュな服装をした女が入り口に待ち構えていた。
「入り口をハサミに変えてたの…そしてハサミは”閉じる”」
バチィン!
「ぐああ…あぐぁあ…」
右腕を容赦なく切断されてしまったようだ。あまりの激痛でどうにかなりそうだった。
「星野博士〜あたしがこの子捕まえてあげたよ〜」
「ハァハァ…やっと追いついた…ってアンタは詠理(えいり)!!」
白衣の女は星野と云うらしく、このパンキッシュな女は詠理と云うらしい。
どうやら仲間のようだな…。
- 120 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/23(火) 14:29:16 ID:hBM8Mtj20
- 「グッドタイミングね…後はアンタがやっちゃっていいわ」
星野は疲れたのか床にぺたんと座る。
この状況…逃げきるにはどうしたらいいだろうか。
詠理とかいう女のスタンドはハサミを作る能力と見た。
恐らくあれだけのパワーだ、近距離型と見て間違いないだろう。
俺だけが逃げる分には問題無いだろうが、ツレ二人を置いてきてるからそうもいかないか…。
「クソッ!!」
俺はその辺に転がっている手頃な大きさの石を手にとり詠理に投げつける。
球速は100km/hは軽く出ているだろう。
バチーン
スタンドでいとも容易く弾かれた。
「こんなのであたしを倒せるとでも思ったわけェ?
攻撃ってのはこうやるんだよっ!!『ジグ・ジグ・スパトニック 』!!」
スタンドで拾った小石を無数に投げつけてきた。
かなりの速さで反応も出来ない…それどころか、
石はハサミへと変化した。
「ハサミ!?」
「チョキチョキ〜!」
「ぐおあああああああああ」
俺の体は小さいハサミによって切りつけられた。
内臓にこそ届かなかったが、これを何回も繰り返されると確実にまずい。
時計に目をやるが星野にスタンドを退化させられてから三分しか経過していなかった。
こ、殺される…!!
- 121 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/23(火) 14:29:29 ID:hBM8Mtj20
- 「急に興味失せたわ…私は寝るから起こしてね詠理…」
余裕づらかきやがって…クソッ!
「触れたものなら何でもハサミに出来るのよ…例えば私の手でもねっ!」
『ジグ・ジグ・スパトニック』が詠理の手に触ることによって手はハサミに変わった。
あの大きさのハサミで切られたら胴体を持っていかれかねない。
攻撃をかわしながらあと一分半経つのを待つのが得策か…!
「そーれ!!チョッキンチョー!!」
「くッ!ふッ!おっと!」
「避けたら当たらないじゃない!…でも、残念!脚もハサミに変えてたからね」
詠理は体の半分以上もある長い脚をこちらへ蹴り上げてきた。
脚はハサミになっており、避けきれずに直撃を腹に喰らう。
「がぁぁあああああ…!!」
俺は苦痛に顔を歪める。ドクドクと生暖かい血液が洪水のように溢れ出す。
「飽きたからこれでオシマイ!!」
そう云うと手のハサミをこちら目掛けて振り下ろしてきた。
- 122 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/23(火) 14:35:28 ID:hBM8Mtj20
- 書き溜め分はここまで…続きは今から考えます
いろいろとひどいなぁ…はぁ…死にたいw
>>107
ありがとうございます
日常系は書くの難しいし読んでてもつまらないだろうからさっさとバトらせましたw
白衣の女当たってました?
>>108
いやぁ…ねぇ?w
そう言ってもらえると助かりますよホントに
>>109
いざという時スタンド使いなってもいいように見た目はスタンド使いから取ってますw
まだ全員スタンド使いにするかは考えてません
- 123 :名無しのスタンド使い:2010/03/23(火) 14:45:28 ID:???O
- ジグ・ジグ・スパトニック出たかwwwww
じゃあ東雲雪華ちゃんもスタンド使いになるといいな
乙でした!
- 124 :名無しのスタンド使い:2010/03/23(火) 14:54:51 ID:???0
- 乙!
好きなスタンドスレでの布教も無駄じゃないってこったな
続き楽しみにしてます!
- 125 : ◆U4eKfayJzA:2010/03/23(火) 15:35:07 ID:9XGMp6aE0
- やっぱり、白衣の女のスタンドはファンキー・モンキー・ベイビーズでしたか。
はい、自案です。大当たりでした。うはー……、すげぇこえぇ。
乙でした!
- 126 :名無しのスタンド使い:2010/03/23(火) 17:07:17 ID:pTBXjr5M0
- 初出演なのに謎の貫禄があるなジグジグはwwwwww
- 127 :名無しのスタンド使い:2010/03/23(火) 23:27:52 ID:???O
- 乙!面白かった!
続きが気になります
- 128 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/24(水) 11:12:24 ID:0fAUKcUo0
- >>123
そうですねw
>>124
あー…先に謝っておきます
ごめんなさい
>>125
マジっすかw当たっちゃいましたか…
これまたごめんなさい
>>126
ごめんなさいwww
>>127
ありがとうございます…今から投下しますね
- 129 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/24(水) 11:12:40 ID:0fAUKcUo0
- ガキィイーン
銃弾が直撃し、ハサミは無残にも砕け散る。
「男の子が情けないわね…」
バタフライマスクをしたツインテールの女の子が横から割って入ってきた。
まさかの助っ人登場か!?
「今すぐその傷治してあげるわ…」
マスクの女の子は俺の方へ銃を向ける。
「ちょ、ちょっと!?俺に撃つの!?」
「別に痛くはないから安心していい…一瞬よ」
バシュンッ!
俺の体へ銃弾が埋め込まれる。
するとみるみるうちに傷口が塞ぎ、失った右腕も元通り生えてきたのだった。
「君もスタンド使いなのか…どうして俺を助ける?」
「その…元々は私が悪いのよ…あの動画を撮ったのは実は私」
「マジで!?」
「祐介君にけしかけるためにやったんだけど…まさかこんなことになるとはねェ…」
何で俺の名前知ってるんだろう…?
「いやぁ…ごめんなさい…」
「アンタ達…何よそ見してんのよ…あたしをこんな目に合わせた罪は重いわよ?」
詠理は負傷した手をさすりながらジリジリと近づいてくる。
「フフ…何の騒ぎかと思って目を醒ましてみれば…あの時の盗撮ちゃんじゃなァ〜い!
よくもネットに動画を載せてくれたわネッ!!」
星野が目を醒まして戦線復帰。これで二対二となった。
- 130 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/24(水) 11:13:04 ID:0fAUKcUo0
- 「『ジグ・ジグ・スパトニック 』!!」
「『ファンキー・モンキー・ベイビーズ』!!」
「とっくに5分経ってたぜ!ババァのほうは俺が相手するッ!『U2』!」
「そっちは任せたら祐介君!」
『U2』で石を拾って星野へ投げつける!!
「馬鹿ね…そんなもの私の『F・M・B』で…」
「石の質量を重くする…!」
「なッ…何ィイイ!?」
『U2』は重くするタイミングなどある程度コントロール出来るので星野がスタンドで防御すると同時に重くしたのだ。
その運動エネルギーは実に高速道路を走る車の60倍倍以上。
「ひぎゃァアアアアアアアアアア!!!」
星野は『F・M・B』でガードしたが耐えきれず腕がひしゃげる
「そして射程範囲だ…」
「ヒッ!まっ…」
「ボーノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノォォォ―――ジ・エッジ!!!」
『U2』で大量の石ころを星野の口の中へ詰め込んでその石ころの質量を重くする。合計15t相当だ。
- 131 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/24(水) 11:13:24 ID:0fAUKcUo0
- 「ぎぃやアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーー!!!」
グオッチュラレロラレロォォォオオオン
星野の体を石ころがブチ破り、見るも無残な物体へと成り果てていく。
「地獄でたっぷり可愛がってもらいな…もちろんペットとして」
俺は隣で行われてるバトルの方へ目を向ける。
「アハハ!ツインテマスクちゃん(仮)中々いい動きするじゃない!」
「……」
「何か言いなさいよ!」
「そうね…やっと充填出来たとこよ…これで…撃てる」
「はい?」
「大事な祐介君をこんな目に合わせたアンタへの怒りッ!『コミュニケーション・ブレイクダンス』!」
チャキ…バシュゥゥン!!
銃弾は詠理の胸へ撃ち込まれた。
「うっ…うわあ…ちょ…ちょっと待って…そんなの嫌だ…」
詠理の全身に切れ目がじわじわと入っていく。
「どう?自分を切られる気分は?」
「嫌だああああああああ死にたくないーーーーーーーッ!!!!」
「残念ね…一度撃った弾は取り消し不可能なの」
マスクの女の子はニコッと笑う。
「うわあああああああああああああああああああああああああ」
バリバリバリバリバリバリバリ
詠理の体は無数の切れ目が裂けてバラバラの身体となる。
- 132 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/24(水) 11:13:41 ID:0fAUKcUo0
- 目を背けては駄目だ。こいつらをほっとけばいずれもっと大勢の犠牲者を出してしまうだろう。
警察なんかに突き出して何とか出来るとも思えない。
殺すしか他なかったんだ。それはこの女の子も同じ考えだと思う。
マスクの彼女は何事も無かったかのようにクルリと踵を返してこちらを向く。
「祐介君…見くびってたけど中々やるじゃない」
「そ、そうかな…」
「テストは合格点をあげてもいいわ」
「ふへっ?何のテスト?」
「私の相棒よ。まだまだ隙が多いけど鍛えればまだまだ強くなると思う」
「あ、相棒ねぇ…」
やれやれ、また面倒なことに巻き込まれた予感がするぜ…。
「はい、これ私のメアドと電話番号!」
サラサラと紙に書いて俺に渡してきた。
これが雪華ちゃんのメアドならどんなに嬉しいことやら…。
「わざわざどうも…」
「何かあったら連絡してね。あ、こっちから連絡することもあるからちゃんと出てよ」
「はいはい…ところであいつらは…いわゆるその…組織の連中って奴だよね?」
「すでに知ってるのね…なら話は早いわ
組織名は『ヴェーダ』。この世界を変革するだとか云ってるイカレ集団よ
私の両親も奴らに殺されたわ…そう、あなたと一緒ね」
「そう…えーと…君は…」
「ユキでいいわ」
「じゃあユキ…さんは今まで単独で行動してたの?」
「ええそうよ。でも、ヴェーダを壊滅させるには戦力が必要…
そこで祐介君を相棒にしようと思ったの」
どこで俺のことを知ったのだろうか。
まさか旅行先での戦いを見ていたのかな?
- 133 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/24(水) 11:14:01 ID:0fAUKcUo0
- 「実戦不足は否めないけど戦力としては申し分ないわ
それに…君の勇気は大したものよ
動画を撮ったのも来てくれるという確信があったから…」
餌に釣られたクマー。
単独でってことは久坂さんたちとは関係ないってことか。
「それじゃそろそろ私は行くわ」
彼女は踵を返し、暗闇の中へ溶けるように去っていった。
その後姿はどこかで見覚えのあるような印象があったが…。
ユキと名乗る彼女は一体何者なのだろうか。
ただ一つ確実に云えることは、俺は戦いの中に身を投じているということ。
もう後戻りは出来ない…。
ヤマトとカズマに電話をかけてみると近くのファミレスで飯を食ってるらしい。
人が命がけで戦ったというのになんとも薄情な、と思う一方で巻き込みたくないという気持ちのほうが強かった。
しかし、説明すると云った以上云い逃れすることも出来ないので、スタンドのことや事の顛末を話すことにした。
もちろんユキの存在は省いてだが。
*
これにて一連の神隠し事件は終止符を打たれた。
俺たちの街にも一時の平穏が戻ったが諸悪の根源は未だ絶たれていないままだ。
奴らを一掃しないことにはこの街…いや、この世界に真の平和は訪れないだろう。
家に着いた頃にはすでに八時を回っていた。
兄貴と妹は料理を作って待っていてくれていたようだ。
俺は椅子に腰を落とす。
「よっこらセバスチャン」
*
- 134 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/24(水) 11:14:17 ID:0fAUKcUo0
- ―――ヴェーダ本部 会議室
部下A「星野十音と希桜詠理の死亡を確認いたしました。および死体の回収を―」
幹部A「報告ご苦労。全く…無様な姿を晒しやがって…」
幹部B「過去ばかりに執着する者が今を生きれるはずが無かろう…
あの女の研究はくだらないものばかり…無駄が削減出来てちょうどよかったくらいじゃな」
幹部C「フン…俺は最初からあんな女など信頼していなかったよ」
幹部B「有嶋の小僧がちょこまか動いとるようじゃのう」
幹部A「そのようですね。子供だからと九年前は見逃してやったのに…愚かな」
幹部C「目障りだな…久坂の連中の動向も気になる」
幹部A「で、どうなさいますか?」
ヴィシュヌ「ホッホッホ…誰が尻拭いをするかの…?」
シヴァ「ま、いいだろう。我が直轄部隊『ガネーシャ』を動かそう」
ヴィシュヌ「ワシが見たところあやつらは才能に充ち溢れとるぞい。
せいぜい見くびらないことだな」
シヴァ「フン…あなどるなよ…都市一つ制圧出来るほどの少数精鋭部隊だ」
幹部A「分かりました…奴らの情報はすぐに部下に集めさせます」
ブラフマー「それよりあの計画はちゃんと進行してるだろうな…?」
幹部B「抜かりはございませんじゃ…いつでも実行に移せます」
ブラフマー「よかろう、では『インドラ』の小隊を招集させろ」
幹部B「ハッ」
To Be Continued...
星野 十音(ほしの・とおね)
スタンド名『ファンキー・モンキー・ベイビーズ』
→死亡。死体は回収済み。
希桜 詠理(きざくら・えいり)
スタンド名『ジグ・ジグ・スパトニック 』
→死亡。死体は回収済み。
有嶋 祐介
スタンド名『U2』
→この後自費で金属バットを弁償。
ユキ(謎のバタフライマスクの女)
スタンド名『コミュニケーション・ブレイクダンス』
→目的達成。
- 135 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/24(水) 11:59:04 ID:0fAUKcUo0
- 使用スタンド一覧、及び登場キャラ紹介
●星野 十音(ほしの・とおね)
【スタンド名】ファンキー・モンキー・ベイビーズ
考案者:ID:RevTgO20
絵:ID:VfS8blIo
生物学・遺伝子工学の博士。3年前にヴェーダの研究所に引き抜かれる。
年齢は20代後半。独身。
何十人もの人間をさらっては実験を繰り返し、化物へと変えていた。
研究所を私物化していたので周りから煙たがられていたり。
●希桜 詠理(きざくら・えいり)
No.1347
【スタンド名】コミュニケーション・ブレイクダンス
考案者:ID:2WHRYSk+O
絵:ID:ZwX9S9z80
星野博士の助手。自傷癖がある。
刹那的な考えを持っているので楽しければ後先考えず行動する。
●ユキ(謎のバタフライマスクの女)
No.1123
【スタンド名】ジグ・ジグ・スパトニック
考案者:ID:pkFPNHwC0
絵:ID:DetKkpXg0
7年前にヴェーダによって両親を殺害される。
誰も彼女の正体は知らない。
●橘 楓(たちばな・かえで)
祐介と同い年で同じクラスで同じアパートの住人。スポーツ万能で陸上部。
嫌いなものはお化け。学業はそれなりに優秀。
●鍛冶 鉄也(かじ・てつや)
祐介とは同い年で幼馴染。硬派。
喧嘩は一度も負けたことがなく、怖がられる存在。
彼が歩くとモーゼの十戒が出来る。楓のことが好き。帰宅部。
●原田 大和(はらだ・やまと)
祐介と同い年で同じクラス。
情に厚いヤンキー。クラス内での地位は高い。帰宅部。
●長瀬 一馬(ながせ・かずま)
祐介と同い年で同じクラス。割とイケメン。
女にモテる。やり捨て上等で取っ換え引っ換え。帰宅部。
●内藤 貴介(ないとう・きすけ)
祐介と同い年で同じクラス。根暗な性格。
オタク内ではよく話す。暇なときは携帯で2チャソを見ている。コンピュータ部。
●東雲 雪華(しののめ・せっか)
祐介が片思いしてる女の子。同い年で同じクラス。
無口無表情で普段は誰とも話さない。
趣味は読書、ゲーム、FX、お絵描き。帰宅部。
●藤原 龍也(ふじわら・たつや)
悪門荘管理人。いつも上半身裸の男。
スタンド使いらしい。
●黒猫K
藤原が飼っている猫。スタンド使いらしい。
その他
1年B組三大美女
古森 芹香(こもり・せりか)、久世 美琴(くぜ・みこと)、結城 未早(ゆうき・みはや)
- 136 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/24(水) 12:05:43 ID:???0
- 疲れたw文章書くのめんどくさいおwww
ジグ・ジグは殺さずに仲間にしとけばよかったなぁ
下手すると俺がジグ・ジグ信者に殺されかねないw
- 137 :名無しのスタンド使い:2010/03/24(水) 12:14:55 ID:b.Jef//YO
- 乙!
ワム続編?でも主役だしコミュニケーション大人気だなwww
それとキャラ紹介ジグジグとコミュニケーションが逆だぜ
- 138 :名無しのスタンド使い:2010/03/24(水) 13:18:59 ID:dD9sQHQoO
- 乙!祐介の友達帰宅部率高いなww
- 139 :名無しのスタンド使い:2010/03/24(水) 13:35:59 ID:???O
- 祐介TUEEEEEEE
ボノボノラッシュNAGEEEEEEE
面白かった、次も期待!
- 140 :名無しのスタンド使い:2010/03/24(水) 15:32:28 ID:???O
- ぼくは、コミュニケーション・ブレイクダンスちゃん!
乙!
- 141 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/24(水) 21:34:10 ID:???0
- やっぱりコメントついてるとうれしいなぁ…
というかこんな稚拙なSSを読んでくださる方がいることに感激
最近TRPGってのが盛り上がってるけどSSがさらにおざなりになりそうだから参加したくても出来無いな
元々スレにおいての本業(?)は絵描きだし…
>>137
素で間違えてたw指摘トンクス
人気スタンドは殺しにくいから扱いづらい。まあ敵なら殺しちゃうけどね
>>138
最初野球部に入れようかと思ったけどヤンキーがスポーツに励んでるのもおかしいと思ってw
>>139
トンクス!
祐介が強いのは今後強敵たちと対等に戦えるようにするためです
>>140
コミュニケーション・ブレイクダンスは今のところ死ぬ予定はないから安心して!
- 142 : ◆U4eKfayJzA:2010/03/24(水) 22:07:51 ID:QwRO.1WI0
- ユキの正体がなんとなく見当ついた気がするぞ。これはニヤニヤが止まらない。
そして、組織はインド神話由来ですか。彼らが何を狙ってるか楽しみです。
乙でした!
>>これまたごめんなさい
いやだなぁ、自分が散々っぱらキャラ死亡を書いてる人間が、自案を惨たらしく殺されるくらい気にする訳ないじゃないですか。
むしろ、華々しく散ってくれて本望ですとも。気がねされてたら、こっちの方が申し訳なかったです。
ともあれ、あの殺し方は凄いなぁ……。よし、参考にしようっと。
>>最近TRPGってのが盛り上がってるけどSSがさらにおざなりになりそうだから参加したくても出来無いな
ですよねー。自分も、余裕があれば参加を考えるんですけど、今は無理です。裏方の手伝いが精いっぱいです。
今後TRPGがしっかりと根を下ろしてくれるといいですね。
- 143 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/24(水) 22:32:43 ID:???0
- >>142
>ユキの正体がなんとなく見当ついた気がするぞ。これはニヤニヤが止まらない。
気づいてもらえて嬉しい
>そして、組織はインド神話由来ですか。彼らが何を狙ってるか楽しみです。
鳥山先生並に行き当たりばったりなので自分でもどうなるのか分からないですw
>いやだなぁ、自分が散々っぱらキャラ死亡を書いてる人間が、自案を惨たらしく殺されるくらい気にする訳ないじゃないですか。
インハリ先生くらいリアルな描写ができればいいんですけどねぇ…
何か自分がキャラ殺すと陳腐になってしまう
是非ともあやかりたいところです…って参考!?何をおっしゃってるんだ…
バトルに関しては消化不良というか…相手が一撃必殺クラスの能力者だから展開しづらかった
>今後TRPGがしっかりと根を下ろしてくれるといいですね。
そうですね。皆さん盛り上げようとしてくれてるので助かります
SS作品雑談スレで「U2がリア充過ぎて死にたい」ってあったけど俺もそう思うw
いつでもスタンド使いに出来るようにキャラをいっぱい出したおかげで祐介君はリア充になってしまった
でも童貞なので安心してねwあと俺にラブコメは書けない
- 144 :名無しのスタンド使い:2010/03/25(木) 16:45:16 ID:y.FdaMgI0
- てか、なにこのエロいツイッター
ttp://twurl.cc/2c5p
- 145 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/29(月) 07:58:41 ID:???0
- 今日の昼ごろに途中の途中だけど投下出来そうです
- 146 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/29(月) 12:41:33 ID:zo1jM1aA0
- 第四章「かつてない危機」
2010年1月16日土曜 午後6時 Y県Y市内 帰り道
あの事件から四日が経ち、すっかり平穏な日常へと戻っていた。
久しぶりに羽を伸ばして遊ぼうと思ってたのだが、あいにく部活の練習。
それでも練習では一生懸命体を動かす。
兄貴は俺たちを養うために好きだった野球を辞めてまで勉強に励んだ。
俺のバイトをして家計を助けたいという提案を頑なに拒んで部活に打ち込めと説得された。
野球をして活躍することが今出来る唯一の恩返しなのだと俺は思う。
友人からは「いいよなユーツーは。青春を謳歌してて」などと言われるけど全然そんなことはない。
何てたって女にモテない。中学時代に三度告白したことがあったが全打席空振り三振。
しかし、まだ一回表の攻撃が終わっただけじゃないか。
残り八回もチャンスがあると思えば希望は持てる。延長戦だってあるさ。
課題だった体重移動も改善出来ていたようで監督から褒められて気分が良かった。
春の選抜ではレギュラー起用もあるかも、と胸を躍らせる。
楽しい妄想をしてる時は足取りも軽く、もう駅が見えてきた。
「ん…何だ?」
耳を澄ますと高架下の奥からガサリと物音が聞こえてくる。
「突入!」という声が聞こえた刹那、五人の武装した者たちが目の前に現れた。
ダダダダダダダダダッ!!
マシンガンの銃声がコンクリートに響いて俺の耳にも伝わってくる。
「クソッ!何だお前ら!!」
俺は必死に『U2』で銃弾を弾くが、些か人数が多すぎて対処が間に合わなくなってきた。
弾き切れなかった銃弾が肩を掠める。
- 147 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/29(月) 12:41:58 ID:zo1jM1aA0
- 「有嶋祐介…どんな強い奴かと思って期待していたのにこの程度とは…ガッカリだよ…
ま、いいさ…これは任務。切り替えだ…『イーヴル・マスカレード』!!」
「お前は俺を満足させてくれるよな…?『スーサイド・ダイビング』!!」
「その綺麗な体じゃそそらないねェ…俺の手で凄惨な死体に変えてやるよッ!『クロスビート』!!」
「気に入らねぇな…お前の位置…見下せるように沈んでもらおうか…『ディーパー・アンド・ディーパー』!!」
「ふぁ〜あ…もう眠くなってきたよ…さっさと片付けなきゃな…『ミッドナイト・クラクション・ベイビー』…」
なん…だと…!!?
全員スタンド使い…そんな馬鹿な…。
しかも、こいつら考えてやがる…スタンドを持ちながら銃を携帯して同時に攻撃を仕掛けるつもりだ。
さて、どうしようね…まともに戦って勝てるとは思えない。だとすれば…。
「逃げるが勝ちだな!あばよ!」
そう、逃げるしか無い。俺一人で何とかしようってレベルじゃないしさ。
「逃げれると思ってるのか…?『スーサイド・ダイビング』で地面をゲル状に変化させるッ!!」
ニット帽を目深に被った男がそう云うと地面がドロッとした粘度のあるゲル状になり、走ろうとしてた俺はガクッと膝をつく。
「クッ…身動きが…しづらい…」
「貰ったァァァー!『クロスビート』ッ!『刃』を叩き込めエエ―――ッ!!」
メタリックなボディを持った敵のスタンドが俺を襲う。
「やれやれ…子供一人相手に五人でリンチったぁ情けないねェ…だが、これで準備は整った」
俺は『U2』で自らの身体を限りなく0に近い重さに変える。
ブオッ!
『クロスビート』の攻撃を仰け反って避けてそのまま宙へと逃走を図る。
十分な高さまで浮いてから重さを元に戻して高架橋に着地する。
- 148 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/29(月) 12:42:23 ID:zo1jM1aA0
- 「逃げやがったぞッ!追えーッ!!」
しかし、このまま走って逃げても先回りをされてしまうだろう。
ならばある程度妨害をしておかなければいけない。
俺は高架橋の壁を『U2』で破壊して破片を奴らの真上から落下させる。
もちろん重量を16t相当に変えて。
「ぐああああああああああああッ!!!」
「お前らスタンドで防御しろォォォーーー!!」
「隊長ッ!奴が逃げていきますッ!!」
「くッ…ただちに六番隊に連絡しろッ!!俺らも合流する…このまま帰ったんじゃ収まりがつかん…!!」
*
午後6時半 Y県Y市内 悪門荘
夕飯の支度をしてる最中に見ず知らずの来客がお宅訪問をしてきた。
手に持つは機関銃、完全武装しており顔はマスクで見えない。
「何だお前たちは…!?」
「有嶋秀彦…我々はお前を殺しに来た」
殺す…組織の連中が俺の家まで嗅ぎつけたか…となると祐介も…。
武装したスタンド使い五人ねぇ…大した徹底ぶりだよ全く。
ダダダダダダッ!!
隣の部屋から銃声が壁を伝播して伝わってくる。
「クククッ…お前だけじゃない…ここの住人は殲滅だ…」
「あの時の戦いを見ていたってことか」
- 149 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/29(月) 12:42:58 ID:zo1jM1aA0
- 「察しがいいな…映像も音声もしっかり撮らせてもらった
では、死んでもらおうか…ッ!『コンフィールド(完全地帯) 』!!」
「俺も行くぜ!『バックストリート・ボーイズ』!!」
「その冷静さ…相手にとって不足はないようですねェ…『フェイド・アウェイ』!」
「……『ミューズ』」
「お前のこと調べたらさァ〜かなりいい会社に勤めてるみたいじゃん…あームカつくなァ〜!『テイキング・オフ』!!」
こいつらの相手をしてる暇は無いッ!
何故なら恐らく妹も襲撃にあっていて一刻の猶予も無いからだ。
戦闘向きのスタンドを持つ祐介はともかく、智恵のスタンドは戦闘向きでは無い…。
急がないとまずい…!!
『ステイアウェイ』で地面に矢印を貼りつけてその上に乗る。
そうすることで矢印の方向に高速移動することが出来るのだ。
玄関を突き破ってアパートの外へ脱出する。
「速いッ!!お前ら逃がすんじゃないぞ!!」
「『テイキング・オフ』!俺のヨーヨーで追跡するッ!!」
物凄いスピードでヨーヨーが俺の背後に迫ってくる。
シュン!
「なッ!?有嶋が消え…!?」
- 150 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/29(月) 12:43:09 ID:zo1jM1aA0
- 「ヒデは俺のスタンド『デッド・エンド』と位置を入れ替えた…!!
つまり…お前らの相手は俺だってことよ!!」
そこに現れしは見慣れた顔。
「京輔…お前ッ!!」
「へっ…いいってことよ!帰ったら飯でも奢ってくれよなー?」
「おいよォーお前ばっかり目立ってんじゃねーぞ京輔!」
背後から現れたのは俺の友人である大沢圭吾。喧嘩大好きのバトルマニアである。
「圭吾…お前まで…」
「いいから速く行けってんだ…ここは俺らで十分だ!
帰ったら酒でも飲もうぜ…」
おいおい…こいつら死亡フラグ立ててんじゃねーよ…
しかし、いいタイミングで来てくれたな…恩に着る。
「そんじゃま…行くかね!『デッド・エンド』!!」
「『ファイヤー・フォックス』!テメェらかかってこいやー!!」
「バカめが…死がほんの少しだけ遅くなっただけだぞ有嶋秀彦…」
『ステイアウェイ』での走行は時速80km前後出るが、直線方向にしか進めない。
そのためいちいち矢印の向きを変えなければならないので神経を削る。
タクシーをひろったほうが得策だろう。
*
- 151 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/29(月) 12:43:57 ID:zo1jM1aA0
- とりあえず書けたのはここまでです…眠い…
- 152 : ◆U4eKfayJzA:2010/03/29(月) 14:06:51 ID:S9gChr9c0
- な、なんという危険な展開……。これほど圧倒的に不利な立場に置かれた主人公チームがあっただろうか!
乙でした!
……やられた、スーサイド・Dに銃を持たせるのを先越された。こっちも考えてたのにotz
- 153 :名無しのスタンド使い:2010/03/29(月) 14:48:58 ID:d92HCGjEO
- これは熱いなwwww
U2応用きくな!
乙!
- 154 :名無しのスタンド使い:2010/03/29(月) 17:36:04 ID:???0
- 乙!
なんという大量襲撃www
- 155 : ◆R0wKkjl1to:2010/03/29(月) 19:29:03 ID:7q4Dn/SUO
- 敵が多すぎてガチで戦って勝てる絵が想像出来ない・・
いや、そこは策略で上手いことやるんでしょうがw
とにかく乙です!!
- 156 : ◆WQ57cCksF6:2010/03/29(月) 22:56:58 ID:YEqPXrqU0
- やべえなにこの数wwwwwww
絶望感パネエwwwwwwwwZAINみたく、このハラハラ感は乙1先生の得意分野だね!
たまんない!わたしもう脱いじゃうッ!
- 157 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/30(火) 01:16:11 ID:???0
- >>152
今まで主人公サイドを強く描写していたので窮地に立たせてみたくなりました
>こっちも考えてたのにotz
先取りしちゃってサーセン…w
>>153
U2の使い方考えるのは楽しい作業ですw
>>154
これどう収拾つけたらいいんでしょうねw
>>155
何とか上手いこといくようにしないといけませんね…
自分でハードル上げた感があるぜw
>>156
サンクス!
大人数バトルは捌ききれないと学習したはずなのにまたやっちゃったよ
主人公サイドのキャラ殺したくてうずうずしちゃうw
- 158 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/31(水) 02:17:56 ID:???0
- さらに大勢のスタンド使いを出す必要が出てきてしまった…
探すのも大変だなぁ
- 159 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/31(水) 04:40:17 ID:YASVgxkw0
- 午後7時 Y県Y市内 悪門荘
「ハァ…ハァ…」
盗んだ自転車でようやく到着。
「なんてこった…これじゃあまるで…戦場じゃないか」
血と硝煙の臭いが鼻腔をツンと刺激する。
「祐介君…いいところに来たよッ!」
「ご、吾郎さん!悪門荘にも奴らが襲撃していたんですね…!?」
「そうだ…ここの住人と秀彦君の友人とで戦ってるけど手に負えたもんじゃない!!
何せ奴らの人数は……十人だ。武装してるどころか訓練された手練…!」
圭吾さんに京輔さん、藤原さん、黒猫K、楓、楓のお父さん、五十嵐さん、吾郎さん、そして見ず知らずの男。
確信はないが恐らく【開かずの六号室】の山本さんだと思われる。
その風貌は金髪長髪でメガネをかけた長身細身の男だった。
小汚い印象はなく、むしろ清潔感溢れたスタイリッシュな感じ。
どんな化物が出てくるかと思えば…期待はずれだなと思ったが今は胸の内に留めておこう。
「山本さんはよくやってくれてるよ…彼がいなければ俺たちは今頃カラスの餌になってたさ
そんなことより俺たちも応戦しようッ!」
「フッフッフ…ハハハハハ!!!」
突如背後から馬鹿笑いが訊こえ、俺は振り返る。
「有嶋祐介ェ〜…テメェはここに来るだろうと思ってたよ」
「逃げようなんざ考えないことだな…せいぜい俺を満足させてくれよッ!!」
そこにいたのは高架下で出会ったイカレポンチ集団だった。
- 160 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/31(水) 04:40:51 ID:YASVgxkw0
- 「そして、増援要請しておいた六番隊と合流だ…!」
今度は新たな五人組の男たちが塀の向こう側から現れる。
何と悪門荘に総勢二十人の敵の小隊が集結してしまった。
こいつらは五人で活動してることから四つの小隊がここにいるのだと思われる。
二十人VS十人+一匹とはね…もう少しパワーバランスを考えるべきだろう…常識的に考えて。
しかも俺たちは一人あたり五人倒さなきゃいけないわけで…。
「フハハ!お前らは俺たちが相手をするッ!!」
「たった二人の丸腰相手に十人で袋叩きなんてカッコ悪いぜ?」
「関係ないねェ〜俺たちは手段は選ばない…重要なのは過程ではなく結果なのだ」
「隊長よォ〜…そろそろ殺っちまいましょう…さっきから俺の右腕が疼いて仕方ないんだよォ…」
「そうだな…こいつらはホロコーストしなければならない
総員かかれェ!!」
十人もの男たちは銃を構え、小刻みなリズムの足音を立てながらこちらへ前進してくる。
「祐介君…覚悟はいいか?」
吾郎は俺に問う。
「もちろんですよ…そっちこそビビって怖気付かないで下さいよね?」
「…言うねェ。それじゃ祐介君行くよッ!!」
バラララララララララッ
奴らはマシンガンを俺たち二人に向けてぶっ放す。
俺たちはスタンドを出してラッシュをして銃弾を弾きながら直進する。
「正面突破ァァァーーー!!」
俺は『U2』で目の前にいた敵スタンドの頭を殴るが、寸前のところで避けられてしまう。
だが、ヘルメットにはかすった。
- 161 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/31(水) 04:41:17 ID:YASVgxkw0
- 「ハッハー!そんなぬるい攻撃が俺様に当たるわけ―――」
「お前のヘルメットを重くする」
「うごォァアアア」
男はボキボキと首の骨を折りながら頭を地面に打ち付けられる。
「隙を見せたな…喰らえ『クロスビート』!!」
背後に忍び寄る影。何ということだ…隙を与えてしまった。
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ。
「祐介君油断しないッ!」
そういうと吾郎は『セファリック・カーネイジ』のポットの中から拳銃を取り出して俺の背後にいる男へ撃ちつけた。
男が『クロスビート』で銃弾をガードする隙に俺は射程距離から逃れる。
「吾郎さんサンキュー…危なかったぜ…」
「だから油断しないでってば!!ほら、もう目の前に敵が来てるよッ!!」
「ああもう…眠い眠い眠い!!!殺す殺す殺す!!!『ミッドナイト・クラクション・ベイビー』!!!」
男は懐中電灯をこちらへかざす。スタンドで攻撃しないのか…!?
「な、何だ…!?どうにもならないじゃないか…」
「この暗闇においてこの懐中電灯の光は銃よりも威力を発揮する…ンー…シットッ!眠いッ!!」
自分に向けられていることに気づいた時には既に遅かった。
光を当てられていた腹の一部が突如重くなり、ズドンと肉片が地面に落ちてぶちまけられる。
「ぐはァ!!」
俺は手をついて地面に血反吐を吐く。
嫌でも自分の肉片が目に入り、胃液が喉をこみ上げてきそうだった。
- 162 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/31(水) 04:41:33 ID:YASVgxkw0
- 「祐介君ッッッ!!!」
吾郎さんは助けたくても同時に何人も相手にしていてその場から離れられないみたいだ。
意識が朦朧としてきて「このまま寝てもいいかな…」などと思ってしまったが、自分に一喝して再び奮い立たせる。
「中々様になってきたじゃねェーかよォォォ―――あぁ…やべ…興奮してきた…
もっとだ…もっともっと傷つけてあげなきゃなァァァ〜〜〜
『クロスビート』で刻みつけてあげるからねェェェェェェ―――ッ!!」
「うるせぇよキチガイ。お前のゲスで汚らしい声が耳にまとわりついりまったじゃねーかよ」
「!?ほう…えらく威勢がいいなガキィィィ―――!!殺した後でた―――っぷり死姦してやるからよォオオオ―――!!!」
「光の重さを喰らえッ!!」
「六番隊の俺も参戦するぜッ!!いい波に乗らせてくれよ―!!『ハートウェーブ』ッ!!」
三人一斉攻撃。銃による攻撃も休めないままスタンドで攻撃をしかけてくる。
俺は自らの足場を『U2』で重くして地面を凹ませる。
スカッ
俺は凹みの中に身を屈めて敵の攻撃を避ける。
「チィ…身の軽い奴だな…だがッ!今度こそ逃がさんッ!!」
「ボノボノボノボノボノォ―!!」
地面の土を掬い上げるようにして敵に撃ちつける。
「目が…目がああああああああああ」
ゴミが入った程度で済むと思うなよ。
「ぐああああああああああ―!!目が…目が潰れるゥゥゥウウウウウウウウウウ」
両眼に入った土は目を貫き、身体を貫通して地面へと落ちていく。
目を貫かれた男は「うぐぅぅぅ」と喘ぎながらうずくまる。
- 163 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/31(水) 04:42:17 ID:YASVgxkw0
- 「テメェ―――!!ちょこまかと小賢しいぞッ!!『ハートウェーブ』ッ!地震波を起こせッ!!」
「やれやれ…私もそっちの助太刀をするか…『エグゾリウス』ッ!!」
「決めたぞ…こいつを殺したら寝るッ!!」
地震、妙な音、懐中電灯の光が同時に俺を攻める。
「うわァ!足場がグラグラと揺れてまともに立てねェ!!
しかも、何だこの音は…うぐッ!心臓の鼓動が…急に速くなってき―――」
ゴバァァァ!
懐中電灯の光で胸を潰され―――
……
意識が…朦朧としてきた…
吾郎さんが必死に…俺の名前を呼んでくれてるが…だんだん聞こえなく…なって…きた…
俺は…ここで…死ぬ…のか…
みんな…兄貴…何にも…出来な…くて…ご…めん…な…
………
……
…
*
- 164 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/31(水) 05:11:17 ID:YASVgxkw0
- 午後6時38分 Y県Y市内 悪門荘
「運転手さんッ!もっと飛ばしてくれないか!?」
「む、無茶言うなよッ!!もうこれでも法定速度を軽くオーバーしてるんだぞォ〜?」
「じゃあ俺に運転代われッ!!」
『ステイアウェイ』の手刀を当てて運転手を気絶させて助手席に座らせた後にスルッと運転席に流れ込む。
「よし…飛ばすぜ」
ギャルルルルル
道路を走行中の車をジグザグに避けながら時速100km近い速度で運転する。
妹がどこにいるかは分からないがとにかく探すしか無い。
携帯を開きメールが着てることを確認する。祐介からだ。
内容は帰り道で妙なスタンド使いの武装集団に襲われた事。
襲われた時刻はほとんど俺と同じだった。六時半…。
「まずいなこりゃ…」
最悪の事態が脳裏によぎる。
いや、マイナスのほうに考えるな…。
一秒でも速く智恵の元に駆けつけることだけに集中するんだ…。
それから5分ほど飛ばしてあぜ道に入る。
ザァアアアアアアアア
晴れていたはずなのに唐突に雨音が耳に飛び込んできた。
ふと右の田んぼに目をやるとその異変の正体に気付く。
「…!?あ、あれは…!!」
田んぼの上にだけ豪雨が降り注いでいた。
俺はその事象を知っている。だからすぐに理解出来た。
「智恵は生きてるッ!!」
- 165 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/31(水) 05:12:25 ID:YASVgxkw0
- とりあえずここまでです…今からまた考えます…
- 166 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/31(水) 06:24:54 ID:YASVgxkw0
- 『ステイアウェイ』のラッシュ時の掛け声募集しますw
- 167 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/31(水) 07:30:55 ID:YASVgxkw0
- いや、ごめんなさい
やっぱいいです
そして投下します
- 168 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/31(水) 08:06:27 ID:YASVgxkw0
- あれは智恵のスタンド『アクアティック・アンビエンス』の能力。
戦闘を得手としたスタンドではないのだが、能力が切れてないってことはまだ生きてる証ッ!
俺は急いで車と停めてから豪雨が降り注ぐ田んぼへと駆け寄る。
40m2にも及ぶ豪雨の空間。
「智恵ッ!!いたら返事してくれッ!!」
返事がない…いや、この豪雨の音にかき消されてるのかもしれない。
中の様子も激しい雨のせいでよく見えなかった。
凝視して見ると五人の男が雨に打ち付けられていた。
しかし、ゆっくりと前進している。その進む先に頭を抱えてしゃがみ込む智恵の姿があった。
智恵の半径1mの間だけは雨が振っていないようだ。
「俺が入っても敵のヤツら同様身動きを奪われそうだな…ならば」
俺は射程距離が10mある『ステイアウェイ』で雨の中へ入る。
『ステイアウェイ』とは視覚を共有しているので中の様子がぼんやりとだが把握出来た。
やはり俺を襲撃した連中と同じ格好をした五人組である。
こいつらは五人一組の小隊か何かだろうか。
「な、なんだテメェ!?」
奴らは『ステイアウェイ』の存在に気付く。
「こいつ…濱元らと戦ってた…そうだ、有嶋秀彦のスタンドだ」
「ああ…つまるところ有嶋智恵の兄か」
「ってことはだ…三番隊はこいつの抹殺に失敗したってことか」
「では我々四番隊がまとめてこいつも倒すとしよう」
「一旦雨の中から脱出してまずはこいつを叩くぞ」
- 169 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/31(水) 08:07:12 ID:YASVgxkw0
- 雨で奴らの会話は聞こえづらかったが俺を殺そうとしてることは分かった。
むしろ好都合だ…どのみちここからでは距離的にあいつらを攻撃出来なかったしな。
そして、雨でずぶ濡れの五人組が姿を見せる。
といってもマスクで顔は見えないが…。
「どうした?来いよイケメン君…すぐに楽にしてやるよ」
「長身でスタイルのいい君の…『断面』ッ!観てみたいなァ〜」
「シュコー…さっさと終わらせてガキのほうも殺るぞ…シュコー」
「ククク…イイ声で啼けよォ…」
「いいか…俺が正面、寺沢と御堂が右、倉繁と窪田が左な
俺が合図を出すから一斉に攻撃しろ」
「来るなら来いよ…」
絶望的とも云える五対一のスタンドバトル。
だが、活路はあるはずだ…それを何とか見つければ勝機はあるはず。
先手必勝!相手より先に攻撃を開始する。
「『ステイアウェイ』ッ!!」
「むッ…ッ突入!」
バラララララララッ
奴らは手元に構えたマシンガンを乱射してくる。
俺は既に準備しておいた小さい無数の矢印を飛んできた銃弾に貼り付ける。
このくらいの動作は俺の『ステイアウェイ』の精密動作性ならワケはなかった。
「ま、俺はこれいらないんで返却させて貰うよ」
銃弾はギュンッと急カーブし、主の元へと帰っていく。
「く、クソッ!!」
奴らは慌ててスタンドでガードするが、一人は右手に、もう一人は左足に銃弾を受ける。
上手い具合にマシンガンも破壊出来たようだ。
先制攻撃…いやカウンターは成功と云ったところか。
- 170 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/31(水) 08:07:33 ID:YASVgxkw0
- 「『チョコレート・ミルク』ッ!!攻撃しろォ―――!!」
男の傍に茶色い人型のスタンドが出現し、白い液体をこちら目掛けてぶっぱなしてきた。
俺は足元に矢印を貼りつけて斜め後ろに後退する。
「いいかお前らァ!スタンドを出して攻撃しろ―ッ!!『オブソリード』ッ!!」
「『ワン・デイ・リメインズ』ッ!!」
「『スキッド・ロウ』ッ!!」
「『クワイエット・ライフ』ッ!!」
「『チョコレート・ミルク』ッ!!」
来るッ!!攻撃がッ
俺は『ステイアウェイ』の腕に矢印を貼りつけてパンチを加速させる。
パンチは『ワン・デイ・リメインズ』の顔面を捉え、『チョコレート・ミルク』が発射した白い液体のほうへぶっ飛ばす。
地面に貼り付けた矢印を急加速させて他の攻撃を咄嗟に躱す。
『ワン・デイ・リメインズ』の本体は白い液体によるダメージをフィードバックしたようで前進が溶けてただれている。
「ぐゥゥゥ…くそォォオ」
「倉繁が負傷した…俺たちでカバーして戦うぞッ!」
「ああ…倉繁…お前はここで休んでろ」
意外にも仲間意識があったようで驚いた。
だからと云って手加減などするつもりはさらさら無いが。
- 171 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/31(水) 08:08:17 ID:YASVgxkw0
- 飛び込んできた『クワイエット・ライフ』とラッシュの応酬をする。
「アロアロアロアロアロアロアロアロアロアロアロアロ―――アロークロスッ!!」
「覚醒覚醒覚醒覚醒覚醒覚醒覚醒覚醒覚醒覚醒覚醒覚醒覚醒ィイイ――――ッ!!」
パワーでこそ押されていたがスピードではこちらが一枚上手と云ったところで何発か奴にくれてやることが出来た。
しかし、こちらも奴の破壊力のあるパンチで手が痺れていた。
「貰ったァ―!」
横から割って入ってきた『オブソリード』の攻撃が腹にヒットする。
破壊力はさほどないようですぐに立ち上がることが出来た。
「ククク…テメェはこれでマーキング済みだッ!!」
シュンッ
『オブソリード』と本体は突如俺の目の前に現れて今度は顔面を攻撃してきた。
スタンド自体の速さもそうだが、瞬間的に現れたため反応が出来なかったのだ。
自分の腹を見るとマークのような物がつけられていた。
対象にマーキングして目の前に瞬間移動するのが奴の能力…。
「『スキッド・ロウ』ッ!奴を分割しろォォォォ―――ッ!!」
ふいを突かれてまたもや対応が遅れる。
咄嗟にスタンドの腕でガードした瞬間、俺の左腕は竹を割ったようにパカッと割れてしまった。
「フハハ!!中々イイ筋肉と骨じゃないか!!良質ゥ!良質ゥ!」
男は前のめりになって俺の腕を覗き込む。
「もういっちょッ!!」
今度は上腕部から下の部分が輪切り状に分割される。
しかし、妙なことに指を動かそうとすると切り離された指は動く。
- 172 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/31(水) 08:08:59 ID:YASVgxkw0
- 「気付いたか…そうだ…分割してもその連続性は保たれている
だが…分割を決定すれば…」
ブシュウウウウウ
「うぐッ!!」
急に腕の感覚が失われ、切り離された部分から大量の血が吹き出す。
「フッフッフ…今度は脚いくか?」
「今だッ!『チョコレート・ミルク』こいつを溶かせッ!!」
またもあの白い液体だ。避けようとするが脚にかかってしまった。
ぐじゅぐじゅと音を立てながら俺の脚はじわじわと溶けていく。
溶けていく際にこの世の物とは思えないほどの痛みを体験する。
ぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅ
ぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅ
ぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅ
「ぐァアアアアアア…アァ…」
「もっと苦しめッ!啼けッ!喚けッ!!地に頭をつけて懇願しろッ!!
『妹の命はどうでもいいから自分だけは助けてください、お願いします』ってなァァァ―――ッ!!」
「……」
耳障りな下卑た雑音が俺の耳を汚染する。
「何とか言えやゴラァァァ――――!!!」
男はドカドカとうずくまる俺の横腹を蹴り続ける。
「バァ!!!」
俺は身体を起こし、『ステイアウェイ』を上半身だけ出して右腕で男の腹を貫く。
懇親の一発をお見舞いしてやった。
「テ…テメェ…まだそんな力が……」
男がバタンと倒れたと同時に俺も地に伏してしまう。
奴らを倒そうという意思に反し、身体は正直だった。
おびただしい量の血液が流れて俺は極度の貧血状態にあり、意識が薄れかけつつあった。
他の連中が集まって俺をボカボカと殴りつけてくるがもはや痛覚は感じられなくなっていく…。
智恵…祐介…みんな…スマン…助けられなかった…。
深い悔恨を残して俺は深い眠りにつくのだった…。
………
……
…
*
- 173 :名無しのスタンド使い:2010/03/31(水) 14:06:15 ID:???0
- 乙!
助っ人が来ると信じたいけど、まさかここで兄貴退場かw?
- 174 : ◆U4eKfayJzA:2010/03/31(水) 14:52:39 ID:sGFWN0VE0
- うおわぁ……。どこまで行っても先が読めねぇ。
この窮地をどうするんだ! 乙でした!
- 175 :名無しのスタンド使い:2010/03/31(水) 19:03:11 ID:???O
- 兄貴イイイイ!!!
- 176 : ◆R0wKkjl1to:2010/03/31(水) 20:27:29 ID:GPCtOaioO
- もう駄目だ。
兄貴が死んじまう。
誰か助けに来てくれ!
絶対絶命じゃあないですか・・・
乙ですッ!
助けが来るんですよね?ね?
- 177 : ◆70nl7yDs1.:2010/03/31(水) 23:10:27 ID:???0
- >>173
それはどうでしょうね〜
>>174
先が読めないだなんて最上級の褒め言葉で御座います…
作者の自分がどうしたらいいんだ?ってキャラ達に問いただしたいくらいですw
>>175
どうもです
>>176
殺すのもありかなーなんて思いつつも幾ら何でもまだ早すぎますよね
まだまだ活躍してもらわないと!
というわけで続き書いてきます
最近忙しくてSS書いてると何にも出来なくて困るw
スタンドリストとか全然更新出来ないよォォォ…
- 178 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/01(木) 08:05:35 ID:Wr8ksB.Y0
- 投下します
一人称視点だったり三人称視点だったりとコロコロ変わるので注意でし
- 179 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/01(木) 08:06:27 ID:Wr8ksB.Y0
- 「祐介君ゥゥゥ――――――――ン!!!」
沈黙する祐介の体を見た吾郎は咆哮する。
「フハハハハ!お仲間死んじゃったねェ〜悲しいかい?」
「心配するな。お前もすぐにそっちに行くんだ」
黒い防護服を纏った男たちは不敵な笑みを浮かべる。
「隊長、こいつトドメ刺しちゃっていいですか?」
敵の一人が隊長と呼ぶ男に許可を求める。
「構わん、やれ」
「了解ッ!『シンプル・トークン』ッ!!」
男が手に持つペンで空間に棒人間を描き出すとそれは立体化していく。
十体あまりの棒人間軍団の出来上がりである。
「一斉攻撃開始ィィ――!!」
男の掛け声と共に棒人間達は動かない祐介の体を狙う。
「や、やめろォォォ――――!!」
「おっと…テメェは俺らが相手だよ…よそ見すんじゃねーぞッ!!」
吾郎は助けに行こうとするが六人の男達に阻まれる。
「何人たりとも俺の棒人間を止めることは出来な―――あ!?」
バシィ
祐介の体から『U2』の腕だけが出てきて棒人間達の攻撃を受け止める。
「こいつ…どういうことだ!?」
男は先刻に隊長と呼んだ男のほうへ顔を向ける。
- 180 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/01(木) 08:07:01 ID:Wr8ksB.Y0
- 「おそらく無意識の防御…『オート防御』と云ったところか…
こんな芸当が出来る奴がいるとはな」
「クソッ!ならば棒人間二十体追加でどうだッ!!一斉にかかれッ!!」
総勢三十体もの棒人間が祐介を襲う。
しかし―――
バシバシバシィィィッ
「ぜ、全部止めやがった…目も開いてないってのによォ……クソッ…何でだよォ……」
男はあまりの出来事に閉口し、呆然と立ち尽くす。
「ハハ…よく分からないけど凄いや祐介君…俺がこいつらを倒すまで何とか持ちこたえてくれよッ!!」
「舐めた口をほざいてんじゃねェェェ―――ッ!!雑魚の分際でよォォォ〜〜〜」
「フン…雑魚かどうかは…俺に勝ってから云うんだな」
吾郎は『セファリック・カーネイジ』のポットの中から閃光弾を取り出して敵の群れに投げつける。
「ぐわッ!!!目がァアアア!!!」
男は後頭部に冷たくて硬い物体を当てられてるのに気付き、表情は目を見開いて口を大きく開けたまま硬直する。
気付いたときには遅く、頭を鉛玉が貫通していく。
「てッ…てめぇ……」
「な、なんだ!?銃声がしたぞ!?」
男達の視界が徐々に戻っていった頃には吾郎の姿は既に無かった。
「あいつどこへ行っ―――」
「あそこだッ!!」
数十メートル離れた位置に吾郎はいた。
- 181 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/01(木) 08:07:28 ID:Wr8ksB.Y0
- 「お前達に取っておきのプレゼントだよ…」
「ハッ!」
男達は足元に置かれた手のひら大の物体の正体に気付く。
それは、爆弾だった。
「3,2,1…BANG!」
吾郎のカウントが終わったと同時に一帯は爆発して粉塵が立ち込める。
「よし…さすがにこの爆発なら―――」
煙の中から二つの人影が見え、吾郎のほうへ歩み寄っていく。
「もう少し判断が遅れていたら死んでいたぞ…中々やるねェ」
「静観してるつもりだったが…やれやれ…得物を使うか」
二人の男達はマスクが焼け焦げて顔が露となっていた。
一人は筋肉質なサーファー風の男、もう一人はナイフを持った軍人風情漂う男。
「二名生存ですかい…」
ナイフ使いの男は俊敏な動きでナイフを手に持って吾郎のほうへ迫る。
吾郎は持っている拳銃でナイフ使いの男目掛けて発砲する。
ナイフ使いの男はナイフで銃弾を受け止める。
直後、銃弾は火で焙ったチョコレートのようにドロドロと溶けて蒸発する。
「熱…か…」
「『イン・フレイムス』の攻撃を受けてみなッ!!」
ナイフ使いの男はナイフを吾郎のほうへ投げつける。
吾郎は避けようとするが、ナイフは方向転換して追い続ける。
「厄介な能力だな…触れても無いのにサウナに入ってるみたいに熱いよッ!」
「よォ兄ちゃん…俺のことも忘れちゃ困るぜ?」
吾郎が振り返るとサーファー風の男は既にスタンドを出して待ち構えていた。
- 182 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/01(木) 08:08:06 ID:Wr8ksB.Y0
- 「『ハートウェーブ』…電磁波を発生させろッ!!」
吾郎は『ハートウェーブ』から発せられる電磁放射と『イン・フレイムス』による夥しい熱量を持ったナイフの板挟みになる。
「はは…参ったな…」
**
光が一切届かない深海のような空間を漂う感覚。
気づいたら俺はこの真っ黒い空間をさまよっていた。
ここは一体どこなのだろうか…。
暗くて深くてフワフワしてて…何と云えない妙な感覚が俺の全身を包み込む。
しばらく歩くと青い炎がゆらゆらと揺れているのが見えた。
その炎へ近づくとグニャグニャと形状を変えていき、やがて人の形へと変化していく。
不思議と怖いだとか不気味だとかいう感情は抱かなかった。
むしろ懐かしくて暖かい感じだ。
そして、顔のパーツが判別出来るほどにくっきりと見えてきた。
俺はこの顔を知っている。遠い遠い記憶だけど昨日会ったばかりのような感覚。
俺とこの人との時間はあの日で止まっているのだから。
「祐介か…?」
青白くぼんやりと発光する人がこちらへ話しかける。
「ああ…久しぶりだね父さん」
そう、俺の実の父親…有嶋圭史郎だ。
本物だと証明することは出来ないけど感覚で何となく分かる。
「大きくなったな…そんなに離れてるとよく見えないぞ
こっちに来てくれ」
「じゃあ隣座るよ」
ずっと会いたかった唯一無二の存在。
俺は九年間の空白を埋めるかのように父さんが死んでからのことを話し続けた。
- 183 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/01(木) 08:08:23 ID:Wr8ksB.Y0
- 「父さんはずっとここにいたの?」
「ああ…ずっとここにいたよ
それに時間の概念が無いようだ…起きるとか寝るとか云うことも無い
おそらく俺はここに永劫留まるのかもしれないな…はは」
一刻の沈黙。そして父さんは口を開く。
「悪かったな…お前たち三人を残して先に死んでしまって…
しかもお前達が狙われた原因は全て俺にある…
俺がここに取り残されたのも罰なのかもな」
「父さんは悪くないよ…
奴らをほっとけないのは俺たちも同じだし…
俺たちは覚悟して決めたことなんだ。後悔はないよ
それに――これからは俺もここにいるよ」
「いいや…お前はここにいちゃいけない
帰るべき場所があるだろう?」
そう云うと父さんの体は強く光だし、辺りを照らし出す。
とても暖かくて優しい光。
父さんが進むべき道を照らしてくれる。
「祐介…お前の信じる道を行くんだ」
ありがとう。
それじゃもう行くね。
俺は眩い閃光の中に身を投じていく。
**
「秀彦君ッ!大丈夫!?ねぇ…起きて…!!」
誰だ…俺の名前を呼ぶのは…。
- 184 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/01(木) 08:08:41 ID:Wr8ksB.Y0
- 「よ、よかった!もうダメかと思っちゃったじゃない…本当によかったわ」
ぼやけた視界が徐々にクリアになっていく。目の前で笑みを浮かべる女性。
その女性は白い服を着ていたので天使なのかな、と思ったがどうやら状況は違ったようだ。
「あなたは…白河さん…?」
「ええ、そうよ!覚えてくれてて嬉しいわ」
そうだ。彼女の名前は白河由衣。
そして、これは天国なんかじゃなく現実だ。
「遅れてすまなかったな…立てるか?」
メガネを掛け、無精髭を生やした茶髪の男が俺に訊いてくる。
その男とは久坂さんだった。
「ええ…死んだかと思ったんですが…白河さんが治してくれたんですね」
「私たちがここへ駆けつけたときは酷い有様だったわ…本当に無事でよかった」
白河さんは目に少量の涙を浮かべながらニコッと微笑んでくれた。
「それじゃ早速で悪いけど君も戦いに加わってもらうよ…
それと…紹介しなくちゃいけないね」
俺は久坂さんが指差す方角へ視線を向ける。
そこには二人の男女がいて、敵と戦っていた。
首に星のアザを持った金髪の外国人女性とオールバックでサングラスをつけたスーツ姿の男。
見た瞬間「この人達は出来る」という印象を抱いた。
俺とは踏んでる場数が違うんだとうなと思わざるを得ないほどの立ち回り。
「女性のほうがジョアンナ・レヴェック、男性の方が鷲崎瑛二だ
彼らは我々の組織『ラムダ』の一員で連中が起こす事件を解決してもらっている
この一件も『ラムダ』の任務なのだよ秀彦君」
久坂さんの解説でやっと状況を飲み込む。
さて、俺もグズグズ寝てる場合じゃないな。
- 185 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/01(木) 08:08:55 ID:Wr8ksB.Y0
- 「じゃあ行きましょう!」
俺は勢い良く立ち上がって戦場のほうへ赴く。
今度こそあんなヘマはしないと誓いつつも味方がいることに安堵を感じる。
「ハハ…負ける気がしないねッ!」
覚悟を決めた者だけが進めるセカンドステージへいざ行かん
**
「お、終わった…」
吾郎は迫り来る『暴力』に震え上がる。
―――死ぬことよりもこのドス黒い『暴力』によって身を蹂躙されるのが嫌だった。
「死ねェェェ―――!!!」
「ヒャッホ―――!!イイ波来てんじゃんよォォォ―――!!!」
吾郎は為す術無く電磁放射とナイフの両方をモロに喰らう。
体がバチバチジュージューと焼け焦げてみるみる灰へと変貌していくのが見て取れた。
「うわあああああああああああああああ」
普段の吾郎からは想像も出来ない壮絶な絶叫。
どうすることも出来ない無力な自分への怒りや悔しさを帯びているような声色。
「へッ!案外あっけなかったな…さあて…二番隊と三番隊は始末し終え―――」
ナイフ使いの男の言葉は眼前のあり得ない光景によって遮られる。
「ど、どういうことだよ…!?」
「こ、こいつ…」
サーファー風の男もあまりの衝撃に後退りをする。
「さて復活したところで第二ラウンド行きますか…」
そこにあったのは吾郎の姿。焼け焦げた亡骸などではなく、傷ひとつ無い未開封の新品。
二人は怪訝そうな顔で吾郎を見つめる。
- 186 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/01(木) 08:09:10 ID:Wr8ksB.Y0
- 「いやいや…お化けでも見たような顔はやめてくれないか?
