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【日常γ】つまり異能都市あっちこっち【その九】- 1 :名も無き異能都市住民:2011/09/09(金) 23:01:09 ID:6cPgE7ys0
- ≪ルールとか≫
・基本age進行で
・コテもコテ無しもどんどん来い
・レスの最初に自分のいる場所を明記してくれるとやりやすいです
・イベントを起こしたい場合は空いているイベントスレをお使い下さい
・多人数へのレスは可能な限り纏めて行うようにしましょう
・無意味な連投・一行投稿はできるだけ控えるよう心がけてください
・戦闘可能ですが、長引く場合や大規模戦闘に発展した場合はイベントスレへ移動してください
・戦闘が起きた場合、戦闘に参加したくない人を無理に巻き込むことはやめましょう
・次スレは>>950を踏んだ人にお願いします
前スレ(其の八)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12841/1301304401/
- 2 :テルメス/ニット帽の男:2011/09/26(月) 23:34:04 ID:DvGffmgQ0
- >>前1000
「聞かなかったくせに言わなかったって言うのはやめてくれよって言っただろ……。
姉って言うのも仮称みたいなもんだ、同じ種類の怪人だから姉って言ってるだけだ」
殆どの怪人は、鱗怪帝から生まれている。
怪人は皆兄弟といえば兄弟である。
「連絡手段は無いが……怪人が戦ってたら、よほど遠くなければ何処にいるかぐらいはわかる。
今日はそれを辿ってなんとかこいつにたどり着いたんだけどな」
足元をつま先で叩いた。
おそらく、テルメスの能力で埋没させたのだろう。
爆発音から、既に跡形もないのだろうが。
- 3 :黒沢小百合:2011/09/26(月) 23:47:30 ID:SSMHlh/20
- >>2
「何が『聞かなかった』だクソ頭がよォォォーッ!!!
テメェ、頭の中にクソが詰まってるんじゃないのかァ……!!
全ての情報を吐け、といっとろーがァッ!!!」
激昂した様子で叫ぶ小百合は、ついに感極まったのか
拳銃を持つ腕を大きく振り上げると銃床でテルメスの頭を殴りつけようと、
それを振り下ろした。
- 4 :テルメス/ニット帽の男:2011/09/27(火) 00:02:56 ID:DvGffmgQ0
- >>3
――ガギィッ
テルメスに銃床は命中した。
しかし、テルメスはピクリとも動かない。
テルメスはいつの間にか怪人の姿に変貌していた。
その腕で、テルメスは殴りかかってきた黒沢の腕に掴みかかる。
「いいのかよ、そんなに簡単に俺の巣の中に入って」
先ほどからテルメスの立っていた場所は、コンクリートの地面を砕いて露になっている砂地。
黒沢が足を踏み入れた瞬間に、砂地は渦巻き始めた。
今はまだゆっくりと渦巻いているが、テルメスがその気を出せば瞬時に飲み込まれてしまうだろう。
「人に物聞くときは態度って物があるだろ。
拘束されたり殴られたりしながら好意的に答える奴は怪人にも居ないと思うんだけどな」
- 5 :黒沢小百合:2011/09/27(火) 00:20:10 ID:SSMHlh/20
- >>4
「あっ……!!」
小百合は、怪人態に姿を変えたテルメスを見て
驚きとも恐怖とも取れない声をあげたが、すぐにテルメスを睨みつけて。
「貴方が悪いのでしょう!以前から非協力的な態度をとってっ……!!!
手を離しなさい、こっちは貴様の正体を公表して『テロリスト』にしたやることもできるんだッ……。」
逃げることもできず、テルメスがその気になれば自分など10秒と経たずひき肉にされてしまうだろう。
小百合は、強硬な態度を崩さないがその首筋に浮かぶ汗と僅かな声の震えに彼は気づく事ができるだろうか。
- 6 :テルメス/ニット帽の男:2011/09/27(火) 00:32:59 ID:DvGffmgQ0
- >>5
「そっちに協力してるのがばれて、
裏切り者として鱗怪帝から粛清されたくないからな。
お前が俺から情報を全部聞きだしてから俺を始末する可能性だってある」
手はまだ離さないが、一気に砂に飲み込む様子も無い。
徐々に動いている為、踝くらいまでは迫っているが。
「俺の正体をばら撒くなら、俺はこの街から出るだけの話だ。
地下に潜って仲間のアリジゴクと暮らすのも悪くないかもしれない」
- 7 :黒沢小百合:2011/09/27(火) 00:43:18 ID:SSMHlh/20
- >>6
「もし協力するなら証人保護プログラムで貴様を保護することもできる。
それに貴様は、貴重な『サンプル』だからな……簡単に殺しはしない……!」
くく、と挑発的に笑みを浮かべる小百合。
しかし、焦りを感じているのは確かなようで彼女の首筋の汗が目に見えて増え始めた。
「貴様の道は一つに二つだ……!
『市民』としてこの街で生きるなら……我々に協力し
都市に対する脅威と戦う義務がある……。」
しかし、小百合はそれでもなお恐怖に耐え言葉を紡ぎ続ける。
「だが『怪人』としての生を全うするなら、この場で私を殺すがいい……!!
『中立』はないッ……どちらかを選ぶしかな……都合のいい『中立』など……。」
- 8 :テルメス/ニット帽の男:2011/09/27(火) 00:56:05 ID:DvGffmgQ0
- >>7
「知るか!『中立』を壊しておいて何をほざいてやがる!」
テルメスの言っていることはいい加減だった。
怪人の本能は、何度かテルメスを人を襲うよう仕向けたことがある。
中立が存在しないのは、解りきっていることだった。
しかし、それなりに落ち着いていた生活が、黒沢が介入したことで変わったのも事実。
「俺の前に現れなければ良かったんだ、お前が……!」
黒沢の首に、腕から生えた鋸状の刃を突きつけた。
- 9 :黒沢小百合:2011/09/27(火) 01:04:19 ID:SSMHlh/20
- >>8
「ひっ……。」
首筋に走る、冷たい感触に小百合は堪えきれず
声を出したが、それでも小百合は折れなかった。
「やはりお前は『怪人』、を選ぶか……。
人間とは、相容れない化け物……それが貴様の本性だ……。」
青ざめた顔で、搾り出すように。
今にも助けてくれと命乞いをしたい、と言うのが小百合の本音であることは間違いない。
しかし、彼女のプライドは『敵である怪人』、『人間の敵』に降伏することを許さなかった。
「いずれ壊れる中立にすがりついて……愚かだな……!
『ハンパ物』はどういった場所でも弾かれるのさ。
遅かれ早かれ、怪人側からも人間側からも弾かれる……。」
- 10 :テルメス/ニット帽の男:2011/09/27(火) 01:17:32 ID:DvGffmgQ0
- >>9
テルメスはそのまま、威嚇するような唸り声を上げ続けていた。
しかし、手を動かす様子もなく、砂のざわめきも収まっていた。
「……ハンパ物……」
テルメスは、黒沢の首をはねることなく、手を下ろした。
同時に、黒沢からも手を離してしまった。
「あの約束のせいか……」
どういうことか、テルメスは人間態へ戻ってしまった。
- 11 :黒沢小百合:2011/09/27(火) 01:25:12 ID:SSMHlh/20
- >>9
「うっ……。」
腕を離され、自由になった小百合は
腰が抜けてしまったのか、その場にぺたりと座り込んで。
「……何があったかは知りませんが、
私は貴方に対する監視を続行……いや、強化します。
情報を貴方はまだ、隠し持っている……。」
未だに震える声。
しかし、瞳に確固たる意思を宿して。
「まだ、あなたは『市民』として逸脱した行動を……
今回を除けばですがとっていない。いわばまだ『市民』側に片足を残している。
まだ、殺しはしない。私も、貴方もまだ交渉のテーブルから下りてはいないのだから。」
- 12 :テルメス/ニット帽の男:2011/09/27(火) 01:37:16 ID:DvGffmgQ0
- >>11
「……市民側になるって約束してたんだ。
俺はあんたが保護してた少年とそう約束してた」
ジボルのことであろう。
テルメスは、目を地面の砂に落としながら言った。
「……悪い……『市民』として……協力させてくれ。
そうしなきゃ、今約束破って無くても、その内破ることになりそうだ」
- 13 :黒沢小百合:2011/09/27(火) 01:42:05 ID:SSMHlh/20
- >>12
「あの子が……。」
小百合は、エルメスが言わんとする人物をすぐに思い描いた。
たしかに、あの純朴さならどんな人物とでも打ち解ける事ができるはず。
「分かりました、ではまた……後日改めてこちらから窺います。
それまでに、話すべきこと、伝えるべき情報をまとめて置いてください。」
小百合はテルメスのことを何も知らない。
情報が、もっと情報が必要だ。
いずれ都市を襲う鱗怪帝とやらと戦うために。
- 14 :テルメス/ニット帽の男:2011/09/27(火) 01:52:55 ID:DvGffmgQ0
- >>13
「解った……」
テルメスは、顔を上げた。
「だけど、鱗怪帝は今大きく動いてない。
情報の中身は、今妙な行動をしてる上級怪人が主になりそうだけど……な」
テルメスの姉といわれる人物が関係しているという、変な怪人というのがそれであろう。
「とりあえず、他の情報も出来る限り纏めとくよ」
- 15 :黒沢小百合:2011/09/27(火) 02:00:05 ID:SSMHlh/20
- >>14
「上級怪人……私を一度倒したあの針野郎や、
水、羽などの高い知能と能力を持つあれらですか……。」
奴らの力は脅威だが、あれほどの力を持ってしても
怪人が人間以上に栄えたという話は聞かない。何か弱点があるはずだ。
「ああ、それと『証人保護プログラム』は必要ですか?
元々はギャングなどから、証人を守るためのシステムですが
現状はそれと酷似している。必要なら我々はあなたを迎え入れる用意がある。」
- 16 :テルメス/ニット帽の男:2011/09/27(火) 02:09:31 ID:DvGffmgQ0
- >>15
「上級怪人はその幹部の候補者達……みたいなものかな」
いずれにせよ、それに匹敵するほどの、
大きな力を持つ怪人達だと思われる。
「ええっと……頼めるなら、そうしてもらいたい」
怪人の中には、テルメス程度を超える能力の者はゴロゴロ居る。
姉もその一人であり、積極的に姉と接触できない理由でもあった。
- 17 :黒沢小百合:2011/09/27(火) 02:15:54 ID:SSMHlh/20
- >>16
「分かりました。ではこちらも準備をしておきましょう。
それでは、私はもう戻ります……。」
小百合は、手続きを始めるために一度千夜へと戻ろうと
踵を返し歩き始めたが、途中でふと立ち止まって
「一度、『守る』と決めたなら我々は必ず貴方を守ります。
その点においては『信頼』していただいていい。私を信頼せずともね。」
それだけを述べて、再び歩き出し。
- 18 :テルメス/ニット帽の男:2011/09/27(火) 02:20:32 ID:DvGffmgQ0
- >>17
「ああ、わかった……ありがとう」
黒沢が歩いていくのを見て、テルメスはその場に座り込んだ。
すり鉢状の自分の巣に。
「……約束ぐらい守ろうな、俺」
そう言ってずっと空を見上げていたのだった。
- 19 :緑乃壱 瞑輔:2011/09/28(水) 00:27:22 ID:HnkBBDEo0
- 「あー、面白そうなコトやってんな、コイツら」
夜の街。
スクリーンに映し出される箱庭での映像を男は見る。
男は外套を羽織っているが、注意深く見ればその下のシャツと袴には
血飛沫が付着しているのが分かるだろう。
「ああ、帰らないといけないのか。
だけどさっき切った奴は二人共ハズレだったからなぁ。懐が寂しいぜ」
耳からぶら下がるボディピアスをジャラジャラ鳴らしつつ、
男は腰に差した刀の柄を撫でる。
「さてと、どこかに獲物はいないもんかね」
- 20 :名も無き異能都市住民:2011/09/30(金) 22:36:55 ID:mRdm0I4U0
- 【緋河神社境内/授与所】
「過ごし易くなったなぁ……」
神札や朱印の授与、祈祷の受付などを行う授与所の番。
緋河神社の雇われ巫女であるナツキの、第一の仕事である。
といっても、特別な祭礼の日でもない限り、境内が多くの人で賑わうことはない。
「しかし、座ってるだけってのは、なんかこう……」
参拝者のために関係者が常駐する必要があるのだが、
かと言って居たからといって常に何か仕事があるわけでもない。
お守りやお御籤を受けていく人が偶にいるくらいだ。
「いいね……」
そんな呑気な仕事が、ナツキの性には実によく合っている。
たまに伸びあがって境内を見渡しては、変わりなし、と一人ごちて、
傍らの愛剣を撫でたり、袖からダイスを取り出してコロコロと転がしたりしている。
そうして何の気なしに振った、色もデザインも異なる3つの六面ダイスの出目は、1、2、3。
「……やっぱ今日は駄目の日か」
神社の境内では、ゆったりとした時間が流れている。
- 21 :アントーニオ・ロックフォード:2011/09/30(金) 22:54:49 ID:iGkCISWU0
- 異能都市の夜に重金属がカチカチと鳴らす音がする。
街頭の明かりを反射することもしない無骨な鎧を全身に纏って老騎士は街を練り歩いていた。
その姿は、むしろ鉄の塊と形容すべきものである。
「異能都市…その名の通り常軌を逸した者の住み家か…」
兜からは蓄えた赤色の髭が溢れ出ている。
アントーニオの、その兜の僅かな隙間から表情を窺い知ることは難しいだろう。
彼は笑っていたのだ――その相貌に深すぎる哀しみを湛えて――
永い年が彼を通り過ぎ、彼の周りで幾つもの国が栄え、滅び、争い、交わり、そして埋もれていった。
「さて、この街は私に何を見せてくれるのかな?」
彼は今、千秋ビルの下に立ち尽くしている。
既に中心部、緋河神社、私立千夜学園と、都市内部の施設を回ってきた所だ。
- 22 :サラ:2011/09/30(金) 23:14:49 ID:mRdm0I4U0
- >>21
「……なんかスッゲェの来たね」
騎士の眼前、ビルの警備員と話をしていた、金髪碧眼の女がそう呟いた。
他人のことを「スッゲェ」と形容する割に、その女の格好も奇抜なものだ。
赤と黒を基調にしたフード付きのローブは、どこから見ても西洋の魔法使い。
「じゃ、今日はここで。……またね」
女は警備員に手で軽く会釈。この場を立ち去るつもりのようだ。
当然、ビルの前に立つ騎士とは正面からすれ違う形になる。
女は凛と立つ老騎士に向けても小さく頭を下げ、すぐ目を逸らす。
そうしてそのまま横を通り抜けようと歩き始めた。
……眼前の騎士に、注意深く観察の目を投げかけながら。
- 23 :アントーニオ・ロックフォード:2011/09/30(金) 23:40:47 ID:iGkCISWU0
- >>22
正面から通り過ぎようとする魔術師風の女性に頭を下げられる。
一応老騎士も頭を下げるが、鎧で動きを制限されていて伝わったかは定かでない。
(この気配…力の属性は【魔】か…)
アントーニオの操る力は【法力】、数学や哲学がそのまま異能にまで高められた力だ。
――なるほど、異質な者が住まう街、噂は本当のようだ
老騎士は女から視線を外し、次なる目的地を目指して歩き出した。
(なんとか宿を探さなければな…)
アントーニオはかなり長期でこの都市に居るつもりだった。それだけの価値があると判断したのだ。
都市の内部事情を知るには自営業より公務の方がよい。王国ならば護衛、共和国ならば警察になるつもりだったのだが…。
――いかんせん分かりづらい
この都市では大きな支配組織が一つでなく、全様を掴みづらい。
ここでは自治と自衛が基本なのだろうか?
就職先に困ったアントーニオは既に通り過ぎた女に振り返って声をかける
「悪いが、勤め先を探している。腕と根性は自負している。」
「この街の治安を守っているのはどこの組織だろうか?」
- 24 :サラ:2011/09/30(金) 23:57:49 ID:mRdm0I4U0
- >>23
「おっと……」
声を掛けられて女も立ち止まる。
ゆっくりと振り向いた表情は、自然なものだ。
「市民を守るお仕事といえば都市の公安局でしょうかね。
……異能絡みなら観測局。それと、このでっかいビルの中に都市警備部門が」
そう言って、ぴんと指を立てて仰ぐばかりの巨大なビルを指差す。
「腕が立つなら、観測局がいいんじゃないかな」
と、女は立てていた指を畳んで、手を腰に当てる。
そうして、老騎士の頭の先から爪先まで、すっと視線を上下させた。
- 25 :アントーニオ・ロックフォード:2011/10/01(土) 00:20:58 ID:iGkCISWU0
- >>24
「なるほど…無能力者の諍いやパトロールは公安局で、大きな騒動では観測局が動くということか」
おそらく、観測局に必要なのは柔軟性と攻撃力。
対して、老騎士の能力はどちらかといえば攻めより守りに傾いている。
当たり前だ、彼の戦闘能力はすべて今は亡き王を外敵から護る為に発達したものなのだから――
そもそも戦闘人口が普通の自治都市の比にならないのだろう、老騎士の護りを必要とする人間自体が少ないのだ。
「千夜グループのビルに都市警備部門…千夜グループは個人経営ではないのかな?」
いくら大手であれ、只の会社が都市の警備まで担うことはないだろう。
とするとなんらかの形で都市側と繋がっていると考えるのが妥当か。
しかし、飽くまで会社は会社だ。都市に直接仕えることにはならない。
そして恐らく観測局では自分の能力は活かしきることはできないだろう。
――となると…
「ありがとう、参考になったよ」
しわがれた声で女に礼を言う老騎士。やはり重々しい兜と髭に遮られ表情は見えない。
「あなたの名は?」
- 26 :サラ:2011/10/01(土) 00:42:29 ID:mRdm0I4U0
- >>25
「……千夜の総帥は世襲の個人経営さ。
そいつから直々に警備部門を任されてる奴が、
今のこの街の治安維持の実質的なトップだね」
そう言いながら、女は注意深く周囲に目配りをしている。
ここ一帯、都市中央部は丸ごと千夜グループのもの。
下手なことは言わないに越したことがないのは確かだ。
「……あとは、公安局に広域捜査課って所がある。
ワンマンで色々やるつもりなら、融通が利くのは、そこ」
見たところ少女といっても差し支えないような、
年端もいかない小娘の口から、さらさらと情報が出てくる。
この事実、異能都市の奇異なる一端、と捉えればそれまでが……。
「あたしの名前はサラ。
……公安局に行くなら、ここであたしに会ったことは内緒だよ」
そう言って、澄ました風に顔を逸らしてみせる。
- 27 :アントーニオ・ロックフォード:2011/10/01(土) 20:44:56 ID:iGkCISWU0
- >>26
「それほどまでに影響力のある会社なのか…」
いい情報だ。
これからの異能都市を見ていくならば、千夜グループの動向には目が離せないだろう。
(周りを気にしているようだな…下手な発言はできない、ということか?)
彼女の話と挙動に、老騎士は都市の至る所に張り巡らされた大樹(グループ)の根のヴィジョンを見た。
そして、そうした力を持つ者達の思惑の根が絡み合い、この街が形成されているのであろう。
「まだ公安部と確定した訳ではないがね……しかし内緒とは、後ろ暗いことでもあるのかい」
別に答えは期待していない。
また、その答えが予想しうる最悪のモノでも、現在の時点で止める行動に移す事はないだろう。
それはアントーニオの道徳観は永い時を経て、常人の理解の難しい形にねじ曲がっているから。
しかし、見た目は只の少女である目の前の女が何故此処まで都市の構造に精通しているのかは気になる。
そうか――ここは『異能』都市か。
話が一段落すると、老騎士は異能都市から初めての月を眺める。
地球の何処から見ても変わらない月が、『この都市が幻ではない』と教えている…。
「私の名はアントーニオ、アントーニオ・ロックフォードだ。」
宜しく――という意味を込めて笑顔を作ったつもりだが、恐らく窺い知ることは出来ないだろう。
「時間を取らせてしまってすまぬな、感謝する。」
そう言って老騎士は夜の都市を、その現代には似合わない鎧甲冑でまた歩き出す。
その瞳の裏に、初めて出会った異能都市の少女を思い浮かべながら…。
///昨日寝落ちしてすみませんでした、一応話を纏めておきます。
- 28 :黒沢小百合:2011/10/04(火) 22:01:17 ID:SSMHlh/20
- 喫茶店AGカフェの奥、
関係者以外立ち入り禁止の旨が書かれた札が下げられているにもかかわらず
誰もが勝手に入っては適当に休んでいくその仮眠室は
2,3日前から一人の女性に占領されていた。
「………………。」
アシュレイに敗戦してから、もう何日になるだろうか。
小百合は、アイリスの部屋からわざわざAGカフェの仮眠室に移動したあげく
そこに篭り、シーツをかぶって1日中丸くなっている。
- 29 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/10/05(水) 21:37:34 ID:YT5zk9K.0
- >>28
「―――……はぁ…」
久方ぶりに、二度目の来店を果たした青年が、仮眠室の前でため息をついた
この中に、以前出会った女―――小百合がいるらしい
「…なんで、僕が……」
たまたま立ち寄ったのでコーヒーでも頂こうかと思ったところ、ガタイの良い客の一人に絡まれ、仮眠室独占容疑の女を起こしてくれと言われたのだ。
何故青年か、というと、前に小百合と青年が話しているのを目撃していた人がいたのだ
そのガタイから放たれる威圧から、気の弱い青年はお断りすることができなかったのだった
コンコン…
「おはようございまぁす…」
寝ている人間を起こすのはいささか気が引けたが、受けてしまった依頼は実行せねばならぬ
青年はドアをノックし、扉を開こうとする―――
- 30 :黒沢小百合:2011/10/05(水) 21:49:33 ID:SSMHlh/20
- >>29
――ガッ――ガッ――。
ほんの数cm扉が開いたかと思えば、
何かに引っかかり、それ以上動かなくなってしまう。
どうやら、扉の向こうに椅子か何かでつっかえ棒が作ってあるらしい。
当の小百合がでてくるそぶりが無い以上、
無理やり入るしかないだろう。
- 31 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/10/05(水) 22:02:46 ID:YT5zk9K.0
- >>30
―――が、何かがそれを遮っているようだ
おそらくつっかえ棒であろう。なるほど、入れないわけだ
「…(ちょっと強引だけど、いいよね…?)」
ならばいたしかたなし
能力を発動、炎を足元から発生させ、扉の下から侵入―――つっかえ棒を外そうとする
「失礼します…」
成功したならば、ドアノブを捻って扉を開け、中へ入って行くだろう
- 32 :黒沢小百合:2011/10/05(水) 22:13:18 ID:SSMHlh/20
- >>31
――ガタッ。
扉の向こうで何かが倒れる音が響き、
既に数cm開いていたドアは炎魔を招き入れるように
そのまま開いた。
奥にある寝台にあるのは真っ白いシーツの山……。
どうやら小百合は、あの中に篭っているようだ。
- 33 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/10/05(水) 22:20:08 ID:YT5zk9K.0
- >>32
「あの~…大丈夫ですか?」
ゆっくりと、極力音を立てないように扉を閉めながら、シーツの山へと近づいて行く
控えめな声であるが、おそらく小百合の元へと届くだろう
- 34 :黒沢小百合:2011/10/05(水) 22:23:35 ID:SSMHlh/20
- >>33
シーツの山は一瞬、ふるえるようにもぞもぞと動いたがそれっきり。
小百合は数日前にこの部屋を占領してからずっとこうらしいが、
誰もこうなった理由を知らない。
時折、千夜の本社から小百合の部下が来ては
困り果てた顔で書類をドアの前においていくが、それらは
いつの間にやら無くなってサインが済まされているというから
仕事自体はしているのだろう。
- 35 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/10/05(水) 22:26:30 ID:YT5zk9K.0
- >>34
「……はぁ」
再び、浅いため息をついて
シーツの山に触れ、揺さぶろうとする
「何か嫌なことでもあったんですかぁ?」
「話くらいなら聞きますよ…?」
書類云々の話は聞かなかった、が、そのふいんきから小百合の状態がかなり深刻であることは察することができた
- 36 :黒沢小百合:2011/10/05(水) 22:59:09 ID:SSMHlh/20
- >>35
ぼこっ、ぼこっ。
炎魔の触れたシーツの山の一部が何度も膨らむ。
どうやら、中から殴りつけているらしい。
「…………。」
でていけ、という事だろうか。
- 37 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/10/06(木) 07:11:44 ID:YT5zk9K.0
- >>36
手のひらに、拳の感触を感じる
中から殴りつけているらしい―――でていけということか
「他の方が使いたいって言ってるんですよ」
「別の場所に移ってもらえませんか…?」
あまり、この事は言いたくなかったが、こうなったら仕方が無い
ぽふっとシーツ山の隣に座って、語りかける
- 38 :黒沢小百合:2011/10/06(木) 21:39:12 ID:SSMHlh/20
- >>37
しかし、炎魔の言葉を聴き小百合はさらに意固地になったのか
もそもそとさらに丸くなり、布団のガードを固くした。
さらには……。
――ぼしゅっ
一瞬、ふとんに隙間ができたかと思えば
そこから、缶詰の空き缶がとびだしてきた。
恐らく、店の厨房からかっぱらってきたものだろう。
彼女は徹底的に抗戦するつもりらしい。
- 39 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/10/06(木) 21:42:22 ID:YT5zk9K.0
- >>38
「あうっ」
シーツの隙間から鋭く射出された金属の塊(缶。)が炎魔の額に直撃する
カン、と軽い音を立てて缶が跳ね、落下。よろめく炎魔、か弱いね
「むぅぅ…頑固ですねぇ」
「好い加減にしてくださいっ!」
炎魔は再びシーツに手を延ばし、無理矢理引き剥がそうとする
更なる抵抗するならば、炎魔も諦めず引き続けるだろう
- 40 :黒沢小百合:2011/10/06(木) 22:03:38 ID:SSMHlh/20
- >>39
小百合も負けじとシーツを引っ張り抵抗したが
腕っ節そのものは中学生レベルである小百合の抵抗などたかが知れている。
「むううーっ!!!」
容易く、シーツを剥ぎ取られてしまう。
くしゃくしゃになったいつもの黒のスーツ、パンのたべかすや空き袋。
先ほどの缶詰。そして幾らかの書類。
小百合はそれらを手早くかき集めると
隣のベッドへと移動してふたたび例の『巣』を作ろうとしている。
- 41 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/10/06(木) 22:19:13 ID:YT5zk9K.0
- >>40
「…よしっ!」
獲物のかかった漁師のような声を上げ、シーツを引き剥がす…が
その中はあら不思議、小部屋をシーツの中へ押し込んだような空間であった。
小百合は脱兎の如く、荷物をまとめて逃げようとする
「逃がしませんよ!」
炎魔はぽんとベットに飛び乗り、小百合を押さえつけようとする
- 42 :黒沢小百合:2011/10/06(木) 22:26:43 ID:SSMHlh/20
- >>41
「がうっ……!!!」
結局、小百合は能力さえ使わなければ
その辺の女性と大差ない、むしろ身体能力だけ見れば劣る。
炎魔に取り押さえられる形で、ベッドに押し付けられる小百合であったが……。
「放せッ、この×××野郎ッッ!!!
訴えてやるぞッ!社会的に抹殺してやるッ!!」
押し倒された体性のまま炎魔の股間に膝蹴りを食らわそうとする。
- 43 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/10/06(木) 22:32:55 ID:YT5zk9K.0
- >>42
「っ!?」
「な、なんてはしたないk―――」
小百合の言葉に、赤面だか怒面だかわからない表情をし、その怯みからか
股間への痛烈な蹴りをもろに食らってしまった
「―――…っ、っぁ、ぁぁ……」
そのままベットへ横転、悶える
かなり痛そう…というか間違いなく痛い
- 44 :黒沢小百合:2011/10/06(木) 22:47:36 ID:SSMHlh/20
- >>43
「汚らわしい下賤な××がこの私の体に触ってんじゃあないぞッ!
こちとらテメーの×××切り取って×××に詰め込んでやってもいいんだッ!」
間髪いれず、小百合の蹴りが飛んでくる。
無理やり引き剥がし、さらには捕まえようとした事が彼女の逆鱗に触れた!
鬱屈し、抑圧された怒りのまま行動する彼女は手に負えない!
「終了だッ!貴様はこれにてなァーッ!!!」
しまいには、物置にあった工具箱からレンチを取り出し
大きく振りかぶって襲い掛かってくる!
- 45 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/10/06(木) 22:52:36 ID:YT5zk9K.0
- >>44
「おっ、ごっ…ほっ…」
再びの、蹴り
今度は鳩尾に直撃し、呼吸がままならなくなる
細い呼吸、霞む視界の中で、炎魔は振りかざされたレンチを見た
「―――……っ」
フラフラと腕を掲げ、それを防ごうとする
…が、何せ遅い。間に合うかどうかは、小百合の腕の振りの速さによるだろう
- 46 :黒沢小百合:2011/10/06(木) 23:02:44 ID:SSMHlh/20
- >>45
――ベゴッ
振り下ろされたレンチは間一髪、
腕にぶち当たり、軌道が逸れたがもしもう少し腕を上げるのが遅ければ
顔面に直撃していただろう。
「………………思い知ったか、×××が。」
小百合は、適当に痛めつければ何も言わなくなるだろうと判断したのか
そのままするするとベッドへと戻り、再び『巣』を作り始めた……。
- 47 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/10/06(木) 23:06:22 ID:YT5zk9K.0
- >>46
「い″っ……だぁ…」
ギリギリのところでレンチを防御する、が、ごぎりという嫌な音が頭の中を駆け巡った
ひ弱な女の腕力といえども、凶器はレンチであった
「―――……っぐ…ま、待ってくださいっ…!」
股間、鳩尾、腕の激痛を、歯をかみしめて堪えながらベットを這う
炎魔もまた、意地になっていた
貞子のようにもう一つのベットへ近づき、新たな巣を(シーツの引き剥がしによって)破壊せんとするだろう
- 48 :黒沢小百合:2011/10/06(木) 23:18:33 ID:SSMHlh/20
- >>47
「ぐぬっ……まだ来るか……。」
忌々しげに顔を歪ませ、炎魔を睨みつける小百合。
レンチは既に、工具箱に投げ入れてしまった。
「離れろッ!離れろッ!このボケがッ!!
××××野郎がなあ、この私に近づくなッ!」
トドメとばかりに、這いずってくる炎魔の顔面に蹴りを叩き込もうとする。
- 49 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/10/06(木) 23:22:38 ID:YT5zk9K.0
- >>48
「――――――」
とどめ、だ。
見事に蹴りが顔面に入り、炎魔はそのまま気を失った
最後に足を掴もうとしたのか、腕を伸ばしていたが―――それも含めて体がゆっくりと倒れていく
- 50 :黒沢小百合:2011/10/06(木) 23:31:22 ID:SSMHlh/20
- >>49
「ハハハッ、この私に逆らうからこうなるのさ。
貴様は下手に他人の事情に首を突っ込もうとした。
おせっかい焼きにお似合いの末路だなあ〜……ヒャハハッ!」
炎魔が地面に倒れ伏したのを確認し、そのまま体を引き摺って表に出す。
ついでに、チラシの裏に『あけるな』と書いた紙を炎魔の頭に張りつけてそのままにしておいた。
そして、最初と同じようにつっかえぼうをして
再びベッドに『巣』をつくるとその中にもぐりこむ。
小百合はいつまで此処を占領しておく気なのだろうか……。
// そろそろ〆。
- 51 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/10/06(木) 23:34:55 ID:YT5zk9K.0
- >>50
/乙でした
- 52 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/10/07(金) 21:42:58 ID:YT5zk9K.0
- 【AGカフェ】
「………ふひゅぅ…」
カウンター席の1番端に、青年が座っていた
顔と腕に包帯を巻き、かなりやつれているご様子
「……はぁ…」
先ほどから何度も何度もため息をついては、時々コーヒーを啜る
朝からずぅぅっとこんな感じであった
- 53 :名も無き異能都市住民:2011/10/07(金) 22:12:56 ID:SSMHlh/20
- >>52
――からんころん
店のドアに備え付けられたベルが楽しげな音を奏で、
新たな来客を知らせる。
現れたのは、眼鏡をかけた初老の男で
何処か疲れたような雰囲気と、きっちりと整った口ひげが印象深い。
「やれやれ、疲れた……。
しかしこの店はウェイトレスもボーイもいないようだが……。」
そして何より、胸の警官バッチが目を引く。
- 54 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/10/07(金) 22:22:05 ID:YT5zk9K.0
- >>53
新たな客の訪れを知らす鈴の音も、青年の耳には遥か遠く
ちらり、と目をやるのみ
―――だが、その小さな呟きに、ゆらりと顔を上げて
「このお店に、店員はいないらしいですよ」
「だから勝手にコーヒーついで、勝手にくつろぐ――ここはそんなところらしいです」
かつてここで出会った―――そしてボコボコにされた―――女から聞いた話を、青年なりに説明する
あくまでも、今の青年なりに、だが
- 55 :名も無き異能都市住民:2011/10/07(金) 22:32:33 ID:SSMHlh/20
- >>54
「ははあ、それは変わった仕組みだな。
とにかく、ご教授ありがとう。」
男は戸惑いを隠さず、困ったような表情を浮かべると
そのまま、厨房の奥へと消えていき。
30分ほど経って、ようやく出てきた彼の手には
インスタントの紙コップ入りコーヒーと、牛乳を注げばいいだけの
コーンシリアルが入った皿が握られていて。
「……いやはや、何分料理は苦手でね。」
苦笑いを浮かべた男は、そのまま炎魔の近くの卓に着いた。
- 56 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/10/07(金) 22:51:24 ID:YT5zk9K.0
- >>55
「―――料理が得意で好きなら、こんなとこ来やしませんよ」
はぁ、と本日何百回目か分からぬため息をつく
自嘲気味の笑みは、儚く悲しいものだ
「…つっ…」
しゃべる事で鼻が少し痛んだらしい
鼻を抑えて、顔をしかめた
- 57 :名も無き異能都市住民:2011/10/07(金) 23:04:03 ID:SSMHlh/20
- >>56
男はため息をつき、シリアルを何度か口に運ぶが
飽きてしまったような様子で、手持ち無沙汰にミルクをかき混ぜる。
「どうした、暴漢にでもやられたのかね。
どうも、殴られた跡の様に見えるが……。」
職業上、ある程度見分けが付くのだろうか。
彼は、炎魔の傷が暴行でついたものとすぐに気づいたようだ。
「私に、回復魔法かなにかの心得があればいいんだが。
生憎、そうそううまくはいかないものだ。あまり、触らんほうがいいぞ。」
- 58 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/10/07(金) 23:11:47 ID:YT5zk9K.0
- >>57
「…ちょっと、依頼で失敗しまして」
「色々とボコボコにされました…」
炎魔の傷を見ただけで「暴力」である事に気づいた事へ、内心で少し驚く
―――と同時に、ただの初老の男ではないな、と感じた
「―――……ですね」
ここはおとなしく、従っておいたほうがいいだろう
ずきずきと痛む鼻から手を離し、コーヒーを飲む
- 59 :名も無き異能都市住民:2011/10/07(金) 23:24:28 ID:SSMHlh/20
- >>58
「若気の至り、ですんで良かったと感謝すべきだろう。
相手が相手なら、今頃はドラム缶につめられててもおかしくない。
……悪党ばかりの狂ったこの都市では。」
シリアルの残りを掻き込み、それをぬるくなったインスタントコーヒーで流し込む。
どうやらこの男は、炎魔がそういった連中を相手にする仕事に失敗した、と思い込んだようで。
「冒険者とか賞金稼ぎの末路は大抵、そんなところだ。
一般市民の死因は病気が今のところ一位だが、
それを殺人に入れ替えるような真似だけはしないでくれ。」
男はゆっくりと立ち上がり、食器を厨房に戻す。
その後、律儀にチップ込みの代金をレジに入れると最後に軽く会釈をしてから、
カフェを後にした……。
- 60 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/10/07(金) 23:31:22 ID:YT5zk9K.0
- >>59
「―――……ブルル」
男の言うことを間に―――冗談では、ないかもしれないが―――受けて、身震いをする青年
顔色も僅かに白くなり、恐怖がうかんでいた
「えぇ――…頑張ります」
青年もまた、一般市民からしてみれば「正義」の側
こくり、と頷くとゆっくりと体を傾け
カウンターに突っ伏して眠り始めた…
- 61 :アイリス:2011/10/09(日) 00:39:16 ID:zpQ2Gl7E0
- 【AGカフェ】
カランと来客を知らせる鐘が鳴れば、アイリスは慣れたとばかりにカウンター席に腰掛ける。
ちゃんと飲み物を持参し、コートを隣の席にかける。
今日、ここを訪れた理由は簡単だ。
アイリスの自宅から黒沢小百合の姿が見えなくなった。
ただそれだけだった。
- 62 :名も無き異能都市住民:2011/10/09(日) 00:46:33 ID:SSMHlh/20
- >>61
あれ以来、小百合は『病気療養』という名目で公の場に出ていない。
異能都市に星の数ほどの種類がある雑誌だとか新聞の中には
小百合は実は戦死しただとか、自殺しただとか、挙句の果てには
恋人と駆け落ちしただとか、適当な内容を掲載している物も散見される。
しかし実際、店の常連客の話に耳を傾けると
小百合はこの店の仮眠室を占領してふさぎ込んでいるというではないか。
- 63 :アイリス:2011/10/09(日) 00:57:25 ID:zpQ2Gl7E0
- >>62
適当な雑誌を手に取り、パラパラとページを捲っていく。
意外と慣れているような手つきであり、斜めに読んで情報を頭の中で処理している。
アイリスが手に取った雑誌にもたまたま、小百合の状況について言及されているものがあった。
複数の雑誌も同様にめくっていき、アイリスの周囲には小百合の情報だけが広げられている状況になる。
「…なるほどね。どれも共通するのは、人前に出ては居ないことくらいかな。」
だが…耳に入る情報を考えれば、意外と傍にいるのかも知れない。
例えば、仮眠室の中…だとか。
- 64 :名も無き異能都市住民:2011/10/09(日) 01:14:29 ID:SSMHlh/20
- >>63
仮眠室はスタッフオンリーと書かれた看板が掛かっているが、
そもそもこの店は客が勝手に厨房まで入り、飲み食いをする店である。
そして、あの店主銃寺森クロスならば勝手に入ったとて
『べつにいいんじゃね。』で済ますだろう。
奥までいって、確認しても問題はあるまい。
- 65 :アイリス:2011/10/09(日) 01:23:49 ID:zpQ2Gl7E0
- >>64
「…まぁ、いいか。」
一度、レストルームと札が掛かった場所へ寄り、それから仮眠室へ。
入る前にはノックをする。
返事があろうとなかろうと入るつもりではあるが…。
- 66 :名も無き異能都市住民:2011/10/09(日) 01:31:18 ID:SSMHlh/20
- >>65
しかしドアは扉の向こうからつっかえ棒でもしてあるのか
ほんの数cm開いただけでそれ以上開かない。
とはいえ、アイリスの吸血鬼としての力を使えば
ドアを破壊して入るのは容易なことだろう。
鍵ではなくつっかえ棒で戸締りがしてあるあたり
本当に小百合が中にいるのかもしれない。
- 67 :アイリス:2011/10/09(日) 01:38:02 ID:zpQ2Gl7E0
- >>66
力任せで強引に入っていくのはスマートでは無い。
魔眼を起動し、ドアそのものを“無かった”こととする選択をしたアイリス。
ドアに走る線を数本、指先でなぞってみれば、バラバラの端材となるドアだったもの。
「やれやれ。そこに誰かいるのかな?」
魔眼から普段の眼へ。
眼の移動で仮眠室の中の“違和感”を探す辺り、アイリスも少し用心しているのかもしれない
- 68 :名も無き異能都市住民:2011/10/09(日) 01:44:30 ID:SSMHlh/20
- >>67
ドアが切り裂かれ、つっかえ棒になっていた
折りたたみ椅子が支えを失って力なく倒れる。
「…………。」
部屋の奥にいくつか置かれた簡素なベッド。
そのうちの一つに、シーツが山と盛られており
周囲に食べ終えた缶詰だとか、パンの袋だとかが散らかっていた。
このシーツの中から、生命の気配がする。
そういった気配を感知する能力に長けているなら、それが小百合の気配だと分かるはず。
- 69 :アイリス:2011/10/09(日) 01:52:58 ID:zpQ2Gl7E0
- >>68
パンの袋や缶詰、盛り上がったシーツ。
この中に誰かいないと判断する方が難しいだろう。
「…小百合かい?出ていくなら一声掛けてくれても良かったんじゃないかな。」
声色は軽い。
責めるわけでもない、極々世間話をするような、そんな声色で。
- 70 :名も無き異能都市住民:2011/10/09(日) 01:57:44 ID:SSMHlh/20
- >>69
「…………。」
しかし、アイリスの問いかけへの返答は無い。
もぞり。震えるシーツの山。
放す気など無いという事だろうか。
- 71 :アイリス:2011/10/09(日) 02:03:34 ID:zpQ2Gl7E0
- >>70
「いるのか居ないのやら…」
小百合にも、常連客にも見えないように、
ニヤリ、と笑みを浮かべて。
「出版社でも出かけてこようかな。黒沢小百合を見つけた、ってね。」
小百合からすれば、アイリスらしき足音は遠のこうとしている。
が、下劣な出版社に情報提供されればどうなるか、小百合には想像しやすいだろう。
- 72 :名も無き異能都市住民:2011/10/09(日) 02:11:38 ID:SSMHlh/20
- >>71
しかし、それでも小百合の反応は無い。
……それもそのはず。
「くぅ……くぅ……。」
先ほどもぞりと震えた際に空いた隙間から
漏れ出すのは微かな寝息。小百合は既に眠りに付いていたのだ。
- 73 :アイリス:2011/10/09(日) 02:14:56 ID:zpQ2Gl7E0
- >>72
僅かに覗いた空間から漏れる寝息。
ああ、なるほど。
これでは反応しないわけだ。
アイリスは小さく溜息をつくと、AGカフェから出ていく。
こうやって手がかりを入手できただけでも収穫だろう。
- 74 :穏島優芽&???:2011/10/10(月) 21:40:55 ID:uarPEXNk0
- それは、ある日の昼下がりのこと。
千夜の都市警備部門に一本の電話がかかってきた。
「艦隊の関係者」と名乗るその人物は、主任の黒沢小百合とのアポイントメントを取りたいと申し出てきたが、
『え? 病欠で長いこと出勤してきてない? あちゃあ、まいったなぁ。
少し大事な「商談」があったんですがねー。え? ああいえいえ、至極個人的な「商談」なんですよ、ええ。
今はまだ個人レベルですが、きっと成立すればビッグな「商談」になりますよー』
「ユメー? フィアナもう飽きてきたー」
『はいはい姫様、もう少しですよー。……ああすいません、それで、何とか連絡付けていただけないものかと思いまして。
まあ胡散臭いことは重々承知してますがね。とにかく、一度連絡を取ってくださるとありがたいです。
…………そうそう、「ミスティック・フリート」って名前を出せばたぶん、一発OK出ると思いますよー』
そう言い残して、その日の電話は切れた。
- 75 :名も無き異能都市住民:2011/10/10(月) 21:53:25 ID:SSMHlh/20
- >>74
それから数日後、異能都市の裏の住人たちの間に
『黒の女王から艦隊へ、こちらに商談の準備あり。邸宅まで来られたし。』との
キーワードが流された。
話をしたければ小百合の邸宅まで来いという事だろう。
彼女の邸宅は異能都市の郊外にあり、個人のものとしては過剰なまでの
防御設備が備えられており、軍隊の攻撃にも数週間は対応できると噂されている。
- 76 :穏島優芽&???:2011/10/10(月) 22:13:42 ID:uarPEXNk0
- >>75
裏ルートで流されたそのメッセージを受けた翌日の夜、その「艦隊の関係者」二人は邸宅のある郊外に姿を現した。
一人は真っ赤なコートを着た背の高い女性で、名を穏島優芽といった。
彼女は常に布に撒かれた槍を肩に担いでいたが、この日だけはその手に紙袋のみを提げている。
中身は彼女の故郷で老舗と言われている店で買ってきた、羊羹の包みである。
「うーん……ああいう「上流階級」な人がどういうもの好きかわからないから、とりあえずこれにしたけど……。
ミスチョイスかなぁ」
「いいんじゃない、突っ返されたら突っ返されたで。キモはそこじゃないんだし」
ぼやく優芽の隣を歩くのは、彼女より一回り小さい背丈の少女。
西洋の尼僧服にも似た真っ黒な長衣を着た、セミロングの銀髪の彼女は、その楚々とした紅顔には相応しくないような、
凶暴な光を宿した紅の瞳を輝かせて、周囲を見渡す。
「大体さぁ、こーんな物騒なお家に住んでる人がさぁ、フツーの「上流階級」なワケないよね?
ましてや今からフィアナたち、血なまぐさい話しに行くんだよ?」
「それはわかってるけどね、姫様。世の中には踏まなきゃいけない手順ってものがあるの」
ややあって二人は、黒沢小百合の邸宅の前に到着した。
- 77 :名も無き異能都市住民:2011/10/10(月) 22:24:36 ID:SSMHlh/20
- >>76
小百合の邸宅の面積は広く大きな公園ほどもあるが、
まるで全てを拒むかのように高い壁がそそり立ち、中の様子を窺い知る事はできなかった。
門の脇に設けられた守衛室に今回の用件を伝えると、二人は以外にもすんなりと、
敷地内へと招き入れられ、本館へと行くように告げられる。
小百合の本邸宅まで、少し歩くことになるが注意深く周囲を観察したなら、
木々の間や、植え込みの中にそれとわからぬよう巧妙に偽装されたトーチカや塹壕、対空機関砲
対人兵器などが張り巡らされている事が分かるだろう。
- 78 :穏島優芽&???:2011/10/10(月) 22:33:36 ID:uarPEXNk0
- >>77
石畳の道を進む二人。
優芽は邸宅の構えに圧倒されてキョロキョロしながら、
長衣の少女は植え込みの中に隠してある対人兵器を目聡く見つけながら、
しかしどれに対しても露骨につまらなそうな顔をして歩く。
「うへーっ、お金のある人は違うねぇ、やっぱり」
「ユメもこういうとこに住みたいって思うの?」
「いやあ、あたしはこういうのは勘弁だね。ゴキブリが出てもすぐわかるような、
こぢんまりしたアパートの一室の方が性に合ってる」
「びんぼーしょーなんだね」
「うっさいよ、姫様」
そんな軽口を叩きつつ、二人は本館の玄関の前に到着する。
- 79 :黒沢小百合:2011/10/10(月) 22:50:25 ID:SSMHlh/20
- >>78
巨大な邸宅は上空から見ると滑らかな円形をしており、
一体何部屋あるのか、と問いたくなるほど無数の窓がその壁面に開いている。
――がこん、と重苦しい音と共に、邸宅の扉が開いた。
「……ようこそ、我が邸宅へ。
体調が優れなかったとはいえ、すぐに返事ができなかった事を許していただきたい。」
かつかつ、とカリガが小気味よく大理石の床を叩く音を響かせながら
一人の女が、扉の中から歩みで出る。
病気と報道されている、黒沢小百合に間違いない。
「……どうぞ中へ、ささやかながら酒席を用意してあります。」
小百合が二人を中へと招く。
- 80 :穏島優芽&???:2011/10/10(月) 22:58:49 ID:uarPEXNk0
- >>79
「おっと、これはどうもご丁寧に……」
小百合の招きに優芽はすぐさま、長衣の少女はそれに倣ってやや遅れ気味に会釈し、
二人は招かれるままに本館の中へと歩を進めた。
優芽は以前――と言っても片手の指で足りるくらい少ない――小百合に会ったことがあるが、
あのときと比べて随分とやつれたように見える。病気という話が信憑性を帯びた。
「ああ、これはちょっとした手みやげです。虎の印がまぶしい店で買ってきた羊羹なんですがね……。
気に入っていただければ幸いですよ」
そう言って優芽は持ってきた紙袋を小百合に差し出した。
- 81 :黒沢小百合:2011/10/10(月) 23:06:24 ID:SSMHlh/20
- >>80
邸内にはそこかしこに水路が流れ、
ガラスと水晶、エメラルドで出来た細工のミニチュアの木々、
琥珀の山脈など、トパーズの砂漠など悪趣味なまでに贅を凝らした趣向が施されている。
『コートなどを、お預かりします……。』
どこからともなく、数人の侍女が現れ
優芽たちのコート、荷物を預かろうとする。
暗に、武器も渡すよう促されるが……。
- 82 :穏島優芽&???:2011/10/10(月) 23:21:19 ID:uarPEXNk0
- >>81
「ユメー?」
「んー?」
優芽が侍女にコートと護身用の拳銃などを預けていると、長衣の少女に名を呼ばれた。
「なんだい、姫様」
「いけないもの持ち込んじゃダメって言われたけど、フィアナどうすればいいの?」
「ナイスジョークね姫様。あー、その子は手ぶらなんでノータッチで良いっすよ。
何ならボディチェックでもどうぞ」
振り返った優芽は、少女の側にいた侍女にそう告げる。
少女は「ユメ〜」などと恨めしい声を出して抗議したが、優芽はまあまあとそれをなだめた。
少女の着ている長衣は、その気になればそれなりの武器を隠せそうだったが、
中に着ているキャミソールやペチコートなどの下着類を無理矢理凶器認定しなければ、
他に何も持っていない。実際にボディチェックすればわかることだ。
- 83 :黒沢小百合:2011/10/10(月) 23:35:28 ID:SSMHlh/20
- >>82
身体検査は執拗なまでに厳密に行なわれたが、
武器類を発見することは出来ず、『預かった物は帰るときに返す』という旨を伝えられ、
そのまま奥の部屋まで案内される。
「どうか、かけてお寛ぎください。
今日は予定も入れていませんから、ゆっくりとお話を伺いたい。」
部屋はイベリア半島に見られるヨーロッパとイスラム文化が合わさった独特の装飾で彩られており、
部屋の中央に置かれた長机には、エキゾチックな料理が所狭しと並べられている。
小百合は、その際奥に腰掛けて柔和な笑みを浮かべていたが、
その笑みは何処か、無理やり口をゆがめているようにも見える。
- 84 :穏島優芽&???:2011/10/10(月) 23:50:27 ID:uarPEXNk0
- >>83
奥の部屋に通された優芽は、部屋の絢爛な装飾に目を奪われるより、
自分たちのために用意されたであろう、料理の数の多さに目を白黒させた。
「いやはや……至れり尽くせりとはこのことですなぁ。逆に申し訳ない気分になってくるよ」
「ユメ、フィアナはどうすればいいの?」
「どうせ話聞いてもわかんないんだから、あたしの隣に座ってればそれで良し」
「は〜い」
少女に指示を下した優芽は長机を挟んだ小百合の反対側に座り、
そのすぐ近くの席に少女を座らせた。
少女が机の上に並べられた料理……ではなく、飾り付けに興味を持った様子なのを見て取った優芽は、こほんと咳払いを一つして、
「……えー、まずは我々の「商談」に興味を持っていただいてありがとうございます。
正直なところ、「けんもほろろ」になる可能性の方が高く思えましたが……」
- 85 :黒沢小百合:2011/10/11(火) 00:02:27 ID:SSMHlh/20
- >>84
「ゆっくりと、と言ったばかりですがさっそく『商談』に参りましょうか。
お食事はご自由にどうぞ。お飲み物はワインでよろしいか?」
侍女が少女たちのグラスに、ワインを注ぐ。
銘柄はよく見えなかったが、芳醇な香りと濃い色合いは高級な品に違いなかろう。
「しかしまさか、『艦隊』側からこの私に接触してくるとはね……。
正直、意外でしたよ。『刺客』を送り込まれるぐらいは覚悟していたのですがね。」
小百合の瞳が、値踏みするように二人を見つめる。
実際、小百合はいつでも二人を。特にフィアナなる少女を攻撃できる態勢を整えている。
指示さえ下れば、鏡の裏や天井、隠し扉などありとあらゆる場所に隠れた兵士が攻撃を加える手はずになっている。
- 86 :穏島優芽&???:2011/10/11(火) 00:17:37 ID:uarPEXNk0
- >>85
外面は基本おちゃらけているが、優芽はこう見えて対能力者戦闘の経験が深い方だ。
鉄火場を切り抜けてきた者独特の嗅覚が、小百合が伏せておいている兵士の気配を嗅ぎ取ってはいたが、
優芽はそんなことをおくびにも出さずに話を進める。
「先頃のあの事件がありましたし、あなた方都市の人間の、艦隊に対する心象は最悪でしょうね。
「我々」はそれを心苦しく思っているのですよ。艦隊が一枚岩でないことが、心底悔やまれます。
そのせいで、「我々」は作らなくても良い敵を作ってしまった」
一方、長衣の少女は話をする優芽の横で、飾り付けの花をいじっては、その色彩に見とれている。
それだけを見れば、花好きの女の子に見えなくもないが、「艦隊」の使者として来た優芽に付いてきたのだ。
普通の少女でないことだけは確かだろう。
「艦隊は今、二つに分裂しています。私の所属する「提督派」と、旧来の思想から離れられない「旧艦隊派」に。
そして厄介なことに、艦隊の持つ戦力の殆どが、「旧艦隊派」に押さえられていまして……。
その話は無論、大殲滅兵器にも及んでいます。あの事件で、大殲滅兵器と呼ばれる兵器の危険性はおわかりだと思いますが」
- 87 :黒沢小百合:2011/10/11(火) 00:35:53 ID:SSMHlh/20
- >>86
「つまりは早い話が仲間割れ、ですか。」
小百合は優芽の艦隊が二つに分裂している、という話を聞き
それだけを呟いたが、最後まで大人しく話しを聞く。
「あの大殲滅兵器は脅威ですし、ミスティックフリートの正体も依然としてつかめていません。
こちらとしては協力者の存在はありがたい……しかし。」
優芽の話は魅力的だ。内部に協力者が出来たなら、
物資などを支援し内戦を煽ることも、直接部隊を送り込むことも出来る。
「しかしだ。その話の信憑性はどうなのですか。
失礼ではありますが、いきなりコンタクトを取ってきた貴方たちを一方的に信用しろ。
といわれても、それが土台無理な話だと分かるでしょう?私に示していただきたい。
信頼にたる、情報を。新たな友に報いるための信頼と誠意の証をね。」
- 88 :穏島優芽&???:2011/10/11(火) 01:01:49 ID:uarPEXNk0
- >>87
話の信憑性を疑う小百合に、優芽は「ごもっとも」と短く言って頷いた。
「では手始めに一つ、情報を。
「旧艦隊派」が何故、この都市に大殲滅兵器を送り込んだのか。その理由は、ある兵器の奪取にありました」
優芽は一息分間をおいた後、いかにも真面目そうな声色で、
「その兵器の名は、アシュレイ・4th。「戦略級」戦闘用アンドロイド開発計画である「八号計画」の試作4号機にして完成品です。
この兵器が他の兵器と違うところは、その極大火力を維持する超高出力リアクターを搭載しているのもそうですが、
一番の特徴は時空間干渉改変システム「クロノグノーシス ver.4」の存在にあります」
優芽がアシュレイの名を口にしたとき、花を触っていた長衣の少女がかすかに口の端を笑みの形に歪めた。
「クロノグノーシスが操るのは時間の密度。それによって強力なバリアフィールドを展開したり、
損傷箇所の時間を逆行させることで、自己再生したり……ver.3まではそれだけでした。
ですが、4号機に搭載されたver.4は、それまでとは破格なのです。
黒沢さんは、「世界線」というものをご存じでしょうか? 「世界線」とは、有り体に言えば世界そのもの。
時の流れに従って過去から現在、現在から未来へ流れる、一つの世界が辿る線、それが「世界線」です。
それは無数にあって……そうですね、「パラレルワールド」と呼んだ方がしっくり来るでしょうか? 時間軸と平行に進んでいます。
ver.4は、その「世界線」を「パラレルワールド」を創造する能力を持っているのです。
無論、世界まるまる一つ創造するのではなく、任意の物質を複製するための、限りなく小規模で限定的な世界ですが……。
この能力を使えば、元となる物を用意することで、それをシステムが存続する限り複製し、この世界に「投影」できるのです。
例えば戦略核兵器なんかを複製すれば、国一つを滅ぼすのに三日はかからないでしょう」
- 89 :黒沢小百合:2011/10/11(火) 01:18:45 ID:SSMHlh/20
- >>88
「アシュレイ……。」
微笑を浮顔に貼り付ける少女。それと対照的に、
小百合は怯えと、憎悪が綯交ぜになったような表情を浮かべる。
「『アレ』にはまだ、そんな機能が……。
それとも、その機能を使っていたのか……、まあいい。
『世界線』というのはよく分かりませんが、結局は物を複製する能力ということでしょう。」
小百合は、優芽の話を聞き『自分の能力に似ているな』と感じた。
書物の内容を具現化する能力――ブラックレーベルソサイアティ。
触媒の違いはあれ、ほとんど同じ能力ともいえるが。
(……私が、勝てるビジョンが見えない……見つからない……。)
得意とする遠距離戦で敗北し、数の上での勝負に負け、接近戦での活路を見出せない。
小百合は、自分の心を再び敗色が満たしていくのを感じた。
- 90 :穏島優芽&???:2011/10/11(火) 01:37:16 ID:uarPEXNk0
- >>89
アシュレイの名とその能力を耳にし、わかりやすく落ち込んだ小百合の様子に、優芽も眉尻を下げた。
「苦々しい思い出とは思いますが、先日、あなたと4thが戦った様子を私も見させていただきました。
あの常識外れの独立攻撃端末の群れ……あれこそ、「世界線」複製能力の現れです。
我々はあの能力を発現させる前に4thを回収し、クロノグノーシスもろとも封印してしまうのが最善だと考えていました。
……ですが、「旧艦隊派」が送り込んだ大殲滅兵器のせいで4thは自身に秘められた真の能力に気づいてしまった。
そして今、あの力が振るわれるのは、4thの胸一つにかかっている……これがどれだけ危険かは、
実際に対峙したあなただからこそ、実感を伴ってわかると考えます」
ふう、とため息をついた優芽は、食卓に用意されていた水差しからコップに水を移し、それを一気にあおった。
「……失礼。それで、話を元に戻しますが、「旧艦隊派」は4thの持つその力に目を付け、
それを奪取することで我々に対して決定的な優位性を持とうとしているのです。
前回の来襲でそれが阻害された以上、「旧艦隊派」は躍起になって4thの奪還を目指すでしょう。
そう、あなたの危惧するように、他の大殲滅兵器をここに寄越すことによって。
この都市が取れる選択肢は……まあ、二つくらいでしょう。4thを都市の味方に引き入れ、「旧艦隊派」を迎え撃つか。
それとも、4thを我々「提督派」に引き渡し、彼らの侵攻の大義名分を奪ってしまうか。そのどちらかです」
- 91 :黒沢小百合:2011/10/11(火) 01:58:00 ID:SSMHlh/20
- >>90
「見て、いたのですか……アレを……。」
見ていたなら、小百合が病と称して表に出てこない理由がもう分かっているはず。
弱いところを見せまいと無理をしていつもの自分を作っていた彼女は
途端に弱弱しくなり、微かに震え始めた。
もし、アシュレイが何らかの方法で敵の手に落ちたなら、
それこそ都市にとっては大殲滅兵器以上の脅威になる。
(……敵に回ることだけは避けなければ、都市のためにも、私の命のためにも……。
まあいい……理由が増えただけだ……理由が……。)
一番良いのは、適当に飼い殺しにしてしまうことだ。
提督派への引渡しも出来ない、現状は協力する風を見せているが
旧艦隊派を殲滅した後、都市に襲い掛かるやも分からない。
「分かりました……。わたしのほうでもその件を含めて動いてみましょう。
どちらにせよ彼女には、近々会いに行くつもりでしたから……。」
都市という鳥かごにアシュレイを捕らえておく。それが小百合の選択となる。
- 92 :穏島優芽&???:2011/10/11(火) 02:12:30 ID:uarPEXNk0
- >>91
「ふふ……賢明な方ですね。もし我々に引き渡す、などと言っていたら私はあなたに「無能」の評価を下そうと思っていました。
そんなあなただからこそ、我々が協力するに相応しい。そこで、です」
優芽はおもむろに、花をいじっていた長衣の少女の頭に手を置いた。
「?」
「この子を、保険としてあなた方千夜グループに貸与しましょう。感づいていると思いますが、
この子は普通の存在ではありません。というか、人間ですらありません。
魔導行使型戦闘用アンドロイド「フィアナ」、それが、この子の正式名称です。
フィアナはver.3までのノウハウを活かしたβ型クロノグノーシスを搭載し、艦隊が今まで培ってきた、
ありとあらゆる魔導機関の粋を集めて作られた、我々「提督派」の切り札です。
少々性格が子供っぽいのが、玉に瑕ですが……その性能には太鼓判を押せると断言しましょう」
「むーっ、ユメ、フィアナは子供じゃないよ!」
ぷりぷり起こるフィアナを、優芽は笑顔でなだめる。
優芽が若いのでまだ姉妹のように見えるが、その構図は完全に子供と大人である。
- 93 :黒沢小百合:2011/10/11(火) 22:18:14 ID:SSMHlh/20
- >>92
アシュレイの物より、旧式とはいえクロノグノーシステクノロジーを搭載した
アンドロイドを渡すのは、それなりの覚悟が必要なはずだしスパイとして送り込むなら
もっと適当な人間を密かに千夜内に送り込めばよい。
『提督派』は信用に足ると見ていいだろう。
「やはりなんらかの能力者かと思いましたが、まさかアシュレイの系列機だったとは……。
正直、予想以上でしたよ。分かりました、貴方たち『提督派』に協力いたしましょう。
さしあたって、必要な支援はありますか?人員、武器、提督派艦艇の受け入れ。
この私にできることなら、力になりましょう。」
俄然、小百合は自分の体に力が満ちるのを感じた。
……行動しなければ。寝ていると、アシュレイの存在に心を食いつぶされてしまう。
夜刀神蔡生に対しての報告書の作成、支援の用意、必要な連絡網・補給経路の確保。
フィアナ――クロノグノーシスに対する解析の準備も行なわなくては。
小百合は内心、やはり自分は仕事をしていないと落ち着かない人種なのだろうと苦笑した。
- 94 :穏島優芽&フィアナ:2011/10/11(火) 22:38:44 ID:uarPEXNk0
- >>93
「ハハ、元気が出てきたようで何より。
これより我々はパートナー同士となるのですから、相方にはできるだけ元気でいてもらいたいものです。
支援の件ですが、それについては特に必要とする物は何もありません。
内部分裂を起こしているとはいえ、我々は世界随一の巨獣、カノッサの一員ですからね。
我々があなた方に期待することは、フィアナを出来るだけ戦わせてデータを取ってもらうことと、
これから来るであろう、残りの大殲滅兵器を確実に破壊していただくこと。この2点です。
大変な仕事だとは思いますが、我々も出来る限りの支援をお約束しましょう」
交渉が成立したのを悟った優芽の顔は、安堵の色を満たした。
その横でフィアナがくすくすと笑っているが……何か言いたそうな様子でもない。
「ああ、そうそう……」
交渉が済み、フィアナを残したまま帰ろうとする際、優芽がふと思い出したようにそう言った。
「第三の選択肢もありましたね。これは我々との盟約が結ばれたとき限定の話だったので、先ほどは言いませんでしたが……。
そこにいるフィアナを使って、4thを破壊する、という手もありました。
フィアナには万一に備えて、対4th用の秘密兵器も搭載されていましてね…………おっと、この話は聞き流しておいて結構ですよ」
- 95 :黒沢小百合:2011/10/11(火) 22:53:05 ID:SSMHlh/20
- >>94
「分かりました、ではフィアナさんをお預かりましょう。
扱いとしては、この私の部下という事にしておきます。
そうすれば、敵襲にも迅速に対応できますし後の処理が簡単に済みますから。」
とりあえず、一般の戦闘員とするわけにもいくまい。
さしあたっては、自分の秘書扱いにでもして千夜ビル内に留まってもらおう。
「ほう、それはいい事を聞きましたね……。
使う機会がない事を祈りますが、脅威に対する対抗手段は多いほうがいい。
敵を殺すために虎を放し飼いにして、飼い主まで食われた。では意味がありませんからね。」
小百合は内心、ほくそえんだ。
可能なら、メンテナンスの際にクロノグノーシステクノロジーともども、
技術コピーを試みるつもりだ。
- 96 :穏島優芽&フィアナ:2011/10/11(火) 23:12:33 ID:uarPEXNk0
- >>95
「ええ……狡兎死して走狗煮らる、という言葉もあるくらいです。
今回のほとぼりが冷めた辺りで4thをどうするかは……あなた次第、ということですよ」
そう言い残し、優芽は「では」と言って小百合の邸宅を後にした。
(まずは、第一段階成功、ってトコかな)
優芽とて、この黒沢小百合という女が手元にあるフィアナにどういう欲望を働かせるかくらいは、容易に察することが出来る。
だが、それをしたところでどうにもならないことを優芽は知っていたし、
優芽に今回のことを指示した上層部もそれをわかった上で、フィアナを千夜に預けることを決定したのだ。
(カノッサとそれ以外とでは技術体系が天と地ほど違うし、何より「あの素材」が無くっちゃね……。
……フフ、黒沢小百合さん、欲をかくのも良いけど、世の中の全ては手に入らないんだよ? そんなこと、大人ならよく知ってると思うけど)
もう遠くになってしまった小百合の邸宅を振り返った後、優芽は都市の闇の中に消えていった。
- 97 :名も無き異能都市住民:2011/10/14(金) 00:24:15 ID:zpQ2Gl7E0
- 夜、裏通り。
この時間になれば、人通りが極端に少なくなる。
だが、今日は違った。
体格の良い男たちが何処かを目指し歩いている姿だ。
あるものは寡黙に、あるものは周りの者たちをちらりと眺めながら。
“血の香り”を隠す者もいれば隠さない者もいる。
ある所では、ガンをつけた、などの理由でお互いを罵り合うような光景も見られる。
ある一点を目指して進む男たちの中、軍服で金髪を三つ編みにした男が周囲の面々を眺めながら呟く。
「(あっちにゃー“剛腕のヒュルム”……ってありゃー……目を合わせれば殺られるな。おいおい…“あいつ”を野に離して良いのかよ…)ヒュー。壮観だねぇ。」
どの男たちも、普通の者たちではない。
ある者は裏稼業で名を上げている者や、売出し中の者もいる。
人と人との間は疎らではあるが、確かに“血生臭い奴等”は何処かへ向けて足を進めている。
- 98 :ラルキム/黒いマフラーの男:2011/10/17(月) 20:56:36 ID:et1rlL8Y0
- 「んー……飲み物が欲しいな」
繁華街のビルの屋上。
黒いマフラーを巻いた男、ラルキムが骨のついた肉を食っていた。
周囲に舞い散っているのは黒い羽根。
「しかし、この街は野生動物まで異能持ちかよ……。
食いもんには困らねえからいいけどな」
食い終わった骨を後ろに投げ捨てると、ラルキムは目下に歩く人ごみを見つめる。
「つ・ぎ・の……ターゲットはっと……」
しかしその視線は、人間ではなく、別の何かに向いている様子だった。
- 99 :名も無き異能都市住民:2011/10/17(月) 21:35:21 ID:SSMHlh/20
- >>98
// まだおられるかな
- 100 :ラルキム/黒いマフラーの男:2011/10/17(月) 21:36:14 ID:et1rlL8Y0
- >>99
//大体書き込んでから一時間ぐらいは待機してるよー
- 101 :バルト・アンデルセン:2011/10/17(月) 21:46:00 ID:SSMHlh/20
- >>98
――どぷん。
ラルキムの投げ捨てた骨が地面に触れた途端、
まるで水面へと落ちたかのように、粘り気のある水音を立てて
地中へと消えた。
「ふむ、鳥の骨……欲を言えばもう少し肉が残っていたほうが嬉しかったけれど……。」
次の瞬間、まるで汚泥が吹き上がるように
粘り気のあるスライム状の物体が現れ、子供の姿を成す。
「貴方は……怪人、だね。
最近街を騒がせているという。」
彼、もしくは彼女は値踏みするように、ラルキムヘ視線を向けて。
- 102 :ラルキム/黒いマフラーの男:2011/10/17(月) 21:53:26 ID:et1rlL8Y0
- >>101
「あ?なんだお前」
ラルキムは振り向かずに、右手を上げる。
その手には、その場に落ちているものとは違う、大きな茶色の羽根を持っていた。
「怪人だったら何だってんだ。
能力者だからってこんなところに居たら、怪人さんに食べられちゃうぞ」
茶化すようにラルキムは言った。
しかし、ラルキムはキョロキョロと周囲を見渡し、
その意識は完全に別のところに向いているようだった。
- 103 :バルト・アンデルセン:2011/10/17(月) 22:03:54 ID:SSMHlh/20
- >>102
「怪人に食べられる……ふふ、違うね。
『怪人が』食べられる、んだよ。」
――がぶんっ
先ほどより、一層激しい水音と共に子供の姿が消え、
同時に立ち込める、形容し難いほど濁った、まるで分厚い瘴気の渦の中にいるような、
全身をのたうちながら這い回るような威圧感。
間違いない、先ほどの子供はラルキムに対して攻撃を仕掛けるつもりだ。
しかし、どうやって?どこから?どのタイミングで?どのように?
『気配』が読めない。
- 104 :ラルキム/黒いマフラーの男:2011/10/17(月) 22:11:11 ID:et1rlL8Y0
- >>103
ラルキムは、威圧感も気にせずに羽根を投げた。
その羽根は、バルトを狙って投げられたわけではなく、向かいのビルの屋上に止まっていたカラス。
「ひゃひゃ、見ろよ!大当たりぃーい!」
ラルキムは立ち上がり、手を叩いてカラスを指差す。
そのカラスは異常に大きく、嘴はノコギリのようにギザギザとした異常体だった。
「頼むから、食事の邪魔はしないでくれねえかなぁ?
一言言ってくれれば優しい俺は分けてやるぜ?」
そこで振り返り、バルトがもと居た場所を見て言った。
- 105 :バルト・アンデルセン:2011/10/17(月) 22:35:32 ID:SSMHlh/20
- >>104
ラルキムの足元がどろりと溶ける様に崩れ、
先ほどの、紫色の汚泥があわ立ちながら吹き出す。
「残念だけど、僕は君たち『怪人』の味を知ってしまった。
もう、私には『怪人』が上質の淡白供給源にしかみえなくてね。」
汚泥はそのまま、一部を腕のように細く伸ばしてラルキムを絡めとろうとする。
『バルト』は元々とある組織が捕獲した
正体不明の化け物のクローン体であり、学習し、進化する事に特化したような個体である。
この生物は、以前の戦闘から『怪人』が都市に住まう生物より、格段に上質な『食物』で
あることを学習してしまったようだ。
- 106 :ラルキム/黒いマフラーの男:2011/10/17(月) 22:48:14 ID:et1rlL8Y0
- >>105
「あー、淡白……なに?」
男はため息を吐き出すように呟いた。
「かわいそうな奴め、相当下級の怪人と戦ったんだろうな」
ラルキムは一歩足を下げ、リンボーダンスのように触手を避ける。
しかし、そこはビルの屋上の縁。
そのままラルキムは落下しそうになる、が。
「ふっ……」
そのまま縁を蹴り、繁華街上空に飛び出すと、向かいのビルに飛びついた。
ビルの壁には突起物など無かったが、ラルキムの腕は猛禽類のような鋭い爪に変化し、
コンクリートの壁に突き刺さる。
ラルキムはそのまま壁を登り、先ほど倒したカラスを掴み取った。
「追いかけっこする気があるなら着いて来い、ひゃひゃひゃ」
カラスの首を毟り、肉を齧りながら、親指でバルトと自分を交互に指す。
- 107 :バルト・アンデルセン:2011/10/17(月) 22:54:42 ID:SSMHlh/20
- >>106
――ばしゃっ
軽い水音を立てながら、バルトはラルキムを追って飛翔する。
液体のままでは空中で飛散してしまうため、『人型』をかたどってから。
しかし、先に着地したラルキムはいわば、『地の利』を得ている。
空中でまっすぐ飛びかかろうとするバルトに攻撃を加える事は容易だろう。
- 108 :ラルキム/黒いマフラーの男:2011/10/17(月) 23:01:04 ID:et1rlL8Y0
- >>107
「おいおい、マジで追いかけっこしたいってか。
いいぜ、付き合ってやる」
カラスをもしゃもしゃと食い、バラバラの骨だけになったそれをバルトの顔目掛けて投げつける。
「ひゃひゃひゃ!こっちだ!」
挑発するように背後に指を指し、その方向に向かって駆け出すと、
マフラーを翻して更に隣のビルへ飛び移る。
時折振り返ってバルトを確認しながら。
- 109 :バルト・アンデルセン:2011/10/17(月) 23:09:24 ID:SSMHlh/20
- >>108
投げつけられた骨はごぽ、と水音を立てて体へと沈み込む。
結局は生物の一部だ、問題なく吸収できる。
(これではイタチゴッコどころか、段々差をつけられてしまう。
生きの良さも良質の栄養源ゆえか……。)
このままでは追いつけないと判断したバルトは、
ラルキムを追いかけながらも、狙いをつけるように手を翳す。
――ズチャッ
掌から、まるで弾丸のように肉片が飛び出しラルキムヘと迫る。
この『生きている』弾丸は命中した生物の肉に同化し、じわじわと喰らう特性を持っている。
- 110 :ラルキム/黒いマフラーの男:2011/10/17(月) 23:19:08 ID:et1rlL8Y0
- >>109
(……なにか来るな)
バルトを見て、ラルキムはニヤリと笑った。
そして、放たれた音と共に横に飛び、
大型の室外機に隠れて肉片の弾丸を回避する。
「ほらあ!俺はこっちだぜ!」
ラルキムは室外機の反対側から飛び出し、
再び走り出すと、またビルを飛び移る。
- 111 :バルト・アンデルセン:2011/10/17(月) 23:24:58 ID:SSMHlh/20
- >>110
この『肉片弾』の恐ろしいところは、
一度外れても自らの力で跳躍し、何度でも目標に襲い掛かるところにある。
いわば、弾丸と言うよりは誘導弾に近い。
バルト本体からも肉片弾は打ち込まれ、例え外れようとも
弾丸自体が意思を持ち、飛びかかってくる非常に厳しい状態だ。
- 112 :ラルキム/黒いマフラーの男:2011/10/17(月) 23:31:55 ID:et1rlL8Y0
- >>111
「おいおい、面白いことするんだな!」
ラルキムの動体視力と素早さを持ってすれば、弾丸がいくつあろうと逃げ切る自信はあった。
しかし、それだけでは面白くも無い。
それに実は、バルトから逃げ切る自信はあったが、バルトを倒す自信も無いのだ。
「ちっと苦手だが、魔術とやらを使ってみるか……」
走りながら、時には屈み、時には飛び、弾丸を避けつつ。
ラルキムはぼそぼそと呟き始めた。
- 113 :バルト・アンデルセン:2011/10/17(月) 23:48:32 ID:SSMHlh/20
- >>112
(ふーむ、アレを避けるのか……。
なかなかどうして、うまくいかないものだね……。)
一方のバルトもラルキムの回避能力に対して、手詰まりを感じていたことは事実で。
(少し疲れるけれど……『挟み撃ち』と行こうか。
うまく誘い込まないと……。)
バルトは、肉片弾と同じ要領で己の肉体を切り離して地面と同化させ、
そのまま密かに、ラルキムヘと忍び寄らせる。
同時に、肉片弾と自分自身を使い逃げ場を制限する。
- 114 :ラルキム/黒いマフラーの男:2011/10/18(火) 00:02:34 ID:et1rlL8Y0
- >>113
「……エクエスのバリアの見よう見まねだが……」
走りながら呟きを止め、指で宙に何かを描いた。
そして、立ち止まり、振り向いて手を構える。
「よし……来い来い……。
今だっ!」
肉片の弾丸が、ラルキムに触れる直前。
ラルキムが構えた手を振りぬくと、
巨大な翼の形をした障壁がラルキムを覆い隠すように出現し、衝撃波を発する。
- 115 :バルト・アンデルセン:2011/10/18(火) 00:10:04 ID:SSMHlh/20
- >>114
――バシッバシッ!!
肉片が障壁に阻まれ弾かれる小気味よい音が何度か響き、
ラルキムの体を、確りと防御する。
こうなるとバルトはいよいよもって手詰まりになってしまった。
隙間さえあればどんな所にでも入り込んで見せるが、攻撃力に乏しい
バルトでは、隙間の無い障壁を突破する力は無い。
「まいったな……。」
(さすがに、これではね……。
時間も、労力も掛かりすぎた。)
ため息を一つ。バルトと周囲に散らばる肉片は
地面に染み込んで何処かへと消え、そのまま再び姿を現すことはなかった。
- 116 :ラルキム/黒いマフラーの男:2011/10/18(火) 00:19:25 ID:et1rlL8Y0
- >>115
「いやあ、俺流にアレンジ加えたつもりが、意外といい感じだな」
障壁は、数秒経つと消えてしまった。
しかし、コツを掴んだのか、
ラルキムの手の振りに合わせて何度も出たり消えたりしていた。
「もうちっと練習してみるかな……。
アレンジしたせいで逆にノーモーションで使えそうだ」
うんうん唸りながら、
ラルキムはそのまま障壁を出したり消したりして遊んでいたようだ。
- 117 :アシュレイ・4th:2011/10/19(水) 00:26:49 ID:wTH5FWJg0
-
夕刻。学校帰りの学生でごった返す、駅や繁華街に通じる大通りの中を、
アシュレイ・4thは周囲の皆と同じように帰路についていた。
オレンジ色の光を青の瞳で受け止めつつ歩いていた彼女は、何かに引き留められるようにぴたりと立ち止まり、
「…………」
何を思ったか、大通りから脇道にそれ、2ブロック離れた裏通りへと歩を進めた。
裏通りと言っても、特にダーティな場所ではない。
が、特に用事もなければ大概の人間は今までアシュレイがいた大通りを使うので、人の出入りは多い方ではない。
その証拠に、彼女がその裏通りに着いたとき、目につく人影はひとつもなかった。
- 118 :黒沢小百合:2011/10/19(水) 00:51:01 ID:SSMHlh/20
- >>117
――こつん。
アシュレイの背後の石畳をピンヒールが叩き、硬い音を響かせる。
「……貴方が一人になる時を待っていましたよ。」
艶やかな長い黒髪と、きっちりと仕立てられた黒のスーツ。
既に沈みかかった太陽の、眩い輝きから逃れるように影の中に佇むのは、
黒沢小百合、その人。
- 119 :アシュレイ・4th:2011/10/19(水) 00:59:03 ID:wTH5FWJg0
- >>118
「……そちらの方が都合が良いと思いましてね」
アシュレイは、背後を振り返らずに静かにそう言った。
その次の瞬きが終える頃には彼女は体ごと振り返っていて、
小百合に向かってぐっと伸びた右手には、鈍色に輝く金属の塊。
翻るスカートとペチコート、そこから垣間見える、太もものホルスター。
右手で抜かれたのは銃だ。
「あなたにとっても、私にとっても。
こんにちは、黒沢小百合。箱庭以来ですね」
向けられる表情は無い。しかし、瞳には一寸の油断もない。
……敵対者の目だ。
- 120 :黒沢小百合:2011/10/19(水) 01:17:59 ID:SSMHlh/20
- >>119
小百合は最後に見たあの無残な姿とは違い、
テレビや雑誌の写真で見る彼女と、相違ないように見えるが――。
その首筋には薄っすらと汗が浮かび、
指先は、小刻みに震えている事が分かるだろうか。
「あの敗戦は、正直私もまだ……受け止められてはいません。
しかし、一つだけ。私の中で変わった事が、ある、のです。『アシュレイ』さん。」
ようやく搾り出したという風に吐き出される、切れ切れの言葉。
アシュレイとは対照的に、その瞼はゆっくりと閉じられて。
「……いままで、貴方を侮っていました。
『ゼンマイ仕掛け』と、所詮心の通わぬ機械だ、と……。
――『ごめんなさい』。」
続けて口から出た言葉は、謝罪の言葉。
先ほどのたどたどしさから想像できないほどするりと述べられた言葉に、偽りの色は見られない。
- 121 :アシュレイ・4th:2011/10/19(水) 01:31:10 ID:wTH5FWJg0
- >>120
まさかそんな言葉があの黒沢小百合の口から出ようとは思っていなかったアシュレイは、
わずかに驚き、しかしすぐに疑惑に目を細めた。
その疑惑が晴れぬからだろう。銃は未だ、小百合の脳天を狙い続けている。
「……どういうことでしょうか。謝るから今までのことは全て水に流せ、と言いたいので?」
あの執念深そうな女が、いきなりこんなに下手に出るわけがない。
確かにアシュレイは小百合を箱庭で敗北させ、その心にダメージを負わせた。
が、だからといって、これはあまりに不自然に見える。むしろこの女ならば、別の復讐方法を考えているのが自然だ。
であれば、今の言葉、額面通りに受け取るのはあまりに危険。
(………………様子を見た方がいいでしょうね)
疑念のありありと浮かんだ表情を向けたまま、アシュレイは次の言葉を待つ。
- 122 :黒沢小百合:2011/10/19(水) 01:55:17 ID:SSMHlh/20
- >>121
ゆっくりと瞼を開けた小百合の目に飛び込んできた光景は、
未だ自分に銃口を向ける、アシュレイの姿。
「……今までが今までです、警戒するのも分かりますよ。
それに……許せとは言いません、これは私の自己満足ですから。」
アシュレイの勝利は、小百合の心にダメージを与えたが
それはアシュレイが計算したよりも、ずっと大きなダメージを残した。
――今の小百合の心を支配するのは、諦観。
勝利する事ができない以上、膝を折り服従するほか無い。
相手の不興を買わぬよう、忠誠を捧げるしかない。つまり、抵抗の意思を捨てた。
「私が、自分を納得させるために勝手に貴方に謝っている。
ですから、逸れに貴方が応える義理などは……ない、ですから。」
小百合は既に心まで敗北者と成り果て、屈服した。
彼女の誠意をはねつけてもいい。受け入れてやっても良い。
全ては、勝利者であるアシュレイに与えられた特権だ。
- 123 :アシュレイ・4th:2011/10/19(水) 02:13:21 ID:wTH5FWJg0
- >>122
「成程。過去の自分に折り合いをつけるためにこうしている、と。
まあわからなくはないですが、しかし、これも酷い仕打ちですよ。
言うなれば貴女、自分のために私を偶像に仕立て上げたわけですよね」
実際、謝られたってアシュレイ自身としては困るだけだ。
何故なら、彼女はもう、この黒沢小百合という女に無関心を決め込むつもりだったからだ。
こちらからは何も干渉せず、降雨の後の地ならしもするつもりは無かった。
そもそも彼女は何について謝ったのだ?
「心の通わぬ機械」だから、取るに足らない存在だろうと侮った、というふうに聞こえたが、
謝罪はどこに掛かっていたのだろうか?
心の無い機械だと扱ったことか? 実力を侮ったことか?
(……どちらでも構いませんがね)
彼女自身の中で折り合いを付けるために謝罪した、というのであれば、
その内容の差などにさしたる意味など無いのだろう。
「話はそれだけですか? それ以外に何か話がないのであれば、私はこのまま帰らせてもらいますよ。
偶像としての役目は十分果たしたでしょうしね」
- 124 :黒沢小百合:2011/10/19(水) 02:28:44 ID:SSMHlh/20
- >>123
「ごめんなさい……。」
最後に小百合は一回だけポツリと呟いた。
機械だと扱ったことへの謝罪か、実力を侮ったことへの謝罪か。
それとも、別の何かか。
それ以上、彼女は何も言わず、
立ち去っていくアシュレイを見送った。
// ごめんよ、そろそろ限界が近くなってきたのでこれで。
// つきあってくれてありがとうね。
- 125 :アシュレイ・4th:2011/10/19(水) 02:33:53 ID:wTH5FWJg0
- >>124
//お疲れ様でした。
- 126 :アイリス:2011/10/20(木) 21:48:46 ID:zpQ2Gl7E0
- 【神羽荘204号室】
テーブルを挟み、黒革のソファーに、花を飾った花瓶。
何処かの会社の応接セットといわれれば、多くの人は納得するであろう部屋の主人――アイリス――はテーブルに置いたボードゲームの盤を見つめる。
静寂が支配し、人の気配も殆ど感じられない極端に物が少ない部屋に、小さいながらも乾いた音が響いた。
12×12のマス目に黒い騎士を表したかのような駒が一歩、前に置かれた音だ。
駒を動かした人物は立ち上がり、窓の外を見つめる。
――既に駒は動き始めた。後は転がすだけ
魔眼を起動し、自らの指先に傷をつける。
滴れる赤い液体に、コウモリたちが侵食されていく。
その様子を冷めた瞳で見つめながら灰色へと変わったコウモリを飛ばしていく。
その作業を何度か続け、指先を舐める。
――“報酬”は用意している。
――後は面白可笑しくなれば良い。
外を眺める瞳は酷く冷淡なものだった。
- 127 :黒沢小百合:2011/10/24(月) 21:50:34 ID:SSMHlh/20
- 【AGカフェ】
「ふう、久々に此処で一息ついた気がします。
ここしばらく、働き詰めでしたから……。」
白身魚のフライとサラダが小奇麗に盛り付けられた皿をいつものカウンター席に置き、
氷の入ったグラスに、ミネラルウォーターを注ぐ。
たしかに、此処最近は麻薬犯罪への対策で忙しく
毎日のように通っていたカフェにも顔を出せていなかった。
- 128 :究極超絶超級覇王アルティメットハイパープリティ少女:2011/10/26(水) 23:07:16 ID:.6prKP66O
- 「私はアウテリート♪プリティアウテリート♪私は〜私は〜♪アウテリート♪」
恥ずかしげもなく高らかに歌う姿は紛うことなき美少女!
召使を引きつれ、大量の荷物を持って街を闊歩する姿はお嬢様!
緑の巻き髪に、寒空の下プリーツの白いミニスカートにニーソックス!
緑のネクタイに腋丸出しの服を着た姿は紛うことなきアウテリート!
そんな美少女のアウテリートさん、今夜はお買物の帰りのようだ
- 129 :わたあめ:2011/10/26(水) 23:15:16 ID:SSMHlh/20
- >>128
冷たい風がびゅうと拭いた。
10月の夜ともなれば、もう冬の気配をそこかしこに感じる事ができる
――ころ、ころ。
と、その風に運ばれて白い綿のような物が運ばれてくる。
きゅーきゅーと鳴き声をあげるそれは、都市に住まうもふもふと呼ばれる生物のようだ。
- 130 :アウテリート/風雲爆烈娘 ◆6xc12amlNk:2011/10/26(水) 23:23:29 ID:.6prKP66O
- >>129
「寒ッ!?もう、狙ったかのような寒い風ですわね……
ラブコメだったらサービスシーンでしてよ」
荒らぶるスカートを押さえる素振りも見せず、体を冷やす風に悪態を吐く
「ん?ん〜?」
そこで目にするのは白い毛玉……少女は鳴き声をあげるその毛玉を見て目を輝かせると一目散に走り出した
「キャーッ!ケセランパセランですわ!私の願い事を叶えてくださいなぁッ!!」
煩悩が渦巻くその眼光には、ファザコンならではの願いが見え隠れしていた
- 131 :わたあめ:2011/10/26(水) 23:29:50 ID:SSMHlh/20
- >>129
風に煽られて転がるケセランパサランもとい、もふもふは
壁に当たってようやく止まり、きゅうと一声鳴く。
吸血鬼の少女、ロザリアの飼いもふであるわたあめは
十分に大きくなったとの事で、最近になって一人での散歩を許されていた。
しかし、街を放浪するうちに迷ってしまい強い風が吹いた拍子に転がってしまったのである。
「きゅー、きゅー。」
わたあめは、体を起こすと自分になにやら尋常ならざる視線を向ける少女を見上げ、
不思議そうに、その体をよじった。
- 132 :アウテリート/風雲爆烈娘 ◆6xc12amlNk:2011/10/26(水) 23:37:32 ID:.6prKP66O
- >>131
「オホホホホ!これで私の野望が叶いますわ!」
少女は一層速度を上げ、もふもふに向かい突撃
召使達は荷物を持たされている為に制止する事も出来ずに
「ゲットぉぉッ!!」
獣の如くもふもふに飛び掛かる少女……もふもふは壁を背にしていた為、落ちは完全に予想できた……
デシーンッ!
少女は自身の形を壁に刻み込む形になってしまうのだった
- 133 :わたあめ:2011/10/26(水) 23:42:21 ID:SSMHlh/20
- >>132
「きゅー……。」
のんきなもふもふもさすがに、
見ず知らずの人間に捕まえられるのはよくないと分かる。
ゆっくりと(もふもふ的にはそれなりに急いで)、その場から離脱。
壁に激突したアウテリートに潰されないよう、移動する。
- 134 :アウテリート/風雲爆烈娘 ◆6xc12amlNk:2011/10/26(水) 23:51:32 ID:.6prKP66O
- >>133
「げぐぐっ……ぷはぁっ!」
街行く人の視線を一気に集め、鼻血を流しながら壁から抜け出すと、少女は再びもふもふを狙う
「うふふふふ……さぁ、いい子だから私の願いを叶えなさいなぁぁあぁああぁッ……!」
鼻血塗れ、ギラつく眼……
もふもふにはホラーこの上ない状況であった
ジリジリともふもふに迫る美少女(鼻血塗れ)
召使達は状況を理解し、荷物を置いて少女を止めようとするが……
- 135 :わたあめ:2011/10/26(水) 23:56:01 ID:SSMHlh/20
- >>134
「きゅ、きゅー!」
鼻血を流しながら迫る少女。
飛びつかれてしまえば、自慢の毛並みに血が染み込んで
しばらく、赤いシミが残ってしまうかもしれない。逃げなければ!
――びゅう。
再び吹いた寒風。
もふもふは先ほどと同じように風に煽られ、転がっていく!
- 136 :アウテリート/風雲爆烈娘 ◆6xc12amlNk:2011/10/27(木) 00:05:09 ID:.6prKP66O
- >>135
「ぐふふふふ!捕まえ……あっ!」
捕まえようと手を伸ばした瞬間に再び風、目の前のもふもふは転がり行く
「あ、こら!待ちなさいな!!……ってこらぁ!」
もふもふが恐がっているのを察知した召使達が少女を羽交い締めにする
「ケセラン〜パセラ〜ン!!」
ズルズルと召使を引き摺りながらも、まだ追い掛ける!
- 137 :わたあめ:2011/10/27(木) 00:07:56 ID:SSMHlh/20
- >>136
『あら、ようやくみつけたわぁ。
何処に行ったのかと心配していたのよ。さ、いらっしゃい。』
見知らぬ少女の声が何処かから響いたと思えば――。
転がるもふもふの姿がぐいんと空間ごと歪み、そのまま霞のように掻き消える。
『飼い主』がもふもふを迎えに来たのだ。
アウテリートとしてはケセランパセランを逃した形だ。
- 138 :アウテリート/風雲爆烈娘 ◆6xc12amlNk:2011/10/27(木) 00:12:43 ID:.6prKP66O
- >>137
「むむむ!?この声は!?」
声は聞いた事がある……お父様に依頼しに来た金髪だ!
