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【日常α】境界線上の異能都市【壱拾肆】- 1 :名も無き異能都市住民:2011/03/26(土) 19:09:19 ID:7gFzKdaU0
- ≪ルールとか≫
・基本age進行で
・コテもコテ無しもどんどん来い
・レスの最初に自分のいる場所を明記してくれるとやりやすいです
・イベントを起こしたい場合は空いているイベントスレをお使い下さい
・多人数へのレスは可能な限り纏めて行うようにしましょう
・無意味な連投・一行投稿はできるだけ控えるよう心がけてください
・戦闘可能ですが、長引く場合や大規模戦闘に発展した場合はイベントスレへ移動してください
・戦闘が起きた場合、戦闘に参加したくない人を無理に巻き込むことはやめましょう
・次スレは>>950を踏んだ人にお願いします
【日常α】トンネルを抜けると異能都市だった【XIII】
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12841/1290436701/
- 2 :灯:2011/04/09(土) 22:19:26 ID:Sj59lUuk0
- 【緋河神社鳥居】
人気のない夜の神社、その鳥居前。
「……お邪魔します」
宙に浮いた少女の影がぺこりと頭を下げる。
そのまますーっと、鳥居をくぐり抜けた。
「お? ……よしよし」
境内に踏み入った影は、小さく声を上げて微笑む。
ふわふわと浮いていた影はゆっくりとその足を石畳に近付け……
―― カラッ
軽く高い下駄の音が境内に響いた瞬間、
おぼろげだった輪郭が形を帯び、一つの像を結ぶように少女が立ち現われた。
二枚歯の下駄、臙脂の袷、黒く伸びやかな髪、そして手に提げられた凝った意匠のカンテラ。
「ふふっ」
身体を捻ったり回ったり、その場で軽く跳ねてみたり。
少女が身体を動かすたび、辺りに軽快な下駄の音が転がる。
- 3 :鳶貴:2011/04/09(土) 22:22:11 ID:gcj2oIKk0
- //>>1乙
「―――ええ。ですからこちらで全て負担します。あのような暴動事件があっては…えぇ、もちろんですよ。」
「はい。再建の目処も…手配させていただきましたので……いえ、当然ですよ。それでは、また伺いますので…。」
通話を切り、電話越しに作っていた笑みを崩して溜息をつく。
場所が悪かった。まさか商売相手があの繁華街に密集していたとは思ってもいなかったのだ。
おまけに、自分も不必要に暴れてしまった事で余計に電話先が増えてしまった。
「……予想よりも既定値を少々上回っている。ケース0bと断定。暫らくは経過を見る事にする…。」
スーツ姿の男が道端で一人、明らかにイラついている声色で携帯に何かを報告している。
「例のガキ……一向に足取りが掴めない…。そういえば奴に突っかかってきた男がいたな…
…待てよ、確か名を呼んでいたような…素姓を知っている素振りではなかったか…?」
"愛"を諭す子供の胸倉を掴んでいた男。名は…知る由もない。
もしかしたら双方どちらかが口にしていたのかも知れないが、そこまで事細かくは覚えていなかった。
「……まぁいい。今は奴よりも忌々しき小娘…それに――――。」
ふと、通り過ぎていた建物に何かを感じ振り返る。
どこかで似たような気配を感じていたのだが、湯煙のようにぼんやりとした何かが覆っていて思い出せない。
「…銭湯か。そういや、あの培養液のキツい臭いにはうんざりしていた所だ、折角…………何だ?」
視界の隅で何かがちらつく。辺りを見回すと、闇の中に佇んでいる明りが見えた…様な気がした。
「……? 気のせいか?」
何もない事を確認すると、当初の予定であった銭湯の事を忘れてしまったのか
男は再び携帯を開いて通り過ぎて行った。
- 4 :灯:2011/04/09(土) 22:40:08 ID:Sj59lUuk0
- 「さて……お手水お手水」
少女がカンテラから手を離すと、カンテラは急に大きくなった灯火に飲まれ、次の瞬間には見えなくなった。
少女はカラカラと下駄を鳴らして手水舎の側まで近寄ると、柄杓を右手に持つ。
掬った水を左手にかけ、持ち替えて右手にかけ、また持ち替えて左手で水を受ける。
その左手の平に溜めた水を軽く口に含み、吐き出す。そうしてまた左手に水を掛け、
最後に柄杓の頭を上に、くるくると回しながら立てて柄を洗い清め、もとの場所に戻す。
「ふぅ……これをやると駄目だ……。冷える」
少女はぱたぱたと両手を振りながら小さく身震いする。
そうしてまた、拝殿までの石畳をゆっくりと歩き出した。
- 5 :灯:2011/04/09(土) 23:06:47 ID:Sj59lUuk0
- 拝殿前、少女は賽銭箱の傍らで足を止める。
時間の都合もあり、主の不在もあり、拝殿の戸は閉ざされている。
「流石にこんな時間だし、誰もいないか……」
伸びたり縮んだりして拝殿の中の様子を窺おうとしたが、結局あきらめた。
姿勢を正し、深いお辞儀を二度繰り返す。
胸の前に両手を合わせ、目を閉じて柏手を打つ。小さな手がぺち、ぺち、とみっともなく二度鳴った。
『(しばらくこの街に御厄介になります……)』
簡潔に挨拶だけを念じて、最後に深く頭を下げる。
「……さて」
振り向いた少女の手には、またカンテラが提げられている。
静かな境内、少女は何かを探すようにぶらぶらと歩く……。
- 6 :灯:2011/04/10(日) 00:04:59 ID:Sj59lUuk0
- 「やっぱりここしかないか……」
少女は取り憑く照明を探して境内を一通り歩いて回ったが、
点灯しているのは目の前にある参拝者用トイレの側の白い蛍光灯だけであった。
出払っているのだがら、必要のない照明は消えていて当然である。
「やなんだよなぁトイレ……。でも背に腹は代えられない」
はぁ、と溜息をついた少女の身体が宙に浮かぶ。
蛍光灯と同じ高さまで浮上すると、手に持ったカンテラをそれに近付ける。
カンテラは蛍光灯のガラス部分をすり抜け、両者の光が重なった瞬間、ふっと明かりが消えた。
「あんまり人が来ませんように」
次第に少女の姿も薄くなり、影は闇の中に溶けるようにして消えた。
彼女が場を離れるまでの間、この蛍光灯は人が近付けば点灯し、
離れたら消灯する、まるで人感センサーを搭載したかのような動作をすることになるだろう。
- 7 :鳶貴:2011/04/10(日) 00:16:20 ID:gcj2oIKk0
- しばらく道なりに歩いていると、足を進めている先ががらりと雰囲気の変った事に気付き
近くの看板を見つけて読み上げる。
「―――緋河神社?ほう、こんな場所にこんな物があったとは…。」
興味深そうに辺りを観察する。
苔生した段差に足をかけ、さらに中へと進んでいく。
「…な、なんだ?この事象……何かが…?」
近づいていくうちに身体にこびりつく様な違和感を覚える。
自身の魔力を寄せ付けまいとしているような―――そんな意思を感じる。
「…………収まったか?」
冷や汗を払いながら、改めて拝殿の方へと向かっていった。
- 8 :灯:2011/04/10(日) 00:39:44 ID:Sj59lUuk0
- >>7
『(人が来た……?)』
性質上、非常によく夜目が通る少女は、参道に若い男の姿をとらえた。
と言っても、彼女が分かるのはそれだけ。
今が昼間なら参拝者のふりをして世間話でも吹っ掛けたところだが、
流石にこの時間。自分のような者が姿を現しては驚かせるばかりだと、
姿を隠したまま男の様子を眺めることにした。
参拝者用のトイレは参道から自然に見える位置にあるが、
魔術的あるいは霊的な素養がない限り彼女の存在を把握するのは難しいだろう。
逆に、少しでも素養を持っているならち、近付きさえすれば何らかの違和感を覚えることだろう。
- 9 :鳶貴:2011/04/10(日) 01:00:11 ID:gcj2oIKk0
- >>8
「…風情のある場所だ。あまり神道などと言った物に関わることはないのだが…。
特別な聖域、といった意味合いではまた違ってくる。こういった場所には“空間”が干渉するものだ…。」
何やら一人で呟きながら、辺りを散策しはじめている。
男は常に微量の魔力を放っている。恐らくはそれで気配を探知しているのだろう。
しかし人間ではなく別の存在となると、また話は違ってくるのだが。
ぴくり。眉が微かに動く。
先程にも似たような気配、というよりも光を感じ取った―――そんな気がする。
男は洗面所の近くで足を止め、静かに顔を上げる。
「………?」
不思議そうに辺りを見回す。距離が遠かった所為か、視認はできていないようだ…?
- 10 :灯:2011/04/10(日) 01:11:27 ID:Sj59lUuk0
- >>9
『(半分くらい気付かれてる……)』
男の様子は、「何かいる」といった雰囲気だけは感じ取っているように見えた。
彼女の方もまた、男の放つ微細な魔力を少しながら察知している。
『(探してる風だし、ずっと隠れてるのも悪いかな)』
逃げ隠れだけは得意な性分の彼女、
危なくなったらトンズラこけばいいや、ぐらいの軽い気持ちで姿を現すことにした。
自身の姿もトイレ前の蛍光灯は消したまま、トイレのドアをすり抜けて中に入る。
使ってもいないのに水を流して……。実体化し、ガチャ、とトイレのドアを開け、普通に出てゆく。
同時に外の蛍光灯に明かりが灯る。
何てことはない、トイレの中から人が出てきて、出てきたら外灯が付いた。
一連の流れはそういう風に見えることだろう。
臙脂色の袷にカンテラを手にした黒髪の少女が、目のあった男にそっと会釈をする。
「……こんばんは」
- 11 :鳶貴:2011/04/10(日) 01:28:26 ID:gcj2oIKk0
- >>10
水の流れる音に反応するように肩を揺らして上げる。
人の気配などまるでなかった突然の矢先だ、少々驚いたのだろう。
「……やぁ、こんばんは。」
男は笑みを作りながら挨拶を返す。
たった今明りがついた。
何ともないように思える事だが、一つの違和感を覚える。
わざわざ暗いまま用を足していた事になる、のだろうか。
それともここからは見えないが中にも明りがあるのか?
「…良い着物だな。この神社の人かい?」
茜とも違った色合いの綺麗な着物を着た少女を
傾いた首に手を当て、見定めるように観察している。
勘繰るような眼差しだ。恐らく、先程の奇妙な違和感からして
普通ではないという事を察しているのか。
- 12 :灯:2011/04/10(日) 01:42:03 ID:Sj59lUuk0
- >>11
「あの、……えっと。何となく察しはついてるかと思いますが……。
私、お化けです。善良なユーレイです。通りすがりの……」
害意はないですよ、と言うように、
少女は素性を明かして両手を軽く広げて肩を竦めて見せた。
ただその胡散臭さは極まりなく、それを信じられるかは相手次第だが……。
「小腹が空いたので、お参りついでにそこの蛍光灯の明かりを食べてたんです。
あなたも……こんな時間に参拝ですか?」
蛍光灯を後ろ手に指さしてそう言い、小さく微笑んだ。
- 13 :鳶貴:2011/04/10(日) 01:57:20 ID:gcj2oIKk0
- >>12
「………“オバケ”?」
何を馬鹿な、とでもいいた気な苦い表情で目の前の「幽霊」を見る。
確かに奇怪の類であると自ら言われれば納得はいく。
普通の人間とは異なる周波、そんな雰囲気を放っているからだ。
しかし、お化けはどうだ。
そう自分に問いかけながら前頭部に手を当てて考え込んでいる。
似たような存在と遭遇した事はあるが、どちらかといえばアンデッドの類であり
ここまで人型を留められるものなのかと、固定観念が生む疑惑にとらわれていた。
「明りを…随分と可愛らしいオバケもいたものだな……。」
似たような話を聞いたことがある。街灯の明りを食べて生きるというお化けの話だ。
……どんなものだったかまでは覚えていなかったが。
「いや…道に迷ってね。…そうだ帰りは銭湯に…いや、流石に閉まっているか…?」
- 14 :灯:2011/04/10(日) 02:09:43 ID:Sj59lUuk0
- >>13
「ふっふっふ、そうです。
化けて出るのは美少女と相場が決まっているのです」
少女は得意気に人差指を立てて小さく振りながら、目を細めて笑った。
「道案内でしたら得意ですよ。
むしろ暗い夜道を行く人の先導こそ、私の本分ってやつです」
カンテラをカランカランと鳴らしながら、
男の周りをぐるり回って、鳥居の側に立つ。
「といっても、銭湯なら迷うほどの距離でもないですが……」
鳥居の方向に向けて手を掲げ、カンテラを揺らす。
返事も聞かず、銭湯まで一緒に歩くつもりのようだ。
- 15 :鳶貴:2011/04/10(日) 02:27:52 ID:gcj2oIKk0
- >>14
「…それは初耳だ。…危害を加えねば何でもいいのだがね…。」
(………これだから、子供というものは訳がわからん……。)
誇らしげな和服の少女の言動や身振りを微笑ましそうに眺めている。
「…持ってる物からして、得意そうなのは伺えるよ。
だがそこまで世話を焼いてもらう義理はな……」
今時珍しい古風なランプを携えている様がどうにも不思議でしょうがなかった。
返事を待たずに道案内を請け負った少女の背を、どうにも疲れた顔で眺める。
「…………ハァ、わかったよ。しかし、不思議な小娘だ…。
……小娘?」
迷うほどの距離を迷った、その事に若干ムッとしながら
猫背になりながらとぼとぼと後を追う。
- 16 :灯:2011/04/10(日) 02:42:54 ID:Sj59lUuk0
- >>15
「まぁ、聞こえましたよ。小娘だなんて。
貴方だって昔は小僧だったでしょう? その点、私は……」
渋々ながらも付いてくる男が様子に満足して背を向けると、
さくさくと砂利の中を進み、カラカラと石畳を歩く。
「……あ」
そして鳥居の下をくぐった瞬間、少女の姿がぼやけた。
ガラスに映り込んだように、姿の向こうに風景が透ける。
足の先は完全に闇に溶けて、空間との境界すら曖昧になっている。
その中で、手にしているカンテラだけが、確かな質量と、熱と、光をもってそこにある。
- 17 :鳶貴:2011/04/10(日) 02:58:20 ID:gcj2oIKk0
- >>16
「………そうかい、そりゃ悪かったよ。その点、何だ……」
突然消えた少女の姿を探すが見つからない。
しかし、妙な事に手にしていたカンテラはしっかりとそこに在る。
丁度、少女の身の丈程の高さでだ。
「―――ほほう!なるほど。 本物の『霊体』という訳か。」
顎元に指を這わせながら、納得といった表情で宙にぶら下がっているカンテラを見詰める。
「これは次元干渉の類…の様子にも見えるようだが違うようだ。
……この土地そのものか、ここに奉られるモノの影響…か?」
カンテラの上で威圧的に佇む鳥居を見上げ、暫し考え込む。
「……で、大丈夫なのか?小娘。」
あ、とこぼしたようなその一言が気掛かりなのか、男は真剣に訊ねる。
- 18 :灯:2011/04/10(日) 03:12:52 ID:Sj59lUuk0
- >>17
「え、ええ。忘れてたから驚いちゃっただけで、大丈夫です。
こういう、霊力の強い場所だと私の力も強くなるんですけど……」
すっと、また暗闇の中から少女の姿が浮かび上がる。
カンテラを膝の上に置くようにして、座った形で宙に浮いている。
が、やはりどこか薄ぼんやりとして、周囲の風景が身体を透き通して見えている。
「……ご覧の通り、私はカンテラのお化けです。
人の姿の方は借り物で、ほんとは子供も大人もないんですよ」
カンテラの高さと男の目の高さが合う位置まで少しだけ浮上する。
男の方を向いたまま、歩くのと同じような早さでふわふわと進み始めた。
「それで、あなたは何をしてる人なんですか?」
- 19 :鳶貴:2011/04/10(日) 03:31:47 ID:gcj2oIKk0
- >>18
「…霊力?なるほど、そういうものなのか…。」
座ったまま浮いている。なんともシュールな光景だ。
いきなり向かいから人が歩いてきたら、どんな顔をするのだろう。
もっとも、普通の人間には大方姿が見えないのだろうが…。
「なるほどなるほど…その点とはそういう訳か。」
鏡をその身に映したような半透明な少女に、何となく手を伸ばしてみる。
実体があるかどうかが気になっているようだ。
「俺か?ただの会社員さ。この都市に移ってからは貿易を生業としている。」
小奇麗なスーツに身を包んだ男は、にやりと頬を引きつらせ
目線の高さまで上ってきた少女と面を合わせる。
ただの会社員は異能や現象に妙に詳しかったり、魔力を辺りに散らしていたりするのだろうか。
「……それで、小娘。キミには名があるのか?
そういった物に魂が宿る場合、必ず名前等に力が宿るそうじゃないか。」
- 20 :灯:2011/04/10(日) 03:48:05 ID:Sj59lUuk0
- >>19
伸ばされた手に、少女もそっと手を伸ばす。
引っ掻くように小さく動かした手が、男の手をすり抜けた。
少女は悪戯っぽく笑って、
「……悪いことをしては、いけませんからね」
そう言った。
本当のことを答えなくとも、以上を訊く気はない。ということだろう。
「……私も多分、貿易商の手によってこの国に運ばれました。
それから多くの人の手を渡りながら、こんな風に夜道を明るく照らして……。
その間、ずっとカンテラとかランプとか、あかりとか、そんな風には呼ばれてきましたけど……」
所詮は道具なので、名前はありません。……そう続けた。
- 21 :鳶貴:2011/04/10(日) 04:12:01 ID:gcj2oIKk0
- >>20
自分の手の甲から小さな手の先が覗いている。
その奇妙な光景に目を丸くしながらも、口元は笑っていた。
そして少女の言葉を聞いてきょとんと歩みを止めるが
暫らく佇んでいると、含み笑いの後にまた後を追ってきた。
「………参ったな。
だが悪いね、お嬢ちゃん。キミの頼みといえど聞けないのさ。
キミのいう所の"悪さ"は我々にとっても同じ見方という訳でもなかろう。」
伸ばした手を戻し、不適に笑いながら歩みの速度を合わせている。
「…そうなのか。聞いていた話と違うな…所詮は逸話、か。
ふむ、随分とぶらりと旅をしてきたようじゃないか。
しかし悲しいものだね。人として生きられたら随分と勝手も違うだろうに。」
悲しげにも聞こえた声に応えていく内に、神社からそれなりに遠ざかって行く。
- 22 :灯:2011/04/10(日) 04:34:34 ID:Sj59lUuk0
- >>21
「ふふふ、全くです。私だって明かりをドロボウしてますからね。
……けど何事も程々に。だれかにおしおきされないようにするんですよ」
私が見てますからね、と言わんばかり。少女はくすくすと笑った。
「私の場合は、悲しいことよりも楽しいことの方がずっと多い旅でした。
人間も面白そうだと思いますが……。私は私の職分が好きです。
……つらい旅を続ける人の、先行きを照らす光が私だから。
暗い闇の中を歩けるように……」
そこまで言った瞬間、ビル群の隙間を抜け、明るい大通りへ出た。
まばゆい電灯の明かりが立ち並ぶ中、ぼんやりだった少女の姿はいっそう霞んでいる
向かいの路地を入った辺りには、銭湯と思しき煙突が見える。
少女は今にも消えそうな姿でその煙突を指差す。
「さて。これで見知った場所に出たでしょう。
あれが銭湯です。……開いているかは分かりませんが」
- 23 :ゆすら:2011/04/10(日) 04:49:03 ID:Tzs1kWfM0
- と、二人の目指す銭湯の入り口から、銭湯一式を抱えた巫女装束の小さな少女が現われた。
同時、地下の龍脈が僅かに刺激され、付近の霊力が上昇する。
「ふぃー、満足満足。湯も良かったが、最後に飲んだあのフルーツ牛乳の格別さと言ったら!
券が切れた後もここに通うのもアリかもしれんのう」
何か良いことがあったのか、ほくほく顔だ。
- 24 :鳶貴:2011/04/10(日) 04:58:33 ID:gcj2oIKk0
- >>22
「なんだ、キミも人の事は言えないんじゃないか。
言っておくが小娘の忠告など聞かんよ…ま、覚えておくだけならいいかもね。」
「………。」
男は思わず聞き入って、そして考えていた。
自分の通ってきた道が如何にして闇に紛れた危険な獣道だったのかを。
その最中に照らされる明りなどなくただ無我夢中で生を追い、拾ってきた。
一筋でも光に照らされていたら、もっと明るい場所に立つ事ができたのなら――?
このような考えを抱くこともなかったのだろうか。
「…そうか。楽しいと思える職務につける事は、人間でもそうある話じゃない。
良かったじゃないか。…何が良かったとは一概にも言えんが…。」
どう言えばいいのかわからないようで、色々と言葉を見つけながら歩みを進める。
暫らく考え込んでいるうちに、先程通ってきた道に合流した事に気が付くと
少女の方に小さく笑いかけた。
「…道案内、御苦労。頼んでもいないがね。
しかし、色々とキミは興味深いな…。」
懐から革の財布を取り出すと、中から紙幣を五枚程抜き出して少女の方に突き出す。
「駄賃だよ。子供には過ぎた額だがね。
それで、油やら明りの元やら好きな物を買うといい。」
>>23
背中から何かが這い上がるような、そんな気配を感じる。
「………?」
気配の先へと目を向けると、巫女服の少女が銭湯から出てきた様子で
満足そうな笑みで神社の方へと向き直ろうとしている。
「……失礼、銭湯の方はまだ営業されているかな?」
軽い会釈をしながら、柔らかい物腰でスーツの男は問いかける。
- 25 :灯:2011/04/10(日) 05:08:53 ID:Sj59lUuk0
- お礼の言葉を受け、どうしたしまして、と頷く。
そして、差し出された紙幣に恐る恐る手を伸ばし、指でつまむようにして……。
その指先が、紙幣をすり抜ける。
手をひっこめた少女は、どこかほっとしたような笑顔になって、
「お気持ちだけ受け取っておきます。ふふ、ふ……?」
カンテラの炎が力の揺らぎに反応するように少し大きくなる。
何事かと思い、その力の流れてきた方に目をやると、
「なんだ、さっき銭湯にいた巫女さ……ん……」
先ほどは、御幣を振るっている姿を遠目に見ただけだった。
が、今は違う。近付いてくる小さな巫女姿が放つ気は尋常のものではない。
どこまでも精神体である少女にはそれがありありと感じられる。
「…………」
男が巫女装束を纏った少女に話しかける傍ら、彼女は緊張して動かずにいる。
- 26 :ゆすら:2011/04/10(日) 05:12:59 ID:Tzs1kWfM0
- >>24
「ほう?」
男に話しかけられ、ゆすらは訝るような表情を見せる。
しかし、それも一瞬のこと。すぐに普段の表情を見せて、
「まだ閉まるまで時間はあるようじゃが……入るのなら早くするんじゃな。
あそこの湯は格別じゃ。きっと長風呂したくなるぞ」
言った後、口の端をつり上げる、やや悪い笑みをこぼした。
「それはそうと、ぬし。私はこのまま早々にここを発った方が良いかな?
私の側にいると、良くない感触に襲われるじゃろうしの」
その視線は、男の中にあるモノを見透かそうという勢いの強さだ。
- 27 :鳶貴:2011/04/10(日) 05:27:06 ID:gcj2oIKk0
- >>25
「………。」
申し訳なさそう財布にお金を戻しながら、少女の手にしたカンテラの火に目を向ける。
先程よりも火力が上がったような?そんな錯覚めいたものを感じ取り、
「…知り合いか?」
声を掛けるが、先よりも反応が薄い。何かがおかしい。
先程感じたものの正体―――一帯の霊力の増加によるものだろうか。
「………おいどうした?」
急に押し黙ってしまった少女に、首を傾げてしまう。
恐らく原因は目前の―――
>>26
「そうですか……それは良い事を聞いた。ありがとう、お嬢さん。」
(……また子供か。しかもまた娘子。なんの因果か……?
―――――。 これは………。
なんだ?この拭い切れぬ違和感…息を詰まらせるような、この感覚は…?)
額に手を当てながら、くらりと身体を傾ける。
思わずたじろぎそうになる身を立て直し、すっとミコ服の少女の方へと向き直った。
「………やれやれ、“キミまで”人じゃないのか…一夜にしてこうも面白く相対するものかよ…?」
男の中には暗い闇。そして無尽蔵に膨れ上がるかのような魔力が渦巻いている。
人としての血の様なものはそこに通っておらず、ただ生気だけが感じられる。
- 28 :灯:2011/04/10(日) 05:35:29 ID:Sj59lUuk0
- >>27
「ちょっ、ちょちょ、あの、その巫女さんに突っかかっちゃ駄目だからね!」
霊力の奔流を受けて、実体化できることに気付いた少女が、
剣呑な空気を察し、男の肘を掴んでちょんちょんと軽く引いた。
心細げな視線は巫女装束の少女の言動に注がれている。
- 29 :ゆすら:2011/04/10(日) 05:40:31 ID:Tzs1kWfM0
- >>27
「ほほう、「まで」とな?」
男の物言いで、ようやくゆすらは男の背後にいる少女に気がついた。
人間ではない、と一見してわかる。像をはっきり結ばない身体が、そう教えていた。
ただ、手にしているカンテラだけが、自らの存在を主張するように光っている。
「これはまた、珍しい組み合わせじゃの。黒い気の怪しい男に、付喪神の女子(めのこ)とは。
私は今、拐かしの光景でも見ているのかのう?」
ゆすらは、男が少女を誘拐してきたと勘違いしているようだ。
- 30 :鳶貴:2011/04/10(日) 05:54:32 ID:gcj2oIKk0
- >>28
底知れぬ何かを持つ巫女。
その存在に食って掛かろうとしながらも、頭の中では現状を事細かく整理している。
いざ剣を抜くような事になれば、周りの状況や遮蔽物の有無等を把握している方が有利だ。
そしてその中で"ある変化"に気が付くのには、少々の間を要した。
はっとしたような表情でカンテラの少女の方へと勢いよく振り向く。
「待て……お前、何故……触れる……?
さっきは何とも……あぁ、それも"コレ"の所為か…?」
正体の元を指した方へと、再び顔の向きを戻す。
>>29
「ふふん、流石に神様も口の利き方までは教えて下さらない様子だ。
そうですなぁ、この娘をさらって新たな研究のカテゴリーとして加えるのも面白い。
何せ今まで類を見ない精神寄生体だ。発見は尽きない事だろう…!」
明らかに先程とは違う笑い、悪意を含んだ笑みを浮かべている。
先程よりも一層、男の中の力が沸き立っているのを感じるだろうか。
「…キミも同様だ、小娘。」
そこまで言いかけて、目を見開いて口を覆う。
突然に間をさした光景は、明らかに慌てているものだ。
- 31 :灯:2011/04/10(日) 06:04:04 ID:Sj59lUuk0
- 「あーわわわわわ……」
目の前で強烈な睨み合いを始めてしまった二人に少女は焦る。
これ以上二人の間合いが詰まってはコトが始まってしまうと、
二人の間に入ろうとするが、流石に身体で立ち塞がる勇気はない。
男の後ろから、両者の間、視線がぶつかる脇に移動して、
「お二方とも落ち着いて、落ち着いて。誤解です。ストップ!」
と、男の表情の変化には気付く余裕がない。
- 32 :ゆすら:2011/04/10(日) 06:13:35 ID:Tzs1kWfM0
- >>30
「人間の、そういう研究熱心なところは嫌いではないよ。
しかし、誰彼構わず俎上に乗せるような振る舞いは良くないのう」
膨れあがった男の気配を正面から受けながら、ゆすらは好戦的な笑みを見せた。
「……今夜は気分が良い。喧嘩をするのなら、相手になるよ、ぬし」
笑んだゆすらの周囲の空気が、ざわつき始める。
彼女の意識に刺激された龍脈が、さらなる霊気を発したのだ。
しかし……。
「おお?」
戦いの気配に高ぶったゆすらの気配が、急激にしぼむ。
無理もない。誘拐の被害者だと思っていた少女が割って入ってきたのだから。
- 33 :鳶貴:2011/04/10(日) 06:25:05 ID:gcj2oIKk0
- >>32
両手で顔を覆って俯いたまま、しらばくの間動こうとしなかった。
(馬鹿がッ! まただ、また余計な事を口にしてしまった……変異した姿ならまだしも、この体のまま…!
………だが、関係ない。口さえ塞いでしまえば全ては収まる寸法だろう。
それに…『疼いて』しょうがない!これ程までに高圧的で底知れぬ相手を眼前にするのは……!)
ニタリと頬を緩ませ、事の収束の方向性を決める。
「ハッ!誰彼構わずと?笑わせてくれるじゃないか。
磔刑台に張り付けるのは貴様等が祀り上げる所の、"神"の所存ではないのか?」
男は揚々と左の腕を振り上げ魔力を集中させた。
体中の皮膚から汗のように吹き出る黒い液体。
そして、その量と湧き上がる速度はどちらも異常だった。
見る見るうちに掲げた腕は黒く染まり、魔力の鎧に包まれる。
手の甲に描かれた三つの魔法陣を赤く光らせながら、今にも手を下さんとしていたが―――
>>31
「………。」
光が段々と輝きを失っていく。
視線の隅で何やら気掛かりな動きを見つけると
体勢は変えずにそのまま視線だけを移した。
「…………何だ?」
止めようとした意図がまるでわかっていない。
- 34 :灯:2011/04/10(日) 06:46:58 ID:Sj59lUuk0
- 一目で力ある神仙の類だと分かった巫女装束の少女と違い、
そこそこの異能を持ち合わせつつも普通の人間だと思っていた男の変容。
さっきまで普通に話をしていた相手の様変わりに少女は恐怖した。
恐怖したが……、今目の前の二人は確かに矛を収めたのだ。
巫女装束の少女の戦意が小さくなっていくのを認めた後、
こっちに視線を向けた男に向かって、
「『なんだ』じゃない!
ひとのこと小娘だの子供だと言っといて、
あんな、ほんのちょっと煽られたくらいでいきなりマジになるってどういうことなの!」
と、声を張り上げてまくしたてる。
攫って云々とか研究がどうこうとか言われたことはサッパリ吹き飛んでいるようだ。
「あなたも! 神様だか仙女だか術者だか知らないけど、
そんだけ力があるひとがこんな街中で『相手になってやる』だなんて、冗談じゃない……!」
と、言いながら次第に声色に涙が交じり、
「と、とにかく、うっ、ぐす……。無益な喧嘩は、だめですー……!!」
とそこまで言って色々と限界を向かえたのか、しゃくり上げて泣き出してしまった。
- 35 :ゆすら:2011/04/10(日) 06:56:37 ID:Tzs1kWfM0
- >>34
「あああ、ぬし、私が悪かった、悪かったよ。だから泣きやんでおくれな……?」
いきなり泣き始めた少女にすっかり動揺して、ゆすらの闘気はすっかり無くなってしまっていた。
そして、がしがしと頭を掻き、
「ううむ……言われてみればもっともではないか。何故私はこんなところでやらかそうと思ったのだ?
小百合どのと話して気でも高ぶっていたか? ……くう、情けない」
ゆすらは反省することしきりだ。
- 36 :鳶貴:2011/04/10(日) 07:11:10 ID:gcj2oIKk0
- >>34
「………。」
ゆすらの方へと顔を向ける。
どうしたものかと向こうの対応を見ていたが
泣き喚いて水を差されちゃ事を荒立てる気も失せただろう。
気だるそうに傾げた首を正し、腕の構えを解いた。
「…小娘。キミには借りがあったね。
ここは大人しく引き下がる事にするよ…。」
このまま引き下がるのはどうにも腑に落ちないが…。
どうにもこうなった子供は見るに耐えない。
そもそもこちらがどうしていいやら判らない。
この現状に片腕で小突くようにして頭を抱えていた。
>>35
「……どうしても“力の程”が知りたくてね…。
非礼を許してくれとは言わない。一度抜き出した刃は、目に焼きついて離れはしないだろう。」
頭を掻いている最中、向き合っていた男が声を掛ける。
「この娘の言う通り、ハナからさらう気はなかった。
ただ、どうにも………。」
馬鹿正直に『喧嘩を吹っ掛けたくなった。』『態度が癪に障った。』
そう言うとまたカンテラの少女が何を言い出すかわからない。
恐る恐る泣きじゃくっている少女の方を見ながら、その先は口を閉じた。
- 37 :灯:2011/04/10(日) 07:21:07 ID:Sj59lUuk0
- >>35
「うぇ……。ひっく。だいじょうぶれす……くすん。
……ひぐ、力が余ると、たかぶっちゃってぇ、ふぁ、わたし……ひっく」
そう言いながら、メラメラと燃えていた炎が、
巫女装束の少女の神気と同期するように萎んでいく。
「ひっく。ふ……すぅ……はぁぁ」
最後に声を震わせて息を吐いて、癇癪はあっけなく収まった。
「偉そうなこと言ってごめんなさい……」
二人に向かい、小さくなって頭を下げた。
- 38 :ゆすら:2011/04/10(日) 07:34:14 ID:Tzs1kWfM0
- >>37
「む……私の方こそすまなかったよ。
私も職業柄、妖しい気の持ち主を見るとこう、戦わなくてはならない義務感のようなものが生まれてしまうでな……。
あまり褒められた職業病ではないのう……」
少女の涙がよほどショックだったらしく、ゆすらはがっくりと意気消沈している。
「いや、しかし、ぬしの言葉が無かったら、我らはここで戦うことになっていただろう。
私はぬしの勇気に敬意を表せねばならんな」
そう言うゆすらの顔は、幾分か晴れやかだ。
>>36
「それと、ぬしもすまなかった。
妖気の類を感じる相手とはいえ、私も非礼が過ぎたやも知れぬ」
ゆすらはばつの悪い顔をしていたが、その後に男にだけ聞こえるような声で、
「この娘に免じて、先刻の研究云々の言葉は忘れてやる。力を試したいなら、後で神社に来ると良い。
じゃが、この娘に手を出すようなことがあってみろ。その時は覚悟せいよ、ぬし」
そう付け加えた。
- 39 :鳶貴:2011/04/10(日) 08:01:20 ID:gcj2oIKk0
- >>37
(…やはりおかしくなった原因はあの巫女の法力…いや、言葉を借りるなら「霊力」か?)
シュルシュル。
布同士が擦れるような音を立てながら、黒い物体は徐々に体内へと姿を消していく。
一先ずは泣き止んだ事に胸を撫で下ろし、覇気迫る形相から疲れきった顔で少女に声を掛ける。
「……何、いいさ。しかし、よく止める気になったな。
あれ程あの巫女に震えていたと言うのに。」
ゆすらの言うように、少女の勇気を称賛していた。
>>38
「………。」
口元だけは笑みを作っているが、明らかに面白くないといった表情をしていた。
「…あの神社か。わかった、また日を改めて伺わせてもらおう。
安心しろ、最初からあの小娘をどうこうする気は毛頭ない。
ただ―――覚悟するべきはあの娘ではなく貴様だ。」
互いに小声で交わしながら、戦意の火種を燻らせる。
「…やれやれ、一風呂浴びようとした矢先にこうなるとは思いもよらなかったよぉな…。」
緊張の糸が切れ、すっかりだらけた表情と声で肩を回している。
先ほどまでに嬉々として敵意を向けていた人物とは思えないようだが
彼が内包している魔力だけは、相も変らず黒々と辺りを探るように纏わりつく。
「お騒がせしたね、お二人さん。
俺の名はトビタカ―――また会う時を楽しみにしているよ。」
背を向けながらそう言うと、当初の目的であった銭湯の入り口へとゆっくりと歩いていく。
―――果たしてまだ開いていたのだろうか。
- 40 :灯:2011/04/10(日) 08:09:18 ID:Sj59lUuk0
- >>38
「勇気だなんて……。
怪我してからじゃ、私、何もできないから……」
目を伏せて言う。
しかし、先の対峙の瞬間、両者の間にあった埋めようもない溝を、少女も感じ取っていた。
目の前で傷つく姿が見たくないために必死になったが、既に分かってしまっていた。
生きる上で拠っているものが違う。次の邂逅のときには、きっと両者は自然に衝突するだろう、と。
けど、それでも……。
「お互いのこと、何も知らないまま殴りあうのは……」
それ以上の言葉は、告げなかった。
>>39
「……トビタカ」
去り際に聞いた名を小さく呟いて、
「……暗闇を歩くときは、明かりを持つようにするんですよ!」
と、遠ざかる背中にそう告げた。
- 41 :ゆすら:2011/04/10(日) 08:22:38 ID:Tzs1kWfM0
- >>39
「……トビタカか、覚えておこう。
どうやら、ここで終わる縁でもなさそうだしの」
色々な含みを持たせながら、ゆすらは去りゆく背中に言った。
それが正しく男の耳に届いていたかは、わからない。
>>40
「……そうじゃな。相対する者のことは、よく知らねば。
たとえ、それが不倶戴天の相手だったとしても」
ゆすらはどこか剣呑な言葉をこぼす。
しかし、その後すぐににこやかな顔になって、
「ところで、ぬし、中々肝の据わった付喪神よのう! 気に入ったぞ!
ぬしさえ良ければ、うちの神社に住まんか? あの神社、社殿としての機能は十全じゃが、人気が無くて寂しいんじゃよ」
いきなりカンテラの少女をスカウトし始めた。
- 42 :灯:2011/04/10(日) 08:31:59 ID:Sj59lUuk0
- >>41
「……へぁ?」
いきなりのことに、突然面食らう。そして、
「あ、神社って、あの、てことは、やっぱり神様だったんですか……」
改めて確証を得て、少女は再び畏まって小さくなった。
「実は先ほど少しお邪魔したんですが、いい場所だなぁって……。
けど、その、お言葉は有り難いんですけど、……少し考えさせてください」
と、申し訳なさそうに言った。
彼女なりの、何かしら理由を抱えているようである。
- 43 :ゆすら:2011/04/10(日) 08:42:28 ID:Tzs1kWfM0
- >>42
「むう……さすがにすぐには首を縦に振れぬか。
じゃが、考えてくれるというのだ。この場はそれで良しとしようかのう」
言葉ではそう言っているが、やはり少し残念そうだ。
「いつでも気が変わったら来ると良いよ。無論、それ以外の用事でも構わんがの。
……私の名はゆすら。ぬしとも、ここで終わる縁は結ばれてなさそうじゃの」
「ではな」と別れの言葉を告げ、ゆすらもまた、ゆっくりとその場を後にした。
- 44 :灯:2011/04/10(日) 08:56:41 ID:Sj59lUuk0
- >>43
「すみません。神社の方には、きっとまたお邪魔させていただくと思います……」
ぺこぺこと頭を下げ、去ってゆく後ろ姿に小さく手を振る。
「ゆすら姫……かぁ……」
少女の手に提げられたカンテラが、ゆらゆらと炎を揺らしている。
「……私は、カンテラだ」
そう言って、少女の姿が掻き消える。
すると、ぽつんと宙に浮いたカンテラの炎が、カンテラ自体を包み込むほど大きくなって……。
『(日の当らない場所を照らすんだ――)』
消えた。辺りには、砂糖菓子のような、ランプオイルの甘い香りだけが残った。
- 45 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/04/10(日) 14:26:37 ID:WVrfsEdY0
- 【公園に一人佇んでいる少女がいる】
「・・・・・・・・・」
【ふと、鞘から銀色の刀を抜いて空に掲げると】
ギュルギュルギュルギュル
【禍々しい力が剣にやどり】
【激しい爆音と共に銀の刀は歪な10の節を持った漆黒の剣へと変貌を遂げた】
「…つかれない…」
【うっとりするように少女は歪な形状の剣を見つめていた】
- 46 :ロザリア・ロートシルト:2011/04/10(日) 16:05:16 ID:SSMHlh/20
- >>45
ディスの周囲に、4本の剣が降り注ぎ
四方に突き刺さったかと思えばそれらは互いを雷で結び
逃げられないよう、檻のようなものを形成した。
「……ディス、一体いつの間に……。」
その光景を、少しはなれたところから険しい表情で眺めるロザリア。
少し目を離した隙に、逃げ出されてしまったがようやくディスを見つけた。
もう、逃がさじと少し強力な魔術による捕縛を試みる。
- 47 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/04/10(日) 16:11:49 ID:WVrfsEdY0
- >>46
「…あう?」
【あたりを見回して不思議そうな顔をするディス】
「だれがこんなことするのかな…
つよくなったのに…」
【剣を掲げながらあたりを確認している】
- 48 :ロザリア・ロートシルト:2011/04/10(日) 16:27:09 ID:SSMHlh/20
- >>47
「ディス、あなたは変わってしまった。
いいえ、間違ってしまったわ……。」
雷でつくられた檻の中のディスに、外から語りかけるロザリア。
その顔は、引きつったように固まっており、怒っているのか悲しんでいるのか分からない。
「これ以上、その間違った力を振るうのなら
私も、貴女を倒さなければならなくなる。」
ロザリアの手には、大量の魔力が溜められており
あれを全て彼女得意の雷に変換したなら、ディスも無事ではすまないだろう。
「……私にそんなことをさせないで頂戴。
だから、ディス。大人しく、私と帰りましょう。」
- 49 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/04/10(日) 16:32:14 ID:WVrfsEdY0
- >>48
「……まちがえた…?」
【ディスは小さくうつむいていう】
「わたしがつよくなるまでに…
ともだちはなんにんのこってるの?
『くー』も『かぺる』も…『ふぇんりる』のともだちも…
みんなまもれなかった…なのに…」
【心のなかに溜まっていたものが溢れ出す】
「なのに…なのに…
もっと……もっとつよくなりたいのに…」
【ディスの体から無意識に禍々しい魔力が溢れ出している】
「…うえにいけないのぉ…」
【その場に跪いてボロボロと涙を流し始めた】
【…普段のディスならそれでも前に進もうという心があっただろうが。その異常が原因なのだろうか】
- 50 :ロザリア・ロートシルト:2011/04/10(日) 16:38:27 ID:SSMHlh/20
- >>49
「貴女のその力は、きっとすぐに貴女を蝕んで
守りたいものをも壊し始めるわ。」
ロザリアは内心安堵した。
まだ、ディスには優しい心が残っている。
「……貴女がしたいのはそんなことじゃないでしょう?
ずっと、ずっと皆を守る、そうじゃない?
一時の力を得るために未来を捨てるなんて、愚かな事。
さあ、ディス早くこっちへ。」
- 51 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/04/10(日) 16:43:08 ID:WVrfsEdY0
- >>50
「…うう……」
【深くうなだれたまま涙を流す】
「ずっとみんなをまもる…
そう…なの…それが…」
【そう言って顔を上げる…が】
ドクン…
「…?…う…うぅ…」
【胸を押さえて再びうずくまる】
「うぅ…あぁああ!!」
【激しくのたうちまわり始めた】
- 52 :ロザリア・ロートシルト:2011/04/10(日) 17:00:43 ID:SSMHlh/20
- >>51
「ディスッ……!」
(クッ……やはり、『アレ』か……!
まったく、厄介なものを……!)
ディスの様子から、すぐに胸に埋め込まれた
邪な魔力が暴れているのだろうと気づいたロザリア。
「……もう、これ以上長引かせるわけにはいかないわ。
少々強引だけれど、アレを解呪しなくては……!」
ディスの周囲、4つの剣に今まで溜め込まれていた
ロザリアの魔力が注がれていく。
魔術師には、炎だとか氷だとか得意とする系統を持つものが多い。
しかし、ロザリアは雷を好んで使うものの実際はどれが得意、ということもないのだ。
今回、彼女は自分の魔力の属性を聖職者などが使う神聖術に近いものに変換、
それを一気に流し込んでディスの胸の呪いを強引に消し去るつもりだ。
- 53 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/04/10(日) 17:06:13 ID:WVrfsEdY0
- >>52
「う…もっと…つよく…」
【黒い蔦のようなものが勢い良くディスの体を侵食し始めるが…】
「ちが…ほんとは…ほんとは…」
【注ぎ込まれる魔力によって侵食は止まり、僅かに意思を保つ】
「いっしょにいたい…だけなのに…なのに…」
【胸を抑えたままその場で呻いている】
「うう…あああああ!!」
【呪いの源は消える気配がない。胸に埋め込まれたものはその力を解くまいとしている】
【胸のあたりから淡い光のようなものが見えるかもしれない】
- 54 :ロザリア・ロートシルト:2011/04/10(日) 17:19:07 ID:SSMHlh/20
- >>53
「く……ぐぅ……!」
ロザリアは、ディスに負担をかけないよう
ゆっくりと魔力を送り込んでいる。
もう、相当な量の魔力を送り込んだが……。
- 55 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/04/10(日) 17:22:48 ID:WVrfsEdY0
- >>54
「は…あああ…う…」
【魔力を送り込まれるうち、少しずつディスの顔も穏やかになっていった】
「…う…」
【しばらくして侵食はだんだんと引っ込んでいった…収まったようだ】
「すー…すー…」
【まるで普段のディスのように寝息を立て始める。まるで何事もなかったように】
【だがまだ大本はなくなっていない…もしかしたら呪いのもとは胸に残っているかもしれない】
- 56 :ロザリア・ロートシルト:2011/04/10(日) 17:36:37 ID:SSMHlh/20
- >>55
「やはり、力押しでは一時的に押さえ込むことしか……。
どこか、ちゃんとした設備のある学院なんかがあれば……。」
ロザリアは大人しくなったディスをゆっくりと抱き上げると、
自分の部屋へと連れ帰るべく、扉を探す。
このままではいけない。
いつか、取り返しのつかないことが起きてしまう。
ロザリアは、誰かに助けを求めようと決意を固めた。
// この辺で〆でいいかな?
- 57 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/04/10(日) 17:38:22 ID:WVrfsEdY0
- >>56
「すー…すー…」
【抱き上げられたディスは何事もなかったように寝息を立て続ける】
【小康状態であってもいつか限界が来るかもしれない…
そのようなことにはあまり気づかずに…】
//おk〜
- 58 :黒沢小百合:2011/04/12(火) 21:57:06 ID:SSMHlh/20
- 【AGカフェ】
「くふう……。」
崩れるようにカウンター席に腰を下ろす小百合。
いつもなら、コーヒーの一つも淹れるのだが今日はそんな気も起きないほど疲れているようで。
- 59 :横島なつき:2011/04/12(火) 22:13:14 ID:Sj59lUuk0
- >>58
カラリン、とドアベルを鳴らして、いかにも女学生といったブレザー姿が現れる。
小柄な体に不釣り合いなビジネスバッグと、さらに大きなキャリーケースを引いている。
営業中を示す表の木札、控え目な音量の小気味いい音楽。しかし、カウンターにはキャリア風の女性がひとり。
ナツキはきょろきょろと店内を見渡しながら、今にもカウンターに伏せんばかりの女性に歩み寄り、
「あの……すみません。店員さんは……」
と、声をかけた。
初めて足を踏み入れたのだろう。この喫茶店のシステムが分からないようだ。
- 60 :黒沢小百合:2011/04/12(火) 22:24:40 ID:SSMHlh/20
- >>59
「う……。」
(お客さんか……やれやれ、
いつもの如くクロスさんはいませんしね……。)
疲れた体を起こし、新たな来訪者を見つめる小百合。
この喫茶店は小百合の旧友である『銃寺森クロス』という
人物が経営する喫茶店なのだが、何分彼はあまり商売熱心ではなく
店は開店休業状態なのが常だ。
「ああ、今は誰もいませんよ。といっても、ここは何時もこうですから
皆、勝手に店に入っては勝手に飲み食いをしているのですよ。
あなたも、厨房で何か漁ってきたらどうです。」
なんとも無気力になげやりな説明を行なう小百合。
田舎などでたまに見る、無人販売所に近い商売形態なのだろうか……。
- 61 :横島なつき:2011/04/12(火) 22:34:19 ID:Sj59lUuk0
- >>60
「そ、そうなんですか……」
ありがとうございます、と小声で続けて、またキョロキョロと店内を見渡す。
なるほど、カウンターの末席に、片付けられないままのカップなど一式と、少額のお金が置いてある。
女性の言葉と店内の優しげな雰囲気に合致を見たナツキは、微笑むともう一度女性に会釈をする。
その女性の二つ隣の席の足元に荷物を置き、丸椅子にブレザーの上着を無造作に置くと、カウンターの中に入って行った。
椅子に残された上着の胸ポケットからは、今にも床に落ちそうな様子で、ナツキの千夜学園の学生証が覗いている。
ナツキの方は、粉末ココアがあることを認めると、小鍋をコンロに置き、少量の水と砂糖、ココアの粉末を泡立て器でかき混ぜ始めた。
……どうやら本格的なココアを作る気でいるようだ。
- 62 :黒沢小百合:2011/04/12(火) 22:43:08 ID:SSMHlh/20
- >>61
(千夜学園……チッ……。)
学生証を見つけ、なつきが千夜学園の生徒だと知ると同時に小百合は舌打ちを漏らした。
ちょうど昨日、同じく千夜学園に通うアシュレイに模擬戦で敗北を喫した事を思い出したからだ。
イラつきを抑えるべく、何か飲もうと立ち上がりかけたその時、
ちょうどなつきがココアを作ろうとしているのが見えた。
「すいません、私にもそれを一杯いただけませんか。
お金なら、あとでお支払いしますから。」
疲れた体を奮い立たせるには甘くて暖かい飲み物が一番。
人を信用せず、大抵の事は一人で片付けようとする小百合には珍しく
見ず知らずの他人に、物事を頼んだ。
- 63 :横島なつき:2011/04/12(火) 22:52:13 ID:Sj59lUuk0
- >>62
「え……? はい、お安いご用です」
手元に目をやっているナツキは。女性の憎々しげな様子になど気付くはずもない。
朗らかに気を抜けた返事をすると、小鍋に先と同様の材料を追加する。
両手を動かしながら、奥まった場所にある冷蔵庫に目をやると、すたすたと歩いていく。
中にある具材に目を通して、都合良くロースハムやスライスチーズを見つける。
さらに調理場の隅のバスケットに小さめのバケットがあるのを認めて……。
「サンドイッチも作りますけど、要りますかー?」
と、カウンター席の女性に声を投げた。
- 64 :黒沢小百合:2011/04/12(火) 23:03:48 ID:SSMHlh/20
- >>63
「ええ、お願いします。」
そういえば、今日は昼食すらまともに取れていない。
最近は多少食べなくても、空腹感を感じることはなくなってしまった。
「サンドイッチか……クロスさんの味が懐かしいな。」
昔この店で食べた、サンドイッチの味を思い出すと
ぐう、とおなかの虫が鳴いた。
- 65 :横島なつき:2011/04/12(火) 23:23:23 ID:Sj59lUuk0
- >>64
はーい、と女性の言葉に返事をする。
ナツキはバスケットに器用に具材を抱えて、カウンターに戻ってきた。
小鍋を火にかけ、ココアペーストに牛乳を加え始めると、たちまち甘い香りが店内に満ちる。
火が通るまでの間、バケットの腹を裂くように包丁を入れ、内側にバターを塗る。
ココアをかき混ぜたり、バケットに具材を挿んだり、まな板とコンロと交互に手をやる。
そんな中、聞こえたのは店主の名前だろう。この店の味を懐かしむ女性の言葉に、
「間に合わせなので、味は保証できませんよ」
と上機嫌に返す。
ココアを火からおろし、火のそばで温めておいたマグカップに注ぐ。
サンドイッチの具材にブラックペッパーを振りかけ、バケットを閉じて、四等分する。
最後にバケットの反発力でサンドが開かないよう、短めの串をプスっと刺す。
「さて完成。お手軽、サブマリンサンドイッチです」
皿に盛って、自分の席の前の置き、別の皿で女性の前にもそっと差し出す。
なるほど、円筒のサンドイッチに串が飛び出ている様子は、潜望鏡を伸ばした潜水艦のようだ。
フランスパンにバターを塗り、ハムとチーズを挿んでブラックペッパーをかけただけだが……。
いい具材を使うことを惜しまない店のもので作ったなら、それだけで十分美味しいだろう。
マグカップを2つもったナツキがカウンターを迂回して、自分の席に戻ってくる。
はい、と女性の前に湯気の立つミルクココアを置くと、ナツキも自分の席に座り、
両手を合わせて小さく、いただきますと呟く。その表情は笑顔に満ちていて、とても楽しそうだ。
- 66 :黒沢小百合:2011/04/12(火) 23:32:28 ID:SSMHlh/20
- >>65
小百合は料理をあまりしないため
このような洒落た料理を手際よく作る事ができない。
もし、同じ食材を小百合に与えても料理中に2回は指を切るだろう。
「間に合わせなどにはとても見えません。
料理がお上手なのですね、なつきさん?」
学生証を見た際、ちょうど名前も見えため
少し失礼かもしれないが、小百合はなつきを名前で呼んだ。
「ここまで出来れば、同年代の男の子などは貴女を放っておかないでしょう?
まったく、女としては少し嫉妬を感じてしまいますね。」
- 67 :横島なつき:2011/04/12(火) 23:49:24 ID:Sj59lUuk0
- >>66
「パンを切って挿んだだけですよ。
ワインやビールによく合うらしいので、おすすめです」
と、口ではそういうものの、
綺麗な大人の女性に褒められ、ナツキは内心喜ぶ。
自分の名前が呼ばれたことには素で気付かないらしく、
「料理、人並みにできる自信はありますけど、
流石に男子の前で料理を披露する機会ってないので……。
むしろお姉さんみたいな、カッコいい大人な女性って感じ、憧れます」
と、女性のスーツ姿に目をやって、えへへへ、と笑う。
そうして、自らの作ったサンドイッチに、大口を開けて噛みつく。
「んん。チーズがほいひい」
口に物を入れたままそう呟くナツキは、いかにも色気より食い気といった子供である。
- 68 :黒沢小百合:2011/04/13(水) 00:04:44 ID:SSMHlh/20
- >>67
「確かに。ピエモンテやトスカーナの上質なワインが欲しくなりますね。
でも、このココアの優しい味、好きですよ。」
温かいココアを口に運び、香りを楽しむ。
誰かが『ココアには幸せの魔法が掛かっている。』と言っていたが、
それはあながち嘘ではないのだろう。
「カッコイイ女性、ですか……。」
いつもなら、当然とばかりに胸を張る小百合なのだが
最近の敗戦、失敗続きですっかり自分に自信を持てなくなってしまっていて。
「いくら上等なスーツに身を包んで自分を飾り立てても、
結果がついてこなくては、ね。誇りというものは気高く、崇高ですけれど、
高すぎると、ただ滑稽なだけなのです。」
- 69 :横島なつき:2011/04/13(水) 00:20:21 ID:Sj59lUuk0
- >>68
「私も好きです。甘味は人を幸せにします……」
自分もココアを口に運んで、はぁ、と一息。
これぞ至福、といったナツキと比べて、目の前の女性は暗く沈んでいる。
きっと仕事で失敗したとか、理想と現実のギャップがどうとか、そういう悩み方だ。
……こういう悩み方をしている人、あの神様の大好物じゃないかな、とナツキは一瞬思った。
既にゆすらと小百合の両人が知り合いであることなど、ナツキは当然知らない。
根が深そうな悩みなら、神社を紹介してみようかな、なんて思いつつ……。
「……そういう風に悩めるのも、大人だからだと思います。
私は、毎日だらだら遊んでばっかり、あっぱらぱーの学生ですから……。
誇りとか結果とか悩んで、自分自身と戦えるような人、やっぱりカッコいいって思いますよ」
と、無遠慮に思ったままのことを口にした。
- 70 :黒沢小百合:2011/04/13(水) 00:28:26 ID:SSMHlh/20
- >>69
「現実の悩む人間など、カッコイイものではありません。
ドラマや、マンガでは皆なんらかの救いや解決策が用意されますが
結局のところ、それらは創作でしかない。」
今までわき目を振らず、自分の思想のため走り続けてきた小百合は
こういったときの対処の仕方、ガス抜きの方法を知らなかった。
破れない壁が現れたとき、それを迂回したりうまく乗り越えたりできずに
まともにぶち当たって止まり続けてしまうのだ。
「ふふ、会ったばかりのあなたにこんなことを話しても仕方がありませんね。
なつきさん、学業のほうはどうです?学生生活は楽しいですか。」
- 71 :横島なつき:2011/04/13(水) 00:45:43 ID:Sj59lUuk0
- >>70
救いも解決策もない、という女性の言葉。
自分がそんな状況だったら、絶対逃げる。ナツキはそう思った。
同時に、毒を吐きながらも凛々しさを失わない目の前の女性には、その選択肢だけは無いのだろう。
そうも思ったナツキは、うーん、と唸るだけだった。
そんな話をした後、何の変哲もない自分のこと話すのは何だかこっ恥ずかしい思いだ。
「えっと……勉強とかはまぁ、好きな教科ならそれなりに……。
……って、あれ? なつきって、私のこと知ってるんですか?」
と、今度は名乗っていない自分の名前が出たことに気付いたようだ。
あまり驚かないのは、ナツキは入学時に日本円にして二億ほどの資産を学園に預け入れており、
学園側の人員がナツキの顔と名前を一方的に把握していた、ということは多々あったからである。
目の前のキャリア風の女性が千夜グループの人間なら、名前が知れていても何の不思議もない。
- 72 :黒沢小百合:2011/04/13(水) 00:52:52 ID:SSMHlh/20
- >>71
「ふふ、学生証が見えてしまったもので。
私は、黒沢小百合。貴女が通う千夜学園の出資元に務めさせてもらっています。」
なつきがこの都市の様々なメディア――
例えば雑誌や、テレビによく目を通しているならば
彼女の名前に聞き覚えがあるかもしれない。
都市警備部門主任、『黒沢小百合』。
過激なやり口と強引な手法で『独裁者』などと
批判されることも多い女性の異能者だ。
- 73 :横島なつき:2011/04/13(水) 01:11:18 ID:Sj59lUuk0
- >>72
なつきもその名前は耳にしたことがあった。
といっても、悪評の絶えない警備だか治安維持の偉い人、といった程度だが。
もっとも、善良極まりない一般市民のナツキにとって、気風の締め付けが厳しくて困ることは何もない。
どんどんやってくれ、とテレビを傍目で見ていて思ったことがあった。
「あれ、なんか今、普通に言ったけど、結構有名人じゃないですか?
と、そこまで言って気付く。
都市の治安維持がこの女性の職掌なら、最近起こってる妙な事件は、彼女の管轄内ということになる。
死傷者が出ただとか、犯人の足取りは未だ、とか、そういうニュースは、情報統制の網の中にいるナツキも把握している。
「あー、あー……なるほど……。
なんてゆーか、その、……頑張ってくださいね。
私、無力な市民なので、心ながら応援してます」
その言葉は、本心7割、社交辞令3割といったところだ。
そして今更ながら、自分が通う学園の上位組織、その中でも確固たるポストの人間に、
自分なんかが間に合わせのサンドイッチと軽食を振る舞った、という事実に、ナツキは目に見えて赤くなった。
- 74 :黒沢小百合:2011/04/13(水) 01:20:25 ID:SSMHlh/20
- >>73
「まあ、有名人といえば……
有名人のカテゴリーにはいりますけれど……。」
なんとなく小百合の中では有名人というと
アイドルだとかコメディアンだとかそういうイメージであり、
自分が有名人といわれるとなんともこそばゆい感じがした。
「ふふ、そういっていただけるととても励みになります。
恥ずかしがっちゃって。かわいいですね……。」
赤くなるなつきをみて、どうにも学生時代の自分を思い出してしまい苦笑する小百合であった。
- 75 :横島なつき:2011/04/13(水) 01:39:28 ID:Sj59lUuk0
- >>74
気恥ずかしさに目を反らして、ナツキはココアを一口。
独立独歩で生きているつもりのナツキにとって、
権力を笠に着るタイプの人間というのは一番好ましくない部類に入る。
そういう中で、黒沢小百合という地位ある人の、思い悩む姿や気さくな態度は、
どこか胸が空くような、賛同できる味方を得たような、いい気分をもたらすものだった。
「なんというか、黒沢さん、思ってたのよりずっと話しやすくて、いい人ですね」
まぁ神様からしてあの調子だし、この街は、もしかしたら基本こんな感じなのかもしれない。
ナツキはそう思った。
「私、この街に越してきてから日が浅いんです。
最初は馴染めない感じも少ししてたんですけど……上手くいく気がしてきました」
あなたに会えたおかげで、この街が好きになれそうだ――。
……流石にそうは言えない。
小百合に目を合わせないまま、ナツキは笑った。
- 76 :黒沢小百合:2011/04/13(水) 01:51:30 ID:SSMHlh/20
- >>75
「話しやすい、ですか。ありがとうございます。
でも、仕事中の私を見てしまえばそう思えなるかもしれませんね。」
くすり、と笑みを漏らす小百合。
この柔和な表情や、すらりとした女性らしい体付きに騙されるものも多いが
その実、小百合はなつきの最も嫌いな『権力を笠に着る』タイプの人間である。
失敗を犯した部下、自分とソリの合わない社員などへの陰湿ないじめや
ほとんど私刑とも言える理不尽な処罰など、彼女の悪行は枚挙に暇がない。
「ええ、問題も多いですけれどいい街ですよ。ここは。
もし、何か困った事があれば私に相談しなさい。力になってさしあげますよ。」
- 77 :横島なつき:2011/04/13(水) 02:06:16 ID:Sj59lUuk0
- >>76
「そうですね。困ったときは……えへへ、頼もしいです」
小百合の仕事中の顔など知る由もないナツキは、
これでも仕事中は別人なのよ、という冗談程度にしか思わない。
「そうそう。私、今度から神社に住み込みで働くことになったんです」
これもその引っ越しの荷物で……。と、椅子の下のキャリーケースを足で小突く。
「私なんかじゃ全然アレですけど、
神様に相談してみたら、悩み事にも出口が見つかるかもしれませんよ。
緋河神社ってところです。……来てくれたら、お茶とか出しますからね」
そう言うと、サンドイッチの最後の一片を口に放り込んで、
「さて、私はもう行かなくちゃ」
と、ぴょんこと椅子を降りると、ポケットから財布を取り出す。
- 78 :黒沢小百合:2011/04/13(水) 02:17:25 ID:SSMHlh/20
- >>77
神社というと、小百合の脳裏にはゆすらの住まう
あの神社が真っ先に思い浮かんだ。
「緋河神社……なるほど。覚えておきましょう。
もしかすると、訪ねるかもしれませんね。」
しかし、神社の名前までは知らなかったため
緋河神社と聞いても特別な反応を返すことはなかった。
「おっと、今回は私が出しておきますよ。
先ほどのココアと、サンドイッチの代金という事で。」
なつきが財布を取り出そうとするのを静止して笑いかける。
そういえば、代金を払うからと言っていたっけ。
- 79 :横島なつき:2011/04/13(水) 02:28:56 ID:Sj59lUuk0
- >>78
「あ、えーと……」
ナツキとしては、店のものを使って片手間に作っただけのものだ。
が、……自分が作ってもらう側だったら、流石にお代を持つのは譲れない。
それに向こうは年上のキャリアウーマンだ。
「じゃあ……ごちそうさまです」
ぺこり、と頭を下げる。
ブレザーの上着に袖を通して、鞄を肩にかけ、キャリーケースを手に取る。
左手首、無骨な男物の腕時計に目を通して。
「丁度いいくらいの時間。
……それでは。お話できて楽しかったです」
お先に失礼します、とナツキはもう一度お辞儀をした。
最後に小さく手を振ると、入って来た時と同じように、カラリン、とドアベルを鳴らして去って行った。
- 80 :黒沢小百合:2011/04/13(水) 02:34:06 ID:SSMHlh/20
- >>79
なつきがいなくなった後、
店の中には小百合一人。
今日はもう、ここで眠ってしまおう。
たとえ彼がやってきたとしても、怒らないだろうから。
// おつー。
- 81 :止木/秘書風の女性:2011/04/13(水) 22:25:45 ID:LIzoKx..0
- 異能都市で人が多く行きかい、千夜ビルが臨める繁華街の一角。
「ええ、名前は止木に決めたわ。
由来?考えればわかるでしょ」
ベージュのスーツを着た秘書風の女性が、歩きながら携帯電話で話していた。
「じゃあね。仕事があったら呼んでね。
……携帯電話の使い方?剣山、あんた私が寝てる間何してたの」
電話を切り、ビルを見上げ、女性はビルに向かって歩く。
- 82 :鳶貴:2011/04/13(水) 23:36:38 ID:XxrsA0ps0
- 都市内:繁華街
とある居酒屋にて
「……名探偵、ねぇ。」
座敷の席で一人、会社帰りと言わんばかりのくたびれたスーツ姿。
揚げ豆腐に混ぜご飯、エイヒレに徳利とクリップボードを机に並べながら
お猪口片手に書類を広げていた。
「物を知らないのは生まれた地を訪れた時から知っていたが……。
まぁ、業務にさえ差し支えなければ何でも構わんか。
…しかし、こういう面倒な事ばかり吹き込まれるのも何か…考え物なのかな…。」
目を通す限りわかった事は二つ。
不思議な"自称名探偵"の事件解決を手伝い、空回りに終わった事。
そして護衛しようとした水商売のお嬢さんにたっぷりと絞られた事。
…一体、何がどうなってこんな報告を聞くことになったのか。今の俺には理解できない。
「…お勘定。」
考えるのも無駄だと悟り、ゆっくりと食事を楽しんだ後に店を出て一服。
道中に暗い脇道で刃物を突き立て合う二人組みを見つけたが
男はその光景に目を向けることもなく、何食わぬ顔で通りを歩き続ける。
相も変らずこの都市は色々な「ゴタゴタ」で満ち溢れていた。
- 83 :酒呑屋 虎姫?:2011/04/14(木) 17:52:35 ID:YqwIu65E0
- 【虎姫邸。相変わらずボロボロの木造建築だが、何故か壊れないのは何故だろう】
【裏通りに面した玄関がぎしっ、と軋みながら開いた】
あ゛はー……げふっ、オエッ。
【扉にもたれるように出てきた虎姫は、いつも身につけているコートや帽子、さらには刀さえ携えておらず】
【革靴に、薄い黒セーター、黒ズボン……しかもそれらもべたべたした染みで酷く汚れていた】
【夕日も落ちた薄暗い空から風が吹いてきて、心地良さそうに目を細める。途中でげっぷ混じりに咳き込んだが。】
……
【普段から変な女ではある。だが今日……いや、ここ最近はそれとは別に『変』だ】
【頼りなさげに玄関に佇み、ぼんやりとした目で手にしたペットボトルから水を口に含む】
- 84 :ゼオラ=アドヴァルド:2011/04/15(金) 22:45:54 ID:cskw3E.60
- 公園。
今日も『仕事』を終えた少女は暇な時間を過ごしていた。
ベンチに腰かけると鞄を膝の上に起き、ボタンを押してそれを開く。
中からクッキーの入った袋を取り出すとその中身を口に運んだ。
「……」
忘れた。
鞄の中を見てみると無いではないか。
半分齧ったクッキーを口にくわえたまま数秒の硬直。
周囲を見渡すとそのに自動販売機を確認し、そっちへと歩いて行った。
- 85 :トロイ:2011/04/15(金) 22:53:59 ID:N45SgiCw0
- >>84
公園。その自販機の群れに並ぶ女性が1人。
外見は黒一色。どこの物か解らない修道服。
棺をバックに、自販機を追い越そうかというほどの長身で直立し、マジックペンで「HELP」と書かれた豚の貯金箱を両手で持っている。
- 86 :ゼオラ=アドヴァルド:2011/04/15(金) 23:00:57 ID:cskw3E.60
- >>85
自動販売機が目的だったが近付いて行くうちに別の物が目に入った。
修道服を身に付けた女性が目に入り、ついふらふらとそちらへ寄っていく。
「……」
女性から、その姿がよく見えるだろう。
女性と同じく、漆黒の衣服に身を包んだ少女が歩いてきたのだ。
- 87 :トロイ:2011/04/15(金) 23:10:26 ID:N45SgiCw0
- >>86
前髪で隠れた双眸に突然小さな物体が映りこんだ。
自分と同じく、他の色を忘れたかのような黒い衣服。
しかし、装飾のレベルが圧倒的に違う衣を纏うその少女にトロイは視線をはっきりと向ける。
気配に敵意がない事を悟ると少女の目線に合うようにその場にしゃがみこみ、豚の貯金箱を「ズズィ」と差し出してみる。
「……へるぷ、みー」
言葉が通じたのか不安だったが、取り敢えず募金を促してみる。
- 88 :ゼオラ=アドヴァルド:2011/04/15(金) 23:19:11 ID:cskw3E.60
- >>87
漆黒のゴスロリ衣装にを包んだ少女。
首を傾げると、紫色の膝まで届く程の長い髪が揺れて。
「……幾ら欲しい?」
たった今、『仕事』を終えた少女。
少々、金銭的に余裕があった。
- 89 :トロイ:2011/04/15(金) 23:29:36 ID:N45SgiCw0
- >>88
自分から話しかけたとは言え、会話が成立した事に驚くと同時に気持ちがやや軽くなるトロイ。
何よりも、この募金活動をしていて金額の提示を促されたのは初めてだ。
胸は躍る……
「……」
……一歩手前で冷静になる。
どう考えてもこの可憐な少女の財力が豊かであるとは考えられなかったからだ。
しかし、差し出した空の貯金箱を仕舞う事も出来ず、取り敢えず少女に指を3本立ててみせる。
「さん、ぜろ、ぜろ……300えん」
内心不安たっぷりに、恐る恐る言ってみた。
- 90 :ゼオラ=アドヴァルド:2011/04/15(金) 23:36:11 ID:cskw3E.60
- >>89
「うぅん……」
因みに、会った時から一切表情は変化していない。
少女という存在からは愛想と言う者が欠落している様子。
「……無い」
- 91 :トロイ:2011/04/15(金) 23:55:59 ID:N45SgiCw0
- >>90
「な……ない……」
抑揚も無く告げる少女。
その事実は内心募金を期待していたトロイを落胆させた。
いや、落胆というよりも自分より年下の少女にたかった自分への情けなさの方が両肩に何か重いものを落とした。
刹那残念がるものの、それでもトロイは立ち上がって少女へ一礼する。
「Thanks」
徐に貯金箱を下ろすと両手を組み、祈るような姿勢をとる。
そのまま彼女は暫く動かない。
- 92 :ゼオラ=アドヴァルド:2011/04/16(土) 00:05:12 ID:cskw3E.60
- >>91
ふいっ。とそっぽを向いて、
本来の目的の自動販売機の方へ歩いて行った。
……が、数分後。
「……んー」
再び女性の前に立つ少女。
鞄の中から一万円札一枚を取り出し、それを見せつける様にひらひら。
「ジュースの分……頂戴?」
自動販売機は一万円札に対応していないのだ。
- 93 :トロイ:2011/04/16(土) 00:19:35 ID:N45SgiCw0
- >>91
祈る両手が解れる。
眼下で少女の手にて踊るは1がひとつに0がよっつ。
「み、ミスターフクザワ!?」
突然の金額増加に呆気に取られてしまった。
この少女に対しては考えを改める必要があるようだ。どこかの令嬢か、それとも偽札か……否、本物の一万円札である。
「……ゴクリ」
思わず生唾を飲み込む。
喉から手が出るほど欲しいが、しかし、貯金箱は空である。
因みに、トロイの全財産は貯金箱にあるお金で全てだ。
自販機の前に立った事から少女が所望する物は恐らく飲み物であろう。ならば……
「これとミスターフクザワ、交換、OK?」
鞄に入っていた小瓶を取り出す。中身はブドウを搾った自家製ジュースだ。
トロイは小瓶を少女に差し出してみる。
- 94 :ゼオラ=アドヴァルド:2011/04/16(土) 00:25:59 ID:cskw3E.60
- >>93
「……?」
女性の只ならぬ反応に思わず疑問の表情を見せる。
尤も、それは少女の感覚がずれているだけなのでであるが。
続いて、取り出された小瓶を笑顔で受け取る。
「うん……いいよ」
小さく頷くと貯金箱に一万円札をねじ込み、小瓶を受け取った。
早速と言わんばかりに栓を抜き、瓶に口を付けると僅かながらに頬笑みを見せた。
様子から察するに葡萄が好きなのだろうか。
- 95 :トロイ:2011/04/16(土) 00:34:51 ID:N45SgiCw0
- >>94
ジュースの味に微笑む彼女を他所に、捻じ込まれた一万円札を取り出し、綺麗に皺を伸ばす。
(初めて見た……これがMr.ユキチ フクザワ……)
正確には日本のお札を見たのも初めてだ。感激のあまり涙がでそうなのを堪える。
それよりも少女に礼を言うのが先だと思い、瓶を持っていない方の手を両手で包んで何度もお辞儀を繰り返す。
「You're like an angel! 名前知りたい、あなたの」
頭上に花でも咲かせる勢いで嬉々として、少女に迫る。
- 96 :ゼオラ=アドヴァルド:2011/04/16(土) 00:39:12 ID:cskw3E.60
- >>95
「……」
少女自身、人懐っこい方では無い。
それ故に、少し対応に困った様子を見せる。
女性の発した『angel』……天使の意を持つ言葉。
自分はそんな物とは無縁だな。と心の中で笑った。
- 97 :トロイ:2011/04/16(土) 00:49:34 ID:N45SgiCw0
- >>96
「……?」
思いがけない収入に興奮気味だったトロイの頭上の花は疑問符に変わる。
故郷にいる弟よりも更に幼い外見をした少女。しかし、先程からその態度は大きな変化を見せない。
こうして改めて顔を近づけると、少女の黄色い瞳に光が少ない事を初めて知った。
歳相応の態度はさっきチラリと見せた微笑のみ。
彼女は一体どういう人間なのか……。
「あなたは……」
詮索しようとして、トロイは言葉を喉の奥に引っ込める。
自分自身も詮索される事は好きではない。
「私、名前、トロイ。よろしく」
今度は落ち着いて、握手を求めてそっと右手を差し出した。
- 98 :ゼオラ=アドヴァルド:2011/04/16(土) 01:03:47 ID:cskw3E.60
- >>97
「……?」
視線を受けて、自然と倒れた首。
それが数秒を以って元に戻る。
外見上は普通の少女であるが、ある一点でその疑問を強める事になる。
……少女の首に巻かれた銀の首輪。
首全体を隙間なく覆うそれは継目等が見受けられない。一体どうやって付けたというのだろうか。
向けられた握手をゆっくりと握り返す。
そして小さく、抑揚の無い言葉で、
「……ゼオラ」
そうとだけ言った。
- 99 :トロイ:2011/04/16(土) 01:13:02 ID:N45SgiCw0
- 「ゼオラ、うん、覚えました」
相変わらず少女の表情は固いようだが、それに微笑を返すトロイ。
応じてくれた手には出来る限りの温もりを残し、放す。
ゆっくりと立ち上がって立たせていた棺に繋いである鎖の束を持つ。
どうやらこの場を離れるようだ。
「お金、ありがとうござます」
深く一礼するトロイ。
「また会いましょう、ゼオラ、またね」
そして棺を引き摺りながら、ゼオラに小さく手を振る。
//こんな感じで閉めても大丈夫ですか?
- 100 :ゼオラ=アドヴァルド:2011/04/16(土) 01:18:13 ID:cskw3E.60
- >>99
「……じゃぁね」
小さく手を振りその背を見送る。
ジュースをもう一口飲んで、その味に浸る。
//おkです。
//ありがとうございました!
- 101 :トロイ:2011/04/16(土) 01:23:40 ID:N45SgiCw0
- >>100
この街で始めてあった人間。その少女の小さな背中が見えなくなるのを確認しながら、トロイも公園を後にした。
片手で抱いた貯金箱が揺れる度にカサカサと中身がある事を告げる。
今日は食べ物にありつけそうだった。
//乙です。こちらこそ、ありがとうございました。
//また機会があれば、宜しくお願いします。
- 102 :黒沢小百合:2011/04/16(土) 23:22:33 ID:SSMHlh/20
- 【異能都市・中央公園】
異能都市の中心部にある、大きな公園。
小百合は仕事帰りに、ここで一息つくことも多いのだが
今回はスーパーの駐車場でちょうど営業していたハンバーガーやサンドイッチなど
軽食を販売する移動販売車で温かいカツサンドとカフェオレを買い、
ため池の見えるベンチでそれをぱくついていた。
「うむ、おいしい。やはりできたての物はおいしいですね。」
家に帰れば、はるかに豪華な食事が取れる。
しかし、それでも小百合はこういったもののほうを好んだ。
- 103 :テルメス/ニット帽の男:2011/04/17(日) 00:03:24 ID:ste/2NNA0
- 公園のトイレ裏で影となっている暗い場所。
パイロットニットを被った男が、三人組の男にリンチされていた。
「この野郎ォ!」
ニット帽の男は二人に腕を掴まれ、リーダー格と思われる男に殴る蹴るの暴行を受けていた。
「もういいじゃん、そろそろ腕疲れてきたから金奪って帰ろーぜ。こいつずっと笑っててきめーし」
「おいおい、次俺もやりてえんだけど。キチガイっぽいからもう殺してもいいんじゃね?」
このような状況になった経緯はこうだ。
ニット帽の男は買い物帰りにこの三人組にカツアゲ目的で絡まれてしまった。
しかしニット帽の男は突然笑いながらリーダー格の男に襲い掛かる。
ニット帽の男は普通の人間に比べて怪力ではあったが、
流石に三対一では勝ち目は無い様で、このような状態となってしまったのだ。
- 104 :灯:2011/04/17(日) 00:10:29 ID:Sj59lUuk0
- >>103
……この公園は、ゆすらが都市内の龍脈の流れを正そうと、力を撃ち込んだ場所の一つである。
以来、ここには地を流れる超自然のエネルギー、――神気、あるいは霊力といったもの――が、
小さな湧水のようにほんの少しながら噴き出しているようで、それが草木を元気付かせ、空気を清浄なものにしている。
カンテラの少女がその背景を知る由はないが、誘蛾灯に惹かれるように、彼女もここに吸い寄せられていた。
公園のトイレ端とは少し離れ、遊具が密集する辺りで惰眠を貪っていたが、騒ぎの様子に気付いたようだ。
ベンチの黒沢小百合の存在には彼女は気付かないまま、カンテラを音を立てて揺らして、四人の男にゆっくりと近付いていく。
……人目には、からん、ころ、からん、ころ、と不思議な音を立てて、火球がゆらゆらと宙に揺れているように見えるだろう。
- 105 :黒沢小百合:2011/04/17(日) 00:15:00 ID:SSMHlh/20
- >>103
「やれやれ、まったく……仕事以外であまり動きたくはないのですがね。」
口の中のカツサンドをカフェモカで流し込み、
紙袋を適当にクズカゴへと投げ入れて、ベンチから立ち上がる。
「貴方達は何をやっているのですか。
これ以上続けるなら、こちらとしても見過ごすわけには行きません。」
暴行を加えるチンピラ集団に、声を掛ける小百合。
彼らがTVや雑誌を読んでいるなら、彼女の顔を知っているかもしれない。
- 106 :テルメス/ニット帽の男:2011/04/17(日) 00:22:25 ID:ste/2NNA0
- >>104
「おいおい、止めだったらやっぱり俺だろ?
だって俺普通に顔殴られたんだぜ」
リーダー格の男はそう言って腕を掲げる。
すると腕が硬質化し、まるでランスのような円錐型になった。
そういう能力者なのだろう。
「……おい、あれなんだよ?」
男のうちの一人が火球に気づいた。
>>105
「邪魔しないでくれるかなあ姉ちゃん。
大丈夫だって、こいつ俺達の友達でちょっとじゃれて――」
「……お、お前……黒沢小百合……!?」
「へ?」
リーダー格の男は黒沢を見知っていたようで、手を元の形に戻した。
「に、逃げろ!まずいぞ!」
「は、はあ?どういう意味だよ!?」
三人組は逃げようとする。
火球に気づいていた一人は、少し走り出すのが出遅れた。
直後、
「っかはははは……ははは……」
「がっぐっ……!?」
笑っていたニット帽の男が、出遅れた男の首を掴み、持ち上げた。
- 107 :『ジボル』:2011/04/17(日) 00:27:07 ID:UvwPoTGA0
- ……うー。
【麻酔でぼーっとした気分を洗い流すため、ジボルは夜の道を散歩していた】
【小百合の家に来ていきなり麻酔銃で撃たれた……まぁ、大暴れしたからだけど。】
【ジボルは人でありながら夜行性である。今までの生活上、夜に獲物を仕留めることが多かった】
【しかしこの今街に身を置いた状態であっても夜に出歩くことが多い】
【理由は単純、人が少ないからだ】
>>104
わう!?
【宙を滑るように動く火の玉を見て驚き】
>>105
わううっ!?
【今しがた逃げ出した屋敷の主人を見てまた仰天し】
>>106
わううううっ…… う?
【そして――首を傾げた】
【そこにいたのがいつか見た、おせっかいな男だったからだ】
【あの時は警官がいたから恐怖で逃げてしまったが……】
- 108 :灯:2011/04/17(日) 00:32:36 ID:Sj59lUuk0
- 『(おっと……)』
襲われている男を助けようと場に入っただけのカンテラは、
襲う側の男たちが逃げ出したのを見てひとまず火を消す。
ほんの少し燃え上がった炎が次の瞬間には何も残さず消えたように見える。
もっとも、神気や霊力に敏い者、優れた野生の勘を持つ者ならば、
気配が依然としてそこに残っていることを察することが出来るだろう。
- 109 :黒沢小百合:2011/04/17(日) 00:34:38 ID:SSMHlh/20
- >>104
「この時機に蛍……?」
火球を見つけた小百合は一瞬、蛍か何かだと勘違いした。
しかし、それが燃えていることに気づき。
「なるほど、聞いた事がある。
墓場だとか、戦場では死体から出たリンが燃えて
人魂のようになることがある、という。こんなところで見られるとは。」
興味深そうに、火球を見つめる小百合。
>>106
「貴方もそこまでです、殴られて頭にきているのは分かりますが
やり返すつもりならば、私もそれを阻止する準備がある。」
ニット帽の男をたしなめるように。
>>107
小百合はまだジボルには気づいていないが
この公園は街の中心部にあるだけ合って街灯が多く明るい。
何もしなければすぐに見つかってしまうだろう。
- 110 :テルメス/ニット帽の男:2011/04/17(日) 00:44:58 ID:ste/2NNA0
- >>107
「ははは……ははっ……」
ニット帽の男は乾いた笑いを上げる。
その様子は男が傷ついていることも相俟って、別人のようである。
>>108
「糞ッあいつ……!」
悪態をつきながらも二人はニット帽の男に掴まれた男を見捨て、走っていく。
勿論テルメスに掴まれている男も火の玉に集中することは出来ない。
>>109
「かははっ……」
ニット帽の男は、小百合の言うことには耳を貸さなかった。
「はははははっ……!」
「ぎゃああっ!!」
一声大きく笑うと、掴んだ男を力任せにトイレの壁に叩きつける。
そして、逃げた二人の方を見てもう一度笑うと、突然全身が鱗に覆われた。
「はっ……」
しかし、そのまま倒れ付し、鱗は周囲に飛び散ってしまった。
- 111 :『ジボル』:2011/04/17(日) 00:50:49 ID:UvwPoTGA0
- >>108
【ジボルは元の世界で野生として生き、森の奥深くの霊木に住んでいた】
【その影響か少年は、『野生のカン』も、その手の『気』や『霊力』も持っている】
【主として視覚に頼る普通の人間なら「何も無い」で済ませる空間に】
わふ〜…。
【何かいるなぁ、と疑うこと無く思った】
>>109
【小百合が仕事中にこっそり抜けだしてきたから、ちょっと顔を出しにくいのだが……】
……わう。
【小百合自体はごはんをくれる。それだけじゃないがまぁ、嫌いじゃない】
【そう考えるとむしろ開き直って、自分の背中を押すように小さく吠えてから揉めている現場へ這いよっていった】
>>110
う? う?
