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避難所スレ
1リリカル名無し:2009/06/12(金) 22:59:34 ID:2T5IS33.0
とりあえず様子見も兼ねて立てました。

2リリカル名無し:2009/06/13(土) 13:02:32 ID:RoTN..eQ0
前スレ

リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル11
ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1244123197/

3リリカル名無し:2009/06/24(水) 22:28:00 ID:1cGX.sdA0
スレが落ちた?

4リリカル名無し:2009/06/24(水) 22:49:56 ID:cbBFWXzM0
もしかして経緯を知らない?議論スレを見れば分かるよ

5 ◆gFOqjEuBs6:2009/06/30(火) 11:45:58 ID:9TddbTFs0
これよりかがみ、バクラ分を投下します。

6 ◆gFOqjEuBs6:2009/06/30(火) 11:46:45 ID:9TddbTFs0
ホテル・アグスタ。
かつて美術品や骨董品のみによるオークションが行われたホテルは、本来ならば常に厳重な警備体制で管理されている筈だった。
しかし、現在のホテルアグスタに、警備などと言う物は存在しない。
勿論、本来この場所で働いている筈のホテルの従業員も。
常時ならばこの豪勢なホテルに宿泊している筈の金持ちも、誰ひとりとして存在しない。
普通に考えればそんな事はあり得ないのだが、ここはそんな非常識が起こり得る場所。
その理由は至極簡単。この場所にいる参加者ならば、その理由について考えるまでもない。
「この場所は殺し合いの場で、ホテルだけがフィールドに組み込まれているから」だ。
他の施設にも言える事だが、何故このホテルがこの会場に存在しているのか。
本当にこの施設は本物なのか、それとも精巧に造られたコピーに過ぎないのか。
また、一体どういった基準でこのホテルが会場に選定されたのか。
それらの真実は主催者側しか知る事は無い。
されど、今ここに立ち入ろうとしている参加者にとってはそんな事はどうでもいいのだ。
彼女らが今考えている事はただ一つ。
「如何にしてこのゲームを生き残るか」、ただそれだけだ。
何としても生き残る。その為にこの施設を探索、可能であれば参加者をその手にかける。
それらを行動方針に、彼女(と見えないけど彼)は、ホテルへと歩を進めた。


と言う事で……
『かがみとバクラが堂々とホテルで休憩するそうです』


周囲を森林に囲まれたホテルの内部は、普通の一般女子高生であるかがみでは考えられない程の豪勢さであった。
まず第一にかがみの目を引いたのが、ホテル内部の広さだ。
入口から入ったかがみが最初に見る景色は、当然のようにロビーという事になる。
されど、その造りは明らかにかがみが知る一般的なホテルを凌駕していた。
神々しいシャンデリアに、見るからに高級そうなテーブル。至る所に使用された金も相俟って、少女の目には余計に美しく見えた。

『どうした宿主サマ、こんな豪勢なホテル来た事も無くて臆しちまったか?』
「そんな訳ないでしょ、バカな事言わないで。ちょっと豪華過ぎて驚いただけよ」
『オレ様が言ったのとどう違うんだよ』
「くっ……色々違うのよ!」

軽口を叩きながら、ホテルの奥へと歩を進めていく。
傍から見れば、かがみがぶつぶつと独り言を言いながら歩いているようにしか見えなかった。
それこそ傍から見れば、精神的にヤバい人みたいに思われること請け合いだろう。
そういう点を考えれば、周囲に誰も居ないのは幸いだった。

7 ◆gFOqjEuBs6:2009/06/30(火) 11:47:16 ID:9TddbTFs0
 
『ところで宿主サマ……このホテルには誰か居ると思うか?』
「見た感じ誰かが荒らした形跡は無いけど……誰か居るとしてもこの規模じゃ探し切れないかも知れないわね」
『そうかい……まぁ、焦る事はないさ。まだデッキの猶予は十分にあるんだからよ』
「あのねぇバクラ? その余裕が後々命取りになるのよ」

バクラの言動一つ一つに突っ込みを入れずにはいられないのはやはり、かがみの元々の性格故だろう。
対するバクラはバクラで、かがみの背後で幽霊のような存在感を示しながらも、「んなこたぁ解ってんだよ」と、一言。
こうしたやり取りが出来るのも、かがみの精神が随分と落ち着いてきている証拠だ。
そう言う意味では、かがみの身体に寄生するバクラとしても安心していた。

「とりあえず、探索した後も出来るなら少し休みたいから、部屋の鍵を取りに行くわよ」

それだけ言うと、フロントに向かって歩き始める。
バクラはというと、かがみの背後に着いて行く以外に出来る事は無い故、黙ってそれに追随。
勿論かがみの案は悪くは無いし、寧ろ殺し合いに生き残る為に休息は必要不可欠と言ってもいい。
かがみのような本来何の力も持たない女子高生なら尚更の事だ。
寄生先の宿主に死なれてはバクラも困るし、同時に気分も良くない。
だからバクラがかがみを心配しているのも、あながち嘘では無いのだ。

フロントに侵入したかがみは、その棚から適当にカードを一枚引きぬいた。
数字に黒いラインだけが書かれたそのカードは、このホテルの部屋を使う為に必要なカードキー。
この殺し合いは恐らくまだまだ続く。それ故にこれを用いて、部屋で暫しの休息を摂るのが目的だ。

『で、そいつは何処の部屋のカギなんだ?』
「“0313”……三階の十三番目の部屋?」
『おいおい宿主サマ、普段じゃ来れないホテルなんだ。どうせタダで泊まるならもっと豪勢に行こうぜ!』
「あんたね……これは殺し合いなのよ? そんなこと言ってる場合じゃ……」
『だからこそさ。使えるモンは全部使うってくらいの精神じゃなきゃ生き残れないぜ?』
「あんたらしいっちゃらしい考えね……でもどれが一番いい部屋なのかなんてあんたに解るの?」
『そうだな……とりあえず最上階の鍵を選びな。こういうのは最上階が一番高いって相場は決まってんだよ』
「何でそんな事知ってんのよ……」

確かにバクラの考えにも一理あるな、とかがみは思考する。
言いながらも、先ほど引き当てたカードを元の場所に戻し、一番高い場所の棚からカードを一枚引き抜く。
一応言っておけば、この殺し合いは何が起こっても不思議では無い。
病院という大型施設を容易く破壊する参加者も居れば、街を一つ崩壊させる程の戦闘を繰り広げる参加者もいる。
そんな奴らが生き残りを賭けて戦うこの会場で、自ら逃げ場を塞ぐような場所に隠れるのは得策とは言えない。
だが、事実としてここまでホテル内を探索する参加者など一人も居なかったのだ。
故にホテルは未だに手つかずの状態で残っているのだ。そう考えれば、最上階で休息を摂るのも悪くはないのかも知れないが。

カードキーを確保したかがみ達は次に、ホテル内の探索を開始した。
何処までも続いているかのように錯覚する廊下と、隣り合わせに無数に存在する部屋。
それら全てを見て回るのは流石に骨が折れるし、それを実行する手間を考えれば、まさに無駄な時間と言っても過言では無い。
だから、宿泊客の部屋を除いたあらゆる部屋を順番に見て回る事にした。

最初に二人が入った部屋は、巨大なホールだ。
数え切れないほどの観客席。そこに座れば、二人の視線が向かう先は巨大な舞台。
まるで舞台劇を見ているような感覚――なのだが、二人にとってそこはそれ以上の価値は見いだされなかった。

「なんか時間の無駄だったわね」
『次行くぞ、宿主サマ』

バクラの声に従い、すっくと立ちあがる。
かつて骨董品によるオークションが行われた会場も、かがみにとっては何の意味もない。
華やかな飾り付けも、ライトアップも存在しないホールは、ただのだだっ広い部屋以上の感想は抱かなかった。

8 ◆gFOqjEuBs6:2009/06/30(火) 11:47:46 ID:9TddbTFs0
 
次に二人がやって来たのは、つい先刻見渡したホールまでとは行かない物の、巨大な広間だ。
無数のテーブルが設置された広間は恐らく、パーティの会場等に使われていたのだろう。
かがみの高校の体育館よりも遥かに広い会場に驚きはしたものの、やはりここにも何も存在しない。
他の参加者が居るわけでもなく、ただテーブルが並べられているだけの部屋はやはりかがみの興味を引きはしなかった。
それどころか、こうも広いホテルを居るかどうかも解らない参加者を探して歩き回るのは、やはり無駄骨のような気がして来た。

「やっぱりもう部屋に行く?」
『待ちな、宿主サマ。そいつはまだ早いぜ』

かがみの考えている事は、彼女の精神に寄生しているバクラには手に取るように解る。
それ故に、こんなホールや広間ばかり見て回ってもどうせ誰も居やしないであろうという考えに至ったのだ。
バクラとしてもそれについては概ね同意だ。それ故に引きとめる理由は無い筈なのだが――

『宿主サマ、ここに来てから何か食べたか?』
「あ……」

バクラに問われると同時、空腹を思い出したかがみの腹部から、情けない音が響いた。
少し顔を赤面させるかがみを笑い飛ばしながら、バクラが告げる。

『二回目の放送前に、昼飯の時間にしようじゃねぇか』
「そ、そうね……こんな会場があるってことはさぞかし立派な厨房があるんだろうし」

返す言葉は、バクラへの肯定と、未だ聞こえる腹の虫。
取りあえず休むのなら昼食を摂る事も必要だ。こうして二人の行動方針は決まった。





チン、と。甲高い音が聞こえる。
同時に開いたドアから現れたのは、柊かがみ(と見えないけどバクラ)。
かがみが両手で押し進める台車に乗っているのは、大量のパスタとパン、その他調味料が多数。

『どうせならば最高の部屋で最高の料理を食おうぜ』

この一言が、かがみが現在料理を運んでいる理由の全てだ。
簡単に作れるパスタとパンを最高の料理と言ってしまうのはどうかと思うが、かがみはこれで十分だと判断した。
パスタならば消化も早く、すぐに体力を作る事が出来ると言う事はかがみも知っていたし、
何よりも無数にある食材からプロの料理人が作る料理と寸分違わぬ料理を作ることなど、かがみには不可能だった。
だからあまり面倒な事は考えなくて済むようにと、食材の中からパスタを引っ掴み、それを湯でて味付けした。
あとはパンと調味料があれば十分過ぎるくらいだ。それらを持って、エレベーターから最上階へと上がったのだ。

9 ◆gFOqjEuBs6:2009/06/30(火) 11:48:16 ID:9TddbTFs0
 
暫し歩いたかがみが、その足を止める。
目の前の部屋番を見れば、かがみが手に持つカードキーと同じ部屋番号だ。
それをリーダーに差し込む事で、部屋のロックは解除される。どうやらホテルの機能は生きているらしい。
部屋の中へと歩を進めたかがみ。その余りの豪勢さと美しさに、かがみは開いた口を閉じるのを忘れてしまった。

『ヒャッハァ〜! こいつはすげぇ、まさしくスイートルームってかぁ?』
「す、凄いわね……これは確かに」

バクラに続くかがみの口元は、僅かに緩んでいるかのように見えた。
窓から見える景色は絶景。この殺し合いの会場全体を見渡せるほどの眺め。
所々で火災が発生していたり、街が崩壊している個所が見受けられるが、それに関しては目を瞑っておこう。
巨大なテーブルに、如何にも高そうな質感のソファ。それらを部屋の中心に置いても、部屋全体の広さを損なわない。
部屋の至る所に設置されたランプが、より高級そうな雰囲気を醸し出していたのはきっと気のせいでは無いのだろう。
かがみの家のリビングよりも遥かに広い部屋からは、まだ他の部屋へと続く扉が存在した。
キョロキョロと周囲を見渡しながらも、部屋の中心のソファに勢い良く飛び込む。
高級クッションが優しくかがみの身体を受け止め、かがみは今にも眠ってしまいそうな感覚に捉われた。

『おいおい宿主サマ、まだ寝るのは早いんじゃねぇか? とりあえず持ってきたパスタを、食っちまおうぜ』
「わ、わかってるわよ!」

かがみの傍らに影のように佇むバクラの言葉に、かがみは再び現実に引き戻された。
そうだ。ここへやって来たのは、殺し合いに生き残る為の休息と、体力を付けるため。
かがみはそれを念頭に置き、持ってきた食料をテーブルの上に並べた。

それからややあって、かがみは此処へ来て初めて、上機嫌と言える程の気分で昼食を摂っていた。
フォークに絡めたパスタをその小さな口に頬張りながら、かがみはバクラへと視線を向ける。

「ねぇバクラ、あんたは食べなくて大丈夫なの?」
『オレ様は食えねぇよ。ここじゃ宿主サマと入れ替わって食おうにも制限が掛ってるみたいだしな』
「制限? じゃああんたはいつでも意識を奪える訳じゃないのね?」
『アァ、さっきの戦闘からもうすぐ2時間か、残念な事にそれでもまだ無理みたいだ』
「ふぅん……ま、私も出来るだけあんたに頼らなくても戦えるように頑張るから、そう気を落とさないでよ」
『はん、さっきまでの宿主サマからは考えられない進歩だな』

薄ら笑みを浮かべたままの表情で、バクラが軽口を叩く。
確かに先程まで命の危機に晒され、精神的にもボロボロだったかがみからは考えられない程の変化だ。
そうさせるだけの出来事が続いたのだから、無理もないと言えば無理もないが。
それよりもバクラが懸念するのは、憑依時間の制限についてだ。
万丈目に憑依した際にもしばらく憑依が不可能となっていたが、それが果たしていつまで続くのかは未だに解らない。

『チッ……ヤロウに憑依した後、正確に時間を計っておくんだった』

舌打ちを一つ、自分のこれまでの行動について軽い愚痴を叩く。
ヤロウと言うのは言うまでもなく、元・宿主サマである万丈目準の事だ。
色々あって再憑依までに必要とする時間を測れなかったのだ。
仮面ライダーへの変身制限時間がだいたい1時間〜1時間半。
そう考えれば、2時間もあれば制限は解除されても可笑しくは無いと考えたのだが。
どちらにせよ、自分の手札が把握し切れていないのは、バクラにとってもいい気持はしない。
これから小まめに再憑依時間を調べるか、と一人思考する。

10 ◆gFOqjEuBs6:2009/06/30(火) 11:48:47 ID:9TddbTFs0
 
そこまで考えて、一つの疑問が浮かぶ。
憑依しなくても使える能力――例えば、パラサイトマインドはどうなのだろう。
形あるものに自分の魂を寄生させる千年リングの能力。
これさえ使う事が出来れば、もしも千年リングに万が一の事があったとしても、自分は生存する事が出来る。
宿主であるかがみにパラサイトマインドで寄生してしまえば、
例え千年リングとかがみが離れ離れになってしまったとしても何も心配はなくなる。
現に、最初の宿主である獏良了にはその方法で規制していた為に何度千年リングを引き離されても宿主の元へ戻る事が出来た。

『(万が一の時の為に、宿主サマで確かめてみるか……?)』

バクラの鋭い眼光が、眼下のかがみを見据える。
このままかがみに完全に寄生してしまうのも有りか、と。
しかし、バクラの思考はかがみの声によって中断される。

「ふぅ……ご馳走さま」
『早いな、もう食っちまったのかよ。じゃあ次の施設に――』
「ちょっと待った!」

バクラの言葉は最後まで告げられる事無く、かがみによって遮られた。
何事かと顔をしかめるバクラに、かがみはそのままの姿勢で続ける。

「折角だし、このままシャワーを浴びてこようと思うんだけど。
 まだ時間もあるんだし、せめて放送まではここで休んでからでもいいでしょ?」
『けっ、そうやってあんまり余裕見せるのはどうかと思うけどなぁ』
「そう固い事言わないの、デッキの猶予だってまだ暫く時間あるんだし」
『あのなぁ宿主サマよぉ、そういう余裕が後々命取りになるんだぜ?』

ホテルにやってきて間もない頃のやり取りを繰り返す。今度は立場は逆だが。
といっても、事実として休めるのならば休んでおいた方がいいというのも一理ある。
故にバクラはそれ以上否定はせずに、せめて放送までは休息を摂る事にした。
と、そんな事を考えている間にすでに千年リングはかがみの身体から外されていたのだが。





一般的な家庭に備え付けられているものよりも大きめな浴槽に、眩しい日の光が差し込む。
ジャグジーが搭載された浴槽内で、日光を浴びながら思いっきり足を延ばす少女は、紫の髪を垂らしてくつろぐ柊かがみ。
先程まで見に纏っていたナンバーズスーツを脱ぎ捨て、髪を結んでいたリボンを外したかがみは、まさに一糸纏わぬ姿となっていた。
湯に浸かる美しい肌には、これまでの戦闘で出来た擦り傷や打撲の跡が見受けられた。
浴槽から吹き出る水流は、その傷を隠そうとしているようで、今のかがみには調度良かった。

11 ◆gFOqjEuBs6:2009/06/30(火) 11:49:17 ID:9TddbTFs0
 
「はぁ……殺し合い、なのよね……」

かがみは大きなため息を一つ落とし、今まで起こった出来事を思い起こす。
アリサと呼ばれた少女が殺された事。エリオが死んだ事。なのはに裏切られた事。
それらはどれも、彼女にとって心の傷にしか成り得ない。思い出せば思い出す程に、目頭が熱くなる。
その後戦った金色のクワガタ男。自分が殺してしまったシグナムという女性の事。
そして、Lという危険人物に拘束され、挙句モンスターに追いかけ回された事。
ようやく出会った万丈目にはまたしても裏切られ、その後戦ったメビウスには敗北を喫した。
これまでかがみが辿った経緯を知れば、きっと誰もがこう言うだろう。
短時間でどれだけハプニングに見舞われれば気が済むんだ、と。
実際にはメビウスはかがみを救ってくれたのだが、今のかがみにとってそんな事は関係ない。
最早バクラ以外の何者も信用出来はしないのだから。

(バクラ……あいつは何で私に協力してくれるんだろう)

その答えは至って簡単な事だ。
バクラ自身もこのゲームを楽しもうとしているし、何よりも宿主に死なれては困る。それだけの理由だろう。
しかし、極度の人間不信に陥ったかがみにとっては、バクラのみが精神的な救いとなっていた。
バクラは自分にしか見えない。それ故にきっと裏切ることはない。
独りぼっちで寂しかった自分と、バクラは一緒に居てくれる。
バクラだけが、自分を救ってくれる。

(アイツだけが、私の味方……)

何を考えているのか解らないし、話していても腹が立つ事はある。
だけど、事実としてバクラが居なければ自分は今こうして疲れを癒すことなど出来なかっただろう。
ふと、思い出したのはこの会場に一緒に飛ばされた、大切な人間達。
泉こなたに、柊つかさ。彼女らは、出会ったばかりのなのはとは違い、信用に足る人物だ。
しかし、今のかがみは素直にそう考える事は出来なくなっていた。

(どうせこなたやつかさに会っても……)

顔を横に振り、その考えを振り払う。
考えれば考えるほど鬱になって行くのは目に見えているからだ。
どちらにせよ、もうかがみは誰の事も信用はしない。なのはの時のように裏切られるのは御免だ。

ならば、もしも二人に出食わした場合は――?

かがみが戦う理由は、あくまで勝ち残って元の世界に帰して貰うためだ。
元の世界に帰れば、皆元通りになっているに違いない。こなたもつかさもなのはも、いつも通りの笑顔で自分を迎えてくれる筈だ。
だが、その為にはこの会場にいるこなたやつかさ達を殺さなければならない。
自分にあの二人を殺す事が出来るだろうか。もし目の前に現れても、この手で命を奪う事は出来るだろうか。
確かにかがみは誰の事も信用しないと決めたが、あの二人が死んでしまえば元も子もない。

ここでかがみは、自分の矛盾に気づいた。
この殺し合いにおける最終的な目的は、元の世界の平和な日常への回帰。
その為の手段として、自分の周囲の平和な日常に必要不可欠な人間たちを殺す。
二人が決して信用していない相手であるのならば、殺す事など造作もない筈だ。
気が可笑しくなっていたとはいえ、シグナムを殺す時だって躊躇いは無かったし、これからもそれを繰り返すつもりだ。
だけど、そうして帰った日常に、恐らくつかさとこなたは居ないだろう。
それは本当に平和な日常と言えるのだろうか。いつも傍に居てくれた筈の人間が居なくなってしまった世界に帰る事に、意味はあるのだろうか。

(私は――)

いくら考えても答えは出ない。
それは、かがみ自身も心の奥では「自分の行いは間違っている」という後ろめたさを感じているからだろう。
だが、生き残る為には戦うしかない。敵が襲い掛かってくるならそれを撃退し、最後の一人になるまで生き残るしかないのだ。
だから、これからもかがみは戦い続けるだろう。
――最後の一人になるまで。

12 ◆gFOqjEuBs6:2009/06/30(火) 11:49:47 ID:9TddbTFs0
 




ホテルの一室のテーブルに置かれているのは、金の装飾品。
輪の周囲にぶら下がっているのは、無数の錐。そして最も目を引くのが、輪の内側、三角の中心に施されたウジャト眼。
三千年の昔、クルエルナ村の命を溶かして生み出されたマジックアイテム――千年リング。
大邪神ゾーク・ネクロファデスの欠片にして、盗賊王であるバクラの魂が宿ったそれは、この殺し合いについて思考していた。
かがみが居ない間、バクラが考えるのは、バクラにとって相棒であるキャロ・ル・ルシエの事。
このゲームは恐らく、パラレルワールドからランダムに集められた参加者によって行われている。
そう考えるならば、キャロもバクラが知るキャロとは別人という可能性も十分にあるのだ。
バクラが思い出すのはあの日、最強の強敵と戦った時の言葉。

――相棒が欲するならオレ様は国だろうが、世界だろうが何でも盗んでみせるぜ!
  それが今、バクラが存在する意味だからなぁ!

どう考えたって、キャロはフェイトに保護された方が幸せに決まっていた。
そうすれば、もう段ボールにくるまって眠ったり、ハンバーガーショップで夜を明かす必要も無くなる。
勿論マフィアの仕事だってしなくていい。眩しいくらいの平和の中で、堂々とした人生を送れた筈なのだ。
だが、それでもキャロはフェイトの手を振り払った。
バクラと一緒に居たい。ただそれだけの理由の為に、綺麗なフェイトの手を弾いて、汚れたバクラの手を取ったのだ。
そこまでされて、バクラも黙っていられる訳が無かった。
だからバクラは、キャロの為に存在する。未来へのロードをキャロと共に進んで行く為に。

そう誓った相手が、この殺し合いに参加しているのなら、自分は何としてもキャロを救わなければならない。
今はかがみと行動を共にしているが、この殺し合いが終わる前に必ずキャロに会って、確かめなければならない。
この殺し合いに参加しているキャロが、本当に自分の知るキャロなのかを。

もしここにいる“キャロ”が“相棒”じゃ無かったなら――

その時はその時だ。迷う必要など何処にもない。
元の世界の相棒・キャロの元へと帰る為に、この殺し合いに参加しているキャロを殺す事も躊躇わない。
全ては相棒の為だ。この殺し合いに勝ち残り、元の世界の、相棒の元へと帰る。
相棒には自分が一緒に居なければならないのだ。きっとバクラを失った相棒は今頃一人で路頭に迷っている所であろう。
何せバクラの知る相棒は定職にもついていないのだから。

だからバクラは、何としてもかがみを優勝させるつもりだ。
かがみもバクラと同じように、元の世界への回帰を願っている。ならば、二人で協力して優勝を狙うのも悪くはない。
もしもそれでも元の世界に帰れなかったとしても、その時はその時だ。
プレシアと戦ってでもキャロの元へ帰らせてもらう。

『だからよぉ……それまでは、せいぜいこの殺し合いを楽しませて貰うぜ』

誰も居ないスイートルームで、バクラは一人告げる。
それは元々争い事が好きなバクラらしい考えだった。キャロと一緒に居ては味わえないスリル。
十分に殺し合いを楽しんだ後に、何としてもキャロの元へ帰らせて貰う。
そんな事を考えていると、不意に千年リングが掴まれた。

13 ◆gFOqjEuBs6:2009/06/30(火) 11:50:17 ID:9TddbTFs0
 
『やっと出てきたか。随分と長かったじゃねぇか、宿主サマ』
「だってこんな高級なホテルのお風呂滅多に入れないでしょ?」

少し機嫌良さ気に告げるかがみの肌は、入浴前よりも心なしか艶がある気がした。
紫の髪の毛も美しく煌めいており、上品なシャンプーの香りを振りまいていた。
くつろぎ過ぎだろうと突っ込みたくなる衝動を堪えて、バクラはかがみの背後に立つ。

『それで宿主サマ、精神的に何か進展でもあったかい?』
「別に……あんたに言うまでもないわよ。ちょっと考え事してただけ」

かがみの心に浮かぶのは、青髪の少女と、たった一人の双子の妹。
精神に寄生しているバクラには、それが手に取るように解った。
どうやら、一人になって考える事は、バクラもかがみも似たり寄ったりらしい。

『そうかい、奇遇だなぁ宿主サマ。オレ様もだ』
「はぁ? 何よそれ」

いつも通り、ニヒルな笑みを浮かべるバクラ。
かがみにしろバクラにしろ、まずはこの会場に居る“大切な人”が本当に自分が知る者なのかから調べなければならない。
かがみならこなたとつかさ、バクラならキャロ。
かがみの場合は少し違うかも知れないが、そういった面では、二人の思いは概ね一致していた。
だが、全てを把握しているのはバクラだけだ。心を読まれている等と気付かないかがみは、軽口を叩きながらソファに横たわる。
このまま少し休むつもりなのだろう。放送まではあと少し時間があるようだし、バクラも邪魔をするつもりはない。

ここで、一つだけ懸念事項が存在する。
バクラが知る限り、かがみはこの会場の参加者が、パラレルワールドから集められている事に気付いていない。
だからなのはにも未だに裏切られたのだと勘違いしているし、心配しているこなたやつかさに関しても、同様に裏切られないかと恐れているのだ。
パラレルワールドだと知れば、かがみはどんな反応をするだろうか。
なのはの件が誤解だと解れば、宿主サマはきっと考えを改めるだろう。
そうなってしまえば折角殺し合いに乗ったかがみの意思が揺らぐ可能性がある。
しかし、同時に別の可能性も存在する。
「どうせパラレルワールドならばと、知り合いだろうが何だろうが迷いなく殺害して行く」という可能性。
そうなれば都合がいいと言えば都合がいい。
だが、見境無しになってしまったかがみがもしもキャロと出会ってしまったら、どうだろう。
もしも相棒かどうかの確認もせずにキャロを殺してしまったら。
相棒で無かったのなら何の問題も無いが、もしも殺されたのが相棒であったなら――
バクラは一人、かがみにパラレルワールドの事実を伝えるべきか悩んでいた。

「じゃあ、私は放送まで少し休むから……デュエルアカデミアはお昼からでもいいわよね?」
『アァ、そうだな。殺し合いはまだまだ続くんだ。少し休んだ方がいいぜ、宿主サマ』

悩んでいる等とは思えない程、いつも通りの冷酷な笑みを浮かべて、バクラはそう告げた。
どちらにせよ、相棒と再会するまでは、かがみが自分の宿主サマである事に変わりはない。
バクラはただ、宿主であるかがみを優勝させる為に行動する。
その先に待つ、たった一人の相棒の元へと帰る為に。

14 ◆gFOqjEuBs6:2009/06/30(火) 11:53:01 ID:9TddbTFs0
 

【1日目 昼(放送直前)】
【現在地 F-9 ホテル・アグスタ】
【柊かがみ@なの☆すた】
【状態】健康、肋骨数本骨折 、4時間憑依不可(バクラ)、30分変身不可(ベルデ)
【装備】ストラーダ(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、千年リング@キャロが千年リングを見つけたそうです、Ex-st@なのは×終わクロ、
    カードデッキ(王蛇)@仮面ライダーリリカル龍騎、サバイブ“烈火”(王蛇のデッキに収納)@仮面ライダーリリカル龍騎、ナンバーズスーツ(クアットロ)
【道具】支給品一式×2、ランダム支給品(エリオ1〜3)、カードデッキ(ベルデ・ブランク体)@仮面ライダーリリカル龍騎、柊かがみの制服(ボロボロ)、スーパーの制服
【思考】
 基本:死にたくない。なにがなんでも生き残りたい。
 1.バクラ以外の何者も信じない(こなたやつかさも)。
 2.映画館に向かってからデュエルアカデミアに向かう。
 3.参加者を皆殺しにするつもりだが、こなたやつかさに出会った場合は……
 4.万丈目に対する強い憎悪。万丈目を見つけたら絶対に殺す。
 5.同じミスは犯さないためにも、12時間という猶予時間の間に、積極的に参加者を餌にして行く。
 6.メビウス(ヒビノ・ミライ)を警戒。
【備考】
※デルタギアを装着した事により、電気を放つ能力を得ました。
※一部の参加者やそれに関する知識が消されています。ただし、何かのきっかけで思い出すかもしれません。
※「自分は間違っていない」という強い自己暗示のよって怪我の痛みや身体の疲労をある程度感じていません。
※周りのせいで自分が辛い目に遭っていると思っています。
※Lは相手を縛りあげて監禁する危険な人物だと認識しています。
※第一放送を聞き逃しました。
※万丈目の知り合いについて聞いてはいますが、どれぐらい頭に入っているかは不明です。
※Lはモンスターに食われて死んだと思っています。
※王蛇のカードデッキには、未契約カードがあと一枚入っています。
※ベルデのカードデッキには、未契約のカードと封印のカードが1枚ずつ入っています。
※「封印」のカードを持っている限り、ミラーモンスターはこの所有者を襲う事は出来ません。
※変身時間の制限にある程度気付きました(1時間〜1時間30分程時間を空ける必要があることまで把握)
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。
※こなたとつかさの事は信用はしないつもりですが、この手で殺す自身はありません。
※千年リングを装備した事でバクラの人格が目覚めました。以下【バクラ@キャロが千年リングを見つけたそうです】の簡易状態表。
【思考】
 基本:このデスゲームを思いっきり楽しんだ上で、相棒の世界へ帰還する。
 1.かがみをサポート及び誘導し、優勝に導く。
 2.デュエルアカデミアに行ってカードを探したい。もっとも、過度な期待はしていない。
 3.万丈目に対して……?(恨んではいない)
 4.こなたに興味。
 5.可能ならばキャロを探したいが、自分の知るキャロと同一人物かどうかは若干の疑問。
 6.メビウス(ヒビノ・ミライ)は、万丈目と同じくこのデスゲームにおいては邪魔な存在。
 7.パラサイトマインドは使用できるのか? もしも出来るのならば……
【備考】
※千年リングの制限について大まかに気付きましたが、再憑依に必要な正確な時間は分かっていません。 (少なくとも2時間以上必要である事は把握)
※キャロが自分の知るキャロと別人である可能性に気が付きました。
※千年リングは『キャロとバクラが勝ち逃げを考えているようです』以降からの参戦です
※かがみのいる世界が参加者に関係するものが大量に存在する世界だと考えています。
※かがみの悪い事を全て周りのせいにする考え方を気に入っていません。
※もしもこの会場に居るのが自分の知らないキャロなら、殺す事に躊躇いはありません。

15 ◆gFOqjEuBs6:2009/06/30(火) 11:55:05 ID:9TddbTFs0
投下終了です。
サブタイトルは「かがみとバクラが堂々とホテルで休憩するそうです」です。
見ての通り、クロス下である「キャロが千年リングを見つけたそうです」のオマージュ的なタイトルです。
それでは、指摘などがあればよろしくお願いします。

16リリカル名無し:2009/06/30(火) 22:32:30 ID:.VBgh6qY0
投下乙です
確かに休息は必要だよな、素が普通の女子高校生なかがみならなおさら
でも少々揺らいでいるが、それも当然と言えば当然か
実際に遭遇した時に期待だ

一つだけ、ホテルは一度ブレンヒルトがざっと調べているので>>7の文は矛盾しているから修正した方がいいかも。
(もしかして二人が入った部屋は一緒だったのかなと思ったりして)

17リリカル名無し:2009/06/30(火) 23:14:12 ID:fBAVlApc0
投下乙でございます。
とりあえず、どちらも色々考えているなぁ……いくらこなたやつかさすら信じられないといっても殺してしまえば元の日常には戻れないしなぁ……
バクラにしてもパラレルワールドの事実を話すかどうかは微妙な所だし……

上手く(下手を)すればデュエルアカデミアでこなたと鉢合わせになるが……果たして……

18 ◆gFOqjEuBs6:2009/07/01(水) 00:18:35 ID:itTwkZPs0
>>16
しまった……これは完全にブレンの事を失念していました。
指摘通り、ブレンの登場話を良く読み直してから、矛盾の無いように
>>7の差し替えになる修正稿を書いて、後日修正用スレに投下しておきます。

19リリカル名無し:2009/07/02(木) 18:44:07 ID:ioET2io60
投下乙
かがみんだけでなくバクラも今回は真面目だな
パラレルワールドの事実を話すかどうか?
真実を知った時、どうなるか?
こなたと鉢合わせの可能性が出てきたがどうなる?
先が気になるなw

20 ◆Qpd0JbP8YI:2009/07/03(金) 20:40:33 ID:AtnaLeLo0
ユーノとブレン、投下します

21 ◆Qpd0JbP8YI:2009/07/03(金) 20:41:24 ID:AtnaLeLo0
「それじゃあ、スクライア」

ブレンヒルトは銀色の艶やかな髪を後ろに撫で付けながら、話し始めた。

「まずはあなたのことについて話してもらおうかしら」
「ぼ、僕?」

彼女の見た目に似合わぬ流麗な様に多少見惚れながらも、
ユーノは質問にハッキリとした声で答えた。

「僕はユーノ・スクライア。時空管理局内の無限書庫の司書長をやらさせてもらっている」
「無限書庫?」
「うん、無限書庫というのは、あらゆる次元世界の書物やデータを集めたデータベースのこと。
世界の記憶を収めた場所とも呼ばれていて、そこにない情報はないとも言われているところだよ」

その言葉を聞いて、ブレンヒルトは心の中で笑みを浮かべた。
今まで足りないと思っていた情報。
それをフェレットが山のように抱え込んできたのだから、それも当然といえるだろう。

「なるほど、それなら司書長さん、ずばり聞くわ。あなたはこのゲームをどう考えているのかしら?」

ブレンヒルトの瞳が真っ直ぐとユーノに注がれる。
死と隣接するゲームに直面し、それでも抗おうとする真摯な目。
しかしその視線を受けて、ユーノは僅かに冷や汗を浮かべた。
殺し合いが始まって、既に半日が経過。
その間、何をしていたかと言えば、彼自身余り思い出したくないもの。
そこから何かしらの考察を得るというは、幾らユーノとはいえ、無理なことだった。
とはいえ、ユーノ自身、素直に何も考えていなかった、と言うのも憚られる。

「た、確かなことは、まだ何も言えない。情報が足らなさ過ぎる」
「スクライア、あなたは無限書庫の司書長なのでしょう? 
情報は足りているんじゃないのかしら?
それとも怪我のせいで思い出せないのかしら? 
だとしたら、大変ね。
その傷が頭に影響を与えているとは考えづらいけれど、
念の為にその傷がどうなっているいるか調べたほうが、やっぱり良いわよね?」

そう言いながら、ブレンヒルトは自らの手をニギニギとさせ、
ゆっくりとユーノのお腹へと近づけていく。

「ちょ、ちょっと待って! 幾ら司書長だからって、
全ての情報を記憶出来るわけないだろう?
だ、だから、薄ら笑いを浮かべながら、こっちに来ないでくれ!」

悲鳴とも言えるユーノの声を聞いて、ブレンヒルトは盛大に溜息を吐いた。

「じゃあ、あなたはこのゲームについて、本当に何も知らないの?」
「う、うん。まだ確かなことは何も……」

22 ◆Qpd0JbP8YI:2009/07/03(金) 20:42:29 ID:AtnaLeLo0
使えないわね。
心の中で呟きながら、ブレンヒルトはユーノを見下ろす。
これならまだバルディッシュのほうが役に立つというものだ。

「じゃあ、あなたはこれからどうするつもりなの?」
「なのはと明日香と……ルーテシア、それにジュエル・シードを探そうと思っている」

恐らくは高町なのはを意味するであろう名前を声にする目の前のフェレットを
ブレンヒルトは幾分か不思議に感じたが、今はそれに勝る疑問が彼女にはあった。

「そう……それであなたは無事に全部見つけたとして、どうするつもりなの?」

その質問には沈黙を返すユーノ。
その居ずまいに、思わずブレンヒルトの額に青筋が浮き立つ。
無限書庫と言われる何だか壮大な所に勤めておきながら、先を見通そうとしない浅慮。
ブレンヒルトの苛立ちに限界が来るのは当然のことだった。

「このバカフェレット! 今の状況が分かっているの?
それじゃあ、あなたの目的を果たしたところで、全てが解決するというわけじゃないのよ。
今、私たちはデスゲームの真っ只中にいるの。
このゲームに対して、何かしらの解決策を導かなきゃ、あなたもあなたの探し人も全部終わりよ。
それともスクライア、あなたは優勝でも目指しているのかしら?」

波濤の如く押し寄せるブレンヒルトの言葉。
その波に飲み込まれて、平常心を保つのは難しい。
だけどユーノは平然と佇立し、思いがけない方法で、その波を受け返した。

「いや……ここからの脱出の手段なら、ないこともない……」
「何ですって!!?」

その言葉を聞いたブレンヒルトは、
思わず怪我をしているフェレット姿のユーノのムギュッと両手で掴み、詰め寄った。

「さっさと答えなさい、スクライア!」
「ちょ、痛い、痛い!  ブレンヒルト、痛いよ!」

見てみれば、ユーノの傷からは僅かに血が滲み出ていた。

「あ、あら、悪かったわね、スクライア。つい興奮してしまって……」
「いや……うん……いいよ、ブレンヒルトの気持ちも分かるし」

ユーノはフィジカル・ヒールの魔法を新たに発動させながら答える。
その様子に若干の居た堪れなさを感じながらも、ブレンヒルトは未だ興奮を隠せずにいた。

「それでスクライア、その方法は何? それは今すぐに出来ることなの? というか、さっさと私を元いたところに返しなさい!」
「いや……えっと……」
「ほら、さっさと答える!」

まくし立てるブレンヒルトにユーノは思わず怯み、言葉を失う。
その様子に痺れを切らしたブレンヒルトは威嚇するかのようにモギュッとユーノの身体を掴んだ。

「ちょっ、痛いって! 痛い! 話すから放して、ブレンヒルト!」
「よし! それじゃとっと話しなさい」

そう言ってブレンヒルトはユーノをベッドの上に放った。
そんな手荒な扱いに内心文句を募らせながら、
ユーノはブレンヒルトの興奮を治めるように、ゆっくりと説明を始めていった。

23 ◆Qpd0JbP8YI:2009/07/03(金) 20:43:10 ID:AtnaLeLo0
「まず最初に言っておきたいんだけど、これは安全で確実な方法じゃない。一種の博打みたいなものなんだ」
「随分と剣呑な言い方をするのね。それじゃあ、失敗したら、私たちの身に危険が及ぶような口ぶりじゃない」
「うん、実際、危険な方法なんだ。そしてやる価値があるのかも、今は分からない。それでも聞くかい?」
「ええ、聞くわ。どの道、今の私にはここを脱出する手段なんて何も思い浮かばない。
それなら何もない道を進んで迷うよりかは、危険だと分かっていても、
今にも切れそうな吊り橋を渡った方が、よっぽど安心できるわ。
何てったって橋の先には明日が見えているんだからね」
「そうだね。そうかもしれない」

ブレンヒルトの言い回しに、ユーノは同意した。

「それで、その危ない橋を渡る方法は何かしら?」
「ブレンヒルトはジュエル・シードというものを知っているかい?」
「ジュエル・シード? さっきあなたが探しているものって言ってたわね?」
「うん」
「残念ながら知らないわ。説明をお願い出来るかしら?」
「うん。ジュエル・シードはロスト・ロギア、古代遺産の一つで、何でも願いを叶える宝石と言われているものなんだ」
「ちょっと、待って、スクライア。あなたの言う脱出手段って、
もしかしてそのジュエル・シードに、願いを叶えてもらうってことなの?
それともこれは何かしらのジョークなのかしら?」

ブレンヒルトは何とも呆れた顔でユーノに聞いた。
期待して質問してみたら、返ってきた答えは、何ともメルヘンチックなもの。
そんな現実感を感じさせないご都合主義的なもので、彼女は到底納得できるはずもなかった。

「いや、ジョークじゃないよ、ブレンヒルト。大真面目さ」

侮蔑の眼差しを送るブレンヒルトに、
ユーノは至って真面目な視線を送り返し、更なる説明を加えていった。

「ジュエル・シードに願いを叶えてもらうってことで間違いはないけれど、厳密には違う」
「どういうこと?」
「結論から言えば、ジュエル・シードの力を解放させる」
「解放?」
「うん。ジュエル・シードは願いを叶えるという側面もあるけれど、その実体は次元干渉型のエネルギー結晶体。
そのエネルギーを解放させれば、次元震が起きて、このフィールドを覆う結界が壊れると思う。
また壊れないにしても、次元震が周りに与える影響は大きい。
恐らく……というより、十中八九、時空管理局がその反応を捉えて、ここにやって来ると思う。
そうなれば、プレシアもこんなゲームを続ける余裕はなくなるだろうし、僕たちも無事にここを脱出することが出来る」

ブレンヒルトはユーノの説明を聞き終えると、指を顎にあてながら、じっと考え始めた。
そしてその時間が終わると、すぐに彼女は口を開いてきた。

24 ◆Qpd0JbP8YI:2009/07/03(金) 20:43:58 ID:AtnaLeLo0
「スクライア、幾つか質問があるわ」

「なんだい?」

「まず最初にそのジュエル・シードがこの会場にあるかということ。
そんなゲームの盤台をひっくり返すようなものを、
あの腹黒そうなオバサンが私たちに支給するとは思えないわ。
二つ目は、その次元震とやらが、私たちにどういった影響を与えるか。
結界に覆われていても、尚、反応を確認できるようなエネルギーを目の前にして
果たして私たちは無事でいられるか。
そして三つ目。これは一番肝心なことよ。
スクライア、あなたの考えには首輪のことが欠落しているわ。
あなたは一体この首輪をどうするつもりなの?
取り敢えず、以上の三つよ。答えてもらえるかしら、スクライア」

「まず一つ目の質問だけど、答えは、ある。
実際ルーテシアのバッグに入っているのを僕が確認した。
恐らくはプレシアは殺し合いの促進を目的として、配ったんだろうね。
ジュエル・シードの願いを叶えるというのは、ものすごくあやふやなものなんだ。
上手く扱わなければ、ジュエル・シードは暴走して、持ち主を取り込んで、モンスターとなる。
そうなれば参加者の間に友好的な関係が出来るはずもなく、自然と戦闘が生じてしまう。
そういった事を考えれば、多分だけど、
他の参加者にも支給されている可能性も高いんじゃないかな」

「なるほど、ジュエル・シードがあるというなら安心だわ。
だけど、スクライアはそんな危ないものを上手く扱えるのかしら?」

「どうだろうね。ジュエル・シードの力を解放することは、僕でも出来ると思う。
だけど、それを完全に制御するとなると、僕一人じゃ、やっぱり難しいかな」

「一人……ね。というと、複数なら可能というわけね。
それでそのメンバーに入るのに、何か資格は必要なのかしら?」

「資格というわけではないけれど、補助系の魔法に長けた人物が欲しいね」

「それはこのゲームの中にいるの?」

「うん、僕の知る限りではシャマルとザフィーラの二人かな。
彼らがいててくれれば、何とか制御はできると思う」

「そう。それでその人たちは殺し合いに乗るような人かしら?」

「普段の彼らを見る限りでは、そういったことは考えられない。
でもこの場でなると、正直、分からないところがある」

「まあ、そうでしょうね。それにその人たちが脱出に必要というのなら、
どちらにしろ、会ってみないことには何も始まらないしね。
それじゃあ次の二つ目の質問の答えをいいかしら?」

「その答えは、何ともいえない。言っただろう、博打だって?
上手く制御できれば、何も問題はない。
だけど制御できなければ、次元震によって、この世界は崩壊。
そして、それに巻き込まれて僕たちは死ぬことになると思う。
勿論、全員ね」

「そう」

「そう、って……驚かないんだね」

「十分驚いているし、嘆き悲しんでいるわ。
でも、このままここにいても、死ぬという可能性は絶えず付き纏う。
だから、あなたのいうことは、今と大して状況が変わらないということなの。
なのに、それを今更、他人に分かるように驚いてみせる必要はないでしょう?」

「まあ、そうかもね」ユーノは苦笑した。

25 ◆Qpd0JbP8YI:2009/07/03(金) 20:44:51 ID:AtnaLeLo0
「それで三つ目は?」

「三つ目の答えは、僕自身、まだ何も考えていない」

「はー!? あなたは何を言っているの!?」

「いや、待って、落ち着いて! お願いだから、ブレンヒルトはこっちに手をのばさないで!」

「……ふん、あなたがそう言うとなると、まだ先に答えがあるというわけね?」

「うん。首輪の方は、多分、Lが考えていてくれていると思う」

「L?]

「僕のパートナー……というのかな? 探偵をしている人間だ」

「探偵ね〜」

「そんないぶかしむ必要はないよ。彼の能力の高さは僕は保証する。
それに彼自身も名簿を見て、僕と同じ結論に達したと思うしね」

「結論? それは一体どんなものなのかしら?」

「結論といっても、そんな大げさなものじゃない。
ただ単に自分の役割を認識したというだけのことだよ。
僕がこのフィールドを覆う結界をどうにかして、
Lが首輪を解除の手段を模索するということを。
一応、僕が結界魔導師と呼ばれていることを、彼は知っている。
そしてその名の通り、僕は他の魔導師よりかは、結界について一日の長があると自負している。
そんな僕に彼が期待することは、勿論、決まっているだろう?」

「結界の解除、もしくは破壊といったところね」

「それにLには戦う能力はなく、また結界についての知識もない。
だとしたら、彼が選び取る行動の選択肢は予想がつく。
つまりは、首輪の解除。
Lがそう動いてくれるなら、僕は安心して他のことに専念できる」

「随分と信頼しているのね?」

「まあ、そうだね」

26 ◆Qpd0JbP8YI:2009/07/03(金) 20:47:09 ID:AtnaLeLo0
「信頼も結構だけど、スクライア、あなたはやっぱり今という状況を失念しているんじゃないかしら?
あなたはさっき言ったわね。Lに戦う能力がない、と?
そんな人がこんな所で無事に生き残っていられると思う?」

「う〜ん」

ユーノは腕を組み、首を傾げながら、唸り声を上げた。
あの濁りきった目をした人間が、死ぬということが、上手く想像できなかったのだ。
寧ろ死んだとしても、そのまま普通に動き出しそうで怖い。

「どうだろう。
彼は頭も良いし、行動にも抜け目がない。
恐らくは生き残っていると思う。
でもそれについは、次の放送で分かるんじゃないかな」

「そうね。そういえば、放送も近いわね」

結果がすぐに分かるというなら、もしものことについてわざわざ頭を悩ます必要はないだろう。

「そういえば、あなたはジュエル・シードを持っているの? 見せてもらえるかしら」

「いや、ルーテシアに預けてあるよ」

ブレンヒルトは思わず眉をひそめた。
ルーテシアは先程、ユーノの腹を刺した張本人。
しかも、ゲームに乗っているという最悪な人物だ。
そんな人間の手に肝心なジュエル・シードが渡っているというのでは、
折角見えてきた脱出という文字が、遠ざかっていくのを感じずにはいられない。
そこで彼女が気になるのは、先程言っていたユーノの言葉。

「スクライア、あなたはさっきルーテシアを探すと言っていたわね。彼女を探して一体どうするの?」

「彼女と会って……うん……話をしてみるよ」

ユーノは言葉を選びながら、ゆっくりと答えた。
ゲームに乗ったものと対峙する。
ブレンヒルトはユーノとルーテシアの関係など、想像もつかなかったが、
それでもユーノの答えは危機感を放棄した馬鹿な考えとしか思えなかった。

「スクライア、確認するけれど、あなたは何故ルーテシアがあんなことをしたのか、ちゃんと分かっているの?」

ブレンヒルトの台詞を聞いて、ユーノはその答えを探す。
思い返せば、ユーノは出会って早々にルーテシアの裸を視姦し
その次には彼女のいじらしい胸をまさぐっていた。
何とも破廉恥な行いをしてきたものだ。
それでは彼女が怒るのも当然といえる。
今まで無事だったのは、ひとえにユーノがフェレットという認識がルーテシアにあったからに過ぎない。
しかし、ユーノはミスを犯してしまった。
先の襲撃の際に、ユーノは咄嗟に変身を解いてしまい、人間体へと戻ってしまったのだ。
ルーテシアはマフィアだ。
そしてマフィアはプライドや面子を大切にするという。
あのナイフを持ったアクションは自分に不義を働いた人間ユーノに対して、
ルーテシアなりのケジメをつけたのだろう。
ユーノはそう判断する。
無論、何をするにしても、あんな状況ですることとは思えないが、ルーテシアはマフィアの跡目。
流石は肝が据わっている、ということなのだろう。
そんな彼女に対してユーノとて恐怖が湧かないわけではないが、
ここでちゃんと謝っておかないと、後々尾を引きかねない。
もし眼帯をした少女やそのファミリーにルーテシアの怒り、ユーノの正体がばれたらどうなるか。
それではこの会場における自身の危険性が遥かに増すし、
ユーノの関係者も見せしめとして処分されかねない。
またここを無事に脱出できたとしても、その後の命に保障がもてない。
やはり一番に解決すべき問題なのだろう。

27 ◆Qpd0JbP8YI:2009/07/03(金) 20:48:29 ID:AtnaLeLo0
「うん……分かっているよ」

ユーノは頼りなくはだが、しっかりと答えた。

「そう、分かっているのね」

今までとは違った優しい声が、辺りに響いた。
ユーノはてっきり軽蔑されるのかと思っていた。
自らの猥褻行為を省みれば、それも当たり前。
だけどユーノの目の先には、何とも柔らかな眼差しを送るブレンヒルトがいた。

「あなたがそこまで言うのなら、私からは何も言えないわ。
ただし、約束なさい。ちゃんと彼女を、ルーテシアを説得すること。いい?」

「えっ、う、うん、約束するよ」

ユーノの戸惑いをよそに、ブレンヒルトは感心していた。
ルーテシアはゲームに乗っていて、ユーノを傷をつけた。
それなのにユーノは彼女の行いを許し、説得しようというのだ。
全く馬鹿げた奴だ、とブレンヒルトは思う。
だけどそれと同時に、ユーノへの信頼が自分の内に湧いてくるのを、
彼女は感じずにはいられなかった。 






【1日目 昼】
【現在地 H-8 畑の隅にある小屋】



【ブレンヒルト・シルト@なのは×終わクロ】
【状態】健康
【装備】1st-Gの賢石@なのは×終わクロ、バルディッシュ・アサルト(カートリッジ4/6)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式、双眼鏡@仮面ライダーリリカル龍騎、首輪(矢車)、ランダム支給品0?1
【思考】
 基本:ここからの脱出。
 1.ジュエル・シードの捜索
 2.L、シャマル、ザフィーラの捜索
 3.残り15人になったら車庫の中身を確認してみる(信用できる人以外に話す気はない)。
 4.キース・レッドとの約束は一応守るつもり。
 5.戦闘には極力関わらない。
 6.フェイトの生い立ちに若干の興味。
【備考】
※自分とバルディッシュに共通する知人に矛盾がある事を知りました(とりあえず保留、別世界の可能性を考慮)。
※キャロ、金髪の青年(ナイブズ、危険人物と認識)、銀髪の青年(殺生丸)の姿を遠くから確認しました。
※車庫を無理に開けようとすれば首輪が爆発すると思っています。中身は単体で状況を変え得る強力な兵器だと思っています。
※ルーテシアの話の真偽は保留。
※ユーノ・スクライアのことを信用しました。
※ルーテシアのことはユーノにまかせるつもりです。



【ユーノ・スクライア@L change the world after story】
【状態】魔力消費(中)、腹に刺し傷(ヒーリング中)、フェレットに変身中
【装備】なし
【道具】なし
【思考】
 基本:なのはの支えになる。ジュエルシードを回収する。フィールドを覆う結界の破壊
 1.ルーテシアと話をする
 2.ジュエル・シードの捜索
 3.シャマルとザフィーラの捜索
 4.Lや仲間との合流。
 5.首輪の解除。
【備考】
※JS事件に関連した事は何も知りません。
※プレシアの存在に少し疑問を持っています。
※ルーテシアがマフィアや極道の娘だと思っています。
※ルーテシアに刺されてから小屋に着く途中まで気絶していたのでルーテシアや明日香がどうなったのか知りません。
※ルーテシアに刺されたのは、自分が破廉恥な行いをしたからだと思っています。
※結界を壊す一つの手段として、ジュエル・シードの力の解放を考えていますが、実際にやるかどうかはまだ分かりません。

28 ◆Qpd0JbP8YI:2009/07/03(金) 20:50:03 ID:AtnaLeLo0
以上です。投下終了しました。
サブタイトルは「明日に架ける橋」です。

29リリカル名無し:2009/07/03(金) 22:44:56 ID:RI2DTqY.0
投下乙でございます。
ジュエル・シードを使って脱出か、(そういやジュエル・シード登場回書いたのもQp氏だったから最初から考えていたのかな?)確かに上手くいけば一気に状況は変わるな。
……まあ、今そのジュエル・シードを持っているのはルーテシアではなく明日香なんだがな。
……そして、何か微妙に不安を覚えずにいられないユーノの思考(まあ、ユーノ視点から見れば間違ってはいないが……どうにも……)……
というか、大丈夫なのかこのコンビ……?

30リリカル名無し:2009/07/03(金) 23:52:26 ID:e5vMbmjA0
投下乙です
ジュエルシードの力で脱出とか結構綱渡りな事思いつくなユーノw
成行きだったが二人の間に少しでも信頼関係ができて良かった
ユーノ、まあ事情知らないからそう思うかもしれんが、ルーテシアの真相知ったらどう思うんだろう

31リリカル名無し:2009/07/08(水) 19:19:11 ID:cOb/K4AM0
投下乙
おま、ジュエル・シードはお勧めできないがこの状況では仕方ない……のか?
神視点ではつっこみ所が多いがマジで大丈夫か?

32 ◆7pf62HiyTE:2009/07/15(水) 14:14:15 ID:5J8F9XZ.0
相川始分を投下します。

33The people with no name ◆7pf62HiyTE:2009/07/15(水) 14:17:11 ID:5J8F9XZ.0
 始は図書館にて身体を休めていた。だが、数時間前にエネルの襲撃を受けた事を踏まえ、敵襲に対しての警戒は一切怠ってはいない。
 当然の事ではあるが、始自身相手が向かってくるならば迎え撃つつもりではある。しかし、この地では幾つかの問題があった。
 それは自身の身に課せられた制限だ。この地ではいつもよりも力が抑えられている。それでも並の相手とは戦えるだろうが、相手によっては致命的な事になる可能性がある。
 とはいえ、恐らくそれは他の参加者も一緒だろう。これ自体は大きな問題とはなり得ない。
 重要なのは次の問題だ、それは一度“カリス”に変身して変身解除を行ったら再変身を行う為には最低1時間置く必要があるという事だ。
 これらの制限が課せられた理由は少し考えればすぐにわかる。この場には自分よりも弱い参加者が数多くいる。制限が無ければ一方的な戦いになるのは言うまでもない。
 となればだ、恐らく自分以外のアンデッド……金居達にも同様な制限が掛けられているのは想像に難くない。
 つまり、恐らくは金居達も一度アンデッド態に変身して人間の姿に戻り(むしろアンデッド態の方が本来の姿なのだがこの場ではこう表現する)その後にもう一度再変身を行う為には1時間置く必要があるという事だ。
 さて、前述の通り条件が一緒ならば変身の制限についても条件が一緒なのでこれだけならば大きな問題にはなり得ない。だが、始は理解している。問題はこれだけではない事を……。

 それは数時間前に遭遇したエネルの存在だ。自らを神と名乗った(始は一切認めていないが)その参加者は雷・電撃を自在に操っていた。エネルと始の戦いは熾烈を極め、エリア1つを壊滅させた(原因の殆どはエネルによるものだが)。
 当然、エネルにも制限が課せられているだろうが、それでその力なのだから強敵である事に間違いはない。実際、始はカリスに変身して挑んだものの完全敗北を喫したのだから……
 更に言えばだ、他にもエネルの様な異質な強敵は存在する。始が先程遭遇した赤いコートの男がそれに該当する。それを踏まえて考えても他にも強敵はいると考えるべきだろう。
 そして、次の瞬間にもその様な参加者に襲撃される可能性があるのは言うまでもない。それこそ今いる図書館を壊滅させる程の力を持つ参加者に……。

 故に始は身を休める一方で次の戦いに備え支給品の再確認を行っていた。今現在、始の手元には自分と先程息絶えたギンガ・ナカジマの2つのデイパックがある。
 共通の支給品を除くと自身の持つラウズカードと黄金の剣であるパーフェクトゼクター、ギンガが持っていた銀色のベルトホッパーバックルと録音機だ。

 これを元に今後どう戦っていくかを始は考えていく。
 まず、真っ先に考えなければならない事は、今現在始はカリスに変身する事が出来ない事だ、変身可能にはもう暫く時間がかかる。
 当然、このタイミングで敵の襲撃に遭えば自身が倒される可能性が高いのは言うまでもない。というより、実際先程エネルに襲撃されたのが丁度その状況だった為、同じ状況を想定するのは当然といえよう。
 また、変身可能になっても今後も同じ状況に遭う可能性はあるはずなので、それも踏まえて考えていく。

 まず、真っ先に考えたのは別のアンデッドに変身する事だ。そもそもカリスというのはハートのAのアンデッド――マンティスアンデッドの姿をコピーしたものでしかない。
 また、今現在の姿である相川始としての姿もハートの2のアンデッド――ヒューマンアンデッドの姿をコピーしたものだ。
 つまり、他のラウズカードを使えばそのカードのアンデッドに変身する事が出来るという事だ。
 今現在始の手元には他にハートの3〜10までのカードが揃っている。極端な話をすれば始は後8回の変身を残していると言えよう。
 だが、始はエネル戦の時点でそれは使えないと判断しており、今もそれは変わっていない。理由は仮に変身してもカリス以下の戦闘力でしかないし、カリスに変身した時の為に力を残しておきたいからだ。
 余程の緊急時であれば使うという可能性も無いでは無いがそれは低いと始は考えていた。故にこの案は却下である。

34The people with no name ◆7pf62HiyTE:2009/07/15(水) 14:19:21 ID:5J8F9XZ.0

 しかし、着眼点自体は悪いものではない。始は次にホッパーバックルを見た。説明書を確認した所このベルトを使えばキックホッパーもしくはパンチホッパーに変身する事が出来るらしい。
 つまり、カリスと同様の力を手に入れる事が出来るという事だ。少なくとも先程考えた別のアンデッドに変身するというアイディアよりは有効だ―――
 ―――だが、やはり始はこの案も使えないと判断した。
 そもそも、ホッパーバックルを持っていたのはギンガだ。何故ギンガはこれを使って変身しなかったのだろうか? 変身さえしていれば先程の戦いも違う結果になっていた可能性があっただろうに……
 その理由はホッパーバックルを使う為には資格が必要で、ギンガはその資格を持っていなかったからだ。
 そして、始も試しに身に付けてはみた(変身するつもりはないが、変身出来るなら何かしらの反応があるはずなので)が何の反応も無い事から恐らく自分もその資格を持っていないだろう。
 使えないのであればアテにするわけにはいかない。故にこの案も却下した。

 ちなみにホッパーに変身する為に必要な資格は『絶望』である。資格を有しているならば変身する為に必要なホッパーゼクターがやって来るはずなのだ。
 ギンガの心の中には『絶望』が無かった為当然変身出来るわけがなかったし、今現在の始も『絶望』しているわけではないので、やはり変身出来るはずがないのである。
 もっとも……この地には『絶望』を抱えた参加者は何人かいる―――彼等がバックルを手にすればきっとホッパーゼクターは応えてくれるだろう―――もっとも、その時が訪れるかどうかはわからないわけだが―――

 変身するという案が使えない以上、変身せずに戦うしかない。無論、基本的にはエネル戦同様時間稼ぎとなるわけだが、その間でも出来る事はあるはずだ。
 つまり、変身せずとも使える武器で応戦するというものだ。
 まず、自身の能力によって生み出される醒弓カリスアローだ。勿論カリスアロー単独で戦えるとは言い難いが、時間稼ぎをする上では十分に使える事はエネル戦で既に証明済みだ。
 相手によっては全く歯が立たない可能性はあるものの十分に使える手段と言えよう。

 次に取り出したのはパーフェクトゼクターだ。ちなみにこれ自体は始に支給されたものではあったが、最初に確認した時点では只の剣だとしか思っていなかった為、金居達との戦闘で初めて使う時までそれに気を止める事は無かった。
 更に、あの時は戦闘中だった事もありやはり単純に剣としてしか使わなかったが今回改めて確認した所説明書を見付け、それを見た所想像以上に使える武器だという事がわかった。
 まずはこのパーフェクトゼクターは剣形態であるソードモードと、銃形態であるガンモードがあるということ。
 次にパーフェクトゼクターはカブト、ザビー、ドレイク、サソードそれぞれのゼクターのパワーを使え、4つのゼクター全ての力を使い強大な力を放つ事も可能だと言うこと。
 但し、カブト以外のゼクターの力を使う為にはそれぞれのゼクターの資格条件――ザビーが『調和』、ドレイクが『自由』、サソードが『誇り』――それが必要となっている。
 なお、余談ではあるがザビー他3つのゼクターは本来であればそれぞれザビーブレス、ドレイクグリップ、サソードヤイバーに装着する事でザビー、ドレイク、サソードそれぞれの戦士に変身する為に使われる。
 だが、パーフェクトゼクターからの指令がある場合はそちらの方が優先されるのだ(つまり変身解除される)。
 これらを踏まえて考えてもパーフェクトゼクターは強力な武器と言えよう。
 もっとも……この場にザビー他3つのゼクターが存在するとは限らないし、仮にあったとしても前述の通りゼクターの資格条件を持たなければその力を行使する事が出来ないのは言うまでもないわけだが……。
 とはいえ、仮に3つのゼクターの力を使う事が出来なくとも使える武器に変わりはない。変身不能状況での時間稼ぎにも、変身した後の戦闘にも十分使えるだろう。

 とりあえず、変身出来ない間に襲撃される場合はカリスアローとパーフェクトゼクターを使って時間を稼ぎつつ、変身可能になったら変身して戦うという、エネル戦とほぼ同じ結論に達した。
 正直な所心許ないとは思うものの、手元にある武器ではこれが限界な為、このことについての考えを切り上げる事にした。

35The people with no name ◆7pf62HiyTE:2009/07/15(水) 14:20:30 ID:5J8F9XZ.0


 さて、変身可能となる時間まではまだ時間がある。変身が可能となるのは次の放送を迎えてからだろう。
 それに、先程の戦闘によるダメージが残っている。大分回復してきたもののまだ万全ではない。現状変身不能であることも踏まえ、もう少し身体を休めた方が良いだろう。
 とはいえ、やはりこの時間を無為に過ごすつもりはない、始は立ち上がり歩き始める。
 だが、戦うつもりが無い以上、現状図書館から出るつもりはない。また、別に本を読むつもりも無い為本棚に向かうつもりもない。

 始が向かった場所はカウンターの中、そこにあるパソコンのディスプレイが点いているのを確認し、パソコン前の椅子に座りパソコンの中身を確かめ始める。
 分かり切っている事だがインターネットで外部に連絡を取る事は出来ない事を確認した。
「当然だな」
 そもそも外部との連絡をプレシア・テスタロッサが許すはずがない。無意味な行動だったと思いながら今度はメールソフトを立ち上げる。先程同様何も得られないだろうと始は思っていたが……
「何……?」

 そこには1通の受信メールと30をも超える送信済みメールがあった。それも中身の文面は全て同じものだ。その時間は6時半頃……今より数時間前だ。その時刻に何者かが各地にメールを送ったという事だろう。
 それよりも気になるのはその文面と送信者だ、メールに書かれている内容は『施設の仕掛けの調査』、『地上本部の罠』、『キングへの警戒』、『放送内容の反復』に関する事だ。
 そして送信者は……『月村すずかの友人』とあった。

「どういう事なんだ……?」
 始にしてみれば現状でメールの中身自体はさして重要ではない。
 放送内容自体は覚えているものの始の行動方針を踏まえればそれについては深く考える必要もないし、施設の仕掛けや罠も気に留める程度で済む話だ。
 キングという名前を見てカテゴリーKのアンデッドを一瞬だけ連想したが、あまりにも安直過ぎる為、それは無いだろうと判断した。
 始が気になったのは次の事だ……
「このメールを出したのは……天音ちゃんの友達なのか……?」
 天音―――栗原天音は始にとって大切な存在である10歳の1人の少女である。そして、彼女から友達になった少女達の話を聞いていたのだ。
 その友達はなのは、フェイト、はやて、アリサ、すずかの5人……直接会った事こそなかったが彼女達の存在を始は知っていたのだ。

 ちなみに、最初に名簿を確認した時点で高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、八神はやての名前を確認している(何故か2つずつあったのが気になったがその事については考えていない。)。
 しかしその時点では、何の力もない小学生である彼女達が参加させられているとは思えなかったし、仮に彼女達であったとしても目的を果たす為には殺すつもりであった為、特に気に留めてはいなかった。
 さて、始の推測が正しいならばメールの送信者はなのは、フェイト、はやての3人の内の誰かということになる。恐らく、彼女達が友達にメッセージを伝える為に行ったのは想像に難くない。

 だが、仮にそう考えるのであれば奇妙な話と言えよう。

 その理由はメールの文面にある。メールの文面が明らかに10歳前後の少女が書いたものとは思えなかったのだ。どことなく大人の人が書いたもの……そういう印象を受けたのだ。
 天音から聞いた所彼女達の歳は天音と同じぐらい……10歳前後のはずだ。しかし、メールからはそんな印象は無い、これはどういう事なのだろうか?
 最初に名簿を確認した時と同様に天音の友人である彼女達とは別人という可能性も考えた。
 それならば当然人間関係が違ってもおかしくはないので先程の仮説―――メールがなのは、フェイト、はやて何れかによるもの―――それは全く成り立たなくなるので問題がない。

36The people with no name ◆7pf62HiyTE:2009/07/15(水) 14:21:21 ID:5J8F9XZ.0

 しかし、冷静にこれまでの事を思い返すと他にも奇妙な事があった。

 それはプレシアによってこの殺し合いの説明が成された時の話だ。あの場では1人の少女が首輪を爆破されて命を落としている。その少女は確かアリサと呼ばれていた。
 だが、始はこれまでそのアリサを天音の友人のアリサを結びつけて考えてはいなかった。
 その理由は単純、首輪を爆破されたアリサが約20歳ぐらいだったからだ。始は彼女を名前が同じだけの別人だと考えていた。

 もう1つある。それは先程ギンガが死に際に遺した言葉だ。
『あと……なのはさんと、フェイトさん……はやて部隊長、それにスバルと……キャロに会ったら――』
 ここで重要なのはなのは、フェイト、はやてには『さん』もしくは『部隊長』付けで呼んでいるのに対し、スバルとキャロについては呼び捨てにしているということである。
 見たところギンガの年齢は10代後半といった所だろう。そしてキャロの年齢は天音と同じぐらいの年齢……10歳前後だろう。
 問題なのはキャロに対しては呼び捨てなのに、なのは達3人に対しては『さん』もしくは『部隊長』付けとなっていた事だ。
 仮になのは達が10歳前後とするならばキャロ同様呼び捨てにしている方が自然である。
 しかもだ……こっちの場合は名前が同じだけの別人と考えるには少々無理があるのだ。ギンガの言葉が確かならなのは達3人は仲間同士である可能性が高い。
 天音の友人であるなのは、フェイト、はやて(他にアリサとすずか)、そしてギンガの話したなのは、フェイト、はやての3人が仲間同士……偶然にしてはあまりにも出来すぎている。
 もしかしたら……あまりにも突拍子も無い仮説ではあるが、その人間関係から考えてメールにあるすずかと最初に殺されたアリサはギンガの話したなのは達の友人という可能性を考えた。だが、
「いや、こんな事を考えても仕方がないか……」
 始はこれ以上考えても意味は無いと思い、その事についての思考を切り上げる事にした。メールの差出人が誰であっても自分のすべき事には変わりはないのだから……


 さて、始は改めてメールを確認する。メールを確認した所、30以上のアドレスに送信してあった。何故、送信者は30を超える場所にメールを出したのだろう?
 普通にメッセージを送るならば必要な所だけに絞るはずだ。
 沢山の場所に送ればそれだけ見られる可能性が高まるが、それは必ずしも仲間とは限らない。自分の様な敵対する参加者に見られる可能性はある。
 それ以前にその仲間がメールを受信出来る状況にあるとは思えない。メールで連絡を取るというのをプレシアが許すとは到底思えない。
「待てよ……」
 始は1通だけあった受信メールを確かめた。それはこのパソコンから送られたメールと同じ物だ。つまり、送信されたメールをそのまま受信したという事だ。
 だが、メッセージを伝えるという目的を考えるならば無駄としか言いようがない。わざわざ送信元にメールを送信する必要など無い。仮に何か理由があるとしたら……
「どのアドレスが何処に送られるのかがわからない……?」
 つまり、送信者もどのアドレスが何処に送られるのかを把握していなかったという事だ。そんな得体の知れないアドレスに何故メールを送ったのだろうか?
「いや……」
 と、始は図書館にメールが来た事を思い出し、デイパックから地図を取り出しある事を確認する。
「送信したメールの数と地図にある施設の数が殆ど同じ……だとしたら……」
 出した仮説……それは送信者は地図上にある施設全てに全く同じ文面のメールを送ったというものだ。
 つまり、送信者はアドレスが何処かの施設のパソコンのものだという事を把握していたが、どのアドレスがどの施設に繋がるかはわからなかったのだ。
 それでも仲間達にメッセージを送る為に敢えて全てのアドレスに同じメールを送ったという事だろう。
「……」
 とりあえず始は送信されたメールのアドレスを全て紙に書き留めて置く事にした。

37The people with no name ◆7pf62HiyTE:2009/07/15(水) 14:22:50 ID:5J8F9XZ.0


 アドレスを書き留めた始は休息を終えた後の事を考える。
 最終的な目的自体は変わらないわけだが、その為の目的地をどうするかを正直決めかねていた。
 本能に従いそのまま進んでもいいだろうし、メールに従って参加者が色々な施設に集まるならば他の施設を回ってみても良いと考えていた。
 その最中、始はデイパックから録音機を出す。ギンガは死に際に始に録音機をアーカードに渡してと頼み、始はそれに対し肯定の返事を返していたのだ。
「アーカードか……」
 始は暫し録音機を眺めた物の再びそれをデイパックに戻した。そして、今一度始はギンガの最期の言葉を思い返す……
『あと……なのはさんと、フェイトさん……はやて部隊長、それにスバルと……キャロに会ったら――』
 天音の友人と同じ名前のなのは達3人と先程自分が襲ったキャロ、そしてギンガの口ぶりから恐らくギンガの妹か弟と思われるスバル……ギンガは始に彼女達について何かを託そうとしたのはわかる。しかし、何を託そうとしたのかはわからなかった。
「俺は……」
 正直な所、始はどうしたらいいのかがわからなかった。



 始の目的は栗原親子の元に戻る事である。
 そして、始はその為に全ての参加者を皆殺しにして優勝しようと考えていた。
 そう、あくまでも目的は帰還であって優勝ではないのだ。だが、優勝以外に帰還する方法は無いと考えていた為、殺し合いに乗って優勝を目指していたのである。
 もっとも……幸か不幸か始はこれまで誰1人として参加者を殺していないわけだが……。
 始はアンデッドであり人間ではないし、殺し合いに呼ばれる前からアンデッド同士のバトルファイトを行っていた。それ故に他の参加者と戦い相手を殺す事については殆ど迷いがなかった。
 それこそ仮に天音の友人であるなのは達が参加させられていたとしてもだ。それは天音と同じぐらいの歳のキャロを殺そうとしていた事からもそれは明らかだ(厳密にはその時には僅かな気兼ねはあったが)。
 その目的は今も変わってはいない。だが、今の始の中にはある種の迷いがあった。

 数時間前始はエネルと戦いを繰り広げた。エネルの力は強大で始は完全敗北を喫した。
 だが、問題はそんな事ではない。重要なのはエネルの血が赤かった事だ。血が赤いという事はアンデッドではない事を意味している。アンデッドの血は緑色なのだから。
 始はこの場に来た当初は元々のバトルファイトと似たものだと考えていた。違う点はせいぜい人間も参加させられているという点だ。
 だが、これまでの事を振り返ると明らかにおかしな事がある。例えば参加している人数からもそれは明らかだ。
 始は前にこの地にいる自分を除くアンデッドの数を最大で9体と読んでいた。しかし、参加者の総数は60人だ。明らかにアンデッドの人数が少なすぎる。
 それでもその時点ではバトルファイトを終盤まで進めた物だと推測し、それ以上の事は考えなかった。
 だが、エネルの存在を知った今ではどうだろうか? エネルの存在は明らかにバトルファイトとは全く異質の存在だ。
 そして、エネル以外にもアンデッドとは異質の強大な存在がいる。先程も触れた事だが赤いコートの男―――ギンガを殺したと思われる彼もそれに該当するだろう。
 なお、余談だがその赤いコートの男がギンガの話していたアーカードなのだが、名前しか聞いていない為、始は赤いコートの男がアーカードだという事には気付いていない。
 更に奇妙な事がある。ギンガとインテグラに自分の世界の出来事を話した際、2人は驚いていた気がした。
 恐らく2人はバトルファイトの事もアンデッドの事も知らないだろうが、それならそれで大きな問題がある。何も知らない彼女達をバトルファイトの参加者にしているわけなのだからだ。

 本当にこの戦いはバトルファイトなのか?
 何故バトルファイトにアンデッドとは無縁の人間が数多く参加しているのか?
 仮にこれがバトルファイトでは無いならば何故プレシアは自分達アンデッドや人間達を集めてこの戦いを行うのか?