俺だって何が何だか分からないんだが…」
吾郎も首を傾げる。もはや全員の理解の範疇を超えていた。
「こいつぁグレートですよ…なんつって」
「て、テメェは!!」
背後から訊こえてくる声にナイフ使いとサーファーの男は振り返る。
「あ…あ…」
吾郎は声にもならない声をあげた後、
「祐介君ッ!!!」
と声を張り上げて呼び掛ける。
「死んだかと思ったら生き返っちゃいましたよ…
神龍が蘇らせてくれたのかな?ハハ」
祐介は苦笑いを浮かべて吾郎のほうへ歩み寄る。
「マジで意味わかんね…」
サーファー風の男は肩を竦めて天を仰ぐ。
**
「圭吾ッ!お前中々やるじゃんよ!」
「そっちこそな、京輔!このバトル燃えるぜ―ッ!!」
京輔と圭吾の二人は同時に四人もの敵を相手に互角以上の戦いをしていた。
「お前イカレてんな…戦闘中に笑ってやがる…」
敵の一人が圭吾へ理解不能と云わんばかりのセリフを投げかける。
「馬鹿かテメーは!こんなに楽しいのに笑わねーほうがおかしいだろうがッ!」
- 187 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/01(木) 08:09:43 ID:Wr8ksB.Y0
- 「キチガイめが…」
「ファァァイユゥゥゥァァァ―――!!!」
圭吾は腹の奥から声を振り絞って渾身のパンチを繰り出す。
「『ミューズ』ッ!!」
敵はスタンドのドリルになっている右手で突き出す。
ガキィィィィィィィィィィィン
両者のスタンドの攻撃がぶつかり合う。
「ぬゥゥゥ…」
圭吾のスタンド『ファイヤー・フォックス』の拳にドリルが突き刺さり、ヒビが入る。
「俺の勝ち―――」
「この早漏野郎が…」
ビシィィイ
「なんだと…俺の『ミューズ』がああああああああああああ」
『ミューズ』のドリルは相手のパンチの破壊力に耐えきれず、ヒビが広がった直後破裂する。
「『コンフィールド』…今の出来事を取り消せッ!!」
違う敵の男が割って入りスタンド能力を発動する。
「情けのつもりか白石…」
『ミューズ』の右手は一瞬で元通りに戻る。
「お前ともあろう者が奴の土俵に上がってどうする…」
「そう…だな…頭に血が登っていたようだ」
- 188 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/01(木) 08:10:20 ID:Wr8ksB.Y0
- 「お前らまとめて来いよ…!正々堂々と拳と拳をぶつけ合おうぜ!!」
「その手には乗らない…」
そう云うと男は『ミューズ』の体を観音開きのように開閉させて、その中へ入る。
『ミューズ』のドリルがギャルルルルと豪快に音を立てながら地面へと掘り進む。
「クソッ!地下へ潜りやがった!」
「これでいい…こいつを地下へ引きずり込めッ!!」
白石はスタンドを出して圭吾を引き付ける。
「今だッ!」
ガシィ
圭吾は足の首根っこを掴まれて地下へと引きずり込まれる。
「うわックソッ!!」
体勢を崩してこけてしまう。
「お、おい!大丈夫か圭吾ォ!!」
京輔が心配そうに声をかける。
敵二人を相手にしてるため圭吾を助ける余裕はなかった。
「ハッハッハ…燃えてきたぜェ〜…やっと面白くなってきた」
『ファイヤー・フォックス』で必死に地面にしがみつく。
『ミューズ』は引きずり込もうとするがこれ以上進まなくなった。
「スタンドの手を離せない状況で俺の攻撃を避けれるかな!?」
白石は『コンフィールド』を繰り出して『ファイヤー・フォックス』に一撃を浴びせる。
「ぐふッ…お宅いいパンチ持ってるねェ…」
「また笑ってやがる…いちいち癇に障る…クソがッ!!」
迫り寄る『コンフィールド』の攻撃。
- 189 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/01(木) 08:11:04 ID:Wr8ksB.Y0
- 「ウオォォォォルゥゥゥァァァァァァ―――――ッ!!!!」
圭吾は大根を引き抜くかの如く、『ミューズ』を地面から引きずり出す。
そして、その『ミューズ』を盾にして『コンフィールド』の攻撃を防御する。
『ミューズ』の体は破壊され、本体の姿が露となり―
フィールドバックにより胸部から大量の血を噴水のように噴き出してから倒れこむ。
「ファァァァィィイユゥゥゥゥァァァァァ―――!!!」
隙を見せた白石の顔面を『ファイヤー・フォックス』が殴り飛ばす。
「あがッ…」
「俺は別に殺しは趣味じゃねェ…だから後三発で許してやるよ」
『ファイヤー・フォックス』の攻撃を生身の体で受けた白石は全身の骨があり得ない向きに曲がり―意識を失う。
「ま…中々楽しめたぜ」
「そっちも終わったか…」
一段落着いた二人は地面に腰を下ろし、お互いの健闘を褒め讃えあった。
「楓ッ!見とれィ!フンヌッ!!」
筋肉という鎧を着てるかのような大柄のタンクトップを着た男、橘楓の父親はスタンドで敵の顔面を殴りつける。
メギメギメギとマスクは破損し、敵の男は十数メートル先にある悪門荘の外塀に叩きつけられる。
「相変わらず筋肉バカなんだから…」
楓は呆れつつも父親の姿勢を見習って敵と相対する。
「嬢ちゃん…かわいいねェ…へっへ…」
敵の男は下劣な声をマスクの中から漏らして楓に掴みよる。
- 190 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/01(木) 08:12:03 ID:Wr8ksB.Y0
- 「もう我慢出来ねェ…ここで犯しちまうかァァァ〜?」
「やれるもんならやってみなさいよ…」
楓は男を挑発する。
「フフフ…諦めたようだねェ…いいよォ…まずはその上着を脱ごうか………うぇ!?」
男は異変に気づく。自分の身に何が起きているかを。
「ようやく気付いたようねェ…やれやれだわ」
「足が…動かない…!!」
「そう…あんたと私の距離を『固定』したの…『スーパーフライ・ジミー・スヌーカ』の能力でね」
楓は自身の前にスタンドを出現させる。それは屈強な体つきをした紫色のスタンドだった。
「このクソアマがァァァ―――――ッ!!!」
男は激昂してスタンドを繰り出そうとするが―
「ルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラァァァ――――――ッ!!!!!」
時すでに遅し、『スーパーフライ・ジミー・スヌーカ』の強力なラッシュを全身に叩き込まれ、五メートル先まで吹っ飛ぶ。
「あンぎゃアアアアアアァァァァァァ!!!」
吹き飛んだ男はピクリともせず絶命する。
「ほう!楓の奴イイ筋しとるのう!ワシも負けておれんッ!!フンヌァ―――!!」
「『CRA¥』ッ!!」
男は全身が黒いスタンドを繰り出すと、指先をターゲットに照準を合わしてパチンコ玉台の大きさのダイナマイトを発射する。
「藤原さァん!山本さァん!手に負えませんよこいつッ!!」
五十嵐は逃げるのが精一杯といったところで全身に火傷の痕が見られた。
- 191 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/01(木) 08:12:32 ID:Wr8ksB.Y0
- 「確かにクレイジーすぎるねェ…」
悪門荘管理人の藤原もてんてこ舞いで五十嵐同様に敵に近づくこともはばかれていた。
負傷した黒猫を抱えながら逃げることだけに集中せざるを得ない状況。
まともに渡り合えている人間は一人だけで、その名は山本。
悪門荘六号室の住人でその姿を見たものは管理人の藤原以外はいないと云われていた伝説上の生き物。
しかし、その山本でさえ劣勢をしいられていた。
「ハァ…ハァ…ペンキでのガードも追いつかなくなってきた…」
山本は息を切らしながら眼前の黒いスタンドを睨みつける。
「完全に後手に回っちまったなァー黄金野郎
どうする?仲間を見捨てて逃げるか…?」
「……」
しばしの沈黙を経た後に山本は答える。
「いやね…敷地内の他の住人の頑張りっていうかさァ…熱気?
それが俺にも伝染しちゃって…こー見えて久しぶりに燃えてるわけよ」
「ほう…じゃあトコトンやるってことかよ?俺はそういうバカは好きだぜッ!!」
男はなおも『CRA¥』による攻撃を休めない。
その爆撃の威力は地形を変えるほどだった。
ウゥゥゥ〜ウゥゥゥ〜ウゥゥゥ〜
キィッ!
突如、白い車体の車が敷地内に乱入。
それはまさしく、いや疑う余地も無く国家権力もとい警察のパトカー。
この騒ぎを聞きつけた近隣住民が通報したのだ。
「そこの連中ッ!全員おとなしくしろッ!」
中年の警察官と若い警察官が制止に入る。
- 192 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/01(木) 08:12:55 ID:Wr8ksB.Y0
- 「ククク…邪魔をしてもらっちゃ困るよサツの旦那…」
『CRA¥』の指先は警察官のほうを向いているが、スタンドを目視出来ない警察官は悠然と近寄っていく。
「お、おいッ!逃げろッ!!殺されるぞッ!!」
五十嵐は歩み寄る警察官へ注意を促すが―――
『CRA¥』は無線で連絡をとっている警察官二名に向けて爆撃を開始した。
ドッグワァァァァ―――ン!!
パトカーもろとも跡形も無く消え去る。
あまりにも無慈悲な攻撃に一同は凍りつく。
バトルを終えたばかりの橘親子や圭吾、京輔たちも慌てて駆け寄る。
『CRA¥』と山本のスタンド『ゴールド・エンペラー』は対峙し、向かい合ったままジリジリと間合いを詰める。
『CRA¥』の爆撃をペンキで作った合金壁でガードし、空中へペンキを撒いて足場を作る。
「器用なスタンドだ…しかし空中へ逃げたところで何も変わらねーよッ!!」
「それはどうかな?」
山本は全身にペンキを塗りたくって、男のいる頭上から拳を振り下ろす。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
山本は五年ぶりに声を振り絞って一発のパンチに賭ける。
悪門荘の命運を左右すると云っても過言ではない一発。
「ぶっ殺すッ!!!」
『CRA¥』は『ゴールド・エンペラー』に向けて弾を連射する。
ズドドドドドドドドドドドド
合金で覆った山本の体に亀裂が入る。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
山本は自身へのダメージを一切気にすること無く、突っ込み続ける。
拳は男の顔面へ到達しようとしていた。
- 193 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/01(木) 08:25:47 ID:Wr8ksB.Y0
- 「限界とっぱああああああああああああああああああああああああああ」
合金のメッキはメリメリと剥がれ落ち、腕以外はほとんど生身を露出した状態になっていた。
完全に山本の腕が男の顔面を捉える。
今度は男の顔面の骨がメリメリと軋み、体は吹き飛ばされて地面へと叩きつけられる。
ドシャアアア!
**
「祐介君間に合ってよかった…」
バタフライマスクを付けて顔を隠したツインテールの少女が俺の方へ近寄る。
俺も面識のある少女だった。左手にレーザー銃のような物を持っている。
ある程度離れた位置からでも呼吸の荒さが分かり、急いで来たということを感じ取れた。
「ユキ…さん!?」
「メール貰ってからすぐに駆けつけたけどさ…着いたときには血まみれで瀕死状態なんだもん
ホントに焦ったわよ!ホントに…ううっ…」
バタフライマスクから覗ける目に涙を浮かべていたのが見えて俺は困惑してしまう。
確かに、俺は悪門荘に来る前にユキにメールを送っていたのだ。
今の今まですっかり忘れていた…。
俺や吾郎さんが全快したのもこのユキのスタンド能力で治してもらったからである。
- 194 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/01(木) 08:29:59 ID:Wr8ksB.Y0
- とりあえずここまで…駄文を書き綴ってしまったぜ…
深夜のテンションに身を任せて書いたら酷いことにw
こいつら叫びすぎだろ…
何より未だに終わってないことに驚愕ですよw
誰か『ジ・エンド』呼んできてッ!
- 195 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/01(木) 08:34:11 ID:???0
- 結構ネタのストックはあるからこれ早く終わらせたいなぁーとは思ってるんですけどね
某人気キャラTとか出してみたいし…
無敵のU2さんがワンパンで敵を倒してくださいよ…もうだめぽ
寝てからまた続き考えます…バトルは辛いおっお
- 196 :名無しのスタンド使い:2010/04/01(木) 14:54:56 ID:MivHkn8gO
- 乙!
コミュニケーションブレイクダンスちゃん可愛い!
敵が多くてバトルが面白いねwwww
- 197 :名無しのスタンド使い:2010/04/01(木) 16:52:35 ID:CfZtE4Jg0
- さすがは乙1先生やでぇ!
バトルロイヤルな感じでハラハラするww
乙ッ!
- 198 :名無しのスタンド使い:2010/04/01(木) 17:41:22 ID:???O
- >人気キャラ
琢Mさんですねわかります
- 199 : ◆R0wKkjl1to:2010/04/01(木) 19:14:27 ID:fgTf9QcAO
- 流石乙1先生。バトルシーンを読むだけで何かスカッとしますね!(私だけ?)
残りの敵をどうやって倒すのか・・・続きがとても気になります!
乙でした!!
- 200 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/02(金) 05:32:54 ID:???0
- >>196
女の子はかわいく書けないっすわ
バトルは四苦八苦しながら書いてるのでそう言ってもらえるとありがたいです
語彙が少なすぎて長々としたバトルは辛い…
>>197
敵出しすぎてさばききれないw
>>198
ご想像にお任せしますw
>>199
マジですか…嬉しいなぁ
そろそろラストなので頑張って書きます
- 201 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/02(金) 07:31:20 ID:qcTuMfAQ0
- いよいよクライマックスだってのにまだ終わってないw
今から出かけるので途中だけど投下します
- 202 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/02(金) 07:31:45 ID:qcTuMfAQ0
- 「チィ…治療型スタンドか…」
ナイフ使いの男は苦虫を噛み潰したような顔で俺たちを一瞥する。
そりゃ倒したはずの奴がザオリクで蘇ったらやってられないよな。
「おい、森下…まずはあの女を仕留めるぞ」
森下と云うらしいサーファー風の男に指示を出すナイフ使い。
賢明な判断だなと俺は思った。
「オーケー隊長!あのクソビッチをぶっ殺せばいいんだなッ!!」
森下のスタンド『ハートウェーブ』が俺たちの前に猛然と立ちはだかる。
「誰がクソアバズレ淫乱ビッチですって!?」
「そ、そこまで言ってな―」
『コミュニケーション・ブレイクダンス』の能力は本体の感情を弾丸にして撃ち出すもの(らしい)。
ユキは銃の引き金を引いて森下の腹部を撃ち抜く。
「う、うぐゥゥゥ……」
撃ち抜かれた森下の様子が一邊する。
体がブクブクと膨れ上がっていくのだった。
およそ人間とは思えないその異形に俺はおしっこチビリそうになる。
「ぶ…ぶ…ぶあああああああああああああああ」
ブッチャアアアァッ!!と耳をつんざく爆音と共に森下の体は空気を入れすぎた風船のように破裂する。
見るも無残な肉片が俺の目の前にボトボトが落ちてきた。
「ユキさん…やることがハードだね…」
「乙女に侮辱した罪よッ!このくらい当然ッ!
ああ…俺は彼女を怒らせないようにしようとこころの中で誓うのだった。
- 203 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/02(金) 07:32:44 ID:qcTuMfAQ0
- 「ほう…中々やるではないか。お前達よりその小娘のほうが出来そうだ
しかしだ…見る所残りの弾数は一、二発と云ったところか」
ナイフ使いの男は冷静に分析していた。
ユキのほうを見ると大量の汗をかいており、疲弊しきってるように見えた。
瀕死の人間を回復させて、敵一人を殺してるくらいだ―精神もすり減っていると見たのだろう。
「お見通しのようね…でもアンタを倒すくらいの余力は残ってるわッ!!」
ユキはナイフ使いの男目掛けて発砲する。
「残念だったねェ…」
イン・フレイムス「オイオイ!ソンナ遠クカラ撃ッテ当タルワケネーヨ!」
ナイフ使いの傍に浮かぶ小型スタンドが口を訊いた。
「な…避け…ッ!?」
「予め弾道が読めてればそんなもの容易に避けられる…お前達とは経験値が違うんだよ」
「祐介君!奴のナイフには気をつけろッ!追尾してくるぞッ!!」
吾郎さんが俺に助言をする。
「お前らみたいな雑魚には一人あたり一本ずつで上等だな。喰らえッ!」
男は勢い良くナイフを同時に三本投げ分ける。
そのナイフにはとてつもない熱量を帯びていた。
「あ、あつッ!!」
ナイフはユキの服をかすめて、服は焼け焦げる。
肩やお腹の部分が少し露出して俺は…いや、何でもない。
「祐介君ッ!守ってあげろよッ!!」
そうしたいのはやまやまだけど…このナイフを躱すのに精一杯でそんな余裕は無かった。
しかし、これだけのエネルギーだ。何か欠点がないとスタンドとして破綻がある。
- 204 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/02(金) 07:33:07 ID:qcTuMfAQ0
- 俺は全力で走って男から距離を取る。
あんまり後ろに行き過ぎて他のバトルの巻き添えになりそうになった。
「どうやらナイフをコントロール出来る時間は短いようだな…
そして射程距離もさほど長くはないようだッ!!」
「祐介君ナイスだわ!」
「この短時間で見破るとは大したものだが…
ならば俺も本気を出すまでだッ!!」
男は走りながら無数のナイフを俺に投げつける。
たくさんのナイフを同時にコントロールするという芸当も出来るのか…。
「『セファリック・カーネイジ』ッ!!」
吾郎さんは男に向けて攻撃を繰り出す。
イン・フレイムス「小サイカラッテナメルナヨ!」
『セファリック・カーネイジ』の攻撃は『イン・フレイムス』によって遮られる。
「なあに…俺もただ戻ってきたわけじゃないみたいっすよ吾郎さん
足手まといはもうウンザリだ」
俺はそう云うと『U2』の手のひらを襲い来るナイフの大群に向けてかざす。
「何をする気だ祐介君ッ!!」
「まあ観ててくださいよ」
ナイフはグラグラと揺れながら停止した後、ボトリと地面へ落下する。
「俺のナイフが…落ちた…だと…!?」
男は血相を変えて重々しく口を開く。
おそらく奴はナイフの達人で自分の能力に相当の自信とプライドを持っていたのだろう。
それをたった一人の高校生に防がれては歯がゆくて仕方ないはずだ。
- 205 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/02(金) 07:33:28 ID:qcTuMfAQ0
- 「ホラ…手持ちのナイフ全部投げてみろよ」
「う、うわああああああああああああああああ」
俺の煽りで男はなすがままナイフを投げてきた。
そして、さっきと同様に『U2』で地面に落とす。
感覚で能力がパワーアップしてるのが分かった。
つまり、俺の『U2』は射程範囲内の空間に存在する物体に対して重さを与えることが出来るようになったのだ。
熱いナイフも触らずに重さを与えられるが、直接触るよりは威力が半減している。
「来るなァ―――!!」
男は一目散に逃げようとする。
「那由多高校野球部の韋駄天なめんなよッ!!」
相手が軍人だか何だか知らないが、100m11秒台の俺からしたらその走りは止まってるのと同義。
すぐに追いついて男の体を押さえつける。
「うぐッ!か、体が…た、立てないッ!!」
「そりゃそうよ…『U2』でお前を重くしたんだからな
そして同時に固定も出来た…」
「や、やめッ…!!!」
「ボーノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノォォォ―――ジ・エッジ!!!」
俺は横たわる男を何度も何度も殴り続けた。
死んではいないが、これで当分はスタンドを出すことも出来ないだろう。
「ゆ、祐介君…やりすぎだろ…」
吾郎さんが呆れ顔でこちらを見る。
- 206 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/02(金) 07:33:54 ID:qcTuMfAQ0
- 「祐介君、この短時間で随分成長したのね…何かあったの?」
「さあ…ねぇ」
俺は言葉を濁す。
「まあ何にしても頼もしいパートナーになってくれたようで嬉しいわ」
「パ、パートナーって…祐介君も隅に置けないなぁ…」
いやいや、誤解してますよ、と弁解しようと思ったがそんな気分では無かった。
敵を倒したことで安心したのか地面へと倒れこむ。
傷を治してもらったとはいえ精神的な疲労が蓄積していたので脳が休息を要求しているようだった。
「どうやら他の皆も終わったようですね…」
「そうだな…君の兄さんも無事だといいが」
「そうですね…でも、心配はしてませんよ
兄貴が死ぬわけありませんから…
それじゃ俺はお先に眠らせてもらいます……」
**
「話は訊いてるわ、有嶋秀彦君」
戦闘中のジョアンナ・レヴェックさんが俺に話しかけてきた。
容姿端麗で美人の女性だ。
彼女はミツバチをモチーフにした人型のスタンドを出して戦っている。
「君も『ラムダ』の仲間だそうじゃないか。よろしくな」
スーツ姿のサングラスをかけた男。鷲崎瑛二さん。
カタギじゃないような風貌の男なので久坂さんの組織に入った経緯が気になるところだ。
上半身は緑系の色で、下半身から下は水の塊だか水蒸気だかになってるスタンド。
「ええ、こちらこそ」
とりあえず営業用のスマイルで返しておく。
- 207 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/02(金) 07:34:12 ID:qcTuMfAQ0
- 「お前ら何よそ見してやがる…『ガネーシャ』四番隊を舐めるなァ―!!」
敵の一人がスタンドを出して攻撃を仕掛けてきた。
「『スウィート・ハニー・ラヴ』ッ!」
ジョアンナさんがスタンド名を発すると全身から花が咲いて包み込む。
敵のスタンドによる攻撃は硬質化した花に遮られて通らないようだった。
「俺の『オブソリード』の攻撃が…!」
花は男の体に絡まっていき拘束する。
「でかしたぞジョアンナ君!たまには私も活躍しないとなッ!『ハーフライフ』ッ!!」
突如久坂さんの服が妙なスーツへと切り替わる。
顔から下を包むスーツは灰色をベースとして、腹や足の部分はオレンジ色でアクセントになっている。
このタイプのスタンドは珍しいのではないだろうか。
「充電満タンなんでね…手加減は出来ないよ!」
人間を超越したスピードで駆けていく。
軽く時速50kmは出てると思われ、一瞬で敵の前にまで到達する。
ジョアンナの花で拘束された男は身動き出来ずに久坂さんの一撃をモロに喰らう。
男は白目になり、泡を吹いて失神する。
「これで一人撃破だな」
久坂さんは顎ヒゲをジョリジョリとなぞりながら残りの敵へ視線を移す。
「『ビッチェズ・ブリュー』ッ!!」
鷲崎さんのスタンドが敵の射程圏内に入り、水蒸気を発生させる。
「ごばァァァ…」
男は高熱の水蒸気を吸い込んでしまったようで…いや、吸い込まされたようだった。
口の周りの皮膚が火傷を負ってただれてるとこからその威力の甚大さが計り知れた。
- 208 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/02(金) 07:34:41 ID:qcTuMfAQ0
- 「ここは俺にとっていい環境なんだよ…これだけの水量なら水蒸気爆発を起こせるッ!」
男の周りを水蒸気が覆い尽くして、大爆発を起こす。
悲鳴を上げる余地すらも無く、ただ塵へとなるだけだった。
「さあ秀彦君…残りの一人は君が倒すんだ」
鷲崎さんから引導を渡される。
「はいッ!行きますッ!」
「ククク…お前ら全員の断面図を眺めるのもいいかもなァ…」
不気味に笑う敵の男と対峙する。
男はスタンドを出して地面を殴りつける。
「まあ…これはパフォーマンスさ」
男がスタンドで殴った地面の一部分は細かい無数のサイコロ状に分割される。
「中々器用な真似するわね…どう?勝てる?」
ジョアンナが訊く。
「もちろん俺一人で十分ですよ」
何故かは分からないが、あいつに負ける気がしなかった。
相手の能力が危険なのは百も承知だが、勇気が泉のようにこみ上げてくる。
「まずはその脳みその断面を見せやがれッ!『スキッド・ロウ』ッ!!」
男は不気味な造形のスタンドを出してこちらへ走ってくる。
「飼い犬風情がワンワン吠えてんじゃねーよ…『ステイアウェイ』ッ!!」
『スキッド・ロウ』のパンチを腕で弾いて蹴りを繰り出すが、寸前で避けられてしまう。
俺はとっさに屈み込んで『ステイアウェイ』で両端が矢尻の矢印を地面に貼り付ける。
すると地面は地割れを起こして、男は割れ目の中へハマる。
- 209 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/02(金) 07:35:05 ID:qcTuMfAQ0
- 「『スキッド・ロウ』―――ッ!!」
男は地面を殴って分割して抜け出す。
「ほんの少しの隙が戦況を左右する…」
新たに『ステイアウェイ』の能力を進化させることに成功した。
それは一度貼った矢印の方向を変えるといったものだ。
俺は先程貼った矢印を矢尻が対面する形に変えた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「地面は閉塞する」
「つ、潰れ…うわああああああああああああああああ」
地面が閉じる力に負けた男は割れ目の間に挟まって即死。
「やったな秀彦君」
久坂さんは俺の肩へポンと手を置く。
「いささか紹介が遅れすぎて申し訳なかった。
今日から君も『ラムダ』の一員として任務に当たってもらうよ」
「よろしくお願いします」
これで奴らの壊滅に一歩前進したように思えた。
自らの手で父さんの仇を討てる、これほどまでに嬉しいことはないだろう。
「さて…あっちのほうにもう一人いるから連れて帰ってアジトの場所でも吐かすとするか」
鷲崎さんが遠方でうずくまる負傷した敵のほうへ顔を向ける。
俺たちもそいつのほうへ歩を進める。
「どうだ?喋れるか?」
鷲崎さんが敵の男に訊く。ヘルメットとマスクを外して。
「うぅ…だ、誰がテメェ何かに…」
「フン…まあいいだろう。後でじっくりと尋問してやるからな」
やっぱりこの人カタギじゃないだろ…。
ザザ…
足音が訊こえて振り返ると謎の三人組がこちらへ向かってくる。
「全く『ガネーシャ』の連中も役立たずだな…まあ前々からボンクラだと思っていたが」
「弱き者に用はない…むざむざと生き残ってもらっては困る」
「そうだな。さっさと始末して帰ろう」
「お前ら何者だッ!?」
俺は突然の乱入者に問いただす。
「安心しろ、今は貴様らには手は出さない」
- 210 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/02(金) 07:35:51 ID:qcTuMfAQ0
- ここまでです…すいませェん
それではまた家に帰ってから…
- 211 : ◆R0wKkjl1to:2010/04/02(金) 08:38:13 ID:IPl1413oO
- 2人とも強えッ!!
三人組は誰!?
一難去ってまた一難な予感がします・・・
乙でした!!
- 212 :名無しのスタンド使い:2010/04/02(金) 17:43:08 ID:f8lERbIcO
- 乙!
三人組の正体が気になる…
それにしてもU2めちゃくちゃ強いwwwwww
- 213 : ◆U4eKfayJzA:2010/04/02(金) 22:45:28 ID:m2h68Pbc0
- 何という同時進行の量……。そして新たな人物たちが更に謎を呼ぶ。乙です!
……でも、父との再会といい、傍目からするとちょっと書き急いでいるような気も……あわわ何でもありません。
- 214 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/03(土) 08:46:49 ID:SOpNz0Ds0
- 一体こいつらの目的は何なのだろうか。
「『ラーマ』…裏切り者や敗北者などの抹殺及び死体処理を主な任務としている粛清部隊
こいつらを持ち帰るつもりか」
久坂さんはこいつらのことを知っているようだった。
「ご名答。本来ならアンタも殺したいところだが、残念ながら俺達の仕事はこいつらの処理だけだ」
「どうしたよ、俺達を殺したいんだろ?感情を殺された虫ってわけでもないだろ?
ほら…来いよ。俺達を殺して手柄にしたらいい」
鷲崎さんが奴らを煽る。
「だから云っただろう…俺達からはアンタらには何も手出しはしない
だが、邪魔をするってのなら話は別だ」
大柄の男がこちらを睨みつけてくる。
血が通っていないのではないかと思えるほどの冷淡な顔と漆黒の目。
思わず俺は恐怖を覚えてしまう。
「俺達がアンタらを目の前にして棒立ちしてるとでも思ったのかよッ!
『ビッチェズ・ブリュー』!奴らを凍らせろッ!」
鷲崎さんがスタンドを出して前方にいる敵を攻撃する。
「愚かな…」
スー…と姿が消えていく。
「き、消えた…だと…!?」
「気を抜くな…まだ周囲にいるかもしれない
ジョアンナ」
久坂さんはジョアンナさんのほうを向いて合図を送る。
- 215 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/03(土) 08:47:45 ID:SOpNz0Ds0
- 「『スウィート・ハニー・ラヴ』…」
ジョアンナさんはスタンドで地面を殴って花を咲かせて、やがて一面を花畑に変える。
そして、その花の茎を伸ばして網状にして一帯に結界を張り巡らす。
「これであいつらが私達や死体に近づけばすぐに分かるわ」
GJ!
「!…反応があったわッ!そこよッ!!」
「えっ…俺!?」
硬質化した花は鷲崎さんのほうに飛んでいく。
「そ、そんな…確かにあそこで反応があったのに何故鷲崎サンのほうに…!?」
ジョアンナさんは怪訝な顔で立ち尽くす。
「し、死体がッ!!」
久坂さんが異変に気付く。
さっきまでそこにあった死体が忽然と消えていたのだ。
他の死体も同様に…。
「あ、あそこだッ!!」
奴らは数百メートル先の団地の建物の屋上にいた。
この数十秒の間であそこまで移動したと云うのか…。
だが、ここで逃がすわけにはいかない。
「追いましょうッ!!皆さん俺に掴まって!!」
俺は皆に促す。
『ステイアウェイ』でなら車と同等のスピードで移動出来る。
そして、以前とは違って自由に矢印の方向を変えられるため方向転換も可能だ。
「私はここに残るわ…あなたの妹サンが心配だもの」
「お願いします…!ではッ!」
矢印は加速して奴らの元へ向かう。
出来るだけまっすぐに最短距離で。
- 216 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/03(土) 08:49:03 ID:SOpNz0Ds0
- 「お、おい!どうやって屋上まで登るんだ!?」
鷲崎さんが訊く。
「しっかりと掴まっててくださいよォ〜…」
『ステイアウェイ』の矢印を壁に這わせて俺達は垂直に進んでいく。
「おぉゥ…吐きそうだ」
「もう少しの辛抱ですよ!我慢してくださいッ!」
団地の住人達が奇異な目で観ていたが今はそんなことはお構いなしだ。
上までたどり着くと俺達はバッと壁から屋上へと飛び移る。
「遅かったか…」
久坂さんがボソリと呟く。
「そのようですね…」
俺達はしばらく周囲を捜索したが奴らの痕跡を見つけることは出来ず断念することにした。
妹は放心状態のままだったので少し心配になる。
**
「休む暇も無いのかよ…」
突然現れた四人組の集団により俺の睡眠は妨げられる。
今度は武装もしてなければ顔も隠していない。
俺達はスタンドを出して身構える。
しかし、どうやら様子が違ったようだ。
奴らは俺らにはとことん無関心で、さっきまで戦っていた敵の元へ向かっていく。
「四つの小隊が出向いてこんなガキ共も倒せないとは…
何が精鋭部隊だ…笑わせてくれる」
スーツに身を包んだ壮年の男は倒れている敵の男に向かって侮蔑的な言辞を投げ捨てる。
一体こいつらは何者なのだろうか?
- 217 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/03(土) 08:49:29 ID:SOpNz0Ds0
- 俺は敵の中に見覚えのある存在を発見して驚愕する。
「お…お前は死んだはずじゃ…!?」
「何が?…ああ、アレね。アレは私の出来損ない(クローン)よ」
そう言い放つ女は四日前に戦ってユキさんが倒したはずの…
『ジグ・ジグ・スパトニック』の本体・希桜 詠理そのものだった。
この日本において人間のクローンを作ることは法律で禁止されてるが、こいつならやりかねない。
だから俺は疑うこともせずにすんなりと受け入れる。
「で、その本物がこんなとこまで出向いてきて何をするつもりなんだ?」
「勘違いしないで。私たちはあなた達には用はないの…」
そう云うと奴らは生きてるか死んでるかは定かではない男達を抱きかかえて帰ろうとする。
「話訊いてるとお仲間みたいじゃねーか…逃がすかよッ!」
慢心創痍であるはずの京輔さんは奴らの背後から攻撃を仕掛ける。
「邪魔をするならば排除するまでだ…『シレラ・スリー』ッ!」
スーツ姿の壮年の男は振り返ること無くスタンドを出す。
「ヘッ!反応が遅ェ―んだよッ!!既に射程範囲だッ!!」
スタンド『デッド・エンド』の拳は男のスタンドをとらえてそのままぶち抜く。
「何が排除するだよ…大口叩いた割には大したことな―――」
バチバチバチ…
「今のは幻覚だ…地上では電離し辛くて本来の20%程しか実力が発揮出来ないな」
壮年の男は京輔さんの背後に回り込んでいた。
- 218 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/03(土) 08:49:45 ID:SOpNz0Ds0
- 「そんな馬鹿な…」
京輔さんは愕然とする。
「よしよし…おとなしくしておけよ
いずれお前らはヴェーダが総力をあげて始末する
それまでにせいぜい余生を楽しんでおくんだな」
俺達は何もすることが出来無いまま奴らが去っていくのを見届ける。
勝ったとか負けたとかそう云う気持ちでは無かった。
ただ怖かったのだ。奴らの目が。
人間ではなく虫のような感じ。
命令を受ければ躊躇いなく何の感情も抱かずに俺達を容赦なく殺すだろう。
本質があの武装集団とはまるで違うということはしっかりと理解出来た。
何を思い彼らは動いているのだろうか…。
しかし、逆に考えれば組織のトップからすればあれほど使い勝手のいい者はいないと思えた。
組織の構成員を監視する仕事を与えられるということは最も忠誠心があるということでもあるからだ。
膨大な構成員からなる組織が成り立っているのも奴らのおかげと云っても過言はないはず。
とぅおるるるるるるるる…
俺の携帯が鳴ったので出る。
「もしもし?ああ、兄貴?そっち終わったんだ…無事でよかったよ
え?後で話がある?分かった…喫茶店の『corned beef』ね…オッケ」
「祐介君…」
ユキことバタフライマスクをつけた謎の少女が俺に話しかける。
「あなたはこれから色々と巻き込まれるだろうけど…
私の相棒だってことは忘れないでね。約束」
どういう意味なのかよくわからなかったが、深く考えないことにしておく。
「それじゃ…またね」
去りゆき側にちらっと振り返ってきたので手を振っておく。
妙なことから知り合った仲だが、信頼という感情は芽生えていた。
- 219 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/03(土) 08:50:24 ID:SOpNz0Ds0
- 「あの子…ひょっとして彼女か何かか?このこのォ〜!」
京輔さんが絡んできたが面倒くさいのでスルーしておく。
**
「非常に申し上げづらいのですが…
『ガネーシャ』二番隊から六番隊までの全滅を確認致しました」
シヴァの部下が重々しく口を告げる。
「そんな…あり得ない…」
他の幹部達は唖然とする。
「シヴァよ…お前の直轄部隊がこのザマとはどういうことだ?」
ブラフマーがシヴァに問う。
「ま、まだだ…『ガネーシャ』は一番隊以外は飾りのようなもの…
次こそは…」
シヴァは苦虫を噛み潰したような険しい表情で喋る。
「ワシはお前を信頼しとるよ。次こそは確実に遂行してくれるだろうとな…
奴らの力を過信しすぎいたのかもしれんのう」
「ヴィシュヌ……分かった、一番隊に出向いてもらうことにしよう
一番隊なら確実だ。戦力は一人一人が一騎当千…!」
シヴァは口頭を釣り上げて不敵な笑みを作る。
「失礼します」
他の部下が会議室に入ってきて報告をする。
「『インドラ』対仮想機動隊の結果ですが…
『インドラ』は誰一人死ぬことなく圧勝でした」
- 220 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/03(土) 08:50:51 ID:SOpNz0Ds0
- 「よろしい、下がれ」
「某国の王様に依頼をしたそうじゃないかヴィシュヌ
何千何万もの群体型のスタンドとは珍しい…是非うちに引き入れたいとこだが
それにしても『インドラ』は優秀だなァ…どこぞのお遊戯集団とは違ってなァ?」
「何だとッ!?」
シヴァは血相を変えてブラフマーに掴みかかる。
「お、おいおい…無駄な争いはやめじゃ」
ヴィシュヌは慌てて二人の間に割って入り制止させる。
「そんなことより…最近うちの下っ端が勝手な行動を取っているそうじゃな?
例えば…『ゾンビ野郎』とかのォ…」
「ええ…被験体一号のことですね
彼は我々の構成員を数名率いて動いてるようです…
目的は分かりませんが謀反行為をする可能性は極めて高いかと」
幹部の一人が云う。
「なるほどのう…ワシはあの実験に対しては反対だったんじゃ
『やはりこうなったか』と思うわい…」
「そうかな?研究自体の成果はあると思うがな
クローン人間のスタンドは遺伝子を採取した大元のスタンド使いのものとほぼ同一という結果が出ている…
このことから強力なスタンド使いを複製出来たり、あるいは洗脳もしやすいだろ」
ブラフマーは他の者の顔色を伺いながら肯定的な意見を述べる。
「私はブラフマー様の仰る通りかと思います
今は一人でも多くの強い兵が必要な時ですし…」
若手の幹部がブラフマーに賛同する。
「う…む。何と云うか倫理観的にな…まあお前がそこまで云うなら仕方なかろう
しかし、謀反をするかもしれんという奴がいるのも事実じゃ…まだまだ管理が行き届いておらぬな
『ラーマ』の増員も視野に入れとかなければなるまい」
「簡単に言ってくれるな…」
- 221 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/03(土) 08:51:13 ID:SOpNz0Ds0
- ブラフマーとヴィシュヌが話してる間はシヴァは黙り込んだままだった。
プライドの高いシヴァは今回の失敗があまりにも屈辱的でやるせなかったからだ。
―――我が右腕、『マハーカーラ』に作戦指揮を取らせるか
**
一時間後、『corned beef』に到着。
兄貴と妹の他に久坂さんと白河さんがテーブルに座っていた。
俺は兄貴の隣の席に腰を降ろす。
そして、久坂さんから告げられたのは『ラムダ』のこれからについてだった。
『ヴェーダ』がこれから過激になっていくのは目に見えているから忙しくなるとのこと。
ただし生活においては学業や仕事をなるべく優先して、また、金銭的な援助も必要ならばするという旨を告げられる。
妹には知らせるつもりは無かったが、巻き込まれた以上は事情だけ教えることにしたらしい。
「秀彦君は鷲崎君とジョアンナ君、それから真嶋君と大沢君の五人で一つのチームとなってもらう
祐介君は五十嵐君と橘君、それとまだ紹介はしてないが蛯原君と天童君の五人で組んでもらうことにするよ
大体同年代で構成してあるから息もあるだろう
今後は基本的にこのチームで動いてもらうことになるのでそのつもりでいてくれ」
兄貴とは別れ離れになるのか…そう思うと少し寂しかった。
「私は山本君や橘大二郎さん、必賦君、藤原君たちと組むつもりだ
そしてすでに別の二つのチームに動いてもらっている…その十人はいずれまた紹介しよう」
久坂さんはひとしきり説明して冷めてしまった紅茶に口を付ける。
「怪我したらすぐに私に連絡してね
と云っても私は忙しいから別の医療班に当たってもらうことになるかもね
私がいいからって駄々こねちゃダメよ」
もう治療してくれる人はいるんだけどなぁと思ったが口に出すのはやめといた。
そういえばユキさんの名前は挙がらなかったな…やっぱり単独で動いているのだろうか。
彼女の存在を知っているのかどうか久坂さんに尋ねようとしたが何故か躊躇する。
- 222 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/03(土) 08:52:24 ID:SOpNz0Ds0
- そして小一時間たわいもない雑談をした後、帰路に着くことになった。
悪門荘は色々と大騒ぎだ。警察官二人が消えちゃってるのはまずいよな。
今日は京輔さんの家に泊まらせてもらうことになった。
結構ヤニ臭かったり夜な夜なギターを弾いててうるさかったりもするけど。
もう一年くらい寝てないような気分だったので布団が恋しくてしょうがなかった。
「よっこらセ・リーグ」
いつもの口癖を呟きながら布団に潜る。
今日は色んなことがありすぎて疲れた。
おやすみ。
そう言い残して俺は深い眠りにつく。
To Be Continued...
悪門荘
→色々とヤバイ。
有嶋祐介
スタンド名『U2』
→ちょっとだけパワーアップ。この後丸一日眠った。
有嶋秀彦
スタンド名『ステイアウェイ』
→タクシーのおっさんに慰謝料五万円渡した。
有嶋智恵
スタンド名『アクアティック・アンビエンス』
→京輔とゲームをして一日中遊んだ。
悪門荘住人+秀彦のツレ
→白河女医に怪我を治してもらった。
ガネーシャ 二番隊〜六番隊
→全滅。
- 223 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/03(土) 09:11:31 ID:SOpNz0Ds0
- やっとオワタ…
wikiに載せる際に少し文章とか推敲しときたいと思います
スタンド一覧は後でまとめておきます
>>211-213
コメントありがとうございます!
本当は『ラーマ』は全員自動操縦型のスタンドにしようと思ってたんですけどね
ワイルドライフを出した時点ではそのつもりでしたw
U2はこれからの激化するであろうバトルに備えて少し強くなってもらいました
>……でも、父との再会といい、傍目からするとちょっと書き急いでいるような気も……あわわ何でもありません。
確かに…ここまで長引かせた要因は詰め込みすぎたせいかもしれませんね
教訓にして次に活かせるようにしたいです
まだまだ至らないところが多いのでそのように教えてもらえるとためになります
今回の話は当初の構想にあったものを出せたので個人的に満足はしてますがオナニー感満載かもw
自己紹介回とでもいいましょうか…それにしても敵を出しすぎましたが…
引き伸ばせばいくらでも続けられそうだけど恐らくあと十章以内には完結すると思います
それより今回で敵を出しすぎたので『ヴェーダ』の部隊に使えるスタンドがいなくなってきましたw
- 224 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/03(土) 09:29:45 ID:???0
- 書いた後で文章おかしいところ見つけると凹む…
使用スタンド一覧
主人公サイド
祐介『U2』
考案者:ID:Azdg7Rlm0
絵:ID:FhUUc7chO
兄貴『ステイアウェイ』
考案者:ID:jPY6mNvA0
絵:ID:OE8h+DM9O
妹『アクアティック・アンビエンス』
考案者:ID:I0FYWOo0
絵:ID:Ea9CcFwo
悪門荘管理人『シークレット・ウィンドウ』
考案者:ID:dCVJargjO
絵:ID:gLqSc0co
黒猫『K』
考案者:ID:lqge56U0
絵:ID:tERXT6AO
三号室五十嵐『アクロース・ザ・メトロポリス』
考案者:ID:Qpm+pi0FO
絵:ID:EsQWtgj40
四号室必賦『セファリック・カーネイジ』
考案者: ID:Kqs0x3QI0
絵:ID: ID:XtDeOiJLO
五号室橘楓『スーパーフライ・ジミー・スヌーカ』
考案者:ID:t6C56tUo
絵:ID:jcRf2gDO
五号室橘大二郎『ラム・ジャム・ワールド』
考案者:ID:GHXNccg0
絵:ID:xRH0l2AO
六号室山本『ゴールデン・エンペラー(黄金皇帝)』
考案者:ID:nZJICvg0
絵:ID:bDXNIRYo
大沢圭吾『ファイヤー・フォックス』
考案者:ID:fCXC9zso
絵:ID:HGEeckgo
真嶋京輔『デッド・エンド』
考案者:ID:CB6rV4v+0
絵:ID:a8j9uyds0
ユキ『コミュニケーション・ブレイクダンス』
考案者:ID:2WHRYSk+O
絵:ID:ZwX9S9z80
久坂知己『ハーフライフ』
考案者:ID:gsX1ae+i0
絵:ID:sJYRm8nfO
白河由衣『ホワイト・メディスン』
考案者:ID:9Gh0CIaUO
絵:ID:DarMMkFfO
ジョアンナ・レヴェック『スウィート・ハニー・ラヴ』
考案者:ID:KxJZU8s0
絵:ID:h0ATGVMo
鷲崎瑛二『ビッチェズ・ブリュー』
考案者:ID:QNs004410
絵:ID:nFJRqxt80
- 225 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/03(土) 09:47:55 ID:???0
- 敵サイド
『ガネーシャ』
二番隊
『ジャスト・ミスト・ザ・トレイン』←名前出てないけど…一応設定上はいました
考案者:ID:ZiOUiplnO
絵:ID:ilMCe3VDO
『シティ・エスケープ』←出てないけd(ry
考案者:ID:f4LNZTfx0
絵:ID:lj/e1oHQ0
『ラザロ』
考案者:ID:h1wpgo5pO←出てn
絵:ID:jUDvki630
『ヤンキー・グレイ』←出t
考案者:ID:uJOQ6g1UO
絵:ID:wY1A9r+c0
『CRA¥(クレイ)』
考案者:ID:IxzoyC4T0
絵:ID:ddoOgRNz0
三番隊
『バックストリート・ボーイズ』
考案者:ID:YxCN4AMWO
絵:ID:836DgT2dO
『フェイド・アウェイ』
考案者:ID:0ZmABXEM0
絵:ID:O79ItuYy0
『ミューズ』
考案者:ID:0mCGZSCU0
絵:ID:ZfaBd2Kk0
白石誠司『コンフィールド(完全地帯)』
考案者:ID:yl0giLoMO
絵:ID:8u2QqPpiO
『テイキング・オフ』
考案者:ID:x73UDj20
絵:ID:iSFPKy.o
四番隊
『ワン・デイ・リメインズ』
考案者:ID:ebFB1gDO
絵:ID:CGmSgpQo
『スキッド・ロウ』
考案者: ID:ZlkI8nlF0
絵:ID: ID:/pRLhC7g0
『オブソリード』
考案者:ID:XD2/KazSO
絵:ID:mzis35eL0
『クワイエット・ライフ』
考案者:ID:AsRo1uB3O
絵:ID:lrYXw0co
『チョコレート・ミルク』
五番隊
『イーヴル・マスカレード』
考案者:ID:9P6vDHaYO
絵:ID:uW0p3OSqO
『スーサイド・ダイビング』
考案者:ID:6xOf42iAO
絵:ID:GWE40Qd/0
『クロスビート』
考案者:ID:O9VcFyzx0
絵:ID:i9YvNgwXO
『ディーパー・アンド・ディーパー』
考案者:ID:xM04z76O0
絵:ID:XYK0UTmvO
『ミッドナイト・クラクション・ベイビー』
考案者:ID:bb7SPoAO
絵:ID:DWiz/voo
六番隊
『トレジャー・チェンジ・ツール』←出t
考案者:ID:E8UOamrk0
絵:◆ f1Q1BRvReM
『ハートウェーブ』
考案者:ID:c+6Ehvdg0
絵:ID:8jVN6MAWO
『エグゾリウス』
考案者:ID:l4130Db2O
絵:ID:hIh5Wi3u0
『イン・フレイムス』
考案者:ID:DawN6HqjO
絵:ID:Df6Gr3c0
『シンプル・トークン』
考案者:ID:hH9U/0OT0
絵:ID:FMB01MzuO
絵:ID:puY8bsTxO
『ラーマ』
『???』←まだ名前は伏せとく
『ジグ・ジグ・スパトニック』
考案者:ID:pkFPNHwC0
絵:ID:DetKkpXg0
『シレラ・スリー』
考案者:ID:Fhpg6goo
絵:ID:Jj/bDYUo
『???』←まだ名前は伏せとく
その他数名登場予定
- 226 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/03(土) 09:51:41 ID:???0
- 自案のスタンドが多かったのは殺しやすかったのと探しやすかったからです
それでは次回にまた会いましょう
- 227 :名無しのスタンド使い:2010/04/03(土) 10:30:04 ID:???O
- 乙!展開速いし更新速いし俺はこのスピード好きだなあ
頑張って!
- 228 :名無しのスタンド使い:2010/04/03(土) 11:02:46 ID:???O
- 乙!
ジグジグスパトニックwwwクローンだったのか
それにしても登場スタンドめちゃくちゃ多いなwwww
- 229 :名無しのスタンド使い:2010/04/03(土) 11:03:28 ID:cm853Un60
- ジグゥゥぅぅぅぅぅぅぅんッッ!!!
ジグゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッッ!!!!!
ジグゥゥッうっn ・・・・・・あgっ 血だ・・・
続けてくれ・・・乙
- 230 :名無しのスタンド使い:2010/04/03(土) 14:36:54 ID:???0
- 乙!この量、このスピード……流石としか言いようがない……
今回も面白かった!次回も期待!
- 231 :名無しのスタンド使い:2010/04/03(土) 17:12:36 ID:???0
- 乙!
まさかベン・○ーがSSに登場するとはッ!
あの群体チートにどう対処するか気になるww
- 232 :名無しのスタンド使い:2010/04/03(土) 17:16:02 ID:ayuk1R6wO
- これ「ZAIN」超えたろ。
乙1の最高傑作の予感がぷんぷんする。
乙!
- 233 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/03(土) 17:57:07 ID:???0
- >>227
そう言ってもらえると嬉しいっすなぁ
まあ次はじっくりと腰を据えてやりたいですけどね
>>228
クローンは今後の布石でもあります
スタンド出しすぎてヒドイ目にあったよ!自業自得だけどw
連載SSの中で一話あたりに出したスタンド数では一番かも?
>>229
おっけwww
>>230
どもですゥ
>>231
いや、ベン某さんは敵としては出るかは未定w
チートだよねアレ…
>>232
そもそも『ZAIN』ってそこまで評価される作品とは思ってないんだけどなぁw
というか黒歴史w
でも、そう言ってもらえるとやる気出ますわ
- 234 : ◆U4eKfayJzA:2010/04/03(土) 21:22:38 ID:WLbv.Mbs0
- クローン軍団……こいつは恐ろしすぎる。そして、ベン・ハーに圧勝できるチームが来るのか……
どんなスタンドが来るか楽しみだ。乙です!
- 235 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/04(日) 04:54:30 ID:???0
- >>234
どもです
クローン軍団は面白いけど倫理的にはかなりあれだよね…
某Tさんが悲惨になりそうだ
- 236 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/04(日) 15:37:18 ID:AlTCYCFE0
- 第五章「腐ってるのはいいことだ」
2010年1月29日金曜 午前12時 Y県Y市内 那由多高校
午前の授業は終わり、これから楽しいランチタイムだ。
俺はいつものようにカズマとヤマトと楓の四人で机を囲んで弁当を食べていた。
「なあユーツー、夜な夜なゾンビが出るって噂知ってるか?」
カズマは購買で買った焼きそばパンを頬張りながら俺に訊く。
「いや…知らないけど」
「スタンドっつう超能力が使えるお前なら知ってると思ったんだけどなー」
あの廃ビルでの一件でスタンドについてバラしてしまったのでカズマは事あるごとにネタを降ってくる。
(ゾンビねぇ…)
「いくらなんでもゾンビは専門外だわ…なぁ楓?」
俺は唐突に楓に話を降る。
「え、ええ!そ、そうね!!きっとそう!!」
楓はビクつきながら答える。
極度の怖がりなのでお化けとか宇宙人とかいった類は訊いただけで身の毛がよだつらしい。
当然ゾンビなどといった定番オカルトもNGだ。
「俺のツレが見たらしいぜ…ゾンビ」
既に弁当を完食したヤマトが口を切る。
「確か一昨日だったかな…陰梁町の墓地でゾンビが徘徊していたとか…」
「ぎゃ――!!」
楓はオーバーリアクションで怖がってる様を表現する。
(ゾンビなんてものがこの日本にいるのかよ…)
- 237 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/04(日) 15:37:56 ID:AlTCYCFE0
- 「俺はよォ…あの廃ビルにいた化物を見てからは何でも信じるようになったぜ
ゾンビくらいいたって不思議じゃねーよ」
カズマは珍しく真剣な面持ちで云い出した。
また探しに行こうだとか云い出しかねないので、さてどうしたものかとため息をつく。
「俺達でゾンビを探してビデオに撮るってのはどうよ?」
(やっぱりな…)
「あー…悪いけど俺パスな。学校帰ったら病院」
上級生と喧嘩して珍しく打撲を負ったヤマトは断りを入れた。
「私はもちろん行かないわよ!」
もちろん楓もパス。
「俺も行かないよ。行くなら一人で行ってくれ」
たいして興味もないので俺もパス。
「なんだよお前ら連れねーな…まあ今度にしとくか」
「お前本当は一人で行くの怖いんだろ」
からかい口調でヤマトが云う。
「バカちげぇよ!つーかよく考えたらゾンビなんているわけねぇだろ!!」
結論、ゾンビなんているわけがない。
賛成多数により可決致しました。
午後の昼下がり、六時限目。
もっとも眠くなる時間帯である。
教科は国語総合で教師の岩城先生が教科書を朗読させていた。
- 238 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/04(日) 15:38:51 ID:AlTCYCFE0
- 「それじゃ東雲、84P読んでくれ」
名前を呼ばれた雪華さんが中原中也の『骨』というタイトルの詩を朗読する。
「ホラホラ、これが僕の骨だ、生きてゐた時の苦労にみちた
あのけがらはしい肉を破つて、しらじらと雨に洗はれ
ヌックと出た、骨の尖。
それは光沢もない、ただいたづらにしらじらと、
雨を吸収する、風に吹かれる、幾分空を反映する―――」
雪華さんは低い声量で淡々と抑揚無く読んでいった。
耳元で喋られたら悶絶死しそうだなぁと思いつつもどこかで訊いたような声な気がした。
それが誰なのかは見当もつかないのだが。
それにしてもこの『骨』という詩は面白いなと思った。
作者の苦々しい自嘲が込められた詩だ。
自己の中にもう一人の自己が見ている。さらにそれを客観視する第三の目。
自我の分裂とでも云うのだろうか。作者のアイデンティティが崩壊しているのが読み取れた。
孤独に絶望している作者の叫び。とても繊細で儚い感情の綴り。
**
部活の練習を終えて帰ろうとした時には既に夜の七時を回っていた。
辺りはすっかりと暗くなっており、ひとけは感じられない。
自分以外の人間が全てこの世から消え去ったのではないのかと錯覚してしまいそうなくらいの静寂。
静寂とは停止。停止とは死。死とは無。
俺は冬が嫌いだ。
暗くて寒くて静かすぎて…考えたくも無いことばかり考えてしまう。
漆黒の暗闇が手招きをしてるようで怖くなった。
見えないということは恐怖だ。
『知らない』ことや『分からない』ことは怖い。恐怖とは未知で、未知とは恐怖なのだ。
『幽霊』のような科学で証明されてない曖昧なものは当然怖いし、『死後』のことも考えると胸が苦しくなる。
死んだら天国か地獄に行くんですよ、と予め理解出来ていればおそらく怖くも何とも無いだろう。
熱心な宗教家が死を恐れないのは死んだらどうなるか知っているから。
それが事実かどうかなんて俺が知る由もないが、本人の世界ではそれが絶対だ。
恐怖を克服する手っ取り早い方法は思い込むこと。宗教とはその手段の一つ。
しかし、その思い込むということ自体が危険であり恐ろしいことなのだが。
恐怖を克服することが『生きる』ということだって誰かも云っていたね。
恐怖を記憶する遺伝子というものが存在していて日本人の98%が不安を感じやすいのだとか…。
**
しばらく歩いたところで路地裏から声がしてきた。
その声はどうやら俺に向けられたものだった。
- 239 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/04(日) 15:39:31 ID:AlTCYCFE0
- 「君が…有嶋祐介…だよね?」
声が小さくて訊き取りづらかったが、男の声だということは分かった。
「ちょっと話があるんだ…こっちへ来てくれないか」
暗闇の中に身を潜ませた男は声だけで俺を誘う。
しかし、何故だろうか。不思議と怖いとは思わなかった。
声を訊いて敵ではないというのが直感的に分かったのか。
「アンタ誰だ?」
俺は当然の疑問を投げつける。
云われたままにホイホイと行くほど危険なことは無い。
「『ヴェーダ』のことを知りたくはないか?」
(『ヴェーダ』…敵の組織の名称…これを知っていると云うことは…)
「分かった。とにかくそこから出てきてくれないか?」
俺は男に促す。
「…怖いけどしょうがないな。出た瞬間殴ったりしないでくれよ」
男は漆黒の暗闇の中から姿を現す。
スーツ姿で腕に腕章のような物を付けた出で立ちの男だ。
背丈は百八十cm近くあったが、体つきは些か細い。
この暗さでも分かるほど肌は薄ら白く、目つきが異様に鋭くてまるで住む世界が違うようだった。
「ここで話すのもアレだな…俺の行きつけの所を案内しよう…仲間もそこにいる」
俺は男の提案を飲んでついていくことにした。
男は辺りをキョロキョロと伺いながら歩いていく。
「さぁ…着いた」
男が案内した場所とは墓場だった。
そこには二人の男が墓の上に腰掛けていた。
(墓場ねぇ…何か引っかかるものがあるような…)
- 240 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/04(日) 15:39:52 ID:AlTCYCFE0
- 「『タクマ』…こいつが例の有嶋祐介か…?」
短髪で小柄な男がスーツの男を『タクマ』と呼んで話しかける
「ああ、そうだ」
「思ってたより全然普通だな」
今度は茶髪のややイカツイ男。
「お前ら一体何者なんだ?」
「自己紹介が遅れたな…俺の名前は…いや、名前は無い…
だが、仲間からは『タクマ』と呼ばれている」
名前が無いというのは一体どういうことなのだろうか。
「で、こっちのチビがシュウでイカツイほうがケンジだ」
「なるほど…じゃあタクマと呼ばせてもらうよ
『ヴェーダ』のことを知ってるみたいだけど…何か縁があるのか?」
「話せば長くなるが…まず俺は組織の人間だったということを打ち明けておこう」
タクマの言葉を訊いて緊張が走る。
「さっき名前が無いと云ったが、俺は戸籍上は存在してない人間なんだよ
単刀直入に云うと俺はある人間の遺伝子から生み出されたクローンだ
まあ信じがたい話だとは思うけどな…」
「いや、信じるよ…」
「!?」
「だって嘘つくならもっと真実味があるようなこと云うはずだろ
眉唾物な話なだけに逆に信憑性があるよ
それに――あいつらは遺伝子を操作した化物を作ってた…
クローン人間は倫理的な問題を除けば作ることは可能らしいし
あの組織がそんなこと躊躇するはずもないしね」
「ふむ…見た目とは裏腹に出来そうな奴だなタクマ」
ケンジがこちらを一瞥してからタクマに話しかける。
- 241 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/04(日) 15:41:12 ID:AlTCYCFE0
- 「そのようだな…」
タクマは墓を背もたれにして腰を降ろす。
(何とバチあたりな…)
「まあ訊いてくれ…
俺達はあいつらによって作られたクローンだ」
タクマは視線を一旦こちらに向けたのち、また地面に戻して語り始める。
「生まれた時から組織の研究所で育ってきた
昔は自分とそっくりの人間が何人もいたが…
その中で一番優秀だった俺を除いて全員処分された…」
(酷いな…だが、奴らのやりそうなことだ…)
「唯一残った俺はありとあらゆる実験を施されてきた
奴らにとって俺らはモルモットのようなものだったんだろう…
思い出すのも嫌なくらい酷い扱いを受けてきたし、殺されそうになったこともある」
「俺達の保護者は研究所の奴らだった
だが、研究のために観察されてきただけであって…そこに愛情なんて一切無かった」
タクマの横に座るシュウは虚ろな目で話す。
「おかしいよな…『親』すらいないんだってよ…
外の世界も知ること無く十六年間生きてきた…」
「そこで俺はシュウとケンジを誘って組織を抜け出すことにしたんだ
組織の連中を全員殺してやりたかったが、現状の戦力じゃそれが無理なのは明らか…」
(なるほどな…ということは―)
「頼む…!俺達を仲間にしてくれ…ッ!!
祐介が組織と戦ってるってのは耳にしてたんだ…
タダでとは言わない!奴らの事で知ってる情報は全て教える!」
タクマは頭を下げて懇願してきた。
- 242 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/04(日) 15:41:41 ID:AlTCYCFE0
- 「分かった…
俺で良かったら力になるよ
俺達も『ヴェーダ』を倒したい。利害は一致してるし断る理由もない」
俺はタクマに手を差し伸べて握手を求める。
「祐介…ありがとう…」
タクマは顔を上げる。その目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「ところでお前達はスタンド持ってるのか?」
俺は三人に訊く。
「ああ…俺達は元々スタンド使いの遺伝子から作られてるらしいからな
『シックス・フィート・アンダー』ッ!」
タクマの背後に棺桶を背負ったスタンドが現れる。
続いてシュウとケンジもスタンドを出す。
(よし…じゃあ兄貴達にもタクマ達のことを教えるか……えっ!?)