そんな事を考えているともふもふが消えてしまったではないか……
「なぁ、はぁ……!?」
もふもふが消えた場所を鼻血を流しながら見つめる……なんの変哲もないその場所を
「……ケセランパセランがぁ!!私の野望がぁ!?」
少女はもふもふを逃がした事を理解して悔しがる
その後、召使に引き摺られながら帰っていくのだった……
- 139 :エドワード=ニュートリング:2011/10/28(金) 21:39:53 ID:xm/dFKGs0
- 異能都市の路地裏にある空き家から、一人の男が出てくる。
何時もとは違う黒いロングコートの下のボロボロの白衣を着た男。
珍しく小さな鞄を持っていた。
「さて…今日も行くとしよう」
彼はここに来てから毎日のように朝・昼・夜に異能都市を歩き回っている。
それは意味の無いようにも見えるが、彼にとっては大きな意味がある。
彼がこの世界からいつでも抜け出すための抜け穴を作っておくためだ。
とは言うものの、そう都合よく行くはずも無く、今日も無意味に歩き回るだけに思えた。
- 140 :エドワード=ニュートリング:2011/10/28(金) 21:42:19 ID:xm/dFKGs0
- //上げ忘れ
- 141 :名も無き異能都市住民:2011/10/28(金) 22:03:55 ID:SSMHlh/20
- >>139
何時間歩いただろうか。
エドワードはどういうわけか工事途中で放置された廃ビルや、空き地、
錆びたテナント募集の看板のみが空しく風に揺れるだけの空き店舗などが多く、
人通りの少ない寂れた区画へと足を踏み入れていた。
この周辺は治安も悪く、警官さえも恐れて一人では立ち入らない区域。
たまに見かける通行人も、腰に拳銃をこれ見よがしにぶら下げたチンピラや
得体の知れない食べ物を売り歩く老婆、客待ちの娼婦ばかりだ。
- 142 :エドワード=ニュートリング:2011/10/28(金) 22:27:30 ID:xm/dFKGs0
- >>141
「嘗ての栄光、か」
そういえば、私が設計に手を貸したあの国はどうなったのやら。
魔道の鎧が適合者を見つけたのやら。
周りから絡まれたりするのを極力避けながら考える。
ふとお腹が減ったのでアイスを取り出して一口。辛い。
治安が悪い地域が見慣れているのか、彼は動じもしない。
何時ものように、穏やかに笑いながら周囲を見回っているだけだ。
- 143 :名も無き異能都市住民:2011/10/28(金) 22:37:29 ID:SSMHlh/20
- >>142
エドワードが周囲の気配を読むことに長けているなら、
路地裏を見回るうちに、自分の後をつける者があることに気づくだろう。
最低でも数人。各自が連携してそれと気づかれぬように
一定の距離を保ってついてきている。
チンピラや武装強盗にしてはかなり手馴れている印象を受ける……。
- 144 :エドワード=ニュートリング:2011/10/28(金) 22:41:58 ID:xm/dFKGs0
- >>143
「私の嫁〜は凛子です〜♪」
後をつけている奴がいることは分かっているが、どうでもいいと言わんばかりに、
アイスを食いながら鼻歌交じりに歩いていく。
何処の世界でも異端者は狙われるもの。
それを理解している彼は、まず泳がせる→元をブッ飛ばす、が一番効率がいいことを知っているのだ。
「今日も彼女は〜画面から〜でて来てる〜♪」
- 145 :名も無き異能都市住民:2011/10/28(金) 22:53:29 ID:SSMHlh/20
- >>144
エドワードが一層人気の無い、狭い路地に差し掛かったとき、
『やつら』の最初の攻撃が始まった。
――キィッ
ふいに、路地の一方の出入り口を塞ぐように黒塗りのバンが乗り付けられたかと思えば
エドワードの背後、もう一方の路地の出入り口を数人の男たちがその身を持って塞ぎ、
手に持った見かけない形の拳銃を発砲した。
サプレッサーが装着されているらしく、発砲音は響かない。
これでは物音を聞きつけて警官や自警団が来ることは無いだろう。
- 146 :エドワード=ニュートリング:2011/10/28(金) 22:59:52 ID:xm/dFKGs0
- >>145
「1,2,3,ハイッと」
黒塗りのバンが止まった場所へ足からメタルエッジを発射。
鋼鉄製のブーメランは高速回転でたいていのものは断ち切る事ができる。
そして、前方の銃弾を、適当な相手へと向かって行きながら急所を避ける。
そして、前方の相手の首筋目掛けて左手で小さなスローナイフを投擲。
当たるかは別だが、肉体のダメージは痛みで動けなくなるほどじゃない。
- 147 :名も無き異能都市住民:2011/10/28(金) 23:13:21 ID:SSMHlh/20
- >>146
――ボンッ
バンは一見、普通の乗用車と変わらないように見えたが
大幅に改造が施されているのか、ブーメランは表面に突き刺さり止る。
『戦い慣れている!気をつけろ!』
反撃がくるとは思っていなかったのか。
『やつら』の中の一人が叫び、立て続けに発砲しながら曲がり角の影に身を隠す。
他の者たちも同様の所作で素早く遮蔽物に身を隠し、スローイングナイフは空を切った。
恐らく軍人か、傭兵上がりのどちらかだろう。
- 148 :エドワード=ニュートリング:2011/10/28(金) 23:23:51 ID:xm/dFKGs0
- >>147
「やれやれ……」
発砲を両腕で急所を防ぎつつ、遮蔽物へ隠れる相手へ手榴弾を3個。
投げつけていく、一つはバンへ、もう二つはさっきまで人間がふさいでいた方へ。
その途中でも銃弾は飛んでくるが、お手製の特殊コートは銃弾程度ではビクともしそうに無い。
流石は、ナノカタリスト技術と言ったところか。
相手の出自は行動で大体組織立った奴等の仲間か何かだが、
問題は誰が、何時、どんな目的で差し向けたかが大事だ。
速いうちに私を脅威とみなしたのか、それとも…?
- 149 :名も無き異能都市住民:2011/10/28(金) 23:34:40 ID:SSMHlh/20
- >>148
男たちの放つ弾丸は、金属製の見慣れたそれではなく
『注射針』にもよく似たフォルムであり、これでは特殊コートを貫くことは不可能。
それどころか、コートに弾かれた拍子に曲がってしまう始末だ。
……敵の目的は、どうやら殺害ではないらしい。
そもそも、エドワードはこの街でこれといった騒ぎを起こしたことも
公の場で能力を使ったことも無いので、なんらかの組織が狙いに来たという線も薄いか。
――ドォガァァッ
さすがに、手榴弾を喰らっては無傷とも行かないのだろう。
手榴弾を取り出し投げた瞬間、バンはアクセルを踏み込み間一髪でその場を離れた。
同時に、男たちもその場をすばやく離れ闇に紛れ込んで逃げていく。
追撃するか、それとも深追いを避けるか。エドワードの自由だ。
- 150 :エドワード=ニュートリング:2011/10/28(金) 23:43:39 ID:xm/dFKGs0
- >>149
「さて、追いかけるとするか」
両足に風の魔素を集中し、微妙に浮き上がる。
どうやら、バンを追いかけていくつもりらしい。
「行くぞ」
動き出すと、バンに追いつかんばかりの速度で迫っていく。
よく見れば微妙に浮き上がっているためか、かなり小回りがきくようだ。
どうやらどうしても、彼らの素性を知りたいらしい。
- 151 :名も無き異能都市住民:2011/10/28(金) 23:53:15 ID:SSMHlh/20
- >>150
舞い上がった粉塵によって車体後方を白く染めたバンは
狭い路地の壁に側面を擦りながら、ギリギリのスピードで駆け抜ける。
その挙動は闇雲に逃げ回る、という風でもなくどこかを目指しているように思えるが……。
――タタタッ!!
ふいに、助手席の窓が開き軽機関銃が小気味よい音と共に弾丸をばら撒く。
走行しながらの射撃のため、命中精度は低いが今度は実弾が使用されている。
一応の注意を払うべきだ。
- 152 :エドワード=ニュートリング:2011/10/29(土) 00:06:42 ID:xm/dFKGs0
- >>151
「おっととと……危ないなっと!」
両手から軽機関銃の弾倉とバレルを狙ってスローナイフ2本を射出。
さっき投げたメタルウイングがまだ刺さっているのなら利用も可能なのだが…。
と、ナイフの本数が足りなくなってきた。後6発しかない。
能力の攻撃も視野に入れて行動を考えておく。こう狭いと此方も余り早くは動けない。
相手が誘っているにせよ、闇雲に逃げているにせよ。
彼は捕まえて情報を吐かせることしか考えてはいまい。
- 153 :名も無き異能都市住民:2011/10/29(土) 00:14:42 ID:SSMHlh/20
- >>152
残念ながら、バンが側面を擦りながら走行するうちに
外れてしまったようで、メタルウィングは刺さっていない。
しかし、エドワードの投げたスローナイフは確かに
軽機関銃を貫き、射手はその拍子に銃を取り落とした。
助手席からは未だに拳銃を発砲してきているが、あれは買おうと思えば
その辺のチンピラでも容易に入手できる粗悪な模造品。
先ほどの機関銃よりも脅威度は格段に下がる。
――グォオオォォッ
攻撃を諦めたのか、バンはさらにスピードを上げる。
このスピードでは、危なすぎて助手席からの攻撃はできない。
しかし、バンの向かう先は袋小路だ。追い詰めた。
- 154 :エドワード=ニュートリング:2011/10/29(土) 00:25:12 ID:xm/dFKGs0
- >>153
//メタルウイングとメタルエッジ間違えたorz
飛んでくる銃弾をコートで弾きつつ、懐から狙撃銃『DSR-1』を取り出して構える。
狙うは運転席。風速やコリオリ、自転などの要素を計算する。
「……!」
バンがスピードを上げた瞬間に引き金を引いてしまった。
直に狙いを運転手に変えてもう一発。
しかし、計算していないため離れたこの状況では狙いは落ちる。
だが、相手は袋小路に着いたようだ。恐らく、追い詰められたのだろう、此方が。
さて、どうしたものだろうか。
- 155 :名も無き異能都市住民:2011/10/29(土) 00:41:04 ID:SSMHlh/20
- >>154
弾丸は車体を捕らえたものの、残念ながら運転手を捕らえなかったようだが
狙撃を受けたバンはさらに速度をあげ、路地裏に突っ込む!
もう、ブレーキをかけても間に合わない。
――自殺するつもりか?それとも、狙撃され混乱したのか?
常軌を逸した唸り声を上げるエンジン、次の瞬間
路地裏のコンクリート壁に激突したバンが爆発と共に――。
――いや、バンはそのまま掻き消えてしまった!
周辺に一気に迸ったかと思えばそのままゆっくりと消える魔力。
敵はこの場所に『転移魔法』の陣を仕込んでいたのだ。
- 156 :エドワード=ニュートリング:2011/10/29(土) 00:44:55 ID:xm/dFKGs0
- >>155
「ふむ……逃がしたか…だが」
これで、自分が狙われている事が明らかになったのは大きい。
誰かは知らないが、最悪である。
しかも相手は痕跡を態々消すと言う真似までやってくれた。
「まぁ、他に相手がいなければいいんだが」
そう思いつつも、周辺を警戒しつつ、袋小路から離れる。
- 157 :名も無き異能都市住民:2011/10/30(日) 01:49:39 ID:zpQ2Gl7E0
- 深夜の廃倉庫の群れ。
その中の一つに、様々な男女が集まっていた。
天井から吊り下げられた裸電球が彼らの頭上を照らす。
廃倉庫の最奥には埃をかぶったパソコンが一台ある。
最早群れとした彼らは我先にとパソコンの前へと走る。
裏稼業ではそこそこ名の知れたもの達だ。
少しでも自分を優位に立たせないのだろう。
真っ先にパソコンの前についたのは、金髪の男。
剛弓と呼ばれる巨大な弓を携え、最低射程150Mを越えるであろう、弓の名手。
その上、自らの異能で様々な効果を持つ矢を創りだす男だ。
男は口を開く。
「押すぞ」
誰かが生唾を飲み込む音がする。
それもそうだ。
様々な方法で依頼が掛けられたものだ。
男はマウスを操り、スクリーンセイバーを解除すると、画面には再生ボタンが映った。
クリックし、音声の再生を行う。
「ここに居る者たちは、依頼を受けると認識する。」
ボイスチェンジャーで変えた肉声が廃倉庫内に響く。
時には嗄れた老婆のような声。またある時にはくぐもった声。明らかに変声処理を行なっていると解るほど可笑しな声だっだ。
「依頼内容を確認する。………」
数分後、主に野太い歓声が廃倉庫より上がった。
これから、真夜中に血生臭い連中が様々な場所で見かけることになるだろう
歓声の中、人知れずパソコンが木っ端微塵に壊れた。
- 158 :バルト・アンデルセン:2011/10/31(月) 23:35:49 ID:SSMHlh/20
- 【公園】
今日は都市各所の公園で、千夜が不定期に行なっている
浮浪者や低所得者層向けの無料の炊き出しが行なわれており
訪れた人々に芋の入った汁やかぼちゃの煮物が振舞われている。
「……あつい……うま……。」
とある公園の一角、錆びて動かなくなったシーソーをイス代わりに
熱々の汁に舌鼓を打つバルトの姿があった。
- 159 :ディス ◆My6NsjkSfM:2011/10/31(月) 23:48:53 ID:WVrfsEdY0
- 「…なんでかなの」
【何処かから甘い匂いが漂ってくる】
「なんでみんなおかしくれたのかなの…」
【其の甘い匂いの先ではベンチの上に】少女が座っていた」
「きょうはなにかあったかなの?」
【少女の膝の上にはお菓子がいっぱい積まれているようである…】
- 160 :バルト・アンデルセン:2011/11/01(火) 00:01:00 ID:SSMHlh/20
- >>159
「おやあ……?」
自分の分の食事を食べ終えたバルトの感覚器官を、
炊き出しの匂いの中に微かに漂う、お菓子の甘い臭いがくすぐる。
元来、甘いものに目が無いバルトはその発生源を探し始めたが……。
残念なことに彼、もしくは彼女には動物的な収穫は備わっていない。
とにかく、微かな香りを頼りに甘いものを探す。
- 161 :ディス ◆My6NsjkSfM:2011/11/01(火) 00:06:29 ID:WVrfsEdY0
- >>160
「あうー。せっかくもらったのだからたべようかなの!」
【よく見るとかぼちゃを模した帽子を被らされている。】
【軽く微笑みながらお菓子の一つに手を伸ばしに行くが】
「あう?」
【こっちに向かってくる人を確認して顔を上げた】
「こんばんわなの〜・・・?」
【少し気にしながら声をかけた。】
- 162 :バルト・アンデルセン:2011/11/01(火) 00:13:05 ID:SSMHlh/20
- >>161
「なるほど、ハロウィンのお菓子だったのか……。
やあ、こんばんは。」
バルトとしては今回の炊き出しにはデザートまであるのだろうか、と
勝手に解釈して心を弾ませていたのだがそういえば、街はまだハロウィーンムードだ。
お菓子を持ってうろつく子供もいよう。
「はは、お菓子の甘い香りに誘われてしまってね。
どうにもそういった類のものには弱くて。」
バルトも見た目は子供である。お菓子を貰うことはあったが
既に全て食べきってしまっていた。
- 163 :ディス ◆My6NsjkSfM:2011/11/01(火) 00:19:50 ID:WVrfsEdY0
- >>162
「あうあう〜。こんばんわなの〜!
…えっと…」
【名前を考えているようだ】
「はろうぃん?それってなんなのかなの?」
【不思議そうに首をかしげて聞く。見た目ディスはハロウィンの衣装に見えなくはないだろう。】
「あう?おかしだいすきなの?
えっと、『でぃす』もだいすきなの。」
【袋の中から飴を取り出して】
「たべる?なの」
【バルトに差し出した。】
- 164 :バルト・アンデルセン:2011/11/01(火) 00:33:02 ID:SSMHlh/20
- >>163
「ハロウィーンというのは、ケルトだかなんだかの風習が元のお祭りらしいね。
おおざっぱだけども聞いたところによれば、大人はお化けの仮装をした子供に
お菓子をあげないと本物のお化けよろしく悪戯されてしまうんだそうだ。」
バルト自身も積極的に参加した経験は無いため、
人から聞きかじった程度の知識しかないが、大まかに言えばこんなものだろう。
「ん、催促するようになってしまったかな。
でも……甘いものの誘惑と言うのは抗し難い。
ありがたく頂くことにするよ。」
差し出された飴玉を受け取り、ひょいと口にほおばる。
- 165 :ディス ◆My6NsjkSfM:2011/11/01(火) 00:38:50 ID:WVrfsEdY0
- >>164
「あうー、なるほどなの!…つまり、おばけのかっこしたら
おかしもらえるなの!」
【納得したように言うが…】
「…そんなにおばけにみえるかなの?」
【…見慣れた自分の包帯ぐるぐる巻きの格好を見て首をかしげた】
「あうー。きにしなくていいの。
『でぃす』もこれだけあまいのあったらじゅーぶんだからなの〜」
【そう言ってビスケットを手にとって口の中に放り込んでモグモグし始めた。】
- 166 :バルト・アンデルセン:2011/11/01(火) 00:46:42 ID:SSMHlh/20
- >>165
「ハロウィーンと言う日は特別だからね。
ちょっと変わった服装をしているだけでも、お菓子がもらえたりするのさ。
君はミイラ男にでも間違えられたんだろうね。」
かく言う目の前の中世的な童子の服装も相当である。
まるで貴族か軍学校の制服のような、豪華で上等な紫の衣服は
様々な種族、人種の坩堝である都市の街中でも目立つ。
「とはいえ、僕は君に借りができたわけだ。
本の小さな事かもしれないけれど、私は借りっぱなしは性に合わなくてね。
しかし、持ち合わせも無いし……困ったな、恩返しができないや。」
ビスケットを幸せそうにほおばるディスを眺めながら
ううむ、と困った様子で頭を捻るが一行に良い案は浮かばなかった。
- 167 :ディス ◆My6NsjkSfM:2011/11/01(火) 00:51:47 ID:WVrfsEdY0
- >>166
「もぐもぐもぐ…なるふぉどなの…
おとこじゃないけどなの…そういうのかなの…」
【感心しながらモグモグと口を動かす。なんか色々零れそうだ】
「んう?あう〜、そんなにきにしなくていいなの〜!
なにかもらおうてつもりじゃないからなの…
…うーん、おともだちになるのならいいの!」
【そう言って微笑み返した。】
- 168 :バルト・アンデルセン:2011/11/01(火) 01:00:23 ID:SSMHlh/20
- >>167
「そうか、じゃあ僕と君は今から友達だ。
困った事があればいつでも私を呼ぶといい。
僕の事は、バルトと呼んで欲しい。」
同じように、笑みを浮かべて。
考えてみれば、施設から逃げ出して以来人と話すことはあっても
こういった同年代の『友人』を作ることは無かった。
「ディス、と言ったかな?これからよろしく。
僕はそろそろお暇しなければいけないけど、一度友人になった君は忘れない。
また、どこかで会うこともあるだろう。運命とはそういうものさ。」
先ほど、この目の前の少女は自分の事をディスと呼んでいたことを聞き漏らさず心に刻む。
バルトはディストの再会を待ち望みながら、自分のねぐらへと帰っていくのだった。
// 瞼がストーンと落ち始めたので強引だけどこのへんで。おやすみー。
- 169 :ディス ◆My6NsjkSfM:2011/11/01(火) 01:07:35 ID:WVrfsEdY0
- >>168
「うん、わかったの!
『ばると』よろしくなの!」
【そう言って大きく頷いた】
「あうあう、おなまえおぼえてくれたの?うれしいなの!」
【無邪気な顔でうれしそうに言った】
「うん、またどこかであおうねなの〜!」
【立ち上がって手を振り見送った】
「…いっぱいだから『ろざりあ』にもあげよなの!」
【ディスは友達ができた嬉しさからか、楽しそうにお菓子を抱えて去っていった】
//おやすみなさいです。
- 170 :矢野 映二:2011/11/02(水) 22:11:11 ID:xm/dFKGs0
- 深夜の異能都市の中央公園にて、ホンダ製オートバイ『CBR1000RR』をベンチの近くに止めて、
一人の若い男がベンチに座ってオレンジジュースを飲んでいた。
目つきはと顔付きは悪く、そして険しい上にパーマがかかった茶色の髪で余計に悪そうに見える。
服装は着崩した感じに着た黒い色のスーツで、新しい物なのかピカピカだった。
「これで、今の所全員分か…?」
数ヶ月前、俺はとある老紳士から一つの依頼を受けて此処に来た。
内容は『異能都市についてのある程度の情報収集』だった。
引越し代金や新たに向こうに建てるビルのデザインなどは老紳士が出してくれたが、
余りに破格の前金に加えてこの待遇、さらには情報収集にかかる費用までも出すと言う、
一言で言えば『異常』とも言えるやり方に疑問がありつつも受けたが、今ならばどうしてそこまでやったかがわかる。
「―――多すぎる、住人の約8割が異能者だと…?
まるでどこかのバカが片っ端にかき集めたみたいになってやがる」
携帯端末のモニターを見ながら俺は呟く。
さすがに『上位』の連中は素性とある程度の能力概要までしか調べられなかった。
だが、問題はこの都市の上層の連中にまで異能者がいると言うことだ。
まるで異能を集める為だけにあるかのように幾人もの異能者がここに集まっている。
- 171 :名も無き異能都市住民:2011/11/02(水) 22:26:45 ID:SSMHlh/20
- >>170
「隣、ちょっと失礼させてもらえるかね……。」
収集したデータを閲覧している映二に対し、ふいに投げかけられた声の主は
くたびれたコートと黒ブチの眼鏡、整えられた髭の初老の男だった。
皺が目立つ柔和な顔つきで笑いかける男の手には、ドーナツチェーン店の箱と缶コーヒー。
それだけであれば、仕事帰りのくたびれたサラリーマンにも見えるが――。
コートの胸部分にさりげなく留め付けられた、
鈍く光を反射する警官バッチに気づく事ができるだろうか。
- 172 :矢野 映二:2011/11/02(水) 22:32:50 ID:xm/dFKGs0
- >>171
素早く端末を通常モードに戻して男を見る。
―――警官バッチ?……どういうこった、ってわけでもないか。
「警官さんがなんか用ですかね?
俺はドライブ帰りに休んでるだけなんですが」
柔和に笑う相手に自分なりにへらへらしながら答える。
探偵業で警官と関わる事は余り無いが、事が事である。
映二は端末を操作して、必要になればいつでも逃げれる準備をしておく。
まぁ、本気で捕まえに来たらマズイのだが。
- 173 :名も無き異能都市住民:2011/11/02(水) 22:46:56 ID:SSMHlh/20
- >>172
「ちょっと、ごめんなさいよ……。
人間、年を喰うと立っているだけでも疲れてしまってね。」
何処と無く枯れた雰囲気の男性は
疲れた様子で息を吐き出しながらゆっくりとベンチへと体を預ける。
「なあに、連行しようって訳でも、とって喰おうという訳でもないさね。
ただ……あまり派手にやらんでくれんかね、あー……エイジ・ヤノ探偵だったかな。」
男は遠くで明滅を繰り返す街灯の光をぼんやりと眺めながら
コーヒーを一口飲み下し、ゆっくりと口を開いた。
- 174 :矢野 映二:2011/11/02(水) 22:52:32 ID:xm/dFKGs0
- >>173
「ええ、そうですよ。
すんませんね…こういう仕事してると、嫌でも警戒してしまうもんで。
それに、目を付けられるほど派手にやった覚えは無いんですけどね」
そう言ってオレンジジュースを一口、口に入れる。
目つきと顔付きの悪さで嫌でも周りから忌避されやすい風貌なので、
目立ってしまうのだろうか。
俺の素性がもし割れてるのだとしたら、『斉藤カンパニー』のことも知られてしまってるのか?
もしかしたらジェネオンの事までばれているのかもs…いや、ばれているか。
- 175 :ディス ◆My6NsjkSfM:2011/11/02(水) 22:52:55 ID:WVrfsEdY0
- 【中央公園内…に包帯を巻いた少女がいる】
「…やっぱりおそとでやったほうが…ちからがはいるみたいなの」
【息を大きく吐き出して、手に持っていた銀の刀をその体に巻いた剣帯の鞘に収めた】
「…ちからおさえられてても、とっくんだけはしっかりしないとなの。」
【そう言って体に巻いた包帯をうねうねと動かし始めている…】
- 176 :ロブ・グリーンフィールド。:2011/11/02(水) 23:13:05 ID:SSMHlh/20
- >>174
「こちらとしても探偵のやってることを一々咎めるなんてのはやりたくないんだがね。
かといって、あれだけ広範囲に嗅ぎ回られれば上の方の目にも止まる。
ウチの人間も何人か調べたろう……。もしや私も入っているかな。」
映二が異能都市の警察組織の人員を調べていたなら
その中に異能者として『ロブ・グリーンフィールド』――目の前の男性のデータが紛れているはずだ。
異能都市中央署の刑事。妻子は既に他界しており、
これといって大きな事件に関わったことはなく、異能者であることを除けば
代わりはいくらでもいるようなごく平凡な人物だ。
「あまり首を突っ込みすぎると、この都市では死に繋がることを理解しているだろうね。
賞金稼ぎや冒険者がいきなり消え、見つけたときには下水に浮いていたなんて珍しいことではない。」
- 177 :ディス ◆My6NsjkSfM:2011/11/02(水) 23:14:37 ID:WVrfsEdY0
- //ちょっとレスはなかったことに…
- 178 :矢野 映二:2011/11/02(水) 23:27:04 ID:xm/dFKGs0
- >>177
//了解です。
>>176
「ええ、今日で大体終わったところなんで。
それに、死につながるとするならもう既に片足突っ込んでますよ」
そう言って笑いながらジュースをまた飲む。
此処で仕掛けてこないということは最後通告のつもりだろうか。
まぁ、以来はある程度完遂したし、後は水面下で駆け引きだ。
「俺の素性くらい知ってるんでしょ?
誰が俺に、何の目的で支援しているかも」
彼は老紳士の依頼としてもう一つ引き受けていた。
『アンサング』――目的と正体すら分からない犯罪組織。
異世界からの魔物を使役し、人造生物の兵隊で被害を出している。
彼は俺に対抗するための装備を貰う変わりに、彼らと戦う定めにある。
- 179 :ロブ・グリーンフィールド:2011/11/02(水) 23:48:53 ID:SSMHlh/20
- >>178
「さあ、どうだかね……。
上のほうはどうだか知らんが、君は探偵なんだろう。
で、どこぞから依頼を受けて都市中を駆けずり回っている。
私個人としてはそれでいいと考えている。」
膝にボロボロと落ちたドーナツのカスを掌で払いのけながら。
警察は現場を荒らし、時には強引な手段を行使する探偵を良く思っていないことが多いが
この男は、多少は理解があるらしく。
「パパラッチやスカベンジャー紛いの輩じゃなければ、
我々からお声が掛かることもある、かもしれんな。」
- 180 :矢野 映二:2011/11/02(水) 23:59:53 ID:xm/dFKGs0
- >>179
「そんな真似はしませんよ。警察行きは三回で十分です。
それに、それほど深く調べ上げたわけじゃないんですよ。
ちょっと調べれば誰だってわかることです」
そう言って飲み終わったオレンジジュースの缶を投げてクズカゴへと入れた。
彼自身は警察事件調査などには基本的に後手に回る事が多い。
それは警察の捜査を妨害しない事と同時に、警察が調べている間に別の事を捜査し、
自分達が警察に目を付けられないようにするためだ。
「捜査手伝いなら構いませんよ。
警察には世話になりましたから報酬はタダでいいですんで」
そう言って昔を思い出したのか、彼は笑いながらそう言った。
どうやら、彼自身は警察を悪くは思っていないらしい。
- 181 :ロブ・グリーンフィールド:2011/11/03(木) 00:17:50 ID:SSMHlh/20
- >>180
「まあ、君に釘を刺しておくことだけが目的だったのでね。
良く分かっているようだし、『私から』はこの辺にしておこうか。」
よいしょと声を出して、ベンチから立ち上がった男は、
映二と同じようにコーヒーの缶をクズカゴへと投げたが、30cmほど右に外れた。
「……とにかく気をつけろ。
この都市には、我々のような業種の敵はかなり多い。
今回の動きで、君の……探偵事務所を警戒する者もいるかもしれん。」
男は律儀に、落ちた缶を拾い上げると改めてクズカゴに捨てる。
「じゃ、時間をとってもらって悪かったね……これで……。」
男は、そのままとぼとぼと公園から去り街の雑踏へと消えていった。
- 182 :矢野 映二:2011/11/03(木) 00:22:37 ID:xm/dFKGs0
- >>181
「ええ、警戒されるかもしれませんね。
気をつけておきますよ、精々明日の朝日が見れるように、ね」
そう答えた後に、男が立ち上がって去っていくの見て。
去っていく男に手を振って見送った後。
「さて、是で一歩って所なのかねぇ」
そういいながらCBR1000RRにキーを挿して起動させると。
重い音を立てながら中央公園から探偵事務所へと帰還していった。
- 183 :早瀬川巴:2011/11/05(土) 22:29:00 ID:rhMoIhJE0
- きぃきぃ、きぃきぃ、と鳴きながら数匹の蝙蝠が空を舞っている、とある裏路地。
太陽が地平線に沈んでしばらく経ったそこについている明かりと言えば、
電信柱に備え付けてある街灯のみで、薄暗いことこの上ない。
そうした電信柱の一本、そこに背中を預けたまま指を舐めているセーラー服の少女が一人。
「今の子の血……すごく美味しかったのです。もしかして処女だったんでしょうか?
でも、確かめる術はありませんし、ううむ」
黒い瞳をかすかに紅に染めたその少女の名は早瀬川巴。
生きた死人。不死者。吸血鬼。……のかけだしである。
- 184 :天突髪 怒人:2011/11/05(土) 22:39:06 ID:PPP1gHkc0
- >>183
【がっかっかっかっかっ!】
【狭い路地に反響するのは地面を蹴りつけるかの如き荒々しい足音】
【同時に、微かな呟きも聞こえてくるかもしれない……】
チッったくざーけやがって何が肩がぶつかっただクソみてーに弱い癖しやがって
態度だけはいっちょ前でいゃーがるそのクセこっちがちょっと小突いただけですぐ
ワビ入れやがってどうせ謝るんだったら最初から突っかかってくんな雑魚の癖に
俺様ん時間とらせやがってお陰で午前中いっぱいあのクズに使わされたじゃねーかブツブツブツブツ
【独り言にしては物騒かつマシンガントークなそれは湯気の立つような怒りが容易に察せられる口調】
【そして……曲がり角から当人の姿が現れる】
ふんッ。
【現れたのは如何にも不機嫌そうな、革のライダースに身を包んだ青年】
【角から顔を出すや否や、ぎゅんっ!と勢い良く少女へ首を向け、顔をまじまじと見る】
……〜♪
【そして、口を細く三日月状に歪める。犬歯が街頭にぎらりと光った】
- 185 :早瀬川巴:2011/11/05(土) 22:44:42 ID:rhMoIhJE0
- >>184
「…………!?」
いきなり現れた男の行動に、巴は絶句するしか反応を返せなかった。
それはそうだろう。30㎝も身長の離れた、(彼女から見て)大男に見据えられ、
犬歯が見えるような笑みを見せつけられてしまったのだから。
なんだ、この男は。その思考だけが、巴の脳裏を駆けめぐっていた。
- 186 :天突髪 怒人:2011/11/05(土) 22:55:11 ID:PPP1gHkc0
- >>185
ほー。
ほーーーーほーほーほーほーほーほーぉぉおおおおお。
【顎に指を二本添えて品定めするように足から頭のてっぺんまで観察】
【しかし別段何を見定めているわけではない。単なるポーズだ】
【結局のところ――怒人にとって、相手が誰かなど殆ど関係がない。】
【ジーンズの右ポケットに手を突っ込み、トランプのカードを取り出す】
【6枚あるカードを鼻歌交じりに人差し指でとんとん叩き、3枚を引きぬいてポケットに戻し…扇のように広げ】
【左手で巴を指さして、いやらしい笑みで手招き】
おいコラジャリチビちょっとコッチ来い。
ちょっとしたゲームしようぜゲーム早く来いってんだブチ殺すぞチビその身長骨壷に入るくらいに縮めるぞ早ァぁああああアアアく!!
【たった数秒でも待ち切れないのか裏路地に怒声をビリビリと響かせた】
【バサバサと声に遅れて鳴った羽音は、声に驚いたカラスだろうか……】
- 187 :早瀬川巴:2011/11/05(土) 23:07:56 ID:rhMoIhJE0
- >>186
来い、と言ってからその舌の根も乾かぬうちに殺す、などという言葉が出てくるあたり、
この男、まともな部類ではあるまい。
しかもこの男、先ほど、つまり現れた時からずっと臭わせている空気があった。
それは暴虐の空気。闘争とも呼べぬ、一方的な暴力の臭い。
彼の恫喝で「人間として」の早瀬川巴は怯んだが、逆に「吸血鬼として」の巴の思考は冷えていっていた。
見た目は一般人でも、彼女は吸血鬼。彼女もまた、暴虐の領域に片足を突っ込んでいる存在であった。
「まあ、落ち着いてくださいなのです。一日一歩、三日で三歩。三歩進んで二歩下がる。
人生はかくのごとく牛歩に似る。急いては事をし損じる。焦る乞食はもらいが少ない。
どうです、そんなに急いでも良いことがないのは、先人もよーく知ってることなのです」
指をピンと立てたその姿は、まるで年下の子を諭すかのよう。ひどくわかりやすい挑発だった。
- 188 :天突髪 怒人:2011/11/05(土) 23:21:21 ID:PPP1gHkc0
- >>187
…ハイハイハイハイハイハイハイハイハイハイハイハイハイハイハイハイ!!!!!!
【歯軋りしながら足をガタガタガタガタ貧乏揺すり】
【「まあ、」の時点でイライラがMAXのようで、物凄い勢いで聞き流しながらトランプを指の先にかざし】
ハーイOK分かったこれだな、お目が高い。
【指の先にある真ん中のトランプを二本の指で乱雑に引き抜き、巴の足元に投げつける】
【ひらひらと危なっかしく揺れながら落ちたトランプは、地面に垂直に立ってからパタンと表へ倒れた】
【そのトランプはいわゆる沢山あるうちの『予備用』、絵柄の書いてない無地のモノで……】
【今は柄の代わりにマジックペンで荒々しく――『殺す』と書いてあった】
【さっき来た道の、少女からは見えない壁の裏に手を突っ込むと――血染めのような色の大斧を引っ張り出す!】
【来る前に曲がり角に置いて隠しておいたのだ】
【残り二枚のトランプごと、グシャグシャに握りつぶしながら柄を両手で持ち、振り上げて】
ハァーイラッキーだな大当たりだ死に腐れチビ!!!!!!
【顔には狂喜、しかし瞳には揺らめく怒りの炎を湛えて】
【死刑執行人がそうするように――少女の地面ごと叩き斬るような、真っ向唐竹割り!】
- 189 :早瀬川巴:2011/11/05(土) 23:29:58 ID:rhMoIhJE0
- >>188
訳のわからないカード遊びから一転、大斧をどこからか取り出した男の行動に、
巴は紅く染まり始めている眼を細め、吸血鬼独特の牙を覗かせる笑みを口に貼り付けた。
これだ。この男は、最初からこれが目的だったのだ。
――――なあんだ、簡単なのです。
落ちてきた鈍い刃を常人離れした運動力で避けた巴は、そのまま男の脇をすり抜け、
すれ違いざまに男の脇腹を引っ掻いていった。
ただの引っ掻きとはいえ、それは吸血鬼が繰り出したもの。
避けなければ、服ごと脇腹を浅く切ってしまうだろう。
- 190 :天突髪 怒人:2011/11/05(土) 23:48:32 ID:PPP1gHkc0
- >>189
【爆音、そして地面が二人を跳ね上げるように揺れる。しかし煙の中に少女の姿は無い】
【少女の抜け出た跡を示すようにライダースが細く爪の軌跡を描き、ぱっくりと口を開けるが……】
【じゃりっ、と何かが絡むような音が服の中から響いた】
ははァーアアアア? お前ガキの癖になかなかビビらないでいやがるまぁそこは評価してやるが
爪だと? 爪?
舐め腐ってやがるァアアアなぁああああああああ!!!!?!!!
【服の中から覗いた、銀色の鎖――『着込み』だ。鋭い爪はその鎖にも小さな口を開けさせたが、貫通には至らない】
【男は激昂と共に柄を左手だけで握ると、地面に食い込んだ斧頭を更に食い込ませるように上体を下げる】
【右手から残りのトランプ二枚が落ちた。『殺す』と、『殺す』。】
ずぁらァオラーーーァアアアアアアああああッ!!!
【舗装を食い破り土を抉り出し、斧はメリメリと軋みを上げながら柄ごと地面にその身を埋め――ずばんっ!!】
【遂には180度、地面から空を斬りつける!】
【しかし武器で2m、そこに腕で2.5mはあろうリーチでも、離れた相手には届かない……が】
【斬り抉った地面の数歩ほど前が、不意に弾け飛ぶ】
【それは連鎖するように、ばばばばばっ!と衝撃波を形成しながら】
【アスファルトを砕く威力で、巴の足を打ち砕かんと攻め寄せる!】
- 191 :早瀬川巴:2011/11/06(日) 00:02:28 ID:rhMoIhJE0
- >>190
爪なんぞ使いやがって。舐めている。
そう激昂する男に、巴はニヤリと笑い返して、
「舐めてるわけではないのです。
……いや、舐めるのが目的だったのは確かですがね」
巴は引っ掻いた手指に血が付いていないことに、落胆したようなため息。
「次こそは舐めさせて……おお?」
男が再び振り回した斧。
到底届かない距離に打ち付けて一体何をするのかと思いきや……なるほど、衝撃波。
原理はよくわからないが、わかる必要もない。必要なのは、何が起きているか、その事実だけ。
巴は衝撃波が自身に届くまで、それを紅い瞳で見つめ続け、
「…………フフッ」
衝撃波が届いたその瞬間、身体全体を蝙蝠の群れに分化させた。
衝撃波の上を跳び越えた蝙蝠の群れは、男の視界をしばし黒い翼で覆った後、
先ほどまで巴が背にしていた電信柱の天辺に集まり、人の形を形成した。
「甘い、甘いよお兄さん。誰しも真正面がメインの窓口じゃないんです。
今まで何人ヤってきたかはわかりませんが、どうも裏をかかれた経験は浅いようで」
電信柱の天辺に危なげもなく立ち、輝きを増した月の光を背にするその姿は、紛れもなく早瀬川巴。
表情は逆光によって見えないが、紅い瞳の輝きだけははっきりと見える。
- 192 :天突髪 怒人:2011/11/06(日) 00:17:48 ID:PPP1gHkc0
- >>191
あ゛ァぁ!?
【届いた! と思った瞬間、無数の黒い翼に変わる少女】
【宵闇に溶けこみ、濡羽色の皮を張ったソレを眉を寄せながら睨みつけて】
だーらぁーらーらーらーァアア。
正面がメインだのなんだの知るかってんだクソッタレ俺様はそもそもそういうヤヤコシーのが
嫌いだから真正面からブチのめしてんだよ裏をかかれた経験も幾らでもあらァでもだから
そういう裏をかくのも裏をかかれないようにするのもややこしーからあーもーちくしょー
ややこしィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!
【背を反らせ、なおも咆哮を繰り返す。逆光に佇む影を目を見開いて睨みつけて】
うるッッっせーんだよ早く降りてきャアアアがれドチクショウがァアアアアアアアアア!!!!
【額に血管を浮かび上がらせながら、斧頭をくるりと反転。再度地面に向けて】
【柄を両手に握り、一撃目と同じように振りあげる】
- 193 :早瀬川巴:2011/11/06(日) 00:27:18 ID:rhMoIhJE0
- >>192
降りてこい、と狂乱する男に、逆光の中、見えぬ笑みを見せた巴はふと、前のめりになって、
「……では、望み通りにするのです」
地面と身体が平行になった瞬間、巴は電信柱を足場に、疾走の形を取った落下を開始した。
髪とスカートを翻し、笑みの口元から牙を光らせたまま、紅い瞳の少女が走り降りてくる。
あまりに愚直な行為だが……?
- 194 :天突髪 怒人:2011/11/06(日) 00:38:37 ID:PPP1gHkc0
- >>193
素直な子は好きだぜ3mm四方の細切れから4mm四方に予定変更してやるありがたく思えッ!!!
【電信柱から駆け下りる巴を横目に捕らえ、地面に斧を叩きつけた】
【握りこぶしより幾ばくか厚いという化物じみた刃厚の斧頭は、またも地面を粉々に砕き】
パァァァァァーティィィィィーッッだァアアアアアアアアアアーーーー!!!!!!!
【甲高い笑い混じりの声は、その後の振動で掻き消されることとなる】
【四方八方、地面を砕く衝撃はそこで霧散することなく地面を這い、舗装を噴き上げ……】
【破砕の蜘蛛の巣が広がるなか、その一本がまたも巴の足元へ牙を剥く】
ハッハァっと!!!
【一方砕け散る地面の中、ベタ足で地面に足を着いていた怒人が踏ん張れるはずはなく】
【瓦礫の海の中でふらりとよろめいたのが見えるだろうか】
- 195 :早瀬川巴:2011/11/06(日) 00:51:01 ID:rhMoIhJE0
- >>194
いかに反射神経に優れる吸血鬼とて、この攻撃の網目、かい潜れるものではない。
それを吸血鬼の闘争本能で理解していた巴は、当たろうとする衝撃波の一つに合わせて、
左腕を足下に回し、腕一本での逆立ちをしてみせる。
当然、支えとなった左腕は足の代わりに衝撃波を受け、骨が露出するほどにズタズタになった。
鈍く激しい痛みが左腕に走る。しかし、巴の表情は苦悶に変わることはない。
むしろ笑っている。歓喜に震えている。闘争の歓喜に。
「ハァァッ!!」
巴はズタズタになった左腕を大振りに振って、そこから壊れたホースのようにまき散らされる血液を、
男の顔に向けてドバドバと浴びせかける。
そうしてから、鉄パイプを潰せるほどに握り込んだ右の拳を、男の顔に向かって思いっきり叩き込んだ。
見た目は少女の小さな拳。しかしながら、それが発揮する衝撃力は工業用ハンマーをも凌駕する。
- 196 :天突髪 怒人:2011/11/06(日) 01:09:56 ID:PPP1gHkc0
- >>195
貰っッッッッたァッッ!!!
【崩れる足場をなんとか踏み固め、右脇に斧頭を回し、バットを振りかぶるような姿勢】
【腕を粉砕されて尚向かってくる人間は、いない】
【そう、いない筈なのだ――『人間』は。】
――グッ!?
【小さな体に斧を叩きつける。その事だけに集中していた怒人だったが……】
【不意に襲う殺気に目を向けた瞬間、視界は真っ赤に染まり、激痛は反射的に瞼を閉じさせた】
【瞼越しに見える物は『人』ではなく――】
【怒人と巴の間には大きなアスファルトの塊があったが――その程度、まるで意に介さず砕き】
【がごんっ!と、およそ人体と人体のぶつかり合う音とは思えない音を立てて、拳が顔面にクリーンヒット!】
ぶッッ
【未だ宙を漂う瓦礫を吹き飛ばしながら軽々と数メートルは吹き飛ばされ】
【裏路地を形成する塀の一つに突っ込み、爆音を轟かせて貫き……体が塀だった一部に埋まる】
【置いてけぼりの大斧が、がろん。と少女の足元に転がった】
- 197 :早瀬川巴:2011/11/06(日) 01:25:41 ID:rhMoIhJE0
- >>196
「ふぅーっ、痛い痛い」
血の流れ出る左腕をだらんと落とし、殴った右手の痺れを解すためにプラプラと振った巴は、まだ薄く笑っていた。
「泣きそうなほど痛いのです。こんなの初めて」
ならば笑いを止めろと言いたくなるが、生憎と今の巴は闘争麻薬とでも言うべきクスリが脳内を駆けめぐっていて、
痛みの苦痛に屈するより、目の前の闘争を愉しむことに意識が集中している。
巴の左腕は自重で筋繊維がひとつひとつ、ぷちっ、ぷちっと千切れていくほどに傷ついていたが、
そこに黒々とした蝙蝠の群れがまとわりついて少し経つと、解散していく蝙蝠の群れの中から、
制服の袖ごと再生した左腕が露わになった。
「さぁて、これからどうしますか?」
ついさっきまで自分を脅かしていた大斧を一瞥した後、塀に磔にされた男に視線を戻し、巴はそう問うた。
応えは期待していないが、もしや、ということもある。
- 198 :天突髪 怒人:2011/11/06(日) 01:46:46 ID:PPP1gHkc0
- >>197
【鼠色の土石に埋もれた体は両足しか見えず、その見えている両足も微動だにしない】
【先ほどまでひたすら早口にまくしたてるような口調もそこにはなく、静まり返っていて……】
あー。
あーあーあーあーあー。
【……いや、静まっていなかった】
だぁーーーーらーーーーーもぉおーーーーーマジかよぉ、なァ?
ちょっとデキるガキだと思ったら見当はずれだぜオイだいぶ出来るガキだったワケじゃねぇか。
【両足が退屈に座る子供のように上下交互にぷらぷら振られる】
せっかくイイカンジに弱そうなガキだからさ? 軽くよ? 軽ーくブチのめして、まぁちょっと遊んで殺すくらいにして、
それで鬱憤晴らしてオシマイみたいに考えてたのにさ? もう最悪だぜマジで。
よっ。
【がばっ、と上体だけで起き上がると瓦礫をいとも簡単に払いのける】
【口調は至って平然と、何事もなかったように――むしろそれが不気味に思えるくらいに――言葉を淡々と紡ぐ】
【顔を伏したまま垂れた鼻血を親指で拭い、ぐちぐちと指の間で弄ぶ】
はぁー……
【突然、麻紐の切れるような音がした。】
よーし、ブッ殺す。
【ただそれだけ。先ほどのような気勢も、威圧も無いが】
【そのしっかと向けた眼球を、怒りの炎を顕現させるように血液が伝っていた】
【足元――子供のように足を叩きつけた箇所は、瓦礫の欠片の一つも残らず粉々にされていた】
- 199 :早瀬川巴:2011/11/06(日) 02:00:29 ID:rhMoIhJE0
- >>198
「ヒューッ、すごい、すごいのです。思いっきり殴ったはずなのに、鼻血しか出してないなんて」
あのスレッジ・ハンマーのような一撃を食らったら、常人ならば顔の形を喪失してしまうはずだ。
しかし、目の前の男はそうではない。すなわち、常人ではない。そのことに、巴は思わず口笛を吹いた。
破砕機械のような足踏みで、欠片も何もかも粉みじんにしてしまうあたり、膂力に関しては吸血鬼の自分を大きく上回るだろう。
「フ、フフッ…………ックックック」
だから? だからどうしたというのだ?
世の中平等ではない。優れる者劣る者の二者択一でしかない。闘争の場も然りだ。
そんなものは驚きにすら値しない。当然の話なのだから。
普段の彼女なら絶対にしないような、喉を鳴らす笑い声をひとしきり上げた後……巴の顔は期待と愉悦に染まった。
――――これから、もっと愉しいことになる。
- 200 :天突髪 怒人:2011/11/06(日) 02:13:29 ID:PPP1gHkc0
- >>199
【例えば死に直面した時】
【人間の体は通常そうであるべき思考速度の限界を超えて、死を回避するために脳をフル稼働させる】
【否――フル稼働を超え、体感速度が遅くなるほどの速さで思考する。これが『走馬灯』と呼ばれる現象だ】
【その場合、大概は『恐怖』という感情が、限界を超えてギアを回す】
【だが怒人は――『怒り』が何よりも先立つし、何よりも強く湧き上がる。そういう人間だった】
【恐怖の数倍。常人では有り得ないほどの『怒り』】
わーらってんじゃ
【人体は過大なストレスに晒された時】
――ァアアアアアアアアアアアアアアアアねェぞコラァアアアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!!
【限界を超えるものなのだ。】
【ほぼ一足飛び、右脚一本で大地を踏み砕き高速接近!】
【体勢を低く、巴の懐へ潜り込むように近づく。左足を大きく突き出し、右足は曲げ】
【地面と直面するほど姿勢を前に傾け右腕を上に引き上げた状態から――】
【腰、背中、そして左腕の筋肉を一気に収縮! そこにある大気ごと押し潰す、左脇へのボディーブロー!】
- 201 :早瀬川巴:2011/11/06(日) 02:23:30 ID:rhMoIhJE0
- >>200
男の、巴の左脇へのボディーブローは、これ以上ないほどに綺麗に決まった。
巴は別に、余裕を見せて避けなかったわけではない。むしろこんな重い一撃、貰う方がバカだ。
彼女の認識は、その一撃を貰うまで、男を常人よりやや上の身体能力だと予想していた。
しかし、それが大きな間違いだったことに巴は気づかされる。
「が………ハァッ……!」
左脇に突き刺さったボディーブローは、巴の左側の肋骨殆どを粉砕し、
内部に伝播した衝撃力はそれだけに止まらず左の肺を潰し、彼女に大量の吐血を迫った。
だが、
「…………ァァッ!」
巴の右足は身体を吹き飛ばすことを拒絶し、彼女はそのまま、大きく口を開けて左脇にある男の腕に食らいつこうとした!
- 202 :天突髪 怒人:2011/11/06(日) 02:41:47 ID:PPP1gHkc0
- >>201
オオオラオラァぁ!!! のォォオオオたうち回れェ゛!!!!
【地を這う衝撃波が可能という事は――人体を這う衝撃波も可能】
【脇腹は固体である肋骨にまず伝わり、それを粉々に砕くと……次は肺】
【空気と血液で膨れた内臓を易々と食い破る】
【巴が剥いた牙をも、一瞬で捉え――避けない。避けるという概念は『怒り』にはない。】
口なんざ
【彼が『憤怒(Wrath)』の名を以て呼ばれる理由は、その全てを押し潰す『執念』にあると言って良い】
開けてんじゃねェぞ馬鹿がァアアアアアア!!!
【腕を引き、今度は握り拳をその『口』に向け、右半身を弓のように引き絞り……放つ!】
【先ほど肋骨をも砕いた一撃より溜めが短い分の威力は引かれているが、今度は指先を固く鋭く尖らせ、喉奥を抉る貫手】
【さらに左手が大きく開かれ、巴の額を握り潰さんと迫る】
- 203 :早瀬川巴:2011/11/06(日) 02:57:33 ID:rhMoIhJE0
- >>202
食らいつこうと開けた巴の口に突き込まれる貫手。
それは巴の口を割り開き、喉奥を破壊しようと加速する。
その上、額を握りつぶそうとする男の左手までもが迫っている。
状況は詰みの様相を呈していた。この後に訪れるのは、巴という少女を認識できないほどに訪れる、頭部の破壊だろう。
「…………ィィィ♪」
喉に手を突き込まれ、悲鳴すら上げられないその一瞬に、巴が見せていたのはまたしても笑みだった。
そして巴は、利けぬ口のまま、こう言った。
――――――つ か ま え た。
今まさに喉奥を突こうとするその手に、小さな凶器が、吸血鬼の牙が深々と突き刺さる。
次に間髪入れずに訪れるのは、血の流入。
それは破砕されたダムのように、決壊した堤防のように、逆さにしたワインのボトルのように。
男の命の欠片、執念と憤怒を身体に満たすその赤い液体が、血液が、牙から一気に巴へと引き上げられる。
同時、まるで好みの麻薬をやったときのような、凄絶な快感が右腕から右肩へと伝わり、
全身を波紋のように駆けめぐるだろう。痛みなら抗えるが、快感はそれほど簡単ではない。
真に恐るべきは、その身体能力でもなく、変身能力でもなく、ましてや魔力ですらない。
吸血鬼の恐ろしさの骨頂は、まさにこれに、吸血能力にあった。
血液。それは命の欠片。活力の通り道。精気の環状高速道路。
それを全て、吸うことによって我が物とする。それが吸血鬼という化け物だった。
- 204 :天突髪 怒人:2011/11/06(日) 03:24:54 ID:PPP1gHkc0
- >>203
【貫手を突き入れた瞬間、待ち構えていたように牙の門が閉じる】
【獲物の血を吸い取るために進化した、鋭利極まりない牙は皮膚をあっさり貫き】
【怒人の血管に達した――】
……つっ!!?
【その途端、吸い取られる血流の代わりに、熱く体中を駆け巡る『快楽』の流動】
【どくん、どくんと、牙を伝って流れだしていく血流のリズムが、脳髄を犯して、酔わせていく】
ッつぅぅ……っ、っ…♪
【頬が弛み、喉奥から得も言われぬ充足感が腕から上り詰める】
【そして男は言う】
――――――つ か ま え た ァ ア ア ア ア ♪
【めきり。】
【牙が、じわり、じわりと押し戻されていく】
【決してその歯の鋭さがなまくらになった訳ではない。膨張した腕の筋肉が、牙を全て埋めても】
【動脈に届かないほど――膨れ上がっただけ。】
【『快楽』を求めるならば、人は強大な存在に立ち向かわない。苦痛は大抵の場合、快楽ではないからだ】
【だが『憤怒』は全てを濁らせる。敵わぬ相手、超えられぬ壁、出来ない行為、全て。】
【苦痛より快楽を優先するその正常な判断。その脳からの僅かな命令も許さない】
【『快楽』と双璧を為す『憤怒(Wrath)』という麻薬が、血流を奪われてなお脈々と血潮を滾らせていた。】
【とうとう、とうとう捕まえたちょこまかと逃げまわる敵の舌を、突き入れた貫手で掴み】
【それと同時に少女の頭部を、左手が掴んだ】
どうだ? ん? 俺の手は。旨いのかなぁ?
【そして、満面の笑み。】
【『牙を剥くような』、満面の笑み】
じゃあ、もっと味わわせてやろう。
は は は は は は
は は は はは は はは
は は は は
はは は は は は
【めりめりめりめりめりめりめりめりめりめりめりめりめりめりめりめり】
【溜め込んだ怒りを全て頭部に押し込めるように、口内と頭骨外部を、全身で抱き込み締め付ける】
【怒りの熱に乾いた笑いが、裏路地の宵に響いた】
- 205 :早瀬川巴:2011/11/06(日) 03:38:56 ID:rhMoIhJE0
- >>204
なんという男だ。
血を吸われながら、その急激な虚脱感に、脳髄を一瞬で蕩かす快感に膝を折らず、反撃に出てきた。
その事実に、巴は驚愕し、狂喜した。
男の血は男の命。そこから読み取った男の情報に、巴は納得を得た。
『怒り』か。
身を焦がしながら、一方で感情の中で一番を誇るそのエネルギーを、身体能力に転化させるとは。
この男、まともな頭で生きていない。脳髄が「怒り」という麻薬に溺れきっていて、他の感情の味を、苦手としている。
闘争の上ではこの上ない資質だろう。そう、闘争の上、だけでは。
「……か…………ぐゅ」
頭を丸ごと潰されながら、巴は静かに思った。
――――哀れな男だ、と。
……そして、男の膂力に耐えきれなくなった巴の小さな頭は、握りつぶしたトマトになって破裂した。
- 206 :天突髪 怒人:2011/11/06(日) 03:51:07 ID:PPP1gHkc0
- >>205
は は は は は
は はは
は は はははは
は。
【笑い声が止む】
【何か妙に痛い事に気づいたからだ。そのうち二つは即座に吸血の牙であることが分かった】
【だが、腕を貫く激痛は三つ……?】
……あぁ。
【なんだろう、と左手で顎をさすろうとした所で分かった。左手の親指が右腕に突き刺さっているのだ】
【無我夢中で圧し潰した指が、それと気付かず自らの躰ですら穿ったのだろう】
【今までの経験上、有り得ない事でもない】
【そう結論づけてからようやく、男は巴が押し潰されていることに気づいた】
……………………………………………………あ゛ァ!?
舐めんなァボケェコルァこのォクソォチビィがァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!
足ァりるかッァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!
【ブチブチブチッ。木綿の布を引き千切るような音がして、額にぽつぽつとどす黒い点が染み出す】
【勝利の悦楽も即座に次の怒りで埋め尽くされる。それが怒人――『憤怒(Wrath)』】
【彼を満足させるものは未だ無い。】
【内出血するまで血管を引きつらせた咆哮の残滓は遠く都市の中心部まで響いた……】
- 207 :早瀬川巴:2011/11/06(日) 04:04:16 ID:rhMoIhJE0
- >>206
男が憤怒に狂い、咆哮をあげるその傍ら。
頭を失った少女の身体が、徐々に霧に変わっていく。
水に溶け出す砂糖のように、その形を急激に失っていく身体は、衣服の一片までも残さずに消滅した。
少女が残す物は何もない。男の手に突き刺さったままのはずの牙も、男に降りかかった返り血も、何もかもが消える。
……そうしてからしばらく経った裏路地。
戦いの余波に巻き込まれなかった電信柱の天辺に、眼下を見下ろす紅い二つの瞳があった。
黒髪に覆われ、セーラー服で包まれた年頃の少女の肉体を持つその瞳は、愉快そうに細められ、
「人という獣の限界以上を見た気分なのです。頭が再生する、という感覚も初めてでしたし。
今日は得る物の多い夜になったのです」
ぺろり、と少女の姿をした吸血鬼は指を舐め、その身体を蝙蝠に分解する。
血に染まって赤く見える月夜を、魔性の群れが飛び去っていった。
- 208 :ミラージュ:2011/11/07(月) 22:59:26 ID:mNU7NPj.0
- 【事件現場近くの通り】
少女は通りに設けられたベンチに座り、ただ、ある一点を眺めていた。
以前に、大規模な爆破事件が起こったビルがあった。
現在はその影響で解体作業が行われている。
誰かが小耳に挟んだ情報によると再びまともに機能できるようになるには一か月以上の時間がかかるようだ。
一か月。さすが異能都市とでも言うのだろうか。
今現在、少女の視線の先、事故の起こった現場では爆破の被害に巻き込まれた報道会社のヘリコプターが回収されていた。
それや、周囲の荒れた度合いが語る、事件の悲惨さ。
「私に、何が足りないのだろうか……」
しかし、少女は其れを見ている訳では無かった。
その少し上の虚空をただ眺めていたのである。
休まらない回収作業を見ている様で、少女も休むことなく視線を虚ろにしていた。
虚空の先にあった物。事件当時に少女が呼び出した巨大な砲身。
事件の犯人として君臨していた少女は再び現場を眺め、溜め息を付いた。
「ふむ……」
「私には、何が足りないのだろうか……」
「ふむ……」
- 209 :名も無き異能都市住民:2011/11/07(月) 23:08:24 ID:SSMHlh/20
-
「――さあ、続いてのプログラムは……。」
古びたスピーカーから放たれる音割れの酷い声。
同時に、少女たちの目の前の錆だらけの鋼鉄フェンスが
バンシーの絶叫を思わせる騒音をあげながらゆっくりと開かれ
武器を持った男たちが、先へ進むように囚われの人々を急き立てる。
「我が闘技場『地獄の釜』がお客様に提供するゲーム!
……彼らは皆、面識どころか『共通点』のない人々ですが……。
いや、唯一の『共通点』はッ!『運』が無かった!そう!」
ところどころ赤く染まった砂が撒かれた広い空間を煌々と照りつける強烈なライトが、
先ほどまで暗がりに押し込められていた身には砂漠の太陽のように見える。
戸惑い、怯えるように辺りを見回す人々。
スピーカーから響く声の通り、老若男女亜人問わず様々なの者がいるが
皆、着の身着のままと言った様子だ。
「君たちは『下手を掴んだ』!制限時間まで逃げ切れば君たちの勝ち!
我が闘技場の人気プログラム――『サバイバルゲーム』だッ!」
運悪く『下手を掴んだ』人々のちょうど対角線上、広い空間の向こう側の扉がゆっくりと開く……。
- 210 :早瀬川巴:2011/11/07(月) 23:27:12 ID:VIha5UK.0
- >>209
そうした「下手を掴んだ」人々の中に、セーラー服姿の少女が一人、立っている。
こんなの聞いてない、という顔できょろきょろ左右を見渡す彼女は早瀬川巴。
見た目は普通の学生だが……その本質は生きた死体であり、吸血鬼である。
「な、何なのですか、これは……?」
夜にしか開催されないイベントの臨時スタッフを募集しているという男について行った結果がこれだ。
何だか怪しげな男だったとは思ったが、まさかこんな展開が待っているとは思わなかった。
目の前の広大なフィールド、そして、がなり立てるアナウンスから拾った「闘技場」の単語。
……ここはコロシアムだ。遅かれ早かれ、そこにいる全員がそう悟るだろう。
そしてコロシアムなのであれば、反対側にも同じような入場口が存在し、そこから「相手」が出てくるはずだ。
そのセオリーはこのコロシアムも例外ではなく、巴は緊張を顔に貼り付けながら、開き始めている反対側の入場口に視線をやった。
- 211 :名も無き異能都市住民:2011/11/07(月) 23:44:05 ID:SSMHlh/20
- >>210
コロシアムに新たに足を踏み入れる、血の匂いを纏う軍団。
筋骨隆々の胸板を露にした戦士、どこから仕入れたのか火炎放射器と思われる兵器を携えた者。
未だ鎖で拘束されているものの、激しくもがきいまにも暴れださんとするトロール。
闘技場側の人間、およそ10人ほど。
『グゲッ!!』
『あっ……!?』
と、突然巴の前方にいた薬の副作用でやせ細ったチンピラと、
娼婦と思われる、肌も露な服を身に纏った女性が声を上げ倒れる。
彼らは鋼鉄の矢で喉笛を正確に貫かれ、既に絶命していた。
闘技場側の人間の中の誰かが、弓矢を放ったのだ。
「殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!」
「見ろよ、もう死んだ!こりゃ『3分で全滅』に賭けて正解だったな!」
外野――先ほどのフェンスよりさらに朽ちたものと仕切られた観客席から
口々に卑下た声が投げかけられる。
- 212 :早瀬川巴:2011/11/07(月) 23:56:02 ID:VIha5UK.0
- >>211
相手側の完全武装ぶりと、目の前にいた人の突然の死、そして観客の「殺せ、殺せ!」という歓声。
巴には何が起きているかさっぱりだったが、勘の良い者ならばもう、これがいわゆる「虐殺ショー」であることに気づいているだろう。
世の中には人の死をエンターテイメントにする人種がいる。
それは何もこういった裏社会に止まらず、テレビがやっているような、難病の末に手紙を残して死ぬ人のドキュメンタリーだって、
言ってみれば人の死をエンターテイメントにしている物である。
しかし表社会のそれらは、表面に感動を塗布しているために、それに気づかされにくい。
巴もそういった「気づかなかった」者の一人だった。だからこそ、この状況に混乱していた。
「ひっ、人がっ……な、何これ、何なのですかっ!?」
矢で射殺された二人を見て、固まっていた集団が口々に悪態や悲鳴をあげながら分散していく。
巴もそれに倣って、わけもわからずに走り始める。何これ、何これ、と繰り返しながら。
- 213 :名も無き異能都市住民:2011/11/08(火) 00:13:24 ID:SSMHlh/20
- >>212
蜘蛛の子を散らすように逃げ出す人々。
アリーナ内には、高低差を作るためのコンテナを組み合わせた
一見遊具のようにも見える障害物や、朽ちた二階建てバスなどが置かれており
意外にも逃げ場や隠れ場所は多いように見える。
『があ……!!!』
『きゃあーッッ!!!!』
どうにか入り口をふさぐ事ができれば立て篭る事ができそうな
二階建てバスの残骸へと走った者、数人が剣奴に取り囲まれ悲惨な最期を遂げる。
『ひ……ひ……!』
巴の逃げ延びた方向は偶然にも、ドラム缶や木箱の散乱する地帯。
木彫りの十字架を掲げた小汚い老人と、千夜学園の制服を着た女生徒2人。
既に二度、三度と転びタクシー運転手の制服を砂だらけにした中年の男が
同じ方向に逃げてきていたが……。
「びゃッ!!?」
コンテナの陰からふいに現れた男が持つ火炎放射器から放たれた業火が
最後尾を走っていた女生徒一人を包み込んだ……。
- 214 :早瀬川巴:2011/11/08(火) 00:35:03 ID:VIha5UK.0
- >>213
女生徒が炎に包まれ、焼け死んだところで、ようやく巴は気づき始めた。これはこういうものなのだと。
一般人の死を観客に提供し、その残虐な光景を楽しませるもの。
「殺せ、殺せ」観客は壊れたラジオのように、それを繰り返している。
巴はギリ……と、唇を噛んだ。吸血鬼の牙が唇に刺さり、血が流れ出す。
「下種の集まりが……!!」
巴の、吸血鬼としての闘争本能がにわかに燃えだした。
それは義憤ではない。
見ず知らずの人間がボロ雑巾のように死んだことに何も感じなかったわけではないが、
今の彼女を満たしているのは、理不尽に対する怒りだった。
ここは、彼女の怒りの琴線と言っても良い。何故なら、彼女はそれによって死んだのだから。
「…………」
巴は踵を返すと、次の獲物に火炎放射器を照準する男に向かって疾走した。
アクセル全開の乗用車と並走できるほどの走力、それを一気に爆発させた巴の速度は、
常人にはそう簡単に目視できるものではない。
「……!」
そうして火炎放射器を持つ男の前に到着した巴は、速度をまったく落とさずに飛び上がり、
力一杯握り込んだ拳を男の顔面に浴びせかけた。
それは喧嘩のレベルでは済まない一撃。
常人並みの肉体強度ならば、その衝撃に耐えきれなくなって首が吹き飛ぶ程の力で繰り出されていた。
- 215 :名も無き異能都市住民:2011/11/08(火) 00:56:05 ID:SSMHlh/20
- >>214
――ボグッ
吸血鬼のパワーは火炎放射器を携えた剣奴の顎を耐火マスクごと砕き、
なおも有り余るその勢いで相当の重量を誇る男を吹き飛ばした。
コンテナに叩きつけられた男は相当量の血液を吐き出すも、どうにか立ち上がろうとしたが
衝突の拍子に背中に背負ったタンクから燃料が漏れ出していたのだろう。
熱せられた火炎放射器の銃口から引火し、そのまま火達磨と化して
先ほどの女生徒と同じく絶命した。
『くっ、くっ、くるなあぁあああ!!!』
『こいつ……ギャアッ!!』
見れば、他にも戦っているものがいる。
バスの残骸ではいかにも魔術師といった風体の赤髪の女性は炎を矢のように飛ばす魔術を駆使し
剣奴に近づく暇を与えず防戦しているし、やや腹の出た中年の男性はどこから手に入れたのか
軍用の大型ナイフをでたらめに振り回し、運良く一人の剣奴を屠った姿が見えた。
「さあー、2度目のアイテムゲットチャンスです!
今回のコンテナは――。」
恐慌と新たに生じた激しい怒りによって、実況など聞こえていなかったが
どうやら、この試合は『被害者』側も武器を手に入れるチャンスがあるらしい。
巴から少し離れた、例のコンテナを積み上げた障害物の最上部にクレーンで
木箱が降ろされるのが見えるだろうか……。
- 216 :早瀬川巴:2011/11/08(火) 01:13:52 ID:VIha5UK.0
- >>215
火炎放射器の男が、その末路に相応しい死を迎えても、巴の怒りはまだ収まらなかった。
周りでも散発的に抵抗の戦闘が発生していたが、そのどれにも巴は介入するつもりは無い。
彼女の敵は理不尽であり、それを提供する者である。自衛のための戦闘になど、今の巴には興味がなかった。
「……次はどいつですか。来ないのならこちらから行きますよ…………」
処女の血を吸ったわけでもなく、満月の力に背中を押されたわけでもない今の巴が、
これほどの怒りに囚われるのはおそらく、先日吸った、怒りを力に変える男の血が影響しているのだろう。
アナウンスが聞こえ、障害物の上に何らかのアイテムが入ったらしいコンテナが下ろされたが、
敵からの施しを受ける気のない巴は、そちらを一瞥しただけで、すぐに興味を殺してしまった。
何かの罠の可能性もあったし、何より吸血鬼の肉体はそれだけで凶器だ。
そんな、年頃の少女という一見凶器には見えない身体を動かし、巴は次の獲物を探して歩き始める。
- 217 :名も無き異能都市住民:2011/11/08(火) 01:31:56 ID:SSMHlh/20
- >>216
「たっ、たすけてっ!!誰かッ!!!」
「おおお……。」
先ほどまで、行動を共にしていた老人たちのものと思われる悲鳴。
巴が火炎放射器の男を屠る間にも彼らは一塊になり逃げ場を探して駆け回っていたようだが、
それが逆に剣奴たちの目に止まる結果となった。
3人の剣奴――。
ショットガンを携えた傭兵風の男、
神経質に垂れた前髪に付いた返り血を拭う若い術者。
そして血塗れの大斧を携えた牛の亜人。
既に、タクシーの運転手と思われる男は彼らの手に掛かり
不規則に痙攣するだけの肉塊と成り果てていた。
残る女生徒と老人はその場に座り込み、屠殺を待つばかり。
ここで救出に赴かなければ、確実に彼らは死亡する。
一方で、激戦区である中央のバスの残骸近辺の生き残りにも危機が迫っているようだ。
どうやらあの残骸はアイテムの設置場所に設定されているらしく、先ほど一人の剣奴を仕留めた
男をはじめとして、ナイフや棍棒など簡単な武器を持つ者も多い。
それゆえ、剣奴たちの猛攻に晒され次第に蹂躙されつつある……。
生き残ることを目指すならば、老人と少女を見捨てて中央の激戦区に参戦し
戦えるものを一人でも多く残すべきだろう。
- 218 :早瀬川巴:2011/11/08(火) 01:44:51 ID:VIha5UK.0
- >>215
中央の激戦区の様子は、巴の位置からもよく見えた。
そちらに行けば、獲物も多いか……そう考えて足を向けたのもつかの間、
今まさに三人の剣奴によって殺される寸前の者達があげた悲鳴が、巴の意識をそちらに向けさせた。
「……あっち、なのです」
中央の激戦区は確かに獲物は多そうだったが、こちらの方がより近い。
たったそれだけの理由で、巴の足は再び方向転換し、疾走を開始した。
この位置からだと、殺人を前にして舌なめずりしている剣奴たちのほぼ背後を急襲できる。
巴の狙いはショットガンの男。
時速100㎞超過の走力が一瞬で彼我の距離を縮め、巴は大きく口を開け、男の背後からその首筋へと鋭い牙を突き立てようとする。
- 219 :名も無き異能都市住民:2011/11/08(火) 02:04:24 ID:SSMHlh/20
- >>218
「うぎゃあぁ!!」
背後からの奇襲。
勝ち誇り、目の前の哀れな獲物をいたぶる事しか考えていなかった
剣奴たちには、それに対応することなど不可能であった。
首筋に喰らいつかれた傭兵はどうにか牙を振りほどこうともがいたが……。
――ズガァッ!
「ギィッ、おっ、おまっ……俺のっ……!!
おひぃいいいっ、ひっ、あしがあ!!!がっ!!!」
もがく男の指が引き金にかかり、暴発的に発射された弾丸が
運悪く、術者の男の右ひざを吹き飛ばした。
「オオオオッ!!!」
残る牛の亜人は大きく斧を振りかぶると、
傭兵ごと巴を両断すべくそれを真横に振り抜く!
- 220 :早瀬川巴:2011/11/08(火) 21:05:41 ID:VIha5UK.0
- >>219
噛みついた男の肩越しに、牛の頭をした人間らしき生き物が、大きな斧を振りかぶるのを見た巴は、
男を噛んだまま後ろにあったコンテナの上に飛び上がり、振り抜かれた斧を回避する。
吸血鬼の強靱な顎と牙は男を掴んで離さず、巴と一緒に男をコンテナの上まで運んだ。
「…………」
首筋に噛みつかれ、ろくな反撃も出来ずに男は身体をじたばたさせている。
もう、遅いのに――――と、巴は一時だけ男を哀れんでから、首筋の傷から一気に男の血を吸い上げた。
その勢い、十数秒で失血死に至るものだ。
それと比例し、脳髄を溶鉱炉に投げ入れたような、この世のものとは思えない快感が男を襲う。
その快感に酔いしれている間に、男はもう死んでいるだろう。
「…………」
そして、男が死んだ後に、巴はその牙から自分の体液を少しだけ男の身体に流し込む。
血の味から、男が非童貞であることは確認済み。
ならばその行為で生まれるのは、巴の下僕となった生きた死体……屍食鬼だ。
- 221 :名も無き異能都市住民:2011/11/08(火) 22:49:47 ID:SSMHlh/20
- >>220
巴の大立ち回りによって生じた一瞬の隙を突き、
女生徒が老人の手を引き、逃げ出す。
彼らは、少しだが生きながらえる事ができたはずだ。
しかし、中央のバスの残骸周辺は酷い物だ。
先ほどまで炎の矢を放ち、剣奴とどうにか渡り合っていた女魔術師は
地面に大の字に組み伏せられ、既に動かなくなったにも関わらず顔面に棍棒をうちこまれ続けている。
彼女が、防御の要になっていたのだろう。
例のナイフの男は全身を投げ槍や弓矢で貫かれハリネズミのようにして絶命していたし
蜥蜴の亜人に首を噛み千切られるもの、魔術師の発した毒煙を吸い込み息絶える者、
全身を膾に刻まれその場に崩れ落ちる者――。
中央は既に剣奴に蹂躙され全滅の様相。
従って、大立ち回りを演じる巴には
自然と血の匂いを欲する観客たちの目、そして何より仲間を殺された
剣奴の敵意が集まる。
「殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!」
敵意、罵声、驚き、愉悦、興奮。
それら無数の、巨大な悪意は今。巴一人に注がれている。
- 222 :早瀬川巴:2011/11/08(火) 23:07:20 ID:VIha5UK.0
- >>221
「さ、行くのです。お前はもう、私の声しか聞けないのですから」
全身から血の気を失い、意味のないうめき声を上げるだけになった元傭兵の屍食鬼に、
先ほど右膝を撃ち抜かれた術者の始末を任せ、巴は牛の亜人に視線をやった。
あの体格と斧は攻撃範囲に優れるが……それだけだろう。
大男、総身に知恵が回りかね、の言葉通りに、精密さはあまりないように見受けられる。
そんなふうに観察していると、いつしか自分に注目が集まっていることを示す、「殺せ」コールが聞こえてくる。
「……下種」
巴は再びそう吐き捨てると、身体を蝙蝠の群れに変身させ、亜人の視界をかく乱する。
亜人は思わず反撃に出るだろうが……その頃にはもう、視界を塞ぐ蝙蝠たちは使い魔にすり替わっているだろう。
巴の身体が変身した蝙蝠たちは亜人の真後ろ上空に集まり、
「…………ァァ!」
蝙蝠の群れから身体を再構成した巴は、落下の勢いを駆って、亜人の首もとに両腕を引っかけ、
怪力で喉を締め上げながらその首筋にも噛みついた。この亜人も下僕にするつもりだ。
- 223 :名も無き異能都市住民:2011/11/08(火) 23:21:39 ID:SSMHlh/20
- >>222
亜人は己に集る蝙蝠を振り払うべく、その太い腕を闇雲に振るうが
中を舞うそれらはひらり、ひらりと霞の如く豪腕をかわす。
そうこうしているうちに巴は先ほどと同じように、首筋に牙を突きたてたが……。
「ブハァァアァッ!!!」
この牛の亜人もパワー、筋肉量という点においては目を見張る物がある。
吸血鬼の鋭い牙が、皮膚を抉ろうにもすぐに戦いの興奮で鋼鉄のように硬くなった筋肉に阻まれ
深くまで通らない。
しかも亜人はふりほどこうとするでもなく、
そのまま仲間の剣奴の元へ走る。
合流し、囲んでしまうつもりだろう。
- 224 :早瀬川巴:2011/11/08(火) 23:35:21 ID:VIha5UK.0
- >>223
亜人が走り出した方向を見て、巴は内心で「まいったのです」と漏らした。
だが、巴は亜人から離れようとせず、すぐさまの吸血は諦め、その両腕に込める力を増やし、
亜人を締め落とすことを優先した。
いかに筋肉に優れたるとはいえ、それは酸素によって支持されるものだ。
気道ごと首の骨を潰しかねない怪力で締め付けられて、果たしてそれが満足に得られるものか?
- 225 :名も無き異能都市住民:2011/11/08(火) 23:48:42 ID:SSMHlh/20
- >>224
「お……オッ……!」
その体躯に見合う速度で駆ける亜人であったが
さすがに呼吸無しで長時間駆けることはできない。
ついには足が止まり、涎を垂れ流しながら膝を付く。
しかしだ、結局此処はアリーナの中。
広い空間があるとはいえ、端から端まで一直線に走れば一分も掛からない。
しかも、相手方の剣奴も巴を目指し駆けているのだから……。
――ヒュンッ
背後から風切り音、弓矢か?
- 226 :早瀬川巴:2011/11/08(火) 23:55:23 ID:VIha5UK.0
- >>225
「!」
背後に何か良からぬ気配を感じ、巴はすぐに行動に出た。
首を絞めていた腕をそのまま頭に持って行き、がっちりとその頭を抱えると、
亜人の背中で一度左に揺れてから、反動を使って右側に大きく身体を回転させ、
亜人の右肩を乗り越えて亜人の正面へと身体を持って行く。これで、背後からの奇襲は亜人の身体が壁になる。
加えて、巴の身体の動きに合わせて、ホールドしていた亜人の頭も回転する。
――――普段ではあり得ない方向、真後ろへと。
- 227 :名も無き異能都市住民:2011/11/09(水) 00:09:12 ID:SSMHlh/20
- >>226
盾とされた亜人の着込んだプレートが、弓矢を弾く金属音。
初撃をうまく回避した……が。
完全に、剣奴たちに囲まれてしまった。
古代の剣闘士を思わせる甲を被った剣士、
先ほどの弓矢を射掛けたと思われるエルフ、上半身をあらわにしたスキンへッドの巨漢。
二刀を持つ女戦士、吸血鬼の天敵ともいえる聖職者。
無論、これだけではなく後から後から剣奴隷は押し寄せ、
皆一様に巴の隙を、伺い武器を構えた。
「終わりだァーッ、ミンチ!ミンチ!ミンチ!」
「ふぉぉおおお、しぬぞおおおお!!!」
観客の悪意が、一層強くなる……。
- 228 :早瀬川巴:2011/11/09(水) 00:20:15 ID:VIha5UK.0
- >>227
首が真後ろに回って絶命した亜人の腕に噛みつき、改めてその血を殆ど抜き取った巴は、
血を吸った一人目の傭兵と同じように少しの体液をその死体へと逆流させる。
そうしてから亜人が手放した大斧を拾い上げ、それを頭上に掲げて回転させ、石突で思いきり地面を突いた。
「さあ、次の死人は誰なのですか!? お楽しみはこれからなのです!!」
術者を始末した傭兵の屍食鬼がショットガンを片手に主の元に戻ってきて、
今し方血を吸い上げた亜人も屍食鬼と化し、緩慢な動きで立ち上がってゆっくりと首を元に戻す。
相手は複数のようだが、こちらは三人。しかも、うち二人は正常な判断能力を持たず、
巴の指示に従ってただ攻撃するだけの屍食鬼。状況は芳しくない。
しかし、巴の口元に浮かぶもの。それは紛れもなく、笑みであった。
- 229 :名も無き異能都市住民:2011/11/09(水) 00:37:27 ID:SSMHlh/20
- >>228
スキンヘッドの巨漢が一番槍とばかりに、
ときの声をあげながら、大地を蹴る。
ついに、均衡が破られた。かに見えたが……。
――ビィイイィィッ
映画館の上映ブザー、に良く似た音が
スピーカーから響くと同時に、アリーナの至る所からガスが吹き出し始める。
「おおっと、ここで終了ブザーがなったァッ!大番狂わせッ!
なんと、今回は生存者2名がでました!払戻金は――。」
それと同時に、ある者は緊張を解す様に大きく息を吐き出しながら武器を収め。
またあるものは、ぼんやりとスピーカーを見上げ。例の巨漢は忌々しげに
手に持った鉄パイプを、地面に叩きつけた。
ガスが、アリーナ全域を包む。
もし、魔術の素養があるならガスだけではなく
数種類の術式が起動したことも、感知できるだろう。
これらは皆、一様に強力な『催眠』の効果を持っている。
――ばた、ばたと剣奴たちが倒れこむ音が聞こえる……。
- 230 :早瀬川巴:2011/11/09(水) 00:46:37 ID:VIha5UK.0
- >>229
終了ブザー。つまり、この乱痴騒ぎもお開きということか。
そのことに、巴はさらなる怒りを覚えた。理不尽を与えておいて、今更どういうことだ、と。
だが、そう思ったところでどうしようもない。
場内に満ちてきた催眠ガスを試しに少し吸ってみると、どういうわけかは知らないが、アンデッドの自分にも強烈な眠気が襲ってくる。
ガスがそうさせているのか、それとも場内の数カ所から感じる奇妙な感覚のそれの仕業か。
「……後始末は、しておくのです」
眠気で急激に重くなる身体を叱咤し、巴は大斧を振り上げると、まず傭兵の屍食鬼の頭を割断して止めを刺し、
次いで亜人の頭も同じように割断した。
これで彼ら下僕の屍食鬼が動くことは、もうない。そのことを確認した巴は大斧を手放し、自分を襲う眠気に身を任せた。
- 231 :名も無き異能都市住民:2011/11/09(水) 01:01:37 ID:SSMHlh/20
- >>230
次に巴が気が付くのは、バス亭のベンチの上になるはずだ。
あれほどまで大量に浴びた血液は綺麗に洗い流され、
忌まわしい記憶にも、魔術によって忘却の彼方へ追いやられた上でだが、
記憶消去に対しては、魔術に対する抵抗力の強さやなんらかの対抗手段さえあれば
逃れられる可能性がある。
とはいえ、たとえ記憶が残っていたとして。
それを告発しても誰が信じるだろうか。
- 232 :早瀬川巴:2011/11/09(水) 01:14:57 ID:VIha5UK.0
- >>231
「……うぅ…………はっ」
バス停のベンチでこっくりこっくり舟を漕いでいた巴は、突然何かの衝撃を受けたように目を覚ました。
寝ぼけ眼をこすれば、そこは無人のバス停。
最終便はとうの昔に発車してしまっており、始発まで四時間以上もあるこのバス停にいるのは、巴ただ一人。
「あ、あれ……私、どうしてこんな場所で寝ていたのでしょう?
それに覚えのない血を吸った感じもありますし……うむむ?」
記憶は消せても、巴の身体に取り込まれた傭兵と亜人の血は誤魔化しようがない。
しかしながら、それからかの残虐ショーにたどり着くことは困難だし、何よりその違和感について考えることを本人が放棄しはじめていた。
「まあ、そんなことはどうでもいいのです。きっと寝ぼけていたんでしょうし……。
それより、早くこんなところからはおさらばしないと……」
巴は身体を蝙蝠に変身させ、雲に隠れた月を目指すように夜の空へと飛翔する。
……今日もあの闘技場から、血の臭いがするのにも気づかずに。
- 233 :ミラージュ:2011/11/10(木) 22:30:21 ID:7hcwnxwgO
- ――公園。
未だに修復作業は進んでいた。
日に日に元の姿へと戻りつつある事故現場をただ何をする訳でもなく見て居た。
朝早くから始まり日が沈む頃には一度終わる工事。
夜が耽る頃になってもう一度作業を初めて日が昇ると同時に引き上げてしまう。
「私には何が足りないのだろうか……」
そう言えば先日から仲間が出来た。
夕食を食べていると欲しそうな目をしていたので少しやったら思った以上によく食べた。
次の日にもやってきたのでなんとなくやったらまた食べた。
そんな日が続く内にいつの間にか膝に乗り上げるまでになってしまった。
整備等一切されていない自由なままの毛の感覚が露出した素肌を擽るのがむず痒いが悪くはない。
私の膝に乗り上げるとよく腹這いになって眠るのだがそれが暖かくてよい。
耳の裏を撫でてやると「にゃぁ」と鳴いては欠伸をしてまた眠るのだ。
「私に足りないのは……猫か……」
最近、そんな気がしてきた。
- 234 :黒マントの大男 ◆6xc12amlNk:2011/11/10(木) 22:41:53 ID:.6prKP66O
- >>233
「いいえ、違うわね……」
風と共に耳に入る否定の声
その低くて凛々しいバリトンボイスを無理矢理高くした声
声は公園を照らす外灯の上からの物だった……
大きなパピヨンマスク、風に揺らめくピンクゴールド刺繍の黒マント
銀色に輝くティアラを頭に乗せ、腕を組んで立つその姿……
美しさと力強さを兼ね備えた妖艶なる人物が、そこにいた……
- 235 :ミラージュ:2011/11/10(木) 22:52:44 ID:7hcwnxwgO
- >>234
今も膝の上で寝息をかく猫の姿が愛らしい。
血の流れによる熱が素肌に触れて今日の様な寒い夜には嬉しい。
「何だ、お前は……」
数週間前に起きた爆破事件。
それの犯人がそれの復興作業を眺めながら猫を撫でていた。
- 236 :ラベンダー郷田 ◆6xc12amlNk:2011/11/10(木) 23:07:36 ID:.6prKP66O
- >>235
問い掛けられた誰だと言う言葉……それに答えるかのように辺り一面にラベンダーの花吹雪が舞う
「私が誰だかしりたいぃ?ん〜、そうね……」
言葉と同時に背景が真っピンクになった感覚に襲われる
「ある時は小粋なお姉さん、またある時は美しきメイクキャップアーティスト♪」
バチコーンッ☆と黒マントがウィンクをするとハートやら星やら素敵なものがいっぱい!
クネクネと外灯の上で器用にダンスを踊る黒マント……
「果たしてその実態は☆ん〜っマッ♪」
次に投げキッス、特大のハートが宙に発生し破裂する
「愛と悪と美の懲戒者!怪盗★ラベンダァァァァッ郷田!!」
キュルルーン☆♪
- 237 :ミラージュ:2011/11/10(木) 23:16:02 ID:7hcwnxwgO
- >>236
「……そうか」
この者が放つ異様な雰囲気。風は吹いてないが寒気を感じたのはミスでは無さそうだ。
ラベンダー郷田と言ったか。貴様のせいで猫が目を覚ましてしまった。よしよし、いい子だ。
「それで、何だ」
猫の脇に手を通すと抱き抱えた。
腕と胸に挟まれた猫が窮屈そうに背を曲げて「にゃぁ」と渋く鳴く。
- 238 :ラベンダー郷田 ◆6xc12amlNk:2011/11/10(木) 23:24:15 ID:.6prKP66O
- >>237
「あらぁ♪ちょっと恥ずかし〜♪全然スルーだわよこの子ぉ〜」
キャピキャピする大男もといお姉さんの破壊力は抜群だ
「なんの話だったかしら〜♪は〜い猫ちゃん?ごきげよぅ〜♪」
ヒラリ空中24回転で地に降り立つお姉さん、キャピキャピ両手を小さく振りながら一人と一匹に近寄ってくる
「そぉそぉ〜♪、あなたに足りないのは猫ちゃんじゃなくてぇ〜♪……愛☆気高さ☆信念☆よ!!」
バーンッバーンッバーンッ!