 多くの疑問が始の中で駆け巡り―――

38The people with no name ◆7pf62HiyTE:2009/07/15(水) 14:23:38 ID:5J8F9XZ.0



―――全ての参加者を殺し優勝したとしても本当に元の世界に戻る事が出来るのだろうか?



 根本的な目的に関わる疑問に行き当たった。仮に優勝したとしても、天音達の所に帰れないのであれば全く意味は無くなってしまう。
 そもそも優勝した所で帰れるとは口にしていなかった為そんな保証が無い事などわかっている。それでも始はそれを信じ、優勝を目指していた。
 だが、果たしてプレシアが本当に信用出来るのか? ある意味でバトルファイトをぶち壊しているあの女を信用して良いのか? 浮かび上がる疑問は止まる事は無い。



 そう―――始の中では本当に全ての参加者を皆殺しにしていいのかという疑問に心の奥底では行き着いていた。



 勿論、始本人はその事を認めたりはしないだろう。だが、いかに口で認めなくとも行動にそれは表れている。

 例えば、先程のパソコンのメールチェックにしてもそうだろう。参加者を皆殺しにするという目的に関して言えば、情報があろうが無かろうが皆殺しにする以上大きな意味を持つ行為とは言えないだろう。
 百歩譲って情報確保の出来るメール内容の確認までは良いだろうが、わざわざメールアドレスを把握する意味は殆ど無いと言えよう。別にメールアドレスで何かするわけではないのだからだ。
 また、アーカードに録音機を渡してというギンガの願いも本当ならば聞く必要は全く無い。アーカードに録音機を渡した所で、そのアーカードも殺す事には変わらないからだ。
 しかし、始はその願いを反故にしたくはないと考えていた……その理由は始自身もわかっていないが……。
 更に、つい先程ギンガを助ける為に図書館まで連れて逃げた時の事もそうだ。やはり彼女を助ける必要も無かったはずなのだ。では、始は何故彼女を助けたのだろうか?
 そして、ギンガが気に掛けていたなのは達の存在……無論始の目的を考えるならば当然彼女達も殺さなければならない……それでも、始は彼女達に会ってどうするかという結論を出す事が出来なかった―――



―――そんな事を考えていく内に時刻は正午に近付いていき―――



「……!!」



 始は突如悪寒を感じた。その悪寒が示す意味は只一つ、アンデッドが本来の姿に戻って戦っているという事だ。
 すぐさま地図とコンパスで場所を確認する。方向は北か北西……距離としては少し離れた場所だろう。
 そのアンデッドは恐らくは金居とは別のアンデッドだろう。金居はつい先程まで自分と戦闘中だった為、今現在はまだ自分同様変身出来る筈が無いからだ。


 その最中、始は自分の中で湧き上がる欲求に今更ながらに気が付いた。それはアンデッドとして他のアンデッドと戦う本能とは違う別の欲求―――

39The people with no name ◆7pf62HiyTE:2009/07/15(水) 14:24:28 ID:5J8F9XZ.0





―――相川始の本来の姿であり―――





―――自身が忌み嫌いその姿に戻る事を望まなかった姿―――





―――ジョーカー―――





―――その姿に戻ろうとする力が強まっているのを感じたのだ。


 事実としてジョーカー化の欲求自体はこの場では強まっている。それは実際始の中で何度と無く湧き上がっていた。しかし始はこれまでそれをさほど感じてはいなかったのだ。
 何故か? 簡単な話だ、始はこの場に来てから理由はどうあれ全ての参加者を皆殺しにするつもりで戦っていた。つまり、ジョーカーになろうがなるまいがどちらにしても対して違いは無いと言う事だ。
 そして、始自身はジョーカーになるつもりは無いと言っていても、一時はジョーカーがバトルファイトで優勝した時に発生するダークローチを使って参加者の皆殺しを考えていた事から、ジョーカーの力を使う意志が多少はあった。
 つまり、これまではジョーカーの欲求が強まっていても始としては殆ど問題は無かったと言う事だ。

 だが、始にとってジョーカーが忌み嫌っている姿である事に変わりはなく、戻るつもりなど無かった。
 しかし、赤いコートの男がギンガに致命傷を負わせた事を知った瞬間、湧き上がる衝動を抑えきる事は出来なくなり遂に本来の姿に戻ってしまった。
 幸いあの時はまだギンガが生きていた事を確認した事ですぐに自分の意志を取り戻せたがそんな事は問題ではない。
 今まで抑える事の出来たジョーカーの力が抑えられなくなってしまった事が問題なのだ。
 不幸中の幸いか欲求が強まってきているとはいえジョーカー化に関しても制限は適応されるらしく現状は元に戻る事は無いし、仮に戻れる状態になっても今の所はまだ抑え込む事自体は出来る為、現状として大きな問題にはなり得ない。

 さて、ここで始の脳裏に新たな疑問が浮かび上がる。何故この場ではジョーカー化の欲求が大きくなっているのだろうか?
 その理由は制限によるものだと考えたものの、仮にそうだとするならば奇妙な制限と言えるだろう。
 考えても見て欲しい、変身に関する制限や身体能力等の制限は圧倒的な力を抑えて弱者でも勝てる様にする為のものだ。
 だが、ジョーカー化の欲求を大きくする事は始を有利にする為のもので、始以外の参加者にとってはあまりにも都合が悪い話だ。(始にしてみればジョーカーに戻りたくはないので制限と言えなくも無いが……)

 ここで始自身に支給された道具について改めて考えてみる。始に支給されたのはハートの1〜10までのラウズカード(数枚は元々自分の所持品だったが)とパーフェクトゼクターだ。
 ハートのラウズカードは始にとって最も使える武器であり、パーフェクトゼクターも(使いこなせるかはともかく)十分に使える道具だった。
 そう、優勝を目指して戦うという意味ではあまりにも都合が良すぎる支給品なのだ。カードが10枚あった時点で始は内心では感謝しようと思ったこともあった。
 しかしだ、逆を言えばこれではまるで『参加者を皆殺しにしてくれ』と言われている様なものだろう。それを踏まえて考えるならば、ジョーカー化の欲求が強まってきている理由にも説明が付く。
 ジョーカーはアンデッドの中でも最強にして最悪のアンデッド、並の者では戦いにすらならないと言えよう。その力が強まるという事は始が参加者を皆殺しにする上ではとても都合がよい。
 結論を纏めるとこうだ……プレシアは最初から始に参加者を皆殺しにさせるつもりでこの場に連れてきたという事……極端な話をすれば始を利用するということだ。
 始もそれ自体は数時間前にもある程度推測していたが、ここに来て改めてその可能性を考えたのである。

 勿論、始が優勝するつもりであればプレシアの真意などどうでもいい話だ。別にこの場に守りたい人がいないわけなのだからジョーカーとなって皆殺しにしても何の問題もない……だが、
「俺は……」
 それでも始はジョーカーに戻りたくないと思っていた。そしてソファーの上で永遠に眠っているギンガを見て再び説明出来ない大きな感情が湧き上がっていく。
 始の目的は変わらない……だが、それを果たす為にどうすれば良いのか? それは、自身に湧き上がる感情の正体と同様に今の自分にはわからなかった……しかし、

40The people with no name ◆7pf62HiyTE:2009/07/15(水) 14:25:22 ID:5J8F9XZ.0



―――それでも始は足を止めたりはしない―――



 仮に答えが出ないとしても戦い続ける事に変わりはない。この戦いが如何なるものであっても、始がアンデッドである以上はアンデッドと戦う事に変わりはない。少なくてもアンデッドはこの場で封印するつもりだ。
 だが、仮に全てのアンデッドを封印したとしたらどうなるのであろうか。
 先程も述べた事だが、始はこの地にいるアンデッドを全て封印したらバトルファイトの暫定的な勝者となり、無数のダークローチを生み出し参加者を一掃出来ると考えていた。
 勿論、そこまで都合の良い話があるとは限らないと思ってはいたが、皆殺しにするつもりだったので正直どちらでも良いと思っていた。
 しかし、今は違う。はっきりとした理由はわからないものの。その力を利用したくは無いと考えていた……。
 だが、アンデッド同士の戦いに勝利をしたならばその力が発動する可能性はある。これは始が抑えようと思っても決して抑える事が出来ない力だ。止める為には始―――ジョーカーを封印する以外には無い。
 前述の通り、この場でダークローチを生み出せるかは不明だ。だが、不明という事は絶対に起こらないという事ではない。これまでの事を踏まえるならば十分に起こりうる可能性はある。

 更に言えば、これは仮にこの殺し合いから生きて元の世界に戻った後にも起こりうる問題だ。
 元の世界に戻れば再びアンデッドとのバトルファイトを行う事になる。当然の事だが始はアンデッドと戦い続けるし負けるつもりなど無い。
 だが、その先に待つのは何か? ジョーカーの優勝による世界の滅亡だ。そうなれば天音達もまた死に絶えるのは言うまでもない。
 天音達の死を始は決して望まない。その一方で戦いを続け生き残る限りその先には世界の滅亡―――天音達の死が待っている。始の行動は明らかな矛盾を抱えているのだ。



 何時からこうなってしまったのだろうか?
 ヒューマンアンデッドを封印した時からだろうか?
 栗原親子の所に居候し始めた時からだろうか?
 それとも―――?



 結局の所、答えなど最初から無いのかも知れない。その先には何も無いのかも知れない。
 それでも始は繰り返される戦いをやめる事無く前へと進み続けるだろう。
 今は只、傷ついた身体を1人休ませるだけである。

41The people with no name ◆7pf62HiyTE:2009/07/15(水) 14:27:41 ID:5J8F9XZ.0



【1日目 昼(放送直前)】
【現在地 E-4 図書館】
【相川始@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】疲労(小)、全身に軽い切傷(回復中)、背中がギンガの血で濡れている、言葉に出来ない感情、カリスとジョーカーに約20分変身不可
【装備】ラウズカード(ハートのA〜10)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式×2、パーフェクトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、ゼクトバックル(ホッパー)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、録音機@なのは×終わクロ
【思考】
 基本:栗原親子の元へ戻るために優勝を目指す?
 1.少なくとも変身可能になるまでは身体を休める。
 2.その後アンデッドの反応があった場所、もしくは他の施設に向かう。
 3.アンデッド、エネル、赤いコートの男を優先的に殺す。
 4.見つけた参加者は全員殺す?
 5.アーカードに録音機を渡す?
 6.あるのならハートのJ、Q、Kが欲しい。
 7.ギンガの言っていた人物(なのは、フェイト、はやて、スバル、キャロ)が少し気になる、彼女達に出会ったら……?
【備考】
※自身にかけられた制限にある程度気づきました。また、ジョーカー化の欲求が強まっている事を自覚しました。
※首輪を外す事は不可能だと考えています。
※「他のアンデットが封印されると、自分はバトルファイト勝者となるのではないか」という推論を立てました。
※相川始本人の特殊能力により、アンデットが怪人体で戦闘した場合、その位置をおおよそ察知できます。
※エネルという異質な参加者の存在から、このバトルファイトに少しだけ疑念を抱き始めました。
※ギンガを殺したのは赤いコートの男(=アーカード)だと思っています。
※カリスの方が先に変身制限は解除されます。
※主要施設のメールアドレスを把握しました(図書館以外のアドレスがどの場所のものかは不明)。

42 ◆7pf62HiyTE:2009/07/15(水) 14:33:15 ID:4ZOkA3PE0
投下完了しました。今回のサブタイトルの元ネタは仮面ライダー555挿入歌『The people with no name』です。
何か問題点や疑問点等があれば指摘の方お願いします。

43リリカル名無し:2009/07/15(水) 23:37:26 ID:92xjWWTY0
投下乙です。
始は大いに悩んでいるなあー。
原作がああだっただけに色々と思う事もあるんだろうな。
でもジョーカーの欲求が強まっているという不安要素も…。

44リリカル名無し:2009/07/19(日) 22:10:02 ID:s53ghsPIO
乙です
始は果たしてどうなるのか…このまま勝ち残るもよし、仮面ライダーになるもよし
先が見えないから楽しみだw
問題はアーカードに渡す録音機か…

45リリカル名無し:2009/07/20(月) 19:40:03 ID:IV29D2JI0
投下乙です。
そうか、そういえばなのは達は天音の友達だったんだっけ。
でも幼なのはは死に、幼フェイトはマーダー化。はやてとキャロもアレだし
ギンガが始に伝えたかったままの思考を保てているのはスバルだけなんだなぁ
彼女らに出会ったら始は一体どうするんだろうか。
基本行動方針にも疑問符が付いたし、今後どうなるのかに期待。

でもキングと金居の所為でジョーカー=敵ってイメージ振り撒かれてるんだよなぁ……w

46 ◆9L.gxDzakI:2009/07/23(木) 09:23:38 ID:W5b87bBw0
アレックス、L分を投下します

47這い寄るもの ◆9L.gxDzakI:2009/07/23(木) 09:24:42 ID:W5b87bBw0
「チッ……」
 舌打ちが響く。
 整った顔立ちが歪められる。
 巨大なトレーラーの運転席につき、ハンドルを握るのはアレックス。
 かつてのキース・シルバーというコードネームには、おおよそ似つかわしくない金の眉が、今は忌々しげにひそめられている。
 そもそも彼はこの車両で、機動六課の隊舎を目指していた。
 瀕死の重傷を負った協力者――Lの治療を行うため、手近な医療施設を求めたのである。
 そして今、目当ての場所へと、ようやくたどり着くことができた。
「何だというんだ、この有り様は……」
 その、はずだった。
 しかし、目の前に広がる光景の何としたこと。
 そこにあるはずの隊舎はなく。
 そこにあるのはただの焼け野。
 もはや火の海すらもなかった。
 たどり着いた先にあったはずの古巣は、見渡す限りの焼け跡と化していたのだ。
 コンクリの隊舎は漆黒に煤け、青々とした芝生はその痕跡すらなく。
 ぷすぷすと不快な煙の臭気が、絶え間なく鼻腔をえぐらんとする。
 誰がやったかなど知らない。
 だが何をやったかは分かる。
 この機動六課隊舎は、自分が到着する前に、何者かによる焼き討ちに遭ったのだ。
 道中で黒煙が上がっているのを遠目に見た時点で、もしやと思ってはいたが、やはりこういうことだったのか。
 これでは機材が使えないだろうし、そもそもそれ以前に、薬の類は確実に全滅しているだろう。
 姑息な奴め。
 自然とそんな感想が沸き上がる。
 戦場で勝利を収める上で、医療品の供給を断つことは、極めて重要な戦略だ。
 器具や薬品などがなければ、たとえいかなる一流医師でも、負傷者を治療することはできない。
 容易に傷を負った者の戦線復帰を許さず、じわじわと敵戦力を削いでいく。
 故に医療品とは生命線と同義。
 それを奪うということは、やりようによっては、兵糧攻めと同等の痛手を与えることができるということ。
 そしてその方針は、もちろんこの手のサバイバルゲームにおいても有効だ。
 適切な治療を施せば生きられる命も、その材料がないだけで、あっという間に死へと直行する。
 たった今しかめっ面を浮かべている、アレックスの反応こそが、それを十二分に物語っていた。
 さて、どうするか。
 どうするもこうするもない。他の医療施設に向かって、今度こそLを治療するべきだ。
 助手席で眠るこの男は、まだ喪うわけにはいかない。
 あの異様な雰囲気を纏った自称探偵は、自分よりも遥かに頭が切れる。
 知識とはそれそのものが武器であり資産だ。
 優れた戦術家を有した5の戦力が、10の蛮勇を倒すことは、ままある。
 Lの知略が役に立つ時が、今後も確実に訪れるはずだ。故に、まだ死なせるわけにはいかなかった。
 欲を言うなら、別れたザフィーラへ移動するという旨を伝えたかったが、生憎と手元には適切な連絡手段となるものがない。
 ないものねだりをしても仕方ない。奴も馬鹿ではないのだから、恐らく察してくれるだろう。
 そう判断し、改めてアクセルを踏み直す。
 ぶるん、と。
 エンジン音と共に、マフラーから吐き出される排気煙。
 ハンドルを操る。ぐるんと回転させる。
 かつて黒の騎士団と呼ばれる組織の前線基地だった、巨大なトレーラーが反転。
 次なる目的地を目指すべく、アレックスの操る車が走り出した。

48這い寄るもの ◆9L.gxDzakI:2009/07/23(木) 09:25:28 ID:W5b87bBw0


 さて、改めて移動を再開した以上は、迅速に目的地を定める必要がある。
 車は人間の足より速い。
 もたもたしていては、目指そうとした場所を既に通り過ぎていた、なんて冗談みたいな展開があってもおかしくない。
 脇に置いたデイパックの口を開き、アレックスの手が地図を抜き出す。
 先ほど六課隊舎に着いたときに、既にLは安静なソファへと移動させておいた。
 今虫の息を立てる彼に代わって、助手席に置いてあるものが、そのデイパックだ。
 慣れた手つきで地図を開き、視線を走らせる。
 軍人上がりならこれくらいはできて当然だ。それどころか、家族連れのサラリーマンだってやる。
(病院は危険だな……)
 真っ先に、その場所を最終手段として保留扱いとした。
 治療を行うというのなら、やはり最も手っ取り早いのは病院だ。
 だがそれは敵も理解している。自分達のような人間を待ち伏せすべく、立てこもっている人間がいてもおかしくない。
 となるとここはやはり、極力他の施設を使うしかない。
 残る候補を可能性を脳内でリストアップ。
 ホテル・アグスタ、地上本部、軍事基地、デパート、学校、デュエルアカデミア、HELLSING本部、そしてスカリエッティのアジト。
 充実度合いはともかくとして、一見してその手の設備がありそうだと思われるのは、そんなところだ。
 このうち、ホテルとデパートを最初に除外。一応挙げてはみたが、やはりこの手の施設の医務室などたかが知れている。
 HELLSING本部というのは、名前からしてどこぞの軍隊か何かの基地だろうか。
 それなら軍事基地や地上本部同様、それなりの設備もあるだろう。軍人とは重傷の絶えない損な仕事だ。
 デュエルアカデミアとは、すなわちアカデミー――大学のことだろう。
 高校や中学の可能性もあるが、大学ならば医学部の大学病院があるはず。見立てとしては悪くない。
 意外にも使える可能性が高いのが、犯罪者ジェイル・スカリエッティのアジトだ。
 昨今のガジェット事件の容疑者である彼は、生命科学の専門家である。
 生命体を弄る――すなわち、治療するための設備があってもおかしくはないだろう。
 現在地からの距離や、設備のレベルを考えると、真っ先に目指すべきは地上本部。次点でデュエル・アカデミアか。
(……、ん?)
 と。
 その時だ。
 一瞬、妙な感覚が彼を襲った。
 何だ、この違和感は。何かがおかしい。何かの異常に後一歩で気づきそうな気がする。
 そして、遂にひらめいた。
(医療品のある施設が、街の東側に集中している?)
 疑問を抱いた点は、そこだ。
 市街地を4-5間のラインで東西に割ると、ある異常性が浮上してくる。
 東側にある施設は、地上本部、デパート、デュエルアカデミア、HELLSING本部の4つ。
 西側にある施設は、機動六課、学校の2つ。
 更に街の外まで考えれば、東側にはスカリエッティのアジトとホテルがあり、西側には軍事基地がある。
 統計すれば、一見して医療設備があるとギリギリ推測できる施設が、東に6つもあるのに対し、西には半分の3つしかない。
 これは一体どういうことか。
 無性に気にかかり、解を探る。
 物資の調達という作業において、最優先すべきは食糧であり、それに続くのが医薬品だ。
 そして食糧は最悪民家などでも見つかるものであるのに対し、役立つ医薬品は病院などの、しかるべき場所にしかないことが多い。
 つまりこれら9つの施設は、この殺し合いを生き抜く上で、必然的に注目の的となる。
 この偏りに意図があるとするならば、参加者の意識を東側に向けようとしているといったところか。
 となると。
 それはつまり、逆に。
(西側に見られたくないものがあるということか……?)
 確証は持てない。
 そもそも殺し合いのフィールドに、主催者の不利益になるようなものを配置する理由がない。
 だが、100パーセントありえないと断じるのは早すぎる。
 ここはさっさとLを治療し、彼の意見を聞いてみるべきか。
 エンジンを更に加速させる。
 這い寄る死から逃れるように。
 陽光の降り注ぐアスファルトを、1台のトレーラーが走っていた。

49這い寄るもの ◆9L.gxDzakI:2009/07/23(木) 09:26:51 ID:W5b87bBw0
【1日目 朝】
【現在地 H-4 大通り】

【アレックス@ARMSクロス『シルバー』】
【状態】健康、疲労(中)、トレーラー運転中
【装備】黒の騎士団専用トレーラー@コードギアス 反目のスバル
【道具】支給品一式
【思考】
 基本:この殺し合いを管理局の勝利という形で終わらせる。
 1.地上本部へ向かいLを治療する。
 2.六課メンバーと合流する。
 3.キース・レッドに彼が所属する組織の事を尋問する。その後に首輪を破壊する。
 4.東側に医療設備が偏っているのが気になる。Lが起きたら意見を聞きたい。
 5.このまま行動していてキース・レッドに出会えるのだろうか。
【備考】
※身体にかかった制限を把握しました。
※セフィロスはデスゲームに乗っていると思っています。
※はやて@仮面ライダー龍騎は管理局員であり、セフィロスに騙されて一緒にいると思っています。
※キース・レッド、管理局員以外の生死にはあまり興味がありません。
※参加者に配られた武器にはARMS殺しに似たプログラムが組み込まれていると思っています。
※殺し合いにキース・レッドやサイボーグのいた組織が関与していると思っています。
※他の参加者が平行世界から集められたという可能性を考慮に入れました。
※ザフィーラから第1放送の内容とカードデッキに関する簡単な説明を聞きました。
※市街地東側に医療設備が偏っていることから、西側にプレシアにとって都合の悪いものがあるかもしれないと推測しています。
【黒の騎士団専用トレーラーの状態】
※内部のコンピューターのOSは地球及びミッドチルダのものと異なります。
※機械設備や通信機能は全てコンピューター制御です(ただし居住スペースはその限りではない)。ギアス世界のOSを知る者もしくはOS自体を書き換えない限り使用不可能です。
※ベノスネーカーとの接触でエンジン部に多大なダメージを負いました。このまま走らせるとエンジン部が爆発する可能性が非常に高いです。アレックスはこの事にはまだ気づいていません。

【L@L change the world after story】
【状態】全身打撲、全身裂傷、中程度の出血、右足粉砕、トレーラー(助手席)乗車中、気絶中
【装備】なし
【道具】支給品一式×2、首輪探知機、ガムテープ@オリジナル、ラウズカード(ハートのJ、Q、K)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、レリック(刻印ナンバーⅥ、幻術魔法で花に偽装中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(シグナム)、首輪の考察に関するメモ、ランダム支給品(ザフィーラ:1〜3)
【思考】
 基本:プレシアの野望を阻止し、デスゲームから帰還する。デスゲームに乗った相手は説得が不可能ならば容赦しない。
※以下気絶前の思考。
 1.機動六課隊舎でザフィーラ達を待ちながら、首輪の解析。
 2.メタルゲラスがかがみを連れてきたら、改めて拘束するなり、落ち着かせるなりして、尋問。
 3.10時までにザフィーラ達が来たら、ミラーモンスターを倒しにかかる。来なかったら、鏡のない部屋に引きこもる。
 4.以上のことが終わったら、船を調べに、その後は駅を調べにいく。
 5.通信で誰かと連絡がついたら、その人と情報交換、味方であるなら合流。
【備考】
※参加者の中には、平行世界から呼び出された者がいる事に気付きました。
※クアットロは確実にゲームに乗っていると判断しています。
※ザフィーラ以外の守護騎士、チンク、ディエチ、ルーテシア、ゼストはゲームに乗っている可能性があると判断しています。
※首輪に何かしらの欠陥があると思っています。
※アレックスからセフィロスが殺し合いに乗っているという話を聞きました。

50 ◆9L.gxDzakI:2009/07/23(木) 09:27:35 ID:W5b87bBw0
ヒャッハー! 今日は殺生丸祭りだぁー!
避難所スレでも雑談スレでも死者スレでも、はたまたWikiの墓でも構わねぇ!
アニメ二期「完結編」放送決定を記念して、全員最低一行以上殺生丸様にお祝いの言葉を述べやがれ野郎共ォー!

……ごめん、調子に乗りすぎた。
そんなわけで投下終了。
地味に今回で、なのロワ投下30作目を迎えました。ホントに地味で短い内容ですがw
特に何事かが起こったわけでもないし、Hl氏の分に影響及ぼすことは少ない……はず。

51リリカル名無し:2009/07/23(木) 12:51:58 ID:AFJJkvLg0
殺生丸様、アニメ完結編放送決定おめでとうございます。
当ロワでは早期退場及び関係者全滅となってしまいましたがそちらでの活躍を願います。
せめて支給品と関わった人物が活躍する事を願いたい所です。

というわけで投下乙でございます。
治療施設の配置から西側に何かがあるかか……こりゃ意外と気付けない盲点だった。
……状況的にヤバイ事に変わりは無いが何かヒントになるかも。

1点ほど指摘を、
時間が朝になっていますが、『変わる運命』が午前だったので午前か昼になると思うんですが?
どちらにしてもやはりHl氏の分に影響は少ないと思いますが……ですよね?

52 ◆9L.gxDzakI:2009/07/23(木) 17:07:30 ID:qSwld.xA0
しまった、素で間違えたorz
昼でお願いします

53リリカル名無し:2009/07/23(木) 17:09:49 ID:MAm0coVE0
投下乙です
マスで埋めるように考察してますね。でも考え過ぎな部分があるなw
治療施設の配置から西側に何かがあるかですか……何かあるの?
そしてLはLで危険が続いてるな

54リリカル名無し:2009/07/23(木) 17:12:16 ID:MAm0coVE0
これで残りはキースレッドだけ?

55リリカル名無し:2009/07/23(木) 23:43:21 ID:IiOgrc/k0
投下乙です。
そういえばそうだなあ今まで全く気づかなかった。
そしてLの未来はいったいどうなるんだろう。

56 ◆HlLdWe.oBM:2009/08/14(金) 00:38:41 ID:pwxXxp.s0
これよりL、アレックス、ユーノ・スクライア、ブレンヒルト・シルト、キース・レッドで投下します。

57誇りの系譜 ◆HlLdWe.oBM:2009/08/14(金) 00:42:01 ID:pwxXxp.s0
地図上にI-8と定められた1km四方の地帯。
そこには木洩れ日も疎らな暗く黒い森が広がっていた。
そして一歩間違えれば迷ってしまいそうな場所にブレンヒルト・シルトはいた。
その身に纏う衣装は漆黒のバリアジャケット。
右手に持ったバルディッシュ、閃光の戦斧の異名を持つインテリジェントデバイスの力によるもの。
漆黒の魔女はデバイスを唯一の供にこの深い森の中の最も深いと思われる場所にいた。

「これは……なるほど、こうなっているわけね」

ブレンヒルトは呟く。
幾度か確かめた末に出した答えを。

『ではそろそろ帰還しましょうか』

バルディッシュは告げる。
小屋に残してきた仲間を気遣って。

「そうね。スクライアには良い土産話になるでしょ」
『ええ、きっと彼の助けになるはずです』

そして魔女とデバイスはその場に背を向けて仲間の待つ小屋に戻るのであった。

「Stille Nacht Heil’ge Nacht/静かな夜よ 清し夜よ
 Alles schlaft einsam wacht/全てが眠る中 起きているのは
 Nur das traute hoch heilige Paar/誠実なる二人の聖者だけ
 Holder Knab’im lockigten Haar/彼らは巻き髪をもつ美しい子を見守る
 Schlafe in himmlischer Ruh/眠り給う ゆめ安く
 Schlafe in himmlischer Ruh/眠り給う ゆめ安く――」

奥底知れぬが豊かな森の中にただ彼女の声だけが響いていた。


     ▼     ▼     ▼


いささか唐突だが、このデスゲームのために用意された会場は素晴らしい場所である。
北東には森があり、南西には海があり、自然に恵まれている。
この土地の大部分を占める市街地には様々な建物がひしめいていて近代的な都会の様相を見せている。
一方で少し市街地を離れれば町中の喧騒とは縁がない静かな自然が広がっている。
そして市街地の中心部には様々なビルが密集した地帯があり、人口のジャングルを形成している。
主な建物もデパートやコンビニなどの日常的に利用するものから病院や神社などの特別な時に利用するものまで揃っている。
さらには学校や図書館などのように教育に関係するもの。
レストランや映画館などのように娯楽に関係するもの。
ゴミ処理場や工場などのように影ながら町に貢献しているもの。
軍事基地や時空管理局地上本部などのように治安維持を担っているもの。
温泉や翠屋などのようにささやかな癒しを与えてくれるもの。
それに加えて聖王のゆりかごやデュエルアカデミアのような一風変わった建物も数多く見受けられる。
まさにここは快適な土地だ。

治安もいい、観光物資も豊富、居住にも最適。
唯一の不満は外への交通手段が少ない事。
だが駅や港は設けられているのでそこまで不便ではないだろう。
確かに病院の立地条件が少々おかしかったり市街地に似合わない建物があったりと不思議な点もある。
だがそれもこの町の特色の一つとして見れば、それはそれで味わい深いものになる。
もしもここに住むような人がいれば、おそらくここでの生活は充実したものになるはずだろう。

――とは言うものの、実際にここにいる者は唯一人の例外もなく殺し合いを強要される身であり、のんびり観光やらに現を抜かす暇など皆無だが。

「ここが地上本部か」

そして現在時空管理局地上本部の玄関前で一人の男がふと言葉を漏らしている。
もちろん緑の軍服と金髪碧眼が印象的な精悍そうなこの男の目的も観光ではない。

男の名はキース・レッド、元エグリゴリのエージェントであり、今はDr.スカリエッティの下で協力関係の身だ。

そして、ただひたすらに目的に向かって邁進する者である。


     ▼     ▼     ▼


「ただいまスクライア。もう怪我の具合は――」
「あ、おかえりなさい、ブレンヒ……ルト……?」
「な ぜ ま た そ ん な と こ ろ に い る の か し ら ?」
「え、いや、これは……傷の、そう傷が治りかけてきたから、ちょっとした運動ついでに……」
「床の上を歩行ついでに私のスカートの中のシックな下着を覗き見たと、へぇ〜」


     ▼     ▼     ▼

58誇りの系譜 ◆HlLdWe.oBM:2009/08/14(金) 00:43:13 ID:pwxXxp.s0


デスゲームの参加者の一人であるキース・レッドが地上本部へ足を運んだ理由は数時間前に二人の人物と交わした約束にある。
その約束を交わした人物とは黒衣の若き魔女ブレンヒルト・シルトと紫髪の幼き魔女ルーテシア・アルピーノの二人。
その約束とは『18時までにキース・シルバー又はベガルタやガ・ボウの情報を手に入れて地上本部まで来い』というもの。

そもそもその約束が交わされた背景は少々複雑だった。

キース・レッドは元々キースシリーズの一人となるべく他のキース達と同じ遺伝子プールから生まれた存在であった。
数々の実験の末に一時は幹部候補に名を連ねた事もあったが、結局はキースシリーズに加えるに値しないと判断される事になる。
その理由は単純な質の違いだ。
キース・ブラックが選ばれたキースシリーズ(シルバー、バイオレッド、グリーン)に比べてレッドの質は劣っていた。
ただそれだけの理由だ。
そしてキース・レッドは最高幹部に就く事もなく、『欠陥品』『初期不良品』という不名誉な称号を頂く結果となった。

この時からキース・レッドの中ではある決意が芽生えていた。
それは『キースシリーズひいてはそれ以上の高みに上る』というものだった。
その決意こそキース・レッドのアイデンティティーとも言えた。
だからこそシークレットエージェントという役目に任じられても目に余るような行動を慎んできた。
それは要らぬ騒動に巻き込まれたくなかった故だが、一方で常に自身の目的を果たす力を求めてきた。

そして終にキース・レッドは遥か高みに上るための力と遭遇した。
それが4つのオリジナルARMSの一つ、高槻涼の所有するジャバウォックの持つARMS殺しの力である。
ARMS殺しはその名の通り無敵に近いARMSに対して天敵と言える存在だ。
それをキース・レッドはその身で体感していた。
どんな傷でも癒えるはずのARMSを宿した自分が唯一癒せなかった頬の傷。
ある任務で赴いた鐙村でのジャバウォック覚醒体に刻まれた傷がなによりの証だ。
それを手に入れる事ができたなら他のキースシリーズそして全てのARMSに対して自らが優位に立つ事は間違いない。
その時からキース・レッドはジャバウォック確保に全てを捧げた。
そして念入りな事前工作を加えた上で行った大規模な作戦。
だがその最中キース・レッドは目的を果たすこと叶わず――。

そして何の因果か再び目覚めた時、キース・レッドはジェイル・スカリエッティの元にいた。
スカリエッティはキース・レッドに尋ねた――力が欲しいかと。
キース・レッドの答えは決まっていた――当然だと。
そしてその言葉の下にキース・レッドはスカリエッティと契約を交わし、手に入れた力が『ベガルタ』と『ガ・ボウ』だ。
時は巡りその世界でキース・レッドは再会した。
自らを欠陥品や初期不良品と決め付けた兄弟キース・グリーンとキース・シルバーに。
その時は諸所の事情で決着は付かなかった。
だからキース・レッドは今度こそと決意して――。

そして舞台は今に至る。
ここでのキース・レッドの目的はキース・シルバーを倒して自身の力を示す事だ。
だからそのためにキース・シルバーの所在と武器である『ベガルタ』と『ガ・ボウ』の行方を探っていた。
それ以外はどちらかというとあまり興味はなかったが、自身の目的を阻むものに容赦する気はなかった。
しかし探しものは一向に見つかる気配さえ見せなかった。
ここにきてキース・レッドは例外として探しものに手を貸してくれるなら何人かは見逃してもいいと思い始めていた。

これがキース・レッドが不本意ながら約束を交わした背景の一端である。
他にも協力関係にあるスカリエッティと繋がりのあるルーテシアを体よくあしらう口実という面もあった。
それらが絡み合った末に結ばれた約束である。

だが唯一つはっきりしている事がある。
キース・レッドが抱くキース・シルバーへの敵愾心は尋常でないという事だ。


     ▼     ▼     ▼


「おっと、うっかり手が滑ってスクライアの傷口に――」
「ぎゃあああ、ストップストップ! 悪かった、僕が悪かったです!」
「…………」
「…………」
「…………」
「……ごめんなさい」
「ふぅ、その誠意に免じてお咎め無しにしてあげるわ」
「ほっ」


     ▼     ▼     ▼

59誇りの系譜 ◆HlLdWe.oBM:2009/08/14(金) 00:43:50 ID:pwxXxp.s0


     ▼     ▼     ▼


「一応だいぶ回復したみたいね」
「あ、うん、もう歩けるほどには――」
「無理しない方がいいわよ。下手したら死んでいたかもしれなかった傷なのよ。もう少し安静にしていなさい」
「え、あ、気を使ってくれてありがとう」
「別に。ただ貴重な情報源に死なれたら私が困るからよ」
「それでも……ありがとう、ブレンヒルト」
「その様子だと話は普通にできそうね」
「うん、話すぐらいなら平気だよ」
「それじゃあ、スクライア……まずはあなたのことについて話してもらおうかしら」
「ぼ、僕?」

60>>58と>>59の間です:2009/08/14(金) 00:45:37 ID:pwxXxp.s0


そして約束を交わしてから数時間後、キース・レッドは地上本部へと来ていた。
理由は施設の下見だ。
先の約束通りならキース・シルバーと雌雄を決する場はここになる。
仮にそれが叶わないとしてもルーテシアやブレンヒルトが誰か同行者を伴って来る可能性がある。
そして時と場合によってはその者達と戦う可能性もある。
戦いに於いて地の利は重要な要素だ。
事前に地上本部の内部構造を把握しておけば戦闘を優位に進める事も可能だ。

(だがこの様子だと、既に誰かが一戦交えていたようだな)

キース・レッドが地上本部の正面玄関に着くと、そこには戦いの跡が如実に残されていた。
正面の自動ドアは破壊されてガラスは周囲に飛び散り、ロビーの床や壁には幾筋もの傷痕が付いていた。
人の気配がない事から既にここにいた者は去ったらしく、傷跡からロビーを傷つけたものが鋭い刃であると推測できるだけだった。

(とりあえずまずは順番に調べるか。最初は地下だな)

だがキース・レッドはその戦闘の跡に一瞥をくれると、すぐに地上本部の探索に取り掛かった。
エグリゴリ時代に幾度となく戦いの中に身を置いてきたのでこれくらい見慣れたものだ。
不敵な笑みを浮かべてキース・レッドは隙を窺わせる事なく地下へ消えていった。

61誇りの系譜 ◆HlLdWe.oBM:2009/08/14(金) 00:47:13 ID:pwxXxp.s0


     ▼     ▼     ▼


「これがメールにあった罠か」

キース・レッドは目の前に広がる魔法陣を眺めてそう呟かずにはいられなかった。
きっかけは地下で見つけたパソコンだった。
地下から探索を始めたのは下から上に探っていけば仮に参加者が潜んでいても逃げるのは困難だと考えたからだ
そして地下に入って早々に大量の機械に埋もれる形で設置されていたパソコンを発見したのだ。

ちなみにここには今まで八神はやてとクアットロの二人が調査に赴いている。
しかしはやては他に考え事をしていたため、クアットロは地球のパソコンに関する知識を持っていないため。
各々の理由から二人はそれに気付く事はなかった。
三人目の来訪者キース・レッドによってようやくその性能に目を付けられたのだ。

そしてキース・レッドはパソコンが一通のメールを受信している事に気付いた。
メールの内容でいくつか気になるものもあったが、最も気になったのは『地上本部の罠』についてだった。
奇しくも今キース・レッドがいる場所であったので様子を窺いに来たのだ。

そして最上階に上がってすぐ見つけたのがこの転移魔法陣。
すぐ近くには『魔力を込めれば対象者の望んだ場所にワープできます』と書かれた看板が立っている。
あのメールに書かれていた罠がこれを指している事に疑う余地はない。

「なるほど、発動には魔力が必要か。あれを途中で拾ってきて正解だったな」

そう言いながらキース・レッドはデイパックの中からある物を取り出していた。
それは圧縮魔力が込められたカートリッジ。
ここへ来る途中の川で拾ったデイパックの中に入っていたものだ。
近くに持ち主を思われる焼死体も浮いていたが、既に首輪は入手していたため目もくれずに放置してきた。

「さて、果たしてメールの内容の真偽は――」

次の瞬間、勢いよく叩きつけられたカートリッジの魔力に呼応して転移魔法が発動した。

62誇りの系譜 ◆HlLdWe.oBM:2009/08/14(金) 00:47:44 ID:pwxXxp.s0


     ▼     ▼     ▼


「スクライア、確認するけれど、あなたは何故ルーテシアがあんなことをしたのか、ちゃんと分かっているの?」
「うん……分かっているよ」
「そう、分かっているのね」
「…………」
「あなたがそこまで言うのなら、私からは何も言えないわ。ただし、約束なさい。ちゃんと彼女を、ルーテシアを説得すること。いい?」
「えっ、う、うん、約束するよ」

63誇りの系譜 ◆HlLdWe.oBM:2009/08/14(金) 00:48:22 ID:pwxXxp.s0


     ▼     ▼     ▼


結果的にキース・レッドは転移魔法を発動させる事が出来なかった。

「発動せずか……一発無駄になったな」

魔法の知識はそこまで精通していないので詳しい原理は分からないが、カートリッジの魔力が魔法陣に影響を与えた事は確からしい。
だが魔法陣から光が放たれても一向にキース・レッドの身体が転移する気配はなかった。
そしてついに光は消えて再び発動前と同じ状態に戻ってしまった。
あとには空のカートリッジが虚しく転がるだけ。

(もしや魔力不足か?)

すぐにキース・レッドは失敗の原因が魔力不足にあると思い至った。
そこで今後はカートリッジ3つで試してみる事にしたが、やはり何も起こらなかった。
それならばと考え直して次は6つで試してみたが、またしても何も起こらなかった。
そこまで試したところでキース・レッドは手を止めた。

(当然と言えば当然か)

キース・レッドはこの結果をある程度予想していた。
なぜならキース・レッドが望んだ場所とはこのデスゲームの主催者であるプレシア・テスタロッサの下だ。
もし成功すればそのまま直にプレシアと渡り合おうと考えていたが、おそらくそれは無理だと思っていた。
なぜならそんな事が可能ならプレシアを快く思わない者達が大挙して攻め入り、デスゲームが成り立たなくなるからだ。

わざわざその事を看板に記さない辺り、プレシアの考えが垣間見えた気がした。

64誇りの系譜 ◆HlLdWe.oBM:2009/08/14(金) 00:51:23 ID:pwxXxp.s0


     ▼     ▼     ▼


「そうだ、ブレンヒルト。今度は君のことを教えてほしい」
「……その前にもう一つ教えてほしい事があるわ」
「ん、なんだい?」
「八神はやて、高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、この3人はあなたの知り合いかしら?」
「え、君もなのは達の知り合いなんだ」
「ええ、うちの学校の生徒会長と会計と広報よ」
「へ?」
「その様子だとスクライアのいた世界はバルディッシュと一緒なのかしら」
「それってどういう意味――」
「バルディッシュ、面倒だから説明よろしく」
『……Yes』
「(バルディッシュ、大変そうだな)」

65誇りの系譜 ◆HlLdWe.oBM:2009/08/14(金) 00:51:53 ID:pwxXxp.s0


     ▼     ▼     ▼


結論から言うと直接プレシアのところへ転移する事は不可能だ。

(プレシアのいる場所が無理なら別の場所で試してみるか)

キース・レッドはまだこの転移魔法陣が罠かどうか判断しかねていた。
仲間を散り散りにさせる罠と言っても今のキース・レッドには仲間など存在しないので損失はない。
仮に見当違いの場所に転移させられたとしても、そもそも探しものの居場所に心当たりがない以上特に問題ではない。
何処へ転移しても地図を見る限り約束の18時までには戻ってくる事は可能だ。
だからこそ心配なく試す事が出来る。

プレシアのところが無理になった状況で候補に挙がるものは以下の3つ。
キース・シルバー、『ベガルタ』、『ガ・ボウ』、そのうちキース・レッドが選んだものは――。

66誇りの系譜 ◆HlLdWe.oBM:2009/08/14(金) 00:52:34 ID:pwxXxp.s0


     ▼     ▼     ▼


「ところでブレンヒルト。さっきまでこの小屋と周囲を調べていたみたいだけど、何かあった?」

ユーノは話し合いが一段落付いた事を確認してからブレンヒルトに尋ねた。
二人がこの小屋に辿り着いてから既に3時間ほど経過している。
本当なら長居をする気はなかったのだが、ユーノの傷が思ったよりも深かったので足止めを余儀なくされていた。
その傷も今ではだいぶ回復している。

「私とあなたのいた世界が違う事に関してはもういいの?」
「こればかりは俄かには信じがたいけど、君が嘘を言っているようには見えない」
「……信頼されているのね」
「うん、もちろん」

ユーノ自身まだ完全に平行世界の事を理解したわけではない。
ただブレンヒルトが嘘を言っていない事だけは半ば確信していた。
それは真摯に対応しているところとか雰囲気で分かった。
本当はこういう状況で他人を安易に信用するのは良くないのかもしれないが、ユーノは気にしなかった。

「小屋の中には特に何もなかったわ」
『あの絵は違うんですか?』
「バルディッシュ、余計なお節介よ」
「あの絵って、何かあったの?」
「……隠しても仕方ないか。ちょっと取ってくるわ」

そう言ってブレンヒルトは複雑そうな表情を浮かべながら部屋を出ていった。
ユーノ一人になった部屋に廊下から聞こえてくるブレンヒルトの足音だけが響く。
いやもう一つ聞こえてくる音がある。
それは歌詞こそ聴き覚えがなかったが、メロディーはなのはの世界で聞いたものだった。

(確かあれは「きよしこの夜」だったはず……)

67誇りの系譜 ◆HlLdWe.oBM:2009/08/14(金) 00:54:01 ID:pwxXxp.s0


     ▼     ▼     ▼


E-5に聳え立つ時空管理局地上本部。
そこには誰もいない。


     ▼     ▼     ▼


程なくしてブレンヒルトは一枚の絵を持って帰って来た。

「それがさっき言っていた絵?」
「……そうよ」

やはりどこか落ち着かない様子のブレンヒルトを訝しみながらユーノはその絵に視線を移した。
それは森の風景を描いた油絵だった。
大型のキャンバスに描かれているのは深い黒と緑で彩られた森。
随分描き込んでいるせいか丹念に作り上げられた絵の出来は素人のユーノも感心するほどだった。
奥底の黒い森がキャンバスの向こうに静かに広がっていて、一瞬その絵の中に吸い込まれそうな錯覚を得るかのようだった。
だがなぜかその絵の中央は木炭で下書きされただけでほとんど白紙のままであった。

「この中央の部分は……えっと、これは小「小屋よ」え?」

ユーノが疑問に思っていると突然説明の手が入った。
だがそれは意外にもブレンヒルトからであった。

「森が木々の群れではなく森たる所以は、人が至る場所だから。人がいるから木は群れではなく数えられ、そして憶えられる」
「ブレンヒルト?」
「森って、あの世界で一番初めに知った漢字だけど、良い表現ね」

ユーノはただ呆気に取られていた。
だがブレンヒルトの説明はまるでこの絵の主の意図をはっきりと説明したかのようであった。
いやそうではない。
ユーノは誰がこの絵を描いたのかだいたい見当が付き始めていた。

「そして森には人が至るけど、そこに住まう人々は隠者と呼ばれる者と、その弟子と、庇護を求めてきた者達。
 隠者とは賢者のこと、つまり世界を憂う者がそこに住むの」

確かに下書きされているものはブレンヒルトの言う通り小屋と数人の人だ。
小屋の中で本を読む老人、小屋の前で一羽の鳥と遊ぶ少女と女性、そしてもう一人。
なぜか老人と女性があり、少女はブレンヒルトにどこか似ている気がした。
あと最後の人物だけ下書きの線が荒く消されていた事が気になったが、それよりも大きな疑問があった。

「あの、もしかしてこの絵を描いたのは……」
「私よ」

それはユーノが予想していた答えだった。
あの説明はそうでなければ本人でなければ出来ないものだ。
最初この絵の存在を隠そうとしたのもブレンヒルトが描いたものであれば納得がいく。
さすがにこの状況で未完成の自分の絵を披露するのは気が進まないものだろう。

「でもなんでブレンヒルトの絵がこんなところにあったんだろう」
「知らないわよ。私もこれを見つけた時はびっくりしたわ。でも……」
「でも?」
「この絵は私の故郷の1st-Gを描いたものなの」
「そうなんだ」

ユーノは1st-Gという言葉を聞いたのは初めてだった。
なんとなく1stという文字が付くからには2ndや3rdの文字が付くGがあるのかなと考えていた。

「もう滅んだけどね」
「え!?」
「だから今私と仲間達はその滅んだ世界のために活動しているの。その大事な時に私は……」
「デスゲームに連れて来られたんだ」
「そうよ」

自らの境遇を離すブレンヒルトはどこか儚げであった。
だからと言ってユーノはどう接していいか掴みかねていた。
だが今こうして自分が無事でいられるのはブレンヒルトのおかげだ。
ブレンヒルトが助けてくれなければ自分は死んでいたに違いない。
だから思い切って提案してみた。

68誇りの系譜 ◆HlLdWe.oBM:2009/08/14(金) 00:54:43 ID:pwxXxp.s0

「あの、ブレンヒルト。もしここから脱出できたら僕も君達に協力するよ」
「え?」
「今まで世話になりっぱなしだからそのお礼という事で……」
「無事に脱出させてくれれば、それでいいわよ」
「でも、それに、あの絵すごく綺麗だから、その1st-Gも――」
「うるさい!」

自分でも何を言っているかよく分からない内にユーノはブレンヒルトに首根っこを掴まれると、そのままデイパックの中に入れられた。
あとにはなぜか嬉しそうな表情を浮かべたブレンヒルトとずっと寡黙を貫いたバルディッシュが残るだけだった。

(私らしくないわね。必要以上に過去を離すなんて……ああ、そうか。あのお節介な黒猫に似ているんだ。
 あの変に私のことを気にかける黒猫の使い魔に……)

そして1分後ユーノがいきなりデイパックから出てきた。
正確には弾かれたらしい。
どうやらデイパックの中に参加者が入っている事ができる時間は1分だけのようだ。
二人の結論はおそらくプレシアの細工という事で落ち着いた。
デイパックの中に籠って殺し合いを避ける参加者が現れないようにするために。

(ふーん、話に聞いた通りの性格だわ。それに頭も良いし信用するには足りる人物ね)

実はブレンヒルトは事前にバルディッシュよりユーノの情報を簡単に教えてもらっていたのだ。
だから先程ユーノに自己紹介を求めていたが、別にそれは既に知っていた事だった。
だが敢えて質問したのには理由がある。
それはユーノが本当に信頼に値する人物かどうかブレンヒルトなりに判断するためである。
もしも嘘を付けば何か不審な点ありと見なして対応したところだが、結果的にユーノは正直に答えた。
だからブレンヒルトもユーノを信じてみようという気になったのだ。
その後でのやり取りでもユーノの優しさは十分把握できた。

「そうだ、さっき部屋から出ていく時に歌っていたメロディーって……」
「ああ、あれね。あれは昔まだ私が1st-Gにいた頃によく耳にした歌よ」
「そうなんだ。それってクリスマスの時――あ!」
「そんな間抜けな声を出して、どうしたのスクライア?」
「え、間抜けは余計じゃ……って、そうじゃなくて。ブレンヒルトには何が支給されていたの!」

このデスゲームでは各々に三つ程度の道具が支給されている。
あの広間でもプレシアがそのような節を言っていた。
ユーノに闇の書とバリアのマテリアとシェルコートが支給されていたようにブレンヒルトにも何らかの道具が支給されているはず。
それによっては今度の行動に役に立つものかもしれない。
あるいはジュエルシードのように危険なものかもしれない。
今ユーノはクリスマスという単語からあの雪の日に旅立って行ったリインフォースのことを思い出していた。
そして連鎖的に自分の支給品に闇の書があった事を思い出したのだ。
何はともあれ支給品の確認は早いうちに済ませておくべきだ。

「ああ、そういえばスクライアには言っていなかったわね。私に支給された道具は全部で三つよ」
「僕もルーテシアも三つ……支給される道具は三つずつなのかな……」
「まだ三人でしょ。結論を出すにはまだ早いわ」
「それもそうか。で、何が支給されていたの?」
「まずはこの1st-Gの賢石、そして双眼鏡、最後は――」

そう言いながらブレンヒルトが取り出した物は一振りの短剣だった。
紅い刀身が見る者に禍々しさを伝える印象的なものだった。

その短剣の名は――

「ベガルタ、キース・レッドの探しものの一つよ」

――それは『小怒/小なる激情』の名を冠した武器であり、キース・レッドが探し求めていたものの一つであった。

「ちょ、ちょっと待ってブレンヒルト! いったい、いつのまに……あ、さっき探索に出ていた時に見つけたんだね」
「いえ違うわ。言ったでしょ、これは『私の最後の支給品』よ」
「え、でもキース・レッドには――」
「ええ、あの時に素直に白状する事も出来たわ。
 でも、それであいつが私達を見逃すか確証がなかったし、それならその事をダシに上手い具合に切り抜けられないかって思ったのよ」
「でもばれたらヤバいんじゃ……」
「平気よ。もう一番の山場は過ぎたから。本当は適当に探す約束だけに済ませたかったけど、18時までに見つけて来いって……。
 まあ結果オーライね。これを持って行って差し出せば、少なくともすぐに身に危険が及ぶ事はないでしょ」


「魔女よ、よくも私を愚弄してくれたな」


そして静かな森の中に終わりを告げる銃声が轟いた。

69誇りの系譜 ◆HlLdWe.oBM:2009/08/14(金) 00:55:15 ID:pwxXxp.s0


     ▼     ▼     ▼


「ちょっとブレンヒルト! 何するんだ!」
「黙ってデイパックの中に入っていなさい。スクライアがいると邪魔なのよ」
「いや、僕だって補助系の魔法は――」
「あなたはまず自分の傷を癒す事に専念しなさい。中途半端な状態で勝てるような相手じゃないわ」
「でもそれなら尚更――」
「……時間稼ぎは私がするから……それじゃあ、さようなら」
「え!?」
「約束忘れたらさっきより痛い目に遭わせてやるから、心しておきなさい」

70誇りの系譜 ◆HlLdWe.oBM:2009/08/14(金) 00:55:54 ID:pwxXxp.s0


     ▼     ▼     ▼


結局、俺は『ベガルタのある場所』を選んだ。

まず選択肢としてキース・シルバーという人かベガルタやガ・ボウという武器か。
ここは武器を選んだ。
なぜならキース・シルバーを越えるには相応の力が必要になる。
こちらの戦力は可能な限り整えておく必要があるのだ。

次にベガルタかガ・ボウか。
ここで決め手となったのは、ここへ来る直前の一連の戦闘だった。
キース・シルバーとの決着が付く前にアギトが強制的に融合してきて俺の身体の制御を奪って撤退した時の出来事。
あの時アギトは俺の要望を聞き入れて、キース・シルバーに刺さった状態のガ・ボウを破壊した。
だから予備があるとはいえ、もしかしたらここにガ・ボウはないのかもしれないと思ったのだ。
ベガルタならここに来る直前まで所持していたからこちらは確実と言ってよかった。

だがそんな事はもうどうでもいい。

俺は愚弄されたのだ。
あのブレンヒルトと云う忌々しい魔女に。
ベガルタを所持していながら、その事実を隠蔽して俺を騙した女。
最初小屋の中に転移させられて失敗かと考えたが、そうではなかった。
あの転移魔法陣は本物だった。

ベガルタを所持したブレンヒルト・シルトの下へ転移できたのだから。

ああ、生かしておくものか、命乞いなど許しはしない。

さあ覚悟しろ! 見せてやる、我が最強のARMS、グリフォンをな!!!

