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【日常γ】まったく夢もキボーも異能都市【その八】
1名も無き異能都市住民:2011/03/28(月) 18:26:41 ID:1sJsd2CgO
≪ルールとか≫
・基本age進行で
・コテもコテ無しもどんどん来い
・レスの最初に自分のいる場所を明記してくれるとやりやすいです
・イベントを起こしたい場合は空いているイベントスレをお使い下さい
・多人数へのレスは可能な限り纏めて行うようにしましょう
・無意味な連投・一行投稿はできるだけ控えるよう心がけてください
・戦闘可能ですが、長引く場合や大規模戦闘に発展した場合はイベントスレへ移動してください
・戦闘が起きた場合、戦闘に参加したくない人を無理に巻き込むことはやめましょう
・次スレは>>950を踏んだ人にお願いします

前スレ(其の七)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12841/1288185133/

2酒呑屋 虎姫?:2011/04/08(金) 20:43:39 ID:qeQz7bMk0
【ぼーっとした様子で歩いている】
【いつもふらふらあてなく歩くが、今はまさしく心ここにあらずといった感じで】
……はぁ。
【泣き出しそうな顔で、適当な建物の塀に背を預けて座り込む】

3名も無き異能都市住民:2011/04/08(金) 21:14:21 ID:SSMHlh/20
>>2

当てもなく歩き回っているうちに、どうやら路地裏に入ってしまったらしい。
先ほどまでは物乞いや妖しげな押し売りなどの姿も見えたが
この辺りは殊更廃れた地域らしく、ひび割れたコンクリートの古い建物ガ目立つ。

――ガサッ

風もないというのに、
うずたかく積まれていたゴミ袋が崩れた。

4酒呑屋 虎姫?:2011/04/08(金) 21:46:49 ID:qeQz7bMk0
>>3
……?
【小さく口を開けてついっと視線を向ける】

5名も無き異能都市住民:2011/04/08(金) 21:57:10 ID:SSMHlh/20
>>4

男が立っていた。
路地裏の入り口には『黒いバン』が止まっており
いましがた、それから降りてきたらしく彼の後ろで側面の引き戸が音を立てて閉まる。

「…………。」

無言のまま、足早に近づいてくる男。
手はポケットへと突っ込まれており、今にも何か仕掛けてきそうだ。

6酒呑屋 虎姫?:2011/04/08(金) 22:09:19 ID:qeQz7bMk0
>>5
……
【僅かに諦めのような光が入り交じった瞳の光】
【座ったまま、あからさまに腰の柄へ手を伸ばし握る】

【殺意はない。だが、それ以外の意思も感じられない】
【『何もなさ過ぎる』――といえばいいのか】

7名も無き異能都市住民:2011/04/08(金) 22:16:04 ID:SSMHlh/20
>>6

――ビスッ

男はポケットから変わった形状の銃を取り出すと同時に
虎姫へと向けてそれを発砲した。

射出されたのは金属の弾丸ではなく、注射針のようなもの。
これには大型動物用の強力な麻酔薬が内蔵されており、
命中と共にそれを体内へと流し込む仕組みになっている。

銃声は非常に小さかったため、警察や近辺の住民が気づくことはないだろう。

8酒呑屋 虎姫?:2011/04/08(金) 22:26:08 ID:qeQz7bMk0
>>7
カンッ
【黒い線がぴしっと空間に描かれ、針が弾かれる】
【虎姫がのそり、と遅く立ち上がり】

なに。
【刃をちん、と鞘に納めた】
【そう、『納刀した』のだ――いつ『抜刀した』のかも分からないほどの速さ、そして最小限の動作で振り抜いたそれを。】

9名も無き異能都市住民:2011/04/08(金) 22:32:30 ID:SSMHlh/20
>>8

「……!?」

男の顔は黒い布とサングラスで隠されており
細かい表情は見えないが、それでも同様の色が窺える。

――バサッ

男は身を翻し、車へと逃げる。

10酒呑屋 虎姫?:2011/04/08(金) 22:42:44 ID:qeQz7bMk0
>>9
……
【虎姫は弾かれ落ちてきた針を手に取る】
【それを路地裏に差し込む、煤けたような光に掲げて小さく笑った】


【斬ろう。】

【虎姫はゆっくりゆっくり、追い詰めるように大げさに足音を立てた】
【男は車に乗るだろう。車に乗り込み、扉を閉めて逃げようと。】
【針をダーツのように構え、狙い定める】

【男が扉に指を伸ばすその瞬間を狙って、投げた】
【軽い動きから不自然なほどのスピードで針は放たれ、男の指とドアを貫き縫い付けようと迫る】

11名も無き異能都市住民:2011/04/08(金) 22:53:59 ID:SSMHlh/20
>>10

――ズッ!

針は男の指に深くめり込み、折れた。

もし、針の強度が十分だったなら男の指を貫通してなお、
バンの外装をつらぬくほどの速度。この針の強度はそんな衝撃を与えられることを
想定されていなかった。

「クソッ、異能者か。乗れ!撤収だ!!」

助手席のパワーウィンドウがスライドし、
軽機関銃の銃口が車内から、酒虎へ向けられる。

――パパパパパッ

今度は一発ではなく、無数の実弾。
敵は、車に乗り込んで逃げるつもりだ。

12酒呑屋 虎姫?:2011/04/08(金) 23:10:16 ID:qeQz7bMk0
>>11
……
(多い……。あの針といい、何かの組織か……)
【銃弾の雨が迫るなか、なんと目を閉じる。集中――】

ガガガガガガッ!!!
【銃弾が虎姫の黒いコートと帽子を貫通して宙に踊り、地面にびしゃびしゃと赤い液体が飛び散る】
【黒い襤褸切れと化したものはうずくまるように地面に丸まった】


――っと…。
【すっ。バンの後方に滑りこみ、しゃがみながら小さく息を吐く】
【一瞬でコートと帽子、そして帽子から出した赤ワインだけを残して逃げ出したのだ】
(これで上手く死んだと錯覚してくれればいいけど……呆気無さ過ぎたかも)
【ちょっと不安も抱いたがどうでもいいか、と頭を振り、刀を静かにバンに刺す】
【これにしがみついて相手の本拠地にご案内してもらおう】

13名も無き異能都市住民:2011/04/08(金) 23:19:09 ID:SSMHlh/20
>>12

「やったか……死体を回収するぞ。
 臓器が一つくらい、使えるまま残っているかもしれん。」

「あの女!俺の指をッ……くそ、消毒薬と包帯をくれ……。」

再び、扉がスライドし中から二人の男が下りてきた。
あの機関銃を持った男と、先ほど指を串刺しにしてやったものの二人だ。

車内にはまだ、運転手と後列に一人いる。
やつらはチームで、なにかをやっているようだがかなり物騒だ……。

14酒呑屋 虎姫?:2011/04/08(金) 23:29:03 ID:qeQz7bMk0
>>13
【アテが外れたと少し落胆して刀を引き抜いたが、なるほど知りたい事は分かった】
あー、アンタたち……臓器売買か。

【朗々と声を上げて降りてきた二人を見る】
【そして――血の色の瞳を除いて、顔全体でにっこり微笑んで】
死体が欲しいの? 手伝ったげる。
【そう言うと同時――あの黒い線が、横薙ぎに振るう鞭のように車へ伸びる】
【高さは丁度、首と胴が離れる高さ】

15名も無き異能都市住民:2011/04/08(金) 23:37:48 ID:SSMHlh/20
>>14

男たちは恐れおののき声をあげようとしたが
その瞬刻後にはもう、彼らは物言わぬ死体に変わり。

刀に跳ねとばされた血がびしゃり、と黒いバンを汚した。

――ブオオオオォォッ

アクセルが命一杯踏み込まれ、動き出すバン。
味方がやられたのを見て、逃げだしたのだ。

16酒呑屋 虎姫?:2011/04/08(金) 23:47:13 ID:qeQz7bMk0
>>15
……闇だねぇ、闇。
【死体に歩み寄り、見下ろす】
【その目に何の感情は篭っていない】

なんでこんな事すんだろ。
なんでこんなアホみたいな事のために、命を捨てて。
生きるための情熱、か?


うらめしー。
【ちん、と僅かに浮いた鍔を鞘に押しこみ、死体を蹴りつけてため息をついた】
【それから地面に落ちた帽子を拾い、コートを拾い…コートに書かれている『GF』の文字を見て、自嘲するように口を曲げた】
【その日以降、都市では辻斬り事件が増えた】

17イェルサ:2011/04/09(土) 23:37:42 ID:0ebeJXvA0
肌を刺すような冬の大気の中に、僅かながら春の匂いが混じり始めた異能都市。
とある喫茶店の中で、男は一人黄昏ていた。

「……はぁ」

ため息。
無意識の内に出てしまったのだろう。
以前はこんなこと、無かったのに。

最近自らが変質してきている気がする。
良く珈琲を飲むようにになった。
喧嘩も余りしなくなった。
ため息を吐くようになった。

「何だか、なぁ……」

そう言って、男はまたため息を一つこぼした。

18白い女:2011/04/09(土) 23:44:54 ID:cskw3E.60
>>17
「全く、何を困っているんだか」
イェルサの前によく見知った女が現れた。
やぁ。と何時も通りの調子で声をかけると向かいの席に腰を下ろした。

「どうかした?」
イェルサの普通でない様子を感じ取ったのか、
首を傾げて顔を近づけた。

19イェルサ:2011/04/09(土) 23:52:54 ID:0ebeJXvA0
>>18
「ん、オマエか」

女が腰掛ける所作をぼーっと眺める。
表情も声も眼も、どこか生気が薄いように感じられる。

「あー……ちょっと憂鬱」

それは理由の解らない憂鬱、である。
早めの五月病にやられたか、それとも無意識下の理由か。
確かなことと言えば、心配されて少し嬉しくなったこと位だろうか。
無論表情には出さないが。

20白い女:2011/04/09(土) 23:59:38 ID:cskw3E.60
>>19
やがて小さく首を振りつつ顔を離す。
しかし、その表情は変わらず不思議がったまま。

「ちょっと憂鬱、ねぇ」
男の発した言葉を復唱し、目を合わせる。
そのまま暫くし、溜め息をついた。

「……そういえば、僕も最近そんな気分だ」

21イェルサ:2011/04/10(日) 00:12:52 ID:0ebeJXvA0
>>20
「ん、そか」

男は少し目を瞑って珈琲を啜った。
そして、暫し無言。
場に溢れる沈黙。
しかしそれは気まずいものではなく、寧ろ気怠さに溢れていて。
男はそれに心地よさを感じていた。

「……何か、平和だな」

沈黙を破り、不意にその言葉が口を衝いた。

22白い女:2011/04/10(日) 00:25:06 ID:cskw3E.60
>>21
「そう、だね……」
近くを通り掛かった店員にケーキを注文。
注文を受けた茶髪の若い女性店員は笑顔でメモを取ると、厨房の方へと小走りで消えて行った。

「今まで見たいな状況じゃなくなったからね。
 ここも……絶対に安全とは言えないけど、昔よりかは随分と楽だよ。
 キミだって今は済むところもある訳だし……平和ボケか何かじゃないの?」

23イェルサ:2011/04/10(日) 00:39:15 ID:0ebeJXvA0
>>22
「平和ボケ、ねぇ……」

またため息が一つ。
確かに自分を取り巻く状況は安全になった。
少なくとも此処では道を歩いていたらいきなり撃たれると言うことも無いだろう。
しかし安全になって憂鬱になると言うことは、自分は危険を求めているとでも言うのだろうか。
戦闘民族じゃあるまいし、と呟きが漏れる。
しかし、事実そうなのかも知れない。

「んー……確かに刺激が足りない気はするな、うん」

自らが鈍摩していく感覚、というのが嫌なのだろうか。

24白い女:2011/04/10(日) 00:54:22 ID:cskw3E.60
>>23
「刺激が足りない。か」
むー。と首をひねって。
そう言えばそんな気がするな。と相槌を討つ。

「そういえば、普段なにしてるのさ?」
不意に、気になった。
特に意味も無く、ただ聞くだけで。

25イェルサ:2011/04/10(日) 01:10:58 ID:0ebeJXvA0
>>24
「普段、か。そうだな……」

自分の日常を思い返してみて、余りにも普通で少し笑ってしまった。
これが今まで続いていて、これからも続いていくのか。
何だか少しやるせないな、と思ったが、平凡と恒久こそが日常なのだろう。

それは一応幸せと呼べるかも知れない。

「早起きして飯食って、琉沙のヤローと口喧嘩して、客の相手して。
 後は帰って寝る。バイトが無い日は街行ったりもするな」

「笑っちまうほど普通だろ?」

そう言って少しはにかむ。
少し平和すぎるにしろ、身の丈にあった幸せではあった。

「じゃあ逆に、オマエは何してんだ?」

26白い女:2011/04/10(日) 01:23:21 ID:cskw3E.60
>>25
「あ、笑った。珍しいね」
その笑んだ頬に人差し指を押し当てた。
その表情を喜々とした表情で眺める女。

「僕?」
自分の生活を振り返ってみる。
定職についておらず、アルバイトをしている訳でも無い彼女は、
「日が出てる間は本を読んだり眠ったり。
 夜になってから暇になるとぶらぶらしてみたり……かな」
なんとも酷い生活ぶりであった。

27イェルサ:2011/04/10(日) 01:30:10 ID:0ebeJXvA0
>>26
「……何だよ、悪いか」

少し照れくさそうに顔を背ける。
僅かに朱の差した頬は案外柔らかい。

「成程、悠々自適だな。
 ……自堕落とも言えるけど」

少し皮肉っぽく笑う。
その笑顔は何時もの様子よりも幾分か幼く見えるかもしれない。

28白い女:2011/04/10(日) 01:39:15 ID:cskw3E.60
>>27
「いや、全く」
意地の悪そうな笑みを浮かべ、頬を押す力を強めた。
その感触が思いのほか良い物だったのか、親指も加えた二本の指でつまんだ。

「むぅ……」
その顔に頬を膨らせて表情だけで反論してみる。

29イェルサ:2011/04/10(日) 01:46:06 ID:0ebeJXvA0
>>28
「ふぁなひぇ」

少しむっとした表情。
しかし怖いというよりは寧ろ滑稽な表情だ。

「ふぁるひふぁるひ、あひゃふぁるひゃらはひゃひふぇふふぇ」

一応謝罪しているらしいが、頬を引っ張られているため何を言っているのか分かり辛い。

30白い女:2011/04/10(日) 01:51:42 ID:cskw3E.60
>>29
「……フフッ」
思いのほか面白かったらしく、
視線から無理矢理外す為に顔ごと逸らした。

「いや、悪かった悪かった」
指を離すと両手を合わせて懇願するようなポーズ。
首を傾げて「ね?」という言葉も添えて。

31イェルサ:2011/04/10(日) 02:00:05 ID:0ebeJXvA0
>>30
「全く……」

少し不機嫌そうな表情を作るが、あくまで上辺だけのもの。
敵わないな、なんて内心では思っているようで、すぐに穏やかな表情に。

「そうだな、悪いと思ってんならオマエのケーキを一口くれ」

32白い女:2011/04/10(日) 02:06:27 ID:cskw3E.60
>>31
「ん、いいよ。
 ……欲しいなら欲しいと、素直に言えばいいのに」
いつの間にか運ばれていたケーキ。
既に何口分か欠けたそれをスプーンで掬い、

「はい、あーん」
差し出した。

33イェルサ:2011/04/10(日) 02:13:18 ID:0ebeJXvA0
>>32
「……おぉ」

反撃のつもりが全く効果がなかったようで面食らう。
それどころかスプーンまで差し出して。
羞恥プレイか?、なんて思っていると顔が少し熱くなっているのが分かった。

「……あむ」

しばらく逡巡、ようやく覚悟を決めたようでスプーンを咥える。
甘い、がそれ以上に恥ずかしい。

34白い女:2011/04/10(日) 02:28:14 ID:7hcwnxwgO
>>33
「あ、食べた」
呆気にとられた表情で見て。
次の瞬間には案の定と言うところか、ニヤニヤとした笑みを浮かべていた。

「どうだい?」
首を傾げて言葉を添える。

35イェルサ:2011/04/10(日) 02:33:54 ID:0ebeJXvA0
>>34
「……甘いよ、チクショー」

何だか負けた気がして悔しそうな様子。
耳まで赤い顔を背ける。
すると周囲の客から生温かい視線が向けられていることに気付いた。

「……」

物凄く気まずい表情である。

36白い女:2011/04/10(日) 02:39:41 ID:7hcwnxwgO
>>35
「うん、それは良かった」
と言うと、ケーキを一口。
ケーキの甘さに思わず笑みを溢す。

それからすぐ、周囲から向けられていた視線に気付き、
その白い肌を耳の先まで真っ赤にして俯くと黙ってしまった。

37イェルサ:2011/04/10(日) 02:43:16 ID:0ebeJXvA0
>>36
「……出るか」

一分か、一時間か。
どれほど続いただろうか分からない沈黙を小さな声が破る。
流石にこの状況は、生きた心地がしない。

38白い女:2011/04/10(日) 02:51:45 ID:7hcwnxwgO
>>37
「……出よう」
俯いたまま小さく頷くと残りのケーキを食べ上げる。
一刻も早くそうしたいらしかった様で、立ち上がるとイェルサの腕を強引に掴んで引き上げた。

39イェルサ:2011/04/10(日) 02:58:30 ID:0ebeJXvA0
>>38
・今回学んだこと〜イェルサの場合〜

――今回学んだことは?

「やっぱりな、周りの目は気にするべきだな」

――どうもありがとうございました。

女に引っ張られながら手早く会計を済ませ、店を出る。
扉を出た直後に笑い声が聞こえた気がするが気のせいだろう。
気のせいであって欲しい。気のせいに違いない。

「……」

無言。
顔は依然として真赤だ。

40白い女:2011/04/10(日) 03:04:33 ID:7hcwnxwgO
>>39
「……もうダメだ、僕は」
等とため息混じりに声をだす。
腕を掴んだままイェルサを支えに歩くものだからべったりとくっついている。

41イェルサ:2011/04/10(日) 03:08:45 ID:0ebeJXvA0
>>40
「……まあ、気にすんなって」

暫く店から離れた辺りで漸く口を開く。
実際は同じくらい気にして、恥ずかしがっているのだが。
ポン、と女の頭に手を置いて誤魔化す。

42白い女:2011/04/10(日) 03:22:49 ID:7hcwnxwgO
>>41
「うぅ……」
そうは行かないと、言葉は無いがそう言いたげな視線を上目遣いで向ける。

「……そう言えば、どこに向かって歩いてるのさ?」
不意に周囲を見渡して。

43イェルサ:2011/04/10(日) 03:32:28 ID:0ebeJXvA0
>>42
「……流石に気にするか」

苦笑気味である。
しかし過ぎたことは仕方ない、ということで先ほどのことは忘れるようにした。

「ん、この方向は家だな」

とにかく離れようと適当な道を歩いていたのだが、どうやら自宅のある方向だったようだ。
もう(主に精神的に)疲れたので帰るのも良いだろう。

「帰るか?」

44白い女:2011/04/10(日) 03:39:41 ID:7hcwnxwgO
>>43
「うん」
先程見せていた意地の悪そうな笑みの面影は既に欠片も無く。
ただそこには年相応……よりも若干幼く見える気弱そうな少女の顔があった。

「……帰る。今日はキミの家に泊まる」
断定。

45イェルサ:2011/04/10(日) 03:48:41 ID:0ebeJXvA0
>>44
「……おぅ」

何だか今日は驚かされてばかりな気がする。
いや、いつもだろうか?
ともかく言えることとしては。

今日は十分に刺激的な一日だった。

女の手を引いて家路を急ぐ。
会う前に感じていた憂鬱は何処かに吹き飛んでしまった。
或いは彼女が払拭してくれた、と言うべきか。

「……ありがと、な」

小さく呟いた本音。
聞こえなくても良い。
ただ伝わっていたら、少し嬉しい。


//そろそろ遅いので、ここらで〆といたしましょう。
//乙&ありでした!

46白い女:2011/04/10(日) 04:07:46 ID:7hcwnxwgO
>>45
上手く聞き取れはしなかったが、
その表情を見るからに何かいい事でもあったのだろうと思案する。
そう考える女の表情も笑顔に満ちていたのだった。

因みに、今日の出来事が相当に堪えたらしく、暫くはイェルサに対しての反応も大人しくなったという。

//お疲れ様でしたー。

47横島なつき:2011/04/10(日) 22:23:35 ID:Sj59lUuk0
千夜学園のブレザーを着た小柄な少女が、神社の境内にいる。
うがい手水に身を清め、簡単なお参りを済ませた少女は、
おみくじのボックスに100円を放り込み、穴から手を入れて中を探っている。

「……畏し、世々知らしめ御恵み散(はらら)かす神達。
 我今ここに100円玉を以て、我が身の上の向くべきを知らまく欲(ほし)。
 いざ此処(このところ)の神、御籤を以て御託(おんことづけ)の如く我に言教え給わんと、畏み畏み……」

いやに真剣な顔をしながら、ぶつぶつと何事か唱え……。

「これだっ!!」

びし、引き出したるおみくじを開いてみれば……。

「なになに。
 『降る雨はあとなく晴れて長閑にも日陰射し沿う山桜花――』
 ……大吉! きたこれぇー!!」

このところついてなかったのか、小さく跳ねまわりながら鼻息荒く大吉のおみくじの文面を眺めている。

48ゆすら:2011/04/10(日) 22:38:39 ID:Tzs1kWfM0
>>47
「ふああぁ〜、なんじゃ、騒々しい……」

大喜びする少女の横にある大きな建物、拝殿の扉が開き、どういうわけか中から人が出てくる。
巫女装束をだらしなく着崩した、小さな少女だ。眠気の残る目をこすり、大きくあくびをしている。

「私の平穏な昼寝を邪魔しおって……今なら鬼に戻っても良い気がするわい……」

寝ぼけ眼の視界に捉えた、薄ぼんやりとした人影を恨めしそうな目で見る。

49横島なつき:2011/04/10(日) 22:54:30 ID:Sj59lUuk0
一通り跳ね終わり、拝殿の段に腰かけていたナツキは、
中から出てきた小さな巫女さんに気が付き、その誇るようにおみくじを見せる。
『おみくじ』、『第六番』と背に銘打たれた小さな紙は、ナツキにこれから福徳の恵みあることを告げている。

「見て見て巫女さん! 大吉大吉!!
 大吉は結ばずに持って帰っていいんだよね!
 えーと、相場、山気を出すな。争いごと、勝てども後に恨みあり……。
 おお、ギャンブルだけは駄目か……。う〜む、神様、よく見てらっしゃる」

目線は巫女さんと手の中のおみくじを行ったり来たり、
巫女さんの恨めしげな様子も何のその、ナツキは真面目な顔になったりにこにこ笑ったり楽しそうだ。

「『心驕り身を持ち崩して災いを招く恐れあり』……。
 身を正しく守れ、だって。まぁ、当たり前のことだけど、結局は正直が大事ってことかー」

50ゆすら:2011/04/10(日) 23:07:10 ID:Tzs1kWfM0
>>49
「むー?」

少女の大吉アピールに巫女装束の少女、ゆすらは、変な鳴き声のような声を出す。
まだ完全に眠気が抜けきっていないらしい。しかし、その目の恨めしさの度合いは益々高まっていた。

「ほう、大吉とな……。まずはおめでとうと言っておくが……」

ゆすらは一旦拝殿に引っ込むと、何やら三角形に折りたたまれた新聞紙を持ってきた。
そしてそれを頭上に掲げたかと思うと、すぐに打ち下ろした。
すると、打ち下ろした新聞紙から風船が破裂するような音が鳴り、強烈に少女の耳朶を打った。
いわゆる、紙鉄砲という代物である。

「あまりはしゃぎすぎると、罰が当たるでな……気を付けるのじゃぞ」

どこか苛つきを感じさせる声で、ゆすらは言った。

51横島なつき:2011/04/10(日) 23:19:10 ID:Sj59lUuk0
>>50
「ぴゃあ!」

パァン! と軽やかな音を立てた紙鉄砲にナツキは驚く。
我に返ったかのように、はしゃぎすぎていた自分に気付く。

「あはい、ここ神社ですもんね。静かにします……」

軽く頭を下げ、おみくじをそっと胸元に抱く。
そこに来てやっと、助勤の類にしては巫女さんの容貌が幼いことに気付く。

「きみ、落ち着いてて偉いねぇ。ここの神社の人?」

そう言って、巫女さんの足元から頭の先までをさっと眺める。
目の前の少女を宮司の娘か、あるいはそれに類する近親縁者だと思ったようだ。

52ゆすら:2011/04/10(日) 23:40:20 ID:Tzs1kWfM0
>>51
「神社の人……のう」

紙鉄砲を再び撃てるようにしながら、歯に物の挟まったような言葉を漏らす。

「うーむ……昨晩のようにそのまま誤解させておいた方が良いのか、それとも明かすのが良いか……。
迷うところじゃのう…………」

ゆすらは眉間にしわを寄せて首を傾げたが、すぐに得心したように頷いて、

「面倒じゃ! おい、水霊!」

拝殿横の大きな池に向かって大声で呼びかけた。
するとどうだろう。池の水が何箇所かせり上がり、水鳥の形を成したではないか。
ある鳥は水面に嘴を差し、またある鳥は翼を広げている。水でできた水鳥たちの、なんとも幻想的な光景であった。

「……さて、ぬし。私が只人に見えるかどうか、尋ねようではないか」

腕を組み、堂々とした振る舞いでゆすらは問うた。

53横島なつき:2011/04/10(日) 23:58:33 ID:Sj59lUuk0
>>52
「お……おお! すげぇ!」

ナツキは水辺の美しい光景に目を奪われる。
後光を放たんばかりの少女の威容をよそに、池の傍らに駆け寄ると、
透き通った羽に嘴をすーっと通す水鳥の様子を、しゃがんで見つめる。
そのまま首だけ少女の方に振り向き、

「水神様が祀ってあるって書いてあったけど、これがそのパワーですかっ」

と、のたまった。『すごいです、神様!』の意に受け取れる物言いである。
が、ナツキは少女が巫女装束を身に纏っていることから、口寄せか何かを行って、
神様の霊験を借り受けることで、こうした神通力を示しているのだと微妙に筋違いの解釈した。
紛いなりにも霊感を持つ者なら、その少女自身が力の源泉であることに容易に気付くだろうが、
残念ながらナツキにその類の感性は具わっていない。

54ゆすら:2011/04/11(月) 00:22:49 ID:Tzs1kWfM0
>>53
「おっとっと……」

微妙にわかっていないらしい少女の様子が、腕組みさせたままゆすらをコケさせた。まるでコントだ。

「以前はこれで何とかなったのじゃがのう……。
小百合どの以上に鈍いということか」

うむむ、と困ったようなうなり声を上げる。
いかにして、この少女に自分がここの祭神だということを伝えるか。
それは一見簡単そうに見えて、中々に難しい問題だった。

「……水に文字でも描かせるか? いや、ダメであろうな。
水芸の類をしても、ああして喜ばせるだけじゃろうし……」

しばらく悩んだ後、苦々しい表情。

「…………ううむ、単純じゃが、ひょっとするとこれが一番良い方法なのやも知れぬの」

少し頬を赤くして少女に向き直り、

「ぬ、ぬし。私にくっつけ。……いや、抱け。幼子にするようにな」

いきなりな発言をした。

55横島なつき:2011/04/11(月) 00:30:46 ID:Sj59lUuk0
>>54
「……う、うん……?」

思い悩むような様子の末、抱き締めろと言われてナツキも軽く当惑する。
雰囲気から、それが何か大事なことなのだということだけ察している。
池のそばを離れ、拝殿まで戻ってくると、巫女装束の少女の段下に立ち……。

「いいのかな……。えっと、……失礼します」

ナツキもほんのりと頬を染めて、同じくらいの高さになった肩を包むように、優しく抱き付いた。

56ゆすら:2011/04/11(月) 00:46:49 ID:Tzs1kWfM0
>>55
(……思えば、人に抱かれるのも随分久しぶりな気がするのう)

少女の温もりを感じながら、ふと、ゆすらは昔に思いをはせる。
しかし、それも一時のこと。ゆすらは少女の片手を取ると、自分の胸に押し当てた。
ゆすらの顔は少し、を通り越して、もう真っ赤だ。少女の手にはさぞかし早い鼓動が――

「……ど、どうじゃ、ぬし。私の心の臓は動いておるか?」

――いつまで経っても、伝わってこなかった。

それは理屈の上では簡単だ。彼女の本質は神霊、言わば霊体である。
今少女が腕の中に包んでいるのは、神力で作られたまがい物の肉体だ。心臓など動いているはずもない。
だが、それを即座に理解しろというのは、普通の少女に対しては酷な求めだろう。
ゆすらはそのことをわかっていながら、自分が人間以外の何かだということを伝える、もっともわかりやすい方法をとったのだった。

57横島なつき:2011/04/11(月) 01:00:02 ID:Sj59lUuk0
>>56
「お、お、おお……?」

この子の髪、いい匂いがするなぁなどと呑気に思っていたナツキだが、
心臓という少女の言葉を耳にして、手の平に意識を向け、そして状況に気付く。

「あ……」

小さく声を上げると、そっと腕を解いて、少し身体を離す。
そうしてちらりと少女の表情を窺うと、さっと目を伏せて……。

「……私、神様に抱っこされたの、初めてです……」

と、照れたような、出し抜けにプレゼントを手渡されたような、
嬉しくも居所がない、といった具合に頬を緩めながら、胸の前で手をもじもじさせている。

58ゆすら:2011/04/11(月) 01:20:26 ID:Tzs1kWfM0
>>57
「驚かせたか? すまぬの、ぬし。
私がこのような姿をしておるがゆえに、このような余計な手間を取らせて……」

少し離れた少女に、まずはすまなそうに謝る。
そして、赤い顔のままゴホン、と無理に咳払い。

「……まあ、その……ぬしが今悟ったように、私は人ではない。ここに祀られた神霊じゃ。
ぬ、ぬしがそのことを理解したのは喜ばしいし……私も人に抱かれるのは久々じゃったし、その、気持ち良かったというか……」

そこまで言いかけて、耳まで赤くなったゆすらは「あああああ!」と叫びながら自分の頬を何度も打った。

「な、なんじゃこの空気は! 嬉し恥ずかしで、もうわけがわからんぞ!」

大声でわめいた後、ビッと少女に指を突きつけた。

「ぬし! 私に人肌を思い出させた責任を取ってもらうからの!」

59横島なつき:2011/04/11(月) 01:37:54 ID:Sj59lUuk0
>>58
「ぷっ、ふふふ、ひゃははは!」

気恥かしさを無理やり取り払おうとするような、少女、
……改め、神様の思いがけぬ可愛らしい様子に、ナツキは笑い出す。
そうしてひとしきり笑った後、ゆすらの言葉にこくこくと頷きながら、目の端に浮かんだ涙を拭って言う。

「そうですよね、人と神様と、昔はもっとずっと仲良しでしたもんね」

ナツキは、神と人とが心を通わせていた時代の御話を、よく知っている。
この神社を見つけて以来、何度か足を運んだが、その度にどこか寂しい場所だと思っていたのだ。
参拝客と居合わせることも殆んどなく、神社側の勤め人などついぞ見たことがない。

そこに、心優しい神様がひとりで暮らしているとなれば、それはどれほどの寂しさだろう。
自分のような無位の人間に対する気さくな態度、親しげな物言いには、
彼女の心が本来どれだけ人間と近しい場所にあったのか、それが如実に示されている。

「私、大抵いつも暇なので、時間を見つけて遊びに来ますよ。
 今度はお茶菓子とか、何か面白い物語とか、お土産に持ってきます」

そう言って、ナツキは屈託なく笑った。

60ゆすら:2011/04/11(月) 02:04:24 ID:Tzs1kWfM0
>>59
「うううー……」

余裕を取り戻したらしい少女に、ゆすらはまた、恨めしい目を向けた。
前と違うのは、頬を打った痛みによる涙が目の端に溜まっていることだ。そのせいで、見た目通りの子供っぽいふくれ面に見える。

「ぬし、それはたまに遊びに来るという程度の話じゃろう……?
その程度では、責任を果たしたことにならんぞ……」

白衣の袖で乱暴に涙を拭く。

「無理強いするわけではないんじゃが……もっとここに来てくれんと……その、少し困るでな。
私はもう、ぬしの人肌を覚えてしもうたし、きっと心の隅で、ぬしを求めてしまうじゃろうし……」

本来守るべき民を失い、気の遠くなるような星霜を独りで経たゆすらの意識は、その年月の重さに比例した強さで、近しい人間というものに飢えていた。
無論、これまでずっと人と接しなかったわけではない。人肌の温度を感じるくらい近くにいる人間に出会わなかった、と言うのが正しい。
それが今、先ほどのちょっとした出来事でそれを感じてしまい、そのせいで今まで膨れあがった押し込めていた「人間を求める心」の堰が切れてしまったのだ。

「ぬし、ここで働く気はないか……? もちろん、十分な報酬は約束する。食事も付ける。
もし望むなら……ここに住み着いてしまっても良い。どうじゃ……?」

言葉は探り探りだが、その瞳からは隠しきれない期待感が感じられる。

61横島なつき:2011/04/11(月) 02:20:14 ID:Sj59lUuk0
>>60
思いがけぬ熱烈なアプローチに、ナツキも流石に赤面する。
だが、肉親はおろか、ロクな友達もいない天涯孤独、そして住所不定、
おまけに上古の時代への憧れを持つナツキにとって、そこに不都合な話は何一つない。
ひとしきり、ゆすらの言葉を受け止めてから、

「ね、願ってもない話です……。
 巫女さんのバイトなら、経験あるし……」

と、言葉の上では至極短く、それだけ。
だが頭の中は『三食宿付き! 神社勤め! 可愛い神様と一緒!!』という言葉がぐるぐる回っている。

62ゆすら:2011/04/11(月) 02:33:07 ID:Tzs1kWfM0
>>61

少女の言葉を聞いてゆすらは「おお……」と半ば呆けた顔で頷いたが、
やがてその意味を完全に把握すると、

「おお!!」

満面の笑みで少女の手を取り、ぐるぐると回り始めた。

「そうか、そうか! やってくれるか!
ハハ、そうか……ぬしが、ここの巫女をな……!!」

大吉を引き当てた時の少女のはしゃぎっぷりがそのまま転写されたように、ゆすらは辺りを跳ね回った。
今のゆすらを見て、誰が神だと思うだろうか。この上ない笑顔で元気に浮かれる彼女は今、完全に外見通りの子供だった。

63横島なつき:2011/04/11(月) 02:50:42 ID:Sj59lUuk0
>>62
無邪気に跳ね回る小さな神様を見ながら、ナツキは再び拝殿の段に腰掛ける。
そして、スカートのポケットの中に入った、大吉のおみくじの文頭をそっと思い出す。

「御祐助をこうむって、福徳増し、
 なお日に進んで望み事は心のままになる、か」

もし本当に助勤が自分ひとりだとしたら、仕事は大量にある。
誰かとの暮らしも、一人に慣れたナツキには、煩わしく思うこともあるかもしれない。
それでも、いつだって神様が付いているのだ。きっと上手くいくだろう。
……そして、これからのことに先立って、まず最初にやるべき大切なことを、ナツキは思い出した。

「そうだ、神様。私の名前、……横島なつき、って言います」

64ゆすら:2011/04/11(月) 03:07:42 ID:Tzs1kWfM0
>>63
踊るように跳ね回る足を止め、ゆすらは少女、なつきに向かい合う。

「なつきどのか。その名、しかと覚えたぞ。
私はゆすら。この緋河神社の祭神にして――――」

もう一度、ゆすらは最高の笑みを見せて、

「見ての通りの、どうしようもない寂しがり屋じゃ。
これからよろしく頼むぞ、なつきどの!」

自分以外、誰一人として居なかったこの神社に、新たな仲間を迎え入れた。



//ここいらが切りの良いところでしょうか。
//かんてらさん、遅くまでありがとうございました!

65三代目“腎臓”(ジン):2011/04/11(月) 22:00:34 ID:onviSg/.0
空が僅かに明るくなり始めた異能都市。
街灯の光を受けて、艶めく銀色の瞳。
黒髪オールバックを撫で、獣の香りをほんのり漂わせながら、迷彩服を着た男は歩く。

「番傘の変人は見つからねーし……。
 女の子と巡り合えることのほうに期待しますかねえ」

彼が歩くのは、そこそこ大きな通りである。
しかしまだ朝では無い、歩行者とは時折すれ違う程度で、女の子との巡り合いなど期待薄
……なのかどうかは分からないが。

66ロージェンス:2011/04/11(月) 22:26:58 ID:1sJsd2CgO
>>65

その後ろ。
歩み寄る人がいる。
薄汚れた黒装束を細身の身体に多数の装飾品と共に鎖で縛った、視線を落として歩く不快な女の姿。

「……、……。」
 男を観察する彼女は物取りの類い。
 窃盗か、強盗か、はたまた未遂か……、それは相手の出方次第。

67三代目“腎臓”(ジン):2011/04/11(月) 22:35:46 ID:onviSg/.0
>>66
「女を好くのが俺の義務だって俺が言う〜♪」

アホな歌をぽつぽつ歌い、耳をポリポリ掻きながら、男は考える。

(誰か付いて来てねえ?)

鼻がピクピク動かし、右手でまた髪の毛を撫でる。
そしてどういうつもりか、男は歩く速度を落とし始めた。
後ろからは分からないだろうが、若干ニヤケながら。

68ロージェンス:2011/04/11(月) 22:42:34 ID:1sJsd2CgO
>>67

 女は男の歩みに合わせて遅くなる、着いてますよと言わんばかりに微妙な距離を開けて
 大通りから枝分かれする細い脇道でも探しているのだろうか、少し視線がズレる。

69三代目“腎臓”(ジン):2011/04/11(月) 22:53:06 ID:onviSg/.0
>>68
(おちょくられてんのかな……?)

向こうまで遅くなったのを背中で何となく感じる。

「……はあ、居ないねえ、女の子」

溜め息を吐きながら、尚も男は歩く。
二人の前にも後ろにも今は人は居ないようで、たまたま走る車もおらず。
そして、妙に横へ逸れる分かれ道が多いポイントに差しかかる。

(どっちが先に動くか……なんちゃってな)

悩む男。

70ロージェンス:2011/04/11(月) 23:09:16 ID:1sJsd2CgO
>>69

 人が居ない、車も来ない、逃げる道も追い込む道も多数ある。
 そんな場所で、女は行動に出る。

 脇道へ反れた。
 この男、金目の物は持ってないものだと考え、襲うのを止めたのだ。

71三代目“腎臓”(ジン):2011/04/11(月) 23:19:53 ID:onviSg/.0
>>70
相手は動かなかった。
いや、動いたが動かなかった。
それを確認して、男は。

「わん、つー、」

すたたた、と素早くバックし、ロージェンスが入って行った脇道へ飛び込んで、

「すりー、恥ずかしがるなよ娘さん!」

と叫びながら右腕を鋭く振る。
すると、その爪先から水で出来た弾丸のようなものが、ロージェンスへ向けて何発か放たれた。
もっとも、水の弾丸はロージェンスをギリギリ掠らない軌道を描いており、
当たったとしても殺傷能力は無い。

72ロージェンス:2011/04/11(月) 23:29:49 ID:1sJsd2CgO
>>71

 ざり。と半身振り向き、腰から獅子の彫刻が施された自動拳銃を取り出し、男へと銃口を向ける。
 軌道からわずかにズレたロージェンスの身体を水の弾が掠り、垂れ下がる鎖がガギガギと耳障りな音を鳴らして跳ねる。

「は、恥ずかしがってないわよっ!――て、言えばアンタみたいなのは悦ぶのかなァ?」
 御返し、とトリガーを引く。
 拳銃が轟と鳴いて鋼鉄の弾丸が男へと吐き出される。

73三代目“腎臓”(ジン):2011/04/11(月) 23:40:50 ID:onviSg/.0
>>72
「喜ばないさ、ただ楽しいだけってな」

鎖が立てる音に、彼の耳はピクンと動く。
飛んで来るのは本物の弾丸。
それに驚く様子も見せず、振った右手をもう一度振る。
その腕に弾丸がぶつかり――

「俺は女と駄弁ったりデートしたり結婚したりするのがライクなのさ!」

――ガギィン。
何か硬いモノに当たったように弾丸は高い音を鳴らし、彼の右腕に弾き飛ばされた。

「そういうわけでお姉さん。
 もうすぐ見える太陽を、お洒落して一緒に眺めませんかっと」

そのままの流れで、彼は三度自分の髪を撫でる。
その後の彼の手には、黒く硬そうな鍼のようなモノが数本握られていた。

74ロージェンス:2011/04/11(月) 23:59:55 ID:1sJsd2CgO
>>73

 弾丸がハジかれたのを見、舌を打つ。
 腰に拳銃を仕舞い、その手首にあるブレスレットを撫でると同じ拳銃が反対の手に現れた。

「ふ〜ん……。
 初対面の女性にいきなりションベンかけるのもライクの範疇?なぁんか服が濡れて気持ち悪いンですケドー」
 当たった水の弾で、ところどころ黒々とテカっているローブを指して口元を歪める。

「日の出ねぇ……、ロマンチックに紅い華でもプレゼントしてくれるわけ?」
 ジャリと腕輪が鳴ると、また一挺。
 同じ拳銃を二挺持ち、しかし構えずにニタニタと嗤う。

75三代目“腎臓”(ジン):2011/04/12(火) 00:17:32 ID:onviSg/.0
>>74
「お洒落の前には髪や肌を磨かなくてはならない!
 というわけで人も居ないし、手早く洗って差し上げようと考えたわけさ。どうよ」

彼は笑顔でそう言うが、どうよもクソも無いし、そもそも普通にわいせつ行為である。多分。

「ワオ、二丁拳銃。
 お姉さんに似合うのは、黒き薔薇か金色の向日葵と見た。
 うん、バッチリに違いない」

拳銃を見据えながら、鍼を握った右腕を振り被る。
が、その右腕をチラリと見て。

「……っと、『こういうの』はまだあんまりやらないほうが良いんだったな。
 ヒィちゃんに怒られちゃ敵わねーし」

バラバラ、と鍼を全て落とした。
そして、何故か「やれやれ」というポーズを採る。

76ロージェンス:2011/04/12(火) 00:35:26 ID:1sJsd2CgO
>>75

「野外で羞恥プレイに勤しむ趣味なんて、少なくとも私はイヤだわ……。どーせなら温か〜いお風呂入りたい、入ってないし」
 鍼を落としたのを見、気を抜く。
 少なくとも“こういうこと”は未だやらないらしい、相手の言葉に疑問を持つこともせずロージェンスはため息を吐く。

「薔薇はともかく向日葵ってデカ過ぎんじゃない? どっちにしても着けたくないケド……。
 ンでさー、私思うんだよ。その鍼とかこの水とか。この街の連中って揃いも揃って何もない所からよく出せるよねぇ。不思議で不思議で堪らないわー」
 女はケラケラと笑う。
 二挺の拳銃を手放すことはしない。

77三代目“腎臓”(ジン):2011/04/12(火) 00:52:26 ID:onviSg/.0
>>76
「風呂か……銭湯に行っている間に日が昇り切っても困るしだなあ。
 これが×××××のジレンマか……」

かなり真剣に悩んでいる。
×××××の部分は異世界の言語なので、恐らく理解できないだろう。
もっとも、雰囲気で分かる可能性は充分にあるが。
因みに彼は×××××ではなく△△△△△である。

「男は誰でも数本の鍼を持っているのだぜ、多分な。
 こっちこそお姉さんが銃を出した仕組みを知りたいところさ。
 ああ、俺のハートを魔法的に撃ち抜いて貰えないものだろうか」

やっぱり真剣に悩んでいる。
相手はまだ拳銃を持っているのに、緊張感はほぼ無い。

そして彼は、微笑みながら真面目な瞳をして訊いた。

「もう一度ビシリと訊いておこう。
 お姉さん、俺という男に興味は? デートしたいという感情は?」

78ロージェンス:2011/04/12(火) 01:10:44 ID:1sJsd2CgO
>>77

(なに、イマの。声がブレたような……?)
 奇妙な言葉に、頭の処理が追い付かず。雑踏のざわめきのように聞こえ、意味を汲み取ることは出来なかった。

「それは私も知りたいわ、なぁんかマドウキ云々って事しか思い出せてないし……?」

 男が“魔法”と言った時、意識の中で奇妙な音がした。スイッチを切り替えるような、そんな音。


「私をサッパリ嫌わないアンタに興味はある。
 ただ、そんな感情も意思も無い。私に好かれたいなら、まずは嫌ってくれなきゃ、腹の底から恨んで、殺してやりたいほど憎んでくれないと全然楽しめないからねェ」
 しかし、それ以上気にする事なくロージェンスは問いかけに答えた。

79三代目“腎臓”(ジン):2011/04/12(火) 01:23:58 ID:onviSg/.0
>>78
「マドウキ……機械?
 ふーむ、俺にはさっぱりだが、俺の同僚は興味持つんだろうなあ。
 まあ、当然だが、そんな奴らにお姉さんを弄くり回されたくは無いところだけどな」

ふん、と鼻息を吐く。

「暴力的な愛……うーむ、それも悪くないか?
 しかし、お姉さんが一向に俺に振り向いてくれないなら、嫌いになっちゃうかもだな?
 でも俺は自称しぶとい男ゆえ、相思相愛の道は険しいな……」

どちらかが好けばどちらかは嫌う。
そういう状況が彼には悲しいらしく、僅かだが泣きそうな顔になっていた。

「あ、そうそう、ついでにもう一つ質問。
 俺的にはもうどうでも良いんだが、訊いとかなきゃヒィちゃんに『喰らわれる』からな。
 この都市で、赤い番傘を差した不審な男を見たことは?」

彼が探す番傘の男、佐宗スグル。
先日の繁華街での事件にてロージェンスとスグルは共にその現場に居たわけだが、
そんな男が居たことは恐らく知らないだろうか。

80ロージェンス:2011/04/12(火) 01:38:51 ID:1sJsd2CgO
>>79

「……んー、どうしよっかなー?」
 ニヤリと歪めて勿体振る。
 しかし、今まで顔を合わせた男にそんな目立つヤツは一人もいなかった。
 もし、過去に見たことがあるとしても、ある日を境に記憶を喪失したロージェンスに覚えはない。

「アンタの同僚――上司? あー、どっちでもいいや――相当おっかないみたいだし。
 職務怠慢っつー事でアンタが『お仕置き』受けてくれると、私的には満足かも……。
 ――あ、満足ついでに好いちゃうかもねぇ? アナタのコト」
 もちろん、そんな事はない。
 ただ、男をからかって遊びたいだけである。

81三代目“腎臓”(ジン):2011/04/12(火) 01:54:04 ID:onviSg/.0
>>80
「知ってるなら教えてくれよう、俺はお礼にドレスでも買ってやる覚悟だぜ?
 今んとこ知ってるのはあの偉いお姉さんだけなわけだしな……」

スグルの交友録は残念ながら乏しいのだから仕方が無い。

「それで満足して貰えるなら、お安い御用……いや、ダメだな。
 好いてくれるのは当然嬉しいわけだが、その頃にはもう俺はあの世行きなわけでしてな。
 ああ残念」

巨大な溜め息を吐いて、頭をポリポリ掻く。
と、その時。

ゴオオオオオオオオオオオオ、オオオオオオオオオオオオン
……という唸り声のようなものが、地面の底から響いて来た。

「……ああ、申し訳無いお姉さん。
 相思相愛作戦はひとまずギブアップ、今日の俺は渋々帰ることにしよう。
 俺は諦めないぞー!」

響く唸り声に追い立てられるように、彼はバック走で素早く立ち去って行った。
頬笑み、手を振りながら。

//そろそろ寝させて貰いますです。絡みありがとうございましたー!

82ロージェンス:2011/04/12(火) 02:06:22 ID:1sJsd2CgO
>>81

 地を揺るがすような唸り声に、肩をビクつかせて驚き、周囲を見る。
 だが、なにも有るわけがない、今は奇妙な捨て台詞を吐いて何処かへと去っていく男の後ろ姿があるだけだ。

「……。変なヤツ」
 そう断じて、踵を返す。
 濡れたせいか冷えてきた、たしか前に頂戴したバックにタオルとか入っていたっけ。
 などと考えながら、脇道を抜けて公園へと向かってぶらぶら歩いていく。

//乙したー。遅くまでありがとうございました。

83有澤零砂:2011/04/12(火) 22:22:29 ID:i6WWeuFEO
(住宅街の一角に立つ一軒家。)

(すこし見たところ回りの家と変わらないそれは、)

(知識がある人間が見れば、窓は防弾ガラスで、壁には鉛などの合金が挟まっているのがわかるだろう。)

(そんなわかる人間が見れば、普通の家では無いだろう家の前には、)

(見たところ普通の少年が箒を片手に掃除をしていた。)

84ゼオラ=アドヴァルド:2011/04/12(火) 22:28:43 ID:cskw3E.60
>>83
「……」
有澤家に立ち寄る小さな黒い影。
その手には木で編まれたカゴの姿がある。
掃除に勤しむ有澤の姿を発見し、歩み寄っていく。

85有澤零砂:2011/04/12(火) 22:34:00 ID:i6WWeuFEO
>>84

(そちらに気づいたらしく手を止めそちらを見て、)

(すこし思い出すようなしぐさをして。)

「あなたですか、今日は何か私に用事でも?」

(あなたのことを思いだしたらしく、訪ねる)

86ゼオラ=アドヴァルド:2011/04/12(火) 22:39:54 ID:cskw3E.60
>>85
「別に……そんな大事な用じゃない、けど」
全身を黒い衣装で固めた紫色の長髪を持つ少女。なんか日中だと暑そう。
「希望するなら……簡単な説明。
 それと、あのパーツ……興味がある」
籠から取り出したのは以前簡単に見せた資料。
今少女の手元にあるものはこの前の物よりも分厚い。

パーツと言うのは恐らく有澤の持って帰ったアインの残骸の事だろう。

87有澤零砂:2011/04/12(火) 22:47:33 ID:i6WWeuFEO
>>86
「なるほど、そういうことか。」

(箒を片付け玄関を指差し。)

「立ち話で喋る事じゃないよね、まあ入ってよ。」

(ドアを開けて中に入るように促す。)

88ゼオラ=アドヴァルド:2011/04/12(火) 22:50:13 ID:cskw3E.60
>>87
「そう……」
少女自身が喋る事に慣れてないのか好まないのか、
その声に抑揚は無く要件も短く端的だ。

有澤に促されるまま入っていく。

89有澤零砂:2011/04/12(火) 22:55:23 ID:i6WWeuFEO
>>88
(特に喋る事も促さず、奥のリビングまで連れていき。)

「まあ座ってよ、何か飲む?」

(リビングの真ん中にある机と椅子を指差し、キッチンに向かう。)

90ゼオラ=アドヴァルド:2011/04/12(火) 22:59:22 ID:cskw3E.60
>>89
「要らない」
椅子に座り、膝の上にカゴを置く。
有澤を目で追って、準備の様子を眺めていた。

91有澤零砂:2011/04/12(火) 23:04:16 ID:i6WWeuFEO
>>90
「ならいいよ、」

(そしてすぐに戻ってきて自分の分の冷えた烏龍茶を机に置いて座る。)

「さて…どちらの話からする?必要ならパーツをすぐに持ってこさせられるけど。」

92ゼオラ=アドヴァルド:2011/04/12(火) 23:10:15 ID:cskw3E.60
>>91
「……じゃあ、パーツ」
少し考え、そう告げた。
視線を下ろし、膝の上の籠から先程の資料と小さな袋を取り出した。

「……はい」
そしてその小さな袋を有澤に手渡す。
中には数枚のクッキーが入っていた。

93有澤零砂:2011/04/12(火) 23:18:40 ID:i6WWeuFEO
>>92
「わかった、じゃあちょっと失礼。」

(とポケットから携帯電話のような機械を出し、すこしその機械と話して)

「すぐ来ますよ、おっと…これはありがたい、僕は甘いものには目がなくてね。」

(そう言って食器棚から皿をだし、クッキーを並べ始める。)



スタスタ

(あなたがある程度耳がよく聞こえるなら、リビングに向かってくる足音が聞こえるだろう。)

94ゼオラ=アドヴァルド:2011/04/12(火) 23:24:13 ID:cskw3E.60
>>93
「そう……よかった」
これも少女の人柄か。
出た言葉には中身が在る様に感じにくかった。

「……?」
何となく、程度ではあるがその音を感じる。
が、それもそれだけでとくにアクションを起こさない。

95有澤零砂:2011/04/12(火) 23:37:11 ID:i6WWeuFEO
>>94
(少年はその様子はあまり気にせず再び椅子に座る。)

(そして、ドアが開きリビングに箱を抱え、
サングラスをかけたメイド服の少女がそちらにお辞儀してからリビングに入り、
机の横に箱をおいた。)

「ありがと。」

(少年が少女に声をかけると表情も変えずお辞儀をし、部屋を出ようとする。)

「…」

(そして少女は、サングラスごしに表情のない目でそちらをすこし見て、部屋を立ち去る。)

「一応、こちらでもいろいろ調べさせてもらったよ。」

(箱からパーツを取りだし、丁寧に机の上に置く。)

96ゼオラ=アドヴァルド:2011/04/12(火) 23:42:43 ID:cskw3E.60
>>95
「そう……どこまで?」
少女は有澤に目は向けず、
手元の資料のページを捲りながら聞く。

「……」
現れた少女に何か思い当たる事でもあるのか、
珍しく身体を動かし去っていくまでの間その姿を見ていた。

97有澤零砂:2011/04/12(火) 23:47:41 ID:i6WWeuFEO
>>96
「流石にこれを構成素材とかぐらいしか解らなかったよ、
この世界の技術もなかなかに高いね。」

(ため息をついてパーツを眺めながら)

「あいつはロボットだよ、まあ好き好んでサングラスをかけたり変わり者だけどね。」

98ゼオラ=アドヴァルド:2011/04/12(火) 23:54:54 ID:cskw3E.60
>>97
「そうね……」
またも適当な返事をする。
それと同時に資料のあるページを有澤に向けて出す。
研究所。という字がトップに来ている様に、研究所と言う場所についての大まかな説明が書かれていた。

「世界の悪は大体が此処。ご都合主義で溢れた集団。
 大まか……だけど、それが本質」
更に資料の内容をかみ砕いた説明を口で流す。
目線は有澤とパーツを適度に交差させていた。

「……別に」
少女が去った後は、何事も無かったかのように会話をする。

99有澤零砂:2011/04/13(水) 00:03:50 ID:i6WWeuFEO
>>98
「なるほど…録でもない組織も有るものですね。」

(すこし、考えてパーツを見つめ。)

「そんな組織が作った録でもない物ってことですか。」

100ゼオラ=アドヴァルド:2011/04/13(水) 00:08:23 ID:cskw3E.60
>>99
「……そう」
小さく頷くと、顔をあげる。
そしてパーツを手に取り。

「研究所製。
 造られたのは……割と最近」
それを指さしながら、説明口調で。

101有澤零砂:2011/04/13(水) 00:13:33 ID:i6WWeuFEO
>>100
「…一体『これ』や『あれ』は何を目的に作られたものなんですか?」

(パーツを見ながら)

「ただの戦闘用、と言うわけではないんでしょ?」

(そして一息はさみ。)

「でもってそんな情報どこで仕入れたんですか?」

102ゼオラ=アドヴァルド:2011/04/13(水) 00:19:07 ID:cskw3E.60
>>101
「……そこまでは、知らない。
 でも、アレが言うには……世界征服……?」
有澤の「あれ」という言葉に反応して資料を探る。
出てきたのは一枚の写真。それをそちらへと向ける。

写真の中身は、森林の中で数人の白衣に囲まれる漆黒の塊。
その塊をよく見れば、以前都市襲撃にきた真紅の塊と同じ形をしたものである事が解る。

「……貴方にも、秘密は有る。
 それを簡単に聞くのは……危険」

103有澤零砂:2011/04/13(水) 00:27:24 ID:i6WWeuFEO
>>102
「世界征服ねぇ…世界なんて手中に納めて何がいいんだか。」


(と言いながらも写真をよく見ていて)

「前に見たやつと色が違うね、同型かな?」

「おっと、それは言えないか。
ならそれには触れないようにしよう。」

104ゼオラ=アドヴァルド:2011/04/13(水) 00:41:59 ID:cskw3E.60
>>103
「さぁね」
またも空返事で返し。

「……それも、解らない。
 ただ……凄く、驚いた」
少女は珍しく顔を上げ、有澤の方を見る。
「始め、資料として在ったのは、これだけ。
 そして、設計上……同型はありえない」
資料のページを進めつつ言葉を続ける。
次のページには彼らの基本設計、
つまり「『特定の』人間に装着して力を発揮する『装甲』と『精神』が一体化したもの」
と、大まかに説明すればこのような事が説明されていた。

……つまり、Aと言う人間にはAという専用の装甲が割り当てられている。
と、言う事は全て装甲がワンオフである事が考えられる。

「それに、この前のアレは……敵の中枢。量産ならまだしも……」
そう、以前現れたミラージュは敵軍団のリーダー機。
それだけに、二機以上存在する可能性は無いのである。


「探る事は……進めない」
言い終わるとほぼ同時、有澤に少女の瞳が向けられる。
それは力と威圧に満ちた視線で、少女と言う成りにはふさわしくない物。
やはり、この少女にも「秘密」とやらは有るのだろう。

105有澤零砂:2011/04/13(水) 00:57:56 ID:i6WWeuFEO
>>104
「…失礼。」

(資料に目を通し、少しだけ考えて。)

「それを説明しうる可能性を2つ思い付いたよ。」

「一つは色を塗り替えた、理由は知らないけど非常にシンプルな答えだ。」

(ふと思い出したように、急に。)

「そういえばさ、この前のあの時そのミラージュって研究所から離反を宣言したよね。」

「研究所としてはさ、ミラージュが開けた穴を埋めるために、
それに離反したミラージュを迎撃するために、
どうしてもミラージュと同じ位の戦力を確保しなければいけなくなるよね。」

(そう言いつつ向けられた瞳をたじろぎもせず見返し。)

「わかってるよ、そこまで命知らずの馬鹿じゃない。」

106ゼオラ=アドヴァルド:2011/04/13(水) 01:03:51 ID:cskw3E.60
>>105
「それもあり得る。
 ただ、ありえるだけ」
本当の事は知らない。
そう言いたげに首を振る。

「……これだけ。
 ミラージュが、どう……とか、必要無い、でしょ?」
パーツを有澤に返す。

「そう……それでいい」

107有澤零砂:2011/04/13(水) 01:16:36 ID:i6WWeuFEO
>>106
「その様子なら本当に知らないか。」
(はぁとため息をついて)
「ちなみにもうひとつ思いついた可能性は、
人間側の『複製』とだけいっておこう。」
(小さい声でそう呟いて)


「…正直なところ、何でもいいから情報が欲しいって言うのが本音なんだけど、
君が必要無いと思うのならきっとそうなんだろう。」

(パーツを受け取りながら、)

「返すってことは、これは僕が持っていても大丈夫なのかな。」

108ゼオラ=アドヴァルド:2011/04/13(水) 01:27:34 ID:cskw3E.60
>>107
「これが限界……」
資料をかき集め、木のカゴに直してしまう。

「別に……。
 ミラージュの『身体』は、私の友達……それだけ」
無愛想でこういった出来事には興味の無さそうな少女ではあるが、
何故動くか。というとそういう答えになるのだろう。

「……要らない。好きに使って。
 試作型リーダー機……パーツの性能も悪くない筈」
確かに、パーツ自体は高性能である。
が、ミラージュに剣で貫かれ、爆散。
その前から戦闘による損傷が在る為、一部の例外を除き使いどころに悩むパーツが殆どでは有る。

109有澤零砂:2011/04/13(水) 01:40:38 ID:i6WWeuFEO
>>108
「まぁ、また何かわかったら連絡でもくれると嬉しい。」

(そう言いながら携帯の連絡先のメモを渡し)

「まぁ、君の友人を助けるためにもできることはやらせてもらうとしようか。」

「わかった、ありがたく使わせて頂こう。
ただ、この様子じゃ一手間かかりそうだけどね。」

(まじまじとパーツを見つつ。)

「…帰るなら、玄関まで送ろうか。」

110ゼオラ=アドヴァルド:2011/04/13(水) 01:44:10 ID:cskw3E.60
>>109
メモを受けとり、丁寧に畳むとカゴの中に入れた。
「……ありがと」
そこに笑みはないものの、
小さく頭を下げる事で彼女なりにも感謝の気持ちを示しているのだろう。

「……じゃあ、お願い」
そう言うと、来た道を戻って玄関まで戻っていく。

111有澤零砂:2011/04/13(水) 01:53:23 ID:i6WWeuFEO
>>110
「友達を助けたい、っていう気持ちは…まぁわかるからさ。」
(少しだけ遠くを見て)

(そして玄関までは何事もなくたどり着き、ドアを開き。)

「気をつけて帰りなよ、いやまぁ君なら大丈夫か。」

112ゼオラ=アドヴァルド:2011/04/13(水) 01:56:38 ID:cskw3E.60
>>111
「心配、されるだけ……ね」
クスリ。と笑い声の様な物を上げると、
玄関を出て、そこで振りかえり。

「じゃ、ね」
小さく手を振るとふたたび歩き出し、有澤家を後にしたのだった。

113有澤零砂:2011/04/13(水) 01:59:27 ID:i6WWeuFEO
>>112
「では、また。」

(そう言って見送ってから、リビングに戻り烏龍茶を飲み干し、
クッキーをつまみつつパーツとにらみ合いを始めた。)

114横島なつき:2011/04/13(水) 22:49:14 ID:Sj59lUuk0
【緋河神社・鳥居】
黒い原付が、朱塗りの鳥居のそばに停まる。
乗っていたのは千夜学園のブレザーを着た小柄な女の子。
フルフェイスのヘルメットを取り外し、髪を払う。

「……ふー」

荷台には大きなキャリーバッグが無理やり固定されている。
こいつを外して下ろして運ぶのが一番面倒臭い。
このまま境内に乗り入れていいものか、思案しているようだ。

115ゆすら:2011/04/13(水) 22:59:33 ID:NyPrAkns0
>>114
鳥居から見える境内に、いつもは置いていない物が置いてある。
大小の葛籠や壺、弓や矢籠などのそれらは、社務所の近くに無造作に集まっていた。
多く、古い物のようだが、雑多にあるので一見のみの市のようにも見える。

「……ん? おお、なつきどの! よう来たの」

それらを運んでいるらしい張本人――ゆすらが、何かの剣を担ぎながら現われた。
が、すぐに周囲の「惨状」を見て申し訳なさそうに眉尻を下げ、

「散らかっていてすまんの。ああ、その乗り物はそこいらに停めておいてくれてかまわんでな」

目線だけで、境内を示す。

116横島なつき:2011/04/13(水) 23:06:56 ID:Sj59lUuk0
>>115
「あ、遅くなりました」

神社の祭神、ゆすらの歓迎の言葉を受け、ナツキは軽く頭を下げた。
ヘルメットを左のハンドルに掛けると、原付に腰掛け、片足を付きながら優しくアクセルを捻って前進する。

「わぁ……何です、これ……。お宝の整理ですか?」

興味はあれど、モノの良し悪しまでは分からないナツキ。素直に見たままを口にする。

117ゆすら:2011/04/13(水) 23:18:56 ID:NyPrAkns0
>>116
「ハハハ、残念ながらお宝ではないよ。
 どれもこれもここ以前の任地を去る際にもらった土産物でな。反物とか、花瓶とか……。
 まあ、そういったものばかりじゃよ。
 なつきどのが来るから、何か役に立つものがないかと、倉をひっくり返しておるところよ」

言ってから、ゆすらは担いでいた剣を降ろした。
両刃の、刃渡り70㎝ほどの剣が、金細工の施された鞘に入っている。

「もしかしたら、こいつはお宝かも知れんがの。
 高天原から持ってきた十握剣(とつかのつるぎ)じゃ」

掛け軸でも紹介するような口調で、ゆすらは言う。

118横島なつき:2011/04/13(水) 23:29:14 ID:Sj59lUuk0
>>117
へー、と、年期の入った品々を眺めていたナツキだが、剣の名にはぴくりと反応する。

「十握剣!」

それは、天に住まう神が持つ、長さ十束あまりの剣の総称だ。
イザナミが火神を切り殺したのも、スサノオがオロチを討ったのも、
タケミカヅチがこの国を平定する際に携えていたのも、いずれもこの剣の親戚筋にあたる。

「その十握剣にも、やっぱりかっこいい名前があるんですか?」

神話の中に登場するばかりの宝剣にナツキは目を輝かせている。

119ゆすら:2011/04/13(水) 23:41:31 ID:NyPrAkns0
>>118
「おお……食いつくのう、なつきどの」

十握剣に目を輝かせるなつきの勢いに気圧されながらも、
ゆすらは剣についての説明を始める。

「残念ながら、ぬしが期待するような名はないよ。
 そもそもこの剣がやったことと言えば、黄泉の入り口にある桃の木の剪定くらいだしのう……。
 そんなことで名前が付いたら、高天原にある十握剣のほとんどに名前が付いてしまうよ」

すまんの、と謝って、ゆすらは話を切る。

120横島なつき:2011/04/13(水) 23:49:29 ID:Sj59lUuk0
>>119
「むむむ、残念。
 ……いえ、むしろ名前を付けるなら今からでも遅くないのでは!」

と、じっと剣を見て眉を寄せて考える。そして自分のバイクを見やり、

「……とりあえず荷物を置いてきます。そんで大急ぎで戻ってきます!」

そう言って、ばばるん、っと原付のアクセルを入れる。
剣以外にも、多くのものに興味を惹かれている様子である。
境内の砂利を鳴らしながら、社務所の脇まで原付を止めに言った。
桃、桃。オオカムヅミ、剪定……ゆすら、水神……、と、ぶつぶつ呟きながら。

121ゆすら:2011/04/14(木) 00:00:31 ID:NyPrAkns0
>>120
「ゆっくりで良いよー」

原付と一緒に社務所に向かうなつきにそう呼びかけ、
ゆすらは近くの大きい葛籠に剣を立てかけた。

「……桃か。あそこの桃を食べなくなって、いったいどのくらいになるのかのう」

立てかけた剣を見ながら、思いふける。
脳裏に浮かぶのは、神となった桃の実と、その味。
自然に出てきた唾を、ジュルリと飲み込む。

「すさまじい場所じゃが……桃の味だけは格別じゃった……」

きっと今、ゆすらの顔は、これ以上ないくらい緩んでいるだろう。

122ブリッツ:2011/04/14(木) 00:09:48 ID:rJV/xpZs0
「……神社か…こんな場所にあったっけか」

エンジン音を響かせるバイクと巫女、そして少女(に見える女性)を横目に
ぶつくさとなにやら小言を漏らしつつ鳥居をくぐる人影。

「………ま、神社は神社か」

いや…人影、というにはなにやらシルエットがおかしい。
黒いジャケットから見え隠れする肌は赤茶けており、深く被った帽子からは尖った鼻先が見える。
そして腰のあたりからは、長い円錐型の尻尾。
全体的に…トカゲを人型にしたような、いわゆるリザードマンというか、竜人というか。

そんな人外が、ここ緋河神社に参拝に来ていた。

123横島なつき:2011/04/14(木) 00:10:30 ID:Sj59lUuk0
>>121
社務所の前に荷物を立て掛けるだけしてナツキは戻ってくる。
見れば、神様が妙に緩んだ顔をしている。

「なにか、天の国の御馳走でも思い出してます?」

と、ぴたりと当てて見せた。
当のナツキはというと、籠に立てかけられた見事な拵えの剣に触っていいものやら。
他にも、弓やら何やらの古めかしい道具たちに興味津津だ。

124ゆすら:2011/04/14(木) 00:34:38 ID:NyPrAkns0
>>123
「……おっと、これははしたないところを見せたのう」

別に垂れてはいないが、白衣で唾を拭う仕草だけはする。

「先刻、私が言うた桃はの、神となったゆえか知らぬが、大層美味でなぁ……。
 あの味に慣れると、地上の桃が口に入らなくなって困るくらいでの」

実際、かなり困っておるんじゃよ、と付け加える。

「黄泉の国に通じる道の傍らにあるゆえ、そう易々と行くことはできんのだが……。
 歓迎の意味を込めて、なつきどのにも食べてもらおうかと考えておるんじゃよ」

ゆすらは、言外に「一緒に黄泉の入り口に行かないか」と誘っているようだ。

>>122
と、その誘いは唐突な参拝客に阻まれる。

「おっとっと、客人のようじゃな」

気配と足音を感じて振り向いたゆすらは、そこに立っている者の姿に一瞬、言葉を失う。
が、すぐにいつもの微笑顔に戻り、

「これはこれは、珍しい客人もいたものじゃ。
 ……いや、失礼。我が神社へようこそ、お客人。
 少し散らかっておるが、勘弁してくれい」

言って、ゆすらはペコリとお辞儀をする。

125横島なつき:2011/04/14(木) 00:46:40 ID:Sj59lUuk0
>>122
帰ってきたところに参拝者らしき姿。その人影の独り言は流石に聞こえず……。
ゆすらがその異様の人影にお辞儀をしたのを見て、ナツキもまた無言で会釈をする。

>>124
美味しいものを覚えると、他のものが食べられないなんて、
何だか猫みたいかもと思ったが、当然口には出さない。
ナツキ自身も果物、甘いものには目がなく、正直、食べてみたい。

「それは……魅力的かもしれません」

だが黄泉比良坂と聞くと、
ナツキにはどうしても蛆の沸いた醜女のイメージが付きまとう。
そのイメージをさっと振り払って、

「桃は別にしても、高天原に行けたら……いいですねぇ」

そう言って、ナツキは空を見上げた。

126ブリッツ:2011/04/14(木) 00:51:44 ID:AXRozTjwO
>>124
「……黄泉…なぁ…」

先ほどから、今来たばかりの自分には何やら理解しがたい会話をしている二人。
この神社の人間であることはわかるが…。
とりあえず、丁寧なお辞儀に対して軽く頭を下げ。

「我が、ってことは あんたが神主か」

……小さい。種族、性差を考えても小さい。
神主という職に着くには若すぎるように思えた。

>>125
「…就職祈願に」

会釈を返す竜人の口から出てきたのは、その姿に見合わぬ生々しい一言。…何を隠そう、この竜人ブリッツ・アーレント 現在無職である。

黄泉や高天原といった単語の飛び交うこの場には、なんとも不釣り合いだった。

127ゆすら:2011/04/14(木) 01:09:01 ID:NyPrAkns0
>>125
「そう構えることもないよ、なつきどの。実際に黄泉の領域に足を踏み入れるわけではないんじゃ。
 入り口に至る道の側に、その桃の木の子孫に当たる木々が集まった桃園があっての。
 そこに行こうかと思っておるんじゃ」

そして、フフンと何やら得意げな表情になって、

「あそこは良い場所じゃぞー。
 私が整備したから、というわけではないんじゃが、
 これまで私はあそこ以上に綺麗な光景を見たことはない」

しかし、それとな、と続ける声はやや険しい。

「高天原だけはやめておけ。ぬしが行っても、きっと良いことはない」


>>126
「いや、私は神主ではないよ。
 ……とはいえ、何と言ったらよいものかのう」

首を捻って、一人悩み始める。
巫女装束の小さい少女……ゆすらは、ここに祀られている神である。
ところが、残念なことにとてもそうは見えないし、第一、いきなり神だと言ってもそれを受け入れる人間は少ない。
そのことを嫌と言うほど経験してきたゆすらではあるが、いつもこの時だけは悩んでしまうのだ。

128横島なつき:2011/04/14(木) 01:17:15 ID:Sj59lUuk0
ナツキはすんでのところまで出かかった、
『こども神主・おとな無職』という言葉を必死で飲み込む。
……みんな不幸になる言葉ってのは、ある。

男に対し、ゆすらが神様であることは、自分が説明するのがいいだろう。
桃や高天原の話は、客人の手前、一旦取り止めて、

>>126>>127
「実は、この方がこの神社のご祭神、ゆすらひめのみこと、なんですよ」

と、ありもしない胸を張って言う。

「まぁ、御覧の通り人と同じ姿をしてるので、ぱっと見は分かりませんが……」

129ブリッツ:2011/04/14(木) 01:24:22 ID:AXRozTjwO
>>127
「違う…のか。…まぁ、偉い役職には就いてるんだろう」

それを気にする必要性は、少なくとも今は無い。
もし必要になったらその時聞けばいい。

…まぁ、自身もヒトではない。人ならざる存在に対しても、いくらかは寛容そうだが…。

>>128
「ゆ…ユスラヒム?…この小さいのが…?」

名前を間違え、本人の前で小さいなどとは罰当たりもいいとこだ。
…悪意は無いのだが、礼儀がなっていない。

「って事は、要するにカミサマって事か。…たまげた」





「あ、ってことは 今口で祈願したいこと伝えれば早いな」

130ゆすら:2011/04/14(木) 01:39:13 ID:NyPrAkns0
>>128
「ぬ、ぬし、なんじゃその、「ゆすらひめのみこと」とは!」

紹介された自分の名前が微妙に長くなっているのに気付き、
ゆすらは赤くなってあわあわし始める。

「こうか、こう書くのか!?」

ゆすらは立てかけてあった十握剣で砂利に文字を書くという、
宝の持ち腐れ度MAXな行為で、地面に「ゆすら姫命」と書いた。

「字面が何だか怪しいぞ、なつきどの!」

ゆすらが言いたいのは、書いた文字から取れる印象が、
昨今の秋葉原近辺に出没する人種が使うそれと同じだということだ。


>>129
「ま、待て、ぬしも待て」

少しパニックを起こしかけた状態で、ゆすらは待ったをかける。

「いきなり就職祈願と言われても加護の与えようが無いでな。
 まずは、ぬしの希望を聞かねば。
 就きたい具体的な職業とか職種とか、何ぞ希望があるじゃろう?」

131横島なつき:2011/04/14(木) 01:54:15 ID:Sj59lUuk0
>>130
「別に、おかしなところはないと思いますけど……。
 格式ある漢字に直すと、こんな風でしょうか」

予想外の反応にナツキはキョトンとして、
自分も靴の先で、『山櫻桃毘賣命』、と文字を書く。

「お名前、ゆすら、としか伺ってないので、
 正式な名前で呼ぶとしたらこんな感じかな、って」

>>129
竜人と思しき男性には、あなたもそう思いませんか、と、目線だけ。
真面目に就職祈願をしにきた様子。二人の話の邪魔にならぬよう努めることにした。

132ブリッツ:2011/04/14(木) 02:06:39 ID:AXRozTjwO
>>130
「…………ブフッ」

どこからどう見ても「ゆすらひめいのち」である。そこはかとない痛々しさが漂う。
慌てふためく彼女の様子とその文字列に、思わず吹き出した。

「…あ、ああ…そうだな、ごもっともだ」
「これ…というのは無いんだが、まぁ…並み程度の収入があって、経験不問で…」

並べる条件がまた生々しい。
とりあえず一番の条件は「機械を使わない仕事」だそうだが…。

>>131
「…とまぁ、悪い。」

と、ふと何かを思い出したらしく切り返し
何をするでもなく、その場から立ち去ってしまった。

133ゆすら:2011/04/14(木) 02:19:30 ID:NyPrAkns0
>>131
「……あっ、ああ、そっちの「ひめ」か……」

自分の勘違いを正され、ゆすらは深い息をつく。
妙なところで現代感覚の神は、先ほどまでの「邪念」をぶるると首を振って振り払い、
幾分か真面目な表情になった。

「なつきどの、おそらくぬしの言うておるところの「正式」は、記紀神話によるものであろうよ。
 確かに、それに倣うのであれば、そうした表記になるであろうな」

持っていた十握剣を、再び立てかけて、

「しかしの、それは「正史」に登場することを許された神に与えられたものであって、
 私のような存在には適用されぬのだよ、なつきどの」

そのことに関してどう思っているのかわかりづらい、無表情に近い顔で言った。

>>132
今時、機械に触れない仕事などあるのだろうか、などと考えながら、
ゆすらは自分にできる最大限の加護を与える。

「ぬしの希望がいまいち見えてこぬのだが……まあ良い。
 瑞祥の気(吉兆の気配のことだ)に当てられやすいようにしておくでな。
 それで良かろ……とっと、忙しい御仁じゃの。
 また来るのじゃぞ、きっと今のでは不十分じゃろうしな」

慌ただしく去る竜人を、ゆすらは微笑みながら見送った。

134横島なつき:2011/04/14(木) 02:40:31 ID:Sj59lUuk0
>>132
「あ、またおこしください!」

ナツキは去りゆく人影に頭を下げる。
今度来た時には、ゆっくり話が出来るようにお茶を淹れよう、と思いながら。

>>133
「そうなんですか……。
 それじゃ、ゆすら様はゆすら様、なんですね」

そう言うと、砂利に浮かんだ堅苦しい文字をさっと消す。
ゆすらの出自は、出会って以来ずっと訊くのが憚られていたことだ。
……その後ろ暗い一片を、確かに垣間見たように思う。
そして、今、全てを知る必要はない、とも。
触れるべきではない部分に触れた気がしたナツキは、
……流石に謝るのも大げさすぎる、と、黙って目を伏せることにした。

135ゆすら:2011/04/14(木) 02:56:10 ID:NyPrAkns0
>>134
「ま、そういうことじゃ。
 今までのようにゆすら、と呼んでくれればそれで間違いはないよ」

目を伏せるなつきの背を、気にするな、とでも言うように優しく叩く。

「さて、どうするね、なつきどの。
 ぬしさえ良ければ、これから黄泉の桃園へ案内するが。
 それとも、社務所の方に用意した、ぬしの部屋でも見てみるか?」

136横島なつき:2011/04/14(木) 03:02:46 ID:Sj59lUuk0
>>135
「……はい」

ナツキは短く答えて、小さく微笑む。
癖なのか、胸の前に手を組んで、自然にゆすらの方へ向き直る。

「流石に今から黄泉国の外れまでは心の準備があれです……。
 荷物も落ち着けたいので、お部屋からお願いしていいですか」

そういって、社務所の入口に立てかけたままのキャリーバッグに目をやった。

137ゆすら:2011/04/14(木) 03:25:39 ID:NyPrAkns0
>>136
「ま、道理じゃな。桃園はまたにするとしようか」

言って、ゆすらはなつきについてこい、という仕草をする。
社務所の扉を開け、履いていたサンダルを脱いで社務所に入る。

「こっちじゃ、足元に気をつけるんじゃぞ。
 土間から座敷へ上がるときの段差が少し高いでな」

なつきの職場になるであろう、社務所の座敷を奥に進んでいく。
社務所の奥、構造上参拝客から見えないようになっている居住スペースに入るとすぐに、
テレビや布団のないこたつがある居間に出た。

「見ての通りの居間じゃ。社務所に一番近いゆえ、ここで着替えることもあるじゃろうな。
 一旦、キャリーバッグのほうはここへ置いていくが良いじゃろう」

こたつを少しどかしてから、ゆすらはまた先へ進む。

138横島なつき:2011/04/14(木) 03:35:44 ID:Sj59lUuk0
>>137
「お邪魔します」

ゆすらの後を追って、靴を脱いで上がり込む。
社殿を見たときも綺麗だと追ったが、社務所の中も立派なつくりだ。
キャリーバッグを引き摺らないよう、えっちらおっちら運ぶ。

「……おおー」

神様が一人で暮らしていた場所は、拍子抜けするほど普通な空間だった。
居間は狭苦しさはなく、かといって広すぎず。炬燵を中心とした憩いのスペースだ。
言われた通り、キャリーバッグを脇に寄せて、キョロキョロしながらゆすらの後に続いていく。

139ゆすら:2011/04/14(木) 03:54:29 ID:NyPrAkns0
>>138
居間と襖一枚隔てた先は台所だった。
新築の台所だけあって、冷蔵庫などの電化製品やシンクは真新しい印象であるが、
コンロの鍋に残っている煮物が、微妙な年寄り臭さを演出している。

「ここが台所。廊下を挟んだ反対側にはトイレと風呂がある。洗濯機は脱衣所。
 廊下から居間へ行くこともできるが、私は大体台所から入るのう」

どうでも良い話じゃったかの、と言いながら、ゆすらは廊下に出た。
台所と風呂があるあたりから先の廊下は少し長く、両側に襖を入り口にした大きめの個室が三部屋ずつ、計六部屋ある。
そのうち、ゆすらは台所側の一番手前の部屋を指さし、

「あそこが、ぬしの部屋じゃ。
 一通りのものは揃えておいたが、まあ見てみると良いよ」

先に入るよう、なつきを促す。

140横島なつき:2011/04/14(木) 04:13:49 ID:Sj59lUuk0
>>139
もっとも気になっていた台所だが……、
一般家庭のものとそう変わらないことに安堵する。
ゆすらの時代がかった喋りに、囲炉裏やかまどだったらどうしようか、とも若干思っていたのだ。
相槌を打ちながらゆすらの後に続き、ゆすらに促されるまま、自分の部屋の戸を開ける。

「……わお!」

そこは、綺麗な8畳間の和室だ。
押入れがあり、クローゼットがあり、床の間があり、その端っこにテレビがある。
障子戸と二重になった窓、畳の床にはテーブル、小さな文机、座布団。
飾りっ気のない、至ってシンプルな、それでこそ素晴らしい自然な和室。
自分の部屋として使うには文句の付けようがない。

「凄い。旅館の部屋……みたいです」

と、ナツキは思ったままを口にする。
そう言うと、一歩二歩、部屋に踏み入って、わぁい、と両手を羽のように伸ばしてみせた。

141ゆすら:2011/04/14(木) 04:27:32 ID:NyPrAkns0
>>140
「ハハ、旅館みたいとは、ちと大げさではないかのう」

そんなことを言っているが、なつきの喜びようにゆすらは得意満面だ。
ゆすらもなつきに続いて部屋に入り、

「何か飾りでも置いておきたかったのじゃが、年頃の娘が何を好むかというのがわからなくてのう。
 ……おっとそうじゃ、あれがあったか」

何かを思い出したようにゆすらは部屋を出て行く。
そして少し経って現われた彼女は、肩に十握剣を担いでいた。

「この十握剣は飾りとして成立せぬか?
 ぬし、どうやらこの剣に高い興味を持っておるようだしの」

なんと、神剣である十握剣を部屋の飾りにどうかと言ってきた。

142横島なつき:2011/04/14(木) 04:35:40 ID:Sj59lUuk0
>>141
「いいんですいいんです。
 さっぱりしていたほうが何でもやり……え?」

……聞き間違いではない。
戻ってきたゆすらは肩に剣を担いでいる。
飾り? 十握剣を? ……またまた御冗談を。

「いやあの、飾りってそれ、神社の宝物殿とか、
 本殿で御神境のすぐ側とかに置いておくものじゃないんですか?」

143ゆすら:2011/04/14(木) 04:51:56 ID:NyPrAkns0
>>142
「他ではいざ知らず、ここでは違うと思うぞ、なつきどの。
 この神社は宝物殿など初めから無いし、御神鏡と言ってもぬし、
 私はこうして顕在しておるでな」

呆気にとられているなつきをよそに、ゆすらは部屋の床の間に十握剣を立てかけた。

「ぬし、今日初めて私と会ったときのことを覚えておるか?
 この剣はな、ぬしがここに来なかったらずーっと倉で埃を被る運命にあったのじゃぞ?
 そうなるよりは、どこかに飾った方がまだましというものじゃ。
 ……ふうむ、床の間と十握剣、中々絵になる構図だの。
 しかし、不安定じゃな。後で太刀置きでも無いか探してみるか……」

床の間を見ながら、ゆすらはうんうん頷いている。もうここに飾る気でいるようだ。

144横島なつき:2011/04/14(木) 05:07:08 ID:Sj59lUuk0
>>143
さも、事もなさげといったゆすらの様子と引き比べて、
根っからの貧乏性であるナツキは大分おっかなびっくりである。

「いやいやいやあのですね!
 それでも私の部屋にそんな高価なもの置いちゃあ駄目です!
 ……ぶつけたり倒したりして万が一にでも壊しちゃったら大変ですよ」

それに、畏れ多くて触れません……。と言葉を継ぐ。
だが、その点に関してみれば、ゆすら自身が神様である。
その神様に抱き付いた人間が何を今更、畏れ多いも何もないと言えば、ない。

145ゆすら:2011/04/14(木) 05:21:27 ID:NyPrAkns0
>>144
「ふふ、ぬしは心配性じゃのう。これは十握剣じゃぞ?
 そりゃ量産品じゃが、神剣中の神剣、草薙剣とかち合って初めて欠けるくらいの堅牢な剣じゃ。
 ぶつける倒すどころか、ぬしが乗ってきたあの乗り物で衝突してもどうこうなることはないよ」

不安定な十握剣を、床の間に横にして置く。
振り向いたゆすらの顔は、意地悪そうな笑みを浮かべていて。

「それにの、ぬし。
 畏れ多いと言うが、ぬしは今、神から贈られた物を断ろうとしておるのじゃぞ?
 それこそ罰当たりとは思わんか?」

146横島なつき:2011/04/14(木) 05:30:25 ID:Sj59lUuk0
>>145
「それもそうですね……。
 壊れないと仰るなら、置くだけでしたら……」

そう。損なわれない、というのなら、とりあえず問題はない。
朝に夜に、宝剣を眺めては気を引き締める生活もいいかもしれない。
思えば神社で暮らすのだ。宝物の手入れの一つや二つ、あって然り。
と、思いながら、聞き捨てならない言葉を耳にした気がして、問い返す。

「あのー、今度こそは聞き間違いだと思いますけど……。
 いま、『贈られた』って……まさか言ってませんよね?」

147ゆすら:2011/04/14(木) 05:39:28 ID:NyPrAkns0
>>146
「おう、言ったぞ?」

キョトンとした顔のゆすらが、あっさりと肯定する。

「なんじゃ、ぬし。ここでオトボケか?
 この流れじゃったらわかるじゃろう。その十握剣は私からの引越祝いじゃよ。
 ぷれぜんと・ふぉー・ゆー、というやつじゃ」

彼女はなつきが何を疑問に思っているか、本気でわかっていないようだ。

148横島なつき:2011/04/14(木) 05:48:27 ID:Sj59lUuk0
>>147
「ややややややっぱりですか!
 いやでも、でも、いえ、……分かりました。
 ありがたく頂戴します。……うぬぬぬぬ」

視線がゆすらと剣を行ったり来たりするが、
やがて鞘に納められた十握剣を見て唸りだす。
先の言葉に加え、引っ越し祝い、プレゼント、
とまで言ってもらえた以上、もう断るつもりはない。
ナツキはごくりと唾を飲み込んで……。

「よ、よい剣は持ち主を選ぶと言いますが……。
 ……いいんでしょうか、私で」

床の間にもの言わず横たわる剣に、
おっかなびっくり、ゆっくりと手を伸ばす。

149ゆすら:2011/04/14(木) 05:53:44 ID:NyPrAkns0
>>148
まるで爆発物でも解体するように十握剣に手を伸ばすなつきを見て、
ゆすらはちょっとした悪戯を閃き、にやにやしながらなつきの背後にまわる。

そして、

「ぴゃあ!」

となつきの背後、至近距離から奇声をあげた。

150横島なつき:2011/04/14(木) 06:12:00 ID:Sj59lUuk0
>>149
「うわあああ!!!!」

前屈みになっていなナツキは、
驚き足を滑らせて、そのまま床の間にダイブする。
宝剣にぶつかるまいと手前に手をついたが、
あろうことかその手がつるりと滑り、十握剣を撥ね上げた。
剣は壁に跳ね返り、ナツキの頭をごちんと打つと、
ナツキの背中に寝転がるようにして倒れた。

「っととと……」

するりと背中から落ちようとする宝剣を支えるため手を伸ばす。
そうして掴んだのが、たまたま束であった。
何の気なしにナツキはそのまま立ち上がると、重さに釣られて剣の頭が下がる。
自然に刀身が鞘から抜き放たれ、……すとん。

「うう、ひどいです! あんまり、で……」

ナツキは、自分の手の中で初めて宝剣の刃を目にすることになる。
小柄なナツキにとって、十握剣は身の丈の半分にもなる大きさだ。
しかし、その重さを全く忘れ去ったように、ナツキは剣を両手で持ち上げて胸の前に掲げる。

「…………綺麗」

目を細めて思わず呟いた。
埃を被っていたことなどまるで嘘のように、刀身は白く煌めいている。
それは美女の肌を清冽な水が撫でるような、どこか色気と魔性を秘めた美しさであった。

151ゆすら:2011/04/14(木) 06:33:46 ID:NyPrAkns0
>>150
なつきのあまりの驚きようと、その後に起こった十握剣との衝突に、
さすがのゆすらも肝を冷やす。

「ぬ、ぬし! 大丈夫か!?」

が、偶然が重なって現われた十握剣の刀身が反射する光に一瞬、目を焼かれ、
袖で目をかばい、なつきに近づこうとする足を止める。
袖を下ろせば、十握剣の刀身に魅入られているらしいなつきの姿があった。

「……悪戯が過ぎたの、なつきどの。すまぬ」

眉尻を下げて謝りながら、改めてなつきの側に寄る。

「……美しいか? まあ、桃の剪定に使っていたとはいえ、神剣に違いはない。
 この世の有象無象の刃とは凄みが違うだろうよ」

落ちた鞘を拾いながら、「ただ……」と漏らす。

「あまり魅入られすぎるでないぞ、なつきどの。
 美しくとも、魔竜の鱗を薄衣ほどに思わぬくらいの切れ味があるでな」

152横島なつき:2011/04/14(木) 06:49:48 ID:Sj59lUuk0
>>151
ゆすらの言葉が耳に届いているのかいないのか。
どこか曖昧な様子だったナツキだが……。

「……うきひさ」

と、一言呟いて、目を閉じ、また見開く。
その瞳には、確かな人間の意識が灯っている。
憑きものが落ちたような、しっかりとした顔になったナツキは言う。

「……この剣の名は、浮瓠量(うきひさのはかり)です」

そういって、ゆすらの目をじっと見た。
それは、水の神を慰撫し、戦勝の約束を得る儀法の名である。
先行きを司る神の声を聞き、憂き久しき路の限りを量るための名である。
魅入られるな、というゆすらの言葉に、ナツキは力強く頷いた。

「……大丈夫です。
 ゆすら様、私、この剣、大事にします!
 ……あっ」

と、そこまで言って、急に重さが自覚されたようだ。
畳を傷付けぬよう、鞘の上に刀身を下ろし、膝をつく。
そして剣を畳の上にぴったりと寝かせてから、そっと鞘に収めた。

「はぁ……えへへ、ドキドキしました」

そう言って、ゆすらを見上げ、気恥ずかしげに笑った。

153ゆすら:2011/04/14(木) 07:14:00 ID:NyPrAkns0
>>152
膝を突くなつきに「おおう」などと声を上げながら、ゆすらは寄り添う。

「うむむ……今のは半分くらい私のせいだとしても、どこか、ぬしは危なっかしいのう……。
 まあ、しかし」

畳の上に横たわる十握剣――いや、浮瓠量に目を落とし、

「浮瓠量か……良い名をもらったの、ぬし。
 なつきどの、名はその存在を構成する重要なものの一つじゃ。
 これが欠けては、どれだけ素晴らしい物品や人物でも、その意味を失ってしまう。
 剣に名を与えたぬしは正真正銘、今この時を以てこの剣の正式な持ち主となったのじゃ。
 私はぬしと、新しく生まれ変わったその剣を、心の底から言祝ぐよ」

「さて」とゆすらは立ち上がり、

「良い飾りもできたことじゃし、私は外の物を倉に戻すとするかのう。
 なつきどのは居間の荷物を片付けたら、風呂にでも入ると良いよ。
 私が清めた水で湧かした湯じゃ。きっと疲れも取れるじゃろ……ろ……」

ゆすらは鼻に奇妙なむず痒さを覚え、話を不自然なところで切らざるを得なくなる。
「ふぁ……ふぁ……」とため込むような息をした後、

「ハーックション!」

盛大なくしゃみをした。

154横島なつき:2011/04/14(木) 07:25:19 ID:Sj59lUuk0
>>153
「はい。ありがとうございます。……大切にします」

ゆすらの言葉に神妙に頷いて、宝剣をぎゅっと胸に抱く。
飾りで終わらせる気はない、いつか立派に振るえるようになろう。
……ナツキは固く決意をした。

「お蔵の整理でしたら、私も手伝いますよ。
 働くつもりで来たんですから、どんどん使って……っとと。
 ……大丈夫ですか?」

話の途中、くしゃみをしたゆすらを案じる。
神様だし、まさか風邪ではあるまい……と、思いつつ。

155ゆすら:2011/04/14(木) 07:41:02 ID:NyPrAkns0
>>154
「い、いや、大丈夫だとは思うがの……」

頭に疑問符を浮かべながら、指で鼻の下を掻く。
と、その動作でゆすらは、自分の袖に付いている埃に気付いた。

「…………! ま、まさか!」

そして、ゆすらの頭の中で全てが繋がった。
なつきへの悪戯、刀身が反射する光、目を庇った袖。
その時に袖に付いていた埃が、ゆすらの鼻に入り、くしゃみを誘発させたのだ。
その事実に半ば戦慄を感じながら、ゆすらは再度、剣に目を落とす。

(こ、こやつ、なつきどのに悪戯をした私に罰を当てよった!)