「うおあああああああああああ」
唐突にケンジが悲鳴を上げる。
一体何が起きたと云うのか。
ポタポタとケンジの胸から鮮血が滴る。
そこには拳程度の穴が開けられていた。
「ケンジッ!!大丈夫か!?おいッ!!」
タクマは懸命に呼び掛けるも虚しくケンジは息を引き取る。
「こんなとこまでついてきてやがったとは…しつこい奴らだぜ…!!」
シュウは激昂する。
「一体何が起きたんだ!?タクマ!」
状況が掴めない俺はタクマに問いただす。
- 243 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/04(日) 15:42:03 ID:AlTCYCFE0
- 「『ラーマ』と云って組織の裏切り者を始末する部隊があるんだ
既にこの墓地に潜んでたみたいだぜ…クソッ!」
タクマはS・F・Uで墓を殴って粉々に吹き飛ばす。
(墓に当たるのはやめとけよな…)
「気をつけろタクマ…敵はこの周辺に潜んでいる
透明になって姿を消す能力を持ってるのかもしれん」
「わ、分かった…おいシュウも…あ…」
気付いた時には既に遅く、頭を潰されたシュウの亡骸が転がっていた。
「ち…ちくしょう…ッ!!!」
「お、落ち着けタクマ!俺の傍から離れるな!!」
「こいつらはいい奴だった…こんな俺とも対等に口を聞いてくれた初めての仲間…」
タクマはカッと目を見開く。
「絶対に許さねぇ…『S・F・U』ッ!!」
『S・F・U』はシュウとケンジの死体に十字架の形をした六つの突起がついた槍を刺した。
グジュウウウウウウウウウ
六つの穴が開いた死体はムクリと立ち上がる。
(これはゾンビ…!!あの噂は…タクマの能力のことだったのか…)
「っておい!俺から離れるなって!!」
「……殺す…ッ!!」
ゾンビ達は「ウガァァァァァァ」と叫びながら前を進んでいく。
そして、動きが止まり―――
- 244 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/04(日) 15:42:17 ID:AlTCYCFE0
- 「くッ…!!」
ゾンビ達に噛み付かれて姿を現した二人組の男女。
男のほうは無精髭を生やしたワイルドな風貌、女のほうはカニの足のような髪型をしていた。
「クソがッ!!」
男は鎖で繋がれた頭に角が生えているスタンドでゾンビ達を払いのける。
「やっと面が拝めたぜ…いいか、お前らは――殺す」
タクマは武者震いをしながら『S・F・U』を射程の許すギリギリまで出す。
その表情は口頭が目につこうかというくらいに釣り上がり、鬼が憑依したようだった。
「裏切り者は抹殺するまでだ…名も無き被験体『一号』よ」
- 245 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/04(日) 15:42:46 ID:???0
- ここまで書けました…続きは後ほど
- 246 :名無しのスタンド使い:2010/04/04(日) 17:45:23 ID:???0
- SLさんの安価対決と同じ組み合わせww
- 247 : ◆U4eKfayJzA:2010/04/04(日) 17:54:01 ID:EIwJrR9w0
- カニヘッドの女って、まさかあれが敵なのかッ! そして、クローン琢磨まで登場するとは……
次は、何が来るんだぁぁぁッ! 乙でした!
- 248 :名無しのスタンド使い:2010/04/04(日) 18:25:26 ID:???O
- ぼっちキターーーーッ!
- 249 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/04(日) 18:38:20 ID:???0
- 「裏切り者は抹殺するまでだ…名も無き被験体『一号』よ」
無精髭の男が淡々とした口調で目的を告げる。
(やはり『ラーマ』の連中はおかしい…一筋縄じゃいかなさそうだ)
「死ねェェェ―――!!」
タクマは墓石を『S・F・U』で砕いてツブテのように相手目掛けて撃つ。
スカァーッ
男に当たったはずの石ツブテは鎖でつながれたスタンドの頭部に瞬間移動して―――
すり抜ける。
「な、なんだと!?」
(ヤバイ!タクマが殺されるッ!!)
俺は走ってタクマに接近してからスタンドを出す。
「『U2』ッ!!」
……
ズズン
姿は見えなくとも…空間全体を重くすればそこに人間がいれば分かる。
前方二メートルに地面が凹んでいるのが視認出来た。
後はそこを叩けばいい。
「祐介危ないッ!後ろだッ!!」
タクマに注意を促されて背後を振り返ると先程のカニの女がいた。
スタンドを出してこちらを攻撃しようとしている。
(一体どういうことだ…!?敵は三人いたということか!?
だが、考えてる時間は無い…)
「ボノォ―!」
俺はそのまま背後にいた女を『U2』で攻撃する。
- 250 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/04(日) 18:38:48 ID:???0
- 「はい残念…本物はこっちよ」
(やられた…!!)
『U2』の拳は空を切る。攻撃したのは実体ではなく映像…!
急いで振り返るが、既にカニ女の姿は無く―――
「うぎゃァァァァ―!!」
俺の射程範囲から離れたタクマの右腕が切断される。
「タクマァ―――!!」
俺はタクマの名前を叫んで駆けつける。
「ゾンビは…かっけぇんだぜ…何てたって腐ってるしよォォォ〜…」
(タクマ…錯乱状態で訳がわからないことを…)
「落ち着けタクマ…!!大丈夫だ…俺が何とか逃げる方法を考えるッ!!」
「よく聞け祐介…奴らは近距離型のスタンドだ
あれだけのパワーなら射程はきっと短い…
つまり―――」
タクマはボソボソと小声で俺の耳元で話した。
「なるほどな…お前の覚悟しっかり受け取った
それじゃ行きますか…!」
再びスタンドを出して臨戦態勢に入る。
ザシュウウウウウ
「うぐァァァァ…ぐッ!よし…捉えた…」
タクマは肩を攻撃されるが、とっさに『S・F・U』を出して相手スタンドを捕まえる。
「骨を切らせて肉を絶つ…だ!行け、シュウ!ケンジ!」
- 251 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/04(日) 18:39:31 ID:???0
- 「グガアアアアアアアアアアアアッ!! 」
ゾンビ達は見えない敵に噛み付く。
「今だ祐介ッ!!今のうちに叩けッ!!」
「ボノボノボノボノボノボノボノボノォ―――!!」
ゾンビが噛み付いてるであろう部分に『U2』でラッシュをかます。
しかし、その刹那―――
ゾンビの穴の広がりが限界を迎え…バラバラに引き裂かれた。
「ガァァァァ……」
「う…うわああああああああああ…!!」
(ヤバイな…タクマの精神が不安定になってきた…
俺一人でやるしかないのか!?)
ゾンビから解放されたことによって敵は逃げていた。
当然『U2』のラッシュは不発に終わる。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
(見えない敵が…来るッ!…しかし静かだ。
こんなに静かなら耳をすませば奴らの足音が訊こえるはず…
恐らく透明にしてるだけで音や臭いまでは消せてないはずだからだ
気を付けるべきはあの映像を生み出す能力…耳に全神経を注ぎ込めば勝てるッ!!)
ガサッ
「そこだァァァァァァァ―――――!!!」
俺は全力を持って音が鳴る方にパンチを繰り出す。
……
「そんな馬鹿な…」
『U2』の一撃は大空振り。
虚しくも空気だけを揺らす結果となった。
(終わった…)
タタタタタタタタッ
- 252 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/04(日) 18:39:47 ID:???0
- 小刻みな足音が耳に訊こえてくる。
それは死へのマーチか。
ああ、俺はここで死ぬんだなと悟った。
グサリ
ボトボトボト
何かが刺さり、血が流れ落ちる音が訊こえてくる。
後ろを振り向くとそこには―――
(タクマ…やるじゃねェか)
タクマは切断された右腕を『S・F・U』で投げていた。
タイミングよく投げられたそれは敵の体を貫くことに成功していたのだ。
敵も何とか痛みに耐えてるようだったが、腕が刺さったことで居場所は丸分かりだった。
血の臭いだってプンプンするぜ。
(後は任せなッ!)
「ボーノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノォォォ―――!!!」
「GIYYAAAAAAAAAAAAAAAH―――!!!」
姿を見せたのは男の方だった。
『U2』のラッシュを食らった男は吹き飛んだ後、地面にメリメリと沈んでいく。
「ゆう…すけ…女のほうを…ごほッ」
喋ることもままならないタクマは血反吐を地面に撒き散らす。
「タクマ…それ以上喋るな…!」
脇腹を攻撃された際にダメージが内臓にまで達していたのかタクマはうずくまる。
- 253 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/04(日) 18:40:02 ID:???0
- (俺達をみすみす見逃して帰るような奴らじゃない…
となると今も透明になって俺達を殺す機を伺っているということだ!
耳を研ぎ澄ませッ!全神経を耳に傾けろッ!!)
「そこだッ!!」
バギィィィ
確かに感触はあった。だが――
「なまっちょろいパワーね…私の敵ではないわ」
見えないスタンドは『U2』の攻撃をくらいながら攻撃をしてきた。
そのパワーは『U2』の比ではないほどだ。
吹っ飛ばされそうになるが、自分に能力をかけて動きを止める。
しかし、顔面にパンチを連打されて能力を解除してしまう。
自分にかけた分も相手にかけた分も。
「うおおおおおおおおおお」
ドガン
俺は墓石にぶつかって軽く脳震盪を起こす。
(ああ…気持ち悪いなぁ…)
「『クリスタル・エンパイア』ッ!オラオラオラオラァアア―――!!」
ドッギャォオオオ―ン
ラッシュを受けた俺の体は九つの墓石を突き破りながら墓地の端にまで吹き飛ばされる。
(すげぇパワーだ…正攻法でも勝てない…)
カニの女は身動きが出来ない俺の目の前で姿を現す。
「とどめよッ!オラオラオラァアア―!!」
女はきらびやかなクリスタルのついたスタンドの拳を俺に向けて振り下ろす。
- 254 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/04(日) 18:40:18 ID:???0
- 「ハァ…ハァ…間に合った」
「タクマッ!!」
ギリギリのところでメシア様が登場。
女の腕をゾンビが掴んでいた。
「そのゾンビ…まさか…」
「そうだ…さっきの男を…殺してゾンビに…させてもらった…
お前が…重くして…動きを止めてたおかげで…簡単に殺せたよ…」
墓石にしがみつきながら立っている状態のタクマが答える。
(無茶しやがって…)
「オラオラオラオラオラオラオラァアアアアアア―――!!」
女の攻撃の矛先がタクマのほうへ移る。
タクマはロクに動くことも出来ないので無防備だった。
「祐介…後は任せる…」
「ああ…『U2』ッ!」
『U2』のパンチは女の頭をとらえる。
「ギャァアアアアアアア」
女は悲鳴をあげる。
「このまま頭をぶち抜かせてもらうッ!!」
ズゴォォオ
カニ頭の女は脳漿をぶちまけて地面に叩きつけられたまま―――
ゾンビの餌食となった。
「タクマ…助かったよ…
何だかんだで頼りになる奴だぜ」
俺はタクマの健闘を讃えた。
- 255 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/04(日) 18:40:28 ID:???0
- 「お前こそな…祐介
うッ!…全身が痛ェ…今頃になって意識が朦朧としてきた…」
倒れかかるタクマを抱きかかえて俺はとある人に連絡を入れる。
**
―――三日後
俺の家にタクマが来て三日が経った。
白河さんに切断された右腕もくっつけて貰ってすっかり全快。
「おいタクマ!俺のポテチ食ってんじゃねーよ!」
「え…あ、スマン…つい美味くてな…」
菓子なんて一切食ったことが無かったタクマには新鮮で仕方がなかったのだろう。
コーラもガブガブと飲み干して、テレビにも食いつくように観ていた。
「やれやれ…頼もしいお仲間が増えたものだな祐介」
兄貴には冗談交じりで呟く。
ちゃんと事情を話していたのでタクマのことについては理解してもらえた。
タクマは戸籍上は存在しない人間なので暫くはうちで一緒に暮す事になったのだ。
「ダウン・オブ・ザ・デッド面白いな…バタリアンもいい!死霊のえじきもたまらんな!」
何故か兄貴がゾンビ映画のDVDを持っていたのでタクマがテレビを占領することに。
もう丸一日寝ずにDVDを観続けてる困った奴だ。
「世間知らずのタクマに面白いもの見せてやるよ。出かけようぜ」
To Be Continued...
有嶋祐介
スタンド名『U2』
→タクマが仲間(居候)になる。
タクマ(本名は無い)
スタンド『シックス・フィート・アンダー』
→祐介の家に上がりこむ。
シュウ・ケンジ
スタンド不明
→死亡。後にタクマによって墓を建てられる。
ワイルドな男
スタンド『テクニカル・エクスタシー』
→死亡。ゾンビ化して引き裂かれた後は山奥に埋められる。
カニ
スタンド『クリスタル・エンパイア』
→死亡。死体はスタッフもといゾンビがおいしく頂きました。
- 256 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/04(日) 18:52:02 ID:???0
- >>246
そういえばそうだったwww
あのクオリティと比べられると困っちゃうなぁ
>>247
カニ惨殺させちゃったからカニファンは見ない方がいいと思うw
次はお熱い人が来る予定は未定
>>248
しかし、ぼっちがぼっちじゃない…
せめてここでは普通に活躍させてあげたいです
- 257 :名無しのスタンド使い:2010/04/04(日) 19:43:45 ID:???0
- ぼっち・・・よかったなお友達ができて・・・
よかった・・・っ!
- 258 :名無しのスタンド使い:2010/04/04(日) 19:59:56 ID:a3waEHuk0
- ぼっちがぼっちじゃないなんて……
なんて素晴らしい世界だ……乙!
- 259 :名無しのスタンド使い:2010/04/04(日) 20:02:10 ID:dAx4.jVYO
- 祐介とのやりとりで普通に泣いた
もうぼっちじゃないんだな…良かった
- 260 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/05(月) 02:21:40 ID:???0
- >>257-259
みんな琢磨のこと好きで安心したw
もういっそ琢磨を主人公格にしてもいいな
今アクモン読み直してるけど…琢磨死んだとこで泣いたw
- 261 :名無しのスタンド使い:2010/04/05(月) 14:04:32 ID:???O
- 乙!
たくま人気だなwwww
- 262 :名無しのスタンド使い:2010/04/05(月) 19:21:21 ID:amY/eRrM0
- 泣いた
- 263 : ◆U4eKfayJzA:2010/04/05(月) 21:33:14 ID:dgCvt4js0
- カニがっ、カニが、味噌をばら撒きながら食われたぁぁッ!
電ちゅみに続いて、二作も主役を張ったスタンドは別作品で敵役として惨殺されるジンクスでも出来たみたいだ。
乙でした!
あ、後、本スレの規制に巻き込まれてるとはいえ、こんなところで言うのもなんですが、自案の絵を書いていただいてありがとうございました。
- 264 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/09(金) 05:50:05 ID:???0
- 「誰だてめーは…!!」
俺は眼前に現れた謎の男に問いかける。
タバコをふかしたいけ好かない男である。
「俺の名前は女医時…ヴェーダの大首領だッ!!」
唐突の告白。
「ハハ…嘘だろ…
じゃあお前が兄貴や妹…タクマを殺したって言うのかよ!?」
「そうだ…俺が殺った」
「てめェェェ―!!許さねェェェ―――ッ!!」
臨界点を超えたドス黒い怒りが体から突き抜ける。
敵意殺意憎悪怨恨悪意拒否反感怨念私憤激怒憤慨。
そして、俺は気づいたら『U2』で男の体をメッタ打ちにしていた。
ガシッ!ボカッ!
男はマッハで死んだ。
「終わったよ…兄貴…智恵……タクマ!!」
U2第一部 完!
- 265 : ◆R0wKkjl1to:2010/04/09(金) 06:31:02 ID:5JmXznvcO
- なん・・・だと?
今、一体何が起こったんだ・・・?
「あ!更新されてる?」と、wktkしながらレスを見たら
U2が・・・終わった?
U2に出してもらいたくて、ピンポイントで案を書いてもらったのに・・・?
そんな・・・・・
俺は信じないッ!!
何かの冗談だろ!?
- 266 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/09(金) 06:46:50 ID:???0
- / , -''"´ \
/ / / ,. ‐'''""~´ ̄ ̄\
V / / / }
∨ / / ,,.. -一ァ',二二二{
V ,..,/ ,.ィ彳 f==<r'二二二{、 | ̄ ̄ __|__ |
∨| ヘ`<=''~ 弋ッ-ミ'''テ~ナ/ |ー― \/ ´ ̄| 「 ̄` | | \/
〉'| | ト、 i{ ,..`二/ =|/''′ |__ /\ 匚]__ !__, |_ | __/
//ヽヽぅ ヽ { =|
//匚 ̄]〕 丶,-‐ ,> ( そ の と お り で ご ざ い ま す )
/´r┐|__,|ト、 、____`7´
__人..二.」' l>、 ヽ`,二/
´"''ー-∟_\ ∠三ノ
―-、__ ``ヾニ='′
`ヽ /、
|‐- ...__ /ヽ\_
\  ̄ `ヽ \
次回、第六章「火を恐れるのは猿までよねー(仮)」
- 267 : ◆U4eKfayJzA:2010/04/09(金) 09:11:21 ID:BVHPj4Mo0
- >>266
ですよねーw
携帯小説(笑)じみた打ち切りエンドなんて、冗談じゃないわけないですね。
次回をお待ちしています。
……自分、この終わりかたを本気で採用しようかな。(ボソッ)
- 268 :名無しのスタンド使い:2010/04/09(金) 14:40:25 ID:???0
- 主人公もラスボスもやるなんてアクモンさんすごいムヒ!
- 269 :名無しのスタンド使い:2010/04/09(金) 20:43:33 ID:???0
- さすがオリスタオシャレ四天王の一人だムヒ!
- 270 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/09(金) 21:47:58 ID:???0
- 昨日…いや今日の朝は調子に乗りすぎましたw
反応してくださった皆様ありがとうございます
スレで何枚か描いたらSSの執筆に取り掛かろうかという予定は未定
>>267
やめてー!
- 271 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/12(月) 02:58:44 ID:???0
- 駄目だ…全然筆が進まない…
これがカニの呪いか…
- 272 :名無しのスタンド使い:2010/04/12(月) 03:38:32 ID:???0
- 主人公にしなくても敵として出すだけで呪いの効果があるだと・・・
恐ろしすぎだろ・・・
- 273 :名無しのスタンド使い:2010/04/12(月) 08:48:20 ID:???O
- 『くりすたる・えんぱいあ』本当ニ恐ロシイすたんどダ…
- 274 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/12(月) 22:51:41 ID:4wz9ZuA.0
- 第六章「火の用心」
2010年1月31日日曜 午前10時 Y県Y市内 『corned beef』
久しぶりに部活の練習もなく羽を伸ばせていた。
選抜の出場が決まってここのところは息をつく暇もなかったので嬉しい。
俺は幼馴染の鍛冶 鉄也と喫茶店『corned beef』で飯を食っていた。
何が悲しくて野郎と喫茶店で飯を食わないといけないのか―
「なァ…祐介知ってるか?『放火魔』の噂」
ピザを頬張りながら鉄也は俺に訊く。
「何だソレ?」
俺は知らなかったので訊き返す。
「最近やたらと火事が多いだろ?その火事全部誰かの仕業らしい
しかも火元が断定出来ないとかで警察も頭を抱えてるとかって話だ」
「嫌な予感がしてしょうがないんだが」
最近は事件があるごとに「『ヴェーダ』の仕業だ」と思うようになってしまっていた。
いくら何でも全てが全て奴らの仕業なわけはないのだろうが。
「俺のクラスメイトの家も火事になって全焼したとかって訊いたぞ
岩田って奴なんだが全身火傷で重症らしい…家族は焼け死んだとよ…」
岩田とやらが鉄也と親交があったのかどうかは分からないが神妙な面持ちで話していた。
「マジか」
「んで岩田の近所に住んでる奴が火事になる前に不審な男を見たとか云ってた」
「そいつが『放火魔』か」
「多分な。分かるだろ?『スタンド使い』のお前なら―――」
**
―――午後2時 悪門荘
今日は兄貴は京輔さんとカラオケに行っていて智恵は友達の家に遊びに行ってるそうだ。
タクマも何故か家にいなくて一人きり。
- 275 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/12(月) 22:52:13 ID:4wz9ZuA.0
- 寒さがピークに達しているようでファンヒーターをつけても部屋の中はぬくまるのが遅かった。
家に誰もいないと余計に寒く感じてしまう。
俺はファンヒーターの前で手を揉みほぐしながらテレビに視線を向ける。
最近周りから情弱呼ばわりされてるのでせめてニュースくらいは見ようと思う。
どうやら県内で火災が頻発しているようでその件数は例を見ないほど多かった。
とぅおるるるるるる
携帯の着信音が静寂を破る。
「もしもし、祐介君。急で申し訳ないんだが―」
久坂さんから初の任務を受渡される。
それは例の『放火魔』の件だった。
「蛯原君と天童君には既に連絡を取ってあるからすぐにそっちに向かうと思う。
今回からはチームで動いてもらうからリーダーの天童君の指示にしたがってくれ」
「分かりました」
電話を切ってから窓の外を覗くとすでに二人の男女が悪門荘の庭で待っていた。
俺は急いで外に出て二人のもとへ行く。
「貴様が有嶋祐介か…」
どこか幼さが残る長髪の男が睨みつけてくる。
彼が天童なのだろうか。
「初めまして、よろしくお願いし――」
挨拶を云いかけた瞬間、咄嗟に『U2』を出して身構える。
ドゴォ!
「ちょ、ちょっと!何するんですか!?」
男はスタンドを出して前触れ無くこちらを攻撃してきたのだ。
俺のようなタイプのスタンドではなく、スーツのように着ている。
群青色のぴっちりしたスーツで背中にはボンベのようなものを背負っていた。
「いや…すまんかった。ちょっと君を試してみたくてな…
俺の名前は天童光雅。このチームのリーダーだ」
やはりこの人が天童なのか…。ちょっと不安だ。
- 276 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/12(月) 22:52:34 ID:4wz9ZuA.0
- 「そして私が蛯原夏海!学校じゃ『エビちゃん』って呼ばれてるからそう呼んでくてれもええよ!」
妙にテンションの高い少女。エビの触覚や爪を模したような髪形に腹巻というファッション。
同年代だと思われるがおよそ普通の高校生とは思えなかった。
そして五分後…。
「天童さん、遅れてすみませェん」
門のほうから五十嵐さんと楓がやってきた。
これで全員揃ったわけか。
「遅いぞ五十嵐!橘!
罰金かゲンコツのどっちがいい!?
俺は選べねェェ…優純普段だからなァ〜…」
天童さんは冗談なのか本気なのか分からないトーンで五十嵐さんに話しかけた。
「いやいや!勘弁して下さいマジで!」
「フン…まあいいだろう
それでは全員揃ったところで行くとしよう」
天童さんはツカツカと門の外へと歩いていく。
俺以外の皆は付いていっていたので俺もその後を歩く。
「な…なぁ…どこに行くんだ?」
俺は小声で楓に訊いた。
「ユーツー君もしかして何も訊いてないわけ?
…私も詳しくは知らないけど『放火魔』が次に現れそうな場所は目星がついてるそうよ」
「へぇー…」
「私に訊くよりリーダーの天童さんに訊いたら?」
「いや…何かあの人おっかなさそうだから…」
楓は呆れつつも同調するように「そうね…」と呟いた。
- 277 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/12(月) 22:52:46 ID:4wz9ZuA.0
- そして、しばらく歩くと目的地に着いたようだ。
「ここだ」
天童さんが指差す方向には東京ドーム何個分かありそうなくらいの広大な敷地を持った豪邸があった。
「ここは確か資産家の金持ちが住んでる家でしたっけ?」
「ああ、そうだ」
天童さんは言葉短めに答えた。
『放火魔』と豪邸に何の関連性があると云うのか。
「『放火魔』の傾向として裕福な家を狙うことが多いようだ
何軒かリストアップして他のチームには別の家を当たってもらっている
我々は見つからないように隠れて放火の瞬間を待つッ!
十中八九スタンドによる犯行だろうから気を引き締めろよ」
天童さんは本日の活動内容を告げた。
俺達は敷地内に不法侵入して木陰に身を潜める事にした。
「はぁ…寒い…」
皆の服装を見るとしっかり厚着をして防寒対策を取っていた。
しかし、俺は恐ろしいほど軽装。この極寒の中Tシャツにパーカーだけである。
「我慢我慢ッ!腹に気合入れれば何てことないさ!ワハハ」
エビちゃんは豪快に笑う。
どうやら根性論がお好きなようだ。
「静かにッ!来たぞ…」
先頭に座り込む天童さんの表情が臨戦態勢に入る。
まさか本当に来るとは…。
ザッザッ…ザザッ…ザザザッ…
足音が一つじゃない!
- 278 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/12(月) 22:53:55 ID:???0
- ごめん、スランプです
全然書けない…やる気スイッチが入らない
- 279 :名無しのスタンド使い:2010/04/13(火) 00:04:10 ID:???O
- なにそれこわい
- 280 :名無しのスタンド使い:2010/04/13(火) 00:05:35 ID:ec9.t81oO
- 頑張れ乙1先生!
続き待ってます
- 281 : ◆6JEWITNnHo:2010/04/13(火) 00:14:30 ID:LStDeT1A0
- >>278
睡魔を理由にサボり続ける自分よりは万倍マシですよ。
レスこそしませんでしたが毎回楽しみにしています。
或る人は「頑張ってる人に頑張れは禁句である」と多分言ってた気がしますが、敢えて言います。
ほどほどに頑張ってください!
- 282 : ◆U4eKfayJzA:2010/04/13(火) 09:53:59 ID:Hd92K45Q0
- ぎゃあ……今度はエビが出た。こっちで一本釣りして網にくるむつもりのエビが出た……。やっぱり、選ばれるスタンドってのはなんか持ってるのかなぁ。
それはともかく、『放火魔』のスタンドが何なのか楽しみにしてます! 乙でした!
- 283 :名無しのスタンド使い:2010/04/13(火) 16:05:26 ID:OxvnYLqYO
- 乙!
エビかわいいよエビ
- 284 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/13(火) 19:51:23 ID:???0
- 明日は朝早いから更新出来ないかも…
こんなにもコメントもらえる俺は幸せ者だなぁ
>>279
こわいよー
>>280
ありがとうございます
>>281
そう言ってもらえるとやる気モリモリです
ホテルの更新も楽しみにしてますね
>>282
個人的にエビ本体のデザイン好きなんでいつか出そうって決めてたんです
『放火魔』といったらアレとかアレですね…まあ想像してるどおりのがくるかとw
>>283
エビが人気者になれるように頑張らないとね
- 285 : ◆R0wKkjl1to:2010/04/14(水) 07:37:53 ID:R1fqHHfUO
- 蟹の次は海老ですかwww
乙です!!
放火魔のスタンドが気になります・・・誰なんだろう?
- 286 :名無しのスタンド使い:2010/04/14(水) 21:51:26 ID:ZGRYBpCE0
- 海老……だと……
- 287 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/15(木) 22:21:30 ID:kb70fu1g0
- 「敵の数は五人だ…都合よくこちらと人数合ってるな…
全員で同時に戦うか、一対一で戦うか…うーむ…どうしたものか…」
「て、天童さん…何モタモタしてんですかッ! あいつら家に近づこうとしてますよッ!」
(天童さん優柔不断すぎるだろ…何でリーダーなんだろう…)
「連携して戦いましょう。俺なんか遠隔操作型のスタンドですから一対一では役に立てそうにないですし」
「そ、そうだな! じゃあ五十嵐の言う通り皆で戦おうッ!」
我らがリーダーは戦う前からすでに汗ダクダクだった。
俺は奴らの会話に耳をすましてみる。
「中々燃やしがいのありそうな家だな…クック…」
「ああ!こんなにも幸福に充ち溢れてそうな豪邸が灰に変わる瞬間ッ!
想像しただけでイっちまいそうだぜェ〜…フィッヒッヒ」
「言葉では表現しきれないほどのエクスタシー…それが放火ッ!」
「それではやりますか」
「早くやっちゃお」
奴らはすぐにでも放火をしそうな勢いだった。
俺は堪えきれずに飛び出す。
「ヘイッ! 待ちなッ!」
「何だテメェ!?」
俺の声に反応した男達は一斉にこちらを振り返る。
同世代の女が一人いるようだったが。
「おたくらさぁ…家に火つける前に尻に火がついてたみたいだぜ?」
俺は『U2』を出してジリジリと迫っていく。
- 288 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/15(木) 22:21:59 ID:kb70fu1g0
- 「いいか…被害を出来るだけ最小限にとどめろよ
五十嵐はこの家の人間を避難させろッ!」
天童さんが指示をする。
「…了解!」
五十嵐さんは『アクロース・ザ・メトロポリス』を出して家に向かう。
「藤田と葉山は家の方を頼む。この糞カスどもは俺達三人が倒す」
リーダー格と思われるイケメンの男が俺達の前に立ちはだかる。
そして女子高生くらいの女と消防士のような防護服を着た男が家の方へ走っていく。
「蛯原と橘は奴らを止めてくれ! こいつらは俺と有嶋が食い止める…!!」
「なめられたもんだな…ガキ二人で俺達を何とか出来るとでも思ったのか?」
「まあ…たまには直に人間を燃やすにもいいだろう…」
タバコをふかした男とゴツイ顔の男も俺達の前に出てきた。
「藤田ァ! ガソリンぶっかけろッ!!」
ゴツイ顔をした男が藤田と呼ばれる男へ促す。
「了解…『ニューエスト・モデル』ッ! ガソリン噴射ッ!」
防護服のようなスーツを着た男は左腕から透明の液体を家に放つ。
これはハッタリでも無く本物のガソリンなのだろう…。
そして、間髪入れずに―――
「『バーニング・ファイヤーダンス』…さあ私と踊りましょう?」
女がそう云うと右手にキーパーグローブのようなスタンドが出現し、その周りには炎が覆っていた。
その腕を振りかざすと地面に炎が這っていってガソリンまみれの家に着火する。
ブワォオオオン!!
たちまち大豪邸は炎に包まれる。
「まずい…!五十嵐早く行け!蛯原と橘は奴らをとめろッ!!」
天童さんは動揺しきっていた。
- 289 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/15(木) 22:22:30 ID:kb70fu1g0
- 「オイ…よそ見とは随分余裕だな? …『ラプソディー・オブ・ファイア』ッ!」
タバコをふかした男は赤い鳥獣型のスタンドを出現させる。
『ラプソディー・オブ・ファイア』と呼ばれるスタンドの周りには何かが舞っていた。
『ラプソディー・オブ・ファイア』はカパッと口を開いて周りに待っている何かを吸い込み始めた。
「『鱗粉』を食らえッ!!」
男がそう云うと『ラプソディー・オブ・ファイア』の口から竜巻が発生して、こちらを襲う。
(鱗粉…!?何かタネがありそうだけど…まともに食らったらヤバそうだ)
「ここは俺に任せろッ! 『ティアーズ・イン・ヘブン』ッ!!」
天童さんはスタンドを出現させるとスーツ姿に変化する。
そしてスーツの穴から凄まじい気流が発生して竜巻を掻き消す。
「俺の攻撃を打ち消すとは…大した圧力だ…だが――」
「川崎…時間稼ぎご苦労!」
俺は振り返ると先程のゴツイ顔をした男が背後に回っていることに気付く。
「見てみろよ…お前の体…すでに燃えてるぜ?」
上着が燃えていることに気づいて咄嗟に『U2』で破り捨てる。
今後はカチン!という音が聞こえてきた。
イケメンの男がジッポライターを開いて火を着けていたのだ。
「俺の『レッド・ホット』はほんの少しの火さえあれば発現出来る…
だが、そこの全身スーツの男…お前の能力は危険だ…
こんななまっちょろい火ではいとも容易く消されてしまうだろうッ!
そこでだ…戦い易いフィールドに変えさせてもらうッ!
藤田ァ! ガソリンを撒いてくれッ!!」
「ああ…撒こう」
藤田はホースをこちらに向けてガソリンを放つ。
俺は避けたものの辺り一帯がガソリンまみれになってしまった。
(何ということを…!)
- 290 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/15(木) 22:22:44 ID:kb70fu1g0
- 「よし…これで心置きなく発現出来る…発火ッ!!」
イケメンの男はライターをガソリンまみれの地面に投げる。
ゴォオオオオオ
燃え盛った炎が徐々に人型へと変貌していく。
それはマスクを被ったスタンドだった。
「これだけの炎なら俺の『レッド・ホット』も安心だろう…」
「『ラプソディー・オブ・ファイア』! あいつを攻撃しろ!」
タバコを吹かす男、川崎が俺のほうを攻撃してきた。
吹き出された竜巻が俺を襲う。
「危ねぇ!!」
間一髪避けるものの、体に鱗粉が付着してしまったようだ。
ボォウ!
右腕に着いた鱗粉が勢い良く発火していく。
(かすっただけでこれだけの…!!)
焦りが俺のパフォーマンスを著しく下げていた。
こいつらの倒すところを想像が出来ない…。
天童さんのほうを見るとイケメンの男と戦っていて劣勢をしいられていた。
「さっきは上着を脱ぐことで回避したが、今度はどうだ?
直接燃やしてやるッ!!」
ゴツイ顔をした男が俺に話しかけてきた。
「まあ…こういう時は―――」
俺は全力疾走で男の元へ駆け寄る。
「正面突破するしかないよなァ〜…炎だとか鱗粉だとか恐れててもしょうがねぇ!
『U2』ッ! 叩き込めッ!!」
ガシィ!
- 291 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/15(木) 22:23:00 ID:kb70fu1g0
- 「オイオイ…あんまりすっとろいもんだから掴んじまったわ
攻撃っつーのはどうやるもんか俺が手本を見せてやろうッ! 『バーン・バーン』ッ!!」
『バーン・バーン』の右ストレートが『U2』の顔面を捉える。
バギャァ
「ごふっ…」
(何て速くて重いパンチなんだ…)
「まだまだまだァ―!! お前が炎に焼かれるまで後四分はあるからなァ〜
たっぷり楽しませてもらうぜェ〜〜〜!!」
ドガドガドガドガッ!!
顔、首、胸、腹、腕、脚…
『バーン・バーン』のラッシュを全身に食らった俺は大量の血反吐を吐き出す。
(手も足も出ないとは…こいつら強すぎる…)
楓とエビちゃんのほうを見ると炎を避けるのが精一杯という光景だった。
五十嵐さんも救出を断念して戦闘に加わっていたが、苦戦をしいられているようだ。
天童さんは何とか戦えているものの敵二人を相手に押され気味だ。
「クハハハハ!! お前達は風前の灯だッ!!」
「いい気になってんじゃねぇ…」
「あ!?」
「お前らに殺されるくらいならッ! 腕の一本くらいッ!」
掴まれていた右腕を切り落として、そのまま左手で男を殴る。
ズシン!
「ぐッ…体が…重い…だと!?」
『U2』の拳で殴られた男はまともに立てなくなり地に伏す。
「このままラッシュをぶち込みたいところだが…質問がある」
「何…!?」
男は怪訝そうな顔でこちらを見る。
- 292 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/15(木) 22:23:15 ID:kb70fu1g0
- 「短調直入に訊く…お前達は『ヴェーダ』の人間か?」
「ああ…そうだ…だが何故お前が知っている!」
「…その反応でお前が下っ端ということは分かったよ
こんなくだらん事件を起こしてるのはお前のような下っ端が自由気ままに動いてるからだろうな」
(しかし、奴らはそれぞれの構成員達に監視をつけてたはずではないのだろうか…?
犯罪行為自体は黙認しているのか?もし、こいつらが警察にでも捕まったら情報を吐くかもしれないというのに…
いや…そうか…戦力か
奴らが何をしようとしているのかは分からないけど大勢の駒を必要としているんだ
実際こいつらは強い。野放しにしてでも飼っておきたいはず…
ただでさえ俺達があの大勢のスタンド使いを倒したせいで戦力は減ってるはずなのだから)
「お前達からはロクな情報も引き出せそうにない…このままラッシュをぶち込ませてもらうぞ」
「おい…見ろよ…」
男は視線を天童さんや楓達のほうに向ける。
「あの全身スーツ男も…このまま戦ってたら負けるだろうよ…
それにあの女どもは―――」
楓達は周囲を炎に囲まれて逃げることも困難となっていた。
家は全体に火が回っていて全焼するのは時間の問題という様子。
「どうする? 俺を殺すか? 俺を殴ってる間にあの女どもは死んでしまうかもしれんぞ?」
「…クソッ!!」
俺は男を放置したまま楓達のほうへ走って向かう。
「フハハハハ!! 甘いねぇ…その甘さが命取りになるんだよッ!!」
『U2』の能力射程から外れた男が下卑た声で笑う。
「死ねェェェ―――!!」
振り返ると男はスタンドを出してこちらに攻撃をしかけようとしていた。
しかし、どうも様子がおかしい。
男は走っているようなのに一向に前進していないのだ。
- 293 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/15(木) 22:23:32 ID:kb70fu1g0
- 「ハァ…ハァ…何故だッ! こんなに走ってるのに全然進まねぇ―!!」
俺は男の背後にいるソレに気が付く。
「火事が起きてると思って来てみたらさァ〜…こんなことになってるとはねェ」
「タクマッ!!」
うちで居候してるゾンビ大好き野郎がそこにいた。
男の体を『シックス・フィート・アンダー』で押さえていたのだ。
「いまいち状況が飲み込めないが…こいつは俺が相手する! 今のうちに行けッ!」
「恩に着るぜ!」
「ちくしょう…! 増援が来るとは…! まあいい…こいつを倒した後はお前だッ!!」
俺は踵を返して楓達の元へ全力で走る。
「これでとどめよ!」
敵の葉山という女が攻撃をしようとしていた。
どうやら戦況は思いの他マズイようで楓達は服に火が燃え移っている。
「待ちなッ!」
俺の存在に気付いた敵は攻撃を中断してこちらに顔を向ける。
「アイツら…一匹逃がしちまってんじゃねぇかよ…情けねェ…」
防護服に身を包んだ藤田という男は肩をすくめた。
顔をうかがい知ることは出来ないが恐らく呆れているのだろう。
「まあいいわ…一匹増えたところで何も変わらないのだから!
藤田、手はず通りやるわよ!」
「了解」
(藤田とかいう奴はあの服自体がスタンドでガソリンを出す能力…
葉山という女はあの右手のグローブから炎を出す能力か…厄介だな)
藤田は左手から勢い良くガソリンを放射してきた。
「『U2』ッ!」
俺は半径二メートル以内に入ってきたガソリンを重くする。
(何とか…自分の体にかかることは回避出来た…)
- 294 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/15(木) 22:23:44 ID:kb70fu1g0
- 「炎って観ていて楽しいと思わない? ゆらりゆらりと揺れて踊ってるみたいで素敵」
葉山はそう云って右手を振って炎を発生させる。
炎は地面を走りながらこちらへ迫る。
ズゴゴゴゴゴゴ
(なんていう速さだ! しかもガソリンが引火して火力が増しているッ!)
「『ニューエスト・モデル』ッ!」
俺は炎のほうに気をとられてたせいで藤田の存在を忘れていた。
周囲に撒かれたガソリンは炎が引火して輪のように燃え盛る。
俺は逃げ場を無くしてしまった。
おまけに炎で相手の姿も見辛い。
自分の周りで勢いよく燃える炎が熱い。
「さあ…とどめよ! 『バーニング・ファイヤーダンス』ッ!!」
「うおあああああああああああ」
俺の全身は紅蓮の炎に包まれる。
「業火に焼かれて死になさいッ!」
「ぐうウゥゥゥアァアアアア…」
細胞が死滅していく感覚。
俺はどうすることも出来ずに焼けながら悶え苦しむ。
「燃えてる貴方は素敵よ。華麗に踊って死んでね」
もはや痛みという感覚も抜け落ちてしまった。
俺はもうじき人から物へと変わってしまうだろう…。
ガクッと跪いて地面に倒れこむ。
意識は朦朧として…まともに考えることも困難となってきた。
- 295 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/15(木) 22:28:15 ID:kb70fu1g0
- とりあえずここまで…
- 296 : ◆U4eKfayJzA:2010/04/15(木) 23:10:42 ID:WPy8IxxE0
- うおっ! 火炎系スタンドが大量に!? 何と豪華な放火魔集団なんですか!
乙でした!
- 297 :名無しのスタンド使い:2010/04/16(金) 03:55:50 ID:FpYFPUkA0
- 密かに気に入ってたスタンドがゾクゾク出てきて嬉死しそうだ…
- 298 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/16(金) 16:35:18 ID:???0
- >>296
出すのはいいけど上手く裁けてないっていうねw
考案者さん達に申し訳ないですわ
>>297
殺すのがもったいないくらい…でも殺さなきゃいけないジレンマ!
U2完結させたら今度は悪い奴を主人公にしてみたいなぁとか思ったけどいつ終わるんだよ…
- 299 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/16(金) 19:20:03 ID:???0
- バスッ!
(な…なんだ…一体何が起きた…?)
「全く…戦うなら私に連絡しないとダメじゃない」
訊いたことのある声がしてきた。
幻聴だろうか?
「傷は治したわ…もっともその失った右腕は私の能力じゃどうしようもないけど」
俺は自分の傷が治っていることに気が付いた。
そして、この声の持ち主は――
「ユキさんッ! 一体どうしてここが…!?」
俺はユキに訊く。
「え…それはその…虫の知らせがしたっていうか…
ってそんなことより!早くそこから出なさいッ!」
俺は『U2』で自分の体を蹴って炎の中から脱出する。
ユキは持っていたバケツの水を俺にかぶせて火を消した。
「た、助かったよ…」
「ホント私がいないと何も出来ないんだから」
バタフライマスクで表情がよく分からないが、心配してくれてるようで嬉しかった。
「クソッ…お仲間登場かよッ! 女に助けられて情けねーなァー!?」
「なあに…ワイ達も参戦やで」
見たことも無い顔が並ぶ五人組。
「ワイ達は仲間や。まだ顔見せしてなかったから知らんのは当然やけどな」
「後は俺達に任せて休んでていいぞ」
俺は助っ人の登場に心底安堵する。
―助かった。途端に肩の力が抜ける。
- 300 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/16(金) 19:20:41 ID:???0
- 「チィ…ここは退却と行くか」
「逃がさへんでッ!!」
関西弁の男が追うが、逃げられてしまう。
ついで他の放火魔達も退散していった。
**
俺は壱越大学病院に寄って白河さんに切断した腕を縫合してもらった。
何の後遺症も残らずに動くので流石としかいいようがない。
それから事情は一通り話した。
「そう…そんなことがあったのね
そういえば皆火傷してたけど君は何でしてないの?」
(そこに気付くとは…大した奴だ…)
「実は――」
俺は『ラムダ』以外に仲間がいることを話した。
タクマはいつの間にか忽然と姿を消していたので病院へ連れて行けなかったが。
「へぇ…女の子ねぇ…ふぅん」
白河さんは意味ありげな顔でこちらを見つめる。
「な、何ですか?」
「いえ、何でもないわ…ふふ
それにしてもそのタクマって子…大変ね」
「え、ええ…」
「社会的にいない人間だなんてねぇ…」
「まあアイツの面倒は俺が見ますよ
出来るならあんまり外をウロチョロして欲しくはないんですけどね…」
- 301 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/16(金) 19:21:42 ID:???0
- 「私が久坂さんに話してみるわ
快く仲間として認めてくれると思うけど」
「ありがとうございます」
**
俺が悪門荘に着いた頃には陽が翳って暗くなっていた。
「ただいまー…」
電気はついておらず真っ暗だ。
今日は二人とも出掛けていたのを思い出す。
ギィ…とドアを開けて部屋に入り、蛍光灯を着ける。
「やぁ…祐介」
「おわっ!!」
何とタクマが体育座りで床に座っていたのだ。
マジでビビっちまったじゃねーか、どうしてくれる。
タクマは顔に火傷を負っているようだった。
「お前…何でどっか行ったんだよ…
病院に行ってれば火傷くらい治してもらえたのに」
「……」
無言。どうやら言いたくないらしい。
(タクマはよく分からないな…。
『ラムダ』の仲間に入れるか打診してもらったことは今は言わない方が良さそうだ)
「まあその何だ…ココアで飲むか?」
「うむ…」
トポトポトポ
ココアの粉末を入れたマグカップに湯を注ぐ。
- 302 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/16(金) 19:22:02 ID:???0
- 「あいよ」
俺はタクマに差し出す。
「ありがとう」
**
時刻は九時を回っていた。
疲れたのかタクマは居間で眠りについていた。
風邪をひかれたら困るので毛布をかけておく。
ブルブルと携帯が振動する。
妹からのメールを受信していたので開いてみた。
『今日は紗希ちゃんの家に泊まるから帰るのは明日になるよ
日曜洋画劇場でやるNAYUTANっていう映画録っといて』
紗希ちゃんというのは智恵の友人であり、俺のクラスメイトである一ノ瀬の妹だ。
確か父親が社長をしていて一ノ瀬のあだ名が社長だったような…。
ハッ
「タクマ!起きてくれッ!」
多少乱暴にタクマの体を揺らして起こす。
「むぁ…?」
「悪いけど一緒に来てくれないか!?」
「むむぅ…」
寝起きが悪いので機嫌がすこぶる悪いようだった。
「お前の欲しがってたアレ買ってあげるから!」
俺の言葉を訊いたタクマはシャキーンと立ち上がる。
「何してんだ祐介早く行くぞ!」
(調子のいい奴だなぁ…)
- 303 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/16(金) 19:22:27 ID:???0
- 「しかし、どこに行くつもりだ?」
「ちょっとな…嫌な胸騒ぎがして…」
天童さんが云っていた言葉を思い出す。
裕福な家が被害に合っているなら一ノ瀬の家が燃やされる確率は高いと云える。
今日燃やされた家ほどではないが、豪邸の部類に入るであろう家だからだ。
何事もなければそれでいいんだけどな…。
**
「こういう時だけ無駄に勘が冴えやがる…」
俺とタクマは燃え上がる一ノ瀬邸の前で呆然と立ち尽くす。
「ちくしょう!ちくしょう…!!俺があの時倒してれば…!!」
俺は拳を地面に叩きつけてうなだれる。
「祐介…諦めるのはまだ早いんじゃないかな?」
タクマの言葉に反応して顔を上げるとそこには――
ザァアアアアア
「雨…!?これは…」
智恵のスタンド、『アクアティック・アンビエンス』の能力によるものだった。
局地的に豪雨を降らして消火させていた。
「よし!助けに行こうッ!」
俺は身を乗り出して家の方へ駆けつける。
しかし、これほどまでに強力に能力を発揮したのは恐らく初めてだろう。
友達を守りたいという意志が働いたおかげかもしれない。
- 304 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/16(金) 19:22:59 ID:???0
- 「ククク…また会うとは奇遇だなァ」
昼間会った放火魔の奴らが家の裏側から回って出てきた。
「仲間に助けられてあのザマだった癖にたった二人だけで来るとは…」
「学習能力が無いなんてモンキー以下だな」
スッと俺の目の前に人影が現れる。
「これで三人ね」
ユキだった。
今度は約束通りちゃんと連絡していていた。
「祐介…この女は何者だ?」
タクマが俺に訊いた。
そういえば一度も面会したことが無かったことを思い出す。
「頼もしい仲間だよ」
「…そうか」
ユキはあまりタクマに関心が無いのか無反応であった。
「今から敵の能力を教えるから頭に叩き込んでくれ」
俺はひとしきり知ってる限りの情報をタクマとユキに教えた。
「祐介…ちょっと耳を貸せ」
タクマに手招きをされて口元に耳を近づける。
ごにょごにょごにょ
俺はタクマの提案に乗ってみる。
「よし…それじゃ行くか…!」
- 305 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/16(金) 19:23:21 ID:???0
- 「雑魚風情がッ!消し炭に変えてやるッ!!」
俺は奴らに詰め寄ろうとするが、対策を取られているのか離れていく。
(しょうがない…秘密兵器を出すか)
がさごそとバッグの中から硬球を取り出す。
「何をするつもり?」
ユキが尋ねてきたので答える。
「遠投は結構得意でね」
『U2』で球を握って、勢い良く振りかぶって投げる。
ドスッと乾いた男が響く。命中だ。
スタンドで投げているので軽く時速200kmは出ているだろう。
球に当たったのはただ一人。
名前は確か藤田…消防士が着る防護服のようなスーツに身を纏った男だ。
他の四人はスタンドを出して防いでいたが、藤田だけはモロに食らっていた。
ガソリンを出す以外は別にパワーが強化されてるわけでもないのか、避けることも防御することも出来ていなかった。
硬球を腹にデッドボールした藤田は手で抑えながら地面に跪く。
「貰ったッ!」
藤田の後ろまで迫っていたタクマは『シックス・フィート・アンダー』で胸を貫いた。
「ち…ちくしょう…」
胸を貫かれた藤田はスタンドが消えて普通の服を着た人間になった。
露となった顔は苦悶に歪んでいた。
「これで一体味方が増えた…『S・F・U』ッ!!」
『S・F・U』は六つの槍頭がついた十字架状の武器で藤田の死体を一刺しした。
ズギュゥウウウン
藤田の死体はムクリと立ち上がり、のろのろと歩き始める。
- 306 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/16(金) 19:23:38 ID:???0
- 「ゾンビ完成ィ〜♪」
「よ、よくも藤田を…!!」
こいつらは仲間意識があるのか、怒りをあらわにしている。
「行けッ!ゾンビ!!」
「ガァアアアアアアアアア」
急に動きが速くなり、敵のいる方向へ直進していく。
見た目が見た目なだけに敵も攻撃を躊躇しているようだった。
「く、クソッ!やりづらい…!!」
タバコをふかしている男はゾンビの大振りな攻撃を必死に避ける。
「川崎ッ!そいつはアイツに操られてるに過ぎないッ!
構わずやっちまえ!!」
イケメンの男がそう云うと川崎はスタンドを出してゾンビと対峙する。
「二階堂…分かったよ…心を鬼にして倒すッ!」
「ウガアアアアアアア」
「『プソディー・オブ・ファイア』ッ!鱗粉を――」
メギャリと痛々しい音を立てて『U2』で投げたボールが川崎の後頭部に命中する。
ゾンビに気を取られすぎて注意力が散漫になっていたのだろう。
後頭部というデリケートな部分に硬球が直撃したダメージは推して知るべしだ。
間もなくして川崎は地面にバタンと倒れこむ。
他の奴らは虚をつかれたように立ち尽くす。
そして、バスンと音がした後、敵の一人が血を吐いて倒れる。
「隙だらけね…」
攻撃したのはユキだった。
一撃で仕留めるこのスタンドの威力は流石だったが、精神の疲弊が顔に浮かんでいた。
数メートル離れた位置にいたにも関わらず息遣いが荒くなっているのが分かった。
- 307 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/16(金) 19:23:59 ID:???0
- 「小田桐までも殺られちまうとは…おのれッ!」
「とうとう私と二階堂君の二人になっちゃった…」
「これでゾンビ三体…」
ズギュゥウウン
「グアアアアアアアアア」
三体に増えたゾンビが二人に襲いかかる。
「燃やし尽くしてあげるわ…『バーニング・ファイヤーダンス』」
『バーニング・ファイヤーダンス』が出した炎は地面を走ってゾンビの足元に燃え移る。
「『レッド・ホット』ッ!!」
燃えるゾンビの足元から二階堂のスタンドが出現する。
『ウラウラウラウラウラァァァ―――!!』
『レッド・ホット』のラッシュを撃ち込まれたゾンビは一瞬にして焼け落ちる。
鼻をひん曲げるような悪臭が立ち込めて俺は手をあてがう。
「喰らいなさいッ!」
バシュゥゥ
ユキが放った『コミュニケーション・ブレイクダンス』の弾丸は『レッド・ホット』の指で掴まれる。
「確かに凶悪な能力だが、一度見てれば対処可能だな。撃ち込まれない限りは触っても平気…と」
「うっ…」
ユキはガクッと肩を落とす。簡単に止められたのはショックだったのかも。
「俺と葉山のコンビネーションをとくと見るがいいッ!」
「そうね…貴方との相性はいいわ」
お決まりの地面を走ってくる炎の攻撃が来たので避ける。
- 308 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/16(金) 19:25:12 ID:???0
- 「フン…俺の『レッド・ホット』は火がある場所に発現出来るんだよ…」
「そして私は炎が走った跡から火柱を出すことが出来る…!」
ボォウ!
さっき避けた場所から火柱が立ち上がった刹那、その中から『レッド・ホット』が出現する。
『レッド・ホット』はパンチを繰り出してきた。
俺は寸前のところで『U2』でガードをするが、相手のパワーが上回っているようで押しのけられてしまう。
後ろに逃げることで追撃を逃れる。
しかし、『バーニング・ファイヤーダンス』による攻撃を食らってしまい、足元を焼かれてしまう。
「ぐわぁッ!」
あまりの痛さにたまらず声を漏らしてしまった。
「祐介君ッ!」
「いや…その能力は相手を倒すことだけに使ってくれ」
「わ、分かった…残り撃てて二発が限度…確実に仕留めないとダメね」
敵は攻撃を休めること無く地面に炎を走らせて攻撃をしてくる。
「やりにくいぜ…近づけないんじゃ俺の能力も役に立たない!」
炎を走りながら避けるのが精一杯だった。
持久力には自信が有るが、さすがに息が切れてきた。
「吐息で真っ白だけど…大丈夫?」
「まだまだ余裕だよ…部活の練習に比べたら屁でもないぜ」
それは強がりでしか無く、すでに足腰はガタがきていたし呼吸もやばくなってきている。
- 309 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/16(金) 19:29:19 ID:???0
- 小出し更新で申し訳ないです…
- 310 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/17(土) 01:54:38 ID:OnT71ai20
- 「次で決める…ッ!」
『バーニング・ファイヤーダンス』が放った火柱から『レッド・ホット』が出現する。
グオオオオンッ!
俺は『レッド・ホット』が繰り出してきたパンチを鷲掴みして、もう片方の腕も押さえる。
「何ィ!?」
「沈めェェェー!!」
『U2』の能力で『レッド・ホット』に重さを与える。
スタンドにかかる重さがフィードバックした本体の二階堂はドスンと地面に倒れこむ。
「ナイスよ祐介君! 身動き出来ない生身の人間なんて目を瞑ってても当てれるッ!」
『コミュニケーション・ブレイクダンス』が放った弾丸が伏したままの二階堂目掛けて飛んでいく。
避けることは困難と思われたが――
「残念だったなァ…! もう忘れたのか?
俺の『レッド・ホット』はほんの少しの火さえあれば発現可能と云っただろう?」
二階堂は右手に持っていたライターで火を着けて『レッド・ホット』を傍に出していた。
『コミュニケーション・ブレイクダンス』の弾丸は寸前のところで遮られる。
「そしてお前の能力射程から外れたッ!」
「忘れてんのはそっちだろ?」
「何云って――」
ブシュウウウッ
「いくら俺が空気だからって忘れるなんて酷いな」
タクマが『S・F・U』が持っていた十字架の形をした武器で二階堂の体をブッ刺していた。
ドバドバとおびただしい量の血液が吹き出す。
- 311 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/17(土) 01:55:00 ID:OnT71ai20
- 「死ね…ッ!!」
タクマは憎しみのこもった声を吐き捨てた後、『S・F・U』の腕を振り下ろして…
――切り裂く。
真っ二つに裂かれた二階堂の体は無惨にボトリと地面に落ちる。
「ひッ!こっち来ないでェェェ〜!!アンタ気持ち悪いッ!!」
最後に残った敵、葉山が怯えながらスタンド攻撃を繰り出す。
地面を走る炎がタクマを襲う。
「よっと」
タクマは十字架を地面にブッ刺してその上に飛び乗ることで炎を回避する。
そして、十字架を蹴ってジャンプ、葉山に向かって手刀による攻撃。
「…バカね! 直接攻撃することも出来るのよォォォーー!!」
葉山の右腕のグローブ『バーニング・ファイヤーダンス』が『S・F・U』の攻撃を受け止める。
「何だと…!? ぐ…ぐあああああああああ!!」
タクマの体は一瞬にして紅蓮の炎に身を包まれる。
「や、ヤバイッ! タクマが火だるま…ッ!!」
「炎自体を消さないと私のスタンドで傷を治しても意味が無いわ!」
「俺があの女の相手をするからユキさんは水を家の中から持ってきてくれッ!!」
「うん!」
ユキは家の方に走るが葉山は両手を広げて立ちはばかる。
「あの男は燃え死ぬ運命なのよ…邪魔はさせないッ!」
- 312 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/17(土) 01:55:12 ID:OnT71ai20
- ゴォオオオウ!
ユキの目の前で豪快な火柱が立ち上がる。
「きゃぁ!!」
「ユキッ!!」
思わず呼び捨てで叫んでしまった。
一刻一秒を争えない事態だ。このままではタクマが死んでしまう。
(俺が、俺が何とかしなければ!)
俺は正面から葉山を攻撃しに行く。
「ボノボノボノボノボノォォォーーー!!!」
「無駄よッ!!」
ゴォオオオオ
俺の足元で火柱が立ち上がる。とっさに避けようとするが服に燃え移っていた。
「く…クソォ…こんなとこで…」
「さぁ、とどめよ!!」
轟音を響かせながら炎が地面を猛スピードで走ってくる。
焼き殺されるイメージが脳裏によぎる。俺はここで死ぬのか…と。
「うあああああああああああ」
俺は断末魔にも似た雄叫びを上げて空を見上げる。
ポタ…ポタ…
俺の顔に冷たい何かが伝う。
これは…『雨』?
次第に勢いが増していき、辺り一面に豪雨が降り注ぐ。
- 313 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/17(土) 01:55:52 ID:OnT71ai20
- 「ま…まさか…」
ザアアアアアアアア
俺やタクマを燃やしていた灼熱の炎は土砂降りの雨によって掻き消される。
視界が全く見えなくなるほどの凄まじい量の雨だった。
「祐介…!!」
姿は見えないが、その声は聴き馴染んだものであった。
しばらくすると雨が引いて、その声の持ち主が姿を現した。
「智恵ッ! 何で出てきたんだッ!」
「分かってるから」
いつものだらしない妹の顔とは違った。
状況を理解した上で、危険を承知の上で来ている…。
「んじゃ…サポートお願いな!」
「任せて!」
俺の顔を見て考えてることを看取したのか、妹はコクリと一度頷いて敵の方へ視線を移す。
俺達兄妹にはこれだけで十分だった。
「狂い踊って死ねッ!! 『バーニング・ファイヤーダンス』ッ!!」
地面を走って炎が向かってくるが――
すぐさま智恵は雨を降らせて炎を消火させる。
葉山のスタンドは『アクアティック・アンビエンス』の前では無力であった。
「射程範囲内だッ!」
「うわあああああああああああああ」
自分の能力が通用しないという理不尽な状況に追い込まれた葉山は半狂乱になって絶叫する。
「ボーノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノ
ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノォォォ―――ジ・エッジ!!!」
『U2』のラッシュを全身に受けた葉山は十数メートル先に吹っ飛ばされた後、ズズンと地面に埋まる。
- 314 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/17(土) 01:56:13 ID:OnT71ai20
- その瞬間、カチリという音がして――
バゴオオオン!!という爆音を残して葉山の体が吹き飛ぶ。
そして、間髪入れずに他の死体も爆発して肉片一つ残さず消し炭となった。
(これは…証拠隠滅か…
恐らく奴らも人員不足で下っ端は爆弾を体内に埋め込まれていたんだろうな…)
「祐介ェー!!」
智恵が俺の元に駆け付ける。
「今の爆発は一体何なの!? ケガはしてない?」
妹からこんなに心配されたことが今まであっただろうか。
「戦いに巻き込んでごめんな…」
「何云ってんの? 家族なんだから助け合うのは当然でしょ」
少し間を開けてから智恵は云う。
「私も…その祐介達と一緒に戦いたい」
唐突の告白に思わず「うへぁ!?」と情けない声を上げてしまう。
「いや、無理だよ…無理無理! んなことしたら俺が兄貴に殺されちまうよ!」
俺は必死に説得させるが、智恵の決心は固いようだった。
さあて、どうしようね兄貴。
「お前ら何やってんだ。さっさと帰るぞ」
声のする方向に視線を投げるとタクマがいた。
ほぼ全裸で股間に申し訳程度の布切れが張り付いている姿だった。
とても寒そうにしている。
- 315 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/17(土) 01:56:55 ID:OnT71ai20
- 「お前それ捕まるぞ…てか何で傷治ってるんだ?」
「さあ…?起きたら治ってた…」
(そういえばユキの姿が無いな…もしかしてそういうことか)
「ん…まあ、とりあえず俺の友達に服を持ってきてもらうことにするか
その姿で夜道を歩かれても困るし…ってか俺も上半身裸…」
**
悪門荘に着いた時にはすでに時刻は丑三つ時になっていた。
結論から云うと一ノ瀬邸は大した被害はこうむっていなかった。
すぐに火を消した智恵のおかげだろう。
俺達は警察に巻き込まれると面倒なので一足先にとんずらした。
そんでもってファミレスで飯をたらふく食って今に至る。
タクマは治してもらったけど俺は火傷を負ったままなので後日病院のほうへ通おうと思っている。
今になって痛みが押し寄せてきやがるぜ。
こうして一連の放火事件は幕を閉じたのだった。
「おい祐介…忘れてるわけじゃないだろうな?」
クッキーをボリボリとほおばりながらタクマが俺に訊いた。
「う、うん…」
タクマが渇望していた物、それは――
「バイオ5!バイオ5!」
「いや…うちPS3無いから」
「パソコンがあれば出来るだろ」
ちょっと前までテトリスすらやったことがなかった癖に…。
ゾンビ関連の物に関しては触手の伸びが半端ではないのだ。
この前は買ってあげた粘土でプロ顔負けのゾンビフィギュアを作り上げていた。
――翌日、ゲーム屋に行ってバイオ5を買わされるハメとなった。
今ではタクマ君はゲーム廃人です。
To Be Continued...