【最初に合ったときと違う様子に、一層不思議に思って駆け寄る】
【その途中での男の変身、そして倒れた様子を見て】
っ!がうっ!
【狼のように飛び跳ねて、男の元へ。心配なのだ】
- 112 :黒沢小百合:2011/04/17(日) 00:59:46 ID:SSMHlh/20
- >>108
生憎、小百合には霊感だとか魔力だとか
己の持つ異能以外にまったくそういった才能がなかった。
そのため、漂っていたリンが燃え尽きたのだろう程度に考え
それ以上灯に対する行動を行なわない。
>>110
――タンッ
背後からテルメスに非殺傷兵器の一種であるテーザー銃が打ち込もうと試みる。
これはコード付きの電極を飛ばし、刺さった相手に電気ショックを与えて鎮圧する兵器だ。
「力に任せて異能を振るうのは感心しませんね。
それに、『阻止する準備がある』といったはずですが?」
電極が刺さればたとえ、軍人や格闘家でも行動不能になる程度の電気ショックをくらうだろう。
>>111
「おや、抜け出してしまったのですか……。
私の具現化しておいた女中どもは何をやっているのか……。」
小百合の豪邸には人はおらず、彼女の具現化した者たちが一切を管理している。
ジボルを見張らせてはいたのだが、逃げられてしまったようだ。
- 113 :テルメス/ニット帽の男:2011/04/17(日) 01:04:48 ID:ste/2NNA0
- >>111
「いでで……なんとか……怪人態は……」
ニット帽の男が呟いた。
殴られた傷を庇いながら起き上がろうとする。
「……ん?お前?」
ジボルが居る事に気づいて首をかしげた。
そして、他にもその場に人が居る事に気づいて起き上がろうとする。
>>112
「あばばばばっ」
その直後、背中に電撃が走った。
そのまま先ほどと同じ体勢に倒れ付す。
(な……何が……)
男はそのまま意識を手放してしまいそうになる。
- 114 :『ジボル』:2011/04/17(日) 01:15:29 ID:UvwPoTGA0
- >>112-113
! わう!!
【テーザー銃が撃ち込まれた瞬間、反射的にジボルはテルメスを守ろうとした。当然それがどういう武器かも分からずに。】
【突き刺さった二本のワイヤーを引き抜こうとそれを右手と左手で握りしめた】
――ワ、ガぁっッ……、ーぁっ……!!
【感電したとき、生物の筋繊維は強制的に収縮する。如何に馬鹿力であろうとそれが筋肉の力なら、抗うことはできない】
【ジボルの体、特に腕から胸まで、灼けた針のむしろに押し付けられたような痛みが走る】
【平均して数秒の放電が終わるまで、固くワイヤーを握ったままその場に丸くうずくまった】
- 115 :灯:2011/04/17(日) 01:25:54 ID:Sj59lUuk0
- >>113-114
一発のテイザーで状況が一変してしまった。
静観を決め込んでいたカンテラの少女は、溜め込んでいた力を使い実体化する。
少年の方は、保護者らしき女性が駆け寄って介抱するだろう。
カンテラは、倒れ伏した男の肩を抱くようにして起こそうと試みる。
「……しっかり!」
跪いた足元にはカンテラの灯かりが煌々と燃えている。
- 116 :黒沢小百合:2011/04/17(日) 01:26:55 ID:SSMHlh/20
- >>113-114
「チッ……こんなこと……っ!?」
テーザー銃の電圧は殺傷用ではないため、
健康な人物ならば、命に別状はないはず。
それでも、動きを封じるほどの電圧だ。
痛みは相当あったはず。
小百合は兵士を具現化してテルメスを確保、および
ジボルの体に何か変調が起こっていないか調べるため2人に近づく。
- 117 :黒沢小百合:2011/04/17(日) 01:28:19 ID:SSMHlh/20
- >>115
いつのまにか、現れた女性。
しかし、少し気が動転していた小百合は通りがかりの人物だろう、
程度の考えしかなかった。
- 118 :灯:2011/04/17(日) 01:32:51 ID:Sj59lUuk0
- 立ち現われた兵士に少女は驚く。
男の頭を膝上に庇い、臙脂の着物の袖を振るって、手の平ほどの炎を放つ。
「下がって!」
炎が燃えるのは僅かな時間だが、その光量と熱は一瞬の足止めには十分だ。
男を確保せんとしていた兵士が普通の人間と変わらないのであれば、
その炎に驚き、また少女の次の手の内を訝しがって足を止めることだろう。
- 119 :テルメス/ニット帽の男:2011/04/17(日) 01:34:33 ID:ste/2NNA0
- >>114
(なんか……背中……?)
男は背中に誰かがうずくまったことを感じていたが、
そのまま気絶してしまった。
>>115
「うっ……」
テルメスは小さく唸り声を上げる。
殴られた傷を急に動かされて痛かったのだろう。
(死……死ぬ……)
しかし、その痛みで気絶から戻ってきた。
>>116
ニット帽の男は一見瀕死に見えるが、テーザー銃に痺れているだけで、
暴行を受けた傷を併せて考えても命に関わる状態ではないようだ。
しかし、完全に自分では動けない状態ではあるが。
- 120 :『ジボル』:2011/04/17(日) 01:42:00 ID:UvwPoTGA0
- >>116
【電流が止めば、痛みは嘘のように引いた。暫く残る外傷とは違うのだ】
あ゛っはぁ、はぁあーっ、はー……あー……
【指をゆっくり開いて、手を離す。痛みは引いたが不快感は残っていた】
【まったく何が起きたか分かっておらず、苦痛を顔に浮かべながらも口はぽかんと開いている】
【視界にスタンドを確認すると…姿は違えど女中たちと同じ『何か』を感じて、若干安心するように表情を和らげた】
>>118
おー…?
【宙に浮いているのは火である】
【獣が火を怖がるのと同じく少年も少しだけ恐怖するが…】
【火は獣害に対する特効薬だ。だが『獣』とみなされてきた『人』はその火にも慣れつつあり】
【近寄らないまでも、それをぽーっと眺める余裕はあった】
>>119
わうー? わうー。
【背中をぽんぽんっとリズムよく叩く。あくまで軽い】
- 121 :灯:2011/04/17(日) 01:46:40 ID:Sj59lUuk0
- >>119-120
男に確かな意思が戻ったことに気付く。
『(大丈夫……じゃなさそうだ……)』
「……そのままでいて、私が守ってあげる」
そう男に言う。
と、そこへ先の少年もまた男の元に近付いてきた。
少年の無事と、男を案じるような態度にひとまず安心をし、
無言のまま、兵士と女性に強い視線を投げかける。
- 122 :黒沢小百合:2011/04/17(日) 01:56:30 ID:SSMHlh/20
- >>119
「とりあえず、拘束させていただきますよ。
そこの男と同様、事情聴取をさせていただきます。」
小百合は、同じように車を具現化させ
テルメスを運び込もうとする。
事情聴取となれば恐らく戸籍なども調べられる。
場合によっては厄介なことになるかもしれない。
>>120
「貴方はなんと言う無茶を……。
一体、何を考えているのですか?」
小百合は少し不機嫌そうにジボルを見下ろし。
「ソクラテス曰く、『唯一善なる物は知であり、唯一の悪は無知である。』
……やはり、多少の教育を施してやるのが必要か。」
小百合は、ジボルになんらかの教育を受けさせることを考え始めた。
>>121
ジボルの様子を見終えた小百合は、
兵士に指示をしてぐったりとしたテルメスを車に運び込もうとしている。
「……どうしましたか?」
ここで小百合は自分に視線を向ける灯に気づき、言葉をかけた。
- 123 :テルメス/ニット帽の男:2011/04/17(日) 02:01:48 ID:ste/2NNA0
- >>120
「あぇ……て……」
ニット帽の男は唸るように呟いた。
叩かれるのは痛くは無いが、本人はジボルの叩く行為がそのうちエスカレートすると考え、
やめてといったつもりだが、おそらくそれを聞き取れる者は心が読める者ぐらいだ。
しかし、叩いているのはジボルだと理解している。
>>121
だんだんと意識が視界と共に鮮明になってくる。
目の前に謎の女性が居た。
「……」
男は何も言おうとしなかったが、その視線からは拒絶が見て取れる。
>>122
運び込まれながら、男は呟いた。
「……せん……や……の……」
声に聞き覚えがあると思ったら、
いつか喫茶店で会った千夜グループの女性だった。
あの時は自分が捕まるなら怪人であることがばれたときだろうと思ったが、
まさかこんなことで捕まるとは、と男は考えた。
- 124 :『ジボル』:2011/04/17(日) 02:12:54 ID:UvwPoTGA0
- >>123
うー! おき! おき!
【『起きろ』と言いたいらしい】
【本人もまだ『起きる』という言葉がいったい何を差すのか分かってないが、寝てる人に言う言葉だとは分かるらしい】
【予想通りだんだん叩く力もエスカレートして】
おっき! おっき!
【ばしーんばしーん。暴力レベルに到達する一歩手前までで、小百合が近づいてくるのを見て、男から離れていった】
>>121
わうっ。
【じゃれるような響きを持った吠声。それから結構元気そうに小百合の元へ駆けていった】
【少年は心配することもなさそうだ】
>>122
さー!
【小百合の足元へ四足で駆け寄って、地面にお尻をつけると両手をばっと広げ突き出す】
【それからテーザー銃のワイヤーを指差し】
とげ、いたい。だ、だかー…ぬく!
わー、ぬく、てぇ、……ばちばちばち! う!
【凄まじく分かりにくいが、それでも微妙に勉強はしているのだ。一応。】
【今あった出来事を身振り手振りで伝えようとしているようだ】
- 125 :灯:2011/04/17(日) 02:16:18 ID:Sj59lUuk0
- >>122-124
カンテラは、兵士も車も、
目の前の女性が何らかの力を使って呼び出していることに、今やっと気付いた。
同時に、男の視線にも。
「あ……」
その視線に射竦められるように、男から手を離すと、
少女は実体を失って、幻燈に映るような半透明の姿に変わる。
兵士に担がれる男に名残惜しげな視線を送りながら、
「……あなたは何者」
と、女性に問いかけをする。
少女の言葉は、威圧的でも挑発的でもない。
……ただ手の中のカンテラの灯りがじりじりと揺れ動いている。
- 126 :黒沢小百合:2011/04/17(日) 02:30:05 ID:SSMHlh/20
- >>123
――バタン
車内への搬入が完了。
この車輌は人物を護送するための物のようで
車体後部に広めの空間があり、そこに拘束された先ほどの男と
数人の兵士が乗り込んでいる。
>>124
「あの人は悪い人なのです。
私は悪い人を捕まえる仕事をしています。」
ゆっくりゆっくりと単語ごとに区切り、ジボルに教えるように。
「私はこれから、この人たちを
千夜というところに運びますから、私の家に帰っているように。
……分かりましたか?」
>>125
「私は、千夜グループ都市警備部門主任、黒沢小百合。
……申し訳ありませんが、私は彼らを護送しなければなりません。」
灯が半透明になっているのも、何らかの異能だろうと片付ける小百合。
この都市で長いこと生活している小百合は、少しおかしい事があっても
『異能』なのだろうと考える癖がついていた。
灯の脇を通り過ぎ、車に乗り込む。
目的地は、千夜ビル。
- 127 :テルメス/ニット帽の男:2011/04/17(日) 02:38:14 ID:ste/2NNA0
- >>124
「いっ」
最後の一発は聞いたらしく、小さく唸り声を上げた。
「……おきてるから……」
黒沢に聞かれないように、小声でジボルに言った。
黒沢に聞こえなく言ったのは、話せるようになっているのがばれて、
この場で尋問を受けるのを避けるためだ。
>>125
ニット帽の男が女性を拒絶したのは無意識だった。
単に見ず知らずだったからかもしれないが、黒沢にもジボルにも一度出会った事があるだけだ。
「……テルメス」
これまた小さな声で名乗った。
>>126
(どうすりゃいいんだ)
逃げるのは簡単だが、後々問題が残る。
やはりここは素直に尋問を受け、適当にやり過ごすしか無いだろうかと考える。
男は二年前にこの街での生活を始めたが、すごしやすいように手続きは行っている。
勿論過去の経緯など話せないため、記憶喪失ということにしてあり、誕生日、年齢もでたらめだ。
名前だけは本名のテルメスを使っているが。
しかし、男を投げつけたのはどう説明すればいいだろうか。
- 128 :『ジボル』:2011/04/17(日) 02:38:38 ID:UvwPoTGA0
- >>126
わるい、ひと?
【運び込まれる男を見送って呟く】
【少年の目からは車両は不気味な箱に見えて…】
【その中に誰かが閉じ込められた。少年は得も言われぬ恐ろしさに小さく震え】
わるいひと……。
うー。わかった。
さー、も、はやー、かえる! よ?
【散歩のはずが結構疲弊したジボルは素直に頷き、小百合に背を向けて去っていった】
- 129 :ロージェンス:2011/04/17(日) 02:44:47 ID:1sJsd2CgO
- 今日も今日とて盗人猛々しく、やれ薄い財布だの、やれつまらない中身だのと愚痴って道を行く鎖巻きの黒装束。
(ま、こんなもんか……。どいつもコイツもカードばかりで使えねぇな、まったく)
収穫を精算し、要らないカードを下水道へと一枚一枚丁寧に放り投げていると、二人のチンピラが脇を走り抜けていった。
彼らは文字通り脇目も振らず、道端にしゃがみ込む黒装束も信号すらも見ずに、何か恐ろしいものから逃げ出す一心で、ただひたすらに走り続けていた。
(……あっちには公園があったような……。カツアゲにでも失敗したかァ?)
最後の一枚を放り捨てると、ニタリと嗤い、彼らが走ってきた方へと足を向ける。
もう、終わってないといいな。等と期待に無い胸を膨らませながら。
- 130 :灯:2011/04/17(日) 02:47:49 ID:Sj59lUuk0
- >>126
「……そう」
脇を通り過ぎていく小百合に、小さく返事をする。
……警備部門。
『(だから諍いの現場に割って入ったのか……)』
女性が公的な身分を有する立場だったことに、今更ながら驚く。
車に押し込まれた男二人がどうなるのか。……自分ならば、確かめるのは容易い。
俄かにカンテラの炎が大きくなると、音もなく少女を包み込み、そして消えた。
後には、花のような砂糖のような甘い香り以外、何も残らない。……人目には、そう見える。
- 131 :止木/秘書風の女性:2011/04/17(日) 02:54:10 ID:ste/2NNA0
- >>129
黒装束には、黒沢小百合の異能による車が走っていくのが見えるだろうか。
それを見つめる、一人の女性が居た。
ベージュ色のスーツを着た、秘書かOL風の女性。
女性はつまらなさそうな顔をして、何処かへ歩いていってしまった。
- 132 :ロージェンス:2011/04/17(日) 03:11:08 ID:1sJsd2CgO
- >>131
走り去っていく車に視線が向かう。
だが、それが異能によって作られた車であっても、黒装束にとっては街を走るただの車。
つまり不特定多数のひとつに過ぎず、こんな時間に珍しいな等と思うだけ。
「おーい、そこのヒトー! さっきソコで何があったか知らないかな〜?」
その車を見つめていた女性へ大声で呼び掛ける。
何か知っていれば聞きたいし、知らなかったり無視されて聞けなければ――その時考えよう。
- 133 :ロージェンス:2011/04/17(日) 13:01:17 ID:1sJsd2CgO
- 返事は無い。
それどころか、女性はますます遠くに歩いていく。
「あ〜ら、無視されちゃった」
ニタリと顔を歪め、進む足を早くする。後ろ手に感じる冷たさ、冷徹な殺しの道具。
(――!?)
拳銃を構えて、顔を上げた先に女性は居なかった。
いや、それどころか、そこは公園の前ではない、何処か別の通り。
さらに、夜ですらなく。いつ時間が経ったのか、もう日が高く昇った昼時。
異能都市に遍在する『歪み』にはまり、時空間を越えて十数時間後の異能都市に吐き出されたのだ。
しかし、ロージェンスはそれを理解出来ずに呆然と立ち尽くす。
スーツ姿が往来するランチタイムの大通りに忽然と姿を現した黒装束。しかも、その手には拳銃。
道いく人の群れは何事かと黒装束を見、そして各々は恐怖と好奇心、僅かな敵意や殺意を向ける。
――あぁ、これはヤバい。
ロージェンスはそう悟ると、人の群れを掻き分け、張り倒しつつ、逃走を開始する。
- 134 :『ジボル』:2011/04/22(金) 21:47:59 ID:xMsJxrn60
- 【昼日中】
らいお、さーん! がおー!
【拾った棒を高らかに掲げ歌い歩くジボル】
【小百合の家に引き取られたはいいものの、上には何も着ておらず下も未だボロいズボン】
【本人が服を嫌がるのもあるが、最も大きい原因は手足を繋ぐ丈夫な枷】
【着ようにも、繋がった手足に袖を通すことはできないからだ】
- 135 :アシュレイ:2011/04/23(土) 22:56:47 ID:pXczbO3g0
- 【私立千夜学園・講堂前】
辺りに、ソースの焦げる香ばしい匂いが漂っている。
時間は午後五時を少し過ぎた頃。丁度小腹の空いてくる時間であり、その匂いが大々的な市民権を胃に行使する絶好のタイミングである。
とはいえ、学校の敷地内、それも入学式などの重要な行事を行う講堂の前で、そういう匂いがするのは希なことだ。
「…………」
匂いの元、「漫画研究同好会 入魂屋」と書かれた、色調と文字の尖り具合が激しい看板を掲げている屋台で、
クリーム色のブレザーを着た銀髪の少女が魂の欠片すら感じられない淡々とした手際で、円盤形の食べ物を焼いている。
キャベツや豚肉などを小麦粉ベースの生地に閉じこめて焼く料理……もうおわかりだろう。お好み焼きである。
熱気を上げる大きな鉄板の上では何枚かのお好み焼きが同時に焼かれており、琥珀色の瞳でそれらに目配せしている少女が時折ひっくり返している。
焼き上がったらしい一枚を見れば、その上にソースを被せるようにかけ、次いでマヨネーズを格子状にトッピングし、最後にひとつまみの青のりを振りかけた。
そうして完成したお好み焼きは、少しの間鉄板で温められた後、コテでプラスチック製のパックに乗せられ、割り箸と一緒にゴム止めされる。
積み上がっているパックは少ない。屋台の出店元が一癖あるにせよ、魂の一欠片も込められていないにせよ、お好み焼きと呼ぶに十二分の味がするし、何より一枚百円という値段が学生の固い財布の紐を緩ませた。
……看板のくだりでお気づきだろうが、この屋台、伊達や酔狂で出店しているわけではない。
今はいわゆる新学期というシーズンであり、この時期の学校では大概、新入生を獲得しようと各部活が大ハッスルする。
屋台の出店元、千夜学園高等部・漫画研究同好会もその例に漏れない。
しかし、屋台は失敗だったようだ。何故なら、お好み焼きの好調な売れ具合にも関わらず、屋台の側のテーブルに置かれた同好会の会誌の数がいっこうに減らないのだから。
「二枚くださーい」
「はい」
今も二枚売れたが、買っていった女子生徒は会誌に目もくれなかった。出店してからこちら、ずっとこの有様である。
「…………」
屋台の少女はそれをもの言いたげな目で見ていたが、すぐに視線を鉄板に戻した。
- 136 :横島なつき:2011/04/23(土) 23:09:49 ID:bYREkklM0
- >>135
横島なつきは、屋台の少女とは色違いの、地味な紺のブレザーに身を包んでいる。
大きめなビジネスバッグからは、棒状のものを収めたと思われる布製の袋が露出している。
実質ダブっているが、彼女も新入生である。
のんびり帰ろうと思っていたナツキも、お好みソースの香りに誘われてやってきた。
放課後の買い食いにはややボリューム過多だが、夕飯は彼女の裁量で何とでもなる。
他の新入生と同じように、ポケットから小銭を取り出すと、屋台に近付いていく。
「ふたつ下さい。容器は別々で、かたっぽマヨネーズ抜きで」
差し出した指先に100円玉が2枚。肝心の会誌は意にも介さない様子である。
- 137 :アシュレイ:2011/04/23(土) 23:17:21 ID:pXczbO3g0
- >>136
「はい、かしこまりました。
ただ、作ってある分は全部投下済みですので、新しく焼かなければなりません。
少しお時間を頂けますか? その分、値段をサービスしますので」
少女の言うとおり、鉄板の上のものを含めて全て、白い格子がトッピングされている。
- 138 :横島なつき:2011/04/23(土) 23:25:18 ID:bYREkklM0
- >>137
「そんな、値段はいいですよ。
サービスなら量をちょっと増やしてほしい、かも」
ナツキにとっての100円や200円は、出費の内に入らない。
2枚の100円玉を鉄板のそばの、すでに硬貨がたっぷり入ったトレーに入れる。
お釣りを出させるのも面倒だ……。ナツキは屋台の脇に避けて焼き上がりを待つ。
そのときに会誌を一瞥するが、漫画を購読する習慣のないナツキは、全く興味を示さない……。
- 139 :二代目“脾臓”(ヒィ):2011/04/23(土) 23:30:40 ID:onviSg/.0
- 「うう……むずむずします」
一つ、鼻がむずむずする。
彼女にとって汚らわしい者どもの臭いがちらちらしているから。
一つ、肌がむずむずする。
スカートは多少なりとも脚を出せるが、セーラー服の袖は詰められないから。
一つ、口がむずむずする。
なんだか涎が止まらないから。
>>135
「すみません……えーっと、私にも、えっと、3枚下さい」
セーラー服を着た肌の白い小柄な少女が、もじもじしながらそう注文する。
左手で小銭入れから300円出そうとする少女の、右手には何故かピンクのミトンが装着されている。
「…………」
そして一瞬ちらりと会誌を見て、すぐ目を逸らす。
そんな少女の瞳も琥珀色らしいが、何処か野生の獣のような輝きがある、かも知れない。
>>136
(あの棒……いや、棒じゃないか……何なんでしょうか)
何となく気になって、鼻をぴくぴくさせる。
嫌な臭いではないが、嫌いな臭いがする、気がする。
「…………」
ミトンを嵌めた少女は、ちらちらとナツキを気にしている様子。
そんな少女からは、何故かうっすらと血のような臭いが漂って来る、かも知れない。
- 140 :アシュレイ:2011/04/23(土) 23:37:43 ID:pXczbO3g0
- >>138
「わかりました。1,5割増しコースで行きます」
頷き、少女は足元にあった大きなクーラーボックスからキャベツを一玉取り出す。
それを鉄板の横にある仮設の流し台まで持ってくると、何を思ったか、ポンと軽くトスした。
ふわりと空中に浮くキャベツ。
その重みで、少女の頭の位置あたりまで落ちてきた次の瞬間であった。
「ハンドソニック」
ぼそり、と呟いた少女の腕が残像を捉えきれない早さでキャベツに向かって振るわれ、
キャベツは瞬く間にみじん切りへと変化していた。
みじん切りになったキャベツはそのまま落ち、流し台にあるザルに見事着地する。
曲芸と言うには少女の表情に愛想がない。判断に迷うところだ。
- 141 :アシュレイ:2011/04/23(土) 23:43:49 ID:pXczbO3g0
- >>139
「三枚ですね、かしこまりました。
割り箸は三つそれぞれに付けておいた方が良いですか?」
詰まれてあったパックを三つ取り、袋詰めする。
支払いの時に見たミトンでは箸は使い辛いだろう……とは思うが、相手もそれを承知のはずだと、
少女はあまりそれを気にすることはなかった。
- 142 :横島なつき:2011/04/23(土) 23:45:46 ID:bYREkklM0
- >>139
「…………?」
ナツキは、目の前の少女から自分に視線が向けられていることに気付く。
得物を――宝剣、浮瓠量を――持ち歩くようになってから、
何だろアレ、といった具合にちらちらと見られることは何度かあった。
その類のものだろう、と、鈍感モードのナツキは、少女の放つ臭いにも、瞳の色にも気付かない。
左肩に掛けた鞄から露出する袋に、何の気なしに右手を添えて、さっと目を逸らした。
>>140
その逸らした目線の先が、瞬獄殺とばかり、キャベツがバラバラになる瞬間だった。
学園に異能者が少なからずいることは、ナツキもちゃんと知っている。
が、その技巧の素晴らしさと、キャベツをみじん切りにしたという用途のアンバランスさ、
何より、さも当然と言った涼しい顔の屋台の少女を見て、
「ぶっ……」
ナツキは思わず噴き出した。
何を口に含んでいたわけでもないが、照れ隠しに右手を口元へやる。
- 143 :二代目“脾臓”(ヒィ):2011/04/24(日) 00:02:58 ID:onviSg/.0
- >>141
「あ、いえ、一つでオッケーです。
一人で食べ……ます、し」
相変わらずもじもじしている。
良く食う奴だ、とでも思われるのが嫌であるかのように。
多分気にはされないのだろうが。
(……それにしても)
また変わった匂いがするな、とアシュレイを見ながら考える。
普通の人とは違うモノの匂い。
キャベツ瞬間微塵切りの神業(>>140)と言い、何となく。
「……素晴らしい技術、ですね」
とりあえず褒めた。
>>142
(……バレました、かね)
ちらちら見過ぎたか。
右手を添える仕草を見て、若干頬を赤くする。
それでも気になるので切っ掛けが欲しい彼女は、
「い、今の凄くないっすか!?」
アシュレイの刻んだキャベツを指差しながら、そう話し掛けた。
顔全体まで赤くしながら。
- 144 :アシュレイ:2011/04/24(日) 00:13:17 ID:pXczbO3g0
- >>142
なつきが吹き出したのを見た少女は、わずかに首を傾げ、
「……おかしな技でしたか?
屋台の出店元から、この格好をするからにはこれは義務だ、と言われまして」
そう言って、少女は食用油などを置いているテーブルから、一冊の雑誌をなつきに手渡した。
雑誌はアニメ専門雑誌のようで、一人の少女が座り込んでこちらを見上げている絵を背景にして、
表紙には大きく「Angel Beats! 大特集!」と書かれている。
その絵の少女の容姿は、背丈などに違いがあるものの、屋台の少女と酷似している。
ぶっちゃけた話、屋台の少女、アシュレイは、いわゆるコスプレというものをしていたのだった。
服装と髪型を変え、碧眼をカラーコンタクトで琥珀色に変える、というやり方で、
漫画研究同好会という出店元である以上、それは当然と言えば当然の話だったが、やはり一般の生徒にはあまり通りが良くないようである。
>>143
「わかりました、では一つで」
袋に割り箸を一つ入れ、アシュレイはミトンの少女に渡す。
そして、やはりキャベツの千切りについて言及されてしまったため、そのことについての説明も欠かさない。
「技で切ったわけではないのです。種明かしをすると、これです」
アシュレイは胸の高さまで右腕を掲げる。
と、何かの金属音と共に、制服の袖口から両刃の剣が飛び出した。
刃渡り20㎝ほどの小さな剣だが、制服の袖口から出ているという見た目のインパクトは強い方だ。
- 145 :横島なつき:2011/04/24(日) 00:24:04 ID:bYREkklM0
- >>143
「うん……。凄い。私もびっくりしました」
掛けられた声に振り向いて、素直に頷いた。
また屋台をチラ見してから、少女に視線を戻し、小さく笑みをこぼす。
それから、少女の赤い顔やミトンを嵌めた手に気付き、そっと首を傾げる。
その様子を注視したりはせず、疑問を口に出したりもしないが……。
>>144
すぐに屋台の少女の説明と、ハンドソニックの種明かしに向き直り、
「……なるほど」
と、驚きと賞賛を小さく口にした。言葉は少ないが、表情は楽しげだ。
寡黙でも優しげなナツキの言動は、屋台の少女が示した元ネタの女の子のそれに近いかもしれない。
- 146 :二代目“脾臓”(ヒィ):2011/04/24(日) 00:34:01 ID:onviSg/.0
- >>144
「あ、ありがとう、です」
ぺこぺこしながらお好み焼きを受け取る。
そして飛び出した剣を見て、
「ロボッ……マシンを仕組んであった? みたいな感じですか?
そのタネがバレないように切ったのも、一つの技、ですよ、きっと」
怯んで「言い間違い」かけたが、どうにか取り繕った、つもり。
何だか微かに機械音も感じたし、その匂いといい、多分ロボットの類に間違い無い。
彼女が今探している人物――佐宗スグルの部下にも、似たような奴がいる。
>>145
「とんでもない業師が居たものです……TATSUJINです」
彼女の同僚であるジンは女と喋るのが大好きだが、自分は比較的口下手だ。
緊張のせいで、言い回しとイントネーションが何か変、かも知れない。
「この学校、こんな超人に満ちているのでしょうか?
昨日転校してきたばかりなので、良く知らない……んです、けど」
潜入という名の転校である。
- 147 :アシュレイ:2011/04/24(日) 00:44:24 ID:pXczbO3g0
- >>145
キャベツを取り出したクーラーボックスから、今度はあらかじめ作っておいた生地のボウルを取り出し、
洗って水切りをしたキャベツをそれに投入していく。
「ただ切るだけでなく、芸術を感じるまでなんて言われましたが、
芸術とかそういうのはピンとこないタイプなので、こうなるまで苦労しました……」
初めて、アシュレイの言葉に感情めいたものが込められた。と言っても、それは疲労感というものだったが……。
>>146
「仕込みの剣ですか……まあ、それに近いものかも知れませんね。
というか、私の扮しているキャラクターはむしろ、この剣を見せつけるように行動するらしいのですが……。
それに気付かれないようになるレベルまでキャベツを切らせ続けたここのオーナーは、そういうところが抜けているようです」
アシュレイは苦労を思い出したためか、ミトンの少女の「言い間違い」には気付かなかったようである。
- 148 :横島なつき:2011/04/24(日) 01:00:35 ID:bYREkklM0
- >>146
「達人というか何というか……。
凡人には及びのつかない類の人たちが、学内に結構いるんです」
そう言って、おどけて肩を竦めてみせた。
異能者を軽くおちょくったような言い方だが、
同時に、自分のことも凡人と、バッサリ斬って捨てた。
変な奴なら珍しくないよ、という意味にも取れる言葉は、
少女の妙なイントネーションも少し気にかけてのことかもしれない。
>>147
「何というか……ご苦労さまです」
そう言って、また小さく笑う。
わざわざキャベツを刻むために、という言葉は飲み込んだ。
キャベツの曲芸を無視しても、屋台の少女の手際はよく、
見た目が可愛いことも手伝って、黙って料理しているだけで充分パフォーマンスになるように思った。
ナツキはわくわくと、自分のお好み焼きが出来上がるのを眺めることにした。
- 149 :二代目“脾臓”(ヒィ):2011/04/24(日) 01:12:54 ID:onviSg/.0
- >>147
「天然ボケなオーナも困り者ですね。
まあ、良くあること……だと、思い、ます。本当の目的と役割を忘れること、なんて」
心の中で胸を撫で下ろしながら、そう返す。
ちょっとずつ話すのにも慣れてきた、と自分では思っている。
「その漫画? も、そのキャラクタとやらと関係あるのでしょうか?
そうなら、参考に一冊貰いたい……かも、なのです、が」
何の参考にするのかは自分でも良く分かっていない。
>>148
「なるほど。しかし、どんな人でも何かしら秀でた部分がある……と、思う、のですよ?」
そう、どんな人でも。
そういう彼女は純粋な「人」ではない。
だから余計に謎の棒が気になる、が、チラ見するのは我慢する。
「そう、あなたもきっと、凄い人です」
横島なつきという人物自身からは、魔法の臭いも異能の匂いも(今のところは)感じ取れない。
と思いつつ、やっぱり棒が引っ掛かる少女はそう続ける。
- 150 :アシュレイ:2011/04/24(日) 01:27:15 ID:pXczbO3g0
- >>148
入れたキャベツと生地をよくかき混ぜ、ボウルを傾けて一定量ずつ、
生地を鉄板に落としていく。冷たい生地が、じゅう、という音を立てて加熱されていく。
「私はただの助っ人なんですが……思わぬ苦労もあったものですよ。
……おっと、割り増しでしたね」
既に落とした生地のうちの一つに、半量の生地を追加。
鉄板の横に置いてあったコテ二本を両手で構え、じっと待つ。
>>149
「……なんと。会誌に興味を持つお客様が現われるとは……」
コテを構えながら、アシュレイは純粋にびっくりしているようだった。
そのまま数秒固まった後、ハッと我に返り、
「でしたら向かって右側の、白っぽい表紙の会誌をお取り下さい。
左の桃色のは、伊達政宗総受け本、とのことです。
何のことかはよく分かりませんが、私の扮しているキャラクターに関係はないと見て良いでしょう」
白っぽい表紙の方も、桃色の表紙の方も、学生レベルより少し上? といった程度の画力だが、
桃色の方からは何故か、身を焦がす執念のようなものを感じるだろう……。
- 151 :横島なつき:2011/04/24(日) 01:41:24 ID:bYREkklM0
- >>149
「ふふ、私は普通です。……ほんとに、ね」
自分自身に向けて優しく語りかけるように、
ナツキは目を瞑り、軽く腰に手を当てて、それだけを口にする。
ナツキは無力で無属性な自分が、とても好きだ。
それが、どんなに特別で強力な異能にも勝ることだとナツキは思っている。
……だが、ひっくり返せば、他人がどうしようと別に興味はない、ということでもある。
少女が何を気にして自分に話しかけているかなんて、ナツキは知る由もない。
>>150
「ああっ……。
……ど、どうも、ありがとうございます」
ぎこちなく礼を言う。
増量サービスといってもせいぜい一回り大きい程度で、
まさか本当に5割増しされるとは、ナツキは思っていなかった。
マヨネーズ抜きの一つは自分で食べて、もう一つはお土産にしようと思っていたが……。
これだけの量があれば、何かおかずを足せばこのまま夕飯の主食にできそうだ。
……そう考え直して、微笑んだ。神社で待つ神様のことを思い出して、
右手をそっと、布袋の中の剣に添えると、ぽんぽんと優しく叩いた。
- 152 :二代目“脾臓”(ヒィ):2011/04/24(日) 01:54:37 ID:onviSg/.0
- >>150
「そ、そんなに驚く……ん、ですか。
いや、私も読みますけど、私の『兄』は可愛い女の子が好きでして」
彼女には兄など居ないのだが。
しかし、彼女の同僚であるジンは本当に女に目が無いし、彼にでも渡せば喜ぶだろう。
なんて思いながら話を聞いていたが、
「総……受け……?
きゃあ、そんな、破廉恥な……」
顔を真っ赤にしてふらふらし始めた。
アウトなやつだ、多分。
「そ、そんな、良く分かってないもの配っちゃいけません、です、よ」
>>151
「普通……ですか。そこまで言うなら……。
でも、だからこそ惹かれる、のかも、知れないですね」
並ぶ総受け本のせいで変な妄想を駆け巡らせながら、少しトーンダウンした声で言う。
自分が所属する“五臓会”には、良い意味でも悪い意味でも「普通」な奴など一人も居ない。
だからこそ、普通を誇っているようななつきに、自分も惹かれているのかも知れない。
(……いや、違うだろ)
もとはと言えば、自分はなつきが持っている棒のほうが気になっていたはずだ。
また自分でも分からなくなって、混乱しながら話題を捻る。
「……あ、ところでそれ、竹刀……か、何かですか?」
誤魔化されたらそれでも良いや、と思いつつ、棒こと宝剣を僅かに震える指で指しながら。
- 153 :アシュレイ:2011/04/24(日) 02:04:54 ID:pXczbO3g0
- >>151
「?」
どうしてだかぎこちないなつきの様子に、アシュレイは再び首を傾げるが、
次ぐ言葉がないようなので、鉄板の生地に集中を戻す。
鉄板の傍らにあるトレーから、豚肉を二本のコテで器用に掴み、二枚ずつ生地に乗せていく。
慣れなのか、修行(?)の成果なのか、動きに迷いがない。
豚肉を乗せてから少しして、アシュレイは片方のコテを生地の下に滑り込ませ、もう片方でひっくり返すという、
すくい投げのような動作で生地をひっくり返した。
>>152
「破廉恥? はて……」
全ての生地をひっくり返した後、問題の桃色の会誌を手に取り、ぱらりとめくる。
そして、アシュレイの全てが止まった。
「…………………………」
何かを引きはがすような、サビまみれの機械のような、そんな動きで桃色の会誌を戻し、
テーブルの上にある桃色の会誌全てを持ち上げると、ポン、とトス。
そして、
「……ハンドソニック」
…………千切りになった会誌の束は、燃えるゴミの段ボールへと収まった。
- 154 :横島なつき:2011/04/24(日) 02:21:33 ID:bYREkklM0
- >>152
『(惹かれる? ……いやいやいや)』
何かの聞き間違いだ、桃色の薄い本に中てられた、
そう思い直して、指差された剣に目をやる。
「これ、ですか?
……えと、お守りみたいなもの、です」
その言葉は偽りではない。
世に優れたる名剣だが、ナツキにはとても使いこなせる代物ではなく、
また、実際にこれを使って誰かを殺傷するようなこともするまいと思っている。
もちろん、学内で刃物を持ち歩いてることをひけらかすのが憚られたからでもあるが……。
ナツキにとって、お守り、という表現はまさしく真実であった。
>>153
そしてまた、鉄板に目を向ける。
見事な料理の手際に感心していたが、
先のキャベツと同じように、薄い本の処刑を目にして、
「ふっ……くく」
噴き出す寸前で押し留まったが、肩を揺らして、笑いを堪えている。流石に効いたようだ。
- 155 :二代目“脾臓”(ヒィ):2011/04/24(日) 02:37:06 ID:onviSg/.0
- >>153
「……でしょ?」
ミトンの右手で赤くなった頬をさすりながら、
会誌がバラバラにされる一連の流れを見て一言だけ言った。
「……あ、でも、勝手に刻んじゃって良かったんですか?」
無事な白っぽい表紙のほうを手に取りつつ、心配しているようで。
>>154
「お守り……ですか。きっとあなたを守ってくれますよ?
私は、そういうの、良く分からないんですけどね」
分からないと言うより、単に信用できないだけだ。
神器とかお守りとか、そういう類のものを彼女は嫌っている。
- 156 :アシュレイ:2011/04/24(日) 02:45:37 ID:pXczbO3g0
- >>154
「…………」
処刑の終わったアシュレイは、静かにまた鉄板の前に戻ってきて、
ほどよい様子の生地から順にもう一度ひっくり返していく。
もうすぐ出来そうだが……彼女は終始無言だった。かなり頭にキてるらしい。
>>155
「良いのですよ……。私、今回のことで益々人間がよく分からなくなりましたが、常識というシステムは理解できています……。
新入生の呼び込みにこんな会誌を使うなんて…………」
どちらかというと闇属性っぽい笑みを浮かべながら、アシュレイはクーラーボックスの中からペットボトルのお茶を取りだし、
それをミトンの少女に差し出した。
「大変お見苦しいものを見せて、申し訳ありません。
籍を置かない、助っ人の身ではありますが、代わってお詫び申し上げます。
これはお詫びの品です……どうか受け取ってください」
- 157 :横島なつき:2011/04/24(日) 03:00:28 ID:bYREkklM0
- >>155-156
「……ありがとう」
それだけ言って、隣の少女をじっと見る。
流石にソースの香りが辺り漂って、血の臭いはかき消されているが……。
目の前の少女の瞳は、確かに無力の人間とは違う光り方をしていて、
自分の身を守るだけの力を持っているのかもしれないな、と思い当たる。
弱い人間は口八丁に手八丁、道具と小細工を使って身を守るのだ。
ナツキの視線に少女が何を思うかは分からないが、
ナツキの方から少女の方に何かを尋ねよう、という気は、今のところないようだ。
しばらくすると、自然にまばたきをして、フォーカスを少女から外した。
プンスカ、と無言の怒りが擬音になりそうな具合の屋台の少女や、
それと会話を交わすもう一人の少女を、ナツキはいかにも楽しげな様子で眺める。
進学してよかったなー、とか、お土産話ができたなー、とか、考えながら。
- 158 :二代目“脾臓”(ヒィ)&迷彩服の男:2011/04/24(日) 03:10:20 ID:onviSg/.0
- >>156
「大変なんですね、この学校も……。
転校生として、なんだか不安でいっぱいです」
アシュレイの語り口に、何となく彼女も少し微笑んでしまった。
面白いかはともかくとして、こういう事件があるほうがエンジョイは出来るのかも知れないが。
「良いんですか? では、ありがたく……。
あなたも自分の分、貰っちゃったらどうですか?」
ミトンの右手でお茶を受け取りつつ、そう言う。
>>157
「ど、どうかしましたか?」
じっと見られて、正体が何かバレたとでも思ったか、ちょっとそわそわし始めた。
彼女の力は、身を守るためにあるモノでは決して無い。
殺すための、壊すための、奪うための、そういうモノだ。
と、そんなところで。
迷彩服を着た黒髪オールバックの男が、鼻歌を歌いながら彼女の方へ歩み寄ってくるようだ。
- 159 :アシュレイ:2011/04/24(日) 03:19:30 ID:pXczbO3g0
- >>157
丁度よい具合に焼けたところで、アシュレイは大きいお好み焼きと、通常サイズのお好み焼きのふたつにソースと青のりをかけ、
少しソースを焦がした後、そのふたつをそれぞれパック詰めした。
「一応、どっちでも良いようにマヨネーズをつけておきます。
本当にお待たせしました」
割り箸ふたつと、携帯型のマヨネーズを一緒に袋に入れ、なつきに手渡す。
……表面上、何でもないように振る舞っているが、やはり会ったときとは雰囲気が違っている。
物静かな彼女の、怒りの琴線をあの桃色の会誌は盛大に触れていったらしい。
>>158
「私は大丈夫です。喉は渇いていませんし、……ちょっとした仕事もできてしまったようですし」
なつきに渡した分を除いた、鉄板の上のお好み焼きを次々とパック詰めしていく。
ちょっとした仕事、のくだりはあまり触れない方が良い雰囲気だ……。
何やらダークサイドに堕ちてしまったようで、迷彩服の男に気付く様子もない。
「こらあ!」
と、校舎の方からおでこの眩しい髪型の三年女子がやって来て、アシュレイに向かって怒鳴った。
アシュレイはゆらり、と幽鬼のような動きでそちらへ向き直る。
「何やってんの!? あの会誌は私たちの同志を呼び込むためのたまうがあっ!」
だが、その怒鳴り声も長くは続かなかった。
驚異的なスピードで肉薄したアシュレイによる、顔面飛び膝蹴り……いわゆるシャイニングウィザードが決まっていたからだ。
アシュレイはたまらず倒れ伏したその三年女子の襟首を掴み、ぐぐいっと顔を寄せて、
「……私はですよ、先輩。常識って大事だなーって、ホント思うんです。
ね、先輩。大事ですよね? 大事です、よ、ね? ね? はい、か、YESで応えてください」
有無を言わせぬ怒りっぷりに、さすがの先輩もどうしようもないのか、鼻血を流したままコクコク!と必死さを感じる勢いで首肯した。
- 160 :横島なつき:2011/04/24(日) 03:32:49 ID:bYREkklM0
- >>158
「……いいえ」
そわそわし始めた様子に、目を瞑って答える。
何だかんだと訳ありな人が多い学園のことだ。余計な詮索はしまい。
同じ新入生なら、また会う機会もあるだろう……。ナツキはそう思った。
その少女が、本当のに学園の人間ならば。
>>159
「っと、お手数おかけします。……ふふっ」
袋に入れて貰えたのは嬉しい誤算だ。
怒り心頭の様子でも自分の仕事に一途な、いい子なのだろう、と勝手に思う。
そして、ごちそーさんです、と声をかけようとした瞬間、少女が消えた。
人が倒れたような音のした方を見れば、ちょっとした流血沙汰になっている。
>>158
どうしましょう……と隣の少女に声をかけようとした時、
向こうから男が近付いてきていることに気付いた。
明らかに目の前の少女に向かって歩いているようで、
ナツキは何も言わないまま少女に視線を向けて、男をそっと指差した。
- 161 :二代目“脾臓”(ヒィ)&三代目“腎臓”(ジン):2011/04/24(日) 03:48:24 ID:onviSg/.0
- >>159
ヒィ「そうですか……仕事?」
かなり危険な空気と雰囲気。
噴出している黒さに、何となく親近感を覚え……ていたところで。
ヒィ「あ、あわわわわ……」
これが怒りの力か。
いや、それだけでは無いのだろうが。
そして若干ビビっているヒィに近づく迷彩服の男――ジン。
しかし、ジンはヒィの横を通り過ぎて、アシュレイと先輩の方へ歩み寄り。
ジン「いやあ、とっても良い香りがするね。
あ、お好み焼きの香りが良いわけじゃなくて、君達の香りが素敵なんだからね?
とりあえず、女子の殴り合いなんて止したまえよ」
オールバックを撫でつけながら、そう話しかける。
>>160
ヒィ「そ、そうですか。なら、オッケーですよ?」
そう言って、ちょっとだけ微笑む。
今のヒィは、間違い無く学生である……が、今日のように学園へ来ることが二度とあるかは分からない。
もっと大事な目的があるからだ。
と、そんなところで。
ヒィ「え、なんですか?」
アシュレイの方が気になって、ジンの方へは中々振り返らない。
そしてジンが横をすれ違ったとき、ようやく気付いた。
ヒィ「あ、あれ……なんでジンさんが?」
アシュレイ達に声を掛けた後、ジンは振り返ってなつきにも話しかける。
ジン「いやあ、とっても良い香りがするね。
あ、お好み焼きの香りが良いわけじゃなくて、君の香りが素敵なんだからね?」
内容は同じだった。
申請すれば私服登校も認められる学園とはいえ、ジンの外見は違和感バリバリだろうか。
迷彩服だし、オールバックだし。
- 162 :アシュレイ:2011/04/24(日) 04:01:51 ID:pXczbO3g0
- 「ハッハッハ、素晴らしいよアシュレイ君」
先ほど三年女子が来た方向から、眼鏡をかけた三年男子が拍手をしながらやって来る。
この先輩も漫画研究同好会の関係者のようだが、それを思わせないような、好青年じみた容姿だった。
「そこに無様な格好を晒している同好会副会長は、我が同好会を二分し、独立を企む裏切り者でね……。
同好会会長として礼を言うよ。まさか助っ人の君が成敗してくれりゅぶばわあっ!」
しかし、怒りで真っ赤っかなアシュレイには容姿など関係なく、
この先輩も、アシュレイによる強烈なアッパーカットで沈む。
「あなたも! 同輩の手綱くらいきちんと捌いたらどうなんです!?
二分云々の前に、常識を叩き込んでください!」
「し、かし、きみ……」
「しかしも何もありません!」
「ごほあぁっ!」
アシュレイに腹を踏みつけられ、会長は何かの液体を吐いて沈黙した。
「あ、あの……レイちゃん……? これ、何が……?
もしかして、私が助っ人なんか頼んだから……?」
周りの凄惨な光景に当てられ、おっかなびっくりといった様子の一年女子が、後から現われる。
この状況を作り出した張本人のアシュレイに話しかけていることから、意外と度胸が据わっているのかも知れない。
「……いいえ、貴島さん。あなたのせいではありませんよ。
交代に来てくれたのでしょう? 会誌がひとつ減っていますが、よろしくお願いします」
「え、ひとつ減ってるって……え?」
困惑ぎみの一年女子を置いてけぼりにして、アシュレイは倒れている同好会会長と副会長の襟首を掴んだ。
「……ああ、ひとつ言い忘れていました。私もあなたと同じ、同好会に入ることにしました。
矯正を必要とする人間が、まだいるかもしれませんしね…………」
「えっと、矯正? 何がなんだか……?」
>>160-161
最後に、さきほどまで相手をしていた客に向かって一礼し、
「では、お二方……と、お三方でしたか。
すみません……私は少し、大事な用事ができてしまいました。
また、どこかでお会いしましょう」
オールバックの男や、うろたえる一年女子の声など聞こえていない様子で、
闇属性な感じで微笑みながら、二人の人間を引きずって校舎へと向かっていった。
…………その日、文化系の部室が集中する建物で、ちょっとしたクーデターが起きたという噂が流れたのはまた、別のお話。
//すみません、自分はここまでのようです。学校ロール、楽しかったです。
//また、機会がありましたらよろしくお願いします。
- 163 :横島なつき:2011/04/24(日) 04:08:42 ID:bYREkklM0
- >>161-162
学内で会ったことはない迷彩服の男。
少女の言葉遣いからしても、学園の関係者ではなさそうだ。
要は赤の他人。赤の他人の男にいい香り、と褒められた。
学園の敷地内で学生をナンパなんて、度胸がある……。
男にどうこうと返事をする前に、
先輩らしき人物二人と謎のオーラを引き摺って去っていた屋台番の少女へ、
聞こえないと分かっていつつも、ナツキは「ごちそーさまでーす」と声を投げた。
ありゃー風紀委員だな、なんてことを思いながら。
それから、やっと男に向かって、
「……あなたは?」
と、それだけ。リアクション自体は遅かったが、
邪険にしたり訝しがったりといった調子ではなく、至って普通に尋ねた。
- 164 :二代目“脾臓”(ヒィ)&三代目“腎臓”(ジン):2011/04/24(日) 04:32:50 ID:onviSg/.0
- >>162
ヒィ「あわわわわ……」
これが地獄か。
自分はもっと酷いことを何度もしてきたのに、それよりずっと凄惨に見えるのは何故だろう。
ヒィの顔は青ざめ始めていた。
ジン「おお、スルーとは中々レベルが高い。
しかし、それで諦めるような俺じゃないんだぜ?
それに、パワフルな女の子は大好きさ」
地獄に引く様子も無く、ジンはぴらぴら手を振ってアシュレイ達を見送る。
とても楽しそうに微笑みながら。
//乙ありがとうございました〜
//こちらこそ宜しくお願いしますです……
>>163
アシュレイ達が去って行って、ヒィは少し落ち着きを取り戻したらしい。
それらを見送ったジンは、微笑みを維持しながらヒィとなつきの方へ戻って来る。
そして、こう言うのだ。
ジン「俺は、この子の――ヒィちゃんの婚約者さ?」
ヒィ「は……な、何言ってんですか!」
ジン「何って、事実だろう? 全く、手間の掛かる未来の嫁だ」
目を点にして、顎を外すヒィ。
そんなヒィを右腕でひょいと抱え上げながら、ジンは左手をポケットに突っ込む。
ジン「んじゃ、俺達はこの辺で。『早退』しなきゃいけなくってな?
薔薇よりも鋭い色男、弥生ユウヤ(やよいゆうや)を宜しく!」
ジンがポケットから取り出したのは、カラーコピーされた大量の学生証。
彼の顔写真がバッチリ載ったそれをばらまきながら、ヒィを抱えたジンは学園から走り去って行った。
ヒィ「ちょっとまっ……さ、さようなら〜……」
空しく響く声。
//うーん、レスが遅くて申し訳ない……そろそろ俺も落ちまする
//どうもありがとうございました〜
- 165 :横島なつき:2011/04/24(日) 04:54:39 ID:bYREkklM0
- >>164
「婚、約者……」
またまた御冗談を、と呆気にとられるナツキをよそに、
男は少女を抱えて去って行ってしまった。
『(やっぱこの学園、はんぱねー……)』
ばら撒かれた学生証のコピーの内、一枚を拾い上げる。
……ナツキは記憶力はいい方だ。
レイ、ヒィ、漫研の会長と副会長、貴島、そしてジンこと弥生ユウヤ。
それが愛称でも偽名でも肩書でも、その人に貼り付く重要なタグだ。
『(確かに覚えましたよっと)』
そう言って、そのコピーを丸めてポケットに入れた。
辺りに同じものが散らばっていようとも、ポイ捨てできないところが小市民である。
「……さーて、一般人は帰りますか」
ナツキも一人、お好み焼きの袋を手に提げ、にやにやと笑いながら帰路についた。
//自分も今日は頭が回らなくていけない……
//お二方ともお疲れさまでした!
- 166 :ロザリア・ロートシルト:2011/04/24(日) 22:25:13 ID:SSMHlh/20
- 【AGカフェ】
――カラン
ドアに備え付けられた鈴が小気味よい音を奏で
新たな客の来訪を知らせる。
「…………彼なら、何か良い手を知っていると思ったのだけれど……。
この様子では、いないみたいね……。」
少女は、店主不在のカフェを見渡し力なく首を振ると
カウンター席に腰掛けて深くため息をついた。
- 167 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/04/24(日) 22:52:01 ID:HnkBBDEo0
- >>166
―― ギッ
木製の床が軋む。
「……お、今日は客がいるみたいだな」
左足を一歩一歩置くようにしてゆっくり歩く。
左手にはいつもの義手は装着されておらず、残った右腕だけを軽く上げた。
「おっす。何かいるかい?」
- 168 :ロザリア・ロートシルト:2011/04/24(日) 22:59:33 ID:SSMHlh/20
- >>167
「あら、意地悪ねぇ。
いるのならば、もう少し早く出てきなさいな。」
店の奥から歩み出てきたクロスの姿を見つけた途端、
ロザリアの表情が、目に見えて明るくなった。
「……いいえ、今日は少し相談があってきたのよ。
貴方ほどの男ですもの。多少なり、実力者連中に顔が効くかとね……。」
くすり、と笑うロザリア。一見優雅に見えるが
彼女の目の下には隈が出来ており、頭髪や肌にも荒れが目立つ。
- 169 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/04/24(日) 23:02:43 ID:HnkBBDEo0
- >>168
「なんだ、問題を抱えてきたみたいだな」
そう言いつつ男はソファーに座る。
よく見れば、左足は義足であることが分かるだろう。
歩き方からすれば、まだ義足に慣れていないようだ。
「俺も、ちと問題を抱えちゃいるが……解決の糸口は見えてる。
お前よりは余裕あるだろうな。いいぜ、話してみろよ。
メニュー以外の注文も、この店は請け負うぜ」
- 170 :ロザリア・ロートシルト:2011/04/24(日) 23:12:47 ID:SSMHlh/20
- >>169
「……ディスが少しマズイ状況になっているのよ。
何者かに、呪いのような物を掛けられている。」
ロザリアがカウンターの上で軽く掌を滑らせると青白い光が浮かび、
様々な絵図や文字が浮かび上がる。どうやら、これらはディスの身体の状況の簡単なまとめらしく
心拍数や精神状態、魔力の状況などが逐一更新されているのが分かるだろう。
「私も、魔術には多少の心得があったつもりなのだけれど……。
正直に言って、解呪に関してはお手上げに近いわ。
これは、強力な魔術師の手助けが何人か、必要になる。」
ロザリアは、心底屈辱だとでもいいたげに表情をゆがめる。
プライドの高い彼女は、本当なら自分ひとりでカタをつけたいのだろう。
「誰か、信頼の置ける者に連絡を取ってくれないかしら……。」
- 171 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/04/24(日) 23:28:24 ID:HnkBBDEo0
- >>170
「呪術か。詳しいヤツは……
うーん、心当たりは無いワケじゃあないが、アイツは今どこにいるのやら。
あ、ちょっと待て。アイツと……ああ、アイツもどうだ?」
ブツブツと独り言を呟いた後、厨房に向かって声を張り上げる。
「メイプルー! レクでもいいやー! 電話帳取ってー!」
『うるせぇ。聞こえてるわボケ』
出てきたのはエプロン姿の少年。
電話帳をクロスの前に放り投げる。
「店長に向かって酷い口だなオイ」
『いつものことだろ……って、なんだコレ。魔術陣?』
「うん、呪いだってー。……チッ、小百合の奴、携帯に出ない。まぁ、アイツは忙しいからな」
『この魔術陣をどうしたいの? なんか命にアレな記号がいっぱい刻んであるんだけどよぉ』
「解呪したいんだってよ」
『ああ、だったらイケそう』
「ああん?」
電話帳をめくるクロスの手が止まる。
「お前、呪術の知識あんの?」
『……まぁ、ちょっと事情があって、な』
「どのくらい知識あんの?」
『この魔術陣を解呪するには相当の手間がかかるってコトくらいだな。
あー、月桂樹と山羊の胃と干し蛭使えばイケそうだな」
「……おい、ロザリー」
クロスは少々戸惑いつつ、メイプルを指差す。
「Apple Guillotineからは、コイツを戦力として提供する」
『オイ待て勝手に決めんな』
「ボーナス出す」
『やらせていただきます店長』
- 172 :ロザリア・ロートシルト:2011/04/24(日) 23:38:09 ID:SSMHlh/20
- >>171
「ふむ……。」
ロザリアは値踏みするように、
メイプルを見つめて。
「……本当にこんな輩で大丈夫なのかしら?
中途半端な腕前の者を差し出されても、迷惑になるだけよ?」
どうにもロザリアはメイプルを信用できないらしく、
懐疑的な目線を彼に投げかけている……。
- 173 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/04/24(日) 23:51:51 ID:HnkBBDEo0
- >>172
「だってよクソガキ」
『知るかよクソ店長』
メイプルは自分より年下(に見える)少女に「中途半端」と言われたのが心外らしく、
尖った牙を噛み締めて軋ませている。
「おいメイプル」
『なんだよ』
「お前にコイツが救えるか?」
『それは僕を試しているのか?』
「いや、俺がお前に『頼んで』いるんだ」
『……』
メイプルは青白く浮かぶ図式をしばし見て、
『僕がやれば、可能性はある』
「お前一人じゃねぇよ。他にも声はかける」
『じゃあ確実だな』
「よし」
クロスは視線をロザリアに戻す。
「俺は一人目として、こいつをお前に紹介する。
下ろすかどうかはクライアントのロザリーが決めてくれ。
二人目、三人目は俺が後で見繕うよ」
- 174 :ロザリア・ロートシルト:2011/04/24(日) 23:58:42 ID:SSMHlh/20
- >>173
「ま、貴方が言うのであれば仕方が無いわね。
それに、今は贅沢も言っていられないし……。」
事実、人間を嫌い交流を持たなかったロザリアには
使えるコネというものが極端に少なく、クロスに頼る他なかった。
「……貴方には、以前から頼りっぱなしね。
何か、私にお礼が出来ればいいのだけれどそれもできない。
…………悪いわね。」
- 175 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/04/25(月) 00:04:42 ID:HnkBBDEo0
- >>174
「礼? ああ、じゃあ機会があれば頼むわ」
そう言ってるクロスの表情から見るに、まったく期待なんてしてなさそうだ。
「じゃあちょいと調べておいて」
『わかった。この手の呪術ならよく受けたからな。パターンも限られてくる。
解呪方法はすぐ分かるんじゃねーの?』
「……お前の過去に何があったかは今は聞かないでおこう。面倒くさい。
そうだロザリー。いまディスはどこにいるんだ?」
- 176 :ロザリア・ロートシルト:2011/04/25(月) 00:14:31 ID:SSMHlh/20
- >>175
「ディスなら、今私の部屋にいるわ。
大半は眠っているようだけれど、時折出かけているみたいね。
特に、以上は無いようだから彼女の好きなようにやらせているのだけど……。」
ロザリアはクロスに、黄金細工の鍵を差し出す。
「これをどこでもいいから、鍵穴に差込み捻れば
私の部屋への通路が開くわ……。」
- 177 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/04/25(月) 00:18:55 ID:HnkBBDEo0
- >>176
「ん、日常生活にはまだ支障は出てないか。危なくなる前に片付けたいけどな」
そう言いつつ、クロスは鍵を受け取る。
メイプルはといえば、まだ仕事が残っていたらしく、
ブツブツと独り言を言いながら厨房へと引っ込んでいった。
「ああ、お前の家って確かそういう便利設定だったな。
っていうかこの鍵、借りていいのか?」
- 178 :ロザリア・ロートシルト:2011/04/25(月) 00:26:32 ID:SSMHlh/20
- >>177
「ええ、一度は押さえ込んだのだけれど。
勢力を盛り返せば、大変な事になってしまうわ。」
ロザリアの言い方だと、既にある程度ディスは呪いに侵蝕された事があるようだ。
彼女がのろいを押さえ込んだのだろうが、完全には消し去れなかったというところか。
「ええ、いいわよ……別に困る物でもないしねぇ。
……くれぐれも、変な事には使わないでちょうだい。」
- 179 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/04/25(月) 00:34:20 ID:HnkBBDEo0
- >>178
「あ、ああ? 変なコト!? つつつつつつ使うわけ無いだろ!!」
視線がバタフライで宙を泳ぐ。
「……オーケー、リミットは近いワケだな。
なるべく早く手を打つとしよう。
左手の修理を急がねばな」
やれやれと呟きつつ、右目の眼帯をガリガリと掻いた。
「じゃあ後日、心当たりのある奴をリストに纏めておくよ。
だから、お前はもう帰ったらどうだ? その様子だとだいぶ疲れているようだが」
クロスはロザリアの頭に右手を伸ばす。
「女の子がこんなクッシャクシャの髪の毛のままじゃいけねーよ」
- 180 :ロザリア・ロートシルト:2011/04/25(月) 00:44:34 ID:SSMHlh/20
- >>179
「ええ、そうさせてもらうわぁ……。
少し、疲れたから……。」
恐らく、ディスを救うために忙しい暇を縫って
いろいろな方法を調べていたのだろう。
「……ん、そうねえ……こんなになっていたなんて……。」
クロスの指がロザリアの髪を梳く。
さらりとした艶やかな髪の毛は、潤いを既に失っていた。
「シャワー、浴びなきゃ……。
私、そろそろ帰るから……。」
ふいに、クロスの指から彼女の感覚が消える。
既に、ロザリアの姿は店の中には無かった。
- 181 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/04/25(月) 00:50:29 ID:HnkBBDEo0
- >>180
「ああ、おやすみ」
そう言い終わる頃には、彼女は目の前から姿を消していた。
「……やれやれ、神出鬼没だね相変わらず」
溜息を吐きつつ、天井を仰いだ。
- 182 :『ジボル』:2011/04/25(月) 20:46:42 ID:G2D5bea20
- ほーーーーーーーー……
【青果店の店先でじーっと果物を見てる少年】
【格好はボロボロで手枷に足枷がついているが、肌はつるっと綺麗なのがアンバランス】
【店員も怪しんで見ていたが】
。
【当たり前のようにがっしとリンゴを一つ掴み】
っ。
【当たり前のようにかぶりつき】
〜♪
【当たり前のように歩き出し】
「…! クぅルラァーーーーーッ!!!」
!!? わうわうわー!!
【あまりに自然な行動に自分がおかしいのか?と混乱していた店員がようやく怒声をあげ】
【ジボルは自分がおかしいとも気付かず驚いて逃げ出した】
- 183 :名も無き異能都市住民:2011/04/25(月) 21:02:39 ID:SSMHlh/20
- >>182
――バシュッ
獣を生け捕りにするための捕縛ネットが
四方から射出され、ジボルを捕らえようとする。
- 184 :『ジボル』:2011/04/25(月) 21:07:40 ID:G2D5bea20
- >>183
【真正面から網が飛んでくるのを見るや目をキラーンと光らせて】
ふおーっ!!
【すぐさま急停止! 側転! 横っ飛び!――】
ふぎゃっ!?
【即捕縛!】
【全方位から飛んできたことに気付かずネットに飛び込んで、訳も分からぬままもがく】
- 185 :黒沢小百合:2011/04/25(月) 21:13:58 ID:SSMHlh/20
- >>184
「……まったく。」
アスファルトをヒールがこつこつと叩く
小気味よい音と呆れたようなため息。
ジボルには、この声に聞き覚えがあるだろう。
「どうして貴方が拘束されているのかが分かりましたよ。
……申し訳ありません、御代をお支払いします。」
絡まったジボルを腰に手を当てて見下ろすのは
最近、食事と寝床を提供してくれる黒尽くめの女――黒沢小百合だ。
彼女は、店主に林檎の代金を支払うとふたたびジボルへと向き直り
しゃがみ込んで目と目を合わせた。
「こんなことをするようでは、文明的とはとても言いがたい。
少し、修正が必要なようですね……。」
- 186 :『ジボル』:2011/04/25(月) 21:17:50 ID:G2D5bea20
- >>185
うー、さゆー……。
【不満げに頬を膨らませる少年】
【自分で取った獲物を自分で喰う。それがどんなに取りやすい物でも当たり前であり、金という文化を持たない少年】
【そんな今までから、自分は悪くないのに、とふてくされてネットを掴んで小さく揺らした】
- 187 :黒沢小百合:2011/04/25(月) 21:25:12 ID:SSMHlh/20
- >>186
「マズは通貨の概念を教え込んでおかねば……。」
顔を抑えて、ほとほと困ったように顔を横に振る。
今までそれなりに経験はつんできたつもりだが、こういったことは経験が無い。
とにかく、言って聞かせるしかないのだろうか。
「いいですか、アレはあの人が獲った物なのですよ。
あなたも、自分が狩った獲物を他人に横取りされるのは嫌ではないですか?」
小百合はジボルにもわかりやすいように、
仮に例えて説明を行なったのだが……野生で暮らしてきた彼には、
納得できない話かもしれない。
自分が狩った物とはいえ、油断していれば他人に掠め取られる事が当たり前。
それが厳しい野生の世界なのだから。
- 188 :『ジボル』:2011/04/25(月) 21:33:11 ID:G2D5bea20
- >>187
よこど…?
とる、いい。とられる、わるい。だから……えー、と……
とられる、オマエ、わるい!
【ネットの間から手を伸ばして、不精ながら去りかけていた店員の背中を指さす】
【店員が振り返ってじろりと睨む】
『わー』、もりにいた、とき、いっぱいとられた。でも、いっぱい、とった。
これ、ヘンか?
【自分の胸に指を添えて首を傾げる】
【現に強い動物は弱者の狩った獲物をまた『狩る』。ライオンなど大型肉食獣がよくやる方法だ】
【ジボルもその単純に強い『力』で以て、他者の獲物を狩ることがよくあった】
- 189 :黒沢小百合:2011/04/25(月) 21:48:16 ID:SSMHlh/20
- >>188
「ううむ……。」
小百合は言葉に詰まってしまった。
今までジボルが生きてきた自然界では当然のこと。
今の説明では理解できない事は当たり前。
「自然の中で暮らすのであれば、それでいいのかもしれませんが
文明の中において、そういった構図は完全にはなりたたないのです。」
しかし、育った文化が違うからといってこのまま放ってはおけない。
何故なら、ジボルは自然から離れ人間社会の中に足を踏み入れてしまうのだから。
「とにかく、ここで者を手に入れるためには『お金』というものが必要なのですよ。」
- 190 :『ジボル』:2011/04/25(月) 22:00:48 ID:G2D5bea20
- >>189
ふふん。……ぶぇくしっ!
【網の中で仰向けに地面に転がったまま、言い負かしたのを自慢するように背を反らす】
【……はいいものの、鼻に網がひっかかって思わずくしゃみをする】
しぜん? ぶんめー? ……ダメか?
【未だにジボルは自分の置かれた状況をよく理解していない】
【ただ『異質な世界の中にいる』ということだけが意識としてあるだけだ】
【まだ叱る響きのある言葉に曖昧なまま首を傾げる】
おかね。
【目が上を向いて何かを思い出すように静止したが、また網の紐が鼻の下をくすぐった】
……うぅぅう゛う゛〜……
【不機嫌そうに顔を顰めると一瞬笑う……いや、笑ったのではない。牙を剥いたのだ】
【人に比べ一層太く厚い犬歯を威嚇するように見せつけ、両手の指と両足の指を網目にひっかける】
【寝転がった体が地面から、浮いた。背筋が盛り上がったのだ】
がうううぅッ!!
【鬱陶しく絡みつく網に咆哮を上げる。周りの人々がざわめくなか腕を上に、脚を下に、】
【巨木をも倒す力で捕縛用ネットを引き裂こうとする!】
- 191 :黒沢小百合:2011/04/25(月) 22:11:44 ID:SSMHlh/20
- >>190
ジボルの人並みはずれた怪力に耐え切れず、
ミチミチと嫌な音を立てながら強化繊維のネットが引き裂かれていく。
「なっ……先ほどまで大人しかったのに……!?
一体、どうしたと……」
先ほどからネットから出ようと、もがいてはいた物の
それとは明らかに違うジボルの様子に、小百合はすこし気おされてしまう。
しかし、このまま逃がすわけにはいかない。
「っ……すこし、眠ってもらうッ!」
咄嗟に、警官を具現化し麻酔弾を脱出寸前のジボルに打ち込む。
大人でも昏倒してしまうそれは、ジボルに通用するのだろうか。
- 192 :『ジボル』:2011/04/25(月) 22:20:33 ID:G2D5bea20
- >>191
ぷえへっ。
【網の中から顔を出して、鼻をごしごし擦る。それから小百合を指差し】
さゆー! さゆーも、ほか、『ひと』、コレのなか、はいってない!
【別段脱出の気配はない。小百合に指を向けて網を見せつけるように掴み】
なのに、『わー』、コレのなか、はいってる! やだ! はな、むずむずする!
【コレとは網のことだろう。千切れた網を仕切りに揺さぶっている】
【そして麻酔銃を見るや――すぐさま銃口から逃れるように地面に手を付き体を左に傾けた。その頬を麻酔弾がかすめる】
【小百合の家で数度撃たれたのがジボルに『学習』させたのだろう】
- 193 :黒沢小百合:2011/04/25(月) 22:28:23 ID:SSMHlh/20
- >>192
「……む。」
この子供は、スポンジのように次から次へと物事を学習する。
あの動きは明らかに銃が何かを学習し、それから逃れるための動きだ。
(幾度か大人しくさせるために銃を使ったとはいえ、
覚えただけでこれほどまでに素早く行動が取れる物ではない……。)
「……わかりました、とにかくそれは消しますから。
大人しくしてくださいね。わかりましたか?」
小百合の言葉と共に、すぅ、と網が空気に溶けて消えた。
もはや捕縛用具としての体をなしてはいいが、気分的にはいくらか違うだろう。
「あなたは、この銃が危ないとわかって避けたのですね?
それほどの理解力があるなら、すぐに私のいう事も分かるはずです。
とにかく、人の物をとってはダメですよ?」
- 194 :『ジボル』:2011/04/25(月) 22:35:00 ID:G2D5bea20
- >>193
お。
【網が消えた。どうやらこれは正しかったらしい、とジボルは安堵して笑った】
【……まぁ、この笑みは自分の言ったことが正しい正しくないではなく、実は小百合が理解してくれた事が嬉しいのだが】
えへへ。
【この呑気な笑みを浮かべている少年には、そんな自分の本心すら全然気づいていない】
うー! おとなするー!
【にこにこ笑顔で右手を高く挙げて首を縦に振る】
- 195 :黒沢小百合:2011/04/25(月) 22:45:16 ID:SSMHlh/20
- >>194
「まったく、これから先どうなるか思いやられますが
まあ、いいでしょう。貴方には専用の講師をつけることにします。」
無邪気に笑うジボルの横で携帯を使い、
講師の手配を始める小百合。
いずれは学校に入れるにしても、まだその段階は程遠い。
とにかく、人間としての常識を教え込まねば。
「さ……林檎を取るという事は、おなかが減っているのでしょう?
帰って、御飯にするとしましょうか。」
- 196 :『ジボル』:2011/04/25(月) 22:49:55 ID:G2D5bea20
- >>195
うー! かえるー!
【また小百合の後ろにぴったりくっつく】
【家路は覚えているが、なんとなく小百合の後ろにくっつく】
【まるで犬のようだ】
あ。
【そういえば。台の上に丸い板(皿)が乗って、他にいくつか変なモノ(ナイフ・フォーク・その他食器)がある】
【そんな光景を頭に思い浮かべて】
さゆー。さゆーのいえの、えーと…まるいやつのうえの、ごはんは『とって』いいか?
- 197 :黒沢小百合:2011/04/25(月) 22:56:18 ID:SSMHlh/20
- >>196
「ええ、いいですよ。
あれは、貴方に差し上げた物ですから。」
ふふふ、とジボルに笑って。
取ってはいけない、といえば聞いてくれるのだ。
小百合は、幾分か気分が楽になった。
「はぐれないようについてきなさいね。」
ゆっくりと家路を辿る小百合。
彼女は人に何かを教えるというのは
なんと素晴らしいのだろうかと、改めて思うのだった。
// そろそろ〆でいいかな
- 198 :『ジボル』:2011/04/25(月) 23:00:09 ID:G2D5bea20
- >>197
あいー!