三連続の決めポーズ、その美しき三連コンボには例えどんな強靱な精神を持っていても釘づけ間違いなしだろう
- 239 :ミラージュ:2011/11/10(木) 23:34:22 ID:7hcwnxwgO
- >>238
なんだこの『男』は。
腹から伝わる猫の熱も心なしか気味が悪く感じる。
――クーキュルキュル(お腹の音)
「……ふむ」
そう言えば朝から何も食べていなかった。
先日まで毎日同じものを食べていたのだがそれに飽きを感じてきたので試しに絶ってみた。
……やはり、お腹は空くと言うことか。
猫を抱えたまま立ち上がるとそのまますたすたとコンビニの方へ歩いていく。
- 240 :ラベンダー郷田 ◆6xc12amlNk:2011/11/10(木) 23:43:23 ID:.6prKP66O
- >>239
「あらあらつれない子ね♪お姉さんショックよぉ〜?」
さすがにこの格好でコンビニに入る訳にはいかない、お姉さんはルージュで艶やかに輝く唇をとがらせて、少女と猫を見ていた
「全く、美力はまだまだトルマリンの様ね……私」
- 241 :ミラージュ:2011/11/10(木) 23:57:15 ID:7hcwnxwgO
- >>240
直ぐにそれは解った。
先程の男がついてこない事に気づいたが、振り向きたくは無かった。
強張っていた猫の緊張も解れたらしく、また私に優しく鳴いてくれた。
せれが余りにも嬉しかったので頭を撫でるとやはり何時もより心地よい。
少女はついた先のコンビニで何時もと同じクリームスパゲティを購入しながら溜め息をつくのだった。
飽きた。
- 242 :黒沢小百合:2011/11/15(火) 23:14:24 ID:SSMHlh/20
- 【AGカフェ】
「うぅっ、寒い……。」
肩に薄く霜をまぶしてカフェへと転がり込んできた小百合は
入り口でそれを払い落としてから、足早に厨房へと向かう。
オニオングラタンと適当なスープを
作れる程度の具在が、冷蔵庫に残っていたかな。
- 243 :キール・エーデルシュタイン:2011/11/17(木) 23:29:35 ID:i4Kj.0Dc0
- 真夜中の公園、水を撒き散らす噴水の傍ら。
少年は歌を口ずさみながら、髪を、肌を、そして衣服を、ごしごし擦って汚れを落としていた。
寒さは骨身に滲みるようだが、やはりここに来たのは正解だ。
『食べかす』で汚れたままでいるよりは、こうしてさっぱりした方が何かと気分がいいものである。
「──♪────♪」
すっかり汚れがおちると、噴水から出て近くの芝生に寝転んだ。夜空を見上げ、満腹感の余韻に浸りながら考える。
そうだ。このままここでもう暫く、服が乾くまでこうしていようか。
もう夜更けだ、どうせ誰も来はしないだろう──。
ひゅう。吹きすさぶ木枯らしが、薄赤く染まった水面を波打たす。
少年にまとわりついた血臭の残滓は、吹き散らされて消えていった。
- 244 :名も無き異能都市住民:2011/11/18(金) 00:21:51 ID:PBnIervYO
- 「寒い、寒い……少しずつ冬めいていきまスね」
木枯らしに吹かれるのは少年だけではなかった。
見た目からして上質であることが伺える燕尾服。外灯を鈍く反射する磨かれた黒の革靴は歩く度にコツコツと小さく小気味良い足音を立てる。
「たまの散歩も良いと思ったのでスが、もう少し厚着でも良かったかもしれないでスね……さて」
多少癖のある発音で一人言葉を紡ぐ「物」。スラリと伸びるスマートな体の首の上、顔が有るべき部位にある「テレビ」が少年の方に「画面」を向け、首を傾げる
「何やら、穏やかな情景ではないでスね。」
- 245 :名も無き異能都市住民:2011/11/18(金) 00:52:22 ID:i4Kj.0Dc0
- 芝生に横たわったまま、寝返りをひとつ、ふたつ。
大きく伸びをしながら溜め息を吐き出したところで、足音に気づく。
ゆっくりと上体を起こし、そちらに視線を向けた。
「……おだやかじゃない、って?」
少年はたっぷり数秒思案を巡らせ、目の前の相手の言葉が、自分に向けられたものだと悟る。
……言葉の意味は理解できた。が、しかし、何が剣呑なのかがどうしても理解できない。
目と目──もとい目とモニターを合わせて同じく小首を傾げると、鸚鵡返しに問いかけた。
- 246 :名も無き異能都市住民:2011/11/18(金) 01:09:54 ID:PBnIervYO
- 「……キミ、寒くないんでスか?」
始めに男が発したのは少年の問いに対する答えでは無く、少年の現状に対する疑問であった。
白い絹の手袋を嵌めた手が、ちょうど顎をさするように、画面の下部を撫でる。
「……ま、いいでス。夜とはいえ、公園という場に血の香りはあまり似合っているとはいえないじゃないんでスか?」
ついで男が指摘したのは、少年にとっての『食べかす』のことであるらしい。
嗅ぐ鼻など有るようには思えないが、どうやら嗅覚はあるらしい。
- 247 :名も無き異能都市住民:2011/11/18(金) 01:36:43 ID:i4Kj.0Dc0
- 「んー。でも、服がかわけば寒くない……っくしゅ」
寒い事は寒いが、我慢できない程ではない。だから大丈夫だ。
やや舌足らずな喋り方に、子供っぽい身振り手振りを交えて、少年は大体そんなような事を言う。
言った傍から小さくくしゃみをしているのはまあ、ご愛嬌だ。
「……うん、だから洗った。水はそのうちながれるし。それに、ここしか洗えそうな場所、なかったから」
ああ、と合点がいったように頷いて、血塗れで居ればもっとここには似合わない、と一言。
まあ尤もではあるのだが、どうにも常識というものを欠いた返答である。
もしや、路地裏に棄てられた孤児かなにかだろうか。
いや。それにしては妙に身形が──伸び放題の髪を除けば──良いが……。
- 248 :名も無き異能都市住民:2011/11/18(金) 02:00:34 ID:PBnIervYO
- 「はぁ、くしゃみしてるじゃないでスか。野性的ともとれまスけど、体調管理が出来ない野生なんて下の下でスよ?」
男はやれやれと肩をすくめ、首を振る。男の身振りは多少芝居がかって大袈裟だったが、表情が無い分そうしてバランスをとっているかもしれない。
「……私が言うのもあれでスけど、キミは随分『外れて』いるみたいでスね」
邂逅の時点でわかっていた事を、口に出す事でより明確にするように、男は言った。『君は異常だ』と。
また、『ただ、君では駄目だとも』
- 249 :名も無き異能都市住民:2011/11/18(金) 02:25:07 ID:i4Kj.0Dc0
- 「だいじょぶ、風邪はひかない。……こどもはかぜのこだって、だれかが言ってた」
何が根拠なのかは自分でもわからないが、自分の体調くらいは把握できる。とばかり、
手の甲で赤くなった鼻の頭をこすりこすり、自信満々に少年は胸を張ってみせた。
芝居じみた言い回しを、素直に心配からくる忠告と受け取ったようだ。
「…………」
受け答えながら髪をいじったり、服の中をぱたぱた扇いだりしていた彼だったが、
やがて興味が相手に移ったのか、ひょいと立ち上がって小走りにそちらへ近寄ってゆく。
接近が許されれば近くで上目遣いに、でなければ遠くから目を細めて。
どちらにしてもしげしげと、相手を上から下まで眺め回すだろう。
掛けられた言葉の意味が、解っているのかいないのか。返答は、未だない。
- 250 :名も無き異能都市住民:2011/11/18(金) 02:48:23 ID:PBnIervYO
- 「人の子供だって、人に傷つけられるんでス。風の子でも気をつけないと風邪ひきまスよ?……ふむ?」
多少警戒している様な気はするが、別段男は少年が近付く事に対して行動を起こす事は無いようだ。或いは、既に起こしているのか
近付き見上げる少年に男は画面を向け、告げる。それは少年に語りかけるようで、少年以外の何か、彼が望むここに居ない誰かに語りかけているるようにも見えた
「夢、願い……言い繕わなければ『欲』。キミは強い。私が居なくても、キミはキミの『願い』がきっと満たせる。」
キミが強くて、残念でス。男は少しも残念な様子もなく、そう呟いた。
- 251 :名も無き異能都市住民:2011/11/18(金) 03:39:36 ID:i4Kj.0Dc0
- 少年の方は、至って無邪気なものである。もちろん無防備という訳ではないが、そも敵対する理由がない。
お腹は膨れていて、相手は積極的にこちらに敵対する様子を見せない。
はぐれものに縄張りなんて物はないし、人の厄介さは身に滲みて知っていた。
「んー……じゃあ、気をつける。ありがと」
(ぬげないのかなー。あんまりおいしくなさそうだなー……食べないけど)
……それに今はそんな事より、目の前の奇態な男が一体何なのか、この目で見極める方が重要だ。
ロボットか、妖精か。ひょっとしてただの被り物をした人かとも疑ったが、どうにもよくわからない。
わからないが、その喋り方がほんの少しだけ気に掛かった。
男に顔があったならきっと、なんとも言えない遠い眼をしているのだろうかと、ふと考える。
「おまえは、かみさまなのか?」
それから、また数秒。どうにか男の言葉を飲み込んで、少年は拙い問いを重ねる。
そもそも、神が何なのかさえ彼は知らない。
だが、それは願いを叶えるものだと、どこかで聞いた記憶があった。
- 252 :欲望成就:2011/11/18(金) 04:05:40 ID:PBnIervYO
- 「どういたしましてでスね。これからどんどん寒くなりまス。キミの親も厳しくなってきまスしね……おおゥ」
言う間に木枯らしが一つ。男は寒さにあまり耐性がないのか、ぶるりと体を震わせた。
「弱めの欲が少し漏れましたよ?当然私は食べても美味しくない筈でス。試した事は無いでスが……きっと不味い筈でス」
それが男の力なのか、少年が、真っ当な人間が抱く物ではない男に対する『食欲』に反応して男は言葉を紡ぐ。
「……さて。神と言ってくれる人もいまス。悪魔と罵る人もいまス。結局、私が何かは私にもわからないのでスよ、ただ…」
そして少年の拙い問いには、男は肯定も否定もしない、なんとも曖昧なものであった。
「私には名前が有りまス。欲望成就(デザイア)という、いつから有ったかもわからない名前が。キミには名前はありまスか?」
- 253 : ◆My6NsjkSfM:2011/12/09(金) 23:07:45 ID:WVrfsEdY0
- 「…ぬうう、ぬーう!」
【レインコートに体を隠した少女が不機嫌そうな顔で歩いていた】
「…あんな屈辱…私は絶対負けないんだから…」
【裏通りのような場所にいるのも何処かその少女の尋常セはないところを思わせる…】
- 254 :黒沢小百合:2011/12/16(金) 23:12:14 ID:SSMHlh/20
- 【路地裏】
小百合は体力的に余裕がある日には、
物見遊山がてら街中を歩いて帰る事にしている。
そこらのチンピラに負けはしないし、仕掛けてくるような
実力のある異能者もまれ。そのため小百合は一般市民が避けて通るような
治安の悪い路地裏も構わず足を踏み入れ、近道をする。
今日は、週末になるとどこからともなく集まっては市場を形成する
商人たちの露店を一通り見回り、怪しげな魔道具やら精巧なガラス細工やらを
買い込んだ帰りのようで、ただのOLにしかみえない。
- 255 :フルトゥ/茶色いベストの男:2011/12/16(金) 23:23:17 ID:et1rlL8Y0
- >>254
黒沢は、茶色いベストの男とすれ違うだろう。
見覚えがあるはずだ。
テルメスから受け取った写真の中に居た男だ。
露店の男に声を掛けられるが、いらないと手を振る。
しかし、キョロキョロとしており、興味が無いわけではなさそうだ。
一体何をしているのだろうか。
- 256 :黒沢小百合:2011/12/16(金) 23:33:45 ID:SSMHlh/20
- >>255
「…………。」
こうした路地裏を歩く人種など大抵
大手を振って表を歩けない犯罪者やチンピラが大半。
油断なく目配せをしていた小百合は、抜かりなくフルトゥの姿を捉えていた。
(……これは行幸。こんなところで例のテロリスト一味と出くわすとは。
少し、泳がしてみるのも面白いか……。)
小百合はあえて攻撃を仕掛けずフルトゥの後を付けることにした。
ねぐらや拠点、鱗怪帝とやらの情報が得られるかもしれないと踏んだのだ。
- 257 :フルトゥ/茶色いベストの男:2011/12/16(金) 23:43:05 ID:et1rlL8Y0
- >>256
しばらくキョロキョロと何かを探すように歩いていると、
急に古い武器を売っている店の前で立ち止まる。
「……これをくれないか」
そして、その中でボロボロのナイフを手に取った。
金は持っているらしく、代金はきちんと支払う。
見た目に反したそれは、明らかにぼったくりレベルの値段だったが、気にはしていないようだった。
そして、次の瞬間それを黒沢の頬を掠めるように投げつけていた。
「……余り気分のいいものじゃないな。
後をつけられるというのは」
- 258 :黒沢小百合:2011/12/16(金) 23:50:32 ID:SSMHlh/20
- >>257
小百合の長髪の一部がはらりと宙に舞い、
路地裏の古びたレンガ壁をナイフが穿つ。
「中々に勘が良い。
これでも、気配を可能な限り消していたのですがね。
獣特有の、直感という事か……。」
腰に手をあて、呆れたようにため息をつき。
「髪は女の命、ともいいます。
それを貴女は傷つけたのですから、ねぇ……。」
くつくつと笑う小百合は人差し指と中指で、紙片を挟み
いつでも戦闘に持ち込める体勢をとる。
- 259 :スケイルフルトゥ:2011/12/17(土) 00:02:32 ID:et1rlL8Y0
- >>258
「俺が……いや、俺達への敵意が滲み出ているぞ」
男の身体は鱗に包まれ、枝分かれした角を持つ怪人の姿に変化した。
両の手をそれぞれ角に当てると、稲妻が迸り、ギザギザの剣が二振り具現化する。
同時に、それを見た周囲で買い物客や、露店の主人らが叫び声を上げながら逃げ惑い始めた。
「俺はフルトゥ。
思い出したぞ、お前はテルメスと戦ったという女だな」
そう言って、バチバチと音を立てる剣を黒沢に突きつけた。
- 260 :黒沢小百合:2011/12/17(土) 00:13:40 ID:SSMHlh/20
- >>259
「テルメス……あのアリジゴク野朗か……。」
嘲るように、鼻を鳴らす小百合。
同時に、黒衣を纏った軍団――。
イモータル
ペルシア帝国の『不死隊』が二人の間を塞ぐ。
「もう逃げる事はできんぞ、化け物。
貴様のその角をもぎ取って、角細工にしてやろう。」
- 261 :スケイルフルトゥ:2011/12/17(土) 00:21:06 ID:et1rlL8Y0
- >>260
「……ふん、弟の方とも既に知り合いか」
剣を打ち鳴らすと、天上に雷雲が現れ、轟音を立てて二筋の雷が剣に落ちた。
剣はより一層帯電する。
「話に聞いたとおりの能力……。
いくぞ!俺はテルメスほど甘くは無い!」
不死隊の群れに、両の剣を振り抜きながら突撃した。
- 262 :黒沢小百合:2011/12/17(土) 00:28:48 ID:SSMHlh/20
- >>261
「圧し包め。この場は狭く、防御に適した地だ。
包囲を厚くし、疲弊させなさい。」
市街地、とくに路地裏であるこの道はさほど広くなく
左右に回りこまれると言った事はあまり警戒しなくて良いが、
背後からの攻撃は十二分に脅威。
敵陣を突破しようにも、道が狭く攻撃箇所が限定されている分。
陣営に厚みがありかなり骨が折れそうだ。
そしてなにより、前後から繰り出される長槍と剣ではリーチが違いすぎる。
槍衾を壁のように繰り出だされては回避も難しいだろう。
- 263 :スケイルフルトゥ:2011/12/17(土) 00:43:37 ID:et1rlL8Y0
- >>262
フルトゥは、剣だけでなく、頭の角をも使い相手の攻撃を的確に受け止める。
稲妻を纏った剣は掠っただけで並みの人間ならば感電死する上、振るうたびに電気が迸り、リーチ差を縮める。
そして、人間を超越した瞬発力で兵の懐に潜り込み、一振りで数人を纏めて切り払っていく。
「死を恐れないとは言え所詮人間の集まりに過ぎん!」
疲労を見せず、次々と兵を倒すフルトゥだったが、そのたった一人の侵攻は流石に遅い。
- 264 :黒沢小百合:2011/12/17(土) 00:50:46 ID:SSMHlh/20
- >>263
「フン、どいつもこいつも猪武者ばかりだ。
自分の力を過信し、バカの一つ覚えを繰り返す。」
とはいえ、リーチのおかげで攻撃もできず雷に焼かれるという事は無い。
挟み撃ちの体制を維持しつつ、兵士たちを補充。
同時に、余裕を見せ付けるかのように背を向けゆっくりと移動する。
「その程度の打撃力では、疲弊するだけさね。
身体的に人間より強いとは言え、ただの個人に過ぎん。
生半可な突撃ではなあ……!」
小百合とフルトゥの相対距離は変わらない。
このままではじわじわと疲労とダメージを蓄積されるのみだ。
- 265 :スケイルフルトゥ:2011/12/17(土) 01:07:14 ID:et1rlL8Y0
- >>264
まるで楽しむかのように剣を振るうフルトゥだったが、
黒沢の呟きを聞いて眼光を鋭くした。
「人間の個と怪人の個を同じに見られては少々不愉快だな!
これでも同じ事が言えるか!?」
フルトゥは三人を纏めてなぎ倒すと、隙を見つけて飛び上がる。
同時に剣を掲げると、再び稲妻が剣を帯電させた。
壁面を蹴り、一直線に黒沢に近づくと、帯電させた剣を振り下ろした。
- 266 :黒沢小百合:2011/12/17(土) 01:21:44 ID:SSMHlh/20
- >>265
「人は弱く、脆い。
それゆえに人は群れ、組織を作ったのだ。
貴様ら怪人は個々の武に溺れ、それを怠った。」
空中から突っ込むフルトゥを迎え撃つは例の槍衾と比較的短い槍による投擲攻撃。
狙いは自分と分かっているのだから、自分の身辺に侍らせた兵の槍をその軌道上に
突き出せば勝手に串刺しになってくれる。
「いわば、貴様らは古代の勇者にすぎんのさ。
ワンマンアーミーの時代は終わった。個で群を覆すなど。
戦略を戦術で覆すなどありえない。」
効果的に敵を殺せるように。
息を合わせ、もっとも避けづらい間合い、タイミングで繰り出される槍。
まるで全体が一つの生物のように統率された動きは、怪人の戦闘員にはないものだ。
- 267 :スケイルフルトゥ:2011/12/17(土) 01:39:43 ID:et1rlL8Y0
- >>266
「そもそも」
兵によって作り出された槍の筵に、フルトゥは"立った"。
「鍛え抜かれた豪腕から振るわれる槍ならばまだしも。
異能の力を秘めた槍ならばまだしも。
"ウスバカゲロウの翅のような薄っぺらな器官"ならばまだしも」
槍の上に立ちながら、フルトゥは剣を黒沢に突きつけた。
「……銃弾も満足に通用しない俺達に、ただの槍如きが通ると思っていたか。
お前は銃や兵器をも操ることを俺は知っている。
しかし、先ほどからお前は槍兵しか出していない」
稲妻が兵士達に落ち、フルトゥは地面に着地した。
「余りにも、お前は俺達を舐めすぎじゃあないか?」
- 268 :黒沢小百合:2011/12/17(土) 23:57:10 ID:SSMHlh/20
- >>267
小百合はただ黙って敵の接近を眺めていたわけではない。
接近を阻む防御網を構成しながらも後退。
(まったく、呆れた硬さだ……。
近代兵器がなくとも何とかなるかと思ったが……。)
もっとも手近な曲がり角へと逃げ込み、体勢を立て直そうとしていた。
- 269 :スケイルフルトゥ:2011/12/18(日) 00:12:07 ID:et1rlL8Y0
- >>268
「守りに逃げるな、貴様の力を出せ!」
フルトゥは叫びながら、防御網を次から次へと切り伏せる。
黒沢が入った曲がり角に、フルトゥは飛び込んだ。
罠が仕掛けられていたならば、何の警戒もしていないフルトゥはまともに受けてしまうだろう。
いや、それを望んでいるのか。
- 270 :黒沢小百合:2011/12/18(日) 00:31:44 ID:SSMHlh/20
- >>269
「『匹夫の勇、一人に敵する者なり』。
貴様は勇者でもない、ただの直進する獣だ。」
角を曲がった瞬間、猛烈な砲火によりフルトゥの視界が真っ白に染まる。
――『メタルストーム』。
オーストラリアの兵器開発企業が開発したこの武器は、
今までの銃とは全く異なる発射機構により一分間に『100万発』もの弾丸を吐き出す
恐るべき兵器。
「それでは御機嫌よう、ああ……消し炭も残らないかな……。」
既に、市街地への被害を考慮していない小百合はこの兵器を壁のように具現化。
それほどの量だ、この周辺の建物は使い物にならなくなる、が。
どうせこの辺はろくでもない者どもの巣窟。適当に金をばら撒けば不満はすぐに出なくなる。
- 271 :スケイルフルトゥ:2011/12/18(日) 00:50:09 ID:et1rlL8Y0
- >>270
「……!」
メタルストームの弾丸が、フルトゥの身体をえぐる音だけが連続して聞こえてくる。
フルトゥは剣を振るい弾丸を受け止めるものの、そんなものは焼け石に水である。
剣は折れ、フルトゥの身体はズタズタにされていく。
黒沢には、その様子は壁のように聳え立つメタルストームと、舞い上がる砂埃のせいで見えることは無いだろう。
「これが――人間の武力か――」
声にならない声で、倒れ付したフルトゥは呟いた。
まだ身体が原型を保っているのは怪人の防御能力を考慮しても奇跡と言っていいだろう。
「これが――見たかった――そして」
わずかに残っていた角が、雷雲を呼んだ。
ゴロゴロと音を立て、雨が降り始める。
稲妻がフルトゥに落ち、爆発が起こる。
フルトゥの命は絶たれた。
しかし、爆発がまだ収まらぬうちに、爆炎の中から、一筋の雷が黒沢に向かった。
その形は、獣の振りかざす枝分かれした角のように見えた。
- 272 :黒沢小百合:2011/12/18(日) 00:58:09 ID:SSMHlh/20
- >>271
しかし、宙を走る雷も壁の如く並べられた
『メタルストーム』によって受け止められ、それをいくつか吹き飛ばしただけで終わる。
「ペンは剣よりも強し、といった人間は機関銃を見た事が無いのだろう。
人は進化する。時代は抜いてしまったのさ。貴様らをなぁ……!」
小百合は、愉悦の表情を浮かべ
アスファルトに残った爆発跡へ言葉を投げかけた。
- 273 :クイーン一派:2011/12/18(日) 01:06:25 ID:et1rlL8Y0
- >>272
「あーあ、フルトゥを殺しちまって」
「これじゃあ新しい四将の候補が減ってしまったわね。三将にするかしら」
爆発後から、一枚の鱗が飛んだ。
それをビルの上の人影が掴み取った。
黒いマフラーの男と、金髪の女性が立っていた。
「我々にとって、4と言う数字は特別なもの。
そういうわけにもいかないでしょう」
爆発の跡地に、二人の人影があった。
白い帽子の少女と、SPのような姿のガタイのいい男。
「かくなる上は……というわけか?"女帝"殿……」
こつこつと足音を立て、黒いロングコートの男が現れた。
男は少女に問いかけた。
「そうですね。あれは中々……見所がある」
少女がそう言うと、彼女らは同時に黒沢に眼を向けた。
彼女らは皆、テルメスから渡された写真の者達だった。
- 274 :黒沢小百合:2011/12/18(日) 01:23:02 ID:SSMHlh/20
- >>273
「おや、これはこれは……。
皆さんお揃いのようで、手間が省けた。」
総勢4人、どれもテルメスから渡された資料で見た顔。
小百合は歓喜した。今日ほど素晴らしい日があっただろうか。
「ククッ、敵討ちと言うわけか?
いいさ、4人束で掛かってくるがいい……・。
それとも、お仲間を殺されて命乞いにでもやってきたのかなぁ……?」
――殺せる。殺せる。殺せる。殺せる。
獲物を前にして恍惚に近い表情を浮かべ、髪を振り乱しながら叫ぶ。
戦闘により昂ぶり、剥き出しになった『獣性』。
それは小百合の精神のもっとも野卑な部分。
- 275 :クイーン一派:2011/12/18(日) 01:33:31 ID:et1rlL8Y0
- >>274
「……だってよ、クイーン。あんたが代表者だからな」
テルメスの姉と、黒いマフラーの男は少女の傍らに飛び降りた。
黒いマフラーの男は、鱗を手で弄んでいる。
「そうね……今丁度人手が減ってしまって困ってるところなの。
少し人員をお借りしに来たのよ……。
……レスト、エクエス、取り押さえなさい」
ガタイのいい男と、ロングコートの男が、同時に黒沢に飛び掛った。
ロングコートの男は、漆黒の逆刃刀を二振り構え、メタルストームの壁を切り開こうとしていた。
- 276 :黒沢小百合:2011/12/18(日) 01:40:09 ID:SSMHlh/20
- >>275
「結局は突撃しか能が無いのだなぁッ!
蜂の巣さ、須らくなあ……!!」
再び始まる鋼鉄の嵐。
掃射される弾丸自体がまさに壁。振り払うとか、回避するとか。
そういったレベルのものではない。
「ヒャッアああはっはははははァァアッッ!!!!
私に仇名す者は皆死ね、我が主に仇名す者は皆、壊れてしまえェェエェッッ!!!」
全てを叩き潰す暴力の塊は、周囲の建物をなぎ倒しながら目に映るもの全てを破壊する。
その中心で、小百合は叫ぶ。
狂乱。まさにその言葉が相応しい。
- 277 :クイーン一派:2011/12/18(日) 01:48:57 ID:et1rlL8Y0
- >>276
「……」
弾丸は通らなかった。
エクエスと呼ばれた男の手から、大量の小さな六角形が組み合わさったバリアが展開され、
その銃撃を防いでいた。
そして、その内側、ロングコートの男の刀から、鉄をも溶かし斬る炎の刃が放たれる。
「……それはむしろ、"こちら側"で存分に叫んでもらおう」
ロングコートの男の姿はノコギリのような角を持つ、鎧武者のような怪人に。
ガタイのいい男の姿は、黄と黒の、全身に六角形の穴を持つベルトの無い怪人の姿に変化した。
【戦将スケイルレスト】【"巣"スケイルエクエス】
- 278 :黒沢小百合:2011/12/18(日) 01:55:12 ID:SSMHlh/20
- >>277
「グゥッ……防御を……!」
マズい、攻撃に傾注しすぎて回避がおろそかになった。
近すぎる。時間を稼ぎ、距離をとらなければ。
判断を下した後の行動は早い。
一瞬で指を袖口に滑り込ませ、感覚を頼りに具現化。
何度も繰り返した動きだ。間違いはしない。
――ガゴッ
レスト、エクエスの前に壁――『コンスタンティノープルの城壁』が現れる。
「フン、一人殺せただけでよしとするか……。
『内乱』を待ち、その後で一網打尽にすればよいのだから。」
小百合はその城壁の上で、同じく具現化したヘリに乗り込み逃亡を図ろうとしている。
- 279 :クイーン一派:2011/12/18(日) 02:05:34 ID:et1rlL8Y0
- >>278
「ぬあああっ!!!」
レストは剣を振るい、城壁を熱波と共に一太刀に切り捨てた。
幹部である証明、戦将の名は伊達ではない。
「私が……!」
「いえ、もう向かわせたわ」
大量のハチが少女の帽子の裏から放たれた。
ハチはヘリに張り付くと巨大化し、人型に変化する。
ハチの兵士達は以前と違い、頭の後ろに辮髪のような器官を備えていた。
大量のハチの兵士がヘリにレイピア状の剣を突き刺し、破壊しようとする。
その中の一体が、ヘリのローターにレイピアを突き刺そうとした。
- 280 :黒沢小百合:2011/12/18(日) 02:20:17 ID:SSMHlh/20
- >>279
しかし、城壁はあまりに巨大。
数百年の間、東ローマを守り続けた『難攻不落』の壁は伊達ではなく
一部を切り捨てたところで、一度に全体を破壊するまでには到底至らない。
レストらを嘲笑うかのように、高い音を出しながら
ローターが回転し鋼鉄の機体が宙に浮く。
「ふぅ……、戦いは血沸き肉踊る物だが少し疲れた。
早く邸宅に戻ってシャワーを――。」
小百合がため息をつき、髪を掻き揚げたその時だった。
ガクン、とヘリが傾き、まるで梯子を外されたかのように地面に叩きつけられる。
蜂兵士が放った鋭い突きが、ヘリのローターを破戒したのだ。
「がァッ……!!?」
小百合は、傾いた際の衝撃でヘリから投げ出され城壁の上に叩きつけられる。
敵に航空戦力がないと甘く見た小百合の失態であった。
- 281 :クイーン一派:2011/12/18(日) 02:28:15 ID:et1rlL8Y0
- >>280
「……生きてるのか?これ。
これ以上壁壊すんじゃねえぞ!人間がこっから落ちたら死ぬからな!」
投げ出された黒沢を、腕が茶色い翼になっている鳥のような怪人が見下ろしていた。
しかし、首に巻いた黒いマフラーから、人間態の姿が想起できるだろう。
【タカ系怪人 スケイルラルキム】
「……こいつを引き入れるってのは……少々癪ね」
同じく、テルメスの姉が、怪人態となって黒沢を見下ろしていた。
以前ダメージを受けた昆虫のような翅は既に回復している。
二体は黒沢を捕らえようとした。
- 282 :黒沢小百合:2011/12/18(日) 02:41:52 ID:SSMHlh/20
- >>281
小百合は地面に叩きつけられた際、
体を弓なりに強張らせて口から血を吐き、
声にならない悲鳴をあげた。
「……ガ……ぁ゛……ぅ゛……ぅう゛ぐ…………グ……。」
しかし、時折びくりと体を震わせながら血を吐き、
うめき声を上げる様子を見るに、彼女はまだ生きている。
そして何より今にも光の掻き消えそうな瞳で、上空から迫る怪人を見つめている。
「い……ぎ……い、や゛ぁ……ぁ……。」
己を捕らえようと近づく怪人に力なく恐怖の悲鳴をあげ、逃げるように身をよじった小百合。
しかし、強く打ち付けられた体はたったそれだけの行為に耐え切れず、再び口からは
多量の血液が漏れた。
石畳の角か何かで内臓をかなりひどく痛めたらしい。
- 283 :クイーン一派:2011/12/18(日) 02:54:06 ID:et1rlL8Y0
- >>282
「駄目だこりゃ、動かせねえな。人間って脆いねー。
クイーン!わりいが来てくれ!」
エクエスが作り出した六角形のバリアに乗り、クイーン、エクエス、レストが城壁の上に登ってきた。
クイーンは黒沢の横に立ち、見下ろした。
「ラルキム。フルトゥの覚醒鱗を空にして渡しなさい」
「ん、あいよ」
ラルキムが覚醒鱗を握ると、その中に残留していたフルトゥの大量の魔力がラルキムの中に流れ込んだ。
空になった覚醒鱗をクイーンに投げ渡し、クイーンはその鱗を、黒沢に突きつけた。
「待て。お前は新たなる帝の力を取り込んで不安定な状態だ。
それは俺が引き受けた方がいいだろう」
クイーンの手を、レストが掴んだ。
「……そうね。任せたわ、レスト」
レストの手に、鱗が握られた。
眼を瞑り、何かを呟いたかと思うと、鱗を黒沢の上に落とす。
「始めて見るわね。新たなる怪人の誕生……」
「妙な儀式とかはいらねえんだな。なるほど、だからこそ幹部か鱗怪帝にしか方法がわからないと」
覚醒鱗が、黒沢の中に飲み込まれていく。
同時に黒沢の身体の内側から、鱗が身体を包み込んでいくだろう。
- 284 :黒沢小百合:2011/12/18(日) 03:06:35 ID:SSMHlh/20
- >>283
「あ゛……。」
血を吐きながらも、地面を這いずる小百合の背に『覚醒鱗』が落ちたと同時に
どこからともなく湧き出した茶色の甲殻がバキバキと音を立てながら全身へと広がっていく。
小百合は恐怖に震えて硬直し、目を見開いていたがやがて
口元が開いたフルフェイスヘルメットのような甲殻に覆われ、その表情は窺い知れなくなる。
自慢であった美しい長い髪は『蛇』の胴体のフォルムを思わせる形へと変化。
甲殻に覆われていない部分の皮膚は、真っ青に染まった。
「ぐ、あ……が……ギャオオオォオオォォッッ!!!!!」
――変身が終わる。
よろよろと、おぼつかない足取りで立ち上がる新たな怪人は
己の誕生を感謝するかのように、天を仰いで咆えた。
「…………クイーン、サマ。エクエス、サマ。レスト、サマ。
テルメス、サマ。アリガト……ゴザイ……マス……。」
小百合だった物は獣を思わせる所作で、怪人たちの前にひれ伏した
- 285 :クイーン一派:2011/12/18(日) 03:25:07 ID:et1rlL8Y0
- >>284
「……どう思う?クイーン」
この場でただ一人人間態のままのクイーンを、全員が見た。
「……少しぐらい逆らうぐらいの方が丁度良かったのだけれど」
「望み過ぎだ……従順を演じてる可能性は?」
「……それはそれで面白い」
レストは鼻で笑いながら言った。
「……レスト、彼女の教育は、あなたに任せていいかしら。
あなたが一番新たな怪人の扱いに馴れてるでしょう?」
クイーンはレストに言った。
「俺はベイやダーネスほど慣れていないがな……解った」
レストはため息をつく。
「じゃあ俺はそろそろ狩りに」
「私も弟を探しにいくわ」
ラルキムとテルメスは、人間態となり、立ち去る。
残ったのはクイーンとエクエス、レストのみとなった。
しばらくクイーンとレストは黒沢の扱いについて話していたが、
「……お前、人間態は?」
約十分後、ようやくレストが、黒沢だった怪人に話しかけた。
- 286 :新たな怪人:2011/12/18(日) 03:43:26 ID:LIoRVs12O
- >>285
「にんゲン、は、コロス、モノ……。」
新たな怪人はたどたどしい口調でそれだけを答えた。
どうやら、とんだ見込み違いをしてしまったらしい。
「ゴメイレイ、ヲ。」
小百合は異能者としては優秀だったかもしれない。
しかし、素材ありの怪人の例に漏れず知性が低いようで
人間態になれないのかもしれないし、もしこのまま人間へと化けても
その地位を生かした攪乱などは不可能だろう。
- 287 :クイーン一派:2011/12/18(日) 03:55:05 ID:et1rlL8Y0
- >>285
「……ああ、そうだ。
怪人は本来そうあるべきだな」
レストは渋い顔をして目を細めた。
「彼女を見て昔のことでも思い出した?」
「馬鹿な。俺はこいつとは似ても似つかない」
レストの顔がしかめっ面に変わった。
「まあいいわ。こいつが食べる時はあなたが監督してね。
これ以上能力者にやられるのは癪だから」
クイーンとエクエスを、大量の蜂が取り囲んだ。
「それじゃあ、ごきげんよう」
蜂がクイーンとエクエスの姿を隠し、何処かへ飛び去る。
クイーンとエクエスは、跡形も無く消えてしまった。
「……しかし、少しでも話が出来るのは好都合だ。
……命令する」
レストの目が光る。
下位の怪人にマインドコントロール効果を持つ光だ。
「俺以外の奴に何かを指令されたら、まず俺に知らせてから行え。たとえクイーンでもだ。
お前が言葉で伝えられる範囲で構わない、いいな」
そういうと、レストの目は光を収める。
- 288 :新たな怪人:2011/12/18(日) 04:05:35 ID:LIoRVs12O
- >>287
「オノゾミ……ノ……まま……ニ……。」
抵抗することなく、命令を受け入れる。
精神の構造が幾分か単純なのか御しやすい。
「ニンげン、かル……。」
名も無き怪人は、そうつぶやくと
先ほどまで守っていたはずの人々が眠る町へ『狩り』に出かけようとしていた。
- 289 :レスト/ロングコートの男:2011/12/18(日) 04:09:15 ID:et1rlL8Y0
- >>288
「それでいい」
にやりと笑う。
「……ほどほどで切り上げるんだな」
レストは怪人から目を離し、何処かへ立ち去ってしまった。
しかし、視線は感じられる。
クイーンに言われたとおり、"監督"しているのだろう。
- 290 :新たな怪人:2011/12/18(日) 04:18:24 ID:LIoRVs12O
- >>289
髪の毛が変異した蛇の尾を地面にたたきつけた反動で跳躍。
深夜の街の闇へ消えていく。
──そして、今朝の新聞に踊る見出しが一つ増える。
『黒沢小百合、戦死』
- 291 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/12/19(月) 21:19:57 ID:HnkBBDEo0
- とある喫茶店。
「んー」
新聞を片手に、喫茶店の店長はコーヒーを口にする。
「死んだァ? アイツが? おいおいおいおいおいおい」
などと言いつつも、コーヒーをテーブルに置いてハサミを構築。
構築したハサミで記事を切り抜こうと、ハサミの刃を新聞に入れる。
「アイツがねぇ。いや、人間いつか死ぬんだろうけど」
チョキチョキチョキチョキ
「しかし死体は? 葬儀はどうなってる?」
チョキチョキチョキチョキ
「んー、ちょいと千夜の方に無理矢理にでも顔出した方がいいんかねー」
チョキチョキチョキチョキチョキチョキ、チョキン。
切り抜いた記事をファイルのページに貼り、そのファイルを本棚に入れた。
「んんんんんー、俺がちょいと多重世界線次元移動にのめり込んでる間に、
巷じゃ随分と厄介なことになってるみたいだな……」
またコーヒーを口にしつつ何やら考え込む、が、
「あー、やめやめ。俺が悩むのは駄目だ。そういうのは向いてない。
いつも通り、ぶっつけ本番きたとこ勝負でいくとしよう」
- 292 :名も無き異能都市住民:2011/12/19(月) 23:29:32 ID:Z5v4fvnI0
- 「―――この街じゃあ」
街頭放送を眺めながら、男はぽつりと呟いた
「“死亡”っての程、眉唾な報道はねぇやな…」
黒沢小百合の死亡報道
知人の死亡報道に、違和感が先行する
「またぞろ、キナ臭い場所に帰って来ちまったモンだな…やれやれ」
「―――…それにしても…」
男は帽子を深く被り直して再び夜道を歩きだす
「…………あいつ、23だったのか…」
翻る赤いマフラーが夜の繁華街に紛れていった
- 293 :名も無き異能都市住民:2011/12/19(月) 23:49:25 ID:zpQ2Gl7E0
- ホテルの最上階の一室、だらりと手足を投げ出し、クラシックな椅子に腰掛けるアイリス。
メイドは夕刊を持ってきて、問題の記事を指し示した。
「…なるほど。さて、これからどうなるのかな。」
僅かに細められた瞳。小百合とアイリスは知り合い程度の付き合いだ。
その瞳に込められた感情は読み取ることはできないだろう。
遺体が無い点から、異能の1つとしてネクロマンサーがいても可笑しくはない。
また、何かの魔術的儀式に使われているのかもしれない。
千夜の中の幹部の一人だ。遺体を回収すれば使用出来なくは無いだろう。
肉体の生死にかかわらず、遅かれ早かれ波乱の様相を呈している。
やれやれ、とばかりにアイリスは紅茶を口に含むと部屋を出ていく。
- 294 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/12/20(火) 00:00:28 ID:HnkBBDEo0
- >>293
――ガッシャアアアアアアアアアアアアン!!
ホテルの窓ガラスをつきやぶり、紅い何かが突っ込んでくる。
「はい千夜ビル到ちゃー……ここどこだァアアアアアアア!?」
割れた窓から吹き込んでくる風に真紅のコートを靡かせつつ、男は夜空に向かって叫ぶ。
「あれ? 俺ちゃんと千夜ビルに向かって飛んで……ああ、また『歪み』で
この辺りの地形が変わったのか。あー、そういう、へー。……どーすっべコレ」
唖然とした表情で割れた窓を見る。
- 295 :アイリス:2011/12/20(火) 00:09:05 ID:zpQ2Gl7E0
- >>294
風圧を受け、アイリスが身に纏う黒のコートの裾が大きく翻る。
と、同時に魔眼を反射的に起動してしまうが、紅いコートを見て魔眼を閉じた。
ツギハギだらけの視界は、カラーの視界へと戻る。
「やあ。随分と変わった挨拶だね、クロス。その慌てようから察するに君も記事を見たのかな?」
真っ黒な革手袋を身につけるアイリスは夜に融けるように全身黒で統一されていた。
- 296 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/12/20(火) 00:15:25 ID:HnkBBDEo0
- >>295
「うわ生首。……違ったアイリスだった。
黒ずくめやめろよ怖ぇよ完全に闇と同化してたよステルス率100%だったよ。
もっと自己主張してくれよ気配ねーんだよお前、俺を見習え!!」
紅いコートをバーン!と主張しつつ、クロスは窓の補修にとりかかる。
補修と言っても、金属板を構築して窓の枠に打ち付け、
なんとか風が入ってこないようにする程度であるが
「あー、見た見た。記事見た。スクラップ帳に貼り付けたわ。
っつーかアイツが死ぬとかどーなってんの、と。
アイツは何を相手にしてたの、と。死体は? 葬儀は? 告別式は?
その辺りの疑問を解決しようと千夜に…
……文字通り飛んでいったんだが、建物を間違えた。
っていうか、お前こんなホテルで寝泊りしてんの? 高くね? すげーなお前」
思ったことをすぐさまベラベラと喋るクロス。
- 297 :アイリス:2011/12/20(火) 00:29:55 ID:zpQ2Gl7E0
- >>296
「僕は夜種たる吸血鬼だからね。夜闇に紛れこむなんて簡単なんだよ。
ああ、そうだ。クロス。夜は騒ぎ過ぎないようにね。最近、物騒な人間がウロウロしているようだから。」
補修作業をするクロスを、クスリと笑いながら眺めて。
胸中は相変わらず器用なものだね、と。
「現段階での情報では証拠は血液と指紋で遺体は見つかっていない。彼女は優秀な能力者である。
ここは今までどんな“事件”が起きてきたのかな?ここの性質を考えれば素直に死亡だなんて思えないね。」
このホテル?しばらく寝泊まりしているけど安いものだよ、と捕捉を加えて。
- 298 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/12/20(火) 00:46:57 ID:HnkBBDEo0
- >>297
「まぁ、そんなんだけどさー」
窓の補修が終わったのか、今度は椅子を造って(もちろん金属製)廊下に座る。
「いや、死んでないなら死んでないで、死んだなら死んだで、俺は確証が欲しいんだよ。
ただの死体でも、この街ではそれがどう使われるか分からん。
仮に死んだなら、俺はちゃんと埋葬してやりたいのさ」
膝に肘を立て、顎を載せつつ視界をアイリスに向ける。
「お前だって吸血鬼ってんなら、分かるだろ? 死体っていう『入れ物』を放置してれば、
誰がどんなことを勝手にしでかすか分からんぞ」
- 299 :アイリス:2011/12/20(火) 01:02:38 ID:zpQ2Gl7E0
- >>298
「遺体の使い道なんていくらでもあるからね。
例えば使い魔、グール、死霊術、思いつくだけでこんなにあるからね。」
蒼の双眸はクロスへと視線を返す。
クロスの瞳に宿るのは哀願か。
「君が小百合の遺体を探すのなら協力するよ。僕とて知らない仲では無いからね。
但し、僕の生活に支障がない程度にだけれどね。目立った情報があれば交換でもしようか。」
アイリスはコウモリを呼び、一瞬魔眼を開き、指先を切る。
アイリスの血を口に含んだコウモリは灰色へと変わっていき、夜の街に消えていく。
「僕が今、出来るのはこんなところかな。」
術関連ならアイリスの魔眼で切れるかもしれないが、吸血鬼になっていたらアイリスの力では無理だ。
そうして、アイリスはクロスに背を向ける。
「何かあれば、連絡を頂戴。取れる頻度は少ないかも知れないけれど。」
じゃあね、とクロスに笑みを浮かべると、再び夜の街に消えていく。
//眠気まっくすー
- 300 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/12/20(火) 01:06:38 ID:HnkBBDEo0
- >>299
「……すまん、お前のそういうところ、ありがたいわ」
闇の中に消えてゆくアイリスを見送り、クロスも椅子から立ち上がる。
「せめて安らかな永眠を、願わくばこの地獄のような世界への生還を、か。
俺もなかなかワガママだね」
ケケケと笑いつつ椅子を分解。
ホテルの廊下を歩きつつ、適当な窓を開け、
「さーて、俺も少しは動くかね。ちょうど、体も鈍ってきたころだ」
クロスは窓から飛び出し、明るい都会の夜空へと飛び出した。
// おやすみ〜
- 301 :甲/出戻り:2011/12/20(火) 21:34:46 ID:Z5v4fvnI0
- 赤いロングマフラーを首に巻いた男が街を歩く
「……確か、ここの角を曲がって……また違う」
立ち止まって辺りを見回す
見慣れていた筈の街並みが何だか変わって見えて
……何て生易しいレベルでは無かった
「やれやれ、まるで別の街だなぁこりゃ…」
しばらくぶりに歩く街は初めて歩くかのようで、正直戸惑う
「(まぁ、仕方の無い事か)」
ふぅ、と一息ついてまた再び路地を行く
各店からほんのりと警戒の色が見て取れた
【都市警備主任の不在】
束の間のこの事態を受けて善からぬ事を企てる人間も少なくは無いだろう
「(メシも落ち着いて食えんとはなぁ…)」
- 302 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/12/20(火) 23:32:29 ID:HnkBBDEo0
- 「垣根の垣根の曲がり角〜♪」
かき集めた落ち葉に、ガソリンをぶちまける。
「焚き火だ焚き火だ落ち葉焚き〜♪」
――ボウッ
公園の真ん中で火柱が立つ。
強烈な火力だが、男は臆することなく火柱の中に木材を放り込んでゆく。
「当ーたろうかー当たろうよー♪
……次の歌詞なんだっけ」
- 303 :甲/出戻り:2011/12/21(水) 21:58:17 ID:33gbWJDE0
- 【仮想空間“箱庭”】
『――ログインします――』
「ここのバージョンも……はー……」
都市部を投影したバーチャル空間にて、赤いマフラーの男は感嘆の声を漏らす
「何か、よりリアリティ増してね?スゲー……進化スゲー」
呆然と辺りを眺める事数秒
「いかんいかん」と、被りを振った
「よっし、じゃあ……始めるか」
帽子と上着を脱ぎ、付近のベンチに掛ける
今宵の目的は“運動”
「(よーい―――ドン)」
心でそう呟くと
誰も居ない仮想空間の都市を勢い良く走り出していった
- 304 :白月 月夜:2011/12/21(水) 22:08:16 ID:o/O1NeGs0
- 【箱庭にて】
「頭がこんがらがるー……」
仰向けで大の字になって寝っころがっていた月夜は、頭を右手で押さえながらつぶやいた。
彼女の周囲には神々しく光っている光の剣が四本ほどふよふよ浮いている。
「実戦レベルで使うにはまだまだだー……」
どうやら剣の扱いの練習をしていたようだ
- 305 :甲/出戻り:2011/12/21(水) 22:21:18 ID:33gbWJDE0
- 走る男の左眼に緑色の螺旋模様が浮かぶ
「“螺旋眼”起動、出力30%を維持」
――キィイイイ……
螺旋模様は甲高い音と共に廻りだす
「設定変更―――ランダム狙撃」
タンッ―――タタンッ!!!
突如周囲より聞こえる発砲音、広角からの狙撃が始まる
「――――ふッ」
流れる様な動きでそれを回避すると、速度を落とさずに駆け抜けて行った
>>304
一旦、狙撃が停止する
「(―――いい感じだ、もう少しレベルを上げて……って)」
駆ける進行方向に大の字で寝転がる月夜を見付けて
「ちょ、ちょちょちょ!!―――うわぁあっと!!?」
飛び越える
ズッシャァアアアアア……!!!
しかし、ノーマークだったイレギュラー回避にバランスを崩して、不自然な態勢でずっこけたのであった
- 306 :白月 月夜:2011/12/21(水) 22:33:37 ID:o/O1NeGs0
- >>305
「うおう!?」
突然頭上を駆け抜けていった男を見て、月夜は素っ頓狂な声をあげる。
体を起こし、着地に失敗したのだろう、変な体勢で倒れている男を見つける。
「だ、大丈夫ですかー?」
月夜は男に近づくと心配そうな声でそう呼びかけた。
- 307 :甲/出戻り:2011/12/21(水) 22:39:40 ID:33gbWJDE0
- >>306
「……だ、大丈夫……だ」
倒れたままの姿勢から声だけが届く
むぅ、と唸ると身体を起こしていく
「メガネが無ければ…危ないところだった…」
よく意味のわからない言葉を呟くと埃を払いつつ立ち上がった
「お、それよりそっちは大丈夫か?どっかぶつけてねぇ?」
振り返る顔には
ぼたぼたぼた
鼻血がしとどに溢れていた……
- 308 :甲/出戻り:2011/12/21(水) 22:41:11 ID:33gbWJDE0
- 「ageとくか」
- 309 :白月 月夜:2011/12/21(水) 22:53:53 ID:o/O1NeGs0
- >>307
「ど、どう見たって大丈夫じゃいりませんよ! 止血止血!」
月夜は慌てた様子で腰のポーチから何枚かティッシュを取り出し、男に渡す。
電脳空間なので直接本体にダメージがいかないということは忘れているらしい。
- 310 :甲/出戻り:2011/12/21(水) 22:59:24 ID:33gbWJDE0
- >>309
「……んむ?こりゃ失敬……」
ティッシュを鼻に詰め詰め、首の後ろを摩ったりしてる
「ありがとう」
ふー……と、落ち着いたのか一息ついて
「いや、騒がせて悪かった。
何かしてたっぽい様子だったけど、邪魔したみてーだな」
先ほどの光る剣が目に入っていたらしい
ゴメンゴメン、と苦笑した
- 311 :白月 月夜:2011/12/21(水) 23:09:39 ID:o/O1NeGs0
- >>310
「いえいえー、こっちこそ何か邪魔しちゃったっぽくてすいません」
こちらもその顔に苦笑を浮かべ答える。
「そういえば、そちらは何をしてたんですか?発砲音みたいなのが聞こえましたけど……」
- 312 :甲/出戻り:2011/12/21(水) 23:17:12 ID:33gbWJDE0
- >>311
「なに、公共の場で注意を怠った俺が……
…ってこのままじゃ謝り合いで時間が過ぎそうだ止めとこう」
ポリポリ、と頭を掻いて
「ん?あぁ、俺?運動と……能力の調整かな」
鼻に詰めたティッシュを抜く、血は既に止まったようだ
「全開で身体を動かせる場って割と少なくてさ、こうして仮想空間のお世話になってたワケ」
煌びやかでリアルだが、無人の街――仮想空間都市――を指さして
「そういうおたくは?何をしに?」
- 313 :白月 月夜:2011/12/21(水) 23:23:13 ID:o/O1NeGs0
- >>312
「んー、一番合いそうなのは特訓、ですかね」
月夜は少し首を傾げながら答える。
「街中でうまく使えるかもわからない力をブンブン振り回すのは
いくら何でも危険すぎますし、同じく仮想空間のお世話になってたって訳です」
- 314 :甲/出戻り:2011/12/21(水) 23:30:40 ID:33gbWJDE0
- >>313
「特訓、か。良い響きだねぇ」
まぁ、目的は似た様なモンか、とカラカラと笑った
「何に対する特訓だい?」
興味を惹かれたのか、質問を続ける
「単純に強さへの探求か、はたまた倒したい相手でも居るのか……
……あぁ、スマン、答え辛かったら別に返答しなくても良い。
ちょっとした世間話程度の興味だから」
- 315 :白月 月夜:2011/12/21(水) 23:41:15 ID:o/O1NeGs0
- >>314
「目的を果たすためではあるんですけど……多分入れ替わってますね、目的と手段とが」
少女は少し照れくさそうに笑いながら、
「まあ、今ではただ単に強さを求めてるだけですよ」
あくまで笑みは崩さずに、月夜は言う
- 316 :甲/出戻り:2011/12/21(水) 23:48:39 ID:33gbWJDE0
- >>315
「ふぅん?」
ふんわりした返答に首を傾げてみるが
少女の照れ笑いを見て、まぁ良いか、とこちらも笑う
ちょっと気になった“目的”への質問は控えておく事にした
「さっきの光る剣?みたいなんがおたくの能力《チカラ》かい?」
- 317 :白月 月夜:2011/12/22(木) 00:03:11 ID:o/O1NeGs0
- 「そうだけど違うというか……私の能力は別なんですよ」
月夜はおもむろに片手をあげると、呟く。
「『上がれ』」
瞬間、月夜の体がふわりと浮く。
「まあ、こんな感じで私の能力は『流れを見る、操る』ことです。
いまのは自分を上に流れさせる……いや多分そんな表現ないと思いますけど、まあそうして浮かんだって訳です。
これも同じ原理なんですけど、同時に複数扱うのはどうも難しくて……」
月夜は光の剣を指さして言う
- 318 :甲/出戻り:2011/12/22(木) 00:11:54 ID:33gbWJDE0
- >>317
「……おぉ」
突如として目線より上がった少女の身体に口から漏れる感嘆の呟き
「流れ、かぁ……うーむ、イマイチ言葉を取ってみてもピンと来るものでは無いけど
……なるほど、そういう風に色んな物の流れ――動き、みたいなモノを使役出来る能力っつーなら
いや、スゲーなそれ、超便利そう」
浮き上がった少女に賞賛の言葉を向けた
「ただ、それだけに扱うのは難しそうだなぁ、神経すっごい使いそう」
- 319 :白月 月夜:2011/12/22(木) 00:25:11 ID:o/O1NeGs0
- >>318
「残念なことにその通りなんですよねー……」
月夜は一つため息をついて、
「ま、だからこうやって練習してたってわけです。
実戦でちゃんと使えるようになれば便利ですしね」
そして能力を解除し、ストンと着地すると、
「そういえば運動って言ってましたけどなんかすっかり立ち話に耽っちゃってましたね」
と、思い出したように言った
- 320 :甲/出戻り:2011/12/22(木) 00:40:53 ID:33gbWJDE0
- >>319
「ん?あぁ、まー良いさ良い物見せて貰ったし、有意義な時間だったよ」
さて、そろそろ時間か、と腕時計を確認した
「んーむ、能力を見せてもらいっぱなし……ってのもフェアじゃあねぇよな」
と、言うと掛けていたメガネを外す
一瞬まぶたを閉じて、開く、先程まで黒一色であった左眼に緑色の螺旋模様が浮かんでいた
「俺はいわゆる“邪気眼使い”ってヤツでさ。
眼の名前は『螺旋眼』――――触れたモノを、廻す能力《チカラ》を持っている」
そう言って手のひらを翳すと、その上に小さな竜巻が現れた
「まぁ、こうやって風を回したり色々廻したり出来るってわけ」
メガネをかけ直すと螺旋模様は消える
それと同時に竜巻もふわりと周囲の風景に流れて消えた
- 321 :白月 月夜:2011/12/22(木) 00:47:26 ID:o/O1NeGs0
- >>320
「おおー……すごい……」
月夜は感心した様子で竜巻を眺める。
「じゃあ、私はそろそろ出るとしますよ。
今日はありがとうございました。えーと……」
そこまで言って、月夜は互いに自己紹介をしていなかったと気付く。
「すいません、自己紹介がまだでしたね、私は月夜、白月 月夜(しらづき つくよ)です。」
にっこりとほほ笑みながらいうと、男に向かって手を差し出す。
- 322 :甲/出戻り:2011/12/22(木) 00:53:09 ID:33gbWJDE0
- >>321
「……」
ややドヤ感が強かった事に若干の羞恥心を覚えつつ
「甲(カブト)だ、まぁ縁があればまた会おう」
ニッと笑って握手に答えた
「んじゃ」
手を離すと踵を返す
『――ログアウトします――』
電子ガイダンスの後、甲の身体は電脳の世界に掻き消えて行った
//絡み、ありあとやしたー
- 323 :白月 月夜:2011/12/22(木) 01:16:50 ID:o/O1NeGs0
- 「――……ふう」
電脳世界から帰ってきた月夜は、人気のない通りを見回す。
「……眠くないー」
かえって寝ようかと思ったが、妙に目がさえている今の状態では寝ようとしても寝られないという
地獄の時間が続くだろうと判断した月夜は、あたりをしばらく散歩することに決めた。
「昨日はそのせいでちょーっとトラブルに出くわしたけど、……まあ今回は大丈夫でしょ」
フラグとしか聞こえない発言である。
- 324 :ディス ◆My6NsjkSfM:2011/12/22(木) 01:22:55 ID:WVrfsEdY0
- 「うわー!こ、降参!降参する!」
【人通りがありそうなところから男性の声が聴こえる】
「もうわるいことしない?やくそくしてほしいの」
【もうひとつは聞き覚えのある少女の声だ】
「わ、わかったよ〜。警察にも行く!自首、するから!」
【かなり必死な声で言っていることを見ると、男性のほうが何かをやらかしたようである】
- 325 :白月 月夜:2011/12/22(木) 01:31:39 ID:o/O1NeGs0
- >>324
「……ん?今の声……」
一つは男の声。もう一つは昨日出会った少女、ディスのものだろう。
「……何やってるんだろ、いってみるか」
ディスは能力者なのでトラブルに巻き込まれても大丈夫だとは思うが、万が一ということもありうる。
月夜は足を音のした方向へ向けると、
「――ふっ!」
思い切り飛び上がった。
能力を使い、自身の体を空中で動かしながらディスの姿を探すと、それはすぐに見つかった。
見間違えようもない、特徴的な包帯が、その子がディスであることを教えてくれた。
「ディスさーん!」
月夜はそう呼びかけ、その後ろに着地する。
- 326 :ディス ◆My6NsjkSfM:2011/12/22(木) 01:36:08 ID:WVrfsEdY0
- >>325
「あう、『つくよ』またあったねなの〜。
わるいひとをみたからつかまえたところだったの。」
【ディスは笑いながら月夜に声をかけた】
「ううう…やりやすくなるかと思ったのに…」
【なんとその男はディスの体から蛇のように伸びた包帯にぐるぐる巻きにされていた】
【手には高級そうなカバンがある。ひったくり犯なのだろう】
- 327 :白月 月夜:2011/12/22(木) 01:44:45 ID:o/O1NeGs0
- >>326
「おおう、ぐーるぐるー……」
月夜は包帯に少なからずびっくりしながらも、それが彼女の能力なのだろうと結論付ける。
そしてひったくり犯の方へ向くと、
「全く、ひったくりとか狡いことしてんじゃねーですよー?
大体危険対利益がかみ合わないでしょ、絶対」
突っ込むところはそこではないのだが。
「それにしてもお手柄ですね、ディスさん。
もしかしたらお礼に何かもらえるかもしれませんよー?」
そういって、冗談だとわかるようにわざとらしく卑しい感じの笑いを浮かべる。
- 328 :ディス ◆My6NsjkSfM:2011/12/22(木) 01:51:44 ID:WVrfsEdY0
- >>327
「あう〜。なんかうれしいなの〜。
あ、とりあえずこのひとはおくっておかないとなの〜」
男性「うう…やっぱり自警してる人もいるのか…」
【そう言ってディスはひったくり犯を近くに居た警官に引渡しに行く】
「かばんは、あとでおかえしするからなの〜」
【そう言ってるうちにひったくられたと思われる女性が現れた】
女性「ありがとう!あなたのおかげよ!
本のお礼だけど…コレくらいで」
【そう言って女性は1万円札…と、飴玉を3つくらい受け取った】
「あう〜!ありがとうなの〜!」
【ディスは満面の笑みで女性に返す。とても嬉しそうである。】
「ほんとうにおれいもらえたの〜。」
- 329 :白月 月夜:2011/12/22(木) 02:03:01 ID:o/O1NeGs0
- >>328
月夜は二人のやり取りをほほ笑みながら眺める。
こういうのはみているだけで心が温まってくるから不思議だ。
「そういえばディスさんってここの自警でもやってるんですか?」
ふとした疑問を口にするが、昨日ディスが言っていた『ロザリア』のことはあえて出さないでおいた。
単なる能力者の自警団が排他的な組織だとはとても思えなかったし、あまり首を突っ込むと面倒なことになるのは必至だというのは身を持って
何回も経験済みだからだ。
- 330 :ディス ◆My6NsjkSfM:2011/12/22(木) 02:11:03 ID:WVrfsEdY0
- >>329
「あうー、そんなつもりはなかったんだけど…
なんかきゅうにわるいことしようとするひとがふえたようなきがしてなの…」
【軽く不満気な顔になっている】
「だからあんしんしておそとあるけないの。
わるいひとはつかまえないとだからなの」
【どうやら自信がありそうだ。彼女の能力的には捕縛が向いているのだろう】
- 331 :白月 月夜:2011/12/22(木) 02:19:16 ID:o/O1NeGs0
- >>330
(犯罪者が増える……そういえば昨日の人もなんかいってた……
一人やられただけでこの様、とか何とか……)
「どうにも、めんどくさい時期にこの街に来ちゃったみたいだなあ……」
月夜は独り言のように呟く。
この街に来たばかりの月夜には何が起きて、何が起きようとしているのかはわからないが、これだけは分かった。
この街はもうすぐ荒れる。なにかよくないことが起こる。
「でもまあ、今から気にしてても仕方ない。ディスさんはこれからどうするんですか?」
気を取り直して、月夜はディスにそう問いかけた。
- 332 :ディス ◆My6NsjkSfM:2011/12/22(木) 02:24:01 ID:WVrfsEdY0
- >>331
「うーん、でもたぶん、またおさまるの。
だからだいじょぶだからなの〜」
【軽く笑いながら言ってくる。あまり気にしてなさそうである】
「あう〜。これからなの?
もうおそいからおうちにかえったほうがいいかなっておもってたんだけどなの…
おそともだんだんあぶなくなってくるしなの…」
【と言いつつもディスは怖がる感じではない。】
- 333 :白月 月夜:2011/12/22(木) 02:29:52 ID:o/O1NeGs0
- >>332
「じゃあ私もホテルに戻りますよ。そろそろ眠くなってきた……あふ」
小さく欠伸をして、ディスに別れを告げる。
「帰りの道中……ってすぐそこか、まあお気をつけて、さようならー」
そうして月夜は踵を返し、立ち去って行った。
//絡みありがとうございましたー!またの機会!
- 334 :ディス ◆My6NsjkSfM:2011/12/22(木) 02:31:28 ID:WVrfsEdY0
- >>333
「うん、ねむいときはねたほうがいいなの〜。
またあおうねなの〜!」
【ディスは微笑みながら手を振って見送っていった】
「うーん、はやくおさまったらいいのになの…」
【少し困った顔をしながら、ディスも家への道に向かっていった】
//こちらこそありがとうございましたー。
- 335 :神羽 鏡子:2011/12/22(木) 22:31:54 ID:4bT0C4OA0
- 「……おっかしいわねぇ」
かつ、かつ、かつ、
大通りのアスファルトを、パンプスのヒールが叩く音。
その音を発する主たる白衣の女は、きょろきょろと辺りを見渡していた。
「クリスマスシーズンで忙しくなるってのは解ってるけど。
帰ってこないなんてねぇ、今日、せっかくすき焼きなのに」
手に下げた買い物袋、がさがさと。中身はえのき。
足りなくなった夕餉の具材を買い足しに、この時間に出歩いていると見える。
いつもならただの水炊きでも御裾分けにありつきに来やがるってのに。そんな独り言を述べながら。
「…………最近、千夜の治安維持のおエラいさんがくたばったって聞いたけど……
そのせいで、治安が悪くなってるから……って、まっさかねー!
腐っても幻想種だもんねー! そーんなに簡単に、」
……くたばったりはしないわよね。
最後に付け足された言葉は、吐き出された白い吐息と相まって、少しだけ弱弱しかった。
――――そういえば、あの魔女も、夕方に出てって。……。
なんとなく見上げた先に在ったクリスマスツリー、てっぺんの星は、のんきにちかちか瞬いている――
- 336 :甲/出戻り:2011/12/22(木) 22:40:16 ID:n1Ndck/E0
- >>335
「む?」
ベンチに座って缶コーヒー(80円)を嗜む赤いマフラーの男
「……あれは」
クリスマスのイルミネーションに照らされた個所に
見知った顔を見付けた様で
「……」
とりあえずじーっと見る
- 337 :神羽 鏡子:2011/12/22(木) 22:49:30 ID:4bT0C4OA0
- >>336
「……いやいやいやいや、ないないない。
いくら今がヒキニートだからってそんな、ん、んんー、
だってホラスペック的にはチートな野郎共だし、だいじょぶジョブズ……」
口走っていることはあんまりだいじょぶジョブズではなかったりする。
甲の視線に気付くことなく、多少ぎくしゃくした足取りで歩みを再開する。
……の、だが。
ぽろんぽろんぽろんぽろんぽろんぽろんぽろん
――――買い物袋から、零れ落ちる、えのき。
それはどういうわけだか一本ずつ丁寧に、彼女が歩いた後の道に舞い落ちてゆく。
やがてそれは、細い細い一本の線を描きだした。
――――月光に照らされ、白く輝く、えのき。
暗い森から光る石を辿って家に帰る童話よろしくえのきを追って彼女を尾行するも、
おっこちてるえのきを拾い集めて彼女を呼び止めるも。甲の自由である。
- 338 :甲/出戻り:2011/12/22(木) 22:57:41 ID:n1Ndck/E0
- >>337
「(ファンタステイック!?)」
えのきで幻想感を出すとか、コイツ…出来る…!
とか何とか思いつつも
スッ
鏡子の憂いを知らない甲は「面白そうだ」と立ち上がる
「…」
ひょいひょいひょいひょいひょいひょ(ry
取りあえずその一本一本をこまめに拾いつつ追いかける
その行軍はさながら一昔前のRPGの様で
ここに奇妙なパーティーが誕生した
- 339 :神羽 鏡子:2011/12/22(木) 23:07:02 ID:4bT0C4OA0
- >>338
純白えのきロードを辿って、ちょっとキングクリムゾンすれば、
彼女の姓が看板に書かれているボロっちいアパートの前に辿り着く。
「だいじょぶジョブズ、だいじょぶジョブズ……」
その、あんまり面白くもない言葉を繰り返しながら。
ついに彼女は、最後まで甲に気付くことなく、アパートの敷地の向こうへ足を運ぼうとした。
――――その瞬間、風が、吹く――
――――――運ばれてきたのは、濃厚な――
――――――すき焼きの芳香。
「…………あれっやだっ、袋破れてんじゃん!」
……ここで気付く。慌てた様子で振り返り――赤いマフラーを視界に収めて、彼女は眼を丸くした。
この機に乗じてすき焼きをたかるという策が、甲の前に、生まれた瞬間だった。
- 340 :甲/出戻り:2011/12/22(木) 23:15:59 ID:n1Ndck/E0
- >>339
「つーかさ、お前、えのき買い過ぎじゃね?」
両手にひと抱えのえのきを手に、第一声を発する
キングクリムゾン中にも当然えのきは拾っていた訳で
袋の中身はほぼ全て甲の手中にあった
「なに?最近ここいらで流行ってんの、えのき健康法」
何て益体も無い事を尋ねながら
「ん?」
漂う匂いに鼻をスンスン動かす
「おぉ、今夜はすき焼きかぁ……」
なるほどなるほど、と頷きながら『神羽荘』の敷地に足を向ける
「あ、それと久しぶり、元気してたか?」
なんて取ってつけた様に挨拶して
- 341 :神羽 鏡子:2011/12/22(木) 23:23:29 ID:4bT0C4OA0
- >>340
「……いいじゃん、えのき美味しいんだから。
しゃきしゃきっとした食感でお腹にも溜まって、お肉が少なくてもごまかせr……エフンエフンッ
久しぶりね、すき焼き食べに帰ってきたの?」
へらりと笑って冗談を飛ばす、いつもの彼女。
しかし今は少しだけ、元気がないようにも見える。
神羽家の大黒柱を長年続けてきただけあって、ごまかし方は上手くなってはいるけれど。
えのきを袋に戻しながら、上がっていいよ、と声をかける。
案内されるままにアパートの一階を歩いていけば、居間のコタツの上で煮える鍋と、
それを囲む二人の少女が待っているだろう。
- 342 :甲/出戻り:2011/12/22(木) 23:36:38 ID:n1Ndck/E0
- >>341
「いや、お前ん家のすき焼き初めて食うけどな?」
それ目当てに帰ってくる思い出ねえよ、と軽口に軽口で返して
「お邪魔します」と、後に続く
「ここも相変わらずだな、リフォームとかしねぇのかよ?」
楽しそうに笑う甲、その巧妙に誤魔化された鏡子の異変には気づく由もない
「あ、そうそうここに間借りしてたあいつ等二人も元気にやってるぜ?宜しく言っといてくれってさ」
ただ、
「ちーす、久しぶりー……おりょ?今日はあの羽根付き達は一緒じゃねーの?」
かつて見た『神羽荘』の団らんにふと、駆けている部分を見付けて
何気なく尋ねてみた
- 343 :甲/出戻り:2011/12/22(木) 23:37:44 ID:n1Ndck/E0
- >>342
//×駆けている
//○欠けている
- 344 :神羽 鏡子:2011/12/22(木) 23:45:57 ID:4bT0C4OA0
- >>342
「じゃあ、何目当てに帰ってきたのかしら?」
きしきし。歩くたびにかすかな軋み音を立てる木造アパートは、
なんとなく懐かしいと思わせるような雰囲気を持っている。
「だってめんどくさいんだもん!」と、笑って返す頃には、憂いの色はきれいさっぱり消し飛んでいた。
「わ、ひっさしぶりに見たその赤マフラー。ひっさしぶりーお兄ちゃん。
羽付きと魔女(笑)はどっか行ってるよ、サンタ狩りとかやってるんじゃないかな?」
コタツに足を突っ込んで、天板に顎を乗っけたまま。
黒髪の少女・小夜が、ゆるりと手を振った。
- 345 :甲/出戻り:2011/12/22(木) 23:54:43 ID:n1Ndck/E0
- >>344
「おう、久しく見なくても相変わらずまだちっこいな、小夜。犬っ子も元気かよ?」
キシシ、と笑いながらジャケットと帽子を取る
ここは暖けーな、とコタツに侵入していく
「そうか……引きこもりのくせに変な時だけ行動的な奴らだな……いや、この時期だからか?」
リア充逃げて、と心の中で祈りながら鍋を眺める
「はぁ〜……久しく味わって無いこの家庭の感じ…良いねぇ…」
しみじみ和む
コタツは心を溶かす魔性のアイテムやで…
- 346 :神羽 鏡子:2011/12/23(金) 00:02:38 ID:4bT0C4OA0
- >>345
「……そのうちおっきくなるから!」
サザエさん時空にとらわれて早数年、成長はするんだろうかこいつ。
犬っ子こと狼少女姉・イメルは、肉をふぉっふふぉっふしながら片手を上げた。超元気。
「はい、ご飯とお椀と、卵。内側からもあったまりなさい。
そうなのよねー、いっつも部屋で煽りスレ釣りスレばっかり立ててるくせに」
遅れて、台所から現れた鏡子が、甲の前に品を置く。
自身もコタツに入って、はーっとひとつ、大きく溜息をついた。
「治安、悪くなってるってのにねぇ……さっさと帰ってくればいいのに」
ちらっと向けた視線の先、新聞の一面を飾る不穏なニュース。
治安維持部門の責任者、黒沢小百合氏死亡の文字。少し気分が翳ったので、すぐに視線を外した。
- 347 :甲/出戻り:2011/12/23(金) 00:14:58 ID:n1Ndck/E0
- >>346
「あ、てめ!ゴング前に肉フラゲだと…!?
――っていうか肉しか食ってねえ!?ふざけんなえのき食え!」
イメルのお椀に良く火の通ったえのきを投入していき
「ありがたく頂戴します…!」
やってきたご飯と諸々をうやうやしく受け取った
鍋をつつく
「ま、あいつ等ならさ、滅多な事じゃどーにかならんだろうよ
俺、前に一回あの天使に丸焦げにされた事あんだぜ?」
笑い事じゃ無いっぽい事をカラカラと笑い飛ばし
やや心配の籠った声に、白菜をはふはふしながら返答する
「(……ま)」
鏡子の向けた視線の先
新聞の記事を甲も見る
「(……滅多な事が、普通に起こるのがこの都市、なんだがな)」
- 348 :神羽 鏡子:2011/12/23(金) 00:23:18 ID:4bT0C4OA0
- >>347
「ふぉご!? ひゃだ!! やだやだえのきやだ!!
飽きたんだ、鍋いっぱいのえのきにはもう――――」
二回目の飽きたをイメルが口にする前に、しゅるん。
どこからともなく触手が伸びて来て、彼女の口を塞いだ。
小夜は何も言わずに俯いたまま。……このすき焼きは一体……!?
「まるこげ……だと? ……んー、まあそうよね。
腐っても天使様と魔女っ子なんだから、死にゃあしないでしょ」
鏡子もまた、自分のお椀にえのきとえのきとえのき、トッピングにえのきを盛りつけて。
再びちらりと見てしまった「死亡」の文字――、……何も言わないまま、嚥下した。
死は、誰の元にも平等に訪れる。
理解はしているのだけど――――
「ってか、この黒沢? って人、一時かぶたんの上司じゃなかったっけ?」
――――受け入れるのは、むずかしい。
仏壇代わりに作った、写真の前に立てかけただけの十字架が、鈍く輝いた。
- 349 :甲/出戻り:2011/12/23(金) 00:34:53 ID:n1Ndck/E0
- >>348
「(あ、あの蟲っ子も居たんだ……)」
『鍋いっぱいのえのき』
それを聞いた時、俺は神羽家の食事事情に深くは突っ込むまい、と思ったんだ―――
「あぁ、黒沢なァ……縁は、浅からずあったよ。
ヤバめの仕事も結構一緒にこなしたモンさ」
なんとなく会話の流れで、思い出して、懐かしむ
けして良い思い出ばかりじゃあ無いけれど
それでも、ちょっとだけ箸を止めて黙ってしまう
「……悪ぃ」
と、短く呟いて苦笑すると再び湯気の立つ鍋に手を伸ばす
その時
甲の巻いている赤いマフラーに紛れていたのか
ふわり
食卓に、僅かに朱に染まった一枚の羽根が落ちた
- 350 :神羽 鏡子:2011/12/23(金) 00:47:38 ID:4bT0C4OA0
- >>349
「……っと、こちらこそ、ごめんね」
重くなり過ぎないように、努めて苦笑交じりに。
お椀の中身を消費して、平静を装ってみた、けれど、
「――――――っ、」
薄汚れた白い一片。鏡子がそれを視認して目を見開き、
次いで彼女の異変に気付いたイメルが視線を追い、箸を止める。
最後に、だるそうに俯いていた小夜が二人の視線の先を見て、息を呑んだ。
「……かぶたん、いろいろ忙しくなりそうね。
そっちも頑張って、良い年末、過ごしてね」
――そんな、唐突な話題の転換。
意図的に触れないようにするのは、心地よい温度を保とうとするため。
せめて、この鍋のぬくもりが完全に冷めてしまうまでは、あたたかな幸せに浸っていよう。
彼女はそんなことを考えながら、――――笑って見せた。
//ねねねね眠気がMAX……! 微妙なところだけど、ここら辺で〆させてください
//久しぶりの絡みありがとうございました、楽しかった!
- 351 :甲/出戻り:2011/12/23(金) 00:58:31 ID:n1Ndck/E0
- >>350
―――空気が変わった
「……」
息を呑む二人の少女と、凄惨に笑う眼の前の鏡子
それらをもたらした物は、三様の視線を集めた『朱色の羽根』
今までの話が歪に噛み合い
第三者である所の甲にも“これ”の持つ意図は伝わった
歯車のずれた食卓で甲は
それ以上言葉は継げず、ただじっと鏡子の眼を見ていた
あと、部屋を貸して欲しいっていう交渉をしに来たのをすっかり忘れていた―――
//オス、お休みよー
//この関係のロール興味深いから良ければまた絡ましてくだしあ
- 352 :白月 月夜:2011/12/23(金) 22:21:21 ID:o/O1NeGs0
- 「クリスマス何それおいしいの、っと」
すっかりクリスマス一色となった異能都市を見て、月夜はぼっちの定型句を呟く。
独りで旅をしている時に、入った街が偶然祭りだったりすると、どうしようもない寂しさに襲われる。
「いっそのことこの街に住み着いちゃうかなぁ……でも確かあの子この街こないんだよなあ……」
独りでぶつぶつと呟くその姿はいかにも寂しげだ。
- 353 :名も無き異能都市住民:2011/12/23(金) 22:52:57 ID:oB5LASG.0
- 「……いい景色だね」
向かい側から歩いてくる人間。
時期も時期、街には他に大勢の人間が居るが、この人物は一際周囲の目を惹くことだろう。
髪や肌が白く、クリスマス一色に染まった周囲に惹かれて忙しなく動く瞳は紅い。アルビノだ。
「……しかし、寒いなぁ。僕も早く用事を済まさないと」
右手には食糧店の袋を下げて、逆の手でメモを見る。
買い物の途中であることは容易に知れるだろう。
- 354 :白月 月夜:2011/12/23(金) 23:06:07 ID:o/O1NeGs0
- >>353
「……」
この状況でいい景色だとかぬかすなんていい度胸してんじゃねーかテメー
さてはお前もリア充かコンチクショーと向こう側から歩いてくる男にガンをとばしてみる
「……はぁ」
が、やればやるほど自分が負け組であることを強調してしまうことに気づきすぐにやめる。
//遅れましたすいません
- 355 :名も無き異能都市住民:2011/12/23(金) 23:10:58 ID:oB5LASG.0
- >>354
「……ん」
目が合ってしまった。
不幸にもガンを飛ばしている最中に。
「何かな、あまりいい気分はしないんだけど」
- 356 :白月 月夜:2011/12/23(金) 23:18:51 ID:o/O1NeGs0
- >>355
「負け犬の遠吠えみたいなモンです、敵意はないんで気にしないでください」
それでも若干不機嫌そうに答える。
- 357 :名も無き異能都市住民:2011/12/23(金) 23:35:59 ID:oB5LASG.0
- >>356
「ん……まぁ、良いんだけど……」
何処か釈然としない表情を浮かべ、首を捻る。
「あ、所で。ケーキ用のお酒探してるんだけど……売ってるところ、知らないかな?」
メモとそちらの顔を交互に見ながら。
- 358 :白月 月夜:2011/12/23(金) 23:42:09 ID:o/O1NeGs0
- >>357
「私が泊まってるホテルが今そういうのたくさん売り出してるっぽいんで探せばきっとありますよ」
月夜は後ろを指さして、
「ほら、あそこです、あのでっかい建物」
- 359 :名も無き異能都市住民:2011/12/23(金) 23:48:26 ID:oB5LASG.0
- >>358
「ありがとう、後で行ってみるよ」
指した先を眺める、
次に視線を月夜に戻すと軽く笑んで。
「ホテルに泊まってるって言う事は旅行か何か?
僕もまだ此処に来て間もないんだけど、ここって飽きなくて面白いよね」
- 360 :白月 月夜:2011/12/23(金) 23:56:40 ID:o/O1NeGs0
- >>359
「それには同意ですねー」
話しているうちに調子が戻ったらしく、少し間延びした感じの話し方で答える。
「あ、因みに旅行ではないですよ。旅を楽しんでるのは確かですけど。
具体的に言えば人探しです」
- 361 :名も無き異能都市住民:2011/12/24(土) 00:06:34 ID:oB5LASG.0
- >>360
「後、力試しっていうのかな……。
僕はその為に来たんだけどさ、強くなるには色々いい場所だよね」
涼しげな顔でそう喋る。
燃え上る様な血を写した真紅の瞳が、どこか寂しげに事を語る。
「人探しって言うと?
手伝えそうなら、手伝うよ? どうせ暇だし」
- 362 :白月 月夜:2011/12/24(土) 00:24:02 ID:o/O1NeGs0
- >>361
「いえ、世界のどこにいるかも正直言ってわかりませんし、
見つけるのは半ば諦めてるんでいいですよ」
月夜は男の提案をやんわりと断る。
あったばかりの人にそんなことを頼むのは気が引けるし、
それに、特徴を伝えて例え見つけたとしても恐らくそれが探し人だとわからないだろうという
確信のようなものが月夜にはあったのだ。
- 363 :名も無き異能都市住民:2011/12/24(土) 00:32:26 ID:oB5LASG.0
- >>362
「……難しそうだね」
こちらの提案を断る姿。
諦めの姿を言葉通りに色濃く感じ、小さくため息をついた。
「その人、見つかるといいね。祈ってるよ。
まぁ、断られちゃったけど、困ったことがあったら手伝うよ。それじゃ」
そろそろ帰らないとね。と続け月夜の隣を抜けている。
メモを持った手を掲げて振ると、背中を向けたまま去って行った。
- 364 :九段坂桐子:2011/12/25(日) 01:46:52 ID:QDKqXtkIO
- 「宗教的なイベントを行っているにも関わらず、その大半は信者でも何でもない人、というのは相当な矛盾だと思うのさ」
都市は輝く。
普段から眠る事のない街並みは、今この時においてその特性を過剰に引き上げている。溢れんばかりの人波は、決して途切れる事がない。
赤と緑に彩られ、光に飾られた景色は見目麗しく、老若男女問わず人々を享楽へと誘っていく。
無論、雑踏の中で呟かれた独り言など、刹那を経る事なく雑音として消えていった。意味もなく告げた言葉は、自身の内すら響かない。
「そこの神様は基本的に排他的で、同位存在を認めない狭心者。なのにそんな悪魔を信仰してる連中にすら祝われるというのは、いったいどんな気分なんだろうね」
女の吐く言葉は、聴かせるつもりがあるのかさえ解らなかった。通りに面する人々はそれこそ無数にいるが、その総てが眼前を立ち止まることなく通り過ぎていく。
たとえ一度振り返ったところで、次の瞬間には雑踏の中だ。女の言葉は、誰にも届かない。
簡易卓に頬杖をつき、喧騒を眺めながら、女は一つ息を吐いた。
「まあぶっちゃけた所を言えば、今起こっているのは宗教論争じゃなく、商売戦争なんだけどさ。好機に乗じて緩くなった財布から金をもぎ取る作業だよ。まさか神の子も、自分の生誕がこんな事に使われるとは思ってなかっただろうさ。ところでそこの御両人、少し君達の行く末を聞いていかないかい?」
通りすがる一組の男女。不思議に通った言葉に、立ち止まる。
都市の夜は、未だ明ける事はない。
- 365 :ラルフ=ハインケルン:2011/12/26(月) 22:22:45 ID:xm/dFKGs0
- ラルフ=ハインケルンが解決した爆破事件の現場近くの公園。
そこに大型のバイクに乗って向かっている男がいた。
ファー付きのブラウンジャケットに身を包み、ヘルメットを被っている。
乗っているバイクの音は少々五月蝿い為結構目立っている。
「えーと、確かこの辺だったと思うんだが……」
俺は最初のアンサングの襲撃の後にエイジから爆破事件の犯人がいると思われる場所を聞いていた。
エイジの言によればこの当たりに住んでいるらしいのだが…。
あの姿のままなら相当目立つ…さて、どこにいるのやらな。
- 366 :ミラージュ:2011/12/26(月) 22:29:26 ID:oB5LASG.0
- 「……寒いな」
あれから、一か月を越えただろうか。
住処から離反宣言をし、自ら飛び出した以上、少女に住処と呼べるものは無く。
詳細な時間など解らずに、陽の傾きで大よその時間を割り出しては思う毎日。
割り出したは良いものの、だからと言ってすることは無く、今日もいつも通りだった。
最早、これが何日目か数えるのも億劫になったのだ。
なら何故、そう思ったのかと言うと、
それは世間一般が聖夜と言うものに浮かれていたからであろう。
色を付けて飾り立てられた街中を見ると去年までの10年余りの年月が思い出されて頭にくる。
(去年まで、私は深層意識の奥だったのか)
と、思うこともあった、今では最早この身体は私一人の物、
もう絶対に返すことは無いぞ、この手で締め上げて陥れて「にゃあ」
「……可愛いな、お前は」
膝上の猫は、暖かい。
- 367 :ラルフ=ハインケルン:2011/12/26(月) 22:36:02 ID:xm/dFKGs0
- >>366
「HAGEる前にー、貴方を抜きたいー…っと」
その少女の前をかつてヤリ合った男が通る。
なにやら人を探しているようだが、見つからないらしい。
鼻歌を歌いながら探しているが、表情はクエスチョンが浮かんでいる。
手には地図のようなメモ書き。
「おかしいぜおい…全然見つからないぜ…」
そんな事を呟きながら薄い黄色の髪をポリポリと掻く。
- 368 :ミラージュ:2011/12/26(月) 22:44:36 ID:oB5LASG.0
- >>367
「頭に来る音だな」
膝上の猫を撫でたまま、顔を上げる。
以前耳にした音と一致する情報。あの忌々しい顔だ。
(何を探しているというのだろうか……)
最近、それすら気になるようになってきた。
非常にどうでもいいと言える事柄。
暇を貪る自分にとってはまたそれも気になる事柄。
少し近づいて聞いてみることにしよう。
- 369 :ラルフ=ハインケルン:2011/12/26(月) 22:51:25 ID:xm/dFKGs0
- >>368
「もしかして大分前に家から引き払っててもういないとかか…?」
いやな可能性が頭をよぎる。
もしそうなら真面目に見つかりそうも無い。
どうしよう、困った事になったな。
取り合えず付近の奴に話を聞いて判断しよう。
「となればまずは聞き込みだな…」
- 370 :ミラージュ:2011/12/26(月) 23:04:55 ID:oB5LASG.0
- >>369
……滑稽だな。
背後から刺したら死にそうな程に脆そうだな。
……そうするつもりは無いが。
「独り言も程ほどにしたらどうだ」
背後から声をかける少女。
外見は正に少女と言った所。
幼げな顔から見るに8歳程度だろうか。
それ以上に幼さを感じさせるのがその身長。120cmあるか怪しい。
しかし、程々の努力はしているようで、機械の外観を持つ、正に「機能的」と言った様子の似合うブーツは多少底上げの機能もあるらしかった。
- 371 :ラルフ=ハインケルン:2011/12/26(月) 23:13:11 ID:xm/dFKGs0
- >>370
「ん?悪いな、独り言癖があるんでね」
そう言いながら背後を向いたとき、知らない顔がみえた。
声は聞き覚えが無くも無いが、あんまりにも見た目に見覚えが無い。
ふと、聞いてみる事にした。
「あー、失礼ですがお嬢さんよ。
どこかでお会いした事、ありましたっけ…?」
彼が知っているのは爆破事件のときの機械しか知らない。
中の人とかまでは知らないのである。ついでに言うと声に関しても記憶が薄い。
ここ最近は彼自身アンサングの襲撃防止などで忙しかったからだ。
- 372 :ミラージュ:2011/12/26(月) 23:24:58 ID:oB5LASG.0
- >>371
「耳に入ると不快だ。そもそも貴様の存在が不快だ」
全く顔を変えることなく良い放つ。
膝上の猫は腕と歳に不相応に発達した胸とに挟まれて何処か苦しげだ。
「会った事の無い人間と、気安く声を交わす軽薄な人間なのか、貴様は?」
- 373 :ラルフ=ハインケルン:2011/12/26(月) 23:32:34 ID:xm/dFKGs0
- >>372
「Who…その辛口は確かにあの時のお嬢さんだな。
で、膝上の猫が割りと苦しそうだからちょっと力を緩めたらどうだい?」
相手の辛口に対して少し苦笑いをした後、苦しそうな猫をみてすぐ気持ちよく笑ってそう言った。
相手からのいわばお前嫌い宣言をまるで気にする風は無く、寧ろ変わって無くて安心したような感じである。
しかし、彼は相手が微妙に変わっている事も感じてはいた。
基本は変わっていないが、行動の端々に前に会った時とは違う印象を受ける。
気のせいかもしれないが。
「俺は女の子を見たら脇目振らずに口説きに行くほど軽くは無いぜ…。
というか、なんだか随分と印象が違うんだが、それがアレの中身って事でいいのかい?」
- 374 :ミラージュ:2011/12/26(月) 23:47:39 ID:oB5LASG.0
- >>373
「だからと言ってこの猫がほしいのだろう? やらんぞ」
ぐっ。
より腕に力を込め身体をひねって遠ざけた。
更に押された猫の頭の皮膚が前に押し出され顔をしかめているように見える。
「アレの……」
視線を事件現場へと向ける。
未だ改修作業が続けられていた。
それは立地の悪さもあるだろうが、爆破の壮絶さを物語る一因でもあった。
そして、それは目の前の犯人の残虐さに直結する。
「そうだな、それに近い。
……成程な。恐らく、貴様はこの私を探しに来たという訳か。何が目的だ?」
恐らく、肯定の意味を取って笑んだのだろう。
その笑みは、その後に続く言葉にも関係しているのかもしれないが。
- 375 :ラルフ=ハインケルン:2011/12/26(月) 23:57:02 ID:xm/dFKGs0
- >>374
「いらないって…マジ猫苦しそうだぞ、顔色見ろって」
少し呆れ気味な笑みを浮かべながら相手に言う。
バイクのシートに座り込みながら彼は相手の言葉を聴いて、
長い事(10分)頭をひねりながら考えた後、ふと思い出したのか。
「アレだ、うちの家に飯食いに来ないか?
前去り際に俺が誘っただろ?」
実際は特に何の理由も無かったのである。
強いて言えば言葉に出したくらいで、もう一つは最近起こっている『ペルソナ』と言う事件への警告くらいだ。
何せ彼女がアンサングに攫われるタマとは思えない。
真面目に殆ど理由が無いといっていいものだった。
- 376 :ミラージュ:2011/12/27(火) 00:06:04 ID:oB5LASG.0
- >>375
「む……」
目の前の男に指摘されるのは癪ではある。が、それ以上に猫が愛おしい。
言われるままに確認をするが、その為に腕を伸ばし持ち替える。正面から向き合う形だ。
それ故に猫は苦しみから別たれ、少女に今までの苦しみを伝えるどころか、別たれただけに良い顔をする。
「どこも問題ではないぞ」
「記憶に無いが?」
バッサリと払ってのけた。
言った後に少しは考えた物の、やはり思い出せなかった様で。
それだけに留まればまだよかったのだが……何か訝しげな顔をしている。
「貴様、さっきは自分で「軽くは無い」と言った癖に、他の女と間違えているんじゃないのか?」
うわぁ。と言った様子の顔でラルフを見る。凄く嫌そう。
- 377 :ラルフ=ハインケルン:2011/12/27(火) 00:15:28 ID:xm/dFKGs0
- >>376
「そりゃ苦しみから解き放たれりゃいい顔もするさ」
やれやれ、といった風に笑って彼はそう言う。
と、直後の発言を聞いたときには予想通りだったのか渋い顔をすると。
少し考えた後に相手に向き直ると。
「まぁ、覚えてないなら別にいいけどな。
いやぁ残念だぜ。まぁ、他にも注意しなけりゃならないことがあったからいいけど」
- 378 :ミラージュ:2011/12/27(火) 00:26:49 ID:oB5LASG.0
- >>377
「本当にか?」
再び抱きかかえると頭を撫でる。
初めよりも幾分か抱く腕は緩くなっているようだ。
ただ、これに関しても表情は訝しげで、むしろこっちの方がその色が濃い。
「何、この私も誘っていくというのなら着いていくが?
唯でさえ食に困った……注意? この私にか? 貴様が?」
四度聞き返す。
その後で「ハッ」とか言いながら馬鹿にした笑みを見せる。
現実、馬鹿にしているのだと思う。うぜぇ。
- 379 :ラルフ=ハインケルン:2011/12/27(火) 00:36:59 ID:xm/dFKGs0
- >>378
「はっはっは、まぁべつに笑ってもいいけどな。
俺だってそう簡単にやられるとは思っちゃいない」
あくまで頭にとどめてもらえればいいのだ、無理そうだけど。
とは言え、一部能力者にも犠牲者が出ている以上…言わないわけにはいかない。
「最近、『ペルソナ』とか言う事件が起きてるんだとよ。
被害者は全員『金髪の着物の女に襲われた』といってる。
警察の能力者課で捜査もしてるんだが、なにぶん残された証拠が無いんで足取り掴めずだ。
仕方ないから、俺みたいな探偵も捜査に駆り出されちまってなぁ…エイジの奴から知り合いに注意しといてくれって言われてるんだよ」
そう、目の前の相手に説明する。
そして、さっき相手が言いかけたことを察したのか。
相手の顔を覗き込むように見て。
「で、腹減ってんじゃないのか?
よかったら飯ぐらい食わしてやるぜ?」
- 380 :ミラージュ:2011/12/27(火) 00:53:25 ID:oB5LASG.0
- >>379
「『金髪の着物の女』なぁ……。
ククッ、それで、貴様はただの注意か?」
悩む顔を見せるが、それはすぐに消える。
様子から察するに、何も知らないのだろう。
ごはんの話を切り出されると、目を輝かせて寄ってきた。
「何、本当か!? おいしい物が食べたい!!」
とか言うものだから驚きである。相当、食に困っていたのだろう。
少しすると、事の異常さに気づいたのかコホンと咳払いする。
「……おいしい物が食べたい」
が、そこは引かない。
- 381 :ラルフ=ハインケルン:2011/12/27(火) 01:04:48 ID:xm/dFKGs0
- >>380
相手の様子を見た彼は特に驚いた様子も無く。
寧ろそう言う一面が見れたことを少々嬉しく思っているようだ。
彼は少し笑った後に相手を見て。
「そんなに腹へってたなら最初に言えば良かったってのに。
一応これでも見知った顔なんだからよ、頼ってくれていいんだがな?
というか、その様子だともしかして家も無いとか言う落ちじゃあないよな…?」
ここまでで相手の性格は大体つかめてはいるものの。
この子ならば有り得なくも無いなーと思いながらいった。
美味しいものが食べたいと言う事は好みの物がくいたいと言う事だろうが、
相手の好みが分からない…甘い物好きなんだろうか、それとも炒飯とか好きなんだろうか。
- 382 :ミラージュ:2011/12/27(火) 01:19:59 ID:oB5LASG.0
- >>381
「真面目に返させてもらうと貴様を頼る手段等無いんだがな」
まぁ、頼りもしないがな。と言って嫌味な笑みを浮かべる。
ラルフの続けた言葉に苦い顔をして、
「別につけたくて付けたオチでは……」
- 383 :ラルフ=ハインケルン:2011/12/27(火) 01:27:31 ID:xm/dFKGs0
- >>382
「真面目に家無き子だったわけか。
そりゃ腹も減るぜ…まったく…」
相手の状況に少々呆れながらも、彼はバイクを見て少し考えると。
名案とはいかないが少しいい案が思いついたらしい。
相手をじっと見ながら。
「なんなら、暫く…いやまぁ次の住居を手配できるまでだが…。
家に住まないか?今なんだかんだで五部屋くらい余ってるし。
お嬢さんがいいんだったら、遠慮なく住んでいいんだが……それより飯か?」
もしかしたら今はそんな事より飯がくいたいんだろうか、と思いながら告げる。
相手が承諾したらば…まぁ文句は出ないだろうが話してみよう。
……そうでなくとも無断ですんでるやつがいなかったわけじゃあないし。
- 384 :ミラージュ:2011/12/27(火) 01:42:19 ID:oB5LASG.0
- >>383
「金はあるんだがな……」
どうも、上手く行かない。と困った顔をする。
後で知ることになるのだが、少女は腹は減って等いなかった。
少女はそれ以外の……他人なら間違い無く悩む筈の無い疑問を抱えていたのである。
「む……そうだな」
ふと、後ろを振り返って工事現場に視線を向けた。
改修作業は滞りなく進み、何時からか工事の終了予定の日にちが張り出されるまでになった。
尤も、彼女はそれまで後何日かを知る術は無かったが。
「貴様の家に泊まるのも良いだろう。ただし、こいつと一緒ならな」
そう言うと猫を掲げて見せた。
不自然なまでに溺愛するこの猫は公園に住み着くようになってから仲良くなったノラネコである。
- 385 :ラルフ=ハインケルン:2011/12/27(火) 01:47:22 ID:xm/dFKGs0
- >>384
「好きにすればいいぜ。
あーでも世話は自分で出来るだけやってくれ。
後多分部屋は二階になると思うから…あんま騒がないでくれよ?」
そう言って彼はヘルメットを被りながらバイクに跨ると。
サイドカーを指差して相手を見て。
「サイドカーに乗ってくれ、俺達の家まで送っていく。
猫はしっかり捕まえておいてくれよ…スピードは抑えるが落ちない保証は無い」
そう言ってバイクにキーを差し込んでエンジンをかけていく。
- 386 :ミラージュ:2011/12/27(火) 02:00:30 ID:oB5LASG.0
- >>385
「フン、騒ぐかどうかは貴様の待遇次第だな」
猫を強く抱えると足に力を込める。
靴の、踝の辺りに付いた真紅の珠が光を帯びると少女が浮き上がっていく。
機能的な機械靴は空も飛べるのだ!