71誇りの系譜 ◆HlLdWe.oBM:2009/08/14(金) 00:56:37 ID:pwxXxp.s0


     ▼     ▼     ▼


私はここで死んでしまうだろう。
キース・レッドが放った最初の銃撃。
ドアの向こうから放たれた規格外の凶弾。
咄嗟に躱したにもかかわらず穿たれてしまった傷。
あれを避けられなかった時点でもう私の命運は尽きていたのかもしれない。
小屋の中は危険だと判断して外に飛び出して走っている最中に背中から血が零れ落ちていくのがはっきりと分かった。
その傷自体はユーノの位置からは目に付かない場所だったが、残念ながら背中を豪快に掠って行った銃弾に血と肉を削られすぎた。
一応安全だと思って賢石の節約でバリアジャケットを解除していた事が悔やまれるが、もう遅い。
だから悟った。
もう助からないだろう、と。
ユーノの治療魔法なら助かる可能性はあるのかもしれない。
だが殺気立っている敵の目の前で呑気に治療している時間などない。
そんな事をすれば二人ともジ・エンドだ。

だからユーノはデイパックに押し込んで境目まで行ってから投げ込んでループさせた。
バルディッシュも一緒に入れた。
私がここで死んだら碌な目に遭いそうにないから。

我ながら何をしているんだろう。
私はこんな事をする優しい魔女さんではなかったはずだ。
見ず知らずの誰かを生かすために犠牲になるなんて……しかもあんな嘘まで付いて……。
約束か……結局私は何がしたかったんだろう……。
ギル・グレアム……もしかしてあなたもそうだったのかしら?
誰かのために嘘まで付いて一人で苦しんで。

「もう逃げないのか?」

でもスクライアだから、こんな事をするのかしら。
あなたは私の故郷を、1st-Gの世界を……だから……。

「……守るわよ」

何をと問われれば答えはおそらく一つだろう。

「文字をもってあなたに刻印してあげるわ! ――我が名誉の一戦ここにあり!!」

72誇りの系譜 ◆HlLdWe.oBM:2009/08/14(金) 00:58:24 ID:pwxXxp.s0


     ▼     ▼     ▼


それは酷い光景だった。

「おそらく1エリアまるごと壊滅。まさかこれほどの力を持っている参加者がまだいたとは……」

アレックスは目の前に広がる惨状にそんな感想を抱いていた。
少し前まではトレーラーを運転していたのだが、今はトレーラーを止めている。
いや正しくは止めざるを得なかった。
11時に禁止エリアになる前にH-4を通過して地上本部に向かっていたアレックスの前に現れたのは壊滅したG-5エリアだった。
そこはほとんどのビルが跡形もなく崩壊して、コンクリートがあちこちでひび割れている状態であった。
そこには数時間前に目にしたF-3と同じ光景が広がっていた。
もちろんそんな状態のエリアでトレーラーを走らせる事など不可能だ。

「地上本部にはここから北に一直線に進めば着けるか」

地図を見ながらアレックスは今後の行動の修正を迫られていた。
大型のトレーラーは地図上の大通りしか満足に走らせることは出来ない。
つまりここからは自分の足で移動しなければいけない。
先程Lが意識を取り戻したが、とても自力で歩ける状態ではない。
ザフィーラの支給品の中に車椅子があった事は幸いだったが、今は緊急を要する時だ。
直接背負って行った方が早い。

だが――


「見つけたぞ、キース・シルバー!!!」


――キース・レッド、飽くなき執念に身を焦がした兄弟がそれを見過ごしてはくれなかった。


キース・レッドが宿敵キース・シルバーを発見したのはブレンヒルトに勝利して地上本部に帰る途中であった。

結論から言うとキース・レッドとブレンヒルトとの戦闘は熾烈を極めた。
主な戦場であったI-8の森は壊滅状態に近いものになり、もうそこは森とは呼べない状態だ。
そして勝利を収めたとは言えキース・レッドはあまり喜べなかった。
二人の戦闘は最初こそ均衡していたが10分としない内にキース・レッドがブレンヒルトを一方的に攻める形になった。
そしてキース・レッドが勝利するのだが、その損失は思いの外大きかった。
ジャッカルとカスールの弾を合計15発も使用した後に銃弾を補充した結果、予備弾はなくなってしまった。
さらにグリフォンを数秒ではあるが防がれるという結果を残してしまった。
そのおかげでグリフォンを使用した後に疲労が増すという制限が判明した事は思わぬ成果であった。
だが正直ここまで力を消費するとはキース・レッドにとって予想外だった。

本来ブレンヒルトの実力は満足な状態であれば高町なのはよりもやや劣る程度。
ブレンヒルトの側に立ってみれば賢石一つでよく持ち堪えた方だ。
死ぬ間際の最期の輝きというべきか。

そして戦闘の疲労を核鉄で癒しつつキース・レッドが向かった先が地上本部であった。
目的は当然ながら転移魔法陣だ。
今回の件であれが概ね信用できる事が判明した。
だからガ・ボウを回収した後にキース・シルバーと対峙するつもりであった。
一応他の者に転移魔法陣を使われないように屋上に通じる地上本部の全ての手段は破壊してきた。
これであとは地上本部に帰って外から屋上に乗りこんで転移するだけだった。

だが出会ってしまった。
こうなれば話は別だ。
目の前にした宿敵を逃がす事などキース・レッドに出来るはずなかった。

今キース・レッドの誇りを賭けた戦いが始まる。

73誇りの系譜 ◆HlLdWe.oBM:2009/08/14(金) 00:59:03 ID:pwxXxp.s0


【1日目 昼(放送直前)】
【現在地 G-5】

【キース・レッド@ARMSクロス『シルバー』】
【状態】健康、疲労小
【装備】ベガルタ@ARMSクロス『シルバー』、核鉄「サンライトハート改」(待機状態)@なのは×錬金、
    対化物戦闘用13mm拳銃ジャッカル(6/6)@NANOSING、.454カスール カスタムオートマチック(6/6)@NANOSING
【道具】支給品一式×6、レリック(刻印ナンバーⅦ)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪×2(優衣、なのは@A’s)、
    ヴァッシュのコート@リリカルTRIGUNA's、S2U@リリカルTRIGUNA's、各種弾薬(各30発ずつ)、カートリッジ(13/30)、
    レイトウ本マグロ@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、杖@ゲッターロボ昴、ランダム支給品(元カレン:0〜2)
【思考】
 基本:キース・シルバー(アレックス)と戦い、自分の方が高みにある事を証明する。
 1.キース・シルバーを倒す。
 2.できるだけ早く首輪を外したい。
【備考】
※キース・シルバーとは「アレックス@ARMSクロス『シルバー』」の事だが、シルバーがアレックスという名前だとは知りません。
※神崎優衣の出身世界(仮面ライダーリリカル龍騎)について大まかな説明を聞きました。
※自身に掛けられた制限について把握しました。
※白刃の主をヴァッシュだと思っています。
※サンライトハート改は余程の事がない限り使う気はありません。
※ルーテシアの話の真偽についてはどうでもいいみたいです。
※アンデルセンのデイパックを拾いました。

【アレックス@ARMSクロス『シルバー』】
【状態】健康、疲労小
【装備】なし
【道具】支給品一式×2、首輪探知機、ガムテープ@オリジナル、ラウズカード(ハートのJ、Q、K)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、
    レリック(刻印ナンバーⅥ、幻術魔法で花に偽装中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、はやての車椅子@魔法少女リリカルなのはA’s、ランダム支給品(ザフィーラ:0〜2)
【思考】
 基本:この殺し合いを管理局の勝利という形で終わらせる。
 1.キース・レッドに彼が所属する組織の事を尋問する。その後に首輪を破壊する。
 2.地上本部へ向かいLを治療する。
 3.六課メンバーと合流する。
【備考】
※身体にかかった制限を把握しました。
※セフィロスはデスゲームに乗っていると思っています。
※はやて@仮面ライダーリリカル龍騎は管理局員であり、セフィロスに騙されて一緒にいると思っています。
※キース・レッド、管理局員以外の生死にはあまり興味がありません。
※参加者に配られた武器にはARMS殺しに似たプログラムが組み込まれていると思っています。
※殺し合いにキース・レッドやサイボーグのいた組織が関与していると思っています。
※他の参加者が平行世界から集められたという可能性を考慮に入れました。
※ザフィーラから第1放送の内容とカードデッキに関する簡単な説明を聞きました。
※市街地東側に医療設備が偏っている事から西側にプレシアにとって都合の悪いものがあるかもしれないと推測しています。

74誇りの系譜 ◆HlLdWe.oBM:2009/08/14(金) 00:59:38 ID:pwxXxp.s0


     ▼     ▼     ▼


アレックスさんの懸念はもっともなものです。
一応これもメモに書き加えておきましょう。
……。
………。
…………。
……………ふぅ、これだけの作業すら思い通りに進まないとは。
これは私が思っている以上に身体の状態が芳しくないようですね。

それにしてもアレックスさん、外で何かトラブルでも起こったのでしょうか。


【1日目 昼(放送直前)】
【現在地 G-5 黒の騎士団専用車両内】
【L@L change the world after story】
【状態】全身打撲、全身裂傷、中程度の出血、右足粉砕
【装備】黒の騎士団専用トレーラー@コードギアス 反目のスバル
【道具】支給品一式×2、首輪(シグナム)、首輪の考察に関するメモ
【思考】
 基本:プレシアの野望を阻止し、デスゲームから帰還する。デスゲームに乗った相手は説得が不可能ならば容赦しない。
 1.外へ様子を見に行ったアレックスを待つ。
 2.怪我の治療が済んだらザフィーラを迎えに行く。
 3.ザフィーラと合流出来たら船を調べて、その後は駅を調べに行く。
 4.通信で誰かと連絡がついたら、その人と情報交換、味方であるなら合流。
【備考】
※参加者の中には、平行世界から呼び出された者がいる事に気付きました。
※クアットロは確実にゲームに乗っていると判断しています。
※ザフィーラ以外の守護騎士、チンク、ルーテシア、ゼストはゲームに乗っている可能性があると判断しています。
※首輪に何かしらの欠陥があると思っています。
※アレックスからセフィロスが殺し合いに乗っているという話を聞きました。
【黒の騎士団専用トレーラーの状態】
※内部のコンピューターのOSは地球及びミッドチルダのものと異なります。
※機械設備や通信機能は全てコンピューター制御です(ただし居住スペースはその限りではない)。ギアス世界のOSを知る者もしくはOS自体を書き換えない限り使用不可能です。
※ベノスネーカーとの接触でエンジン部に多大なダメージを負いました。このまま走らせるとエンジン部が爆発する可能性が非常に高いです。アレックスはこの事にはまだ気づいていません。

75誇りの系譜 ◆HlLdWe.oBM:2009/08/14(金) 01:00:52 ID:pwxXxp.s0


     ▼     ▼     ▼


「…………」
『Mr.ユーノ』

なんで僕はここにいるんだろう。
その理由はバルディッシュの説明もあってだいたい理解できた。
どうやらこの会場は対応する端と端でループしているらしい。
あの時僕はブレンヒルトの手で無理やりデイパックの中に入れられてしまった。
だからおそらくそれがI-7付近の境目に投げ入れられて、そのまま川に落ちてここまで流れ着いたんだろう。
デイパックの口を縛っていたみたいだけど、1分経ったから強制的に出されたらしい。
すぐ近くに温泉みたいな建物が見えるからここはB-7の東側の岸かな。

「ブレンヒルト……君は……」

そして二回目の放送が始まった。


【1日目 昼(放送直前)】
【現在地 B-7 川の東側の岸】
【ユーノ・スクライア@L change the world after story】
【状態】魔力消費(小)、腹に刺し傷(ヒーリング中)、フェレットに変身中、呆然
【装備】なし
【道具】支給品一式、双眼鏡@仮面ライダーリリカル龍騎、バルディッシュ・アサルト(カートリッジ4/6)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(矢車)
【思考】
 基本:なのはの支えになる。ジュエルシードを回収する。フィールドを覆う結界の破壊。
 0.ブレンヒルト……。
 1.ルーテシアと話をする。
 2.ジュエルシード、シャマルとザフィーラの捜索。
 3.Lや仲間との合流。
 4.首輪の解除。
 5.ここから脱出したらブレンヒルトの手伝いをする。
【備考】
※JS事件に関連した事は何も知りません。
※プレシアの存在に少し疑問を持っています。
※ルーテシアがマフィアや極道の娘だと思っています。
※ルーテシアに刺されてから小屋に着く途中まで気絶していたのでルーテシアや明日香がどうなったのか知りません。
※ルーテシアに刺されたのは自分が破廉恥な行いをしたからだと思っています。
※結界を壊す一つの手段として、ジュエルシードの力の解放を考えていますが、実際にやるかどうかはまだ分かりません。

76誇りの系譜 ◆HlLdWe.oBM:2009/08/14(金) 01:01:30 ID:pwxXxp.s0


     ▼     ▼     ▼


地図上にI-8と定められた1km四方の地帯。
もうそこには木漏れ日も疎らな暗く黒い森は広がっていない。
そこにあるのは焼け野原だ。
ほとんどの木々は根元から折れて倒木となり、そうでないものは根が付いたまま倒木となり、I-8全域に散乱している。
木々を育んできた大地には大小様々なクレーターが無数に穿たれて、見るも無残な光景だ。
それらの惨状は全てキース・レッドとブレンヒルト・シルトによるものである。
キース・レッドのジャッカルやカスールが火を噴き、ARMSを展開すれば、ブレンヒルトの重機関銃が火を噴き、竜砲が炸裂する。
しかしブレンヒルトの力の要は賢石であるので、そのような攻防は長くは続かなかった。
だが結果としてI-8が壊滅するのには十分すぎる攻防であった。

だがそんな焼け野原の中で一人の魔女が根っこにもたれている。
その少女は焼け野原の中にあって服装は煤けて千切れているが、それは微々たるものであり、制服の形は保たれたままであった。
そしてその傍らには限界を越えて酷使された賢石の破片が役目を終えたかのように散らばっていた。
敗北の決め手になったグリフォンを防いだ衝撃で対のリボンは消し飛び、ブロンドヘアは風に揺れるままになっている。

だが1st-Gの魔女の顔は安らかなものであった。

もう奥底知れぬが豊かな森の中に彼女の声が響く事はない。

【ブレンヒルト・シルト@なのは×終わクロ  死亡確認】

【全体備考】
※I-8はほぼ壊滅状態になりました。
※地上本部の転移魔法陣からプレシアのところへ転移する事は不可能です。
※地上本部の屋上に通じる全ての手段は破壊されました。

77 ◆HlLdWe.oBM:2009/08/14(金) 01:04:39 ID:pwxXxp.s0
投下終了です。
まずは再予約とはいえ遅れてしまいすいませんでした。
今後は自分の書くペースを見極めて努力します。

誤字・脱字、矛盾、疑問などありましたら指摘して下さい。

78リリカル名無し:2009/08/14(金) 20:19:15 ID:i4coZGfIO
投下乙です
どこもかしこも不運ですね
でも言いにくいですが全体的に説明(描写)不足みたいな印象でわかりかねる箇所がいくつかあったので加筆した方がいいと思いました

79リリカル名無し:2009/08/14(金) 22:33:32 ID:u1eQh.3A0
投下乙でござる。

ブレンヒルトはここで退場か……最後にある程度頑張ったとはいえキース・レッドのダメージが軽微すぎる為殆ど犬死に……
とりあえず生き残ったユーノが上手く温泉の明日香(with夜天の書&ジュエルシード)と合流……駄目だ、イヤな予感しかしねぇ。
キース・レッドは遂にキース・シルバー(アレックス)と激突……決着着いたらどうなるんだろうか……。

と、ここからは幾つか疑問が、

1.ブレンvsキース・レッド戦の描写が殆どオミットされている。
 例えばこれがキース・レッドが一方的な攻撃もしくは不意打ちでブレンヒルトが何も出来なかったならそれでも良いんですが、
 本編にもある通りブレンヒルトは(少なくても10分弱は)抵抗出来ていた上エリアすらも壊滅させているんですよね……
 正直、描写不足は否めない気がします。
 それにキース・レッドが疲労(小)以外のダメージが無いのも引っかかる……(核鉄で回復したとしても後述の理由でちょっと……)

2.転移魔法陣があったのは屋上?
 とりあえず、転移魔法陣に続く道を塞ぐ為に屋上への道を塞ぐ(つまり屋上への階段という解釈?)のはいいんですが、
 確か、転移魔法陣があったのは屋上ではなく最上階の展望台だった気が……まあ、この辺は修正程度で済むレベルですが。

3.時間経過的にいける?
 他の話を合わせて読んでキース・レッドがブレンヒルトの所に転移したのはキャロよりも後だと思う(キース・レッドは転移前に道を塞いでいるのでその後にキャロが使うのは無理がある。)んですが、
 キャロはゆりかごに転移後ほぼ同じタイミングでゆりかごにやってきたフェイトと遭遇しているんですよね。
 ところが、フェイトがゆりかごに到着したのはどう高速で見積もっても11時過ぎ(正直割と放送直前な気もする。)なんですよね。(ブルーアイズ戦が11時過ぎなので。)
 そうなるとキャロの転移時刻も11時前後辺りでないとおかしい事に(転移後ゆりかご到着まで時間がかかったとしてもいいけど幾ら何でも1時間は無いだろう。)
 で、これで何が問題かというと、

 レッド転移→ブレン襲撃そしてブレン撃破→I-8からG-5まで移動→シルバーとの遭遇

 これらを一気に(こちらの解釈としては1時間弱で)行うのは正直無茶ではなかろうか……
 ついでに言えばその短時間でキース・レッドの疲労やダメージが回復するのも早すぎる気が……(出来ないとは言わないけど……ちょっと都合良すぎない?)

 真面目な話、他の話との兼ね合いを考えるとブレン撃破まではともかくそこからシルバーとの再会までやるのは厳しいと思うのですが(まあ、過去にも時間的に無茶な展開幾つかあったからそれ自体は一応アリだけど。)

以上の事から考えて、自分も色々フォローを入れるべきだと思います(でも、これフォロー入れるの大変なんですよね……)。

80リリカル名無し:2009/08/16(日) 20:22:50 ID:xKmjJdJM0
投下乙です
ブレンヒルトが……確かに犬死に近いな
そしてユーノはどうなるのだろうか?
不吉な予感しかしないなw

81 ◆HlLdWe.oBM:2009/08/16(日) 23:56:54 ID:JPcWReT.0
修正作業に戸惑ってすいません。
明日には修正版を投下できると思います。

82 ◆HlLdWe.oBM:2009/08/17(月) 23:59:46 ID:LnVbaBRU0
修正版投下します。
避難所スレの>>66から一部も含めてだいぶ書き換えたのでそこから投下していきます。

あと戸惑って→手間取って
あまり違いはなさそうですが一応

83誇りの系譜(修正) ◆HlLdWe.oBM:2009/08/18(火) 00:02:20 ID:d3Mf8mhw0


     ▼     ▼     ▼


「ところでブレンヒルト。さっきまでこの小屋と周囲を調べていたみたいだけど、何かあった?」

ユーノは話し合いが一段落付いた事を確認してからブレンヒルトに尋ねた。
二人がこの小屋に辿り着いてから既に3時間ほど経過している。
本当なら長居をする気はなかったのだが、ユーノの傷が思ったよりも深かったので足止めを余儀なくされていた。
その傷も今ではだいぶ回復している。

「私とあなたのいた世界が違う事に関してはもういいの?」
「こればかりは俄かには信じがたいけど、君が嘘を言っているようには見えない」
「……信頼されているのね」
「うん、もちろん」

ユーノ自身まだ完全に平行世界の事を理解したわけではない。
自分とブレンヒルトはもちろん、バルディッシュとさえ同じ世界でないらしいという事実は少なからず衝撃的だった。
だが、だからと言ってブレンヒルトが信用できないという理由には結びつかない。
いくらか接するうちにブレンヒルトが嘘を言っていない事だけは半ば確信できた。
それは真摯に対応しているところとか雰囲気で分かった。
本当はこういう状況で他人を安易に信用するのは良くないのかもしれないが、ユーノは気にしなかった。
ブレンヒルト自身の事よりもこちらの質問を優先した理由もブレンヒルトを信用しているが故の選択だった。

「小屋の中には特に何もなかったわ」
『あの絵は違うんですか?』
「バルディッシュ、余計なお節介よ」
「あの絵? 何かあったの?」
「……隠しても仕方ないか。ちょっと取ってくるわ」

そう言ってブレンヒルトは複雑そうな表情を浮かべながら部屋を出ていった。
そして一人部屋に残ったユーノの耳に廊下からコツコツというブレンヒルトの足音だけが聞こえてきた。
いやもう一つ聞こえてくる音がある。
それは歌詞こそ聴き覚えがなかったが、メロディーはなのはの世界で聞いたものだった。

(確かあれは「きよしこの夜」……)

84誇りの系譜(修正) ◆HlLdWe.oBM:2009/08/18(火) 00:03:02 ID:d3Mf8mhw0


     ▼     ▼     ▼


まずは階段から取りかかるか。
さすがに全階は時間と労力の都合で無理だが、中腹以下なら疲労も問題ない程度だ。
ARMSの腕を大型の刃に変化させて階段に突き刺して適当に伸ばして動かすだけ。
これでほとんど使い物にならなくなるから意外と楽だったな。
次はエレベーターか。
こちらは階段より遥かに楽だ。
全てのエレベーターを最上階まで上げてからワイヤーロープごと箱を切断すれば終了だ。
これで作業は完了か。
他の移動手段も粗方潰した。
これで他の参加者が安易に転移魔法陣を使用して仲間を増やす事はないだろう。
俺は他のルートからここに上がるつもりだが、もし他の参加者がそれに気づくと今の作業が無駄骨になるな。
その時はその時だ、どうせ気づいたところで実行できる者は限られている。

さて、そろそろ行くか。

85誇りの系譜(修正) ◆HlLdWe.oBM:2009/08/18(火) 00:05:13 ID:d3Mf8mhw0


     ▼     ▼     ▼


程なくしてブレンヒルトは一枚の絵を持って戻ってきた。

「それがさっき言っていた絵?」
「……そうよ」

やはりどこか落ち着かない様子のブレンヒルトを訝しみながらユーノはその絵に視線を移した。
それは森の風景を描いた油絵だった。
大型のキャンバスに描かれているのは深い黒と緑で彩られた森。
随分描き込んでいるせいか丹念に作り上げられた絵の出来は素人のユーノも感心するほどだった。
奥底の黒い森がキャンバスの向こうに静かに広がっていて、一瞬その絵の中に吸い込まれそうな錯覚を得るかのようだった。
だがなぜかその絵の中央は木炭で下書きされただけでほとんど白紙のままであった。

「この中央の部分は……えっと、これは小「小屋よ」え?」

ユーノが疑問に思っていると突然説明の手が入った。
だがそれは意外にもブレンヒルトからであった。

「森が木々の群れではなく森たる所以は、人が至る場所だから。人がいるから木は群れではなく数えられ、そして憶えられる」
「ブレンヒルト?」
「森って、あの世界で一番初めに知った漢字だけど、良い表現ね」

ユーノはただ呆気に取られていた。
だがブレンヒルトの説明はまるでこの絵の主の意図をはっきりと説明したかのようであった。
いやそうではない。
ユーノは誰がこの絵を描いたのかだいたい見当が付き始めていた。

「そして森には人が至るけど、そこに住まう人々は隠者と呼ばれる者と、その弟子と、庇護を求めてきた者達。
 隠者とは賢者のこと、つまり世界を憂う者がそこに住むの」

確かに下書きされているものはブレンヒルトの言う通り小屋と数人の人だ。
小屋の中で本を読む老人、小屋の前で一羽の鳥と遊ぶ少女と女性、そしてもう一人。
なぜか老人と女性があり、少女はブレンヒルトにどこか似ている気がした。
あと最後の人物だけ下書きの線が荒く消されていた事が気になったが、それよりも大きな疑問があった。

86誇りの系譜(修正) ◆HlLdWe.oBM:2009/08/18(火) 00:05:46 ID:d3Mf8mhw0

「あの、もしかしてこの絵を描いたのは……」
「私よ」

それはユーノが予想していた答えだった。
あの説明はそうでなければ本人でなければ出来ないものだ。
最初この絵の存在を隠そうとしたのもブレンヒルトが描いたものであれば納得がいく。
さすがにこの状況で未完成の自分の絵を披露するのは気が進まないものだろう。

「でもなんでブレンヒルトの絵がこんなところにあったんだろう」
「知らないわよ。私もこれを見つけた時はびっくりしたわ。でも……」
「でも?」
「この絵は私の故郷の1st-Gを描いたものなの」
「そうなんだ」

ユーノは1st-Gという言葉を聞いたのは初めてだった。
なんとなく1stという文字が付くからには2ndや3rdの文字が付くGがあるのかなと考えていた。

「……今はもうないわ」
「え!?」
「滅んだのよ。だから今私と仲間達はその滅んだ世界のために活動しているの。その大事な時に私は……」
「デスゲームに連れて来られたんだ」
「そうよ」

自らの境遇を離すブレンヒルトはどこか儚げであった。
だからと言ってユーノはどう接していいか掴みかねていた。

「もしかしてプレシアはこう言いたいのかもしれないわね、『こんなところで油を売っていていいのか』って」
「…………」

ユーノは言葉を返せなかった。
実際この会場でこの小屋にブレンヒルトが立ち寄る確証はないが、ブレンヒルトの言っている事には一理ある。
確かにブレンヒルトには一刻も早く元の世界に帰る理由がある。
おそらくユーノに構っているよりも脱出方法を早急に確立する事の方を優先させたいはずだ。
でも現状ブレンヒルトはユーノの怪我の治療のために満足な行動ができていない。
見た目ではそれほど変化はないが、心の内では歯痒い思いをしているのかもしれない。

それでもブレンヒルト・シルトはユーノ・スクライアを助ける事を優先した。

ブレンヒルトは有力な情報を得たいと言っていたが、ユーノはそれだけではないような気がしていた。
理由はどうあれ今こうして自分が無事でいられるのはブレンヒルトのおかげだ。
ブレンヒルトが助けてくれなければ自分は死んでいたに違いない。
だから何らかのお礼はしなくてはいけないと強く思ったのだ。
そしてユーノは口を開いた。

「あの、ブレンヒルト。もしここから脱出できたら僕も君達に協力するよ」
「え?」
「今まで世話になりっぱなしだからそのお礼という事で……」
「無事に脱出させてくれれば、それでいいわよ」
「でも、それに、あの絵すごく綺麗だから、その1st-Gも――」
「うるさい!」

自分でも何を言っているかよく分からない内にユーノはブレンヒルトに首根っこを掴まれると、そのままデイパックの中に入れられた。
あとにはなぜか嬉しそうな表情を浮かべたブレンヒルトとずっと寡黙を貫いたバルディッシュが残るだけだった。

87誇りの系譜(修正) ◆HlLdWe.oBM:2009/08/18(火) 00:07:27 ID:d3Mf8mhw0


     ▼     ▼     ▼


E-5に聳え立つ時空管理局地上本部。
そこにいる者は皆無だ。

88誇りの系譜(修正) ◆HlLdWe.oBM:2009/08/18(火) 00:08:03 ID:d3Mf8mhw0


     ▼     ▼     ▼


ブレンヒルトは考えていた。
なぜ先程のような行動に至ったのか。

(……どうも私らしくないわね。必要以上に過去を離すなんて……ああ、そうか。あのお節介な黒猫に似ているんだ。
 あの変に私のことを気にかける黒猫の使い魔に……)

そう強引に結論付けた瞬間、時間にして1分程度経った頃、ユーノがいきなりデイパックから出てきた。
正確には弾かれたらしい。
どうやらデイパックの中に参加者が入っている事ができる時間は1分だけのようだ。
おそらくプレシアの細工に違いない。
デイパックの中に籠って殺し合いを避ける参加者が現れないようにするために。

(それにしても話に聞いた通りの人物だわ。一応いろいろと考えているみたいだし、信用するには足りる人物ね)

実はブレンヒルトは事前にバルディッシュよりユーノの情報を簡単に教えてもらっていたのだ。
だから先程ユーノに自己紹介を求めていたが、別にそれは既に知っていた事だった。
だが敢えて質問したのには理由がある。
それはユーノが本当に信頼に値する人物かどうかブレンヒルトなりに判断するためである。
もしも嘘を付けば何か不審な点ありと見なして対応したところだが、結果的にユーノは正直に答えた。
だからブレンヒルトもユーノを信じてみようという気になったのだ。
その後でのやり取りでもユーノの優しさが十分把握できた。

「そうだ、さっき部屋から出ていく時に歌っていたメロディーって……」
「え、ああ、あれね。あれは昔まだ私が1st-Gにいた頃によく耳にした歌よ」
「そうなんだ。それってクリスマスの時――」

ブレンヒルトはいきなりの質問に戸惑ったが、すぐに答える事ができた。
しかし元々あの歌はLow-Gのものだったはず。
なぜそれをユーノが知っているのか、と疑問に思う間もなくユーノの叫びが思考を遮った。

「――あ!」
「そんな間抜けな声を出して、どうしたのスクライア?」
「え、間抜けは余計じゃ……って、そうじゃなくて。ブレンヒルトには何が支給されていたの!」

ユーノの説明によるとこのデスゲームでは各々に三つ程度の道具が支給されている。
あの広間でもプレシアがそのような節を言っていた。
実際ユーノには闇の書とバリアのマテリアとシェルコートが支給されていた。
今の話の中でユーノはクリスマスという単語から連鎖的に自分の支給品に闇の書があった事を思い出したのだ。
そこでまだブレンヒルトの支給品を確認していない事に気付いて先の質問をしたわけである。

「ああ、そういえばスクライアには言っていなかったわね。私に支給された道具は全部で三つよ」
「僕もルーテシアも三つ……支給される道具は三つずつなのかな……」
「まだ三人でしょ。結論を出すにはまだ早いわ」
「それもそうか。で、何が支給されていたの?」
「まずはこの1st-Gの賢石、そして双眼鏡、最後は――」

そう言いながらブレンヒルトは最後の支給品として一振りの短剣を取り出した。
その短剣の刀身は紅く、見る者に禍々しさを伝える印象的なものだった。

その短剣の名は――

「ベガルタ、キース・レッドの探しものの一つよ」

――それは『小怒/小なる激情』の名を冠した武器であり、キース・レッドが探し求めていたものの一つであった。

「ちょ、ちょっと待ってブレンヒルト! いったい、いつのまに……あ、さっき探索に出ていた時に見つけたんだね」
「いえ違うわ。言ったでしょ、これは『私の最後の支給品』よ」
「え、でもキース・レッドには――」
「ええ、あの時に素直に白状する事も出来たわ。
 でも、それであいつが私達を見逃すか確証がなかったし、それならその事をダシに上手い具合に切り抜けられないかって思ったのよ」
「でもばれたらヤバいんじゃ……」
「平気よ、もう一番の山場は過ぎたから。本当は適当に探す約束だけに済ませたかったけど、18時までに見つけて来いって……。
 まあ結果オーライね。これを持って行って差し出せば、少なくともすぐに身に危険が及ぶ事はないでしょ」



「魔女よ、よくも私を愚弄してくれたな」



そして静かな森の中に終わりを告げる銃声が轟いた。

89誇りの系譜(修正) ◆HlLdWe.oBM:2009/08/18(火) 00:08:54 ID:d3Mf8mhw0


     ▼     ▼     ▼


「ちょっとブレンヒルト! 何するんだ!」
「黙ってデイパックの中に入っていなさい。スクライアがいると邪魔なのよ」
「いや、僕だって補助系の魔法は――」
「あなたはまず自分の傷を癒す事に専念しなさい。中途半端な状態で勝てるような相手じゃないわ」
「でもそれなら尚更――」
「……私もあとで合流するわ……それじゃあ、さようなら」
「え!?」
「さっきの約束、もし忘れたら一生記憶に残るぐらいの痛い目に遭わせてやるから、心しておきなさい」

90誇りの系譜(修正) ◆HlLdWe.oBM:2009/08/18(火) 00:09:33 ID:d3Mf8mhw0


     ▼     ▼     ▼


結局、俺は『ベガルタのある場所』を選んだ。

まず選択肢としてキース・シルバーという目標かベガルタやガ・ボウという武器か。
結局選んだものは武器。
なぜならキース・シルバーを越えるには相応の力が必要になる。
こちらの戦力は可能な限り整えておく必要があるのだ。

次にベガルタかガ・ボウか。
ここで決め手となったのは、ここへ来る直前の一連の戦闘だった。
キース・シルバーとの決着が付く前にアギトが強制的に融合してきて俺の身体の制御を奪って撤退した時の出来事。
あの時ガ・ボウはキース・シルバーに刺さったままでこのままでは解析される可能性があった。
だからアギトにガ・ボウを破壊させた。
そのため予備があるとはいえ、もしかしたらここにガ・ボウはないのかもしれないと思ったのだ。
ベガルタならここに来る直前まで所持していたからこちらは確実と言ってよかった。
それにここではARMSの力は制限されているらしい。
特にガ・ボウに固執しなくてもいい状況なのも一因であった。



だがそんな事はもうどうでもいい。



俺は愚弄されたのだ。
あのブレンヒルトと云う忌々しい魔女に。
ベガルタを所持していながら、その事実を隠蔽して俺を騙した女。
最初小屋の中に転移した時は失敗したかと考えたが、そうではなかった。
あの転移魔法陣は本物だった。

ベガルタを所持したブレンヒルト・シルトの下へ転移できたのだから。

ああ、生かしておくものか、命乞いなど許しはしない。

さあ覚悟しろ! 見せてやる、我が最強のARMS、グリフォンをな!!!

91誇りの系譜(修正) ◆HlLdWe.oBM:2009/08/18(火) 00:11:32 ID:d3Mf8mhw0


     ▼     ▼     ▼


私はここで死んでしまうだろう。
キース・レッドの銃撃。
その初弾は木製のドアを簡単に破壊した。
そして次弾は窓から逃げようとした私の背中を穿った。
あれを避けられなかった時点でもう私の命運は尽きていたのかもしれない。
外に飛び出して走っている最中に背中から血が零れ落ちていくのがはっきりと分かった。
一応安全だと判断して賢石の節約のためにバリアジャケットを解除していた事が悔やまれるが、もう遅い。
その傷自体はユーノの位置からは目に付かない場所だったが、残念ながら背中を豪快に掠って行った銃弾に血と肉を削られすぎた。

だから悟った、もう助からないと。

ユーノの治療魔法なら助かる可能性はあるのかもしれない。
だが殺気立っている敵の目の前で呑気に治療している時間などない。
そんな事をすれば二人ともジ・エンドだ。

だからユーノはデイパックに押し込んで境目まで行ってから投げ込んでループさせた。
バルディッシュも一緒に入れた。
私がここで死んだら碌な目に遭いそうにないから。
少し前にループの存在を確認していた事が早くも功を奏した。

我ながら何をしているんだろう。
私はこんな事をする優しい魔女さんではなかったはずだ。
知りあって間もない誰かを生かすために犠牲になるなんて……しかもあんな嘘まで付いて……。
約束か……結局私は何がしたかったんだろう……。
ギル・グレアム……もしかしてあなたもそうだったのかしら?
誰かのために嘘まで付いて一人で苦しんで。

「もう逃げないのか?」

でもスクライアだから、こんな事をするのかしら。
あなたは私の故郷を、1st-Gの世界を……だから……。

「……守るわよ」

何をと問われれば答えはおそらく一つだろう。
それにまだ生きる事を完全に諦めたわけではない。
だから手負いの身だからと思って油断しない事ね。

「文字をもってあなたに刻印してあげるわ! ――我が名誉の一戦ここにあり!!」

92誇りの系譜(修正) ◆HlLdWe.oBM:2009/08/18(火) 00:13:09 ID:d3Mf8mhw0


     ▼     ▼     ▼


魔獣と魔女は戦う。
どちらかが倒れるまで。
見たところ両者の力は拮抗していると言えよう。
それほどまでに魔獣と魔女の戦いは熾烈であった。
お互いが放った銃弾は周囲の木々を容赦なく薙ぎ倒していく。
森の中での戦いゆえに木々を壁にする事も回避の手段になり得る。
そのため森は信じられない早さで崩壊していった。

だがそれは偽りの拮抗。
その証拠は両者の様子。
魔獣の顔にはまだ十分な余裕が見て取れる。
一方で魔女の顔には余裕など微塵も見て取れない。

そう最初から勝敗は明らかだった。

そしてとうとう魔女が動きを止めた。
原因は身体の限界。
もう魔女の身体は縦横に動けるほど力は残されていなかった。
当然魔獣はこれを好機と見た。
満足に動けない魔女に向かって必殺の超振動『グリフォン』を叩きこむ。
その威力は周囲の地面は隆起させて木々を根元から倒すほど。
まともに喰らえばそれはまさしく必殺の一撃。

だが魔女は耐えた。

自らの身の前に光の盾を作りだし、必殺の一撃に耐えていた。
そしてこの瞬間魔獣にとっての好機は魔女にとっての好機となった。
魔女の傍らには激戦の最中に斬り倒された大木のなれの果て。
それが魔女の手によって竜砲へと生まれ変わる。
次の瞬間、龍の咆哮に匹敵するかと思える砲撃が魔獣を襲う。
その威力は射線上の木々を一瞬で焼き払うほど。
まともに喰らえばそれはまさしく必殺の一撃。

だが魔獣はいなかった。

竜砲が火を噴く寸前に横に飛び退いて射線から外れていた。
そしてこの瞬間魔女にとっての好機は魔獣にとっての好機となった。

魔獣は笑った。
魔女は身構えた。
魔獣が腕を振り上げる。
魔女が青い石を掲げる。

そして激戦に決着が付く。

93誇りの系譜(修正) ◆HlLdWe.oBM:2009/08/18(火) 00:16:42 ID:d3Mf8mhw0


     ▼     ▼     ▼


H-8の畑の隅にある一軒の小屋。
だが数十分前には温かな空気に満ちていた小屋は魔獣の襲撃で半壊してしまった。
そして今その小屋の中では破壊した当人であるキース・レッドが戦いの疲れを癒していた。

(放送までもう時間がないか。予想外に長引いたな)

結果的に魔獣キース・レッドと魔女ブレンヒルトとの戦いはキース・レッドの勝利に終わった。
主な戦場であったI-8の森は壊滅状態に近いものになり、もうそこは森とは呼べない状態だ。
そして勝利を収めたとは言えキース・レッドはあまり喜べなかった。
二人の戦いは最初こそ均衡していた。
だがしばらくするとその拮抗は崩れ、そこで勝負は付いた。
そしてキース・レッドが勝利するのだが、その損失は思いの外大きかった。
ジャッカルとカスールの弾を合計15発も使用した後に銃弾を補充した結果、とうとう専用の予備弾はなくなってしまった。
途中で拾ったデイパックの中に確か各種弾薬があったので、あとで確認しておく必要がある。
さらに奥の手であるグリフォンを一度ではあるが防がれるという結果を残してしまった。
最期の一撃も盾に阻まれて結果的にブレンヒルトに直撃する事はなかった。
終始あの青い石の力で攻防を担っていたようだが、結局あれが何かは分からずじまいだった。
サンライトハート改を出さずに勝てると思っていたが、正直ここまで力を消費するとは予想外だった。

だが本来ブレンヒルトの実力は満足な状態であれば機動六課の高町なのはと同等のレベル。
手負いのブレンヒルトの側に立ってみれば賢石一つでよく持ち堪えた方だ。
所謂最期の輝きと云うものか。

そして予想以上に消耗した身体を休めるためにキース・レッドは一度小屋に身を落ち着けた次第だ。
だがそれも間もなく終わる。
時間短縮には核鉄の効果によるARMSの治癒促進が大きな助けとなった。
ブレンヒルトの他に誰かいた気がするが、追っている最中にそれらしき人影がなかった。
おそらく気のせいだろうとキース・レッドは結論付けた。
首尾よくベガルタも手に入れる事が出来たので、あとは再び地上本部に戻って転移魔法陣を使うだけだ。
転移する前に最上階の展望室に通じる地上本部の移動手段は全て潰してきた。
これで他の参加者が仲間と合流するなどのような厄介な行動を取る心配もない。

「シルバーよ、もうすぐだ……もうすぐ……」


【1日目 昼(放送直前)】
【現在地 H-8 畑の隅にある小屋の中】
【キース・レッド@ARMSクロス『シルバー』】
【状態】健康、疲労小(核鉄で回復中)
【装備】ベガルタ@ARMSクロス『シルバー』、核鉄「サンライトハート改」(待機状態)@なのは×錬金、
    対化物戦闘用13mm拳銃ジャッカル(6/6)@NANOSING、.454カスール カスタムオートマチック(6/6)@NANOSING
【道具】支給品一式×6、レリック(刻印ナンバーⅦ)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪×2(優衣、なのは@A’s)、
    ヴァッシュのコート@リリカルTRIGUNA's、S2U@リリカルTRIGUNA's、各種弾薬(各30発ずつ)、カートリッジ(13/30)、
    レイトウ本マグロ@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、杖@ゲッターロボ昴、ランダム支給品(元カレン:0〜2)
【思考】
 基本:キース・シルバー(アレックス)と戦い、自分の方が高みにある事を証明する。
 1.地上本部の転移魔法陣を使ってシルバー(アレックス)及び『ベガルタ』『ガ・ボウ』の捜索。
 2-1.出会った者にシルバーと『ガ・ボウ』について知っている事を聞き出す。
 2-2.聞き出した後、役に立ちそうならシルバーと『ガ・ボウ』を探すようにさせ、役に立たないなら殺す。
 3.1及び2を邪魔するものは容赦なく殲滅する。
 4.できるだけ早く首輪を外したい。
【備考】
※キース・シルバーとは「アレックス@ARMSクロス『シルバー』」の事だが、シルバーがアレックスという名前だとは知りません。
※神崎優衣の出身世界(仮面ライダーリリカル龍騎)について大まかな説明を聞きました。
※自身に掛けられた制限について把握しました。
※白刃の主をヴァッシュだと思っています。
※サンライトハート改は余程の事がない限り使う気はありません。
※ルーテシアの話の真偽についてはどうでもいいみたいです。
※アンデルセンのデイパックを拾いました。

94誇りの系譜(修正) ◆HlLdWe.oBM:2009/08/18(火) 00:17:16 ID:d3Mf8mhw0


     ▼     ▼     ▼


「…………」
『Mr.ユーノ』

なんで僕はここにいるんだろう。
その理由はバルディッシュの説明もあってだいたい理解できた。
どうやらこの会場は対応する端と端でループしているらしい。
あの時僕はブレンヒルトの手で無理やりデイパックの中に入れられてしまった。
だからおそらくそれがI-7付近の境目に投げ入れられて、そのまま川に落ちてここまで流れ着いたんだろう。
デイパックの口を縛っていたみたいだけど、1分経ったから強制的に出されたらしい。
すぐ近くに温泉みたいな建物が見えるからここはB-7の東側の岸かな。

「ブレンヒルト……君は……」

そして二回目の放送が始まった。


【1日目 昼(放送直前)】
【現在地 B-7 川の東側の岸】
【ユーノ・スクライア@L change the world after story】
【状態】魔力消費(小)、腹に刺し傷(ヒーリング中)、フェレットに変身中、呆然
【装備】なし
【道具】支給品一式、双眼鏡@仮面ライダーリリカル龍騎、バルディッシュ・アサルト(カートリッジ4/6)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(矢車)
【思考】
 基本:なのはの支えになる。ジュエルシードを回収する。フィールドを覆う結界の破壊。
 0.ブレンヒルト……。
 1.ルーテシアと話をする。
 2.ジュエルシード、シャマルとザフィーラの捜索。
 3.Lや仲間との合流。
 4.首輪の解除。
 5.ここから脱出したらブレンヒルトの手伝いをする。
【備考】
※JS事件に関連した事は何も知りません。
※プレシアの存在に少し疑問を持っています。
※ルーテシアがマフィアや極道の娘だと思っています。
※ルーテシアに刺されてから小屋に着く途中まで気絶していたのでルーテシアや明日香がどうなったのか知りません。
※ルーテシアに刺されたのは自分が破廉恥な行いをしたからだと思っています。
※結界を壊す一つの手段として、ジュエルシードの力の解放を考えていますが、実際にやるかどうかはまだ分かりません。

95誇りの系譜(修正) ◆HlLdWe.oBM:2009/08/18(火) 00:18:08 ID:d3Mf8mhw0


     ▼     ▼     ▼


地図上にI-8と定められた1km四方の地帯。
もうそこには木漏れ日も疎らな暗く黒い森は広がっていない。
そこにあるのは焼け野原だ。
ほとんどの木々は根元から折れて倒木となり、そうでないものは根が付いたまま倒木となり、I-8全域に散乱している。
木々を育んできた大地には大小様々なクレーターが無数に穿たれて、見るも無残な光景だ。
それらの惨状は全てキース・レッドとブレンヒルト・シルトによるものである。
だがそんな焼け野原の中で一人の少女が根っこにもたれている。
その少女の服装は紺を基調としたブレザーに明るい灰色っぽいスカート。
その制服はいくぶん煤けて千切れているが、それは微々たるものであり、制服の形は保たれたままであった。
そしてその傍らには限界を越えて酷使された賢石の破片が役目を終えたかのように散らばっていた。
不意に風が少女を撫でていった。
ツインテールを形作っていた対のリボンは消し飛び、灰色に近いプラチナブロンドの髪は風の思うがままになっている。

だが1st-Gの魔女の顔は安らかなものであった。

もう奥底知れぬが豊かな森の中に彼女の声が響く事はない。

【ブレンヒルト・シルト@なのは×終わクロ  死亡確認】

【全体備考】
※I-8はほぼ壊滅状態になりました。
※地上本部の転移魔法陣からプレシアのところへ転移する事は不可能です。
※地上本部の最上階の展望室に通じる地上本部の全ての手段は破壊されました(ただし階段は中腹から下のみ破壊されています)。

96 ◆HlLdWe.oBM:2009/08/18(火) 00:20:26 ID:d3Mf8mhw0
再投下終了。
すいません修正スレに投下すべきでしたね。
(途中で気付いたんですがスレ別れるのも見にくいのでそのまま投下しました)
これで問題は解決したと思います。
また何かあれば言ってください。

97リリカル名無し:2009/08/18(火) 20:25:02 ID:ELZv64gk0
修正版乙です。
ということはLとアレックスの出番は無くなったという事になりますね。
……やっぱりブレン犬死にだなぁ……

ただ気になったのはキース・レッドのダメージが核鉄とARMSの治療効果で疲労小まで回復しているみたいですが、
転移してからブレン撃破してから回復させたとしては正直、回復力が強すぎる気が(ただ2時間もしない内に両腕再生したという前例があるからなぁ……)

描写を見る限り(キャロが転移してから)色々試し&道潰ししてから転移しブレン戦闘の時間を踏まえると放送まで時間はそれ程残らない気がするんですよね……
これって、ブレンヒルトは戦闘では殆どダメージを与えられなかったという解釈になるのでしょうか? それともダメージをここまで回復させる時間はあったという解釈でしょうか?

98 ◆HlLdWe.oBM:2009/08/18(火) 23:32:06 ID:d3Mf8mhw0
今更ですがアレックスとLのシーンは全カットとしました。

>>97
すいません、そこは単純な修正ミスです
よってキース・レッドの【状態】を
>【状態】健康、中程度の疲労(核鉄で回復中)
になります。

それと最後の【全体備考】に
>※地上本部最上階の展望室には空のカートリッジが10個転がっています。
の一文を追加します。

あとユーノの荷物にブレンヒルトの絵@なのは×終わクロが抜けていました。

wiki編集の際に直しておきます。

99リリカル名無し:2009/08/19(水) 00:13:01 ID:3kTPB81.0
>>97
返答ありがとうございました。確かにそれなら納得です。
……後、空のカートリッジが10個転がっているということは、レッドの所持カートリッジも(13/30)ではなく(13/20)と減るような気が……

100 ◆HlLdWe.oBM:2009/08/19(水) 09:19:12 ID:UAQSrgS20
>>99
元が30発あって(30/30状態)、道々補給したりしてアンデルセン死亡時点で23/30状態、今回10発使用で13/30になったはず。
だから13/30で合っているの思うのですが。

101リリカル名無し:2009/08/19(水) 19:58:01 ID:9BsY7WUA0
>>100
そうか、消費して空のカートリッジが手元に無くてもXX/30になるのか。
了解です(……空のカートリッジって魔力込めたら再び使えるのだろうか……)。

102第二回放送 ◆9L.gxDzakI:2009/08/29(土) 21:25:55 ID:VhsJu.Rk0
 12時間。
 早いようで遅いようで、あれから既に12時間だ。
 この81マスの箱庭にて、血と狂乱の殺戮劇が幕を開けてから、実に半日が経過しようとしていた。
 表向きに言及することはなかったが、かの大魔導師が規定したタイムリミットは48時間。
 要するに、間もなく4分の1もの時間が経過しようとしているということだ。

 12時を迎える。
 デスゲーム開幕の瞬間から、実に12時間ぶりに、時計の両針が頂点を指す。
 12とはすなわち正午。
 午前と午後を二分する、境界の時間が目前に迫っている。
 12とはすなわち6プラス6。
 6時間ごとに行われる定期放送の2回目が、間もなく始まろうとしている。

 12時間。
 分数にして720分。
 秒数にして8640秒。
 これから流れる放送は、その膨大な時間の振り返りだ。
 黒髪の魔女が囁く時、彼らは果たして何を思う。
 後悔/恐怖/歓喜/安堵/悲哀/希望/失望/絶望。
 生き残った39人は、果たして何を抱くのか。

 かくて定期放送は始まる。
 個人の感情などはお構いなしに。
 ただ淡々と事実のみを語るため、2度目のメッセージが鳴り響く。



 6時間ぶりね。
 みんな、ちゃんと聞いているかしら。
 現在の時刻は12時ジャスト――第2回目の定期放送の時間よ。
 今回も最初に禁止エリアを発表させてもらうわ。しっかりメモを取るようにね。
 今のところはそんな事態になっていないけど、うっかり禁止エリアに入って、
 そのまま自滅なんて死に方されたら、こちらもあまり張り合いがないのだから。

 13時からA-4
 15時からA-9
 17時からE-6

 以上の3エリアよ。
 ちゃんと記憶できたかしら?
 二度目は言わないわよ。聞き逃したからもう一度、なんて甘えは聞きたくないわね。
 一緒にいるお仲間にでも聞くか、他の参加者を脅して問い詰めるか、もしくは諦めて泣き寝入りでもしなさい。

 ……ああ、そうだったわね。
 これまでに命を落とした脱落者の名前も読み上げていくわ。

 アレクサンド・アンデルセン
 インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング
 ギンガ・ナカジマ
 ザフィーラ
 フェイト・T・ハラオウン
 ブレンヒルト・シルト
 武蔵坊弁慶
 八神はやて
 遊城十代

103第二回放送 ◆9L.gxDzakI:2009/08/29(土) 21:26:48 ID:VhsJu.Rk0
 以上、9名よ。
 前の6時間に比べて少しは減ったけど、まだまだ順調と言っていいペースね。
 貴方達のしたたかさと残忍さには、本当に感心させられるわ。
 果敢に戦って死んだ者、仲間を庇って命を落とした者、些細なミスが命取りになった者、ほとんど事故のような形で死んだ者……
 ……ふふ……全くもって貴方達は、私を楽しませてくれるわね。
 開始からこれまでの12時間は、最高に面白いショーだったわ。
 今後も私を飽きさせることのないよう、パフォーマンスの向上に努めることね。
 えてして観客とは無責任でわがままなもの……私がこの催しに飽きた瞬間に、全員ドカン、なんてことも有り得るのだから。

 ……そうね。せっかくだから、ついでにもう1つ話しておくわ。
 6時間前にご褒美の話をしたけれど、どうやら今のところは、あまり意味をなさなかったようね。
 この期に及んでこのゲームを止めようとする者が、まだまだ大勢いるみたいだわ。
 残虐非道なデスゲームに、敢然と立ち向かう正義のヒーローという構図はなかなかに面白いし、
 そうした連中が転落していくのも、見応えがないと言えば嘘になるのだけど……こうも数が多いと、少し鬱陶しいわね。
 貴方達がこの演劇のスパイスになっているのは確かよ。でも、いい加減食傷気味になってきたわ。
 もう一度言うわよ。
 私はその気にさえなれば、貴方達を一瞬で全滅させることもできる。
 最初に死んだ娘のことを覚えているでしょう? 彼女の末路を、改めて思い出しておくことね。

 ああ、それとも特典がお望み?
 全部終わった後の優勝賞品だけでは、いまいちやる気が湧いてこなかった?
 そうね、それもそうだったわね。
 確かに優勝した後のご褒美だけなら、ひたすら身を隠してやり過ごすだけでも手に入ってしまうものね。
 それはそれで面白いかもしれないわ。
 貴方達の好きなビデオゲームでも、敵を倒せば経験値と資金という見返りがある……そういうボーナスも悪くないわね。
 分かったわ。次の放送までに、何か考えておきましょう。
 何人か参加者を殺したら、他の誰かの居場所を教える、だとか、支給品がもう1つもらえる、だとか……
 改めて考えてみると、色々とアイデアは尽きないものね。この6時間で吟味してみることにするわ。
 貴方達からも何か要望があったら、その間に言っておきなさい。
 確実に採用されるわけではないけど、一応参考にはさせてもらうから。

 それから、最後にもう1つ。
 まさかとは思うけれど……私が心変わりしてこのゲームを中止する、なんて可能性を考えてる人はいないわよね?
 そういう温情は期待しない方がいいわ。
 さっき読み上げた死者の中に、フェイト・T(テスタロッサ)・ハラオウンという娘がいたでしょう?
 私のフルネームはプレシア・テスタロッサ……
 ……ふふ、そういうことよ。
 実の娘が殺されても、黙って見てるような冷酷な人間に、最初から情なんて期待しないことね。
 貴方達が殺し合って、最後の1人になること以外に、このゲームに終わりなんてないのだから――。

104第二回放送 ◆9L.gxDzakI:2009/08/29(土) 21:27:23 ID:VhsJu.Rk0


「……よく言いますね。フェイトのことなど、娘とも見なしていなかった貴方が」
 魔女プレシア・テスタロッサの背に、投げかけられた声が1つ。
 茶髪の頭に猫耳を生やした娘は、かの大魔導師の使い魔・リニスだ。
「いいじゃないの。使える物はいくらでも使うべきだわ。このゲームをより円滑に進めるためにはね」
 くるり、と。
 言いながら、プレシアが振り返る。
 腰掛けていた椅子を180度反転させ、リニスの方へと向き直った。
 その顔は暗い。
 嘲笑気味の放送の割に、実際の表情は深刻なものだ。
「どうにも上手くいかないものね」
「ええ……数字だけは決して悪いものではないのですが、
 うち3人は同じ戦闘で死亡したわけですから、実質死者が出たケースは7つになります」
「一応譲歩はしてみたけれど、すぐにでも適当な特典をつけるべきだったかしら」
 そう。
 現状は、決して上手くことが進んでいるわけではなかった。
 余裕ぶって見せた態度も、ハッタリの要素がなかったといえば嘘になる。
 第1回放送までの6時間で、死者の発生したケースは合計12。
 一度の戦闘で複数死者が出たのは、アグモンとクロノ・ハラオウンの1回のみ。
 カレン・シュタットフェルトと高町なのはは、ギリギリ別々のタイミングと考えていいだろう。
 対して、今回は僅か7回。約半分の数字である。
 ギンガ・ナカジマをはじめとした3人が同時に死亡したことで、現在の数字は稼げたわけだが、
 言ってしまえばそれも運がよかっただけだ。
 2人同時に死亡はともかくとして、3人以上ともなると、そう易々と期待できるものでもない。
 そもそも彼女らが死ぬ直前までは、一瞬「もう駄目か」とも思ったほどである。
 今はいい。結果として、今は9人もの死者を確保できた。
 だがこのままのペースで減り続ければどうか。
 万が一、半分また半分と、死者の発生するケースが半減し続けていったならば。
 単なる不安材料かもしれない。杞憂に終わる可能性の方が高いかもしれない。
 だが現実化でもしようものなら、よくて20人弱が余ったところで、停滞を招いてもおかしくない。
「万が一の時には、あの者達を会場に送り込むという手もありますが……」
「あくまでも最終手段ね。それに、今回のゲームの“目的”を考えれば、できうる限り取りたくない手でもあるわ」
 ふぅ、と溜め息をつきながら、プレシアがリニスの言葉に答える。
「まぁ、今はこうして手を打ったことが、どう作用するかを見守るほかないのだけど」
「先ほどのボーナスの話ですか」
「そうね」
 頼みの綱は、今のところそれだ。
 何らかの形でこちらの実力を見せ付ける、という手もあったが、それを取るにはもう少し熟慮を重ねる必要がある。
 下手なことをしてしまっては、ゲームバランスが狂うかもしれない。
 飴と鞭という形で、次の放送の時に、ボーナスと一緒に突きつけておいた方が無難だろう。
「問題は、何を特典につけるか、ということだけど……」
 故に、今はより制約の少ない、特典の方を先に考える。
 果たして彼ら参加者が求めているものは何か。
 一体どんな餌をばら撒けば、奴らは食いついてくるだろうか。
 プレシア・テスタロッサは思考する。
 このデスゲームをより円滑に進めるために。
 その先にある“悲願”を成し遂げるために。
「……貴方ならどうする?」



 第2回目の放送は終わった。
 デスゲームに臨む参加者達は、果たして何を思うのか。
 デスゲームを進める主催者達が、次に打つ手は果たして何か。
 運命は加速する。
 時の流れは加速する。
 個々の思いを流れに乗せて。
 思いを集めて群れと成して。

 次に動くのは、誰だ。

105リリカル名無し:2009/08/29(土) 23:48:33 ID:NVRMeTzw0
投下乙です。
初禁止施設は神社か、ヴァッシュと新庄どう出る!?(あ、そういやエネルもいた…)

106 ◆9L.gxDzakI:2009/09/01(火) 11:15:57 ID:Zwg/LCIY0
相川始、浅倉威分を投下します。

107狼煙 ◆9L.gxDzakI:2009/09/01(火) 11:16:33 ID:Zwg/LCIY0
 ――ああ、また天音ちゃんの友達が減ってしまった。
 二度目の定期放送を聞いた相川始が、率直に浮かべた感想だ。
 読み上げられた死者は9人。
 やはりというか当然というか、彼に直接関わってくる人間の名は読み上げられていない。
 そもそも始自身に関係のある人物など、金居と呼ばれていたギラファアンデッドか、まだ見ぬもう1人のアンデッドくらいだ。
 金居の名が呼ばれた気配もない。故に彼にとっては他人事。
 故に、彼の思考は己ではなく、栗原天音の友たる2つの名へと向けられる。
 フェイト・T・ハラオウンと八神はやて。
 一度目の放送で呼ばれた高町なのはと同じく、自分にとって大切な少女の友人の名だ。
 大人のアリサの存在や、メールの文面の違和感から、まだ本人であるという確証はない。
 だが仮に本人だとするならば、きっと彼女は悲しむだろう。
 たとえ自分が無事に帰っても、3人もの友達が命を落としたとあれば、素直に喜べないだろう。
 できることなら、守ってやれればよかったかもしれない。
 1人で帰ってくるよりも、4人で帰ってきた方が、天音もきっと喜ぶはずだ。
 今更ながら、そんなことを考えた。
 栗原母子の元へ帰るため、優勝すると誓った彼が、今になって見捨てたことを後悔した。
 何を今更、と自分でも思う。
 自分は殺人者だ。少なくとも、殺意を持った存在だ。
 まだ誰にもとどめを刺していない、などとというのは言い訳にならない。
 既に何人もの人間を殺しにかかった自分が、今になって他人の死を悼むというのか。
 脆い決意だ。鬼に戻ると決めながら、いざ何かが起ころうものなら、すぐに人間の顔が出てきてしまう。
(ギンガ・ナカジマ……)
 それもこれも、あの少女のせいだと言っても過言ではなかった。
 ギンガ・ナカジマ。
 先ほどの放送でも名前を呼ばれた、魔法使いの少女の名を思い出す。
 初めて会ったときは敵だった。そもそも敵対うんぬん以前に、狩りの対象でしかなかった。
 次に顔を合わせた時には、長い髪は短くなっていた。
 知らぬとはいえ、自分達を襲った相手を、皮肉にも自分自身の手で救ってしまったのだ。
 それでも彼女に後悔はなかった。
 むしろ自分の甘さを見透かし、本気で更生させようとさえしていた。
 仮面ライダー。
 不思議とその名が浮かんでくる。
 あの青紫の髪の少女と、不死者の鎧で武装した戦士の姿が重なる。
 それも自分のような紛い物ではない、本物の仮面ライダー達だ。
 人々を守るため鎧を纏い、アンデッドを封印する正義の戦士。
 その姿が、何故かあの少女と重なる。
 見た目はまるで違うというのに。共通点などないというのに。
 いいや、共通点があるとするなら、彼女の強き心と優しさか。
 大切なものを守るべく、敢然と困難に立ち向かう闘志。
 殺戮を呼ぶ化物である自分さえも、決して見捨てることをしなかった優しさ。
 もちろん、まだまだ未熟な部分も多い。肉体の強さも、本物のライダーには遠く及ばない。
 それでも彼女の魂は、間違いなく正義の味方のそれだった。
 胸に芽生えつつある人の心は、確かに彼女のあの姿に、あるべきヒーローの片鱗を感じていた。
(どうかしている)
 ぶん、と首を振る。
 頭の中に溜まった思考を、無理やりに弾き出そうとする。
 ギンガが正義の味方だろうと、そんなことは所詮自分には関係ない。
 名乗る名前は偽りのヒーロー。
 仮面ライダーカリスは英雄の贋作。
 この身はアンデッド・ジョーカーのもの。
 アンデッドを殺し人をも殺す、最強最悪の殺人鬼の器。
 仮に望んだとしても、所詮は相容れない存在。ましてや望んだことなどないし、これから望むつもりもない。
 正義の味方になんてなる気はない。
 正義の味方は、眩しすぎる。

108狼煙 ◆9L.gxDzakI:2009/09/01(火) 11:17:05 ID:Zwg/LCIY0
 内心で自分へ言い聞かせながら、ふっと頭上の空を仰いだ。
 現在地はあのHELLSING本部のある、D-5エリア南の大通りだ。
 ダメージと疲労からようやく立ち直った始は、禁止エリアの記録を早々に終えると、図書館を脱し行動を再開した。
 死者の名前も移動中に聞いたものだ。特典の提案に関しては、興味を抱くことすらなかった。
 そうしてあてどなく大通り沿いに歩き、今に至る。
 未だ積極的に戦うつもりはなかった。こうもやもやとした感情のままでは、満足に戦うこともままなるまい。
 アンデッドの反応があった場所とは、真逆の方向へ向かっているのもそのためだ。
 それでもじっとしているのも落ち着かず、結局ふらふらとさ迷う現状に至った。
 あるいは潜在するジョーカーの意識から、無意識的に逃れようとしていたのかもしれない。
 かつ、かつ、かつ、と。
 僅かに上方を見上げながら、靴裏でアスファルトの道路を叩く。
 もうほんの気持ち歩を進めれば、F-6に踏み込もうかという位置だ。
「……?」
 それを頭上に確認したのは、ちょうどそんな頃のことだった。
 ふと、視界に留まるものがある。
 忌々しいほどに澄み渡る青空に、何やら陰りのようなものが。
 一瞬雲かとも思った。だがそれにしては様子がおかしい。
 改めてよく見てみると、それが煙であることが分かった。
 煙だ。
 物を燃やした時に発生する、あの黒煙だ。
 炎が上がっているということは、戦闘が起きたということか。一瞬その可能性へと至る。
 しかし、否定。
 違う。あれはそうではない、と。
 あれを戦闘の余波と断定するのを、いくつかの違和感が妨げる。
 音と、数だ。
 前者の音は戦いの音。
 煙が上がっている地点はそう遠くない。
 地図上の区分で表現するなら、南東に斜め1マス分ほど。急げば1時間以内に到達可能だ。
 おまけにこの静けさである。
 周囲に一切音のないこの場所で、仮に戦闘が起ころうものなら、僅かにでもその音が聞こえてきてもおかしくないはずだ。
 後者の数の問題もある。戦闘によって発生した煙にしては、たった1つというのは少ない。
 故に始はこの煙を、戦闘によって偶発的に発生したものではなく、わざと点けたものとして判断する。
 となると次の問題は、誰が何のために火を焚いたか、だ。
 通常このような行動を取ることは、敵に自分の居場所をみすみす伝えることに等しい。
 逆に考えるならば、人を集めるのには最適な手段というわけだ。
 狼煙――それが始の推定する、この火災を引き起こした理由の可能性。
 殺し合いに乗っていない人間が、仲間を集めようとしているのかもしれない。
 殺し合いに乗っている人間が、餌を撒いて獲物をおびき寄せようとしているのかもしれない。
 どちらの理由であったとしても、あそこには人が集まるはずだ。
 こんなことをしでかす奴は、よほどの自信家か大馬鹿か。
 いずれにせよ、見過ごすわけにはいかない。
 この絶好の狩りの機会、決して無駄にしてはいけない。
 まだ心は不安定だ。迷いがないと言えば嘘になる。
 それでもせめてこの狼煙を上げた、酔狂な人間の顔くらい、拝んでおいても罰は当たらないだろう。
 かつん、と。
 コンクリを蹴る。
 徒歩の時よりも鋭い音で。
 煙の立ちのぼる方角目掛けて、始が勢いよく駆け出した。

109狼煙 ◆9L.gxDzakI:2009/09/01(火) 11:17:47 ID:Zwg/LCIY0


 ぱちぱち、ぱちぱちと。
 火花の爆ぜる音がする。
 めらめらと赤い光を放つのは、ごうごうと巻き上がる高熱のプラズマ。
 ひとたび人間が飛び込めば、あっという間に炭化するだろう。
 光と音を伴い渦巻くのは、あらゆる生命を脅かす必殺の熱量だ。
 それは炎。
 湧き上がる真紅の炎熱が、1つの家屋を飲み込んでいる。
 建築物1つ分に当たる炎は、煙を立てるには十分すぎるほどだ。
 火災の現場を眺めるのは、ぎらぎらとした目つきを持つ1人の男。
 結局浅倉威は、さんざん悩み抜いた末に、レストランへと放火することにした。
 放送を聞きながら、店中に火が回るよう仕込みを行い、最後にこうして火をつけたのだ。
 面倒が実った。期待通りの煙が上がる。
 もくもくと立ち込める黒煙は、さぞや人を集める狼煙となってくれるだろう。
 凶暴な期待を内に秘め、浅倉は1人ほくそ笑んだ。
 そうして灼熱の業火を見上げながら、ふと先ほどの放送を思い出す。
「殺したら手に入るボーナス、か」
 プレシア・テスタロッサはそう言っていた。
 どうやら現状に不満を抱いているのは、あの主催者もまた同感らしい。
 殺し合いを止めようとする者を駆り立て、殺し合いに乗る者には更なるやる気を与えるために、
 彼女は更なるご褒美の存在をほのめかせた。
 この次の3回目の放送を迎えれば、殺した人数に応じて、何らかの特典を与えるつもりだという。
 願ったり叶ったりだ。
 闘争を楽しむ材料が増えるのは嬉しいし、戦う相手がやる気になってくれるのもありがたい。
「なら、こういうのはどうだ?」
 故に、浅倉は提言する。
 よりよい闘争を楽しむために、最も望む条件を提案する。
 支給品の追加ではない。そんなものは他の参加者から奪えばいい。
 パワーアップでもない。自分自身の力で殺し合えないのはつまらない。
 もっと根本的な問題だ。
「俺が何人か殺したら、知りたい奴の居場所を教えてくれる、ってのはよ」
 たとえ手数が増えようと、たとえ不可思議な力で能力を上げようと。
 そんなことをしようとも、相手がいなければ意味がないのだ。
 重要なのは力を蓄えることだけでなく、戦う相手を見つけることだった。
 こんな狼煙を上げたところで、やはり参加した全員がやって来るというわけでもない。
 当然取りこぼしが出てくるだろうし、それを捜すためにも、敵の場所を知ることのできる用意が欲しい。
 プレシアはこうも言った。提案したところで確実に採用されるわけでもない、と。
 しかし、自分で言うのもなんだが、この意見はかなりいい線を行っているはずだ。
 そういう願いくらい、聞き届けられてもいいだろう。
 さて、そうなれば誰の居場所を聞こうか。
 そうだ、天道総司にしよう。
 仮面ライダーカブトにしよう。
 自分も仮面ライダーだ。やはり最初に戦うのはライダーがいい。
 そのためにも残りの5時間弱で、王蛇のデッキかそれに匹敵する武器を探さなければ。
 と――その時。
「!」
 かつん、かつん、と。
 音が聞こえる。
 火花の爆ぜる音ではない、新たな音が近づいてくる。
 早速仕掛けにかかった奴がいたか。駆け足の音が鳴る方へ、ゆっくりと向き直る。
 程なくして、それは現れた。
 この盛大な狼煙の元へ、一番最初にやって来たのは――
「………」
 茶色の髪をセミロングにし、ベージュ色のコートを羽織った、線の細い印象の男だった。

110狼煙 ◆9L.gxDzakI:2009/09/01(火) 11:18:35 ID:Zwg/LCIY0


 爬虫類のような奴だ。
 燃え盛る灼熱に照らされた浅倉へと、始が抱いた第一印象だった。
 もちろんその理由の一端には、身に纏った蛇柄のコートの存在もある。
 だがそれだけではない。
 獣のようにぎらついた、そして独特な粘性を持った凶暴な眼光は、紛れもなく蛇やトカゲの放つそれだ。
 この蛇男以外の人間は周囲に見えない。
 ということは自分が一番乗りということだろうし、こいつが放火犯だということなのだろう。
「お前は殺し合いに乗ってるのか?」
 故に、それを問いかける。
 この狼煙に込められた意図は何なのか。
 仲間を集めたいという願いか、はたまた獲物を集めたいという殺意か。
「ああ。たまには俺自身が祭りを催してもいいだろう」
 後者だったようだ。
 そもそもこの男の気配を見れば、分かる話でもあった気がする。
 鋭く引き絞られた双眸に宿るのは、垂れ流しにされた闘争本能だ。
 祭りというのは、これから起こりうる乱戦を示した、彼なりの比喩表現であろうか。
 どうやらこの男、戦いや殺し合いに快楽を求めるタイプらしい。
 淡々と敵を討つタイプの始には、到底理解できぬ感情だ。
「お前はどうなんだ」
 今度は逆に、浅倉の方から問いかけてくる。
「乗っている……だが、今は気が乗らない」
 真実だ。
 今は戦うつもりはない。晴れぬ心に闘志が宿らない。
 こんな状況で戦っても、ろくな結果は得られないだろう。
 天道やギンガの時のように逃げられるか、エネルの時のように返り討ちに遭うのがおちだ。
 この男がどれほどの実力の持ち主か、今のところはうかがい知れない。
 だが、仮面ライダーホッパーなる存在のように、自分達ライダーに匹敵しうる存在へと変身する可能性も大いにある。
 油断できない状況だ。故に、手出しをすることは控えたかった。
「なんだ、つまらねぇ奴だ」
 失意。
 いかにもつまらなさそうな目をした浅倉から、目に見えて闘志が霧散していく。
 戦うつもりのない人間など、狩っても面白くないということか。
「……だが、俺もこの状況を利用したい。他の連中が来るまで、俺も一緒に待たせてもらう」
「いいだろう。その代わり、その気になった時は俺とも戦え」
 幼稚な殺意だ。
 底が見えた気がした。
 つまるところこいつにとって、闘争とは全てが万事娯楽なのだ。
 自分のように背負う者がいるわけでもなく、ライダー達のように掲げる大義があるわけでもない。
 個人的な欲求を満たしているだけだ。だから遊びで戦えるのだ。
 さながら子犬か何かのように、手当たりしだいに吠えかかるのだ。
 盲目的に戦闘行為を求める男に、最後にはそんな感想を抱いた。
 かつり、かつりと足音を立てる。
 手頃な建築物へと歩み寄り、その硬質な壁へともたれかかる。
 浅倉との距離は先ほどより離れた。
 元より他の参加者と馴れ合う気はないが、こいつとは特に馴れ合いたくなかった。
 十人十色、という諺の意味を再認識する。
 人間にも色々あるものだ。
 ギンガのような優しい奴もいれば、こんなに気に食わない奴もいるのか。
「1つ聞きたいことがある」
 と、そこで。
 ギンガの姿を思い浮かべたところで。
 そういえば、頼まれていたことがあったのを思い出した。

111狼煙 ◆9L.gxDzakI:2009/09/01(火) 11:19:26 ID:Zwg/LCIY0
「アーカードという奴を知っているか?」
「知らねぇな。誰だ、そいつは?」
「俺を助けたギンガという女から、そいつに伝言を頼まれた」
 デイパックの中に収めておいた、例の録音機の件だ。
 先の戦闘の中で命を落とした、ギンガから託されたものの存在を思い出す。
 彼女は事切れる直前に、アーカードなる存在への伝言が記録されているそれを受け取った。
 何故引き受けたのかなど知らない。
 言ってしまえば、それもまた始の闘志を削いでいる原因の1つだ。
 どうかしていると改めて思う。
 だがそれでも、何となく、届けてやりたいとは思った。
 それが“情け”と呼ばれる感情であることには、未だ彼も気付いてはいなかった。
「……そのギンガって奴は、このゲームに乗ってないんだな?」
 浅倉の問いかけに、我に返る。
 正解だ。
 ギンガは殺し合いに乗っていない――容易に推測できることではあった。
 ゲームに乗った殺戮者ならば、わざわざ獲物を助ける理由などないからだ。
 だがそれでも、それが推測できるのはあくまで人間。
 この野獣じみた戦闘狂に、そこまでの知能があるとは、正直思っていなかった。
 たとえ狂っていたとしても、やはりこいつも人間か。どうやら人並みに頭はあるらしい。
「ああ。最後まで殺し合いを止めようとして、命を落とした」
 故に、正直に答える。
「馬鹿な奴だ」
 返事は、嘲笑。
「ヒーロー気取りが悪人助けて、挙句に死んじまったなんてな。とんだお笑い話じゃねえか」
 くつくつ、と。
 唇の端を吊り上げて。
 下衆な笑いを浮かべながら、浅倉の言葉がギンガを嘲る。
 ああ、確かに馬鹿げた話だ。
 エネルに敗れた自分を放っておけば、少なくとも殺人者が1人減ることになっただろうに。
 それでも彼女は自分を助け、立ち去る自分を追いかけて、ギラファアンデッドにさえ立ち向かった。
 人殺しを野放しにする事態を招いただけでなく、そのまま命まで落としてしまった。
 自業自得だ。お人よしが馬鹿を見た。
 それこそ馬鹿にされてもおかしくはない。
 ああ、しかし。
 何故だろう。
「……もう一度言ってみろ」
 無性に腹が立っているのは。
 ぐ、と右の拳を握る。
 何故こんなにも怒りを覚えるのだろう。
 何故許せないと思うのだろう。
 彼女の生き様を否定することに、何故こうも腹を立てている。
 答えなど出ない。今はまだ出なくても構わない。
 今まさに言わんとするのは、かつて発したのと同じ言葉。
 かつて自分の正体に迫られた時、あの仮面ライダーへと言い放った男だ。
 状況はあの時とは違う。
 あの時この言葉を投げかけた相手は、正義のために戦うスペードのライダー。
 今目の前に立っているのは、闘争本能を垂れ流すだけの最低の男。
 理由もあの時とまるで違う。
 あの時この言葉を投げかけたのは、自分の身を守るためだった。
 天音に正体をばらされて、今の関係が崩れ去るのを怖れたためだ。
 しかし今まさに自分は、他人のために怒ろうとしている。
 己の正義に殉じたギンガの、その尊厳を守ろうとしている。
「その時は――」
 絶叫した。
 怒号を上げた。
 始が言い放った言葉は――

112狼煙 ◆9L.gxDzakI:2009/09/01(火) 11:20:17 ID:Zwg/LCIY0


 僅かに衰え始めた火の手を見つめながら、浅倉はじっと獲物がかかるのを待っていた。
 かれこれ数十分前につけた炎だ。そろそろ燃やすものを失い、燃え尽き始めてもいい頃だろう。
 同時にこれだけの時間が経ったということは、そろそろ誰かが来てもいい頃だということ。
 間もなくだ。そう予感していた。
 根拠などない。だが分かる。
 もうすぐこの狼煙を見上げた何者かが、自分と戦いにやって来る。
 それこそ先ほどのような日和見ではない、正真正銘の戦士が来る。
 これまで暴力の中に身を置いてきた、浅倉であるが故の直感だ。
 ちら、と。
 その視線を、傍らの建物へと向ける。先ほどまで始が寄りかかっていた場所だ。
 元々機嫌の悪かった彼は、更に機嫌を悪くしたらしく、建物の中へと引っ込んでしまった。
 どうやらこの浅倉という男を、始はとことん嫌ったらしい。
 顔を合わせていることさえも、不愉快でたまらないと思うほどに。
「……何が気が乗らない、だ」
 ふ、と。
 浅倉の顔に浮かぶは笑み。
 それも先ほどの嘲笑ではなく、好戦的な獣の笑みだ。
 最初はあの始という男は、戦意の欠片もない腑抜けでしかなかった。
 故に戦おうとも思えず、むしろ己のイライラを増幅させたに過ぎなかった。
 拍子抜けだ。故に、失望した。
 しかし、最後に見せた怒りを向けられた時、彼の中での始の印象は一変した。
 気が乗らないとはよく言ったものだ。
 己に怒鳴りかけたあの瞬間、感じたのは紛れもない本物の殺意。
 曇りに曇りきったナイフが、一瞬にして澄みわたったのを感じた。
 ナイフどころのものではない。あれは剣呑な日本刀。
 面白い。
 それでこそ戦うに値する。
 彼をその気にさせることができれば、どれほど素敵な闘争が楽しめるだろう。
 故に、彼は待つ。
 来訪者と、始の本気。その双方を待ち続ける。
(もう一度言ってみろ。その時は――)
 あの時男の発した怒号を、内心で好奇と共に反芻しながら。
 始の言葉は。
 極大の怒りと殺意と共に、相川始の放った言葉は――






 ――俺は貴様をぶっ殺す!!