【にこにこ笑いながらその後をついていく】
【その後、今日はいささか大人しく、無作法ながらあまり汚さず食事をとった】
【そしてその翌日から、何をするにしても「いいか?いいか?」と女中に聞きまくるジボルだった】
//おしゃーこれで〆で
- 199 :黒沢小百合:2011/04/27(水) 22:07:55 ID:SSMHlh/20
- あの後、朝方に意識を取り戻し、鉛のように重い体に
鞭を入れて自力で病院へと向かい検査を受けたのだが
その結果、体調悪化の原因は過労とストレスによるものであると分かった。
ほんの数日ではあるが医者に仕事を禁じられ、療養を勧められた小百合は
しぶしぶ異能都市からすこし離れた山間部にある湯治場を訪れていたのだった。
山間部にある、といっても都市へとバスが定期的に運行されているし、
ただの観光目的の宿泊客も多い。
「……こうなっては仕方ありません。
2,3日体を休めるのもいいかもしれませんね……。」
はぁ、とため息を吐き出した小百合は未だ重い体を引きずり、
湯治場と温泉街を足して2で割ったようなこの場所の散策を始めるのだった。
- 200 :サラ:2011/04/27(水) 22:38:10 ID:bYREkklM0
- >>199
「どぉーこかでぇー……だーれかがぁー」
その通りの脇、ベンチが据えられた東屋。
観光客用に無料解放されている足湯に足を浸し、ベンチに横たわっている女がいる。
白い素足、黄金をハチミツに溶かしたようなブロンドヘアー。
学者か聖職者か、そうでなければ明らかに魔術師です、といったようなガウンを着ている。
通りの景観とはミスマッチな西洋人が、目を瞑ってうっとりと足湯に身を委ねている。
「あたしーを、待ぁってー……いてーくれるぅー……」
近寄らなければ分からないだろうが、その女、魔術師サラが足を突っ込んでいるお湯は、
まるで足湯の槽全体がマッサージャーになったように、ひっきりなしに波を立てている。
「血ぃーはー流れぇ、皮はー裂けーるぅー」
歌詞は物騒だが、外人が足湯で和んでひとり歌っている様子は、のどかだ。
- 201 :黒沢小百合:2011/04/27(水) 22:48:21 ID:SSMHlh/20
- >>200
この界隈は中々に賑わっている様で足湯のある東屋にも
何人かの浴衣を着た観光客が集まり思い思いに湯の温かさを楽しんでいる。
「隣、失礼しますね。」
歩きつかれた小百合はこの足湯を見つけると、
すこし休もうと、偶然空いていたサラの隣に腰を下ろした。
湯の熱気と地熱で暖められた畳の感触もここちよく、
全身に熱が染み渡るのを感じる……。
- 202 :サラ:2011/04/27(水) 23:03:05 ID:bYREkklM0
- >>201
「痛みはー……っとー、はいな」
流石に隣に人がいるのに寝転がっているわけにもいかず、身を起こす。
そうしてサラが言葉を切ると、足湯の波はさーっと消えて、元のなだらかな流れに戻る。
「……なんだかお疲れですねぇ」
隣に腰掛けた女性の顔には、疲れが滲んで見えるようだった。
仕事疲れで湯治にでも来たんだろう、と察して、そう声をかける。
かと言って、疲れてる人にしつこく話しかけて億劫がられるも何だな、と思う。
言葉を継がず、サラは湯に浸した足をゆっくり前後に動かした。
すると流れに僅かな波が立ち、また先ほどと同じように細やかな波になって、
湯治客たちの足裏に心地よい振動を届け始めた。
- 203 :黒沢小百合:2011/04/27(水) 23:17:51 ID:SSMHlh/20
- >>202
「ええ、すこし医者に療養を勧められまして。
仕事に今すぐにでも戻りたいのが本音なのですが。」
サラの隣に座ったこの女性の長い髪は痛みが目立つ上、
白い肌は荒れてカサつき、鋭い瞳の下にはくっきりと隈が浮かんでいる。
言葉からも分かるように、激務でここまでやつれてしまったのだろうが
それにしてもこのやつれ方は病的な物すら感じさせる程。
「んー……気持ちいい……。
こうしていると、体の中の毒気が抜けていくようですよ。
この波は、貴女が……?」
小百合は最初、何らかの装置がこの波を発生させているのかと思ったが
発生させる機械は見当たらないし、モーターやらの駆動音もしなかったため、
不思議に思い発生源を探していた。
ちょうど、サラが足を動かす動きと、この並みの発生が同機しているのを見つけたらしい。
- 204 :サラ:2011/04/27(水) 23:36:21 ID:bYREkklM0
- >>203
「お医者さんとはまぁ……。
けど、様子を見るにタダゴトじゃないね
いっぱい食べなきゃ駄目だ」
女性の状態は悲惨なことになっている。
平生ならば凛とした美しさを放っているのだろう。
なまじ元が綺麗なだけに、やつれた様子は幽鬼じみた趣がある。
貴方が波を、という問いに、サラはゆっくり頷いて、
左耳の青いイヤリングを指でつついてみせた。
「……私は魔法使いなのです。
足をこう、伸ばすと、リンパの流れが……」
そういうとサラは座る位置を前にせり出し、、斜めに足が浸かるよう、ピンと伸ばす。
そしてアキレス腱を伸ばすように、かかとをぐっと突き出し、つま先をこちらに引くようにする。
こうすると、ひざ裏から足首、つま先にかけてのリンパ腺がよく広がるのだ。
ヒールを履いたり足を締め付けたりといった格好をしている女性は、ここをほぐすのは特に意味がある。
- 205 :黒沢小百合:2011/04/27(水) 23:48:26 ID:SSMHlh/20
- >>204
「魔法使い……。
この足湯で雇われてでもいるのですか?」
先ほどの波は強すぎず、かといって弱すぎない
程よい心地よさをもたらす、絶妙な具合であった。
現代のように病気の原因が詳しく解明される以前の中世において
魔術師、祈祷師は医療と切っても切れない関係であったが
現在でもこうして残っていたのだろうか、と小百合は興味を持った。
「ふむ、こうでしょうか……。」
とりあえず小百合はサラのまねをして、同じようなポーズをとる。
これは魔術の類とは関係なさそうだが……。
- 206 :サラ:2011/04/27(水) 23:58:56 ID:bYREkklM0
- >>205
「いや、いま見聞を広める旅をしててね。
なるべく温泉とか、近くに史跡とか植物園とかあって、
泊まるだけじゃないとこを宿に選んでるのさ」
それらしい言い方をしているが、要は観光ツアーである。
売り込めば雇って貰えたかもしれない、と言われて気付いたが、
もう発つ予定で今夜の宿は取っていない。……諦めることにする。
小百合が自分の真似をして足を伸ばしたのを見て、
うんうんと頷き、自分のひざの裏を優しく揉み解すようにする。
もう片方の足で器用に波を立てながら、話を続けた。
「それでこの先に……あたしみたいな、
一芸秀でた皆様が集まる都市があるって小耳に挟んでさ」
それは量らずとも分かる、小百合が仕事の場とする異能都市のことだ。
- 207 :黒沢小百合:2011/04/28(木) 00:12:53 ID:SSMHlh/20
- >>206
「旅のお方でしたか……。私も貴女と同じく、
見聞を広めるために世界を回った事がありましたがそれは今でも
素晴らしい経験として残っていますよ。」
小百合は目の前の女性を過去の自分と重ね合わせているのか、
心地よさげに目を閉じ、思索に耽っている。
「ええ、都市はこの湯治場からバスも出ていますから。
行こうと思えば、迷うことなく行けるはずです。」
- 208 :サラ:2011/04/28(木) 00:29:59 ID:bYREkklM0
- >>207
「へぇ……。あなたも旅を。
いいよねぇ、旅は。自由があって出会いがあって……」
そう口では言ってみたが、
目の前の女性が自分のような貧乏旅行をしていた風には思えない。
小百合が只者ではないことは、感覚的に悟ってはいたが……。
世界を股にかけて、といった方がしっくりくる感じだ。
「そのバスの時間までもう少しあるんだ。
……あたしは、旅をすること自体が目的で、旅をしてる。
あなたは……また別の理由があってのことだったのかな」
昔、旅をしていて、今は戻りたい仕事がある……。
旅を住処と定めた自分とは、似て非なる経験をしているのだろう。
旅の始まりにも、旅の途中にも、そして、その旅の終わりにも。
- 209 :黒沢小百合:2011/04/28(木) 00:45:16 ID:SSMHlh/20
- >>208
「さあ……自分の糧とするため、と理由をつけていましたが
結局、あの時は何も考えずただ現状を打ち破りたかったのかもしれません。
閉塞して、何もつかめない現状を。」
たしかに、世界中を見て周り、得る物もあったと確信がもてる。
しかし、何を得たのか……その肝心要がはっきりとは分からなかった。
「まあ、結局のところ……私は若かったのでしょうね。
機を待つことができず、無理やりにでも動きたかったのだろうか。」
- 210 :サラ:2011/04/28(木) 01:06:27 ID:bYREkklM0
- >>209
「あはは、飛び出す時なんてそんなもんよね。
今のままじゃ駄目だーとか、もっと他に何かあるはずだーとか」
恐らく、自分も似たようなクチだ。
自分の周りにあるものが陳腐に思えて、そうでないものが欲しかった。
ここでないどこかなら、知らない誰かならそれを持っているかもしれないと。
疲れ切った目の前の女性も、その果てできっと何かを得たのだろう。
「でも、今は戻りたい仕事があるってことは、
何か大事にしたいもの見っけたってことなのかな。
……そう考えると、私の旅の終わりは遠そうだなー」
小百合の旅の終わりは、大切な人との出会いじゃないか、とサラは直感していた。
恋人か、百年の友か、それとももっと別の何かか……。
サラはそれを羨ましいとも思うし、逆に煩わしかろうとも思う。
人生を賭すものを見つけられない自分は、まだ未知の世界への飽くなき憧憬の中にいる。
いつまでも旅が出来るわけではないが……今は、それでいい。
- 211 :黒沢小百合:2011/04/28(木) 01:27:24 ID:SSMHlh/20
- >>210
「ええ、幸運にも私は、命を懸けてもいいと思える程
大切な物を見つける事ができました。」
小百合は己の主君と、愛すべき町を思い浮かべる。
忠誠、いやそれ以上――信仰とも恋慕とも言い切れるほどの絶対的な小百合の気持ち。
彼女は、長いたびの中で運良く安心を見つけたのだ。
「人という物は、一生をかけて自分の目的を探し続けます。
一生見つからない人もいるでしょう。いくつもの目的の中で揺れ動く人も居るでしょう。
こんな早くに、絶対的な目標を見つけられた私は本当に運が良いのでしょうね。」
ふふ、と軽く笑みを漏らしてサラへと笑いかける小百合。
幾分かt彼も取れたのか、その表情は軽く女性的な穏やかさに満ちていた。
「……あなたは、貴女の目標を探す途中なのですね。
しかし、決して焦ったり、早まったりしないように。目標というのは
時に道端に転がり、時には砂漠の蜃気楼のように遠くに見えるものですから。」
- 212 :サラ:2011/04/28(木) 01:48:02 ID:bYREkklM0
- >>211
「あ、笑った。
……ふふ、やっぱり笑うときれい」
小百合の微かな笑顔に、サラも小さく笑い返す。
命を懸けられる、揺るぎない大切なもの。
それらの言葉よりも、あの亡霊の如くやつれきった表情から笑みが零れたこと。
そのことが、彼女に矜持を与えたものの大きさを雄弁に物語った。
「あたしは、旅を続けること自体が目標だけど……。
地図や案内板ばっかり見てちゃ駄目ってことだね」
そう考え始めると、バスの時間ギリギリに間に合うよう発つのも妙な気分だ。
少しずつ寄り道しながら、ゆっくり歩いてみようかな、と思った。
「よし。そろそろ行きます。……餞別ですが、ちょっとお手を拝借」
そう言って、握手を求めるように、小百合に手を差し出す。
餞別は見送る側が渡すもので、言葉は正しくないが……何かいいことをする気のようだ。
- 213 :黒沢小百合:2011/04/28(木) 01:54:49 ID:SSMHlh/20
- >>212
「ん、なんでしょうか……。」
小百合は言われるがままに、差し出された
サラの手を握ろうとする。
なんだろう、とでもいいたげな彼女の表情は
いつもなら決して他人に見せることの無い、小百合の素の表情だ。
- 214 :サラ:2011/04/28(木) 02:25:42 ID:bYREkklM0
- >>213
無防備に手を差し出してくれた小百合に、
サラは改めて優しい笑みを見せ、目を瞑った。
その手を取り、もう片方の手を小百合の手に被せるように、そっと乗せる。
「リラックスしてください。……人は、共鳴できる生き物です。
……それが赤の他人でも。顔も名前も知らない、世界の反対側の人であっても」
そう言って、サラは高い音で鼻唄を歌い出す。
それは彼女が先ほど歌っていたものと同じ歌だ。
千辛万苦の旅路の果て、見知らぬあなたがきっと待っている――。
その歌の意味を小百合は知らないだろう。だが、重要なのは歌詞でも旋律でもない。
サラは喉で生まれた音の震えを鼻腔に共振させ、そこから体中に広げる。
それは優しく握った手をから、小百合にも伝わる。
小百合が無駄に身体を緊張させたりせず、自然体でいたならば、
その握った手先からソナーを発するように、全身に波紋のように揺れが広がるはずだ。
その揺れは体中を跳ね返りながら、体中の細胞という細胞を僅かに震えさせる。
しばらくすれば身体の芯から熱が生まれ、体内の余計なものがまとめて振るい落とされるように感じるだろう。
怪我や疾病は治せないが、体内を巡る波紋の力は、肉体に正常な代謝を取り戻させることができる。
全身にそれが行き渡った辺りで、サラは目を開き、そっと手を離す。
失った体力が補われるわけではないが、甘い残響が綺麗さっぱり消える頃には、
小百合の身体は気だるさからは解放され、新たな活力を求めて復活する準備が完了するだろう。
「……私は『衝撃の魔術師』、サラ。また会いましょう、綺麗なおねーさん」
と、照れを隠すようにさっと立ち上がると、小さくウィンクして、
それから振り返らず、後ろ手に手を振って歩き去って行った。
- 215 :黒沢小百合:2011/04/28(木) 02:34:33 ID:SSMHlh/20
- >>214
歌声と共に、体に何かが染み渡っていくような
感覚を味わった小百合は最初はとまどいこそしたものの
心地よい震えに身をゆだね、ゆっくりと目を閉じた。
じんじんと体の中心から湧き上がるような
暖かさはこの湯によるものか、とも思ったがどうにも性質が違う。
「ええ、もしご縁があればまた……。」
それがあの歌によってもたらされたと小百合が気づくのは、
もう少し後のことであった。
- 216 :???:2011/04/28(木) 21:03:12 ID:j3dxNUKs0
- 箱庭空間、闘技場No.4。
柱が数本、そして人為的な瓦礫が積まれているその空間に、電子的な歪みが生じた。
戦闘訓練を目的にしているこの闘技場は幾つかあるが、その中心に、何かが現れた。
甲冑、だろうか。
余りに平凡な、中世辺りで実際に使われていてもおかしくない鎧。
くすんだ金属の光。
量産的で、顔をすっぽり覆う形の甲冑は、中の人物に対する想像を悉く阻む。
「さて。」
その人物は呟いて、鞘から剣を抜いた。
両刃の剣。グラディウスの定義のような形をしている。
「盾は、まだ揃ってないけど…最初だから仕方が無い」
甲冑はまたそう呟いて、剣を振るう。
鍛錬、というよりは、暇つぶしのようだ。
- 217 :???:2011/04/28(木) 22:13:28 ID:j3dxNUKs0
- 剣を振ることにも飽きてきたのか、その甲冑は闘技場の真ん中で佇んだ。
データの名前が文字化けしている。
いや、そもそも彼のデータは本来箱庭には入っていない。
何らかの方法で、強引にアクセスしているその存在は、
箱庭外の端末からでも目を引く異端な存在だった。
- 218 :穏島優芽:2011/04/28(木) 22:21:26 ID:5zePDO.60
- >>217
甲冑の人物の後方、電子的な光の螺旋が闘技場の端で発生し、一人の人間を構成する。
布で包まれた槍を持った、赤いロングコートの女性だ。
彼女は地面の感触を確かめるように2、3度足踏みをしてから、闘技場の中心へ歩を進めた。
「あれっ? ここ誰も使ってないはずなんだけどなぁ……」
ログイン前の情報で、ここが無人だと思ってやってきたようだ。
- 219 :???:2011/04/28(木) 22:27:09 ID:j3dxNUKs0
- >>218
「やぁやぁ、初めまして。」
対して、甲冑の人物は気軽にそう言った。
「そりゃぁ、僕は箱庭に正常に認識されていないからね、
無人だと思ってもおかしくは無いよ」
くるくると剣を回しながら、彼はそういう。
声色から、甲冑の中で彼が笑っているであろう事が想像出来た。
「さて、折角の闘技場なんだからさ…
君のそれ、武器なんだろ?」
布で包まれた物体を指差して、続ける。
「僕の名前はR.P.L。箱庭での最強を目指しているよ。
もし良ければ、手合わせして貰えないかな?」
- 220 :穏島優芽:2011/04/28(木) 22:38:25 ID:5zePDO.60
- >>219
「おっとっと……いきなり戦おうだなんて、血の気の多いこと。しかも最強目指す系だし。
あたし、ここに戦いに来たわけじゃないんだけど……」
困ったように眉根を寄せ、うーんと唸る。
「……あたし、パンピーとは戦う趣味ないの。
あなたが特別な「何か」を持ってるんなら別だけどね」
要するに、能力者であれば戦っても良い、という意味だ。
- 221 :R.P.L:2011/04/28(木) 22:46:32 ID:j3dxNUKs0
- >>220
「なるほど、えり好みしてる訳だね。」
甲冑の下の声はにこやかだ。
「この甲冑は特別な『何か』は持って無いよ」
その返答は、望まれていたものとは違うだろう。だが。
「これ自身が、特別な『何か』なのさ。
君の目の前にいる甲冑人間こそが生まれたての僕の能力だ。」
「無敵だけど、今は最弱。物足りないかも知れないけれど、
一応楽しめるんじゃ無いかなぁ?」
不可解な言葉の羅列をするが、ともあれ甲冑の男は剣を構えた。
「ジョブチェンジ」
次の瞬間、甲冑は掻き消え、其処に居るのはローブを纏い三角帽子を被った、
典型的な『魔術師』。
「いくよっ!」
響く声はそのままに、魔術師の持つ平凡な木の杖に異能の力が集まり始める。
- 222 :穏島優芽:2011/04/28(木) 22:57:46 ID:5zePDO.60
- >>221
「何を言ってるかはよくわかんないけど……」
女性は槍を包んでいた布を勢いよく剥ぎ取った。
現われた槍は吸い込まれそうな――不自然なくらいに――青に染まっている。
「とりあえず、自己評価のほうは「特別」ってことでオッケーなんだね。
じゃあ問題ないや。やろっか」
槍を一回転させ、構える。
「穏島優芽。とりあえず名乗っておくよ」
力を集中させる「魔術師」に、にやり、と笑ってみせた。
- 223 :R.P.L:2011/04/28(木) 23:06:45 ID:j3dxNUKs0
- >>222
「うわお、なんて青色。なんというか、体に悪そうだ」
槍に関する感想を述べた後、三角帽子の下で魔術師はニヤリと笑う。
「うん、特別さ。僕の能力は特別だよ。」
「穏島優芽さん、だね。ありがとう…戦闘開始だね、まずはこっちから。」
「ファイアミサイルッ!」
それは、典型的な焔の魔術。
燃え盛る焔が不規則な軌道で、だが正確に襲い掛かる。
だが、魔術の心得のあるものなら簡単に避ける事が出来るだろう。
「その槍にも、何か能力が仕込んでありそうだけど。刺されたら毒されそうだよ」
- 224 :穏島優芽:2011/04/28(木) 23:16:48 ID:5zePDO.60
- >>223
「あ、わかっちゃう?」
軽い感じで応えながら槍を振り回し、襲い来る焔を打ち落としていく。
「それがわかるんなら、もう文句ないよ。君はあたしと戦える人間だ。
……今度は、こっちから!」
魔術師と、自分とを結ぶ直線上にあった焔を打ち落とした優芽は、
少しだけ体勢を低くして走り出した。
「刺されたら悪そう……じゃ、食らって確かめてみるってのは、どう?」
このまま接近を許せば、打ち上げるような軌道の刺突が襲うだろう。
- 225 :R.P.L:2011/04/28(木) 23:28:29 ID:j3dxNUKs0
- >>224
「一応、この体も異能だからね。それくらいは…槍、そんな風に使うんだね。」
焔を打ち落とすたび、ピピピ、とどこかから電子音が聞こえた。
「速い…ッ!間に合うか、…スロウッ!」
網状に広げられた異能の力が、前方に展開される。
突っ込んだ彼女の体は、少し遅くなるだろう。
その隙に魔術師は回避を行うが、槍がかすり、ローブが破け、肉が少し裂ける。
その感触に、どこか気味の悪さを感じるかもしれない。
生きている心地がしないのだ、その体から。
「…ッ!早いなぁ、スロウをかけ続けないととても…槍相手は難しい、なッ!」
「だけど、これはどうかなッ!?ウォーターボールッ!」
直線的な軌道だが、焔と違い打ち消せない。
質量を持った物理的な水の弾丸が飛来した。
そして魔術師は距離を取ろうと後ずさる。
「…ッ!君の槍は、…そうか、疲労やMPに影響を与えるんだな、
精神から削るなんて、僕と一緒で悪趣味だね」
- 226 :穏島優芽:2011/04/28(木) 23:40:41 ID:5zePDO.60
- >>225
異能の網に包まれ、優芽は身体全体に感じたことのない負荷を認める。
しかし、相手を傷つけることには成功したようだ。
槍の穂先が魔術師の身体をかすり、ローブと皮膚が裂けているのを刹那に見る。
「……? 今の感触……ってうあっ!」
槍で肉体を傷つける、あのいつもの感覚ではないことに違和感を覚えるが、
そこに隙が出ていて、しかもスロウのかかっている状態の優芽が水の弾丸を防ぐことができようはずもなく、
優芽は水の弾丸に撃たれ、後ろにあった柱に叩きつけられた。
「げっほ、げほ……身体の動きを阻害する力だなんて、悪趣味を自称するだけあるわ……げっほ」
咳き込みながら、柱に手をついて立っている。続く攻撃の気配はない。
- 227 :R.P.L:2011/04/28(木) 23:47:09 ID:j3dxNUKs0
- >>226
「大丈夫、僕はまだLv1だから、スロウの効果も長く無い…」
ピロリン、という音がして、彼の衣装が少し変化した。
装飾品が増えた気がするし、三角帽子も少し質が変わっている。
「言っている間にLv2だね、やっぱり戦力差のある相手とやると、経験値の入りが違うよ!」
無邪気に喜ぶ魔術師。そう、彼の能力は。
「もう気付いたかも知れないけれど、僕の能力は『ゲーム』さ。
能力名、ロールプレイングライフ。戦闘力に差のある相手との
戦闘で得た経験値で自動的に強くなるんだ、よッ!
魔法じゃない、この能力こそが悪趣味たる所以さ!」
「そして、新しい魔法も手に入れたッ!ブラッディウィンドッ!」
それはLv2の魔法。自身のHPと引き換えに血の刃を作り出す。
精神攻撃を受ければ魔力が持たないと判断しての選択だろう。
柱めがけて斬撃が飛ぶ。
- 228 :穏島優芽:2011/04/29(金) 00:00:08 ID:5zePDO.60
- >>227
迫り来る血の刃を見るなり、優芽はわざとそこへ飛び込んでいった。
優芽の左肩が切り裂かれ、血が噴出する。
「へー……それはとっても面白いねぇ……」
ゆらり、と崩れかけた身体のバランスを踏ん張って整える。
そして何を思ったか、手にしていた槍の柄を、傷口にぐりぐりと押しつけ始めた。
「っぐ……じゃあ、さ……」
鮮やかな青が、塗りつけられた血で赤く染まっていく。
そうして柄の大体半分くらいが赤くなったところで、優芽は槍を頭上に構え、
「その能力が「悪い子」になっちゃったら、いったいどーなるのかなぁ……!?」
ヘリの回転翼さながらに振り回した。
遠心力で槍に塗られていた血が飛び散り、石畳に、柱に、瓦礫に降り注ぐ。
それらの血からは、名状しがたい「悪意」のようなものを感じるはずだ。
- 229 :R.P.L:2011/04/29(金) 00:11:22 ID:j3dxNUKs0
- >>228
「…、わざ、と…かい?言っておくけど、レベルの高い攻撃の方が入る経験値は多いんだよ?」
困惑したような魔術師。だが、その後の行為にさらに混乱は深まるばかりだ。
「僕はそんなことじゃぁ動揺しないよ、でも…そうか、槍以外の、君の能力は…ッ!」
その行動の共通項、それは血液。血液に何らかの効果がある、と推定し、
飛散する血液を防ごうとしたが、微小な滴が完全に防げるわけも無く。
また、自分の周りに赤い染みを作ったそれに、何かが狂っていく感覚があった。
「…ッ!?呪い…!なんてことだ、くそッ!」
彼の姿が、また変化する。その姿は、大男。武器は一振りの大斧、だが
その巨体は槍の素早い攻撃をかわすには向いていないし、リーチも合わない。
「くっそ、ジョブチェンジの制御が効かない…よりによってウォーリァか、いや、これだけでもまだマシだ。
良いのがまた出るのを待つしか無いなッ!とりあえず…地壊撃ッ!」
斧を振りかぶり、瓦礫を盛大に飛ばす。周りに存在する狂った血液を遠のかせる為でもあるが、
それでも威力は高いだろう。だが、呪いのせいか狙いが甘かった。
- 230 :穏島優芽:2011/04/29(金) 00:26:15 ID:I.2jsPKM0
- >>230
狂い始めた相手を見て、優芽は激痛の中、嬉しそうな笑みを作った。
「ふふ、ふ……ルルイエの館にて死せるクトゥルフ夢見るままに待ちいたり……ってね。
良い感じ。波が来てる」
呟くように言った優芽は、瓦礫の雨を回り込むことで回避し、
魔術師から大男に変わった相手の側面をとる。
「まずは、お返しの分……!」
左肩を負傷している優芽は右腕だけで槍を操り、大男の膝裏目がけて槍を突き入れた。
- 231 :穏島優芽:2011/04/29(金) 00:27:23 ID:I.2jsPKM0
- //やべ、打ち間違ってた
// >>230→>>229
- 232 :R.P.L:2011/04/29(金) 00:37:09 ID:j3dxNUKs0
- >>230
大男のわき腹には魔術師と同じ傷が入っていた。どうやら、肉体は変化こそすれ
ダメージは蓄積されるようだ。
「僕より、よっぽど悪趣味じゃないか、…ッ!」
瓦礫を避けた相手にそう言い放つ。
「だけど…足はくれてやるよ、その代わりッ!」
軌道がブレても関係無い。この技は当てる為では無い。
避ける時間を敢えて無くし、彼は迎撃の態勢を整えていた。
膝下に走る激痛と引き換えに、ウォーリァは斧を振り下ろす。
「震撃ッ!」
目標に攻撃が当たるかどうか、では無い。
足場の安定を奪うその攻撃は、標的がどこに居ようと地に足つく限り避けられないのだ。
「ジョブチェンジッ!」
すかさず転がり、相手の間合いから離れたときには、男は白装束のヒーラーになっていた。
「…治癒魔法が効きにくいな、ただでさえレベルが低いのにッ!」
だが、呪いの効果は彼の体を蝕んでいた。
「さて、血の効果は打ち消させてもらうッ!ホーリーライトッ!」
聖属性の状態異常回復。衣服についた血が落ちていく。
彼の能力は状況に合わせたジョブチェンジによる多様な攻撃が特色だ。
呪いでアンコントローラブルになってしまうと、不利に働きかねないのだが。
そう、どうしても、回復中は隙になる。
【R.P.L、攻撃無し】
- 233 :穏島優芽:2011/04/29(金) 00:53:33 ID:I.2jsPKM0
- >>232
「く、うぅっ……!」
斧による激震で、優芽は耐えられずに尻もちを突く。
2撃目を突き込もうとしていた優芽にとって、それはダメージすらないものの、手痛い反撃となった。
「……やるね! レベルが低いっての、ウソなんじゃない!?」
槍を支えにして立ち上がった優芽は、足元の石畳を槍で薙ぎ払い、一直線の傷をつける。
「クトゥグァ! いあ!」
優芽の呼びかけで、石畳の傷が活火山のそれと同じように炎を吹き上げる。
吹き上がった炎の壁を槍で払い、炎の飛礫と変えて白装束に変化した男を狙う。
一つ一つは微細なダメージだが、いかんせん数が多い。
- 234 :R.P.L:2011/04/29(金) 01:09:03 ID:j3dxNUKs0
- >>233
「いや、レベルが低いのは本当さ!だから君に引き上げて貰うんだッ!」
吹き上がる焔、そして飛来する、火山弾のような熱量を持った投石。
「旧支配者、火の邪神…か…ッ!ライトニングッ!」
単線の雷が飛来する火山弾を打ち抜き、爆散させる。
だが、無数の瓦礫を防げるはずも無く、
「ぐあっ!…ああ、くそ、手数が多いな…ッ!」
忌々しげに吐き捨てる。瓦礫の速度により、石畳をすべる。火が両手を炙る。
しかし。
ピロリン。
攻撃を受けた事により、レベルアップの音がする。
白装束がニヤリと笑う。
「ヒーラーLv5…5の倍数。必殺技の登場だ、君がッ」
より洗練された象牙の杖が、彼女へと向けられた。
神聖なその杖から、強烈な圧迫感を感じる。
「君が引き上げてくれたッ!」
両手を広げ、高らかに詠唱する。
「セイントシルバーッ!」
彼女の頭上に、銀の大剣が現れていた。
切っ先を下にして、真っ直ぐ落ちてくる。
いや、堕ちてくるのだ。
剣の攻撃力ではなく、圧倒的な威圧の力がこの技の真骨頂だった。
常人ならば、畏怖に体が縛られ、逃れられないだろう。
「君を倒して!僕は更なる進化を遂げるッ!」
- 235 :穏島優芽:2011/04/29(金) 01:32:46 ID:I.2jsPKM0
- >>234
「……!?」
びりびりと身を押しつける圧迫感に、優芽の動きが止まる。
頭上を見やれば、銀色に輝く大きな刃が落ちてくるところだった。
回避しようとすれば出来る速度。しかし、足が動かない。
(魔力で押さえつけてるんだ!
これは、重い……!)
しかし、優芽はかの大怪物、カノッサ機関に名を連ねる者だ。このままやられるつもりは、毛頭ない。
彼女は鉛を仕込まれたような動きで槍を地面に突き立てると、自らの穢れた魔力を槍に注ぐ。
あの剣は強大な聖性で構成されている。……ならば、それと対になる邪気をぶつけてやれば良いだけの話だ。
が、
「調子に乗って血を出しすぎたね……。たぶん、これがミツバチの一撃になる」
肩の出血が予想以上に多く、優芽の意識が朦朧としてきている。
次の一撃を繰り出したが最後、彼女は戦闘不能となるだろう。
「……よし! じゃあ、行こっか!」
突き立っていた槍を引き抜く。槍は、優芽の血に潜む「悪意」に染められ、蜃気楼を作るほどの邪気を放っていた。
そして、槍を逆手に持ち替え、目と鼻の先まで近づいた剣を見据えて、
「……行っけぇ!」
持てる力の全てを出して、思いっきり投擲した。
槍は、邪気の欠片を周囲にまき散らしながら、聖性の剣を迎撃する。
- 236 :R.P.L:2011/04/29(金) 01:47:39 ID:j3dxNUKs0
- >>235
「…なんて邪気、闇の力…本当に、悪趣味だな…ッ!」
捻じ曲がる空間に息を呑むが、彼の魔力の供給は止まることは無い。
押し潰す。断ち切る。このまま、銀の剣を墓標にするのだ。
「はははッ!良いねぇ、この感じッ!?
対立属性の衝突、全力で相手になるッ!」
狂気の笑み。もはや満足に立つ事も出来ない体で、
それでも杖を支えにその光景を瞳に収め続ける。
左足はもう使えないだろう。
びし、ミシ。
剣が一回り、二回り大きくなる。
圧倒的な神聖の剣による威圧の波。
それと共に堕ちてくる断罪の剣。
だがそれを、毒々しい程の蒼さと邪気を撒き散らす闇の一撃が、貫いた。
全霊を込めた邪槍が、神聖を穢して飲み込んで行く。
ヒーラーの目が見開かれた。
一瞬の無音と共に、銀の剣は一点に収束し、衝撃と共に砕け散った。
「…まさか」
ヒーラーは杖にすがる様に辛うじて立っているが、結果は明白だった。
空間を、邪が支配する。
穢槍がその邪性で闘技場を汚染した。
治癒術が逆流し、裂傷から血が噴出する。
「くぉ、おおおッ!」
それでも、男は杖にしがみつく。倒れてはいけないと言い聞かせるように。
- 237 :穏島優芽:2011/04/29(金) 02:06:00 ID:I.2jsPKM0
- >>236
「……悪趣味なのは、どっちだよ、まったく」
旧支配者の邪気で穢された空間に、優芽の声が静かに響き渡る。
全力を込めた槍を投擲した後の優芽は、近くの柱に寄りかかり、座り込むだけで精一杯の状態だった。
「戦ってレベルを上げる力ってことはさ、修羅道以外の道が残されてないじゃん、それ。
胸が熱くなるくらいけったくそ悪いよ。生き地獄ってやつだね」
優芽の前に、上空から槍が落ちて突き刺さった。
聖性を中和してなお、邪気を吹き上げる槍の姿に、優芽はくすり、と笑う。
「心地よい邪気だとは思わない? 精神が黒く染まって、見たこともない深いところに堕ちていく感覚がする。
無遠慮な光のないとこに連れてってくれる。これだから旧支配者の研究は止められないよ……」
優芽は「ああ……」と、恍惚の表情で吐息を漏らす。
彼女もまた、狂気を宿した者だった。
- 238 :R.P.L:2011/04/29(金) 02:21:31 ID:j3dxNUKs0
- >>237
「…この力は…僕の願望だ。この能力は…箱庭、限定なん…だ。
箱庭を出た僕はただの無力な一般人で、君など…興味も持ちそうに無い…小さな存在だ」
独り言のように、ヒーラーは呟きながら、立ち続ける。
「修羅道であろうと、関係ないさ。この中で、この中でのみ…僕は強くあれるんだから…」
血だまりが出来ていた。治癒の逆流により、今までの傷が開いている。
白装束が毒々しい赤に染まる。
邪気に染まった空気を、彼は大きく吸った。
「セーブ」
一瞬、彼の体が光る。そして、遂にヒーラーは崩れ落ちる。
「君には解らない、だろう…ね。
小さな希望が目の前にあれば、人はそれに縋る…
僕は、君のように…自ら堕ちれなかったのさ」
呼吸の度に口の端から血が垂れる。血の泡が、つぅ、と喉を滑った。
「だけど、この感覚は、この時間は、この空間は
光も何も無い、闇の帳は…救われた、気分だね…」
そして、幸福そうな顔で、目を閉じた。
「ありがとう、またいつか…戦おう。更なる進化の為に」
別れの言葉を残して、ロールプレイング・ライフは消滅した。
ログアウトとはまた違う、ブレを伴なった強制切断。
邪気に浸った静寂が訪れた。
【R.P.L、敗北】
//お付き合いありがとうございましたー!
単発キャラでは無いのでまたお会いしましょう!
- 239 :穏島優芽:2011/04/29(金) 02:40:17 ID:I.2jsPKM0
- >>238
「……なるほど。ここは、君にとっての「救い」の場所、なんだね。
あたしが、邪神の腕に感じるのと同じような……」
優芽のまぶたが段々重くなってくる。
彼女の左肩から流れている血は、周囲に血の池を作るほどだ。
失血死は、避けられない。
「あらら……セーブされちゃった。
……ま、もっと面白くなるっていうんなら、それでもいいけど」
ついに、優芽の視界がまぶたで遮られた。
そこからはもう、加速度的に進んでいく。
「更なる進化のために、か……。ウチの会社も同じようなこと言ってるよ。
縁があるなら、また会うのかもね…………」
最後に、「あーあ……腹減ったなぁ……」と漏らし、そのまま優芽は動かなくなる。
死亡判定を受諾した箱庭のシステムが優芽を切り離すまで、邪気に包まれた彼女は静かに眠っていた。
//こちらこそありがとうございました。
//遅レスすまんです……
- 240 :想条 織我:2011/04/29(金) 20:16:16 ID:j3dxNUKs0
- 霧が立ち込めていた。
異能都市の大通りは、白い靄がかかったようになっている。
車ものろのろと進み、ヘッドライトがどこか不安そうだ。
人通りもあるが、その霧のせいで閑散とした印象を受ける。
霧は、ある場所へ近付けば近付くほど濃くなっていった。
歩道の端に、敷物に細工を並べる露店のようなものがある。
其処に、3つの人影があった。
- 241 :柊宇都 綾:2011/04/29(金) 20:31:00 ID:7hcwnxwgO
- >>240
「霧……?」
一人の少女が大通りに差し掛かった。
全てが白く染まった視界を前に、機械の馬の足を止めさせる。
暫く周囲を眺めていたが、再び歩を進ませる。
注意深く一点の視線を動かしつつその足は濃霧の中心点へと向かっている様だった。
「?」
濃霧の中心点。最も霧の深い場所。
最早視界もまともに機能しておらず、ぼんやりと見える人影。
その人影に好奇心の赴くままに近寄っていく。
- 242 :想条 織我:2011/04/29(金) 20:45:39 ID:j3dxNUKs0
- >>241
霧の中心から、その露店から声が聞こえてくる。
「ああ、…ありがとうございます、ありがとうござ、ひっ、あ、ありがとうございます…」
異常な量の涙。泣きながら、露店の主の足に縋りついている中年の女が居た。
露店の主は…白いシャツに、黒いスラックスを着て、眼鏡をかけた平凡そうな男は、
置かれた小さな椅子に座ったまま、穴の開いたような黒い目をその女に向けていた。
その横に、スーツを着た若い男が立っている。近付く少女を見て、泣いている女の肩を抱き、
そのまま近くの裏路地へと一緒に姿を消した。
すすり泣きの音が、十分聞こえなくなってから、露店の主は少女の方へと顔を向けた。
「おや、短時間の間に二人も…今日は商売繁盛だね」
中年の男が、座ったままにこやかに笑う。
「どうぞ。霧のせいで見にくいかもしれないが」
並べられた細工の方に手を伸べる。
貴金属での細かな装飾品が、数個、並んでいた。
どれも同じく、英語のLをモチーフにした装飾品だ。
- 243 :柊宇都 綾:2011/04/29(金) 21:00:13 ID:7hcwnxwgO
- >>242
去っていく二人に視線を向ける。
霧のせいでぼんやりとした像でしか見えず、どんな人間かは解らなかった。
目の前の、この男も同じ。今解るのは服の色程度。
「この霧は……何だ?」
機械の馬から飛び降りる。
手のひらを上にしてゆっくりと手を水平に動かし、周囲の様子を問う。
警戒の心があることが少女の声から簡単に感じられる。
- 244 :想条 織我:2011/04/29(金) 21:12:20 ID:j3dxNUKs0
- >>243
「私の周りにはいつもこのような霧が出るのでね」
かちゃ、と新しい細工を並べる。
「まぁ少し待って欲くれないか、もっと良く見えるようにしよう」
さぁ、とゆっくり、霧が薄くなっていく。とはいえ、完全に消えるわけでは無い。
露店と、その主の顔が判別出来る程まで霧が引いた。
「警戒しているね、無理も無い。この街では異常は日常茶飯事だけど、
だから異常が安全だという理由にはならないからね。」
大丈夫、とでも言うつもりだろうか、彼は両手を広げて見せた。
武器も何も持っていない。
「そして、君の警戒は、…一般人、では無いようだね。
少なくとも、純粋に店に興味があって来た訳では無さそうだ」
言葉をゆっくりと紡ぐ。
文章自体は何という事は無い。だが、声が、言葉が否応なしに染み渡る。
張り詰めた警戒をゆっくりと溶かすように。
- 245 :柊宇都 綾:2011/04/29(金) 21:25:33 ID:7hcwnxwgO
- >>244
「……」
その険しげで威圧感のある表情こそ変化は無い。
が、男の動きに、言葉に少しは警戒心が削がれたのか、歩みを進め近づいてきた。
背後の機械でできた双頭の馬があとに続く。
「何の店だ? ……あまり良い場所には感じないが」
一見すると普通だが、眼を凝らすと肩の周りや腰の辺りに割かれた布地は少なく、若干過剰気味な服装をしている。
髪に覆われて隠された左目を抑え、ため息を吐きつつそう言った。
- 246 :想条 織我:2011/04/29(金) 21:32:22 ID:j3dxNUKs0
- >>245
「普段は良いところなんだけれどね、私が来るといつもそうだ。霧が出る」
笑いながら、彼はその後ろの馬に興味を示す。
「それは…?馬の形をしているが、…複雑な機構だね」
「この店は、見ての通り金細工を売っているんだ。
私が趣味で作ったものだが、まぁまぁ良いものだと自負しているよ。
そして、買いに来た人の話を聞く場所でもあるんだ」
霧がまた濃くなったような気がする。
「どうしてその目は焼けてしまったのかな?」
- 247 :柊宇都 綾:2011/04/29(金) 21:43:39 ID:7hcwnxwgO
- >>246
「……ただの貰い物だ」
右手を伸ばし、馬の背に乗せる。
すると、双頭合わせて24個の光が灯り、全身に雷が走った。
「!!」
目を抑える力を強め、逆の目では男を強く睨む。
「何だ、お前は……何故それを知っている!」
- 248 :想条 織我:2011/04/29(金) 21:54:46 ID:j3dxNUKs0
- >>247
「貰い物、か。戦闘経験のある君の武器は、それでは無さそうだね」
まるで昔から知っているかのように、すらすらと言葉が流れている。
眼鏡の奥の目は不気味だが、不思議と敵意や悪意は感じない。
言葉自体は飾り気も何も無い。にも関わらず、言葉の不穏な空気と裏腹な、奇妙な暖かさを感じるのだ。
「知っているんじゃないよ、『今知った』んだ。君の目は焼けている。
何か事情があるのだろう?そして今もその事情が君の枷になっているのでは無いかな?」
一つの細工を手に取る。ちゃら、という音と共に金の鎖が流れた。
「そんなに怖がらないでくれ。私は事実を知っているだけだ。」
「君の事は、まだ何も知らないんだ」
にっこりと笑う。
- 249 :柊宇都 綾:2011/04/29(金) 22:08:21 ID:cskw3E.60
- >>248
「黙れッ!!」
蒼紅24の光がもう一度灯ると同時、男の足元に電撃が飛んだ。
しかし、狙いは甘く、辺りに行く事でもしなければ当たらないだろう。
「お前……!!」
その間に右手に漆黒の大剣が現れる。
今の少女からは迷いと恐怖がいとも簡単に感じ取れる。
- 250 :想条 織我:2011/04/29(金) 22:17:58 ID:j3dxNUKs0
- >>249
「おっと!…やっぱり、君は怒るだろうね」
椅子から緩慢に立ち上がり、少し移動。
その動作は、電撃が放たれる直前に行われた。
攻撃は、無論当たらない。
「私なら、君の迷いを解放してあげられるかもしれないよ。
そんなに大きな武器を持っていても、君の心に安心は無い。
必要なのは、心を貫く一本の芯。…迷いを捨てれば、人は驚くほど強くなるのだから」
優しい言葉がかけられる。
剣を向けられていても、男の表情は穏やかで、変わることが無い。
霧が、更に濃くなった。大通りにクラクションが響く。
「…さぁ、攻撃したいならすれば良い。
君への救いの扉は、開かれている」
片手を、差し伸べるように出す。敵意も悪意も感じない、色白のただの、手。
- 251 :柊宇都 綾:2011/04/29(金) 22:28:00 ID:cskw3E.60
- >>250
「僕が、迷っていると! 何故解る!!」
左手の袖口に隠してあったナイフを投げつける。
それと同時に走り込み、大剣で豪快に叩きつける動作を取った。
- 252 :想条 織我:2011/04/29(金) 22:39:45 ID:j3dxNUKs0
- >>251
「才能だよ。私は君の事を理解する才能がある。
だから、解って当然だ。迷い、恐れ、困惑――」
「救ってあげよう」
ナイフは、投げる前にかわされていた。
どういう訳か、動き自体は緩慢なのに、攻撃は当たらない。
大剣を揺れるようにかわし、更に飛び散る瓦礫すら彼を避けていく。
「しかし、少々その剣は私の手に余るね」
キィィィィ、と力が収束する。
霧が一部分晴れ、中心に光の球が構成された。
「迷える武器は振るわず、捨てなさい。」
収束したエネルギーの塊が、彼女の持つ剣を弾き飛ばそうと迫った。
- 253 :柊宇都 綾:2011/04/29(金) 22:51:25 ID:cskw3E.60
- >>252
「クッ……!」
少女の手から弾け飛んだ大剣は刃を下に落下して地面へ突き刺さった。
一瞬、怯む動作を見せるも直ぐに立ち直る。
今度は右手からナイフを投げると再び走り込む。
大剣を失った少女は攻撃の意思を失わない。
何故なら、まだ少女には武器が在る。
「消えろッ!!」
腰に刺さった水色の長刀。
それから放たれる高速の一閃が霧を割く。
- 254 :想条 織我:2011/04/29(金) 23:01:52 ID:j3dxNUKs0
- >>253
「そう、それで良い」
剣を失った少女を見て、彼は満足げに微笑むが、その後の行動に少し怪訝な顔をする。
「迷いある牙を私に向けても、『私』は消えないぞ。
君が恐れているのは、私ではなく、私を通して見える君の『真実』だ」
ゆらり、と直前でナイフをかわす。まるで、解っているかのように。
だが、その刀の攻撃で、初めて男に緊張が生まれた。
「…ッ!これは、…性能が…捕捉しきれないな」
今までぎりぎりで攻撃をかわしていた男だが、初めて明確に距離を取った。
シャツが薄く裂け、たらりと血が垂れる。噴出した水に、薄い赤が混じる。
だが、笑顔は壊れない。
人の心の隙間に入り込み、巧みに自身への畏怖と崇拝を植えつける、
その狂信の才能は、未だに底が割れていない。
「無駄だ。君の攻撃は、真実への恐怖に他ならない。
君の闇は、私が取り除こう」
- 255 :柊宇都 綾:2011/04/29(金) 23:12:26 ID:cskw3E.60
- >>254
「僕に迷い等……!」
元々情緒不安定で精神にまだ幼い節のある少女である。
その為想条の精神攻撃が面白い程に効き過ぎる。
いまも心を迷わせて次の手を出そうとしていない。
もう少し揺さぶれば攻撃の意思を取り除けそうだ。
- 256 :想条 織我:2011/04/29(金) 23:21:20 ID:j3dxNUKs0
- >>255
想条の能力は、霧に触れた物体の状態を余すところ無く知れる事。
その為、眼帯の裏の目が実は焼けていることは霧に入ってきた瞬間に解っていた。
また、能力による数秒の未来予測により、異能を介さない攻撃はほぼ先に察知する事も出来た。
この凶悪な情報能力と、生まれ持った才能により、
時には事実、時には推測で相手の心を揺さぶり、そして安心させてしまう。
そして、今も、彼はそのようにして牙を折ろうとしている。
「教えて欲しい。君がどうして迷っているのか。
聞かせて欲しい。君に何があったのか。
私は君を理解するだろう。心の霧を晴らすだろう。
そして、安息な、迷いの無い君の未来を約束しよう。
……さぁ」
穴のような目が、少女を見つめた。
優しい笑顔。差し伸べられた手。
霧の中で、その白い手だけがひときわ鮮烈に見える。
それは、誘い。
戻れない、彼の甘い罠。
握ったが最後、離れられない安らぎの手だ。
- 257 :柊宇都 綾:2011/04/29(金) 23:34:35 ID:cskw3E.60
- >>456
ふらり、ふらりと寄っていく。
刀も既に納められ、想条に向けられる牙は最早ない。
「教えてよ……。
お父さんが居なくなったら……。
僕は一人になったら僕は、何を支えにしていけばいいの……?」
白い手を取りつつそう答える。
想条には今の彼女が何よりも無害な物に見えるだろう。
- 258 :想条 織我:2011/04/29(金) 23:42:56 ID:j3dxNUKs0
- >>257
その瞳は、少女が手に縋りつく事をさも当然のように見ていた。
笑顔は崩れない。慈愛に満ちた、その雰囲気。
「可哀想に、君の支えは居なくなってしまったのだね…
君が一人で立てるその日まで、私と私の仲間を支えにしなさい。
私の言葉を杖にして、私の知を骨にしなさい…
もっと聞かせて欲しい、君の闇を、心の霧を」
先程の女性も、そうだった。
心を折られ、心を撫でられ、最後には彼に縋りつく。
「さぁ、行こう。君を理解する為に。君を迷いから救う為に」
少女の手を取り、路地裏へ向かおうとする。
いつの間にか、スーツの男が微動だにせず路地の入り口に立っていた。
- 259 :柊宇都 綾:2011/04/29(金) 23:51:03 ID:cskw3E.60
- >>258
「良いよ……解った。
キミが支えになってくれるなら、僕もキミを手伝うよ……」
機械の馬を呼びよせて、想条についていく。
もう、既に彼女は一切の疑念を持っていない。
- 260 :想条 織我:2011/04/30(土) 00:01:18 ID:j3dxNUKs0
- >>258
満足そうな笑みを浮かべて、彼は少女の手を握った。
足取りは、路地の方へ。
前を通るときに、スーツの男が深々と頭を下げる。
そして二人は都市の闇の中へと潜って行った。
//お疲れ様でした、絡みありがとうございました!
- 261 :黒沢小百合:2011/04/30(土) 22:42:27 ID:SSMHlh/20
- 【AGカフェ】
『今日夜10時8分ごろ、千夜グループ都市警備部門所属の
○○○○さん宅が激しく燃えているのが発見され消防が消火に当たりましたが
家屋は全焼。焼け跡から逃げ遅れたと思われる○○○○さんの遺体が発見され――。』
カフェ備え付けのTVが、火事のニュースを伝える。
それによると被害にあったのは小百合の部下である、とある社員。
(ふふ……『アレ』も私に楯突きさえしなければ長生きできたのに。バカな女だ。)
しかし小百合はアナウンサーの機械的な言葉を聴きながら、
上機嫌な様子で上等なグルジアワインをグラスに注ぐ。
そのグラスに写る彼女の表情は恍惚ともとれるような、悪意に満ちた笑みであった。
- 262 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/04/30(土) 23:14:43 ID:WVrfsEdY0
- 【AGカフェの扉が突然開かれた】
「ここが私のおうちですか〜?!」
【…メイド服で瓶底メガネの女性が妙に元気よく入ってくる】
「……あれ。ここはお店…ですね…」
【片手にはスーパーの袋(ネギがはみ出している)を抱えたままあたりを見回している】
- 263 :黒沢小百合:2011/04/30(土) 23:23:41 ID:SSMHlh/20
- >>262
小百合は興が殺がれたとでも言いたげな様子で顔を顰め、
その素っ頓狂な声の方向に顔を向ける。
「…………。」
(何も悩みがなさそうだな。
羨ましいよ……暇そうで……。)
小百合は『わざと聞こえるように』ため息をつき
残ったグルジアワインを一気に飲み干した。
- 264 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/04/30(土) 23:25:58 ID:WVrfsEdY0
- >>263
「え?あ…すいません。
たしかにこのあたりがおうちだったはずなのに…
地図のとおりではたしかに…あれ?」
【慌てて外を見回す。改めてあたりを見て驚いた】
「あの〜、そこの人…
ここはどこなんでしょう…」
【かなり困った顔で尋ねてきた…慌てすぎてため息は聞こえてないようだ】
- 265 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/04/30(土) 23:26:31 ID:WVrfsEdY0
- //名前違うよ!
- 266 :黒沢小百合:2011/04/30(土) 23:35:38 ID:SSMHlh/20
- >>264
「さあね……。」
(歪みに巻き込まれたか……?
ククク……脳味噌が空っぽの女には似合いだな
いつまでも無意味な努力を続けるのは……。)
小百合は至福の時間を邪魔されたのがよほど
気に食わないのか、取り付くシマも無いほど冷たい。
「あなたの家でない事だけは確かですよ。
『歪み』にでも巻き込まれたのではないですか?」
- 267 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/04/30(土) 23:39:44 ID:WVrfsEdY0
- >>266
「えっと…歪み、ですか?」
【しばらく空を見上げて考えた後】
「あ!そうだ!」
【と言ってポンと手を叩く】
「帰る途中に急にあたりがぐにゃぐにゃになって私思わず転んでしまったんです!
転ぶのはいつものことですから気にせず歩いてたんですが…
あたりが観たことないところばっかりで…もしかしてそれが歪みですか?」
【ひと通り話し始めた】
- 268 :黒沢小百合:2011/04/30(土) 23:49:26 ID:SSMHlh/20
- >>267
「ペラペラペラペラと五月蝿いやつ。
お前は『自分で考える』という事が出来ないのか?」
元より攻撃的で短気な小百合。
ついに、堪忍袋の尾が切れたようで手に持ったグラスを握りつぶし
そのまま握りこぶしをテーブルに叩きつける。
「……私は今、機嫌が悪いのだ。
貴様の四六時中開かれた口から発せられる、
便所のクソのようなおしゃべりに付き合ってやる義理などないッ!」
- 269 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/04/30(土) 23:52:51 ID:WVrfsEdY0
- >>268
「ふゃう!?すすすすすすすいません!」
【怒鳴り声を聞いて思わず腰を抜かした】
「その、機嫌悪いなんて知らなくて…
ほ、他の場所で聞いておきますから…あうあう、すいません!」
【何度も頭を下げる。かなり気が弱そうに見える】
「その…ここにいたら迷惑になるだけでしょう…か?」
【直ぐに出ていける姿勢を取る】
- 270 :黒沢小百合:2011/05/01(日) 00:00:05 ID:SSMHlh/20
- >>269
「何度も同じ事を言わせるな。
今、『自分で考えろ』といったろーがッ!!」
やることなすこと一々癪に障る女だ。
もしかして本当に頭の中は空っぽではないのか?
「私はお前のような物と語る舌は持たん。
もう、勝手にしろ。」
どうやら、女性とは決定的にウマがあわないらしく
小百合はフン、と鼻息荒く腕組みしそっぽを向いてしまった。
- 271 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/01(日) 00:02:57 ID:WVrfsEdY0
- >>270
「うう…自分で考える…」
【あたりを見回して軽く頷いた後】
「とりあえず寝床を探します」
【と、ヒトコト言うと】
「す、すいませんでしたぁ」
【足早に店から出て行った】
//orz
- 272 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/01(日) 21:15:09 ID:WVrfsEdY0
- 【AGカフェに独りの少女が座っている】
「うう…う…うううう…」
【座席に顔を突っ伏してうずくまったまま体を震わせていた】
「…ほんとは…そんな…」
【何か小さく声が聞こえる】
- 273 :No.31:2011/05/01(日) 23:36:36 ID:j3dxNUKs0
- 夜の公園に、薄着の少女が居た。
異国の研究所の被検体、番号31。
仲間と組んで異能都市へのテロを行い拘束されていたが、
今は観測局の保護観察期間となっている。
その少女が、久しぶりに本気で能力を使ったのは、
数分程前、明らかに正気では無い目の色をした男に襲われたからだった。
「か、は、早く俺の、モノになれ」
「うるさい!後3秒以内に消えなかったら氷像にするわよ!」
距離数メートル。だが、走れば男の方が早いだろう。
背中を向けずに、牽制し、一歩でも踏み込めば能力を直ぐに使おうとしていた。
- 274 :南瓜:2011/05/01(日) 23:43:59 ID:j3dxNUKs0
- //投下ミス!すみません、>>273は無視してください!
- 275 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/02(月) 22:01:31 ID:WVrfsEdY0
- 【AGカフェ】
「……すー…すー…」
【昨日と同じ席で突っ伏したまま眠りについていた】
【実はディスはすでにココでかなりの時間寝ている。
かなり眠かったのかそれとも…】
- 276 :セシベル・S・コープス:2011/05/03(火) 13:08:17 ID:WEhMfl5k0
- >>275
【カフェの戸を開いて入ってくる、やけに露出の多い服を着た青年】
ほー……。
【どかどかと我が物顔……というか、そこまで他人を意識していない平然とした顔で】
【カウンターを乗り越えて入り、適当にパンやら肉やらを物色してサンドイッチを作り】
ん。店員はどこだ。
【そんな当たり前の事に気づいたのはサンドイッチを口いっぱい頬張ってやっとだった】
【なぜかカウンターの店員サイドでくつろぎながら、退屈そうに唯一の客を見やる。見覚えのある少女だ】
寝てるな……。
【脳内イタズラエンジンがフル回転で作動開始。】
- 277 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/03(火) 13:11:39 ID:WVrfsEdY0
- >>275
「すー…すー…」
【寝息を立てていなければ死んでるんじゃないかと疑われるくらいの爆睡っぷりである】
【ちょっとやそっとでは起きそうにない…】
【ただ以前会ったときに比べて不気味な魔力のようなものを感じられるかもしれない。】
- 278 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/03(火) 13:12:14 ID:WVrfsEdY0
- //失礼。>>276でした。
- 279 :セシベル・S・コープス:2011/05/03(火) 13:18:12 ID:WEhMfl5k0
- >>277
……ム。
【近づくと、怖気の立つような何かに顔をしかめた】
【セシベルはほぼ純粋に魔力のみで作られた生命体】
【まるでその不気味な力が、自分の体に直に触れるようで……。】
…せっかく傑作イタズラを思いついたというのに。
【かなり不満げに指の間に挟んだ大量のハムを放り投げる。何する気だったんだ】
- 280 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/03(火) 13:21:24 ID:WVrfsEdY0
- >>279
【不気味な魔力はすこしずつであるが外へと漏れ出しているようである。】
【力はディスの胸の真ん中あたりから放射している】
「…ん…」
【少し眠りが浅くなったのか、まぶたがわずかに動く】
「……くんくん…」
【鼻を鳴らして食べ物の匂いを探っている…
お腹空いてる可能性ありである…】
- 281 :セシベル・S・コープス:2011/05/03(火) 13:32:03 ID:WEhMfl5k0
- >>280
おいおい頼むぞ。俺は魔力と深い関わりはあるが、別に関わりたいワケじゃないんだ。
【大げさに頭を垂れ、左右にぶんぶん振るう。それからカウンターに引き返して】
こういう魔法とか、魔術とかは苦手、だっ……と。
【ぶつくさ文句を言いながらまたパン耳を切り、肉を切り……またサンドイッチ】
別に料理が苦手ってわけじゃないからな。
【皿に乗せて頭のすぐそばに置いてやる】
【それから……ディスの近くに立ったまま、じーっと様子を見てる】
- 282 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/03(火) 13:34:35 ID:WVrfsEdY0
- >>281
「…くんくんくん」
【頭の直ぐそばに置かれたサンドイッチの匂いをかいだとたんに】
グーキュルルルルル
【けたたましく鳴らされる腹の音】
「あう…?おなかすいたの…」
【そう言ってディスはゆっくりと目を覚ました】
「あう!ごはんなの!」
【いうが早いか眼の前のサンドイッチを素早く取り上げて食べ始めた】
「もぐもぐもぐもぐもぐもぐ」
- 283 :セシベル・S・コープス:2011/05/03(火) 13:41:45 ID:WEhMfl5k0
- >>282
なんてゲンキンな……まぁいい。
ディス、久しぶりだな。胸見せろ。
【爽やかな笑顔でセクハラまがい。】
【勿論魔力を調べるためだけど、全然オブラートに包まない発言はモロ性犯罪者である】
- 284 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/03(火) 13:49:34 ID:WVrfsEdY0
- >>283
「あうあう〜、おいしいなの〜」
【ニコニコしながらサンドイッチを食べていく】
「…ん?どしてなの?
みてみたいなの?」
【ディスは不思議そうにセシベルを観る】
【幸いディスはそっちの方には疎いので軽蔑の目を向けられたりはしないようだ】
- 285 :セシベル・S・コープス:2011/05/03(火) 14:00:32 ID:WEhMfl5k0
- >>284
個人的にも見てみたいが……ちょっと今回は事情が違う。
そうだな……最近体調が悪かったりしないか?
俺は医者だから見せてみろ。
【スムーズに嘘をつき、そこらの椅子を引っ張ってきて傍らに座る】
- 286 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/03(火) 14:05:14 ID:WVrfsEdY0
- >>285
「あう…そっかなの…
そういえばずーっとちょうしがわるいきがするなの…
どこがわるいかみてもらえるならなの」
【ディスは納得したように頷いた】
「えっと、これでいいかなの?」
【シャツを首の下までたくし上げて胸のあたりを露出させる】
【その胸の中心のあたりにまるで埋めこまれたかのように黒い石が存在している】
【その黒い石を中心として根をはるように黒い血管のようなものが四方八方に伸びていた】
- 287 :セシベル・S・コープス:2011/05/03(火) 14:11:47 ID:WEhMfl5k0
- >>286
【白い肌を侵蝕するように伸びる黒い根に、思わず息を飲んだ】
鼻血吹いて卒倒、って光景じゃないな。
これは何だ? いつからこうなった?
【魔力生命であるセシベルは、ここがあの不気味な魔力の源泉と容易に分かった】
【そーっと指を伸ばして石に軽く触れる】
- 288 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/03(火) 14:16:46 ID:WVrfsEdY0
- >>287
「あう…やっぱりへんなのかなの…」
【ディスは見たことがないのか、それともあまり気にしてないのか。心配そうに見つめている】
「…うーん…いまから3しゅーかんくらいかなの…
『ろざりあ』おむかえにいっていっしょにかえろうとしたときに…
きゅうにめのまえにみたことないひとがきて…」
【そう言って軽く頭をかかえる】
「そのあとどうなったのかはよくおぼえてないけどなの…」
【不安気に答える】
【触れたところからは特に魔力が大きく流れこんでくるように感じるかもしれない。】
【幸いディスの方は触られてもなんともないようだが】
- 289 :セシベル・S・コープス:2011/05/03(火) 14:23:54 ID:WEhMfl5k0
- >>288
ッ……。
【無理矢理存在に押し込まれるような不快感に、素早く指を引っ込める】
胡散臭い奴はいるもんだなぁ。そこらじゅうに。
それだけじゃどうにも俺には分からんな。
ただ……少なくともコレは、
【眉根を下げて目を細め、石を険しい表情で睨みつけた】
『イイモノ』じゃあ、ない……。
- 290 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/03(火) 14:27:36 ID:WVrfsEdY0
- >>289
「あう、だいじょぶなの?」
【焦った顔でセシベルを見つめる】
「そう…やっぱりなの…
こうなってからなんだかずっとちょうしがわるいきがするなの…」
【胸を軽く押さえて頷いた】
「…どうしたらいいのかなの…」
【今までにないくらいの不安そうな顔だ】
- 291 :セシベル・S・コープス:2011/05/03(火) 14:37:38 ID:WEhMfl5k0
- >>290
いやぁ、俺は大丈夫。それよりまずは服を下げよう。
逮捕されるのはイヤだし。
【ディスの上着の端を掴んで元通りに体を覆わせる】
いっその事撃ち抜い………………あー、冗談だ、冗談。
【かなり迷った。今かなり迷った】
もっと魔力・呪いに詳しい人間が必要だな。
……おっと。そろそろ時間だ。それじゃ早く帰れよ。
【不意にあっけなく、セシベルは片手を挙げて足早に店から出ていった】
- 292 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/03(火) 14:50:49 ID:WVrfsEdY0
- >>291
「あうあう…」
【上着をじっと見て言った】
「あう?うちぬ…なにかいったかなの?
あうあう、そうだねなの…しってるひとがいるほうがいいなの」
【少し不安そうに言った】
「あうあう、またねなの〜。
またあおうねなの〜」
【軽く手を振って見送った】
「…う〜…つかれるの…」
【ディスは見送った後テーブルに体を預けて項垂れた】
- 293 :アミルちゃん & アミルちゃん:2011/05/05(木) 00:56:17 ID:cskw3E.60
- 【公園】
「ハッ、とぁ!」
『はっはっはー! 甘いぞアミルちゃん!』
緑色のゆるふわツインテ少女が公園で風に拳を放っている。
振り向きざまに手刀を放ち、さらに一歩踏み込んで蹴る。
よく見れば、それが風相手では無く砂に向かって放たれている事が解る。
少女の目の前に現れた砂の壁。拳を付き上げ壁に向かって走り込む。
始めは腕、次は肩、と緑色の炎を全身に纏い、
「撃熱のぉ……ヘルシュート!!」
タックルをかます!!
砂の壁はシュートと言う名のタックルによって粉砕される。
カッコよく振り返りキメポーズ。
「アミルちゃん完全☆勝利ッ!!」
右手は腰に、左手は指を伸ばして前に。
- 294 :『ジボル』:2011/05/05(木) 01:08:01 ID:WEhMfl5k0
- >>293
【ボロい麻布のズボンを履き、手枷足枷を嵌められた少年が歩いている】
おみせ、が、たべもの、が、たべちゃ、だめー♪
【小百合の根気強い教育によって野生の少年は接続語を覚えた】
【と言ってもカタコトなのは変わらず、即興の歌も意味不明な詞になっている】
がう?
【いつもの公園に近づくと誰かが遊んでいるようで、少し足を止める】
【獣と虐げられた少年の人に対する恐怖心はまだ微弱ながら残っており】
【少々の警戒心を持ってポーズを取るアミルを遠くから眺める】
- 295 :アシュレイ:2011/05/05(木) 01:09:33 ID:zds1Eogs0
- >>293
千夜学園の制服を着た少女が、公園の入り口から入ってきた。
「…………」
彼女はゆっくりと歩きながら、何かを探すようにキョロキョロと周囲に目をやっている。
その手にはハンドガンと思しき物体が握られ、左手も添えられていて、何かあればすぐに構えて撃ちそうな気配だ。
- 296 :アミルちゃん & アミルちゃん:2011/05/05(木) 01:14:49 ID:cskw3E.60
- >>294
「ガウガウと……そういうキミは少年ではないか!」
片手は腰に手を当てたまま、
伸ばした指の4つと握り、人差し指をジボルに向ける。
>>295
勝利宣言と共に勝ちポーズを繰り広げる少女。
見ればその服や肌の細部には傷が付いており、激闘の後を匂わせる……。
- 297 :アシュレイ:2011/05/05(木) 01:23:23 ID:zds1Eogs0
- >>294
ボロと足枷姿の少年を見て、少女は少しの間足を止めるが、
彼女の目的に合致しなかったのか、すぐに視線を外す。
周囲を警戒する少女の表情からは、わずかな緊張感を感じるだろう。
>>296
元々公園に居た少女が、よく見ると傷だらけなのに制服の少女は気付く。
それを認めるや否や、制服の少女は勝利ポーズ状態の少女に駆け寄って、
「何か、ここでありましたか?」
戦いの痕跡を見ながら、話しかけた。
- 298 :『ジボル』:2011/05/05(木) 01:25:29 ID:WEhMfl5k0
- >>295
……?
【少女の持つ拳銃を、何の抵抗や特別の警戒もなくじーっと見つめる】
【長く大きい麻酔銃は見たことがあるが、それ以外の銃に関しては無知だ】
【丸くて大きな目を開いて、じー……】
>>296
がうっ!?
【指さされると同時にぴょんと後ろに飛び上がる。猫みたい】
【四つ這いになろうと背を丸めたところで……】
っ。
【何とか踏みとどまる。四つ這いで行動はしないよう教えられているのだ】
【確か人と会ったときはえーっと…】
こ……こ……?
! こんにちまして!
【色々混ざってる。】
- 299 :アミルちゃん & アミルちゃん:2011/05/05(木) 01:34:10 ID:cskw3E.60
- >>297
「よくぞ聞いてくれました!」
アシュレイに向けて両手でパチパチ。
「今、アミルちゃんは来るべき決戦を迎えるべく、特訓中なんだw」
独りでに風を斬るシャドーボクシング。
だが、どこにも相手などは見受けられない。
>>298
「こんにちましてww」
屈託も表裏も考えも無さそうな笑みを一面に広げて挨拶をする。
「これはサービスだwww受け取れwww」
かたから掛けた黄色のポーチを開き、飴玉数個を落とす。
- 300 :アシュレイ:2011/05/05(木) 01:44:55 ID:zds1Eogs0
- >>298
何だかジッと見られている……。
そのことに、少女は若干のとまどいを覚える。
(……私に興味があるのでしょうか? それとも銃に?)
内心、首を傾げる。
>>299
決戦に向けた特訓。そう言われて、制服の少女、アシュレイは脱力感を覚えた。
「特訓……でしたか。なるほど。
……怪人出現の通報は誤報でしたか」
最後の言葉は、誰に言うでもない感じの、呟きに似たものだった。
アシュレイは拳銃を制服の左脇に仕舞って、特訓中であるらしい少女の周りを改めて見る。
「砂……?」
すると、少女の周辺には砂が散らばっているのに気付く。
無論、公園ならば砂場くらいあるだろうが、それにしたってこの集まりようは普通ではない。
- 301 :『ジボル』:2011/05/05(木) 01:48:46 ID:WEhMfl5k0
- >>299
【あ、バカっぽい】
【それ以下の知識を持ってるジボルだけどそんなふうに思ってちょっと安心】
おー?
【すぐ足元まで近寄って飴玉を取ると匂いを嗅ぐ】
【見たことのないモノのため判断に困ってるのだ】
>>300
おおー……あっ。
【拳銃に手を伸ばそうと思ったところで、アシュレイが拳銃を仕舞った】
う゛ー……!
【不満げに頬を膨らませて唸る】
- 302 :アミルちゃん & アミルちゃん:2011/05/05(木) 01:52:51 ID:cskw3E.60
- >>300
「よくぞ気付いてくれました!
この砂こそが、必殺のアミルちゃんなのだよwwww」
にへらとわらう少女。
言ってる意味が全く理解できないのは正常。
>>301
「それは飴玉だよww」
ポーチの中から同じ物を取り出すとそれの袋を破る。
ジボルに破る様子とその中身を見せつけた後、ゆっくりと口に運んだ。
「こうするんだww」
- 303 :アシュレイ:2011/05/05(木) 02:03:31 ID:zds1Eogs0
- >>301
拳銃を仕舞ったところで、少年が不満そうに唸り始めたのを聞いたアシュレイは、
もう一度拳銃を取り出し、
「これに興味があったのですね。でも、これは危険なものですよ?」
告げてから、アシュレイは公園にポイ捨てしてあったアルミ缶に銃口を向けて、射撃。
何かのスパーク音に似た音を立てて、光る弾がアルミ缶を直撃する。光弾が当たった缶は赤熱して真っ二つになった。
「わかりましたか?」
子供に何かを諭すよう……ではなく、事務的な口調でアシュレイは言う。
>>302
「必殺の……?」
射撃した後で、アシュレイは少女から砂の説明を受ける。
(ちゃん付け……貴島さんがよく私にしますが、かと言って必殺技にちゃん付けするものでしょうか?
いや、そもそも必殺技なんでしょうか……?)
そんなことを考えながら、アシュレイは少女に向き直り、
「もしよろしければ、その必殺の……アミルちゃん、でしたか?
それを見せていただけませんか?」
- 304 :『ジボル』:2011/05/05(木) 02:08:26 ID:WEhMfl5k0
- >>302
たべものか!
【ぱぁっと表情が明るくなった】
【毒見をしてくれたから危害はないだろう……というか食べれるものなら食べたい】
こう、あ、おちた。
【包装を切る。地面に落ちる。拾う。払う。食べる。ばっちい】
んぐ……かたいぞ。
【バリバリ噛み砕いて】
>>303
!!
【麻酔銃など比にならない威力を放った拳銃に】
お〜〜〜〜〜…!
【憧れるように息を吐いた。強い物に憧れるのはこの年齢ならではだ】
みる! みるー!
【拳銃に手を伸ばしてぴょんぴょん跳ね始めた】
- 305 :アミルちゃん & アミルちゃん:2011/05/05(木) 02:17:39 ID:cskw3E.60
- >>303
「ふふふ、そんなに見たいか」
一歩下がって二人に間を開け、右腕を高く上げる。
「この大量の砂をオーバーレイユニットに、
オーバーレイネットワークを構築!」
掲げた右腕に緑色の炎が集まり、渦を巻く。
それと同時に周囲の渦も二人の間の一点に集中し、
炎の渦に同調するように螺旋を描く。
「こい、エクシーズッ!!」
螺旋を描き上り詰めた砂が美しき球体となる。
やがてそれは一つの少女の形となり、ゆっくりと降りてきた。
アミルちゃんの腕に纏われた炎は一体何だったのか。
『砂のアミルちゃん、参上ぉww』
……双子?
>>304
「そうだぞ、少年ww」
凄く得意気になった少女。
偉そうに胸を張る様子が凄くバカっぽい。
- 306 :アシュレイ:2011/05/05(木) 02:25:37 ID:zds1Eogs0
- >>304
「ま、待ってください、今のを見てなかったのですか?」
跳ねながら拳銃に手を伸ばす少年を、困惑しながら避け続ける。
アシュレイは機械ゆえ、少年独特の憧れというものを知らない。
よしんば普通の人間だったとしても、そこには男女の壁が立ちはだかるので、理解したかは疑問だが。
「わかりました、わかりました……。そんなに触りたいのなら、どうぞ」
少年の執念を感じたのか、諦めたアシュレイは銃のグリップを少年に向けて差し出した。
「ただし、引き金を引いても弾は出ませんよ?」
それは弾倉に弾が無い、という意味ではない。
この拳銃は、アシュレイからのエネルギー供給が無いと、ただの金属の塊にすぎない物体に成り下がるのだ。
>>305
「…………!?」
炎の渦と砂の渦の共演を特に驚きもせずに見ていたアシュレイだったが、
その共演の終わりに普通の砂が突然人の形を成したことについては、驚きを隠せなかった。
「これは……どういうことですか?
アミルちゃん……アミルちゃん…………?」
元々居た方と、砂の方を指さして確認するような仕草をとる。
しかし、アシュレイの頭の中は疑問符で埋め尽くされていた。
- 307 :『ジボル』:2011/05/05(木) 02:38:56 ID:WEhMfl5k0
- >>305
〜〜?
【最初味が出るまでは、ガラスか石でも噛み砕いたかというように顔をしかめていたが】
【やがて甘味が出てきて】
っ! うまいぞ!
【口の中をもごもご】
んお!?
【二袋目を開け始めたところで突然砂が蠢きだし、少女の姿を形作ったのに驚きまた飴を落とす】
>>306
わーい!!
【銃を手にとって大はしゃぎ。グリップを握って引き金を引いて】
っばちちー! ばちちー!
【さっきのスパーク音を真似て遊ぶ。暢気な子供そのものである】
【しばらく拳銃をベタベタ触りまくってから、やがて楽しげにアシュレイのほうへ銃口を向けた。弾は出ないものの、危ない】
- 308 :アミルちゃん & アミルちゃん:2011/05/05(木) 02:41:46 ID:cskw3E.60
- >>306
――ガッ
――ガッ
アミルちゃん(緑色)が一歩足を踏み出して、
その横に並ぶアミルちゃん(茶色)がそれに倣う。
『「アミルちゃんパワーッ!!」
>>307
「もったいないwww」
けらけらと笑いその様子を眺める。
- 309 :あしゅれい:2011/05/05(木) 02:51:10 ID:zds1Eogs0
- >>307
「あっ、銃は敵じゃない人に向けてはいけませんよ」
腕をクロスさせ、大きな×を作る。
「銃は敵を殺すための力ですから、それを向けることは殺意を示します。
殺意。わかりますか? お前を殺す、という気持ちのことです」
銃の機能は敵の殺傷だ、とだけ考えてるアシュレイの思考が分かる言葉である。
>>308
「あ、アミルちゃんパワー……」
それを呆然とした様子で見ているアシュレイ。
おそらく決めポーズなのだろうが、それで何が決まるのかが、彼女には理解できなかった。
- 310 :アシュレイ:2011/05/05(木) 02:51:47 ID:zds1Eogs0
- やべえ名前直すの忘れてた
あしゅれい ×
アシュレイ ○
- 311 :『ジボル』:2011/05/05(木) 03:03:56 ID:WEhMfl5k0
- >>308
あ。
【また落ちた飴を拾って、払って、ぱくり】
うまー……。
【至福の笑みである】
>>309
ころ……? ……そっか、これは、ころすか。
【手に持ったモノを見つめる。ずしりと重い】
ん。
【グリップから手を離し、上部を持って相手にグリップを向けて拳銃を返す】
【それから丁寧に体の前に両手を揃えて(手枷のせいで嫌でも揃うのだが)】
ごっめんなさい!
【頭を下げ、変につっかかったカタコトな言葉で謝る。でも珍しく間違いのない言葉で】
あー、とー、……ありがとうござい、やがる?
【いや間違ってる。】
【突然、きゅー、と小さく何かが鳴った】
えーあ…おなか、へる。ばいな!
【お腹を押さえた。どうやらジボルの腹が鳴ったらしい】
【少年はお腹をぱしぱしと叩くと、一度だけにっかり笑って、裸足でぺたぺた走り去っていった。】
- 312 :アミルちゃん & アミルちゃん:2011/05/05(木) 03:07:11 ID:cskw3E.60
- >>309
「アミルちゃんパワーは無限大だw」
『テストには出ないぞww』
成程。全く解らん。
>>311
「少年、可愛いなww
気を付けて帰るんだよー」
ニッコリと。笑いながら手を振って見送った。
「帰るぞアミルちゃん」
『がってんだアミルちゃん』
お互いに顔を見合わせると跳ねて公園を出て行った。
そして勢いよくジャンプするとそのまま『飛んで行った』。
- 313 :アシュレイ:2011/05/05(木) 03:16:36 ID:zds1Eogs0
- >>311
「いえ、わかってくれたならばそれで良いのです」
銃を返してもらいながら、先ほどのはしゃぎぶりとはうって変わった謝罪をする少年に、アシュレイは微笑みを向ける。
自分の振るまいを顧みることができる、規律正しい人間は彼女にとって好ましさの対象だ。それが例え、ボロと手枷の少年であっても。
そして、空腹を覚えて帰って行く少年に手を振り、
「……帰る場所があるのですか。良い、ことですね」
その表情にフッと一抹の寂しさがよぎって、すぐに消えた。
>>312
「無限大……テストには出ない……」
彼女らの、アシュレイの理解を超えた行動と言動に、アシュレイの頭の中は完全に混乱し始めていた。
「アミルちゃん……アミルちゃん……。
アミルちゃんパワー……無限大…………テスト……出ない……」
思考ループに陥ってしまったアシュレイは、二人が去るのにも気付かず、しばらくその場で疑問符に押しつぶされていた。
- 314 :黒沢小百合:2011/05/05(木) 23:27:49 ID:SSMHlh/20
- 【AGカフェ】
「ふぅ……、疲れた……。
なにか……食べる物は……。」
今日も勤務を終え、カフェにふらりと訪れた小百合は
カウンター席に荷物を置き、もそもそと厨房へ向かう。
「スパム……塩抜きスパム……う〜ん、
チーズと……これは……トマト……いや、チリソースかな……。」
食品物色中……。
- 315 :イザヤ:2011/05/05(木) 23:52:23 ID:j3dxNUKs0
- >>314
カラン、と音がして、…いや、しなかったかもしれない。
ともかく既に男は店の中に居た。
黒ずくめの妖怪が、店内を見回して、また店員が居ないのか、と呟いた。
「たまには洒落て見るのも良いもンだ。」
今日は洋食を食べようと、厨房に入ろうとして、カウンター席に置かれた
先客の荷物を見つけた。
「おや、誰か居るのかィ?」
- 316 :黒沢小百合:2011/05/06(金) 00:03:28 ID:SSMHlh/20
- >>315
――ガラ、ガサッ――ゴトッ、ゴトッ!!
イザヤの問いかけに応える声はなく、
厨房のほうからは何かを漁る音のみが聞こえる。
――今、店内には店員も客もいない。
つまり、食料狙いのコソドロや飢えた野犬が入り込んでいても
咎める者などいない、と言い換えることもできる。
- 317 :イザヤ:2011/05/06(金) 00:10:13 ID:j3dxNUKs0
- >>316
「…盗人が荷物置いて仕事にかかる訳も無し…」
一瞬脳裏に浮かんだ窃盗という言葉に、頭を振りながら厨房に入って行く。
後姿で知人だと気付き、1秒後には妖怪の性か、銀烏で拳銃の形を作り出して居た。
「動くな。両手を挙げて言うとおりにしろ」
もしこれが未知の相手であれば何が起こってもおかしくないが、
彼は小百合の手の内を知っている。
能力発動までのタイムラグでネタをばらそうという魂胆だ。
- 318 :黒沢小百合:2011/05/06(金) 00:17:58 ID:SSMHlh/20
- >>317
イザヤが厨房に足を踏み入れたとき、
小百合はかがんで、下のほうの棚に頭を突っ込んでいた。
(……っ……!!!?)
突如、投げかけられた脅迫の声に一瞬混乱する小百合であったが、
すぐに思考を建て直し、戦略を構築する。
(ヤツはなんだ、賊の類か……それとも私を消そうとする輩か……。
何にせよ……この状況は……。)
小百合は、仕込んだ紙片を密かに握りしめ、
ゆっくりと棚から頭を出す。
- 319 :イザヤ:2011/05/06(金) 00:27:22 ID:j3dxNUKs0
- >>318
「よし、両手をあげたままだぜ…おっと、ヘタな真似はするんじゃねぇぞ、
びっくりして引き金を引いちまうかもしれねぇぜ」
こつん、と後頭部に銃口もどきが当てられる。
いたずら好きのレベルを超えているが、本来妖怪とはこういうものだ、
という偽免罪符を用意したイザヤは調子に乗っていた。
金属の性質を持つ能力。当然、その感触も金属だ。
- 320 :黒沢小百合:2011/05/06(金) 00:39:23 ID:SSMHlh/20
- >>319
「…………。」
小百合は、無言で手を上げ指示に従う――。
かと思いきや、くるりと振り向き
不愉快そうに眉間に皺を寄せた。
「イザヤさん、こういういたずらはあまり感心しませんね。
この私はこういうおフザケは好きではない。」
ずっと背中を向けており、イザヤのほうに
視線を一度も向けなかった小百合が何故、この悪戯を見抜けたのか。
それは、彼女の能力――『スタンド』のおかげに他ならない。
基本的にスタンドは本人と視界の共有を行うことが出来る上、
資質の無いものには不可視。様子を盗み見るに、これ以上便利な能力は無い。
- 321 :イザヤ:2011/05/06(金) 00:47:59 ID:j3dxNUKs0
- >>320
「おンやァ、何で解ったンだ?」
すまねぇ、と謝りながら銀のハリボテ銃を烏の群れに戻して、こんどはイザヤが両手を挙げる。
「俺は結構好きなんだが、そいつァすまなかった。
なァに、呼んでも出て来ねェモンだから様子を見に行ったら、つい」
片眉を上げてニヒヒと笑う軽薄なこいつは本当に伝統的な妖怪なのだろうか。
「まァ良いや、腹が減ってンだ。何かあるかい?」
- 322 :黒沢小百合:2011/05/06(金) 00:57:59 ID:SSMHlh/20
- >>321
「……この私の能力をもってすれば
この程度、造作も無い事です。」
呆れたようにため息をつき、疲れたとでも言ったように
肩を落す小百合は、調理台にこん、と音を立てて缶詰を置く。
「スパムやアンチョビ、カニのほぐし身だとかの缶詰ならありますよ。
それ以外だと、ミックスピクルスの瓶詰めとか。」
新鮮な野菜や魚類は既に切れてしまっていて
保存の利く缶詰、瓶詰めしか残っていないようだ。
「また、私が補充しておきますよ……。
クロスさんももう少し、店に気を使ってくれるといいのですが……。」
- 323 :イザヤ:2011/05/06(金) 01:08:24 ID:j3dxNUKs0
- >>322
「へェ、詳しいところまで知らねぇが、応用力の高ぇ能力なんだなァ」
何故死角に居る人間を当てることが出来たのか、不思議に思いながらも
そういうものか、と納得する。
「缶詰ばかりじゃねぇかィ」
呆れたように呟きながら、彼はカウンターに戻ろうとする。
「珈琲でも飲むかィ。缶詰なら巣にもあるからなァ…」
だが途中でそうそう、と思い出したように振り返り、
「そういや、千夜グループへ俺を捻じ込んでくれる話はどうだぃ?
無為に過ぎる日々は知識を蓄えるにぁ向いてるが、感覚が鈍る。
やはり何か負荷がねぇとな」
黄色い眼がきらりと光った。
- 324 :黒沢小百合:2011/05/06(金) 01:25:36 ID:SSMHlh/20
- >>323
「コーヒーなら良い豆が幾つもありますよ。
彼の舌は確かですから、どれも間違いないと思います。」
一見がさつそうに見えるクロスだが、やはり料理人としての資質、
そして腕は確かなものがあり、彼が仕入れたコーヒー豆に外れは無かった。
「ええ、熟慮を重ねましたが……貴方の現場に出たい、
という希望もありましたし、こういうポストを用意しました。」
そして小百合は、一枚の名刺を取り出す。
『千夜グループ都市警備部門主任補佐』と書かれたその名刺は
名前があるべき場所に空白が広がっていた。
「貴方は、私の補佐を務めていただきたいのですが……。
これでよろしいでしょうか?役不足というなら、夜刀神さんに掛け合ってもう少し
良いポストを再考いたします……。」
- 325 :イザヤ:2011/05/06(金) 01:44:37 ID:j3dxNUKs0
- >>324
「そうかィ、なら頂くとしようかねェ」
用意をしながら喉を鳴らすように笑う。
そして差し出された名詞を見て、一瞬目が開かれ、なるほど、と呟きが漏れた。
「なるほど」
もう一度、今度はしっかりとそう言う。
人差し指に銀の霞が集まる。
指が名詞の上に置かれると、インクが流れ出すように名詞に銀色が広がり、
名詞の空白に長い名前が刻まれた。
『架天山那由他坊』
「希望通りだ。ありがたく拝命つかまつる」
言葉だけは大仰に、ニヤ、と笑って。
イザヤはその役を引き受けた。
「その名は俺の真名だ。
『イザヤ』は俺がつけた名前だからなァ、天に賜った名は一つは捨て、今はそれしか持たねェ。
呼ぶときは今までどおりイザヤでも良いンだが」
銀の名の刻まれた名詞を見つめながら、烏天狗は呟く。
「これからもよろしくお願いする」
少し改まって、イザヤは頭を下げた。
- 326 :黒沢小百合:2011/05/06(金) 02:00:52 ID:SSMHlh/20
- >>325
「では、これから貴方は私の部下ということになりますから、
土地神という身分は、勤務中は忘れていただきますよ。」
頭を下げるイザヤを、見下ろすように背筋をピンと伸ばして応える小百合。
オフの小百合であれば、イザヤに頭を下げられるなど恐れ多いと答えていたはずだが、
今のテンションは彼女は、仕事中のそれ。
「我々の仕事には失敗の二文字は許されません。
もし、貴方が何らかの失敗をしようものならば、それ相応の処分を下します。
その覚悟はちゃんとできていますね?」
小百合は目の前の翼を持たぬ天狗の決意を再確認するかのように
鷹のような鋭い切れ長の瞳で、彼を見据えた。
- 327 :イザヤ:2011/05/06(金) 02:12:45 ID:j3dxNUKs0
- >>326
一瞬面食らうが、彼は即座に対応する。
「解りました。私は命令を忠実に守ります」
口調が一変した。
発音や抑揚まで変化し、心なしか声色まで変わっている。
ずっと、その調子で誰かに仕えて居たことがあったかのように。
その感覚を思い出したかのように。
「無論です。私の行動は成功と、より良い成功しか齎しません。
失敗には如何なる処分も受ける覚悟にあります」
染み付いた言葉を繰り返すように。
烏天狗は組織に組み込まれていく。
- 328 :黒沢小百合:2011/05/06(金) 02:25:13 ID:SSMHlh/20
- >>327
その姿を見た小百合は、密かにほくそえんだ。
――かつて自分を打ち負かしたはずの天狗が
この私に頭を垂れ、まるで従順な犬のように忠誠を誓っている。
なんと痛快な事か。あの土地神が人であるこの私に!