「その必要はない。
貴様を追わせてもらう。進め」
位置的に男より優勢になった為か何故か態度がより大きく。
相変わらずの命令口調で進路方向を指差した。
- 387 :ラルフ=ハインケルン:2011/12/27(火) 02:15:22 ID:xm/dFKGs0
- >>386
「はいはいっと…」
サイドカーを外してオート操縦で自宅に向かわせる。
もっとも、これから向かうのだが…真面目に邪魔だったのだ。
主にカーブとかで。俺はアクセルを入れて加速していく。
「そんじゃあま…飛ばすからしっかり追いかけて来てくれ」
どれくらいのスピードで相手が飛行できるかはわからないが、人間で軽いし。
300kmくらいだったらきっと追いついて来てくれるだろうと思いアクセルしっかりと入れる。
重くそして耳に残るけたたましい音を発しながらタイヤは勢い良く回転して、公園からバイクが走り抜けていく。
最大トルク7,250rpm、最高速度300kmを超える速度を叩き出すエンジンは激しく回転している。
- 388 :ミラージュ:2011/12/27(火) 02:32:16 ID:oB5LASG.0
- >>387
「了解。確りと追わせて貰う」
キイィィン……。
機械靴の駆動音が響く。
バイクのアクセルが入るのを脳内で感じ取ると同時に身体を水平に倒す。
ほぼ同時に発射したそれらは同じスピードで距離を離す事なく、近づく事すらなく進んでいく。
完璧な計算。ただ、それは運転についてだけであった。
(目が乾く……)
高速でバイクを追えば当然そうなるであろう。腕の中の猫も無事では済まないだろう。
猫を服の中にしまうとその上から腰部にストックしてあった小型の機械を射出。
お互いが点となって線を作り、その線に囲まれて面ができる。
少女を囲んだ6つの小型機械は、規則正しいダイヤの中に少女を閉じ込めた。こうすれば風も関係あるまい。
ふと、視線を下げて男を見た。
忠告と言い飯と言い、挙句の果てには住居の提供……。
前々から甘いやつだとは思って居たのだが、予想以上の様だった。
一度、奴の家でも爆破して解らせてやるのもいいだろう……まあ、それは一通りの事が終わってからだ。
まずは、僕の考えを聞いてもらおうか……私自身の未来についてな。
- 389 :矢野 映二:2011/12/27(火) 22:38:39 ID:xm/dFKGs0
- 西区にある喫茶店の窓際の席で探偵矢野映二は着ていたコートを椅子に掛け、
カフェオレの様な飲み物を口にしながら休憩していた。
テーブルの上には書類を留めたファイルが置かれている。
「あー……今日もよく働いた」
砂糖を入れすぎて砂糖の味しかしないカフェオレを飲みながら俺は呟く。
今日だけで依頼を12は消費したし、最近起こっているペルソナの事についても調べていた。
……明らかに平時の倍は働いていると思う。
//誰も来なかったらばソロールへ。
- 390 :月夜:2011/12/27(火) 22:41:18 ID:dL8H4NjE0
- >>389
「あー疲れたー……」
- 391 :月夜:2011/12/27(火) 22:48:09 ID:dL8H4NjE0
- >>390
//何やってんだ俺はあああ!
すいません途中送信してしまいました
「あー疲れたー……」
だるそうに言いながら月夜は喫茶店の扉をあける。
そのまま誰もいないテーブルへとおぼつかない足取りで歩み寄っていき、
イスに座るとすぐにテーブルにうつ伏せになった。
- 392 :矢野 映二:2011/12/27(火) 22:49:52 ID:xm/dFKGs0
- >>390
「んー…アレはたしかーっと…」
ポケットから携帯を取り出して資料を閲覧する。
あった。名前は白月月夜、年齢は16…能力は流動の視認・制御・変質等…。
現在の目的等々は不明で、危険度としては中の下といった所だろう。
ただ、身体能力の方面や能力の性質上敵対する事は避けるほうがいいだろう。
「……」
携帯の画面を見ながらどうしたもんか、と考えていた。
情報源としてはの望めないだろう。そもそも知らない顔だし。
ルディの奴なら如何するかな…?
- 393 :月夜:2011/12/27(火) 23:02:01 ID:dL8H4NjE0
- >>392
「あ、すいません、コーヒーもらえますか?」
男の視線に気付いているのかいないのか、月夜は暢気にコーヒーを注文している。
ほどなくして運ばれてきたコーヒーに糖分補給の為か、片手で数えられなくなる程の
角砂糖を入れ、それを一気飲みして幸せそうな顔をした。
どうやら疲れのあるなしに関わらずいつもその量をいれるようだ
- 394 :矢野 映二:2011/12/27(火) 23:19:33 ID:xm/dFKGs0
- >>393
「まぁ…いいか。
今は仕事が大事ってな…」
そう言って、書類の中身を確認しながら頭のなかで状況を描く。
一件目は街の裏路地で背後から一撃されたと思われ…その後正面から一撃。
二件目は中央公園で出会いがしらに一撃と思われる…。
三件目…これは二件目と同じか…。共通項は全員『金髪の着物の女』を見たって事か。
しかし金髪で着物…か、手がかりとしてはちいさいよなぁ。
「お陰で能力者課は忙しい事もあってこっちに回されたんだよな…。
つったってこれじゃあ殆ど情報無しと同じだぞ…」
一人ボヤきながら、カフェオレを一口。
甘すぎる。
- 395 :月夜:2011/12/27(火) 23:35:25 ID:dL8H4NjE0
- >>394
「……探偵か何かでもやってるのかなあ?」
資料らしきものを見ながら呟いている男に気づき、月夜はその男に少し興味を持つ。
探偵だとしたらこの町の住人の情報は幾つか持っているだろう。
もしかしたら、『あの子』の情報も持っているかもしれない。
席から立ち上がり、男へと近づく。
「すいません、ちょっと聞きたいことがあるんですけど」
- 396 :矢野 映二:2011/12/27(火) 23:47:56 ID:xm/dFKGs0
- >>395
何故この事件がペルソナ、なんてネームで呼ばれてるんだっけ・・・?。
何々…狙われた人物全員が所謂『ペルソナ使い』と呼ばれる能力を持っていたから…か。
つー事はペルソナ使いを狙ってるって言う事なのか?自然覚醒してる奴には特に意味は無い。
ペルソナ使いへの復讐…?可能性としては無くも無いが勘が無いって言ってる。
とすると何が目的なんだ…?うーん分からん。ん、誰かよんでる?
「はい?どうかしましたか?」
近づいてきた相手に振り向きながら答える。
何か聞きたいとかいっていたきがするが、何を聞きたいのやら。
答えられることにはいろいろ制限があるんだが…もしかしてナンパか?無いな、絶対無い。
大方人を探してるとか道を聞きたいとかだろう。
- 397 :月夜:2011/12/28(水) 00:01:22 ID:dL8H4NjE0
- >>396
「ある人について聞きたいんです」
男の予想通り、月夜が聞きたいことはある人物についてだった。
「わたしに瓜二つの人がこの街に居るとか聞いたことありますかね?」
月夜はすぐに訂正を入れる様に、早口で言葉を紡ぎ始めた。
「いや、正直我ながら馬鹿らしい質問だって言うのは重々承知してるんですよ。
ただ、やっぱりこういういかにも情報を持ってそうな人がいると聞かずにはいられないというか、なんというか……」
最後の方はしりすぼみになってしまっている。
やはり弁明しても馬鹿らしいことに変わりはないということに気がついたのだろう。
- 398 :矢野 映二:2011/12/28(水) 00:06:06 ID:xm/dFKGs0
- >>397
さて、如何答えたものか…。知っているといえば知っているのだが。
発言権が無いので知らないと答えるしかないんだろうな。
これ系統は発言に気を使っちまうぜ。
「悪いが知らないな、仮に知っていたとしてお前は何をするつもりなんだ?」
表情を変えることも無く彼は聞かれた質問に答えると同時に聞き返す。
威圧するわけでもなく、興味本位という風でもない。
仕事でやっている、と言う風だ。
- 399 :月夜:2011/12/28(水) 00:18:03 ID:dL8H4NjE0
- >>398
脳裏に浮かぶのは、生まれて間もないころの記憶。
「……どうしても聞けなかったことを、聞いてみたいだけですよ。別に殺意だとかがあるわけじゃありません」
知らなくても仕方がないか、と諦めの表情に変わり、そう答える。
「お仕事お邪魔してスイマセンでした。ほんの気持ちですけどお礼です」
月夜はいくらかの銅貨をテーブルに置き、喫茶店の出口へと足を向ける。
- 400 :矢野 映二:2011/12/28(水) 00:23:34 ID:xm/dFKGs0
- >>399
「そうか、ならいい」
知っている情報を明かせないのは色々と面倒だが、まぁ悪く思わないでくれよ。
それにどうしても調べたければ依頼に来るだろうし。
何だかんだで、信用仕事柄だから依頼なら調べるし。
「…俺ただ飯くってんだけどな」
ここの店長に依頼の報酬代わりに一日一回ただ飯食ってるのだ。
まぁいいや、たまには払っとこう。
そう思いながら俺はまた資料とにらめっこすることになる。
- 401 :名も無き異能都市住民:2011/12/30(金) 22:24:38 ID:oB5LASG.0
- 「ふっ、よっ」
左膝、右膝。
右のつま先で蹴り上げて位置を調整する。
一歩下がって左の膝で受け止める。
少し強めに右で蹴り上げて高めに浮かせる。
右足をつけると同時に強く踏み込む。
左脚を上げて上空に上げたそれを意識する。
落下まで3秒、2秒、1秒……
「はぁっ!」
身体を強くひねって左脚を振り切って……シュート!
- 402 :セシリア:2011/12/30(金) 22:41:54 ID:0DGoez6Q0
- >>401
真っ黒なマフラーに、真っ黒のロングコート。
それとは対象的な真っ白い肌をした女性がその傍らで、『何かが暴れている』のを感じていた。
女性は、白い包帯で両目を包み隠している。そのため視界は一切開けておらず、世界で起こる物事を見ずに、感じるのだ。
タイミングを合わせてシュートをすると、その動きに合わせてわずかに首が動く。視界が無くとも、動きは見えている訳だ。
そのまま、何をするわけでも無くコーヒーを片手に、白い息を吐き出しながら、その動きを楽しんでいたるようである。
- 403 :名も無き異能都市住民:2011/12/30(金) 22:56:13 ID:oB5LASG.0
- 10m程離れた壁に突き付けられたボールは跳ね返り上空を飛ぶ。
描く放物線自体は緩やかなものの、その速度がシュートの強烈さを物語っていた。
自身の元へと帰ってくるボールに視線を注ぐ。
ボールとの距離がそれなりに狭まってきたところでアクションを見せた。
後方宙返り。バック宙とも言うそれ。
膝を曲げて屈んだと思うと、跳び上がり上下反転。
脚が頂点にたどり着いたあたりでボールを掠めとって見せた。
そのままさらに半回転し、ボールを足に挟んだまま着地してみせる。
>>402
視界の端に人間の足が映った。
屈んだままの膝を伸ばしつつ手を振ってみる。
「……あ、」
しかし、その手をすぐい降ろしてしまう。セシリアの包帯に気づいたらしい。
ボールを蹴り上げて両手で掴むと、歩み寄っていく。
「僕に何か用かい?」
- 404 :セシリア:2011/12/30(金) 23:06:41 ID:0DGoez6Q0
- >>403
コーヒーを一口飲み、「ふぅ……」と、真っ白な息を漏らす。
両目に包帯をしている――赤の他人から見れば、見えていないと連想するのは普通だろう。
ボールを持った相手が歩み寄るのに気づいたらしく、腰を上げて立ち上がる。
そして近寄る人物に「私に何かよ……」まで言いかけたが、相手も同じこと言い出すのを見て途中で口を閉じた。
「別に用件なんてない、見ていただけ。迷惑だった?」
コートの衿と、マフラーを直しながら言う。
- 405 :名も無き異能都市住民:2011/12/30(金) 23:17:16 ID:oB5LASG.0
- >>404
「いや、全く」
向けられた疑問を否定で返す。
ボールをセシリアの座っていたベンチの隣に置くと、真紅の瞳はそちらの口元を見ていた。
続く視線はコート、マフラーへと移り「へぇ……」等と興味深げな素振りを聞かせる。
「迷惑にはなってないさ。
キミが何時から見ているのかと、なんで見ているのかが気になったのさ」
- 406 :名も無き異能都市住民:2011/12/30(金) 23:32:37 ID:0DGoez6Q0
- >>405
「……人をじろじろと見て、何?」
不愉快だという感情を隠すことなく、刺のある口調で話す。
近くにボールが置かれると、その上に手を乗せ、それからベンチに腰を戻し、膝の上にボールを置いた。
「何時からって言われてもわかんない。ついさっきから、ずっと見ていたけど。」
その後、なぜ見ているのか? という質問には答えることなく。
「もっと、色々やって。」
膝の上のボールを差し出しながら、言う。
- 407 :神宮寺 真由子:2011/12/30(金) 23:35:27 ID:xm/dFKGs0
- >>ALL
「ま、まさかV-MAXがこんな時にエンストしちゃうなんて…!」
ヤマハ製の大型二輪自動車『V-MAX』を引いた、
赤銅色のライダースジャケットにワンピースを着た少女がいる。
年の頃18歳、身長は150代前半で小柄な体躯に反して、
開いたライダースジャケットの下のワンピースからは胸の谷間が見える。
「速く、家に戻して…メンテ…したいけど!
今日はちょっと疲れて…そろそろ…きついぃ」
そんなことを言いながら二人の近くをゆっくりと、
しかしかなり苦しそうにバイクを引いている。
- 408 :名も無き異能都市住民:2011/12/30(金) 23:50:17 ID:oB5LASG.0
- >>406
「……やっぱり」
その言葉に対し、そちらの予想とは違うだろう、笑顔を浮かべた。
「キミ、見えてるんだね」
そういうと、掌を向けてそちらの目の前で手を振ってみる。
「ずっと……へぇ、気が付かなかったよ」
この質問には恐らく、意味は無いのだろう。
会話の掴みや、意味は無いものの気になったか。
どちらかと言うと、知りたかったのはもう一つの質問の方。
しかし、そちらの答えが出ないとなると、一瞬、気の抜けた表情をするが、直ぐに取戻し、
「いいよ」
腕を伸ばし徐々に身体を後ろに傾けていく。
地面に腕がついても滑らかな動きで回転運動を続け逆立ちの形が近くなっていく。
身体の動きに足が釣られていくと、伸ばした右足でセシリアの持ったボールを蹴り上げる。
ボールが宙を舞う間に逆立ちを止める。今までと同じ進行方向に足を下ろした。
こうして「依然としてセシリアに正面を向けたままの人間と、その上で宙を駆けるボール」の図が出来上がる。
右膝を曲げて、足の裏を天に向けると、そこにボールが着地した。
「……と、言っても、何すればいいのか浮かばないけど」
>>407
「……?」
さぁ。どうしようか。
自分は機械には詳しくない。
助けたいところだが、自分は何もできないだろう。
エンスト。と言う言葉自体は自分の所持していた乗り物にも同じ言葉があったので理解はできるけど……。
「……」
結果として「公園の真ん中で足の裏にボールを乗せた真っ白の人間がそちらをガン見」
という奇妙な状況が出来上がってしまうのである。
- 409 :名も無き異能都市住民:2011/12/31(土) 00:14:20 ID:0DGoez6Q0
- >>408
「その通り、ある程度は目で見るのと変わりないけど……なに笑ってるのよ。」
口元をムッとした形に歪める。
「顔の前で手を振るの、やめて。それと、目は見えてないから。」
「随分と熱中してたみたいだしね、そっちが気づかなくて当然。」
飲み終えたコーヒーの空き缶を、ベンチの端に置いた。
「なんで見てたの? って、楽しかったからよ。
他には……偶然通り掛かったとか、暇だからとか、あるのはそういう類いのものだけ。」
目の前の人物が、ボールを自由自在に操る。
そして、好き勝手扱われるボールをゆっくりと目で追う。
「何時も通りやって。練習とか、そういう普通のコトでいいから。」
>>407
音に反応して、ベンチに座っている人影が振り返る。
ベンチの人影はしばらく観察して、状況をなんとなく理解すると。
「……大変そうね。」
と、他人事のように冷たく呟いた。
ちなみに、この人影は両目を包帯で隠していて、あまり使い物にならなそうであった。
- 410 :神宮寺 真由子:2011/12/31(土) 00:25:12 ID:xm/dFKGs0
- >>408 >>409
「はぁー…これはエンジンが機嫌直してくれるまで待った方がいいわ、こりゃ」
ふと動きを止めると、バイクを止めて近くのベンチに向かおうとしたところで。
二つの人影を発見する。
とりあえず、挨拶をしようと思ったのか。
「こんばんは!」
何にも考えてなさそうな、人柄がにじみ出る笑いと共に元気良く挨拶する。
真っ白で足の裏にボールを乗せた人や両目が包帯で隠れている人を見ても、
どうやら「そういう人たち何だな」で済ませて、とりあえず挨拶しようと思ったらしい。
- 411 :名も無き異能都市住民:2011/12/31(土) 00:36:41 ID:oB5LASG.0
- >>409
「成程、不思議だ」
フフッ。
そう笑うと足の裏のボールを浮かせ、そのまま踵で蹴り上げる。
頭上を経由したボールは今度は前で突き出された右足の元へ。
足首と足の甲の間でホールドされている。
「そんな感じかぁ」
ボールを保ったまま考えるような言葉の雰囲気を見せる。
僕も暇なんだよね。そう続けると右足を傾けてボールを地面に落とした。
小さく跳ねたボールを下から救い、顔の高さほどに蹴り上げる。
右膝、右膝、左膝、とリフティングを続けながらまだ考える様子。
「こういう事をするのも、久しぶりだしね、少し困るよ」
左膝で受けたボールは前に飛び出してしまう。
それはアクシデントから来るものではなく、狙い通りの動きらしく、左脚の先で174cmの身長を裕に超える程高く蹴り上げられた。
落ちてくる間に一回転し、落ちてきたボールを再び膝で受ける。
何度か頭を超すほど跳ねて、首元の高さまでに一度衰え、眼前の辺りでの往復に落ち着いた。
「視線の練習か何か?」
>>410
「こんばんは」
高く蹴り上げたと思えば、延々とリフティングを続ける。
ぶれないボールと上半身、体重運びや脚技の技量は中々の様だと伺える。
「助けが必要かな?
大したことはできないけど、僕でよければ手伝うよ」
ボールを見ることなく、けれど不安定になることは無く。
純白の衣服から真っ白な印象を与えるだろうが、
この人間の肌は白く、髪は白金に薄くきらめいていた。
――-アルビノ。真紅の相貌からそう言った結論に至るだろう。
- 412 :セシリア:2011/12/31(土) 01:02:57 ID:0DGoez6Q0
- >>411
「種を明かせば、不思議もナニもないんだけどね。」
笑い声にまた不愉快そうな表情を作った。
が、ボールさばきが始まると、真っ白なため息とともに不愉快さ消えたようである。そうなるとそうなったで無表情であるが。
「良いんじゃない、何かに夢中になれるっていうのは……」
今は、視線がボールを扱う足元に集中している。
先程、目では見ていないと言ったが、本来なら視線がある場所がキョロキョロと動く。
「視線の練習? ……違う、何度も言わせないで、ただ見ていて楽しいだけ。
変だと思ってるかもしれないけど、こういうアクロバチックなの、見ていると中々楽しいのよ。」
「視線の練習なんて考えたこともないけどね。顔は自然と動いてるだけだし。
……なんか、動きに違和感とか、不快感とかあった?」
しばらく黙り込み、終始にこりともせず様々な動きを楽しんでいた。
それから空を見上げるように首を曲げ、立ち上がった。
「コレ置いてくから、よかったら飲んで。」
ポケットからコーヒー缶を一つ取り出し、ベンチの上に置いた。
>>410
「……」
元気な挨拶に、面食らったようでしばらく硬直。
「……こんばんは。」
「仕方がないし、アンタにもあげる。」
ポケットから取り出したコーヒー缶を一つ、投げる。
「……後は、頑張って。」
それから二人に背を向けて、どこかへ歩きだした。
//眠気が酷いのでこのあたりで
//お疲れ様でした。ありがとうございました。
- 413 :神宮寺 真由子:2011/12/31(土) 01:09:55 ID:xm/dFKGs0
- >>412
「うわっとと…ありがとう!
なんか分からないけど、頑張るよ!」
なんだかよくは分からないが、取り合えず応援されてるようだ。
返事はしておこう。ッていつの間にかいなくなってる…。
缶コーヒーは結構暖かい。
//お疲れ様ですー。ロールありがとうございました。
>>411
「あははは…大丈夫だから気にしなくていいよ。
ちょっとバイクが機嫌悪くしただけだから…ちょっと待ったら動くと思うし」
大型バイクに腰を下ろしながら缶コーヒーを開けて一口。
快活に笑っているがどこか疲れが見えている。
どうやらそうとうな距離をバイクで引いてきたようだ。
もしかしたら意外と腕力があるのかもしれない。
「あ、そう言えば自己紹介がまだだったよね。
私、神宮寺 真由子って言うんだけれど、君はなんていうの?」
- 414 :名も無き異能都市住民:2011/12/31(土) 01:19:14 ID:oB5LASG.0
- >>412
「……気になるけど、簡単には教えてくれたりはしないよね」
先ほどから、笑みに反応して見せる不快感。
気にはなるのだが、如何にして聞き出そうか。
「『見ていて』、ねぇ……」
セシリアの言葉全体よりも、この一言が気になる様で。
そちらの眺めるボールを忙しなく動かして視線の動きを見ている様子。
ボールで遊ぶこと自体嫌では無いらしく、暫く付き合っていたが変える素振りを見せるとわざと地面に落とし、踏みつけて動きを止めてしまう。
セシリアを無言で見送り、缶コーヒーを左手の、真紅の手袋の上から掴む。
それでも熱さを感じたんのか少しの間手の上で跳ねさせた後、しっかりと握るとプルタブに指をかけ、
「いや、全く」
そう呟いた。
>>413
「そっか、それならば良いんだ」
プルタブから指を離す。
缶コーヒーを持て余した手は缶を投げ上げては落とすを繰り返す。
そうしながら少女の元へと寄ってきた。
因みに、足ではボールを歩きながらドリブルで運んでいる。
「名前?
そうだね……『無い』って言ったら、満足してくれるかな?」
幾度も宙に浮く缶コーヒーを眺めながら淡々とした口調で答えた。
- 415 :神宮寺 真由子:2011/12/31(土) 01:28:05 ID:xm/dFKGs0
- >>414
「わー、名前が無いなんて始めて見ましたよ。
でも呼ぶのはちょっと不便で困ってしまいそう、です」
淡々とした相手とは違いころころと表情が変わっていっている。
さっきは笑っていた顔が驚き一色に染まっている。
どうやら本当に始めてみたようだ、しかし直表情を戻すと。
「とと、すいません…ちょっとはしゃいでしまいました。
悪く思い無いで下さいね…?」
相手に謝罪しながらも顔は驚きが抜け切っていなくて、
驚きと申し訳無さの混じったなんだかへんな顔になっていた。
- 416 :名も無き異能都市住民:2011/12/31(土) 01:51:22 ID:oB5LASG.0
- >>415
「そうかな。
僕は物心ついた時からこんなのだったからね」
ふぅ。と息を吐いて缶をキャッチする。
それから小さめに一回投げると、真紅の手袋を付けた左手で掴んだ。
「別に悪く思ったりはしないよ。普通に生きてれば、誰だってそう思うことだからね
普通、ある筈の名前が無いのだから……そりゃあ、僕だって悩みはしたさ」
手にした缶コーヒーを差し向けながら、
今までの冷ややかな表情を崩し、申し訳なさそうな表情に変わる。
「……ごめん、開けてくれないかな。
僕、力無いし、手が悴んじゃって」
- 417 :神宮寺 真由子:2011/12/31(土) 01:54:32 ID:xm/dFKGs0
- >>416
「あ、ちょっと待ってくださいね。
ほっと…」
素早く手を伸ばしてプルタブに指を引っ掛けて引くと、
綺麗にコーヒーの缶が空く。
「こんな感じでいいですか?
大丈夫なら教えてくださいー」
そう言って、自分の缶コーヒーを一口飲んでいく。
バイクの調子はまだ戻りそうに無いので、少し待つとしよう。
- 418 :名も無き異能都市住民:2011/12/31(土) 02:11:11 ID:oB5LASG.0
- >>417
「……ああ、上出来だよ」
それを受け取る際に、手袋の上から袖を伸ばし、熱対策を入念にする。
受け取ってからも暫くは飲まず。猫舌なのだろうか。
「ありがとう」
真紅の相貌を上機嫌そうに歪めてから、缶コーヒーに口を付けた。
そちらの身長にもよるだろうが、非常に背が高く感じられる。170cmはあるだろう。
- 419 :神宮寺 真由子:2011/12/31(土) 02:17:04 ID:xm/dFKGs0
- >>418
「ん、そろそろ回復してきたかな…?」
少し、キーを挿してエンジンをかけてみる。
重苦しい音と排気ガスを噴出しながらエンジンが唸りだした。
缶コーヒーを飲み干して全力投球でゴミ箱に入れる。
「ちょっと休んだらやっぱり機嫌直してくれたみたい」
唸るエンジン音を聞きながら、目の前の相手へと言う。
身長さが18cmあるせいか、ちょっと見上げる形になっているけれど。
- 420 :名も無き異能都市住民:2011/12/31(土) 02:27:32 ID:oB5LASG.0
- >>419
「それは良かった」
やはり猫舌らしく、ちびちびと飲み進めていく。
エンジン音を聞いて、何処となくなつかしそうな表情をする。
- 421 :神宮寺 真由子:2011/12/31(土) 02:33:40 ID:xm/dFKGs0
- >>421
「それじゃあ、私。
行くね、ちょっと時間が遅くなってしまったから。それじゃあ、またね!」
そう言ってヘルメットを被って、バイクに跨って。
アクセルをかけていく。ゆっくりとだが重い音と共にバイクは走り去っていく。
後に残されるのはさっきまで一緒にいた相手のみ。
//ちょっと眠気がやばくなってしまったので。
//強引とは思いますが終わりにさせていただきました。申し訳ありません。
//それでは、かなり眠いので眠らせていただきます。お休みなさい、ロールありがとうございました!
- 422 :名も無き異能都市住民:2011/12/31(土) 03:01:25 ID:oB5LASG.0
- >>421
「……またね」
寒空の、冬の風が駆け抜ける。
それに強い寒さを感じたので、ちょっと多めにコーヒーを含んでみる。
「……あつっ」
やっぱり、僕は猫舌だな。
とか、一人思いながら帰って行った。
//お疲れ様でした!
//ところどころ返しが遅くなってしまって申し訳ありませんでした……。おやすみなさいです、良い夢を!
- 423 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/01/01(日) 17:22:35 ID:WVrfsEdY0
- 【新年開けての早朝・・・】
【緋河神社は初詣のお客で溢れかえっている】
「…えっと…こうでいいのかなの…」
【カランカランと神社の鈴を鳴らして、少女は軽く手を叩く】
「……おともだちがもっとふえて…みんなまもれるようになりますようになの…」
【小さく口で唱えて、少女は拝んだ】
「………もっといのったほうがいいのかなの」
【だがディスはマダ色々心配なのか、なかなか拝む姿勢を崩さない…】
- 424 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/01/02(月) 21:26:00 ID:WVrfsEdY0
- 【緋河神社の階段を少女が降りていく】
【同じように参拝に着ていた客も同じように降りていた】
「おねがいきいてくれるかなの…」
【神社から立ち去る足取りは少し重い…少し重たい願いを述べていた故であろうか】
- 425 :セシリア:2012/01/02(月) 21:35:12 ID:0DGoez6Q0
- 年始の神社。おそらく、初詣客で賑わっていることだろう。
目を包帯に包んだ彼女も、片手に干支の描かれた飾り物を持っている。
>>424
視界が閉じているのを補うため、他の感覚は鋭い――鋭くしている。
少女の呟きが聞こえたのか、それとも別の感覚か。とにかく、人込みの中に知っている物を見つけた。
その場で少し考えたが、しばらくして意を決し、人込みを書き分けて少女の方へと歩き出す。
- 426 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/01/02(月) 21:44:05 ID:WVrfsEdY0
- >>425
【色々考えているうちにディスのお腹がグーとなった】
「うーん…おまつりだったらなにかおいしいものないかなの…」
【そう言ってあたりを見回して…セシリアを発見した】
「あう?こんにちわなの〜。
えっと…『せしりあ』だったっけなの?」
【少し首をかしげている】
- 427 :セシリア:2012/01/02(月) 21:55:21 ID:0DGoez6Q0
- >>426
「……」
少女の目の前まで来た。足を止め、しばらくその場で少女を見つめ続ける。名前を呼ばれるまで――
「あ……そ、そうよ。『セシリア』。わざわざ覚えていたの?」
「どうやら、お腹すかしてるみたいね。」
少女の様子を見て、そう問う。
- 428 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/01/02(月) 21:59:15 ID:WVrfsEdY0
- >>427
「あう、おともだちのなまえはおぼえてるからなの」
【軽く笑って返した】
「あう…がまんしたいんだけどなの…
いろいろおいのりしたあとだからなの」
【ちょっと申し訳なさそうに見える。】
- 429 :セシリア:2012/01/02(月) 22:05:01 ID:0DGoez6Q0
- >>428
「お友達?」
ため息を吐き出す。それから視線を人込みの方へとそはした。
「いつの間にお友達になったの……」
「新年早々我慢とか、ちっこい癖に立派なことしてんじゃないわよ。
ほら、あっちの方に出店とかあるんじゃない。」
と、ディスを連れ出す。嫌がるなら手を引っ張るなり背中を押すなりして連れていくだろう。
「ちょっとぐらい……買ってあげる。」
- 430 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/01/02(月) 22:13:12 ID:WVrfsEdY0
- >>429
「あうー、その…
おともだちじゃだめかなの?」
【なんか気にしているように見える…】
「あう?そう…かなの。
その…」
【少し戸惑っている…】
「…あ、ありがとなの」
【が、何処か嬉しそうな声である】
- 431 :セシリア:2012/01/02(月) 22:25:25 ID:0DGoez6Q0
- >>430
「友達だとか、そんなガラじゃないわよ。」
「でも、まあ……嫌ではないし、勝手にしなさい。」
相変わらずあっちを向いたりこっちを向いたり。絶対に視線を合わせようとしない。
ただ、その横顔は意地悪している顔でも、嫌いな人と向かい合う顔にも見えない。
「……嫌って言っても食べさせるし。
そういうことだから、私を恨みなさい。」
ふん、と鼻を鳴らす。
「それで、なに食べたいの? 早く選びなさい。
遠慮はいらないから。」
- 432 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/01/02(月) 22:28:37 ID:WVrfsEdY0
- >>431
「あう、ありがとなの…」
【少し元気が出てきたようだ】
「うん、いただきますなの」
【そう言って出店の近くへよっていく】
「…じゃあ…これはいいのかなの」
【りんご飴の出店を指さす】
- 433 :セシリア:2012/01/02(月) 22:39:08 ID:0DGoez6Q0
- >>432
「……」
顔の包帯を引っ張ったり、上げ直したりして、位置を調整する。
「だから、遠慮はしないでって。」
『りんご飴』。少し考え込むように黙り込み、それからゆっくりと販売しているりんご飴とやらに目を向ける。
単調な会話を店員とかわし、りんご飴を二つ購入する。
「じゃあ、はい。」
購入したうちの一本をディスに手渡す。もう一本は自分で食べる分だ。
「ところで、りんご飴って何? どうやって食べるの?」
りんご飴を食べたことが無いようだ。
- 434 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/01/02(月) 22:47:02 ID:WVrfsEdY0
- >>433
「うん…わかったの」
【大きくうなずいて答えた】
「あう〜。これおいしそうなの〜。」
【りんご飴を手にとってほほえむ】
「あう?どうやってなの?
えっとなの…」
【棒の部分をトントンと叩いてしばらく考えた後】
「ここをもって…この、においするところたべるなの」
【そう言ってりんごの部分をじっと見せる。見えないかもしれないが】
- 435 :名も無き異能都市住民:2012/01/02(月) 22:56:57 ID:0DGoez6Q0
- >>434
「ああ、これでも見えてるのよ。
大まかな形だけはね。色とかは全く見えないけど。」
「いい臭いね……甘い臭い。飴って言うぐらいだから嘗めたらいいのかしら?」
顔のすぐ近くに飴を持ってくる。
「えーと、このまま食べていいのよね。
じゃあ、いただきましょうか。」
「……お菓子みたいだけど、こんなのでお腹いっぱいになるの?」
「まあ、食べ足りないならまだ食べたら良いけど。」
ディスが口をつけるのを待って、自分も食べるだろう。
- 436 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/01/02(月) 23:01:42 ID:WVrfsEdY0
- >>435
「あう、みえてるなの…
ちょっとあんしんなの」
【不安そうな顔は少し和らぐ】
「うん、このままでいいの。
いただきますなの〜」
【そう言ってりんご飴にかじりついた】
「あまくておいしいよなの〜」
【そう言ってどんどん勢い良くりんご飴を食べていく】
「…えっとなの…けっこういっぱいたべないとまんぞくできないかなの…
いっぱいたべるのはたいへんだけどなの…」
【少し手を止めて複雑そうな顔をする】
- 437 :名も無き異能都市住民:2012/01/02(月) 23:19:25 ID:0DGoez6Q0
- >>436
「あんたなんかに心配されるような私じゃないわよ。」
目の動きや、唇の動きから表情を読み取れるぐらいのことは楽にできる程度には見えているようだ。
「ちなみにこれは、りんごっていうぐらいだから赤いの?」
「私も、いただきます。結構でかいのね。」
端の方に口をつける。
「……飴は逃げてかないからゆっくり食べていいのよ。
強制はしないけど。」
たしかに美味しい飴だが、こちらはまだ全然食べれていない。
「まあ、いいんじゃない。アンタぐらいの歳のころ――実際、何歳かは知らないけど。食べたい時には食べた方がいいんじゃない?」
- 438 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/01/02(月) 23:32:05 ID:WVrfsEdY0
- >>437
「そっかなの…うん、あんしんしてるなの」
【にっこりほほ笑んで返す】
「うん、とってもあかいの…
それからおいしくてなの…」
【子供だからかちょっと口下手である】
「あうー。そうなんだけどねなの…
なんかおなかすいてるとはやくなっちゃってなの。
もっとゆっくりたべたいんだけどなの…」
【もうりんごが半分以上なくなっている】
「『でぃす』もおとしわかんないなの…
でもみんなよりいっぱいたべてるみたいなの」
- 439 :名も無き異能都市住民:2012/01/02(月) 23:47:59 ID:0DGoez6Q0
- >>438
微笑むディスに戸惑うような表情をし、また視線をそらす。
「本当に変わった子ね。」
「ふぅん。やっぱり赤いんだ。」
飴の処理がとても大変そうだ。そして必死な割には遅い。
「美味しいなら良かったじゃない。コレ私には甘すぎ。」
「もう私のことは気にしないでいいから、好きに食べなさい……」
十分の一も減らない飴。さらにペースが落ちている。
「分からないなら、今はちびっこってことにしておくから。
私よりずっと歳下な子供よ。」
「……さっき、いろいろおいのりした。って言ってたけど、何をお祈りしたの?」
- 440 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/01/02(月) 23:54:27 ID:WVrfsEdY0
- >>439
「…そうなの?」
【ディスはあんまり気づいてないようだ】
「あうー…おいしくなかったかなの?」
【何処か心配そうだ】
「あうー、ずっとしたなの?」
【じっとセシリアを見ている。ディスの方も身長はさほどでもなさそうだ】
「おいのりなの?
…えっと…おともだちみんなまもれるくらいつよくなれたらって…そういのってたの」
- 441 :名も無き異能都市住民:2012/01/03(火) 00:13:18 ID:0DGoez6Q0
- >>440
「そうよ、そうに決まってるわ。」
悪意があって言っている訳ではない。
「ううん、美味しいのだけどね、ちょっと大きいのコレ。
……残り食べない?」
まだまだ若いが、未成年に見られることはないだろう――セシリアはそういった容姿だった。
「正しい年齢が分からないって……アンタ、苦労してるのね。」
痛みを共感するかのように、口元を歪める。
「……アンタが皆を守るって? やっぱり、小さい癖に立派ね。」
- 442 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/01/03(火) 00:36:06 ID:WVrfsEdY0
- >>441
「あうー、へんじゃなくするにはどうしたらいいのかなの…」
【普通に聞き返してきた】
「たべていいなの?
なんだかうれしいなの!」
【喜んでセシリアのりんご飴を手に取る】
「…なんだかおおきくなれなくてなの…
もぐもぐ、こんなにいっぱいたべてるのになの…」
【片手を大きく振って言う】
「うん、いなくなったひとがいるからなの…
もうそんなことになってほしくないの…だからつよくなりたいなの」
【発する言葉からはなにか重みのようなものが感じられる】
- 443 :セシリア:2012/01/03(火) 20:48:44 ID:0DGoez6Q0
- >>442
「そんなこと、私に聞かないでよ。
……というか、アンタは今のままでいい、今のままじゃないと駄目よ。」
有無を言わせぬ勢いで「分かったわね。」と言葉を続ける。
「食べても良いけど……帰ったら歯磨きしなさいよ。」
甘いものをもぐもぐと食べる姿にため息をつく。軽い胸焼けをおこしているセシリアであった。
「昔から比べて、ちょっとでも身長伸びてる?
少しでも変化があるなら、アンタぐらいの年頃なんて気がついたらおっきくなってるって。」
大きく振られる手の動きに合わせて、首が動く。動く物体に過敏に反応してしまうらしい。
「そう、そんなことがあったんだ……
アンタが誰を守ろうが、何処で何をしようと勝手だけどね、アンタがいなくなっちゃダメだっていうこと、忘れないで。
神様なんて、立派な癖に肝心な時は守ってくれないんだからさ。」
「でも、心構えは立派ね……ちっこい割には。」
- 444 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/01/03(火) 20:55:11 ID:WVrfsEdY0
- >>443
「そっかなの・・・
うん、このままでいくの」
【うれしそうに返した】
「あうあう、はみがきはまいにちしてるなの!
しんちょう?あうー・・・」
【考え中…ディスはその辺の電柱とかを叩きながらしばらくして口を開く】
「まだぜんぜんのびないなのー」
【困り顔】
「うん…わかってるの…
たのみごとはしたけど、やるのは『でぃす』だからなの…
もっとがんばるの!」
【ガッツポーズをして真剣な顔になった】
「その…いろいろあったからなの…」
- 445 :セシリア:2012/01/03(火) 21:10:42 ID:0DGoez6Q0
- >>444
「こんな子も、何時かは大人になるのかしら。」
「できれば、ちゃんとなって欲しいのだけど……」
心配そうな雰囲気を出しながら、電柱などを叩いて回るディスを見つめる。
「まあ、もし駄目でもあまり落ち込んだ駄目よ?」
それから、少し悩んで言葉を続けた。
「私なんか……私の体は、もう成長ができないし。
たまにはそういい子もいるんじゃない?」
「別にアンタがそうだって言うんじゃ無いわよ。私はアンタこれから成長すると思うし。
だからつまり……あまり気にすんなってコトよ。」
口下手な台詞を並べまくり、フォローを試みる。
「うん、頑張りなさい。」
真剣な表情になる少女に、どうしようもなく口元を優しくして。
「ほら……アンタ、どうせコレも食べるでしょ、はい。」
近くにあった見せでわた飴を買い、ディスに押し付ける。
- 446 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/01/03(火) 21:29:09 ID:WVrfsEdY0
- >>445
「あうー、ほんとにおっきくなりたいなの〜」
【うなずいて返す。セシリアの顔を見て】
「あうー。『せしりあ』はおっきくなれないの?
…えっと…おっきくなれない…わけじゃないよねなの!」
【ディスも少し心配そうにフォローし返す】
「あう、がんばる…
ありがとなの」
【嬉しそうにわたあめを受け取った】
「こういうときにあまいのがいちばんいいの・・・もぐもぐ」
- 447 :セシリア:2012/01/03(火) 21:43:22 ID:0DGoez6Q0
- >>446
「見た目とは裏腹に、心の強さは大人5匹分ぐらいはありそうなものだけど。」
幼い姿とは裏腹に、真剣な顔や重い雰囲気を見せることが多い少女だ。
「私の体はもう成人しきってるし、これ以上の変化がなくて困ることは無いわ。」
自分の言葉を肯定も否定もしない。ただ、『もう聞かないで』という雰囲気は幼い身にも分かるだろう。
「成長したいなら、牛乳飲みなさいよ。
あと甘いものばかり食べないで、バランス良く食べなさい。いいわね?」
「後はどうかしたい? 祭の神社って色々とあるけど。」
- 448 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/01/03(火) 21:56:29 ID:WVrfsEdY0
- >>447
「その…いろいろなこと…みてきたからなの」
【少し顔を俯けて言う。でも笑顔になるのはすぐだった】
「あう、そっかなの…だいじょぶだよねなの…」
【気配を察して話を切り上げていく】
「あうー。すききらいはしないけどなの…
おいしいのならなんでもたべるの!」
【笑って返す】
「…あうー。なにかあそべるのあるのかなの?」
【そう言って周りを見る】
- 449 :セシリア:2012/01/03(火) 22:07:39 ID:0DGoez6Q0
- >>448
「悪いわね。聞きたいことが沢山あるでしょうけど、今日は答えたくない。……かな。
私も、アンタに聞きたいことが色々とあるのだけど、今日はやめておくわ。」
「そうね……後、今日は難しいことはやめておきましょう?」
他人にたいして気遣いもできる。色々と見てきた少女を目の前にして。
「次会うことがあれば、その日は色々とね。」
ゆっくりとしたペースで神社の中を歩いていく。
「遊ぶなら……射的とかボールなげとかはあるんじゃない。
別にいいけど、やるからには景品を取るのよ。」
- 450 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/01/03(火) 22:12:24 ID:WVrfsEdY0
- >>449
「あうあう…そっかなの。
『でぃす』もあんまりはなしきかないでおくなの」
【少し首をかしげながら言う】
「かんがえすぎはよくないってことかなの…
ちょっときょうはいろいろかんがえてたかもしれないの…」
【軽く頭を抱えて返した】
「あう、そのしゃてきをしてみるの!
えっと…あそこかなの?」
【そう言って的が書かれた出店の方へ歩いて行く】
- 451 :セシリア:2012/01/03(火) 22:26:11 ID:0DGoez6Q0
- >>450
「そうねぇ……三が日ぐらい、何も考えないで居たいものよ。」
ディスの言葉を聞き、射的屋を探した。
店を見つけると、早足に近寄る。
「射的ね……ちゃんと狙いなさいよ。それと、、怪我だけは駄目よ」
店員にお金を払って、射的の銃を受け取る。
それをそのまま、ディスに手渡した。
「ちゃんと弾込めれる?」
- 452 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/01/03(火) 22:32:08 ID:WVrfsEdY0
- >>451
「あうあう、そうだねなの…
こんなときぐらいゆっくりしたいかなの…」
【ディスはどこか力が抜けたような顔になっている】
「あうあう、これをうてばいいんだねなの!
たまは…えっと…これかなの?」
【そう言って近くにあったコルク栓を摘む】
クシャッ
「あう。やっちゃったの…」
【摘まれたコルク栓はディスの指によってあっという間に平らになってしまった】
- 453 :セシリア:2012/01/03(火) 22:40:05 ID:0DGoez6Q0
- >>452
「美味しいもの食べた上に、遊べるなんて、新年早々アンタ本当に幸せ者ね。」
その傍らで、なんだかんだ言いながら付き合うセシリアであった。
「ほんと素直ね……もう。」
「ちょ、ちょっと……一発無駄になったじゃないの、ドジね。」
「ちゃんと見てなさい、いい?」
ディスから一度取り上げ、弾を入れて見せ、それから返す。
「次からは自分でやりなさいよ。」
「……てか、結局馬鹿力ね。コレを潰すなんて。」
- 454 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/01/03(火) 22:44:02 ID:WVrfsEdY0
- >>453
「うん、しあわせがこのままつづいたらいいの」
【そう言って鉄砲を構える】
「あう…ごめんなさいなの…
あんまりちからいれないようにしようとしてるけどなの…
やっぱりむずかしいの。」
【そう言って弾の入れ方をじっとみて…】
「あうあう、こうすればいいのかなの」
【そう言うとディスの体に巻いていた包帯がうねうねと動き出して】
【コルク栓をつまんで弾を鉄砲に詰めた】
- 455 :セシリア:2012/01/03(火) 23:00:21 ID:0DGoez6Q0
- >>454
「しあわ……せ?」
もしも両目を包み隠す包帯が無ければ、きょとんとした目を見せていただろう。
「なに、今が幸せだってこと?」
「……。」
目の前で、まるで意志を持っているよう動く包帯。
「やっぱり、ね。」
別にこの都市では珍しいことではない。
――『やっぱり』という言葉。つまり、ディスが能力者であると知って、そういう予測があって、付き合っていたのだ。
「ええ……それでいいのよ。後はよく狙って引き金を引くだけ。」
- 456 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/01/03(火) 23:05:43 ID:WVrfsEdY0
- >>455
「…あう?だれかといっしょにいられるのは
とってもしあわせなの!」
【少し不思議そうな顔をしている】
「へんなこといったかなの?」
【ディスも何処かきょとんとした目をしている】
「あうー。こうするのがいちばんだいじょぶなの。
なんとなく、わかってたのかなの?」
【包帯をうねうねと動かしながら返す】
「えっと…どれにしようかなの…」
【引き金の先をいろんな所に向ける…】
「あ、あれがいいかもなの!」
【そう言って向けたのは可愛らしいクマのぬいぐるみ】
- 457 :セシリア:2012/01/03(火) 23:31:18 ID:0DGoez6Q0
- >>456
「さっきも言ったでしょ。
アンタは変なのがいいの。ちょっとビックリしただけ。」
ゆっくりと、首を左右に振る。
「アンタが幸せなら、いいんじゃない。不幸で居るよりはマシでしょ。」
「まあ、ここに弾を突っ込んで、ここを引っ張ればいいの、簡単でしょ。」
「なんか便利そうね、こんなに沢山うねうねしていると、素敵よ。」
指の先で包帯の一つを突いてみる。
「ちょっと……狙うにしては大きくない?
倒して落とさなきゃ駄目なのよ。まあ、なんとかならなくもなさそうだけど。」
「まあ……頑張って。」
- 458 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/01/03(火) 23:38:25 ID:WVrfsEdY0
- >>457
「そっかなの〜。へんなのもわるくないのかなの」
【ほっとして返す】
「うん、それがいちばんだとおもうの。
『でぃす』のしあわせにおもうことが『でぃす』のしあわせなの。」
【そんなことを言いながら鉄砲の使い方をひと通り教わって。】
「あう?そうかなの。」
【チョンと触られて包帯を少しだけ引っこめる。絹のような手触りである】
「うん、なんとかしておとしてみるなの!」
【じっと標的のぬいぐるみに狙いを定め…】
「はっしゃ!なの!」
【引き金を引いた!】
パヒューン ボスッ
【クマの顔面に見事にコルクの弾は命中したが】
「あうー。なかなかたおれないの〜」
【グラグラ揺れているばかりでまだ倒れない】
- 459 :セシリア:2012/01/03(火) 23:50:34 ID:0DGoez6Q0
- >>458
「少なくとも、私は今みたいのが好きよ。
驚かされることばかりで、大変だけどね。」
顔にくっついてる包帯を直すそぶり。
「いちいち言うことが達観してるわね……アンタ、本当は何歳よ。精神年齢はいくつなの?」
「やっぱり、触られると嫌なの……?」
包帯の様子を側で観察して。
「しょーがないわね。……よいしょ。」
ディスの腰に両手をあて、持ち上げる。
「これなら、もうちょっと近くで狙えるんじゃないの?」
高めに、さらに前に詰めるように持ち上げた。
- 460 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/01/03(火) 23:55:50 ID:WVrfsEdY0
- >>459
「そっかなの〜。
いまみたいにいられたらいいの〜」
【そう言って頷く】
「うー…おとしなの?
かぞえたことないからよくわからないなの…」
【そう言って悩み始める…が、どうにか射撃に集中しようと考える】
「あうー、さわりにくるひとはあんまりいなかったから、ちょっとびっくりしただけなの〜」
【慌てて包帯を元の位置に戻す。】
【しかし、持ち上げられて少し戸惑い始めた】
「あう?あうー。だいじょぶなの?」
【少しセシリアを気にしているようだが…】
「あう、でもここからならねらえるかもなの!」
【喜んで狙いを再びつけた】
- 461 :セシリア:2012/01/04(水) 00:13:03 ID:0DGoez6Q0
- >>460
「……アンタの好きなように生きなさい。 アンタなら、みんなが応援するでしょ。」
小さく、頷き返した。
「まあいいわ、何歳だろうと関係ないもんね。」
「持ち上げられるのも嫌?
一応、アンタが言ってくれた『友達』なりに頑張ってるのよ?」
「でも、上手くいってなかったらごめんなさいね。」
「ん、大丈夫よ。アンタ軽いから。
さっさと落としてしまいなさい。元値はとりましまょ」
支えは意外と安定している。なかなか力持ち。
- 462 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/01/04(水) 00:21:38 ID:WVrfsEdY0
- >>461
「うん、そうしていくの」
【小さく頷いた】
「あうー。おとしがわかんないのはしんぱいだけどなの…
でもへいきだよねなの!」
【そう言って笑いかける。】
「あう、だいじょぶなの。へーきならなの!
それじゃあ…おとしにいくからなの」
【そう言ってディスはじっとクマのぬいぐるみの顔に狙いを定めて】
「またはっしゃなの!」
【引き金を引く】
パヒューン ボスッ
【2発目が命中した瞬間、ぬいぐるみは後ろにゆっくりと勢いがつき】
「あ!やったの〜!」
【ゴトン、と棚の後ろに倒れこんだ】
- 463 :セシリア:2012/01/04(水) 00:32:47 ID:0DGoez6Q0
- >>462
「ほんっと元気ね。少しでいいから元気分けてくれない?」
短いため息をつく。
「まあ、大した問題じゃないんじゃない? 自分の歳が分からなくて死ぬ人間は居ないわよ。」
笑いかける度に、困ったように包帯を直すそぶりで答える。
「はい、じゃあ頑張って。」
しばらくして、クマの人形が落ちたようである。
それをもって、ちょうど弾切れとなった。
「じゃあ……よいしょ。」
ディスをその場に下ろし、鉄砲を店に返させる。
そのかわりに、人形を受け取った。
「はい、これ。人形よ。」
その人形は、そのままディスに手渡した。
「……うん。」
腕時計に目を落とすセシリア。真面目な表情を浮かべる。
「今日は、おしまいよ。私、色々としないといけない時間になったから……。
また会いましょう。今日は気をつけて帰りなさいね。」
人込みの中へと消えていくセシリア。途中、一瞬だけ振り返った。
//すいません、ではこれで終わりとさせてもらいます。
//お疲れ様でした。ありがとうございました。
- 464 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/01/04(水) 00:36:14 ID:WVrfsEdY0
- >>463
「あうー。わけられるなら
いっぱいわけるなの!」
【にっこりしていった】
「うん、それならあんしんなの!」
【少し嬉しそうだ】
「やったの!ちゃんととれたの!
えっと…ありがとなの!『せしりあ』のおかげでちゃんととれたの〜」
【そう言ってくまのぬいぐるみを受け取り、抱え上げた。】
「あうー。わかったの!またあおうねなの〜」
【大きく手を振ってディスはセシリアを見送った】
「ふう、『ろざりあ』にみせてあげよかなの。よろこんでくれるかなの〜」
【ディスはとても楽しそうに神社を離れ、帰路についた】
//こちらこそお疲れ様でしたー
- 465 :月夜:2012/01/05(木) 23:16:27 ID:dL8H4NjE0
- 「……なーんか最近夜の散歩が日課になってる気がする」
いつも通り眠気がくるまで辺りを散歩していた月夜は、複雑な面もちで呟いた。
最初は辺りの地理を把握しておくという目的もあったが、大体の道がわかるようになってからは完全に惰性だ。
こんな時間帯に出歩いていたら不審者に間違われても仕方ないというのに、なぜ続けているのだろうか、
試しに自問してみるが、当然答えはでない。
「……なんでだろうなあ……」
空を見上げて、答えのでないその疑問をもう一度呟いた。
- 466 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/01/07(土) 23:48:11 ID:oB5LASG.0
- 「あれ……?」
公園。
爆破事件による傷痕は完璧に消え去り、
周囲を歩く人々は平穏の時を過ごしていた。
その中で、ゴスロリ服に身を包んだ少女はベンチに座り、
手持ちのカバンからあらゆる物を引っ張り出してそれらを傍らに広げていた。
それは、何かの液体が入った小瓶であり、鉄の針であったり、
フランスパンもあれば、クワガタも入っていた。
「……無い」
- 467 :ガルテラ:2012/01/09(月) 21:31:26 ID:ZFCfPuPg0
- 「王手っす」
「え?あ……参りました……」
ある公園の屋根と机付きのベンチで、五人の黒子のような人影と、
カンテラと大きなトランクを傍らに置いた男が将棋に興じていた。
「ガルさん弱いっすねー。
俺達全員ガルさんに勝っちゃいましたよ」
「将棋が私と相性が悪いんです。
もうゲームは終わりです。皆さん城に帰って持ち場に戻ってください」
「このー負けたからってー」
黒子達は勝負が終わるといそいそと将棋板を片付け始める。
ばたんとトランクが開き、黒子が三人、そこに飛び込んだ。
どういう仕組みになっているのか、三人の黒子は消え去ってしまった。
「……あなた達は?」
二人の黒子は、将棋を片付けてもまだベンチに座っていた。
「俺たちはこの後も仕事無いっすから。ほらほら、俺がかばん持つっすよ」
「はいはい……じゃあ行きましょうか」
そう言って公園を出て再び夜の街を歩き始める三人。
やがて繁華街にたどり着くと、ふと思い出したように男が振り向き、黒子二人に指を突きつけた。
「そうそう、次はチェスで勝負ですよ」
「こだわってる」
「ああ、こだわってるな」
- 468 :ディス ◆5YtYk7gJuY:2012/01/10(火) 00:40:26 ID:WVrfsEdY0
- 【公演に設置してある箱庭のポータル】
ヴンッ…
【一人の少女が実体化して帰ってきた】
「…ふー…とりあえずかんじはおぼえてるみたいなの…」
【全身に包帯を巻いた小さな少女】
「でもやっぱりきたえてるってかんじはしないなの…
おそとじゃないとだめってことかなの…」
【少し残念そうな顔である】
「あう、いまはあんまりふかくかんがえちゃだめなの!
ひとやすみひとやすみなの」
【そう言って近くにあったベンチに座って一息ついた】
- 469 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/01/10(火) 00:52:11 ID:oB5LASG.0
- >>468
「よぉ」
ディスの背後から肩を叩き、それと同時に声をかける。
漆黒の衣服なのは何時もと同じだが、今日はパンツルックで、後ろ髪を縛っている。
「今日も特訓か?」
- 470 :ディス ◆5YtYk7gJuY:2012/01/10(火) 00:57:15 ID:WVrfsEdY0
- >>469
肩を叩かれたのにちょっとびっくりしていたが、
「あう?『ぜおら』こんばんわなの〜」
【その相手がゼオラであることがわかるとすぐに安心した顔になった】
「うん、とっくんしてたの…
でもやっぱりおそとじゃないとつよくなったってかんじがあんまりしないなの…」
【軽くため息を付いて返す】
- 471 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/01/10(火) 01:02:06 ID:oB5LASG.0
- >>470
「此処は結構精密にコピーしてくれるみたいだが……」
ディスの言葉を聞いて手を握ったり腕を伸ばしてみたり。
首をかしげるが、視線に入ったポータルを見て頷き。
「成程、仮想の相手じゃ満足行かないって感じだな」
そのままポータルを眺めながら返す。
- 472 :ディス ◆5YtYk7gJuY:2012/01/10(火) 01:06:37 ID:WVrfsEdY0
- >>471
「あうー、そうなの…
なかにいるときはかんじはするんだけど…
おそとにでたらやっぱりつよくなってるかどうかがよくわからないの…
あんまりつかれないからかなの…」
【自分の手も伸ばしたり広げたりしてみる】
「でもおそとでたたかうのはあんまりよくないしなの…
とっくんはなるべくめいわくかけないようにしてるなの」
【時々素振りをしている姿が公演で目撃されている…恐らくなるべく人が近くに来ない所でやっているのだろう】
- 473 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/01/10(火) 01:14:03 ID:oB5LASG.0
- >>472
次の言葉を聞き、またも悩む。
腕を組んで考える様子を見せて、
「ディス、あの中でしたこと、覚えてるか?」
腕組みの片腕だけを伸ばし、問いかける。
視線はディスに、伸ばした指先はポータルに。
「動いた感覚を残す為に、動いたことを覚えるんだ」
- 474 :ディス ◆5YtYk7gJuY:2012/01/10(火) 01:18:22 ID:WVrfsEdY0
- >>473
「…あのなかでしたこと?」
【ディスは眼を閉じてゆっくりと考える】
「えっと…けんをつかっていろいろしてたなの…」
【そう言って自分の体につけている剣帯から銀の刀を抜く】
「うーん…ふりかたは…こんなふうに…」
【そう言って自分の身長ぐらい有りそうな銀の刀を軽々と振る】
「あうあう、あとはほーたいもつかってたかなの…
まぜてたからちょっとむずかしいけどなの…」
【更に体中の包帯もうねうねと動かし始める。肝心の剣の型はやはり上等とは言えないものである】
- 475 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/01/10(火) 01:27:21 ID:oB5LASG.0
- >>474
「覚えてるなら十分だ。
動かした感覚……残ってねぇか?」
漆黒の炎を纏った腕を横に振りぬき、
その流れを活かしたまま足を振りぬき一回転する。
恐らく、この少女はこの様な事をあの中でやっていたのだろう。
「お前、その剣を使うのか?」
- 476 :ディス ◆5YtYk7gJuY:2012/01/10(火) 01:32:18 ID:WVrfsEdY0
- >>475
「かんかく…うーん、かんがえてやるとちょっとつかれるけどなの…」
【そう言って剣を振りながら包帯を動かし、攻撃するような動作を行った】
「こんなかんじかなの…」
【少し自信なさそうだ】
「あう、そうなの…だいじなものだからちゃんとつかってあげないとなの」
【銀色に光る刀は、一見するだけで美しいシロモノであることがわかる輝きを放つ】
- 477 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/01/10(火) 01:42:16 ID:oB5LASG.0
- >>476
「考え無しに動くってのは良くねぇな」
振り返り、ディスの一連の動きを眺めながら。
「お前位の腕力なら殴った方が良い気もするんだけどな……まぁ、いいか」
輝きに対し目を細める。
どんな性質の物であっても、光には弱いようだ。
- 478 :ディス ◆5YtYk7gJuY:2012/01/10(火) 01:59:06 ID:WVrfsEdY0
- >>477
「あうー、やっぱりいろいろかんがえてうごかないとだめなんだねなの…
なんかからだがかってにうごいてってかんじなことがおおいからなの…」
【頭をかいて申し訳なさそうに言う。本能が赴くままにということだろうか】
「うーん、それをしてもいいんだけどなの…
もらったものだからしっかりつかってあげないとわるいからなの…」
【どうやら思い入れが深いようである】
- 479 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/01/10(火) 02:10:49 ID:oB5LASG.0
- >>478
「俺は武器を使わねぇからそこは教えられねぇ……。
剣とか戦術とかはレラに任せればいいんだがアイツは何処で遊んでんのか」
腕を組んだまま首を振って悩ましげな表情をする。
「……やっぱ、子どもには難しいかぁ」
ディスの顔を見ると、ニヤリとした笑みを浮かべてディスの頭をポンポンと叩く。
そのままポータルへと歩いて行くと中に消えてしまった。これからさらに練習を続けるのだろう。
//お疲れ様でした。二時を回ったので、ここまでで!
- 480 :ディス ◆5YtYk7gJuY:2012/01/10(火) 02:25:57 ID:WVrfsEdY0
- >>479
「あうー…『れら』にあったらつたえてほしい…かなの?」
【ちょっと期待する顔である】
「ちょっとむずかしいかもなの…
『でぃす』ももっととっくんしてみるねなの!またねなの〜!」
【そう言って手を振り見送っていった】
「ふぁー…もうひとがんばりしたいけどなの…」
【そう言って軽くあくびをすると、ディスは公園から去っていった】
//お疲れ様でしたー
- 481 :甲/in異能都市:2012/01/11(水) 23:24:43 ID:tw1V9icw0
- 【都市部:移民マーケット】
「おばちゃん、肉まん特大な」
湯気立つ蒸篭から取り出される大きな肉まんを恰幅の良いおばちゃんが包む
『350ね』「はいよ」
財布の小銭と引き換えに包みを受け取った甲は
「うー……あったけー」
手にした肉まんの温かさで冷えた両手を温める
都市部――貿易港に隣接された広場にて不定期に展開されている『移民マーケット』
海を渡ってやって来た品々が所狭しとひしめき合い
多国籍の風情を醸し出している
賑わう人波の人種も様々で、交わされる言語にも聞きなれないものが混ざる
「――はむ」
ちなみに甲が口にしている肉まんも舶来品
かの海獣『リヴァイアサン』の肉を使用しているとの触れ込みだが
真偽は定かではない
「(リバ肉……
じゃ、ねぇなこれ……それっぽいフツーの肉まんだわ……)」
まぁ、美味いから良いか何てポジティブに
肉まん片手に屋台を冷やかしていく事にした
「(金はそんなにねぇけどなっ)」
- 482 :名も無き異能都市住民:2012/01/11(水) 23:35:00 ID:SSMHlh/20
- >>481
――カッ
甲の足元にのコンクリートに軽い音を立てて突き刺さる、甲殻。
あの忌々しい怪人のものに間違いない。
しかし、その姿は見えず飢えた獣の気配だけが甲を取り巻いている、が……。
奇妙なことに、仕掛けてくる様子がない。
怪人は殺戮を好む種だというし、以前会ったアレは特別、
そういった事に躊躇がなさそうに思えた。
誘っている、のだろうか。
- 483 :甲/in異能都市:2012/01/11(水) 23:54:10 ID:tw1V9icw0
- >>482
「……ち」
足元に突き立つ見覚えのある甲殻に、舌打ちをひとつ
あの夜、自分を侵食した――あの蛇型怪人の物だ
「(当てる気のねぇ攻撃、か……ヤロウ、一丁前に誘いか?)」
先ず、罠であろう事が頭をよぎった
あの夜見せた狡猾さは本物だ……誘うべき場所に誘って、確実に仕留めに来る可能性が高い
そして次にその行動に違和感が沸いてくる
この甲殻の主は間違い無くあの時の怪人“スケイル”だ
だとすると……以前見せた見境の無さが感じられない
この大人数のマーケット内で甲一人を狙う理由――その理由には心当たりが見当たらなかった
「ま……移動するってんなら、その方が好都合だがな」
周囲を巻き込む事は由とは出来ず
足元に残った甲殻を踏み潰すと――眼鏡を外す
左眼に邪気眼の証である緑色に煌めく『螺旋模様』が浮かび上がる
「やれやれ……鬼が出るか、蛇が出るか……まぁ、蛇の方か」
予想以上に早く訪れた“再会”に
昂る身体を
逸る心を抑えつつ
赤いマフラーは人垣をすり抜けて――より暗がりへと歩いて行く
この先はコンテナ地帯
死角も多く、何よりこの時間にはほとんど人は訪れない
- 484 :スケイルエキドナ:2012/01/12(木) 00:07:45 ID:SSMHlh/20
- >>483
積み上げられたコンテナによって光源が遮られ、視界の悪い地帯に足を踏み入れた甲。
いたるところにコンテナや作業用機械によってできた遮蔽物・高低があり、
奇襲をかけるにはこれ以上ないロケーション。
――シューッ、シューッ
四方から聞こえる、獣の息使い。
たった一人に向けられる集団的悪意。
甲が、少し開けた場所に差し掛かったときだった。
『グルルルル……。』
『ギッ……ギギッ……!』
ある者は闇の中から、ある者はコンテナを伝って。
下級怪人が甲を包囲するように集結――数は20体は下らない。
そして最後に、甲の前方、コンテナの上に護衛と思しき女怪人2体を引きつれ
スケイルエキドナが降り立った。
『カ……ブ……ト……。』
彼女は、奇襲を仕掛けるでもどこかに隠れて部下を延々と嗾けるでもなく、
甲の前に堂々とその体を晒している。
- 485 :甲/in異能都市:2012/01/12(木) 00:18:53 ID:tw1V9icw0
- >>484
取り囲まれるのを眼で、肌で感じながら
現れたエキドナに向き合う様に足を止める
「よう、ご指名かい?……はて、名前を名乗った覚えはねぇがな」
数は20前後――これは、以前相手取った雑兵か
蛇怪人の周りの2体……こっちは、雑兵よりも格が上だな
「名前を読み取る特殊能力でもあんのか……
それとも――お前ん中に、俺に関する記憶でもあるのかね」
仕掛けて来る様子を見せない相手にこちらから動く事は出来無い
何というか
それ以前に目の前の怪人の一連の動作に
以前とはどこか違う様子が見えた
襲撃というより――接触という風な意味合いが見える
最も
次の瞬間襲ってくるかも知れない相手だという事は承知しているので
警戒のレベルは最高潮で保っている
- 486 :スケイルエキドナ:2012/01/12(木) 00:36:25 ID:SSMHlh/20
- >>485
獣じみた蛮声をあげていた下級怪人たちは、
エキドナが姿を現すと共にまるで己の主人の言葉を待つ奴隷たちのようにしんと静まり返る。
その様子は、訓練や経験などでは到底たどりつきえない、何かの強力な『縁』を感じさせる。
「カ……ブ……ト……キョウリョク、ナ……イノウシャ……。
ワレラ、ニ……クダレ……。」
途切れ途切れに紡がれる言葉。
たどたどしいながらも、女性らしい穏やかな声質で語りかけるそれに敵意はなく、
寧ろ、知的な人間との交渉を思わせる穏やかなものであった。
「……オマエホド、ノ……モノナラ……スグニ、ヨイ、チイ……ツケル……。
クイーン、ノ……タメ、オトナシク、ソノミ、ヲ……ササゲヨ……。
イタミ、ハ……ナイ……スバラシイ、チカラ……エラレル……ゾ……。」
以前の戦闘でも、この怪人は甲へと降伏するように促してきた。
甲が目撃した怪人の中でも、一等知性が低く人間に仇なす存在であることは間違いない存在だが、
それでも交渉を持ちかける程度の分別は持ち合わせていると見える。
そういえば、黒沢小百合も人材の確保には熱心だったか。
敵対者には容赦が無いが、ある程度実力を認めた相手には甘くなる性質――。
酷似している……。
- 487 :甲/in異能都市:2012/01/12(木) 01:10:53 ID:tw1V9icw0
- >>486
「意思の疎通が……出来てる、とは言えんなァ」
はぁ、とため息を吐くと頭を掻く
「チイ…地位か、成程お前らのコミュニティーへのスカウトをしてんのか
クイーン……女王ね、そいつがお前らのボスってところかな、そんで仲間になりゃあ力をくれると……」
断片的に紡がれる言葉を噛み砕く様に復唱し、理解に勤める
「(これが、コイツの殺戮本能以外の“個性”かな……
クイーンに絶対服従っつー感じなのは、怪人共通って訳じゃなさそうだしな)」
さて
集まった情報により
バラバラだったパズルのピースが合わさっていく
『部下を生み出す異能』
『甲殻の下の瓜二つの顔』
『俺の事を知っている記憶』
『怪人能力を与える、クイーンなる存在』
「(後は……声と、話してる時の感じか――まぁこりゃあ只の勘だけど)」
合わされたピースが導き出す答え
コイツは
怪人として力を与えられた――『黒沢小百合』本人、だ
「……やれやれ、何やってんだよ……ったく」
頭を抱えてうつむく
しかし次の瞬間――がばっと勢い良く顔を上げ
「断るッッ!!」
夜の港に響く程の声で怪人へのスカウトを蹴り飛ばした
「何やってんだテメェはッ!!
都市護るって意気巻いてた奴が何怪人とかなってんだよ馬鹿野郎!!」
ビシッとエキドナに指をさして矢次早にまくしたて
「あぁもう何?蛇とかお前!似合い過ぎだろうが!まさかノリノリでなったんじゃねぇだろうな!!」
激昂する甲に呼応する様に
頭髪と瞳が徐々に赤く染まっていく
「ち……まぁ、元気でなによりだ
話の続きはその殻をお前から引き剥がしてからにする……!」
ジャリ、と地面を踏み締めて前に進む
交渉は見事に決裂したようだ
- 488 :スケイルエキドナ:2012/01/12(木) 20:51:15 ID:SSMHlh/20
- >>487
「オロカモノメ……チカラ、ノ……サ……
オモイシラセテ……ヤル……ゾ……ッ……!!」
戦闘態勢をとる甲を苦々しげに見つめ、牙をむき出しにするエキドナ。
護衛役の2体が彼女をかばうように前に出ると、エキドナはさらに、
後頭部から生える長い蛇の尾をコンテナに叩きつけて跳躍し甲から少し距離をとった。
「モノドモ……カカレ……アシ……モギトレ……。
ウデ、クイチギレ……ウゴケナクシテ……ワガ、シモベニ……!」
オーケストラの指揮者のように腕を振りかざし、エキドナが叫ぶと
今まで彫刻のように静かにその場にたたずんでいた下級怪人たちが一斉に駆け出し
四方八方から、次々と甲へ躍り掛かる。
以前戦った下級怪人と差異は見られないが、またあのヒットアンドアウェイ戦法を取られるのはマズい。
- 489 :甲/in異能都市:2012/01/12(木) 22:11:25 ID:Lco.ksP60
- >>488
「むざむざ敵に取り込まれるたぁ…大方また意地でも張って無茶したんだろうよ」
距離を取られる
成程、前回の戦闘経験が活きているらしい
それもそうだろう相手のベースは『黒沢小百合』
必勝の手段は手堅く使ってくる――
「さぁて――行くぜ……!」
キィイイイイ……!!!
甲高い音を上げる、左眼の螺旋模様の輝きが一段と増し
360度から迫り来るエキドナの従者をぐるりと一瞥する
「――」
肉薄する群れの中心で構えた拳は
――ドォンッ!!!!
“足元の地面”を激しく打ちつけた
『回転する衝撃《アクセル・インパクト》―――!!!!』
“回転能力による衝撃の拡散”
地面に打ち込んだ拳打の衝撃が甲の周囲を廻り、奔り――拡がる
拡がる程に響き合い、威力を増す衝撃はやがて
「弾けろ……!!」
迫る怪人群に牙を剥く
ドドドドドドドドドドドドドドド――――ッッ!!!!!!
甲の周囲の地面から、無数の拳打が打ち込まれる様な衝撃が放たれた――!
- 490 :スケイルエキドナ:2012/01/12(木) 22:25:12 ID:SSMHlh/20
- >>489
エキドナの繰り出す下級怪人は特殊な能力こそ持たないが
人間には無い、強靭な身体能力が持ち味。
『グギッ……!』
『ギャアッ……ア……!』
彼女らの約半分は、地面から伝播する強烈な衝撃に穿たれバラバラに砕けたが――。
『キシャアアアァッッ!!!』
残りは攻撃を察知しその身体能力を活かして跳躍、
上空から鋭い爪をギラつかせ飛びかかってくる。そして……。
――バラララッ!!!
雨あられのように飛来する例の甲殻弾。
繰り出すのは、エキドナと護衛の二体。上、横からの多角攻撃だ。
- 491 :甲/in異能都市:2012/01/12(木) 22:36:24 ID:Lco.ksP60
- >>490
「進行方向が開きゃあ――大成功…っ」
怪人が跳躍した事により開ける視界
上空から爪を振るう群れを置き去りにするように駆け抜ける
次の瞬間飛来する“甲殻弾”
肉体を侵食された苦い記憶が頭をよぎるが――
「――させるかッ!!」
振り払う様に前方の空間を“掴む”と
“風を回転させる”
吹き荒れる暴風が甲の周囲を渦巻き、甲殻弾の軌道を逸らす
「“邪気眼使い”に二度同じ手が通じると思うな……!!」
姿勢を更に低く
駆ける速度を更に上げ――目標、エキドナに向け一直線に迫る
- 492 :スケイルエキドナ:2012/01/12(木) 22:47:58 ID:SSMHlh/20
- >>491
――ピシッ、ピシッ!
暴風による隔壁に阻まれ、甲まで至らず四散する甲殻。
弾丸の如く駆け出した甲とエキドナを阻むものは、例の2人組みの怪人しかいない……が。
二人組みの怪人は、道を明けるように左右へと飛ぶ。
すると――。
『クヒャァッ!!!』
『クヒィッ!!!』
――バチィィッ!!!
二人の怪人の間に、稲妻にも似た強力な力場が発生。
まるで、網のように甲の進行方向を塞ぐ。やはりあの二体はほかとは違うようだ……。
- 493 :甲/in異能都市:2012/01/12(木) 22:59:34 ID:Lco.ksP60
- >>492
「(あれは――――マズい)」
進行方向に展開された“稲妻の網”を
触れてはならない、と直感が判断する
――ヒュガッ
“網”を更にはエキドナ達三人を飛び越す様に身体が前方に跳ね上がる
エキドナを含む怪人三体を眼下に収め
「(先ずはあの二体をやらなきゃ……届かんか!)」
目標を護衛二体の内、一体に定める
その一体に向けた右拳が
『螺旋――』
ギュィイイイイイイイイ……!!!!
甲高い音を上げて回転する
『――噴射跳躍拳ッ!!!!』
――ヒュドッ!!!!
回転する右拳が“ロケットパンチ”として撃ち出された!
- 494 :スケイルエキドナ:2012/01/12(木) 23:19:45 ID:SSMHlh/20
- >>493
『ア゛……ッ……!』
――噴射跳躍拳が、怪人の腹部にめり込み甲殻をバキバキと破壊する。
しかし、拳が捕らえたのは護衛の片割れではなく、
彼女を守るように身を投げ出した下級怪人。
既に、先ほどの生き残りがエキドナと護衛の周りに集結している。
「スバラシイ……オマエ、ノ……ウゴキ……ミエル……!
ニンゲン、ノ……カラダ、デハ……コウハ……イカナカッタ……!!」
その中で自分の体をいとおしげに抱きしめ、恍惚の声をあげるエキドナ。
誰にも言わなかったが、エキドナの素体となった小百合は己の脆弱さを密かに嘆いていた。
敵に肉薄されれば逃げることも、戦うこともできず、足手まとい。
高速で動く相手には感覚が付いていかず、効果的な対応ができない。
怪人と化し、強化された体はその弱点をたしかに克服していた……が。
――己の新たな力に酔いしれる彼女は、まだ失ったものに気づいていない。
「ユケ……シモベタチヨ……ヤツ、ヲ……ココヘ……。」
再び始まる進撃。下級怪人は補給され現在20体ほどだろうか。
- 495 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/01/12(木) 23:27:47 ID:HnkBBDEo0
- 突如として、轟音が響いた。コンテナの数個が吹き飛び辺りを転げ回る。
吹き飛んだコンテナがあった場所、そこを通って一人の男が顔を出した。
「……んっんー? ここか? ここでいいのか?
港って聞いたはいいが、場所がわからなかったけど、
騒ぎの音を元に辿りゃ、意外と簡単に着けたな」
辺りを見回し、クククと笑う。
「なーるほど、量産型がいっぱいいやがる。そんでアイツが……はいはいはいはい」
歩を進め、両者の間へ。
そして振り向き、
「久しぶりだな、甲」
- 496 :甲/in異能都市:2012/01/12(木) 23:40:24 ID:Lco.ksP60
- >>494
「――――ちィ!」
目標を捉えきれなかった右拳を即座に戻し、着地
「(反応が、疾い……!手駒の動かし方も効果的だ……!)」
そして舞台は振り出しに戻る
エキドナの周囲に固まる怪人の群れに吐きつけるように舌打ちをひとつ
「……さぁて、どう崩したもんか」
その軍団はさながら城壁の様に見えた
そういえば、黒沢と異能都市で始めて闘った時も、アイツ城壁出してたなぁ……何て考えながら
「隙を、こじ開ける」
再び走ろうと足を出した時
>>495
「――」
その声に――その姿に足を止める
「おう、久しぶり……元気そうで何よりだ」
「銃寺森――クロス」
再開を噛みしめる様にその名を呼んだ
そして隣に立つ
「で」
顎に手を当てて
「アイツ、黒沢だ」
ピッとエキドナを指す
「やるぞ」
説明はそれで十分と言わんばかりに
クロスの横で構えを取る
- 497 :スケイルエキドナ:2012/01/12(木) 23:52:25 ID:SSMHlh/20
- >>495-496
――ズザッ!!
今にも甲へと飛びかからんとする下級怪人たちが、
轟音に即座に反応し、陣形を変更。
クロスと甲、両者に対応できるよう防御体制を組む。
「ク、ロ……!」
人海の奥でエキドナが静かに唸った。
その意図は歓喜か、はたまた驚愕か。
甲殻に覆われた彼女の顔から、それをうかがい知ることはできない。
「オ、ォ……ォ……!」
――ドガァッ!!!
吼える。破壊音、飛び散るコンテナの欠片。
スケイルエキドナは、下僕たちと共に二人へと突撃を開始した。
- 498 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/01/13(金) 00:03:35 ID:HnkBBDEo0
- >>496
「テメーも相変わらずで何よりだ」
クロスも同じく、甲の横で構える。
「で、だ。やっぱりここは本体を叩くのが定石だよな。
だが見たところ、あの軍団共がそれを邪魔してるワケか。
なるほどな……よし、あのザコ共は俺に任せろ」
>>497
迫り来る軍団
それを前に、クロスは笑う。
バッドエンドトリガー
「 紅獄罰骨 、発動!!」
周囲が紅い邪気で溢れる。
「金属構築! 凶器生成!!」
たちまちクロスの周りに、ありとあらゆる種類の武器が現れる。
その一つ、巨大な金棒を手に持つと、軍団の前線に向かってブン投げた!
「オラ来いよ量産型共! 在庫は無限にあるぜ!!」
- 499 :甲/in異能都市:2012/01/13(金) 00:12:36 ID:Lco.ksP60
- >>497
「落ち着きが無くなってきたな、オイ」
クロスの登場にざわめき立つ群体
強固な城壁が、左右に割れた
「良い感じじゃねーの」
壁が拡がる、という事は部分的には薄くなる
一人ならば、動きでどうにかしようと企てていた状態が展開された
>>498
「その通り、いやぁ……やっぱ対群戦は苦手でなぁ」
苦笑して頭を垂れる
「助かる」
クロスの能力解放と同時に、体勢を低く取る
「『螺旋眼』起動――!!」
溢れる紅色の邪気の横で
赤色の邪気が渦巻く
「――――GO」
それを足に回すと、クロスが金棒を放るのと同時に一直線に駆けだした
- 500 :スケイルエキドナ:2012/01/13(金) 00:32:01 ID:SSMHlh/20
- >>498
凶悪な唸りをあげながら飛来する金棒は、
かわしきれなかった2体の下級怪人の甲殻を粉砕して貫き、
有り余る勢いで背後のコンテナへと怪人の残骸を引っ掛けたままめり込んだ。
「ミエル……!アア、タノ……シ、イ……!!
ク、ロ、……カブト…………オマエラ……コロセルゾッッ!!!」
しかし、エキドナは笑う。
人間であった頃では、決して感じられなかったスリリングな感覚が
『小百合』の精神を高揚させる。
>>499
「コロセッ……コロセッ……!!!」
号令の元、甲を迎撃すべく弾丸のように飛び出す怪人たち。
それに混じり、同じく駆け出すエキドナとその護衛。
まず、甲と接触したのは護衛怪人であった。
『『クヒャヒャッッ!!!』』
目障りな笑い声と共に、先ほどと同じ甲を包み込もうとする。
同時に、飛びかかる数体の下級怪人。
前方を塞ぎ、再び上空から!
- 501 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/01/13(金) 00:42:28 ID:HnkBBDEo0
- >>499>>500
まだ数の多い怪人を前に舌打ち。
「ああ、やっぱり数は後から補充可能なのか?
やっぱり厄介な能力も引き継いでんな!」
そう言いつつも、今度は大量の凶器を指の間に挟むように持ち、
「言っただろうが!! テメェらの相手は俺だァ!!」
クロスの金属操作能力をもってして、弾丸を撃ち出すように射出。
自身の目の前にいる敵よりも、甲の前にいる怪人に向かって攻撃を放った。
「突っ走れ! 甲!!」
- 502 :甲/in異能都市:2012/01/13(金) 00:46:01 ID:Lco.ksP60
- >>500
「お前等は、アイツが任せろっつったんだ」
翻る護衛怪人と、複数の下級怪人
しかし甲は――それを意に介さず
――ザザァアア
地面を滑り、上空からの襲撃を潜り抜ける
道は開く
そう確信し、拳を構えた
>>501
『噴射――』
右拳に鮮やかな赤い邪気が迸り
『――跳躍拳ッッ!!!』
壁の向こう“エキドナ”に向けて拳を撃ち出した!
- 503 :ガルテラ:2012/01/13(金) 00:56:11 ID:ZFCfPuPg0
- 遥か遠くの、しかしコンテナ地帯が見えるビルの上。
黒いロングコートを着た男が、エキドナと甲、クロスの戦いを見ていた。
「……流石に、戦闘に馴れた実力者を二人も相手にするのは分が悪いか?」
男は立ち上がり、突如全身が焔に包まれた。
腰にぶら下げていた二振りの抜き身の逆刃刀を構えた。
「絶熱……!」
全身の焔が刀に燃え移る。
同時に跳躍した。
>>501-502
突如、真っ赤な焔がクロス、甲とエキドナの間に飛び込んできた。
焔は甲に向かい、その拳を受け止めたのは、焔を纏った二振りの刀。
「実質二対一は見ていられないな。
……最も傍から見ると二対二十数なんだろうが」
ロングコートを羽織った、二振りの逆刃刀を構えた男が、焔の源泉に立っていた。
- 504 :スケイルエキドナ:2012/01/13(金) 01:07:12 ID:SSMHlh/20
- >>501
甲の目前を防ぐ、数体の怪人。
それらに雨あられと打ち込まれる弾丸。
さしもの怪人も、この弾幕にたじろぎ一瞬竦んだところを
バタバタと討たれ、斃れていく。
しかし、例の護衛二体は自分の周囲に球形のエネルギー波を展開し、それに耐えている。
>>502
クロスの支援射撃によって、突破口が開く。
厄介なエネルギー防御壁を張る個体も、防御に忙しいらしく動きをとめている。
吸い込まれるように、エキドナへ向かう跳躍拳。
「カ、ブ……トォオオォッッ!!!」
空中で、高速回転。
そのままアルマジロのように体を丸め突撃。
拳をくらいつつ、そのまま甲へと突っ込む!
- 505 :レスト:2012/01/13(金) 01:09:38 ID:ZFCfPuPg0
- //すんません、名前間違えてんの今気づいた!
- 506 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/01/13(金) 01:30:15 ID:HnkBBDEo0
- >>503>>504
突如として現れた炎に、一瞬全身がこわばる。
「ああ? 何だオマエは? っていうか見るからに炎熱使いっぽくて、
俺としては是非とも相手したくない奴なんだけどよォ……」
そう言いつつも新たに武器を数本構築し、周囲に突き刺しておく。
「さァて、ややこしくなってきたぜ。混戦になりそうだな、今のうちに準備しておくか」
す、と、息を吸い込む。
そして、詠唱開始。
――肉の杯は塵となり、骨は砕けて灰となる
Dead bodies on the ground.
――しかし御霊は残響し、魂響となりて囁き叫ぶ
The ghost crawled out, the ghost crawled in.
――喰らわれし者の信念は、喰らいし者の糧となり、
His appetite is filled up.
――腹で満ちる夢によって我が幻想を現創す
And he realize one's long-cherished wish.
- 507 :甲/in異能都市:2012/01/13(金) 01:43:34 ID:Lco.ksP60
- >>504
火花を散らす甲殻と拳
「浅い、か――ッ!!」
打ち込んだ拳を意に介さず突き進む姿に舌打ちしつつ
迎え撃つように、廻り――跳ぶ
回転するエキドナの身体に相反する回転を乗せた蹴りを打つ
「――く、の……らァッ!!!」
軋む足
弾かれる身体
突撃を僅かに逸らし――地面に転がる
>>503
「――」
目に焼きつく程の赤い焔を見た
「――――ち、い!!」
次の瞬間、焔は形を変える
第三者の介入だ
そう気付いた甲は跳ね上がる様に後方に跳んだ
視線は前方に
焔が男の形をとる所を確認した
この状況、エキドナに与する様に立つその存在は
「新手の怪人か……」
こちらに傾いき始めた天秤を再び揺るがす
>>506
後方、クロスの脇に戻る甲
「……スマン、しくった」
メンゴ、と平謝り
そして
詠唱を始めるクロスの前に立つ
「今度は俺が援護の番か」
ゴキリ、と首を鳴らし
「じゃあ、時間を稼ぐとする」
敵は二体に増えた
クロスが蹴散らした雑兵もしばらくするとまた元の数に戻るだろう
「三分だったか?――なるべく早口で頼む」
詠唱に集中し始めるクロスを尻目に
再び赤い邪気を滾らせて進む
- 508 :レスト:2012/01/13(金) 02:00:03 ID:ZFCfPuPg0
- >>504
「エキドナ、お前がどう思うかは知らんが、
一応お前が倒されると困る人間が居るんでな」
刀を逆手に持ち、柄の部分でエキドナを指差すように突きつけた。
「この戦いは介入させてもらうぞ」
言い終わると同時に、刀を構えなおし、レストは眼前の能力者二人に目を向けた。
>>506
「……お目付け役とでも言った所か」
焔が消えた。
目の前の男は姿形は人間。
しかし、その立ち振る舞いを見る限り、男の正体は怪人であろう。
「お前達の知り合いらしいが、そんなことは知ったことじゃない。
今のこいつはスケイルエキドナ。
怪人であり、俺達の同胞だ」
>>507
「さっきから見ていたが、かなりのやり手のようだな。
そこの鉄使いもそれなりの使い手らしい」
値踏みするように、男はクロスと甲を見た。
「数の上ではエキドナたちが勝っているが、
流石にこれほどの能力者が二人も居ればエキドナも分が悪いだろう」
今度は刀にのみ火焔が発生した。
熱波が周囲を包み込む。
「戦将レスト、助太刀させてもらう」
- 509 :スケイルエキドナ:2012/01/13(金) 02:07:24 ID:SSMHlh/20
- >>503 >>506-507
蹴りによって機動を逸らされながらも、
ヘビと言うよりはトカゲのように弾き飛ばされた先の壁面に張り付くエキドナ。
甲殻の背中部分には、甲の拳によって穿たれたひび割れが。
そして何より、蹴りによって砕かれた顔面部の甲殻の欠損部からは――。
何処を見るでもなく、虚ろにさ迷う意思の篭らない小百合の瞳が
甲殻が再生される前の一瞬だけ垣間見えた。
「レスト……サマ……ジャマ、スルナ……!
クロ、ス……カブ……ワタシ、ノ、モノ……!!」
ようやく、介入したレストに気が付いたのか若干語気を荒げるエキドナ。
「ジャマヲスルナラ、オマエモッ……!」
スケイルエキドナのクイーンへの忠誠は確かなものであったが
それを上回る、なにかが今の彼女を動かしている……。
「ヤツ、ヲ……トメロ……!」
詠唱の意味を知っているのか、部下の怪人にクロスの攻撃を命じる。
その数、総勢10体。護衛役の2体もその中に混じるが、数と言う点では少ない。
――能力の劣化。
身体能力は上昇したが、その代償として彼女の異能は著しく劣化してしまっていたのだ。
補充に時間がかかりすぎ、今までのように使い捨てしていてはそれが追いつかない。
短所を補い、長所をスポイルした存在。それが現在の彼女なのだ。
- 510 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/01/13(金) 02:16:48 ID:HnkBBDEo0
- >>507
甲の申し出に、目で「すまん、助かる」と応え、詠唱を続ける
詠唱と共に邪気自体が術式として構築され、クロスの身体に刻まれてゆく。
そして詠唱しながらも一本の短刀を持ち、それを逆手に持つ。
>>508
(なんだ、「お目付け役」だって? 一見すりゃ人間っぽい形はしてるが……)
詠唱を続けつつも、心の中で舌打ち。
(怪人の同胞、ってことはアイツも同じく怪人と見ていいだろう。
俺にとって厄介な能力な上に、まだ怪人化もしていない。
言い換えれば、現状はまだ「怪人化しなくても充分」と相手が判断しているからだ。
ナメられてんのか、それとも、それに見合う実力の持ち主なのか……)
――血潮は鉄《クロガネ》、肉は銅《アカガネ》、骨は銀《シロガネ》、心は黄金《コガネ》
The body is created by inorganics, minerals and metals.
詠唱による邪気の流れから見るに、分かるだろう。
もうすぐ、詠唱が完了する。
(俺も本気を、出させて貰おうか!)
>>509
小百合だとは聞いていた。
それでも、やっぱりどこかで現実離れしているような感覚はあった。
だが実際にやはり小百合の面影を目の当たりにして、思わず息が詰まる。
(ああ、ったく、つまんねぇことになってやがる)
少し、歯が鳴った。
(さぁて、どうやって止めてやろうかね……!)
――千滅の焔、色持たぬ温度、終わり無き無限を孕む鋳造の炉
The heart is created by flame, blaze and Gehenna.