.

113狼煙 ◆9L.gxDzakI:2009/09/01(火) 11:21:25 ID:Zwg/LCIY0
【1日目 日中】

【F-6 レストラン付近の建物内部】
【相川始@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】健康、背中がギンガの血で濡れている、言葉に出来ない感情、浅倉に対する憤り
【装備】ラウズカード(ハートのA〜10)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式×2、パーフェクトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、
    ゼクトバックル(ホッパー)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、録音機@なのは×終わクロ
【思考】
 基本:栗原親子の元へ戻るために優勝を目指す?
 1.レストランの火災につられた参加者を待つ
 2.その後アンデッドの反応があった場所、もしくは他の施設に向かう。
 3.アンデッド、エネル、赤いコートの男を優先的に殺す。
 4.見つけた参加者は全員殺す?
 5.アーカードに録音機を渡す?
 6.あるのならハートのJ、Q、Kが欲しい。
 7.ギンガの言っていた人物(なのは、フェイト、はやて、スバル、キャロ)が少し気になる、彼女達に出会ったら……?
 8.浅倉のことは気に食わないが、今は戦うつもりはない。気持ちを整理する時間が欲しい。
【備考】
※自身にかけられた制限にある程度気づきました。また、ジョーカー化の欲求が強まっている事を自覚しました。
※首輪を外す事は不可能だと考えています。
※「他のアンデットが封印されると、自分はバトルファイト勝者となるのではないか」という推論を立てました。
※相川始本人の特殊能力により、アンデットが怪人体で戦闘した場合、その位置をおおよそ察知できます。
※エネルという異質な参加者の存在から、このバトルファイトに少しだけ疑念を抱き始めました。
※ギンガを殺したのは赤いコートの男(=アーカード)だと思っています。
※カリスの方が先に変身制限は解除されます。
※主要施設のメールアドレスを把握しました(図書館以外のアドレスがどの場所のものかは不明)。

【F-6 レストラン前】
【浅倉威@仮面ライダーリリカル龍騎】
【状態】右手に火傷、満腹
【装備】ライダーベルト(カブト)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、マシンガンブレード@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式、ヴィンデルシャフト@魔法少女リリカルなのはStrikerS、肉×10kg、魚×10kg、包丁×3、
    フライパン×2、食事用ナイフ×12、フォーク×12
【思考】
 基本:戦いを楽しむ。戦える奴は全員獲物。
 1.レストランの火災につられた参加者と戦う。
 2.今はまだ始とは戦わない。本気になった始に期待。
 3.王蛇のカードデッキ、及びカブトのベルトに填める物(カブトゼクター)を探す。
 4.回復した天道と戦う時にはベルトを返した上で戦う。
 5.なのは(sts)と遭遇した時にはヴィヴィオの名前を出してでも戦ってもらう。
 6.キング、鎌を持った奴(キャロ)、なのは、フェイト、はやて、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、ユーノと戦う。
 7.首輪にイライラ、外したい。
 8.プレシアには「規定の人数を殺害した参加者には、望む人間の居場所を教える」という特典を採用してほしい。
【備考】
 ※プレシアは殺し合いを監視しており、参加者の動向を暗に放送で伝えていると考えています。
 ※ヴィンデルシャフトのカートリッジシステムに気付きました。
 ※カブトに変身できる資格があるかどうかは分かりません。
 ※なのは、フェイト、はやては自分の知る9歳の彼女達(A's)とヴィヴィオの言っていた大人の彼女達(StS)の2人がいると考えています。

114狼煙 ◆9L.gxDzakI:2009/09/01(火) 11:22:17 ID:Zwg/LCIY0
投下終了です。

オレァクサムヲムッコロス!

言わせなければならないような気がした。

115リリカル名無し:2009/09/01(火) 12:49:19 ID:M7KHSZ6YO
投下乙です
だんだんと人間の心を宿して行く化け物の始と、心は化け物そのものでありながらも人間の皮を被った浅倉
あらゆる面において真逆な二人のライダーの対比。後は誰が集まるかによるか…

一点気になった点が。
クロス元であるマスカレードでは確か、始はまだ剣崎と出会う前だった筈ですので、「俺は貴様をぶっ殺す」は今回初めて浅倉に言った台詞になると思うのですが…

116リリカル名無し:2009/09/01(火) 13:34:37 ID:ugx.7Gzo0
投下乙でござる。やっぱり燃やしちゃったよ浅倉!(まぁ振ったのは7p氏だけど)また1つ施設が……

で、本編の方はどちらもマーダー(?)で、どちらも仮面ライダー(?)で、どちらも誰も殺してないというよく似た境遇の2人。
にも関わらずその正体と心の有り様はまさしく真逆、釣られてやってくる人も踏まえて後の激闘を感じるお話でした。
後は誰がやって来るか……位置関係的に結構いるな……。

指摘に関しては……個人的には最後の台詞は残して欲しい所だが……修正でどうにかなるだろうか……?

117リリカル名無し:2009/09/01(火) 15:14:01 ID:M23RaIJo0
投下乙です!
そういえばこの二人は全く真逆の存在なんだなぁ……
そして背負うものを持たないライダーと、そうでないライダーの出会いはどんな展開に繋がるのか。
浅倉の放火という行動は結果的に当初の思惑通り様々な参加者を寄せ付ける事になりそうで、
この先果たしてどんな大規模バトルになるのか楽しみです。

指摘に関してですが、確かにマスカレード本編では始はまだムッコロ関連の会話をしてなかったですね。
とは言っても、大した修正点ではないと思うので「かつて発したのと同じ言葉」のくだりを修正して
初めて言った台詞っぽくしてしまえば、大丈夫かな……?

118リリカル名無し:2009/09/01(火) 18:49:56 ID:qkT9Tlrw0
投下乙です。
どっちも異色のライダー同士、なかなかどうして一筋縄ではいかないな。
始は徐々に本編のように人間性を得ているようで、さて非情なロワでは如何に?
それと浅倉楽しそうだなw

こちらも少し指摘を。
剣崎関連は既に出ているので割愛(ああそうか、マスカレードだとブレイドは1話開始ぐらいの時期か)
あと始はまだ『仮面ライダー』という言葉は知らないはずなのでその辺りが少し引っ掛かりました。
(ライダーという単語を互換すれば問題ないと思います)

119 ◆9L.gxDzakI:2009/09/01(火) 19:21:31 ID:Cwe7kyNs0
え!?

……スイマセン、素で勘違いしてました。というか橘さん、1話目からカリスがアンデッドだって知ってたんですかい……
ともあれ、修正版を投下してきます。仮面ライダーに関しては、ライダーの互換で。
ただし仮面ライダーカリスに関しては、ライダーカリスだといまいちしまらないので、そのままにしておいてください

120リリカル名無し:2009/09/01(火) 20:15:00 ID:M7KHSZ6YO
あれ?剣及びマスカレード世界じゃ仮面ライダーって単語自体は都市伝説として有名なんじゃないのかな
キングがはやてにライダーの話した時も無償で人を助けてくれる仮面ライダーの都市伝説みたいに話してたし
天道もどっかでそんなこと言ってたような
まぁこれに関してはマスカレード氏に確認してみた方がいいか…

121リリカル名無し:2009/09/01(火) 20:58:58 ID:qkT9Tlrw0
>>119>>120
すいません。仮面ライダー都市伝説のことすっかり忘れていました。

122 ◆9L.gxDzakI:2009/09/01(火) 21:07:38 ID:Zwg/LCIY0
ええー!?

流れからしててっきり、始は仮面ライダー都市伝説のことを1話時点では知らなかった、と言ってたのかとorz
じゃあ、仮面ライダーの互換はなしで

123 ◆gFOqjEuBs6:2009/09/01(火) 23:43:08 ID:M23RaIJo0
えーとですね……なんかもうごめんなさいorz
マスカレード初期の方は、言ってしまえばもう結構テキトーな流れなのですよ
正直最初は単発ネタ的な感じで数話書くだけのつもりでして、適当なとこで話を
詰め込んだのがあの文章的にも展開的にも稚拙なアレだったりします。
なので橘さんがいきなりアンデッドの事知ってたとかその辺もそういう勢い的な処があります。
同じようにマスカレードにおいては他の設定やグロンギなんかについてもおもいっきり改変しちゃってます。
いやまぁ何が言いたいかって言うとですね、とにかく初期の方はもう……なんかすいませんorz
今やってるクウガが完結した後にはマスカレードの方も今の文章力で参加作品から大幅に絞ってやり直そうと思ってますです。

という訳で本題の補足説明(?)ですが、マスカレードの世界においても仮面ライダー都市伝説は健在です。
所々にそういう感じの会話や台詞を入れてあったと思います。なので、今回の投下分で始が仮面ライダーについて
知っていたことに関しては特に問題は無いかと。

それと一つ気づいた点が。
今回の話で、始の変身制限がもう解けているのなら、最後の備考の
「カリスの方が先に制限が解除される」ってところは消した方がいいっぽいかな?と思いました。

124 ◆7pf62HiyTE:2009/09/04(金) 15:41:52 ID:JQEGpP3U0
泉こなた、早乙女レイ分を投下します。

125らっきーえむぶれむ星戦の系譜 ◆7pf62HiyTE:2009/09/04(金) 15:43:10 ID:JQEGpP3U0
 殺し合いが始まってから12時間、プレシア・テスタロッサによる2回目の放送が流れた。
 その放送が終了してから約15分……デュエルアカデミアから急ぐ様に走る足音が立つ。
 足音の正体は泉こなたと早乙女レイ、2人の少女によるものだ。約2時間前、ルルーシュ・ランペルージがスバル・ナカジマ、こなた、レイ、そしてこなたに付かせているリインフォースⅡにアカデミア内部の調査を向かわせていた。
 スバルは早々に自身の割り当て範囲の調査を終え入口にいるルルーシュの所に戻っていたが後の3名は今まで戻ってはいなかった。
 その3名も各々の範囲の調査を終え戻ってきているが、急ぐ様子を見る限り只事ではない様子だ。
「ねぇ、リイン……本当に大丈夫?」
「大丈夫です! はやてちゃんやヴィータ達が馬鹿な事しようとしていても絶対にリインが止めますから! それよりも今は……」
 こなたがリインを気遣いつつ下へと急ぐ……と、
「あ、こなた……」
「レイ……その……」
 同じように下に降りようとしていたレイと鉢合わせになった。だが、こなたとレイの表情は固い……2人はレイの心配をする一方、ある危険性を危惧している。
 さて、この3人がルルーシュ達と別れてからこの瞬間に至るまでの間に何が起こっていたのだろうか? そして彼女達は今何を思っているのだろうか? それを紐解いていく為、ひとまず時間を戻してみよう―――



   ★   ★   ★   ★   ★



「うーん……」
 こなたは地図を眺めながら難しい表情をしていた。
「こーなーたー!」
 そんなこなたにリインが怒った様な表情で口を出す。
「あっゴメンゴメン」
「地図を眺めている暇があったら早く調べてくださいですよー!」
 こなた達はアカデミアの中層部を調べていたはずだった。しかしこなたは調べる手を止めて地図を見ていたのでリインが怒ったのである。その調子であった為、内部調査の方はまだ終わってはいなかった。
「でも、ちょっと気になる事があってさ」
 しかしこなたとしても調査をサボるつもりで地図を見ていたわけではない。
「どうかしたんですか?」
「うん、調べ終わった後の事を考えていたんだけどさ……」
「それ以前に今は調べる事が優先だと思うですけど……」
 そう口にするリインを余所にこなたは語る。アカデミア内部の調査を終えた後、こなた達は首輪を外す為に首輪の確保と首輪の解析の出来る施設に向かう事になっていた。
 首輪の確保についてはルルーシュの同行者であったディエチが死んだであろう病院に向かえば確保出来る可能性が高いのでそちらに向かえば問題は無いだろう。
 仮に手に入れる事が出来なくても現状を考え(喜ばしい事とは言えないが)道中で死体を見付けられる可能性が高いので恐らくそちらの方は問題はない。
 実際、こなたとリインは気付いていないがこの前後でスバルがチンクを保護しており、チンクが所持している2つの首輪をルルーシュとスバルが確認しているので首輪の確保についてはクリアしたと言えよう。
 だが、問題はこの後だ。首輪の解析を行う為には設備の整った施設に向かう必要がある。
 先程の話し合いで上がった施設は機動六課隊舎と地上本部。これら2つの施設に向かえば首輪の解析が行える可能性は高いだろう。
 更に、六課隊舎と地上本部は管理局の施設、高町なのはやフェイト・T・ハラオウン、八神はやて達もそちらに向かう可能性が高い。つまり、彼女達との合流が出来る可能性もあるという事だ。
 そして、仮にこなたの友人である柊かがみや柊つかさもなのは達に保護されているならば彼女達とも再会出来る可能性がある。
 この状況下において六課隊舎と地上本部に向かうというのは有効な手段と言えよう。
「それの何処が問題なんですか?」
「うん……もしかしたら何だけど、ボク達がそこに向かう頃には既に壊されているんじゃないかって思ってさ」
 こなたの感じた危惧はこれらの施設が戦いに巻き込まれ崩壊して使用不能になっているのではないかという事だ。

126らっきーえむぶれむ星戦の系譜 ◆7pf62HiyTE:2009/09/04(金) 15:44:39 ID:JQEGpP3U0
「幾ら何でも隊舎や本部がそう簡単に破壊されるとは思わないですけど」
「ボクもそう思うけど、病院の事もあるからさ……」
 こなたはスバルと共に病院に向かった時の事を語る。スバル達は医薬品や毛布、食料を確保する為に最初の目的地を病院に定めそこへ向かっていた。
 が、実際に2人が病院に到着する事はなかった。その途中で病院方向から右腕を失う程の重傷を負ったルルーシュを保護したからだ。 保護した時点でルルーシュは気絶した為詳しい事は聞けなかったが、それだけでも病院には殺し合いに乗った参加者がいるのは明白、ルルーシュの治療及びこなたを守る為、スバルは病院に向かう事を止めてすぐ近くの施設であるアカデミアに向かったのだ。
 そして、後に聞いたルルーシュの話を踏まえて纏めるとこの時点で病院にいたもしくは向かっていた参加者は少なくても6人(スバル、こなた、ルルーシュ、ディエチ、ルルーシュ達が確認した参加者2人)いた事になる。
 ちなみにルルーシュ達は把握していないもののこの前後病院及び近辺には更に2人の参加者がいたし他にも既に1人の女性の死体があった。そして、他にも病院方向を目的地に定めていた参加者はいた。
 更に重要なのはこの状況になったのはこの殺し合いが始まってから約4〜5時間しか経過していない段階での話だ。それだけの僅かな時間で多くの参加者が集結し惨劇が起こっているという事だ。
 何故、その僅かな時間で参加者が病院に集結し、人の命を助けるはずの施設は人の命を奪い合う惨劇の舞台と化したのだろうか?
 理由は単純、例外はあるものの皆が皆考える事は同じだったからだ。そう、皆病院で医薬品の確保及び怪我人の治療を行おうと考えるからだ。故に誰もが病院を目的地に定めそこに参加者が集結する。
 さて、そうなると殺し合いに乗った参加者はどうするだろうか? 当然、参加者の集結する病院に向かい彼等を一網打尽にしようとするはずだ。おまけに病院には怪我人もいる。殺すのに最も都合が良い状況と言えよう。
 そもそも、こなた達は知らないが実はルルーシュはそれを見越した上で参加者を一網打尽にする為に病院の爆破を目論んでいた。だが、それは病院にいたある参加者によって実行には至らなかったわけではあるが……
 しかしそれはある意味ルルーシュにとっては不幸中の幸いといえよう。ルルーシュはまさか守るべき対象であったスバルが病院に向かうとは考えていなかった。そう、下手をすればスバルを殺してしまう可能性があったのだ。
 それが現実のものとならなかったのは運が良かったと言えなくもない(代償は大きい為本当に運が良かったと言えるかどうかは微妙だが)。

127らっきーえむぶれむ星戦の系譜 ◆7pf62HiyTE:2009/09/04(金) 15:46:16 ID:JQEGpP3U0
 閑話休題、結局の所病院の様に人が数多く集まる施設であれば、同じ様に殺し合いに乗った参加者も訪れる可能性が高いという事だ。規模にもよるが戦いにより施設が使用不能になるほどのダメージを受ける可能性はある。
「うーん……確かにそう言われると……」
 こなたの話を聞き、リインも不安を感じる。先程リインはそう簡単に破壊されないと語ったが、
 よくよく考えてみればJS事件の際にジェイル・スカリエッティの戦闘機人達が地上本部及び六課隊舎を襲撃し施設に大きな被害を与えていた事実がある。絶対に大丈夫という保証など何処にもない。
「だからさ、丁度良い施設が他にないかなって思ってさ。リインは何かそういう施設に心当たりとか無い?」
 そう口にするこなたに対しリインは
「使えそうな施設ですか……」
 リインは地図を少し眺め、
「基地や工場……後はスカリエッティのアジトやゆりかごぐらいだと思いますよー」
 リインが示したのはA-1の軍事基地、B-8の工場、C-9のスカリエッティのアジト、そしてI-5にある聖王のゆりかごだ。
「ゆりかご?」
 そう聞き返すこなたに対しリインはゆりかごについて簡単に説明する。聖王のゆりかごは古代ベルカの聖王が所持していた超大型空中戦艦である。
 その規模を考えれば、解析を行える設備がある可能性はある。とはいえリイン自身も詳しい構造を把握していない為(なにしろJS事件でゆりかごは撃沈されているからだ)、確証は無いわけだが。
「……どれも端っこにあるね」
「でも、人が訪れそうにないんだったら逆に今も無事だと思うですよ」
 問題はこれらの場所が市街地より離れた場所にあるという事だ。とはいえ、離れた場所つまり人が訪れて無さそうな場所という事は今もって無事である可能性はあるということだ。
「でもさ、狙って施設を潰す人っていそうだと思わない?」
 だが、殺し合いを望む参加者から見れば首輪解除されては困る。その為、それを妨害する為に施設を破壊しようとする可能性は十分にある。
「……そんな事言ったらキリがないですよ」
「そうだね……」
 と、こなたは地図を眺め、
「……例えばさ……秘密の施設とか隠された建物とかって無いのかな?」
「秘密? 隠された?」
「うん、ボク達もそうだけど、みんな施設を目指しているよね。でも、逆に何もない場所に何か隠された重要な施設があるんじゃないかって考えたんだけど」
「確かに……地図に載っていない施設はありそうな気がするですよ。でも、どうしてそう考えたんですか?」
「だってさ……この手の事で隠し要素なんてお約束じゃん。秘密基地や秘密の店とかさ?」
 そう笑顔で答えたこなたに対し、
「……馬鹿な事言ってないで早く調べるですよ!」
 と怒るリインであった。とはいえ、
「……でも、お約束とかはともかく、こなたの言う通りかもしれないですから後でスバルやルルーシュにも話しておくですよー」
 と、こなたの推測自体は肯定していた。
「でも、ゆりかごとかはともかく隠し施設を探している余裕は多分無いと思うですよ」
「大丈夫、ボクもそこまで期待してないからさ」
 というわけで施設調査を再開する2人であった。

128らっきーえむぶれむ星戦の系譜 ◆7pf62HiyTE:2009/09/04(金) 15:48:46 ID:JQEGpP3U0

 ちなみに、こなたがこういう事を考えていたのにはちゃんと理由がある。それはこなたもスバルやルルーシュ達の力になりたいと考えていたからだ。
 だが、真面目な話こなたが武器を持った所でスバルの様に戦えるわけがないし、考えた所でルルーシュの様に具体的な方針や作戦を考え実行に移せるわけもなく、カードの扱いについても完全にレイの方に分がある。
 こなたにあるのはせいぜいアニメやゲーム等で得た知識だけだ。しかもそれすらもプレシア・テスタロッサによって細工されている。
 そう、この場においては無力にして足手まといな人間でしかない。そんな彼女がこの殺し合いを平穏無事に生き残れる事などまずあり得ない。
 しかし現実には今現在こなたは肉体的にも精神的にもダメージは少ない。何故彼女はここまで無事に過ごせたのだろうか?
 その理由は恐らく『幸運』であった事だろう。
 これはこの場に来てからのこなたの動向を見ていけば理解出来るだろう。この場でこなたは最初に赤いコートの男アーカードに襲われたがすぐ近くにいたスバルによって助けられ何とかその場を切り抜ける事が出来た。
 この状況における『幸運』は2つ、早々にスバルと合流出来た事と襲撃した相手がアーカードだった事だ。スバルとの合流については言うまでもないが、何故襲撃したのがアーカードだった事が『幸運』だったのだろうか?
 ここでアーカードに襲われた時の事を振り返ってみよう。この際にこなたは支給品であったナイフを投げてアーカードの頭部に刺してしまった。普通の人間であれば致命傷であるがアーカードは吸血鬼、その程度のダメージなど即座に完治した。
 一見するとこれは『不運』に見えるが逆に考えてみよう、『アーカードを仕留められなかった』ではなく『アーカードを殺さずにすんだ』と……
 そう、アーカードの再生能力故にこなたは人を殺さずに済んだのだ。幾ら相手が殺し合いに乗っていたとしても殺してしまえばこなたの心に大きな罪悪感を抱かせるのは明白、一歩間違えれば心が壊れる可能性だってあった。
 それを避けられたのは『幸運』と言えよう。
 更に言えば支給品に関しても適度に使える物が多く殺人を強要するような質の悪い物はなかった。これも『幸運』と言える。
 その後、こなた達は病院に向かったわけだが前述の通りそのまま病院に向かえば危険人物と遭遇する危険性があった。だが、これについても病院から逃げてきたルルーシュと合流したお陰でその危険を避ける事が出来た。
 しかもだ、その後も病院では参加者同士の戦いが起こり最終的には倒壊してしまっている。
 いや、そもそも倒壊の決め手となったのはヴァッシュ・ザ・スタンピードによるエンジェルアームだが放たれたその攻撃はH-6の病院から離れたG-5上空で炸裂した。
 さて、この攻撃の方向がアカデミアに向けられていたらどうなっていただろうか? それによりアカデミアの崩壊は確実。当然、内部にいるこなた達の命は無いだろう。実際にそうならなかったのは『幸運』以外の何者でもない。
 また、つい1〜2時間前アカデミアの隣のエリアG-6の大通りがある戦いによって壊滅した。それ以外にも数多くの施設やエリアが激しい戦いにより壊滅している。しかし、未だアカデミアは何事もなく健在だ。これも『幸運』と言えるだろう。
 そして、落ち着いて情報交換をする事が出来たお陰で参加者が違う並行世界から連れて来られている……必ずしも知り合いが自分を知っているとは限らないという事実を知る事が出来たということだ、これもまた『幸運』と言えよう。
 つまり、こなたは多くの『幸運』に恵まれ今もって精神的にも肉体的にもダメージは少ないのだ。
 しかし、そんな『幸運』が何時までも続くだろうか? そんな都合の良い話などあるわけがない。今現在も周囲には殺し合いに乗った参加者が数多くいる。次の瞬間にはその矛先が自分に向けられるかも知れない。
 いや、既にそんな『幸運』などとっくに終わっているのかも知れない。何故なら友人であるかがみやつかさは自身の都合で最終的に優勝を目指す様になってしまっている。
 彼女達は恐らく自分の願いを叶える為には容赦なく最後の1人となろうとするだろう。それはこなたにとっては不幸としか言いようがない。

129らっきーえむぶれむ星戦の系譜 ◆7pf62HiyTE:2009/09/04(金) 15:49:48 ID:JQEGpP3U0
 何にせよ、これから先『幸運』だけでは生き残れない。しかしだ、前述の通り武器を持って戦った所でまともにやりあえるわけもないし、スバルからも何も知らない普通の子が戦わなくてもいいと言われていた。それが正しいのは明白だ。
 だが、スバルやルルーシュが戦いによって傷つくもしくは傷ついていく姿を只黙って見ていられるこなたではない。何か出来る事をやろうとするのは当然と言えよう。
 こなたにあるのはゲームやアニメ等の知識、前述の通り若干操作されてはいるが、そこで得た経験までは消されてはいない。故にRPGやネトゲでの経験を生かして地図を見て考え、地図にない施設を探したらどうだろうと考えたのである。
 勿論、自身の考えなど既にルルーシュ達も考えている可能性はある。だが、そんな事などこなたにだってわかっており過度な期待などしていない。それでも、黙って見ているよりはずっと良いとこなたは考えていた。

 さて、施設調査も大詰めに入る頃、
「そういえばリイン、ちょっと聞いていいかな?」
「何ですかー?」
「死んだ人を生き返らせる事って出来るのかな?」
 こなたがリインに死者を生き返らせる事が可能なのか聞いてきた。
「ちょ……何を言っているですか?」
「あ、いきなりこれだけ言われちゃ何がなんだかわからないか……あのね……」
 こなたは最初の放送時プレシアが優勝者には何でも願いを叶えると言いだし、最初に殺されたアリサ・バニングスを実際に蘇生した(がすぐさま再び殺したが)上で死者を生き返らせる事も出来ると言っていた事を話した。
「アニメやゲームじゃあるまいしそんな事は不可能……だよね……?」
 とはいえ、正直な所この辺の話は自信が無いのが本音だ。無論これはアニメやゲームの様にポンポン人を生き返らせる事が出来るだろうと考えているわけではない。
 実際に幾つかのマンガやゲームでは死んだ人を生き返らせる方法があり、実行されたというパターンが幾つかある。
 こなたはこの場所が様々なアニメやマンガ等に出てくる世界の人物や物が集まっていると考え、その方法も存在するかもしれないとは思っていた。
 なお、誤解の無い様に書いておくが、だからといってこなたは殺し合いに乗るつもりは全く無いし、プレシアの言葉が真実だとは思ってはいない。
 真面目な話、生き返らせる方法が世界に平和を取り戻したり、何かの球を集めたりするものだったら、実行に移す事を少しは考えるかもしれない。
 しかし、60人で殺し合いを行い最後の1人になればというのはどう考えたっておかしい。少なくともこなたの知る限りそんな方法で人を生き返らせる事がまかり通ったマンガやアニメなど見た事がない。
 いや、仮にあったとしてもその末路は何れもロクなものではなかったはずだ。どちらにしてもその言葉に従った所でその願いが叶う事はないだろう。
 大体……昨今のアニメやマンガを見た所で生き返らせればいいという様な命を軽視するものなど殆ど無い(例外はあるが)。むしろ、命を大事に扱っている物の方が多いと言えよう。
 本題に戻そう、ここで重要なのはプレシアが本当に死者蘇生を行う事が可能かどうかである。リインは少し考え、ゆっくりと口を開いた。
「多分それは不可能だと思いますよー」
「あ、やっぱり」
「だって本当に生き返らせる事が出来るんだったらこんな殺し合いだってやっていないはずですよー」
 生き返らせる事が出来るなら殺し合いをやっていない? その事がこなたは気になった。何故生き返らせる事が出来るなら殺し合いをやらないのか?
「それはどういう意味……?」
「うーん……」
 リインは少し考える仕草を見せたが、ゆっくりとこなたに語り始めた。それはプレシアが10年以上前に起こしなのはが魔法に関わる切欠となったPT事件の概要についてを……

130らっきーえむぶれむ星戦の系譜 ◆7pf62HiyTE:2009/09/04(金) 15:51:45 ID:JQEGpP3U0
「つまり、あのおばさんは娘のアリシアちゃんを生き返らせる為にそのPT事件を起こしたって事?」
「はいです。はやてちゃん達がなのはちゃんと出会う前の事ですけど大体そんな話ですよー」
「でも、それと生き返らせる事が不可能なのがどういう関係が……」
「PT事件から考えれば、プレシアの目的はアリシアちゃんの復活だと思うですけど……」
 PT事件を踏まえて考えればプレシアがこの殺し合いを開いた目的はアリシア・テスタロッサの復活。それはPT事件を知る物が少し考えれば導き出される推測である。今回その話を初めて聞いたこなたもそれについては異論は無い。
「仮に既に復活させる事が出来るんだったら、こんな殺し合いなんてしないですぐにでもアリシアちゃんを生き返らせれば済む話ですよー」
 そう、復活させる事が出来るのならば今すぐにでもアリシアを復活させればそれで事は済む。少なくともプレシアが殺し合いを行う理由は無い。
 ちなみに管理局及びなのは達に対する復讐という理由が仮にあったとしてもそれはついでというのがリインの見解だ。
 その理由はPT事件には関わっていないはやて達やスバル達、更にいえばディエチ達が連れて来られている一方、PT事件関係者のリンディ・ハラオウンやエイミィ・ハラオウン(PT事件当時エイミィ・リミエッタ)が連れて来られていないからだ。
 つまり、PT事件関係者の復讐にしては連れてきた人々が不自然すぎるという事だ。
 どちらにしても断言こそ出来ないものの現状では目的はアリシアの復活と考えるのが自然と言えよう。となれば現状では前述の通り復活は不可能であり、放送での復活劇は嘘ということになるだろう。
「特撮みたく良くできた人形とかでも使ったのかな?」
(並行世界のアリサちゃんを利用したと考えた方が自然だと思うですけど……)
 何はともあれ、復活劇は嘘という事で話は纏まりこなたは調査を再開しようとする……しかし、リインの方はどことなく表情が重い。それを見て、
「あれ、どうしたの?」
「いや、確かに復活は嘘だと説明したですけど……」
「もしかして……それを信じちゃう人がいるの?」
「はいです……」
 ここでプレシアの言葉に従う人物……それは死んだ人を生き返らせる為に殺し合いに乗る人物の事だ。
「そんなヤンデレには会いたくないな……それって誰?」
 こなたは恐る恐るリインに聞く……
「……ヴィータやシャマル、ザフィーラがそれ聞いてはやてちゃんが死んだら間違いなく乗るですよ。多分シグナムも生きていたら……」
「え!? それってリインの……」
 こなたとリインは調査の最中でも互いの家族について等を話していた。その為、リインにとってはやて達は仲間というよりも家族だという事をこなたは知っている。
「で、でもだよ、まだはやてちゃんは呼ばれていないんだからまだ……」
「むしろ……はやてちゃんの方が乗ってしまう気がするですよ……」
 その言葉を聞いてこなたは言葉を失った。
 八神はやてを知る人物が普通に考えれば……はやてが殺し合いに乗る事など絶対にあり得ないという結論を出すだろう。
 それはヴィータ達もそう考えるだろうし、なのは達も同じだろう。そしてとある片翼の天使も同じ結論を導き出すはずだ。真面目な話その見解自体は全く間違っていない。
 だが、何にでも例外は存在する。状況が微妙に異なる並行世界が存在するならばはやての人格が多少変わった並行世界が存在してもおかしくはない。
 そう、とある世界のはやてはゴジラを封印する為に家族であるヴィータ達を失っていた。
 それ故に彼女の精神は不安定となると共に家族を取り戻す為に躍起となっていた。その為、本来は友人であるはずのなのはやフェイトとも何度と無く衝突を起こしていた。
 そして、リインは丁度その世界からこの場所に連れて来られていた。故に、仮にこの場に自身の世界のはやてがいるならばプレシアの言葉に乗る可能性があると考えていたのである。
 こなたもリインも最悪の事態が起こっているとは信じたくはない。だが、現実が全く理解出来ない程愚か者ではない。2人の間重いい空気が流れる……
「だ、大丈夫ですよ! 仮にはやてちゃんやヴィータ達が殺し合いに乗っていてもリインが絶対に説得するですから!」
「う、うん……」
 不安そうな表情を浮かべるこなたを見て、何とか強がって見せたリインだった。



 ―――そして、難航はしたものの漸く内部調査を終え、後は下で待つルルーシュの所に戻るだけである。恐らくレイやスバルも戻っている事だろう。そう考え下へ降りようとしたその時、

『6時間ぶりね。
 みんな、ちゃんと聞いているかしら。』

 2回目の放送が流れた―――

131らっきーえむぶれむ星戦の系譜 ◆7pf62HiyTE:2009/09/04(金) 15:52:40 ID:JQEGpP3U0



 ―――放送によって知らされた死者は9人、前回の放送に比べ人数こそ少ないが総数が減っている以上あまり問題にはなり得ない。既に全体の3分の1以上の死者が出てしまっている。
 ここで重要なのは呼ばれた名前だ。その中にはレイの仲間である遊城十代、スバルの姉であるギンガ・ナカジマ、はやての友人であるフェイト、そして……
「そんな……はやてちゃん……ザフィーラ……」
 リインの家族であるはやてとザフィーラが死んだ事が明かされたのだ……故にリインは泣いていたのだ。
 真面目な話、はやてとザフィーラががリインのいた世界とは別の彼女達という可能性はある(ザフィーラについては間違いなく別世界の彼だろうが)。
 しかしだ、別世界の彼女達だとしてもリインにとって大事な人達である事に何ら変わりはない。彼女達の死を悲しむのは当然と言えば当然だろう。勿論、フェイト達の死についても悲しんでる。
「……」
 一方のこなたは前の放送の時と同様比較的落ち着いていた。かがみとつかさの名前が呼ばれなかったから少なくても2人は無事だという事がわかっているからだ。
 フェイトに関しても交流が深くはない為、死を知らされてもショックではあったものの号泣する事はなかった。
 だがしかしだ、死者が出て悲しくないわけではない。悲しいに決まっている。それ故に家族の死に泣いているリインを見てどう話したらいいのかなどわからなかった。
 ただ……1つだけ確実な事がある。それは仮に自分がここで死んだら間違いなく父親の泉そうじろうは悲しむという事だ。もしかしたら自殺してしまうかも知れない。
 そうじろうを悲しませない為にも、必ず生きて帰らないといけない……勿論、かがみ達とも一緒に……こなたはそう思っていた。
 その最中、こなたは名簿と地図を広げ放送での言葉をよく思い出し考える。この様子だとリインやスバル、レイは放送で聞き逃している部分があるかも知れない。
 だったら『ボク』がやるしかない。こなたはちゃんと放送を聞いていたのだ。
 とりあえず気になったのは誰かを殺したら御褒美がもらえるという話だが、そんな言葉に乗るつもりはないのでそれについては深くは考えない。

132らっきーえむぶれむ星戦の系譜 ◆7pf62HiyTE:2009/09/04(金) 15:54:48 ID:JQEGpP3U0
 むしろ……こなたにとってはその時にプレシアが口にしたある言葉が引っかかったのだ。
『貴方達の好きなビデオゲームでも、敵を倒せば経験値と資金という見返りがある……そういうボーナスも悪くないわね。』
 プレシアは現実に起こっているこの殺し合いをゲーム扱いしているのだ。純粋にビデオゲームが好きなこなたにしてみればそれは憤りを感じるものだったのだ。
 こなたのいた世界でも殺人事件や監禁事件といった凶悪な事件がよく起こっている。問題なのはその度にゲームの影響が議論として持ち上がっている。
 実際、過去にかがみ達とその事について話した時、モラル以前にゲームのやり過ぎだとこなたは口にしていた(ちなみにその際かがみからアンタの事だろとツッコまれたが)。
 それでもだ、ゲーム等と現実を一緒にする事など決してあってはならない。ゲームで人を殺せると言って、現実で人を殺すなどという話は決して許される話ではない。
「ゲームと現実を一緒にしないで欲しいよ……」
 他にも許せない事がある。リインの話によればプレシアは娘であるアリシアを生き返らせようとしていた。娘を生き返らせようとした事に関してはこなただって理解は出来る。
 真面目な話をすれば、こなた自身も仮に家族を失い、生き返らせる手段があるならばそれに賭ける可能性があるのはわかっている。
 だからこそ許せないのだ。プレシアは理解しているのだろうか? これまでに死んでいった人達にも家族や友人がいることを。それは今も泣いているリインを見れば一目瞭然だ。
 本当にアリシアの事を想っているのであれば、こんな事などまず実行しないはずだ。自分と同じ悲しみを他の人にも味わわせるのだから。
 とはいえ、いくら憤りを感じてもこなたの力ではどうする事も出来ないのが現実だ。ひとまずは調査や放送で得た事をルルーシュ達に伝えるといった出来る事をやるしか無いだろう。
 そんな中、気になる事があった。あの放送でプレシアはフェイトが自分の娘だと言う事を語っていた。
 実の所、リインがPT事件の説明をする時プレシアとフェイトの関係についてはボカして説明した為、その事をこなたは初めて知ったのである。
 当然の事だがプレシアとフェイトが親子であるという事については驚いている。だが、名前の『T』やプレシアの口ぶりから恐らくは本当だというのは間違いない。
 だが正直な所プレシアの言う様な親子関係だったとは思えなかった。それならばリインがPT事件の説明をした時に詳しく話してくれるからだ。少なくても何か事情があるんじゃないかとこなたは考えていた。
 何にせよそれについては後でリインから確認を取ればいいと考えていた。
 それよりもこなたにはある懸念があった。死者の中にギンガや十代の名前があったという事は……スバルやレイが彼女達を生き返らせる為に殺し合いに乗る可能性がある事を……そんな事は無いと思いたいが絶対に大丈夫とは思えない……そして、
「かがみんにつかさ……大丈夫かな……」
 自分の友人達は無事なのか? 生きているのはわかっているがルルーシュの様に腕を失っている可能性や精神的に追いつめられている可能性は否定出来ない。
 そしてこれまでに呼ばれた死者の死に何かしら関わっている可能性はある……例えば、庇われた対象がつかさであったり、事故に近い形の死にかがみが関わっていたり……。
 考えれば考える程、雰囲気は重くなる……その状況の中で、
「ボクは……何が出来るだろう……」
 こなたは只、窓から外の景色を見ていた……そこには変わらぬ景色が―――
「あれ……何だろう……?」

13399% ◆7pf62HiyTE:2009/09/04(金) 15:58:05 ID:JQEGpP3U0
 ここで再び時間を戻そう。レイの方は自身に割り当てられた調査範囲の調査を早々に終えていた。真面目な話すぐさま下で待つルルーシュの所に戻っても何ら問題は無い。
 だが、レイはルルーシュの所に戻ろうとはしなかった。その理由は至極単純、単独で行動出来るこのタイミングを利用して今後の方針を考えておきたかったからだ。
 レイの目的は十代を守る事、その為にすべき事は殺し合いに乗った参加者を殺す事である。殺し合いに乗った参加者を全て殺せば十代の身を守る事が出来るからだ。
 が、実際の所現実は甘いものではなかった。その理由の1つが殺し合いに乗った凶悪にして強大な参加者が数多くいるという事実。
 どれぐらい強大かは既になのは達が殺されているという事からも明白であり、スバル達が遭遇した再生能力を持つ赤いコートの男やルルーシュの右腕を瞬時に切り落とし彼の力も通用しなかった金髪の男の存在がそれを証明している。
 断言しよう、レイ1人では目的を達成する事はおろか生き残る事すらほぼ不可能だということを。一応、レイ自身にも使える武器はある。しかし現状の手持ちだけで殺し合いに乗った参加者全てを仕留める事は不可能だ。
 さて、1人で無理となれば当然誰かと手を組むべきではあるが……レイの方針を考えると現状ではこれまた厳しい。
 今現在レイはスバル達のグループと同行しているもののスバルとこなたは仮に殺し合いに乗った参加者と遭遇しても絶対に相手を殺したりはしないだろう。
 確かに完全に無力化出来るならそれでも良いかも知れないが、中途半端なダメージで取り逃がした場合は後々になって脅威になるのは誰にだってわかるはずだ。
 それがわからないスバルでは無いだろうが、それでもスバルは殺人者を殺そうとはしないだろう。
 一方、ルルーシュは見た所危険人物を排除する事に戸惑いは無いだろう。その意味ではレイの行動方針と合致する。しかしここで問題なのはその危険人物に自分も入っている可能性が高いという事だ。
 当然の話だ、この状況で全く知らない人物を信用する事など愚行でしかない。自分が危険人物として警戒されても全く不思議はない。実際、ルルーシュ達の立場から見れば自分は危険人物と言っても差し支えはない。
 勿論、警戒されているだけならばまだ良いだろう。それならば何れは出し抜ける可能性がある。
 しかし、相手が悪すぎた。ルルーシュの知略はレイが知る誰よりも秀でている。レイの浅知恵などまず通じない。
 しかもだ、ルルーシュにはギアスと呼ばれる絶対遵守の力がある。この場では制限が掛けられている様だが真面目な話レイの立場から考えればそんな事など全く意味を成さない。
 たった1度しか使えないという話だがその1度の『命令』によってトドメを刺される可能性は高い。
 何しろ『高層ビルの屋上から飛び降りろ』、『H-4(既に禁止エリア)へ向かって走れ』と命令すれば簡単に殺せるし、命令次第で盾にも鉄砲玉にも出来る。
 それ以前にギアスの命令次第ではデュエルゾンビの様に戦いを求めるだけの存在になりかねない。それを避けるには何かしらの方法でギアスを無駄撃ちさせるしかないが、あまりにもリスクが大きいし、ルルーシュがそんなミスをするとは思えない。
 こうなれば人知れずルルーシュを抹殺するしかないが……ハッキリ言って実行出来るとは思えないし、ルルーシュの力は利用出来る事に変わりはないのでやるべきではない。

「どうしたらいいかな……」
 真面目な話、身動きの取れない状況だ。下手を打てばすぐにギアスをかけられる。慎重にならなければならない。
 だが既にデュエルアカデミアに来てから8時間だ。無駄に滞在しすぎたとは言わないが、もうそろそろ行動を起こさなければ不味い。
 しかし単独での行動は実質不可能に近いし、仮に出来たとしても強大な殺害者がいる以上良策とは言えない。グループで行動した方が良いのは明白だろう。
 グループとしての行動方針は纏まっている。ハイパーゼクターを使う為のベルトの入手、首輪を外す為の首輪の入手、その後解析が出来た施設へ移動し解析、そして仲間達との合流だ。
 グループとしてすべき事についてはこれで問題はない。しかしそれ以外にもグループとしては当然今いるメンバーを守る必要があるし、同時に敵対勢力の排除もあるのは明白だ。
 結論を言おう、たった5人のメンバーでそれだけの行動をとるにはすべき事が多すぎる。

13499% ◆7pf62HiyTE:2009/09/04(金) 16:03:10 ID:JQEGpP3U0
「なんとかグループ分けが出来ればいいけど……」
 レイが考えたのは今いるグループを2つに分ける事だ。すべき事が多いならデュエルアカデミア内部探索同様手分けして行えば良い。そうすれば出来る事も多くなる。
 しかもこのアイデアにはレイにとって別のメリットも存在する。
 それはレイ自身身動きを取りやすくするというものだ。前述の通りこの状況で単独行動はまずあり得ないだろうから2人と3人のグループを作る事になる。そうなると、警戒すべき相手は減るため今よりも動きやすくなる。
 だが、賛同してくれるかは微妙だ。まずスバルが反対する可能性が高い、スバルから見れば自分達3人は守るべき対象だからだ。
 また、ルルーシュの反応も問題だ。ルルーシュならばこの案のメリットを察するだろうが、逆に自分の狙いをも看破する危険性もありこれによりギアスをかけられる可能性もある。
 故に案を出す事については慎重になった方が良いだろう。

 続いて考える事はこれまでの情報の整理だ。まず挙げられるのは参加者が異なる時間軸及び並行世界から連れて来られているという事実だ。考えても見ればレイがこれまで出会った人物は皆異なる時間軸そして並行世界から連れて来られていた。
 最初に出会ったフェイトは10年以上前の時間軸から連れて来られ、
 アカデミアで出会ったスバルは自分の世界に来たスバルとは別の世界の彼女、
 こなたやルルーシュ、リインもスバルとは違う世界……それも皆がそれぞれ違う世界から連れて来られている。
 もしかしたら、アカデミアに向かう途中で出会いフェイトの足止めをさせた戦闘服を着た女性も自分及びスバル達とは別の世界の人だったかも知れない。
 この事実を踏まえれば恐らく参加者の殆どは異なる世界及び時間軸から連れて来られた可能性が非情に高い。
 なお、並行世界に関する情報についてはメンバー全員が認識しているが、時間軸に関して知っているのはレイだけでまだスバル達には話していない(だが、実はこのタイミングでルルーシュはそれを知ってしまったが……)。
 話を戻そう、ここで重要なのは1点だ。レイの仲間であるはずの十代、万丈目準、天上院明日香もまたレイとは違う時間軸もしくは並行世界から連れて来られている可能性があることだ。
 それから察するにもしかしたら十代達が自分を知らないという可能性があるという事だ。しかし……
「……でも十代様は十代様よね」
 レイにとっては大して違いは無いという結論に落ち着いた。どちらにしてもやるべき事に変わりは無いと判断した。
 次に考えるのは放送で話していた優勝者への御褒美の話だ。死者蘇生も出来ると話していたわけだが……
「まず無理よね」
 レイは死者蘇生の話を信じてはいなかった。
 アリサ蘇生に関してはデュエルモンスターズで使われるソリッドビジョンを使うなりすれば十分にそう見せかける事は可能だし、それでなくても異なる並行世界からそれぞれアリサを連れて来れば簡単に実行できる話だ。
 しかもだ、レイはフェイトから彼女の家庭環境を聞いている……その中にはプレシアとフェイトの関係も含まれている。フェイトがアリシアを失ったプレシアが生み出したクローンだという事実も……。
 つまりだ、プレシアはアリシアの復活を望んでいる事をレイは知っているのだ。仮にプレシアの目的がアリシア復活だとするならばそんな技術をこんな殺し合いで使わずにアリシア復活で使えば済む話だ。故に死者蘇生は嘘だと判断していた。
 大方、知り合いや友人達の死を知らされた参加者を殺し合いに乗せる為にそんな手の込んだ仕掛けを行ったのだろう。
「フェイト、大丈夫かな……?」
 ここで頭に浮かぶのはこの場で出会ったフェイトの事だ……既になのは、クロノ・ハラオウンと言った新しい家族や友人を失っている。彼女がなのは達の復活の為に殺し合いに乗ってしまう可能性は……
「いや、フェイトが殺し合いに乗ったりするはずはないよね……」
 だが、レイはそれを否定した。フェイトは殺し合いはしないと断言していたし、何より殺し合いに乗った参加者でさえも殺さないと言っていた。それ故にレイとの方針が一致しない為、2人は別れる羽目になったのだ。
 そんなフェイトが甘い言葉で殺し合いに乗るわけがない。レイはそう考えていた。

13599% ◆7pf62HiyTE:2009/09/04(金) 16:04:50 ID:JQEGpP3U0

 ―――そうして考えを纏めている内に時は過ぎていき
「そろそろ戻らないとルルーシュに怪しまれるかも……」
 と、レイが下に戻ろうとした時、

『6時間ぶりね。
 みんな、ちゃんと聞いているかしら。』

 2回目の放送が始まった。まず、禁止エリアが伝えられるが現状気にする必要はない。神社が禁止エリアになるものの遠く離れている為問題はない。
 そして続いて伝えられるのは死者の名前……五十音順にその名が呼ばれていく―――

『ギンガ・ナカジマ』

 スバルの姉が呼ばれた。下にいるであろうスバルは何を思っているのだろうか―――?

『ザフィーラ
 フェイト・T・ハラオウン』

 この時点で明日香の生存が確認出来たわけだが、それと同じくらい気になるのはフェイトの名前が呼ばれた事だ。
(このフェイト、どっちだろう……)
 この場にはフェイトが2人いる。レイが出会ったフェイトとそうでないフェイトだ。レイと出会った方ではない彼女の場合はデュエル・ゾンビになっている彼女である可能性があった為、不謹慎ながらも安堵は出来るわけだが……
 他にもリインの家族であるザフィーラが呼ばれた事も気にかかっていたが放送はまだ続く―――

『ブレンヒルト・シルト
 武蔵坊弁慶』

 この時点で万丈目の生存が確認される。正直デュエル・ゾンビとなっている可能性がある為不安はある物の、無事だったのが嬉しくないわけがない―――

『八神はやて』

 なのは達の友人にしてリインの家族。彼女も2人いる為、どちらかはわからないがやはりリイン達は悲―――





『遊城十代』





「……え……?」





 今、何て言ったのだろうか? 一番呼ばれてはならない人物の名前では無かったのだろうか? レイは自らの耳を疑った。しかし無情にも放送は流れ続けていった―――





「一体……誰が……を……」

13699% ◆7pf62HiyTE:2009/09/04(金) 16:13:32 ID:JQEGpP3U0





そして、放送が終わり、そこには腰を落とした少女の姿があった―――





「十代様……」
 レイの目からは涙が溢れていた。守るべき対象であった十代が死んだという起こってはならない事が起こってしまったからだ。
 いや、真面目な話あり得ない話ではなかった。なのは達といった強者も死亡する状況なのだ、十代が生き残れる道理など全く無い。
 自分がもう少し上手くやればよかったのか? いや、確かにルルーシュ達に捕まったのは手痛いミスだったかもしれない。それでも周囲に危険人物がひしめく状況であった事を考えるとそれ程悪いとは言えないだろう。
 どちらにしても確実な事がある。最早、十代を守る為に戦うという事には意味がない。既にその十代はいないのだから。
「そんなのはイヤァァァァァァァ……」
 だが、それを認められるレイではない。何とかして十代を取り戻したいと思うのは当然だ。
 今まで友人や家族が呼ばれた人の気持ちを理解していたつもりになっていた。だが、本当は全く理解などしていなかったのだ。本当に大切な人を失ったならばそのショックは並大抵の物ではない。





 そう、プレシアが言った死者蘇生の言葉に釣られて優勝を目指し殺し合いに乗る人間の気持ちがよくわかる……これならばフェイトは殺し合いに乗る。今死んだ者の中にはフェイトによって殺された参加者がいても不思議ではない。
 どちらにしても十代を取り戻すにはもはや優勝して生き返らせるしか手段はない―――





 ―――だが、果たして本当にそれが可能なのだろうか?





 考えてもみて欲しい、前述の通りレイ単独ではまず不可能なのは自身がよくわかっているから考えるまでもない。また、グループを組んで行動した所で最終的にはその仲間達……スバル達を殺さなければならない。
 そもそも、幾ら十代を生き返らせる為とは言えスバル達やこなた達まで殺すという事には抵抗がある。いや、十代を取り戻す為ならば実行しても良い。だが、実行しようとしたところでスバルやルルーシュに無力化されるのがオチだ。
 それ以前に、プレシアの言葉が真実であるという保証など全く無い。大体、死者蘇生が嘘だと判断したばかりではないか。
 いや、仮に可能だとしてもだ、プレシアがわざわざ願いを叶えてくれるだろうか? 考えてもみて欲しい、自分の娘ですら平気で殺し合いに放り込む様な外道が此方の願いを叶えるという殊勝な事などするだろうか? 裏切る可能性の方が高いだろう。
 そう……レイが最後の1人になる可能性は限りなく低く、同時に優勝しても願い事を叶える可能性もまた低い、十代をこの手に取り戻す可能性など99%無いと言っても良いぐらいだろう。
「どうして十代様が死ななきゃならないのぉぉぉ……」
 そもそもの話、あまりにも理不尽な話だ。何故十代がこの殺し合いに巻き込まなければならないのだ? 巻き込む人なら他にも幾らでもいるだろうが。十代は只のデュエリストでしかないはずだ。巻き込まれなければならない理由は無いはずだ。
 大体、プレシアは様々な時間軸や並行世界から参加者を連れてきているのだろう、だったら他の世界から連れてくれば事足りる話だ。何故わざわざ自分や十代のいる世界から―――

13799% ◆7pf62HiyTE:2009/09/04(金) 16:17:33 ID:JQEGpP3U0





「待って……」





 ここで、レイはある可能性に気が付いた。それはあまりにも都合が良すぎる考えだというのは重々承知している。しかしだ、可能性はある……というよりは99%わからない話だ―――
「もし……と十代様が違う世界から……違う時間から連れて来られているとしたら……?」
 仮にレイと十代が違う世界もしくは違う時間軸から連れて来られているとしよう。この場合どうなるだろう?
 ややこしい説明をする前に先に結論を述べようか、レイ自身がいた世界に戻れば変わらず十代がいる可能性が高いと見ていいだろう。
 違う世界から連れて来られている場合……これはあまりにもわかりやすい、違う世界から連れて来られているならばそもそもレイのいた世界の十代は連れて来られていないのだから当然戻れば何事もなく十代がそこにいる。
 さて、違う時間軸の場合だ……これは2つの可能性があり得るだろう。十代の方が過去の場合とレイの方が過去の場合だ。
 十代の方が過去の場合だとするならば……レイが記憶する限り、レイがこの殺し合いに巻き込まれる前まで十代が行方不明になったという事は無かった。だとしたら最早十代がいた時間軸と自身のいた時間軸はパラレルワールドになっている可能性がある。
 つまり、この場合でも元の世界に戻れば十代がそこにいることになる。極端な事を言えば時間軸が変わっても並行世界と同じ扱いといえるという事だ。
 とはいえ、レイの方が過去の場合だとそうなっているとは言い切れない。仮にレイが生き残って元の世界に戻っているなら死んだ十代が元の世界に戻ったレイからこの殺し合いの話を聞いていたという可能性がある。
 この場合だと、仮に元の世界に戻って十代と再会出来ても後に十代が行方不明になって帰らぬ人になる可能性がある。だが、もしかしたらパラレルワールドになっているという可能性もある。
 纏めよう、絶対とは言い切れないものの元の世界に戻りさえすれば再び十代に出会える可能性があるという事だ。

 この仮説はあくまでも可能性レベルの話だ。虫の良い話なのはわかっている。だが、皆殺しにして願いを叶えるのに比較した所で大した違いなど無いだろう。
 その可能性に気が付いた瞬間、レイに思考が急速に戻ってくる……いや、以前よりも冷静になってきている。可能性が見えてきたのだ、只泣いている事に意味などは無い。レイは考える……これからどうするべきかを……。
 結論自体は単純だ、レイ自身が生き残り元の世界に帰れば良い話だ。勿論、最後の1人になるかプレシアを打ち倒すかはこの際問わない。
 とはいえ現状ではプレシアを打ち倒す方向で良いだろう。最後の1人になるよりは現状可能性は高いし、警戒されてはいるものの丁度今はスバル達のグループにいる、悪い状況ではない。
 真面目な話、十代を死なせた元凶であるプレシアに従いたくはないという理由もあるにはある。もっとも、状況次第では優勝狙いに切り替えざるを得ないかもしれないが今はまだその時ではない。
 それを見極めるのに必要なのは情報だ。それは十代が自分と同じ世界及び時間軸から連れて来られているかの情報だ。それを確かめなければ今後のレイの行動が徒労に終わる可能性がある。何しろ十代のいない世界に戻った所で意味など無いのだから。
 では仮に最悪の事態……レイと十代が同じ世界かつ同じ時間軸から連れて来られた事が判明したらどうすればいいだろうか? この場合はプレシアの言葉に従う以外の選択は無いのか?
 だが、冷静さを取り戻したレイは別の考える。プレシアに従う事も嫌だったし、何か別の方法があるはずだと……そして考えた。仮に人を復活させる手段があるのであればその手段をプレシアから奪えばいいのだと。
 それならばプレシアの言葉に従って殺し合いをする必要も無くなるし、十代も取り戻す事が出来る。困難な道なのは承知しているが、レイが取れる手段としては最善と言っても良い。
 勿論……前述の通り優勝狙いに切り替えざるを得ない可能性はある。だが、あくまでもそれは最終手段だ。99%わからない以上今はまだその時ではない、本当に他に手段が無いと判断したその時までは―――

13899% ◆7pf62HiyTE:2009/09/04(金) 16:18:58 ID:JQEGpP3U0



 さてここまで読んで頂いた方の中には十代が死んだ事を伝えられたレイが優勝狙いに切り替えなかった事を意外に思っている人も多いだろう。
 実の所、レイが出会ったフェイトはなのは達を生き返らせる為に殺し合いに乗っているし、同じ事を考えている参加者は他にもいる。
 しかし、フェイト達とレイには決定的な違いがある。それは参加者が違う世界から連れて来られている事を知っているかの違いだ。
 真面目な話、生き返らせようとするのは元の世界に戻ってもその対象がいないからでしかない。だが、元の世界に戻っても変わらずその対象が無事でいるならば……生き返らせる意味合いは大分薄まるのは当然の理と言えよう。
 勿論、不幸にも同じ世界から連れて来られている可能性は否定出来ない。だが、必ずしも言い切れない話だ。生きている可能性があるならばその可能性を懸けたり信じたりするのは当然の事だろう。本質的には優勝して願いを叶える事との差は殆ど無い。



 閑話休題、レイはそろそろルルーシュの所に戻ろうと考えた。とりあえず最優先ですべき事は報告だ。十代がいなくなった以上は焦る必要は無い。ルルーシュ達に対しても全面的に協力しても良いだろう。
 更に言えば、殺し合いに乗った参加者をスバル達と衝突してまで無理に殺す必要も無い。十代が殺されるという心配が無い以上、スバル達と対立してまでそれを行うメリットなど無いのだから。勿論、必要ならば殺しても構わないわけだが。
 但し―――ある人物だけは絶対にこの場で殺すとレイは考えていた。


「十代様を殺した奴だけは……」


 そう、十代を殺した人物だけはその理由が何であれ殺すつもりでいた。もしかしたら事故だったのかも知れないし、後で生き返らせるつもりで殺したのかも知れない。
 だが、そんな理由などレイにとってはどうだって良い。十代を殺した事を正当化してのうのうと生きている事など決して許されない。
 例え死んだ十代がレイと違う世界の十代であっても、十代が十代である事に変わりは無いし、十代がいた世界の自分がどれだけ辛いのかを考えれば決して許せるものではない。
 故にレイは十代が別の世界の十代であっても彼を殺した相手は絶対に殺すと考えていた。
 誰が殺したのかが不明という問題はあるが、それについては確実ではないものの方法はある。先程放送で述べていた御褒美の話だ。それを利用すれば十代を殺した人物を教えてもらえるのではないのだろうか?
 実の所、レイは十代の死を伝えられた時こう口走っていた。

『一体……誰が十代様を……?』

 仮にそれがプレシアの耳に届いているならば検討してもらえる可能性はある。正直プレシアの狙いに乗るのは癪だが、十代を殺した奴を殺す為ならばその言葉に乗るのも致し方ない。
 勿論、誰か殺さないとその情報を得る事は出来ないが、ルルーシュと同行していれば殺し合いに乗った参加者を殺す機会は訪れるし、自分じゃなくてもルルーシュがその御褒美をもらえるならばルルーシュに頼んで利用させてもらう事だって出来るので問題はない。
 とは言え、この案が採用されるかは不明だ。しかし、仮にその手段が使えなくても意地でも十代を殺した相手を見つけ出し殺すつもりである。
 間違いなくスバル達はそれを止めようとするだろう。しかしこれに関してだけは譲るつもりはない。手持ちのカード……『レッド・デーモンズ・ドラゴン』を使ってでも必ず成し遂げるつもりだ。その結果がどのようなものになっても―――

13999% ◆7pf62HiyTE:2009/09/04(金) 16:22:25 ID:JQEGpP3U0



 ところで……話は脱線するが、レイの行動次第では十代の死を避ける事が出来た可能性がある事に気が付いているだろうか?
 レイがデュエルアカデミアに向かう背後で十代が北へ向けて走っていたから遭遇出来た可能性があった……という事を語るつもりはない。もっと別の話だ。
 細かい説明は省くが、十代の死には殺し合いに乗ったフェイトが関わっている。そう、レイと遭遇したフェイトだ……
 つまり……フェイトが殺し合いに乗るのを止める事が出来れば十代の死を避ける事が出来た可能性があるという事だ。
 だが、そんな事が可能なのか? 可能性はある。レイはデュエルアカデミアに向かう途中新庄・運切と出会っている。彼女もまたレイやフェイトとは違う世界から連れて来られている。
 そう、3人が合流し落ち着いて冷静に話し合えば参加者が違う世界及び時間軸から連れて来られている事実をフェイトが知る可能性があった。
 そして、フェイトがこの事実を知った上でなのはの死を知ったとしても……別の世界のなのはのかもしれないと考える可能性があるのだ。それならば殺し合いに乗らない可能性がある。そしてフェイトが殺し合いに乗らなければ十代が死ぬ事は無かったという事だ。
 勿論、知ったとしてもフェイトが殺し合いに乗る可能性はある。だが、乗らない可能性もあった。
 つまりだ……レイは十代を守らなければならないという焦りからフェイトと別れ単独でデュエルアカデミアに向かった事が十代の死に関わってしまったという事だ。
 『レイが十代を殺した』と断じるつもりはないが、レイの行動が十代の死に繋がった可能性がある……
 当然の事だがそんな事実など当事者達は気付いていないし、主催者側でさえもまず気付いていないだろう……この事はあくまでもレイ達の行動を分析した上でわかる話なのだから。主催者側にそんな事をする趣味など全く無いだろう。