「大いによろしい。では、イザヤ。
くれぐれもこの私を失望させぬように。」
存分にこの背徳的でさえある快感に身を任せた小百合は、
『仕事中モード』を解いて、オフの小百合に戻る。
「……しかし、驚きましたね……。
貴方が昔、妖怪の組織に身を置いていたとは聞いていましたが
これほど上下の礼がしっかりと身に染み付いているとは。」
- 329 :イザヤ:2011/05/06(金) 02:42:34 ID:j3dxNUKs0
- >>328
「承知しました。」
簡潔な言葉に、意思が見える。
その間の取り方、抑揚、高低から、十分すぎる程に伝わる、
命令への理解と服従。
そして、『上』のオーラが消えた瞬間に、彼は何時も通りになった。
「…あんたの補佐という仕事にやりがいを感じてる。それもあるなァ。
だが、生来の本能的な部分に、『組織』が根付いてるンだ。
言い換えれば、その頃の一般的な妖怪は、組織を作りその中でねェと生き残れなかったンだよ」
『天烏』という組織に身をおいていた、と彼は話す。
妖怪と人間の立場の逆転を目指す革命集団に、生まれた時から居たのだと。
翼と引き換えに、其処から逃げて来たのだと。
淡々と。
「俺はこの組織で翼を取り戻さなきゃいけねェンだ、
だから『上』認められるように、全霊を尽くさなきゃならねェ」
まずは、『仕事の中の』小百合の信頼を勝ち取ること。
それが彼の当分の目標になる。
- 330 :黒沢小百合:2011/05/06(金) 02:57:10 ID:SSMHlh/20
- >>329
「ふむ。そう言って頂けると励みになります。」
組織としての行動様式が、本能にまで根付く。
その一点だけでも、『天烏』という組織の苛烈さがひしひしと窺える。
なるほど、ただの自由人かと思えば既に教育済みとはありがたい。
この様子であれば、即戦力として運用できる。
「あなたのその、上昇思考は素晴らしいですね。
この私としても、その前向きさは好意に値すると率直に言わざるを得ない。
やはり、変革を率先して行なおうとする者だけのことはある。」
表情にこそ出さないが、
頼れる部下が出来たと小百合は心の中で喜んだ。
「さて、もうそろそろお暇しなくてはね……。
では明日、早速千夜の私のオフィスに来てください。
いくつかの説明と書類をわたさなければなりませんから。」
それだけ言うと小百合は、AGカフェを去っていく。
イザヤの生活は明日から劇的に変わるだろう。
- 331 :イザヤ:2011/05/06(金) 03:03:58 ID:j3dxNUKs0
- >>330
この順応に一番驚いていたのは、彼自身だったのかもしれない。
淡々と説明したのは、彼が落ち着こうと努力していたからだ。
焼き捨てたはずの暗黒の時代は、まだ自分の奥底に眠っていた。
そして今もう一度揺り起こされたのだ。
今度は違う。そう思いたい。
「上に立たなきゃ見えねェ景色もあるンだ、俺はそれを知る機会があった。」
予定と言葉を頭に刻み、簡潔に部下としての返答を告げ。
彼の黄色の眼は爛々と輝いていた。
- 332 :テルメス/ニット帽の男:2011/05/08(日) 22:24:29 ID:ste/2NNA0
- あるラーメン屋。
パイロットニットを被った男が、料理の到着を待っていた。
「それでは今日は、異能都市に蔓延る怪人の特集をお送りします」
テレビのニュース番組を見ながら、男はため息をつく。
いかにも携帯電話か何かのカメラで撮ったようなタレコミ映像や写真が、続々と流される。
- 333 :リョロ=スエルト:2011/05/08(日) 22:42:49 ID:lnIm1tXo0
-
>>332
「あーあ、肩こる……」
ラーメン屋にひとりの少年が入店し、カウンター席に腰を下ろした
少年は千夜学園で規定されたブレザーの制服を着ており、一目でそこの生徒であるとわかる
メニューをちらりと見て塩ラーメン(一番安上がり)を注文した後、
少しパーマがかかったクリーム色の髪をくしゃりと指で弄りながら何ともなしにテレビの映像をぼんやりと眺めている
- 334 :テルメス/ニット帽の男:2011/05/08(日) 22:52:27 ID:ste/2NNA0
- >>333
「最近の千夜学園の生徒のみを狙った事件も、怪人の仕業である可能性が高いとのことです。
この事件で殺害された生徒の血が全て抜かれているという特徴があり――」
同時に、画面にブレブレの写真が映る。
物陰に隠れて撮影したといわんばかりの、赤紫色の人型の写真だった。
男はそれを思案顔で眺めていた。
「はい、チャーシューメン御待ち」
「……あ、どうも」
- 335 :リョロ=スエルト:2011/05/08(日) 23:03:43 ID:lnIm1tXo0
-
>>334
「……学生でも?」
流される映像になかなかショッキングな映像を流すものだ、などと他人事な感想を抱いていたが、
次いで思わず口を衝いて出た言葉は驚きを隠しきれない様子で
自分が思った以上に大きな声を出してしまったと気づき
テーブルに肘をついて、思わずバツが悪そうに周囲を見回す
- 336 :テルメス/ニット帽の男:2011/05/08(日) 23:12:44 ID:ste/2NNA0
- >>335
「……?」
男はラーメンを啜る直前の体勢でリョロの方を見た。
そして、制服から千夜学園の生徒だと気がつくと、納得したように頷いた。
店員がバツが悪そうな顔でテレビのチャンネルを切り替える。
「……聞いた話では撃退した奴もいるらしいよ。
B級週刊誌の情報だけど」
フォローのつもりだろうか。
ニット帽の男が呟くように言った。
- 337 :リョロ=スエルト:2011/05/08(日) 23:23:48 ID:lnIm1tXo0
- >>336
「あー……」
店員に気を使わせてしまったようで、申し訳なさそうな表情を店員に向ける
たしかにショックは受けているけれど、別に耐性がないわけではないんだけれど。
そんなふうに思ったが、変に思われても嫌なのでそのままにしておくことにした
「ああ、そうなんですか。勇敢な方がいらっしゃるんですね」
男のつぶやきを聞いて、そちらを向く
たしかに異能者ならばそれも可能か。怪人とやらの能力がどの程度かわからないけれど。
「これ以上犠牲者が出ないといいんですけどね」
店員が運んできた塩ラーメンを受け取りながら、温和そうな笑みを浮かばせる
- 338 :テルメス/ニット帽の男:2011/05/08(日) 23:35:52 ID:ste/2NNA0
- >>337
「……そうだね」
そういったが、男は無理だな、と内心思っていた。
何しろ怪人の幹部は次々復活し、男の予想では怪人の頂点の復活も近いと見ているからだ。
「とりあえず、千夜学園の生徒じゃなくても気をつけたほうがいいんだけどね。
会社員の同じような死体が見つかってるって話だし」
この男は、一連の事件にどういうわけか詳しいらしい。
- 339 :リョロ=スエルト:2011/05/08(日) 23:49:10 ID:lnIm1tXo0
- >>338
「そうなんですか……詳しいですね?」
投げかけた言葉はただの感想ではなく、質問のようなニュアンスを含んでいた
目の前のラーメンを箸で掬い、息を吹きかけては口に含む
「勘違いだったら失礼ですが、なにか……この事件のことを知っているような印象を受けます」
- 340 :テルメス/ニット帽の男:2011/05/08(日) 23:56:26 ID:ste/2NNA0
- >>339
「臆病なだけだよ」
自嘲気味に言った。
「怪人っていう得体の知れない者が怖くて。
この関連のニュースや新聞、雑誌は大抵見てるから」
一応本当の話である。
先ほどまで語った話は、全てメディア上で公開されている情報。
ただ、相当なマイナーな雑誌が情報元の話も多い。
- 341 :リョロ=スエルト:2011/05/09(月) 00:03:45 ID:lnIm1tXo0
- >>340
「そう……ですか」
腑に落ちないながらも自分を納得させ、再びラーメンを啜る
「でもこの街自体結構得体のしれないところがありますよね
『歪み』についてもそうですし……他にもよくわからない組織とかがチラホラと」
怪人もそういったものの一部か、と顎に手を当て考え込む仕草
「怪人もやっぱり組織みたいなものを組んでるんですかね?」
- 342 :テルメス/ニット帽の男:2011/05/09(月) 00:14:24 ID:ste/2NNA0
- >>341
「ついこの間の国際手配犯とか言うのが事件起こしたばっかりだし……」
その時のことを思い出してため息をつく。
「組織も何も、2000年前の遺跡から怪人が帝国を作ってたって証拠が見つかってるから驚きだね」
そう言ってラーメンを啜った。
- 343 :リョロ=スエルト:2011/05/09(月) 00:26:35 ID:lnIm1tXo0
- >>342
「物騒な世の中ですよね……どうかしましたか?」
息を吐き出したテルメスに対して、詳しいことを知らないリョロは疑問を抱いたようで
「2000年も……へえ」
そんなことは授業にも出てこなかった(サボったり寝たりしているため定かではないが)ためか
あるいは何か他の理由からか。興味が湧いたような表情を浮かべる
- 344 :テルメス/ニット帽の男:2011/05/09(月) 00:37:14 ID:ste/2NNA0
- >>343
「いや、何も」
どう考えても何かありそうだが、それ以上言う気は無いのだろう。
「まあ、この辺のことはしょっちゅうニュースで取り上げられてるんだけどね」
遺跡から復活した怪人!という響きがインパクトがあるので、
ニュースなんかではよく特集が組まれていたりする。
実際にはあまり役に立つ情報は無いのだが。
- 345 :リョロ=スエルト:2011/05/09(月) 00:45:11 ID:lnIm1tXo0
- >>344
「………」
鼻を鳴らして腕を組むが、自分も素性を晒す気はない
お互い様か、と小さく笑うとラーメンの汁を飲み干した
「あはは……テレビとかあんまり見ないものですから。というかあんまりテレビのある環境にいませんね」
テレビも見ないし新聞も読まず、ネットも使わないため情報が遮断されているのだった
- 346 :テルメス/ニット帽の男:2011/05/09(月) 00:59:34 ID:ste/2NNA0
- >>345
「へえ、珍しい」
同じくスープを飲み干して言った。
「あ、そうそう。
一部の怪人は人間の姿に化けたりするらしいから、気をつけた方がいいよ。
親父さん、ご馳走様。勘定」
席から立ち上がり、勘定を済ませる。
「それじゃあ、俺は食べ終わったからこれで」
店員に言ったのか、リョロに言ったのか、もしくは両方か。
突然急ぐように男は店を出てしまった。
- 347 :リョロ=スエルト:2011/05/09(月) 01:10:53 ID:lnIm1tXo0
- >>346
「それは注意しないといけないですね…忠告をありがとうございます」
リョロもつられて立ち上がり、足早に立ち去るテルメスを見送った
続いてふ、とため息を吐き出して
(あのヒトは否定したが……やはり何か関係があるとみてよさそうだ)
「怪人、ね……機会があれば調べ上げてみたいものだね」
勘定を済ませると、街の中心部へと向かっていった
- 348 :イザヤ:2011/05/09(月) 22:54:28 ID:j3dxNUKs0
- 飛ぶ影がある。
銀翼で夜の街を徘徊する、黒い天狗。
きらきらとした人工的な光が眼に眩しい。
彼が飛ぶのは裏路地の上空。
上からでしか見えない場所を、潰していく。
「上からじっくり見なきゃ、解らねェもンだな、
自分の住む街ッてのは」
呟きが口から漏れた。
- 349 :黒沢小百合:2011/05/10(火) 21:30:54 ID:SSMHlh/20
- 【AGカフェ】
――カランコロン
半開きに扉に、体を押し込んで無理やり店の中へと入る小百合。
見れば彼女は骨折しているのか、松葉杖をつき、右足をかばっているではないか。
「くそっ……!!」
カウンター席に身を投げ出すように座った小百合は、
機嫌が悪いのか握りこぶしを卓に叩きつけ、持参した酒瓶を浴びるように飲み始めた。
- 350 :鳴瀬 成美:2011/05/10(火) 21:48:28 ID:uMOJ9mFc0
- >>349
一寸の間の後、ゆっくりとベルが揺れドアが開く。
黒髪の女性が腰に下げた脇差の柄の頭を握るようにして抑えながら、辺りを見回し入店した。
「………。」
客層は少なく、並んだ椅子の上で酒を煽っている女性が一人。
見たところ傍らの松葉杖を繁々と見た後、何席分か距離を置いてカウンター席に座る。
「…あ、あの……すみません、店員さんはどちらに……?」
頬に汗を伝わせながら、おそるおそる訊ねてみる。
- 351 :黒沢小百合:2011/05/10(火) 21:56:22 ID:SSMHlh/20
- >>350
既に酔い始めているのか、ほんのりと顔を赤く染めた小百合は
鋭い視線を新たに店に入ってきた女性へと向けた。
「この店に店員は居ませんよ。
皆、勝手に飲み食いしていますから貴女もそうすればいい。」
それだけを言うと、コップに注がれた琥珀色の液体を呷る。
未だに機嫌が悪いらしく、眉間には深く皺が刻まれ時折、
何かを殴りたくて仕方が無いと言った風に、拳を握り締める様は
女性に威圧感を与えるだろう。
- 352 :鳴瀬 成美:2011/05/10(火) 22:11:22 ID:uMOJ9mFc0
- >>351
「…そうですか。わかりました…。」
店員がいない、とはどういう事なのだろうか。それ程この辺りは治安が良いという話は聞かない…。
物珍しそうに店内やカウンターの奥を見回しながら、再び女性に視線を戻す。
「…怪我をなされているようですね。
諍い……でしょうか。」
苛立ちを隠しきれない様を、横目で伺っている。
傷を負い如何にも不服そうな女性の態度に恐怖を感じているようで
肩を微かに震わせていた。
- 353 :黒沢小百合:2011/05/10(火) 22:23:03 ID:SSMHlh/20
- >>352
「ええ、そのような物ですよ。
この街は争いが多いですから。」
しかしそうは言っても、傍から見ても上等な物だと分かる
綺麗な黒のスーツに身を包み、高級品の時計やさりげない装身具で
身を飾ったその姿、背こそ高いもののモデル体系の華奢な体付きの彼女が
喧嘩をするような人種には見えない。
「あなたも精々巻き込まれないように。
今のように、他人のことを詮索するのは時に死につながる。」
肩を震わせる成美を脅すように。
- 354 :鳴瀬 成美:2011/05/10(火) 22:38:41 ID:uMOJ9mFc0
- >>353
「……不快にさせてしまったのなら申し訳ありません。」
目を伏せて俯き、机に目を落とす。
その後はてんで押し黙ってしまい
辺りにはカチンとグラスが鳴らす音だけが静かな店内に響いた。
「……………私だって、そんな…こんな…事…したく…死にたく…なんか…。」
暫らくの間を挟んだ後に再び口を開く。
とうとう女性の威圧的な言動や態度に呑まれたのか、涙声になってしまった。
- 355 :黒沢小百合:2011/05/10(火) 22:51:33 ID:SSMHlh/20
- >>354
「ま、人間いつどんな理由で死ぬか分かりませんからね。
例えば、この私がもし『猟奇殺人犯』だとしたらどうします?」
くふ、と妖しげな笑みを漏らし
椅子を回転させてゆっくりと体を成美へと向ける。
「何の理由もなく、いきなり隠し持った拳銃を
あなたに向けて引き金を引く。それだけで、哀れあなたは死んでしまう。
ただ、運が悪かったという理由だけで。」
酔っているせいか、小百合は見知らぬ他人であるはずの
成美を虐めに掛かった。
- 356 :鳴瀬 成美:2011/05/10(火) 23:05:24 ID:uMOJ9mFc0
- >>355
女性の突然に飛び出てきた衝撃的な言葉を真に受けたのか
肩をびくりと震わせ、座っていた椅子を慌てて踵で蹴飛ばし後退る。
「…………っ!」
目に涙をため咽ぶような声を出して小百合
思えば脇差に手を触れるような素振りすら見せない。
酔っ払いのからかいにしたって悪意を向けて、
ましてや殺人犯や拳銃等という言葉まで並べているのだから
柄に手を掛けていてもおかしくはないのだが。
「ひっ………わ、私は…ま、まだしねまっ……!」
- 357 :黒沢小百合:2011/05/10(火) 23:17:02 ID:SSMHlh/20
- >>356
「くひぃっ、可愛いですねぇ……。
その怯えた表情を見ると、顔面に鉛玉を叩き込んでやりたくなる。」
だいぶ良いが回ってきた小百合は
気分はすっかり悪人気分になり、ニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべ。
まあ、脅かすのはこれくらいにしておこう。
「……死にたくないならば、夜中にこんな酒場に近づくのは感心しませんね。
…………ふふ、怯えてしまいましたか?」
小百合は再び、持ってきた酒をグラスに注ぎそれを呷り始める。
多少気分は晴れたためか、幾分か雰囲気が柔らかくなった。
- 358 :鳴瀬 成美:2011/05/10(火) 23:32:42 ID:uMOJ9mFc0
- >>357
腰掛に手を着き、よれていた体勢を啜り泣きながら元に戻そうとしている。
…すっかり誰とも知らぬ"猟奇殺人犯"、彼女のペースに巻き込まれていたのだった。
やがてその脅しが本意ではない事に改めて気が付くとほっと胸を撫で下ろしていた。
身形の良い小百合とは違い、何処か垢抜けない感じの女性は顔を青くしたり赤くしたりと忙しない。
「…………。」
伏せがちな三白眼を向けながら再び沈黙が訪れた。
文句を垂れようか、驚きを伝えたらいいのか悩んでいるようだ。
「………酷いです。」
涙声混じりに呟く。
- 359 :黒沢小百合:2011/05/10(火) 23:47:02 ID:SSMHlh/20
- >>358
「この私は、『もしも』の時の心構えを説いたに過ぎません。
あなたに恨まれるような筋合いはありませんね。」
くくく、と実に楽しそうに笑う小百合はカウンターに手を付き
ゆっくり、ゆっくりと立ち上がって。
「……ま、脅かしすぎた事は謝りますよ。
これはそのお詫び、という事で。」
財布から、ま新しいを何枚か取り出しカウンターに置く。
好きに使え、ということだろう。
「では、ごゆっくり……。」
そのまま、松葉杖をつきゆっくりと店を立ち去った。
// ごめんよー、明日早いから今日はもうおちるー。
// あんまりうまい事絡めなくてごめんね。
- 360 :鳴瀬 成美:2011/05/11(水) 00:00:28 ID:uMOJ9mFc0
- >>359
「っ………仰る道理はわかります。わかりますが……」
内心食って掛かりたいの抑えているのか、自分に言い聞かせるような口調になっていた。
「あ…そのような……。」
言って止める前に意地悪気な笑いを残して店を出てしまった。
「………名前……。」
泣き驚き疲れたのか、暫らくはカウンター席から離れようとはしなかった。
半時程して成美がいなくなった店内には、2人分の空のグラスと別々に分けられた代金。
そして手の付けられてない紙幣が置かれていた。
- 361 :酒呑屋 虎姫?:2011/05/11(水) 21:01:38 ID:A5S3eo1A0
- は〜〜〜…………。
【ベンチの背もたれに両腕を回して大股に、ベンチを占有して座る黒服】
【よく晴れた春まっさかりの空を見上げて、ぼーっ。】
【頭は90度後ろなのにかぶった帽子が落ちないのが不思議】
- 362 :黒沢小百合:2011/05/11(水) 21:50:49 ID:SSMHlh/20
- >>361
かつかつと石畳を叩く小気味よいヒールの音。
その音の源は黒のスーツをきっちりと着こなした
仕事帰りのOL風の女だ。
夜道を一人歩いて帰る年頃の女性。
こう書くとチンピラや路上強盗の主な標的になりそうなものだが、
彼女に手を出そうものなら、次の瞬間には蜂の巣となる。
- 363 :サラ:2011/05/15(日) 00:47:12 ID:iWsjJ6uQ0
- 真夜中。
立ち並ぶコンクリートのクレバスの底に人影がある。
緋と黒のマントで身体の線を隠した、金髪の女だ。
「――♪」
その女、サラは消え入るような小声で歌を歌っている。
街灯も射さない路地裏を、ゆらゆらと上機嫌に歩いている。
不意に、その袖口からビー玉ほどの小さく透明な珠が落ちた。
カチリと音を立てて落ちた珠をサラは足で蹴る。
珠は何かを覆っているブルーシートの下に転がって行った。
「――、――♪」
また少し歩いて、自動販売機の前に通り掛かる。
サラはいつの間にか手に持っていた小銭を自販機に投入。
それとは反対の袖口から、小さな珠を放る。
珠は転がって自動販売機の下に隠れて見えなくなる。
それと同時に、ガコンと音を立てて自販機からサイダーの缶が吐き出される。
「ひひっ」
サラはそれを手にとって栓を切ると、そっと口に当てて飲み始めた。
- 364 :サラ:2011/05/15(日) 01:00:31 ID:iWsjJ6uQ0
- 250mlの細長い缶のサイダーを飲み干すと、
隣に据えられたゴミ箱に放り込む。
「まだ、冷えるね。……ひひひ」
サラは誰に言うでもなくそう呟くと、マントの下で身体を震わせた。
そしてまた上機嫌に笑いながら、歌い出す。
「――――♪」
ゆらゆらと歩き出し闇から闇へ、
黄金色の髪を揺らしながら消えていった。
都市の物陰に、隙間に、小さな水晶の珠をばら撒きながら。
- 365 :テルメス/ニット帽の男:2011/05/15(日) 21:42:06 ID:ste/2NNA0
- ――ガシャアアァッ!
とある放棄された倉庫で、男がガラクタを破壊していた。
「はぁ……はぁ……」
襲え、人間を、能力者を殺せ。
男の本能が、怪人の幹部の幻影となって、そう告げていた。
「やめろ!来るなああっ!」
幹部の幻覚を振り払い、男は倉庫から飛び出す。
「……なかなかしぶとい奴だ。
これほど揺さぶりかけても衝動を抑えるか」
それを、とあるビルの上から女性が見つめていた。
- 366 :名も無き異能都市住民:2011/05/15(日) 22:42:55 ID:SSMHlh/20
- >>365
テルメスが走るうち、歪みに巻き込まれたか……。
それとも、知らず知らずのうちに偶然に入り込んだのか、
治安の悪い路地裏に足を踏み入れてしまっていた。
都市の区画整備計画で、オフィス街になるはずであったこの通りも
治安の問題や資金難、立ち退き交渉の難航など様々な理由で計画は頓挫し結局開発されず
今では怪しげな魔術の品を売る老婆やヤマ師、チンピラの類が跋扈する危険となっている。
「やあお兄さん、ちょっとみていかない?」
テルメスにも、早速麻薬のブローカーと思われる人物が声を掛けてきた。
- 367 :テルメス/ニット帽の男:2011/05/15(日) 22:49:28 ID:ste/2NNA0
- >>366
「はぁっ……はぁっ……。
……!?」
男は突然声を掛けられて、驚き飛び上がるように振り向いた。
反射的にブローカーの男の胸倉を掴み、締め上げる。
「た、頼むから……話しかけないでくれ……」
締め上げている右腕が、突然鱗に包まれて、灰色の装甲に覆われた。
それを見て、驚いたような顔でブローカーの男を突き放す。
男が右腕を抑えると、もう装甲は消えていた。
- 368 :名も無き異能都市住民:2011/05/15(日) 22:56:38 ID:SSMHlh/20
- >>367
「チッ!くたばれ××××野郎!!」
突き飛ばされた男は商売にならないと見たのか
先ほどの馴れ馴れしい態度から一変、口汚くテルメスを罵るとそのまま、
他の客を探すためか路地裏の影に消え。
――ガオン。
その後、どこかからエンジン音が聞こえた。
- 369 :テルメス/ニット帽の男:2011/05/15(日) 23:01:56 ID:ste/2NNA0
- >>368
「……車……」
どうやら、ここは意外と人通りが多いらしい。
この界隈に入った瞬間に声を掛けられたことから、常に誰かが客を狙って、
建物内から外を見張っているようなものなのかもしれない。
しかし、こんな路地裏に車両?
「早く、人気の無いところに行かないと……」
そんなことも気にする余裕が無いほど、
男は衝動を押さえつけるのに必死になっていた。
- 370 :名も無き異能都市住民:2011/05/15(日) 23:15:10 ID:SSMHlh/20
- >>369
たしかに、ここは近くに安酒場やトタンと木材、ビニールシートを組み合わせた
バラック小屋のような屋台がいくつか集まっており、ダンボールを布団代わりに寝る
浮浪者などがちらほらと見受けられ、路地裏といっても人が多い。
逃げるようにその場を立ち去るテルメスに、
ドラム缶で木材を燃やし、暖を取っていたホームレスたちが
視線を向けたが、それだけで後を追ってくる者はない。
- 371 :テルメス/ニット帽の男:2011/05/15(日) 23:23:42 ID:ste/2NNA0
- >>370
走ってる内に、まったくではないものの徐々に人通りが少なくなってくる。
「……この辺りなら……」
そう呟いた瞬間に、音も無く頭の上を影が通り過ぎた。
「……まだ追ってきてるのか……」
その場に会った一斗缶を蹴飛ばしたい衝動に駆られるが、
大きな音を立てると危険なので、再び歩いて移動を始めた。
- 372 :サラ:2011/05/15(日) 23:29:38 ID:iWsjJ6uQ0
- >>370-371
男の進行方向には人影がある。
緋と黒のアカデミックな装束に身を包んだ、ふわふわの金髪の女。
浮浪者たちが集まる区画の最果て、また別な路地の入り口だ。
彼女の目当ては露店の品……怪しげな魔術用具やら何やらだ。
サラは、絨毯を広げた老婆の前に腰をかがめていたが、
やがて自分の方に向かってくる一つの気配に気付く。
「おや……あれは」
顔を向ければ、あの公園の一件でも見かけたニット帽の兄ちゃんではないか。
……だが、どうやら今回の様子はタダゴトではない。
何とも言い難いが……よくない濁りのようなものが纏わりついているような。
「…………」
サラはふらふらと歩いてくるニット帽の男にじっと視線を向けたまま。
その耳には魔力を湛えた結晶が青く光っている。
- 373 :名も無き異能都市住民:2011/05/15(日) 23:34:22 ID:SSMHlh/20
- >>371
テルメスから100mほど離れた瓦礫の影に、
ゆっくりと蠢く者があった。
その人物が携えるのは、無骨なフォルムの狙撃銃。
――タンッ
引き金に指が掛けられ、その銃口から飛び出した麻酔弾は
風を切ってテルメスへと向け放たれた。
本来なら、大きな音となる銃声もサプレッサーによってガスを逃がされ、
気にも留めないような、取るに足らない音としか感じられないはずだ。
この攻撃を音によって感知するのは難しい。
- 374 :テルメス/ニット帽の男:2011/05/15(日) 23:47:12 ID:ste/2NNA0
- >>372
「……見た顔……」
男はサラを見て呟いた。
しかし、ただ挨拶を交わした程度の仲なので、
立ち止まって話し込む気も無いし、そんな暇も無い。
「どうも……隣……通ります……」
そのまま片手を上げてふらふらと通り過ぎようとするが、
>>373
「……!!!」
突然、小さな衝撃を受け、ふらりと倒れそうになる。
「な……ん……?」
直後に足ががくがくと振るえ、猛烈な眠気が男を襲った。
その場に手、膝を付いて、倒れそうになるが、何とか壁を伝って立ち上がる。
「だ……しわ……ま……?」
流石に怪人だからか、人間ほどの即効性は無いらしく、
男は催眠薬の働きから必死に抵抗していた。
もう数発撃てば、完全に眠るかもしれない。
- 375 :名も無き異能都市住民:2011/05/15(日) 23:54:58 ID:SSMHlh/20
- >>374
――タッ――タッ――。
軽い音と共に、連続で麻酔弾が撃ちこまれていく。
射撃の精度からみても、相手が素人とは考えにくい……。
>>372
テルメスがいきなり、麻酔針のような物が
打ち込まれたことにサラは気づけるだろうか。
続いて、軽い破裂音のような音が響き次弾が飛来。
なんらかの防御手段があればそれを食い止める事ができるかもしれないが……。
――タンッ
そのうち一発は、明確に『サラを狙って』撃たれた麻酔弾がまぎれている。
- 376 :サラ:2011/05/15(日) 23:56:53 ID:iWsjJ6uQ0
- >>373-374
「あっ……!」
その銃弾に、彼女以外の誰が気付いただろう。
常人を上回る知覚能力、音に関する素養、そしてテレキネシス。
その全てが、その瞬間だけは、狙われた男とその周りにピントが合わせられていたのだ。
……高速で進む銃弾は、僅かな力で逸らすことができる。
だが、遅れた。自分に向けられているのとはワケが違うのだ。
彼女が状況を把握した次の瞬間には、男の身体はよろめいた。
「麻酔銃……!」
そう呟くと、男を庇うようにして射線に割り込んだ。
少なくとも、これで二発目以降が男に当たることはない。
そしてサラは次弾に備えて左手の中に杖を具現化させる。
微細な魔力がサラの身体を駆け抜け、左耳の結晶が淡い光を放つ……。
よろめく男に背を向け、視線は正確に狙撃者へと刺さっている。
- 377 :サラ:2011/05/16(月) 00:01:00 ID:iWsjJ6uQ0
- >>375
サラは意図して、向かってくる銃弾の全てを自分の手元へ軌道修正する。
杖の力場に触れた弾丸は、運動エネルギーをゼロにされ、音もなくサラの右手に収まっていく。
- 378 :テルメス/ニット帽の男:2011/05/16(月) 00:09:04 ID:ste/2NNA0
- >>375,376
「誰だ……!」
男は既に麻酔の効き目を振り払って、立ち直りかけていた。
「どけぇっ!」
弾丸を軌道修正したサラを、男は突き飛ばすようにして、
離れた狙撃主に向かって走っていく。
その体が、鱗に覆われていった。
- 379 :サラ:2011/05/16(月) 00:15:28 ID:iWsjJ6uQ0
- >>378
「きゃっ……!」
明確な敵意を持った攻撃ならば避けられるが、ことのついで、
ほとんど無意識に行われた動作に対しては、サラの反応は常人よりも鈍い。
払い除けられたサラは尻餅こそつかなかったものの、大きく身体をよろけさせる。
「……ちっ」
その間に駆け出した男に、サラは追い付けない。
それでも、周りに気を配りながら小走りで男の後を追う。
- 380 :名も無き異能都市住民:2011/05/16(月) 00:17:01 ID:SSMHlh/20
- >>376-378
攻撃の失敗を確認し、
狙撃手はゆっくりと瓦礫を伝いその場から逃げ去っていく。
暗闇に紛れ、分かりづらいが
なんらかの感知能力があれば捉えられるはずだ。
- 381 :テルメス/ニット帽の男:2011/05/16(月) 00:24:17 ID:ste/2NNA0
- >>379,380
「……どこだ……!」
暴走がちな闘争本能に火をつけられ、
男は完全にキレていた。
「うおおおおっ!!!」
全身の鱗が剥がれ落ち、灰色の装甲を纏った怪人が姿を現した。
「どこだっ!!!どこにいるっ!!」
サラが見ていることも忘れ、雄たけびを上げながらガレキを破壊していく。
- 382 :サラ:2011/05/16(月) 00:33:07 ID:iWsjJ6uQ0
- >>380-381
「あっちだ! ……冷静になれ! 理性を失うな!」
その言葉が、男に聞こえているかは分からない。
サラは右手の中にあった麻酔弾の一つを投擲する。
それはテレキネシスによって正確にナビゲートされ、
狙撃手に吸いつけられるように、緩やかなカーブを描いて飛んでいく。
しかし、元が女の腕力なだけに、あまりスピードは出ない。
サラが投げた様子を見ていたなら、避けるのは無理でも、
辺りにいくらでもある障害物で身を庇うくらいは簡単だ。
……ただし、もしこの弾が人体以外の場所に着弾した場合、
サラの魔力によって、弾丸は爆竹のような大きな音と衝撃を伴って破裂するだろう。
- 383 :名も無き異能都市住民:2011/05/16(月) 00:41:50 ID:SSMHlh/20
- >>381-382
身を隠せるような大きな瓦礫やゴミが途切れたせいか、
狙撃手は素早く走り出すと、そのまま近くの角へと走りこみ消える。
麻酔弾はその角に阻まれ、ヤツの体を捉えるには至らなかったが
サラの魔力によって大きな音を伴い炸裂した。
今から追えばまだ追いつくか?
そもそも、ヤツの目的は一体……?
- 384 :テルメス/ニット帽の男:2011/05/16(月) 00:49:38 ID:ste/2NNA0
- >>382,383
「そこかァっ!!」
角を曲がった瞬間を確認し、怪人は腕についた鋸状の器官を叩きつけ、地面に穴を開けた。
コンクリートの下には当然砂地があり、怪人は砂を掻き分けて潜る。
ボコボコという地底を移動する音が、かなりの速さで狙撃手を追いかける。
地上から聞こえる狙撃手の足音を頼りに、
怪人は狙撃手の居る数歩先に、コンクリートを突き破って飛び出した。
「うおおおおおっ!」
同時に狙撃手に向かって、怪人は鋸状の刃を突き出した。
- 385 :サラ:2011/05/16(月) 00:58:34 ID:iWsjJ6uQ0
- >>383-384
「あーもう、熱くなっちゃって……!」
地面の穴を飛び越えて、サラも狙撃手を追う。
ニット帽の男の気配は、狙撃手に先回りしようと動いている。
サラは地面を蹴って、自らを念動力でブーストし跳躍した。
狙撃手が曲がった角まで一気に距離を詰めたサラは、そのまま角の内側ギリギリを曲がらず、
相手が何か仕掛けてきても対応できるよう、自由に動けるゆとりを持って通路の交差地点に躍り出た。
その左手に杖を、右手には残った2発の麻酔弾を構えている。
タイミングを合わせたため、上手くいけば、狙撃手はサラとテルメスの二人に挟まれる形になるだろう。
- 386 :名も無き異能都市住民:2011/05/16(月) 01:09:03 ID:SSMHlh/20
- >>384
――ズッ
テルメスの飛び出した位置はドンピシャ。
狙撃手は驚きの声をあげる暇すらなく、刃に貫かれ絶命。
勢いのあまり、二つに裂かれた体から噴出した
真っ赤な血が、返り血となってテルメスにびしゃりと掛かった。
>>385
サラは目の当たりにするはずだ。
異形と化したテルメスが、地面から飛び出し
狙撃手を串刺しにする様を。
路地裏が、ライフルを持った男から飛び散った血で赤く染められていく。
- 387 :テルメス/ニット帽の男:2011/05/16(月) 01:16:47 ID:ste/2NNA0
- >>385,386
「うああああっ!!!」
怪人は刃に突き刺さったままの狙撃手を執拗に反対の腕の刃で切りつける。
怪人の灰色の体は、赤く染まっていった。
そして、最後に狙撃手を振り上げ、地面に叩きつける。
「うおおおおっ!!!」
喜びとも憎しみともとれる叫びを上げた。
- 388 :サラ:2011/05/16(月) 01:21:41 ID:iWsjJ6uQ0
- >>386-387
「うわっ……!!」
目の前のスプラッタな状況に、くるりと回れ右。
こういう状況に慣れているわけではないサラにはちょっと刺激が強い。
さっきまでピントを合わせていた人間の意識が、弾けて飛んで消えた。
そのこともサラの脳髄を撃つ。
「やりすぎだぁ、ひぇぇー……」
胸元に両手で杖を抱えながら、ちらちらと肩越しに、
雄叫びを上げるテルメスの様子を見たり見なかったりしている。
- 389 :テルメス/ニット帽の男:2011/05/16(月) 01:35:05 ID:ste/2NNA0
- >>388
一通り叫ぶと、男は怪人はだらんと腕を落とし、
その場に膝を突いた。
「……や……って……しまった……」
血溜まりに手を突く。
男の姿は、既に怪人の物からニット帽の男に戻っていた。
- 390 :サラ:2011/05/16(月) 01:43:15 ID:iWsjJ6uQ0
- >>389
「手助けしないほうがよかったかな……」
サラは血溜まりに足が浸からない位置まで、そっと歩み寄る。
見るも無残な肉塊に変わった狙撃手に、手の中の麻酔弾を優しく放り投げた。
そっと目を瞑って、亡骸に向かい膝を折るように小さく会釈をする。
「どうか安らかに。……頭は冷えたかしら?」
サラはうなだれる男にも声をかける。
字面こそ挑発的だが、若干おどおどした声色には気遣いが滲んでいる。
- 391 :テルメス/ニット帽の男:2011/05/16(月) 01:51:51 ID:ste/2NNA0
- >>390
「近づくな……頼むから……」
うなだれ、血溜まりを見つめながら呟くように言った。
「また……いつああなるか……」
男の体は、サラが行動の行動に反応するように、
鱗が現れたり、剥がれ落ちたりを繰り返している。
- 392 :テルメス/ニット帽の男:2011/05/16(月) 02:05:27 ID:ste/2NNA0
- >>391
//訂正…男の体は、サラの行動に反応するように、
- 393 :サラ:2011/05/16(月) 02:09:43 ID:iWsjJ6uQ0
- >>391
『(力の暴走ってやつか……)』
サラは男を見詰めたまま、小さく後ずさった。
「……何もしてやれないのが歯痒いね」
男の発作のような症状は、どうも体質によるものだ。
専門的な知識を持たないサラにはどうしようもない。
「でも、そうして悔やめる内は人間だ……。
あたしも焚きつけて悪かった。……ごめんね」
この惨状はサラの差し金のせいでもある。
半分は自分の手に掛けたようなものだ。
その言葉は、殺した男、死んだ男の両方に向けられている。
「…………」
それ以上の余計な言葉を飲み込んで、サラは男に背を向ける。
最後に一瞥してから目を伏せると、サラは黙ったまま、静かに歩き出した。
- 394 :テルメス/ニット帽の男:2011/05/16(月) 02:19:41 ID:ste/2NNA0
- >>393
「人間……?
……笑わせるな……人間に成り下がりたいわけでもない……」
男は失笑した。
元から男は人間でないし、人間になりたいと思ったことも無い。
ただ、怪人の仲間と争いの中で生きるよりは、
人間の中でひっそりと生きたほうがマシだと思ってるだけだ。
しかし、その中途半端な思考のせいで、怪人の力を抑え切れていないのかも知れないが。
「……見てるんだろう……幹部の奴め……。
俺が人を殺して、満足してるんだろう!
それとも一人ぽっちじゃあ足りないとでも言いたいのか!」
サラが去ってから、男はそう叫んで、仰向けに倒れた。
- 395 :『ジボル』:2011/05/17(火) 22:17:14 ID:1pPfvznI0
- 【公園】
【もう暗い公園だが、街灯はついていた。春の夜は適度に暖かく快適だ】
【ジボルは今日も邸を抜け出して散歩を楽しんだあと、いつもの公園にいた】
ほほー……
【ベンチの上に本を広げて、自分は地面に足をつけてしゃがんでいる】
【奇妙な姿勢だが…両手が枷で左右纏められているせいで、本を開き、めくるという所作ができない彼の一応の方法であった】
- 396 :黒沢小百合:2011/05/17(火) 22:27:47 ID:SSMHlh/20
- >>395
「あ!」
夜の公園に規則正しく響く
かつかつ、というヒールの音。
その音の主はもちろん、ジボルを保護している女性
黒沢小百合その人だ。
「まったく、貴方はまた家を抜け出したのですね?
夜は危ないとあれほど言ったのに……。」
- 397 :『ジボル』:2011/05/17(火) 22:37:42 ID:1pPfvznI0
- >>396
う? おー、さゆー。
【家の主人を見るやぱっと明るい笑みを見せ、両手を揃えて振る】
【開いている本の字はやや大きく、絵の豊かな色彩が目立つ。児童向けの絵本だ】
『いえ』がなか、空をみえないし、風をないし……。
それに、た、た……『たいくつ』だぞ。
【奇妙さは残るものの、結構話せるようにはなってきている】
【叱るような小百合の口調に眉を八の字に下げてしゅんとする】
- 398 :黒沢小百合:2011/05/17(火) 22:51:54 ID:SSMHlh/20
- >>397
「そうはいっても……夜は危ないのです。
貴方なら分かるでしょう?夜は危険な者たちが動き出すのですよ。」
野生の生活を送っていたジボルにはこう言ったほうがわかりやすいだろうと
少々噛みくだいて説明を行なう小百合。
しかし、ジボルのいう事も一理ある。
今まで自由に生活していたのだし、遊びたい盛りの年頃だろう。
「うーん、何か遊ぶ物があればよいのですか……?」
- 399 :『ジボル』:2011/05/17(火) 23:02:32 ID:1pPfvznI0
- >>398
ン。
【頭に浮かぶは巨獣、猛獣の類】
【夜行性のジボルならでは。小百合の言うことは直感で理解できた】
んー……
【ちょっと悩む。以前のように木々の間を飽きるまで駆けたい気もするし】
【せっかく読めるようになった本をもっともっと沢山読んでみたい気もする】
【しかし……。悩むうちに、ぽろっと自然に言葉が零れた】
さゆーといっしょがあそぶ。だめ?
【まん丸い目を小百合に向けて、小首を傾げる】
- 400 :黒沢小百合:2011/05/17(火) 23:10:44 ID:SSMHlh/20
- >>399
「それは無理ですね。私は昼の間仕事……。
いいえ、狩りに出かけているのですよ。だから、
いつもたくさんのご飯が食べられるです。」
とかく、ジボルにわかりやすいよう単語を変換しながら
少しずつ教え込んでいく。
「外で遊ぶなら、せめて私の家の林で遊びなさい。
あそこなら、危険な物はいませんから。」
ジボルを家において以来、小百合は邸宅の庭に仕掛けた
様々な防犯設備の中でも、危険なものを撤去していた。
敷地内の林程度では1,2週間で飽きられてしまうかもしれないが
それでも遊び場がないよりはましだろう。
- 401 :ロージェンス:2011/05/17(火) 23:12:18 ID:1sJsd2CgO
-
黒装束の女は目的もなく執着もなく、只々、夜の街を彷徨う。
つまりは散歩だ。
脱いだローブをカロンの鎖で腰に巻き、トップには袖の無いレザージャケットのみ。
「あっつい。……ん?」
陽に焼ける事のない肌を夜風と公衆の目に晒して涼を取るロージェンス。
ふと目についた公園。
きっちりとしたスーツ姿の女性と手枷を嵌めた少年。
なんともアンバランスな組み合わせだ、と思った。
「こんばんは〜、あっついですねぇ。あなた達も夜涼みですか?」
出来る限り、フランクに。
邪な笑顔の上から人当たりの良い顔を貼り付けて、声をかけた。
- 402 :『ジボル』:2011/05/17(火) 23:22:09 ID:1pPfvznI0
- >>400
……さゆーがいっしょ、が、いいのに……。
【瞼を半ば下げ、不満げにボソボソと呟く】
【地面を弱く蹴る。足枷の鎖がちゃり、と鳴った】
>>401
?
【現れた女性の姿を見据えるや、野生の鼻はぴくりと動いた】
【肩幅よりやや狭く足を開き、筋肉の内側をいつでも動くよう『意識』しておく】
……。
【直感はロージェンスの裏の『顔』を、なんとなく察していた】
- 403 :黒沢小百合:2011/05/17(火) 23:36:21 ID:SSMHlh/20
- >>401
「ええ、そんなところです。
最近は急に暖かくなって蒸し暑くなりましたから。」
声を掛けてきた女性は風体こそ変わっているが
話してみたところ、別段おかしな様子は見られない。
小百合も、ごく当たり前に挨拶を返したが……。
>>402
「無理を言わないでください。
何か遊べる物を今度、用意しますから。
貴方は強い子ですから一人でも我慢、できるでしょう?」
今度、パズルや積み木のような知育玩具でも与えてやろうと思い、
ジボルのほうに視線を戻したが、微妙に警戒の色を滲ませるその様子を見て
何が起こったのか、と辺りを見回す。
……ああ、見知らぬ人間に警戒しているのか。
「ジボル、大丈夫ですよ。ここは安全な場所ですから。
少し、警戒させすぎてしまいましたかね……。」
- 404 :ロージェンス:2011/05/17(火) 23:48:22 ID:1sJsd2CgO
- >>402
(へぇ……。これはなかなか)
見知らぬ人に警戒するような少年の微かな『敵意』を感じとったロージェンスは、くすりと笑みを含む。
そして、
「こんばんは。その本……キミの?」
人見知りした子供にそうするように優しく話し掛ける。
>>403
「思い出したように暑くなりましたからね、かと思えば急に寒くなるしで……大変ですよ、ホント」
ところで、とジボルを指し気まずそうな表情と間を演じて。
「その子、お子さんですか?」
と、一言。
- 405 :『ジボル』:2011/05/17(火) 23:55:06 ID:1pPfvznI0
- >>403
……。
【それでもなお不満は開きかけた口の中に残ったが…】
【押し殺すように口を閉じ、唇を尖らせるだけに終わった】
【小百合に言われると、少しだけ、ほんの少しだけ警戒心を和らげる】
【完全に警戒を解き切らないのはちょっとした鬱憤もあったかもしれない】
>>404
……おー。
【ちらとベンチの上の本を見やり、小さく頷く】
【見知らぬ相手、というだけでは過剰な警戒心は、返事すら短く簡素なものにさせた】
【今まで幾度と聞いた声色である――『獣の子』として面白がり、捕まえようと、心の中に企んだ者の】
【過去に何人もいたそんな『ヒト』の事を思い出して、冷や汗がじわりと滲んだ】
- 406 :黒沢小百合:2011/05/18(水) 00:05:14 ID:SSMHlh/20
- >>404
「いえ、違いますよ。この子は、うちで保護している
孤児の子供なのですけれどどうにもこの枷が外れなくてね。」
本当は保護した当初、あまりにも家中をひっくり返して暴れるので、
はずさずに、そのままにしておいただけなのだが……。
「そもそも、どうしてこんな枷がされているのか……。
とりあえず、その形はどうあれ人と生活していたのは間違いがないのでしょうけど。」
枷が嵌められている、という事はなんらかの犯罪を犯したか
虐待が行なわれていたかのどちらかだ。野生に近いジボルの様子から見るに、
恐らく前者。農作物を荒らすなどしていたのだろう。
>>405
「ふふ、いい子ですね。
そういう子にはご褒美があるのですよ。」
ジボルの頭を撫で、その掌にキャラメルをぽとりと落す。
これは小百合がジボルに与えるため、あらかじめ買っておいたものだ。
「こういうの、食べた事がありますか?
いきなり飲み込むと喉に詰まったりしますからゆっくり噛むのですよ。」
- 407 :ロージェンス:2011/05/18(水) 00:23:15 ID:1sJsd2CgO
- >>405
「ふふ、そんな固くならなくても良いのに……もしかして、お姉さんの事嫌い?」
わざとジボルの横にしゃがみ込んで、小首を傾げながら尋ねる。
敵意に混じって嫌悪感も出てきた事に違和感を感じつつ、無理に『いい人』を演じてはいるが。
……感想、吐き気がする。
>>406
「保護……、ねぇ」
ジボルの隣から離れ、立ち上がる。
「そりゃ、こんな××××じゃあ、誰でも棄てたくなるでしょうね――あ、いっけない。つい本音が」
『いい人』が剥がれ落ちた。
咽の奥でくつくつと笑って、卑下の感情をジボルに向ける。
「大方、その手枷もテメェが嵌めたンだろォ?孤児を保護したとか、色々と悪い噂が書き立てられてるお姉さんには似合わないし」
ロージェンスは新聞で黒沢小百合を一方的に知っていた。とはいえ特別、害意があるわけではない。
ならば何故こんな発言をするのかと言えば、ただ単に人を怒らせるのが趣味だからだ。
- 408 :『ジボル』:2011/05/18(水) 00:35:34 ID:1pPfvznI0
- >>406
【相変わらず相対する相手を警戒して……】
……?
【興味が一気に掌に乗せたキャラメルに向いた。警戒はどこいった。】
【甘い匂いがするそれをすんすん、と鼻を近づけて嗅ぐ。毒はなさそうだと思うと口に放りこんだ】
……〜♪
【けっこう順調に飼いならされつつある。】
>>407
ッ……!
【小百合から貰ったキャラメルがまだ硬いまま、ばきっと音を立てて噛む】
【噛もうとした訳ではない。嫌悪感――それ故の歯ぎしりであった】
【次いで小百合を嘲笑うロージェンスにとうとう、慣れ親しんだ熱が沸き立ち……】
【――同時に、いつもは感じていなかった思考回路が、ジボルの中で動き始めていた】
【例えば獲物を取られたとき。寝首を掻かれたとき。総じて『傷つけられた時』】
【有無を言わさず跳びかかり、爪を立て牙を刺す――その獣が】
【表面張力ギリギリで、躊躇した】
【『小百合が迷惑するのではないか』その一点において!】
- 409 :黒沢小百合:2011/05/18(水) 00:43:20 ID:SSMHlh/20
- >>407
(またか……やれやれ……。)
小百合は、いきなり態度を豹変させたロージェンスに対し、
怒るでもなくただうんざりしたように顔をしかめた。
メディアへの露出も多い小百合は普段から、
こういった理不尽な中傷には既に慣れっこになっているのだ。
「では、そのように思っておけばよろしい。
この私は貴方の主義主張に行う意思は無いし、権利もない。
もう一つ付け加えれば、興味もない。」
そのままため息をつき、くるりと踵を返す。
>>408
「さあジボル、家に帰りますよ。
もうだいぶ遅くなってしまいましたし、帰ってご飯にしましょうか。」
ロージェンスの姿が見えないよう、体でジボルの視界を塞ぎ、
方に手をやってゆっくりと帰るように促す。
- 410 :ロージェンス:2011/05/18(水) 00:58:46 ID:1sJsd2CgO
- >>408
「ハハハッ!可愛いねぇ、歯軋りしちゃって。キャラメル勿体無いでしょー?」
瞬間湯沸し器のようになったジボルを笑い。
しかし、その状況が理性的な躊躇から来ているとは露とも思わず。
ケラケラと嘲笑う。
>>409
「……へーぃ、へい。華麗にスルーですか、そうですか、面白くないなぁ」
手を広げ、肩をすくめる。
興味無さげに背を向けた黒沢に、同じように背を向けて公園の出口へと歩き出す。
「帰ってご飯に……。思いっきり母親的なセリフじゃん――いや、むしろ飼い主的?」
その最中、ぶつぶつと聞こえるように呟きながら。
- 411 :『ジボル』:2011/05/18(水) 01:11:37 ID:1pPfvznI0
- >>410
ぅぅうううう……!!
【地の底から響くような低い唸りが喉を震わせる】
【今すぐにもこの『奇妙』な不快さをぶつけてくる人間を縊り殺してやりたい】
【追い討ちの嘲笑に、ぴくんと中指が跳ね――ロージェンスの首めがけ、神経が体を突き動かそうとしたその瞬間】
>>409
あ……。
【敵と認識したものを隠すように立ちはだかる小百合】
【勢いを殺されて少しよろめくが、すぐ体勢を整え】
お、おー。
【馬鹿にされても牙を剥かない】
【そんな小百合にもロージェンス同様の『奇妙さ』を感じつつも、それはある種の温かみを帯びたもので】
【素直に頷くと、足を帰り道に向けた】
【この『奇妙』というのが、原始的でまっすぐなジボルと違う、人の間で形成されたモノ】
【いわば人間の『歪曲した』内面的な何かとでもいうもので……】
【ジボルはこんなものかな、と一種の理解を芽生えさせながら家路につくのであった】
- 412 :イザヤ:2011/05/19(木) 21:22:38 ID:j3dxNUKs0
- いつもと変わらない街並みである。
そんなに大きくないこの通りには人通りも少なく、どこかでクラクションが響いている。
だが、その中に異質が巧妙に隠れていた。
烏が――良く見なければ鳩と間違えるほど灰色の烏が、
街灯や屋台の上、裏路地の窓の桟などに止まっている。
「…異常はねェなァ、ッてもまだ眼が足りねェや」
そんな通りを歩く、黒服の男が一人。
能力で作り出した烏と視界を同期させ、人の目の届かない場所を
チェックしながら動いていた。
- 413 :名も無き異能都市住民:2011/05/19(木) 21:44:05 ID:SSMHlh/20
- >>412
イザヤから直線距離にしておよそ数百m程の距離。
一匹の烏の視界に、灰色のワゴン車が飛び込んできた。
スラムの一角、剥き出しのコンクリートや鉄骨が目立つ建設中の
ビルの敷地にゆっくりと停車した車。
よく見れば、他にも何台かのワゴン車やバンが止められている。
それだけなら、チンピラの集会かなにかと片付けることも出来たが……。
車から降り立った男たちは、周囲を警戒しつつ
『目隠し』と『猿轡』をされた男女数人を強引にビル内へと連れ込んでいく。
これは明らかに尋常の光景ではない。
- 414 :イザヤ:2011/05/19(木) 21:53:21 ID:j3dxNUKs0
- >>413
迅速に体が反応した。
まるで壁を透かして見ているかのように彼の黄色の眼が細まり、
『何が起きたか』を知る。
「初めて偵察が役に立ったなァ、一丁仕事といくかィ」
この規模ならばまず自分だけで、と考えた彼は、
そのまま能力を行使しにかかる。
「銀烏、六千羽――翼形態三対」
「銀烏、二千羽――剣形態『纏水落月』」
全ての『眼』が細かい銀の烏になり、収束していく。
そして三対の銀の翼と一振りの剣が形作られた。
地を蹴る。同時に翼が空を掴む。
最速機動の今の状態なら、上空を経由しても10秒と少しもあればその現場にたどり着くだろう。
- 415 :名も無き異能都市住民:2011/05/19(木) 22:05:01 ID:SSMHlh/20
- >>414
イザヤが現場に降り立った時にはもう既に
男たちは建物内に入ったのだろう。辺りは不気味に静まり返っていた。
人質をつれているにしてはかなり素早い行動。
そのへんのチンピラではこうはいかない。
例の建設途中のビルは6階建てでそれなりの大きさがあり、
エレベーター、もしくは階段で上に上る事ができそうだ。
例の男たちはエレベーターを使ったようだが……。
- 416 :イザヤ:2011/05/19(木) 22:14:47 ID:j3dxNUKs0
- >>415
「…早ェな」
少しの間、『眼』を失ってから到着するまでの間に全てが行われていた。
組織的な事件が起きている、と感じる。
「…屋内で戦うのにァ慣れてねェが…」
外から中が確認出来ない限り、空中からの突破は避けた方が良いだろう。
もしも場所を外した場合、1階から逃げられる恐れがある。
「仕方がねェ」
残る二千羽の銀烏で魔方陣を地面に描く。
もしもの時の為のコンタクトを取る手段を用意したのだ。
「さァて、行くぜッ!」
エレベーターを破壊するかどうか迷ったが、隠密行動を優先する。
翼が霧散して彼の体内に吸い込まれると同時、彼は一階に踏み込んだ。
まずは階段で上を目指す。
エレベーターが表示している階が、恐らく敵のいる場所だろう。
- 417 :名も無き異能都市住民:2011/05/19(木) 22:24:47 ID:SSMHlh/20
- >>416
エレベーターの表示は4階で止まっている。
つまり敵は4階の何処かに居るという事。
外観出見た限り、4階は半分ほど完成していたはずだ。
恐らく、その完成済みの部屋のどれかに潜伏していると見て間違いないだろう。
足元を照らすぼんやりとしたライト以外、
照明がないため暗くて分かりづらいがペンキ缶や脚立がところどころに置かれているため
音を立てないよう、注意する必要がある。
- 418 :イザヤ:2011/05/19(木) 22:30:56 ID:j3dxNUKs0
- >>417
(俺がいる事には気付かれてはいねェだろうが…)
万が一の事もある。階を上がるときも慎重に進む。
同時に狭い空間での戦闘も想定しておく。
その足が4階に差し掛かる。
物音がしないが、ねっとりとした人の気配を感じた。
剣による『威圧』は見たものにしか効果が無い。
とにかく彼は最も近い部屋の扉の鍵を銀弾で破壊し、
蹴り開けて中へ踊りこむ。
- 419 :名も無き異能都市住民:2011/05/19(木) 22:42:55 ID:SSMHlh/20
- >>418
――バゴッ
申し訳程度につけられていた扉を空け、飛び込んだ部屋は
まだ内装が施されておらずコンクリートが剥き出しのまま。
しかし、工事用工具や資材が雑多に置かれ、工事現場などで使われる
簡易照明のみで照らされた部屋には人影はない。
この部屋は他の部屋とつながっているらしく、奥のほうでにわかに足音がし始めた。
敵に進入を気づかれたと見るのが妥当か。
- 420 :イザヤ:2011/05/19(木) 22:48:05 ID:j3dxNUKs0
- >>419
(奥か…!)
足音のする部屋を知り、あえて彼は今いる部屋を出て、
外の扉を破壊して族のいる部屋へと侵入する。
まだ体勢の整わない内に叩こうとしたのだ。
同じように鍵を破壊してから蹴り開けて、周囲の状況を把握する。
攫われていた人間の確保が第一だろう。
- 421 :名も無き異能都市住民:2011/05/19(木) 22:59:08 ID:SSMHlh/20
- >>420
鍵を破壊した瞬間、扉越しに撃ち込まれる銃弾。
それらは薄い借りの扉を容易に貫通し、イザヤへと迫る。
一瞬、室内を見ることは出来たが、
男がおよそ10人ほどいたという以外情報を得られなかった。
人質は別の場所か、それとも資材の影にでもいるのだろうか。
- 422 :イザヤ:2011/05/19(木) 23:07:13 ID:j3dxNUKs0
- >>421
「ぐッ!」
銃弾が着流しと肩の肉を抉り取った。
赤い線を横目で見ながら、彼はそのまま部屋に踏み込む。
二発目が放たれる前に、『剣』の能力を発動すれば優位に進めると踏んだからだ。
「『纏水落月』、『圧』ッ!!!」
「おとなしくしろィッ!」
銀の剣を振りかざす。
同時に放たれる強烈な威圧と畏怖。
妖気と呼ばれるものを数十倍に濃縮したものだ。
まともに見れば、精神力の弱いものなら金縛りになるだろう。
その為に注意をひきつけてまで扉を破壊している。
だが、もし見なかった者が居れば――彼等は圧に屈すること無く動けるだろう。
畏れを放ちながら、彼は更に部屋に踏み入る。
人質が隠れるようなスペースがあるかどうかの確認だ。
- 423 :名も無き異能都市住民:2011/05/19(木) 23:17:38 ID:SSMHlh/20
- >>422
イザヤの判断は、少し性急過ぎたかもしれない。
何しろ相手は10人もいるのだ。
すぐに、二の矢、三の矢もとい弾丸が打ち込まれ、
イザヤに対して弾幕を張る。
敵の何人かは、『畏れ』の効果を受けたようだが、
未だに反撃を行う物もおり、この狭い空間では非常に厄介だ。
部屋の奥、資材の影には人質が居るようだが……。
むやみな突撃ではイザヤといえども到達できるかどうか。
- 424 :イザヤ:2011/05/19(木) 23:28:26 ID:j3dxNUKs0
- >>423
「くっそ、効果が少ねェかッ!」
攻めあぐねるには訳がある。
彼の能力は、人質に傷をつけずに救出出来る性質のモノが少ない。
飛ぶ斬撃や衝撃の類はこの狭いビルでは人質をも巻き込むだろう。
畏怖の効果もあり、まともに命中するものは少ないが。
「…わき腹、腕…くそ、傷が増えたなァッ!」
銀弾で応戦した後に後退して壁の影に姿を隠す。
部屋に残されたのは浮遊する銀の扇。
バチバチと放電の音が聞こえ、そして小規模の雷が横向きに落ちる。
コンクリートのこの部屋で、雷が目指すのは彼らの使う拳銃だ。
時間を稼ぐ間に、彼は更にもう一つ、大きな扇を形作り始める。
「さァて、あいつらの足止めがどれだけ持つか…ッ!」
巨大な扇の完成まで、後僅か。
- 425 :名も無き異能都市住民:2011/05/19(木) 23:44:23 ID:SSMHlh/20
- >>424
目もくらむような稲光が部屋の中から漏れ、銃撃が止んだ。
が……すぐに、散発的ながら銃撃が再開される。
恐らく、ここには予備の武器、弾薬なども
一緒に置いてあったのだろう。いうなれば、敵の補給基地といったところか。
――ダダダッ――バスッ――ダンッ
イザヤが隠れた間も、銃撃は止まず
削り飛んだコンクリート片が粉塵となって舞う。
- 426 :イザヤ:2011/05/19(木) 23:55:24 ID:j3dxNUKs0
- >>425
「はッ、十分…ッ!」
壁としての意味を成さなくなってきたコンクリートの壁の裏には、
既に巨大な扇が完成していた。
「久々に使うが…後で始末書もンだな…」
キィィィイイイ。耳鳴りのような音が大きくなり、
先ほどよりもはるかに巨大な放電音と共に――
「妖雷―ッ!」
雷撃が壁を削り取った。
斜め下方向に打ち出された巨大な雷撃は、
今まで身を隠していたコンクリートごと、
その部屋の地面を抉り取って突き抜ける。
人質の位置は安全なように、敵の足場を崩す一撃。
それと共に彼はもう一度敵の前に姿を現す。
扇に使った烏は未だ回収出来ず、残った烏で翼を一対。
崩れた足場を飛びぬけて、至近距離まで一気に近付く。
- 427 :名も無き異能都市住民:2011/05/20(金) 00:04:13 ID:SSMHlh/20
- >>426
轟音と共に、コンクリートが崩落する。
これならば、敵集団が何人いようとひとたまりもあるまい。
イザヤは高速で室内へと飛び込んだが――。
――『人影がない。』
崩落したコンクリートの中にも、部屋の奥、
床の残った部分にも、敵も人質の影も見当たらない。
イザヤが扇を精製しているうちに、別室へ移動したのか?
いや、そういった気配はまったくなかった……。
- 428 :イザヤ:2011/05/20(金) 00:14:19 ID:j3dxNUKs0
- >>427
もうもうと舞う埃が晴れて、イザヤは訝しげに室内を見渡す。
(どこに行きやがった…?)
移動した様子は無い。
人質を連れてこの時間でどこかに移動するのは不可能だ。
かといって、崩落に飲み込まれた訳でも無さそうだ。
「……転移能力の類か?」
とにかく外へ脱出していないか、それを確かめなければ。
そう考えた彼はガラスの無い窓から身を乗り出す。
玄関がぎりぎり見える場所だ。
- 429 :名も無き異能都市住民:2011/05/20(金) 00:26:59 ID:SSMHlh/20
- >>428
窓から見下ろしても
敵の影を見つける事ができない。
相手の姿は完全に消え去ってしまい――。
――ドガッ!!
突然の爆発音。音源は下、恐らく1階だろう。
ビルが崩落するような威力ではないが、何かが激しく燃えているのか
黒煙がもうもうと上がる……。
- 430 :イザヤ:2011/05/20(金) 00:31:40 ID:j3dxNUKs0
- >>429
「くそッ、何が起こってやがるッ!?」
敵の姿が無いなら、異常の元へ向かうしか無い。
崩落した穴からイザヤは一階に『落ちる』。
着地の衝撃を殺して、煙にまかれた周りを見渡した。
翼を3対展開し、周囲に対して何時でも攻撃できるように対応する。
- 431 :名も無き異能都市住民:2011/05/20(金) 00:38:46 ID:SSMHlh/20
- >>430
イザヤに対する攻撃はない。
燃えていたのは一階に止まっていた数台の車だ。
先ほどの爆発は攻撃というより、
証拠隠滅を狙っての車の始末だったというわけだが……。
これで、敵が一階に降り車で逃げた線は消えた。
やはり、なんらかの転移術が使われたのだろうか。
- 432 :イザヤ:2011/05/20(金) 00:45:14 ID:j3dxNUKs0
- >>431
車が見えて、爆発の意図を知り、彼は翼での防御を解く。
「ちッ、転移か…俺の見逃しがなけりゃァな。
もしかすると、能力者が作り出した人形、ッてェ線もあるが…
それだと人質の説明がつかねェ。……」
転移されたなら、人員が足りない。
彼は置いていた魔法陣を使って部署と連絡を試みる。
- 433 :名も無き異能都市住民:2011/05/20(金) 00:49:15 ID:SSMHlh/20
- >>432
部署とはすぐに連絡を取る事ができた。
どうやら、何人か人員を回してくれるようだが
この様子ではあの男たちを再び捕らえる事は難しいだろう。
遠くで、消防車のサイレンの音が聞こえる。
すぐにここにも人が現れるだろう……。
// こんな感じで〆でいいかな?
- 434 :イザヤ:2011/05/20(金) 00:55:03 ID:j3dxNUKs0
- >>433
「……」
どん、と壁を叩く。
「逃がしたッ!!!」
手柄を上げるには絶好のチャンスだったのに、などと
泥臭い考えが充満し、イザヤはもう一度壁を叩いた。
「くっそ、屋内戦と…人質か、能力に限界がある…ッ!」
やってきた部署の人間に後の捜索を任せ、イザヤは報告に戻る。
対策を練らなければ、と呟きながら。
//お疲れ様でしたー!
- 435 :酒呑屋 虎姫?:2011/05/21(土) 20:40:03 ID:UNZWz/ns0
- 【交番】
【今でこそ使われることも少なくなったが、もとは虎姫がよく使っていた場所だ】
【昼に埃の被った椅子に腰をかけてずっと経ち……今ではもう夜】
【街灯だけが虎姫の姿を微かに照らすだけだ】
はー……夜だ。どーしよ。
……ホンット、どーしよ…。
【深い溜息を吐いて、頭をボリボリ掻いて】
【椅子を跳ね飛ばして立ち上がると、交番の外へ出る。人通りは少ないけど、車は何台か通りすぎていく】
【憂いげに目を潤ませ、街の中をふらふらと歩き始めた】
【行く先は……この先は恐らく繁華街だ】
- 436 :名も無き異能都市住民:2011/05/21(土) 21:17:51 ID:SSMHlh/20
- >>435
――ガシャアァアァ
交番から2,30m程離れただろうか。
虎姫の背後からガラスの割れる音が響いた。
交番に何者かが立ち入ったのか……?
- 437 :酒呑屋 虎姫?:2011/05/21(土) 21:23:27 ID:UNZWz/ns0
- >>436
……んお?
【気の抜けた声をあげて、首だけで振り返る。闇の中には何も見えない】
んー……
【猫背になってぐるりと踵を返す。さらに、極めて自然に腰の鞘を左手で引きぬき、無造作に握って行く】
【別段威嚇とか、そういう気を起こした訳ではない。威嚇など必要でない】
【そういうまどろっこしい事抜きに――彼女は斬る】
だーーれーーーだぁぁあああーーーーー〜〜?
【交番入り口に大股開いて仁王立ち。覗き込むように頭を前に突き出した】
- 438 :綿鬼大御神:2011/05/23(月) 23:00:44 ID:HnkBBDEo0
- とある神社の中にて、気配が蠢いた。
「……」
目が覚めた。ここはどこか。
「あー、あーあーあー、うん」
喉が渇いている。何か飲みたくて仕方ない。
ズルリズルリと布団の中から這い出ると、外への扉を開ける。
外から湿気を含んだ冷たい空気が流れ込み、銀色の髪の毛を揺らす。
ああ、そうだ。もうこんな季節だ。
「今日は何日じゃ?」
確認したくて、社の中に何故かあるテレビをつける、が、
電力が無いのか反応なし。
「ちぃっ」
ガスッとテレビを蹴ると、頬を膨らませつつ外に出た。
- 439 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/23(月) 23:06:10 ID:WVrfsEdY0
- 【社の外から小さな寝息が聞こえてくる】
「zzzzzz」
【社においてあったベンチに一人の少女が腰掛けて眠っているようである】
- 440 :綿鬼大御神:2011/05/23(月) 23:09:52 ID:HnkBBDEo0
- >>439
「……なんだ、ワッパか」
寝ているようなので、そっとしておいてやることに。
包帯に包まれた服装に覚えはあるが、名前はなんといったか、
「まぁよい。水じゃ水」
フラフラと歩いて蛇口に向かい、思いっきり水を流すと、
まるで犬のように横から舌を伸ばして飲み始めた。
「ふーい、生き返った」
濡れた袖、衿を気にせずに口元を拭う。
ボサボサを髪の毛を掻き毟りつつ、少女もまたベンチに座った。
「……次は、何か食べるとするかの」
- 441 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/23(月) 23:13:26 ID:WVrfsEdY0
- >>440
「う〜…」
【少し魘されているようにも見える少女】
「う〜…う〜…」
【胸を片手で押さえながら呻いている】
- 442 :綿鬼大御神:2011/05/23(月) 23:15:32 ID:HnkBBDEo0
- >>441
「ビクッ」
うなり声を聞いて身構える。
「な、なんじゃコヤツは……」
構えつつも少しずつ接近。
「ほれ、おきろ、ほれ……起きんか!」
ベシベシと頬を叩いてみる。
- 443 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/23(月) 23:17:40 ID:WVrfsEdY0
- >>442
「あうあう。」
【ペシペシ頬を叩かれて】
「んう?ねちゃってたんだなの…」
【少し眠たげな顔をして目を覚ます】
「…あう?どこかであったようなの…」
【綿鬼の姿を見て首を傾げる】
- 444 :綿鬼大御神:2011/05/23(月) 23:19:01 ID:HnkBBDEo0
- >>443
「なんじゃ魘されてただけか」
起きた様子を見て、ほっと一息。
そして、いきなり手を差し出す。
起こすためではない
「で、おぬし、食い物は何かあるか? 食べられるものなら何でも善いぞ」
いきなり催促である。
- 445 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/23(月) 23:23:10 ID:WVrfsEdY0
- >>444
「あう〜?うなされてたなの?
う〜ん…おぼえてないなの…」
【軽くため息を付いて胸を抑えた】
「あう?ごはんなの?
あう〜、どこにあるのかなの…
ここにはなにか…」
【軽くあたりを見回した。コンビニが神社の外にチラホラ見える…】
- 446 :綿鬼大御神:2011/05/23(月) 23:29:13 ID:HnkBBDEo0
- >>445
「それがあったか!!」
コンビニを見るや否や、社へとUターン。
賽銭箱の蓋を勢いよくバキリと外すと、中から小銭を掴み取る。
「ひぃふぅみぃ……これだかあれば足りるじゃろ!」
掴み取った小銭を握り締めたまま、勢い良く神社の鳥居を飛び出した。
「すまんなワッパ! 儂はいま忙しい!」
そう言うが早いが、少女は遠くのコンビニへと、自動ドアを手動で開けて入っていってしまった。
- 447 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/23(月) 23:31:26 ID:WVrfsEdY0
- >>446
「あうあう〜?
おかねもってたんだなの!」
【安心した顔で綿鬼を見送るディス】
「…はぁ…
すこしはがまんできるようになったかなの…」
【綿鬼の姿が見えなくなったところを見計らって、大きく荒い息を吐き出して再び胸ぐらのあたりを強く握った】
- 448 :ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/05/26(木) 23:36:57 ID:1sJsd2CgO
- 【異能都市 北部】
夜でもにぎわう繁華街。
なんやいろいろと行き交う通りに混ざり込む黒装束。
ローブをはだけ、タンクトップのような短さのジャケットと焼けない肌と細い身体をヘソまで晒す。
かなりきわどい薄着であるのに色気より不健康さが目立つ印象である。
(……なんつーか、団体一組様に追われ始めてんのは確かみたいね。千夜が躍起になってる、て訳じゃ無さげだけど)
先ほど、追っ手の一人を路地裏に捨ててきたロージェンスは現状について考える。
(どんな組織か、考えても分かるわけないか。それより、ちょっと動いたからか小腹がすいたな……)
ちら、とコンビニを見付け、ぼんやりと歩いて向かう。
- 449 :ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/05/27(金) 22:16:13 ID:1sJsd2CgO
- 【異能都市 何処か】
裏路地。
そこには、少し訳ありの品を扱う露店商が集って一つの市を構成している。
いわゆる、闇市場と呼ばれるものだ。
「……あぁ。――だ。……、……そう。どーも、言われなくても他を当たるよ」
そこに露店商と交渉していた黒装束の女性がいた。
ローブをはだけ、タンクトップのようなジャケットを着て、陽に焼けない肌を露出させている。
表情を見るに交渉は上手くいかなかったようだ。
- 450 :逆瀬川 純鈴:2011/05/27(金) 22:49:17 ID:6mSH0AXM0
- >>449
「 ……―― いやー、どこも不景気だねー」
裏路地の奥から、少々場違いな少女の声。
その背後に黒外套の男が、音も無く後に続く。
「そんなもんだろう。これが此処での『相応の対価』、なんだろうさ」
興味無さ気に、黒外套の男は呟く。
そんな様子を気にも止めず、少女は、歩みを進めた。
「此処なら商売出来るんじゃないのー? 『あなたのお望み、叶えます』って」
「……馬鹿は休み休み言え」
「ばか ばか ばか 」
男の溜息が、路地裏に落ちた。
- 451 :ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/05/27(金) 23:03:57 ID:1sJsd2CgO
- >>450
(……貴方の望み叶えます?)
場違いな少女の声に、ロージェンスは顔を向ける。
その先には、黒い外套の男が見えた。
奇妙な取り合わせ。
ロージェンスはそう感じた。
「……んー、そこのお兄さん。さっきのアレ――望みを叶えてくれるのって、キミ?」
ツカツカと歩み寄り、にこやかに訊ねる。
線の細い黒装束の女は顔面ピアスだらけ、腰にはじゃらじゃら五月蝿い鎖と装飾品。
なんというか、普通なら不快感を感じる容姿だった。
- 452 :逆瀬川 純鈴:2011/05/27(金) 23:16:29 ID:6mSH0AXM0
- >>451
「ほーら、釣れた釣れた! 良かったねーお仕事だねっ!」
「少し黙れないのか、お前は」
何だか嬉しそうな表情ではしゃぐ少女と、呆れ顔の男。
少女はハンチング帽子を被り直し。男を横目で見て、口を開く。
ナ ニ ヲ ノ ゾ ム ?
「おねーさん変な格好だねー、それは置いといて、『貴女の望みはなぁに?』」
笑う少女の隣で、黒外套の男は静かに――ロージェンスを『見/観/視』ていた。
- 453 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/27(金) 23:17:31 ID:WVrfsEdY0
- 【異能都市の何処か】
「……」
【一人の少女がじっと空を観ている】
「あう〜」
【少し疲れた様子で小さくため息を付いた】
- 454 :ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/05/27(金) 23:30:41 ID:1sJsd2CgO
- >>452
男が何を見/観/視ているのか知らないが、ロージェンスは愉しそうに嗤う。
「――そうね、端的に言えば兵器かしら。差し当たって設計図だけでも構わないんだけど?」
微かに口が息を吐く。
わずかに振動しただけの声に成り損なった音。
――そして、轟音。
“コイツ”
「《傲レル幻銃》に見合うヤツが、アナタに用意出来るか……甚だ疑問だけど」
ロージェンスの後ろに、10tトラック並みの体躯を持つ機械の獣が召喚される。
建造物の側面を削ぎ、その四足の直下にあった露店商を殺ぎ。
傲慢に鎮座するその姿は――獅子の身体に鷲の頭と翼を持つ――伝承の獣グリュプス。
- 455 :逆瀬川 純鈴:2011/05/27(金) 23:41:32 ID:6mSH0AXM0
- >>454
「"大ハズレ"じゃあないのか、コレ」
「そーとも言うかも...」
―――――キィイイイイイインッ!!
甲高い音が、ロージェンスの鼓膜を揺らす。
男の背後に浮かび上がる、数十の魔法円。
少女の周りで、歪む空気。
「お前さんが望めば、神にも為れる! 但し――『相応の対価』を払えば、だがな!」
男が一つ、靴音鳴らせば。
周囲は、『歪み』に、包まれた。
- 456 :ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/05/27(金) 23:55:25 ID:1sJsd2CgO
- >>455
「なにを言――――ッ!!?」
鼓膜を叩く甲高い音。
頭が割れそうな錯覚を伴う厭な音。
耳を塞ぐ事も叶わず、男の声と共に辺りは『歪み』に包まれる。
「……おい、なんなんだ。
変なトコ飛ばして何を言うかと思えば神にもなれる! 相応の対価! ハハッ、新手のキャッチセールスかァ!?
……というより、ここはドコ。アンタラはいったい何をしたのよ」
背後に召喚した獣は何処かへと消え、怪訝な表情をしたロージェンスが残った。
何が起こったのか、さっぱり掴めていないようだ。
- 457 :逆瀬川 純鈴:2011/05/28(土) 00:09:01 ID:6mSH0AXM0
- >>456
「『此処』にあって、『此処』じゃあないとこ、かなー。誣いて言うなら、『無秩序』、かな?」
少女は"哂う"。
魔獣の嘶き、咎人の断末魔、狂えるモノの叫ぶ"音"。
無数の『何か』が、その"視線"をもってロージェンスを射貫く。
次第に『歪み』は解けて――そこは元の、『何も起きていない』路地裏へと。
「『常識を覆す』だけのことさ。それには――代償が付き物、ってことだ」
呟くと、男は消える。
"其処に居た"という、存在感すら残さずに。
一人残った少女は、未だに、"哂って"いた。
- 458 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/28(土) 00:18:39 ID:WVrfsEdY0
- >>456
「…いまだれかのこえがきこえたの…」
【不思議そうな顔で声のする方へと歩いて行く】
「……だれかなの…」
【どこか疲れた顔に見える】
- 459 :ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/05/28(土) 00:25:14 ID:1sJsd2CgO
- >>457
奇怪な光景にロージェンスは不快感を露わにする。
現実感がまるで無い。
言葉も意味を失うほど。
「――!?」
そして還ってきた。
奇妙な体験をした、という漠然とした何かを得て……しかし何かを失ったという訳でもない。
「……で、いったい何がどう変わったの?」
今も哂う少女に、半ばイラついて訊ねる。
男が消えた。その変化に気が付けないまま。
- 460 :ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/05/28(土) 00:27:41 ID:1sJsd2CgO
- >>458
その先には、奇妙な黒装束の女と、一人の少女が居た。
少なくとも、黒装束の女はディスに気が付いていない。
- 461 :逆瀬川 純鈴:2011/05/28(土) 00:38:08 ID:6mSH0AXM0
- >>459
「なぁんにも。何にも『変わってない』よ。だって『それは求めてない』でしょ?
とりあえず振り返ればいいんじゃあないかなー。ほんとに『何も変わってない』から」
静かに、踵を返す少女。
緩くロージェンスに手を振りながら、ゆっくり、ゆっくりと歩き出す。
「また、会えると良いね。ううん、きっとまた『遭う』よ。
だって、"私は君の敵じゃないから"」
そうして少女は、何も変わらぬ闇市の何処かに、姿を消した。
――以下中の人――
迎えに行かなきゃ行けないので落ちまする。
絡みさんくすでした!
- 462 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/28(土) 00:39:24 ID:WVrfsEdY0
- >>460
「…あのひとは?」
【ロージェンスの顔を見て軽く首を傾げる】
「う〜ん…なんだかへんなくうきなきがするなの」
【隠れたりすることなくてくてくと歩いて行く】
- 463 :ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/05/28(土) 00:50:34 ID:1sJsd2CgO
- >>461
「……ワケわからない。望みなら言ったでしょうよ。望んじゃいないならそもそもこんな所、来るわけ……」
去りいく少女の背を眺めつつ、ぼそぼそと愚痴って。
深々とため息をつく。
//お疲れさまでしたー
>>462
「……ん?」
振り返って、見覚えのあるような姿に気が付く。
包帯が特徴的な痛ましい少女。先ほどのとは逆ベクトル。
しかし、何処で見たかまでは思い出せず、大して気に留めずすれ違おうとする。
- 464 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/28(土) 00:53:28 ID:WVrfsEdY0
- >>463
「くんくん…」
【ロージェンスに近づくとクンクンと鼻を鳴らす】
「…あう〜?どこかであったようなきがするなの…
どこでだったかなの…」
【不思議そうな顔で言った】
- 465 :ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/05/28(土) 01:09:16 ID:1sJsd2CgO
- >>464
すれ違いさまに匂いを嗅がれたのに気がつかず、そのまま歩いていて。
――ふ、と立ち止まる。
「あー! あー、そうだそうだ! いつぞやの『景品』じゃあないか!」
いつかの夜。
離れた所から見ていただけだが。
一人が何かを施して、一人が取り戻しに現れ、一人が奪い去っていった少女。
様々な思惑で欲しがられている様子が『景品』のようで、ロージェンスはそう覚えていた。
そして、
「アッハハ。案外、雑に扱われてるのね。こんな所に居たら、お姉さんみたいなヤツに狙われるってのにさァ!」
唐突に手元に現れた拳銃《獅子ノ帝銃》を振り向きざまにディスへと向ける。
銃口には赤の円陣が回っている。
込める魔弾は基本形状、火の属性。炎の弾丸《女帝の虚栄心》
- 466 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/28(土) 01:12:02 ID:WVrfsEdY0
- >>465
「あう!?けいひんってどういう…」
【不思議そうな顔で訪ねようとしたところ】
「っ!?」
【振り向きざまに向けられた銃を見て驚いた】
「えっと…ねらってるって…どういうことかなの?」
【警戒心をもってロージェンスに目を向ける】
- 467 :ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/05/28(土) 01:35:05 ID:1sJsd2CgO
- >>466
警戒心を感じ取り、笑みを深めるロージェンスは魔弾の装弾が完了したのを見、引き金に指をかける。
「……そりゃあ、言わずもがな――テメェの命を狙ってンだよ」
しかし、引き金は引かれなかった。
その直前で、路地から飛び出してきた男が手から炎を噴き、ロージェンスを攻撃したからである。
「チッ、こんな所まで。忌々しい……!」
男の迎撃に魔弾を撃ち、逃げるロージェンスを追って男もまたこの場から消える。
後には元の静寂のみが残された。
//ここで落ちますー。ノシ
- 468 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/28(土) 01:36:49 ID:WVrfsEdY0
- >>467
「あう…『でぃす』のいのち…?」
【驚きながらも身構えてロージェンスに対峙するが…】
「…あ、ほかのひとなの!
…たすかったの…かなの?」
【立ち去っていった二人をただ見送るばかりであった】
//おつー
- 469 :名も無き異能都市住民:2011/05/29(日) 22:04:19 ID:SSMHlh/20
- 上弦のアトリエの扉がこつ、こつ、と控えめに二度叩かれる。
まるで、上弦以外の誰にも音を覚られたくない、とでもいうように。
こんな時間に来客の予定など無かったはずだ。
- 470 :上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2011/05/29(日) 22:11:44 ID:.6prKP66O
- >>469
「うおぉぉぉッ!!」
ドバダダダダダッ
そんな人の気もいざ知らず、まるでわざとらしさを感じるほどに足音を立て
廊下の奥から走ってくる人物
「っおりゃぁ!」
バタンッ!
一度扉を開け、自身の部屋に戻るミントグリーンの髪を持つ男
「どちら様?」
そして、何事も無かったかの様に再び扉を開き、客人を迎える
- 471 :名も無き異能都市住民:2011/05/29(日) 22:31:38 ID:SSMHlh/20
- >>470
しかし、扉を開けたところでそこには誰の姿も無く。
いつもどおりの風景が広がっているだけで――。
「……高名な錬金術師であるクラーリオ氏の奇行癖は
幾度か、聞き及んでいたけれど。」
上弦の背後から投げかけられる少女の声。
振り向けばそこに、赤と黒のゴシックドレスに身を包んだ少女が居るはずだ。
気配も息使いも体温も無く、いつのまにかそこに立ち尽くし
どこか呆れたような視線を上弦に送っている少女が。
- 472 :上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2011/05/29(日) 22:41:32 ID:.6prKP66O
- >>471
「……」
姿の見えぬ声の主を探すかのように、男はパチパチと何度か目をしばたかせる
「ふはは、奇行とは人聞きの悪い……結構子供は喜ぶんだよ?これ」
一人で静かに笑った後、ゆっくりと男は振り替える
生れ付き鋭い眼光、しかしどこか優しい口元が少女の視界に入るだろう
「相変わらず可愛らしい服装ですね、ゴールデンクワガタ様?」
- 473 :ロザリア・ロートシルト:2011/05/29(日) 22:47:51 ID:SSMHlh/20
- >>472
「その名前で呼ぶのはお止めなさいな。
レディに対する礼を欠いていてよ。」
どうにも、目の前の男の振る舞いには調子を崩される。
ロザリアは不機嫌そうに、片目を吊り上げてからため息をつき。
「……貴方をニンゲンの中でも信頼できると見込んで少し、
頼みたい事があるのだけれど……。」
- 474 :上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2011/05/29(日) 22:56:13 ID:.6prKP66O
- >>473
「ふむ、可愛い名前なのだが……以後気を付けよう」
注意されたのならば今はやめよう、しかしこの男の顔……また同じ事をするだろう
「頼みとは珍しいね、一体君が私に何を頼むというのかな?可愛い服か?」
“人間の中でも”と言う言葉にいささか何かを感じ取ると
冗談を言いながらも、真面目な表情で尋ねる
- 475 :ロザリア・ロートシルト:2011/05/29(日) 23:03:48 ID:SSMHlh/20
- >>474
「貴方はディスのことを覚えているわね?
なんどか、貴方と会った包帯を巻いた子を。」
実際、会った事の少ないロザリアのことを
これほど覚えていれば、ディスのことなど当然覚えているだろう。
「ディスは……今、かなり強力な呪術――。
いえ、『呪い』の類に体を侵されているわ。
私も魔術にはそれなりの腕前があると自負していたものだけれど……。」
言葉を切り、くやしげに目を伏せて。
「私では、どうすることもできなかったわ。
でも、貴方ほどの腕前ならディスから呪いを除去できるかもしれない……。」
- 476 :上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2011/05/29(日) 23:13:30 ID:.6prKP66O
- >>475
「あぁ、もちろんだ……
たまに一緒に遊ぶしね」
ディスの顔を思い出したのか、笑顔になりながら何度も頷く
しかし、その笑顔は一瞬にして真剣な表情に様変わりしてしまう
「つまり、頼みとは……私に解呪の薬を調合して欲しいと言う事だな?」
目を伏せた少女を慰めはしない
それはロザリアがプライドの高い吸血鬼と知っているから
プライドの高い吸血鬼が、自分に頭を下げる程にディスを大切に想っていると感じているから、余計な事は言わない
- 477 :ロザリア・ロートシルト:2011/05/29(日) 23:20:11 ID:SSMHlh/20
- >>476
「ええ……でも…・・・アレは一筋縄ではいかないわ。
かなり高純度の霊薬が必要になるはず……。」
ロザリアも多少の調合は心得ており、
手に入る範囲で材料をかき集めいくつかの薬による解呪も試したが
それらはことごとく失敗していた。
「頼りにして、いいのね?」
- 478 :上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2011/05/29(日) 23:31:26 ID:.6prKP66O
- >>477
「絶対とは言い切れ無いね……」
しかし、帰ってきたのは酷く頼りない返事だった
「君も試してみたんだろ?色々と……でも無理だったから私に頼みに来た……」
男は目を閉じ首を振る
「君が出来なかった事を私が簡単に成功させるとは考え難い……
もちろん、私も最大限努力はするが……」
そして、目を開きロザリアを見た時……男の瞳は酷く冷たいものであった……
並の者ならばその場で逃げ出してしまう程に……
「一部の材料を頂けるかな?君の血を大量に……あと大切な歯を……」
あろう事か、男はとんでもない要求を少女に突き付ける、吸血鬼にとって大切な……歯を寄越せと言うのだ
「絶対成功は約束できないよ?
それでも……君はその材料を私に提供するかい?」
- 479 :ロザリア・ロートシルト:2011/05/29(日) 23:42:37 ID:SSMHlh/20
- >>478
「いいわ、全て貴方に差し上げましょう。
……『歯』は犬歯でよくて?」
ロザリアは、二つ返事で上弦の要求に了解して見せた。
いや、したように見せようとしていた。
「材料は……手に入れづらいものをすぐに、
私の使い魔に運ばせるわ。血液と『歯』は後日でいいかしら。」
たんたんと言葉を並べているように見えて、
ロザリアはかすかに震えているし、血の気の無い真っ白な肌は
さらに青く染まっているように見える。
- 480 :上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2011/05/30(月) 00:01:11 ID:.6prKP66O
- >>479
「……」
じっとロザリアの顔を眺め、急に冷たい眼差しは消え失せる
残ったのは父性溢れる優しき眼差し
「君はいい子だな、歯って言うのは冗談さ!
血も2、3滴でいいぞ?恐がらせちゃったかな?ごめんね?」
そして口から出る冗談発言
ニッコリと笑う男の姿に、既に先程の威圧的な面影は存在しなかった
残っているのはいつも人をからかっていた一人の男の姿である
「いっやぁ、可愛い所あるね〜?
ついでに配達お願いできる?
『ドンケルハイト』って花とね、ドラゴンゾンビの新鮮な心臓ね!