こじつけかも知れないが、相手は神剣である。可能性は否定できない。
元々自分のものだったとはいえ、あの時点ではもう、所有権はなつきに移っていた。
ならば、神剣が持ち主を害した相手に何らかの報復を与えても、おかしくはないのだ。

「……今日は来たばかりじゃ。部屋の整理もあろう。倉の仕事は私がしておくよ。
 それとな、なつきどの。外に出るときは、極力その剣を持っておった方が良いぞ。
 きっと、いや、必ずぬしの助けになるであろうからの」

なつきにとっては意味の分からない付け加えだろう。しかし、その意味を知る機会はそう遠くない。
確信めいた考えを抱きながら、ゆすらは部屋を出て行った。


//この辺が切りの良いところでしょうか。

156横島なつき:2011/04/14(木) 07:53:37 ID:Sj59lUuk0
>>155
「う、うん……?」

ゆすらの様子には釈然としないが、くしゃみのことは問題なさそうだ。
埃でも鼻に入ったのかもしれない、と思うに留まった。

「え、持って歩く、ってことですか?」

と、抱えた剣に目をやる。
流石に失くしたり盗られたりは恐ろしいが……。
加護があろう、と神様が言うのだから、素直に従うことにした。

「……分かりました。それじゃ、私はキャリーケースですね」

そう言って、ゆすらの後に続いて部屋を出る。
……無意識に、その左手に剣を、――浮瓠量を持ったまま。

//おつかれさまでした!

157【異能都市・千夜学園パート】 豪奢な衣服の生徒:2011/04/18(月) 00:07:53 ID:6IfkJPTM0
千夜学園。
小中高と連なるエスカレーター式の大規模な学園であり、
日々異能都市の各地から生徒が集まり、学生生活を送っている。

異能都市中心部にある本校舎、その敷地内。
授業も終わり、放課後の今。部活動に励む者や友人と歓談する者、様々な生徒が存在している。
なにやら忙しそうに走る者もいれば、喋り合いながら並び歩く者もいる。日常の風景。


そのような日常の風景の中で、学生服の生徒に紛れて――――否、私服の生徒に紛れていても目立つような、
何らかの民族衣装の如き外見の豪奢な衣服に身を包んだ男がゆるりと歩く。

大人と大差の無い体格や若さの残る顔貌から考えて高校生だろうか、
一人何をするでもなく、荷物を肩にかけて敷地を行く。  校舎から、生徒の利用可能な施設の集まるエリアへ。
向かう先は小中高……果ては教師にまで広く利用されている、近隣の施設と比較しても遜色ない巨大な学内図書館。


……黙々と歩む特異な衣服に身を包んだその生徒は、ふと時計を見て時間を確認し 歩みを止めて方向を転換して。
自販機へと向かい、某白濁した炭酸飲料を購入して近くの椅子へ座る。

158アシュレイ:2011/04/18(月) 00:22:00 ID:GxCpAomA0
>>157
彼の向かうであろう図書館へと、一人の女子生徒が歩いていく。
銀髪碧眼である以外に特に特徴のない彼女は、大人が抱えても難儀するような大きさの段ボール箱を軽々と肩に担いでいる。
見た目のバランスは最悪だし、普通の女子生徒然とした彼女が重そうな段ボール箱を担ぎ上げていることから、
特異な衣服の彼とはまた別の意味で目立ってしまっている。

彼女が向かう先、図書館の入り口では図書委員らしき女子生徒が心配そうに彼女を見ている。
どうやらあの段ボール箱は、図書館へ搬入する荷物らしい。

159【異能都市・千夜学園パート】 豪奢な衣服の生徒:2011/04/18(月) 00:56:15 ID:6IfkJPTM0
>>158
少女の持っている段ボールを見て、その不安定さに思うところがあったのか立ち上がる。

飲み終わったのか、某白濁した炭酸飲料の缶を投げ捨て……るかのように宙に放り投げると、
そのまま缶は前方のゴミ箱の上までふわふわと飛んでいき、何かに潰されるかのように圧縮されて収まり。

……そのまま不安定な様子で段ボールを運ぶ少女の方へ、自分の本来の目的地の方へと歩いていくと、
彼女の方を向いて何かを呟き始めて――――ふと、不釣り合いな様相の割に軽々と運んでいることに気付き、止める。

「……随分と重そうな荷物だけど、その割には軽々と運んでんね。
 空の荷物を運ぶような変わった用事でもなけりゃ、何かの能力かな」

160アシュレイ:2011/04/18(月) 01:09:44 ID:GxCpAomA0
>>159
声をかけられ、女子生徒は足を止める。
振り返った彼女は男の特異な服装をその碧眼の視界に入れるが、そのことに対しては何の反応も示すことはなかった。
彼のような服装を見慣れているわけではない。反応の薄い性格なのだ。

「この荷物ですか? これは図書館に新しく入る本だそうです。
 普通に考えて台車を必要とする重量ではありますが、私は必要としません。
 能力ではなく体質的な特権です」

女子生徒――――アシュレイは、その身体を機械で構成した、いわゆるアンドロイドという存在である。
しかし、彼女の見た目は完全な人間であるため、一目でそれとはわかりにくい。
アシュレイの言う「体質的な特権」とは、そのギャップに対応するための方便であった。

161【異能都市・千夜学園パート】 豪奢な衣服の生徒 / 瀬崎 浜和:2011/04/18(月) 01:25:43 ID:6IfkJPTM0
>>160
「体質的な特権、か。なるほど」

アンドロイド  という発想には至らないが、何らかの人外の種なのだろうと認識し、納得する。
人以外の種ならば、外見上が人間であっても純粋な力は遙かに凌駕していることも多々ある。
異能の類ならば、『体質』とは表現しないだろう……と、軽くそう思考して。

「まぁ、そういうことなら。
 ……Timb…naw…a…」

再びなにやら呟くと、何らかの力を行使したのかふと彼女が過多に抱えている荷物の重量が幾らか軽くなる。
人間が抱えれば重いことは変わりないだろうが、恐らくは道具を必要とせず運べる程度の重量まで。

「――――『体質的な特権』があるから平気なわけで、重いもんを持ってるのには変わりないわな。
 それなら、幾らか軽くなりゃ疲れも減る、ってな」

荷物に軽く振れてアシュレイの横を通り過ぎ数歩進むと、足を止め振り返って。

「目的地は同じみたいだし、軽い手伝いだ。さっさと運んどこうぜ」

軽い調子で、そう告げる。

162アシュレイ:2011/04/18(月) 01:36:35 ID:GxCpAomA0
>>161
担いでいた箱の重量が和らいだのを感じたアシュレイは、驚きにわずかに目を見開く。
が、自分がいるのがどういう都市だったかを思い出し、すぐに元の無表情に戻った。

「これはどうも。能力者の方でしたか」

軽く一礼し、先を行く男に追従する。

「目的地は同じ、ということはあなたも図書館へ?
 てっきり、学園への来客の方だと思っていたのですが……」

はっきりとは言っていないが、ここでアシュレイは男の服装に言及していた。
「学園内部の者だとは思わなかった」と、暗にその言葉は言っている。

163【異能都市・千夜学園パート】 瀬崎 浜和:2011/04/18(月) 01:55:22 ID:6IfkJPTM0
>>162
「まぁ、能力者……に含まれるのかな。
 少しばかり術理を学んでてね。魔術とは、幾らか違うけど」

個としての『異能』ではないが、『超常の能力』といえば確かにそうだ、と肯定の意を示し。

「……ああ、来客じゃないよ。正真正銘ここの学生さ。
 高校部2年、学籍番号はH20056番の"瀬崎"。図書館ででも調べて貰えれば証明も出来る」

図書館へと歩きながら、質問の『言葉通り』の答えを返す。
そして、10秒に満たないかどうかという時間、間を置いて。
暗に言いたいであろうことに至ったのか、再び口を開き。

「――――確かに、ぱっと見は学生じゃないかも知れんね。制服も着てないし。
 まぁ、この服は諸般の事情ってやつさ。さっき言った、術理に関する"決まり"でね……」

肩に掛かる装飾の部分をつまみ、服を指し示して。

「……『力』の流れだとか、精神面への問題でこの服の着用が決まってる。
 一応付け足すと、届け出は出してあるよ……っと、階段か。
 終わったらまた軽くするけど、ちょいとばかり重さを戻させてもらうよ」

階段にさしかかり、一言付け足す。
言葉通り、階段を上っている間は重量が元通りに戻るだろう。

164アシュレイ:2011/04/18(月) 02:07:37 ID:GxCpAomA0
>>163
「成程、こういう街です。そういうこともあるのでしょう」

男、瀬崎の語る、生徒であるという答えと服装に関しての理由に相槌を打ちながら、
アシュレイも階段へと足をかける。

「……っと」

瀬崎の言うように箱に重量が戻り、アシュレイは箱のバランスを取り直す。
術の行使をやめる理由はよく分からないが、彼は服に能力に関係する何らかの仕組みがあるようなことを言っていた。
階段で服が大きく乱れるから、術の構成に障害が起きるのかも知れないという予想を立てつつ、アシュレイは階段を上り続ける。

165名も無き異能都市住民:2011/04/18(月) 02:17:51 ID:JnVkxABQ0
>>163>>164
真夜中。
千夜学園に二人の影。
千夜学園の制服を身に纏う華奢な人物、その三歩後ろに明らかに高校生とは言えないような男が追従するように歩いている。
千夜学園の制服を身につける人物が持つのは封筒。
封筒の下部には“私立千夜学園”と印字されており、学園内の封筒だろう。

「やれやれ。書類をもってこいの一点張りとは困ったものだね。
 …珍しい。こんな夜中に学園にいる人物がいるなんて。」

166【異能都市・千夜学園パート】 瀬崎 浜和:2011/04/18(月) 02:24:15 ID:6IfkJPTM0
>>164
「此処は、色々な『力』を持った人や、人以外が集まるからなぁ……」

軽くぼやくと、アシュレイがバランスを取り直している様子を見て。

「……すまんね。やっぱこういう外的な力は、万事便利に使えるって訳でもないもんで。
 その点、直接の力なら時と場合を選ばず便利なんだが」

戦闘から外れ浸透した術理は、変わらず身につけるであろう服に『強化』の力を備えさせた。
術式自体は変わらず行使できるが、服に用いられた刺繍の構成が乱れればその力は半減し、
そして使用している術自体も段ボールに大きな不規則運動が行われれば行使は難しくなる。

「さて、と。そろそろ着くか。
 さっきから見てるあの子に渡せ……るのかな。台車とか見える位置にはないけど」

階段を登り、図書館の前まで来た。
先程まで、不安定な様子で段ボールを運ぶアシュレイの様子を心配そうに見ていた図書委員らしき女性との方を軽く見た後、
図書館まで届けられた荷物をどうするのか……と、振り返り立ち止まって。

167アシュレイ:2011/04/18(月) 02:42:11 ID:GxCpAomA0
>>166
「いえ、気に病むことはありませんよ。
 校門からずっと、こうして歩いてきたので」

術を停止せざるを得なかった様子の瀬崎にそう応えながら、アシュレイも階段を上りきる。
と、彼女を見守っていた女子生徒が、やはり心配そうに駆け寄ってきて、

「レイちゃん、大丈夫? ごめんね、こんな仕事頼んじゃって」
「私は大丈夫です、貴島さん。私の「体質」を知っているでしょう?」
「知ってても心配だよ、レイちゃん……」

貴島と呼ばれた女子生徒が本当に心配そうに言葉をかけるものだから、アシュレイの顔はやや困り気味だ。

「……ともかく、これは図書館のカウンター裏で良いのですね?」
「うん、そうだよ」

貴島の肯定に頷くと、アシュレイは瀬崎に顔を向け、

「ありがとうございました、瀬崎さん。
 あなたが助けてくれたとき、重量は問題なかったのですが、持ち方の関係で箱が歪んできていたところでした。
 助けがなければ、今頃箱が歪みきって中身をこぼしていたかも知れません。助かりました」

礼を言ってから、アシュレイは箱を担いだまま図書館へと入っていく。
その後を、瀬崎に一礼した貴島が追っていった。

168【異能都市・千夜学園パート】 瀬崎 浜和:2011/04/18(月) 02:46:11 ID:6IfkJPTM0
>>165
「……おや」

ふと見れば、変わった2人の存在が見られる。片方は明らかに学生ではない。
保護者か何かだろうが、追従して見えるその様子はどこか不可解に映る。

2人の関係は不明だが、手に持っている封筒から学校へ何らかの用事なのだろう。

「教職室は、施設の集まるこの辺りにゃ無いよ。……まぁ、図書館じゃ教員は結構見かけるが。
 よく分からんけど、何かの用事かな?」

変わった様子の二人を、軽い調子で呼びかける。

呼びかけたのは、特異な姿をした男。外見上はただ肩に荷物を掛けているだけ。
通常の光以外のもの……魔力などの超常の存在を捉えることが出来るのなら、
やや後方を歩く少女の近くに、魔力とは異質ながらも非常に近い『力』を働かせているのが確認できるだろう。

//夜中だっけ。まあモブは図書委員娘しかいないしやりやすい展開で問題はないけど

169アシュレイ:2011/04/18(月) 02:50:10 ID:GxCpAomA0
>>165
アシュレイは荷物の搬入に集中していて、二人にはまったく気付かない。
何らかの接触があれば、二人を認識するだろう。

170【異能都市・千夜学園パート】 瀬崎 浜和:2011/04/18(月) 03:02:58 ID:6IfkJPTM0
>>167
「校門から、か。また随分と」

長い距離を運んだものだ、と感嘆し。

「……段ボールは頑丈ではあるけど、あんま重すぎるものを入れて耐えられるものでもないからなぁ。
 まぁ、手伝いが助けになったんならそれに越したこたぁない」

貴島と呼ばれた女生徒とのやりとりを意識の片隅で捉えつつ、二人の人影の方へと向かい呼びかけていたが、
礼を告げる声に反応しアシュレイへと向かい直し、今までと同じように軽い調子で答えて。
図書館へと入っていくアシュレイと、その後を追う貴島の様子を見送る。

「さて、と」

……そして、再び。
変わった様子の2人へと向き直る。

171名も無き異能都市住民:2011/04/18(月) 03:06:32 ID:JnVkxABQ0
>>168
「御機嫌よう。」

十分な光源があれば、彼或いは彼女とも見えるような人物が居るのが分かるだろう。
一応、男子用制服を身に纏ってはいるのだが。

「一応ね。大した用事ではないのだけど、手続上必要な書類を提出しないといけなくてね。
 残念ながらこの時間帯しか作れなかったわけだよ。」

男の特異…民族衣装と捉えるべきか。
魔力というものであれば捕捉可能だが、魔力に似て非なるものは“感じる”
それに差し当たっての危機感を感じるわけでは無い。
アイリスにとって、無視“出来る”範囲でしか展開されていないので問題はないだろう。

>>169
「御機嫌よう。学生の本分は勉強というけれど、勉強をする上で束の間の休息は必要と思わないかな?」

と、学生には見えない男を追従させた彼・或いは彼女が話しかけてきた。
後ろの男に目配せをしながら。

172アシュレイ:2011/04/18(月) 03:22:13 ID:GxCpAomA0
>>171
段ボール箱を中に置いて戻ってきたらしいアシュレイが、図書館の入り口へ戻ってくる。
そこにいた少々怪しい二人組のうちの一人から話しかけられ、彼女は訝りながらも向き直り、

「これはどうも、こんばんは。
 休息は確かに必要ですが、休息に図書館は利用できないと思いますよ。
 今、新刊が大量に入って、中は大騒ぎですから」

背後の図書館に、目線だけやってアシュレイは応える。

173【異能都市・千夜学園パート】 瀬崎 浜和:2011/04/18(月) 03:27:55 ID:6IfkJPTM0
>>171
「手続き、か。どんな部類か分からない以上細かいことは言えないが、
 3割4割の教員は図書館含めこの辺りにいるだろうし、確認してくのも良いんじゃないか」

まぁ、教員は教職室 って可能性も十分だがね、と付け足して。

服装以外は、至極真っ当。口調は丁寧さに欠けるが、必要そうな情報を答える。

174名も無き異能都市住民:2011/04/18(月) 03:40:52 ID:JnVkxABQ0
>>172
千夜学園の印字がされた封筒を持っている方、千夜学園の制服を身につけた人物が口を開いた。

「それは残念だ。大騒ぎなら仕方がないね。
 ということは君は図書委員か、何かかな?」

目だけで周囲を確認する。
雨風を凌げそうな場所をいくつか見繕うつもりなのか。

>>173
「なるほどね。一応、書類を受け取る際にある程度確認しておいたんだけど、
 教員の目を通してからでも遅くはないのかも知れないね。」

書類が入っているであろう封筒を一瞥し、浜和の顔を見る。
話すときには人に目を向ける。一般常識といえるものだろう。

「ところで、君は此処に詳しいようだけど、現役かな?」

可能性としては多額の寄付金で許された現役、或いは直近のOBといったところか。

175アシュレイ:2011/04/18(月) 03:49:32 ID:GxCpAomA0
>>174
図書委員か、という問いかけにアシュレイは首を振り、

「私は作業の手伝いを頼まれたに過ぎません。
 人より若干、力が強い「体質」なもので」

言いながら、この「体質」という方便は本当に便利だとアシュレイは思った。

「ここは無理でしょうが、食堂や学生ホールが使えるかと。
 時間も時間ですし、食堂の方はやっていませんが、椅子に腰掛けるくらいだったら出来ると思います」

どうやら一休みできる場所を探しているらしいので、そう付け加えておく。

176【異能都市・千夜学園パート】 瀬崎 浜和:2011/04/18(月) 03:53:39 ID:6IfkJPTM0
>>174
「まぁ確認済みなら問題は無かろうが、一応その方が良いだろうさ」

向かい合い、目を向け、また向けられる。
……男の瞳の奥には何らかの力を感じられるが、あくまで残滓程度のもの。
なんらかの『力』を行使したか、もしくは秘めているのかは定かではない。

「詳しいも何も、普通に現役生徒。……服は確かに制服じゃないがね」

服装はおかしいが、よく見れば大学生以下ではあろうと推測される顔貌。
確かに現役なのだろう。……私服認可、という範疇でない奇抜な様相ではあるが。

>>172>>174
「……っと、図書室に関しては自分より彼女のが詳しいかな。
 申し訳ないが、ちょいと用事の時間で。また機会があれば」

アシュレイが出てきたのを見た際に、ふと時計が目に入る。
現在の時刻を見ると、唐突に様相を変え、急ぎ図書館へと入っていった。

177名も無き異能都市住民:2011/04/18(月) 04:05:32 ID:JnVkxABQ0
>>175
「素晴らしいね。人の役に立てるのは素晴らしい。」

自分は全く人の役にたたないよ、と軽く自嘲を織り交ぜ。

「この時間に此処に来る機会が無かったからね。助かるよ。
 これから職員室…だったかな。そこに向かってから食堂で一休みすることにするよ。」

食堂の規模などを一度見ておく為に今後の行動を決定。

「僕は二年のアイリス。君は?」

>>176
「ああ、さようなら。夜は気をつけて。」

現役なら、学年を聞いておけばよかったと思う頃には既に浜和は急いで図書館へ入っていったところだった。
どういう形であれ、この学園内にネットワークが欲しいアイリスであった

178アシュレイ:2011/04/18(月) 04:19:50 ID:GxCpAomA0
>>177
「いえ、そんな……」

適材適所が信条のアシュレイにとって、自分の性能を活かせる場所があればそれを行使するのが当然であって、
そのことについて礼を言われたり、賞賛されたりするのはあまり理解できなかった。
それは人の形をしていても彼女が人間ではない証左となる要素であったが、それをアシュレイが気付くはずもない。

「私は高等部一年のアシュレイです。
 ……そういえば、食堂には自動販売機が密集したブースがあったはずですので、
 飲料と軽食程度ならば用意できると思いますよ」

自己紹介の後、記憶にあった食堂についての追加情報も話しておく。
先輩だから知っているのかも、とは思ったが、一応念のためだ。

179名も無き異能都市住民:2011/04/18(月) 04:36:27 ID:JnVkxABQ0
>>178
「謙遜しなくても良いと思うんだけどね。君は良いことをしたのだから。」

仮にもアシュレイは女性だ。
助けがあったとはいえ、その女性は重たい荷物を持ち運んだのだ。
必要だから、ではなく好意で。だからアイリスは褒めた。

「へぇ…意外と設備が揃っているようだね。
 …アシュレイは不思議に思うかもしれないけれど、僕は食堂にほとんど行ったことが無くてね。その辺りの情報はありがたいよ。」

登校はしているものの、学内で食事を取ることはほとんど無く、空いた時間は様々なことをするアイリス。
故に食堂周辺の情報はありがたいものだった。

180アシュレイ:2011/04/18(月) 04:56:35 ID:GxCpAomA0
>>179
「わかりました。先輩がそう言うのなら……」

そうは言っていても、アシュレイの中で折り合いはついていなかった。
彼女は見た目に反し、生まれてからまだ一年程度しかたっておらず、
自身のメモリーに登録された対話ルーチンの助けで他人との会話を保っている状態だ。
ゆえに、この状況でこう言うのが正しい、とプログラムが提示した言葉でも、
どう正しいのか喋っている本人は良く理解していない、ということがしばしばあった。
どうやら、今回もそのケースの一つになるらしい。

「食堂にあまり行かない人もいると聞き及んでいますし、先輩がそういうタイプならば無理はありませんね。
 あそこは、混むときはひどく混むらしいですから」

クラスメイトが言っていたことを参照しながら、アシュレイはアイリスの言葉に理解を示した。
アシュレイも一度、その混雑っぷりを体験したことがあったが、あれは人の波という暴力と呼ぶべきものだ。

181名も無き異能都市住民:2011/04/18(月) 05:12:54 ID:JnVkxABQ0
>>180
「褒められたら素直に受け入れれば良いと思うよ。」

先程のように、謙遜するものも答えのうちの一つだろう。
が、アイリスの言葉通りに受け入れるのも一つの手ではないだろうか。

「みたいだね。クラスメイトが言っていたよ。昼時の食堂は戦争だって、ね。
 好き好んで態々行こうとは思えない場所みたいだ。」

そういう場所なら自然と足が遠のく。
後ろの男が、アイリスに耳打ちをする。
懐から懐中時計を取り出し、時刻を確認するとなるほど、いい時間だ。

「アシュレイ、そろそろ書類を持って行ってくるよ。では、御機嫌よう。」

小脇に持つ書類を軽く掲げ、アシュレイを見つめて、微笑んで見せるアイリス。
アイリスと男は職員室がある方向へと振り返り、去っていった。

182アシュレイ:2011/04/18(月) 05:24:10 ID:GxCpAomA0
>>181
「わかりました、先輩。以後そのように」

アイリスの言葉で、アシュレイは人に応対する方法の一つを学んだ。
人の賞賛は素直に受け取るべきであり、それは自信をつけるだけでなく、相手の意を尊重する行為でもあるのだと。
無論それはどの場合でも適用されることではないが……多くの場合当てはまるのだろう、とアシュレイは考える。

考えていると、後ろの男に耳打ちされたアイリスに別れを告げられ、アシュレイは意識を思考から引き戻した。

「はい、先輩。ご縁がありましたら、またどこかで」

去っていく二人組を、アシュレイは見えなくなるまで見送っていた。

183ロージェンス:2011/04/22(金) 00:25:24 ID:1sJsd2CgO
 夜間、営業時間の終わった『図書館』に忍び込む黒装束の侵入者がいた。
 案内のパンフレットによればこれは地上五階、地下二階のビルディング。公設の図書館としてはなかなかの規模を誇っている。
 ……しかし、セキュリティは甘かったようだ。耳障りな警報の一つも鳴りはしない。

 割った窓から中に入って一目見た時、広い、と率直にそう思った。

 週刊誌や絵本、文庫本から専門書まで所狭しと並べられた館内は質素な内装ではあるが、
 地下施設に売店などを設けており、近場の市民に限らず都市の人々にそれなりの人気がある。

(私が探してるのは、ここら辺の“一般向け”じゃ無いんだよねぇ……)


 “表向きには非公開の秘密 文書を蔵書する『魔導図書館』――これが当図書館の真の姿である。”
      ――入場者向け案内パンフレット中綴じ部分から抜粋。


 確かに表向きではないが、きっちり紹介されている魔導書部門。
 蔵書は多数の魔導書の写本を始め、他に魔術に関するイロハを纏めた参考書や公的利用に関する専門書なども揃っている。
 それらを閲覧しようと日中に出向いたら許可証云々と門前払いをくらったので、夜中に堂々と見にきてやった、というわけだ。

「さて……、こんな時間だけど貸出してくれるカナ」
 どっちにしても勝手に拝借するケド、とロージェンスは扉をくぐり足を踏み入れる。
 警備会社に送られる静かな警報が、また一段と強くなっていることに気が付くこともなく。

184横島なつき:2011/04/22(金) 20:25:17 ID:bYREkklM0
【昼下がりの緋河神社】

なだらかな午後の境内に、黒髪の小柄な巫女装束が一人。
竹箒を傍らに置いて、賽銭箱の隣、濡れ縁に腰掛けている。
膝の上には鞘に納められた十握剣、名は浮瓠量。

『(振るえるようになるって決めたけど……。
  危ない真似はする気ないし、剣道やフェンシングとは規格が違うしなぁ)』

その剣の名は、水に浮かんだ柄杓を意味している。
ナツキは左手を鞘に右手を柄に、そっと剣を掴むと立ち上がる。
目を瞑って、両腕をまっすぐ胸の前に突き伸ばし、剣を地面と水平に構えた。

『(水の上に瓠を浮かべる。……瓠は沈まない。
  指で突いて傾けても、ほんの少しの水を飲むだけ。
  でも、その瓠に手で掬って水を足し続けたら……)』

手の中の柄杓に水が溢れる。その様子が心に浮かぶ。
ナツキは目を見開いて、一閃、剣を横一文字に引き抜く。
すると、刀身からか鯉口からか、抜き放たれた剣と共に清冽な水が辺りに散った。
傾けた鞘からもさらさらと流れ落ちる少量の水を難しい顔で眺めていたナツキだったが……。

「…………ふぅ」

鍛練は終わりと言わんばかり、肩の力を抜くように溜息を吐いた。
鞘を持ったままの左手を柄頭に軽く添えて、玩具を扱うように、
気の抜けた様子でひゅんひゅんと不格好に剣を振り回している。

185イザヤ:2011/04/22(金) 20:34:44 ID:j3dxNUKs0
ばさばさと音がした。
鳥の羽音といくらか違う、どこか少し金属的な音が、上空から降って来る。
そして、直後に何者かが神社の傍の木の枝に降り立ち枝が震える、ざわ、という音が聞こえた。
何かでは無く、何者か。
黒装束の不審者は、不浄を弾く神社の力をものともせずに入ってきた。

「…おォ」

黄色の目が巫女の姿を枝の上から確かに捕らえ、地面に飛び降りた。

「お初にお目にかかるねェ」

立ち上がった不審者はそういって近付いてくる。

186横島なつき:2011/04/22(金) 20:43:12 ID:bYREkklM0
>>185
「ひゃっ」

上から飛び降りてきた何者かに、ナツキは驚く。
そこで反射的に剣を構えるといった習慣は、ナツキにはない。
むしろ挨拶の言葉を受けて、自分が抜き身の得物を持っていてはみっともない、と思い至った。

「あ、は、初めまして。じゃないや……ようこそお参りくださいました?」

妙に語尾が上がったが、それは神社に勤める者の定型的な挨拶だ。
相手の姿を上から下に眺めながら、ナツキはゆっくり剣を鞘に収める。

187イザヤ:2011/04/22(金) 20:51:42 ID:j3dxNUKs0
>>186
「この神社の巫女さんかィ」

見たままなのだが、一応確かめてみる。

「驚かせて悪かったなァ、此処ァ時々昼寝に来るンだ、なんせ龍脈の真上で土地が元気だ」

良く見ると、周りに小さな羽虫のようなものが飛び交っているのが解るだろう。
そして、その造形が蟲では無く烏だということにも。

「俺ァイザヤ。烏天狗ッてェ妖怪だが、同時にちっぽけな土地神でもある」
「災いを呼ぶような奴じゃねェから安心しなァ」

「お嬢ちゃんは?」

黄色の目が、好奇心たっぷりに聞いて来る。

188横島なつき:2011/04/22(金) 21:03:10 ID:bYREkklM0
>>187
「はぁ! 天狗様ですか!」

烏天狗、土地神という言葉。そして何より結界たる神社の境内にいること。
確かに人間でなさそうだが、悪い奴ではなさそう、とナツキは自然に判断した。
お辞儀とまではいかないが、ぺこりと頭を下げて、

「私はただの学生で、ここの住み込みの巫女さん見習いです。
 多分、羽根休めには最適の場所ですから、ゆっくりしていってくださいね」

そう言って、笑顔で両手をひらひらと振る。私は無害ですよー、という冗談半分のジェスチャーだ。
その左手には、さっきまでと変わらず、金細工のある剣を納めた鞘が握られている。

189南瓜:2011/04/22(金) 21:12:13 ID:j3dxNUKs0
>>186
「おやおや、妖怪は毛嫌いされてるかと思ッたンだが、先入観がねェのはありがてェ話だなァ」

くつくつ、と笑い声が漏れる。

「ああ、ちょいとくつろがせてくれなァ。…その剣は、お嬢ちゃんのかィ?
浄の力が一際強いが。五行なら『水』、俺の『金』とは相生だなァ」

190横島なつき:2011/04/22(金) 21:25:30 ID:bYREkklM0
>>189
「えへへ。西洋のモンスターと違って、
 この国の妖怪は神様の親戚みたいな方々が一杯いますからね」

そう語るナツキの表情は、自分のことでもないのにどこか誇らしげだ。
土地の生き物や暮らしを護るのは、天に認められた神ばかりでないことをナツキは理解している。

「分かりますか! 名前、水に浮いた柄杓で、浮瓠量って言うんです。
 ここのご祭神は水神様で、剣自体も金気の最たるものですから、ぴったりな名前だと思って」

剣を胸に抱き寄せて、右手でそっと柄に触れる。……抜き放ちはしない。
そしてナツキはさっきから気になっていた、天狗の周りを飛び回る小さな銀色に目をやる。

「貴方のそれは……何かの鳥? 小さなカラスですか?」

191イザヤ:2011/04/22(金) 21:40:39 ID:j3dxNUKs0
>>190
「そうさなァ、日の本は区別が曖昧で、だからこそ俺も立派に神を勤めてるンだが。
龍や鬼が神なンて、信じられねェだろうなァ」

八百万の神、とはそれだけ神様がいる、という事では無い。
どんなものにも神がいるという、いわば無限の代名詞。
中には妖怪まがいのものもたくさんいるわけで。

「正確には俺ァ土地神だから、本来なら治める土地があるンだが、事情によってその地から離れてるンだ。
頻繁に戻ってはいるンだが、やっぱり落ち着かねェもンだ、こうやって近い空気を吸いにくるぐらいは」

それは神社の浄化された空気のことを言うのだろう。

「おうとも、妖気と神気を併せ持ってンだ、そういうのには敏感でねェ。
憂き久の量り、かィ…なるほど。道理でそンなに清浄な気を持ってるわけだ。
剣の形をしているのも、その名に理由があらわれてる訳だなァ。うん」

良い。何に対してか、そう呟いた。
遠くの鳥の声が小さく響いて聞こえるほど、澄み渡った空気。

「あァ、コイツは俺の妖術で発現させてる。
銀烏、名の通り金の属性を持った小さな烏の群れさねェ。」

彼の手に銀の靄が集まる。それは幾千もの微小な銀の烏。
そして、それらが融合し、造形するは銀の剣。

「纏水落月、それがこの剣の名さねェ。妖怪の神ってェのは争いが多くて、
俺のこの剣は神器じゃァ無くて戦いの道具だが。ウチの神社にもその剣みてェに
格のあるモンが欲しいねェ」

192横島なつき:2011/04/22(金) 22:00:07 ID:bYREkklM0
>>191
「おぉー……そちらも水に縁ある名前、ですね……」

小さな烏が変幻した眩い銀の刀身に、ナツキは目を細める。
それに釣られるようにして、自分も浮瓠量を抜き放つ。
この剣が、この世に早々並ぶもの持たない、格式あるものであるのは確かな事実だ。

「……この剣、私のものになったのは成り行きなんですよ。
 それこそ貴方のように、自分の体の一部くらいに使えればいいんですが……。
 そもそも、私のような争いとは無縁の人間にとっては、やっぱり猫に小判というか」

だから境内の打ち水に使おうとしていた……とまでは言わない。
だが自分が持つことになったことに対しての後悔はないのだろう。語るナツキの表情は優しく柔らかい。

193イザヤ:2011/04/22(金) 22:12:30 ID:j3dxNUKs0
>>192
「でもコイツはそんなに属性まで良く良く考えて作られたモンじゃねェンだ、
俺の畏れ、妖怪の持つ威、を増幅する役目を持ってる。
精神波に触れれば威圧で皆動きが鈍くなるから、この名をつけたのさねェ」

その間に、銀の武器はまた靄に戻った。何千もの小さな烏が、今度は背中に集まり、銀の翼を形作る。

「それに俺は翼がねェから、こうやって翼の代わりもさせてるンだ、
いずれキチンとした神器もつくらねェと」

苦笑を浮かべながら、抜き放たれた剣に目が鋭く光る。

「成り行きなもんかねェ、神器はそれ自体に意思がある。
持ち主を選ぶくらいはするだろォ、それがどれだけ偶然のように見えてもなァ」

「それに、その剣はお嬢ちゃんに『合ってる』」

それが、妖怪的な分析の元に言われた言葉なのかは解らない。

「使う時になれば、嫌でも使わせてくれるもンさ、そういうすげェのはなァ。
それまでは、大切にしてやったら良いのさ。お嬢ちゃんのそれは、俺の剣とは違う。
俺は剣の性能が大事だが、その剣は剣の形を成している事に意味があるンだ」

解りそうな、解らないような事をのたまって、烏天狗はくつくつ笑う。

194ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/04/22(金) 22:23:13 ID:WVrfsEdY0
【昼下がりの神社の近くに少女の姿がある】

「……きょうはなんだかきぶんがいいなの〜」
【うつろな目をして明るい表情をしながら空を見る】

195横島なつき:2011/04/22(金) 22:32:15 ID:bYREkklM0
>>193
「わぁ……」

白銀の翼。ナツキは思わず息を飲む。
威風、という言葉がまさに目の前にあるようだ。
天狗と流れ星の関連性を説く誰かの話が頭の隅をかすめる。
どこか機械的な色をした翼は、煌めく星屑を散らして伸びる流星の尾を思わせた。
……それは神話に名を残す先導の神の姿。
追い風と共に先行きの安全を保証する、天狗が持つ神威そのものだ。

「へへ。私たち、お似合いだって、うきひさ……」

見惚れているような、聴き惚れているようなナツキ。
ごくりと唾を飲み込んで、改めてギュッと柄を握り締める。
やる気がメラメラと瞳の中で燃えている。

「……そうですよね。出会いに意味はありますよね!
 なんてったって神様がくれた出会いですもの。そりゃあー!」

そう言って、イザヤからくるりと身体を90度背けると、
バツ字を書くようにぶんぶんと、軽々と浮瓠量を振り回し……

>>194
「あっ」

視線の先に一人の少女を見つけて、いけないいけない、慌てて後ろ手に剣を鞘にしまい込んだ。
小柄で腕も短く、かつド素人のナツキが、手元を見ないまま咄嗟に剣を鞘に収めることなど、
本来ならできることではないのだが……そういうことなのだろう。

196イザヤ:2011/04/22(金) 22:39:29 ID:j3dxNUKs0
>>194
「おう、ディスじゃねェか、久しぶりだなァ」

ふらふらと手を振る。

「こンなところで何してンだィ?」

>>195
「烏天狗に翼がなけりゃァ格好つかねェからなァ」

苦笑と共にゆるく羽ばたく。

「あァ、意味はあるもンさ。幾億の可能性の中でそれを掴み取ったンなら、
神懸かりと言わずしてなンと言う、さねェ」

微笑みながらその様子を見守る。
そして、現れた少女に手を振って、そうだ、とナツキに振り返る。

「ありゃァ俺の友達だ、ディスッてンだ。あの子も剣を持ってるぜ、不思議な事に」

全然不思議そうでは無い顔でそう告げる。

197ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/04/22(金) 22:43:04 ID:WVrfsEdY0
>>195
「でも…ここどこなのかなの〜?」
【あたりを見回していう。少しテンションが高い気がする】

「あう〜?だれかいるの〜。」
【首をかしげながら歩いて来る】

>>196
「あう〜。『いざや』ひさしぶりなの〜」
【大きくてを振って駆け寄ってくるディス…だが】

「あう〜。なんだかあんまりおそとにでてないからなの〜。
 たまにはおそとにでないとなの〜」
【いつもどおりのはずなのにどこか違和感を感じるかもしれない】

【少しうつろな目をしており、以前とは違って不気味な魔力のようなものが感じられるかもしれない】

198ゆすら:2011/04/22(金) 22:45:10 ID:pXczbO3g0
と、拝殿の更に奥、本殿の方から突然ガタガタと音がし、しかしすぐに止む。
それから少し経って、拝殿から巫女装束の小さな少女が出てきた。

「今帰ったでなー。変わりはないか、なつきどの?」

彼女はこの緋河神社の祭神、ゆすらである。
今日も龍脈を修復しに外に出ていたはずなのだが、彼女は何故か拝殿から出てきて、
しかも「今帰った」などと言っている。
まったくわけのわからない言動と行動だったが、本人にそれを気にする素振りはない。

199横島なつき:2011/04/22(金) 22:53:42 ID:bYREkklM0
>>196-197
「あぁ、お知り合いの方ですか……」

少女のちょっと普通でない格好にナツキはドキッとしたが、
目の前の両者の打ち解けた様子に安心する。
ここはどこ、と疑問を口にする少女に向かって、

「ここは、神社です。緋河神社。
 そして私は神社の巫女さんの、横島なつき。よろしくね」

そう言って、イザヤに対しても、
今まで名乗っていなかったということで、目線をやって改めて小さく会釈をする。

>>198
そこに拝殿からガタガタと言う音。
次いで聞こえた朗らかな声。そちらにもぺこりと小さく頭を下げる。

「あ、おかえりなさい。……そして、あちらの方が、当社のご祭神のゆすら様です」

自己紹介に続いて、居合わせた二人にこの神社の主を紹介した。

200イザヤ:2011/04/22(金) 23:02:11 ID:j3dxNUKs0
>>197
「…ディス、その…どこでそうなった?」

近付いて来て、解る。妖、魔、神、全ての気を使えるからこそ、その異変を感じ取る。

>>198
続いて、神社の中から「かえって」来た、その少女に目をやり。

「…此処の主様、だねェ。…鬼を祀ってるンだと思ってたが、こりゃァ…ちょいと特殊なケースかィ」

イザヤは妖怪から神になった者。だが、ゆすらの根本的な部分は妖怪では無いと、何故か解る。

紹介を受け、改めてゆすらに向き直った。

「俺ァ烏天狗の土地神だ。真名は架天山那由他坊だが、イザヤの方が慣れてるから、そう呼びなァ。
領内に勝手に入ッちまッたが、良かったかィ?」

>>199
「紹介ありがとうなァ、なつき、ねェ」

ふんふん、と頷きながら。

「巫女と主、二人だけかィ?」

201ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/04/22(金) 23:09:03 ID:WVrfsEdY0
>>198
「あう〜。まただれかきたの〜」
【首をかしげていう】

「こんにちわなの〜。だれかなの?」
【うつろな目の少女はそう言って頭を下げた】

>>199
「あうあう〜。よろしくなの〜。
 『なつき』なの〜」
【軽く手を振っていう】

「ここはなんだかいいところなの〜。
 なんだか…おちつくの」
【空を見て微笑んだ】

>>200
「…あう〜。わかるのかなの」
【頭を軽く掻く】

「いまはおちついてるけど…
 あんまりくるしくないけどねなの…
 おっきくなると…またへんになるかもなの」
【そう言って胸を押さえる。どうやらその不気味な力はそこを中心にしているらしい】

202ゆすら:2011/04/22(金) 23:17:34 ID:pXczbO3g0
>>199-200

「おう。……しかし、今日はまた珍しい客人がおるのう」

なつきに応えた後、ゆすらはイザヤへ視線をやる。

「イザヤどの、丁寧な挨拶、痛み入る。私はゆすら。ここの祭神じゃ。
 前科者ゆえ、この街の土地神ではないがの」

ふふ、とゆすらは自嘲ぎみに笑う。

>>201
「ああ、良い日和じゃな。
 私はゆすら。この神社の主じゃよ」

そう言って、ゆすらはディスに微笑みかける。

203横島なつき:2011/04/22(金) 23:25:55 ID:bYREkklM0
>>200-202
微笑んだ少女に、ナツキも笑顔で手を振り返す。
霊能に疎いナツキは、彼女の纏う力の一片すら感じ取ることはない。
その能力とは別のところで……どこか危うさを感じさせる少女だな、と直感した。
左手の中の剣も沈黙を守っている。ナツキはイザヤに向き直り、

「はい、二人暮らしです。と言っても、この通り神様が顕在してるので……。
 祭祀周りは省略で、家事一般の他には、授与所の番くらいしか仕事はないんですよ。
 行事とか、お祭りのときなんかはまた別でしょうけど……」

ですよね、と言った具合に、ゆすらに向けて、親しげに首を傾げて視線を投げた。

204イザヤ:2011/04/22(金) 23:32:26 ID:j3dxNUKs0
>>201
「…何があったンだ?これは…魔力、かィ?」

この少女自身は、魔法を使いはしなかった。となると、どこから沸いているのか。

>>202
「よそ者の土地神が、しばらくこの地に居つくンだ、好意的でありがたい。
此処は、良い場所だなァ…。思わず、安らぎに飛んできてしまッてなァ。
…なるほど、前科者か、だがそれを言うなら俺も烏天狗の中では大罪人さねェ」

くつくつ、と笑って。

「龍脈の上にあるという事は、実りも多いがその分悪い輩も呼び込みやすいもンだ、
一応土地神として、何か出来る事があればいつでも言ってくれィ。」

>>204
「なるほどな、神様が自身でやってくれンならそれもやり方か。
巫女と神がそこまで仲が良いッてなァ初めて見たなァ」

うーむ、と考えて。

「お嬢ちゃんは、元々この神社で暮らしてたのかィ?」

205ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/04/22(金) 23:37:25 ID:WVrfsEdY0
>>202
「あう〜。『ゆすら』なの〜。
 こんばんわなの〜」
【小さく頭を下げて言った】

「ここにすんでるなの?」
【元気な声で尋ねるが少し顔色が悪く見える】

>>203
「そうなんだなの〜。
 …ここはいいところだよねなの〜」
【そう言って神社に向き直る。背中にはよく見ると銀の刀が背負われていた】

>>204
「…よくわからないの…
 なんだか…だれかしらないおんなのこにあってなの…
 そのときのことはよくおぼえてないけど…」
【胸を抑えたまま答える】

「そのあとなんだとおもうなの…ずっとねてて…
 きがついたらこんなちからが…あってなの…」

206ゆすら:2011/04/22(金) 23:53:24 ID:pXczbO3g0
>>203-204

なつきの言葉にゆすらは頷き、

「そうじゃな。なつきどのの仕事はどちらかと言うと、私の相手をすることじゃしの。
 おかげで毎日が充実しておるよ。何せ、毎日神楽舞を踊ってくれるようなものじゃからな」

「羨ましいじゃろ?」とでも言うように、ゆすらの表情は得意げだ。

「確かにこういう場所はこの街では珍しい場所じゃて。土地神であるぬしが寄りついても不思議はない。
 来たいときはいつでも気兼ねなく来るが良いよ。同じ神同士、前科者同士、何も憚ることはないでな」

悪そうな顔でにやり、と笑う。

「大抵の輩はこの神社の結界に阻まれて来ることは出来ぬが、こういう街じゃ。例外もあろう。
 私は外の龍脈を直しにちょくちょくここを出ているゆえ、私が留守のときにそういう「例外」がおったら、
 蹴り出しておいてくれると助かるでな」

>>205
「ああ、ここに住んでおる。ぬしも、少しここにとどまってゆくと良いよ。
 ぬしの中の「不浄なる力」も、ここでは悪さはせんだろうしな」

ゆすらの顔はあくまで穏やかだ。

207横島なつき:2011/04/23(土) 00:03:50 ID:bYREkklM0
>>206
「神楽舞……。そうだ、音楽を覚えるのもいいかもしれません。
 お爺ちゃんが獅子舞やってたので、ほんのちょっとなら分かりますよ」

もっとも、ナツキの祖父がやっていたのは太神楽と呼べる代物ではなく、
さびれた田舎の芸能、パチモンの宴会芸程度のものであるのだが……。
ナツキが篠笛や囃子の初歩くらいは人並みにできる、という点だけが事実である。

>>204
「進学のために、一人で田舎から出てきたんです。
 ここに住まわせてもらったのは、つい最近のことですよ」

ナツキの言葉には、多くの情報が欠落しているが、そこに嘘はない。
……身寄りを亡くして天涯孤独であることは、ゆすらにもまだ話していないことだ。
隠すつもりもないが、無暗に話すことでもない。
瞬きついでに目を反らすと、ディスの背中の刀に目が行った。

>>205
イザヤと少女との会話にひそかに聞き耳を立てるナツキは、
少女の言葉に笑顔で頷くだけで何も言わない。
……自らの背丈と大差ない刀を背負う少女は、
見た目の上では自分より4つか5つは年下だろう。
出で立ちといい刀といい、先ほどからの会話の内容といい、何か浅からぬ事情がある。
だがそれ以上に……こうして顔を合わせてみて、ナツキは目の前の、
ディスと呼ばれた少女に、どこかで会ったことがある、と感じ、それがナツキを沈黙させた。

208イザヤ:2011/04/23(土) 00:15:18 ID:j3dxNUKs0
>>205
「そんなに直ぐの出来事だったのかィ、…くそ、何があッたのか解れば良いンだが…」

頭を掻いて、その不穏な魔力を感じ取ろうとする。

「魔力を抑える方法もあッたかもしれねェ、ともかくその魔はどこか危険なにおいがするンだ」

彼の顔は何時になく真剣だった。

>>206
「あァ、神ッてェのは普通は孤独なもンだが…そんな風に出来れば、幸せだろうなァ」

しみじみと呟いて。

「あァ、物の怪の類が入って来たなら任せてくれィ。
神格は発揮出来ねェが、そこらの妖怪よりゃ俺の方が格上さねェ」

戦闘能力には自信があるようだ。

>>207
「なるほどなァ、此処に来たのも縁、ッてェ訳だ。
そりゃァ結びつきも強くなる…だから此処が居心地良いのかもしれねェな」

薄く笑って。


「すまねェが、少々用事が出来た。ディスの魔力が気になるンだ、久方ぶりに魔術書でも引っ張り出してくらァな。
楽しかった、また来るぜィ」

銀の翼が背中から生え、羽ばたけば瞬く間に木々を突っ切り、見えなくなった。

//寝落ちします!絡みありがとうでした、またよろしくです!

209ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/04/23(土) 00:19:40 ID:WVrfsEdY0
>>206
「あう、そうみたいなの…
 このちかくにきてからなんだか
 あんまりくるしくないの…」
【軽く微笑みながら言った】

「しばらくゆっくりするの」
【そう言って軽く頷いた】

>>207
「…あう〜?」
【少し不思議そうな顔で首を傾げる】

「なにかきになることあるのかなの?」
【じっと見られているのを見て尋ねた】

>>208
「あう…なにがあったか…
 ちかくにいた『ろざりあ』がしってるかもなの…」
【そう言って首をかしげた。魔力はどこか不気味さをたたえており、いずれの属性とも思えない不気味な力である】

「あう…なるべくちからつかわないようにきおつけようとおもうなの…」
【そう言って頷いた】

「あうあう〜!またあおうねなの〜」
【大きくてを振りイザヤを見送った】

210ゆすら:2011/04/23(土) 00:30:24 ID:pXczbO3g0
>>207

「ほう、ぬしのじじ様がの。
 ぬしも巫女の勤めにも覚えがあるようじゃし、ぬしの家は元々そういう家じゃったのか?」

なつきの抱える家の問題など露程も知らないゆすらは、気軽にそんな質問を投げる。

>>208
「ふふ、頼もしい御仁じゃ。これで私も安心して仕事ができるよ。
 今度会うときは、茶でも用意してやらねばな」

言いながら、ゆすらは飛び去る影を見送り続けた。

>>209
「ああ、そうすると良い。
 ……じゃが、大元を絶たねばどうにもならん類のもののようにも見える。
 先の烏天狗もそうじゃが、何か心得のある者に相談した方が良いじゃろうな」

ゆすらの言葉は言外に、自分ではどうしようもない、ということを告げていた。

211横島なつき:2011/04/23(土) 00:45:40 ID:bYREkklM0
>>208
魔力、魔術書……。
そういった言葉ばかりが妙に耳に引っ掛かる。
別れの文句に言葉を返す余裕もなく、
さっと消えていってしまった後ろ姿に、ナツキは後から手を振って見送った。

>>209
「あ、うん……」

ナツキはディスの顔を改めて覗き込むが……。
顔を合わせるのは正真正銘今日が初めてだ。
ナツキの記憶の中の包帯の少女とディスは、今日のところは、まだ結び付かないだろう。

「あなたのこと、誰かに似てるかも、って思ったんだ。
 だけど気のせいみたい。……その、寛げる場所だから、ゆっくりしていってね」

余計な雑念を頭の中で振り払って気持ちを切り替えると、
ナツキ本来の、人畜無害、健康優良な笑顔を少女に向けた。

>>210
「社家ではないんですが、そこそこ古くからあった商家で、
 地域の組合長とか、氏子総代とか、そういう役割がよく回ってきてたんです」

ナツキの生家は、江戸の末期に舶来品を仲買して成り上がった商家だ。
祖父の遺産がナツキ個人で扱うには莫大であることは、これに由来する。

「……そうだ。えっと……ディスちゃんっていったっけ。
 座って休みたかったら、私がお茶を淹れてくるけど……どうします?」

と、最後にゆすらともディスともなく、二人に向けて尋ねる。

212ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/04/23(土) 00:51:52 ID:WVrfsEdY0
>>210
「あう、わかったなの…
 だれか…たよりになるひと…『いざや』のほかにも
 だれか…」
【軽くうなだれながら言う】

「うーん…ほかにだれがいるのかなの…」
【不安げな表情に変わっていた】

>>211
「あう〜…そう。
 『でぃす』にそっくりなひとなの…」
【不思議そうな顔で言った】

「だれなのかなの…そのひとなの…
 あう?おちゃなの?」
【どこか嬉しそうな顔になった気がする】

「あう〜!ほしいなの〜!」
【はしゃぎながら言う。姿は殆ど違わず「あの少女」なのだが雰囲気が全く異なるだろう】

213ゆすら:2011/04/23(土) 00:55:59 ID:pXczbO3g0
>>211-212
「ほほう、ぬしの家は名主の類じゃったか。ならば道理じゃな。
 ……ああ、私は構わんで良いよ、なつきどの。まだ、今日やる分の仕事が残っておるでな。すぐに出るよ。
 帰ってきたらぬしの茶をもらうとしよう」

なつきにはそう応え、ゆすらは不安げな様子のディスに視線を戻す。

「不安か? 私もどうにかしてやりたいが、そっちの心得はとんと無くてのう。
 …………そうじゃ、あの手がある。
 なつきどの、この子に持ってくる茶のついでに授与所からお守りを持ってきてくれんか」

首を傾げていたゆすらは何かを思い出したように首を戻し、なつきにお守りを持ってくるように頼んだ。

214横島なつき:2011/04/23(土) 01:04:18 ID:bYREkklM0
>>212-213
「はい。それじゃ、今はディスちゃんにお茶と、お守りですね」

分かりました、とゆすらに軽く頭を下げて、ディスに手を振る。

「ちょっと待っててね」

そう言って、左手に十握剣を揺らしながらパタパタと授与所の方に駆けていった。
お茶を淹れずとも、小さなパックのジュースでもあればそれを持ってくるつもりだ。
……すぐに戻ってくるだろう。

215ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/04/23(土) 01:14:58 ID:WVrfsEdY0
>>213
「あうあう…そうなの…
 だいじょぶだといいんだけどなの…」
【不安げなまま言う】

「あう?おまもり?」
【顔を上げ手首をかしげた】

>>214
「あうあう〜、ありがとなの〜」
【嬉しそうに見送る】

216ゆすら:2011/04/23(土) 01:20:35 ID:pXczbO3g0
>>214-215
授与所に駆けていくなつきを見送ってから、ゆすらはディスの訝しげな様子に気付く。

「ふふ、見ていれば今にわかるよ。
 じゃから何も心配せずに待っておれ」

ディスに優しげに笑いかける。

217横島なつき:2011/04/23(土) 01:27:40 ID:bYREkklM0
>>215-216
「ダッシュで持ってきましたっ」

足袋に雪駄でパタパタと巫女装束が戻ってくる。
右手にアップルジュースのパック、左手にオレンジジュースのパックを持っている。
両手がふさがるので十握剣は置いてきたようだ。
アップルジュースと一緒に握り込んでいたお守りを、まずはゆすらに手渡す。

「はい。厄除けと迷いましたが、普通の御守護で」

縁結び、学業成就、交通安全、厄除け……。
お守りにも種類があるが、ナツキが持ってきたのはどれという属性のない、最も普通なものだ。
今から神様自らが力を込めるなら、これが最も相応しいものだろう。

「で、お茶じゃないけど、ディスちゃん。オレンジとリンゴとどっちがいい?」

そう言って二つの200mlパックをディスの前に差し出した。

218ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/04/23(土) 01:32:05 ID:WVrfsEdY0
>>216
「あう〜、たのしみにしてるなの。
 なにがくるのかなの」
【少し嬉しそうな顔になった】

>>217
「あうあう、おかえりなの!」
【微笑みながらなつきに顔を向ける】

「あう〜、じゅーすもだいすきなの!
 う〜ん…」
【オレンジジュースとアップルジュースを交互に見る】

「じゃありんごにするなの!」
【そう言ってアップルのパックを指さした】

219ゆすら:2011/04/23(土) 01:35:45 ID:pXczbO3g0
>>217-218

「おお、すまんな、なつきどの」

ゆすらはなつきに手渡されたお守りの袋を開け、中から木製の内符を取り出す。
そうしてから、お守りを持っていない方の手、その親指をくわえると、指先を力一杯噛み切った。

「……っ!」

痛みが走り、ゆすらは顔をしかめる。
噛み切られた指先が血を流しているのを確認すると、それを内符に押し当て、大きく「勅」という字を書いた。

「よし……」

血文字の書かれた内符を袋に戻し、それをディスに差し出す。

「これは私の分身のようなものじゃ。血の力が失われぬ限り、ぬしの中にあるものを抑えるじゃろう。
 じゃが、所詮は対症療法。できるだけ早く、大元をどうにかする方法を見つけるのじゃぞ。
 それとな、この加護のやり方はここだけの内緒にしておいてくれよ。強力な加護じゃが、あまりやると私が貧血になってしまうゆえな」

「それに痛いし」と、ゆすらは茶目っ気を感じる笑みを見せて付け足した。

220横島なつき:2011/04/23(土) 01:48:18 ID:bYREkklM0
>>218-219
素直なディスの言動に心を和ませつつ、
はい、とアップルジュースのパックを差し出す。

「それじゃオレンジは私が頂いちゃおう」

そう言ってふふふ、と笑う。
その傍ら、ゆすらが指先を噛んだのを見て、思わず小さな悲鳴を上げる。
血はそれほど苦手ではないが、指先の痛みを想像すると、膝の裏がムズムズしてくる。

「神様って、大変なんですね……。
 ……これ、役に立つか分かりませんけど」

オレンジジュースを袂に放り込み、入れ違いに絆創膏を一枚引っ張り出して差し出す。
お守りの為に用意したわけではなく、ハンカチなどと一緒に常に持ち歩いているものだ。

221ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/04/23(土) 01:52:00 ID:WVrfsEdY0
>>219
「あうあう、だいじょぶなの?!」
【突然指先をかじったのにびっくりしたディス】

「…あう、そうなんだなの…それでじをかいて…
 これでちからがつくんだねなの…」
【受け取ったお守りを見て微笑んだ】

「あうあう、あんまりがんばらないようにきおつけるなの…
 これで『ろざりあ』もあんしんしてくれるかなの…」
【少し頭を下げて微笑んだ】

>>220
「あう〜、じゃあいっしょにのもうなの〜」
【アップルジュースを手にとって微笑んだ】

「ここはとってもいいところなの…
 しばらくくるしかったけど…ここはおちつくなの…」
【そう言ってジュースをごくごく飲み始めた】

222ゆすら:2011/04/23(土) 02:03:51 ID:pXczbO3g0
>>220-221
「ありがとう、なつきどの。
 確かに大変じゃが、それだけ救えるものも多いでな。やめる理由はどこにもないよ」

もらった絆創膏を、血を吸ってからさっそく傷口に張り付ける。
それから、ゆすらの行為に驚いている様子のディスの頭を2、3回ポンポンと優しく叩いて、

「ああ。病んでいるときに無理は禁物じゃぞ。
 ぬしを心配する者もいるじゃろうしな」

先ほどから出ている「ろざりあ」という名の人物がそうなのだろう、とゆすらは予想をつけている。
心配してくれる者がいるのは良い、とゆすらは思う。昨日、小百合と戦った後だからだろうか。今日は特にそう思った。

「……さて、私は仕事に戻るとするよ。
 ディスどのといったか? 私は出るが、好きなだけゆっくりしていってくれ。
 なつきどの、ディスどのの世話のほう、頼んだぞ」

「夕飯までには戻る」と言い残し、ゆすらは来たときと同じように拝殿の中へと入っていく。
そして、例のガタガタという音がした後、ゆすらの気配は境内から無くなっていた。


//自分はここで落ちます。お二方、ここまでありがとうございました!

223横島なつき:2011/04/23(土) 02:16:27 ID:bYREkklM0
>>222
「はい、後のことは任されました。
 ……いってらっしゃいませー」

ゆすらのお出かけを、小さくお辞儀をして見送る。
……夕飯の買い出しまでには、まだ時間がある。

>>221
ディスが嬉しそうにジュースを飲む様子に再び和みつつ、
ナツキもパックにストローをプスっと刺し、ぢゅー、とそれを吸う。

「ふぅ。……お世話といっても、素直ないい子だもんねぇ。
 神社、好きなように、ゆっくり見て回るといいよ。私はお掃除してるからさ」

と言いつつ、動き出す気配はない。
ちょんと左手を腰に当てて、右手でパックのジュースを支えている。
ナツキの休憩はまだ続くようだ。

224ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/04/23(土) 02:18:15 ID:WVrfsEdY0
>>222
「あうあう、そうだねなの。
 なんとかしてなおしたいんだけどねなの〜」
【軽く微笑みながら言った】

「あうあう〜、わかったの!
 またあおうねなの〜!」
【嬉しそうな顔をして手を振った】
//おつでした

>>223
「あう、そうするの〜。
 なんだかとってもきょうはきぶんがいいなの〜!」
【ジュースを美味しそうに飲みながら微笑んだ】

「おいしいなの〜」
【眩しい笑顔を見せた。顔色は悪いけど】

225横島なつき:2011/04/23(土) 02:34:43 ID:bYREkklM0
>>224
この子には小動物的な可愛さがある。
初めて会った時の印象や、イザヤと話していた時の違和感はすでに忘却の彼方だ。
それっ、とボールでも投げれば拾って戻ってきてくれるんじゃないか……。
何かに元気を吸われているような、妙な顔色の悪ささえなければ。
オレンジジュースを飲みながら、ナツキはそう思った。

「……その調子で、身体の具合が悪いのも何とかなるといいねぇ。
 私はそういうの直したり、なんか力をあげたりできないけど、
 お茶とかジュースとかなら出せるし、遊び相手とかならいつでもなれるから。
 必要なことがあったら、気軽に声かけてね」

そう言って、目線を合わせるように軽く膝を折って、ディスに微笑む。
それから、ジュースのパックがベコっと凹むまで思い切り吸いこんで、全身で伸びをする。

「……っさー、てと! さっさかお掃除だ!」

賽銭箱のすぐ脇に置いてある竹箒を手に取ると、薙刀の演武をヘナチョコにしたように、軽く振り回す。

226ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/04/23(土) 02:39:21 ID:WVrfsEdY0
>>225
「うん…おちついてるときはだいじょうぶなんだけどねなの…
 あんまりうまくからだがうごかなくて…」
【見たところ病弱に見えなくもないが…】

「うん、しばらくここにいさせてほしいなの」
【そう言ってディスも飲み干した】

「あう〜、おそうじがんばなの〜」
【大きくてを振って微笑む】

227横島なつき:2011/04/23(土) 02:48:05 ID:bYREkklM0
>>226
「身体が動かないのは大変だ……。
 遠慮しないで、ゆっくり休んでね」

身体を動かす遊びが何かできないかと思っていたが、聞く限りでは流石に無理のようだ。
かと言って、ナツキが知っているインドア系の二人でできる遊びと言ったら、大抵ギャンブル的なものになる。
それは教育上よろしくない……と思ったところで、ナツキは今朝振ったサイコロの出た目を思い出した。

「そうだ、ディスちゃん。ちょっと凄いものを見せてあげよう。
 飲み終わったら、そのジュースのパック、私に貸してくれる?」

そう言って、竹箒を肩で担ぐ。ナツキの様子はどことなく自信あり気だ。

228ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/04/23(土) 02:52:49 ID:WVrfsEdY0
>>227
「あうあう、でもぜんぜんうごかないわけじゃないよなの〜。
 いつもよりなだけだからなの」
【軽く微笑んで言う】

「すごいもの?
 あう〜、これをわたせばいいのかなの?」
【少し首をかしげながら飲み干したジュースのパックをなつきに渡す】

229横島なつき:2011/04/23(土) 03:05:11 ID:bYREkklM0
>>228
「そうだね、散歩でこんなとこまで来るくらいだし。
 私は運動って大嫌いだから、案外、動けるの同じくらいだったりしてね。
 ……さんきゅー、見てなよ?」

ナツキはディスに背を向けると、左手に凹ませたジュースのパック2つを、右肩に竹箒を担ぐ。
やろうとしているのは、野球で言うところのノックだ。
賽銭箱の脇から、濡れ縁の端のそばにあるカゴ状のゴミ箱まで。
投げて入れるのなら大した距離ではないが……。
ナツキは左手で二つのパックをそっと放り上げた。
そして左手を竹箒の柄の下端に添え、両手で思い切りそれを振り抜いた。

「せいっ!」

竹箒は二つのパックを正確に捉えた。
赤いリンゴのパックはほぼ直線を描いて飛び、ゴミ箱の壁を何度か跳ね返って底に落ちた。
そしてオレンジのパックはくるくると縦に回転しながら高くまで飛び、大きな放物線を描いて、
……すとん。ゴミ箱の中に収まった。それを見届けたナツキは、振り向いて、竹箒を担いでディスにガッツポーズをして見せた。

「アイ、ガッチャ! どんなもんよ!」

230ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/04/23(土) 03:15:33 ID:WVrfsEdY0
>>229
「そうなの、たたかうのはいまはむりってかんじかなの〜」
【チョット落ち込んだ顔である】

「あう〜?なにがあるのかなの」
【ドキドキしながら見守る…】

「あう〜?!いまのどうやってやったなの!?
 すごいのすごいの!!」
【なつきの曲芸のようなテクニックを見て思わず拍手をした】

231横島なつき:2011/04/23(土) 03:33:14 ID:bYREkklM0
>>230
「あっはっはー! すごいでしょう!
 これはねー! ……これはねー、運がいいだけなんだよー……」

高らかに笑って見せて、反転、脱力したように肩を落とす。

「ほんとに種も仕掛けもないんだ……。『カッコよく入れ!』って思っただけ。
 今日は、とってもとっても運がいい日だって、占いの結果に出てたから……」

と、おどけて落胆した風に言って見せるが、ナツキの表情は嬉しそうだ。

「明日やると、多分、すっぽ抜けた竹箒が私の頭の上に落ちてくるんだよ。
 ……世の中、いいこと悪いことばっかりは続かないようになってるからね。
 ディスちゃんも調子の悪い日が続いてるみたいだけど、
 それが何とかなったら、きっと絶好調な毎日がやってくるよ。……勘だけどね」

そう言って、ディスにウィンクを投げた。

「よし。着替えて買い物だ。この調子で商店街の福引を当ててくるよ。
 ……というわけで、ディスちゃん、またね。
 授与所の隣にパックのジュースが山積みで置いてあるから、
 好きに飲んでいいけど、暗くなる前には帰るんだよ?」

と、掃除の予定はどこへやら。ひらひらと手を振って、裏の社務所の方へ歩いて行ってしまった。

232横島なつき:2011/04/23(土) 03:35:23 ID:bYREkklM0
//いけない、書き忘れてしまいましたけど、急ですがこれで〆ですスミマセン
//お三方ともお付き合いほんとありがとうございました!

233ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/04/23(土) 03:40:24 ID:WVrfsEdY0
>>231
「そうなの?でもうんがいいってすごいことなの。
 『でぃす』もいつかいいことあるよねなの」
【少し微笑みながら言った】

「うん…わるいことばっかりなのはあとでいいことあるからだよねなの…
 それをしんじてみるの!」
【軽くガッツポーズして微笑んだ】

「あうあう、わかったの〜。
 しばらくいるけど…またねなの〜」
【そう言って手を振って見送った】

【その後ディスは夕方までいたらしい…】

234名も無き異能都市住民:2011/04/24(日) 22:57:26 ID:k8Q1TGU.0
轟、と音がする。
それは大気の悲鳴。
鋼の翼が高速で虚空を引き裂く音色だ。

翼の持ち主は思考する。
……暫くぶりの登場だろうか。
メタ思考は削除。
改めて、
……修復できるだけはしたけれど、無謀だっただろうか。
そう。
今己の身は傷ついていると形容して問題ない状況だ。
全壊から半壊へ、損傷へと持ってきたのは褒めてもらってもいいだろう。

旋回すればぎしりとフレームが歪む。
加速すればみしりとブースターが揺らぐ。
……あれ、これ損傷ってレベルじゃないよね?
一抹の不安も削除。

ただ飛んで、飛んで、
……見つかるといいな。
探すのは欠片。
自分を決定するパーツだ。

細かい場所を探すには向かないが、それでも何かしかの反応を求めて。
鋼鉄の竜は宙を裂く。

235ロージェンス:2011/04/24(日) 23:08:48 ID:1sJsd2CgO
 人気のないアーケード商店街。
 昼間は賑わいを見せるこの場所も、夜間は嘘のように誰も居ない。
 そんな気味の悪い静けさが沈む中、黒装束は本を読んでいた。

「……術式の構築には足りないわね、やっぱりあんな場所じゃ駄目か」

 先日、図書館から盗んだ魔導書の写本に目を通し、最近になって思い出した魔術についての知識を補っている。
 記憶に蓋をされたように一部しか思い出せない知識では、まだまだ魔導機に書き込む術式の構成が出来ないのだ。

(ま、基礎原理を補えれば『アレ』は召喚できるケド、まったくもって不便な記憶よねぇ……)

 思い出した記憶の中途半端さにため息をつきながら、最後の一冊に目を通す。
 魔導書の解読は案外重労働だ、表面に目を通すだけならまだしも、中身を識るために文脈を一節読み進めれば徐々に精神を蝕まれ、下手をすれば自己矛盾に陥り自壊するからだ。
 それは著者の精神構造に合わせて読み手のそれに急速な修正を加えなければならないからだ、という仮説もある。

 しかし、それを克服してこその魔術師だ。
 記憶を無くす前は魔導機を扱いながら『死の水』を使役していたロージェンスもまた、魔術師の端くれではあった。

236黒瑪瑙:2011/04/24(日) 23:10:43 ID:HnkBBDEo0
>>234
「さっむぅ!」

 ビルの屋上にて、少女は叫ぶように言った。

「いくらまだ義足に慣れてないからって、なんでワタシが……ああもういいや。帰ったら殴ろう」

 そう言いつつも、目は夜空を見ているまま。
 片手には球状の物体を抱えている。

「『空を見てりゃいつか出る』って言ってたけど、いつまでも待ってるわけには……ん?」

 いた。
 夜の闇の中で星に紛れ、金属光沢が月の光を反射している。
 たぶん、あれに間違いない。

「聞こえるかな。おーい」

 一応声を出し、手を振ってみた。

237名も無き異能都市住民:2011/04/24(日) 23:24:50 ID:k8Q1TGU.0
>>236
……む。
当てもなくという言葉がぴったりの行動が変化する。
センサーに呼びかけの声がヒットしたというのもあるが、
……共振?
微弱だが確かに振れがある。

迷わず竜は降下した。

超超高度から落ちるように下へ。
速度は正しく一瞬。
しかし慣性や巻き上がる風の何もかもを押さえつけ黙らせて、

『―――――お呼びですかよ?』

少女の立つビル。
その上空数メートル。
傷ついた鋼鉄の塊から、無機質な声が降る。


>>235
本に集中するロージェンスにも音は聞こえるだろう。
飛行機の飛ぶ際に起こす音のような、引き裂きの音色が。

238黒瑪瑙:2011/04/24(日) 23:31:31 ID:HnkBBDEo0
>>237
「……どこ行った物理法則」

 覚悟していた風圧が来なかったので、スカートを抑えていた片手を戻し、
 球体を両手で持って銀色の竜へと伸ばす。

「えーっと、伝言です」

 彼女は誰の伝言なのかも言わずに、ただ告げる。

「『遅れてすまない』 ――だそうです」

239ロージェンス:2011/04/24(日) 23:46:46 ID:1sJsd2CgO
>>237

 ――――?
 今、なにか凄い落ちる音が聞こえた気がしたロージェンスはアーケードから出て、空を見る。

(……、なにアレ。妙な飛行体と、小さくてよく分からないケド……ヒト?)