- 316 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/17(土) 02:17:54 ID:???0
- 無理やり終わらせた感が否めないけどこれで許して><
登場スタンド
No.292
【スタンド名】ラプソディー・オブ・ファイア
考案者:ID:OmHCrPryO
絵:ID:P6RSvXfo0
No.314
【スタンド名】 バーン・バーン
考案者:ID:LoNr5bHLO
絵:ID:OCYV4z900
No.310
【スタンド名】レッド・ホット
考案者:ID:WndcBSBR0
絵:ID:yySEnDeIO
No.579
【スタンド名】バーニング・ファイヤーダンス
考案者:ID:sSifRuf/0
絵:ID:I2RfQCZw0
No.1558
【スタンド名】ニューエスト・モデル
考案者:ID:behCVXAo
絵:ID:UDOU7Oso
- 317 : ◆WQ57cCksF6:2010/04/17(土) 02:42:32 ID:Fp0Y7Ju.0
- バトル熱いwwww普通に参考にしたいwwwwww
バーンバーン好きだったから出てきて嬉しい!タクマくんとバイオ5やりたい!
coopしよう!俺ジルな!
- 318 :名無しのスタンド使い:2010/04/17(土) 12:05:17 ID:???O
- 乙!
琢磨は俺の嫁
- 319 : ◆U4eKfayJzA:2010/04/17(土) 16:54:53 ID:VbnnZhDM0
- やはり、相手が放火魔集団だった以上、雨を降らせられる智恵ちゃん無双が来ると思ってました。
そして琢磨のサービスカットきゃーwww でも、バイオ5ってゾンビでしたっけ。
遅れましたが乙でした!
- 320 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/17(土) 19:05:27 ID:???0
- ぶっちゃけバイオ5やったことないです
そもそもPS3自体持ってないんだよなぁ…
>>317
また新たな嫁www
バーンバーンあっさり殺しちゃってサーセンw
>>318
ふと思ったけど本家琢磨の命日っていつだろう
>>319
やっぱりバレバレな展開でしたかw
実はT・I・Hに無双させようと思ったけど、それではあっけないと思ったので引き伸ばしました
しかし、一人称視点でバトルって面倒くさいしやりづらいですな…
- 321 :名無しのスタンド使い:2010/04/17(土) 20:24:44 ID:???0
- 乙!
天童と内藤って本体の特徴被ってるけど、書いてるうちに気が変わったとか?
- 322 : ◆70nl7yDs1.:2010/04/19(月) 03:15:21 ID:???0
- >>321
どうなんでしょうねぇ
- 323 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/07(金) 21:54:52 ID:???0
- 読み返したらつまんなさすぎて凹んだ…
- 324 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/08(土) 19:47:14 ID:???0
- もうちょいしたら投下開始します
- 325 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/08(土) 22:15:12 ID:sDxWljH60
- 第七章
――2010年2月10日水曜 Y県Y市内 悪門荘
「おい起きろ祐介」
俺は兄貴の声でようやく起きた。
目覚まし時計のほうを見ると既に九時半を回っていた。
アラームを設定していた時刻はとうに過ぎていて遅刻は確実と云ったところか。
「お、おはよう……」
「車で連れてってやるからさっさと支度しな」
「あれ?兄貴、会社は……?」
「ちょっとな……有給取ってあるんだ」
「へぇ……珍しいな」
俺は急いで着替えをして兄貴の車に乗り込んだ。
空はどんより曇り空で朝だというのに薄暗い。
不吉ささえ感じられる一面グレーの天井(そら)だった。
ブロロロロロ……
車は悪門荘の敷地から出て公道を走っていく。
「なぁ兄貴……一つ訊いていいか?」
「何だ?」
「『ヴェーダ』の連中は俺らを消すことに躍起になってるけどさ……
もし、俺らが死んだら……次はどんな行動を取ると思う?」
「さぁな……」
それだけ云って兄貴は黙り込んだ。
本当は見当がついているんじゃないだろうか、と俺は懐疑の目を向けてしまった。
奴らを潰したくてもどこに住んでいるのか、どこに出没するのかすら分からないのではどうしようもない。
兄貴が有給を取った理由……それは単独で探しに行くためではないだろうか?
俺と妹がいなければ今すぐにでも会社を辞めているのかもしれない……。
しばらくして車は学校に着いた。
「やけに静かじゃねーか……」
- 326 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/08(土) 22:15:26 ID:sDxWljH60
- 俺はぼそりと呟いた。
「オイオイ祐介……まさか今日休みだったとかじゃないよな?」
「いや……そんなはずは……ちょっと行ってくる」
「俺も一緒に行こう……何か嫌な予感がするしな」
嫌な予感……考えたくも無いが、今までの経験からして……。
校門をくぐって校舎のほうへ向かっているが、恐ろしいくらいに物静かだ。
これじゃあまるでゴーストタウンじゃないか。
俺達はそのまま昇降口へと上がった。土足のままで。
「おかしいな……人っ子ひとりいないぞ」
そう云って俺は兄貴の方に視線を向けるとコクリと頷いた。
予感的中か……?
廊下に俺達の足音だけが響き渡る。
ふと兄貴が手で俺を制して歩くのをやめさせた。
コツーン……コツーン……
何者かが俺達の足音に紛れていたのだ。
その音の発生源は廊下の曲がり角にいるものだと思われた。
「祐介……気をつけろ」ボソッ
兄貴は小声で忠告をし、俺は頷いて返した。
コツーン……コツーン……ピタ
音が止まった。ちょうど曲がり角に隠れているのだろう。
俺は意を決して『U2』で壁を破壊した。
「ボノォォォ―――ッ!!」
ガラガラと崩れ落ちる壁の向こうに黒い人影を見た。
そして、その瞬間――
「うおわああああああああああああああああああ」
人影が絶叫した。
- 327 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/08(土) 22:15:38 ID:sDxWljH60
- 「ぎょわあああああああああああああああッ!?」
俺もつられて共鳴。
「って……内藤ッ!?」
「そういう君は有嶋祐介……」
何と人影の正体はクラスメイトの内藤貴介だった。
「色々とよォ〜……聞きたいことあるッ!」
「ばッ!! そんな馬鹿でかい声出してんじゃねーよ……!!」
さっきまで絶叫してた奴がよく言うぜ。
「一体何があったんだよ!?」
俺が内藤を問い詰めようとしたら兄貴が提案してきた。
「ここじゃ話が出来ないらしい……場所を変えようか祐介」
「……分かった」
――体育倉庫
「ここなら大丈夫か?内藤」
「あ、ああ……まず何から話せばいいやら……」
「内藤君、落ち着いて話してくれ」
兄貴はポンポンと内藤の肩に手を叩いて宥める。
「結論から云うと……俺らのクラス、いや少なくとも学年全員は謎の集団に襲われた
俺は必死になって逃げてきたんだ……」
謎の集団……十中八九『ヴェーダ』の仕業だな。
「一体何をされた?」
兄貴は冷静に訊いた。
「わ、分からない……ただ数人の男が教室に突然乱入したのは覚えてる……
それから急に苦しみだして倒れていったんだ……
俺は遅刻して来たから逃げることが出来たんだ……」
「なるほどな……よし、教室に行くぞ祐介」
- 328 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/08(土) 22:15:49 ID:sDxWljH60
- 「イエッサー!」
俺達は立ち上がって校舎の方へ向かう。
「ちょ、ちょっ! アンタら行っちゃダメだ! 殺されちまうッ!!」
内藤は必死の形相で俺達を制止させようとしてきた。
「悪いが内藤……俺達は行かなくちゃいけないんだ
頼むから一人で帰ってくれ」
「いや、でも……」
「さっきお前は気が動転してて忘れてるかもしれないけど……
あの壁を破壊したのは俺だ……つまり――」
『U2』で倉庫の中にあった金属バットをへし曲げる。
非スタンド使いであれば空中で曲がったように見えるだろう。
「俺達は超能力使いってわけだ
超能力に対抗出来るのは超能力を持った者のみ……」
「そうか……信じるよ……目の前で見せられちゃ仕方ない
俺はもう帰るから二人で行ってくれ……俺に後ろを向けてなッ!!」
グオオオオオオオッ!!
「隙だらけだぞ有嶋ァ――――!! 死ねッ!!」
「ボノォ―――ッ!!」
「うぐォアアアアアアアア」ベギボギ
俺は背後から迫り来る内藤の攻撃を押し返して倉庫の奥に弾き飛ばした。
壁に叩きつけられた内藤はズルリと倒れ込んだ。
「な、何故……何故俺が攻撃するって……分かったんだ……」
「何故か……だって?
……まずあいつは俺と違って遅刻をしたりしねぇ
噂じゃ中学から一度も遅刻したことが無い奴らしい
そして、あの『ヴェーダ』がスタンドを持たない人間を気づかずに逃がすとは思えないからだ」
内藤の姿形をした『何か』は徐々にヴィジュアルを変貌させていく。
それは、真っ白の全身タイツで顔がのっぺらぼうの男になった。
「お前……『ヴェーダ』の使いだな?」
- 329 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/08(土) 22:15:59 ID:sDxWljH60
- 「うぐぐ……」
「まあいいか……戦いが終わった後まで生かしといてやるさ
どうせ動けないだろ?」
「か、体が……沈んで……行くッ!!」メリメリメリ
ズズゥーン
「そこでおとなくしてな……さて兄貴」
「終わった? それじゃ行くか」
我関せずと人差し指でクルクルとバスケのボールを回していた兄貴が立ち上がった。
「急ごう」
――教室前
「はぁ……はぁ……全速力で走ってきたから疲れたぜ」
「ったく!お前速すぎだろ!」
学校でも速い部類に入る俺についてきてる時点で兄貴も十分速いと思うけど。
「それじゃ祐介……いっせーのーせ!で入るぞ……いいな!」
「お、オッケー」
「いっせーのー……せ!」バッ
シィーーーン
「い、いない……!?」
「マジで!?」
俺達二人は呆然と立ち尽くす。
「一体どこに――」
「フォッフォッフォ……お探しのようじゃな?」
背後からする声に反応して咄嗟に振り返る。
教室の外の廊下に帽子を被った老人が立っていた。
「な、何者だテメェ!?」
- 330 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/08(土) 22:16:12 ID:sDxWljH60
- 「何者だ、か。それは正しい質問じゃよ有嶋祐介君……
知りたいという欲求は実に健全だ
ならば答えるのがワシの義務だと云えるのう?」
謎の老人がこちらへ歩み寄りながら話を続ける。
「ワシは『ヴェーダ』の幹部をしとる影現斎(ようげんさい)という者じゃ」
齢は六十八、身長は百六十五、体重は六十二、血液型はAB、星座はかに、結婚歴なし
こう見えて持病どころか虫歯一つ無い健康体だのォ」
「だから何なんだよテメェは!!」
なおも影現斎と名乗る老人は話し続ける。
虫酸の走る爺だ。
「そして、ワシの生きがいは『知る』ということ……
『知りたい』ということは根本的な欲求だが、最も大事なことなのだよ
そう、これは本能ッ!人間を成長させる本能じゃ!
分かりやすいとこで云うと『宇宙の外に何があるか』とかかのォ〜」
「さっきから何言ってんだ爺さんよォ……
じゃあ何か? 『ヴェーダ』にいることと宇宙の外を知ることが関係あるのか?」
「あるいはそうかもしれんのォ〜
この世の真理を解き明かすには何が必要だと思う?」
「……」
ペラペラと喋って何が目的なんだこいつ。
「つまりスタンドってわけか爺さん」
ずっと黙り込んでた兄貴が口を開いた。
「ご名答じゃ有嶋秀彦君
ワシは真理を解き明かす手段としてスタンド使いを探しておる
だが、生半可なスタンドじゃ無意味じゃ……
スタンドの更に上の段階を行ったスタンド……
進化の果てにある究極のスタンド……ワシはそれを求めておるのじゃッ!」
「進化……究極……!?」
「そうじゃ……まだこの目にしたことは無いが文献には残っておってな……
その文献にはこの世の全てを超越した絶対的なパワーを持っていると書かれとる」
「で、そいつはどうやって引き出すんだ?(語るに落ちてるようだからもう少し話させるか……)」チラッ
兄貴はそう云いながらこちらに目で合図をしてきた。
- 331 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/08(土) 22:16:43 ID:sDxWljH60
- いい加減我慢の限界だが、仕方ない。
「いくつか方法はある……
その方法の中の一つがワシのスタンド『エイボンの書』
この能力を使えばスタンドを『進化』させることが出来る……
しかし、世の中都合のいいことばかりじゃなくてのォ……
二回しか使えないという『制約』があるのじゃよ
まだ一度も使ったことはないけどのォ〜」
「……」
「一度も使ったことが無いのに何故能力が分かるか? そう思っとるじゃろ?
その答えは……ワシの中に存在する『使命』ッ!
先祖代々この能力が引き継がれてきた……だから分かるッ!
そして、スタンドとは別の才能……スタンドの『素質』を見ぬく眼ッ!」
「何だそりゃ?」
- 332 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/08(土) 22:17:20 ID:???0
- たったのこれだけとか……orz
小出しってレベルじゃねーぞ……ora
- 333 :名無しのスタンド使い:2010/05/08(土) 23:11:14 ID:???0
- 乙!段々物語が動いてきたな・・・
ヴェーダ幹部が何をしでかすのか!?楽しみだー
- 334 :名無しのスタンド使い:2010/05/08(土) 23:23:54 ID:???0
- 乙!
幹部の爺さん良いキャラしてるなww
U2の友達も目覚めさせられちゃうのかな?
続き楽しみにしてますお
- 335 : ◆U4eKfayJzA:2010/05/08(土) 23:34:45 ID:hwrI/32U0
- この爺さん、誰のスタンドを進化させようとするんだ?!
そして、U2の友人たちはどうなるんだろう?
乙です!
- 336 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/09(日) 07:12:03 ID:???0
- >>333
やっと折り返し地点くらいです
まだまだ先は長い…
>>334
ありがとうございますw
ネタバレになるので云えませんが、まあ期待は裏切らないと思います
>>335
この爺さんを殺そうかどうか悩んでたり
- 337 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/09(日) 07:58:53 ID:tE9Fdb120
- ガネーシャ一番隊で出すスタンドを安価で募集します(ガネーシャとは戦闘部隊で一番隊は一番優秀という設定)
しかし、安価でもその中から選考しますので全部出すかもしれないし一体しか出さないかもしれませんのであしからず
既にU2で登場してるスタンドや戦闘に不向きなのは多分無理です
>>338-348でお願いします
- 338 : ◆U4eKfayJzA:2010/05/09(日) 08:56:39 ID:4ldhyrUk0
- 一瞬、インフィニティ・オン・ハイ、ストレングス・イン・ナンバーズ、アメイジング・グレイスのうちどれかという鬼畜安価をしそうになりましたw
けど、冷静になって選んだ結果、それなりに使いやすそうかつステータスも問題ない『フリッパーズ・ギター』を推すことにします。
味方スタンドなら、また別のを推すんですけどね。
- 339 :名無しのスタンド使い:2010/05/09(日) 09:55:10 ID:???0
- バブルガム!
- 340 :名無しのスタンド使い:2010/05/09(日) 10:01:46 ID:nRbUKwIU0
- 『ア・シングルマン』をお願いします
- 341 :名無しのスタンド使い:2010/05/09(日) 10:09:42 ID:fNztWdh2O
- No.2023
【スタンド名】なし
- 342 :名無しのスタンド使い:2010/05/09(日) 13:51:05 ID:???O
- フラッシュ・ゴードン!
- 343 :名無しのスタンド使い:2010/05/09(日) 14:14:03 ID:???O
- グラン・トゥーリスモ
- 344 :名無しのスタンド使い:2010/05/09(日) 16:03:47 ID:???O
- アスファルト・ジャングルちゃん!
- 345 :名無しのスタンド使い:2010/05/09(日) 16:59:55 ID:jZD/h75U0
- 楼閣・エンパイア・ステート 〜風と共にGoing My Way〜
- 346 :名無しのスタンド使い:2010/05/09(日) 19:29:50 ID:???O
- 鬼畜ちゅみ
- 347 :名無しのスタンド使い:2010/05/10(月) 00:25:26 ID:fQeAOvtY0
- クロード・レインズ
- 348 :名無しのスタンド使い:2010/05/10(月) 00:28:43 ID:j4myk2zsO
- ザ・テンダー・トラップ
- 349 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/10(月) 17:34:01 ID:???0
- みんなありがとね
- 350 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/10(月) 20:50:43 ID:???0
- とりあえず5体ほど選ばせていただきました
恐らく今回の話に登場すると思います
ついでにラムダのメンバーも募集してみるテスト
安価指定はしないので自由に書き込んでもらえたら幸いです
- 351 :名無しのスタンド使い:2010/05/10(月) 21:42:35 ID:5R4zUbqcO
- オリヴァ・ツウィストちゃん!
- 352 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/10(月) 21:51:09 ID:???0
- >>351
それは別で登場予定だから無理w
- 353 :名無しのスタンド使い:2010/05/10(月) 22:17:33 ID:Xo.Mdl9k0
- No.359
【スタンド名】クーラシェイカー
- 354 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/10(月) 22:30:29 ID:???0
- ちなみにラムダは味方側です
>>353
そのスタンドいつか出そうと思ってましたw
何かいいよね
- 355 :名無しのスタンド使い:2010/05/10(月) 23:01:36 ID:dW/OKXAM0
- 自案で恐縮ですがT'EN VA PASをお願いします。
- 356 :名無しのスタンド使い:2010/05/10(月) 23:12:45 ID:rFgZAIrw0
- もしよければトールを
- 357 :名無しのスタンド使い:2010/05/11(火) 00:56:08 ID:???0
- クララベラさんをお願いします
- 358 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/11(火) 06:16:02 ID:IwvkqGIM0
- 「ワシの眼にはスタンドの素質が形となって見えるのじゃ
そう……『樹』のようにな
スタンドの素質がある者は立派な『樹』が見える……
根の張り方や幹の太さを見れば成長性は大体予測がつく」
教室のドアがガラリと開いて顎鬚を蓄えた男が入ってきた。
「終わりましたよ、影現斎様」
顎鬚の男はそう云いながら老人の元へ近寄る。
「ぬゥ〜? もう済んだのか……四條君ッ!」
「ええ……影現斎様の仰る通りでしたよ」
「こっちも終わったぞ……ククク」
どこか虚ろな目をした長髪の男が顎鬚の背後からヌゥーっと出てきた。
白い服に身を包んだ男は手首から血を垂れ流している。
「さァて……お喋りはこの辺にしといてやろうぜ兄貴ッ!」
「ああッ!モタモタしてるとこの学校の生徒がヤバイかもしれねぇからなァ〜」
「おやァ〜? 勘違いしてもらっちゃ困るのォォォ……
君達と戦うのはワシらじゃないッ!!」
「映像を見て分析させてもらったけど君らは強いよ、うん
だから私たちは手を出さないのさ!」ジョリジョリ
顎鬚の男は顎に右手で髭をさすりながら左手で教室の入口の方向を指さした。
「君らの相手をするのは彼らだ」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「あ……あ……」ガクガク
入り口から見覚えのある五人組がゾロゾロと姿を現して入ってくる。
(そんな……)
- 359 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/11(火) 06:16:53 ID:IwvkqGIM0
- 「左から鍛冶鉄也君、原田大和君、長瀬一馬君、古森芹香君、結城未早君!
一目見て彼らはスタンド使いになれると言う確信があったッ!!
これから彼らはワシらの手となり足となり馬車馬のように働くのじゃァァァ――!!」
耳障りな爺の声が纏わり付く。ああ……嘘だろう? これは夢か?
顎鬚の男がジョリジョリと髭をさすりながら云う。
「人間ってのはね、三タイプいるんだよ……
スタンドの才能を持つ人間と持たない人間……
そして、先祖がウイルス感染していて遺伝によってスタンドの才能を持つ人間だ
しかし、才能……いや、ここでは『スタンド遺伝子』としておこう
S遺伝子を持つ人間の中で自力でスタンドを発現する人間もいるが、稀であったりする
だから、S遺伝子を持つ人間であってもSウイルスに感染させてS遺伝子を変化させる、ないしは休眠しているS遺伝子を起こす必要がある」
顎鬚の男は教室の椅子に腰をかけてなおも話し続ける。
「この五人はいずれも遺伝でS遺伝子を持っていたが休眠状態にあってスタンドを発現しないまま過ごしていたようだ……
ウイルスを与えても発熱をしなかったのは好都合だった
あ、そうそう、使えないゴミの『処分』は既に決定してあるよ」
俺は耳を疑う。処分ということはッ!ここにいない五人以外はッ!!
(つまり……雪華ちゃんは奴らに……!! 許せねェ……)
「兄貴ッ! 止めてくれるなよッ!! 『U2』ッ!!!」ズォォオオオ
「フォッフォッフォ……血気盛んじゃのォ」
老人の顔を目掛けて『U2』の拳が放たれるが――
「無駄じゃ……!!」
渾身の攻撃は老人の眼前でパンチはズバッという音を残して空を切る。
老人が避けたのではなく、俺が動かされたのだ。
「ククク……既に俺のスタンドで『洗脳』は完了しているゥ〜!!
この五人は命がけで俺達を護るだろうッ!ウヒャヒャヒャ」
大和の横に立つタマムシをモチーフにしたような緑色のスタンドが俺の『U2』の腕を掴んでいる。
「祐介……お前とは友達だった……そう、『だった』んだ……
だがよォ〜……なんでだろうなァ〜……今は殺したくて仕方がない」
友人の口から発せられる科白には殺気が込められているように感じられた。
「嘘だろ……ヤマトォォォ――!! 正気になってくれよォォォ―――!!!」
俺は大和の肩を掴んで何度も揺さぶった。
「目障りだ……死ね……『リンキン・パーク』!!」
大和のスタンドは椅子や机に『蝶番』を付けて連結させた。
- 360 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/11(火) 06:17:19 ID:IwvkqGIM0
- 「な、何だ……!?」
連結した椅子や机が虫のようにうねり始める。
蝶番を軸にバタンバタンと動いているのだ。
「ぐおああああああ」ドゴォドゴォ
机の角が顔面に直撃し、激痛が走る。
「祐介ェェェ―――!!」
兄貴が俺の名前を叫ぶ。
「大丈夫だよ……既に『U2』は机に触ってるからッ!」
ズズゥウン…
蝶番で繋がれた椅子や机は重さを与えられて床に沈んでいく。
「ここは俺一人で十分だよ。兄貴は洗脳させてる長髪の男を倒してくれ!」
「……そっちは任せた!」
兄貴は長髪の男のほうに向かって走る。
「威羅君……わかっとるのう?」
「ああ」ダッ
長髪の男は踵を返して教室から出て廊下を走り去っていった。
「逃がすかッ!!」
兄貴も男を追って出て行った。
「フォッフォ……たったの一人で五人を倒せるつもりかェ?
お前さんの兄も薄情な奴よのォォォ〜」
「分析不足だな爺さん。傷つけずに捕らえるのは得意分野なんだよ」
「ほォ……お手並み拝見といくかのォ! かかれェィィィ!!」
爺さんの掛け声と共に敵の支配下にいる五人がスタンドを出して俺に襲いかかる。
「ちょっと痛いかもしれないけど我慢しろよ!
ボーノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノォ―――!!」
ズギュゥ ―z___ン
- 361 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/11(火) 06:17:40 ID:IwvkqGIM0
- 俺は的確に最小限の力で五人の体に『U2』の拳をヒットさせた。
五人は床に倒れてめり込む。
「生命に重さを加えても生命維持には支障がない……多い日も安心ユーツーだぜ!」
「重い……だが、動けないと言うのなら祐介……お前も同じなんだよッ!!」グググ…
(鉄也は何を云ってるんだ!? ……いやッ!これはッ!)
「気付いたか……そうだ、お前の足元ッ!! 俺のジェルで動きを封じたッ!!
俺の……『リンゴ・スター』の能力でな……」
鉄也と共にうつ伏せで倒れているオオクワガタのような人型のスタンドの口からドロドロしたジェルが零れ出ていた。
そして、俺の足元にもガッチリとコーティングされており、既に硬くなったジェルは足とジェルを離れさせなくしていた。
「フォッフォッフォ……自分の能力を過信しすぎたのう?祐介君……」
(ちくしょう……)
「確かに重い。だが、動けないわけじゃあないぜ?
蝶番のパワーならなァァァ〜〜〜!!オラァァァ―――!!!」ズゴゴゴゴ
「体に蝶番を付けて動きやがった……だと……!?」
「そして……『射程範囲』だ。くらえッ!!」
.. /⌒i /`l _ ,、
_,,..、 .| / ,..-、 ,、. l |/ 〉 .〈 .| ,.-、
l l | /´ l,、_ノ ,l | l |レ' _,,」 .`'´ 〉 _,,..、 ,..、
| i' '´_,,、 ,! L.-ヾ=,' l、_,.. 、 「Zノ ヽ `ー、 / ア
.| し''´ 」 _,.-'´ _, - '_´ ゙l_,〉 ヽ、 'l / /
.| ,,.-''´ (_,.- '´| L-'´ _) `ー',/ /
| .| ,.-'´ ,.-'" / /´
..l、_ノ {,.- '´| | 「 /
|,i `''"
大和が繰り出した頭突きを腹に食らってドタッと転けてしまう。
「ぐぁぁ……!!」
胃の中の内容物がシェイクされたような感覚を味わって吐きそうになる。
「それだけじゃあない! 頭突きをしたと同時にお前に蝶番をつけさせてもらったッ!!」
「何ィィィ―――!? うおわあああああああああああ」
足の先に付けられた蝶番が鮮魚のようにバタンバタンと飛び跳ねる。
俺の体は周りの机に打ち付けられるのだった。
「クソーッ!! 『U2』! 周りの机を蹴散らせェェェ―――!!」ドガドガドガッ
- 362 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/11(火) 06:18:32 ID:IwvkqGIM0
- 「だが、蝶番からは解放されないぜ?」
俺の足に付いた蝶番が頭の方へ移動し――
「蝶番は窓と結合するッ!!」
体は運動場が見える窓のほうへ引っ張られ――
ドヒュゥ――z____ン!
ガッチャァーンと騒々しい音を炸裂させて俺の体は窓を突き破って外へと転落していく。
ヒュウヒュウと風が吹く寒空の元へダイブだ。
(さて……どうしたものか……一つも傷つけずに倒すなんて無理か)
「『U2』ッ!! 俺の体を限りなく0に近い質量にしろッ!!」
」」 」」 」」 」」
__ | __ | __ | __ |
| | | | _| _| _|
___| ___| ___| ___|
「落ちたはずだが……何で戻ってきてんだッ!!テメェーはよォォォ〜〜〜」
大和達は目を白黒させながらこちらを怪訝そうな顔で伺う。
「やっと面白くなってきたのう」
「そのようですね、影現斎様」
爺と顎鬚の男は平然とした顔で云った。
(……チッ、射程から外れたせいで五人とも解放されてるか)
「今度は俺の出番かな〜?
『ブレイズ・オブ・グローリー』……熱を造形しろッ!」
一馬からリーゼントのような頭をして両腕にリングをジャラジャラと付けた人型スタンドが出てきた。
そのスタンドは炎のような揺らめくものを小練りだして何らかの形を作っている。
次第に姿形がはっきりしてきてそれが何なのか理解出来た。
「カラスッ!?」
「行けェェェ―――!!」
そして、この熱さッ!! これは紛れも無く熱を持っているッ!!
俺は襲いかかるカラスを飛び退いて避けるが――
それは
分裂して無数の小さいカラスとなってさらに襲いかかってくる。
- 363 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/11(火) 06:18:46 ID:IwvkqGIM0
- 「ちくしょう!」バッ
「ハーイ! 私と遊ぼうよ!」
避けようとして振り返っさ先に結城 未早がいて、彼女はニコニコと笑っていた。
コロシアイ
「さあ始めましょう? 楽しいゲームをねッ!!」
脚と腕に螺旋状の溝が走っている人型のスタンドが俺の頭を狙って殴ってきた。
俺は咄嗟にカウンターのパンチを繰り出していた。
(女を殴る趣味はないが…… 後で治してあげるから我慢してくれ!)
「ボーノボ――……」
「ノボノボ…ノ……あれ……!?」
「体感した? わたしの流れをぶった切る能力……『オリヴァ・ツウィスト』を!」
「一体……!! 何が起きたって言うんだ!?
催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ!!」
「さあ来なさいよ!」
「ラッシュがダメなら……下に転がってる椅子でも喰らえッ!!」ブォン
『U2』で椅子を未早に向けて思いっきり投げる。
次の瞬間、投げたはずの椅子は真下に落下していた。
「……!?」
「まだ理解出来ないの? 馬鹿なの? 死ぬの??
それとさ……これは忠告。たまには周囲を見回した方がいいよ」
気付いたときには時既に遅し。
俺の周囲に無数の揺らめく小さいカラスの集団が囲っていた。
一馬のスタンド『ブレイズ・オブ・グローリー』の仕業だ。
「死ねェェェ―――!! ヒャッハァァァ―――!!」
一馬の雄叫びと共に熱を持ったカラスの大群が一斉に俺の方へ飛んでくる。
ちくしょう、万事休すか……!!
***
- 364 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/11(火) 06:19:00 ID:IwvkqGIM0
- 「野郎……逃げ足が速いぜ……だが、逃がすわけにはいかねェ〜よなァ〜」ガチャリ
俺は学校の駐車場に停めてた車のエンジンをかけて長髪の男を追う。
奴はトレーラーが付いたトラックを運転して逃げ去ろうとしていたのだ。
恐らくあのトレーラーの中にはこの学校の生徒がいるのだろう……。
いや、待てよ。それにしては狭すぎるッ! ……罠か!?
だが……俺には追うしか選択肢が無いッ!!
車をオーバートップギアにして全速力で加速だッ!! アクセルを踏み込むッ!!
「『ステイアウェイ』ッ! 矢印をタイヤに貼り付けろッ!!」
ズギュゥ ―z___ン
「ヘイッ! 法定速度なんざ倍々でByeByeだ!!
110km……130km……150kmッ!!」
「メーターを振り切るッ!!!」
しかし、次の瞬間ルームミラーに映り込む二つの人影に戦慄する。
俺は前へ進むことだけに夢中になっていたせいか気付かなかった。その存在に。
「君……覚悟は出来ているのか?」
「うわッ!! だ、誰だァ―――!!?」
「私は……」
/´〉,、 | ̄|rヘ
l、 ̄ ̄了〈_ノ<_/(^ーヵ L__」L/ ∧ /~7 /)
二コ ,| r三'_」 r--、 (/ /二~|/_/∠/
/__」 _,,,ニコ〈 〈〉 / ̄ 」 /^ヽ、 /〉
'´ (__,,,-ー'' ~~ ̄ ャー-、フ /´く//>
`ー-、__,| ''
俺は男の口から驚愕の言葉を耳にする。
「味方だ」
「へっ!?」
「君のサポートをしたいと思う……
申し遅れたが、私の名前は絹井」
「そして僕が三輪だ。ヨロシク」
チラッと振り返って男達の風貌を確認する。
絹井は赤帽子を被った黒ずくめの中年、三輪は金髪でメガネの才気溢れる出で立ちだ。
- 365 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/11(火) 06:19:33 ID:IwvkqGIM0
- 「あのォ〜……急すぎて理解不能なんですが!」
「そんなことよりッ! 君は前を向いてなさいッ!!」
「は、はい……(敵ではなさそうだが、一体何者!?)」
「いいかい……君は敵の罠にまんまとハマったんだ!
しかし、『最悪』ではない……むしろ迎え撃てるチャンスッ!!」
「何がですか?」
「君を殺すために敵さんのトップの右腕と直属の精鋭部隊が待ち構えてるってことさ」
なるほどね。三輪という男の言う事は何故か正しいと思えた。
今回の俺の行動は安直そのもの……だが、願ったり叶ったりじゃないか。
「ハハッ……今更何が来たってビビりゃしないですよ
親玉が来たって戦う覚悟はすでに……あるッ!!」
「そうか……その言葉が聞きたかった
ならば我らも全力でサポートしよう」
俺は彼らに当然の疑問を投げつける。
「一体……貴方達は何者なんです!? 何故そこまで詳しい!?」
「……」
「まあ……いつかは話すことだ
我々はこの国の極秘裏に存在する諜報機関『STR』の人間なのだよ、有嶋秀彦君」
「諜報機関? 『ヴェーダ』のことを探ってるんですか?」
「そうだ
三年ほど前にこの機関設立された……
最初は藁を掴むようだったが、今年に入ってからは足取りが掴めてきてな」
絹井が答え、続けて三輪も応えた。
「何故かと云うと……まあ君は察しがついてるだろう
奴らの動きが活発化していってるからだよ
このままでは取り返しの付かないことになる…と推測さえされてる」
「なる……ほど……」
「既に君達のこと、『ラムダ』のことも調査はしてある
我々の長からも君達は信用出来ると太鼓判を押しているのさ」
俺も彼らが敵とは思えなかった。
まだ信頼は出来ないが、今は一人でも味方が欲しい時だ。
「分かりました……協力していただけるならこれ以上頼もしいことはありませんよ」
「奴の車はもうじきあの人気のない公園の前で停まる。いいな?」
「はい……」
そして、絹井の云う通り敵が乗るトラックは公園の前で停車した。
中からは長髪の男が出てきて、トレーラーの中からは六人の男女が現れた。
「あのブサイクな饅頭みたいな頭をした男がいるだろう?
あいつは『マハーカーラ』と云ってかなり手強い奴だ……気をつけろよ」
「分かりました……(妙な顔だが……見かけにはよらないということか?)」
「さあ僕たちも車から出るよ……もうここを出たら決着が着くまで帰れないと思いたまえ」
三輪が脅すように云う。俺の膝もガクガクと震え出していた。
「オイオイ……ビビってんのか?」
絹井が訊く。だが、答えはNoだ。
「フフ……これは武者震いですよォ〜……
やっと奴らの幹部連中を引きずり出せっと思うと嬉しくてですねェェェ〜〜〜ハハハハハハ!!」
どうしたことか。笑いが止まらない。
- 366 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/11(火) 06:21:40 ID:IwvkqGIM0
- 投下はここまでです…すいませェん
何かハイなテンションで書いてたら秀彦が壊れたwww
- 367 : ◆9X/4VfPGr6:2010/05/11(火) 09:33:02 ID:z.WEs/bc0
- 乙!
自案出てて嬉しさやべぇwwwww
- 368 :名無しのスタンド使い:2010/05/11(火) 11:29:23 ID:bie4r4aQO
- オリヴァ・ツウィストちゃんかわいい
- 369 :名無しのスタンド使い:2010/05/11(火) 12:51:27 ID:gqcclZJwO
- 乙です。自案が2体もでてきた嬉しさでニヤケがとまらんwww
- 370 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/11(火) 17:04:36 ID:IwvkqGIM0
- >>367
マジですか!どれだろう!?
>>368
女の子って実にバトルさせづらい
あんまり傷つかせたりさせるの得意じゃないんですよね
>>369
マジでw
しかし今回はクッキーさんがデザインしたスタンドが3体も出てるという(もう1体は後で出ます)
クラスメイト五人のスタンドは前から出したかったので個人的に満足です
- 371 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/11(火) 17:29:40 ID:???0
- 別のSSが書きたくなってきた…はぁ
- 372 : ◆U4eKfayJzA:2010/05/11(火) 18:15:14 ID:bpW2VLds0
- 友人相手のバトルはきつい……。そして、更に別の組織が出てくるとは!
乙です!
>別のSSが書きたくなってきた…
なら、単発で気分転換するか、二作同時進行すればいいじゃないですか。
自分の経験じゃ、並行で二作までは何とか執筆出来ます。三作同時はきついですけど。
別のを書きたい時は、書いた方が気が楽になりますよ。
- 373 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/11(火) 18:26:10 ID:???0
- U4先生お米ありがとうです
新しい組織のSTRはSyoTaRoh…ショタローさんから取ってたりw
自分は不器用だから二作同時なんてとてもじゃないけど出来やせんぜ…
出来るならやりたいですが…恐らく自分には無理でしょう
まあとりあえず焦らず一話一話を大事にしていかないといけませんね
- 374 :名無しのスタンド使い:2010/05/11(火) 18:27:13 ID:???O
- ショタローさんやたら色んなところで名前使われるなwwww
- 375 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/12(水) 21:20:26 ID:???0
- 絵を描いてる時やSSを書いてる時は日本語の曲は流すと集中しづらい
だから日本語以外の洋楽やインストゥルメンタル、サントラ等がいい…と勝手にに思い込んでいる
荒木先生も邦楽は邪魔だって云ってたけど凄く気持ちが分かる
バトルシーンだとHM系があうんだよな〜デスメタルとかグラインドコアとか好き
>>374
パッと思い浮かぶのが何故かショタローさんなんだよw
- 376 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/13(木) 02:37:56 ID:/sA33MDE0
- 糞眠いけど投下するぜ
- 377 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/13(木) 02:42:19 ID:/sA33MDE0
- 「さぁ……行くぜ……!!」ガチャリ
俺は車のドアを開けて戦場へと赴く。
敵は運転手の長髪の男とコンテナから出てきた六人の男女。
眼光を鋭くして敵を睨みつける。
丸っこくて白い頭をして首から下は黒い特殊スーツに身を纏った奇妙な男が喋る。
「シヴァ様のご命令によりお前を抹殺するんだお!」
妙な語尾だ。こいつが要注意人物『マハーカーラ』か……?
こいつからは恐ろしさはさほど感じないのだが。
何と云うか……肩透かしを食らった気分だぜ。
「何余裕ぶってる……てかお前の隣にいる二人は誰なんだお!?」
『マハーカーラ』は絹井と三輪に問う。
「誰かなんて問題じゃないねェ……今から貴様らは死ぬんだからなッ!」
「僕は戦闘能力は無いが……サポートするよ」
「質問に答えないとは無礼な奴だお……抹殺するおッ!!」ワナワナ
「先手必勝だぜッ!!」
俺は奴が動くより先に攻撃を仕掛けた。
『ステイアウェイ』は自身の腕に矢印を付けてパンチをブーストさせる。
.. /⌒i /`l _ ,、
_,,..、 .| / ,..-、 ,、. l |/ 〉 .〈 .| ,.-、
l l | /´ l,、_ノ ,l | l |レ' _,,」 .`'´ 〉 _,,..、 ,..、
| i' '´_,,、 ,! L.-ヾ=,' l、_,.. 、 「Zノ ヽ `ー、 / ア
.| し''´ 」 _,.-'´ _, - '_´ ゙l_,〉 ヽ、 'l / /
.| ,,.-''´ (_,.- '´| L-'´ _) `ー',/ /
| .| ,.-'´ ,.-'" / /´
..l、_ノ {,.- '´| | 「 /
|,i `''"
**
熱を持ったカラスの大群は祐介のいる場所を集中攻撃する。
周囲の椅子や机をジュウジュウと焦がした臭いが辺りに立ち込める。
『ブレイズ・オブ・グローリー』はパワー・スピード共に並だが、これだけ囲まれていては脱出は困難と思われた。
しかし――
「助かったぜタクマァ―!! お前はいつもタイミングいいぜェ!!」
天井をぶち破ってタクマが祐介の体を『S・F・U』で掴み上げていた。
- 378 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/13(木) 02:42:52 ID:/sA33MDE0
- 「お前に渡していた小型通信機が早速役に立ってよかった」
そう、祐介はこの教室に向かう途中にタクマに連絡していたのだ。
タクマは壊れたガラクタの機械のパーツだけでこの装置を作って祐介に渡していた。
「それにしても敵の数が多いな。勝算はあるのか?」
「敵と云っても大事な友達だ……殺しはしないってば
この五人はここにはいないスタンド使いに洗脳されている!
だから兄貴に賭けてるのさ! それまで俺達が持ちこたえればいい」
「やれやれ……だが、そこの顎鬚はよォ〜く覚えてるぜ……」
「誰かと思ったら一号君か。脱走したと思ったらそっち側につくとはねェ〜
もう少し頭のいい子かと思ってたんだが残念だよ」
四條はにべもない口調で云った。
「この子が例の裏切り者というわけじゃな……これで探す手間が省けて一石二鳥じゃのう」
「アンタが影現斎か……噂には訊いてたが……まあいい
どっちみち全員皆殺しだ……!」
タクマは静かに闘志を燃やしている風だった。
内に秘められた憎悪という感情が渦巻いて表面化し、彼の体を突き動かす。
「ワシらに攻撃が届けばいいがな……この五人は手強いぞ?」
「タクマ……この際、ある程度の傷なら構わないぜ!
じゃないとこっちが殺されてしまうッ!!」
祐介は鬼気迫る顔をして決心をつけているようだ。
友人と殴り合いをしないといけないというこの状況に強い怒りを抱くが、何とか抑えて平静を装うとしていた。
「分かった……手加減は出来ない……やってやるさ」
一馬はすでに新たな『熱』の造形を作り上げて待ち構えていた。
その『熱』はカエルの姿をしている。
ピョンッとカエルの群れが祐介達に襲いかかる。
「『シックス・フィート・アンダー』ッ! なぎ払えッ!」
『S・F・U』は手に持つ十字架型の武器でカエルを払いのけようとした。
- 379 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/13(木) 02:43:19 ID:/sA33MDE0
- 「甘いぜお前ェ〜俺の『作品』を舐めすぎだ」
ギゴガゴ!ギゴガゴ !
トランスフォーム
「形態変化完了」
カエルは形態を変えて無数の球体へと変わった。
玉は弾け飛んでタクマの方向へ。
「くッ!!」ジュワァァァ
体に直撃して熱をモロに食らったタクマは悶える。
肉が焼けた臭いがして祐介は思わず手で鼻を塞ぐ。
「タクマ! 大丈夫かよッ!!」
「いやァ……中々にヘヴィなバトルだな……堪えるぜ」
タクマは傷口を手で押さえながらよろよろと歩く。
「私も能力を披露してもいいかしらぁ〜?」
今まで空気だった小麦色の女、古森芹香が口火を切る。
スカートのポケットからカッターナイフを取り出して手首を切り始めた。
「な、何やってんだァァァ――!?」
祐介はその不可解な行動に驚きを隠せない。
まるで意図の読めないその行動。
「ふふ……これで私のスタンドが使えるわぁ
『カルタ・マリナ』水を噴出しなさい!」
芹香の手首の疵口から大量の水が噴出される。
「そして…水圧MAXよ!」ドブゥワァア
「くっ……うおお……」
祐介はその強烈な水圧に押されて思わず数歩だけ退く。
「ぬ……ぬうう……」
「さあ今よ! 皆今のうちに攻撃を――」
「ナンチャッテ」
祐介に向かって噴出される水は手前で落ちて行く。
- 380 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/13(木) 02:43:48 ID:/sA33MDE0
- 「俺の半径2m以内の物体は重さが加わる……
その水はスタンドじゃなくて実在する水だから当然……落ちるッ!」
「なんですって!?」
端正な顔立ちの芹香の顔が歪む。
「はい、タッチ!」
祐介は芹香の体に触れる。
「きゃああああああ」ズシン
重さを与えられた芹香の体。床はその重さに耐えられなくなり、穴を開けて落下して行く。
「全然大したこと無かったな。さて……ここからが本当に地獄だ」
祐介は他の四人を一瞥した後、肩を竦めてフゥと息を吐いた。
四人は一斉に祐介とタクマを囲って攻撃を開始し始める。
「ボノボノボノボノォ―――!!」
「『オリヴァ・ツウィスト』は流れをぶった切るッ!!」
「クソッ……また攻撃が……!!」
『ギュワッシャー!!』
鉄也のスタンド『リンゴ・スター』が口から粘性のジェルを吐き出して祐介の足元に付ける。
即座に硬質化して固定される。
「『リンキン・ パーク』ッ! 貼り付けろッ!!」
「ぬぅおわぁああああ」ガチャリ
祐介の両腕は床に『リンキン・ パーク』が作った蝶番で繋がれてしまった。
足はジェルで、腕は蝶番で雁字搦めである。
「身動きが出来ねぇ!」
「今助けるぞ祐介ェェェ―――!!」
助けに入ろうとしたタクマの間に一馬が割って入る。
「ヘイッ! お前の相手はこの俺だ!」
「邪魔してんじゃねーよ!祐介の友人だからと穏便に済まそうと思ってたがヤメだ
この槍で串刺しにしてやるぜッ!!」
「やれるもんならやってみろよォ〜陰キャラ君よォォォ〜」
- 381 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/13(木) 02:44:02 ID:/sA33MDE0
- 「くらえッ!!」ブォン
「熱を網状にした……」
スタンドで十字架の武器を振りかざしたタクマであったが目の前に網が出現してくるまれる。
その熱さに悶え苦しみながら床を転がり続ける。
「ぐゥゥゥ……!!」
「でかい口叩いててよォォォ〜大したことねーじゃねーかッ!! オラッ!!」
「熱いが……耐えられないレベルじゃあないな」シュパシュパ
タクマは攻撃を避けて、『S・F・U』でラッシュを繰り出す。
「『ブレイズ・オブ・グローリー』! 受け止めろッ!!」
ビシッビシィィ
「フン……能力のほうにパワーを使ってるせいで純粋な力やスピードは大したことないようだな」
「……だから? 力比べで勝てても俺の能力の前じゃ平伏す他無いってのッ!」
一馬は人間の背を超える巨大な竜型の『作品』を造形する。
そのデカさ故に熱量は凄まじく教室の温度が上昇したように感じられるであろう。
本体の一馬でさえ大量の汗をかいていた。
タクマはモタモタしていたら祐介がやられてしまうと思いつつも自分のピンチに精一杯であった。
この状況を打破するにはどうしたらいいのか……それだけを考える。
「さっさとくたばりやがれェェェ――!!」
恐ろしくデカイ体躯を持った竜がタクマに向かって直進する。
「やれやれ……俺も覚悟が必要だなッ!」クワッ
タクマは腕を頭の前で組んでそのまま竜の体の中を突っ切った。
いくら大きかろうとギリギリで耐えれる熱さだと踏んだ上での行動だ。
「何ィィィ――!! 俺に向かってくるだとォォォォオ」
「………」ブゥォン
『S・F・U』が振り下ろした十字架の武器が一馬の脳天に直撃する。
- 382 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/13(木) 02:44:22 ID:/sA33MDE0
- 「―――!!!」
一馬が声にならない叫びをあげ、白目を向いたまま気絶した。
「ぐッ……すまない……俺はここまでのようだ……」
タクマは力尽きて床に倒れこむ。
「うがァ……」
祐介はあれから鉄也や大和らに嬲られ続けていた。
「そろそろ飽きてきたなァ〜やっちゃっていいぞ未早」
大和が未早に指図を出す。
「あは、やっちゃっていいの? それじゃあ……」
『オリヴァ・ツウィスト』は祐介の体を向かいの壁まで蹴り飛ばして叩きつけた。
硬質化したジェルや蝶番などお構いなしという程の破壊力だ。
もはや祐介に意識は無く、ズルリと壁を背に雪崩れ込む。
「あっけないのォ〜だらしないのォ〜つまらんのォ〜〜〜」
影現斎は心底つまらなさそうな顔で呟く。
「そう? なら私が遊んであげるわッ!」
セーラー服姿の少女が唐突に現れる。
ただ一つ、普通の女子高生と違っていたのはバタフライマスクを付けているという点。
四條は顎鬚を触りながらニタニタと少女の顔を凝視する。
「ようやくお出ましかい? 東雲雪華ちゃん」
四條の口から発せられる人名。
その名は祐介の想い人だった。
「……!! 何で知ってるのよ!?」
「知ってるも何もねぇ……フフ、ちっちゃい頃はよく私と遊んだじゃないか
まあ忘れるのも無理もないか……当時三歳くらいだったしね」
「あなたは一体……?」
「君の親父さんには今でもお世話になってるよォ〜
我らが『ヴェーダ』の研究所の所長ッ! 東雲所長にはねッ!!」
- 383 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/13(木) 02:44:56 ID:/sA33MDE0
- 「知らない……そんな奴知らないッ!!
私の知ってる優しかった父さんは死んだんだッ!!」
「フゥ〜……所長の娘だ……殺すわけにはいかないな
『半殺し』で拘束ってとこか」
「そうじゃな……後で直せばいいんじゃから生きてさえいれば問題はないのォ〜」
ハッと我に帰った雪華は影現斎と四條の会話を尻目に祐介の元へ駆け付ける。
ぴくりともしないその体を抱き抱えて起こす。
「祐介君ッ!!」
呼び掛けるが返事は返ってこなかった。
雪華は祐介の口元に耳を当てて呼吸を聴く。
「……呼吸がないッ!! 心臓は……動いて……いな……い……」
_ r'^>/^ゝ r-、 ,、 _ r'^>/^ゝ r-、 ,、
| `l / // / / / く ヽ | `l / // / / / く ヽ
'! Lニ_`'' 「`L_ 'ー-' `ー'' '! Lニ_`'' 「`L_ 'ー-' `ー''
'! ,、_7 i ``゙''ー、 .'! ,、_7 i ``゙''ー、
1 | | l` ̄`'' 1 | | l` ̄`''
i_」 'L_」 i_」 'L_」
「死んだんじゃよッ! それは人間にあらず! 物ッ!!」
「……五月蝿いッ!!」
歯を噛みしめ、眼から大量の涙を零す。
少女は何で彼がこんな目に合わなくちゃいけないの?と、この理不尽な現実に対して失望を抱く。
「『コミュニケーション・ブレイクダンス』ッ!!」
「彼に撃つのか? それとも私達に撃つのか?
その判断の駆け引きで君達の運命は決まる……フフフ」
「そうね……一発撃ったら数秒のインターバルは必要
でもッ! それでもッ! 私には助けるしか頭に無いのよッ!!」バシュァ
祐介の体に『コミュニケーション・ブレイクダンス』の弾丸が埋め込まれる。
「かかったな阿呆がッ! 雪華を捕まえるんじゃァァァ―――!!」
祐介のクラスメイト四人が一斉に雪華に襲いかかる。
雪華は咄嗟に銃でガードをするが、当然弾かれて後方の壁に叩きつけられる。
「うっ……適わない……こんなのって!」
「もう十秒経ったよ〜。ホラッ! 撃ってきなさい!」
未早が挑発してきた。
「うわあああああああああ」バシュッ
- 384 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/13(木) 02:45:11 ID:/sA33MDE0
- 「何? 言いたいことがあるなら言えよッ!」
「私の……能力は人体以外にも適用されるのよ
言ってる意味分かる?」
「はぁ!? 時間稼ぎが見え見えだよ!! 死んじゃえッ!!」ブォワ
『オリヴァ・ツウィスト』が振り下ろす手刀が雪華の首筋まで迫る。
「とりあえず当たったものは『爆発しろ』って感情を込めたの
だからね……足元気を付けた方がいいわよ」
ドガァアアアン!未早の足元に落下した弾丸の床が勢い良く爆発する。
床の破片が未早の脚に刺さり込む。
「何よこれェ……脚がズタズタじゃない……
許さない……ゆ”る”さ”な”いィィィィィィ――――――!!」
「うわあああああああ(鼓膜が裂けそう!)」ビリビリ
未早の馬鹿でかい声が部屋の中を響き渡り、まるで教室が揺れてるような錯覚を起こす。
「脚をやられたからそっちに行くのにあと三十秒はかかるよォ……!」
「ハァ……ハァ……逃げないと……」
膝は恐怖でガクガクと震え、脚が竦んで逃げることも困難となっていた。
男子三人も雪華の元へじわじわと歩み寄ってくる。
「最後の弾丸ッ! どう使うか決めたわッ!!」
「もう何やっても無駄だよッ! 苦しんで死ねッ!!」
「あなたに託すわ……勝手だけど……もうそれしか方法がないの」バシュウウゥゥ
雪華が弾丸を放ったと同時に『オリヴァ・ツウィスト』は雪華の胴体に拳を貫通させた。
グジュリ…と生々しくて痛々しい音が聴こえた後、ドバドバと朱色が流れ落ちる。
「あ……がッ……はふッ……」
まともに話すことも出来ず、嗚咽を繰り返す。
「あァ〜〜〜とても苦しそうッ! その顔素敵ッ!!
これこそ『勝った』って感じだよ! 愉悦愉悦愉悦ゥゥゥ―――!!」
「ヴ…後ろ……ミロ……私の……勝ち……だ…………」
最後にそう言い残して雪華は息絶える。
非常に苦しそうな喋り方であったが、その表情は笑っていた。
- 385 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/13(木) 02:46:21 ID:/sA33MDE0
- 全員死んで『ヴェーダ』側の完全勝利かと思われたその矢先――。
/´〉,、 | ̄|rヘ
l、 ̄ ̄了〈_ノ<_/(^ーヵ L__」L/ ∧ /~7 /)
二コ ,| r三'_」 r--、 (/ /二~|/_/∠/
/__」 _,,,ニコ〈 〈〉 / ̄ 」 /^ヽ、 /〉
'´ (__,,,-ー'' ~~ ̄ ャー-、フ /´く//>
`ー-、__,| ''
「お前の意志は受け取ったッ!」
「お主は……!! 何故生きとるッ!!」
さっきまで瀕死状態にあった男が立ちはだかっていた。
「あの娘の能力だよ……俺に撃つとは粋なことしやがるぜ」
雪華が最後の一発を撃ち込んだ相手とはタクマだった。
酷い火傷を負っていたが、『C・B』の能力で完全に完治していたのだ。
「フォッフォッフォ。なァに……生き返ったところでどうしようもあるまい」
「さあ、どうかな?」
「かかれッ!!」
影現斎の掛け声とほぼ同時に四人はスタンドを出してタクマに詰め寄る。
「シャアァァ!!」
タクマの『S・F・U』はスタンドを掻い潜って未早の足元にパンチを当てた。
「うわああああああああああ」
さっきのダメージに追い打ちをかける攻撃だった。
当然、未早は悲鳴をあげてのた打ち回る。
他の三人にも動揺が走り、動きが若干鈍ってしまう。
十字架の武器をジャイアントスイングのように放り投げて鉄也の体に直撃させる。
「うぎゃああああああぁぁぁ―――!!」
肋骨でも折れたのか、鉄也は壮絶な痛みを味わっていた。
「後二人……」
「あんまり舐めてんじゃねぇぞコラ!
『ブレイズ・オブ・グローリー』は蝶型の作品を作り上げてタクマの周囲を取り囲む。
「焼けて死ねッ!!」シュンシュンシュン
蝶は一点に集まるかのようにタクマの体へ迫る。
あまりの熱量に真冬でありながら教室の中はサウナのようにすら感じられた。
「いいやッ! 俺の勝ちだッ!! 戻れェェェ――!!」
タクマの合図と共に十字架の武器が独りでに浮かんで、タクマのいる方向へ動き出す。
「な、何ィィィ――!?」
「俺と武器の対角線上にお前はいる……今からどうなるか分かるかな?」
「ちくしょおおおおおおおお」
グサリと六つの槍が一馬の体を突き刺す。
そして、間もなくして床に倒れこみ、起き上がることは無かった。
残るは後一人、原田大和のみ。
「はぁ〜情けないねェ〜結局残ったのは俺だけかよ」
彼の表情は余裕そのものだった。
一辺の曇も無く勝利を確信した目。
- 386 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/13(木) 02:46:49 ID:/sA33MDE0
- やばいくらいに眠い!!
書いてる途中で何度も意識が飛びかけたw
ねまーーーーーす
- 387 :名無しのスタンド使い:2010/05/13(木) 09:47:30 ID:aMchMDK2O
- コミュニケーションブレイクダンスちゃんがああああああああああああ
- 388 : ◆9X/4VfPGr6:2010/05/13(木) 10:14:05 ID:PFs/tAA6O
- うわああああああああああああああああああああああああああああ!!!
- 389 :名無しのスタンド使い:2010/05/13(木) 10:59:10 ID:???O
- 乙!
女の子にバトルあんまりさせたく無いって言った矢先からエグいwww
それにしても爆弾にもなるとはコミュニケ万能すぎるw
- 390 : ◆U4eKfayJzA:2010/05/13(木) 11:23:22 ID:djTdnL/g0
- ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!
まさかのコミュニケーションブレイクダンスちゃんの死亡ってぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
あ、毎度毎度マサクゥルやってる自分が言うのもなんですし、乙1先生なら当然理解していることでしょうけど、ちょいとマジレスしますね。
思い切ったことやったなぁ、というのが正直な感想ですね。なんせ、味方キャラの死ってのは作中における決断の極致ですもの。
一度死んでしまえば、そのキャラは「舞台からの退場」という「作者の支配の外の世界」に行ってしまいますから、安易には使えないんですよね。
それをまさかヒロイン格のキャラに、終盤でもなさそうなところで使うとは、感服……ん? そういえば、U2には例外の伏線っぽいのが既にあったような。まさか、ねぇ……
>>絵を描いてる時やSSを書いてる時は日本語の曲は流すと集中しづらい
ははぁ。じゃあ、型月のBGMはともかくとして、デイアフ時代のmisonoの曲とか聞いて精神を高揚させる自分は異端ですかね……
人それぞれ集中力を高められるのは違うのかも。
- 391 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/13(木) 11:55:47 ID:/sA33MDE0
- あまりにも眠すぎて投下分の後半記憶にないぞw
>>387-390
うおお…反響が凄いな…
いや、やっぱり女の子を傷つけるのは抵抗ありますよ…
だけど、そうしないと話が進まないので致し方ないところなのです
>それにしても爆弾にもなるとはコミュニケ万能すぎるw
コミュ・Bはただの回復役にしたくなかったので攻撃にも参加させます
>>360
うおお…うお…
>人それぞれ集中力を高められるのは違うのかも。
人それぞれ、それに尽きますよ
あんなこと書いててなんですけど邦楽は嫌いというわけではないのであしからずw
言葉が分かると歌詞に集中してしまって執筆や絵が疎かになってしまうんですよね(それでも聴いてしまう曲もありますが)
最近は「おおかみかくし」のサントラをローテで聴いてます
misonoといえば御園…
- 392 :名無しのスタンド使い:2010/05/13(木) 12:12:00 ID:9y1n1Z3E0
- 一見、普通の女の子の日記ですが、
ある事をした後に更新しています。
かなり中毒性が高いので注意が必要かもしれないです。
ttp://stay23meet.web.fc2.com/has/
- 393 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/13(木) 19:11:02 ID:/sA33MDE0
- 投下します
- 394 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/13(木) 19:11:50 ID:/sA33MDE0
- ┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨ ┣¨┣¨……
「ウッシャアアアァァァ―――!!」シュバシュバ
『S・F・U』のラッシュが射程範囲内に入った大和に向けられる。
「蝶番を自分の足につける……」グオンッ
大和の体は攻撃を受ける寸前で蝶番を軸にして後ろに反れる。
「呼吸停止の場合十分で死亡率が五十%……心臓停止なら……
三分で死亡率が五十%にまで上がってしまうッ!
そして十分経過で死亡だ……お前らは今から三分以内に殺すぞッ!」
「やってみろよォ〜出来るならよォォォ〜〜〜!」
「……」ガッ
タクマは十字架の武器を拾って大和に向けて叩き込む。
直前で『リンキン・ パーク』でガードするが、『S・F・U』のパワーが上回っていたようで大和を退ける。
「何故避けずにガードしたかという点について……疑問に思わなかったか?