逆手に構えた短刀を、自分の心臓の前で構える。
準備は、整った。
- 511 :甲/in異能都市:2012/01/13(金) 20:45:16 ID:faIEKDrE0
- >>508
「……こりゃまた、派手な能力だな」
熱風を浴び赤いマフラーが後方に靡く
「(……あー……クロスの天敵だこれ……)」
じゃり、と地を踏み締める
火炎の立ち昇る二刀を眺め
「なら、戦将レスト――お前の相手は俺がしなきゃな」
不敵に、笑う
>>509>>510
そしてエキドナに向き直る――雑兵の数が少ない
エキドナはクロスに対し、整いきれていない陣形で攻撃を命じて来ていた
思った通りだ
“あのエキドナはこのクロスの詠唱の意味を知っている”
なればこそ生じた焦りは、付け入る隙となる
「させねぇ――よ!!」
両拳を合わせる様に打ち付けると、その両腕に“紅蓮の装甲”が現れる
「――set」
短く告げる言葉と同時に
具現化した装甲からドリル状の突起が左右腕部に五本づつ、合わせて十本生え揃う
『螺旋針――フルドリライズ……ッ!!』
――ッギャァアアアアアアアア…!!!
それらは一斉に唸りを上げて回転し、
迫り来るエキドナの兵隊怪人に伸びる――!!
- 512 :レスト:2012/01/13(金) 21:09:05 ID:ZFCfPuPg0
- >>509
「ふん、余計なタイミングで欲を持ちやがる。
この場合は成長を喜ぶべきか?」
にやりと笑いながら呟いた。
「だが、戦いを続けさせるだけありがたいと思え。
本来なら無理やりにでも連れ帰るところだ。
なんならクイーン達を全員呼んでもいいかもしれないな」
介入を中断する気は、無い。
>>510
クロスが何か起こそうとしているのは解っていたが、
それを止める事は出来ない。
既にエキドナの兵隊が襲い掛かり、手を出せないからだった。
「……あれはエキドナの自発性に任せるとして……。
なら、あっちか」
レストは甲に向き直る。
>>511
「俺の相手をする、と宣言しておいてそれは無いだろう。
こっちを向け」
紅蓮に燃える刀を交差する。
二振りの刀の炎がお互いを増長させる。
「いや、やはり向かなくても良い。
死ね。それで十分だ」
交差させた灼熱の刀で、甲に斬りかかった。
- 513 :スケイルエキドナ:2012/01/13(金) 22:32:05 ID:SSMHlh/20
- >>510-511
クロスに対して突撃する下級怪人たちに
唸りをあげながら襲い掛かる十本の螺旋針。
それらは怪人の甲殻を容易に削り飛ばし、その肉を引き裂く。
――――ギャギャギャッッ!!!
しかし、問題はやはり護衛の二体。
螺旋針はやつらの展開する強烈なエネルギーフィールドに受け止められ、
その表面に波紋を投じたものの、突き破るまでには至らない。
『グギァァッ!』
『ガギッ……!』
防衛線を2体が抜け、クロスに迫る。
追うか?しかし、レストを捨て置いてよいものだろうか?
>>512
「ヨケイナ……マネ……ヲ……!」
壁を蹴り、近くのクレーンの上に降り立ったエキドナは
音がするほど歯をかみ締めながら、甲へと向かうレストを睨みつけ……。
「……ジャマ、ヲ……スル、ナラ……コロス……!」
その場でくるりと一回転し、尻尾を鞭のように振るい
尻尾部分の甲殻をレストに対して飛ばす。
しかし、数は多いが狙いは甘く命中コースの甲殻弾は少ない。
- 514 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/01/13(金) 22:35:23 ID:HnkBBDEo0
- >>513
迫り来る二体の尖兵。
それを前にしてクロスはまだ退かない。
心臓の前で構えられた短刀。
そこに邪気が収束され、
――光放つ鉱石、無念の魂により、
Cross and growing soul ...
――今、此処に
has to be doing just...
――我は科人に永久の生を祈らん!
So Wunsch Ich Dem Sunder Das Ewige Leben!!
短刀を自分の身体に突き刺した。
途端、本流。
周囲に満ちていた紅の邪気が全て、クロスの中へと収束してゆく。
そして、弾けた。
一気に逆流し周囲へと流れる衝撃は、眼前へと接近していた二体の怪人を一気に吹き飛ばす。
「鐵血装甲、完成形態……」
現れたクロスの姿。全身を黒い甲殻が覆っている。
甲殻の表面には紅い魔術式が走り、淡く発光。
髪の毛は真っ白に変色し、暗闇の中で尾のように靡く。
頭から生える二本の角は、まるでクロスを鬼か悪魔のように見せていた。
目を覆うバイザー。普段は眼帯に包まれている右目側がひび割れてゆき、
クロスブレイム
「極刑鬼神、『咎喰十字』!!」
右目部分のバイザーが内側から砕け散り、紅の輝きを放つ瞳が現れた。
>>511>>512
「待たせたな甲、選手交代だ!!」
跳躍。
背から爆炎を放ち夜空に紅いネオンラインを残しつつ、一瞬にして甲の上へ。
甲へと迫っている灼熱の刃の前に巨大な鉄柱を差し込むように構築。
鉄柱は熱により真っ赤になるが、なんとか一撃を凌いだ。
「このアッツい奴を頼んだ! 切り札を出させて貰ったが、やっぱり熱は嫌いだぜ」
- 515 :甲/in異能都市:2012/01/13(金) 22:51:52 ID:faIEKDrE0
- >>512>>513>>514
「(範囲攻撃じゃ、やはりあの二体には足止めで精一杯
――だが、“それで良い”)」
膨らむ背中の“紅の気配”に二ィ、と歯を見せる
貫いた物、貫ききれなかった物
それぞれの十本のドリルは役目を終えると瞬時に元の装甲に戻った
そして
緑色に煌めく螺旋模様を称えた眼が
己を焼き尽くさんと迫る焔を――レストを見る
「慌てんな、ダチの見せ場なんだから――よッ!!!」
再び形質を変える装甲は円盤状の回転する盾になり
ギャギャギャギャギャギャギャ……!!!!
接触の火花を散らしながら
二対の焔を上げる刀を受け止め
その纏った焔は盾の回転を受け、甲の後方に流れる
『回転《アクセル》――』
更に甲は動く
翻る身体はまるで独楽の様に廻りながら
受け止めた“点”を軸に、レストの身体を沿う様に奔る
『――拳打《バレット》!!!!』
高速回転する身体の遠心力を拳に乗せ
レストの側面から鋼の拳によるフックを横薙ぎに振るう――!!!!
- 516 :レスト:2012/01/13(金) 23:15:23 ID:ZFCfPuPg0
- >>513
後ろを向いたまま、レストは左手の刀を振るった。
甲殻が弾き飛ばされ、レストの走り去った後に突き刺さる。
(このまま自我が確立されれば、四将の器とすることが出来るか…?)
レストら上級怪人の能力をもってすれば、マインドコントロールで無理やり命令を聞かせることは容易だ。
しかし、それをしないのは、エキドナの成長を促す為。
>>513-515
防がれ、受け止められた刀のうち、一本が突然不自然に吹き飛んだ。
フックはレストを捉え、レストは殴り飛ばされる。
しかし、甲の拳には、浅い感覚が残ったのみ。
―ザザザザザザッ!
レストは地面を立ったまま滑り、数メートル先で停止する。
――シュウウゥゥゥッ……
レストの片手の平から、煙が立ち上っていた。
あの瞬間の内に刀を放り投げ、素手で甲の攻撃を受け止めたのである。
遅れて落ちてきた刀を、煙が出ていない、刀を既に持っている手で受け止めた。
一応のダメージはあるようだ。
- 517 :スケイルエキドナ:2012/01/13(金) 23:56:43 ID:SSMHlh/20
- >>514-516
『『グガアァッッ!!』』
二体の怪人の歯牙が、クロスを切り裂かんとしたその時。
紅の軌跡を残し、跳躍した鬼神。衝撃波により、二体はコンテナへと叩きつけられる。
まだ死亡してはいないが、ダメージを受けたらしく足取りがおぼつかない。
戦線復帰には、少し時間が掛かるだろう。
――――対峙する、2人と2匹。
「……『クロス』……!」
クロスの言葉が、エキドナにも聞こえたのだろう。
彼女の意識は。彼女の敵意は。全て、目の前の鬼神に注がれる。
「ナンド……コノトキ……ヲ……ユメミタ……コトカ……!」
慢心の力を込めて地を蹴り、恐るべき速度で肉薄。
「お……オォ……オ……!」
歓喜の咆哮。そう、野獣は……エキドナは感謝したのだ。
己を産み落とした父母に。今までの経験に。そして怪人として再び自分に生を授けたクイーンに。
「……コ……ロ、スッッ!!!」
空中で体を縦に高速回転。その勢いのまま尾をクロスへと振り下ろす。
- 518 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/01/14(土) 00:04:59 ID:HnkBBDEo0
- >>515>>516
「よ、し。上手く分断できたかね」
視界の端で二人を確認しつつも、クロスは全身に走る魔術式に邪気を巡らせる。
カチッ、カチッと装甲を展開させつつ刀剣翼の角度を調整。
自分の相手は、スケイル・エキドナだ。
>>517
振り下ろされる尾。
それに対しクロスは両手を掲げ、
「よ……ッと!!」
ガスン、という音と共にクロスの両足が少し道路の中へと埋まる。
刀剣翼を広げ、背部から爆炎を吹き上げながらも尾を受け止めた。
尾を掴んだクロスは、今度は全身の魔術式を輝かせつつも爆炎を各部から吹き出し、
「ラァアアアアア!!」
エキドナの体を自分の方へと投げようと、尾を真後ろへと振り挙げた。
- 519 :甲/in異能都市:2012/01/14(土) 00:07:59 ID:l2c8PP1w0
- >>516
「(背面からの礫を排除し、俺の拳を難なく防いだか……速いな)」
拳を振り抜けなかった
身体の回転は止まる
とん、とんと軽くステップを刻み
「俺も出し惜しみ無しで行かねえと、久し振りにやべぇか――おい、起きろ“ねぼすけ”」
自身の胸に、手を翳す
「【輪廻の金獅子】――力を解放する」
――獣の咆哮が響いた――
――それは遠くに聞こえ、それは近くに感じる――
甲の内に眠る無限機関『金色の魂』が廻り出し
引き出される力は金色の粒子として甲の体外に溢れ出す
瞳に浮かぶ緑色の螺旋模様は
赤色と金色の二色の二重螺旋へと
紅蓮の頭髪は、流れる金の長髪へと変貌する
「廻り、流れ、解けて――混ざれ」
甲の周囲の地面に抉り取られた様に螺旋状の亀裂が奔り
「“ネヴァーエンディング・ソウル”」
膨らむ力は、大気を揺らすと甲が手を翳した胸部に収束していく
「行くぜ戦将
生半可な焔でこの魂、焼き尽くせると思うな――」
刀を取ったレストに
金色の粒子を引き連れて進む
- 520 :スケイルエキドナ:2012/01/14(土) 00:16:43 ID:SSMHlh/20
- >>518
「グ、ギッ……!?」
怪人として渾身の力を込めた一撃を防がれるならまだしも、掴まれる。
これはエキドナの中のちっぽけな、それ以上に自分自身への根拠の無い自信に満ちた
考えの中には、まったくなかったこと。
「――ッッ!!」
クロス側へ恐るべき力で引き寄せられ、空中で体制を崩したエキドナにできることは
胎児の様に腕と足を縮めて己の急所を守ることのみ。
- 521 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/01/14(土) 00:24:44 ID:HnkBBDEo0
- >>520
「いっちょ前にガードするぐらいの知識はあるか。いや、急所を護るのは本能かね」
空中から迫るエキドナを前に、クロスは右拳を握りしめる。
「でもまぁ、肉体も怪人化されて強化されてるだろうし、」
右腕の肘部がカシャンと開き、爆炎を吹き出す。
「思いっきりいくぞ。死ぬなよ、小百合」
ガードされている腕に向かって、爆風の勢いを乗せた渾身の拳を撃ち込んだ。
- 522 :レスト:2012/01/14(土) 00:25:25 ID:ZFCfPuPg0
- >>519
「良いだろう、貴様が本気を出すというなら、俺も出さなければな」
レストは片手で二振りを構え、甲に突きつける。
足元から全身にかけ、侵食されるように全身が鱗に覆われた。
身体を覆った鱗は変形し、レストの身体を重厚な鎧に作り変えていく。
「あああぁぁぁっ!!」
突きつけた刀を振り下ろし、両手に持ち直すと、それを振りぬいた。
その衝撃で、火炎と共にレストの全身を覆っていた鱗が弾き飛ばされた。
焔の奥から現れたのは、鎧武者の如き重厚な漆黒の装甲。
装甲に刻まれた溝から溢れる火炎の光。
頭部には波打つ二本の鍬形。
そして、鋭く甲を射抜く眼光。
それが鱗怪人スケイルレストの真の姿だった。
「戦将改め、紅蓮の重戦士、レスト。
異能者、確かカブト、とエキドナが言っていたな。
切り捨ててやる、カブト」
甲の動きとは対照的に、レストはゆっくりと踏み出した。
- 523 :甲/in異能都市:2012/01/14(土) 00:39:25 ID:l2c8PP1w0
- >>522
「そうこなくっちゃよ」
金色の獅子はニヤリと笑うと
ゆっくりと歩を進める重戦士へと低態勢で接近する
「――set」
迫りつつ
両手を拡げる甲
その両手に金色の粒子が渦巻き――振り抜く
『スパイラル・ケイジ!!』
両手の五指に絡む粒子がそれぞれ
金色のドリルに変換される
レストの左右から
渦巻く螺旋の粒子が伸びる――!!
- 524 :レスト:2012/01/14(土) 00:53:05 ID:ZFCfPuPg0
- >>523
――ギャルルルルッ!
左右から迫る螺旋を、両腕の刀を高速回転させ、まるで盾のように防いだ。
その摩擦によって生じた火花が、刀の炎を増大させる。
「炎よ、集え……!」
左の刀の火炎が消えた。
同時に右の刀の火炎が今までに無く増大し、レストの身体を陽炎に歪ませる。
「一挙撃熱!!!」
刀を振り下ろし、構えを取ると一気に振り上げる。
斬撃が長大な火柱を纏い、甲に放たれた。
- 525 :スケイルエキドナ:2012/01/14(土) 00:55:01 ID:SSMHlh/20
- >>521
――ギシャァッッ
「グ……ギィヤァアァッッ!!!」
甲殻を粉砕した、というよりは甲殻ごと『中の肉を叩き潰した』ような打撃音。
エキドナはコンテナ一つを貫通し、積み下ろし用クレーンの操縦席まで吹き飛び、ようやく止まる。
「ア……、ア゛ガ……グ…………!
ゲボォ……オ、……ゴ……ゴガァ……!」
エキドナの状態は悲惨の一語。
クロスの拳を受け止めた腕部は、肘から下、半ば崩壊した骨のみが残る右腕。
左腕も肉がズタボロに引き裂かれ、もはや残骸さながらの左腕と無残きわまり、
守られていたはずの胸部甲殻も粉砕され、その下から覗く肌の色が変色している。
「コ……ゴ、ァ……コレ……ガ……ッ!!
ア、ガ……オモ゛、シロイ……オモシロイ……ゾ……ッ……!!」
しかし、満身創痍ともいえる傷を負いながら、
緑色の体液を口から吐き戻しながらもエキドナは立ち上がる。
骨を構築し。肉を再生し、血液を精製し――。
「マダ……オワラ……ナイ……!」
おぼつかない足取りで、駆け出す。
その目標をもちろん、目の前の紅い鬼神。
「おぉ、オ゛ッ……!!!!」
低い態勢から勢いを乗せ、大地を蹴る――。
狙いはクロスの顎。その意識を刈り取るべく長い手足を活かした蹴りを放った。
- 526 :甲/in異能都市:2012/01/14(土) 01:08:23 ID:l2c8PP1w0
- >>524
『螺旋領域《スパイラルフィールド》――五段展開!!』
渦巻く粒子が回転し
五枚
振り下ろされる激熱の火柱と甲を遮る様に展開される
――バンッ!!――バンッ!!バンッ!!
一枚、二枚、三枚と
炸裂音と共に金色の粒子による盾は裂かれ、散る
しかし高速で回る粒子の盾は、当たる度にその収束した焔を散らし、周囲に受け流す
撒き散らされる焔は周囲のコンテナ群を穿ち、削り、破壊していく
二人を囲むように、辺りに炎が蔓延していった
バンッ!!!!
「(四枚――まだだ……!!)」
四枚目のフィールドが更に破られて尚、甲は炎の柱を睨む
――ギャ……!!!
そして、その暴虐の力が最期の五枚目の盾に差し掛かった時
『超螺旋――』
再び胸部から沸き上がる金色の力を右腕に廻し
拳を突き出す
『――噴射・跳躍拳ッッ!!!!』
ギャァアアアアアアアアアア!!!!
金色の粒子を回し、纏わせた螺旋の拳が
炎を巻き込みながらレストの振り下ろした刀に挑みかかる――――!!!
- 527 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/01/14(土) 01:12:11 ID:HnkBBDEo0
- >>525
「――視える」
輝く右目がエキドナの状態を読み取る。
クロスの持つ右目は「この次元の存在」では無い。
見えない筈のものすら視ることが出来る。
しかしクロスは、右目から入ってくる情報全てを処理、理解できるわけではない。
クロスの脳が右目のスペックに追いつけていないのだ。
それでもエキドナが、もの凄いスピードで再生しているのを確認できた。
「ちぃ、腕を二、三本潰したところで戦闘不能にするのは難しいか、とォ!?」
鋭いハイキックが顎へと迫る。
気づくのが少し遅れた。避けきれない!?
ならば、避けなければいい。
「ぐッ!!」
爪先が顎へと入り、脳が揺さぶられる。
しかしそれと同時に、クロスの行動も終わっていた。
全身の装甲が開き、そこに金属がセットされる。
クロスが先ほどから放っている爆炎。
それは、金属を水分と意図的に反応させることによる、強烈な酸化反応を利用したものだ。
その金属爆発が、クロスの装甲全身から、吹き出された。
クロスを中心に爆風が広がる。
- 528 :レスト:2012/01/14(土) 01:26:40 ID:ZFCfPuPg0
- >>526
拳と刀の鍔迫り合い。
一本では、片手では不足と判断したか、
刀に添えるようにあてがい、甲の拳を受け止める。
轟音を上げつつも、刀は一切ダメージを受ける様子は無い。
むしろレスト自身の腕が持ちそうに無かった。
「流石魔将の鍛えた刀だ……。
俺の方が刀より先に音を上げそうだ」
ギリギリと歯を食いしばる。
地面が揺らぎ、レストは少しずつながら押され始める。
「だが俺の武器は……この刀だけではない」
突然、食いしばっていた歯を、顎を大きく開いた。
「心頭焼却!」
そう叫ぶと同時に、レストは口から火炎を吐き出す。
――ゴオオオォォォッ!!!
地獄の鬼の叫び声のような音を立てながら、
炎は甲に迫る。
- 529 :スケイルエキドナ:2012/01/14(土) 01:27:55 ID:SSMHlh/20
- >>527
蹴りを放った直後の態勢。
エキドナがいくら素早かろうとこの距離、このタイミングでは爆風を避けきれず、
防御の体勢を取ることもできない。
「――オ゛……アァァ゛アッ……!!?」
まるで暴風に揉まれる木の葉のように、吹き飛ばされ再び障害物へ激突。
外傷は腕の部分を除き、かなり再生しているようにも見えるが内部にはダメージが残っているらしく
緑色の体液を口から吐きだした。
さらに……。
「ウ、うあ……ア……!!」
コンテナの残骸にもたれかかりながら、どうにか立ち上がるエキドナ。
しかし、甲殻の顔部分をかきむしり、フラフラとゾンビのように出鱈目に歩き回るなど
先ほどと比べてその様子がおかしい。
――その理由は、彼女の主要な感覚器であるピット器官にある。
目に当たる器官がないスケイルエキドナにとって、
熱や赤外線を感知するピット器官は、聴覚と並び重要な感覚器。
エキドナは先ほどの爆発をモロに受けたため、それを狂わされクロスの姿を捉えられないでいる!
- 530 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/01/14(土) 01:39:52 ID:HnkBBDEo0
- >>529
「ぐ、くぁあ……」
爆炎を撒き終わり、ドシャリと着地するクロス。
頭はまだガンガンに揺れるが、よろけている場合では無いのだ。
「今、のうち、に……!!」
いくら怪人といえど、特別な魔術式、魔術陣でも無い限り、
肉体の再生には限界があるとクロスは踏んでいた。
ならば、死なないギリギリまで相手の肉体を削り、
弱らせれば一時的な拘束は可能なのではないだろうか、とも考えている。
「まだ仮定でしかないが、ならば策はある!!」
クロスの右目がエキドナを捉える。
「ああ、なるほどな……ピット機関か。どうりで」
クロスは地面に手を当て、力をみなぎらせる。
「金属構築、生成、生成、生成……セット」
そして立ち上がる。
彼女の感覚器が再生される前に、クロスは刀剣翼を展開。
その刀剣翼自体を操作し、エキドナへと向ける。
「さて、藪をつつくぜ!!」
空中に浮いた刀剣翼を、弾丸のようにエキドナへと向けて射出した。
魚群のように空中を泳ぐ刀剣郡が、エキドナの足を狙う!
- 531 :甲/金獅子《ネヴァーエンディング・ソウル》:2012/01/14(土) 01:42:23 ID:l2c8PP1w0
- >>528
「――あぁ、そして俺にもまだ“左”が残っている」
迫る炎は壁の如く視界を塞ぐ
しかし甲は、その壁の向こう――レストに向けて左拳を構えた
「意地で、推し通る――!!」
金色の粒子を全身に纏い
炎の壁に向けて跳躍する
「“螺旋眼”フルドライブ!!!!」
左眼に浮かぶ、金と赤の二重螺旋が唸りを上げて輝き廻る
それと同時に
金色の粒子を巻き込みながら、甲の身体が回転し始める
炎との接触
先程のフィールドと同様、金色の粒子は炎を散らしていく
「――づ、ぎ……あぁあああああ!!!!」
しかし、自身を中心に添えたその防御陣では地獄の業火を総て防ぐには叶わず
衣服を、身を、内部を焦す熱に苦悶の声が上がる
「肉、は、くれてやる……だが、その首――――」
金色の獅子が炎を突き抜ける
焦げた身体で
しかし、螺旋が浮かぶ瞳と
握り締めた拳は勢いを増し
「――――貰うぞ!!!」
渾身の拳撃が、レストの顔面を狙う――!!
- 532 :スケイルエキドナ:2012/01/14(土) 01:54:03 ID:SSMHlh/20
- >>530
悪いことに、ピット器官は破壊されたのではなく、
熱によって一時的に機能を狂わされただけであって、再生・修復の仕様がない。
いっそ破壊されれば、再生する事ができたのだが……。
――メキッ!
エキドナは何を思ったか、自分の頭部甲殻に手をかけ……。
「コンナ……モノ……!!
グ、ア……ァ、ガァアアァアッッ!!!」
――メジュッ、ゲチュッ……バキャァッ!!!
飛び散る体液、甲殻の欠片。
なんとエキドナはそのままそれを力任せに剥ぎ取り、
素体となった小百合の顔を露出させたではないか!
「ミエ……ル…………!!」
そう、彼女は甲殻によって隠されていた素体の目を一時的に使うつもりなのだ。
しかし、『小百合』の目に飛び込んできた光景は――。
凶器の群れ、意思を持つかのように空中を回遊する銀と紅。
「ヒギャアァアァァッッ!!!」
ズタズタに引き裂かれた脚部。
さすがの怪人もこれにはたまらず、尻餅をつくようにその場に倒れる。
- 533 :レスト:2012/01/14(土) 01:54:40 ID:ZFCfPuPg0
- >>531
――バギィッ!!!
「――ッ!」
拳はレストを正確に捉えた。
右の鍬形が折れ、二振りの刀と共に宙を舞う。
――ガアアアァァァンッ!
周囲に並び立っていたコンテナにまるでミサイルでも打ち込まれたかのような穴が空いた。
――ガンッ……ガンッ……ザンッ……!
地面にレストの刀と鍬形が突き刺さる。
レストはコンテナの中から出てこない。
果たして、レストは。
- 534 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/01/14(土) 02:01:55 ID:HnkBBDEo0
- >>532
「器官を捨てた? どうなって……いや、なるほど」
思案がめぐる、めぐる。
「再生能力はほぼオート発動。
ある程度以上の『損傷』が無ければ再生しない。
つまり、炎熱による一時的機能低下じゃ再生してくれないってことか」
だんだんと分かってきた、今の小百合のスペック。
それを考察し、クロスはニヤリと笑う。
「少し、『位置』を調整するか。あれも加えておこう」
また地面に手を置き、力をみなぎらせる。
今回は攻撃は無いようだ。
――異形の舞台よ、出番だ。
set of the “Freaks circus”
- 535 :甲/金獅子《ネヴァーエンディング・ソウル》:2012/01/14(土) 02:07:23 ID:l2c8PP1w0
- >>533
「――――っつ、ハァ!!はぁ……ッ!!」
炎壁を通り抜けた身体が、新鮮な空気を欲し喘ぐように荒い呼吸を繰り返す
「……づ、くそ、何っつー堅い得物だよ……!」
刀との激突から還った右拳
その装甲はズタズタに砕かれ原形を留めず、
その内の拳にも色濃くダメージが刻まれていた
負傷の多い個所から金色の粒子が修復を始めていくが
焦げた部位の多さから、易々とは治るには至らないだろう
「(捉えた、が――くそ、底が見えねぇ相手だ……まだ油断するには早ぇ)」
後方で爆発音が響いている
クロス達の決着は近いのかもしれない
「ゴフッ!……呼吸器は、焼けた肺は、取り敢えず正常に動く……」
自身の回復に、金色の粒子による力をフル回転させながら
レストが吹き飛んだコンテナに向けて歩を進める
- 536 :スケイルエキドナ:2012/01/14(土) 02:17:26 ID:SSMHlh/20
- >>534
地面に倒れ付したエキドナは、ダメージの蓄積のため
再生速度が低下しているのか、未だに動けるまで回復したようには見えない。
『ギギッ……ギ……!』
『アギァッ!!』
そんなエキドナに駆け寄る影が二つ。
先ほど、クロスに吹き飛ばされ戦線離脱した護衛の二体だ。
「オマエ、タチ……ジャマヲ……!
……イヤ、ハヤク……コイ……コッチヘ……!!」
最初は戦いに水を差されるのを嫌い、拒否しようとした彼女であったが
すぐに態度を改め二体を呼び寄せると……。
「――シャアァアァァァッッ!!!」
『アッ……ギャ――!?』
『グギャァッ――!!?』
尻尾を地面に叩きつけた勢いで短く跳躍。
一体の首に尻尾を巻きつけて、締め上げ骨を砕き――。
もう一体に覆いかぶさるように飛びかかると、その首筋に牙を付きたてた。
――グシャゥ、ズチュッ……ジュッ……。
エキドナは自らの部下を『喰らっている』。
食とは即ち体内に命を取り込む儀式。
部下の命を取り込んだエキドナは、傷ついた体を急速に癒していく。
- 537 :レスト:2012/01/14(土) 02:17:48 ID:ZFCfPuPg0
- >>535
――ガダッ……
コンテナの中から、音がした。
そして、穴の中に見える真っ赤な炎。
――まだ、生きている。
「……良い一撃だった……異能者カブト」
穴の中から、炎を纏った人影が現れた。
全身の装甲には皹が入っていたが、その隙間からは絶えず炎が噴出している。
それはダメージを受けた結果の筈なのだが、
逆にそれがレストを化け物であることを引き立てていた。
「だが、まだ浅い……!俺を倒すことは出来んぞ!!!」
装甲の隙間から猛烈に炎を噴出させて瞬間的に加速し、
真っ赤な拳で甲に殴りかかってきた。
- 538 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/01/14(土) 02:22:06 ID:HnkBBDEo0
- >>536
「……うへ、グロいなもう」
だが、これで再生の限界を延長できることが判明した。
「ま、俺の今の策はお前の再生能力ありきなんだけどな……よし!」
準備が整ったようだ。
「んじゃ、行くとするか。傷を癒すことに専念してるってことは……うん」
刀剣翼を再び構築。
全身の装甲を展開し、爆炎を吹き出すと、
「そろそろ詰めさせて貰うぜ!!」
エキドナへと走り出した。
- 539 :甲/金獅子《ネヴァーエンディング・ソウル》:2012/01/14(土) 02:33:39 ID:l2c8PP1w0
- >>537
「……へ、だと思ったよ」
立ち上がる人影――否、その姿は最早人に非ず
異形はさながら炎の化身に見えた
炎の化身は甲に迫る
「(粒子を回復から防御に転換
死にたくねぇなら――全力で防げ、甲ッ!!!)」
格子状に編み込まれるドリル状の金色の粒子
折り重なる螺旋が先ず、その拳を受け
突き抜ける
「(第二陣――!!)」
次いで突き出す両手から更に螺旋が生まれ
ギャギャギャギャギャギャギャ……!!!!
その先端が火花を散らし、拳に拮抗
そして次の瞬間破壊された
「――――く、の、やらァッ!!!!!」
半壊した右の装甲と左の装甲を自身の前に交差して
最期はその身で赤の拳を受けとめる
「ッ――――」
しかし、勢いを完全に殺すには至らず
その身は錐揉みしつつも吹き飛び――アスファルトの大地を転がる
左右の装甲はあとかたも無く崩れ去った
- 540 :スケイルエキドナ:2012/01/14(土) 02:33:55 ID:SSMHlh/20
- >>538
咀嚼音が、止まる。
「カハァアァッッ……クク……ッ……!
スバラシィィィ……モウ、キズ……ナオル……!!」
口の周りを部下の体液で真緑に染めたエキドナは
自らのその足で、しっかりと立ち上がり。
「クロ……ス……ワタシ、ヲ……モット……!
モット、ダ……モット、タノシ……マ、セロ……ッ!!!」
未だに尻尾が巻きついたままの部下の亡骸。
本来は、これも喰らうつもりだったのだが予想外に傷の回復が早く不要の長物となった今――。
――――ブォォオッッ!!!
体を回転させた勢いでクロスに遺骸を投げつける。
女性型の怪人とはいえ、甲殻に覆われたその体の質量はかなりのもの。
怪人の筋力で投げ放たれたことによる速度とあいまって、十二分に投擲武器として機能する。
- 541 :レスト:2012/01/14(土) 02:48:03 ID:ZFCfPuPg0
- >>539
――バギンッ……!ギンッ……!
地面に突き刺さっていた、両の刀を抜く。
「……?
……そうか、……だった」
左の刀に、何かを呟くと、
「……次の一撃で、首を貰う」
胸の前で腕を交差させる構えを取り、腰を沈める。
噴出していた炎が、吸い込まれるように刀に集中していった。
ゆっくりと息を吸い、吐く。
ただの深呼吸ですら、いまや火炎放射と言っても謙遜無い。
「死にたくなければ立て……。
狩られたくなければ立て……!
食われたくなければ……立て!」
徐々に、刀に熱気が集中していく。
今までも何度も繰り返した動作。
しかし、今度ばかりは威力が違う。
周囲一体が、夕焼けのように真っ赤に染まり始めた。
- 542 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/01/14(土) 02:58:28 ID:HnkBBDEo0
- >>540
「ってェ、おい!?」
残骸を目前にして目をみはる。
よけるか、否か。
しかし何を考えたのか、クロスはそれを正面からまともに食らった。
「ぐぅッ!!」
甲殻がクロスの体をお仕返し、勢いが殺されクロスは地面を転がる。
亡骸をどかし、なんとかクロスは立ち上がる。
攻撃続行かとおもいきや、クロスは立ち止まり動かない。
「悪いな、準備完了だ。オマエは俺に、時間を与え過ぎた」
右手の中指と親指を合せ、エキドナへと向ける。
フリークスサーカス
「 罪人跋扈 、開幕だ」
パチン、と、指が鳴る。
途端にエキドナの足元の大地から金属の異形達が飛び出してきた。
まるで鋼の頭に鎖の束で構成されたような胴体を持つ異形達は、
エキドナの四肢へと牙を向け、胴体をエキドナの体に巻きつけようと一斉に遅いかかる。
そう、クロスが大地に手を向けていたのは、全てこれらの準備だ。
例え一体を倒そうが、倒された異形ごと別の異形が長く巨大な胴体をくねらせエキドナを包み込もうとする。
頭の大顎はエキドナの四肢を狙い、牙は肉を裂こうときらめく。
「再生したければ再生するといい。
ただし、鎖状の胴体に密閉された空間で無理に肉体を構築すればどうなるか……
いや、そういえば再生はオートなんだっけか?」
- 543 :甲/金獅子《ネヴァーエンディング・ソウル》:2012/01/14(土) 03:06:16 ID:l2c8PP1w0
- >>541
「……その、どれも……ごめんだね、だが……!」
膝に手を当て、立ち上がる
「望み通り立ってやるよ――ただし、てめぇを倒す為にな……!!」
窮地に立って、尚輝く螺旋の瞳は――未だ光を失わず
夕日と錯覚するほどの滾る熱気に相対する様に右拳を突き出す
『螺旋眼奥義――無限上昇』
紡いだ言葉と同時に甲の周囲に漂う金色の粒子が渦巻き、膨らみ
その量は留まる事を知らず増え続ける
甲の突き出した右腕に赤色の螺旋が廻り出し
膨らみ続ける金色の粒子はそこに導かれる様に収束していく
混ざり合う様に絡み、廻る二つの力はやがて
甲の右腕に赤色と金色の輝ける螺旋――
――――巨大なドリルを顕現する
それは甲の魂の形
貫く甲の意思そのもの
『螺旋眼決戦奥義――“俺のドリル”』
回復も、防御すら捨てた
甲渾身の攻撃の型
そのドリルはそこに在りて
回り――――爆発する時を待つ
- 544 :レスト:2012/01/14(土) 03:24:48 ID:ZFCfPuPg0
- >>543
「行くぞ……螺旋の能力者……カブト!」
吼えるように宣言すると、レストは、走り始めた。
ボロボロと装甲の欠片を落としながら、まっすぐ甲に。
それは、太陽が落ちてきたかの如く。
走り去った足跡は溶解し、炎の道を作る。
熱気によってコンテナ郡はひしゃげ、甲を包み込んだ。
怪人は目の前に迫る。
そこにあるどの炎よりも輝く目を光らせ。
そして――
「首狩の焔双顎(ヴォーパルシザース)!!!」
二振りの刀を擦り合わせ、巨大な鋏の様に振り抜いた。
怪人、スケイルレストの究極の技。
それは、刀の全長よりも遥かに巨大。
湾曲した炎の刃が、
斬撃が届く前に焼け死んでしまいそうな猛熱が、
甲の喉元に喰らいつこうと襲い掛かってきた。
- 545 :甲/金獅子《ネヴァーエンディング・ソウル》:2012/01/14(土) 20:12:12 ID:l2c8PP1w0
- >>544
「(退路は、断たれた)」
熱で拉げたコンテナ群に後方までも覆い隠され
「(だが、それで良い――――さぁ……行こう!)」
太陽の中心に居る様な錯覚さえ起こさせる炎の中で
螺旋の瞳は焼き切れる程に輝きを増し
迫る魔人に踏み出す
「――――突貫」
ギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
赤金色の二重螺旋――『俺のドリル』が唸りを上げて回転し
迫り来る熱波を先端から呑み込み、食い散らかしながらその勢いを上げていく
炎熱の発生源でありその中心――炎の化身、紅蓮の重戦士レストを目指して
その身をただ一本のドリルと化して甲は進む
そして
ドリルの――甲の先端にレストの持つ究極の一振りがぶつかり
衝撃の余波で左右の首筋から鮮血が上がる
「ブッ――――貫けぇええあああああああああああああッッ!!!!!」
しかし螺旋は止まらない
一回転毎に少しづつ前へ出る
命尽きるまで突き進むと
今、甲の魂は最高潮を迎える――!!
魔刀の究極と愚直な螺旋
その二つのせめぎ合いは
夜尚暗い港を、尽きる事の無い輝きで溢れさせていた
- 546 :スケイルエキドナ:2012/01/14(土) 22:23:41 ID:SSMHlh/20
- >>542
追撃をかけるべく、獣を思わせる独特の低い姿勢で
地面をすべるように走るエキドナ。
――バァンッッ!!!
尻尾を地面に打ちつけ、弾丸のように低く跳躍。
そのまま空中で体をピンと反り、尚且つ右手を引き絞ったその姿は
さながら弓矢のよう。
「死ネェッッ……!!」
その集約された圧倒的パワーが、開放を迎えようとしたその時――。
大地から大挙湧き上がる異形どもが、その開放を妨げる。
「ギ……、ジャマ……ダァッ……!!」
正面の一体に万力を込めて打ち込まれた拳。
それは一撃の下に金属の異形をブチ抜いたが、その力に耐え切れずエキドナの拳も砕け――。
その次の瞬間、彼女は恐怖とも、憤怒ともとれぬ奇妙な咆哮と共に異形の群れに飲み込まれた。
「ア――ギ、ギャ――。」
異形たちの立てる、耳障りな金属音の中に途切れ途切れに混じるエキドナの悲鳴。
彼女を取り囲んだ圧倒的暴力は、全身をズタズタに引き裂き、砕き、貫き、蹂躙する。
- 547 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/01/14(土) 22:41:01 ID:E4Ka56rgO
- >>546
「よし、ストップ。そのまま拘束!」
エキドナの動きを止めたところで異業達の動きを止める。
そのままエキドナを縛り上げる形となった。
「どうやったら元に戻るかわかんねぇが、一応このまま千夜のとこに持っていくか」
まるで球体のようにもなったそれを、能力で操作して持ち上げる。
「甲ー! とりあえず捕まえたぞー!」
- 548 :レスト:2012/01/14(土) 22:54:29 ID:ZFCfPuPg0
- >>545
――グバァッ……!
胸の装甲は完全に弾け飛び、腐った肉のように糸を引く。
同時にその身体は爆裂。
怪人が死亡した時に起こる現象だ。
しかし、未だその身体は原型を留めていた。
構えた刀は進み続ける。
レストは、ただ気合だけで怪人としての死を免れていた。
「負けるわけには……いかんっ!!!」
ドリルを受けるその刃は、勢いを殺すことなく。
甲を受け止め、その首を取ろうと燃え盛る。
しかし、やがて刀自体が――
いや、立て続けに受けた大技の応酬に耐え切れなかったのか。
――ギャッ……ギイイィィィン……!
左の刃が砕けた。
しかし、折れた先端もまた、吸い込まれるように甲の首筋を狙って飛んだ。
折れて尚、まだ主人に応えようというのか。
- 549 :スケイルエキドナ:2012/01/14(土) 23:18:31 ID:SSMHlh/20
- >>547
エキドナは瀕死の状態の状態であるのか、
もはや悲鳴は聞こえず、中で抵抗している様子もない。
それどころか、緑色の体液が異形たちの鎖状の胴から染み出し、
粘性のある溝音を立てながら、地面へと垂れている。
クロスはエキドナの確保に成功したが、果たして甲は――。
- 550 :甲/金獅子《ネヴァーエンディング・ソウル》:2012/01/14(土) 23:21:13 ID:0.F9MMNo0
- >>547
炎とコンテナの残骸に囲まれた壁の向こうで
怪人と甲の叫び声が聞こえた
>>548
折れた刃――レストの執念の権化が甲の首に迫り
――バサリッ
金色の髪束が熱風に巻き上げられる様に辺りに散らばった
その金髪を称えていた甲の首は――
「……ここで、死ねるかぁああああッ!!」
――迸る鮮血の中、しかし、未だ繋がっている……!!
肉薄した刃に巻き付いた“赤いマフラー”がその進行を寸での所で制止する
何処にでも在る様なその布が甲の命を文字通り繋ぎ止めた
「――――――」
ドリルはやがて綻び、中腹から砕け始める
破壊されたドリルの破片は金色の粒子に戻り周囲に舞い散っていく
「――――まだだ」
金色と赤色の飛び散る破片
甲はその中から“ドリルの先端”に狙いを定めると
「もう――――一歩ぉおおおおおッ!!!!」
それを押し込むように
振り絞る最期の力で拳を打ち込んだ!!
- 551 :レスト:2012/01/14(土) 23:56:49 ID:ZFCfPuPg0
- >>550
「うおおおおおぉぉぉぉぉっ!!!」
響き渡る異形の咆哮。
火柱を生む刀。
相棒に先立たれた右は未だ折れず。
「跡形も残さず――燃え尽きろっ!!!!」
怪人の眼光未だ絶えず。
しかし、目の前の男も未だ倒れず。
消えそうになった、欠片のような小さなドリルを再び叩き込む。
最後の、ちっぽけなドリル。
これさえ凌げば――
そのドリルに向かって刀を叩き込む、が。
遂に、怪人はその威力に耐え切れず、吹き飛んだ。
- 552 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/01/15(日) 00:03:29 ID:HnkBBDEo0
- >>549
「……中身がグロいことになってそうだな」
漏れ出した液体を見てポツリとつぶやく。
「死んでなきゃいいんだけど」
>>550>>551
「っと、向こうもそろそろ決着か!?」
巨大な鎖の球体を手元に手繰り寄せる。
「炎……もとい熱っていうのはとても強力な力だ。
上限を考えなければ金属どころか大地すら溶かす。
頼むぞ甲……無事でいてくれ!!」
クロスは球体と共にコンテナの向こう、甲とレストの元へと駆けた。
- 553 :甲/金獅子《ネヴァーエンディング・ソウル》:2012/01/15(日) 00:15:32 ID:0.F9MMNo0
- >>551
「う――ぐ……!」
吹き飛ぶ怪人レスト
役目を終えたドリルは、今度こそ跡形も無く消滅した
周囲に散った金色の力の残滓は甲の周囲に渦巻くと炎を天高く逃していく
「く、はぁッ……!!……どうだ、今度、こそ……!!」
溢れ出る首からの流血を手で抑え
炎を散らす目的外の粒子を緊急で回復に廻す
短くなった金髪に黒髪が混ざり始める
「(…………限界、か……手応えは、あった……が)」
止まらない、溢れ出る“無限機関”からの粒子エネルギーの供給は
ダメージを受け過ぎた身体では最早ほぼ制御は効かず
徐々にその輝きを失していく――――
残存粒子は既に回復に回り尽くし
追撃の手は無い
>>552
金色の粒子に導かれ、天に炎の柱が昇る
激しい気配は終結し
決着は近い様に覗えた
- 554 :スケイルエキドナ:2012/01/15(日) 00:18:56 ID:SSMHlh/20
- >>552
鎖の一部から、エキドナの己の体液に染まり、
甲殻ごと肉をズタズタに抉られた右腕が、だらりと力なく垂れている。
――ボロッ
未だに、肌へと張り付いていた甲殻は
完治した瘡蓋のごとく、ポロポロと剥がれ落ちていく。
- 555 :レスト:2012/01/15(日) 00:29:08 ID:ZFCfPuPg0
- >>553
レストは、コンテナの隙間だったコンクリートの上に倒れていた。
刀をしっかりと掴み、しかし、一ミリたりとも動かない。
手足には鎧が残っていたが、
胸部はオレンジ色の肉が見えていた。
その身体は激しい炎に包まれているが、
今までの炎よりは弱い。
周囲には、レストの攻撃から燃え移った炎がパチパチと音を立てていた。
- 556 :甲/金獅子《ネヴァーエンディング・ソウル》:2012/01/15(日) 00:40:37 ID:0.F9MMNo0
- >>555
「なん……て、ヤロウだ……!」
炎が消えていない
更には炎の向こうには刀を未だ離さないレストの姿が見えた
「ち、くそ――奴は、まだ……!」
止血はまだ全身の半分といった所か
身体を動かす度に、軋む身体に苦痛が奔る
「(だが……行かないと……!!)」
引きずる様に足を動かすと、滾る炎の中心
レストに向けて進んで行く
「(……回復は、中断……かき集めろ、残った力を……!)」
消えゆく金色
リミットまでの時間はもう無いに等しかった
- 557 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/01/15(日) 00:47:06 ID:HnkBBDEo0
- >>554>>555>>556
「やめろ甲!!」
エキドナを内包する鎖の球体。
それと共にクロスがコンテナの上に立ち、叫んだ。
「小百合の捕獲には成功した! もう無理をする必要は無い!
相手は虫の息みたいだが、お前もやべぇじゃねぇか! っていうか首!
お前の首スゲーことになってんぞ!!」
クロスはコンテナの上から降り立ち、甲の前へ。
「ここは引こう! もともと、俺達の目的は小百合の奪還だった。
お前の相手も、いま無理をしてでも決着をつけなきゃいけない相手じゃねぇ!」
そう言った後、今度はレストの方へと振り向く。
「どうだ? お前もここで引かないか? 俺達は、目的を果たした」
- 558 :レスト:2012/01/15(日) 00:52:11 ID:ZFCfPuPg0
- >>556
レストは死んだように動かない。
しかし、死んでいる訳が無い。
怪人は死ぬときに、その身体は爆散し、
怪人としての力が消滅するのだ。
それでも動かないのは気絶しているからか、それとも――
――薄れゆく意識の中で、レストは身体を動かそうとしていた。
しかし、指の一本さえも動かない。
無意識なのか、右腕だけは刀を掴んでいる。
(死ぬ……死ぬのか……。
あの能力者が最後の相手ならば満足だ……が、しかし……)
レストの魂をその身体に繋ぎとめているのは――
(まだ、悔いがある……。
ここは俺の死ねる……場所ではない……!)
- 559 :レスト:2012/01/15(日) 00:54:02 ID:ZFCfPuPg0
- >>557
レストからの返事は無い。
しかし――
――ザリッ……
指が、動いた。
- 560 :スケイルエキドナ:2012/01/15(日) 01:03:01 ID:SSMHlh/20
- >>557
――ズガッ!!
ふいに小規模な爆発音が響き、
生暖かい風が、クロスの頬を撫でた。
見れば、異形の一部が損壊しその部分から小百合の姿が覗いている。
「ぅ…………。」
急速に赤みを取り戻していく肌。
ボロリ、と剥げ落ちる大きな甲殻の塊。
人間に戻っているのか……?
- 561 :甲/金獅子《ネヴァーエンディング・ソウル》:2012/01/15(日) 01:12:44 ID:0.F9MMNo0
- >>557
熱くなった頭に、冷水の様なクロスの声が響く
「ッづ……!……はは、流石だ……!」
やりやがったな、と賞賛に口角が上がる
「(……首?うぉお…!止血全然進んでねぇじゃねえか……!)」
ダラダラと零れ出る命の滴を再び残存粒子が塞ぎ
痛みが朦朧とする意識を繋ぐ
>>558
「(…………動かない)」
冷静になった頭で、その様子を観察する
「(いや、動かず回復に努めているようなら……クロスの言う通り、撤退が最善手か……?)」
怪人スケイルの底を甲は知る由も無い
手応えの残る拳と交えた相手の刀とで力量を推し量る事は出来たが
その推察では、確信を得るにはまだ不十分過ぎた
「(不確定要素が多過ぎる……好機だか何だか、掴み切れねぇ)」
燃え盛る炎を見詰めながら
攻めあぐねる
>>559
「――――」
動いた
「…………悪ぃ」
それは、クロスに向けての謝罪
身体の心配に掛けられた声には
「……ここまで闘っといて、ハイここまでよ……って勝ち逃げは」
まだ応える事は出来ない
「やっぱ、無理だ――――俺」
首のマフラーをきつく縛る
歩幅を広く、体勢を低く
拳を大きく引き――――ピタリ、と構えの姿勢で制止した
「(……我ながら、馬鹿だよなぁ)」
何処かで、冷静なままの自分が苦笑したが
その考えすらクリアにして
霞む視界の中、頭は逆に鮮明に
レストの行動に対応できる位置で、機を待つ
- 562 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/01/15(日) 01:18:53 ID:HnkBBDEo0
- >>560
「!?」
いきなり訪れた小百合の変化。
まだ怪人について深い知識を持たぬクロスには、何が起こっているのか理解できない。
「戻っている……のか? なぜ? 物理的再生能力の限界を超えたからか?
ともかく、早く詳しい奴に見て貰わねぇと……」
>>560>>561
「……ったく、甲。そういうところ、やっぱり変わんねぇよな」
コンテナの上に飛び上がり、ドカリと座る。
「邪魔はしねぇぞ。どうやらタイマンになってるみたいだからな。
お互いもあと、もって一撃出せるか出せないからしいし……決着、見届けてやる。
だけど、甲。――勝てよ……!!」
- 563 :レスト:2012/01/15(日) 01:28:22 ID:ZFCfPuPg0
- >>561
指が動いて数秒。
その動きが連鎖するように、レストは起き上がっていく。
炎が、再び燃え上がる。
「……止めを……」
刀を地に突き刺し、揺れる炎と同化するように立ち上がった。
「……刺せば……よかったものを……。
……俺はもう、戦う……力は残っていない……」
刀を杖のようにして。
「この勝負……は預けた……次に会うときは……」
ふらふらと、甲に歩み寄っていく。
弱弱しいその歩みと対照的に、炎が勢いを増していく。
「俺が――」
レストの身体は、人間態に戻ったが、その炎は消えない。
身体から、鈍い色の煙が立ち上っている。
それは、蒸発していくレストの血。
- 564 :黒沢小百合:2012/01/15(日) 01:29:28 ID:SSMHlh/20
- >>562
小百合の失踪時には大量の血痕が残されていたというし、
先ほどまであれほどの激闘を行なっていたというのに、異形の体内から覗く彼女に、
負傷の類は見られず、ご丁寧にも小百合のユニフォームである黒のスーツまで無事。
しかし、意識はないようで時折苦しげなうめき声を上げるほかに、彼女の反応はない。
とにかく、彼女が怪人の支配から解放されたことは確かに見える。
- 565 :甲/金獅子《ネヴァーエンディング・ソウル》:2012/01/15(日) 01:41:19 ID:0.F9MMNo0
- >>562>>563
「止めを刺せば良かった……あぁ、その通りだよチクショウ」
「……」
「……ぁああああああもう」
がくり、と半金髪の頭を垂れると
「……まさか、怪人と約束を交わす事になるたぁな
――――…あぁ、承っといてやるよ……闘将レスト」
勝負を預けた
その言葉に頷き、構えを解く
同時に張り詰めた緊張が切れたのか、膝が折れ全体がよろめく
「へ、ばーか……次に闘んなら、疑う余地も無く完勝したらぁ……!」
首の止血と全身の火傷の応急処置を終えると
金色の粒子は風に巻かれて夜空に消える
輝く金髪は黒髪に戻り
左眼の螺旋模様はその奥へと潜んで消えた
- 566 :レスト:2012/01/15(日) 01:43:23 ID:ZFCfPuPg0
- >>565
まだ、レストの言葉には続きがあった。
パクパクと、声にならない掠れた音を出し、ようやくその声を、言葉にした。
「――帝王だ」
そう言い残し、倒れ付す。
同時に炎が消えた。
炎の向こうには――レストは居なかった。
レストは跡形も無く消え去った。
燃え尽きたのではなく、消え去ったのだ。
しかし、最後の台詞。
レストはまだ生きている、そう判断しても良いだろう。
- 567 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/01/15(日) 01:57:52 ID:HnkBBDEo0
- 「……む、話はついたようだな」
コンテナから飛び降り、甲の元へと走る。
走りながらもクロスに纏われていた装甲がガランガランと音を立てて剥がれ落ちていった。
「傷は……ああ、粒子による応急処置か。
傷口は塞がってるみたいだが、後でちゃんと病院行っとけよ」
甲にそう言いつつ、クロスは鎖の中から出る小百合の腕を視る。
彼女の腕は徐々にではあるが、人間のそれになりつつある。
「一時はどうなるかと思ったが……やれやれ、無事、取り戻せたようだぜ」
- 568 :甲/オーバーロード:2012/01/15(日) 02:01:36 ID:0.F9MMNo0
- >>566
「――は?ていお……う?」
その言葉の意味を理解出来兼ねて困惑に首を捻るが
次の瞬間にレストは消えていた
「…………なんつーか」
心に従い、レストを逃したが
果たして良かったのか――なんて考えが僅かに頭を過った
「良いさ、てめぇの不始末だったら……てめぇで何とかすりゃあ良い」
久し振りに熱い夜だった
身体も、心も
それと
「(“金獅子モード”……久し振りに出したからなァ……しばらくは能力ゼロ状態か)」
“金獅子状態”での能力行使は甲の身体にとって完全なオーバーロードとなる
現在判明している副作用は数日間の能力停止
行使した時間にも関係してくるが最低でも二日以上、『螺旋眼』の使用は出来なくなった
「あと、筋肉痛とー……」
自身に翌日振りかかるであろう受難を指折り数え辟易しつつも
コンテナの上に座るクロスの方へと歩き出した
>>567
「スマン、取り逃がした」
半ば既に開き直った様に謝るとコンテナにもたれかかる様に座り込む
「ご苦労さん、いや来てくれて助かった……」
- 569 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/01/15(日) 02:28:14 ID:HnkBBDEo0
- >>568
「いや、俺だって助かったさ。それより、だ」
ふむ、と右目で甲を視る。
「……病院まで運ぼうかい? 千夜の息がかかってる場所があった筈だ」
そう言いつつも携帯電話を取り出す。
「俺だ。クロスだ。……そう、あのクロス。話が分かる人に変わってくれ。
…………ああ、どうも。突然ですまないが、二人ほどそっちに診て欲しい奴がいる。
一人は甲。そうだよ、甲。マジ。あともう一人が小百合……うわッ、うるせッ!!
喚くな! 今から運ぶから準備を……ああ、いいよ別に。それより人を集めてくれ。
何しろ拘束するのに手間がかかってな。ああ、うん、頼んだ」
電話で話しつつも、甲に「どうする?」と目で言う。
- 570 :甲/オーバーロード:2012/01/15(日) 12:45:31 ID:8dZxyt4s0
- >>569
「行く……」
手をぷらっと上げるとその問いに答えた
「その方が、多分色々と都合が良い」
サイレンの音が遠く聞こえる
消防と、あれは多分クロスが呼んだ救急かな……
「……じゃ、後は任せた」
眠ぃ、と呟くとそのまま意識をまどろみに手放した
コンテナが開けた海の向こう
鮮やかな朝日が、夜明けの到来を告げていた
- 571 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/01/15(日) 15:14:04 ID:E4Ka56rgO
- >>570
「おう……っと、寝ちまったか」
甲を抱えると、小百合も引き連れサイレンの方へ。
「まだ事件は終わっちゃいねぇ。
でも、ま、今日はここで一段落とするか」
そして三人は、病院へ。
- 572 :ヴァージニア:2012/01/16(月) 20:53:38 ID:WaCltr.Y0
- ヴァージニアの夜は早い。とはいえ、やっていることは人間のときと変わらない。
建築現場に赴いては、放置してある鉄パイプを失敬する。くず鉄屋に売れば、キロ数十で売れるのだ。
五メートル程度の鉄パイプなら、重さは15キロ程。数本売るだけで、アルバイト等の一時間分の時給に相当する。
彼女の大好きな正義とは程遠いが、いいのだ。モラルレベルでの正義を、彼女はよく分かっていない。
吸血鬼となって得したこととすれば、鉄パイプを一度に運べる量が増えたことだ。
以前は一本運ぶことがやっとだったが、今では二桁の数の鉄パイプを楽々運ぶことができるようになった。
方法は褒められるものではないが、こうして彼女は一日の生活費を稼いでいる。しかし、
「おなかすいた……」
代わりに、体を維持する為の代謝量が増えた。それなりの力を持つと、見合った量のエネルギーが必要となる。
例えば、象は一日あたり150kgの食糧が必要とされている。吸血鬼の場合も同様に多くの食料が必要らしい。
しかし、吸血鬼には吸収に適した食材が存在する。
血だ。
「………」
通行人を見ては、よだれを垂らす。
奇妙な感覚から、自分が嫌になって壁に頭を何度も叩きつける。見ている者はこう不思議に思うだろう。
何やってるの、この人。
- 573 :甲/in異能都市:2012/01/18(水) 22:05:23 ID:QzgFWCDo0
- 【――回想――】
【都市郊外――某所】
「壊れた」
ガシャン、と金属片が詰まった布袋をカウンターに置いた
『……壊れた、じゃなくて壊した、だろ……っかー、ありえねぇ……!』
店主と思しき人物は苦々しくその布袋を眺めると
ふかしていたタバコをもみ消した
布袋の中身は、先日のコンテナ地帯における怪人との抗争
その折に大破した両腕部の装甲――“赤煌”の破片だった
「まぁ、壊されたっつーのが本当かな?」
『……その方がありえねぇっての
“お前の中に混じり合って同化してた装甲”だろうが
今までは怪我が治るのと同時に、それも直ってたはずだろうに』
戦闘の損傷以外で心当たりは?との問い掛けに甲は首を傾げる
『け、』
分からねえのかよ、と毒づくと店主は破片の鑑定を行った
そして、数十分後
『……判明したぞ、まぁ端的に言う、こりゃ“過負荷”だ
過剰な能力の行使による使用限界の突破……そろそろ壊れる時期だった、って線が濃厚か』
「……寿命みたいな?」
『あぁ、っつーか、こりゃだいぶ前から痛んでた感じだな
長く使ってんだろ?そろそろお前さんの使用に耐えられなくなって来てたんだよ』
「マジかよ……」
過負荷、といわれると心当たりがある
オーバーロード『金獅子モード』による能力行使だ
元々、それに想定した強度では造られてはいない為
無理な能力行使が祟ったのだと、素直に納得する部分もあった
「直る?」『直んね、新しいの探せ』
――――――――――――――――――
……と、言われたのが今日の日中の話
「(……はー……どうすっかなァ……)」
オーバーロードにも耐える“赤煌”を超える装甲の捜索
漠然とした探し物であった
「せめて素材……邪気とかを通しやすい強硬度の金属でもありゃあなぁ……」
クロスの奴でも訪ねてみるか、と呟くと
大通りをAGカフェの方角へと歩き出した
- 574 :早瀬川巴:2012/01/18(水) 22:10:51 ID:r6cIpuA60
- >>572
すると突然、何かが倒れたり割れたりするけたたましい音が当たりに響き、それに遅れること一瞬、
横の路地から何かが吹っ飛んでくる。
強い勢いのままゴロゴロと地面を転がるそれは、まだ二十歳にもなっていないであろう少年。
動きやすい服装から露わになっている肌には、何かに強打されたような酷い痣がいくつも出来ていて、
しかも左腕はあり得ない方向に曲がっている。折れているようだ。
「く、くそう、ヴァンパイアめ……!」
苦々しげな表情をし、脂汗を垂れ流しながらよろよろと立ち上がろうとした少年であったが、
今し方少年が吹き飛んできた路地から黒い影が飛び出し、その影に組み伏せられてしまった。
少年を急襲したその影は、女子高生が普通に着るようなセーラー服の上に、黒いロングコートという、
奇妙な出で立ちの少女であった。
少年は組み伏せられたまま、最後の力を振り絞るように右手に手にしていた銀色のナイフを少女の腕に突き刺したが、
「無駄だとわかっているはず、なのです」
少女にそれを苦痛に感じる様子はなく、ナイフを刺されていない方の手で少年の首を掴み、
そのままギリギリと締め上げる。
路地から出てきた速度といい、ナイフを苦痛に感じないことといい、尋常の存在ではないのだろう。
それらの証拠にもう一つ並べるように、首を締め上げてから数秒もしないうちに、少年の首から何かが折れる音が響いた。
- 575 :甲/in異能都市:2012/01/18(水) 22:19:53 ID:QzgFWCDo0
- >>574
「――」
路地から飛び出す二つの影を見て数秒
嫌な音がした
「……ち」
小さく舌打ちをすると、二人に近づいていく
- 576 :ヴァージニア:2012/01/18(水) 22:23:39 ID:M1/izw920
- >>574
突然の出来事に我を忘れ、その光景を見入っていた。
しかし、少年から聞こえる最後の音で、その行為が何を意味しているのか理解した。
眼前に居る女子高生は、人を殺したのだ。
首の骨を折れば、人間はほとんどの場合即死である。
彼女は戦慄した。こんな簡単に命は奪われていいのだろうか。
彼女の普段出入りしている場所は治安が悪いとはいえ、人――正確には彼女は人間ではないが――の前でこんなことをする者がいるだろうか。
(……悪だ)
鉄砲玉の彼女は、いつもなら勧善懲悪の精神から攻撃を行っていただろう。
しかし、恐怖を覚えた彼女は…今回は何もできず、身動きができない。
- 577 :早瀬川巴:2012/01/18(水) 22:31:50 ID:r6cIpuA60
- >>576
「………………」
絶命の音と、死の弛緩を見届けた少女は音のでないような細く長い息を吐き、ゆっくりと立ち上がった。
少女の顔にはやるせないような表情が張り付いている。少なくとも快楽殺人者の類ではないことは確かだった。
と、その段になって、彼女は初めて今の一連の出来事を見ていた者がいるのに気がつき、そちらに顔を向けた。
「……見ていたのですか、今のを?」
問いかけながら、腕に刺さったままだったナイフを引き抜き、少年の亡骸の上に投げる。
- 578 :ヴァージニア:2012/01/18(水) 22:44:43 ID:M1/izw920
- >>577
「ひ……人殺し……」
彼女もまた生死を超越した吸血鬼だが、まだ年端も行かない子どもで善悪も判断できていない。
そんな彼女は死と言うものに対して恐怖を覚え、目の前で起こったことは死そのものなのだから、動揺するのも当然である。
- 579 :早瀬川巴:2012/01/18(水) 22:57:44 ID:r6cIpuA60
- >>578
「なるほど、人殺し、ですか。まあ確かに」
普通、人殺しなどと呼ばれれば、動揺の一つも見せるはずなのだが、少女はそんな様子は露ほども見せない。
身を翻した少女はさきほど投げ捨てた銀色のナイフを拾い、
「しかし、いずれ貴女もそうせざるを得なくなる場面が来るのです。
貴女は私と同じ――――吸血鬼のようですから」
ナイフを掌で弄びながら、少女は同族らしい彼女に歩み寄っていく。
「これ、何だかわかりますか?
これはどこかの教会か何かで法儀礼を施された、不浄の存在を誅滅するために作られたナイフなのです。
こんなモノを持っているということは、さっき私が殺した彼は、
ヴァンパイアハンターかエクソシストの駆け出しだったようですね」
そのナイフはまさにヴァンパイアのような魔物に対してはこれ以上ない武器と言えた。
「これを、殺意を持って向けられたら、貴女、どうしますか?
ちなみに私の答えは、アレです」
転がっている少年の亡骸を指さしながら、少女は問うた。
- 580 :ヴァージニア:2012/01/18(水) 23:09:00 ID:M1/izw920
- >>579
「違う……」
言葉では否定するが、実際その状況に直面したとき、そう言えるのだろうか。
命の危機に直面した時、彼女は殺す以外の選択肢を見出せただろうか。
「私はあなたとは……、違う」
そう言いながらも、漂う血の匂いに反応し。お腹が鳴る。
- 581 :早瀬川巴:2012/01/18(水) 23:21:43 ID:r6cIpuA60
- >>580
「そうですか。不殺を貫くならばそれでも良いと思うのです。
でも、自分の命と相手の命を天秤にかける瞬間は必ず来ます。
その時どうするかを早い内に決めておいても、損はないと思うのです」
拒絶されてしまっても、やはり動揺はない。
少女は「そう言うと思っていた」とでも言うような表情のまま振り返って、少年の亡骸へと歩いていく。
その途中で弄んでいたナイフを再び投げ捨てる。今度はアスファルトの上に落着し、乾いた金属音が空しく響いた。
「こうして殺さなくても、血を得る方法はいくらでもありますし――」
亡骸の首を片手で掴み、持ち上げる。
「――その必要も、本当は無いのですけれどね。私の場合。
ところでこの死体、もしかして欲しかったりしますか?」
- 582 :ヴァージニア:2012/01/18(水) 23:30:29 ID:M1/izw920
- >>581
背徳的な響きだった。
この亡きがらを自分の食糧とするならば、この飢えを満たせる。
しかしそれは、自分が吸血鬼であることを肯定し、人間の心と決別しなければならない。
自らの欲求に正直に従うべきか、モラルを遵守するか……
訳も分からず、目から涙が零れている。
それは、彼女の人間である心が見せた、抵抗の証だった。
- 583 :早瀬川巴:2012/01/18(水) 23:46:55 ID:r6cIpuA60
- >>582
欲しい、と彼女の眼は言っているが、その言葉が口から出てきてはくれないようだった。
おそらく、吸血鬼となって間もないのだろう。その気持ちはわからなくもない。
しかし。
「……鯨を捕まえて食べることは道徳に反するからやってはいけない、という言説を聞いたことがあるでしょう。
彼らが言うには、鯨は知能が高く、他の食料となり得る動物とは違う存在だから、それを食べるなど、
残酷以外の何物でもない、と。阿呆な話ですよ。
貴女が踏みとどまっているのはそのレベルの話です。人間を食べるなど、やってはいけないと。
まあそうでしょう。人間が人間を食べるなんて、まともじゃありません。
しかし、貴女は違う。貴女はもはや人間ではない。吸血鬼という、人間以外の生き物になってしまった。
可逆的な話ならばともかく、そうではないのでしょう?
現実として空腹があり、それを満たすためには血が必要。貴女にあるのはその図式だけです」
亡骸を彼女の前に突き出す。
……死んだばかりで、まだ暖かみがあるそれを。
「貴女が自分の変容に絶望し、自殺を選ばなかったということは、吸血鬼として生きることを選択したことと同義なのです。
……それとも、今ここでその命を絶ちますか? おあつらえ向きに、吸血鬼に効果的な刃物がそこにありますよ?」
- 584 :ヴァージニア:2012/01/18(水) 23:56:34 ID:M1/izw920
- >>583
結局、彼女の選んだ道は捕食することだった。
亡きがらに牙を立て、チスイコウモリのように鮮血を舐めとる。
生存本能に逆らえるほどの理性、信念を彼女は持っているはずもなく。
吸血鬼としての欲求を果たす為に、他者の血を奪い自らの糧としていく。
その行為中は、涙が止まらなかった。自分がどうしてこんなことをしているのか、
なぜそのことを認めているのか、分からなくなってしまった。
もう少しだけ、もう少しだけ。そう粘っていると、ついに血がなくなってしまった。
血が通っていない搾りかすを、地面に横たわらせると、ごめんなさい、ごめんなさいと小さな声で何度も言っている。
- 585 :早瀬川巴:2012/01/19(木) 00:10:28 ID:r6cIpuA60
- >>584
ようやく「食べてくれた」彼女に目線を合わせるようにしゃがんだ少女の顔は、少し優しげなものになっていた、
「よく、頑張りましたね。それで良いのです。
そうしなければ、私たちは死んでしまう。そこに善も悪もありません。
生きる、ということは他の命を食べること。それが少し、変わっただけなのです」
少女は血の無くなってしまった亡骸に手を乗せて、
「この子はどうやら、女の子を知らないまま死んでしまったみたいですね。
貴女が今飲んだのはいわゆる童貞の血、というものです。処女のそれと並んで、質の高さでは双璧を為すものですよ。
初めて飲んだ血がこれっていうのも、何だか気の毒ですね。もうこれ以上のモノは無いのですから」
少し冗談めかした声色で言う。
- 586 :ヴァージニア:2012/01/19(木) 00:33:11 ID:M1/izw920
- >>585
「う……、ぐすっ……」
彼女は吸血鬼として生きることが、こんなにも辛いものだとは思ってもみなかった。
そして、このような捕食行動は次第に慣れて、罪悪感を感じないようになっていくだろう。
それを思うと、彼女は悲しいのだ。今は人間の心を持っているからこそ流せる涙だが、
次第にそんな感情も消えてしまうのだと考えると、自分と言う存在をたまらなく嫌いになるのだ。
「自分は、自分はもう……」
悪の道を歩んでいるのだろう。そう思わずにはいられない。
人を殺傷し、血を奪うことを肯定する。そんな存在に、なりつつある。
彼女は茫然自失の状態のまま、主人の下へと帰って行く。
その足取りは重く、姿はとても生気を帯びているものとは思えないものだった。
// すいません、眠気が参ったのでここで締めさせていただきまする。
- 587 :早瀬川巴:2012/01/19(木) 00:43:37 ID:r6cIpuA60
- >>586
ふらふらと危なっかしい歩き方で何処かへと去っていく彼女を、少女は見送る。
「あの子……あのままだと壊れますね。
そうなるか、それとも乗り越えるのか…………それは本人次第ですし、私には口出しできませんけど。
ふふっ、私もいつのまにか、考え方だけは吸血鬼に染まってしまったようですね」
それを厭う表情は彼女にはない。
少女はコートから、奇妙な文様の書かれた一枚の紙を取り出すと、それを少年の亡骸に乗せる。
すると、紙を中心にして死体が燃え上がり、あっという間に死体を灰に帰していく。
そこは即席の火葬場と化していたが、そこにもう少女の姿はない。
ただ、一匹の蝙蝠がその上空を旋回して、きぃきぃと鳴きながら夜の空へと飛び立っていったのみである。
//乙でした
- 588 :レア・アシェット:2012/01/19(木) 18:45:38 ID:u1xi.WBk0
- 【異能都市 町外れ 夜】
クレーターのようにくぼみが広がった道路や、穴だらけになった壁。そのほかにもあちこちが崩れてしまっている一帯。
過去に能力者同士の戦いが行われた。そう、考えられている場所の一つである。
異能都市にはそれほど珍しい場所ではない。
調査はずっと前に終了したため、現在は封鎖がとかれているのだが、町外れという地理の関係か、そのまま放置されているようだ。
そのため今はコレといったものが無く、非常に寂しい場所になっている。
そんな場所に、一人の人影。あちこちを行き来しては、何かを記録しているようである。
- 589 :名も無き異能都市住民:2012/01/19(木) 21:46:46 ID:SSMHlh/20
- >>588
――ブォオオォ……ォォ……。
レアから2、30mほど先、大きなクレータで道が寸断された
地点に一台の黒塗りのバンが止まった。
この周辺はこの放置された戦闘現場から分かるように住人が少なく、
地理的条件などその他もろもろの利害関係から開発も進んでいない打ち捨てられた区域。
都市から出るにしても、すぐに車では走行不可能なほど荒れた荒野にでるこの場所から
出る意味はあまりない。
一体、どこへいくつもりだったのだろうか。
- 590 :月夜:2012/01/19(木) 22:09:35 ID:dL8H4NjE0
- >>589
「……あれー?」
ガシャン、と金属音のようなものが辺りに響きわたる。
つい先日のラインハルトとの戦闘で、月夜は光の剣が自立的に動いたことに疑問を抱き、
こうして人気のない場所でそれが本当のことだったのか確かめようとしたのだ……が。
「駄目だ。全く動かない」
あの時の完璧な連携はどこへやら、剣は顕現させてもその場に落ちるだけで、うんともすんともいわない。
無意識の内に能力を使ってたのかな、と結論づけて帰ろうとした、その時。
(…………?)
月夜の視界に一つのバンが入る。
「違法な売人とかだったら放っておけないかな……」
月夜は見つからないように静かに接近する。
- 591 :レア・アシェット:2012/01/20(金) 20:57:22 ID:u1xi.WBk0
- //>>588で、絡みを募集しています。
- 592 :ガルテラ:2012/01/21(土) 21:01:03 ID:ZFCfPuPg0
- 異能都市内の川原。
カンテラを持った男が歩いていた。
いつも連れている黒子達は今日はいない。
当然、大きなトランクは自分で持っている。
「ふーむ……」
男は何かを探すように周囲を見渡しながら歩いていた。
とは言え、男にとってこれはいつものことであり、日課である。
多少不審かもしれないが、ただの散歩とはそう変わらない。
「うん」
一人で何か納得したかのように頷くと、土手に上がってくる。
そしてそこに座り、川を眺め始めた。
- 593 :コレット/『人形使い』:2012/01/21(土) 21:52:07 ID:1sJsd2CgO
- >>592
少女は人を捜していた。
最近は特に念入りに、半ば諦めてはいるが。
「あ――」
川原を見ながら土手に座っている男のシルエットが、捜し人のそれとよく似ていたから近寄って声をかけた。
でもそれは、トランクの影を身体の一部と勘違いしたからで――
- 594 :ガルテラ:2012/01/21(土) 22:01:22 ID:ZFCfPuPg0
- >>593
「なんですか?」
男は笑顔でコレットの方を向いた。
「私に何か……?
道にでも迷ったとか」
首を傾げつつ、コレットに話しかける。
- 595 :コレット/『人形使い』:2012/01/21(土) 22:12:20 ID:1sJsd2CgO
- >>594
「あ――。いえ、人を捜していて……」
――人違いでした。
とは言いにくかった。
この少女、よく見れば口が動いていない。
創られた無表情な貌の一部はまさに人形のそれであるから当たり前なのだが。
- 596 :ガルテラ:2012/01/21(土) 22:21:42 ID:ZFCfPuPg0
- >>595
「人探しですか。
私は先ほどからこの周辺で人は見ていませんが……」
そう言いつつ、男はコレットがまったく顔を動かさないことに気づく。
(む……腹話術でしょうか……)
対した驚きは見せないものの、疑問には思っているようである。。
「どのような人間をお探しで?
余りお役には立てないでしょうが……」
- 597 :レア・アシェット:2012/01/21(土) 22:38:07 ID:u1xi.WBk0
- ブレザーに身を包んだ少女が土手を歩いてくる。
大きく重そうなリュックサックを片腕で引き下げ、川を見ながら歩いていた。
>>595>>896
少女は二つの人影に近くまで歩き、二人の影を見つけると――ふと、足を止めた。
そして、二人の姿を何やら珍しそうに見つめている。
- 598 :コレット/『人形使い』:2012/01/21(土) 22:49:53 ID:1sJsd2CgO
- >>596
「えと、凄く恰幅の良い……そう、おっきな大福餅を二個重ねたような体格の男の人です」
しばらくこの辺りに人気は無かったという。
聞くだけ無駄だ。
そう思っても、心は勝手に言葉を出す。
「たしか、仲間内では『デリバー』と呼ばれていました」
どんな仲間内か、少女自身も知らない。
>>597
千夜学園高等部の生徒なら、少女を知っているかもしれない。
生徒会員会計、高等部一学年のコレット・フランキス。
いや、もしかすると。
いつも自家製の人形に乗り移っている変人、としてかもしれないが。
- 599 :ガルテラ:2012/01/21(土) 23:03:08 ID:ZFCfPuPg0
- >>597
土手を歩いてくる少女を見つける。
男は大きなトランクにカンテラと、確かに目を引かれるいでたちではあるが、
立ち止まってまで見るような格好でも無い。
「……なんでしょうか。
何か珍しいものでも?」
男はレアに声をかけた。
>>598
「……恰幅の良い……。
デリバーと言う呼び名……。
……申し訳ありません、そのような人間は見たことがありませんね」
首を振る。
しかし、見覚えは無いらしかった。
「見かけたらお教えしましょう。
部下達にも見かけたら私に知らせるように言っておきます。
ですが……その男にどのような御用事で?
言えないようなことならば構わないのですが、その男が危ない人物でしたら……」
男はコレットに不審感を向けていた。
恐らく逆の状況も想定しているのだろう。
つまり、危ない人物はコレットで、危害を加るために男を探しているとしたら、である。
- 600 :レア・アシェット:2012/01/21(土) 23:17:27 ID:u1xi.WBk0
- >>599
そのまましばらく、目の前の人物を眺め続けていたが、やがて口を開く。
「この街に来て初めて、一目見て『異能者』だと分かる人達に会ったから。」
男は大きなトランクにカンテラと。この街になれた人間なら足を止める程ではないのかもしれない。
しかし、異能都市の外からやってきたレアには、カンテラを持っているというのはとても珍らしく見えたようだ。
「……雰囲気も違う。」
>>598
知っている目で、コレットを見る。
生徒会員として公開されている情報程度は知っているようだ。
「あなたも、そうなんだ。」
しかし今、目の前にコレットは特殊――『異能者なのだろうと思える片鱗を見せている。そして、そこに興味を引かれている。
レアにとって興味があるのは、生徒会会計ではなく、異能者であるのだ。
- 601 :コレット/『人形使い』:2012/01/21(土) 23:31:03 ID:1sJsd2CgO
- >>599
「あ、いや。別にその人は悪い人じゃなく……ちょっと狭い趣味の物売りさんです。欲しい物が出来たのですが連絡が付かなくて……」
――本当の用事は言えない。
いや、正直に言えないだけだ。
だから少女はただ要点を隠して伝えた。
ハハハ、と少女は乾いた声で笑う。
生身の身体ならきっと汗を浮かべていただろうが、この身体はただただ無機質な人形である。
もちろん何も出ない。
>>600
目の前の男が反応した背後の方から声をかけられて振り向く。
「え、っとー……。うん、たぶんそうなる」
見慣れたブレザーの見知らぬ少女に言葉を返す。
異能者の意味する範囲は広く、そうすれば一種の魔術士である自分もその範疇なのだ。
- 602 :ガルテラ:2012/01/21(土) 23:39:10 ID:ZFCfPuPg0
- >>600
「なるほど、そういうことですか。
かくいう私もこの街に来てから日は浅いんですよ」
男は人間とは違うものであり、
雰囲気は若干邪悪に感じる者も居るかもしれない。
「できれば私が何者かを解っても、人には言いふらさないでいただけるとありがたいのですが。
この街に危害を加えに来た訳ではありませんので」
それは種族的な問題から来るものである。
男自身はなんら特筆すべき敵意、悪意を持っているわけではなかった。
>>601
「それならば良いのですが」
不信感は余り解けなかったが、
それ以上疑っても自分には関係は無いと判断し、無理やり自分を納得させる。
「ところで……先ほどからも気になっていたのですが……。
その身体は一体?」
コレットの身体は不信感を抱く理由の一つであった。
表情が読めないのは少し信用し辛い。
まあ、ただ単純に人形の身体に対する興味からの質問でもあるのだが。
- 603 :レア・アシェット:2012/01/21(土) 23:59:40 ID:u1xi.WBk0
- >>600
「……そう。」
能力者である。という返事を聞くと、コレットに近寄る。
「ねえ、『異能者』。一つ、私に頼まれて。」
そう言う彼女の表情は冷静で、言葉には何の感情もない。
まるでずっと前から決めていた台詞のように淡々としている。つまり、『異能者』なら誰でも良いのだ。
>>602
男の言葉、そして僅かな動きをじっくりと観察する。
それも普通の人間では考えられない集中力で、である。
その様子はレアが不思議と判断したように、周りから見れば変わった行動と見えるだろう。
「よく分からない。だから、人に言い触らすほど情報も無い。」
「……何者?」
- 604 :コレット/『人形使い』:2012/01/22(日) 00:11:42 ID:1sJsd2CgO
- >>602
「身体……?」
なにか服に付いていたりするのだろうか、と足や腕を見――やや遅れて、そうかと意図を掴む。
「人形です、等身大の。ほら、あの『着ぐるみ』ってあるでしょ? そのリアリティを高めたようなものです」
知りませんかマペッター、とコレットは首を傾げる。
俗に着込み派と呼ばれる人形使いの呼び名であり、人形を外的に操作するのではなく、肉体から幽体離脱し人形への憑依する事で内的に操作するのだという。
>>603
「まぁ……、私に出来ることなら」
彼女はどんなことを頼むつもりなのだろう。
出来ることは少ない。
人形使いとしては半人前で、生身の自分自身はずっと自宅に籠っている。
たぶん、捜し人に逢うまでずっとそのままだ。
- 605 :ガルテラ:2012/01/22(日) 00:17:21 ID:ZFCfPuPg0
- >>603
「解らないのであれば何も問題はありませんよ。
ですが、聞かれるのであれば答えましょう。
隠して通せるようなものでも無いので」
男は咳払いをした。
「悪魔です、私は。
比喩などではなく、種族的に」
そう言って、レアの反応を見つつ、付け足す。
「悪魔と言うものはあまり良い印象は持たれないでしょう。
ですから、なるべく内密に……ね」
>>603
「マペッター……というのは初耳ですが、なるほど。
どういうものかは解ります」
感心しながら言った。
「……しかし、無表情なのはそういう物だからなのでしょうか。
少し、その……、
……不気味です」
人のことは言えないだろうが、コレットの顔について突っ込んだ。
- 606 :レア・アシェット:2012/01/22(日) 00:33:13 ID:u1xi.WBk0
- >>604
しばらく、コレットの顔を見つめている。
二、三度まばたきをした後に口を開いた。
「私と戦って。」
「ただ、訓練の相手するだけ。その約束が欲しい。」
「嫌ならいい。他の人も当たる。」
他の人。と、脇のガルテラを意識しながら言った。
>>605
「……悪魔?」
「驚いた、本当に居るとは聞いていたけど。」
言葉で驚いたと言いながらも、表情に驚いた様子は全く見られない。
「悪魔なのに人間にどう見られるかを気にするの?
悪魔って、人間を見下して馬鹿にしているものだと思ってた。でも間違いだ、改める。」
- 607 :コレット/『人形使い』:2012/01/22(日) 00:50:35 ID:1sJsd2CgO
- >>605
「……悪魔に表情で不気味と言われる日が来ようとは」
この距離で話していれば聴こえるものである。
ショックを受けたような声色だが、やはり顔は無表情。
「素材がセラミックだから、どうにもなりませんよ」
シリコンなら多少は動いたのに、と愚痴る。
>>606
「うん、それは無理。ごめんね」
運動すらしたことが無いのだ。
戦闘となれば精々逃げ回るのがやっとで、人形を粉々にされても自分は死なないという利点しかない。
そもそも、戦いたがるという事がコレットにはよく分からなかった。
- 608 :ガルテラ:2012/01/22(日) 01:00:24 ID:ZFCfPuPg0
- >>606
「そういう悪魔も少ないわけじゃないですよ。
ただ私は人間は大切なお客だという思想で、対等に付き合って来ましたから。
ここ数十年は契約だとかそういったことはまったくしていませんがね」
悪魔と言ったら、召喚、契約などと言った行為も付き物である。
供物や魂などを対価として貰う以上、それも立派な取引だ、という考えなのだろう。
「人目はそれは気にしますね、こういう都市ですと。
いつ神の信徒に襲われてもおかしくはありません。
現に何度か……」
>>607
「おや……聞こえていましたか……。
……すいません、この距離ならば当然ですね。
……他言は余りしないでくださいね?」
小声で話したのに、と呟いた。
「セラミックですか……。
結構科学的な素材なんですね」
てっきりオリハルコンだとかのような魔術的素材で出来ていると思っていた。
- 609 :レア・アシェット:2012/01/22(日) 01:20:27 ID:u1xi.WBk0
- >>607
「分かった。貴方は戦うのが好きじゃないみたいだ。
……初対面なのに無理を言った。」
その後は、視線を落として、何事かを考え込む。
「……あくまで訓練が目的だから。それを断られた今、私が貴方を攻撃する理由は全く無い。分かってるだろうけど。」
>>608
「断片的な話だけ聞くと、悪魔も私達と大差ないように思える。」
「人間を対等に思う悪魔というのは聞いたことが無い。」
「この都市にあるものが、実際に見た物が真実。だとしたら……そうなんだ。」
悪魔という物について考え直す必要があるようだ。
「貴方が神に背くような事をしたことが無いなら……それは間違っている。」
「悪魔だから。という理由は許されない。」
「『悪魔』。貴方は、私と戦うつもりは無い?
何時でもいいから、それが私には必要になっている。」
- 610 :コレット/『人形使い』:2012/01/22(日) 01:34:31 ID:1sJsd2CgO
- >>608
「もちろん他言しませんよ。あぁ、そういえば――」
自己紹介もしていなかった。と、コレットは名前と千夜学園の学生であることを手短に述べた。
>>609
「うん、必要な事なんだね。分かった……」
戦闘技術を磨く学科もあると聞いた事がある。
たぶん、その関係なのだろう。と勝手に思い込む事にした。
- 611 :ガルテラ:2012/01/22(日) 01:39:59 ID:ZFCfPuPg0
- >>609
「神も悪魔も関係ありませんよ。
私は召喚され、要求されたことに対しては正当な対価は貰います。
例えそれが魂、命と言った物でも、相応の事を行うならば"貰わなければなりません"。
さらに必要ならば、それを地獄に落としたりもします」
簡単なことならば、単純な供物だけで彼は動く。
人間がどうしても成し得ないことをするとき、彼はそれらを要求する。
勿論貰った分はきっちりと働く、それが契約だ。
単純な等価交換である。
「そもそも悪魔と言うものは神が転じたものとも言いますがね。
……自分が神だ、などとあつかましいことを言うつもりはありませんよ?」
そう言って、戦闘を要求してきたレアに首をかしげた。
「戦い、ですか?
今すぐでなくて良いのならば構いませんが……」
>>610
「コレットさん、ですか。
ほう……あの千夜の」
感心しながら、男も自己紹介する。
「私はガルテラ。
道しるべの悪魔だとか、光る虫の王などと呼ばれることもあります」
- 612 :レア・アシェット:2012/01/22(日) 02:07:31 ID:u1xi.WBk0
- >>611
「要求され、召喚されることはあっても、要求することは無い?
もしそうなら……やっぱり貴方を退治する理由は無い。」
「ますます悪魔狩りが許せなくなくなってきた。」
「等価交換だとか、律儀に働くとか……謙虚だし、本当に悪魔? 少し心配。」
この悪魔にたいして、多少ながら好意が湧いてきたのか……なのと表現したものか、強いて言えば『優しい無表情』をふと浮かべる。
首を傾げる悪魔をよそに、言葉を続ける。
「私は戦うためにここに来たから。
異能都市には、簡単に安全な訓練をできる空間があるらしい。もし協力してくれるなら、連絡が欲しい。」
と、アドレスと番号を手渡す。
「こういう連絡のための番号だけど。」
>>609
「……」
かなり悩んだ後に言葉を切り出す。
「次に学校で会ったら声をかけてほしい。でも、嫌なら良い。
学校で案内とか、してほしいものがある。」
「じゃあ……私は先に行くから。」
二人を後にして、その場を立ち去る。
//お先に落ちます。レスが遅かったりいろいろとごめんなさい。
- 613 :コレット/『人形使い』:2012/01/22(日) 02:28:27 ID:1sJsd2CgO
- >>612
「うん、分かった。それじゃあ、その時はよろしく」
立ち去る姿を見送り。
少し、安堵した。
>>611
「千夜のといっても……学ぶ事の多い半人前ですよ」
声色が僅かに淀む。
途端に片腕がだらりと脱力し、乾いた音を鳴らした。
「もうそろそろ戻らないといけない、か……」
垂れた腕をもう片方で持ち上げながら、困ったように呟く。
「ガルテラさん。私は早く家にこの人形で戻らないといけないのですが、あいにく道が分からなくなってしまった」
――道案内を頼めますか?
そう、律儀な悪魔に頼んでみた。
あまり遠くはないが、入り組んでいる為に土地勘がなければ迷いやすい場所。
そこがコレットの望む場所――自らの家である。
- 614 :ガルテラ:2012/01/22(日) 02:42:21 ID:ZFCfPuPg0
- >>612
「無論、契約によって縛られているから契約者には逆らえず、
こちらから要求などしている暇が無い、などと言うこともありますが……」
契約は決して悪魔上位のものばかりではない。
やり手の魔導師なんかに召喚されると、
契約の穴を付かれ一方的にこき使われることもままあるのだ。
「律儀なのは少し自覚がありますが、謙虚、でしょうか。
結構図々しいとは思いますが」
本人は結構気ままに、
気になったことは首を突っ込みつつ生きているつもりである。
「はあ、箱庭のことですね。
あれは一度試したいとは思っていました。
ぜひご連絡させていただきます」
>>613
「道案内ですか?