 ダメだ、遠すぎて分からない。
 ……近くに行ってみる?
 いや、やっと人目に付かない場所を探し出せたんだ、わざわざ出向く必要は無い。

 ロージェンスは好奇心を抑えて、アーケードの中へと戻っていく。
 何かと誰かの邂逅の現場を見ただけで、私には関係ない。と、黒装束は道の闇に溶けて消えた。

240名も無き異能都市住民:2011/04/24(日) 23:54:01 ID:k8Q1TGU.0
>>238
『物理法則を無視出来ねば当機は飛べませんがよ?』
それもどうなのだろうか、と意識の片隅で思うが今は目の前の物だ。
少女の掲げた球体。
それは、
『――――――紛れもなく欠けたパーツですがよ?』
先ほどからざっくりと検査を続けているがどれもこれもが一致する。
魔術的反応が弱いのは休眠状態に入っていると判断して、
『約束を護っていただいて感謝します、と伝えてくださいませんかよ?』
精密動作モードに切り替え。
ゆっくりと高度を下げ、半ば無理やりに下部装甲を開き―ネジが落ちたが気にしない―、
『と』
飲み込むようにして球体を格納。
慣性制御で先ほどの位置に身を戻して、
『再度感謝を告げておきますがよ?』

241黒瑪瑙:2011/04/25(月) 00:00:53 ID:HnkBBDEo0
>>240
「いえいえ。私は届けただけですから。礼はあの人に……いや、言わなくていいです。
 アイツは今回も、ただ自分の気が済むまで暴れただけに過ぎませんから」

 苦笑いを返すと。「それでは」と背を向ける。

「あ、夜中はエレベーター動いてないんだっけ。今度は階段を下りるのか……」

 うんざりしたような顔で溜息を吐いた。

242名も無き異能都市住民:2011/04/25(月) 00:13:50 ID:k8Q1TGU.0
>>241
『たとえそうであっても、貴方が届けなければ今日の入手は不可能だったと何かが告げていますがよ?』
カンのようなもの。
機械の身にはありえないが、
……魔術的側面もあるし。
ありえないことではない。
だから、ウソではないのだと結論して、

『計画停電ですかよ?』
いや単に人がいないだけか、と思い直す。
これはつまり、
……さっそく一部なりとも返せるか?
『――――当機をお使いくださいですがよ?』
まだ精密動作モードは続いている。
ならばと身を傾けて、乗る際の足場と出来るように風防を開き、パイロットシートを晒す。
『内部損傷は少ないので快適にご使用いただけると思いますがよ?』

斜めになった機竜がそのままの姿勢で固まるというのも中々奇妙だったが。

243黒瑪瑙:2011/04/25(月) 00:22:02 ID:HnkBBDEo0
>>242
「いいんですか? でも……」

 そう言いつつ、屋上まで上った時間を思い出す。

「……すみませんが、ありがたく乗らせていただきます」

 ペコリと頭を下げると、コクピット(?)へと乗り込んだ。

「あ、それと」

 シートにすわりつつ、思い出したように口を開く。

「いつ戻るんですか? その、前みたいに……
 ……に、賑やかな口調というか、性格に」

 言葉をオブラートに包みつつ質問。

244名も無き異能都市住民:2011/04/25(月) 00:37:09 ID:k8Q1TGU.0
>>243
音もなく風防が閉まる。
同時に操縦室内のパネルに光が走り、
『安全性確保ですがよ?』
万が一墜落しても中は無事にするからと告げる。
……いや本気だけどもー。

するりと風を割り、空へ舞い上がれば異能都市が眼下に広がる。
全天型モニターに感謝しながら夜景を映し、
『――――即答は出来かねますがよ?』
本当に。
『現状はいわば、冷凍睡眠中のようなものですがよ?
 起こす時には健康チェックから始めねばなりませんがよ?』
それと、と繋いで、
『何やら躊躇われているようですが、馬鹿と言って構いませんがよ』
機竜の判断は時に言葉のオブラートさえもぶち破る。
何故か最後だけ疑問形ではなかったが。


時間にして5分ほどだっただろうか。
『到着ですがよ?
 お忘れ物や落とし物などなさいませんようご注意くださいですがよ?』
カフェの前、今回は大気裂く音さえも立てずに降下して、
『それと、』
数秒の思考を持つ。
……アレをやったら多分とても楽しいことになるんだけども。
飛行中の検査では、殆ど問題はないと判断されていたが、
……思い立ったが吉日…。


『――――助かった』


その一言を聞く頃には、機竜は既に空を駆けているだろう。

245黒瑪瑙:2011/04/25(月) 00:48:59 ID:HnkBBDEo0
>>244
 降りて、言葉を聞いて、
 振り向いたら、もう、いなかった。

「……」

 夜空を見て、閃光の残滓を追うように目を細める。

「こちらこそ、と言いたいところですね」

 もう聞こえないであろう返礼を告げる。
 騒がしい彼が戻ってくれば、また彼も前のように騒がしくなるだろう。
 その日常が戻ってくるのが、彼女にとって一番なのである。

「さて、寝ますか」

 彼女は店のドアを開けた。

246黒沢小百合:2011/04/26(火) 23:44:35 ID:SSMHlh/20
【AGカフェ】

「……くふう。」

今日も仕事の疲労が凄まじく
カフェに訪れるなりカウンター席に崩れ落ちる小百合。

つい先ほどまで、仕事をしていたのかワイシャツは汗で濡れ、
自慢の長い黒髪はボサボサと乱れに乱れている。

「う…………うぅう……。」
(だめだ…・・・もう少し……休もう……。)

コーヒーでも飲んで一息つこうかと体に力を入れるが、
立ち上がることすら億劫で、小百合はもう少し体を休める事にした。

247テルメス/ニット帽の男:2011/04/26(火) 23:53:28 ID:ste/2NNA0
パイロットニットを被った男が、扉の前でキョロキョロとしている。
30秒ほど経って、男はカフェに入ってきた。

「喫茶店に入るだけでも一苦労だ……」

男は席に座るなり、持っていたアルバイト雑誌を広げた。

248黒沢小百合:2011/04/27(水) 00:01:16 ID:SSMHlh/20
>>247

店のカウンター席にはぐったりとした様子の女性。
以前、テルメスを捕縛したあの女だ。

体調が悪いのかじっとりと汗をかき、荒い息をついている。

249テルメス/ニット帽の男:2011/04/27(水) 00:09:54 ID:ste/2NNA0
>>248
「だめだ、あまりいい仕事無いし、まずは何か食べよう」

そう言って店員を探すが、代わりにカウンターで見覚えのある女性を見つける。

「あ……えーっと……警備仕事のお姉さん?
 大丈夫ですか?」

少し気まずそうに、しかし捕まったことを恨んでいる訳ではないので、
彼女を心配するように声をかけた。

250ゼオラ=アドヴァルド:2011/04/27(水) 00:12:36 ID:cskw3E.60
>>246
小百合の前にコーヒーが置かれる。
カウンターの向かい側に居るのはアルバイト服の少女。

「……どうぞ」
コーヒーの隣に適当にカットされた果物の乗った小皿が置かれる。

>>249
見てみれば、珍しく店員が居る様子。
「……」
ただし、凄く愛想悪い。

251黒沢小百合:2011/04/27(水) 00:13:51 ID:SSMHlh/20
>>249

しかし小百合は応えない。

傍から見れば眠っているように見えるがその実、
小百合は意識を失ってしまっていた。

疲労のあまり、ついに彼女は体調を崩してしまったのだ。

もし彼女の体に触れれば、その体温の高さに驚くだろう。
彼女の汗は疲労からくる発熱によるものだった。

252ゼオラ=アドヴァルド:2011/04/27(水) 00:15:20 ID:cskw3E.60
//うぇ……やっぱりお時間の都合で無かった事に……すいません。

253黒沢小百合:2011/04/27(水) 00:15:59 ID:SSMHlh/20
>>250

朦朧とする意識の中、
置かれたコーヒーに反射的に手を伸ばそうとする。
しかし、カップに手が触れた時点で意識を失い。

――ガシャァッ

そのまま、カップを床に取り落としてしまう。

254テルメス/ニット帽の男:2011/04/27(水) 00:23:59 ID:ste/2NNA0
>>250
「あ、店員さん居た居た。
 紅茶と、あー、サンドな物貰えますか」

愛想は悪くても、男はあまり気にしていないようだった。
とにかく何か食べれれば文句は無い。

>>251
「あれ、寝てるのかな?」

じっとりとした汗に少し異常は感じたようだが、
体には触れずに自分の席に戻ろうとする。

「うあっち!」

その直後に、取り落とされたコーヒーが脚にかかり、男は飛び上がった。

255黒沢小百合:2011/04/27(水) 00:33:01 ID:SSMHlh/20
>>252

//おつおつー

>254

「ぅ……う……。」

小百合はそのまま、椅子から床へと転げ落ち、
こぼれたコーヒーが白のワイシャツにしみを作る。

立ち上がることも出来ず、力なく呻くその様子は尋常ではない。

256テルメス/ニット帽の男:2011/04/27(水) 00:42:26 ID:ste/2NNA0
>>255
「あつつ
 っと、あれ?大丈夫ですか?」

脚を振りながら、なぜか起き上がろうとしない黒沢を起こそうとする。

「あつっ!?」

触れた瞬間、驚いて手を離す。

「すごい熱だ……」

椅子に再び座らせるのは無理だと判断し、
ソファに寝かせようと持ち上げた。

257黒沢小百合:2011/04/27(水) 00:51:20 ID:SSMHlh/20
>>256

テルメスの腕に伝わる小百合の体温と
じっとりと濡れたい服の感触、そして細かな震え。

吐き出す呼気もかなり熱っぽく、恐らく熱は40度近くある。

「うぅう……やとのかみ……さん……やと……の……。」

うわごとを繰り返す小百合はメディアで見せるような
強硬さなどどこにもなく、子供のような弱弱しさを感じさせる。

258穏島優芽:2011/04/27(水) 00:53:04 ID:pXczbO3g0
>>256-257

「あーあ……疲れた、腹減った、血が足んない……」

喫茶店のドアベルを鳴らす者がもう一人、現われる。
布に包まれた、2メートル半ほどの長さの棒状のものを持った、赤いロングコートの女性だ。
そのままでは通らない棒を肩に乗せて斜めにしながら、ドアをくぐってくる。

「すんませーん……腹に溜まるものって置いて…………
 ってオイオイオイオイ、どしたの、兄ちゃん。何があった?」

店に入るなり、倒れた女性とそれを介抱する男がいたのだ、そういう反応を返すのも無理はない。
棒を入り口の側に立てかけて、二人の方へ近づいてくる。

259テルメス/ニット帽の男:2011/04/27(水) 01:01:54 ID:ste/2NNA0
>>257
「寝かせたはいいけど、俺医療知識なんかないよ」

ため息をついて、辺りをきょろきょろ見渡す。

「店員さんもいつの間にかどっか行ったし。
 とりあえず氷嚢でも作ってみようかな」

>>258
「さあ、急に倒れて。
 俺携帯電話持ってないんで救急車呼んでもらえませんか?」

男はビニール袋に氷を詰めながら女性に言った。

「あと、どこ冷やせば効率いいんでしょう」

男は医療知識はさっぱりだった。

260黒沢小百合:2011/04/27(水) 01:10:29 ID:SSMHlh/20
>>258

男性に抱かれた小百合は
傍から見ても一目で分かるほど、体調が悪化していた。

滝のように流れ出す汗は既に、
小百合の長い髪をつたってぽたぽたと床へと垂れ始めている。
場合によっては、救急車を呼ぶ必要があるかもしれない。

>>259

ソファに寝かされた小百合は
寒気がするのか、自分自身を抱きしめるようにして
小さく、縮こまっている。

ワイシャツは既にぐしゃぐしゃで、スーツにまで
汗が滲み始めているのが分かるだろう。

261穏島優芽:2011/04/27(水) 01:19:27 ID:pXczbO3g0
>>259-260
「え、急に倒れた? どれどれ……」

ソファに横たわる女性の様子をしばらく眺めて、ロングコートの女性はふんふんと頷き、

「まあ冷やすっていうなら、額、脇の下が一般的だよね。あと氷枕?
 うん、だいたいそんなトコでしょ。あとこの様子だとタオルも必要かな」

流れ出る汗の勢いにひるむことなく、淡々と告げる。
「あ、あと」と、思い出したように続けて、

「ヒトカタとか持ってないかな? 和紙で作った簡単な人形。
 ……って、バカな質問だったね。一般人が持ってるワケないじゃん。
 ふーん…………となると、アレかな。
 注射器とかあればいいんだけど、さすがに無いよね?」

262テルメス/ニット帽の男:2011/04/27(水) 01:25:39 ID:ste/2NNA0
>>260
「あれ、そういえばこれってそもそも冷やすべきなの?
 冷やしたから悪化とかないよね」

即席氷嚢を持って右往左往。
病人の前で慌ててはいけない。

>>261
「とりあえず、これをこうして……」

言われたとおりに氷嚢を設置。
タオルを調理場から拝借して黒沢の汗を拭う。

「ヒトカタ?そんなもの何に……あ、そういう能力者か何かですか」

ヒトカタならテーブルに置いてあるちり紙で簡単に作れるが、
和紙でないのでちゃんと効果があるかどうか。

「流石に注射器は……」

263黒沢小百合:2011/04/27(水) 01:37:21 ID:SSMHlh/20
>>261-262

小百合はまるで胎児の様に体を丸くし、
時折苦しげにうめき声を出しては、うわごとで何かをしきりに呟く。

病気なのか、それとも他に原因があるのかどうか分からないが
とにかくなんらかの処置を施しておくべきだろう。

とはいえ、この喫茶店で何処までの処置ができるかはわからないが……。

264穏島優芽:2011/04/27(水) 01:38:38 ID:pXczbO3g0
>>262-263
「ま、そうだろうね。逆に注射器とか持ってたら何奴!?とか思ったし。
 じゃあ吸い飲みは? ともかく、液体を身体の中に流し込みたいんだけど」

聞きようによっては危ない発言に聞こえるかもしれないが、表情にふざけている様子はない。本気で言っているようだ。

「こんなとこで使うとは思わなかったけど……まあいいや。
 後でサッカーどもを何匹か潰せば良いだけだしね。こういう街、そういうの多そうだから」

後から出てくる汗を拭きながら、どこか物騒な呟きを漏らしている。

265テルメス/ニット帽の男:2011/04/27(水) 01:48:35 ID:ste/2NNA0
>>263
男はタオルで汗を拭って、それ以上出来ることはないかと考えた。

「まだ救急車呼んでないな」

店内に電話は無いか探す。

>>264
「急須なら」

調理場にあったものを持ってきた。
吸い飲みに形は似ているが。

266穏島優芽:2011/04/27(水) 02:00:37 ID:pXczbO3g0
>>265
「急須……まあ、この際しゃーないか」

受け取った急須の蓋を開けて近くのテーブルに置くと、ロングコートの女性はポーチから何かの小瓶を取り出した。
小瓶の中には白いキラキラした液体が入っていて、女性はその中身を急須に注ぎ入れた。

「これはねぇ、吸血鬼どもが吸い取った人間の生気を抽出したものなんだ。
 見たところこの人、過労くさいし、これ飲ませておけばオッケーだと思う」

さも当然といったふうに液体の入った急須を傾け、ソファの女性に飲ませていく。
ソファの女性はそれを時たま咳き込みながら、なんとか飲み込んだようだ。

「よしよし。これで大丈夫だけど、この人どうしよっか?
 ここ置いてく? それとも念を入れて救急車とか呼んじゃう?
 経験から言ってこのまま置いていっても何も問題ないとは思うけど」

267テルメス/ニット帽の男:2011/04/27(水) 02:07:41 ID:ste/2NNA0
>>266
「あ、大丈夫そうならこのままでいいんじゃないですかね」

男は対して何もしていないが、疲れたように背伸びをする。

「いや、ありがとうございました。
 一人じゃどうしていいか解んなかったもんですから」

ため息をついて礼を言った。

「じゃあ俺はこれで」

店員も居ないので、男は持ってきた雑誌を抱えて帰ることにした。
からん、と男はドアを鳴らして出て行った。

268穏島優芽:2011/04/27(水) 02:17:22 ID:pXczbO3g0
>>267
「あ、やっぱ放置いっちゃう?」

くっくっく、と喉を鳴らす笑い方をして、

「うん、じゃあね。また会いましょ、「人以外」さん」

出て行く男に朗らかに手を振った。最後の方が男に聞こえたかどうかは、微妙だが。
ドアが閉まるのを見てグッと伸びをし、

「……さってと。このままで良いとは言ったケド、一人放置はヤバいよねー」

そう言って窓際の席につき、テーブルに突っ伏す。

「あー……腹減ったぁ……」

その後彼女はソファの病人が目を覚ますまで、ずっと「腹減った」とうわごとのように言い続けた。

269ロージェンス:2011/04/27(水) 22:31:07 ID:1sJsd2CgO

 ――ひぃぃぁああああっ!!!た、助け、助けてぇえええええっ!

 情けない男の悲鳴が夜の通りに響き渡る。
 命が危険に晒された者の悲痛なソレは案外遠くまで良く届いた。
(……まさか、ここまで怯えるとは……。困ったな)
 鎖巻きの黒装束は頬を掻く。
 人通りの少ない所を選んで実験していたが……さっきの悲鳴が誰かに聞こえてたら面倒だ。
 そう考えて通りに落ちる月の光を遮っていた“巨大なデク”を構成分解して魔導機へ格納する。

 そして、黒装束はゆっくりと追走を開始する。
 うねうねと腐敗臭のする水を地に這わせて、その流れに乗りながら滑るように、逃げたサラリーマン風の男を捕らえに向かう。

270???:2011/04/27(水) 22:43:36 ID:ste/2NNA0
「……ジュルル……ん?」

ビルの影の中で、何かをすする音と、男の声が聞こえた。

「なんだってんだ、食事中だのによ。
 まあ、殆ど食い終わってるけど、ジュルッ」

――ドサッ

もう一度すする音が聞こえたかと思うと、何かが影の外に投げ捨てられた。
月明かりに照らされたそれは、血の抜かれた女性の死体。

「ヒヒ、見つからないように逃げねえとな」

物陰を伝って、得体の知れない者が路地を移動する。

271穏島優芽:2011/04/27(水) 22:46:11 ID:5zePDO.60
>>269
路地の横から布に包まれた槍が払われ、サラリーマンの足を捉える。
倒れたサラリーマンの背を革靴で踏みつける人影。
それは槍と、赤いロングコートの目立つ若い女性だった。

「あ、ゴメンねー。見せ場奪っちゃって」

人混みの中で肩をぶつけて謝るノリで、女性は黒装束に声をかけた。

「……でさー、これ、どうするの? 要るの?」

踏みつけられ、胸を圧迫されて声もなく足掻くサラリーマンを指さす。

272鳶貴 / 変異体:2011/04/27(水) 22:47:15 ID:XxrsA0ps0
>>269
逃走する男の前に人影が現れる。
通りを走り回って興奮状態の頭は段々とその姿が人ならざる事に気が付くだろう。

「おやおや…逃げ惑う姿はさながら野兎のようだね。」
笑みを浮かべているのは怪物。
鎧を纏った大男のようだったが、頭部は人間のそれではなかった。

「しかし広い視野を持っていても生かせないようじゃ、ね。」

273ロージェンス:2011/04/27(水) 22:57:57 ID:1sJsd2CgO
>>270

 ――はぁ……はぁ……はぁっ、殺される……! イヤだ、まだ死にたくないっ、俺にはっ……、養うべき家族がっ!

 サラリーマン風の男は恐怖心を振り払うように独り言を繰り返し、息を切らしながら走り続ける。
 音もなく滑るように追ってくる女から、化け物のように見えるソイツから一心不乱に逃げ惑う。

 奇しくも、男の行き先は女性の死体を投げ捨てた得体の知れないものと同じで――
 そのまま鉢合わせれば、汗だくで絶望に満ちたサラリーマン風の男は例えそれが誰であろうと助けを求めるだろう、そしてその後ろに滑るように追ってくる黒装束が見えるはずだ。

274ロージェンス:2011/04/27(水) 23:05:28 ID:1sJsd2CgO
>>271-272

 しかし、男は突然現れた女に足元を掬われ、盛大に転ける。
 背を踏まれ、苦しむ男は突然現れた二人に――いや、片方は最早化け物で……

 ――あ、アアアッ! イヤだ、助けて! 助げてぐれぇ……!

 何がなんだかワケが分からず、涙を流し、自らの運命を呪う。
 その男の後ろから、黒装束が近付いてきていた。

275穏島優芽:2011/04/27(水) 23:12:20 ID:5zePDO.60
>>274
「はいはい、暴れなーいの。往生際って、案外簡単に来るものよ?」

ロングコートの女性がサラリーマンを解放する気配はない。
口調は子供をあやすそれであっても、その表情の裏には明らかな「悪意」が潜んでいた。

276???:2011/04/27(水) 23:12:54 ID:ste/2NNA0
>>271
「これ、あんたのか?」

暗闇のなかから、得体の知れない人物が声をかけてきた。
ヤンキー座りをしているらしく、左足だけが物陰からはみ出ている。
その左足は生々しい赤紫色で、人間には見えない。

「殺したら俺にくれよ」

>>272
「お?仲間……じゃ、無いな。
 お前ベルトつけて無いもんな」

得体の知れない人物は、鳶貴にも目を向ける。
暗闇の中で、不気味に目が光って見えた。

「このおっさん、あんたのかよ?
 殺したら俺にくれない?」

>>273
「おっさん、あんまり人連れてくんなよ。
 俺飯食ってたとこなのによ」

暗闇から覗く左足からは、この人物が人ならざる者であることが用意に想像できる。

「あーあ、また来たよ。
 おーい、これあんたのか?」

そしてまた、殺したらくれないかと言う問いかけをする。

277鳶貴 / 変異体:2011/04/27(水) 23:22:56 ID:XxrsA0ps0
>>274-275
「……ふーん。」

足蹴にされた男には目もくれず、現れた女性に目を向ける。
その視点の先は禍々しいと評すに相応しいと感じさせるような
携えた武器に段々と移っていった

「何だか知らんが、面白い場面に出くわしてしまったようだね。」
くすくす、と不気味な低い声で笑いながら
後から現れた黒装束の方に顔を向ける。

「………ほう?」

>>276
「仲間…?」

人ではない仲間がいる。
そう告げた怪しげな人物の姿を認めると、顎元に手を当てて何やら考え始める。

「……残念ながら、俺の物ではないよ。
 どうやら食人家のようだが、食事の良し悪しは向こうの方にでも聞くといい。」

そう言うと、指を刺して二人の方に向き直った。

278ロージェンス:2011/04/27(水) 23:33:56 ID:1sJsd2CgO
>>275-277

 ちゃぷん。と腐敗臭を漂わせる水が鳴る。
 追い付いた鎖巻きの黒装束は、槍を持つ女性と、化け物の両方に目を配ってにこやかに笑う。

「ドーモアリガトー、タマ小せぇクセして逃げ足早くて困ってたのよ。お二人とも何処の誰かさんか存じませんケド、どうせロクでもない人間デショ?」
 うねうねと二人の足元へ動く腐さった水溜まり、形容し難いナニカが蠢く水は、まるでこの世の物ではないようだ。

 と、

 ――あ、あぁ……。はは、ハハハハっアア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!!!!

 遂に狂ったサラリーマン。
 嗚咽を溢しながら口を裂いて笑い、涙と鼻水に咽び叫んで、最早言葉にならない音をあげる。

 そこに現れた異形の左足。
 問いかけに黒装束はしばらく考えて……。

「――あぁ、なるほど。そういうことならさ、ソレ、要らないし五月蝿いからアンタにあげるよ」
 欲しいならこっちに来い、と。
 言外にそう言った。

279穏島優芽:2011/04/27(水) 23:41:51 ID:5zePDO.60
>>276
得体の知れない人物に声をかけられても、女性は大して動じた様子はない。

「この人? いやあ、あたしんじゃないから、あっちの人に訊いてね」

目線だけで黒装束を示す。

>>277
槍で小突いて男を黙らせた女性は、側に異形の男がいるのに気づき、
楽しそうな笑みをこぼした。

「やや、今日は良い夜だね。こんなにもいっぱい珍しいお客さんに出会えるんだもの。
 とりあえずこんばんはしておくよ」

女性は「こんな感じのは見飽きてる」とでも言うように、平然とした様子で相も変わらず微笑んでいる。

>>278
「ロクでもない人間」と言われ、女性は少しの間キョトンとしていたが、やがて爆笑して、

「あっはっは、ロクでもない人間かぁー。ま、そりゃそーだ。
 逃げまどってる一般人を転ばせて、その追跡者に引き渡しちゃうんだからさぁ、まともじゃないよねー」

腐臭のする水たまりを眼下に見つつも、女性は笑い続けている。

280???:2011/04/27(水) 23:47:11 ID:ste/2NNA0
>>277
「あー、勘違いだ、悪いな、ヒヒヒ」

不気味な声で笑った。

「食うって言うか、飲む?
 俺が欲しいのは血だけだからさ」

>>278
「生きたまんまのやつは別にいらねーんだけどな。
 俺殺したいんじゃなくて血が欲しいだけなんだけど。
 殺すならやりたい奴にやらせれば、殺したい奴は満足して俺は血がもらえる、なんていうか……エコじゃん?」

この異形は少し語彙力が低いようだ。

「あー、でもあっちの奴は別な!
 ちょっとムカついて俺がやっちまったんだ」

遠くに倒れる、血を抜かれた女性の死体を示した。
女性は千夜学園の制服を着ていた。

>>279
「あー、あの人に頼めばもらえるみたいなんだけど、
 あんた人殺したりして快感とかいうタイプ?」

ポリポリと頬を掻く様な音がする。

「もしそうだったらやっちゃってくれたら有り難いんだけど。
 まあ、この場でそのおっさん殺したいって言う人が居ないなら俺がやるけどさ」

281鳶貴 / 変異体:2011/04/28(木) 00:03:24 ID:XxrsA0ps0
>>278
辺りに漂う異臭に気が付き、鼻を啜る。
しかし異形の頭部には目と口以外に形作っているものはなく

「…ハハハハ。
 勇ましい事だ。その“ロクでもない人間”の怒りを買う事の意味を考えないでもなかろ…。」
そしてその正体を首を傾げながら見定めている。
乱暴な言動を低い声の笑いで返した後、何かを思い出したようで言葉の尻を途切れさせる。

「……その姿。」
公安から流れていた情報の中の一つに垂れていた糸を見つけ、引く。

「キミが例のコソ泥、かね?」

>>279
「俺だけではなく奴に対しても、随分と平然としているね。
 面白いよ、キミ。」
隠れている声の主の方に目配せして、微笑み返すように頬を吊り上げる。
足元で狂ったように呻き笑う男はもう眼中にないようだ。

「…キミも面白いが、手に持つそれも面白そうだ。」

嬉々とした口調で怪物が示す物は、言わずもがな男を小突いている長槍の事であった。

>>280
「すると、キミは吸血鬼かね?しかしそのようにも見えないが…。」

顎元を指で撫ぜながら、また何かを考えている。


「血か。そうか…。
 とすると、キミの仲間も?」

血を飲むのか、そうでなくても人を襲っているのか、そう聞きたいらしい。

282ロージェンス:2011/04/28(木) 00:25:30 ID:1sJsd2CgO
>>279

 女性の足元、正にその直下にたどり着くと、びくん。と波打って水溜まりは止まった。

「そして罪もない善良な市民は殺されました。て、なってないのが不思議なくらいよねぇ?」

 息はしているが、既に精神は死んでしまったサラリーマンの頭を踏みつける。
 抵抗すら無い……。
 彼女は舌を打ち、ただ壊れたように音を吐き散らす口にブーツの先を突っ込んだ。

>>280

「……ふぅん。襲うついでにヤっちゃいました、ってことね。なら野郎にでも目覚めれば?」
 エコ、と名付けた利己的提案をする異形に卑下の視線をぶつけて、意地悪く嘲笑う。
 そして、徐々に喉の奥へとブーツの先を押し込んでいく。
 吐くものも出せずに吸う息で肺へと流れ込み、微かに噎せる男はこのまま窒息死するだろう。

>>281

「そうね、私はただのコソ泥。でもアンタは私に“敵意”を向けた――この時点で、アンタに勝ち目はない……」
 サラリーマンを窒息させながら冷めた声で言うと、ロージェンスは「けれど」と繋いで。

「私はアンタと闘う気は無いし、必要も無い……何故なら、その『死の水』がアンタの生気を吸い尽くすから」
 足元で揺らぐ腐臭の水は既に足を濡らしていた。
 しかし、生気を吸われている気配は微塵も無いことに気が付くだろうか……。
 『死の水』とは名ばかりで、黄泉の河から召喚されたとはいえ『ただの腐った水』なのだ。

283穏島優芽:2011/04/28(木) 00:33:13 ID:5zePDO.60
>>280
「人はねー、殺しても大して面白くないんだなー、コレが。
 パンピーだともっとつまらない」

槍の石突でサラリーマンの頭をゴリゴリ擦り、

「血が欲しいんだっけ? じゃあ、あたしじゃだめだね。
 槍も魔法も、どっちも穢いから。きっと美味しくなくなっちゃうよ」

>>281
「あ、これ? やっぱ臭っちゃう?」

槍を手元に寄せて、すんすん、と女性は鼻を鳴らす。
辺りには腐臭が充満しているが、彼女が感じ取ろうとしているのはそういった類の「匂い」ではないようだ。

「わかってたことだけど、わかる人にはわかっちゃうんだよね。
 マズイかな、これ?」

女性は首を傾げて問う。

>>282
足元で波打った水を見ながら女性は笑みを強くして、

「そーだねー。善良な市民ってのは、こういうときは死ぬ役目を負わされてるかわいそーな種族なんだよね。うるうる」

手を組んで、祈るように天を仰ぐ。
女性が黒装束の行為を止める気配は、まったくと言って良いほど無い。

284???:2011/04/28(木) 00:38:50 ID:ste/2NNA0
>>281
「元はただの自分の血を操るだけの能力者だったんだけど、
 あいつらに捕まってこんな姿にされたんよ」

しかし、悲壮感は無い。
むしろ能力が強化されたためか、喜んでいるようにも見える。

「血を飲むのは俺の能力のせいだから、仲間は俺が見る限りは普通のもん飲み食いしてるな。
 ただ、なんか人は襲ってるけど、ヒヒヒ」

>>282
「誰がヤるかよ、あんなの。
 うわっ考えただけで気持ちわりい」

グロテスクな肌の色した奴が言えることではないと思うが。

>>283
「あ、そう?残念」

サラリーマンをじっと見つめながら言った。

「あー、別に誰のでもいいんだけど。
 味とかそういうので判断してる訳じゃねえし」

285鳶貴 / 変異体:2011/04/28(木) 01:00:35 ID:XxrsA0ps0
>>282

「―――敵意か、なるほど。」

能力の一端に触れ、足下に広がる水に視線を移す。
怪物が発した『敵意』は頑として向けられたものではなく
警戒程度の微々たるものだったが、それすら感知した眼前の女に僅かな恐怖を抱く。

「"ロージェンス・カプル・ニブラス"。二つ名は何だったか…そう、"贖罪の女山羊"。」

重厚な脚甲でぴちゃぴちゃと水を跳ねながら、男を甚振っている指名手配者に近寄る。
口にした効果に臆する事もなく
動揺している素振りも見せない。

「何だか知らんが、その大層な名前の汚水も効果をなしていないようだな?
 それとも俺はもう術中に嵌ってしまっているのかな…?」

>>283
「マズいかどうか問いかけるような…物騒な代物を持ち歩いている事は認知しているようだね。」
肩を小気味に揺らして笑った。
目の前の怪物は槍のそれとはまた違う
黒々とした魔力を内包していた。

「問いの答えは"さて"ね。
 俺自身、そういうモノにそれ程詳しいわけでもないんだよ。」

ただ放たれていた異質さを感じ取っただけで、その魔具の本質までは見えていないようだ。

>>284
「ほう、内部の手引きによるものなのか……。」

撫でていた顎元の指を、ぴくりと揺らして止める。


「……思い出したぞ。先に起きた怪死事件。
 その被害者もまた血を……。」

改めて側に捨てられていた遺体を見る。

「…千夜学園。そうか………。
 キサマ、何を……?」

鎧の怪物の表情が驚きのものへと変った。

286ロージェンス:2011/04/28(木) 01:14:20 ID:1sJsd2CgO
>>283

「そして、私たちみたいな“ロクでもない奴ら”の愉しむ道具となりました。めでたし、めでた……しっ!」
 一度足を抜いて、虫の息の男の顔面にガッと蹴り込む。
 ……頚が妙な方へ曲がった。

「――アンタ、面白いね。名前は?」
 顔をあげてロージェンスは女性に名前を尋ねる。
 彼女が他人に好意的な興味を持ったのは――覚えている限りでだが――初めてだった。

>>284

「こんなゲテモノにすら気持ち悪いなんて言われちゃ、彼女も浮かばれないわねー。どうでもいい、けどっ!」

 ぐしゃり。と男の頭蓋が凹む。
 これで死んだだろう。
 もし、まだ生きてたなんて言っても私は知らない。

「はい死んだ。ハイエナ君、さっさと処理してくれる?」
 これで私も人殺しか、と数瞬後悔して開き直った。
 たぶん、記憶が無くなる前にも殺してただろうし、と。

>>285

「……へぇ、私ってもしかして有名人? ご丁寧に二つ名まで付けられてるなんて知らなかったわ。ねぇ、私って何した人?」
 いや、そもそも。
 ロージェンスには過去の記憶が無い。
 今では自らの名前と特異体質、装身具の効果等を思い出しているものの、肝心な経歴については未だに白紙のままだ。

「バレちゃった。今は亡き足下のサラリーマンは真剣に信じたってのに、嘘を見抜くチカラでもあるの?」
 けたけたと嗤って愉しそうに、異形の体躯を下から舐めるように見ていき、やがて視線を合わせてにらめっこ。

287穏島優芽:2011/04/28(木) 01:27:46 ID:5zePDO.60
>>284
「じゃあ今、このおねーさんが殺してくれるっぽいから、ちょっと待っててねー」

口に突っ込まれたブーツを見ながら言う。

>>285
「へぇ、詳しいわけじゃないんだ」

女性は存外に驚いた顔をしている。

「いやね、君みたいなのを、前にウチの会社で見たことがあるっぽいんだけど……ちょっと思い出せない。
 それでそっち系に詳しい人なのかなって思ってたから、意外だったよ。
 君、ウチの会社に関係してない? ああ、社名は大カノッサ……じゃない、カノッサ機関っていうんだけど」

聞く者が聞けば恐れ、聞く者が聞けば怒りをあらわにするであろうその名を、女性は何でもないように告げた。

>>286
「わお、窒息の方かと思ったのに。おもしろいやり方するねー」

お〜、と感嘆の声を上げながらぱちぱちと小さく手を打つ。

「あたし? あたし、優芽(ゆめ)。穏島優芽(おだじま ゆめ)。よろしくね。
 そういう君は?」

288???:2011/04/28(木) 01:32:48 ID:ste/2NNA0
>>285
「ん?ああ、あいつかー。
 いや、対したことは考えて無いよ、ヒヒ」

笑いながら立ち上がって、影の外に歩いてくる。

「単に千夜学園――ムカつくからちょーっと嫌がらせしてるだけ」

>>286
「俺今はこんな格好だけど、
 本当はイケメンなんだぜ?ヒヒヒ」

全身が脚と同じ赤紫色で、背中と右腕には、
先端に穴が開いた注射器の針をそのまま巨大化したようなものが十〜二十本生えていた。
そして、腰には異能都市に出没する怪人達共通の紋章が刻印されたベルトが取り付けられていた。

>>287
「あー、いただきますってか?」

針の生えていない左腕でサラリーマンの遺体を掴み、
牙の生えた口を開けて噛み付いた。
ジュルジュルと音を立てて血を啜っていく。

289鳶貴 / 変異体:2011/04/28(木) 01:59:22 ID:XxrsA0ps0
>>286
「フハハハ…!知らぬ存ぜぬで通るような肩書きなら…?
 ……待てよ。」
おちゃらけた女の言葉に感じた違和感。
惨たらしく市民を躊躇無く殺せる人間が犯罪者である事には先ず間違いない。
問題はそこではなく、どこか真実味を含んだ問いかけだった。

「………さぁね。キミのような口うるさいだけの娘如きに賞金がかけられているのか。
 一番詳しいのが目の前に一人いるばかりだが?」

「なに、『生気を吸い取られる』というのがどういう事か、一概にどうとは言えんが
 似たような現象に覚えがあるのさ。幾つもな。」
先に現れた怪人を気にしながら、光る目が視線を捉える。

>>287
「意外に思えるだろう。
 確かに関わってきた事は幾度かあるが…中々興味が持てなくてね。
 俺よりも詳しくて興味津々な連中が周りにたくさんいるから、そいつ等に任せてるって話さ。」

「―――なんだって?」
大カノッサ、その部分で今まで作っていた笑みを崩し
あからさまな反応を見せた。

「……フフフフフ、いや、参った。
 機関の者…同業者……か。」
異形の男もまた、恐れ多きその機関に名を連ね従っている者だった。


>>288
「……ふむ。私怨か。」
現れた毒々しい体色の人型に目をやる。
その皮膚に突き刺されたような針を認めると
片目を伏せるようにして見詰める。

「…話には聞いたことがある。"怪人組織"とやらの者だな。
 どうだろう、一つ提案がある。君の襲う学園には俺の部下もいる。
 キミに必要な分の血液を提供する代わりに
 色々と話なり何なり、聞かせてもらえないだろうか。」
食事の様子を見ながら取引を持ちかけている。

290ロージェンス:2011/04/28(木) 02:20:47 ID:1sJsd2CgO
>>287

「私の名前なら、さっきそこの人が言ったけど。ロージェンスっていうよ」
 優芽と怪物の足元に留まっていた水を呼び寄せ、ブーツについた諸々を洗い流す。
 ロージェンスに魔術で召喚、使役されているようだ。

「……で、カノッサって何?」
 無知故に、その名を恐れず。
 そして愚かしい。
 知っていれば躊躇したであろう、その名を何気なく尋ねる。

>>288

 うわぁ、説得力ねぇ……。

 声に出す前に思い、口には出さなかったが、顔には出た。はっきりと。
 そして、迷いなく遺体に噛み付き血を啜る光景を見て苦く笑う。
 猟奇的な行動に嫌悪を覚えたからではない。
 それが当たり前だと言わんばかりに、日常の延長線上で行動する針だらけの異形が言う『元の姿』はこれじゃないのか。
 などと考え、ウニみたいな形状を想像して、もはや人間じゃない。なんて鳥肌を立てていたからだ。

>>289

「似たような現象に覚え、ね。それはそれで普通じゃないわね」
 オウム返しして眉を潜める。
 が、光る目に視線を返されると真剣に見つめ返す。

「……教えて。なんで、そんな口うるさい小娘に、賞金なんかが掛かっているのかを」

 小国とはいえ、数々の国を渡り、国家を潰して歩いていた国際的犯罪者。
 数年前、潰された小国達が『英雄』の下に決起した大連合『アゼル連合国』に挑まれ、敗走してからは追われる身であるというのに、知らぬ存ぜぬはおかしな話である。
 そういった経歴を知っていれば、彼女に記憶が無い。というのは安易に想像出来ることであろう。

291穏島優芽:2011/04/28(木) 02:32:33 ID:5zePDO.60
>>288
「ううん? 血吸いの類だったんだね。なるほど納得……」

優芽はその「食事」の様子を興味深そうに見ている。

>>289
「同業者? ……へぇ、あなたも大カノッサの……」

「同業者」というワードに、優芽の笑みが弱まる。

「じゃあ、同じ穴のってことか。
 あたし、この街来たばっかだから、今度会ったら街でも案内してよ。
 何せ右も左もって奴だからさー」

照れたように頭をポリポリと掻く。
同じ場所にカノッサの関係者が二人もいるという、割と珍しい状況がそこにはあった。

>>290
「ふうん、ロージェンス・カプル・ニブラス、ね。覚えとく。
 次に会うまでに愛称でも考えるよ」

「善良な市民」の頭を蹴り潰した相手に愛称を付けようとするあたり、優芽も相当である。

「で、ウチの会社に興味がある、と。
 ……でも、あんまり外でその名前、言っちゃダメだよ? ウチの会社、恨まれやすい質だから。
 そこんところ約束してくれるんなら、教えてあげる」

292???:2011/04/28(木) 02:42:54 ID:ste/2NNA0
>>289
「たしか……スケイル!とかいう組織だったかな」

遺体から口を離して答えた。

「だめだね、俺いきなり怪人にされて、好きなだけ暴れて来いって言われただけだし。
 何にも知らないよ、ヒヒヒ。
 それに俺のこれは能力を強化するための吸収だから必ず必要なもんでも無いし」

そう言って再び遺体に口をつけるが、もう一度口を離して思い出したように言う。

「そうそう、どうしてもって言うなら、幹部に取り次ぎぐらいは出来るけどな」

>>290
「あー、やっぱ一般人より能力者の方が高エネルギーなのか?」

不満足そうに食事を終えて、干からびた遺体を放り投げる。

「まあ、無いよりは、ってか
 ごっそさん」

>>291
「断っとくけど吸血鬼じゃないからな」

食事を終えると忠告した。

「太陽に当たっても死なないし、何千年も生きたりしないからな。
 ふう、血も頂けたし最初は逃げるつもりだったし帰るかな」

怪人はそう言って、再び影の中に入る。

「それじゃあ、ごっそさん」

物陰から物陰を伝って、派手な体色が目立たない用に去っていった。

293鳶貴 / 変異体:2011/04/28(木) 02:58:35 ID:XxrsA0ps0

>>290
「大したことではないだろう?何せ"ロクでもない人間"だ。
 何も驚くような事じゃないさ。そうだろう?」
人間と言葉を並べてはいるが、人型の立って動く鎧の怪物が人間かどうかは怪しい。
そして真剣な眼差しを受けた事が意外だったのか、少し後を引くようにして驚いた。

「………何も知らないのか。」
漆黒の肌と光で作られていた表情が真顔に戻る。
機関を知らないと言う話もどうにも引っ掛かるものがあった。

「…大罪人であるキミ自身が知らぬ事を俺が知っているものか。
 情報にはキミが追われる身であり、どういう訳か……。」
そこまで言い切る前に言葉を遮る。

「…そんなに知りたい事なのか?」


>>291
「正確に言うならば我々が機関に同調しているのだがね…。」
額を鉤爪のような指で小突きながら説明する。
表情の変化には気が付いていないようだ。

「お安い御用ですよ。
 俺の名前はトビタカ。どうぞよろしく頼むよ、穏島さん。
 …いやはや、珍しい事もあったものだな…。」
ロージェンスとの会話の横で名前を聞いていたようだ。


>>292
「"スケイル"…か…それが組織の名称か…。」

今度は口元に指を当てて撫でるような動作をする。

「…やれやれ。
 自分でも良い案だと思ったのだが、あっさり決裂してしまったな。」
やれやれと両手を上げながら首を振る。
そしてその表情には少し"怒り"が見え隠れしていた。


「幹部、か。上とも話して考えてみるよ。
 ……個人的には必要ない、と思うがね。」

人を貪る怪人が去り行く姿を目で追いながら、ぽつりと言葉を述べた。

294ロージェンス:2011/04/28(木) 03:23:30 ID:1sJsd2CgO
>>291

「へぇ……。それは愉しそうね、すごく、愉しそう。でも、今は遠慮しとく」
 恨まれる事を望み、そうであることを好む体質的な性癖を持つ彼女にとって、カノッサは魅力的に感じられた。
 だが、同時に。
 何故かそれ以上踏み込んではいけない気がした。いや、むしろ強迫に近い感覚で知ることを拒んでいるような……。

>>292

 見事にカラッカラの木乃伊みたくなったサラリーマンの成れの果ては、使い古されたボロ雑巾のような最後を迎えた。

(……ん、音……?)
 微かに聴こえるサイレンの音。
 通報を受けた警察が嫌々ながらもやってきたのだった。

>>293

 大罪人、追われる身、賞金、そして二つ名。
 総じて知り得る一つの結論は極めて表面的な物でしかなかったが、何も知らない彼女にとっては重大な情報であった。

「……そうね。たしかに自分の事は、自分自身が、分かってないと、ね……。――でも仕方ないじゃない、知らないんだから」
 自らの“殻”を知り得た空っぽの彼女は、うつ向いて息を吐く。
 最後はもう、自分に言い聞かせるように呟いただけだった。

「知りたい、すごーく知りたいケド。どうやら時間切れみたいね、面倒事はイヤだし、私はさっさと退場させて頂くわ」
 言って、水柱が立つ。
 その噴出に乗り、上へと逃げたようだ。
 次第にサイレンの音が大きくなってきている。
 彼らがこの場所を特定するのも時間の問題だろう。


//ここらで〆にします。
//遅くまでありがとうございました

295穏島優芽:2011/04/28(木) 03:30:14 ID:5zePDO.60
>>292
「吸血鬼じゃない血吸いかぁ……この街は面白いね、ホントに」

優芽は興味深そうな視線のまま、影に入っていった姿を見送る。
その視線は、兎を前にした狼のような……狩人じみた目から送られていた。

>>293
「そんな細かいこと気にしない、気にしない。
 あたしたちに味方してくれる人って、希有だもん。有り難いって」

と、名前を告げられ、名前を訊いていなかったことに思い至る。

「あ、ごめんね、名前訊いとかなくって。そうだよ、バカだなあたし……。
 次会うときもその姿とは限んないじゃんか」

こんこん、と自分の頭を小突く。
優芽はこの異形の男が、一時的な変異体であることに薄々気付いているようだ。

>>294
「そっかぁ。また、気が変わったらあたしんトコ来てよ。
 お茶をお供にして教えてあげるから」

水柱に乗ってその場を後にするロージェンスに、巨大な怪物のような組織に身を置いた優芽はにこやかに手を振った。
彼女の逡巡ももっともだ、と思いながら。


//ありがとうございました。乙です!

296鳶貴 / 変異体:2011/04/28(木) 03:54:44 ID:XxrsA0ps0
>>294
辺りを駆けるようにして近づいて来る耳障りな警報に気が付き…溜息を一つ。

「…ただのコソ泥だと思っていたが、どうやらその実態はより複雑で悪辣なようだな。
 記憶喪失―――それも自身を守る一つの防衛手段だという話を聞いた事が…。」
真に自身の行いを忘れて尚、人を殺し悪行を積み重ねる。
一体彼女の精神や感情の器といったものは如何様にして形成されているのか。

「知りたいのなら知ろうとすればいいさ。その糸口を俺が見つけてやっても良い
 もちろん、タダではないがね。」
上空へ向かって逃走する前に、笑いながらそう告げた。


「―――どうやら、もう少し調べる必要性が出てきたようだな。
 面白い"駒"になってくれそうだね。」


>>295
「………。」
味方するという所為、言い方に少し複雑といったような難しい顔で笑みを作った。

「ハハハ、そこまで察しているとは驚き…というのは失礼かな。
 流石とも言うべきか。機関の人間だけある。」
腕を組んで様子を見ていたが、程なくして足音が遠くから聞こえてくる事に気が付き


「さて、一先ず避難でもしますかな?
 それとも厄介事に正面から向かう方がお好みか?」

言い終えた後に手甲を顔の前で構え、甲に書かれた三つのうち二つの術式の印を銀色に光らせる。
そして次に素早く腕を突き出したかと思うと、何もない筈の空間を腕で突き破った。

突っ込まれた腕は霧のような何かの中に消え、そこからは別の場所への転移空間を作り上げているようだ。

297穏島優芽:2011/04/28(木) 04:15:21 ID:5zePDO.60
>>296
「厄介事に正面から?
 冗談。パンピーの犬なんか相手にしても疲れるだけ。損しかないよ」

やれやれ、といったふうに肩をすくめる。

「……とはいえ、「ミスティック・フリート」に身を寄せてるあたしが尻尾を巻くってのも、
 艦隊の沽券に関わる話でね。
 誘ってくれてるんならありがとうだけど、あたしは残るよ」

槍に巻かれていた布を取り払うと、中から奇妙に波打つ柄が特徴的な、鮮やかな青の槍が現われる。
外気に晒された槍は脈動するように、もしくは怨嗟の声のように、周囲に微かな波動を発生させた。

「警官の皆殺し。これが狼煙になるでしょ。
 ……実にカノッサらしいやり方だとは思わない?」

片手だけで槍を一回転させると、優芽はコートの裾を翻して、サイレンが聞こえる方へ走っていった。
警官のものと思しき悲鳴が聞こえたのは、その十数秒後のことである。

//自分もここで落ちます。
//トビタカさんも乙でした。

298鳶貴 / 変異体:2011/04/28(木) 04:36:13 ID:XxrsA0ps0
>>297
「確かに。言うとおりだね。」
同じく無能力者達にちょっかいをかけても無益なだけと考えていた鎧はうなずく。

「"ミスティック・フリート"…これはまた随分と大層な名前がでてきたな。
 この都市にもその人員を宛がっていたとは知らなかった…。」
既に得物を紐解き構えた穏島に目をやり、背景の事も考えるその姿勢に感心している。
というよりも、そうでなくては機関の人員は中々勤まるものでない。

「フフフフフ…いいねぇ、益々面白い。」

当初はその魔槍への好奇心を強くするばかりであったが
その面白い人柄にも興味が沸いてきたようだ。


「では、邪魔にならぬ内に俺も退散しよう。
 また会った時は、観光案内でも何でも引き受けましょう?」

相変わらず不気味な面で笑みを浮かべる鎧の怪人。
突っ込んだ片腕に引き込まれるように消えていくと
辺りはサイレンの鳴り響く中で警官の悲鳴と風を切る音だけとなった。

299穏島優芽:2011/04/29(金) 22:27:21 ID:I.2jsPKM0
【異能都市・中央公園】

霧がたちこめ、普段よりずっと人気が少ない中央公園。
そこにあるベンチに、足を組んで腰掛けている人影がある。
「うん、上等上等」
布に包まれた槍をベンチに立てかけ、膝の上に乗った紙箱からかつサンドを摘み、
ひょいひょいと口に運んでいるその人物は、赤いロングコートの目立つ若い女性だ。
「こういうの好きだなシンプルで。
 ソースの味って男の子だよな……なんてね」
時折つぶやきながらサンドを頬張る彼女の横には、二箱分のかつサンドの空き箱がある。
つまるところ、彼女が今食べているのは三箱目だということだ。

300テルメス/ニット帽の男:2011/04/29(金) 22:41:26 ID:ste/2NNA0
「俺が復活してたこと……やっぱり幹部にばれてたのか……!」

パイロットニットを被った男が、公園の外を走っていた。
時折後ろを振り向き辺りを見渡しており、何かから逃げているようにも見える。

「居ない……撒いたか?」

肩で息をしながら、男は立ち止まった。
後ろを振り向き、周囲のビルの屋上を見る。

「影将、だよな……こっそり追跡するのは奴が一番だし。
 ……霧で見えないか……嫌な天気だな、今日」

自販機を求め、男は公園に入ってきた。

301穏島優芽:2011/04/29(金) 22:48:42 ID:I.2jsPKM0
>>300
「やっぱかつサンドうめー。生きてて良かったー……あ?」

遠くで何かが動いたような気がして、優芽は目を細めた。
この霧だ。普通なら視認できる距離でも、今日はそうはいかない。
ゆえに、優芽の意識は「何か動いたか?」程度だった。
その片手間に、サンドをまたぱくつく。三箱目の中身はもう残りひとつだけだった。

302テルメス/ニット帽の男:2011/04/29(金) 22:55:25 ID:ste/2NNA0
>>301
「自販機自販機……全力疾走したから喉カラカラだ」

都合よく自販機を発見し、アイスティーを購入。
今度はベンチを探して歩く。
すぐにベンチも見つかったが、先に誰かが座っていた。

「……もしかして幹部じゃ……。
 ……いや、違うよな、あの様子じゃ」

それでも多少警戒しながらベンチに近づいていった。

303穏島優芽:2011/04/29(金) 23:02:23 ID:I.2jsPKM0
>>302

「おや? おやおや?」

距離が縮まって、ようやく彼女は男の姿を確認した。

「誰かと思ったら、こないだカフェでテンパってたお兄ちゃんじゃない。
 こんな偶然あるもんだね」

槍を反対側に立てかけ、男が座れるスペースをベンチに作る。

「ささ、おいで。場所は空いてるよ」

ベンチの空きスペースをポンポンと叩く。座れ、ということらしい。

304テルメス/ニット帽の男:2011/04/29(金) 23:08:59 ID:ste/2NNA0
>>303
「ん?」

警戒しながら近づいていたら、いきなり声をかけられた。
当然更に警戒するが、一応知った顔と解り、安堵する。

「ああ、この前の。
 先日はどうも、隣失礼します」

言われるがままにベンチに座り、さっき買った缶のプルタブを開ける。
一気に缶の中身を半分ぐらい飲んでため息をついた。

305穏島優芽:2011/04/29(金) 23:15:16 ID:I.2jsPKM0
>>304

「ほほう、兄ちゃん良い飲みっぷりじゃねぇか……」

オヤジっぽく言って、優芽は男に最後のサンドが入った紙箱を差し出し、

「ここで会ったも何かの縁だ……肉屋のかつサンドだ、取っときな。釣りはいらねぇぜ」

やっぱりオヤジっぽく締めた。

306テルメス/ニット帽の男:2011/04/29(金) 23:22:50 ID:ste/2NNA0
>>305
「はあ、頂きましょう」

かつサンドを受け取ってほお張った。
多少喋り方に突っ込もうとも思ったが、

「あ、美味い。
 どこの肉屋だろう、これ」

素直にかつサンドが美味かったので、聞いてみた。

307穏島優芽:2011/04/29(金) 23:32:36 ID:I.2jsPKM0
>>306

「フフ……そいつはな、ドイツはブランデンブルク地方、その更に奥地の…………なんてことはなくてね。
 街の西側の商店街にあった肉屋のやつ。わかる? 銭湯あるあたりなんだけど」

そのオヤジな喋り方に疲れたのか、優芽は話の途中でそれを戻してしまう。
どうやら、気分が切り替わりやすい質らしい。

「商店街をブラついてたら、これまた良い匂いがしてきてさぁ。
 気がついたら、財布の紐を緩めてたってわけ」

にしたって、三箱も買ってしまう人はそうはおるまい。

308テルメス/ニット帽の男:2011/04/29(金) 23:41:23 ID:ste/2NNA0
>>307
「はあ、西側はあんまり行かないなあ」

サンドの最後の一切れを口に放り込み、飲み込むと、
残った紅茶を流し込む。

「ご馳走様です。
 さて、これからどうしようかな……」

立ち上がって、背伸びをする。

309穏島優芽:2011/04/29(金) 23:49:54 ID:I.2jsPKM0
>>308

「そういえばさぁ」

背伸びをしている男の方を見ずに、
優芽はさも今思い出しましたといった体で話し始める。

「おとつい、君のお仲間っぽいのに会ったよ。
 死体から血吸ってたけど、君もそういう類?」

徒人には絶対に言わないであろう、言葉の羅列。
優芽の語り口からは「善意」も「悪意」も感じられない。
ただ、「興味」だけがその言葉に乗っていた。

310テルメス/ニット帽の男:2011/04/29(金) 23:56:07 ID:ste/2NNA0
>>309
「は?」

振り向いて硬直。

「……どういう意味でしょうかね?それは」

吸血の怪人は、最近組織に入れられた新参。
テルメスは会ったことはないが……。

「何で突然そんな意味のわからない事を?」

311穏島優芽:2011/04/30(土) 00:05:38 ID:I.2jsPKM0
>>310

「いやね、「似て」んのよ、君とあの血吸いが。
 なんかこう、悪いのが詰まった感じって言うの? そんな感じの気配。
 仕事柄、そういう気配には人一倍敏感なんだ、あたし」

対する優芽は、新参者の怪人を知り、それが属している組織を知らない、
という事情を抱えており、男とはまるっきり正反対だった。

「君みたいなの、一人……いや、一匹? 
 どっちでもいいけど、あの血吸いが言うことを信じるなら、一つじゃないんでしょ?
 ……ねえ、君たちって、何なの?」

空になった空き箱を捻り潰しながら言う。
圧縮された箱が、ぎゅっ、と、悲鳴のような音を立てた。

312テルメス/ニット帽の男:2011/04/30(土) 00:13:09 ID:ste/2NNA0
>>311
「……俺に、どうしろって言うんですか?」

どちらとも取れる言葉。
まったく意味が解らずに、反応に困っているのか、
怪人であることを認め、優芽が何を求めているのかを聞いたのか。

「何が言いたいんですか、あなたは」

313穏島優芽:2011/04/30(土) 00:21:50 ID:I.2jsPKM0
>>312

「うーん、ぶっちゃけた話ね」

捻り潰した箱を、近くのくずかごへシュートする。

「君の正体が知りたい。いや、正確には君「たち」ね。
 その気配は、どう考えても人じゃない。けど何なのかわからない。
 そこのところを、はっきりさせたいんだ、あたしは」

口の端に残っていたパンくずを、指で取って舐める。

「だってあたし、そういう研究が大好きだから」

314テルメス/ニット帽の男:2011/04/30(土) 00:33:02 ID:ste/2NNA0
>>313
「あんたがどういう人間かによっては、
 俺のことを告白してもいいと思った」

男の体が、鱗に包まれる。

「だけど、あんたはだめだ。
 俺は研究材料になんかなるつもりはない」

鱗が剥がれ落ち、男は両腕に鋸上の刃を備えた灰色の怪人に変貌していた。

「俺が平穏に生活するためには、あんたを殺さなきゃならない。
 あんたのせいで俺がスケイルの怪人と同族とばれたら、俺はこの街に居られなくなる」

右腕に備えられた鋸を、優芽の首筋に突きつけた。

315穏島優芽:2011/04/30(土) 00:46:33 ID:I.2jsPKM0
>>314

「ふーん。交渉決裂、ってわけだ」

下手に動けば怪人に殺されるこの状況においても、優芽の態度は変わらない。

「平穏のために殺す、か。ありきたりだなぁ、君も。
 それ、「人間」がよく使う言い訳だよ? 君、「人間」だっけ?」

にこり、と、悪意を感じさせる微笑みを浮かべて、

「違うよねー?」

突きつけられた鋸を掴んだ優芽は、そのまま自分の首筋を少し切り裂いた。
皮膚が裂け、緩やかに血が滲み出てくる。
永い星霜と那由他の距離を日常とする、旧支配者、その「悪意」をはらんだ血が。

316テルメス/ニット帽の男:2011/04/30(土) 00:56:55 ID:ste/2NNA0
>>315
「俺はあいつらの命令で殺しはしたくない。
 俺は俺の意思で動きたいから殺すんだ」

怪人は鋸を振り上げる。

「俺は人間じゃない。
 こう言えば満足なのか」

そして、振り下ろした。

317穏島優芽:2011/04/30(土) 01:09:34 ID:I.2jsPKM0
>>316

「いいや、満足じゃあないね」

鋸が振り下ろされる少し前、優芽は組んでいた足を戻し、地面を思い切り踏みつけていた。
その力で槍と優芽ごとベンチが後ろに倒れ、鋸はベンチの股の下をくぐるにとどまる。

「君が尊重する自分の意志ってやつをバッキバキに折ってから、
 泣いて命乞いをする気力すら起きない状態でまな板の上に乗せて、」

ベンチを倒す勢いを使ったバック転をしてベンチの後ろに立ち、跳ね上がった槍をしっかり掴んで、

「君のその鱗にメスを入れるまで、あたしは満足しないよ」

槍を包む布を取り去った。
現われた鮮やかな青の槍は、目覚めを強制された腹いせのように、瘴気を含んだ波動の嘶きを上げる。

318テルメス/ニット帽の男:2011/04/30(土) 01:18:13 ID:ste/2NNA0
>>317
「……ますます殺さなきゃならないな」

左腕で、地面を叩きつける。
すると、地面全体が動き出し、巨大なアリジゴクの巣のような、
すり鉢上のフィールドが出来上がった。

フィールドは絶えず動き続け、ただ立っているだけならすぐに飲み込まれてしまうだろう。
しかし、生半可なジャンプ力では、砂に脚を取られ、飛び上がることすら出来ない。

「生き埋めにしてやる」

怪人は、両手の鋸を器用に使って砂に潜り込んだ。
おそらくこの怪人は、この地中を自在に動くことが出来ると思われる。

319穏島優芽:2011/04/30(土) 01:35:10 ID:I.2jsPKM0
>318

「生き埋めは勘弁願いたいなぁ」

足を取られつつあるというのに、優芽の声に恐怖はない。

「蟻地獄、か。とんだ虫野郎だったわけね。
 ……じゃあ」

優芽は首筋の血を指に取り、その滴を空へ飛ばす。

「いあ いあ イタクァ クァ……!」

ちっぽけな血の滴が二つに分かれ、さらに小さくなる。
――――が、その二つの滴は次第に赤く光り始め、最大高度に達したときはもう、
夜空の凶星と見紛うかという紅の輝きとなっていた。
霧に浮かぶ二つの紅。それは見ようによっては、紅に光る巨人の瞳のようにも見え――――

「……凍えろ、虫」

次の瞬間、蟻地獄が支配する地面に、一瞬にして強大な冷気が降り注いだ。
冷気は蟻地獄が飲み込んだ、自販機や街灯などの公園のパーツはもちろんのこと、その土までもを凍らせていく。
二つの凶星が輝く下で、冷気による強制停止の時間が始まった。

320テルメス/ニット帽の男:2011/04/30(土) 01:46:08 ID:ste/2NNA0
>>319
ボコン、と優芽の足元に穴が開く。
脚を掴み、地面に引きずり込もうという魂胆だろうか。

「!?なんだっ!?」

しかし、冷気によって固まった地面に思うように身動きがとれない。
上半身が飛び出したまま、地中に戻ることが出来ない。

「せめて、中心に!」

優芽に掴みかかり、アリジゴクの中心に投げ込もうとする。

アリジゴクは能力によって作られたもので、
氷結を砕いて動き続けるが、動きは鈍っている。
今ならば常人のジャンプ力でも抜け出せるかもしれない。

これ以上中心部に近づけば話は別だが。

321穏島優芽:2011/04/30(土) 02:01:40 ID:I.2jsPKM0
>>320

優芽のスラックスから携帯の着信音が鳴るのと、足元から怪人が掴みかかってくるのは同時だった。

「誰、こんなイイとこで邪魔するの…………っとっと!」

スラックスのポケットに意識が向いたことで、足元の怪人にすんでのところで気付いたようだ。
流動性を失い、凍土になりつつある土を蹴って後退る。

「……っはい、もしもし!?」

怪人の動きが止まっている隙に、優芽は携帯電話を取り出し、苛立たしげに受話ボタンを押す。
が、聞こえてきた声に驚愕を隠せない顔になり、

「げえっ、提督閣下……!!
 あ、いえ、いまのげえっ、はかつサンドを食べ過ぎたせいでありまして……」

肩と頬で携帯を保持し、槍と足をフルに使って蟻地獄を上っていく。

「……はい、はい……は!? 今なんと!?
 っく、少々お待ちを!」

電話をしながら、ようやく蟻地獄から抜け出た優芽は、受話口に手を当てて、

「ごめんねー! ちょっとあんたの相手してる場合じゃなくなったー!
 また今度迎えに行くからねー!!」

怪人に向かって叫び、通話を再開しながら優芽は公園の出口へと走っていった。
後に残ったのは二つの凶星と冷気のみだが、術者が居なくなった今、それらは力を失っていく事だろう。


//すみません、自分はここで落ちます。絡みありでした!

322テルメス/ニット帽の男:2011/04/30(土) 02:08:37 ID:ste/2NNA0
>>321
「ま、まてっ!この……」

追いかけようとするが、冷気のせいでうまく砂から這い出すことが出来ない。
そのまま優芽を取り逃がしてしまった。

「……幹部にもばれた、人間にもばれた……。
 俺はもう、この街に居られないのか……?」

とにかく今は、逃げるべきだ。
再びアリジゴクの中に飛び込み、地中を伝って怪人は何処かに行ってしまった。

//おつでしたー

323No.31:2011/04/30(土) 21:58:33 ID:j3dxNUKs0
平日昼間の公園でアイスを食べている少女が居た。
白いワンピースに水色の髪の彼女は、海からやってきたイ○娘などでは無い。
れっきとした犯罪者であり、その年齢の低さから保護観察中の異国の少女だ。
No.52と呼ばれた青年と共にテロを遂行しようとしたが、
観測局と異能者の前に倒れたのだった。

腰掛けたベンチの上で足をぷらぷらさせて、ぼーっと空を眺めている。

324“16”:2011/04/30(土) 22:07:00 ID:FRwfC/wE0
>>323
「――ぼーっとしてたら、融けちゃうよ?」

上空から、声。
アイス少女は多分、この声に聞き覚えがあるはずだ。

いつだかの戦場で喚いていた、なりきりヒーローである。

325No.31:2011/04/30(土) 22:18:38 ID:j3dxNUKs0
>>324
…!

怪訝な顔で空を見上げたが、その声にぴんと来るものがあったようだ。

「保護観察中のわたしに何の用ですか?」

凍てつく視線。どうやら機嫌が悪いようだ。
だが、そういいながらアイスを口に運ぶ動作はもくもくと続けられている。

326“16”:2011/04/30(土) 22:24:07 ID:FRwfC/wE0
>>325
「いんやぁー。特に用はないんだよねー。
 パトロール中にたまたま見つけたからさ、なんとなく声掛けてみただけさっ」

ふよふよと降下。
真っ白い髪の先が重力に逆らって天を衝くけれど、やがて敗北してくたっと墜ちた。

「保護観察中かー、面倒臭いねっ。
 ……御身体の方は大丈夫かい? 怪我が残ってたり、病気したり、してない?」

せめて声だけは、世間話の軽さを持っていようと努めながら。
隣いいかい? なんて、空いたベンチを指差しながら訊ねてみる。

327No.31:2011/04/30(土) 22:33:17 ID:j3dxNUKs0
>>326
「ヒーロー。…うさんくさい」

侮蔑のような視線だが、相手の事をヒーローと呼ぶ。
どこか矛盾したその対応に、彼女の棘が見せ掛けだけである事が透けている。

「身体は、大丈夫。でも、能力の過剰使用のせいで、しばらく強い能力は使えないの。
怪我とかは、…きれいさっぱり。すごいわね、この都市の技術は」

ふぅ、とため息を吐く。その仕草はどこか大人びていて、
少しこっけいだった。

「ん。」

アイスをもしゃもしゃ。首の傾きで、ベンチの隣を指した。
座っても良いらしい。

「パトロールなんて、貴方も暇ね。でも、もうすぐ、忙しくなるわよ」

328“16”:2011/04/30(土) 22:45:43 ID:FRwfC/wE0
>>327
胡散臭い、と言われたことに対してはちょっぴりむっとしただけだった。
言われ慣れているのだ、哀しいことに。

「そっかそっか、それなら良かった。
 でもねー、技術を過信するのは良くないぜー?
 ニンゲンってのは必ずどっかに欠陥があるんだ。そのニンゲンが創ったモノも然り、さっ」

断言する口調を使いながら、しっつれーい。ぽすっと少女の隣に座り込む。
こちらはなんというか、16と言う年齢にしては子供っぽすぎる。

「まあ、この街、強いバケモノがうじゃうじゃしてるからねー。
 強盗が銀行員に返り討ちされちゃうことなんて日常茶飯事。ヒーローのお仕事が少なくなっちゃう。
 ……で、そんなニートヒーローがどうして忙しくなっちゃうんだろうね?」

だいたい予想はできる。カボチャ頭の男が、脳裏にちらついた。

329No.31:2011/04/30(土) 22:57:06 ID:j3dxNUKs0
>>328
「先生は、欠陥なんて無いよ」

誰も、彼女の崇拝の対象については触れていないのに、彼女は当然のようにその答えを返した。

「いつか、この都市の技術も越えて行くのよ」

それは希望に満ちた眼だった。洗脳では無い。本心からの崇拝であり、狂信なのだ。

「…貴方は、その、貴方の…怪我とかは、……」

だいじょうぶ?と、聞こえないくらいの声で呟く。

「…No.28が、もう既に、此処に送り込まれているわ。
観測局の人にも喋ったけど…この前、戦ったNo.9やNo.100とは、
また別の意味で怪物よ。でも…」

「また護りにいくんでしょうね」

足をぶらぶら。小鳥の鳴き声。
どこから見ても平和な光景に、少女は諦めとも羨望ともつかない眼差しをしていた。

「ん。」

アイスをひとすくい。それを隣にいるヒーローの口元に突き出した。
食べて良いよ、とのことらしい。

330“16”:2011/04/30(土) 23:04:35 ID:FRwfC/wE0
>>329
「そうかなー? キミがそう信じてるだけで、他の人から見れば穴だらけ、なのかもよっ」

はははー、笑っていると口が渇く気がして、やめた。
何を持って欠陥、穴とするのか、それはまあ人それぞれだけど、
少なくとも自分は醜く穴だらけなんだろうなー、……検診行かなきゃ。そんなことを考えたり。

「ボクは平気さっ。竜の細胞が入ってるからね、怪我はすぐ治っちゃう!」

ぴんぴんしている様を、過剰に見せつける。そうでもしないと、なんとなく自分が駄目になる気がした。


「……当然。護るためにボクはこうなったんだし、護れなかったらボクのか……あ、ん」

か、その次に入る言葉は、アイスを食べるために中断される。
当然だけど冷たくて、口の中の体温を思い出す。

331名も無き異能都市住民:2011/04/30(土) 23:13:02 ID:2uB0xumg0
がさり。
がさがさ。
草が揺れ、葉がこすれあう音が立つ。

音の主は顔を見せないが、
「――――」
どうも、アイスを食べる二人組に興味があるような気配はしていた。

332No.31:2011/04/30(土) 23:13:25 ID:j3dxNUKs0
>>330
崇拝の対象をけなされたように感じて、露骨に少女は不機嫌そうな顔をしたが、直ぐに戻った。

「竜の細胞…すごいわね、私も脳回路を変更しただけなのに、身体全体を置き換えるなんて。」

どこまでもその口調は幼い少女にそぐわない。

「たくさん怪我しても、良いの?街の為に?」

私にとっての『先生』みたいなものか、と呟いた。

「先生はね、捨て子だった私と仲間を全員、研究所で育ててくれたんだよ。
勉強も教えて貰って、働き口も見つけてくれたの。私はまだ食事係だったけど」

在りし日の日常を懐かしそうに語って。

「私が先生の為にどんな事でも出来るように、貴方も多分、そうなのね」

ヒーローの口からスプーンを引き抜いて、残りのアイスを食べてしまう。
少女の肩がヒーローの肩に触れる。ふぅ、と本日何度目かのため息をついて、No.31は空を見上げた。

「にしても、まだ春なのに、暑いわね。」

そう、青空に向かって呟いた。

333“16”:2011/04/30(土) 23:19:24 ID:FRwfC/wE0
>>331
――何奴。
視線をちらり、其方に向ける。

>>332
「そんくらいしないと、ヒーロー稼業やってけないんだ。ボクはもともと無能力者だったしね」

むぐむぐごくっ、冷たい感覚が咽を通り過ぎていくのを確認した後、ちがう言葉を紡ぎだす。

「……そうだね。そうなんだよ、ボクはどんな事でもするためにどんなことでもやったんだ。
 それを無駄にしたくない、って意地があるから、今こうやってヒーローやって、怪我するんだとも思う。
 我ながら馬鹿みたいだなーって思うけど、わりと後悔はしてないね」

キミと一緒でね。そう付け加えて、同じく視線を空に。

「……ほんとに。こないだまで寒かったのにね」

334No.31:2011/04/30(土) 23:25:34 ID:j3dxNUKs0
>>331
…?
僅かに首を傾げ、深々ともたれていたベンチから身体を起こす。

「何か居るの?」

キィ、と彼女の目が水色に光る。

>>333
「私も、元一般人よ。今もヒーローなんてなれないけどね。
無茶して能力を手に入れたのは同じね」

先程の不機嫌が嘘のようにニコニコしている。

「そうだよね、賭けた以上は、賭け金以上の何かを得るまで、とまれないものね」

うん、と頷いて。

「良いや、もう、暑いとイライラするのよ」

彼女が虚空を見つめると、ピシ、バキ、と空間に小さな氷の粒が現れた。
いくつもいくつも落ちてきて、素肌にひんやりした感覚が宿る。

335名も無き異能都市住民:2011/04/30(土) 23:28:41 ID:2uB0xumg0
>>333
>>334
音の元は二人の傍の木――の、上から。
視線や問いかけに反応したか、またがさがさ音がして、

「――――――いやいや何もいないよ」

男なのか女なのかよくわからない声が不在を主張した。

336“16”:2011/04/30(土) 23:37:13 ID:FRwfC/wE0
>>334
「なればいいのに、ヒーロー。
 ヒーローになろうと思った時、人は既にヒーローになっているのさ!」

ふんす、(無い)胸を張って豪語。

「ジャックポッド当てようと、……ハズれて一文無しになろうと。
 こーやって空は季節を変えて……わ、つめたい」

目を細めて、氷の来訪を眺めてみた。

>>335
「そっかそっかー何もいないのかー残念だー。
 じゃあそこに何もいないということが判明した以上、ボクはそっちにブレスの試し打ちでもしてみようかな」

本来ブレスを使うにはタメが必要なんだがまあギャグ補正ってことで。
突風のブレスが、茂みに向かって放たれる――!

337No.31:2011/04/30(土) 23:45:52 ID:j3dxNUKs0
>>335
「……?」

そうか何もいないのか、と納得しかけた平和ボケの自分を蹴り飛ばし、
この怪しい声が何者なのか、思索をめぐらせる。

>>336
草むらへのブレス攻撃にサムズアップしながら、

「貴方から更に仕事を取り上げる気にはならないわね。
それに私は本来戦闘向きじゃ無い能力なのよ」

苦笑する。護るべきものを護れなかった己自身にも。

「ふぅ、こんなところかしらね。大分良い気温になったと思わない?」

周囲の気温が下がっていた。吹き抜ける風が心地よい。

338名も無き異能都市住民:2011/04/30(土) 23:51:48 ID:2uB0xumg0
>>336
>>337
「そうそう誰もいないから撃ってmっていやぁ―――――!!!!」
がさがさがさがさごいんっどさっ。
ブレスは直撃、見事に4回転半しながら人影が落下した。
銀…否、鋼色の”しっぽ頭”を抱えてふるふるしている。
いい位置を打ったらしいがギャグ補正だ、問題ない。

339“16”:2011/04/30(土) 23:57:13 ID:FRwfC/wE0
>>337
「ふっふん、戦うだけがヒーローじゃないんだぜ?」

そうは言ってみたものの、他に何をするのか具体的には解って無かったり。
そもそも戦うために身体を「こんなふうに」したのだ。

「うん、……涼しいね。気持ちいい」

目を細めたまま、気持ちいいついでにんーっと伸び。

>>338
「出ました四回転半、世界新ですッ!」

実況解説しながらそちらを見、

「……しっぽ、や、あたま、……あん?
 ねえねえ、何アレ。なんて動物? てかアレ動物なの?」

隣の少女に訊いてみる。アレ呼ばわりで。

340No.31:2011/05/01(日) 00:03:38 ID:j3dxNUKs0
>>338
「……人語を操る、…何かしら、解らないわ」

興味深げにそれを見るが、何とも庇護欲をそそる仕草に逆にいじめてみたくなる。

「凝視凍結(コールドストーカー)、『視線』凍結!」

少女の目から直線上に、氷の線が作られた。
視線の移動と共に線は無数に形作られ、謎の人型を氷の檻が取り囲む。
とはいっても、すぐに融けて壊れるレベルなのだが。

「いくらで売れるかしら?」

>>339
「戦うために強くなったんでしょう?」

笑いながら、隣に立つ。

「さぁ、私にも…解らないわ。どこか研究所にでも調べて貰いましょう、
観測局に引き渡すのも良いかもしれないわ」

わざと人型を怖がらせるように、聞こえる声でそういった。

341名も無き異能都市住民:2011/05/01(日) 00:09:43 ID:2uB0xumg0
>>339>>340
暫く悶絶していたが、やがてのっそりと起き上が……
「シャクトリムシのポーズー」
……。
ともあれ頭を抱えつつも起き上がれば氷の檻で、
「うおお何だこれ!すげえ俺今天然の冷蔵庫にいねえかコレ氷まみれじゃねえの!!
 しかもこのまま売られるとかマジ世の中いつの間に大グルメ時代になってんだよ俺はおいしくねえ――――――!!!」
くねくねした動きでスライディング。
氷をぶち破って滑り、しっぽの如くまとめた長い髪を砂まみれにしつつ二人のところまで滑ってくると、
「いいですか二人とも、―――――-善良な一般市民をいじめてはいけません」
お兄さんとの約束DA☆と言って笑った。

342“16”:2011/05/01(日) 00:14:59 ID:QYyPcDfoO
>>340
「うーん、まあ……そうなんだけどねっ、
 強くするべき部分を間違えたというか、そんな感じさっ」

ちょっと困った感じの口調と表情で、そんなことを言ってみる。

「……、や、それは、」

歯切れ悪く零れ落ちる言葉。
もちろん冗談で言っているのはわかるけど――ちょっと、思い出してしまった。

>>341
「……鬼井さん?
 ああ、男だったんだ」

そこかよ。

「……で、善良なる一般人の鬼井さんは。
 どうして女の子二人を物陰から凝視してたんだろうね?」

じとー。
かなり怪しんでいるっぽい。言い方がアレだし。

――前に絡んだときは竜形態だったよね?って中身が不安になってきてる。

343No.31:2011/05/01(日) 00:21:02 ID:j3dxNUKs0
>>341
その姿に、氷のような冷徹な視線を向ける少女は、ぼそっと

「…寒い」

と呟いた。

「こそこそ私達を覗き見するような趣味のある奴は、
善良な市民とは言えないわね」

絶対零度の瞳の冷たさ。

>>342
「ふぅん、そっか。
それでも貴方はヒーローなのね、何だか…良いわね、そういうのって」

芯、だろう。人の中に、横にいるヒーローの中には芯が通っているのだ。
だからこそ、ヒーローなのかもしれない。

「…ごめんなさい、貴方は…無遠慮だったわね」

しゅん、とする少女。うつむいて、長いまつげに目が隠れる。

344名も無き異能都市住民:2011/05/01(日) 00:27:59 ID:2uB0xumg0
>>342
「おい何か漢字変換ミスってね?まさかの珍妙な名字になってね?
 というかその名前は某鬼畜おやぢに通じてね?」
中身の記憶力には最早以前の絡み状況など残っていないが前向きに行こう。
ともあれ、少女のジト目に声も見た目も中性的でどっちつかずな鋼色が俯いた。
「いやね?凝視してたんじゃなくてね…?なんというかこうね…」
わきわき手を動かして、
「――――昼寝しようとしたら面白そうな話してたんだもんっ☆」
右手を目元にやってキラッ☆。

>>343
「おいおいおいおい嬢ちゃん、俺ほど善良な生命体もこの地上にそうは存在しないと思うぜ…!!
 皆幸せになればいいと常に願ってるぜ俺は!!」
絶対零度にもめげないっ……!!などと呟きつつ、
「ま、とにかく、お前確か一回殴りに行った気が済んだけど気のせいかねえ。
 俺か、あるいは俺に似たのがだけども」
元気になったのかあ。
へらりっと笑ってそう言った。

……スライディング後の体勢のまま。

345“16”:2011/05/01(日) 00:34:35 ID:QYyPcDfoO
>>343
「……ん。だからさ、君もやってみればいいんじゃないかな、って。
 世界なんて大きな媒体を護ろうとしなくていいの、護りたいモノを護ればいい」

――ああなんて浅ましい。
自分で吐き出す言葉に自分で反吐が出そうだと思う。
彼女の場合、芯を作らねば崩れてしまうから通しているのだし、
そもそもその芯はぐしゃぐしゃに歪んでいるのだ。

大丈夫、気にしないで。
言いながら、こんと咳をひとつ。
手を少女の頭に伸ばそうとして、自分の手が汚い気がして、やめた。

>>344
「……ほう、盗み聞きしてました、と。
 素直に供述してくれるとは感心だねっ」

けほん。もう一つ咳を零しながらおもむろにポッケを漁り、取り出したのは携帯電話。
彼女の指先はボタンに伸びる、1、1、0――

346No.31:2011/05/01(日) 00:45:02 ID:j3dxNUKs0
>>344
その金属質にやっと姿を思い出す。

「私が、都市に来た日に、迎撃した一人ね。
…おかげさまで。保護観察中だけれど、何も悪いところは無いわ」

「でも、能力の過剰使用で、しばらくは高密度な能力は使えないわね。
今はリハビリよ。」

直ぐに融けた氷の檻の残骸を見て、苦笑した。

「あの時は、ありがとう。でも、また、来るわ」

敵がね、と呟いて。何だか地面で楽しそうなそれが少し憎たらしくて、
横たわる身体を踏みつけようと小さな足が下ろされる。

>>345
「そうね…何が私の大切か、もう解らないのだけど。
先生は私には守れなかったから。…見つかったら、それを護るわ。」

すぐに融けそうな、ささやかな笑顔。
そして、何を思ったか、唇を少し噛んで、彼女の頭に手をやった。
ぽんぽん、と、軽く撫でる。

347名も無き異能都市住民:2011/05/01(日) 00:58:43 ID:2uB0xumg0
>>345
「あれぇ―――――!?人の会話って聞いちゃったりすることってねえかなあ!!俺無罪じゃねえかなあ!!」
押すボタンをぼんやり眺めて。
組み合わせに気付き絶叫して。
「何だ自分がヒーローやってるのを暴露って恥ずかしい…だけど友達だからryとかそういうのだったのか!?
 大丈夫、俺、……口は堅い方だから!!」
笑顔でサムズアップ。

>>346
「リハビリ中かあ。ま、よく食べてよく寝れば人間元気になるもんさ。
 せっかくまったり過ごせんだから、友達作って楽しくやればいいと俺は思うなあ!」
おおっと、なんて言いながら転がって足を回避。
腕立てするように地面を押し、光翼を展開して浮き上がり、
「礼の言葉も警告もいらねえさ、この都市はんな弱くねえよ。
 いい機会だから護られておけ、ハッピーエンドのために頑張っちゃるからさ」
追加された俺以外の何かがなという発言で色々台無しになったのは気のせいではない。


「―――――さて、俺は全力で逃げだすからな!?
 マジで110番はキツイんだからな?!職質の恐怖を味わえばいいと思うよ!!」
落ちてきたかと思えばスライディングして、飛んで。
ある意味忙しい彼は言葉の節々でポーズを決めたのに満足したか、

「じゃあなお前ら!また縁があったらその時は通報しないでね――――――――!!!!」

轟、と音がして。
一瞬だけ二人の上に巨大な影が落ちたかと思えば、鋼色の人影は消え失せていた。

348“16”:2011/05/01(日) 01:03:15 ID:QYyPcDfoO
>>346
「……、」

びくり、大きな反応を返す。
ちょっとだけびっくりしたような表情、見開いた黄色い瞳で少女を見、
けほん。もう一つ咳。

「……、ありがとう」

少女の手のあたたかさに、お礼。

>>347
「残念、ヒーロー設定はびっくりするほどオープンだッ!」

胸を張って言うことじゃあねえ。
音にびっくり、目を閉じた瞬間には鋼の彼はそこから居なくなっていた。

「……ちぃ、逃がしたッ」

そしてこのヒーローにあるまじき発言である。

349No.31:2011/05/01(日) 01:11:24 ID:j3dxNUKs0
>>347
「さんざん良い言葉を吐いて、人任せなんて。…馬鹿みたい」

その顔は、微笑だ。言葉こそ嫌味だが。

「此処で楽しむ、なんて、考えたことも無かったけれど、…
全部が、もし、本当に片付いたら…」

遠くを見るような目で。

>>348
「どういたしまして」

少し背の低い少女はにっこり笑った。

「さて、自由時間も終わりね。私はそろそろ観測局に戻るわ。
指定時間を守らなかったら、また監視段階が戻されちゃうから」

事も無げにそういうと、またねー、と手を振った。

350“16”:2011/05/01(日) 01:22:25 ID:QYyPcDfoO
>>349
「……ん。またね」

手をふりふり振り返し。

 結局ボクは何のためにヒーローになったんだっけ。
 テレビの中の彼に憧れたのは覚えてる、何故憧れたのかが問題で。
 彼のまわりにはたくさんの人が居て、みんな笑っていて。
 「ヒーロー、ありがとう!」「ヒーロー、大好き!」……みんな彼を否定しない。


「……ああ、そっか」


 「ヒーロー」に憧れたんじゃあ、ない。
 「ヒーローを取り巻く環境」に憧れたんだ。
 親ですらほとんど顔を見せない、白ばっかりの消毒液臭い病室で。
 ひとりぼっちで消えていくのが嫌だっただけ、なんだ。


「……笑わせんなよ」


 どの口が「護る」などと嘯くんだ。
 エゴを固めて作った、薬漬けの舌で正義を紡いで語る自分は、
 なんて醜い、

こん。咳をして、どこかへ去っていく。

351名も無き異能都市住民:2011/05/01(日) 22:18:56 ID:.6prKP66O
ゴゴゴゴゴ……
【アトリエ、その主である男性の部屋の扉の向こうからなにやらオーラが漏れだしていた】
 
【しかし、マナのメイドや執事は何も気にする事もなくいつも通りのお勤めである】

352ゼオラ=アドヴァルド:2011/05/01(日) 22:25:30 ID:cskw3E.60
>>351
「?」
今日は窓から。
屋根に脚を駆けて窓を上から覗き込んで見る。
流れた紫色の髪がカーテンの様に窓を覆った。

353上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2011/05/01(日) 22:33:21 ID:.6prKP66O
>>352
「ふはははははは!」
【窓から眺めるお部屋の景色、ミントグリーンの髪の男が仁王立ちで高笑いをしていた】
 
「ふはははははは!扉が開いた瞬間、モフモフしてやるぞははははははは!!」
【腰に手を当て高笑いする男からは凄まじい邪なオーラが……】

354ゼオラ=アドヴァルド:2011/05/01(日) 22:41:01 ID:cskw3E.60
>>353
ただボーっとその様子を眺め、音も無く溜め息。
「……フフッ」
何か良い事を思いついたらしく、気付かれないほど小さな声で笑む。
闇と同化して慣れた手つきで物音ひとつ立てず侵入し、天井を伝って上弦の背後へ。

――とんとん。

闇から手を伸ばし上弦の肩を軽く叩く。
それと同時に再び溶けて、少女は居なくなる。

355上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2011/05/01(日) 22:44:55 ID:.6prKP66O
>>354
「ん?」
【肩を叩かれたら振り向く、それは誰だって無意識ににやってしまう】
 
「……?」
【もちろん、背後には何も無い】
 
「気のせいか?」
【キョロキョロ辺りを見回し、男は再び仁王立ちに……心なしか少しテンションが下がっているようだ】

356ゼオラ=アドヴァルド:2011/05/01(日) 22:50:28 ID:cskw3E.60
>>355
上弦が思いのほか恐がらなかった為、驚かせるのを中断する。
姿を表すと上弦の肩の上に乗った。

「……やぁ」

357上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2011/05/01(日) 22:54:55 ID:.6prKP66O
>>356
「……ッ」
【男はビクッと体を痙攣させた事が少女の体にも伝わっただろう】
 
「……」
【しかし、少女が肩に乗っても挨拶をしても反応が無い】
 
【実は……かなり恐がっていた様で……急に肩にかかる重さと静かな声に……白目をむいていた】

358ゼオラ=アドヴァルド:2011/05/01(日) 23:01:57 ID:cskw3E.60
>>357
……。
場所が触れた際の、痙攣は感じ取れた。
しかし、その後の動きの無さに首を傾げた。
そして数秒立って、顔を覗き込んでみる。

「……ひっ」
その顔が衝撃的で、とても恐く感じて、
小さく声を上げて肩の上から頭に向かって体重を駆けて抱きついた。

359上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2011/05/01(日) 23:08:43 ID:.6prKP66O
>>358
「ぬっ!?この良い匂い……感触は……ゼオッ!」
【一瞬、抱きつかれた瞬間に意識を取り戻し、自身の肩に乗るものの正体を突き止めたのだが……】
 
ピキッ!
 