 レイが下に戻る為立ち上がる。そしてふと窓を見る。そこには市街地の変わらぬ街並みが―――
「え……?」



   ★   ★   ★   ★   ★



 では、冒頭場面に話を戻そう。
 こなた達は窓の外で煙が上がっているのを見たのだ。
 地図を確認した所方角から見てレストランのある辺りだ、そこで何が起こっているのかは不明だが確実に言える事はそこには誰かがいるという事だ。もしかしたらかがみ達やヴィータ達の可能性はある。ルルーシュ達に伝えるべきなのは言うまでもない。
 そして大急ぎで下に戻ろうとしたら同じように下へ戻ろうとしているレイと鉢合わせになったのだ。
 放送で十代の名前が呼ばれた以上、レイが受けたショックは計り知れない。殺し合いに乗った可能性だってある。故にこなたとリインはレイを気遣いたい一方警戒をしていたのだ。
 しかし、こなた達の真意を察してか察せずかは不明だがレイの返答は予想外のものであった。
「ああ、ボクなら大丈夫だから。それより早く戻らないと……外で煙が……」
「レイも見たですか! 早くスバル達に伝えないと!」
 と、再び足を進める。そう、レイも外の煙を見ていたのだ。そこには殺し合いに乗った参加者……もしかしたら十代を殺した奴がいるかも知れない。レイ自身がそこに向かうのかはともかく無視出来るわけがない。
 思惑はどうあれ3人のすべき事は一致している。故に3人は走る、下で待つルルーシュの所へ……

 その一方、こなたはある事が気になった。
(レイってボクッ娘だったっけ……?)
 そう、レイの一人称が『ボク』になっていたのだ。いや、そもそもレイの一人称は基本的には『ボク』だった。だが、恋する乙女であるレイはその相手……十代の前では『私』と意図的に変えていたのだ。
 しかし、十代の死の影響がそこにはあったのだ。無意識の内に戻したのか、意識的に戻したのかは不明ではあるが。
 とはいえそれは些細な問題だ。些細な問題であるが故、はやて達の死のショックから抜け切れていないリインは気付かなかったし、今その事を話している余裕はない。
 だからこそ、こなたはその事については今は気にしない事にした。しかし、そんなレイの姿を見て何故か不安な気持ちが強まるのを止める事など出来なかった。

14099% ◆7pf62HiyTE:2009/09/04(金) 16:24:03 ID:JQEGpP3U0



【1日目 日中】
【現在地 G-7 デュエルアカデミア】
【泉こなた@なの☆すた】
【状態】健康、ギアス
【装備】なし
【道具】支給品一式、投げナイフ(9/10)@リリカル・パニック、バスターブレイダー@リリカル遊戯王GX、
    リインフォースⅡ@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS
【思考】
 基本 かがみん達と共に家族の元に帰る為、自分の出来る事をする
 0.ギアスによる命令:自分の一人称を『ボク』に変えろ
 1.下で待つルルーシュに外の煙や調査結果について報告
 2.自分にかけられたギアスの持続時間を計測する
 3.リイン、レイ、スバルが心配。
 4.アーカード(名前は知らない)を警戒
 5.後でフェイトとプレシアの関係を確認してみる
 6.かがみん達……大丈夫だよね?
 7.おばさん(プレシア)……現実とゲームを一緒にしないで
【備考】
 ・参加者に関するこなたのオタク知識が消されています。ただし何らかのきっかけで思い出すかもしれません
  なお、オタク知識については思い出してはいないものの消されているという事実には気が付きました
  しかしそれをスバル達に話すつもりはありません
 ・パラレルワールドの可能性に行き当たり、かがみ達が自分を知らない可能性に気が付きましたが、
  彼女達も変わらない友達だと考える事にしました
 ・参加者達が異なる時間軸から呼び出されている可能性に気付いていません
 ・ルルーシュの世界に関する情報を知りました
 ・この場所には様々なアニメやマンガ等に出てくる様な世界の人物や物が集まっていると考えています。
 ・ギアスの持続時間は後続の書き手さんにお任せします
 ・「月村すずかの友人」からのメールを読みました。送り主はフェイトかはやてのどちらかだと思っています
 ・地図に載っていない施設が存在する可能性があると考えています
 ・PT事件の概要(フェイトとプレシアの関係は除く)をリインから聞きました
 ・自分に割り振られた調査エリアを調べ終えました。何かを見つけたか否かは、後続の書き手さんにお任せします
【リインフォースⅡ思考】
 基本 スバル達と協力し、この殺し合いから脱出する
 1.はやて(StS)や他の世界の守護騎士達と合流したい
 2.下で待つルルーシュに外の煙や調査結果について報告
 3.こなたにかけられたギアスの持続時間を計測する
 4.こなたと話した他の施設や隠し施設の事をルルーシュに話してみる
 5.はやて(StS)やヴィータ、シャマルが心配。殺し合いに乗っているならそれを止める
 ※スバル達が自分とは違う世界から来ていることに気付きました
 ※リインフォースⅡの参戦時期は第四話ではやてと会話する前(つまり眠っている間)です。制限は次の書き手にお任せします

14199% ◆7pf62HiyTE:2009/09/04(金) 16:25:13 ID:JQEGpP3U0

【早乙女レイ@リリカル遊戯王GX】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式×2、『フリーズベント』@リリカル龍騎、『光の護封剣』@リリカル遊戯王GX、
    『レッド・デーモンズ・ドラゴン』@遊戯王5D's ―LYRICAL KING―、
    リインフォースⅡのお出かけバッグ@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS、情報交換のまとめメモ
【思考】
 基本:十代のいる世界に戻る
 1.下で待つルルーシュに外の煙や調査結果について報告、グループ分けのアイデアを伝えるかは状況次第
 2.情報を集める、特に十代がどの世界及び時間軸から連れて来られたかと死者蘇生が可能かどうかを確かめたい。死者蘇生が可能ならその技術を手に入れたい
 3.各施設を回りカードとデュエルディスクを手に入れる。できればチューナーを手に入れたい
 4.ルルーシュとは共闘、但し警戒(特にギアス)は怠らない
 5.十代を殺した者については絶対に殺害する。スバル達に反対されても譲るつもりは全くない
 6.十代を殺した者を知りたい、その為ならば御褒美を利用する事も視野に入れる
 7.殺し合いに乗った者を殺害する事については現状スバル達と対立してまで行うつもりはない
 8.レッド・デーモンズ・ドラゴン……使えるかな?
 9.最悪の場合は優勝を狙う事も視野に入れておく
 10.フェイト(StS)、万丈目を強く警戒
【備考】
 ・リリカル遊戯王GX10話から参戦です
 ・フェイト(A's)が過去から来たフェイトだと思っています
 ・フェイト(StS)、万丈目がデュエルゾンビになっていると思っています
  スバル達には、「自分の世界のフェイトは、敵に洗脳されているかもしれない」と説明しました
 ・ここではカードはデュエルディスクなしで効果が発動すると知りました
 ・デュエルデュスクを使えばカードの効果をより引き出せると思っています
 ・カードとデュエルディスクは支給品以外にも各施設に置かれていて、それを巡って殺し合いが起こると考えています
 ・デュエルアカデミアの3分の2を調べました、どの場所を調べたかについては次の書き手さんにお任せします
 ・レッド・デーモンズ・ドラゴンが未来の世界のカードだと考えています
 ・シンクロ召喚の方法がわかっていません、
  チューナーとチューナー以外のモンスターが必要という事は把握済みですがレベルの事はわかっていません
 ・正しい召喚手順を踏まなければレッド・デーモンズ・ドラゴンを召喚出来ないかどうかは不明です
 ・ギアスの能力を知ったことで、ルルーシュに逆らうことができるかどうかと、若干の不安を抱えています
 ・「月村すずかの友人」からのメールを読みました。送り主はフェイトかはやてのどちらかだと思っています
 ・参加者が異なる並行世界及び時間軸から連れて来られている事を把握しており、十代達もその可能性があると考えています。その場合、元の世界に戻れば十代に再び会えると考えています
 ・死者蘇生については半信半疑ですが、可能性は捨てていません
 ・御褒美については十代を殺した相手を知りたいと考えています
 ・自分に割り振られた調査エリアを調べ終えました。何かを見つけたか否かは、後続の書き手さんにお任せします

142 ◆7pf62HiyTE:2009/09/04(金) 16:27:24 ID:JQEGpP3U0
投下完了しました。見ての通り今回前後編となっています。
>>125>>132がこなたパートである前編『らっきーえむぶれむ星戦の系譜』(23KB)で、>>133>>141がレイパートである後編『99%』(26KB)です。
サブタイトルの元ネタは『らっきーえむぶれむ星戦の系譜』の方が『ファイヤーエムブレム聖戦の系譜』で『99%』の方は遊戯王デュエルモンスターズGXのOP『99%』です。
何か問題点や疑問点等があれば指摘の方お願いします。

143リリカル名無し:2009/09/04(金) 23:34:02 ID:Xs5iOUJs0
投下乙です
こなたはゲーム経験生かす方向か、案外うまくいったりしてw
一方のレイはこのままならドロドロの展開行きかねない、どうするw

144リリカル名無し:2009/09/07(月) 10:45:48 ID:sGGbsp5Q0
投下乙です
こなたが以外と活躍してるのか? 面白いな
レイはもうダメかもしれないなw

145 ◆9L.gxDzakI:2009/09/09(水) 15:43:47 ID:uzXu2pBM0
アーカード分を投下します。

146しにがみのエレジー。〜名もなき哀のうた〜 ◆9L.gxDzakI:2009/09/09(水) 15:44:50 ID:uzXu2pBM0
 広大な学校のグラウンドに、1つ佇む影がある。
 赤い影はアーカード。真祖の吸血鬼たるアーカード。
 長身のコートの裾をたなびかせる、真紅の人影が佇んでいる。
 眼下に倒れ伏すは主君の遺体。少し視界を傾ければ、数時間前に屠った恐竜の死骸。
 されど血吸う鬼の魔眼は、遥か上空を眺めていた。
 したたる鮮血のごとき双眸が、ぼんやりと陽光へ向けられていた。
 太陽。
 夜の一族(ミディアン)と称される吸血鬼にとって、最も忌むべき凶悪な天敵。
 アーカードほどの吸血鬼でなければ、即座に焼き殺されるであろう煉獄の業火。
 されど不死なる王の視線は、その太陽にも向けられてはおらず。
 されど不死なる王の視線は、その先の魔女の声へと傾けられる。
 思い返すのは先の放送だ。
 首輪から流れる声を聞いた時、ふと6時間前のことを思い出した。
 そういえば、最初の放送を聞いていなかったと。
 かのアレクサンド・アンデルセンとの闘争に没頭し、最初の放送を聞き逃していたと。
 不思議と、あの神父のことを思い出していた。
 何かを暗示するかのように。
 真実、それは暗示であった。

 ――アレクサンド・アンデルセン。

 それが真っ先に呼ばれた死者の名だ。
 新たに死亡した9人の参加者のうち、一番最初に呼ばれた名だ。
「逝ったか、神父」
 ぽつり、と呟く。
「お前も私を置いて逝ってしまうのか」
 アンデルセンは死んだ。
 ヴァチカン特務13課・イスカリオテが誇る、最強の化物掃除屋が。
 あの死と破壊をもたらす砲弾に引き裂かれ、互いに離れ離れとなった後に。
 自分の預かり知らぬままに、何者かの手によって殺された。
 否、あるいはあの瞬間、既に命はなかったのかもしれない。
 激烈な猛威を振るう光球に飲み込まれ、塵一つ残ることなく消え去ったのかもしれない。
「無様な、ものだぞ……」
 声が震える。
 僅かに揺らぐ。
 握り締めた右の拳が。
 左手に掴んだパニッシャーが。
 かたかたと微かな音を立て、アーカードの全身が揺れ動く。
 その手を、その肩を、その身体を震わせるものは。
 誇り高き不死王(ノスフェラトゥ)をも駆り立てる、抑えきれぬ激情の正体は――
「……巫山戯るなよ、アンデルセンッ!」
 遂に吸血鬼は絶叫した。
 白き十字架の先端を、グラウンドの大地に叩きつけた。
 極大の憤怒をその声に滲ませ、極大の憤怒にその顔を歪ませ。
 堰を切ったかのように、己が激情を爆発させて。
 怒れる吸血鬼アーカードの叫びが、びりびりと大気をも振動させた。

147しにがみのエレジー。〜名もなき哀のうた〜 ◆9L.gxDzakI:2009/09/09(水) 15:45:29 ID:uzXu2pBM0
「貴様それでも殺し屋か! 貴様それでもイスカリオテが鬼札(ジョーカー)か!」
 アレクサンド・アンデルセン。
 史上最強のユダの司祭(ジューダス・プリースト)。
 HELLSINGが掃除屋として新生して以来、最も興味をそそられた男。
 化物じみた再生能力を持ちながら、何者よりも化物を否定した、確実に人間であった男。
 最も頑強なる人間であり。
 最も容赦なき人間であり。
 最も狂おしき人間であり。
 最も誇り高き人間であり。
 最も好ましき人間であった。
 こいつにならば殺されてもいい、などと生ぬるいものではなく。
 こいつ以外に殺せる者はいない、と思わせるほどの男であった。
 幾度となく刃を交えた最強の宿敵。
 夢の幕引きにふさわしい最高の好敵手。
「このおれをくびり殺すのではなかったのか!
 それがどこの誰とも知れぬ輩に、糞のように殺されたとでもいうのか! 恥を知れ! 恥を知れ!! 恥を知れ!!!」
 そのアンデルセンはもういない。
 史上最強の宿敵は死んだ。
 史上最高の好敵手は死んだ。
 神の代理人であったはずのあの男が。
 神罰の地上代行者であったはずのあの男が。
 故にどこまでも神ではなく、故に果てしなく人間であったあの男が。
 絶滅させるべき異端共の巣窟の中、逆に何者とも知れぬ輩に絶滅させられた。
 無様なものだ。
 止め処ない怒りがこみ上げてくる。
「殺ったのは誰だ! おれから奴を奪い去ったのは何者だ! 狗か!? 人か!? 化物か!?」
 否。
 その憤怒はアンデルセンに向けられたものではなかった。
 その灼熱の怒りの矛先は、名も顔も声も知らぬ何者かであった。
 狗が囲って嬲り殺したか。
 人が知恵を使って謀殺したか。
 化物が力にものを言わせて捻り殺したか。
 許せない。
 たとえ誰であろうとも。
 矜持もなくただ群れるだけの狗。
 力及ばず姑息な手を弄した人間。
 無力に耐えられなかった化物。
 そのいずれにも、アンデルセンを譲ってやる気などなかったというのに。
 なんと狂おしき怒りの形相。
 なんと狂おしき悲しみの形相。
 加害者に抱くものこそが怒りならば、被害者に抱くものはすなわち悲しみ。
 もう二度と奴とは戦えない。
 もう二度と奴に期待はできない。
 最も期待すべき人間には、もはや何一つ期待することは許されない。
 最愛の恋人にも等しき。
 最高の親友にも等しき。
 最強の宿敵との永別。
 最低の形での永別。
 手を伸ばした先にあったかもしれない死を失い。
 永遠の生の牢獄に、また、独り。
「………」
 怒りが、悲しみが。
 静かになりを潜めていく。
 独り全てをぶちまけた吸血鬼が、その顔に平静を取り戻していく。
 くっ、と。
 首を傾けた。
 足元で眠る女性へと、己が真紅の視線を向けた。
 主君インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング。
 この6時間で命を落としたもう1人の人間。
 最期の瞬間に再会し、最期の命令(オーダー)を残して逝った女だ。
 その言葉には逆らえない。
 その言葉になら従える。
 500年前のエイブラハム・ヴァン・ヘルシングの血を引くに相応しき、この女の言葉にならば従ってもいい。

 ――見敵必殺(サーチアンドデストロイ)だ! 我々の邪魔をするあらゆる勢力は叩いて潰せ! そして、あのプレシアを……

 それが最後に下された命令だ。

148しにがみのエレジー。〜名もなき哀のうた〜 ◆9L.gxDzakI:2009/09/09(水) 15:46:56 ID:uzXu2pBM0
 全ての邪魔者を殲滅せよ、と。
 であればこの状況において、我らHELLSINGの邪魔者とは一体何だ。
 何がHELLSINGの邪魔になる。いかなる目的の邪魔となる。
「やはり、プレシア・テスタロッサか」
 それが殺人(マーダー)のターゲットだ。
 国教騎士団HELLSINGの目的とは、かのナチスの残党共の殲滅。
 狂った少佐に率いられた、あの恐るべき大馬鹿共達に、今度こそ敗北と絶滅を叩きつけること。
 女王直々に突きつけられた任務だ。
 その最大の障害は、言うまでもなくあの黒髪の魔女だ。
 奴を叩き潰さねばならない。
 あの女をこの手でくびり殺し、速やかに元の世界へと帰還せねばならない。
 最後に言いかけた言葉からも、あのプレシア・テスタロッサが最大の標的であることは、論ずるまでもない事実だ。
 ならば、どうする。
 どうすれば魔女の根城へとたどり着ける。
 この箱庭にそれらしき場所はどこにもない。であれば、外に出なければならない。
 そのためには――
「……首輪を外してみるか?」
 す、と。
 白い手袋の指先で、鉄の首輪の表面をなぞった。
 全ての根源はこの首輪だ。
 この首輪をつけた時からおかしくなった。
 首輪をつけた時から命を握られ、首輪をつけた時から力が衰えた。
 放送もこの首輪から聞こえてきたものだ。
 であればこの首輪こそが、奴が自分達参加者を管理するための端末。
 それが外れたならばどうなる。
 自分達の管理下にない者が生まれたらどうする。
 処分するしかない。
 迅速に始末するために人手を割くしかない。
 いかに魔法技術を持っているといえど、これほど大掛かりなゲームを1人で管理することは不可能なはずだ。
 であれば、奴には必ず手を出す余裕がある。
 ルーク・バレンタインやトバルカイン・アルハンブラのような。
 多かれ少なかれ必ず下僕を用意していて、それを自分の元へと送り込んでくる。
 そしてそれらを呼び寄せれば、それらがこの箱庭へ飛んでくる手段が明らかになるはずだ。
 その手段を利用すれば、逆にこの箱庭から飛び出すことも可能になるはずだ。
 仮にそうでなかったとしても、こんなものに命を握られていては、さしものアーカードも太刀打ちできない。
 ここに目的は決定した。
 首輪を外す。
 そしてプレシアの元へたどり着き、かの魔女を打倒する。
 目的地は工場でいいだろう。道中、機械に詳しい者を探してもいいかもしれない。
 どちらにせよ、ここから工場まではそれなりに遠い。残念だが、闘争に興じている時間はない。
「いや」
 ふ、と。
 不意に浮かぶ、笑み。
 必ずしも闘争が望めないというわけではない。
 避けなければならない戦いとは、自分から敵に突っ込んでいくという戦いだ。
 敵から自分に突っ込んできた戦いなら、避けてならぬという道理はない。
 我々の邪魔をするあらゆる勢力は叩いて潰せ――インテグラからの命令にも合致する。
 幸いにも、自分は既に多くの人間に恨まれた。
 それらと顔を合わせれば、確実に向かってくることだろう。ならば、全く闘争が楽しめないというわけではない。

149しにがみのエレジー。〜名もなき哀のうた〜 ◆9L.gxDzakI:2009/09/09(水) 15:47:54 ID:uzXu2pBM0
「喜ぶがいい、セフィロス。どうやらまだ、お前には構ってやれそうだ」
 あの男へと呼びかけた。
 漆黒のコートを身に纏い、銀色の長髪をたなびかせる麗人へと。
 暗黒の片翼をはためかせ、薔薇の魔剣を振るう化物へと。
 自分に敵意を抱いている、数多の者共の最強の1人へと。
「存分に妨害をしてみせろ。熱烈に立ちはだかってみせろ。
 お前が全身全霊をかけて邪魔をするならば、私も全身全霊をかけて、正当防衛を行使してみせよう」
 もはやあの男だけだ。
 仇敵と呼べるのはセフィロスだけだ。
 最も倣岸な無礼者。
 最も不遜な挑戦者。
 これまで相対してきた化物の中でも、とびきりに面白いと思える男。
 アンデルセンが最高の人間なら、セフィロスは最高の化物だ。
 殺し合いに乗ったあの男は、間違いなく自分の邪魔者たり得る。
 故に顔を合わせれば、今度こそ決着をつけることができる。
「待っているぞ」
 あの男こそは自分の獲物だ。
 自分だけに殺す権利があるのだ。
 今度こそ――誰にも渡してなるものか。
 ざく、と。
 グラウンドの地面を踏む。
 大地を踏み締め吸血鬼は進む。
 新たに課せられた命令(オーダー)の下に。
 最後に課せられた命令(オーダー)の下に。

 ――俺はいく。お前はいつまで生きるのだ。哀れなお前は、一体いつまで生きねばならぬ?

「膨大な私の過去を、膨大な私の未来が粉砕するまでだ」
 耳に聞こえた気がした声に、微かに笑みを浮かべて応じた。
「なに、直ぐだ。宿敵よ――いずれ地獄で」
 そう呟く吸血鬼の微笑は、どこか寂しげな色を宿しているようでもあった。


【1日目 日中】

【現在地 D-4 学校の校庭】
【アーカード@NANOSING】
【状況】健康、昂ぶり、アンデルセンの死への悼み、セフィロスへの対抗心
【装備】パニッシャー(砲弾残弾70%/ロケットランチャー残弾60%)@リリカルニコラス
【道具】支給品一式、拡声器@現実、首輪(アグモン)、ヘルメスドライブの説明書
【思考】
 基本:インテグラの命令(オーダー)に従い、プレシアを打倒する。
 1.プレシアの下僕を誘き寄せるために、工場に向かい首輪を解除する。
 2.積極的に殺し合いに乗っている暇はないが、向かってくる敵には容赦しない。
 3.工場へ向かう道中で、首輪を解除できる技術を持った参加者を探してみる?
 4.セフィロスは自分の手で殺す。アンデルセンを殺した奴も殺す。
【備考】
※スバルやヴィータが自分の知る二人とは別人である事に気付きました。
※パニッシャーは憑神刀(マハ)を持ったセフィロスのような相当な強者にしか使用するつもりはありません。
※第1回放送を聞き逃しました。
※ヘルメスドライブに関する情報を把握しました。
※セフィロスを自分とほぼ同列の化物と認識しました。
※今回のゲームはプレシア単独で実行されたものではなく、共犯者ないし部下が協力していると考えています。
 また、首輪が解除された場合の主催者の対処法が、「刺客を送り込んで強制的に排除させる」というものだと考えています。

150しにがみのエレジー。〜名もなき哀のうた〜 ◆9L.gxDzakI:2009/09/09(水) 15:49:25 ID:uzXu2pBM0
投下終了。
タイトルの元ネタは、「しにがみのバラッド。」と「BALLAD 名もなき恋のうた」です。

元々サブ主人公だった又兵衛をメイン主役に持ってきて、本当にちゃんとバランス取れてるのでしょうか

151リリカル名無し:2009/09/09(水) 21:56:13 ID:ov3yMDqc0
投下乙です。

対主催アーカード誕生!
良かった良かった、インテグラの最期の命令がほぼ狙い取りに届いて。
しかもアーカードの殺害対象が全員マーダーなのも色々都合がよい
(セフィロス、アンデルセンを奇襲で仕留めたルーテシア、そしてアンデルセンと最後に戦ったアンジールはマーダーなので)

……でもなぁ、アーカードってやって来た事がやって来た事だから対主催からも恨まれもしくは警戒されているんだよなぁ……(しかもアーカード本人的には幸いと思っている辺りタチが悪い)
とりあえず共闘出来そうな対主催グループは無い事も無いだろうけど……なんかあんまり状況好転していない様な気が……いや、好転はしている……ハズだよな?

バランスに関しては……どうでしょう?(映画見る予定ないしなぁ……)

152リリカル名無し:2009/09/10(木) 09:52:04 ID:KYHJqwV60
投下乙です。
ほう、アーカードはこういう方向できたか(つうかアーカード首輪外せるだけの技術あったかな)
でも相変わらず危険人物には違いないな(参加者全員殺したほうが早くプレシアに会えそうな気がするのは秘密だw)

153 ◆7pf62HiyTE:2009/09/13(日) 17:51:01 ID:4x.uDbTE0
万丈目準、ゼスト・グランガイツ分を投下します。

154太陽 ◆7pf62HiyTE:2009/09/13(日) 17:52:16 ID:4x.uDbTE0
 2度目の放送が終わった―――
 新たな禁止エリア3つ、新たな死者の名前等がプレシア・テスタロッサによって伝えられた―――
 ゼスト・グランガイツは何を思うか―――

 禁止エリア―――現状気にする必要は無い。
 新たな死者―――ルーテシア及び協力者とその仲間が呼ばれていない以上、何の問題もない。『奴』に関しては呼ばれる筈が無い故考慮する必要はない。
 御褒美の検討―――どの様な餌を釣り下げられようとも従うつもりなど全く無い。
 そして―――

(プレシア……何を急いでいる……?)

 ゼストが感じたのはその事だった。
 現時点で死者は22人、半日でこのペースはそう遅いものではない。人数が減った以上今後はそのペースも落ちるであろうが、単純に考えても早ければ2日、遅くても3日で決着が着くと推測出来る。
 更に与えられている食料は1人につき3日分、考えるまでもなくこの殺し合いが少なくとも3日を想定したものなのは想像に難くない。
 また、放送毎に伝えられる禁止エリアの存在もある……エリアの総数は64、1回の放送毎に3つ指定されるならば21回目(6日目6時頃)の放送で63個のエリアが指定される。
 そして6日目正午の22回目の放送までに残るエリアは1つだけ。そして22回目の放送で最後の禁止エリアが指定されその1時間後には発動する筈だ。
 故にその瞬間には決着が着く……その時刻は6日目の13時、それがこの殺し合いの最終タイムリミットと言って良い。
 また、それでなくても刃向かえば首輪爆破及び24時間以内での死亡者が無ければ全員死亡というルールもある。反逆者の排除のみに絞った所で放っておいても時期に決着が着くだろうと言うのは誰にでもわかる話だ。
 だが、プレシアは放送毎に意図的に殺し合いを促進させる為の話を持ち出している。
 最初の放送での死者蘇生の実演を行ってまでの優勝商品の話、少し考えれば親しき者を生き返らせる為に殺し合いに乗せる為のものなのはわかる。
 そして今回の放送での数人の参加者を殺した上での御褒美の話だ、言うまでも無く此方も殺し合いを促進させるものと考えて良い。同時に反抗しても無駄だと念を押した上でだ。
 御褒美の話など最初の場所で説明を行えば済む話だ。それをせずに放送毎にそれを伝えているという事は……煽っているのだろう、殺し合いが促進する様に……
 だが、何故急ぐ必要がある? 前述の通りペース的には順調、難航した所で最悪6日目の昼には決着が着く。反抗されようとも首輪を爆破すれば何の問題もない。急ぐ必要は皆無だろう。
 少なくともわざわざ御褒美を釣り下げてまで行うメリットが大きいかどうかは微妙だ。
 更に言えば、瞬時に自分達をこの場に連れてきたという謎の力もある。誰がどう見てもプレシアの圧倒的優位には変わりが無いだろう。
(俺の知らない何かが起こっているのか……?)
 だがここまでの話はゼストの視点から見た推測でしかない。自身の知らない所で何かが起こっているというのは否定出来ない。しかし―――
(いや、プレシアに何があろうとも俺のすべき事は変わらん。今は―――)
 プレシアが何を企んでいようと自分の目的に変わりはない。それよりも今は現状への対処が優先だ。細かい事は後から考えれば良い話だ。

155太陽 ◆7pf62HiyTE:2009/09/13(日) 17:53:28 ID:4x.uDbTE0

 現状対処すべき問題は2つ、
 1つはモンスター達の戦いによる商店街の崩壊、先程までと比べて煙は収まりつつある事から既に戦いが終わろうとしている可能性は高い。
 とはいえ、その戦いに巻き込まれたであろうC.C.が気がかりなのは言うまでもない。放送で呼ばれていない以上、生きているのは明白だがそれは『=無事』とは限らない。
 早々に戻った方が良い事に変わりはない。戻ったら戻ったで間違いなく彼女に愚痴や嫌みを言われるだろうが今回ばかりは戦いに駆けつけられなかった自身にも非がある為それも当然の話だ。
 それでなくても、あの場にはもしかしたら他にも参加者―――もしかしたらルーテシアや『奴』がいる可能性がある。どちらにしても戻るべきなのは言うまでもない。
 だが、ここでもう1つ問題、目の前にいる少年への対応だ。少年―――万丈目準と接触した時彼は何かに怯えておりまともに情報交換出来る状況ではなかった。
 しかしこのような場所に怯えている状態で1人放っておけるわけもない。その上彼は商店街で起こった戦いに関わっているモンスターについて何か知っていた。仮に戦いが収束せず、未だモンスターが健在の可能性もある以上、その情報を確保しておくべきだろう。
 だが、今に至るまでに詳しい事は殆ど聞けなかった。これまでに聞けた事は彼はそのモンスターの為に柊かがみを死なせてしまったらしいという事ぐらいである。その罪悪感が彼を苦しめているのは想像に難くない。
 そして詳しい事は何も聞けずこうして放送の時を迎えてしまったのである。
 万丈目の抱えている苦しみを理解出来ないわけではない。とはいえ今も殺し合いが進んでいる事を踏まえるならばこれ以上ここに留まるわけにもいかないの事実、これ以上ここで時間を無駄にするわけにはいかないだろう。
 それ以前に、放送でかがみの名は呼ばれなかった。少なくとも万丈目がかがみを殺したという事は無いはずである。モンスターの正体は未だ不明故、楽観は出来ないが罪悪感は軽くなっているだろう。

 故にゼストは話を切り出す。仮に態度が変わらなかったとしてもこれ以上は待てない、そう考えて―――
「万丈目、放送は聞いて―――」
 しかしそのタイミングで万丈目が口を開いた、
「カードデッキ―――」
 ここに来て万丈目は自身に起こった事を語り出したのだ。

156太陽 ◆7pf62HiyTE:2009/09/13(日) 17:54:12 ID:4x.uDbTE0





 万丈目の話を纏めるとこういう事だ。彼自身に支給された2つの支給品が彼を追いつめてしまったのである。
 1つはカードデッキ。これを使う事でモンスターの力を使役出来る仮面ライダーと呼ばれる戦士に変身する事が出来るわけだが、これには大きな問題があった。
 それは最長で12時間以内に生きた参加者をモンスターの餌として食べさせなければならないという問題だ(ライダーへの変身を行う等モンスターの力を使えばその時間は短くなる)。
 仮にそれを行わなければ所有者自身を襲う……つまり自分自身が餌となるという事である。
 万丈目の話ではこの殺し合いが始まって1時間前後のタイミングで眼帯を付けた少女に襲われた際に一度変身し交戦したものの誰も食べさせてはいないという話だった。
 ちなみにその少女の特徴からゼストには彼女がチンクだという事がわかる為、ゼストは彼女の名前やその仲間を万丈目に説明した。
 さて、チンクを喰わせていない事はわかっており、その後もかがみと出会うまでは誰にも会わなかった為……12時間以内、先程の放送までにはタイムリミットを迎える。つまりそれまでには誰かを餌にしなければならないという事だ。
 これだけでも十分厄介だが、ここでもう1つ厄介な支給品が出てくる。それが盗賊の魂バクラが宿った千年リングの存在である。バクラはこの殺し合いを楽しもうとしているという話で極端な話殺し合いに乗っているといっても良いだろう。
 また、短時間ではあるものの所有者の身体を乗っ取る事も出来るという面倒な存在である。前述のチンクとの戦いの際にバクラは万丈目の身体を乗っ取ったという話だ。
 しかし、その能力は優秀であったことと、バクラ自身も死ぬつもり(魂だけ故この表現も妙だが)は無かった為、万丈目とバクラの目的は合わなくても共闘は一応出来ていたそうだ。
 が、刻々と迫るカードデッキのタイムリミットの中でバクラが動いたのだ。バクラは運良く出会ったかがみを利用して万丈目をモンスターの餌にしようとしていたという話だ。
 勿論、これは万丈目の推測に過ぎずバクラの本心は不明。しかし、迫るタイムリミットと乗っ取り能力、そして万丈目と目的が合わない事を踏まえればその可能性は高いと考えて良いだろう。
 それに気が付いた万丈目は自らの身を守る為に敢えてカードデッキをかがみに押しつける様な形でバクラから逃げたという事である。
 当然、その結果かがみがモンスターの餌となる可能性は高いだろう。

157太陽 ◆7pf62HiyTE:2009/09/13(日) 17:55:26 ID:4x.uDbTE0


「成る程、そういう事か……だが彼女の名前は……いや……」
 しかし現実にはかがみの名前は呼ばれていない。つまりかがみはモンスターの餌とならなかったという事である。
 だが、それが良い結果とは限らない。かがみが餌にならなかったとするならば、かがみもしくはバクラは誰か他の参加者を餌にしたという事である。
 つまり、どちらにしても万丈目が誰かを殺したという事実には変わりが無いという事だ。しかし、
「ああ……それは俺もわかっている……」
「……そうか」
 万丈目の表情には先程までに見られた怯えは見られなかった。その理由は気になるが、この場は話を進める事にした。
 ちなみに、ゼストの視点から見て万丈目の行為はある意味ではやむを得なかったと言えるし、見たところ万丈目自身も自分のした事を理解していた様だった為、少なくともこの場で万丈目に対してこれ以上その事を追求するつもりはなかった。
「確認するが、君に支給されたカードデッキのモンスターは赤いドラゴンだったか?」
 2人が確認したモンスターは赤と白のドラゴン、ゼストの記憶では白いドラゴンはキャロ・ル・ルシエの使役するフリードリヒの可能性が高い。故に赤いドラゴンがカードデッキのモンスターという事になるが……
「いや、俺に支給されたのはカメレオン……緑色のやつだった」
 しかし万丈目に支給されたカードデッキは緑色のカメレオンバイオグリーザだった為、それを否定した。
 何はともあれ、商店街で何が起こったのかは大体把握出来た。
 恐らく参加者の内の誰かに支給されたカードデッキの限界時間が訪れてしまいモンスターが暴れ出した、もしくはカードデッキを支給された参加者が理由はどうあれ他の参加者を襲撃したかのどちらかだろう。
 そして何者かがフリードリヒを召喚、もしくは白いドラゴンのカードデッキで応戦した……それが商店街で起こった戦闘だろう。
 万丈目の言う緑色のカメレオン……バイオグリーザは確認できなかったがその戦いに関わっていないとは言い切れないだろう。
(C.C.はそれに巻き込まれたか……もしくは奴もそれに関わっているか……それは不明だがな……)
 ゼストはC.C.の支給品の全てを把握していなかった。それ故にC.C.の支給品が商店街の戦いにどれだけ関わっているかを読み切れなかった。
 結論から言えば商店街の戦いにはC.C.自身の2つの支給品が関わっている。
 1つは万丈目の話したカードデッキ……もっともその契約モンスターは赤いドラゴンでは無いわけだが。もう1つはまさしくゼストの推測通りのフリードリヒ……もっとも竜魂召喚を行ったのは別の参加者であるが。
 とはいえ……前述の通りこれら2つの支給品の事はゼストは知らないわけではあるが。
(仮にあの魔女の支給品があの戦いに関わっているならば文句の1つでも言ってやらんとな……)

 商店街での事態を大体把握した以上はすぐにでも戻りたい所だ。だが、万丈目とはもう少し情報を交換しておきたい所だ。
「……時間が惜しいが聞きたい事がある」
 そう言いゼストは名簿を取り出した。

158太陽 ◆7pf62HiyTE:2009/09/13(日) 17:56:20 ID:4x.uDbTE0





 それから10数分後、ゼストは商店街へと向かっていた。ブリッツキャリバーの機動力があればそう時間はかからないだろう。
 色々話し合った結果、万丈目とは一旦別行動をとる事になった。
 1人残しておく事が危険な行為というのはわかってはいるが、未だ戦闘が続いている可能性のある商店街に連れて行く事も同じぐらい危険だという事も明白である。
 真面目な話、戦いになった場合万丈目を守りきれるとは限らないという側面もある。いや、並の相手ならばまだ良いが『奴』が関わっているならばそうは言っていられない。
 仮に戦闘が終わっていたとしても人が集まるであろう市街地は戦闘が起こる可能性が大きい、身を守る武器の無い万丈目を連れて行かないという選択肢は悪手とは言い切れないだろう。少なくとももう少し仲間もしくは武装が揃うまでは。
 本音を言えば、何も持たせないで置いていった事が悔やまれてならない。今にして思えば自身に支給されたスティンガーをブリッツキャリバーと交換とはいえC.C.に10本全て渡したのは失敗だったかもしれない。
 とはいえ今更それを言っても仕方が無いだろう。ひとまず今は商店街に戻る事を優先するべきだ。
 万丈目は家屋で少し休んだ後軍事基地に向かうと言っていた。軍事基地であるならば何か武器を手に入れられる可能性がある。万丈目はそこに向かい武器を手に入れるという話である。
 また、軍事基地はこのマップの隅ともいうべきA-1にある。隅である以上当然人通りは少ないのはいうまでもない。万丈目の話ではマップの端と端は繋がっているという話だがそれでも問題は無い。
 A-1と隣接しているエリアの内B-1は既に禁止エリア、A-9も15時には禁止エリアとなる、更に言えばI-1は一面が海……つまり、普通に考えれば行き来が可能なのはA-2からという事になり普通に考えればまず近寄りにくいエリアという事だ。
 本音を言えば、万丈目を置き去りにしたくは無かったし、出会った当初の万丈目ならばまず置いていくという選択肢は無かった。だが、別れる直前の万丈目を見た所若干の不安は残るもののひとまず置いていっても良さそうな様子ではあった。
 故にゼストは単身商店街へと足を進めているのである。

 さて、移動しながらもゼストは万丈目から聞かされた話を今一度思い返していた―――

159太陽 ◆7pf62HiyTE:2009/09/13(日) 17:57:00 ID:4x.uDbTE0





 ゼストは自身の知る参加者とC.C.の共犯者らしいルルーシュ・ランペルージの名前を伝え知っているかどうかの確認をした。その返答は……
「ああ……そのルルーシュって奴の事は知らないが、なのは達の事なら一応知っている……」
「何、それは本当か!?」
 見付けた……漸くあの復讐鬼の手掛かりを……ゼストの声が自然と熱くなる……それでも高町なのはは仮にもかつては管理局のエース・オブ・エース、悪鬼に堕ちた彼女を知っているとは限らない。それでも、期待を持って詳しい事を聞こうとするが……
 だが、次の瞬間冷水をかけられたかの様に頭を冷やされる結果となる。
「俺の知っている彼女達とは限らないがな」
 その瞬間、ゼストの思考が停止する。何を言っているんだと正直思う。しかし、すぐさま冷静さを取り戻し、
「どういう意味だ?」
 そう問うゼストに対し万丈目はデイパックから1冊のノートを出した。それは自身にも支給されているノートだ。情報を纏めるのに使う為に参加者全員に支給されたものだろう。
 万丈目が取り出したノートにも『万丈目サンダー』と書かれていたのが気にならんでもないが、今はそんな事はどうでも良い。万丈目はノートのあるページを開きゼストに見せる。
「……これはどういう事だ?」
 そこには万丈目、そしてバクラの知り合いの名前が書かれていたがそれが問題だったのだ。
 万丈目の知り合いの中にはなのはだけではなく、スバル・ナカジマ、エリオ・モンディアル、キャロの名前があり、バクラの知り合いの中にもキャロの名前があったのだ。
 その上で万丈目は自身の事情を説明する……万丈目、天上院明日香、早乙女レイ達は自分達の学校であるデュエルアカデミア毎見知らぬ異世界に飛ばされたが、『管理局機動六課の高町なのは達』が助けに来たという話だった。
「ちょっと待て、高町なのはやスバル・ナカジマ達が管理局にいたというのか?」
「あ、ああ……少なくとも俺の知るなのは達は……」
 信じられないというのがゼストの本音だった。なのはだけではなくスバル、エリオ、キャロも管理局側にいるというのか? 自分の知る限りスバル達はスカリエッティ側にいたはずであり少なくとも管理局とは敵対しているはずだ。
 またなのはにしても今更管理局に従うとは到底思えない。これは一体どういう事なのか?
「ゼストさん……そのノートの下の方にも書いてあるが……」
 そう言われゼストは下の方を確認する。そこには並行世界の可能性が記されていた。未だどういうことか理解しきれないゼストに対し、
「確認したいんだが……あんたの世界のキャロは管理局ではなくマフィアに入っていたのか?」
 そう問いかける万丈目であった。

160太陽 ◆7pf62HiyTE:2009/09/13(日) 17:57:54 ID:4x.uDbTE0





 万丈目から聞かされた並行世界の可能性、彼自身も信じられない話だったがバクラの知るキャロと自分の知るキャロの状況が違う事から判明したその仮説はゼストに大きな衝撃を与えていた。当然信じられる話ではない。
 しかし、冷静に考えてみればその可能性は限りなく大きく、またそう考える事でこれまでに覚えた違和感の大半に説明を付ける事が出来る。
 まず、C.C.の知るスバルが何故か学生となっていた事、ゼストの知るスバルはスカリエッティの戦闘員の筈で平和な学校に通っているとは思えない。
 次に最初の放送でヴィータの名前が呼ばれなかった事、ゼストはこの場所に来る直前ヴィータに致命傷を与えていた為、予めプレシアが治療した、もしくはすぐに治療出来る用意があったという都合の良い話が無い限りはまず生き残れない筈だ。
 だが、並行世界の仮説が正しい場合、別の可能性が見えてくる。
 C.C.の知るスバルはスカリエッティ側の戦闘員になっていない、もしくは本当に普通の学生だったという可能性、そしてこの場にいるヴィータはゼストの世界とは別の致命傷を負わされていないヴィータだったという可能性だ。
 ゼスト視点だけから見れば信じられない話だ。しかしC.C.、万丈目、そしてバクラの知る彼女達の状況がここまで違うとなると流石にその可能性を無視する事は出来なくなってくる。
 そしてこの仮説ならば2つあった高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、八神はやての事についてもクローンではなく異なる並行世界から連れてきたという可能性が出てくる。
 また、アリサ・バニングスの復活劇についてもクローンではなくこれまた並行世界の彼女を利用した可能性が出てくる。
 とはいえ、これらの事はまだ可能性に過ぎない。商店街に戻って落ち着いた所でC.C.から詳しく確認しそこから判断すれば良いだろう。
 最悪C.C.から確認を取る事が出来ないとしてもブリッツキャリバーから確認すれば良い話だ。
 ブリッツキャリバーのスペックがゼストに報告されていたものとは違いファイナルリミッターが解除されA.C.S.が使用可能になっていた事実がある。
 ゼスト自身その時はなのはと遭遇した時には命を削ってでも使う程度の認識しか持たなかったがもしかするとブリッツキャリバーに関しても自身の世界の物では無い可能性がある。
 勿論A.C.S.程度ならば単純に隠してあったという可能性もある、しかし(確認した時には気にも留めなかったが)スペックノートにはバリアジャケットに対毒仕様のプログラムが組み込まれてるとあったのを思い出した。
 対毒仕様という事は毒を扱う相手への対策という事だ。だが、持ち主のギンガ・ナカジマが必要とする程の相手が思い当たらなかった。
 不必要な装備を追加する必要など無い。だとすると、ブリッツキャリバーがゼストのいた世界とは別の世界の物で、その世界においてギンガはA.C.Sを使わなければならない強者、それも毒を使う様な相手との対応を迫られていたという可能性がある。
 つまりだ、ブリッツキャリバーから確認を行えばその世界の大まかな状況を把握する事が出来るという事である。
 プレシアが何故参加者を異なる並行世界から連れて来るという面倒な事をしたのかは不明、しかし正直それが如何様なものであれゼストの目的は変わることはない。プレシアの抹殺、それだけは確定事項である。
 だが、他の目的についてはどうだろうか? そう、ゼストの捜し人が異なる並行世界の人物の可能性があるという事だ。仮にの話だが、なのはとルーテシア・アルピーノが自分とは別の世界から連れて来られた場合はどうだろうか?
 いや、ルーテシアの方は恐らくどの世界の彼女であっても問題は無いだろう。どの世界にしろゼストの愛したメガーヌ・アルピーノの娘である事に違いは無いはず、故に彼女を保護するという事には変わりはない。

161太陽 ◆7pf62HiyTE:2009/09/13(日) 17:58:41 ID:4x.uDbTE0

 問題はなのはだ。仮に彼女が自分の知る世界の彼女では無かったとしたら?
 万丈目の話ではその世界の彼女は管理局に属しており復讐鬼に身を落としたという様子は無かった。恐らくその世界の彼女はスカリエッティによって人造魔導師の処置を受けていなかったという事だろう。それならば管理局にいる事にも説明がつく。
 では、仮になのはが自身の世界の彼女では無いとしたらゼストはどうすべきなのだろうか?
 少なくても、狂気に堕ち無益な犠牲と争乱を起こし続けていない彼女ならば抹殺する理由はない。だが、こればかりは実際に彼女に会って確かめて見なければわからない。
 しかしだ……果たして実際に彼女と遭遇した時にはどう行動するだろうか? 冷静に判断を下す事が出来るのだろうか? それはゼスト自身にもわからなかった―――

 とはいえその事については今は考えるべきではない。落ち着いた時に改めて考えれば良い話だ。今はそれよりも商店街に戻る事が優先である。
 仮に戦闘が終わっていたとしても今後の事を踏まえるならば殺し合いを促進させるカードデッキは早々にモンスター共々破壊しておくべきだ。
 また、仮にかがみと遭遇したならばバクラの宿っている千年リングも引き離し処分した方が良い。
 さて、放送時ゼストはプレシアが殺し合いの早期決着を望んでいると考えたが、万丈目の話を聞きその可能性はより強まったと感じていた。
 殺し合いを楽しむ者の魂の宿ったリングに、12時間以内に誰かを食べさせなければならないカードデッキ、何れも殺し合いを促進させる為のものだ。
 ならばプレシアの思惑を打ち破る為にゼストもまた急がなければならないだろう。故にゼストは商店街に向けて走り続けていた。


 その中でゼストは万丈目の事を考えていた。只怯えていただけで殆ど何も話してくれなかった少年が何故急に全ての事を話してくれたのだろうか?
 いや、それ以前に彼の目は何処か戦う者の目をしていた様な気がする。勿論、時間が少なかった為多くは話せなかったが自暴自棄になっている様子もなかったし、殺し合いに乗っている様子もなかった。
 だからこそゼストは多少の不安は感じたものの彼と別行動を取る事が出来たのである。
 きっかけは恐らくは放送だ。だが、放送に万丈目を変える何があったのであろうか?
 彼がカードデッキを押しつけたかがみが生きていた―――否、仮にそうであってもその特性を考えれば誰かを死に追いやったた事に変わりはない。
 ならば―――放送で誰か仲間が死んだのか? その人物が死んだ事が結果として彼を立ち直らせたというのか? それならば確かに可能性はあるだろう。
 だがそうであるならば誰の事だ? 管理局の連中に関しては最初の放送の時にも既に何人か死んでいるしそこまで親しい人物では無い為その可能性は低い―――ならば―――
 ゼストは万丈目が見せたノートに書かれていた彼の知り合いの名前を思い出す。そしてある人物の名前に気が付いた。
 万丈目はその人物については名前すら出さなかった為、その人物がどのような人物なのかはゼストは知らない。だが、推測にしか過ぎないがその人物は万丈目にとって―――





 その事に気が付いた時、不意にゼストはある人物の事を思い返していた―――
 その人物は誰よりも世界の平和を願っていた―――
 その人物はそれ故に道を踏み外し自分や愛した女性、そして奴の人生を狂わせた―――
 その人物はそれでも地上の平和という現実を見ていた―――
 そして、最早会う事の叶わぬその人物はゼスト・グランガイツにとって―――

162太陽 ◆7pf62HiyTE:2009/09/13(日) 17:59:33 ID:4x.uDbTE0





(レジアス―――)





 友であった―――





 懐古は一瞬で終わる―――今は目の前の現状に立ち向かわなくてはならない。故にゼストは商店街へと急ぐ―――





 ―――太陽が彼を照らしていた―――





【1日目 日中】
【現在地 C-2 大通り】
【ゼスト・グランガイツ@魔法少女リリカルなのは 闇の王女】
【状態】健康
【装備】ブリッツキャリバー@魔法妖怪リリカル殺生丸
【道具】支給品一式
【思考】
 基本:高町なのはの捜索・抹殺、プレシアの抹殺、ルーテシアの保護。
 1.商店街に戻ってC.C.と合流する。
 2.カードデッキ及び千年リングを見付けた場合は破壊・処分する。
 3.落ち着いたらC.C.及びブリッツキャリバーから彼等の世界について詳しく確認する。
 4.その後、軍事基地に向かい万丈目と合流する。
 5.行動を共にする仲間を増やす(市街地は危険そうなので武装が整うまでは基本的に避けたい)。
 6.なのはと戦う事になればギア・エクセリオンの発動も辞さない――己の命を削ってでも。だが、仮に彼女が自分の世界の彼女では無いとしたら―――?
【備考】
 ※なのはとルーテシアが自分とは違う世界から連れて来られている可能性に気付きました。
 ※C.C.との協力関係はギブアンドテイクという暗黙の了解の上に成り立っています。
 ※ギア・エクセリオンによる負担の程度は不明(ゼストは自分のデバイスのフルドライブ同様に命を削る可能性もあると推測)。
 ※プレシアにはスカリエッティと同等かそれ以上の技術があると思っていますが、プレシアを全く信用していません。
 ※幕間「修羅のように」(シグナムを倒した直後)からの参戦です。
 ※ヴィータとプレシアの間で何らかの約定があったかもしれないと考えています(並行世界の彼女の可能性を考えています)。
 ※スバルが『スバル・ナカジマ』の名前である事に疑問を抱きました(並行世界の彼女の可能性を考えています)。
 ※カードデッキの制限と千年リングについての情報を把握しました。
 ※参加者が異なる並行世界から連れて来られている可能性を知りました。
 ※プレシアは殺し合いの早期決着を望んでいると考えています。
 ※エリアの端と端が繋がっている事を知りました。

163太陽 ◆7pf62HiyTE:2009/09/13(日) 18:11:17 ID:4x.uDbTE0
 ここで万丈目準に関して1つのエピソードを語ろう。
 約2年前、彼は度重なる敗北等からデュエルアカデミアを飛び出した事があった。その際に自身のデッキも失ってしまったがその後自らの力でカードを集め姉妹校であるデュエルアカデミアノース校に編入しトップにまで上り詰めた。
 そしてその後、デュエルアカデミアとの対抗デュエルでアカデミアの代表と決闘する事になった。
 万丈目が相手という事でアカデミア本校の生徒からは楽勝と見られていたが、ノース校の生徒達からは当然の事ながら代表である万丈目に大きな期待をかけられていた。だが、少なくとも万丈目にとってはこの対抗デュエルはそれだけの事では無かった。
 実は万丈目には優秀な2人の兄がおり、万丈目は兄達から強大の落ちこぼれだと言われていた。
 その兄達がこの対抗デュエルの場にやって来て自分達主催でテレビ中継の用意までしたのだ。その目的は万丈目をプロモートしカードゲーム界のスターにする為だ。
 それだけではなく兄達は金にものを言わせたカードの山を用意し万丈目に最強のデッキを作らせようとしたのだ。万丈目グループの顔に泥を塗る様な事をするなと言った上で……。
 その決闘の結果自体はこの場話ではさほど重要では無いので割愛するが、この時万丈目は大きなプレッシャーをかけられていたのだ。
 とは言え、決闘の場ではそんな事など微塵も感じさせない位何時もの強気な調子であった。だが……決闘前、彼は1人洗面室で……。

『俺は兄弟の落ちこぼれであるはずがない……勝って勝って勝ち続けるんだ……』
『誰も俺の背負っている物の重さなんてわかりゃしない……勝てというだけだ……』

 そう、万丈目も内心では苦しんでいたのだ。当然万丈目自身はこんな姿を誰かに見られたくは無かっただろう―――

164太陽 ◆7pf62HiyTE:2009/09/13(日) 18:17:19 ID:4x.uDbTE0





 閑話休題、ゼストが去った後万丈目は家屋にて―――





「ぐっ……はぁ……プレシアめ……」





 涙を流していた―――





「許さんぞ……よくも……よくも……」





 口にするのはプレシアに対する怒り―――





「この俺にこんなものを支給しやがって……!!」





 その手にはスプーン、口元には赤いカレーが付着していた―――





 そう、万丈目は自身に支給された3つ目の支給品である激辛のカレーを口にして涙を流していたのだ―――その姿など他の者に見せられるわけが無いだろう。
 呆れている方達も多いだろうがここで少し冷静に考えてみて欲しい、万丈目はこの場に来てから既に一度このカレーを試食しておりマトモに食えたものではない事を理解しているはずだ。にも関わらず何故彼は今改めてカレーを食しているのであろうか?
 そもそも泣いている理由は本当にカレーを食べたからなのか?

165太陽 ◆7pf62HiyTE:2009/09/13(日) 18:28:24 ID:4x.uDbTE0





 ここで物語は放送の前まで遡る。
 これまでの話を読めばわかる通り、万丈目がかがみにカードデッキを押しつけた為かがみが死ぬ事になる可能性は非情に高かった。
 仮にかがみが死ななかったとしてもカードデッキの特性とバクラの行動方針を踏まえバクラに襲われた参加者が死ぬ可能性が高い。
 つまり直接的ではないにしろ万丈目が誰かを殺したという事になる。
 当然の事ではあるが万丈目は誰かを殺したくはなかった。その彼にとって誰かを殺すという事は強い罪悪感を抱かせる結果となった。
 いや、真面目な話その対象が殺し合いに乗っている悪人だった、もしくは万丈目本人が直接手を下したのであればまだ良かったかもしれない。
 だが万丈目はあくまでも何の罪もない普通の少女に誰かの死を強要するカードデッキを押しつけたのだ。
 自分が助かりたいが為に全ての責任を何も知らないかがみに押しつけたのだ。
 その行為だけを見るのであればそれは誰が見ても卑下する行為と言えよう。それを自覚しているからこそ万丈目は苦しんでいるのである。
 こんな事をした自分を明日香やレイ達アガデミアの連中、そしてなのは達が見ればどう思うだろうか? 軽蔑するに決まっている。そして何より自分自身がそれを嫌悪していたのだ。
 だからこそ万丈目は逃げ出した。逃げ場など何処にも無いとしてもだ。
 だが逃げても逃げても万丈目の側に『奴』が現れ耳にはその声が響くのだ。ノース校にいた時にも聞こえたアカデミア本校にいるはずの『奴』の……
 何故『奴』が現れたのかなどどうだっていい、今の万丈目にしてみれば誰にも会いたく無かったし誰の声も聞きたくなかった。故に万丈目は逃げ続けた……
 勿論、プレシアに報復するという方針には変わりは無かったし、仲間達と合流し明日香達を守りたいという意志は消えていない。だが、少なくとも今はその事すら考えられなかった。それ程までに万丈目は強い罪悪感を感じていたのである。

 そして『奴』の姿が見えなくなり声も聞こえなくなり立ち止まった時、『奴』とは別の男性……ゼストが話しかけてきたのだ。
 ゼストはこの殺し合いに乗っていなかった様だが万丈目にとっては誰でも大差など無かった。
 すぐにでも逃げ出したかったが走り続けた事による疲労もあって動けなかったし、何よりゼストはマッハキャリバー(本当はブリッツキャリバーなのだが万丈目はマッハキャリバーだと認識していた)を持っていたのだ、逃げられるわけがない。
 そして同時に爆発音が響くと共に商店街の方に赤と白の龍が現れ戦いを始めたのだ。白い方はフリードリヒの様に見えたが恐らく赤い方はバイオグリーザ同様カードデッキのモンスター……
 自分と同じ様にカードデッキを支給され、同じタイムリミットに追われた参加者がいたのだ。その事が先程全てをかがみに押しつけた万丈目を押し潰そうとしていた。
 すぐにでもこの場から逃げ出したかった。だが今度はゼストが側にいた為それは出来なかった。
 ゼストはモンスターの事について詳しく聞きたがっていたし、自分の事を気遣っていた。だが人殺しの自分を気遣うなどかえって自分が惨めだと感じた。自分なんか放っておいてすぐにでも商店街に戻って欲しいとすら思った。

 それでもゼストは万丈目から離れようとはしなかった。そうしている内に忌まわしい放送が訪れたのだ。万丈目にとってはある種の宣告とも言える……
 放送に関しては恐ろしい程鮮明に耳に入ってくる。最初に禁止エリアが伝えられるが万丈目にとってはそんな事は大した問題じゃない。ほんの数分程度の話であっても何十分もかかっている様な気がした……
 そして死亡者の名前がゆっくりと―――少なくとも万丈目はそう感じていたそれが―――読み上げられる―――

166太陽 ◆7pf62HiyTE:2009/09/13(日) 18:29:12 ID:4x.uDbTE0





ザフィーラ―――





フェイト・T・ハラオウン―――





 五十音で読み上げられているのは把握している。故にこの時点で既に明日香とレイの生存は確定。いや、それ以上にかがみの生存すらも確定した事になる。
 だが、万丈目の心が晴れる事はない。バクラが付いているのだ、きっとタイムリミットを迎えるまでに他の参加者を見付けてそいつを喰わせたのだろう。それをさせたのは誰だ? 嗚呼、他でもない自分だ。
 結局の所、放送を聞いた所で救われるわけがなかったのだ―――それでも放送は続き―――





武蔵坊弁慶―――





八神はやて―――

167太陽 ◆7pf62HiyTE:2009/09/13(日) 18:35:35 ID:4x.uDbTE0





 もうやめてくれ……そう思う万丈目であったが―――





●●●●―――





 その名前が読み上げられた瞬間、万丈目の思考が停止する。





(今……何て言った?)





 いや、言った事もそれが意味している事も理解している。間違いない、『奴』が死んだのだ。自分にとって最も鬱陶しい『奴』が―――
 この瞬間だけはかがみに対して抱いていた罪悪感すらも忘却の彼方に消えていた。只、心の奥底からある感情が浮かび上がって―――





(……待て……ちょっと待て! これではまるで……まるで―――





アイツが死んで悲しんでいるみたいではないか!!)

168太陽 ◆7pf62HiyTE:2009/09/13(日) 18:36:32 ID:4x.uDbTE0





 ―――それに気付いた瞬間、万丈目は心の中で叫んだ、そして湧き上がる感情は―――




(違う! 悲しんでなどいない! これは怒りだ! いや、アイツが死んで誰が怒るか! ああそうだ、コイツはプレシアに対する怒りだ!! 決してアイツが死んだからじゃない!)




 怒り―――それでも別の感情が湧き上がるが万丈目はそれを必死に押さえ込み―――





(そうだアイツが死んで天上院君やレイが悲しむからだ! この万丈目サンダーがアイツが死んだ事で悲しむなどあるわけがない!! むしろ清々するぐらいだ!! プレシア……天上院君達を悲しませた事……絶対に許さん!!)





 そう納得させた頃、放送では新たな御褒美の話が出てきていた。それを聞いている時の万丈目は既に放送前の万丈目ではなかった―――





(冗談じゃない! これ以上天上院君やレイを悲しませてたまるか!)
 真面目な話、かがみに対する罪悪感を忘れていたのはその一瞬だけで、この時には既にその事は頭の中に戻ってきており今も万丈目を締め付けており正直な所逃げ出したい気持ちだ。
 だがプレシアに対する怒りと明日香達を守らなければという想いが強まっているのだ。これ以上塞ぎ込んでいるわけにはいかない。
 ならば何をするべきか、決まっている、まずは自分の知る事を全てゼストに話す事だ。真面目な話かがみの事で責められるかも知れない。だが、それ以上に明日香達を守りたいという想いとプレシアに対する怒りが強かったのだ。
「カードデッキ―――」
 決意を新たにした万丈目は全てをゼストに語る―――その内心では未だ否定し続けている別の想いを抱え続けて―――





 そして、情報交換を済ませゼストが商店街へ向かった後すぐさま万丈目は家屋に入りデイパックからカレーを取り出したのだ。
 万丈目は知らないがそのカレーは奇しくもゼストのいた世界のルーテシアがなのはの為に作ったもの―――
 その世界のなのははスカリエッティによって身体を弄られ味覚を失っていた。そのなのはの為にルーテシアはカレーに大量のスパイスを使用した―――味覚を失った者でも辛いと感じる様にと―――
 故にそのカレーは普通の味覚を持つ者にとってはマトモに喰えたものではない。
 そんな事は実際に一度試食している万丈目にだってわかっている。それでも万丈目はそれを食べたのだ、涙を流し続けながら―――何故、泣いてまでカレーを食べているのか―――その心は万丈目にしかわからない―――
 だが、少なくともこんな姿など誰にも見られたくはなかった―――

169太陽 ◆7pf62HiyTE:2009/09/13(日) 18:39:12 ID:4x.uDbTE0





「はぁ……はぁ……はぁ……俺にこんなものを喰わせた事……絶対に許さんぞ……プレシア……」
 身体を震わせ涙を流しながらも万丈目はカレーを完食した。正直な所、舌と喉が痛く暫くは声を出すのも辛い状態である。万丈目はデイパックから出した水を口に含み痛みを和らげていく。
「とにかく、昼飯は終わりだ!」
 と、万丈目はデイパックからノート等を取り出し、目の前のパソコンとノートに目を向ける。パソコンに関してはカレーを食べて苦しんでいる際に気を紛らわせる為に見ていたものである。
「月村すずかの友人からのメール……と」
 パソコンを調べた所、6時半ぐらいにメールが届いていた。完全に信用出来るかはともかくひとまずその文面をノートに書き留めていく。続いてゼストとの情報交換で得た事を記していく。
「バクラに言われて作ったこいつが役に立つとはな……ちっ」
 結局の所、万丈目にとって支給品で得たものというのはバクラの助言で作ったこのノートぐらいと言ってもよい。
 殺し合いを楽しもうとしていたバクラが殺し合いを打破しようとしている万丈目の役に立ったという皮肉な話であり、万丈目の表情は複雑なものであった。
 だが、ノート自体は大いに役に立った。正直な所、自分の持つ情報を口だけで伝えるにはまだ精神的に辛かったし、ゼストの様子を見る限り口だけで説明するのは難しかったからだ。
「まさかなのはがな……」
 ゼストが自身の捜し人を説明する際、なのはについては特に復讐の為なら無関係な人間をも殺害する悪鬼だと語っていた。付き合いが短いとはいえ万丈目の知る彼女とはあまりにも違いすぎる為、聞いた当初は信じられなかった。
 だが、バクラと話した並行世界の事を思い出した為、それについては容易に理解は出来たし、その可能性がほぼ確実だと判断出来た。そして異常なまでに彼女に対し殺意を抱くゼストに対し上手く説明する為にノートを見せたのである。
 ノートを見せた所でゼストが理解してくれるかどうかは正直微妙だったが、情報交換をしていく内にゼストもそれを理解してくれた様だった。
「だが、面倒な事になったな……」
 しかし、それは万丈目にとっても大きな問題である。
 幸運な事に万丈目を最初に襲った眼帯の少女の名前がゼストの話からチンクという名前だと判明し彼女の仲間としてクアットロとディエチがいる事も確認出来た。何れもスカリエッティという科学者の所にいる連中らしい。
 が、どうもゼストによるとスバル、エリオ、キャロもそのスカリエッティ側におり、なのはも彼の所で人造魔導師として身体を弄られ復讐鬼に落ちたという話だ。
 ゼストの事情も含め詳しい事は聞けなかったが、要点を纏めるとスバル、エリオ、キャロ、そしてなのはも殺し合いに乗っている危険人物の可能性があるという事だ。
 これ自体は並行世界による際なので今更疑う必要はないし、同時に可能性がある程度の話なのでそれ自体は良い。
 問題は連れて来られた並行世界によっては他の参加者までも危険人物の可能性があるという事だ。
「これでは誰がアテになるかわからんぞ」
 故にだ、単純になのは達と合流すれば良いかどうかの判断を付けられなくなってしまったのだ。実際に会ってみなければわからないがその相手が殺し合いに乗っていれば全てが終わりだ。
 ちなみに、明日香やレイが自分とは異なる並行世界から連れて来られている可能性についてはまだよく考えてはいなかった。
 それを考えてしまった時、『奴』が異なる並行世界から来た可能性―――自分の世界の『奴』が生きている可能性を考えてしまう―――だが、『『奴』が生きている事を望んでいる自分』を認めたく無いが為にその事については考えるのをやめていたのだ。
「……いや、むしろそれがわかっただけでも幸運か」
 しかし、わかっているならば注意する事が出来る。とりあえず今はゼストの知る危険人物の事を把握しておく。
 そして、ここまでの情報がノートに記され纏められていった。

170太陽 ◆7pf62HiyTE:2009/09/13(日) 18:40:31 ID:4x.uDbTE0



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  自分の知り合い:遊城十代、天上院明日香、早乙女レイ、高町なのは、フェイト・T・ハラオウン
          スバル・ナカジマ、ティアナ・ランスター、エリオ・モンディアル、キャロ・ル・ルシエ

  バクラの知り合い:キャロ・ル・ルシエ、ユーノ・スクライア、フェイト・T・ハラオウン

  ゼストの知り合い:高町なのは、ルーテシア・アルピーノ、フェイト・T・ハラオウン、八神はやて、
           シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、クロノ・ハラオウン、ユーノ・スクライア
           チンク、クアットロ、ディエチ、スバル・ナカジマ、エリオ・モンディアル、キャロ・ル・ルシエ

  C.C.の知り合い:ルルーシュ・ランペルージ

  危険人物:眼帯をした少女→名前を聞いておけば…
              →仲間がいる可能性あり→名前はチンク、仲間にクアットロ、ディエチがいる。
       ゼストの世界のなのは、スバル、エリオ、キャロ
       L
       バクラ→千年リングさえ引き離せれば……

  禁止エリア:B-1 D-3 H-4→何か基準でもあるのか?
        A-4 A-9 E-6

  アグモン、ギルモン→どうでもいいが兄弟かなんか?

  フェイト・T・ハラオウン、クロノ・ハラオウン→おそらく兄妹かなんかだと思われる。
                        →やはり兄妹らしい、但しフェイトは元々プレシアの娘らしい。

  スバル・ナカジマ、ギンガ・ナカジマ→兄妹、または姉妹だと思われる。この人とも合流したほうが良いかも。
                   →姉妹なのは間違いないらしい、正直合流したかったがもしかしたら……

  柊かがみ、柊つかさ→おそらく兄妹、あるいは姉妹であろう。
           →赤の他人らしい

  武蔵坊弁慶→昔の人間?あるいは同名異人の可能性あり。

  C.C.、L→コードネームかなんか?

  キング→王?