……構いませんが、対価はいただきますよ。
寿命や、魂……」
その対価とは――
「あなたの寿命から、そうですね……三時間程度。
もしくはそれ相応の値段、物品を」
近所程度の距離だと、それだけであった。
寿命が減るだけである、死後地獄に落ちると言うようなことも無い。
「払う気があるならば着いてきて下さい。
持ち合わせのお金が無いのならば、到着してからの後払いで結構です」
悪魔はそう言うと、トランクごとカンテラに吸い込まれ、
カンテラは光の球体となってしまう。
「ああ……カードでのお支払いは不可能ですので」
ジョークなのだろうか。
そう言いながら、ガルテラだった球体はふよふよと進んでいってしまった。
着いていけば、コレットの家はたとえガルテラが知らない場所でも最短距離でたどり着く。
歪みに巻き込まれなかった場合の話だが。
ついて行くか行かないか、払う方法はコレットに委ねられた。
//もうちょっと支払いシーンとかやりたかったのですが、時間がやばいのでここで落ちさせて頂きますー
- 615 :コレット/『人形使い』:2012/01/22(日) 03:04:38 ID:1sJsd2CgO
- >>614
「それじゃあ、私の名義で一括払いにするよ」
選んだ対価は寿命三時間。
悪魔との取引は初体験である。
現在が自分の日常に介在しないような感覚がした、現実感が消えていく。
むしろそんな状態が彼女にしてみれば好ましいと思えるのだ。
先導する光る球に付いていく。
やがて辿り着く家路に向かって。
//乙。ありがとうございましたー
- 616 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/01/23(月) 21:12:53 ID:HnkBBDEo0
- 「あー、めんどくっせー!」
喫茶店「アップルギロチン」
店のカウンターにて何やら作業をするクロス。
しかしどうやら料理や飲み物を作っているわけではないようだ。
カウンターの上にあるのはクロスの右腕であった。
「機械じかけの義手だからなー。そろそろメンテが必要だと思ってたけ、ど」
能力でドライバーやレンチなどの工具を使い、義手を開く。
義手の内部は機械とは思えないような、肉の塊に埋めつくされていた。
肉と言っても、どこか無機質で所々が金属のような光沢を放っている。
無機物と有機物が融合したような肉塊である。
「相変わらず意味わかんねーことになってるわ。
自分の体とはいえ、どうなっているのやら。とりあえず回路の交換くらいはしておくか」
そう言うと次々と回路を能力で生成しては、古い回路と交換してゆく。
- 617 :レア・アシェット:2012/01/23(月) 21:28:32 ID:u1xi.WBk0
- >>616
義手を弄る人物、のすぐ傍らに一人の少女が居る。
特別に鋭い感覚があるとか、常に周囲を警戒しているならば気がつくだろうが、並の人物ではかなり近づくまで気がつかないだろう。
特別な技術を使って、気配を殺しているようであった。
「――人工物。」
カウンターに身を乗り出して、義手の姿を見る女性。小さな声で何かを呟いていた。
学院後頭部のブレザーを着込んでおり、重そうなリュックサックを持っているようだ。
義手から視線を上げて、腕の持ち主を見上げる。
銃寺森を見る視線は、どことなく鋭い。
- 618 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/01/23(月) 21:39:09 ID:HnkBBDEo0
- >>617
「あー、回線交換めんどくせー。もっとパパッと終わらせあれあぎょぉ!?」
変な声が出た。
「お、オマエ、いついらっしゃいましたんですか? おしぼり出しますか? 気配が無いのでございませー」
テンパっているせいで変な声が出ている。
ただ宙に浮いている工具やら何やらが瞬時にレアの方へと先端を向けており、
少なくとも警戒状態にはなっているようだ。
- 619 :萌葱 アテナ:2012/01/23(月) 21:39:39 ID:7gFzKdaU0
- >>616
「お久しぶりでーす!只今帰りましたー!」
からんからんっ、と甲高い音を響かせて、一人の少女が店内に現れた。
紅い髪と真っ黒な瞳が印象的な、とても小柄な少女である。
肩に旅行かばんを背負い、右頬に大きな傷跡を残して、店内に入ると、ふぅ、と一息。
「すいません、何も言わずに出てっちゃったんですけど、武者修行から帰って来ましたよてんちょー!」
にこにこと笑顔を見せながら、クロスの元へと駆け寄ってくるだろう。
前に比べて、少々穏やかさがより増した様にも見えるが、その奥に妙な重さも宿している雰囲気であった。
うーん?と首をかしげながらクロスの肩から作業を覗き込もうとする事だろう。
>>617
「って、お客さんですね、いらっしゃいませー!」
活発そうなこの少女は、貴方を視界に収めると、快活な様子で挨拶をするだろう。
どうやら、この店に関わっている少女のようだった。
- 620 :眼帯なう:2012/01/23(月) 21:49:55 ID:u1xi.WBk0
- >>618
至近距離で銃寺森を見つめつづける。数十秒、一切まばたきをせずに。
工具がこちらを向いていること、警戒されていることは全く気にならないようだ。
「……」
「……貴方は何。一体、何?」
鋭い視線に、押し殺すような声が、問い詰めるような印象に感じられるだろう。
>>619
チラリとだけ別の人物を意識したが、最終的には無視してしまう。
正気を失う――そこまで酷くはないが、様子がおかしい。
何かを見失ってしまっているようである。
- 621 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/01/23(月) 21:53:53 ID:HnkBBDEo0
- >>619
「ああ、そうだったん? 他のバイトから『しばらくいない』とは聞いてたけど。
とりあえず、その、あれだ。おかえり」
クククと笑いながらも、席を立つ。
「あ、そこの義手は触んないで。メンテ中なんだ。
あと、お客さん来てるから、おしぼりと……ああ、やっべ。いま右腕ないんだった。ちょっとやってくれないか?」
>>620
「え、あの、何と言われましても」
レアに敵意は無いと見たのか、警戒がとけてゆく。
浮いていた工具も宙を移動し、カウンターの上へと並べて置かれた。
「えーとだな、うん。困ったな。
とりあえず最初に自己紹介だ、うん。
俺はクロス。銃寺森クロス。この店の店長だ。
で、お前の名前は?」
- 622 :萌葱 アテナ:2012/01/23(月) 21:57:43 ID:7gFzKdaU0
- >>620>>621
「んー…………?不穏な雰囲気?」
レアの様子とクロスの態度を見て、むむ、と眉根を寄せる。
しかしながら、クロスの言葉を聞いて、コクリ、と頷く。
「りょーかいですてんちょー!」
たたた、と軽やかな音を立てて奥に走っていく少女。
ばさ、ばさばさ、と着替えてウェイトレスの制服に着替えて直ぐに戻ってくる、この間30秒。
体が覚えているのかてなれた様子でおしぼりを取り出して、静かながらも機敏な動きでレアの横におしぼりを置いた。
「おしぼりです、どうぞー」
そうして、二人の姿を目にいれながらも、カウンター奥のキッチンでお湯を沸かし始めて紅茶の準備を始めるのだった。
動く度にポニーテールがふわふわと動いて目立つだろうか。
- 623 :レア・アシェット:2012/01/23(月) 22:08:35 ID:u1xi.WBk0
- >>622
自分の周りを動き回る少女の存在に気が付いたようだ。
小さく唸り声を漏らし、目だけ動かして周囲を見渡した。
先程の気配は一貫の無いものらしく、何もかも萎えてしまったに冷たい表情を浮かべている。
>>621
カウンターの椅子に座る。視線は虚ろに足元を向いている。
「なんと説明したらいいのか……。」
「……私は今、後悔しています。それは分かってください。」
先程の、不可解な態度について言っているらしい。
「レア。レア・アシェットです。」
- 624 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/01/23(月) 22:14:30 ID:HnkBBDEo0
- >>622
「不穏っつーか、初めて見る顔だ。
まぁ、ああいう不思議キャラにあっても不思議じゃないぜ、この都市なら」
そう言いつつも、クロスはアテナが紅茶を沸かすのに合わせてマグカップを取り出す。
「俺も少し飲みたいね。あ、そういえばマフィンあるんだった」
などと言いつつ、片手で戸棚からマフィンを取り出す。
>>623
「ごめんな、さっきはテンパっててさ。びっくりしちゃって。
だってお前、気配ないんだもん。気付いたら目の前にいてさー」
そう言いつつもクロスはまた義手の前へと座り、作業を再開した。
「ああ、レアね。うん、レアか。よろしく。何かご注文はあるかい?
無ければ無いで、どうぞゆっくりしていくといい。そういう店だ」
義手の作業は終わったらしく、外していた外部装甲を取り付けると、クロスはシャツの袖を腕までまくる。
「よいしょ……う……〜〜〜ッ ……っと」
義手はクロスの右腕にガションと嵌った。
「あー、この神経が接続されて感覚と肉体がリンクする感じが慣れないわー」
- 625 :萌葱 アテナ:2012/01/23(月) 22:24:15 ID:7gFzKdaU0
- >>623
「どーもですっ」
貴方の冷たい表情にも動じず、笑顔を貴方に向ける少女。
接客に慣れていると言うよりも、そういう性格なのだと言われたほうがわかりやすいことだろう。
うつろな雰囲気にも負ける事は無く、ぱたぱたとせわしなく動いていた。
>>624
「あー、確かに変わった人、多いですしねこの都市。
まあ……その、てんちょーとかも結構変わってますしね」
紅茶を慣れた手口で準備して、取り出したマフィンを横目で見て、茶葉を選定。
流れるような動作で、ポットにお湯を注ぎ、カップに注ぐと、カップ3つとポットを持ってカウンターに置いた。
そして、とんっ、とカウンターの椅子に座り込むと、ふぅ、と一息着く。
>>ALL
「お近づきの印ってことで、お姉さんにはサービスしときます!
ってことで、後でバイト代からさっぴいとくって事でてんちょー!」
紅茶をレアに進めながら、ニコニコ笑顔でマフィンも取り分けていくことだろう。
紅茶は、綺麗な琥珀色で、普通の紅茶と違う甘い香りがしていた。
「お茶うけとの相性も考えて今日はキャラメル系のフレーバーティーにしてました!
さーさー、てんちょーもどぞどぞ」
お茶を進めながら、レアの方を見て。
「このカフェのバイトの萌葱アテナって言います!
お姉さんは、レアさんで良いですか?」
と自然に自己紹介をするのだった。
- 626 :レア・アシェット:2012/01/23(月) 22:30:24 ID:u1xi.WBk0
- >>624
「それは謝罪しない、警戒を怠る方が悪い。」
銃寺森の顔を見て話す。明らかに作り物の無表情であるが、どちらかというと、こちらの方が似合っている。
「……ランチはある?」
元々、店に入った理由はそこにあった。
その間も、義手をじっと見つめ続ける。
>>625
「……」
元気な少女に言葉をかけようと口を開きかけたが、結局一言も出てこなかった。
「意味が分からないのだけど……。」
だされた紅茶に中々手が伸びない。
店長と名乗った人物と、少女を交互に見る。
- 627 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/01/23(月) 22:35:27 ID:HnkBBDEo0
- >>625
「は? 俺は一般人の中でも年に数人しか選ばれないという、ベストオブ一般人だぜ!」
嘘乙。
「ああ、紅茶サンキュ。貰うぜー。
で、さー。武者修行って、一体どんなことやってたんだ?」
紅茶を飲みつつ、アテナへと質問を投げる。
>>626
「そんな常時警戒できるような人間じゃねーっての俺は。ゴルゴ13じゃあるまいし」
そう言いつつ、食べ物のあるメニュー表を出す。
「まぁ、食べ物なら大抵あるよ。サンドイッチだのカレーだのシチューだの。
メニューになくても材料があるなら作れないことは無いぜ」
シシシと笑っていたが、ふとレアの目の動きに気付く。
「……なんだ、この義手が気になるか? 昔、ダチの父親に作って貰ったモンだ。
ま、後になって俺がだいぶ改造を加えてるんだけどな」
- 628 :萌葱 アテナ:2012/01/23(月) 22:41:24 ID:7gFzKdaU0
- >>626
「えーっと、だから。そのぉ…………、サービスです、よ?」
なぜだか語尾が疑問形になって、首を傾げる少女。
とりあえず態度とかから見ても、余り敵意の類とか、そういう黒い物は感じられないだろう。
どうやら、完全に善意でのサービスだったらしい。
>>627
「えー…………?えー……?」
半目でクロスを見据えて半笑いの赤毛少女がそこに居た。
まあ、自分も人の事は言えなかったりするため、アレなのだが。
「はいはいどぞー!久々だけど腕は鈍っていないはず!」
紅茶の腕には未だに自身が有るのか、少し得意げに無い胸を張る。
そして、武者修行の質問を受けて、うーん、と唸って。
「えっと、いろんな紛争地帯とか、そういうところで人助けしたりしてきましたよ!
あと、魔力の濃い所、なんか魔界っぽい所に迷い込んじゃいまして、2月位そこ彷徨ってました。
色々……その、見てきてですね。ちょっとは成長できたかなー、って思えますよ」
頬の大きな傷跡、切り裂かれた痕を手でなぞって、苦笑を零す。
元々子供としては重い世界で生きてきた少女は、またも子供には重い所に足を踏み入れてきたらしい。
- 629 :レア・アシェット:2012/01/23(月) 22:51:38 ID:u1xi.WBk0
- >>627
「ともかく、それについてはこれ以上何も言うつもりはない。」
食事のメニューを受け取るが、中身は見ない。メニューはもう決まっているのだ。
「カレー、大盛り。」
「3つ。」
義手の事を話し出すと、視線は銃寺森の顔へと動く。
義手に関しては真面目に話を聞いているのである。
「それは腕だけ。」
「つまり……貴方は人間なの?」
>>628
「そんなに変?」
「タダでご馳走してくれる店なんて、初めて。……だから、よく分からなかった。」
「食べていいなら、食べる。
分からなかっただけ、悪意はない。」
紅茶に指を伸ばしだした。
- 630 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/01/23(月) 22:59:56 ID:HnkBBDEo0
- >>628
「ブッ、ま、魔界ィ!? なんてトコ行ってんだよ……
魔界っつってもドコの魔界よ? 地獄とはまた別?
いや、生傷が増えてるとは思ってたけど、そんなエグい場所に行ってたんかい」
あー、と声を漏らしつつアテナを眺める。
「よく生きて帰ってこれたモンだな。しかも二ヶ月か。でも思い出すなー。
俺も紛争地帯で戦争止めようとして、両軍壊滅させたことあるわ。
魔界にも行ったことあるけど、流石に二ヶ月は無いなー。
あんな地獄だかなんだか分からん場所、二度と行きたくねぇ」
>>629
「え、カレー大盛りって、結構多いよ? いいの?」
そう言いつつも立ち上がり、皿にライスを輪を作るように盛る。
そして鍋を開けると、ライスの輪の中にカレーを注いでいった。
「うーん、普通の人間と同じなのかどうかと言われれば『違う』と言わざるをえない。
それでも『人間なのか』と問われれば、俺は声を大にして言う。
俺は、人間だ。……ま、色んなところにメスが入ってるけどなー」
そう言いつつ、カレーライスを三つ、レアの前へと出した。
「ええと、本当に食える?」
- 631 :萌葱 アテナ:2012/01/23(月) 23:05:51 ID:7gFzKdaU0
- >>629
「うーん、ただ初めてのお客さんだったみたいだしさ。
だから、これからも来てくれたら嬉しいなぁって思ったから、ちょっとサービスしちゃおっかなって思っただけだよ?」
彼女としての動機はだいたいそれくらいのものだった。
逆に言えば、それだけの理由で、彼女にとっては他人に善意を向けることが出来るとも言えるか。
「ん、折角淹れたしね、飲んでもらえれば嬉しいかな」
もし紅茶を飲めば、渋みを殆ど感じさせず、雑味のない澄み切った味が口の中に広がり、香りが鼻を通るだろう。
香りは、普通の紅茶と違ってカラメル系の少し甘い印象のもの。菓子であるマフィンとの相性もよさそうだ。
>>630
「いやいや、森の中さまよってたら気づいたらスッゴク暗い所に居たの!
と言うか、回りに幽霊的なの沢山居たから、多分生きたまま冥界に行っちゃったんじゃないかなぁって思うんだよね……。
おっきな竜が襲いかかってきたから3日ちょっと掛けて戦ったりしてたけど、本当になんで生きて帰ってこれたか……」
半端じゃなくデンジャラスな生活を営んでいたようであった。
少なくとも、死んでもないのにあの世にたどり着くなど早々有ることじゃないだろう。
「流石に銃弾とかはねぇ……、でも良い技術者さんが見つかって新装備出来たし相棒もバージョンアップできたし!
まあ、魔界に行ってね……なんというか、こう……後遺症というか竜に勝ったせいか分かんないんだけど、微妙に眼の色が変わっちゃってるんだよね。
とりあえず、しばらくは武者修業はしなくてもいいかなーって気分かな」
ずいっとクロスに顔を近づけて、ほらほら、と右目を見せるだろう。
よく見れば、左目に比べて少々色に紫の要素が加わっているようで、異能の気配がわずかに感じられたかも知れない。
- 632 :レア・アシェット:2012/01/23(月) 23:15:26 ID:u1xi.WBk0
- >>630
「問題ない、大丈夫。」
当然、と言った表情である。
「曖昧な表現だと、判断に困る……
けどメスの入っても。人間は人間だと考える。
貴方が人間だというなら、そう思うことにする。」
目を閉じる。銃寺森が知るはずがないが、彼女が目を閉じるのは、非常に安心したという無意識の暗示ということが多い。
ただ、核心には至らなくても、なんとなく安心したとあう雰囲気は感じ取れるはずだ。
「食べる。」
行儀マネーはしっかりと、ゆっくりと食べはじめた。
>>631
「……また分からない。商売の一環ってこと?」
紅茶を口に運ぶ。茶の知識は皆無だが「美味しい」ことは分かった。
「お菓子は食後に貰うから。」
「……また来るかもしれない。」
「安さも、それなりだし。」
と、何時の間にか大盛りカレーが二杯終わっている。
- 633 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/01/23(月) 23:24:40 ID:HnkBBDEo0
- >>631
「ああ? どれどれ」
クロスは右目の眼帯を外し、アテナの右目を“視る”。
「……うげ、ごめん、ちょっと入ってくる“情報”が多すぎて見てるだけで頭痛ぇ」
慌てて右目を抑えつつ、また眼帯をつけた。
「あー、なるほど。とにかくマトモじゃねぇ状態へと昇華してるのは分かった。
新しい力? それが能力をプラスするものなのか、能力にブーストをかけるものなのかは分からないけどな。
でも大丈夫か? 慣れない力がいきなり備わると、今度は日常生活が大変になると思うけど。
いきなり、見えなかったものが見えるようになったり、とか。その辺りは大丈夫か?」
>>632
「大きさに似合わず、よく喰うねオマエは。
それだけエネルギーが必要なのか、それとも単に燃費が悪いのか?」
クククと笑いつつ、クロスは座る。
「どんな存在であれ、意思を持つ限りは『自己の定義』ってのは必要だと俺は思うぜ。
その定義があって初めて自分を信じることが出来る。
自己の確立。それは時に強大な力になると俺は思っている。
だから、俺は人間だ。そう『信じて』いる」
で、とクロスは続ける。
「お前はどうだ? 人間なのか?
……と、悪いね、いきなりこんな質問をして。
この都市には見かけで判断できないような奴がワンサカいるんで、一応確認したくてな」
- 634 :萌葱 アテナ:2012/01/23(月) 23:29:02 ID:7gFzKdaU0
- >>632
「んー、っていうよりは初めてのお客さんに私のお茶を飲んで欲しいだけかも。
お茶淹れるの大好きだし、それを誰かに飲んでもらえるのもうれしいからさ。それだけだよ」
商売人というわけでもないただのバイトのアテナだ、そんな事を考えているわけじゃなかった。
と言うか、特に深いことはなんにも考えずに、紅茶を振舞っていたのだった。
「ん。次は私特製のタルトでも食べてもらえたら嬉しいかな。
オレンジとレモンとシークワーサー味が有るけど、個人的にはシークワーサー味がおすすめだよ!」
>>633
「だいじょぶてんちょー!?」
慌てた様子を見て、アテナもまた、わたわたと慌てる。
右目には今のところ色以外の変化はなく、奥に膨大な異能の源泉が有るだけだった。
「というか、倒した竜さんいわくは、なんか〝種〟とかなんとか言ってたかなぁ。
まだどう育つかは分かんなくって、それを決めるのは全部ボクと、運命だって」
異能の種が、彼女の中には植えつけられたようだった。
何らかの代償を払いそうな、そんな気配も感じさせるものだが。
ともかく、芽吹いていない現在は問題なさそうだ。
「……とりあえず、偶に視界がぶれたりするけど、それくらいかな。
変なモノ見えなくなる事も無いし、声とかも聞こえないしね」
- 635 :レア・アシェット:2012/01/23(月) 23:45:08 ID:u1xi.WBk0
- >>633
「これでも、腹八分。」
「食事が必要な理由は想像に任せる。大した事じゃない。」
最後の皿を片付け、スプーンを置いた。
「立派な事を言っているのは分かるけど、貴方の理屈を認めていいのか、どうかは分からない。
否定はしないけど、私にはその考えが怖い。」
「『自己』とか『自分』を私はまだ、定義出来ない。……するつもりはない。」
「私も人間のはず。あくまで人間の枠の中でデザインされた。
でも、今は人間を超える事を求められてる。だから、何なのか分からない。」
>>634
「理解はできるけど、実行できるのは不思議。」
彼女はあまりそういう出来事と、関係のない環境で育ったのである。
「でも、今度からはちゃんとお金は払うから。」
「……」
カレーの代金を支払うと、無言で立ち上がり二人の顔を交互に見る。
それから、何もいわずに店を後にした。
//時間が厳しいので、お先に失礼します。
//お疲れ様でした。
- 636 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/01/23(月) 23:48:41 ID:HnkBBDEo0
- >>634
奥に宿る“源泉”。それの残り香のようなものを、クロスの右目が勝手に“視て”しまっただけだろう。
それほど影響が無いとはいえ、クロスの脳には『理解できない』為、負荷がかかる前にクロスは右目を閉じた。
「種ェ? なんか変なの植えつけられたなんじゃねぇか?
まぁ今のところ問題なさそうだけどさ。なんかヤバくなったらすぐ言ってくれよ?
大切な働き手と貴重な幼女分が無くなっちまう」
ケケケとクロスは笑った。
「うちの家訓は『幼女は大切』です!!」
>>635
「ん、それよく言われる。要するに『思い込みの力ってスゲー!』ってことだ」
うむうむと一人、勝手にうなづく。
「で、オマエはと言うと、その、スゲー曖昧すぎてちょっとよくわかんねぇって。
俺は頭悪いんだから、もうちょっと分かりやすく……あ、帰るの? あ、はい。
ありがとうござーぁっしたー」
手を振って見送りつつ、
「……なんだったんだアイツ。レア・アシェット……って言ったっけか。ま、覚えておくか」
- 637 :萌葱 アテナ:2012/01/23(月) 23:53:30 ID:7gFzKdaU0
- >>635
「んー……、そうかなぁ」
なんとも言えない表情の少女。
そして、去っていくレアを見送って、ぱたぱたと手を振った。
「またのお越しをお待ちしておりますー!」
/*おつでしたー!*/
>>636
「うーん、確かに怖いし大きな竜だったけどねぇ。どうなんだろう。
ん、私も折角の居場所なくしたくないしね。何かあったら、頼りにしてるからね、てんちょー!」
そして、クロスの言葉を聞いて、口をとんがらせて。
「あと、幼女じゃないってー!もう10歳だよ?」
幼女といっていいのか、少女といっていいのか。
一応ながら魔法少女を名乗ったりもしているのだが…………。
「うー……、流石に旅とかで疲れたから、今日は直ぐ寝に帰る、かなぁ。
という訳で、帰りますねてんちょー」
そう行って、ぱたぱたと着替えに奥に走っていくのだった。
/*自分も明日は用事があるので此れにて!おつでした!*/
- 638 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/01/24(火) 00:00:02 ID:HnkBBDEo0
- >>637
「10歳とか最高じゃねーか! おい待て! 舐めさせろ!
添い寝させて! おつかれさまー!!」
バタバタと追いかけつつも、着替え部屋に入ったので仕方なくストップ。
「さーて、俺も寝るとすっかね」
欠伸をしつつ肩を回すと、クロスも奥へと入っていった。
- 639 : ◆FA/Bw.T3QU:2012/01/27(金) 19:02:47 ID:NU7KRSgg0
- 市内某所にある小さな公園には、雪が積もっていた。
子供たちが楽しげに雪合戦でもしていそうな景色だったが、今そこにいるのは―――たった一人。
「また“独り”かぁ。元々旅人の身だから、今更言っても……だけど」
銀髪の小柄な少年だけだった。
ブランコを囲う柵に腰掛け、足をぱたぱたとさせながら少年は呟く。
深い青色の瞳は、俯き気味に白い地面を見つめていた。
「……ま、今までの方が恵まれすぎてた、って事で」
とん、と白い地面に足を下ろすと、彼は足元に積もった雪を鷲掴みにする。
小さな手で掬い上げたその雪を両手で固めて、力任せに放り投げた。
- 640 :柊宇都 綾:2012/01/27(金) 22:35:18 ID:oB5LASG.0
- 「寒い、な……」
雪を踏み鳴らす四足の異形に跨る少女がそう呟いた。
纏う衣服は薄手の物、それも面積が少ない。
季節外れを通り越した、過激な服装をしていた。
「しかし……何処に」
異形の歩みを止めさせると、自販機へと歩いて行く。
コインを投入し、目当ての物を購入すると取り出し口に手を伸ばす。
寒いという割には軽装で、その上暖かい物を飲もうとしていた。きっと馬鹿なのだろう。
終始呟いている独り言の内容や、周囲に目を凝らしている事から察するに、誰かを探しているのだろうか?
- 641 : ◆FA/Bw.T3QU:2012/01/27(金) 22:46:13 ID:NU7KRSgg0
- >>640
自販機に向かう少女の後方―――つまり背中側の少し遠くに、彼はいた。
ライトの照らす外で、少年は雪を弄んでいた。
「……帰らなくていいってのは楽でいいんだけど。
気がつくとこんな時間になっちゃってるから考えものだよね」
少女の姿は視界に写っていないようで、彼はおもむろに雪玉を放り投げる。
狙いもクソもない適当さで放たれた雪玉は、なんとも運の悪いことに少女の後頭部めがけて飛んでいった。
「う、やっば……そこの人! よ、避けて!」
少年の方は投げた直後それに気づき、声を上げた。
が、所詮雪玉は雪玉。
当たった所で“少し寒くなる”程度で済むだろう……普通の格好をしていれば、だが。
- 642 :柊宇都 綾:2012/01/27(金) 23:00:31 ID:oB5LASG.0
- >>641
「……?
―――!!」
なんとも楽天的な思考だ。そこの人、を誰か別な人の事だと思って居たのだろう。
視界に目を凝らす余り注意が疎かになり、後頭部に雪玉をぶつける羽目になってしまった。
柔らかい雪玉は少女の頭を揺らすと崩れ、剥き出しの背中に降りかかる。
とっさに雪を払おうとして開いている左手を伸ばそうとするのだが、鋼鉄の籠手をしている為にそうは行かず。
一度缶を左手に持ち替えてから右手で背中を払った。何とも手際が悪い。
「……」
振り返ると、少し遠くの少年に視界を向けた。
顔は至って無表情。それだけに、どこか冷たく、不機嫌そう。
布面積が薄い、過激。と言っても不健全な意味では無く、
ファンタジー世界に置けるダークナイトの様な、速度に特化した衣装である。
- 643 : ◆FA/Bw.T3QU:2012/01/27(金) 23:13:06 ID:NU7KRSgg0
- >>642
「うぉうっ」
少女に雪玉が直撃した瞬間、彼はびくりと肩をこわばらせた。
その少女が振り返り、こちらを見ているのを確認した少年。
すると段々その顔色が青くなったり白くなったりして、最終的に。
「……だっ、大、丈夫?」
制止するように両手のひらを少女に向け、わなわなと震えながらもそんなことを言った。
「うあーただでさえ寒そうな格好してるのに雪バッサァとか冷たくない訳ないじゃん。
とりあえず生命のぬくもりこと“仔犬”を喚び―――あーもう、今いないんだった。肝心な時になんでいないかなあもう。
ていうかそもそも僕がこういう心理状態になきゃあ雪玉をあらぬ方向に飛ばす事もなかったりしたかもしれない訳で―――」
ぶつぶつと独り言を呟きながら、彼は頭を掻く。
そしてふとマシンガントークにブレーキをかけると、思い出したかのように一言。
「―――ねえ。その格好、寒くないの?」
彼女の格好を見て『動きやすいのかなあ』だとか『過激だねえヒュウ』などではなく、それ。
寒さに追い打ちを掛けた本人の問いかけとは、全く思えない切り返しである。
- 644 :柊宇都 綾:2012/01/27(金) 23:22:07 ID:oB5LASG.0
- >>643
「寒い」
ただ一言。少年の問いに対する的確かつ解り易い答え。
少女の吐く白い息が発した言葉をより信じさせる。
「……こういう日は、特に」
少し間を開けて言うと左手の缶――甘めのコーヒー――を一口飲む。
- 645 : ◆FA/Bw.T3QU:2012/01/27(金) 23:31:40 ID:NU7KRSgg0
- >>644
「あっは、だろうね」
苦笑でも失笑でもなく、彼は普通に笑った。反省の念は何処に。
と、彼はおもむろに着ていた紺色のパーカーを脱ぐと、それを差し出して言う。
「良ければ、どうぞ。寒いのは慣れっこだしね、僕」
彼も吐くのはやはり白い息。
だがその表情に苦は感じられず、嘘を言っているようにも見えない。
「……んで、こういう日に外なんか出てどうしたの? 探しモノでも?」
- 646 :柊宇都 綾:2012/01/27(金) 23:41:21 ID:oB5LASG.0
- >>645
「これも、修行の内」
少年の好意を断った。
寒さの特訓か、或いは羞恥心か。
どちらとも取れるが……どちらにしろ今のところただの変人である。それくらいにアブノーマルな姿なのだ。
「人。探し人」
異形が少女の元へやってきた。
漆黒の、首から先が二つあって、顔部分は紅と蒼のライトが12個ずつ整然と並ぶのみの、馬。
足を地面に付けるたびにバチッと音がする。足跡を見れば、雪が少々溶けている。
- 647 : ◆FA/Bw.T3QU:2012/01/27(金) 23:50:44 ID:NU7KRSgg0
- >>646
「修行かあ……むっふ、なんか格好いいねえ」
それなら、と少年は差し出したパーカーを小脇に抱えた。
「探し人、か。それじゃあ僕も似たようなもんだ。
尤も、僕の場合探すつもりはないんだけd……っとと」
異形の馬の姿(あるいはそれが突然こちらに来たこと)に驚いたのか、彼は一、二歩後ろに下がった。
二つ並んだ異形の頭をまじまじと見比べて、
「うん、なかなか綺麗だ。属性としては電気や雷辺りなのかな?
この子はさしずめ相棒って感じで……ふむふむ」
「……そんで、探し人―――だっけ。どんな人を探してるの?」
- 648 :柊宇都 綾:2012/01/28(土) 00:05:03 ID:oB5LASG.0
- >>647
「……ごめん」
少年が小脇に抱えたパーカーを見ながら頭を下げた。
年齢は少年よりわずかに上と言った所だろう。
しかし、意思疎通能力は少年よりはるかに劣る。
「何故?」
首をわずかに傾けた少女の隣で馬が嘶いた。
少年に向けて弱い電撃を発する。間雪が溶けていく。
「……ロウリッド」
背中を撫でて静止した。
主を守ろうとしての威嚇だったのだろう。
異形の馬の放った電撃の影響か、綾の闇色の髪が若干跳ねた。静電気現象か。
「緑色の、髪……目は、紅い」
それだけを喋り、口を閉じてしまう。
実は、最近一緒になったばかりで少女の事を深く知っていなかった。
現実に直面し、初めて気づくこの悩み……わずかに目を細める形で顔に出た。
- 649 : ◆FA/Bw.T3QU:2012/01/28(土) 00:23:46 ID:NU7KRSgg0
- >>648
「あっはは、何も謝らなくたっていいのに」
今度は困ったように、そんなことを言いながら笑いかけた。
「何故かって? ……ま、本人達から『探すな』ってお言葉を頂いてるからね。
一応上司みたいなものだったし、逆らう訳にも行かないんだよ」
笑みは崩さない少年。
その困ったような笑い顔は、仕方ないとでも言いたげに陰った。
「……おおっと、ごめんごめん。
ご主人にちょっかい出すつもりはなかったんだ。悪かったよ」
頭を垂れるようにして、彼は異形の馬にそうやって語りかける。
「“緑の髪に紅い瞳”―――分かった。覚えとく。
そんで、もしも見つけたら今度は何とかして君に伝える。
見つけた本人を引きずってでもね」
へらへらとしていたような少年は一瞬、真剣な顔をして答えた。
またすぐにニシシと笑った時、少年の輪郭にノイズが走る。
「……ありゃ、もう“時間”?
悪いけども、ちょっと僕はこの辺りで失礼するよ」
ザザザ、と遂には少年の声までもが雑音混じりになって、
消えた。
- 650 :柊宇都 綾:2012/01/28(土) 00:35:56 ID:oB5LASG.0
- >>649
「……へぇ」
また、難儀な事だ。ど思いながら少年の顔を注視する。
本当は会いたいんだろうか。とか考えて。
――。
少年の意図を理解してか異形の馬は少し下がる。
綾の背後に着くと首を少し下げた。
「ありがとう。でも――――」
引き摺られると……困る。
そう言いだそうとした矢先、少年が消えた。
『時間』。どういう意味なのだろうか。彼の言う上司から何か言われたのだろうか。
まだ、辛うじて暖かいコーヒーを飲み干すと、異形の馬に跨って公園を去って行った……。
- 651 :ヴァージニア:2012/02/01(水) 21:50:30 ID:V5vuUwDM0
- 病院の一室でヴァージニアは怯えていた。
もちろん、そうならざるを得ない状況になっているのだ。
四六時中得体の知れない組織に狙われている。それが精神状態を悪化させる原因であった。
その原因は自分が引き起こしたものなのだろう。しかし、全く身に覚えが全くない。
また吸血鬼の血が彼女に捕食をさせてしまったのか。無意識の状態になると、何が何だか分からなくなる。
寄生中による傷は完治して、体力も既に回復したようだ。
改めて自分の体に宿っている不気味な回復力を再認識する。
「此処に居たら、また狙われる……」
病院の窓を開ける。冬の寒さが体を凍てつかせる。ここは地上三階だ。
そこから少しずつ身を乗り出すと、震えながら壁を伝って降りていく。
……素直に病院内から出ればいいのに。と思うかもしれないが、やはり人を避けたいのだろう。
- 652 :萌葱 アテナ:2012/02/01(水) 21:57:26 ID:7gFzKdaU0
- >>651
病院の中は、にわかに騒がしくなっていたかも知れない。
先日の晩に遅い来た怪人の起こした事件による負傷者が、沢山担ぎ込まれていたのだ。
そして、四階の辺りから、貴方の聞き覚えのある声が聞こえてきたのがわかるかも知れない。
「だーかーらーっ!死んでるんだから怪我なんてたいしたことないって言ってるでしょー!」
注射嫌ー!と叫ぶ悲痛な声が聞こえた、直後。
ガラスが粉砕するけたたましい音を立てて、貴方の目の前に何かが落下して。
ずずん、と轟音を響かせて、頭頂部以下の全てが埋まっているのが見える筈であった。
かろうじて確認できる頭頂部の髪の色は、錆鉄色だ。
「〜〜〜〜〜!? た、助けてー! あいたたたたたー!?」
頭をよく見れば包帯が巻かれている様子がわかる。
どうやら、地面に埋まっている何かもまた、けが人の類だったらしい。
- 653 :ドーラ:2012/02/01(水) 21:57:56 ID:7gFzKdaU0
- /*名前ミスん*/
- 654 :ヴァージニア:2012/02/01(水) 22:07:58 ID:V5vuUwDM0
- >>652
「……」
世界丸見え的に言うならば、もしも四階の窓の真下に居たらと思うとゾっとするね、である。
とりあえず放っておくわけにも行かないので、降りて様子を見に行こうとするのだが、まだまだ地上二階ほど。
壁を伝って慎重に降りるのには、時間が掛かりそうだった。
飛び下りればいいのに。と思うかもしれないが、やはり飛び降りると痛いのだろう。さすがに吸血鬼でも。
- 655 :ドーラ:2012/02/01(水) 22:10:38 ID:7gFzKdaU0
- >>654
「うがー! で、出れないっ!」
ずぼっ、と土に汚れた手が地面から生える。
まるで某国民的RPGの仲間を呼ぶ土っぽい手のあいつの様な感じだ。
地面から小さい手が二本生えてうごめいている姿は正直シュールというほか無い。
完璧に埋まっているようで、一人じゃ出れなさそうだ。
- 656 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/01(水) 22:16:57 ID:WVrfsEdY0
- 【病院前に一人の少女がやってくる。先日の戦いでヴァージニアを病院に届けた人のようだ】
「あれ?あの人…」
【ふと窓の方を見て…建物から降りそうになっている影を見る】
「待って下さい!!自殺は絶対にダメですよ!!」
【ものすごい勢いで鶫は窓の方へ突っ走ってきた】
- 657 :ヴァージニア:2012/02/01(水) 22:28:20 ID:V5vuUwDM0
- >>656
二階程度の高さから降りて死ぬ確率とはどれくらいなのだろう。
まして、彼女の場合は吸血鬼なのだから、死ぬ可能性などほとんどないはずだが……
しかし、面識のない人がいきなり迫ってくるのだ(先日の戦闘では気を失っていた為、助けてくれた人だと分からない
自らを狩りに来る『刺客』と思わざるを得ない状態だった。
>>655
仕方なく、飛び降りた。
「ッ痛……」
上位の吸血鬼になればなるほど、命の心配はなくなり、痛みもなくなると言われているが
彼女はできたてほやほやの吸血鬼。痛みがないわけがない。
ビリビリと痺れる足を懸命に動かして目もとに涙を浮かべながら、ドーラの手を確認し。
「はやく出て、そうでないと殺される……!!」
マドハンド×2が現れた。
ヴァージニアは腰を深く落とし、まっすぐに相手を引いた。
- 658 :ドーラ:2012/02/01(水) 22:36:12 ID:7gFzKdaU0
- >>656
「だれかぁあああー!」
人の声が聞こえたため、地面から生えた手がブンブンと動く。
不気味な光景だが、少々シュールでもあり、とりあえず害意とかはなさそうにも感じられることだろう。
よく見れば、病院の上の階のガラスが砕け散っており、他にも自殺志願者はいたらしい。というか既に死んでいるのだが。
>>657
「――――ぶはっ!」
死霊としての存在度を上げることで物質的な性質を弱めることで重量を下げていた彼女は、たやすく地面から引っこ抜かれる。
まるで風船を握っているような不気味な感覚を感じることだろう。
地面から生えて、完全に飛び出した時は、背後の景色も透けていたのである。
ぼぼぼ、と体を覆うように人魂が生まれ数瞬後には服の汚れも消えて、透けていない姿になる。
「え、えとぅ、どういうこと!? 敵、敵なんだね!」
とりあえず、貴方の言葉を聞いて敵だと判断。
走ってくる防人を確認すると、ヴァージニアを庇うように前に出て仁王立ちをする事だろう。
「とぉー!」
とりあえずと唐突に牽制の魔弾を右手を前にかざし撃ち放つ。
威力は低いが、当たると結構な衝撃を食らって吹き飛ばされるだろう。
- 659 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/01(水) 22:40:17 ID:WVrfsEdY0
- >>657
「あ、平気そうですね…って」
【鶫は慌ててヴァージニアの近くまで寄ってきて、顔を確認して驚く】
「一昨日の襲われていた人じゃないですか!
大怪我してるんじゃないですか?危ないですよ!」
【気遣うように言う】
>>658
「…自殺しようとしてんですか貴方ー!!」
【マドハンド×2にも駆け寄っていく】
「…て、全然平気そうですね。」
【元気に飛び出してきたのを見て安心する…が】
「え?敵ってどういうぼあは!!」
【弁解するまもなく牽制球を食らって後方に3回バウンドしながら勢い良く吹っ飛んだ】
- 660 :ヴァージニア:2012/02/01(水) 22:46:58 ID:V5vuUwDM0
- >>658-659
ドーラを抜いた瞬間に、走り去って行くヴァージニア。
話を聞かずに保身に走っているようだ。
……正義の味方が好きな割には、トリックスター的な振舞いが多いような。
そんな彼女と入れ違いに、これまた認識の無い人物が現れる。
帽子を深めに被り、コートを着こなしていて、見るからに怪しい。
「そこの二人、こんな子を見なかった?」
そこの二人とは、ドーラや防人のことを指して言っているのだろう。
写真に写った人物は、今まさにこの場から逃走したヴァージニアの写真だった。
「この病院に居る筈なんだけど?」
ますます怪しい言動である。
- 661 :ドーラ:2012/02/01(水) 22:56:22 ID:7gFzKdaU0
- >>659
「ふぅー!」
猫の様に毛が逆立つ妖気が逆巻いている、唸り声を上げながらどす黒い死の気配を振りまきまくっている。
頭に巻いていた包帯や、腕の包帯が外れて、骨がもろ見えである。
死んでる上に人間ではないため問題はあまりないのだが、かなりショッキングな光景といえば光景かもしれない。
「って…………うーん? なんだろ。うーん、えーっと。
もしかして悪い人じゃないかも?」
ふっ飛ばしてからたっぷり数十秒悩んでから、負の気配に敏い少女は気がついた。
あれ、この人悪い人じゃないんじゃないか、と。
>>660
「お、ま、えだーッ!」
野生の勘、多数の戦場の兵士の死者の魂の戦闘の勘、それらがびびっ、と反応を見せる。
まあ、間違っているかも知れないけど、とりあえず躊躇う様子は全くない。
汝右の頬を打たれたら左の頬を打つべしと言うが、彼女の場合は汝右の頬を打たれたら顔面に右ストレートである。
そもそも、撃たれる前に殴るからその言葉すら当てはまらない。
びょん、と飛び上がって骨の露出していない右腕の方を振りかぶって素早い動作で顔面を撃ち抜こうとするだろう。
一応殺すつもりはないし、骨を折ったりもしないが、かなり痛いはずだ。
と言うか、先程からこの死霊生きてる人間よりアクティブである。
- 662 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/01(水) 23:02:22 ID:WVrfsEdY0
- >>660
「ん、ぶはっ!
えっと…あれ?さっきの人は何処に…」
【起き上がってすぐに当たりを見回すが…彼女の姿が見えない】
「…ん?急に何ですか?」
【コートの人間を見て不思議そうに首を傾げる】
「わかりませんね、消えちゃったみたいですよ」
>>661
「いきなりぶん殴るなんてどういう了見ですか!!
いくらなんでも危ないじゃないですか!」
【すぐに立ち上がって怒った表情でまた戻ってくる】
「…なにか見えてますけど…骨が」
【一瞬ドキッとした表情になる。かなり驚いているようだ】
- 663 :???:2012/02/01(水) 23:09:30 ID:V5vuUwDM0
- >>661
攻撃されることが分かっていたのか、それとも別の力が働いているのか、身を屈めてするりと避ける。
「いきなり攻撃するなんて、乱暴な人だ……」
>>662
「『消えちゃったみたいですよ』……ということは、知っているということ」
写真をコートのポケットに素早くしまう。
「どの方向に行ったのか、分かりませんか? その子に大事な用があるので……」
大事な用とは……
- 664 :ドーラ:2012/02/01(水) 23:11:55 ID:7gFzKdaU0
- >>662
「だって悪い人かと思ったらとりあえず吹っ飛ばすでしょ!」
ふんす、と鼻息荒くそう言い放つ少女。
悪い子ではないのだが、思考が短絡的かつ直情的。
しかしながら、悪いとは思っているのか、ぺこり、と頭を下げてごめんなさい、と言うだろう。
「あー……うーんと、ゾンビっぽいアレだからね、死んでるから怪我とかたいしたことないよ!
墓地とかでちょっと寝泊りすれば傷とか治っちゃうし!」
周囲をよく見れば人魂が浮かんでいたりする。
どうやら本気で幽霊のようだった。
>>663
「言ってもいいけど、何物かとりあえず話してよねー!
如何にも怪しい人にそんな事言う筈ないじゃんか!」
ぷんすか怒りながら、知っている上に話していいと匂わせる。
だがしかし、態度を見れば警戒している様子はプンプン臭う。
それもそうである、ヴァージニアに蛇を植えつけたような奴ならば、迷いなく成敗するのだから。
- 665 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/01(水) 23:16:15 ID:WVrfsEdY0
- >>663
「いえ、そこまで詳しく知ってるわけじゃないんですが…
一昨日襲われていたのを助けた程度ですよ。」
【少し警戒しているようだ…】
「大事な用事ですか…一昨日のことと何か関係が?」
>>664
「弁解する暇もなくぶん殴られるなんていうのはありえません!!
はぁ…反省してるみたいですし、まあいいですけど。」
【軽くため息を付いて言う】
「幽霊ですか…うーん、幽霊が実在しているとは思いませんでした。
でもまあこの街ではありえそうですね…」
【あちこちの人魂をみて興味津々に言う】
- 666 :???:2012/02/01(水) 23:23:08 ID:V5vuUwDM0
- >>664-665
「二人ともあの子の知り合いか何かか?
……分かった、ちょっと言いにくいが、話そう」
何かを確かめる為か、周囲をきょろきょろ見渡す。その動作もまた怪しさが滲み出ている。
「実は言うと、俺は『暗黒の渦<スパイラルシェード>』の一員だ……
そして、この子の始末を命じられている」
ヴァージニアの写った写真に人さし指を向けて。
- 667 :ドーラ:2012/02/01(水) 23:39:00 ID:7gFzKdaU0
- >>665
「だって、とりあえず殴る事から始めるからさ、いっつもー。
旅先とかで危険なことあると話したりするどころじゃないし。でも、ごめん。怪我してない?」
割りとシビアな人生を生きてきているようで、見た目の年齢に見合わずそこらへんの考えは自分のものとして持っていた。
一応攻撃は加減してあるため、直撃していても殆ど痛みとかは残ってはいないだろう。
>>666
「へぇ…………」
少女の目が据わり、見た目からは想像もつかない不気味な気配が辺りを満たすだろう。
既に臨戦態勢に入っている辺り、警戒は半端ではない。
始末、とかそういう言葉から、蛇を植えつけたのは、その組織だと予想したのだ。
(たぶん、殺すの失敗したからそのまま殺そうとしてるんだよね……、こりゃまずいや……!)
「で、殺したいからターゲット教えてー、なんて言われて教えると思うの?」
ぼぼぼ、と周囲に揺らめく火の玉が浮かび始める。
その光景は、極めて幻想的且つ、恐怖を煽る光景だったかも知れない。
- 668 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/01(水) 23:44:15 ID:WVrfsEdY0
- >>666
「…あの子の始末ですか?
なんだか穏やかな雰囲気ではありませんね」
【ふんふん、と相槌を売っているが怪しんで居ることにはまだ変わりないようである】
「どう見ても女の子なその写真の子をどうして始末などと?」
>>667
「うーん…なんか大変そうな人生だったようですね」
【少し気にしている…】
「幸い私は頑丈なのでコレくらいなら平気ですよ。
でもまぁ…あの攻撃よりも転がった時のほうが痛かったですね。」
【体中の砂をポンポンとはたき落として答えた】
- 669 :???:2012/02/01(水) 23:53:45 ID:V5vuUwDM0
- >>667
「それと同時に、この子は俺の妹でもある……
最後に見たのは、何年前だろうか……、いや、そんなことはどうでもいい。
とにかく俺は始末を命じられたが……、できればやりたくないんだ」
>>668
「どうしてか、は言えない……
いや、組織の意向を誰かに話そうとするだけ無駄なんだ……、情報規制<プロテクト>がかかっている……。
だからこそ、今まで知られなかった組織だ……」
- 670 :ドーラ:2012/02/02(木) 00:01:16 ID:7gFzKdaU0
- >>668
「まあねー、そりゃ死霊だし、というか人じゃないから人生じゃないかも。
なんだかんだで魔法使いのじっちゃんとかに良くしてもらってたから、気にしなくていいさ」
にへら、と緩い笑みを浮かべる少女。
先ほどまで暴力を振るっていたのと同じ存在とはとても見えない事だろう。
>>669
「…………うーん。じゃあさ、わたしか、そこの人と一緒に会いに行けばいいんじゃないかな。
なんか変なことをしたらその瞬間にわたしが全身粉々に粉砕するけどね」
びりびりと振るえる気配を周囲に振りまきつつも、折衝案を紡ぎだす少女。
しかしながら釘を刺す事も忘れることはないのだが――――。
「て…………あわわ…………ッ、ちょっと体維持できないかも!
えっと、そこの人!」
と、隙通り始める体で、防人を指さすドーラ。
「えっと、ヴァージニアの事よろしくっ!あと、この怪しいひ――――」
言葉は途中で途切れて、体が透き通って何処かに消えてしまった。
どうやらダメージを受けても死ぬことはないが、しばらく現界するのが難しくなるらしい。
割りと大怪我の状態で無茶をしていたからだったのだろう。
/*明日も速いので、自分はここらへんで落ちるです、中途半端でごめんなさい……*/
- 671 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/02(木) 00:08:41 ID:WVrfsEdY0
- >>669
「言えないように暗示か…口封じか…そうされているわけですね。
なるほど、わかりました。」
【鶫はそれ以上は詮索しない】
「でもあまり乗り気ではなさそうですね。
なんとなく、わかりますけど。」
>>670
「ああ、そうですか…
まあ元気に生きて…というか死んでいるのなら何の問題もないでしょうね」
【安堵の表情を浮かべつつ頷いた】
「え?あ、この人をどうにかするようにってことですかね…
承知しましたっ!」
【そう言って軽く敬礼して見送った】
//おっつかれさまです
- 672 :???:2012/02/02(木) 00:16:01 ID:V5vuUwDM0
- >>670
「俺が変なことするってなら、この場で二人とも始末してるよ……」
よほど腕に自信があるのか、強気なことを言ってみせる。
もっとも、暗黒の渦の構成員の大半が慢心を持っているので、やはりこの人物も例外ではないようだ。
「一体なんなんだこの人は……」
透き通って消えて行くことに、うろたえてはいなかった。
// お疲れ様ですよ。
>>671
「一歩間違えば犯罪組織だ。
そんなところの構成員だと知ったら、アイツは悲しむだろ」
善悪で語ると、暗黒の渦は悪だ。
妹は正義の味方が好きだったはずだ。間違いなく軽蔑されるだろう。
「……もっとも、アイツはもう正義の側になることはできないだろうけどね」
もともとヴァージニアは殺人で手配されていた。
それに写真で見れば、もう人間でないことも分かっている。
「アイツがまだ人間の心を持っているうちに、死なせてやるのも……」
- 673 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/02(木) 00:20:04 ID:WVrfsEdY0
- >>672
「犯罪組織ですか…
そこに身をおく理由はわかりませんが…どうやら妹さんを大切に思ってるようですね」
【態度が先程より穏やかになっている。感じ入るものがあったのだろうか。】
「死なせる?」
【その言葉に鶫は過敏に反応する】
「どんな理由があっても、親類を死なせるようなことは絶対にいけません…
諦めちゃダメですよ!!どんなことがあったって!そんなの絶対…」
【先ほどまでの冷静さとは打って変わって、憤るように、悲しむように言葉をつなげていく】
- 674 :???:2012/02/02(木) 00:28:23 ID:V5vuUwDM0
- >>673
「すまん……組織のことも考えると、丸く収まるような考え方にシフトしちまうんだ」
写真を再びポケットの中にしまい。
「今日のところは引き上げるよ。
……アイツは今、逃げることで必死のようだからな」
コートを翻して、闇夜に溶けるように消えて行った。
// 眠くなってきたのでここで終わりにしますね。
- 675 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/02(木) 00:33:09 ID:WVrfsEdY0
- >>674
「あ、いえ・・・ちょっと興奮しすぎましたね…
こちらこそすいません…」
【落ち着きを取り戻して頭を慌てて下げる】
「ええ…その、なるべく戦いたくはないですね…」
【そう言って手を振り見送っていった】
「…あの子…放っておけないかもしれません」
【そう言うと、鶫もその場を去っていった】
//おやすみなさいませー
- 676 :焔魔堂 宗也:2012/02/03(金) 22:43:07 ID:1sJsd2CgO
-
「……ここ、か」
夜を疎らに照らす、降りたシャッターばかりの寂れた商店街に男が一人。
暗い防寒着姿の彼は手元のメモに目を落として「ふむ」と頷いた。
その背中には炎が。
柱のような“熱源”が上昇気流を伴って、煌々と“火ノ尾”を逆立てている。
- 677 :早瀬川巴:2012/02/04(土) 21:21:59 ID:IL9AAIAo0
-
吸血鬼が「主食」とするもの。それは当然、人間の血である。
ただし、その血に対するこだわりと言うか、摂取に際しての制約にはどうも個体差があるらしく、
個体によっては血を飲まなくても何とかなる……ということがこの街に来てわかった。
それは早瀬川巴という吸血鬼にしてみれば、何の得にもならない情報。
しかしながら、人の、それもついさっきまで人体の中を駆けめぐっていた血でないと飢えを満たされない彼女が、
どうして執拗にヴァンパイアハンター達に追われるのか、という問いに対する答えの一端を、その情報は握っていた。
曰く、そういう制約を受けているのならば、この早瀬川巴という吸血鬼は恒常的に人を襲っているに違いない――――。
それはそうだろう。彼女が求めているのは、新鮮な血。生命力に溢れた生き血なのだから。
だが、彼女はその「捕食行為」に際して死人を出したことは、一人もない。ましてや、屍食鬼や吸血鬼を誕生させたこともない。
そういう意味では、彼女は「比較的無害」な吸血鬼であったが、彼女が襲われる理由はもう一つあった。
曰く、早瀬川巴は成り立ての吸血鬼でまだ力も弱く、討滅するのは容易――――。
この二つの理屈から、彼女の元には結構な頻度でヴァンパイアハンターの駆け出しが派遣された。
特殊な能力を持たない、肉体のみを頼りとする者も居れば、異能を「狩り」の助けとする者もいた。
彼女は良い「狩り」の「練習相手」であり、新米のヴァンパイアハンター達に「吸血鬼に勝利する快感」を教えるための教材でもあった。
それがために、彼女は彼らがやってくる度に命の危険にさらされることとなった。
「……非道く、ふざけた話、なのです」
それに今夜、「否」を突きつけたのは、他でもない早瀬川巴自身であった。
ヴァンパイアハンターのギルドは、新米でありながら何度もハンターを返り討ちにし続ける巴に痺れを切らし、
それなりに経験のある者と、やはり新米のハンターとで構成された、十人もの人数にのぼる討伐部隊を編成し、
早瀬川巴を本格的に狩りにかかった。
「私をそっとしておいてくれないから、こうなるのです……」
その結果が、今夜の中央公園の惨状である。
討伐部隊はそのことごとくが、四肢を失って壊れたホースの様に血を当たりにまき散らしていた。
死体は十個。生き残りは居ない。
その死体達が吹き出す血の噴水を浴びて真っ赤に塗れながら、吸血鬼・早瀬川巴は薄く笑った。
- 678 :艮 鬼門:2012/02/04(土) 21:33:19 ID:7gFzKdaU0
- >>677
「……へぇ」
そんな呟きが、少女の背後から聞こえてくることだろう。
びちゃりびちゃりと、血の海の中、むせ返る香りの中、構うこと無く〝それ〟は歩く。
格好を見れば、学ランに黒ぶちメガネ、特徴の無い短くも長くもない黒髪というただの高校生。
だが、纏う空気は果てしなく、重く、不快。
足を一歩踏み出すごとに、周囲の血が腐敗して、不快な香りを周囲に撒き散らし始める。
ぐちゅり、死体の体をまさぐって、傷を見つけてみれば、その傷口に深く手を突っ込む。
ずるり、と手を引き抜けば、何故か血が一つも着いておらず、〝傷〟が空中に浮かんでいた。
そうして、幽鬼の様な生気のない表情で、同じように他の死体からも、〝傷〟を〝摘出〟し始めるだろう。
そうした作業をしながらも、貴方の方にそれ程感情を移さない顔で振り返って。
淡々とした口調で、問いかける。
「人? それとも、化物?」
問いかける青年は、見た目だけを見ればただの青年。
特に他意はなかった、ただ普通の人間じゃこんなふうに殺せないだろうな、と気になっただけ。
青年の気配は人とはとても思えない、吸血鬼やそれらの存在に縁の近いものであった。
- 679 :早瀬川巴:2012/02/04(土) 21:44:14 ID:IL9AAIAo0
- >>678
無論、巴も吸血鬼の端くれ。
どこからともなく出てきて、奇妙な行動をし始めるその男が徒人ではないことくらい解っていた。
だが、「何か」までは解らない。そこが彼女の「嗅覚」の限界であった。
「ついこの間まで、「人」ではあったのですけどね……。ですが、その問いかけには「化け物だ」と答えましょう。
ここを見れば、説得力もあるというものでしょう?」
血染めの巴は徒手空拳。セーラー服に備え付けられた小さなポケットに、折りたたみナイフくらいは隠せるだろうが、
そんな武器でここにある死体の損壊ぶりを与えられるわけがないのだ。
四肢は力任せにねじ切られ、心臓はえぐり出され、頭は潰れて脳が盛大に飛び出している――――こんな惨状を、ナイフで為せるはずがない。
「そういうあなたも、人の匂いがあんまりしませんね。血の臭いにつられて来たのですか?」
今度は、巴から問いかけが飛ぶ。
- 680 :艮 鬼門:2012/02/04(土) 21:55:40 ID:7gFzKdaU0
- >>679
黒縁眼鏡に血がびちゃりと飛んで、嫌そうな顔をしながら、眼鏡を外すとポケットに仕舞い込む。
そのまま転がる死体にしゃがみ込み、貴方と目を合わすことをしないで会話を続ける。
「あ、やっぱりか。俺にはこういう事はできないからな。素手で頭潰すなんてさんさら無理だし」
そう言って、死体の潰れた頭に右手を叩きつけてみるも、ごん、という音がするだけ。特に凄まじい腕力を発揮したりはしない。
ともかく、少女が人だという事を全く否定するつもりはないらしく、淡々と、傷を摘出し続けている。
空中に空間の裂け目の様な〝傷〟がいくつも浮かんでいる光景は、幻想的などという言葉は当てはまらない、無意識的に不安を煽る光景だ。
その間も、死体の体に刻まれている、傷達は摘出されて、死体はだんだん綺麗な姿に戻っているだろう。
「いや、ぶっちゃけピンチだったから。というか、さっきから退魔師に追われてて」
そう言って、学ランの腹を捲り上げてみれば、銃弾で撃ちぬかれたと思われる傷が有った。
数発弾丸が潜り込んでいるのか、未だにだくだくと血がこぼれ続けている。
だが、丈夫なのかなんなのか、それ程苦にしている様子はなさそうである。
「――――こんなもんか」
取り出した〝傷〟の総数は大凡50程。それらを手元に集めて一つにまとめるようにねじ繰り回す。
そうしている内に、たん、と言う銃声が聞こえてきて、艮と貴方をかすめるように銃弾は飛び去っていく。
銃弾の飛んできた方向を見てみれば、そこには何処にでも居るチンピラのような男が居る。
「いい加減に死に晒せ――――祟鬼ぃぃぃぃぃぃいぃいぃぃぃッ!」
銃弾を乱射して、艮を狙う男。艮は足元の死体を引っ張り上げて、死体を盾にしながら逃げている。
そして、少女の方を向くと、変わらぬ無表情で問いかける。
「倒してくれないか。俺、あまり強くないし」
銃弾が死体に潜り込み、死体が損壊されていく中、暢気に貴方にそう頼む事だろう。
- 681 :早瀬川巴:2012/02/04(土) 22:16:14 ID:IL9AAIAo0
- >>680
(死体の傷が巻き戻っている……?)
巴が与えた傷は、もはや傷とは呼べず、「欠損」とでも言うべきものである。
それを青年が蒐集し――それと同時に死体が元の状態に戻っていくのは、中々にサイケデリックな光景だ。
だが、ここが「異能都市」と呼ばれる都市であることを、巴は忘れてはいない。
一見益にならないことをしているように見えても、本人にとっては大事な意味があるのかもしれない。
……それに、今はそんなことを問題にしている場合ではないようだ。
銃弾が作る衝撃波が甲高い音を巴の耳に突き刺していくし、「倒してくれ」とのたまう青年は問題解決に動く気が無さそうである。
厄介事を持ち込んでくれたものだ……と思う。
しかし、反面、ハンター達の勝手な論理に反応しっぱなしだった「憤怒」の琴線が、喜悦の声をあげていた。
――――「ウサ晴らしの相手がまた増えた」、と。
「…………!」
殺る、と決めた巴の行動は早かった。
銃弾の雨の中を、あえて正面から突っ込む。無論、足や肩に銃弾が命中するが、そんなことでどうにかなる身体を、巴はもはや持っていない。
そうして一気に距離を詰め、男の前に立つと、右手の手刀を一閃。それだけで勝負は決まった。
何故なら、凄まじい速度で繰り出された手刀が、銃を持っている腕を肩口からばっさりと切り落としていたからだ。
普通ならば、そこで男の悲鳴が上がるだろうが、巴はそんなことを許しはしない。
手刀で腕を斬り飛ばした後、身体を回転させて勢いを作り、男の顔面に左の掌を打ち付け、
「さようなら、なのです」
そのままの勢いを駆り、男の頭を公園のアスファルトに盛大に激突させた。
アスファルトはその勢いの強さを物語るように蜘蛛の巣状にひび割れ、その中心に、まるで召喚陣の中央に置かれた生け贄のように、
砕かれた男の頭を置いた。
男の身体はその瞬間びくん、と震え、それっきり動かなくなってしまった。
- 682 :艮 鬼門:2012/02/04(土) 22:29:57 ID:7gFzKdaU0
- >>681
傷が、文字通りになくなっている。最初から傷など受けていないかのように。
しかしながら、失われた命までは元に戻らないのか、死体は死体のままである。
銃弾がかすめていく中で、右手の中で傷を粘土の用にこねくり回し続けている艮。
そして、自分で何もしない艮は、ただ死体に傷が増える度に傷を摘出して死体を盾にし続けるだけ。
そんな中で、行動を決めて退魔師を殺した貴方の様子に、しかし表情は動かない。
哀れ無残に死に絶えた男の様子を確認すると、べちゃり、と死体を地面に投げ捨てて、貴方の方に歩いてくる。
先ほどから全く変わらない態度をそのままに、無言で貴方の傍らに衝くと、くろぐろとした瞳を向けて。
「やるじゃん」
と礼一つ言わずに、しかしながら彼なりには敬意を持つ様子で言葉を投げかけた。
足元で転がる死体にしゃがみ込むと、掌の上に浮かんでいた〝球状の傷〟を死体に触れさせる。
その直後である。
死体が、ぱん、と破裂して原型一つ留めないまでのひき肉に作り変えられたのは。
その傷を見てみれば、先程の死体の傷を部位を変えて再現した物と分からなくもない。
但し、10人を死に居たらしめる損傷を一人に全て移し変えた為、同じ傷の再現とは言えど密度は10倍なのだが。
「俺に鉛玉撃ったお返し」
手元には小さくなった黒い傷の球が浮かんでおり、左手でポケットから匕首を取り出す。
鞘を抜くと、刀身が存在しない短刀が現れる。鞘の口に黒い球を寄せると、鞘の中に〝傷〟は吸い込まれていった。
傷を回収していた彼の理由が、これで理解できただろうか。
- 683 :早瀬川巴:2012/02/04(土) 22:40:38 ID:IL9AAIAo0
- >>682
「ええ」
賞賛らしい青年の言葉を、巴は自らに突き刺さった銃弾を指で摘出しながら、そんな気のない返事をした。
ウサ晴らしは一時の熱狂をその人に与えるが、事が終わった後に残るのは、静寂を纏った下方へ向かう大きな落差のみ。
そのつまらなさから、彼女はそんな返事をしてしまっていた。
だからだろう。傍らに来た青年が、「球体の傷」などという訳のわからない方法で、今し方出来たばかりの死体を破壊しても、
大きな反応を見せなかったのは。
「先ほど、この男の事を退魔師、と言いましたね。よろしければ、そこのところの事情を教えてはもらえませんか。
完全な野次馬根性ですので、嫌なら嫌と、ハッキリ言ってくださればこの話はここで終わりなのです」
顔に飛び散ってきた肉片を指で弾きながら、巴は青年に言った。
- 684 :艮 鬼門:2012/02/04(土) 22:50:35 ID:7gFzKdaU0
- >>683
びちゃびちゃ、と学ランに肉片が飛び散っても、特に気にする様子は見せず。
手で払い落とすと、湿った学ランを脱いで、肩に駆けた。
そして、特に感慨も何も見せる様子は無く、血で赤くそまっちゃシャツの腹を捲り傷を確認していた。
とりあえずで傷はふさがっているようで、休憩とばかりに近くの植え込みのレンガの上に座った。
「別に話してもいいけど大したことでもないんだが」
貴方の問いかけに、青年は特に隠す様子も嫌がる様子も見せずに、答えて。
そして、一瞬の間の後に、もったいぶる様子など欠片も感じさせずに言葉を吐き出していく。
声色は、淡々と。合成音声もかくやという程の味気ない色だ。
「……俺、鬼と人の混血な。一応角も生えてるけど小さいし、体もそんなに強くない」
先ほどまでを見てれば、身体能力が高くないのはわかるだろう。
髪を掻き上げてみると、生え際の少し上辺りから二本の小さな角が見える。
「だが、少し嫌われる力有ってな。一族を追われて勘当されたんだが。
俺の特性も有って色々悪いこと呼びこんでな、それを嫌う人間が俺を狙うわけだ、そして俺の力がそいつらを俺にたどり着かせる。
――――俺は、〝不幸〟を司る鬼。生きてるだけで運が悪いことばかりが起こるし、俺が死ぬときは多分誰かも道連れだろう。
お前だって、俺と出会ったから退魔師に襲われるとばっちりを受けたしな。要は――――そういう事だ」
不幸の鬼、祟の鬼。名前に刻まれた呪が更にそれを強めている。
負の力を司る方角、丑寅――――艮の鬼門の名の通りに、男の存在は災そのものでしか無い。
存在するだけで人々に災禍をもたらす存在が、それらを祓う存在に狙われないはずが無いのである。
- 685 :早瀬川巴:2012/02/04(土) 23:14:56 ID:IL9AAIAo0
- >>684
「……なるほど」
青年が語り終えたところで、腕を組んで聞いていた巴はそんなふうに理解を告げた。
まさか鬼と人との混血だったとは。
巴はこの青年に会ったとき、「人の匂いが薄い」と思った。だが、異能を持つ人間は大概そうだ。
人という生き物としての道理を外れているからして、それは順当であり、そしてこの青年もそういった者達の一人だと断定していた。
だが実際はこうだ。判断の甘さが残っていたことを、巴に告発する一件だった。
「不幸を呼び込むならば、その元を絶ってしまえばいい。あなたを狙う人々の理屈は合理的です。
ですが、消極的でもある。理解と救済をはなから捨て去って、拒絶と消滅を唯一の方法とするなんて……」
巴の声に、怒りが乗った。
「……理不尽極まります。
確かに、私はあなたの「特性」とやらで、受けなくても良い傷を受けました。ですが、こんなものは私にとってはあまり問題になりません。
あなたも見たでしょう。私がそう時間をかけないで、あの退魔師を始末したのを」
組んでいた腕を解き、巴はピンと人差し指を立てて、
「思うに、そういうことなんじゃないでしょうか。
あなたは不幸を呼び寄せる体質なのかも知れない。けれど、それを補助して呼び込んだ不幸を始末せしめる同胞が居れば、
あなたの体質は問題にならなくなるのではないでしょうか?
元から絶つのではなく、相殺する。……まあ、それだけの人数を集めるのは骨でしょうけどね。
ですが、漫然と理不尽を受け入れるよりはよっぽど良い選択のように、私には思えるのですが」
- 686 :艮 鬼門:2012/02/04(土) 23:29:59 ID:7gFzKdaU0
- >>685
「――――仕方ない。俺はそういう存在だし、お前は別だがただの人間にはただの理不尽だ。
知ってるから諦めてるが、だからっておとなしく死ぬ気も無いだけだしな」
怒りすらも飄々と受け流して、色の無い、感情の見えない声と表情を浮かべ続けるだけ。
己の境遇を受け入れているのか、諦めているのか。その余りにも不自然過ぎる姿の理由は、相手の続ける言葉でさらされることとなった。
「――――俺に希望を持たせるな、吸血鬼」
少女が、救済や、可哀想と思ってその言葉を紡いだかどうかは定かではない。
だが、青年は少女の紡いだ〝良い選択〟に濃密な殺意で返してくる。
希望を持たせるなと青年は言う、己を救う言葉を何よりも嫌う、憎む、恐れる。
「最初から希望を持たず、救いを求めず、何も期待しなければ。
絶望しなくて良いし、救われないのを悲しむ必要は無いし、期待が外れるのに苦しまなくてもいい。
だから、俺は――――〝それ〟は要らない。俺に見せるな、聴かせるな。そんな、嫌なものを」
最初から全てが地の地に落ちていれば、それ以上落ちないからそれ以上辛くはならない。
もし救われても、いつかまた叩き落されるかも知れないならば、救済などは必要ない。
そんな、青年独特の〝絶望論〟。それが、その言葉をその思想を拒絶する理由であった。
初めて青年の表情が崩れる。苦しみ、憎み、恐怖を浮かべる表情は、何処にも良い感情も救いも見えはしない物だ。
右手には、いつの間にかナイフが握られており。直後。
己の肉体、左腕の二の腕辺りにナイフを深々と突き刺して、ぶちぶちぶちと肉を皮を引きちぎりながら傷を刻んでいく。
ナイフを口で咥えると、その傷に右手で触れて手をふわりと浮かべるように動かして、傷を摘出――――出来ない。
なぜなら〝不幸にも〟己の傷を消すことだけは、この青年には不可能であったからだ。
「――――刻まれたくなければ、さっさと消えろ、化物」
突き放すような声、口調、態度、表情。
先ほどまでの無表情が消えて、浮かぶのはしかしただの悪意だけだ。
文字通りに、災い。貴方は彼に出会ったことを不幸と思っても何ら構わないだろう。
- 687 :早瀬川巴:2012/02/04(土) 23:50:03 ID:IL9AAIAo0
- >>686
「なるほど、それがあなたの答えですか」
巴は彼女が初めに言ったように、元々はただの一般市民であった。
だが、ある日、吸血鬼という名の理不尽が彼女の「普通の生」に終止符を撃ち込み、
生きた死人、不死者(ノスフェラトゥ)としての「生」を余儀なくされた。
そうなって彼女が最初にしたこと。それは自らに破滅と望まぬ再生をもたらした吸血鬼を「破壊」することだった。
以来、彼女はその魂に刻んでいた。
――――いかなる理不尽であっても、自分を再び侵すことは許さない、と。
そのためならば、巴は百鬼を縊り殺し、悪魔を踏みにじり、神ですら殺意の対象とすることも厭わなかった。
彼女が今こうして「生きている」のは、まさに理不尽への反逆に他ならない。泣き寝入りなど、言語道断であった。
そんな彼女にとって、希望と救いを放棄した青年の思想は、唾棄すべきものに他ならない。
それを青年が告げた今この瞬間、巴は青年を「見下げ果てた奴」だと、認識した。
「確かに、あなたには希望は要らないでしょうね。……いや、希望を持つに相応しくない、と言い換えましょうか。
災難の風下に置かれたとき、誰しも二つの選択肢を持ちます。それは「諦める」か、「反逆」するか。
そして後者を選び取った者こそ、希望と救済を得るに足る存在となる。
……あなた、どうして生きているんですか? 全てを諦めたのなら、自ら命を絶てば良いではありませんか。
幸い、自傷行為は可能のようですし」
青年が自分で付けた傷を、視線で示す。
そしてその後に、明らかな侮蔑を含んだ笑みを、表情に乗せた。
「言えませんよね。希望も救済も要らないと言いながら、心密かにそれを待っているだなんて。
反逆の意志もなく、希望を求めるそれもなく、ただただ、巣で待つひな鳥のように光り輝く救済が舞い込んでくると思っている。
あなたはそう思っているから生きているのですよね。違いますか?」
- 688 :艮 鬼門:2012/02/05(日) 00:04:29 ID:7gFzKdaU0
- >>687
ただ漫然と、ただ暗い闇を喰らい、芋虫の様に生きることを艮は望んだ。
緩慢な絶望に、生ぬるい諦めに、唾棄すべき人生を生きることを、艮は求めた。
辛さから逃げるのを悪とは思わない、何かに抗う事を諦める事を悪とは思わない。
ただ一つだけ分かっているのは、自分のあり方は大抵の人間から不快に見られる事で、しかしながら鬼門はそれをどうでもいいと断じる。
「だって――――死ぬのって怖いじゃん」
余りにもあっけない答え、生きるつもりも無いけど死ぬのも怖いから生きている、そう鬼門は語るのだ。
希望も無く、信念も無く、理念も無く。〝ただ生きている〟。そんな生きているのか死んでいるのか分からない日常。
その息の詰まる醜悪な温室暮しに鬼門は浸り続ける事を望んでいる。
言うなれば理不尽に逆らわず、しかしながらぐちぐちとしつこく生き残り続けるのが、鬼門の生き方。
それで構わない。クズの様に、ゴミの様に生きて、最後まで特に何も得る事無く、何も起こす事無く、死にたい、心からそう思う。
だからこそ――――――怠惰と絶望の青年は、貴方に〝反逆〟をする。
「――――だらだら適当に俺は生きていきたい。無価値でどうしようもない屑で居たいんだ。
そうすりゃ楽だ、そうすれば悲しまない、そうすれば色々とどうでも良くなる。
だから――――これだけは〝どうでもよくない〟。ふざけるな、俺はお前じゃない。お前の論理を俺に適用するな。
見下げ果てろよ、屑と罵れよ、希望を持つのにふさわしく無いと勝手にのたまえ」
珍しいほどに饒舌に、鬼門は只の怠惰の言い訳を大量に並べ立てていく。
勘違いをしている、艮鬼門は――――〝全力で怠惰〟を生きているのだ。
「――――知ったことか。俺はこう生きると決めたんだ」
傷口から血をぼとぼとと零して、希望も救済も求めない、怠惰が笑む。
右手に握られる傷は、1m程の長剣にも見えるサイズであり、周囲の空間を歪ませている。
侮蔑を受ける存在と己で知っている青年は、侮蔑を受けても何一つ揺らぐことはなかった。
- 689 :早瀬川巴:2012/02/05(日) 00:28:33 ID:IL9AAIAo0
- >>688
「……く、っくく、あっははははははははははははははは!」
「傷」を持ちながら、巴が示した侮蔑を全く予想しなかった形ではね除けた青年の言葉に、巴は笑いを禁じ得なかった。
特に――――「死ぬのが怖い」という冒頭の言葉が、彼女の琴線を盛大に触っていったのだ。
「確かに! 死ぬのは怖いのです。自分が緩やかに、痛みもなく、音もなく消滅していくあの感覚は、何にもましておぞましい!
そんな素朴な気持ちが、絶望を生きるあなたをつなぎ止めていたとは……いやはや、まったくもって予想外!
しかし、その気持ちは好意を持てます。私の行動原理も、突き詰めればそこに行き着きますからね」
そう言ってまた笑い声を上げた巴であったが、笑いが一段落付くと、ですが、と言って、笑みを絶った。
「それは童話「蟻とキリギリス」におけるキリギリスの態度です。
冬という理不尽が来るまで、それに対する備えをするでもなく、ただ享楽に溺れて日々を怠惰に生きる。
今はそれで良いかもしれない。けれど、冬に追いつかれたとき、あなた、どうするのですか?
死ぬのが怖い、と口にしながら、それを遠ざける努力がない。怠惰的な矛盾が、あなたの生き方には横たわっている」
青年の攻撃的意志を示す「傷」を見る。
「それで私の不愉快な口を閉じればこの話はここで終わりますが、あなたを取り巻く環境は何も変わらない。
この先にはさらなる議論かそれとも決裂の闘争か……そのどちらかの敷居が落ちてますが、そんなものは無意味でしょう。
――――あなたが不変を武器にする以上は」
血まみれのセーラー服姿、その人影が、徐々に蝙蝠の群れに変わって崩れていく。
「そんな不毛な行為に、私は付き合う気はないのです。
さようなら、人と怪異の子。冬にあなたの死骸を見ることがないよう、心の隅で祈っているのです」
そう言い残し、早瀬川巴は完全に蝙蝠の群れに変わって、血の臭いが未だ漂う夜空へと溶けていった。
明るく地上を照らす月の光が、その黒々とした群れの影を映し出していたが、それも少しの間のことであった。
- 690 :艮 鬼門:2012/02/05(日) 00:39:53 ID:7gFzKdaU0
- >>689
「笑うか。まあな、笑われて当然だろうが」
貴方の笑い声に、黒い瞳を死なせながら貴方を見据える事で反応を返す。
爛々と光を失う瞳が輝かないで貴方を見つめたり見つめなかったりする中で、貴方の笑い声が只々響く。
そして、ただ貴方の言葉を聞くだけ聞いて。
「……あー。その時はその時で、多分諦めると思うな。
まあ、諦めたくなければそこで何とかするさ。〝不幸にも〟無駄に終わるだろうけど」
最初から希望を捨てたわけではない、最初から絶望したわけではない、最初から抵抗を辞めたわけではない。
只、それら全てが〝不幸にも〟無意味に終わったからこそ、いつしかそれらを辞めたのがこの青年。
だからこそ、信念を捨てる事を信念に、男は全力で享楽と怠惰に浸り無為に無意味に生き続ける。
死という理不尽は、彼の世界には近いのに。それでもそれらを諦めて、でも怖いから生き続ける。
矛盾を矛盾のまま、ただそのまま生き続けるだけ。その時が来ればその時だ。
去っていく吸血鬼を見送って、鬼は――――嗤う。
「――――――ッハ…………ヒハっ、ハハハッハハッハハハハハハハハ!!」
後ろを振り向けば、十数人の退魔師の群れが居る。
ああ――――不幸だ。死んでしまいたい。そう青年は呟いて。
右手の傷を強く握りしめて足を踏み出すと、退魔師達が一斉に襲いかかる。
「だって――――死ぬのは怖いもんなぁ」
暢気に呟いて。不幸にも襲われた鬼を襲う退魔師の群れは不幸にも死んでしまいましたとさ。
- 691 :欠け耳のボロッブ:2012/02/05(日) 23:47:02 ID:SSMHlh/20
- 異能都市中心部では時間を問わず
まるで濁流のように流れる歩行者の群れを見る事ができる。
それはもう半刻ほどで日付が変わろうという、今においても変わらない。
「ふぐう、これじゃあラチがいかんなあ。
時間も時間だ、そろそろ腹の虫も鳴き始めたし……。」
そんな人ごみの中に、不揃いの赤褐色のなにかが2つひょこひょこと見え隠れする。
それはゴブリンの長い耳で、持ち主であるゴブリンは道端に置いた大きなリュックの上に乗り
人ごみの中から、何かを探そうとしているようだった。
「ええい、ここだ。ここにはいっちまおう。」
彼が探していたのは、飲食店。
夕方からついさっきまで、ずっと商談を続けていたボロッブは食事を取っておらず
この繁華街で目ぼしい店を探していたが、これはと思える店もなく歩き回ったはてに見つけた
小さな中華料理屋でいささか遅い夕食をとることに決めたのだった。
- 692 :上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2012/02/06(月) 22:28:53 ID:.6prKP66O
- ここは最近やっと有名店と言われるくらいに客が入りだしたアトリエ……
来れば欲しいものが手に入り、見た事の無い品物が並び、注文さえすれば言った通りのものが作ってもらえるそんなお店……
そこに一人の男が会計をするカウンターに陣取っていた
ミントグリーンの髪に白い服、それはこのアトリエの主、上弦であった
マナ達が一通りの片付けを終え、手伝いから解放された後の『影の営業時間』
名前こそ大袈裟だが、要するに暇を持て余したアトリエの主が一人で店番する時間帯であった
「しかしな……マナ達はちょっと店を楽しみ過ぎだな……その内24時間営業とかにしちゃったりしないよな……」
基本この時間帯に客が来ることは滅多にない、だからそんな意味もない独り言を喋ってしまう
- 693 :オーレリア=グラムハイト:2012/02/06(月) 23:11:22 ID:oB5LASG.0
- >>692
コンコン。と扉が二度叩かれる。
そののちに扉を開けて、入ってきたのは上弦の良く知る少女であった。
受け持ったクラスの教え子の一人、オーレリア=グラムハイト(通称オリア)である。
屋内に入ると、扉に向き直って丁寧に閉めると、再び中を見渡す。
長い、珍しい形の杖を両手で掴み、胸の前で抱きしめていかにも不安そうと言った様子を見せる。
少女がそこまで不安そうにする理由を上弦は知っている。彼女は極度の人見知りなのだ。
※彼女の杖はオリジナル品です。友人の誰か(オリアも知らない)からの貰い物です。
- 694 :上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2012/02/06(月) 23:21:11 ID:.6prKP66O
- >>693
「……ん?」
珍しい、この時間帯に客とは……男はすぐさま少女を視界に収める
そして再び珍しそうに表情を変える、まさか生徒が尋ねてくるとは思ってもみなかったのだ
「オリア!こっちこっち、安心しろ今は私しかいないぞ」
ぶんぶんと手を振りながら歯を輝かせる『うざやかスマイル』で少女に呼び掛ける
若干、心の中では驚いてしまわないだろうかと考えながら
- 695 :オーレリア=グラムハイト:2012/02/06(月) 23:32:07 ID:oB5LASG.0
- >>694
上弦の声に驚き、身を震わせ跳び上がった。
彼女のトレードマークである、背中の大きなバラと、腰に差した二つの百合も、それに合わせて揺れる。
「せ、せんせぇ〜!」
驚きのあまり、一度硬直してから声の主の方にゆっくりと向き直る。
正体が上弦だと知って、安堵し、顔を笑顔で一杯にしながら寄っていく。
- 696 :上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2012/02/06(月) 23:39:30 ID:.6prKP66O
- >>695
「ははははは!そうかそうか!私に会えてそんなに嬉しいか!」
店の中でも学校でも変わらない男のテンション、それは少女にとっては多分有り難いことだろう
「しかしどうしたんだいオリア?こんな時間に」
時間はもう遅い、街には24時間人波が行き交うが、先程の驚き様を見せ付けた少女が出歩くには、かなり心細い時間帯である筈だが
- 697 :オーレリア=グラムハイト:2012/02/07(火) 00:10:56 ID:oB5LASG.0
- >>669
「うれしいですー!」
とことこと夜様子は兎に角うれしそうだ。
人見知りの割には人懐っこく、親しい人間には特に甘える少女だ。
「ちょっとざいりょうがたりなくなっちゃって……」
杖から片手を話すと、その手で頬を掻く。
- 698 :上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2012/02/07(火) 00:17:08 ID:.6prKP66O
- >>697
「よーし、頭を撫でてあげよう!」
ワシワシと少女の頭を撫でる男、その姿はいつもの教師らしさで溢れている
その内嫌がる生徒も出てくるのだろうが、オリアならきっと大丈夫だろう
「材料が足りない?そりゃ困ったな!何が足りないんだ?こんな時間に来てくれたんだ、今日は無料サービスだ!」
こんな夜中でもハイテンション、少女の材料は何かと尋ねる
きっと広い店内で材料を探すのも楽しむだろう
- 699 :オーレリア=グラムハイト:2012/02/07(火) 00:30:49 ID:oB5LASG.0
- >>698
「あわわわあ、あたまがぐしゃぐしゃになっちゃいますぅ……」
フラフラしながら、髪を整える。
しかし、特にいやだと言う様子は無く、むしろ楽しげだった。
「それはわるいですよ!
ちゃんとおこずかいもってきたんんでかってかえります!」
ぷくぷくと頬を膨らませてわずかに怒った様子を見せる。
この年代特有の、子供扱いされるのを嫌うというやつなのだろうか。
ただ、オリアは非常に穏やかな少女で、単純にタダで貰うのは悪いと考えている節もありそうだ。
「では、「あおいおはな」と「ちいさなきば」。それと、「つよいかやく」がほしいんです」
手書きと思われるメモを引っ張り出して読み上げている。
書かれた様子を見るに、すべて同じ物に使うようだが……一体何を作るんだろうか。
- 700 :上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2012/02/07(火) 00:51:40 ID:.6prKP66O
- >>699
「む?そうか……よし、じゃあ……」
何かを思い付いたのか、その場は納得したように見せ、少女が挙げる材料を棚から取りに行く
「青い花と強い火薬と小さな牙か……何を作るんだ……火薬……爆弾か?」
一体何を作るのか、男は考えた……
自分が食物を錬金する材料でも、オリアなら全く別の物を作り出しそうだと、失礼である
だが、上弦の娘がそれの典型なので一概にも言えない
抽象的なアイテム名、男はそれに該当するであろう品物を次々に籠に入れて行き
「なぁ、何を作るんだい?」
そう問い掛けながら、少し取りに行くのが面倒な『グラビ石』をこっそりと籠に入れた……オマケである
- 701 :オーレリア=グラムハイト:2012/02/07(火) 01:17:10 ID:oB5LASG.0
- >>700
「あたらしいアクセサリーでもつくろうかな〜って」
自身の緩い、ふわっと盛り上がった髪を撫でながら。
背中の薔薇と、腰の百合が示す通り、彼女は花が好きである。
その為に、今までも良くこういう物を作っては、親しい友人にプレゼントしているのだった。
「あおいはなが、ドーンッてやつです!」
楽しげに、ニコニコと笑う笑顔は向日葵の様だ。
そして、それに夢中になる余り上弦の優しさには気づかない。
- 702 :上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2012/02/07(火) 01:25:17 ID:.6prKP66O
- >>701
「あぁ、なるほどなるほど……」
オリアらしいなと微笑みながらカウンターに戻ってくる
ただ、ドーンッはなんの事かわからなかった
「……この火薬は危険だから気を付けるんだぞ?」
やはりオリアは見ていると癒され安心するが、危なっかしい気がする……上弦はちゃんと釘を刺しておく
「それじゃあ三点で……200コールになるよ、はいお試し品の傷薬」
でも、やっぱり心配なのかお試し品と称して傷薬も付属
さすがにこれはばれないだろう、上弦は自然なタイミングである事を心の中で自画自賛
- 703 :オーレリア=グラムハイト:2012/02/07(火) 01:40:47 ID:oB5LASG.0
- >>702
「わかりますか! えへっ、うれしいです!
おとうさんもおかあさんも、ナツメもわかってくれなかったんですよ!」
つまり、誰にも解らないらしい。
ナツメは少女の愛する機械狼の事である。話したのだろうか……。
「はーい」
少女らしい、かわいいデザインのサイフから指定された金額分を取り出し、カウンターに置く。
そして、品物を受け取り……ふらつく。
「わわあ、これ、おもいですー。なにいれたんですかー?」
少女オリアは非常に貧弱な娘であった。
昔から勉強ばかりに励んでいた頭でっかちな人間であったため、その分身体が強くない。
身体測定では友人に驚かれ、体育テストではぶっちぎりの最下位。そういう少女なのである。
そのため、上弦の密かに入れたグラビ石の重さでふらついていた。とても傷薬を受けとる余裕はなさそうだ。
「ナツメぇー。たすけてぇ」
そう呼ぶのだが、姿が無い。
何時も傍らに居るのだが、今日はいないのだろうか……?
- 704 :上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2012/02/07(火) 01:50:10 ID:.6prKP66O
- >>703
「ははは、みんなわかってないじゃないか」
ナツメと言う存在は少女の傍らにいつも居た、だから担任である上弦は知っている
笑いながら、少女に籠を渡す
しかし、この少女なんとも貧弱……上弦は頭を掻きながら少女に駆け寄る
「重いか、真心ってやつを入れ過ぎたかな……どれ持ってあげよう
って言うかナツメはどうした?」
機械狼ならば簡単に運べるだろう、しかし今は確認できない
いつも一緒の筈なのにナツメがいないとは珍しい
- 705 :オーレリア=グラムハイト:2012/02/07(火) 02:05:03 ID:oB5LASG.0
- >>704
「でも、せんせーはわかってくれたんですよね?」
キラキラと輝いた光を向ける。
始めて解ってくれた(と思われる)人間を前にしての輝きはかなりのものだ。
努力の末に、袋を下ろしてしまう。床に付けて、周囲を眺める。
「ナツメぇー……。
……。……あれ? ナツメ? あれ?」
居ない。
首を左右に振って探し、居なかったので一回転して探し。
もしかしたらしたに居るのかもしれないと見下げて居ない。
じわりじわりと瞳に涙が溜まっていくのが解るだろうか。
「せんせぇー、ナツメが、いなくなっちゃった……」
涙を瞳一杯に貯めて、上弦に懇願の眼差しを向ける。
- 706 :上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2012/02/07(火) 02:18:05 ID:.6prKP66O
- >>705
輝いた純真無垢な瞳、そんなものを見せられては上弦もたじたじ
「あ、あぁ!もちろんさ!ははははは!」
少し苦笑い気味だが、笑ってみせる
しかしナツメが見当たらず瞳いっぱいに蓄まる涙……これはマズイ!
「お、おおお!落ち着くんだオリア!ほ、ほら、飴玉だぞ〜!」
必死にオリアを泣かせまいとわちゃわちゃと
「ナツメェ!どこだぁ!出てこい!出てこないとオリアが泣いちゃうぞ!?」
オリアを泣かせまいとわちゃわちゃ、ナツメを探してわちゃわちゃ……大変である
先程オリアが扉を丁寧に閉め過ぎたので店の外に居るかもしれないと、扉だって開け放つ
そしてまた叫ぶのだ
「ナツメェ!早く来てくれぇ!!」
- 707 :オーレリア=グラムハイト:2012/02/07(火) 02:46:36 ID:7hcwnxwgO
- >>706
居た。
扉の外で漆黒と白銀が半々に入り交じった色をした機械の狼が、扉が空くのを待っていた。
上弦の思考の通り、怯える余りにナツメの事を忘れ、丁寧に扉を閉めすぎたオリアが原因であった。
店の中で涙を拭きながら、飴を頬張ろうとするオリアを見つけると、一目散に駆けていった。
「な、ナツメ! ぐすっ、あいたかったよ〜」
現れた機械狼を抱き寄せる少女。
うんうん。と頷く少女の顔は段々と笑顔になっていく。
- 708 :上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2012/02/07(火) 02:55:18 ID:.6prKP66O
- >>707
「いたぁ!?」
見つけるも束の間、ナツメはオリアのそばへ
それを見て上弦は安心する、これで大丈夫だろう……ほら
もうオリアは笑顔になっている
「よかったよかった!オリア、ナツメを閉め出したらダメだぞ?ちゃんと見てあげなさい、ナツメもこう言う時は何かアクションしないと」
まぁ、二人が再会出来たのでよしとしよう!
オリアが笑顔、ナツメもそばに
そして上弦も笑顔!
もはや言う事なしである
- 709 :オーレリア=グラムハイト:2012/02/07(火) 03:15:24 ID:7hcwnxwgO
- >>708
「ナツメ、ごめんね?」
飴を右頬に移動させ、右頬を膨らませながら喋る。
硬く、冷たそうなナツメの肌を、柔らかく、暖かい手つきで撫でる。
「ごめんなさい……」
少女オリアが謝ったのは上弦に対してではない。
彼女の前で静かに佇んでいる機械の狼に。だった。何とも不思議な姿であった。
少すると上弦に向き直り、同じようにして謝ると立ち上がった。
「よい、しょ……っ! たはぁ……」
床においていた品物を、ナツメの背中にのせた。
それだけで力を使い果たしたのか、だれてナツメに寄り掛かる。
狼らしく厳しい様子で身体を素早く揺すると、少女は仕方無く。と言った様子で立ち上がる。
「せんせ、ナツメもわかったっていってます!」
先程の「行動を起こせ」と言う忠告に対してだろうか。
何れにせよ、ナツメの言葉を上弦は聞いていないし、今までに喋った事はない。
ただの軽い遊びか何かだろう。オリアはそういう少女だった。
「それじゃあ、かえります! またあしたです!」
床に置いていた杖を拾いあげると、ナツメを率いて店を出ていった。
以前、上弦に楽しげに話した少女の杖。
ナツメと一緒に、よく解らない人間から受け取ったのだと言っていた。
上弦には見覚えがあるだろうか? 機械狼に似たデザインの、機械生物を。その持ち主を。
//ありがとうございました! 遅くなってごめんなさい……。
//自分は楽しかったです! おやすみなさいませ!
- 710 :上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2012/02/07(火) 03:29:57 ID:.6prKP66O
- >>709
一部始終を優しげな表情で眺める
とても仲が良いのだろう、それがひしひしと伝わってくる
オリアに謝られ、ナツメもわかってくれたようだ
「あぁ、また明日……気を付けて帰るんだぞ?」
最後は先生らしくキリッと呼び掛ける
一人の少女と一匹(一機)が並んで歩く姿を見送りながら、上弦は考えを巡らせた
「あの子に杖を作る繊細さなんて感じなかったが……あのナツメのデザイン……
間違いなくレラだな……全く……」
事情をゼオラから聞いている上弦は頭を掻きながらアトリエ内に消えていった
//こちらこそありがとう!遅くても気にしない!
//私も楽しかったよ!
お休み!
- 711 :コレット/『人形使い』:2012/02/07(火) 22:25:56 ID:1sJsd2CgO
-
真っ赤な鳥居を挟んで境内側、参道からくれば大方目につく手水場。
何故かひしゃげた杓子を手に持ち、そこに無表情を落とす私服の少女。
「……」
しかし、その微動だにしない体の割りに内心は慌てふためいていた。
(……りきみ過ぎた。どうしよう、掬う前だから良かったけど――いや、良くないでしょ。
神社の名前は知らないけど、もし由緒正しいというかなんというか。
とにかく、そういうものだったら、罰当たりな事をしたのかも……!?)
神主、あるいは従業員に叱られる。
コレットは、そんな当たり前な恐怖より、神罰という単語が真っ先に思い浮かぶのであった。
- 712 :金髪の着物の女:2012/02/07(火) 23:11:35 ID:xm/dFKGs0
- >>711
「はぁ、何でまたこんな所に来なきゃならないんだか」
呆れて溜め息を吐きながら、着物を着た金髪の女性と思わしき人物が近くを通る。
顔立ちはどこか男性的だが、格好や雰囲気が女性らしさを見せていた。
彼女…は少女と手に持った柄杓を見て。
「おい、どうしたんだ、ソレ」
曲がった柄杓を見ながら女性らしい声で聞いた。
- 713 :コレット/『人形使い』:2012/02/07(火) 23:33:24 ID:1sJsd2CgO
- >>712
背後からした声に驚き、飛び跳ねるように振り向いて。
節からカシャンと音が鳴る。
「あっ、いや。
これは決して悪戯とか、そういうのではなくて。
せっかく参拝するなら、こうした方が縁起も付くかと」
わたわたと慌てた声色、しかし貼り付いたような無表情のまま言い訳を力説。
……して、意味が無い事をさとり。
「うっかり、力みすぎた。というか……、ボッキリ折ってしまったわけです」
木の皮一片で繋がった柄杓を両手に乗せて、白状したのだった。
- 714 :金髪の着物の女:2012/02/07(火) 23:38:36 ID:xm/dFKGs0
- >>713
「ふーん。で、どうしたらいいか迷って途方にくれてるってワケか」
余り興味があるように思えない感じで彼女…はその話を聞く。
うっかり、と言う事場が少し彼女は気になったようだが…特にどうでも良くなったらしい。
彼女は特にソレをどうしようという気も無いようで。
「ヘタに固まってるより、素直に謝り行けばいいんじゃないか?