「く、首がぁぁっ!?」
【体重を掛けた為か、それともゼオラだと分かり気を抜いた為か……首がコキャッってなりました】

360ゼオラ=アドヴァルド:2011/05/01(日) 23:15:31 ID:cskw3E.60
>>359
「ひ、あぁ」
さっきの顔が凄く恐かったらしく目を瞑ったままです。

「大丈夫……?」
上弦の言葉からなにか危なそうなのは察したらしく、離れる。

361上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2011/05/01(日) 23:22:09 ID:.6prKP66O
>>360
「……ああ、大丈夫だ……問題ない……」
【首が横に傾いたまま男はそう言い放ち、自分で無理矢理首を元に戻す】
 
「痛かったが……柔らかくて……良い匂いだった!」
【窓から外を眺めて清々しい顔で鼻血を出す】
 
「いらっしゃいゼオラ、今日は一段と熱烈じゃないか!」
【首がコキャッってなっても、この人は元気です!】

362ゼオラ=アドヴァルド:2011/05/01(日) 23:26:02 ID:cskw3E.60
>>361
「うん……こんにちは」
若干会話が成り立っていないが、何時も通りに頭を下げる。

「痛くない……?」
恐る恐る目を上げる。
何時も通りの様子に安心しつつ、聞いた。

363上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2011/05/01(日) 23:29:36 ID:.6prKP66O
>>362
「あぁ、最初は心臓が止まりかけるほど驚いたが……痛くはないぞ!」
【やはり、最大のダメージは恐怖だった】
 
「ゼオラは怪我をしなかったかい?結構暴れた気がしたが……まぁ立ち話もなんだ、座って座って」
【椅子とテーブルへとゼオラを誘導し始める】

364ゼオラ=アドヴァルド:2011/05/01(日) 23:35:02 ID:cskw3E.60
>>363
「そう……解った」
上弦の肩から降りると、指示どうりに椅子に座る。

365上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2011/05/01(日) 23:39:52 ID:.6prKP66O
>>364
「ゼオラがいいんだったらまた私の顔に抱きついてくれてもいいんだがね!ははははははは!!」
【冗談混じりに笑い、手早くクッキーと珈琲を用意する】
 
「さて、何から話そうか……」

366ゼオラ=アドヴァルド:2011/05/01(日) 23:42:45 ID:cskw3E.60
>>365
「そう……じゃ、何時か」
軽い笑み添えて返事をする。

「この前の……こと?」

367上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2011/05/01(日) 23:48:24 ID:.6prKP66O
>>366
「ああ、頼むよ!」
【親指を立てて笑う姿は、清々しい、爽やかな変態である】
 
「そうそう、なんだか恥ずかしい所を見せてしまってすまなかったね」
【珈琲を一口啜って】
 
「何か聞きたい事はあるかな?」

368ゼオラ=アドヴァルド:2011/05/01(日) 23:50:47 ID:cskw3E.60
>>367
「聞きたい事は……別に」
同じ様にコーヒーを啜り。

「気には……なるけど」、
 聞いて、良いのかな……って」

369上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2011/05/01(日) 23:53:50 ID:.6prKP66O
>>368
「私は構わないんだけどね……確かにあれはキツいけど、最近は慣れてきたのか……対処も完璧だしね?」
【男は優しい笑みを浮かべると、ゼオラの頭を撫でる】
 
「心配してくれる人もいるしね?」

370ゼオラ=アドヴァルド:2011/05/02(月) 00:01:38 ID:cskw3E.60
>369
「そう……ありがと。
 ただ、無事なのが、解れば……いい」
頭をなでられつつ、小さく頷いて返した。

371上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2011/05/02(月) 00:10:15 ID:.6prKP66O
>>370
「そうか……こちらこそ有難う……」
【頷くように男は首を動かし、笑う】
 
「そうだ、今度君に錬金術を教えてあげよう、楽しいよ?」
【一応男は錬金術の先生なのであった】
 
「じゃあ、後はのんびりしようか」
 
 
//これ以上説明をしようとすると今の雰囲気が壊れるかもしれないので
//説明は終わります、補完って程じゃなかったが勘弁!

372ゼオラ=アドヴァルド:2011/05/02(月) 00:16:22 ID:cskw3E.60
>>371
//あい、了解!

「ん、教えてくれるの……?」
前から少々興味のあった事だったので喜ぶ素振りを見せる。

「うん、そうする……」

373上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2011/05/02(月) 00:22:13 ID:.6prKP66O
>>372
「あぁ、もちろんさ!ゼオラならすぐ出来るようになるはずさ!」
【喜んでくれたのが嬉しかったのか、テンションが上がる】
 
「とりあえず……モフモフさせろぉ!」
【そんなこんなで、今夜もゼオラと上弦の夜は更けて行くのでした!】
 
//お疲れさまでした

374ナナセ=フミヅキ & 河平 セセリ:2011/05/04(水) 00:38:05 ID:cskw3E.60
『でしょ? この前学校の帰りに見つけんたんだ〜』
等と言いつつ、カツサンドを手渡す制服姿の少女。
「もう要らないよ」と言って広げた掌でカツサンドを抑えた帽子の人間。

『もう要らないの? こんなにおいしいのに?』
「確かに美味しいよ。だけど1つで十分だよ」
制服の少女が5つ目のカツサンドを口に頬張るすがたを不思議そうに眺める帽子の。
……爆発しろとでも言われかねん光景である。

375???:2011/05/04(水) 00:51:57 ID:ste/2NNA0
>>374
二人組の背後を、何者かが付けてきている。
不規則な足音が乾いた道に響く。

「ヒヒヒ」

不気味な笑い声が、何者かから発された。

376ナナセ=フミヅキ & 河平 セセリ:2011/05/04(水) 01:01:43 ID:cskw3E.60
>>375
「セセリ、離れるなよ」
『え、うん、わかったよー!』
急に雰囲気の変わった声に首を傾げながらも頷く制服の少女。
七瀬は振り返ると同時に攻撃的な声を視線を向ける。

「お前、何の様だ?」
七瀬の手はベルトのバックルに掛けられている。
そのバックルが、不意に怪しく蠢いた……様な。

377???:2011/05/04(水) 01:06:55 ID:ste/2NNA0
>>376
後ろから歩いてきたのは、耳と鼻にピアスをつけた、金髪のメッシュを入れた男。
大体高校生ぐらいで、ジーンズから鎖のようなものが垂れていたり、
指にはごつい指輪をはめていたりとやたらチャラチャラしていた。

「んああ、ごめんね。
 ちょっと美味そうでさ、分けてくれたらうれしいなー、なんて」

そう言って制服姿の少女を指差した。

378ナナセ=フミヅキ & 河平 セセリ:2011/05/04(水) 01:18:32 ID:cskw3E.60
>>377
「……。セセリ」
『ん? わわっ』
一つ呼吸を置いてバックルから手を離す。
セセリと呼ばれた制服の少女が今まさに食べようと思っていた6つ目のカツサンドを奪う様に手にとって。
それを持って男の前へと歩み寄ってきた。

「……今すぐ消えろ」
男に其れを差し向ける。
帽子の下の鋭い瞳は先程と全く変わっていない。

379???:2011/05/04(水) 01:24:28 ID:ste/2NNA0
>>378
「ヒヒヒ、解ってんだろ?
 そっちじゃないって」

男は両腕を突き出す。
両腕の袖から、赤紫の管が3本ずつ飛び出した。

「俺が欲しいのは、そいつの血だよ!!!」

管はうねって帽子の男を避け、セセリという少女に勢いよく伸びていった。
管の先端は鋭く尖っており、人体には簡単に突き刺さると思われる。

380ナナセ=フミヅキ & 河平 セセリ:2011/05/04(水) 01:37:37 ID:cskw3E.60
>>379
「! 避けろッ!!」
男から伸びた緋色の管。
それを目で追い、身体で追い。

『わ、わっ!!』
制服の少女は一度、二度、三度とホップステップ。
ジャンプの前に追いつかれて少々傷を負ったが、
『封印解除っ!
 うわぁ、勿体ないなぁ』
背中から伸びる蝶の翅で空中に逃げ遂せる。
勿体ないのは手から投げ出され地面にぶちまけられたカツサンドと翅に突き破られた制服。

「断ち切れ!」
左手で掴んだベルトのバックルを勢いよく引き抜く。
それが一瞬、牙を向いたかと思うと蛇腹剣となって緋色の管へと伸びて行った!

381???:2011/05/04(水) 01:46:35 ID:ste/2NNA0
>>380
管は全て断ち切られ、男は後方に跳んだ。
着地と同時に、男の体が鱗に包まれる。

「あぁーあ。
 もう少しだったのになぁ。
 じゃあまず、お前から食わせてもらおうか、ヒヒ」

鱗は頭から順に剥がれ落ち、男は赤紫色の怪人へと姿を変えた。
右腕から背中にかけて、20本程度の尖った管が生えている。
腰には世間で騒がれている怪人の紋章が刻まれたベルトが取り付けられていた。

怪人は唸りながら首を回す。
ガキガキと間接が音を立てた。

382ナナセ=フミヅキ & 河平 セセリ:2011/05/04(水) 02:00:41 ID:cskw3E.60
>>381
「これが噂の怪人か……!?」
ジャキ、ジャキ。という音を立てつつ蛇腹剣の節が収束し、一本の剣に姿を戻す。
機械的で、何処か禍々しい雰囲気を持つそれ。

「今退くのなら攻撃はしない。
 退かないのなら……私の力の一部にさせてもらう」
どうする。と怪人に剣を向けてそう喋る。
毒々しい程に尖った犬歯が二つ。姿をのぞかせる。

383アシュレイ:2011/05/04(水) 02:01:26 ID:zds1Eogs0
二人が戦っているところに、突如、重い発砲音が響き渡った。
その弾丸は赤紫の棘を繰り出す怪人の足元に着弾し、アスファルトを吹き飛ばす。
遠くを見る視力があれば、千夜学園の制服を着た少女が電話ボックスの上に乗り、
大きなスナイパーライフルを構えているのが見えるだろう。
そして、手元のボルトハンドルを操作し、次弾を装填するのも。

384???:2011/05/04(水) 02:11:58 ID:ste/2NNA0
>>382
「正ぇぃ解!
 俺が怪人……の一人だ!」

怪人は叫んだ。

「一部にする?
 逆だろ、俺がお前を食うんだよ、ヒヒヒ」

>>383
「……あ?」

足元に弾けた弾丸を見て、その弾道を遡る。
電話ボックスの上から、何者かが怪人を狙っている。
怪人は、電話ボックスの上の人物が千夜学園の制服を着ているのを確認すると、笑い声を上げた。

「ヒヒヒ、またいい獲物が来たもんだな。
 ……やってみろよ!
 この体、どこまで出来るのか試すのも悪くねえ」

怪人は総じて耐久力が人間よりも高い。
ハンドガン程度の銃は通用せず、威力の高いスナイパーライフルでも通常の物では決定打は与えられないだろう。

385ナナセ=フミヅキ & 河平 セセリ:2011/05/04(水) 02:18:16 ID:cskw3E.60
>>383
『七瀬! あれ!』
「解っている!」

『お、同じ制服だよぉ!』
「(そ、そこなのか……!?)」
意味は違えど驚きを受ける二人。
七瀬と呼ばれた帽子をかぶった人間は小さく咳払いをし。

「(味方……の様だな)」
一先ずは安堵の様子を見せる。

>>384
「フン、見栄を張るだけならただの猿にでもできるぞ?」
向けた蛇腹剣を掲げると同時にニヤリとした笑み。

「かかれッ!」
ジャキン、ジャキンと音を立ててかなりの勢いで剣が伸びる、迫る。

386アシュレイ:2011/05/04(水) 02:24:43 ID:zds1Eogs0
>>384
少女が持っているスナイパーライフルは、50口径の、いわゆる対物ライフルと呼ばれる類のもので、
装甲車程度の装甲であれば、貫通することが可能だ。

「…………」

そんな銃を威嚇に使った少女は、威嚇射撃を受けても退く様子のない怪人に、改めてスコープの十字線を合わせた。
狙いは腕の間接部。
強い力で銃のブレを抑制した少女は、迷うことなく発砲。再び、重い発砲音が響いた。

>>385
こちらを見て何事か騒いでいる二人に一瞬、目をやるが、すぐにスコープに視線を合わせた。
まずは、目の前の怪人を何とかするのが優先だと、少女は判断する。

387???:2011/05/04(水) 02:38:17 ID:ste/2NNA0
>>385,386
怪人は前のめりに受身をとり、剣を避ける。
そしてそのまま帽子の男に右腕の針を突き刺そうとした。

が、ライフルの弾丸が右腕をとらえ、腕の間接が弾けた。

「あ!?ぐあああっ!!!」

怪人はその場に倒れ、のた打ち回る。
腕はそのまま怪人にくっついていたが、間接が抉れて大量の血液がボタボタと落ちていた。
人間が同じ傷を負ってもここまでの出血はありえないというほどの量だ。

「おっ、俺の血がああぁぁ!!
 畜生!!!」

怪人はふらふらと立ち上がり、スナイパーライフルを指差した。

「ゆっ、ゆるさねえぞ、千夜学園め!
 そっ、そこのお前もだ!絶対報復してやる!覚えてやがれ!」

そのまま跳び上がり、住宅地の屋根の上を飛び石伝いに逃げていった。

388ナナセ=フミヅキ & 河平 セセリ:2011/05/04(水) 02:44:05 ID:cskw3E.60
>>386
見れば、上空にて飛来する少女の背中からは蝶の物と思われる翅があった。
そしてその少女の身につけている制服は、アシュレイと同じ千夜学園の物である。
……だが、あの翅具合からすれば間違いなく制服を突き破ってしまっている……。

>>387
「……去ったか。
 幸いだったな。私の血ほど落ちぶれた物は無いぞ」
ガシャキン、ガシャキン。
一本の剣に戻ったそれは、変形してベルトに戻る。
それを再び着用しながら、そう呟くように言った。

389アシュレイ:2011/05/04(水) 02:50:41 ID:zds1Eogs0
>>387
腕の間接に被弾し、血をまき散らしながら逃げていく怪人を見て、
少女はライフルを下ろす。

「……あれが、話にあった怪人ですか。
 なるほど、一般の生徒にとっては脅威ですね」

下ろしたライフルが、細かな粒子となって消えていく。

>>388
ライフルが完全に消滅したところで、少女は電話ボックスから飛び降り、
帽子の人間と蝶の翅を持つ女子生徒の二人組の方へと近づいていく。

「二人とも、大丈夫でしたか?」

二人に問う少女の左腕には、「臨時風紀委員」の腕章がクリップでとめられている。

390ナナセ=フミヅキ & 河平 セセリ:2011/05/04(水) 03:04:53 ID:cskw3E.60
>>389
「ああ、私は大丈夫だ」
帽子の人間は頭を下げた。
「だが……」と、いう視線の先にはアシュレイに文字通り突撃する制服の少女の姿が。
『あーりーがーとーっ!!』
急降下突撃の後に手を取ってそれをぶんぶんぶん。
やたらと綺麗な眼をした少女がキラキラ光らせつつ。
『ホントにありがとねっ!
 ねぇねぇ、貴方はお名前なんて言うの?
 私は河平セセリ、助けて貰ったんだからお礼もしたいし、ちょっと教えてほしいかな。
 あぁ……別に嫌ならいいんだけどね。ほら、この都市っていろんな事情が持った人一杯いるし……。
 あ、そうだ。カツサン食べる? これがまたおいしぃーんだぁ! 商店街のお肉屋さんのカツサンドでね?
 今日学校の帰りに見つけたんだけど……あ、そういえばあなたも同じ学校の制服だよね!
 あーっ! 風紀委員さんなんだぁ。いいなぁかっこいいなぁ憧れるなぁ!
 それよりね、ね? 私のぐむぅっ』
「セセリ、少し静かにてくれ」
口を押さえて無理矢理引き剥がす帽子の。
もう一度頭を下げて。

「助けてもらって済まない。
 セセリも言っていたが、私にも名前を教えてはくれないだろうか?」

391アシュレイ:2011/05/04(水) 03:19:05 ID:zds1Eogs0
>>390
セセリと名乗る少女に手を取られ、激しく振る動きに揺られながら、
臨時風紀委員、アシュレイは彼女のマシンガントークに撃たれっぱなしで、
「は、はい……」とか「いえ……」とか言うのが精一杯な状態になり、まともに返事が出来なかった。
が、横にいた帽子の人間の制止に救われ、どうにか落ち着きを取り戻す。

「げ、元気なようで何よりです……。
 申し遅れました、私は千夜学園高等部一年所属のアシュレイといいます」

名前を告げてから、腕章に触れ、

「それと、ご期待にそえなくて申し訳ありませんが、私は風紀委員ではありません。
 最近、千夜学園の生徒を狙った殺人事件が横行しているのはご存じですよね?
 それを受けて、風紀委員が学内の異能者向けに臨時委員の募集をかけていまして……。私はそれに応じているだけの身なんです」

392ナナセ=フミヅキ & 河平 セセリ:2011/05/04(水) 03:39:17 ID:cskw3E.60
>>391
『それでもそれでも凄いよアシュレイちゃん!
 さっきの銃の腕だってすっごくかっこよかったもん!
 こう……バーンッ! って打つ姿。私惚れそうだったなぁ』
静止を振りきって腕章に目を向けまた喋る。
次に銃を構える真似をして、言葉と同時に打ち出す真似を。
さり気無くちゃん付けなのはセセリが高等部二年生に属するからである。

「元気そう。で済めばいいんだがな」
思い出した様にセセリの腕をつかみ、袖を巻くし上げる。静止は諦めた模様。
そこには怪人の緋色の管に付けられた傷が血を流していた。

「私は文月 七瀬。同じく千夜学園高等部、学年は二年だ。
 アシュレイ、良ければさっきの奴らについての情報を教えてほしい」

393アシュレイ:2011/05/04(水) 03:57:10 ID:zds1Eogs0
>>392
「それは……あ、ありがとうございます。
 そんなふうに言っていただけるとは思いませんでした……」

自分の所作の真似をし、再びの高速トークに入りかけているセセリに礼を言いながら、
アシュレイは内心、疑問を浮かべていた。

(格好いい? あの射撃体勢が? よくわかりません……)

そんなことを思っていると、セセリの腕の傷が帽子の人間、七瀬の手で露わにされていた。

「これは……普通の傷では終わらないかも知れません」

七瀬の自己紹介と情報開示の求めに、アシュレイは頷きを返し、

「河平さんの傷にも関係してくると思いますが、今回現われている怪人はどうも、吸血行動をするタイプの怪人のようなのです。
 と言うのも、被害にあった生徒たちの死体には、一滴の血も残っていなかったことが判明しているからです。
 自然界には吸血を阻害されないよう、血が固まる作用を遅らせる化学物質を打ち込む吸血動物がいるという話があります。
 もし先ほどの怪人がそうだったならば、そのまま血を流しておくのはマズいと思います。
 どちらにせよ、止血の処置はしておかないと」

そう言って、アシュレイは制服のポケットから包帯を取り出し、七瀬に差し出す。

394ナナセ=フミヅキ & 河平 セセリ:2011/05/04(水) 04:12:08 ID:cskw3E.60
>>393
「うん! アシュレイちゃんのお陰で私も助かったんだよ!」
ニコニコと明るくアシュレイに離しかける。
自らの腕の傷は全く危険視していないらしい。

「吸血行動をとる怪人……か。
 セセリは愚か私の血まで吸おうとは」
その後もぶつぶつと呟いている。
ベルトが呟きに反応するように動いている……。

が、包帯を向けられると呟きを止め、それと同時にベルトの動きも止まる。
「ありがとう。感謝するよ」
セセリの腕にくるくると慣れた手つきで包帯を巻いていく。
当の本人は笑顔のままで全く気にはしていない様だが。

395アシュレイ:2011/05/04(水) 04:34:43 ID:zds1Eogs0
>>394
七瀬の手慣れた手つきと、蠢くベルトを見て、アシュレイは怪人と戦っていたのもこの人物だったことを思い出す。
この異能都市、戦いを常とする人間は山ほど居る。
ベルトの動きや血についての呟きも、七瀬もそういった一人だからこそなのだろう、という思考で覆い隠し、
それ以上深く考えることはなかった。
アシュレイはセセリの破れた制服を視線で示し、

「街の住民全体に被害が及んでいるのであれば、話はまた違うのでしょうが、今回のことは千夜学園に集中しています。
 出資元の千夜グループの対応が後手に回れば、責任問題に発展しかねません。
 そういう意味合いがあるのかどうかはわかりませんが、怪人に襲われた生徒に対する補償が始まっていますので、
 その制服も申請すれば新調してもらえると思いますよ」

怪人が去った方向に踵を返す。

「怪人が出現する以上、学園生にとって安全な場所というのははあまり多くありません。
 幸い、あなた方は抵抗できるだけの力を持っているようですが、他の一般生徒はそうもいかない。
 お手すきであれば、あなた方も臨時風紀委員の募集についてご一考くださるとありがたいです」

「では、またご縁がありましたら」と言い残し、アシュレイは怪人を追って走り去っていった。

//このあたりで締めたいと思います。
//遅くまでお付き合い、ありがとうございました!

396ナナセ=フミヅキ & 河平 セセリ:2011/05/04(水) 04:43:48 ID:cskw3E.60
>>395
『ありがとうねー!
 あーしゅれーいちゃーん!』
去っていくアシュレイに両手をぶんぶんと振りながら大声で別れを告げた。
「傷口は強く振るものじゃないぞ」
と、腕を掴むとそのまま引いて場を去って行く。

//こちらこそありがとうございました!

397ロージェンス:2011/05/04(水) 21:52:21 ID:1sJsd2CgO
 ジャリジャリ、と耳障りな金擦れを引き連れて静かな大通りを歩く黒装束。
 両脇のビルが揃って改修工事を始め、道路はあちこち捲れて穴だらけ、標識から街路樹まで立っているものは軒並みキズだらけという光景。
 昨日今日と新聞を賑わせている襲撃事件のあった大通りだから仕方がない。

「……、……」
 悲惨な爪痕に言葉も出ない。かといって感慨も無い。
 『現在復興に向けて〜』だの、『住民の協力を〜』だの、ここぞとばかりに声を大にするヤツらがいるから気になって見に来ただけだ。
 誰か居れば邪魔でもしてやろうか、なんて考えていたが……。ここまで人の気配がないと、かえって面白味がない。

 野次馬気分でロージェンスは歩く。ただなんとなく、ぼんやりと。

398トニー・ハーディガン:2011/05/04(水) 22:03:11 ID:SSMHlh/20
>>397

――ゴッ、ガゴッ――ガシャァアァン!!!

その時、半ば崩れかけて立ち入り禁止のビニールテープが張り巡らされている
飲食店の南京錠の掛かった扉が、蹴り破られ中から、ボロを纏った男が現れた。

「ケッ、さすがに大半が腐ってやがらァ。」

男の手には、ソーセージの束やチーズ、
様々な缶詰といった物が乱暴に握られている。

なるほど、あの男は火事場泥棒というわけだ。

399ロージェンス:2011/05/04(水) 22:19:05 ID:1sJsd2CgO
>>398
 
 ド派手な音に驚き、暇すぎて何処か行きかけてた意識が戻ってきた。

「おー……。泥棒サンとはご苦労なこって」
 ボロを纏った火事場泥棒を見ながら、コンビニ強盗してしょっぴかれたのを思い出す。
 金盗れば後々楽なのに気が付かないで、物ばっかり盗ってた頃(ほんの二、三週間前)の自分とその光景を被せてみたりして。
 口元に笑みを浮かべ、ロージェンスは動く姿を目で追う。

 ――ガチャ

 わざと聞こえるように音を鳴らして取り出す拳銃。
 男に向ける銃口に幾何学的な模様の二重円が浮かび上がり、魔力の流れが機械的に組み上げられていく。

400トニー・ハーディガン:2011/05/04(水) 22:29:07 ID:SSMHlh/20
>>399

「あァ……?」

拳銃の部品が立てる物騒な金属音、展開される幾何学的な二重の円。
大半の『チンピラ』連中はそれだけで怖気づき、逃げ出す代物だ。

しかし、男はただ不機嫌そうに顔を歪めロージェンスを
一瞥すると、そのままそれらを抱えて歩き去ろうとするではないか。

肝が据わっているのか、それともタダの頭のイかれたジャンキーか。

401ロージェンス:2011/05/04(水) 22:47:01 ID:1sJsd2CgO
>>400

「……って、無視ィ?」
 ぼそりと溢す。
 その間に魔力を束ねる二重円は銃口に吸われ、弾倉が魔弾に満たされた。

「涼しげにスルー決め込んでないで、こっち向けやコソ泥野郎」
 音もなく魔弾が飛ぶ。
 火を纏った魔力の塊が男のこめかみへ向けて、一直線に。

402トニー・ハーディガン:2011/05/04(水) 23:10:49 ID:SSMHlh/20
>>401

唸りをあげながら、銃口から飛び出した弾丸が
男のこめかみを捉える直前『空間』がまるで水面のように波打った。

――その途端、弾丸は壁にぶち当たったかのように空中でひしゃげ、その場にぽとりと落ちる。

「オイオイ、こりゃあ勇ましい姉ちゃんだな。
 なんだ、最近じゃ出会い頭に弾丸を叩き込むのが
 若いやつの流行りなのか。」

ゆっくりとロージェンスへ顔を向ける男。
ボロの下で、ヤツの口の端が挑発的に捲れ上がった。

「女と銃か。中々にそそる組み合わせだがな。
 銃ってモンは『男の象徴』だと相場が決まッてんだよォ!!」

男がボロを翻した瞬間、何かが街灯の光を反射しギラリと光った。

――投擲用の短刀が2本、続けざまに投げられたことにロージェンスは気づくか。

403ロージェンス:2011/05/04(水) 23:35:28 ID:1sJsd2CgO
>>402

 ――砕かれた。
 実体として脆いとはいえ、皮膚を抉り骨にヒビを入れるほどには威力のある魔弾を男は動作もなく砕いた。
 それだけで、彼が異能を持つ者だと容易に知れた。

「うーん? ドチラかって言えばマイブーム。そんな物騒な遊びが流行るほど、この都市も堕ちちゃいないデショ」
 日中、目を瞑りながら人混みを歩いても生きていられるくらい安全である。
 ともかく、効かないと分かった魔弾を魔力に分解して、新たに構成を作り替える。

「ハッ、なんて分かりやすい男尊女卑。そっちのほうが時代遅れよ――ッ!?」
 ギラリと光る刃を見、しかし気が付けなかった。
 迫る一本が拳銃を弾き、もう一本が腹の鎖に食い込んだ。
 弾かれた拳銃は銃口に新たな二重円を浮かべたまま地面に跳ね、男とロージェンスの間へと滑っていく。

 完璧に不意を突かれた。
 悔しさに舌を打ち、男を睨み付ける。

404トニー・ハーディガン:2011/05/04(水) 23:50:51 ID:SSMHlh/20
>>403

「気に入らねェんだよォ!!
 女が得意気に『玩具』振り回すのはなァッ!」

短刀に弾かれ、地面へと落ちた
拳銃へと向けられる男の掌。

その掌は薄紫色のぼんやりとした光に覆われており、
彼が異能者である事を如実に主張している。

――ガガガッ、ザッ――ズザッ!!

その時だ。『拳銃』が独りで、男のほうへ引き寄せられるように動いた。
引きずるように、ゆっくりと。であるが、確実に拳銃は男のほうへと動いている。

「ハハハ、どうやらコイツも俺に扱って貰いたいようだが?」

405ロージェンス:2011/05/05(木) 00:15:25 ID:1sJsd2CgO
>>404

「な、しまッ!?」
 動き出す拳銃に慌てて飛び付こうとする。
 しかし、鎖で留まらず腹を突いていたナイフがその動きを阻害した。
 改めて鋭い痛みを伝えるナイフを引き抜く間に――

 ずるずると男の下へ引き摺られていく拳銃『獅子の帝銃』に新たな魔弾が装填される。
         Shriek.
 その名は――帝王の断末魔。

 トリガーを引けば、数秒後に弾倉が轟音とともに破裂し、目映い光を発する閃光弾にも似た性質を持つ一発の魔弾。

 逃走用の魔弾が込められた拳銃は、間もなく男の下にたどり着く。
 彼がそれを使えば、ロージェンスはたちまち逃げ出すだろう。

406トニー・ハーディガン:2011/05/05(木) 00:29:40 ID:SSMHlh/20
>>405

程なくして、拳銃は男の使う不可思議な力により、
彼の足元までに引き寄せられてしまう。

「ハッ、中々いい物を使ってるじゃないか。
 このゴテゴテとした細工は好かんが……。」

ロージェンスへと見せ付けるように、ゆっくりと弾倉内の弾丸を確認。
まだ残弾が十分残っていることを確認すると、ロージェンスの足へと狙いを定め、
ゆっくりとトリガーを引く。

装填されている銃弾がただの9mm弾ではなく、
特別な『魔弾』であることに気づけなかったあたり、
どうやらあの男は魔術の心得は無いらしい。

407ロージェンス:2011/05/05(木) 00:57:59 ID:1sJsd2CgO
>>406

 ――カチンッ

 撃った。
 というのに虚しい音が響く。
 残弾の無い空っぽの銃を撃った時のように手応えすらまるで無い。

(……かかった!)
 思惑通りに男が『魔弾』を撃ったのを見ると、ロージェンスは男に背を向け一目散に走り出す。
 これから閃光を放ち、破裂する拳銃から逃げるために。

 果たして男は気が付けるだろうか、獅子の彫刻に灯った5つの光点がカウントダウンのように一つ一つ消えている事に。
 全て消えた時に何かが起こるであろう危機感を覚えるだろうか。

 どちらにせよ、拳銃は破裂する。
 目映い閃光を撒き散らしながら、帝王の名を冠する銃は自身の死を目前にして吼える。

 ――グゥォォォオオオオオオオオオオオッ!!!!!!

 一瞬の灼熱を帯び、白熱し、破片すら遺さず帝王は昇天する。
 その余韻が収まる頃には、もう黒装束の姿は見えない。
 幾つかある横道のいずれか一つへ逃げたようだが、彼女の匂いを覚えた犬でもなければ何処に逃げたかは分かるまい。

408トニー・ハーディガン:2011/05/05(木) 01:24:31 ID:SSMHlh/20
>>407

「――ッ!? 不発、いや……こりゃ……!」

不穏な気配を察知した男は咄嗟に拳銃をその場に捨て、
先ほど荒らしていた飲食店へと全力で走る。

己の不完全な『読心能力』による、思考盗聴による情報。
一目散に逃げ出す女、一つづつ数を減らす光点。

すこし頭を働かせれば、これから起こる大まかな事象は予測できる。

「クソダラァーーーッ!!!」

寸でのところで、店内へ飛び込み頭を抑えて防御体制をとる。
やはり、あの拳銃は爆薬仕込みか。

爆発による熱と、煙が収まったころ、ようやくその身を起こした男であったが……。

「あのアマめ、なかなかやりやがる……。
 クソッ、体中埃だらけ――ドアァッ!!!?」

既にダメージを受けていた家屋は崩落。
男は、その瓦礫に飲まれ消えた。

409ヴァイス/りにゅーある:2011/05/05(木) 21:39:55 ID:FRwfC/wE0
街中、歩く影がひとつ。

「聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな……っと」

白い肌の上に白い修道服を着た白髪白銀眼の青年。
さて上記の文章中に「白」は幾つ入っているでしょう?
閑話休題。聖職者っぽい格好をしている彼が手に持っている青いビニール袋、
解る人にはすぐ解るあの店の袋であった――――

――――兄眼意図。

がさがさ音を立てながら揺れるその、青年の手元だけが。
彼の色合いからひどく浮いている、浮いている。

410アシュレイ/立華奏コス:2011/05/05(木) 21:56:54 ID:auWZ8PYk0
>>409
彼の目の前を、一人の少女が横切ろうとしていた。
クリーム色の制服を着た、銀髪の少女。真っ直ぐ前を見る瞳は琥珀色に染まっている。
何も知らない一般人が見れば何でもない姿でも、それが兄眼意図の袋を持っている人間ならば話は違ってくる。
「天使ちゃんマジ天使」……思わずそう言ってしまいそうな姿だ。

411ヴァイス/りにゅーある:2011/05/05(木) 22:03:47 ID:FRwfC/wE0
>>410
もともと彼はあんまり人付き合いが好きではないのだ。
なので、知らない人に対する感心と言うモノは低い。
通り過ぎ、

「…………、」

立ち止まり、

「…………、」

シャッ――
少女の姿を頭から爪先まで。見定めて、

「…………。」

シャッ――
無音無言のまま、どっから出しやがったそのアイ○ォン。
写メる気満々。レンズを少女に、向ける――(許可なしで)

412アシュレイ/立華奏コス:2011/05/05(木) 22:09:27 ID:auWZ8PYk0
>>411
「…………!?」

尋常ではない執念のようなものを感じ、少女はバッ、とそちらに顔を向ける。
見れば、自分に向かって携帯電話のレンズを向けている、聖職者風の青年。

「な……!」

何をしているのですか、と訊こうとして、少女は踏みとどまる。
懐から何かの手帳を取り出し、急いだ様子でパラパラとめくり始める。
その間に、シャッターは切られてしまうだろう……。

413ヴァイス/りにゅーある:2011/05/05(木) 22:14:36 ID:FRwfC/wE0
>>412
――――――かしゃあっ、

ボタンを押す親指は止まらずに、シャッターはまばたきをひとつ。
無情にも、少女のマジ天使写真は彼の携帯に記憶を残すこととなる――

「……よし」

そしてこの白い青年、無表情ながらドヤ顔に。
満足げに、携帯をポケットに直そうと――

――そう、「携帯」。それさえ奪ってしまえば、青年の手中に少女の明確な記憶は残らない。

414アシュレイ/立華奏コス:2011/05/05(木) 22:23:04 ID:auWZ8PYk0
>>413
シャッター音と、少女が手帳の1ページで手を止めるのは同時。
彼女は手帳と満足げな青年に、交互に視線をやり、

「…………あの、すみません」

少女は「天使ちゃん風緊急対処マニュアル」と表紙に書き殴られた手帳を手に青年に近づき、

「この場合の対処はこれで良いのでしょうか?」

手帳の1ページを広げて見せる。
そこには、

『レイヤーさんの許可無く撮影すべからず。正しきオタクたるものこれを聖句とし、遵守すべし。
 さもなくば死あるのみ』

と、筆ペンで威圧感たっぷりに書かれた前置きの後に、

『天使ちゃん的に考えて、天使ちゃんは無許可撮影されたら「刺す」と思われます』

「刺す」の部分だけ太い赤字で、そう書いてあった。

415ヴァイス/りにゅーある:2011/05/05(木) 22:28:48 ID:FRwfC/wE0
>>414
刺す。さす。SASU。
その二文字がやけにくっきり見えるのは錯覚ではあるまい。

「…………は、ハンドソニックだと……」

見てみたい、けど、痛いのは嫌。
煩悩に塗れた聖職者はその二点の間で揺れている――

ちなみに携帯は手に持って、そのまま硬直しており。
奪い取ろうと思えば容易に取れる。

416アシュレイ/立華奏コス:2011/05/05(木) 22:42:28 ID:auWZ8PYk0
>>415
ハンドソニック。青年が呟いたその単語に、少女は若干の怯みを感じた。
彼女にとってその単語は、果てしない努力と苦労に塗れている。
全てはなりきりの完成度を高めるため――――そんなスローガンに乗っかってしまったのは自分であるのだが。

「……しかし、この対処は少し非現実的すぎる」

赤字の「刺す」を見ながら、少女は呟く。
そして、おもむろに右腕を上げ、

「ハンドソニック」

宣言と共に、少女の右腕、袖口から両刃の剣が勢いよく飛び出た。

「……いちいち宣言しなければならないのもそうですが、
 これが本物の刃物なのを、あの人は分かっているのでしょうか?」

袖口から伸びる刃を見ながら、首を傾げている。
キャラクターの再現方法に意識が向いていて、目の前の携帯電話を奪い取るという考えは浮かんでこないらしい。

417ヴァイス/りにゅーある:2011/05/05(木) 22:51:05 ID:FRwfC/wE0
>>416
シャッ――――かしゃあっ、

またしても降ろされたシャッター。
其処に至るまでの携帯の操作速度は並大抵のそれではなく。
熟練――否、異様なまでの「執着」が育て上げた指の動きによって、再度記憶は刻まれる。

「……よし」

だから、 よ く ね え よ 。
平淡平坦なドヤ顔は白い輝きを増して、至極満足げに。

こいつなら刺してもいいと思うんです、私……

418アシュレイ/立華奏コス:2011/05/05(木) 22:58:44 ID:auWZ8PYk0
>>417
再度のシャッター音を耳にし、少女はそちらを向く。

「…………」

そして、少しの間その度合いを増した満足表情をジッと見た後、
手帳のページをめくり、何ページか目を通して、

「……そう、あなたは変態なのね。
 一度死んだ方がいいと思うわ」

そのキャラクターを真似るかのように、静かに、しかし存在感のある声色で言い、右腕の刃を振り上げた。

419ヴァイス/りにゅーある:2011/05/05(木) 23:07:36 ID:FRwfC/wE0
>>418
振り上げられる刃を視認。
彼は慈愛を籠めて抱擁を受ける聖女のような、そんな――両手を広げた姿勢を取る。

「変態じゃねえよ、仮に変態だったとしても――」

すぅ、
白い掌は夜の空気を撫ぜて、上へ上へと滑ってゆく。
ちょうど、これから刃が曳くのであろうラインを挟むようにして、手はそこで静止。

「――――変態と言う名の、天使様だ」

――――ぱしぃ、ん。そんな音がした。
位置の高い、合掌。それは正しく「白刃取り」と呼ばれる行動、だが、

 で き て ね え 。

さっくりと、刃はきっかり青年の額にめり込んでいます。ギャグ補正で死にはしませんが。

420アシュレイ/立華奏コス:2011/05/05(木) 23:14:26 ID:auWZ8PYk0
>>419
何かの防御行動と思しき動きにも関わらず、振り上げた刃があっさり刺さってしまったので、
少女は逆にポカーンとしてしまっていた。

「…………そんなに避けづらい早さでしたか?」

刺さったことにコメントを入れるのが普通であるが、事の間抜けさに、少女はそんな問いを投げかけていた。
実際、威嚇程度に抑えた速度の攻撃だったのに、この有様である。

421ヴァイス/りにゅーある:2011/05/05(木) 23:21:35 ID:FRwfC/wE0
>>420
「……避けるより白刃取りしたほうがかっこいいと思った。
 でもよく考えたら白刃取りとかしたこと無かった。
 思ったより難しかったです」

最後の方は小学生の感想文みたいだ。
とりあえず何も挟んでいない両掌を下ろして、うんうんと頷いた。
そうこうしている間にも血はでろっでろに垂れ流しである。

「……ギャグ補正があるとはいえども地味に痛いのな、これ」

刺さった刃を引っこ抜いて、そこに存在する傷跡。
あーあ普通に避ければよかった、なんて呟きながら、手を翳す。

淡い青色の、聖なる光。掌から洩れるそれが傷口を照らして、どうやら回復を行っている模様。

422アシュレイ/立華奏コス:2011/05/05(木) 23:33:03 ID:auWZ8PYk0
>>421
白刃取りした方がかっこいい、という青年の言葉に、
少女は「いやかっこいいって……」と、呆れを含んだ感想を漏らしてしまう。

「格好の問題で刃物と向き合うのは止めた方がいいと思いますよ……?」

言いながら、少女はポケットから止血のためのハンカチを取り出すが、
青年が治癒魔術と思われる力で傷口を塞いでいるのに気付いて、

「……この刃は地味に痛い、で済む切れ味ではないと思うのですが。
 曲がりなりにも、キャベツを芯ごと一瞬で切れる鋭さがあるんですよ?
 それにその力……あなたは一体?」

少女は何か不思議なものを見るような眼差しで、青年を見ている。

423ヴァイス/けいたいいどう:2011/05/05(木) 23:42:04 ID:QYyPcDfoO
>>422
「本気で殺そうとして刃を下ろされるんならまず避けるし、
 ヤり返すよ、俺は」

何を、とは言わないまま。
確かに刃は肉を裂いて骨まで到達した感触を得たはずだが、彼はまだ息をしていて、
魔術を行使するだけの余裕がある(ギャグ補正が大幅に入っているけれど)。

「……あなたの街の、聖職者さんだ。
 カミサマ嫌いの聖職者。そんだけ、ってことにしとくか」

「種族」は語らず「役職」のみ。
燐光――ほんのちょっぴりの神聖さを醸し出すそれを纏った手を、おどけるようにひらひら。

424アシュレイ/立華奏コス:2011/05/05(木) 23:54:42 ID:auWZ8PYk0
>>423
青年の言動は、少女が明確な殺意を持って刃を振り下ろしたのではないことを、
まるで刃を降る前に知っていたかのようだ。

「それはそうでしょう。その場合、あなたにはその権利がある」

むしろ、殺意に対して防御行動と反撃を行わない人間がいるのだろうか、と少女は思う。

「やはり、神に仕える方……え? 神様嫌い?
 神を嫌っているのに聖職者を?」

嫌いなものに仕えるなんてひねくれているとは思ったが、彼の言葉には何か含むものがある。
そこに事情があるらしいが、少女には想像も付かない。

425ヴァイス:2011/05/06(金) 00:05:59 ID:QYyPcDfoO
>>424
「神の教えに忠実な輩の中には、右の頬をぶん殴られた時、
 左もどうぞ! つって自ら差し出す変態も居るんだよな、これが」

ひでえ教えだよなまったく。
やれやれと肩を竦めるポーズと共に頭を振ってみれば、
血がぴちゃっと飛んで、白い服を盛大に汚した。

「存在だけは信じちゃいるけど思想そのものは好きじゃねーんだこれが。
 聖書とか読んでみろ、えっらい上から目線で語られてて心底ムカつくぞ」

そこまで言うのに仕える理由、そこだけ不明瞭にしたまま、彼は踵を返す。
顔だけそちらに向けて、口だけでちょっと笑って見せた。

「……人間だってそうじゃん。
 仕事は嫌いだけど、やらなきゃ給料が貰えずに死んでしまう。だから、いやいやでも働くだろ?
 それと、似たようなモンだよ。俺が聖職に就いてる、理由」

――――いたって、不純。

426アシュレイ/立華奏コス:2011/05/06(金) 00:21:36 ID:auWZ8PYk0
>>425
「極端な無抵抗主義は私も嫌いです。
 戦って、戦い抜いて、人は進化してきたのでしょうに……」

それは少女の本質から出た言葉だった。
敵を撃ち、敵を焼き、敵を粉砕するために造られた、彼女の存在を表す言葉。

「隣人は愛すべき存在とは限りません。ともすれば、不倶戴天の敵となる時すらある。
 まさしく、あなたの言うとおり、人は神の論理だけで動いているわけではない。
 その人が置かれている状況によって、神を愛する人も居れば、神に唾を吐きかける人もいる」

ハンカチを握った手を胸に置き、

「それでも神に仕えるあなたは、忍耐強い人なのですね。
 その強さは率直に言って尊敬に値しますよ」

不純を語る青年と対するような、純然とした、心からの微笑みを見せた。

427ヴァイス:2011/05/06(金) 00:42:30 ID:QYyPcDfoO
>>426
「戦って……ん。そだな、そしてその後『気付く』から、人間は進化した」

戦った、『その後』。
彼はどうやらそちらに重きを置くことを重要とするらしい。
彼の根っこは、長い時間を掛けて伸ばしに伸ばされて、「進化」の光景をこんな形で吸収した。

「『忍耐強い』とも言うし、『意気地がない』とも言う。
 だから俺はまだ『堕ちない』で、白を名乗っていられるんだな」

だからそんなに、褒めるこっちゃないよ。
悪戯っぽくそう言う、言葉は「上空から」掛けられる。
はっきり見せた背中からは一対の白い翼が生えていて、
彼はいつの間にか空に浮いていた。

「……ま、俺は俺なりに『堕ちない』ように頑張りますよ、と。
 あんたにも主の栄光が与えられますように」

Amen,
かなり罰当たりな、おどけた様子の祝詞を一言だけ。
少女に掛けて、彼は夜空に吸い込まれるように、飛び去ってゆく。

……こいつが天使ちゃんでした。そんなまさかのオチであった。

//絡みありがとうございましたっ!

428アシュレイ/立華奏コス:2011/05/06(金) 00:55:38 ID:auWZ8PYk0
>>427
出会った時の奇行と、神を嫌う姿には、あまり似つかわしくない白い翼を、
少女は目を細めて見上げる。

「天使……主の栄光。それが必要な存在とは最もほど遠いと思いますよ、私は」

青年の祝詞の残響を心の中で聞きながら、少女は呟く。

「だって私は、「兵器」ですから」

その言葉に、落ちる寂しさはない。むしろ、確固たる意志を感じる。
それでも、彼に聞こえない程度の声に落とすくらいには、彼女は情というものを理解していた。


……しかし、それは彼女がコスプレをした本来の目的と写真を撮られたままなのを思い出すまで、あと30秒たらずのことであった。

//乙でした!

429No.31:2011/05/06(金) 23:54:19 ID:j3dxNUKs0
商店街。
眼を輝かせて色々な店を物色している少女が一人。
白いワンピースに水色の眼と髪が喧騒の中でも良く目立っている。
No.31、以前都市を対象にしたテロを行い、
現在は保護観察中の少女だ。

こういう場所は初めてなのか、あっちへふらふら、こっちへふらふらと
危なっかしく歩いている。

430トニー・ハーディガン:2011/05/09(月) 00:13:09 ID:SSMHlh/20
娼館やアヘン窟のような如何わしい違法な店が立ち並び
チンピラや麻薬の売人がうろつく異能都市のとある路地裏。

この誰からも見放された『吹き溜まり』と呼ばれる場所の片隅で、
もぞもぞと蠢く男の姿があった。

「うぃー……頭が痛ェ、あのアバズレのおかげで酷い目にあったな……。
 まったく、クソ地獄に首まで漬かった気分ってヤツだ。」

ロージェンスとの交戦から数日。
あの後、どうにか瓦礫の山から抜け出したトニーであったが、
騒ぎを聞きつけてやってきた警察と一悶着起こし、ほとぼりが冷めるまで
この『吹き溜まり』に潜伏していたのだ。

――それにしても酷い界隈だ。

トニーは、この法の存在しないイかれた街を見て改めて思う。

腰の曲がった物売りの老婆を殴り、わずかな金の入った財布を奪うチンピラがいるかと思えば。
散弾銃を顔面に撃ち込まれたような酷い状態の死体が片付けられもせず放置されている。

「……ほんとうにゴキゲンだ。
 どうやら、この辺りのチンピラどもは聖書でだって人を殺せるんだろう。」

吐き捨てるように独り言を漏らしながら、食料を求めて街を歩く。

431ナナセ=フミヅキ & 河平 セセリ:2011/05/10(火) 23:15:54 ID:VoJSms.Y0
「第49期千夜学園高等部生徒会役員選挙」
『再々々告知?』
学校からの帰り道。
七瀬の持つ一枚の紙に二人の視線が注がれていた。

「他に誰もでないと言うのなら私が出るべきかな」
『ななっちがそんなこと言うなんて珍しいねっ?』
「別に……唯の気まぐれさ」
帽子を上げ、自分の隣で菓子パンを美味しそうに頬張る少女を目に入れる。
『気まぐれ?』と、その帽子の下の瞳に目を合わせるとそう復唱した。

「再々々告知。そこまでしても人が欲しいんだろう。
 どうせ誰もでないのなら、折角だし私が。な」
『へぇ〜』
解ったのか解っていないのか。曖昧な返事ではあるが笑顔を添えて返す。
それから思いだした様に制服姿の少女は口を開く。
『あっ! 私はななっちを応援するからね!』
「え? ああ、ありがとう」
突然のななっちにうろたえつつも、どうにか笑顔で返す。

「な、ななっち……」

432テルメス/ニット帽の男:2011/05/10(火) 23:29:48 ID:ste/2NNA0
パイロットニットを被った男が歩いていた。
男はなぜか機嫌がよさそうであった。

「最近は力も安定してるな。
 このままこの変な暴走が無くなってくれればいいんだけど」

と、突然男の体が波打つように鱗に包まれ、再び人間の姿に戻った。

「……ああ、解ってる。
 そうそう都合のいいことは起こらないんだ」

そう呟いて、どんよりした顔になって角を曲がった。
つまり、ナナセとセセリの二人のいる通りである。

433ナナセ=フミヅキ & 河平 セセリ:2011/05/10(火) 23:40:14 ID:VoJSms.Y0
>>432
「いっその事、会長の座にでも就いてみるか」
そんな他愛もない話をし、丁度こちらも角に差し掛かろうとしていた。
お互いの目はお互いを向き、前への注意は薄れていた。

『ばふっ』
前方不注意。
制服の少女、セセリが菓子パンごとテルメスにアタックした。

434テルメス/ニット帽の男:2011/05/10(火) 23:49:08 ID:ste/2NNA0
>>433
男はどん、と衝撃を胸に喰らったが、一瞬よろめいた程度で倒れなかった。
むしろ跳ね返されたセセリの方が物理的ダメージは大きいかもしれない。
そう、物理的ダメージは。

「……ああ、うん。
 わかりました鱗怪帝様、今日は厄日ということですね」

男は服に菓子パンの屑をつけてうなだれた。
なんかジャムらしきものもべったりついてる。

「……っと、大丈夫ですか。
 すいません、前見てなくて」

//勝手にジャムつけちゃったけど菓子パンの種類に問題があったら無視してくださいね

435ナナセ=フミヅキ & 河平 セセリ:2011/05/10(火) 23:57:26 ID:VoJSms.Y0
>>434
//問題ありませんにょ。

『ぅぁ、あ……』
そのまま跳ね返ってよたよたと数歩後退。
小さく呻きながら首を振っている。

「申し訳ない」
コートからシックな黒いハンカチを素早く引き抜くと同時に近寄る帽子の。
テルメスの呟きは聞こえて居なかったのか、聞き流したのか。

436テルメス/ニット帽の男:2011/05/11(水) 00:04:30 ID:ste/2NNA0
>>435
「ちょっと、大丈夫ですか、本当に」

ヨタヨタしているセセリに近寄ろうとする。

「あ、いえ。
 俺は大丈夫です」

あせるように手でパタパタとパン屑をはらうが、当然ジャムが手にべたべたつく。

「あー……」

どうしようもないのだ。

437ナナセ=フミヅキ & 河平 セセリ:2011/05/11(水) 00:12:37 ID:VoJSms.Y0
>>436
「もし、良ければ」
男にハンカチを差し出す。

『だ、大丈夫れす……よ』
まだ呂律の上手く回っていない口でなんとかと言った様子で返す。

438テルメス/ニット帽の男:2011/05/11(水) 00:17:16 ID:ste/2NNA0
>>437
「すいません、お借りします」

ハンカチを受け取って手を拭う。
そして服についたジャムを完全ではないがふき取る。

「いや、ぜんぜん大丈夫じゃ無いよね。
 もしかして口の中とか切っちゃいました?」

テルメスはただ立っていただけだ。
別に怪力を発揮した覚えは無いので、怪人の力が暴走したかと少しあせる。

439ナナセ=フミヅキ & 河平 セセリ:2011/05/11(水) 00:24:45 ID:VoJSms.Y0
>>438
「全く何と言えばいいのか……。
 こちらの注意不足です、申し訳ない」
帽子を落とさない様に抑えるとテルメスに向かって深く頭を下げる。
全体的にシックで派手でない感じに纏められた服装を纏った七瀬。
しかし、その中で帽子とベルトの二点が目に留まるだろう。
帽子はその他の衣服とはミスマッチな印象を与え、ベルトからは禍々しい邪気の様な物さえ感じる。

『うぐぐぅ、大丈夫ですよぉ』
動きを止めると何度も瞬きをする。
自分の頬をつねってみたりしてパンをかじったりして、

『私、ちょっと衝撃とかに弱いんですよぉ。
 生まれ、と言うのかな、まぁ生まれつきですよっ!』
そして何故かグッと立てた親指を向ける。

440テルメス/ニット帽の男:2011/05/11(水) 00:32:18 ID:ste/2NNA0
>>439
「いや、俺も前を見てなくて」

と言いつつ、ベルトを注視する。
邪気を感じて、変なものを身につけてるなあ、と思いつつも、異能都市だから、で納得してしまう。
別に変な魔道具を収集する趣味も無く、特に追求する気は無いのであった。

と言うか、この帽子の男はナナセを心配するべきではないのかな、という事の方が気になっていた。

「また妙な体質……いえ、大変ですね。
 すいません」

441ナナセ=フミヅキ & 河平 セセリ:2011/05/11(水) 00:43:20 ID:VoJSms.Y0
>>440
『うぐぅ……そう言われると辛いです。
 とってもとっても大変です。でも、大丈夫です!』
ニッコリと笑って返す。

「セセリ、私は謝るべきだと思う」
七瀬が顔を上げ、もう一度今度は小さく頭を下げると視線の向きをセセリに変えた。
その言葉で思い出した様にセセリと呼ばれた制服姿の少女は頭を下げた。
『申し訳ございませんでしたぁ』

その間に七瀬はテルメスの元をはなれ、セセリの方へ移動する。

442テルメス/ニット帽の男:2011/05/11(水) 00:50:53 ID:ste/2NNA0
>>441
「いや、そんな丁寧に……。
 こちらこそすいません」

頭をかきながら軽く頭を下げる。

「本当にご迷惑かけました」

よかった、怪人の力が暴走したわけじゃなくて、と安心する。

443ナナセ=フミヅキ & 河平 セセリ:2011/05/11(水) 00:59:57 ID:VoJSms.Y0
>>442
「……何か、気にかかる事が?」
帽子の鍔を持ちあげ視線を向ける。
そうされた事によって露出された七瀬の瞳はどこか険しい。

444テルメス/ニット帽の男:2011/05/11(水) 01:07:02 ID:ste/2NNA0
>>443
「いや、"もう"無いです。
 では俺は失礼します」

そっけない性格なだけかもしれないが、
帽子の男にはなんだか警戒されている、と思い、
男はナナセとセセリの脇を通り過ぎていった。

445ナナセ=フミヅキ & 河平 セセリ:2011/05/11(水) 01:15:26 ID:VoJSms.Y0
>>444
「ええ、それでは」
最後にもう一度だけ小さく頭を下げる。

「……行こうか。セセリ、本当に怪我はない?」
『大丈夫だよっ。さ、帰ろっか』
去り際にテルメスの方をもう一度だけ見る七瀬。
「なんだか……」等と呟く辺り、思い当たる節でもあったのだろうか。
しかしそれもセセリに心配の言葉を掛けられて直ぐに思考の外へ。
会話の内容を手元の用紙に戻し、テルメスの来た角を曲がって行った。

446黒沢小百合:2011/05/14(土) 22:19:00 ID:SSMHlh/20
【AGカフェ】

「ふぅ……今日はまあ、楽な仕事でしたし
 一杯引っ掛けてかえりましょうかね……。」

一日の勤務を終え、いつものようにカフェを訪れる小百合。

今日の仕事は千夜軍事開発部門の新兵器プレゼンなど現場に出なくても良いものばかりで
体力を使わないで済んだため、いつものように疲れ果ててはいない。

447鳶貴:2011/05/14(土) 22:53:54 ID:lqWAZ/Eg0
>>446
「なるほど、ここは…喫茶店か。」
ドアのベルを鳴らしながら、スーツ姿の一人客が入ってくる。
硬いスポーツシューズに床が音を鳴らす。

「それにしては、いささか見慣れない装飾だな…。」

キョロキョロと辺りを見回し、独り呟く。
内包された警備の術式を見透かしているのか。

448黒沢小百合:2011/05/14(土) 23:02:26 ID:SSMHlh/20
>>447

店内にはカウンター席に女性が一人居るだけで、
他に客の姿を見ることは出来ず、静かな空間に唯一流れる
BGMのジャズがなんとも心地よい。

店員の姿すら見えないのは少し不可解だが
一休みするにはちょうどいいだろう。

449鳶貴:2011/05/14(土) 23:14:07 ID:lqWAZ/Eg0
>>448
「…何とも言い難いね。」
雰囲気ある音楽に包まれながら、店内の寂しい客層に気が付き
同じ一人客の女性の背中に目を向けた。

「おや?」

身に覚えのある気配。何処かで会った様な気もするが、思い出せない。
そしてその似たような慨視感自体にもまた覚えがあった。

「……どこだったか。」
腕を組んだ後、手を顎元に回して何やら考えている姿勢を作る。
一声掛けるという発想がその時にはなかったようだ。

450黒沢小百合:2011/05/14(土) 23:23:37 ID:SSMHlh/20
>>448

「…………。」

小百合は最初、新たに店へと足を踏み入れた客へ
ちらりと視線を向けたがすぐにテレビへと視線を戻したのだが……。

どうにも、その客は席に座る様子がなく
なにやら視線を感じる。

「あの、どうかなされましたか?」

他に声を掛ける者もなし。
小百合は仕方なく、自分から声を掛けた。

451鳶貴:2011/05/14(土) 23:35:18 ID:lqWAZ/Eg0
>>450
「……いや、失礼。」
顔を向けられ、顎を撫でていた手を止める。
挨拶もなしにじっと視線を向けられる…
端から見れば不審に思われて仕方の無い行動だ。

「以前どこかで…あれ?」
まただ。デジャヴというやつだ。
同じ質問をしたような記憶が頭の中を巡る。

「…お会いしましたか?」
あまりいい関係ではなかった事がもやもやと浮かんでくるのだが…
肝心の相手の事が思い出せていない。

452穏島優芽:2011/05/14(土) 23:36:14 ID:HWaz5s.I0
そして、また一人、店のドアベルを鳴らす者が現われる。
布に包んだ槍を持った赤いコートの女性、穏島優芽だ。

「あー……は、腹減りんちょ……」

だが、その顔は若干憔悴気味。
槍もいつものように担いでいるわけではなく、むしろ杖代わりにしている形。
彼女の言葉は空腹を訴えているが、どうもそれだけではないようだ。

「……ややっ?」

入り口からよろよろとやって来た優芽は、店内に見知った顔がいるのに気付いて、そんな声を出した。

453黒沢小百合:2011/05/14(土) 23:45:28 ID:SSMHlh/20
>>451

「さあ、私は特に覚えがありませんが……。」

小百合は、鳶貴に見覚えがないようであった。
しかし、小百合に対して見覚えがあるのも当然。

彼女は千夜グループ関連のニュースや新聞記事の露出が多く
そういったものに目を通し手入れば、記憶の片隅に引っかかっているはずだ。

>>452

店内には男女が一人づつ。
どうにも会話をしている?様子であるが、なにか違うような気もする……。

しかし奇妙なのは、この店には店員が居ない事だ。

454鳶貴:2011/05/15(日) 00:01:01 ID:lqWAZ/Eg0
>>452
来客を伝える音の方へ振り向き、不意に顔を強張らせる。
今度こそ以前に顔を合わせたことがある相手だ。特異を隠せないあの長物を持っているのだから間違いない。
しかし、あの時は今のようなビジネススーツを着てはいないどころか
体格すら違う化物の姿だったのだが…。

「……この間はどうも。トビタカと申します。」
相手が気付いているかどうかわからず、念の為に名乗る。


>>453
「おや、そうですか…。それは失礼しました。」
そんな筈はないのだが…
心のうちでそう呟きながら、申しわけないと女性に詫びる。

「ここの店の方かな?面白い喫茶店だ。雰囲気もいい。
 注文は貴方に?それともセルフですかな?」

455穏島優芽:2011/05/15(日) 00:11:52 ID:HWaz5s.I0
>>453-454
優芽はカウンター席の女性の意識がこちらに向かないのを見て、
そういえばあのときはこの人気を失ってたな、と思う。
そして、横にいた見慣れないスーツの男に、以前出会った怪物の名を告げられたが、

「ああ、やっぱだよね。その魔力の感じ、覚えあるもん。
 こんちわ、トビさん。……いや、時間的にこんばんはかな?」

赤く色づいている外を、窓を通して見る。

「あとね、この店店員いないときは良心市のシステム採用してるっぽいよ。
 ホラ、田舎とかであるじゃん。野菜の直売所で、「代金はこちらに」ってメモ貼っついた箱だけポ〜ンって置いてあるやつ。
 あれと同じよ」

鳶貴にそう言いながら、優芽はカウンターの隅に紙幣を何枚か無造作に置き、
「はらへった〜はらへった」などと口ずさみながら、店の冷蔵庫を物色し始める。

456黒沢小百合:2011/05/15(日) 00:25:29 ID:SSMHlh/20
>>454-455

「いいえ、私はただの常連です。
 この店は皆――。」

もう、この説明を行なうのもだいぶなれてきたな。
などと思いながら口を開いた小百合であったが、優芽に先をこされてしまった。

「まあ、そういう事です。
 今そちらのお嬢さんが説明してくれたように
 この店はそういうシステムなのですよ。」

そういって、グラスを空にして。

>>455

(ふむ、この店のルールを知っているという事は何度かここに来た事があるのか……。
 私もよく此処に来てはいるけれど初めて見る顔ですね……。)

厨房へと入って行く優芽。
その動作は慣れた物で、既に何度かこの店に訪れている事が分かる。

「あぁ、その籠の中にスパムがありますよ。
 多く仕入れたはいいのですけど、中々減らないので一つどうです?」

小百合は、店主不在のこの店の仕入れを時折代行している。
どうやら、仕入れすぎたスパムが余っている様で。

457鳶貴:2011/05/15(日) 00:38:30 ID:lqWAZ/Eg0
>>455
「こんばんは。なるほど、そういう事だったか。道理でキッチンの方にまで人気が無い訳だ。」
懐から財布を取って紙幣を抜き、優芽を真似て代金を置く。
そういえばここに寄ったのも軽い食事でも取ろうとしていたのを思い出した。

「しかし、防犯の術式といい…いや、一部は呪いといった方がいいかな。
 ここのオーナーも徒者ではなさそうだ。最近は特に治安も悪いが…ここなら大丈夫、かもしれん。」
そこまで言い切る程ここの事を知っているわけでもなかったので、後半は半ば口ごもった感じに。


>>456
「なるほど、ご丁寧にど…あぁ、思い出した。千夜グループの方でしたな。」
冷蔵庫の方に歩いて行き、愉快な歌を口ずさんでいる女性の横から中を覗く。


「最近は色々と大変だというのをよく耳にします。
 警備員が何人か事件に巻き込まれたとか…何とか。」
テレビの方へ視線を移しながら、食材をあれこれと手にしている。
ニュースにはあまり報道されていないが、グループの社員が通り魔に会った―――そんな事があったかも知れない。

458穏島優芽:2011/05/15(日) 00:52:17 ID:HWaz5s.I0
>>456
実際のところ、優芽がこの店に来るのは二度目でしかないのだが、
商店街の肉屋を始めとした、異能都市内に存在する食べ物関連の店舗を食べ歩きした際、
屋台のおでん屋のオヤジからこの店のシステムを聞いたのが彼女の振るまいの理由である。

「うへぇ、スパム! うう、やべっ、スパム寿司思い出しちゃった……。
 ぐぐぐ……あんなの生み出す人間の気が知れないよ……ブツブツ」

女性にスパムを勧められたが、優芽は露骨に嫌そうな顔をしてしまう。
どうやらスパムにトラウマがあるらしく、ブツブツとスパム寿司の文句を呟きながら、冷蔵庫の物色を続ける。

>>457
「うん、呪いっぽいよね、コレ。間違っても解呪したくない部類だけど」

狂気と悪意と不浄を混ぜて、その濃厚な部分だけを取り出したような研究を続けていた優芽にとって、呪いの類は友達のようなものだったが、
彼女をしてそう言わしめるこの店の術式はそれ以上に底知れないものらしかった。

「治安。治安ねぇ……いや、場合によっちゃ、治安云々言ってる場合じゃなくなるかもよ?」

治安の悪さを口にする鳶貴に優芽は意味深に言って、

「ウチの船団が、この街に興味持ち始めてる」

部外者の女性がいるからそんなふうにぼかしているが、内容は割と危ない部類の話だった。
しかし、ソーセージの束を手にしているせいか、イマイチ決まっていない……。

459黒沢小百合:2011/05/15(日) 01:08:59 ID:SSMHlh/20
>>457

「ええ、その通りです。」

小百合は、目の前の人物もどうせ
TVだとか、雑誌で自分の事を見たのだろうと思いそれ以上は何も言わず。

「最近は治安の悪化が叫ばれていますしね。
 わが社の社員も何人か、被害にあったものも居ます。」

通り魔以外にも、様々な事件で損害を出しているため
印象に残っていなかったのか、小百合は特定の事件に対して言及しなかった。

>>458

「ううむ、まあ……缶詰ですし長持ちはするからいいか……。」

女性の様子から、これはスパムを食べないな、と思う小百合。
また後日、少し自分で食べて数を減らしておこう……。

「さて、私はそろそろお暇しましょうかね……。」

小百合は、グラス2杯ほど酒を飲んだだけで
店を後にした。結局は明日も仕事がある。

明日に影響を残すほど大量に飲むわけには行かないのだ。

// ごめんよー、なんだか眠いからそろそろノシ。

460鳶貴:2011/05/15(日) 01:21:42 ID:lqWAZ/Eg0
>>458
「解呪…ふむ、やはりその道については詳しいようだね。」
少しばかり彼女の口にしていた『タイタス』について調べている内に見つけた、本人の資料にも目を通した。
とは言っても精々"熱心な"探求家であるという事ぐらいなのだが。

そういえば以前、ある呪いを打ち消す手段を画策しているという少年に出会った。
それについて詳しく聞いてみようかとも思ったが、思えばそんな間柄でもなく義理もない…。

「場合じゃない?それはどういう…。」
片や調理器具と調味料を手にしていた男が聞き返す。

「……なるほど。それはそれは……面白い話だ。」

気取られないようにという意が伝わったのか、ちらりと小百合の方に目を向ける。


>>459
「ああ、やはりそうでしたか。」
確かに顔を合わせたことがあるのだが、どうやら向こうはそれを忘れているようだ。
表向きの会社という関係から友好的に接していたのだが
銃傷を負わされた事があったのも思い出し…

「ええ、こう暴徒やら何やら恐ろしい事が続くと…ちゃんと警備が機能しているかもわかりませんな。
 おっと、お帰りですか。お気をつけて。何分、物騒ですからな。」

柔らかい口調ながらも悪意を含ませながら、出口へ歩いていく小百合を笑顔で見送った。

461穏島優芽:2011/05/15(日) 01:43:09 ID:HWaz5s.I0
>>459
「食べ物は美味しく食べられる人が食べれば良いと思うんですよ……。
 残念ながらあたしは無理」

少し落胆した様子の女性に、優芽はフォローを入れる。
とは言っても、余り物と言われるくらいだから、きっと他の人も食べないんだろう。優芽は少しスパムを哀れに思った。
そして、暇を告げる女性の後ろ姿を振り返って見る。
優芽は以前に遭遇したときの様子と、明日に響かないような飲み方を照らし合わせて、

「……ありゃー早死にするな」

ぼそりと、聞こえないように言った。

>>460
「面白い話でしょ? まあ、「まだ」興味程度でしかないんだけどね。
 異能者の密集地なんて、ここしかないわけじゃないから」

ソーセージの束の他に、冷蔵庫からサラミと食パン、野菜ジュースの500ミリペットを取り出した優芽は、
それらを抱えて一足先にカウンターへと戻る。

「あたし、実は休暇中の身なんだけど、今日の朝ね、いきなり艦隊から戻ってこいって電話来て」

初めに居た女性が去ったためか、優芽は「船団」の呼称を「艦隊」に戻していた。

「何かと思ったらね、極東第二支部が作った「脚装戦艦」の進水式だったって話。
 脚装戦艦ってわかる? 馬鹿でかい足が付いた、馬鹿でかい大砲付きの戦艦。支部肝いりの、都市破壊用兵器」

サラミのパッケージを剝きながら、話を続ける。

「脚装戦艦「フォルブランニル」。艦隊の興味が強くなったら、こいつが派遣されてくるかもね」

あくまで、軽い調子で。

462鳶貴:2011/05/15(日) 02:03:59 ID:lqWAZ/Eg0
>>461
「確かに。それにこの地は『歪み』やら不安定な要素が多い。
 今の今まで見送られていたのも頷ける。」

早死に?と今はいない小百合に呟かれた言葉に首を傾げながら
厨房を借りてフライパンを温め始める。

「…"休暇"か。暫らく聞かなかった言葉だ。
 艦隊…"ミスティック・フリート"か。」

油を引いてスパムやソーセージを炒り、別のフライパンで目玉焼きを作っていた。

「ほうほう。それはまた大それた代物が…。
 それで?その鉄の象の足は…あぁ…少し焦げた。
 我々としては侵攻は何かと都合が良いし、何しろそちらの決定に口を出す気はないが…。
 やれやれ、興味本位に振り回されるのも大変だな。」

さも日常会話のように、互いに軽い調子で料理片手間に物騒な話をしている。

463穏島優芽:2011/05/15(日) 02:17:36 ID:HWaz5s.I0
>>462
「いやまったく。この街は面白そうな「サンプル」に充ち満ちてるからね。
 それ全部調べた後だったら壊そうが何しようが、あたし的には別に構いやしないんだけどさ」

サラミをかじりつつ、物騒な同意を示す。

「そもそも脚装戦艦なんて金食い虫が建造される話が出てきたのは、「八号計画」の失敗を切っ掛けにしてるんだよ。
 あの計画さえ上手くいってたら、あたしも進水式なんていう眠気道場に行かなくて済んだんだけど」

野菜ジュースを一気に三分の一ほどあおって、ふと何かに気付いた様子になる。

「あ、「八号計画」の解説要る?」

464鳶貴:2011/05/15(日) 02:35:23 ID:lqWAZ/Eg0
>>463
「フフフ、流石は魔術師。勉強熱心なだけある。
 精々俺までサンプルにされない事を祈るよ。
 …と言っても、いうなら俺自身も実験体で随時データは記録されているんだが…。」

片面が少し焦げ付いたスパムとソーセージに、冷蔵庫に入っていたトマトペーストのようなソースをかけ
トーストと目玉焼きで挟んで盛り付ける。


「機関が判断したのだから、いくら金が掛かっていようと問題なかろう。
 …ただそれも、事が身を結んだ時に限る話だが…。」

熱々のエッグトーストを四等分に切り分けた。

「"八号計画"?…すまない。此処の所は何かと忙しくてね。
 表の稼業にもっと人員を割くべきだったよ…あの"狂人"の始末だけで今は手一杯…。」

アイスコーヒーを入れ、カウンターのテーブルに運び料理と一緒にいただく。

465穏島優芽:2011/05/15(日) 02:56:03 ID:HWaz5s.I0
>>464
「……「狂人」の始末? なんだか良くわかんないけど、あまり根を詰めすぎるのも良くないよ。
 もちろんトビさんの身体を案じてのことだけどさ、機関の一部として、機関に奉仕できなくなるのも、
 それはそれでイヤンな話だし」

今度は食パンの袋に手を出し、2枚、3枚と早いペースでそれを平らげていく。
よほど腹が空いていたらしい。

「悪意、狂気、不浄、呪い、邪悪。
 だいたいそういうジャンルがあたしの専門だから、何かあったら言ってよ。協力するからさ。
 ……っと、「八号計画」の解説だったね」

4枚目を飲み込み、袋の中に手に付いたパンくずを落とす。

「「八号計画」ってのはね、要するに機関に敵対してるアホども街ごと潰してやろーぜ!!
 っていう考えの下に計画された、都市及び能力者殲滅用人造人間開発計画のこと。ま、戦闘用アンドロイド開発計画だね。
 人と同じ姿で都市に潜り込んで、気付く暇も与えないまま一気に極大火力で街を葬り去ろうっていうコンセプトだったみたい」

また野菜ジュースをあおる。ボトルの中身は、もう残り少ない。

「……でも残念なことに、敵対者に事前に察知されちゃってさ。
 計画を進めていた研究所ごと、試作機も吹っ飛んじゃって、計画はパア。
 主任開発者も行方不明になっちゃって、お流れになりましたとさ」

ちゃんちゃん、と、優芽はおどけて見せる。

466鳶貴:2011/05/15(日) 03:18:33 ID:lqWAZ/Eg0
>>465
「…ハハハ、ありがたい忠告として受け取っておくよ。
 それにしても、そんなに腹が空いていたのかね。」

あっという間に飲み干されたコーヒーを注ぎ足しに冷蔵庫に向かう。
まだ何か食べるのか?と戸を開けながら問いかけた。

「悪意…狂気が専門、か。それは頼もしい。
 …が、キミの他に魔術や科学に秀でた人員にヤツの事を任せたが、全員が『どうにもならない』という返事だった。
 呪縛や投薬すら意に反さない、かといって殺しても次の日にはまた顔を出す…まるで"醒めない悪夢"さ。
 こちらの苦労も知らず好き勝手やっているのに…上層部は何故ヤツを野放しに…。」

両手で顔を覆いながら話している。
言葉の半ば、はまるで独り言のような問いかけにも聞こえた。


「なるほど。実に単純で素晴らしい計画だ。複雑すぎると機械は故障し人は失敗する。…設計や人材にもよるが。
 …そういえば、同じように街を破壊する計画を大々的に報道していたガキがいたな…考えもしなかったが、ヤツも機関の…?」

「…やれやれ。従事している人間には耳が痛い話だ。
 結局の所、脚装戦艦建造もキミの休暇の取り消しも、全てはその尻拭いという訳か…。」
会話の内容とは裏腹におどけてみせる優芽に薄い笑いを向けた。

467穏島優芽:2011/05/15(日) 03:47:11 ID:HWaz5s.I0
>>466
「うん、朝食べないで出ちゃったから、ここに来るまで、お腹と背中がくっつきそうだった。
 ウチの艦隊のトップ……通称「提督閣下」は、「朝飯を食べる暇があるなら、機関へ向ける礼賛の言葉のひとつでも考えろ」
 とかマジで言いそうな厳ついおじ様だもん。怖くて一分一秒でも早く会場に着こうと必死だったんだよ……。
 あ、追加注文はナシで良いよ。ここ、あんまり腹に溜まるもの置いてなさそうだから」

サラミとソーセージの束、食パン一斤を食べ尽くしつつあるというのに、「腹に溜まるものがない」ときた。
優芽がよほどの腹減りか、大食いの類であることは間違いなかった。

「ふーん……その「狂人」も相当だね。殺しても居なくなんないなんて、さ。
 あたしの扱ってるジャンルはちょっと特別だから、もしかしたら効くかもね。
 旧支配者……素敵ヴォイスだけで沢山の人間を狂死させる、そんな存在がスポンサーのジャンルだからね」

鳶貴の言葉の、後半の呟きは優芽の耳には入らなかったらしい。

「街を破壊するって言ってた子供? どうだろう、あたしは聞いたことないよ。もしかしたら、程度の予測しか立たないね。
 ……まあともかく、そういう計画があったって話。
 あたしンところの艦隊も技術供与してたから、失敗の報で「閣下」が茹でダコみたいに怒り狂ってたのを思い出すよ……」

しみじみと語る優芽の手元には、いつの間に食べたのか、食料の姿形は無かった。
後に残っているのはゴミと、残り少ない野菜ジュースだけで、
彼女は残ったジュースを飲み干すと、ゴミと一緒にボトルを店のゴミ箱にシュート。
入ったのを確認すると、カウンターに立てかけてあった槍を担ぎ上げた。

「あたしはもう行くよ。今日はハラヘリの一日だったし疲れたしで、あんま動きたくないからね。
 ……これ、あたしの連絡先。何かあったら呼んでよ」

そう言って優芽はカウンターに一枚の名刺を置くと、「バーイ」と軽く手を振って、店を出て行った。


//キリが良いと思うのでこの辺で……。
//トビタカさん絡みありでした!