『リンキン・ パーク』はその武器に触れることが出来た……つまりッ!」ズズズ…
「何ッ!!」
タクマの体と槍が付いた十字架の武器が蝶番によって繋げられた。
「蝶番は『閉じる』ッ!!」
「しまっ――」
ザッグリャアァ
タクマの胸部から腹部にかけて六つの槍が刺さり貫通する。
しかし――
「ぐっふァ……うっ……」
「運のイイヤツだ……急所に当たらずに刺さるとは……
だが、逆に考えれば苦しみの中で死ぬことになるわけだから……アンラッキーだよなァ?」
「ハァ……はァ……」
立っているのがやっとという状態であり、大量の出血で意識も朦朧としかけていた。
彼の床下は朱色に染まる。
「その傷ならほっといても死にそうだが……これでトドメだッ!!」
『リンキン・ パーク』のパンチがタクマに放たれる。
**
秀彦の『ステイアウェイ』によるブーストパンチは完全にマハーカーラをとらえたと思われた。
だが、パンチは空を切る事になる。
マハーカーラの体はドロドロに崩れ去っておよそ生物とは思えない姿形になって地面を這っていた。
- 395 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/13(木) 19:12:09 ID:/sA33MDE0
- 「何だこいつ……よく分からないがヤバイッ!」
「秀彦君ッ! そいつには気をつけろ!
さもないと君はマハーカーラに殺される事になるッ!!」
三輪が必死の形相で秀彦に忠告をする。
(な、何だ……足元がフラつく……)
異変に気づき、視線を足元に落とすと地面が崩れさっていた。
このままでは地面が陥没しかねない状態。
「お二人とも……俺に掴まって下さい!」
足元に矢印を貼りつけて一気に加速。三人はその場から離れる。
しかし、敵達は既に回り込んで待ち構えていた。
「秀彦君いいかよく訊けッ! 僕のスタンド『ミスター・ロストマン』は過去の情報を知ることが出来るッ!」
「つまり、未来の三輪さんから情報をもらえたってことですか?」
「そうだ……未来の僕はこう云っていた
”秀彦君はマハーカーラに殺された、僕と四條さんは今からあの五人に殺されるだろう”……と!」
「死ぬと分かっていてむざむざ戦わないはず……相手の弱点とかも分かってるんですか?」
「いや……未来の僕達は為す術も無く殺されたのだろう………
だが、時として勝算が薄くても戦わなければいけない時もあるんだ!
奴らを倒して捕まえることが『ヴェーダ』を壊滅させる足がかりになる……」
「命を掛けることと命を捨てる事は違う……教えてくださいッ!
何でもいいッ! 相手の能力をッ!!」
「オーケー……だが、全ての能力を把握してるわけじゃない
まずはあの男、殴った物から泡を発生させて自在に操ることが出来る
その物体の強度と同じ強度の泡となるようだ……
そして、あの帽子の男……強力なエネルギー弾を放つ
ただ充填するまでに時間がかかるらしい
最後にマハーカーラは物体の状態などを崩すことが出来る能力を持っている」
「分かりました……しかし、これでまた未来が変わりましたね?
また何か情報が入ったらお願いします」
黙り込んでいた絹井が秀彦に話しかける。
「さて、私は君のサポートをするとしよう」
「アンタ達いつまでお喋りしてるつもりなの……?」
/´〉,、 | ̄|rヘ
l、 ̄ ̄了〈_ノ<_/(^ーヵ L__」L/ ∧ /~7 /)
二コ ,| r三'_」 r--、 (/ /二~|/_/∠/
/__」 _,,,ニコ〈 〈〉 / ̄ 」 /^ヽ、 /〉
'´ (__,,,-ー'' ~~ ̄ ャー-、フ /´く//>
`ー-、__,| ''
- 396 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/13(木) 19:12:23 ID:/sA33MDE0
- 両手に刀を持った少女が秀彦達のいる方向に突っ込んでくる。
三輪が持ち得る情報には入ってない能力者だ。
少女のスタンドはドロドロの形状となって地面に浸透していっていた。
(来るッ! 一体どんな能力なんだッ!?)
秀彦は『ステイアウェイ』で迎え撃ってしまった。
後になって気付くことになるが、それは悪手だった。
「アロアロアロアロアロアロアロアロ―――アロークロスッ!」
矢印をつけてブーストした両手によるラッシュを放つ。
秀彦は完全に少女をとらえたと思った。
「既に地面に『浸透』させていたのよ……地面は変形するッ!」グゴゴゴ
少女と秀彦の間に土の盾が出現し、『ステイアウェイ』のラッシュを遮る。
土壁は粉々に破壊されるが、その向こう側に少女の姿は既に無く――
後ろに回り込まれていた。
「『アスファルト・ジャングル』……!」
ドロドロのスタンドは既に本体の元に戻っており、拳を振り上げていた。
「……!!」
しかし、少女の体はあらぬ方向へ飛んでいく。
「私の存在を忘れてもらっては困るねェ……」
赤帽子の男は含みを持った笑みを浮かべていた。
「不意打ちは趣味ではないが……私の『ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン』で殴らせてもらった」
「絹井さん! た、助かった……」
「よくも……私の顔に傷つけてくれたわね……殺してやるッ!」
「来なさい……来れるものならな」
「何云って……あれ? 体が動かない……!!」グッグッ
少女はゴキブリホイホイに捕まったゴキブリのように地面にくっついて離れることが出来なかった。
「殴ったときに粘性を持たせたのだよ……動けまい?」
「フフフ…アハハハ!! このくらいなんてこと無いわ……
私の『アスファルト・ジャングル』ならねッ!!」
A・ジャングルが地面に浸透していって、土が少女の体を覆っていく。
「どうよッ! これなら動け――」
「アロークロスッ!」ドシュゥ
少女の死角に迫っていた『ステイアウェイ』のパンチが少女の体に直撃する。
- 397 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/13(木) 19:12:53 ID:/sA33MDE0
- 「うおああああああああ」ビュオォォ
少女の体は数十メートル先に停まっているトラックにぶち当たり、即死は確実だった。
「まずは一人……」
「よくやった秀彦君ッ! だが、これで敵も本気を出すだろうな……」
絹井の予想通り、ガネーシャ一番隊の残り四人とマハーカーラは一斉にかかってくる。
祐介のクラスメイトを洗脳させた長髪の男は高みの見物とでも云わんばかりに遠方で立ったままだった。
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
前方から迫る五体のスタンドとその本体。秀彦との距離も十メートル以内だ。
「今から俺が絹井さんを動かします……云ってる意味分かりますか?」
秀彦は絹井の顔を見て訊く。
「フ……この窮地で面白い発想をする。気に入ったッ! 任せようッ!!」
そう答えた絹井の足元に『ステイアウェイ』で矢印を貼り付けた。
ギュンと絹井の体は加速して行く。
「まるで人間をリモコン操作してるみたいだな……」
この状況を見た三輪はそう呟いた。
『ステイアウェイ』に身を委ねた絹井は巧みに敵の攻撃をかわしていく。
「チィ……すばしっこい奴だッ!! 操ってる奴自体を殺さねーとッ!!」
「佐藤ッ!落ち着くんだお! アイツの動きはせいぜい時速80kmってとこだお
澤村の『バブルガム』なら十分とらえられる速度ッ!!
お前は素粒子の加速に専念して好機を待てばいいお!」
「わ、分かった! 頼むぜ澤村よォ〜……」
「任せろぉ……俺が倒してやるよぉ……」
「スっとろい口調で話してんじゃないわよ! 来るわよッ!!」
女の横を通過した絹井はスタンドを澤村に叩き込もうとする。
「スっとろいってのはよォ〜〜〜このオヤジのことを云うんだぜェ!
『バブルガム』ならこのタイミングでも十分にッ! 泡を出せるッ!」
澤村はバックルをスタンドで殴り、そこかわ泡を発生させた。
その泡がクッションとなり、絹井のスタンド『G・S・T・Q』の攻撃を受け止める。
攻撃を受けた泡は割れること無く、その場所に浮遊し続ける。
- 398 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/13(木) 19:14:44 ID:/sA33MDE0
- 「俺の攻撃をくらいなァ――!!」
敵の少年は真っ黒な煙のように揺らめいている人型のスタンドを出して、絹井に殴りかかる。
しかし、絹井の体は後方に下がって空振りに終わることとなった。
「ふゥ〜……矢印の方向を動かすのって神経削るんだよなァ……」
秀彦は汗を拭ってため息を吐く。
「頑張ってくれ……」
三輪は祈るように戦況を見つめ続ける。
「しかし……あの有嶋秀彦という男の能力……三島の能力に似てるな」
澤村は云う。三島というのは敵の中にいる可愛らしい容姿をした女の名前のようだ。
「そうね……私の『グラン・トゥーリスモ』とよく似てるわ」
またも『ステイアウェイ』で操られた絹井は敵の群れの中に突っ込んで行く。
「フン…私の『G・S・T・Q』の射程は十メートルだ
近ければ近いほどパワーは発揮出来るが、私の能力の性質上問題はない」
上半身だけの一つ目のスタンド、『G・S・T・Q』は地面を移動して行く。
絹井に付けられた矢印は『G・S・T・Q』のほうに移った。
『G・S・T・Q』の繰り出したパンチは少年の足元に当たり、体勢を崩された少年は地面に尻もちをつく。
「クソがッ! ……ケツが地面にくっついちまった」
「ちょこまかとうっとおしいんだお!」ズバッ
マハーカーラは地面を崩すが『G・S・T・Q』は素早く移動して避ける。
今度は三島の元まで移動して拳を向けている。
「『グラン・トゥーリスモ』は既に『スタンド痕』を残しているわ……私の周囲にね」
『G・S・T・Q』は三島の半径二メートルに踏み込んだ瞬間、ぐるぐると回転して彼方まで弾き飛ばされる。
そう、それはまるでスリップしたかのように。
『G・S・T・Q』は矢印の上から外れる。
ダンゴムシとタイヤを組み合わせたような外見の『G・トゥーリスモ』が姿を現して三島の足元で回っていた。
そして、『G・トゥーリスモ』は辺りを高速で移動し始める。
秀彦達がいる場所にまで来るが、何もせず通りすがるだけ。
「マズイ……あのスリップ……俺の能力と似ている……」
秀彦は戦慄する。
- 399 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/13(木) 19:15:01 ID:/sA33MDE0
- 敵の内、三人が『スタンド痕』に乗ってスリップを利用して高速移動してきた。
あっという間に秀彦との距離を縮める。
「シュワシュワシュワアアァァァ―――!!」
『バブルガム』のラッシュを秀彦は『ステイアウェイ』でガードをする。
しかし、パワーで圧倒され、ガードを弾かれて『ステイアウェイ』は全身に攻撃を受ける。
スタンドへの攻撃は本体にフォードバックし、秀彦は血反吐を吐いて地面にうずくまった。
「弱いなぁぁ……自分じゃ何も出来ないのかぁい?」
「違うな……あえて食らってやったんだよ……スタンドの腕を見なッ!」
「何だと……これは矢印ィィィ――!!」
矢印を付けられた『バブルガム』の腕は本体の意思を無視して本体の顔を殴りつける。
『ステイアウェイ』の能力だった。秀彦は矢印を付けるためにわざと攻撃を食らったと云うわけだ。
「ぐ……ぐわあああああああああああ」メリメリメリメリメリィィィ…
グッシャアアアアアァァァァ
澤村の頭蓋骨は自らのスタンドによって砕かれ、脳漿をぶち撒ける。
ボトボトと頭の内容物が地面に落ちていく。
「うひゃぁ……おぞましいッ! だけどよく倒したよッ!
これは確実に未来と変わっているッ!」
「三輪さん……俺はそうは思わない……確かに既に二人倒した……
だが、まだ何も安心出来る気がしないッ!」
「それは勘かい? まあこのまま楽に勝てるとは思わないが……」
」」 」」 」」 」」
__ | __ | __ | __ |
| | | | _| _| _|
___| ___| ___| ___|
「何か来るッ!!」
秀彦の直感は的中していた。
遠方で素粒子を加速させていた帽子の男の周りが強力な光を放っていた。
メタリックで無機質なスタンドを囲うリング状の物、そこからは離れてても肌で感じ取れるほどのエネルギーがほとばしっていた。
.. /⌒i /`l _ ,、
_,,..、 .| / ,..-、 ,、. l |/ 〉 .〈 .| ,.-、
l l | /´ l,、_ノ ,l | l |レ' _,,」 .`'´ 〉 _,,..、 ,..、
| i' '´_,,、 ,! L.-ヾ=,' l、_,.. 、 「Zノ ヽ `ー、 / ア
.| し''´ 」 _,.-'´ _, - '_´ ゙l_,〉 ヽ、 'l / /
.| ,,.-''´ (_,.- '´| L-'´ _) `ー',/ /
| .| ,.-'´ ,.-'" / /´
..l、_ノ {,.- '´| | 「 /
|,i `''"
- 400 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/13(木) 19:15:23 ID:/sA33MDE0
- その強力なエネルギーが弾となって発射された。
エネルギー弾は秀彦達のいる方向で突き進んで行く。
敵達は既に予測していたようでとっくに離れていた。
エネルギー弾が通る真下の地面は触れてもいないのにめくれていて、その威力が伺い知れた。
直径一メートル程のエネルギー弾が秀彦と数メートルの距離まで迫る。
「無理だ……もう避けられないッ!!」
秀彦は光の目の前で絶望する。『どうしようもない』とはこういう状況なのかと。
「いや……諦めるのはまだ早いな」
三輪はドンッと秀彦を突き飛ばす。
「何てことをッ! 三輪さんッッッ!!」
「君には希望がある。未来を変えるのはスタンドなんかじゃなく人間の強い意志だッ!
僕は君を信じているよ……!!」ブワアアアァァァ
三輪の体は眩い光に包まれる。
あまりの光量で目も開けられない。
「う、くうゥ……」
次第に光が霧散していき、秀彦は目を開ける。
「あ……ああ……跡形も……」
つい先程までそこにいた三輪の姿は無く、削れた地面だけがあった。
「ハッ……ハァッ……」
目に涙を浮かべ、平静を保てなくなった秀彦は呼吸を乱す。
そんな姿を見た絹井は慌てて駆け寄る。
「秀彦君ッ! 奴らが近づいてくるぞッ!
三輪の犠牲を無駄にする気か!?」
「わかってます……でもッ! 俺のせいだ……俺のせいでッ!」
絹井は秀彦の肩を掴む。
「彼が突き飛ばしていなかったら二人とも死んでいた……違うか?
もう君はこの世界の命運を握ってる存在なんだよ
覚悟をしたと云っていたのは嘘か?」
そう云われた秀彦は目を瞑ったまま暫く沈黙する。
大事な家族の存在を思い出す。
- 401 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/13(木) 19:15:46 ID:/sA33MDE0
- 「ええ……おかげで落ち着きました……
絹井さん数秒でいいので時間稼ぎして貰えませんか?」
「それは構わないが……何をするつもりだ?」
「まあ……任せて下さい」
/´〉,、 | ̄|rヘ
l、 ̄ ̄了〈_ノ<_/(^ーヵ L__」L/ ∧ /~7 /)
二コ ,| r三'_」 r--、 (/ /二~|/_/∠/
/__」 _,,,ニコ〈 〈〉 / ̄ 」 /^ヽ、 /〉
'´ (__,,,-ー'' ~~ ̄ ャー-、フ /´く//>
`ー-、__,|
マハーカーラと三島の二人が絹井と対峙する。
一人は次のエネルギー弾のために素粒子を加速させるために動けず、もう一人の少年は絹井に地面とくっつけられたせいで動けなかった。
長髪の男は公園の一番端に立っており、静観していた。
「たった一人で俺達をどうにか出来るとでも思ってるのかお?
あいつはどこに走って行ってるんだお!?」
マハーカーラはその顔から感情が読み取れないが、声は怒りに満ちていた。
今までこれほどまで任務に手間取ったことがないからだ。
既に二人の犠牲者を出しているのは完璧を求める彼にとっては腹立たしいことだった。
「そうだな……お前らみたいなゴミクズ程度なら私だけで十分かもしれん」
絹井は逆撫でさせるように挑発する。
「マハーカーラ様ッ! こいつは大したことありませんッ! 私目におまかせを!!」ダッ
三島は『G・トゥーリスモ』を出して飛びかかる。
だが、次の瞬間――
敵が乗っていたトラックが突っ込んできた。
時速80kmで公園内を横断するそれは三島とマハーカーラにぶつかって行く。
鍵も無いのに何故トラックを動かすことが出来たか?
それは、『ステイアウェイ』で矢印をトラックのタイヤに貼りつけたからだ。
大きい面積の物体に貼り付けることは出来ないが、四つのタイヤの貼り付けることなら容易かった。
しかし、その重過ぎる質量を動かしたおかげで秀彦は精神的に疲弊しきった。
「やったぜ……」
トラックの運転席に座っている秀彦は絹井に向けてガッツポーズをする。
「よくやった……ん!? これは……!?」
絹井はすぐに異変に気付いた。
三島の死体は転がっていたが、マハーカーラの姿は無かった。
- 402 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/13(木) 19:16:34 ID:/sA33MDE0
- 「ここだおッ!」
マハーカーラは自らの体を崩してタイヤとタイヤの間をすり抜けていた。
故にノーダメージ。
車体の下から崩して内部に侵入していく。
秀彦は慌てて出ようとするが、マハーカーラのほうが先に動いていた。
ヌッと手が出てきて秀彦の体を掴む。
「崩せるのは物体だけじゃない……精神だって可能だおッ!」
「うわああああああああああああ」
秀彦は絶叫する。
ガタガタと震えながら手で頭を抱えて怯え始める。
「お前の精神は崩壊したお……これでトドメだおッ!!」
「……あれ? 手が動かないお!? 何故だおッ!!」
「だおだお五月蝿ェーんだよッ! この被り物野郎がッ!!」
車の外からスタンドの腕だけが中に出てきてマハーカーラの腕を押さえつけていた。
「そこにいるのは誰だおォォォ――!?」
もう片方の腕でドアを開けようとした刹那、マハーカーラは外に出ていた。
「な、なんだおッ!? さっきまで車の中にいたのに何故外に――」
「俺の『デッド・エンド』の能力で位置を入れ替えたのさ……」
_ r'^>/^ゝ r-、 ,、 _ r'^>/^ゝ r-、 ,、
| `l / // / / / く ヽ | `l / // / / / く ヽ
'! Lニ_`'' 「`L_ 'ー-' `ー'' '! Lニ_`'' 「`L_ 'ー-' `ー''
'! ,、_7 i ``゙''ー、 .'! ,、_7 i ``゙''ー、
1 | | l` ̄`'' 1 | | l` ̄`''
i_」 'L_」 i_」 'L_」
能力から解放された秀彦は横にいる男の姿に気が付く。
「京輔ッ!!」
「たまたまよォ〜通りすがってみたらお前がいるもんだから驚いたぜ
今度飯でも奢れよッ!」
マハーカーラは危機的状況に陥ったことが少ないせいか、慌てふためいていた。
「な、何だお……前に何かが当たって進めないお!
……ン? ……だ、誰だこいつゥゥゥ」
- 403 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/13(木) 19:16:52 ID:/sA33MDE0
- 「一つ宣言しとくぜ……今から俺はお前を殴るッ!!」
「ひいいいいいいいいい」
「ファァァァイイイィィィユウウウゥゥゥアアアァァァァァ―――――!!!」
怒声にも似た掛け声と共に拳を縦横無尽に繰り出す。
手数が数えきれないほどのラッシュが叩き込まれる。
スタンドの動きは本体と連動しており、本体も同様の動きをしている。
全身に攻撃を受けたマハーカーラの黒いスーツは壊れて生身が露出したまま数百メートル先の道路までぶっ飛んで行った。
そして、通りすがった車に跳ねられてお陀仏となった。
「素顔は中々にイケメンだったな……残念な奴だ」
男はそう呟いた。
「圭吾ォ――!!」
秀彦が男の名前を呼びながら駆け付ける。
「ム?」
「何でお前までいるんだよ?!」
「いや……たまたまだわ
散歩に出かけてたまたま公園を通ろうとしただけ
それよりこっちがぶったまげたっつーの!」
「まあ助けてくれてありがとな……だが、まだ終わっちゃいない」
「俺一人に任せてくれてもいいんだぜ〜
最近喧嘩してねぇから疼いてたしよォ〜」
「あの左奥にいるロン毛の男は俺に任せてくれ……
後右にいる帽子の男は気をつけろ」
「ン……分かった! ブッ倒してくるぜェェェ」ドタドタ
「俺も付いて行くか」
圭吾と京輔は三十メートル先にいる男の元へ向かって直進する。
「バカめ……突っ込んできやがったッ!!
『フラッシュ・ゴードン』ッ! エネルギー弾発射ァァァ――!」
恐ろしい速度でエネルギー弾が飛んでいく。
この近距離ではおよそ避けるのは困難だろう。
「やれやれ……俺がついていてよかったな圭吾
DEAD END(行き止まり)!」シュンッ
- 404 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/13(木) 19:17:07 ID:/sA33MDE0
- 「クハハハ!! 死にさらせカスどもがァ―――……あへ?」
『デッド・エンド』と位置を入れ替えられた男はエネルギー弾の前に立っていた。
「えっ……嘘ッ!! ちょっ……待っ――」
「自らの攻撃で自らを殺す……最高の自殺だな」
京輔は口元を釣りあげてほくそ笑む。
「うぎゃあああああああああああ」ジュウゥアアア
自らが放ったエネルギー弾で自らを消すという結末。
男が被っていた帽子だけがヒラヒラと舞って風に流されて飛んで行った。
「さて……そこに座ってるガキをやっつけるか……」
圭吾は絹井によって地面にくっつけられたままの少年に目を向ける。
「か、勘弁してェェェ〜〜〜! 俺は命令されてただけなんだよォォォ〜〜〜!!」
「知らねーな。俺は考えることが嫌いなんだよッ! とりあえず殴るッ!!」
「うおああああああああああああ」ボゴボゴッ
「お、おい……その辺にしとかないと死んでしまうぞ……」
京輔が制止させる。
「おおっと……ワリワリ」
「後で尋問なりするだろうから半殺しにしとけよ」
- 405 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/13(木) 19:19:28 ID:/sA33MDE0
- ここまでです
何でまだ終わらないんだ…
- 406 : ◆9X/4VfPGr6:2010/05/14(金) 08:47:01 ID:WyN5q.CEO
- 乙!
タクマァァァァァァァアッ!
- 407 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/15(土) 15:18:49 ID:???0
- タブーをおかしてみたいけどU2は健全な作品(理想)を目指してるからやれないなぁ
何ていうかキャラに裏切りをさせてみたいんだよなぁ
敵組織に寝返るみたいな
>>406
どもです!ちょっとだけ活躍させる予定
- 408 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/16(日) 13:42:28 ID:M/rY0ayc0
- 投下開始ィィィ――!!
- 409 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/16(日) 13:43:10 ID:M/rY0ayc0
- 所変わって長髪の男と対峙する秀彦。
「逃しゃしねーよ」
男の前に対峙してジリジリと距離を縮めて行く。
「ククク……誰が逃げるって? 逆だよ逆……
お前らは絶対に逃がして帰さないッ! ここで消えてもらうッ!!」
「何を企んでいる?」
「俺のスタンドは戦闘向きじゃない。つまりお前と殺り合えば十中八九俺が負けるだろう
だがな……戦いってのはスタンドだけじゃっないてわけだ」
不気味な笑みを浮かべて男を云った。
「仲間が負ければこうすると決めていた……」ニヤ
男はズボンのポケットからリモコンのような物を取り出して握る。
「トラックに爆薬を仕込んでいたッ! 俺と共に死んでもらおうッ!!」
「なんだとォォォ―――!!?」
(こいつ……本気で云っているのか!?
この目……嘘をついてる目じゃねぇ……だとすると)
秀彦は『ステイアウェイ』を出して男に殴りかかる。
加速されたパンチはこの至近距離では避けることは出来ず、男は後方へ吹き飛ばされた。
吹き飛ばされた衝撃でリモコンを手から離して。
「やれやれ……だが、これでどうやら助かったようだな」
「フハハハハー!! ここまで思い通りに行くと……気持ちがいいッ!!」
「まだそんな大声を出す元気があったか……
お前には尋問してやっからよォ〜……殺しはしないが、もう少し痛みつける必要がありそうだな」
「クックック……これを見な」チラ
男は握り締めていた拳を開いた。
「もう一つ……あったのかッ! いや……さっきのは偽物ッ!?」
「その通りだ……バカめが!!」カチリ
「しまっ――」
「『ヴェーダ』に栄光あれッ!!」
グッバオン!
瞬間、眩い光に包まれた後、爆音と共に公園一帯は吹き飛ぶ。
渦巻く様々な感情は爆弾と共に無に帰すのだった。
**
『リンキン・パーク』のパンチを避ける体力の無いタクマは真正面で受ける。
咄嗟にスタンドの腕でガードしたおかげで蹌踉めく程度で済んだ。
相手のパワーは弱かったが、このまま受け続ければいずれ死ぬとタクマは考える。
- 410 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/16(日) 13:43:34 ID:M/rY0ayc0
- (このままなら殺されてしまう……ならば使うしか無いな)
「しぶてェ――なァァァ―――!! 死にぞこないがよォォォ〜〜〜!!」
ドカッドカッ
「悪いなアンタ……最悪殺してしまうかもしれん」
「ハハッ……殺す? 冗談にしちゃ笑えないんだけど」
しかし、それは苦しまぎれで云った言葉ではないということはタクマの表情が物語っていた。
タクマの顔を見た大和は沈黙する。
「いざという時のために持って来てた動物の死骸を使うときが来るとはな……」
そう云うと『S・F・U』の棺桶の蓋を開ける。
棺桶の中からゴロゴロと床に動物の死骸がこぼれ出てきて散乱する。
「『シックス・フィート・アンダー』ッ!!」
『S・F・U』は十字架型の六つの槍がついた武器を動物の死骸に突き刺した。
「小動物だと小さいからなァ〜……持って二分程度ってとこか……」
『グォォオオォォオオォ……』
『ゲギョギョォォオオン……』
鳥や猫、犬、狸などの動物の死骸が起き上がり、吠え始める。
ギョロギョロと辺りを見回してターゲットを発見したようだ。
「やれッ! ゾンビどもッ!!」
『グァアアアアァアアアアア――!!』
「何だッ!! 噛み付いてきやがったァァァ――!!」
大和の服の袖にゾンビ犬が噛み付いてしがみつく。
そして、他のゾンビどもが取り囲む。
「ほォ……この土壇場で形勢を逆転するとはッ! 面白くなってきたわい!」
影現斎は高みの見物といった様子で戦況を見守る。
「次はお前らの番だからな……首を洗って待ってろよッ!!」
「フォッフォッフォ……楽しみにしとるよォ」
「クッ……!」
ゾンビ犬に腕を噛まれた大和はガクッと膝を地に着ける。
- 411 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/16(日) 13:44:03 ID:M/rY0ayc0
- 「フン……ゾンビの前じゃ人間など無力のようだな」
「いいや、違うなッ!」
大和は『リンキン・パーク』でゾンビ達を殴って床に蝶番で固定をした。
固定されたゾンビ動物達は身動きが取れずにのた打ち回る。
「なんだとォォォ――!?」
「腕をやられた分はしっかりお返ししてやらないとなァァァ〜〜〜??
覚悟はいいかッ!!」
大和は『リンキン・パーク』で『S・F・U』の槍を拾い上げてタクマの胸の上から振り下ろす。
(俺はここで死ぬのか……!!)
目を瞑り、死を覚悟したタクマであったが、数秒経っても意識が失われることはなかった。
目を開いて見ると大和は気絶して床に倒れていた。
「これは一体……」
タクマは大和の体を凝視するが、何故こうなったのか見当もつかなかった。
「ムゥ……威羅の奴しくじりおったか……」
「そのようですね。しかし、彼なら組織を裏切ることは考えられないので心配はないでしょう」
敵の会話からタクマもそれとなく状況を理解する。
「こいつらを洗脳してたスタンド使いが死んだってことか
秀彦さんの勝ちだッ! 後は俺がこいつらを倒すだけ……」
出血がおさまりそうになかったが、ここぞとばかりに気力を振り絞って眼前の敵を睨みつける。
「よもやこの五人が倒されることになるとはのォ……褒めてつかわそう
だが……」
「な……!?」
「これでお終いじゃ」チャカ
胸倉から拳銃を抜き出してタクマのほうへ向ける。
「その傷でこの至近距離なら確実に避けることは不可能だのうて」
タクマは近くに落ちていた『S・F・U』の武器を拾い上げる。
「そんなもの拾ったところで無駄じゃよッ!!」
銃口から撃ち出される鉛の弾がタクマの胸部を撃ち抜く。
「がはッ……」
タクマは口から大量の血を吐いて壁にもたれ掛かる。
- 412 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/16(日) 13:44:58 ID:M/rY0ayc0
- 「フフ……お疲れ様。被験体No,001」
四條をそう言葉を発した直後、全身に衝撃が走る。
胸から腹にかけて槍が三本刺さっていた。
「こ、これはッ!!」
「最後の切り札……十字架から槍を飛ばせるんだぜ……
お前だけは許さねぇ……無責任に……俺達を作っては……捨てやがって……
……お前は……お前だけは……道連れに……して……やる……」
「てめェェェ―――!! 薄気味悪いクソガキがァァァ―――!!」
(祐介……どうやら俺もダメみたいだ……)
四條は自らの拳銃を取り出してタクマを何度も撃ちつける。
タクマは壁にもたれかかったまま動くことは無かった。
「ハァ――ハァ――……傷は深いが……致命傷にはならなかったようだ……」
だが、安堵する暇もなく、カランカランと金属が転がる音がする。
音がするのはタクマのほうからだった。
「何だ!?」
四條が振り返るとタクマの体の中からスタンドの腕が出てきていた。
(まさか……あれが銃弾を全て掴んだということか……!?)
/´〉,、 | ̄|rヘ
l、 ̄ ̄了〈_ノ<_/(^ーヵ L__」L/ ∧ /~7 /)
二コ ,| r三'_」 r--、 (/ /二~|/_/∠/
/__」 _,,,ニコ〈 〈〉 / ̄ 」 /^ヽ、 /〉
'´ (__,,,-ー'' ~~ ̄ ャー-、フ /´く//>
`ー-、__,| ''
「……!」ハッ
四條が気配を感じ、左のほうを見ると一人の少年が立っていた。
「有嶋……祐介……!!」
眼光鋭い表情の祐介が佇んでいた。
- 413 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/16(日) 13:45:28 ID:M/rY0ayc0
- 「殺す」
脅しとも取れない殺気じみた言葉を浴びせる。
「ひィ……く、来るな!」
四條は動揺して思わず退いてしまう。
「殺す」
なおを浴びせられる殺意。
「うぐ……」
「殺す」
「ハァ……フゥ……」
四條は呼吸を整えて冷静を取り戻そうとする。
「殺す」
「ハ……! 『ノートン』ッ! こいつにウイルスを注射しろォォォ――!!」
しかし、『ノートン』の攻撃は失敗に終わる。
祐介の『U2』が先読みしていたのか、攻撃をしようとした瞬間に腕をへし折っていた。
「ぎゃあああァァァァァ―――――!!」ベギボギ
「殺すッ!! ボォーノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノォォォ―――ジ・エッジ!!」
.. /⌒i /`l _ ,、
_,,..、 .| / ,..-、 ,、. l |/ 〉 .〈 .| ,.-、
l l | /´ l,、_ノ ,l | l |レ' _,,」 .`'´ 〉 _,,..、 ,..、
| i' '´_,,、 ,! L.-ヾ=,' l、_,.. 、 「Zノ ヽ `ー、 / ア
.| し''´ 」 _,.-'´ _, - '_´ ゙l_,〉 ヽ、 'l / /
.| ,,.-''´ (_,.- '´| L-'´ _) `ー',/ /
| .| ,.-'´ ,.-'" / /´
..l、_ノ {,.- '´| | 「 /
|,i `''"
「ぎょわああああああああああああああああああ」
ラッシュを全身に叩きつけられた四條は服が肉にめり込んで裂けていく。
『U2』は服を重くしたのだった。
最後はグチャグチャに押し潰され真っ赤な肉のミンチへと変貌を遂げた。
祐介は四條の死を確認すると影現斎のほうへ視線を移す。
- 414 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/16(日) 13:45:57 ID:M/rY0ayc0
- 「おぞましいのォ〜……高校生がやる所業かのォ〜……」
「コロス」
目を見開いて殺気を飛ばす。
もはや祐介に理性は無かった。
「……ここは逃げるとするわいッ!!」ダッ
距離を取るが、ぐんぐんと『U2』が接近していく。
祐介との距離を五メートル、十メートルと離してるにも関わらず。
「こやつスタンドが暴走しとるッ!!」
廊下を走る影現斎は後ろを振り返って姿を確認する。
_ r'^>/^ゝ r-、 ,、 _ r'^>/^ゝ r-、 ,、
| `l / // / / / く ヽ | `l / // / / / く ヽ
'! Lニ_`'' 「`L_ 'ー-' `ー'' '! Lニ_`'' 「`L_ 'ー-' `ー''
'! ,、_7 i ``゙''ー、 .'! ,、_7 i ``゙''ー、
1 | | l` ̄`'' 1 | | l` ̄`''
i_」 'L_」 i_」 'L_」
「か、体が重いッ!! 周りの物も壊れていきよるッ!! これは重力ッ!?」
ガラガラ……ブンブン……
「空間が……重力で歪むゥゥゥゥゥ―――!!!」
あたりの映像がグニャグニャと歪み始める。
『U2:Rattle and Hum(魂の叫び)』
『U2』が影現斎に接近して云った。
『U2』は拳を彼の顔面に当てる。
「やめるんじゃァァァァ―――――!!!」
『ラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリィィィ―――ジ・エッジ!!』
「うごあああああああああああああああああああああ」ブッシャァァア
影現斎の体はバラバラに崩壊し、肉片となって床にぶちまけられる。
『罪ノ重サ知レ……』
影現斎を倒した後、『U2』は祐介の元へ向かう。
- 415 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/16(日) 13:46:23 ID:M/rY0ayc0
- 祐介は理性を取り戻して事態を把握していた。
「ユキは……雪華ちゃんだったのか……
何で今まで気付かなかったのだろう……」
辺りを見回す。
「皆ごめん……俺のせいで……」
『諦メルノハマダ早イ……』
「『U2』…!? 何で独りでに歩いてるんだッ?!」
祐介は疑問を抱くが、構わず『U2』は続ける。
『ケガノ重サヲ取リ除ク……ソレガ可能ダカラダ』
「なんだって……?」
『U2』は雪華が横たわる場所まで移動し、拳を体に当てた。
すると、みるみる雪華の傷は無くなっていった。
同様にタクマやクラスメイトの体も治していく。
「俺にこんな能力が……!?」
『完了シタ……ユウスケ……サヨナラダ』
『U2』の体は次第に朧げとなり、空虚に溶け込んでいく。
**
あれから五日が経った。
結論から云うと皆無事だった。
兄貴や京輔さん達は爆発に巻き込まれて重症だったが、何とか生きていてすぐに白河さんのいる病院まで運ばれた。
白河さんのスタンドで治してもらったから後数日もすれば退院出来るそうだ。
あの教室にいたタクマや雪華ちゃん、鉄也達は暴走した『U2』の能力で無事元通りになっていた。
鉄也達は戦っていた間の記憶が無いらしく、スタンド能力が手に入ったことを素直に喜んでいたみたいで……。
久坂さんが事情を説明して『ラムダ』に入らないかと勧誘したら二つ返事でOKを出した。
他のクラスメイト達は労働させるために殺さずに体育館内で監禁されていたらしい。
こんな事件があった直後ということもあり学校は一刻の間は休校するという措置が取られた。
え? 俺が今どこにいるかって?
- 416 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/16(日) 13:46:41 ID:M/rY0ayc0
- ………
「ねぇ、祐介。私これ食べたい」
雪華ちゃんはメニュー表を見ながらスイーツ(笑)を指さして云う。
普段学校では見せることの無い笑顔、と云っても本当に僅かな表情の変化。
「じゃあ俺もそれ頼もうかな」
俺はあれ以来、雪華ちゃんと打ち明けて急速に仲良くなった。
今じゃ一緒にファミレスへ行くほどだ。
「あーじゃあ俺はカツ丼な祐介!」
「俺は和風ハンバーグ!」
「俺はピザだ!」
「俺はドリアで!」
「私はグラタンかな!」
「私はカルボナーラがいいな」
「私はチキンカツカレー一択!」
「お前らいっぺんに喋るなッ!……やれやれ」
二人っきりだったらどんなによかったことか。
俺らの動向を嗅ぎつけてタクマ、鉄也、一馬、大和、楓、古森さん、結城の七人が俺達と一緒に来るということになった。
「俺達は巻き込まれたんだからな? 飯ぐらい奢れよ!」
本当は記憶も無い癖に……とは思ったが云わない事にした。
兄貴から貰ったばかりのお小遣いはこの支払いで綺麗さっぱり無くなりそうだ。トホホ。
でも、雪華ちゃんが今まで見たことないくらい楽しそうにしていたから「まあいいか」と思うことにした。
/l___________
< To Be Continued・・・ ||_//][]
\l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
- 417 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/16(日) 13:56:34 ID:M/rY0ayc0
- 新規登場スタンド
・鍛冶 鉄也
No.1731
【スタンド名】リンゴ・スター
・原田 大和
No.991
【スタンド名】リンキン・ パーク
・長瀬 一馬
No.915
【スタンド名】ブレイズ・オブ・グローリー
・古森 芹香
No.898
【スタンド名】カルタ・マリナ
・結城 未早
No.1081
【スタンド名】オリヴァ・ツウィスト
・威羅 万智御
No.150
【スタンド名】マザー・ファーザー・シスター・アンド・ブラザー
・マハーカーラ
No.2287
【スタンド名】タワーオブバビロン
・四條 茂
No.1697
【スタンド名】ノートン
・影現斎
No.1529
【スタンド名】エイボンの書
・ガネーシャ一番隊
No.1473
【スタンド名】バブルガム
No.1852
【スタンド名】 フラッシュ・ゴードン
No.1901
【スタンド名】グラン・トゥーリスモ
No.1940
【スタンド名】アスファルト・ジャングル
No.1730
【スタンド名】クロード・レインズ
- 418 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/16(日) 14:06:22 ID:M/rY0ayc0
- 感想
とりあえず苦しかったです…もうそれだけです
特に中盤の秀彦が戦うところとかね…本当に辛かったw
安価で選ばせてもらったのに申し訳なかったw
クラスメイトのスタンドはクッキーさん率高いなぁとか思ったり…
好きなスタンドばっかり集めたのはいいけど実はそんなに強くなかったという
特にカルタ・マリナwどうしたらいいのか分からなくて早々とフェードアウトさせました…
終盤の祐介・U2が敵をボコるところは結構ノリノリで書けましたけどね
『U2:Rattle and Hum(魂の叫び)』はレクイエムじゃなくて進化というか暴走しただけです
最後で祐介が完全にリア充化してしまったけど…どうしようw
多分あと5話くらいで終わりそう
- 419 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/16(日) 15:48:27 ID:???0
- 素で忘れてたw
>>417
STR
・絹井
No.137
【スタンド名】God save the queen(ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン)
・三輪
No.384
【スタンド名】ミスター・ロストマン
- 420 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/16(日) 15:57:15 ID:???0
- まだもう一体いたwww
No.733
【スタンド名】トゥーマッチ・ラブ・ヒューマン
- 421 : ◆6JEWITNnHo:2010/05/16(日) 16:58:58 ID:.CkpULtM0
- 乙です。
暴走U2チートすぎるww
そしてリア充は爆発しろ
ヴェーダを倒してからなッ!
- 422 :名無しのスタンド使い:2010/05/16(日) 17:41:15 ID:???0
- 乙!
怪我の重さをなくすとか予想外すぎて驚いたww
その気になればなんでもできちゃいそうなコミュニケーションといい恐ろしすぎるww
古森ちゃんは自案だけど、確かに使いにくいね 申し訳ない・・・
タスクみたいにヴィジョンに象徴的意味しかないから殴る蹴るさせられないし、場所状況選ぶし
- 423 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/16(日) 19:39:33 ID:???0
- 急いでたので書き忘れましたが、スタンドを使わさせて頂きありがとうございました
それにしても自分でも引いちゃうくらいスタンド使い登場してるな…これ完結する頃には三桁行くんじゃw
>>421
正直このオチの付け方はどうかとも思ったけど…これしかなかったんです
ここで『ラムダ』の仲間が来て治してくれるというのは避けたかったし、死亡してから時間が経ちすぎるとさすがに死んじゃうしw
レクイエム化も微妙なので暴走させるという選択を取らせました…仲間まで治しちゃうのは強引にも程がありましたがw
『凄味』で何とかしたということで勘弁してくださいw
祐介にはヴェーダを倒した後に爆発してもらいましょうかw
>>422
コミュブレの便利屋具合は異常w
気を遣わせてこちらこそ申し訳ありませんでした…
カルタ・マリナは好きなんですけどね
せめて出せる水量の上限に縛りが無かったら…w
本体が好みなのであまり傷付けずにフェードアウト出来て逆によかったかなと思います
- 424 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/16(日) 19:48:16 ID:???0
- あと某SS様が使ってた擬音AAを無許可にパクってすみません…
- 425 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/16(日) 20:01:08 ID:???0
- U2が終わったら悪い奴が主人公のSSを書きたいな
- 426 : ◆9X/4VfPGr6:2010/05/16(日) 21:01:45 ID:iMSOQ9RQ0
- 乙!
>>425
なにそれ期待
- 427 : ◆U4eKfayJzA:2010/05/18(火) 08:25:31 ID:2WCkpYKw0
- 感想遅れてすんません……
U2のチートぶりは予想してなかったw
ってか、本当になんで今までユキの正体に気付けなかったのか小一時間問い詰めてみたい。
乙でした。
- 428 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/20(木) 00:32:06 ID:aNhAzuIA0
- >>426
いつになるんだかって話ですけどねw
>>427
どもです〜
U2は正直やっちゃった感が否めませんね
ユキの正体に気づけなかったのは、普段雪華が無口なのと、変装時に声を変えてたからです
後髪型を変えてたり顔を隠してたりしてたから…まあ祐介は鈍感でしょうね
- 429 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/28(金) 18:32:59 ID:SLa.cVbE0
- 途中だけど投下しちゃおう
- 430 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/28(金) 18:33:17 ID:SLa.cVbE0
- 第八章「おーい磯野、野球しようぜ!」
――2010年2月27日土曜 Y県Y市内 悪門荘
空という名の天井は一面が青に染まっていた。
まだ2月だが日当たりがいいので寒さはあまり感じない。
俺はガラガラと窓を開けて深呼吸する。
「すぅぅぅぅぅぅはぁぁぁぁぁ」
澄んだ空気を体いっぱいに吸い込んで眠気を拭い去る。
ガチャっとドアが開いた音が玄関から聴こえてきた。
「タクマ最近いないけど……一体どこをほっつき歩いてんだ?」
昨日から出かけていなかったタクマに訊く。
「出稼ぎさ……俺だって金は欲しいからな」
「何やって稼いだんだ?」
「スタンドを使って手品とかやってんだけど全然儲からないんだよな
一週間やってたったの3Kだぜ」
タクマは布巾着を開けて小銭を見せびらかす。
「そりゃ難儀だな……俺もここんところ散財しまくってるせいで一文無しだ……」
とぅおるるるるるるるるるる
携帯が鳴ったので出ることにする。
『もしもしィ〜ユーツーちゃん! 今日暇? 遊び行かね?』
朝っぱらからハイテンションなカズマからだった。
あまりにも声が大きいため思わず携帯を耳から離す。
「いやァ〜それが……困ったことに金無くて……」
「ふゥゥ〜ム……一つ眉唾な話があるんだけど聞くか?」
「ん……何?」
「姉貴から聞いた話なんだけど、野球の試合をして勝ったら三十万円くれるチームがあるらしいんだ。姉貴の知り合いがそのチームに入ってるとかでさ
お前野球部だろ? やりたいなら話通してもいいぜ」
- 431 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/28(金) 18:33:36 ID:SLa.cVbE0
- 「マジかよォォォ〜本当ならめちゃくちゃおいしいじゃねーか!」
「その代わり参加費三万いるらしい」
……
世の中そんな旨い話ばかりじゃないよな。
「しかも三十連勝中」
「マジかよ……いや、やるよ! 金は欲しいしな!」
「おう。じゃあ連絡先訊いてくるから適当に頭数揃えとけよ」
「分かった」
カズマとの電話を終えた後、すぐに野球部の仲間に電話をかけた。
「もしもし、有嶋だけど今日――」
「ごめん㍉www彼女とデートするからwwwww」
ちくしょう! 死ね!
気を取り直して別の奴に電話を……
「もしもし――」
「ネトゲするから㍉wwwwww」
俺よりネトゲ優先かよ……
まあ次こそは……三度目の正直!
「も――」
「㍉」
話すら聞いてもらえないとは……!
なんて非道い奴らだ!!
それから何人にも当たってみたが全員から断られるという結果に。
俺は自分の人望の無さに凹んだ。
「そう落ち込むなよ祐介! 俺が出てやるよ」
「た、タクマ様ァ――!!」
「その代わり俺は一銭も出さないし、賞金は分け前貰うからな」
「お、オッケ……ちゃっかりしてるな」
- 432 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/28(金) 18:33:55 ID:SLa.cVbE0
- 野球部員が駄目となると彼らを招集するしかないか……。
――三十分後
「しっかりちゃっかり連絡取ったぜ〜日時は明日だってよ!」
「えらい急だな……」
「それで面子は揃ったわけ?」
「ま…まあな……お前も来るんだぞ」
「ちょ…ええ〜!? 何勝手に俺も入れちゃってんの?」
と云いつつも心の底から嫌がってる風ではなかった。
「どーせ暇なんだろ」
「ま……何だかんだで楽しそうだから行ってあげてもいーぜ
その代わり賞金の一割は貰うからな!」
「出来高制でな
それより今から練習するから悪門荘の裏にある空き地に来てくれ」
「メンドクセーな……汗流したくないんだけど」
若者とか思えない発言だ。
「他の皆にはもう声掛けてんだからカズマも来いよ。じゃな」ピッ
電話を切った俺は急いでジャージに着替える。
「ホラ、タクマも俺のジャージ貸すから着替えて!」
「おお……」
普段スーツばっかり着てるからジャージ姿は違和感ありまくりだった。
「タクマって右利きだよな? 使ってないグラブあるから貸すよ」
グラブを渡すと早速左手に付けて感触を確かめていた。
物珍しそうに見てるので絶対初心者なのだろう。
というかルール知ってるのだろうか……。
――二十分後
悪門荘の裏にある無駄に広い空地に十数人もの人間が集った。
この空き地は悪門荘の大家さんの私有地なので使わせてもらえるのだ。
- 433 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/28(金) 18:34:27 ID:SLa.cVbE0
- 俺が誘って来てくれたのは兄貴、妹、五十嵐さん、吾郎さん、カズマ、ヤマト、鉄也、楓、結城さん、古森さん、そして雪華ちゃんである。
イレギュラーなのが誘っても無いのに来てくれた楓の親父さんこと橘大二郎氏。
「ガハハ! 話は楓から聞いたぞ! ワシが監督をやってやろう!」とノリノリのようだ。
俺やタクマを合わせると十四人。男性陣(監督除く)でも八人だ。
何とか形だけでもチームは作れそうでホッとする。
「それじゃ今から練習をしながら適性を見ますね」
「ういよー」「ほーい」「おけけー」
何とも気の抜けた返事が帰ってくる。
士気を高めなければ。
「まず野球経験のある人挙手」
兄貴、吾郎さん、カズマ、ヤマト、鉄也、楓、大二郎さんが手を挙げる。
カズマやヤマトはリトルリーグに入ってたらしいし、鉄也は中学時代は野球部だった。
楓はスポーツ万能だから野球だって上手いんだろうな。
急造のチームとしてはまずまずの戦力と云ったところか。
「それじゃ……まずは準備運動でもしましょう」
「二人一組作ってー」なんて云ったらタクマが確実に余りかねないのでさすがに自重した。
五分くらいかけて念入りに体をほぐす。
「体も暖まったことだしノックでもやりますか〜」
「おう! ばっちこい!」
鉄也が一人気を吐いてスタンバイしていた。
楓の目の前でイイトコを見せたいのか。
「それじゃ行くぜ!」カキーン
俺は白球を軽く宙に投げて金属バットで打つ。
「こんな球止まって見えるわ!」ドタバタ
バシィ
コロコロ……
「……」
勢い良く捕ろうとしたのはいいが、グラブを弾いてトンネルをするとは……。
鉄也は顔を真赤にして逃げるように俺の前から離れた。
- 434 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/28(金) 18:34:49 ID:SLa.cVbE0
- 「じゃあ私がやるわ!」
楓が颯爽とノックを受けに来た。
「よし、タクマはあそこに立っといてくれ。
楓は球を捕ったらタクマに送球してね」
「オッケー」
「そォい!」カキーン
「よっと!」パシッ
楓は軽快にゴロをさばいてタクマへ綺麗なスローイングで送球をする。
お手本な動きだ。
もはや鉄也の出る幕は無く、萎縮しまくっていた。
そして、守備の練習を終えて大体皆のポジション適性は分かった。
次は打撃を見よう。
昔作ったまま放置してた網のゲージを移動させる。
「俺がトスするからこの網に向かって打って下さい
じゃあまずは兄貴頼む」
「分かった」
そう云うと兄貴はバットを握りしめて今にも打ち出しそうな構えを取る。
俺が優しくトスを出すと――
ガッギャァァァ―――ン
目にも止まらない速さでバットが振り抜かれ、音を置き去りにした。
打球はギャルギャルと網に張り付いたまま回転し続ける。
「すげぇ……こんなバッティング初めて見たッ!」
ヤマトが感嘆の声を漏らす。
一同が兄貴の凄さに驚いてる姿を見て俺も悦に入る。
「いやいや……まだ本調子じゃないよ」
兄貴の場合、冗談ではなく本気だ。
球場でならライナーで柵越え出来るほどのパワーとスイングスピードを持っている。
- 435 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/28(金) 18:35:24 ID:SLa.cVbE0
- ――夕方
ひとしきり練習を終えた俺達は帰路に着くことにした。
泥まみれになったが誰一人不満を漏らさなかった。
練習を通して全員の気持ちを一つにすることが出来たのでよかったと思う。
最初はどうしたものかと思ったけどこれなら勝てるかもしれない!
帰ってすぐに飯を食って風呂に入って就寝。
明日に備えて八時半というお子様も吃驚の時間帯に眠った。
――翌朝
一同はバスに乗り込み、目的地まで行くことにする。
「昨日は眠れた?」
俺は皆に訊く。
「おうよ! 見たい番組も見ないで爆睡だ!!」
明らかにテンションがおかしい鉄也は目の下に隈を作っていた。
寝る間も惜しんでバットを振ったのか、手はアザやマメだらけ。
「これだけの面子が揃えば負ける気がしねーな!」
余裕綽々と云った表情でカズマが豪語する。
「まあ油断禁物だ……どんな奴が相手でもな」
真面目くさった顔で吾郎さんが応える。
「そういう気概でいてもらえたら助かりますよ
さて、スタメン発表したいんですが構いませんね!」
1番 センター 有嶋祐介 (右投左打)
2番 キャッチャー 必賦吾郎 (右投右打)
3番 ピッチャー 原田大和 (左投左打)
4番 ショート 有嶋秀彦 (右投右打)
5番 ライト 長瀬一馬 (右投右打)
6番 レフト 鍛冶鉄也 (左投左打)
7番 サード 五十嵐心太郎 (右投右打)
8番 セカンド 橘楓 (右投左打)
9番 ファースト タクマ (右投右打)
控え 有嶋智恵、古森芹香、結城未早、東雲雪華
監督 橘大二郎
「えー……以上がスタメンです」
- 436 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/28(金) 18:35:39 ID:SLa.cVbE0
- 「ええっ!? 俺がキャッチャー!?」
「ピッチャーとか聞いてねぇよ!! アホ介!」
色々と不満が漏れる。
「経験者の中でキャッチャー出来そうなのは吾郎さんしかいないんですよ……
ヤマトは昔ピッチャーやってて一応変化球投げれるし、左腕だし」
一応説明するが二人は納得のいかないようだった。
「みんな頑張れー! 全力で応援するよ!」ワイワイ
元気いっぱいの未早さんが声をあげる。
「ヒデ兄は全打席ホームランで!」
「無茶いうなよ」
兄貴は智恵の要求に苦笑いで応じた。
そうこうしてる間にバスは目的地に到着した。
何と市民球場を貸切で試合が行われるらしい。
両翼100m、中堅122m、最大収容人数2万人の球場だ。
既に相手チームは到着していて並んで待っていた。
全員がお揃いのユニフォームを着ているが、こっちは統一感皆無で恥ずかしい。
俺は彼らに歩み寄って挨拶をする。
「やぁ。君が祐介君? 名門・那由多高校の野球部員なんだってね
今日はお互い死力を尽くして良い試合をしよう^^」
えらく爽やかな青年が出迎えてくれた。
そして、俺はこの青年に見覚えがある。
二年前、甲子園を沸かせたピッチャーで十年に一人の逸材と云われたほどだった。
名前は確か伊藤啓太。高一までカリフォルニアにいたという帰国子女だ。
大学でも活躍してると聞いたことはあったが、まさかこのチームにいるとは…。
これは雲行きが怪しくなってきたな。
「フン……女まで混ざってるとは…ナメやがって……! どう見ても寄せ集めじゃねーか
ちゃんと金は用意してきてんだろうなァ〜?」
190cm以上ある大柄の男がこちらへ向けてガンを飛ばしてくる。
この男は去年の都市対抗野球で優勝したチームの四番だった中尾とかいう奴だ。
どんだけ豪華なんだよ……このチームは。
「へいへい……ちゃんとありますよ」ジャラ
何年も前からこっそり貯金箱に貯めてきたありったけのお金(全部硬貨)。
何も問題はない、勝てば倍になって戻ってくるんだ。
- 437 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/28(金) 18:36:03 ID:SLa.cVbE0
- 「ちょ、祐介! 恥ずかしいだろォ!!
す、すいませェん……こちらでお願いします」サッ
兄貴が必死の形相で俺の前に出てきて財布から諭吉を三枚取り出した。
相手の奴らがクスクスと笑ってたので途端に恥ずかしいことだと理解出来た。
「それじゃ試合は三十分後の十時から始めたいと思います。練習はご自由に^^」
伊藤さんはそう云った後、踵を返して球場の中へ入っていった。
俺達も続いて中へ入る。
「すっげ……審判までいるぜ」
「今更ビビってんじゃねーよカズマ
さっさとアップしようぜ」
走り込みやらをしてるうちに二十分が経ち、間もなく試合開始の時刻が迫る。
「サインはワシが出す! 今から作るから覚えといてくれよ」
広島カープの帽子を被った楓のオヤジさんがここぞとばかりに監督面をしだした。
まあいないよりはマシか……。
十時になり、両チームはグラウンドに整列して礼をする。
「プレイボール!」
**(こっから三人称視点)
1回表 ☆スターゲイザーズ 0 − 0 那由多ラーメンズ
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ○○○ \◇/
投手:原田大和 打者:小野
「(どうかストライク入りますように……)」シュッ
パァン!
ヤマトが振りかぶって投げた球が吾郎のミットに収まり、乾いた音を鳴らす。
オーバースローの直球は外角低めに決まりストライクとなった。
左打席に立つ小野はバットを振る素振りも見せなかった。
「(球速は130km台前半と云ったところか……低めにさえ集まれば打たれはしないだろう
それにこの球審はストライクゾーンが若干広いようだ
後は変化球だな……)」
キャッチャーの吾郎はヤマトにサインを出す。
- 438 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/28(金) 18:37:22 ID:???0
- とりあえずここまで
続きはまた今度!
ちなみに野球はあんまり詳しくないです
- 439 : ◆U4eKfayJzA:2010/05/28(金) 19:07:53 ID:???0
- 乙です! 今回は、中休みっぽい感じですね。
しかし、相手チーム名がスターゲイザーズとは、文字通りの消える魔球やら、輝く魔球とか、燃える魔球とかが出てきそうですなw
>ちくしょう! 死ね!
安心しろ、祐介。君だって周囲からはそう思われているんだからwww
- 440 :名無しのスタンド使い:2010/05/28(金) 19:30:33 ID:N.Oq.Zlg0
- タwwwwwwイwwwwwwwトwwwwwwwwwルwwwwwwwww
- 441 :名無しのスタンド使い:2010/05/29(土) 03:49:40 ID:???O
- タイトル吹いたwwwwwwww
- 442 :名無しのスタンド使い:2010/05/29(土) 11:48:52 ID:???0
- ICHILOWマダー?
- 443 : ◆70nl7yDs1.:2010/05/29(土) 15:46:13 ID:???0
- >>439
毎回ドカドカ殴ってるだけじゃ飽きてしまうんでたまには気の抜けた話でも
あんまり野球に使えそうな奴がいなくて困ってるんですよねぇ
>安心しろ、祐介。君だって周囲からはそう思われているんだからwww
あえて読者に突っ込ませるように書いたのでその反応は嬉しいですw
祐介爆発しろ!!
>>440-441
どもwww
>>442
ICHILOWのスイングで球場がヤバイw
出すにしてもチートすぎて扱いづらいからなぁ
- 444 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/02(水) 22:42:35 ID:???0
- 予想クイズ
正解してポイントを貯めよう!
Q.ホームランを打つのは?
A.那由多ラーメンズ
B.スターゲイザーズ
C.どっちも打たない
正解者には2点差し上げます
- 445 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/02(水) 22:43:11 ID:???0
- もう一つ追加
D.どっちも打つ
- 446 : ◆6JEWITNnHo:2010/06/05(土) 16:29:24 ID:???0
- ほなCで
- 447 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/06(日) 17:16:20 ID:???0
- >>446
どもです!
これからもちょくちょくクイズを出して10P獲得された人には何かしたいと思います
好きなスタンドを一体登場させる権利とか絵のリクとか
- 448 :名無しのスタンド使い:2010/06/06(日) 22:17:42 ID:???0
- さすが乙1先生は考える事が違うや
Dで
- 449 :名無しのスタンド使い:2010/06/07(月) 01:44:54 ID:???0
- じゃあA
- 450 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/12(土) 14:58:13 ID:ogEuOr3s0
- まだ途中までだけど投下開始です
- 451 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/12(土) 15:00:55 ID:ogEuOr3s0
- キャッチャーの吾郎はヤマトにサインを出す。
「(このサインは……昔唯一得意だったアレか
練習で投げたけど上手くいくかどうか……よし一か八だ!)」シュッ
ヤマトが投げた球はさっきとは打って変わって勢いが無く遅い。
大きく縦に割れるように曲がり、吾郎のミットに収まる。
しかし、ストライクゾーンからは外れ、「ボール」と球審は宣告する。
「(まずまずだな……及第点と云ったところか
このスローカーブで緩急をつければストレートが活きる
次は……)」
吾郎はサインを出し、それを見たヤマトは頷く。
投げた球は速さを維持したまま鋭く大きく左下に曲がり、打者の足元へ落ちて行く。
小野のバットは空を切っていた。
「ストライク・ツー!」
球審は右手を握り、右腕を右斜め前約45度に力強く上げて宣告する。
「よっしゃ! これで2ストライク!」
ヤマトは両手を握りしめて歓喜する。
「(タイミングを狂わせるスローカーブに空振りが取れる高速カーブ……
強打者揃いのこのチーム相手でも通用するかもしれないな
だが、焦りは禁物だ。一球釣り球を投げさせとくか……)」
速球はキャッチャーのミットの位置通りにアウトローに決まる。
「ボール!」
「(ミットをほとんど動かすこと無く要求通りの所に投げれるとは……
大した制球力だ……よし次は……)」
「(このピッチャーの決め球はカーブってとこか……三振を取りに来るならば……)」
小野は一辺の焦りも見せずに冷静に狙い球を絞る。
「うおりゃあ!」シュッ
ヤマトが投じた球はクロス方向に曲がっていき、インローに食い込んでいく。
- 452 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/12(土) 15:01:22 ID:ogEuOr3s0
- 「何!? カーブを予想してたのに……この球はッ!!」
スパァン!