ここの人だって、潔く謝りに来た奴を叱るほど暇じゃないだろうし」
そんな事を言って体を伸ばしていた。
- 715 :コレット/『人形使い』:2012/02/08(水) 00:11:49 ID:1sJsd2CgO
- >>714
興味がなさそうに返された言葉は至極真っ当で。
そのため適当であった。
「……ですよねぇ」
悪い事をしたと思うからこそ、その当たり前をこなすのが、難しい。
そんな性分だからこその神頼み。
コレットの希望はそういった類いの、難しい事だ。
しかし、出鼻をこうして自ら挫いてしまったのだ。
神頼みではどうにもならない、という事だと受け止め、先ずは一つ、自ら動く事にした。
「素直に謝ってこよう……うん、そうします」
それが謝罪だというのだから幸先は悪い。
とぼとぼと、管理人が居そうな建物――社務所だろうか――に歩いていく、少女の形をした人形。
脚の球体関節が後ろからだと、はっきりと判るだろう。
- 716 :金髪の着物の女:2012/02/08(水) 00:36:14 ID:xm/dFKGs0
- >>715
「ああさっさと行って来たらいい。
無駄に時間をかけると、こういうのは五月蝿いらしいからな」
そう言って近くの木に体を預けながら、少女を見る。
球体間接―――人形の姿と解った。
まぁ、確かに他に比べて息が細いとは思ったけれど、人形とは思わなかった。
「ま、世の中色んな奴がいるか。
一々殺ってたらキリがなくなっちまう」
そう呟いて、ぼうっと風景を眺める。
たまには何も目的無しに外出するのも悪くはないな。
本当ならあの人形も殺ってしまうべきなんだろうけれど。
今日は少し気が乗らないし、放って置く事にしよう。
彼女は少女が戻ってくるのを待つように、ぼうっとしている。
- 717 :コレット/『人形使い』:2012/02/08(水) 00:51:40 ID:1sJsd2CgO
- >>716
建物に入ってから暫くの間があり、神主らしき男と共に少女が出てくる。
深く頭を下げる少女に、神主は苦笑いというか訝しげな表情を向け、一言二言口を開けると手で軽く追い払うようにした。
「……叱られました、案外あっさりですけど」
行きより幾分か軽い足取りで戻ってきた少女は、照れ笑いのような雰囲気で――しかし無表情で、報告した。
体が人を模した作り物なら顔もまた、その貌に造型された作り物だ。
- 718 :金髪の着物の女:2012/02/08(水) 00:59:11 ID:xm/dFKGs0
- >>717
「そりゃそうだ。神主は思ってるほど暇じゃない。
物壊したぐらい一々長々と説教なんてするかよ」
ぼうっとした感じで少女を見ながら彼女は吐く。
それで用件は終わりだ、とでも言うかのように歩き出すと。
「んじゃ、オレは行くぜ。
今度はオレに会わないようにしろよ―――」
彼女は顔だけを少女の方に向けると。
僅か悦楽と殺意を見せながら。
「次会ったら殺っちまうかもしれないからな」
そう言ってゆっくりとその場から去っていった。
//時間が遅いのでもう寝ます。
絡み有難うございました!
- 719 :コレット/『人形使い』:2012/02/08(水) 01:08:20 ID:1sJsd2CgO
- >>718
「え……」
去り際、豹変した雰囲気。
その感触に酷く動揺した。
異能都市ではよく有る事。
その片鱗を垣間見たコレットは、中途半端に剥離した意識を人形に詰め直し、
震えのような接続不良を引き起こしながら、カタカタと家路についたのだった。
- 720 :早瀬川巴:2012/02/09(木) 21:19:45 ID:JR0ce2b60
- 【異能都市 エリュシオン記念運動公園】
魔剣エクスカリバー。
人外や能力者に惨殺された、力を持たない一般市民の怨念が集まって形成された魔剣である。
この魔剣は過去、早瀬川巴という吸血鬼を主とし、その内なる憎悪を人外と能力者にぶつけるべく、大きな災害を引き起こした。
……だが、皮肉にもその凶行は、彼らを殺した者と同類の力を持つ能力者によって阻止され、
更にその力の源となっていた憎念と怨霊は緋河神社の神に浄化されてしまい、魔剣と呼ぶには相応しくない、伽藍洞の剣に成り下がっている。
それでも、尋常の手段では傷一つ付かない、不壊の剣としての存在は残り、かつてそれを握っていた者の手に収まっていた。
「……まあ、喜ぶべき事だとは思いますけどね。
いつまでも憎念に縛られて、輪廻に戻れないというのは悲しすぎる。輪廻があるかどうかは別として、ですけども」
満月を一日過ぎた月にかざしていた紅の剣を、早瀬川巴は鞘に戻す。
時刻はすでに夜の十時を過ぎていて、運動公園に残っている人間はほとんどいない。
ランニングコースの側に設置されているベンチに、巴は二十分ほど座っていたが、その前を通る者がいないのがその証拠と言えよう。
「昨夜は良い月でしたね……」
足を組んで座りながら、巴は頭上に浮かんでいる月をぼんやりと見上げている。
- 721 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/02/10(金) 00:21:34 ID:oB5LASG.0
- 突如、濃い魔力が周囲を漂い始めた。
その量は夥しく、異常。しかし、周囲で戦闘の気配は無い。
周囲一体は平穏で平静。夜に相応しい静寂となっていた。
しかし、一帯を制圧するように現れた尋常でない魔力が、平静を、崩す。
>>720
―――パキ、
まず手始めに、巴の足元に落ちていた、冬という季節に耐えきれなかった小枝が音を立てて分れた。
――ミシ、ミシ……。
それを皮切りに、巴の周囲の、公園の有りとあらゆるものが崩れだす。
公園の柵が拉げ、大樹の葉が落ちて焼き消えたり。
巴の足元が新しい音を立てる。偶然、通りかかった鳥が強大過ぎる魔力に充てられ、地面に落ちた音だった。すでに息は無い。
暫くすると、遠くから女が歩いてくるのが見えた。黒いシックなドレスを纏った、長身の女だった。
紫色の髪を引き摺る一歩手前まで伸ばした髪を連れながら、空を、見上げながら歩いていた。
- 722 :早瀬川巴:2012/02/10(金) 00:35:49 ID:JR0ce2b60
- >>721
それは一夜城のように、いつの間にか出来上がっていた致命的なフィールドであった。
まるで、死が空気と同化してやってきたような錯覚を生じさせる。
だが、既に死んだ、アンデッドの巴はその影響を受けることはない。
いきなりの現象に巴は眼を白黒させたが、かのフィールドが引き起こす現象が自分に影響を与えないと悟ると、
フィールドの中で起こる現象のひとつひとつを興味深そうに見つめた。
――――無論、向こうから来る女の姿も、その瞳に納めている。
(これはあの……人? がやっていることなのでしょうけど、随分とまあ、はた迷惑な存在もいたものですね。
歩く災害とはこういうのを言うんでしょうか?)
巴はしばらくその女をじっと見つめていたが、ふと、お尻に違和感を感じた。
立ち上がって見てみれば、自分が座っていたベンチの木の部分が凄まじい勢いで腐食していっていた。
これでは座れようもない。
「やれやれ、お月見は終了なのですか」
巴が立ち上がった位置は、ちょうど女の通り道を阻害する場所である。
パンパンとお尻を両手で払っている巴は、それに気づいていない。
- 723 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/02/10(金) 00:51:21 ID:oB5LASG.0
- >>722
距離が近くなればなるほど、魔力は濃く、強くなる。
大樹自体にも傷が入り始めた。鳥の死骸が潰れ始めた。にじみ出た液体も破壊され沸騰し、消えていく。
今、世界の空を彩る無数の星の一つが彼女のせいで潰れたのだが、それに気づく人間はいないだろう。
変わりに、巴の実感できる変化が背後で起こった。
既に座れるものでは無くなっていたベンチに止めが刺されたのだ。細いパイプが拉げ、折れ曲がっている。
その、色濃い破壊の魔力は精神にも異常をきたす。
弱すぎる人間ならただ女からにじみ出ただけの魔力でも死ぬ。適度な体勢を持っていたり、魔術の心得がある人間でも頭痛や吐き気等、異常が起こる。
それだけの魔力を常に発生させる女が、今巴の目の前にいた。
僅かに上を向けていた首が前を向く。それと同時に足が止まった。
前を向くだけでは止まらずに、少し下に傾いて、巴に『視線』を向けた。
「―――」
目に、布を充てていた。
視界の全てを塞ぐように、ぐるぐると巻かれた布が、女の目の付近を覆っていた。
そのせいで巴から見えるのは鼻から下のみだろう。衣服の黒さと対照的に、陽にあたっていないのだろうと思わせる、白い肌。
- 724 :早瀬川巴:2012/02/10(金) 01:24:00 ID:JR0ce2b60
- >>723
「……ふうむ?」
その魔力で出来た毒の泉のような場所で、巴はおもむろに、剣帯の鞘から魔剣を抜きはなった。
紅に鈍く輝く剣は濃密な魔力が漂う空気に触れると、目覚めるように一瞬、赤く光り、
周囲の毒々しい魔力を強い勢いで吸い上げ始めた。
「ああ、やっぱり。この剣はこういうのを取り込みやすいのですね。
中身がないということは、逆に言えば色々詰め込めるということ。
良い栄養になるようです」
それらは独り言だが、しかし声量的には女にも聞こえているだろう。
彼女の目を覆う布からいって、こちらが剣を抜きはなったことは知るよしもないはず。
しかしながら、この「魔力的災害存在」が、いったいどういう意図でこんなところを歩いているかが解らない以上、
巴は自分なりの方法でこの存在と接触する必要があった。
こういう存在に自発的に接触する気はないが、このフィールドに取り込まれてしまった時点で、その願望は露となって消えたと言えよう。
果たして、この存在、敵か、それとも中立の第三者か。
味方の可能性は放棄していないが、それは限りなく低いと言わざるを得なかった。
- 725 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/02/10(金) 01:43:23 ID:oB5LASG.0
- >>724
空の魔剣が、魔力を吸い上げる。
女から噴き出る魔力も収まらないので、魔剣に限りが来るまでは吸い続けるだろう。尤も、それも底知れないのだろうが。
しかし、それによって少しの変化が現れた。
そこにただあるだけの魔力が成していく破壊は止まらない。
起きた変化と言えば―――少し、明るくなったこと。
彼女は奥に酷く純粋で尚且つ濃い暗黒性を有していた。
強すぎるあまり、それが魔力にも干渉し周囲を知らぬ間に暗くしていたのだった。
そういえば、女から感じられるものが、もう一つあった。それは、魔力に比べれば極微量の物。
憎しみ。怒り。殺意。そうよばれる物とは違うが、そういったものを掻き集めた集合体―――負の感情その物だった。
魔力に比べて微量。しかし、その『負の感情』も相当なものだった。魔力の強さに圧されただけで、これも、かなりの不快感を誘う。人種によっては、耐性を持つ人間もいるが。
巴から、魔剣に視線を動かした。
女は布を目のあたり全体に充てていた。にも拘わらず、熱烈な視線が向かう。
これも魔力のサポートあってのものなのかもしれない。それを探ろうにも、周囲の魔力と負の感情が遮って思考を邪魔するのだが。
「――――あ。 、 …… あ」
非常に細い。掠り切れそうな声を、如何にも絞り出したと言った様子。
魔剣を前にして女は昂っているというのだろうか。周囲の魔力の強さが、一段と跳ね上がった。
それに伴って地面が抉れ始める。周囲が再び薄暗くなる。ただあるだけの魔力によって。
どうも、この女は魔剣に興味を持ったらしかった。
- 726 :早瀬川巴:2012/02/10(金) 02:05:07 ID:jDElVOJs0
- >>725
憎念と憤怒と殺意。それこそ、この魔剣が元々宿していたものだ。
千数百から成る魂の外殻、その集合体たる魔剣は、非業の死を遂げた怨霊たちの願いの剣である。
そういった感情の器としては、これ以上のものはそうそうあるものではない。
「剣だけに元の鞘、ってやつなのでしょうか。ふふっ、ちょっとセンスのないジョークなのです」
爆発的な魂のエネルギー、それも千を超えるそれを中身にしていただけあって、魔剣の容量は底が知れない。
健啖の鋼が赤い霧の形で周囲の魔力を喰らっている間、一方の巴は女を観察していた。
こんな濃い魔力を居るだけで放出するこの女、やはり尋常の存在ではあるまい。
不死者たる吸血鬼の身にも痺れのように感じるほどの、暗黒の魔力……悪魔か。それとも邪神か。
言い過ぎのような気もするが、当事者としてはそんな感想を抱かずには居られない。
そして、件の彼女の興味は、自分から魔剣に移ってしまっているようだった。
単なる興味なのか。それとも欲しいのか。前者ならともかく、後者ならば丁重に断らねばなるまい。
身に余る物だとしても――――それでも、この魔剣の主は自分であるから。
- 727 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/02/10(金) 02:36:30 ID:oB5LASG.0
- >>726
魔剣を前に力を強めていく女。このままでは、危険。
周囲の魔力量が跳ねあがり続け、その一つ一つも爆発的に濃くなっていく。
ガリガリと地面に傷が入る。抉れる。
ついには空に傷が入る。抉れる。世界という玉に入った傷の先には、ただ暗黒が広がるのみ。
魔剣に一方的に昂りを示す女。彼女の生命ともいえる魔力を吸い続ける魔剣。
それらは共鳴に近い関係にあるのだろうか。お互いがお互いを満たしあう様な。
激しい戦闘の傷痕を付けられていく公園。その中心の二人は至ってシンプルに向かい合っているだけだが。
全ての生命が刈り取られ、暗黒に回帰しようとしていた。死と、闇。その二つそのものになった女の都合のいい世界に書き換えられていく。
巴は既に死者である為に死にはしない。その筈である。
しかし、このまま此処にいるというのは良しとしない筈だ。常識的に考えて、『良し』では無い。
爆発的に、その危険度を増していく魔力に圧され、潰されていく周囲、世界。無意識に破壊を行う魔力が何時巴にも襲い掛かるかわからない。既に牙は向いているのだ。
巴に死を超越した死―――破壊が向かおうとしているのだ。早急に、対策を打たなければ。
- 728 :早瀬川巴:2012/02/10(金) 03:05:24 ID:jDElVOJs0
- >>727
空間が女の魔力に耐えきれず自壊を始めている中で、あろうことか巴は半ば放心の状態となっていた。
別に、今起きている現象に心が飽和しているわけではない。
暗い感情を宿した魔力をかなりの量、吸い上げた魔剣が以前の力を取り戻しつつあり、その感覚に打ち震えているのであった。
魔剣がそもそも、多くの魂の集合体であることは先に述べた。
それゆえに大きい力を持っていて、そして、同じだけの意識が剣の中には内包されていた。
だが、今はその意識達が存在せず、魔剣の内に生じ始めている大きな力の統帥権を持つのは、今は巴一人であった。
その感覚のなんと甘美たることか。
視覚は世界を俯瞰し、聴覚は地下の秘した水の音までも聞き取り、触覚が世界を抱き込んでいる。
……そんな、錯覚を覚えてしまうほどの力だった。
「……………………良い」
巴の意識は恍惚に溺れていて、しかし、明鏡止水の境地にあった。
魔剣から流れ込んでくる強大な力の刺激が、魂の感覚を押し広げて、巴にかつて見たものを思い出させていた。
――――それは、大いなる空穴。無にして全。始まりにして終わりの場所。
「……そうか。これですか」
そう呟くと、巴は静かに瞼を閉じる。そうして二呼吸分間を置いてから、再び眼を開けた。
彼女の瞳は、暗黒の宇宙に浮かぶ太陽のように、黄金に染まっていた。
周囲は死と闇の魔力に満たされつつある。全力でまわれ右をすれば、ここから抜け出す余地はあろうが――――。
「冗談。こんな機会を逃して、なるものですか」
巴は魔剣を正眼に構えると、その柄をギュッと握りしめ、切っ先を女に向けた。
それと同時に、巴の周囲に白い光の粒子が集まり始めた。
暗黒の中にあって輝くそれらは、蛍の光のように儚いが、けっして周囲の暗黒にとけ込むことはない。
むしろ、それを侵して相殺するような――――凄絶な聖性がその粒子には宿っていた。
- 729 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/02/10(金) 03:28:43 ID:oB5LASG.0
- >>728
巴は悪魔と感じた。それは間違いない。
今の巴の様に、強大な魔力に惹かれ、その先で命を落とした人間も数多い。その者から見れば、悪魔。
邪神とも感じた。それも正しい。
暗黒性の強く、破壊の意思を濃く孕んだ魔力を持つ、神にも匹敵するであろうこの力は、正しく邪神。
だが、それだけでは無かった。それでは過ぎなかった。
彼女もまた純粋であった。今の彼女もまた、無。
周囲に流れる暗黒性は、世界のすべてを取り込んだ故の、黒。
水を吸い上げ、土を抉り取り、空に覆い被さり、英知を汲んだ。世界を丸々取り込んだ、宇宙の黒にも等しい純粋だった。
だから、何とするか。
女は自らに向けられた切っ先を視線に捉え尚、強大な魔力を流しつつあった。
むしろ、押し殺さんとする聖性をより高めたいのか、さらに強い魔力を流している様子であった。
ここで、今初めて、彼女が『意欲的に』動いた。
今まで無意識の内に動いていた女が初めてその魔剣を『視たい』と思った。
無意識の内に働いていた破壊が、ぴたりと収まった。
それだけではない。失われた破壊が巻き戻りつつあった。
パイプは元の平行を取戻し、上には木が組まれる。鳥は膨らみを取戻しまた空を飛ぶ。
大樹は季節に合わぬ花を咲かし、夜空には僅かな明りが戻った。
より、強大な魔力が死を、破壊を超越し再生と創造に変わる。邪神と呼ぶのがふさわしく思えるほどの力。
再び静寂が戻った公園で、女はただ一点、魔剣を見つめていた。
- 730 :早瀬川巴:2012/02/10(金) 03:54:43 ID:jDElVOJs0
- >>729
闇を極め、黒を支配する女とは違い、巴は生まれたままの、光も暗黒も選ばない、中庸の道を進んできた。
それは別に罪なことではない。極めるということはとどのつまり、そこしかない、ということを差している。
「人間」として生きている以上、光も闇も存在するその混沌たる中庸は、歩みを進めるために必要不可欠である。
しかし、今の彼女は「不死者」である。人間ではない。
それを巴自身もわかっていたが、そこから無意識に目を背け、人間のまま歩もうとした。そこに、巴の吸血鬼としての歪みがある。
だが……怨念の魔剣が引き起こした事件、命の価値を安く見る世界、そして、極地たる力を見せつける目の前の女。
それらが、今ここで、巴に道を選ばせてしまった。
「……闇が、邪気が、歪みが人を、私を殺したというのなら。
私はそんなもの要らない。そんなものに染まるものか。そんなものに操られるものか。
そんなもの――――殺してやる」
静かに放たれた言葉は、静謐という鋭さを以て、収拾の様を見せる暗黒の空間を走った。
巴は正眼に構えた魔剣をひっくり返し、切っ先を地面に向けて、そのまま勢いよく突き下ろした。
すると、魔剣の暗い紅に染まっていた刀身から、夜を昼に戻すかのような、眩い白光が溢れ出した。
光はバベルの塔のように天を真っ直ぐに突き、残っていた闇をその内に飲み込んで、消し飛ばす。
「………………」
やがて光が晴れ、剣を地面に突き刺したままの巴の姿と、夜の闇が戻ってくる。
巴の周囲には余韻のような光の粒子が渦を巻いて飛び、魔剣はその全身を一点の曇りもない白に染め上げていた。
魔剣の変貌はそれだけに止まらず、歪んだ意匠の柄や鍔を、清廉さを感じさせる直線を基調とした意匠に変形させている。
その姿は、魔剣と呼ぶよりは、聖剣と呼ぶに相応しいものであった。
- 731 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/02/10(金) 04:15:32 ID:oB5LASG.0
- >>730
依然、ただ立ち尽くすのみであった。
辺り一帯が一瞬、太陽を取り戻したかの輝きを帯びたが、女は動じなかった。
目に当てられた布の為に光を感じなかった訳ではない。確かに光は届いてはいないが、強力な波動と魔力が立ち上ったのは理解していた。
これだけ闇に染まればこの光は強烈な物だろう。
恐らく、この都市に存在するもう一人のゼオラという少女ならば、闇に肩を入れすぎた余りにその身に苦痛を宿すだろう。
だが、この女は既に闇だけの存在ではないのだ。光も闇も、破壊と創造を共にする全て。裏を返せば無。『無よりの闇』の存在だったからこそ。
彼女に触れた光が光の膜を作り、次に浴びる光を受け付けない。その背後で、女の影――強すぎる闇から生まれた光――が身体を補填する。
そうして光の中ですら、その剣に見惚れる余り、凝視していた。
強い光を受けて、大樹が、揺れた。
再生の力によって花を付けていた桜。その花びらが、一つ落ちて、足元までやってきた。
- 732 :早瀬川巴:2012/02/10(金) 04:30:32 ID:jDElVOJs0
- >>731
剣の発した光はまさに、聖性の爆発であった。
誕生した赤子が初めて鳴き声を上げるように、自らが生まれたことを周囲に知らしめ、そして嘆いたのだ。
巴が発現させた聖性は、この世の最も深い場所にある二項対立、闇と光、陰と陽のうちの一方を転写し、
魔剣に蓄積していた魔力を無理矢理変質させ、それに変えたものである。
自分を殺し、魔剣を生むまでに人々を殺めた力に刃向かうための、殺戮するための、言うなれば、「殺意の聖性」であった。
その光は命を育むものではなく、人に道を示す物でもなく、ただ単に、闇と邪気を破壊するためだけに召喚されたものであった。
「……感謝するのです。名無しの悪魔さん。
私は何をすべきか。何をしたかったのか。私は思い出し、選択することができた。
微睡んでいた私を引っぱたいたのは、間違いなくあなたです」
地面から魔剣、否、聖魔剣を引き抜く。
真っ白な刀身に、鮮やかな青に染まった巴の瞳が映った。
- 733 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/02/10(金) 04:58:53 ID:oB5LASG.0
- >>732
風が吹いた。強い、風が。
まるで、少女を祝福するかのように桜の大樹が揺れ、花を散らす。
そのうちの一つが女の足元に落ちた。
花びらが、泡立ち始めた。
再生の魔力によって生命を受けた花びらが、泡立ち、浮き上がり、光を伴って人を形取る。
それは、桃色の髪と衣装をまとった少女の形となって、
「やほー☆」
現れた。
察するに、この女の能力の内なのだろう。
少女は漆黒の女に抱きつくと、女がそれを拾い上げる。
「お姉ちゃんは、ありがとうっていってるよ」
対照的に、表情豊かな少女は笑顔を膨らませ、そう答えた。
- 734 :早瀬川巴:2012/02/10(金) 05:12:12 ID:jDElVOJs0
- >>733
攻撃的なまでに真っ白な聖魔剣を月にかざしていた巴は、いきなり聞こえてきたお気楽な声に内心、ズッコケた。
剣を下ろして、声の主を見やれば。それは全体的に桃色に染まった、表情のはっきりした少女。その隣には、先ほどまで暗黒を吹き荒れさせていた女。
どう見ても不釣り合いだったが、桃色の少女を受け入れている点から言って、暗黒の女の身内であるらしい。
そして、桃色の少女は何故か、女の感謝の意をこちらへ伝えてきた。
それは今し方起こった一連の事柄が、女にとって好ましい変化を起こしたのか。それとも単に、良い見せ物を見せて貰ったことへの感謝か。
まあ後者だとは思うが。
「そうなのですか。では、私からはあとひとつだけ。
――――散歩するのなら、もう少し静かにすることをお勧めしますよ、と」
それだけを言って、巴は剣を鞘に戻す。
そうしてから、いつの間にか乱れていた黒髪を払って整え、自らの身体を白い霧へと変化させ始める。
彼女の身体は十秒も経たないうちに全て霧に変わり、その霧も、空気に溶けるようにすぐに無くなってしまった。
//遅くまでお付き合いありでした! お疲れ様でした!
- 735 :ゼオラ&ユリウス:2012/02/10(金) 05:20:52 ID:oB5LASG.0
- >>734
「あ、もうひとつ」
少女は去っていく背中に言葉を投げかけた。
「剣においていかれないよーに。だって?」
言っている自分は、意味が理解できないのだろう。
ただ、女の意図を読み取ってそれを口にしているだけに過ぎない。と言う事なのだろう。
巴が姿を消すと、女は少女を降ろした。
もう一度強い風が吹くと少女は光と共に花びらに戻り、風に消えていった。
残った一人は自らの影に沈んでいき、最終的にはそこにだれもいなくなった。
- 736 :欠け耳のボロッブ:2012/02/12(日) 23:15:37 ID:SSMHlh/20
- 都市の中心部から少し離れた場所に、
魔道具や魔法的な触媒、素材を販売する店の集まった区画がある。
そうした物が自然と発する魔力に惹かれ、妖精、精霊やエルフ、といった種族が
多く集まるこの場所は近代的な区画の多いこの都市にあって、いささか異なる趣を感じられる。
「ういぃい……今日はこれくらいにしておくかね。
おうい、戸締りと整理をやっておいてくれ。先に飯を食べてくるでな。」
その区画の片隅に店を出しているボロッブは、
仕事を片付けて大きく伸びをするとまだ食事を取っていなかった事を思い出し、
従業員にいくつか作業を頼んでから、通りへと繰り出した。
- 737 :レア・アシェット:2012/02/18(土) 15:36:43 ID:RXYke8bw0
- 【異能都市 郊外の公園 夜】
「……っ」
人の気配が無くなった、夜の公園。
「たあっ……!」
闇の中に力強く空気を切る音が響く。
掛け声とともに、六尺棒を振り回す少女。
大量の汗を拭きだし、呼吸も荒い。ずいぶんと長い間体を動かしていたようだ。
傍らのベンチには大きなリュックサックとタオル、そしてドリンクが置かれている。
- 738 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/02/18(土) 15:42:59 ID:WVrfsEdY0
- >>737
【・・・他に誰もいないはずの郊外の公園】
「…さんじゅうよん!」
【よくよく聞くとちょっと離れたところから少女の声が聞こえてくる】
「えっと…そのさきはなんだったかなの…あうあう、またいちからなの!」
【空を切る音が声のする方から同時に響いている…】
【そこにいるのは全身に包帯を巻いた少女。その体の大きさに見合わない銀色の刀を大きく振るっている。】
【少女も同じく長い間体を動かしているようで、額からは汗がいっぱい流れている。】
- 739 :眼帯 ◆P1hbOj87Wc:2012/02/18(土) 15:52:50 ID:RXYke8bw0
- >>738
一度動きを止め、ドリンクに手を伸ばしたところ、どこからか声が響いてくるのに気がついた。
タオルを頭に被り、ドリンクを手に持って声の方へと歩き出す。
「……誰か、居るの?」
聞こえてくる声が幼いようなので、警戒はしていない。
「……。」
- 740 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/02/18(土) 15:56:38 ID:WVrfsEdY0
- >>739
「あう?…だれかいるなの?」
【声が聞こえてきたので少女はその声に対しておんなじように返す】
「こんばんわなの〜。もしかしてとっくんしてるところみてたかなの?」
【汗をいっぱい書いた顔で少女の顔を見上げて言う】
【人の前なので刀は背の鞘に収めたようだ。】
- 741 :レア・アシェット:2012/02/18(土) 16:04:02 ID:RXYke8bw0
- >>740
「……子供?」
幼い声だとは思っていたが、その声の主は予想よりもさらに幼い。
「…………」
しばらく、包帯少女をじっと見つめた。
「見てないけど……特訓してたの?」
特訓そのものは見てないが、刀と鞘のの大きさは確認している。
- 742 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/02/18(土) 16:10:43 ID:WVrfsEdY0
- >>741
「あうー、ちょっとへんかなの?」
【自分の格好をチラチラと見ながら恥ずかしそうに言う】
「とっくん?うん、そうなの。
これをつかってたんだけどなの…」
【よく見るとディスの体には剣をつなぐ帯が巻き付いている。】
【そしてその背中に先ほど振るわれていたと思われる刀が収まっていた】
「それをいっぱいふってなの…つかいかたをおぼえてたところなの〜」
- 743 :レア・アシェット:2012/02/18(土) 20:08:12 ID:RXYke8bw0
- >>742
容姿を気にする相手の一言で、凝視している自分に気がついたようだ。
「ごめんなさい。そういうつもりではなかっのだけど……」
申し訳なさそうに呟いて、包帯の少女に向き合う。こちらは女性にしては長身なので、覗き込むような形になった。
「ただ、正直に言えば、変だと思わないけど……少し変わってはいるかも」
相手が幼いと気楽なのか、言い終えて優しく微笑む。
目の前の少女には見合わないサイズの武器。それを本当に使うのなら、考えられる理由は一つだ。
「……そう」
幼い少女が武器を持つ姿に、同じ年齢の頃の自分を重ねる――だとか、何か思い至ったところがあるのだろう。急に物思いにふけるているようになってしまった。
- 744 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/02/18(土) 20:15:54 ID:WVrfsEdY0
- >>743
「あうあう、きにしないでいいなの〜。
このかっこ、べつにきにしてないからなの。」
【軽く笑いながら返した】
「かわってる、なの〜。
でもひととちがうのもわるくないかなの〜」
【中々のポジティブシンキングである。】
「あうー、どしたの?
やっぱりふしぎなのかなの?これがなの」
【鞘に収まる刀に軽く目をやって、不思議そうな顔をして返す。
どうしたんだろう?と言った感じの視線だ。】
- 745 :レア・アシェット:2012/02/18(土) 20:36:31 ID:RXYke8bw0
- >>744
「一応、聞くけど……寒くないの?」
ちなみに、金髪のこちらの少女も上着や防寒具無しでジャージのみと、端から見れば寒そうな格好である。
「うん、なかなか素敵だと思う」
最近は、奇抜やファッションがよく流行しているようだし。
「昔の事を思い出した。あまり、良い思い出じゃないのだけど
……貴女のせいではないから、気にしないで」
頭にかけてあったタオルで、一度顔から首を拭く。
「それ……刀? 実物は、初めて見た。
名前は良く聞くから、興味はあったのだけど……」
- 746 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/02/18(土) 20:44:11 ID:WVrfsEdY0
- >>745
「あうー?あったかくないのはわかるけどなの〜。
へーきなの。」
【大分元気な掛け声で返す。「寒くない」とは言わないようだ】
「あうー。ずっとこんなふくなの〜。」
【どうやら嬉しいらしく、大きく手を振ったりする。】
「そっかなの…おもいで…
ここにいたらいいこともいっぱいあるから、きにしないなの…」
【若干負い目を感じたのだろうか、励ましのような言葉を送る】
「そうなの。だいじなひとからもらったものなんだけどなの〜。」
【何処か嬉しそうに言う。見ると銀の装飾があちこちに見られる…】
- 747 :レア・アシェット:2012/02/18(土) 21:17:16 ID:RXYke8bw0
- >>745
「貴女が大丈夫なら、それでいいのだけど……」
どうにも、心配そうだ。
「……」
「……たまには変えたら?」
強くは言わないが、心配そうだ。
「大丈夫、昔は昔だって割り切ってるつもりだから。
でも、ありがとう。良いこともあるよね……」
『良いこと』で何か思いついたらしく、真顔に変わって包帯の少女に向き直った。
「そう……特訓するなら私が、相手になるけど……」
「よかったらで良いのだけど……少し鞘から出して見せてくれない? いやなら、無理にとは、言えないけど」
- 748 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/02/18(土) 21:28:27 ID:WVrfsEdY0
- >>747
「あうー、たまにかえたりしてるよなの〜。
がっこいくときとかなの〜」
【微笑みながら言う。】
「うん、またいいことあるからなの!
…あう?とっくんなの?」
【突然の提案に驚く少女】
「あう〜!とっくんできるのならそれがいいの!
いっしょのほうがいっぱいできるとおもうからなの!」
【そう言って笑う】
「えっと…これをなの?
いいよなの!」
【ディスは嬉しそうに鞘から刀を抜いた。】
「どうかなの?」
【片手に持って尋ねる…】
【その刀は、刃の部分がまばゆい銀色に輝いていた。
そりを持ったその刀身はまるで淡い月の光のようにも見える…】
- 749 :レア・アシェット:2012/02/18(土) 21:54:56 ID:RXYke8bw0
- >>748
「そう、学生なんだ」
「私も、一応高校生。学校で会うことは無いと思うけど……」
出席率はあまり良くないのである。
「……」
「貴女の名前、聞いて良い?」
「一つ、伝えておく。理解できなかったら、それでも構わないから。
私の目的は、異能者の情報収集なの。でういう異能があって、どういう使われ方をして、どんな人物が使っているか。そういうのを調べるのが私の仕事なの」
「……不快に思うだろうけど、私に付き合ってくれるなら、それを理解した上でお願いしたい」
抜かれた刀の刃ギリギリまで、顔を近づける。
そのまま刃をちょっと振り下ろせば、すぐに顔を切れるだろう。
「……確かに、美しい。これが、刀なの」
- 750 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/02/18(土) 22:08:55 ID:WVrfsEdY0
- >>749
「あうー、おなじようにがっこうにいってるなの?
それじゃあえっとなの…あ、べつのところでべんきょしてるんだねなの!」
【納得したように答える】
「おなまえなの?あう!
おなまえは『でぃす』っていうなの!」
【そう言って軽く頭を下げる】
「えっと…おなまえは?なの…」
【顔を上げてじっとレアの顔を見る。どうやらディスも名前を聞きたいようだ】
「えっと…じょうほうしゅーしゅー…
どういうつかいかたをされてるかなの?なるほどなの!」
【再び納得したように頭を下げる】
「いろいろしりたいことがあるのはいいことなの!
きょーりょくするの!」
【…よくわかってるのかわからないが、どうやら悪くはないようだ】
「あうあう、さわったらあぶないからねなの〜」
【ぎりぎりまで近づいてくるのを見て、困った顔になっている。】
- 751 :レア・アシェット:2012/02/18(土) 22:36:47 ID:RXYke8bw0
- >>750
「年齢が違うから、クラスも違う」
「強いて言えば……放課後のグラウンドにはよくいるけど」
部活動に所属しているわけではないが、様々な運動部を転々としているのである。
「ディス? いい響きだと思う」
「私は『レア』 レア・アシェット」
小さく、笑う。
「よろしく、ディス」
「情報を使うのは私じゃないから……なんともいえない」
「けど、貴女がくれた情報で貴女が不利になるような事は無い。私がさせない」
「協力してくれるの? ありがとう。
……異能の事は、凄く知りたいと思っている。」
「私も、なるべく貴女の訓練に協力できるように努力する」
「……………」
小さな子に注意されるというのは、不思議な光景だが、全く気にならないようである。
「……不思議。まるで、生きているような武器」
- 752 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/02/18(土) 22:42:53 ID:WVrfsEdY0
- >>751
「あうー、ぜんぜんちがうよねなの〜!
もしそうならあそんでるときにあえるかもしれないなの〜」
【軽く頷いて言う】
「うーん…『れあ』でいいかなの?
よろしくなの〜!」
【嬉しそうに答える。】
「『でぃす』もいろんなひとのことわかりたいなーっておもってるの!
だからいっしょにとっくんできるならそれはいいことなの!」
【軽くうなずき答える。】
「いきてるようなの?あうー!よくわかったの!」
【驚いたような顔をしている】
「このけんはともだちなんだよなの!
ときどきはなしかけてくることあるの〜!」
- 753 :レア・アシェット:2012/02/18(土) 23:04:38 ID:RXYke8bw0
- >>752
「多分、学部も違うはず……だとしたら、かなり遠い」
「見つけたら、声をかけてくれてもいい。……そうしてくれると、嬉しい」
「呼び方はなんでもいい。……あだ名は勘弁して欲しいけど」
手に持っていた、訓練用六尺棒の分解を始める。
「ごめんなさい。そろそろ、私は戻らないと……」
「訓練についてだけど……私、よくこの公園にいるから、次に会えた時で良い?」
「他の人の事もだけど……世界には分からないことが沢山ある。
それは……多すぎるぐらいに」
「上手く説明はできないけど、そのために私は強くなりたいの。強くならないと駄目なの」
「剣が、話す?」
イメージなのか、本当に話すのか……どちらも有り得ることだ。
「生きている……生きた武器、そう生きた武器か……」
「素敵ね……」
道具を全て大きなリュックサックにしまう。
「じゃあ、またね……ディス。貴女のおかげで、これからもっとこの街が好きになれると思う」
そう言い残し、歩いて行く。
//すいません、ちょっと時間なので落ちます。乙津でした、ありがとうございました
- 754 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/02/18(土) 23:20:41 ID:WVrfsEdY0
- >>753
「あうー、かなりとおいなの…
わかったの、みつけたらはなしかけてみるの!」
「うん!『れあ』よろしくなの!
…あうー?いそがしなの?わかったの!」
【六尺棒を分解する姿を見て、納得したように頷いた】
「わかったの!またあったとき、やくそくするの!」
「あうー。せつめーむずかしいけど…
かたなにすんでるひとがいるのかなの?そんなかんじなの!」
【素敵、と言われたためか嬉しそうだ】
「あうあうー!またねなの〜!
もっとまちをすきになるのがいいとおもうの〜!」
【大きく手を振り見送っていった】
//お疲れ様だよー
- 755 :川堀アミル & 寒田レイ:2012/02/20(月) 23:04:40 ID:oB5LASG.0
- 『待ああぁぁてやこらああああぁぁ!!!!』
「いやだよwwwだってレイ怒ってるもんwwww」
『怒るにきまってんだろが!!!』
方や激昂。方や飄々とした追いかけっこが二人の少女によって行われていた。
翠の長髪をはためかせながら逃げるアミルを、
紫色に鈍く、怪しく光る槍を携えたレイが追っていた。
大きく槍を振り回すと、刃の放っていた怪しいオーラが離れ、煙のように周囲に残る。
少し時間を置くと、煙が意思を持ったようにアミルに襲い掛かる。
手を伸ばした煙がアミルを掴もうとしたが、対抗して放たれた翠色の炎に屈して消えてしまう。
追いかけっこにはこうした異能都市ならではの残虐な要素が加えられ、それはさらに過激さを増していっていた。
- 756 :東西南北 良方:2012/02/20(月) 23:15:51 ID:7gFzKdaU0
- >>755
「……わおっ、やっべ」
そんな声が、少女達二人の近くで聞こえたことだろう。
飄々としつつも、妙に響き、妙に重みのあるような無いような、そんな独特な印象の声だ。
そして、格好を見てみればもっと独特。アロハ柄のミリタリージャケットに、ブカブカのジーンズを履いた姿はまだ良いだろう、馬鹿っぽいだけだ。
視線を上に向けてみると、鶏のようだった。坊主にされた頭は真っ白に染められて、真ん中だけは鋭く立ち上げられてモヒカン、そして色は真紅。
顔には色の濃いサングラスが掛けられており、案外にも話しやすそうな笑みを浮かべる度に、割りと鋭い犬歯がむき出しになる。
「――――っと、すとーっぷー」
かつかつ、と靴の音を鳴らしながら、そんな不良が二人の間に割って入ろうとする事だろう。
妙な気配。人だというのに人とは違う気配を纏った男は、先程よりも存在感が有り、緩い声も大分聞こえやすくなるだろう。
敵意はなさそうだが、威圧感だけを放って、二人の注意を己に向け用としているようだった。
- 757 :川堀アミル & 寒田レイ:2012/02/20(月) 23:41:08 ID:oB5LASG.0
- >>756
『お前はいつも、お前はお前は!!!』
口ぶりから察するに、何時も苦労させられているのだろうか……。
それに値する程の怒気が感じられ、それに比例して槍から放たれる煙の量は多く、濃くなっていった。
因みに、この時はまだ良方が喋る前。
静止するように。と投げかけられた声を聴くと、そちらに目を向けた。
この時少女は『邪魔だ!』と言うつもりだったのだが、その立ち居振る舞いの奇抜さに怯み、
『ど、どぁー……』
等と拍子抜けしたセリフを言って立ち竦んでいた。
この出来事で、煙に対する意思が殺がれたのか、煙が段々と薄くなっていった。
そうしていくことで周囲の景色も晴れていき、少女の姿が見える様になると、少女もまた奇抜な服装をしていた。
水泳用のエイムスーツ(全身)。明らかに水中用のそれである。
- 758 :東西南北 良方:2012/02/20(月) 23:51:54 ID:7gFzKdaU0
- >>757
止まった少女を確認して、ぐりん、と青年は転身して、レイに向く。
背丈は無駄にでかく、しかも動く度に頭のとさかがワサワサと動きを見せる。
格好は割りと大きなサイズの服を着ているため、特に威圧感がすごい上に、突出した奇抜さ。
止まった所で何らおかしくない、むしろそうなって当然という青年は、んー、と暢気に声を漏らして。
「……おお、変な格好してんのな」
自分の事を総て棚にあげて、そんなことを言うのだった。
にぃ、と笑みを見せる姿は、威圧感は既に無く、気のいいチンピラの兄ちゃんにしか見えない。
すぅ、と少し腰を曲げて、同じような顔の位置にすると、余り激しくない口調で、問いかける。
「で、なんか有ったのか? 俺の予想だと、お前が被害者であっちの子が加害者とかそんな感じだと思うんだが」
アミルの方に指をさしつつ、なんとなくで予想を立てながら言う。
この予想は果たして当たっているのだろうか。
- 759 :川堀アミル & 寒田レイ:2012/02/21(火) 00:06:10 ID:oB5LASG.0
- >>758
『あ、アンタに言われたくないよ!』
無論指摘。
大槍を持っていない方の手で指を差し。
『それに変な格好って言うな! 一番動きやすいじゃないか!』
と、機能性の実演として何度か飛び跳ねてみたりその場でブリッジをしてみたりする。
『まぁ、なんだ。そんなところだ』
ブリッジを継続したまま、目線だけを向けて話す。
視線を上にあげて、空中に漂う少女を見ては、また良方の元へ。
一方、アミルは未だ空中の方でふわふわしていた。
- 760 :東西南北 良方:2012/02/21(火) 00:14:16 ID:7gFzKdaU0
- >>759
「あ、やっぱり?」
にへら、としてやったりというか確信犯的笑顔を浮かべる良方。
本気なんだかそうでないんだか、中々分かりづらいタイプの人間のようだ。
「んー、確かに動きやすそうだけどよ、寒くね? マフラーでも要るか?」
うりうり、と案外にも高級品のマフラーを、レイの首に巻こうとするだろう。
特に害意とかもなく、寒そうだなー、と思っただけらしい。
そして、指の向く先にいるアミルを見て、んー、と思案顔。
「ま、とりあえずこっち来いやー」
そう言いつつ、右手を虚空に向けてぎゅうと握り締める動作をする。
そして、強く引き寄せるような動きをすると、アミルに、地面に向けて徐々に引き寄せようとする力が発生してくることだろう。
サングラスの奥の右目からは、青白い光がじわりと漏れていた。
- 761 :川堀アミル & 寒田レイ:2012/02/21(火) 00:29:31 ID:oB5LASG.0
- >>760
『元々寒さには大勢がある種族なのだよ。フフッ……』
立ち上がって腰に手を当ててもう片方でそちらを指差す。カッコいいと思って居るのだろう。
この少女、未発達かつ発展中の身体が示す通りの中学生。そういうお年頃なのだ。
「おっ、お、おっ……?」
自らに働く謎の力を不思議に思いつつ、それに従う身体に悩む。
そうしているうちにじわじわと近寄っていく。
かなりの時間を掛けて近寄っていくと、その頃にはそれを楽しむようになっていた。
満面の笑顔を向けていたのだが、良方を見て驚いた顔をした。
「ど、どぁー……」
何処かで見たリアクションと共に。
- 762 :東西南北 良方:2012/02/21(火) 00:39:05 ID:7gFzKdaU0
- >>761
「ヤベェ、マジかっけーわ、まあ、俺の髪型のほうが10倍はクールだけどな」
何故か対抗するように頭のとさかを逆立てる良方、こいつの精神年齢は中学生と同等だ。
しかしながら、此方はガタイが良い上にチンピラ。可愛らしいレイとは違い、誰も得をする図が存在しない。
「……ふぅ、慣れねーな」
サングラスを外して、奇抜な外見に似合わないほど、割と優しげで女性的な童顔を露わとする。
多分普通の格好をすれば普通以上なのだ、決してしないであろうが。
右目には0の数字が浮かんでおり、青白い光が漏れていたが徐々に薄まり元の色に戻って。
うー、と声を漏らしながら眼を瞬かせて、眼を開いて。サングラス無しだと威圧感4割減程の良方は、なんとも言えない表情になる。
「……なーんーでー、みーんーなー、そーんな反応ーすーるーかーなー」
間延びしているが、良方としては割りとガチで格好良いと思ってこういう格好をしていた。
心が敏感なぴっちぴちの18歳♂。ちょびっと傷心モード、3秒アレば戻るが。
- 763 :川堀アミル & 寒田レイ:2012/02/21(火) 00:51:29 ID:oB5LASG.0
- >>762
『……そ、それがクールだと思っているのか?』
一瞬で真顔になって聞き返す。
この少女も感覚的にはズレてはいて、やはり同じくそれがズレていると思って居ないのだ。
そして、良方のズレとはベクトルが違うようでこちらは受け入れることが出来なかった様子。
「ニワトリwwwwwばっさばさwwww」
少し浮いて頭頂部に腕を伸ばし、その鶏冠の様な部分を触る。
「わっしわっしwwwわっしっし……あれ?」
傷心モードをさらに抉るかの様なセリフを並べていた途中で動きをピタリと止めた。
空中に浮いたまま腕を組み、首をひねって考える仕草。
「にわとりってどーやって鳴くんだっけ……?
わっしっしwwwわっしっしwwww……違うなぁwwww」
一体その答えは何処から来たのか。
- 764 :ミラージュ――『The 13』:2012/02/22(水) 23:31:09 ID:oB5LASG.0
- //セルフ清掃
「まだ、こんな物では無いな……」
真紅の鎧を填めた右手を握り、また開き。
左手で頭を押さえて瞳を閉じて、ただ、佇んでいた。
この行動には意味がある。所謂、性能テストという奴だった。
彼女の精神本体はこの鎧本体だと言っても過言ではない。
それを、上手く動かす為の所謂触媒として作られたのが中身。この肉体。
大勢の兄弟姉妹とは違い、最高の性能を持つミラージュは、それだけこの中身も考慮する必要があった。
触媒となる人間の思考能力が低ければ性能は最大限の物にはならない。
触媒となる人間の演算速度が遅ければ、早すぎる処理に耐えかねて脳が焼き切れて死んでしまう。
それをクリアするには、中の人間は所謂、天才と呼ばれるものでなければならなかった。
「フフフ……まだいける。
この性能ならば何処までも、引き出せる。私の力を……!!」
ここまでは彼女一人の話。
ここからは周囲全体の話。
夜の公園。
今日の気温は低く、夜になれば一層寒気が増す。
今も風が吹く、真冬の公園には、やはりと言うべきか少女一人だった。
彼女的に言えば、一人の方が好都合なのだろう。
もし、誰かが彼女を見て思う事は(たとえここが非常満載の異能都市だとしても)一つだろう。
―――変質者なんじゃないか。と。
公園のほぼ中央で、謎のポーズをとる少女の右腕には真紅の鎧。
それだけならまだしも、瞳を瞑っているにも関わらず、嬉々とした笑みと訳の解らない呟き。アウトである。
- 765 :名も無き異能都市住民:2012/02/25(土) 21:52:21 ID:.6prKP66O
- 様々な種族、現象が渦巻く異能都市
普段人通りの多い場所も一つ二つ場所を移したらすぐに人通りが少なくなってしまう
気を抜けば不思議な現象に巻き込まれてしまうそんな場所、それが異能都市
その都市で一際人通りの少ないその場所…
この時間になれば物好きしか通らぬその場所…
その場所ではたまに濃霧が起こる
気を抜けば自分の存在すらわからなくなってしまう程の濃霧
実害がある訳ではない、不思議とこの場所で事件が起こった事は無いのだ
それもあってか、好奇心の強い子供達の度胸試しの場所にもなっているらしい…
噂では、濃霧が一際濃くなる日に、そこにお化けが現われるそうだ
- 766 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/28(火) 22:19:19 ID:WVrfsEdY0
- 【商店街のハズレ付近に箱庭への転送装置がある】
【・・・そこから突然実体化する姿があった。】
「はぁ、…流石に相手が違いすぎましたね」
【学園の制服を着た其の少女は何処か落ち込んでいるように見える・・・】
「システムと思っていましたが、中々の強敵…やられてしまいました。」
【胸を押さえてつぶやいている】
- 767 :?:2012/02/28(火) 22:33:27 ID:dL8H4NjE0
- >>766
その少女が出てきたすぐ横、転送装置などないはずのその場所から、一人の人物が出てくるだろう。
白と黒の服に桃色のショートヘアー、右手に握られているのはダイヤの1が描かれたカード。
「相変わらず便利だね、これ。人がいると使い辛いのが難点だけど……って、あれ?」
すぐそばにいた少女を見つけ、話しかける。
「こんばんは、誰かに襲われでもしたの?」
箱庭の存在を知らない少女はそんなことを聞く
- 768 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/28(火) 22:38:08 ID:WVrfsEdY0
- >>767
「おや、そんなところに誰か…?」
【不思議そうにその少女を見て言う】
「こんばんは…あ、ここですか?」
【ポンポンと転送装置を叩く】
「人がいない時とかに、そういうふうに敵を生み出すシステムのようなものもあるんですよ。
ただ…手ごわかったりしますね」
- 769 :?:2012/02/28(火) 22:48:45 ID:dL8H4NjE0
- >>768
「と、言われてもですな……わっつでぃす?何の機械これ?」
そもそも転送装置を知らない少女はそんなことを言われてもちんぷんかんぷんだった。
カードを持ったまま右手を顎にあて、機械を不思議そうに眺める。
「その口ぶりから察するに、仮想空間にでも行けるの?だとしたら何そのハイテク機能」
「でもそうだとしたら面白そうかも、今度使おうかな
何がどーなってんだー、と呟きながら転送装置をぽんぽんと叩く。
- 770 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/28(火) 23:03:03 ID:WVrfsEdY0
- >>769
「ああ、ひょっとしてここに来て間がなかったりしますか?
じゃあ説明をしましょう。」
【大きくうなずき、機械を指さす】
「これは箱庭という装置で…
予想通り仮想空間内に転送する仕組みの装置です。
この中で戦闘を何度も行えます。しかも内部では致命傷を受けても命を落とさないという優れた機能もあるんです。」
- 771 :?:2012/02/28(火) 23:16:14 ID:dL8H4NjE0
- >>770
「いえーす、ざっつらいと」
少女の質問に完全なカタカナ英語で答える。
「まさか本当にそんなハイテクな物だったとは……」
「この街に来てから驚きの連続やでえ」
中途半端な関西弁でそんなことを言う少女。
口調がころころ変わるのはわざとなのだろうか。
「そんであなたはさっきまでここで戦ってた、という訳か」
「ふーん……ふーん……」
今度は制服の少女に視線を移し、上から下まで遠慮なく見る。
何かを考えているようで何も考えていないような、よくわからない顔だ。
- 772 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/28(火) 23:22:27 ID:WVrfsEdY0
- >>771
「うーん、私はここにいた記憶しかないので他の場所はよくわかんないんですけど…
そんなにすごいことなんですねぇ」
【感心するように答える】
「そうなんですよ。しかしまだまだ未熟というか…
能力を使いこなせないようなかんじがするんですよ。」
【少し情けない顔をしている…】
「えっと、なんでしょう?」
【ジロジロ見られているのがちょっと気になっているようだ】
【ちなみに鶫は制服の上から見てもかなりのスタイルであることが伺える。】
- 773 :?:2012/02/28(火) 23:37:13 ID:dL8H4NjE0
- >>772
「能力ね、因みにどんなのがつかえるんで?」
私のはこんなのね、と言ってから少女はスペードの1が描かれたカードを取り出す。
そしてパチンと指を鳴らすと、
「どう?手品みたいでしょ」
その手には3本のナイフが握られていた。
そしてもう一度指を鳴らし、ナイフをカードに戻す。
「いや、特に他意はないんだけど……でけー」
相手のを山と表現するなら少女のは丘だ。
人並みに気にはなるようだ。
「神様って理不尽だよねー……平等のひの字もないぜ」
深い溜め息をつく。
- 774 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/28(火) 23:45:57 ID:WVrfsEdY0
- >>773
「へぇ…よくわかりませんけどそれが貴方の能力なんですか…
すごいですねー。」
【興味津々で其の手品のような動きをしげしげと見つめている】
「私の能力は…こんなふうに」
【そう言って手袋を付けた腕をぐっと握ると…】
「ふんっっと」
【手のひらが淡く金色に輝きはじめた】
「こんなふうに、力を込めたものを強くすることができますよ。」
【そういって軽く光る手を見せてみる】
「えっと…いえ、まだこれからでしょう…ね」
【どうやらスタイルを確認していたのだろうと気づくと、何処か後ろめたそうな顔で他所を見る】
- 775 :?:2012/02/28(火) 23:59:11 ID:dL8H4NjE0
- >>774
「……あまり誇れたものじゃないけどね」
鶫に聞こえないように、小さく呟く。
「おー、きれーだー」
淡く光る鶫の手を見て、感心したように言う。
少女はしばらく光る手に見惚れていた。
「ふっ、いいよ気にしてないから」
若干負のオーラを身にまといながら自嘲気味に呟く。
そのままぶつぶつと神様を呪う呪詛を呟き始める。なんだかんだいってやはり気にしているようだ。
「まあいいや、一々落ち込んでても仕方ない」
「それよりさ、やっぱ戦うってことは殺したい奴とかいるの?」
とんでもないことをさらっと聞く少女。相手の事情は完全に無視だ。
- 776 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/29(水) 00:02:50 ID:WVrfsEdY0
- >>775
「いえいえ、中々精錬されているように、そう見受けられますよ。」
【ニコニコ笑いながら返す】
「どうもありがとうございます。まああんまり使いこなせていないんですけどねー」
【相変わらず少し情けない顔である。】
「そう、ですかー。気にしてないなら…えっと」
【さすがに呪詛様な声も聞こえているらしい、なんか困った顔になっている】
「こ、殺したい人!?いえいえいえいえ断じてそんな事ではありませんよ!」
【慌てて大きく首をふる】
「なんというか…せっかく手に入れた力なのでもっと上手く使いたいと、そう思っているんですよ」
- 777 :?:2012/02/29(水) 00:14:26 ID:dL8H4NjE0
- >>776
「……意外と耳いいのね」
聞かれたのが予想外だったのか、驚いた様子を隠しきれずに言う。
「綺麗なのと使いこなせてるかどうかは関係ないさ」
励ますように優しい表情をする。
「まあそんなもんか。殺したい人がいれば遠慮せず……ってごめん今のなし」
気楽に、明るい表情で言う少女だったが、突然言葉を切る。
その表情はかなり暗い。過去に『何か』があったことは想像に難くないだろう。
「そ、それよりもさ、うまく扱いたいなら相手してあげようか?最近体動かしてなかったし」
無理やり話題を変える。だが若干焦っているのが見え見えだ。
- 778 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/29(水) 00:24:02 ID:WVrfsEdY0
- >>777
「ああ、なんか効かれたらいい気分じゃないですよね。
申し訳ございません。」
【軽く頭を下げる】
「そうですかー。なんだか嬉しいです、綺麗と言われて」
【少し恥ずかしそうだ】
「殺し…?あ、いえ…あんまり踏み込まないようにします…
何処か難しそうな話のようですし」
【何処か気になっているようだが…】
「あ、相手ですか?ええ、特訓になるのであればコチラとしても嬉しいですよ。」
【少しきにしながらも、申し入れは快く受けた。】
- 779 :?:2012/02/29(水) 00:31:21 ID:dL8H4NjE0
- >>778
「いやいや、気にしないで頂戴」
困ったように少女は笑う。
そして鶫に頭を上げるよう促す。
「うー、助かる」
(どーも調子が悪いね、疲れてんのかな私)
深い溜息とともに感謝の言葉を言う。
少女としても踏み込まれたくない話題のようで、すぐに気持ちを切り替える。
「えーと、じゃあ箱庭とやらに移動すればいいのかな?」
恐る恐るといったふうに転送装置に向かう。
- 780 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/29(水) 00:35:49 ID:WVrfsEdY0
- >>779
「そうですか…わかりました。」
【少しきにしながらも、ゆっくり頭を上げる】
「えっと、そうです。その装置に立って…
ここをこう操作すれば入れますよ」
【手馴れた様子で機械を操作していく】
「場所はここで指定できます。好きなのをどうぞ」
【パネルに箱庭内のマップ選択画面がある。】
- 781 :?:2012/02/29(水) 00:43:46 ID:dL8H4NjE0
- >>780
「うう、機械はどうも苦手でのう……助かるわい」
今度は老人のような口調。
もしかしたらふざけているだけなのかもしれない。
「じゃあ……これだ!」
眼を瞑りながら適当にボタンを押す。
そして二人が転送された先は、草原。
「うえっへー……本当に仮想空間?これ。信じられないわー……」
風景のリアルさに少なからず驚いた様子を見せながら、少女は歩く。
仮想空間ではなく、まるで現実世界にいるかのような錯覚に陥る。
「……って見惚れてても始まらない、やりましょうか」
ウエストポーチからトランプをのカードを取り出し、右手で持つ。
あまり戦闘態勢とは言えないその姿は、すこし滑稽に見える。
- 782 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/29(水) 00:49:58 ID:WVrfsEdY0
- >>781
「ええ、このとおりです。…その口調は…
いえ、行きましょうか」
【鶫も特に気にする事無く、転送されていく】
「草原ですか…なるほど、見晴らしのいい場所ですね」
【いつの間にか鶫は、その少女の前で風呂敷を抱えてあたりを見回していた】
「そうですね。遠慮なくやりましょうか」
【そう言って風呂敷の中から何かを取り出した】
【どうやら鉄砲のようだが…見た目からプラスチック臭のするシロモノである】
「さて、準備開始です」
- 783 :?:2012/02/29(水) 00:56:49 ID:dL8H4NjE0
- >>782
「うーし、久々に戦うし張り切っていきますかー」
少し気の抜けた声で気合を入れる。正直本当に気合が入っているかは微妙だ。
少女は少女で準備運動を始める。手首足首を回し、軽く体をひねったりする。
「っしゃあー、そんじゃまずは小手調べ」
スペードの1を1本のナイフに変え、鶫に投擲する。
避けるのはそこまで難しくないだろう。
- 784 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/29(水) 01:01:41 ID:WVrfsEdY0
- >>783
「いいですよ。いつでも!」
【少し笑いながら答える。しばらくするうちに鉄砲にも光が満ち始めた】
「この程度っ!」
【投擲されたナイフを素早く右に飛ぶことで避ける】
「コレでどうだっ!」
【鶫は地面を転げながら、少女に向けて鉄砲を発射した】
【威力、速度共に本物の鉄砲の如き勢いで少女に向かっていく。】
- 785 :?:2012/02/29(水) 01:12:13 ID:dL8H4NjE0
- >>784
「なるほど、そういう使い方か」
段々と光を帯び始めた鉄砲を見て、少女は小さく笑う。
「――っと!おもちゃの鉄砲がここまでとはね……意外と怖いなあ、それ」
紙一重で銃弾を避け、余裕の笑みを崩さないまま、少女は呟く。
「少し厄介だね、これぐらいはいた方がよさそうだ」
少女はハートのエースを取り出し、変化させる。
カードは二体のマネキンに変わり、少女の横でじっと立つ。
「そんじゃあ試しに行ってみようか!」
身をかがめ、鶫に向かって駆けだす。マネキンは後ろに付ける形で付いてきている。
両手には逆手に持った2本のナイフ。右手の方のナイフを構えると、下から切り上げようとする。
- 786 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/29(水) 01:18:35 ID:WVrfsEdY0
- >>785
「まあ、まだ開発中ですけどね」
【拳銃を構えながらゆっくり立ち上がる】
「なるほど…たしかに面白い術ですね」
【二体のマネキンを交互に見て、なにか理解したかのようにニヤリと笑った】
「そう簡単にはやらせません…よっと!」
【右手のナイフの攻撃を素早く後方に下がって避けに行く。だがわずかにナイフがあたり、制服に切れ目が出来た】
「攻撃一辺倒で済まないですが、もう一発!!」
【怯むこと無く再び鉄砲を構え、少女に狙いをつけて発射した。とは言え狙いが甘いのでそう急所には当たらなそうだ】
- 787 :?:2012/02/29(水) 01:28:49 ID:dL8H4NjE0
- >>786
「その開発を進めるための戦闘さね、好きにやるといい」
こっちも好きにやらせてもらうから、と笑って付け加える。
「っと、流石に避けられちゃうか」
後方に跳んだ鶫に追い打ちを仕掛けるように、両手のナイフを投擲する。
右手のナイフは的確に胸を目指し飛ぶが、左はかろうじて当たるかといった程度だ。
「構うことはない、どんどこい!」
鉄砲を構えられ、発砲の予兆を感じ取っても少女は避ける素振りすら見せない。
そして引き金が引かれ、銃弾が発射される。だが、少女は前進をやめない。する必要がないからだ。
少女と銃弾の間に、先ほどまで少女の後ろにいたはずのマネキンが割り込む。
銃弾はマネキンを打ち砕くが、そこで止まってしまい少女には届かない。
少女は再びナイフを両手に召喚する、投擲されたナイフを鶫が避けたなら、その先に右手のナイフでもう一度切りかかるだろう。
- 788 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/29(水) 01:38:16 ID:WVrfsEdY0
- >>787
「ええ、コチラだって色々用意してありますからね!」
【そう言って風呂敷から再び何かを取り出す】
「ナイフ攻撃…さすがに厄介です!」
【見ると取り出したのは、プラスチック製の模造刀。】
カキィン!
【しかし、金属を弾く音と共に片方のナイフをはじき飛ばす】
サクッ
「くっ…さすがに抗しきれませんか…!」
【もう片方のナイフは、わずかに威力を殺すことは出来たものの、弾かれた勢いで頬をかすめて飛んで行く】
「接近戦ならどうなんでしょうね!」
ガキィン!
【そう言って右手のナイフの攻撃を、構えた模造刀で受け止める】
「でいやぁ!!」
【受け止めた後、其のナイフを押すように刀を前に轢いていく】
- 789 :?:2012/02/29(水) 01:50:57 ID:dL8H4NjE0
- >>788
「チッ――」
ナイフで刀を受け止めるのは分が悪いと感じたのか、
少女は刀を右に受け流してそのまま後ろに跳び、距離をとる。
「流石にナイフだけでやろうとするのは無理があったか……」
「悪いね、流石に甘く見てたよ。こっちもちゃんと相手しよう」
ナイフをカードに戻し、新たに別のカードを取り出す。
そこに描かれていたのはジョーカー。そしてそこから召喚されるのは――
「やっぱ使いなれたのじゃないと駄目だよね、どうも調子でないんだこれじゃないと」
少女の背丈ほどの大きさがある大鎌。それを横に構え、少女は再び接近を試みる。
そして右から軽く振り払い。そこまで強くはないので、受け止めることは容易だ。
- 790 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/29(水) 01:55:37 ID:WVrfsEdY0
- >>789
「おっとと…」
【後ろに飛ばれたため、刀を押す勢いで僅かに前へ出てしまう鶫】
「なるほど…本気ですか」
【血がにじむ右の頬を軽く拭って微笑む】
「いいですよ、コチラだって手かげんする気はありません」
【手に持っていた刀はより光を増している、どうやら力をより送り込んでいるようだ】
「随分とでかい武器ですね…まあこっちだって!」
【そう言って刀を軽く振る】
「そう簡単に破られるものではありませんよ!」
【振り払おうとした大鎌を、素早く逆手に持ち替えた刀で受け止めにかかる】
【ちなみに先程の鉄砲はポケットのなかに入れ、すぐに取り出せる状態である】
- 791 :?:2012/02/29(水) 02:10:00 ID:dL8H4NjE0
- >>790
「まあこれぐらいは……ね」
刀を大鎌の刃と持ち手の角に引っ掛け、そのまま後ろに引く。
何もしなければ刀は刃に引っ張られ、下手をすれば前に重心を崩されるだろう。
そして刃を地面に突き刺すと、
「――ラアッ!」
鎌を持ったまま、前方に宙返りしながら飛ぶ。
鶫を軽く飛び越すような跳躍力で鶫の後方に移動しながら、なおかつ構え直した鎌で上から攻撃を仕掛ける。
- 792 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/29(水) 02:15:38 ID:WVrfsEdY0
- >>791
「ぬわっ!それはちょっと・・・!」
【引っ張られないように足を踏ん張り、どうにかこらえるが…】
「…まだまだ、攻撃は受け流しますよっ!」
【後方に飛んだ少女の動きを見て】
「く…!」
【すぐに刀を振りあげ、鎌を受け止める、が】
ガギィン!
「あいたっ!」
【重さも込めた一撃には耐え切れず、その場に倒れこんでしまう。】
【そこに一瞬スキが生じている】
- 793 :?:2012/02/29(水) 02:19:52 ID:dL8H4NjE0
- >>792
「――っとと……」
着地時に少し体勢がぶれるが、構わず振り向きざまに鎌を振りぬく。
一瞬の体勢のブレが響き、鎌を振るスピードが若干遅い。
その一瞬が仇となるか――
- 794 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/29(水) 02:24:41 ID:WVrfsEdY0
- >>793
「まだっ!」
【起き上がる前に、振り抜かれた鎌を刀で受け止めようとする】
ガキィン!
【もう一度受け止めることは出来たが】
ザクッ
「うぅっ!」
【わずかに止めきれず、其の刃は鶫の脇腹に軽く刺さる。】
【鶫の顔は苦痛に歪み、わずかに力が緩んでしまっている】
- 795 :?:2012/02/29(水) 02:35:42 ID:dL8H4NjE0
- >>794
「くっそー、これすらできなくなってるとは……」
思わぬところで響いた勘の鈍りを実感したのか、少女は悪態をつく。
「まだまだ行くよ!」
少女は鎌を引き戻し、持ち手を入れ換える。
そして鎌を半回転させながら、柄の部分で相手のアゴめがけて下から振り抜く。
//表現がどうしても分かりにくくなってしまう……
//すいません眠気がヤバくなってきたんで次のレスは明日返させてください
- 796 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/29(水) 02:43:17 ID:WVrfsEdY0
- >>795
「うぅ…ダメ…ひるんじゃ」
【少女の姿を見据えながら、再び刀を構えようとするが】
「がはぅっ!?」
【顎を勢い良く打ち上げられて、鶫の体は勢いよく宙を舞った】
ドザァッ!
【そのままの勢いで地面にその身をたたきつけられた】
「ぐ…ぅ…」
【しかしそれでも鶫は気絶せず、なおも立ち上がろうとしている…】
【心なしか刀に向けて流れていく力がより光り輝き、高まっていくように見える。】
//了解ー。待ってますー。
- 797 :?:2012/02/29(水) 16:54:05 ID:dL8H4NjE0
- >>796
少女は立ち上がろうとする鶫に近付く。
そして容赦なくその首に鎌の刃を押し当てると、
「チェックメイト」
笑いながら言った。
刃は押し当てているだけなので、まだ抵抗はできるかもしれないが、
もし少女がその気になれば、一瞬にして押し当てた鎌で鶫の首を刈り取ろうとするだろう。
「どうする?まだ続けたいって言うんだったらご勝手に」
「ただし鎌はどけてあげないよ、諦めた方が賢明じゃない?」
- 798 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/29(水) 17:11:34 ID:WVrfsEdY0
- >>797
「く、う…」
【押し当てられた鎌をじっと見つめて、ぐっと歯を噛み締める。】
「たしかにこの…状況…圧倒的な不利ですね…」
【しかし自身の意思に反して刀は激しく光り始めている…】
「…降参…」
【本当に諦めようとしているように見える…が】
「…う、くっ…!」
【突然刀を手に取り、鎌を弾く勢いで振り抜かれた】
【先程よりもさらに破壊力が増した一撃になっている…】
- 799 :?:2012/02/29(水) 17:28:01 ID:dL8H4NjE0
- >>798
「ん、じゃあやめる?」
なおも光り続ける鎌を少し気にしながらも、戦闘態勢を解く少女。
額に浮かんだ汗をぬぐい、鎌をどけようとした瞬間。
「……ッ!?」
突如刀に鎌を弾かれ、再び身構える。
弾かれた鎌が地面に刺さる前に再び取り、そのまま鶇に鎌を向ける。
「……まさかこの私が騙されるとは思わなかったよ。中々にあなたも道化師じゃない?」
不敵に笑い、鶇をじっと見据える。
- 800 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/29(水) 17:35:18 ID:WVrfsEdY0
- >>799
「ふふ、正義は詭道なりということです。」
【微妙に間違ったことを言いながら返す】
「それに…色々自分の力がわかりかけてきた所…
ここで引き下がってはもったいないんです!」
【総言って左手から先ほどの鉄砲を取り出す】
「体はすごく痛いのに…なんか力が沸き上がってくるんです…!」
【先程よりも強い光が鉄砲にこめられている…】
//お風呂に入るのでちょっと来るのが遅くなりますー。申し訳ありません。
- 801 :?:2012/02/29(水) 17:52:01 ID:dL8H4NjE0
- >>800
「正義ね……まあいいや」
特に間違ってもないし、と心の中で呟く。
「せっかくこんな便利な場所で戦ってるんだし、簡単に諦められちゃ……ね」
「さ、仕切り直しといこう!」
取り出された拳銃は、先程より遥かに強い輝きを放っている。
マネキンで防いでも、完全に止められるかは定かでない。
危険な賭けをするより、別の手段をとった方がいいと判断したのか、
少女はマネキンを消し、別のカードを取り出す。
そこに描かれているのはダイヤのエース。そしてそこから出てきたのは人一人入れる程度の大きな箱。
手品の切断マジックなどに使われそうな外見をしたその箱を、少女は召喚と同時に開ける。
「当たらなければどうってことはない!そして見えなきゃ当たんない!」
その言葉通り、少女が箱を開けた瞬間、大量の黒い霧のような何かが吹き出した。
その何かは少女と鶇を包み込むように漂う。煙幕代わりとして使ったようだ。
「さて、私は今どこにいるでしょうか」
黒い霧の中で少女の声がどこからともなく響く。
- 802 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/29(水) 18:14:52 ID:WVrfsEdY0
- >>801
「了解しました。それじゃあ早速!」
【拳銃を少女に向けて構える鶫。しかし】
「今度はどんな手で来るんですか?」
【大きな箱を警戒してみつめる…】
【が、突然あたりに立ち込める黒い霧を見回して】
「周りが見えない…どこから攻撃を仕掛けてくるかですか…」
【フッと笑いながら返す】
「なんなら…」
【光を足元に向ける】
「その箱を狙うのが上策ですが…ね!」
【足元に向けて弾丸を発射したのだ】
カッ!
【着弾した箇所から、まるで閃光弾のように激しい光が周囲へ広がっていく。衝撃で霧を吹き飛ばすつもりのようだ】
- 803 :?:2012/02/29(水) 18:47:44 ID:dL8H4NjE0
- >>802
「そんな手も使えるのか……!」
思わぬ霧の突破方法に感心したのか、驚いたように言う。
光が霧を払い、一気に視界が開ける。
元通りの風景となった草原には、何もなくなっていた。
そう、少女や箱すら、だ。
「…………」
箱の目的は黒い霧で視界を防ぐためだけではなく、むしろもう一つの効果、転移にあった。
少女は箱を開くと同時にその中に飛び込み、そして箱の能力で鶇の上空に転移。
結果として光に霧が払われるころには少女は鶇の視界から消え、箱も少女が転移したことによって消えた、という訳だ。
少女は音もなく落下する。
鶇が上空の少女に気づけなければ、大鎌が鶇を真っ二つに切り裂くだろう。
- 804 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/29(水) 19:05:00 ID:WVrfsEdY0
- >>803
「…うまくいきましたか」
【見事霧を晴らし、あたりを見回す】
「箱がなっ…!」
【あたりを見回し、上空に影があることに気づく】
「避けないっ…!」
【慌てて振り向き刀を構えようとするが…】
ズバァッ!!
「あぐぁっ!!」
【その一瞬のスキの間に、鶫の胸を真一文字に切り裂いた】
「は…あ…うっ!!」
【其の刻まれた深い傷から止めどなく血が溢れ出しはじめる】
「う、あっ!…ぐぁっ!」
【膝をついてその場でうつむき、くぐもった悲鳴を上げはじめた。】
- 805 :月夜:2012/02/29(水) 21:26:50 ID:dL8H4NjE0
- >>804
「大丈夫……ってそんなわけないか」
心配そうな表情で話しかける。
「流石にもう無理でしょ、ほら、さっさと出よう」
鶇の前で屈み、そう促す。
//遅れました、何度もすいません
- 806 :?:2012/02/29(水) 21:27:51 ID:dL8H4NjE0
- >>805
//名前何回変え忘れれば気がすむんだ俺
- 807 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/29(水) 21:32:19 ID:WVrfsEdY0
- >>805
「は…ぁ…うぅ…う…」
【その場でへたり込んだまま立ち上がれない。さすがにあの一撃を食らってはまともに動くことさえできないようだ】
「た…うぅっ!」
【両手で胸を抑えながら体を震わせる。】
【このままではまともに喋ることもままならなそうだ。ここは連れて帰るのが懸命かもしれない。】
- 808 :?:2012/02/29(水) 21:42:14 ID:dL8H4NjE0
- >>807
「……ちょい失礼」
できるだけ傷を刺激しないように鶇を抱えあげ、転送装置を呼び出す。
そしてパネルを操作し、箱庭から出る。
「戻ってきたけど、しばらくは動かない方がいいんじゃない?」
鶇を担いだまま外に出て、一応忠告する。
- 809 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/29(水) 21:47:19 ID:WVrfsEdY0
- >>808
「うぅ…」
【返事もまともにできないまま、現実世界に転送された】
「あー、えっと…ありがとうございました。
今回の戦闘で色々わかりましたよ。」
【現実に戻ると、担いでいた鶫の深い傷、を始めとした色んな傷は跡形もなく消え去っていた】
【少女自身も、戦闘によるダメージなどは完全に元通りになっていると感じるはずである】
「大丈夫ですよー。もう下ろしても平気ですから。」
- 810 :?:2012/02/29(水) 21:53:59 ID:dL8H4NjE0
- >>809
「ならよかった、私も久々に動けたし、それに綺麗に勝てたし…………」
少女の言葉がそこで途切れる。
そして急に口を右手で押さえると、その場にうずくまる。
「ぅ…………あぐ……」
見た目は特に変わりないし、外見上は特に問題ないが、その姿はかなり苦しそうだ。
必死に込み上げて来るものを押さえるように、右手で強く口を塞いでいる。
- 811 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/29(水) 21:57:52 ID:WVrfsEdY0
- >>810
「それはありがたいです…?」
【突然その場にうずくまったのを見て慌てて近寄っていく】
「ど、どうしたんですか?だ、大丈夫ですか!
しっかり!」
【背中を軽くさすりながら必死になって呼びかけている】
- 812 :?:2012/02/29(水) 22:05:18 ID:dL8H4NjE0
- >>811
「だいじょう…………ぶ…………」
えずきながらも、何とかその言葉を絞り出す。
「ごめ……ちょっと……ついて…………こないで……」
よろよろと立ち上がり、今にも倒れそうな足取りで歩き始める。
一歩歩くだけで倒れそうになったりと、かなり危なっかしいが、少女はそれでも鶇から離れようとする。
- 813 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/29(水) 22:10:08 ID:WVrfsEdY0
- >>812
「大丈夫…そうにはとても見えないですよ!」
【歩き出そうとするのを見て慌てて近寄っていく】
「い、一体どうしたんですか…?何か理由が…」
【健康体そのものの鶫ならば少女にはすぐに近寄っていけるだろう。なおも心配をかけてくる】
- 814 :?:2012/02/29(水) 22:20:52 ID:dL8H4NjE0
- >>813
「お…………ねが…………」
もはや言葉にすらならなくなってきた声で、それでも懇願する。
目をつむり、鶇を視界に入れないように。
(違う……この子はアイツじゃない……)
(もう……アイツは……)
鶇の声と少女の記憶の中の誰かの声が重なる。
幻聴だと思っても、その声は止まらない。
「う…………うあああああああああああああああああ!」
突如少女は叫び声を上げ、カードを取り出す。
描かれているのはジョーカー、大鎌を召喚するカードだ。
そして召喚された鎌を握ると、鶇に向かっていきなり切りかかろうとする。
いきなりの事ではあるが、それはあまりにも遅く、力のない攻撃だ。
避けるのも、防御するのも大して難しくないだろう。
- 815 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/29(水) 22:24:42 ID:WVrfsEdY0
- >>814
「?!っ来るつもりですか!?」
【突然の攻撃に驚きながらも難なく其の鎌の一撃を上手く横に飛んで交わす】
「よくわかりませんけど…留めないとヤバイ気がしますね!」
【そう言って両手にはめていた手袋に力を込めはじめる…】
(声が…聞こえたような?)
【不思議そうな顔であたりを見回す。】
- 816 :?:2012/02/29(水) 22:30:13 ID:dL8H4NjE0
- >>815
「あああああああああああああああ!!」
少女は鶇に向かってひたすら鎌を振り回し続ける。
太刀筋も何もかもめちゃくちゃだが、振り回す少女の気迫はもはや人でないような印象すら与える。
- 817 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/29(水) 22:38:39 ID:WVrfsEdY0
- >>816
「一体何があったのかはわかりません…でも!」
【振り回してくる鎌をどうにか避けながら、じっと少女に顔を向けて】
「ひとまず気絶程度はしてもらい…ます!」
【力を貯めた拳を鎌を振り下ろした時…その隙を突いて懐に潜りこもうとする】
「これをくらいなさいっ!」
【お腹付近に軽く力を込めた拳を打ち込もうとしている…】
- 818 :?:2012/02/29(水) 22:45:42 ID:dL8H4NjE0
- >>817
切りかかった隙に接近してきた鶇に反応できず、
「……ッ……」
少女はあっさりと拳を腹に喰らう。
衝撃にしばらくよろめき、それでも鎌を振るおうとしたが………
ドサッ、と力尽きたように少女が地面に倒れる。
大鎌はいつの間にか元のカードに戻っていた。
- 819 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/29(水) 22:48:41 ID:WVrfsEdY0
- >>818
【一撃を打ち込んで、少女が気絶したのを見届けると】
「ふう…なんとかなりましたか…」
【額の汗を拭って一息ついた、そして】
「よいしょ、っと」
【倒れた少女を抱え、おんぶさせた】
「ひとまず何処に連れていけばいいんでしょうね…
病院…?でしょうか…」
【少し悩みながら歩き始める…結構悩んでいるようだ】
- 820 :?:2012/02/29(水) 22:55:50 ID:dL8H4NjE0
- >>819
「…………ぅぐ……」
少女は目を閉じたまま起きる気配はない。
ただ、何かにうなされたように時々うめき声をあげている。
外傷は特にないので、起きるまで適当なところに寝かせていても大丈夫そうだが……
- 821 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/29(水) 23:02:20 ID:WVrfsEdY0
- >>820
「一体どうしたんでしょう…
心配です…」
【抱えたまま、心配そうな顔をして歩き出す】
「やはり人のいる場所…いえ、やはりここは…」
【なにか考えながら歩き出す…民家に向けて歩き出したようだ。】
「私の部屋がひとまず安全でしょうか」
【そう言って歩いていった先は…学生寮である。】
- 822 :?:2012/02/29(水) 23:15:26 ID:dL8H4NjE0
- >>822
「……ん……」
学生寮につきしばらくして、少女が目を覚ます。
見覚えのない場所にしばらくぼんやりと辺りを眺めていた少女だが、
「………………!」
気絶するまでの出来事を思い出したのか、慌てて鶇に話しかける。
「私……あの……ごめん」
少し前までの明るさなど欠片も見当たらない少女は、うつむきながら小さく謝罪した。
- 823 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/29(水) 23:21:07 ID:WVrfsEdY0
- >>822
【目覚めた先は…学生寮内の鶫の部屋】
「あ、目が覚めましたか」
【椅子に座ってじっと少女を見つめる】
「気にしなくていいですよ。
その…止められましたし」
【少し申し訳なさそうに言う】
「その…事情はともかく、大丈夫でよかったです
えっと…なんて呼べばいいでしょうか?」
- 824 :?:2012/02/29(水) 23:27:54 ID:dL8H4NjE0
- >>823
「……いや、ほんとゴメン」
文句のつけようが一切ない完璧な土下座で、もう一度謝罪する。
なんだかんだでいつもの調子に戻って来ているようだ。
「なんて、と言われてもですな……好きに呼んでくださいとしか」
困った顔をしながら言う。
- 825 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/29(水) 23:34:11 ID:WVrfsEdY0
- >>824
「いやいや、顔を上げて下さい。
もう大丈夫ですから!」
【大きく手を振って答える】
「そうですか、うーん…
ひとまず、娘さんでいいですかね」
【…ネーミングセンスはよろしくないようだ】
- 826 :?:2012/02/29(水) 23:42:04 ID:dL8H4NjE0
- >>825
「あ、ホント?ありがとー」
ニコニコと笑いながら顔をあげる。
見た感じは完全にいつもの調子に戻ったようだ。
「おっけー、どんな呼び方でもどんとこいだぜイエイ」
ない胸を張って言う。
なぜ胸を張ってそんなことを言うのかは分からない。
「それじゃあ、あんまり居続けるのも何だし、帰らせてもらうね」
「また会えたら会おう。えーと……」
少女はそこで相手の名前を聞いていないことに気づく。
- 827 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/29(水) 23:48:40 ID:WVrfsEdY0
- >>826
「はあ、どうぞよろしくお願いします」
【鶫は頭を下げて言う。ない胸をはっているぶん、ある胸が目立っている…】
「そうですか。ええ…いいですよ!」
【大きく頷いた後、自己紹介をした】
「ああ、私の名前ですね。私の名前は防人鶫(さきもりつぐみ)と言います。
どうぞよろしくお願いします」
- 828 :?:2012/02/29(水) 23:52:39 ID:dL8H4NjE0
- >>827
「鶫ちゃんね、しっかりと覚えましたぜ」
鶫、つぐみ、と何回か繰り返す。
人の名前を覚えるのが苦手なタイプのようだ。
「それじゃあ、今度こそさようなら、鶫ちゃん」
軽く手を振り、鶫に別れを告げる。
- 829 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/02/29(水) 23:58:41 ID:WVrfsEdY0
- >>828
「ええ、ありがとうございます!」
【嬉しそうに返す】
「またあいましょうね!」
【手を大きく振って見送っていった】
「…しかしあれは…どうなっていたんでしょう…」
【不思議そうな顔をして考える…】
//お疲れ様でした
- 830 :コレット:2012/03/01(木) 20:48:51 ID:1sJsd2CgO
- 【都市近郊 陸橋下】
薄汚れたフードコートが俯き加減で架橋下を歩いている。
体格からして少女だろう、身体の線は細く到底歩き慣れているとは見えない。
長い間、悪路を歩き詰めて疲れた少女はふと立ち止まり、暗い空を仰いで先を見る。
「……まだ、遠いなぁ」
でも、進まなければ帰れないんだ。
と、生身の少女――コレット・フランキスは気を引き締める。
商業区から港に渡る幹線道が這った陸橋に沿い、都市に向かって進む。
彼女の歩いてきた方角には廃れた無人家屋やコンテナターミナルが忘れられたようにあるばかり。
- 831 :九段坂桐子:2012/03/01(木) 22:33:20 ID:Or3y3X8Q0
- >>830
「……こんな所を女の子が歩くなんて、感心しないなぁ」
ふと、声が掛けられる。
やや高いアルトの響き。方向は、少女の横から。
橋脚の下、蛍光色のスプレーで乱雑に描かれた落書きを背に、佇む一人の女の姿。
一纏めに巻かれた黒髪に、東洋系の顔立ち。唯一異彩を放つ双眸が、少女を確りと捉えていて。
見るとそこには、”占”と書かれたクロスを垂らした小さな机があった。
座る女の対面には、粗末な椅子の空いた席。
招き入れる様に、女の手が緩やかに宙に振れた。
- 832 :コレット:2012/03/01(木) 23:15:08 ID:1sJsd2CgO
- >>831
声から二歩半過ぎ、気が留まる。
コレットは首だけ動かし、お節介な響きに振り向く。
するとどうだ
胡散臭い東洋系の女
机を挟んで空いたイス
そして提げられた“占”の字
「……占い師?」
声に明らかな興味の色が乗る。
フードを外して、目を凝らす。
- 833 :九段坂桐子:2012/03/01(木) 23:40:25 ID:Or3y3X8Q0
- >>832
「そうだね。君の言う通り、しがない占い師だよ」
興味の色に、応えるは薄い笑み。
振られた手が、掌を返し椅子を指す。
暗に”座れ”と、示している様に。
「君みたいな小さな女の子が彷徨くには、少し危ないんじゃないかと思ってね。ほら、最近は何やら『危ない事件』も多いし、ね?」
- 834 :コレット:2012/03/02(金) 00:06:51 ID:1sJsd2CgO
- >>833
「人が消える噂、神隠しだか人攫いだか……あぁ、事件だから暴動とか、か
でもアレは都市にいても危ない。し、どうしようもない」
イスに腰かけ、顔を占い師に向ける。
ゴワついた薄い茶髪に暗褐色の瞳、睨み付けるような目付きに不満げに凝り固まった口
なんとも酷い悪相である、オマケに血色が悪い。
「あなたこそ、こんな辺鄙な場所で構えてていいの?」
とてもじゃないが人通りがあるとは思えない。
だからこそ帰り道に選んだのだから。
- 835 :九段坂桐子:2012/03/02(金) 00:31:15 ID:Or3y3X8Q0
- >>834
椅子の触感は、固い。
そこらの家財屋で売っているような、折りたたみのパイプ椅子。
擦り切れた合皮、へたれたクッションの感触は、お世辞にも良いとは言い難い物で。
「そうだね。でも今は――『放火魔』。どうにも、それが流行みたいじゃないか。
あれだけ何件も頻繁に起こされては、安心して夜も眠れないというものだよ」
血色の悪い顔を覗き込む様に、女は視線を巡らせる。
細い首筋、軋んだ髪質、薄汚れたその身体は、年頃の少女というには少し外れた雰囲気をまとっていた。
「”辺鄙なばしょだから”、だよ。ここなら、変な事件には巻きこまれない。
少なくとも『突然燃やされたりはしない』、そうだろう?」
それは、正論というにはあまりにズレたもの。
危惧するものを避けるために他を度外視するというものだった。
- 836 :コレット:2012/03/02(金) 00:47:03 ID:1sJsd2CgO
- >>835
「……変なの。その理屈じゃあ、この陸橋の下も危ないじゃない」
橋が崩れるかもしれない
トラックが落ちてくるかもしれない
厭なものに遇うかもしれない
可能性はゼロでは無い。
例えどんな事でも。
「まあ、でも確かに怖いわ、放火魔。私、基本ずっと家に居るから、特に――」
そう、いつもなら自宅から魔術を用いて人形を遠隔操作している。
だが、今日に限っては生身の身体で外出している。
- 837 :九段坂桐子:2012/03/02(金) 01:05:48 ID:Or3y3X8Q0
- >>836
少女の追求に、くすりと笑みがこぼれ出る。
邪気の伴わない、思わず、といったそれ。
「確かに、それもそうだね。でもまあ、私としてはここが安全だと思ったのさ。
……そうだね。”占いでそう出たんだ”、と言えば納得してくれるかい?」
肘を突き、組んだ手で顎を支える体勢。
受かべた苦笑は、まるで悪戯の弁明のようで。
「なるほど、たまの出歩きは楽しいものね。特に見知らぬ場所は、興味がそそられる。
どこか、行きたいところがあったのかい?」
"基本ずっと家にいる"、という言葉に、女は気を留める。
少女の姿は、世辞を抜きにしても綺麗という物ではない。家に居た者が一日二日出歩いたとて、こうはなるまいと。
ならば、前提が間違っている。家が極貧に窮しているか、あるいは『そういうこと』に遭遇したか。
いずれにせよ、面白そうだ――
轟音。大型のトラックが、頭上の橋を通り過ぎる。巻いた気流が、二人の髪を靡かせた。
- 838 :コレット:2012/03/02(金) 01:33:32 ID:1sJsd2CgO
- >>837
「それなら……いいや」
普通に考えてもそうだ。
陸橋の強度は定められた安全基準を満たしている訳だし
そんな陸橋の防音壁を突き破るトラックは少ないだろう
限りなく可能性が少ないなら無視も出来る。
「行きたいところ……というより、捜し物かな。あるかないか分からない“そういった”……物。
ほら、あの倉庫街って“そういった”噂も多いし、やっぱ出やすそうじゃない?」
正確には捜し人だ。
ただ、コレットは嘘を言っていない。
その人物が扱う、とある物が欲しいだけなのだから捜し物でも間違いはない。
しかし、占いや噂といったオカルトという雰囲気を含めると途端に解釈が異なってくる。
- 839 :九段坂桐子:2012/03/02(金) 02:25:33 ID:Or3y3X8Q0
- >>838
少女の頷きに、返す様に女もまた頷く。
思索に耽り、答えを返す少女を、その行動を、女は眼の端々に捉えていて。
「『探し物』、かあ。確かに、それが手に入れ難い、ないしは在るのかどうか定かではないものであるなら、物探しはロマンに溢れているね。
私もそういう話は何度か耳にした事はあるけど……流石に、本物に出合った事はないね。そういった物は日の下にも、暗がりにも現れてはくれないのさ」
噂は、駆け巡る。
だがそれは、あくまで噂。本物には決してなりきれない、虚飾の妄言。
いつしか嘘に塗り固められたそれは、真実を一切語らぬものに変わってしまう。
故にそう、噂は”現れない”。
「……それで、探し物は見つかったのかい? 廃棄区域(あんなところ)に行ってたんだ、何か収穫の一つでもなければ無駄骨というものだろう?」
- 840 :コレット:2012/03/02(金) 02:58:22 ID:1sJsd2CgO
- >>839
「まるっきり、て訳じゃないけど――うん、やっぱ無駄骨ね。
あなたの言うように、日の下にも暗がりにも、もっと暗い場所を手探りしても見付けられなかったから」
……あれは、偶然だったのかな。
漏らす独り言。
あの日から探し続けて、求め続けてずっと、報われない結果に口をつく言葉。
胸の内で繰り返す度、堪らず助けを求めたくなる。
だが、求めたところで結果が変わる事は無かった。
「……あの、一つ占ってもらっていいかな」
だからこそ、すがるような心待ちで切り出す。
「私が、近い未来、いったいどんなものに、遭遇する、のかどうか……。
……あー、いや。やっぱ運勢でいいかな、さすがに占いは予言じゃないし」
- 841 :九段坂桐子:2012/03/02(金) 03:32:55 ID:Or3y3X8Q0
- >>840
「……偶然では、ないよ」
漏らした独り言に、求めぬ応えが返される。
女は、少女がした事を知らない。探し物が何で、どうして探しているのか、それすらも確固たるものとしては解らない。
現実とは、必然性の連続で成り立っている。
原因があり、結果がある。今を生きるのであれば、その法則は決して揺るがない。
ならば、そう。少女の身に起こったのは、決して偶然ではないと。
いくつもの出来事が重なり、起こるべくして起こったものなのである。
「残念、生憎と私の占術はよく当たると言われていてね――”件は真実のみ語る”のさ」
少女が縋り、女が応える。
人間、窮地に陥れば藁にも縋る。女は、そうした人間を多く見てきた。
それが己の役割だと、重々理解している。不平不服関わらず、それを成せるだけの力が、己にはあったが故に。
金属の、擦れる音。見れば女の手には、複数枚の硬貨が握られていて。
自然と。投げられる。
空へ。中空へ。
昇った後に、それは落ちてきて――
- 842 :九段坂桐子:2012/03/02(金) 03:45:50 ID:Or3y3X8Q0
- >>841
宙に舞う硬貨。しかしその一つとして、地面へと落ちるものはない。
吸い込まれる様に、机へと並ぶ硬貨。それを眺める様に、女は覗き込んで――
「――磐桓。利居貞。利建侯(急くはなし。地道に進む事がお前の功を成す)」
「――屯如。?如。乗馬斑如。匪寇婚媾。女子貞不字。十年乃字(決して動いてはならない。君が動けば動くだけ、禍を生む)」
「――不恒其徳。或承之羞。貞吝(やがて君は、導を失う。風に流され、信頼をも失う)」
「――需于血。出自穴(その時、お前は光を見る)」
「――需于酒食。貞吉(光に従え。安らかに待て。望みしものが現れるまで)」
「――視履考祥。其旋元吉(他者を見、他者を測り、そして己となせ。さすればお前は、更なる一歩を踏む)」
それは、どこか異質な響きを持っていた。
紡がれたのは、およそ六節。
紡いだのは、目の前の女。だがその声は――一人の物には、どうしても聞こえなくて。
「……まあ、こんなものかな。どうだい。参考にでも?」
女は相変わらず苦笑を浮かべ、少女を眺めていた。
- 843 :コレット:2012/03/02(金) 04:32:27 ID:1sJsd2CgO
- >>841
「偶然じゃ、無い……?」
硬貨は少女に纏う因果に掛かった。
沿い、避け、重なり、弾け、滑り、止まる。
張り巡らされた些事の糸が描く運命の網目を下り語る。
―― 曰く、少女は真実に対し無自覚である。
―― 曰く、広まる“噂”に少女も組み込まれている。
―― 曰く、少女の求める声は捜し人の耳に届いている。
―― 曰く、少女を捜している人が少女の求める捜し人を知っている。
―― 曰く、その『探し物』は『d_i__』を経て放火魔へと繋がる。
―― 曰く、少_h___の運mei___コト___。
―― 曰く、…………
―― 曰く、……
―― ……
机に落ちる硬貨。
それらは数々の示唆を表し、音を鳴らしながら散らばる。
散ってもなお多数が残るが、数枚は弾かれ机の下に落ちていく。
全てが下り落ちた後、静まる中
一枚だけ、排水口へと転がる硬貨がある。
それはまるで告げる事から逃げるような動きであるし、放っておけば流れる水路へポチャン間違いなし。
- 844 :狗 ◆ZwSFISyT06:2012/03/02(金) 04:35:45 ID:1sJsd2CgO
- // おっとぉおおっ!