あ!後は幽霊の涙も欲しいかな!後は〜…………」
ドンドンとロザリアの知らない……
と言うか採取方法……いや、存在すら危うい素材の配達を頼む姿にロザリアは怒りを覚えても不思議は無いのだった
- 481 :ロザリア・ロートシルト:2011/05/30(月) 00:20:23 ID:SSMHlh/20
- >>480
「……意地悪ね。」
ロザリアの表情がさらに歪むが、
結局諦めたように、ため息をつき。
「ドラゴンゾンビの心臓はすぐに用意できるわ。
ドンケルハイトと幽霊の涙は……そうね、4日以内に必要数そろえてみせる。
それ以外は……少し、厳しいけれど……できるだけ努力する。」
ロザリアは顎に手を当てて考え込む仕草をしながら、
そろえられるもの、そろえられないものをより分け上弦へと知らせる。
上弦が名前を挙げたものの中でロザリアが用意できそうなものは一割に満たない。
- 482 :上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2011/05/30(月) 00:26:52 ID:.6prKP66O
- >>481
「なはははは!そう言うなよ、頑張るのはいいけど……たまにはディスのお嬢さんと遊んであげなよ!」
ロザリアが用意出来ないものはこちらが用意するという旨を伝える
「まぁ、取り敢えず私もお嬢さんを診てみるよ
より効果的に薬を作らないとね!」
これで、上弦への依頼は上手く出来ただろう
相変わらず、絶対の約束は出来ないが……それでも上弦は力を尽くしてくれるだろう
- 483 :ロザリア・ロートシルト:2011/05/30(月) 00:32:54 ID:SSMHlh/20
- >>482
「え、ええ……分かったわ……。」
アレ以降、ディスは何処か人が変わってしまい
ロザリアもどことなく、彼女に接しづらくあまり一緒に居る事がなくなった。
「手間をかけるわね……。
でも、よろしく頼んだわよ。」
声だけを残して、初めから居なかったかのようにロザリアの姿が掻き消える。
彼女お得意の空間魔術によってどこかへ転移したのか、それとも体を霧にかえる
吸血鬼の力を使ったのかは分からないが……。
「いつか、御礼はするから……。」
- 484 :上弦・F・クラーリオ ◆6xc12amlNk:2011/05/30(月) 00:37:37 ID:.6prKP66O
- >>483
「ふふん、久しぶりに全開で調合に行こうか!」
最後の言葉は聞こえていたのかいないのか……
それはわからないが、男は小さく笑うと、部屋に戻るために扉を開く
- 485 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/31(火) 23:29:04 ID:WVrfsEdY0
- 【梅雨の合間の月夜が覗く空】
「……もうすぐだと思うんだけどなぁ〜」
【空を見上げるのは、ブカブカのレインコートを着込んだ少女】
「やっぱりオンズに任せたのって失敗なのかなぁ〜」
【くすくす笑いながら空を見る】
- 486 :ロザリア・ロートシルト:2011/05/31(火) 23:37:53 ID:SSMHlh/20
- >>485
「見つけたわ……。」
――パリッ
レインコートの少女に、背後から声が投げかけられると共に、
空を裂く様な音を立てながら雷が飛来する。
- 487 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/31(火) 23:41:31 ID:WVrfsEdY0
- >>486
「お?」
【突然の雷撃で少女は覆われた…かに見えたが】
「…青天の霹靂…じゃなくて」
【上空に突如として浮かび上がった半透明の物体が少女を守っていた】
「なにかよ〜お?化物さん?」
【フードに覆われた顔からはニヤけた口元が見える】
- 488 :ロザリア・ロートシルト:2011/05/31(火) 23:49:36 ID:SSMHlh/20
- >>487
「用も何も……!!!」
再び背後、超至近距離からの声。
ロザリアは、『影から影へ移動する能力』を使って
雷を防御した際に生じた少女の影へと移動したのだ。
「ディスを元に戻せェッ!!!!」
そのまま、力任せの豪腕を振るい
少女の胸部を背後から貫こうとする。
- 489 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/05/31(火) 23:54:33 ID:WVrfsEdY0
- >>488
「もとにも何も」
【ロザリアの豪腕はレインコートを確かに捉え、豪腕が深く背中にめり込んだ…様に見えた。】
「お母さんが言うにはディスは「もともとああ」だったらしいよ?
私はただ眠ってたのをたたき起こしただけよ。」
【しかし少女は淡々と続ける。】
【まるでウォーターベッドのようにぶよぶよとした感触がロザリアに伝わるだろう】
「正しくは…「また眠らせろ」じゃない!?」
【突然レインコートが破れ、中から粘ついた液体が飛び出し、ロザリアに襲いかかる】
【その液体は油臭い匂いをしている】
- 490 :ロザリア・ロートシルト:2011/06/01(水) 00:07:03 ID:SSMHlh/20
- >>489
(捉えたッ……!)
手刀がレインコートへ叩き込まれる刹那、
ロザリアは攻撃の成功を確信したが……。
「うっ……これは……オイル!?」
べったりと粘性を持った油が肌を濡らし、
一瞬ひるむ物の、すぐに辺りを見回して相手の姿を捉えようとする。
「小細工が得意ですのね。
小虫風情がほんとうに小賢しいわ……。」
- 491 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/06/01(水) 00:11:59 ID:WVrfsEdY0
- >>490
「小細工じゃあ無いよ」
【やや離れた位置にたった少女】
「これは私の武器なの!」
【そう言って右手をロザリアにかざすと】
【激しく空を切る音と共にビー玉大の液体が散弾のごとく右手から発射され、ロザリアに向かっていく】
【ロザリアにかかっているオイルは気のせいか普段よりも高い粘性を持っているように感じ、身動きを取りづらくなるかもしれない】
- 492 :ロザリア・ロートシルト:2011/06/01(水) 00:26:15 ID:SSMHlh/20
- >>491
「この程度で私を謀ろうなどと!
夜種の主たる吸血鬼の力を舐めるな……!」
そう、吸血種である彼女にとっていくら粘性が高かろうと、
オイル程度では動きに影響を与える事ができない。
(……電熱、はマズイ……それなら……!)
――パキキキッ!!
突如流れ込む、肌を刺すほどまでに冷え込んだ冷気。
それはやがて地面を凍てつかせながら地を走り
発射された液体をも凍りつかせ、少女へと向かう。
ある程度の距離まで近づくと、独りでに氷柱が突出し彼女を穿つだろう。
- 493 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/06/01(水) 00:30:06 ID:WVrfsEdY0
- >>492
「えぇ!?そんな!」
【発射された液体が凍りついてどんどん下へと落ちて行く。それを見て仰天した少女は】
「ヤバイ!ココは回避を…」
【バックステップでかわそうとするが】
「あ!あたっちゃった!」
【突然吐出した氷柱で両手を貫かれ、血が吹き出した。】
【ダメージは大きそうだが少女は顔色ひとつ変えてはいない】
- 494 :ロザリア・ロートシルト:2011/06/01(水) 00:38:23 ID:SSMHlh/20
- >>493
「――爆ぜろォッ!」
次の瞬間、氷柱から多数の『氷の枝』が分岐し、
さらに太もも、足、肩と致命傷にならない部位を貫こうと伸びる。
ロザリアは少女を殺さず、捕獲して
対抗手段を聞きだすつもりなのだ。
- 495 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/06/01(水) 00:42:40 ID:WVrfsEdY0
- >>494
「あ、わわわわわ!」
【慌てすぎて身動き取れなくなっていた少女は】
ザグザグザグザグ
【致命傷にならない部位を貫かれてあえなく身動きできなくなったようだ】
「…あー、体が動かない…どうしたらいいのかな…」
【あちこちから血を流してへたり込む少女】
【…とても痛そうに見えない】
- 496 :ロザリア・ロートシルト:2011/06/01(水) 00:55:28 ID:SSMHlh/20
- >>495
「待ち受けるは永劫の監獄だ。
時が擦り切れるまで次元の狭間をさまようがいい。」
――バシィッ!!――バシィッ!!!
動けない少女の周辺に、雷を纏った儀式剣が
次々と杭のように打ち込まれ陣を形作っていく。
この魔術はロザリア得意の空間系魔法を応用した時空の監獄に敵を送り込んでしまう恐ろしい術。
何らかの魔術的抵抗か、物理的に陣から脱出できなかった場合そこへ送り込まれる事になる。
- 497 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/06/01(水) 00:59:16 ID:WVrfsEdY0
- >>496
「え!?ちょ、ちょっと待って!
さすがにそれは勘弁!」
【そう言うと、突然レインコートがぐにゃぐにゃと歪み始め。】
バシュウウウウウン!
【四方八方へとすさまじい勢いで油が伸びていく。その勢いで儀式の剣を弾き飛ばしに行くつもりなのか?】
【しかし油のせいで少女の姿が見えなくなる…】
- 498 :ロザリア・ロートシルト:2011/06/01(水) 01:14:26 ID:SSMHlh/20
- >>497
もともとこの魔術は手間がかかり、
陣を乱されただけで効果を失う実戦に向かない物。
そのため、油程度でも容易に術の発動を防止する事が出来た。
「……逃げるつもりか。」
ロザリアは自らの体に備わった生体感知能力をフルに活用し、
少女の姿を探す。
- 499 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/06/01(水) 01:17:25 ID:WVrfsEdY0
- >>498
ごぽごぽごぽ
【油の集合体のようなものが空を飛び回っている】
「…そろ…分か…」
【時折ロザリアの耳にとぎれとぎれに聞こえてくる独り言】
【とともに】
バジュウウン!
【無数の槍の形を形成した油がロザリアに向かって雨のごとく降り注いできた!】
【危うくその姿を見失いそうなほどの量である。逃げの一手なのだろうか?】
- 500 :ロザリア・ロートシルト:2011/06/01(水) 01:33:17 ID:SSMHlh/20
- >>499
先ほどは奇策によってまともにオイルを浴びたが、
ある程度距離が離れているなら回避は容易だ。
ロザリアはその場で横っとびしつつ、建物の影へ飛び込む。
油の雨が止むと共に、飛び出す算段ではあるが……。
- 501 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/06/01(水) 01:37:27 ID:WVrfsEdY0
- >>500
【油の雨がやんだ直後…一人の少女が空中に座っていた】
【いや、正確には空中に形成された油の上に座っている】
「私たちはこうして「戦う」事に意味があるんだよ。」
【実にご機嫌そうに少女はしゃべっていた】
「これが力を目覚めさせる儀式なのさ」
【不敵に笑う少女。かなり口が軽いみたいだ】
- 502 :ロザリア・ロートシルト:2011/06/01(水) 01:43:44 ID:SSMHlh/20
- >>501
――バシュッ
物陰に身を隠したままロザリアは魔術を放つ。
敵はなにやらべらべらと喋っているところを見ると、相当油断している。
速度こそあまり速くないが高い追尾性能を誇るこの黄色い光弾は、
当たった瞬間発熱し、オイルに引火するはずだ。
- 503 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/06/01(水) 01:48:31 ID:WVrfsEdY0
- >>502
「あれ?」
【突然発火音が響いたのに気づいた少女は足元を観る】
「あああ!燃えちゃう!これはいけない!!」
【慌ててオイルを周囲に拡散させて燃焼を防ごうとするが】
「しまった!飛べない!!」
【しかし拡散させてしまったせいで少女はあっけなく下へと落下して行った】
- 504 :ロザリア・ロートシルト:2011/06/01(水) 01:57:57 ID:SSMHlh/20
- >>503
「フン、いい気味だわ……。」
その光景を確認したロザリアは嘲る様に鼻を鳴らし、
物陰から歩み出て彼女が落下したであろう地点へと歩を進める。
今までのタフネスぶりからこれで死んだとは思えない。
- 505 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/06/01(水) 02:03:59 ID:WVrfsEdY0
- >>504
【…落下地点を見ると落下地点には蓋が吹き飛んだマンホール穴があるだけであった…】
「もう充分さ。」
【地面の下から響いてくる声】
「あの子を救いたかったらもっと戦うことだね!
それはあの子のためだよ〜!」
【からかうような声が地面をドンドンと流れて行った】
【…まるで手加減していたかのようにも見えたかもしれない…】
//少し無理矢理ですがここで終りにしませう。
- 506 :ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/01(水) 21:48:35 ID:1sJsd2CgO
- 【異能都市 南部】
大手総合百貨店、駅中店。
電車の駅と直結している大きな店内は昼夜変わらず賑わいを見せている。
異能都市内の店舗ということもあり、異能者向けの商品も取り扱っているため客層に逸般人も多い。
「ふむふむ。なぁんか色々あるけど、みんなバカみたいに高いわねー……」
そんな中、ブーツや装飾品の音を鳴らしながら歩く鎖巻きの女性がいた。
地下フロアで購入したリンゴをかじりつつ、紙袋を抱えて五階の衣料品売り場をうろついている。
売り場に並べられた服を一通り見て、何も持たずに試着室に入っては出てくるを繰り返している。
- 507 :酒呑屋 虎姫?:2011/06/01(水) 21:58:48 ID:LG/1lVyg0
- >>506
【ぼんやりと百貨店の中を歩いている女】
【全身、帽子まで真っ黒でさらに当たり前に帯刀だが……この都市で異彩を放つ物ではない】
【その格好より、夢遊病患者のようにふらふら歩いていることのほうが周りの注意を引いている】
【服のフロアに辿りつく。なんでこんなとこ来たんだっけ。服は充分持ってるし。】
【元々興味がないので、何もなければサクッと次の階に上がろうかと思って歩きまわり……】
……お?
おー、おー。
【あった。】
【何度も試着室に出入りを繰り返す不審な女】
【イカツイ装飾品をつけていて、凝視するには若干恐ろしいその姿をじーっと見つめる】
……
【ついには靴売り場の簡素な椅子に座り】
さん、しー……
【微笑みながら出入りを数え始めた】
- 508 :黒沢小百合:2011/06/01(水) 22:00:55 ID:SSMHlh/20
- >>506
ロージェンスの姿を物陰から見つめる者があった。
「………………。」
そう、以前の交戦時、『クトゥルフの叫び声』によって
精神に多大な影響を来たしたはずの黒沢小百合、その人だ。
エスカレーターやエレベーターがあるため、
ほとんど使われない階段の角に隠れ、ロージェンスの姿を窺っている。
- 509 :ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/01(水) 22:08:17 ID:1sJsd2CgO
- >>507
計五回。このテナントの試着室の数と同じである。
「ここにも無い。さて、次っとー……」
そう呟いて別のテナントへと歩いていく。
靴売り場の待ち合いベンチ前を通って、安さに定評のある衣料品テナントへ。
>>508
(……なんだろう。なぁんか、視線っつーか警戒心っつーか……)
あまり試着室にばかり出入りし過ぎて店員に睨まれたかな、程度に考えつつ後ろを振り向く。
ちょうど階段、その場所を。
- 510 :酒呑屋 虎姫?:2011/06/01(水) 22:16:21 ID:LG/1lVyg0
- >>509
なんか探してんのかなぁ〜……?
面白そっ、ついてこ。
【ぴょんとウサギのように跳び、中腰で後ろからそろりそろり、ガタン!】
あっスンマセ。
【ぶつかった棚に謝りながら、ニヤニヤ顔でついていく】
【一応警備員であり、交番も出入りしている虎姫】
【最近話題の指名手配犯の顔なら勿論のこと知っている】
【だが虎姫はそんなもの気にしない。というかどーでもいいのだ、ホントに。】
【何か楽しい事が起きそうで、子供のように胸をときめかせていた】
- 511 :ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/01(水) 22:33:27 ID:1sJsd2CgO
- >>510
そこの試着室に入っていくロージェンス。
ここの試着室は、大きな部屋をいくつかの小部屋に分けており、他とはなにか違う構造である。
……一度入ってからずいぶん時間が立っても出てこない。
追跡に気が付かれたのか、それとも中で何かがあったのか。
どちらにせよ、やけに静かだ。
- 512 :酒呑屋 虎姫?:2011/06/01(水) 22:40:53 ID:LG/1lVyg0
- >>511
【また試着室から離れた椅子を見つけて座り、ぼうっと見ていたが…】
……なんかあったかなぁー。
【小首をかしげ】
いよっし。
【また腰を上げてフラフラと試着室に寄っていき】
もーしもーし、はいってますゥーン♪?
【デレデレ笑顔で試着室の扉をノックして、扉にぴたっと耳をくっつける】
【声の調子と匂いから明らかに酔っている】
うーん……コップとかを経由したほうがいいかな。
- 513 :ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/01(水) 22:53:43 ID:1sJsd2CgO
- >>512
この大部屋には試着室が6つ。
中央の通路を挟み、左右に3つずつ。
一つ目の1番と書かれた扉の奥には誰もいなかった。誰かが居た形跡もない。
1番の隣、入口から見て左の真ん中3番。入口から見て右、手前の2番と奥の6番。
それぞれに三人、人が居るようである。
(……なんだろ、酔っ払い?)
そして、2番と書かれた試着室にロージェンスは居た。
それ以外は普通の客である。
- 514 :酒呑屋 虎姫?:2011/06/01(水) 23:02:38 ID:LG/1lVyg0
- >>513
……あれ? どっちだっけ?
【二番にへばりついていたが、扉から離れて首をぐるりと回す】
【さらには試着室の間をぐるぐる円を描いて歩き回って、指もこめかみに当てて回して……見てるほうが目が回りそう。】
こっち? あのー! あれ、いないや。
【すでに空いてる部屋の扉を開け閉めして中を覗き込む】
ってことはー閉じてるとこのー……おーい!! 火事だぞー!!
【迷惑千万な嘘っぱちを大声で叫んで三番のドアをバシバシ叩く】
【叩かれるたびに扉がたわむくらい強い】
- 515 :ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/01(水) 23:15:22 ID:1sJsd2CgO
- >>514
ロージェンスが2番の試着室から出てくるのと、若い男がこめかみに青筋を浮かべて3番から出てくるのは一緒だった。
「おい、うるっせーぞ、くそアマ。酔っ払いがこんなトコ来てんじゃねーよ」
若者がものすごい勢いで食って掛かる。
その光景を眺めながら、ロージェンスは6番の手前に歩いていく。
- 516 :酒呑屋 虎姫?:2011/06/01(水) 23:21:33 ID:LG/1lVyg0
- >>515
いっやーん、そんな怒っちゃダーメー♪ うへへへ……。
【掌を天秤のように頬の横に並べ、斜め上を向いて舌をべーっ。】
【マトモに取り合う気はないらしい】
【2番が開くと、そっちに目がぐるっと向いて、若者の頭をぽんぽん叩きながら】
おっと、愛しのハニーが行動開始。
さーアンタはゲラウェイ。シッシッ。お別れのチューが欲しいかい?
【手の甲を向けて追い払いながら、若者に背を向けて】
- 517 :ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/01(水) 23:40:45 ID:1sJsd2CgO
- >>516
「……ここには無いのか」
6番の扉を開けて、中を適当に見ながらブツブツ呟く。
そうして引き返そうとして、虎姫と視線が合い、キョトンとした表情になる。
「――ん、なろっ……!ふざけてんじゃねぇぞ!」
ポケットからナックルを出し、手に付けて虎姫へ殴りかかる若者改めチンピラ。
- 518 :酒呑屋 虎姫?:2011/06/01(水) 23:51:14 ID:LG/1lVyg0
- >>517
あ。
【やっと目が合って、嬉しそうににっこり笑って手を振ろうと……】
こんばんhちょっとアンタうるさい。
【左手を翻し、コートの端を舞い上がらせながら体を転換。ナックルの上から手を大きく開いて被せ】
【腕の筋肉が軋む音を立てながら肥大化し始める。鋼鉄ですら和紙のようにひしゃげさせるほどの歪な力を】
【チンピラの手がどうなろうと構わない。遠慮なしに握り込む】
【その間にもう一方の右腕を男の腰にするっと添えて】
そーかそーか、アンタがしたいのはキッスじゃなくてダンスのほうだったかー!
全然気がつかなか
っ た ァ ッ !!
【腰のズボンのベルト辺りを引っ掴み、引き上げて投げ飛ばそうとする】
【方向なんて全然考えてないらしく、あろうことかロージェンスのほうへ。】
- 519 :ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/02(木) 00:17:40 ID:1sJsd2CgO
- >>518
とんでもない力を加えられ。
チンピラの手首にナックルがめり込む。
骨の砕ける音、腕からずれた手、ベルトを掴む手。
それらにチンピラが気が付いたのは、今まさに投げられようとしている時だった。
「あ……――ァアアアアアッ!!」
「うわっ……!」
飛んできたチンピラと縺れるようにして倒れたロージェンス。
6番の“誰もいない”試着室の扉に背を打ち、痛そうに顔をしかめる。
「人に人投げつけるな! びっくりしたじゃんか!」
がー!とうなるロージェンス。
- 520 :酒呑屋 虎姫?:2011/06/02(木) 00:29:22 ID:LG/1lVyg0
- >>519
あースッキリ。
【ぱんっぱんっと手を払って、肩を大きく回す。それだけでごきごきとどこかの関節が鳴った】
んおー? 何アンタ、いつまでそこ居たのよ?
もうてっきり今までみたいにフラーっとどっか行ったのかと。
【ポケットに手を突っ込んで呆れたように口を開けた】
……って、あら。ここ誰もいないのかな?
【革靴を鳴らしてロージェンスに歩み寄り……目は六番の扉へ。】
【人が二人ぶつかっても静かな試着室。中の人はよほど怯えて中で震えてたりするのか】
【もしくは誰もいないか――もしそうなら、扉が閉まってるのは不自然だ。】
まーまー、そんな怒んないでよう。
【頬に薄紅色を浮かべながら、驚くほど真っ白な掌を差し出す】
【虎姫の肌はまるで色彩が抜け落ちたようで……だからこそ、頬に差す紅が際立って見える】
【理由はまぁ、酔っ払ってるからだけど。】
- 521 :ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/02(木) 00:47:53 ID:1sJsd2CgO
- >>520
「……今までみたいにってどういうコトだ」
差し出された手。
その白い手を取ることはせず
自分の上で手から血を流しながら呻くチンピラを退け、立ち上がる。
「ん? 居ないっちゃ、居ないみたいだけど……」
6番の試着室には誰もいなかった。
入ってきた時にロージェンス含め三人いるような気配はした、そのうち一人は自身の悲惨な腕を抱えながら床の上で痛みに呻いている。
では、もう一人は何処に消えた?
- 522 :酒呑屋 虎姫?:2011/06/02(木) 00:53:15 ID:LG/1lVyg0
- >>521
【ちぇっと残念そうに眉を下げて手を引っ込めて】
あー? そりゃストーキングってワケさ!
【舌をぺろっと出してウィンク&サムズアップ。胸を張って言う事じゃない】
あ、でも犯罪者相手だったら合法? やっべーラッキー、尾行しまくり。
……マジで?
なーんか居た気がするんだけどなぁ〜〜〜、白昼夢かなぁ〜?
【帽子の中に手を突っ込んで頭を掻いて】
- 523 :ロージェンス/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/02(木) 01:10:04 ID:1sJsd2CgO
- >>522
居た気がする、けど居ない。
そういえば、この扉の奥から音が聞こえた覚えが――
「いや、うん。違う、居なかった。ここには誰も居なかった」
居ないんだからしょうがないじゃないかー、アハハ。と色々否定。
じっ、と誰もいなかった6番の試着室の鏡を見て、虎姫へと視線を移す。
「んで。尾行なら見つかった瞬間終わってるワケだが、ストーカーさんは何をするつもりでしょうか?」
リンゴの芯を鏡のほうへ投げ捨て、虎姫の横を通り出口に向かおうとする。
- 524 :酒呑屋 虎姫?:2011/06/02(木) 01:24:25 ID:LG/1lVyg0
- >>523
……居ないしね。
【鏡を覗いて、口の中に中指突っ込んで人差し指で鼻を押し上げる。変顔】
……あー……そっか、どうしよ。見なかったことにして。……イヤ違うか。
【肘を手で支えるように腕組みし、指で下唇を数度押し上げて……】
【ぴんっとその指を跳ね上げぱっと笑顔になり】
……『じゃあまた』って事でッ!
【勢い良くロージェンスの背中に敬礼。捕まえるとか攻撃するとかの考えは今のところ無い】
【もっとも……山の天気か、天災か。唐突な思考と行動が直結し思いとどまらない虎姫】
【今度あったときが果たしてどうかは不明】
【十数秒の敬礼を終えると、くるんと踵を返して、床に転がる若者を一瞥】
うーん。死ねっ。
【ひょいと膝を曲げ――『鬼』と『何か』の混合で出来た出鱈目な力は、若者の胸、ちょうど心臓の位置に振り下ろされた】
【爪先が何かを貫き潰す音は、肉に包まれて酷く静かだろう】
【上機嫌な鼻歌が残響し――まるで影のように、虎姫の姿はすぐさま消え去った】
- 525 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/06/03(金) 00:13:26 ID:WVrfsEdY0
- 「―――すー」
【AGカフェのいつもの席に少女が眠り込んでいる】
「すー…」
【普通に穏やかに眠っているだけに見えるのだが…】
【魔力を感じやすい人間ならば彼女の発する不気味な魔力に気づくかもしれない。】
- 526 :名も無き異能都市住民:2011/06/04(土) 22:35:22 ID:PjFid5J20
- 【AGカフェ】
ただ一人、千夜学園の制服を身に纏う人物が佇む光景がある。
のんびりと淹れられた紅茶を愉しむ姿は、落ち着きからか学生に見えなくも無い。
街中を歩いただけで感じる、様々な“もの”
「やれやれ。この街は相変わらず、とはね。落ち着いてきたかと思えばこれか。」
そろそろ自衛も考え無ければ、という意見を頭の隅に追いやる。
今はゆっくりと時間を過ごしたい
- 527 :てんちょ ◆CROSS/.AzE:2011/06/04(土) 23:01:57 ID:HnkBBDEo0
- >>526
「あー、ダル。振込み忘れとかマジでシャレになんね……あ、やべ、客がいた」
奥から出てきたのは右目に眼帯をつけた男。
紅メッシュ混じりの黒髪を掻きつつ、カウンターの中へと入る。
「ああ、いらっしゃい。何か注文で?」
- 528 :アイリス:2011/06/04(土) 23:12:57 ID:PjFid5J20
- >>527
「信用問題に関わるよ。」
肩に掛かるくらいの金髪を持つ人物、アイリスが応えた。
店長が久しぶりにその姿を見たのは偶然だろう。
「そうだね。軽食をお願いするよ。最近はゆっくりと食事を出来る時間も取れなくてね。
ああ、そうだ。ミルクティーとデザートは食べ終わった後で出して欲しい。」
カウンターの上に両肘を置き、手を組む。
組んだ手に顎を乗せ、店長に上目遣い。
- 529 :てんちょ ◆CROSS/.AzE:2011/06/04(土) 23:20:52 ID:HnkBBDEo0
- >>528
「なんだお前か、久しぶりだな。
ちょい待て。さっき個人用に作ったハムサンドがある筈だ」
冷蔵庫を開け、プレスされたサンドイッチを取り出し、
包丁で切り分け始める。
それにサニーレタスのサラダと一緒に皿に盛り合わせ、アイリスの前に出した。
「あ、ミルクティーは温かいのと冷たいの、どっちにする?」
- 530 :アイリス:2011/06/04(土) 23:29:16 ID:PjFid5J20
- >>529
「…これはサンドウィッチというものだったかな。
ナイフとフォークがあれば助かるよ。」
とりあえずナイフとフォークがあれば良いか、的な。
挟んでいるものから食べても問題は無いと分かるが、サンドウィッチの食べ方をいまいち分かっていない様子。
「ホットが良いね。まだまだ夜は肌寒いよ。」
コートを持ってきたら良かった、と苦笑とも思えないような苦笑を浮かべる。
「最近、少しきな臭くなっていないかな?気のせいならいいのだけどね。」
- 531 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/06/04(土) 23:32:48 ID:HnkBBDEo0
- >>530
「おいおい、マジかよ」
しかしクロスは食べ方にまで言及するわけにもいかなく、
戸棚からナイフとフォークを取り出してアイリスへと渡した。
紅茶はホットとの返事を聞き、早速ヤカンでお湯を沸かす。
「きな臭い? この町はいつでもそうだろうが。
いつまで経っても臭くて汚いクソみてぇな町だ。
それとも、なんだ?」
ニィイ、と笑って目を細める。
「また新しい面倒事でも増えたのか?」
- 532 :アイリス:2011/06/04(土) 23:45:41 ID:PjFid5J20
- >>531
いまいち食べ方を分かっていない様子である。
サンドイッチのパンだけをフォークで分け、ハムと付け合せのサラダを載せてひとくちサイズに切る。
器用にフォークに載せれば口に運ぶ。
「美味しいね。素材の扱いがシンプルなだけに胃に優しい味だ。」
好評の口上を述べる。
所作そのものは非常に慣れたものであり、形になっている。
今度直産の野菜でも売り込んでみようか。
「増えたと断定は出来ないけれど、厄介ごとの“種”はこの辺りに多くあるのかもしれないね。
芽吹いているかどうかは僕の知るところではないね。その辺りは黒沢小百合の方が詳しいと言えるんじゃないかな。」
口ぶりから、どうもこの店主、厄介ごとを歓迎している節がある。
アイリスはその辺りを探りに来ているのだが…。
- 533 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/06/04(土) 23:49:51 ID:HnkBBDEo0
- >>532
「ああ、小百合ね。まーたアイツは色んなことに首を突っ込みおる。
まぁ警備部門なんてそれが仕事なんだろうけどなー」
ひっひっひ、と笑いつつ沸かしたお湯を、茶葉の入ったポットの中へ。
お湯の入ったポットに布を被せ、しばらく放置。
「そういえば、前に殴りあった後にしばらく見てねーな。今度尋ねてみるわ。
うまく行けば、また楽しいことにはなりそうだ」
好戦的な、肉食獣のような、ギラついた目で窓の外を見る。
どうやら彼は、次なる好敵手を求めているようだ。
- 534 :アイリス:2011/06/05(日) 00:00:31 ID:PjFid5J20
- >>533
「だろうね。彼女もよくやると思うよ。
この街では大変だろうね。」
ギラついた瞳を輝かせる店主を横目にサンドイッチを切り分け、食べる。
色々と問題が多い街がココだ。
その原動力がどこからくるものかはアイリスは知らない。
「楽しい、ね。
店長は武闘派だろうからいいけれども、僕を初めとする武闘派では無い者のことも少しは考えて欲しいものだよ。」
自ら戦いを望むわけではないが、偶に戦いたいと思う時がある。
店長のように大っぴらにするわけには行かないが
- 535 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/06/05(日) 00:01:15 ID:WVrfsEdY0
- 【カフェの扉が突然開かれる】
「こんばんわなの〜。
なにかたべていいかなの?」
【いつものとおりな少女だ】
- 536 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/06/05(日) 00:07:35 ID:HnkBBDEo0
- >>534
「ああ、すまねーな。ま、アレだ。台風みたいなモンだと思ってくれ」
手をヒラヒラと振りつつ、片手でカップに紅茶を注いだ。
ミルクと砂糖、蜂蜜やシナモンを用意し、それらをアイリスの前に並べてゆく。
「でもよ、俺みたいな連中からしたらタマんねーんだよ、この都市は」
- 537 :アイリス:2011/06/05(日) 00:16:18 ID:PjFid5J20
- >>535
やぁ、といった具合にひらひらと手を振って見せる。
>>536
ミルクを注ぎ、砂糖をスプーン半分ほど入れると最初に楽しむのは香り。
ミルクで柔らかくなった香りが鼻を通り抜ける。
「なるほどね。」
紅茶を一口飲み、サンドイッチを面倒な手法で食べる。
咀嚼する束の間の思考。
先ほど窓の外を眺めていたのは戦う相手を求めているからなのか。
クロスの思考はアイリスには分からない。
が、推測は出来る。
「店長は戦う相手を求めている、のかな?」
飢えた獣、という言葉は適切ではない。
狩りをする相手を探す獣…肉食獣といったところか。
- 538 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/06/05(日) 00:24:38 ID:HnkBBDEo0
- >>535
「ちょうどハムサンド食わせてたトコだ。テメーも食え食え」
サンドイッチを皿に載せ、カウンターに並べる。
>>537
「まぁ、な。最近ちょいと体がウズいて仕方ねぇ。
暴走する前にどっかで発散したいトコなんだけど……さーて、いい相手はいないモンか。
俺みたいなケンカ大好き野郎なんて、なかなかいないからな」
カウンターに頬を載せ、プクーと膨らませる。
いい年である筈なのに、まるで子供だ。
「ま、だからと言って嫌がる相手にケンカふっかけるようなことを、やるわけにもいかなく……
仕方ないから自分から厄介ごと、面倒事に首を突っ込んでいるのが現状だ」
- 539 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/06/05(日) 00:27:26 ID:WVrfsEdY0
- >>537
「あう?こんばんわなの〜。」
【ふとアイリスの姿を見て微笑んで手を降った】
「またあったねなの〜」
【そう言って席に座りに行く。どこか不気味な気配を少女は発していた】
>>538
「あう〜、もうあるの!
うれしいなの〜!」
【ディスはとても嬉しそうに素早くサンドイッチを頬張り始める】
「もぐもぐもぐもぐもぐ」
【一応元気そうだが、まだ不気味な気配が漏れ続けている】
- 540 :アイリス:2011/06/05(日) 00:34:16 ID:PjFid5J20
- >>538
「そうだね…、僕で良いなら相手になろうか?
店長の相手になれるかは分からないけどね。」
と、苦笑して見せる。苦笑して見せる時点で店長に取っては物足りないかもしれないが。
実はアイリスも頻度は少ないが、発作のごとく戦いたくなる時がある。
格上相手にどれだけ立ち回れるか。
少しでも経験を積みたいが、無闇矢鱈と喧嘩をふっかけるわけにもいかず。
店長のような好戦的な人物のほうが有りがたかったりする。
また、別の狙いがあったり…。
>>539
やれやれ、早速きな臭いが…。
いつものディスとは違う雰囲気。
どう違うと言われれば……、うまく説明は出来ないが。
「随分と久しぶりだね。元気にしていたかな?」
- 541 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/06/05(日) 00:39:37 ID:HnkBBDEo0
- >>539
「ああ、あとディス。空いてる日があったら後で、あのカレンダーに書き込んでおいてくれ」
そう言ってカウンターの内側にあるカレンダーを指差す。
「うちの従業員が『解呪方法の目処がついた』って言っててな。
そろそろ試してみたいらしい」
>>540
「え、マジ? いいの? マジで?」
なんかいきなり目を輝かせ始めた。
「スゲー助かるわ。すまない、ちょっと頼む。
色々と試したいことが溜まっててな、NPC相手じゃなくて実戦で試したいんだ。
後ででいいから、空いてる日教えろ!
あ、俺は金曜日と日曜日以外の夜がいいなー。
今決められないなら後ででもメールしてくれ」
勝手に話を進め始めた。
- 542 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/06/05(日) 00:42:45 ID:WVrfsEdY0
- >>540
「あうあう、ひさしぶりなの『あいりす』なの〜。
…いままでなにをしてたのかなの?」
【その顔は若干心配そうに見えた】
「あう?『でぃす』は…げんきなの。
いつもどおりなの〜」
【一見元気に振舞っているが…なにか隠し事がありそうな顔だ】
>>541
「あう?あいてるひ…やっとうまくいくのかなの?」
【少し安心した顔でいう】
「…ちょうしがいいひがいいのかなの…」
【カレンダーをじっと見つめて言った】
- 543 :アイリス:2011/06/05(日) 00:50:40 ID:PjFid5J20
- >>541
「相手にならなくても苦情は受け入れないよ。これは覚えていてね。」
店長の目の輝きに若干引きつつも、携帯電話を懐から取り出し、アドレスと電話番号を表示させる。
クロスの連絡先が分からなければ、どうにもならない。
「金曜と日曜の夜を除く、ね。分かったよ。」
分厚いシステム手帳を開き、空いている日を確認する。
直近なら月曜夜、木曜夜だろうか。
「時間を使えるのは、月曜の夜か木曜の夜だね。店長はなるべく早いほうが良いかな?」
>>542
「少しの間、実家に帰省しててね。それでしばらく居なかったんだ。」
落ち着かせるように、優しい声で。
「そうでもない、みたいだけど。体調が悪いんじゃない?」
先程から話している解呪の件が絡んでいるのだろう。
- 544 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/06/05(日) 01:01:34 ID:HnkBBDEo0
- >>542
「ああ、日程は金曜日と日曜日以外で頼む」
>>543
「あー、じゃあ月曜の夜で頼むわ」
やはり早い方が良かったようだ。
「さ、て。俺はいい加減に寝るとすっか。お前らも夜更かしすんなよ〜」
そう言ってクロスはエプロンを洗濯機に放り込み、裏へと消えてゆく。
「あ、お代は今日はいいや、俺の夜食を分けたようなモンだし。
そんじゃー」
そう言って彼は「STAFF ONLY」と書かれたドアの向こうへ。
- 545 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/06/05(日) 01:05:28 ID:WVrfsEdY0
- >>543
「あうあう、そうなんだなの。
おうちがあるの〜」
【少し感心している】
「えっとなの…まえより…かなの…」
【どうやら今度は本当そうに見える】
>>544
「あう〜。そこいがいならだいじょうぶなんだねなの〜」
【頷いて言った】
「あう〜。またねなの〜」
【そう言って大きくてを振り見送った…】
「…う〜ん…」
【しばらく軽く唸った後】
「ここがいいかなの…」
【そう言ってある日に印をつけた】
【――――6月11日・土曜日】
- 546 :アイリス:2011/06/05(日) 01:09:20 ID:PjFid5J20
- >>544
「わかったよ。スケジュールを入れておくね。」
立ち上がり、制服を整える。
「そうだね、そろそろ僕もお暇しようかな。ごちそうさま。」
>>545
「ちゃんと休まないとだめだよ。体の成長はまだまだこれからなんだから。
たくさん食べて、たくさん遊んで、たくさん寝ないと。」
要は子供らしく、ということだろうか。
アイリスは懐から懐中時計を取り出し、時間を見る。
「ああ、もうこんな時間だ。僕はそろそろお暇するよ。ちゃんと治すんだよ、ディス」
ディスに笑みを向ければ、アイリスの姿は消え失せ光の粒が煌き、消えていく。
- 547 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/06/05(日) 01:11:22 ID:WVrfsEdY0
- >>546
「あうあう…わかったの…
あんまりむりはしないからなの…」
【反省する顔になった】
「あうあう!またねなの〜!
ちゃんとげんきになるからなの〜」
【そう言っててを振り見送って行った】
「…ふー…このときに…
どこにいけばいいのかなの?」
【そう言ってディスはじっと自分の記した日。6月11日(土)を見つめていた】
- 548 :酒呑屋 虎姫?:2011/06/05(日) 22:28:13 ID:JunA9H3E0
- 【AGカフェ】
【黒服の女がふらふらと歩いている。いつもどおり酒気を帯びているが】
【今日はそれとはまた別の理由でご機嫌のようで…】
〜〜〜♪ 〜〜〜〜♪
【数回来ただけの喫茶店だが、場所は覚えていた。鼻歌交じりに扉を開ける】
……まぁ〜なんていつもどーりの誰もいなさ。
これでいーのんか? いーのんだろーけどさ。
【独りごちる。カウンターを土足で踏みつけて乗り越え、適当にコーヒーを作って】
【カウンターの客側に戻って椅子に座ると、カップにティースプーンを入れてかき混ぜる】
【ぐるぐる、ぐるぐる、何度も。】
くっ
くふふっ……♪
【黒く濁った液体の中で、金属と陶器ががちゃがちゃ騒がしく鳴いた】
【何かを思い出して、愉しそうに、愉しそうに笑う…その笑い声は、酷く耳障りな響きだ】
- 549 :黒沢小百合:2011/06/05(日) 22:35:43 ID:SSMHlh/20
- >>548
――カラン
「ふぅ……。」
物憂げなため息と共に、ドアが動き
黒いスーツに身を包んだ女が店内に足を踏み入れてきた。
「おや……今日は先客がいたのですね。珍しい。」
女はカウンター席まで疲れた様子でゆっくりと進み、
荷物を置いたところで、虎姫の靴から落ちた泥で汚れたカウンターを見て
顔をしかめた。
- 550 :酒呑屋 虎姫?:2011/06/05(日) 22:44:53 ID:JunA9H3E0
- >>549
ん〜?
おー小百合っちゃん、おっひさー。
【スプーンの柄をぴたりと止めて、肩越しに振り返る】
【屈託の無い、人懐っこそうな笑顔は普段と何も変わらず】
だよねぇー。この完全放置スタンスの店に誰かいるなんて珍しい。
【三白眼でにひにひ口角を釣り上げて】
【店内は虎姫の淹れたコーヒーの香りで、大人び落ち着いた、まさに喫茶店の香り】
ん? あーごめん汚れちゃった。事故事故。
勘弁してよ今拭くからさ……。
【しれっと事故扱い。今度はちゃんと回りこんでカウンターの中へ。奥に入ると】
あったあった布巾。
【白い布を水に浸し、カウンターをゴシゴシと力を込めて擦り始めた】
- 551 :黒沢小百合:2011/06/05(日) 22:58:50 ID:SSMHlh/20
- >>550
「公共の場を過度に汚す行為は感心しませんね。
貴方はもう少し、慎みという物を持ったほうがいい。」
卓上に残った跡から、恐らく靴のままここを乗り越えたのだろうと
推測し、不機嫌な様子で小言を言う小百合。
小百合はクロスが居ない時に時折、
ここの掃除や商品の補充をしたりするなど、この店に愛着を持っている。
それ故に、粗末に扱われる事をあまりよく思わない。
「コーヒー、まだ残っていますか?
残っているなら新たに淹れる手間が省けるのですが。」
- 552 :酒呑屋 虎姫?:2011/06/05(日) 23:13:39 ID:JunA9H3E0
- >>551
やっぱそーおー? 僕もさー、もうちょっとこう、女らしさ?っていうの?
色々考えたほうがいいと思うんだけどさ……はは。
【泥はカウンターの中にもぽつぽつと、薄く足跡を残すように点在している】
【汚れを擦りながら、ふと真っ赤な瞳の煌く目を細めて乾いた笑いを零す】
でも、考える毎に分かんなくなっちゃってさ?
女らしさとか、男らしさとか、そもそも自分って誰なんだろう、とか。
【真っ白な布巾は、泥から滲み出した茶色い汚水を染みこませ始めた】
【……いや……茶色にしては。茶色というより、これは】
無い物ねだりなのかな、僕にとっては。だから……
【『赤』?】
だから……妬ましくなっちゃうよね。自分が何者か分かってるような、呑気な人が。
あ、コーヒーだったらまだ残ってるから、適当に注いでよ。
【一瞬、コーヒーの匂いに錆の匂いが混ざって、すぐ消えた】
【虎姫は小百合に笑顔を見せた後、布巾を畳んでカウンターの奥に引っ込んだ。ばしゃばしゃと泥を洗い流す水音がする】
- 553 :黒沢小百合:2011/06/05(日) 23:22:17 ID:SSMHlh/20
- >>552
「………………。」
小百合は、一瞬血の様にも見えたその泥に反応した。
が、すぐに頭を振って疑念を払い落とす。
赤いペンキか何かが泥に混じっていたのかもしれないし、
工事現場か何かを歩いて赤錆を含んだ泥を踏んだだけかもしれない。
(まさか、ね……。)
一抹の気持ち悪さを感じながらも、コーヒーを入れ
ついでに軽食として作った、半熟の目玉焼きと焼いた薄切りハムを持って
カウンター席へと戻る。
- 554 :酒呑屋 虎姫?:2011/06/05(日) 23:31:36 ID:JunA9H3E0
- >>553
ふーっ! キレイキレーイ!!
【水に濡れた布巾をぱんぱんと叩いて元に戻し、いい汗かいて戻ってきた】
あー! なんか美味そうなモン食ってる!! ズルい!!!!
【と思ったら、小百合の目玉焼きとハムを指さして目を見開き】
【いい匂いに鼻を膨らませながら怒ったように叫んだ】
【そして唐突にどたどたとカウンターまで駆けて】
とうっ!!
【走り高跳びのベリーロールのようにカウンターを大ジャンプで飛び越えて、体を横倒しにくるくるっと回転させ】
【どかん!と爆音を立てて複数の椅子の上に寝転がり】
あ〜〜〜〜〜〜ん♪
【目を瞑って大きく口を開けて、暫し待機。】
- 555 :黒沢小百合:2011/06/05(日) 23:40:31 ID:SSMHlh/20
- >>554
「まったく、貴方という人は……。」
やれやれと言った様子で片目を閉じ、
フォークで刺したハムを虎姫の口へと運ぶ小百合であったが
何をしているんだ私は、とばかりに顔を赤くして。
「これは差し上げますから、自分で食べなさい。
私は新しいのを作ってきます。」
そのまま、つかつかとキッチンへ消えていく。
この程度なら料理に時間は掛からないため、すぐに戻ってくるはずだ。
- 556 :酒呑屋 虎姫?:2011/06/05(日) 23:46:09 ID:JunA9H3E0
- >>555
やりぃー!
【うっとりしながらハムをもぐもぐ。寝転がったまま両肘ついてほっぺた押さえて幸せそう】
あらそう? 悪いわねぇーあっはっはっはっは!!
【絶対悪いとか思ってない。】
……そーいや小百合ちゃんって、それなりにエラいんじゃなかったっけ?
ウチに馬鹿みたいに大量にお酒送ってきたし、お金も充分あるんでしょ?
なーんでこんなところで。しかもハムエッグ。
【両足を交互に上げ下げしつつ、フォークで卵の黄身を突っつきながら不思議そうに目線を上げる】
- 557 :黒沢小百合:2011/06/06(月) 00:00:40 ID:SSMHlh/20
- >>556
それから、しばらくしてほとんど同じ物を
持って戻ってきた小百合は、すっかりぬるくなったコーヒーに口をつけた。
「ここは私の知人の店なのですよ。
昔からの腐れ縁、というヤツですけれどどうにもね。」
虎姫と同じく、フォークで目玉焼きの気味部分を裂き
とろり、と流れ出た半熟の黄身をハムや白身に絡める。
「気品は尊いですが、誇り高すぎると見苦しいだけです。
私だって、常に贅沢をしているわけではありませんしこういうものを
食べたくなる時だってありますよ。」
寧ろ、ハムエッグは小百合の取る食事の中ではまだ上等な部分に入る。
朝、昼は激務のため取れないことのほうが多いし、取れたとしてもゼリー飲料や
固形の栄養食といったものばかりだからだ。
- 558 :酒呑屋 虎姫?:2011/06/06(月) 00:13:08 ID:JunA9H3E0
- >>557
ええ!? そーなの!?
全ッ然知らなかった。ただの喫茶店だと思ってた。
【小百合のような優雅な所作は欠片もなく、虎姫はフォークを横に倒して皿の中を掻きこみ】
『ほほり高ふぎるほ見苦ひいらけ』れぇ……んンっぐ。
そんなもんかい。いやー難しいこと考えるの苦手だわ。
【膨らんだ頬をコーヒーで流しこんで】
あ
【綺麗サッパリ、真っ白けなお皿の上をじーっと眺める。ちらっと小百合の皿も見上げる】
僕は空気、僕は空気……!
【念仏のようにブツブツ唱えながら体を精一杯伸ばし、そーっとフォークの先を小百合の皿へ近づけ出す】
- 559 :黒沢小百合:2011/06/06(月) 00:20:59 ID:SSMHlh/20
- >>558
「…………。」
ふん、と鼻を鳴らし無言のまま
皿を虎姫へと差し出す。
どうにも、自分は人がよさ過ぎるようだ。
「私に対してそういう事をするのはいいですけど、
他の人にはくれぐれもそんな事をしないように。」
- 560 :酒呑屋 虎姫?:2011/06/06(月) 00:29:36 ID:JunA9H3E0
- >>559
空気作戦成功!?
【多分違う。】
わーかってるって。きっとしないから……って、あっ。
【皿を手にとろうとしたところで、体をぴたりと硬直させて】
あー、やっば。忘れ物だぁ……!!
食べたいのはすっごい食べたいんだけど、やっぱお腹減ってるでしょ。
僕忘れ物思い出しちゃったからもう帰るね! ありがと!
【椅子のベッドから跳ね起きる。椅子が幾つもグラグラ揺れて】
【虎姫は焦ったように頭を掻きながら、早足で扉へ向かい、戸を蹴り開けた】
縁があればまた。グッバーイ、フェアウェール。
【まるで風のように、手を振るのも体が殆ど店外に出てからと慌ただしく去っていった】
【喧しさの元凶が去って、店内はいつもどおりの静寂を取り戻す】
- 561 :黒沢小百合:2011/06/06(月) 00:35:53 ID:SSMHlh/20
- >>560
「まったく、なんとも破天荒な……。
しかしまあ、アレが彼女の持ち味なのでしょうね……。」
慌しく去っていく虎姫を呆然と見送り、
残りのハムを口に運ぶ。
静かなカフェの時間はゆっくりと過ぎるのだった。
- 562 :フミヅキ=ナナセ & 河平 セセリ:2011/06/06(月) 22:11:51 ID:VoJSms.Y0
- 「それは尤もだ」
今日も今日とて帰宅中。
こんな時間まで何をしているのかは不明だが、今日も二人きりである。
「生徒会長に就いてはみたのだが、な」
自分と並んで歩き、大口を開けてはその口にドーナツを放り込む蟲人族の少女を横目にして帽子を深くかぶり直す。
口をもぐもぐと動かしつつ何度か頷く様から「うんうん、それでそれで?」と言おうとしている事が解った。
小さく溜め息をつくと口を開いた。
「……食べ歩きは行儀が悪いぞ」
- 563 :横島なつき:2011/06/06(月) 22:29:29 ID:bYREkklM0
- >>562
長閑な様子の二人の目の前、コンビニの自動ドアが開く。
出てきたのは千夜学園の校章を付けたブレザーの女学生だ。
肩から細い布ぶくろの突き出たビジネスバッグを提げ、
手には……カルボナーラとプラスチックのフォークを持っている。
コンビニのレンジで今しがた温めてもらったものだろう。
「そろそろこういう温かいものも食べ収めか……」
フォークでくるくるとパスタを巻き込み、ふー、と息を掛けて冷ます。
それを口の中に放り込もうとした瞬間、ナツキは差し掛かった二人に気付く。
同じ学園の生徒と見受け、ナツキは膝を曲げて小さく会釈をした。
「どうも……」
声を出すか出さないか位の小声で、そう口を動かす。
辺りにはチーズとホワイトソースの香りが漂っている……。
- 564 :フランシスカ・キールダリア:2011/06/06(月) 22:39:49 ID:yoK3W6uY0
- >>562-563
二人が歩く前方、路地裏から黒いレディーススーツ姿の女性が現われた。
……現われたが、すぐに引っ込んでしまう。
どうやら雨どいから伸びる配管に持っていたショルダーバック引っかけたらしい。
女性はショルダーバックを難儀して戻し、大きなため息をつく。
「ふぅ……やっぱり八年前とは違うんですね。
駅前のラーメン屋も無くなってますし、所々道がふさがってたり、
かと思ったら行き止まりの道が拡張されていたりしますし……」
少しクセのある金髪を指先で弄びながら、何やら独り言を呟いている。
「……こうやって愚痴っていても仕方ありません。
ここは誰かに道を訊いた方が良いですね」
そう言って辺りを見回す視線が、二人連れの男女と、そこから少し離れた場所にあるコンビニから出てきた、
学生服姿の少女に止まる。
- 565 :ナナセ=フミヅキ & 河平 セセリ:2011/06/06(月) 22:49:10 ID:VoJSms.Y0
- 「元々それは家に置いておく分として買ったのでは……」
『あ、無くなっちゃった』
「何……!?」
と歩みを止めて制服の少女の方を見る七瀬。
そこにはドーナツの箱を上下逆さに持ち、軽く揺すりながら笑顔を向ける少女の姿が。
『お腹すいたなぁ……ちょっと買ってくるね!』
「何!?」
食べ足りないと宣言する少女にッ思考回路が追いつかず、
声をかける余地なく少女はコンビニへと掛けて行った。
>>563
『どうも〜』
なつきの元へ走り寄る少女。
擦れ違い様にそういうと手を振りながら駆け抜けてコンビニへ。
「……はぁ……」
後で歩きながらコンビニへと向かう深く帽子をかぶった人物。
なつきの傍で足を止めるとそちらに顔の向きだけは向けて「どうも」と挨拶を返した。
>>564
どうしたものか。と考える七瀬。
不意に視線をずらし巡らせ……。
「……ん?」
何故こっちを見ている?
- 566 :横島なつき:2011/06/06(月) 22:57:00 ID:bYREkklM0
- >>564-565
「……ふふ」
自分に笑顔を向けてコンビニの中に掛け込んでいった少女を、
ナツキも微笑んで見送る。次いで、お連れさんらしき男子生徒へ向け、
「奢ってあげなくていいんですか?」
と、悪戯っぽく言う。デートかしら、と軽くからかっているつもりのようだ。
言うだけ言って、ナツキは今度こそカルボナーラをすすり始める。
男子生徒の目線の動きとボディスーツの女性にはまだ気付いていない。
- 567 :フランシスカ・キールダリア:2011/06/06(月) 23:04:45 ID:yoK3W6uY0
- >>565
疑わしげな視線を送られていることに気付き、女性はハッとする。
「おっと……ジッと見続けるのはマナー違反ですね。
学園の生徒みたいですし、ここは思い切って」
意気込んだ彼女はショルダーバックを持ち直して七瀬に歩み寄り、
「こんにちは。
少し、訊ねたいことがあるんですが、いいでしょうか?」
穏やかな微笑みを浮かべながら、七瀬に話しかけた。
>>566
七瀬に話しかけた後、カルボナーラを食べ始めたなつきに、
女性は微笑んだまま小さく会釈する。
- 568 :ナナセ=フミヅキ & 河平 セセリ:2011/06/06(月) 23:08:23 ID:VoJSms.Y0
- >>566
「別に。私たちはそんな間柄じゃあ無い」
なつきの口調や様子から悟り、帽子の下で眉にしわを寄せる。
ボディスーツの女性の方に顔は向いている様子だがその目線・表情までは解らない。
それを隠しているのはシックな衣装と全くマッチしていない帽子。
>>567
「少しならな」
そう、淡白な返事を返す七瀬。
店内を除けばセセリがまだ必死に食糧を選んでいる姿が見えた。
「……いや、私には結構な時間が在る」
帽子で隠れた苦笑い。
- 569 :横島なつき:2011/06/06(月) 23:23:37 ID:bYREkklM0
- >>568
「そう」
それだけ言って、ナツキは口元に小さく笑みをこぼす。
相手は恐らく上級生であろうに、大した胆力である。
>>567
会釈を受けて、ナツキも小さく膝を曲げて返す。
『(偶然街で助けた外人さんが、実は新しいALTの先生でした、
なんて展開が昔やったリスニングの問題にあったっけな……)』
などと頭の中で考えながら、カルボナーラを口に運ぶ。
応対自体は頼りになりそうな男子生徒の方に任せたようだ。
道案内なら得意な方だが、話を振られるまでは黙っているつもりだろうか。
- 570 :フランシスカ・キールダリア:2011/06/06(月) 23:32:45 ID:yoK3W6uY0
- >>568
(あれ、この子……)
苦笑いを浮かべるこの少年の顔に、女性は見覚えがあった。
この異能都市に来るまでの間、電車に揺られながら目を通していた資料にあった千夜学園の生徒の一人と、顔が一致する。
その資料の記述とこの少年が同一人物なら、この少年は……。
「ええっと、違ってたらごめんなさい。
君、千夜学園高等部生徒会長の、ナナセ=フミヅキ君じゃないですか?」
知らない人が名前を知っているのは、中々に警戒感を突かれるシチュエーションだが、
女性の表情は先ほどの微笑みから変わっていない。それを七瀬がどう取るか。
>>569
返礼を見て、女性は一定のやりとりは終えたと判断し、
そういえば、こっちの子もどこかで見た顔だな、などと思いながら、少年との会話に集中する。
それはそこにいる横島なつきという生徒が、受け継いだ遺産を全て学園に預託しているという特殊なケースにあたるために、
女性が持っていた学園の資料になつきについての記載がなされていたからであったが、そのことに女性はまだ気づけないでいた。
- 571 :ナナセ=フミヅキ & 河平 セセリ:2011/06/06(月) 23:42:35 ID:VoJSms.Y0
- >>570
「……一応、そう言う事にはなっているな。
まだ私は何も仕事に手はつけていないが」
取りあえず、真実のままを返し、一歩退く。
「一方的な状況という物も時には楽しむべきだが、今はそう言う時ではないだろう?」
帽子の下の見えに瞳から見えるほどの敵意が伝わってくる。
七瀬は目の前の女性に対し敵意を持っていた。だが、それはまだ激しいものではない。
取りあえずはそちらの情報が欲しい。といった様子だ。
>>569
視線は目の前の女性に向けたまま、声をなつきへと向ける。
「一応聞くが、知っているか?」
なつきの態度には興味を示さない。
単に学年の違いに気付いていない事も有るだろうが、それ以上にどうでも良い。
- 572 :横島なつき:2011/06/06(月) 23:51:21 ID:bYREkklM0
- >>570-571
「ぶぇっ……ごほ! ……ごほっ」
ナツキは驚きのあまり、むせ返った。
カルボナーラが飛び散って辺りに被害を出すことはなかったが……。
『(生徒会長……!!)』
その言葉は大分予想外だった。
成績も大して良くなく、極めてサボりっ気の強い自分にとって、
実行委員だの生徒指導だのといった人に顔を覚えられるのは厄介だ。
「や、あの、知らないッス。自分こっち越してきたばっかなんで。
きっとアレじゃーないですか。新任の先生とかじゃないでしょーか」
さっきまでの余裕はどこ吹く風、普段と全く違う口調で答える。
ナナセと呼ばれた生徒会長の異様に険しい雰囲気も少なからず動揺を煽る。
ナツキは明後日の方向を見つめながら、カルボナーラを静かにすすり始めた。
- 573 :フランシスカ・キールダリア:2011/06/06(月) 23:59:47 ID:yoK3W6uY0
- >>571
「あっ、ごめんなさい。私ったら失礼ですよね……」
恥じ入った様子で謝罪する女性だが、七瀬の敵意に怯えた気配はない。
それは肝が据わっているのではなく、
「私はフランシスカ・キールダリア。千夜学園高等部の臨時養護教諭としてこの街に来ました。
と言うより……西川先生、知ってますよね? 前期生徒会顧問の。
その先生に今期の生徒会顧問を引き受けてくれないかって誘われたのが本当なんですけどね」
このフランシスカ・キールダリアという新任教師の、生徒に対するスタンスの現われであった。
生徒をハナから警戒するような行為は、彼女の行動規範の中には入っていない。
>>572
「……というわけなので、そこのアナタ! 大正解! 花丸一コです!」
ピッと右の人差し指を立てて、ニコニコ顔。
ALTでは無いにしろ、本当に新任の教師だったとは露程も思わなかっただろう。
- 574 :ナナセ=フミヅキ & 河平 セセリ:2011/06/07(火) 00:09:35 ID:VoJSms.Y0
- >>572
「?」
咽るなつきに唯疑問の表情を向ける七瀬。
まさかそれの理由が自分に在るとは露ほども知らず、
必死になってまで食べる理由があるのかとまで思案した。
尤も、七瀬がそう感じた理由もまた七瀬に在り。
先程自分で言った通り、全く仕事もしておらず、そこから来る自覚の無さに因るものだった。
「……物は味わって食べる事をお勧めする」
思考回路の終点であるその結論をなつきに向けた。
>>573
「……ふぅ、ん」
半分、いやそれ以上。
敵意を向けていた相手の素性を知って、思わず固まる。
そのまま数秒を過ごし、咳払いと共に再起動。
「一応、会い…ました……ね。
はぁ。そういう……事、で」
顔一杯に気まずそうな色を出し、思わず目を背ける。
「せ、セセリは……まだ、かなぁ」
焦りと気まずさが七瀬をここから逃がそうとする。
少女の夜食選別はもう少し掛りそうである。
- 575 :横島なつき:2011/06/07(火) 00:23:57 ID:bYREkklM0
- >>573
「あ、え、えへへ、お世話さまです……」
微妙な返答をしながら、ナツキは心の中で舌打ちをする。
なにせ生徒会長とその顧問、おまけに保健室の先生ときた。
相手の素性が分かってから警戒し始めるというのは何とも皮肉なものだ。
もっとも、今のナツキは行儀が悪いだけでやましいことはしていない。
堂々としていればいいのだが……。
>>574
「あ、うん……。大丈夫、美味しいです……」
そんな会話の間も食べ続けたカルボナーラは、
既にパスタは食べ終え、少量のパンチェッタが残るのみだ。
持ち前の塩味に黒コショウとチーズが効いている。
楽しげな先生と、何故か気まずそうな生徒二人。
イタリアンの香ばしさが三人を包んでいる……。
- 576 :フランシスカ・キールダリア:2011/06/07(火) 00:33:19 ID:yoK3W6uY0
- >>574
「本当にごめんなさい。本来なら私から名乗るべきだったんですが、
自分が受け持つ生徒かも知れない人に会って、ちょっとテンション上がっちゃってて……」
何とも気まずそうな七瀬をなだめるように言ってから、フランシスカは嬉しそうな笑みを浮かべて、
「ふふ……フライング気味の顔合わせになってしまいましたね。
新米教師ですけど、これからよろしくお願いします、七瀬君」
七瀬の前に、握手を求める右手を差し出した。
>>575
「?」
花丸をあげてから、何故かそわそわし始めたなつきに、フランシスカは小首を傾げる。
花丸にトラウマでもあるのかな……というような、的外れな予想を立てるこの女教師は、
やや空気を読む能力に欠けるところがあるらしい。
- 577 :ナナセ=フミヅキ & 河平 セセリ:2011/06/07(火) 00:39:06 ID:VoJSms.Y0
- >>575
「な、ならいいんだよ。
私としても嬉しい限りだ」
何がどう嬉しいのか。
やはりかなり精神が揺れている様子だった。
「所で、名前は何と?」
思いだしたかのように両手を叩き、
話の雰囲気を変えるいい方法だとでも思ったのだろう。
>>576
「宜しく……です。フランシスカ先生」
なんとか状態は回復へと向かっているが、今一まだ完全では無い。
求められた握手に両手同時に差し脚てしまい、引く訳にも行かず包み込むように握った。なんとも痴態臭い動きである。
『たっだいま〜……ぁ?』
ビニール袋(大)一杯の菓子パンやケーキを手にコンビニから出てきた少女。
ボディスーツの女性の手を握る七瀬とそれを見守る立場のなつき。
三人の異様な空気のズレを読み取り、にこっと笑顔。
『にぎやかだねぇ〜』
読み取れて無かった。
- 578 :横島なつき:2011/06/07(火) 00:54:12 ID:bYREkklM0
- >>576
『(お気楽で人の良さそうな先生だ……)』
最後のパンチェッタを飲み込みながら、そんなことを思う。
生徒に甘い人ならいいと思いつつ、小首を傾げた先生に軽く微笑み返す。
カルボナーラは食べ終わった。もうこの場に長居する必要もない。
名前でも尋ねられる前に足早に退散しよう……そう思ったところだった。
>>577
「……横島なつき、です。一年生です……」
……表情自体は普段と変わらない。が、内心はやってしまった、という言葉で溢れている。
目を合わせずに、ずぼ、とコンビニの備え付けのゴミ箱にカルボナーラの容器を突っ込んだ。
学生の立場なら彼女についてはただの女生徒である以上の情報は持ち得ないだろう。
だが、教員ならば話は別だ。半年の放浪歴から来るダブり、そして財産の学園への預託。
特別な事情から把握事項を持つ学生は多いが、彼女も確実にその一人として数えられるのだ。
そのことをすっかり忘れているナツキは、
店内から出てきた少女に笑みを返すと、小さく手を振った。
- 579 :フランシスカ・キールダリア:2011/06/07(火) 01:07:27 ID:yoK3W6uY0
- >>577
何で両手で包んでくれるんだろう? とは思いながらも、握手に応えてくれたことに、
フランシスカは更なる喜色を笑みに乗せた。
「はい、七瀬君。
それで、初めに戻るんです……」
何かを言いかけたところで、フランシスカはコンビニから出てきた少女に気付き、
続く彼女の、場の評価を聞いて、
「ええ、賑やかですよね!」
あろうことか、それに同意していた。
>>578
返答のように微笑んだなつきにつられるように、フランシスカも微笑む。
なつきの様子の回答には全然ならないが、それで良いと思ってしまえるのがフランシスカだった。
(……ん? 横島、なつき?)
と、七瀬の問いかけに答えたなつきの、自らの名を告げる言葉に、フランシスカは記憶の合致を感じた。
放浪歴、遺産の預託、独り身……そんな単語が踊る資料の文面と写真とを、
さっきまでカルボナーラをすすっていた少女と照らし合わせたフランシスカは、ニコリと笑み、
「横島さんもよろしくお願いしますね。
何か、相談事があれば、是非保健室に立ち寄ってください。
私で良ければ相手になりますから」
七瀬に握られていない左手を胸に当てながら、穏やかにそれだけを言った。
- 580 :ナナセ=フミヅキ & 河平 セセリ:2011/06/07(火) 01:17:16 ID:VoJSms.Y0
- >>578
「そう、か。
私の事はさっき聞いただろう。フミヅキ=ナナセだ」
名前を聞いたり、帽子に隠れて居ない部分から見るに、東洋人だ。
にも関わらず、少し凝った名乗り方をする帽子の。
「まあ、また合う事も有るだろう。覚えておこう」
『ふふ〜♪』
両手一杯に食べものを抱えて上機嫌なのだろう。
なつきに幼子のような笑顔を向けている。
>>579
「始めに?」
両手を離し、その手を口に充て、咳払い。
それを合図に切り替えた様子で、何時もの何処か近寄りがたい雰囲気を漂わせ始めた。
『うんうん、賑やかなのはいい事だよ♪』
と、袋を足元に置いてその無数の中身の一つに早速手を出し始めた。
どれほど食べる気なのだろうか……。
- 581 :横島なつき:2011/06/07(火) 01:28:25 ID:bYREkklM0
- >>579
「あ……はい。ありがとうございます」
相談事という言葉に、初めて自分の抱えていた事情を思い出す。
しかし、それらのことはナツキの中ですっかり清算されていることだ。
気にかけてもらえるのは、ありがたさ半分、煩わしさ半分といったところ。
『(それに今は、ひとりってわけじゃないし)』
そんなことを考えながら、鞄から突き出た布ぶくろにそっと手を添えた。
>>580
自分の境遇を思い返すことで、ふっ切れたのか勇気が湧いたのか。
「はい、七瀬先輩ですね。生徒会長がんばってください」
と、普段の余裕を取り戻し、こともなさげに言ってみせた。
帽子の下の目線にも、もう物怖じはしないだろう。
もっとも、一般に照らせばこれが最も普通な下級生の反応だが……。
「……あなたも、よろしくね」
浮かれた様子のセセリに向かい、肩をすくめて笑って見せる。
その天真爛漫な様子から、まさか上級生ではあるまいと思い込んだらしい。
- 582 :フランシスカ・キールダリア:2011/06/07(火) 01:38:50 ID:yoK3W6uY0
- >>580
(ん、落ち着いてくれたんだ。良かった)
七瀬がいつもの調子を取り戻したらしいことに、フランシスカは安堵する。
先ほどまでの様子も見ている分には目新しいが、何か話すときは、やはり本人が落ち着いていることが好ましい。
「はい。七瀬君に話しかけたのは、本当はちょっと道を尋ねたかったからなんです。
千夜学園までの道を教えてもらいたくて……。
実は私、あそこの高等部の卒業生なんですが、何分七年前のことでして。
大分道が変わっちゃって、道に迷っていたんですよ」
「それで……」と続けようとするフランシスカのお腹が、グーッと不足を覚えた音を出す。
セセリが持っている大量の食料の姿に、胃が刺激されてしまったらしい。
「………………今のは忘れてください」
今度はフランシスカが気まずそうな、それでいてこれ以上ないくらい真っ赤な顔になった。
>>581
礼を言うなつきの姿が、とても難儀な過去を背負うものとは思えないことに、フランシスカは意外な気持ちになる。
だが、その後の布袋に触れる動きで、今のなつきには側にいてくれる「誰か」がいるのを悟った。
(私の出番は、無さそうですね)
安心半分、寂しさ半分の心で、そう思う。
「あ、そうでなくても普通に遊びに来てくれると嬉しいです」
その寂しさの部分が少し勝ったのか、フランシスカはそんな付け足しをしていた。
- 583 :ナナセ=フミヅキ & 河平 セセリ:2011/06/07(火) 01:51:39 ID:VoJSms.Y0
- >>581
「元より、やる気等無いが形だけやるとするさ」
クク。と無意味笑う。
出る言葉から近づきづらい雰囲気を醸し出す七瀬。
本来がこういう人間なので在り、本人の調子が戻っただけなのである。
>>582
「道……ね。
それなら、この通りえを真っ直ぐ行って……」
自分たちが歩いてきた方向を指さし、喋り始める。
その後は時に手振りを交えながら次々と説明をしていく。
それはそれは、聞く側の都合を無視したスピードで。
『……んぅ?』
菓子パンを食べようとした矢先、
空腹の音が聞こえて、次に視線が向けられちる事に気づく。
『ひとつなら、上げるよっ』
にっこりとしたままビニール袋の中の一つを差し出した。
因みに七瀬は忘れるどころか無視して道案内を延々と続けている。こういうところも友達が少ない理由の一つなのだろう。
- 584 :横島なつき:2011/06/07(火) 02:04:13 ID:bYREkklM0
- >>582-583
遊びにおいで、というフランシスカの優しい言葉に頷きを返す。
七瀬の物言いも、ナツキにとっては肩が凝らない楽な距離感だ。
意外に付き合いやすい人たちかもしれないぞ、とナツキは思った。
『(で、もしやと思っちゃいたけど道案内か……)』
この矢継ぎ早な七瀬の説明では内容を把握するにも難があるだろう。
ナツキはゴミ箱に寄りかかり、鞄からA6サイズのメモ帳を取り出すと、
七瀬の説明を耳で聞きながら、何やらボールペンを走らせ始めた。
ナツキは元より道筋が頭に入っているから、早口な説明でも内容を掴むのは簡単だ。
目の前の三人のやりとりを澄ました顔で聞き流しながら、
学園までの簡潔な地図をすらすらと手慣れた様子で描き上げていく。
- 585 :フランシスカ・キールダリア:2011/06/07(火) 02:17:33 ID:yoK3W6uY0
- >>583
「はい……はい……ふむふむ」
七瀬の態度から、とりあえず腹の虫の件は「聞かなかったこと」にされたらしいと判断したフランシスカは、安心して彼の案内に耳を傾ける。
早いスピードで言葉に出力される道順を聞きながら、しかし、フランシスカの意識は全然別のことを考え始めていた。
(やる気など無いだなんて……誰かに押しつけられでもしたのでしょうか?
こういう生徒ほど、しっかりサポートしないといけませんね……)
そんな考えを抱きながら、記憶に道のりを刻み込んでいたフランシスカであったが、
セセリから差し出されたパンにそれまでの思考が全部吹っ飛ばされた。
「え、くれるんですか? ……ありがとうございます。
このお礼はいつか、必ず」
生徒にパンを貰うという、教師としてはあまり褒められたものではない行為に、
フランシスカは嬉しさと情けなさにサンドイッチにされ、それ以上の思考を許されなかったのである。
ちなみに、覚えた道順も吹っ飛んでいた。
>>584
メモ帳に何事かを書き始めたな、という認識を得た時点でセセリのパン攻撃(?)に当てられ、
フランシスカの意識は完全にそちらに向いてしまっていた。
そして、七瀬の口から得られる学園への道のりが、記憶と全くかみ合わなくなってきているのに気付いたフランシスカの額に、
うっすらと冷や汗が流れ始めている。
言葉の上では「はい、はい……」と七瀬に応えてはいるが、勘の良い人間なら全然覚え切れていないのがわかるだろう。
- 586 :ナナセ=フミヅキ & 河平 セセリ:2011/06/07(火) 02:27:19 ID:VoJSms.Y0
- >>584
「それで、そこの角を……ん」
地図。
七瀬の目にはなつきの描く物がそう見えた。
道筋をたどると学園までの道のりだと解る。
「中々、気が効く」
道案内の口を閉じ、顔を近付けて地図を眺める。
普段は見えない帽子の下は穏やかな顔をしていた。
>>585
『うん。ちょっと私も買いすぎちゃったしね〜。
私とななっちで全部食べるのも無理があるしね!』
じゃあ何故買った。
帽子を深く被りなおすと道案内を途中で止め、なつきの方を見ていた。
「私も面倒は出来るかぎり省きたい。
なつきの地図を見る方が何倍も速いだろう」
- 587 :横島なつき:2011/06/07(火) 02:42:53 ID:bYREkklM0
- >>585-586
感心したような七瀬の言葉に対し、
口では何の反応も返さないが、ナツキの表情は得意気だ。
七瀬の説明が止まってからは、
口元にボールペンを当てて少しだけ考え込む動作も見せたが……。
「こんな感じ……と」
やがて手を止め、ぺりっ、とメモ帳を剥がして差し出す。
そこに書かれているのは、道順と大まかな距離関係、
曲がり角の目印などの必要な情報を網羅した、学園までの地図だ。
高層ビルなどの、現在地や方角を掴むための大きな目印もアイコンで再現されている。
といっても、大筋は七瀬が口にしていた説明と変わらない。
早口で、しかも途中までではあったが、その内容は正確だったのだろう。
「……はい、先生。丸で囲ってあるコンビニが現在地」
- 588 :フランシスカ・キールダリア:2011/06/07(火) 02:54:29 ID:yoK3W6uY0
- >>586
「そ、そうなんですか……」
パン一個減ったくらいではまったくその威容を崩さないビニール袋に、フランシスカはさもありなんと思う。
これほど大量に買い込むということは、この二人――おそらく、十中八九セセリの方――のうちのどちらか、
あるいは両方が、ヤセの大食いだということなのだろう。
きっと、この食料の山を切り崩す光景は、見てるだけで胸焼けがするに違いない。
「へっ? あ、はい……」
セセリの買ってきた食料に改めて圧倒されていたフランシスカだったが、
七瀬の、なつきの地図を見るように勧める言葉に、完全に対応しきれずに、若干間の抜けた返事をしてしまう。
(せっかく道案内してくれていたのに……悪いことをしてしまいましたね)
セセリと話している間、案内をきちんと聞いてやれていなかったことが、七瀬の先の言葉に繋がっているのだろう……という予想が、
フランシスカの心にそんな後悔の念を残した。
>>587
なつきから受け取った地図を見て、フランシスカは思わず感嘆の声をあげた。
「これはすごいですね……普通、紙に書く地図にランドマークなんて書かないものですが……。
この地図は、今まで見たどの手書きの地図よりも精密ですよ。ありがとうございます、なつきさん!」
地図を大事そうに持ちながら、華やいだ笑顔を見せるフランシスカ。
それは「教師っぽくない」と思われても仕方のない、少し子供っぽい笑顔だった。
- 589 :ナナセ=フミヅキ & 河平 セセリ:2011/06/07(火) 02:58:43 ID:VoJSms.Y0
- >>587
「ふむ……」
なつきの書きあげた地図を目にしてそう小さく声を漏らす。
それが確かなものである事を目で追って確認する。
終いに小さく頷き、
>>588
『そうなんですよ!』
ぶんぶん。と首を縦に振る。
実際はそんな事無く。
ただ単に七瀬が面倒だっただけなのだが。
「これが在れば問題ない……な。
もう時間も遅い、私は帰らせてもらう。フランシスカ先生、話はまた何時か」
そういうとセセリの肩をたたき足早に去っていく。
それに反応した制服の少女は袋を抱えて追いかけて行った……。
//訳の解らぬ文も続きますし、もう時間も遅いので眠りますね……。お休みなさいです。
- 590 :横島なつき:2011/06/07(火) 03:18:12 ID:bYREkklM0
- >>588-589
「いえいえ。……旅慣れしてますもので、ね」
フランシスカの言葉と、小さく頷いた七瀬を横目にナツキも小さく笑う。
地図を描くのは、ナツキが気ままな旅の中で身についたスキルのひとつだ。
すでにしまったメモ帳の他のページには、
住宅地図と案内板を足して割ったような地図がいくつも描かれている。
七瀬とセセリの二人の仲良さげな背中を見送りながら、
「それじゃ、私もここで。……先生、さよーなら」
子供のように頭を下げて別れの挨拶をする。
身体を起こし、さっと向きを変えて、そのまま振り向かずに歩き出す。
ほうっとけばよかったかな……なんてことも、ほんの少しだけ思いつつ。
//キリがよさそうなので私もここで。お二方とも、ありがとうございました!
- 591 :フランシスカ・キールダリア:2011/06/07(火) 03:26:38 ID:yoK3W6uY0
- >>589
「はい。ではまた、お会いしましょう。
次に会うのは学校でしょうね」
微笑みを浮かべながら、フランシスカは小さく手を振って、去る二人を見送る。
次はどんな話をしよう、セセリさんにはどんなお返しをしたら良いだろうか、などと考えながら、
まだ見ぬ生徒達に思いをはせていた。
//遅くまでお疲れ様でしたー
>>590
「旅慣れ……ですか。ふふ、頼もしいですね」
なつきの旅慣れは、おそらく資料にもあった放浪歴が習得させたものだろう。
それを普段の会話の上で事も無げに言える、ということは、やはりそのことはもう、
彼女の心を縛るものではないということの証左だ。
「はい。なつきさんも、また。
地図、ありがとうございました」
見かけは普通の少女でありながら、存外、強い子なのかも知れない。
そこが見抜けないあたり、自分はやっぱり新米教師なんだなぁ、といったことを思いつつ、フランシスカはなつきにも手を振った。
//お疲れ様です。絡みありでした。
- 592 :カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/07(火) 22:04:44 ID:1sJsd2CgO
- 公園のベンチ。
ナース服の女性が座って、未開封のエクレアを片手に口をもごもごさせていた。
安曇カンナ。重犯罪者であるロージェンスに協力的な姿勢をとっているとされる人物である。
彼女の隣には菓子パンの詰まったビニル袋とペットボトルの紅茶が一つ。
「さて、お次はエクレア〜。えいやっ」
気の抜けた掛け声。
手に持っていたエクレアが包装ごと半分くらい無くなった。
断面は鋭い刃物に斬られたようになめらかで、反対に片寄っていたシューも同じように半分くらい無くなっている。
すると、どこからともなく膝の上に未開封のエクレアが三つ姿を現した。
削って、増やす。
これがカンナの能力である。
コピー
「むふふふ〜、いくら食べても“複製”なら太る心配もないのでーす。いっただきまーす」
“複製”は数時間で自然に消えるため、吸収される前に無くなるという寸法。
ビリッ、と包装を破りエクレアをほお張る表情はすごく幸せそうだ。
- 593 :逆瀬川 純鈴:2011/06/08(水) 00:11:16 ID:fbkxur6g0
- >>592
「わお! なにそれすごい一個ちょーだい!」
何処からともなくひょっこり現れた、ハンチング帽子を被りサングラスをかけた少女。
サングラスで隠れていて見えないが、きっとその瞳はキラキラしているのだろう。
- 594 :『ジボル』:2011/06/09(木) 13:16:36 ID:rduAL9bY0
- くあー〜〜〜ああう。
【大欠伸】
【ジボルは今日も小百合の屋敷を抜け出して街を散歩していた。もはや習慣となりつつある】
【だけど今日は照りつける太陽がコンクリートを焼いていて、裸足のジボルはとても散歩などできず】
【いつもの公園に駆け込み、日差しの強さにたまらず逃げ込んだ木陰は涼しかった】
【そんなわけで今、ちょうど昼寝を終えた辺り。午後過ぎの太陽は一向に衰える気配を見せない】
はへー、はへー。
【舌をベロンと出して犬のように体温調節。そのままぼー……。】
- 595 :テルメス/ニット帽の男:2011/06/09(木) 13:32:52 ID:ste/2NNA0
- 「暑いな」
まったく暑そうな素振りを見せずに、ニット帽の男はそう呟いた。
「まったく公園の砂もカラカラになって……。
あ……アリジゴクの巣」
木の根元に同族を見つけ、覗き込んでいた。
- 596 :『ジボル』:2011/06/09(木) 13:42:26 ID:rduAL9bY0
- >>595
【前屈一歩手前みたいな感じで座って、寝起きの目を擦る】
【暑いけど木陰も飽きたし、どこ行こうか……】
おう。
えーと、ゴハンのひと。
【面白いものを探してチラッと目についたのは、いつぞや出会った男であった】
【何か覗き込んでいる様子に興味が沸いて、近づこうと立ち上がるが】
あ……でも、さゆーが『わるいひと』っていってた……。
【ジボルの中では『ご飯持ってた人』+『怪我人』だが、小百合がテルメスを連れてったとき、ジボルはそう説明を受けていた】
【果たして話してもいいものか……木陰の端が境界のように、ジボルの足を止めた】
- 597 :テルメス/ニット帽の男:2011/06/09(木) 13:48:44 ID:ste/2NNA0
- >>596
「……ん?ああ、や」
片手を軽く上げた。
「お前そんなに流暢に離す奴だったか?
……一応言っとくけど、俺はテルメスだ」
短期間で言葉が上達したことに驚きつつ、名前を名乗る。
「悪い人?……まあ、そうかも」
怪人という種族に対する意識なのか、悪びれた。
- 598 :『ジボル』:2011/06/09(木) 13:58:43 ID:rduAL9bY0
- >>597
あっ、 ……や。
【やや仏頂面で手を挙げて、挨拶を返す】
【微妙な警戒心とか、家主(飼い主?)の言ってたことだからとか、その他諸々がそうさせてるのだが】
【それでも挨拶を返すのは、あまり悪い人に感じられないからだ】
さゆーが、ことばが、おしえてくれて……しゃべれる。ちょっと。
【でも接続詞は変になってる】
……なにか、わるいことが、したか?
【風が吹いて、ざらざらと葉が鳴った。神妙そうな顔で僅かに細めた瞳が、木漏れ日を弾いて光る】
- 599 :テルメス/ニット帽の男:2011/06/09(木) 14:05:55 ID:ste/2NNA0
- >>598
「あ、そうなんだ、凄いなあの人」
高い地位の人らしいし、何度か新聞で名前を見たこともある。
忙しそうなのにこんな少年を引き取って言葉まで教えている。
「悪いこと……最後にしたのはかなり昔だったなあ」
ちなみにテルメスの昔は2000年近く前のことである。
その頃はまだ、組織には従わざるを得ない状況で、
普通に能力者相手に戦っていた、つまり人を殺していたのだ。
- 600 :『ジボル』:2011/06/09(木) 14:12:47 ID:rduAL9bY0
- >>599
うん。さゆーは すごいぞ。
いそがしそうだけど、ごはんいっぱいで、つよいぞ。
【ご飯いっぱい=狩りが出来る=強い みたいに考えてる】
【まだまだ社会のシステムをあまり理解していないようで】
いまが、もうしないか?