468鳶貴:2011/05/15(日) 20:41:16 ID:Yly1ZzBM0
>>467
切り分けたトーストに齧り付き、コーヒーをすする。

「ハハハ、尤もらしい"上官タイプ"だな。提督閣下と呼ばれるのも納得。
 忠誠も重要ではあるが、賛辞よりも結果が全てだ。少なくとも私はそう思っている。
 そうかい?腹に溜まるものか…スパム…はさっき駄目と言っていたな。」
余程お腹が空いていたのだろうか?それにしても食べすぎな気もするが…。

「本当に手を焼いているよ。だが、いつまでも奴の遊びにも付き合っていられん。何とか片をつけるさ、近いうちにね。
 旧"支配者"?何とも良い響きだ。その可能性も試してみたくなったよ。」
最後の一切れを手早く口に入れ飲み物で流し込む。

「そうか。…流石にその線は薄いか。
 なるほど、解説ありがとう。ふふ…怒り心頭の閣下とやらは、さぞかし恐ろしいだろうな。
 ふむ、そのような計画があったとは…少しその辺りについて調べてみる必要があるな…。」

食器をさげ、使った調理器具等を流しに運んで手早く洗い上げ
帰り支度をしていた女性が残したカウンターの上の品に目を落とす。

「…ご丁寧にどうも。ああ、ゆっくり休むといい。
 そうだな、キミ達の手を借りたい時が来たら連絡させてもらおう。その前に食事もいいかも知れんな。
 今日みたいに腹ペコかどうかはまたその時の話だが。」


別れの手振りを微笑みと頷きで返し、機関の同胞を見送る。
程なくして優芽と入れ違いになる形で紺のスーツを着た二人組の男が店に現れる。
襟元が草臥れた鳶貴とは違い、男達はシワ一つ無い完璧な服装だった。

「…何かね。」
「"ミルヴァス"様です。今度は公安局の人間が二人…。」
「あの馬鹿者が…直ぐに手配しろ。」

打って変わって激しい剣幕を見せつけ、スーツの三人はドアベルを乱暴に打ち付けるようにして店を出て行った。

469八代真人:2011/05/15(日) 23:24:41 ID:1sJsd2CgO
 片手にビニール袋、片手に携帯、人通りの疎らな住宅街周りをとろとろ歩く姿。
 カジュアルスーツ姿の男はコンビニ帰りだった。

「……、……」
 その途中で公園に入った。
 目線は手元の携帯に落ちている。

470黒沢小百合:2011/05/16(月) 22:07:00 ID:SSMHlh/20
【AGカフェ】

「……ふう。ご飯にしよう……。」

がさり、と音を立ててカウンターに置かれる茶色の紙袋。
中身はまだかすかに暖かい焼きたてのパン。

小百合は上着を適当な椅子に掛けてから席に付き
ごそごそとパンを漁り始めた。

471アシュレイ&湊友希子:2011/05/16(月) 22:45:36 ID:HWaz5s.I0
>>470
カラリン、と軽やかなドアベルの音。
それに続いて、髪をポニーテールに纏めた快活そうな、千夜学園の制服を着た少女が入ってきた。

湊「ちわーっす、湊青果店でーす」

ろくに店内も見ずに店中に聞こえるような声で言った後、ポニーテールの少女は後ろ、
つまり、店の外に振り返って、

湊「レイ、こっちこっち。あ、そこちょっと段差あるから気をつけて」
レイ「はい、了解しました」

店の外からやってきた、大きな段ボールを担いだ銀髪の少女と連れだって入ってくる。
そちらの少女もまた、千夜学園の制服を着用していた。

湊「あれ? 店員さん誰もいない感じ?
  まいったなぁ……ま、いいや。モノだけ置いちゃおう」
レイ「良いのですか?」
湊「いいのいいの。もうペイは済んじゃってるし」

後から入ってきた、段ボールを担いだ少女のほうは、小百合の位置からは担いだ段ボールに隠れて顔が見えない。
だがもし、声を覚えていれば、即座に彼女の正体に気付くだろう。
以前、小百合を負かせた、あのアンドロイドであることを。

472黒沢小百合:2011/05/16(月) 22:53:03 ID:SSMHlh/20
>>471

「ん、発注していた材料が……。」

このところ、店を空け気味な店主に代わり
発注を行なったのは小百合であった。

折角居るのだから、受け取りも自分が済ませておこうと
ゆっくりと立ち上がり、声の方向へ振り向いてみれば……。

「…………!」

小百合の表情が一瞬にして凍りつく。
原因はもちろん、希子と一緒に居るアシュレイだ。

473アシュレイ&湊友希子:2011/05/16(月) 23:06:55 ID:HWaz5s.I0
>>472
ポニーテール少女、湊 友希子は小百合と直接的な面識はなく、ニュース関連の情報にも疎いため、
立ち上がった小百合の行動を「トイレかな?」程度の認識にとどめた。
アシュレイの方はというと、顔が段ボールの影になっているせいで、小百合に気付いていない。

湊「こっち。カウンターの奥に厨房があるから、そこに置くの」

友希子は厨房に向かって先導する。

湊「いやー、それにしても悪いねー、レイ。あたしの仕事手伝ってもらっちゃってさ。
  アンタ、何でも手伝ってくれるから、ついつい頼んじゃうあたしサボりちゃん過ぎだよね」
レイ「いえ。役に立てる場所があるのなら、私は一向に構いませんよ」

アシュレイは友希子の先導に従って厨房に入っていく。
店側は一時、小百合一人になった。

474黒沢小百合:2011/05/16(月) 23:14:48 ID:SSMHlh/20
>>473

小百合は拳を真っ赤になるまで握り締め、
その場に立ち尽くして厨房へと消えるアシュレイを睨みつける。

小百合は一見、穏やかで余裕たっぷりに見えるが
本来の性質は非常に攻撃的かつ感情的で、一時の激情に身を任せるタイプ。
既に彼女の頭の中ではアシュレイ憎しの感情が渦巻き
何らかの刺激があれば爆発しかねない状態だ。

きっと小百合は、友希子たちが厨房から出てくるまで
その場で憎しみの視線を向け続けているだろう。

475アシュレイ&湊友希子:2011/05/16(月) 23:31:31 ID:HWaz5s.I0
>>474
厨房の奥から、荷物を置いているらしい二人の会話が漏れてくる。

湊「いやーでもさー、アンタは少し他人を手伝いすぎだと思うよ、あたし」
レイ「そうですか?」
湊「沙英の本運びに始まって、サッカー部の鈴木君に頼まれてサッカーゴールを一人で動かしたり、
  ソフト部の部室模様替えのときだって大きいロッカーとかも入れ替えたり……。
  あとあれだっけ? こないだの侵攻事件ンときも手伝いに行ったんだっけ?」
レイ「行きましたよ」
湊「うーん……やっぱり。そりゃ、こっちとしちゃ嬉しいけど……。
  アンタ、何かやりたいこと無いの?」
レイ「やりたいこと……?」

悩むようなアシュレイの声の後に、厨房から友希子が出てくる。

湊「そ、やりたいこと。アンタにもひとつやふたつある……っひ!!」

厨房から出てきた友希子は、小百合の憎悪の視線に気付いた途端、短い悲鳴を上げてまた厨房に戻っていってしまった。

レイ「どうしました?」
湊「な、なんかお客さんに睨まれた」
レイ「睨まれた……?」

引っ込んでいった友希子に代わり、今度はアシュレイが出てくる。

レイ「! …………」

出てきたアシュレイは、小百合に気付いて少し驚きの反応を返したが、
すぐにもとの冷静さを取り戻し、小百合に向かって会釈した。

476黒沢小百合:2011/05/16(月) 23:44:40 ID:SSMHlh/20
>>475

「人間の感情があるフリは止めろゼンマイ仕掛け。
 貴様などプログラムによって動く機械の人形でしかない。」

アシュレイに向けて一層強く浴びせられる敵意。

小百合の強烈な自尊心は、己の力足らずの敗北を
アシュレイへの憎悪に摩り替えてしまった。

「私の前からさっさと立ち去れ!
 貴様をこの場でスクラップに変えてやってもいいんだぞ……!」

小百合の長い黒髪が、静電気を浴びたように逆立ち始めた……。

477アシュレイ&湊友希子:2011/05/17(火) 00:09:16 ID:HWaz5s.I0
>>476
逆立ち始めた小百合の髪を見て、アシュレイは以前に戦ったときのことを思い出す。

レイ「……もし私が立ち去らなければ、ここで始めるつもりですか?
   こんな狭いところで、あの能力を発現すると?」

激情をぶつけてくる小百合とは対照的に、アシュレイの顔は冷静なままだ。

レイ「貴女にはできませんよ、黒沢小百合。千夜の治安維持担当である貴女には。
   ここでやりあえば、間違いなくこの店は灰になる。
   いや、この店だけで済めば良い。貴女の能力から考えるに、この周辺数百メートルを瓦礫に変えることだって出来ます」

アシュレイの左脇にはビーム拳銃が納められているが、彼女はそれを抜かない。

レイ「仮にそれで私をスクラップにし、溜飲を下げたとしましょう。
   しかし、その後に待っているのは貴女の身の破滅と、千夜グループに対する周辺住民の深刻な不信感です。
   一時の感情で周辺住民を危険に陥れた貴女は、最低でも免職を免れないでしょうし、
   貴女が所属している千夜グループの任命責任問題も回避できないでしょう。
   最悪、千夜グループをこの街から追放する動きにも発展しかねない」

そこまで言って、アシュレイは「さて……」とカウンターに手を付き、

レイ「ご注文は? 黒沢小百合さん」

478黒沢小百合:2011/05/17(火) 00:22:26 ID:SSMHlh/20
>>477

小百合の目がこれでもかと見開かれ、
まぶたが小刻みにピクピクとひくつく。

「お前はゼンマイ仕掛けの分際で……。
 例えこの辺一体を灰にしようと、貴様に全ての責任を被せてやるぞ……!
 メディアにはテロリストの戦闘用アンドロイドとでも報道させればよろしい。」

小百合は今まで、そうやって自分の機嫌を損ねた者、
従わぬ者に対してレッテルを貼り付ける工作を行なってきた。

彼女が若くして千夜グループの重役の地位についているのは、
総帥たる夜刀神蔡生の知り合いというだけではなく、そういった狡猾な行いも大きなウェイトを
占めているのだ。

「お前はもう、お終いだ――。」

胸元に隠した拳銃を引き抜こうと、衣服に手を差し込む小百合。

しかし、この行為は愚かとしか言いようがない。
いくらメディアを使おうとも、住人を完全に騙しきれるはずがないのだ。

今の小百合は怒りで分別を失っている。

479アシュレイ&湊友希子:2011/05/17(火) 00:41:02 ID:HWaz5s.I0
>>478
懐の拳銃に手を伸ばした小百合に、アシュレイはふう、と大きく息をつき、

レイ「……わかりました。貴女がそこまでするというのなら、私がこのまま立ち去りましょう。
   それで双方問題はないでしょうし、もう、仕事は終わっていますから。そうですよね、湊さん」

厨房からそっと二人の様子を見ていた友希子は、アシュレイに問われてビクッとし、何回も頷いた。

レイ「では、行きましょうか」

言って、アシュレイは友希子の手を引いて店の出入り口まで歩いていく。
その位置関係は、常に小百合から友希子を庇えるもので、小百合に対するアシュレイの警戒がうかがい知れるだろう。

湊「れ、レイ、めっちゃ見られてる……」
レイ「問題ありません」
湊「でも……」
レイ「問題ありませんよ」

会話を交しながら店の出入り口に着いたアシュレイは、まず友希子を店の外に出し、

レイ「では、私はこれで、黒沢さん。
   私の銃口が、「千夜グループ」に向かないことを祈ります」

そう言い残し、軽く一礼して友希子に続いて出て行った。


//この辺で締めたいと思います。お疲れ様でした。

480イザヤ:2011/05/17(火) 00:45:57 ID:j3dxNUKs0
>>478
ザァ、と薄い銀の霞がカフェ内を満たすと共に、霞の其処に黒衣の男が現れた。
小百合に背を向けたまま、素早く右手を伸ばして小百合を制止する。

「―――撃つなら私が代わりに剣を抜きましょう。
『貴方』は、『此処』で撃ってはならない」

ただ、言葉を淡々と紡ぐ。
黄色の眼は去り行くアシュレイをじっと見つめていた。

>>479
黄色の眼が無機質にその行動を記録していく。
不穏な動きがあれば即座に動くような、感情の無い眼だった。

481黒沢小百合:2011/05/17(火) 00:57:02 ID:SSMHlh/20
>>479-480

「ぐ……く……。」

小百合は、アシュレイの冷静な態度に
引き金を引く事も出来ず、そのまま固まってしまった。

そこへどこからともなく現れたイザヤ。
彼の静止もあいまって、小百合は結局そのままアシュレイを見送った。

震えながら唇を噛み、にわかに血を滲ませているその様子は
怒りと屈辱の色がありありと見て取れた。

482イザヤ:2011/05/17(火) 01:10:52 ID:j3dxNUKs0
>>481
「……。」

制止の必要は無いと判断したイザヤは、小百合に向き直る。
小さくため息をつき、体の緊張を解いて。

「何してンだィ?」

呟く。

「今のは自滅覚悟の行動だッたッてのか?違ェだろ、
一瞬の憎悪で自分ごと殺しちまうところだッたンだぞ?!」

部下としてでは無く、小百合を知る一人として。
己の野望への橋を架けてくれたその人に、まくし立てる。

「その誇りや生き様、それはあンたを構成する大事な材料だ、だが――
強すぎる憎悪は、毒だ」

唇を噛み、眼を背けた。

「もっと自分を大切にしてくれ。あンたに死なれちゃ困るンだ」

483黒沢小百合:2011/05/17(火) 01:24:20 ID:SSMHlh/20
>>482

「…………!」

小百合は、イザヤの言葉を震えながら聴いていた。

イザヤのいう言葉は全て正しい。
それ故に、反論を行うことが出来ないからだ。

しかし――。

「うるさいッ!!!」

先ほどからずっと握られ、血が通わず真っ白になった
拳が、イザヤの顔面に向けて振るわれた。

強烈なプライドをもつ小百合はやはり
自分の非を認めることなどできなかったのだ。

484イザヤ:2011/05/17(火) 01:34:26 ID:j3dxNUKs0
>>483
「――ッ!」

痛み。それは過去に経験した傷に比べればほんの僅かな痛みだ。
だが、生身の拳は同じだけの痛みを彼女にも伝えたはずだ。
それ故に彼はその痛みを噛み締めた。

それでも、動かない。

「――次からは、まずは俺を呼んでくれ。俺は全身全霊であンたの誇りの為に戦おう。
あンたの為に薙ぎ払い、あンたの為に突き刺して、あンたの為に切り裂こう。
だから――」

頼む、と。
烏天狗は頭を下げる。

485黒沢小百合:2011/05/17(火) 01:48:32 ID:SSMHlh/20
>>484

「ふーっ……ふーっ……!!」

小百合は荒い息をつきながら、イザヤの頭を見下ろす。

ヒリヒリと熱されたようにかすかに痛む右拳の感覚がゆっくりと
彼女の興奮を醒ましていった。

小百合は謝罪の言葉か、それとも言い訳か――。
何かを言いたげに口を一瞬開いたが、言葉に詰まった様子で
そっぽを向いてしまい。

「…………もういい……。」

結局小百合はイザヤの言葉に答えることなく、踵を返して何処かへと足早に去っていく。

486イザヤ:2011/05/17(火) 01:58:38 ID:j3dxNUKs0
>>485
小百合が去る足音を聞きながら、彼はまだ頭をあげなかった。

頼む。

そうもう一度、呟いた声が聞こえた。

487ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/05/24(火) 22:09:57 ID:1sJsd2CgO
【異能都市 南部】

 住んでいた家族の怨念が呪いとなって管理人を狂わせた、とか。機関の実験が行われた跡、だとか。今はテロリストグループの拠点になっているかも、等々。
 根も葉もない噂が立つ八階建ての廃虚マンション。

 その四階の三号室。
 家財道具の残骸が散らかっている部屋に潜む姿があった。

 昨日、黒沢小百合に襲撃され逃走したロージェンスは、その廃屋で身体を休めていた。
 本来のねぐらとは違うが、丁度よく見付けたのであわよくば拠点化出来ないだろうか、と画策している。


 外からの主な出入口である階段の他に、半地下となっている駐車場の奥に扉が備え付けられており、一階へ続く裏口となっている。
 その二つの入口、表側の階段にはこれでもか、というほどに魔弾《はじける種子》が設置され魔法陣が淡い光を放っている。
 逆に裏口は一見して何も無い。ように見える。

 非常用階段は所々崩壊していてマトモには使えそうにない……。

488黒沢小百合:2011/05/24(火) 22:24:11 ID:SSMHlh/20
>>487

――また、あの感覚だ。

一瞬にして幾つもの敵意が自分を取り囲むあの女の能力。
ヤツは息つく暇すら与えじとばかりにロージェンスをがむしゃらに追跡しているらしい。

『反社会分子に告ぐ。君は完全に包囲されている。
 武装を解除し、我々に今すぐ投降するならば司法取引によって
 君の罪状をいくらか軽くする事ができる。今すぐ投降しなさい。繰り返す――。』

長年放置され、埃で曇った窓ガラスの向こうには
ヘリの投光機の光が何度も横切るのが見える。

そして入り口付近、および屋上に『敵意』。
投降を進めておきながら、いつでも突入できる状態を作っているのだ。
これではたとえ素直に武器を捨て、出て行ったところで射殺が関の山だろう。

489ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/05/24(火) 22:41:13 ID:1sJsd2CgO
>>488

 一気に『敵意』が増える。
 そのぶん『河の水嵩』も上がり、なんとも言えない興奮作用をロージェンスにもたらす。

「罪状って言われてもねぇ……」
 どうやら自分は指名手配者らしいのだが。
 ……正直、実感は無い。
 ついでに言えば記憶も損なわれている。

 下と上の状況は見るまでもなく分かった。
 彼女が扱う兵士達の『敵意』は指向性が強く曇りの無いうえに、量ったように一定だ。
 どういう教育をすれば、こうもブレの無い心理状態を維持し続けられる人間を作れるのだろうか?

(……案外、人間じゃなかったり、するかもねぇ)
 化け物染みた兵士達の位置を微細に感じつつ、ヘリの照明から逃げるようにして部屋を動く。

 屋上の扉にも魔弾が仕掛けられている。階段は下から上までびっしりと加圧式の放電地雷のような魔弾を敷き詰めているらしい。
 裏口にはトラップが仕掛けられた形跡が何もない、安全に侵入可能だ。

【レス +2点/説得 +2点】

490黒沢小百合:2011/05/24(火) 23:00:56 ID:SSMHlh/20
>>489


「やはり、説得には応じませんか。
 ふふ……そうでなくてはね。」

建物を包囲する兵士の背後、一層強い敵意――いや、『悪意』のある地点。
そこに停車した作戦指揮車の中にはこの部隊の指揮官、黒沢小百合の姿があった。

「総員、突撃。女を見つけ次第射殺せよ。
 ……あの女の死体の××を切り取ってそこに××を詰め込んでやれッ!!」

全兵士にダイレクトに指示を出せる小百合は
昨日の雪辱を晴らすべく、兵士たちに突入命令を下す。

屋上、正面、裏口から同時に兵士たちが雪崩れ込んだが
当然、突入と同時にトラップ術式が起動。哀れな犠牲者を物言わぬ肉塊へと変えていくが……。
兵士はまるで命を捨てるかのように次々、次々と建物内へ躍りこんで来る。

――人命軽視の人海戦術。

通常の組織ではこんなことはできない。

491穏島優芽:2011/05/24(火) 23:05:21 ID:cELwN/Ek0
と、マンション横の非常階段が突如として崩れ、周囲に展開していた兵士達のうち、何人かを巻き込んだ。
どうやら、崩れかけているのにも関わらず、階段を無理に上った人間が居たようだ。
その人物の気配は四階に到達しており、歩く速度でロージェンスの居る三号室へと近づいている。
敵意の類は無いようだが……。

492ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/05/24(火) 23:19:21 ID:1sJsd2CgO
>>490

「……マジで基地外染みてるわ、ヤツら本当に人間か?」
 屋上付近、入口付近に仕掛けた種子の発動を感知して冷や汗を浮かべる。
 爆裂した衝撃で上と下から連鎖的に爆裂、瞬く間に階段は放電に焼かれ、階段にもうもうと黒い煙が立つ。

「ま、とりあえず流されとけ」
 フロアに出たロージェンスは、階段に向けて『死の水』――とは名ばかりの腐敗水を大量に召喚。
 上へはポロロッカ、下へは鉄砲水の様に腐敗水の濁流が階段を流れていく。
 その濁流に《孔雀ノ皇銃》を向けて……

【レス+2点/行動 ?】

>>491

「――誰だ!」

 突然、非常口から入ってきた姿へと極彩色の銃口を向ける。
 敵意を感じられないから、あの女の兵士達では無いだろうが……いったい?

【レス+2点/行動 ?】

493黒沢小百合:2011/05/24(火) 23:35:18 ID:SSMHlh/20
>>492

いくらでも代わりが居るとはいえ、小百合の部隊は
トラップ、および大量の腐敗水によって思うように進軍できず。

「……とりあえず、敵を釘付けにすることができたか。
 じわじわと貴様の体力を削り取ってやる……。」

小百合は、コネによって手に入れたその間に例のPDAや、
自前の携帯電話で関係各所に情報を送信。このまま、増援を待つ構えだ。

さらに……。

――ズガガガガガッ!!!

老朽化したコンクリートをぶち抜き、30mm機関砲が鋼鉄の弾丸を吐き出す。

494穏島優芽:2011/05/24(火) 23:37:18 ID:cELwN/Ek0
>>492-493
拳銃を突きつけた相手は、青い槍を肩に担ぎ、赤いロングコートを着た女性、穏島優芽だった。
彼女は警戒感バリバリで出てきたロージェンスの銃口を見て「おぉう」などと変な声を出したが、
相手がロージェンスだと分かると、途端に笑みを見せて、

「いやあ、キミかぁ。
 何かすごいのに追い詰められてる人が居るなあって思って来てみたら、まさかキミだったとはね、ロージェンス。
 こりゃ、愛称云々とか言ってる場合じゃないかもね」

次に会うまでに愛称でも考える、という優芽の言葉を覚えているだろうか?
いや、この際それはどちらでも良いのだが、兵士達がなだれ込んでいるこの状況でも軽い調子を崩さない彼女はやはり、尋常の人間ではなかった。

「もしかしたら、あたしのご同類が襲われてんのかとも思って準備してたけど……ま、無駄にはならなかったってことで」

槍を肩から降ろし、床を石突で叩く。
その動作で、優芽の右手首が袖からこぼれて見えるようになった。
手首は血で真っ赤に染まっていて、ブラウスとコートの袖口を濡らし続けていた血が、一滴、また一滴と床に落ちていく。
血からはこの世のものとは思えない、異質すぎる「悪意」を感じるだろう。

「ああ、そうそう、思いっきり耳塞いでた方がいいよ。
 すぐに用意できる、あたしの最大術式を展開しておいたんだ。今からスゴいのが来るよ」

手首から出続ける血をまるで気にしていない優芽は、あくまで軽い調子でそんなことを言った。


――――その彼女の警告らしからぬ警告から十数秒経った後のことだった。

『――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!!!!』

マンションの近くから、オーボエのそれに似た「鳴き声」が響き渡った。
無論、ただの鳴き声ではない。
それを聞いた付近の雀や猫などの小動物が一瞬のうちに狂死し、何の能力も持たない人間もまた、頭を血が出るほどかきむしった後、やはり同じように狂死していく。
能力者のような特殊な人間には若干、効きが弱いが、それでも激しい頭痛と悪辣なイメージを主とする幻覚に苛まれ、普段通りに能力など使えようはずもない。
邪神クトゥルフの「声」、それがこの「鳴き声」の正体だった。

495黒沢小百合:2011/05/24(火) 23:40:35 ID:SSMHlh/20
// おおう、また途中送信……。
// >>493の最後に追記

AH−64D『アパッチ・ロングボウ』攻撃ヘリからの攻撃だ!
敵はどこまでもロージェンスを休ませないつもりか。

>>491

数人の兵士が、ロージェンスの攻撃以外の何かにより
倒されたことを小百合は感じたが、特にアクションは起こさなかった。

なんらかの攻撃の気配は感じられなかったし
今はロージェンスへの攻勢を強める事が第一と考えたからだ。

496ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/05/25(水) 00:09:01 ID:1sJsd2CgO
>>493

 ビル外に飛び出した大量の腐敗水は、まるで意思を持つかのようにうねりながら屋上の一点へと集結する。

 悲嘆ノ別レ路、別称アーケロンとされる水の術式である。
 ロージェンスはこれによって召喚した水を手足のように使役できる。
 つまり――

 轟音をもって、30mmの砲弾を吐き出す機関砲がコンクリートを破砕し始めると集結した水の塊が、押し流さんとする勢いを持つ大蛇の如き奔流で機関砲へと迫る。

 その最中、PDAにメールが届く。
 内容はたった一文。
『位置情報の提供、ありがとうございます』
 ……彼等は戦力にはなりえない。このメールにはそう感じさせる何かがあった。

【レス +2/報告 +5+8】

>>494

 見覚えのある女だった。
 突撃銃を短くした極彩色のカービン銃を下げつつ記憶を探る。
 たしか、

「穏島、優芽……だっけ。
 まさか、真面目に愛称考えてたとか言わないよな?」

 彼女の緊迫感のまるでない様子がこの状況では何かと浮いている。
 ロージェンスもそれなりに落ち着いてるようには見えるが、その実、外の『敵意』へ向けて手探りで大量の腐敗水――術式《アーケロン》を操作している。

「……ッ!!」
 彼女の腕、その血から感じる濃密な『悪意』に身の毛がよだつ。
 そのせいか、何気ない警告に素直に従って耳を塞ぐ。

 ――直後、咆哮。

 頭がオカシクなりそうだった。
 その威力に外の腐敗水は、クトゥルフの叫びに殺され、大質量の雨となって周囲を叩いた。

【レス+2/会話+1】

497ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/05/25(水) 00:13:49 ID:1sJsd2CgO
//自分も、投稿前に一度スレを見よう、そうしよう。
//というわけで追記。

>>495
 突如現れたヘリに対しても、双頭の大蛇へと枝分かれした腐敗水が迫る。
 ――が、それもクトゥルフの叫びに殺されて、地を打つことになる。
【攻撃 +3点】

498黒沢小百合:2011/05/25(水) 00:20:55 ID:SSMHlh/20
>>494 >>496

ふいに、ヘリからの銃撃、
および敵兵士の蠢く、足音が掻き消えた。

ロージェンスなら、例の『叫び』と共に敵意が消え去った事が分かるだろう。

「あっ……あぁぁ゛……あ……ぁ゛ー……。」

小百合は、ビルから数十mはなれたところで、
地面に力なくへたり込み、定まらない視線で虚空を見つめていた。

……まるで赤子のように呆け、目から血の混じった涙を流しながら。

小百合の能力『ブラックレーベル・ソサイアティ』によって
生み出された兵士たちは本来、本体である小百合にダメージをフィードバックしたりはしない。
しかし、なぜ異能者であり多少は効きが弱いはずの彼女がこれほどまでのダメージを受けたのか?

それは、『感覚共有』能力によるもの。
本来、一人一人の兵士と感覚を共有し視聴覚情報を得たり
直接指示を下せるという能力であるが、今回はそれによって兵士一人一人が感じた
『イメージ』を直接叩き込まれる事になってしまったのだ。

今の彼女は、まさに再起不能といっても過言ではない。
トドメを刺す事も容易だろう。

499穏島優芽:2011/05/25(水) 00:28:14 ID:cELwN/Ek0
>>496-498
この世のありとあらゆる恐怖と狂気を集めて凝縮したような「声」が響き渡る中、耳を塞いでいない優芽は恍惚の表情を見せている。

「ああ……なんて素敵なダンディヴォイス。
 あたし、ますます惚れ直しちゃいそうだよ……」

術者とはいえ、彼女もこの「声」の効果を受けており、頭痛と幻覚が襲ってきているのだが、それすら彼女には悦楽の材料らしかった。
やがて術の効果が切れ、「声」が無くなると、彼女は心底残念そうな顔になったが、それも一時のこと。
すぐさま槍を肩に担ぎ直し、外の様子を窺う。
先ほどまで場を制圧しつつあった兵士とヘリの姿が、「消された」かのように居なくなっていることを確認した優芽は、ロージェンスに向き直り、

「……さて、反撃のチャンスでもあるし、逃げるチャンスでもあるね。
 どうする、お姫様?」

にやりと笑いながら、ウィンクをキメた。

500ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/05/25(水) 00:43:01 ID:1sJsd2CgO
>>498

(……消、えた?)

 厭なイメージの断片が未だに湧いてくる頭を振り、辺りの『敵意』をつぶさに探る。
 返ってくるのは遠くからの微々たる『嫌悪』、少しばかりだが強い『憎悪』も感じられる。

 しかし、無い。
 先ほどまでの大量の敵意が何処にも。

 ……何故か背筋がうすら寒い。
 漠然とした恐怖に、立ち尽くすばかり。

【レス+2】

>>499

「は、はんげき? ……あ、ああ反撃ね、うん」

 目の前の優芽に声をかけられるまで、思考が止まっていた。
 それほど、あらゆる意味で強烈だったのだ、先ほどの『叫び』は。

「ハハッ。再起不能に追い込む、ってのも楽しそうねぇ」
 反撃。
 その案に賛成し、ビルを出て黒沢小百合を探し始める。

【レス+2/会話+1】

501黒沢小百合:2011/05/25(水) 00:46:39 ID:SSMHlh/20
>>500

小百合はすぐに見つかった。

「う……う゛ぁ……あ゛あ……ぁっ……。」

次第に近づくロージェンスたちの姿を見ても、
微動だにせず、時折ゾンビのようなうめき声を上げながら蹲っている。

その姿は既に再起不能というにふさわしいありさまで、
少なくとも、しばらくはこのまま動くことすら難しそうだ。

502穏島優芽:2011/05/25(水) 00:59:56 ID:cELwN/Ek0
>>500
「フフッ、そーだねー。ここでいっそ、後顧の憂いを断つってのもアリだよね」

反撃を選択したロージェンスが一足先にマンションから出るのを、優芽も追いかけようとするが、

「……あっとっと。やっぱ貧血ぎみかぁ」

足をもつれさせ、槍で何とか踏ん張ってロージェンスを追う。
優芽の最大術式「クトゥルフの声」は、その血でクトゥルフの居城であるルルイエと、
その天頂に位置する星々を描く必要があったために、大量の血を必要としていた。
さすがに小百合ほどの再起不能ぶりを見せることは無かったが、槍にすがるその姿は、正直頼りない。

>>501
しかし、見えてきた小百合の姿を見て、優芽は喜色を顔に表した。

「こりゃあいい、こいつは黒沢小百合だ!
 軍隊が消えたから、もしやとは思ってたけど、本物とはね! ここで始末しておけば、後事が大分楽になると思うよ?」

都市でなされている報道と、カノッサ機関からの情報で、優芽は小百合の情報をある程度ながら知っていた。
槍にすがりながら、いつもの明るい調子で、彼女はロージェンスに小百合の殺害を勧める。

503ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/05/25(水) 01:21:14 ID:1sJsd2CgO
>>501

 意味の無い呻きをあげる黒沢小百合を見付け、微かに息を飲む。

「なるほど、コイツの能力は軍勢を呼び出す魔導機みたいなもの。ってワケか」
 昨日、今日と起こった事。
 そして現状からなんとなく黒沢小百合の能力を理解する。
 とはいえ、その正体や性質までは分からない。

【レス+2】

>>502

 チャンス、か?
 今ここで始末してしまえば、もしくは……。

 状況がそうさせるのか。
 穏島と初めて会い、人を殺した時を幻視した。
 名も知らぬ異形に自分が指名手配者だと教えられたのも、その時だった。

 人殺し。
 記憶を失くす前にも、同じように人を殺したかもしれない。
 人殺し。
 だが、今は何故かその言葉が頭から離れない。
 人殺し。

(……これが罪悪感、ってやつか。馬鹿らしい)
 今さら何を考えているんだか、ロージェンスは自分を嘲笑った。
 そして、殺害を提案する穏島にハッキリと答えを返す。

「放っておく。私がどうこうする前に、さっきのアレでこの有り様だし。こんなんじゃ、虐めても楽しくない」
 拒否。
 片足上げて、わざとらしく回れ右してロージェンスはこのビルから離れていく。

「そんじゃ、おやすみ、穏島サン。なかなかにド派手な術式見せてくれてドーモありがとー」
 そんな棒読みの言葉を残して、何処かへと。

【レス+2/会話+1】

504名も無き異能都市住民:2011/05/25(水) 01:31:25 ID:SSMHlh/20
>>502-503

ロージェンスが踵を返し、何処かへ消えていこうとした時、
微かにではあるがサイレンの音が聞こえ始めた。

小百合が連絡していたのは何も鮫嶋商会だけではない。
自分の部下である千夜の実働部隊や地元警察など使える駒はいくらでも使う。
それが小百合のやり方であり、ようやく援軍としてやってきたのだろう。

505穏島優芽:2011/05/25(水) 01:38:28 ID:cELwN/Ek0
>>503
「まー確かに。死に際の人間なんてオモチャにするしか用途は無いけど、反応が無いんじゃーねー」

ロージェンスの一瞬の逡巡を優芽は感じ取ってはいたが、それには触れず、ロージェンスの答えに同意を示しておく。
わかっていても、人を殺す感覚というのには中々慣れないものだ。かつての優芽もそうだった。
――――今は、過去形に過ぎないことだが。

「うん、おやすみ、メリー。
 あ、メリーってのは愛称だよ!」

贖罪の女山羊、という通り名に合わせて考えついた愛称であったが、
残念ながら「メリー」で有名なのは山羊ではなく羊の方である。
そこのところに気付いていない、間抜けな「悪意の主」は、去っていくロージェンスにぶんぶんと手を振った。

>>504
「ふーん……どうしよ」

ロージェンスが去った後、蹲る小百合は自分が殺そうかどうしようかと優芽は考え始めたが、
その思考は遠くから聞こえてきたサイレンで遮られた。

「ああん、もう! これだから秩序の犬ってのは!!」

苛立たしげに吐き捨てた優芽は、内ポケットから一片の紙片を投げる。
すると、紙片は空中で魔術式の陣を展開し、陣の中から、黒しか色を持たない、ガーゴイルのような生物が現われた。

「じゃあね、黒沢さん。良い夢見てね!」

生物は小百合に向かってウィンクをする優芽の肩をその足のかぎ爪で保持し、そのままどこかへと飛び去っていった。

506名も無き異能都市住民:2011/05/27(金) 23:15:20 ID:SSMHlh/20

――キィッ

緋河神社の境内前に、一台の車が止められた。
一目見ただけではただのワゴンにしか見えないが、数cmの厚さの防弾ガラスと
鋼鉄仕込みの特別フレームによって装甲車のような強度を得た特別車。

その後部座席が開き、車椅子に乗った人物が
電動リフトを使ってゆっくりと車から神社へと降り立つ。

「ゆすら様……に……あわない……と……。」

黒いチャドルのような衣服に身を包んでこそいるものの、
小刻みに震えるさまが身と取れるその人物は、ゆっくりゆっくりと本堂へ向け
車椅子を走らせる。

507ゆすら:2011/05/27(金) 23:28:25 ID:QDFfT4ow0
>>506
緋河神社の境内は相変わらず清浄な空気を漂わせ、静かな雰囲気であったが、
その日の神社はいつも以上に静かであった。

「………………」

その静かすぎる境内で、朝からずっと、神社の主である水神、ゆすらは拝殿横の池の側に立っていた。
難しい顔でジッと水面を見ながら、何かに集中している様子で、車が神社の前に止まったことに気付いていない。

508黒沢小百合:2011/05/27(金) 23:45:51 ID:SSMHlh/20
>>507

「ゆすら……さま……。」

水面に照り返す、微かな月明かりによって
厳かに浮かびあがる本殿と一人の少女。

――ザリッ――ズズッ――。

さながら時が止まったかのようなその情景は、
思わず息を呑んでしまいそうな美しさと、排他的な神秘性を兼ね備えていたが
砂利の跳ね飛ばされる無粋な音が、不協和音の如くそれを台無しにした。

「う、うぅ……。」

細かい砂利にタイヤが空回りし、バランスを崩したのだろうか
車椅子の女性が、地面へと投げ出されていた。

「ゆす……ら……さま……。」

頭を上げた拍子に布によって隠されていた顔が外気の下に晒される。
その顔は、紛れも無くあの夜刀神の従者の物であった。

509ゆすら:2011/05/27(金) 23:59:13 ID:QDFfT4ow0
>>508
玉砂利の跳ねる音で、ようやく来訪者に気付いたゆすらが見たものは、
力なく地面に倒れている一人の女性。
いつもと服装が違い、かつまるで廃人寸前のようなその様子に、
ゆすらの意識はそれと認識するのを一時拒絶したが、間違いなくその顔は黒沢小百合であった。

「さ、小百合どの!? どうしたというのだ、一体!?」

サンダル履きの足でぺたぺたと音をたてながら、小百合のもとへと走る。
「箱庭」で戦って以来、彼女とは会ってはいなかったが、それにしたってあれからそんなに時間は経っていないし、
時間が開いていたとしてもこの様子は普通ではない。

「立てるか、小百合どの? ……ああいや、車椅子か。
 私がわかるか? この手を取れるか?」

小百合の側へ駆け寄ったゆすらは、しゃがんで小百合に手を伸ばす。

510黒沢小百合:2011/05/28(土) 00:08:09 ID:SSMHlh/20
>>509

「ひっ……あぁああぁぁぁあ……。
 ……あっ……ひぐっ……いや……。」

ゆすらが手を伸ばした瞬間、体を丸め震える小百合。
その姿は以前の聡明で、抜き身のナイフのようだった彼女とは別の生き物のよう。

――キィイィッ

「ひぃああぁあぁっ……!!!」

遠くの車のブレーキ音にすら敏感に反応し、自分の体をかき抱く。

511ゆすら:2011/05/28(土) 00:22:09 ID:QDFfT4ow0
>>510
小百合の異常な怯え方に、ゆすらの顔が険しいものになる。

「これは……あの黒沢小百合の魂をこうまで引き裂くものがあるのか……?
 まさかとは思うが……」

疑念を呟きながら、ゆすらは震える小百合の体にできるだけ優しく触れ、ぽんぽんと叩く。

「小百合どの、小百合どの。
 私じゃよ、ゆすらじゃ。ぬしの側におるぞ」

ゆすらの声はどこまでも穏やかで、どこか母親のそれのようにも聞こえる。
それは生命の源たる水を司る神独特の、「生命に対する母性」とでも呼ぶべき力の片鱗であった。

512黒沢小百合:2011/05/28(土) 00:32:10 ID:SSMHlh/20
>>511

「ひぁぅっ!!!あ゛ぁっ……!」

触れられた途端、小百合は激しく暴れだしたが
『母性』のおかげか、すぐに小百合は大人しくなった。

しかし――。

「ひぃ……ひぐぅぁあ……あぁああぁぁぁぁ……。」

肩で荒い息をつき、これでもかと見開かれた瞳。
きっちりとした衣服は泥で汚れ、かさかさに乾き罅割れた唇は
意味を成さないうめきを漏らすばかりで。

相当――いや、異様な量の『魂の汚れ』が彼女を汚染している。

一体どのような攻撃を受ければ、こうなるというのか。

513ゆすら:2011/05/28(土) 00:50:02 ID:hma8eUnA0
>>512
「この焦げ付いたような穢れ……やはり旧支配者。
 ヤツの「声」を聞いたのか」

水神であるゆすらも、先日の「声」を聞きはしなかったが、感じ取ってはいた。
旧支配者の発現する致死量の穢れを伴った神気は、遠く離れていても感じられるほどに強烈だ。
実は、池の側に立っていたのも「声」が龍脈に与える影響を調べていたからで、
あの池は池の水がわき出る地下を通して都市全体を見る、ゆすらの第二の目とも言えるものであった。

「小百合どの、こっちへ。私のところまで来い」

旧支配者の神気に当てられたとなれば、通常の手段で小百合の魂は救えない。
ゆすらは地面に座り込んだ自分の膝を打って、そこまで来るように言う。まずは、できるだけ距離を詰める必要があった。

514黒沢小百合:2011/05/28(土) 00:57:25 ID:SSMHlh/20
>>513

「うっ……うぅ……。」

小百合はゆすらの言葉に反応し、
どうにか這いずってゆすらの元へ向かおうとした。

が、それすらもできない。
赤ん坊の如く、手足はただ空しく地面を打つばかりで
見た目より幾分軽いはずの自分の体すら満足に支えられない。

「たっ……たてな……たてない……
 いやだ……しっ……しっ……しぬのは……いや……。」

再び錯乱しつつあるのか、またあの『震え』が始まった。
小百合はもしかするともう、手遅れではないのか……。

515ゆすら:2011/05/28(土) 01:12:39 ID:hma8eUnA0
>>514
小百合が満足に這うこともできないらしいのを見て取ると、ゆすらは立ち上がり、
自分から小百合の側へと向かった。

「小百合どの……」

そして、震え出す小百合の頭を胸にかき抱き、努めて優しい声を出す。

「落ち着け、小百合どの。ここには私とぬししか居らぬ。
 ぬしを害する者など、影もない。居ても私が倒してやる。
 だから、な? 私の声だけ聞いておくれ」

母が子にするように、ゆすらは小百合の頭を撫でながら言う。

516黒沢小百合:2011/05/28(土) 01:17:11 ID:SSMHlh/20
>>515

「うああ……ぅううぅうっ……。」

小百合を抱いたゆすらの胸部が
流れる涙によって薄っすらと湿る。

触れさえすれば多少は落ち着くようだが
時間がたつと、先ほどのように錯乱状態に陥ってしまう。

「やとのかみさん……ごめんなさい……。
 やとのかみさん……ごめんなさい……。」

ゆすらを、己の主たる夜刀神だと認識しているのであろうか、
小百合は只管に己のふがいなさを謝罪した。

517ゆすら:2011/05/28(土) 01:38:55 ID:hma8eUnA0
>>516
以前「箱庭」で戦ったときと言い、魂の壊れた今と言い、
小百合の意識の根幹には常に「夜刀神」が棲んでいるらしい。
それは彼女の心の支えであるからだろうが、こういう時には彼女を苛む要因でしかない。
彼女の「心の歪み」……それは生来の性質ももちろん関係しているだろうが、
「夜刀神」の存在もそれを助長しているのではないのか?とさえ、ゆすらは思った。
しかし、今はそんなことを思っても詮無きことである。

「小百合どの。私の声が聞こえるなら、今から言うことをよく聞いてくれ。
 私はこれから、ぬしの魂にまとわりついている穢れを吸い上げる。
 その穢れは邪神を由来としておるから、ともすればぬしの魂を巻き込むやも知れぬ。
 もしそうなったら、あとはぬしの精神の強さにかかっておる。残念ながら、それを助けてやることは私にはできぬ。
 意識を引きずり込まれる感覚を感じたなら、自分の中にある大事なものだけを思え。とにかく自分を見失うでないぞ!」

小百合の耳元で、錯乱している彼女の意識に語りかける。

「……わかったか? わかったのなら、私の腕を叩いておくれ。それを、合図とする」

518黒沢小百合:2011/05/28(土) 01:43:11 ID:SSMHlh/20
>>517

「……っ…………。」

しばらくゆすらにしがみ付いたまま、
荒い息をついていた小百合であったが赤子よりも幾分弱いのではないかと
思ってしまうほど、か細い力でゆすらの腕に触れる。

その瞳には、明確な怯えの色が宿っていた。

519ゆすら:2011/05/28(土) 01:55:34 ID:hma8eUnA0
>>518
たとえ赤子にも劣る力であろうと、そこに意志が籠もっているのであれば、それで良かった。
大事なのは反応の強さではなく、意識の光がそこにあるかどうかだからだ。
ゆすらは小百合の不安を映す瞳に向かって微笑むと、懐から一枚の、何も書いていない符を取り出し、
それを握った拳を小百合の胸に置いた。

「……では、ゆくぞ」

その言葉を皮切りに、ゆすらは自らの神気を小百合の中に打ち込んだ。
小百合の中で清浄なゆすらの神気と、穢れた旧支配者の神気がぶつかり合い、それに触発された旧支配者の神気がゆすらに反撃に出る。
それがゆすらの狙いだった。

「捕まえた……!」

反撃に出てきた旧支配者の神気を、自らの神気でがっちりと拘束し、そのまま吸い上げにかかる。
握り込んだ符が一気に真っ黒になり、ゆすらの中に旧支配者の神気が流れ込み始めた。

520黒沢小百合:2011/05/28(土) 02:01:11 ID:SSMHlh/20
>>519

「はぁぁっ……!!!」

その瞬間、小百合は深く息を吸い込むような声を出した。
まるで、飛び出し行く己の魂を体の中にとどめようとするような。

神気が符へと流れ、それが黒く染まるにつれ、
ゆっくりゆっくりと反比例するように頬に赤みが戻るのが分かる。

「く……ふ……。」

時折、苦しげな声を出し痛いほどにゆすらに抱きつく小百合は
ごく小さくではあるが、夜刀神、そしてクロス、ニナ、ディスと己の友人の名を呟いている。

521ゆすら:2011/05/28(土) 02:19:50 ID:hma8eUnA0
>>520
ゆすらの中に入り込んだ旧支配者の神気は、今度はゆすらの魂を穢しにかかる。
が、神としての力がそれに拮抗し、押さえつけた。

「なめるなよ大蛸め…………! 私とて神じゃぞ!」

吸い上げが進むにつれ、小百合がしがみつく腕が痛みを訴えるが、それを感じたゆすらの顔は不敵な笑みに変わった。

「そうだ……! いいぞ、小百合どの! その調子!!」

小百合の中から失われようとしている旧支配者の神気だったが、吸い尽くされる寸前で大きく暴れる。
魂に亀裂を入れ、そこに逃げ込もうとするかのようなその力は、小百合の意識に「声」を聞いたときと同じような悪いイメージを打ち込む。
千夜グループの崩壊。学園の破壊。小百合が己を保つために呟いた友人たちの、惨たらしい死の光景……。それはまるで、断末魔の叫びであった。

522黒沢小百合:2011/05/28(土) 02:32:24 ID:SSMHlh/20
>>521

「ああぁあぁあぁっ!!!!」

その途端、小百合は大きく声をあげた。
目を限界以上に見開き、乾いた唇を噛むその表情は絶望そのもの。
物や権力への執着が強い小百合にとって、築き上げてきたものの崩壊以上に
強烈なダメージは無い。

――だが……。

すぐに、小百合の顔が安堵の色に染まる。
彼女は理解したのだ。これが『まやかし』であるということに。

――小百合が見たヴィジョンの一つに己の主、夜刀神蔡生の死のヴィジョンがあった。

絶対的に夜刀神蔡生という存在を信奉する小百合にとって、
それはたとえ夢の中としてもありえない、起こりえない光景。

主への妄信……いや、狂信が小百合の命を救ったのだ。

523ゆすら:2011/05/28(土) 02:41:51 ID:hma8eUnA0
>>522
最後の抵抗すら凌がれた旧支配者の神気に、もはや為す術はない。
引き千切るようなゆすらの力に負け、その一片の欠片も残さずに小百合の中から消え去っていった。

「…………ふいー! 終わった、終わったぞ、小百合どの!」

旧支配者の神気を吸い尽くしたゆすらは、大きく息をつく。
痛いほどに握りしめていた符をその辺に投げ捨てる。神気のやりとりの為に使った符は、ボロボロの塵となって風に散らばっていった。

「よく耐えたのう、小百合どの。やはりぬしは徒人ではないな!」

小百合を労うように、ゆすらは小百合の頭を優しく叩いた。

524黒沢小百合:2011/05/28(土) 02:45:56 ID:SSMHlh/20
>>523

「……夜刀神さん……は……?」

頬を濡らす涙を拭いもせず、寝転んだまま
呆けたような表情でゆすらに問いかける。

やはり、途中からほとんど意識が無かったのか。

「私は……そうか……なんとなく覚えている。
 恐ろしい声を聞いて……それで……。」

自分に言い聞かせるように、ぽつりぽつりと。

525ゆすら:2011/05/28(土) 03:04:06 ID:hma8eUnA0
>>524
「小百合どの。ぬしが聞いたのは、「旧支配者」と呼ばれる邪神の声じゃ。
 旧支配者は星々を渡り、その強大すぎる力で一時、この地球全土を支配した恐るべき存在でな。
 声だけで何万の人を狂死させるほどの力を持っておる。
 噂だけは聞いておったが、実際にその片鱗が地上に現われるまで信じられはしなかったよ」

「だが……」と、ゆすらは小百合が来たときにしていたような難しい顔になって、

「先日、それと思われる神気の爆発があった。
 私が聞いていたものよりはずっと被害が少なかったが……それでも、多くの死が水を通して伝わってきたよ。
 おそらく、その「声」を耳に出来る範囲の命は絶滅したじゃろう。
 ぬしが生きていたということは、能力者と一般に呼ばれる者達は大丈夫じゃったろうが……」

大きく首を振って、ため息をつく。

「徒人にとって、「声」は致命的じゃ。その街区は壊滅したと見て良いじゃろう」

526黒沢小百合:2011/05/28(土) 03:14:35 ID:SSMHlh/20
>>525

「旧支配者……。」

小百合はその響きを聞くだけで何か、
体の芯が底冷えするような感覚を味わった。

ゆすらのいう事はにわかに信じがたいが、彼女が言うからにはきっとそうなのだろう。

(すぐに、資料を取り寄せてあの区域を調査しないと……。
 幸い夜だった事が救いですが……。)

夜の開発区域にはほとんど人が立ち寄らない。
そのため、大きな被害が出たとは考えにくいが……。

(だめだ、頭が働かない……。)

考えを巡らすうち、小百合は自分がゆっくりと眠りに落ちつつあることを悟った。
体が休息を求めているかのように、意識に靄がかかる。

小百合はそのうち、その誘惑に抵抗できずゆっくりと眠りの海に沈んでいった。


//ではそろそろ〆ということで。

527ゆすら:2011/05/28(土) 03:26:27 ID:hma8eUnA0
>>526
小百合の瞼が重くなってきているのを見て、ゆすらはふふっと笑み、

「眠いか、小百合どの。まあ無理もないよ。
 今の今まで邪悪な神気にやられ続けていたのだからの」

ゆすらは小百合の頭をゆっくりと撫で、眠気を煽る。

「今は難しいことは考えずに、眠ると良いよ。
 考えるのはそれからじゃ」

小百合の意識が、段々と眠りに落ちていくのがわかる。
そして、彼女が完全に夢の中に入った途端、ゆすらは苦しそうに胸を掴んだ。

「っく……ふふ……大蛸め。今は大人しくしておけ。
 後で相手をしてやる……!」

境内の池が激しく波打って、やがておさまる。
あとには、安堵と苦悶の、二つの吐息だけが残った。

//おk

528ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/28(土) 23:04:13 ID:WVrfsEdY0
「はぁ…はぁ…」
【いつもの公園にディスの姿はあった】

「…このまちにわるいひとが…いっぱいいるなの…」
【胸を押さえながらうつろな目でなにかうわ言のようにつぶやいている】

「…ううん…しんぱいさせたら…だめなの…」
【その姿は苦しそうにも見えた】

529三代目“腎臓”(ジン):2011/05/28(土) 23:20:12 ID:onviSg/.0
「あー、酔った……」

迷彩服を着た青年は、溜め息を吐いて呟く。
酔ったと言っても、それは車酔いのようなもの。
若干青い顔を携えた彼は、

>>528

「気分転換だ、ちょっと休むか」

ふらふらと公園に入ってくる。
と、そこで苦しそうなディスを発見すると、驚いて彼は駆け出す。

「そこの儚き少女よ、どうしたのかな
 ……って、あっ、この前の子じゃないか!
 いや、マジでどうしたんだい?」

スグルの嘘で大犯罪者扱いされた青年が、
その捕獲作戦に参加していた少女との邂逅に再び驚く。

530ゼオラ=アドヴァルド:2011/05/28(土) 23:22:22 ID:VoJSms.Y0
>>528
「……こんばんは」
公園に夜の風がざっと吹く。
騒々しく揺れて夜の一部を奏でる樹の影に少女は立っていた。

「元気……?」
その葉から、ゆっくりとディスのいるベンチへと歩いていく。

531ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/28(土) 23:25:10 ID:WVrfsEdY0
>>529
「あう?…えっとなの…
 こんばんわなの」
【軽く微笑みながら男性に向けて手を振るディス】

「あう?…わるいひとなの?」
【軽く失礼なことを行って首をかしげた】

>>530
「あう?『ぜおら』もこんばんわなの〜」
【軽く手を振り微笑んで見せるディス】

「だいじょぶ…かなの。きょうはなの…」
【しかし顔を見れば強がっているように見えるだろう】

532ゼオラ=アドヴァルド:2011/05/28(土) 23:33:21 ID:VoJSms.Y0
>>531
ディスの言葉に何時も通り特に表情の変化は無く、
「……そう」
と、とだけを返すと更に近付く。

「……」
目の前まで移動して、更に顔を近付ける。
じーっと、目を見ている。

533三代目“腎臓”(ジン):2011/05/28(土) 23:33:31 ID:onviSg/.0
>>530
「ワオ、麗しいレディ……とかいう気分じゃないから今日は止めとこう」

咳払いし、いつもの調子を抑え込む。

「この子(=ディス)の知り合いかな……うーん、気まずい」

何が気まずいのかは分からないが、
テレビなどの広告媒体に最近触れたことがあるならば、
ジンという男が犯罪者である(とされていた)ことを知っているかもしれない。

>>531
「わるいひと、なんて言わないでくれよう。
 あれは番傘のアホ野郎の言いがかりであって、俺はそんなに悪い人じゃないんだぜ」

やれやれ、という仕草を大袈裟に行う。

「俺は世界の女の子の味方さ、言うまでも無い正義……はともかくとして。
 気分が優れないのかい? 人のこと言えないけど」

そういう彼の顔も若干気分が悪そうである。

534ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/28(土) 23:38:11 ID:WVrfsEdY0
>>532
「あう?どうしたの?」
【だんだん近づいてくるのを見て不思議そうな顔を擦る】

「…?」
【じっと見つめられ、なおさらよくわからないという表情になるディス】
【ディスの目は綺麗な黒目である】

>>533
「あう〜。ごめんなさいなの…
 おなまえしらなかったからなの…」
【少し申し訳なさそうな顔で頭を下げた】

「あう〜、きょうはきぶんはいいほうなの〜。
 でもすこしつかれてるかなの…」
【一応元気に振舞っているらしい】

「あう〜…わるいひとじゃないなの〜。
 それならあんしんなの!
 じゃあ…なんてよんだらいいのかなの?」

535ゼオラ=アドヴァルド:2011/05/28(土) 23:45:20 ID:VoJSms.Y0
>>533
「……?」
恐らく此方を向けられたであろう声に反応し、僅かに顔を向ける。
そしてすぐに逸らす。

全身を漆黒の衣服で包んだゴスロリ服の少女は見たところ10前後の歳に見える。
しかし、少女から感じられる魔力の量は年齢に見合わないほどの豊富な量。
ディスとのやり取りの際に一切の表情の変化が無く、また、ジンに対してもそうであって、非常に近づき辛い雰囲気を出していた。

少女はジンに対し余りにもそっけない対応をしたが、知らない訳ではない。
情報収集の序で手に入れた物の一部に関連する物があり「犯罪者扱いされている人」くらいの認識はあった。
が、興味が無い。それに尽きた。だけの事である。

>>534
「……」
目を合わせ、数秒。
少女はそのままに口を開く。

「嘘」

536三代目“腎臓”(ジン):2011/05/28(土) 23:55:19 ID:onviSg/.0
>>534
「ああ、君は広告見て来たわけじゃ無かったわけかな。
 ま、君は悪くないさ。レディに名乗らない俺が悪い。
 というわけで、俺のことは気安く「ジン」とでも呼んでくれ」

精一杯の微笑みを浮かべ、手を振りながらそう言う。

「疲れてる、か……こないだの俺らとの戦いのせいかな?
 つっても、あれは結構前か」

うーん、と腕組みして考え、

「何から来る疲れかは知らないが、
 それなら公園よりもゆっくりたっぷり休める所に行くべきではないかい、家とか」

とりあえず事情も知らないので、普通のことを言う。

>>535
(ヒィちゃんとは違う意味で、なんか黒いよな……)

ふんふん鼻を動かし、魔力の気配を感じ取る。
相手がどんな雰囲気を纏っていようと、普段の彼ならばすぐ告白を始めるのだが、

「おう、申し訳無い。『か弱き少女』に突然声を掛けるのはルール違反だな。
 君、その子(=ディス)の知り合いかい?
 気分が優れなさそうで、でも俺じゃ何も出来ねーと思うし、心配なわけだが」

踏ん張って、やっぱり普通のことを言う。

537ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/28(土) 23:58:09 ID:WVrfsEdY0
>>535
「あう?」
【その一言でディスは確実に動揺した】

「う、うそじゃないの…ほんとにへーき…なの」
【その慌てた様子は嘘である証だ】
【ディスは隠し事がとてつもなく下手なようだ】

>>536
「あうあう、そっかなの…
 『じん』なの、よろしくなの」
【なるほど、と頷いていう】

「あうあう、『じん』はわるくないなの。
 もうちょっとまえからだからなの」
【首を振って否定する】

「う〜ん…いえでゆっくりしないとかもしれないけどなの…
 なんでかなの…おそとにでたくなるときがあるの…」

538ゼオラ=アドヴァルド:2011/05/29(日) 00:07:49 ID:VoJSms.Y0
>>536
「……そう」
ディスから顔を離すと、そのあの一歩離れて。
ジンの方に向き直ると表情の変化も動作も無しに。

「別に……。
 だからって、何か……出来る訳でも、ない」

>>537
「……そ」
それだけを言うと小さく溜め息をついた。

少女の表情こそ変化無く何時も通りだが、
ただ一文字だけの声ともとりきれないその発言にはディスに対して明るくない雰囲気が込められていた。
解りやすく言えば、憐れみ、や、呆れ。と言った様子の。

539三代目“腎臓”(ジン):2011/05/29(日) 00:17:03 ID:onviSg/.0
>>537
「あの時より、更に前? マジすか……」

あの戦いの前には交流など無かったし、
その後ジンは故郷の次元へ帰っていたので、戦いの後にも交流は無かった。
原因など知る由も無い。
彼は意味も無く首をひねる。

「こういう公園なんかで、友達と喋る……ってのも、癒しっちゃあ癒しかも知れないけどな。
 ただ悪いこと、ってわけじゃあ無いと思うぜ。
 君の調子がイマイチな原因にもよるだろーが」

友達は大事だぜー、と続ける彼には友達など居ない。

「あ、そういや君の名前は?」

そして、思い出したように名を訊く。

>>538
「なんか事情知ってるっぽい言い方なのは気のせい?
 ……うーん、でも、俺達にも出来ることはあるはずなんだけどな」

似合わない真面目な顔で考えるが、

「元気づけるとか。一緒に美味いモノ食うとか。遊ぶとか。寝るとか。
 医者に診てもらうとか……あ、分かんねーけど、何かあるっしょ?」

どうせその程度のことしか思いつかない。

540ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/29(日) 00:22:36 ID:WVrfsEdY0
>>538
「…なにかわるいこといったのかなの…」
【明るくない雰囲気を察したのかディスの顔も不安になった】

「・・・…」
【ディスからも少し恐れのようなものが感じられる】

>>539
「あうあう…そうなの」
【頷いていった】

「あう〜、ここにいるとすこしおちつくなの…
 だからゆっくりしてるなの…」
【どうも対症療法でしか無さそうだ】

「あう、なまえなの?『でぃす』なの!」
【名前は元気に言った】

541ゼオラ=アドヴァルド:2011/05/29(日) 00:30:14 ID:VoJSms.Y0
>>539
「じゃぁ……やればいい」
淡々に冷ややかとした様子で答える。
やはり表情に出ないがその言葉にはまだ軽度だが敵意の様な物が明らかと。

「貴方達だけで、ね……」

>>540
「別に……。
 嘘を吐かれるのは、なれっこ、だしね……」
口調こそディスを安心させるようなものではあるが、
その言葉は明らかとしてそうではない物だった。

542三代目“腎臓”(ジン):2011/05/29(日) 00:43:49 ID:onviSg/.0
>>540
「この公園、ヒーリング効果でもあんのかな?」

野生の獣の血が入っていても、そういうことに彼は疎い。
ので、適当なことを言う。

「いっつもこの公園に来てる感じ?
 まー、『今の落ち着き』よりも、根本的な解決しなきゃーなー。
 ……ってか、そもそも原因は何だい? 怪我? 病気?
 怪我なら、あの番傘の間抜けがどうにかしてくれそうなんだが」

怪我を治すのはスグルの得意技だが、病気は基本的にどうしようも無い。

「ディス、か。覚えたぞ……うむ、可愛い名前だ」

はは、と微笑む。
ジンの方は、気分が悪いのが少し治ってきたらしい。

>>541
「んもう、可愛い顔で怒るなよう」

耐え切れなくなって来て、普段の調子が若干顔を覗かせる。
ウザいウインク付きで。

「何か出来ることは無いかって、そう思わないかい?
 考えもしていないかい?
 それとも、俺を「お節介なアホ男」とでも思ってるかい?」

543ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/29(日) 00:51:25 ID:WVrfsEdY0
>>541
「あう…その…
 いやなきぶんにさせたなら…ごめんなさいなの…」
【頭を下げて言った】

>>542
「そうなのかなの…おちつくところなの…」
【少し空を見上げる。月は大きな雲に隠されていた】

「あう〜…ことばでいうとむずかしいなの…
 「なにかされた」みたいなのかなの…」
【ディスは少し曖昧な返事を返す】

544ゼオラ=アドヴァルド:2011/05/29(日) 01:02:37 ID:VoJSms.Y0
>>542
徹底無視。ガンスルー。

「そんな事は、無い。
 ディスに気をかけてくれるのは……嬉しい。私だって、友達」
珍しく温厚な口調でそう返し、ジンに向けていた視線を一度ディスに戻す。
しかし、再びジンに向けられた瞳は先程より冷ややかな物になっていた。

「それでも。何もできないよ。
 ディスが、何かしないと。教えてくれないと。
 何を、すればいいかなんて、誰も……」

>>543
「別に……構わないよ」
何時も通りの感情表現に乏しい口調と言葉で帰ってきた。

545三代目“腎臓”(ジン):2011/05/29(日) 01:19:30 ID:onviSg/.0
//落ちるので全体レス付いてます

>>543
「へえー……」

彼も同じように天を見る。

(この都市が、雲に隠れる月のようにならなきゃ良いんだが)
(……って、今は関係ねーな)

ふっ、と笑う。
都市の心配よりも、目先の女の子の心配が先だ。

「『何かされた』? 良くない呪いでも掛けられたのかい?
 うーん、それなら、」

どうにか出来なくもない奴が居る。番傘の色男だ。

>>544
「そうかい、それなら結構さ。
 ま、でも、実際俺ってアホだしな。
 困った女の子が心配で心配で、何もせずにはいられなくなるのよ。
 救わないと、って思うのな」

言いながら、何故か照れている。

「ふむ……デリカシーな問題かも知れないしな。
 深入りとか無理強いなんて良くないかも知んねえ……ああ、でもなあ」

デリケートと言い間違えていることには気づいていない。

>>ALL
と、そこでズンズンガンガンパラパラとやかましい着信音が鳴る。
それは彼の携帯から響くモノだったようで、「すまん」と言いながら電話に出る。
見た目はテンキーが付いたストレートの携帯のようだが、妙にゴツイ。

「おう、もしもし……なんだ、七代目か。
 どうし……あっ、ヒィちゃん起きた!?
 オッケー、プリン持ってくから待ってやがれ!」

電話を切り、慌てたような、嬉しそうな様子で彼はゼオラとディスに言う。

「悪い、最重要案件がようやく目覚めたっぽいから、そっち行かなきゃならねえ。
 ディスちゃん、もし原因が呪いとかなら、七代目が……「スグル」って奴がどうにか出来るかもだぜ。
 んじゃ、マジで悪い、ディスちゃんの件についてはアホなりに考えとくからよう!」

手を振りながら、バック走で二人から離れていく彼。
そして公園から出ると、人間離れした脚の速さで走り去っていった。

//パソコンが落ちそうな気がするので、先に落ちさせて貰いますです
//ありがとうございました〜

546ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/29(日) 01:23:17 ID:WVrfsEdY0
>>544
「そう…なの…
 どうしたらいいのかなの…
 いまはなの…」
【わずかに胸のあたりから漏れ出してくる邪気】

「ちょっと…」

>>545
「あう〜…しってるひとがいるなの?
 ありがとなの…」
【少し安心した顔だ】

「あう!?びっくりしたの。
 いまのおとはそれだったの…」
【目を真ん丸くしてびっくりしている】

「あうあう〜!またねなの!」
【微笑みながら手を振って見送った】

「…あう?『すぐる』って…」
【そう言ってゴソゴソと名刺を取り出して確認した】

547ゼオラ=アドヴァルド:2011/05/29(日) 01:31:44 ID:VoJSms.Y0
>>545
「……そ」
とだけ言って答えると、小さく手を振って見送った。

//お疲れ様でした〜。

>>546
「今じゃなくていい……。
 でも、教えてくれると、うれしいかな……」
ジンにそうした様に、ディスに向けても手を振る。
それと同時に小さく笑顔を添えると闇の中へと消えて行った。

//時間も遅いので私も撤退しますね。ありがとうございました!

548ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/29(日) 01:35:58 ID:WVrfsEdY0
>>547
「うん…わかったの…
 いつかまたね…なの」
【大きく頷いて見送った】

「…きょうはかえろうかなの…」
【そうつぶやくと、ゆっくりたってその公園から去っていった】

549ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/05/30(月) 22:39:01 ID:1sJsd2CgO
【異能都市 闇市場】

 先日、武器設計図の売買交渉を邪魔されてしまった。
 その最中に看護婦に拉致され、半ば監禁されていたロージェンスは隙を見て逃げ出し、この闇市場で再度、取引相手を探していた。
 しかし、

「……。くそっ、何処もかしこも気味悪がって話にならねぇ……」
 ――鎖巻きの女との取引は悉く破滅する。
 たかが二、三件の取引を失敗しただけで妙な噂が広まってしまった。
 舌を打ち、抑えきれぬイラつきを抱えながら市場を端から端まで渡っている。

550逆瀬川 純鈴:2011/05/30(月) 22:45:10 ID:DfGFzcOs0
>>549

「やほー、あんまりイライラすると禿げるよー?」

この場に似合わぬ、気の抜けた声。
振り返れば、其処には以前遭った奇妙奇天烈摩訶不思議少女。
右手にはジュラルミンケースを持って、少女は陽気に笑っていた。

551ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/05/30(月) 22:56:19 ID:1sJsd2CgO
>>550

「――アァ? ナニサマかと思ったら、イカサマ少女か。
 別にイラついてる訳じゃないっつーの」

 とてもイラついた口調である。
 そのまま立ち去ろうかと考えたが、少女の持つジュラルミンケースが目に留まった。
 しばらく、物珍しそうに見て、偉そうに一言。

「そんで、ヒトサマを呼び止めて、いったい何用かしら」

552逆瀬川 純鈴:2011/05/30(月) 23:06:09 ID:DfGFzcOs0
>>551
「イカサマとかひっどいなー! 折角『アレ』の代わりに持ってきてるって言うのにもうあげないよ?」

ぷんすかとでも効果音がつきそうな、そんな表情をする少女。
ジュラルミンケースをさっと後ろに隠し、少女は言う。

「対価先払いなら、あげてもいいけどねー?」

553ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/05/30(月) 23:19:11 ID:1sJsd2CgO
>>552

「ハッ、『叶える』って言って叶ってないんだ、イカサマ呼ばわりされてもしょーがないでしょうが。
 貰わなくても奪い取るって方法もあるんだけどねぇ?
 ……ま、何が入ってるか解らない以上、無闇に手出しは出来ないケド」

 両手を挙げ、皮肉げに呟いて。
 敵意の無い事をアピール。
 ……とりあえず、今のところは。

「そんで、その“対価”って何さ。やっぱりお金? それとも身体?」
 なんとも俗世間的な考えである。

554逆瀬川 純鈴:2011/05/30(月) 23:25:02 ID:DfGFzcOs0
>>553
「しょーがないじゃん! あの時は殺りあう気かと思って咄嗟に『事象歪曲』しちゃったんだから!」

頬を膨らませて怒る少女。
じっとロージェンスを見つめて、否睨んで。

「……そんなもんじゃないよ。私が欲しいのは――君の情報、かな?」

555ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/05/30(月) 23:43:47 ID:1sJsd2CgO
>>554

「……私の、情報? そんなもんで良いの。これはまた意外な対価ね」
 もしかしたら……。などという自分の妄想を鼻で笑う。

「いいわ。こちとら、昔の記憶はほとんど無いケド。それで役に立つならなんでも聞いて」
 了承。
 とりあえず、話せることは話すつもりだ。
 私の何を知りたいのか、具体的に訊いてくれれば覚えている限り何でも。

556逆瀬川 純鈴:2011/05/30(月) 23:53:35 ID:DfGFzcOs0
>>555
「いやー聞くとか面倒だしさくっと終わらせちゃうよん」

ゆっくり、ゆっくりと近付く少女。
眼前まで迫れば、左手を、ロージェンスの額に当てて。

「ちょっとだけ、痛いかも」

静電気が走ったような、そんな痛みが、ほんの一瞬だけ。

557ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/05/31(火) 00:06:54 ID:1sJsd2CgO
>>556

「――痛っ」
 静電気のような地味な痛み。

 その行為で記憶を覗いた、というのならば奇妙な物が観えたかもしれない。
 それは、空白。
 ここ最近の出来事や、自身のチカラ、兵装についての朧気な自覚と無自覚のブラックボックス。
 それ以外が総て空白。
 限りなく何も無いのだ。
 それを記憶喪失で片付けるには、いささか腑に落ちない記憶の欠如。

「〜っ……。話す気満々だったのに、いったい何したってのよ」
 一瞬の間に何をされたのか、さっぱり掴めないロージェンスは少女を睨み付ける。

558逆瀬川 純鈴:2011/05/31(火) 00:16:37 ID:DfGFzcOs0
>>557
「『アレ』と似て非なるもの......うーん難しいなぁこれ。ていうかこれアレだよね、うん、あれだよ」
一人ぶつぶつと呟きだす少女。

「ん、ちょっと頭の中を『覗いた』だけだよ。それにしてもなーうーん......」

首を傾げて、まぁいっか、と一言。

「じゃあお楽しみの中身こうかーい!」

じゃじゃーんとジュラルミンケースを開けて

          ―なんと中には蠢く無数のワカメが!―
すぐ閉めた。

「ごめん変なとこと"繋がっちゃった"。気を取り直して――」

もう一度開けば、其処には"二発の銃弾"が。

559ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/05/31(火) 00:26:46 ID:1sJsd2CgO
>>558

「覗いただけ……。サラリと、もの凄いことしやがって……」

 妙な呟きに首を傾げつつも、なんだかんだで気になっていたジュラルミンケース。
 その中身は、

 ――驚愕……ッ!
 ――圧倒的、ワカメ……!

 待てゐっ!とツッコミを入れる気力すらごっそり持ってかれた。
 だって、ものすごく、ぬたってるんだもん。

 ……気を取り直して。

「なにさ、これ」
 銃弾です。

560逆瀬川 純鈴:2011/05/31(火) 00:44:17 ID:DfGFzcOs0
>>559
「私の能力は『接続』、だからねー。
 どっかの『組織』じゃ『完全支配<バッドネスエンプレス>』なんてごっつい渾名つけられちゃったし」

へらへらと笑っているが、その瞳は、笑ってなんかいなかった。

「そっちの赤いのが『歪み』を凝縮した銃弾。ほんの、ほんの少しだけ、"事象を捻じ曲げられる"。
 ――死にそうにヤバイってときの、"ジョーカー"。興味本位で使うと自滅するよ。
 でそっちの青いのは、なんていうか、こう、めっちゃ跳ねて跳ねまくって最終的に手元に戻ってくるブーメラン弾、みたいな?
 使用者には絶対にあたらない、"らしい"よ!よ!」

それだけ言うと、踵を返して。
「そろそろ行かなきゃ行けないから、また、"遭う"かもね。
 あと設計図とかさー、根気よく探せば、『きっと誰かが聞いてくれる』はずだから、がんばって」

そういい残すと、少女は、裏路地の影に、消え去った。

561ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/05/31(火) 01:26:36 ID:1sJsd2CgO
>>560

「バットネスエンプレス、ねぇ……。御大層な二つ名ですこと」
 自分の手配名が『贖罪の女山羊』という事を棚に上げて、去る少女を見送る。

 手元には赤と青の銃弾。
 構造と組成が解れば魔導機に入力出来るのだが、自分の知識では解析は不可能に思われた。
 “赤”は《獅子ノ帝銃》の規格と合っているようだから、問題は無い。
 “青”は……どうだろう、撃てるかな。手元の銃器と規格が合わなければ、それまでだが。

「……感謝はしとくよ、イカサマ少女。私の望みを叶えてくれる人が現れるまではね」
 だが。もう、この一帯の闇市場では叶わぬ願いだろう、と。
 疫病神を見るような露店商達の視線を浴びながら、くつくつと嗤って去っていく。

562黒沢小百合:2011/06/01(水) 21:32:48 ID:SSMHlh/20
【AGカフェ】

「ふぅ、最近は怪人やら女山羊やらに掛かりきりでしたし、
 久しぶりにまともな食事を取ったような気がします……。」

仕事を早めに切り上げた小百合は、
久しぶりにAGカフェに立ち寄って夕食をとっていた。

ソフトシェルクラブのフライとワイン、パンを口に運びながら
この生活を続けていて、自分はいつまで生きていられるのだろうか、など
取り留めのないことをぼんやりと考えていた。

563アオギリ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/01(水) 22:00:49 ID:1sJsd2CgO

 カラン、とベルを鳴らし大柄な白衣の男が入ってくる。
 男の片目は窪んで落ち込み、その奥には何も無いことを静かに語っていた。

>>562
「……、失礼。休憩中だったかな」
 言って、適当な席につく。
 店員が休憩していると勘違いしている。
 ……微かに消毒アルコールの匂いがした。

564黒沢小百合:2011/06/01(水) 22:16:35 ID:SSMHlh/20
>>563

「…………。」

男の姿を見た途端、小百合の目の色が
獲物を見つけた獣のようにギラついた。

(ロージェンスの協力者と目される人物、アオギリ……。
 こんなところでお目にかかれるとは。)

静かに席を立ちアオギリへと近づくと
隠し持った銃を抜き放ち、その側頭部へ突きつけようとする。

「梧総合病院院長、アオギリ。
 あなたには犯罪幇助の疑いが掛けられている。
 少し、話を聞かせてもらおうか……?」

565アオギリ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/01(水) 22:39:06 ID:1sJsd2CgO
>>564

 突き付けられる拳銃。
 その感覚を静かに眺めながら、

「どうやら、この店にはウェイターがいないらしい。独特な商売形態だと思いませんか?」
 平然と。
 微塵の恐怖もなく話しかける。

566黒沢小百合:2011/06/01(水) 22:46:10 ID:SSMHlh/20
>>565

「私に二度同じことを言わせないでくださいますか?
 生憎、私は無駄が嫌いで我慢弱い性分なのですよ。」

脅すように厭らしい笑みを顔に貼り付け、
時折、銃を揺らすように動かしながら話を続ける小百合。

「さもなくば、この引き金が『不幸な偶然』によって
 引き絞られることになったとて、私は責任を取れません。
 さあ、今なら任意同行という形で済ませてさしあげますから……。」

567アオギリ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/01(水) 23:06:57 ID:1sJsd2CgO
>>566

「貴女も独特な方だ。任意という言葉を用いながら、その行為には強制力が伴っている。
 死体を作るなら側頭部ではなく頸椎を狙え、筋繊維と骨髄の末端なら損傷しても価値は減らんよ」
 やれやれ、という雰囲気でキッチンに向かう。
 ヤカンを火にかけ、湯を沸かそうとしてポットに気が付く。

「話ならここでも十分だろう。動向は“任意”たしか、そうだったな?」
 抵抗する気配も、敵意すらも感じられない。

568黒沢小百合:2011/06/01(水) 23:19:03 ID:SSMHlh/20
>>567

「今なら任意動向に応じた、という形で処理を行なってやるというだけの事。
 あなたも院長ほどの立場ですから、『連行』されたというのは対外的にいささか都合が悪いでしょう?」

小百合は銃にかけられていた安全装置を
これ見よがしに音をたててはずす。

「最後の警告です。今すぐ動くのを止めて、私の指示に従え。
 私はお前に適当な罪を被せてこの場で処罰する事だってできるんだぞッ……!!」

569アオギリ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/01(水) 23:29:56 ID:1sJsd2CgO
>>568

「あぁ、そうだな。たしかに世間体は気になる。仕事に支障が出るのは問題だ」
 仕事=命。のアオギリにとってこればかりは無視できない忠告である。
 出来ればコーヒーが飲みたかったがポットにはお湯が無かった。
 仕方ないか、と呟いて深々とため息をつく。

「何が聞きたい。患者のプライバシーを侵害しない程度には話してやろう」
 カウンターへと戻り、同行には応じる姿勢を取る。

570黒沢小百合:2011/06/01(水) 23:41:31 ID:SSMHlh/20
>>569

「フン、最初からそうやって大人しくしていれば
 いらぬ苦労をすることも無かったのに……。」

小百合は顔を歪め、うんざりだとばかりに片手でで顔を覆い。
そのまま大きくため息するように息を吐き出し、質問を始めた。

「まず第一にロージェンスと貴方は協力関係にあるのか。
 それを答えてください。この会話は録音しますから、嘘をついていると
 確定した場合、重罰が待っていると思いなさい。」

571アオギリ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/01(水) 23:55:53 ID:1sJsd2CgO
>>570

「少しばかり、短気なのはいかんな。たまにはリラックスできる環境で仕事を忘れて余暇を過ごすといい……っと、失礼、患者では無かったな」
 カウンターに手を付き、質問を聞いて考える。

「ロージェンス……? あぁ、あのお嬢さんか、何ヶ月か前に公道で倒れているのを、うちの看護師が夜中に出勤ついでに搬送してきて以来会ってないな。
 今は仮退院中だ、協力もなにも連絡先すら把握出来ていないから再入院させようにも出来なくて困っているんだ」
 うちの看護師、というのはカンナで間違いはないだろう。
 梧総合病院に夜勤の看護師はカンナただ一人だったからだ、今は昼勤の数人を回して繋いでいるらしいが……

572黒沢小百合:2011/06/02(木) 21:17:03 ID:SSMHlh/20
>>571

「……貴方たちの関係はおおよそ、分かりました。
 では現在、なんらかの支援を行なっているのですか?
 例えば、治療であるとか……食糧支援であるとか。」

小百合はカウンターに指を這わし、
手持ち無沙汰に動かしながら質問を続ける。

573アオギリ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/03(金) 00:38:19 ID:1sJsd2CgO
>>572

「言っただろう、連絡すらつかないと。
 “患者”に治療や病院食を提供しようにも、当人が蒸発して見つからないんじゃあ……不可能だろ?」

 穏やかな口調で話し続ける。
 呼吸や脈拍の乱れもなく、嘘を吐いているようには見えないが、銃を突き付けられても平然としていた男である。
 今、その真偽を慎重に判断するか。
 聞き出すだけ聞き出して判断は後回しにするか。

「あぁ、一つ聞きたいんだが。
 あのお嬢さん――ロージェンスはいったい何をしたんだ?」
 素朴な疑問を訊ねるような態度だった。

574黒沢小百合:2011/06/03(金) 01:02:50 ID:SSMHlh/20
>>573

「……彼女は重犯罪者です。捕まれば死刑は免れぬほどのね。」

アオギリの問いに、短く答える小百合。
彼に情報を与えたところでこちらの益にはならない。

「では……彼女の治療、診察を行なった際に
 何か気になった事はありませんか?身体的特徴、所持品、
 食べ物や服装の好み、なんでもかまいません。」

575アオギリ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/03(金) 01:23:57 ID:1sJsd2CgO
>>574

「死刑、か……。厭な裁きだ」
 苦い顔で呟く。

「気になることか。行き倒れにしては小綺麗だったのと、大量の装飾品だな。付けている量がそもそも多いのにストックまで用意されていて、とても奇妙だったよ」

 しばらく考えるような間を置いて。
 それと、と繋ぐ。

「彼女は逆行性健忘症の疑いがあった。つまり、過去についての記憶がほとんど、あるいは全くないかもしれないという事だ。少なくとも名前は覚えていたようだがね」

576黒沢小百合:2011/06/03(金) 01:36:08 ID:SSMHlh/20
>>575

「ふむ……アクセサリー……。」

以前、ロージェンスを包囲攻撃した際には
明らかに命中弾を与えていたにもかかわらず、大きな負傷を与えられなかった。
あの体中に巻いていた鎖に、なんらかの術式があったのだろうか。

「記憶喪失ですか……。
 たしかに、不可解な行動はありましたが……。」

以前、ロージェンスは小百合を殺すチャンスがあったはずだが
何故だかそのまま、どこかへと逃げ去った。

伝え聞くような人物なら、そのようなチャンスを逃すはず無いが
記憶喪失、と聞いて幾分か納得がいった。

「分かりました、そのほかに気になるような事はないですね?
 この私に報告しておくべき事象、事件などは。」

577アオギリ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/03(金) 01:54:38 ID:1sJsd2CgO
>>576

「……無い。ウチの病院は平常運行だ、今は看護師が一人行方不明になってる程度だな」
 十分、大事な気がする。

「もう、話は終わりか?」

578黒沢小百合:2011/06/03(金) 02:03:44 ID:SSMHlh/20
>>577

(行方不明……。報告の中にあったナース姿の女の事か。
 一応、証言とは合致しているが……。)

アオギリの証言が正しければ、彼はロージェンスに無関係で
例のナースが独断で支援を行なっていることになる。

「ええ、分かりました……。
 貴方を無関係と認めましょう。先ほどの非礼をお詫びします。」

一応頭を下げて見せるが、アオギリを完全に信じたわけではない。
寧ろ、彼の病院近辺に監視をつけるべきだとすら小百合は考えている。

579アオギリ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/03(金) 02:21:55 ID:1sJsd2CgO
>>578

「あぁ、別に構わない。あれくらいは非礼にもならん」
 ため息一つ吐いて、

「それじゃあ、俺は帰らせてもらう。もう、用は済んだだろ?」
 カフェの扉に手をかけ、そのまま外へ行こうとする。

580黒沢小百合:2011/06/03(金) 02:26:24 ID:SSMHlh/20
>>579

「ええ、お手数をお掛けしました。」

立ち去っていくアオギリに最後に深く頭を下げて。
彼の姿が見えなくなったところで、ようやく頭を上げる。

「報告するまでも無い……か。
 とりあえず、ヤツには監視をつけておかねばな……。」


// とりあえずキリがいいのでこの辺で。
// お手数をお掛けしました……。

581逆瀬川 純鈴:2011/06/03(金) 22:46:53 ID:fbkxur6g0
【裏路地の寂れた喫茶店――<黒猫の雨宿り>】

「――いやぁ、ほんっとにさ、退屈」

揺れる柱時計の振り子を見つめながら、溜息混じりに、独り言。
店内には、この少女と、初老の店主のみ。
店主はグラスを磨きながら、凶悪に退屈そうな少女に話しかけた。

「退屈ならば、暇つぶしを見つけてみては? 案外、その辺に転がっているものです」
「そんな気力もないんだよねー……」

再び、店内に静寂が訪れた。

582テルメス/ニット帽の男:2011/06/05(日) 22:10:47 ID:ste/2NNA0
「……鱗怪帝……復活するのか」

男が公園で、新聞を読んでいた。
怪人が研究所を襲撃した事件の記事だ。

「怪人の力が暴走するなら、街を出ても意味はないし……」

新聞を投げ出し、ベンチに寄りかかった。

「そういえば今日まだ夕食べて無かったな」

583カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/05(日) 22:38:11 ID:1sJsd2CgO

「むぅ……。久々に見付けたー、と思ったら、また逃げられた」
 ナース服を着たポニーテールの女は口を尖らせていた。
 善意の行為が思うように進まず不機嫌なのだ。

「いつもなら炭酸でジュワァッ!と吹き飛ばしたい気分なのですが、今カンナさんはねっちねちしているので微炭酸にします」
 通りかかった公園。
 そこにある自動販売機前で独り言を呟きながらメロンソーダを購入。
 この独り言に意味はあるのだろうか。いや、無いだろうが、とにかく声が大きい。やたら大きい。

584テルメス/ニット帽の男:2011/06/05(日) 22:54:15 ID:ste/2NNA0
>>583
「……あ、牛丼」

大声のナースを横目に、呟いた。
別に幻覚が見えているわけではなく、ただ思いついたものを口にしただけだ。

「今どこが安かったかな。
 あっちこっち値段競争してるし」

思案にふける。

585岩井川ユワイ:2011/06/05(日) 22:58:48 ID:onviSg/.0
>>583
「ナースさん、人生楽しんでそうだねー、けっけっけ」

妙に袖の長いワイシャツに細いダメージジーンズを合わせた女(男)が、ふらりと現れる。
ニコニコしながら財布を取り出すソイツは、

「徘徊癖のある御老人が失踪でもしたかい?」

そう声を掛ける。

586カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/05(日) 23:31:46 ID:1sJsd2CgO
>>584

「牛丼……、今はきっと何処も同じ価格だったと思う。安くするならタダで食わせろー!」
 メロンソーダを飲みながら独り言に対して独り言。

>>585

「んー? いやぁ、これがなかなか楽しくなかったり、不愉快だったりする!
 徘徊癖というより脱走癖だね、ありゃ。ベルトで固定してみても抜け出すね、きっと。
 全く、なんで私の善意をないがしろにしやがりますか彼女は、少しはコッチの機微を汲んで頂きたい。
 でもそれがちょっと楽しかったりする側面もあったりして、なーんか複雑……あれ、やっぱし楽しそうなのかな?
 ふむ。同じ女性としてどう思いますか、アナタは」
 一気に言うと。
 ぷはぁ、とメロンソーダを半分流し込む。
 そして、胃袋から二酸化炭素。つまりゲップ(無音)である。

587テルメス/ニット帽の男:2011/06/05(日) 23:40:38 ID:ste/2NNA0
>>586
「……あ、そう」

顔を上げる。

「生姜はタダだけどね。
 いくら食ってもいい。
 あと七味も」

たまに居る、生姜を山盛りにして食うタイプの人間だ。

588岩井川ユワイ:2011/06/05(日) 23:42:13 ID:onviSg/.0
>>586
「うーん、僕の持ちうるあらゆる観点を参照しても、あなたはとっても楽しそうに見えるのだ。
 そうやって超いっぱい喋っちゃうところとかねっ☆。
 っていうか、拘束しても抜け出すってなんじゃらほい。
 イリュージョン? 某テンコー?」

右の拳を頭に載せ、左の掌で顎を撫でながら首を傾げる。

「その人、あなたをからかうのを楽しんでたりするんじゃないかしら?
 或いは照れ隠しとかなっ。
 僕はコレでも買おう」

小銭を自販機へ捻じ込んだユワイは、プリンシェイクを購入。
落ちて来たそれを素早く振り始める。

589カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/06(月) 00:06:13 ID:1sJsd2CgO
>>587

「なん……だと……?」
 知らなかった事実に驚愕。
 真正直に出された品のみを食べて満足していたタイプである。
 真実を知ってみるとなんというか損した気分になってくる。

「……あ、ところでお兄さん。しょうが山盛りにして牛丼かっ食らうお兄さん。
 ワタシ、ちょっと人を尋ねているのです。お尋ね者という奴です?
 鎖ぐるぐる巻きの真っ黒な女性を見ませんでしか。探しているのですよ、かなり必死に今もナウ」
 メロンソーダのペットボトルをゴミ箱に投げつけて訊ねる。
 ちなみに、お尋ね者ではなく捜し人である。

>>588

「プリン的天狐ー!
 ……うん、今の無し。どちらかといえば彼女はパワフルに抜けると思うのさ。
 今の今まで私三人がかりでも拘束に成功してないし、仮に出来てもねぇ……」
 むぅ、と口を尖らせてみたかと思えば次の瞬間には、
 おぉ、美味しそうなシェイク。今度飲んでみよう。
 とにこやかになっていたりと、喜怒哀楽が忙しい。

「うぅむ。そんな愛情表現は好きくないなぁ……いかんせんツンが多すぎる、もう少しデレがあれば……。
 ――いや、そうではなく。
 アナタも見ませんでしたか? 鎖ぐるぐる巻きの真っ黒な女のヒト。そのヒトを探してるんです、こう見えても割りと必死に」

590テルメス/ニット帽の男:2011/06/06(月) 00:15:27 ID:ste/2NNA0
>>589
「俺はテルメスだ」

冷静に名前を訂正する。
このまま変なあだ名が(しかも長い)定着されても困る。

「鎖を巻いた……?
 そいつなら何回か会ったけど、最後に会ったのは大分前だな。
 あんまり積極的に関わりたい奴じゃあないね」

そう言って苦笑する。

591岩井川ユワイ:2011/06/06(月) 00:18:07 ID:onviSg/.0
>>589
「そのダジャレ、いただいたのだ。ふふふ」

PDAを取り出し、全力でニヤケながら、手書きメモをスタイラスで書き殴る。
そういうことのために支給されたモノでは無い、はずだ。

「パワフルにはパワフルで……太い鎖を何本もトレーラーに繋いでおくとかどうかしら?
 ……いや、それはいささか短絡的かにゃ。
 よし、こうなったら罠だな、しかもちょっと痛い罠だな、ギザギザとか付いてるの。
 えへへ、胸が高鳴るーっ」

ユワイのほうは、壊れた喜と楽しか無い様子。
プリンシェイクを飲んで、あめーあめー言いながらケラケラ笑っている。

「好きな人を困らせたいタイプの奴って、結構多いと思うんですよー。
 ……って、いや、その人女なのか。
 いや、それ以前に、鎖ぐるぐるって」

どっかで見たな、と、ちょっと考えてみる。
そして、アイツじゃないのかな、と思い至り、

「その人って、重犯罪者とかって言われてる人じゃね?
 ってか、僕もその人探してんじゃね?」

592カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/06(月) 00:40:08 ID:1sJsd2CgO
>>590

「私はカンナ。見ての通り看護師やってます、つまりナース!それは白衣の天使ッ!
 だけど今はワケあって休職中。肩身が狭い思いで毎日を過ごしているのです」
 トホホ、と落ち込むカンナ。
 だが先ほどまでの振る舞いからして、ものすごく羽を伸ばしている気がする。

「あら、そう。それは残念。
 しょうが山盛りにして牛丼かっ食らうほど周りの目を気にしないテルメスさんにも、関わり合いになりたくない人っているのねぇ」
 ……余計に長くなった。

>>591

「ぎゃー! やめてー! 暗黒面の記録は消してー!」
 だが、届かぬ願いである。

「トラバサミと分銅鎖の奏でるコラボレーションは好きそうねー。うん、彼女は女性よ、なかなかに非力そうで怪力だから困っちゃう。
 いつもいつも、誰かに追いかけ回されて怪我ばっかりしているので看護師的には見捨てられないヒトなのです」

 そして、ユワイの問いに対してニヤリと歪んだ笑みを返す。

「我が師曰く、医療の前には大罪人も善良な民も等しく人間であり患者である。
 ……だから、彼女がどういう人であろうが私にとっては患者。あなたが探してる重犯罪者とは違うんじゃないかな?」
 PDAのメールを見たなら、目の前のカンナと名乗るナースは重犯罪者ロージェンスの協力者であると分かるだろう。