球はミットに収まり乾いた音を鳴らす。
小野が振ったバットは球にかすりもせず空気を振動させるだけとなった。
球審は「ストライク・スリーッ!」と指差しのようなジェスチャーをして宣告する。
「今の球はスライダー!? いや……一瞬浮かび上がったような……これはまさか」
「そう、スラーブ。習得も非常に見易いからカーブが投げれるならスラーブも投げれるんじゃないかと思ってね」
吾郎は小野に答える。
「なるほどね……まあ見切れない球じゃないな。次は必ず打つ」
静かに闘志を燃やしながら彼はベンチに下がっていった。
「(まずはワンナウト……球種が少ないからすぐに攻略されそうだな……
上手くヤマト君をリード出来ればいいが)」
1回表 ☆スターゲイザーズ 0 − 0 那由多ラーメンズ
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ●○○ \◇/
投手:原田 大和(左投) 打者:大石 小太郎(右打)
大石は念入りにバットを数回振ってからバッターボックスに入る。
顔つきから高校生と云った感じだが身長は185cmはあり体つきも引き締まっていた。
眼光鋭くピッチャーのヤマトを睨みつける。
「(うおッ怖ェー! 今にもバットで殴りかかってきそうな顔だぜ!)」
ヤマトは思わず肩を竦めて苦笑いを浮かべる。
「気を引き締め直していくぜ」シュッ
振りかぶって投げた一投目はカーブがすっぽ抜け――
カキィーン
高く抜けた球を打たれ、ライト前に運ばれる。
「ヤベェ……やっちまった……」
ガクッとうなだれて落ち込むヤマトの元に吾郎は慌てて駆け付ける。
- 453 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/12(土) 15:03:35 ID:ogEuOr3s0
- 「球が抜けて甘く入ってしまったな
だが、まともに決まればそう簡単には打たれないんだ
気を取り直していこうヤマト君
打たれたと云ってもまだシングルヒットだしランナーは気にしなくていいさ」
「う、うす」
ヤマトの腰をバンバンと叩いて吾郎は戻っていく。
1回表 ☆スターゲイザーズ 0 − 0 那由多ラーメンズ
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◆
O ●○○ \◇/
投手:原田 大和(左投) 打者:伊藤 啓太(右打)
三番バッターは試合前に出迎えてくれた爽やかな男、ピッチャーの伊藤だ。
ヤマトはロージンバッグを握って手に粉末をつける。
そして、力いっぱい投げたストレートがアウトコースいっぱいに決まり、ストライクとなった。
「(よし……次は……)」
吾郎はサインを出す。
二投目は大きく左側に外れる。いや、わざと外させたのだ。
球をキャッチした吾郎はすぐさま二塁に送球する。
盗塁を試みた一塁走者の大石だったが、二塁上のいるショートの秀彦にタッチされてアウトとなった。
「いやぁ〜……いい肩してますねぇ
ウチの大石君もチームじゃ俊足なほうなんですがね」
打席に立つ伊藤は笑顔を見せながら吾郎のプレーを讃えた。
「……そりゃどうも」
「(よ、よし……吾郎さんが守備で助けてくれたことだし俺も頑張らないと!)」シュッ
斜めに鋭く曲がるスラーブだったが、伊藤はタイミングを合わせてバットを振り抜いた。
ライナー性の二遊間を抜けるセンター返しと思える当たり。
だが――
秀彦は横っ飛びをして強い当たりの打球をダイビングキャッチする。
「うおおおおおお!! ナイス秀彦さんッ!!」
「任せな! 俺のとこに来る球は全て捕ってやるよ」
滅多に見せないドヤ顔で秀彦は云う。
「いやぁ〜頼もしいッス!」
- 454 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/12(土) 15:04:01 ID:ogEuOr3s0
- ――1回の表終了、1回の裏、那由多ラーメンズの攻撃
1回裏 スターゲイザーズ 0 − 0 那由多ラーメンズ☆
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ○○○ \◇/
投手:伊藤 啓太(右投) 打者:有嶋 祐介(左打)
バッターボックスに入った祐介は深々と深呼吸をした。
対戦したことが無い遙か格上のピッチャーと対戦するのだから緊張は強かった。
しかし、それよりも興奮が上回りアドレナリンは全開と云った様相だ。
お互い顔を見合わせた後、伊藤は投球姿勢に入る。
左足を投手板の後方に引き、地面から離して軸足で全体重を支えて腰を捻り、左足で投手版前方を再び付けて踏ん張り、軸足で投手板を蹴り、上手から振り下ろして球をリリースする。
糸を引くような速球が真ん中低めにズバンと決まった。
まるで球がミットに吸い寄せられるようであり、祐介は手も足も出せず立ち尽くす。
「(は、速いッ! 145kmは出てるぞ……!!
しかも、肩や肘が柔らかいのか球の出どころが全く見えなかった……)」
そして、二球目は綺麗に横滑りするスライダーで祐介はインローに入った球を空振りする。
速球と同じような投法なのと130km台の速度なため速球と区別がつきにくかった。
「(クソッ……プロでもこの精度のスライダーは中々観れないっての)」
「(フン。これで三球三振だ)」シュバッ
投じられた球は放物線を描き、シュート気味に祐介から逃げるように外角に落ちていった。
バットは出掛かったが、何とか堪えて止めた。
「ボール!」
「チッ……フォークを見たか」
周りに聞こえない程度に伊藤は呟いた。
ロージンを手で叩いて粉をつける。
両手を振りかぶってストレートを投げつけた。
キンッ
直前でバントの構えに変え、三塁方向に球を転がして一塁へ全力疾走。
サードの 一二三は前進して急いで捕球するが投げても間に合わないと悟って投げるのをやめる。
セーフティバント成功である。
「速ェ……どこのスプリンターだよ……」
ピッチャーの伊藤は呆れ顔で一塁にいる祐介を見つめる。
- 455 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/12(土) 15:04:35 ID:ogEuOr3s0
- 1回裏 スターゲイザーズ 0 − 0 那由多ラーメンズ☆
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◆
O ○○○ \◇/
投手:伊藤 啓太(右投) 打者:必賦 吾郎(右打)
「ふんっ!」カキーン
吾郎は初球のインハイに来た速球を流し打ちしてライト前に運ぶ。
「く、クソォォォ!! 何でこんな雑魚野郎どもにッ!!」
平静を保っていた伊藤の顔面がビキビキと歪んでいく。
「銃弾に比べたら静止してるのと同然さ」
伊藤に聞こえない程度に吾郎は呟く。
だが、ファーストの中尾には聞こえていた。
「えらい余裕ぶってんじゃねーか
まぐれで打ったくらいで調子こいてんじゃねーぞカス」
「……」
吾郎は無言で返した。
1回裏 スターゲイザーズ 0 − 0 那由多ラーメンズ☆
S ○○○ /◆\
B ○○○○ ◇ ◆
O ○○○ \◇/
投手:伊藤 啓太(右投) 打者:原田 大和(左打)
「よっしゃ! 自ら先制点を取ってやる!」
ブオン!
ブオン!
ブオン!
「ストライク・スリー!」
気を吐いてバットを振り回したが、ヤマトの一打席目は三球三振に終わった。
「お…俺だっせぇ……」
1回裏 スターゲイザーズ 0 − 0 那由多ラーメンズ☆
S ○○○ /◆\
B ○○○○ ◇ ◆
O ●○○ \◇/
投手:伊藤 啓太(右投) 打者:有嶋秀彦(右打)
「(左右左右ねぇ……交互に組んでるのか
しかし、この男……何か『ヤバイ』)」
一球目はスライダーを豪快に空振りし、その間に二塁の祐介が三盗を決める。
「(ちょこまかと走りやがって……)」
- 456 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/12(土) 15:05:17 ID:ogEuOr3s0
- 1回裏 スターゲイザーズ 0 − 0 那由多ラーメンズ☆
S ●○○ /◇\
B ○○○○ ◆ ◆
O ●○○ \◇/
投手:伊藤 啓太(右投) 打者:有嶋 秀彦(右打)
「おらァ!」シュバッ
内角低めに投げた速球だったが――
キンッ
秀彦はバントをして三塁側に球を転がした。
「スクイズだとッ!?」
サードは慌てて打球を捕りにいくがグラブを弾いてこぼしてしまう。
その間に祐介はホームベースを踏んでおり、一点が入った。
そして、秀彦は一塁に出塁し、吾郎は二塁に進塁した。
「まずは一点。手堅く頂きましたァン!」
秀彦はガッツポーズを取って喜んだ。
「さすが兄貴だぜ!」
1回裏 スターゲイザーズ 0 − 1 那由多ラーメンズ☆
S ○○○ /◆\
B ○○○○ ◇ ◆
O ●○○ \◇/
投手:伊藤 啓太(右投) 打者:長瀬 一馬(右打)
「やっと俺の出番が回ってきたぜ! ホームラン行くぜオラー」
「え……あれ……」ブオン
「ちょ……まっ」パァン
「うおお……」ズコッ
「ストライク・スリーッ!」
最後はコケながら空振りという恥ずかしい結果だった。
「(よかった……三振俺だけじゃなくて。しかもコケてるし)」
ベンチから試合を観ていたヤマトは内心ホッとしていた。
1回裏 スターゲイザーズ 0 − 1 那由多ラーメンズ☆
S ○○○ /◆\
B ○○○○ ◇ ◆
O ●●○ \◇/
投手:伊藤 啓太(右投) 打者:鍛冶 鉄也(左打)
「えっ! 俺省略!?」
- 457 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/12(土) 15:05:55 ID:ogEuOr3s0
- ――2回表、スターゲイザーズの攻撃
2回表 ☆スターゲイザーズ 0 − 1 那由多ラーメンズ
S ●●○ /◇\
B ●●○○ ◇ ◇
O ○○○ \◇/
投手:原田 大和(左投) 打者:中尾 一浩(左打)
スターゲイザーズの主砲の中尾はファールで粘っていた。
次で10球目の投球となる。
「俺のカーブをくらいやがれッ!!」シュッ
「ヘッ! 来ると思ったぜ!」
カキィーン
白球は宙高々と舞い上がり、外野スタンドへと吸い寄せられていった。
それは今試合初のホームランだった。
「うおっしゃァアア―――!!」
中尾は大声を出しながら両手を上げてダイヤモンドを走っていった。
そして、打たれたヤマトはガクッと膝をつく。
慌てて内野陣が駆け付けて声をかける。
「打たれたのはソロなんだし切り替えていこう」
吾郎の声も届かず俯いたままだった。
「(やれやれ……これじゃもう投げられないな)
じゃあ秀彦君……」
吾郎は秀彦のほうへ視線を向けて云いかけた。
「ん? 何ですか?」
「ピッチャーやってもらえるかな?」
「いやいやいや……! 俺なんかじゃ……」
「またまた謙遜を。現状ヤマト君はもう投げられないし他に出来そうなのは貴方しかいないんだよ」
「……分かったよ。やればいいんだろ」
あまり乗り気ではないもののボールを吾郎から受け取って投げる意志を見せた。
「すいません秀彦さん……俺が不甲斐ないばかりに……」
「落ち込むのは早いよ
君は俺の代わりにショートをやるんだ。そして打って名誉挽回しろ!」
「は、はい!」
元気を取り戻したヤマトは急いで守備位置についた。
そして、秀彦は投球練習を開始する。
- 458 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/12(土) 15:06:35 ID:ogEuOr3s0
- スパァーン
「ん! 中々イイ球来てるよ!」ビュッ
2回表 ☆スターゲイザーズ 1 − 1 那由多ラーメンズ
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ○○○ \◇/
投手:有嶋 秀彦(右投) 打者:大野 篤(左打)
190cm弱もある大柄な男が打席に立つ。
秀彦は振りかぶって一球目を投じる。
スリークォーター気味から投げられた球は若干左方向に曲がり打者のインコースに食い込んだ。
大野はバットを空振りする。
「(これはカットボールッ! 球威も凄いし……こいつ只者じゃないな)」
二球目は外角に外れてボール、三球目も外れてボール。
「(ケッ……何だノーコンかよ。楽勝だな)」
ズバッ!
ボールは縦に落ちて大野のバットは空気を切る。ジャイロ回転が強く若干左方向にも曲がっていた縦スライダーだ。
「ぬゥ……何て落差のある縦スラなんだ……」
そして、外角低めいっぱいに決まったストレートを見逃して三球三振となった。
「(よし……思ったより来てるな
恐らく130km後半くらいだけど球が伸びて速く感じるだろう)」
2回表 ☆スターゲイザーズ 1 − 1 那由多ラーメンズ
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ●○○ \◇/
投手:有嶋 秀彦(右投) 打者:一二三 涼太(右打)
「思わず手が出ちまったぜ」
セカンドゴロでツーアウト。
2回表 ☆スターゲイザーズ 1 − 1 那由多ラーメンズ
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ●●○ \◇/
投手:有嶋 秀彦(右投) 打者:望月 コウ(左打)
「え……女ァ!?」
秀彦は驚愕する。
別に女性の野球選手はそれほど珍しくはないが、男の中に混じってやっていることに驚いたのだ。
「(レフトがやたら小柄でひょろいと思ったらまさか女とはね……だけどまぁ――)」シュッ
「こんなの打てないですぅー!」ブンッ
「(手加減はしないよ!)」シュッ
アウトハイの釣り球を無理に当ててしまい、ピッチャーゴロとなってスリーアウト。
- 459 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/12(土) 15:07:29 ID:ogEuOr3s0
- ――2回裏、那由多ラーメンズの攻撃
2回裏 スターゲイザーズ 1 − 1 那由多ラーメンズ☆
S ●●○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ○○○ \◇/
投手:伊藤 啓太(右投) 打者:五十嵐 心太郎(右打)
「うおー! 当たれーッ!」
スカッ
空振り三振。
2回裏 スターゲイザーズ 1 − 1 那由多ラーメンズ☆
S ●○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ●○○ \◇/
投手:伊藤 啓太(右投) 打者:橘 楓(左打)
「ふへっ!?」
パァン
ど真ん中だった速球を見逃してツーアウト。
「負けず嫌いの血が騒いじゃうわね……大体読めてきたわ!」
アウトローの速球を弾き返し、サード強襲のライナーとなったが捕球されてアウト。
「う〜ん……難しいなぁ……」
「……」イラッ
伊藤はアウトになったとはいえ女に打たれたことが癇に障ったのか苛立ちを表情に出していた。
2回裏 スターゲイザーズ 1 − 1 那由多ラーメンズ☆
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ●●○ \◇/
投手:伊藤 啓太(右投) 打者:タクマ(右打)
「(また変なのが出てきたな……こいつら野球舐めてるだろ)」
「……」スッ
素人丸出しの構えで打席に立つタクマ。
「打てるもんなら打ってみろッ!」シュバッ
左に曲がるスライダーだったが、タクマは振ること無く立ったままだった。
惜しくも外れてボール。
そして、二球目、三球目も外れてノースリーとなった。
「(ハァハァ……何故入らん……こいつ何かやりづらいな)」
結局、フォアボールとなって歩かせることとなる。
- 460 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/12(土) 15:08:33 ID:ogEuOr3s0
- 2回裏 スターゲイザーズ 1 − 1 那由多ラーメンズ☆
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◆
O ●●○ \◇/
投手:伊藤 啓太(右投) 打者:有嶋 祐介(左打)
「(足が速いだけの奴に打たれるほど甘くねーよ!)」シュバッ
鬼気迫る投球を見せて祐介をツーナッシングに追い込む。
「オラッ!」シュバッ
バントの構えをしてすぐに引いて投球を見送った。
際どいところに決まったがボール判定。
「(この俺に揺さぶりをかけるつもりかッ!)」シュバッ
カキーン
祐介は引っ張って打ち、ライト方向に持っていった。
「打ち返しやがった……許さんぞ……」ワナワナ
2回裏 スターゲイザーズ 1 − 1 那由多ラーメンズ☆
S ●●○ /◇\
B ●●●○ ◇ ◆
O ●●○ \◇/
投手:伊藤 啓太(右投) 打者:必賦 吾郎(右打)
ブオォン
「ストライク・スリー!」
吾郎は12球ほど粘ったがスライダーに泳がされて三振となりスリーアウト・チェンジ。
「(ざまぁみろ! 素人どもが俺の球を打てるわけがねーんだよ!)」
――3回表、スターゲイザーズの攻撃
3回表 ☆スターゲイザーズ 1 − 1 那由多ラーメンズ
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ○○○ \◇/
投手:有嶋 秀彦(右投) 打者:加賀美 塁(右打)
妙な髪形をした男が打席に立つ。
「くぁあ! 打てんッ!!」ブォン
豪快なスイングを見せるが、緩急とコーナーを突いた投球の前に空振り三振。
3回表 ☆スターゲイザーズ 1 − 1 那由多ラーメンズ
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ●○○ \◇/
投手:有嶋 秀彦(右投) 打者:アシッド ハウス(左打)
外国人のパワーで豪快に飛ばすもののセンターフライに終わる。
- 461 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/12(土) 15:09:20 ID:ogEuOr3s0
- 3回表 ☆スターゲイザーズ 1 − 1 那由多ラーメンズ
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ●●○ \◇/
投手:有嶋 秀彦(右投) 打者:小野 雄(左打)
「実際に立ってみるとめっちゃ速く感じるぜ!」カキーン
ショートゴロでスリーアウト。
――3回裏、那由多ラーメンズの攻撃
3番 原田 大和
ライトフライでワンナウト。
4番 有嶋 秀彦
打球はセンターの頭上を越えて二塁打となる。
5番 長瀬 一馬
ファーストにゴロを打ってツーアウト。
その間に秀彦は三塁に進塁。
6番 鍛冶 鉄也
ピッチャーフライでスリーアウト。
秀彦の出塁も虚しくこの回も無失点に終わった。
――4回表、スターゲイザーズの攻撃
4回表 ☆スターゲイザーズ 1 − 1 那由多ラーメンズ
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ●○○ \◇/
投手:有嶋 秀彦(右投) 打者:伊藤 啓太(右打)
先頭打者の大石をセンターフライに打ちとってワンナウト。
三番打者の伊藤を迎える。
縦に落ちるスライダー、カットボール、ツーシームと投げるがいずれも外れてノースリー。
そして、甘く入った球を流し打ちして打球は一二塁間を抜けていく。
「(不味いな……秀彦君の球が対応されてきている
次は四番の中尾かよ……)」
吾郎はキャッチャーマスクを外して汗を拭う。
4回表 ☆スターゲイザーズ 1 − 1 那由多ラーメンズ
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◆
O ●○○ \◇/
投手:有嶋 秀彦(右投) 打者:中尾 一浩(左打)
「コナクソッ!!」シュッ
「ぬるすぎだぜェ! オラァアアー!」カキィーン
中尾はライナーでライトスタンドに叩き込んだ。2ランである。
「な……なんてパワーだ……規格外すぎる……」
ホームランを打たれた秀彦は愕然としたまましばらく放心状態であった。
- 462 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/12(土) 15:09:38 ID:ogEuOr3s0
- 4回表 ☆スターゲイザーズ 3 − 1 那由多ラーメンズ
S ●●○ /◇\
B ●●○○ ◇ ◇
O ●○○ \◇/
投手:有嶋 秀彦(右投) 打者:大野 篤(右打)
「(クソ……こいつまで俺の球についてきてやがる)」
カキーン
大野は三遊間を破り、レフト前にヒットを打った。
「(疲れてるのか球威が無くなったな
しかもストライクとボールが区別しやすいぜ!)」
六番の一二三はライト前ヒットを放ち、七番の望月はバントでそれぞれ進塁させた。
4回表 ☆スターゲイザーズ 3 − 1 那由多ラーメンズ
S ●●○ /◆\
B ●●●○ ◆ ◇
O ●●○ \◇/
投手:有嶋 秀彦(右投) 打者:加賀美 塁(右打)
ツースリーとなり外に投げられなくなった秀彦はど真ん中に投じる。
だが、狙っていたかのようにセンターに打ち返す。
「しまっ――」
しかし、祐介は浅く守っており、ゴロを捕球した後すぐさま本塁へと送球をする。
その送球は矢のように勢い良くノーバウンドでキャッチャーミットに収まった。
まさにレーザービームである。
「ハハッ! スゲーぜユーツー!」
ショートを守っていたヤマトが近寄って肩をバンバンと叩いて賛辞を送る。
「助かったぜ祐介……」
祐介の攻守に助けられた秀彦はホッと肩を撫で下ろす。
試合の行方は一体どうなるのか!? 後半に続く!!
- 463 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/12(土) 15:14:08 ID:???0
- 今のところスターゲイザーズがHRを打ったので>>444はAとCの可能性がなくなりましたね
- 464 :名無しのスタンド使い:2010/06/12(土) 16:01:33 ID:???0
- 乙
野球につかったら糞チートの某スタンドを出しちうまうとは・・・!
さすが乙1先生だぜ!
- 465 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/12(土) 16:30:37 ID:???0
- >>464
どもです
一人だけどう見てもバレバレな名前のキャラいるからバレちまったかw
まあ主人公チームも野球に使ったらチートな奴いるし何とかなるはず…
- 466 : ◆U4eKfayJzA:2010/06/12(土) 19:19:19 ID:???0
- あ、あれ? どこかで見覚えのある、こういう時にはファッキンなまでのチートスタンドの本体がいるような……
乱闘時に、誰かに野球場の土煙を超音波メスに変えられてバラされるんじゃなかろうかwww
乙です!
- 467 : ◆neHjiUQ7Jo:2010/06/13(日) 01:05:37 ID:J73VLc1U0
- 女レフトが気になりますねぇ……
スタンド使いが混じってるとしたら、俺が就活の面接で「尊敬している人は?」
と質問された時にガチで答えたICHILOWの出番があっても良いんじゃ……
- 468 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/14(月) 00:58:15 ID:???0
- クソ眠いけど途中まで投下します
- 469 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/14(月) 00:59:11 ID:???0
- ――4回裏
4回裏 スターゲイザーズ 3 − 1 那由多ラーメンズ☆
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ○○○ \◇/
投手:伊藤 啓太(右投) 打者:五十嵐 心太郎(右打)
速球を流して打ち、一塁線を転々と転がっていく。
塁審はフェアテリトリーに対して腕を伸ばして人差し指でフェアグラウンドを指差す。
伊藤は先頭打者を出すことになった。それも初球で打たれて。
「まぐれだ……ここからは一匹たりとも出さねぇ!」
伊藤の気迫が球に乗り移り、楓、タクマ、祐介の三者連続三振となった。
――5回表
5回裏 ☆スターゲイザーズ 3 − 1 那由多ラーメンズ
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ○○○ \◇/
投手:有嶋 秀彦(右投) 打者:アシッド ハウス(左打)
アシッドは秀彦の甘く入ったスライダーを右中間へ引っ張って二塁打。
祐介が拾って投げた時にはすでに二塁へ到達しており、その卓越した走力を見せつけた。
5回裏 スターゲイザーズ 3 − 1 那由多ラーメンズ☆
S ○○○ /◆\
B ○○○○ ◇ ◇
O ○○○ \◇/
投手:有嶋 秀彦(右投) 打者:小野 雄(左打)
小野は手堅く送りバントでアシッドを三塁に進めさせる。
5回裏 ☆スターゲイザーズ 3 − 1 那由多ラーメンズ
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◆ ◇
O ●○○ \◇/
投手:有嶋 秀彦(右投) 打者:大石 小太郎(右打)
「最低限だ……ヒットは打てなくてイイ
犠牲フライさえ打てばッ!」
宣言通り大石はセンターのやや浅いところに犠牲フライを放った。
タッチアップで三塁走者のアシッドは全力疾走でホームへ走る。
同タイミングで祐介のバックホームが迫ってくる。
ワンバウンドした送球を拾い上げて吾郎は大石にタッチ。
「セーフッ!!」
両腕を水平に伸ばして球審は宣告する。
「ち、ちくしょう……俺のせいで負けちまうのか……」
秀彦は顔面蒼白になり意気消沈した。
チーム全体に暗い雰囲気が立ち込める。
「ドンマイドンマイ。ここで抑えとけばまだまだ逆転の余地はあるさ
気を引き締め直していこう秀彦君」
吾郎は駆けつけて声をかける。
「そうですね……」
「俺達を信頼してくれ! 俺んとこに来た球は全部捕るからよォ〜
打たせて捕る戦法でいきましょうぜッ!」
- 470 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/14(月) 01:05:51 ID:???0
- 「ヤマト君……」
「そうよ! 一球たりとも私の後ろには逸らさないわ!」
「体で受け止める……」
「楓ちゃん……タクマ君……
分かったよ……ここからは命に変えても全力で投げきるッ!」
「いよっ! それでこそユーツーの兄ちゃんだぜ!」
「(何かすごくクサイ展開になってるけど……まいっか)」
五十嵐は内心冷めた目で見ていたが、口には出さないことにした。
5回裏 ☆スターゲイザーズ 4 − 1 那由多ラーメンズ
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ●●○ \◇/
投手:有嶋 秀彦(右投) 打者:伊藤 啓太(右打)
「うおおおおおおおおお」シュッ
「くああああああああああ」ブンッ
スパァァアアアン
伊藤のバットは縦に落ちたスライダーの上レベルを豪快に空振りしていった。
次いで二球目。カットボールが打者の手元で変化し、バットを出すが打ち損じてしまう。
セカンドの楓が正面でキャッチし、ファーストに送ってスリーアウト。
――6回表
6回表 スターゲイザーズ 4 − 1 那由多ラーメンズ☆
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ○○○ \◇/
投手:伊藤 啓太(右投) 打者:必賦 吾郎(右打)
上手くタイミングを合わして打ち、センター前に落ちるポテンヒット。
6回表 スターゲイザーズ 4 − 1 那由多ラーメンズ☆
S ●○○ /◇\
B ●○○○ ◇ ◆
O ○○○ \◇/
投手:伊藤 啓太(右投) 打者:原田 大和(左打)
「ぬァー! 手元が滑った!」
バキャッ
ヤマトは背中に球が当たり悶絶する。
「デッドボール!」
「痛ェ! ……だけど出塁出来てラッキー」
「やってしまった……反省しなければ……」
- 471 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/14(月) 01:06:10 ID:???0
- 6回表 スターゲイザーズ 4 − 1 那由多ラーメンズ☆
S ●●○ /◆\
B ●○○○ ◇ ◆
O ○○○ \◇/
投手:伊藤 啓太(右投) 打者:有嶋 秀彦(右打)
ツーエンドワンという投手有利のカウントから投げられた一球はフォーク。
秀彦はそれをしっかりと見てボールとなり、平行カウントとする。
「(落ち着け俺……まともに投げればこんな素人に打たれるわけがねぇ!)」シュバッ
伊藤が投げた球はもっとも打ち頃の真ん中高めに行く。
甘い球を見逃さなかった秀彦は芯でとらえ、打球はセンターの頭上を越えグングンと伸び――。
「っしゃー!! ホームランだぜ兄貴!!」
祐介はベンチから身を乗り出す。
白球はスタンドの中へ消えていった。
「これで1点差……!」
表情を一切緩めずにダイヤモンドを一周する秀彦。
「おい……伊藤……あんまり情けねぇ真似してるとあの人に怒られるぞ!」
見かねたショートの小野が伊藤の元へ駆け付ける。
「フハハ……こうなったら使ってやる……『能力』をッ!」
「まあ……お前が使うなら止めはしないさ
だがよォ〜〜〜お前が『能力』を使っちまうと一瞬で終わっちまうからなァ?」
「フン……格の差を見せつけてやる……」
伊藤はズボンのポケットからスポーツ用のサングランスを取り出して掛ける。
6回表 スターゲイザーズ 4 − 3 那由多ラーメンズ☆
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ○○○ \◇/
投手:伊藤 啓太(右投) 打者:長瀬 一馬(右打)
「ここで打たなきゃ男じゃないな! ここらで一本打たせてもらう」
「行くぜ……」スッ
シュゴォォォ
伊藤の投げた球は目にも留まらぬ速さでキャッチャーのミットに収まる。
「ストライク・ワン!」
「何なんだよッ!! さっきまでも凄い球だったが、それとはまるで別ッ!!
160km!? 170km!? 一体どんだけ速いんだよォォォ!!
しかも、あのピッチャーの横にいるのは! 俺は知っているッ!!」
間髪入れずに投球姿勢に入り、腕を振りかぶって投げる。
伊藤が投げたフォークはプロ野球選手が投げるストレートの速さすらも凌駕した速度で届いた。
物理的に人間の力では到底不可能とすら云える投球であった。
- 472 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/14(月) 01:06:30 ID:???0
- 「クッソー! 有り得ねェェェ―――!!」ブォン
カズマは完全に振り遅れていた。
「ストライク・ツー!」
「うおあああああああああああああ」
運良く出たバットに当たるが粉々に砕けてフライとなった球をキャッチャーが掴んでワンナウト。
「こいつは……スタンド使いッ!!」
その後も後続を絶たれてスリーアウト・チェンジ。
ベンチに下がったカズマは仲間に伊藤がスタンド使いだということを告げた。
「それは本当か!?」
ヤマトが血相を変えて訊き返す。
「ああ……一瞬だが奴の横にスタンドヴィジョンが見えた
ベンチからは見えづらいからみんなには見えなかったと思うけど」
「ならば目には目を……歯には歯を……だな」
「俺達もスタンドを使うってワケか、兄貴」
「ああ。このまま負けて金だけ取られて気が済むかよ?」
祐介は少し考えた後、賛同の言葉を入れる。
「そりゃそーだな。なけなしの金をみすみす献上するわけにはいかないぜ
みんなスタンドを使って勝とうッ!」
今まで座ったままだった監督の橘大二郎が立ち上がって沈黙を破る。
「皆に言わなければならんことがある……」
「な、何ですか……!?」ゴクリ…
一同に緊張が走る。
「ちょっと便所行ってくるから後は頼んだ!!」ダッ
大二郎は猛然とダッシュしてトイレへ駆け込んで行った。
「……」
――6回裏
6回裏 ☆スターゲイザーズ 4 − 3 那由多ラーメンズ
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ○○○ \◇/
投手:有嶋 秀彦(右投) 打者:中尾 一浩(左打)
「テメーの球はもう見切ったんだよ! ほら投げてこい!」
打席に立った中尾が秀彦に向けていきり立つ。
- 473 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/14(月) 01:07:08 ID:???0
- 「(おあいにく俺の『ステイアウェイ』は野球向きなんでね!)」シュバッ
秀彦は投げた瞬間に『ステイアウェイ』で矢印を張り付けた。
矢印を張り付けられた球は恐ろしい速度でキャッチャーの手元まで到達する。
あまりのスピードにキャッチャーの吾郎ですら反応出来なかったが、ミットを動かさず必要がなかった。
「(何て球だ……ミットの中でまだ回転してるッ!
このままじゃ手が持たない……『セファリック・カーネイジ』で受け止めるか)」
吾郎は自分の体から上半身だけスタンドを出してミットを持たせた。
「えっ? 何今の……」
スタンドを持たない中尾には今の投球の正体を知る由は無かったが――
「あいつも俺達と似たような能力を持っているのかッ!」
同じスタンド使いの伊藤にはその姿を目視することが出来た。
「どうやらそのようだな……そしてあのキャッチャーもだ」
ベンチの横に座っている大石が伊藤に語りかけた。
「となると……奴ら全員能力を持ってる可能性もあるねぇ
俺らも能力解禁といくか?」
大野がベンチの後ろから持たれかかりながら話に入ってきた。
伊藤は再びサングラスをかけてドリンクを一口含んでから喋る。
「ああ……これは野球を超えた野球……超野球だ」
6回裏 ☆スターゲイザーズ 4 − 3 那由多ラーメンズ
S ●●○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ○○○ \◇/
投手:有嶋 秀彦(右投) 打者:中尾 一浩(左打)
「あ……あぁ……」
中尾はタイミングを速くして振るが、それでも遅くてかすりもせずに空振り三振。
「だめだこりゃ……」
6回裏 ☆スターゲイザーズ 4 − 3 那由多ラーメンズ
S ●●○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ●○○ \◇/
投手:有嶋 秀彦(右投) 打者:大野 篤(左打)
テンポよく投げてツーアウト。
秀彦は同様に投げた球に矢印を貼りつけて運動エネルギーを与える。
目にも留まらぬ速さで大野のインコースに向かって飛んでいく。
「確かに速い……だが――」
「『イエロー・クォーツ』!」ズズズ…
大野の真横にスタンドの像が出て右手を球に向ける。
「『外野スタンド行き』の判を押すッ!!」
ズギュゥ ―z___ン
- 474 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/14(月) 01:07:30 ID:???0
- 『イエロー・クォーツ』に判を押された球の表面に『外野スタンド行き』という文字が浮かび上がる。
そして、その球はバットに触れてないにも関わらずグルリと迂回して外野スタンドへ向かっていく。
「(アイツもスタンド使いッ!? これじゃあ……ホームランになってしまう!)」
秀彦は後ろを振り向いて球の行方を眺める。
半ば諦めかけたその時だった。
祐介はフェンスによじ登って『U2』で球に触れる。
「どっちのスタンドパワーが強いか比べようじゃねーかッ!
『U2』重くしろォォォ―――!!」
グググ…
数秒間空中で揺れながら止まる。
「入れェェェ―――ッ!!」
既に三塁を回っていた大野が叫ぶ。
その想いが通じたのか、球は徐々にスタンドのほうへ入ろうとしていく。
祐介は『U2』で球を直接掴んで引張る。
「うおおおおおおおおおおお」
力技で打球をねじ伏せて無理やりグラブにおさめる。
その瞬間、「アウト」と塁審は宣告。
「俺の『イエロー・クォーツ』が力負けするなんてことが……」
6回裏 ☆スターゲイザーズ 4 − 3 那由多ラーメンズ
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ●●○ \◇/
投手:有嶋 秀彦(右投) 打者:一二三 涼太(右打)
「よぉ〜し、よ しよしよしよしよしッ!
ああッ! 可愛いよォォォ〜! 愛しのボールちゃんッ!!」
男は向かってくる球をスタンドで殴りつけた。
「『ザ・シング』ッ! レフトに転がっていけッ!!」
すると球に目と口が浮かび上がり、喋り出す。
『ニヒヒ……リョウカイ!』
自我を持った球は三遊間を抜けてレフトへと転がっていく。
「何か分からんがとりあえず捕るッ!」
鉄也はグラブを構えてゴロを捕ろうとする。
だが――
自我を持った球は手前で跳ねて鉄也の頭上を越えて行く。
「ち、ちくしょう!」
慌てて後ろを振り返って捕りに行こうとするが、転々と動き回る球にてんてこ舞いになる。
「何やってんだ鉄也ッ!」
見かねたセンターの祐介が駆け付ける。
しかし、その間に一二三はホームベースを踏んでおり、5点目が入った。
「(なんてこった……あんなの反則だろ……
もうこうなったら全球三振を取る勢いじゃないと……)」
- 475 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/14(月) 01:07:52 ID:???0
- 6回裏 ☆スターゲイザーズ 5 − 3 那由多ラーメンズ
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ●●○ \◇/
投手:有嶋 秀彦(右投) 打者:望月 コウ(左打)
紅一点の望月だったが、容赦なく矢印で加速させた球を投げる。
「あんまり私をなめないで下さい!」ズズズ…
望月はスタンドを出して迫り来る球に触れる。
「あなたと私の能力……『オ・デ・エモシオン』は相性がいいのよね」
通常、秀彦本人が能力を解除するか、物体が破壊されない限りは止まることはあり得ない。
だが、球は勢いが無くなってボトリと地面に落ちた。
「ボール!」
「(……!? 一体どんな能力なんだ?)」
秀彦は目を疑った。
「私の能力は物体の推進力を奪うというもの
だけどね……5秒間経つと戻っちゃうんだ」
地面に落ちた球を吾郎が拾おうと瞬間、ボーン!と地面を弾いて後逸する。
「クスクス……塁に誰もいなくてよかったわね」
望月はわずかに表情を緩めて卑しく笑う。
「(このままじゃ四球で出してしまう……三振が取れる球を投げてもらうしかないのか?)」
吾郎が出したサインに頷いて秀彦は投げる。
望月は縦に落ちるスライダーに触れることが出来なかった。
吾郎はスタンドを全身出して必死に受け止める。
しかし、判定はボール。
「ハァ……ハァ……投げれねぇ……」
結局、ど真ん中にストレートを放ることが出来ず望月を歩かせてしまう。
6回裏 ☆スターゲイザーズ 5 − 3 那由多ラーメンズ
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◆
O ●●○ \◇/
投手:有嶋 秀彦(右投) 打者: 加賀美 塁(右打)
「オラッ!」シュッ
秀彦の投げた球は空気を切り裂いて外角に構えられたミットへ向かっていく。
「ぬるいねェ〜〜そんなぬるぬるなスピードじゃ物足りないよォ〜〜」
男がそう云うと球の上にスタンドが出現する。
そのスタンドは球に乗ったまま、方向展開してライトの方へ球を転がして行く。
「うわわっ! 俺のところに来たッ!!」
自分のほうへ打球がスタンド付きで転がってきたカズマは動揺する。
「とりあえず捕まえるッ!」
カズマは『ブレイズ・オブ・グローリー』を出してスタンドを追うが素早くて追いつけない。
「待てやコラアアアア」
モタモタしてる内に加賀美は一周してさらに一点追加。
- 476 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/14(月) 01:08:18 ID:???0
- 6回裏 ☆スターゲイザーズ 6 − 3 那由多ラーメンズ
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◆
O ●●○ \◇/
投手:有嶋 秀彦(右投) 打者: アシッド ハウス(左打)
「『オービタル』で軌道を変えるッ!」
秀彦の投球は打者の手前で軌道修正し、セカンドの方向へ推進して行く。
しかし、直前で楓が『スーパーフライ・ジミー・スヌーカ』で球を触れる。
「ここで固定する。それからボールをグローブの中に入れればアウトね
それにしても審判の人にはボールがひとりでに浮いてるように見えたのかなぁ……」
楓の守備で何とかアウトにするがこの回2点取られ、3点差に広がった。
- 477 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/14(月) 01:11:36 ID:???0
- 眠すぎるんで今日はここまで…
>>466
どのスタンドのことだろう…w
>>467
ICHILOWは秘密兵器なんで温存ですよ!
- 478 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/14(月) 01:36:39 ID:???0
- はぁ…今日中に終わらせたかったな…寝よう
- 479 : ◆U4eKfayJzA:2010/06/14(月) 12:03:00 ID:???0
- しっかし、審判にとっては因果な試合だなぁコレ……。イカサマもいいとこだわw
乙でした!
- 480 : ◆R0wKkjl1to:2010/06/14(月) 13:22:32 ID:is1lv8WgO
- うぉあぁあッ!?
今の・・・今まで気がつかなかったwww
スター・ゲイザーズだなんて嬉しすぎるww
スタンド野球バトル・・・審判もスタンド使いだったりしてwww
乙でした!!
- 481 : ◆9X/4VfPGr6:2010/06/14(月) 13:23:14 ID:1hPwgZCEO
- 乙ッ!
野球にスタンドが混じると大変なことになるんだなやっぱり…
- 482 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/16(水) 18:52:31 ID:???0
- かなり微妙な仕上がりになったけど投下します
>>479
確かに審判には「???」って感じでしょうねw
>>480
名前だけ拝借してすみませんでしたッ!
審判もスタンド使いなら面白かったかもしれませんね…
個人的に今回の話は不完全燃焼のまま書き上げてしまった感じです
>>481
某チートが入ったことで収拾がつけずらかったです…
色んな意味で大変なことになりましたね
- 483 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/16(水) 18:53:09 ID:???0
- ――7回表
7回表 スターゲイザーズ 6 − 3 那由多ラーメンズ☆
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ○○○ \◇/
投手:伊藤 啓太(右投) 打者:橘 楓(左打)
伊藤の投げた球はホームベース上で止まる。
『スーパーフライ・ジミー・スヌーカ』が球を触ったからだ。
慌ててキャッチャーが捕ろうとするが、楓の走りに合わせて球も動いていく。
「残念でしたァ〜!」
楓は悠々と一塁ベースに到達していた。
7回表 スターゲイザーズ 6 − 3 那由多ラーメンズ☆
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◆
O ○○○ \◇/
投手:伊藤 啓太(右投) 打者:タクマ(右打)
タクマの『シックス・フィート・アンダー』は背を向けて棺桶を開ける。
「何ッ!?」
棺桶の中に球が入り、棺桶は閉じられた。
スタンド使いからも非スタンド使いからも球は見えなくなってしまったのだ。
そのままタクマは一塁へ向かって走る。
「こーいうのを消える魔球って云うのかな? いや、違うか
このままホームベースを踏ませてもらうぜ」
その間に一塁走者の楓は本塁に帰って一点が入る。
タクマは猛然と走って三塁ベースを蹴った。
「こっから先は通さねーぜッ!」
ファーストを除く内野陣がスタンドを出して待ち構えていた。
「あの棺桶を開けるんだッ!!」
ショート・小野の猫のような顔をしたスタンド『ルッキング・グラス』が『S・F・U』の棺桶に手を掛ける。
棺桶の扉はギィ……と開く。
「勝ったッ!!」
「いいやッ!お前らの負けだ! お前らはその棺桶と戯れてなッ!」
タクマは『S・F・U』の棺桶だけを切り離して走り抜ける。
「なんだとォォォ―――!?」
小野が棺桶の中から球を取り出した頃には既にタクマは本塁を踏んでいた。
『おいおい……何なんだこのザマは……
伊藤……負けたらどうなるか分かってるんだろうな?
今すぐ俺と代わるか?』
スターゲイザーズ側のベンチから声が聞こえてきた。
一番奥のベンチに座っている人影が発した声だった。
「い、いや……だ、大丈夫ですんで! まだこっちが勝っていますし!
これ以上の失点は許しませんので……それにこんな奴ら貴方が出るまでもないかと!」
『そうか……ならいいんだがな……』
伊藤達はホッと肩を撫で下ろす。
- 484 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/16(水) 19:03:45 ID:???0
- 7回表 スターゲイザーズ 6 − 5 那由多ラーメンズ☆
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ○○○ \◇/
投手:伊藤 啓太(右投) 打者:有嶋 祐介(左打)
「(もうこれ以上打たれてたまるか……あの人に何されるか分かったもんじゃねーよ!)」シュバッ
伊藤が投げた瞬間、祐介は射程のギリギリまで『U2』を出して球に触れた。
すると球はズブズブと地面にのめり込んでいく。
「クソッ! 重すぎて持ち上げれねぇ!!」
その間に祐介は生還し、那由多ラーメンズは同点にまで持ち越した。
「(ヤベェ……)」
だが、その後二者連続三振と取ってとり秀彦を迎える。
7回表 スターゲイザーズ 6 − 6 那由多ラーメンズ☆
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ●●○ \◇/
投手:伊藤 啓太(右投) 打者:有嶋 秀彦(右打)
「(こいつにはあの矢印の能力がある……
まともに勝負したところでホームランにされるのが関の山……)」
伊藤は勝負を避けて秀彦を歩かせた。
7回表 スターゲイザーズ 6 − 6 那由多ラーメンズ☆
S ●●○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◆
O ●●○ \◇/
投手:伊藤 啓太(右投) 打者:長瀬 一馬(右打)
「ちくしょう……! 俺のスタンドじゃ役に立たない!」
カズマは三球三振に終わった。
「(ふぅ……こいつの能力が大したことなくて良かったぜ)」
――7回裏
那由多ラーメンズは1番の小野と2番の大石を三振に取ってツーアウト。
次は3番の伊藤に打順が回るはずだったが――
ベンチ内で伊藤と謎の人影が揉めていた。
「ま、待って下さいッ! まだ同点ですッ!!
自分が必ず逆転してみせ――」
『いいやッ! 我慢の限界だねッ!
お前の代わりに俺が出るッ!!』
謎の人影は伊藤を押しのけてグラウンドの芝を踏んだ。
- 485 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/16(水) 19:04:15 ID:???0
- その正体はところどころ機械になっている人の形を成した者だ。ただし四本腕である。
「い、ICHILOW さん……本当に出てしまわれるのですか…!?」
望月がそれに恐る恐る訊く。
『お前らが情けないからなァ〜……俺がイチ流のプレーというものを見せてやるよ』
7回裏 ☆スターゲイザーズ 6 − 6 那由多ラーメンズ
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ●●○ \◇/
投手:有嶋 秀彦(右投) 打者: ICHILOW(左打)
打席に入ったICHILOWは背筋を伸ばし、右手でバットを垂直に揃え、左手を右上腕部に添える動作を行う。
「(こいつは一体何者なんだ……? およそ人間には見えないが……
ここまではっきりと目視出来るスタンドがいるのだろうか?)」
秀彦は眼前のICHILOWに対して疑問を抱くが、すぐに払拭させて投球に集中する。
腕を振りかぶって球を投げ、それに『ステイアウェイ』で矢印を付けて加速させる。
時速にして200kmは軽く超えていたが、ICHILOWの動体視力の前では止まってるに等しかった。
ICHILOWがバットを振ったインパクトで地形が変わるのではないかというほどの衝撃波が巻き起こる。
キャッチャーの吾郎はスタンドを出してガードするが、それでも5m後方にまで吹き飛ばされてしまった。
芯で捉えられた打球はライナーでサードの正面へ飛んでいく。
「ちょッ……!!」
咄嗟にスタンド『アクロース・ザ・メトロポリス』を出して身を守るが、打球の勢いは衰えること無く、スタンドの翼を突き破ってレフトの鉄也の元へ。
「ここは俺に任せなッ! 『リンゴ・スター』のジェルで捕ってやるよ」
『リンゴ・スター』は粘着性のジェルを飛ばして打球をからめとろうする。
だが――
「嘘だろ……ジェルをぶち破って行きやがったッ!!!」
打球はそのままフェンスに直撃し、ギャルギャルと埋もれながら回転していた。
鉄也は急いで球を取って投げようとするがICHILOWの姿は既に無かった。
辺りを見回すとベンチ内でくつろいでいるICHILOWがいたのだった。
「じ、次元が違う……化物だ……
しかもピッチャーの伊藤と交代したってことはあいつが投げるのか!?」
マウンドに立つ秀彦は戦慄した。
その後、4番の中尾を三振に取って7回の裏は終了する。
- 486 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/16(水) 19:04:38 ID:???0
- ――8回表
「どうやらあのICHILOWって奴がマウンドに上がるらしいぜ……」
先程のバッティングを見た鉄也はビビりまくっていた。
「だ、大丈夫だって……死にはしないでしょ……多分
あ、俺はさっきの守備の時に負傷したから誰か代わりに出てもらいたいんだけど……」
五十嵐は傷をアピールして交代を求める。
「そ、そうだな……(他には女性しかいないけど……そうなると人型でパワーのある結城さんが妥当か)
じゃあ結城さんが五十嵐さんの代わりにサードに入って、鉄也の次を打ってもらえますか?」
祐介が未早に打診する。
「いいわよ! 退屈すぎてうずうずしてたとこなんだからね」
全く臆すること無く嬉々として応えた。
8回表 スターゲイザーズ 7 − 6 那由多ラーメンズ☆
S ●●○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ○○○ \◇/
投手:ICHILOW(左投) 打者:鍛冶 鉄也(左打)
ICHILOWが投げた球はフェラーリの最高速度を凌駕する速さでキャッチャーミットに到達する。
「無理ぽwwwwww」
三振した鉄也はバレリーナのように踊ってるかのようだった。
8回表 スターゲイザーズ 7 − 6 那由多ラーメンズ☆
S ●○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ●○○ \◇/
投手:ICHILOW(左投) 打者:結城 未早(右打)
「流れをぶった切らせてもらうわ」
未早は『オリヴァ・ツウィスト』を出して前方に向けて拳を突く。
ICHILOWの投げた球はマウンドとバッターボックスの中間で地面に落下する。
見計らって一塁に向かって走る。
しかし、ICHILOWは即座に球を手掴みしてそのまま一塁へ飛び移る。
未早が一塁ベースを踏む前にICHILOWは割り込んでタッチアウトにした。
そして、楓も三振に倒れてスリーアウト・チェンジ。
――8回裏
この回はランナーを許してしまうが、攻守にも助けられ無失点に抑える。
- 487 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/16(水) 19:05:22 ID:???0
- ――9回表
「さあ皆……この回で最低でも同点に持ち込まないと負けだ……
相手はあのICHILOWとかいう化物……どうやって点を取るか……」
集まったチームメイトに秀彦は投げかける。
「次は俺が打つ番だよな……」
常識知らずのタクマもICHILOWのチートっぷりに打ちのめされていた。
「わ、私が出る!」
「えっ!? 雪華ちゃん!?」
突然の申し出に一同は驚愕する。
普段は地味でおとなしい性格なので前に出てくることは珍しいからだ。
「私の能力なら上手くいけば出塁するくらいなら出来るかも……」
「そこまで云うなら俺の代わりに出てもらおうかな……?」
タクマは持っていたヘルメットとバットを手渡す。
「もし東雲が塁に出たらユーツーお前がホームラン打って逆転だな!」
カズマがケラケラと笑いながら云う。
「無茶云うなよな……だけどまあこの回で最悪同点にまで持っていかないと負けか……」
「じゃあもう行くわ……」
雪華は真剣な面持ちでバッターボックスへ向かう。
その姿を見た祐介は覚悟を決めた。
「必ず俺が本塁にまで帰してやるよ!」
背後から祐介が声をかけて送り出す。
「うん。信じてる!」
9回表 スターゲイザーズ 7 − 6 那由多ラーメンズ☆
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ○○○ \◇/
投手:ICHILOW(左投) 打者:タクマ→東雲 雪華(右打)
『こんな小娘が相手とは……舐められたものだ』
「舐めてるのはアンタじゃなくて?」
雪華はスタンドの『コミュニケーション・ブレイクダンス』を出す。
『それがお前のスタンドか……一体何をするつもりだ?』
- 488 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/16(水) 19:06:03 ID:???0
- 「バットに弾丸を打ち込むのよッ!」バシュッ
ズズズ……
弾丸を撃ち込まれたバットはうねり始める。
『よく分からんが喰らえッ!』シュゴッ
バットは一人でに動き出して、 が投げた球を三塁線に打ち返した。
サードの一二三は捕ることが出来ず、後ろにそらしてしまう。
だが、全力でダッシュして後ろに回り込んでいたICHILOWはカバーに入っていた。
すぐさま捕球したICHILOWは一塁に向かって送球する。
弾丸を放ったせいで精神的に疲労した雪華はまだ一塁に到達していなかった。
しかし、非スタンド使いの中尾はICHILOWが投げた球を捕れずミットを弾いてしまう。
雪華は相手のエラーに助けられてセーフとなる。
『チィ……あの役立たずめが……』
9回表 スターゲイザーズ 7 − 6 那由多ラーメンズ☆
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◆
O ○○○ \◇/
投手:ICHILOW(左投) 打者:有嶋 祐介(左打)
「(恐らく今までは力をセーブしてたはずだ……
だけど次からは本気で来るはず……チャンスはあるのだろうか?)」
ICHILOWは振りかぶって投げた。
音速を越える速度で投げられた球は音を置き去りにしてキャッチャーミットに収まる。
「(は……速すぎる……まともじゃないね)」
そして、二球目もストライクとなり、ツーストライクと追い込まれる。
「アンタが投げる球は確かに打てない……だが、他の8人がアンタ並に優れてるわけじゃない
考えようによってはいくらでも戦法はあるってもんよ」
『黙れ小僧ッ!』シュゴッ
ICHILOWが投げた球はいつも通り寸分の狂いなくキャッチャーがミットで示した位置に行く。
「ヘヘッ……球は速いけど俺はミットを一ミリも動かさなくていいから楽なもんだな……
俺のスタンドを使うまでも無いぜ」
「『U2』ッ!」ズズ……
『U2』はキャッチャーのミットに入った球を触る。
「な、なんだこれはァァァ――!! 急にボールが重くなりやがったッ!!」
ズシン
キャッチャーのアシッド・ハウスは重くなった球に引きずられて地面に手をつく。
スタンドで球を取り出そうとするが、パワー型ではないため動かすことは困難だった。
『貸せッ! 俺にッ!!』
ICHILOWがミットから球を強引に引き剥がして重くなった球を持ち上げる。
しかし、すでに祐介は一塁を走り抜けていた。
「(ランナーは返せなかったけど繋げられてよかったぜ……後は吾郎さんとヤマトと兄貴に任せよう!
しかし……『U2』で重くした球を持っちゃうなんて……こんな規格外な奴は初めてだ……)」
- 489 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/16(水) 19:06:25 ID:???0
- 9回表 スターゲイザーズ 7 − 6 那由多ラーメンズ☆
S ○○○ /◆\
B ○○○○ ◇ ◆
O ○○○ \◇/
投手:ICHILOW(左投) 打者:必賦 吾郎(右打)
『どうやら貴様らは俺を本気にさせてしまったようだ……死人が出ても知らんぞ?』
ICHILOWが足を上げただけで周りの土が舞い上がり、ざわざわと芝がなびき始める。
『ウオッシャァァァアアア―――!!!』シュゴォォォッ
叫びとともに投げられた球はライフルの砲口速度すらも凌駕する。
もはや人間の動体視力で反応出来る速度では無かった。
「あわよくば『セファリック・カーネイジ』のポットの中に入れて……などと思ったが……これは無理だ……すまない皆……!!」
結局、吾郎は三振に倒れた。
9回表 スターゲイザーズ 7 − 6 那由多ラーメンズ☆
S ○○○ /◆\
B ○○○○ ◇ ◆
O ●○○ \◇/
投手:ICHILOW(左投) 打者:必賦 吾郎(左打)
「いや、無理だろッ!!」ブオッ
ヤマト、三振でツーアウト。
9回表 スターゲイザーズ 7 − 6 那由多ラーメンズ☆
S ○○○ /◆\
B ○○○○ ◇ ◆
O ●●○ \◇/
投手:ICHILOW(左投) 打者:有嶋 秀彦(右打)
ICHILOWは手に持つユンケルをグビグビと補給する。
『クックック……エネルギー満タンだ』
「やれやれ……9回表ツーアウトで俺かよ……
あんな速い球に矢印なんか張り付けられるか……」
秀彦が呟いた瞬間、ほんのわずかだがマウンドに立つICHILOWに残像が見えた。
「な、何だ今のは……」
『これは何だと思うかね?』スッ
右手に持っていたのものを自分の前に見せる。
それはベンチに座ってるはずの吾郎が耳に付けていたイヤリングだった。
『ちょっと手が滑って持ってきてしまったよ……』
「時止めとか時飛ばしとか……そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……」
ICHILOWのスタンドプレーに秀彦は青ざめる。
『やっとエンジンがかかってきた……ラスト一球……覚悟はいいかな?』
「(どうすれば……いや、当てればいいのか……バットに当てさえすれば……
そう……奴の投げる球は精密機械のように寸分狂いなくミットに届く……
ならそこを利用すれば……」
『ウオッシャァァァアアア―――!!!』シュゴォォォッ
ICHILOWが投げるモーションに入った瞬間に秀彦はバントの構えを取る。
そして、来た球に当たってバットは砕け散るが、球は幸運にもファールになること無くピッチャー前に転がっていった。
- 490 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/16(水) 19:06:49 ID:???0
- 「よしッ!」
秀彦は全力で走って一塁へ向かう。
『一体何のつもりだ? 俺のスピードはしっかりと知ったはず……
今から拾っても十分タッチアウトに出来ると云うものを――何ィィィ!?』
ICHILOWの前に転がっていった球は軌道を変えてサードのほうへ動き始めた。
『これはアイツの矢印ッ! バットに当たった瞬間に貼り付けたのかッ!』
「うわァ! 俺の服の中に入ってきたァァァ――!!」
サードの一二三は服の中に侵入を許す。
「『ザ・シング』ッ! この球に自我を与えろォォォ――!!」
『か、勝手なことをするなッ! 今すぐ俺によこせッ!!』ドガッ
ICHILOWは『ザ・シング』を殴り飛ばして服の中から球を奪い取る。
既に一塁走者と二塁走者の雪華と祐介は本塁に帰っていた。
そして、秀彦は三塁キャンバスを蹴って本塁を陥れようとしていた。
秀彦がスライディングをするのと同タイミングでICHILOWはキャッチャーへ送球をした。
ギュォォォオオオオオ
空気を切り裂いて送球はノーバウンドでキャッチャーミットに吸い込まれる。
だが、あまりの衝撃に耐えられなかったキャッチャーは球を零してしまう。
「兄貴ィィィ―――!! 信じてよかったよォォォ」
「よっしゃぁぁぁああああああ」
「勝ったで―――!!」
チームメイトはベンチから出て逆転打を放った秀彦を祝福する。
まだ9回の表であったが、勝ったかのような雰囲気だった。
「アイツは確かに凄い。だが、野球は一人でするもんじゃねえ」
秀彦はグラブをつけてマウンドへ上がった。
――9回裏
9回裏 ☆スターゲイザーズ 7 − 9 那由多ラーメンズ
S ○○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ○○○ \◇/
投手:有嶋 秀彦(右投) 打者:アシッド ハウス(左打)
「(打たないとICHILOWさんにしばかれる……!!)」
アシッドは気迫の一打でバットを折りながら『オービタル』で軌道を操作して一二塁間に転がすが、セカンド・楓の攻守に阻まれてアウトとなる。
- 491 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/16(水) 19:07:06 ID:???0
- 9回裏 ☆スターゲイザーズ 7 − 9 那由多ラーメンズ
S ●●○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ●○○ \◇/
投手:有嶋 秀彦(右投) 打者:小野 雄(左打)
「『ルッキング・グラス』ッ! ボールを透過させるッ!」
秀彦が投げた球はいつも通り吾郎のミットにおさまるはずだった。
だが、『ルッキング・グラス』が直前で触れたことによって吾郎のミットを透過して手に直接当たってしまう。
吾郎が球をこぼしてしまったことで振り逃げが成立し、小野は一塁へ走る。
「うぐぁあああ……」
手に直撃した吾郎は手を押さえて悶絶する。
時速200kmを超える速さで飛んでくる硬球が手に当たったわけだからタダで済むはずが無かった。
小野は一塁を回って二塁へ行こうとしていた。
「さ……させるかァ!!」
吾郎は気力を振り絞って右手で球を掴んで二塁へ投げる。
タイミングはほぼ同時で塁審の判断によってはどっちとも取れた。
「アウッ!!」
塁審は右手を握り、腕をまっすぐ頭上に上げて宣告した。
秀彦は慌てて吾郎の元へ駆け付ける。
「だ、大丈夫ですか!?」
「これで……あとワンナウトで試合終了……だが……」
左手は出血していて指も骨折しているようだった。
「キャッチャー交代しましょう! しかし、他に務まりそうな人がいないですね……」
「大丈夫だッ! ワシに任せろッ!!」
ベンチ裏から現れた中年の男。
橘楓の父親、橘大二郎だった。
「長い戦いだったが……ようやくケリをつけれたぜい!」
戦いというのはトイレでの戦いのことである。
「キャッチャーの経験あるんですか?」
「ああ! 中学高校とキャッチャーとしてその名を轟かせてきたッ!
強肩の大ちゃんとはワシのことよ……」
「そうですか……ではお願いします」
- 492 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/16(水) 19:07:54 ID:???0
- 9回裏 ☆スターゲイザーズ 7 − 9 那由多ラーメンズ
S ●○○ /◇\
B ○○○○ ◇ ◇
O ●●○ \◇/
投手:有嶋 秀彦(右投) 打者:大石 小太郎(右打)
秀彦の気迫が乗り移ったかのようなキレのある速球が外角いっぱいに決まってツーストライク。
「当てさえすれば俺の『足あと』であっという間に一塁へ行けるのに……!!」
「これで終りだッ! ICHILOWに打席は回ってこないッ!」シュバッ
「ちくしょおおおおおおおおお」ブオンッ
最後の打者、大石を三振に仕留めた秀彦はガッツポーズを握りしめた。
『俺の出番は回ってこなかったか……』
ICHILOWは一人球場を後にした。
『確かに野球は一人でするものではない。
君達の……チームワークの勝利ということだな……』
――試合終了後
グラウンドを整備した後、一同は顔を合わせた。
「色々あったけど……楽しい試合だったよ」
伊藤はスッと手を伸ばして握手を求めた。
そして、祐介もそれに応じる。
「まさかこんなスタンド野球になるとは思わなかったけどね」
「スタンド……? この能力はスタンドと云うのか
俺達と同じような能力を持った人間がこんなにもいるとはね」
「いずれ……伊藤さん達の力を借りないといけない時が来るかも知れません
その時は……」
「いつでも呼んでくれ。その時は駆け付けるよ」
伊藤から連絡先をを教えてもらい、賞金の三十万円を受け取った。
- 493 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/16(水) 19:08:09 ID:???0
- ――とあるラーメン屋
祐介達一行は祝勝記念にラーメンを食べに来ていた。
「いや〜何はともあれ勝ててよかったよ! 乾杯!」
「しかし……とんだ化物が来たもんだよ……どっと疲れたわ」
秀彦はかなりぐったりとして横になっていた。
「まあまあ! ちゃんと賞金も貰えたことだし!」
「ん? そういえば……一割くれるって約束してたよな? ユーツー?」
カズマが身を乗り出してせがむ。
「えっ? えーと……そうだっけ?(ヤベー……こんだけ人数いると残らねーじゃん……)」
「忘れたとは云わせねーぞ? 紹介料も含めて二割は貰ってもいいくらいだからな?」
「わ、分かったよ! 皆で山分けすればいいんでしょ!?」
「さすが! 大好きだぜユーちゃん!」
酒を飲んで酔っ払ったカズマは祐介に抱きついてちゅっちゅと熱い接吻を一方的にした。
「うわッ! キタねーやめろッ!」
無理やり引き離して外へ出た。
まだ寒気の残る夜なので思わず身震いしてしまう。
祐介は店の壁にもたれかかって一言呟いた。
「よっこら瀬川瑛子」
To Be Continued...