【未だ面持ちを崩さないまま続けて尋ねる】
- 601 :テルメス/ニット帽の男:2011/06/09(木) 14:20:19 ID:ste/2NNA0
- >>600
「飯は大事だな……」
呟きながら蟻を捕まえてアリジゴクに放り込んだ。
とは言えアリジゴクは十数日飯を食わなくても生きていける。
アリジゴクの怪人たるテルメスもまた同じ能力を有していた。
「……出来るだけ、努力はするけど」
ジボルの年齢に見合わない神妙な面持ちに、目をそらしてしまう。
なぜかとがめられている気がした。
- 602 :『ジボル』:2011/06/09(木) 14:36:06 ID:rduAL9bY0
- >>601
……じゃあだいじょーぶだな!
【ぴょんと木陰から飛び出す】
【強いか弱いか、敵か味方か、旨いか不味いか、毒のあるかないかまで】
【ここに来るまで全て『野生の勘』という不確かなものに頼り続けてきた】
【それはかなり危うく綱渡りに近いものだが――生来磨かれ続けた物は、同じく『不確かな』善悪を正しく判別していた】
【ぺたぺたと二本足で歩いて、蟻地獄を覗く】
ほーーーー……
【地面のアリを掴んでぽいぽい投げ込む。もうすっかり警戒は霧消してしまっていた】
- 603 :テルメス/ニット帽の男:2011/06/09(木) 14:43:39 ID:ste/2NNA0
- >>602
「……進化してる」
二本足で歩くジボルを見て言った。
確か前見たときは繋がれた腕を地面に付けて三本足だったはずだ。
「……努力してみるか。
もう少しぐらい」
アリジゴクから次々と吐き出される蟻の死骸を見て呟いた。
- 604 :『ジボル』:2011/06/09(木) 14:48:03 ID:rduAL9bY0
- >>603
すっぱいのすきかー! すっぱいのすきかー!
【なにいってんだコイツ】
【次々アリを渦に放り込む顔は暑さでかいた汗がきらきらして凄く楽しそう。子供って残酷ね!】
う? なにいったか?
【ジタバタ蠢くアリを摘んだまま振り向く】
- 605 :テルメス/ニット帽の男:2011/06/09(木) 14:53:50 ID:ste/2NNA0
- >>604
「その酸っぱいのがいいんじゃないか」
まるで食ったことがあるかのような言い方だった。
食用の蟻が存在する国もあると言うが。
「ダンゴムシ食わせると面白いぞ、
ダンゴムシ、体液吸われて真っ白になるから」
無駄な知識を吹き込む。
「いや、大して重要なことは言ってない」
- 606 :『ジボル』:2011/06/09(木) 15:04:16 ID:rduAL9bY0
- >>605
え゛
わ、わーはアリたべるのを、ちょっとイヤだぞ……。
【こっちも食べたことあるような、っていうかある。】
【いつぞやの酸味を思い出して口をへの字に曲げて】
ほー……ダンゴムシ、どこがいるかな。
【苔むした石やら切り株やらは無い、いたって普通の公園だから、探すのは少し骨か】
【ひと通り虫を弄り倒して遊んでいると不意に、ぐるるるる…と何かが鳴った】
あうう、おなかへったぞ。
アリ……じゃない。めし、たべてくる。
【手についた砂をズボンでゴシゴシと拭いて、未だ空で燃え盛る太陽のように明るく笑う】
じゃな!!!
【鎖をじゃらじゃら引きずりながら、ぱたぱたと駆けて去っていった】
- 607 :テルメス/ニット帽の男:2011/06/09(木) 15:13:33 ID:ste/2NNA0
- >>606
「そうか、残念だ」
ちょっと残念そうである。
「ああ、じゃな。
鎖邪魔じゃないのか?切って貰えばいいのに」
手を振って見送った。
「……やっぱり俺は怪人なんだなあ。
でもうまいよな?」
足元のアリジゴクを見て呟いた。
- 608 :カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/10(金) 23:05:58 ID:1sJsd2CgO
- 【異能都市 西部】
公園のベンチに一人、ナース服のカンナは、アーケード商店街と繋がる通路を眺めながら、ぼんやりしていた。
ここも、子供が喜びそうな遊具は数少なくなってきた、今やベンチとブランコくらいだ。
(……『後で話を聞きにいく』か……誰宛てだろ、というより。そもそもなんで彼女は?)
メモ書きに目を落とし、物思いにふける。
- 609 :カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/11(土) 01:12:39 ID:1sJsd2CgO
-
「……考えても仕方ないか。それより、今は彼女の面倒看なきゃ」
言って、アーケード街に向かう。
途中、閉まっている精肉店の脇を抜けて、ロージェンスが“拠点”としている所に向かう。
道中は建物の張り出した二階や屋根、半地下等で上空から非常に視認しにくく、そもそも地形的に道があるとは考えられない。
このアーケード商店街を作る段階で、何者かに意図的に仕組まれた“隠し通路”の先にビル壁面に偽装された“拠点”の入り口がある。
―― 中略 ――
片面がガラス張りの通路を通り、出た管理室を抜けて、ロージェンスの居るその部屋にたどり着く。
しかし、
「えー、……またぁ?」
ロージェンスは居なかった。
寝ていたベッドはもぬけの殻。
点滴は倒れ、機器や壁には弾創が残っていて部屋は荒れ放題だった。
ずいぶんと衰弱していたからこんな短期間じゃ回復しないと踏んでいたのに……。
(体調がすこぶる良さそうで安心したけど……、精神状態はよろしくないわねぇ。
非常に攻撃的になってる、正常な判断力も欠如してるみたいだし。野放しは危険か……)
カンナは“拠点”を出る。
ロージェンスを見つけるため。
- 610 :黒沢小百合:2011/06/12(日) 23:08:25 ID:SSMHlh/20
- 【AGカフェ】
「………………。」
店内に漂う濃厚な酒気。
カウンターに突っ伏し、泥のように眠る小百合の周りには
いくつかの空き瓶や割れたコップの破片が散乱しており、
ぶちまけられた琥珀色の液体が雫となって床へ零れ落ちていた。
- 611 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/06/12(日) 23:24:50 ID:HnkBBDEo0
- >>610
「……う、うわぁ」
モップを片手に店主のクロスは、疲れた表情でその光景を眺める。
「何があったんだよコイツ。こんなキャラだったか?」
そう言いつつも窓を開き、モップの水気を絞って床に叩きつける。
「ええい、眺めていても片付かん! やるしかねぇ!
おい小百合! おきろ! ここは宿屋じゃねぇぞ!!」
床をモップで拭いつつ、大声を出して小百合の座る椅子を蹴る。
- 612 :黒沢小百合:2011/06/12(日) 23:37:01 ID:SSMHlh/20
- >>611
――どさっ。
「うっ…………。」
小百合は、蹴りでぐらついた椅子から転げ落ち
ようやく眼を覚ましたが、のろのろと体を起こすと再び
酒が半分半分残ったボトルに手を伸ばした。
「……ひぅ……ぐ……。」
しかし、酔いのあまり動くのもままならないのか
それを掴めずに、倒してしまった。
- 613 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/06/12(日) 23:49:56 ID:HnkBBDEo0
- >>612
「っだああああああああああもおおおう」
モップを放り投げ、小百合へと手を伸ばす。
「おいコラー。意識あるかー? 生きてるかー?」
ペチペチと頬を16ビートで叩く。
「何かあったのか? お前がそんなに飲むなんて珍しい」
- 614 :黒沢小百合:2011/06/12(日) 23:59:51 ID:SSMHlh/20
- >>613
「ん……んぅ……?」
何度か頬を叩かれているうちに、
小百合はようやく完全に意識を覚醒させた。
とはいえ、この様子から分かるように相当飲んだのだろう。
顔は林檎のように真っ赤で、息もかなり酒臭い。
「あ、あぁ……申し訳ありません、少しだけ……の
つもりだったのですが、痛飲してしまいました……。」
小百合は虚ろな表情でカウンターに寄りかかると
クロスの問いに答えず、欠けたグラスに僅かに残ったブランデーを飲み干した。
- 615 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/06/13(月) 00:11:45 ID:E4Ka56rgO
- >>614
「いやだから! わかってんなら酒飲むな!
つーか危ないから! それ危ないから!」
欠けた瓶やグラス、ガラスの破片などを急いで片付ける。
「無理すんなよもう……あー、ちょっと失礼」
無理矢理に小百合を担ぎ、ベッドに横に寝させた。
「待ってろ。麦茶持ってくる」
- 616 :名も無き異能都市住民:2011/06/13(月) 00:21:53 ID:VoJSms.Y0
- 「……」
――久し振りに外に出てみれば。
――ふと周囲を見回してみれば。
久々にカフェへ来た女は口を噤んでいた。
変わった事と言えばその事ともう一つ、服装が変わっっていた。
今までは活動のしやすそうなラフな服装を好んできてはいたが、
今日ばかりは白の薄手のワンピースとちょっと異色な格好をしていた。
それでも左手には真紅のグローブが付けられており、それで白い頭を掻き毟る。
グローブと同じその存在の中で希少な白以外の色である紅い瞳は一目見れば睨んでいるのかと間違ってしまう程。
妙に口数が少ないのも、服装が変わったのも、不機嫌そうに見えるのも。
「……暑い」
それが全ての理由だった。
- 617 :黒沢小百合:2011/06/13(月) 00:23:21 ID:SSMHlh/20
- >>615
「あっ……やめっ……!」
小百合は無理やり担がれた拍子に
グラスを取り落とし、がちゃりと破片が飛んだ。
「う……大丈夫だと言ったのに……。」
小百合はそうはいう物の、体をうまく動かせないのか
上半身を僅かに起こす程度で、ベッドから動かない。
そのうち、諦めたように体をベッドに預けた。
- 618 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/06/13(月) 00:28:39 ID:E4Ka56rgO
- >>616
「いらっしゃい」
散らかった店内で、男は苦笑しながら少女を迎え入れる。
「ちょいと酔っ払いが暴れていてね。
なに、すぐ片付ける。注文はあるかい?」
>>618
「うっせ。大丈夫には見えねーよ」
そう言いつつも近くのテーブルに麦茶を置いた。
「何があったか知らないけど、ヤケ酒は程々にしておけよ」
- 619 :黒沢小百合:2011/06/13(月) 00:36:53 ID:SSMHlh/20
- >>616
店の奥にある仮眠用のベッドに横たわる小百合は
店内のバースペースからは見えないが、クロスが麦茶を運んだりしている様子から、
奥に誰かいることは容易に推測できるだろう。
>>618
「私も……酒に逃げたくなる事もあります。
『人間』なんです。私だって……。」
そのイメージから、彼女をよく知らない人間からは
完璧人間のように見られがちな小百合であるが、その実相当人間臭い性格を持っている。
小百合は、拗ねた様にシーツをかぶり横になっていたが
クロスが接客のため店内に戻ると、ちびりと麦茶を口に含んだ。
- 620 :名も無き異能都市住民:2011/06/13(月) 00:40:52 ID:VoJSms.Y0
- >>618
「久し振りだね、随分と」
具体的に「何時からだ」とも言おうと思ったが、
暑さのせいで上手く纏める気にも、考える気にもならなかった。
若干衰弱した様子で少々乱暴に歩き、
そのままの粗雑な動きで手近な椅子に座ると突っ伏した。
左腕に肘を付き、紅い左手を垂直に立てるとそれを力なく振りつつそれと同じ様子で、
「何か冷たいの」
と、告げた。
>>619
「……」
――誰かいるな。
一度顔を上げて奥をぼんやりと眺める。
そう思うに至ったのではあるが、それだけ。
今の状態ではそれ以上には至らなかったらしく、
こてん。と首を倒すと再びうつ伏せてしまった。
- 621 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/06/13(月) 00:54:23 ID:E4Ka56rgO
- >>619
「ああ、知ってるよ。
お前が誰よりも人間らしいのはよく知ってる」
頭を掻きつつ、クロスは片付けを終えてカウンターへ戻る。
「人間だから無茶するし、人間だからこそ、こうやってブッ倒れる」
カウンターの中でニシシとクロスは笑う。
「分かってるさ。俺も一応、人間だからな」
>>620
「……久しぶり……ああ、うん、久しぶりだな」
と言いつつもクロスの脳内では必死な記憶検索が行われてた。
(真っ白な髪に真っ赤な目。
印象的な外見だ、忘れるハズがねぇ。
格好こそ違うが、コイツには見覚えがある。
あるっちゃああるが……)
よく冷えたレモネードを用意しつつ、クロスは冷や汗を流す。
(……コイツの名前、なんだっけ!)
- 622 :黒沢小百合:2011/06/13(月) 01:04:25 ID:SSMHlh/20
- >>621
「…………。」
カウンターへクロスが戻り、彼の声がおぼろげに聞こえる。
その声にぼんやりと耳を傾けているうちに、小百合はゆっくりと眠りに落ちていった。
// 今回はこれでおつるー。
- 623 :名も無き異能都市住民:2011/06/13(月) 01:05:44 ID:VoJSms.Y0
- >>621
名前なんて出ないだろう。無いのだから。
そのままの意味での答えの無い問いに苦しむ姿を目に掛けもせず、
机にだらりと倒れては「あつい」と呻きを繰り返す。
先程から左手は天井を向いたままである。直す気力も無いのだろうか……?
- 624 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/06/13(月) 01:13:27 ID:E4Ka56rgO
- >>622
//おやすみ〜
>>623
クロスにとってはまるで「名前を思い出せない」ようで、内心大慌てである。
よって「極力名前を呼ばないようにする」作戦に出た。
「ほい、どうぞ」
氷が入ったグラスに、キンキンに冷えたレモネードを少女の前に出す。
「確かに暑くなってきたよなー。
湿気がもうヤバイヤバイ」
ふと、視線は左手へ。
「どうしたその手は。寝違えたのか?」
- 625 :名も無き異能都市住民:2011/06/13(月) 01:21:59 ID:VoJSms.Y0
- >>624
「ん、ありがと」
気の抜けた声と同時に身体を起こすと目の前に置かれたグラスを両手で持つ。
それを口につけ、僅かに傾けて少しずつ飲む。
「ふぅ。少し元気が出たよ」
そう告げると軽く微笑む。
向けられた問いに首を振って答え、その後少し顔を歪めて左手で首を押さえる。
「別にそうじゃないよ。首はそうかもしれないけど」
- 626 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/06/13(月) 01:29:11 ID:E4Ka56rgO
- >>625
「この季節は寝るのも苦労するよな。暑いとなかなか寝付けない。
やっと寝れたと思ったら変な体勢で、肩を痛めたりしやがる」
どうやらクロスも肩を寝違えた経験が最近あるようだ。
「そして問題は……虫だ」
クロスの表情が曇る。
「この季節になると奴らは活発になる。
いや、活発になるどころか、数が増え大きさを増し大群で……
あああああもうやだ!!」
頭を抱えて床をゲシゲシ踏みならす。
「近々、市役所行って許可取って!
奴らの根城の下水道に殺虫剤まいてやる!」
- 627 :名も無き異能都市住民:2011/06/13(月) 01:37:09 ID:VoJSms.Y0
- >>626
「ふふ、やっぱり悩みは同じだね」
首を押さえたまグルリと回し。
「虫。ねぇ……。
僕が知ってるのは数と大きさが反比例する奴だけど」
またも表情を歪ませると感慨深い表情をする。
「じゃあ頑張ってくれよ。
応援はするけど手伝いたくはないよ。僕は」
- 628 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/06/13(月) 01:47:21 ID:E4Ka56rgO
- >>627
「んだよー。つれねー奴だな」
苦笑しつつ、自分もレモネードを飲む。
「他にも暑いのが嫌いなのは、俺の能力的な意味でも……いや、
これは言ったらつまらねぇな」
クックックと笑いつつ、クロスは立ち上がる。
「さて、俺もそろそろ寝るか。
お前さんも、あまり夜遅くまでいると危険だぜ
特にこの都市じゃな」
そう言うとクロスは、店の奥へと姿を消した。
- 629 :名も無き異能都市住民:2011/06/13(月) 01:55:02 ID:VoJSms.Y0
- >>628
「キミみたいに物好きじゃないって事だよ」
合わせる様に口に運び、次にこの一言。
「そうだね……。
今日は大人しく帰って眠るよ」
そういうとレモネードの残りを飲み干して、グラスを置くと席を立つ。
来たときよりも幾分かマシな足取りでカウンターへ足を運び代金を置くと、その脚で入り口へ。
「おやすみ」
クスッ、と笑って左手を小さく振るとカフェを後にした。
- 630 :白髪の老人:2011/06/13(月) 22:19:53 ID:ste/2NNA0
- 髪が長く、後頭部で結んだ白髪の老人が、シャッターの下りた喫茶店の前に立っていた。
「ここは潰れたのか……少し気に入ってたんだが……。
仕方ない」
老人は背筋が伸びていて、歩き方もまっすぐ、立ち振る舞いは若々しい。
「おれはどれぐらいここに居なかったんだ……?
向こうに行ったときの記憶がはっきりしていればいいんだが……。
まあいい、数ヶ月しかずれずに戻ってこれただけで御の字だ」
老人は、腕を組んで歩き出す。
一歩進むたびに、カチャ、カチャ、と奇妙な足音が鳴り響いた。
- 631 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/06/13(月) 22:22:06 ID:WVrfsEdY0
- 【街角を歩く影がある】
「もぐもぐもぐもぐもぐ」
【久しぶりに包帯をまいた少女がいっぱいパンを手に持って歩いていた】
- 632 :R-sa(ローザ・オートマータ):2011/06/13(月) 22:37:02 ID:VoJSms.Y0
- 「ここは何処だ……一体」
純白の身体を持つ機械人形が周囲に視線を這わせながら歩いていた。
その視線は鋭く、全ての物を深々と嘗めまわす様な勢いで。
「街……都市、か?」
身体中に走る朱色の動力線。
それと同色の瞳を瞬かせて小さく頷いた。
- 633 :白髪の老人:2011/06/13(月) 22:39:53 ID:ste/2NNA0
- >>631
――カチャ、カチャ
奇妙な足音がディスに近づいてくる。
足音の主は、白い長髪の老人。
「……あれ……ディス?だったかな……」
老人はディスを見て呟いた。
>>632
「変わった奴だな……。
でも、異能都市に戻ってきた感じだ」
白髪の老人が、カチャカチャと足音を鳴らして歩いていた。
R-saをチラ見しながら。
- 634 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/06/13(月) 22:41:58 ID:WVrfsEdY0
- >>632
「もぐもぐもぐ、」
【近くになにかモグモグ食べている少女が歩いている】
【全身に包帯が巻かれている】
>>633
「もぐもぐ…あう?」
【視線を感じたのかその老人の方に顔を向ける】
「…あう〜?」
【クンクンと鼻で匂いをかぐディス】
【知り合いならば匂いでだいたい分かるのだが…?】
- 635 :R-sa(ローザ・オートマータ):2011/06/13(月) 22:46:52 ID:VoJSms.Y0
- >>633
「何だ。ご老人」
こちらを見ていると解ると歩み寄っていく。
「私に何か用が?」
後ろ手に構えた右手には身体と同じく純白の槍が握られている。
>>634
「不思議な場所だな」
シルエットこそ人型に近いそれ。
しかし純白の身体はどう見ても鋼鉄製で動力線からは朱色の光が流れている。
- 636 :白髪の老人:2011/06/13(月) 22:52:46 ID:ste/2NNA0
- >>634
「おれだ。
沢桐創だよ」
顔立ちは、確かに似ている。
沢桐の目の色は黄色かったはずが、目の色は黒い。
しかし、匂いは多少変わったかも知れないが、沢桐に近いそれだ。
>>635
「いいや、どこのロボットかな、と。
それともサイボーグかな」
老人は、R-saの体、特に脚をじろじろと見ていた。
奇異の目というよりは、興味、好奇心である。
- 637 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/06/13(月) 22:55:27 ID:WVrfsEdY0
- >>635
「あう〜?」
【ちらりとその人物を見る少女】
「このまちにはいろんなひとがいるんだなの〜」
【鼻をくんくん鳴らしてつぶやく】
>>636
「あう〜?ほんとなの!『そう』とそっくりのにおいなの〜」
【少々びっくりした顔をしている】
「でもちょっとかおがかわってるなの〜。どしたの?」
【首をかしげて尋ねる。ちょっとどころではないと思うが…】
- 638 :R-sa(ローザ・オートマータ):2011/06/13(月) 23:02:33 ID:VoJSms.Y0
- >>636
「何だ。失礼な奴だな。
私の脚がそんなに魅力的か」
外見は人間の脚を継承してると思われるものの、そのもので在るとは消して言えない。
白い装甲に挟まれた筋に朱色の光が走る。
「私は戦闘用の機械人形(オートマータ)だ。
ロボットやサイボーグと同じにされては困る」
その言葉を発した表情には限りない嫌悪の表情が。
>>637
「私のセリフだ」
ディスの方を真っ直ぐに眺めてそう言う。
- 639 :沢桐老人:2011/06/13(月) 23:10:46 ID:ste/2NNA0
- >>637
「いろいろあって、ついこないだまで別の時代に住んでてな」
詳しく説明してもいいのだが、
ディスに理解できるか不安だったので、簡潔に話す。
「帰ってこれるまで、43年間もかかった」
>>638
「あ、つい。
足型の機械はちょっと興味はあるが」
どうやら自分でも意識せずに足を見ていたようだ。
「すまない、オートマータと言う種類の機械は始めて見たから。
……ロボットとの違いを教えてもらえればあり難いんだけど」
- 640 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/06/13(月) 23:20:05 ID:WVrfsEdY0
- >>638
「あう?あ、こんばんわなの〜」
【ディスは改めて頭を下げて微笑む】
「はじめましてなのかなの?
なんだかひととちがうにおいしたから
ふしぎにおもってなの〜」
【頭をポリポリ掻いてほほえむ。悪意はなさそうだ】
>>639
「あう〜?えっと…えっとつまりなの…」
【とても不思議そうな顔で首をかしげた後】
「ひとりだけせいちょうしたってことなのかなの?」
【一つの答えを出す】
- 641 :R-sa(ローザ・オートマータ):2011/06/13(月) 23:34:07 ID:VoJSms.Y0
- >>639
「……その程度、常識の筈だが」
丁寧に溜め息をつく真似をするとゆっくりと顔を起こす。
「ロボットはただのロボットだろう。
私達オートマータは人間を模して造られた文字通り機械の人形だが」
>>640
「匂い。か。
確かに私は人ではないな」
足で地面を踏みならすとカン、カンと金属の音がする。
「しかし、ここは何処なのだろうな……」
あいさつ程度の会話も終わったと思ったのだろう。
二人に背を向けると何処かへと歩いて行ってしまった……。
- 642 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/06/13(月) 23:37:26 ID:WVrfsEdY0
- >>641
「あう〜。もしかしてろぼっとなのかなの?」
【不思議そうな顔をするが…】
「あう、おなまえいってなかったの…」
【去っていくのを見て少し残念そうに見送った】
- 643 :沢桐老人:2011/06/13(月) 23:43:02 ID:ste/2NNA0
- >>640
「ああ、うん。
そういうことになるね」
苦笑しながら応える。
「だから、異能都市がすごく懐かしく感じるな」
>>641
「……あ、ああ!アンドロイドのことかな」
あんまりわかっていなかったようだ。
「あ、さよなら。
……誰が作ったんだろう」
- 644 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/06/13(月) 23:47:14 ID:WVrfsEdY0
- >>643
「なるほどなの〜。
だからかわったんだなの〜!」
【納得したらしい。】
「なつかしいなの…
あんまりかわってない。かなの?」
【あたりを見回していう。ちなみにディスも最後にあった時と背丈など全く変わっていない】
- 645 :沢桐老人:2011/06/13(月) 23:54:54 ID:ste/2NNA0
- >>644
「異能都市の雰囲気は変わってないなあ。
43年前だから、もうあんまり覚えてないけど」
辺りを見渡してから、ディスを見る。
「ディスもあんまり……変わってないかな?」
実際のところ、良く覚えていないので疑問系をつけた。
- 646 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/06/14(火) 00:04:11 ID:WVrfsEdY0
- >>645
「あう〜。ながすぎて『でぃす』にはよくわからないなの…」
【首をかしげていう。
沢桐の過ごした時間の4分の1しか生きていなさそうだからしょうがないだろう。】
「そうなの〜。はやくおっきくなりたいのにあんまりかわらないなの〜」
【不満そうな顔をしている】
- 647 :沢桐老人:2011/06/14(火) 00:14:05 ID:ste/2NNA0
- >>646
「あせらなくても、その内嫌でも成長するよ。
成長するのが嫌になるぐらい今を楽しんでおいたほうがいいと思うな」
あせりすぎて未来に生きてしまった男の一言である。
「じゃあ、そろそろおれは行くよ。
またね」
男はカチャカチャと音を立てて歩いていった。
後姿は、髪型以外は21歳の頃と変わっていなかった。
- 648 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/06/14(火) 00:18:07 ID:WVrfsEdY0
- >>647
「そっかなの〜。
うん、たのしくすごすの!」
【大きく頷きほほえむ】
「またあおうねなの〜!」
【そして大きくてを振りながら見送った】
「あう〜。まだおなかすいてるなの〜」
【パンを沢山抱えたまま再び歩き出した】
- 649 :カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/14(火) 22:08:54 ID:1sJsd2CgO
-
――ありがとうございましたー。
店員の夜でも明るい声。
帽子を目深に被ったラフな服装の女性がコンビニから出てきた。
「……、ふぅ」
ため息をついた彼女の、
手に提げたビニール袋には缶詰とパンがつまっている。
- 650 :逆瀬川 純鈴:2011/06/14(火) 22:16:48 ID:luIBWR560
- >>649
「ちょいと其処のおねーさん、湿気た顔してどうしたのん?
暇なら――お茶でも如何?」
なぁんて、少しおちゃらけた声。
カンナの目の前に立つ少女――ハンチング帽子を深くく被り、夜だというのにサングラスを掛けている――は、
口元を歪ませながら
"見覚えのあるカード"を、ひらひらと見せ付けていた。
- 651 :カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/14(火) 22:33:07 ID:1sJsd2CgO
- >>650
「……これが重たくてね。良いね、賛成。場所は……“ウチ”でいいかな?」
目の前の少女に警戒こそすれ
カードを見ると、手短に応えた。
ウチ
“拠点”への道のりは遠くない。入り口を見付けるのが難しいだけだ。
……もっとも“接続”を前にしては些事な問題だろうが。
- 652 :逆瀬川 純鈴:2011/06/14(火) 22:41:59 ID:luIBWR560
- >>651
「おっけーおっけー。それじゃー楽しい楽しいティータイム!」
そう言うとカンナの隣へと近付いて、サングラスをずらし、悪戯っぽく笑う。
「道案内は任せるよ。ま、道中は安心して。"私は一人じゃあないから"、ね」
見渡せども、周囲には『誰も居ない』、のだが。
- 653 :カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/14(火) 23:01:33 ID:1sJsd2CgO
- >>652
「ふふ。それじゃあ行きますか」
見れども誰の姿も無い。
後ろに目でもあるのだろうか。
などと考えつつ、向かった先は日戸アーケード商店街。
なんの変哲もない精肉店の薄暗い脇道――上空からは見えない通路――を抜けた先のブロック塀。に偽装された“入り口”を通り……
《中略》
見るだけで鉄臭い食肉加工の設備が揃った部屋を、ガラス越しに沿う地下通路を進んだ先。
「ここが、隠れ家。あんまり居心地はよくないけどねー」
管理・当直室と書かれた扉を開けて、中に招き入れる。
「おかえり……。あぁ……もしかして、例のカードのお客さん?」
その中にはベッドに横たわるロージェンスと、もう一人のカンナの姿があった。
- 654 :逆瀬川 純鈴:2011/06/14(火) 23:19:23 ID:luIBWR560
- >>653
「どんな場所も住めば都、だーよ」
だいぶ暢気な少女だった。
「へろーう! そうそう私がカードの人! 厳密に言えば私じゃあないんだけど――」
「俺でもない、両方が正解――と言った所だな」
いつの間にやら、黒外套の男が少女の背後に。
声を出さなければ、きっと気づかれないままだっただろう。
気配も生気も存在感も、『何も無い』が故に。
- 655 :カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/14(火) 23:38:12 ID:1sJsd2CgO
- >>654
「はは……」
暢気な少女に、部屋の中に居たカンナは弱々しく笑う。
外に居たほうのカンナはいつの間にか消えていた。
あちらは分身だったようだ。
「さて、と。お二人さんが聞きたい話っていうのは、私でも大丈夫かな?」
カンナは寝ているロージェンスの様子をチラと見てから、二人に訊ねる。
- 656 :逆瀬川 純鈴:2011/06/14(火) 23:47:11 ID:luIBWR560
- >>655
「どっちかと言えば、君に話があるからね。全然無問題だよん。
ロージャたん……じゃなくて、ロージェンス・カプル・ニブラス、彼女の『記憶』は対価として『視た』からね、其処は問題ないの。
まーなんてゆーか、ちょっと協力しない? みたいな?
私は彼女に興味があるし、『生きていて欲しい』、と思うし。
今すぐ信用して、なんて言わないよ。ただこう――まぁいいやうん、そういうこと!」
如何言うことなんだか。
後ろで空気化していた男は、音も無くロージェンスに近付き、脈を計ったり熱を測ったりしていた。
多分、退屈、なんだろう。
- 657 :カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/15(水) 00:06:45 ID:1sJsd2CgO
- >>656
「協力……。願ってもない提案、ね。是非ともお願いしたいわ」
そして、後ろで、ロージェンスを弄っている男を見、
「……大丈夫。生きてるから、少し疲れてるだけみたいだから」
言って、深々とため息をつく。
こちらもずいぶん疲労しているようだ。
他に男の興味をそそりそうなものといえば、山積みの段ボール。
中身は何の肉か分からない“肉の缶詰”甘辛く調味してあるようだが、匂いがややキツイ。
「……私は、安曇カンナ。あなた達は?」
- 658 :逆瀬川 純鈴:2011/06/15(水) 00:23:16 ID:luIBWR560
- >>657
「だってさ、おっちゃん。交渉成立を祝ってバズーカクラッカーでも鳴らs」
ゴスッ、と鈍い音と共に、脛を抑えて蹲る少女。
"何か"が、脛をぶっ叩いたらしい。
「其処の馬鹿は逆瀬川 純鈴(さかせがわ すみれ)。……俺に名は、無い。
しっかし、まともな物食ってんのか? 俺が買いに行ってやるよ。
こういう時に、『俺みたいな』のが役に立つんじゃねぇの」
とか、ぶっきらぼうに言ってみたりして。
「うぐぅ....うん、とりあえずはさ、君も休まなきゃ。
必要な物があったら、紙に書いてドアの前にでも置いてて。
おっちゃんなら『誰にも怪しまれない』し、『尾行されることも無い』から、さ」
- 659 :カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/15(水) 00:39:37 ID:1sJsd2CgO
- >>658
「あはは、それは心強い……。
食料も大事だけど、いまは特に医薬品が足りなくて……点滴とか、用意できるかな」
早速、メモにカリカリと書きこんでいく。
日常的な食品名などに混じって、普通じゃ見ないような名前が羅列している。
「……んーと。そこの――ま、いいか――おっちゃん。早速だけどお願いしたいの、当分はこれだけあれば、平気だから」
メモ書きで紙幣と硬貨をくるんで渡す。
- 660 :逆瀬川 純鈴:2011/06/15(水) 00:58:31 ID:luIBWR560
- >>659
「了解りょーかいお安い御用さー」
「……早めに持ってくる。合図はノック、三三七拍子だ」
「……何で三三七拍子、なの?」
「分かりやすくて良いだろ」
「まぁ、うん、そうだねー……」
だとか、そんな会話をして。
「それじゃぁ、今日はこの辺りで!」
「……じゃぁな」
少女が床に『点』を打ち、男が『歪み』を生み、その中へと消えていく二人。
......三十分後、三三七拍子のリズムでノックされ、扉の前には頼んだ品と頼んでも無いプロテイン一袋が置かれていたとか。
- 661 :カンナ/イベントGM ◆ZwSFISyT06:2011/06/15(水) 01:12:20 ID:1sJsd2CgO
- >>660
「三三七拍子。ふふ、把握した」
二人のやり取りを見て、微かに笑った。
そして、ほとんどすぐに居なくなった彼女達(彼等?)に、凄いなぁと呟いて。
例の三三七拍子が来るまで、少しばかり眠っていたとか。
……そして、プロテインは苦笑いと共に段ボールへと収納されたらしい。
- 662 :セシベル・S・コープス:2011/06/17(金) 18:27:59 ID:LeO46Yc.0
- 【埠頭】
【夕方頃。金色の液体が燃え揺らめきながら水平線に沈んでいく時間】
【肩に引っ掛けただけのコートが風に煽られて布地をぱたぱたと打ち合わせる】
【セシベル・S・コープスがそこにいた】
【普段はマシンガン・トーク(比喩ではなく文字通り)の青年は夕焼けを睨んで動かない】
【悩んでいるのだ。彼なりに。】
- 663 :黒沢小百合:2011/06/20(月) 21:31:00 ID:SSMHlh/20
- 【AGカフェ】
「く……ふ……。」
ほとんど崩れるようにカウンター席につき、
肩で息をしながら、荒い息を整える。
最近、休みが続いたせいか体力が激務についていかないのだ。
- 664 :Baltasar Christer Richter:2011/06/25(土) 13:34:12 ID:/lZA6WB6O
- 【AGカフェ】
「――――報告は以上です」
「成程、成程ね。いやぁ興味深い。実に興味深い。なんとも興味深いね……反吐が出るくらいに」
「私達が言えることでしょうか――"バルタサール"博士?」
白衣の男――バルタサール――は、その言葉に、一層眉間に皺を寄せた。
「エリシェ、僕の研究は『人類の進化』の為に必要不可欠なモノ。研究の先に見るモノが違うのさ」「……同じようにも、見えますが」
「いいや、違うよ。全くもってこれっぽっちも一から十まで違うのさ。
いいかい、エリシェ。『完成された存在』である我々人間を、更にその上へと『進化』させる。
異能力を持たない者を異能力者へと『進化』させ、異能力者をさらなる高みへと『進化』させる。
"どこも間違っていない"のさ。我々は、『人間』を『新たなステージ』へと導いているだけなんだ」
男の言葉に、白衣の女――エリシェ――は、溜め息を吐く。
研究者という生き物は、どうしてこうも狂ってしまうのか、と。
目の前の男に対して、そして……己に対しても。
「さて、エリシェ。我々の研究を進める為には、やはり『彼女(サンプル)』が必要不可欠だ。
此処にいるのは間違い無い、けれどどうにも"僕がプレゼントした通り名"は気に入らなかったらしいね。
今は『潜入者(ブラックキャット)』を名乗って、相変わらずやんちゃしてるみたいだ」
男は立ち上がり、ポケットから取り出した一枚の紙を掲示板に貼ると、女もまた立ち上がり、出口へと向かう。
「純鈴ちゃん……」
女の呟きは、開け放たれた扉の向こうへ吸い込まれて。
白衣の男女は、店を出る。
- 665 :サラ:2011/06/28(火) 00:27:34 ID:bYREkklM0
- 【都市部の外れ、薄暗い路地裏】
「いっひひひひ!」
罪のない悪戯を思い付いた少女のように笑いながら、
金の髪をした魔術師風の女が路地裏を駆け抜けていく。
それを後から、色の黒い、大柄な男が怒号を上げながら追い回している。
両者の距離は少しずつ縮まり、やがて女が十字路を大通りへ向けて曲がる。
と、男がその後を同じように曲がろうとしたところで、盛大にすっ転んだ。
男の足が見えない何かに躓いたように後ろへ跳ね上げられ、前のめりになって強かに頭を打つ。
そのままテカテカのスキンヘッドを基点に綺麗に前転し、十字路の真ん中で大の字に伸びてしまった。
逃げていた女、サラは、その様子を、角を曲がったところで立ち止まって見ていた。
まるで男がこの場所で転ぶのが始めから分かっていたかのようだ。
「ハッハー! やー、運が悪いねぇ、兄ちゃん」
目を回している男に掛ける声には、悪びれた様子は少しもない。
- 666 :ジン:2011/06/28(火) 00:42:23 ID:XxrsA0ps0
- >>665
「か、かんべん―――」
「ハァイッ!!」
ドゴォッ 気持ちの良い音を薄暗い路地に響かせて
上等な革のスーツを着た男が細い通路を物凄い勢いで吹っ飛ばされてきた。
顔中には青い痣が幾つも出来て腫れている。
「………さっ 大人しく賞金の引換券になってくれよな?」
奥からは体格の良い鮮血のようなベストを着た男が、バンダナの位置を直しながら現れた。
「…………………ん?」
吹っ飛ばされた男の傍らで、スキンヘッドの大男が倒れている。
その事に気が付くと、やっちまったか?と汗を垂らしながら頬を掻いた。
- 667 :サラ:2011/06/28(火) 00:58:10 ID:bYREkklM0
- >>666
「うわぁっ!」
吹き飛んできた男にびくっ、と縮み上がるサラ。
だがその動作はいかにも芝居がかってわざとらしく、
振り向いた目元口元も妙にふやけたままで、驚いている風には見えない。
「駄目だよ喧嘩しちゃあ! 怪我してるよこの人!」
ジンと、新しく転がった男を交互に指差して、けらけら笑う。
幼げな顔立ちの西洋人であるサラはとても成年には見えないが、
どうやら多分にアルコールが入っているらしい。顔全体が紅潮している。
にこにこ顔のサラは、青痣だらけの顔になっている男の側に近付くと、
その顔に手を翳し、その手の平から優しく暖かな光を放ち始めた。
……誰が見ても一目で癒しの魔術だと分かるだろう。
- 668 :ジン:2011/06/28(火) 01:17:16 ID:XxrsA0ps0
- >>667
「おいおい大丈夫かよオッサン………あ?」
巻き込んでしまったかもしれない坊主頭の男に歩み寄ろうとすると
路地の角から陽気な少女が現れた。
ジンは中腰のような姿勢で膝に手を付ながら、サラの行動を訝しげに見ていた。
「な、なんだそれ?仙術か………?」
この男は魔法使いや異能者にはそれ程詳しくなく、知っているカテゴリも少ない。
しかしながら、サラが不思議な魔術を扱う人間だという事は何となく理解しているのだろう。
- 669 :サラ:2011/06/28(火) 01:36:09 ID:bYREkklM0
- >>668
「おっと、この黒光りするデカイのは、放っとけば勝手におっきするよ。
惜しむらくは、その頃には目当てのあたしの身体はどこにもないことだナ」
ジンに喋っているのかスキンヘッドに喋っているのか、
自分がどんな意味合いのことを口走っているのかすら分かっていなさそうだ。
ジンがつい先日顔を合わせた人物であることも、
そちらに意識が向かないせいだろうか、気付いていないようだ。
「そしてこいつは魔法だよ! でも、……うわっ、効いてる! なんかみるみる治ってく!」
その代わり、妙な方向のチャンネルは開いてしまっているようだ。
内出血ばかりだった男の顔が、すーっと綺麗になっていく。
左耳のイヤリングも光っておらず、サラは普段では考えられない性能の魔術を発揮している。
「すげー! なんだこれ、魔法みたい!」
が、そのことの意味にもいまいち気付かず、他人事のように驚いている。
- 670 :ジン:2011/06/28(火) 01:50:04 ID:XxrsA0ps0
- >>669
気を失っているのか気になるのか、黒くてデカイと形容された男を靴の爪先で小突く。
「…………何か知らんが、このデカブツも気の毒だな。」
どことなく様子のおかしい目の前の魔法使い。
その姿を以前起きたプラント騒動で見た事を気付くのには時間を要した。
なにせうろ覚えながらもクールな印象だったのだが、今はへらへらとしているのだ。
「………ん。 そういやお前、この前のちんちくりんか。あん時はありがとよ。
ん、なんだ?魔法?魔法みたい?というか随分とご機嫌だな?なんだ?酔ってんのか?
あ!つーかテメーそいつに何してんだ!?余計な事すんじゃねぇッ!」
あれこれ一斉に問いかる最中、サラの行動の意図に今更ながら気がついて指を差し怒鳴る。
そして急いで止めようとサラに駆け寄ろうとする。
- 671 :サラ:2011/06/28(火) 02:06:55 ID:bYREkklM0
- >>670
「ん? あぁ! あんた二人組の!
あのとき遠くから屋上の見張りをキュッて!
お礼を言うのはこっちの方だよ、あの見えない奴が出てきたとき……も……」
酩酊してむしろ知覚が拡大されているのか、ジンのことは顔を見るなり思い出した。
そしてやっと、目の前の男が一見とはいえ知り合いであることに気付いたらしい。
サラの笑顔はそのままに、さーっと血の気が引いて行くのが見えるだろう。
サラはギギギギ、と首を回して、すっかり元通り綺麗な顔になった男を見やると、
治癒の光を失った手をバッと引っ込めて、すっくと立ち上がった。
「……失敬。引換券、って言ってましたっけ。この人、賞金首だったのかしら?」
努めて冷静を装いつつも、目を明後日の方向にやっている。
- 672 :ジン:2011/06/28(火) 02:27:39 ID:XxrsA0ps0
- >>671
「あ?ああ、賞金首さ。名前は………覚えてねぇや。
何処にでもいやがる雑魚野郎なんだが、賞金の大小を選んで受けるほど贅沢言ってられねえ身分何だよな〜〜〜
………オイコラ こっち見ろよ。」
歯を食い縛り曇った表情をサラに向ける。きっと怒っているのだろう。
本人に悪意は無かったにせよ、その「やらかした」という表情がジンを刺激していたのだった。
「…〜〜〜〜ッ!………イッテェな……あ、や、や、ヤベッ!」
ピリピリとした空気の中、治癒の魔法が余程効いたのか
よろけながらも先程吹っ飛ばされていた男が立ち上がる。
そしてジンの顔を見るなり急いで背を向け逃げ出そうとするが―――
「臉頂捶ッ」
素早く掌を相手の背に押し付け、そのまま力を込めて突き出す。
その速さは尋常ではなく、息をつくような早さで男は再び吹っ飛ばされていった。
「………ま、怒っちゃいねぇよ。また"治されたら"怒るけどな。
で、どうしたんだ?そっちの男は?」
いつの間にやら下がってきたバンダナを直しながら、先程の黒いデカ男の方を向く。
- 673 :サラ:2011/06/28(火) 02:45:53 ID:bYREkklM0
- // せめて後1レスと思ったけどコックリコックリで頭が働かぬ申し訳ない……
// >>665-672 中断
- 674 :サラ:2011/06/29(水) 22:10:07 ID:bYREkklM0
- >>672
「いっひひ……」
照れ笑いをしながら、申し訳ないっすといった具合に肩を竦める。
それにても、自分が今しがた手当てした男が再び吹き飛ばされるのは妙な気分だ。
そのジンの見事な手際に、ひゅー、とサラは息を漏らした。
「お見事。……せっかく目を覚ましたのに、残念な奴だ」
と言うが、彼我の実力差は圧倒的なのだから仕方がない。
これでは再び吹き飛ばされるために起こされたようなもの。
男にとってはたまったものではないだろう。
サラは再び倒れた男に憐みの視線を投げ、続いて色黒の男の方を見やる。
「この黒いのは……ただのチンピラかな。さっき一杯奢ってもらってさ。
そのままあたしを持ち帰ろうとして、追っかけてる途中で転んでこんな風に……。
けど、気を失っただけで怪我はしてないし大丈夫。放っとけばけろっと起き上がるよ」
飲みに誘われたサラは、乗り気を装い相手を煽りながら、
奢るだけ奢らせた後、これから本番というところで逃げ出したのだ。
獲物に逃げられたといえばそれまでだが、どちらが悪いかといえば明らかにサラの方が悪い。
「……今度はもっとユルい女を捕まえるんだね」
このことに自責の念までは抱かずとも、気の毒には思うのだろう。
まだ酔いの抜けない赤らんだ表情で、やや申し訳なさそうな顔をしてみせた。
- 675 :ジン:2011/07/01(金) 01:11:24 ID:XxrsA0ps0
- >>674
「ヘヘッ!チョロイチョロイ。
なぁに、ショボイ悪党どもは遅かれ早かれこうなる運命だよ。
もっと荒っぽい野郎に棺桶送りにされるよかマシだろ?
その点……俺は打ち所が悪くても病室送りだ。
出られない奴もいるだろうが、今みたいに魔法とか何とかでどうにでもなるだろ?」
開き直っているというより、さも当然であるかのように話している様はどこか恐ろしく清々しい。
サラの同情の視線にもなぜ?と頭の上に疑問符を浮かべているに違いない。
「なんだ…………『タカって』たのか。
そういう事してっと後が怖いぜ?そのやったらデカイのがもっとデッカイの連れてやって来ないとも限らねぇんだ。」
立て続けに吹っ飛ばされ伸びている男の襟首を掴み運んで来る。
引き摺ってきた賞金首を荒々しくロープで縛り、再び地面に放りパンパンと手を払った。
「ホドホドにしとけよな。あんましヒデーと、見かけても助けてやんねーぞ?」
人をおちょくり回した行いを「悪い」とは口にしなかったが、あまり良い行為とも思っていない。
が、危険な騒動に駆けつけ共に事の制圧にあたった位だ。
彼女が根から悪い人間でないという事は知っているつもりだった。
「そういやぁここん所のニュース見たかよ?
俺らや船の方に乗り込んだネェちゃん、他の駆り出されて来た異能者の事なんか触れもしねぇし映っちゃいねぇ。
どういう事なのか なんかよくわかんねーけどムカッ腹が立つぜ〜〜〜ッ」
- 676 :サラ:2011/07/04(月) 22:02:55 ID:bYREkklM0
- // >>675 イベントCの444へ移動しました。
- 677 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/04(月) 22:19:12 ID:WVrfsEdY0
- 【AGカフェの席の外が見える席に少女は座っていた】
「あう〜、きょうはおそらがきれーなの…」
【見上げると星星が光り輝いている】
【少女は思わずそのきれいな空に見とれていたのであった】
- 678 :横島なつき:2011/07/04(月) 22:24:02 ID:bYREkklM0
- 【都市部、大通り脇のコンビニ前】
千夜学園のブレザー姿の少女。
横島なつきが意気消沈といった面持ちで、
コンビニのゴミ箱に寄りかかってアイスを食べている。
「サイコロを振ると旅心が起きるなぁ……」
空いた左手の中には、六面サイコロが三つ。
何の気なしといった具合に、ころころと手の中で転がしている。
「隣町まで行って夜通し歩く……訳にはいかないか。制服だし」
などと、年端の割に風流人めいたことを言ってはいるが、ただの現実逃避である。
ホームレス相手にチンチロをやって手持ちを大方スッたなんて、誰にも言えない。
傍目には、もう夜も遅い時間、そろそろ補導対象の学生がコンビニの前でアイスをパクついているばかり。
- 679 :横島なつき:2011/07/04(月) 22:24:38 ID:bYREkklM0
- // おうっふ! 失礼! >>678はなかったことに!
- 680 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/04(月) 22:34:42 ID:WVrfsEdY0
- >>679
//きにせんでもええよー
- 681 :横島なつき:2011/07/04(月) 22:36:00 ID:bYREkklM0
- >>677
窓の外、カフェに向かって歩いてくる人影がある。
ブレザー姿は、都市の人間なら誰もが一目で分かる千夜学園のもの。
ナツキは窓から星を見上げるディスに気付くことなく、
そのままカラリンとドアベルを鳴らして店内に入ってきた。
「ィラッシャーセーィ」
どーせ誰もいないだろう、と高を括っていたのだろう。
入店と同時に、直角にお辞儀をしてそんなことを口走った。
- 682 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/04(月) 22:41:12 ID:WVrfsEdY0
- >>681
「あう?」
【ふと、入ってきた音を聞いて視線をドアの方に向ける】
「あうー、なんかちがうの〜。
はいるときはそういうあいさつじゃないの〜」
【窓側の席にちょうど包帯ぐるぐる巻きの少女が座っていた。】
- 683 :横島なつき:2011/07/04(月) 22:47:59 ID:bYREkklM0
- >>682
「……ひょわぁ!」
ナツキはぴんと身体を硬直させる。
ばっ、と声に振り向くと、見知った顔を見つけて赤くなる。
「ディスちゃんじゃないか! びっくりしたぁ……。
誰もいないと思ってさ、ちょっとふざけてみたんだよ、うん」
そう言うとぱたぱたと顔の前で手を振ってみせた。
そうしてキョロキョロと店内を見渡して、
他に誰もいないことを確認すると、ディスの隣の椅子に鞄を下ろした。
「えへへ、お邪魔します」
小さくお辞儀だけすると、カウンターの方へ。
飲み物か何か取ってくるつもりのようだ。
- 684 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/04(月) 22:50:37 ID:WVrfsEdY0
- >>683
「あうあう〜『なつき』だったの〜。
そっかなの、ほんとにまちがえたわけじゃないんだなの〜」
【何故か安堵の表情を浮かべる】
「あう〜、なにかとってくるのかなの」
【カウンターに少し目を向けるが…しばらくしてまたふと星空を見上げる】
- 685 :横島なつき:2011/07/04(月) 22:55:55 ID:bYREkklM0
- >>684
「おー、私のこと覚えててくれたんだねー」
カウンターを物色しながら、ディスの言葉に相打ちを打つ。
そうして持ってきたのは、ティーセット一式ならぬミルクココア一式だ。
ディスの分のカップもテーブルに置いて、
ナツキは自分のカップに粉末を入れ、ミルクで溶き始める。
「外を見て何を……あぁ、星かぁ。そう言えば、もうすぐ七夕だっけ」
手を動かしながら、ディスの視線を追うようにナツキも星空を見上げた。
- 686 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/04(月) 23:00:26 ID:WVrfsEdY0
- >>685
「うん、おともだちはたいせつだからなの。
だからわすれないようにしてるなの」
【そう言ってややぎこちない笑みを浮かべる。】
「うん…おそらのおほしさまがあんなにいっぱいあるの、
とってもきれーなの〜」
【そう言って空を指さした。天の川がひときわ明るく街を照らしている…】
- 687 :横島なつき:2011/07/04(月) 23:07:18 ID:bYREkklM0
- >>686
「そっか。……えへへ、いい子だね」
ディスの笑みに、ナツキも照れて笑う。
「夏といえば天体観測だねぇ。天の川かー……。
知ってる? 天の川って、地上に影を落とすんだよ」
と、ナツキもぼんやりしたように言う。
喋っているナツキ自身は分かっているつもりだが、
影を落とす、という説明だけでは聞いた方は訳が分からないかもしれない。
- 688 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/04(月) 23:11:24 ID:WVrfsEdY0
- >>687
「あう〜、またいわれたの〜」
【少し照れくさそうである。】
「てんたい…あう〜、もっとちかくでみれるってことなのかなの…
あう〜?かげって…どういうことかなの?」
【どこか不思議そうな顔でいう】
- 689 :横島なつき:2011/07/04(月) 23:16:52 ID:bYREkklM0
- >>688
「あー、えっとね。
お日様や月の光は明るくてさ、影ができるでしょ」
店内の照明でテーブルにできたスプーンの影を、トントンと指で叩く。
「これと同じ風にね、天の川に背中を向けると、
地面に自分の姿の影を見ることができるんだよ。マメ知識。
……といっても、この街じゃどこも明るすぎて無理だろうけど」
そう言って、今度は画家が絵筆を使ってそうやるように、
ぴんと伸ばした手にスプーンを持って、天の川に向けて立てた。
- 690 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/04(月) 23:21:50 ID:WVrfsEdY0
- >>689
「うんうん…」
【非常に興味深そうになつきの話を聞いている】
「あう〜、そっかなの…
まぶしーいひかりなんだなの…おほしさまがおそらにいっぱいあるってことなの〜」
【そう言って手を天の川に透かしてみる。何も見えるわけではないが…】
「それも…かげがみえてくるのかなの〜」
【しばらくしてスプーンの方にも目を向ける】
「あのおそらのむこうに、みんないるのかなの…」
【軽く微笑んでいるが、少し悲しそうにも見えた】
- 691 :横島なつき:2011/07/04(月) 23:41:34 ID:bYREkklM0
- >>690
「空の向こう……かぁ」
得物を背負っているディスの過去には、
何か穏やかならぬ事情があることは察しがついた。
「星は遠いからなぁ……」
そう言って、スプーンを握り込んだ手で空を指差す。
狙いを定めるように片目を瞑って、口元に薄く笑みを浮かべる。
拳銃の形に突き出された人差し指は、真っ直ぐにわし座のアルタイルを指している。
- 692 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/04(月) 23:45:21 ID:WVrfsEdY0
- >>691
「だいじょぶなの…
もうあえなくても、かなしくないからなの…」
【少し悲しげではあるが、それでも笑顔で答えた】
「みまもっててくれる、って…そうおもってるからなの…
だからだいじょぶ…」
【ディスも一緒にじっと、星座に指を指している。少し風が強く吹いた】
- 693 :横島なつき:2011/07/04(月) 23:58:06 ID:bYREkklM0
- >>692
「……そう、だね」
並の大人ならディスに何か優しい言葉でも掛けるところだが、
ナツキはそう言ったことが大の苦手……というより、嫌いなのだ。
自分がそういう類の誤魔化しが効かない境遇で育ったせいもあるかもしれない。
「一年に一度なんて恵まれてる、ってんだ」
ナツキは、ばーん、と彦星を撃ち落とす真似をした。
「……私らは生きてる! 大好きな人に二度と会えなくってもね」
こんな言い方、ディスは傷付くかもしれないと思ったが……。
それでもナツキは、くくくっ、と笑ってみせた。
- 694 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/05(火) 00:01:48 ID:WVrfsEdY0
- >>693
「そっかなの…
えっと…おそらのむこうのあのひとたちかなの…」
【空の向こうを見つめてつぶやく。ある程度は知っているらしい。】
「…うん、はやくあいたいなって…おもってないの…
もっといっぱい、おともだち…たいせつなひとがほしいからなの…」
【少しだけ前向きなことを行って、大きく頷いた。】
【ふとお隣りのお店を見ると、笹が風に揺られてるのが見えた】
- 695 :横島なつき:2011/07/05(火) 00:12:38 ID:bYREkklM0
- >>694
「思い出の箱は笑って閉じろ、ってね。
私の爺さんの言葉だよ。……ディスは強い子だ」
ディスの強かさに、そっと胸を撫で下ろす。
そうしてから、偉そうなことを言ってしまった、
と溜め息ついでに、窓の外の笹を一瞥する。
「……そう言えば、この店に笹はないね。
客商売ならこういうイベントの飾り付けは大事だろうに」
再度、キョロキョロと店内を見回す。
- 696 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/05(火) 00:16:51 ID:WVrfsEdY0
- >>695
「わらってとじろ…
うん、わるいことばっかりおもいだしてたら、
わらえなくなっちゃうからねなの…」
【元気を取り戻したのか、星空に向けていた目を同じく笹の方に向けた】
「あう〜…えっとなの…あれにいろんなかざりつけるんだっけなの…」
【じっと笹を見つめた後、なつきに顔を向ける】
- 697 :横島なつき:2011/07/05(火) 00:26:09 ID:bYREkklM0
- >>696
前向きなディスの言葉に、ナツキは頷く。
そして笹を見たディスの問い掛けに対して、
「そうそう。普通は短冊に願い事なんかを書くんだけど……。
んー、何とかしてこっちの店にも笹を用意できないかな……」
ナツキは普段、自分の食器の片付けついでに、
簡単な調度品の手入れやシンクの掃除を気分次第でやっている。
が、流石に笹をどこかから運んできてやる義理はない。
ナツキはポリポリと頭を掻いた。
- 698 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/05(火) 00:28:32 ID:WVrfsEdY0
- >>697
「おねがいごとなの…
なら『でぃす』もおねがいごとするなの〜!」
【嬉しそうに微笑んで手を上げた】
「あう〜、どこかからとってくることはできないのかなの…」
【困った表情であたりを見回している】
- 699 :横島なつき:2011/07/05(火) 00:39:39 ID:bYREkklM0
- >>698
「緋河神社の一画には確か竹藪があったけど……。
願い事のために神社から笹を拝借ってのもアホらしいしなぁ」
そう言って肩をすくめる。
もっとも、仮に近くに笹を分けてくれる場所があったとしても、
ナツキがそれを取りに行ってカフェまで運んでくることなどないのだが……。
となると、思い付くことはひとつだ。
「うーむ、ちょっと出て行って隣の笹に短冊掛けようか」
ナツキは鞄からペンを取り出して立ち上がると、
テーブルのココアも鞄もそのままに、そそくさとAGカフェの戸に手を掛ける。
- 700 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/05(火) 00:41:14 ID:WVrfsEdY0
- >>699
「うーん、たのんだらもらえるかもしれないけどなの…」
【少し期待してるっぽい】
「あうー、おとなりさんにおねがいごとをたのむのかなの〜。
やってもだいじょぶなのかなの?」
【心配そうな顔で後をつけていく】
- 701 :横島なつき:2011/07/05(火) 00:47:34 ID:bYREkklM0
- >>700
「いいさいいさ。縁起モノだし、駄目とは言わないはず」
カラリン、とドアベルを鳴らして表に出る。
【ナツキに「靴下が片方だけ見つからなくなる」呪いがかかった!】
呪いのことなど知る由もないナツキは当然それに気付かない。
「お、ペンもちゃんと置いてあるね。よーし」
隣の店の笹飾りの脇にある小さな机の上には、
菓子箱に入った色とりどりの短冊とサインペンが置かれている。
ナツキは早速それを手に取って、何を書くべきか考え事を始めた。
- 702 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/05(火) 00:49:50 ID:WVrfsEdY0
- >>701
「そっかなの…
だいじょぶだよねなの!しあわせのおすそわけ…かなの」
【少し穏やかな顔で歩き出す】
「それじゃ『でぃす』もなの〜」
【包帯をシュルっと伸ばして短冊とサインペンを取り、ゆっくりと何か書き始める】
- 703 :横島なつき:2011/07/05(火) 00:59:26 ID:bYREkklM0
- >>702
ちらり、と楽しげな様子のディスを横目で見やる。
ナツキはクジを引くのは好きだが、願掛けなどはしない性質だ。
神様は好きだが神頼みは好きではない……捻くれ者である。
「……よし」
そうして書き上がった願い事は、
『カフェの主人と遭遇できますように』
と、事実気になってはいたことだが、極めて小事である。
例年お決まりの願い事である、七夕の晩に大雨が降りますように、よりもさらにスケールが小さい。
ディスの手前そんなことは書けないからと、なるべく小さな願い事を選んだ結果である。
「AGカフェ、何度か来てるけど一度も従業員の顔見たことないんだよね」
そう説明しながら、笹飾りに自分の短冊を括り付けた。
- 704 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/05(火) 01:02:09 ID:WVrfsEdY0
- >>703
「うーん、でもときどきくるからねなの。
まいにちいったらいつかあえるとおもうなの〜」
【ゆっくり包帯を使って短冊に書きこんでいき】
「あう、『でぃす』もできたの。」
【そういって、短冊を笹に括りつける】
【少しぎこちない字で『みんな なかよし』 と記されていた】
- 705 :横島なつき:2011/07/05(火) 01:12:25 ID:bYREkklM0
- >>704
「お、そういうところを見ると、
ディスは会ったことがあるみたいだねぇ。
店のセンスがいいから、私ずっと気になってるんだ」
ナツキはディスの純粋な願い事に思わず頬を緩める。
仲良し! こんな言葉、自分が進んで文字にしたことがあっただろうか……。
自分の捻くれ具合が改めて可笑しくなって、ナツキは小さく笑った。
「まだ男の人か女の人かも知らないんだけど……仲良くなれたらいいな」
独り言のようにそう言うと、AGカフェに向き直って歩き出す。
- 706 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/05(火) 01:24:26 ID:WVrfsEdY0
- >>705
「うん、いいひとなの。
『でぃす』のことしんぱいしてくれてて…
おともだちかなの…」
【にっこり笑顔で頷いた】
「そうなの、きっと『なつき』もなかよくなれるとおもうの!
そしたらきっとみんななかよしなの!」
【ディスも一緒にお店に戻って行く】
- 707 :横島なつき:2011/07/05(火) 01:32:31 ID:bYREkklM0
- >>706
「ふふ。ディスがいい人っていうなら、
なんか本当に優しい人なんだろなぁ……」
笑顔のディスに振り返りながら、店の戸に手を掛ける。
カラリン、と、明るい音を立ててドアベルが鳴った。
「……そうだ。心配、で思い出したけど……。
この前、なんだか体調悪そうだったけど、今は大丈夫なの?」
神社で会ったとき、ディスがゆすらから護符を手渡されていたのを改めて思い出す。
あのときのディスは、まるで生きる力そのものに陰りが見えそうな調子だったが……。
- 708 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/05(火) 01:36:47 ID:WVrfsEdY0
- >>707
「うん、その…さいしょあったときはわるいひとみたいにみえたけど…
しばらくあってるといいひとだってわかった…かなの」
【微笑みながら言う。短い付き合いではなさそうだ。】
「あう、その…そのひとがおしえてくれたひとのおかげでいまはへーきなの!」
【改めて元気そうに腕を振って見せる】
「でも、あんまりたたかわないほうがいいかんじ…なのかなの。
いまはおさえてるっていうだけだからなの…
そのものをなくすのはむずかしいからなの」
【胸のあたりをさすって言った】
- 709 :横島なつき:2011/07/05(火) 01:47:58 ID:bYREkklM0
- >>708
「なるほどねぇ……。
ひとまず元気になったみたいでよかったよ。
ディスには色んな友達がいるんだ……」
元気そうに腕を振るディスに、ナツキも安堵の笑みをこぼす。
「ふふふ、おかげ、って、いい言葉だね」
胸をさするディスの頭を撫でようと、ナツキはそっと手を伸ばす。
- 710 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/05(火) 01:51:50 ID:WVrfsEdY0
- >>709
「うん、あんまりちからつかっちゃいけないからちょっと
しんぱいなんだけどなの…」
【やはり周囲の友達を案じているんだろう。】
「だいじょぶだよね。なの。みんなつよいから…
ずっとがんばれる、よねなの。」
【顔を上げて微笑み返す】
「だれかのためになれるかなの…『でぃす』も」
【なでられながらもディスは返す。若干ボサボサの髪質をしている】
- 711 :横島なつき:2011/07/05(火) 02:08:28 ID:bYREkklM0
- >>710
「……戦いのこととかは、私には分からないけどさ。
誰かの為に頑張ろうと思えるなら、出来ることは幾らでもあるよ」
少し粗めのディスの髪をくしゃくしゃと撫でながら、ナツキは続ける。
「私が神社でやってる仕事は、お掃除とか留守番とか……。
やろうと思ったら誰でもできることばっかり。でも、大事な仕事。
少しのことでも誰かがやらなきゃ、神社は荒れ放題になっちゃうからね」
ぽんぽん、と最後にディスの頭を優しく叩く。
手を離したナツキは、少し膝を屈めてディスの顔を見つめた。
「……ディス、料理ってやったことある?」
- 712 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/05(火) 02:12:59 ID:WVrfsEdY0
- >>711
「がんばること…『でぃす』ほかのことはあんまりやったことないから…
ほかになにかなの…」
【ちょっと嬉しそうな顔をしている。なでられるのは好きなようだ】
「そっかなの…だれかがいるとたよりにされるってことかなの」
【仕事内容を聞き、とても感心している。軽く叩かれても気にしていない。】
「あう?りょーり…えっとなの…
ずっとまえにやったことあるの…しっぱいしちゃったけどなの…」
【恥ずかしそうに目を背ける】
- 713 :横島なつき:2011/07/05(火) 02:23:38 ID:bYREkklM0
- >>712
「うむ、そんなとこだろうと思った。……いい? ディス。
世の人を幸せにする秘訣、その第一は、美味しいご飯なのです」
身体を起こして胸を張ったナツキが、ぴんと人差し指を立ててそう言った。
「ディスみたいな子が家庭的な料理スキルを持ってるなんて言えばね、
大抵の男はコロリだよ、コロリ。胃袋さえ攻略しちゃえばこっちのもんよ。
という訳でさ、私が教えるから、よかったら料理を覚えてみない?」
キラリ、とナツキの目に光が宿る。
- 714 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/05(火) 02:27:34 ID:WVrfsEdY0
- >>713
「おいしーごはん…
そっかなの、ごはんをおいしくたべられたらみんなしあわせなんだなの!」
【経験があるのだろうか、ディスは思ったよりも直ぐに納得した】
「あうあう〜…ころり?えっと、よくわからないけどなの…
うん!おいしーごはんつくりたいかもしれないの!おしえてほしいなの〜!」
【ディスは比較的早く話に乗った。でもよくわかってないっぽいが…】
- 715 :横島なつき:2011/07/05(火) 02:49:01 ID:bYREkklM0
- >>714
「よしきた! 今日はもう遅いからアレだけどね、
無水鍋の使い方だけちゃっちゃか教えてあげよう」
と、元気よく元気よくAGカフェに入ると、キッチンに歩を進めていく。
「これ一つあれば、蒸す、炊く、煮る、焼く、揚げる、炒める、
何でも可能、時代を超えた究極の調理器具、それが無水鍋!」
イチから料理を身につけるとなると、覚えるべきことは多い。
包丁の使い方から入らない辺り、ナツキは無水鍋に思い入れがあるようだ。
自分のテーブルの上のココアはそっちのけ、キッチンの探索を始める。
「卵があるねー、お肉があるねー。あと玉葱。
……大安定の卵とじ丼だなこれは!」
ナツキはノリノリだ……といっても、運がいいことに、
教えるのはカツ丼や親子丼などの一般的な作り方だ。
……さくっと覚えられるだろう。
//なんかあらぬ方向に転がってきましたが、
//もう時間もアレなんで、そんなこんなで料理教室でした、チャンチャン!
//みたいな方向でここいらで〆でよろしいでしょうかっ
- 716 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/05(火) 02:53:22 ID:WVrfsEdY0
- >>715
「あうあう〜!わかったの!
いっぱいつくってみるなの!」
【微笑みながら元気よく厨房に向かう】
「あう〜、たまごとじ…うん、ためしてみるなの!」
【ディスはなつきから料理…卵とじ丼から分かりやすく教えてもらったこともあって直ぐに覚えた。】
【…しかしながら持ち前の腕力が災いして卵を粉砕したり鍋を振りすぎて中身をぶちまけてしまったりで大変だったらしい…】
//おk〜。お疲れ様ですー
- 717 :黒沢小百合:2011/07/11(月) 22:04:07 ID:SSMHlh/20
- 【AGカフェ】
「さて、今回は以前うやむやになって使えなかった
このホットサンドメーカーを使ってみましょう。」
仕事帰りの小百合はAGカフェに入るなりキッチンへと向かうと、
道具置き場に勝手に突っ込んでおいた真新しいホットサンドメーカーを引っ張り出してきた。
パンを切り、チーズやハムなどをメーカーに適当に挟み込んで
そのまま直火で熱する。待っている間に、コーヒーなども淹れて。
- 718 :三代目“腎臓”(ジン)&佐宗スグル:2011/07/11(月) 22:32:55 ID:onviSg/.0
- >>717
ジン「あっちい……足で稼ぐのは俺の仕事じゃねーだろ?」
グル「はあ……これはもう私だけの問題じゃないんだから、手伝ってもらわにゃ困るんだよ」
ジン「一人で責任抱え込むのか、分配するのかハッキリしろよな全く」
黒髪オールバックの迷彩服男――ジンは、文句をブツブツ言いながら。
番傘で顔を隠す白衣の男――スグルは、溜め息をたくさん吐きながら。
共にくたびれた様子でカフェの戸を開く。
- 719 :リューン=エンブリス:2011/07/11(月) 22:39:04 ID:750aG8GM0
- >>717
カラン、と 店の扉をくぐり、人が入ってきたことを告げる音が鳴る。
入ってきたのは、異能都市に限らず……
ともすれば異能者すらいない場所にも普通にいるであろう容姿をした、ベージュ色のポニーテールをした少女。
「ホットサンド一つお願いしますー。」
一見の客だろうか、思いきりカフェのキッチンにいる小百合のことを店員と思っているようで。
何か目的があるわけでもないのか、小百合が調理している様子を見て同じものを注文する。
- 720 :黒沢小百合:2011/07/11(月) 23:03:04 ID:SSMHlh/20
- >>718-719
店に入るなり、香ばしい2種類の香りが鼻腔をくすぐる。
パンの焼ける香りと、挽きたてのコーヒーの香り。
店内の有線スピーカーから流れる小気味のいいジャズの音色とあいまって
これぞ喫茶店と言った雰囲気がぷんぷんと漂っている。
>>718
ちょうど、カウンター席に淹れ立てのコーヒーと
これまた焼きたてのチーズとハム、トマトのホットサンドが置かれており、
なんとも食欲をそそる匂いを漂わせている。
しかし、この持ち主はどこにいるのか。
店内にはまばらに客がいるだけでこれを頼んだと思われる人物は見当たらない。
>>719
「はーい。」
とりあえず、リューンの注文に返事をして。
ここ最近、時折暇な時(といっても仕事帰りの僅かな時間だけだが。)、
自発的に店番をしている小百合は先ほど、自分用に作ったホットサンドの材料のあまりを
使っててきぱきと調理を行なっていく。
「おまたせしましたー。ご注文のホットサンドです。
暑くなっているのでお召し上がりの際は気をつけてください。」
元々、材料も切ってあったのですぐにホットサンドは出来上がり。
皿に適当につけあわせを載せて、リューンの元へと運ぶ。自分で言うのもなんだが、
なかなかいい出来だ。
- 721 :三代目“腎臓”(ジン)&佐宗スグル:2011/07/11(月) 23:12:45 ID:onviSg/.0
- >>719
ジン「いらっしゃいレディ、どうだい俺t」
グル「それは後でやろうか、そうしよう」
ジン「後でなら良いのかよっ」
歯を輝かせながらナンパしようとする迷彩服野郎と、
それの腕を引っ張る番傘男に気付くかどうかは分からない。
>>720
ジン「……おお、久しぶりだねお姉さん、ここの店員もやってたのか!」
グル「ゲホゲホッ!」
ボロボロ気味なせいか、二人とも小百合に気付いていなかったらしい。
ジンのほうは、先の公園での戦闘など忘れたかのように気軽に声を掛けている。
スグルのほうは、とりあえず気まずくて酷い咳をしている。
- 722 :リューン=エンブリス:2011/07/11(月) 23:26:53 ID:750aG8GM0
- >>720
「ありがとうございます。」
運ばれてきたホットサンドを見て、笑顔を浮かべて応える。
何となく入ってみたけど……良さそうな店かな と。
まだ何も食べておらず実態は分からないながら、香りに誘われて軽く感じて。
「……あれ、最初に作っていたのは?」
自分が見かけて、それにつられて頼んだホットサンド。
しかし、様子を見る限り他の客が頼んでいた訳でもなさそうで 少し気になったのか、小百合に尋ねかける。
>>721
「えーと、」
唐突な尋ねかけに、少し口ごもって。
「……ご同席、程度なら?」
疑問系で煮え切らない返答をする。
ただ、返答の内容からして拒絶の意思はないのだろう。
- 723 :黒沢小百合:2011/07/11(月) 23:40:13 ID:SSMHlh/20
- >>721
二人の姿を見つけると、小百合は露骨に顔をしかめて見せた。
やはり都市を混乱させたことで、相当に嫌われてしまっている。
「なるほど、自由人はお気楽でよろしい。
あれほどのことをやっておいてまだのうのうとここで暮らしていたのか。」
>>722
「あれは私が自分で食べるための物ですよ。
ここは、少々特殊な店でしてね。」
店のロゴが入ったエプロンを適当な椅子にかけ、
カウンター奥から客席側へと出てくる小百合。
「店長や店員があまりいないので、
ここの常連は皆、勝手に材料を調理してその
材料代だけ置いて帰るのですよ。」
よくよく考えると、エプロンの下がスーツと言うのも妙な話だ。
- 724 :三代目“腎臓”(ジン)&佐宗スグル:2011/07/11(月) 23:48:57 ID:onviSg/.0
- >>722
ジン「そんな感じでオッケーされたらこっちが照れるだろ、なんたらかんたら……」
グル「別にオッケーってわけじゃなくnゲホゲホッ!」
ジン「お前はむせるかツッコむかのどっちかにしろよ」
スグルの背中をバンバン叩くと、リューンの横へすたすたと向かう。
ジン「いいなー、ホットサンドか。
ま、つっても俺は暑さで食欲無いわけだが……」
>>723
ジン「そんなに怒らないでくださいよう。
謝罪と賠償はそっちの番傘野郎がそれはもうみっちりと……」
スグルは、番傘を持たない手で自分の胸をバシバシ殴り、咳を無理矢理止めている。
ジン「……あ、お姉さんには謝罪も賠償もしてなかったな」
グル「先日は誠に失礼致して、申し訳ない……
罰なり傷なり奉仕活動なり、気の済むまで何でも与えてくださいまし」
どうにか咳を落ち着けると、スグルは番傘を放り出し、
流れる動作で頭頂と床につけ、土下座を繰り出した。
- 725 :リューン=エンブリス:2011/07/12(火) 00:04:39 ID:750aG8GM0
- >>723
「な、なるほど……変わってますね。」
確かに、一般的な基準で言えば特殊……どころか、店として成り立つのかも怪しい。
しかし、この都市では起こり得ることなのだろう と、なにやら小さく呟きながら頷く。
取り敢えずはこの変わった店について理解したらしい。
「……仕事帰り、でしょうか。お疲れ様です。
店員さんでもないのに頼んでしまって。すみません。」
小百合の様子を見、先程の話と合わせてどうやら店員でなかったらしいことに気が付き。
>>724
「暑い時は食欲がなくなりますよね。
涼しくしておけば解決はできても、中々そうは行きませんし……ダイエットには、良いかも知れませんけどね。」
……健康には不味いですけど と付け足しつつ、ジンの言葉に同意して。
「……辛いものだとか、冷たくて食べやすいものだとか色々聞きますけど、
何であれ自分にあった"食欲がなくても食べられるもの"は見つけておくと良いと思いますよ。」
- 726 :黒沢小百合:2011/07/12(火) 00:23:39 ID:SSMHlh/20
- >>724
「器物損壊、傷害、過失致死。
罪に問おうとすればお前たちなどいくらでも罪状を挙げられるのだぞ。
それで本当に謝罪と賠償だけですむと思っているのですか?」
小百合の眉間に、びっしりと皺がよっている。
彼女の白魚のような指はいますぐにも二人を絞め殺してやりたい、
とばかりにぱき、ぱきと音を立てている。
「とはいえ、都市への脅威の排除のためにやったこと、
というのも考慮はしなければならない。はてさて、どうした物か……。」
>>725
「いえいえ、いいのですよ。
私が好きでやっていることですから。」
スグルたちへの険悪な態度とは一転、ごくごくふつうにリューンへと接する小百合。
ついでに、サービスで淹れてきたコーヒーを彼女のホットサンドの皿に置く。
- 727 :三代目“腎臓”(ジン)&佐宗スグル:2011/07/12(火) 00:33:30 ID:onviSg/.0
- >>725
ジン「涼しくするっつっても、健康的に涼しくしなきゃならねーしな……。
どうすりゃ健康的なのかは知らねーけど。やっぱり扇風機なのか?」
ジンの声は結構バテ気味だ。
ジン「いくら効こうと、熱いモンや辛いモンは食いたくないな……。
……あ、冷奴なら食えるかな。
そういうもの、お姉さんは何かあるのかい?」
>>726
グル「うぐう……」
言い返せず頭も上がらないスグルはただ唸る。
ジン「そうそう、それだ、その脅威だが。
俺達のリーダーは、その番傘野郎がどうでも良くなったのかは分からねーけど、
別の目的でこの都市に攻め込む的なこと言ってやがったんだ。
そういうわけで、技術協力や技術提供で手を打たせていただくってのはどうでしょうかな。
あ、勿論無償でな?」
その代わりに、随分真面目な顔をしたジンが、比較的真面目な提案をする。
口調はほぼ普段通りだが。
- 728 :リューン=エンブリス:2011/07/12(火) 00:53:57 ID:750aG8GM0
- >>726
「通りで……このホットサンド、すごく美味しいです……あ、ありがとうございます。」
好きでやっているというだけあり、ここでこのようにするのには慣れているのだろうな、と。
ホットサンドを一口食べ、コーヒーを渡しに来た小百合に笑顔で応える。
>>727
無理な冷却をしないで、適度に利用するぐらいなら冷房だって悪いものじゃないとは思いますけどね と、軽く応え。
「扇風機も良いですね。気温が高いといっても、直射日光を受けずに風通しを良くしていれば案外涼しいですから。
"湿度"と"熱気の籠もり"が辛い暑さの主な原因、だと思いますよ。……ただの経験則ですけど、ね。」
ジンの声とは対照的に、辛さを感じさせない声。
経験則、というだけあり色々と試したのだろう そこまで夏バテにやられている訳ではなさそうだ。
「んー……私は、冷たくて口当たりの良いものだったら結構色々といけちゃうので気になりませんけど……」
小さく思案し、2、3秒の間を置いて。
「特に挙げるとすれば、麺類辺りが結構好きですね。」
- 729 :黒沢小百合:2011/07/12(火) 01:05:21 ID:SSMHlh/20
- >>727
「つまり、貴方たちが都市を混乱させた行為は
無駄な物資と人員を消費しただけのまったくの無駄だったというわけだ。」
嘲笑するように、ふんと鼻を鳴らす小百合。
「……まあ、それで手を打ちましょう。
敵が来ると分かっているのですから現段階で
戦力を減らす必要はないですから。」
小百合の言い方だと、襲撃を撃退した後にスグルたちをも
始末してしまおうと考えているように思える。
>>728
「ふふ、この店は置いてある材料はどれも一級品ですからね。
私のような料理に不慣れな者が作っても、それなりの物ができてしまう。」
元来、小百合自身の調理スキルは並み程度。
料理店で出せるほど凝った料理を作れる腕前はない。
良い素材とホットサンドと言う簡単な料理であったからそれなりに見れるものになっているのだ。
「まぁ、変わっているとはいえここは中々に良い店ですから
お気に召しましたならぜひ、ご贔屓に。」
- 730 :三代目“腎臓”(ジン)&佐宗スグル:2011/07/12(火) 01:13:27 ID:onviSg/.0
- >>728
グル「何で冷やすにしろ、水分も取るのが大事……」
土下座の姿勢のまま、白衣に埃の付いたスグルがつぶやく。
ジン「麺類か、そうめんとか冷麦とかかな。
自分で湯がくのすらダルイのよな……良い店知らない?」
>>729
グル「そういうことです……もう何と謝れば良いものか……」
ジン「ま、俺らを見れば分かる通り、奴らは変人揃いなんでな。
ほんと、スマン……いや、謝ってもしょうがないわけだが」
相変わらず頭押しつけっぱなしのスグルと、重い息を吐くジン。
ジン「そうか、ありがとう。『長い付き合いになる』だろうから、宜しく頼むぜ。
……あ、そうそう。お姉さんって、確か軍隊とか操ってたよな。
あれ、洗脳への耐性や対策は備えてるのかい?」
敢えて一部を強調するように言いつつ、ジンは続けて問う。
- 731 :リューン=エンブリス:2011/07/12(火) 01:32:28 ID:750aG8GM0
- >>729
流石、店員がいなくともカフェ……調理器具は、相応のものがあるんだな、と
「良い感じの変わった店」から「しっかりしている、良い感じの変わったな店」へ1段上がった脳内評価。
「店員がいない、って店は初めてですけど。良い感じですし、また今度この辺りに来た時にでも立ち寄らせて貰いますね。」
って、店員さんじゃない常連さんに言うのも不思議な感じですけど と、小さく笑いながら言って。
「そういえば、お勘定は……さっきのホットサンドとコーヒーって、幾らぐらいですか?」
話の合間合間につまんでいて、そろそろ食事も終わる頃だ。
店員がいないのなら、その辺りは一体どうなっているのだろうか、と。常連であろう小百合に尋ねる。
>>730
「ああ、そうそう。それに、この時期には汗もかきますし塩分も一緒に取りたいですね。」
呟くスグルの言を受け、頷き軽く付け足して。
「行ったことのない店って、今日みたいに気が向いた時にしか入らないから余り分かりませんが……
この間入った"麺帝"って店は、味は凄く良かったですよ。あとは普通の店なら、隣町の××店とか。
……"麺帝"の場所は、歪みを少し通ったので正確には分からないですけど。」
なにやら含みのある言い方だが、取り敢えず麺類を扱う店として名前が挙がる程度には良い店なのだろう。
それも、味に関しては『凄く』と特別勧められるほどで。
- 732 :黒沢小百合:2011/07/12(火) 01:49:39 ID:SSMHlh/20
- >>730
二人の話を聞きながらも大仰な仕草で
片手で顔を抑え、ため息をつく小百合。
「こちらとしても『長い付き合い』であることを望みますが、
人と言うものは得てして意外な事で死んでしまうものですからね。
精々、長生きできるよう祈ることです。」
先ほどから、小百合は嫌味だけしか言わない。
本当にこんな人物と協力など、できるものだろうか。
「ええ、洗脳への耐性ならある程度。
一応、具現化した兵士は私のコントロール下にありますから。」
そういいながらも、荷物をまとめて立ち上がり。
>>731
「ふふ、初めてのお客様ですし料金はこちらで吸収しましょう。
次からは適当にお金を置いておくといい。この味ならこの程度だろう、というくらいのね。」
ほんとうにアバウトな店だ。こんな事で経営がなりたっているのかは
まったくもって疑問であるが、経営者もこれほど放っておくという事は道楽の一種なのだろう。
「では、私はそろそろおいとまします。
では、夜を楽しんでくださいね。」
ふう、と軽く息を吐いて店から立ち去る小百合。
後には、有線放送から流れるジャズの美しい旋律だけが残った。
// ごめんよー、そろそろ眠いのでこれでおちるます。
- 733 :三代目“腎臓”(ジン)&佐宗スグル:2011/07/12(火) 01:59:03 ID:onviSg/.0
- >>731
グル「そういえば、親父が良く梅干し作ってたっけ……
作り方訊いておけば良かったかな」
ようやくスグルが少し顔を上げる。
その顔はかなり白く、口の左端が吊り上がっていた。
ジン「うげー、梅干しはダメだ、俺みたいなモンには合わねえ。
……“麺帝”かー、飲食店とかってあんまり行かないからなあ。
しかもかなり期待できると見た、参考になるなる。ありがとな!」
一方のジンはそう言い、ニカッと笑うと、
ジン「……んあ、もうこんな時間かよ。
そろそろ帰らねーとヒィちゃんに怒られそうだな。
そんじゃあ、また会いましょうぜ!」
くるりと背を向け、親指をグッと立てた。
>>732
ジン「そりゃ結構。ただ、お姉さん自身が洗脳されないように注意な……。
っと、帰るのかい。お疲れ様〜、ありがとう」
手をぴらぴら振るジン。
グル「あざーーーーっしたっ!」
その後ろで立ち上がって敬礼し、泣きながら叫ぶスグル。
ジン「情緒不安定かよ。ほら、俺達も帰ろうか」
グル「ああ、そうだな、帰ろう……」
ジン「……そういや、俺達って何しに此処に入ったんだったっけ?」
グル「ああ、そうだな、帰ろう……」
バテバテで入ってきたのだから、休むためだったのだろう。
全く休めなかったが。
ともかく、二人も店を去る。
//お疲れ様でした〜、ありがとうございました
//俺も寝まする。お二人ともどうもです
- 734 :リューン=エンブリス:2011/07/12(火) 02:16:18 ID:750aG8GM0
- >>732
「何から何まですみません……ありがとうございます。」
料金すらも裁量に任せられる、とは。全く想像していなかったのか、しばし唖然として。
「……っと、それではまたー、今夜はありがとうございましたーっ!」
立ち去っていく小百合の様子に気を取り直し、先を行く小百合に届くように声を上げて見送る。
>>733
「酸味や辛味は得手不得手の差が大きいですけど、良く聞くと言うことは効果は大きいみたいですね。
私は苦手ってほどではないですけど、夏場に好んでとることもないのでよく分からないですが……」
梅干しの一つに対しても、反応は三者三様。
「いえ、参考になったのならなによりです。
それでは、また機会があれば。」
笑い、背を向けて親指を立てたジンに対し、笑顔を返し見送った。
「……んー。それじゃ、自分もそろそろ出ようかな。
良い香りだったしつい飲んじゃったけど、この時間にコーヒー飲んじゃって寝られるかな……」
そして、他の客も減ってきた店内、会話をしていた1人と1組も去った後一人呟いて。
店内に流れるジャズにあわせた軽い足取りで、店を去っていった。
// お疲れ様でしたーっ! 超絶久々のロール楽しめました。邪気上がってきた…!