593テルメス/ニット帽の男:2011/06/06(月) 00:53:31 ID:ste/2NNA0
>>592
「関係ないだろ……」

ため息をついた。

「一度バイトしてたコンビニで強盗されたし。
 強盗と関わりたいって言うほうが珍しいだろう」

それにしては何度か会話した気がするが。

594岩井川ユワイ:2011/06/06(月) 00:53:41 ID:onviSg/.0
>>592
「やなこった〜い」

PDAをさっさとポケットに仕舞い、自慢げな顔をしながら、一切無い胸を何故か張る。

「なんか随分トラブルに巻き込まれるのか巻き込んでるのか、大変っすねえ。
 あれだね、色々あってグレたんだね。やさぐれたんだね。
 子供のまま大人になったタイプだね、そういうのって守ってあげたくなるよね。
 分かるよ、僕って超正義の味方なのさ〜」

説明会の際にOSだなんだと言っておきながら、ユワイはまだメールを一通も見ていない。
ダジャレをメモしていたように、気が付いたことを留め置く手書きメモ程度にしか使っていないのだ。

「ふーん、なるほど、ほうやな。
 批判や非難を恐れず、患者を患者として見れるのなら、あなたも師とやらも立派だと思うのです。
 うむ、難しいぞ。対立しつつ助けなくてはならんとは!」

ロージェンスの協力者だと知っていたとしても、ユワイはカンナを問い詰める気にはならないだろうが。

595カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/06(月) 01:19:42 ID:1sJsd2CgO
>>593

「私の近くに自分の目玉を抉ったヤツでも平然と助ける人が居るから、それくらい平気だと思ってたけど。
 これは考えを改めなくちゃなりませんな、うんうん。てかあの子、強盗もしてたのか」
 うんうん、と頷いて。
 腕時計を見る。

「む。もうこんな時間」

>>594

「超爼な正義の味方」
 ボソッと呟き。

「うーん、言われてみれば、まだまだ子供なのかもね。
 そういった考えで思い返してみると、超絶反抗期真っ只中的なサブタイトルが付きました。母親かっ、とツッコミはセルフサービス。
 ふふん、私の師は奇人変人の類いだけど立派なのだ、誇るよー、お姉さん自分の事みたく誇っちゃうよー!」
 ある胸張って、小高い丘。
 見た目三十路が何を張り合ってるんだか。


「さて、そろそろ私はお時間なので帰ります。おやすみなさい」
 言って、二人にターンして向いて、なめらかなお辞儀。
 その場でリ・ターンして歩き始めると、さっさと公園から居なくなってしまった。

596テルメス/ニット帽の男:2011/06/06(月) 01:26:28 ID:ste/2NNA0
>>595
「物好きな奴も居るもんだ。
 ああ、確かに強盗された、しかも警察に突き出したらいつの間にか逃げてた」

カンナが公園を去ってから、男は立ち上がって、新聞をゴミ箱に捨てた。

「さてと……牛丼はやめだ。
 カレーにしよう」

そう呟いて、公園から立ち去った。

597岩井川ユワイ:2011/06/06(月) 01:35:19 ID:onviSg/.0
>>595
「ナースにお世話される側になってみるかい?」

言いながらケラケラ笑っている。ひたすら楽しそうに。
怒りはしないらしい。

「ここからどうやって常識ある存在に育て上げるか……ふふふ、密かに期待しているのだぞ。
 ……ふむ、流石リアルは違いますな。
 まあ、諦める以前に欲しい訳でも無いけれど。けらけら」

男なのだから、ある方がおかしいし、あることを望むのもおかしい。はず。

「捜索頑張ってねー、僕も頑張るよー。
 さてさて、体力づくりでもしておきますかしらね〜……」

カンナを見送ると、うーんと伸びをし、そして同じく公園を去るユワイだった。

//乙々でした〜

598黒沢小百合:2011/06/06(月) 23:41:21 ID:SSMHlh/20
【異能都市郊外、温泉宿】

青い畳と、硫黄の混ざり合った独特の臭い。
滞在する人々は日ごろの柵から開放され、思い思いに羽を伸ばす。

「………………。」

日ごろの激務と戦闘で体調を崩す事が多い小百合は
疲労回復兼、負傷の治療を行なうためマメに医者に診察を受けるだけでなく
時折こういった保養地、湯治場に足を運んで休息を取るようにしている。

しかし、今日の小百合は旅館ロビーのソファに腰を降ろしたまま
温泉に入るでもなく、ずっと思索に耽っているようだが……。

599横島なつき:2011/06/10(金) 21:59:06 ID:bYREkklM0
【正午前、緋河神社参道】
小柄な巫女装束。
横島なつきが今日も境内をウロウロしている。

「気のせいだといんだけどなー」

神様でも、ときには患ったり死んだりする。
気にしているのは祭神ゆすらの体調のことだ。
どこかで穢れや呪いでも引き受けたのか、どうも振るわない様子だな、と漠然と感じていた。
しかし、なんの心得があるでもなし。ナツキの仕事は普段と変わらない。

「……ふっ」

剣の柄を右手、鞘を左手。
気合い一閃、刃を払い、鞘に収めてはまた抜き放つ。
その度に清らかな水が刀身から迸り、境内の砂利や石畳を濡らしていく。

やっているのは水打ちだ。
桶と柄杓を使う代わりに、鞘と剣でナツキはそれを行っている。
浮瓠量と名付けた十握剣、その力の一端がこれのようだ。

「……清明き水、集い瀬となり川となる。
 澱み、淵となれども、猛り逆巻きてはまた流れ流れゆく。
 流れは尽きず流れは留らず、恵み潤し、癒し慰め、また流れゆく」

ぶつぶつと、語るように独り言を呟きながら、ナツキは手を動かす。
大体こんなようなことを口走りながらやると調子がいいようで、
剣から放たれる水の輪が、一回ごと次第に大きくなっていく。

「山の色を映し、花の香に染まり、大地を栄えさせ給う。
 梢に吠える風を聞き、揺らめく月の影を飲み、
 限りなき歓びを歌いながら、千万の営みを幸え給う。
 ……清明き水よ、っと」

ぱっ、と最後に水を払い、くるくると剣を陽光にはためかせ、音高く鞘に収める。
毎日のことで慣れてきたのだろう。剣を扱う一連の所作に危うさはない。

600黒沢小百合:2011/06/10(金) 22:21:09 ID:SSMHlh/20
>>599

――かつ、かつ。

神社の石畳に響く、硬いヒールの音。
現れたのはいつもどおり、黒いスーツに身を包んだ小百合だ。

「……おや、貴方はいつぞやの……。
 たしか、横島……なつきさんでしたか……?」

巫女装束に身を包み、剣を携えた姿を見て
一瞬誰だか思い出せない様子の小百合であったが
どうにかこうにか、記憶を整理してなつきの名前を搾り出した。

601横島なつき:2011/06/10(金) 22:37:04 ID:bYREkklM0
>>600
「……あら」

黒沢小百合だ! と、ナツキの方はすぐに名前が思い浮かぶ。
カフェでの邂逅以来、彼女の姿はメディアを通して何度も見る機会があった。

「はい、横島なつきです。
 よく覚えていてくださいました。緋河神社へ、ようこそ」

そう言うと両手を揃え、目を閉じて丁寧にお辞儀をする。

「えへ、黒沢さん、お参りですか?」

参道のど真ん中に突っ立っていてはアレだと、小さく後ずさる。
ナツキの中には、偶然入った店で黒沢小百合と一緒に食事した、
という部分ばかりが印象に残り、何を話したかまではよく覚えていないらしい。
ゆすらとの事情も知らないナツキは愛想良く微笑んで、月並みな対応だ。

602黒沢小百合:2011/06/10(金) 22:54:36 ID:SSMHlh/20
>>601



「いいえ、ゆすら様に以前のお礼をと思いましてね。
 良いカシャッサが手に入ったので、差し上げようかとお尋ねしたのですが……。」

小百合はゆすらがこの都市に居ついて以来、
魂の汚れや呪いの浄化など、何度かお世話になっている。

既に、礼をしてもし足りないがとりあえずということで
サトウキビを蒸留したブラジルの酒、カシャッサを持参した。

神性という物は酒好きである事が多いし、
水という性質を持つゆすらならば嫌いではなかろうと
普段、彼女が飲まないような酒を用意したのだ。

「今はゆすら様は何処に……?
 本殿のほうでしょうか?」

603横島なつき:2011/06/10(金) 23:05:32 ID:bYREkklM0
>>602
「ゆすら様とお知り合いだったんですか!」

ナツキはなーんだ、と眉をひそめて楽しげに笑う。
といっても、よく人が来る神社だし、よく出歩く神様だし、
どこでどういう人と関わり合いになっていても不思議はない。

「お礼ってことは、ご祈願か何かなされたんですね。
 ゆすら様は、えーっと……。多分いたと思いますけど今はどうだか。
 けど、ちょっと出かけてても、本殿に向かって呼びかければ通じると思いますよ」

どうぞ、といった感じに手で拝殿、その奥にある本殿を示す。
そうして小百合を先導するように、パタパタと雪駄を鳴らして歩く。

604黒沢小百合:2011/06/10(金) 23:14:28 ID:SSMHlh/20
>>603

「ええ、以前に何度かね。
 貴方こそ、ここでバイトをしていたなんて……。
 少し、驚いてしまいましたよ。」

ふふ、と穏やかに笑いながらなつきの後ろについていく。

ぼんやりとした灯りによって照らされた夜の神社は中々ムードがあり、
小百合は気が引き締められるような感覚を覚えた。

「ゆすら様、いらっしゃいますか。
 ゆすら様……?」

本殿の前で、何度かゆすらへと呼びかけるが、
彼女の声は返ってこなかった。

605横島なつき:2011/06/10(金) 23:38:15 ID:bYREkklM0
>>604
「えへへ、何度かいらしてたなんて。私も驚きです。
 今まで居合わせなかったのが不思議ですね」

凛としたスーツの女性が拝殿の前に立つ様子は、何とも絵になる。
小百合の流れるような黒髪を見て、この人は和服もきっと似合うぞ、と、
ナツキは少し関係ないことを考えながらも、小百合にならってゆすらを呼ぶ。

「ゆすら様ー。お客様がお見えですよー」

長閑な声を上げ、がらんがらん、と賽銭箱に据えられた鈴を控え目に鳴らした。

606ゆすら:2011/06/10(金) 23:40:05 ID:yoK3W6uY0
>>604-605
代わりに応えるように、本殿に安置されている御神鏡がガタガタと揺れ始める。
……いや、違う。御神鏡が置かれている祭壇自体が揺れているのだ。
祭壇の下からは、漏れ出るマグマのように、黄金色に輝くエネルギーが噴出している。
そのエネルギーは清浄な気を内包しながら、同時に荒々しい。

とりあえず、後ろに下がった方が良さそうだ。

607黒沢小百合:2011/06/10(金) 23:47:28 ID:SSMHlh/20
>>605-606

「……下がって。」

尋常ではない様子の御神鏡を見た小百合は、
何か危険な気配を感じとり、なつきを静止するように手を伸ばして一歩前に出る。

何かあった場合、自分を盾にするためだ。

「ゆすら様、これは一体何です?
 ふざけているのであれば、すぐにお止めいただきたい。」

敵意だとか悪い気配は感じない。
寧ろこの気高い神気は紛れも無くゆすらの物だ。

小百合は、あの茶目っ気のある神の事。
もしかしたら自分を驚かそうとしているのかもしれない、と考えた。

608横島なつき:2011/06/10(金) 23:54:55 ID:bYREkklM0
>>607-608
「……ひゃ」

ナツキは自然と、小百合に庇われる形となる。
ゆすらが出顕の際ごとごと音を立てることはあったが、
今回は、いつものお出ましとは少しばかり様子が違うようだ。

小百合の様子をナツキは大げさだと思いながら、
その毅然とした立ち振る舞いに心強さを感じていた。

「…………」

ナツキは黙って胸元に剣を抱き、小百合の腕越しに本殿を見通している。

609ゆすら:2011/06/11(土) 00:00:12 ID:yoK3W6uY0
>>607-608

光は祭壇を徐々に移動させていき、祭壇の下にあったものを見せる。
それは、本殿の床にぽっかりと開いた穴であった。
穴の中には地下の大河と言わんばかりの、黄金色のエネルギーの奔流が見え、そこから時折、エネルギーが噴き出している。

「ういっしょ!」

と、どこかで聞いたような声と共に、その穴から今時珍しい、濃い緑に渦巻き模様の大きな風呂敷包みが飛び出して、本殿の床に着地した。
続いて、穴の縁に子供のような手がかかり、穴からひょっこりと、巫女装束の幼い少女が顔を出す。

「ふいーっ、あそこまで行くのは一苦労どころではないのう……。
 ……ふむ? なつきどのに小百合どのではないか。どうした? 本殿まで来るというのは、珍しいの」

意外そうな顔で、少女、ゆすらは二人に話しかける。
……どうやら呼びかけに応えたわけではなく、丁度どこかから戻ってきたところらしい。

610黒沢小百合:2011/06/11(土) 00:11:26 ID:SSMHlh/20
>>608-609

「こ、これは一体……?」

あ!やせい(?)のゆすらが飛び出してきた!

……もとい、飛び出してきたゆすらの姿と
小気味よい声になにやら気を抜かれてしまったのか
はあ、とため息をついた。

「すいません、どうにも警戒しすぎてしまったようで。」

なつきを守るように差し伸べていた腕を引っ込め、
少し困ったように、笑みを浮かべる。

「……いえ、この前の例としてお酒を差し上げようかと。
 ゆすら様は、本殿の床下で一体何を…・・・?」

611横島なつき:2011/06/11(土) 00:20:48 ID:bYREkklM0
>>609-610
あっけらかんとしたゆすらの様子に、ナツキは小さく溜め息をつく。

「ゆすら様、おかえりなさい。……大きな荷物」

神鏡、本殿が門として使われることに
もはや違和感を抱かないナツキは、荷物の方に驚く。
風呂敷包みの中は、どこかへ出かけた土産の品だろう。

>>610
自分を守ろうとしてくれた小百合に、ナツキは微笑んで頷く。
と、そこで、今回の用件である小百合持参のお酒に目が止まる。

「……あ、そうだ。私、おつまみ持ってきますね」

主人と客とが揃って、上質な酒がそこにある。
ならばやることは一つだと、ナツキはパタパタと通用玄関へ向けて駆けて行った。

612ゆすら:2011/06/11(土) 00:33:50 ID:yoK3W6uY0
>>610-611
なつきの出迎えの言葉に、「おう!」と笑顔で応えたゆすらは、
酒を持ってきた、という小百合の言葉に目を輝かせて、

「ほう、それは有り難い話じゃの! このところはあまりに忙しゅうて、酒の類には縁が無かったゆえ……」

穴からはい出たゆすらは、吹き上がる光に髪をなびかせつつ、移動した祭壇を穴の上に戻す。
再び祭壇の下になった穴は、まだ光を漏れ出していたが、ゆすらが御神鏡を逆の位置に置き直した途端、光ははたと止まった。

「今の穴が気になるか、小百合どの? あの穴はな、直接龍脈の流れに通じておった穴での。
 時々、こうして龍脈の中を移動するんじゃ。足で行くより断然、こちらを使った方が速くて、つい横着の道具にしてしまうんじゃが……」

風呂敷包みを横目に見て、

「今回はちと、この方法でしか行けない場所に行っておったでな。驚かせて悪かったの」

613黒沢小百合:2011/06/11(土) 00:45:22 ID:SSMHlh/20
>>611

「申し訳ありませんね。気を使わせてしまって……。」

しかし、正直なところ神社にカシャッサにあう
おつまみがあるのか少し不安だ。

やはり素直に、日本酒でも持ってきたほうが良かったか
などとなつきの後姿を眺めながら、小百合は考えていた。

>>612

「ええ、ミナス・ジェライスの添加物なしの本物のカシャッサです。
 日本酒ではないですからお口に合うかどうかはわかりませんが……。」

飾り下の無いラベルの貼られた、
透明のボトルを紙袋からだしてゆすらへと渡す小百合。

しかし、その眼は例の龍脈へ注がれていて。

「直接龍脈を移動……そんな事ができるのですか……。
 というよりも、龍脈というものは目視できる物だったのですね。
 てっきり、姿かたちの無いものだと思っておりました。」

アレほどのエネルギーがあるのなら、どうにかして
発電などに転用できないか、とぼんやりと考える小百合であった。

614横島なつき:2011/06/11(土) 00:58:27 ID:bYREkklM0
>>612-613
程なくしてナツキが戻ってきた。
右手のバスケットの中には、柿ピー、あたりめ、コンミート、レーズン、
缶詰のパイナップル、小包装のチョコレート、サラミ入りプロセスチーズなど色々入っている。

「はいはいっ、お待たせしましたー」

左手のバスケットには、砂糖のビン、クラッシュアイス、そして100%ライムジュース。
未成年のナツキが何故カシャッサに対してこういう品を選定できるか謎であるが……。
兎も角ナツキは一通りのものを揃えてやってきた。

「ところでゆすら様、その風呂敷包みの中身は何なんですか?」

そんなことを言いながら、よいしょ、と、
拝殿から続く濡れ縁に腰を下ろすと、二人に手招きをした。

615名も無き異能都市住民:2011/06/11(土) 01:00:25 ID:HnkBBDEo0
――ガサガサガサガサ

 近くの茂みが動く。
 いや、茂み自体がまるで生き物のように動いている。

――ガサガサガサガサガサ

 茂みはつまみと酒の近くまでやってくると、

――ひょいっ

 茂みの中から手が出てきた。
 それはしばらく辺りを探るように這っていたが、やがてつまみのコンミートを掴むと、

――ヒュバッ

 もの凄い勢いで引っ込んだ。

――むしゃむしゃむしゃむしゃむしゃ

 しばらく、茂みの中から咀嚼音が響く。

616ゆすら:2011/06/11(土) 01:11:38 ID:yoK3W6uY0
>>613
「舶来物の酒か。舶来物は確かに日ノ本の酒ではないゆえ、変わった味がするが、嫌いではないぞ?
 米以外で作る酒というのは、むしろ興味深いものじゃて」

小百合から渡されたボトルを抱えながら、ゆすらはラベルの表記を見るが、
日本語表記でないためにまったく読めなかった。

「?? ……小百合どの、これは一体、何で出来た酒なんじゃ?」

疑問を小百合に投げかけたゆすらは、小百合の意識と言葉が龍脈に向いているのに気付き、

「ああ、龍脈で移動することは出来るが、だからと言って試してはいかんぞ、小百合どの。
 それは私のような、実体を持たぬ神霊が可能とするものであって、実体のある者が龍脈に足を踏み入れれば、
 途端にその大きな力の流れに引き裂かれてしまうでな。
 龍脈に流れているのは大地の力、言い換えれば、この星の力なんじゃ。それゆえの力の大きさだと思ってくれい」

>>614
そこまで小百合に話したところで、なつきが戻ってくる。

「お、おお……なつきどの、そのような数のつまみを、一体どこから……?」

圧倒されながらそれらの品々を見るゆすらは、そういえば最近の台所はなつきどのが取り仕切っているのだったな、と思い出す。
そして、自分が携えてきた風呂敷包みに言及されたゆすらは、本殿から風呂敷包みを持ってきて、

「これの中身はな、見ればわかるぞ」

解いた風呂敷の中に入っていたのは、見た目にもみずみずしい色つやを持った、大量の桃だった。

「黄泉の桃じゃ。以前、話したことがあるじゃろう?」

617ゆすら:2011/06/11(土) 01:18:21 ID:yoK3W6uY0
>>615
「…………で」

なつきに風呂敷包みの中身を説明したゆすらは、食いしん坊の「茂み」に目を向け、

「そこな君子。出て来やれ」

ゆすらがパンと両の手を打つと、何もない虚空から、その「茂み」に向かって、バケツ一杯分の水がぶちまけられた。

618黒沢小百合:2011/06/11(土) 01:25:42 ID:SSMHlh/20
>>614

「なんとまあ、一体この神社の何処に
 こんなモダンな代物が……。」

とりあえずここまで用意されては、と。
カシャッサにクラッシュアイスと砂糖、ライムジュースを混ぜて
カイピリーニャにしていただく。

「ふう……普段はあまりこういうものは呑まないのですが、
 たまに呑むとなんとも言えない異国情緒を感じますねー……。
 南国の強い日差しとプランテーションの様子が思い浮かぶようです。」

>>615

そうして、何かおつまみをつまもうと手を伸ばした矢先……。

――ガサゴソ

「………どうやら、無粋なやからが紛れ込んだと見える。」

小百合は、つまみを拝借する謎の茂みを
ヒールで思い切り踏みつけた。

>>616

「サトウキビを蒸留して作った酒ですよ。
 ゆすら様には珍しいかと思い持ってきたのですがお気に召したようなら。」

小百合は、薬と笑って残りのカシャッサを流し込む。
既にアルコールが回り始めているのか、ほんのりと赤く染まった頬が
なんとも女性らしく艶やかだ。

「星の力……なんとも雄大な物ですね……。
 実体を持たぬ、というと……?」

小百合は、目の前にしかと存在するゆすらが『実体が無い』というのがよく
分からないらしくなんだか納得のいかない表情を浮かべた。

619横島なつき:2011/06/11(土) 01:40:19 ID:bYREkklM0
>>615
「私のコンミート……」

馬肉入りの安いコンミートは自分用だったのか、
若干がっかりしているようだが、ゆすらと小百合の挟撃を目の当たりにして、
自分がこれ以上、茂みに向かって何かしようという気にはならないようだ。
もっとも、元からそのような大した度胸は持ち合わせていないが。

>>616
「桃! 以前話してらした黄泉平坂の桃ですか」

すっと、その内の一つを手にとってみる。

「見た目には……どこが違うという風には見えませんね」

だが、大きさといい色つやといい、紛れもない一級品だ。
割って食べたら美味しいのだろう、と、ナツキの目にはありありと好奇心が浮かんでいる。

>>618
「えへへ、半分は私の私物です」

ラムやカシャッサといった酒には、甘いものが合う。
特に南国の気風高いカシャッサには、チョコやドライフルーツはぴったりだ。

ゆすらと小百合の龍脈の話にも興味を注いで耳を傾ける傍ら、
ナツキは先ほどから、カシャッサの瓶にチラチラと視線を送っている。
……飲む気でいるのだろうか。

620綿鬼大御神:2011/06/11(土) 01:40:49 ID:HnkBBDEo0
>>617>>618
――じゃぼん

 水をかけられ、

――ぎゅむっ

 そして踏まれ、
 しばらくシーンと動きを静めたが、やがてプルプルと振るえだし、

「何をするか貴様らァアアアアアアアアアアアアアア!!」

 茂み(自作)を放り投げ、中から白髪の少女が顔を出す。
 びしょ濡れの着物の裾をズリズリと引きずりつつ、ゆすらに向かってズカズカと歩く。

「確かに儂とて、勝手に貴様の領分に入った落ち度はあれど!
 唐突に冷や水をかけるとは何事か!
 多少儂より神気があるからって調子に乗っておるんじゃないぞ!
 そこの人間もだ! 儂の領分ではないとはいえ、神に手を出せばどうなるかおりゃぎゃうッ!!」

 コケた。
 着物の裾に躓いてコケた。
 そして、

「……もういい、やる気のうなった。
 全てどうでもようなった」

 いきなり脱力したかのように地面に伏せたまま、しくしくと泣き始めた。

「もういいんじゃ。儂なんてもういいんじゃ。どうでもいいんじゃ。
 久々に目覚めれど儂の領分の神気は一向に満ちぬ。
 信仰してくれる者も無し。住処も朽ち果て荒れ果てるだけ。
 腹が減っても喰うものは無し。
 恥をしのんで他の神の領分に忍び込めば、この有様。
 もういいんじゃ。儂なんて……儂なんて……」

621ゆすら:2011/06/11(土) 02:01:28 ID:yoK3W6uY0
>>618
「ほう、サトウキビの酒とな……。
 確か琉球……ではなくて、沖縄にもサトウキビを使った酒があったと記憶しておるがの。どれ……?」

沖縄のそれとは違うのか、と思いつつ、ゆすらも小百合に倣って口をつける。

「うむむ〜〜っ、これはまた、今まで口にしたことのない味じゃ。
 じゃが……悪くない、決して悪くないぞ!」

ゆすらは飲む度に口をすぼめているが、好印象のようだ。
ちびちびと飲んでいるために小百合ほど酒が回ってはいない様子ではあるものの、いつもより朗らかな表情をしている。
しかし、話が自分の実体の件に及ぶとやや顔を引き締めて、

「ふうむ……何と言ったら良いかな。
 小百合どの、例えばこの緋河神社以外の神社に、私のように姿を持った神を見たことがあるかの?」

>>619
なつきが桃の話を覚えていたことに、ゆすらは頷いて、

「うむ。死の気配を容易くはね除ける、かの神話の桃。その末裔たちじゃ」

いかにも食べたそうにしているなつきに、少し意地悪な顔を向けた。

「ひとつと言わず、ふたつ、みっつと持って行っても良いぞ、なつきどの。
 じゃが……その桃は、神の桃。この世ならぬ旨みを持つゆえ、それを食べたが最後、他の桃は口に入らんぞ?」

>>620
「茂み」から飛び出てきたその不審者が、自らと同じ神気を持つ者だということもそうだが、
それ以上にゆすらが衝撃を受けたのは、彼女の口調であった。

(妖怪キャラ被り、だと……!!)

以前、ちょっとした用向きで高天原に帰った時に、比較的若い神からその妖怪の存在を聞いた。
「ゆすらさん、神だからって昔と同じ喋り方だと、そのうちそいつに会っちまいますよ」
……彼の言葉が、ゆすらの耳にフラッシュバックした。

「…………ま、まあ、ぬしも大変じゃったのじゃな……。なつきどの、この者に出来るだけの物を供してやってくれ。
 というか、私の他に居を構える神が居ったとはのう……」

ゆすらはなつきにそう頼み、高天原が言っていたこととは違うのう、とか、あの神、仕事が適当ではないか、とかを呟いた。

622黒沢小百合:2011/06/11(土) 02:08:55 ID:SSMHlh/20
>>619

「何をちらちらと見ているのですか?
 貴方はまだ学生でしょう。飲酒はいけませんね。」

小百合はなつきの視線に気づき、カシャッサの瓶を
体を挟んで反対側、なつきから見えない位置に隠した。

「若年からの飲酒による弊害は世間にも広く知られていますが
 何分、飲酒をすると自分を律する事ができず風紀というのを乱す者も少なくない。
 あなたはその昔、酔っ払いは見苦しいといって飲酒をしなかった
 神聖ローマのシャルルマーニュや前漢の光武帝を見習うべきです。」

>>620

「人の物を盗り、貪った口でそれを言うか。
 盗人猛々しいとはまさにこのことですね。」

小百合は、綿鬼に対して侮蔑を混ぜた視線を送り、
ほとほと困ったといった風に、せせら笑う。

「この場でお前を逮捕してやっても良いのですよ。
 それほど食べ物に困っているなら留置場の粗末な飯を食えばよい。
 世の中には、生活に困り留置所や刑務所の飯目当てにわざと捕まるものもいますから。」

>>621

「ふふ、おいしいならおいしいと素直に言えばよろしいのに。」

小百合はゆすらの様子に笑みをこぼし、
自分も2杯目をすっと飲み干す。

「……ええ、我が主夜刀神もそうですし。
 私の形式上の部下にも、イザヤという天狗の土地神がおられますが。」

小百合は普段、どちらかというと神を軽視する人間であるが
以外にも、様々な神性との交流を持っている。

623綿鬼大御神:2011/06/11(土) 02:27:02 ID:HnkBBDEo0
>>621
「この都にも、居を構える神はたくさんおろうに。
 まぁ、儂の社は辺境中の辺境もいいところじゃがな。
 辺境故に誰もいない、寂しい場所よの」

 地面にゴロゴロと転がりつつ、ぷくーとふくれる。
 薄汚れて見えるのは、水をかぶったからだけでは無いだろう。

「誰からも信仰されぬ、管理もされぬ神は
 ただ忘れ去られてゆくだけよ。
 フフフ……御主もいずれは、そうならんようにな……フフフ」

 嫌な笑い方をする少女。

>>622
「くっ、この人間如きが……」

 歯をギリギリと鳴らしつつ、小百合を見上げてにらむ。

「儂とて腐っても神ぞ。
 信仰こそされ、下賤な者と並んで飯を食らうなぞ御免じゃ!
 あな悔し! 力が戻っておれば、貴様なぞまず最初に鱠切りにしてくれておるのに……!」

624横島なつき:2011/06/11(土) 02:27:31 ID:bYREkklM0
>>621
「うーむむむむ……。凄く美味しいものを食べて、
 程度の低い品に下が合わなくなるってこと、ちょっと経験ないですけど……」

ナツキはジャンク品でも美味しく頂ける舌の持ち主だ。
美味しいに越したことはないが、安物でも充分いける。
そんなナツキには少し想像が及ばない。

「そんなになんでしょうか。すっごい食べたいような、やっぱり食べたくないような……」

そもそも生身の人間が天界の食べ物を口にして大丈夫だろうか、という心配も少しあった。

>>620
『(ゆすら様のお友達……なのかなぁ。
  普通にお客さまとして来ればいいのに……)』

と、内心至極もっともなことを思いつつ、口には出さない。

「あ、あの、よろしかったら、どうぞお掛けになって」

と、自分が座っている位置をずらし、
バスケットの中のおつまみと、勝手だがカシャッサを勧める。

>>622
「ですよねー……。分かってます。未成年ですもん」

肩をすくめて、大人しく引き下がる。
風紀是正の責任者だ、このくらいは予想していた。
別に、いま飲む必要もない。
頂き物なのだから、誰もいないときにこっそり楽しめばいいのだ。

だが……。

『(あの白髪の、ゆすら様の友達っぽいの、飲みそうだなぁ……)』

と、現金な心配をしていた傍ら、意外な言葉が耳に入った。

「え、部下?! 天狗のイザヤさん、って、あのきらきらした銀色の?」

鴉天狗のイザヤは、神社に来訪したことのある人物だ。
お互い直接名乗ってはいないが、会話の中で名前は把握していた。

625綿鬼大御神:2011/06/11(土) 02:32:42 ID:HnkBBDEo0
>>624
「ほぉおう、気が利くな貴様。
 名はなんという?
 格好から見るに、この神社の世話をしておる巫女の者じゃろう。
 なんなら儂の社の方もたまにで善いから世話をせんか?」

 早口に喋りつつも、目の前に出された酒と食べ物をバクバクと食べ始めた。

「うおおお……これは……おお……」

 涙を流しながら食べている。
 恐らく久々の食事だったのだろう。

626ゆすら:2011/06/11(土) 02:45:13 ID:yoK3W6uY0
>>622
「舶来物には希に、とにかく強い味をぶつけて感覚を麻痺させるような物があるゆえ、
 一口二口飲んだくらいではそうはっきりとは言えんのじゃ、堪忍してくれ。
 ……むむ、しかし、これは…………ふむ、いける」

やはり美味に感じているようで、ちびちびやっていたペースが少し上がっている。

「おっと、そういえばそうじゃの。夜刀神、イザヤどの……あとは、そこの「神さま」もな」

白髪の少女に、ちらりと目を向ける。

「じゃが、それらの者どもは例外じゃよ。小百合どの、一般的、な話じゃ。
 例えば、元旦の初詣。どこかの神社に人が集まる光景を、よくテレビでやっているじゃろ?
 そこに神の姿を認めたことがあるか?」

手にした杯に目を落とす。杯に入った酒の水面には、幼い少女の姿をとった神が映っていた。

「神というのはな、小百合どの。基本的に霊体なんじゃ。ほれ、神霊、と書くじゃろ?
 私のように、実体を伴っている方が異端なんじゃよ」

>>623
「辺境にあって、それなりの歴史がある社であれば、分社があってもおかしくないんじゃがのう……」

少女の言に、ゆすらは首を捻る。

「確かに、今の民草に昔ほどの神への信仰があるかと言えば、それは違うが、
 それも人が、科学や文学のような、自らの内なる神に気付いたゆえの結果じゃろう。
 人を守護する神たる身としては、むしろ喜ぶべき様とは言えぬか?」

人が真に発展するのであれば、信仰は必要ではない、というのがゆすらの考えだ。

>>624
唸るなつきに、ゆすらは笑みを見せて、

「はは、冗談じゃよ、なつきどの。この桃にそんな呪いのような効果があるわけがないよ。
 ただ、私の主観で言えば、これ以上の味わいのある桃はこの地上には無いな」

風呂敷からひとつ、桃を取り出して、その色つやに満足そうに頷く。

「何せ、これは私が育てた桃じゃからな。自分で育てたもの以上に、美味いものはないと思うのだよ。
 だから遠慮無くかじりついてくれ、なつきどの。黄泉の縁で私が育てた桃の感想を聞かせてくれ、な?」

627黒沢小百合:2011/06/11(土) 02:54:07 ID:SSMHlh/20
>>623

「おお、怖い怖い。では鱠切りにされる前に
 貴方を留置場へ送り込んでしまうとしましょう。
 ふふふほらほら……。」

小百合は綿鬼によく見えるようにディスプレイを向けながら
1、1、0と3回、ゆっくりとボタンを押した。

「すぐに警官が来て貴方を連れて行くことでしょうよ。
 神とやらが窃盗で捕まるとはなんともはや……。」

>>624

「はい、天狗のイザヤで間違いありません。
 一応、私の部下という扱いで社会勉強のために働いていただいておりますが。」

妙に食いつきのいいなつきに少し驚く小百合。

「もしや、お知り合いなのですか?」

>>625

「これが神、なのですかねえ……。」

小百合は納得いかない、という風に
冷めた視線を綿鬼へと向けている。

「ふむ……なるほど、そういう理由があるのですか……。
 どういうわけかは分かりませんが……っと?」

小百合の体が、不自然にぐらりと揺れて。
どうやら、悪酔いしてしまったらしく顔が赤い。

「す、すいません……どうやら少し酔ってしまったようです。
 もう少し話をお伺いしたかったのですが、今日はこの辺で……。」

ふらふらとしながら立ち上がる小百合。
彼女はそのままの足取りで、足早に神社から立ち去ってしまった。

628横島なつき:2011/06/11(土) 03:02:58 ID:bYREkklM0
>>625
「わぁっ! いっぺんに食べちゃ駄目なのに!」

私のお楽しみが! という言葉をナツキは飲み込んだ。
お供え物だと思って、大歳の客だと思って……。
ちゃんと我慢することにしたようだ。

「せ、せめて、味わって食べてください……」

>>627
「はい、えっと、以前神社にお越しになったことがあるだけですけど……」

凄いなぁ……。と、聞こえるか聞こえないか、そう呟いた。
確かに田舎上がりとは聞いていた。その神様が小百合の元で社会勉強とは……。
と、今聞かされた以上の事情を知る由もないナツキは、そう評価をしたようだ。

>>626
「あぁ、そういうことなら……」

ゆすらが育てた、という言葉が何もかもふっ飛ばしたようだ。
さっきまでの思案の影はどこへやら。
その木の剪定に用いられていたという、浮瓠量を抜き身で膝の上に。
刃に這わせるよう桃をあてがって回し、皮をむくと、ナツキは桃に齧り付いた。

ぱくりと一口、ナツキは口元に手を当てて、濡れ縁から垂らした足をぱたぱた。
味が口に広がるのに合わせて、花が咲くように笑うと、ゆすらに向かって小さく頷いた。
小さく喉を鳴らしてその一口目を飲み込んで、

「……酔っ払いそうです」

ふへへ、と口元を弛めた。
なるほど、神仙の口にする甘露とはこれのことか、といった具合のようだ。

629綿鬼大御神:2011/06/11(土) 03:07:01 ID:HnkBBDEo0
>>626
「あー、どうやら貴様とは存在の在り方が違うようじゃな」

 コップに注がれた酒を一気に飲み干し、綿鬼はゆらりと立つ。

「儂はのう、他者から信仰……つまり、存在認証を受けて、
 初めてこの現世に『神』として『存在』できておる。
 つまり、儂は他者からの信仰がなければ……んーと、」

 ここで少し言葉を濁し、

「『神』としては、存在できんのじゃ。
 ま、この世には様々な神がおるでな。八百万とも言うし。
 少なくとも儂という神の在り方が、こうなのじゃよ」

 フフフと笑いつつ、あたりめを噛む。

「ま、儂とて人々が内なる神に気付いたことに、悪しきことは思うとらんよ。
 むしろ善きことかな。じゃが、今度は儂が困る。
 フフフ、真に強く、難儀で厄介な者よの。『科学』という神とやらは」

>>627
「待て、まーてまてまてまてまてまて!」

 しかし既に時遅し、小百合の親指は「通話」と書かれたボタンにまで伸びている。

「善し、人間よ取引といこう。貴様がその携帯型伝承器の動作を止めるならば、
 儂は変わりに……ええと、なんじゃろう……」

 取引材料は悲しいことに無かった。

>>628
「味わっておる! 味わって……ごくん」

 殆ど噛まずに飲み込んだ。

「しかし御主も偉いものよのう!
 まだ二十もいかぬ歳であろう?
 この歳でよくぞまぁ

――ピーポーピーポー

 なんじゃ五月蝿いぞ」

――ピーポーピーポー
――キキーッ
――バタン
――ザッザッザッザッ

――「この子か、通報があったのは」
――「どうします?」
――「とりあえず、小百合さんの言うとおりに留置所送りだな」
――「やれやれ、こんな子供がねぇ」
――「保護者が来るのを待つか」


「待てやめろ貴様! 神に向かって何を! あ! やめ! のあー! あーぁぁぁ……ぁぁぁ……」


 こうして綿鬼大御神は、留置所へと放り込まれてしまった。

630あしゅれい:2011/06/11(土) 03:24:04 ID:yoK3W6uY0
>>627
「はは、は、神にも色々居るということじゃ……」

白髪の少女に冷たい視線を向ける小百合に、ゆすらは苦笑いを浮かべて応える。

「まあ、力のある幽霊程度に思っておけば、正解ではなくとも近いじゃろうて。
 それで……」

二の句を継げようとしたゆすらは、悪酔いしたらしい小百合の様子を認める。

「……大丈夫か、小百合どの?
ああ、ゆっくり休めよ。ぬしほど、休息を必要とする人間はそうは居るまいて」

そう言って、去る小百合の背中を見送った。

>>628
もはやなつきと託生の身となった十握剣、浮瓠量を使って桃の皮をむき、
その身にかじりつくまでを見届けたゆすらは、なつきの短く、しかし十分すぎる感想ににやりと笑い、

「ふふふ……そうであろうとも。
 系譜は一級、育ての水も一級、三級なのは土地くらいのその桃が、美味くないわけがなかろうて。
 これで酒でも作ったら、どれほどの逸品ができるものか……」

手にした桃を風呂敷の上に戻し、なつきの手にある剣と桃に目を戻す。

「しかし……十握剣と神の桃の組み合わせか。ふふ、今のぬしの前では、いかなる穢れも裸足で逃げ出すな」

>>629
「ふむ……ぬしはあれか、元々実体のあった類か?
 そうした神は信仰無くして、その存在を存続できぬと聞いた覚えがあるが……」

そう言えば、以前に会ったイザヤという神も、天狗から転じた神だったことを思い出す。
この都市には、そうした神が多いのかも知れない、とゆすらは考えた。

「そうじゃな。そこのところの制御がまだ覚束ないのが、「科学」という神の欠点じゃて。
 ……今のぬしは、その「科学」で武装した人間に、容易く取り押さえられる存在じゃがの」

ため息をついたゆすらは、白と黒にカラーリングされ、赤色灯を光らせる車に押し込まれる少女に、小さく手を振った。

631横島なつき:2011/06/11(土) 03:39:16 ID:bYREkklM0
>>629
「あ、あらー……」

引き連れられていく白髪の神様を、ナツキは見送ることしかできない。
さんざ酒肴を荒らされた恨みもあれど、流石にブタ箱は気の毒だ。
ナツキは顔の前で小さく柏手を打ち、名も知らぬ神様の無事を祈るのだった。

>>630
「黄泉の軍勢を退けた桃ですもんね。
 えへへ、大手を振って鬼退治に行けますね!」

ナツキはそう答えて、桃をもう一口。幸せそうに笑う。
……桃が魔を払うのは桃太郎の話ばかりではない。
大陸から渡り、宮中で行われた追難では、鬼やらいに桃の木の矢を用いる。
何より、豊穣の象徴として大神実命と名付けられた桃の神性は、

『現き青人草の、苦しき瀬に落ちて患い惣むときに助くべし』

生ける人々の苦難を退けることに集約されるのだ。

「こんなに一杯あると、色んな人にお裾分けしたくなりますね」

足早に去って行ってしまった小百合や、先の白髪の神様にも、
ひとつ持たせてあげればよかったかも、と、自分のものでもないのにナツキはそう思った。

632ゆすら:2011/06/11(土) 04:04:52 ID:yoK3W6uY0
>>631
「鬼退治……か。そうじゃな。その前に、供の者を選別せねばならぬがの。
 桃太郎という、かの最強の鬼斬りに肩を並べるなら話は別じゃが、
 さすがに今のご時世、猿、犬、雉ではやっていけんじゃろう?」

「鬼退治」の件で、ゆすらは少し寂しそうな顔をしたが、すぐにニヤついた悪戯っぽい顔になる。
その顔の裏で、ほの暗い考えを抱きつつあるのにも関わらず。

「……さて、なつきどの。機微に聡いぬしならば、もう気付いているのかも知れぬが……」

桃太郎の話題を終えたゆすらの言葉は、先刻までの気軽さを失っている。

「私は先頃の……」

小百合が去っていった鳥居に視線をやって、首を振り、

「ちょっとした事情で、少し穢れを受けてな。この桃はその浄化のために持ってきたのじゃよ。
 ……ああもちろん、ぬしに食べて貰うためのものでもあるがの。
 まあともかく、そういうことじゃから、お裾分けにするつもりであれば、また持ってくるよ。今回のは、その、勘弁してくれい」

言って、ゆすらはばつが悪そうに笑った。
「少しの穢れ」……それは、神の桃を大量に使う説明には、全然なっていない言葉だ。

「善は急げと言うでな。これから禊ぎに入るゆえ、私が出てくるまで本殿には入らぬように。
 でないと、なつきどのの玉の肌が黒ずんでしまうやも知れぬからの」

冗談めかして言いながら、ゆすらは五つほど桃を残すと、本殿に入っていった。
本殿の扉を閉めながら、先ほどのほの暗い思考を反芻する。

(……近いうち、私はなつきどのに斬られるやも知れぬな)

そして扉は、重苦しい音を立てて閉められた。

633横島なつき:2011/06/11(土) 04:45:39 ID:bYREkklM0
>>632
「そうですね。……大切なのは、頼れる仲間です」

ナツキは、続くゆすらの話には小さく相槌を打つばかり。
ゆすらの中の鬼に気付くことはない。
一瞬だけ見せた愁いの表情も、穢れの話と同じものだと思ったようだ。
杞憂で済めばと思っていたが、やはり気のせいではなかったらしい。
錠の向こうに消えたゆすらの背中に、そのことを思い知らされた。

……ならば、やらなければならないことがある。
ナツキは残された桃にも、ささやかな宴の跡にも、
閉ざされた重い扉にも背を向けて、境内に歩み出る。
そして、……手にした剣を抜き放った。
白い刃が光を浴びて煌めき、冷たく透き通った水が迸る。

「――水よ。清明き神よ、幸い給え。
 聞し召せ、大神実命、祓戸の大神達、八百万の神達」

足で踏み祈りを地に走らせ、剣を以て願いを空に掛け、詞を天に上げる。

「罪と言う罪は在らじと。穢れと言う穢れは在らじと。
 科戸の風の、天の八重雲を吹き放つ事の如く。
 朝の御霧、夕の御霧を、朝風夕風の吹き払う事の如く」

砂利を踏めば音が立ち、剣を振れば水が放たれる。

「大津辺に居る大船を、舳解き放ち、艫解き放ちて、大海原に押し放つ事の如く」

祝詞は朗々と、まさに川の流れの如く、澱みなく神社に広がってゆく。

「遺る罪は在らじと、遺る穢れは在らじと。祓い給い清め給い、幸え給うことを、此く申し奉る」

それは災厄を撥ね退け、万難を打ち倒すための言上げ。他でもない、小さき御主のため。

「いざ幸い給え、清明き水よ、優しき神よ。……私の――」

634トニー・ハーディガン:2011/06/15(水) 00:04:52 ID:SSMHlh/20

「まったく、いったいこりゃあどうした事だこの街は。
 何処もかしこも区画が無茶苦茶だ。」

前回のロージェンスとの交戦からだいぶ時間がたったが、
傭兵トニーは、彼女の姿を捉えられずにいた。

そう、彼はこの町特有の現象『歪み』に翻弄されていたのだ。

(思念や思考まで曲がりくねってやがらぁ。こら厄介だねえどーも……。)

彼は他人の思念を読み取ることができ、それを利用して
街のどこかに潜伏したロージェンスの思念を探していたが、歪みは思念の伝達にも
影響を及ぼすようで、一気に広範囲を探ろうとするとどうしても探査不能地域がでてしまうのだ。

635カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/15(水) 00:17:49 ID:1sJsd2CgO
>>634

 探知する思念の中に、覚えのあるものが引っ掛かった。
 例の『イレギュラー』だ
 あの時は、2つの同じなんだか違うんだか判然としない思念だったが。

 今は一つ。
 しかも近づいてくる。
 だが、気付いている気配は無い。

「……、……」
 ラフな服装で帽子を目深に被った女性。アレだ。
 手にビニール袋を提げて、今まさにトニーの横を通りすがろうとしている。

636トニー・ハーディガン:2011/06/15(水) 00:26:38 ID:SSMHlh/20
>>635

(ん、こりゃぁ……ははあ、あの時のアバズレじゃあないか。
 こいつぁ、ツいてる……。)

トニーは、禁煙用のガムを排水溝へと吐き捨て
それと気取られないように、カンナの後をつける。

例の思考を読み取る能力を利用した追跡は、範囲内ならば
例え姿が見えなくとも後を追う事ができるため、通常の追跡よりも格段に感づかれにくい。

カンナの後をつければ、ロージェンスの手がかり、
よくすれば潜伏先が突き止められるかもしれないがうまくいくだろうか。

637カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/15(水) 00:46:56 ID:1sJsd2CgO
>>636

 手に提げたドラッグストアのビニール袋には包帯や湿布、保存の効く缶詰などが入っている。

 カンナが追跡に感付いた様子は無い。
 だが、

「……あと、15分。走ればギリギリ間に合うかなー」
 時計を見て、呟いたと思うと。
 ――ダッ!
 突然、走り出した。

638トニー・ハーディガン:2011/06/15(水) 00:55:07 ID:SSMHlh/20
>>637

(走り出したか……気付かれた様子もなし。)

それと同様に、トニーも足を速める。
最大まで感度を高めれば、2,3ブロック程度離れても探知は可能。

足音で気づかれぬよう、さらに距離を離してカンナを追う。
とはいえ彼女が人間以上の速度で走れるならついていくことはできない。

639カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/15(水) 01:06:49 ID:1sJsd2CgO
>>638

 カンナはむしろ足は遅いほうであった。
 訓練も運動もしていないインドア派の成人女性、その体力は低い。
 しばらく走っては、減速して、また微加速しては、減速してを繰り返し、やってきたのはアーケード商店街。

「はぁ……、はぁ……。あー、なんとか着いた。でもっ、疲れたっ……」

 日戸アーケード、と書かれたゲートっぽい商店街の入り口手前で、しゃがみ込んで息を整えている。
 しかし、商店街の店は軒並み営業時間外。娯楽施設のある地下道も入り口は閉まっている。
 ここにいったい、どんな用事があるというのだろうか。

640『燃え狂う紅蓮の刃(ブラッドブラッドブラッド)』:2011/06/15(水) 01:07:12 ID:luIBWR560
>>638

何処から、だろうか。

突如現れた『敵意』。

否、『殺意』。警告めいた"純粋なる『殺意』"が、トニーに向けられ――


――そして、消えた。

641トニー・ハーディガン:2011/06/15(水) 01:17:29 ID:SSMHlh/20
>>639

(商店街……?ハッ、殺人鬼にしちゃあ中々可愛い潜伏先じゃないか。
 ……しかし、街中で無差別殺人をやるようなやつが本当にここにいるのか?)

店が閉まっている以上、このアーケードの何処かに潜伏しているのだろう。
トニーはそう考えたが日中人通りも多いはずのこんな場所に潜伏する物だろうか、
と一抹の疑問も感じる。

果てさて、この先は鬼が出るか蛇が出るか。

>>640

「おやあ……。」

自分に向けられた明確な殺気。
トニーは、戦いの予感に満面の笑みを浮かべながら
己の能力で周囲を探ったが……。

「…………?」

すぐに掻き消えてしまったそれは非常に奇妙。
とにかく、ここにはロージェンス関連の何かがあるはず、と確信し
PDAで商会に一応、ロージェンス潜伏疑いありと位置情報を送っておく。

642『燃え狂う紅蓮の刃(ブラッドブラッドブラッド)』:2011/06/15(水) 01:28:32 ID:luIBWR560
>>641
「不思議だろぉ? 『何も感じない』ってのはよぉ?」

背後から、男の声。

――この男、何も考えちゃぁいない。在るのは『単純明快な殺意』と

「俺ぁ、血に飢えてんだ。血ぃくれよ血ぃをよぉ!寄越せよこせよこせヨコセヨコセ!」

――それに伴う、『狂気』。

少なくとも、"まともではなさそう"な、片目の男が。

"二人"を視界に捕らえ、口を歪ませた。

643カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/15(水) 01:34:18 ID:1sJsd2CgO
>>641

 一通り、息を整えたようで、商店街を奥に進んでいく。
 その途中。

「……。――」
 ふと、後ろを振り向いた。
 だが、特に何もなく再び歩き出し、

 ――ガッシャァア……!
 ビニール袋の落ちる音。
 缶詰が転がり、包帯の箱が潰れる。
 カンナが気にしていた『時間』は、分身である自らの存在が継続する残り時間だった。

 後には、ただただ、静寂が残るのみ。

644トニー・ハーディガン:2011/06/15(水) 01:42:27 ID:SSMHlh/20
>>642-643

ふいに、追跡対象の思考が途切れる。

カンナの能力を知らないトニーには転移だとか空間移動だとか
そういった能力によるものだろうか、と推測を巡らすほか無い。

とにかく、今回は空振りだがもっと面白そうな相手を見つけた。

「ほぉう、この俺に感知できん物があるとは驚いたが……。
 『匂う』んだよ、君はな。狂おしいほどにこの俺の闘争心を掻き立てる狂気の臭いがなァ!」

男は、背後にいるであろう敵に向け静かに笑って見せた。

645ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/06/20(月) 23:41:07 ID:WVrfsEdY0
【異能都市は時間の流れが少し違う時も多い】
【その時は夕暮れ。商店街に紅い日が差し込んでいた】

「…あんまりからだうごかさないほうがいいのかなの…」
【以前に比べてだいぶ症状が収まった様子のその少女は】
【胸のあたりを軽くさすっていた。今でも少し不安なのかもしれない】

646ロザリア・ロートシルト:2011/06/20(月) 23:54:04 ID:SSMHlh/20
>>645

「もう、大丈夫なの……?」

背後から投げかけられる声。
ディスが呪いを掛けられて街をうろつくようになって以来
どこか疎遠になってしまったロザリアの声だ。

(一応、押さえ込むことには成功した……と聞いたけれど……。)

ディスに術式を施したメイプルはもともと、ロザリアがクロスを経て知り合った人物。
彼から、全て消し去る事は不可能だったものの、効力を相殺することに成功したと聞いた。
後は、上弦に頼んだ薬の効力次第か……。

647ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/06/20(月) 23:57:38 ID:WVrfsEdY0
>>646
「あう?ろざりあ…
 きてたの…」
【軽くため息を付いて返した】

「うん、いぜんみたいにからだがうごかなくなる、ってことはなくなったの…
 でもあんまりちからつかわないようにっていわれたから、
 たたかえない…かなの」
【その顔はどこか残念そうだった。】
「…へーき、へーきなの。」
【自分に言い聞かせるようにディスはつぶやいた】

648ロザリア・ロートシルト:2011/06/21(火) 00:07:05 ID:SSMHlh/20
>>647

「ディス、あの力はまだ完全に消え去っていないわ。
 だから無理に力を引き出そうとしてはダメよ。」

残念そうなディスの顔を覗き込んで、
お互いの額を合わせる様に。

「もし、これ以上あの力を使うなら……。
 私にも考えがあるわ。それだけは覚えておいて。」

649ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/06/21(火) 00:11:10 ID:WVrfsEdY0
>>648
「…うん…わかったの…」
【まだ少しだけ、未練がありそうな顔だった。でも…】

【額を合わせ、じっと見つめるロザリアを見て】
「うん…みんなとってもつよいからねなの…
 だから…みんなだいじょぶだよねなの…
 『ろざりあ』にめーわく、かけたくないからなの…」
【うん、と大きく頷いて微笑んだ】

650ロザリア・ロートシルト:2011/06/21(火) 00:20:30 ID:SSMHlh/20
>>649

「何も全てを自分でやろうとしなくていいの。
 できない事は出来ない、だから人に頼る……それでいいのよ。」

ディスの背後にまわり、肩に手を置く。

「さ、帰りましょう。貴方の家に……。」

651ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/06/21(火) 00:25:31 ID:WVrfsEdY0
>>650
「…うん、わかったの…
 その、ぜんぶひとりでやろうとしてたみたいなの…」
【ディスは少し、穏やかな声になった。】
【過多に手をおかれ、少し眼を閉じてディスはほほえむ】

「おうち、わかったの。
 おなかすいたからねなの…」
【肩に置かれた手をとって、いつもの無邪気な顔で少女は返した。】
【大事な友だちを失って、少女はまだこころに傷があるのだろう。】
【まだその笑顔には陰りが見られた。】

652ロザリア・ロートシルト:2011/06/21(火) 00:38:29 ID:SSMHlh/20
>>651

(……やはり、まだ時間が必要なようね。
 でも、焦ってはダメよディス。時間が全てを洗い流してくれるから……。)

ロザリアは、あえて言葉をかけずに自室への『門』を開いた。
ディスは若く、純真で『痛みを感じない』という得意な体質であるがゆえに
無茶をしがち。

また、彼女ほどの年齢では『大人しく時を待つ』という事が出来ないのも仕方ない。
しかし、それなりに長い時を生きてきたロザリアは時がディスをゆっくりと変えていくだろうと
信じていた。

653ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/06/21(火) 00:45:40 ID:WVrfsEdY0
>>652
「…むり、したらだめだもんねなの…」
【軽く微笑みながらも、まるで自分に言い聞かせるように
 少女はつぶやいた】

【未だ少女の心には焦燥と悲しみが渦巻いているのだろう】

【その姿はどこか危なっかしさを感じさせる】

「おふろ、はいりたいかなの。」
【家の中に入って、少女はそう呼びかけた。】
//このへんがタイミングよさそうかな?

654ロザリア・ロートシルト:2011/06/21(火) 00:55:37 ID:SSMHlh/20
>>653

「ええ、すぐに用意するわ。」

(まだ、私がしっかりしないと……。
 もどかしいわね、他人の事って……。)

ディスとロザリア、二人の少女の姿が消える。
彼女らの未来が、どう転ぶかはこれからのディスの選択に
掛かっていることは間違いない。

// んだねー、おつよー。

655逆瀬川 純鈴:2011/06/21(火) 18:10:06 ID:/lZA6WB6O
【『隠れ家』・扉前の部屋】

愛銃ブレン・テンの整備をしながら、少女は思案する。

――引っ掛かる、『鮫嶋商会』の存在。

『仲間』の調査で見付かった多数の『疑問点』。
それに、『彼女の記憶』からは見付けられなかった、『追われる理由』。


……『彼女の記憶』、と言えば、あの『大きすぎる空白』も、引っ掛かる。
『ブラックボックス』とは桁違いの『空白』。

――其処に"何も、無い"。

断片も、痕跡もない。

となれば――

「最悪の結論、なのかな……」

愛銃を組み上げ、立ち上がれば。

三三七拍子という合図(ノック)が、響き渡った。

656ロージェンス&カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/21(火) 20:07:24 ID:1sJsd2CgO
>>655

 逡巡に似たわずかの間。
 控え目に開けられた扉の隙間から微かに覗く銃口。
 そして、ひょっこりと隙間からカンナが悪戯っぽく顔を出す。

「いらっしゃーい。
 ……うん。こういう事やってみたかっただけなんだ、すぐ開けるよ」
 引っ込む、クローズ、チェーンを外して、フルオープン。


「ハッ。物好き第2弾……誰かと思えばアンタだったのねぇ」
 ベッドの上に座ったロージェンスは、訪問者の姿に薄く笑う。
 振る舞いこそ普段通りだが、点滴に繋がれたままの姿はまだ回復しきっていない事を語っていた。

657逆瀬川 純鈴:2011/06/21(火) 22:30:24 ID:qTWo7cRQ0
>>656
じとー、とサングラス越しの視線。
「……まー、ジョークが言えるくらい元気になったってことにしとくよ」
ゆっくりと部屋に入り、静かに扉を閉めた。

「で、調子は如何? できれば早めに、"逃げる準備"をするべきだと思うんだよねー」

サングラスを外して、少女は言う。
その眼は、笑ってなんかいなかった。

658ロージェンス&カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/21(火) 22:46:44 ID:1sJsd2CgO
>>657

「準備って何さ、都市カラ逃ゲラレナイのに2geru準備しても……」
 “逃げる準備”と聞いた瞬間、ロージェンスは機械的に言葉を吐き出した。
 その顔に感情は無く、ただただ虚ろ。

 何か、オカシイ。

 するとカンナが逆瀬川に近づいて、耳打ちするように伝える。

「……私も前から逃げたほうが良いって言っているんですけど。
 一種の強迫観念に囚われてるみたいで、無理に強要すると暴れて手が付けられなくなるんです」

659逆瀬川 純鈴:2011/06/21(火) 22:57:31 ID:qTWo7cRQ0
>>658
「あー……ごめんごめん。逃げるんじゃなかったね、うん、言い間違えちゃった」

あちゃー、とハンチング帽子を取り、頭を掻いた。

「ちょっとさ、休む場所を変えてみない? ここより住みやすいとこ、知ってるんだー」

苦笑いしても、その眼は、笑わなかった。

660ロージェンス&カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/21(火) 23:13:33 ID:1sJsd2CgO
>>659

「ああ、そう。なら良いかな、ところで具体的に何処?」
 目を細めて笑みを作る。
 だが、瞳に生気が無い。
 まるで、何かに操られているような……。

 前もってまとめていた荷物を持ってきたカンナは、ロージェンスの点滴を外して彼女に肩を貸す。

661逆瀬川 純鈴:2011/06/21(火) 23:20:37 ID:qTWo7cRQ0
>>660
「私の知り合いにね、裏側――まぁ、"私達向け"の喫茶店やってる人が居てさー。
 隠し部屋、貸してくれるって。
 下見してきたけど、中々広くて良いとこだったよ。
 あー、"どっかと繋がりのある人"じゃないのは確認済みだし、安心して」

そう言うと、一度、靴底を鳴らして。

「準備はいい? いいなら――行くよ」

再度、踏み鳴らせば。

    純鈴の目の前の床に、『歪んだ穴』が、開いた。

662ロージェンス&カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/21(火) 23:35:18 ID:1sJsd2CgO
>>661

 説明を聞き、くすりと笑む。

「ふふ、そういう事なら。大丈夫、ね」
 言うと、ベッドから降り。
 カンナに肩をかされ、穴へと落ちていく。


 …………。

 ……。

 ――

 考えてみれば、わざわざ“閉じる”必要は無い。
 繋がりを探知される事を危惧していたが……。
 これは双方向ではない。
 此方側からの一方通行なのだから。

663逆瀬川 純鈴:2011/06/21(火) 23:50:43 ID:qTWo7cRQ0
>>662

――其処は、まるで一軒家のようだった。
十二畳程のワンルーム、大きな窓からは日が差し込み、庭らしき場所には、様々な植物が、育っていた。

「"地下三階、庭付きのワンルーム"。
 閉め切った部屋じゃ体に良くないと思ったんだけど、どう?
 あ、外と同じように、日は暮れて日が昇るから、いいもんだよー」
だとか、後に続いた少女は言う。

「とりあえずさ、カンナちゃん、後で話があるからさー、色々一段落ついたら、上の喫茶店に来てね。
 ……あぁ、大丈夫だよ。"滅多なことじゃ、見つからない"」

それだけ言うと、扉を開けて、その先の階段を、登っていった。

664ロージェンス&カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/22(水) 00:04:39 ID:1sJsd2CgO
>>663

「ふーん。これは、なかなか……なるほど、なるほど」
 一通り部屋を見回して、まずはベッドへダイブ。

 荷物を広げて、とりあえず要る物を準備しているカンナを見てロージェンスは、
「行ってきなよ。後は私がやっておくから」
 と、カンナを部屋から出して、改めて部屋を見回した。
 なんだか、調子が良くなってきた気がする。そう、とっても。


 ――“喫茶店”

 案外早く、カンナは上ってきた。
 半ば追い出されるようにして部屋を出てきたのだから、早くもなる。

「……それで。私に話ってのは?」
 少し混乱気味の頭を整理しつつ、カンナは逆瀬川に訊ねる。

665逆瀬川 純鈴:2011/06/22(水) 00:17:45 ID:qTWo7cRQ0
>>664
庭、とはいえ此処は地下。生垣の向こうは壁であり、出入り口は、階段へと続く一つのみ。
しかし、"日が差す"、というのは、中々開放的な気分にさせるものだ。
鳥の鳴き声までするのだから、尚更だろう。

喫茶店<黒猫の雨宿り>。寂れた店内には、店主であろう老人と、少女の二人。
カーテンは閉め切って、入り口のドアには<クローズ>の表示。
「単刀直入に聞くよ。彼女――ロージェンスは、一体『何』? 」
向かいの席に座るよう促しながら、少女は、そう言った。

666カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/22(水) 00:37:18 ID:1sJsd2CgO
>>665

「……。どうだろう、指名手配者で私の担当する患者で異能力をもった女性。かな」
 逆瀬川の対面に座って、しばらく考えてから答えた。
 しかし、それは“何か”という問いに対しては、いささか的外れな答えだ。

「それより、ここって何、いったい何処なの。やっぱり逃げるって提案したからには、異能都市の外になるわけ?
 あぁ、それと、なにか飲み物もらえ……て、クローズドじゃ無理かな、もしかして」
 ドアにかかったソレを見て。
 あぁ、店なんだな。と思った。

667逆瀬川 純鈴:2011/06/22(水) 00:59:49 ID:qTWo7cRQ0
>>666

「……成程ね、ありがとう」

それだけ言って、顎に手をあて考え込む少女。
代わりに、老紳士が二人分のアイスコーヒーをトレイに乗せて、やってきた。
注文から、約三秒後。

「此処は『喫茶店<黒猫の雨宿り>』、異能都市内の裏通り、『歪み』の発生の多い地域に御座います。
 ……外へ出るのは得策では無いかと。彼女――ロージェンス様でしたか――の精神に、多大な影響を与えかねない、そう判断されたようです」

老紳士はアイスコーヒーをテーブルに置き、一礼しカウンターへと戻る。

「そうなんだよね、そうなんだ。外へ出せば、開放させるかもしれない。でもさ、何度か見て思うんだよね。
 まるでさ、外へ出れないように"『命令(プログラム)』されてるみたいだ"、って。
 他にも、色々思う点はあるんだけど――それらから導き出した結論が、ね」

アイスコーヒーを一気に飲み干し、真っ黒な瞳でカンナを見る。
そして、少しだけ、躊躇いながら。
カンナにだけ、聞こえるように。間違っても、ロージェンスに聞こえぬように。

――「そう、そんな訳無いと、思うんだけどね。彼女は、『ツクラレタモノ』、かも知れないってこと」

『接続』による"念話"で。カンナの脳に直接届く『音』で、そう言った。


//今日は此処で中断しても良いでしょうか...?

668カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/22(水) 01:36:09 ID:1sJsd2CgO
>>667

 考え込む少女を前に、カンナは老紳士に礼を言い、コーヒーに口をつける。

「……こんなところがあるなんて、いままで知らなかった。
 うん、分かった。ありがとう」
 都市に点在する『歪み』の特異点、ここは、きっとその一つなのだろう。
 それなら、普通は迷い込むかしない限り、まぐれでは辿り着けないだろう。

「……、……。まさか、そんなこと」
  プログラム
 “ 強迫観念 ”を植え付け、行動を制限する。
 そんなことが出来るとしたら、どうなるのだろう。
 いや、そんなことをされているのがロージェンスなのだろうか。
 だとすれば、誰が……。

「……っ!? な、なにを――」
 あまりにも突飛な推測に、思わず口を衝く言葉を、寸でのところで呑む。
 彼女が“念話”で話しかけてきた意図を察知したからだ。

(……だとすれば。今、アオギリさんが調べてる『バラバラ死体遺棄』と『ドッペルゲンガーの行軍』も、なにか関係が?)
 心中で独り言のように考える。
 ……きっと“念話”で筒抜けなのだろう。

//あいさ、了解。乙さまー

669逆瀬川 純鈴:2011/06/22(水) 20:52:06 ID:/lZA6WB6O
>>668
――「"有り得ない"話じゃあ、ないんだよね。
『彼女』の記憶、『覗いた』んだけどね。最近っから"無かった"みたいな『空白』が大半で、残りは短すぎる『記憶』と、ブラックボックス。
例えるなら――日記帳の最初から中盤までが"何も書いてないみたいに真っ白"で、終盤だけ書いてあるけど所々破れてそこらへんに落ちてる、みたいな感じかな」

言い終えると、一つ、溜め息。
表情から察するに、"筒抜け"、ではなさそうだ。
そしてはっと思い出したように。

――「そうそう、私に『声を』を届ける時はさ、喋りかける感じで頭に思い浮かべればいいよん。
とゆー訳でさ、何でもいい、何か知ってたら、教えて?」

670カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/22(水) 21:22:05 ID:1sJsd2CgO
>>669

 ……ページの途中から書き始めた日記。
 記憶喪失のようだったが、忘れていたというのは作られた記憶なのか?
 いや、重要なのはそこじゃない。
 記憶に今までが存在しないことだ。
 これは、普通あり得ない。

(……となると、やっぱり)
 考え込みそうになったところを、“これ”での話し方を教えられた事で引き上げられた。

――「……こう、かな。聞こえてるといいけど……。
 まぁ、ちょっと気になるっていうか。ウチの院長……アオギリさんが調べてる事となにか関連してるかも、と思って。
 少し前、都市の外で『Dr.サイクロプス』が関連するって言われる怪事件や噂話があって、その中に
 『ドッペルゲンガーの行軍』っていう、そのまま同じ姿同じ顔の人間がぞろぞろと足並み揃えて歩いていたという噂話と
 不気味な『バラバラ死体遺棄事件』があって、これはDNA検査で同一人物のものと特定されたバラバラの遺体が、いざ復元すると複数人分の遺体でしたって話」

 慣れない行為にやや不安を持ちながら、話しかけるようにして考える。

――「もし、この二つが関連してたら……。人造人間かクローン人間なんだろうけど、どちらも“ヒトを作ってる”わけだよね。
 あまり考えたくないけど、バラバラ事件のほうは“奇形の成人女性遺体”ってことで決着してるらしい、事実だから……」

671逆瀬川 純鈴:2011/06/22(水) 22:05:29 ID:/lZA6WB6O
>>670
再び考え込む少女。
腕を組んだり、顎に手を当てたり、額に手を当てたり。
その間に、二杯目のアイスコーヒーがテーブルに置かれるが、直ぐに一気に飲み干された。

――「その噂が本当なら、胸糞悪くなるね……
『人間』の複製……そして『量産』。
そんなのが出来るのって相当おっきいとこか…
資金も土地もあって、"そんなこと"をしても隠せるだけの、隠れ蓑。」

「……あ゛〜〜! イライラしてきた! 『人間(わたしたち)』をバカにしやがって!」

ばん! と大きな音は。
少女が、苛立ちを押さえられずに、テーブルを叩いた音だった。

672カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/22(水) 22:26:33 ID:1sJsd2CgO
>>671

「ひぅっ!?」
 大きな音に縮み上がる。
 そうして、恐る恐る。
 少し溢れたコーヒーを拭いて、一口。

「……でも、確たる証拠が足りないんですよ。
 ただ、どれも『Dr.サイクロプス』……つまり、アオギリさんが関係していると言われてるのは確かで。
 そんなこと、あり得ないのに……」
 呟くようにして口に出す。

673逆瀬川 純鈴:2011/06/22(水) 22:42:22 ID:/lZA6WB6O
>>672
「スケープゴートにされちゃってる、って訳ねー…
そのさ、アオギリって人、何処に居るの?
ひょっとしたらさ、何か知ってるのかも知れないし」

ほんのり首を傾げなから、そう言う少女。
まだ、イライラは治まらないらしく、靴底が何度も何度も床を叩いていた。

674カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/22(水) 22:58:43 ID:1sJsd2CgO
>>673

「スケープゴート……」
 おうむ返しして。
 一気にコーヒーを飲み干す。

「それが、今は都市の外……。
 組織的に監視されてるらしくて、自由に動けなかったんだけど。
 どうしても『Dr.サイクロプス』絡みの事件を調べたいって言ってきたから、私の“複製”を使って失踪に見立てて外に逃がしたんだけど……」
 今、何処に居るかは分からない。
 つまりはそういう事だ。

675逆瀬川 純鈴:2011/06/22(水) 23:16:52 ID:/lZA6WB6O
>>674
「むむむぅ……
なんとか連絡取れないかな……
『繋ぐ』にしても遠すぎ……ん?」

不意に、カンナを見詰める少女。
ぐいっ、と、顔を近付けて。

「カンナちゃん、アオギリって人の顔、思いっきり思い浮かべてみて。
君経由でさ、ひょっとしたらさ、『繋げられる』かもしれない!」

細かい説明一切無し。
なんだか無駄にテンションが上がっている少女であった。

676カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/22(水) 23:36:39 ID:1sJsd2CgO
>>675

「へ? あ、あぁ。わかった……」
 妙な食い付きに押され、倒され、言われるがまま。
 アオギリの顔……のみならず、全身を細かいディテールまで見事に頭に思い浮かべた。

 まるで、いつものことで慣れてます、と言わんばかりの早業だった。

 ……今、もし『繋げた』ならば。
 とある港にて、鮫嶋商会の寺打海産社長、寺打吉竹と沈黙をもって対面しているのが分かるだろう。
 丁度、そこでは黒沢小百合の手によって寺打海産の麻薬密輸が摘発されようとしているのだ。

//イベC参照。

677逆瀬川 純鈴:2011/06/23(木) 00:12:11 ID:hTWErvPY0
>>676
――カンナ経由での、『類似的遠距離接続』。
  魔術にある"類感の法則"を使い、"カンナが思い浮かべたアオギリ"に『接続』することで、アオギリ本人に『接続』できないか、と考えたようだ。
  即ち、カンナの思い浮かべた姿が似ていれば似ているほど、其れは成功率を高める。
   

「みいいいいつっけたっ! はず!」

しょうじょの ひとみが あやしく ひかる!
ポケットから小型端末を取り出すと、『接続先』を、端末に変更。

ぶぃん、と音がして、アオギリの様子が、立体映像として映し出された。

「ほうほう、これがアオギリって人?
 場所はっと……港? えーっとその周りに居るのは……"リョウくーん"、データ照合おねがーい」

端末から、へいへいとやる気の無い声。
どこか別の場所とも繋がっているらしく、声の主は、少女の仲間か。

678カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/23(木) 00:24:03 ID:1sJsd2CgO
>>677

「え、あ、はい。その通りです……アオギリさんなんで港なんかに……」
 その間にも立体映像の状況は刻一刻と変化する。

 目の前の相手と話していたと思ったら、
 瞬く間に白い煙に包まれ、見えにくくなった。
 催涙ガスである。
 そのあと、なにか動いたと思うと……。

 若干、映像がブレる。
 繋がりにくくなってきたようだ。
 カンナを経由することで、カンナの認識と、アオギリの現状にズレが生じているのかもしれない。

679逆瀬川 純鈴:2011/06/23(木) 00:33:57 ID:hTWErvPY0
>>678
ブレが生じた直後、端末から声がした。

「照合完了、『鮫嶋商会』、寺打海産社長、寺打吉竹。
 何でも港でドンパチやってるらしい。座標も送っておく」

「サンキュー、リョウ君頼りになるよー!
 てな訳でー、行ってみる? ううん、答えは一つ! 真実もいつも一つ!
 マスター、ロージャたんお願い!」

一つ頷くと、ロージェンスの居る部屋へと降りていく老紳士。

少女といえばテンション高めで色々言っているものの、"何か引っかかるもの"を見たらしい。
その瞳は、全然笑ってなんか居なかった。

680ミハエル・ラング/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/23(木) 01:03:54 ID:1sJsd2CgO
>>679

 ロージェンスの居る地下の部屋。
 その扉を開けた老紳士が見たものは“二人の人間”。

 片方はロージェンス。
 そして、もう片方は……。

「おや、ワタクシとした事が。お嬢さんとのランデブーを、老い先短そうな爺さんに見られるとはねぇ」
 立ち尽くしたロージェンスの手を取る男は、老紳士を見付けるといやらしく嗤った。
 ――アゼル連合国大臣、ミハエル・ラング。
 キッチリした紺のスーツを内側から押す身体は、鍛え上げられた戦士をも思わせる。

 その背後には『歪み』の残り香がわずかに立ち上っていた。

681老紳士:2011/06/23(木) 01:41:02 ID:/lZA6WB6O
>>680
「おやおや、失礼ですが、どなたでしょうか。
見たところ『客人』ではないようですが……さてはて」

老紳士がぱん、と手を叩けば、

壁一面に浮かび上がる魔法陣

――『対侵入者用空間凍結』――

「その『客人』に手を出すようであれば、この老体、全身全霊を持って対処致す次第に御座います」

出口は、ただ一つのみ。

682ミハエル・ラング?/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/23(木) 02:04:02 ID:1sJsd2CgO
>>681

「おー、見事。がっちり硬められてしまいましたねぇ?」
 くつくつ、と嗤って。
 男はロージェンスの手をとり、抱き寄せる。

「全力で、いったい何をするのか。非常に興味がある。――興味はありますが、イマイチ魅力に欠ける」
 カツン――と靴音。
 すると時空に“亀裂”が走る。
 術式による空間凍結の制御下、無理矢理、押し込んで“開こう”としている。

683逆瀬川 純鈴:2011/06/23(木) 04:12:00 ID:/lZA6WB6O
>>682
喫茶店内にも、魔法陣は浮かび上がっていた。
少女のテンションが百八十度変わり、下へ続く扉を、睨み付けた。
「相当ヤバいかもね、コレ」
呟くと、地下へ、駆けてゆく。


――+――+――


地下。
老紳士は怯むことなく、亀裂を塞ぐ為の新たな魔法陣を、次々と作り出していく。
「抉じ開けようとは、中々の実力者と見受けますが……果たして、私めと貴殿、どちらの力が上でしょうか!
否(いえ)……私は、一人ではない故、貴殿は些か不利でしょう!」

老紳士は笑う。
背後の扉が勢い良く開き、少女が飛び出す。

状況の把握に、数秒も必要ない。
先ずは、『空間接続』。
扉に触れ、視界に入る亀裂を、そこと『繋ぐ』。
平行し、ロージェンスへの『接続/干渉』。
直接触れる、のが最良ではあるが、この距離で、対象には『点』も打ってある。
『接続』自体に、何ら問題は、無い。


――「君は『自由』だ。誰にも縛られない、何にも縛られない。
君は『自分の意識』で動ける。『君』は『君』だ。誰でもない、『個』としての『君』だ!
例え世界が認めなくても、この『私』が、それを『認めよう』! 『君』が、『君』である『自由を』!」


頭が、焼ききれそうに熱い。
"この手"の『並列接続』は、凶悪に負荷がかかる。
それでも、止めない。


――『彼女』が、『彼女自身』を取り戻し、『思考』し『動く』までは!

684Cord:Nyarlathotep-0021/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/23(木) 14:11:56 ID:1sJsd2CgO
>>683

 しのぎ合いが続く。
 新しい術式を構築されれば“逆算”し崩壊させ、補修されれば“阻害”しエラーを吐き出させ、幾重もの干渉が繰り返される。
 変更し変容させ変質を促す。この“男”という変化し続けるウイルスに術式は徐々に確かに侵食されていく。

「いえいえ、ワタクシに追い付ける貴方も人間にしては良くやりますねぇ。ただ、少し疲れてきたでしょう?」
 ウイルスが矛先を術式自体から老紳士の精神へと移し始めた。
 その時、少女によって扉が開け放たれた……!


 時間にして、ほんの瞬き。
 逆瀬川の“言葉”に、ロージェンスの囚われた心が動く。
 息を吐くより早くその干渉は最深部へと至った。

 ――“記憶の空白”
 その奥に根差した元型《太母の像》に絡み付く暗い靄。
 『“         ”!!』――靄が叫ぶ。
 ロージェンスを縛り、苦しめる鎖であるソレは断末魔の叫びにのせた“名状しがたき畏怖”を逆瀬川の頭に強烈に流し込むッ!

 彼の者は云った――深淵を覗く者は同時に深淵に覗かれている、と。

 そうして、事は成った。
 ロージェンスを囚われから解放出来たのだ。


「――なっ!?」
 その変異に気が付いた男は、腕の中のロージェンスに最至近距離から魔弾《羨望にも似た》その碧に燃える刃に斬りつけられる。
 翡翠の炎に瞬く間に焼かれる男から逃げ出した彼女が、瞬時に思考し行動する。
 燃える刃の生えた拳銃《獅子ノ帝銃》に懐から取り出した弾倉をロード。
 赤い弾丸――『歪み』を封じ込めた“切り札”の込められた銃を男に突き付け。

「――私の前から、消えろぉおおおおおっ!!!」
 ――撃ち放つ。
 着弾点から封じ込まれた『歪み』が空間凍結の影響下で拡大を始める。
 じわりじわりと胸元から呑み込まれていく、翡翠の炎に爛れた男は……嗤っていた。

「クックックッ……! その力……“潜入者――ブラックキャット”か、話には聞いていたが素晴らしい!Wonderful!! 驚嘆に値するぞ、小娘ッ!」
 爛れた顔が崩れ、焼かれた皮膚が剥がれ落ちる。
 男の姿は三角錐の塊を乗せた軟体の沸騰する肉が、より集まって余った尖端を床に伸ばす無貌なる顕現に変質していた。

「“θ/d9”の回収は諦めましょう、アゼルが供物を受け取れない以上、
 ワタクシ達にとって、贖罪の山羊は無価値……どうせ処分する予定の習作ですしねぇ。
 ククク、ハーハハハハハハハッ!!!」
 ぶくぶくと泡をふいて哄笑する異形は、拡大する『歪み』に呑み込まれ。

 ――パスンっ……。

 異形が消え去ると『歪み』は跡形もなく閉じた。
 あとには、力無く座り込んで肩で息をするロージェンスがいるばかり。

685逆瀬川 純鈴:2011/06/23(木) 19:06:51 ID:/lZA6WB6O
>>684

「……終わった、か」

呟いたのは、『黒外套の男』。
老紳士が"居たはずの場所"で片膝をつき、笑っている。

「全く、さ、馬鹿げてる、よね」

そう言うのは、今にも倒れそうな、"死んだような瞳"をした少女。
おもむろにポケットから愛銃ブレン・テンを引き抜くと、自らのこめかみに銃口を当てて――


ぱぁん!


銃弾は、少女を貫かなかった。
『少女に流れ込んだ畏怖』を的確に、完全に、『打ち砕く』いたのだ。

そうして漸く、少女の瞳に生気が戻る。


「――ッう! これだから『干渉』は怖いんだ。『何が潜んでいるか解らない』から、さ。
それにしても、馬鹿げてる。どこまで『人間(わたしたし)』を馬鹿にすれば気が済むんだよ……」

物に当たる元気もないらしい。
静かに座り込んで、「大丈夫?」、とロージェンスを見た。

686ロージェンス:2011/06/24(金) 00:08:27 ID:1sJsd2CgO
>>685

「……ふ、はははっ……」

 荒かった呼吸が穏やかになり、ふと、笑いが込み上げた。
 自分を縛るナニカが消え去った事を今確かに感じたのだ。

「大丈夫。うん、もう大丈夫……ちょっと、疲れただけだから」
 立ち上がることも出来ず、手元の拳銃を構成分解すると、座ったまま意識を失った。
 緊張がとけて、安堵から疲労が襲ってきたのだ。
 なにせ、ここに来る前『隠れ家』に居た時から、精神を“操作”されていたのだから。


 一方、上のカンナは、もう喫茶店にはいなかった。
 下の騒ぎに逆瀬川が出向いた直後。
 立体映像に映る、アオギリの亡骸を見てから、幽鬼のような足取りで外に出ていったのだ。

 とかく、もう、ここには居なかった。

//ここで〆で、いいかな

687逆瀬川 純鈴:2011/06/24(金) 02:46:08 ID:/lZA6WB6O
>>686

「そっ、か。良かった……」

安心したのだろう。そのまま倒れるように眠りにつく少女。


「……ったく、俺だって無事じゃあないってのに」
「仕方ないでしょうな。後は私めにお任せを」

悪態を吐きながら起き上がる男と、扉を開け現れる、『本物』の老紳士。
この黒外套の男、『認識』をねじ曲げ、老紳士に"なりすまして"いやがった。

「……それじゃあ、任せた。
そこの馬鹿共は二、三日寝かせておけ。暫く出すんじゃあ、ない」

それだけ言うと、俺は扉の向こう側へ、消えていく。


「はてさて、貴女達の運命の女神は、微笑んでくれるのでしょうかね」

老紳士は呟きながら、倒れた二人をベッドに寝かせ、一礼し扉の向こうへ、消えていった。



//長々とすいませんでした。おつかれさまでした!

688黒沢小百合:2011/06/27(月) 23:01:32 ID:SSMHlh/20
今日の小百合はいつもより一層疲労の色が濃く、AGカフェまで
歩く事すら出来ずに、路地裏にある寂れた酒場で休息を取っていた。

(AGカフェまで我慢すればよかった、かな……。)

客は少ないながらも、よく手入れされているAGカフェとは違い、
放置された酒瓶や床に落ちた食べかす、ゴミくずなどが目に付くが
小百合は足をこれ以上動かす気にもなれず、泥水のようなコーヒー一杯で粘りながら、
店の片隅で疲れた体を休めるのだった。

689『双紅蓮(ブラッドブラッドブラッド)』:2011/06/27(月) 23:25:18 ID:/lZA6WB6O
>>688
「チッ……今日も収穫ナシ。不景気だよなぁ不景気だなぁ」

ばたん、と扉を開け現れるのは、短めの茶髪をツンツンに立てた、過剰にアクセサリーをつけた青年。

小百合の横を通りすぎ、適当な椅子に腰掛けた。

690黒沢小百合:2011/06/27(月) 23:38:41 ID:SSMHlh/20
>>689

コーヒーのみで粘る小百合にこれ見よがしに不機嫌そうな顔を向ける禿げた小太りの店主。
小百合の身につける高級装身具を物欲しそうに見つめる、ボロボロのコートを着た男。
馬鹿笑いを上げながら、バレバレのイカサマで仲間から金を巻き上げるチンピラ。

――この店に現れる者に、まともな人間など居まい。

小百合は、周囲全てを見下し、極力関わらないように、
そっぽを向いている。

とはいえ、この店をよく利用するような人種には小百合は絶好のカモに見えるだろう。
小奇麗な格好、若く、か弱そうな女。しかも、かなり疲れているように見える。

例のボロボロのコートの男――この辺では『ハイエナのリック』と呼ばれる物取り。
やつは、既に小百合に狙いを付けているようだ。

691『双紅蓮(ブラッドブラッドブラッド)』:2011/06/28(火) 00:02:17 ID:/lZA6WB6O
>>690

「マスター、"いつもの"」

この青年、どうも常連らしい。
静かに十字のネックレスを外すと、運ばれてきた『竜殺し』に口をつけて、溜め息。

『ハイエナのリック』に気付いているんだか、気付いていないんだか。

692黒沢小百合:2011/06/28(火) 00:20:47 ID:SSMHlh/20
>>691

(……チンピラ、か。)

多少体力を回復した小百合は、テーブルに銀貨を置き、
この店から立ち去ろうとする。

『おっと、ごめんなさいよ……。』

酔っ払った風を装い、小百合に寄りかかった例の男が
素早く小百合のスーツの中に手を滑り込ませ、財布を抜き取ろうとしたその瞬間。

――バキャッ!!