  なのは、フェイト、八神はやての名前が二つある→誤植?
            →違う世界のなのは、フェイト、八神はやての可能性あり
            →クローンの可能性もあり

  死者蘇生→ありえない。何かトリックがあるのでは?
            →違う世界の同じ人物を連れてくれば実行可能
            →死者蘇生の技術自体はあるらしいが、放送の場合はそれではないらしい。クローンの可能性もあり。

  並行世界、パラレルワールド
            →断言できないが可能性あり
            →その可能性は高いと考えて良い。場合によっては安全そうな人物が危険人物となっている可能性があり

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171太陽 ◆7pf62HiyTE:2009/09/13(日) 18:45:24 ID:4x.uDbTE0



 以上の事とメールの文面がノートに記される。正直な所、ゼストから聞いただけの話もあり、万丈目自身も整理仕切れてはいない為もう少し考えてみたい所だがとりあえず今は他にすべきことがある。
 それは軍事基地への移動、そして中の調査しての武器の確保だ。それを行う旨についてはゼストとも話し合いをしており彼も了承してくれた。
 ゼストの話では市街地は危険らしく、更に商店街では戦いが起こっているという事もあり避けられるならば避けた方が良いという話だ。
 とはいえゼストはC.C.との合流の為一旦戻らなければならない。が、武器の確保は必要という事で軍事基地に万丈目が向かうという事である。
 本音を言えば万丈目としてはまだ他の人に会いたくはなかった為、人通りの少ないであろう軍事基地への移動はむしろ都合が良かった。
 さて、その軍事基地だが地図を見てわかる通りこの舞台の隅にある。端と端がループしている為、隅にある事自体は意味を成さないが、隣接(及びそれに相当する)エリアが海または禁止エリアになる為、実質三方が封鎖される事となる。
 この状況を考えるにもしかしたらこの軍事基地には何かあるかもしれない。仮に何もなかったとしても人通りの少なさそうな軍事基地であれば使える武器が手に入る可能性が高い、行ってみる価値はあるだろう。
 また、メールを見てから知った事だが施設には何か仕掛けがある可能性がある(勿論地上本部の様に罠の可能性もあるが)、どちらにしても調べてみた方が良いだろう。
 勿論、移動の際には禁止エリアについては避ける様に厳重に注意しておくのは言うまでもない。軍事基地を調べた後についてはまだ考えていないがゼストを待つなり他の場所に移動するなりすれば良いだろう。
(……もし禁止エリアに入ってもすぐに首輪が爆発しないならば工場や温泉にも行けるだろうが……危険すぎるか?)
 例えばA-1から西に進み禁止エリアとなっているA-9に移動したとしてもすぐさま北もしくは南にあるI-9、B-9に移動すればそのまま地図の東にあるエリアに移動出来る。
 だが、禁止エリアに入りすぐさま首輪が爆発する危険もある為むやみやたらと試すわけにはいかないだろう。やはり、うっかり禁止エリアに入らない様注意をしておくべきだ。

 さて、ゼストの話では放送後の御褒美の話からプレシアはこの殺し合いの早期決着を望んでいる可能性があるらしい。カードデッキの事を踏まえてもその可能性は高い為、万丈目もそれについては異論はない。
 故に急がなければならない為万丈目は行動を開始する。カレーの入った容器以外をデイパックに入れ家屋を出て、空を見上げる。空には太陽が輝いている。
 先程も述べたがかがみに対する罪悪感が消えたわけではない。ゼストが万丈目を責める事は無かったが、それでも万丈目が許されざる罪を犯した事は万丈目自身が解っている。
 それでも最早只罪の重さによって俯いているという事はない。必ず全ての元凶であるプレシアに報復をする、その決意を持って万丈目は口を開く。





「プレシア……俺様の声など聞こえているんだろう……だったら良く聞け、俺や天上院君、レイ達をこんな目に遭わせて只で済むと思うな……絶対に貴様に報復してやるぞ……この俺……!!」





 それは誰の目にも明らかな宣戦布告、こんな事をするメリットなど何処にも無い事など分かり切っている。それでも言わずにはいられない―――

172太陽 ◆7pf62HiyTE:2009/09/13(日) 18:55:57 ID:4x.uDbTE0





「一!」





 まだ喉が痛くそれ程大きい声は出せない。それでもその声はプレシアに届く様にと―――





「十!」





 何処かで悲しんでいるであろう明日香やレイ達に届く様にと―――





「百!」





 離れ離れになった自身のエースモンスター達に届く様にと―――





「千!」





 そして死んでいった―――





「万丈目!」

173太陽 ◆7pf62HiyTE:2009/09/13(日) 19:14:53 ID:4x.uDbTE0





「『サンダー!!』」





「……!!」





 自分が喋ると同時に何処からか声が聞こえた気がした。それは鬱陶しかったが最早聞く事の叶わないであろう『奴』の声が……





「気のせいだ……そうに決まっている」
 だが、気のせいだと判断し万丈目は歩き出す。禁止エリアであるB-2への侵入を避ける為とりあえず北のA-2へと向かっていく―――
「……アイツのカードも探しておいてやるか」
 確かハネクリボーとネオスだったか、そう考えながら万丈目は歩く。そんな中、不意に少し昔のある出来事を思い出していた。





 それは約2年程前のセブンスターズと戦っていた時、セブンスターズの中にアビドス3世という古代エジプトで無敗を誇った『デュエルの王』と呼ばれた少年がいた。実際の所無敗伝説は家臣達が手を抜いていた為という誤解されたものであったが……。
 その亡霊となった彼がセブンスターズとなり現代に蘇ったのは本人によると一度で良いから対戦した『奴』の様な男と楽しい決闘をしたかったからだった。
 そして『奴』との決闘に敗れた彼は天国へと戻る事になったがその際に『奴』も誘ったのだ。楽しいデュエルを一度だけで終わらすのは勿体無いと……
『おう、連れてけ連れてけ!』
『コラー!!』
 『奴』の返答は100年ぐらい待ってというもので三千年待った彼にしてはあっという間だという事で彼も了承し天国に行ったのだ。
『お前等も一緒に行こうな、あの王様にもっと沢山本気の決闘教えてやろうぜ』
『断る、死んでからも貴様と一緒なんて御免だ』
『いいじゃねえか、友達だろ』
『誰が友達だ! 誰が!!』
『あれ? 万丈目君天国に行けるの?』
『どういう意味だ!!』





「100年って言った癖に……早すぎるだろ……馬鹿が……」
 きっと『奴』は死んでからもデュエルをしているのだろう。万丈目はそう考えていた。
「くっ……俺は奴に一度しか勝っていないのに……」
 万丈目と『奴』は幾度と無く決闘している。しかし、万丈目が勝ったのは最初の1回だけである―――
 ―――が、実際はその決闘は中断という形になっていて、あのまま続けば実は『奴』の伏せカードによって万丈目は敗北していたのである。その事実を万丈目は知らないが―――
「待っていろよ……不本意だが俺もそっちに行ってやる……一万年ぐらい先になるだろうがな……」
 今の自分が天国に行けるかなどどうだっていい。だが、必ず『奴』の所へ行き、再び決闘すると万丈目は誓う。
 しかしそれはあくまでもずっと先の話だ。今は明日香達を守る為に、プレシアへ報復をする為に行動しなければならない。故に今はこれ以上『奴』の事は考えたりはしない―――

174太陽 ◆7pf62HiyTE:2009/09/13(日) 19:16:35 ID:4x.uDbTE0





 空を見上げ今も自分を照らす太陽を見て―――そして呟いた―――





「さらば、十代……」





【1日目 日中】
【現在地 B-2】
【万丈目準@リリカル遊戯王GX】
【状態】疲労(小)、かがみに対する罪悪感(ある程度軽減)、舌と喉がヒリヒリ
【装備】なし
【道具】支給品一式、考察等を書いたノート
【思考】
 基本:殺し合いには乗りたくない。仲間達と合流し、プレシアに報復する。
 1.禁止エリアに注意しつつ軍事基地へ向かい、武器等を確保する。
 2.これまでに得た情報を整理したい。
 3.その後、ある程度はゼスト達を待つが、場合によっては禁止エリアに注意しつつ東側の施設(工場や温泉)に向かう。
 4.できればもう暫くは他の参加者と会いたくはない。
 5.かがみ君……すまない……。
 6.余裕があればおジャマ達を探したい。
 7.十代……カードぐらいは探してやる。
【備考】
 ※チンクとその仲間であるクアットロを警戒しています。
 ※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。
 ※デスベルトが無い事に疑問を感じています。
 ※パラレルワールドの可能性に気づき、その可能性は高いと考えています。
 ※柊かがみはLという危険人物から逃げてきたと思っています。
 ※かがみとつかさは他人だと思っています。
 ※バクラを警戒しています。
 ※場合によってはなのは達も危険人物の可能性があると考えています。
 ※明日香達が並行世界の人物の可能性がある事についてはまだ考えていません(十代生存を望んでいると考えたくないので)。
 ※市街地が危険だという話をゼストから聞きました。
 ※ゼストからプレシアが早期決着を望んでいる可能性の話を聞きました。
 ※ノートにはゼストとの情報交換で得た情報等やこれまでの考察内容(本編参照)とメールの文面が記載されています。

【備考】
 ルーテシアのカレー@魔法少女リリカルなのは 闇の王女を完食しました。空の容器とスプーンがB-2の家屋に残っています。

175 ◆7pf62HiyTE:2009/09/13(日) 19:18:48 ID:4x.uDbTE0
投下完了しました。何か問題点や疑問点等があれば指摘の方お願いします。
今回のサブタイトルの元ネタは遊戯王デュエルモンスターズGXのED『太陽』です。
なお、今回約42KBと分割が必要になりますので分割点の指定を、ゼストの状態表まで(つまり>>162)が前編で以降(>>163)が後編です(前後編共に約21KBになるはず)。

176 ◆HlLdWe.oBM:2009/09/17(木) 16:55:27 ID:.hVpSjy20
ルルーシュ・ランペルージ、スバル・ナカジマ、チンク、泉こなた、早乙女レイ、柊かがみ分を投下します

177いきなりは変われない ◆HlLdWe.oBM:2009/09/17(木) 16:56:19 ID:.hVpSjy20
なんでこんなことになったんだろう?


     ▼     ▼     ▼


目覚めてまず目に入ったのは広い天井だった。
つまりそれは今自分が外ではなく、どこか建物の中にいる事になる。
しかも天井の広さから考えると、かなり大きな建物らしい。

とりあえず状況を整理しよう。

私は誰だ?――チンク。
稀代の科学者ジェイル・スカリエッティことドクターが生み出した戦闘機人、その5番目に当たる。
全員で12人から構成されるナンバーズという姉妹の中で私は姉としてまとめ役に徹する事が多い。

そして私は現在デスゲームという名の殺し合いに参加させられている。
同じナンバーズからはクアットロとディエチが同じく参加させられて、既にディエチは帰らぬ身となった。
まったく姉として不甲斐ない限りだ。
そして私も不意を突かれて両腕を焼かれ、それから――。

そこで記憶は途切れているが、おそらく気を失ったのだろう。
確か気を失う前は外にいたので誰かが建物の中に運んでくれたのだろう。
ここに運んでくれた者が殺し合いに乗っていないのか、または情報欲しさに助けたのかは分からない。
今はこんな身になっても生きているだけで良しとしよう。
そうだ、生きてさえすれば何か手は打てるはずだ。

たとえこの身が動かなくても、私を運んだ者にせめて――。

「ダメだ、やはり俺が行こう」
「でもルルーシュ」
「こいつが目を覚ました時、お前が傍にいないと話ができないだろ」
「……まあ、そうだけど」
「なら、スバルはここに残れ。そんなに心配するな、もうすぐこなたやレイも戻ってくるはずだ」

男と女の声がした。
男の声には聞き覚えがなかったが、女の声には聞き覚えがあった。

『タイプゼロ・セカンド』スバル・ナカジマ。

なるほど、彼女ならこの対応も納得がいく。
たとえ敵対していても管理局に所属するタイプゼロ・セカンドが怪我人を放置するはずがない。
しかもその姉であるタイプゼロ・ファーストは私達が目の前で拉致している。
その行方を聞き出すために助けたという可能性も高い。
どちらにせよ最終的に殺される可能性がだいぶ低くなって安心した。

「ルルーシュ、大丈夫かな」

同行者の名前はルルーシュか。
先程までどちらがここを離れるかで言い合っていたが、ルルーシュという者が行く事になって奥の方に入っていった。
私が起きた時のためにタイプゼロ・セカンドを残すと提案した事。
そこから考えてどうやらこちらの事情をある程度把握して且つ的確な判断が下せる人物のようだ。
なかなか有能な参加者だ……だが、なぜだろう。何かが頭に引っ掛かる……。

「あ、チンク! よかった、気が付いたんだね!」

ようやく私の意識が戻った事に気付いたか。
怪我のせいで身体が思うように動けなかったからこちらからコンタクトが取れなかったが、これでその問題もクリアだ。
そういえばタイプゼロ・セカンドは地上本部襲撃の時にかなりのダメージを負っていたはずだが、そのようには見えないな。
ああ、なるほど。
少し考えれば分かる事だ、つまりは私と一緒か。
私と同様にこの殺し合いに参加させるに際してプレシアが修理したのか。
だがそれはこの際置いておこう。

「一応ある程度の手当てはしたけど、その、あの……」

そう言ってタイプゼロ・セカンドは私から目を逸らした。
だがその目がチラチラと私の両腕に向けられている事はすぐに分かった。
両腕を失った私を気に掛けているのか。
どうやら本気で助けようとしているようだ。
それなら尚更安心だ。

「あ、そうだ。さっきチンクのデイパックの中身見ていたらさ、なのはさんの実家のシュークリームが入っていたから食べなよ。
 ほら、何か食べた方が身体には良いからさ」

ほう、精一杯の励ましか。
さっきから一言も喋っていない私をなんとか元気づけようとしてくれるのか。
だが少しずつ口に運ばれるシュークリームはかなり美味しかった。
おそらくミッドチルダに店を出せば評判は上々だろう。
敵同士でなければもっと違う関係を築けただろうに。
だがこうして敵味方関係なく接するタイプゼロ・セカンドなら任せられる。

「……た、頼みが……あ……」
「チ、チンク! え、頼みって、なに!? なんでも言ってみて!」

まさか敵に頼む事になるとは思ってもみなかったな。

「クアットロを……妹の事、た、頼んだぞ……」

まるで遺言だな。

178いきなりは変われない ◆HlLdWe.oBM:2009/09/17(木) 16:57:06 ID:.hVpSjy20


     ▼     ▼     ▼


少し前までは普通に生活していたはずだったのに。


     ▼     ▼     ▼


「……どうしたらいいんだろう」

目の前に横たわる銀の長髪の少女チンクを眺めながら、青のショートカットの少女スバル・ナカジマは悩んでいた。
あれから少し話した後、チンクはまた眠りに就いた。
どうやら思った以上に体力を消耗していたらしく、当分は安静にしておいた方が良さそうだ。
結局チンクはシュークリームを一つ食べただけで残りはスバルが支給されていた食料と一緒に頂いていた。

だがその僅かな間にいくつか分かった事がある。
まず一つはチンクが殺し合いをするつもりがないという事。
これだけでスバルは幾分ほっとした。
どのタイミングでここへ連れて来られたのかはまでは聞けなかったが、これなら穏便に話は進められる。
そしてもう一つは今まで出会った参加者の情報。
少なくても黒髪に黒コートの少年、アンデルセン、ヴァッシュは確実にデスゲームに乗っているらしい。
一方で天上院明日香、ユーノ・スクライア、アンジールは味方となり得るらしい。

スバルにとってチンクが明日香やユーノと知り合っていた事は幸いだったが、逆に素直に喜べない事もあった。

一つは黒髪に黒コートの少年。
どうもレイの知り合いの万丈目準という少年と風貌が一致するようだ。
そうなると万丈目はレイの危惧通り危険だと判断するのが妥当だろう。
もう一つはアンジール。
名前から参加者名簿に載っているアンジール・ヒューレーという参加者に間違いない。
チンクから詳しくは聞けなかったが、そのアンジールはアンデルセンに襲われていたチンクを助けたらしい。
その行為だけ見れば良い人に思えるが、よく考えれば単純にそうとは言い切れない。
つまりチンクの味方だがスバルにとっては味方ではない場合もあるのだ。
元々スバルとチンクは敵同士であり友好的になったのはつい最近だ。
だからアンジールがチンクにとって味方であって、スバルにとって敵という可能性は十分ある。
こればかりは実際に会ってみなければ判断しかねる。
この問題は一時保留として、ルルーシュやみんなが戻ってからまた考え直した方が良い。
他にもクアットロの事も考えなくてはならない。
だがこればかりは拘束という形で保護する事で妥協してもらうしかない。
いくらチンクの頼みとはいえ相手があの悪名名高いクアットロでは用心せざるを得ない。
あとは先程回収したチンクが持っていた名簿の件もある。
これも後々みんなと話し合っておかなくてはならない。

(それにしてもルルーシュ、大丈夫かな?)

現在ルルーシュは保健室にシーツなどの補給に出向いている。
チンクの応急処置それにこれからの事を考え手に必要だと考えての行動だった。
最初はスバル自身が行くと言ったのだが、チンクと話せるのはスバルだという理由でルルーシュが行く事になった。
正直なところスバルはルルーシュにあまり無理はさせたくないと思っていた。
まだ怪我も応急処置だけで安心できない状態な上に先程のシャーリーとの一件だ。
シャーリーと断定する要素はルルーシュの態度だけだが、それ以外に考えられなかった。
あれからルルーシュとその事について話していない。
だが顔には出さないが相当参っている事ぐらいスバルでも分かっていた。

(何もなければいいけど――)

いろいろと物思いに耽りつつ最後のシュークリームで栄養補給を終えたその時――。

『6時間ぶりね。みんな、ちゃんと聞いているかしら』

――悲報を告げる二度目の放送が始まった。

179いきなりは変われない ◆HlLdWe.oBM:2009/09/17(木) 16:59:15 ID:.hVpSjy20


     ▼     ▼     ▼


平凡だったあの日々がなぜか遠くに感じられる。


     ▼     ▼     ▼

180いきなりは変われない ◆HlLdWe.oBM:2009/09/17(木) 17:00:34 ID:.hVpSjy20
「今度は9人。全体の人数が減った事を考えるとペースは変わらずか」

二度目の放送をルルーシュはデュエルアカデミア内の廊下で聞いていた。
特に問題もなく保健室での用事を済ませてスバルの元へ帰る途中にその放送は始まった。
今回指定された禁止エリアでは初めて施設が入った。
その指定されたエリアには神社という施設があったが、まだ訪れていなかった。
果たしてそこに何があったのかルルーシュには知る由もない。
そしてこの6時間で死んだ者は9人、デスゲーム開始からこれで22人、既に全体の3分の1以上が死んだ事になる。
だがその事実よりも今回発表された死者の内容の方がルルーシュにとっては何よりも重要だった。
それはつまり放送の内容によってスバル達が受ける影響が深刻であると考えていたからだ。

(まず俺とこなたは大丈夫だ。俺は間接的に知った者ばかりで、確かこなたも同じはずだ)

しかしこなたの場合は知り合いと言っていたフェイトの名が上がった事が唯一の心配点ではあった。
だが前の放送でも同じ立場の高町なのはの名が上がっていたが、ある程度受け入れていたようだ。
今回もいくらか悲しみはすれど大きな問題にはならないと判断していいだろう。

(そしてチンクは情報不足なので保留。次にスバルだが――)

スバルの場合。
今回スバルの関係者で名が上がった者は実姉のギンガ、上官のフェイトとはやて、そして仲間のザフィーラ。
実に死者9人中4人がスバルの知り合いなのだ。
たまたま事前にフェイトの死は知っていたとはいえ内一人は実の姉だ。
いくらスバルが毅然とした態度を取っても相応のショックを受けているはず。
しかも前の放送でも6人の知り合いが死んだ事が発表されている。
前の放送も含めて気持ちを整理するための時間が必要かもしれない。

(しかしスバルはあれで強い奴だ。きっと大丈夫だ……問題は、レイだな……)

レイの場合。
これが最大の問題だった。
今回発表された死者の中にいた遊城十代という人物はレイの知り合いの一人だ。
しかもレイと最も繋がりが深い参加者である可能性が極めて高い。
その根拠はレイと情報交換をした時の発言だ。
あの時知り合いの人物関係を聞かれたレイは次のような答えを返した。

『遊城十代、万丈目準、天上院明日香の3人です』

この時レイが真っ先に上げた参加者が他ならぬ遊城十代なのだ。
あのような場合たいてい反射的に最も思い入れがある人物を先頭に持ってくるものだ。
つまりレイにとって遊城十代はこのデスゲームの中で最も気に掛ける人物という事になる。
それがどういう関係だったかは知らないが、これは由々しき事態と言えよう。
レイはスバルと違って普通に生活を送ってきた只の一般人だ。
そんな彼女が今回の悲報を聞いて大人しくしているとは到底思えない。
最悪の場合今回の放送の内容に耐えきれずにパニックに陥る可能性さえある。

181いきなりは変われない ◆HlLdWe.oBM:2009/09/17(木) 17:01:32 ID:.hVpSjy20

この時ルルーシュはある人物の事を思い出していた。
それは先程出会ったシャーリーだ。
シャーリーはルルーシュに恋をしていた。
だがルルーシュが最愛の父の死に追いやったゼロだと知ると、シャーリーはルルーシュを殺そうとしたのだ。
結果的にシャーリーのルルーシュへの想いが凶行を止めたのだが、一歩間違えればルルーシュが死んでいた可能性は十分あった。
だからルルーシュは十代を失ったレイがシャーリーのような行動に出るかもしれないと思ったのだ。
そしてその矛先はレイの行動を縛った自分達にも向けられる可能性もあった。

(これは不味い事になったな。もしレイがそんな事になれば余計な被害が出てしまう。そうなる前にいっそ――)

無味乾燥な寂しい廊下がルルーシュの脳裏に暗い影を落としていく。
そうつまりレイがパニックに陥る前に禍根を断とうというのだ。
備えあれば憂いなし、疑わしきものは排除するべきだという思考がルルーシュの頭の中で組まれていった。

(――いや、何を考えているんだ。そんな事をすればスバルやこなたに反発される事は明らかじゃないか)

ルルーシュは一瞬浮かんだ最悪のシナリオから目を背けさせた。
なによりまだ何もしていないレイを殺すなど正気の沙汰としか思えない。
むしろそのような状態にならないようにレイに精神的なケアを施すべきだ。

(いったい俺はなんでこんな事を……焦りすぎだ。疲れているのか?)

実際先程からルルーシュは身体がだるいと感じていた。
ここに来てから実に波乱な出来事ばかりだった。
特に病院での金髪男との邂逅は九死に一生を得る程の危機であった。
そのような事があったために身体にいつも以上に負担が掛かっているのだと結論付けた。

(少し荷物をデイパックの中に仕舞って負荷を軽くするか)

今ルルーシュが身に付けている物は元から着ているゼロの衣装、そして拳銃とインカム、それとアサルトライフルだ。
アサルトライフルは元々スバルの支給品だが、ミッドチルダには質量兵器がないから扱うのに難があると言うので受け取っていた。
スバルの戦力を削るようだが慣れない武器では逆に不利になる可能性もあったので、そこはルルーシュも納得していた。

(ここでアサルトライフルを使う事はないだろう、とりあえず仕舞っておくか。
 それとインカムも外しておくか……これはディエチの遺品みたいになってしまったな……。
 あと拳銃は――う……)

そこでルルーシュの視界は一瞬ぼやけ、そして若干の眩暈もした。
これは不味いと思ったルルーシュが軽く頭を振って気持ちを切り替えようとした瞬間――。

――一度きりのはずの揺れが何故か二度三度と続いた。

(え、なんだ? 視界がぼやけ――)

そしてその揺れが身体全体に広がった時、ルルーシュは廊下に倒れ伏していた。

182いきなりは変われない ◆HlLdWe.oBM:2009/09/17(木) 17:03:21 ID:.hVpSjy20


     ▼     ▼     ▼


でも、もうどうしようも出来ない。


     ▼     ▼     ▼


「さっきの施設の話ですけど――」

泉こなたと早乙女レイ。
ルルーシュの元へ異変を告げるべく急いでいた二人の頭上から声が掛けられたのは少し前にルルーシュが通った廊下だった。
二人に声を掛けたのはレイに支給されていた人格搭載型のユニゾンデバイスであるリインフォースⅡ。
今はギアスの継続時間を計るためにこなたの傍にいる。
ここで話の見えないレイにこなたは先程の施設に関する危惧の説明をした。
つまり人が集まりそうな機動六課や地上本部は既に破壊されているのではないかと。

「こなたが抱いている危惧はむしろ他の施設の方が当てはまると思うんですよ」

この会場内にミッドチルダを知る者が何人いるかは知らないが、まず全員という事はないだろう。
実際にこなたはここに来るまで存在すら知らなかったし、ルルーシュやレイも大して知ってはいなかった。
そのような魔法やミッドチルダを知らない者にすれば首輪解除のために向かう施設は当然機動六課や地上本部ではなくなる。
彼らにとって首輪解除のために向かう施設は一般的に知れ渡っている工場や軍事基地となるはずだ。
つまり破壊される可能性が高い施設とはそういった誰でも知っている施設になるのだ。

「だから結局どこも同じだと思うんですよ」
「そっか、確かにそうだよね。いやあ、『あたし』もまだまだ――あっ!?」
「どうしたの?」
「……一人称が『ボク』から『あたし』に戻った」

こなたはこれより2時間前にルルーシュから『一人称を『ボク』に変えろ』と云うギアスをかけられていた。
これ以降こなたの一人称はいつもの『あたし』から『ボク』へと変わっていた。
そして今『ボク』から『あたし』への一人称が戻ったという事はルルーシュの絶対遵守の力ギアスの効力が切れた事を意味する。
それに逸早く気付いたリインはすぐさま持続時間の確認に入った。
リインにはギアスの継続時間を計るという役目が課せられていたからだ。

「だいたい2時間というところですね」

素早く出されたリインの答えにこなたとレイは複雑な表情を浮かべた。
このデスゲームにおいて2時間も相手を意のままに操れるとしたらそれはかなり有利だ。
だが相手に下せる命令は一度だけ、しかもそのたびにルルーシュに相応の負担が掛かってくる。
この結果をルルーシュがどう思うかは正直本人がいないと分からなかった。

「そうだリイン。時空管理局ってあたしたちを助けに来られる程の力あるの?」

それはこなたがふと思った疑問だった。
スバルもリインも時空管理局なる組織に所属している以上、元の世界からいなくなれば何かしらの騒ぎになるはずだ。
つまり時空管理局がプレシアの企みを察知する可能性があるのだ。
これはこなたにしてみればゲームにおける援軍ユニットのようなものだ。
それは今まで大して何の力にもなれなかった自分に焦った結果だったのかもしれない。
その焦りがこなたを急かすのだろう。
どんな小さな事でもいいからみんなのために役に立ちたいと。
だからどんな情報でも活用できないかと。

183いきなりは変われない ◆HlLdWe.oBM:2009/09/17(木) 17:03:52 ID:.hVpSjy20

「うーん、確かに時空管理局は次元世界の秩序を司る組織。このような事態なら既に捜索が為されていると思います。でも――」

リインはそう前置きしてから自分の考えを述べていった。
結論から言うと時空管理局の助けは期待できない可能性が高い。

まずこのような大規模な企てを管理局の目から隠蔽し続ける事は困難であるはずだ。
少なくとも管理局や元の世界の仲間が既に何らかの捜索の手を打っていると考えていいだろう。
だがその一方でプレシアは一度管理局にアリシア復活の計画を破綻させられた経緯がある。
しかもプレシア自身も以前はミッドチルダの中央技術開発局で第3局長として働いていた経歴を持っている。
これらの事から当然ながら管理局の力の程はよく知っているはずだ。
その上でこのような大規模な殺し合いをするという事は余程管理局に察知されない自信があると考えて間違いない。
さらにいくつものパラレルワールドから参加者を連れて来るという事はその世界の数だけ管理局の目に留まる可能性が高くなる。
例えばスバルとリインは別の世界から連れて来られたので、それぞれスバルの世界の管理局とリインの世界の管理局が捜索の手を打っているはずなのだ。
これは参加者の一部であるので本当のところはもっと多くの世界の管理局が何らかの行動を起こしているはずだ。

それにもかかわらず未だ管理局が動いているという兆しが全くない。

つまりこのデスゲームはかなり高度に隠蔽されている可能性が高い。
だからリインは時空管理局の助けを得るのは難しいという結論を出したのだ。
もちろんこれはリインが管理局の力を信じていないという事ではない。
むしろ管理局に所属して直にその力を知っているからこそ辿り着いた結論だ。

「そういう訳であまり外からの援軍は期待できないかもなのですよ」
「そっか。でも一度失敗しているから同じ過ちを繰り返さないようにするのは当然だよね」

質問に答えたリインと同様に質問した当人であるこなたもこの回答には少し落胆させられた。
外からの援軍が期待できないという事はますます中にいる自分達が何とかしないといけない。
これからの険しい道のりを考えて少々暗くなってしまう二人であった。


このままならこの話はここで終わるはずだった。
二人の傍で全てを聞いていた一人の少女さえいなければ――。

184いきなりは変われない ◆HlLdWe.oBM:2009/09/17(木) 17:04:39 ID:.hVpSjy20


     ▼     ▼     ▼


いまさら後戻りなど出来るはずがない。


     ▼     ▼     ▼


「ルルーシュ、ルルーシュ! しっかりして!」

誰だ、俺の名前を呼ぶのは。
誰だ、俺の眠りを妨げるのは。

「やっぱり傷口が化膿しています。は、早く治療しないと!」

ん、この舌足らずな声はリインフォースⅡか。
それにさっきの声はこなたか。
いったいどうしたんだ、そんなに慌てて?
それに俺は何をして……ああ、そうだ。

確か保健室にシーツを取りに行って……エントランスに戻る途中で……どうやら気を失ったみたいだな……。
疲労か、貧血か、あるいは両方か。
それによく考えてみればここに来てから何も食べていなかったな。
いろいろ重なって廊下に倒れこんだか。
そしてそこに通りかかったこなたとリインが俺を見つけて――ん、向こうにもう一人いるな。

あれは……レイか……?
まだ視界がぼやけてはっきりとは分からないが、あの赤い服装はレイで間違いないな。
でもなぜ離れた場所に立って、両手に拳銃を――。

え?

おい待て。

レイが両手に握っているあれは……俺が持っていた拳銃じゃないか!?
いつのまに取られたんだ!?
それよりも確かあの型はSIG P220だったはず、あれなら多少の無茶でレイでも撃てるぞ!

レイ、やはり十代の死のショックで自暴自棄になったのか。
残念だ、だがそれなら仕方ないな。

スバルを、みんなを守るためにも、お前には死んでもらう!

「ヒッ!?」

突然レイが小さな悲鳴を上げた。
それに釣られてかこなたとリインも何か異常が起きていると察知したらしい。
だがもう遅い。
レイ、今頃見つかった事に気付いて身体が震えているのか?
それは好都合だ、その隙にチェックメイトだ!

「レイ、俺に従え!」

だがそのギアスはレイに届く事はなかった。
それを阻んだものはこなたでも、リインでも、ましてやレイでもなく――。


――天から降り注ぐ瓦礫だった。

185いきなりは変われない ◆HlLdWe.oBM:2009/09/17(木) 17:05:11 ID:.hVpSjy20


     ▼     ▼     ▼


また何人か人が死んだ。


     ▼     ▼     ▼


ここで時間は少し巻き戻る。

「そんな……ギン姉まで……」

デュエルアカデミアのエントランスで放送を聞き終えたスバルは呆然としていた。
一応禁止エリアと死者は放送を聞きながら書き記しておいた。
そして最後のプレシアからの提案を聞き終えた時、スバルは深い悲しみに包まれていた。
今回発表された死者は9人。
1回目の放送より減っているとはいえ全体の人数から考えれば殺し合いは止まる事なく順調に進行しているようだ。
それだけでもスバルは悲しみと憤りを隠せなかった。
だがそれ以上に死者の中に知っている名前が6人もいた事がスバルを悲しみへと誘っていった。

アレクサンド・アンデルセン――先程チンクから聞いた危険人物(誰であっても人の死は聞きたくない)。
遊城十代――レイの知り合い。
八神はやて、フェイト・T・ハラオウン、ザフィーラ――機動六課の仲間。

そして――ギンガ・ナカジマ。

スバルの実の姉もこの6時間で死んでしまった。

スバルは泣いていた。
身体から悲しみを吐き出すように。
最初はすすり泣くように、そして次第に嗚咽を交えて泣いた。
ここまで発表された死者22人のうち、スバルと縁のある者は10人にも及ぶ。
普通ならその悲報に押しつぶされそうなところだが、皆を守ると決めたスバルは耐えていた。
だがそれでも耐えきれずに泣く事もある。
しかもギンガは実の姉であり、スバルと接していた時間が最も長い。
もしかしたらギンガは別の世界のギンガでスバルの知っているギンガでなかったかもしれない。
それでも悲しいものは悲しい。

(ギン姉……ギン姉……)

ふと思い返せばギンガとの思い出が鮮明に思い出される。
そのたびにスバルはまた涙を流すのだった。
今ここには前の時のようにこなたやルルーシュはいない。
一応チンクがいるが、すぐに目覚める気配はない。

だから今のうちに悲しみは全て出し切ろう。
そして気持ちの整理が付いたらまた決意を新たに進もう。

そんな事を思ってスバルはまた涙を流そうとして――。

「誰!」

――来訪者の存在に気付いた。
下を向いていたのですぐには分からなかったが、足音が聞こえたので気付いたのだ。
スバルはすぐに気持ちを切り替えて来訪者の正体を確かめるべく顔を上げた。

スバルの視線の先にいたのは入口に身体を半分隠してスバルの様子を窺っていた紫髪のツインテールの少女だった。

186いきなりは変われない ◆HlLdWe.oBM:2009/09/17(木) 17:05:41 ID:.hVpSjy20


     ▼     ▼     ▼


もう余計な事は考えないでおこう。


     ▼     ▼     ▼


柊かがみとバクラは二回目の放送をホテルのロビーで聞いていた。
プレシアの声で進行する放送を聞きつつ禁止エリアと死者を名簿と地図に記す作業は淡々としたものだった。
だが唯一死者の名前にLの名前がなかった事がかがみを驚かせる事となった。
だがすぐにバクラとの協議の結果、万丈目のように誰かにカードデッキを押し付けて難を逃れたのだろうと結論付けた。
王蛇のカードデッキが問題なく使用できている点が何よりの証拠だった。
Lは少女を縛りあげて監禁するような危険人物であるから自分の命欲しさにそういう行動に出ても不思議ではなかった。
ちなみに一回目の放送の内容もバクラから聞いていたので禁止エリアで爆死という心配もなくなり安心した。

そしてもう一点死者の中にこなたとつかさの名前がなかった事がかがみにとってはほっとできる事であった。
だがそんな甘い考えは捨てた方がいいと同時に思った。

その後相談の結果、二人はまずはデュエルアカデミアに向かう事にした。
理由はバクラの進言だった。
曰く、早く行かないと他の奴に使える物を全部持って行かれるかもしれないと。
その意見にかがみも賛同して、途中の映画館はひとまず素通りする事にした。
もう既にかがみのバクラへの信頼はかなりのものにまで昇華していた。
それはここに来てから最も真摯に対応してくれた者がバクラであったというところに寄っている。

そしてすぐにホテルを引き払ったが、その際のかがみの姿はホテル到着時と変わっていた。

まず身に付けている服装がナンバーズスーツからホテルの従業員の服装に変わっている点。
これはいつまでも汗や埃で汚れた下着を替えたいというかがみの要望が理由だった。
ホテルの従業員が使う部屋を見つけたついでに下着と服を拝借したのだ。
ちなみにナンバーズスーツも着替えたのはナンバーズスーツだと身体のラインがくっきりと見えるからだ。
それに比べて従業員の服装は清潔且つ淫らではなく、何より見慣れた服装なので安心する。
バクラが少々渋っていたが、そこはかがみの意見を尊重する事で合意した。

もう一つは持っている道具だった。
かがみがホテルに来た時、持っていた道具はEx-stだった。
だが今かがみが持っている物はサーフボードのようなもの――ライディングボードになっていた。
それはナンバーズ11番ウェンディの固有装備であり、元々はエリオに支給されたものだった。
だがエリオはそれを確認しないまま命を落とし、巡り巡ってかがみの手に渡ったのだ。
その説明書きを見る限り少しコツを掴めば誰でも乗れるという事に気付いた二人がこれを使わない理由など無かった。
これを使えば歩くよりも早く移動できるからだ。
一方でEx-stは邪魔になるようなのでデイパックに仕舞っている。

そして移動を開始してライディングボードをなんとか上手く乗れるようになった頃、かがみはデュエルアカデミアに到着した。
そこで最初に目にしたものがエントランスの中央で泣き崩れている青のショートカットの少女と傍らで横になっている少女だった。
遠くからではこれ以上の事は分からなかったのでもっと近くで様子を探ろうとしたその時――。

「誰!」

――青髪の少女に気付かれてしまった。

いきなり顔を上げてきたので当然ながら姿を隠す時間などなかった。
当初は身を隠して近づいて様子を窺ってから行動するつもりだったが、呆気なく破綻してしまった。
こうなれば強硬手段に出るしかないかと観念したその時――。

「もしかして柊かがみさん?」
「え? なんで私の名前を知っているのよ?」

――なぜ初対面の相手に名前を呼ばれた。

187いきなりは変われない ◆HlLdWe.oBM:2009/09/17(木) 17:06:16 ID:.hVpSjy20


     ▼     ▼     ▼


私は死にたくない、生き残りたい、ただそれだけが望み。


     ▼     ▼     ▼


スバルは困惑していた。

確かにエントランスの入り口にいた少女は柊かがみであった。
だがここでスバルにとって複雑な問題が持ち上がった。
かがみはスバルの事を全く知らなかったのだ。
元々スバルがかがみの事を知っているのはこなた経由で情報を得ていたからだ。
そして「ゆーちゃん」という人物のクラスにスバルが転入してきた事もこなた経由での情報だ。
だから当然親友であるかがみもスバルを知っていると思っていたのだが、そうではなかったらしい。

しかしスバルにはその原因に心当たりがあった。
つまりここにいる『柊かがみ』は『こなたの世界の柊かがみ』ではないのだ。
実際にこなたとかがみの間では僅かなズレがある。
詳しく言うと、こなたはなのは達が転校してきてしばらく時間が経過した時から連れて来られたのに対して、かがみは転校初日の夜から連れて来られている。
なぜプレシアがそのような事をしたのかは杳として知れないが。

だからスバルはかがみを混乱させないためにも参加者が別々の世界または時間から連れて来られている可能性について話した。
最初は呆然と聞いていたかがみも説明が終わると何やら深刻そうな表情になっていた。
自分の知り合いが実はそうではないかもしれないという事実が判明したのだから至極当然の反応だ。
しかも現時点で既にこなたとかがみは別の世界または時間から別々に連れて来られた事が確定したのだ。
一般人のかがみにとってその衝撃は相当なものだろう。
現にその事を知ったかがみは一人で考えたいと言ったきり、少し離れた場所で何か呟いていた。

それをスバルは黙って見ていた。
下手に余計な事を言ってかがみを刺激するのは良くないと思ったからだ。
だからそっと見守って時間が経ったらまた話そうと考えていた。

(それにしてもルルーシュの帰りが遅い気がする。やっぱり私が行けば良かったかな)

スバルはかがみと同様に保健室に向かったきり音沙汰ないルルーシュの事も気に掛かっていた。
本来ならもうとっくに帰ってきてもいい時間だ。
いくらルルーシュが本調子でないとはいえ遅すぎる程である。
ここは自分が探しに行くべきかとスバルが立ち上がろうとすると、いきなりエントランスに少女の声が響いた。

「そう、そうなのね」

それは先程まで落ち込んでいる様子を見せていた柊かがみのもの。
だがその事実をスバルは信じられなかった。
なぜならかがみの声には重々しいものが混じっているような気がしたからだ。

「あ、はは、あはは、あはははは――!!!!!」

それはひどく破滅的な笑い声だった。
明らかに女子高校生の出すような笑い声では断じてなかった。

「え、かがみさん、どうし――」

その時スバルは気付いていなかった。
かがみの笑い声があまりにも異常だったために――。

『ッシャァァァァァアアアアア!!!!!』
「――ッ、スバル!!!」

――鏡の向こうから迫り来る敵に気付けなかった。

188いきなりは変われない ◆HlLdWe.oBM:2009/09/17(木) 17:06:55 ID:.hVpSjy20


     ▼     ▼     ▼


また一人殺した、でも仕方ないでしょ。


     ▼     ▼     ▼


それに気付いたのは偶然だった。
ふと薄ら寒い殺気を感じて目が覚めたのだ。
これは虫の知らせと言うべきものか。
とりあえずそんな事はどうでもいい。
殺気の正体はすぐに分かった。
床に転がっている空のペットボトルとビニール袋。
おそらく食事の跡と思しきその残骸に紫の蛇が映っていた。

『ッシャァァァァァアアアアア!!!!!』
「――ッ、スバル!!!」

蛇が飛び出すのと私がスバルを突き飛ばすのはほぼ同時だった。
そういえばいつのまにか呼び方がスバルになっているな。
まあ、あの怪我でよく咄嗟にここまで動けたものだ。

だが身代わりに私が蛇に喰われてしまったがな。

結局、姉がしてきた事は何だったのか。

もうすぐ死ぬ身だ、それを考える事もないか。

タイプゼロ・セカンド――いやスバル・ナカジマ、後は頼んだぞ……。


【チンク@魔法少女リリカルなのはStrikerS  死亡確認】

189いきなりは変われない ◆HlLdWe.oBM:2009/09/17(木) 17:07:27 ID:.hVpSjy20


     ▼     ▼     ▼


もう私の手は血で汚れている。


     ▼     ▼     ▼


「うそ、チンク……チンクゥゥゥ!!!」

それは一瞬の出来事だった。
スバルの注意が一瞬疎かになったちょうどその時に起こった出来事だった。
だが何が起こったのかは把握できた。
紫の蛇に喰われかけたスバルを庇ってチンクが代わりに紫の蛇に喰われた。
言葉にすればそれだけで済むような出来事の中でチンクは死んだのだ。

(あ、あたしの不注意で死んだんだ……あたしがもっとしっかりしていればこんな事には――)
『ッシャァァァァァアアアアア!!!!!』
「う、プロテクション」

だがスバルにチンクの死を悼む暇はなかった。
チンクを喰らってもまだ足りぬとばかりに獰猛なベノスネーカーはスバルに再度襲いかかって来たのだ。
しかしスバルも同じ過ちは繰り返さないとばかりにプロテクションを展開してベノスネーカーの進行を阻む事に成功した。
ベノスネーカーの毒牙とスバルのプロテクションが競り合い、一進一退の様相を呈していた。
だがいくらなんでもベノスネーカーの巨体をいつまでも支えているのは今のスバルでも無理があった。

(不味い、このままだと競り負ける。どこかで打点をずらして体勢を整え『Aufmerksamkeit!(警告!)』え!?)

その刹那、背後から放たれた凶光がスバルを無防備な背中を飲み込んだ。

190いきなりは変われない ◆HlLdWe.oBM:2009/09/17(木) 17:08:47 ID:.hVpSjy20


     ▼     ▼     ▼


だから決めた。


     ▼     ▼     ▼


「だ、大丈夫ですか、こなた」
「うん、なんとか無事だよ。でもいったい何があったの?」
「リインにもよく分からないです。咄嗟に防御魔法を展開するだけで精一杯でしたから」

こなたとリインはお互いの無事を確認すると、周囲の様子を恐る恐る窺った。
まだ周囲には埃が立ち込めて様子がまるで分からなかったが、近くの壁には縦横に亀裂が走っていた。
どうやらデュエルアカデミアの何処かで爆発か何かの衝撃で建物に亀裂が入ったようだ。
つまり長居をすれば施設の倒壊に巻き込まれる可能性が高いという事になる。

「そうだ、ルルーシュとレイは!?」
「すいません。レイは離れていたので防御魔法の範囲外でした」

その答えを聞いた時、こなたの脳裏に最悪の状況が浮かんだ。
建物に亀裂が走って天井や壁が脆くなった挙句に瓦礫として降り注ぐ様が。
そしてその下にいたレイは為す術もなく潰れて、血だまりの中に肉片が――。

「そ、そんな……じゃあレイは……」
「……でもどうやらあまり瓦礫は落ちていないみたいです。だから無事だと思いますよ」
「あ、そう言われてみれば……」

確かにリインの言う通りだった。
先程より少し埃が薄らいだために周囲の様子が分かるようになっていた。
一見すると縦横に亀裂が走って今にも崩れそうだが、案外壊れている壁や天井は微々たるものだ。
周囲の様子を確認すると、こなたはほっと胸を撫で下ろした。
少なくともレイが死ぬという最悪の結果は見なくて済みそうだ。
そうなるともう一人の行方が気になってくる。

「ところでルルーシュは……」
「ルルーシュならこなたの足元で寝ているですよ」

周囲をキョロキョロと見渡していたこなたにリインが声をかけた。
どうやら周囲ばかり見ていたせいで足元を見落としていたみたいだ。
まさしく灯台もと暗し。

「あ、いたいた。ルルーシュ、もう大丈夫だ――」

――ぴちゃ。

「へ?」

こなたは不思議に思った。
ルルーシュに目を向けるために少し足を動かした瞬間、水溜まりを踏むような音が聞こえたのだ。
だが周囲を見ても水道管が破裂している気配などない。
それならこの水溜まりはいったい――。

「こなた! それ血だまりです!!」
「え、ええ!? そんな、ルルーシュ! ルルーシュ! ねえ、起きてよ!!」

リインに遅れること数秒、ようやくこなたにも状況が分かってきた。
ルルーシュは真っ赤な血だまりの中に倒れていたのだ。
原因は右腕の傷口。
そこがさっきの衝撃で開いてしまったのだ。
その場しのぎの止血と応急処置だけで放置していた事が裏目に出た。
ずっと傷口を防ぐのに使っていたスバルの鉢巻きは長時間の使用で緩んでいたのだ。

191いきなりは変われない ◆HlLdWe.oBM:2009/09/17(木) 17:10:08 ID:.hVpSjy20

「こなた、ルルーシュの右腕は化膿もしていたです! このままの状態が続けば命が危ないです!」
「それって結構ヤバいんじゃ。早く何とかしないと!」
「早く正規の治療を施さないと……ヒーリングだけではもう焼け石に水です!!」

リインの悲痛な叫びを聞いているうちにこなたは今の状況に至る発端を思い出していた。
そもそもの始まりはこなたとレイが合流してルルーシュの元に戻っている最中に遡る。
途中いくつか今後について話しながら移動していると、廊下で倒れているルルーシュを発見したのだ。
エントランスで待っているはずのルルーシュがなぜ廊下で倒れていたのか不思議だったが、それ以上に大きな問題が判明した。
ルルーシュの右腕の傷口が化膿して発熱していたのだ。

おそらく応急処置だけでは細菌の侵入を食い止める事ができなかったのだろう。
しかも失血によって体力も相当弱っていたはずだ。
さらに右腕の傷口に巻かれたスバルの鉢巻きは未だに替えないまま今に至っている。
それでは細菌の良い温床になるばかり。
今まではいくつもの緊張の中でルルーシュは発熱の前兆を疲労だと判断して無視してきた。
それはただスバルを守りたいがために多少の無理はしていたのだ。
だがそれは反って状態を悪化させる事となっていた。
実際は表面上の変化はないように見えたが、その実ルルーシュの身体は限界に達していたのだ。

ルルーシュの容態に気付いたリインが急いでヒーリングを施したが、リインの力もここでは制限されていて状態は芳しくなかった。
だが必死の治療が功を奏したのか、しばらくするとルルーシュは目を覚ましてくれた。
まだ焦点が定まらないのか目が虚ろだったが、意識を取り戻した時はほっとした。

しかしその後に事件は起こった。

なぜか目覚めたルルーシュはいきなり左目に紅い不死鳥の紋を浮かび上がらせたのだ。
それは絶対遵守の力であるギアスが発動する前兆だ。
なぜこのタイミングで、誰に、どんな目的で。
こなたとリインはその一瞬にいくつもの疑問が湧いた。
だからどうしていいか分からず結局ギアスの発動を止めさせる事ができなかった。
まさか化膿による発熱の影響で思考が錯綜しているなど思いもつかない事態であった。
だが結果的に『俺に従え』というレイへのギアスは不発に終わった。
あの瞬間に起こった爆発の影響で落ちてきた瓦礫によって。
それは今になってそれほど大きくなかったと判明したが、ギアスを遮るのには十分なものであった。

そして結果的にレイにギアスは掛けられなかったが、ギアスの発動自体は成立していた。
だから当然ギアスに掛けられた制限でルルーシュには多大な疲労が残る事になった。
それは辛うじて意識を取り戻していたルルーシュを再び昏倒させるのに十分だった。
しかも意識を失う際に無意識のうちに倒れる身体を支えようと腕を出したのが決定的だった。
身体の支えとして出した右腕は既になく、傷口をもろに床に直撃させる結果となった。
その衝撃で止血用の鉢巻きが取れて傷口が開くなど、まさに泣きっ面に蜂の状態だ。

これらの原因の一端がルルーシュにもあるとはいえ自業自得にはあまりにも不幸な出来事であった。

だがそもそもこなたとリインはルルーシュの行動の理由など知る由もない。
二人にとってはいきなり重症のルルーシュがレイにギアスを掛けようとした事ぐらいしか分かっていなかった。

だから二人は知らなかった。

「ルルーシュ……あなたのせいで十代様はアアァァァァ!!!」

ルルーシュが目撃した光景を。
レイが拳銃の銃口をルルーシュに向けている様子を。

192いきなりは変われない ◆HlLdWe.oBM:2009/09/17(木) 17:12:28 ID:.hVpSjy20


     ▼     ▼     ▼


もう迷わない。


     ▼     ▼     ▼


きっかけは些細な会話だった。
リインが話していた時空管理局の救援に関する会話。
それ自体は一応聞いていたが、その中に出てきた一つの事実がレイには衝撃的だった。

それは『パラレルワールドから参加者を連れてくるごとに時空管理局に発見される可能性が高い』という内容だ。

つまりプレシアにとってはパラレルワールドから参加者を連れてくる事は何らかのリスクを負う事になる。
ではなぜプレシアはリスクを負ってまでそのような事をするのか。
それはもちろん参加者の間で誤解を生じさせて殺し合いを誘発してデスゲームを円滑に進めさせるためだろう。

だが参加者全員にそれが当てはまるだろうか。

確かに別世界の影響で知り合いだと思っていた者が自分の事を知らない、あるいは時間が違うせいで味方だと思っていた者が敵になる。
まさに誤解による殺し合いの促進だ。
だがこれによって殺し合いに影響を及ぼす者は何らかの力のある者に限られる。
例えばもし自分と十代の間に誤解が生じたところで大して力のない二人など他の参加者から見ればどうでもいい存在でしかない。
一応カードの扱いに一日の長があるが、そのような力はカードがなければ何の役にも立たない。

つまり自分達のような何の力もない一般人は誤解を生じさせてもあまり意味がない。
パラレルワールドからリスクを冒して連れてくるだけのメリットが無いのだ。

この結論に至った時、レイは絶望した。
先程の放送で呼ばれた遊城十代がレイの世界の十代で間違いないという事になるからだ。
本当はこのような結論など否定したかった。
だがどう考えても否定できる理由など見つからなかった。

だからレイは一人静かに恨んだ。
十代を殺した犯人を。
そして――。

――レイの行動を阻んだルルーシュを。

ここに来てからレイは実に半分以上の時間をこのデュエルアカデミアで過ごしている。
その原因はルルーシュだ。
ルルーシュの疑いの目を警戒するあまり行動は慎重にせざるを得なくなり、結局のうのうと時間を浪費するだけだった。
確かにいくつか収入はあったが、それよりももっと会場を巡って十代のために何かできたはずだ。
ルルーシュさえいなければスバルやこなたを上手く言いくるめて別行動できたかもしれない。
だからこそルルーシュの存在が許せなかった。
だがいくら憎んでもレイの手持ちには人を殺せるような道具はない。
『レッド・デーモンズ・ドラゴン』は使用に関して不確定要素がありすぎる。
唯一の拳銃はルルーシュに取られたままだ。
だからレイは一度生まれた負の感情を持て余していた。

193いきなりは変われない ◆HlLdWe.oBM:2009/09/17(木) 17:13:03 ID:.hVpSjy20

だが好機は意外にもすぐ訪れた。

エントランスに向かう廊下の途中でルルーシュが倒れていたのだ。
しかも右腕の傷が化膿して発熱を引き起こして重症になっていた。
すぐさまこなたとリインはルルーシュの応急処置に取り掛かり、レイはルルーシュやこなたの荷物を預かる事になった。
レイが治療に参加しないのはレイより年上のこなたの方が治療の助けには向いているからだ。
だから治療の邪魔になるようなデイパックや銃器を預かる役はレイになったのだ。

図らずともレイの手に人殺しの道具が舞い込んできたのだ。

レイの目の前ではこなたとリインが床に救急箱やシーツなどを広げて必死の治療に当たっている。
もちろん二人が意識を向けているのは重症のルルーシュで、仲間だと思っているレイは意識の外になる。

だからルルーシュから取り戻した銃を構えても何の反応もなかった。
もう照準は合わせたので後は引き金を引くだけだった。

だがいざ引き金を引こうとすると指が動いてくれなかった。

本当にこれでいいのか。
もしかして自分は間違っているんじゃないか。
こんな事をして結果的に何になるのか。

そんな疑問がレイの胸中に渦巻いた。
そもそもレイは十代を守るために危険人物を殺そうと決意したが、今に至るまで誰も殺していない。
手違いで無害なフェイトを殺してしまったと思った時は一瞬たじろぎさえしていた。
誰かを殺す決意はしたが、まだ誰かを殺す覚悟は固まってはいなかったのだ。
だから銃口をルルーシュに向けたまでは良かったが、そのままの状態から一歩進む事ができなかった。

だが皮肉にもその最後の一歩を踏み出す一押しになったのはルルーシュであった。

あの時ギアスを掛けられかけたレイは悟ったのだ――もうここに自分の居場所はないと。
確かにレイはルルーシュを撃とうとしたが、まだ覚悟は定まっていなかった。
だからルルーシュが目覚めて目が合った時、自分の行動がばれたと思って身体が震えたのだ。
もう全て打ち明けてしまおうかと思うぐらい実際のレイは精神的に追い詰められていた。

しかしそんなレイにルルーシュは躊躇う事なくギアスを掛けようとした。
確かに銃を撃とうとしたレイに非がある。
だがただ銃口を向けただけでギアスを掛けるとは如何なものか。
こちらはまだ撃つ覚悟さえ固まっていなかったというのに。
しかもギアスの内容は『俺に従え』――レイを完全に従順させるものだ。
これがまだ『銃を捨てろ』や『撃つな』ならまだ納得がいく。
だが『俺に従え』などまるでレイがルルーシュの道具であるかのような言い草だ。

そしてレイは悟ったのだ――ルルーシュにとって自分は使い捨ての効く道具のような存在だと。
それに気付いた時、頭のどこかで何かが吹っ切れた気がした。
そして激しい怒りと憎しみが湧きあがってきた。
自分はこんな奴のために十代様を守る時間を浪費してしまったのかと。

だから二度目に銃を構えた時、もうそこに躊躇はなかった。
だがこの時は声を上げたせいでこなたとリインに気付かれて、あまつさえ3人の逃亡を許してしまった。
銃を撃った反動で腕が少し痺れているが、問題ない。
一応逃げていった方角は裏口の方なのでどの方向へ行ったのかはだいたい分かる。
ここで自分が調べた範囲では目ぼしい物はなかったからここに長居する必要もない。

「ルルーシュ、あなたを殺して、次に十代様を殺した奴も殺す。そして――」

その時にはもう全てが終わるだろう。

「――私も死ぬ。ごめんなさい、十代様」

どうせ元の世界に十代はいない。
死者蘇生の可能性など先程考えた通り、期待するだけ無駄だ。
それなら生きているより死んだ方がいい。
もしかしたら天国という場所があって十代と再会できるかもしれない。

「……私――いやボクはもう恋する乙女なんかじゃない」

そこには恋する乙女の姿はなかった。
そこにあるのは悲しい復讐者の姿だけ。

194いきなりは変われない ◆HlLdWe.oBM:2009/09/17(木) 17:13:53 ID:.hVpSjy20


【1日目 日中】
【現在地 G-7 デュエルアカデミア裏口付近】
【早乙女レイ@リリカル遊戯王GX】
【状態】健康、銃の反動で腕が少し痺れている、自暴自棄
【装備】SIG P220(8/9)@リリカル・パニック、
【道具】支給品一式×4、フリーズベント@仮面ライダーリリカル龍騎、光の護封剣@リリカル遊戯王GX、レッド・デーモンズ・ドラゴン@遊戯王5D's ―LYRICAL KING―、
    リインフォースⅡのお出かけバッグ@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS、情報交換のまとめメモ、投げナイフ(9/10)@リリカル・パニック、
    バスターブレイダー@リリカル遊戯王GX、レギオンのアサルトライフル(100/100)@アンリミテッド・エンドライン、洞爺湖@なの魂、
    小タル爆弾×2@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、インテグラのライター@NANOSING、医薬品一式、メス×3、医療用鋏、
    ガムテープ、紐、おにぎり×3、ペットボトルの水、火炎瓶×4、ラウズカード(クラブのK)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、
    ハイパーゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、シーツ数枚
【思考】
 基本:目的(ルルーシュと十代を殺した者を殺す)を果たしてから死ぬ。
 1.ルルーシュを追いかけて殺す。
 2.十代を殺した者を殺す。
 3.レッド・デーモンズ・ドラゴン……使えるかな?
 4.フェイト(StS)、万丈目を強く警戒。
【備考】
※フェイト(A's)が過去から来たフェイトだと思っています
※フェイト(StS)、万丈目がデュエルゾンビになっていると思っています(スバル達には「自分の世界のフェイトは敵に洗脳されているかもしれない」と説明しました)。
※ここではカードはデュエルディスクなしで効果が発動すると知り、またデュエルデュスクを使えばカードの効果をより引き出せると思っています。
※カードとデュエルディスクは支給品以外にも各施設に置かれていて、それを巡って殺し合いが起こると考えています。
※レッド・デーモンズ・ドラゴンが未来の世界のカードだと考えています(シンクロ召喚の方法がわかっていません、チューナーとチューナー以外のモンスターが必要という事は把握済みですがレベルの事はわかっていません)。
※正しい召喚手順を踏まなければレッド・デーモンズ・ドラゴンを召喚出来ないかどうかは不明です。
※レイの調べた範囲でデュエルアカデミアに目ぼしいものはありませんでした。
※死んだ十代は自分と同じ世界の十代で間違いないと思っています。
※かなり破滅的になっているので周りの話をあまり聞かない可能性が高いです。

195いきなりは変われない ◆HlLdWe.oBM:2009/09/17(木) 17:15:21 ID:.hVpSjy20


     ▼     ▼     ▼


生き延びたいなら躊躇ってはいけない。


     ▼     ▼     ▼


「ダメですこなた! やっぱりさっきの衝撃で傷口が開いてヒーリングだけじゃ手に負えないです!!」

背中からリインの必死の訴えを耳にしつつこなたは決死の逃避行に挑んでいた。
なんとか裏口からデュエルアカデミアを抜けて現在は先程確認した煙の方に向かっている。
大した理由はない、ただ咄嗟にその方角が思いついただけだ。
本当はスバルと合流したかったが、あの時デュエルアカデミアを襲った衝撃はエントランスの方からであった。
だからそこも安全とは言えない。
しかも今迂闊に戻ればレイを鉢合わせになる可能性もあるのだ。
実のところ今の状況は最悪だ。
まず近くに頼れる存在がリインしかいない上に、そのリインも治療で手が離せない状態。
そしてこなたは重症のルルーシュを背負って逃げている最中。
時々背丈が違い過ぎるから背負うのは大変だと泣き言を言いたくなるが、そんな暇などありはしない。
今は一瞬たりとも気を抜けない。

なぜなら気を抜けばたちまち背後から追いかけてくるレイに殺されるかもしれないからだ。

あの時なぜレイがいきなり発砲してきたのかは分からない。
だがレイの顔は相当追い詰められたものだった。
きっと何か深い事情があった事だけはなんとなく分かった。

だが現状が最悪である事に変わりはない。
最初の銃弾とその後の逃亡はリインのおかげで何とか上手くいったが、そうそう何度も上手い事いくわけがない。
今のこなたはデイパックさえない状態なのだ。

まさに頼れるのは己の身一つのみ。


【1日目 日中】
【現在地 G-7 北西部】

【泉こなた@なの☆すた】
【状態】健康、ルルーシュを背負っている
【装備】なし
【道具】なし
【思考】
 基本:かがみん達と共に家族の元に帰る為、自分の出来る事をする。
 1.とにかく逃げる(一応煙の方を目指して)。
 2.落ち着いてからルルーシュに外の煙や調査結果について報告。
 3.リイン、レイ、スバルが心配。
 4.アーカード(名前は知らない)を警戒。
 5.後でフェイトとプレシアの関係を確認してみる。
 6.かがみん達……大丈夫だよね?
 7.おばさん(プレシア)……現実とゲームを一緒にしないで。
【備考】
※参加者に関するこなたのオタク知識が消されています。ただし何らかのきっかけで思い出すかもしれません。
※いくつかオタク知識が消されているという事実に気が付きました(スバル達に話すつもりはありません)。
※かがみ達が自分を知らない可能性に気が付きましたが、彼女達も変わらない友達だと考える事にしました。
※ルルーシュの世界に関する情報を知りました。
※この場所には様々なアニメやマンガ等に出てくる様な世界の人物や物が集まっていると考えています。
※地図に載っていない施設が存在する可能性があると考えています。
※PT事件の概要(フェイトとプレシアの関係は除く)をリインから聞きました。
※自分に割り振られた調査エリアを調べ終えました。何かを見つけたか否かは後続の書き手さんにお任せします。

196いきなりは変われない ◆HlLdWe.oBM:2009/09/17(木) 17:15:58 ID:.hVpSjy20

【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反目のスバル】
【状態】左腕裂傷、右腕欠損(傷口化膿・再出血)、疲労極大、発熱による若干の錯綜、強い決意、深い悲しみ、気絶中
【装備】ブリタニア軍特派のインカム@コードギアス 反目のスバル、リインフォースⅡ@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS
【道具】なし
【思考】
 基本:守りたい者、守るべき者を全力で守り抜く。
 1.レイは危険なのか?
 2.チンクが目覚めたら彼女と話をする。
 3.スバルを守るために、たとえ汚れ役を買って出てでも、スバルにとって最善と判断した行動を取る(もしもの時は殺害も辞さない)。
 4.ディエチやカレンの犠牲は絶対に無駄してはならない。
 5.ギアスの制限を確かめたい。
 6.戦力の確保及びプレシアの関係者の捜索、首輪の解析を行う。
 7.C.C.、クアットロと合流したい。
 8.ゲーム終了時にはプレシアに報復する。またその後でシャーリーに自らの命の決断を仰ぎ、それに従う。
 9.レイ、左腕が刃の男(=ナイブズ)、赤いコートの男(=アーカード)、殺し合いに乗った頭の切れる参加者を警戒。
【備考】
※ギアスに何らかの制限がかかっている可能性に気付きました。また、ギアスのオンオフは可能になっています。
※ギアスの発動には左目の強烈な痛みと脱力感が伴います。
※プラント自立種にはギアスが効かない事が確認されました。
※ギアスを使った際の疲労は命令の強さに比例すると考えています、同時にギアスが効かない参加者が他にも考えています。
※こなたの世界に関する情報を知りました。もっとも、この殺し合いにおいて有益と思われる情報はありません。
※「左腕が刃の男」が既に死亡したナイブズである事に気付いていません。
※ここにいるスバルを“本物のスバル・ナカジマ”であると認めました。
※レッド・デーモンズ・ドラゴンは現状では使えない可能性が高いと考えています。
※「月村すずかの友人」からのメールを読みました。ご褒美の話をどう捉えているかは後続の書き手さんにお任せします。
※シャーリーが父の死を聞いた直後から来ている事に気付きました。また一緒にはいられないと思っています。
【リインフォースⅡ:思考】
 基本:スバル達と協力し、この殺し合いから脱出する。
 1.はやて(StS)や他の世界の守護騎士達と合流したい。
 2.ルルーシュの治療に専念する。
 3.落ち着いてからルルーシュに外の煙や調査結果、こなたと話した他の施設や隠し施設の事について報告。
 4.はやて(StS)やヴィータ、シャマルが心配。殺し合いに乗っているならそれを止める。
【備考】
※リインフォースⅡの参戦時期は第四話ではやてと会話する前(つまり眠っている間)です。制限は次の書き手にお任せします。


【チーム:黒の騎士団】
【共通思考】
 基本:このゲームから脱出する。
 1.デュエルアカデミア内部を調べる。
 2.首輪解除の手段とハイパーゼクターを使用するためのベルトを探す。
 3.首輪を見つけた時には機動六課か地上本部で解析する。
 3.それぞれの仲間と合流する。
【備考】
※それぞれが違う世界の出身であると気付きました。
※デュエルモンスターズのカードが武器として扱える事に気付きました。
※デュエルアカデミアにて情報交換を行いました。内容は[[守りたいもの]]本文参照。
※「月村すずかの友人」からのメールを読みました。送り主はフェイトかはやてのどちらかだと思っています。
※チーム内で、以下の共通見解が生まれました。
 要救助者:シャーリー、ヴィヴィオ、万丈目(注意の必要あり)、明日香、かがみ、つかさ、ルーテシア
 合流すべき戦力:なのは、フェイト、はやて、キャロ、ヴィータ、シャマル、ユーノ、クアットロ、チンク、C.C.、(フェイト及びクアットロには注意の必要あり)
 危険人物:赤いコートとサングラスの男(=アーカード)、金髪で右腕が腐った男(=ナイブズ)
 以上の見解がそれぞれの名簿に、各々が分かるような形で書き込まれています。

197いきなりは変われない ◆HlLdWe.oBM:2009/09/17(木) 17:17:01 ID:.hVpSjy20


     ▼     ▼     ▼


どんな事をしても私は生き残る。


     ▼     ▼     ▼


そこには少し前までは立派なエントランスがあったはずだ。
だが今ではその面影は見る影もなく廃墟と呼ぶのが相応しい状態になっていた。
まだ爆煙が晴れていないので一部しか見えていないが、全貌も推して知るべしというところだろう。

そんな光景を見てもかがみは何も思わなかった。
ただ自分がしたんだなと他人のような目で自分を見るだけだ。

最初かがみはスバルが言っている事が信じられなかった。
だがバクラに確認を取ったところ、それが真実であると知った。
つまり自分とこなたは別々の世界から連れて来られたという事実を認めるという事だ。
またバクラになぜこの事を黙っていたかと聞くと、宿主つまりかがみにこれ以上心労を掛けたくなかったと答えた。
その心意気は嬉しかったが、本音を言うともっと早く言ってほしかった。
本当のところはキャロと出会った時のかがみの反応が心配だったために言わなかったのだが、この際仕方なかった。
いざという時は時間を稼いで精神を乗っ取れば解決だ。