- 735 :黒沢小百合:2011/07/12(火) 22:36:30 ID:SSMHlh/20
- 【都市中心部・市民公園】
公園の中心部に位置する人工池のほとり。
このお気に入りのスペースで小百合は今日も水面に映る月を眺めながら
ぼんやりと取り留めのない考えに埋没していた。
蒸し暑い日続きの7月でも、今日は幾分か涼しく多少風があるためすごしやすい。
「よっと……。」
――ぱしゃっぱしゃっ、ぽちゃん。
ふと、昼間に見た子供たちが水切りをして遊んでいた事を思い出し
自分も、不慣れな手つきで円盤状の石を池へと投げる。なかなかうまくいかない物で
投げ放たれた石たった2回はねただけで、水面下へと沈んでしまった。
- 736 :テルメス/ニット帽の男:2011/07/12(火) 23:02:15 ID:e7V3UU/M0
- 池の向こう側に、パイロットニットを被った男が立っていた。
男は池の近くに生えている樹をじっと見つめていた。
「……」
木の幹には、茶色い羽虫が止まっていた。
ゆっくりと、男は羽虫を捕まえようとする。
しかし、羽虫はすんでのところで飛んでいってしまった。
「うーん……」
男は飛び上がった羽虫を目で追いながら唸った。
- 737 :No.31:2011/07/12(火) 23:05:58 ID:dL9W2t9U0
- >>735
「あ、お姉さん…」
小百合の後ろから少女の声がした。
先日プールであった、No.31という少女だ。
白いワンピースと同じほど白い肌は、どこか不健康そうにも見える。
「また会ったわね」
そのまま近付いてこようとする。
- 738 :黒沢小百合:2011/07/12(火) 23:21:05 ID:SSMHlh/20
- >>736
池の反対側にいる小百合には、
テルメスが木の幹をずっと見ている不審な人物に見える。
勤務中ならば、一応事情を聞くところだが、
今は勤務時間外、それに何分かなり大きな池だ。
池の周囲を歩いて向こうまで行くにはそれなりに時間が掛かってしまう。
小百合は、もし何か異常な行動をしなければそのまま放っておこうと心に決め
2投目の石を水面へと投げた。
>>737
「あなた、ですか……。」
――ばしゃっ、ぼちゃぁ。
小百合の投げた2個目の石はただの一度跳ねただけで
水面へ溶けるように消えた。
どこか小百合が渋い表情を浮かべているのは、
当然水切りの結果が芳しくなかったからではない。
No,31が、かつて千夜に対してテロを企てた人物であることを知ってしまったからだ
- 739 :No.31:2011/07/12(火) 23:28:18 ID:dL9W2t9U0
- >>738
「…。」
その表情に、少女はあきらめた様な笑顔を浮かべる。
「知っちゃったんだね…。」
隠すつもりも無かったのだが。少女はごめんなさい、と小さく呟いた。
「謝って許される事じゃないわ。だから、許さなくて良いから」
手ごろな石を一つ取り、水面にひゅ、と投げる。
投げ方はつたなかったのに、何故か石は水面を跳ねた。いや、バウンドしたといった方が正しいか。
>>736
池の先にいる人影をその二つの目が捉えた。
心なしか肌寒く感じるだろう。
そして、ゆっくりと水面が動きをなくして行く。
無意識に漏れる彼女の能力がその現象を作り出していた。
- 740 :テルメス/ニット帽の男:2011/07/12(火) 23:32:47 ID:e7V3UU/M0
- >>738
羽虫はそのままゆっくりと池を飛び越え、黒沢の近くまで飛んでくる。
それを目で追っていた男は、黒沢の姿に気づいた。
しかし、特に何をするでもなく対岸に立って石を投げる黒沢を見ているだけだった。
羽虫は黒沢の周囲をパタパタと飛んでいる。
その姿から羽虫はウスバカゲロウと思われる。
まとわり付いてくる羽虫はそれとなく邪魔だ。
>>739
男は少し肌寒く感じたが、それを31の能力のせいとは気づいていない。
男は二人の水切りを見て、おもむろに足元の石を拾い上げる。
そして、勢い良く投げた。
しかし、なぜか真上に飛び、足元に落ちた。
- 741 :黒沢小百合:2011/07/12(火) 23:39:37 ID:SSMHlh/20
- >>739
「ええ、観測局のデータベースにあの後アクセスしましたから。
未遂とはいえ、我が千夜本社を狙ったテロに貴方が関与していたとは驚きました。」
疲れたようなため息をつき、電灯のちょうど真下のベンチに腰掛け。
「よい友人になれるかも、と思ったのですがね。」
その顔には多少の落胆の色が見える。
>>740
この時季は虫が多く、小百合も
虫除けスプレーを使うなど対策には多少気を使っている。
しかし、それでも虫と言うのはよってくる物で
小百合はうっとおしそうに手で、蜻蛉を振り払おうとする。
- 742 :No.31&No.9:2011/07/12(火) 23:49:42 ID:dL9W2t9U0
- >>741
「そっか、そりゃそうだよね。」
No.31。No.52とタッグを組んで未曾有の大火災を招こうとした人物。
データ上での彼女は単なる千夜へのテロリストだろう。
「…No.28がお姉さんの事を知ってたわ。全身凍傷だったけど、腕利きのヒーラーが居て
何とか助かってるみたい。」
彼女が言っているのは、あの超級サイコキネシスを操った青年の事だろう。
「…でも、駄目だと解ってても、どうしても、私達には」
搾り出すような声で、これしかなかったの、と彼女は呟いた。
うつむいたまま、石を投げる。ぼちゃん、と一度も跳ねずに小石は水に沈んだ。
>>740
「よう。」
突然後ろから声がした。
少年だ。幼い顔立ちに似合わず耳にはいくつかのピアスがついている。
金色の髪が危険さを際立たせるような、そんなとげとげしい少年。
「あんた、観測局の監視者かい?No.31についてるのか?」
にぃ、と笑う。片手が背中の後ろに回っている。
- 743 :テルメス/ニット帽の男:2011/07/12(火) 23:54:47 ID:e7V3UU/M0
- >>741
暫く付かず離れずの距離を飛んでいたが、
手を払う、虫はヒラヒラと何処かへ飛んでいってしまった。
男は虫を目で追い、
見えなくなったとたんにため息をついた。
>>742
「ん?」
男は振り返って金髪の男に不思議そうな表情をした。
石が真上に飛んだからか、ちょっと不服そうにも見える。
「……突然なんだ?
そんな番号は知らないが」
言われた意味が理解できなかった男は、
No.31という単語自体も人名とは気づかずに聞いた。
- 744 :黒沢小百合:2011/07/13(水) 00:05:26 ID:SSMHlh/20
- >>742
(凍傷……あの時、のか……。)
No.28という名前には聞き覚えがなかったが
凍傷、ときいてようやく顔を思い出したようで。とはいえ、あの戦いでは
自分も酷く負傷して、最後はよく覚えていなかったのだが。
「……だめだと分かっていても、なんですか。
声に出していただかないと、わかりませんよ……。」
さすがに一度会っただけの人物の心情を読み取れるほど、
小百合の観察眼は鋭くない。
- 745 :No.31&No.9:2011/07/13(水) 00:18:18 ID:dL9W2t9U0
- >>743
「ああ、まぁ聞いても教えてくれねーよな。そりゃそうだ。
それにどちらかってとあっちのお姉さんの方が監視っぽいなぁ」
相変わらず片手を隠したまま。だが、かすかに血のにおいがする。
>>744
「……大切な人を、国に人質に取られてるの。この世界より、大切な人を。」
少女が小さく呟いた理由は、至極単純なことだった。
「その人を護る為に、災厄級の能力者3人が国の言いなりになって動いているわ。
No.28もその一人。一人だけでも街を落とせる彼等が動いたら、最悪の被害になる。
だから、私達が先手を打とうとしたの。
この街の象徴の、千夜ビルを攻撃する事で。
街が壊滅する前に、象徴を壊滅させれば、3人は動かないと思ったから。」
理由にならない理由。だが、彼女の世界では、それしか打つ手が無いのだろう。
「皆嫌だ。皆そんなことしたくない。でも、耐えられなかった。
皆、先生の為なら何だってやるわ」
あきらめた笑みが顔に張り付いている。
- 746 :テルメス/ニット帽の男:2011/07/13(水) 00:27:25 ID:e7V3UU/M0
- >>745
「いや、本当に知らないんだが……」
首をかしげながら言った。
「観測局ならわかるが、観測局はこの街の警備組織だろう。
一体何を監視するって言うんだ」
隠した片手には警戒するように、脚を半歩引いた。
血の匂いにも気づいたが、そちらにはあまり興味を示さなかった。
- 747 :黒沢小百合:2011/07/13(水) 00:42:52 ID:SSMHlh/20
- >>745
「ふむ……。」
この少女が言っている事の真偽は分からないが、
人を無理やり働かせるのに、人質と言うのは有効な手だ。
とはいえ、今小百合がこの少女にしてやれる事は何もないし、この少女の言い分が正しくとも
一度脅迫されて動いた相手だ。再び脅迫されれば、また敵に回らないとも限らない。
「私にはあなたにどう言葉をかけていいのか分かりませんし、
置かれている状況は非常に気の毒な物ですが……。
貴方の仲間が都市に攻撃を仕掛けてくるというなら、全力でそれらを撃退するのみです。
私の仕事は、そういう仕事です。恨んでくれるなら恨んでくれて構いません。」
小百合は、あえて少女を励まさずに自分の考えを淡々と述べた。
この少女は、既に『諦め』てしまっている。そんな相手を下手に励ましたところで
何の解決にもならない、と小百合は考えたのだ。
- 748 :No.31&No.9:2011/07/13(水) 01:08:56 ID:dL9W2t9U0
- >>746
「あの子はね、あの白いワンピースきた方さ。あいつはテロリストとして
観測局から保護観察中だ。術によっても監視されてるが、実際に後つけてるやつもいるみたいだからな、
観察員を先に消さないと接触した後が面倒なんだよ」
淡々と、不利な情報を口走る。
其処に理由は無く、彼は場当たり的に行動しているだけなのだろう。
「あんた、違うみたいだな。観察してるんなら俺が近付いた時点で
報告のそぶりは見せる筈だから…ハズレか」
舌打ちし、少年はきびすを返す。
隠していた左手には、何も持っていなかった。
掌を爪で裂いたような傷があり、血が流れていた。
「そんなところにいたら怪しまれるぜ?本命の観察員に通報されないように
気をつけなよ?」
少年は闇へと溶けていく。
>>747
少女の顔が。本心からの笑みに変わる。
「全力で……ありがとう、お姉さん。」
「恨むなんてしないわ。彼らを止めて、全力で。
もし私達に力が無かったら、あきらめる事しか出来ないわ。
何とか出来る能力を持ってしまっているから、彼等は足掻かざるを得ないの。
それがたとえどんなに汚い道でも。だから、彼等を止めてあげて。」
正しさと、心の様の食い違い。
彼等の夢を、希望を、可能性を打ち砕くことが、世界にとっての最善なのだ。
だからといって、彼等の行動が止まることは無い。
「ありがとうね、お姉さん。止めてくれるって、信じてる。」
ぎゅう、といきなり少女は小百合に抱きつき、そしてすぐ離れた。
「じゃあね、もうすぐ時間だから。また、会えれば」
少女は手を振って、観測局の支部の方へと駆けていった。
- 749 :テルメス/ニット帽の男:2011/07/13(水) 01:17:23 ID:e7V3UU/M0
- >>748
「最初から知らないって言ってるだろ。
気をつけろなんて言われても、他人の事情なんて知らないな」
左手の血を見て、怪訝そうな顔をする。
「あんたの方が怪しいじゃないか……」
ため息をついて、男は近くにあったベンチに寝転んだ。
- 750 :黒沢小百合:2011/07/13(水) 01:31:43 ID:SSMHlh/20
- >>748
(この子は、自分の目標を挫折させた相手に感謝するというのか……。
理不尽な現実を受け止めた、その上で……。)
「ええ、止めて見せますよ。
貴方たちにとっては、残酷な現実にしかほかなりませんが……。
っと、時間なら仕方ありませんね……では……。」
その場で軽く手を振り、夜道を駆ける少女を見送る。
こういった仕事につく以上、汚れ仕事もさんざん経験してきた。
こうした後味が悪い仕事も、腐るほど経験してきた。
(まったく、困りますね……こういうのは。
あまりにもできすぎた子だ……。)
小百合はそれ以上考えないように、もう一度ため息をついてから
ベンチから腰をあげ、ゆっくりと家路に着いた。
- 751 :Fe-105(イツカ):2011/07/17(日) 22:01:44 ID:onviSg/.0
- 「う〜ん、手掛かり無いなあ……」
デニム短パンに白い半袖Tシャツを合わせた少女が、夕暮れの公園にしゃがみ込んで唸っている。
「ホントに準備なんて進んでるのかなあ。
どんだけ上手く隠してんだろ」
彼女の足元には、アナログテスターのようなモノが2つ置かれている。
どちらのリード線も公園の地面に突き刺さっており、何らかの数値を計測しているらしい。
また、彼女の背後には10冊ほどの分厚い本が積まれている。
- 752 :黒沢小百合:2011/07/18(月) 22:17:55 ID:SSMHlh/20
- 【路地裏】
未だに、硝煙の臭いが色濃く残る路地裏。
抉り飛ばされたレンガや、破裂し水を垂れ流すアパートの配水管、
パチパチと音を上げながら燃えるゴミ袋など、様々な状況証拠が
先ほどまでここで戦闘が行なわれていた事を示唆していた。
「ふん、まったく余計な抵抗をするから
こういう羽目になる。おまえたちは、誰に喧嘩を売ったのか……
知るべきだった……なあ!!」
ヒールの先が、地面に倒れ伏した男の腹にめり込む。
男は既にかなり負傷し、気を失っているようで小さく呻き血反吐を吐き出したが、
2発、3発と続けて蹴りが叩き込まれる。
そう、この場所で戦闘を行なっていたのは黒沢小百合、その人であった。
- 753 :不気味な二人組:2011/07/18(月) 22:55:28 ID:3EaBc40s0
- >>752
「おいおい、こいつはすげえぜ!」
騒ぎを聞きつけたのか、
髪の毛を逆立たせた、ラフな格好の男が路地裏に現れた。
「止めとけよ、変なことに首突っ込むんじゃない」
その男を追いかけてもう一人、
赤いワイシャツに黒いネクタイとズボンの男が、ラフな男の肩を掴む。
「えらく派手なことやってるじゃねえか。
ねぇちゃん?」
ラフな男はもう一人の制止振り切り、
いかにもチンピラな喋り方をしながら歩いてきた。
- 754 :黒沢小百合:2011/07/18(月) 23:10:12 ID:SSMHlh/20
- >>753
小百合は、興が削がれたとでも言いたげに、
顔を歪め、男たちのほうへと顔を向けた。
「そこで止まれ。それ以上近づくならこちらには攻撃の用意がある。」
あえて隠さず、威嚇するようにさらけ出される小百合の右手に握られた拳銃。
警告を無視すればその銃口はたちどころに新たに現れた男たちへと向けられるだろう。
その間に、倒れた男を何処からか現れた兵士たちが引きずり、
路地裏の奥へと運んでいく。まだ事の全貌は見えないが果てさて、どうしたものか。
- 755 :不気味な二人組:2011/07/18(月) 23:16:01 ID:3EaBc40s0
- >>754
「おう、やろうってのか?
撃てるなら撃ってみろよ、おもしれえ」
「……!おい、そいつはやばいぞ」
赤いワイシャツの男は、
黒沢が誰だかわかっているようで、ラフな男を引きとめようとする。
しかし、ラフな男は引き下がる様子はなさそうだった。
「何だよ、このねえちゃんそんなに有名人なのかよ」
黒沢の顔をじろじろと見ながら、
ワイシャツの男の方を向かずに言った。
- 756 :黒沢小百合:2011/07/18(月) 23:31:25 ID:SSMHlh/20
- >>755
「警告はしたぞ。」
――ダンッ
小百合は何のためらいも無く
赤いシャツの男の眉間を狙い引き金を引いた。
こんな治安の悪い地区をこんな時間に歩くような奴らだ。
どうせ一人死んだところで、誰も騒ぎはしまい。
- 757 :不気味な二人組:2011/07/18(月) 23:43:55 ID:3EaBc40s0
- >>756
「だからもう帰……!!」
赤いワイシャツの男は言いかけて倒れた。
ラフな男は驚いた顔で振り向いた。
「っの野郎ぉ!」
ラフな男は黒沢に殴りかかろうとする。
その右腕は、一瞬のうちに奇妙な能力によって鱗に包まれた。
しかし、その腕を倒れたはずの赤いワイシャツの男が掴んだ。
「だから止めとけって言っただろ。
そいつは千夜警備の奴だ」
ワイシャツの男は額から血を流し、それを反対の腕で押さえていた。
先ほど倒れた場所には、血に塗れた弾丸が転がっている。
- 758 :黒沢小百合:2011/07/18(月) 23:52:05 ID:SSMHlh/20
- >>757
殴りかかろうとする男にも、
そのまま銃を向け、至近距離から引き金を引く。
そこまでして、赤いシャツの男が生きているのに気づいて。
「異能者か……まったく、幸運なことで。
幸運ついでに警告しておいてやる。すぐにここから立ち去れ。
さもなくば、私の怒りを思い知る事になるぞ。」
……どうやら、今日の彼女は相当に機嫌が悪いらしく、幾分か凶暴性が増している。
犯罪者を取り締まる側がこれでは、どちらが正しいか分かった物ではない。
- 759 :不気味な二人組:2011/07/19(火) 00:03:37 ID:3EaBc40s0
- >>758
「あだっ!!」
ラフな格好の男も、撃たれて倒れた。
男の体から弾丸が、弾き飛ばされるようにして落ちた。
おそらく赤いシャツの男と同じく、致命傷どころか対した傷にもなっていないだろう。
「ヌラタ、もういいだろ。帰るぞ」
「……畜生、いつかぶちのめす……」
「馬鹿なこと言うなよ。
悪かった、今すぐ帰るから……」
赤いシャツの男は、ラフな男を引きずるようにして、その場を立ち去った。
二人とも、打たれた傷は既に跡形も無く消え去っており、
去り際にはラフな男の腕はただの人間の腕に戻っていた。
- 760 :黒沢小百合:2011/07/19(火) 00:12:39 ID:SSMHlh/20
- >>759
「フン、好奇心は猫をも殺すというのに、
何故わざわざ危険に頭を突っ込むのか……。」
二人が立ち会った後、小百合は
先ほどの男の引き摺られていった路地裏の奥へと消えた。
そしてしばらくして――。
――ダンッ!ダンッ!
数発の銃声が響く。数日後、無思想のテロリスト、暗殺者として
多少は名の知られた男の死体が都市郊外の溝で発見されたというニュースが
都市の新聞の片隅に載る事だろう。
- 761 :占術師:2011/07/27(水) 21:52:43 ID:QDKqXtkIO
- 【路地】
静まり返った、夜半過ぎ。
都市の喧騒は未だ衰えを知らない。だがそれも、ここまでは届かない。
立ち並ぶビル群、絶え間無い繁華街。そんな場所から、一つ道を外れた都市の隙間。
路地裏程には治安は悪くなく、かといって派手さとは遠い。そんな空隙。
そんな場所に、それは在った。
壁に寄り添う様に、簡易椅子に座る姿。
何の変哲もない木机に、無造作に掲げられる文字は"占"。
「……だぁれも通らないねぇ」
テンプレ通りの見世を開いた占術師の姿が、路地に在った。
- 762 :寒田 レイ:2011/07/27(水) 22:06:05 ID:kgxnmc8.0
- 「む……」
ふと、前を通りかかる少女。
全身用のボディスーツを着て肩にはナップザックを掛けている。
彼女自身全体が水に濡れて居り、海からそのまま上がってきたかの風貌をしていた。
その少女が困っているのは少し目を向ければ読み取れるだろう。そういう顔をしていた。
- 763 :占術師:2011/07/27(水) 22:16:52 ID:Or3y3X8Q0
- >>762
ぺたり、ぺたり、ぺたり。
狭い路地の間、壁と壁の間を反響する音は、実に奇妙なもので。
こんな所で、ましてや海から離れたこの異能都市で聞く様なものでは、断じて無い。
「おや……?」
ふと、音の元へと視線を向ける。
そこに居たのは、一人の少女。
そんな幼い子がこんな場所にいるという状況自体が、既におかしい。
だがそれ以上に不自然なまでに、ずぶ濡れの体であって。
「どうしたのかな? こんな所で」
交わした視線は、酷く困惑した色をしていた。
- 764 :寒田 レイ:2011/07/27(水) 22:24:50 ID:kgxnmc8.0
- >>763
ふと、声がしてどこからかと視線を巡らせる。
少ししてそちらを見つけ。
「占いの、方か?」
そちらに近寄りつつ「道に迷ったのだ」と素直に述べた。
相手は此方の事を気に掛けているし、別に話しても困る事では無い。
何より、一人で居てもこのままではたどり着けないだろう。と考えて。
- 765 :占術師:2011/07/27(水) 22:38:13 ID:Or3y3X8Q0
- >>764
ぺたりぺたりと近寄るその姿に、机の前の椅子を勧める。
もとより客用だ。状況として、なんらおかしなものでもあるまい。
「ああ、そうだよ。しがない占術師さ。さて、君はなんだろうね」
そう言って、占術師は小さなタオルを少女へと差し出す。
頬に掛かる髪を、軽く手で押さえた。
「道に迷った、ねぇ。さて、その道はどの道だい? 帰り道か、それとも行く道か」
- 766 :寒田 レイ:2011/07/27(水) 22:44:03 ID:kgxnmc8.0
- >>765
「有難い」
示された椅子を見て会釈をする。
タオルを受け取るとそれを椅子に敷き、その上に腰かけた。
「行く道、だ。
今しがた遠方から泳いできたのだが……どうやら上陸場所を間違えた様なんだ」
と、後方の来た道を振り返りながらそう喋る。
- 767 :占術師:2011/07/27(水) 23:06:57 ID:Or3y3X8Q0
- >>766
おや、とでもいうような表情が、占術師に浮かぶ。
腰掛けた少女に、再び差し出すは先程と柄の違う草色のタオル。
先程のものは、どうやら”自分を拭け”という意味合いだった様で。
「今しがた泳いできた……って、あれ。この近くに大海あったっけ?」
少女が来た方角を、占術師は覗き込む。
そこにはただ、路地の闇がひろがるばかりで。
- 768 :寒田 レイ:2011/07/27(水) 23:21:07 ID:kgxnmc8.0
- >>767
「む……?」
目の前の表情と渡された二枚目のタオル。
もっときっちり覆わないとダメか。とか思っていたが、どうやらそうではない様子。
そういえば、振り返った時に自分の足跡が路地に綺麗に写ってたのが何か恥ずかしかった。
「成程、そういうことか」
そこで少女は気付いた様子。
タオルを頭にかぶせるとガシガシと力を込めて拭いていく。
「……無いのか!?」
慌てた様子でもう一度振り返る。
足跡はきれいに地面に写り込んでいて、少女の言うとおりならこれは闇の奥にまで続いている事だろう。
「なら、一体私は何処から……海だと思っていたがあれは川なのか、下手をすれば下水かも知れんのか……」
首を元の方向に戻すと頭を抱えて一人でブツブツと喋っている……。
- 769 :占術師:2011/07/27(水) 23:32:07 ID:Or3y3X8Q0
- >>768
「ちゃんと意図は汲んでくれたようだね」と、占術師は頷く。
ガシガシと乱雑に拭く姿に若干苦笑を浮かべたが、吹き終えた時にはその表情は消えている。
「いや、流石に下水を海とは間違えないでしょ常識的に考えて……」
仮に本当に下水だとしたら、最早恐るべき事態である。主に、ここが。
妙に据えた匂いがする、気がする。今使われたタオルが心なしか汚れている、気がする。
ほんの少しだけ、占術師の椅子が後退する。しかし無情にも、背後は壁。
退路など、無い。
「やれやれ……とはいえ、その様子じゃ正真正銘の迷子みたいだね、君は。行く道を探していると言ってたけど、生き別れになった母親でも訪ねにきたのかい?」
一人頭を抱える少女に、自嘲気味に笑う、その表情。
やんわりとした口調で、占術師は少女へと初心を問いかけた。
- 770 :寒田 レイ:2011/07/27(水) 23:44:02 ID:kgxnmc8.0
- >>769
「あぁ、無駄なタオルを使わせてしまって済まない」
拭き終わると適当に頭を振り、
自らの下敷きになっているタオルを見つつそう言った。
「私が上がってきたのは港の様な場所だったんだが……。
なにしろ、此処は桁外れな場所だと聞く、川や下水には舟が止まってたりはするのか?」
次に、身体……というかスーツを拭く為に立ち上がる。
その際に少女の背の方から細長い何かが見えた。
恐らく尻尾なのだろうが、それは陸上の普段思い浮かべる動物の物と比べ、非常に細い。
「いや、友を訪ねてきたのだ。
これから、一緒に暮らす予定なのだがこの有様だ」
はは。と苦笑する彼女の荷物はナップザックただ一つしかない。それも完全に浸水してしまっている。
一応、中には何か入っているらしい膨らみをしているのだが……?
- 771 :占術師:2011/07/27(水) 23:59:00 ID:Or3y3X8Q0
- >>770
「なに、別に気にする事はないよ。使い方はどうあれ、きちんと役割を果たしているならそれは重畳さ」
頭を振った際に散った飛沫が、頬を叩く。細い指先が、水滴を軽く拭った。
「この近くの港といえば、現世橋港かな。舟が停泊してたなら、多分そこだと思うよ……って、ホントにまさか海を泳いできたのかい、君? だとしたら水泳選手も真っ青の体力だよ……」
呆れた様なその表情には、どこか驚きの色も含んでいた。
それは、少女の行動の結果のみではなく、その少女自身に対して。
立ち上がった際に見えたそれは、まさしく飾りなどではない純正の尻尾。
亜人か、と呟いた一言は、闇に飲まれて届かない。
「友人、だね。なら話は早い。その友人と連絡をとって、迎えに来て貰えば……と思ったけど、もしかしてそれ、全滅かい?」
スーツに続き、少女が拭い始めたナップザック。とはいえそれも、もはや見るも無惨な姿で。
流石に中身を出した方がいいと思った占術師の腕が、そのチャックへと伸びた。
- 772 :寒田 レイ:2011/07/28(木) 00:12:28 ID:kgxnmc8.0
- >>771
「そうか、度々申し訳ない」
身体も拭き終わり改めて席に着く。
衣服や頭の代わりに濡れたタオルを手に余している様だ。どうすればいいのか解らないといった風だ。
「元々そういう種族だからな。泳ぐのは苦痛でない」
そう言う少女は水棲生物の物と思われる尻尾以外は人間と大差ない。
水中に適した姿をしているとは思えないのだが……?
「迎え、か……水中を通って来た故、通信機器は持って無くてな」
更に、番号も知らないと告げるその少女。
荷物へ伸びる手に小さく声を上げたが、特に抵抗を見せる訳では無く。
その中にはゴム製の物と思われる黒いボディスーツが出てきた。
「私の替えの物だ。欲しいならやるぞ?」
でてきたのは、これだけ。
- 773 :占術師:2011/07/28(木) 00:28:20 ID:Or3y3X8Q0
- >>772
「……うん、いや、えと、お断りしとくよ。うん」
ナップザックの中から出てきた予備のラバースーツに、占術師の表情が固まる。
その後の提案にも、ノーセンキュー。軽く振られた手は、力なく。
なんなんだろう、この娘(こ)は。
海を泳いできたと言えば、持っているのはスーツだけ。友人の所にお世話になると言っても、これはちょっとあんまりじゃないだろうか。
なんだか何処か、きな臭い匂いがしなくもないね。
「……はぁ。よくそんな構えで、お友達に会いに来たモノだね、君は。見当は付いて……ああそうだったね、そういえば君は迷子だった」
少女g手持ちぶさたに持っていたタオルを、回収する。
脇に出したのは、小さな深皿。水に塗れたそれを、軽く絞り上げた。
- 774 :寒田 レイ:2011/07/28(木) 00:37:44 ID:kgxnmc8.0
- >>773
「そうか、機能的で動きやすいし私はいいと思うんだが……」
少女の表情が何かを考える様な顔をする。
恐らく前にも勧めたことが在り、その度に断られているのだろう。
「友達といっても……む、説明がし難いな」
首をかしげつつ独り言のように。
その後の言葉にそうだ。と頷いておいたが、それで如何にかなる訳ではない。
- 775 :占術師:2011/07/28(木) 00:53:38 ID:Or3y3X8Q0
- >>774
「それはもっとアクティブな人に勧めると良いと思うよ。生憎と私はインドア派なのさ」
ほら、と見せつける様に占術師は両腕を広げる。
その姿は、白を基調とした男物の和服。それを纏う女には、雰囲気的にも役職的にも似合うモノで。
「友達か、或いは仲間か。もしかしたら、事情が変わって敵になったりしてね。まあ、私の勝手な想像だよ」
そうして肩を竦める様にして、両の掌を向ける。
表情はどこか、苦笑する様でも笑う様でもあって。
伸ばした指先が、路地の先を示す。
そちらは、路地裏から路地を通り都会の喧噪へと出る最短経路。こことは異なり、人と光に溢れる所。
「あっちに行けば、大通りに出られるよ。こんな所にいるよりは、君の友人の場所も、君の行く道も見つかるはずさ」
- 776 :寒田 レイ:2011/07/28(木) 01:13:05 ID:kgxnmc8.0
- >>775
「ふむ。素直に残念だ。
屋内生活にも向いていると思うのだがな……」
スーツ狂はそちらの言葉に耳を傾け頷きつつも残念そうな顔をしていた。
「私を、或は友人を、怪訝に扱うのは感心しないな。
だがな、もしそうなっても私は信じていくだけだよ」
示された道へ首を向ける。
キラキラとした希望の眼差しでそちらを見て、
「成程有難い! あそこまで行けば行く先が解るかもしれんな!」
……と、不意に黙ってしまった。
興奮を一気に冷まし、落ち着いて席に着く。
真面目な顔でナップザックからボディスーツを取り出し。
「今、私の手元はこれだけだ。勿論金は無い。
占いの者に道を聞いた以上、なにかを支払わなければならない。
しかし、お前がこれは要らないと言うので私が使う。だからこれは置いていく」
そういうとナップザックを置いて席を立つとラバースーツを持ったまま大通りへ駆けて行った。一体なんだったのだろうか。
- 777 :占術師:2011/07/28(木) 01:23:44 ID:Or3y3X8Q0
- >>776
「え? あっ、ちょっと君! ……行っちゃった。一体なんだったんだろう」
突然ナップザックを置いて、マイルールと共に大通りへ駆けだした少女。
急な行動に、占術師はついていく事ができない。唯々、遠ざかる姿を見届けていた。
夜の路地に、一陣の風が通り抜ける。残されたのは、女一人とナップザック一つばかりで。
「……どうしようか、コレ」
別段、今回は占術を用いた訳でもなければ、吉凶を判じた訳でもない。
故にそこに代金も報酬も存在せず、客観的に見れば少女の行動は空回り以外でもなんでもない。
途方に暮れて、女は壁に背を預ける。
「まあ、いっか」
見上げた空に、星はなく。
小さく吐いた溜息が、虚しく響いた。
- 778 :バルト・アンデルセン:2011/07/28(木) 22:10:00 ID:SSMHlh/20
- 異能都市の中心部に存在する巨大な駅ビル。
その中に存在する書店に少年とも少女ともつかない、不思議な人物の姿があった。
「〜〜♪〜♪♪〜♪〜」
楽しげにリズムをとりながら、カートを押し
時折、本を手にとってはぱらぱらと捲っている。
だいぶ前からこの調子で本を物色しているのだろう。
既にカートには10冊以上の学術書が入れられていた。
- 779 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/31(日) 22:39:39 ID:WVrfsEdY0
- 【AGカフェ】
「すー…すー…」
【ディスは相変わらず店の奥の席で眠っていた。】
「すー…すー…」
【力は抑えこまれたものの、それでも体力は消耗するようで】
【普段より長い時間寝ているのは相変わらずであった。】
- 780 :ゼオラ=アドヴァルド:2011/07/31(日) 23:12:01 ID:kgxnmc8.0
- >>779
バイト中。
今は人も居らず、店員にとっては暇そのもの。
ストックされていた材料を適当に眺めると幾つかを手に取り調理を始める。
ある程度の後に出来上がった料理を持って、ディスの向かいの席へ。
皿の上には簡単そうなフライドチキンが乗っていて、美味しそうな熱と匂いを漂わせている。
それをテーブルに置くと、何処からか団扇を取り出し、
「……」パタパタ
チキン越しにディスを仰ぎ始めた。匂いがそちらへと流れていく。
- 781 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/31(日) 23:20:48 ID:WVrfsEdY0
- >>780
「……くんくん」
【寝ていたディスは小さくくんくん鼻を鳴らした】
「あう、いいにおいがするの」
【ゆっくりと目を開けて匂いのする方に目を向ける】
グーキュルルル
「おなかすいてるなの…」
【軽く唸るお腹をさすってチキンの匂いのする方に歩いて行く】
- 782 :ゼオラ=アドヴァルド:2011/07/31(日) 23:31:05 ID:kgxnmc8.0
- >>781
「……おきた」
フッと笑みを浮かべるとチキンの皿を差し出す。
「あげる」
- 783 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/31(日) 23:34:46 ID:WVrfsEdY0
- >>782
「あう〜、おしごとしてたなの〜。
『ぜおら』なの〜」
【微笑んで返した】
「あう〜!ありがとなの、おなかすいてたところだったの〜」
【目の前に差し出されたチキンを見て眼の色が変わる。結構お腹が空いてたようである】
「いただきますなの〜!」
【もらったチキンを手にとってモグモグ食べ始めた】
- 784 :ゼオラ=アドヴァルド:2011/07/31(日) 23:40:49 ID:kgxnmc8.0
- >>783
ディスの言葉に少し長く深めに目を閉じる事で返事をし、
寝起きにいきなり手掴みで頬張っていく姿に無表情ながらも内面では驚いていた。
「フフ……実験、成功……」
一人で呟いて嬉しそうに右腕だけで小さくガッツポーズ。
匂いで眼を覚ますのかどうかの実験らしかった。
- 785 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/31(日) 23:43:58 ID:WVrfsEdY0
- >>784
「これおいしいなの〜!」
【とても嬉しそうにチキンを食べていた、ところで】
「もぐもぐ…んう?うーん…なにかへんかなの?」
【少しゼオラの表情を見て首を傾げる。】
【口のあたりにちょっと食べかすが付いている…】
- 786 :ゼオラ=アドヴァルド:2011/07/31(日) 23:48:41 ID:kgxnmc8.0
- >>785
「べ、別に……?」
不意に此方の事を聞かれ、少し焦る。
それを誤魔化す為に口元の食べかすに注意をそらそうとする。
「ついてる。そこ」
ディスの口元を指さしている。
- 787 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/31(日) 23:51:23 ID:WVrfsEdY0
- >>786
「あう〜、きにしてないの〜」
【ディスはいつもどおりの笑顔で返す、食べかすがついてることを聞いて】
「あう、うっかりなの〜」
【恥ずかしそうに手でゴシゴシと口元を拭う。以前の状態より回復したように見える】
- 788 :ゼオラ=アドヴァルド:2011/07/31(日) 23:55:30 ID:kgxnmc8.0
- >>787
「うん。……綺麗」
深く長めに頷くと立ち上がり、
ディスの手を取って指差して。
「でも……汚い」
もう片方の手で調理場を指さす。
手を洗って来い。という事だろう。
- 789 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/07/31(日) 23:59:57 ID:WVrfsEdY0
- >>788
「あう、こんどはこっちがよごれちゃったの〜」
【少し恥ずかしそうにしている】
「うん、ちょっとあらってくるの〜」
【ディスは軽い足取りで調理場に歩いていった】
【水の流れる音が響いている】
- 790 :ゼオラ=アドヴァルド:2011/08/01(月) 00:01:57 ID:kgxnmc8.0
- >>789
「……暑い」
再び座り直し、小さく溜め息。
団扇で仰ぐ力も何処か弱々しく気だるそう。
- 791 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/01(月) 00:04:09 ID:WVrfsEdY0
- >>790
「おまたせなの〜」
【手を軽く拭いてからディスはゆっくり戻ってきた】
「…あう〜。ダイジョブなの?」
【ちょっと心配そうに見ている。ディスも暑そうだ】
- 792 :ゼオラ=アドヴァルド:2011/08/01(月) 00:07:13 ID:kgxnmc8.0
- >>791
「大丈夫……かなぁ」
そういうもやはりだるそうで語尾も伸び気味になってしまっている。
仰ぐ先をそちらに変え、少し経って思い出した様に。
「……元気?」
- 793 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/01(月) 00:20:32 ID:WVrfsEdY0
- >>792
「そっかなの…ここってちょっとあついのかなの」
【あたりを見回してつぶやく】
「あう?『でぃす』はげんきなの!
いつもどおりになの!」
【ディスは微笑んで見せる。たしかに元気そうだ】
- 794 :ゼオラ=アドヴァルド:2011/08/01(月) 00:26:32 ID:kgxnmc8.0
- >>793
「……ここは、そうでもない、けど」
店内の隅の方で環境に配慮された温度に設定されたエアコンが働いている。
幾ら外より涼しいとは言えど、慣れてしまえば暑く感じてしまうものだ。
「そう……特訓は、どう?」
前回あった時からの進展を聞いている様だ。
- 795 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/01(月) 00:29:16 ID:WVrfsEdY0
- >>794
「うーん、おそとはもっとあついからねなの…
たいへんだよねなの」
【外をじっと見て言う】
「あう?とっくんなの?」
【問いを聞かれて少し悩んだ】
「うーん、いまはちからがあんまりつかえないからなの…
その、とっくんでもなにあるかわかんないなの〜」
【どうやら休んでいるようだ。少し寂しそうな顔だ】
- 796 :ゼオラ=アドヴァルド:2011/08/01(月) 00:36:18 ID:kgxnmc8.0
- >>795
「……ね」
窓の外には誰も居なかった。
時間のせいもあるのだろうが、それが外の惨状とも言える状況を表している様な。
「力……?」
気になる様な素振りを見せる。
じーっとディスの方を見つめて動かないでいる。
死者の力を応用し、ディスの生きる力を視ているのだ。
大まかに読み取って、異常がある事は読み取れたがそれくらいの様子。
- 797 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/01(月) 00:41:06 ID:WVrfsEdY0
- >>796
「うん、ここでゆっくりしよなの」
【微笑んで返した】
「あう、そうなの。『めいぷる』のおかげでおさえてもらったけどねなの」
【胸の真ん中に手を置く】
「それでもなくなったわけじゃないの…わるいちからがここからでてくるの」
【少し深刻そうな顔である。】
- 798 :ゼオラ=アドヴァルド:2011/08/01(月) 00:51:47 ID:kgxnmc8.0
- >>797
「……」
無言で頷くと、エアコンのリモコンを取り出してきた。
二度ほど下げると何処かやりきった表情が見える。
「へぇ」
ディスの示した辺りを中心にもう一度調べてみる。
先程よりも強い感覚が得られたが、やはり手持ちの知識ではどうにもならない。
- 799 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/01(月) 00:53:34 ID:WVrfsEdY0
- >>798
「うん、さっきよりもあつくなくなったかなの」
【顔を天井にむけて微笑んだ】
「その、だからあんまりたたかえないの…
ざんねんだけどなの…」
【ディスは寂しそうな顔をしていた】
- 800 :ゼオラ=アドヴァルド:2011/08/01(月) 01:00:41 ID:kgxnmc8.0
- >>799
それでも暑さが完全に撃退できるという訳でもなく。
ついにはテーブルに突っ伏してしまった。
「大丈夫……良くなる。
皆、頑張ってる……から」
その顔を突っ伏したまま横目で眺めながらそう言った。
- 801 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/01(月) 01:03:18 ID:WVrfsEdY0
- >>800
「うん…そうだよねなの…
みんなつよいからなの…
ともだちにたよっていいよねなの。」
【少し元気を取り戻したようで、再び笑顔に戻った】
「…あう、そろそろかえらないと…しんぱいしてるかもなの」
【時計を見て驚いたディスは少し足早に喫茶店の入り口のドアを開ける】
「じゃあまたねなの〜!」
【ディスは振り返ってそう言うと、そのまま店の外を歩いていった】
//おやすみなさい。
- 802 :ゼオラ=アドヴァルド:2011/08/01(月) 01:12:13 ID:kgxnmc8.0
- >>801
問いかけには同じく無言で頷くのみ。
身体を起こして見送る。最後の客も居なくなった。
「……かえる」
従業員のエプロンを外し、綺麗に畳む。
リモコンを手に取り稼働を止めて、奥の部屋の方へ消えて行った。
- 803 :バルト・アンデルセン:2011/08/07(日) 22:47:12 ID:SSMHlh/20
- 異能都市の中心からさほど遠くない、場所に一軒の書店がある。
店員のいない狭い店内のいたる所に雑多に本が積み上げられ、表紙の文字が
擦れて見えなくなっているような古い本や、羊皮紙に手書きで何か、
走り書きのような乱暴な文体で意味不明な内容が記されたメモを束ねたような
特異な商品すらも目に付く。
「………………。」
本の山の隙間をすり抜けるようにして店内を世話しなく行きかう
一人の子供の姿があった。
- 804 :いえるさ:2011/08/07(日) 22:58:46 ID:4CJfBIkc0
- >>803
本なんてものに関わることは一切ないだろう、と常々思っていたが、何の因果か、今俺はここに居る。
「今更お勉強ってのも、何だかなあ……」
溜息を吐きたい気分だ−−がそうも言ってられない。
あの忌々しい野郎に馬鹿にされて、黙っていていいはずがない。
そして彼は意を決し、書店の中に入って行ったのだった。
- 805 :イェルサ:2011/08/07(日) 23:00:04 ID:4CJfBIkc0
- >>804
//名前ミス
- 806 :名も無き異能都市住民:2011/08/07(日) 23:00:25 ID:Or3y3X8Q0
- >>803
「うわっ!?」
それは、どっちが発した言葉だったろうか。
忙しなく駆けている、その最中。堆(うずたか)く積み上げられた古書の山を曲がった所で、二人は出合った。
――否、ぶつかった。
女は書を読み耽っており幼子に気付くことなく、幼子にとって女は死角たる位置にいた。
ただそれだけのことであり、同時にそれほどのことであった。
ぐらり、ぐらり。
この狭い店内。人一人がやっと通れる程度の隙間でぶつかれば、その周りはどうなるか。
通路に平に積まれた、幾つもの書の山。その結果は、言うまでもない。
>>804
入った店内。その奥から、何かが崩れる大きな音がした。
- 807 :バルト・アンデルセン:2011/08/07(日) 23:10:11 ID:SSMHlh/20
- >>804
ほとんど大人一人がどうにか通れる程度の広さしかない店内の通路。
その両側には崩れ落ちてきそうなほど、ぎっちりと本が詰め込まれた本棚と、
それに入りきらず、平積みにされたさまざまな本や雑誌が山を作っていた。
しかし外観から店の内部の様子全ては分からない物で。
奥には、小さなテーブルが置かれた多少スペースに余裕のある空間が見える。
客用の読書用スペースだろうか。
>>806
「あ……。」
外見からは少年とも、少女とも取れる紫髪の子供は、
また判別のつきづらい中性的な声色で、驚いたように微かに呻いた。
洒落たデザインの、緑の羽根付き帽子が頭から落ちる。
――どさどさどさっ。
そこに追い討ちをかけるように、二人の頭上に多数の本が降り注いだ。
- 808 :イェルサ:2011/08/07(日) 23:17:59 ID:4CJfBIkc0
- >>806
逡巡、喧嘩だろうかと−−いや違う。
この店内の様子から鑑みるに、本の山が崩れたとの判断が正しいだろう。
そう言えば先程から小さな姿が店内を駆け回っていた。
本にぶつかったか、或いは人にぶつかったか、どちらもありうるだろう。
取り敢えず今自身がやるべきことは−−
>>807
「大丈夫か?」
音の発せられた場所、そこは予想通りの惨状となっていた。
本の山から見える手足が二人分であるため、後者の予想が当たっていたらしい。
「取り敢えず、本を退けるか」
その言葉の直後、本は質量を失ったかの様な軽さとなる。
- 809 :九段坂桐子:2011/08/07(日) 23:24:48 ID:Or3y3X8Q0
- >>807
「あ……」
中性的なその姿を確認したのが、女の視界に入った最後の風景だった。
手にした本が零れ落ちる。そのまま、意識はブラックアウトした――
>>808
声がかけられても、本の山からは返事はない。
内側から崩されるようすも、這い出る様子も無く、ただただ山があるばかり。
言の葉が流れ、本の山から重量が失われる。
軽さを得た山が、自重で崩壊していく。その内側、埋もれた二人の姿が、そこにあった。
尤も、片方の女は倒れたまま、動く気配がないのだが。
- 810 :バルト・アンデルセン:2011/08/07(日) 23:35:26 ID:SSMHlh/20
- >>808-809
イェルサが何を行なったのかは分からないが、
本の重量が嘘のように軽くなり、紫髪の子供は本の山から
がさごそと這い出してきた。
いや、それだけではない。
本が独りでに宙に浮き、見る見るうちに
元のように山と積もれたではないか。
しかし、この子供が魔法を使った気配などは無かった。
となると、此処の本には全てなんらかの魔術が掛かっているのか。
>>808
「……ええ、どうも。
お手数を掛けしました。」
服についた埃をぱさぱさと払い、羽根付き帽を拾い上げてから
目の前の子供は軽くお辞儀をした。
年齢は10代前半、といったところだが
口調や立ち振る舞いはしっかりとしており中々に大人びて見える。
>>809
先に本の山から這い出た紫髪の子供、
バルト・アンデルセンは独りでに本棚へと戻る書物に
目を輝かせていたが、桐子が未だ倒れている事に気づき、慌てて手を差し伸べて。
「お姉さん、大丈夫?
どこかお怪我などしていませんか……。」
頭を打ってしまったのだろうか……。
- 811 :イェルサ:2011/08/07(日) 23:43:18 ID:4CJfBIkc0
- >>809
「おーい……って、完全に伸びてるなこりゃ」
困った。
怪我は無いようだが、どうしたものだろうか。
……頬でも叩いてみるか。
「……起きろー」
倒れた女のそばに座り込み、軽い力で頬を叩く。
ぺちっ、ぺちっ、と何とも間の抜けた音が響いた。
>>810
「っと、あんたは大丈夫みたいだな」
座り込んだままで、少女の方に首を向ける。
被害は少々埃塗れになったくらいのようだから、特に心配することはないか−−と、イェルサは安堵の溜息を吐く。
「にしても、何だ。ここの本には魔法でもかかってるのか?」
俺がしたのは重力を操作しただけだし、と続ける。
- 812 :九段坂桐子:2011/08/07(日) 23:51:18 ID:Or3y3X8Q0
- >>810-811
「んー……」
ぺちぺちと、頬が叩かれる。柔らかい。
次第に、眼が開かれていく。
ぱちぱちと、幾度かの瞬き。現状確認する様に、周囲を見回して
「……あぁ。ありがとう」
さしのべられた手を、確りと握りしめた。
……寝そべった体勢のまま、動かない。上半身を起こそうとすらしない。
起こしてくれと、そう眼が言ってる気がした。
- 813 :バルト・アンデルセン:2011/08/08(月) 00:00:33 ID:SSMHlh/20
- >>811
「そうみたいだね。僕の見立てによると、
恐らくこの『店』自体に、かなり高度な魔術が仕込まれているみたいだ。
例えばこうすると……。」
とんとん、と平積みにされている本を一冊指先で叩く。
すると、その本は宙をすべるように動いて、店最奥のカウンターにぱたんと音を立てて落ちた。
「ついこの間この店を見つけたんだ。
ね、なんだかすごいでしょう。」
>>812
「おっと、では失礼して……。
僕の力では、両手を使わないと抱き起こす事ができないからね。」
片手を背中に回して、そのまま体を起こす。
バルトの掌はひんやりと冷たく、
まるでトカゲや、蛇といった爬虫類に触れているようだ。
- 814 :イェルサ:2011/08/08(月) 00:09:08 ID:4CJfBIkc0
- >>812
「目、覚めたか」
目の前の女は意識を取り戻したようであるので、手を引っ込める−−が、未だ寝ぼけて居るように思われたため、確認の声をかけた。
>>813
「成る程……」
正直な話魔術に関して自分自身はずぶの素人、まったくと言っていいほど無知であるが興味はある。
先天的な異能は概ね或る分野に特化しているため、汎用性に欠ける。
しかし魔術ならば手間こそかかれどそれを補うことができるからだ。
「魔術、か……」
思案するように、呟いた。
- 815 :九段坂桐子:2011/08/08(月) 00:12:10 ID:Or3y3X8Q0
- >>813
「……驚いた。以外と力あるんだね、君」
眼を瞬かせて、幼子をまじまじと見つめる。
いくら起こすのが女性とはいえ、いくら両手を使ったとはいえ、明らかに自分より幼い者が自分を起こしたという事実に、女は感心していて。
「もしかして君、亜人の類かい? まあそれなら、この手の感触も納得というものさ」
そう言って、女は自分の背を支えてくれた手をそっと握る。
人の温もりから、かけ離れた冷たさ。ふにふにと、女の親指が、その手を揉んでいた。
>>814
「ああ、ありがとう。君が助けてくれたのかい? ありがとう」
大事な事なのである。言葉と共に、女の頭が下げられる。
……とはいえ、その手は感謝を示している間も、ずっと幼子の手をもみほぐしていたのだが。
- 816 :バルト・アンデルセン:2011/08/08(月) 00:31:06 ID:SSMHlh/20
- >>814
「魔術という物はなかなか興味深いよ。
間口は広く、底は暗闇に包まれ見えない。
これほど探究心をそそられる分野も少ない。」
イェルサの心情を見透かしたかのような物言い。
バルトはそのまま本棚に手を伸ばし、魔術書と思われる一冊を取り出した。
「これなんてどうかな、僕も同じのを一冊持ってる。
中々に良い本だと思うけど……。」
『初級魔術論』と書かれたそれは、所謂入門書のようで、
擦り切れかかった帯には、入門書売り上げ一位だとか高名な魔術師の推薦コメントだとか、
ありがちな宣伝が書き込まれている。
>>815
「そうだね、亜『人』というのは少し違うけれど、
まあ……似たようなものさ。」
人、にアクセントのついたバルトの物言い。
見た目はどこから見ても人間の子供にしか見えないが人ですらないというのか。
その手は赤子のように柔らかく、
ビニールかゴムの中に、ジェル状のものが入っているような感触だ。
「……そろそろ、話してくれるとうれしい、かな。」
- 817 :イェルサ:2011/08/08(月) 00:38:14 ID:4CJfBIkc0
- >>815
「お、おう……」
何だろうか、近寄れないというか、近づき難いというか。
そんな雰囲気を感じる。
>>816
「丁度いいな……」
隣にいても聞き取れるか聞き取れないか、そのくらいの音量で呟く。
魔術を覚えればあのドヤ顔が癇に障る野郎−−自分と同じ顔なのだが−−を見返し、かつ強くなれるのだ。
乗らない手はない。
「……よし、決めた。それ、買わせてもらおう」
爽やかな、しかし何処か野心めいた笑顔でそう言うと、彼はその本に手を伸ばした。
(まさかショタk−−)
悲しいことだが、些細な事で人は現状を取り違える−−すなわち、勘違いをしてしまうのだ。
- 818 :名も無き異能都市住民:2011/08/08(月) 00:41:06 ID:4CJfBIkc0
-
>>815
「お、おう……」
何だろうか、近寄れないというか、近づき難いというか。
そんな雰囲気を感じる。
(まさかショタk−−)
悲しいことだが、些細な事で人は現状を取り違える−−すなわち、勘違いをしてしまうのだ。
>>816
「丁度いいな……」
隣にいても聞き取れるか聞き取れないか、そのくらいの音量で呟く。
魔術を覚えればあのドヤ顔が癇に障る野郎−−自分と同じ顔なのだが−−を見返し、かつ強くなれるのだ。
乗らない手はない。
「……よし、決めた。それ、買わせてもらおう」
爽やかな、しかし何処か野心めいた笑顔でそう言うと、彼はその本に手を伸ばした。
- 819 :イェルサ:2011/08/08(月) 00:43:08 ID:4CJfBIkc0
- /817はミスなんで、818の方でお願いします(ーー;)
- 820 :九段坂桐子:2011/08/08(月) 00:53:22 ID:Or3y3X8Q0
- >>816
ふにふに、ぐにんぐにん。
感触が珍しいのか、しばしそのままでいて。
「へぇ……いや、世の中には色々な存在(もの)もいるんだねぇ。おっと、気分を害してしまったかな。すまないね」
面と向かって言いづらそうにする幼子の様子に、女は手を解放する。
その感触が忘れられないのか、どこか物足りなげに自分の掌を揉んでいた。
>>817
「それと君、言いたい事は胸の奥に秘めておくものじゃないよ?」
にっこりと。振り返った女の表情は、とてもよいもので。
言葉の暴力ならぬ、表情の暴力か。眼は口ほどにものを言うという、典型的例であった。
- 821 :バルト・アンデルセン:2011/08/08(月) 01:07:19 ID:SSMHlh/20
- >>818
イェルサが購入する旨を口に出すと、
魔術書は先ほどと同じく、宙を独りでに動いて
ぱたんと、カウンターに落ちる。
「お金を置いておくと、それもいつのまにかどこかに消えるんだ。
ああ、タダで持っていこうとすると、本の角で殴られてしまうから変な気は起こさないでね。」
冗談っぽく、にやりと微笑んでみせる紫髪の子供。
その表情には、中性的な人物独特のなんともいえない艶やかさが潜んでいて。
>>820
「自分でも、そこはよく分からない。
哺乳類なのか、爬虫類なのか?それとも昆虫?魚類?菌類?
……もしかすると、生物ですらないのかもしれない。」
頭の上にちょこんと乗った羽根付き帽子を指先でくるくると回し、
ゆっくりと考えながら、言葉を紡いでいくバルト。
自分自身のアイデンティティの不確かさが、
彼にどういった影響を与えているのか他人が知る事はできないが、
考えをまとめる際の表情は、どこか不安げであった。
- 822 :イェルサ:2011/08/08(月) 01:15:31 ID:4CJfBIkc0
- >>818
(心を読まれたっ!?)
「そ、そうか。肝に命じとくよ……」
隠し切れない動揺、取り繕った様な笑顔にたらり、と汗が一筋。
本能が警鐘を鳴らす。
逃げろ、と−−
>>821
「お、おう! 教えてくれて有難うな!」
そう言うや否や、そそくさとレジに代金を置き。
「じゃあな!」
逃げる様にして帰って行ってしまった。
去り際の顔が青かったのは、気のせいではない。
//何だか眠気がヤバくなってきたので、ここら辺で自分は落ちます!
//お疲れ様&ありがとうございましたノシ
- 823 :九段坂桐子:2011/08/08(月) 09:57:42 ID:QDKqXtkIO
- >>822
「ふ、ふふふ……!」
ギリギリギリと、まるで錆びた歯車が回ろうとするかの様に首を回し、イェルサへと視線を合わせていく。
憔悴した表情のまま去りゆく姿を、女は『凄み』のある笑みを浮かべてただ見送っていた。
>>821
「何者か解らない、か。随分と哲学的な質問だね。でも生憎と、私はその疑問に答えてあげられるだけの知識は持ち合わせていないのさ」
そう言って女は、広く開いた和服の袖口に手を入れる。
何かを探る様なその動き、やがて取り出されるは一枚の札。
白地に赤い縁取り、描かれたるは松に赤短冊。それは――
「睦月・松地赤札――『探事に凶事。疾く止めよ。然らば火矢が己が身を潰しめん』」
それは、異質なものだった。
先刻まで聞こえていた、女の声ではない。発しているのは間違いなく女だが、その口からは別の言葉が零れている。
酷く掠れた響き、低い音。まるでそれは、年経た男のようで。
「……そうだね。まずは、色々なものを見てくるといいよ。他者と自分が同じ良いものをどれだけ持ち合わせてるか。それを知り会えたら、素晴らしい事だと思わないかい?」
一つ区切って告げた次の声に、もうその違和感はない。よく通った女の声が響くばかり。
とん、と手近にあった画板程の本に腰かけて、軽く表紙を叩いた。
「それじゃ、私はこの辺りで御暇しよう。またどこかでね」
本が宙を舞い、カウンターへと飛んでいく。
その背に乗って女もまた、飛び去っていった。
/寝落ち申し訳なかったです、はい……!
- 824 :バルト・アンデルセン:2011/08/08(月) 20:41:11 ID:SSMHlh/20
- >>822
「忙しないなあ……。」
なにやら顔を青くしてどたばたと立ち去っていった
イェルサを見送る。
その後、何故あんなにも顔を青くしていたのだろう、と思い
少しの間思案したが、結局分からずじまいであった。
>>823
「……まあ、皆が抱えている問題さ。
『自分が何者であるのか』なんて問題はね。私の場合、
少しその形が違うだけだと思う。」
バルトは、女性との会話を楽しんでいるようであったが
突如、その口から出たしわがれた男の声に、怪訝そうに顔をしかめて。
「……お姉さん、今のは……ってああ、行ってしまった……。」
今のは何か、と問おうとしたところで女性は何処かへ
飛び去っていってしまった。
やれやれ。と呟き、帽子の埃を取るバルト。
話し相手がいなくなった彼、もしくは彼女は、そこでもう少し時間を潰していたという。
- 825 :防人 鶫 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/13(土) 16:30:36 ID:WVrfsEdY0
- 「パトロール…終わりです。」
【大通りの前で地図のようなものにチェックを入れている少女】
「…うーむ、自分の能力を以下に生かすか…
考えるのは難しいものです…」
【考え事をしているようである】
- 826 :白銀帝 ◆FA/Bw.T3QU:2011/08/16(火) 14:06:21 ID:LESoMFJQ0
- 「思うんだけど、この光景ってかなりおぞましいものだよね」
ざり、ざり、と、何かを引きずるような音が、路地裏に響いていた。
路地裏を歩く銀髪の少年は、誰に言うでもなく、言葉を吐く。
「だってさ、腕だよ腕? 僕みたいな可愛いショタっ子が腕引っ張って歩いてるんだよ?
いやいやホラーかよってさ、思うのよ僕」
はああ、と嘆息して、少年は後ろを振り返る。
彼が握り、引きずっていたのは―――『腕』だった。
肩口から切り落とされたような、それ。
「……あーあ、もう。ほんっと、面倒なこと押し付けられちゃったなあ」
『腕』を引きずる少年は嘆息し、再び路地裏を歩き出した。
- 827 :バルト・アンデルセン:2011/08/16(火) 14:19:09 ID:SSMHlh/20
- >>826
――ぐじゅる。
まるで、泥水が沸く様な濁った水音が白銀帝の背後で響き、
間髪を入れいれずに、声が投げかけられる。
「やあ……君は変わった物を持っているね?
一つ、何でそんな物を持っているのか、聞かせてくれるとうれしいのだけれど。」
声の主は、少年とも少女ともつかない外見の子供。
年齢にしてまだ十代前半といったところか。
「ああ、警察に知らせるとかそういう気はないよ。
ただ、単純な興味なんだ。」
- 828 :白銀帝 ◆FA/Bw.T3QU:2011/08/16(火) 14:25:32 ID:LESoMFJQ0
- >>827
「……ん」
ゆっくりと、緩慢な動作で帝は振り向く。
青い瞳が、不意に現れた人物を捉えた。
「これ? いやあ、別に面白いものじゃあなくてさ。
友達が失くしたものを見つけただけだよ」
左手で掴んだその『腕』を軽く挙げ、目の前の彼―――あるいは彼女に見せる。
平均的なそれよりも少し筋肉質で、手はごつごつとして、大きい。
よく目を凝らせば、細く細かい回路のようなものが見えるだろう。
「んんん? 失くした? ……あれ、なんか違うな。
えっと、そう、奪われた―――うん、そうだ、奪われたものを取り返してきたのさ」
軽く持ち上げたその腕をふりふりと揺すりながら、彼は答えた。
- 829 :バルト・アンデルセン:2011/08/16(火) 14:34:45 ID:SSMHlh/20
- >>828
「へぇ、確かに普通の腕ではないみたいだね。
もっとも、不可思議と理不尽の坩堝であるこの街において
何を普通、とするかにもよるけれど。」
紫色のくせっ毛を揺らしながら、ゆっくりと近づいてくる子供は
興味深げに腕を観察し、触ろうとして手を伸ばしたが直前で動きを止め。
「ああ、失礼……少し、触らせてもらっても?」
服装は豪華な刺繍入りのどこか、貴族学校かなにかの制服のようにも見えるが
そこからも性別をうかがい知ることはできず、また声質も中性的で判断材料にはならない。
- 830 :白銀帝 ◆FA/Bw.T3QU:2011/08/16(火) 14:40:49 ID:LESoMFJQ0
- >>829
「あっはは。ま、確かに一般的なヒトの腕とは別物だね。作り物だしさ、これ」
つんつん、と空いた方の手で『腕』をつつく。
「いいよいいよ、壊したりしなけりゃ別にどうにでもなるだろうし」
言うと、彼はさらに『腕』をぐいと差し出した。
近くで見るとよくわかるが、その表面は本当にヒトの肌とほとんど差異がない。
触れれば暖かさが伝わってきそうだが、生憎血は通っていないらしい。
(……綺麗な制服だなあ)
ぼうっとそんな事を考え、自分の服装に目をやる。
空色のパーカー。深い紺色のジーンズ。
随分と前から代わり映えのない、ある意味トレードマークのようなもの……少し、飽きてはいるようではあるが。
「……ねえねえ、その制服ってどこの? あんまり見ないような気がするけど」
- 831 :バルト・アンデルセン:2011/08/16(火) 14:56:07 ID:SSMHlh/20
- >>830
「へぇー……恐ろしく精巧にできているけど……。
何か、作り物みたいだね。」
一通り観察した後で、腕を白銀帝の手へと戻し。
「この服?ああ、これはこの都市の物じゃないんだ。
僕らはその施設を『ハイブ』と呼んでいたけど、正式な名前は知らない。」
服は、この子供の頭髪よりさらに深い紫色。
かなり上等な生地が使われているようだが、古いものらしく
よく見ると、ところどころに直した様な後が見られる。
- 832 :白銀帝 ◆FA/Bw.T3QU:2011/08/16(火) 15:04:31 ID:LESoMFJQ0
- >>831
「何だったかな、生体……んん? えっとー。
生体なんとか義手って言うみたい、正式にはね」
返ってきた『腕』を肩に担ぐ。
肘のところでだらんと折れ、随分とシュールさが増した。
「『ハイブ』……巣箱、群衆、活気づいた場所―――ね、ふうん」
帝の青い瞳に、何かが駆けた―――それは文字のようで、しかしそれが現れたのはほんの一瞬だった。
「そのハイブってのはどんな所? 学校みたいだとか、なんというか。
……ああっと、答えにくかったら流してもらいたいんだけど」
- 833 :バルト・アンデルセン:2011/08/16(火) 15:19:22 ID:SSMHlh/20
- >>832
「義手、か……僕が見たことのあるのは、
何処の技術かはしらないけれど、生体工学が進んでいる世界の物かな。
僕が見たことのあるのは炭素ポリマー樹脂だとか、もっと機械的なのだけさ。」
自分の掌を、にぎにぎと開いたり閉じたり。
『生体何とか義手』が実際に動いているところをみたことはないが、
恐らく実際の四肢と遜色ない動きをするのだろう。
「一言で言えば、管理された場所さ。一日に3回の食事に適度な運動。
ある意味では牧場のようであったともいえるけれど。まぁ、住むにはいいところだよ。
……もし住めるなら、だけれどね」
- 834 :白銀帝 ◆FA/Bw.T3QU:2011/08/16(火) 15:35:35 ID:LESoMFJQ0
- >>833
「細かくは僕も聞いてないんだよね、たはは。
開発者自体冗談みたいな奴だから、多分聞いてもまともに答えてはくれないだろうし」
目を細めて苦笑し。
ずり落ちそうになった『腕』を慌てて担ぎ直す。
「一応、今はこの街に住んでるんだよ、その開発者。
生まれが別の世界って訳でもないし―――
―――ああ、所属する所がある種、別世界なのかもしれないけど」
「へえ……そこまで徹底されてた訳じゃないけど、僕も似たような境遇かもしれないや」
『腕』を担いでいない方の手で、頭をかく。
手の甲には T-10 という文字が見えた。
所々薄れている辺り、刻み込まれている、という訳ではなさそうだが。
「……『住めるなら』、って、言うと?」
- 835 :バルト・アンデルセン:2011/08/16(火) 15:59:18 ID:SSMHlh/20
- >>834
「『ハイブ』は研究施設なんだよ。
生物、特に軍事や医療に転用できる特殊な生物のね。
僕はそこで育てられた、『臓器移植用特殊培養体』さ。」
突然、目の前の子供の右腕がまるで泥濘のように液化し、
どろりと地面に垂れ下がったが、一瞬ぶるりと震えた後、
木馬、輝くような紫色の蝶、粗末な椅子、ボトルシップ、小型犬と次々に姿を変え
最終的に体を這い上がると、元の場所に収まり右腕にすがたをかえた。
「どんなものにも姿を変えられる、故に、
どんな人間の臓器にも問題なく適合する臓器を、すぐに提供できる……んだそうだよ。
この、僕の能力を応用すれば……。」
- 836 :白銀帝 ◆FA/Bw.T3QU:2011/08/16(火) 16:17:19 ID:LESoMFJQ0
- >>835
「おおっ、……!」
帝はびっくりした様子で目を見開き、次々と形を変えていくそれを見ていた。
「すごいな……にしても、変わった能力だね。有意義な力みたいだし。
……培養体、ってことは君も『造られた』のかな?」
驚きや感動が入り交じったような、そんな表情。
しばらく、目の前の少年とも少女とも言い切れないその人の言葉を聞き、
「君は随分、人道的な理由で『造られた』んだね」
―――僕とは、ちょっぴり違うみたいだ。
消え入るような声で、そうやって呟いて。
「……おっと、いけないいけない。
僕は『腕(コレ)』を渡しに行かないといけないんだった」
ふっと我に帰り、帝は頭を振る。
「また君とは話がしたいな。縁さえ合ったら―――んじゃあ、またね」
『腕』を掴んで適当に振ると、帝はそんな裏路地を去っていった。
// このへんで落ちます
// ありがとうございましたったー
- 837 :バルト・アンデルセン:2011/08/16(火) 16:36:37 ID:SSMHlh/20
- >>836
「造られた……まあ、そんなところさ。
僕はオリジナルの複製だから。」
白銀帝の視線に、最初は得意気に笑みを浮かべていたが
『人道的』という言葉を聴くと、その表情は曇り。
「ノーベルは元々、鉱山の発破工事のためにダイナマイトを作ったけれど、
それはいつしか軍事転用され、たくさんの人々を殺してしまった。
僕もそれと同じ。ただ、『医療用』に転用できただけに過ぎないさ。」
バルトは、『ハイブ』のほかの実験体たちがどういったものだったかをあえて話さなかった。
いや……兵器として殺人に特化したおぞましくも、美しいその姿を思い出したくなかったのだ。
「ええ、今度は君の話を聞きたい。
君も作られたんだろう……じゃあ、また……。」
帝に応えて、その場で腕を振る。
彼の姿が見えなくなった後、よくわからない感情に試みだされたバルトは
しばらくその場で立ち尽くしていたという。
// ういうい、おつかれさまー。
- 838 :名も無き異能都市住民:2011/08/17(水) 22:02:55 ID:kgxnmc8.0
- それは何時からだっただろうか。
背後の方から感じる視線は確実に敵意を孕んでいた。
それも緩いものではなく、殺意とも呼べるような代物だった。
またか。等と思いつつ溜め息を吐くと角を曲がると同時に少し足を速める。
予想通りにそれらも付いてきた。確認する必要はなかったかな。とまた溜め息。
買い物は住んでいたので後は帰るだけだった。興味本位から脇道にそれて裏路地に入る。
(薄暗い……人通りも少なそうだ)
入り込むなりそう感じたと同時、視線は形となって襲いかかってきた。
「……外れ、かぁ。残念だな」
クク。と笑うともう一度周囲を見渡した後、後続が居ない事を悟る。
それから襲いかかってきた人間たちの方を見てそう呟くのだった。
- 839 :黒沢小百合:2011/08/17(水) 22:28:02 ID:SSMHlh/20
- >>838
それから1ブロックほど離れた路上に、
帰路を急ぐ小百合の姿があった。
「……む、これは……戦闘の音か……?
それなりに人数が多い、喧嘩と言うには少し規模が大きいか……。」
耳聡く戦闘の音を聞きつけた小百合は、
少し方向を変え、戦闘の行なわれているであろう場所へ向かう。
- 840 :名も無き異能都市住民:2011/08/17(水) 22:39:45 ID:kgxnmc8.0
- >>839
小百合が現れた頃には既に場は静まっていた。
そこに居たのも3人の男と一人の女だけであり、
周囲の損傷具合からもそれほど大きなものでは無かったらしい事が解るだろう。
「リンゴ、落としちゃった」
大量の食物が入った紙袋を抱えつつ、リンゴを拾い上げようとする女。
以前から何度か顔の合わせた事のあるアルビノのその人だった。
「や、奇遇だね。どうかした?」
そちらを見つけるなり屈託の無い笑顔を向ける。
- 841 :黒沢小百合:2011/08/17(水) 22:48:57 ID:SSMHlh/20
- >>840
「いえ、喧嘩か何かの音が聞こえたのでね。
……ここで喧嘩があったのは確かなようですが、大丈夫ですか。」
たしかに、周囲に多少なりとも真新しい損傷があることから
ここで戦闘が行なわれていたのは確実。
しかし、奇妙なのは喧嘩か、戦闘があったにしては
この場にいる人間の間に流れる空気が穏やか過ぎる事。
(何か……妙だな……。)
小百合は違和感を感じながらも、
とりあえず、スタンドの警官を具現化し周囲を封鎖する。
- 842 :名も無き異能都市住民:2011/08/17(水) 23:10:32 ID:kgxnmc8.0
- >>841
「大丈夫、僕はね」
そういうと背後で倒れている三人に目を向ける。
それは数秒程しか無く、直ぐに小百合の方へ視線を戻し。
「僕はアレに興味無いからどうにでも。今回も『当たり』じゃなかったしね」
等と言って心底残念そうに溜め息を付く。
- 843 :黒沢小百合:2011/08/17(水) 23:16:27 ID:SSMHlh/20
- >>842
「む……その背後の人達は……。やはり、喧嘩があったようですね。
悪いですが、一応拘束させていただきますよ。あなた達をね。」
街灯も無い、薄暗い路地だったため最初は気が付かなかったが、
よく目を凝らせば奥に何人か、人が倒れているのが見えた。
とりあえず、都市の警備を担当する物としては職務を果たさなくてはならない。
小百合はすぐさま、具現化した警官を向かわせ倒れた男たちを保護、
さらに目の前の白い女を拘束しようとする。
- 844 :名も無き異能都市住民:2011/08/17(水) 23:23:38 ID:kgxnmc8.0
- >>843
それは困る。といった表情を見せて、
「襲われただけなんだけど……僕も?
いや、確かに彼らの持ち物漁ったりはしたけど……何も取ってないよ」
黙っていても直ぐに解るだろうから。と思い口にする。
彼らの衣服の乱れ方からして手が加えられた事は真実で、実際に何も取られていないのも本当の事だった。
- 845 :黒沢小百合:2011/08/17(水) 23:42:15 ID:SSMHlh/20
- >>844
「お言葉ですが、口では何とでも言えるのですよ。
喧嘩という事ですし、厳重注意ですむと思いますが双方に事情を聞かねばなりません。
千夜の都市警部部門詰め所までご同行をお願いできますか?」
警官たちはてきぱきと倒れていた男たちを助けおこし、
いつの間にか具現化されていた、パトカーの中に乗せた。
幸い、男たちの傷は浅いようで、大事にはならないか。
しかし、持ち物を漁ったという点については不利に働く可能性がある。
- 846 :名も無き異能都市住民:2011/08/17(水) 23:47:53 ID:kgxnmc8.0
- >>845
「仕方ないな……解ったよ」
今日何度目かの溜め息、
抵抗する必要もないので素直に従っていく。
- 847 :黒沢小百合:2011/08/17(水) 23:54:30 ID:SSMHlh/20
- >>846
その後、千夜の詰め所へ連行された白い女と
男たちであったが、喧嘩相手の集団が麻薬や軍用の大型ナイフを所持していた事、
ひどく泥酔していたことなどから、正当防衛と判断され、衣服を漁った事に注意を受けたのみで、
すぐに詰め所から開放された。
// なんかあれになっちゃったけど……〆でいいかな?
- 848 :名も無き異能都市住民:2011/08/17(水) 23:56:53 ID:kgxnmc8.0
- >>847
//いいんじゃ、無いです?
- 849 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/19(金) 21:46:30 ID:WVrfsEdY0
- 【先日の戦闘のあとに一人の少女が立っている】
「……………」
【なにか思いに馳せているように見える】
- 850 :高城 悠里:2011/08/21(日) 21:07:38 ID:OXzGfVe.0
- 「取れませんねえ……」
繁華街のゲーセン、黒い帽子を被ったスーツ姿の男が居る。
怪しいって言っちゃいけません。これでもちゃんとした社会人です。
男と対峙しているのは所謂UFOキャッチャーというゲーム機。
どうやら景品の、三頭身にデフォルメされた人形を取りたいようだが、
「もう三千円消費ですか、早いですねえ」
この筐体は一回200円なので、既に十五回はトライしている計算になる。
だが今の所戦利品はゼロ。悲しいものである。
- 851 :バルト・アンデルセン:2011/08/21(日) 21:23:18 ID:SSMHlh/20
- >>850
深い紫色の頭髪と中性的な顔立ちが特徴の10代前半の子供が、
2,3プレー目のあたりからだったろうか。ちょうど悠里背後の自販機と
簡素なプラスチックの椅子が置いてあるカフェスペースで紙コップのカフェオレを飲みながら、
キャッチャーの一挙手一投足を見守っていた。
時折、人形にアームが引っかかりそうになれば声にこそ出さない物の、
おお、と表情をほころばせ。かたん、と音を立てて人形が元の位置に戻れば、
まるで自分の事のようにしょんぼりと肩を落とす。
何の変哲も無いUFOキャッチャーが、彼(彼女)にとってはとても面白いショーであるらしい。
- 852 :高城 悠里:2011/08/21(日) 21:31:55 ID:OXzGfVe.0
- >>851
「これは少々難しいものですねえ……」
頬に手を当て、困り果てた様子の男。
流石にこれ程までの出費は予想外だったらしい。
十六回目もあえなく失敗に終わり、諦めたのか、男がその場から去ろうとした。
と、
「……おや」
ふと、こちらを見ていたらしい子供と目が合った。
男の性癖にピッタリの容貌だったのだろうか、無意識の内にそちらへ歩みを進め
「そこの君、ワンプレイ如何です?」
200円を差し出して、無駄に爽やかな笑みを浮かべながら話し掛けていた。
本能とは恐ろしい。
- 853 :バルト・アンデルセン:2011/08/21(日) 21:48:26 ID:SSMHlh/20
- >>852
「ん、ああ……いえ……。
そういうわけで見ていたのでは……。」
声も中性的そのもの。いよいよ持って性別不明なこの子供だが、
この年齢にしてはなかなかしっかりした性格の持ち主のようで。
両手を自分の胸の前に出して、お金を受け取らなかった。
「あのゲームに興味があるわけではないけれど、お金は受け取れない。
こう見えても、困らない程度のお金は持っていますから。」
- 854 :高城 悠里:2011/08/21(日) 21:57:24 ID:OXzGfVe.0
- >>853
「そうですか、それは残念です……」
残念そうに、しかし笑顔のまま200円を財布に戻す。
ただそう簡単に食い下がる程、男の性癖はやわなものではなかった。
「君はゲームをしないのですか?折角ゲームセンターに居るのですし」
変わらぬ笑顔のまま問い掛ける。
今日の男の目標は「この子が喜んでいる所を見る」らしい。変態である。
- 855 :バルト・アンデルセン:2011/08/21(日) 22:09:29 ID:SSMHlh/20
- >>854
「やってみようかな……。
でも、何分こういうところは初めてで……ね。」
この目の前の子供は彼の髪の毛より深い、
紫色の貴族学校、もしくは士官学校の制服のようなきっちりとした服を身に付けている。
なにより、その所作はどことなく優雅さが感じられ
こういった『世俗的』な場所に慣れていない感じは、先ほどから見られた。
「……じゃあ、貴方と同じ物を。」
プラスチック椅子から腰を上げ、先ほど悠里がプレイしていた台の隣。
まったく同じ機種ではあるが、景品として大きなチョコレート菓子の詰め合わせが入れられた
UFOキャッチャーに200円を投入、おっかなびっくりボタンを押し始め……。
――ガッ。
彼、もしくは彼女のUFOキャッチャー初体験は
まったく見当外れの場所にアームを下ろしてしまった。失敗である。
- 856 :高城 悠里:2011/08/21(日) 22:22:21 ID:OXzGfVe.0
- >>855
「いえいえ、意外と簡単なものですよ?」
そう言いながらこの子の横へ。
おそらく人生初なのだろう、UFOキャッチャーをプレイしている様子を眺めていた。
と、その結果は失敗。
「ええと、このボタンを押すと横に、このボタンを押すと前へ進むんです。
コツとしては『「本体の中心」と「ツメとツメの間」を目印にして目標のポイントの点と点で狙うと精密な狙いができるようになる』
とかこの前TVで言ってましたけどねえ」
それを実践してサッパリだった訳なんですが、と笑い声を漏らす男。
とりあえず身振り手振りを通しながら基本動作は教えた。後は、
……この子次第ですよねえ。
初挑戦でいきなり景品を取る事が出来れば凄いだろう。少なくとも男よりは。
- 857 :バルト・アンデルセン:2011/08/21(日) 22:34:46 ID:SSMHlh/20
- >>856
「逆方向に戻したりはできない、一方通行なんだね。
……コツも……理解できたよ。」
もう一度、硬貨を200円分投入。
男に言われたように、本体の中心とツメの間を目印に目標を狙う……が。
――ぱこっ
「うーん、やはりだめだね。
見るだけではなく、実際にやってみるというのは難しい。」
どうやらこの機種、ボタンを話してもすぐに止まらず、
慣性で少しスライドしてから止まるタイプのようで。
このスライドの感覚を掴まなくては、景品を掴めない。
- 858 :高城 悠里:2011/08/21(日) 22:51:11 ID:OXzGfVe.0
- >>857
「こういう類のものは慣れが必要でしょうからねえ」
……そう簡単に取れては店も商売上がったりでしょうしねえ。
と、男は何か閃いた様子で、筐体の横に移動した。
そしてその位置から狙いの景品を眺め、
「では僕が合図を出しますので、その瞬間に前進のボタンを離してくれませんか?
少し早めに合図をすればそのままクレーンがスライドして丁度良い位置につくでしょうから」
そんな事を提案してみた。
- 859 :バルト・アンデルセン:2011/08/21(日) 22:57:37 ID:SSMHlh/20
- >>858
「共同作業、ということですか。
こちらも素人ですし少々のハンデを貰うくらいは……いいかな。」
ふふ、と楽しげに笑みを漏らして。
この子は、景品を取るというよりその過程を楽しんでいる。
「じゃあ、もう200円……と。」
ちゃりん、と硬貨が音を立てて投入されると同時に
筐体が楽しげな音と、鮮やかなイルミネーションが灯る。
――うぃんうぃんうぃん。
アームがゆっくりと動き始めた。
- 860 :高城 悠里:2011/08/21(日) 23:04:51 ID:OXzGfVe.0
- >>859
「ええ、合図はお任せください」
200円が投下され、ゲームが始まった。
最初の横移動は相手任せだ。三回目と言う事もあり、狙いはある程度精確だろう。
問題は、
……こちら、ですよね。
クレーンが前進を始めた。男はじっとその様子を眺める。
そしてクレーンが景品の手前辺りまで進んてきた所で、
「……今です!」
合図を、送った。
- 861 :バルト・アンデルセン:2011/08/21(日) 23:19:16 ID:SSMHlh/20
- >>860
「…………っ。」
絶妙のタイミング。
クレーンは滑るように移動して、景品の上に止まる。
――ぱすっ
止まる。止まった、のだが……。
アームは景品の滑らかなビニール容器をつかめず、
空しく表面を撫上げて、そのまま元の場所まで戻ってきてしまった。またもや失敗である。
「ああ、惜しかった。
けれどこれは、ちょっと無理かなあ。」
こういうゲームは店側が勝つようにできているのだが、
それでも、男の目の前の子供は朗らかに笑っていた。
彼、もしくは彼女にとっては景品など問題ではないのだ。
- 862 :高城 悠里:2011/08/21(日) 23:31:47 ID:OXzGfVe.0
- >>861
「……ははは、ナイスファイトです」
少し悔しそうな様子だが、しかし男も笑みを見せた。
そうして相手の横へと戻っていき、右手を突き出しサムズアップ。
……喜んでいる姿は見れませんでしたが、笑顔を見る事が出来ただけでも良しとしますか。
と、そこである事実に気づいた男。
「そう言えばお互いまだ名乗ってすらいませんでしたね。
僕の名前は高城 悠里、傀儡師をしています」
そう言って、サムズアップをしていた手を開きそのまま差し出す。
握手を求めていると言う事は容易に判断できるだろう。
- 863 :バルト・アンデルセン:2011/08/21(日) 23:39:32 ID:SSMHlh/20
- >>862
「おっと……これは、うっかりしていました。
バルト・アンデルセン。バルトと覚えて欲しいな。」
差し出された右手を握る。
しかし、妙なことにこの子供――『体温』がない。
しかも、ゴムか何かにゼリーが入っているかのような
人とは違う、柔らかい感触。
「傀儡……人形遣い、という事かな。
あの、たまに街角で人形を使ってショーをしている。」
- 864 :高城 悠里:2011/08/21(日) 23:51:25 ID:OXzGfVe.0
- >>863
「ええ、解りましたバルト」
笑顔のまま、バルトに対してそう応えた。
だが、
……この妙な感触といいどこか世俗離れした雰囲気といい、ミステリアスですねえ。
ま、可愛いから良いのですが。
あっさりと疑問をフルスイングで投げ捨てた男。それで良いのか。
「僕の仕事は少し違いますねえ。
例を挙げるとするなら……」
つい先程まで自身がプレイしていた横の筐体、その中にある景品の人形を指差し
「ああいった人形を創り出すのが僕の仕事なんです。
偶にそういったショーをする事もありますが、あくまでそれは人形の営業みたいなものですし」
と、男はそこで何か思いついた様だ。
「こうして会ったのも何かの縁です。
次に会う時までにバルトの為に人形を創っておきましょうか?」
無論御代は構いませんよ、と笑顔で言った。
- 865 :バルト・アンデルセン:2011/08/22(月) 00:06:35 ID:SSMHlh/20
- >>864
「ああ、なるほど。理解したよ。しかし驚いたな……。
人形作りの職人さんっててっきりピノキオのゼペット爺みたいに、
おじいさんばかりだと思ってたよ。」
UFOキャッチャーのガラスに顔を近づけ、人形を観察。
最近のフィギアだとかドールだとかは精巧にできていて金属だとか木、
布の質感まできちんと再現されている。
「ん……『私』の……人形……?」
人形を作っておこうか、などと初対面の人間に言われれば
大抵の人間は気味が悪い、と思うだろう。
この目の前の子供も、そう思ったのか顔から血の気がさっとひいた。
……いや、それにしては怯え方が異常だ。蒼白になるまでにぎゅうと拳を握り締め
唇を噛み、微かに震えている。
「い、いや……『僕』は……いい……。
やめてほしい……ああ、ごめんなさい……気分が悪い……。
失礼……。」
先ほどまで、笑みをたたえていたはずのバルトは、
吐き気でも催したように、口を押さえて駆け出し。そのまま、店の外へ飛び出すと
するりと繁華街の人並みにまぎれて、見えなくなった……。
// 今日はこの辺でおつ。ありがとうございました!