- 494 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/16(水) 19:08:36 ID:???0
- 使用スタンド一覧
ありがとうございました!
1番 ショート 小野 雄(ルッキング・グラス)
2番 ライト 大石 小太郎(ステップス)
3番 ピッチャー 伊藤 啓太(サンシャイン・デイズ)→ ICHILOW
4番 ファースト 中尾 一浩
5番 センター 大野 篤(イエロー・クォーツ)
6番 サード 一二三 涼太(ザ・シング)
7番 レフト 望月 コウ(オ・デ・エモシオン(Rエモシオン))
8番 セカンド 加賀美 塁(サイダーハウス・ルール)
9番 キャッチャー アシッド ハウス(オービタル)
- 495 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/16(水) 19:14:11 ID:???0
- >>444-445は正解がDということになりました
見事正解した>>448に2ポイント贈与でし
- 496 : ◆U4eKfayJzA:2010/06/16(水) 22:25:44 ID:u8zwaOyg0
- いつの間に更新が……って、マジでICHILOWがきやがったwww
ICHILOW一人で試合がヤバかったw 乙でした!
- 497 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/17(木) 05:49:15 ID:???0
- >>496
ありがとうございます
ICHILOWはねぇ…ほんとにねぇ…www
こいつチートすぎてあらかじめ決めてた祐介チーム勝利シナリオが面倒くさくなりましたよ!
最後らへんは泣きながら書いてたことしか覚えてない…ガチで辛かったwww
次はどうしようか悩んでます…
もう一気に最終決戦にまで持ち込んじゃおうかなとか考えてるけど…うーむ
- 498 : ◆neHjiUQ7Jo:2010/06/17(木) 21:05:28 ID:fnMu/xUI0
- ICHILOWさんが……ICHILOWさんが!!!
ICHILOWさんの何が凄いかって、本人自体がスタンドな事もあるけれど
他の連中と違って、ちゃんとルール守ってるんだぜ……
- 499 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/18(金) 04:37:13 ID:???0
- >>498
普通に投げて普通に打ってるだけですもんねw
それに比べて祐介側はやりたい放題だから困るぜ…
ちなみに書いてる時に気付いたんですが…
大和は左投げなのにショートについてますね…
まあ…終わったことなので勘弁して下さい!
- 500 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/23(水) 21:07:53 ID:lKQ85cYI0
- 第九章「」
――2010年4月10日土曜 Y県Y市内 悪門荘
選抜高校野球大会も終わり、一週間が経っていた。
俺たち那由多高校野球部は二回戦を勝ち進むが、準々決勝で今大会で優勝することになった興南高校に破れてベスト8という結果に終わった。
俺は高津先輩と併用という形で一番センターで起用され、それなりの成績は残せた。
同学年の川崎昂太とのポジション争いに勝てたのは何よりも大きかったと思う。
悔しさはあったけど既に夏へ向けて気持ちは切り替わっていた。
いつの間にか二年に進級してたけど特に変わった事はなし。
新しいクラスではスタンド使い組のメンバーは揃っていて、一年の時となりのクラスだった鉄也も一緒だった。まるで新鮮味はないけどちょっとホッとしている。
雪華ちゃんとの関係はたまに遊びに行ったりご飯を食べに行く程度で別に進展は無いけど親密になれている気がする。
ただ、彼女の家に呼ばれたことが無いのが気がかりだ。
俺は家族ぐるみで仲良くなっているのに。
「よう祐介。珍しく早起きだな」
起きたばっかりで半開きの目をこすりながら兄貴がリビングに着た。
「まあね……ここ最近はゴタゴタもないからぐっすり眠れてさ
それにしてもヴェーダの奴らおとなしすぎじゃないかな?」
「油断してると痛い目に合うぞ
奴らは必ず俺達を抹殺しにかかるはずだ……何か策を練っているに違いない」
寝起きの顔を急に神妙な面持ちへと豹変させて云う。
「そうだな……もはや俺達だけの問題じゃないし」
「さて……仏壇に線香をあげてくるか」
スクッと立ち上がって兄貴は仏壇の前に座り、線香に火をつける。
有嶋家では日々の日課となっている。
「なあ……兄貴……
非常に聞きづらい……いや、兄貴自身もあえて話さなかったんだと思うけど……
その……俺達の母さんのことについて教えてくれないか?」
「……」
兄貴は背を向けたまま沈黙する。
- 501 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/23(水) 21:08:13 ID:lKQ85cYI0
- 「俺がまだ幼い頃に話した記憶は朧げにあるけどさ……
急にいなくなったような……」
「俺は……知らない……」
兄貴は震えるような声で答えた。
「あ、いや、ごめん……こんなこと聞いて」
「母さんは突然失踪した……
父さんに聞いたら海外に出張したと言っていた……
だけど……子供ながら嘘なのは分かってたよ」
俺が母さんのことで知っているのは父さんと同じ職場……研究所に勤めていたということ。
考えたくも無いが、父さん同様殺されたということも……。
**
遅く起きた智恵やタクマも集まって昼食を摂っていた。
兄貴お手製のオムライスを頬張りながら視線をテレビに向ける。
『緊急ニュースです。今日11時半に東京都千代田区永田町一丁目にある国会議事堂が爆破され、周囲で火災が発生しております。
依然勢いが衰えること無く燃え続け、消防隊が立ち入るのは困難という状況です。
中にいたと思われる職員は救出出来ておらず、消防隊が火災の鎮火に当たっているという状況です――』
ざわ……ざわ……
「一体何が起きてんだ……?」
俺は脳裏に『ヴェーダ』の存在がよぎる。
まさかな……。
『たった今速報が入りました。
総理官邸が今日正午過ぎに爆破され、建物は倒壊した模様です。
鳩山田首相は官邸内にいると見られ、未だ安否は不明です――』
あまりにもショッキングなニュースに一同の表情が険しくなる。
この平和な日本でテロが起きるなんて信じられるだろうか。
「これはおそらくヴェーダの仕業だ……」
タクマがボソッと呟く。
「えっ!? それはどういうことだ!?」
「俺がまだ施設にいた頃に耳にしたんだが……
- 502 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/23(水) 21:08:27 ID:lKQ85cYI0
- 上の連中がこの日本を支配しようとしてるのは聞いたことがあるんだ……」
「俺も久坂さんから聞いていたが……まさかこんな急に動き出すとはな
次に何をしでかしてくるか分からん……ヤバいね」
苦笑いを浮かべながら兄貴は云う。
「とりあえず久坂さんに電話したほうがいいんじゃない? ヒデ兄」
「そうだな……」
**
身を揺るがせ、鼓膜を突き破ろうかというほどの爆音が鳴り響く。
ガラガラと建物は崩れて人間達は瓦礫の下敷きになっていく。
ぼうぼうと炎は周りに燃え移っていき、逃げ場は次第に失われていく。
「鳩山田……お前にリーダーの資格はない
そして、この国のくだらぬ政治はここで終了するのだッ!」
「ふざけるなッ! 友愛の精神なき独裁者がッ!!」
「ククク……ハッハッハ!!
もはやこの世界を変えるには力でねじ伏せるしか無いのだよッ!
まずはその礎としてこの国を支配するッ!
いずれは世界中を我が国として統治するのだ……」
男は鳩山田に視線を投げる。
「どうやら友愛が必要のようだな……『YOU&I』ッ!
奴を仕留めろォォォ―――!!」
『OK、ユキオ。既に攻撃は開始している』
全身白タイツの鳩の頭をしたスタンドが赤いブーメランを男に向かって投げていた。
「『シング・ライク・トーキング』……ブーメランは反転する」
男にあたる直前でブーメランは軌道を変えて元の位置へ戻っていく。
「何ィィィ――!?」
ブーメランは『YOU&I』の腕に刺さる。
『油断をしただけだ……安心しろユキオ』
そう云うと腕に刺さったブーメランを抜いて手に持ってそのまま男の元へ走る。
- 503 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/23(水) 21:08:39 ID:lKQ85cYI0
- 「無駄だッ!」
『ウググ……私の攻撃が……首を刎ねるつもりなのに刺さらないッ!』
「お前の無敵なパワーとスピードは反転したのだ……
今のお前は群体型の一体のパワーにも劣る」
「私の『YOU&I』がッ! 今まで一度も負けたことがない『YOU&I』がッ!
ふざけるなァ――!! お前のようなちっぽけな存在如きにッ!!」
「隙だらけだぜ鳩山田……」
鳩山田の背後から声が聞こえてきて咄嗟に振り返る。
「俺が出る幕も無さそうだが時間が無いんでね」
「仲間が他にいたとはッ!」
「ホッホッホ……それでは一気にカタをつけようか」
「(いつの間に二人も……!!)」
三人の男達が鳩山田を取り囲む。
- 504 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/23(水) 21:13:06 ID:???0
- 小出し投下サーセンw
タイトルは「血の土曜日」でお願いします
- 505 : ◆U4eKfayJzA:2010/06/23(水) 21:56:44 ID:???0
- し、シング・ライク・トーキングvsぽっぽ……だと……?
まさか、シング・ライク・トーキングがこちらでも使われるとは、なんという俺得w
これから、どうなっていくんだ??! 乙でした!
- 506 :名無しのスタンド使い:2010/06/23(水) 23:09:37 ID:08zpOGOY0
- なんという急展開!
ぽっぽさんとSLTの戦いの結果は!?
wktkすぎるぜぇ!
- 507 : ◆R0wKkjl1to:2010/06/24(木) 10:27:46 ID:gV8iWz32O
- ま、まさかポッポが出てくるとは・・
S・L・T戦、一体どうなってしまうのか?
鳩ちゃん頑張って><
乙でしたッ!
- 508 : ◆neHjiUQ7Jo:2010/06/24(木) 20:48:19 ID:J5H5JQ.20
- 乙です!
にしてもポッポは現実でもココでも悲惨な目にあってんなwww
まぁ同情はしないが
- 509 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/26(土) 07:49:35 ID:???0
-
____ / ̄ ̄ ̄\
/___ \ / ___ ヽ
/ |´・ω・`| \ / |´・ω・`| \ みんな〜
/  ̄ ̄ ̄ \ / _,  ̄⊂二二)
| i ヽ、_ヽl | |
└二二⊃ l ∪ | |
| ,、___, ノ | ,、 |
ヽ_二コ/ / ヽ / \ /
_____/__/´ __ヽノ____
- 510 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/26(土) 08:21:00 ID:???0
- >>505
SLTさんは初めて見た時から好きでした
デザインも能力もラスボス然としていて…
でも自分なんかに扱えるのは不安です…
>>50-508
まあネタバレするとぽっぽはヤムチャなんですけどね
- 511 :名無しのスタンド使い:2010/06/26(土) 15:10:23 ID:BWSC0PxQ0
- トv'Z -‐z__ノ!_
. ,.'ニ.V _,-─ ,==、、く`
,. /ァ'┴' ゞ !,.-`ニヽ、トl、:. ,
rュ. .:{_ '' ヾ 、_カ-‐'¨ ̄フヽ`'|::: ,.、
、 ,ェr<`iァ'^´ 〃 lヽ ミ ∧!::: .´
ゞ'-''ス. ゛=、、、、 " _/ノf:::: ~
r_;. ::Y ''/_, ゝァナ=ニ、 メノ::: ` ;.
_ ::\,!ィ'TV =ー-、_メ:::: r、
゙ ::,ィl l. レト,ミ _/L `ヽ::: ._´
;. :ゞLレ':: \ `ー’,ィァト.:: ,.
~ ,. ,:ュ. `ヽニj/l |/::
_ .. ,、 :l !レ'::: ,. "
- 512 : ◆U4eKfayJzA:2010/06/26(土) 16:48:41 ID:???0
- まさか、乙1先生にまで好かれた案だったとは……。うん、S・L・Tは自分の最高の案、とこれから吹聴し続けよう。
大丈夫ですって、ありゃ本当にチートですからマジで何でもありです。
男の概念を反転させて性転換させたり、貧乳を巨乳にしたり、萌をノーマルに変えたり、といった無駄な使い方から、ナマクラ刀(鋭利)で頑丈(脆弱)な鉄板を引き裂いたり、負傷と無傷の状況を反転させたり、といくらでも使い方はあります。
てな訳で、思うがまま好き放題に反転させてしまって下さいな。
>>511
ヤムチャなんだろう? それが反転する……、言いたいことは判るよな?
乙1先生のことだから、ポッポのポッポたる所以を反転させる可能性も……、あれ?
むしろ、反転したままの方が有益かも。今じゃ手遅れだが。
- 513 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/27(日) 09:00:15 ID:???0
- >>511
ヤムチャwwwww
>>512
ラスボスっぽいのって中々ないから重宝させていただきます
正直何でも使えそうなだけに何していいかわからなくなるんですよね
読者をうねらせるような発想をしないといけないのか!?みたいなプレッシャーがw
あとぽっぽは残念ながら皆の期待には答えられない…w
- 514 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/27(日) 19:00:50 ID:???0
- もう少しで投下します
その前にどうでもいいウラ話でも…
ヴィシュヌは爺キャラだけど実は『エイボンの書』にするつもりでした
その名残で>>134では「ワシが見たところ〜」とか言って才能が見抜けるようなキャラになってるんですよね;;
まあ諸事情で変更してエイボンの書は影現斎というキャラで登場させることになったのです
SSを書く前に候補を色々リストアップしてるので当初使う予定だったキャラが使えないことが多々…
- 515 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/27(日) 23:48:01 ID:7EaXgwJc0
- ____ / ̄ ̄ ̄\
/___ \ / ___ ヽ
/ |´・ω・`| \ / |´・ω・`| \ みんな〜
/  ̄ ̄ ̄ \ / _,  ̄⊂二二)
| i ヽ、_ヽl | |
└二二⊃ l ∪ | |
| ,、___, ノ | ,、 |
ヽ_二コ/ / ヽ / \ /
_____/__/´ __ヽノ____
- 516 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/27(日) 23:48:46 ID:???0
- 「ハァ……ハァ……何だか急に寒くなってきた……」
「老体には堪えるか? 今すぐスタンドで身を守ったほうがいいぞ」
徐々に周りにダイヤモンドダストが発生していく。
そして、男のスタンドが眩い光を放って輝く。
「丁度良くこの周りは炎で熱量が多い……十分な熱が集まりそうだ」
「『YOU&I』戻れェェェ―――!!」
「我がスタンドは唯一無二……何人たりとも抗うことが出来ないッ!」
「ぐ……な、何をした……」
鳩山田の胸から大量の血が滴る。
向こうの景色が見えそうなほどの穴が空いていた。
肉が焼け焦げたような異臭が漂う。
「不可視の熱線は避けることが出来まい……」
「うおああああああああああああああああ」
グジュウウウウウウウウウウウウ
鳩山田の肉体が一瞬で消し炭に変わる。
「(ハァ……ハァ……! 私は死んでいないのかッ!?
暗いッ! 何だここはッ! ぐ、ぐああああああああああああああ
熱いィィィ―――!! 体が焼けるゥゥゥ―――!!)」
「永遠をさ迷い続けるのじゃ……凡愚な者よ」
「(誰かッ! 助けてくれェェェ―――……)」
「貴様に「黄金の時代の天国」を生きる権利は無い……さて行くかシヴァ、ヴィシュヌ」
男達三人は踵を返して官邸を後にする。
「ジャスト三分……段取りよく行くと気分が良いわい
一番の不安要素だった鳩山田を早々に潰せてよかった」
「では、これより作戦に取り掛かろう」
「東雲所長らには手はず通り連絡している……開始時刻は後五分……」
- 517 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/27(日) 23:49:04 ID:???0
- **
――警察庁長官室
一室で二人の男が向い合って話し合っていた。
「長官……事態は急を要します」
「久坂君……我々警察や政府は奴らの存在を知っていた……
STRなる組織を旗揚げした鳩山田も恐らく殺されただろう……」
「警察の協力は必要です
私達のチームでは奴らを全滅に追い込むことは難しい」
「しかし……力になれるだろうか?
警察の中にもスタンドという能力を持った人間もいないことは無いが……」
「いえ……機動隊やSATの要請をお願いしたいんです
スタンドは無敵の力ではありません
銃器や爆弾、閃光弾など戦闘に役に立ちそうな武器はある
それに一般市民を避難させるためにもいて欲しい」
「なるほど……分かった
全面的に協力をしよう
確かに市民を守るのは我々の勤めだ」
「ありがとうございます
それともう一つ……」
「何かね?」
「私がもっとも信頼を置ける人物……”彼”の力が絶対必要だ
おそらく海外にいると思われますが……呼んでいただけないでしょうか」
「あの男か……一度会ったことはあるがあまりのオーラに圧倒されそうになった
来てくれるかは分からないが話は取り付けよう」
久坂は窓のほうへ歩いて外を眺めながら云った。
「奴らが次に取る行動は大体分かります」
「それは本当か!? ならば早急に対策を……」
- 518 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/27(日) 23:49:29 ID:???0
- **
――都内某所
「うぐ……急に体が……熱い……」
胸を押さえながら呼吸を荒くした壮年の男が街の雑踏で倒れる。
通りすがった少年が男にぶつかる。
「オイ、オッサンッ! 痛ェじゃねー……がはッ」
ドサッ
少年も意識を残したまま地面に倒れて息を荒げる。
「ぐぁぁ……ぐるじい……」
次第に周りに人間も倒れこんでいく。
死んだわけではなく何とか立ち上がって物にしがみつきながら移動している者もいたが。
苦しみ悶える群衆の中で顔色一つ変えずに立ち尽くす三人がその場を後にする。
「ウイルスは十分に散布出来たようだな……もういいだろう、次の場所へ移ろう」
全身を妙な茶色いスーツで纏った男が倒れこむ人達を一瞥してから云った。
「東雲所長……本当にこんなことをしても大丈夫なんでしょうか?」
白髪の男が全身スーツの男へ訊いた。
「何も臆することはない。三大神のお考えに間違いはないのだ」
「そうだぞ、阿久根ッ! こんなに楽しいことをやらずにどうする!?」
「しかし……ラムダの連中が嗅ぎつけてきたら……」
東雲と呼ばれる男は阿久根を睨み据えた。
「ひッ! す、すみません……」
「時間がないんだ。急ぐぞ」
- 519 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/27(日) 23:49:48 ID:???0
- **
――悪門荘
「久坂さんから電話があった。今すぐ東京へ発てと……」
携帯をパチンと閉じた兄貴がこちらに顔を向ける。
「てことは爆破事件は本当にヴェーダの仕業だったのか!」
「どうやらな。ラムダの皆には連絡が行き届いてるようだ
今すぐ空港に行って合流しよう」
外に出ると管理人のミニバンに乗り込んだ藤原さんがいた。
「君達も早く乗りなよ」
俺達は促されたまま車に乗り込んだ。
そして、空港に着いたらクラスメイトやラムダのメンバーが勢揃いして待っていた。
「はいこれ、防護服とマスクよ。飛行機の中で着てね」
白河さんから手渡しで貰った服を持って俺達は飛行機に搭乗する。
予約など取っていなかったが手回しして特別に貸切運行だ。
「東京なんざ初めて行くぜーッ! 楽しみだなユーツー!!」
何故か修学旅行にでも行くかのような田舎者カズマ君がはしゃぐ。
やめてくれ、恥ずかしいから!
俺達は機内で白い防護服に着替えて着席した。
「じゃ俺寝るから着いたら起こしてくれ……」
これからの戦いに備えて兄貴は深く眠った。
俺も倣って寝ようかと思ったら隣に座っていた雪華ちゃんに話しかけられる。
「祐介君は……怖くないの?」
どうか虚ろな表情だ。
「いや……確かに怖いのもあるけど因縁の相手だからね
この手で倒せるならやっぱ嬉しいかな」
- 520 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/27(日) 23:50:45 ID:???0
- 「私は……怖い……」
「えっ?」
「今まで言わなかったけど私の父はヴェーダで働いているの
あいつのことは大嫌いだけど……それでも……戦うことになったら……」
泣いてこそいなかったが声は震えていた。
俺は何も声をかけてあげることが出来なかった。
もし彼女の父親と自分と戦うことになったら手加減することも逃がすことも出来ないだろう……。
そして一時間半が経って東京の空港に到着。
防護服とマスクに身を包んだ従業員が数人いたが、他の客は一切おらず閑静としていた。
そして、同じく防護服を着た人がこちらへ近づいてくる。
「みんな早速だけど来てくれ」
我らがラムダのリーダー、久坂氏だった。
俺達は彼の後についていき、大名行列のようにゾロゾロと列をなして歩いた。
しかも白い防護服を着た怪しい集団である。
俺達は暫く歩いてホテルにたどり着いた。
ワンフロアを貸しきっているそうだ。もっとも客はほとんどいないが。
部屋の中に四十人近い人間が入ることになった。
妹はお構いなくという感じでテレビを勝手に付けた。
俺達はソファーや椅子に腰掛ける。
久坂さんは立ったまま話し始めた。
「まあ御覧の通り東京はウイルスによって大パニックだ
まだ死者こそいないが、これだけ即効性のあるウイルスは驚異……
だが、奴らは今回大胆に動いてきた……総理大臣を殺すほどにな
我々にとっても奴らを叩くなら今しかないというわけだ」
「しかし……見つけ出すことが出来るでしょうか?」
吾郎さんが訊いた。
「人海戦術に出るしか無いだろう
そこで警察に協力を仰いで一緒に探してもらうことになった
我々は五つのチームに編成してそこに機動隊やSATの隊員数十名ずつ加える」
- 521 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/27(日) 23:50:59 ID:???0
- 「普段のチームのままでいいのでは?」
サングランスをかけたスーツ姿の鷲崎さんが訊いた。
「うむ。そのほうがよさそうだね
新たに加入した祐介君の友人達はそれぞれ割り振って入れさせてもらうよ
しかし、戦闘する場合でも必ず皆へ連絡をすることだ」
「分かりました」
「ちょっ……なにこれ! みんなちょっとテレビテレビ!」
妹の声が向こうから聞こえてきて緊迫した空気を破る。
どうやらテレビに何かが出ているらしい。
「何かあったの?」
俺はひょいと画面の前に陣取る妹を押しのけて観てみる。
そこには見たこともない男三人が映っていた。
おそらく芸能人でも有名人でもないだろう。
一体誰だろう?と考えていたら画面の中の男の一人が喋り始めた。
容姿は銀髪で顔立ちは整っているが勇ましい表情のロングコートを着た男だった。
『皆さんごきげんよう。そして、初めまして。
私は本日を持ってこの国を統治するブラフマーという者だ。以後お見知りおきを……
さて、国会議事堂及び官邸爆破事件、ウイルス騒動は全て私達ヴェーダが行ったものなのだよ』
「なんだとォォォ―――!!?」
俺達は驚愕する。まさかこいつらがのこのこと出てきて顔を晒すとは。
「あの糞野郎……」
久坂さんはぼそりと呟いた。
普段見せることのない鬼気迫る表情である。
『私達がウイルスで行うのは……そう選民
よりよい国づくりを行うためには今の日本は邪魔な人間が多すぎる……
変革をする礎としてまずこの国にとってマイナスとなるファクターを全力を持って取り除きたい』
男は数秒ほど真正面を向いたまま沈黙をし、また話し続けた。
- 522 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/27(日) 23:51:17 ID:???0
- 『ウイルスで死ぬのは感染から一週間前後……
しかし、ご安心頂きたいッ! 我々はちゃんとワクチンを用意してあります
このワクチンさえ摂取すれば今まで通り生活することが出来るのです
だがね……タダで渡すのは虫が良すぎる話だ……
我々ヴェーダに一生の忠誠を誓う……それが条件だ』
「何ィ!?」
『裏切り者が出ることを考えて体内に爆弾を埋め込ませてもらおうか
各地に監視員を設置して少しでもそういう素振りが見られた場合は即ドカーン……ハッハッハ!!
以上のことに理解した上でワクチンが欲しい人間は今から云う病院へ行き給え』
「く、久坂さんッ! こいつがヴェーダのトップですか!?」
兄貴が険しい形相で尋ねる。
「ああ……忘れもしないさ……こいつが現ヴェーダを率いてる人間だ……
そして、ヴェーダを立ち上げた狗飼さんを殺して組織を乗っ取った男……」ギリ
『私はこの世界を変革し、”黄金の時代の天国”へ導くことを約束しようッ!
何も恐れることはない……私の教えを守って私についてくればいいだけの話だ
今の腐った政治、司法、教育、経済……全ては私の手で生まれ変わるッ!』
それから一通り演説をして男らは去っていった。
奴らのどす黒い邪悪に虫酸が走る。
「それでは、久坂班、鷲崎班、天童班、金子班、映見班に別れて捜索を開始しよう
医療班や智恵ちゃんはここで待機していてくれ」
「さ、祐介君行こう」
俺は天童さんについて行く。
天童班は班長の天童さんに俺とエビちゃん、五十嵐さん、そしてタクマと雪華ちゃんで編成されている。
それから機動隊やSATの隊員、警官等三十人余りを引き連れての行動だ。
まずはブラフマーが云った病院を捜索するということになった。
俺達は最寄の靴木衣病院へ向った。
「やれやれ…街中とは違って病院はウイルスに感染した患者でごった返しているな」
辺りの光景を見渡して天童さんは云った。
「それより早くヴェーダの連中を見つけないと!」
俺は捜すように促す。
「そうだな……人をかき分けて奥へ進んでみよう
オラ、どけッ!」
普段は優柔不断なくせにこういう時は積極的な人だな……。
- 523 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/27(日) 23:51:44 ID:???0
- 「どうやらこの部屋……のようだな……」
突き当たりの一番最後の部屋の前で俺達は構える。
天童の合図で俺達七人がまず先に突入した。
ガチャッ バンッ ダダッ
「久しぶりだな……有嶋祐介
あの時生かしておいた恩を忘れて色々としてくれたみたいじゃないか? ああ?」
そこにいたのは忘れもしない顔だった。
「テメェはッ!!」
眼前にいるメガネをかけた長髪の男を睨みつける。
「ククク……覚えてもらえていたようで嬉しいぜェ〜?」
男は笑いながらスタンドを出した。
人間の身長くらいある傘を持った人型のスタンドだった。
俺達もそれを見てスタンドを出して身構える。
「ハハハ! 俺とやろうってのか? 笑わせるなクソガキ
今じゃ俺も『インドラ』の隊長だ……あの時とは違うッ!
あの時受けた屈辱は今ッ!この時を持って晴らさせてもらおうッ!!」
といいながらも男は一歩も動くことなくその場に立ち止まっていた。
一体何のつもりだろうか。
「オイッ! 祐介ッ! 頭の上に雲みてェーなもんが出てるぞッ!」
天童さんの声でようやくスタンド攻撃されることに気付く。
手で触れてみると冷たい感触があった。
やがてポタポタと雨が振り、次第に雨脚が強くなっていくのが分かった。
男は目を見開いて殺気じみた声で云う。
「Raindrops Keep Fallin'on My Head(雨にぬれても上を見ていろ) ッ!!」
To Be Continued...
- 524 : ◆U4eKfayJzA:2010/06/27(日) 23:57:37 ID:???0
- Raindrops〜まで出てくるとは……、そしてぽっぽを焼き鳥にしたスタンドもなんとなく見当がつきました。
凶悪スタンドばかりで、いよいよ最終決戦への期待が高まる! 乙でした!
- 525 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/27(日) 23:58:24 ID:???0
- クソ眠い…寝ます…最後らへん半分眠りながら書いてました…
さて突然ですが、問題です
正解者には3P差し上げます
Q.次回死人が何人出るか(スタンド使いは除く)
A.1人
B.2人
C.3〜5人
D.それ以上
- 526 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/28(月) 00:11:51 ID:???0
- >>524
さすがU4先生だ…全てお見通しのようですね
RKFMHは序章の頃から出そうと決めてました
『インドラ』は戦闘能力に秀でてる設定なので凶悪なスタンドいないかなーって探してたんですがあまり見つからなかったw
こんなこと言うのはあれなんですけど皆さんベテラン案師だからはっちゃけ無くなってるのかも
能力も素敵だしパラメーターも破綻がなく一体で丸一話作れそうなスタンドが多いけど逆にシンプルに凶悪でチートなスタンドが少ないというか
かといってチートランクに入っちゃうのは強すぎて扱えませんがw
決着まで後2話程度ですかね…何とか盛り上げていきたいと思います
コメントありがとうございました!
- 527 :名無しのスタンド使い:2010/06/28(月) 01:57:27 ID:???0
- 乙!
病院には青い魔物が住んでそうな気がしたでし。
死人は6FUのゾンビ要員かな?特に根拠はないけどCで
- 528 : ◆U4eKfayJzA:2010/06/28(月) 11:45:36 ID:???0
- 死人の量……。何気に最多死者数を誇っている乙1先生なら、国の一つや二つは造作なく消滅させてくれる、と信じてDで。
スタンド使い以外なら、原作でもチョコラータ一人で大量殺戮こなせてる訳ですし。
- 529 : ◆neHjiUQ7Jo:2010/06/29(火) 00:39:08 ID:qHzcBYwM0
-
ノ´⌒ヽ
γ⌒´ \
.// "´ ⌒\ )
i./ ⌒ ⌒ .i )
i (●)` ´(●) i,/
| ::::: (_人_) ::::: |
(^ヽ__ `ー' _/^)、
|__ノ  ̄ ̄, |、)|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ノ´⌒ヽ
γ⌒´ \
.// "´ ⌒\ )
i./ ⌒ ⌒ .i )
i (⌒)` ´(⌒) i,/ Dで。
| ::::: (_人_) ::::: |
(^ヽ__ `ー' _/^)、
|__ノ  ̄ ̄, |、)|
- 530 : ◆6JEWITNnHo:2010/06/29(火) 00:50:32 ID:WX92op8M0
- Raindropsryは自案やし焼き鳥職人は企画中のSSで使う予定のんやし(多分)何かもうとんでもなくwktkしてきましたよw
あと自分もDを選択させてもらいます
- 531 : ◆70nl7yDs1.:2010/06/29(火) 01:23:59 ID:???0
- こういう反応があると逆に1人しか殺したくなくなる自分
>>527
6FUも活躍させたいんですよね
>>528
何という無茶振りwww
>>529
ぽっぽさんwww
かませ扱いで出しちゃってごめんなさいwww
>>530
Raindrops使わせていただきました!ありがとうございます
焼き鳥職人www
- 532 :名無しのスタンド使い:2010/07/03(土) 10:44:37 ID:???0
- 遅らばせながらDを選択したいんですがかまいませんねッ!
- 533 : ◆70nl7yDs1.:2010/07/15(木) 19:41:46 ID:???0
- 今気づいたけど楓って祐介達と同じチームだったんだな
設定忘れてて何故か入ってないことに…
- 534 : ◆70nl7yDs1.:2010/07/16(金) 04:19:58 ID:0QbGBetM0
- 第十章「WAR(闘) 」
――2010年4月10日土曜 東京都 某病院内
「何ッ!! こいつ……!!」
祐介は男の方へ走った。
「何のつもりだ? もしかして……ククッ」
男は祐介が目前に迫ろうかというのにも関わらず余裕面をかましていた。
「雨雲を引き離したッ!!」
その状況を見たタクマが云った。
祐介の頭上にあった雨雲は走ったことによって一時的に離れたのだ。
しかし、雨雲は走る祐介を追った。
「雨雲から何かして攻撃するんだろう? だけど接近すればどうかな?
自身にもダメージが及ぶ可能性があるんじゃないか!?」
「フフン……バカめがッ!!」
「今に哂えなくしてやるぜッ!! くらえッ!!」
『U2』は射程に入った男目掛けて右ストレートのパンチを繰り出す。
「甘いなガキ……俺の雨雲は素早いんだよ……
『止まない雨』を体感しなッ!!」
すでに雨雲は祐介の頭上へ戻っていた。
それに気付いた祐介は男のほうへ飛び移る。
「クック……誤算だったな……」
男はスタンドが持つ傘を体の前に広げた。
「な……!?」
飛び移ろうとした祐介は傘にぶつかって遮られる。
祐介の頭上から高水圧な水が押し寄せる。
それは刃物さえも凌駕する威力を持つウォーターカッターのようなものだった。
「ボノボノボノボノボノォォォ――――――!!!」
即座に雨に対してラッシュを打ち込んだが、その威力は尋常ではなく、祐介の首元を切りつけた。
- 535 : ◆70nl7yDs1.:2010/07/16(金) 04:20:40 ID:0QbGBetM0
- 「うおあああああああああああああ」
「フハハハ!! 確実に頚動脈いったッ!!」
「うぐゥ……」
夥しい量の血液を流出させて祐介は倒れこむ。
「祐介君ッ!」
雪華は『コミュニケーション・ブレイクダンス』の銃弾を祐介の背中に撃ち込んだ。
「お前は……東雲所長の……! データによると確か……」
「ボノォ!!!」
起き上がった祐介はスタンドで男を殴った。
しかし、攻撃は何者かによって遮られてしまうのだった。
「よそ見してちゃ駄目じゃないですか藤沢さん」
天然パーマの男が突如、窓を割って入り、スタンドの尻尾で『U2』の攻撃を止めたのだ。
「オォ…厚木か! ナイスタイミングだ」
「増援かよ…」
祐介はバッと飛び退いて後退する。
「ハァ……ハァ……」
あんな一瞬で能力を使ったため雪華は精神をすり減らして呼吸を乱していた。
「ありがとう……後は俺達に任せて!」
「ああ。だが、生半可な覚悟じゃ無理なようだな……」
天童は少し及び腰に云った。
「皆さん、患者達の避難をお願いします!」
五十嵐が機動隊員達に呼びかけた。
「ああ…任せろ!」
隊員達は患者達の体を抱えて外へ運び出そうとする。
「大丈夫か? 立てるか?」
- 536 : ◆70nl7yDs1.:2010/07/16(金) 04:20:56 ID:0QbGBetM0
- 隊員の男はブロンドの髪の女性の肩を叩いて訊いた。
「ええ…水が飲みたいわ…」
「水? わ、分かった…持ってこよう」
すぐに隊員の男はペットボトルに入った水を持ってきた。
「ありがとう。これで十分よ」
そう云うとブロンドの女はすくっと立ち上がった。
それは衰弱しきった患者のような動きではない。
「な…!?」
動揺する男を尻目にペットボトルの蓋を開けた。
「『ゴーストシップ・ウィズ・デアデッケン』ッ!! 水は加圧する…」
ジョロジョロと垂れ流した水は凄まじい勢いで男のほうへ飛んでいき、体を豆腐のように切り裂いた。
「な、何だ!?」
振り向いた他の隊員達も同様にウォーターカッターでバラバラにされていく。
「うおああああああああああ」
悲鳴が病院内の廊下を木霊する。
「な、何だアイツは――!!」
祐介たちも直ぐ様女の行動に気が付いた。
「フフッ……綾瀬も来たか……」
藤沢は女の名前を口にした。
「やめてよね。ファミリーネームがダサくなるくらいなら結婚しないほうがよかったわ」
「よく言うぜ。金目当てで結婚したくせに」
天然パーマの厚木が皮肉っぽく云った。
「まあいいわ……さっさと片付けて遊びに行きましょ」
ツカツカと祐介達の方へ歩み寄っていく。
「うぐぐ……し、死ねッ!!」
- 537 : ◆70nl7yDs1.:2010/07/16(金) 04:21:09 ID:0QbGBetM0
- 生き延びた隊員の一人が銃を発砲した。
銃弾は綾瀬のほうへ飛んで行く。
だが、大量の砂が彼女の前に壁を作って銃弾を防いだ。
「ダメじゃないか……確実に息の根を止めないと」
「ありがとう戸塚君!(ふふ…わざと敵を一人生かしておいてよかったわ)」
戸塚と呼ばれた見た目十代後半といったところの少年は脚が切断されて死にかけの隊員の男へ近づく。
「や、やめてくれ―――ッ!!」
戸塚の身の丈より大きいゴーレムが出現する。
「『クイック・サンド』ッ!!」
その大きな手で男の顔を掴んでトマトを潰すかのように一瞬で握りつぶした。
「野郎……ッ!」
祐介は眉間にシワを寄せて戸塚の顔を睨みつける。
「僕に歯向かう者は皆こうなるんだよ」
「いい加減にせぇよ! お前みたいな奴は私が倒してやる!!」
激昂した蛯原はロブスターのような外見のスタンドを出して攻撃する。
「やれやれ……育ちの悪そうな女だな」
ゴーレムのような『クイック・サンド』の腕が『エヴィータ』の爪による攻撃を防ぐ。
「な!」
「その程度のパワーが僕に届くと思ったわけ? 少しは楽しませてくれよ!」
そのまま腕を『エヴィータ』の懐に叩きつけ、蛯原は遠くへ飛ばされる。
「エビちゃん!!」
祐介が叫ぶ。
「大丈夫だって! こんな奴にやられるほどヤワじゃないよ!」
『エヴィータ』は口から泡を噴き出して蛯原の体を包み込む。
泡は次第にスーツ状になっていく。
- 538 : ◆70nl7yDs1.:2010/07/16(金) 04:21:22 ID:0QbGBetM0
- 「何ッ!?」
戸塚は目線を上へ上げる。
蛯原は自らのスタンド能力によって空中を自在に泳ぐことが出来るのだ。
蛯原はスタンドに乗って戸塚の上にまで接近する。
「(速いッ!)フン……僕のスタンドが空は飛べないが形は変化出来るんだよ……」
ガタイの良かった『クイック・サンド』が徐々に細長い形状へ変化していく。
「えっ!?」
「これで届く……!!」
頭が天井に着くほどの体長になった。
振り下ろした腕が蛯原をとらえる。
スタンドでガードをするが地面に叩きつけられた。
「んぎゃ!」
「蛯原ッ! 俺も戦うぞ!!」
天童が割って入ろうとすると綾瀬がそれを遮った。
「せっかく面白くなったところなのに邪魔しないでよね」
そう云ってペットボトルを取り出した。
「(あの水は……くらうとマズイッ!)」
『ティアーズ・イン・ヘブン』で強烈な気流を発生させて綾瀬の持つペットボトルを吹き飛ばす。
「これで水の攻撃は出来ないだろう……?」
「何を云ってるのかしら……液体なら床に撒き散ってるじゃない!」
「何だと!?」
死体から流れる血液が天童の体を貫通していく。
「跪きなさいッ!!」
「ぐぁあああ……」
胴体や手足に攻撃を受けた天童は床に膝をつける。
「天童さんッ!!!」
- 539 : ◆70nl7yDs1.:2010/07/16(金) 04:21:37 ID:0QbGBetM0
- 慌てて祐介が助けに入ろうとするが――
「オイオイオイィィィ〜〜〜俺を差し置いてよそ見ったァ……余裕かましやがってよォ――!」
藤沢が目をひんむいて云った。
「ヤバい……祐介! 頭上にまた雨雲がッ!!」
タクマが祐介に教える。
「クソッ!」
「俺達なんかに歯向かわずに暮らしとけばよかったものをよなァ〜〜〜!!
身の程知らずのクソガキがよォォォ〜〜〜……死ねッ!!!」
藤沢はドスの利いた声で叫ぶ。
勝ち誇った顔で。
しかし、その時バンッ!という音が部屋の中を轟かせた。
「ぐァアアア……」
「死ぬのは……あんた達だけでいいのよ」
『コミュニケーション・ブレイクダンス』が発砲した銃弾が藤沢の頭に入り込む。
「ぐぬぬゥゥゥ……がはッ! 何を……しやがッた……」
よろめきながら机に雪崩れ込む。
「今にもくたばりそうだが……テメェに対しては可哀相だとかは思わねーな……
地獄でたっぷりとしごかれろよッ!!」
「や……やッめッろォォォォォォ」
「ボォーノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノォォォ―――ジ・エッジ!!」
「ぐぎゃァアアアアアアアアアアアア」
ラッシュを受けた藤沢の頭はメキメキと音を立てて机の中に沈んでいく。
そして直ぐ様走って天童の元へ駆け寄る。
「大丈夫ですか……!!」
「俺のことより……蛯原のことをッ!!」
- 540 : ◆70nl7yDs1.:2010/07/16(金) 04:21:50 ID:0QbGBetM0
- 「ククク……こっから先には行かせねーぜ……」
「そうよ。戸塚君の邪魔はさせないわ」
厚木と綾瀬が祐介達の前に立ちはだかる。
「なら実力行使で行くまでだ……吹き飛べッ!!」
上空に上がった天童が下流気流を発生させた。
気流に二人は飲み込まれる。
あまりにも強力な気流なため、床は吹き飛んで床下が見えてしまう。
「やったか!?」
天童は気流を止め、確認する。二人の姿は無かった。
「て、天童さんッ! 後ろ後ろ!!」
「え?」
壁にスタンドの尻尾を刺して難を逃れていた厚木と抱えられる綾瀬がいた。
血液によるウォーターカッター攻撃が天童を襲う。
「ぐッ!!」
痛みによる声が漏れる。
しかし、本来受けるはずであった傷は天童には無かった。
代わりにタクマの『6・F・U』が受け止めたのだ。
「タクマァァァ―――!!」
「なぁに……これくらいなんてこのないさ……」
棺桶で受け止めたからダメージのフィードバックは比較的軽かった。
「何度でもやってやるわ……喰らいなさいッ!」
再度、ウォーターカッター攻撃が来る。
「クソッ……近づけねぇ……あそこにさえ行ければ……」
『6・F・U』は十字架の槍を回しながら攻撃を防御する。
徐々に十字架の形が崩れていく。
祐介は厚木と対峙する。
「俺さー腹減っちゃったんだよねー。そろそろ死んでくれないかな」
- 541 : ◆70nl7yDs1.:2010/07/16(金) 04:22:16 ID:0QbGBetM0
- 「タクマ……お前のしたいことは理解してるつもりだ
時間稼ぎなら俺に任せてくれ!」
「祐介……分かった!」
二人の間で意思疎通が交わされ、タクマは廊下の方へ出た。
「逃がさないわよ!!」
「ボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノォ――!!」
祐介はラッシュを繰り出して厚木と綾瀬に接近する。
二人は祐介の能力を知っているので避けながらカウンターを狙おうとしていた。
「もらったァ!」
尻尾の先についた鋭い刃が祐介の左腕に刺さる。
スピードで『U2』をまさっていたのだ。
「ッ…!」
「ハハッ! これでトドメだ!!」
だが、様子がおかしい。厚木のスタンドは身動きが出来なくなっていたのだ。
「何だ……し、沈むッ!!」
「狙うなら心臓か頭だろ。掴めばこっちのものだ」
『U2』の能力を食らった厚木は床を貫いて下半身がはまってしまう。
「あんたみたいな無能はいらないよ!」
「綾瀬……ッ! なにす――うぎゃああああああああああ」
綾瀬はスタンドの手刀で厚木の首を掻っ切った。
「な、何してんだテメェェェー!! 仲間じゃないのか!?」
「仲間だァ!? ふッざけんなボケッ!!
こんな役立たずが仲間はないでしょ!! 私は強い男以外興味ないのッ!!」
「お、恐ろしい女だ……タクマまだか!?」
「いや……もう準備完了だ」
部屋の中へ戻ってきたタクマがそう云うと人影がゾロゾロと現れた。
「何よこれッ!! さっき私が殺した奴らじゃない!!」
- 542 : ◆70nl7yDs1.:2010/07/16(金) 04:30:54 ID:0QbGBetM0
- それは『6・F・U』が生み出したゾンビ群であった。
「ゾンビ達……あの女を貪れッ!!」
タクマが綾瀬の方を指差す。
ゾンビはタクマに言われるがまま綾瀬の方へ歩いていく。
「きゃああああああ!! こっちに来ないでェェェ!!」
悲鳴をわめき散らしながら部屋の隅へ逃げる。
だが、大量のゾンビが囲んで逃げ場は無くなった。
「さあ祐介……あの子を助けに行こうか」
「ああ……行こう」
祐介は疲れ切った雪華を抱えて部屋を出る。
続いて天童と五十嵐も部屋を後にする。
最後に出たタクマがバタンとドアを閉じた。
その部屋の中がどうなったかは祐介達は知らない。
ただ、綾瀬が部屋から出て来ることは無かったが。
***
秀彦達が訪れた病院でも戦闘が起こっていた。
「鷲崎さん……こいつらめっちゃ強いんスけど! ヤバくないですか!?」
苦戦を強いられているヤマトが弱音を吐いた。
「うるせぇよ。何とかするしかないだろ!」
「あいつらは俺達が喋ってるのを黙ってみてくれてるほどお人好しじゃないですよ!」
秀彦が味方に対して云った。
「秀彦の言う通りだぜ! 攻めるっきゃねー」
まさに戦闘中の圭吾は微塵も自信を失ってはいなかった。
「君達の攻撃は無駄なんです。云ってること分かります?」
インドラのリーダー格と思われる清書な少女が秀彦達に話しかける。
「さぁね……無駄かどうかなんて終わってみるまで分からないさ」
秀彦も圭吾の元へ駆けつけて参戦した。
- 543 : ◆70nl7yDs1.:2010/07/16(金) 04:35:30 ID:???0
- すんません、投下はここまでです…
次はいつになるかな…
- 544 : ◆70nl7yDs1.:2010/07/16(金) 04:43:40 ID:???0
- ちなみに>>現時点で525はDが確定となりました
>>528>>529>>530>>532の方々にはそれぞれ3P贈与します!
- 545 : ◆70nl7yDs1.:2010/07/16(金) 04:46:28 ID:???0
- 次は第十章で味方サイドの死人が何人出るか問題にしてみます
正解者には4pを差し上げます
A.0人
B.1人
C.2人
D.3人
E.4人
F.5人
- 546 : ◆U4eKfayJzA:2010/07/16(金) 11:24:05 ID:40on1FZU0
- あ、あれ? 智恵ちゃんが駆けつけてきて、アクアティック・アンビエンスでRaindrops〜を無力化させてフルボッコにするんじゃなかったんだ。
予想外の流れだったけど、祐介たちの圧勝でよかった。乙でした!
味方キャラの死者数は……、乙1先生ならゴミのように人を蹴散らしてくれると信じてF、と言いたいところだけど、無難なDで。
- 547 : ◆70nl7yDs1.:2010/07/16(金) 15:46:35 ID:???0
- >>546
それやろうかと思ったけどさすがになーと思って踏みとどまりました
後は水道管破裂とかやりたかったけど…うーん
Raindrops〜のあっけなさは異常ですね(チートだから…)
Dですか…いいんですねDで…フフフ
- 548 : ◆70nl7yDs1.:2010/07/16(金) 20:05:44 ID:???0
- んじゃ問題は締切りとします。
投下開始!
- 549 : ◆70nl7yDs1.:2010/07/16(金) 20:06:13 ID:???0
- 「ねぇ……ななみん……こいつらもう殺っちゃおうよ……飽きたしさ……」
ブツブツと陰気な表情の女が呟いた。
爪を噛んだまま喋ってるため聞き取りづらい。
「まあアリカがそこまで言うなら……藤枝ッ! 早く倒しなさい」
「名字気に入ってないから名前で呼べよな! 左京だよ左京!」
「ごちゃごちゃうるさい……まずその口を針で縫い合わそうか……」
アリカが殺気を込めた声で藤枝を脅かした。
「うひぃ……分かったよ……もう藤枝でいいよ!」
至極どうでもいいやりとりをした高校生程度の男が前に出てスタンドを出す。
鉤爪の付いた細長い四肢と蝙蝠に似た頭を持つ2メートルほどの獣人のようであった。
スタンドはキリキリキリキリ……と謎の声を発しながら近づいていく。
「ぐああ……耳を塞いでも意味ねぇ! 視界がグルグルする……」
圭吾はふらつきながら後退し、尻餅を着いて倒れた。
他の者も平衡感覚が無くなってまともに歩けなくなっていた。
「くっ……あの女が来るぞ……!」
鷲崎は必死に堪えてスタンドを構える。
「どんな風に歪めようかしら……ふふふ」
アリカは獣のように獰猛そうな人型スタンドを出して走る。
「無敵の『ビッチェズ・ブリュー』で何とかしてくださいよォ――! 鷲崎さん!!」
怯えきった顔のヤマトが鷲崎に話しかけた。
「無茶云うな……頭ン中が揺さぶられてるみたいで気持ち悪いぜ
俺が攻撃してもあの傘の女に全て遮られてしまう……!」
傘の女とは七海のことだった。
血に染まった傘はあらゆる攻撃を無効化するという最強の防御スタンド。
十分前からラムダ側は攻撃しているが全てあの傘によって無効化されていた。
「ま……普通に考えればあの傘の女を引き離せばいいってことですよね
俺と京輔が注意を引き付けるんで後はお任せします」
秀彦は云った。
- 550 : ◆70nl7yDs1.:2010/07/16(金) 20:06:33 ID:???0
- 「数では圧倒的に勝ってるものね
いいわ、私はこっちでサポートに務める」
「ジョアンナさん……ご健闘を!」
秀彦と京輔は踵を返して傘の女の方へ滑っていった。
平衡感覚は失われていたが、秀彦の『ステイアウェイ』の能力で何とか動くことは出来た。
「何あれ……たったの四人で……私を倒せると思ってるわけ……?」
アリカのスタンドが拳を振り下ろす。
「ファァァイユゥゥゥァァァ―――!!!」
圭吾のスタンド『ファイヤー・フォックス』の拳とぶつかり合った。
パワー・スタンドともに全くの互角であり、両者ともノーダメージに終わる。
「へッ! テンションの上がった俺様は更に強くなるぜ? 覚悟は――」
「ふふふ……残念でした……」
アリカは凄みを感じさせる表情で云った。
指を加えるという仕草がその恐怖感を煽る。
その刹那、グニャリと圭吾の五本の指が変形する。
「うぐあああああああああ」
声を軋ませながら鳴いた。自信に満ち溢れていたその表情は苦しげなものへと歪ませていく。
「お、おい! 大丈夫か大沢君ッ!」
「ワシザキ……敵から目を逸らさないでッ!」
ジョアンナは鷲崎に花を咲かせてクッション代わりにして守った。
花は原型を留めること無くいびつな物へと変貌を遂げる。
「それそれぇ……ふふふ……逃げてばっかりじゃ面白くないでしょ? あんた達のハラワタを口から吐き出させてあげるわ……」
「うるさいッ! 黙れッ! 来るなッ!!」
ヤマトは泣き喚きながらガムシャラに攻撃した。
だが、その攻撃は空を切るばかりであった。
「いいわよぉ……でもね……攻撃ってのはこうやるのよ
『ブラック・ワルツ』ッ……」
- 551 : ◆70nl7yDs1.:2010/07/16(金) 20:06:52 ID:???0
- その攻撃は『リンキン・パーク』の右腕をへし折った。
「うわああああああああ!!」
さらに、折れた腕が丸まっていき、およそ人間の腕とは思えない形へと変化していく。
「もっと……もっともっと……苦しめてあげなきゃねェ……んふふ」
アリカは口頭を釣り上げて不気味に笑った。
「イカれてるわね……ワシザキどうする?」
「俺はかつて杜王町という町の青年達から様々なことを学んだ……」
「死ねェェェ……」
『ブラック・ワルツ』のパンチが鷲崎の顔面の前にまで迫る。
「守りたい町がある……守りたい人々がいる……
だから俺は全力でこいつを倒すッ!!」
鷲崎はスタンドの両手で『ブラック・ワルツ』の腕にしがみついた。
「何よこいつ……イカれてるの? ふふふ……でも、どうなるのか見物ね……」
「ジョアンナ! 君のスタンドで僕とこいつを一緒に縛り付けてくれッ!!」
「ワシザキ……あなたまさか……」
「ああ……僕はここで死ぬ……これは必要な犠牲ッ!
この世界の平和を守るためだ……覚悟は出来ているッ!」
「わ、分かったわ……『スウィート・ハニー・ラヴ』ッ!!」
ジョアンナはスタンドで鷲崎の背中に触る。
すると見る見るうちに花が咲き返り、茎が伸びて二人の体に巻きついていく。
「は、離せ……お前ら……許さない……」
ギヂギヂと爪を噛みながら呟く。
「別に許してくれなくていいぜ……」
周囲の空気が変わる。
鷲崎はスタンドで首を掻っ切った。致死量の血液が流れ出る。
「わ、鷲崎さん……」
「短い付き合いだったが――……楽しかったな
- 552 : ◆70nl7yDs1.:2010/07/16(金) 20:07:05 ID:???0
- お前らならヴェーダを倒してくれると……俺は信じてる
じゃあな……」
それだけ言い残して鷲崎はアリカと共に爆発した。
モクモクと煙が立ち上り、その煙はまるで鷲崎をかたどったかのようだった。
「鷲崎さぁぁぁん!!」
七海と戦っていた秀彦が叫んだ。
「よくも私の可愛いアリカを殺してくれましたわね……」
「七海、敵はかなり疲弊してるッ! 殺るなら今だッ!」
「そんなこと分かってますわ藤枝……」
「よぉ……そこの兄ちゃんは遠隔操作型……嬢ちゃんは防御用のスタンドだろ?
勝ち目は無くなったんじゃない?」
京輔は冷静に訊いた。
「うるさいですわ!! 今にその口を黙らせてあげますッ!!」
「やれやれ……そうかいそうかい。じゃあ行くぜ……」
それから先は一方的となった。
攻撃の要を失った七海と藤枝は秀彦達には敵わず倒されてしまう。
「うぐ……こ、殺しなさい……それともなぶるのが趣味なのかしら?」
「いいや……あんたらにはヴェーダのボスさんを教えてもらわなくちゃいけないからな」
秀彦が冷淡な表情で睨みつけた。
「し、知らないわ……あの方々がどこにいるのかなんて……」
「そうだ! 知らないんだ!! 俺達は終わったら連絡を受けることになっていた……ハッ!」
「やれやれ……じゃあ携帯を貸してもらおうか」
「何をするッ!」
秀彦は遠慮なしに藤枝のポケットを探り始め、携帯にありつく。
「どれどれ……な!? 何だと……全部非通知だと……」
「バーカ……!」
「黙れ!!」
- 553 : ◆70nl7yDs1.:2010/07/16(金) 20:07:17 ID:???0
- 圭吾が上から肘打ちをして床に伏せさせた。
「イテテ……本当に知らな――ぐェ」
突如、藤枝の顔が真っ二つに切断される。
「藤枝!? あなた一体……あぐァ」
七海の頭も赤い爪が貫通し、次第に頭は膨張して破裂した。
「全くよォ〜……一騎当千だとか噂を聞いていたインドラさんも大したことねぇなあ?
何も上の情報は知らされちゃいねーだろうけど……捕まった以上は死んだも同然だろ」
探検家のようなファッションをした男が死体の後ろから現れた。
そして、もう一人。
「うふ……綺麗な血ね……」
パンキッシュな服装に身を包んだ少女がいた。
ハサミになった左手に血が滴っている。
「お……お前は……」
「覚えてくれてたの? 嬉しい」
「何喜んでんだ、ノン。さっさと始末するぞ」
「はぁーい倉敷さん」
するとさっきまで寝ぼけてたような顔が途端に鋭くなり、殺気じみた目付きに豹変する。
「ま、まずい……全員殺されるッ!! 皆逃げろッ!!」
秀彦は仲間に逃げるよう促す。
「一人たりとも逃がすかいボケナス」
「うぎゃああああああああ」
倉敷のスタンドは『カニンジン』と仮称していたものだった。
負傷した者たちを次々と切り裂いていく。
「うぎゃああああああ」
圭吾は腕を切り裂かれ、膨張して吹き飛んだ。
ヤマト、ジョアンナも同様に腕をもがれていく。
「この野郎ッ!」
- 554 : ◆70nl7yDs1.:2010/07/16(金) 20:07:30 ID:???0
- 「やめろ京輔ッ! 逃げることだけを考えろッ!!」
「誰が逃がすって? ほらこっちだよ」
『ジグ・ジグ・スパトニック』は地面にハサミを大量に作っていた。
開閉するハサミに脚を取られた京輔は切断されてしまう。
「痛ェェェ―――!!」
「クソがァ!!」
秀彦は京輔に矢印を付けて自分と一緒に逃げようと試みる。
「はい、チョッキン!」
だが、矢印がハサミによって切られてしまった。
こんなことは未だかつて一度もなかったことだ。
切られた矢印は機能を失い、加速が止まって停止する。
「どうやらここまでのようだな……さらばだ有島秀彦
『ワイルドライフ』、殺れッ!」
「万事休すか……」
秀彦は天を仰いだ。
「今日も空は青いなぁ」と呟いて。
***
ところ変わって久坂一行。
既に病院にいたインドラの部隊を撃破していた。
久坂はある男と話している。
「私はSTRの絹井だ。そして、こちらが機動隊大隊長の宗像さんである」
「よろしく久坂君。君の活躍は聞いているよ。お互い協力して奴らの足取りを掴もうじゃないか」
宗像は険しい表情を崩さない。
「ええ……是非お願いします」
そして、久坂は一行から遅れて病院の外へ出ようとする。
「(ローラー作戦を取るしか無いのか……? このままでは奴らは逃げてしまう!)」
「ほう……久坂……久しいな。誰かを探しているのかな?」
分厚いコートを着た長身の男が立ちはだかる。
- 555 : ◆70nl7yDs1.:2010/07/16(金) 20:08:14 ID:???0
- 「貴様はシヴァ……いや、夢野柩錯(きゅうさく)!!」
「夢野……柩錯……? ああ……昔の俺はそんな名だったか
だが、今は関係ないんだよ。今の俺はシヴァでしかない」
「名前だけ取って神気取りか? 馬鹿馬鹿しい……」
「何も知らないのか。まあ……いいだろう。教えてやろう
俺達は十年前にインドへ渡った。そこで出会ったのさ……」
「何にだ?」
「俺達三人はインドの聖地で瞑想に明け暮れた
一年が経とうとした時だ。俺達の中に三神が舞い降りた
そう……夢野青年には破壊神シヴァがな……
夢野の体は器に過ぎないのだよ」
「ふざけるな……そんなオカルトが存在するわけないッ!! 有り得ないッ!!」
久坂は頑なに否定した。
「ふ……凡人には理解出来ないか?
ならば見せてやろう……」クワッ
シヴァの両目の間に第三の目が開眼する。
それとともに神々しいまでの後光が射し込む。
「ぐゥゥゥ……なんてオーラだ……眩しすぎるッ!!」
「フハハハハハ!! どうした? 来ないのか?」
「くッ!!」
久坂は思わずたじろいだ。
「久坂さん!? どうしたんで――何だこいつは!?」
吾郎が駆け付ける。
「こいつが奴らの……トップの一角だよ必賦君」
続いて他の久坂班の者たちも集結する。
「フン……うるさいのが沸いて出てくるか……
久坂以外の相手は本来粛清部隊であるラーマにお任せするとしよう」
ゾロゾロと物陰から姿を現すラーマの面々。
- 556 : ◆70nl7yDs1.:2010/07/16(金) 20:08:35 ID:???0
- 「お任せください。シヴァ様」
その中の男が頭を下げて云った。
「七〜八人程度いるみたいだからそれなりに楽しめると思うよ
じゃあ俺は久坂と遊んどくから後は任せた」
「ハッ!」
三人の男女が襲いかかる。
久坂以外の八人+一匹が応戦する。
「こっちはこっちで盛り上がろうか、久坂」
シヴァはジリジリと距離を縮めていく。
「ぐ……」
久坂は後ろを確認せずに下がるが、壁に当たってこれ以上後ろへは行けなくなった。
大量の汗をかき、息を荒くする。
「おいおい……どうしたよ? 戦う前から疲れてどうするんだ」
「クソッ!」
壁を突き破って建物内へ入る。
「鬼ごっこか? いいだろう」
シヴァは後を追った。
「単純なスピードならパワードスーツを着た俺の方が上……! 後は……」
病院のコンセントをぶち破り、そこから電気を供給する。
「よし……充電完了だ!」
ガラガラ……
壁が音を立てて崩れる。
「シヴァ……来たか」
「探したぞ……だが、楽しい鬼ごっこもここで終わりだッ!」
「やれやれ。血気盛んなこった。覚悟しなッ!」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
対峙するシヴァと久坂は第一歩を踏み込んだ。
To Be Continued...