そしてかがみはなのはがあのような反応を取ってもおかしくないという事に行き着いた。

だがそれだけだ。

世界が違おうと、時間が違おうと、かがみの身に降りかかった出来事に変化はない。
エリオが死んだのも。
クワガタの怪人に襲われたのも。
ピンクの髪の女侍を殺したのも。
その後で片翼の剣士に死にそうな目に遭わされたのも。
Lに監禁されたのも。
モンスターに追いかけられたのも。
万丈目にカードデッキを押しつけられたのも。
カードデッキを破壊されてモンスターに襲われたのも。

全て世界や時間の違いなどと関係のないことばかりだ。
結局のところ自分の不幸の原因に変化はない。
この事実を知ったからと言ってかがみの方針が変わる事などないのだ。

むしろ逆に踏ん切りが付いた。
なぜならここにいるこなたは自分の世界のこなたではない。
つまり優勝して元の世界に戻ればこなたは変わらずそこにいるのだ。
そうなるとこなたが別世界ならつかさも別世界だろう。
かがみは根拠もなくそう思っていた。
もうこなたとつかさを気に掛ける必要はないのだ。
だが可能なら自分の手で殺すのは避けたいというのが本心ではある。

つまりもう迷う事ないのだ。

だからこその選択、だからこその行動だった。

現状かがみの手持ちの武器で一番使えそうなのは王蛇のカードデッキだ。
だがそれにはいくつか制約があり、とりわけモンスターの暴走を止める餌の確保は急務だった。

だからかがみは餌としてスバルを選んだのだ。
こちらの事を警戒していないその隙に行動を起こせばいけると思ったのだ。
結果的にそれは失敗したが、代わりの餌は補充できた。
一応備えとして構えていたEx-stまで使うとは思ってもみなかった。
バクラにしてみれば一度逃がした相手だったので内心喜んでいたが。

198いきなりは変われない ◆HlLdWe.oBM:2009/09/17(木) 17:17:41 ID:.hVpSjy20

「このEx-stって使いどころ微妙ね……あ、これ弾の補充ってどうするの?」
『さすがに俺もそれは知らねえぜ。またあとで考えるか』
「そうね」
『ああ、それよりも……』
「ん?」
『気を付けろ、あの青髪まだ死んでないぞ』
「まだ、生きているんだ」

バクラの言う通りスバルは生きていた。
爆煙が晴れてエントランスの全貌が明らかになって初めてスバルが少し離れた場所に倒れている事に気付いた。
内心であの隙にベノスネーカーを襲いに行かせれば良かったと思ったが、ベノスネーカーはあの一瞬で傷を負わされたらしい。
そのせいかスバルの服装が白の戦闘服っぽいものから茶色の制服に変わっていた。

『バリアジャケットが解けたのか? 何にせよ、チャンスだぜ』
「何か考えがあるの?」
『ああ、あの剣みたいなデバイスを今のうちに取り上げれば、後が楽になるぜ』

バクラはキャロと行動するうちに基本的な魔法の知識は身に付いていた。
だからスバルの姿の変貌を見た時にすぐにバリアジャケットが解けた事に気付いたのだ。
そしてまた魔導師にとってデバイスが必要な物である事も知っていたので今の内に奪取する事を提案した。
だがかがみはその意見に懐疑的だった。

「そんな上手い具合にいくわけ――」
『盗みのカードがあっただろ』

王蛇のカードデッキの中にあった「STEAL VENT」のカード。
確かにその盗みのカードなら首尾よくいきそうだ。

「じゃあ、さっさと済ませましょうか」
『ああ、俺と宿主でダブルライダーだな』
「それ、なんか意味違う気がするわよ」

かがみはバクラの軽口を適当に流しながら王蛇のカードデッキを制服のポケットから取り出した。
そして首に下げている千年リングに映した次の瞬間、かがみの腰にはライダーの象徴たるベルトが顕現していた。

「『変身!!』」

戯れで重ねてみた二人の声を同時にベルトにデッキが差し込まれる。
もうそこにいるのは柊かがみではない。
そこにいるのは戦う事を宿命づけられた戦士、仮面ライダー王蛇の姿であった。

(私は生き延びたい。誰だってそう思うわよ。だから私は間違っていない――)

かがみはそう思いながら「STEAL VENT」を発動させた。
いやそう思わずにはいられなかったのかもしれない。
いくら状況が状況とはいえ少し前まで平和に日々を過ごしていた女子高校生が喜々として殺し合いに参加するなど普通なら考えにくい。
だが普通でなければ。
もしかしたらかがみは別々の世界や時間という免罪符の下で自分の行為を正当化しているのかもしれない。
本当のところは誰にも分からないが。

たとえ孤独でも命ある限り戦う、それがバトルロワイアルだろう。

「いったい、どうしてこんな事に……」

スバルは未だ状況が把握できていなかった。
紫の蛇が襲ってきた事も。
背後から放たれた直射系の砲撃魔法のようなものの事も。
かがみが紫のバリアジャケットのようなものを身に纏った事も。
頼みの綱のレヴァンティンがいきなり消えてかがみの手に現れた事も。
どれもスバルには分からない事ばかりであった。

だがこのままかがみを放っておけない事だけは分かった。

今のスバルの手元にあるのは爆発の最中掴んできた自分のデイパックだけ。
チンクのデイパックは爆発のせいでバラバラになって中身があちこち散らばっている。
バリアジャケットの外装は爆発によるダメージを軽減するためにリアクティブパージして、アンダーも軽減できなかった衝撃で破損してしまった。

まさに頼れるのは己の身のみ。

それでもスバルは諦めようとはしなかった。

たとえ孤独でもどんな厳しい状況でも突破する、それがストライカーだろう。


――そして静かに戦いの幕は上がろうとしていた。

199いきなりは変われない ◆HlLdWe.oBM:2009/09/17(木) 17:21:18 ID:.hVpSjy20


【1日目 日中】
【現在地 G-7 デュエルアカデミア エントランス前】

【柊かがみ@なの☆すた】
【状態】健康、肋骨数本骨折、3時間憑依不可(バクラ)
【装備】ホテルの従業員の制服、ストラーダ(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、千年リング@キャロが千年リングを見つけたそうです、
    カードデッキ(王蛇)@仮面ライダーリリカル龍騎、サバイブ“烈火”(王蛇のデッキに収納)@仮面ライダーリリカル龍騎
【道具】支給品一式×2、Ex-st@なのは×終わクロ、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはStrikerS、レヴァンティン(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
    ランダム支給品(エリオ0〜2)、カードデッキ(ベルデ・ブランク体)@仮面ライダーリリカル龍騎、柊かがみの制服(ボロボロ)、スーパーの制服、ナンバーズスーツ(クアットロ)
【思考】
 基本:死にたくない。なにがなんでも生き残りたい。
 1.バクラ以外の何者も信じない(こなたやつかさも)。
 2.スバルを殺した後で映画館に向かう。
 3.万丈目に対する強い憎悪。万丈目を見つけたら絶対に殺す。
 4.同じミスは犯さないためにも、12時間という猶予時間の間に積極的に参加者を餌にして行く。
 5.メビウス(ヒビノ・ミライ)を警戒。
【備考】
※デルタギアを装着した事により電気を放つ能力を得ました。
※一部の参加者やそれに関する知識が消されています。ただし、何かのきっかけで思い出すかもしれません。
※「自分は間違っていない」という強い自己暗示のよって怪我の痛みや身体の疲労をある程度感じていません。
※周りのせいで自分が辛い目に遭っていると思っています。
※Lは自分の命が第一で相手を縛りあげて監禁する危険な人物だと認識しています。
※万丈目の知り合いについて聞いてはいますが、どれぐらい頭に入っているかは不明です。
※王蛇のカードデッキには未契約カードがあと一枚入っています。
※ベルデのカードデッキには未契約のカードと封印のカードが1枚ずつ入っています。
※「封印」のカードを持っている限り、ミラーモンスターはこの所有者を襲う事は出来ません。
※変身時間の制限にある程度気付きました(1時間〜1時間30分程時間を空ける必要がある事まで把握)。
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。
※こなたとつかさの事は信用しないつもりですが、この手で殺す自信はありません(でもいざという時は……)。
※千年リングを装備した事でバクラの人格が目覚めました。以下【バクラ@キャロが千年リングを見つけたそうです】の簡易状態表。
【思考】
 基本:このデスゲームを思いっきり楽しんだ上で相棒の世界へ帰還する。
 1.かがみをサポート及び誘導し、優勝に導く。
 2.万丈目に対して……?(恨んではいない)
 3.こなたに興味。
 4.可能ならばキャロを探したいが、自分の知るキャロと同一人物かどうかは若干の疑問。
 5.メビウス(ヒビノ・ミライ)は、万丈目と同じくこのデスゲームにおいては邪魔な存在。
 6.パラサイトマインドは使用できるのか? もしも出来るのならば……。
 7.かがみが自分の知るキャロと出会った時殺しそうになったら時間を稼いで憑依してどうにかする。
【備考】
※千年リングの制限について大まかに気付きましたが、再憑依に必要な正確な時間は分かっていません(少なくとも2時間以上必要である事は把握)。
※キャロが自分の知るキャロと別人である可能性に気が付きました。
※千年リングは『キャロとバクラが勝ち逃げを考えているようです』以降からの参戦です。
※かがみのいる世界が参加者に関係するものが大量に存在する世界だと考えています。
※かがみの悪い事を全て周りのせいにする考え方を気に入っていません。
※もしもこの会場に居るのが自分の知らないキャロなら、殺す事に躊躇いはありません。

200いきなりは変われない ◆HlLdWe.oBM:2009/09/17(木) 17:22:02 ID:.hVpSjy20

【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康、全身にダメージ小、若干の不安、軽い混乱
【装備】なし
【道具】支給品一式、スバルの指環@コードギアス 反目のスバル、炭化したチンクの左腕、チンクの名簿(内容は[[せめて哀しみとともに]]参照)
【思考】
 基本:殺し合いを止める。できる限り相手を殺さない。ルルーシュを守る。
 1.かがみを止める。
 2.ルルーシュに無茶はさせない、その為ならば……。
 3.こなたを守る(こなたには絶対に戦闘をさせない)。
 4.アーカード(名前は知らない)を警戒、レイにも注意を払う。
 5.六課のメンバーとの合流、つかさの保護。しかし自分やこなたの知る彼女達かどうかについては若干の疑問。
 6.もしも仲間が殺し合いに乗っていたとしたら……。
【備考】
※質量兵器を使う事に不安を抱いています。
※参加者達が異なる時間軸から呼び出されている可能性に気付きました。
※仲間(特にキャロやフェイト)がご褒美に乗って殺し合いに乗るかもしれないと思っています。
※自分の存在がルルーシュの心を傷付けているのではないかと思っています。
※ルルーシュが自分を守る為に人殺しも辞さない及び命を捨てるつもりである事に気付いていますが、それを止める事は出来ないと考えています。また、自分が死ねばルルーシュは殺し合いに乗ると思っています。
※ルルーシュの様子からデュエルアカデミアから出て行ったのはシャーリーだと判断しています。
※自分に割り振られた調査エリアを調べ終えました。何かを見つけたか否かは、後続の書き手さんにお任せします。
※万丈目とヴァッシュが殺し合いに乗っていると思っています。


     ▼     ▼     ▼


時として人は個人の思惑が錯綜する事で思わぬ結果を生む事がある。
またその影響で誤った道を進む者が現れたとしても責める事は出来ない。
なぜならそれを選び取ったのは他ならぬその者自身なのだから。

そして往々として人はそれが正しいものであると信じこもうとする。
だからありきたりな説得程度では戻る事など不可能だ。

坂を転がり始めた球が止まれないように。

いきなりは変われない。

【全体備考】
※デュエルアカデミアはもう一度強い衝撃を与えれば倒壊する可能性が高いです。
※チンクが持っていたデイパックと支給品一式(共に高確率で使用不能)は砲撃の影響でバラバラになりました。
※翠屋のシュークリーム@魔法少女リリカルなのはA'sは完食しました。
※チンクの死体はバニースーツとシェルコートと一緒にベノスネーカーに喰われました。
※スバルのはちまきと救急箱は一連の騒ぎの中で紛失・使用不能となりました。
※ギアスの持続時間は2時間でした。
※以下のものが【G-7 デュエルアカデミア エントランス前】に散らばっています。
 料理セット@オリジナル、被験者服@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪×2(フェイト(StS)、ナイブズ)、大剣・大百足(柄だけ)@魔法少女リリカルなのはsts//音が聞こえる、ルルーシュの右腕

201 ◆HlLdWe.oBM:2009/09/17(木) 17:22:51 ID:.hVpSjy20
投下終了です。
誤字・脱字、矛盾、疑問などありましたら指摘して下さい。

202リリカル名無し:2009/09/17(木) 18:21:52 ID:.hVpSjy20
>>175
少々遅れましたが投下乙です。
万丈目は、これはツンデレか?なんだろう可愛く見えてくる不思議。
なにはともあれ万丈目は新たな一歩を踏み出したのか、軍事基地なにかあるのかな?
それとゼストはなのはに会ったらどうするんだろう。
あ、レジアスと十代…友か…

203リリカル名無し:2009/09/17(木) 19:32:13 ID:GRlqhyxU0
投下乙です。

またしても対主催涙目としか言いようの無い展開だ……
かがみの襲撃はまだいいとして黒の騎士団の手持ち道具殆ど全部レイに持ってかれたじゃねえか……
こなたがボロボロのルルーシュを背負ってレイから逃げ切れるかどうかも問題だがその方向には始と浅倉という危険人物2名が(まぁ、現状2人とも問答無用で襲うとは思えないけど……)
せめて道具さえ取り返せればなぁ……
しかもレイは……限定マーダーなんだけど……頼むから道具は返してくれぇ!
スバルはスバルで武装充分仮面ライダーかがみんとほぼ丸腰で戦闘……どないせっちゅうねん!
チンクは……最期にスバルに託せた事だけが幸運だったか……でも状況は最悪……希望はないのか?
あ、そういやチンク退場で次の放送でアンジールが完全に奉仕マーダー化するな……ま、いいか。

204 ◆HlLdWe.oBM:2009/09/20(日) 11:08:31 ID:WovPubao0
wiki報告
拙作「いきなりは変われない」をWikiに収録するに際して状態表などにおかしな箇所あったので微修正しました。
大筋に変化はないです。

205 ◆7pf62HiyTE:2009/09/21(月) 18:47:02 ID:c.3iIgV60
シャーリー・フェネット、早乙女レイ、泉こなた、ヴィヴィオ、ルルーシュ・ランペルージ分を投下します。

206Nightmare of Shirley ◆7pf62HiyTE:2009/09/21(月) 18:48:43 ID:c.3iIgV60
 結論は出た―――

 シャーリー・フェネットは1人デュエル・アカデミアに向かっていた―――
 自身の父親であるジョセフ・フェネットを殺したテロリストゼロであり―――
 自身のクラスメイトであり初恋の相手ルルーシュ・ランペルージに会う為に―――
 手にしているのは自身のデイパックとアカデミア売店の鍵、そして拳銃だけ―――

 シャーリーはゼロ=ルルーシュを殺す為に彼の待つアカデミアに向かっていたのだ。

 その様子など一緒にいたヴィヴィオに見せられるわけがない。だからこそ彼女はヴィヴィオを一時的に置いていったのだ。
 彼女を守る為にジェットエッジとクラールヴィントは置いていった。これで一時的に身を守る事は可能だと考えたのだ。
 少し考えればこれらを置いていった所でヴィヴィオが自身の身を守れる事など出来ない事など誰にでも解る。しかし、ルルーシュの事で頭が一杯だったシャーリーにはその様な冷静な判断を下す事など出来なかった。
 それは行動を起こしたタイミングからもわかる話だ。彼女がヴィヴィオと別れたのは放送の約5分前―――そう、放送の存在を失念していたのである。
 たった1人でいる所で親しい者の死を知らされるのがどれぐらい辛い事か少し考えればわかる話だ。当然呼ばれる可能性は充分にある―――そして実際ヴィヴィオのママであるフェイト・T・ハラオウンの名前が呼ばれた。
 しかし、今のシャーリーはその事すら考えることは出来なかった。放送の中身自体はある程度頭には入ってはいるだろうが、今の所はルルーシュが生きている事以外の事は考えられなかった。
 他の参加者の生死について考える事が出来ないぐらい今のシャーリーはこれからすべき事で頭が一杯だったのである。
 当然の事だが後方で煙が上がっている事など気付くわけがない。

 ゆっくりと、ゆっくりと、シャーリーはルルーシュの元に近付いている。
 しかしだ、近付く度に足取りが遅くなっている様な気がする。
 結論は出した筈なのに―――まだ迷っているのだろうか?―――
 当然の話だ、これはどのケーキを食べようかで迷うという単純な問題ではない。
 シャーリー・フェネットの人生における重要な決断なのだ。結論を出した所で行動に移す瞬間まで迷うのは当然と言えよう。
 もしかしたら―――ルルーシュの顔を見た瞬間に結論を変える可能性だってあった―――
 つまり彼女の出した結論が最終的にどのようになるのか、それはシャーリー自身すらもわからない話である―――

 だが、状況は彼女を追いつめていく―――

 アガデミアのある方向で何かの衝撃音が響いた。アカデミアにいるルルーシュに何かが起こったという事だろう。故に急がなければならない―――
 だが、足取りは重くその歩みは遅い。未だ迷いがあるのだろう。

 故に彼女は気付けない―――
 ほんの少し冷静に周囲を見渡す事が出来ればルルーシュと再会出来た可能性があった事に―――

207Nightmare of Shirley ◆7pf62HiyTE:2009/09/21(月) 18:49:58 ID:c.3iIgV60





 何を以てしてもルルーシュを殺す―――

 それが早乙女レイの出した結論だ。遊城十代を守る為に行動していたが、不幸にも十代は死んでしまった。
 更にこなた達の会話を聞いて生還しても十代がいる世界には戻れず、蘇生すら出来ないと判断してしまった。
 故にレイは十代を殺したであろう誰かを、そして自分の動きを封じた元凶であるルルーシュを殺す事にしたのだ。
 この時点で既に冷静ではなかったがこの時の彼女にはまだ迷いがあった。
 故に運良く拳銃を手にし気を失っていた彼に向ける事が出来ても発砲する事は出来なかったのだ。
 しかし、このタイミングで目覚めたルルーシュが『俺に従え』とギアスを放ったのだ。
 レイの心中としては何故有無を言わさず自分の意志を奪おうとしたのかが解らなかった。まだ銃を向けただけではないか、撃つのを封じるだけで良かった筈だ。そのルルーシュの暴走とも言える行動によって―――

 ―――レイは弾けた―――

 もう迷わない、絶対にルルーシュを殺すと―――
 幸か不幸かそのタイミングでアガデミアに衝撃が走り瓦礫が落下した事で自身を襲おうとしたギアスは届かなかった。しかしギアス自体は発動していた為ルルーシュは再び気絶した。
 この好機を見逃すレイではない、再び拳銃をルルーシュに向けて発砲した―――
 結論を言えばその時の自分の叫び声でこなたとリインが気付いた為、銃弾を外す結果となってしまった。そして気が付いたら自分以外の者はいなくなっていた。
 裏口から逃げた事はわかるしルルーシュの血痕もあった為逃げた方向は容易にわかった。
 事態が事態故、こなた達は何も持たずに逃げ出した様だった。当然の事だがレイはその全て―――4つのデイパックとその中身を回収した。武装が充分に揃ったのはあまりに都合が良すぎる話だ。
 しかもだ、このタイミングで衝撃が起こった理由は不明だがほぼ間違いなく殺し合いに乗った襲撃者が現れたのだろう。その場所はスバル・ナカジマがいるであろうエントランス方向……
 恐らく彼女はそこにいる襲撃者に対処せざるを得ない。故に彼女も動けない。
 そう、全てが彼女にとって好機だったのだ―――あまりにも遅すぎた―――
 故に彼女はルルーシュを追い、そして彼を殺すと―――
 既にこなた達の姿は見えなくなっていたが血痕を辿ればその方向は煙の見える方向、ルルーシュを背負っている状況ならばそう距離は離れていない。故に拳銃と動きを封じる事の出来るであろう光の護封剣を構え移動を始めたのだ。
 光の護封剣でルルーシュ達の動きを封じ拳銃でトドメを刺す、それがレイの立てた作戦である。わざわざモンスターを召喚する必要はない。
 こなたに関しても殺すつもりでいた。ルルーシュを殺すのを妨害したわけだし、そもそも足止めする羽目になった原因に彼女も全く関わっていないわけではない、同罪だとレイは判断した。
 リインに関しては2人さえ死に彼女から離れれば放っておいても行動不能になる為何の問題もない。
 それにこなたを殺しておけばこれで2人死んだ事になりプレシアの言っていた御褒美がもらえる可能性が高まる。運が良ければ十代を殺した相手が分かりそいつの元に移動する事も出来るだろう。乗らない理由は全く無い。
 そして十代を殺した者に出会ったならば『バスター・ブレイダー』及び『レッド・デーモンズ・ドラゴン』を召喚し全力を以てそいつを仕留める……そして全てが終われば自分も死ぬ……それがレイの考えた今後の行動方針だ。
 だが、まずはルルーシュの元に追いつかなければならない。故に彼女は血痕を辿り煙の上る方向に向かう―――
 その途中、血痕自体は途切れ足取りは辿れなくなった。だが、自分に襲われる可能性がある以上わざわざ戻る可能性は皆無、故にレイは進行方向自体は変えずに進む―――煙が上る方へと―――

208Nightmare of Shirley ◆7pf62HiyTE:2009/09/21(月) 18:50:38 ID:c.3iIgV60


 客観的な話をすればレイの心情は理解出来なくもない。だが、些か結論を急ぎすぎていたと言えよう。
 そもそも本当に十代とレイは自分と同じ世界から連れて来られたのだろうか?
 彼女が同一世界から連れてきたと判断したのは、一般人である2人を違う世界から連れてきて誤解を招く可能性が皆無だからだ。
 だが、本当にそうであろうか? 絶対に無いと言い切れるのか?
 仮に十代達がジェネックス開催中やセブンスターズと戦っていた頃から連れて来られたならばレイは『過去に一度丸藤亮に会いに来て、その時に十代に好意を持った少女』という程度の認識しかない。
 レイが再びデュエルアカデミアにやって来たのはジェネックスも終盤の時期だからだ。
 その頃の十代達ならば早乙女レイの存在を失念している可能性が高い……そんな事は無いだって? ラーイエローに割と長い間いた誰かの存在を忘れる様な連中だ、そんな可能性が無いなんて言えるのか?
 勿論これは少々乱暴な暴論だ。だがそれとは別にしてもある並行世界で十代が危険人物もしくは重要人物になっている可能性が0だと言えるのか?
 参加者の誰もが知らない話……プレシア・テスタロッサも把握しているかは不明だがある世界の話をしよう。
 覇王の軍勢が世界を蹂躙している世界があった―――
 その世界にて高町なのはは覇王軍に属するモンスター達と戦っていた―――
 だが、彼女は強い者との戦いを楽しみ、弱い者に対しての虐殺を楽しんでいた―――
 これだけでも充分信じられない話ではあるがそれ以上に信じられないのは―――
 覇王の正体が遊城十代だった事である―――
 その世界の行く末などここでは重要ではない、その世界の十代ならば殺し合いに乗るのは明白、連れてくるメリットは大いにある。
 勿論、そんな世界の存在など普通は信じられはしない。だが、レイが最初に出会った9歳のフェイトを考えれば19歳のフェイトの姿なんて到底想像出来やしない。それと同じ事なのだ。
 そこまで考えれば本当に同一世界だと結論付ける事なんて出来るのか? いや、出来やしない。
 また、連れてくる世界が増えればそれだけ管理局に発見されるリスクが増大するとあるがこれも正しいと言えるのか?
 いや、確かにリスクは増大する。もしかしたら無駄とも言えるかも知れない。
 だが、その無駄を行っている証拠は存在する。『レッド・デーモンズ・ドラゴン』のカードがそれにあたる。
 細かい説明は省くがこのカードもデュエルモンスターズのカードではあるもののレイにとっては未知のそのカードは未来のカードだと判断していた(厳密には並行世界のものだが)。
 だが、そんなカードをわざわざ持ってくるメリットなんて何処にある? 攻撃力3000のカードならレイのいた世界にも存在する『青眼の白龍』等を用意すれば済む話だろう。何故そんな無駄な事をする必要がある?
 そもそもの話だ、幾らデメリットが大きくなるからと言っても既に参加者だけを見ても6つ(レイ、フェイト、スバル、こなた、ルルーシュ、リイン)の世界から連れて来られているのを確認している。
 実数自体はまだ多いだろうし支給品まで含めればその数は更に増大する。その中で今更1つ増やした所でリスクに大差なんて無いとは思わないか?
 それ以前にだ、どんなにリスクがあるとしてもメリットが僅かにあるならばその可能性は0では無い筈だ。もう少し冷静でいたならそれぐらい考えられた筈である。
 また、十代復活の望みが無いというのも勝手な決めつけでしかない。確かに可能性は0に近いかもしれないが本当に0だと言い切れるものではない。もう少し情報を集めてからでも遅くは無かったはずだ。
 少なくても……放送後に1人で考えていた時のレイだったらそんな結論は出さなかった筈だった。だが、やはり十代の死亡のショックが抜け切れていなかったのだ。こなた達の話をそのまま受け取り早々に結論付けてしまったのだ。

 だが、最早レイを止める事などまず不可能だ。今のレイはルルーシュ、そして十代を殺した者に対する憎悪に囚われており冷静な判断など下せる筈がない。
 武器さえなければまだ止められただろうがが彼女の手元には充分な武器は揃っている。並の説得では逆に彼女を暴走させる結果にしかなりはしない。
 誰が何を言ってもレイには届きはしないだろう。天上院明日香や万丈目準の声すらも―――

 彼女の頭には自身の目的を果たす事しか無かった―――2人を殺し自殺をすると―――

 しかし、レイは最も重要な事を失念していた―――殺し合いに乗った参加者に襲われる可能性? それもあるだろうがここで言っているのはそれ以上に最もシンプルな事だ―――

 その事に気付かぬままレイは進む。そして―――

209Nightmare of Shirley ◆7pf62HiyTE:2009/09/21(月) 18:51:50 ID:c.3iIgV60





 少し時間を戻そう―――

 ヴィヴィオを下ろしたシャーリーはデイパックからジェットエッジとクラールヴィントを出して彼女に渡し、
「お姉さん……」
「ちょっと、お姉さん大事な用事を済ませてくるから待っていてくれる? 大丈夫、用事が済んだらすぐに戻ってくるから―――」
「もしかして、ルルってお兄さんの所に行くの?」
「うん……ちょっと大事なお話をしにね」
「ヴィヴィオも連れ……」
「ダメ! 本当に大事な用事だから……お願い、言う事を聞いて……」
 そう言うシャーリーの表情は何処か辛そうであった為、シャーリーが心配なヴィヴィオとしては一緒に行きたかった。だが、辛そうなシャーリーの表情を見てしまっては連れて行って何て言えやしない。
「うんわかった……早く戻ってきてね……ルルお兄さんと一緒に―――」
「うん……何かあったらこれを使って身を守ってね」
 そう言ってシャーリーはヴィヴィオの元を去っていった―――
 正直な所、ヴィヴィオは不安だった―――シャーリーがルルーシュを殺しに行ったのではないのかと―――
 思い返せば、シャーリーの『ゼロ』に対する憎しみが大きいのは彼女の態度を見れば明らかだ、それこそ殺しかねない位の。
 だがその一方で沢山ルルーシュについての話を聞かされた為、彼に強い好意を抱いているのもわかっていた。
 そのルルーシュがゼロだった―――それを知ったシャーリーがどうするのかが正直わからなかった。
 当然の話だがヴィヴィオとしては誰一人として死んで欲しくはない。それが例え殺し合いに乗っている人物だとしてもだ。
 更に仲の良かった友達同士ならば尚の事だ。シャーリーとルルーシュに何があったのかはわからない。でも、出来るならば仲良くして欲しいと思っていた。
 だが、ヴィヴィオは無力だ―――幾ら聖王と言われた所で今の彼女は魔力を持った幼子でしかない。故に彼女にはシャーリーを信じる事しか出来なかったのだ。
 ルルお兄さんと一緒に戻ってくると―――それは彼女の出来る精一杯の願いだったのだ。


 シャーリーが去ってから少しすると、2度目の放送が始まった―――聞かされた内容はヴィヴィオにとって辛いものだった。

 スバルの姉であるギンガ・ナカジマやなのはとフェイトの友達であるはやてが死んだ事もショックだった―――
 さっき自分を元気づけてくれたザフィーラが死んだ事もショックだった―――
 そして何より、フェイトママが死んだ事がショックだった―――

 座り込んでヴィヴィオは1人泣いた。最初の放送の時は側にシャーリーも浅倉威もいてくれた。だが、今は自分しかいない。ヴィヴィオを元気づけてくれる人など誰もいなかった。
 その一方でヴィヴィオは考えていた―――何故見かけた時は元気だったザフィーラが死んでしまったのだろうか? あんなに元気だったのにどうしてだと……
 考えた所で答えなんて出るわけがない。だが、泣いている内に思い出したのだ。あの時ザフィーラは様々な事で落ち込んでいるヴィヴィオを元気づけてくれた。
 そんなザフィーラが只泣いているのを望んでいるだろうか? なのはやフェイトにしてもそんなヴィヴィオの姿を見たいと思うだろうか?
 そんなはずはない。みんなこんな逆境に負けずにこの殺し合いを脱してくれる事を望んでいるはずだ。
 そう考えた時、ヴィヴィオは負けたくないと思った。それが死んでいったザフィーラ達が望んでいる事なのだから、「強くなる」となのはと約束したのだから―――
 それでも今だけは泣かせて欲しい―――ヴィヴィオは1人泣いたのだ。

 そして何時しかヴィヴィオは泣きやみ座ったままシャーリーが帰ってくるのを待った。放送ではシャーリーもルルーシュも呼ばれなかった。
 きっと今2人は話をしており、それが終わったら戻ってくるはずだ。ヴィヴィオはそれを信じて待った。少し離れた方で煙が上がったのが見えたがヴィヴィオはその場から動かずシャーリー『達』の帰りを待った―――

210Nightmare of Shirley ◆7pf62HiyTE:2009/09/21(月) 18:52:28 ID:c.3iIgV60





 こういう状況って『進路に光明、退路に絶望』って言うのかな……いや、違うなぁ―――

 仮にこういう事を言えば柊かがみが『何のゲームの台詞だ?』とツッコミを入れ、
 高良みゆきが正解を言い、
 柊つかさがそんな会話を聞いて笑っているんだろうが―――

 この状況で反応をしてくれる者など誰もいないし、そこまで状況が読めないほど泉こなたも馬鹿ではない。故に考えはしたものの口にしたりはしない。
 泉こなたはリインフォースⅡと共に傷の悪化とギアスによる後遺症で気を失っているルルーシュを背負ってアカデミアから逃げていた。
 逃げている相手はアカデミアを襲った襲撃者ではない。先程まで行動を共にしていたレイだ。
 襲撃の際に瓦礫が崩れルルーシュは再び出血し、そのタイミングで側にいたレイがルルーシュに発砲したのだ。それ自体はリインが防いでくれたものの、危険である事に変わりが無かった為、こなたはルルーシュを背負いリインと共に逃走する事にしたのだ。
 本音を言えばスバルと合流したかったが衝撃があったのはスバルがいると思われるエントランス……恐らく彼女は襲撃者への対処に追われているのだろう。故に合流するわけにはいかない。
 だが、一連の騒動でこなたは殆どの手持ち道具を置いて来てしまった。あるのはルルーシュが今も身に付けているインカムぐらいである。
 地図もなく、時間も無い状況で目的地などとっさに浮かぶわけもない。ひとまず見えた煙の方向に向かって進んでいる。
 しかし、少し考えれば煙のいる方向には殺し合いに乗った危険人物がやって来る可能性があるのはわかる話だ。こなたは自ら危険な方向に足を進めているのである。
 だが、危険と判っていても今更引き返すわけにはいかない。後方からはすぐにでもレイが自分達を殺す為に追い掛けてくるだろう。ルルーシュの血痕を見れば方向を見出す事は容易い。
 それに気付いた時、こなたは自身の制服のスカーフをリインに渡しそれを使う事でルルーシュの止血を行う事は何とか出来た。
 これ以上、血痕を辿られる心配は無くなったがそれでも方向だけは読まれている。逃げ続けなければならない事に変わりはない。が、ルルーシュを何処かで休ませなければ危険な状態な事にも変わりはない。
 せめて何処か都合の良い場所で休ませる事が出来れば良かったがそんな都合の良い場所などピンと来るはずもない。

 ともかく今は移動を続けるしかない。しかしだ、ルルーシュを背負っているこなたの体力も何れは限界が来る。煙の出ている場所まで辿り着けるかどうかは微妙、辿り着いた所で襲われる可能性だって高い、正直どうしたらいいのかなどわからなかった。
 一番良いのはルルーシュを見捨てて何処かに隠れる事だ。レイの狙いがルルーシュに向いているならそれが自分の身を守る上で一番確実だ。
 それでなくてもルルーシュは瓦礫が落ちる直前、突然レイに絶対遵守のギアスをかけようとしたのだ。ある種の洗脳能力とも言えるギアスを有するルルーシュを危険人物としてこのまま捨てておいても問題はないだろう。
 しかしこなたにはそんな事は出来なかった。死にそうになっている人を放置出来ないから? 確かにそれもあるかも知れない、だが本当にそれだけなのか?

211Nightmare of Shirley ◆7pf62HiyTE:2009/09/21(月) 18:53:11 ID:c.3iIgV60

 その最中、こなたは前方で少女が1人座っているのが見えた。
「あれ?」
 こなたはその少女に接近していくが、その時にリインが、
「あれは……ヴィヴィオ!!」
 座っている少女はなのはやフェイト達機動六課が保護し、なのはとフェイトの娘となったヴィヴィオであった。
 リインの声を聞いてヴィヴィオは、
「え……リイン? それにお姉さんは……」
 そう答えたリインの目には涙を流した跡があった。それを見たこなたは、
「……大丈夫、お姉さん達は殺し合いに乗っていないよ」
 笑顔でそう答えた。そんな中、ヴィヴィオはこなたに背負われているルルーシュを見て、
「ルルお兄さん!」
「え、ルルーシュを知っているですか?」
「ちょっと待って、どういうこと?」
 ルルーシュを知っていた事を驚く2人だったが、
「シャーリーお姉さんは?」
 更にヴィヴィオはシャーリーの事を聞いてくる。話を聞いた所、シャーリーはルルーシュに会いに行ったという話だ。だが、
「ごめん……見てないや……」
「リインもルルーシュの治療に集中していたですから……」
 こなたは前を向いて逃げる事に必死だったし、リインはルルーシュの治療に専念していた為、シャーリーを見ていなかったのだ。
「多分行き違いになったと思うですけど……」
「今戻ったらレイに追いつかれるよね……」
 シャーリーの事が気がかりではあったが、レイに襲われる可能性を考え戻るという選択肢を除外する。その一方で、
「不味いなぁ……今のレイとシャーリーって人が鉢合わせになったら……」
「危ないですよ……」
 レイとシャーリーが出会った時に起こる最悪な事態が頭をよぎる。しかし、今はヴィヴィオやルルーシュの事も気がかりなので2人については出会わないで欲しいと祈る事ぐらいしか出来なかった。
 ともかく詳しい話を聞きたかったが、移動もしておきたい。しかし煙の方向は危険……途方に暮れつつこなたは周囲を見回すが……
「え……ちょっと待って……何であんな所に……?」

212Nightmare of Shirley ◆7pf62HiyTE:2009/09/21(月) 18:54:07 ID:c.3iIgV60





 かくして最悪な事態は起こる―――

 シャーリーの眼前に見慣れない赤い制服を着た少女が近付いて来た。少女は何処か思い詰めた表情でその手には見慣れない拳銃を持っていた。
 彼女が何者かはわからない。だが見た目から考えてイレブンつまり日本人であったことから黒の騎士団の団員なのかもしれない。実際、日本人と思われる参加者は割といた為その可能性は十分にある。
 その表情から危険人物の可能性が高かった。だが、ルルーシュのいたアカデミア方向からやって来た事を踏まえれば、もしかしたらアカデミアで起こった事やゼロ=ルルーシュの事が聞けるかも知れない。
 意を決してシャーリーは口を開く、
「ちょっと聞きたいんで……」
「今、黒い服を着た人を見かけなかった!?」
 だが聞くよりも早く少女から質問されたのだ。凄い剣幕だった為、言おうとした事が言えなかった。
 黒い服を着た人と言えばルルーシュ=ゼロしかいない。恐らく彼女はゼロを探しているのだろう。だが、シャーリーは彼を見かけていない為、
「ごめん、誰も見ていないけど……」
 そう答えるしかなかった。

 ここで視点を赤い制服を着た少女、レイの方に切り替えてみよう。幾らこなた達の状態ではそんなに早く移動は出来ないとはいえ急いだ方が良いのは明白だ。
 だが、やって来た浴衣の少女から何かルルーシュの目撃情報を聞けるかも知れない。故に少女が聞くよりも早くレイは黒い服を来た人を見かけたかどうか聞いた。
 ルルーシュの名前を出さないで黒い服と聞いたのは名前を知らない可能性があったし何より黒い服はこの昼間では非情に目立つ。見ているならばすぐにわかるはずだからだ。
 なお、見かけたのならば。本当にルルーシュかどうか確かめる為、右腕を失っていたかとか桃色の制服を着た少女はいたかとか聞くつもりであった。
 だが、少女の返答は否定であった。ルルーシュを見かけたという情報が得られるならばともかく、そうでないならば構っている時間なんて無い。
 フェイトやスバルといった他の参加者と関わって悠長にしていた事が十代の死に繋がった以上、最早レイは他人と関わるつもりなどなかった。武器は充分に揃っている、ここでルルーシュを逃がすつもり等ない。
 そんな事は止めるべきだと説得して来たとしてもレイに止める意志など全く無い。邪魔するならば殺すつもりでいた―――


 仮に2人の頭がもう少し頭が冷えていて冷静に物事を考えられ、落ち着いて情報交換が出来たならばもう少し違った結末になっていたかも知れない―――だが―――


「そうですか、それじゃ急いでいるから」
 と言ってシャーリーの横を通り過ぎていった。
「え、ちょっと……なんでそんなに急いで……」
 シャーリーが慌てるかの様に去っていくレイに問いかけるが……
「邪魔しないで、ボクはすぐにでも―――」
 すぐにでもこの場を立ち去りたかったレイはその焦りから思わず口にしてしまったのだ。

 それを聞いたシャーリーの思考が止まる、何て言ったのだろうか? いや、言った言葉だけは判っている。





『ルルーシュヲコロサナキャナラナインダ』

213Nightmare of Shirley ◆7pf62HiyTE:2009/09/21(月) 18:56:53 ID:c.3iIgV60





 ご都合主義ってレベルじゃないよね―――

 こなたが思ったのはその事だった。今現在こなた、リイン、ルルーシュ、ヴィヴィオがいるのはある建物の中だ。それは……
「まさかこんな所にアニメイトがあるなんてね」
 そこはアニメイトであった。それもなのは達と一緒に訪れた事のあるアニメイト―――そう、こなたは数十メートル離れた所にアニメイトの看板を見付けそこで一旦休む事にしたのだ。

 ちなみに現在位置はG-6ではあるが地図を見てもらってもアニメイトは載っていない。何故ここにアニメイトがあるのだろうか?
 だが、与えられた地図には大体の地形と機動六課隊舎や病院、デュエルアカデミアといった主要な施設しか載っていない。
 そう、地図に載っていない施設があっても不思議は全く無いのだ。いや実際に施設は幾つか存在している。
 とある片翼の剣士が見付けたF-4のビジネスホテルもそれにあたる。
 そう、アニメイトもまた隠された施設の1つだったのだ。

 こなた自身も隠し施設の可能性は考え一応リインにも話してはいた。だか、こなたの脳内ではそういうのは俗にいうヒーローの秘密基地や秘密の店を連想していたし、リインもあったとしてもこれは予想外だった為正直驚いている。
「こういう時ってどういう表情したらいいと思うですか?」
「……笑えば良いと思うよ」
 とはいえ、こなたにとっては馴染み深い場所という事で一旦こなた達はここで休む事にした。正直煙の上っている場所に不用意に近付くのは危険なのはわかるし、それ以前にルルーシュの状態を考えればどこかでちゃんと手当てをしたかった。
 レイの接近が気がかりではあったが地図にない施設であればやり過ごせる可能性は高かった。アニメが好きだからアニメイトに行っていると読まれる可能性はあるが、読まれさえしなければなんとか乗り切れる可能性があるとこなたは思ったのだ。
 あくまでもルルーシュの状態がある程度回復するまでの一時的な休憩で動ける様になったらすぐに離れる、それがこなた達の出した判断だった。
 故にアニメイトに行った所で遊んでいる時間は全く無い。微妙に品揃えが変わっている事が気にはなったがひとまずそれについては考えず、店の奥から救急箱を見付け出しそれを使いルルーシュの手当てを行った。
 その後はヴィヴィオからこれまでのいきさつを聞くわけだが、リインはルルーシュの治療を継続して行っている為話は聞いているものの、その主導となるのはこなたであった。
(こういうのってむしろかがみんかみゆきさんの方が得意分野なんだけどね……)
 そう思うこなたではあったものの幸いヴィヴィオはこなたの事を信頼してくれており、話を聞く事は容易に行う事が出来た。

 彼女はまず浅倉と出会い、その時に2人の男性が襲ってきた事を話した。
 それを何とか切り抜けた2人は温泉にて天道総司とシャーリーに出会い、天道は温泉から去っていき残された3人で彼の後を追ったのだ。
 そしてキングが天道を連れて温泉に向かってくる所に遭遇し、天道を治療すると話していたキングに彼を任せ3人は市街地に向かった。
 しかし、その後突然浅倉が暴れて2人の元を去っていったのだ。そして悲しみに暮れた際にザフィーラが現れ、すぐさまいなくなった事をヴィヴィオは語った。
 ちなみにヴィヴィオの説明だけでは正直わかりにくかったが、キングと出会う前からはクラールヴィントもある程度把握していた為、クラールヴィントから確認を取りつつ話を進めていった。

214Nightmare of Shirley ◆7pf62HiyTE:2009/09/21(月) 18:57:40 ID:c.3iIgV60

 ここまでのヴィヴィオ達の話を聞いたこなたは考える。真面目な話、ヴィヴィオの人物評とこなたの評価は微妙に違っているのだ。
 浅倉……ヴィヴィオは彼をヒーローみたいな人物だと語っていたが、話を聞く限りこなたにはどうしても彼がそんな善人だとは思えなかった。彼の行動を見てもそうだったし、何となく危険な感じがしたのだ。
 半裸の男……彼に関してはヴィヴィオの感じた通り危険人物だと判断した。
 もう1人の男……ヴィヴィオは危ない人だと思ったが、こなたは浅倉と逆の評価の可能性があるかもと考えた。つまり、善人の可能性だ。
 天道……シャーリーが何故かゼロと呼んでいたらしいが、こなたはそれが誤解だと分かっている為それについては考慮しない。善人かどうかは不明だが、話を聞く限り何となく大丈夫かなとこなたは思った。
 シャーリー……ルルーシュの言っていた少女だ、彼女に関しては当然問題は無い。
 キング……ヴィヴィオは良い人だと言っていたが、彼を警戒してと書かれたメール(フェイトかはやてが出したらしい)を見ているこなたは彼に対して一応警戒はしている。
 ザフィーラと出会った事に関して気になる事もあったがとりあえずそれに付いては保留にした。
 ちなみにこなたの感じた人物評に関しては今のところヴィヴィオには話すつもりはない。こなたの主観によるものが多く断定はできないし、浅倉をヒーローと思っているヴィヴィオの夢を壊す様な無粋な事がそう易々と出来るわけもなかったからだ。
 とりあえず人物評に関しては一段落付いた後でリイン、ルルーシュと話し合うつもりでいた為、今の所はこなたの心に留めておく。
 その後、2人は駅に向かい(クラールヴィントから確認した所)15人以下になれば開く車庫の存在を聞き。そして、2人はデュエルアカデミアに向かったが……
 そこでルルーシュと出会い彼と何か話をした後、シャーリーはヴィヴィオを背負ったままアカデミアを去っていったのだ。
「あたしたちが中を調べている間にそんな事があったんだ……」
 こなた達から見ればルルーシュとシャーリーの再会がこのような形になった事が信じられなかった。ヴィヴィオやクラールヴィントからの断片的な情報しか無い為具体的な事はわからないが、その結末が悪いものだった事は理解している。
 その後暫くの間彷徨った後、シャーリーはヴィヴィオを置いて単身ルルーシュの所に向かったという話である。
 そして1人シャーリーの帰りを待っていたらこなた達がやって来たという話だった。

 さて、ここでこなたはヴィヴィオの話や起こった事を自分なりに冷静に考えてみる。
 まず考えるのはシャーリーとルルーシュの間に何が起こったかである。何故、2人の再会が悲しいものとなったのだろうか?
 話によれば、ルルーシュはシャーリーに自分が彼女の父親を殺したゼロである事をカミングアウトし、自分を殺すかどうかを迫ったという話だったのだ。
 その事にシャーリーは強いショックを受け、ヴィヴィオも戸惑っており、実際ルルーシュと行動を共にしていたこなたも驚いている。リインは何か理由があったのではと語ったが、
「でもその理由がわかれば苦労は……あれ、ちょっと待って……」
 シャーリーとルルーシュが友人という話は一同が知っている話である。だが冷静に考えてみるとこなたがルルーシュ本人から聞いている話とヴィヴィオがシャーリーから聞いている話には食い違いが見られる。
 こなたはルルーシュからシャーリーにルルーシュの記憶を消したという話を聞いていた。つまり、ルルーシュ視点から見ればシャーリーは友人であり保護対象であっても、シャーリー側から見れば只の同じ学校の生徒でしか無いという事だ。
 だが、ヴィヴィオの話ではシャーリーはルルーシュの事を大事な友人だと語っていた。こなたに言わせればそれは恋と言えなくもない。
 そう、ルルーシュの話にあったシャーリーと状況が異なっているのだ。
(うーん……パラレルワールドって事で筋が通りそうな気もするけど……何か引っかかるんだよね……なんだろう……)

215Nightmare of Shirley ◆7pf62HiyTE:2009/09/21(月) 19:02:15 ID:c.3iIgV60
 ここでこなたはルルーシュの話を思い返す。シャーリーの記憶を奪ったと言っていたがそうなると奪う前はどうだったんだろうか? その前はシャーリーはルルーシュに好意を寄せていたのではないのか?
(あれ? もしかして……シャーリーってルルーシュに記憶を消される前からやって来たとか? まさかとは思うけど……)
 そもそも何故ルルーシュはシャーリーの記憶を消さなければならなかったのか? ゼロとしての行動がシャーリーを傷付けてしまい、ルルーシュがゼロだという事をシャーリーが知ったからだ。
 となるとだ、ルルーシュの言っていたシャーリーはゼロの正体を知りその記憶を消されており、ヴィヴィオの話していたシャーリーはゼロの正体をまだ知らず当然記憶など消されていなかったということなのだろうか?
 さて、仮にシャーリーがゼロの正体を知らないとして今のルルーシュを見たらどう思うだろうか? ルルーシュの服はゼロの衣装そのもので仮面だけが無かった。つまりそれを見れば……
(仮面無かったら……正体ばれるよね……)
 会いたがっていた恋人が凶悪なテロリストだと知ったら当然ショックを受ける。その場から逃げるのだって頷ける。だが、彼女は再びルルーシュに会いに行ったのである。
(でもそうなるとヴィヴィオを置いていった理由がわからないけど……)
 だが、ここでその際にルルーシュが自分を殺すかと迫ったのを思い出し、
(まさか、ルルーシュを……)
 ゼロに強い憎悪を向けていた事からシャーリーはルルーシュを殺すつもりで向かい、その姿を見せたくなかったからヴィヴィオを置いていった……そんな考えるのも嫌な想像をしてしまった。
(で、身を守る為に置いていったんだろうけど……無茶にも程があるよね)
 こなたの手元にはヴィヴィオから受け取ったクラールヴィントとジェットエッジがある。それを使っていざという時は身を守らせようとしたのだろうが、ヴィヴィオにこれだけで身を守らせようと言うのは無謀だと正直呆れていた。
 此処までの話は割とこなたの想像による所が多い為、断定はせずに話題を切り替える。

 次に考えるのはアカデミアで起こった出来事だ。
 こなたが把握している範囲で整理すると
 廊下で倒れていたルルーシュをリインが治療し、
 その後治療の甲斐あって気が付いたルルーシュはいきなりレイにギアスをかけようとしたが、
 そのタイミングで瓦礫が落下してきて、
 その出来事でルルーシュは気絶&出血し、
 そして、レイがルルーシュに向けて発砲した。
 あの時点では何故こんな事になったのかがさっぱりわからなかったし、その時点ではアカデミアから逃げる事に必死だったので考える余力などなかった。
 しかし、整理してみると実はそんな難しい話ではない。
 まず、ルルーシュが倒れていたのは右腕の傷が悪化したからなのはこなた達も把握している。だが、果たして本当にそれだけだったのだろうか?
 ヴィヴィオの話から察するにその前にルルーシュとシャーリーは出会っておりそこで前述のやり取りがあった。
 ルルーシュの真意に関してわからない所はあるものの、それがルルーシュの望むものでは無かったのは確かだ。
 更に言えば、ここに至るまでルルーシュには色々負担をかけている。自分達の前では気丈に振る舞っていても心労は溜まっていたはずだ。
 そこで本来なら喜ぶべきシャーリーとの再会が恐らくは最悪の結果に終わったのだ。精神的に限界が来てもおかしくはない。
 更に言えば、十代の死を聞いたレイが凶行に及ぶ可能性にルルーシュが思い当たらないはずがない。リインにしても警戒していたし自分だってそれを危惧していたのだから。
 そして先程の精神状態でそんなレイの姿を見れば冷静な判断なんて下せる筈がない。故にいきなりギアスをかけようとしたのだろう。そしてそれにより再び気絶したと。
「でも、あの後のレイの様子を見る限りギアスはかかっていなかったよね? どうして気絶したのかな?」
「もしかしたら届かなくても使っただけで負担がかかるかもしれないですし、あの場にいたリインやこなたにも届いたからじゃないんですか?」
 レイにギアスが届きはしなかったが発動はしていた。その推測は正しいし、またあの場にいたリインやこなたに対してもギアスの命令は届いていた可能性はある。
 しかし既にこなたにはギアスが使用済の為かかるはずはないし、リインはユニゾンデバイスであるためかからなかったという所だろう(リインに関しては推測でしかないが)。
 どちらにしてもこの顛末についてはちゃんとルルーシュに報告しておくべきだろう。

216Nightmare of Shirley ◆7pf62HiyTE:2009/09/21(月) 19:16:10 ID:c.3iIgV60
 今度はレイの側から見てみよう。だが、こちらに関してはルルーシュよりも解りやすい。
 何て事は無い、十代の死で暴走したのだろう。先程も考えた通りその可能性は充分にあり得る。
 それに、ルルーシュがレイを警戒し彼女の行動を縛っていたのはこなたから見てもわかる。その状況で気絶しているレイがルルーシュを見て凶行に及ぶ可能性は十分に考えられた。
 放送後会った時はそんな事は言わなかったが、レイが発していた不穏な気配はこなたも薄々感じていた。とはいえあの場ではそんな余裕なんて無かったからレイを気にかける事は出来なかった。
 だが、実際はそんな事は無かったのだろう。本当は最初からルルーシュを殺すつもりでこなた達が手当てしている隙に彼に銃を向けていて、気が付いたルルーシュがそれを見たという可能性はあった。
「もう少しレイに気を使うべきだったかな……」
「そうです……ちょっと焦っていたかもしれないです……」
 今更ながらにレイに充分な注意を払えなかった事を後悔した。もう少し注意していれば凶行を避ける事が出来たかもしれないし、起こったとしても手持ちの道具をある程度持ち運べた可能性はあったのだから。
 そしてルルーシュのギアスの発動、それがトドメとなったのだろう。故にレイは暴走したと。
「……ヤンデレを実際に目の当たりにしたけど……二度と会いたくないね」
「残念ですけど、今のリイン達ではどうしようもないですよ」
 アニメやゲーム程度の知識しか無いとは言えヤンデレの恐ろしさはよく知っている。故に最早レイを止める事は不可能だとこなたは考えていたし、リインもそれに同意した。
 既にギアスを使用した事、そして道具をが殆ど奪われた事を考えるとこなた達では太刀打ち出来ないし、アカデミアに残っているスバルでも無力化は厳しいだろう。
 真面目な話明日香達でも説得は通用しないとこなたは考えている為、その可能性も除外する。
 正直レイがああなってしまった事に関してはこなたとリインも責任を感じているし本当ならば止めたいとは思う。
 だが、止められない可能性が高い以上無茶なんて出来ないし、同時に今は傍に重傷のルルーシュや無力な少女であるヴィヴィオがいる為、彼女の元に戻るのは論外だ。レイに関しては諦めるつもりでいた。
 問題は行き違いになったと思われるシャーリーだ。前述の通りレイと遭遇する可能性は高いし、仮に遭遇しなくてもアカデミアには襲撃者がいる。
(なんとかレイと出会わずにスバルと合流出来ていればいいけど……)
 残念ながらこなたには祈る事しか出来ない。それに今はすべき事が他にもある。

「リイン、ルルーシュの方は……」
 気になるのはルルーシュの容態だ、リインによると少なくても最悪の事態は避ける事が出来た為現状死ぬ事はない。とはいえ目を覚ますにはもう少し時間がかかるだろうし、十分な治療を施した方が良い事に変わりはない。
 勿論、リインとしては今後も治療は続けるつもりではある。しかし、制限下での長時間の治療でリインにも疲労が溜まっている。
 その様子を見てヴィヴィオは、
「こなたお姉さん……こなたお姉さんはずっとルルお兄さんと一緒にいたの?」
「ん? ま、割と長い間一緒にいたかな」
 こなたがルルーシュと出会ったのは明け方、それから後はアカデミアで一旦別行動をしていた約2時間を除くとずっと一緒だった為、割と一緒にいた事に違いは無い。
「じゃあ教えて……ルルお兄さんって良い人なの、それとも悪い人なの?」
 ヴィヴィオは知りたかったのだ、彼が本当はシャーリーが楽しそうに語っていた友人であるルルーシュなのか、憎しみを抱いていたテロリストゼロなのかを……

 真面目な話ルルーシュの本心や正体を把握している者は非情に少ない。その殆どを把握しているのは彼にギアスを与えた共犯者であるC.C.ぐらいなものだ。
 その例外はルルーシュから直接聞いたスバル(この場にいるスバルではなくルルーシュの世界のスバル)ぐらいである。
 だが、実はこの場にはそれを知る者が他に2人いる。1人は彼の足跡を記したサイトにアクセスしてそれを知ったキング。そしてもう1人がアカデミアでルルーシュ本人から直接聞いたこなたなのだ。

217Nightmare of Shirley ◆7pf62HiyTE:2009/09/21(月) 19:16:59 ID:c.3iIgV60

 そのこなたは考える―――ルルーシュのした事は悪い事だって誰が見ても明らかだし、客観的に見ればそれが決して許されない事はわかっている。だからルルーシュは決して善人では言えなく、悪人である事には違いはない。だが―――
(そんな単純な事じゃないよね―――)
 そう、善人とか悪人とかそんな単純な言葉で片付けられなかったのだ。
 確かにルルーシュのした事は許されはしないとは思う。だが何故彼はゼロとなって戦争を起こし多くの犠牲を出さなければならなかったのか?
 それは妹であるナナリーが望む世界を手に入れる為だったはずだ。その根底にあるのは悪意ではなく願いだったはずだ。
 当然どんな理由であってもそれは許される事ではないだろう。それ故に彼は自身の行動で多くのもの―――友達や初恋の人を失い親友とは敵同士になってしまった。それはある意味では因果応報もしくは自業自得とも言える。
 だが、ルルーシュ自身も幾度と無くその事で苦しんでいた。彼自身本当は友達や仲間を傷付けたく無かったはずだ。
 きっとルルーシュも自分と同じなんだろう。ルルーシュだって家族や友達と何て事はない平和で楽しい日常を過ごしたかった筈なんだ。だけど彼のいた世界と彼に与えられた境遇がそれを許さなかった。
 仮にこなたがルルーシュと似た境遇だったらどうしていただろうか? 真面目な話、実際にそんな状況になってみなければわからない。だが……
 少なくとも家族や友達を幸せにする、最悪不幸にはさせたくないと思う。こなただってそれぐらいの事は考えるのだ。
 結局の所、ルルーシュの場合はその規模が大きくなって結果として多くの悲劇を生んでしまったに過ぎないのだ。
 何度も書くがその行動は自体は許されはしない。だが、その根底にあるものまで否定する事は誰にも出来ないはずだ。
 家族、友人、仲間の身近な幸せを願う―――それは決して誰にも否定出来やしない。
 思えばルルーシュはこの場に来てからもスバルや自分の事を気にかけていた。自分にかけたギアスも一人称の変更と解けなくてもこなた自身全く問題のない物だ。間違いなく自分達が無事である事を望んでいた。
 それに最初に出会ったディエチを犠牲にした事に関してもずっと苦しんでいたのを知っている。
 更にレイを警戒し彼女にギアスをかけようとしたのもきっと自分達の身を案じての事だったんだ、焦りすぎだったとは思うけどそれを頭ごなしに否定する事なんて出来はしない。
 何よりシャーリーに自分がゼロだと知られた時に彼が取った行動は何だったのか? それはシャーリーに自分を殺させる事だった。やり方は不器用だとは思うがシャーリーを傷付けた事を悔やんでの行動ではなかったのか?
 そんなルルーシュを只の悪人と断ずる事などこなたに出来るわけがない。だから―――
「良い人か悪い人かはお姉さんには言えないけど……友達や仲間想いなのは確かだと思うよ。シャーリーって人を傷付けちゃったかも知れないけど……ルルーシュだって本当は苦しんでいたと思う……これじゃダメかな?」
 ヴィヴィオにわかってもらえるかはわからない。けれどこれがこなたに出来る精一杯の答えではある。
「うん……」
 ヴィヴィオ自身、シャーリーを傷付けてしまった事に関しては納得出来てはいない。だけど友達想いだって事に関しては信じたいと思った。ルルーシュはシャーリーが好きな人なのだから……
 その一方、こなたは何故自分がここまでルルーシュを助けたかったのかに気付いた。自分の身を守る為ならばこのまま置き去りにして逃げても良かったはずだ。ルルーシュを助けなければ自分に及ぶ危険を回避出来た可能性はあった。
 誰であっても人が苦しんだり死ぬのは嫌だった、確かにそれはある。だが、それならばもう少しレイやスバルを気にかけたって良かった筈だ。何故ルルーシュだったのか?
 その答えはきっと、こなた自身もルルーシュの願いが叶う事を望んでいるのだろう。
 考えてもみて欲しい、ルルーシュはナナリーの幸せという誰の中にもある願いを望んだだけなのだ。にも関わらずその代償として彼は多くのものを失いすぎた。それでも、ナナリーが何者かによって浚われるという悲劇が起こっているのだ。
 この場に来てからもルルーシュは仲間を守る為に行動していた。にも関わらずルルーシュは右腕や仲間を失い、死にそうになって仕舞いには命まで狙われる始末だ。
 当然、ルルーシュにも責任はある。だが、それにしたってあまりにも報われなさすぎではなかろうか? 何故彼がここまで苦しまなければならないのだろうか?だから―――

218Nightmare of Shirley ◆7pf62HiyTE:2009/09/21(月) 19:18:16 ID:c.3iIgV60
「死なせないよ」
 こなたはルルーシュの助けになりたいと思った。勿論、自分の無力さなど痛いほど判っている。それでもルルーシュも元の世界に返したいと思ったのだ。
 何が出来るのかはわからないし何も出来ないかも知れない、それでも何か出来るはずだと……こなたはそう考えたのだ。
 そうすると何をすべきだろうか、ルルーシュの手当をしたい所だがリインも最早限界……と、こなたはクラールヴィントを見て、
「そういえばこれってシャマルって人のデバイスだよね……」
 クラールヴィントがシャマルのデバイスであるのを思い出す。シャマルが治療を得意としている事は聞いている。そして、その彼女のデバイスがあるならば……
「これ……使えないかな?」

【1日目 日中】
【現在地 G-6 アニメイト店内】
【泉こなた@なの☆すた】
【状態】疲労(小)、スカーフ無し
【装備】クラールヴィント@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
【道具】ジェットエッジ@魔法少女リリカルなのはStrikerS、救急箱
【思考】
 基本:かがみん達と共に家族の元に帰る為、自分の出来る事をする。
 1.ルルーシュの治療を行う、クラールヴィントが使えれば良いけど……
 2.落ち着いたらこれまでの事を話し合い、その後アニメイトから離れる。
 3.ルルーシュを何とか助けたい。
 4.リイン、スバル、シャーリーが心配。
 5.アーカード(名前は知らない)、浅倉、エネル(名前は知らない)、キング、レイを警戒。特にレイとアーカードにはもう会いたくない。
 6.後でフェイトとプレシアの関係を確認してみる。
 7.かがみん達……大丈夫だよね?
 8.おばさん(プレシア)……現実とゲームを一緒にしないで。
【備考】
※参加者に関するこなたのオタク知識が消されています。ただし何らかのきっかけで思い出すかもしれません。
※いくつかオタク知識が消されているという事実に気が付きました(スバル達に話すつもりはありません)。
※かがみ達が自分を知らない可能性に気が付きましたが、彼女達も変わらない友達だと考える事にしました。
※ルルーシュの世界に関する情報を知りました。
※この場所には様々なアニメやマンガ等に出てくる様な世界の人物や物が集まっていると考えています。
※地図に載っていない施設が存在しているのを確信しました。
※PT事件の概要(フェイトとプレシアの関係は除く)をリインから聞きました。
※自分に割り振られた調査エリアを調べ終えました。何かを見つけたか否かは後続の書き手さんにお任せします。
※ヴィヴィオ及びクラールヴィントからこれまでのいきさつを聞きました。浅倉、エネル(名前は知らない)、キングを警戒しており、矢車(名前は知らない)と天道についての評価は保留にしています。
※クラールヴィントは浅倉を警戒しています。
※救急箱はアニメイト店内で調達したものです。

【ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】疲労(中)、シャーリーへの心配、悲しみ、決意、浅倉に対する複雑な感情
【装備】ヴィヴィオのぬいぐるみ@魔法少女リリカルなのはStrikerS、レークイヴェムゼンゼ@なのは×終わクロ
【道具】支給品一式
【思考】
 基本:六課の皆と一緒に脱出する。
 1.シャーリーお姉さんを助けたい、ルルお兄さんも助けたい。
 2.ママ達がいなくなってもヴィヴィオがんばる!
 3.天道お兄さんを助けたい、浅倉お兄さんともお話したい。
【備考】
 ※浅倉の事は、襲い掛かって来た矢車(名前は知らない)から自分を救ってくれたヒーローだと思っています。
 ※浅倉をまだ信頼しており、殴りかかったのは何か理由があるのだと思っています。矢車とエネル(名前は知らない)を危険視しています。
 ※キングのことは天道を助けてくれるいい人だと思っています。
 ※この場にもう1人なのはやフェイトがいる事に気付いていません。

219Nightmare of Shirley ◆7pf62HiyTE:2009/09/21(月) 19:19:41 ID:c.3iIgV60

【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反目のスバル】
【状態】左腕裂傷、右腕欠損(傷口化膿)、疲労大、発熱による若干の錯綜、強い決意、深い悲しみ、気絶中
【装備】ブリタニア軍特派のインカム@コードギアス 反目のスバル、リインフォースⅡ@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS(疲労(大))、こなたの制服のスカーフ
【道具】なし
【思考】
 基本:守りたい者、守るべき者を全力で守り抜く。
 1.レイは危険だ。
 2.チンクが目覚めたら彼女と話をする。
 3.スバルを守るために、たとえ汚れ役を買って出てでも、スバルにとって最善と判断した行動を取る(もしもの時は殺害も辞さない)。
 4.ディエチやカレンの犠牲は絶対に無駄してはならない。
 5.ギアスの制限を確かめたい。
 6.戦力の確保及びプレシアの関係者の捜索、首輪の解析を行う。
 7.C.C.、クアットロと合流したい。
 8.ゲーム終了時にはプレシアに報復する。またその後でシャーリーに自らの命の決断を仰ぎ、それに従う。
 9.左腕が刃の男(=ナイブズ)、赤いコートの男(=アーカード)、殺し合いに乗った頭の切れる参加者を警戒。
【備考】
※ギアスに何らかの制限がかかっている可能性に気付きました。また、ギアスのオンオフは可能になっています。
※ギアスの発動には左目の強烈な痛みと脱力感が伴います。
※プラント自立種にはギアスが効かない事が確認されました。
※ギアスを使った際の疲労は命令の強さに比例すると考えています、同時にギアスが効かない参加者が他にも考えています。
※こなたの世界に関する情報を知りました。もっとも、この殺し合いにおいて有益と思われる情報はありません。
※「左腕が刃の男」が既に死亡したナイブズである事に気付いていません。
※ここにいるスバルを“本物のスバル・ナカジマ”であると認めました。
※レッド・デーモンズ・ドラゴンは現状では使えない可能性が高いと考えています。
※「月村すずかの友人」からのメールを読みました。ご褒美の話をどう捉えているかは後続の書き手さんにお任せします。
※シャーリーが父の死を聞いた直後から来ている事に気付きました。また一緒にはいられないと思っています。
【リインフォースⅡ:思考】
 基本:スバル達と協力し、この殺し合いから脱出する。
 1.ルルーシュの治療を続ける。
 2.はやて(StS)や他の世界の守護騎士達と合流したい。殺し合いに乗っているならそれを止める。
 3.落ち着いたらこれまでの事を話し合う。
【備考】
※リインフォースⅡの参戦時期は第四話ではやてと会話する前(つまり眠っている間)です。
※自分の力が制限されている事に気付きました。
※ヴィヴィオ及びクラールヴィントからこれまでのいきさつを聞きました。

【チーム:黒の騎士団】
【共通思考】
 基本:このゲームから脱出する。
 1.これまでの情報を纏める。
 2.首輪解除の手段とハイパーゼクターを使用するためのベルトを探す。
 3.首輪を見つけた時には機動六課か地上本部で解析する。
 4.それぞれの仲間と合流する。
【備考】
※それぞれが違う世界の出身であると気付きました。
※デュエルモンスターズのカードが武器として扱える事に気付きました。
※デュエルアカデミアにて情報交換を行いました。内容は[[守りたいもの]]本文参照。
※「月村すずかの友人」からのメールを読みました。送り主はフェイトかはやてのどちらかだと思っています。
※チーム内で、以下の共通見解が生まれました。
 要救助者:シャーリー、ヴィヴィオ、万丈目(注意の必要あり)、明日香、かがみ、つかさ、ルーテシア
 合流すべき戦力:なのは、フェイト、はやて、キャロ、ヴィータ、シャマル、ユーノ、クアットロ、チンク、C.C.、(フェイト及びクアットロには注意の必要あり)
 危険人物:赤いコートとサングラスの男(=アーカード)、金髪で右腕が腐った男(=ナイブズ)
 以上の見解がそれぞれの名簿(ルルーシュ、スバル、こなた、レイ)に、各々が分かるような形で書き込まれています。