- 866 :高城 悠里:2011/08/22(月) 00:15:26 ID:OXzGfVe.0
- >>865
「うーむ……」
気分が悪そうに去っていったバルトを無言で見送った男。
……バルト『の』人形、じゃなくてバルト『の為の』人形って言ったんですけどねえ
初対面の人間に「お前の人形創ってやるぜフゥハハハー」とか言われたら、流石にこの男でも引くレベル。
いやはや日本語は難しいものだ。日本人だが。
「ま、可愛らしい人形を創り上げてプレゼントすれば誤解も解けるでしょう」
そう自分に言い聞かせるように呟くと、男もゲームセンターから去っていった。
/絡みありです乙でしたっ!
- 867 :黒沢小百合:2011/08/23(火) 22:36:36 ID:SSMHlh/20
- 都市繁華街の端にこっそりと存在するミニシアター。
蔦だらけの外見、ひび割れたレンガの壁。中に入れば客足はまばら。
しかしそれは逆に、小百合もさほど人の目を気にせずゆっくりと映画を楽しむ事ができるということ。
「……ふう。やはり、映画は良い。」
ちょうど、映画を見終えたのか空のポップコーン容器を抱えて
ロビーのソファでくつろぐ小百合であった。
- 868 :高城 悠里:2011/08/24(水) 20:27:55 ID:OXzGfVe.0
- 「最近のコンビニ弁当はバラエティ豊富ですねえ」
夜の繁華街を歩く一人の男。
不自然なまでに赤く染められた髪に、まるで童話に出てくる妖精の様な白く透き通った肌。
黒い帽子を被り、黒いスーツを着用している。
そんな出立ちの男が右手に持つのはコンビニのビニール袋。中身は酢豚弁当とペットボトルの緑茶、それとおにぎりが数種である。
「最近は冷凍やレトルトばかりですしねえ。
たまには料理を作りたいものですが……」
この男、一応最低限の家事はこなせる。
だが近頃は専ら人形製作に勤しんでおり、料理などしている時間が無いのだ。
……作り置きのものじゃ体に悪い事は解っているんですがねえ。
そんな事を思いつつ、男は大通りから逸れて路地裏へと入っていこうとする。
こちらの道程の方が家に幾分早く着く事が出来るのだ。
- 869 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/26(金) 22:10:10 ID:WVrfsEdY0
- 【ビルの屋上に小さな影とちょっと背の高い影が立つ】
「…わかってます。報告の通り。
本来の力を封じられてしまったようです。」
【小さい少女は何かを無線機越しに話している。】
「…どうにかして力を?私にはどうすればいいか全く…
…はぁ…分かりました。」
【そこまで言うと無線機を切った】
「取り敢えず様子見る?」
「…………」
【大きな女性は黙って頷いた】
「分かったわ、取り敢えず街に潜伏…様子見ってことで」
「…………」
【そこまで言うと2つの影はビルを飛び降りた。】
- 870 :名も無き異能都市住民:2011/08/26(金) 22:26:46 ID:9kpy4S2w0
- 「ぐふぇぁ!?」
下にいた何かが潰された
- 871 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/26(金) 22:36:52 ID:WVrfsEdY0
- >>869
「ん?」
【ふと少女が下を見て首を傾げる】
「……?」
【背の高い女性も無表情に首をかしげる】
- 872 :名も無き異能都市住民:2011/08/26(金) 22:41:32 ID:9kpy4S2w0
- 「・・・・」
返事がない
黒くて丸っこい物体は微妙に震えながら沈黙している
※黒くて丸っこい物体→直径50cm程度
- 873 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/26(金) 22:46:46 ID:WVrfsEdY0
- >>872
「なんだこれ?
この街には色々変なのが居るんだなぁ」
【チッコイ物体から足を離してじっと見つめる】
「生き物かな?」
- 874 :名も無き異能都市住民:2011/08/26(金) 22:59:07 ID:9kpy4S2w0
- >>873
もぞもぞ
「―――…」
「!?」
カサカサカサカサ!!
黒い物体は路地裏に逃げて行った
- 875 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/26(金) 23:03:54 ID:WVrfsEdY0
- >>874
「…あれなにかな?」
【立ち去っていった影をみて再び首を傾げる】
「………」
【背の高い女性も一緒に首をかしげる】
「ごきぶり…かなぁ?」
- 876 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/08/30(火) 21:02:19 ID:st8GyBag0
- 【都市の一角、仄暗い路地裏】
【見た目17~18くらいの青年がダンボール箱に入れられたテンプレのような猫と戯れている】
【指を差し出して猫に触らせたり、抱き上げて頬擦りしたりとそれはそれは好き勝手に…】
にゃーにゃー…
【心まで猫と化したのか、泣き真似をしながら】
【手から下げていたビニールの中を漁り缶詰を取り出す】
【それを開封してダンボールの中へ置いておいた】
【愛らしい三匹の子猫たちはそれを囲んで匂いを嗅ぎ―――やがてむしゃむしゃと食べ始めた】
【青年は満足げな表情でそれを眺めている】
- 877 :名も無き異能都市住民:2011/08/30(火) 21:26:40 ID:SSMHlh/20
- >>876
そんな様子を見て路地裏の浮浪者が数人、
炎魔を取り囲むようにして近づいてきた。
「お恵みを……。」
猫にエサをやっている様子を見て、もしかしすれば
自分たちも『お恵み』にありつけるかもしれない、そう考えたのだろう。
全貌も把握できぬほど巨大なこの都市ではこういった
職にあぶれ、その日の暮らしすら危うい人たちも多いのだ。
- 878 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/08/30(火) 21:40:09 ID:st8GyBag0
- >>877
【路地裏の闇の中から現れた浮浪者に、びくっ…と一瞬ビビってしまったが】
【彼らの境遇を考えるとどうしてもいたたまれず―――尻ポケットに入れてある財布に手にとった】
ごめんなさい…あんまり持ち合わせてないんですけど…
【青年はそこから某野口様を人数分抜き出し、浮浪者に配ろうとする】
……頑張ってください
【どうしても上から目線になってしまうのを気にしながら、励ましの言葉を添えておいた】
- 879 :名も無き異能都市住民:2011/08/30(火) 21:49:51 ID:SSMHlh/20
- >>878
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
「あんた、いい人だねぇ!」
「おおー、ありがてえ、ありがてぇ。」
お金を貰うなり、口々に感謝の言葉を述べる浮浪者たち。
騒ぎを聞きつけたのか、路地裏のあちこちから一人、二人と別の者が次々に現れ、
同じように炎魔に恵みを請い始めた。
……これでは際限が無い。
その光景に、ちょうど遠くで客引きをしていた娼婦が
『バカね。』とでも言いたげな、侮蔑的な視線を投げかけていた。
- 880 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/08/30(火) 23:05:06 ID:st8GyBag0
- >>879
ぅ……
【多方から新たに現れた浮浪者…それを見て泣きそうな表情になる青年】
【もう既に財布はすっからかんだし、街中にいる浮浪者全員に恵みをもたらせるはずもない】
…ごめんなさいっ!
【ほぼ思考停止に陥ってしまった青年は、
ダッ!と地面を蹴って走り出す】
【出口は1つ…大通りへに続く路地裏の入り口。そこへ向かって…】
- 881 :名も無き異能都市住民:2011/08/30(火) 23:13:23 ID:SSMHlh/20
- >>880
――どんっ
走り去ろうとした炎魔にぶつかり、
よろめいた浮浪者の下品な罵声が背後から聞こえる。
あの、媚びるような『お恵みを』の不揃いな合唱は角を一つ曲がれば聞こえなくなり、
そのまま何の問題もなく、大通りまでたどり着けた。
道を歩いていたサラリーマンが突然路地裏から飛び出してきた炎魔に、
一瞬怪訝な顔を向けたがそれもすぐに、人ごみの中に消えて。
- 882 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/08/30(火) 23:33:48 ID:st8GyBag0
- >>881
【後方から呪いのような声が聞こえてくるが、それを振り切るように走り続け―――大通りへ出たところで、跳躍】
【足から焔を噴出させ、それを足場に再跳躍】
…ぅえっ……えぐっ……
【そのまま連続で空を跳んで行き、むかいのビルの屋上に着地した】
【先ほどまで優し気であった表情は崩れに崩れ、涙が零れていた】
【青年はその場に座り込み、気が静まるまで泣いていたという…】
- 883 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/31(水) 21:47:52 ID:WVrfsEdY0
- 【異能都市中央病院。色んな能力者が運ばれてくる大きな病院である】
「…?」
【とある病室のベッドの上で少女が目覚めた】
「…あう?ここはどこかなの?」
【起き上がってあたりを見回す。裸で全身包帯で覆われているがあんまりキにしていない】
「…えっとなの…びょーいんだったかなの…
はこばれたのかなの…」
【少しため息を付いてベッドからあたりを見回している…】
- 884 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/08/31(水) 23:08:04 ID:9LqRdans0
- >>883
/まだおられますか?
- 885 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/31(水) 23:13:07 ID:WVrfsEdY0
- >>884
//いますよーう
- 886 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/08/31(水) 23:18:54 ID:9LqRdans0
- >>883
【どんっ!】
【…という低い音が病室に―――少女の耳に届くだろう】
【音源は病室の窓だ】
「あ、あけてくださぃ…!」
【窓の外には17~8くらいの青年が、窓枠に張り付くように立っており、情けない声で助けを求めている】
【中に侵入するため窓を引っ張ったり押したりするが…鍵がかかっているため叶わない】
【病院の外では、パラパラと雨が降り始めていた】
- 887 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/31(水) 23:21:16 ID:WVrfsEdY0
- 「?…だれかなの」
【ふと窓のほうを見る】
「あう〜、はいりたいの?
どーぞなの〜」
【特に疑いもせず、包帯を伸ばしてまどを開けた。】
- 888 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/08/31(水) 23:30:23 ID:9LqRdans0
- >>887
【部屋の中から伸びた包帯が器用に窓鍵を開け…体重を前にかけていた青年は転がるように中へ】
【ぅ……ぅ……と低い呻き声をあげながら、フラフラと立ち上がる】
「…っふぅ……ありがとうございます」
【随分とやつれた表情で少女に一礼】
【そのまま少女が横になっていたベットへと近づいて行き―――上半身のみを横たわらせようとする】
【下半身はベットに添えつけられていた椅子の上だ】
「少し…休ませてもらっていいですか…?」
【僅かに息を切らせた声で、少女にお願いをした】
- 889 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/31(水) 23:34:16 ID:WVrfsEdY0
- >>888
「あう〜、…いいけどなの」
【少し微笑んで返す】
「おそとはあめなんだなの…
いっぱいふるのかなの・・」
【少しのんきなことを言いながら窓を閉める】
「…だいじょぶなの?」
【心配そうに見つめている。】
- 890 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/08/31(水) 23:40:43 ID:9LqRdans0
- >>889
「…天気予報によると、台風が来るらしいですよ」
【顔をベットのマットに沈めながら、モゴモゴと喋る青年】
【普段なら、他人に迷惑をかけるようなことは絶対にしないのだが…今は完全に脱力しきっている】
「…多分、大丈夫です」
「体が乾けば、もう少しマシになると思います……」
【視線を感じながらも、顔上げる気力さえ湧かないらしい。ぴくりとも動かずに口と喉だけ動かして会話をすすめていたが】
「そしたら、すぐに出ていくので……ごめんなさい…」
【謝ったら、急に申し訳なくなってきて】
【わなわなと体を震わせはじめた】
- 891 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/31(水) 23:43:15 ID:WVrfsEdY0
- >>890
「あうあう、じゃあいっぱいふるかなの・・・」
【窓をじっと見つめて言う】
「あう!わるいとおもってないなの、おそとさむかったならなの…」
【少し手を止めてから…首を傾げる】
「なんか…こわがってるみたいなの…」
- 892 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/08/31(水) 23:49:30 ID:9LqRdans0
- >>891
「…いぇ、怖いわけではありません……」
「ただいきなり、こうやって病室に上がり込んで…」
「どうお礼をしたらよいか…」
【ぐぐぅ…と重い頭を持ち上げて、ディスの顔を見る】
【青年の目頭には涙が溜まっていた。脆すぎる】
- 893 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/08/31(水) 23:52:43 ID:WVrfsEdY0
- >>892
「あうー。そんなのきにしなくていいの〜。
はいってきたからってめーわくじゃないの!」
【慌てて手を振る。包帯ぐるぐるだけど、少女は今は服をしてない。が、キにしていない】
「べつになにかしてほしいってことはないの〜。」
- 894 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/09/01(木) 00:01:50 ID:9LqRdans0
- >>893
「そ、そうですか……」
【少し視線をずらすと、少女が包帯「のみ」の格好であることに気がついた】
【小学生並みの体型とはいえ他所の女、しかもボディーラインはっきり】
【なんだか見てはいけないような気がして、頬に朱を数mm混ぜながらベットを見ることにした】
「なら、今度ご飯でも奢りましょうか…?」
「このままだとどうしても、気になってしまうので…」
- 895 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/09/01(木) 00:12:11 ID:WVrfsEdY0
- >>894
「あう〜?どうかしたの?」
【そういうことには疎いのか、不思議そうに首をかしげている】
「あう〜、ごはんなの?うーん…」
【少し考えてから】
「うん、わかったの。それでいいかなの!」
【笑顔で微笑み返した】
- 896 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/09/01(木) 00:18:05 ID:9LqRdans0
- >>895
「なんでもないですっ…」
【どきっ、と心臓が跳ね、嫌な汗が吹き出してきたが―――首を横に振ってごまかそうとする】
「よし…では、いい感じのお店を探しておきますね」
【ディスの微笑みを見、青年も薄く笑う】
【それから、ベットの上においた腕に力を込めて立ち上がり…】
「えっと……お名前を教えてもらっても、いいですか?」
【中途半端な敬語で、名前を尋ねた】
【足取りは覚束ないが、青年は幾分か回復したようだった】
- 897 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/09/01(木) 00:25:08 ID:WVrfsEdY0
- >>896
「うーん・・・やっぱりぐあいわるいのかなの?」
【なんだか心配そうだ】
「あう〜、たのしみにしてるの〜。」
【なかなか嬉しそうだ】
「あう?おなまえなの?
なまえは『でぃす』なの〜。よろしくねなの〜!」
- 898 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/09/01(木) 00:29:34 ID:9LqRdans0
- >>897
「もう、大丈夫ですよ」
「歩いて帰れます」
【ディスが自分を心配しているのは明らかで…青年はそれもまた申し訳なくて、気丈に笑みを浮かべた】
「ディスさん…ですね」
「僕は【炎魔】といいます。以後、お見知りおきを…」
【ぺこり、と頭を下げて自己紹介】
【そしてうーんっ…!と伸びをして】
「今日は、ありがとうございま、した」
【目眩に襲われてぐらりと揺れながらも、しっかり二本足で支えた】
【もし、止めなければ、青年はそのまま病室から立ち去るだろう】
- 899 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/09/01(木) 00:32:37 ID:WVrfsEdY0
- >>898
「そっかなの〜。
だいじょぶ…わかったの。」
【まだきにしているようだ】
「あうあう、よろしくなの!『えんま』かなの〜」
【微笑みながら返す】
「あう〜、やっぱり…なにかわるいびょーきじゃないなの?」
【ふらついてるのを見てまた心配そうである。】
- 900 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/09/01(木) 00:40:30 ID:9LqRdans0
- >>899
「水が、ダメなんですよね…僕」
「雨に当たったりだとか水たまりに、入っちゃうと……急に体調が悪くなってしまう、んです」
【病室の入り口のドアに手をつき体を支える青年】
【風邪も併発したのだろうか、顔色もあまりよくない】
「ぁ……」
【少女の問いに答え終わると、気が抜けてしまったのか】
【ふわりと体が傾き、倒れていく…】
【このままならば、青年の体はどさりと床に倒れて…意識を失うだろう】
- 901 :ディス/騎士見習い少女 ◆Dix.OeuOIQ:2011/09/01(木) 00:46:01 ID:WVrfsEdY0
- >>900
「あうあう、それはだめなの…
やっぱりここにいないと…あう?」
【言い終わる前に倒れてしまった。】
「えっと…あう!ここにたおれてるひといるの〜!」
【ディスは慌ててナースコールを押して報告した。しばらくしたら看護師が来るだろう。】
//そろそろ切りますかー。
- 902 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/09/01(木) 00:52:13 ID:st8GyBag0
- >>901
/ですねー
【青年は、間もなくして到着した看護婦に運ばれて行った】
【貧血と軽い風邪であったため、次の日の朝には帰れる…ということが、少女にも伝わるだろう】
【翌日から、青年は少し鬱気味になったのだった…】
/絡み乙ありでした
/途中眠気で何かいてるかわけワカメなとこらがあったかもです…ごめんなさい
- 903 :黒沢小百合:2011/09/01(木) 22:06:18 ID:SSMHlh/20
- 【AGカフェ】
「よいしょっと。」
いつものカウンター席につくなり、
紙袋をあさって、紙箱を取り出す小百合。
『大人の工作 -ミニボトルシップ- 』。箱の表面にはそう書かれていて、
中には、道具一式と一緒に、なにやらたくさんのパーツが入っている。
そう、小百合はいまからこの場所でこれを作るつもりなのだ。
- 904 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/09/02(金) 20:27:02 ID:ifd4e2460
- >>903
【チリリリン、という軽快な音と共に喫茶店のドアが開き、1人の青年が入って来た】
【小百合が座るカウンター席の、隣の隣のそのまたもうひとつ隣に座る】
ふぅ…アイスコーヒーを、一杯お願いします
【席に着くや否やため息を付き、注文をした青年は、チラリ…と横を見て】
【ぽけぇ…と、それを注視し始めた】
……
【単にボトルシップが珍しかったのと、女の黒髪に惹かれたから、だ】
【アイスコーヒーが来るまでの間、あるいは女に何かしら言われるまで、炎魔はボトルシップと黒髪を交互に眺めているだろう】
- 905 :黒沢小百合:2011/09/02(金) 20:38:22 ID:SSMHlh/20
- >>904
しかし、奇妙な事にこの店には『店員』が見当たらない。
この店の僅かなほかの客を見ていると、皆勝手に厨房に入ったり、
冷蔵庫から材料を取って適当に料理をしたり。
その光景はまるで、田舎などでたまに見かける野菜の無人販売所のよう。
「……ああ、初めてですか。この店は。」
あの女が、声を掛けてきた。
「この店の店主はどうにも物臭で、ほとんどこの店を放置しているのですよ。
ですから、常連は勝手に厨房を漁る。貴方もなにか食べたいなら、どうぞご勝手に。」
- 906 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/09/02(金) 20:50:15 ID:ifd4e2460
- >>905
/ぬわっ…その設定調べてなかった…ごめんなさい
【どうやら下を向き過ぎていて、周りが見えていなかったようだ】
【青年の放った注文は、誰にも届いていなかった…】
【あれ?あれ?とキョロキョロしていると――…先ほどまで注目していた女が話しかけて来た】
えっ、あぁ…そうなんですか
…ありがとうございます
【未だかつて、こんな適当な店があっただろうか】
【そんなことを考えながら席を立ち、カウンターの向こう側へ行って自分でアイスコーヒーを作る】
あ、あの…
お金はどうしたらいいんですか…?
【氷をいれて、コーヒーを注いだところで振り返り…ストローを刺しながら女に問いかけた】
- 907 :黒沢小百合:2011/09/02(金) 21:01:47 ID:SSMHlh/20
- >>906
「次回からは、適当にレジにでも入れて置いてください。
今回は常連の私が出しておきますから、どうぞごゆっくり。」
カウンター席近くのレジを指差して。
客にお金まで扱わせるとは、防犯上どうなのだろうと疑問は尽きないが
この店はこれでうまくやっているらしい。
「……ほかに何か、分からない事があればいつでもどうぞ。
ああ……コーヒーにあうつまみなんかは冷凍庫の右奥にバニラアイスが入っていますから。」
女性は、その後ボトルシップの組み立てを再開したが
どうにも模型と言うものに慣れていないらしく、中々に作業が進まない。
- 908 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/09/02(金) 22:01:20 ID:st8GyBag0
- >>907
ありがとうございます…何から何まで…
【初見の相手にお金を立替させるのはいかがなものか…と思ったのだが、小百合は既に模型作りを再開してしまっていた】
【邪魔をするわけにもいかず、小百合の言葉の通りに冷凍庫からバニラアイスを取り出し…元の席へ戻る】
【それから再び、小百合のボトルシップ作成を―――正確には小百合の指を、じーっ…と見つはじめる】
【不慣れとはいえ、器用に動く指はなんとも魅力的…だと青年は感じていた】
【もう少し会話をしてみたい。と考え、むぅ…と小さく呻いて話題を探し】
ボトルシップ、趣味、なんですか?
【カタコトな言語で、頬杖をつきながら聞いてみた】
- 909 :黒沢小百合:2011/09/02(金) 22:17:17 ID:SSMHlh/20
- >>908
女性のよく手入れされた長い黒髪は、艶やかに輝き
まるで陶磁器のように白い指先は壊れてしまいそうな危うさに満ちている。
もし、炎魔が新聞やニュースに一般人並みに目を通しているなら
彼女が、この都市有数の巨大企業、『千夜グループ』の軍事関連部門責任者である事に
気づくかもしれない。
「いえ……私もこういうものは初めて作ります。
その昔オスマントルコ帝国の皇帝はたとえ帝位を失ったとて人並みの生活ができるよう
一応の職業訓練を受けていたといいますし、技能訓練と言う意味でも
何か新しい物に手を出してみようかと思いましてね。」
ピンセットで、小さな部品をつまみあげる。
……うまく掴めずポロリと落としてしまう有様であったが。
「なんでも良かったのですが、これは中々に面白そうだったので。」
- 910 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/09/02(金) 22:54:43 ID:st8GyBag0
- >>909
【小百合のぼけぇ…っと眺めていると何処かで見たことのある顔…?と気にかかったが…それがテレビの向こう側の存在であるとは、思い至らなかった】
そ、そうなんですか…
【なんだかとても(青年にとっては)難しい単語が出て来た。ちょっと戸惑い気味に相槌を打った】
【そして、小さな部品を上手く掴めず落としてしまう様子とのギャップが少し面白おかしくて…くすり、と微笑んだ】
僕もやってみよっかなぁ…
【これからの会話をどう続けたらいいかわからず、独り言を漏らして】
【再三小百合の観察を開始した】
【時折口をストローに持っていき、右手のスプーンでアイスを食しながら…】
/遅れました…
- 911 :黒沢小百合:2011/09/02(金) 23:07:07 ID:SSMHlh/20
- >>910
「最近は書店などで解説書付きの物が買えたりしますからね。
値段も2,3000円と手ごろですし、興味があればどうぞ。」
話しながらも、ピンセットでボトル内で作業。
細長いパーツをくっつけようとしたとたん、既にくっついている部品に触れてしまい、
ぼろぼろと崩れてしまった。
「…………。」
さすがの小百合もため息をつき、
側においてあった冷めたカフェオレを一口。
- 912 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/09/02(金) 23:14:19 ID:st8GyBag0
- >>911
ぁ……あぁ…
【小百合がピンセットをボトルの中に入れ、部品を付けようとする…も、どこをどう謝ったのかボロボロと他の部分も儚く崩れてしまった】
【口をわなわなとさせて悲しみの表情を作る青年。とても残念そうだ】
ちょっとやってみていいですか…?
【しかしここから、自分ならできるんじゃないかという愚かな考えが生まれ】
【そぉっと立ち上がりながら、こう聞いてみた】
- 913 :黒沢小百合:2011/09/02(金) 23:19:46 ID:SSMHlh/20
- >>912
「……差し上げますよ。」
そういうなり、荷物をまとめて立ち上がる小百合。
財布から適当につかんだ硬貨をレジに投げ入れると、
そそくさと店から出て行ってしまった。
どうやら、やる気をなくしてしまったようだ。
- 914 :炎魔 ◆XGlbuX6gjc:2011/09/02(金) 23:26:39 ID:st8GyBag0
- >>913
えっ、あ…ありがとうございます
【有無を言わせず出て行ったしまった小百合の背中に、軽く一礼して見送ると、ボトルシップの前に座り…】
【夜が耽るまで、没頭していたという】
【勿論、全く完成しなかったが】
- 915 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/09/09(金) 22:06:44 ID:HnkBBDEo0
- 「暇である!!」
クロスは暇であった。
暇を持て余したクロスは無駄な工作を始めるという習性を持っている。
「よって今よりプラネタリウム二号機の開発を始める!!」
そう言うと、プラ板で出来たボールと油性ペンを用意する。
手元にどっかのサイトからググって出してきた星図を見つつ、油性ペンでボールに印をつけ始めた。
ちなみに一号機は穴の大きさに問題があり、星を上手く再現できなかったのだ。
- 916 :名も無き異能都市住民:2011/09/09(金) 22:15:02 ID:WVrfsEdY0
- >>915
「あのー。こんにちはー。」
【突然開くカフェの扉】
「解呪が出来る人、のお知り合いの方でしょうか?」
【入ってきたのはレインコートを被った少女】
「…」
【もう一人はメイド服を見にまとった長身の女性である】
- 917 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/09/09(金) 22:24:08 ID:HnkBBDEo0
- >>916
「ああん? 今度は誰だよもー」
ボールに手をつけながら、クロスは入ってきた人物に目もくれずに作業に没頭している。
「いらっしゃいいらっしゃい。解呪て……ああ、メイプルの受けた仕事か。
今度はどういうご用件で?」
- 918 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/09/09(金) 22:27:44 ID:WVrfsEdY0
- >>917
「ああ、その…知り合いの女の子の呪いを
解いてくれた人がどんな人なのか気になって…」
【クロスに目を向ける少女は…ディスから聞いた少女の外見と合致する】
「それで、貴方に聞けば居場所がわかると聞いたので…」
【もう片方の女性はわからない。ただじっとしているだけだ。】
- 919 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/09/09(金) 22:33:19 ID:HnkBBDEo0
- >>918
「ちょい待て」
男は立ち上がると、厨房へ続く出入り口に顔を突っ込む。
「おいクソガキー! ……っぶね! 包丁投げんな!
クソガキだからクソガキだろうが! おいやめろずん胴鍋はやめろ。
お前に客だ。早く来い。……駆け足!!」
厨房から顔を出したのは、茶髪の少年であった。
頭から角が生え、耳が垂れ耳であること以外は普通の少年だ。
『あ、なんっすか?』
- 920 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/09/09(金) 22:36:21 ID:WVrfsEdY0
- >>919
「…このお店はセキュリティはどうなってんでしょう…」
【厨房から流れてくる声を聞いて少女は首を傾げる】
「あら、もしかして…」
【出てきた少年を見て首をかしげて…そして口を開く】
「貴方がその…呪いを解けるお方ですか?」
- 921 :メイプル・ビターキャラメル:2011/09/09(金) 22:41:16 ID:HnkBBDEo0
- >>920
店長と思われる男はまた座ると、もくもくと作業を始めた。
「ああ、一応僕が解いたけど……それがどうかしたか?
問題でもあったなら、僕に出来ることならやるけど」
少年はカウンターから椅子を引っ張り腰掛ける。
「ああ、座って」
少年は二人もソファーへ座るようにと促した。
- 922 :黒沢小百合:2011/09/09(金) 22:42:45 ID:SSMHlh/20
- >>919
「……そんなことでは数少ない客も怖がって逃げてしまいますよ。
包丁とは何ですか、物騒な……。」
入り口近くで両手を腰に据え、呆れ顔を浮かべえいるのは、
その数少ない客の一人、黒沢小百合だ。
「この建物に、シャワー室ってありましたっけ。
もしあるなら、貸して頂きたい。」
いつもと違うのは、黒のスーツに黄土色と緑色の、
生き物の体液と思われるどろどろがところどころ、付着していることだ。
……実のところ、服の汚れは序の口で、
背後に回れば彼女自慢の美しい黒髪にべっとりと纏わり付いているのだが。
- 923 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/09/09(金) 22:46:48 ID:WVrfsEdY0
- >>921
「そうですか、それはありがたいです。」
【にこにこして返す少女】
「それならば…ひとつ注意が必要だと思ってですね。」
【少女はゆっくり目を開ける】
「あの子の力を抑えこんでもどこかに吹き溜まりが現れる可能性がありますから。
注意したほうがいいですよ?」
【少女に見えないいやらしい笑みを浮かべている】
【…あと、背後付近から水音がするように聞こえる】
>>922
「くんくん…」
【少女は振り向いて首を傾げる】
「色んな血の匂いがする…」
【だがあまり興味はなさそうだ】
「……」
【相変わらずメイド服の女性は黙ってみているだけである。】
- 924 :銃寺森クロス&メイプル ◆CROSS/.AzE:2011/09/09(金) 22:51:56 ID:HnkBBDEo0
- >>922
「大丈夫だって。普通の包丁が投げられたところで斬鉄は難しいだろ?
……って、どうしたんだよ小百合。ベットベトじゃん」
クロスは立ち上がり、箪笥からバスタオルやら何やらを取り出す。
「風呂場なら、このドア入って左に行った後に右。
石鹸とかシャンプーは中にあるから勝手に使って。
話を聞きたいところだが……今は風呂に入れ。今すぐ」
そう言って「STAFF ONLY」と書かれたドアを開ける。
「ああそうだ。おーい、黒瑪瑙ー!!
なんか服ー! ……いや、違う。俺のじゃなくて!
いや、でもお前用のは小さくて入らないか……
じゃあ俺用のでいいやー! もってきてー!!」
>>923
「吹き溜まり? それはどういう意味だ?」
首をかしげる少年。
「あいつの力は『相殺』したんだ。抑え込んだわけじゃ無い。
あいつの中で魔術の暴走が起きても、その暴走した分を別の魔術が『喰って』いる。
消えてはいないが、発動するにも『できない』状態を保っているわけだ」
少年は「それと」と言いつつ立ち上がる。
「なに笑ってんだ? お前」
その目は、捕食者の目であった。
- 925 :黒沢小百合:2011/09/09(金) 23:00:27 ID:SSMHlh/20
- >>924
「鉄の化身である貴方は大丈夫かもしれませんが、
我々のような善良な市民にとっては脅威です。以後、気をつけるように。」
軽く皮肉を飛ばしながらも、
ため息をついて指定された方向へと向かう小百合。
「今日捕まえた犯罪者の中に異能者がいましてね。
そいつの能力のせいで、こう。まったく、やってられませんよ。」
厨房や物置なんかには勝手に入っていたが、こういった部屋に入るのは
よくよく考えるとはじめてだな、などと考えて。
>>923
小百合はそのまま血の臭いを残しながら風呂場へと消えていく。
あれだけべっとりとこびり付いた汚れだ。
しばらくはでてこないだろう。
- 926 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/09/09(金) 23:04:05 ID:WVrfsEdY0
- >>924
「そんな怖い顔しないでくださいよ。」
【前に出ようとした女性を片手で止めながら言う】
「彼女は内心では「守りたい」という思いを捨てきることができない。
たぶん夢のなかあたりで気を紛らわすかもしれない。」
【笑うのはやめて、真剣そうな顔になる】
「その想いの残滓がどこかに現れるかもしれないですよ。
強さの度合いはよく分からないけど」
【そう言って立ち上がる】
「そうならないようにするには、呪いを抑えるのをやめたほうがいいかなーって。
思ってはいませんよー。」
>>925
「ふむ…結構キライじゃない匂いだったけど…」
【ちょっと名残惜しそうな顔をしている…】
- 927 :銃寺森クロス&メイプル ◆CROSS/.AzE:2011/09/09(金) 23:08:11 ID:HnkBBDEo0
- >>925
「おいおい、どんな能力者だよ。バケモノに変身でもしたのか?」
そう言いつつバスタオルを小百合に手渡し、風呂場に消えてゆくのを確認した。
「さて、何か飲み物でも用意してやるか。何かあったっけなー」
などと言いつつ冷蔵庫を開ける。
>>926
「ノラリクラリと、話が見えないな。気に喰わない」
少年は腰に手を当て、もう一方の手を広げて舌を出す。
そして少女の前へ、鼻先も当たるくらい前へ出る。
「何が言いてぇ? 何が目的だ? めんどくせぇからハッキリ言えよ」
- 928 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/09/09(金) 23:12:59 ID:WVrfsEdY0
- >>927
「…あーえっと…やっぱり直接的に言いましょう」
【そう言うと突然コートの袖から半液体状の腕が飛び出す。】
「……貴方は我々の計画の邪魔なので、いなくなってくれると嬉しいってことです」
【巨大な腕を振り上げる…】
「…え、ここは壊したくない?」
- 929 :黒沢小百合:2011/09/09(金) 23:18:09 ID:SSMHlh/20
- >>927
その時であった。
「奇怪な……蟲、といえばいいでしょうか。
そういった生物を使役して、攻撃してくる異能者でしたね。
破壊力こそないものの、うっとおしいのなんのって。殺すたび、体液を撒き散らすのですから。」
『いつもの』、小奇麗な服装の小百合がそこにいた。
恐らく、彼女は自分自身を具現化して操作しているのだろう。
「飲み物なら、何か軽いお酒をいただけますか?
できるなら、柑橘系の物がいい。」
- 930 :銃寺森クロス&メイプル ◆CROSS/.AzE:2011/09/09(金) 23:24:50 ID:HnkBBDEo0
- >>928
「だと思ったよ」
密着したのは、相手が動いてもすぐさま反撃できる為。
攻撃の回避は、この際考えない。
メイプルは巨大な腕を目視しつつ、それでもその腕を回避することもなく、
食らうのを覚悟した上で、少女の腹に向かって掌を打ち込んだ!
>>929
「……ちょっとびっくりした」
クロスはそう言いつつも、ジンとトニックウォーターを取り出す。
「じゃあジントニックでいい? っていうか、『お前』が飲んだところで意味あるのかよww」
そう言いつつも、何やら暴れてるメイプルに向かって声をかける。
「騒がしいぞ。外でやれ。あと、俺達の敵であるなら二度とこの店に来れないようにしとけ」
『やっちまってもいいのか?』
「店の破損は気にしなくてもいい。いつものことだ」
- 931 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/09/09(金) 23:29:48 ID:WVrfsEdY0
- >>930
「ほりゃ!」
【ためらいなく巨大な腕をメイプルに向けて振り下ろす】
どボォん!
【確かに少女にパンチはめり込んでいるが…】
「うーん。このお店の雰囲気は悪く無いと思ってたのだけど…
壊したくないから外でやる?もう勝負は付きそうだけども」
【メイプルにはウォーターベッドを叩くような感触が伝わるかもれない。】
【中にあの液状のものが流れているようだ】
>>929
「すいません。おそとでやりますね。」
【軽く頭を下げて返した。】
【…もう一人の女性は先に外へ出ていく。】
- 932 :黒沢小百合:2011/09/09(金) 23:32:06 ID:SSMHlh/20
- >>930
「何やら、騒がしいですけど問題発生ですか?
もし手に余るようなら、加勢しますけど……。」
まだ、小百合は酔った客が暴れている程度にしか思っていないようで。
ま、加勢の必要はないだろう。と考えているのがありありと感じられる口調だ。
「あとで飲むんですよ。『本体』がシャワーを浴び終えた後にね。
私が今飲んでも意味はないですし、もし飲んだとて具現化を止めた時にその酒は、ね。
……床を掃除するはめになりたくはないでしょう?」
- 933 :銃寺森クロス&メイプル ◆CROSS/.AzE:2011/09/09(金) 23:40:57 ID:HnkBBDEo0
- >>931
水であることは分かっていた。
だから、「拳」ではなく「掌」を打ち込んだのだ。
いくら水分とはいえ、衝撃をゼロにするのは難しい。
メイプルの撃ち込んだ掌の衝撃は水分の中を駆け回り、
もし少女の体を構築している水分が通常の水であれば、水しぶきとなって霧散しているだろう。
が、
「あぶしっ」
振り下ろされた拳。
メイプルは顔から床にめり込んだ。
>>932
「ああ、気にするな。ガキ共がじゃれてるだけだろう。俺達が出るまでじゃねぇよ」
そうは言ったものの、クロスは心配ではあるのか、戦いから目を離さない。
が、手も出さない。それはメイプルを思ってのことであろう。
「お前、結構面白いこと出来るんだな。
でも構築された後の物質までは取り込めない、か。
考えてみりゃ当然っちゃあ当然だけど。
本体は今どうしてる? わかるか? できれば相手が出てきた時間に合わせて作りたいんだが」
- 934 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/09/09(金) 23:44:48 ID:WVrfsEdY0
- >>933
「ん。何か…してるみたいね。」
【確かに衝撃は周囲を伝わるが…体内へ到達する前に勢いが衰える】
「一体何をしたというのか…分からないけど!
もう一発!」
【そう言ってもう片方の腕を振り下ろしにかかる】
【失敗はしていない。間違いなくメイプルの術は成功している
だが…一部に弾ける部分はあるが、全体のダメージとはならない。】
【どうやら彼女を覆うものは液状ではあるが、水ではないようだ】
- 935 :黒沢小百合:2011/09/09(金) 23:52:14 ID:SSMHlh/20
- >>933
「『私』ですか、今髪を洗っているところですよ。
中々にしつこくてね、べとべとして石鹸を使っても中々落ちない。」
『具現化された小百合』は手持ち無沙汰に、カウンターに身を預けつつ
二人の戦いを、まるでヒーローショーでも見ているかのようにぼんやりと眺める。
「後ですね、私の意識自体は『本体』のものですよ。
さすがに、何万と具現化している状態ではできませんけど
一人程度ならば完全に自分で操作する事が可能です。例えるなら、そうですね……。
シャワーを浴びながら、テレビ電話でクロスさんと話しているような物に近い。」
ここで、小百合はところでと言葉を切り。
「……ところで、貴方の服ってどんな物を用意する気なのですか。
まさかあの真っ赤なコートとか、ですか?」
- 936 :銃寺森クロス&メイプル ◆CROSS/.AzE:2011/09/09(金) 23:55:09 ID:HnkBBDEo0
- >>934
「……っだァー!!」
叫びと同時に、メイプルが四つん這いになって床を押し出す。
ギャリッという音と共にメイプルが後ろへと跳躍。
ギリギリで一撃を回避した。
「なんだてめぇ、スライムか?」
メイプルが耳にかけたピアスを外すと、邪気を込める。
シャリンという音と共に、ピアスは巨大な鎌へと変貌を遂げた。
「一応武器なんて出してみたが……斬ったところで意味あるのかねコイツは」
>>935
「なるほどなー。だいたい分かった。
服の方は安心しとけ。普通のワイシャツとズボンだ。
下着までは揃えられないから、いま黒瑪瑙が買いに行ってる」
ズズズとコーヒーを飲みつつ、クロスはメイプルに向かって厨房の方を指差した。
「あと、あの紅いコートは普通の人には着れねーよ。
色々と仕込んであるからな。多分、重すぎてやばい。
着てみる?」
- 937 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/09/09(金) 23:58:09 ID:WVrfsEdY0
- >>936
「…意外にしぶとい…」
【先ほどの余裕が消えたのか、少女はその体型に合わない細足を蹴って後方に下がる】
「そのでかい得物…ここじゃやりにくそうだし、お外にでます?」
【巨大な腕も刃の形へと形を変えていく】
- 938 :黒沢小百合:2011/09/10(土) 00:06:20 ID:SSMHlh/20
- >>936
「下着の代金のほうは、後で出しておきますよ。
また、お金を送っておきますから経営の足しにしてください。
……っと、ようやく取れたか……。すいません、スポンジをダメにしてしまったかもしれません。
石鹸も、一つ丸々なくなってしまった。」
汚れが取れたなら、小百合もそろそろ上がってくるだろう。
酒を造り始めるには、ちょうどいい頃合といったところか。
「へえ、そんなに重いのですか。
切るのは遠慮しておきますけど、だいたいどのくらいあるのですか。
5、60kgくらい……いや、もっとか……。120、と予想してみましょう。」
>>937
「しぶといのは結構ですが、そろそろ退散していただきたいですねえ。」
今まで感染するのみだった小百合が、ふいに少女に声を掛けると同時に
頭上から『小さな丸薬』のようなものが降り注ぐ。
――『高分子吸収ポリマー』
小百合が以前、水を操る怪人との戦いに備えて秘策として用意していた物だ。
触れれば、たちどころに水分を吸収してしまうこの特殊素材は水を使う物にとっては脅威そのもの。
- 939 :銃寺森クロス&メイプル ◆CROSS/.AzE:2011/09/10(土) 00:10:07 ID:HnkBBDEo0
- >>937
「……別に。俺はどこでもいいけどね!!」
メイプルは鎌を振るい、思いっきり投げた。
ただそれだけだ。ヤケクソにでもなったのか。
しかし少年の目は、まだ何も諦めてもいない。
メイプルは鎌を投げたと同時に、少女に向かって走り出した。
>>938
「いいよいいよそのくらい。
消耗品なんて消えてナンボだ」
そう言いつつ、クロスは冷蔵庫を開けた、ところで……
「おいちょっと待て小百合。
うちのクソガキの喧嘩だ。
手を出さないで……ああ、もう遅いか」
やれやれと額に手を当てた。
「まぁ仕方ないけどさー! そろそろ客の迷惑だしさー!」
- 940 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/09/10(土) 00:25:01 ID:WVrfsEdY0
- >>938
「ぬぅん?」
【突然頭上からボロボロと降ってくる丸薬を不思議そうに見るが】
「こんなものが…なんになるっていうのか!」
【一気にその腕で振り払おうとする。】
【しかしその物体はその液状の腕に取り込まれる】
「んあれ?ナンカ動きがかたくなっちゃったな…」
【少しずつその丸薬は水分をすこしずつすって大きくなるが。
少しずつ半透明の腕が固体のように固く成るのみであり、完全に吸われはしない】
「…外に出たいんだから…邪魔するのはよしてね!」
【そう言って少女は小百合に向けて固形になったその腕を振り回した】
>>939
「…もぉ…あの人のせいでやりにくいったらない…」
【そう言って少女は大きな鎌を受け止めると同時に】
「外で…待ってますから!」
【カフェのウィンドウを突き破って無理やり外へと飛び出していった】
- 941 :黒沢小百合:2011/09/10(土) 00:31:13 ID:SSMHlh/20
- >>939-940
「一応、都市の治安を守る物としては見過ごせません。
第一、貴方も酔客の相手を――。」
振り向いて、クロスに説教を垂れようとしたところに
少女の豪腕が一撃、小百合を跳ね飛ばし――。
いや、小百合は吹き飛ばされた瞬間具現化を止めた。
吹き飛ばされて備品を壊さぬよう、と考えたのだ。
「クロスさーん、ちょっと服、もってきてくださーい。
そいつ、『×××して、××して、×××』しますからー。」
風呂場からクロスを呼ぶ小百合の声。
非常に物騒なのは気のせいではない。
- 942 :銃寺森クロス&メイプル ◆CROSS/.AzE:2011/09/10(土) 00:34:42 ID:HnkBBDEo0
- >>940
外に出た少女の上を、少年が一飛びで追い越す。
「ったくもー、よぉー。邪魔なら邪魔でさー、頼むとか無いのマジで。
僕にとってはあのディスって奴がどうなってもいいし、頼まれたからやっただけでさ。
でも、まぁ」
少女の前、道路に立った少年は空を見上げる。
「もう、遅いよな」
今度は鎌を、真上に向かって放り投げた。
少女に向かっての攻撃は無い。
>>941
「ガキ相手になさけないぞ小百合」
クロスは脱衣場に服をおく。
「第一、ありゃメイプルの喧嘩だ。
手出しはしない方がいいぜ。それに、だ」
クロスは表の方へと顔を向ける。
「そろそろ決着がつく」
- 943 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/09/10(土) 00:39:03 ID:WVrfsEdY0
- >>942
「…あの子は私たちのために力を覚醒させなくてはいけない…
あの子は…王なんだから!!」
【外ではもう片方の女性がじっと待っている】
「もう遅い…何を言っているのか分かりかねるけど…」
【空に放り投げられた鎌を見て軽く笑う】
「ちょっと隙だらけっぽくない!?」
【巨大な腕は刃に変わってメイプルに一直線に伸びていく】
- 944 :黒沢小百合:2011/09/10(土) 00:49:33 ID:SSMHlh/20
- >>942
「そもそもこの都市において、『子供相手』だとかいう発想がよくない。
子供に見えても、その実数千年を生きる物、恐るべき能力でこちらを殺しに掛かってくるものなど、
ごまんといる。貴方も、そういった輩を相手にした事は『夜の生活』だけではないでしょう。」
ひょい、と腕だけを出してタオルやら服やらを取り込んでいく小百合。
しばらく、ごそごそと体を拭っていたがようやく、服を着て現れて。
「思ったよりも、良い服を着ているのですね。
そういえば、貴方は割と服装に気を使うほうでしたか……。」
身長の高い小百合には、クロスの衣服がよく似合う。
- 945 :銃寺森クロス&メイプル ◆CROSS/.AzE:2011/09/10(土) 00:55:44 ID:HnkBBDEo0
- >>943
ブスリ、と。
刃がメイプルの腕に刺さった。
伸びた刃を腕で防御したのだが、刃物に対して生身の腕が防御に使えるわけがない。
血がどくどくと流れ、少年の足元が真っ赤に染まってゆく。
だがメイプルはニヤリと笑い、こう言った。
「つ か ま え た」
ザン、と鎌がメイプルの隣に落ちて地面に突き刺さる。
この鎌は何の為に上に投げられたのか。
それは、鎌の次に落ちてくるものを見ればわかるだろう。
落ちてきたのは、何やらロープのようなもの。
空から一本、垂れている。よく見れば、ロープのようなものの先からバチバチと光が出ているのがわかるだろう。
投げられた鎌。それが斬ったのは……電線だ。
「打撃も斬撃も効きそうに無い……
だったら電気はどうだ? チキンレースと行こうぜスライム女!!」
切れた電線をメイプルが掴み、
容赦なく、その切断面を少女から伸びて自身に刺さる刃に押し付けた!
少女にも……もちろんメイプル自身にも! 高圧電流が駆け巡る!!
>>944
一瞬だけAGカフェの電気が消え、すぐにまた明るくなった。
自家発電に切り替わったのだ。
「あー、やりやがったなアイツ。後で修理しとくか」
そう呟きつつ、風呂から出てきた小百合に目を向ける。
「いや、まぁそうなんだけどなー」
クロスの周りにだって、少女や少年に見えて実は千年は下らない長寿の人物を見たことはある。
「でもまぁ、アイツらは『ガキ』だと思うよ? 雰囲気で見てる」
と、外を眺めながら言った。
「おお、似合うじゃん。男物着てる女に『似合う』って言うのも変だけどな。
胸の辺りとかは大丈夫か? 男物だから立体裁断が出来てなくて、
その代わり大きめのものを用意したんだが」
- 946 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/09/10(土) 01:00:01 ID:WVrfsEdY0
- >>945
「な、これって!」
【突然全身を駆け巡った感覚に少女は驚きの声を上げる】
「だ、だめ!早く拡散…を!」
【少女は慌てて液体をあちこちに飛ばし始める。】
【拡散した液体はたちまち炎に包まれて周囲の民家、通り道などににばらまかれていく】
「は、はや…く!」
【だがメイプルが捕まえた部分は拡散がおくれ、
たちまち炎が少女を包もうとしていた】
- 947 :黒沢小百合:2011/09/10(土) 01:05:10 ID:SSMHlh/20
- >>945
「ふむ……、雰囲気ですか。
まあ、獣じみてはいますが貴方の判断は確かですから。」
しかし、釈然とはしていない、という風の表情。
この女は、すぐに感情が表情に出るので分かり易いことこの上ない。
「ええ、胸周りもなんとか。
男物というのも、結局は服ですからね。似合う者もいるでしょう。
逆に私が、ゴスロリだとかああいうフリル満載のかわいい服を着ても似合わないように。」
ぐん、とその豊満な胸を自慢げに強調して見せる小百合。
やはり、似合うといわれると嬉しいのだろう。
- 948 :銃寺森クロス&メイプル ◆CROSS/.AzE:2011/09/10(土) 01:10:14 ID:HnkBBDEo0
- >>947
「大丈夫そうなら何よりだ。っと、胸を強調するな胸を。
巨乳は好かん! やっぱり俺はゴスロリロリした服が似合う子が……っと、ちょっとすまんね」
クロスは小走りに表へと出る。
「決着がついたみたいだ。どうせクソガキのことだし、何をしたかは予想がつく。
手当てしなくっちゃ」
>>946
「へっ……チキンレースにもなんねー……か……二人共、崖から落ちちまった」
などとメイプルは言いながら、電線を手放してバタリと倒れた。
メイプルの体からは焦げ臭い匂いが流れ、腕は皮膚が焼けた上に指が変な方向へと動いている。
その前に、クロスは立った。
「……ま、クソガキにしちゃ上出来か」
メイプルを抱えると、残ったメイド服の女に声をかける。
「おい、今日はもうこの辺にしておかないか?
お前たちは用件も伝えたし、お前の仲間も治療が必要だろ?」
周囲に散らばった液体を眺めつつ、クロスは言った。
「それでもまだ相手になるってんなら、流石に俺が出ざるを得ない。
『紅獄罰骨』が相手になる……と言えば、その意味がわかるか?」
- 949 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/09/10(土) 01:16:12 ID:WVrfsEdY0
- >>948
「…うう…わたしは…まだ…」
【油が勢い良く燃え落ちたあとには。全身をやけどし、
痛々しい姿になった少女が立っていた】
「しる…もんか…まだ勝負は…ついて…」
【そこまで言おうとしたところで】
ヒュッバシイン
【メイド服の女性は少女の後頭部に鋭い一撃を決めた】
「…ぁ」
【少女は力なく倒れ、女性はそこを抱え上げて担いだ】
「……」
【女性は無表情に手を前に出して首を横に降った。】
【その目からは「今日はここまでにする」と言いたげな視線が浮かんでくる】
【次第にあちこちで消防車のサイレンの音がし始めた。】
【炎があちこちに引火したのだろうか】
「……」
【女性は黙って45度の角度で頭を下げた】
- 950 :黒沢小百合:2011/09/10(土) 01:19:52 ID:SSMHlh/20
- >>948
「結局、服と言うのは機能が……っとと、
まったく、人の話を聞かないお人だ……。」
小百合はべとべとに触らないようにしながら、
自分の着てきた衣服の袖口から乱暴に紙片を引っつかむとクロスの後を追い。
「手当てが、必要なのでしょう。
私ならばこの場である程度の処置ができますよ。」
既に小百合は、衛生兵を具現化し待機させている。
敵が引けば、すぐに処置に当たらせるつもりだ。
>>946
「そしてこの、『剣征帝の従者』こと黒沢小百合も同じく相手になりましょう。
悪ふざけも結構ですが。そう、貴方は少しやりすぎた。」
啖呵を切りながら、クロスの隣に並ぶ小百合。
- 951 :銃寺森クロス&メイプル ◆CROSS/.AzE:2011/09/10(土) 01:28:11 ID:HnkBBDEo0
- >>949
「早く行きな。こっちも色々と忙しいんでね」
そう言ってクロスは背を向ける。
女性の意図が伝わったのだろう。警戒は解いていた。
「それと」
背を向けたままクロスは言葉を出す。
「次はもっと派手にやろうぜ」
そしてクロスは店の中へと戻っていった。
>>950
「敵は退いた。すまない小百合、治療を頼む」
そう言ってクロスはメイプルをソファーに寝かせる。
腕の筋肉組織はボロボロだが、適切な処置を施せば復活は可能だろう。
皮膚は少し、移植が必要かもしれない。
「ムチャやりやがって、このガキ」
「お……い」
「なんだよ」
「『クソ』……は、つけない……のかよ?」
「……生意気なガキだよ、まったく」
二人してヒヒヒと笑った後、メイプルは目を閉じて意識を手放した。
「やれやれ、大した奴だよ。
ああそうだ、小百合。そこの服、洗濯しておこうか?」
- 952 : ◆Dix.OeuOIQ:2011/09/10(土) 01:29:35 ID:WVrfsEdY0
- >>950
「………」
【黙って会釈し、片手を前に出した。】
【敵意は感じられない。最初から彼女は戦うつもりはなかったようだ。】
「……」
【あたりに火の気が出ているのを見て、再び頭を下げた】
【…服のポケットから時折小切手が見えたりしている】
>>951
「……」
【女性はその返答に対して、また沈黙で答え。】
「b」
【親指を立てて返した。】
- 953 :黒沢小百合:2011/09/10(土) 01:35:19 ID:SSMHlh/20
- >>951
「さすがにここでは大掛かりな手術はできませんが、この程度ならここで処置は十分可能です。
とはいえ、後で一応病院に行って治療を行なうようにしてください。」
数人の兵士が、気絶したメイプルに手早く処理を行なう。
その手際は見事なもので、あっという間に処置が終了してしまった。
「ん、ああ……あの服は恐らくもうダメでしょう。
臭いもなかなか強烈で、洗っているうちに繊維のほうが傷んでしまう。
どうしても、というなら黒瑪瑙さんように差し上げてもいいですけど。」
- 954 :銃寺森クロス&メイプル ◆CROSS/.AzE:2011/09/10(土) 01:42:45 ID:HnkBBDEo0
- >>953
「ん、そうするよ」
応急処置を施している間に、クロスは携帯電話を開く。
すぐに救急車が駆けつけ、メイプルを運んでいった。
「あの服、そんなに汚れてるのか……いや、黒瑪瑙にあげても着れないだろアイツ!
ったく、何と戦ったんだよ一体」
そう言いつつ、クロスはやっとジントニックをつくり、小百合の前に出した。
- 955 :黒沢小百合:2011/09/10(土) 01:48:30 ID:SSMHlh/20
- >>954
「ですから、蟲ですよ。さっき説明したでしょうに。」
呆れ顔の小百合は、ジントニックが出されるなり
それを一気にあおり、ふうと息を吐き出してまさに一息ついたといったところで。
「……んー、お酒と言うのはやはり少量を嗜む分には良いですね。
酒は呑んでも呑まれるな、とはよく言ったものです。
どうです、貴方も一杯やって一息ついては。明日は久々に休暇ですから付き合いますよ?」
小百合が今日、いつもより軽かったのは明日が休みで少々浮かれ気味だったからだろう。
そうでなければ、小百合とて風呂を貸してくれなどとは頼むまい。
- 956 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/09/10(土) 01:58:50 ID:HnkBBDEo0
- >>955
「あー、そうだったっけ? 蟲か。……虫かー」
前回のG騒ぎがあった為、クロスもあまり良い気はしない。
「なんだよ明日休みか。じゃあ少し俺も飲ませてもらおうか」
クロスはそう言うと氷を大量に容器に入れ、ボトルも持ってソファーへと向かう。
ソファーの前に氷、ボトル、割る用の様々な飲み物、酒のアテなどを置いてソファーに座った。
「こっち来いよ」といって隣の席をポシポシ叩く。
「虫ってこう、さ。綺麗な奴は本当に綺麗なんだけど、汚い奴はマジでやべぇよな。
よくもまぁ、あれだけ不快感を撒き散らせるデザインに進化したモンだと思うわ」
- 957 :黒沢小百合:2011/09/10(土) 02:05:47 ID:SSMHlh/20
- >>956
「おや、親切なのですねえ。
今日ばかりはお言葉に甘えるとしましょうか……失礼。」
子供のようにソファを叩くクロスに苦笑しながらも、
指定された場所に腰を下ろす。この光景を彼女の部下が見れば
十人中十人とも『あの冷徹な主任が笑うなんて、信じられない』と答えるだろう。
「生存競争の果てにああなったのでしょうけれど、生き物と言うのは不思議なものです。
生理的嫌悪を催すデザインのものもいますけど、実際は清潔だったりするんですよね。虫って。
例えば蜘蛛などは外見こそグロテスクですが、消毒作用のある唾液で毛づくろいをするために
その見た目と反してかなり清潔だと聞いた覚えがあります。」
- 958 :銃寺森クロス ◆CROSS/.AzE:2011/09/10(土) 02:13:45 ID:HnkBBDEo0
- >>957
「へぇ、その辺りはちゃんと考えてんのか。
でも今日の相手はちょいとグロ過ぎだろ。
なんだよ、殺すたびに体液撒き散らすって!
不快感与えるためだけに使役された虫としか思えん」
クロスはウィスキーを飲みつつ、「俺が相手にしなくて良かった」と呟いた。
「そういえば俺の知り合いにも蟲を使う奴がいたな。
神羽って奴がそうだった気がする」
そうして夜は更けてゆく……
//「このまま会話は夜遅くまで続いた」ってことで、切らせていただきますぜ〜
- 959 :名も無き異能都市住民:2011/09/15(木) 22:47:56 ID:cvq7FI.w0
- ―――???
「……?」
ふと、気付いた。
頭に過った予感が、真実なのかを確認するために周囲を見渡す。
何時からだろうか。買い物の帰り道を歩きもうすぐ家に着く予定だった所。
周囲は左右の脇に等間隔で木の並べられた一本道。
「歪みの影響かな、いや、これは……」
そう思案しつつ、白い女は取りあえず歩を進めた。
- 960 :名も無き異能都市住民:2011/09/15(木) 23:01:22 ID:SSMHlh/20
- >>959
人通りのない、暗い夜道の先。
壊れた家具やドラム缶、打ち捨てられ錆だらけの車などが
一緒くたにぶちまけられた、ゴミ捨て場のような空き地に動く人影が見える。
――ズチャッ――ズッ――。
しゃがみ込んで一心不乱に右手を振り下ろす人影。
それが振り折されるたび、その汚泥が跳ねるような音が響いた。
- 961 :名も無き異能都市住民:2011/09/15(木) 23:10:11 ID:cvq7FI.w0
- >>960
「なんだ、違ったか」
先に進むと、複数の感情が入り混じった複雑な表情を見せた。
道の先が見覚えの無かった事に対する少しの喜びと、少しの疑問。
「似てただけな、まぁいいや」
後ろを振り返って今までの道を眺めていたが、
気のせいで済ませると前を歩きだした。
「わ……なんだここ」
辿り着いた場所の余りの酷さに驚きの声を上げる。
跳び跳ねる泥が買った物に付かない様に高く持ち上げると人影を警戒しながら進んでいく。
- 962 :名も無き異能都市住民:2011/09/15(木) 23:24:00 ID:SSMHlh/20
- >>961
いくら暗いといっても、目と言うのは次第に慣れていく物で。
人影との距離が近づくにつれ、『ヤツ』が何をやっているのか分かるようになってきた。
――『ヤツ』は、地面に倒れたもう一人の人物に跨り、
その頭部目掛けて、大型の……恐らく軍用ナイフを何度も、何度も振り下ろしていた。
既に相当量の血液が流れ出ている事から、倒れている人物は恐らく事切れている。
「……ヒょっ!!!」
ふいに、その人影が叫んだ。興奮し、甲高いが男の声だ。
「見たのか、見たのか。ヒョッ……!!」
『ヤツ』は顔をぐるりと動かして白い女へと向けると
まるで昆虫を思わせるような動きで、ゆっくりと歩き出した。
影の中で、その異様な輝きを宿した眼光だけがらんらんと輝いている。
- 963 :名も無き異能都市住民:2011/09/15(木) 23:34:16 ID:cvq7FI.w0
- >>962
「う、わっ……」
男のやっていた事が時間が経つにつれて明らかになっていた。
顔を歪ませ惨状を直視しないようにしつつ、一歩ずつ退いて男から離れていく。
- 964 :名も無き異能都市住民:2011/09/15(木) 23:47:14 ID:SSMHlh/20
- >>963
微かな月明かりが、男の顔を照らす。
手入れのされていないぼさぼさの頭髪は油かのように
粘着質な何かが付着しており、においも酷い。
そして何よりくたびれた皮の服と、手に握った大きなナイフには
べっとりと血と、薄い肉の筋が付着しているではないか。
「……なあ、月曜日に上司に怒られたんだ。
火曜日には何があったと思う。そう、道行く女が俺をみて笑いやがった。
そうさ、笑った。確かに。あげく水曜日にはアレだよ。アレがあったんだ。
なあ分かってくれるだろ。仕方なかったんだ。こっち見ろ。なあ。」
男は距離を詰めるでもなく、白い女とまったく同じ速度で後を追ってくる。
時折、発作のように甲高い声を出す男の精神状態は正常ではないことは確かだ。
- 965 :名も無き異能都市住民:2011/09/15(木) 23:54:56 ID:cvq7FI.w0
- >>964
「な、なんだよ、」
何て場所に来てしまったんだと心の中で後悔する。
あの場所に来た時点で不思議に思い退き返すべきだったと自身を呪う。
目の前の男に対する純粋な恐怖が原因で思った様に言葉が出ない。
「何が、あったのさ」
既に的もな精神状態にある彼女ではなかったが、
最低限の備えをする程度の余裕は有った。
異能を持つ人間に対しての、対抗の手を打つ心構え程度だが。
- 966 :名も無き異能都市住民:2011/09/15(木) 23:59:26 ID:SSMHlh/20
- >>965
「わからねーのかァァア!!
この堕落した女がァーッ!!!」
男は突如激昂し、力任せに地面を蹴る。
大きく振りかぶられたナイフは、まるで空を割く様にひゅうと音を立てて
女の頭上から一直線に落ちて来る!
大振りの一撃は隙こそ大きいが、威力については折り紙つきだ。
まともに喰らえば、その後の運命は言うまでも無いだろう。
- 967 :名も無き異能都市住民:2011/09/16(金) 00:07:32 ID:cvq7FI.w0
- >>966
「……ッ!!?」
男の急な大声に身が竦み上がるのを感じ、
それに伴った恐怖心で反応が一瞬遅れたのを悟った。
必死に回避行動を取って、ナイフが腕を掠める程度に留めたが決して上出来とは言えないだろう。
「わ、解らないよぉ!!」
男から距離を取って逃げつつ叫ぶ。
唯一可能な接近戦も相手がナイフを持っている以上、不利が付くだろう。
それに、あの精神状態故に何時か来るであろう奇策に対する対抗が確実に出来ないのも問題である。
- 968 :名も無き異能都市住民:2011/09/16(金) 00:18:29 ID:SSMHlh/20
- >>967
男のナイフ捌きは上手いとはいえないが、
それでも、あの刃渡りの長いナイフは脅威以外の何物でもない。
空を切ったナイフは、勢いあまって石畳に叩きつけられ
軽い金属音と共に、火花を散らす。
「ふひゃあっ!!!」
今度は、振り下ろした体勢を利用した半ば体当たりのような、
体ごとぶつかってくる下方からの突き。
直線的な連続攻撃ではあるが、女に体勢を立て直す隙を与えない。
- 969 :名も無き異能都市住民:2011/09/16(金) 00:24:32 ID:cvq7FI.w0
- >>968
「ふ、ざけっ!!」
飛び上がって回避すると壁を蹴って更に高く。
男を越えた上空で女は点へ手を翳す。
――その時だった。
上空を走る一機の獣。
女の所有する機械で出来た鷲が白い女をさらって行ってしまった……。
//あら、緊急離脱……。
- 970 :No.9:2011/09/16(金) 00:27:54 ID:y79ArvVk0
- 「おいおい、こりゃ何だ?」
トゲトゲの金髪に大きなピアス。
身長の低いマセた不良という印象を与える少年が、路地裏から出てくる。
恐らく歪みに巻き込まれたのであろう、泥の撥ねる道を歩きながらそのダボついたカーゴパンツは特に汚れていない。
片手にはトランプ。彼は路上賭博で生活費を稼いでいるのだ。
「…参ったな、めんどくせえところに遭遇しちまった。
おいおい、ナイフ持ちながら素手の女に本気ってのはどういう事だい」
全力で、トランプをプラスチックケースごと男に向かって投げる。
狙いは曖昧だったが、―――ふいにトランプのケースは半透明になり、9つに分裂した。
投擲の軌道はそれぞれ微妙に異なっている。どれか一つくらいは男に当たるだろうか。
「あれ、あんたの知り合い?」
そうしながら、少年は女に向かって声をかける。
- 971 :名も無き異能都市住民:2011/09/16(金) 00:28:00 ID:SSMHlh/20
- >>969
――ひゅん、と音を立てて女より幾分下をナイフが通り過ぎる。
男がほとんどやけっぱちに投げたものだろうが
そんな物があたるはずも無く、そのまま闇に飲まれてどこかで
カランと金属音を立てた。
- 972 :名も無き異能都市住民:2011/09/16(金) 00:34:04 ID:SSMHlh/20
- >>970
「きゃあ!」
ケースの一つが、ちょうどNO.9に背を向けていた
男に命中し、それに驚いたのかやつは驚いたような声を揚げた。
「なあ、あんたでいいや。聞いてくれよ。
今週の火曜日さ。あの女、俺にのんだくれと言いやがった。
俺の頬を平手で張りやがったんだ。なあ。酷いと思わないか。」
男はしばらく呆然とNO..9を見つめていたが
ふいに先ほどどこかへ投げてしまった大型ナイフより幾分か小さい、
市販の折りたたみナイフを取り出すと、ぶつぶつと意味の分からないことを呟きながら、
ゆっくりとそちらへ向かっていく。
- 973 :南瓜:2011/09/16(金) 00:42:41 ID:y79ArvVk0
- >>972
命中すると共に、他のケースはふっと虚空に掻き消えた。
『九廻世界(リアクトナイン)』の能力の結果だ。
「酷いと思うがね、それはあんたとその女の間でする話じゃねーの?
ナイフで切るだのなんだのは、二人でした方が良いと思うぜ?」
話しながら、近くの獲物を探す。
賭博場での持ち物検査を通れないので、戦闘用のナイフは置いてきてしまったのだ。
だが、この路地にはゴミはあっても手ごろな武器になるようなものが無い。
(おいおい、マズいぞこりゃ…ッ!何だって運の悪い歪みだ、こっちは逃げるのにも適してねーのにッ!)
- 974 :No.9:2011/09/16(金) 00:43:12 ID:y79ArvVk0
- //訂正 南瓜→No.9
- 975 :名も無き異能都市住民:2011/09/16(金) 00:47:32 ID:SSMHlh/20
- >>973
「あの店、絶対八百長してやがるんだ!
他の客もグルだ!なんて世界だ!!!」
男の話は、女がなんだ、上司が何だ、酒が何だと
コロコロと話題が変わり、要点がつかめない。
そうしているうちに、男のナイフを握る手には力が込められて。
「おほっ!!!」
男は大きく振りかぶると、そのまま体を捻るようにして横に薙いだ。
- 976 :No.9:2011/09/16(金) 00:57:56 ID:y79ArvVk0
- 「完全にイカれてやがンな、だけど…」
走ったらあっちの方が早い。なんとなく、そんな気がする。
それにこっちは土地勘も無いのだ。
「戦うしかねーか。ぶちのめさせてもらうぜッ!」
横への薙ぎ、だとNo.9が知覚するのはナイフが直前に迫ってからだった。
相変わらず肉体の能力は低い、と実感しながらも、彼は既に能力を発動させていた。
No.9の体の存在感が薄れ、その像が9つに分離する。
9人のNO.9はそれぞれ別々の避け方をした。
「これが、ベストかッ!」
分身達はナイフが当たりそうになる度に掻き消えたが、
そのうち2人程度は、ナイフを無傷で避けることに成功する。
さらに像は1人に収束した。9つの可能性のうち、1つを選び取る能力。
彼が『ギャンブルでは最強』と自負する能力であるが、戦闘では中々使いづらい。
「あんたも気の毒だが、そんなのに襲われる俺のほーが気の毒だ」
大振りの隙をついて、右足を折り曲げ、空いた胴体に靴底を叩き込む。
そしてナイフを奪おうと更に間合いを詰めにかかった。
- 977 :名も無き異能都市住民:2011/09/16(金) 01:05:22 ID:SSMHlh/20
- >>976
「ぐぇっ!!」
男は既に、返す刀で再びナイフを横に薙ごうとしていたが
動体に強烈な蹴りを入れられ、ぐらりとふらつき尻餅をつくように倒れる。
しかし、倒れながらも強引に振りぬかれたナイフは
胴が傾いたせいでひゅんと空しくNO.9の頭上を切り裂くだけだった。
男を取り押さえるなら今しかない。
- 978 :No.9:2011/09/16(金) 01:09:00 ID:y79ArvVk0
- >>977
「うおッ!?あ、危ねー…観念しやがれッ!!」
倒れた男のナイフを持つ手にまたがろうと、左足をかける。
腹いせに左ひじで顔面を狙っておとなしくさせようとした。
「へっへ、タッパはねーけどな、技術は習ったンだよッ!」
- 979 :名も無き異能都市住民:2011/09/16(金) 01:19:13 ID:SSMHlh/20
- >>978
――ドガッ
片手の動きを封じられた男の顔面に硬く尖った肘が叩き込まれる。
おそらく、薬物か何かでボロボロになった歯が欠け、男の口の端からぼろりと零れ落ちた。
「おぉおおお゛お……。」
あまりの痛みに、呻いているのだろうか。
今までとは違う、低い叫びをあげた男。
もし、No.9が警戒を怠っていないなら
空いたもう片方の手に、どこから取り出したのか同じナイフが
握られていることに気づくだろう。
- 980 :No.9:2011/09/16(金) 01:23:57 ID:y79ArvVk0
- >>979
腕を絞めてナイフを取り落とさせようとしたところで、
男の意識がその腕に向いていないことに気がついた。
余りにも簡単に、『ナイフを取り落とし』たのだ。
「もう一本かッ!!!?」
素早く飛びのこうとする。可能ならば男の取り落としたナイフを手に入れようとする。
- 981 :名も無き異能都市住民:2011/09/16(金) 01:32:35 ID:SSMHlh/20
- >>980
既に男は、いつでも攻撃できる態勢にあり
もしナイフを拾おうとすれば、たとえ俊敏な猫であろうとも
男の得物の餌食になるのは確実。
――ナイフを拾うことはできない。
「ぐぎぎぎ、おまえもかッ!おまえもグルなんだなッ!!
やっぱりだ!みなグルになって俺を陥れようとしやがる!!!」
No.9が飛びのいた拍子に、踏まれていた腕を痛めたのか
片腕をだらんと垂らして近づいてくる男。どうにかしてやつの脇を抜け、改めてナイフを拾うか?
それとも、このゴミの中から何か、使えそうなものを探し出すか?それとも、ここで撤退するか。
No.9の判断はいかに。
- 982 :No.9:2011/09/16(金) 01:49:49 ID:y79ArvVk0
- >>981
「逃げたい、ってのが本音なんだけどよー」
きしし、と笑う。
「逃げたところで…こんな危険な奴をほっとく訳にはいかねーんだよ、No.31が出会ったらどうする…」
それは自分に言い聞かせるようにつむがれた。No.9の額に汗が滴る。
「よっし、覚悟は決めた。お前、捉え切れるか?」
ぶわっ、と。No.9が駆け出す。存在感がどんどん薄くなって、9つに分かれた像は
あるものは左、あるものは右、あるものは真正面に突撃してくる。
上手くすり抜けられたやり方、が一つでもあればいいのだ。
逆に言えば、全てのやり方で負傷した場合、彼は必ず負傷してしまうのだが。
とにもかくにも、バラバラに動く9つの像が男に向かって駆けてくる。
- 983 :名も無き異能都市住民:2011/09/16(金) 01:56:36 ID:SSMHlh/20
- >>982
男は、NO.9の能力に驚いたように立ち止まり、
殆ど闇雲にナイフを振り回す。
そう、最初にNO.9が能力を使った際に
この男は背を向けていたため、今の今まで、
異能者を相手にしているとは思っていなかったのだ。
「うおお……。」
男の動きは狙いも何も無い。
じっくりと様子を見れば問題なく、一撃を与えられるはずだ。
- 984 :No.9:2011/09/16(金) 02:04:12 ID:y79ArvVk0
- >>983
「避け方」は相手の動きを見てから決定できるものでは無い。
避け方を『事象』として設定したならば、その時点で9つの避け方は全て決定されているのだ。
闇雲なナイフにも、数通りの「避け方」が無駄になっていく。
だが、避け方の一つが上手く行ったならば、彼の作戦は成功なのだ。
脇から滑り込むようにして、像の一つがナイフに到達する。途端に、他の分身達は消えうせた。
「事象確定、ナイフゲットッ!!!」
すかさず、No.9はナイフを振りかぶる。
「ンで、お仕置きタイムだッ!おめーの悪い腕を使えなくしてやるよッ!」
ナイフはその切っ先の重みで、安定した投擲軌道を描いた。更に。
「事象設定、ナイフの軌道ッ!その軌道を、九廻せよッ!」
9回試行。ナイフが半透明になり、9通りの投げ方が同時に男の肩口を襲った。
9通りの投げ方のうち、最も良いものだけが残るのだ。
ナイフが刺さるのを待たずに、No.9は間合いを詰める。
繰り出すのはシンプルに、もう一度蹴りだ。ただし、今度は膝の皿を狙う。
- 985 :名も無き異能都市住民:2011/09/16(金) 02:10:53 ID:SSMHlh/20
- >>984
「うげぁ!!!!」
男の肩に、例のナイフが突き刺さる。
元々、工作用、野外活動用の市販のナイフであるので
最良のものとはいえ、それほど深くは刺さっていないが動きを止めるには十分。
そのまま、滑り込むように間合いを詰めたNO.9の蹴りをまともに受けた
男は、その場に崩れるように倒れ、激痛からか泡を吹いて気を失った。
- 986 :No.9:2011/09/16(金) 02:14:35 ID:y79ArvVk0
- >>985
「…相変わらずカッコ良く勝てねーな…ただの分身能力じゃねーか。」
ため息をつきながら、男の衣服で腕を後ろに縛る。ナイフはNo.9が回収し、自分のものにした。
「っても、俺も公安や観測には会いたくねーんだった、連絡だけしてトンズラするか」
男に殺されたぐちゃぐちゃの死体から、携帯電話を探す。
顔をしかめながら生暖かい電話に緊急番号を入れ、要件を伝えた。
- 987 :名も無き異能都市住民:2011/09/16(金) 02:22:37 ID:SSMHlh/20
- >>986
電話を終えても、男はまだ目を覚ます気配は無い。
この様子なら、このまま放っておいても大丈夫だろう。
心配なら、瓦礫の中にあった工事用の黄と黒のロープで
縛り上げておけばよい。それ以上のことは、まもなく此処に訪れるであろう
警察の仕事だ。
- 988 :No.9:2011/09/16(金) 02:29:14 ID:y79ArvVk0
- >>987
「やっぱりよー、俺の能力はギャンブルでこそ冴えるんだよなー…」
ぶつぶつ呟きながら手ごろに縛れるものを探し、工事用のロープを発見した。
足から腕までぐるぐる巻きにして、きっちりと結ぶ。
「よし、後は任せたぜ、公安さんよ」
軽く手を振りながら、No.9は帰り道を探して夜の街に消えていった。
//お疲れ様でした!
- 989 :横島なつき:2011/09/16(金) 23:23:28 ID:0I3JuZkQ0
- 【真昼の緋川神社境内】
「暑い……」
千夜学園の校章入りブラウスを着た少女、
雇われ巫女のナツキが神社の濡れ縁で伸びている。
雑巾を放り出し、左手に愛剣をだらしなく握ったまま、木目の上に黒髪を散らして仰向けだ。
「融けちゃう……九月の気温じゃないよう……」
境内には蝉の鳴き声が乱反射し、参道は日に当たってジリジリと焦げんばかり。
それでも、風通しも良く木々の緑にも恵まれた境内は他所よりいくらか涼しいのだが……。
「くそー忌々しい機関の連中めー、温室効果ガス攻撃とは卑怯なり……おのれぇー……」
そんなことを呟く以外は、あ゙ー、とか、ゔー、とか唸るばかり。
ナツキは暑さに完全にノックアウトされ、先程からずっとこの調子で、だらけきっている。
- 990 :黒沢小百合:2011/09/18(日) 23:38:04 ID:SSMHlh/20
-
「ふぅ……。」
大男をとっちめたところで切りよく今日の職務を切り上げた小百合は
近頃のマイブームである、珍品の蒐集に精を出す。
ちょうど、現場近くでバザールを見つけた小百合は、
露天を見回りながら、胡散臭げな魔法の品だとか骨董品に目星をつけていく。
ちなみに鳥を模した衣装が彫られた観賞用の美しい刀剣と、瑠璃色の水差しを
既に、衝動買いしてしまった
- 991 :テルメス:2011/09/18(日) 23:48:49 ID:DvGffmgQ0
- >>990
黒沢の居る場所から数メートル。
このあたりではよくある押し売りにあっている男が居た。
「だから買わないよ、そんな金無いって」
「そんなこといわずにさあ。ほら、これなんか掘り出し物だよ」
テルメスは、奇妙な面を押し付けてくる商売人の男を振り払っていた。
ここにはある物を探してきたのだが、カモに見られているのか、少し歩くたびにこの調子だ。
「財布の中身見せようか?って言うか金あってもいらないって。
……被せようとすんなおっさん!」
面を顔に押し当てられ、商売人の男を向きながら逃げるように黒沢の方に走ってきた。
- 992 :黒沢小百合:2011/09/18(日) 23:52:09 ID:SSMHlh/20
- >>991
――どんっ。
両者、周囲の確認が不十分だったのか。
出会い頭に、ぶつかってしまった。
――がしゃっ。
その拍子に、転んだ小百合が取り落とした
紙袋から、嫌な音がした。
- 993 :テルメス:2011/09/19(月) 00:00:19 ID:DvGffmgQ0
- >>992
「うわっ!」
無様に尻餅をつくテルメス。
「す、すいません、大丈夫で……黒沢小百合?
なんでこんなとこに……」
テルメスは黒沢を見ながら紙袋を拾い上げようとする。
そして、紙袋の中の嫌な現実に触れた。
「……」
恐る恐る中を見ようとする。
- 994 :黒沢小百合:2011/09/19(月) 00:08:31 ID:SSMHlh/20
- >>993
「うう……。」
小百合は転んだ拍子に眩暈を起こしたのか
しばらく、片手で額を抑えて目をしばたかせていたが、
顔を左右に振って、どうにか立ち上がり。
「ああっ、私の水差しがっ……!?
胡散臭さはどうあれ見た目は気にいってたのにっ!!!」
素っ頓狂な声をあげて憤慨する小百合。
それもそのはず、中身を見るまでも無く美しいガラス細工の水差しは
衝撃で砕け、大きな欠片が紙袋の外まで飛び出していた。
しかも、それだけではない。
小百合はまだ気づいていないが、彼女の購入したもう一つの品である
鳥の細工がされた刀剣も、石畳に打ち付けられた拍子にポッキリと折れてしまっているではないか。
- 995 :テルメス:2011/09/19(月) 00:15:17 ID:DvGffmgQ0
- >>994
「……ふ、不可抗力だ。
あのおっさん……!」
テルメスは仮面を押し付けてきた商売人の男を探そうとするが、
既にトラブルを察知して何処かに消えてしまっていた。
「……あ、の」
一瞬つまりながら、黒沢に声をかける
- 996 :黒沢小百合:2011/09/19(月) 00:27:08 ID:SSMHlh/20
- >>995
「…………。」
小百合は、テルメスの声に黙したまま答えない。
しかし、彼を刺す様に見つめるその瞳にはだんだんと憤怒と、憎悪の色が滲み始めて。
「お前は、これは……そうか……。
さては……自分が不当に拘留を受けたと……。
理不尽に拘束を強いられたと……復讐のつもりか……。」
ぽつ、ぽつ、と言葉を漏らす小百合の頭の中では
恐るべきシナリオが出来上がりつつあるようだ。
- 997 :テルメス:2011/09/19(月) 00:33:34 ID:DvGffmgQ0
- >>996
「え?いや……セコ過ぎるでしょ、こんな復讐!
不可抗力!不可抗力だ!」
手を振り、後ずさりしながら弁明する。
「えっと、ごめんなさい!俺の前方不注意だった!ごめんなさい!」
頭を上げ下げし始めた。
- 998 :黒沢小百合:2011/09/19(月) 00:39:19 ID:SSMHlh/20
- >>997
平謝りするテルメスを小百合はしばらく、
何かを呟きながら見つめていたがフン、と軽く鼻を鳴らしてから口を開き。
「不可抗力、ですか……まあいいでしょう。
しかし、それでもこの破壊は貴方の過失によるもの。」
壊れた、ビンの欠片を拾い上げてテルメスの目の前に翳す。
「ビンの代金、20万円を弁償していただきたい。
誠意、というものがあるなら容易いでしょう。」
小百合にとって20万円を得ることはどうでもいいのだ。
ただ、テルメスを精神的にいたぶることだけを目的にしていることは間違いない。
- 999 :テルメス:2011/09/19(月) 00:45:30 ID:DvGffmgQ0
- >>998
「二十っ……いや、えっと」
その金額に目を大きくしながらも、慌てて安っぽい財布を開く。
しかし当然と言うべきか、財布にそんな金は入っていない。
「……三万と、四百八円しか持ち合わせが……。
いや、必ず返すから今はこれでどうか!」
財布ごと差出しながら言った。
- 1000 :黒沢小百合:2011/09/19(月) 00:52:21 ID:SSMHlh/20
- >>999
「取引において最もしてはならないのは、
確実な証拠も無しに中途半端に金銭物品を受け取りその場を修めてしまう事です。
この場で、誓約書を書いていただけますか。かならず残金を払うと。」
くっくっ、と笑う小百合は確実にこの状況を楽しんでいる。
周囲の人々の気の毒に、とでもいいたげな視線がテルメスに突きささるが
誰も小百合にその辺にしておいてやれ、と言うものはいない。
「それか、この支払いを見逃す代わりに千夜の生体研究所に
研究サンプルとして『全面協力』する、というのはどうでしょう。」
この提案は何かヤバイ。
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