- 557 :名無しのスタンド使い:2010/07/16(金) 21:11:29 ID:0T9Ah0KM0
- ジグジグスパトニックちゃあんzぅぅう右派cpづfほすいhふぉしぇ!!!!!!!!
あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!ジグジグたん!!ジグジグたん!!!ぅううぁわぁああああ!!!
あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん
んはぁっ!ジグジグスパトニックたんの返り血浴びた服をチョキチョキしたいお!チョキチョキ!あぁあ!!
間違えた!髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!チョキチョキ!髪髪クンカクンカ!ペロペロペロペロ…!!
死んじゃったクローンたんかわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!
また会えてよかったよジグジグたん!あぁあああああ!かわいい!!かわいい!ぎゃああああああああ
…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!
ぐあああああああああああ!!チョッキンチョ!チョッキンチョ!!!チョッキンチョ!!!!!!
- 558 :名無しのスタンド使い:2010/07/16(金) 21:20:47 ID:0T9Ah0KM0
- ふぅ…
まずは更新お疲れ様です。
スタンド使い勢力入れ乱れての熾烈な戦争がますます激化していきそうですね。
もはや誰が死んでもおかしくは無い…これからもドキドキしながら読めそうです。
次回更新楽しみにしています。
- 559 : ◆70nl7yDs1.:2010/07/16(金) 21:53:39 ID:???0
- ジグジグへの愛がすげぇwwww
と思ったらリラックスして急に真面目になってるしw
作者である自分ですらコントロール出来ずに全員殺しかねないですよ
いろんな意味でドキドキですねwありがとうございます
次回更新はいつになるか分かりませんが、U2の絵は描いてみたいなと思います
- 560 : ◆R0wKkjl1to:2010/07/17(土) 01:33:47 ID:IwSrWuf2O
- 夢野久作!!今気がつきましたww
何か耳に覚えがあると思ったら・・・
ドグラマグラの作者かぁwww
記憶の引き出しが弱ってるのかなぁ、私。
更新乙ですッ!!
全滅は・・・やめてください><
泣いちゃうよ!!
- 561 :名無しのスタンド使い:2010/07/18(日) 01:11:34 ID:???0
- 神奈川県しばりの名前かと思ったらそうでもなかったでし。
- 562 : ◆70nl7yDs1.:2010/07/18(日) 06:10:07 ID:???0
- >>560
気付いてもらえて嬉しいです
漢字が違うから分かりにくかったんでしょう
全滅はさすがにないですけど何かしらしたいと思います
泣かないで;;
>>561
神奈川だけじゃ無理があったので他の県からも取るつもりです
実は他のラムダチームも全員考えてありますが出す機会があるかどうかw
- 563 : ◆U4eKfayJzA:2010/07/19(月) 16:09:08 ID:???0
- 感想が遅れましたが、乙でした!
なんか、物凄い超常現象的な状況になってますけど、これってまさかスタンドがやらかしたことなんでしょうか?
神が降りたって……
- 564 : ◆70nl7yDs1.:2010/07/20(火) 06:11:39 ID:???0
- >>563
ありがとうございます〜
最初は神の遺体ということにしたかったけど肝心の遺体がないじゃん…と思って舞い降りたことにしてしまった
インドの聖地だから不思議なことが起きてもいいんじゃないでしょうかw
スタンドはその時に目覚めた設定です
矢に刺されて発現したのではなくて、元々潜在的にスタンドを発現する素質があったということです
修行により目覚めたケンゾー的な。ただし聖地(神)のパワーがキッカケで短時間で目覚めることが出来た
ごめんなさい…!
- 565 : ◆70nl7yDs1.:2010/07/26(月) 10:17:39 ID:???0
- 続き書きたいけどやりたいことがいっぱいある…;;
今週中に何とか出来るかなぁ
- 566 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/05(木) 22:01:32 ID:???0
- 第十章「焔」
――2010年4月10日土曜 東京都 某病院内
向かい合った久坂とシヴァはお互いに第一歩を踏み込んだ。
そして、蹴った床は剥がれ飛んで辺り一面に砂埃が巻き起こった。
人智を超えた決戦が始まりを告げたのだ。
お互いがぶつかり合うかと思われたが、久坂は右に飛び移る。
「何……!?」
シヴァは直ぐ様視線を向けた。
久坂は薬品の入った瓶をシヴァに対して投げつける。
「『ビヨンド・ザ・バウンズ』ッ!」
シヴァは自身のスタンドを前に出して瓶を叩き割る。
しかし、中の液体が体にかかることは無かった。
液体は一瞬で凝固していく。
「なるほど……お前の能力のタネが分かった
どおりでこの部屋が寒いはずだ……それにそのダイヤモンドダスト……!」
「フン。それが分かったところで何だというのだ……
お前が負けるということは予定調和なんだよ」
そう云ってシヴァは凍った液体をスタンドで久坂に向けて投げた。
だが、久坂は手に持ったバールで容易くなぎ払う。
「ほぉ……俺の攻撃に反応するどころか防御まで出来るとは……
大したパワーとスピードだ……だがッ!」
「速いッ!!」
接近したシヴァがラッシュを叩き込む。
「シャルシャルシャルシャルシャルシャルシャルシャルシャルシャルシャルシャルシャルシャル
シャルシャルシャルシャルシャルシャルシャルシャルシャルシャルシャルベーシャッ!!」
「ジェララララララララララララララララララァァァァ―――――――ッ!!」
『ビヨンド・ザ・バウンズ』の拳と『ハーフライフ』のバールが交わる。
ラッシュの応酬が繰り広げられた。
「何だと……俺の攻撃を受けながら凍らないとは……!?」
久坂のスーツからバチバチと放電していた。
- 567 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/05(木) 22:02:06 ID:???0
- 「お前のスタンドが熱を奪うのなら熱を出すまでだッ!」
久坂の左手によるパンチが懐に決まる。
「うごォァァァァ―――ッ!!」
衝撃でシヴァは後方の壁まで飛ばされて激突する。
ガラガラと崩壊していき、姿が見えなくなるほど埋もれてしまう。
「やったか……?」
「ククク……クックック……」
瓦礫の下から不気味に笑い声だけが漏れた。
「……化け物めッ!」
シヴァは瓦礫を片手で払いのけて出てきた。
ほとんどダメージはなく悠然と歩いていく。
「おかげさまで十分な熱量が得れた……」
「!?」
何かしらの危険を察知した久坂は横にジャンプする。
「いい勘だ。当たれば即死だったな」
「ぐああ……ッ!!」
『ビヨンド・ザ・バウンズ』から放たれた不可避の熱線が久坂の右肩を掠めていた。
熱線は久坂の背後の壁を貫いて隣の部屋に到達し、爆発する。
「な、何だ今のはッ!! 目には見えない攻撃……ッ!?」
「どんどん行くぜーッ!!」
間髪入れずに『ビヨンド・ザ・バウンズ』は熱線を放射する。
「うおあああああああああああああああ」
久坂の絶叫が病院内を木霊した。
「いい声でなくじゃあねぇか……ククク!
だが……惜しい……もう少しズレていれば心臓を貫けたが……」
「がは……ッ!! (右腕を持って行かれてしまった……出血がヤバいな)」
久坂はジャンプして天井を貫いて上の階へ行く。
- 568 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/05(木) 22:02:22 ID:???0
- 「逃げるつもりか……無駄なことだがな」
シヴァもスタンドで床を蹴り上げて上へ飛んだ。
「久坂はどこへ行った……隠れて奇襲でもするつもりか?」
その場に久坂の姿はなかった。
シヴァは廊下に出て床に耳を当てた。
「ふゥむ……なるほど……まだ近くにいるなッ!」
手当たり次第壁やドアをぶち破って捜索を始めた。
ガサッ
常人では聞き取ることが困難なほど微小な音だったが、シヴァの聴覚は聞き逃さなかった。
「フハハハ! やっと見つけたぞ
だが、もう逃げても無駄だ……」
病室のベッドの上に久坂は座っていた。
「逃げる? ハハ……勘違いしてもらっては困るな」
「何ィ? ホラを吹いてんじゃねぇよ……片腕を失ったお前に何が出来る」
「誰かが犠牲にならなければならないのなら……俺だろう」
「まさか……!」
久坂はすくっと立ち上がる。
「子供たちには希望がある……この混沌とした世界を照らしてくれる希望の光だ
それを守るためなら俺は犠牲になってもいいッ!」
そう云いながら久坂は直方体の装置を取り出した。
「さあ……ともに散ろうか……夢野ッ!」
「なるほど、時限爆弾をしかけたのか……覚悟をしてきたようだが……
お前は学習していないのか? こんなことチンパンジーでも理解出来るだろう
俺の能力は熱を吸収出来るんだ……爆発ごときで死ぬと思ったか?」
「それはどうかな……もし全方向に爆弾をしかけてるとしたら?
スタンドは無事でも本体のお前は無傷でいられるか!?」
久坂は親指を起爆装置のスイッチに乗せる。
- 569 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/05(木) 22:02:38 ID:???0
- 「押させるかァアアアアア――――――ッ!!!」
シヴァは身を乗り出して襲いかかる。
「終わりだッ!!」
カチリ
シヴァの攻撃より速くスイッチは押された。
チュドオオオオオオオン!
無数に仕掛けられた爆弾が爆発し、病院の一角が音を立てて崩壊していく。
「(フフ……贅沢を云えば圭史郎の子供達を見守りたかったな……)」
久坂は笑っていながらこの世から去っていった。
両者とも爆発で死んだと思われたが――
「グググ……」
そこにあったのはシヴァの姿だった。
全身がズタズタに傷ついていたが何とか生き延びていた。
「さすがの俺も……死ぬかと思った……ハァ……ハァ……
人間の肉体はひどく脆いものだな……自己治癒するのも時間がかかりそうだ……」
何とか立ち上がり、ふらつきながらも歩いていく。
「ラーマはあいつらを倒しただろうか……」
病院の外へ出て見渡すがそこにラーマの面々はいなかった。
「誰も……いないだと……!?」
「ここだ……」
シヴァは背後から聞こえる声に反応して振り返る。
そこにいたのは悪門荘の住人、必賦吾郎だった。
「何ィィィ!? あのラーマがチッポケなお前ら如きに負けたと言うのか!?
ありえんッ!!」
歯を食いしばり、眼光鋭く吾郎を睨みつけた。
「ああ……だが……あまりにも犠牲は多すぎたがな……」
- 570 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/05(木) 22:03:06 ID:???0
- 吾郎はスタンドのポットの中から拳銃を取り出す。
「ち、ちくしょう……貴様ァアアアアアアアア」
バンッ
吾郎は何のためらいもなく発砲し、シヴァのこめかみを弾丸が貫通した。
シヴァは白目を向いたままダラリと力なく倒れ込む。
「どうやら久坂さんは……死んだようだな……」
「ご、五郎さん……」
脚を負傷して動けなくなった鉄也が吾郎の名を呼んだ。
「ああ、すまん……他の皆に連絡をしないとな……
あと俺達はここから動かない方がよさそうだ」
物陰で一人の少女が泣いていた。
「うっ……うっ……お、お父さん……」
楓は動かなくなった父親の体の上に覆いかぶさるようにして泣き崩れていた。
その涙と合わせるかのようにポタリポタリと雨が地に注がれていく。
次第に雨脚は強まっていき、楓の嗚咽は雨に掻き消される。
他の殺されたチームメイト達の体は雨に飲み込まれていく。
「みんな……」
空を見つめながら吾郎は一人呟いた。
***
祐介達は戸塚を撃破したが、新たな刺客に攻撃されていた。
スーツに身をまとった壮年の男とホステス嬢のような風貌の女とデコを出した男の三人だ。
三人の会話からスーツの男の名前は菊池、女は宮村、デコ男は葛木ということが判明した。
「強い……強すぎるッ!! だけど戦わなくちゃ……!!」
祐介達は疲労困憊した肉体に鞭を打って立ち上がる。
「この程度の連中にインドラの小隊がやられてしまうとは……情けない」
菊池は転がる死体を一瞥してから投げ捨てるように云った。
- 571 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/05(木) 22:03:23 ID:???0
- 「これは任務なの。さっさと片付けるわよ」
宮村は冷徹な表情のまま仲間に促した。
「ああ……一切の隙すら見せてはならないぞ」
そう云って葛木は祐介のほうに手をかざした。
「祐介! ボサッとしてんじゃねぇ!!」
天童が祐介を蹴り飛ばす。
「『ディム・ボガー』……ッ!!」
ドグオオオン
空気中で爆発が起き、天童は爆風に巻き込まれる。
だが――
「このくらいなら俺の『ティアーズ・イン・ヘブン』でかき消せるぜ」
強烈な気流を発生させて爆風を押し返した。
「天童さん! あの女の姿が見当たらないですよ!」
五十嵐が天童に呼びかけた。
「い、いつの間に……皆気をつけろッ! どこに潜んでるか分かんねーぞッ!」
一同が気を取られているうちに菊池はスタンドを出していた。
向かい合わせにした手と手の間からバチバチと音を立てる球が発生する。
それはプラズマだった。
「ハッ!」
天童が気づいたときには既に遅く、プラズマの球が体に直撃していた。
スタンドのスーツは完全に砕け散り、天童は血反吐を撒き散らしながら地に伏せる。
「うおおおおおおおおおおお」
叫びながら五十嵐は特攻する。
大きな鳥型のスタンド『アクロース・ザ・メトロポリス』を敵の方へ飛ばした。
「雑魚めがッ!」
プラズマ攻撃によって『アクロース・ザ・メトロポリス』は墜落してしまう。
遠隔操作型のスタンドであったためパワーで勝てるはずが無かった。
- 572 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/05(木) 22:03:40 ID:???0
- フィードバックを受けた五十嵐は全身の皮膚がただれて重症だった。
「チィ……クソがァ!!」
スタンドの拳を握りしめて敵に向かうタクマ。
しかし、その刹那、タクマは足をすくわれてこけてしまう。
「ぐッ!」
「死ねッ!」
プラズマを腕に纏ったパンチがタクマに向けられる。
だが、次の瞬間、菊池の体は吹き飛ばされた。
「ボノォ!!」
『U2』のパンチが菊池のスタンドの肩に直撃したのだ。
「ウッシャァアアア!!」
タクマはスタンドの腕を後ろに振った。
その場所には何も無いはずだったが、振った腕は確実に何かに当たっていた。
グチャリと不快な音が響く。
「うぎゃぁああああ……!!」
すると数十メートル先で悲鳴を上げながら腹部を押さえる宮村がいた。
自身を透明にするスタンドの能力が解除されたのだ。
- 573 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/05(木) 22:04:10 ID:???0
- 小出しでサーセン…今日はここまで…
- 574 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/07(土) 02:59:33 ID:6nIH4.7Y0
- 「オラッ!!」
葛木がタクマに接近して手を突き出そうとする。
「ボノォ!!」
『U2』が手刀を振り下ろして葛木のスタンドの両腕に叩きつけた。
ズシンッ
「う、うおおッ!!」
葛木の両腕は床へ垂直に落下し、床を突き破ってしまう。
人間が到底動かせないほどの重さに変えられてしまったのだ。
そして、祐介は間髪入れずに葛木に対して攻撃を加えた。
心臓を貫かれた葛木は絶命する。
「やったか祐介……」
「まずいな……天童さんと五十嵐さんが……
このままだと二人とも死んでしまうッ!」
祐介は慌てふためきながら辺りの医療品等を探し始めた。
何の知識もなく素人同然だったが、何とか手当をして包帯を巻いた。
しかし、これでは気休め程度にしかならず二人の容態はどんどん悪化していくばかりであった。
「早く白河さん達に連絡して来てもらわないと!」
ふらつきながら歩く蛯原が祐介に云った。
「ああ……そうだな」
直ぐ様携帯を取り出して連絡を試みる。
ボタンを押そうとした瞬間、携帯は一瞬で灰へと変わった。
「この俺に傷をつける奴など初めてだ……」
祐介達が振り返るとそこには菊池の姿があった。
「『シレラ・スリー』ッ!!」
菊池がスタンド名を叫ぶと辺りがバチバチと音を立て始める。
- 575 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/07(土) 03:00:13 ID:6nIH4.7Y0
- 「うッ! なんだ……急に頭痛くなってきた……
あ、あいつが……ぶ、分裂し始めた……うわあああああああああ!!」
急に祐介は取り乱し始めた。
「うう……視界が……グニャグニャ歪むッ!!」
続けて他の者も同様の症状を訴え始める。
「これは一体……うぐァアア!!」
「プラズマから発せられる高磁場が脳波へ影響を及ぼすことにより幻覚症状を引き起こすことがあるという……」
タクマは冷静にこの状況を解説した。
「ご名答……だが、それが分かったとこでどうしようもないだろう?」
顔色一つ変えずに祐介達の元へ近づいていく。
「祐介……いいか……よく聞け……
ここは俺が食い止めるッ! だからお前は皆を連れて逃げろッ!!」
「ふざけんなタクマッ! お前を置いてみすみす行けるわけないだろッ!!」
「このまま全員ここで死にたいのか? ……違うだろ?
目には目を……スタンド使いにはスタンド使い……
俺達がここで全滅してしまったらもうこの世界は終わりなんだ」
タクマは祐介を諭すように云った。
「なぁに……俺は死なねぇよ。行けッ!」
「わ、分かったッ!」
祐介は全員の体の重さを軽くして運んだ。
壁に穴を開けて無理やり出口を作ってそこから脱出をした。
「無駄だ……すぐにお前を殺して奴らに追いつく」
「それはどうかな……フフッ」
タクマは不敵な笑みを見せた。
『6・F・U』は十字架の槍を握りしめる。
タクマは考える。彼の人生において他人のために行動するということは有り得なかった。
だが、祐介と出会ってから変わった。それは本人にも理解出来ていたのだろう。
他人のために何かをすること、また、その喜びを実感することが出来た。
そこにあるのは感謝。自分という存在を受け入れてくれた人間への恩返し。
- 576 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/07(土) 03:00:53 ID:6nIH4.7Y0
- 「うおおおおおおおおおおおお!!」
なんとタクマは自分自身に槍をぶっ刺したのだった。
覚悟を決めたタクマに躊躇は微塵もない。
「な、何をしたッ! 貴様ァ!!」
「俺にも……どうなるか分かんねぇが……ただ一つ分かることは……
お前も道連れにナるッて……こトだッ!!……ウ、ウガアアアアアアアア!!」
タクマは自身の能力で生み出したゾンビのように成り果てていった。
「近寄るなッ!!」
菊池はスタンドで攻撃するがタクマの動きは止まらなかった。
「グガァアアアアアアアアアアアアッ!!」
タクマの体はスタンドと同化しており時間の制限が無くなっていた。
そして、攻撃力や耐久力も格段にアップしている。
「クソがッ!!」
『シレラ・スリー』がパンチを繰り出すが、タクマは噛み付いて止めた。
バキバキバキ……
『シレラ・スリー』の右腕は砕け、ダメージは本体にもフィードバックした。
「ぐッ……この野郎ッ!! や、やめ――」
グッチャグッチャ
菊池は頭部を食われて絶命する。
ゾンビと化したタクマはなおも死体を食べ続ける。
「行儀が悪いじゃないか……被験体No.001 」
神々しいカリスマを放つ男がコツコツと靴音を鳴らしながら近づいていく。
「グァア……」
タクマは男の存在を視認して、捕食するターゲットとして定めた。
「やれやれ……どうやら私の言葉すら理解出来ていないのか」
「グギャァアアアアアアアッ!!」
タクマは男へ襲いかかる。
歯をむき出しにした口が男の顔面をとらえようとした瞬間だった。
ビシィッ
男が出したスタンドがタクマの顔面を殴り飛ばす。
だが、痛覚も自我もないゾンビはすぐに立ち上がった。
- 577 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/07(土) 03:01:38 ID:6nIH4.7Y0
- 「グオオオオオオオオ……」
しかし、タクマは男に襲いかかることはせずに自らの腕をかじりつき始める。
「他者を食べるという性質を『反転』させた……つまり、お前は自らを食べるのだ」
外はザァザァと雨が降り注いでいる。
祐介は皆を避難させていた。
「やっぱりタクマのことが気になる……俺一人で助けに行ってくるよッ!
雪華ちゃんとエビちゃんは天童さんと五十嵐さんの様子を診てて!」
「えっ!? じゃあ私もついていくッ!!」
雪華は自分も連れていくように懇願する。
「ダメだ! もう何発も撃ってるし、それ以上精神を磨り減らしたら命に関わってしまう!
白河さん達が来るまでここで待っててくれッ!!」
祐介は一人で雨の中を駆けて行った。
そして、ボロボロになった病院の中へ戻る。
「やっと会えたな……有島祐介
まさかインドラはおろかラーマさえ壊滅させてしまうとは予想外だった……
だが、ここまでだ……このブラフマーが来た以上はここで終止符が打たれるのだ」
「タ、タクマ……タクマァアアアアアアアア!!!」
無惨な姿へ成り果ててしまった友の姿を視界に収める。
「お前が見殺しにしたせいでこうなったんだよ……フハハハハハハ!!
人一人助けられない矮小な存在がこの私にその拳を向けるのか?」
」」 」」 」」 」」
__ | __ | __ | __ |
| | | | _| _| _|
___| ___| ___| ___|
「てめぇ……」
祐介は今までに見せたことのない怒りの形相を見せる。
「さぁ……来いよッ!! 決着を着けてやろうッ!!!」
「絶対に……絶対に許さんッッ!!!!!」
床に散乱している瓦礫を拾い上げてスタンドでブラフマーに向けて投げた。
ギュンッ
- 578 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/07(土) 03:02:12 ID:6nIH4.7Y0
- 「『シング・ライク・トーキング』ッ!! 『反転』だッ!!」
『U2』が投げたはずの瓦礫はDVDを巻き戻すかのように投げた手元へ戻っていく。
だが、瓦礫は『U2』に到達することなく、一メートル手前で落下する。
ブラフマーは走って祐介との距離を縮める。
「私の再創造は何人たりとも止めることは出来んッ!!
バラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラァァァ―――――ッ!!!」
ブラフマーの『シング・ライク・トーキング』がラッシュを繰り出す。
「ボォーノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノボノォォォ―――――ッ!!!」
拳と拳が交わり合う。
怒りで覚醒した『U2』のほうがパワーは上回っており、相手の攻撃を押しのける。
だが――
シュボォオオオ!
祐介の体が突然燃え始めた。
「な、何だこれはッ!」
「水の概念を反転させたのさ……お前は雨で濡れていた……つまりお前の体は燃えるということだッ!」
「だが……関係ない……このままぶち抜くぜッ! ボノォ!!」
『U2』のパンチがブラフマーの顔面にヒットする。
「ぐゥゥゥ……」
ズシン!
ブラフマーの体は地面に深く沈む。
「これでは身動きが取れんッ! こんなはずが……クッソォオオオオ!!」
「地獄で悔い改めるんだなッ!!」
『U2』の一撃が向けられる。
しかし、攻撃は空を切るだけとなった。
「な、何だと……!?」
ブラフマーは宙を浮いていた。
「お前の重くするという効果を反転したのだ……」
「くっ……なんて奴だ……」
グンッ!
ブラフマーはスタンドで天井を蹴った。
猛スピードで祐介に向かって飛んで行く。
- 579 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/07(土) 03:02:29 ID:6nIH4.7Y0
- 「くらえッ!!」
だが、今度は『シング・ライク・トーキング』の攻撃が空振りすることになった。
祐介は自らの能力で身体を軽くして宙へ逃れた。
「器用な真似をッ!!」
「潰れろォォォ!!」
祐介は今度は自らを重くしてブラフマーを下敷きにする勢いで落下していく。
「ぐおおおおおおおおおお」
十数トンという重さになった祐介に乗られたブラフマーは胴体がグチャグチャに潰れた。
「これで……元凶であるお前が死んだことでこの世界にも平穏が訪れるだろう……」
「ククク……!!」
潰れたはずのブラフマーが笑い声を発した。
「ま、まさか……!?」
「そうだッ! 傷を反転させたッ!!」
「こいつ……!!(一体どうやって倒せばいいんだッ! これじゃ不死身じゃないかッ!)」
「そろそろ燃え続ける炎を気にしたほうがいいんじゃないか?」
祐介は火だるまになっていた。
「このくらいで……クソ……立て、立つんだ俺ッ!!」
自らを奮い立たせようとするが炎の勢いは凄まじく、祐介は床に跪く。
「死ねッ!!」
『シング・ライク・トーキング』の拳が祐介の体を貫通する。
「ありがとよ……この距離なら届く……」
「何ッ! こいつッ!!」
『U2』は力を振り絞って渾身の一発をブラフマーの体に食らわせた。
- 580 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/07(土) 03:02:49 ID:6nIH4.7Y0
- 「バカめ……すぐに反転してやるッ!!」
ブラフマーは能力を使って反転させた。
「すぐにとどめを――な、何ィィィ!?」
ズズン……ブラフマーは床に叩きつけられた。
「重くしたんじゃない…『軽く』したんだ……
お前は俺が重くしたものだと早とちりした……」
「こ、このクソガキッ!!」
だが、祐介に攻撃するだけの体力がすでに残っていなかった。
「ごふッ……」
大量の血を吐き、力なく倒れる。
「フン……脅かしやがって……
死んだのか? 自由に動けるようになった……」
能力が解除され、ブラフマーは立つことが出来るようになった。
「放っておいても死にそうだが……一応頭を潰してお――」
スタンドの腕を振りかざそうとしたが、祐介に到達することなく動きが止まる。
スタンドだけではなく、ブラフマー、いや、全ての物体が静止した。
この世界に真の静寂が訪れる。世界の時間が止まっていたのだ。
「遅れて済まなかったな……君が祐介君か……
よくたった一人で孤独に闘ったと思うよ。敬意を評するぜ」
195cmはあるかと思われる長身の男はブラフマーを一瞥する。
「そして、やれやれ……久しぶりに訪れた日本がこんなことになってるとはな……」
そう云うと男は筋肉隆々な戦士のようなスタンドを出した。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ――オラァッ!!!」
男のラッシュが終わったと同時に時が動き始める。
ブラフマーの肉体は殴られた跡が現れ、全身から血が吹き出し、彼方へ吹き飛ばされていった。
「おぷぎゃううううううう(な、なんだこいつはッ!!)」
「殺しはしない……貴様はこれから警察に身柄を拘束されるだろう」
男は祐介の体を抱きかかえてその場を去った。
To Be Continued...
- 581 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/07(土) 03:26:21 ID:???0
- >>534
何故か十章のままになってますが、十一章の間違いです…すみません!
なるべく早く次を書きたい…おそらく次が最終回になると思います
使用スタンド一覧
ありがとうございます!
No.1622 【スタンド名】シレラ・スリー
考案者:ID:Fhpg6goo 絵:ID:Jj/bDYUo
No.443 【スタンド名】ブリリアント・パピヨン
考案者:ID:pTqL93ewO 絵:ID:uWNQUe6VO
No.2774
【スタンド名】ディム・ボガー
考案者:ID:tufNT2M0
絵:ID:Vyck9EDO
No.896
【スタンド名】ビヨンド・ザ・バウンズ
考案者:ID:3D5dUMHX0
絵:ID:ZX3k7nRq0
No.1013
【スタンド名】シング・ライク・トーキング
考案者:ID:3c0wdujP0
絵:ID:tb0+3Oqw
- 582 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/07(土) 12:23:03 ID:???0
- 多分今日中に最終話投下出来そうかな…
- 583 :名無しのスタンド使い:2010/08/07(土) 13:50:01 ID:???O
- U2が完結…だと…!?
期待してるぞッ
- 584 : ◆WQ57cCksF6:2010/08/07(土) 14:44:38 ID:???0
- いよいよファイナルですね!連載開始から半年、ついに始まる最終章!
SS史に残るような劇的なフィナーレを期待してます!
- 585 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/07(土) 15:18:40 ID:???0
- >>583
ありがとうございます!
ようやく…ようやく完結することが出来ます!
振り返ってみると長かったようで短かったのかもしれない…
>>584
ありがとうございます!
あんまりハードルを上げないでくださいよwww
出しづらいからwww
- 586 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/07(土) 15:19:14 ID:???0
- 第十二章「ONE」
――2010年4月10日土曜 東京都 某病院外
『ワイルドライフ』の攻撃が秀彦に迫る。
だが、その瞬間、『ワイルドライフ』は瞬間移動して京輔の『デッド・エンド』と入れ替わる。
「京輔……無理しやがって」
「後は頼んだぞ……」
「ああ……そこで休んでろ」
秀彦の『ステイアウェイ』は腕に矢印を付けてパンチを加速させる。
『ワイルドライフ』の後頭部を殴って地面に叩きつけた。
「がはァ……」
スタンドへの衝撃がフィードバックして男は気絶する。
「あまり調子にのるんじゃないわよ」
ゴスパンクな衣装に身を包んだ女は右腕をハサミに変えて大きく開いた。
その攻撃は秀彦に向けられた。
「俺の左腕はくれてやるさ……」
そう云って左腕を前に差し出してわざと切断させる。
「アローッ!!」
秀彦は二つの矢印を対極になるように女の体に貼りつけた。
「な、何をし――いぎゃああああああああ」
バリバリバリ
女の体は矢印に引っ張られて真っ二つに裂けていく。
「これで……終わった……」
安堵こそ無かったが静かに膝をつけた。
「グレート……もう少し来るのが遅くなってたら皆死んでたよなぁ〜〜〜」
秀彦は悠然と歩いてくる時代錯誤なリーゼントをした警察官の制服を着た長身の男であった。
「立てるかい?」
- 587 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/07(土) 15:19:30 ID:???0
- 男は優しく秀彦の肩をポンポンと叩いた。
しかし、それは人間の手ではなくスタンドの手であった。
「あ、ああ……
な!? 切断された腕が治っていく……他の傷も……!?」
「オレの名前は東方仗助。ヤバい連中がいるって聞かされてスっ飛んで来たっスよ〜
一体何が起きてるのか……聞かせてもらうぜ」
「それはいいけど……その前に貴方の能力で皆を治してやってくれないか?」
「あッ! そーだったッ!」
仗助は慌てて全員の傷を治し、秀彦たちは敵のことや何が起こってるのかを説明した。
「そんなヤバいことになってたのかよォーッ」
「ええ……俺達は皆のことが気がかりなんです……
連絡は取れませんが助けに行きたいと思います」
「なるほど……じゃあオレ緒に行くよ」
「仗助さんがいれば頼もしい……助かります」
腰を上げてその場から離れようとした時、背後からミケランジェロの彫刻のような肉体をした老人が歩いてきた。
「貴様らはどこにも行かしゃあしないのォ〜〜〜
仲間の元へもあの世へもなァァァ〜〜〜永遠だ……永遠の痛みを味わいながら苦しみ続けるがいいッ!!」
「てめぇ何者だッ!?」
ヤマトが老人に対して訊いた。
「ワシはヴェーダの三神の一人であるヴィシュヌだ
だらしない部下が始末出来ないなら自ら出向かなければなるまい」
「ノコノコと現れやがってッ! だが、ちょうどいい……この手で叩き潰してやるッ!!」
圭吾が先陣を切ってヴィシュヌへ突撃していった。
スタンドを出して殴ろうとする。
だが、ヴィシュヌは動きを先読みしていたのか、軽く攻撃を躱す。
「The Agony and the Ecstasy(生涯にわたる苦悩と尽きぬ欲望)ッ!!」
The Agony and the Ecstasy (以下:A2E)の攻撃は生身の圭吾を襲った。
手刀で首をはねたのだ。
- 588 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/07(土) 15:19:53 ID:???0
- 「け、圭吾ォォォ―――ッ!!」
ゴロゴロと圭吾の頭部が転がっていく。
「うわああああああああああ 痛ェよォォォ〜〜〜!!」
ヴィシュヌはナイフを取り出して圭吾の額に投げて刺した。
「これが永遠の痛みだ……お前の肉体がこれから滅びようとも永遠に苦痛から解放されることない」
グチャッ
ヴィシュヌは圭吾の頭を踏みつぶした。
「次はお前らの番だぞい……フッフッフ」
「う……うぐァ……」
秀彦は声にならない悲鳴を上げた。
「お、落ち着けッ! 今あいつに突っ込んでいったところで死ぬだけだッ!
何か策を練って戦うべきだぜェ〜〜〜」
仗助は秀彦を制止させた。
「だけどなァ〜仗助さんッ! 俺はダチが殺されておとなしくしてるほどクールじゃないぜッ!!」
「いや……京輔君が突っ込んだところで死体が増えるだけだ」
仗助は冷静に言い放った。
「あ、あの野郎がこっちに来ますぜッ!」
ヤマトは足が竦んで動けなくなっていた。
「いいかッ! 絶対に奴を直接触れようとするなよッ!!」
秀彦は皆に念を押して後方へ下がる。
ヴィシュヌは仗助に標的を定め、パンチを繰り出す。
「ジョウスケッ!」
ジョアンナは仗助の肩を触り、花を出現させた。
花は一瞬で仗助の前方に壁を作っていく。
ヴィシュヌのスタンド『A2E』の攻撃は花によって遮られる。
花は仗助が制服に付けている飾りを元にして作られているため、とても硬くなった。
さらに茎がヴィシュヌの体を雁字搦めにして拘束する。
- 589 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/07(土) 15:20:14 ID:???0
- 「チィ……!」
「オンドリャァアアア!!」
「くたばれッ!!」
秀彦と京輔による同時攻撃をヴィシュヌは受ける。
「がはァアア……」
全身に巻き付けられた茎を破って吹き飛んでいく。
「やったか!?」
だが、すぐに立ち上がり、猛然と襲いかかってきた。
受けた傷は超スピードで治癒していく。
「神と同化したワシがこの程度の攻撃で死ぬわけがなかろうッ!」
「グレート……マジにヤバい奴みたいっスねぇ〜
半端な攻撃じゃまともにダメージも与えられないんじゃあよォ〜〜〜」
「しかし……攻撃しなければ奴に勝てないッ!」
「おそらくあいつのスタンドは殴ったことで効果が発動するタイプ……
なら少なくともスタンドの拳にさえ注意すれば何とかなるはず」
仗助はジョアンナが生み出した花の破片を拾い、それを握りつぶしてから投げた。
銃弾のように素早く飛んで行く。
「フン……ちょこざいなッ!」
『A2E』は容易く花の破片を弾いた。
「フフン……何かと思えばこんなくだらない攻撃とはな……ナメやがって!
痛くも痒くもないわいッ! このワシが真の痛みをたっぷり味わせてやるぞッ!!」
「ナメてんのはどっちっスかねェ〜〜〜」
弾かれて地面に落ちた花の破片が動き出してヴィシュヌの背中を突き破って体内へ侵入する。
「何だとッ!?」
「破片を拾ったときに握りつぶして地面にこぼれていた血を閉じ込めた……
そう、てめーの血だぜ……だからそれはてめーの体ン中に戻ってるわけだッ!」
「く、クソッ!」
ヴィシュヌは体に指を入れて花の破片を取り出した。
- 590 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/07(土) 15:20:33 ID:???0
- 「くらいやがれッ!!」
秀彦は折れた無数の茎に矢印を付けて一斉に飛ばした。
「ぬぉおおおおッ!!」
ヴィシュヌは全身に茎を受け、それは内臓にも及んでいた。
いくら治癒が速くても致命傷は免れないと思われた。
「フゥ〜〜〜……ワシもここまで追い込んだのは貴様らが初めてのことだ
そこは褒めてやろう……だが、ここまでよのうッ!」
「な、何だアイツ! 平然と歩いてくるぞッ!」
致命傷を受けたはずのヴィシュヌが歩いてる姿を見た京輔は驚愕した。
「自らに能力を使ってしまうとはなァ〜……
だが……これでもはや貴様らは終わりだ……死ぬことすら許さないッ!!」
『A2E』のパンチが仗助の目前にまで迫る。
しかし、当たる寸前で仗助の体はふわりと浮かび上がり、後方へ引っ張られていく。
『A2E』の攻撃は空を切るだけに終わった。
仗助の体は花が散乱していた場所まで引っ張られ、ポケットから花の破片が出てきた。
「なるほど……その『治す』能力……かなり器用な真似が出来るようだな」
「こうなるとあいつの首をはねて動けなくするしかないようね……」
ジョアンナが云った。
「ああ……だが、それをやるかが問題だ……」
「まあ、オレしかいねぇよなァ〜〜〜」
「仗助さんッ!?」
「いくら強ぇと云っても承太郎さん……オレの知り合いのように素早いわけでも無いぜ
こう見えて触れられたらヤバい相手との戦いは熟知してるつもりだ
皆はサポートしてくれッ!」
「わ、分かりましたッ!」
秀彦は頷いて矢印を仗助の両腕に貼り付けた。
ヴィシュヌは走りながらこちらへ向かってくる。
- 591 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/07(土) 15:20:57 ID:???0
- 「今だッ! 『デッド・エンド』ッ!!」
京輔は自身のスタンドの位置とヴィシュヌの位置を入れ替えた。
「ナイスだッ!
ドララララララララララララララララララララララララララララ」
両腕に矢印をつけられて普段より加速している『クレイジー・ダイヤモンド』のラッシュを全身に受ける。
「うげああああ――っ」
悲鳴を上げた。
この勝負、仗助の勝ちと思われたが、すぐに顔面蒼白となった。
「何ィィィ―――!?」
なんと攻撃を受けていたのはヴィシュヌではなく京輔だった。
ヴィシュヌは寸前で隣にいた京輔の体を掴んで代わりに攻撃を受けさせたのだ。
「今治してやっからよォォォ〜〜〜!!」
「フン……それは敵わぬことだなッ!!
気持ち悪い髪型しくさってッ!! さっさとくたばらんかいィィ〜このド低脳がッ!!」
プツゥゥ〜〜〜〜〜ン
その言葉を聞いた瞬間、仗助の顔つきが豹変する。
「おい、ジジイ……あんた、今俺の髪のことなんつった!?」
「は!?」
「ドラァッ!!」
ヴィシュヌが反応出来ないほどに速い一撃が顔面をとらえた。
「ウゲェ――ッ!!」
衝撃でヴィシュヌは壁に叩きつけられる。
「ドララララララァァ―――ッ!!!」
間髪入れずに『クレイジー・ダイヤモンド』の高速ラッシュがヴィシュヌの全身を打ち付ける。
後ろの壁も粉々に崩壊していき、ヴィシュヌの肉体を取り込んで修復していく。
それはヴィシュヌの顔が浮かび上がったような壁となった。
もはや喋ることも出来ない。
「そんなに永遠が好きならよォ〜〜〜お前も壁と一体化してこの場所で永遠を過ごすんだな……」
- 592 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/07(土) 15:21:28 ID:???0
- 「仗助さんッ! やりましたねッ!」
秀彦が仗助の元へ駆け付ける。
「おっと……早く京輔の傷を治さないといけねぇな」
仗助のラッシュを食らった京輔だったが何とか息があったため治すことが出来た。
ポツポツと雨が大地に降り注いでいく。
一行は祐介の元へ移動する。
***
「こんなとこでまでアンタの顔を見なきゃいけないなんて……最悪だわ」
雪華は目の前に現れた三人の男の一人を睨みつけた。
「実の父親を前にしてその口はなんだ?」
この男は雪華の父親、東雲広明。ヴェーダが誇る研究所の所長であった。
「アンタなんか父親じゃないッ!」
「ほう……だが、お前の能力には利用価値があるッ!
力尽でも連れて行くとしよう……阿久津! 黒田! 捕らえろッ!」
東雲所長は部下の二人に命じた。
雪華はスタンドの銃を構えて向けるが、その手はガタガタと震えている。
そして、目には涙を浮かべていた。
「うわああああああああッ!!」
雪華は『コニュニケーション・ブレイクダンス』で発砲した。
だが、震えていたためか弾丸は当たること無く逸れていった。
「雪華ちゃんッ!」
蛯原がスタンドを出して助けようとするが、二人の男に止められる。
男たちは手を蛯原の口に当てた。
「うぐぐ……ぐあああああ」
突然胸を押さえて倒れ込む。
「分かった……ついていくわ……だから皆には手を出さないでッ!」
- 593 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/07(土) 15:21:59 ID:???0
- 「おぉ……よぉ〜しよしよしよしよしよし! いい子だッ!(後でたっぷり傷めつけて殺してやるわボケ)」
「ククク……後でこのへんな髪型の女で楽しませてもらおうかな……グヒッ」
部下の阿久津が卑しく笑った。
「さぁ、こっちだッ! 早く来いッ!!」
黒田が雪華の腕を強く引っ張って連れていこうとする。
だが、その時だった。
ドバババババッ
無数の銃弾が黒田と阿久津の頭を貫通していった。
「な、何者だッ!?」
東雲所長は慌てて背後を振り返る。
そこには白河をはじめとするラムダの医療チーム、そして祐介の妹・智恵、銃を構えたSWATや機動隊員がいた。
「ち……ちくしょおおおおおおお」
東雲所長は一斉射撃を受けて即死する。
地面にバタリと倒れ、それから動くことなかった。
「雪華ちゃん……大丈夫?」
白河が声をかけた。
「ええ……でも、何だろう……この言葉に出来ない虚しさ……」
雪華は虚ろな目で動かない父親を見つめた。
白河はすぐに重症を負った天童と五十嵐に応急処置を施し、祐介達が闘ってた病院の中へ搬送した。
承太郎が運びだした祐介も同様に治療が行われた。
***
こうしてこの大決戦は幕を閉じた。
ラムダ内の死者は十二人にも及び、仲間達は悲しみに暮れたのだった。
この後、祐介達はウイルスに感染してることが判明したが、すぐにワクチンを接種することで難を逃れた。
そして、タクマの葬式は極少人数だけで行われることとなった。
- 594 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/07(土) 15:23:53 ID:???0
- 祐介はお焼香をしながら呟く。
「勝ったよタクマ……お前がいなかったら俺たちは死んでいた……
お前から貰った大事な命だ……まあ俺なりに精一杯生きて見せるぜ
あっちでしっかり見守っててくれよな」
――それから一年後の夏
ラムダやSTR、警察等の尽力によりヴェーダの残党はほとんど捕まえられていた。
祐介と承太郎が倒したブラフマーこと綾辻征人は警察に見つかった時には既に死体であった。
おそらく自害したものだと警察は判断した。
しかし、この首謀者の存在はおろか組織のことも世間には公表されていない。
余計な混乱を招かないようにという配慮だ。
再び平穏な日々が訪れ、ラムダの戦士達も日常へ戻っていった。
祐介は高校三年生で最後の高校野球だった 。
順調に甲子園を勝ち進み、決勝まで行ったが惜敗で破れてしまう。
一大会通算記録が打率5.98、本塁打2本、盗塁6個と好成績を残し、プロ入りも噂されたが本人にその意思はなく高校卒業後は就職するつもりである。
スピードワゴン財団の厚意によりラムダの面々は生活費を貰ったが、あったが有嶋家は断った。
特に深い理由はないが、何となくダメになる気がしたからだ。
ミーンミンミンミン…
太陽は遠慮無く照りつけ、セミの声が盛大に鳴り響く猛暑。
祐介はグラウンドで後輩の練習を観ていた。
「先輩……また行くんですか?」
祐介の後輩が訊き、祐介は「ああ」と言葉短めに答えた。
学校前に秀彦の車が到着し、そこに乗り込む。
晴れて高校生となり、祐介と同じ学校に通う妹の智恵も同乗していた。
「なぁ兄貴……今回の敵はヴェーダの残党なのか?」
秀彦は久坂亡き後、会議が行われリーダーに抜擢されたのだ。
現在は全ての統率を秀彦が執っている。
今年の春に『スタンド使い連盟』なるものを発足させて全世界のスタンド使いから情報交換をしていたりする。
そのおかげでスタンドを悪用する犯罪者をリストアップしやすくなった。
「さぁな。だが、最近になって新たなスタンド使いの犯罪グループが現れたという情報が集まっている」
- 595 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/07(土) 15:25:03 ID:???0
- 「用心に越したことはないの! そそっかしいんだから気をつけなさいよ祐介!」
智恵はからかいつつ云った。
「お前にだけは言われたくねーよ」
そうこうしてるうちに目的地に辿り着いた。
既に他のメンバーは既に到着していて待機しているのだった。
「よぉ……しばらく見ないうちにでかくなったな」
最近、チーム編成を変えて祐介達のチームに入った天童昇が云った。
「そーですかね。まあ天童さんと会うのも半年ぶりくらいですもんねぇ」
祐介の身長は一年という歳月の間で驚異的に成長した。
今や185cmもあり、兄の秀彦より大きくなっていた。
「おー! ユーちんこないだぶり! 安くまけたるからウチの八百屋で野菜こうてったってーな!」
蛯原夏海は相変わらずのテンションであり、チームのムードメーカーだった。
「ユーツー君……ちょっと黒すぎない?」
橘楓は今からスタンド使いと一戦交わるかもしれないというのに緊張感の無い間抜けなことを訊いてきた。
「はぁ……楓さんお美しいですなぁ……」ボソッ
鍛冶鉄也は本人に聞こえない程度に呟く。
「終わったら飯行こうぜ」
いつも通り明るい原田大和が誘った。
「はぁ〜彼女と遊ぶつもりだったんだけどなぁ」
取っかえ引っかえな長瀬一馬だったが今の彼女とは半年以上付き合っており、最長記録を更新中。
「祐介君……」
東雲雪華は名前だけを呼んで祐介と数秒間見つめ合った。
この二人の中がどれくらい発展したかはここにはあえて書かないが、『言葉が必要ない仲』とだけ云っておこう。
「コラコラ君達、イチャついてんじゃないよ。さ、気を引き締めていくぞッ!」
秀彦が倉庫の扉に手をかけた。
奇しくもその倉庫は去年の冬、初めて有嶋一家がヴェーダと闘った場所であった……。
――ひとつの生
だけど僕たちは同じじゃない
僕たちは互いに支えるようになる
互いに支えるように
互いに支えるように
ひとつの・・・生
ひとつの
『U2 -黒い森で啼く蒼い鳥- 完』
- 596 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/07(土) 15:34:31 ID:???0
- 皆様、半年以上にも渡ってご愛読ありがとうございました。
第十二章を持ってU2を完結したいと思います。
連載SSというのは生まれ始めての経験で慣れないこと続きで苦しかったですが、いい経験になりました。
苦しかったからこそ終わることが出来た今は感動も一入です。
正直なところ修正したい部分は山ほどあります…。
ですのでいずれ修正した分をwikiに掲載出来ればいいなと考えております。
あとがき的に各話の感想や各キャラの感想など書いていきたいですね。
- 597 : ◆XBKLFVrvZo:2010/08/07(土) 16:24:14 ID:uYOUa4Mw0
- うお、おお、おおぉ……おおぉ……
ついに終わってしまった……最後の原作スタンド使いたちの助っ人!
U2チームたちの奮戦! 興奮しすぎて気持ちの整理がつかない……
とにかく半年間本当に御疲れ様でしたああああああああああ!!!
- 598 :名無しのスタンド使い:2010/08/07(土) 16:48:01 ID:???O
- ひとつの…
「ONE」か。良いタイトル、そして良い終わり方だ。
乙!半年間お疲れさまでした
U2、べらぼうに面白かったぜ!
- 599 : ◆U4eKfayJzA:2010/08/07(土) 22:19:30 ID:???0
- 結局、更新停止中に先を越されてしまいましたか……。とうとう、終わってしまいましたね。
振り返ってみると、強敵ぞろいの相手に、祐介たちはよく立ち向かったものです。
そして、S・L・Tをフル活用していただき、感謝の言葉もございません。本当にお疲れ様でした!
- 600 : ◆R0wKkjl1to:2010/08/08(日) 23:17:33 ID:???O
- うわぁああぁあ!!
U2が終わってしまったぁああぁあッ!?
いや、ラストが近いなぁとは思ってましたが・・
なんだかまだ信じられません(>_<)
ですが、終わってしまったんですね・・・胸が熱くなるラストでしたッ!!
乙かれ様でした!
- 601 : ◆9X/4VfPGr6:2010/08/09(月) 00:10:16 ID:???O
- 気がつけば新連載も始まってるしU2は終わっちまってるしよォォォォ〜〜ッ!
本当に乙かれ様でした!次回作を今から期待してます!
- 602 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/09(月) 03:36:32 ID:???0
- >>597
ありがとうございます!
原作からの助っ人は卑怯だったけど…中期あたりから出そうとは考えてましたね
しばらく充電してから次は漫画にでも挑戦してみたいと思います
書いてみて初めてSSの難しさや皆さんの凄さが分かりました…
>>598
そう言ってもらえると書いた甲斐があったなぁと思います
U2の「ONE」は歌詞がいいですよねぇ…
>>599
U4先生より先に終わってしまいました…
緻密なバトルは苦手なのでもっとどうにか出来なかったのか!?という感は否めないですねw
キャラをたくさん出しすぎてしまったのは反省点…
S・L・Tは上手く扱えなくて申し訳なかったです!
>>600
焦りすぎた感はありますねw
ただ詰め込みすぎてもgdgdするだけかなと思って十二章でまとめてみました
ラストを褒めてもらって嬉しいです!
>>601
XB先生の新連載は熱いですねェ
次回作はSSという媒体ではやらないと思いますがよろしくお願いしますw
- 603 :名無しのスタンド使い:2010/08/11(水) 02:24:35 ID:???0
- 漫画・・・だと・・・
期待せざるを得ないッ!
- 604 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/18(水) 16:46:28 ID:???0
- キャラ感想
No.44『U2』 考案者:ID:Azdg7Rlm0 絵:ID:FhUUc7chO
有嶋祐介
主人公スタンドを探してる時、目についたのがU2でした。
本体設定が無いのと能力が強いのが決め手となりましたね。
特に特徴がないので地味な主人公になってしまったなと後悔。
両親がいないとはいえ友達がたくさんいて彼女までいるというリア充w
能力が強すぎるので扱いづらかった…いや、扱いきれなかったと言いましょうか。
何気にSSで一番敵を殺しまくってるという…w
名前の由来はU2(ゆうゆう)から。「有」嶋「祐」介。
No.938『ステイアウェイ』 考案者:ID:jPY6mNvA0 絵:ID:OE8h+DM9O
有嶋秀彦
主人公の兄として登場させました。選んだ理由は絵がとにかくかっこよかったからですねw
それに能力も魅力的でした。
同僚の女からモテるけど祐介達が成人するまでは付き合わないことにしてるという裏設定があったり…。
だけど祐介は平然と彼女を作ってるんであんまりですね。
最終決戦で死なせようかとも考えましたが踏みとどまりました…。
名前の由来は秀才な人間だから。
No.826『アクアティック・アンビエンス』 考案者:ID:I0FYWOo0
絵:ID:Ea9CcFwo
有嶋智恵
まず名前が某SSのキャラと被ってしまったことをお詫びします。
名前の由来は覚えてません…。多分候補の中で可愛らしいのを選んだんだと思います。
スタンドは絵が好きなのと非戦闘なものだったからです。
あまり活躍出来なくて申し訳ない。ただ、年端もいかない女の子を傷つけるのはどうかと思ってw
No.81『シックス・フィート・アンダー』 考案者:ID:3LCDZWPHO
絵:ID:GCxWlxUi0
タクマ
自デザですが、アクモンの琢磨が好きだったので自分のSSに出してみましたw
アクモンでは非業の死を遂げているのでここでは幸せにしてやりたいと思いましたが、やっぱり死なせてナンボかなとw
施設から脱走するまでの暗い話を書こうとしたけど…かわいそうなのでやめました。
- 605 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/18(水) 17:01:59 ID:???0
- No.1418『シークレット・ウィンドウ』 考案者:ID:dCVJargjO 絵:ID:gLqSc0co
藤原龍也
アクモン荘の管理人として登場させましたが、活躍の機会を作れませんでしたね。
名前の由来はあの芸能人です。
No.293『アクロース・ザ・メトロポリス』 考案者:ID:Qpm+pi0FO 絵:ID:EsQWtgj40
五十嵐心太郎
あんまり活躍させれなかった…。
名前の由来はなし。
No.1036『セファリック・カーネイジ』 考案者: ID:Kqs0x3QI0 絵:ID: ID:XtDeOiJLO
必賦吾郎
自案です。割と登場頻度が高かったような気がしますね。
ZAINでも最後まで生き残ったりと思い入れがあったのかもしれません。
名前の由来はVIPから。
No.1670『スーパーフライ・ジミー・スヌーカ』 考案者:ID:t6C56tUo 絵:ID:jcRf2gDO
橘楓
本体の絵が可愛かったので選んだ覚えがあります。
祐介とは恋仲にしてあげられませんでしたねぇ。
名字の由来はオンドゥルルラギッタンディスカー!?
No.1777『ラム・ジャム・ワールド』考案者:ID:GHXNccg0 絵:ID:xRH0l2AO
橘大二郎
楓の父親を出そうと思って探してたときに見つけてこれだ!と思いました。
ちなみに楓の母親は出番は無かったけどちゃんといますw
No.1614『ゴールデン・エンペラー(黄金皇帝)』 考案者:ID:nZJICvg0 絵:ID:bDXNIRYo
山本秋悟
絵がかっこよかったので衝動で出しました。
特に設定は考えていませんでしたし出番も…。
- 606 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/18(水) 17:24:46 ID:???0
- No.1617『ファイヤー・フォックス』 考案者:ID:fCXC9zso 絵:ID:HGEeckgo
大沢圭吾
まあ自案です。
結局ラスボスのかませに…。
No.976『デッド・エンド』 考案者:ID:CB6rV4v+0 絵:ID:a8j9uyds0
真嶋京輔
これも自案。
使い方次第じゃ強かったんですけど作者がド低脳すぎて扱いきれませんでした。
No.1731『リンゴ・スター』 考案者:ID:UUcmRh.0 絵:ID:OlVxywAO 絵:ID:YFnhTzM0
鍛冶鉄也
祐介の友達は不良を出そうと思ったのでこのスタンドを選びました。
No.991『リンキン・ パーク』 考案者:ID:7sXx1Sne0
絵:ID:47qt6n8DO
原田大和
理由は同上。あとクッキーさんの絵がよかった。能力も面白いよね。
No.915『ブレイズ・オブ・グローリー』 考案者:ID:xE9kbw0c0
絵:ID:njYFSHwRO
長瀬一馬
同じくクッキーさんの絵が好きだったので。
名前の由来は多分某ジャニーズ。
No.898『カルタ・マリナ』 考案者:ID:/WyPgjwjO
絵:ID:FUd+HOgNO
古森芹香
同じく(ry
出したのはいいけど能力を生かしきれ無くて登場頻度が…。
小麦色の肌は好きでし。
No.1081『オリヴァ・ツウィスト』 考案者:ID:RmDbUi3g0
絵:ID:w9tCbaST0
結城未早
女本体で探してた時に好きなスタンドスレで変態から愛されていたので出したという経緯が…。
祐介のクラスメイトの名前は結構苦労してつけたなぁと思い出しました。
No.1347『コミュニケーション・ブレイクダンス』 考案者:ID:2WHRYSk+O
絵:ID:ZwX9S9z80
東雲雪華
いわゆる便利屋。オリヴァ同様に好きなスタンドスレで愛でられたのでw
実は祐介とは幼い頃に会っており、公園で一人遊んでたところに祐介が来て話してたことがあったという設定。(しかし祐介は覚えていない)
苗字の由来は東雲太郎からw
- 607 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/18(水) 17:46:26 ID:???0
- ラムダキャラは他にも出すつもりだったんでしたが…さすがに無理でしたw
No.1102『ハーフライフ』 考案者:ID:gsX1ae+i0 絵:ID:sJYRm8nfO
久坂知己
ヴェーダの元研究員という肩書きでいきたかったので本体が物理学者であるこのスタンドを選んだと思います。
No.468『ホワイト・メディスン』 考案者:ID:9Gh0CIaUO 絵:ID:DarMMkFfO
白河由衣
治療係が欲しいなと思っていたので。
名前は多分…市川由衣が取ったんじゃないかな。堀江由衣じゃないと思うw
No.1551『スウィート・ハニー・ラヴ』 考案者:ID:KxJZU8s0
絵:ID:h0ATGVMo
ジョアンナ・レヴェック
自デザから。この能力はユニーク。
描いた後思ったけど本体の首長すぎたねw
No.543『ビッチェズ・ブリュー』 考案者:ID:QNs004410
絵:ID:nFJRqxt80
鷲崎瑛二
あのSSどうなったんでしょうね…。
しかし、このスタンドは水がある場所ならかなり有利ですね。破壊力はトップクラスなのでは。
No.196『ティアーズ・イン・ヘブン』 考案者:ID:Krk2yFJk0
絵:ID:S41zea8U0
天童昇
このスタンドもかなり強いですよね…。強すぎるのであまり活躍させられなかったw
No.836『エヴィータ』 考案者:ID:sOFZbLco
絵:ID:sOFZbLco
蛯原夏海
個人的に大好きな本体とスタンド。もっと人気あってもいいのにね。
No.137『God save the queen』 考案者:ID:/UeNt/FV0
絵:ID:T/IUp+bu0
絹井満
絵がかっこよかったのでw
No.384『ミスター・ロストマン』 考案者:ID:nbqdud430
絵:ID:NucSYI960
三輪大樹
この絵師さんの絵いいよね!
- 608 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/18(水) 18:09:55 ID:???0
- No.1013『シング・ライク・トーキング』 考案者:ID:3c0wdujP0
絵:ID:tb0+3Oqw
ブラフマー
これはラスボスっぽい!と絵と能力を見て決めました。
探してみて思ったんですが、ラスボスに使えそうなスタンドって意外と少ないんですよね。
実は当初はシヴァで出すつもりだったり…。
名前はインドの神様から引用。
最初は聖人の遺体でスタンドに目覚めた設定だったけどおかしいことに気づいて憑依した設定にしました。
あんまり強いもんだから承太郎さんにオラオラしてもらいましたよw
No.896『ビヨンド・ザ・バウンズ』 考案者:ID:3D5dUMHX0 絵:ID:ZX3k7nRq0
シヴァ
焼き鳥職人。
No.1744『The Agony and the Ecstasy(生涯にわたる苦悩と尽きぬ欲望/A2E)』 考案者:ID:4CiL0ZI0
絵:ID:XcHtQYAO
ヴィシュヌ
スタンド名と能力に惹かれて。
出したのはいいけどチートすぎたんですよねぇ…。
苦肉の策として仗助に倒してもらいました。
実はエイボンの書をヴィシュヌとして出す予定でした。
No.1529『エイボンの書』 考案者:ID:OqkmLIE0
絵:ID:wiDnywAO
影現斎
能力使えんかったなぁ…。
No.1550『Raindrops Keep Fallin'on My Head(雨にぬれても上を見ていろ)』 考案者:ID:0XzoIaQ0 絵:ID:bFYmmcSO
藤沢
最初から出すのは決めてたんですが、いかんせん強すぎた…。
もっと熱いバトルをさせたかったんですけどねー。
名字の由来はは地名から。
- 609 : ◆70nl7yDs1.:2010/08/18(水) 18:11:10 ID:???0
- 登場スタンドが多すぎるのでこのへんで割愛させていただきます…w
- 610 :名無しのスタンド使い:2010/08/18(水) 20:20:54 ID:ZFFgLUIwO
- 乙!やっぱ参考になりますなあ
- 611 : ◆WQ57cCksF6:2010/08/22(日) 03:03:26 ID:???0
- 遅れてすみません!
お疲れ様です!じょーたろさんやじょーすけさんが出てくるところはマジ熱ッ!あつあつですね!
物語の締め方も綺麗にできていて素晴らしいです。
次回は漫画!期待させていただきます!ウホッ!
- 612 :名無しのスタンド使い:2010/10/17(日) 10:36:58 ID:???0
- 今、全話拝見させていただきました。
いや〜、面白かったです!
戦いだけではなくギャグもあり恋愛もあり涙もありと、読んでいて非常に楽しかったです。
その上、バーニング・ファイヤーダンスにビヨンド・ザ・バウンズと、二つも自分の案を採用していただき、本当にありがとうございました!
実は2つともゲームソングが元ネタとなっております。
自分が出した案の中でもこの2つは特に考えて作った案であり、また絵師様にも素晴らしいという言葉では足りないような最高の絵を書いていただいた、思い出深いスタンドでした。
この二つのスタンドがこのSSに使われているのを見た時は本当に涙が出そうなくらいに嬉しかったです。
改めて、本当にありがとうございました!
■掲示板に戻る■ ■過去ログ倉庫一覧■