『げっ、ガギャッ……!?』

小百合の肘が顔面に食い込み男がもんどりうって倒れる。
血のついたスーツをハンカチで拭い、店を出ようとする小百合に
店の客の憎悪の視線が向けられた。

693『双紅蓮(ブラッドブラッドブラッド)』:2011/06/28(火) 01:14:06 ID:/lZA6WB6O
>>692

「穏やかじゃぁ、ないなぁ、オイ」

――轟ッ!

引き抜いたナイフの刃が燃え盛り、『炎の長刃』と化した。
それを小百合の背に向けて、青年は視線も向けずに、『竜殺し』に口をつけた。

「手前ェの話はよぉ、よぉく知ってるぜぇ? 『黒沢小百合』さんよぉ?
こんな掃き溜めに、何の用だァ?」

694黒沢小百合:2011/06/28(火) 01:26:41 ID:SSMHlh/20
>>693

「いいえ、これといって用などありませんよ……。
 鳥が止まり木に停まることに、理由がありますか?」

小百合は、これ以上相手にしたくないと言った様子で血を拭った
ハンカチを捨て店を後にする。

今から追えば、すぐに追いつけるだろうが……。

695鳶貴 / 変異体:2011/06/29(水) 00:22:45 ID:rMhIcMso0
【異能都市 郊外】

「テスト終了。時間はおよそ5分弱、数値は13.4%を記録。まぁまぁだな。
 成美、そっちの調子はどうだ?」

『………ほ、殆どが例の会社や公安他機関の手が及んでいるようです。資料と呼べる物は何も………。
 一人にお話を…その、"丁重に"伺った所…集団の様子から過去の暴動事件と何か関連性が………という報告が』

「…わかった。
 成美、千夜学園に居る間も気を抜くなよ。あまり穏やかではない話が次から次へと挙がって来ているからな。
 醜態を曝す様な真似は…断じて許しはしない。」

『………わかりました。』



電話を切る音と同時にドサリと何か重いものが倒れる。
暗い噴水広場には街灯設備があるのにも関わらず全てが機能していない。

携帯電話を片手に一人の黒い怪物が、静かに噴水の縁に腰を下ろしていた。
その足元には外傷は何処にも無いものの完全に「生気の失われた」男が横たわる。

「…言えた義理ではないか。今一度、この力のデータを集めより磐石な物へとしなければ…。」

696黒沢小百合:2011/06/29(水) 22:00:22 ID:SSMHlh/20
【AGカフェ】

「よいしょっ……と。」

いつものように仕事の疲れを癒すため
馴染みのカフェに立ち寄った小百合であったが今日はいつものバッグ以外に、
なにか紙袋を抱えていた。

「ちょうどいいですし、ここの店の材料を使って
 何か軽く、作ってみるとしますか。」

小百合が紙袋の中から取り出したのは真新しいホットサンドメーカー。
プレートを取り替えることによって焼きおにぎりや鯛焼きを作る事もできる代物だ。
どうやら、帰り道に新しく出来たホームセンターの売り出しセールを覗き、衝動買いしてしまったらしい。

697ノイディハール ◆X7kkkkkkkk:2011/06/29(水) 22:10:39 ID:R4Sg9QN60
>>696
「おいおいおいそこねーちゃんウチは持ち込み禁止だよ、っと!」

少女が喋りながら近寄ってくる。
店内にいたのか、少女は緋色の浴衣の裾と橙色の明るい髪を揺らし、
ぺったぺったとゴム草履で床を踏み、小百合さんの隣に立った。

「なんぞそれ?
私並の求心力秘めたその夢アイテムについて教えてみ? な?」

698黒沢小百合:2011/06/29(水) 22:19:31 ID:SSMHlh/20
>>697

「何ですか貴方は。やぶからぼうに……。」

(初めて見る顔ですが……はてさて、クロスが雇ったバイトか何かか……。
 まったく、この状況で店員を雇う余裕があるとは思えないのですがね……。)

威勢のいい物言いの少女に対する小百合の態度は冷ややかであった。
小百合はこの店の常連を自負しているが、目の前の少女――ノイディハールの姿を
みるのは、初めてであったからだ。

「ただのホットサンドメーカーですよ。安売りで2980円。
 まだ在庫はたっぷりあるようでしたからほしいなら駅前のホームセンターに行きなさい。」

699ノイディハール ◆X7kkkkkkkk:2011/06/29(水) 22:46:59 ID:R4Sg9QN60
>>698
「ほー…………ホットサンドメーカーねえ。初見初見。
お米パンレベルの発明品だったりする?
ってかてかお姉さんあれだろ? 千夜のどっかで見た顔だぜ…………!!」

弾丸のように言葉を続けざまに発し、少女が小百合さんの隣に腰掛けた。
興味津々を顔に浮かべて、ホットサンドメーカーを見ている。
日に焼けて、少し赤くなった腕をホットサンドメーカー向けて伸ばした。

「触っていい?いいかい…………?」

700黒沢小百合:2011/06/29(水) 22:59:44 ID:SSMHlh/20
>>699

「ホットサンドメーカーなど、昔からあるものでしょうに。
 まあ、触りたいというのならどうぞ……。」

非常に強引な少女の『押し』に小百合は少しひるんでしまったのか
呆れたように、あけたばかりのホットサンドメーカーを差し出した。

「まあ、雑誌やテレビなどで取り上げられた事もありますから
 知っている人は知っているでしょうね。千夜の総帥専属秘書、黒沢小百合と申します。」

701ノイディハール ◆X7kkkkkkkk:2011/06/29(水) 23:29:58 ID:R4Sg9QN60
>>700
「ウチの社長が言ってたぜ。
『千夜のトップは私と五歩くらいレベルが違う』って」

ホットサンドメーカーに向かって伸ばした手を、更に伸ばし、それを差し出す小百合さんの手首を掴もうとする。
幼いながら、少し大人びた形の顔に獰猛な笑みを浮かべた。

「ってーことはよ。ってーってーってーって。
その千夜のトップの秘書であるお前は、どんくらい強えんだろな? ん?」

702黒沢小百合:2011/06/29(水) 23:41:36 ID:SSMHlh/20
>>701

「……なるほど?これは中々に情熱的なアプローチをするものですね。
 ですが、そういうことならば率直に言えばよろしい。」

なるほど、という表情を浮かべた後
小百合は挑発的にノイディハールを見つめる。

「おまえと戦いたい、とね。」

703ノイディハール ◆X7kkkkkkkk:2011/06/30(木) 00:02:22 ID:R4Sg9QN60
>>702
「私ってば詩人で文人だからさー直接な言い回しとか恥ずかしくてできいんぜ。お腹すいたけど」

んだよ、お前もやる気満々じゃん?
小さく呟いて、少女が立ち上がる。

「予定いつあいてるよ。
どーせお前ら上流貴族みてえにせっせか働いてるやつってのはスケジュール帳がびっしりなんだろ?
お前があいてる日時に合わせてやっからどうかお願いします」

704黒沢小百合:2011/06/30(木) 00:11:31 ID:SSMHlh/20
>>703

おかしな子供だな、と小百合は内心苦笑したが
その身に宿すまっすぐな意思は嫌いではない。

「それでは、今週末にお相手をお願いできますか?
 ああ、怖気づいてキャンセルするのなら早めにお願いしますよ。」

からかうように、挑発を織り交ぜて予定を伝える。

705ノイディハール ◆X7kkkkkkkk:2011/06/30(木) 00:22:29 ID:R4Sg9QN60
>>704
「おっけ。んじゃ今週末の夜な。
場所は〝箱庭〟の市街地フィールド。
暗いとやりづれえからフィールド自体の日時は正午だ。
武器はお互い『なんでもあり』。ルールはねえ。勝った方が勝ちな」

にた、と笑う。
立ち上がり、首を鳴らした。

「後、私の名前は『風祈=ノイディハール』。リグヌ社製ハールシリーズ弐番姫。
…………ネイディハール知ってんなら、あいつの妹って言えば伝わるか?」

左手を、帯に挟んだ刀に乗せる。
右手で首の後を撫でながら、小百合さんを見上げた。

「賭け事はご法度な。
私が負けたからって、リグヌがヘボいとか思うんじゃねえぞ」

706黒沢小百合:2011/06/30(木) 00:34:44 ID:SSMHlh/20
>>705

「ええ、了解しました……。
 ……と、なるほど。リグヌ社の……ようやく、わかりました。」

小百合は、そこで厭らしい笑みを浮かべて
ノイディハールの耳元でそっと囁く。

「以前、敵との交戦で破損した貴方の姉……
 ネイディハールをわが社で回収した事がありましたが……。
 なんとも酷いやられようでしたよ……。あなたもすぐにああして差し上げますよ。
 グチャグチャにひき潰されたスクラップにね。」

707ノイディハール ◆X7kkkkkkkk:2011/06/30(木) 00:45:49 ID:R4Sg9QN60
>>706
目を細め、答えた。
口に小さい笑みを湛え、小百合さんと一歩距離を開ける。
少女は軽く方を震えさせながら音を落とした。

「…………あいつは都市で第三位だ。口に気をつけろよそれ以下。
あんまふざけたこと抜かしてっとここで潰すぞ、あ?」

708黒沢小百合:2011/06/30(木) 00:58:10 ID:SSMHlh/20
>>707

「第3位?ああ、例の闘祭の順位の事ですか?
 あのような大会で一度入賞したからといって、実際の強さに結びつくという物ではない。
 2度、3度と実績を残しているならば別ですが、それ以外に彼女は大きな戦果をあげましたか?」

くくく、と不愉快な笑みを浮かべながらノイディハールを挑発し続ける小百合。
手持ち無沙汰に机を人差し指で撫でつつ、言葉を紡ぎ続ける。

「……ええ、あなたがそのつもりならどこからでもどうぞ。
 私としては、一向に構いませんが……。」

小百合はこっそりと、紙片を手の中に握りこんだ。
これでもし、この場で襲われても完全に先手を取られることはない。

709ノイディハール ◆X7kkkkkkkk:2011/06/30(木) 01:06:08 ID:R4Sg9QN60
>>708
「そんでもおめーより良い結果残してんだろババア。
ルーズドッグの戯言にしか聞こえねえよ」

柄に手をかける、が、堪え、彼女は踵を返す。
戯言と、彼女は言った。
ならばどうして心を囚われて、揺らしてしまうのか。
息を零し、外に向けて一歩を踏む。

「繰り返すが週末の夜。市街地フィールドな。ぜってえこいよ」

710黒沢小百合:2011/06/30(木) 01:17:11 ID:SSMHlh/20
>>709

「あの大会に限っては、ね。」

小百合は、ノイディハールの挑発を受け流し
その不敵な態度を崩さない。

「ええ、喜んでお伺いさせて頂きますよ。
 なにせ、我が千夜とリグヌ社との力の違いを
 はっきりと証明する絶好の機会なのですからね。」

その背に既に勝ち誇ったような視線を送りながら
小百合は、具現化した兵士に運ばせたシャンパンを口にした。

『勝利祝いの酒』であるシャンパンを。

711ノイディハール ◆X7kkkkkkkk:2011/06/30(木) 01:28:43 ID:R4Sg9QN60
>>711
舌打ちを一つ。
ドアを蹴り開けて、足音高く彼女は店を出て行った。

中:遅レスすまねー……!!
ということで、今週末よろしくおねがいしますん

712黒沢小百合:2011/06/30(木) 01:30:07 ID:SSMHlh/20
>>711

// おうおう!おつかれさまでしたー!

713黒沢小百合:2011/07/01(金) 22:34:09 ID:SSMHlh/20
【中央公園】

「ふう、今日は昼間に雨が降ったから比較的涼しいですね。
 とはいえ、この湿気はどうにかならない物か……。」

小百合は、AGカフェと同じく気に入っている都市中心部の
公園の人口池の桟橋で休息をとっていた。

ベンチに座り、駅前のスタンドで購入したハンバーガーと
ペットボトルドリンクで簡単に食事を済ませ、ぼうっと池に映る月を眺める。

714沢桐老人/義足の男:2011/07/01(金) 23:42:27 ID:ste/2NNA0
――カチャ、カチャ

「……ああ、暑いから外に出たくなかったのになあ」

長い白髪を後頭部でくくった白髪の老人が、奇妙な足音を鳴らしながら歩いていた。
手には食パンが入ったレジ袋を持っている。

「朝飯は大切だしなあ、しょうがない。
 今日は涼しい方だからよかったとしとこう」

老人は顔は皺だらけだったが、
その背筋は下手な若者のより伸びていたし、白髪とは言え禿げも見られなかった。

「……あ、どうも。
 多少蒸しますが涼しくていいですね、今日は」

丁度黒沢の横を通り過ぎるとき、男はふと気づいたように話しかけてきた。

715黒沢小百合:2011/07/01(金) 23:56:48 ID:SSMHlh/20
>>714

「ええ、ああ……今晩は。」

小百合は考え事をしている最中にふいに話しかけられ
少し遅れて、老人に返事を返す。

(こんな夜に散歩だろうか……中々に元気な老人ですねえ。)

716沢桐老人/義足の男:2011/07/02(土) 00:09:18 ID:ste/2NNA0
>>715
「今晩は。
 ああ、すいません、考え事をしてたようで」

そういいながらも、老人はその場に立ち止まった。

「最近は急に暑くなって困りますね。
 この老体にはあんまり……まあこのとおり健康なので堪えてませんが」

そう言って笑う。
健康自慢がしたいのだろうか。

717黒沢小百合:2011/07/02(土) 00:20:51 ID:SSMHlh/20
>>716

「ああ、いえ……お気になさらず……。
 ご壮健そうでなによりですね。老人の活力と言うのは
 今後ますます重要になってくるでしょうから。」

小百合は、目の前の誰とも知らぬ老人の話にあわせ
適当に相槌を打ち、答える。

「とはいえ昼は日差しが厳しいですから、くれぐれもお気をつけて。
 あまり自分の体を過信しすぎると足元をすくわれる事もあるかもしれません。」

718沢桐老人/義足の男:2011/07/02(土) 00:24:08 ID:ste/2NNA0
>>717
「すくわれる足がありませんよ、なんて。
 いや、幽霊とかじゃないですよ」

719沢桐老人/義足の男:2011/07/02(土) 00:28:00 ID:ste/2NNA0
>>717
「すくわれる足がありませんよ、なんて。
 いや、幽霊とかじゃないですよ」

そう言ってまた笑う。

「健康でも頭が良くなきゃやっていけないですよね。
 最近も訳わかんない事件が多くて。
 俺には何が起こってるのかさっぱりわかりません」

//途中送信すいません><

720黒沢小百合:2011/07/02(土) 00:34:01 ID:SSMHlh/20
>>719

「……ええ、心身ともに健康でなければね。」

小百合は、正直老人の長話にはうんざりしていた。
見ず知らずの、たった今あったばかりの老人の話など興味はないし、
何かの益になるという事もない。

なにか+になる事があるとすれば、老人の気が晴れる程度だろう。

「ああ、ご老人。ご高説の最中誠に申し訳ないのですが
 そろそろお暇しなければ……。」

(時間の無駄、ですね……。)

小百合は、それとなく話をさえぎるとその場から立ち去ろうとする。

721沢桐老人/義足の男:2011/07/02(土) 00:42:13 ID:ste/2NNA0
>>720
「ああ、すいません。
 年のせいだとは思いたくないのですがつい長話を」

なんとなく黒沢の心中を察しながら、老人は軽く会釈する。

「それでは俺もこれで。
 どうもお騒がせしました」

そう言って、二度目の会釈をしながら老人はまた奇妙な足音と共に歩いていく。

「んむ……やっぱり何処かで……。
 まあ、大方昔……」

ぶつぶつ言いながら老人は去っていった。

722黒沢小百合:2011/07/02(土) 00:49:31 ID:SSMHlh/20
>>721

(奇妙な老人であったが……。
 どこかで会った事があったかな……。)

小百合は、歩きながらも先ほどの老人のことを思い返していた。
あの足音はどこか聞き覚えがあるな、などと思いながら。

723八代真人:2011/07/02(土) 21:45:07 ID:1sJsd2CgO
【AGカフェ】


「……、……はぁ」
 オイルプラント占拠に関する新聞記事に目を通しながら考え事にふける八代真人。

 彼はNo.28との戦闘後、病院に搬送され、全身の裂傷に骨折で全治一ヶ月を申告された。
 療養中に臓器不全等を併発したりもしたが、一週間前に無事退院。
 今はたまった仕事や、雑用等を片付けながら現場復帰にむけてのリハビリ中だ。


(声明の無いテロリズムか……主張無き暴動に意味は無いような気がするんだけどな)
 都市のエネルギーに関わる重要な施設。
 それを破壊するのではなく、わざわざ占拠している。
 手間のかかる事をしているんだ、なにか一つくらい要求があってもおかしくはないはずなのだが……。

「……報道規制でもかけてるのか」
 上手く考えが回らない。
 自宅療養中の身で情報が回ってきていないのもあるが、一月寝て起きてばかりだった事が大きい気がした。

724黒沢小百合:2011/07/02(土) 22:01:40 ID:SSMHlh/20
>>723

――カラン

「……おや。珍しいですね。この時間に人がいるなんて。」

唐突にドアが開き、黒髪の女性が店に入ってきた。
その女性は真人を見て少し驚いたように表情を変え、カウンター奥へと引っ込んでいき……。

「お待たせいたしました、ご注文はお決まりでしょうか?」

AGカフェのロゴが入ったエプロンを身につけた小百合が真人の注文を聞きに現れる。
彼女は、この放置されがちな店を維持すべく、体力がある日には給仕の代わりをするようにもなっていた。

725八代真人:2011/07/02(土) 22:26:37 ID:1sJsd2CgO
>>724

「あぁ、どうも……」
 手元から目線を外すことなく応える。
 メモ帳にまとまらない考えを書き足し、ため息をつく。

 ふと、注文を聞かれた真人は
 新聞を畳み、カウンターの向こうにいる女性の顔を見て、驚いた。

「あんた、千夜の……!?」
 千夜グループ総帥秘書として名高い黒沢小百合。
 その人が、なぜカフェで、自分に、注文をとっているのか、と。

726黒沢小百合:2011/07/02(土) 22:30:47 ID:SSMHlh/20
>>725

「それを答える事が貴方の注文なのであれば
 そうです、と答えましょう。で、他にご注文は?」

小百合はそんなことはどうでもいい、
とでも言いたげな表情を浮かべ、再び注文を聞き返す。

(やれやれ、顔が下手に売れると面倒な事もありますが……。)

727八代真人:2011/07/02(土) 22:48:48 ID:1sJsd2CgO
>>726

「……コーヒー。ミルクがあれば欲しい」
 詮索してもしょうがない。
 ここに居るから、居る。そういうことだ。

(……少し、腑に落ちないけどな)
 腑に落ちないといえば、オイルプラントの件もそうだ。
 千夜グループも調査に加わっていると聞く。
 しかし、観測局が出ている以上、公安局は首を突っ込みにくい……。
 どう、切り出そうか。

728黒沢小百合:2011/07/02(土) 22:58:17 ID:SSMHlh/20
>>727

「はい、では少々を待ちください。」

カウンター奥に消える小百合。
再び彼女が現れたときには、コーヒーとミルクを乗せた
ステンレスの盆を手にしていた。

「お待たせしました、コーヒーです。
 他にご注文など、ございますでしょうか?」

ことり、と小さな音を立てて真人の前にコーヒーが出される。
しかし小百合の所作はどこか不慣れで、危なっかしい。

729八代真人:2011/07/02(土) 23:19:36 ID:1sJsd2CgO
>>728

「どうも。他に、か……」
 コーヒーにミルクをあけると、ぼんやり考えて

「オイルプラント占拠の犯人像について、少し情報が欲しいかなーって……」
 言ってから思う。
 直球過ぎだろ、と。

730黒沢小百合:2011/07/02(土) 23:30:10 ID:SSMHlh/20
>>729

「それは貴方個人のご注文ですか?
 それとも、『公安局』からのもので?」

どこまで情報を知っているかは分からない、
小百合は、真人が公安局の人間であることに勘付いていた。

「貴方個人のご注文、という事であればそんなものは取り扱っていない、といわせていただく。
 『公安局』からの依頼であるなら、正規のルートから打診していただきたい。」

エプロンを脱ぎ、適当なところにかける小百合。
どうやら、店員としての彼女はもう店じまいという事だろうか。

731八代真人:2011/07/03(日) 00:09:38 ID:1sJsd2CgO
>>730

「その両方かな、公安局広域捜査課の八代真人からの注文は。だけど断られちゃあしょうがないか……」
 コーヒーを口にして、息をつく。

「それなら、一つだけ聞かせてくれ。
 その事件、異能者が関わってる可能性があるかどうか。それだけ」
 異能者が絡むと、捜査のうえで公安局は不利になる。
 独自に動くにしても、その情報が不透明だとどうしても勇み足になってしまう。

732黒沢小百合:2011/07/03(日) 00:24:00 ID:SSMHlh/20
>>731

「…………ええ、事件の背景、動機などはまだ不明ですが
 実行犯の中に、という意味であれば確実に異能者が関わっています。」

小百合は、少し考えた後に口を開き真人に情報を伝える。

「オイルプラント内部に潜入した部隊からの報告を見たところ、
 施設内で異能者とおもわれる正体不明の敵との戦闘があったそうですから。
 それと、大サービスでもう一つだけ教えて差し上げましょう。」

まるで、真人を試すかのようにその瞳を覗き込む小百合。
その距離は、二人の顔が接触しそうになるほど近く。

「恐らく、今回の実行犯は以前、都市中心部でおきた暴動に深く関わっている。
 まあ後は自分で調べるなり、後で正式に情報開示を求めるなりしてください。」

733八代真人:2011/07/03(日) 00:54:22 ID:1sJsd2CgO
>>732

「期待通りというか、なんというか……異能者が絡むとなると、少しアプローチを変えないとな」
 非能力者の一般市民を守るための公安局。
 ならば動機もそれに準じ、かつ実行犯との接触を最低限に抑える方針でなければ交渉も上手くいかないだろう。


「……あの暴動と深い関係。ですか」
 接近に少し反り。
 試されるような視線に返すものは無い。

734黒沢小百合:2011/07/03(日) 01:05:15 ID:SSMHlh/20
>>733

「出すべき最低限の情報は出しましたから、
 これで貴方たちの上層部も多少は満足するのではないですか?
 これ以上はこの場で話すわけにはいきませんがね。」

真人が体をそらすより早く、小百合は洗い物をはじめていた。
その顔がどこか冷めたような様子なのは、真人の行動に関係があるのかないのか。

735八代真人:2011/07/03(日) 01:38:05 ID:1sJsd2CgO
>>734

「ええ、おそらく」
 コーヒーに口をつけ、それっきり黙る。
 書き足したメモ帳とにらみ合っても、関連性ははっきりと見えてこない。
 今はこれが限界か。


「ありがとう。コーヒー美味しかった」
 言葉に情報の礼も含ませ
 お金を置いて、店を後にする。

736黒沢小百合:2011/07/03(日) 02:12:35 ID:SSMHlh/20
>>735

「……またのお越しを。」

がらん、と音を立てて閉まるドアの音を聞く小百合。
置かれた金をレジの中にしまい、自分用のコーヒーを淹れる。

「はてさて、公安局はどう動く事か……。
 ま、どちらにせよ我々が問題を解決することには変わりないですがね。」

737黒沢小百合:2011/07/04(月) 22:01:02 ID:SSMHlh/20
【路地裏】

「ぐ……ぶ……。」

小百合はおぼつかない足取りで、人気のない路地を行く。

(今日は……ハードだった……な……。
 はやく……休もう……。)

昼間から立て続けに事件が起こり、それの対応に掛かりっきりだった小百合は
己の能力の行使も難しいほどに体力を消費しつくしてしまっていたのだ。

しかし、プライドの高い小百合は他人に弱いところをほとんど見せたがらない。
それ故に彼女は人気の無い裏道や細い路地を選び、ゆっくりゆっくりと自宅を目指していた。

――ズシャァッ

「ぐぅっ……い、っつ……くそ……。」

満杯のゴミ置き場から崩れ道に落ちたゴミ袋に躓きバランスを崩して転ぶ。
普段の、気力に溢れた状態の彼女であれば考えられない失態。
転んだ拍子に擦りむいた掌がじんじんと痛むが、そんなことを気にする余裕も気力も無く、
壁面に取り付けられた雨樋にしがみ付くようにして体を起こし、再び歩み始める。

738名も無き異能都市住民:2011/07/05(火) 00:03:29 ID:VoJSms.Y0

  キ
        ィ」
キィ、キィと音が鳴る。
不思議な音のする方には、ただの車椅子が一つ。
座席の上には布の様な物が置かれているだけの、何の変哲もない車椅子。
しかし、その周囲では無数の蜘蛛が群れを為している。
大きさや種類さえも不定な無数の蜘蛛達。

739黒沢小百合:2011/07/05(火) 00:08:53 ID:SSMHlh/20
>>738

小百合は、その奇妙な光景に何か日常からかけ離れた
異質な物を感じ、道端に無造作に捨てられていた壊れたクローゼットの影へと、
とっさに身を隠した。

「……何か不気味な。迂回、したほうがいいか……。」

それだけ言ったところで、吐き気を催した小百合は
腹部を押さえ、足を引きずるようにしてその場から離れようとする。

740名も無き異能都市住民:2011/07/05(火) 00:14:25 ID:VoJSms.Y0
>>739
去っていく小百合へ何時からか視線が向けられている事に気づくだろう。
そして、その出先はあの車椅子。

「   う

   
       ぅ ?」
もし、振り返るならば、
車椅子に黒いワンピースを来た少女が腰かけている事が解る。
しかし、その少女には足が無い。

741黒沢小百合:2011/07/05(火) 00:24:49 ID:SSMHlh/20
>>740

「っ……!」

小百合は、視線を感じた瞬間足を止めてゆっくりと振り返る。

ああ、いけない。アレは何か、人ではないものだ。
対抗手段が確保出来ない今は逃げなければ。

「……くそっ、こんなときに……。」

壁に持たれかかるようにして、車椅子の少女から距離をとる小百合。
しかし、そのスピードは追おうとすれば車椅子でも追える速度だ。

742名も無き異能都市住民:2011/07/05(火) 00:30:30 ID:VoJSms.Y0
>>741

       ?」
数秒かけて首を倒し、
その倍の時間をかけて元に戻す。

キイキイカタカタと車椅子を動かし、小百合を追っていく。
ついに並走するにまで距離が縮まり、4本しか無い指で小百合の服の裾をつまむ。
「お  ね
   え
       さ   ま」
また、ゆっくりと数秒かかって首を倒す。
「     ど
       こ ?」
同じように数秒かかって首を立てた。

743黒沢小百合:2011/07/05(火) 00:40:00 ID:SSMHlh/20
>>742

必死に足を動かしているのに、後ろからゆっくりと接近する車輪の音。
ついに、それが自分の背後にぴったりとつき、裾に重みを感じた瞬間
小百合は背筋にぞわり、と冷汗をかくのを感じた。

「ひっ……。」

自分に対して、明確に投げかけられた問いかけ。
アレは今、自分のすぐ後ろにいる。

最大の武器である異能を使えない今、対抗手段はない。
こうなっては、この謎の少女が自分に敵対的でないことを祈るばかり。
小百合は、かたかたと震えながらその場に立ち尽くすことしか出来なかった。

744名も無き異能都市住民:2011/07/05(火) 00:46:37 ID:VoJSms.Y0
>>743

  す
     わ
  う    ?」
目の前の女性を不思議がったのか、
少女は在ろうことか二本の脚で立ち上がり小百合の前へ。
ぺたぺたと地面を裸足で歩き、もう一度、今度は五本の指で裾を引っ張りそう言った。
今はその姿は全く視えないが、先程まで無数の蜘蛛が這っていたもの。とても座る気には……。

745黒沢小百合:2011/07/05(火) 00:57:13 ID:SSMHlh/20
>>744

「い、いや……いい……。」

聞き取りにくいが座るか、とこの少女は聞いているのだろう。

今のところ敵意はないようだが、正体が掴めない以上警戒を解くべきではない。
とりあえず、多少は落ち着きを取り戻した小百合は刺激しないよう、ゆっくりと少女から離れようとする。

(なんて日だ……こんなことなら、
 昼間に少し力をセーブしておくんだった……。)

746名も無き異能都市住民:2011/07/05(火) 01:04:25 ID:VoJSms.Y0
>>745
「 
 ぅ
   …   …   」
コテン。と首を前に倒す。
そのままとぼとぼと車椅子に帰っていく様子はどこか寂しげだった。
カタカタと車椅子が並走し、暫くしてやっと首が上がる。上げ過ぎて頭が後ろへ行く。
再び減った四本の指を膝が無いので車椅子の肘置きの上へ。

再び何処からか現れた蜘蛛達が少女の身体や車椅子を這いまわっている……。

747黒沢小百合:2011/07/05(火) 01:14:43 ID:SSMHlh/20
>>746

(今、なら……。)

小百合は、その隙に再び距離をとる。
遅々として進まぬ行軍だが、とにかく今は逃げる事を考える。

(もう少し進めば……人の居る通りに……出る……。)

小百合の記憶が正しければ、2,3角を曲がれば
繁華街、とは行かないものの、人通りがあるとおりに出られるはず。
彼女がなんらかの妨害をしなければ、だが……。

748名も無き異能都市住民:2011/07/05(火) 01:24:59 ID:VoJSms.Y0
>>747

 ば
    い 」
小百合に向かってそう言うと、
掲げた三本の指をゆっくりっ数分かけてにぎにぎ。
それから気付いたころには車椅子と纏っていたワンピースのみ。
少女自身はどこかへ消えてしまったようである……無数の蜘蛛と引き換えに。

749黒沢小百合:2011/07/05(火) 01:35:41 ID:SSMHlh/20
>>748

曲がり角を曲がる前、振り向いた小百合は
一瞬だけ、少女が指を掲げようとしている様子を目撃した。

「……なんだったのでしょう、あれは。」

人通りのある通りまでなんとかたどり着いた小百合は、
明かりのない、暗い路地を振り返る。追ってきている様子もない。

「妖怪やら、妖魔……というものでしょうか。
 なんにせよ、敵意はなかったのだろうか……。」

はからずも不思議な体験に遭遇した小百合は、ゆっくりと考えを巡らせながら
疲れた体を動かし、再び岐路に着いた。無論、人通りのある場所を通って。

750八代真人:2011/07/05(火) 22:03:32 ID:1sJsd2CgO

 人通りの疎らな道を歩き回るカジュアルスーツの男、八代真人は先ほどから同じルートを三周もしている。
 パトロールも公安局の仕事のうちだ。今は特命により定時交代の24時間体制に強化されている。

(三周目も異常無し。そろそろ区画交代か……次のルートは、と)
 携帯を開いて地図を確認する。

 異能都市全域に警備網が敷かれているとはいえ、やはり“穴”はある。
 例えば、定時交代、定められたルート、そして公安局員もヒトなのだ、ということ。

751名も無き異能都市住民:2011/07/05(火) 22:18:01 ID:SSMHlh/20
>>750

――タンッ――パラララッ

ふいに軽い破裂音が連続して響く。
……間違いない、銃声だ。

音の発生源は恐らく、路地裏の何処か。
今いる場所から1,2ブロックほどしか離れていないと思われるが……。

752八代真人:2011/07/05(火) 22:31:56 ID:1sJsd2CgO
>>751

 このまま何も起きなければ良いんだけどなぁ、などと考えていると、銃声が聞こえた。

「くそっ……!」
 真人は音のしたほうへ走り、路地裏に飛び込む。
 そう遠くないはずだ。
 入り組んだ路地を駆けながら腰に携帯する拳銃に手をやって、銃声の発生元に急ぐ。

753イザヤ:2011/07/05(火) 22:46:21 ID:zFOgu2f.0
>>752
走る彼の耳に、焦ったような声が聞こえた。

「くっそ、またかよ…ッ!」

突如、銀色の物体が曲がり角の向こうから現れる。
銀の翼を持った黒装束が、狭い路地にあたるかあたらないかぎりぎりで飛んできたのだ。

「…!」

同じ方向に走る八代の姿を認め、空飛ぶ男が八代に叫ぶ。

「お前っ、公安かィ?!俺は千夜の警備だ、『銃声』だよなァ?」

極端に省略した聞き方で、確認する。
銃声のブロックはすぐだ。

754名も無き異能都市住民:2011/07/05(火) 22:47:44 ID:SSMHlh/20
>>752

3分ほど路地裏を駆けただろうか。
ふいに、真人から20mほど先の曲がり角から、人影が飛び出してきた。

――タンッ!タンッ!!

人影の正体は、ジーンズにタンクトップというラフの格好の若者。
彼の右手には拳銃が握られており、先ほど飛び出してきたばかりの路地へ
焦った様子で発砲している。

チンピラ同士の小競り合い、といったところだろうか。

755名も無き異能都市住民:2011/07/05(火) 22:53:03 ID:SSMHlh/20
>>754の対象に>>753も追加

756八代真人:2011/07/05(火) 23:14:43 ID:1sJsd2CgO
>>753-754

「公安のヤシロだ。あぁ、間違いない!」
 銀の翼を持ち飛ぶ姿を見てわずか警戒するが、叫ぶ声に『味方』と判断し、叫び返す。

 そこに飛び出すラフな若者。
 “何者”かに発砲している、見るからに当事者だ。
 目測15m……イケるか?

「――――!」
 いっそう強く走り込み、若者へタックルを仕掛ける。

 曲がり角の向こうの“何者”かへの対応は一切考えず、イザヤに丸投げた。
 異能を持たない自分より、持っているであろう彼のほうがイレギュラーには強いはずだ。

757イザヤ:2011/07/05(火) 23:22:42 ID:zFOgu2f.0
>>754-756
「解った、そいつは任せたぜィ」

加速してタックルをしかける八代の後ろから、銀翼が馳せる。
その若者が飛び出してきた路地で体を捻って急ターンし、
地上に降りて翼で体をガードする。

「さて、こっちには何がいるのかねェ」

拳銃を焦って撃っていた、ということは相手も拳銃か
同等の脅威であるということだろう。
銀翼の裏からイザヤはその向こうに何が居るのか確かめようとする。

758名も無き異能都市住民:2011/07/05(火) 23:35:53 ID:SSMHlh/20
>>756

「うおっ!!?」

青年は『何者か』との戦いに夢中で、真人に気づいていなかった。
タックルは見事に成功、そのまま青年を組み伏せる形になる。

「×××××め!あいつら殺してやる!離せ!」

後頭部を撃ったのか、アスファルトに血がついていたが
それでもなお青年は口汚い言葉を吐き、もがいている。力も強く、
気を抜けば容易に跳ねのけられてしまいそうだ。

>>757

――ヒュゥンッ!!

イザヤの鼻先を、弾丸が掠めた。

街灯が壊れているため暗くてよく見えないがどうやら、イザヤから20,30m先の
路地裏に乗り捨てられた廃車の陰に何者かが隠れ、こちらを狙っているらしい。

狭い路地裏という地形。中途半端に突っ込めば、狙い撃ちされてしまう。

759イザヤ:2011/07/05(火) 23:51:06 ID:zFOgu2f.0
>>758
「八代!そいつを攻撃してたやつがこの路地奥にいるぞ!
撃ってるのはおそらく1人、銃を持ってるみてェだ」

鼻先をかすめた弾丸に、あわてて翼のガードの裏に隠れながら
八代に伝える。
翼のガードといっても、本来飛行用のものを盾に使っているので、
そんなに防御力は高くない。後ろに跳び退って、路地の角に身を隠す。

(この狭さじゃ俺の『武器』は使えねェな)

隠れながら考えたことは、己の武器の少なさ。
範囲の大きな攻撃を繰り出してしまう彼の3つの武器は、この場所では使えない。

そう考えて、彼は翼から銀弾を繰り出した。

760八代真人:2011/07/05(火) 23:54:33 ID:1sJsd2CgO
>>758

「公安の者だ――このっ……暴れるな!」
 組み伏せる力を強くし、若者の抵抗に対抗する。

「ここで何があった。キミは何をしていたんだ」
 真人の拘束は固いが、しかし完璧ではなく、柔道経験者かケンカ慣れしていれば、抜け出せる隙を見つけられるはずである。

761名も無き異能都市住民:2011/07/06(水) 00:09:32 ID:SSMHlh/20
>>759

イザヤの銀弾が路地裏に降り注ぎ、
木箱やブリキのゴミ箱が派手な音をたて砕ける。

――――パスッ、パスッ!!

その間をかいくぐり、路地の奥へと駆ける影が3つ。
イザヤの判断とは裏腹に、敵は複数で行動していた。
もし、強引に突撃していればどうなっていた事か。

しかも、相手はどこから手に入れたのか銃に消音機を装着している。
基本的に消音機は市販されていないはず。相手はプロか、それともなんらかの
組織の後押しを受けているのか。

>>760

「テメェ、いいかげんにっ……!!!」

どうやらこの男、武道を修めているということはなさそうだが
それなりに喧嘩慣れしているようで一瞬の隙を突き、男が真人の腹部に対して
蹴りを叩き込もうとする。

敵はまだ、拳銃を手にしたままだ。一度脱出されてしまうと、状況は一気に不利になる。

762イザヤ:2011/07/06(水) 00:22:36 ID:zFOgu2f.0
>>761
(…マジかよ、スクランブル状態で二人が様子見、一人攻撃?
判断がよすぎる、会話なんて聞こえなかったぜェ?
相手は結構組織化されてるのか?!)

3人が焦って攻撃せず待っていたという事実に、彼は驚きつつも何とか冷静を保つ。

(俺たちが駆け付けたのは八代が抑えてるやつの銃声を聞いたからだ。
だが、この路地裏で撃ち合いになっていたのなら…消音機。マズいなァ)

銀の霞を固めて、彼は手元に扇を作り出す。その数10、それらが狭い路地裏に、
勢いよく投げ放たれる。
重力に逆らうように、その扇は奥へ逃げる影を追う。

「さて、混乱に動じねェなら動じる『混沌』を作らなきゃァな」

バチィッ!

放電音とともに、扇から電撃が放たれた。
狙いはそれて近くのドラム管をはじくだけで終わったが、
10の扇は一斉に不気味な放電音を響かせ始める。

ランダムに周りの金属を狙って、電撃の嵐が起きた。
威力は弱いものの、足止めになるだろう。

その機を狙って、イザヤは低姿勢で飛行し移動する。

763八代真人:2011/07/06(水) 00:40:17 ID:1sJsd2CgO
>>761

 突き上げられた蹴りに反応し防御姿勢をとろうとするも、遅い。
 まともに腹部に蹴りを受け、一瞬怯んだところを若者に抜けられてしまった。

(しまった……!)
 相手はまだ拳銃を手にしたままだ。
 真人は咄嗟に腰にやった手で警棒を掴む。
 抜き手の力で伸ばした警棒、その持ち手をスイッチごと握り締めてスタンガンの如く放電させる。
 若者に向かって警棒を振り上げ、脚か身体か腕か、とにかく何処かに当てて昏倒させ動きを封じようとする。

 若者の拳銃が速いか、振り上げた警棒が速いか。
 果たして――

764名も無き異能都市住民:2011/07/06(水) 00:55:35 ID:SSMHlh/20
>>762

この場が何もない開けた場所なら、
逃げていく者たちの服の金具、装身具、銃などに電撃が吸い寄せられただろうが
この路地裏には、それこそドラム缶から捨てられた錆びた工具、穴の開いた看板など
金属はいくらでもある。

それ故に、威力が低い電撃程度では威力が分散しすぎて
足止めの効果はほとんど見られなかった……。

――パスッ!パンッ!

敵は時折振り向きざまに発砲してくるがこれは殺傷が目的ではなく、
イザヤへの威嚇を狙っての物だろう。完全に逃げる体勢に入ったようだが……。

>>763

「死ね!×××野郎!!」

既に手に拳銃を握っていた若者と、腰から警防を抜く真人。
いくら素早く真人が武器を構えたとてその優位性は明白、
一瞬、若者のほうが早いか、いや――。

――カッ

若者が引き金を引くも、砲身の中に弾丸がつまり発射されない。
チンピラでも手に入れられるような粗悪な改造銃はもみあいの中で既に壊れていたのだ。

「ギャッ!!!」

警棒が打ち込まれる同時に、若者は昏倒してしまった。

765イザヤ:2011/07/06(水) 01:10:58 ID:zFOgu2f.0
>>764
「畜生、狭すぎたか、…逃がすかよッ!」

威嚇の銃弾も、この狭い通路ではかわしながら追うことは難しい。
イザヤは軽く飛び上がり、そのまま路地が見える程度の高さで彼らを追う。
空に向けた発砲は的外れな場所に流れ、イザヤの追跡を邪魔はしない。
上から様子が見えない路地がない限りは。

「さんざん撃ってくれたなァ、お返しだぜェ!」

銀翼2枚から、マシンガンのように銀弾が射出された。
速度は銃ほどではないものの、一発が針のように長く尖っている弾である。
威嚇と、地面に刺さった場合の足止めには効果的だ。

路地は幅が狭い。その直線を、一気に縦に銃弾が巡る。
それも、進行方向からイザヤの真下に向けて。
かいくぐれない限り、引き返すしかないだろう。

766八代真人:2011/07/06(水) 01:26:18 ID:1sJsd2CgO
>>764

 倒れた若者の手から銃を蹴り離し、意識の有無を確認してから、いささか電圧が強すぎるきらいがある警棒をしまう。
 この若者は公安局で身柄を確保しよう、だが今は……。

「……攻撃してきたのは1人って言ってたが。コイツはたしか“あいつら”って……」
 となれば十中八九、数人のグループだろう。
 もし、それが誘拐事件の犯人グループだとしたら逃すわけにはいかない。

 真人は巡回中の公安局員に連絡を入れ、若者の身柄確保と警戒強化を頼むと、イザヤの後を追いかけ始める。

767名も無き異能都市住民:2011/07/06(水) 01:31:46 ID:SSMHlh/20
>>765

銀弾が再び、路地裏へと降り注ぐ。
これならば、足止めの効果は申し分ない。

いや、おかしい。敵はその『銀弾』の嵐の中へと突っ込んだ!
見れば敵の体の周りに薄桃色のフィールドのような物が張られ、
まるでレインコートのように銀弾を弾いているではないか!

時折、弾ききれずに肩や背中に被弾している様子があるが
敵は強引に、別の路地へと走りこんでいく……とはいえ、上から見ているイザヤには
その路地が袋小路である事が分かるはずだ。ついに、敵を追い詰めた。

>>766

銃声を聞いた住人からの報告で既に公安局や
千夜の「舞台が動いているらしく、すぐに身柄の確保は行なわれるとのこと。
これで、追跡に集中できる。

そこかしらに残る細かい破壊の跡により、今からでも犯人の追跡は容易なはず。
それに、空を見上げればイザヤのいる場所も分かる。

768イザヤ:2011/07/06(水) 01:44:24 ID:zFOgu2f.0
>>767
「こっちだ、八代!」

地上にいる八代に叫んで、彼はその袋小路の入口へと降り立つ。
ここからはもう逃げ場がない。
だが、追い詰めたものの不安が拭えなかった。
チンピラの喧嘩というにはあまりにも整いすぎた装備。
障壁さえ展開してみせた彼らは、いったいどこと通じているのか。

「まぁいいさねェ、君たちに喋ってもらうンだからなァ」

障壁があるなら、銀弾は防がれるだろう。もともとそんなに威力もない。
かといって、障壁を壊すような斬撃は相手の命をも断ち切りかねない。
彼の選択は、非常に原始的なものだった。

銀の翼が掻き消えて、数個の銀の輪が両手両足、頭上に出現する。

「さァて、流石に武装はあっても、対応は出来ねェだろうッ!」

異常なまでの、速度と精密機動。
銀の輪は取り付けられた部分を活性化する。

銃弾を避け、時には周りのもので防ぎながら、イザヤは逃走者との距離を詰めていく。

769八代真人:2011/07/06(水) 01:51:55 ID:1sJsd2CgO
>>767

「……あそこか!」
 上空から自分を呼ぶイザヤの姿を見上げて、追う足を早める。
 向かう先には曲がり角があった。
 自動拳銃を抜き、セーフティを外してから一度スライドさせて、薬室に弾が入ったことを確認する。

「…………」
 曲がり角から、イザヤが追い詰めた袋小路を注意深く覗き込む。
 攻撃などが無ければ、一気に突撃するつもりだ。

770名も無き異能都市住民:2011/07/06(水) 01:59:08 ID:SSMHlh/20
>>768-769

イザヤと真人が敵の消えた路地裏へと踏み込む。
それを迎え撃つべく、敵の反撃が……こない。

それどころか、敵の姿がどこにも見当たらない
この路地には室内に入るためのドアや窓などは無くよじ登れそうな
足場となる雨樋なども見当たらない。

当然、隠れるようなところも皆無だ。

……あまりにも不可解な状況だが、魔術の素養があるなら
この場所で何らかの魔術が使われたことを、感じ取る事ができるだろう。

771イザヤ:2011/07/06(水) 02:06:42 ID:zFOgu2f.0
>>770
おかしい。さっきまで肉薄していた敵が、影も形も無くなっている。

「確かにここだぜ、八代よォ。前にもあったンだ、敵が突然消えるってのが…」

そう、あのときは逃したが、今回は動揺は少ない。
あれだけの技術を持っていた集団なら…科学以外にも手段を持っているだろう。

「…こりゃァ恐らく何らかの異能か魔術だなァ。千夜の支援部隊も来ているなら場所が分かったら動かせる。」
「観測局の探査部隊がいりゃァわかるんだろうが…」

772八代真人:2011/07/06(水) 02:28:10 ID:1sJsd2CgO
>>770

「な……消えた、だと?」
 一応、念のため、もしもを考えて探すが、それらしき人影は見えない。
 途端に向ける相手の無くなった自動拳銃にセーフティをかけ、ホルスターに戻した。

 異能の類いか、魔術的なものか、はたまた歪みか。
 どのような手段で消えたのか、様々な可能性は出てくるが、真人にそれを確かめる術は無い。
 そのことと、逃げられた事実にやり場のない怒りのようなものを感じていた。

>>771

「……それも、今のようにヤツらだけで消えたのか?」
 前にもあった。と聞いて、真人はイザヤに訊ねる。
 少しでも情報が欲しい。

773イザヤ:2011/07/06(水) 02:31:02 ID:zFOgu2f.0
>>772
「どちらかというと、瞬間移動、とも言うべきかねェ。
とにかく、その場から消えたとしか表現が出来ねェンだ。」

まいった、と呟きながらイザヤは話す。

「この前はビルの上階から。そして今は袋小路で。
透明になるだけなら、脱出は不可能だろォ?俺はどこかに特定のポイントがあったのかと思ったが…
まァ、最初の一人がどうして攻撃されてたのか聞けば、カギになるかもしれねェな」

774イザヤ:2011/07/06(水) 02:33:51 ID:zFOgu2f.0
>>772(続き)
そうしている間に、イザヤのもとに警備部隊がやってきた。

「包囲網もあるが、あの瞬間移動がある限りキツいな。
また何か情報が入れば連絡する。公安の八代、で話は通るかねェ?
ンじゃァ、俺はちっと報告してくらァな」

軽く手を振り、彼は部隊の中に紛れていく。
現状と経過の報告をするのだろう。

//すみません、寝ます!おやすみなさいー

775名も無き異能都市住民:2011/07/06(水) 02:36:50 ID:SSMHlh/20
>>771-772

その後、最初に現場へと到着したのは治安維持局の部隊であった。
彼らは真人とイザヤに先ほどの若者を拘束した旨を伝えると、すぐに一体を封鎖。
続々と駆けつける千夜や観測局の部隊と合流し、犯人を捜索をおこなったが、
結局成果は得られずに終わった。

後日、例の若者の事情聴取が行なわれたが
「いきなり襲われた。敵対するギャングの襲撃だと思い反撃した」と述べるだけで
有用な情報を得られず、結局その若者を麻薬と凶器所持の現行犯で逮捕するに留まった……。

// とりあえず夜も遅くなってきたのでこの辺で〆と。
// お付き合いいただきありがとうございました。

776八代真人:2011/07/06(水) 02:59:53 ID:1sJsd2CgO
>>773-774

「ビルの上階と袋小路、か……共通するといえば他に逃げ道が無いくらいか……」
 瞬間移動で逃げられるなら、なぜ応戦しながら撤退するのだろうか。
 ……考えても、出てくるのは可能性ばかりだ。

「当事者だしな……。やっぱ、それが一番か。
 あぁ、それで通じ……る。かな、たぶん」
 真人はイザヤを見送って、来た道を戻っていった。
//乙さま&おやすみなさーい

>>775

 周辺調査に参加し、薬莢など犯人を特定出来そうな物品を回収していったものの、目ぼしい成果は無く。
 退屈な調書を書いて提出するに留まった。
//乙さま&おやすみなさーい

777ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/06(水) 23:17:40 ID:WVrfsEdY0
【AGカフェの隣に立っている笹には願い事が二つほどくくりつけられている】
【そのうちの一つがディスの願い事である】

「おほしさまきいてくれるかなの〜…」
【そう言って天の川が流れる夜空をカフェの窓からずっと見上げている…】

778ロザリア・ロートシルト:2011/07/06(水) 23:26:30 ID:SSMHlh/20
>>777

――カラン

「ディス、アイスココアをいれたから、そろそろ飲みに入っていらっしゃい。
 空を眺めるのもいいけれど、虫に刺されてしまうわよ。」

カフェのドアが開き、保護者であるロザリアがディスを呼ぶ。

(アレ以来、だいぶ改善が見られるわね……。
 後はクラーリオの霊薬がダメ押しでどれほど効果を上げるか……ね。)

779ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/06(水) 23:29:28 ID:WVrfsEdY0
>>778
「あう?『ろざりあ』こんばんわなの〜。
 ここあだいすきなの〜!」
【ディスは特に気にしないでロザリアについていく】

「あう〜。むしさんにさされたことはないかなの〜…
 みんなかゆいかゆいいってるけどそんなことないからなの…」
【そう言ってあたりを見回す。近くに笹がはためいているのを見て若干表情が柔らかくなったようだ】

780ロザリア・ロートシルト:2011/07/06(水) 23:46:56 ID:SSMHlh/20
>>779

(このままいけば、先行きも明るそうね。
 よかった……。本当に……。)

今日はまばらに客の影が見られる店内。

そのカウンター席には既に2人分のココアと、
切り分けられたショートケーキが置かれていた。

「さあ、たんと召し上がれ。ケーキもまだ、たくさんあるから。」

ディスが以前の調子を取り戻すにしたがって、
ロザリアの表情も最近はだいぶ、明るくなった。

781ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/06(水) 23:50:05 ID:WVrfsEdY0
>>780
「あうあう、けーきもあったの。
 いただきますなの〜!」
【ディスは大喜びでケーキにぱくついた】

「もぐもぐもぐ、おいしいの!」
【ディスは今までに比べて幸せそうである】
【だいぶ穏やかになったのにはなにか理由があるのか】

782ロザリア・ロートシルト:2011/07/07(木) 00:03:39 ID:SSMHlh/20
>>781

「しかし貴方はまったく太らない体質なのねぇ。
 ……少し羨ましいわぁ。」

そういいながらもロザリアは自分の分のココアをちびちび。

すぐにディスがケーキを食べつくしてしまうだろう、と考えて
残りのケーキを持ってきた。

「ディス、少し質問があるのだけれど。
 アレ以来、体の調子はどう?気分が悪いとか、頭が痛いとか。
 胸が苦しいとか……そんなことはない?」

783ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/07(木) 00:09:32 ID:WVrfsEdY0
>>782
「もぐもぐもぐ…あう〜。すぐにおなかがすくからかなの〜」
【ディスも不思議そうなかおである。
 お腹を見てもまるで圧縮されているのかと思うほど膨らまない】

「…ん?」
【此処で一旦手を止めて、ロザリアの顔を見る】

「うん、まえみたいなことはおこってないの。
 でもまた たたかったりしたらちからつかっちゃうかもしれないの…
 その…『めいぷる』は「おさえただけ」っていってたからなの…」
【そう言って胸のあたりをさすってみせた】

784ロザリア・ロートシルト:2011/07/07(木) 00:23:48 ID:SSMHlh/20
>>783

「今、偉い先生にディスのためにお薬を作って貰っているのよ。
 それを飲めば、或いは呪いを消し去る事ができるかもしれないわ。」

ロザリアはディスの手をとり、目を見つめて。

「だから、それまでは力を使ってはダメよ。
 友達を守るのは、他の人に任せなさい。さもないと貴方は、
 また悪い力に取り込まれることになるわ。」

785ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/07(木) 00:27:26 ID:WVrfsEdY0
>>784
「あうあう、おくすりがつくられてるなの…
 いいひとがここにはいっぱいいるんだなの〜」
【嬉しそうに言うがどこか後ろめたそうだ。少し気にしているのかもしれない】

「うん…その…ともだちがかなしくなるのがわかったからなの…
 だからちからはつかわないなの。おやすみするの〜」
【ディスはそう言って頷いた。自分の名前は出さない。】

786ロザリア・ロートシルト:2011/07/07(木) 00:37:19 ID:SSMHlh/20
>>785

ディスは一見無邪気な子供のようだが、
実際のところ周囲にかなり気を使う。

そんなディスの考えを読み取ったのかロザリアは
背中に手を回し、ぎゅうと抱きしめる。

「貴方が気にする必要はないわ。
 子供は、大人に世話を焼かせるのが仕事なのよ。
 そうして、ゆっくりと大人になってそのときに改めて回りの子供に世話を焼く。
 それでいいのよ。」

787ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/07(木) 00:44:12 ID:WVrfsEdY0
>>786
「あう」
【ギュッと抱きしめられて、ディスは少し安堵した】

「…うん、ちょっといそぎすぎたのかなの…
 たすけたかったひとがいなくなったりで…だから『でぃす』あせって…
 もうなくしたくないっておもって…」
【ディスは自分の心情を吐露する】
「でも…やっぱりまだこどもなの…
 ぜんぶできるわけじゃ…ないよねなの…」
【少し肩を震わせて、泣きそうな声でいう】

788ロザリア・ロートシルト:2011/07/07(木) 00:59:41 ID:SSMHlh/20
>>787

「全部できるわけがない、だから『ともだち』がいるのよ、ディス。
 ……皆で協力して、足りない部分を補い合う。動物でさえできる事よ。
 友達の大切さを知っている貴方なら、できるわね?」

そんなディスを諭すように、ゆっくりと背中を撫でるロザリア。
この調子だと、泣き出すかもと感じてディスを抱えたまま、転移魔法を発動させる。

目的地はロザリアの部屋、ディスのベッドのうえだ。

// そろそろ〆でいいかな?

789ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/07(木) 01:05:50 ID:WVrfsEdY0
>>788
「うん…うん…
 みんなといっしょに…『でぃす』…がんばるなの…」
【掠れた声でディスは言う。どうやらもう泣き始めているのかもしれない】

「おうち…かえるねなの…」
【少し落ち着いた声で顔を上げて涙を流した】
【家に転移した後。ディスはロザリアの胸の中でひとしきり泣いた後…疲れたように眠りについた】
//分かりましたー。乙ですー

790No.31:2011/07/08(金) 22:28:41 ID:j3dxNUKs0
観測局より保護観察中の少女が歩いていた。
蒸し暑い夜が嘘のように、彼女の周りは涼しい。
鼻歌交じりの散歩は、彼女の楽しみの一つのようだ。
やがて彼女は公園に着き、ベンチに腰掛けると夜空を見上げる。

どうやら星を眺めているようだ。

791黒沢小百合:2011/07/08(金) 22:32:40 ID:SSMHlh/20
都市部の夏というのは、たとえ夜になっても
昼間の太陽によって熱せられたアスファルトが放出する熱のせいで蒸し暑い。

この異能都市住民もご多分に漏れず、放射熱による蒸し暑さに苦しんでいた。
しかし、夏を涼しくすごすための施設と言うのは何処にでも存在する物で。

――ザバァッ!!

小百合は一段高くなった台から、綺麗に澄んだ水に飛び込み
のんびりとその感触を楽しむ。ここは、全天候型の大型屋内プール。

仕事帰りの小百合は、あまりの蒸し暑さに衝動的にそれに足を踏み入れてしまったのだ。
こういう施設は手ぶらで言っても何とかなる物で、施設内の売店で水着とタオルを購入して
すぐにプールへと直行する事ができた。さすがにこの時間は人がまばらで、
ガラス張りの天井から夜空が見えることからなかなか趣がある。

792No.31:2011/07/08(金) 22:51:57 ID:j3dxNUKs0
>>791
新たな人影がプールの入り口に見えた。
この時間には珍しく、10歳前半くらいの少女が一人だ。
浮き輪を片手に、紺のスクール水着を着た少女は珍しそうに屋内を見渡す。

スクール水着の名前欄には、大きく「かんそくきょく No.31」と書かれている。

…貸し出されたのだろうか。

793黒沢小百合:2011/07/08(金) 23:07:01 ID:SSMHlh/20
>>792

「ん、あれは……観測局……?」

のんびりと水泳を楽しんでいた小百合であったが、
『かんそくきょく』の文字に目が留まった。

観測局にはあんな人員もいたのか、と少し驚いたが
少し話でも、と思い立った小百合は備え付けのはしごでプールサイドへと上がる。

「もし、あなたは観測局の方でしょうか?」

見た目は少女といえど、これから仕事を共にするかもしれない相手だ。
小百合はあくまでも対等の立場で少女へと話しかけた。

794No.31:2011/07/08(金) 23:13:02 ID:j3dxNUKs0
>>793
どうすればいいのか、といった表情でプールサイドを歩いていたNo.31だが、
話しかけてきた女性を見上げた。

「観測局?貴方は観測局の人なの?」

そういったところで、自分の着ている水着の文字に気付き、ああ、と頷く。

「ごめんなさい、私は観測局じゃ無くて、むしろその逆よ。
私は観測局の保護観察中なの。
今日は自由な日だから、行った事の無い場所に行っておこうと思って」

そういって、水色の髪を揺らして嬉しそうに笑う。

「この水着は観測局の人に借りたのよ。」

それから少女は、なんであんなに皆優しいのかしらね、と呟いた。

「お姉さんも、観測局の人なの?」

プールサイドに座り、足をプールに浸しながら少女は振り返って聞いた。

795黒沢小百合:2011/07/08(金) 23:27:59 ID:SSMHlh/20
>>794

「いいえ、私は観測局ではなく千夜グループのものです。
 とはいえ、私の仕事は観測局と同じような物ですけれど。」

保護観察中、ときいて小百合はすぐにでもデータベースにアクセスし
この少女の事を調べておきたかったが、荷物は全て貸し金庫の中だ。
なんとも歯がゆいが、今は諦めるしかない。

「言った事のない場所、知らない場所、
 そんなところに実際に出向くのはなかなか良い経験になりますよね。
 そういった好奇心と言うのは、人を動かす原動力になるものです。
 そして時には、思わぬ幸運をもたらすものです。」

小百合は、そういうとすぐ側にあったジューススタンドで
トロピカルジュースを2人分注文して、片方をNo.31へと差し出す。

「個々であったのも何かの縁。これは私からのプレゼント、ということで。」

796No.31:2011/07/08(金) 23:36:51 ID:j3dxNUKs0
>>795
「千夜……。」

その名前に、少しあっけに取られた後、少女は大人びた表情で苦笑した。
千夜グループの象徴、街の中心の千夜ビル。
それこそが彼女のテロの標的だったのだから。

トロピカルジュースを驚いた表情で受け取り、こわごわと口をつける。
気に入ったのかそのまま2、3口飲んで、ありがとうお姉さん、と笑った。

「お姉さんは千夜の人だったのね…大きなビルよね、国外でも有名よ?」

水色の瞳が意味ありげに笑う。

「好奇心…そう、この町は本当に不思議ね。私の居た世界がどれだけ狭かったか、
生活して思い知ったわ。」

797黒沢小百合:2011/07/08(金) 23:51:10 ID:SSMHlh/20
>>796

「ええ、千夜の支社は様々な地域に点在しています。
 いずれも、それなりのシェアと信頼を獲得していますしね。」

小百合はまるで自分の事のように、得意気に鼻を鳴らした。
彼女は己の尊敬する夜刀神蔡生の側近であること、そして千夜で重要な地位に
ついていること、その二つが誇らしくてたまらないのだ。

「ここは不思議を凝縮したような街ですからね。
 その昔、ソポクレスは『世に不思議は数あれど人に勝る神秘なし』と述べましたが、
 生物のように拡張、発展、成長を続けるこの街の神秘は人にも劣りますまい。」

798No.31:2011/07/09(土) 00:02:30 ID:j3dxNUKs0
>>797
ちゃぷちゃぷ。心地良い水音と共に、No.31は浮き輪でプールに浮いている。
彼女は泳げないが、十分楽しそうだ。

「それにしても、水に浸かるだけでこんなに涼しいのね。
海はもっと広くて塩辛いらしいけれど、いつか見てみたいわ」

見上げると、室内の明かりに多少消されるが夜空が見える。
満足げに彼女は微笑んだ。

「生物…そうね、だからこの街は活動を止めないのかしら」

プールサイドのジュースはもう空だ。
ふと少女は小百合を見上げて、

「お姉さんも自分の入っている…千夜グループが好きなんだね。
私も、私の入っている、私の周りが、好き。」

笑顔で呟いた。

799黒沢小百合:2011/07/09(土) 00:16:12 ID:SSMHlh/20
>>798

一方の小百合は、プールサイドの椅子に寝そべり
まだ半分ほど残ったトロピカルジュースをちびちびと飲んでいた。

「ちょうど海開きも近いですからね。
 もう少ししたら、行ってみるといいでしょう。」

この少女は、好奇心に満ちている。
上昇志向の強い小百合は、No.31に親近感、好感を抱いた。

「ええ、大好きですよ。私の所属する組織ですから。」

小百合も、少女に答えるように笑顔で。

800No.31:2011/07/09(土) 00:20:25 ID:j3dxNUKs0
>>799
「うん。私は、私の使命を果たせなかったから――もう一度、ここで生き直すの。
知らないことは全部知るつもりよ!」

バタ足を覚えた少女は気ままにプールを動き回っている。

「お姉さんの名前は?私はNo.31。サーティーワンよ。
私の施設では、名前は全て数字なの」

801黒沢小百合:2011/07/09(土) 00:31:39 ID:SSMHlh/20
>>800

「ベーコンやソクラテスなど、古今の哲学者が何度も説くように、
 知識とは即ち力であり、この世で唯一の絶対的な善。
 学ぶという行為は実に素晴らしい……。」

目を細めて、微笑む小百合。
ジュースのさわやかな風味が夏の火照った体になんと心地よいことか。

「私の名は黒沢小百合。
 千夜グループ総帥付き秘書兼都市警備部門主任を務めさせていただいております。
 サーティーワン、以後お見知りおきを……。」

802No.31:2011/07/09(土) 00:43:39 ID:j3dxNUKs0
>>801
No.31はちらっと壁の時計を見た。プールサイドに近付き、水から上がる。

「小百合さんね。…都市警備部門!千夜は治安維持もしてるのね。
…もう少ししたら、私も保護観察が取れるの。
能力はまだ戻して貰えないようだけど、大分自由になるわ。」

頭を振って水滴を払う。

「―――No.100やNo.28も観測局に撃破されて、残るは一人。
観測局は独自に調べてるみたいだけど、もうすぐNo.3が動く。標的はこの街全域よ。
だから、それを乗り越えて、――また会いましょう、小百合さん」

時間が来たわ、施設に戻らないと、と彼女は言って、出口に向かいながら小百合に手を振った。

「楽しかったわ、ありがとう!」

そうしてNo.31は去っていった。

//絡みありがとうございましたー!

803黒沢小百合:2011/07/09(土) 00:51:43 ID:SSMHlh/20
>>802

「こちらこそ、楽しかったですよ。
 機会があれば、またお会いしましょう……。」

No.31が更衣室へと消えた後、小百合はもう一度飛び込み台から
プールへと飛び込み、水中に潜ったまま月を眺めつつぼんやりと考える。

(観測局に撃破……彼女は、テロリストの一味だったのか……?
 No.3……とりあえず、あとでデータベースを調べてみないと……。)

小百合が、No.31が千夜本社のビルを狙ったテロを企てたと知るのは
それから1時間以上後の事であった。

//おつよー

804シャオロン・デュオ=シャル:2011/07/19(火) 22:28:22 ID:VoJSms.Y0
【裏路地】

「おおぉ?」
裏路地の少し広まった空間。
その中央で座る子どもの目の前には倒れた男が見える。
男の頬を叩く子どもは暫くして反応が無い事を悟ると男の腕を口に付け、少しばかり遅い夕食を取るのだった。。

805髪の逆立った男:2011/07/19(火) 22:41:32 ID:3EaBc40s0
>>804
「んー……。
 ……血の匂いがするぜ」

髪の逆立った、ラフな格好の男が、
鼻を鳴らしながらシャルオンの背後に現れた。

「……ずいぶんと美味そうじゃねえか」

ニヤニヤと男は笑う。

806シャオロン・デュオ=シャル:2011/07/19(火) 22:50:53 ID:VoJSms.Y0
>>805
「これはシャルのごはんだ」
声のした方を振りかえる。
腰から伸びた二本の鎖が鼻の頭で交差して巻かれている。
大事そうに男の腕を抱き寄せてそう言うのだった。

807髪の逆立った男:2011/07/19(火) 23:00:27 ID:3EaBc40s0
>>806
「そんなこと言うなよ、ちょっとぐらい分けてくれたっていいだろ?」

そう言って男に手をかけようとする。

「別にお前を食ってもいいんだぜ」

男は相変わらずニヤニヤと笑っていた。
釣りあがった口から覗く歯は鋭く尖っており、
とても人間のものとは思えなかった。

808シャオロン・デュオ=シャル:2011/07/19(火) 23:07:43 ID:VoJSms.Y0
>>807
「だめだ」
そちらが近付くと、倒れている男の髪を引っ張って逃げる。
人差し指の第二関節辺りまでを口に含む。

「シャオは、おいしくない、ぞー」
少しばかり怯える様な口調と声。
こんな物ばかりを食べていれば確かに美味しくはないだろうが……。

809髪の逆立った男:2011/07/19(火) 23:12:33 ID:3EaBc40s0
>>808
「んー……腹が膨れりゃ何でもいいんだよ」

肩を回しながらシャオロンをゆっくりと追いかける。
歩きながら、男の体は全身が鱗に包まれていった。

「食ってやる。
 お前もそいつもな」

鱗が頭から剥がれ落ち、男は刺々しい鰭が全身に備わった、
褐色の縞模様の怪人に変化した。
男はゆっくりと歩み寄る。

810シャオロン・デュオ=シャル:2011/07/19(火) 23:19:59 ID:VoJSms.Y0
>>809
「くうぅおおおぉ……おまえ、こわいぞ」
腕を口にくわえ、身体を抱き上げさらに逃げる。
端まで移動しぶるぶる震えている。

「こっちにくると、おこるぞ」
身体中を走る鎖がカチャカチャと音を立てる。
更には全身から邪悪な気が滲み出ているのが解るだろうか。

811褐色の怪人:2011/07/19(火) 23:25:38 ID:3EaBc40s0
>>810
「面白いぜお前。
 おこってみろよ」

怪人は、刃物のような鰭を持った腕を振り上げ、
シャオロンの前に立った。

「ふん、お前は能力者か」

怪人は邪悪な気を感じ取ったのか、呟く。
鰭の生えた腕を、シャオロンに向かって振り下ろした。

812シャオロン・デュオ=シャル:2011/07/19(火) 23:40:17 ID:VoJSms.Y0
>>811
「ううぅ……」
男が目の前に立つと蹲って小さくなった。
今にも泣きだしそうな顔をして見上げていたが、
拳に反応して鎖に巻かれた腕を交差して防御に使った。

男の腕が触れた瞬間、その接点から光を発する。
「わあああっ!!」
そしてカウンターでその場で宙返りをして見せ、背中から伸びた尾を鞭のように使い払う!

813褐色の怪人:2011/07/19(火) 23:48:44 ID:3EaBc40s0
>>812
怪人は尾の鞭を食らってよろめき、
胸にえぐられたような傷が付いた。

「んん……あぁっ……」

しかし、怪人が体勢を立て直すと傷は簡単に閉じてしまう。

「ったく、痛え痛え……」

814小龍・堕:2011/07/19(火) 23:58:23 ID:VoJSms.Y0
>>813
目の前の子どもは龍へと変貌を遂げていた。
現れた龍に子どもの衣服が引っ掛かっている所から子どもが変化したものだと解るだろう。
背中側から伸びた身の丈以上もある鞭の様な尾。
身体を浮かせる翼は一対揃っているものの、穴の開いた寂れた布のような翼をしていた。

「はなれろっ!」
空中で身体を回転させ、再び尾で払う。
地面を抉りながら進む龍の尾の軌道には光の線が刻まれる。

815褐色の怪人:2011/07/20(水) 00:07:10 ID:3EaBc40s0
>>814
「んおおっ!?」

怪人が弾き飛ばされ、建物の壁に叩きつけられた。
壁は砕け、怪人の体の形に綺麗に皹が入っていた。

「あんでえ、人でなしかよお前も。
 ハァッ!」

着地と同時に怪人は両腕を振り上げる。
腕の鰭から水のカッターが飛び出した。
二枚のカッターは変化した小龍に向かう。

816小龍・堕:2011/07/20(水) 00:17:01 ID:VoJSms.Y0
>>815
「!」
二つの水のカッターは龍の胴体を捉える。
痛みに暴れ、踊り狂う尾が周囲を傷つけて回る。
その度に刻む光の線。邪悪な魔力を孕んだ光。

龍の周囲殆どが光の線に覆われてしまっている。
「シノン……たすけて、いたい、こわい」
恐怖を訴えると同時に魔力を解放。
周囲を乱雑に走る衝撃刃が襲う!

817褐色の怪人:2011/07/20(水) 00:26:07 ID:3EaBc40s0
>>816
解放された衝撃刃に、
怪人は全身をズタズタに切り裂かれたように見えた。

「お前、食い応えありそうだなぁ」

しかし、怪人は小龍に飛び掛ってきた。
その顔面に鋭い鰭で斬り付けようと腕を振り上げながら。

818小龍・堕:2011/07/20(水) 00:34:39 ID:VoJSms.Y0
>>817
「くぅるなああぁ!!」
吼える。それと同時に鰭が突き刺さる。
大量の血が吹きあがり、悲鳴が響く。その瞬間だった。
自身を覆う程に取り巻いた光の線の全てが邪悪で禍々しい気を放つ。
一本につながった光の帯が高速回転を始め、光の刃をなった!

819褐色の怪人:2011/07/20(水) 00:42:44 ID:3EaBc40s0
>>818
「うあっ!」

怪人は高速回転する光の帯に巻き込まれ、
刃に切りつけられながら吹き飛ばされる。

「……ぐっ……。
 うおおっ!」

胸に大きな切り傷を受けた怪人は、
全身に力をこめて先ほどのように回復を試みる。
しかしその傷はまったくふさがる様子を見せなかった。

「なにっ……畜生……!
 ……仕方ねえ、ここは逃げた方がよさそうだな……」

怪人は光の刃が発生したシャオロンと戦うのは困難と判断し、
胸の傷を抑えながら逃走しようとする。

820小龍・堕:2011/07/20(水) 00:47:15 ID:VoJSms.Y0
>>819
「ううううぐぅ……!!」
鰭から受けたダメージが大きかったのか、
暴れる事もできず地面に落ちて只管痛みに悶えている。
逃げるのも、追撃を加えるのも今なら容易だろう。

821褐色の怪人:2011/07/20(水) 00:49:37 ID:3EaBc40s0
>>820
「畜生……痕にならねえかな、この傷……」

血をポタポタと流しながら、怪人は走り出す。

既に背中を向けた怪人は、
シャオロンが地面に落ちたことも気づかずにその場を立ち去った。

822シャオロン・デュオ=シャル:2011/07/20(水) 01:01:13 ID:VoJSms.Y0
>>821
「うぅ……ぐすん。いたい」
数時間後、その場にはボロボロになった衣服を纏って涙を流す子どもが居た。
何度も虚空に向かって痛いと訴え、既に人とも言えぬ容姿となってしまった男の死体を片手路地裏の奥へと消えて行った。

823黒沢小百合:2011/07/20(水) 22:42:44 ID:SSMHlh/20
【AGカフェ】

「…………。」

いつものカウンター席ではなく、
店の置くの店員用休憩室で、書類とにらめっこ。

自分のオフィスでやればいい仕事を何故カフェでやるのかは謎なのであった。

824名も無き異能都市住民:2011/07/29(金) 22:44:37 ID:WVrfsEdY0
「こぉ〜らぁ〜!!待ちなさあああああい!!」
【人が少し少なくなった街並み…の中に突如として響く大きな声】

「この万引きめぇ!逃がしませんよ〜!!」
【一人の男性がバッグ片手に走るその後ろから、千夜学園の制服をきた少女が猛スピードで追いかけていく。】
【何やら捕物のような光景である。】

825黒沢小百合:2011/07/29(金) 22:59:52 ID:SSMHlh/20
>>824

「うるさいですね……。」

先ほどからなにやら外が騒がしい。
書類整理に追われ、すっかりストレスを溜め込んでしまった小百合は
至極不機嫌そうな表情でAGカフェのドアを開き、通りに出た。

そこでちょうど、例の捕り物を目撃して。

「……まったく。」

正直気が進まなかったが仮にも小百合は千夜の都市警備部門を統括する立場にある。
ここで、黙って万引きを見逃すようでは、市民の支持など得られないだろう。

とりあえず、男の進行方向に兵士を具現化。
無理やり取り押さえようと試みる。

826名も無き異能都市住民:2011/07/29(金) 23:05:38 ID:WVrfsEdY0
>>825
「うわー!」
【突然現れた兵士を前にして急停止しようとするが…】
【ちょうどいいところで兵士に取り押さえられてしまった】

「…おっと」
【学生らしき少女は立ち止まって取り押さえられたのを見て】

「そのバッグの中に万引きした品が入ってるはずです。
 お助けいただいて、ありがとうございます。」
【安心した表情で学生は頭を兵士に向けて下げた】

827黒沢小百合:2011/07/29(金) 23:28:24 ID:SSMHlh/20
>>826

「少し、待っていなさい。
 一応、確認をしますから。」

とりあえず捕まえたものの事情をよく知らない以上、
誤認逮捕でないとも言い切れない。

男から簡単に氏名を聞きだし、手持ちのPDAで警察のデータベースで検索する。
……間違いない。この男は、以前にも犯罪歴がある窃盗の常習犯だ。

「よろしい、諸君らはこの男をも最寄の警察署まで連行するように……。
 っと、バッグでしたね。どうぞ。」

確認を終えた小百合は、兵士に万引き犯を連行させると
バッグを少女へと返した。

828名も無き異能都市住民:2011/07/29(金) 23:33:39 ID:WVrfsEdY0
>>827
「はい、どうもです。」
【バッグを手にとってびしっと敬礼のポーズをとる】

「今の兵士さんは…貴方の部下の方でしたか。改めて、ご協力感謝致します。」
【この熱いのに赤いマフラーと白いニット帽をかぶっている。服のセンスは良くなさそうだ】

829黒沢小百合:2011/07/29(金) 23:41:28 ID:SSMHlh/20
>>828

「この都市は真に遺憾ながら犯罪の多い都市です。
 今後は十分に注意するように。」

敬礼を返す少女に忠告をし、
書類の残りを片付けるためAGカフェへと入ろうとする。

830名も無き異能都市住民:2011/07/29(金) 23:44:51 ID:WVrfsEdY0
>>829
「大丈夫です!私は人のために、自分の「手に入れた」能力を役立てたいと思っていますので。
 凶悪犯など相手ではわかりませんが、今は平和の為に修行しています。」
【真っ直ぐな瞳で小百合を見て言った。少し気になるフレーズもあるが…】

「いつかは街の平和を守れるようになりたいです!」
【結構単純なのだろうか。嘘偽りはなさそうだ。】

831黒沢小百合:2011/07/29(金) 23:56:25 ID:SSMHlh/20
>>830

「能力、ですか。一つ忠告差し上げるなら
 そのように不用意に自分が能力者であると触れ回らぬ事です。
 力と言うのは、いらぬ争いを生む引き寄せる物ですから。」

小百合は肩越しに視線を向けて、ふんと鼻を鳴らし。

「たとえば、私が反異能者を掲げる過激な活動家であったなら
 今この場で命を狙われる可能性すらあったのですよ?」

832名も無き異能都市住民:2011/07/30(土) 00:01:07 ID:WVrfsEdY0
>>831
「むぅ、力はあまりあたりには見せぬもの…ですか。
 分かりました、何か…方法を考えてみます。」
【少女は少しうつむいて考えこむ。千夜学園の能力者情報の中に一応彼女も居る…ようである】

「うーむ、千夜グループのお偉い方が、反異能力者の活動家には見えませんが…」
【少し冷や汗を流しながら小百合を見る。それなりに知名度はあるらしい】

「…なるほど。相手が貴方のような人だったら、勝ち目がないかもしれません…」
【素直に頭を下げた】

833黒沢小百合:2011/07/30(土) 00:13:21 ID:SSMHlh/20
>>832

「何も、私のような能力だけではありませんよ。
 例えば相手が隠し持っていた銃を放ったならそれでおしまい。
 そこのゴミ捨て場のブロックを手にとって殴りかかってくるかもしれない。
 極論を言ってしまえば、素手でだって当たり所が悪ければ人は死ぬ。」

結局は特殊能力が使えるからといって、異能者もただの人間。
肉体強化だとかの能力者でない限り、致命的な一撃を喰らえば死に至る。

「警戒はいくら尽くそうとも、やりすぎという事はありません。
 貴方も長生きしたいのであれば常在戦場の心構えを忘れてはなりません。」

小百合は、説教を行ないながらも密かにPDAを捜査し、
目の前の女生徒のデータを検索する。千夜の制服をきているという事は千夜学園の生徒。
見つからない、というレベルのデータ量ではないはずだ。

834名も無き異能都市住民:2011/07/30(土) 00:23:13 ID:WVrfsEdY0
>>833
「なるほど…ふむ、油断して襲いかかられれば…
 自分の能力についてもっと考えてみなければ…」
【結構素直に小百合の話を聞き及んでいる。どうやら口だけというわけでもなさそうである。】

「敵と相対したときにはいかなる時も油断せず…
 はい、私ももっと精進します。」
【生真面目に返す。飲み込むのも速い…】

【小百合の調べていたデータには…イカのように記されている。】
「千夜学園高等部1年 防人 鶫(さきもり つぐみ)」
「生徒会長を務める。正義感の強さが目立つ。成績は筆記は並。スポーツは上の中程度」
「入学時には特殊な能力を持たなかったが7/15日。突如として能力の覚醒を確認。」
「詳しい仕組みは不明であるが、何らかの効果で衣服の強度の上昇を確認。」
「そのことから能力は強化系の可能性あり。詳しい能力は追って検査する予定…」

【本当に目覚めたのはつい最近のようだ。】

835名も無き異能都市住民:2011/07/30(土) 04:00:29 ID:WVrfsEdY0
>>834
//中等部に訂正します

836黒沢小百合:2011/07/30(土) 22:51:17 ID:SSMHlh/20
>>834

(ふむ……。)

今後何らかの役にたつやもしれぬと判断し、
データをPDAに保存しておく。

「では、私はそろそろ仕事に戻ります。
 貴方がこの都市で大成することを願っていますよ。」

かつかつとヒールを鳴らし、カフェの中へ。

// おそくなってごめんね。これで〆でいいかな?

837防人 鶫 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/30(土) 22:56:14 ID:WVrfsEdY0
>>836
「ありがとうございます。
 貴方のような人を目標にしようかと、思います!」
【微笑みながら敬礼のポーズをとった】

「じゃあ私は、品物を返しに行ってきますので、これで〜」
【小百合に向けて手を振るとバッグを抱えて去っていった】
//気にしないでいいですよー。わかりました。

838ホホイ:2011/08/03(水) 18:35:50 ID:PBnIervYO
(`・ω・´)`・ω・´)

ふたり いる!

839ホホホイ:2011/08/03(水) 19:39:52 ID:PBnIervYO
(`・ω・´)`・ω・´)`・ω・´)

さんにん いる!

840ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/03(水) 20:01:51 ID:WVrfsEdY0
【AGカフェの近く。一人の少女が歩いていた】
「…うー、まだねむたいの…」
【少し調子が悪そうにも見えるが。それでも平気そうな顔をするようにしているようだ】

841ホホホイ:2011/08/03(水) 20:10:06 ID:PBnIervYO
(´・ω・(´・ω・(´・ω・`)???

くるりとそちらにふりむいた

842ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/03(水) 20:12:50 ID:WVrfsEdY0
>>841
「あう?」
【何か視線を感じ、視線のする方向に顔を向けた】

「…あそこにいるのはなの…」
【視線のする先をジーーー−ーっと見る。どんなものが見てるのか気になるらしい。】

843ホホホイ:2011/08/03(水) 20:19:47 ID:PBnIervYO
三人のホイはぷいぷいと手を振っている。そちらに気付いたらしい。

844ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/03(水) 20:21:19 ID:WVrfsEdY0
>>842
「あう〜?!いっぱい「ほい」がいるなの!」
【びっくりしてホイのいる方へ駆け寄っていく】

「おともだち…なのかなの?」
【隣とかを見ながらつぶやく】

845ホホホイ:2011/08/03(水) 20:27:38 ID:PBnIervYO
「ミル=イーだ」
左のが、そう答えた。
「ミル=フーだ」
右のは、そう返した。
「ホイだ!」
真ん中は、答える必要はなかったと思う。
ホイが首輪をしている以外は、若干の髪の長さや、目つきの鋭さなどの違いしかなく、殆ど見分けが付かない。

846ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/03(水) 20:31:32 ID:WVrfsEdY0
>>845
「あうあう、そっかなの…『いー』で」
【向かって左を指さして言う】
「こっちが『ふー』で」
【向かって右を指さして言う】

「『ほい』なの!えっと…
 『いー』と『ふー』はおともだちなの?」
【そして中央のホイを見つめていった】

847ホホホイ:2011/08/03(水) 20:38:24 ID:PBnIervYO
「うん。ナカマ。ナカーマ」
「なんでいるかは、しらない」
何時の間にか、現れたのだと言う

ぐーるぐーるとホイの周りを回るイーとフー
「「どっちがどっちだ?」」

848ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/03(水) 20:41:25 ID:WVrfsEdY0
>>847
「うーん、なかまなの…
 えっと、おともだちってことでいんじゃないかなの〜」
【二人を見て微笑むが】

【ぐるぐる回られて】
「あうあうー。どっちがなのかなの…
 どっちもにおいかわらないのかなの…」
【二人を見て鼻を鳴らしながらクビをかしげた。
 その鋭敏な鼻で匂いとかで判断できるかはわからない】

849名も無き異能都市住民:2011/08/03(水) 20:52:03 ID:PBnIervYO
//きょう夜勤無いって言ってたじゃないですかーヤダー!!

//仕事おちなんですちくしょう……ちくしょう!

850ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/03(水) 20:52:37 ID:WVrfsEdY0
>>849
//おk、また今度にしましょう。

851銃寺森クロス  ◆CROSS/.AzE:2011/08/08(月) 21:29:37 ID:HnkBBDEo0
「あー」

 夜の公園のベンチ。
 紫煙が街灯の明かりをぼかす。

「やっべぇ、暇だ」

 タバコをふかす男の名は銃寺森クロス。
 こう見えても、とある喫茶店の店長だ。

「暇だなー。マジ暇だなー。
 なんか面白いことねーかなー」

 やる気の無い目で夜空を見上げ、溜息を吐き出す。

「あー、そうだ」

 何かを思いついたのか、タバコの火を指先で揉み消す。

「テロでもやるか」

 そんなことを、サラッと言った。

852ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/08(月) 21:33:07 ID:WVrfsEdY0
>>851
【の、となりのベンチで】
「すー…すー…」
【ぐっすりと眠っている少女がいる。いつもの包帯ぐるぐる巻きである。】

「すー…すー…」
【絶妙なバランスで眠っている】

853銃寺森クロス  ◆CROSS/.AzE:2011/08/08(月) 21:35:19 ID:HnkBBDEo0
>>852
「…………」

(うーわまた寝てるよコイツはいつもいつも。
 どう反応すればいいか分かんねーよもー放置しよう放置放置)

 放置。

854ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/08(月) 21:37:19 ID:WVrfsEdY0
>>853
「…すー」
【ゴロンと転がってベンチの下に落っこちる】

「あう?」
【額に土をつけた状態でゆっくりと起き上がった】

「うーん…」
【不思議そうな顔で空を見上げる】

855銃寺森クロス  ◆CROSS/.AzE:2011/08/08(月) 21:40:40 ID:HnkBBDEo0
>>854
「…………」

(あーもうコイツわかんねーマジでわかんねー
 どうすりゃいいんだマジで反応に困るんだよコイツはいつもいつも)

 クロスの額に冷や汗が流れる。
 とりあえず相手も起きたようだし、軽く手を挙げる。

「よう、起きたか?」

856ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/08(月) 21:45:01 ID:WVrfsEdY0
>>855
「あう、ごめんなさいなの。
 なんかへんなところでへんなゆめみちゃったみたいなの…」
【あくびを軽くしながらゆっくり起き上がる】

「きゅうに、とちゅうでねむくなる…みたいなの…」
【軽く頭の後ろを掻いている】

857銃寺森クロス  ◆CROSS/.AzE:2011/08/08(月) 21:48:48 ID:HnkBBDEo0
>>856
「あ、そうなん?
 お前は他人と身体の構造が違うからかもな。
 いや、適当に言ってるだけなんだけどさー」

 もう一本タバコをつけようと思ったが、ディスがいるので仕方なく、
 タバコのケースを上着のポケットに押し込んだ。
 代わりなのか、自販機へ行き硬貨を入れる。

「あ、おまえ何か飲む?」

858ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/08(月) 21:53:26 ID:WVrfsEdY0
>>857
「ねるときは…まえとあんまりかわんないみたいなの。
 つかれたりすることはなくなったけどなの…・」
【足元をパタパタはたいて居る】

「あうー、そういえばなにかのみたいなの…
 じゅーすないかなの?」

859銃寺森クロス  ◆CROSS/.AzE:2011/08/08(月) 21:56:19 ID:HnkBBDEo0
>>858
「ああ、大抵のモノはあるんじゃねぇの? 、と」

 クロスはもちろんドクペを選ぶ。
 ガコンと出てきた缶を手にし、片手で開けた。

「ま、疲れが残ってないならいいんじゃね?
 俺はよくわからねぇんだけど……っつか、情報不足だわ。
 判断材料が圧倒的に足りねぇよ」

860ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/08(月) 22:02:31 ID:WVrfsEdY0
>>859
「あうあう、おねがいなの〜」
【穏やかな顔で答える】

「うん…わかってることは…
 ちょうどこれがでるまえにあったひとが」
【胸をぐっと抑えてため息をつく】

「『でぃす』とおんなじにおいだったことかなの…
 しってるにおいなのにしらないひとなの…」

861銃寺森クロス  ◆CROSS/.AzE:2011/08/08(月) 22:05:12 ID:HnkBBDEo0
>>860
「お前と同じ臭い?」

 オレンジジュースを買い、それをディスに向かって放り投げる。

「そりゃ……“研究所”の人間ってコトか?
 ったく、あいつらは潰しても潰してもゴキブリみてーにまた現れるなァオイ」

862ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/08(月) 22:09:10 ID:WVrfsEdY0
>>861
「そう、かもしれないの。」
【缶をキャッチしてから頷いた】

「でも『くろす』とはちがうにおいみたいでなの…
 いまもどこかにいるのかなの…しんぱいなの…」
【さすがに怪力ではうまく開けられないのかタブは包帯を使って丁寧に開けている】

863銃寺森クロス  ◆CROSS/.AzE:2011/08/08(月) 22:15:59 ID:HnkBBDEo0
>>862
「ま、俺は最近は研究所の情報は追ってないしなー。
 俺に関するアレやコレはもうカタがついたみたいだし。
 すまないが、俺にはその話を詳しく追うことは難しそうだ」

 飲み終わった缶を両手でグシャリと潰し、
 ペラペラのコースターのようになった金属の塊を、
 ゴミ箱向けて思いっきり投げ込んだ。

「さて、と。しかし暇だなー。テロは近々に時間決めてやるとして、
 その前にやるべきコトを片付けないとなー。……ゴキブリ退治とか」

864ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/08(月) 22:19:03 ID:WVrfsEdY0
>>863
「うん…なの。
 だれもこなかったら…それでいいんだけどなの…」
【少し寂しそうである】

「…てろ?
 なにかするの?」
【不思議がっている。】
【…時折変な気配もあったりするが…】

865銃寺森クロス  ◆CROSS/.AzE:2011/08/08(月) 22:29:24 ID:HnkBBDEo0
>>864
「あー、テロはただの暇つぶしゲームみたいなモンだ。気にしなくていい」

 バイクに跨り、キーを差し込む。

「ただ、さ。このまま落ち着いて腐ってくのも、俺らしくねぇじゃん?
 もうちょっとだけ、暴れさせて欲しいのよ」

 バイクにエンジンがかかった。

「というわけで、すまねぇ。ちょっと色々と準備しなくちゃいけなくなった。
 なに、“この世界”でドンパチ始めるわけじゃないから安心しろい。
 “この世界”じゃむしろ、下水管のゴキブリ退治を先にやんねぇとな。
 あいつら、また巨大化してやがるし……」

 そう言いつつもエンジンを大きく吹かす。

「じゃあな、ディス。少しは寝る場所、考えないとスグにやられちまうぞ」

 そう言うとクロスは、夜の街の中に消えていった。

866ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/08(月) 22:34:59 ID:WVrfsEdY0
>>865
「げーむ…そっかなの…
 たいへんなことじゃないといいけどなの…」
【心配そうだ。】

「このせかい…あのせかい…
 よくわからないけど…むりしないでねなの…」
【どこか不安そうである。】

「えっと…たいじするなの…うん。ちゃんとねるところはかんがえてみるなの。
 またねなの〜」
【軽く手を振りながら見送っていった】

「…いったいなにがあるのかなの」
【首をかしげながらもゆっくりジュースを飲み始めた。】

867黒沢小百合:2011/08/13(土) 21:16:54 ID:SSMHlh/20
【AGカフェ】

「ふう、久々にお酒でも……。
 確かこの辺に……これと……これでいいかな……。」

いつものようにカフェの厨房をがさごそと漁る小百合。
一瓶1000円程度の安いワインと、冷蔵庫の片隅に残っていたフルーツラムチーズを
手に、カウンター席へ。

「んむ……なかなかいける……。
 やはり、クロスさんの舌は確かですねえ……。」

868防人 鶫 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/13(土) 23:50:00 ID:WVrfsEdY0
>>867
【AGカフェ】
カランカラーン
【人の入る音が聞こえる】

「……ここがいろんな人が集うお店…
 ふーむ、」
【あまりうるさくない喋り方であたりを見回す少女】

「…ここでは静かにしなければ…」
【周囲に気を使いながら近くの席に座った】

869黒沢小百合:2011/08/13(土) 23:56:12 ID:SSMHlh/20
>>868

カウンターでひとり酒を飲む女性。
以前、ちょうどこの店の前でであったあの女性だ。

870防人 鶫 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/13(土) 23:58:56 ID:WVrfsEdY0
>>869
「…あのお方は以前の…」
【少し興味を持ったのかじっと見つめる】

「うーむ…千夜グループの方も
 ここを…」
【声をかけたそうではあるが】

「…」
【お酒の席であるのを見てじゃまになるのではないかと思っている…
 ちょっといい人すぎるような…】

871黒沢小百合:2011/08/14(日) 00:13:37 ID:SSMHlh/20
>>870

一方の小百合も、新たな客に気づいてこそいたが
自分から話しかける事もあるまい、と一人酒を飲んでいた。

こんな開店休業同然の店を選んで入ってくる者など、
クロスの知人か、どういうわけかここに惹きつけられた人々。
この店独特のルールが分からないようなら世話ぐらいしてやるが、
こちらから進んで話しかける気にはならない。

872防人 鶫 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/14(日) 00:17:39 ID:WVrfsEdY0
>>871
(…ちょっと怖そうな人です…)
【なにか近寄りがたいオーラでも感じたのか、軽く息を飲む】

(うーむ、しかし…む?)
【何かの気配を感じ取ったのか、少女は後を振り向いた】

「ちょっと待った!!お金を払ってください!」
【どうやら食い逃げ現場を抑えたらしい】

873黒沢小百合:2011/08/14(日) 00:29:03 ID:SSMHlh/20
>>872

「…………。」

(やれやれ……。)

小百合は、至極めんどくさそうにグラスを置き
ゆっくりと騒ぎの方向へ顔を向ける。

ははあ、なるほど。あれはこの辺でも
そこそこ名の通ったスリの一人だっただろうか。
しかし、それ以上に見大江があるのは食い逃げの現場を押さえた少女の顔。
以前も、スリだか引ったくりだかを追いかけていた少女だ。

「……一体、何の騒ぎですか。」

大きな声で『金を払え』と言っているのだ。
聞かずとも、食い逃げだと予想はつくが。

874防人 鶫 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/14(日) 00:34:01 ID:WVrfsEdY0
>>873
「あ、その。またしてもこんな場面で
 お話の機会が…」
【少女は振り向いて軽く挨拶した】

「えっと、今たしかに押さえておりますので少々…
 ほら、お金を払って!」
【見ると少女は細そうな片手一本で結構ガタイのいい男をしっかりグリップしている】
【右手の手袋が淡く光っているように見える】

875黒沢小百合:2011/08/14(日) 00:47:25 ID:SSMHlh/20
>>874

この様子なら逃がす事は無いだろうし、
あの男は以前一度、ひどく痛めつけてやった事がある。

私の目の前で逃げるということがどういう結果を生むか、
身にしみて知っているはずだ。

「お久しぶりです。相変わらず、
 そうやって事件に首を突っ込んでいるのですね、貴女は。
 まあ、正しい事をしているのですから止めはしませんが。」

最後の、長生きはできませんよ。という台詞をかみ殺して。

876防人 鶫 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/14(日) 00:52:25 ID:WVrfsEdY0
>>875
「…あ、おとなしくなりました。」
【どうやら食い逃げ犯は抵抗するきも治まったらしく、おとなしく席に戻った。
 多分また送られるまで待つつもりだろう】

「え、はい…なんだか目の前のことが放っておけなくて…
 悪いことをする人間を放っておけないのが…」
【ちょっと下を向いて考える】
「どうも…自制が効かなくて、反射的というか発作的…というか…」
【何やら抱えていそうだ】

877黒沢小百合:2011/08/14(日) 01:02:43 ID:SSMHlh/20
>>876

「親御さんがよほどよい教育を施していたのでしょう。
 貴女は素晴らしい人格をお持ちのようですね。」

目の前の少女の気高い精神性はまるで、
自ら光を発するかのようにまぶしい。

「とはいえ、貴女のような人間は恨みを買いやすい。
 ある程度の注意は払うべきでしょうね。」

自分とは正反対だな、と小百合は静かに苦笑して。

878防人 鶫 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/14(日) 01:08:58 ID:WVrfsEdY0
>>877
「…どうでしょうねぇ。
 親のおかげなのかは分からないんですけど…」
【あまり多くは語らない。詮索されたくはないのだろうか。】
【尤も千夜の情報網を使えばすぐに調べられそうではあるが】

「恨み、ですか…やはりまずは善行を重ねないといけませんか・・・
 恨みを買われるのだけはどうにかしないと…」
【再び考えこむ少女。】
「出すぎた真似になってしまったでしょうか…」

879黒沢小百合:2011/08/14(日) 01:15:17 ID:SSMHlh/20
>>878

「出すぎた真似、もなにも。
 物事には結果が発生するというだけの事。
 自分の予期せぬ結果も含めてね。」

小百合もいままで恨みによる復讐の対象になった事も何度もある。
命を狙われたことも2度や3度ではないが、それでもなお最前線で戦い続けるのは、
この都市をよくしたい、そして主である夜刀神蔡生に喜んでもらいたいという一念ゆえ。

「悪と言うのは、あらゆる手段を使って我々の社会を、
 そして個人の生命を脅かす。とはいえ、それと過剰に恐れ
 戦う事を止めるのが懸命だとは思いませんが。」

880防人 鶫 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/14(日) 01:23:56 ID:WVrfsEdY0
>>879
「そうですね…それくらいの覚悟がなければ…
 正しいことは貫き通せません…」
【同意するように頷いている】

「ずっと自分には力がなくて…正義を貫ける力を欲していました。
 つい先日私が能力を手に入れたのは…何かの天命なのかと
 思うかのように嬉しかったんです。」
【右手にはめた手袋を掲げて言う】
「…正しいことに使えるようになりたい…
 そんな思いが爆発しそうです。」

881黒沢小百合:2011/08/14(日) 01:30:17 ID:SSMHlh/20
>>880

「そして、貴女は力を手にしたと……。
 その力をどう使うかはあなたしだいです。
 貴女の正義が、私の正義と違う物に成り果てない限り私たちは
 この街を愛する同志といえるでしょう。」

ふふ、と穏やかに笑みを浮かべて。

「さて、私はそろそろお暇しますよ。
 ああ、最後に一つ。あなたは個人で活動しているようですが、
 街の自警団にでも身を置く事をお勧めします。一人ではできない事も、
 組織の力さえあればできてしまいますからね。」

ちょうど、ワインを一瓶空けた小百合は、
代金を払い、ゆっくりとドアへ。

そのまま、夜闇の中に消えていった。

// そろそろおつるよー。
  ちょっと強引だけど〆。

882防人 鶫 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/14(日) 01:35:32 ID:WVrfsEdY0
>>881
「ええ、出来れば貴方とも一緒に守りたいと思っています。
 正義とは人を守ることですから」
【軽く微笑んで言った】

「自警団…一緒に街を守ろうと思う人がいるんですね!
 素晴らしいです!ぜひともそこに身を寄せてみたいです!」
【自警団、その言葉を聞いて鶫は直ぐに気合の入った顔になった】

「はい、またいずれ会えるとイイな!と思います。」
【軽く敬礼して見送った】

「…あ、なにか注文するのをすっかり忘れていました」
【そう言うと鶫は席に戻って色々注文したようである】
//大丈夫。おつー

883焔魔堂 宗也:2011/08/14(日) 20:54:01 ID:1sJsd2CgO
おおよそ昼時、路傍にできた疎らな人だかり。
その中心には奇術を演じる碧眼の男。
彼が閉じた鉄の輪を掲げると、鉄色は炎に包まれ七色七輪の環に変じ
羽ばたく折り鶴が輪に消え入ると、白かったそれは輪の色に染まって姿を現す。

「………」
何も話さず、黙々と演じる姿に、道行く人は足を留め始めた。

884焔魔堂 宗也:2011/08/14(日) 21:46:36 ID:1sJsd2CgO
七色の折り鶴は見物人のもとにひらひらと羽ばたいていく。
誰かの差し出した手のひらに折り鶴が休まったのを見て、同じようにする人もいる。

「………」
碧眼の男は相変わらず無愛想のままだ。
彼は黒いシルクハットを被り、繋がった七つの輪をクルクルと回し始める。
やがて七つの輪は一つ、二つと数だけを減らしていき、虹の輪になって男の首にかかる。

――かと思いきや、カララン、と地面に落ちた。

乾いた音と共に消えた男の代わりに虹色の輪とその中央に、
『ご静聴ありがとうございました』となにか間違った文言が書かれた札の入った、逆さのシルクハットが残されていた。


実はその同時刻、近場で銀行強盗があったのだが
直後に匿名の通報があり怪我人もなく未遂に終わったという。
奇術を見ていた人々の中にはその銀行に向かおうとしていた人も少なからずおり、運が良かったと胸を撫で下ろしたとか。

885防人 鶫 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/14(日) 21:48:21 ID:WVrfsEdY0
>>883
【人だかりを見つめる一人の制服の少女】
「なんでしょうこの人だかりは…
 大道芸でしょうか?」
【人混みを軽くかき分けてそのもとを見に行こうとしている】

886防人 鶫 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/14(日) 21:48:54 ID:WVrfsEdY0
//…ひと足遅かったかな?

887黒沢小百合:2011/08/15(月) 21:44:10 ID:SSMHlh/20

――こつ、こつ。

裏路地の石畳をヒールが叩き、
小気味よい音を立てる。

「ふう、今日の業務ははやく終わりましたね……。
 明日も忙しくなりそうですがどうなるものやら……。」

家路を短縮するやや暗い路地に入ったが、
こういう退廃的な場所も中々雰囲気があってよい。

888九段坂桐子:2011/08/15(月) 21:58:11 ID:QDKqXtkIO
>>887
 
「……お疲れかな、お姉さん?」
 
ふと、そんな声がした気がした。
こんな裏路地で、誰かが自分に掛ける筈もない。掛けるとすれば、ガラの悪いチンピラぐらいか。

そんな事を浮かべながら周囲を見回せば、視界に映る影が其処にあった。
出店――否、そこまで仰々しいものではない。
粗末な小卓に、一対の椅子。
掛け布には、テンプレ通りの「占」という文字一つ。
 
ビルの影となっているのか、相手の姿は暗がりの中で窺い難く。
ただ、路地に出された右手だけが、女の方へと手招いていた。

889黒沢小百合:2011/08/15(月) 22:06:24 ID:SSMHlh/20
>>888

「ふむ……。」

小百合は、基本的に占いの類を信じない。
路地裏だとか商店街でこうした占い屋が客を待っている様を
横目で見たことこそあれど、今までの人生で占ってもらった事など無かった。

しかし、今日は仕事も早くあがり
家に帰ったところで、これといった用事も無い。

(たまには……覗いてみようか。)

少々いぶかしげに表情を歪めながらも、怪しげな占い師のほうへ。

890九段坂桐子:2011/08/15(月) 22:26:25 ID:QDKqXtkIO
>>889
女が歩いていけば、次第にその姿が明らかになっていく。
ビルとビルの間、先の裏路地よりは些か暗い場所。そこで、一人の女が緩やかに手を振っていた。

編み上げられた黒髪に、紫色の瞳。
男物の和服に身を包んだ、同い年程の女。

「やあ、いらっしゃい……胡散臭いかい?」
 
そう言って、女は軽く肩を竦めた。

891黒沢小百合:2011/08/15(月) 22:33:10 ID:SSMHlh/20
>>890

「こんなところで営業しているのでは
 木石で無い限り、胡散臭いと思うのは当然でしょう。」

肩をすくめる女に応えるように、
微笑をたたえて冗談っぽく。

「では……さっそくお願いしましょうか。
 水晶玉……というには何やらオリエンタルな雰囲気ですし、
 方法は風水ですか?それとも、手相か、易か……。」

椅子にゆっくりと腰掛けて女に問う。

892九段坂桐子:2011/08/15(月) 22:55:30 ID:QDKqXtkIO
>>891

「手厳しい言葉だ。でも、それもそうだね」
 
人混みが嫌いでね、と女は付け足す。
微笑みと問いに返されるも、また笑みで。
 
「そうだね、生憎と東洋系の術しか学んでいないのさ。今流行りのタロットやらを望むなら他に行ってもらった方がいいけど、大丈夫かい?」

893黒沢小百合:2011/08/15(月) 23:02:51 ID:SSMHlh/20
>>892

「いえ、どういったものでも結構ですよ。
 ゴム手袋に頭を突っ込むだとか金魚を飲むだとか奇抜な物でなければ、ですが。」

過程はどうあれ、適当に当たりそうな、もしくは誰にでも
当てはまるような中傷的な言葉でお茶を濁すのでしょう、と言う台詞を噛み潰し。

結局、小百合は余興を楽しむためにこの卓に着いたのだ。
結果など、端からどうでも良い。

894九段坂桐子:2011/08/15(月) 23:24:55 ID:Or3y3X8Q0
>>893

「ははっ、そんな奇想天外珍妙不可思議な方法でやるモノなんて、まかり間違っても神々へは届かないね。届くとすれば、そんな異常趣味を抱えたマイノリティな連中だけさ」

そんな苦笑を浮かべ、女は佇まいを直す。
とはいえ、それでもあくまで椅子に深く腰をかけた程度。改まった様子は、窺えず。

「まあ、つまるところ"気が向いたから"という感じだからね。本格的なモノで時間をかけるより、わかり安いモノでいこうか」

そう言って、右の開いた袖口に手を差し入れる。
中には何が、どの位入っているのか。しばらくまさぐる最中。
やがて、取り出したるは紙一山。
赤い縁取りに、鮮やかな絵画。妙に真新しいそれが、机の中心に裏積みに置かれた。

「"花札"――見た事ぐらいは、あるだろう?」

どうぞ、とでも言う様に、手がさしのべられる。
好きなだけ引けと、そう言外に告げていた。

895黒沢小百合:2011/08/15(月) 23:38:27 ID:SSMHlh/20
>>894

「ええ。生憎ルールまでは存じませんが……。
 まあ、トランプのようなものですし、占いにも使えそうですね。」

差し伸べられたそれに、手を伸ばしとりあえず一枚。
そろり、と札を裏返してみれば明暗鮮やかなススキと月の絵柄が顔を出した。

「…………これは……。」

ルールを知らない小百合にとっては、これがどういった札なのかどうかも分からないし
素人判断ではあるが絵柄的にも、めでたいだとか、喜ばしいものにはあまり思えない。
とりあえず、女の言葉を待つ小百合だが……。

896九段坂桐子:2011/08/15(月) 23:50:49 ID:Or3y3X8Q0
>>895
「――葉月・芒十五夜」

ぽつりと、女はそう呟いた。
開かれた札を見つめ、視線を持ち上げる様に再び小百合の表情を窺う。

「……これでいいかな? 別に何枚引いても、手順外れとかはないから安心したらいい」

その札に対する回答は、与えられない。
ここで止めるも止めぬも、自分次第だと、そう告げて。

897黒沢小百合:2011/08/16(火) 00:10:56 ID:SSMHlh/20
>>896

女の言葉を聞いた小百合は少し考えてから、
再びおずおずと山札に手を伸ばし、一挙に札を3枚引いた。

梅にホトトギスが止まっている札と、同じく梅が咲いている様子のみがかかれた絵柄。
なかなかに縁起の良さそうな札を引き、小百合の表情も幾分かほころぶが……。

(これは……中々に縁起のよさそうな札ですね……。
 こういうのがもう少し来ればいいのに……しかしこれはどうなのだろう……。)

小百合の引いたもう一枚の札に描かれているのは紅葉の上に青い短冊のようなもの。
何か意味があるのだろうが、これはどう判断した物かわからない。

「ええと、これで占っていただきましょうか……。」

合計4枚の札を、女性に見せ判断を仰ぐ。

898名も無き異能都市住民:2011/08/16(火) 00:48:43 ID:Or3y3X8Q0
>>897
「二式・如月・春告之梅
三式・如月・紅梅
四式・神無月・紅葉青札――結構、では参りましょう」

パン、と澄んだ音がした。
裏路地に響くそれは、女が諸手を叩いた音。
それを皮切りに、この場の空気も何処か澄んだ物へと変じた感覚がする。
まるで祈る様なその姿。閉ざされた紫眼が、ゆっくりと開かれていく。
死を告げる紫水晶。薄く開けられたその視線が、今一度小百合を捉えて。

「『静寂、不忠。他が為に成す事なかれ。信仰は己が身を焼くと知れ。さすれば不毛の荒野が眼前に開かん』」

瞬間、女の口から漏れたのは、異質な声色。
何処か嗄れ、朽ち果て囁く様な、不気味な声色。

「黎明、疾走。事の起こりに吉事あり。住み慣れた砦を捨て疾く新しく事を成すとよい」

次いで出た声に、先の不自然さは何処にもない。
ただ先程までの、女の声が響くばかり。

899黒沢小百合:2011/08/16(火) 00:56:36 ID:SSMHlh/20
>>898

「…………占いの結果をとやかく言うつもりはありませんが、ね。
 まぁ、出し物としてはそれなりに楽しめましたよ。」

小百合は、酷く不機嫌な様子で席を立ち
財布を取り出すと、紙幣を何枚か取り出して卓に置く。

信仰、すなわち己が主君と定めた神性、
夜刀神蔡生への絶対的献身が身を焼く元になると。
住み慣れた砦を捨てる、つまり千夜グループの重役の立場から身を引けと。

目の前の占い師はそういっているようにしか聞こえなかった。

900九段坂桐子:2011/08/16(火) 01:08:45 ID:Or3y3X8Q0
>>899
「それは重畳。余興程度には、楽しめたかい?」

席を立つ小百合へ、向ける視線一つ。
不機嫌な表情をしているにも関わらず、女は微笑を浮かべたままで。

「まあ、この結果が何を示しているかは、当人のみぞ知るところ。或いは、これを告げた神自身、だけ」

謳う様に、呟く様に。
零した言葉に、悪意はない。女は唯の、「つかい」であるが故に。

「案ずる事もなく、気に病む事もないよ。起こる物は、起こるべくして生じる物だからね」

901黒沢小百合:2011/08/16(火) 01:25:53 ID:SSMHlh/20
>>900

「神、ですか。」

嘲るようにフン、と鼻を鳴らして。

「ニーチェ曰く、『賛美される事を常に欲する神に、私は信仰を持つことなどできない。』
 生憎、私も彼の言葉が正しいと思っている人間でしてね……。」

それだけを吐き捨てると、小百合は踵を返し路地裏から去って行く。
こつ、こつ、というヒールの音はどことなく、怒気を孕んでいるようにも思えた。

902フランシスカ・キールダリア:2011/08/19(金) 22:09:09 ID:bU0MhiN.0
昨日の大殲滅兵器来襲による戦闘の傷跡が残る、巨大な交差点。
崩壊したビルの瓦礫や、機竜の残骸が辺りに散乱する中を歩く、白衣姿の女性がいた。

「まさか大殲滅兵器を投入してくるなんて……。
 あの船団は一体何を考えているんでしょうか……?」

彼女はフランシスカ・キールダリア。千夜学園高等部の臨時養護教諭である。
昨日の戦闘中に援護に現れた人物であり、
もしその現場を見ているのならば、フェルティアと名乗る戦闘用アンドロイドを鹵獲した人物であることもわかるだろう。

903黒沢小百合:2011/08/19(金) 22:18:01 ID:SSMHlh/20
>>902

現場は既に千夜や観測局などいくつかの組織によって合同封鎖され
瓦礫の除去や機龍の残骸の回収にあたっていた。

フランシスカは昨日の戦闘で重要な役割を果たしたため、すんなりと中に入れたが……。

「フランシスカ・キールダリア氏ですね。
 少し、お話を聞かせていただいてもよろしいでしょうか?」

すぐに、千夜のエージェントが現れ半ば拘束するように周囲を囲んで
比較的瓦礫の少ない場所に設営されている幕舎へと移動を促す。

904フランシスカ・キールダリア:2011/08/19(金) 22:25:10 ID:bU0MhiN.0
>>903
現れたエージェントの、有無を言わせない空気を持った言葉に、
フランシスカはわかり切っているらしい顔で頷き、

「ええ、わかりました。案内をお願いします」

自分を取り囲むエージェントの後に続き、案内されるままに幕舎へと向かう。

905黒沢小百合:2011/08/19(金) 22:43:37 ID:SSMHlh/20
>>904

「ようこそ、フランシスカさん。
 まあ、適当に掛けてください。」

幕舎に入るなり、投げかけられる声。
ニュースや雑誌に目を通しているなら、その声の主――。

奥の椅子に座る女性が、千夜の都市警備事業全般を一手に司る女。
黒沢小百合だという事が分かるだろう。

幕舎の中には簡素な机と椅子、ボード等が置かれており
先ほどまで此処で打ち合わせや報告が行なわれていた事が窺える。

906フランシスカ・キールダリア:2011/08/19(金) 22:53:45 ID:bU0MhiN.0
>>905

適当に掛けろという小百合に頷き、フランシスカは机を挟んだ小百合の反対側の席についた。

(あれは黒沢小百合さん、でしたか。
 千夜グループからこの街の治安維持を任されているという……)

この街に住む者で、彼女の名を耳にしない者はそう多くない。
フランシスカはあまりニュースを見ないタイプではあるが、そんな彼女ですら小百合の名前は知っていた。
それだけ名のある人物が、自分の様な一介の養護教諭に何の用事だろうか、とフランシスカは疑問に思う。
まあもっとも、小百合の興味がどこに向いているかは、大体察しがつくが……。

907黒沢小百合:2011/08/19(金) 23:10:23 ID:SSMHlh/20
>>906

「単刀直入に申し上げましょう。
 ……あなたは、この件についてなんらかの情報を握っていますね?
 しかも、昨日のあのアンドロイドを保護しているとも聞く。」

肉食の昆虫のようにギラギラと燃える小百合の瞳。

……この女は危険だ。一見理性的なその精神性の内に、
ひどく粗暴な本性を秘めている。

「情報、および『テロリスト』の身柄を我々に引き渡していただきたい。
 聞いた所によると、あの少女は我が千夜の学院に身を寄せていたと聞きますが……。
 もし、他にも『テロリスト』の息が掛かっている者がいては厄介ですから、
 彼女の交友関係者なども教えていただけると助かるのですが。」

908フランシスカ・キールダリア:2011/08/19(金) 23:25:58 ID:bU0MhiN.0
>>907
まさに単刀直入である。フランシスカはそのストレートな言葉にやや怯みを感じると共に、
その内容がおおよそ予想通りだったことに、少し安堵した。

「ええ。と言っても、私が知っているのは昨日来襲した機竜を始めとする「大殲滅兵器」と呼ばれる兵器群と、
 それらを保有していると思われる組織の情報だけです。
 その情報すら、数年前の物なので、今もそうだとは限りませんが……。
 それに、「大殲滅兵器」が何故、この街に来たのか。そのあたりの事情は、私にもわかりません」

小さく、首を振る。

「そうした情報があなた方の役に立つのであれば、喜んで提供いたしましょう。
 ただし、鹵獲した対能力者戦闘用アンドロイド「フェルティア」の引き渡しには応じられません。
 私には、彼女に対して果たさねばならない責任がありますからね」

909黒沢小百合:2011/08/19(金) 23:33:41 ID:SSMHlh/20
>>908

小百合の眉が不機嫌に釣りあがるのが見える。
いや、彼女はフランシスカの怯みを見逃さずわざと表情に出すことで
脅しにかかっているのだろう。

「情報提供には応じるが、『テロリスト』の引渡しは拒否すると……。
 貴女は自分がどういったことを口走っているのか理解しているのですか?」

席を立ち、ヒールの音を響かせながらゆっくりと近づく小百合。
そしてフランシスカの耳に、吐息が掛かるほど顔を近づけて。

彼女は、自分が恐ろしい存在に見えるように最大限の演出をしている。

「……責任、といいましたね?それは貴女の教師としての責任……ですか?」

910フランシスカ・キールダリア:2011/08/19(金) 23:50:56 ID:bU0MhiN.0
>>909
耳元で小百合の恫喝じみた言葉を聞きながらも、フランシスカは正面を見つめ続けたままだ。

「都市の治安維持を任されているあなたにとって、
 承伏しかねることを言っていることは理解しているつもりです。
 先ほどの私の言葉は、それをわかった上でのものだとご理解ください」

彼女の眼差しは、殉教者のそれのような強さを持っている。
相手が自分よりも大きな存在であるにも関わらず、それを知っていてなお、
それをはね除ける意志を、心の内に宿しているのだ。

「私が彼女に果たす責任……それは、教師としての責任ではありません。
 彼女の、「制作者」の一人としての責任です」

911黒沢小百合:2011/08/20(土) 00:00:56 ID:SSMHlh/20
>>910

「『製作者』……ほう、貴様。
 今回の事件にかなり深く関わっているようだな。」

思わぬところで重要参考人を見つけたという笑みか。
喉を鳴らすようにくつくつと笑う小百合。

「テロリストの件は……まあいい。
 とにかく、お前の知る事を全て話せ。
 それから貴様の処遇を決定する。」

912フランシスカ・キールダリア:2011/08/20(土) 00:21:37 ID:bU0MhiN.0
>>911
威圧感はあっても丁寧だった小百合の口調が変わったのを聞き、
仕方のないことですね、とフランシスカは内心で嘆息した。

「わかりました。……そうですね、まずは大殲滅兵器と、
 それを保有する組織についてお話ししましょう」

パイプ椅子の上で居住まいを正したフランシスカは、記憶を手繰るように目を閉じて、

「大殲滅兵器とは、エーテル式魔導機関技術の粋を集めて作られた、超広域破壊用の兵器のことで、
 今回の件で言えば、あの機竜、正式名称「エーフィルヴルム」がそれに当たります。
 大殲滅兵器には風、水、土、火の、それぞれのエレメントにあやかった四種類のタイプが存在していて、
 エーフィルヴルムはそのうちの「風」に当たる機体です。
 もっとも、エーフィルヴルムはそれら大殲滅兵器の中では最も古い兵器で、数年前の時点で退役が囁かれ始めてましたが……」

話がわき道にそれそうになって、フランシスカは言葉を切る。

「おっと、関係のない話ですね。
 ……そして、そういった大殲滅兵器を開発し、保有している組織は「ミスティック・フリート」と呼ばれています。
 「フリート」の名が示すように、研究開発を行う双胴空母型の研究施設と、それを護衛する護衛艦艇群によって構成された、
 大規模な船団だと聞き及んでいますが、それ以上のことは私にはわかりません。その組織と直接関係していた訳ではありませんからね」

913黒沢小百合:2011/08/20(土) 00:35:20 ID:SSMHlh/20
>>912

「大殲滅兵器……結構な破壊力だが……。」

(アレで退役間近の兵器……となると、
 現在運用されている別の大殲滅兵器はもう少し手強いか……。)

ただでさえ手強かったの機龍が比較的旧式に当たると聞き、
小百合は少し頭痛を起こしそうになったが、ため息をつきながら
フランシスカの話を聞き。

「ミスティックフリート……そんな組織が都市に一体なんの恨みが……。
 まあ、この都市は脅威にもなり、魅力的でもあり……狙われる理由は十二分にありますし
 考えても仕方ない事でしょうかね……。

自分の席に戻った小百合は、要点のメモに書き起こし始めた。

「で、開発者ということは、あなたはその組織から委託されて
 兵器開発を行なっていた、というところでしょうかね……。」

914フランシスカ・キールダリア:2011/08/20(土) 00:51:57 ID:bU0MhiN.0
>>913
「ミスティック・フリートが何の意図であの機竜を寄越したかは想像も付きません。
 この都市に何かあるのか……もしくは、極端ですが、能力者に壊してもらうことで、
 退役した機体を廃棄する、という理由である可能性だってあります」

現時点でできるのは、こうやって推測することだけ。無駄でしかない。

「仰るとおり、フェルティアはミスティック・フリートから依頼されて制作されたアンドロイドです。
 人間の認識速度を凌駕する飛翔速度を発揮し、相手の認識の埒外に身を置いたまま致命傷を与える……。
 それが私、いえ、私「たち」に要求されたアンドロイドのコンセプトでした」

915黒沢小百合:2011/08/20(土) 01:08:19 ID:SSMHlh/20
>>914

「独自に艦隊を運用するほどの大規模な組織ですし、都市への攻撃を狙ったと見て良いでしょう。
 あなたの言うように廃棄が目的なら、売却、バラして資源にするなどほかにやり方がありますし
 破壊されれば、我々に技術と情報を与え、敵を増やす事にもなる。買い手がつかず、
 廃棄にも困るほど資金難に陥っているというのも考えられないことはないですが……。」

もっともそんな組織なら、遅かれ早かれ勝手に壊滅する。
最初に言ったように独自に艦隊運用ができるほどの組織だ。
組織が廃棄資金に困るほど困窮しているとは思えない。

やはり、攻撃が狙いだろう。

「……私『たち』。つまり、あなたもという事でよろしいか。
 あなた自身もミスティックフリートで製造されたものですか?」

916フランシスカ・キールダリア:2011/08/20(土) 01:31:25 ID:bU0MhiN.0
>>915
「なるほど。確かに仰るように、この都市への攻撃、という公算が大きそうですね。
 大殲滅兵器を開発、運用できるあたりの事情を見ても、資金力の巨大さを窺い知ることができますし……」

小百合の言葉に、フランシスカは頷いて同意を示す。
しかしそれだと、攻撃目標はいったい何だったのか、という疑問が残る。
機竜の行動は、特定の何かを狙ったものではないように見えた。後に現れたフェルティアだってそうだ。
彼女らの行動からその意図をくみ取るのは、どうやら難しそうである。

ただ、その内の一体、フェルティアは現在、フランシスカの家で修理と改修が行われている。
彼女に訊けば何かわかるかも知れない……と、フランシスカは頭の片隅で考えた。

「ええ、私「たち」です。フェルティアは私と父の二人で開発したアンドロイドですが、
 私も父も、ミスティック・フリートに深く関わってはいませんでした。
 しかし、そうであるにも関わらず父には艦隊から依頼が来ていました。ということは、艦隊に関係する組織、
 もしくはその背後にある組織などに父が関わっていた可能性があります。
 父がそのことについて話してくれることはありませんでしたが……」

フランシスカは少し寂しそうな顔で俯いた。

917黒沢小百合:2011/08/20(土) 01:40:51 ID:SSMHlh/20
>>916

「貴女のおおよその事情は分かりました。例の、ミスティックフリートとやらの事も。
 そして……話を例のテロリスト、フェルティア……でしたか。アレに戻しましょうか。
 私としては、彼女の処分、もしくは千夜の研究所で厳重に解析、封印が望ましいと考えているのですが。」

(アンドロイドがアンドロイドを製造、か……。
 もはや人間の手を離れた一つの種族だな。コレは……。
 非常に歪な形ではあるが……。)

小百合は、現時点でフランシスカすらも疑い始めていた。
恐らく、彼女は『父』と呼ぶ存在によって作られたのだろうがその『父』が
ミスティックフリートに深く関わっていたなら、フランシスカの言葉が何処まで本当かどうか怪しい。

それに、いくら高度とはいえアンドロイドの感情、思考はプログラム。
彼女の気づかないうちに『トロイの木馬』に仕立て上げられている可能性すらある。

918フランシスカ・キールダリア:2011/08/20(土) 02:00:05 ID:bU0MhiN.0
>>918
フェルティアの処分か封印を提案する小百合に、フランシスカは首を振り、

「私はそうは思いません。昨日の戦闘におけるフェルティアの損傷は激しいですが、
 制作者である私の手にかかれば、彼女の完全修復は可能です。
 帯同していたエーフィルヴルムの撃破はもう既に艦隊も把握しているでしょうし、
 鹵獲され、帰還できない状態となったフェルティアを奪還する後方部隊も存在しなかった。
 彼女は艦隊に見捨てられたと見てまず間違いありません。
 となれば、鹵獲したフェルティアは私たちにとって有用な存在に成り得る。償いの機会を与えることができるんです」

強い意志を示すように少し眉をつり上げたフランシスカは、「それに」と続け、

「一度私の手を離れたとはいえ、フェルティアは私の娘、いえ、妹のような位置づけの存在です。
 それを他人の手に預けるなど、とてもではありませんができません。
 例え相手が、都市を守る筆頭の存在であるあなたでもね」

919黒沢小百合:2011/08/20(土) 02:11:12 ID:SSMHlh/20
>>918

「発足したばかりで予算の少なかったSWAT部隊や
 補給の乏しかった第二次大戦の連合軍アフリカ戦線の将兵は
 敵の使用した武器を鹵獲し、戦線や組織を維持したと聞きますが
 今回の場合、はっきり言って不安材料が大きい。」

とはいえ、小百合は理解していた。
こういう『強い意志』……特に『何かを守ろうとする意思』はとてつもなく頑強で、
一朝一夕ではどうすることもできない事を。

それに、もしあれを自軍の戦力に転向できれば心強い限り。

(仕方ありませんね……。)

小百合は、顔をしかめて大きくため息をついて。

「とはいえ、処分命令を下したところで貴女は聞きはしないでしょう。
 ……よろしい、運用を認めても良いでしょう……ただし。

此処で、小百合は言葉を切りフランシスカをその鋭い眼光で見つめた。
既に、執念の焔は消えたそのf回黒い炉の瞳には変わりに穏やかな光が宿っているようで。

「我々の監視役を貴女たちにつけさせていただきたい。
 また、千夜のラボで詳しい解析をしたいのですが、この条件を飲んでいただけるなら。
 私としても、あの……えーと、フェルティあの保護を認めましょう。。」

920フランシスカ・キールダリア:2011/08/20(土) 02:24:39 ID:bU0MhiN.0
>>919
「……わかりました。ご理解いただけたようで何よりです」

小百合がフェルティアの運用を認めたことに、フランシスカは安堵半分、意外さ半分の心境で応えた。
おそらく、彼女が欲しがっているのはフェルティア自身ではなく、そこに使われている技術の方だ。
だが、その技術を宿す戦力としてのフェルティアも小百合が見逃すはずはない、と考えていたフランシスカにとって、
小百合がフェルティアの確保を諦めたことは意外であった。

「ただ、フェルティアは現在、修理及び改修のために一歩も動けない状態ですので、少し時間をいただくことになりますが、
 それでもよろしいでしょうか?」

921黒沢小百合:2011/08/20(土) 02:41:54 ID:SSMHlh/20
>>920

「結構。もし必要であれば、千夜の機材を使用していただいて構いません。
 なんなら、人員の派遣などを行なう準備もありますが……。」

一度、協力、運用すると決めれば小百合の判断は早い。

彼女は敵にすればその執念でいくらでも攻撃を加えてくるが、
一旦味方にしてしまえば、可能な限り手を尽くしてくれる。

「……ああ、あとフェルティアのデータを提供していただけるとありがたい。
 今後の我々の兵器開発の一助になりますから。」

922フランシスカ・キールダリア:2011/08/20(土) 02:52:43 ID:bU0MhiN.0
>>921
「いえ、あなた方のお手を煩わせることはないでしょう。
 損傷は大きいですが、幸いにして基幹部分にダメージが入っている様子はありませんでしたし。
 パーツの交換と、彼女をこの都市で行動させるための、ちょっとした改修が必要なだけですから。
 後は……はい、フェルティアのデータですね。一両日中にそちらに送信しておきます」

フランシスカがそこで一旦言葉を句切ったとき、何かの駆動音と共に吹いた風で、幕舎が少し揺れた。

「……ああ、私の帰りが遅いので、迎えが来てしまったようです。
 他に何かあれば、千夜学園の高等部までお願いしますね」

そう言って、フランシスカは小百合に一礼すると、ゆったりとした足取りで幕舎を出て行った。
ジェット機のエンジン音を大きくしたような音を残して、何かの飛行物体が飛び立っていったのは、それから数秒後の話である。


//ここいらで切りませう

923黒沢小百合:2011/08/20(土) 02:59:51 ID:SSMHlh/20
>>922

「麻薬に、怪人、そして今回のミスティック・フリート……。
 やれやれ、ただでさえ人手が足りないというのに。」

優雅な足取りで幕舎を後にしたフランシスカを見送った小百合は、
懐から携帯用の酒瓶を取り出して、こっそりと一息ついた。

(……今回は危なかった。あれ以上の敵が出てくるとなると、
 いよいよ持って都市も危ないか……。都市機能の崩壊だけはなんとしても……。)

// はあくー。

924ロザリア・ロートシルト:2011/08/24(水) 22:26:40 ID:SSMHlh/20
【上弦のアトリエ】

アトリエの扉を、がたがたと風が揺らし、
黒い『霧』がまるで意思を持つかのように、そこへと溜まっていく。

それは次第に人の形を成し、一瞬赤色の光を放ったかと思えば
そこに、ゴシック調のドレスに身を包んだ少女が立っているではないか。

「……クラーリオ先生、『材料』を持ってきたわよ。
 ここを開けてくださらないかしら。」

925名も無き異能都市住民:2011/08/24(水) 22:36:59 ID:.6prKP66O
>>924
扉が開く、そこには緑色の執事服に身を包むマナと
緑色のメイド服に身を包むマナ
 
その二人が深々とお辞儀をし、少女に語る
 
『現在旦那様は釜の方へと居られます、案内致しますのでこちらへ』
 
少女の前には執事、背後にはメイドが陣取り、進むように促す

926ロザリア・ロートシルト:2011/08/24(水) 22:47:50 ID:SSMHlh/20
>>925

促されるまま、廊下を進むロザリア。
既にいくつかの――比較的入手が容易ですぐに必要になるであろう物は、
上弦亭に送ってある。

今回持ってきたものは、入手困難なもの、取り扱いが危険であるものなど。
現在はロザリアの作り出した『別の空間』に保管してあるため、安全ではあるが……。

927名も無き異能都市住民:2011/08/24(水) 22:54:30 ID:.6prKP66O
>>926
二人は少女を伴い歩いていく
途中、上弦の部屋内に入り別の扉を開く
するとそこからは長い長い廊下が続いており
辿り着いたのはマナのレリーフが彫られた巨大な扉の前
 
『では、こちらに……』
 
執事が少女に頭を下げ、この先に上弦が居ると告げる

928ロザリア・ロートシルト:2011/08/24(水) 23:05:23 ID:SSMHlh/20
>>927

(さすが、高名な錬金術師の邸宅ねぇ……。
 一見そうとはみえないけれど、いたるところに魔術的モチーフが配置されている。)

――キィィ

ロザリアが巨大な扉に手を翳すと、軽い音と共にそれが動く。

「クラーリオ先生、材料をお持ちしましたわ。」

ロザリアは、アトリエ内に入ると
持ち前の雲雀のような声を張り上げ、上弦を呼んだ。

929上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2011/08/24(水) 23:18:04 ID:.6prKP66O
>>928
「うおぉぉ!私、風になってる!私、風になってるぞぉ!!」
 
その声に応えるのは場違いにはしゃいだ声
見るとそこには揺り椅子を激しく揺らしながら全身する男の姿である
 
説明しよう、彼が上弦である
 
彼が!たった今少女が感心した高名な錬金術士!
上弦・F・クラーリオである!

930ロザリア・ロートシルト:2011/08/24(水) 23:29:37 ID:SSMHlh/20
>>929

ロザリアのやる気が3さがった▼
ロザリアの上弦への評価が12さがった▼
ロザリアのストレスが8あがった△

「あの、クラーリオ先生。お薬の材料を……。」

先ほどのよく通った声は何処へいったのか。
蚊の鳴くような声で、ぼそぼそとしゃべるロザリア。

恐怖は人を萎縮させるが、『理解できないもの』もまたそうなのだ。

931上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2011/08/24(水) 23:38:58 ID:.6prKP66O
>>930
「ふはははは!何人たりとも私の前ははしら……ん?」
 
一人揺り椅子カーチェイスを楽しんでいた男は少女の姿を確認すると、揺り椅子ごとグルングルン回りながら少女に近づく
 
「おや、どうした夜族のお嬢さん!尋ねていたのならば気軽に声をかけてくれていいんだぞ?」
 
キキィッ!と止まりながら少女に告げる
うざく爽やかな笑顔が眩しい

932ロザリア・ロートシルト:状態:げんなり:2011/08/24(水) 23:51:17 ID:SSMHlh/20
>>931

ロザリアのやる気が12さがった▼
ロザリアはなんだかげんなりした気分になった。

「もう!だから、さっきから『薬の材料』を持ってきたといっているでしょう。
 レディにあまり迷惑をかけるのは、紳士のすべき事とは言えませんわね!」

ぷんすかと怒りながら、手ぢかな卓へと近づき、
それを撫でるように水平に腕を動かす。すると……。

小瓶に入った毒々しい液体、宝石のような果実や異国の美しい花。
生理食塩水に浮く、生き胆のようなもの。エメラルドのように輝く粉末。
見たこともない小動物の干物。煙のようではあるが、固体のようでもある謎の物体。

上弦が指定した、いくつかの薬の材料がすぅと卓上に現れた。

「とりあえず、かき集められるだけかき集めたわ。
 まだいくつか手に入れていないものもあるけれど、今はこれでどうにかして頂戴。」

短期間でこれほどの材料を手に入れるためにはかなりの出費も必要だろうし、
何度も危ない橋を渡った事だろう。

933上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2011/08/25(木) 00:13:05 ID:.6prKP66O
>>932
「ははは、そいつはすまない!それにしてもよくこれだけ集められたね!」
 
謝罪もそこそこに、材料たちを品定めするかの様にじっくりと観察していく
 
「うんうん、完璧だ!この調子で他の材料も頼むよ!
あ、君の血とお嬢ちゃんの血は最後で良いよ」
 
そう言うと、錬金釜に向かいグルグルとかき回す
釜の状態を調べているようだ
 
「しかしまぁ、お嬢ちゃんも幸せだね!こんなに思ってくれる人がいるなんて……最近の調子はどうだい?」

934ロザリア・ロートシルト:2011/08/25(木) 00:19:46 ID:SSMHlh/20
>>933

「ディスの最近の容態は安定してるわ。
 あれだけ手の込んだ呪いを掛けた張本人からの干渉も無いのが、
 少し不気味だけれど。悪戯であんな物を無関係の人間にかけたりするかしら。」

手を顎に乗せて、考え込むように。

「では、他の材料も手に入れ次第まとめて持って来るわね。
 さっそく、探しにいくから……。」

びゅう、と軽い風が吹きアトリエの窓がカタカタと揺れる。
……ロザリアの姿は、既に跡形もなく消え去っていた。

// 明日早いからそろそろ〆。ありがとうー。

935上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2011/08/25(木) 00:25:00 ID:.6prKP66O
>>934
「そうか、それなら良かった!あまり無理はしないでくれよ、君に何かあったら薬が完成しても意味が無いんだからな」
 
振り向きながらそう言うと、すでに少女の姿はなく
 
「せっかちだな、少しは休まなければいつか怪我をするぞ……
全く、私も期待に応えなければな……」
 
男は一人、調合作業に入った

936黒沢小百合:2011/08/29(月) 21:53:21 ID:SSMHlh/20

「ここは……まるで中東のスークのような……。
 う〜ん、よく分からないスパイスのかほり……。」

体力が比較的残っている日は散歩ついでに家まで歩いて帰る事が趣味の小百合は
ときとま、都市の『歪み』に巻き込まれて面白い体験をしたり、知らない場所に足を踏み入れる事がある。

今回、歪みに巻き込まれた小百合は都市の何処かにある、
アラビア風の市場に出くわしたようだ。

(折角だから、こういうところで食事をしていこうかな……。)

籠に山と盛られた色とりどりの香辛料の香りに食欲を刺激された小百合は、
適当に市場を見回りながら、屋台で売られているよく分からない食べ物や瑞々しい青果を
ゆっくりと見て回ることにした。

937金髪の女性:2011/09/04(日) 22:40:59 ID:6cPgE7ys0
繁華街のある場所で、金髪の、黒い服装の女性が立ち止まっていた。

「そう、あいつはまだ見つからないのね」

金髪の女性は、指先に茶色い羽虫を止まらせ、
まるで羽虫と会話するように呟いていた。

「一体どこに行ったのかしら。
 もしかして本当に能力者にやられて……」

女性は指に止まらせた羽虫を放ち、舞い上がる様子を見つめていた。

938ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/09/04(日) 22:57:53 ID:WVrfsEdY0
>>937
「…うーん、おもったよりはやくでられたかなの」
【包帯をまいた少女がゆっくりと歩いている。】

「でもあんまりはげしくうごいちゃだめ…っていわれたの…」
【少し残念そうな顔をしている。】

939金髪の女性:2011/09/04(日) 23:05:51 ID:6cPgE7ys0
>>938
「本当に、この街は能力者だらけね」

金髪の女性は、羽虫が空に消えると歩き出そうとする。

「……あの変な子も能力者かしら。
 まったく、忌々しい」

歩き出そうとして、ディスの奇妙な風貌を見ると同時に足を動かすのをやめた。

940ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/09/04(日) 23:11:27 ID:WVrfsEdY0
>>939
「…ん?みられてる?なの…」
【視線を感じて視線のする方を見る】

「…だれかなの?」
【不思議そうに金髪の女性を見た】

941金髪の女性:2011/09/04(日) 23:16:42 ID:6cPgE7ys0
>>940
女性は殺意の感じ取れる視線でディスを見ていたが、すぐに視線を外した。

「……ここは駄目ね……」

周囲を見るが、ここは繁華街、人が溢れていた。
騒ぎを起こせば自分もただで済むとは限らない。

「こんなことしてる場合じゃないわね。
 早くあいつを見つけないと」

そう言って再び歩き出した。

942ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/09/04(日) 23:20:19 ID:WVrfsEdY0
>>941
「あいつ?…うーん…しってるひとなのかなの…」
【そう言って首を傾げる】

「あう、かえるほうとおんなじなの…どうしよかなの…」
【少し不安に思いながらもあとについていく形になっている】
【取り敢えず匂いを確認…知っている人の匂いがしないか確認してるようだ】

943金髪の女性:2011/09/04(日) 23:25:07 ID:6cPgE7ys0
>>942
女性からは、何かとてつもなく古い匂い、そして若干の砂の匂いが感じ取られた。
さらに、ほんの微かに、テルメスと言う男に似た匂いが感じられた。

少し歩くと、女性は立ち止まり、宙に向かって手を上げた。
すると、先ほどと同じ種類の羽虫がどこからとも無く現れ、女性の指先に止まる。

「……ここにも居ないのね」

先ほどと同じように、羽虫に呟いた

944ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/09/04(日) 23:34:28 ID:WVrfsEdY0
>>943
「あう?…もしかして『てるめす』さがしてるのかなの?」
【匂いを感じ取って少し首を傾げる】

「うーん…『てるめす』のおともだち?
 なのかなの…」
【考えながら言う…よく分からないという気分のようだが・】

945金髪の女性:2011/09/04(日) 23:42:58 ID:6cPgE7ys0
>>944
羽虫を放すと、女性は再び歩き出す。
やがて繁華街を抜け、女性は交差点にたどり着いた。

女性はディスの帰路から外れた道を選ぼうとしていた。

徐々に人気の無い道に進んでおり、
先ほどの女性の視線から感じ取る限り、このまま後をつけるならば危険かもしれない。

946ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/09/04(日) 23:52:03 ID:WVrfsEdY0
>>945
「…どうしたらいいのかなの…
 もうかえるほうじゃないけどなの…」
【ディスはとても悩んでいた。】
【今は無理をしてはいけないと言われている。
 しかしケガをする危険性があるところに行かないと誰だか分からない…】

「…うーん。とおくからこえがきこえたらなの…」
【困った顔をして門のあたりから少しだけ見る。バレてないか心配そうだ。】

947金髪の女性:2011/09/04(日) 23:58:14 ID:6cPgE7ys0
>>946
女性は交差点から少し進むと、三度羽虫を呼び寄せ、
うんざりしたように首を振って羽虫を放した。
おそらくまた見つからなかったのであろう。

「……」

そして、一瞬だけちらりとディスを振り返るような仕種をし、

「ふう……」

そのまま立ち去った。

948ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/09/05(月) 00:03:18 ID:WVrfsEdY0
>>947
「…あう〜」
【立ち去ったのを見て少しため息を付いた】

「そういえば『てるめす』はどこにいるのかなの…
 だれかさがしてるっておしえてあげないとかなの…」
【考え事をしながら歩き出した。】

949シルクハットの少年:2011/09/08(木) 21:57:23 ID:GrM5kKU60
―――公園。

闇が空を覆う夜の公園。
その中央で立っているだけの少年が居た。
顔は僅かに上を向き、延々と広がる闇を唯じっと見ていた。

ふと、遠い夜空から白い蝶が舞い込んできた。
少年は視線をその蝶へ向けると人差し指を差し出した。
ひらひらと舞いこんだ蝶は少年の指先に留まるとゆっくりと翅を閉じた。
「やはり、見つかりませんか……」
そう呟いた少年はふぅ、と溜め息を付いて帽子を取り、滑らかな金髪を夜風に晒した。

950名も無き異能都市住民:2011/09/08(木) 22:11:11 ID:6cPgE7ys0
一匹の大きな蜂が、シルクハットの少年の下に飛んできた。
蜂はブンブンと大きな羽音とたてて飛び回る。
その様子は、まるで白い蝶を狙って様子を伺っているように見えた。

どうやらスズメバチに見えるが、背中には黒と黄色で禍々しい模様が描かれている。

951シルクハットの少年:2011/09/08(木) 22:19:43 ID:GrM5kKU60
>>950
「ふむ?」
羽音が耳に入り顔を動かし蜂を探す。
無暗に動いて刺されたくないから、と指先に蝶を止めたまま静止。
蝶の方も動く様子を見せない。触覚から胴体まで真っ白で淡い光を放っている。

その間にもまた別の方向から純白の蝶が少年の元へとやってくる……。

952名も無き異能都市住民:2011/09/08(木) 22:26:25 ID:6cPgE7ys0
>>951
蜂はシルクハットの少年が何もしてこないせいか、気にする素振りも見せない。
別の方向からやってきた蝶も無視しているのか、気づいていないのか。

不気味に羽音を立てながら、指先の蝶の背後に蜂は空中静止する。
蜂は狙いを定め、蝶に向かって一気に突進し、噛み付こうとした。

953シルクハットの少年:2011/09/08(木) 22:32:05 ID:GrM5kKU60
>>952
指先の蝶は依然として動く素振りを見せない。
翅を閉じた後は淡い光を放つだけで飛び立つ所か翅を広げる様子も無かった。
そんな蝶が蜂の攻撃から逃れる訳もなく、噛みつかれるのだが。

パァン!
「おっと」
蜂の牙が触れると同時に蝶が幻想的な光を遺し弾け散った。
魔力が凝縮された事によって作られた蝶だったのである。

954名も無き異能都市住民:2011/09/08(木) 22:40:09 ID:6cPgE7ys0
>>953
蝶が弾けた瞬間、蜂は驚いたように後ろに飛んだ。
しかし、弾けた蝶の光を見て、蜂はすぐに飛びついた。

魔力が弾けた光が再び収束し、蜂はそれを喰らいついた。
その瞬間、蜂の背中の模様が、ボウッと光ったように見えた。

955シルクハットの少年:2011/09/08(木) 22:45:49 ID:GrM5kKU60
>>954
その光を見逃すことなく、浮かび上がった模様に目を細める少年。
「光……」
この蜂が一般普通の物では無いと判断するのに瞬く程もいらず、
蜂を視界にとらえたままゆっくりと距離を取ろうとした。

956名も無き異能都市住民:2011/09/08(木) 22:49:32 ID:6cPgE7ys0
>>955
満足げに飛んでいた蜂は、
思い出したかのように、別の方向から飛んできた二匹目の蝶に狙いを定めた。

再び蜂は蝶に飛び掛る。
先ほどは蝶が逃げなかった為か、今度は狙いを定めるのも早かった。

957シルクハットの少年:2011/09/08(木) 22:55:43 ID:GrM5kKU60
>>956
矢張り抵抗を見せない蝶は同じ様に光を遺し散っていく。
ある程度の距離を取った少年だったが蜂を見つつ思案にふける。
(魔力を糧にして生きる生命なのか……?)
落ち着いた様子で帽子をかぶり直し。

958名も無き異能都市住民:2011/09/08(木) 23:04:40 ID:6cPgE7ys0
>>957
再び光を喰らい、満足そうな蜂だったが、
周囲に同じ蝶が存在しないのを確認すると何処かに飛び去ろうとする。

「ぺデス!」

突如、少女の叫び声が聞こえた。
蜂が声のした方を向き直ると、そこには一人の白い風貌に白い帽子の少女と、
それを護衛するかのような大柄な黒いスーツの男が居た。

「勝手に持ち場を離れたと思ったら、こんなところに居たのね」

蜂が少女の方に飛んでいき、帽子に止まった。

959シルクハットの少年:2011/09/08(木) 23:10:31 ID:GrM5kKU60
>>958
「……ペデス。というのですか、その蜂は」
同じく純白の衣装に身を包んだシルクハットの少年。
シルクハットを外すと胸の前に持っていき、一礼。
少年の柔和な笑みを浮かべていて、ペデスと呼ばれた蜂や持ち主と思われる少女に敵意を抱いている訳ではなさそうだ。

「こんばんは」

960名も無き異能都市住民:2011/09/08(木) 23:20:43 ID:6cPgE7ys0
>>959
「すごく高純度の魔力を食べたのね」

帽子の縁から、指先に蜂を移すと、驚いたように呟いた。
そこでようやく目の前の少年に気づいたようで。

「あら、これはご丁寧に、こんばんは。
 この子にあなたが恵んでくれたのかしら」

少女は帽子を隣の男に渡し、スカートの裾をつまんで軽く上げ、お辞儀をする。
お辞儀は上品に見えたが、何処か見よう見真似とでも言うようなぎこちなさを感じた。

「名前じゃないわ、私の眷属は皆ぺデスと呼んでいるだけよ。
 簡単に言えば役職ね、この子達は皆ぺデスよ」

そう言うと、隣の男から帽子を受け取り、帽子を裏返す。
帽子の内側には、なんとびっしりと同じ蜂が張り付き、翅をばたつかせていた。

961シルクハットの少年:2011/09/08(木) 23:34:06 ID:GrM5kKU60
>>960
「わぁ」
少年は帽子の中の様子に驚いた声を上げた。
コホン。と小さく咳をして様子を取り戻すと。

「失礼、少し驚いてしまいました」
そういうと小さく礼をすると帽子を胸から外し、口を上にする。
すると、そこから飛び出した大量の光を放つ蝶。
「仕事の終わった彼らで良ければ、幾らでも」
それらは自由に飛んでいる様に見えてある程度の感覚を取って他方に散って行った。

962名も無き異能都市住民:2011/09/08(木) 23:42:49 ID:6cPgE7ys0
>>961
先ほどの一匹が、帽子の中で翅をばたつかせている群れの中に入ると、少女が帽子を裏返す。
そしてもう一度裏返すと、あれだけいた蜂は全て消え去っていた。

「結構。私は持ち場を離れた一匹を回収しに来ただけです」

そう言いながら帽子を被る。

突然隣の男が、少女に耳打ちをした。

「……」
「そう、坂口が。
 ……知り合いが呼んでいるらしいわ。
 私は、これでさようなら」

今度はただの少女のように手を振ると、
後ろに手を回し、黒服の男を連れて歩いていった。

963シルクハットの少年:2011/09/08(木) 23:50:45 ID:GrM5kKU60
>>962
「今と限らず、また次の機会でも」
帽子をかぶり直し、翡翠色の目をゆがめて微笑む。
少女が去る素振りを見せたのでそちらを見て。

「さようなら」
同じく子どもらしく手を振ると暫く離れるまで見送り、
それが終わるとまた闇夜に視線を向けて蝶の帰りを待っていた。

964黒沢小百合:2011/09/10(土) 22:46:07 ID:SSMHlh/20
異能都市の港湾部には、いくつかヨットハーバーが存在し
そのうち、最も大きく都市の富豪らのクルーザーやモーターボートが停泊する一つに、
休暇を楽しむ小百合の姿があった。

小百合が個人的に所有している大型クルーザーのデッキで都市部の夜景を眺めながら、
フルーツラムチーズを肴に、シャトー・マルゴーの2001年物を一口。

今回は電話の類も全て置いてきており、どこにも行き先を知らせていない。
まさに文明社会の重責からの開放、といった風だろうか。

965ベイ:2011/09/10(土) 23:56:14 ID:6cPgE7ys0
>>964
真っ黒いフード付きローブを被った男が、港に立っていた。
異能都市によく居る怪しい宗教家にも見えるかもしれないが、
その正体は唯一異能都市で人間態がばれているスケイルの幹部、ベイだ。

男はずっと海の波を見つめており、周りの人間はまったく目に入っていないようである。
ベイはエイの特質を持った怪人……仲間でも探しているのだろうか?

966黒沢小百合:2011/09/11(日) 00:01:58 ID:SSMHlh/20
>>965

のんびりとした時間を過ごす小百合は
港湾部を行きかう人などに注目していない。

完全にオフモードである彼女は、今日は仕事をするつもりがないのだ。

それに、現在は夜。
真っ黒いフードなど船上から見えるはずもない。

967ベイ:2011/09/11(日) 00:20:37 ID:6cPgE7ys0
>>966
「遅い……レストのやつ」

ベイは仲間を探していたようだが、海の仲間ではなかったらしい。

「リゾート地、か。
 少し回って見ても面白いかも知れないな。
 遅れてるのはレストだ、入れ違いになっても奴が悪いだろう」

ベイは港に沿って歩き出した。

//ちょっと用事で遅くなりました、すいません

968黒沢小百合:2011/09/11(日) 00:35:53 ID:SSMHlh/20
>>967

停泊する船舶はどれも、個人所有の豪華なものばかりで
デッキで酒を飲み、乱痴気騒ぎを繰り広げる者たちの姿も見える。

そんな中、なんらかの感知能力があるなら
一度至近距離で小百合とあった事のあるベイの事。

彼女がこの近くに存在していることに気づくかもしれない。

969ベイ:2011/09/11(日) 00:52:12 ID:6cPgE7ys0
>>968
「奴ら、船に乗るとテンションが上がるのか?
 ……ダーネスは好みそうだが……」

騒ぐ者達を見てベイは呟く。
ふと、その向こう側に見える、ただ一人しかいないクルーザーを見つけた。

「あの女……黒沢小百合か?
 嫌な人間に会ったと考えるべきか……。
 ……?この感覚……」

ベイは黒沢を見つけると、なにか疑問を持ったようで、顎に手を当てる。

「……テルメス……?」

970黒沢小百合:2011/09/11(日) 00:58:34 ID:SSMHlh/20
>>970

しかし今のところ、小百合の周囲に人の気配を感じる事ができない。
信じられないことだが、今の彼女はたった一人であると考えていいだろう。

彼女はこの異能都市の警備の根幹に関わる人物だ。
ここでもし、彼女を討ち取る事ができれば今後の侵攻が幾分かラクになるのは間違いない。
好機と見て、仕掛けるのも良いかもしれない。

971ベイ:2011/09/11(日) 01:07:52 ID:6cPgE7ys0
>>970
ベイは呟いた瞬間、空を見上げた。

「あいつ、何を考えている?」

空には茶色い奇妙な靄、
いや、羽虫の群れが港に向かって迫っていた。

突然、大量の茶色い細長い翅を持った羽虫が、黒沢の乗った船目掛けて突っ込んできた。
羽虫の翅は鋭くなっており、触れれば切り裂かれてしまうだろう。

972黒沢小百合:2011/09/11(日) 01:14:04 ID:SSMHlh/20
>>971

小百合は一瞬、空を見上げて顔をしかめたように見えたが
それが自分の乗る船目掛けて突っ込んでくる事が分かると、足早に船内へと消える。

どうやら、あのクルーザーは防弾・防刃仕様のようで
窓ガラスさえも破壊する事ができない。奇襲に失敗したからには
反撃と、増援を覚悟しなければならないだろう。

973ベイ&?:2011/09/11(日) 01:21:09 ID:6cPgE7ys0
>>972
奇襲に失敗した虫達は、先ほどまで黒沢が居た辺りに渦巻いていた。
渦巻く虫達は積み重なるように塊を作り、人型を作り出す。

見る見るうちに羽虫の群れは、
背中に翅を持った、薄茶色の怪人に変化した。

「黒沢、小百合だな」

怪人は女性のような声で黒沢に向けて指を指した。

974黒沢小百合:2011/09/11(日) 01:33:52 ID:SSMHlh/20
>>973

返される答えはなく、ただ波間が静かに揺れるお炉が響くのみ。。
既に小百合は船室の奥、デッキからは見えない位置に消えている。

どこかに逃げたか、それとも隠れて奇襲を狙っているのか。

975黒沢小百合:2011/09/11(日) 01:40:52 ID:SSMHlh/20
>>974修正

お炉→音

976ベイ&?:2011/09/11(日) 01:41:56 ID:6cPgE7ys0
>>974
「逃げたか……殺さずに追い詰めるのも難しいものね」

怪人は背中の翅で飛び上がり、クルーザーを見下ろした。

「まさか船の外に逃げることは出来ないでしょうけど……。
 ひっくり返して出てくるのを待とうかしら」


一方、港でその様子を見ていたベイは飛び上がった薄茶色の怪人を見て呟いた。

「……”テルメスの奴”、黒沢小百合を狙って何をやってるんだ……?」

977黒沢小百合:2011/09/11(日) 01:49:03 ID:SSMHlh/20
>>976

しかし、待てども待てども一行に小百合が船から出てくる気配はない。
高級なマンションなどには侵入者に備え、パニックルームが設置されている事が多いが
この船にも、そういった設備があるのだろうか。

しかし、奇妙なことに既に小百合の『気配』が消えうせている。
既に、彼女は脱出してしまったのか?

978ベイ&?:2011/09/11(日) 01:57:56 ID:6cPgE7ys0
>>977
「仕方ないわ」

薄茶色の怪人は顔に手を当てると、その能力を発動させた。
空気中を飛ぶ塵や、港の砂が浮き上がり、怪人の周囲を渦巻き、超局地的な砂嵐となる。
海の上だからか、なかなか砂は集まらないらしく、
まだ少し大きな波が立つ程度だが、時間をかければ船一隻をひっくり返すほど強力な砂嵐に成長するだろう。

979黒沢小百合:2011/09/11(日) 02:23:03 ID:SSMHlh/20
>>978

ガタガタと船がゆれ、デッキ上の固定されていない
プラスチックの椅子が吹き飛ぶが、それでも小百合は現れない。

――実は、小百合は既にこの船から脱出しているのだ。

底部には小型の潜水艇が格納されており、
彼女は密かにそれに乗って、既に港の外に出ている。

さすがに、港の騒ぎも大きくなってきた。
そろそろ撤退の潮時だろうか。

980ベイ&?:2011/09/11(日) 02:37:58 ID:6cPgE7ys0
>>979
そろそろか、と薄茶色の怪人が砂嵐で船を巻き上げようとしたとき、
港に立っていたベイが声を上げた。

「テルメス!奴は既に逃げている。
 船の下から、小型の潜水艦が出るのが見えた」
「魔将……?」

薄茶色の怪人は後ろを振り向いた。

「……魔将、わかっていたはずでしょう。
 奴は黒沢小百合よ。気づいていたならあなたが仕留めなさいよ!」
「君が黒沢小百合に何の用事があったのかが気になってね。
 殺すのが目的じゃなかったんだろう」

薄茶色の怪人は、舌打ちをすると、全身を小さな羽虫の群れに分解。
ベイから逃げるように飛び去った。

「何を考えてるのやら……。
 もうここでの待ち合わせは無理かな。
 人の目が多すぎる。レストも察してるだろう」

振り向くと、ベイを怪人の幹部だと察した人々が慌て、逃げ惑っていた。
ベイは人々を一瞥すると、海に飛び込み、見えなくなってしまった。

981黒沢小百合:2011/09/12(月) 23:24:37 ID:SSMHlh/20
AGカフェ奥の休憩室で蠢く影が一つ。

非常に特殊な経営形態を持つこの店であるから、
ここまで客が入り込んでくることは珍しくないのだが。

「ふう……。」

休憩室備え付けのビデオデッキからDVDを取り出す。
小百合は仕事帰りに借りたDVDをここで見ていたのだ。

982テルメス/ニット帽の男:2011/09/13(火) 22:07:10 ID:6cPgE7ys0
「ふあ……あ……」

それなりに質素な部屋の片隅で、テルメスはあくびを上げた。
いつも被っているパイロットニット帽は足元に放り出され、ぼさぼさの金髪が露になっていた。

黒沢小百合にこの部屋に入れられて以来、テルメスはすることも無く殆どの時間は寝て過ごしていた。
稀に近場で起きる怪人事件は「感じ取れる」ため、それが唯一の娯楽であった。

「別に不満は無いけど……時間の感覚無くなるな……ふあ……」

二度目の大きなあくびをすると、テルメスは立ち上がり、簡単な自己流ストレッチで身体をほぐし始めた。
それが終われば再び寝っ転がり、また身体かガチガチに鈍るまで寝てしまうのだが。

983黒沢小百合:2011/09/13(火) 22:21:16 ID:SSMHlh/20
>>982

――コンコン

「……入りますよ。」

軽いノックの音と、あの黒髪の女――黒沢小百合の声。
それから数秒遅れて、金属製のドアが横にスライドする。

「ここ数日の観察とカウンセリングの結果により、
 貴方の『仮釈放』が決定しました。とはいえ、条件付ではありますが。」

部屋に入るなり、小百合は有無を言わさず用件を述べる。
どうやら機嫌が悪いらしく、額にはいくらか皺がよっている。

984テルメス/ニット帽の男:2011/09/13(火) 22:27:16 ID:6cPgE7ys0
>>983
「うわったた」

黒沢が入るなり、テルメスは慌てて帽子を被った。

「は……仮釈放?
 突然だな。それで、条件って言うのは?」

パイロットニットの両耳の出っ張った部分を引っ張りながら、テルメスは聞いた。

985黒沢小百合:2011/09/13(火) 22:36:39 ID:SSMHlh/20
>>984

小百合が、ポケットから銀色の何かを取り出し
部屋中央のテーブルの上へとぶっきらぼうに投げる。

テーブルに触れ、カツンと硬い音を響かせたそれは
少し滑った跡、テーブルの縁で静止した。

「発信機入りの観察用腕輪です。もしこれを破壊する、許可無く外す、異常に興奮する、
 生命反応が低下するなど、特定の条件に達すると我々に報告される仕組みになっています。」

改めてそれをみてみると、そういう用途のものと言われない限りは
気づかないような男性用の地味な金属の腕輪だ。

「これを付ける事が条件の一つ、そして定期的に我々のカウンセリングを受ける事。
 怪人の情報を提供する事、この三つさえ約束していただければ我々は貴方を釈放する用意がある。」

986テルメス/ニット帽の男:2011/09/13(火) 22:48:41 ID:6cPgE7ys0
>>985
「……発信機?」

腕輪を机から取り上げると、まじまじと確認する。

「破壊したり許可無く外すってのは大体構わないけど……。
 異常に興奮したり、生命反応が低下したりはどういう意図でデータが取られるんだ」

腕輪はまだテルメスの手に弄ばれており、着けようとはしない。

「カウンセリングとか情報提供も協力するけど、それは教えてくれないか」

987黒沢小百合:2011/09/13(火) 22:56:43 ID:SSMHlh/20
>>986

「興奮状態で我々に連絡が入るのは、あなたが激昂して……。
 もしくは、怪人としての本性を抑えきれなくなった時に対する備え。
 生命反応は仲間からの口封じ、および自殺を防ぐためです。」

腕輪は重厚感のある見た目に反して非常に軽く
慣れれば、違和感を感じることは無いだろう。

「……理解したなら、同意して此処を出るか。
 拒否して保護観察とカウンセリングの日々を続けるか、返答していただきたい。」

988テルメス/ニット帽の男:2011/09/13(火) 23:06:34 ID:6cPgE7ys0
>>987
「……………………」

テルメスは、何を考えているのか少しの間黙って腕輪を見つめていた。

「……ああ、解った」

暫くすると、テルメスは腕輪を嵌めて、同意の意を示す。

「これでいいんだろ。
 必ずや、憎き鱗怪人共の殲滅が果たせるよう協力しようじゃないか」

腕輪を着けた右手を掲げながら、
渋るような顔をして、そう言った。

989黒沢小百合:2011/09/13(火) 23:12:42 ID:SSMHlh/20
>>988

「よろしい、では釈放しましょう。
 すでに大半の手続きは済ませてありますから、この書類にサインを。
 これに記入がし終えれば、ここを自由に立ち去って構いません。
 ああ、没収した持ち物は受付で受け取るように。」

小百合は、続けて取り出した書類をテーブルに置く。
ペンなど、尖ったものはここに入る際没収されたが幸い書類と一緒に渡されたため
困る事は無い。

「ああ、あと……もし貴方からこちら側にコンタクトをとりたい場合、
 その腕輪の上部を横にスライドさせて、中にあるスイッチを入れてください。
 通信機能が作動しますから、覚えておくように。」

990テルメス/ニット帽の男:2011/09/13(火) 23:23:18 ID:6cPgE7ys0
>>989
「えっと……なになに……。
 っと……」

テルメス、と書類にサインしたところで、何か悩むような素振りを見せたが、

「出来たぞ。これでいいんだな」

そのまま小百合に書類を渡し、腕輪のスイッチを確認する。

「スイッチは……これだな。解った。
 えっと……なんて言うか、お世話になりました」

991黒沢小百合:2011/09/13(火) 23:28:50 ID:SSMHlh/20
>>990

「言っておきますが、私は貴方を完全に信用したわけではない。
 もし、貴方が何か怪しげなそぶりを見せれば。もし、貴方が敵に利する行為をとるなら。
 その時、貴方はこの私の熱した鉄のような激しい怒りを思い知ることになるでしょう。」

律儀にも礼を言うテルメスを冷ややかな目で見つめる小百合は、
いつもの回りくどい口調で忌々しげに、吐き捨てる。

「この言葉、努々忘れるなかれ。」

992テルメス/ニット帽の男:2011/09/13(火) 23:37:20 ID:6cPgE7ys0
>>991
「そんないちいち大げさに表現しなくても解ってるよ」

帽子を外し、ボサボサだった髪の毛をなでつけた。
そして、もう一度帽子を被ると、部屋の中に残した物は無いか確認する。
と言ってもテルメスの持ち物は帽子ぐらいしか無いのだった。

「あとは受付で没収されたものを受け取るぐらいか……。
 サインはしたんだ、行っていいんだろ?」

993黒沢小百合:2011/09/13(火) 23:43:57 ID:SSMHlh/20
>>992

「あなたは先ほどの私の言葉を聞いていなかったのですか。
 サインをし終えたなら、立ち去ってよいと申し上げたはずですが私の記憶違いでしょうか?」

小百合は一層厳しくテルメスを睨みつけ、皮肉を飛ばす。

「まあ、これ以上語る言葉も無いでしょう。
 私はこの辺でお暇させていただきますから、もう勝手にするといい。」

そのまま、踵を返し立ち去る小百合。
テルメスは機嫌が悪い小百合の相手をさせられるという、貧乏くじを引かされた形だ。

994テルメス/ニット帽の男:2011/09/13(火) 23:54:12 ID:6cPgE7ys0
>>993
先ほどまでテルメスが生活をしていた建物、千夜グループの施設前。
対した物を持っていなかったテルメスは、荷物を受け取ってもほぼ手ぶらだった。

「……居心地は悪くは無かったけど、
 やっぱりあの黒沢って人の目が怖かったな……出てきて正解だった」

建物前でテルメスは大きく背伸びをする。

「……さて、これからどうするかな。
 うっかり俺より格上の怪人に会ったらアウトだからな。
 ……ましてや姉さんに会ったその日には……」

ため息をついて、テルメスは夜の人ごみの中に紛れ込んでいった。

995黒沢小百合:2011/09/17(土) 21:37:25 ID:SSMHlh/20
最近、小百合はバザーや、骨董品店などを見て回っては
古今東西の珍奇な品、マジックアイテムなどを買い漁っている。

「ええと、……これはなん、でしょうか……。
 『卵』……のようにみえますが……ううむ……。」

教もそのご多分に漏れず、以前歪みに巻き込まれて
別の場所に飛ばされた際、偶然見つけた中東風のスークを再び訪れ
なにやら、物色しているようだ。

996ロージェンス:2011/09/24(土) 01:13:47 ID:1sJsd2CgO
【港湾部】

(まったく、いつ見ても気持ち悪いくらい自然ね。紛れ込んでどれがどれだか……)

輸送トラックの助手席から港を見てロージェンスは感心する。
積み荷を降ろす作業員、輸送車に荷を詰める作業員、蟻のように動く人間の中に潜むようにして青いギャングが混じっている。
彼らの目的は運び込まれた資材の強奪。
一見すると貨物の積み換え作業にしか思えないが着々と犯罪が進行している現場なのだ。

そしてロージェンスは現在、理由あって彼ら――密売ギャング、ウルフズネストに協力している。
とても個人的な理由だ。思惑と言い替えても良いほどの。

「いくぞ。準備は?」
「いつでも……、待ちくたびれたくらいよ」
積み込みが終わり、エンジンがかかる。
ロージェンスの仕事は追手の迎撃、だが逃走中に奪取したことがバレなければ出番は無い。
そして今回もやはり出番は訪れず、問題なく貨物を奪い盗れるのだろう。
やがて輸送車輌は走りだす、本来のルートを外れて今宵も積み荷だけが何処かへと消えてしまうのだ。

997テルメス/ニット帽の男:2011/09/26(月) 21:23:20 ID:DvGffmgQ0
――ヅンッ……

異能都市の路地裏で、鈍く小さな爆音が鳴った。
路地裏に居たのは怪人態のテルメス、目の前にはすり鉢状にくぼんだ、コンクリートが砕けた地面があった。
周囲には尋常でない土埃が立ち込めていた。

「なんなんだ、”レギア”の事を聞いただけで襲ってくるなんて……。
 やっぱり姉貴、変な怪人とつるんでるみたいだな」

テルメスは怪人態を解き、ニット帽を被った人間の姿に戻る。
すり鉢状の砂場を滑り降り、その真中に手を突っ込むと、青い小さな鱗を取り出した。

「今姉貴に会いに行くのも不味いしなあ。
 話を直接聞ければ……」

998黒沢小百合:2011/09/26(月) 23:01:48 ID:SSMHlh/20
>>997

それからしばらくして……。

「……止まりなさい、怪人。」

テルメスは何処かから現れた小百合に、呼び止められていた。
彼女は前と同じく不機嫌な様子で顔をしかめ、
右手の指は今にも何かを殴りたい、と言う風にぴくぴくと神経質に動いている。

「あなた、先ほど『戦闘』を行ないましたね……。
 報告しなさい。ここで。今すぐに。以前の尋問で話していない事などあるのなら、話せ。」

999テルメス/ニット帽の男:2011/09/26(月) 23:13:00 ID:DvGffmgQ0
>>998
「報告?怪人に襲われたから正当防衛しただけだって」

何処から現れたんだ、といわんばかりの顔で、すり鉢の中から黒沢を見上げた。

「俺の姉貴が変な怪人と接触してるのを知って、
 その変な怪人について調べてたら怪人に襲われた。
 これで十分か?全部あんたから解放されてから起こった事だ」

別に話していなかった訳ではないと言いたいらしい。

1000黒沢小百合:2011/09/26(月) 23:22:36 ID:SSMHlh/20
>>999

「姉。姉がいたのか。お前には……。
 何故、報告しない!!」

小百合は憤怒の様相も凄まじく、
その切れ長の双眸でテルメスを睨みつける。

「貴様がそれほど我々に非協力的であるなら、こちらにも考えがあるぞ怪人。
 もしお前が獣より多少は頭が回るなら我々に協力しないという選択肢がどれほどの
 不利益をもたらすか、わかるだろう!!」

小百合の手に、拳銃が現れる。
恐らく、既に紙片を握りこんでいたのだろう。

彼女は憤怒のあまり息も荒くその拳銃をテルメスに向けた。

「ここで知っていること、貴様の持つ情報をすべて吐け!!
 他の怪人との連絡手段を持っているんじゃないだろうなッ!?」

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