// ミスった!拾い忘れた!
// >>843はスルーで!
- 845 :名も無き異能都市住民:2012/03/02(金) 04:39:42 ID:Or3y3X8Q0
- >>844
//あえて拾いたいのですが構いませんか・・・!
- 846 :コレット:2012/03/02(金) 04:56:22 ID:1sJsd2CgO
- >>841-842
「……す、凄い」
他の占いとは一線を画す、異質な感覚。
なにか絶対的な支配下に置かれているような挙動を見せた硬貨に異能の片鱗を見た。
少なくとも、コレットはそう感じた。
だが。
「……うーん。動けば禍が、しかし動かなければ光も無く?うん?いや、違うか、とにかく良くない事が?」
なにか混乱していた。
しばらくして漸く呑み込めたのか、深く頷く。
そうして、ふと不安になる。
――お代だ。
- 847 :狗 ◆ZwSFISyT06:2012/03/02(金) 04:58:45 ID:1sJsd2CgO
- >>845
// どうやら世界は分岐したようだ。
// どちらか好きなほうを選んでください。
// 重ね重ねごめんなさいorz
- 848 :名も無き異能都市住民:2012/03/02(金) 10:16:01 ID:Or3y3X8Q0
- >>847
ハウリングのように、重なり響く声。
空中で擦れる音、机を叩く音、地面に落ちる音、そのいずれもが奇妙な音色を奏でる。
少女の耳に届いた声は、その本来の『言葉』とは別に、異なる『意味』を含んでいて。
その時少女は、聴覚ではなく、直感で認識した。考えるより速く、”そうである”と確信した。
それは謂わば――『天啓』。
様々な示唆、少女の纏う因果と運命の糸を縒り紡いだ、一種の予言に他ならなかった。
聴覚と直感を埋め尽くした数多の情報が、少女を混乱させる。
それぞれ独立した感覚に、倍数近い情報量を、それも解りにくい形式で叩きつけたのだ。それを瞬時に判別しきるのは、並大抵の事ではない。
「これは”予言”だ。でも、”確定した未来”じゃない。因さえ変えれば、自ずと果は変わる。
君がどう進むか――それが、一番肝心なところさ」
そう言い終えると、女は少女へと手を伸ばした。
少なくとも、それは握手を求めたものではない。先刻のように、掌を少女へと向けたかたち。
――”対価”だ。
// 偉い人は言いました
// 両方取ればいいじゃない
- 849 :コレット:2012/03/02(金) 11:22:01 ID:1sJsd2CgO
- >>848
聴覚が直感が、それぞれ受け取った予言。
それら総てが少女の中で正しく情報になる訳ではない、だが確実に受け取ったのだ。
その事実が吉と出るか、凶と出るかはまさしく行動次第。
「…………」
試されている。
今、色々と試されている。
無言で対価を請求する女の手に視線を落としながら、コレットは考える。
占いの相場は幾ら程なのかを。
思えば聞いてすらいなかった。
この占術は彼女の異能なのだろうか。
だとすると、相場は当てはまるのか。
そもそも支払いは貨幣なのだろうか。
悪魔の道案内に寿命を支払った事もある。
相手が求める物を差し出さなくてはならないのだ。
考えて、考えて、考えて……。
三枚の紙幣をそっと置いた。
所持金の半額である。
- 850 :九段坂桐子:2012/03/02(金) 15:08:48 ID:QDKqXtkIO
- >>849
「……」
渡された紙幣に、女は僅かばかり表情を曇らせた。
臥せられる瞼。一つ頷けば、再び少女へと向けられる視線。
「まあ、いいか。いいよ、確かに、『対価』は受け取った」
そうして、女は紙幣を握る。
渡された三枚――その二枚を、少女の掌に握らせて。
「……これは『前金』さ。もし君にとって"私の占いが正しかった"と感じられる時が来たら、その時はまた残りを支払いに来るといい。
誤啓を告げた、なんて事になってしまったら、私の面目は丸潰れだからね」
浮かべた苦笑は、若干の暗い色を孕む。
真上を通る喧しいトラックの音が、何故か遠くに聴こえた気がした。
- 851 :コレット:2012/03/02(金) 20:33:01 ID:1sJsd2CgO
- >>850
曇る表情に足りないと感じたが、返ってくる二枚を見るに違うらしい。
いったい彼女は何を求めていたのだろう。
考えても、私は分からなかった。
「あの、あなたは……」
訊こうとして口ごもる。
何を求めていたのか、とは口に出せなかった。
「……いえ、ありがとうございました。
あなたのおかげで気が楽になった、というか、指針が見えてきたみたいな感じ。
それが正しいかどうかが私の行動次第なら、もし違っても私の責任だから」
少なくとも、それが少女にとって誤りになることは無い。
やがて僅かに空が白む、案外長い時間が経っていたようだ。
- 852 :九段坂桐子:2012/03/02(金) 22:29:28 ID:Or3y3X8Q0
- >>851
断ち切られた言葉に、返されるものは無かった。
少女を握った手が、軽く叩かれる。温もりを残す様に、惜しむ様に。
離される掌。残されたのは、二枚の紙幣だけ。
「いいよ、感謝する必要なんてないさ。それが、私の役割だからね。
……私が言うのもなんだけどね、最後に決めるのは自分自身だよ。”現在”起きた総ての事に、自分の手で変えられない事なんて無いんだから」
伏し目がちに、呟く様に述べる言葉。
昇り始めた日が、夜から影を生む。橋脚、生まれた影に隠された女の表情は、窺えなかった。
- 853 :コレット:2012/03/02(金) 23:55:50 ID:1sJsd2CgO
- >>852
「……それじゃ、いつか」
去り際にそう言って。
昇り始めた陽に焦りをみせた少女は、いそいそと都市に駆けていった。
椅子の下に学生証が落ちている。
千夜学園高等部一学年
コルファランテ・アルバ・フランキス
整った容姿の写真は先ほどの少女に間違いない。
連絡先と住所が書かれている、一つは学園のものもう一つは少女の自宅だろう。
- 854 :九段坂桐子:2012/03/03(土) 04:55:15 ID:Or3y3X8Q0
- >>853
「……おや?」
少女が去り、店を畳もうとした際にみつけたそれ。
一枚の学生書に映る姿は、まごうことなく先程の少女で。
「おやおや、なんというか、難儀な事だねえ」
手の内で、くるくると回す。
さてどうしたものかと、思索に耽りながら、女は橋を後にした。
- 855 :欠け耳のボロッブ:2012/03/03(土) 23:33:30 ID:SSMHlh/20
- 中心区画から少し離れた公園。
そこのベンチに座り、紙袋を漁るボロッブの姿があった。
「……しめしめうひひ。」
仕事帰りのボロッブは、たまたま見つけたスタンドで
ホットドッグ(サルサ味)とコーヒーを買い、遅めの夕食をとることにしたのだ。
- 856 :キルリス:2012/03/04(日) 00:05:54 ID:do5XJmGE0
- 黒い体毛に覆われた、オッドアイの双眸。
その黒猫はゆっくりと公園に入っていき。キョロキョロしている内に、
ベンチへと歩いて行く。尾は地面と並行。
だがその表情は人間で例えるなら考え事をしているような表情であるだろう
- 857 :欠け耳のボロッブ:2012/03/04(日) 00:36:51 ID:SSMHlh/20
- >>856
「おやあ。」
むぐむぐとホットドッグにかぶりついていたボロッブは、
2〜3mの距離でようやく近づいてくる黒猫に気づき。
「人に慣れとるなあ、おいでおいで。
ごはんおあげようなあ。」
普通の猫に接するようにちっちっと舌を鳴らして。
がそごそとポケットを探り、魚の干物のようなものを差し出しているが……。
- 858 :キルリス:2012/03/04(日) 00:42:55 ID:do5XJmGE0
- >>857
人懐っこい、その猫はボロッブが差し出す魚の干物のようなものの匂いを嗅ぎ。
なぁ、と小さな鳴き声を上げて、ボロッブの隣へと飛び上がり。
その隣で前足でベンチを叩く。此処に置け、ということなのだろうか。
近くで見れば、より一層分かるはずだ。
暗がりで隠された表情には、考え事をしているようなことに。
- 859 :欠け耳のボロッブ:2012/03/04(日) 00:52:11 ID:SSMHlh/20
- >>858
「おんやあ、まあ。
賢え猫だこってなあ、ちいと待ってろい。」
煮干をそこにおき、どこぞから取り出した
ミルクを、これまたどこからともなく取り出した木製の器に置く。
本来猫にミルクを与えるのはあまりよくないのだが、このミルクは
なにやら、やたら魔力が多く感じられる。
「おめーさん、どこぞの使い魔だろう。
魔力の感じで、わかるよ。」
魔成分調整乳、とでもいったところだろうか。
- 860 :キルリス:2012/03/04(日) 01:01:28 ID:do5XJmGE0
- >>859
「我が使い魔と見切ったの。」
吐き出した言葉とは裏腹に、舌でペロペロとミルクを舐めて、次第に口の周りを白く染めて。
更に煮干など、一呑で食べてしまった。
「最近の主は、この我に暇を与えん。先の事件も、見てこいと言われたばかり。
事件で食事を邪魔され、この有様だ。」
何やらこの猫、主<マスター>の愚痴を漏らしつつ、上から目線で語るはいいものの、
口の周りに確りとミルクをつけているあたり、情けない。
- 861 :欠け耳のボロッブ:2012/03/04(日) 01:14:45 ID:SSMHlh/20
- >>860
「あっしゃぁ、こう見えても魔術師の端くれでやんしてね。
一応、魔術師のギルドにも一時期いたんよ。」
ミルクに口を付けるキルリスの隣でぞぞぞとコーヒーをすするボロッブ。
彼が売る商品の殆どが魔術品なのも、そういった関係の人脈ありきなのだ。
「事件ったあ、一体何だい?」
規模に反比例して、事件が起こる数も多いこの都市である。
今朝も車10台以上が絡む大事故とテロ騒ぎが起こっている。
- 862 :キルリス:2012/03/04(日) 01:24:29 ID:do5XJmGE0
- >>861
「我が知る魔術の理に関わる者は、総じて総じて襲われたの。
我のようなものに餌を与えるとは、主は少し変わっておるな。」
猫は口許を舐めて。
だがミルクを全て取り切ることは出来ずに。
「テロといったか、二人組の男女が街中で暴れておったもの、
もう一つは昨日も出来損ないが二匹暴れておったの。」
一つはテロリストの事件、もう一つはボロッブも参加していた、昨晩のバケモノが暴れていた事件だった。
その現場にこの猫はいたようだ。
口を開けて言葉を話し、意思疎通を図りながらもミルクを飲む。
余程腹が減っていたのか、魔力の補給が必要だったのか、ミルクを舐める速度は早く
「」
- 863 :キルリス:2012/03/04(日) 01:25:00 ID:do5XJmGE0
- >>862
//一番下の「」はスルーでお願いします
- 864 :欠け耳のボロッブ:2012/03/04(日) 01:35:12 ID:SSMHlh/20
- >>862
「あぁー、昨日のアレかい!
ありゃあー大変だった、うむ。大変だ。」
どうやら昨日の出来ぞこない二匹というのは思い当たるらしく、
ボロッブは一人ああ、あれかあなどとしきりに頷いている。
「んまあー、使い魔はそういうのが仕事さなあ。
主の代わりとなり、危険な場所へ斥候替りにいかされるのはよくあることさね。
だからこういう商品もあるんだがのう。」
っと言って取り出したのは、いぜんアイリスにも進めた事がある
瓶に詰められた『インスタント使い魔』。
- 865 :キルリス:2012/03/04(日) 01:47:36 ID:do5XJmGE0
- >>864
「して、その出来損ないはどうなったのかの。
この現状を垣間見る限り、あるべきところにもどった、と判断する……ニャ」
腹が減りすぎて、使い魔の生存と、語尾にニャが付く性質を比べれば、
主が空腹時に例外処置をしたのかもしれない。
「主が以前話していたニャ。
使い捨てはいらニャい、と。どのような考えの基とは知らぬのニャ」
アイリスは継続して同じ使い魔を使用したいらしい。
都度都度作るのは面倒ではないだろうか。
- 866 :欠け耳のボロッブ:2012/03/04(日) 01:56:30 ID:SSMHlh/20
- >>865
「あァ、昨日あーしが見たンは、
あれさね、魔法生物のキマイラみたいなやつさね。
とはいっても、ちょいとやりあってあとは逃げっちまったが……。」
魔術師の中には、自分の力試しや
新術の開発のために、戦闘にあえて参戦する物も少なくない。
ただ、ボロッブはあまり好戦的ではないらしく
逃げられるとみるとすぐに逃げてしまうのだ。
「あんりゃ、そいつは残念だなあ。
便利なのに、こいつ。」
ちなみに、この前アイリスに手紙を届けた蝙蝠もインスタント使い魔なのだ。
- 867 :キルリス:2012/03/04(日) 02:01:24 ID:do5XJmGE0
- >>866
「うむ、『いんすたんと使い魔』とやらは主の耳に入れておくニャ
ミルクと魚、世話になったニャ。我はそろそろ行くニャ」
黒猫はベンチから飛び降りて、ボロッブの方に一度振り向くと、にゃ、と鳴いた。
その姿は街灯の光が届かぬ場所へ。
僅かながら魔力の補給や空腹回避が出来たのか、尻尾は機嫌良さそうに左右に揺れていて。
- 868 :欠け耳のボロッブ:2012/03/04(日) 02:05:10 ID:SSMHlh/20
- >>867
「おうおう、宣伝よろしくなー。
ボロッブ商会の宣伝もよろしゅうー。」
去っていくキルリスを見送ったボロッブは
残ったホットドッグをコーヒーで流し込んで。
「よっと!」
子供のように、ベンチから降りると腰をぽきぽきと鳴らしてそのまま家路に着いた。
- 869 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/03/05(月) 22:42:25 ID:WVrfsEdY0
- 「…あの事件の記事は…」
【昼下がり頃のAGカフェ。そこで一人の学生らしき少女が新聞に目を凝らしていた】
「…代えの鍵を貰うまでは結構暇ですし…
それに、あの時の怪物騒ぎ…何が動いてるのか書かれていないか…」
【どうやら暇なようであるが、情報収集をしているようだ】
- 870 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/03/06(火) 21:35:38 ID:WVrfsEdY0
- 【商店街から騒がしい声が聞こえてくる】
「ふう、万引き犯…ゴヨウです!!」
【万引き犯らしき男を腕を背中に固めて地面に倒れさせている少女がいる】
「みなさーん。警察を呼んでおいて下さい!」
【あたりに大声で呼びかけている…固めた万引き犯の手にはバッグがあるようだ】
- 871 :レラ=バニッシュ:2012/03/06(火) 21:50:13 ID:oB5LASG.0
- >>870
「……なんだ、この騒ぎは」
居候先への帰宅途中、喧噪を耳にして、少し立ち寄ってみる。
騒ぎの中央では万引き犯らしい人間を取り押さえた少女の姿が。
- 872 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/03/06(火) 21:54:02 ID:WVrfsEdY0
- >>871
「とりあえず、抵抗はしないほうがいいですよ。
関節はずしとか、まだうまくできませんから」
【ちょっと怖いことを万引き犯にささやいて、抵抗を阻止している…】
【しばらくして遠くからパトカーの音がしてきた】
「お、どうやらそろそろ来たみたいですね
ここからは任せますか…」
【そう行って万引き犯の拘束を若干解く…】
【よく見ると万引き犯は自分の懐に手を伸ばそうとしている…何か隠し持っているのかもしれない】
- 873 :レラ=バニッシュ:2012/03/06(火) 22:06:52 ID:oB5LASG.0
- >>872
「フン……」
万引き犯の動きには気が付いた。
だが、それのみで動きを示すことは無い。
民衆は常に理解しやすいヒーローを求めている。
目の前の、勇猛果敢に突き進んだ少女もそうだ。
効果的にヒーローを演じてやるには、少し待つべきだ。
明確に攻撃の意思を示したときに、この銃で手を打ち抜いてやればいい。
少女に危険が迫った時、助けてやればいい。邪魔にならないように。
- 874 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/03/06(火) 22:12:29 ID:WVrfsEdY0
- >>873
【しばらくして、パトカーが到着して…】
「あ、待ってましたよー!」
【手を振りながら呼びかける…其のすきを突いて】
【万引き犯はナイフを取り出してその切っ先を鶫に向けようとしていた】
「早速捕まえて下さいー!」
【一見すると気づいてないように見える…このまま行くと万引き犯は彼女に襲いかかるかもしれない】
- 875 :レラ=バニッシュ:2012/03/06(火) 22:23:32 ID:oB5LASG.0
- >>874
「油断が……」
腰のポシェットから取り出した小型の機械。
それを小さく振り上げると光を発し、銃となって手元に落ちようとしている。
それが手に落ちる間、男との距離を目視で図る。約10m。
次に、弾が通るコースを作り上げる。力の加減と狙う一を計算に入れて、答えをはじき出す。
「過ぎるぞ!」
それを構え、引き金を引けば、計算した通りのコースで弾丸が男の手元を弾く。
- 876 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/03/06(火) 22:32:33 ID:WVrfsEdY0
- >>875
【今まさに襲いかかろうとしたその瞬間】
ガキィン!!
【万引き犯の持っていたナイフをレラの放った弾丸が弾き飛ばした】
「えっ?いったい何が…?」
【その音を聞いて鶫は改めて犯人の方を振り向く】
【そこには持っていた手を痛そうに押さえる万引き犯が】
「む…まさか武器を隠し持っていたなんて…」
【近くに転がり落ちたナイフを確認して頷いた】
「万引き犯と思って油断していました…これはいけませんね…」
【少し下を向いて悩む顔になった】
「しかし、今弾いたのはだれが…?」
【あたりを見回して言う】
- 877 :レラ=バニッシュ:2012/03/06(火) 22:38:48 ID:oB5LASG.0
- >>876
「念のため聞こう、怪我は無いか」
野次馬の中をかき分けて、鶫の元へ寄っていく。
現れたのは身長が120センチ程度しかない幼女。幼女。
濃い蒼色の髪の下にある顔は相当青白く、不健康そうだ。
少女に確認を取り終えると、犯人にも同じことを聞くだろう。
しかし、「速く引き渡してしまえ」と少女に迫る。
- 878 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/03/06(火) 22:44:06 ID:WVrfsEdY0
- >>877
「あ、ひょっとして貴方が助けてくれたんですか?
…その、ありがとうございます」
【少女の姿を見て、見下ろす形になりながらも頭を下げてお礼をした】
「ええ、怪我はありません…
貴方のおかげ…ですね」
【改めて頭を下げる】
【犯人の方は怪我はないことを述べると警察に連行されていったようだ。】
- 879 :レラ=バニッシュ:2012/03/06(火) 22:57:12 ID:oB5LASG.0
- >>878
「……その体勢はやめろ」
そう言うと小さくジャンプする。
それと同時にジェットブーツを起動させ、空中に浮かびあがった。
「フン……。
この僕に感謝しておくことだな」
犯人が連行される様を見届けると、鶫に視線を戻して。
- 880 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/03/06(火) 23:00:30 ID:WVrfsEdY0
- >>879
「ええ…すいません。
浮けるんですね〜」
【感心しているようだ】
「なんというか…私は随分と不注意でしたね。
油断なんて最後までするべきではありませんでした…」
【軽く落ち込んでるようだ】
- 881 :レラ=バニッシュ:2012/03/06(火) 23:14:00 ID:oB5LASG.0
- >>880
「フッ、僕は天才だからな。
この程度の事は造作も無い」
なんだか自慢げ、凄く自慢げ。
「正義感が強ければ強い程、猛進する物だ。
そういう時こそ、落ち着いて見渡せれば、少しは使い物になるのだがな……」
溜息を付きながら、そう呟くように。
- 882 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/03/06(火) 23:17:45 ID:WVrfsEdY0
- >>881
「頭がいいですか…
私も見習いたいです」
【お伊達でもなく、本当に言っているようだ】
「落ち着きを持たなければですか…
確かにちょっと焦り気味かもしれませんね。
いろいろありすぎたせいかもしれません…」
- 883 :レラ=バニッシュ:2012/03/06(火) 23:21:59 ID:oB5LASG.0
- >>882
「無理だ」
キッパリと一言。
「僕の様な天災と言うのは生まれ持った才能の様な物でな。
貴様の様なただの凡人とは訳が違う。」
ある意味、犯人より質が悪いと言える……。
「同じ過ちを、二度は起こすなよ?
学習能力の無い人間は嫌いだからな?」
- 884 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/03/06(火) 23:26:11 ID:WVrfsEdY0
- >>883
「凡人ですか…
たしかにそういうのもを見るとそういうふうに見えてきますねぇ」
【じーっとブーツを見つめている】
「ええ、わかってます。
次からはこんな油断はしないように気をつけますよ!」
【どんと、大きな胸をはって答えた】
- 885 :レラ=バニッシュ:2012/03/06(火) 23:48:11 ID:oB5LASG.0
- >>884
「貴様と僕の間には、決定的な差があることを、覚えておけ……」
純粋な視線を向けられると、何処か具合の悪そうに。
「チッ……貴様の相手は調子が狂う。
今日を教訓に、次からは気を付ける事だな」
そう言うと、ジェットブーツの出力を上げ、上空に飛び去って行った。
- 886 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/03/06(火) 23:51:34 ID:WVrfsEdY0
- >>885
「ええ、そうですね…わかりました…
ん?どうしました?」
【何処かバツが悪そうな顔をするのを見て、不思議そうに見つめる】
「えっと…はい、分かりました〜!
またお会いしましょう!」
【そう行って微笑む】
「うわー…飛んでいけるなんてすごいです!
私もアレくらい能力を高められたらいいんですけど…」
【そう行って見送っていった】
- 887 :ヴァージニア:2012/03/08(木) 23:03:11 ID:ssCu2sa.0
- ここは暗黒街。その地下闘技場。
血の匂いに誘われて、踏み入れたこの地は。
違法賭博だとか、小遣い稼ぎとか、快楽殺人とか。
専らそんなのばかり溢れている場所。常人ならば、訪れるべきではない。
「人がいっぱい……」
しかし、彼女はそんな様子を特に不思議に思うこともない。
今の彼女は倫理観が著しく欠如しているのだ。
初めて訪れたこともあり、完全なお上りさんだが。
- 888 :名も無き異能都市住民:2012/03/08(木) 23:11:39 ID:SSMHlh/20
- >>887
ヴァージニアが降り立った場所は『比較的』まともな連中が集まる『中層部』と呼ばれる区域。
狭い通路の壁面に違法な商品を売る店が軒を連ねており、
商談に夢中になっている商人のポケットから財布を盗み取る獣人の少年や物乞いなど
地上の路地裏とあまり変わらない光景が、目の前で展開されている。
この場所の噂を聞く物なら、巨大な闘技場の存在を知っているはずだ。
そうでなくとも、所々に掲げられた看板によってその存在を知るだろう。
- 889 :ヴァージニア:2012/03/08(木) 23:24:56 ID:ssCu2sa.0
- >>888
ヴァージニアは迷ってしまったので、目印となりそうな建物を目指そうと思った。
何やら血の匂いもするし、誘われるがまま移動する。
- 890 :名も無き異能都市住民:2012/03/08(木) 23:38:18 ID:SSMHlh/20
- >>889
血の臭気は、どうにも人々が向かう先と一致するようだ。
それを辿るに連れて人々の密度は増し、食べ物の臭いや
カーニバルを思わせる賑やかな音楽、人々の興奮した様子の話し声などが
絶えることなく、耳に滑り込んでくる。
――『地獄の窯』。
ヴァージニアがたどり着いた施設は、
この暗黒街一番の目玉、人の生き死にを娯楽として提供する
非合法な闘技場であった。
- 891 :ヴァージニア:2012/03/08(木) 23:44:18 ID:ssCu2sa.0
- >>890
「……」
人と人との命のやりとり。
それを遠目に見て、今のヴァージニアはこう考える。
「『合法的』に、殺し合いをする場所なのかな……」
この闘技場は、明らかに人を殺していることが分かる。
しかし、そんなことは許されないはずだ。現にヴァージニアも止められている。
けれども、観客たちは歓喜し、その死合いを見入っている。
ここから分かることは、この殺し合いは『合法的』に行われているということ。
最低限の倫理すら携えていない吸血鬼本能の具現人格は、そう解釈してしまったようだ。
- 892 :名も無き異能都市住民:2012/03/08(木) 23:55:45 ID:SSMHlh/20
- >>891
たしか、闘技場に入る際には
通常の観客の入り口以外に、もう一つ。
武器を背負った戦士や風体妖しげな魔術師など
いかにもカタギではない人物ばかりが足を踏み入れる入り口が無かったか。
こうした場所では参加者の入れ替わりが激しく、
常に人員の補充を行なっているはず。そこが出場者用の入り口だったのかもしれない。
- 893 :ヴァージニア:2012/03/09(金) 00:01:09 ID:ssCu2sa.0
- >>892
出場者用の入り口に、偶然にも入ってしまったヴァージニア。
初めて訪れたので、場所が分からないのも仕方がない。
それに、文字が読めないというのもある。新しい人格には教養が全くないのだ。
「ここでは、人を殺してもいいの?」
さらにあろうことか、受付でこんなことを言うものだから。
挑戦者であると思われても仕方ない。
- 894 :アイリス:2012/03/09(金) 00:06:43 ID:do5XJmGE0
- 【地下闘技場 観客席】
バーカウンターを備えた富裕層向けの上層席に腰掛けて、カクテルをサイドテーブルに置き、
これから始まるであろう戦いを眺めていた。この席では富裕層のみが立ち入れる場所。
この人物の服装は富裕層の子息であろう、最高級品をふんだんに使用されており。
また、この場所だからか、未成年で有りながらも飲酒は黙認されていた。
これから始まるであろう、戦い。
その光景を魔眼を通し観察しようと、魔眼を開く。
コロシアムに上がるであろう者は気付くはずだ。
―“ ”の香り漂う視線が、コロシアムを行き来していることに
ただ、それが“ゲーム”に影響されるかまでは、分からない。
- 895 :名も無き異能都市住民:2012/03/09(金) 00:16:19 ID:SSMHlh/20
- >>893
受付の男は退屈そうに、安物のボトル片手にテレビでラグビーを見ていたが
ヴァージニアの声を聞くと向こうの扉に入れと言う風に指で指示し、そのまま再び
テレビへと顔を向けた。
本来は参加申請書などが必要なのだが、
今日は一般の参加者の集まりが悪かったためにそういった
規則が無視されていたのだ。
- 896 :ヴァージニア:2012/03/09(金) 00:23:18 ID:ssCu2sa.0
- >>895
「あっちに行けば観戦できるんだね。ありがとう」
完全に思い違いのまま、挑戦者用の入口の中へと入る。
入ってしまえばもう逃げられない。
殺されても文句は言えない。例えそれが間違いであっても。
>>894
ちょっとした思い違いから、コロシアムに入ってしまった。
「あ、間違えました」
などと言える雰囲気では無い。
吸血鬼となっても、戦力が著しく不足している彼女は生き残れるのか。
様々な視線が自分に集まってくるのが分かる。
その中には、変わった雰囲気の目線もあるが、どこからのものか全く見当もつかない。
それよりも、まずは命を護らなければ。
- 897 :名も無き異能都市住民:2012/03/09(金) 00:38:30 ID:SSMHlh/20
- >>896
挑戦者用の入り口に入ると、薄暗い控え室に出る。
ヴァージニアが入ると、ちょうど試合ができる人数に達したようで
筋肉も露な大男や、鎧に身を包んだ男などが参加者を促して奥へと進ませる。
今回の試合形式は、古代の海戦を模したもののようで
闘技場には水が張られており、参加者は簡素な小船に乗せられる。
そして、比較的大きな船に乗り装備も整った闘技場側の戦士と戦わされるのだ。
流水といえば、吸血鬼には天敵。
慎重な立ち回りが要求される。
- 898 :ヴァージニア:2012/03/09(金) 00:47:09 ID:ssCu2sa.0
- >>897
小舟に乗った彼女は、水面を眺め見る。
触れただけで体中に痺れを催す。直に落下してしまえば、死は避けられない。
それは、船を破壊されれば敗北が確定するということ。
彼女が吸血鬼だと分かれば、それを行ってくることは定石。
相手も自らの命をチップとして賭けているのだ。手加減などしてこない。
ならば、取るべき策は。
全力で目立たないこと。
吸血鬼の本能が前面に出たヴァージニアは闇属性に関する術の資質を得た。
自らを目立たなくするような系統の魔法があり、それを行使することで。
同士打ちで頭数が減るのを待つ。
- 899 :アイリス:2012/03/09(金) 00:57:45 ID:do5XJmGE0
- 水上戦。
くすり。と笑みを浮かべた。
見れば、最後にエントリーした少女は同族ではないか。
以前見た、体を引き摺る少女だ。
彼らの戦いは“潰せる者から潰す”
詰まりは弱いものを篩いにかけ、蹴落としていく。
何かしらのキッカケがあれば、彼らはそうするだろう。
そして、彼らは経験で知っているはずだ。定石を覆すのは難しいことに。
周囲の客たちが一斉に賭け始め、周囲が静かになったころ、アイリスは賭けに出た。
「あの少女に500万。いいのかな、こんな子供に賭金を負けるだなんて。」
子供の単語を強調したアイリスの声を聞いたものは賭けの金額を口々に増やした。
万単位で膨れていく賭金。彼らは口々に“負けるはずがない”などを口走り。
(ま、ここで死ぬようなら…)
その先は考える必要は無い。
散る命だ。この先会うことも無いだろう。
- 900 :名も無き異能都市住民:2012/03/09(金) 00:57:56 ID:SSMHlh/20
- >>898
音割れの酷いスピーカーから会場に響き渡る
試合前の実況の煽りが終わると、すぐさま戦いの火蓋がきって落とされた。
開始と同時に、闘技場側の大船が突撃。
回避できず、船首に備え付けられた衝角と闘技場の壁とに挟み込まれた
参加者側の船一隻が早くも撃沈されてしまった。
――ヒュヒュンッ
ヴァージニアの乗る船にも、火矢が射掛けられる。
小船に乗っているのは、何もヴァージニアだけではないのだ。
必然的に、攻撃に晒されてしまう。
- 901 :ヴァージニア:2012/03/09(金) 01:13:00 ID:ssCu2sa.0
- >>900
火矢が飛来する。これが船に燃え移れば終わりだ。
手にしたナイフで、弾く。射線を小舟から逸らしていく。
陰術による存在率の低下は無意味だった。
このままナイフによる弾きを繰り返しても、押し負ける。
彼女には戦闘センスがないが、やるべきことは決まった。
「あの大船を、叩く……」
攻撃力の高い主催者側の船を沈めるか、奪うしかない。
射られた矢を手で掴む。
吸血鬼の動体視力と運動能力が無ければ不可能だっただろう。
燃えている矢をそのまま投げ返す。大船が木製ならば燃やせるはずだ。
- 902 :名も無き異能都市住民:2012/03/09(金) 01:23:49 ID:SSMHlh/20
- >>901
火矢はとんぼ返りするように、大船へと吸い込まれていく。
――トンッ
快い音と共に大船に突き刺さる火矢。
しかし、火矢の一本程度では大船を燃やす事は不可能で
変わらず、攻撃を加えてくる!
他の参加者の船弓矢や魔術などで反撃を行なっているが、
なかには大船に近づいて取り付こうとしているものも見受けられる。
- 903 :ヴァージニア:2012/03/09(金) 01:28:25 ID:ssCu2sa.0
- >>902
攻撃に夢中で、防御を疎かにした結果。
自分の船が燃え始めていることに気がついた。
もちろん、水をかければいいが。彼女は水に触れることはできない。
「乗り移るしかない……」
しかし、その二つの船の距離はけっこう開いており、迎撃の射撃もある。
跳躍で行くことは困難を極めている。
そこで、彼女は変化を用いることにした。
体躯を組み替え、蝙蝠形態となって、空中を移動する。
- 904 :名も無き異能都市住民:2012/03/09(金) 01:42:17 ID:SSMHlh/20
- >>903
敵は、どうにか取り付きよじ登ろうとしている
戦士を槍で突き落とし、さらに乗っていた船に対して攻撃を集中させ
それの乗員を全滅させた。
ただしその対応に手間取り、他の船への対応がおろそかになっている。
乗り込むなら今しかないだろう。
- 905 :ヴァージニア:2012/03/09(金) 01:50:41 ID:ssCu2sa.0
- >>904
この状態ならば、闘技場から逃げ出す選択もできただろうが。
全くもって考えが至らなかった為、戦線を舞う。
大船の真上に移動すると変化を解き、落下する。
落下と同時に、位置エネルギーを利用した攻撃を乗組員に対して行う。
- 906 :名も無き異能都市住民:2012/03/09(金) 01:56:55 ID:SSMHlh/20
- >>905
一人の兵士がヴァージニアの攻撃に対応できず、
兜ごと粉砕されてひしゃげ、そのまま事切れた。
しかし、ヴァージニアはただ一人的中に乗り込んだ形。
古代風の鎧兜に身を包み、長盾と槍を携えた兵士数人に囲まれてしまう!
ここで奮戦し、他の味方が取り付くまで耐える事ができれば……。
- 907 :ヴァージニア:2012/03/09(金) 02:01:34 ID:ssCu2sa.0
- >>906
火を放たれた小舟から脱出することには成功したが、
この状況もまた、窮地であることには変わらない。
まずはこの場で戦うことで騒ぎを起こし、敵を引きつけることができれば。
「厳しいかな……」
自然治癒能力が高いが、連戦を繰り返せば、自己修復が追いつかない。
ヴァージニアは電撃戦を仕掛けることにした。
ナイフを手に持ち、持ち前の脚力を使って敵に接近し、喉を掻き切る。
これで一人一人倒していく寸法だろう。
鎧かぶとが喉を保護していたら元も子もないが。
- 908 :名も無き異能都市住民:2012/03/09(金) 02:11:56 ID:SSMHlh/20
- >>907
しかし、兵士たちは船上から参加者側の船を攻撃できるようにか、
リーチの長い槍で武装している上、防御用の長盾を装備している。
そのため、接近するまでに敵に先手を許してしまうし、
懐に入り込んでも、盾による防御で攻撃を仕掛けづらい。
敵の包囲網が狭まり、槍のリーチにある者はそのまま槍で。
ヴァージニアに近いものは、腰の剣を抜き放ち攻撃を仕掛けてくる。
- 909 :ヴァージニア:2012/03/09(金) 02:16:33 ID:ssCu2sa.0
- >>908
それでも取るべき戦術を変えない。
戦闘における柔軟性を持ち合わせていないのだ。
つまり、完全なノーガード戦法であり。
まさに肉を切らせて骨を断つというものであった。
体中をずたずたに引き裂かれながらも、盾を怪力で殴って吹き飛ばし、
防御が手薄になった者の急所を狙っていく。
剣すらも、もはや目に入っていないのか
そのまま受けつつ、カウンターアタックを仕掛ける。
- 910 :名も無き異能都市住民:2012/03/09(金) 02:23:14 ID:SSMHlh/20
- >>909
弓で他の参加者の乗る小船への攻撃を行なっていた兵士たちも
ヴァージニアに対応するべく、剣を抜き放って戦列に加わる。
そのため、小船への攻撃が弱まり取り付く隙が増え。
そうしているうちに一つの船が大船に取り付く事に成功し、
その生き残りの戦士が3人が乗船に成功した!
船上の混乱が広がっていく!
- 911 :ヴァージニア:2012/03/09(金) 02:31:20 ID:ssCu2sa.0
- >>910
それからのヴァージニアは気が狂ったかのようだった。
片っぱしから兵士たちの命を奪うと、戦いの最中であるにも関わらず吸血を行い始めたのだ。
傷の修復に当てるためのエネルギーを補充するためなのだが。
更に、ナイフで行っていた急所攻撃も、自らの牙で代替し
まるで野生の肉食動物が、捕食対象を即死させるために行うような光景となっていた。
生存するため、そのたった一つの概念の為に、彼女の思考はシャットアウト。
本能のまま生きる状態となり、とても高貴な種になったとは思えない。
グールのように堕ちた状態へとなってしまった。
- 912 :名も無き異能都市住民:2012/03/09(金) 02:45:38 ID:SSMHlh/20
- >>911
混乱に乗じて次々と小船が取り付き、
次第に戦いの趨勢が決まっていく。
剣戟の音と怒号、悲鳴。断末魔の叫び。
もはや、船上は参加者側によって制圧されヴァージニアを止めるものも居ない。
――ドスッ!
戦士が敵から奪った槍で最後の一人にトドメを刺す。
戦いは、参加者側の勝利に終わり観客が歓声を上げた。
例のスピーカーから勝者を讃える声と、賭けの結果を知らせる放送が聞こえる……。
- 913 :ヴァージニア:2012/03/09(金) 02:56:18 ID:ssCu2sa.0
- >>912
気が付けば、選手たちの控室で横たわっていた。
訊くところによると、選手たちの残骸を持ち出し、貪っていたらしい。
ファイトマネーにより懐は潤い、命を喰らったことで更なる強さを得たが。
何か大きなものを失ってしまったかもしれない。
「……ごめんなさい、ごめんなさい」
もちろん命を奪った選手に対しての謝罪ではない。
吸血鬼だから、食料に対して罪悪感を感じてはいない。
彼女は主人に対して謝っていた。
闘技場への入場は事故だったとはいえ、『人を殺すな』という命令を、保身の為に無視したのだ。
主人の期待に沿うような行動ではなかったかもしれない。
しかし、側に居てほしいという命令もあった。競合する概念の内、ヴァージニアはこちらを選んだ。
何が何でも生存することが、今のヴァージニアに課せられた使命。
「……もっと強くならないと」
そう彼女は決意を固め、闘技場を後にする。
- 914 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/03/10(土) 23:08:24 ID:HnkBBDEo0
- 「さーて、腹が減ったな」
喫茶店にて、男は冷蔵庫の中から幾つかの容器を取り出す。
「ん、固まっているか」
どうやらゼリーを作っていたようだ。
容器の中のゼリーを取り出し、サイコロ程度の大きさに切り分ける。
さまざまな色、さまざまな味のゼリー。
それをグラスの中にいれ、そこにサイダーを注いでいった。
「……んー」
グラスにサイダーを注ぎつつも、表情は上の空。
僅かに体が発光し、右目から紅い邪気が漏れる。
「何人か、みない奴が増えたな。感じたことも無い性質の力の流れを感じるわ。
ま、俺の探知能力じゃ、詳しいことはぜんぜん分からないんだけどなー。
あー、魔眼とか千里眼とか、そういうの欲しいもんだわ。女湯のぞき放題」
そんなことを考えつつ、グラスとスプーンを持って暖炉の前のソファーに座った。
- 915 :ガルテラ:2012/03/10(土) 23:19:39 ID:cA7m7mYw0
- >>914
「そういった場所にお連れすることは出来ますがね……。
お勧めは出来ませんよ」
突然背後から声を掛けられる。
そこにはカンテラを持った、黒いコートの男が立っていた。
同時に喫茶店の扉が閉まる男がする。
今しがた入ってきたのだろう。
「始めまして、恐らく私がその"みない奴"の一人であると思われますね。
店長さんですか?」
- 916 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/03/10(土) 23:23:40 ID:WVrfsEdY0
- >>914
【カランカランと、入り口を開ける音が聞こえる】
「失礼しますー。お店やってますー?」
【ニット帽とマフラーを着けた制服の少女が入ってきた】
「今日は店員さんがいるんでしょうかねぇ」
【ひとりごとを言いながら歩いて行く】
- 917 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/03/10(土) 23:24:18 ID:HnkBBDEo0
- >>915
「……」
苦い顔をしつつ、クロスは振り向いた。
「出たよ、このパターンだよ。
『いつの間にか後ろにいる』っていう奴だよもう……ざっけんなぁあああ!!」
怒りに任せて木のスプーンを床にたたきつける。
「この都市には気配が無い奴が多すぎるんだよコンチクショオオオオ!!!
ふっざけんなビックリすんだよ何度やられても慣れないんだよクソがあああああ!!」
自分勝手な理由で怒っているが、あまり気にしなくていいだろう。
「そうだよ、俺がこの喫茶店の店長だ。名前はクロス。銃寺森クロスという。
ま、気が向いたら覚えておいてくれ。お前さんは?」
木のスプーンを拾い、布巾で拭いつつガルテラへと質問を投げる。
- 918 :ガルテラ:2012/03/10(土) 23:32:26 ID:cA7m7mYw0
- >>917
「……お気持ちは察しますが、そういう方ばかりなので、
こちらも舐められてはいけないと自然とそうなってしまうのですよ」
別の事情もあるのだが、それは別の話である。
「クロスさんですか。
先日、ディスと言う女の子の紹介でこの店を利用させていただいたのですが、
その時は喫茶店として利用は行う暇が無かったので、今日は改めてまいりました」
そう言って、丁寧にお辞儀をする。
「ええっと……私はガルテラと申します。
よろしくお願いします」
- 919 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/03/10(土) 23:39:43 ID:HnkBBDEo0
- >>916
「安心しろ、今日はいる日だ」
ソファーの上でグラスにスプーンを突っ込みつつ、クロスが言う。
「いらっしゃい、注文は何にする?」
>>918
「ああ、ディスの紹介ね、はいはい」
グラスの中のゼリーがなかなか取り出せないのか、スプーンを弄りつつも返事を返す。
「ディスからだいたい聞いただろうけど、この店は結構いい加減な店でな。
店員がいつも、いるかいないか分からない、喫茶店のくせに勝手に寝泊りする奴もいる。
爆発や乱闘騒ぎも日常茶飯事だ。ま、こんなダラけたクソみたいな店だけど、
雰囲気が合うんなら、よろしく頼むぜガルテラとやら」
やっとゼリーが取り出せたのか、それを口に放り込みつつクロスはニシシと笑った。
「注文があればいつでも声をかけてくれ。
無いんならどうぞ、その辺りでダラダラしてるといいぜー。
今は暖炉の近くが暖かいぞ。あ、水と麦茶は飲み放題だから」
- 920 :ガルテラ:2012/03/10(土) 23:48:48 ID:cA7m7mYw0
- >>919
「勝手に寝泊り……いえっ」
心当たりがあるのか、急にどもる。
寝泊りしたのではなく、させたのだが。
「はい、ワカリマシタ、私の知り合いは気に入りそうですね。
……私は……これから見極めます」
そう言って笑う。
「ああ、ええっと……。
サンドイッチとかありますか?
できればカロリー高めの」
夕食を摂るつもりで来たのか、重い物を要求する。
>>916
「あなたは確か……ゾンビ騒ぎのときに」
カンテラを持った男が、店内に居た。
みていたかどうかは解らないが、ゾンビ騒ぎの最中、
目玉を咥えた骸骨という悪魔に化身した男だ。
- 921 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/03/10(土) 23:50:49 ID:WVrfsEdY0
- >>919
「あー、店長さんですね!
よかったです!店長の作るレシピが美味しいとか評判ですから!」
【とても嬉しそうにいう】
「えーっと…喫茶店といえばナポリタンですね。
ナポリタンをお願いします」
【人差し指を立てて注文した】
>>920
「ん?私ですか?」
【ふと、地震に向けられた声を聞いて振り返る】
「もしかして貴方もあの場所で戦っていらしたんですか?
なるほど…見たことある…ような」
【記憶が曖昧なのか、少し考える顔をしている】
- 922 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/03/10(土) 23:59:15 ID:HnkBBDEo0
- >>920
「ああ? カロリー?」
グラスを空にしてノッソリと立ち上がり、クロスはカウンターの中へと入る。
「うーん、甘いものとしょっぱいもの、どれがいい?
クリームサンドもローストチキンサンドも、いろいろあるぞ。
ああ、肉系でいいならドラゴンサンドってのもあるが。
今朝いいのが入ったんでな」
>>921
「クッ、喫茶店をガチガチの偏見で見やがって。
でも作っちゃう悔しい! ビクンビクン」
自分で「ビクンビクン」と効果音を言いつつ、鍋に水を入れて火にかける。
その間にフライパンも取り出し、タマネギを炒め始めた。
- 923 :ガルテラ:2012/03/11(日) 00:05:33 ID:cA7m7mYw0
- >>921
「ええ、まあ。大変でした……ね」
男はあの異形達を思い返しているのか、
少し顔が曇った。
「お怪我など大丈夫のようですね。
結構重症にも見えましたから、少し気がかりでした」
とは言え、それで何か手助けしたわけでもないのだが。
>>922
「ドラゴン……?とは……。
……いや、自分で確認します。
それをください」
探究心があるのか、妙な名前のサンドイッチを要求した。
「少しお腹が空き過ぎているもので、大抵のものなら食べますよ」
(……ワニは鶏肉に近いと言いますが、ドラゴン?
いや、もしかしたらただの喩えで案外普通のものかも……)
ぶつぶつと、その正体を想像している。
- 924 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/03/11(日) 00:09:04 ID:WVrfsEdY0
- >>922
「いえー、偏見では無いですよ〜。
コレでレベルが決まる!というくらい重要なものとは捉えておりますが」
【軽く笑いながら返す】
「…んー」
【店長の眼帯?をふと見て、軽く首を傾げる】
>>923
「ええ、そりゃあもう…
死にかけましたよ」
【軽くため息をついていう】
「まあ…あの時は立てないぐらいに体中を殴られましたけど…
この街の医療はかなりのものですからね。平気ですよ!」
【ぐっと拳を握って元気さをアピールしている】
- 925 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/03/11(日) 00:15:27 ID:HnkBBDEo0
- >>923
「オッケー。やっぱ焼きたてがいいだろうからな」
そう言って厨房に入る。
しばらくしてから持ってきたのは、片足。
まるで鳥類のような形の、しかし羽の代わりにウロコがびっしりとついた片足。
大きさは大人の身長とほぼ同じ。それをクロスは抱えてもってきた。
「あー、大きすぎるな」
クロスの体が僅かに発光し、瞬時に空間上に刀剣が構築される。
おそらくクロスの能力によるものだろう。
それをクロスは手に持ち、片足を一振りで切り分けた。
「ん、このくらいか」
次に包丁を、これもまた刀剣と同じように新たに構築し、
肉の表面についたウロコを剥がしてゆく。
ウロコは別の素材に使えるらしく、ゴミ箱ではなく別の容器に入れていた。
ウロコを取った肉に塩コショウなどの下味をつけ、それをオーブンにブチ込んだ。
「いやー、竜種の肉なんて市場じゃなかなか出回らないからなー。
一度食ってみたかったんだわ俺ー」
そんなことを呟きつつ、クロスはドラゴン肉を焼いている間にパンの準備をする。
「そういえばガルテラって竜の肉とかそういう珍しい食べ物を食べたことある?
俺は学生時代にリヴァイアサンの肉を食べて死にそうになったことがあるわ」
>>924
タマネギ、ピーマン、ベーコンを炒めたところでホールトマトを投入。
その間にもお湯は沸騰していたようで、お湯の中に麺を放り込んだ。
「え、ナポリタンってそんなに重要なメニューだったの?
やべぇ、今まで適当に作ってたわー。今までの客にどの程度のレベルの店だと思われてたんだろ」
うへー、と声を漏らしつつも防人の目線に気づく。
「どうした?」
- 926 :ガルテラ:2012/03/11(日) 00:26:09 ID:cA7m7mYw0
- >>924
「無茶はなさらないように……
と、あの場に居た私が言えることでも無いですね」
そう言ってハハハ、と笑う。
「あれから、あの事件の関係には、私は遭遇していませんが、
あなたはどうですか?」
>>925
「うわあ……」
男は出てきたその食材に圧倒される。
しかし、手際よくクロスの手で調理されていくのを見るに連れて、
それはゲテモノではなく、普通に、いや、かなり美味そうな料理に見えてくる。
「……ええ、まあ、それなりに珍しいものは手を出してきました。
フェニックスの爪だとか、醗酵ゾンビだとか……。
ですが、竜の肉というのも意外に盲点でしたね」
調理の光景を見て、つばを飲み込みながら答えた。
「リヴァイアサンの肉というのは不味いんですか?
それとも毒か何か」
- 927 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/03/11(日) 00:30:07 ID:WVrfsEdY0
- >>925
「いえ、きになさらなくてもいいんですよ!
意識せずに造ったものこそ一番とも言います」
【どこかのんきなことを言っている】
「あ、いえ…おしゃれなのかあるいは…
と気になってしまいまして」
【すいません、と慌てて頭を下げた】
>>926
「まあなるべくそうしたいんですけどね…
とは言え放っておけない性分ですから」
【困った顔で言う】
「そうですね…そういえば何度も事件が起こっていますね…
以前、それらしき相手と戦闘したことがありますね」
【そう言って頷いた】
「なんとなくわかります…アレは許しがたい人間の仕業なんだと思います」
- 928 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/03/11(日) 00:45:01 ID:HnkBBDEo0
- >>926
「醗酵ゾンビぃ? なにそれ食べてもいいものなの? っていうか食べ物なの?
ゾンビとかゾンビファイターみたいな『モンスターの名前』じゃなくて食べ物なの?」
ひぃいと声を漏らしつつも、焼けたドラゴン肉を薄く切り、
それをレタスと一緒に何枚も包む。肉としての量は多いが、
薄切りにしてあるので食べにくいことは無いだろう。
こうしてローストドラゴンサンドの完成である。
それを切り分けお皿に乗せて、ガルテラの前に出した。
「リヴァイアサンは本来は神話に出てくる巨大な怪物の名前だけど、
俺が食べたのは『発見されたとき、便宜上リヴァイアサンと名づけられた』ってだけの生物で、
実際にその神話に出てくるリヴァイアサンだったのかどうかは不明だけどな。
ちなみにお前の言うとおり、毒入りだ。俺は死ぬ思いをしたが……
友人に竜種の奴がいてな、そいつはなぜか普通に食えてた。
コアラがユーカリ食ってるようなモンなんだろうなー」
>>927
「おしゃれ、でもあるかな」
ヒヒヒとクロスは笑う。
その間にも麺は湯だったらしく。それをお湯から上げてソースに絡め始めた。
「昔、ちょっと眼をやられちまってな。
その後に復活したんだが、そしたら今度は眼の性能が桁違いでな。
同世界線上の別次元も重ねて見えちまうんだ。
そうなると今度は俺の脳がその別次元の情報を処理しきれなくてな。
もう脳がパンクしちまうワケよ。そこで、普段はこうやって眼帯つけてる」
ナポリタンが出来たようだ。
それを皿にクルクルと盛り付け、防人の前へと出した。
「どうぞ。できればそのナポリタンの『レベル』とやらも、教えてくれ」
- 929 :ガルテラ:2012/03/11(日) 00:56:31 ID:cA7m7mYw0
- >>927
「やはり起こっているんですね。
……まあ、私は目の前にしない限り手を出す気はありませんが」
呟きながらため息をついた。
そして、料理が出来上がる。
「暗い話で申し訳ありません。
……食事を楽しむことにしましょう」
>>928
「まあ、醗酵と銘打っていたので、食べても無害でしたが……。
事前に動いているのを見てしまったせいかもしれません、
余り味が脳に届きませんでした」
よほど見た目がアレだったのだろうか。
「竜種の友人ですか。
あ、ありがとうございま……す?」
料理が出てくると、男は首をかしげ、皿を見下ろした。
「確かこれ、ドラゴンの肉と……」
そして、クロスの顔を見る。
「……ハハハ、まあ、友情の形は様々ですが」
- 930 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/03/11(日) 01:00:39 ID:WVrfsEdY0
- >>928
「おしゃれでも…
何かあるようですね」
【フームと首を傾げる】
「へえ…ふむ…
簡単に言うと、負傷した目が治った後、別の世界が見えるようになって…
それを見えなくするために眼帯をつけていると…そういうことですか」
【若干難しかったのか、復唱するように答えた】
「あ、どうも…いただきますね」
【フォークを手にとって、綺麗に面を巻きとって口に運ぶ】
「…」
【モグモグと口を動かした後…口を開いた】
「これは、とても美味しいですよ!
なんというか素材の味というか…麺の歯ごたえも丁度よい感じで…
レベル高い!と、私は思いますよ!」
【目をキラキラさせ始めた】
>>929
「そうなんですよ…
できるかぎり自分は助けになりたいと思っています。
なんというか…ほっとけないので」
【そう言ってまた真面目な顔になる】
「いえいえ、特に気にしていませんよ
こういう時はやはり、のんびりしないといけませんね」
【そう言って軽く笑った】
- 931 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2012/03/11(日) 01:07:59 ID:HnkBBDEo0
- >>929
「意思の疎通ができれば友人。それが出来ねば敵か食い物だ」
竜肉を食いながらも、竜種の友人もいるクロス。
彼にとっては、形は重要では無いようだ。
「ああ、ちなみにこのドラゴン肉は寒冷地の鉱山で主をやってたドラゴンの肉だそうだ。
長い間、鉱石を取ろうとする人間を襲って困らせていたようだな。
肉食ではなく草食。岩に生えたコケを食べるようだ。
草食なのに人を襲うのは、やっぱり縄張り意識が強いかららしいな。
コケしか食べないから肉は柔らかく、内臓まで美味しく食べられるらしい。
いやー、いいものゲットしたわ」
クロスも躊躇することなく竜肉を食べる。
「ん、触感はやわらかいが、味は鶏肉と魚肉を混ぜたみたいだな。
こりゃ味付けを塩コショウ使ったのは正解だったわ」
>>930
「っしゃあああい!!」
両手をグッと握り締める。
「フフフ、あとはこの辺りには喫茶店が少ない。
つまりライバル店が少ないのだ。これはつまり……勝負あったな!」
どうやら「一人勝ち間違いなし」と言いたいようだが、
味以前にこの店は店員や店長の仕事に対する態度が最悪であったということを、
クロス自身はすっかり忘れていたのだが、まぁ、それは別の話。
「と、と。すまん、もうこんな時間か。俺はそろそろ寝るわー。
お代はカウンターの上に適当に置いといてくれー。
ドラゴン肉サンドは今つくったメニューだから、まだメニュー表には無いけど、
普通のサンドイッチと同じ値段でいいやー」
ふぁふー、とあくびをするとクロスはヨロヨロと歩きつつエプロンを脱ぐ。
「そんじゃま、みんなおやすみなー」
客を残して先に寝る店長。
こんな適当な喫茶店が、Apple Guillotineなのであった。
- 932 :ガルテラ:2012/03/11(日) 01:19:58 ID:cA7m7mYw0
- >>930
「助けに……ですか。
無償なのでしょうね、あなたの性格だろうと」
眉をひそませつつ、男は言った。
「ですが、漠然と助けたい、では無く
あなたが助けたい物ははっきりさせておいた方がいいですよ。
……まあ、ちょっと自分でも何言ってるか解りませんが」
そう言って、目の前のサンドイッチに取り掛かり始めた。
>>931
「いえ、でも……。
え?
……ああ、なるほど、そういうことですか……」
草食と聞いて、ようやく理解したようだ。
男は凄まじい勘違いをしていたようである。
「それなら安心して食べられますね。
……なるほど、これは美味い。
素材だけでなく、調理した方の腕の良さも感じられますね」
そしてようやく口を付けるのであった。
- 933 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/03/11(日) 01:22:39 ID:WVrfsEdY0
- >>931
「いやー、とても嬉しそうですねー。
私もなんか美味しいの食べられて嬉しいですよ!」
【ニコニコ笑いながらナポリタンをどんどん食べていった】
「はあ、おやすみなんですか…
じゃあまた今度〜!」
【そう言って見送っていった】
>>932
「そうですね…自分のためと考えたことはあんまりありませんでした」
【少し考えてから口を開いた】
「助けたいものは決めたほうがいい…?
それは、よくわかりませんけど、なんとなくわかるような…」
【考える顔をして答えた】
- 934 :ガルテラ:2012/03/11(日) 01:30:40 ID:cA7m7mYw0
- >>933
「すいません、妙なことを言って。
何を助けたいのか。
何を、のところに全人類をとか全世界を、と入れても構いません。
夢を大きく持つことは良いこととされていますから」
男は鶫の方を向いていない。
どこか遠くを見ている気がする。
「……私は、無償の行いが余り好きではありません。
無論、人がそれを行うのを止めるほどではありませんし、例外で行うこともあります。
意味が理解できなければ、ただの私のエゴだと思ってください」
男はただ、自分の意思を確認したいだけだったのだろうか。
- 935 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/03/11(日) 01:36:16 ID:WVrfsEdY0
- >>934
「何を助けたいかですか…
たしかにそうですね。漠然としたものはあります…」
【そう言って少し首を傾げる】
「それはたしかに貴方の言うとおりかもしれませんね…
自身に無益なことはほめられたものではないかもしれません。
情けは人のためならず、といいますしね。しかし…」
【少し考えて言う】
「この街を守りたいという思いは…いずれ自分にも帰ってくるんじゃないかと…
そんな思いがあります」
- 936 :ガルテラ:2012/03/11(日) 01:46:49 ID:cA7m7mYw0
- >>935
「そうですか……ぜひ、あなたの夢が叶うことを願います。
……無償の行為は嫌いなので、願うだけになってしまいますが」
そう言って、男は自嘲気味に笑う。
皿が空になると、男は立ち上がった。
「……ごちそうさまでした。
私はこれで帰りますが、最後に一つお聞きしてもよろしいですか?
私はガルテラと申します。あなたのお名前を」
- 937 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/03/11(日) 01:49:28 ID:WVrfsEdY0
- >>936
「ええ、いいんですよ。
道が違っても、交わることはあるかもしれませんからね」
【鶫はそう言って笑い返した】
【しばらくして鶫が食べていたナポリタンの皿も空っぽになった】
「カルデラさんですね。わかりました。
私の名前は防人鶫(さきもりつぐみ)です。覚えておいてくれると嬉しいですよ」
- 938 :ガルテラ:2012/03/11(日) 01:53:42 ID:cA7m7mYw0
- >>937
「鶫さんですね、今後もまた縁がありましたら」
男は自分の分の代金をレジ前に置き、鶫におじぎをした。
「では、また」
男は喫茶店を出ると、カンテラに火をつける。
そして、街の中の小さい光の一つとなって、何処かへ歩き去っていった。
- 939 :防人 鶫 ◆My6NsjkSfM:2012/03/11(日) 01:54:58 ID:WVrfsEdY0
- >>938
「はい、コチラこそ縁がありましたらまた会えるでしょうね。
またあいましょうね、ガルテラさん」
【そう言って見送った】
「ふーむ、そろそろ帰らなければいけませんね」
【しばらく店内に居た後、帰っていった】
- 940 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/03/14(水) 00:11:23 ID:WVrfsEdY0
- 【AGカフェ】
「………」
【テーブルの上に乗っかっている問題を見ながらずっと固まっている】
「…うー…」
【頭から湯気が出ている…知恵熱か何かなのだろうか】
- 941 :?:2012/03/14(水) 12:06:07 ID:dL8H4NjE0
- >>940
「何やってるのかな?」
テーブルの対面に座り、店員にコーヒーを注文してする。
桃色のショートヘアーを風に揺らし、少し伸びをする。
額には少し汗が浮かんでいた。運動でもしていたのだろうか。
「……宿題?」
問題をちらりと眺め、懐かしそうに問う。
- 942 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/03/14(水) 12:11:39 ID:WVrfsEdY0
- >>941
「・・・ふぁ?」
【突然の問いかけにディスは顔を上げる】
【・・・寝てたかもしれない】
「あう〜。いつのまにそこに」
【少し驚いている様に見える】
「えっと、あうー。そうなの…
ぜんぜんわからないなの〜」
【軽く落ち込んだ表情で言う】
- 943 :?:2012/03/14(水) 12:18:15 ID:dL8H4NjE0
- >>942
「まあついさっきなんだけどね」
宿題を手に取り、コーヒーを飲みながら眺める。
少女にとってはあまり難しいものとはいえないものだ。
「これぐらいだったら普通に教えられるけど……」
どうする?とでも言いたげにディスに視線を向ける。
- 944 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/03/14(水) 12:22:20 ID:WVrfsEdY0
- >>943
「あうー、そっかなの〜。
ぜんぜんわかんなかったの」
【どうやら勉強に集中していてわからなかったようだ】
【少し恥ずかしそうに頭を掻く】
「あうー。いいなの?
じゃあおしえてほしいなの〜」
【そう言って宿題の内容を見せた】
【どうやら足し算と割り算の問題がいっぱいあるようだ】
- 945 :?:2012/03/14(水) 12:32:48 ID:dL8H4NjE0
- >>944
「気配を消すのには自信があるんだ」
得意げに笑って、コーヒーを飲み干す。
「四則計算ねー、分数が入った時にてこずった覚えがあるわ」
「足し算は1の位の計算結果が頭の中に入ってればあとは筆算でどうとでもなるし、
割り算なんて慣れよ慣れ。結局数こなしていくうちにすらすらできるようになるわ」
教えているようで全く教えていない。
勉強はできるけど教えるとなるとからっきし、というタイプのようだ。
- 946 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/03/14(水) 12:36:21 ID:WVrfsEdY0
- >>945
「へー、それはすごいなの〜」
【とても感心しているようだ】
「あうー、しそ・・・く?
えっと・・・ひっさん・・・それと・・・」
【必死になってその少女の説明を聞くが…】
「せつめいでわかんないの……あうぅ」
【また頭から湯気が出始めている】
- 947 :?:2012/03/14(水) 12:46:24 ID:dL8H4NjE0
- >>946
「四則計算ね、足し算、引き算、掛け算、割り算の4つのこと」
テーブルに+、−、×、÷の記号を指で書く。
「えー……と、そうだね、まず足し算は繰り上がりは10で一度区切るようにしてみるといいわ」
「7+9=6+10=16みたいに頭の中で式を変化させていくと解きやすいわ、引き算も同じ」
実際は変化するのにも戸惑うことがあるのだが、それには個人差がある。
中の人はいつもこういう計算方法だ。
「掛け算割り算は……もう暗記しかないわね、ほら、九九とかやったでしょう?」
「あれと同じような感じ」
「面倒だけど『割られる数』から『割る数』を何回引けるか、っていうのをやって、
引けた回数がその割り算の答えだから、いざとなったらそうすれば間違いはないわ」
どれも余計に頭がこんがらがることばかりだ。
- 948 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/03/14(水) 12:51:04 ID:WVrfsEdY0
- >>947
「ふんふん」
【どうにか調子を取り戻し、熱心に話を聞き始める】
「あうー、なるほど、あたまのなかでたして…
じゅーにしてなの…」
【思ったよりも頭の中に入ったのか
軽く頷く】
「くくは、うたっておぼえてるなの!
えっと…わってなの…わりざん…うーん…」
【必死になって覚えようとしているようだ】
【ちなみにその間、必死でメモを取る動きをしているのは】
しゅるしゅるしゅるしゅる
【ディスの腕に巻かれていた包帯が行なっていた】
- 949 :?:2012/03/14(水) 12:55:35 ID:dL8H4NjE0
- >>948
「掛け算から等式変形でもいいけど……それじゃ応用がきかないか」
何かよりよい方法が無いかと思案する。
「ならば質問7×8は?」
なぜかは知らないがこれが一番てこずった記憶がある少女だった。
「うおう、包帯が動いていらっしゃる……」
驚いたような顔を見せ、興味津々な様子で動く包帯を眺める。
- 950 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/03/14(水) 13:00:25 ID:WVrfsEdY0
- >>949
「あうー、むずかしいことばなの〜」
【等式などわからない言葉が多いようである】
「しち はち…しちはだからごじゅうろくなの!」
【割とすぐに答えを出した。どうやら本当に唄で覚えているようだ】
「あうー?びっくりさせたかなの…
でもこっちのほうがやりやすいからなの」
【少し頭を下げて言う】
- 951 :?:2012/03/14(水) 13:04:30 ID:dL8H4NjE0
- >>950
「正解、よくできましたー」
右手をのばし、ディスの頭をなでる。
特に意味は無かったりする。
「ああいや、謝る必要はないよ、自分のやりやすいようにやればいいさ」
頭を上げるように言う。
そこには困ったように笑う少女の顔があるだろう。
- 952 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/03/14(水) 13:10:08 ID:WVrfsEdY0
- >>951
「あうー。ありがとなの…
なんかうれしいーの」
【頭をナデナデされて嬉しそうだ】
「あう、うんなの〜。
いろいろかんがえててちからはいったらたいへんだからなの〜」
【そう言って顔を上げる】
「ちょっとこまったかなの〜?」
- 953 :?:2012/03/14(水) 13:16:42 ID:dL8H4NjE0
- >>952
「え?ああ、うん?そんな顔してた?」
ディスの言葉になぜか驚く少女。
両手で頬をぐりぐりとこねたりしている。
「まあ、大丈夫だよ、問題ないさ」
適当に結論づける。
「それよりほら、宿題の続き、終わんないよ?」
ディスに宿題の続きをするよう促す。
少女は若干焦っているようにも見える。
- 954 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/03/14(水) 13:20:56 ID:WVrfsEdY0
- >>953
「あうー、ちょっとしてたかなの〜」
【そう言って笑う】
「ふにゅー…」
【ほっぺをこねくり回されて、少し薄目になっている】
「だいじょぶかなの〜。
あう、そうだったの。はやくおわらせないとなの〜」
【そう言って宿題の答えを書きこんでいく。少女の教え方もあってか順調に問題が解けていった】
「あうー、そういえばなの…おなまえまだきいてなかったかなの?」
- 955 :?:2012/03/14(水) 13:24:46 ID:dL8H4NjE0
- >>954
「やわっかいわぁ……」
こちらも少し表情がまったりとしている。
「名前、ねぇ……名乗る程のものでもないし、好きに呼んでくれていいよ」
実際は呼ばれる名前が無い、といった方が正しいが。
- 956 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/03/14(水) 13:30:53 ID:WVrfsEdY0
- >>955
「むー?やわかいの?」
【ディスの顔はもち肌と違ってよさそうな柔らかさ加減であった】
「あうー、すきによんでなの〜…えっとなの…」
【容姿で名前を決めようとしているのだろうか。
ジロジロと少女の姿を見始めている】
- 957 :?:2012/03/14(水) 13:37:47 ID:dL8H4NjE0
- >>956
「うん、柔らかい」
両手で頬を弄り続ける。
「好きに呼ぶがいい、あんまりひどいのはかんべんな」
おどけて言う。
因みに今日の少女の服装は黒のニーソとホットパンツ、
白地のTシャツの上から黒いパーカー、といった感じだ。
- 958 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/03/14(水) 13:41:21 ID:WVrfsEdY0
- >>957
「えへへ、なの…
さわられるのはきらいじゃないなの〜」
【なんか楽しそうに微笑む】
「うーん…しろくろ…
かなの…」
【どうやらネーミングセンスはなさそうだ…服装から判断しているようである】
「そろそろできそうなの〜」
【そうこうしているうちに問題をドンドンと解いていった】
- 959 :?(しろくろ):2012/03/14(水) 13:45:38 ID:dL8H4NjE0
- >>958
「しろくろ……ああ服装か」
最初不思議そうにしていたが、自分の服を見て納得する。
表情からは気に行ったのかそうでないのかは判断しづらい。
「そういえばキミの名前は?」
こちらも名前を聞いていなかったことに気づき、問う。
- 960 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/03/14(水) 13:48:37 ID:WVrfsEdY0
- >>959
「しろくろ…でもいいのかなの?」
【少し心配そうな顔で言う】
「あう、おなまえはなの、『でぃす』っていうなの。
よろしくねなの!」
【にっこり微笑んで答える】
- 961 :?(しろくろ):2012/03/14(水) 13:52:31 ID:dL8H4NjE0
- >>960
「もちろん、大歓迎ですとも」
笑顔でそう返答する。とくに他意はなさそうだ。
「ディス、ね……よろしく、ディスちゃん」
右手をディスに差し出す。
「っと、ちょいやることあるから私はこの辺でお暇させてもらうね」
そう言って立ち上がり、カフェの出口に向かう。
- 962 :ディス ◆My6NsjkSfM:2012/03/14(水) 13:55:48 ID:WVrfsEdY0
- >>961
「あうあうー、よかったの〜」
【ホット一息突いた】
「あうあう、よろしくなの!こちらこそなの〜」
【嬉しそうに頭を下げ挨拶した】
「あう、いそがしいのかなの〜。
わかったのー、またねなの〜!」
【そう言って手を振り見送っていった】
- 963 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/03/16(金) 00:02:02 ID:oB5LASG.0
- ―――AGカフェ
静かな店内に響く金属が掠れる音。
熱く熱せられた鉄板に、ナイフが触れる音。厚い肉を切り裂く際の副産物。
今現在、客の無いこの空間では、漆黒に塗れた少女が一人遅めの夕食を取っていた。
大好物の厚切りステーキ。それも、店に置かれていた素材で一番質のいい肉を使っている。
彼女にとっての至福の時間の筈。しかし、それでも溜息が出てしまうのは感嘆か、それとも別の何かか。
- 964 :アウテリート ◆6xc12amlNk:2012/03/16(金) 00:36:08 ID:.6prKP66O
- >>963
そこに小さな物音が一つ
こんな時間に客が来るなんてまずありえない……
しかし、少女のいる場所には常にこいつらの影がある
白いプリーツのミニを翻し、こんな時期でも腋丸出しのお嬢様
白いニーソとスカートの間の絶対領域が眩しいお嬢様
そして、なんだかわからないが格好良いポーズを決めるお嬢様
虹色の瞳を持つ少女が漆黒を見つめ歩み寄る
「あらあらなんですの?溜息なんて吐いて、幸せが逃げますわよ?ほら吸って吸って!」
その騒がしさが漆黒の機嫌を損なうかどうかはわからないが…
- 965 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/03/16(金) 00:40:16 ID:oB5LASG.0
- >>964
「……久しぶり」
大したリアクションを示す訳でも無く。
最早慣れっこ。そういった感じの返事で。
もう一口食べて、ステーキを存分に味わいながらアウテリートの方を見た。
- 966 :アウテリート ◆6xc12amlNk:2012/03/16(金) 00:53:34 ID:.6prKP66O
- >>965
「反応薄いですわよッ!せっかくプリティ・アウティが来てあげたのに……
もっとこう…素敵!抱いてッて感じに……いや、なんか違いますわね」
ぶつぶつ言いながらゼオラの近くに腰掛け、にっこりと微笑みを返す
「えぇ、お久しぶりですわね
それで、どうしたのかしら?モグモグドヨーンな空気でしたわよ?寂しかった?」
ゼオラが一言話す度にアウテリートは2、3を話す
漆黒の少女と正反対な純白の少女、その名は……
「プリティ・アウティ!」
- 967 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/03/16(金) 01:01:45 ID:oB5LASG.0
- >>966
「……」
余りにもハイテンション。
快活な少女との差は正にモグモグドヨーンな空気。
「少し、だけ」
十分に口内の肉を噛んで、ゆっくりと飲み込む。
そしてプリティ・アウティの問いかけに肯定する仕草を見せた。
しかし、プリティ・アウティから視線を外し、またも溜息。
- 968 :アウテリート ◆6xc12amlNk:2012/03/16(金) 01:13:24 ID:.6prKP66O
- >>967
「でしょうでしょう!そんな気がしていましたのよ!だから私が寂しがり屋の貴方を癒してってこらぁ!」
視線を外し、またため息を吐くゼオラをみて頭からポッポッと煙を出しながら迫る
「私じゃダメだっていいますの?」
- 969 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/03/16(金) 01:19:40 ID:oB5LASG.0
- >>968
「……別に」
それだけを返し、再び夕食を進める。
視線は白い少女を捕らえるのを止め、適当な床へ放られている。
- 970 :アウテリート ◆6xc12amlNk:2012/03/16(金) 01:26:50 ID:.6prKP66O
- >>969
「ちょっ!ちょちょちょちょっ!!私を見なさいな!ほら、その綺麗な瞳で!
私を舐め回す様に見なさいな!ねぇってば!」
必死にゼオラの視界に入ろうと動き回るが、視界に入れない……
「ほ、ほら!今ならスカートの中だって……いや、違いますわね……」
ミニのプリーツをしばらくバタバタするが、何か違うと考え直し……
「ほ、ほら?ゼオラ?」
なぜこんなに必死になるのか……
アウテリートはゼオラに楽しんでもらいたいのである
- 971 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/03/16(金) 01:30:41 ID:oB5LASG.0
- >>970
「何?」
ただ、端的に一言。
抑揚無く返された言葉には、余りにも感情が篭っていない。
多過ぎる溜息も、アウテリートを邪慳に扱っているからに見えてきて。
- 972 :アウテリート ◆6xc12amlNk:2012/03/16(金) 02:00:32 ID:y9UnqzWE0
- >>981
「むむむむぅッ…!」
口元を真一文字に結び、ゼオラを見つめ返し
意地悪やめてというようにムムムと唸る
若干涙声で涙眼である
- 973 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/03/16(金) 02:12:17 ID:oB5LASG.0
- >>972
「……」
チラリと視線を戻し、無表情で見つめる。
しかしその視線にも感じられる物は無く、あるのは限りなく暗く見えない闇のみ。
夕食を食べ終えた少女はより深い溜息をつき。
(決して彩として自ら置いた添え物が余ってしまったからではなく。)
水の注がれたコップを手に取って少しだけ口に含み、それを飲み干すと。
「飽きた」
とだけ口にして。
- 974 :アウテリート ◆6xc12amlNk:2012/03/16(金) 02:23:48 ID:y9UnqzWE0
- >>973
「あ、飽きたですって?私の体に!?それともステーキに!?」
ユサユサとゼオラの肩を揺らし
「あ!お残しはダメなんですのよ!?ほらほら、あーん」
しかし挫けないお嬢様!
口数の少ない少女とやかましい少女
なんやかんや言ってアウテリートは楽しんでいるようだ
- 975 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/03/16(金) 02:30:27 ID:oB5LASG.0
- >>974
「全部」
アウテリートの朗らかな雰囲気には一切の反応を示さず。
今までの少女ならば最悪嫌々応じ、決して断ることが無かったのだが、
それ以上に「全部」に飽きが来てしまったらしい。
「ここも、今も、明日も……」
そういうと、元気無さ気に項垂れてしまうのであった。
- 976 :アウテリート ◆6xc12amlNk:2012/03/16(金) 02:50:23 ID:y9UnqzWE0
- >>975
「……そうですの」
なるほど、それでこんな雰囲気だったのか
アウテリートは納得したように答える
その表情は悲しげであったが慈愛に満ちた表情で
腕を伸ばしゼオラを抱き締め
「飽きちゃったから寂しかったの?少しでいいから、私とお話ししませんこと?」
ゼオラの雰囲気に今までと違うものを感じたアウテリートはしっかりと、それでいて優しくゼオラを抱き寄せる
このままでは何処かに行ってしまいそうだから……
- 977 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/03/16(金) 02:55:26 ID:oB5LASG.0
- >>976
ガクリと首を落とした少女。
どうしようもなく世界に「飽き」を感じてしまい。正にどうしようもなく。
そこに向けられた問いかけにちょっとした希望を見出して顔を上げた。
「何、に……?」
少なくとも、「今」だけは埋めることが出来そうだ。と。
- 978 :アウテリート ◆6xc12amlNk:2012/03/16(金) 03:15:51 ID:y9UnqzWE0
- >>977
「そうですわね…まずは私から何か……」
ゼオラが飽きてしまったのならどうするべきなのであろうか?
アウテリートは考える、でも考えても仕方ないと、心の中でグルグルグルグル
「じゃあ、私の好きなもののお話はどうかしら?」
今、自分が話せるのはこれくらい
しかしゼオラは聞き飽きてしまっているだろうか?
でも、今は食いついてくれるのを祈るしかない
「あまり人には話してない内容ですわよ?」
- 979 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/03/16(金) 03:29:02 ID:oB5LASG.0
- >>978
コクリと、一度だけ頷いて。
「今」と言う時間を埋めてくれるなら、何でもいい。
//すいません、眠気が限界なのです……。
//今は一度寝かせて欲しいのです……。
- 980 :アウテリート ◆6xc12amlNk:2012/03/16(金) 03:42:37 ID:y9UnqzWE0
- >>979
「好きなもの…と言うより、好きな人?」
うんうんと頷きながらそう言い
「その人はね、強い人なんですのよ?
切れ長で美しい顔立ち、でね?いつも無口なんですけど、笑うと暖かい人なの……」
ゆっくりと、噛み締めるように話始める
ゼオラの頭を撫でて
「初めて会ったとき、実は少し嫌いでしたのよ?
だって、大好きなお父様がその人ばかり構うんですもの……」
//了解したぜ!
- 981 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/03/16(金) 14:19:56 ID:oB5LASG.0
- >>980
「……それで?」
頭を撫でられながら、思いつく限りの、精一杯の、返事を返す。
けれども、やはりそれは彼女には淡白に聞こえてしまうのだろうと思うと、少しだけ物悲しい。
- 982 :アウテリート ◆6xc12amlNk:2012/03/16(金) 15:45:17 ID:.6prKP66O
- >>981
「でもお互いを知っていく内にね、お父様の気持ちもわかってしまったの」
淡白な返事だと思っただろうか?
いや、アウテリートはゼオラがどんな少女なのか知っているのだ……
「いっつも黒い服着て、むすっとした顔してる人だったけど……放って置けないんですのよ……
私思いますの、本人は確かに外見とは逆に大人っぽい雰囲気があるんですけど
同時に、外見通り誰よりも子供らしい所があるんですの……」
- 983 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/03/16(金) 16:20:29 ID:oB5LASG.0
- >>982
「そう……」
幾らアウテリートが心優しかったとしても、今の自分を好ましくないはず。
自分の事を想ってくれているだけに、この「飽き」も理解しているのだろうか。
今までの様な、比較的心を込める事が出来た返事を務めようとするが、最早それにも「飽き」を感じて。
- 984 :アウテリート ◆6xc12amlNk:2012/03/16(金) 16:51:59 ID:.6prKP66O
- >>983
「誰の事を言ってるかわかります?……貴方の事ですわよ?」
如何に自分がゼオラを想っているのか、一生懸命に語るアウテリート
「今、全部に飽きちゃった貴方を私が好きにならないとか思いました?
残念、私は今の貴方も好きですわよ〜」
いつだってアウテリートのゼオラに対する好意は本物である
だからゼオラが好ましく思われない等、心配する必要は皆無なのだ
「……ねぇ、どうして飽きちゃったか自分でわかりますの?」
- 985 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/03/16(金) 17:17:54 ID:oB5LASG.0
- >>984
「……解ってる」
自分の事だと言う事も、飽きの原因も。
自分で理解はできているのだが。
「面白く、無い……」
- 986 :アウテリート ◆6xc12amlNk:2012/03/16(金) 17:34:43 ID:.6prKP66O
- >>985
「そう……よかったら、私にお話してくださいませんこと?」
話す事すら飽きてしまっているのだろうか?
「私、貴方の役に立てるならなんだってしたいんですの……だから、聞かせて?」
アウテリートは虹色の瞳で必死に訴え掛ける
- 987 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/03/16(金) 17:48:29 ID:oB5LASG.0
- >>986
「どしようもないよ……」
どうしようもない怠惰。
どうしようもない倦怠感。
「全部……飽きた」
- 988 :アウテリート ◆6xc12amlNk:2012/03/16(金) 17:55:11 ID:.6prKP66O
- >>987
「……話しなさいな、私がなんだってしてあげますから……それだけで楽になったりしますのよ?
だから、どうしようも無いなんて言わないでくださいな」
必死に、ただゼオラが話してくれる様に願い、問い掛け続ける
今、ゼオラの力になれるのは自分だけだと、アウテリートは信じている
- 989 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/03/16(金) 18:28:24 ID:oB5LASG.0
- >>988
「なんでも……?」
なんだって。という単語が引っ掛かったらしく、
復唱して、僅かにやる気を見せる。
「なんでも?」
この言葉の後には要求が続くだろう。
だが、安易に答えてしまうのは何か危うい雰囲気。
なんでも。という言葉を盾にとんでも無い要求をしてくるのだろう。
- 990 :アウテリート ◆6xc12amlNk:2012/03/16(金) 18:37:21 ID:.6prKP66O
- >>989
「……」
急にやる気を見せるゼオラを眼にし、少しだけ驚いた様子
安易に答えてはいけない雰囲気だ……
だが、アウテリートは自身の父親同様、ゼオラの為ならば怯まず、なんでもする覚悟があった……
安易に答えて、軽率と呆れられるか?真剣に考えていないと罵られるか?
例えそうなったとしても、アウテリートのゼオラに対する想いは本物だ
だから、こう答えるしか無い
こう答えなければならない
こう答えたい
「えぇ、なんでも……嘘は絶対につきませんわ……
貴方がどんな願いをしても、必ず!」
凛とした表情で、アウテリートは答えた
- 991 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/03/16(金) 18:58:32 ID:oB5LASG.0
- >>990
アウテリートは案外、簡単に頷いた。
それを前にして何度目か、数えきれない程吐いた溜息を見せる。
その意図はなんなのだろうか? 少なくとも、今までとは違って、意味が無いわけではなさそうだ。
アウテリートは、この少女の事を果たして知って居ると言い切れるのだろうか?
職業を明かした事はあるが『具体的に』それを離したことは無い。
ただ漠然と「殺す」と言うだけの仕事。「それだけ」だと、どうも軽く見ている節があるのではないのか。
目の前の少女も、その父親も、能天気で螺子が抜けているのではないかと思う事すらあった。
今まで見て見ぬふりの様な感じで、それを表に出す事は無かったものの、今はそれを出すべきだと。
「本当……?」
それを踏まえた、最後の確認。
- 992 :アウテリート ◆6xc12amlNk:2012/03/16(金) 19:16:00 ID:.6prKP66O
- >>991
「……」
眼を閉じ、考えを頭に巡らせる
さて、少女は一つだけ気になる事がある
この願い……普段無欲のゼオラがこうも食い付くのはイレギュラーな事だ……
周りの空気がいつもと違う…なんというか、頭の中が冷たい液体に満たされたようなそんな感覚……
まさか、ゼオラは自分に死を望むのだろうか?
こんなにも確認を取ると言う事は……私に……
「その前に質問いいですこと?」
ゼオラとは離れようとせず、アウテリートはそう口にし
「貴方の仕事って……殺し屋でしたわよね?
それってどう言う殺し屋ですの?
ただ殺すだけ?それとも、冥界的な場所に“落とす”って意味ですの?」
何故だろうか?関係ない質問が口から出てくる
原因はわからない、ただ……このまま頷いてしまったら、ゼオラに嫌われる気がしたのだ
- 993 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/03/16(金) 21:53:40 ID:oB5LASG.0
- >>992
「何?」
少々人意欲と言う物を取り戻したように見える。
なんでも。
自らの渇きを潤すにはこの言葉でなければいけないのかもしれない。
それだけ、何か大きく、苦しい要求なのかもしれない。
アウテリートが脳裏に浮かべたとある答えが、より現実味を帯びる程の静寂。
課せられた問に、首を傾げ。
急に湧き出た意欲を読み取られ、その「飽き」を止める希望が生まれた事を悟られたのか。
「どっちも」
基本的には、ただの殺しに過ぎない。
だが、少女が請け負う依頼はどれも最上級な物。当然対象も相応の人間になる。
それだけの人間は余程悪に染まって居る事も多く、殺したついでに冥界に落としておいた方が、冥界のシステム的に「都合が良い」事が多い。
その結果としての、どっちも。
- 994 :アウテリート ◆6xc12amlNk:2012/03/16(金) 22:19:57 ID:.6prKP66O
- >>993
「貴方の殺しって、誰に頼まれてるかしら?
いや、殺し屋になった原因ていいますの?」
父親から聞いたゼオラの昔の姿……殺し屋なんて大それた職業に就くなんて天地がひっくり返ってもありえない……
しかし、ゼオラは今殺し屋としてここに存在している
つまり、天地がひっくり返ったのだ……
「……」
アウテリートはゼオラの首輪に視線を移す
そう、ゼオラは一度死んだ人間……冥界帰りの暗殺者なのだ……
「貴方の知り合い……かしらね?変な奴がいましたわね?
お父様にまとわり付いて……なんでしたっけ?苗床がどうの……」
冥界へ落ちた死者を養分として利用する存在を知っている
しかし、野菜として使う…と言う事しかアウテリートは知らない……
「貴方の仕事……あの女も関係してますの?」
自分は何の話をしているのだろうか?
ゼオラに尋問のような事をしてしまう自分を恥じる
だが、少しでも深く
例え見当違いな推理でも
例え何度質問をしても、ゼオラの事を知らないと……
簡単に、ゼオラの願いを叶えるとは言えないのだ
- 995 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/03/16(金) 23:14:33 ID:oB5LASG.0
- >>994
「誰でも」
基本的に、独自に通じたネットワークから仕事を請け負っている。
冥界を経由したルート。それによって「とある人物」がゼオラに提案した依頼が、そのまま仕事となる。
今まで、自らが命を落としてから、何気なく行ってきた行動。それの原因を問われても、今一パッとしない。
「関係、無いよ……」
それだけは確か。関係は無い。話しても大丈夫だろうと踏んで、口を開く。
「あれは……ついで」
偶々依頼の人物が、カロエラ好みの生命だった場合、その身体を引き渡すのみで。
カロエラの指示で誰かを狙うと言った事は、今まで行っていない。
- 996 :アウテリート ◆6xc12amlNk:2012/03/19(月) 19:54:01 ID:.6prKP66O
- >>995
「そうですの……」
自分の推理の一つは間違いだったらしい……
さて、では次にどの質問をぶつけるか……
仕事の元締めの事?
物事全てに飽きてしまったきっかけ?
仕事の内容を具体的に?
自分に何を頼もうとしていたのか……
知りたい事が多すぎる……
「……」
何を聞こう……あまり長い間質問をし過ぎるとまたゼオラが飽きてしまうかもしれない
しかし……
「ゼオラ?いいかしら?今から質問をしますわよ?」
- 997 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/03/19(月) 21:43:11 ID:2gQ38VP60
- >>996
「……いいよ。ただ、最後には……」
瞳に確りとした光を持たせ、アウテリートを眺める。
普段、無欲な少女が確認を求める。必死な事に違いない。
それだけに、質問には時間を掛けても大丈夫だろう。
最後に『少女の願いを果たしさえすれば』幾らでも待つ筈だ。
- 998 :アウテリート ◆6xc12amlNk:2012/03/19(月) 22:00:29 ID:.6prKP66O
- >>997
「もうね、私……貴方の全てが知りたいんですの……よくって?」
ゼオラの必死さが伝わる
願いは叶えてあげたい……
それが例え自分を死に至らしめたとしても……
だから、最後のチャンスなのだ、今こそゼオラの全てを知るために……
「……(死ぬとは決まってませんわ)」
しばしの沈黙
ゼオラの全てが知りたい
そう考える…
思えばゼオラが人を殺める事にも、見てみぬ振りをしてきたのだ……ここではっきりと聞いておこう
「私は貴方の全てが知りたい、なので質問しますわ……
まず、貴方が人を殺めるという事柄の全てを話してくださいな
何故、どんな理由で等……全てお話しになってくださいな」
- 999 :ゼオラ=アドヴァルド:2012/03/19(月) 22:50:53 ID:2gQ38VP60
- >>998
アウテリートの言葉に、頷く。
続いた言葉に、大きく息を吐いて臨んだ。
溜息では無い。ふーっ。と、長い時間を掛けて吹いていく。
深呼吸の様な物だった。次は息を吸って。
「……理由?」
それを聞いて、拍子抜けしたような反応を見せて、黙る。
考えたことが、無かった。そんな『単純な』事は。
- 1000 :アウテリート ◆6xc12amlNk:2012/03/19(月) 22:58:53 ID:.6prKP66O
- >>999
「……殺して、それからどうするんですの?ただ条件が合えば冥界へって訳じゃないですわよね?」
ゼオラが拍子抜けした事をすぐに感じ取る
この質問もダメか……
しかし、何か決定的な……
そう、何か……
アウテリートは何故こんな質問ばかりしているのかわからなくなっていた
ただ、ここで何かを知らなければいけないような気がしていただけで
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