220Nightmare of Shirley ◆7pf62HiyTE:2009/09/21(月) 19:56:00 ID:c.3iIgV60





 レイには何が起こったのかを理解する事は出来なかった―――

「邪魔しないで、ボクはすぐにでもルルーシュを殺さなきゃならないんだ、そして十だ……い……」

 『……代様を殺した奴を殺すんだ』―――そう続くはずだった言葉は声にならなかったのだ。
 気が付いた時には身体から力が抜け、手から銃とカードが落ち、そして倒れていくのを感じていた。その時に漸く自分が撃たれているのに気付いたのだ。背後から左胸の辺りを何発も―――
 何故自分は撃たれているのだろうか? それがレイには理解出来なかったのだ。完全に不意打ちだとレイは感じていた。
 そして倒れた後、浴衣の少女はデイパックと拳銃、カードといった彼女の持ち物を全て持ち去っていったのだ。
(待って……それを持っていかないで……それがないと……ボクは……十代様の仇を討てなくなる……)
 薄れ行く意識の中、そう叫ぼうとしたが、叫びは声にならず、少女に届く事は無く、口からは只血を流すだけだった。

 そして、考えるのは―――

『何故ボクは撃たれたのだろう?』

 レイにはそれがどうしても理解出来なかった。見たところ彼女は殺し合いに乗っていない様に見えたからいきなり襲う事はないはずだし、今回は銃すら向けていないのだから襲われる理由は全く無いはずだ。

 だが、此方から言わせればその理由などすぐにわかる。そもそもレイにはある物が欠如していたのだ。
 それ『自分が撃たれる覚悟』だ。
 『撃っていいのは、撃たれる覚悟のある者だけだ』という言葉がある。これはゼロことルルーシュの言葉ではあるが、実際の所この言葉は真理と言えよう。武器を取って戦う者は次の瞬間には自分が撃たれる可能性を考えなければならないのだ。
 『自分は好きなだけ人を殺す事が許されていますが貴方達が自分を殺す事は許されません』なんていう自分勝手な理屈がまかり通るわけがないだろう?
 少なくても、ルルーシュやスバルはその覚悟を持ち合わせていた。ルルーシュに関しては言っている張本人なので当然だが、スバルに関しても(殺すつもり自体は無いが)任務の中で凶悪な犯罪者との戦いによって命を落とす可能性を想定していないわけがない。
 だが、レイの頭の中ではそれが著しく欠如していたのだ。
 殺し合いに乗った参加者やデュエルゾンビになった万丈目、危険人物であるルルーシュは警戒していたではないか?
 確かにそうだが、危険人物の警戒だけなら極端な話撃たれる覚悟の持たないこなたにだって出来る。
 ここでいう話は自分の行動によって自分を撃たれるという可能性の話だ。レイにはそれが欠如していたのである。
 当たり前の話だが襲撃した場合相手は当然迎撃に出るだろう。それにより返り討ちに遭う可能性はあって然るべきだ。
 更に言えばレイの行動目的は『十代の命を脅かす者の抹殺』だった。これと同じ事を考える参加者がいたって不思議ではないだろう。
 つまり、レイが襲おうとした参加者の命を脅かす者を抹殺する事を考える参加者がいてもおかしくないという事だ。
 レイがルルーシュを殺すつもりでいるのをルルーシュの命を守りたい参加者が知ったとしたら……その結果がこれなのだ(実際の所はそんな単純なものではないが)。

 レイがその可能性を想定出来なかったのはこれまでの行動を見てもわかる。
 最初に出会ったフェイトにしてもアカデミアで遭遇したスバルにしても拘束もしくは束縛される可能性は考えても殺される可能性は全く考えていなかった。
 また、フェイトに攻撃をした時も殺したかも知れない罪悪感は感じても無事だったと知るやいなやすぐにその事は忘却の彼方へと消えたのだ。当然、逆に殺される可能性なんて考えていない。
 とはいえ出会った人物が基本的に安全な人である以上そう考えても仕方がないだろう。
 そして、ルルーシュに出会うわけである。ルルーシュは危険人物であったし、ギアスをかけられる可能性もあった為警戒をしていた。だが、やはり撃たれる可能性が欠如していたと言わざるを得ない。
 ここでレイがギアスをかけられそうになった時の状況とレイの思考を思い出して欲しい、
 レイはその瞬間ルルーシュに銃を向けていた。それを見たルルーシュは『俺に従え』というギアスをかけようとしていた。
 その際にレイが思ったのは『銃を向けただけでギアスというのは如何なものか』、『『銃を捨てろ』とか『撃つな』ならまだわかるが『俺に従え』はないだろう』といったものだ。

221Nightmare of Shirley ◆7pf62HiyTE:2009/09/21(月) 19:56:46 ID:c.3iIgV60
 結論を言おう―――レイの思考はあまりにも自分勝手で甘すぎる。
 勿論、その時のルルーシュの精神状態を省みれば暴走に近いものではあった為、レイの側にも同情の余地はあるだろう。だが、この場ではその事は抜きにして彼女が把握していた情報だけで考えてみよう。
 冷静に考えてみて欲しい、十代の死を知ったレイが暴走する可能性は充分にあったしそれでなくても危険人物として警戒されていたのはレイ自身がわかっているはずだ。
 そんな彼女に銃を向けられてみろ、次の瞬間には撃たれて殺されてしまうと考えるのが普通だ。撃たなかったから良いだろうなんて理屈は通用しない、自分の身を守る為であるならば当然の判断だ。
 命令内容にしても1度しか使えないギアスを有効利用するのであれば先々まで有効な『俺に従え』というのは有用だ。銃を捨てさせるだけで済ませるなど無駄でしかない。
 それ以前に命の懸かった状況であるわけなので『死ね』と命令されてもおかしくはない、故に『俺に従え』という命令はむしろ甘過ぎるぐらいだ。にもかかわらずレイはそれを解っていなかった。
 つまり、レイには『撃たれる覚悟』が決定的に欠如していたのだ。しかも出会った人物がルルーシュ以外自分を撃つ事が無い者達だ。そんな覚悟を得られる機会など訪れない。
 そんな彼女がまさかいきなり撃たれるなんて事を想像出来るわけがなかったのだ。

 前にも触れた事だが、彼女の行動次第では十代を死なせる結果を回避する事が出来た可能性はあった―――
 だがそれだけではなく、先程の彼女の行動でプレシアを打倒する集団を危機に追い込んでしまい―――
 そして今度は自身の命すらも失おうとしているのだ―――

 言うなれば自業自得―――彼女の行動の殆どはマイナスの方向に働こうとしている―――

 ―――『失おうとしている』? 『失った』ではないのか?―――

 その通り、今現在レイの命は未だ消えてはいない。
 不幸中の幸いか銃弾は急所を僅かに逸れている。出血は激しいがすぐにでも手当をすれば生きていられる可能性は0ではない。

 だが、限りなく低いという状況に変わりはない。何故なら彼女の近くには助けてくれそうな参加者などいないからだ。
 こなた達は危険人物であるレイとは最早関わり合いになりたくはない為来るわけがない。
 万丈目や明日香のいる位置からは距離が離れすぎている。
 その他の参加者で助けてくれそうな良い人などまずいない。
 唯一の例外がスバルだったが彼女はアカデミアで襲撃者と対峙している。結末次第だが過度な期待は出来ない。
 仮にやって来たとしても手遅れに終わる可能性が高く、運良く生きていられたとしてもマトモに動けるかどうかは微妙だ。

 全て彼女自身の行動が招いた結果である―――

【1日目 日中】
【現在地 G-7】
【早乙女レイ@リリカル遊戯王GX】
【状態】吐血、左背部に4つの銃痕(出血中)、気絶、自暴自棄
【装備】無し
【道具】無し
【思考】
 基本:目的(ルルーシュと十代を殺した者を殺す)を果たしてから死ぬ。
 1.どうして撃たれたんだろう?
 2.武器とカードを返して……
 3.ルルーシュ、十代を殺した者を殺す。邪魔したこなたも殺すし邪魔するなら他の者も……
 4.フェイト(StS)、万丈目を強く警戒。
【備考】
※フェイト(A's)が過去から来たフェイトだと思っています
※フェイト(StS)、万丈目がデュエルゾンビになっていると思っています(スバル達には「自分の世界のフェイトは敵に洗脳されているかもしれない」と説明しました)。
※ここではカードはデュエルディスクなしで効果が発動すると知り、またデュエルデュスクを使えばカードの効果をより引き出せると思っています。
※カードとデュエルディスクは支給品以外にも各施設に置かれていて、それを巡って殺し合いが起こると考えています。
※レッド・デーモンズ・ドラゴンが未来の世界のカードだと考えています(シンクロ召喚の方法がわかっていません、チューナーとチューナー以外のモンスターが必要という事は把握済みですがレベルの事はわかっていません)。
※正しい召喚手順を踏まなければレッド・デーモンズ・ドラゴンを召喚出来ないかどうかは不明です。
※レイの調べた範囲でデュエルアカデミアに目ぼしいものはありませんでした。
※死んだ十代は自分と同じ世界の十代で間違いないと思っています。
※かなり破滅的になっているので周りの話をあまり聞かない可能性が高いです。
※シャーリー(名前は知らない)に撃たれた事は理解しましたが、その理由を理解していません。自分には撃たれる理由は無かったと思っています。
※撃たれた傷は急所を僅かに外しているものの、すぐにでも手当をしないと命に関わります。

222Nightmare of Shirley ◆7pf62HiyTE:2009/09/21(月) 19:58:13 ID:c.3iIgV60





 シャーリーは1人逃げる様に走っていた―――

 その手に持つデイパックの数は5つ、1つは彼女自身が元々持っていた物、後の4つはレイが持っていたものだ。
 何故レイのデイパックをシャーリーが持っているのだろうか? そのシャーリーが口を開く、

「殺しちゃった……」

 レイの言葉を聞いた瞬間、シャーリーの頭は真っ白になり―――気が付いた時にはレイが倒れていたのである。
 シャーリーは持っていた銃を先へ行こうとするレイに向けて背後から発砲したのである。あまりにも突然の出来事にレイは気付く事は出来なかったのだ。
 銃弾は左背部に命中―――だがそれで止まることなく、シャーリーは再び発砲―――やはり左背部に命中―――そして再び―――再び―――
 レイが倒れた音を聞き、シャーリーは漸く自分がレイを撃っていた事に気が付いた。そして見たのだ、背中から血を流して倒れているレイの姿を―――

 手元には銃―――考えるまでもない、自分が少女を撃ってしまったのだ。だが何故? そうだ、彼女はルルーシュを殺すと言っていたんだ。そして、気が付いたら―――
 我に返った瞬間、シャーリーは恐ろしくなってその場から逃げ出したのだ。彼女の持っていたデイパックや拳銃、カード全てを持ち去って―――

 どうしてこんな事をしてしまったのだろうか? シャーリーにはそれがわからなくなっていた。
 レイがルルーシュを殺すと言ったから? だが、シャーリー自身もルルーシュを殺すつもりでいた。止める理由は無かったはずだった。
 だが、それをレイから聞いた瞬間、頭の中が真っ白になってしまったのだ。そして気が付いたら―――


 シャーリーの心情を紐解いてみよう、前述の通りシャーリーはルルーシュを殺すつもりでアカデミアに向かっていた。
 だが、これまた前述の通りシャーリーは迷っていたのだ。極端な話ルルーシュを許す可能性は充分にあったのだ。
 その限りなく不安定な状態でルルーシュを殺そうとする人物と遭遇したのである。
 殺すと決めているならばレイに同行すれば良く、許すと決めているならばレイを止めれば良かった。
 だが渦巻く殺意と想いは増大しその末に―――暴走した。
 そして気が付いたらレイを撃っていたという結末だ。
 だが、自分の精神状態など今のシャーリーに理解出来るわけがない、シャーリーは訳もわからず、人殺しとなった事実を抱えて走っていたのだ。
 レイの持ち物を全て持ち去った理由も彼女自身よくわかっていない。もしかしたらルルーシュをレイから守る為というのもあったのかも知れないし、自分と出会ったという痕跡を全て持ち去りたかったからというのもあったかも知れない。

223Nightmare of Shirley ◆7pf62HiyTE:2009/09/21(月) 19:59:57 ID:c.3iIgV60


 シャーリーは未だ混乱の真っ直中にいる。だがたった1つ確かな事実がある。

 『シャーリーは少女を射殺した』という事実だ。

 この出来事によって、シャーリーの立ち位置は大きく変わってしまった。今の彼女には最早ルルーシュを裁く資格など無い。
 何故なら、彼女は既に被害者ではなくルルーシュと同じ加害者になってしまったからだ。裁く者ではなく裁かれる者となってしまったのだから。
 如何なる理由があってしてもレイを殺す事など決して許されはしない。それはシャーリー自身もわかっていることだ。
 考えてもみて欲しい、レイにだってシャーリーと同じように家族や友達がいたはずなのだ。彼等がレイの死を知ったらどう思う? 殺した相手、つまりシャーリーに強い憎悪を抱いて当然なのだ。
 確かにレイにも殺されるべき理由はあったかもしれない、だがそんな事など理屈でしかない。最早自分はゼロと同じ最悪のテロリストになってしまったのだ。
 そんな自分がルルーシュを裁く事なんて許されるわけがないだろう。だからこそシャーリーは振り返りヴィヴィオの所へ戻る為走ったのである。
 走っている内にスバル達といった友達の姿が浮かんでくる―――だが、最早彼女達と共にいる事なんて出来はしない―――だって自分は人殺しなんだから―――

 今は只ヴィヴィオの所に戻りたかった―――夢中で走り続け―――故にその途中で何かが落ちても気付かない―――
 その行動は明らかな逃避だ。だが、彼女の存在がシャーリーにとっての最後の希望だったのだ。

 しかし―――

「ヴィヴィオちゃん……どこ……?」

 ヴィヴィオの待つ場所に戻ってもそこには誰にもいなかった。
 いや、本当は数十メートル離れた建物であるアニメイトに彼女もいたしルルーシュもいた為、上手く探せば合流出来たかも知れない。、だが今の彼女にそんな事の出来る余裕など無い―――

「あはははは……そっか……そうだよね……ヴィヴィオちゃんだって私を見捨てるに決まっているものね……」

 ヴィヴィオは本当はルルーシュと仲良くして欲しい事はシャーリーにだってわかっていた。だが、シャーリーはそれに目を背けたのだ。
 そういえば放送ではフェイトの名前も呼ばれていた―――それを聞いたヴィヴィオがどれだけ悲しむかなんて分かり切った話だ。なのに自分は彼女の事を忘れて自分の都合だけで行動したのだ。
 こんな自分などヴィヴィオにも見捨てられて当然の話だ。

「無かった事に出来ればいいのに……そうだ、確かプレシアって人が言っていたっけ……全員を殺したら……」

 全てを無かった事にするのを一瞬考えた。しかし、

「ダメだよ……今度はスバルやヴィヴィオちゃんも殺すっていうの……これじゃ私……どんどん嫌な女になってしまう……」

 自分の都合で何の罪もないスバル達を殺す事など決して許されない。故にシャーリーは踏みとどまった、だが同時にそれは絶望を意味していた。何をしても自分が許される事は無いのだと―――

「……どうしたらいいのかな……」

 そんな中、頭に浮かぶのはある1人の男性―――

「あの人にも悪い事しちゃったな……」
 その人物は天道……シャーリーがゼロだと決めつけた人物だ。ルルーシュがゼロだと知るまではずっと彼がゼロだと思っていた為、ずっと憎悪を向けており苦しんで死ぬべきだと思っていた。本人が否定していたにも拘わらずだ。
 更に言えばルルーシュがゼロだと知った後は彼の存在など完全に失念していた。何で忘れていたのだろうか?
 考えれば考えるほど自分が恐ろしいほどに醜悪な人間に思えてくる―――いやそれは間違っている。思えてではない、実際にそうだったのだ。
「あの人に謝ろう……」
 もはや自分が許されるとは思えない―――だが、それでも彼には謝りたいと思った。まだ彼は生きているのだから―――
 確か温泉に向かったはず―――その方向へ向けて彼女は歩き出した。ルルーシュやヴィヴィオ達がいるアニメイトに背を向けて―――

224Nightmare of Shirley ◆7pf62HiyTE:2009/09/21(月) 20:01:33 ID:c.3iIgV60

【1日目 日中】
【現在地 G-6】
【シャーリー・フェネット@コードギアス 反目のスバル】
【状態】健康、強い自己嫌悪と罪悪感、絶望
【装備】浴衣、ゼロの銃(6/10)@コードギアス 反目のスバル
【道具】支給品一式×5、デュエルアカデミア売店の鍵@リリカル遊戯王GX、SIG P220(8/9)@リリカル・パニック、
    フリーズベント@仮面ライダーリリカル龍騎、光の護封剣@リリカル遊戯王GX、レッド・デーモンズ・ドラゴン@遊戯王5D's ―LYRICAL KING―、
    リインフォースⅡのお出かけバッグ@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS、情報交換のまとめメモ(内容は[[守りたいもの]]参照)、投げナイフ(9/10)@リリカル・パニック、
    バスターブレイダー@リリカル遊戯王GX、レギオンのアサルトライフル(100/100)@アンリミテッド・エンドライン、洞爺湖@なの魂、
    小タル爆弾×2@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、インテグラのライター@NANOSING、医薬品一式、メス×3、医療用鋏、
    ガムテープ、紐、おにぎり×3、ペットボトルの水、火炎瓶×4、ラウズカード(クラブのK)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、シーツ数枚
【思考】
 基本:天道に謝りたい。
 1.天道がいるであろう温泉に向かう。
 2.もうルルをどうこうなんて出来ないし、スバルやヴィヴィオの側にもいられない。
【備考】
 ※六課がブリタニア軍の特殊部隊で、スバルはその一員だと考えています。ザフィーラを大型犬だと思っています。
 ※プレシアはブリタニアの偉い人で、この殺し合いを開いたのは六課や日本人及びその関係者を抹殺する為だと考えています。
 ※ヴィヴィオの境遇を自分と重ねています。
 ※ここには同姓同名の別人がいると思っており、放送で呼ばれたなのはが別人の可能性があると考えています。
 ※デュエルアカデミアを決闘の学校で物騒な所だと思っています。
 ※ザフィーラが殺し合いに乗っているかもしれないと思っています。
 ※駅を調べ終えました。
  ガソリンスタンド、ホテル、映画館、デュエルアカデミア、病院をどのような道のりで調べるかは、まだ考えていません(今のところそれを考える余裕がありません。)。
 ※ルルーシュ=ゼロだと気付きました。
 ※第2回放送に関して少なくてもヴィヴィオ、スバル、ルルーシュ、天道、フェイトの生死は把握しています。それ以外の内容がどれぐらい頭に入っているかは次の書き手にお任せします。
 ※レイ(名前は知らない)を黒の騎士団団員だと思っており、彼女を殺したと思っています。
 ※進行方向は煙の立ち上っている方向とは多少ずれています。





 彼女が去っていった後、そこには彼女の持つデイパックから零れ落ちた1匹のカブトムシが飛んでいた―――それが何を思い、そして何処へ向かうのか―――それは誰にもわからない―――





【アニメイト@なの☆すた】
第一話にてこなたがなのは達と行く事になった店で本ロワではG-6に配置されている。
フェイトにどんな店か聞かれた際、こなたは「ん〜……まぁそういうお店だよ」と答えていた。
中身はほぼ現実のものと同様の可能性が高いが、クロス作品に直接関わる商品(『コードギアス』、『遊戯王』、『TRIGUN』等)は取り除かれている。

【備考】
※ハイパーゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレードがG-6アニメイト近くに滞空しています。何処に向かうのかは次の書き手にお任せします。

225 ◆7pf62HiyTE:2009/09/21(月) 20:03:17 ID:c.3iIgV60
投下完了しました。何か問題点や疑問点等があれば指摘の方お願いします。
今回のサブタイトルの元ネタは『コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー』からです。
なお、今回約58KBと分割が必要になりますので分割点の指定を、>>215までが前編で>>216以降が後編です(前後編共に約29KBになるはず)。

226リリカル名無し:2009/09/22(火) 10:17:28 ID:OLTZdwp20
投下乙です
そりゃあついこの前まで平和な世界にいたんだから撃たれる覚悟なんてあるはずないよな
この結果は起こるべくして起きた出来事か、レイ南無
そしてこなたがここにきて頭角を現し始めたのか!?
あ、でもこなたー早いとこスカートを包帯なりなんなりに替えないと衛生上さっきの二の舞だぞー

一つ分からなかったんですけど>>208で「なのはが覇王軍のモンスターと戦う」「彼女は強い者との戦いを楽しみ、弱い者に対しての虐殺を楽しんでいた」
とありますが、いったい元ネタはなんなんでしょうか(リリカル遊戯王GXはその前だし、他のクロス作品?)

227 ◆7pf62HiyTE:2009/09/22(火) 11:11:04 ID:T/LWLy7E0
感想ありがとうございます。

>>226
なのはvs覇王軍の話は『遊戯王系単発SS』のとあるSSの内容が元ネタとなっています。
SSとして存在する以上使えると判断して今回利用した次第です。

重要なのは『十代が危険人物となっている可能性がある』という説明なので、
この描写に問題がある場合はその内容には触れずに、『十代はある並行世界の未来で覇王となっている』という風に修正する事も可能です。
結局の所、この描写はレイの判断が早計だったのを客観的に説明する為のものでしかない為、
SSの内容自体には影響がないはずですが、修正した方が良いでしょうか?

228リリカル名無し:2009/09/22(火) 11:27:06 ID:OLTZdwp20
>>227
素早い返答乙です
いえ少し気になったぐらいで内容を特にどうこう言うつもりはないです
だから修正を求める気はありません

229リリカル名無し:2009/09/22(火) 22:05:22 ID:q7/jI/vsO
投下乙です。今回は色々と進展があったようで続きが楽しみです
シャーリーとヴィヴィオ組にもようやく動きが
アニメイトに隠れたこなた達。果たしてルルーシュは助かるのか
レイは自業自得としか…
周囲に誰もいなくて助かる見込みも少ないという絶望的な状況、やはり死ぬしかないのだろうか…

230リリカル名無し:2009/09/24(木) 19:28:04 ID:ao/DqRyQ0
投下乙です
こなた組の先が気になる。こなたが奮闘するのか、ルルーシュは助かるのか、それとも。
シャーリーはとうとうその手を汚したか。

俺は下手に人が居ない方が安全だと思うがロワに毒されてるのだろうかw

231リリカル名無し:2009/09/24(木) 19:38:45 ID:2AuNoAtc0
>>230
確かに一理ある
だがこの状況だと誰かの助けがなければまず生存は絶望的だと思われる

232 ◆9L.gxDzakI:2009/09/27(日) 21:31:45 ID:FT/qSX.k0
スバル・ナカジマ、柊かがみ分を投下します。

233想いだけでも/力だけでも ◆9L.gxDzakI:2009/09/27(日) 21:33:21 ID:FT/qSX.k0
 ――力がないのが悔しかった。



 ぐわん、としなる音が鳴る。
 空を切り裂くどころでなく、大気を踏み潰さんばかりの重量感。
 傷を負わせたは負わせたが、あの程度ではまだ戦闘に支障ないらしい。
 極太のミラーモンスターの尾が、彼女の顔面目がけて振り抜かれた。
 スバル・ナカジマの頭へと、紫のベノスネーカーの体躯が、鞭のごとく襲いかかった。
 ぐっ、と。
 思いっきり身を反らして避ける。
 まさに間一髪の回避だ。文字通り青色の前髪が、数本千切れてはらはらと舞った。
 姿勢を立て直した彼女の元へと、入れ替わりに襲いかかるのは鎧の戦士。
《SWORD VENT》
 仮面ライダーだ。
 紫電の甲冑を身に纏い、毒蛇の意匠を持った仮面ライダー王蛇だ。
 今やコブラの魔人と化した柊かがみが、目にもとまらぬ速さで突っ込んでくる。
 やはり、速い。
 その姿を見た時から、あれがハイパーゼクターの説明書にあった、仮面ライダーなのではないかと思っていた。
 そしてこの人間離れした速力である。
 間違いなくかがみのものではない。何らかの強化が施されているのは明白だ。
 であればその正体は、マスクドライダーシステムなる強化服に他ならない。
 びゅん、と鳴る裂空。
 振り下ろされたのは黄金の刀剣。
 巨大なコブラの尻尾を模した、ソードベント・ベノサーベルだ。
 紙一重の動作でこれをかわす。
 殺到するのは更なる追撃。
 縦に、横に、斜めにと、次々と繰り出される斬撃の連続。
 されど先のベノスネーカーのそれに比べれば、幾分か読みやすい素人の剣術。
 相手が素手でなかったことが幸いした。
 どう考えても、かがみは戦闘経験の乏しい一般人である。
 対してスバルは、シューティングアーツを会得した、接近戦のスペシャリスト。
 そんな相手に、腕力に物を言わせて攻撃を当てられるのは、せいぜいパンチやキックまで。
 より複雑な技術を要する武器を持ったままでは、確実に命中させられるわけがない。
 とはいえ、終始余裕というわけではない。
 狙いは確かに拙いが、振りそのものは速いのだ。
 何度か冷や汗をかいているし、おまけにこちらにはもうバリアジャケットがない。
 殺傷設定の刀剣型デバイスなど、一撃でも食らえば命が危ない。
 故に、ばっ、と跳び退る。
 バックステップで鋭く地を蹴り、アームドデバイスのリーチ範囲外へ。
 着地した地点の足元を見れば、そこに転がるのは瓦礫の欠片。
 欠片といえどそのサイズは、子供の顔面にも匹敵する大きさだ。
 相手を黙らせるための武器としては、まさにおあつらえ向きのサイズだ。
「ちょこまかするんじゃないわよっ!」
 再度王蛇が襲来する。
 金色の魔剣を振りかぶる。
 繰り出すまでの隙が大きすぎだ。狙いもあまりに読みやすすぎる。
 痺れを切らした大振りの一撃。故に、回避するのは容易。
 先ほどのそれと同じように、ばっとバックステップでかわす。
 代わりに両手に抱えた瓦礫を、素早く頭上へと持ち上げた。
 平時のデバイスの補助はない。
 魔力効率は格段と落ちている。
 されどスバル・ナカジマは、体力自慢のグラップラーだ。
 これくらいの打撃攻撃に、身体強化など不要だ。
「そぉいッ!」
 叩きつける。
 振り下ろす。
 渾身の筋力を両手に込め、岩石の一撃を叩き込む。
 紫のヘルメットに直撃した瓦礫が、鈍い音を上げて砕け散った。

234想いだけでも/力だけでも ◆9L.gxDzakI:2009/09/27(日) 21:34:02 ID:FT/qSX.k0
「うっ! ……このぉ!」
 されど、さしたる効果は得られず。
 仮面ライダー王蛇は健在。
 ほんの一瞬の怯みの後に、苛立った声と共に突きを放つ。
 びり、と裂音が鳴り響いた。
 身をよじってかわしたスバルの上着の脇腹辺りが、しかし避けきれずに切り裂かれた。
 ぞっ、と。
 顔から血の気が引くのを感じる。
 危なかった。あと数ミリ身体が刃に近ければ、そのまま傷を負っていたところだ。
 その場からダッシュし、距離を取る。
(駄目か……!)
 ち、と舌打ちをした。
 あれを顔面に叩きつけた程度では、肉体的ダメージを与えられないことなど分かっている。
 求めたのは頭の粉砕ではなく、脳震とうによる気絶。
 仮面ライダーの装甲ならば、あの程度で砕け散ったりはしないと、信頼した上での攻撃だ。
 しかし、あの毒蛇型のヘルメットは、こちらの信頼以上に堅かった。
 物理的ダメージはおろか、副次的な衝撃さえも凌ぎきってしまったのだ。
 全く効果がないわけではない。現にほんの一瞬だけ、苦悶と共に動きが止まった。
 だが、その一瞬だけだ。
 それだけでは有効とは言えないのだ。
 今の一撃で駄目ならば、現在の装備と場所のままでは、さしたるダメージは与えられない。
 更なる武器を探す必要もある。
 一瞬ルルーシュ達のことが気になったが、彼らにはリインフォースⅡがついているはずだ。
 あれでスバルの上官である。
 仲間を平気で見捨てる冷徹な人間ではないが、仲間を危険地帯に留まらせるような馬鹿でもない。
 先ほどの砲撃の轟音を聞いていたならば、ちゃんとここから脱出しているだろう。
 故にスバルは迷うことなく、エントランスの窓ガラスから、素早くその身を投げ出した。



 幼い頃、空港火災に巻き込まれたあの日、自分には何もできなかった。
 ただただ恐怖に涙を流し、助けを求め続けるだけだった。
 なのはさんに救われて。
 かっこいいと思える強さに触れて。
 そんな力のなかった自分が、生まれて初めて情けなく思えて。
 何もできなかった自分が嫌いで、初めて悔しさに涙を流した。
 ただひたすらに――力がないのが、悔しかった。



 ばりん、と響く音と共に。
 受け身を取って大地を転がる。
 相手に追いつかれるよりも早く、態勢を立て直して足を進める。
 デュエルアカデミアから離れんと、全速力で一直線。
 ガラスの破片のこびりついた上着は、走りながら脱ぎ捨てた。
 茶色の上着が地へと落ち、白いワイシャツ姿が顔を出す。
 分厚い布地から解放された胸元が、僅かに勢いを増して揺れた。

235想いだけでも/力だけでも ◆9L.gxDzakI:2009/09/27(日) 21:35:18 ID:FT/qSX.k0
 足音が聞こえる。戦闘機人の鋭敏な聴覚が、迫りくる脅威の音を認識している。
 並走する地を滑るような音は、あの紫色の巨大なコブラか。
(まだ追いつかれるわけにはいかない)
 速やかに街の店舗などを巡り、武器に使えそうなものを探さなくては。
 疾駆と共に思考するスバルが、近場の適当な建物へと飛び込む。
 潜り込んだのは書店のようだ。
 照明の落ちた薄暗い部屋の中、無数の本が陳列されている。
(ハズレか)
 内心でがっくりと肩を落とした。
 こんなものでは戦えない。
 生身の人間を殺せるレベルの重量でなければ、あの魔人には有効打を与えられない。
 少年ガン■ンは人を殺せる厚さだと誰が言ったか。
 とんでもない。
 どう見てもあの瓦礫ほどの強度もない漫画雑誌が、こんな状況下で役に立つものか。
 カウンターにある文房具にも、残念ながら期待は持てない。
 シャーペンやボールペンを突き立てたところで、生身に届く前に折れる。
「逃げるなっ!」
 と。
 その、瞬間。
 ヒステリックな叫び声が、店外から勢いよく鳴り響いた。
 ぐしゃ、と。
 同時に轟く、破砕音。
 壁を砕き侵入してきたのは、やはり鏡の世界の大蛇。
《シャアアアァァァァァッ!》
 牙を剥き首を持ち上げるベノスネーカーが、鋭い叫びを上げて威嚇。
 追いつかれたか。
 ち、と舌打ちをしながら。
 手の届く範囲の本の中でも、最も分厚いものをショーウィンドーに投げつける。
 強烈な音と共にガラスが粉砕。
 強引に作りだされた出入り口から、一分の逡巡も見せずに脱出。
 一瞬ちらとかがみを見た後、すぐさま次の店へと入る。
 されどそこから続いたのは、今の状況の繰り返しだ。
 肉屋に飛び込んでみれば、そこにあったのは冷蔵庫と、いくつかの肉を捌く包丁のみ。
 冷蔵庫は武器にするには大きすぎる。包丁の切れ味では鎧は切れない。
 大きな肉の塊でも置いてあれば、投擲武器にはなっただろうが、食材の類は一切なかった。
 そのままベノスネーカーの追撃を逃れ、次の店へと飛び込んでいく。
 入った先はエステサロン。当然収穫などありはしない。
 ベノスネーカーに追い立てられる。そのまま次の店へと入る。
 入った先は喫茶店。とりあえず椅子を1つ抱えた。
 ベノスネーカーに追い立てられる。飛び出しかがみへと椅子を投げつける。
 さしてダメージも与えられず、そのまま反撃を受ける前に移動。
 八百屋、服屋、不動産屋。
 行く店行く店どれもこれも、まともな武器が置いていない。
 自動車の店でもあったならば、タイヤ辺りがが使えたのだろうが。
 現地調達品で敵と戦えるのは、せいぜいビデオゲームの世界ぐらいかと実感する。

236想いだけでも/力だけでも ◆9L.gxDzakI:2009/09/27(日) 21:36:14 ID:FT/qSX.k0
(このままじゃまずい)
 間違いなく詰む。
 次に入った事務所らしき建物にも、大して使えそうな物はなかった。
 急いでここから出なければならない。
 今できることがあるとすれば、敵から逃げ回ることだけだ。
 入り組んだ机の間を縫い、入ってきた扉へと向かわんとする。
「もう逃げられないわよ」
 しかし。
 その先に。
 開け放たれた出口の向こうに、待ち構えていたのは蛇の甲冑。
 コブラを引き連れた蛇の王が、仁王立ちになって構えている。
 柊かがみだ。
 仮面ライダーだ。
 待ち受ける敵に出口を塞がれていた。
 ごくり、と。
 我知らず、喉が鳴る。
 これはまずい。
 確かにこれでは逃げ場がない。
 現在スバルが立っている場所は、事務所に並んだ机の合間だ。
 左右を塞がれている。
 後方に逃げ場を求めようにも、眼前にはベノスネーカーが待ち構えている。
 体当たりの態勢は万全だ。こちらが下がりきる前に、突撃を食らってお陀仏だろう。
 万事休す。
 まさに危険な綱渡り。
 一瞬の判断ミスや動作の遅れが、即座に死に直結するシビアな環境。
 かがみが一声下僕へと命じれば、すぐに決着をつけるのも可能だろう。
 しかし、彼女はまだそれをしない。
 余裕のつもりなのだろうか。はたまた威嚇のつもりだろうか。
「どうしてかがみさんは、殺し合いに乗ったんですか……?」
 その間に問いただしておきたかった。
 何故彼女は戦うのか。
 何故パラレルワールドの話を聞いた途端に、殺意を露わにして襲いかかってきたのか。
 ただの高校生であるはずの彼女が、こうして他人を殺めんとしている。
 その理由が知りたい。
 もしかしたら彼女の言葉から、説得の糸口が見つかるかもしれない。
「決まってるでしょ! 私が生き残るためよ! このゲームで優勝する以外に、帰る方法なんてないんだもの!」
「でも、それじゃあこなたやつかささん達だって……!」
「どうせあの娘達は私の世界のあの娘達じゃないんでしょ!? そんな奴ら相手に、迷ってなんていられないのよっ!」
 苛立ちの滲む声でかがみが叫ぶ。
 何と凶暴な主張か。
 何と醜悪な殺意か。
 こんな態度はかがみらしくない。
 少なくともこなたから聞いた限りのかがみは、こんなに割り切りのいい人間ではない。
 自分の目的のために、友や妹と同じ顔をした人まで、無惨に殺せる人間ではないはずだ。
「駄目ですよ、そんなのっ!
 こなたは言ってました……貴方は怒りっぽいけど、根は優しい人だって……だから……!」
「じゃあ他にどんな道があるっていうのよッ!」
 喉の奥から絞り出すような。
 肺の空気全てを吐き出すような。
 思いっきり上げられた大絶叫に、今度こそスバルは一瞬震えた。

237想いだけでも/力だけでも ◆9L.gxDzakI:2009/09/27(日) 21:36:50 ID:FT/qSX.k0
「殺らなきゃ殺られるの! 他の脱出法を探してる時間なんてないのよ!
 どうせほとんど無傷のアンタには分からないだろうけど、現に私はもう何度も殺されかけてるの!
 迷ったら殺される! 気を許したら騙される! だから私はみんなを殺す!
 慣れ合いなんて必要ない! もう間に合ってるの! バクラがいれば十分なのよっ!!」
 ばん、と紫の胸板を叩く。
 右の手のひらで胸元を押さえ、語調も荒く吐き捨てる。
 極大の憎悪に塗り潰された、どす黒く鋭い言の葉の数々。
「バクラ……?」
 その中に、気になるものがあった。
 バクラという名称だ。
 どうやら誰かの名前らしい。文脈からすると、協力者だろうか。
 だがおかしい。バクラなどという名前は、あの名簿の中にはなかったはずだ。
 それはまだいい。偽名を名乗っているのだと説明づけられる。
 だが問題は、そのバクラなる人物が、今一体どこにどこにいるのかということだ。
 彼女の言動から察するに、別行動を取っているとは考えがたい。
 こうまで人間不信に陥ってしまった彼女を、1人にしておくということは、即座に自分の信頼を失うことに直結する。
 それが分からないほどそのバクラも馬鹿ではないはずだ。
 いいやそもそもそうだとしたら、彼女がバクラを頼ることなどないはずだ。
(……待てよ)
 その時。
 ふと、脳裏にひらめいた仮説。
 かがみが変身する前に、その胸元には何があった。
 彼女が仮面ライダーの鎧を身に纏ったことで、一体そこに何が隠されていた。
 あそこに首からかけられていたのは、黄金色のネックレスではなかったか。
 そして自分達の世界に存在する、物質でありながら人格を持つ物――インテリジェント・デバイス。
 ならば、これも同じということか。
 自分達のデバイスと同じように、あの不気味なリング状の首飾りに、何らかの意思が込められていたということか。
 そしてそこから更に推測できることがある。
 かがみの豹変。
 協力者の存在。
 その者への依存。
 そこから導き出される答えは――
「お前は誰だ! 一体かがみさんに何を噴き込んだっ!!」
「ベノスネェェェカァァァァァァァァ―――――――――ッッッッ!!!」
 返事が返ってくることはなく。
 無慈悲な絶叫と共に放たれた大蛇が、扉の枠を押し拡げ襲いかかった。



 自分に力があったのなら、エリオを助けられたかもしれない。
 戦う力があったのなら、こんなに恐ろしい思いをすることもなかったかもしれない。
 だけど、自分には力がなかった。
 弱いから何もできなくて、エリオを見殺しにするしかなかった。
 弱いから変身の解けた隙を突かれて、Lに拘束されてしまった。
 全部、自分が弱かったからだ。
 だから――力がないのが、悔しかった。

238想いだけでも/力だけでも ◆9L.gxDzakI:2009/09/27(日) 21:37:36 ID:FT/qSX.k0


『最後の最後で、俺様の存在に気付きやがったな』
 面白くないといった様子で、バクラが吐き捨てるようにして呟いた。
 こういうところが、このかがみという新たな宿主の悪いところだ。
 冷静になった時の頭の回転は悪くない。心理誘導もたやすく、自分の意思に従わせやすい。
 だが如何せん実戦経験がないからか、随所に迂闊な部分が見られる。
 今だって名前を口にしなければ、自分の存在を隠し通すことができたはずなのだ。
 その点では、万丈目の方がまだ用心深かったかもしれない。
「うっさいわね……今ので殺したんだから、正体なんて関係ないじゃない」
『いや、まだとどめは刺せてねぇみたいだぜ?』
「それってどういうことよ?」
 かがみの視線が虚空を向く。
 現実にはそこには何もないのだが、彼女の意識下では、バクラはそこに浮いているように見えるらしい。
『あれを見な』
 そのバクラが促した先は、ベノスネーカーを突っ込ませた小さな事務所だ。
 壮絶な体当たりの果てに巻き起こった粉塵が、ようやく晴れかけたところである。
 もしスバルがその一撃で命を落としていたならば、今頃はその機械仕掛けの身体を、大蛇に貪り尽くされているはずだ。
 だが、しかし。
 どうにもベノスネーカーの様子がおかしい。
 瓦礫の山の上に立つコブラは、彼女が倒れているはずの足元には目もくれず、ひたすら周囲をきょろきょろと見回している。
「アイツ、何やってるの?」
『逃げ出したエサを探してんだろうな』
 実際、視線を傾けてみたところ、そこには彼女の姿はなかった。
 あの状況下でスバルは突撃を回避することに成功し、まんまとこの場から逃げおおせたのだ。
 格闘戦型の魔導師の底力というものには、心底感嘆せざるを得ない。
 何せつい一瞬前に気付くまで、バクラでさえ殺したものとばかり思っていたのだから。
「そんな……ここまで追い詰めておいて……!」
 ぎり、と。
 仮面ライダーのマスクの下で、細かな歯軋りの音が響く。
 あれほど苦労して追い詰めたにもかかわらず、この期に及んでまた逃げられたのか。
 かがみに比べれば気の長い方であるバクラから見ても、その心情は察するに余りある。
『どうすんだ、宿主サマ? このまま追いかけるか?』
「決まってんでしょ! まだそう遠くには逃げてないはず……何としてでも探し出してやるわ!」
 苛立った声を上げながら、かがみが建物の中へと踏み込む。
 狭苦しい室内を探索し、開け放たれたままの裏口を見つけると、そこから再び外へと出た。
 恐らくあのスバルもまた、ここから脱出したのだろう。
 そして同時に、思い出したように王蛇の変身を解く。
 ベノスネーカーもまたそれに呼応し、散らばっていたガラスへと引っ込んだ。
 変身制限のデメリットは痛いが、無駄に猶予時間を浪費して、そのまま食われるよりはましだ。
『ミラーモンスターを戦わせるんだったら、メタルゲラスを優先して使うことをオススメするぜ』
「ベノスネーカーの猶予時間を回復したばかりだから?」
『それもあるが、もうそっちはしばらく休ませた方がいいだろ』
 ああ、と、かがみから納得したような声が上がった。
 彼女の方は気付かなかったが、傷ついた身体で突撃を繰り返したベノスネーカーは、徐々にその動きを鈍らせていたのだ。
 そろそろ体力が弱ってきたのだろう。であれば、不用意に戦闘させることは避けるべきだ。

239想いだけでも/力だけでも ◆9L.gxDzakI:2009/09/27(日) 21:38:07 ID:FT/qSX.k0
『ん?』
 と、その時。
 バクラの短く漏らした声に、不意に怪訝な響きが宿る。
 何か気になるものでも見つけたのか。
「どうしたのよ?」
 同じく怪訝な表情になったかがみが、バクラに向かって問いかけた。
『……居場所の分からねぇ獲物を探すのと、居場所の分かる獲物の所に向かうのと、どっちがいい?』
 にやり、と。
 意識下の少年の顔に浮かぶ凶悪な笑み。
 享楽的にして嗜虐的な双眸は、遥か上空へと向けられている。
 彼の意識する方へと、彼女も視線を向けてみる。
 そこにあったものは。
「煙……?」
 もうもうと立ち込める黒煙だ。
 果てなく広がる蒼穹の中、不自然に一筋の煙が直線を描いていた。
 あれはどう見ても火事の煙。それも燃えている建物は1軒だけ。
 それほどの火災が起こせるような人間が戦った場合、もっと派手に燃えてもいいはずなのだが。
『そりゃあ、俺らみたいにゲームに乗ってる奴が、戦う相手を呼び寄せるために燃やしたんだろ』
 声に出して問いかける前に、バクラが答えを先取った。
「あっちに行けば、もっと手っ取り早く餌が見つかる……」
『だろうな。で、どうするよ?』
「まぁ……あたしもあっちに行くことに異論はないけど……」
 かがみの回答は、しかし語尾を濁すようにして勢いを失う。
 妙に不安げな色の宿った視線が見つめるのは、自らが背負ったデイパックだ。
 否、正確な対象はその中身。
 そしてバクラにはそれが分かっていた。
『デルタギアを使うのは、さすがに気が引けるってか』
 こくり、と。
 先ほどのヒステリーが嘘のように。
 すっかり意気消沈した少女が弱々しく頷き、紫色のツインテールを揺らす。
 装着者に力をもたらす代わりに、闘争本能を刺激し正気を奪う悪魔のベルト――デルタギア。
 かがみが引っ込みがつかなくなったも、ある意味これが原因なのだ。
 恐らくこれを使ってしまえば、彼女はまた暴走してしまう。
 自我を失い不要なまでに殺戮を楽しむバーサーカーとなり、際限なく暴れまわってしまう。
 この殺し合いだって、好きで乗っているわけではないのだ。
 最後の理性さえも失ってしまうのは。
 自分が自分でなくなってしまうのは、怖い。
『なら、そいつが必要になったら、俺が代わりに変身してやろうか』
「アンタが?」
『俺様は元々破壊と殺戮が大好きなタチでな。
 朱に交われば赤くなるってのはよく言うが、元から赤色の俺だったら、朱に混ざろうとも大して変わらねぇだろうよ』
 要するに、こういうことだ。
 元々好戦的なバクラは、根はまともな人間であるかがみに比べて、デルタギアに精神を侵食される可能性は低い。
 ならば仮面ライダーデルタに変身している間は、自分と人格を交代しよう、と持ちかけてきたのである。
『もっとも、俺もいつになったら、また入れ替われるようになるかは分かんねぇけどよ』
「……そうね……じゃあ、その時はお願いするわ」
 ありがとう、と。
 声にならない感謝の言葉が、小さく現実の言葉と重なる。
 心の奥底でそっと囁いた言葉が、バクラの耳には届いていた。
(ったく、面倒なもんだぜ……)
 白髪の頭をぽりぽりと掻く。
 信用を獲得するというのは悪くない。そうすればより利用しやすくなる。
 だが元々盗賊王バクラとは、馴れ合いや友情とは縁の薄い一匹狼だ。
 いちいち感謝されたり恩義を感じられるのは、正直目的うんぬん以前にむずがゆい。
 それもあまり気に入らないタイプの女から向けられるとあれば、なおさらだ。
『まぁともかく、ちゃっちゃと行って済ませちまおうぜ』
 そしてそんな感情はおくびも表に出さず、バクラはかがみに道を促したのだった。

240想いだけでも/力だけでも ◆9L.gxDzakI:2009/09/27(日) 21:38:58 ID:FT/qSX.k0


 力がないのが悔しかった。
 だけど、今この手には力がある。
 仮面ライダーやミラーモンスターという武器があるし、バクラという頼もしい相棒もいる。
 だったら、もう生き残るためには何もいらない。
 この力さえあればいい。
 別世界のこなたやつかさが現れても、そんなことはもう関係ない。
 仮面ライダーと千年リングがあれば、もう仲間意識とか想いやりなんて必要ない。
 生き残るために。
 元の世界へ帰るために。

 私はこの仮面ライダーの力で、全てを薙ぎ払う。

241想いだけでも/力だけでも ◆9L.gxDzakI:2009/09/27(日) 21:39:48 ID:FT/qSX.k0
【1日目 日中】
【現在地 G-6】
【柊かがみ@なの☆すた】
【状態】健康、肋骨数本骨折、2時間30分憑依不可(バクラ)
【装備】ホテルの従業員の制服、ストラーダ(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
    千年リング@キャロが千年リングを見つけたそうです、
    カードデッキ(王蛇)@仮面ライダーリリカル龍騎(1時間変身不可)、
    サバイブ“烈火”(王蛇のデッキに収納)@仮面ライダーリリカル龍騎
【道具】支給品一式×2、Ex-st@なのは×終わクロ、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
    ランダム支給品(エリオ0〜2)、レヴァンティン(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
    カードデッキ(ベルデ・ブランク体)@仮面ライダーリリカル龍騎、柊かがみの制服(ボロボロ)、スーパーの制服、
    ナンバーズスーツ(クアットロ)
【思考】
 基本:死にたくない。なにがなんでも生き残りたい。
 1.バクラ以外の何者も信じない(こなたやつかさも)。
 2.煙の上がった場所(=レストラン)にいる参加者を殺しに行く。
 3.2の後で映画館に向かう。
 4.万丈目に対する強い憎悪。万丈目を見つけたら絶対に殺す。
 5.同じミスは犯さないためにも12時間という猶予時間の間に積極的に参加者を餌にして行く。
 6.メビウス(ヒビノ・ミライ)を警戒。
 7.デルタギアを使用する際には、バクラに代わりに変身してもらう。
【備考】
※デルタギアを装着した事により電気を放つ能力を得ました。
※一部の参加者やそれに関する知識が消されています。ただし何かのきっかけで思い出すかもしれません。
※「自分は間違っていない」という強い自己暗示のよって怪我の痛みや身体の疲労をある程度感じていません。
※周りのせいで自分が辛い目に遭っていると思っています。
※Lは自分の命が第一で相手を縛りあげて監禁する危険な人物だと認識しています。
※万丈目の知り合いについて聞いたが、どれぐらい頭に入っているかは不明です。
※王蛇のカードデッキには未契約カードがあと一枚入っています。
※ベルデのカードデッキには未契約のカードと封印のカードが1枚ずつ入っています。
※「封印」のカードを持っている限り、ミラーモンスターはこの所有者を襲う事は出来ません。
※変身時間の制限にある程度気付きました(1時間〜1時間30分程時間を空ける必要がある事まで把握)。
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。
※こなたとつかさの事は信用しないつもりですが、この手で殺す自信はありません(でもいざという時は……)。
※千年リングを装備した事でバクラの人格が目覚めました。以下【バクラ@キャロが千年リングを見つけたそうです】の簡易状態表。
※ベノスネーカーが疲弊しているため、回復するまではメタルゲラスを主軸として使っていくつもりです。
【思考】
 基本:このデスゲームを思いっきり楽しんだ上で相棒の世界へ帰還する。
 1.かがみをサポート及び誘導して優勝に導く。
 2.万丈目に対して……?(恨んではいない)
 3.こなたに興味。
 4.可能ならばキャロを探したいが、自分の知るキャロと同一人物かどうかは若干の疑問。
 5.メビウス(ヒビノ・ミライ)は万丈目と同じくこのデスゲームにおいては邪魔な存在。
 6.パラサイトマインドは使用できるのか? もしも出来るのならば……。
 7.かがみが自分の知るキャロと出会った時殺しそうになったら時間を稼いで憑依してどうにかする。
 8.デルタギアを使用する際には、かがみと人格を交代して代わりに変身する。
【備考】
※千年リングの制限について大まかに気付きましたが、再憑依に必要な正確な時間は分かっていません(少なくとも2時間以上必要である事は把握)。
※キャロが自分の知るキャロと別人である可能性に気が付きました(もしも自分の知らないキャロなら殺す事に躊躇いはありません)。
※千年リングは『キャロとバクラが勝ち逃げを考えているようです』以降からの参戦です。
※かがみのいる世界が参加者に関係するものが大量に存在する世界だと考えています。
※かがみの悪い事を全て周りのせいにする考え方を気に入っていません(別に訂正する気はないようです)。

242想いだけでも/力だけでも ◆9L.gxDzakI:2009/09/27(日) 21:41:06 ID:FT/qSX.k0
 王蛇が去りてしばらくの後。
 静けさを取り戻した街中に、静かに蠢く影がある。
 物陰から事務所の裏を除いていたのは、十代半ばほどの少女の体躯。
 青いショートカットの頭は、逃げ延びたスバル・ナカジマのものだ。
 息を殺し様子を伺っていた彼女の顔には、びっしりと脂汗が浮いている。
 張り詰めた緊張が解けていき、ふぅ、と軽く息をついた。
「っ……ん、ぅう……ッ」
 と、同時に。
 くぐもった苦悶の声が漏れる。
 自然とアスファルトに手のひらをついていた左腕の、二の腕の部分を軽く抑えた。
 身をよじり、痛みに耐える。
 ここで下手に大声を出しては、存在を彼女らに気取られかねない。
 そうなれば勝ち目はゼロだ。逃げることすらも不可能になる。
 何せ武器がないだけでなく、手負いの身にまでなってしまったのだから。
 右の手のひらを引き剥がした二の腕には――赤黒い痣が浮かび上がっていた。
 触れていた手に熱を感じる。確実にフレームが折れている。
 つくづく戦闘機人技術とは、妙に芸が細かいものだ。
 見た目も痛覚も、人間の骨折そのままではないか。
 確かにスバルはベノスネーカーの体当たりに対し、直撃を避けることには成功していた。
 だが、その後がまずかった。
 デスクを飛び越える際に生じた一瞬のタイムラグが、彼女の動きを鈍らせていた。
 結果完全に回避するには至らず、左の二の腕を掠めてしまい、内部フレームをへし折られてしまったのだ。
 苦痛に震える身体に鞭打ち、ぐっと両足を立ち上がらせる。
「添え木になるもの……探さなくっちゃな……」
 ぽつり、と力なく呟く。
 もちろん、すぐに固定するわけではない。
 患部を自力で接合させるのは危険だ。
 人間の場合、人為的に骨折箇所を繋ごうとすれば、ショックで意識を失うこともあるらしい。
 こんな戦場のど真ん中で気絶するのはどう考えてもまずい。
 故に仲間と合流するまでは、使用は避けるつもりである。
 それでも、用意するに越したことはない。この辺りの店を探れば、材料はすぐに手に入るだろう。
 ふらり、ふらりと。
 力ない足取りで、道路を進む。
(見ていることしかできなかった……)
 彼女を苛むものは、肉体的苦痛のみではない。
 重い後悔がのしかかる。
 かがみを止めるはずだった。
 チンクの死を無駄にしないためにも、何としてでも止めなければならないはずだった。
 だが、結果はこうだ。
 チンクを殺され、仲間とはぐれ、かがみを見失い、左腕までも潰されてしまった。
 得られた戦績など何一つない。むしろ失うものばかりという体たらく。
(最悪だ)
 頭を抱えてしまいたい心地だった。
 自ら止めると決めた相手が、鉄火場へと勇んで進んでいくのを、そのまま見送ることしかできなかった。
 そもそもこの殺し合いが始まってから、自分はろくに役に立った覚えがない。
 せいぜいあの吸血鬼からこなたを守った時くらいだ。
 最初の瞬間だけ頑張っただけで、全く後に続いていない。

243想いだけでも/力だけでも ◆9L.gxDzakI:2009/09/27(日) 21:41:38 ID:FT/qSX.k0
(このままじゃ、駄目だ)
 強く己を戒めた。
 痛む左手を押さえながら、それ以上の決意を胸に誓った。
 このまま何もできないままでは終われない。
 この腕に治療を施した後で、改めてかがみを止めに行く。
 否――あのリングに宿っていたであろう、バクラなる存在の意思から、本当のかがみを取り戻す。
 だが、1人では駄目だ。
 あの紫の鎧の仮面ライダーには、丸腰で挑んでもかなわない。
 現に左腕を折られたのだ。文字通り、痛いほどに分かる。
 ならば、どうする。
 決まっている。
 仲間達を集め、協力を仰ぎ、皆で彼女を救い出すのだ。
 決意を固めたスバルの表情に、ほんの少し力が戻った。



 力がないのが悔しかった。
 それを手に入れた今でも、まだ悔しい。
 この声は彼女に届かなかった。
 デバイスを奪われてしまったがために、力で止めることもできなくて、ただ見送ることしかできなかった。
 あたし1人ではまだ足りない。
 想いに力が伴っていない。
 自分1人の力だけでは、彼女の胸には届かない。
 だけど、まだ諦めてはいない。
 ルルーシュ達と力を合わせて、何度でも呼びかけてみせる。

 あたしは必ず、かがみさんを救い出す。


【1日目 日中】
【現在地 G-6】
【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康、全身にダメージ小、左腕骨折、ワイシャツ姿、若干の不安
【装備】なし
【道具】支給品一式(一食分消費)、スバルの指環@コードギアス 反目のスバル、
    炭化したチンクの左腕、チンクの名簿(内容はせめて哀しみとともに参照)
【思考】
 基本:殺し合いを止める。できる限り相手を殺さない。ルルーシュを守る。
 1.骨折箇所の添え木になるものを探す
 2.ルルーシュ達と合流し、かがみを止めにいく
 3.ルルーシュに無茶はさせない、その為ならば……。
 4.こなたを守る(こなたには絶対に戦闘をさせない)。
 5.アーカード(名前は知らない)を警戒。レイにも注意を払う。
 6.六課のメンバーとの合流とつかさの保護。しかし自分やこなたの知る彼女達かどうかについては若干の疑問。
 7.もしも仲間が殺し合いに乗っていたとしたら……。
【備考】
※質量兵器を使う事に不安を抱いています。
※参加者達が異なる時間軸から呼び出されている可能性に気付きました。
※仲間(特にキャロやフェイト)がご褒美に乗って殺し合いに乗るかもしれないと思っています。
※自分の存在がルルーシュの心を傷付けているのではないかと思っています。
※ルルーシュが自分を守る為に人殺しも辞さない及び命を捨てるつもりである事に気付いています。
 でもそれを止める事は出来ないと考えています。また、自分が死ねばルルーシュは殺し合いに乗ると思っています。
※ルルーシュの様子からデュエルアカデミアから出て行ったのはシャーリーだと判断しています。
※自分に割り振られた調査エリアを調べ終えました。何かを見つけたか否かは後続の書き手さんにお任せします。
※万丈目とヴァッシュが殺し合いに乗っていると思っています。
※アンジールが味方かどうか判断しかねています。
※千年リングの中に、バクラの人格が存在していることに気付きました。
 また、かがみが殺し合いに乗ったのは、バクラにそそのかされたためだと思っています。


【備考】
※G-7デュエルアカデミア敷地内に、時空管理局陸士制服の上着(スバル)が落ちています

244 ◆9L.gxDzakI:2009/09/27(日) 21:42:39 ID:FT/qSX.k0
投下は以上です。

245リリカル名無し:2009/09/27(日) 21:57:12 ID:BUqeiFyY0
投下乙です。
とりあえず、スバル何とか左腕骨折だけですんだか……
しかしそのルルーシュ達も大変な事になっているのだが……
で、かがみんはどうやらレストラン方面に向かう様で……
さあ、浅倉は王蛇を奪還できるか!?

1点指摘があるんですが、今現在かがみはデルタギアを持っていません(現在の所持者は大はやて)。
話題に出すのはともかく、この内容だとデルタギアを持っていると取れるんですが……。

246 ◆9L.gxDzakI:2009/09/27(日) 22:45:55 ID:FT/qSX.k0
あれ、そうだったっけか!?
すいません、完全な把握ミスですorz とりあえず、明日までに修正を用意します

247リリカル名無し:2009/09/28(月) 23:02:45 ID:edSrspuQ0
投下乙です
スバルは死ぬと思ったが生き残ったか
丸腰だからせめて武器を入手出来ればいいんだが
だがマハキャリは他の人が持ってるし
そしてかがみんはレストラン方向か。浅倉と鉢合わせするのか?

248リリカル名無し:2009/09/29(火) 09:56:20 ID:mnPpd02k0
投下乙です
勝負はお預けか、いやスバルの方は深刻か。
レストランに波乱の予感!?奇しくも時間はお昼時だ!
修正版見ました――凛かよw

249 ◆7pf62HiyTE:2009/10/01(木) 10:50:16 ID:NI/rt1XU0
ヒビノ・ミライ分を投下します。

250がんばれ! ウルトラマンメビウス ◆7pf62HiyTE:2009/10/01(木) 10:53:43 ID:NI/rt1XU0
 首輪から放送が鳴り響く。
 プレシア・テスタロッサにより新たな禁止エリア、新たな死者、その他様々な情報が伝えられる。
 彼女自身も語っていたがその情報が語られるのは1度だけ、聞き逃した所でもう1度話してくれるなんていう都合の良い話など無い。

 そう、ここで禁止エリアを聞き逃したとしても彼女から教えて貰うなんて事は絶対に無く、
 死んだ人の名前を聞き逃したとしても彼女がもう1度教えてくれるなんて親切な話など無い。

 だが、ここにそれを聞き逃す不幸な青年がいた。彼の名はヒビノ・ミライ、ガジェット・ドローンの爆発の衝撃により気を失っていたのである。
 いや、その理由は正確では無いか。彼の正体はウルトラマンメビウス、それに変身していた彼ならばその衝撃だけで気を失うのは考えにくい。
 そもそも彼はその直前、1人の銀髪の男によって胸を斬られていた。それによるダメージは決して軽くはなく、暫くの休息が必要であった。
 しかし彼はその銀髪の男が八神はやてという少女の命を狙っていると考え、彼女を守る為にメビウスに変身して彼を追ったのだ。その途中で不幸にもガジェットと遭遇したのである。
 つまり、ガジェットによるダメージだけではなく先程の銀髪の男によって受けたダメージも気絶の要因となっているのである。
 不幸な事にそのタイミングは放送直前、そこで気絶をすれば放送を聞き逃すのは明白、今後大きな支障となるのは誰の目から見てもわかることだろう。
 更に言えば、放送では彼の仲間を含めた9人の名前が呼ばれた。その中には前述の『八神はやて』の名前もあった。その事を彼が知らないと言うのも不幸と言えるだろう。もっとも知った所で幸運とは言えないが……
 ガジェットと戦わなければ良かったのでは? いや、結果的な話だがそうとは言い切れない。
 ガジェットは生体反応に突撃を仕掛けて自爆する仕掛けが為されていた。故に、これを放置すれば他の参加者の命を脅かすのは明白、これを破壊したという判断は決して間違ってはいない。
 また、少々残酷な話だが真面目な話手負いのメビウスで銀髪の男に勝てる可能性は非情に低く、それ以前に銀髪の男に追いついた段階で既に変身が解けている可能性がある。
 つまり、客観的に言えばこのまま銀髪の男に向かっていっても犬死で終わる可能性が高かったという事だ。
 故に、この行動による結果はベストとは言えないもののワーストとも言えないものだった。

 しかし、この状況が悪い事に変わりはない。放送を聞き逃した事も大きいし、何より先程の爆発で他の参加者がやって来る可能性がある。
 この状況で殺し合いに乗った参加者が現れれば―――結果など語る必要も無いだろう。
 だが、ミライのダメージと疲労は大きい、このまま『何も無ければ』気を失ったままでいるだろう。そう、『何も無ければ』―――



 唐突だが、とあるフロントアタッカーはとある祝福の風を見付けた時こう思ったそうだ、
『何でこんな人までここにいるの。見せしめ含めて61人じゃなかったの。』
 確かにこの殺し合いの参加者は60人、見せしめを含めれば61人だ。その認識は間違っていない。
 だが、現実には意志のある支給品が幾つか存在している。先程の祝福の風もそうだし、前述の銀髪の男にはとある烈火の剣精が支給されていた。また、とある竜召喚士の竜も支給品として支給されている。
 当然の事だが、彼等にも首輪等何かしらの行動の制限が為されている。参加者と同一のものかは不明ではあるが、厄介な事に変わりはない。
 ところで、この場ではデュエルモンスターズと呼ばれるカードゲームのカードが何枚か支給されている。
 ある世界では実際にそのカードのモンスターや魔法が現実のものとなっていたが、それはこの場でも例外ではなく、やはり制限はあるものの実際に発動する事が出来る。
 さて、そのカードの中には『精霊』と呼ばれる特殊なモンスターが幾つか存在している。
 元々の世界ではカードが実体化し干渉を仕掛ける事など殆ど無いが、『精霊』は実際に現れ、限られた者だけではあるが視認し意思を通わせる事が出来る。
 そして、そのある世界においては限られた者以外の誰でも姿を見る事が出来声も聞く事が出来た。
 この場に置いてもその『精霊』と呼ばれるカードが幾つか支給されている。とある少年の相棒ともいえる『精霊』はつい先程とある湖の騎士の傍で姿を現し、何故か悲しみの泣き声を発していた。そして―――

251がんばれ! ウルトラマンメビウス ◆7pf62HiyTE:2009/10/01(木) 10:55:07 ID:NI/rt1XU0



 その『精霊』―――『彼』は気が付いたら暗いデイパックの中にいた。
 しかし、不幸にもデイパックの持ち主は『彼』とその兄達の存在に気付く事は無かった。
 『彼』は『精霊』とはいえあまりにも無力―――故に只周囲の音や声を聞く事しか出来なかった。
 声や音しか聞けなかったが、少なくともこの場が過酷な殺し合いの場だという事だけは理解した。
 幸い近くに兄達がいた事はわかっていたが、暗く狭いデイパックの中ではどうする事も出来なかった。
 ただ、『兄貴』やその仲間の無事と再会を願う事しか出来ないでいた。
 だが、度重なる激しい振動により閉ざされたデイパックは少しずつ開いてしまい―――
 先程の強い衝撃により一気に開き幾つかの中身が飛び出すと同時に―――『彼』のカードも外へと飛び出したのである。



「ううっ……酷い目にあったわぁ……」

 カードから出てきた『彼』は全身が黄色く、パンツ1枚だけを穿いたモンスターである。その外見は誰が見ても弱々しく、ある意味では気色悪く、好き好んで使う奴など少ないであろう。
 外見はアレでも……と考える者もいるだろうが、このモンスターの能力は非情に低く最低レベルと言っても良い。そういう面から見ても好き好んで使う奴など少ないであろう。
 『彼』とその兄弟の持ち主もこう語っていた。

『確かにこいつらの攻撃力は0、見てくれも性格も間違いなく最悪』

 ……何故持ち主が『彼等』を使っているか疑問に思う方もいるだろうが、ここでは重要ではない為話を進めさせて貰う。
 『彼』の名はおジャマイエロー、兄達であるおジャマブラック、おジャマグリーンと共にデュエルモンスターズの精霊である。
 おジャマイエローは周囲を見渡し、先程まで起こっていた戦いの衝撃で飛び出したという事は理解出来―――

「ばんざーい! やっと暗くて狭い所から出られたわぁー!!」

 外に出られた事を喜んだ。が、
「って、喜んでいる場合じゃないって!」
 周囲を見渡すとガジェットの残骸が未だ黒煙を上げており、更に
「この人怪我しているじゃないの!?」
 近くにいる青年が怪我をして倒れていたのだ。
「どうしよう、万丈目の兄貴も心配だし、この人も放っておけないし……」
 と、色々考えている間に、

『6時間ぶりね。
 みんな、ちゃんと聞いているかしら。』

 青年の首から女性の声が響き始めたのである。
「えー!?」
 それが何なのかは1度聞いているおジャマイエローも理解している。禁止エリアと死亡者を伝える放送である。これを聞き逃す事が致命的なのはおジャマイエローにだってわかる。
 しかし見たところ青年が反応していない為、彼がこれを聞いている様子はない。
「どうするの!? 誰が禁止エリアとか聞くの!? もしかしてオイラ!?」
 パニックに陥るおジャマイエローである。最初の放送も一応聞いてはいたが彼の兄貴である万丈目準を含めた彼の仲間達が無事程度の事しか把握出来ていない。真面目な話彼に放送内容を覚えろと言うのは無謀というものだろう。
 そうこうしている間に放送は進み、

『13時からA-4
 15時からA-9
 17時からE-6』

「A-4……A-9……E-6……A-4……A-9……E-6……よし、覚えたわ!」
 と、安堵するおジャマイエローであったが何度も復唱している内に死亡者の発表に入っていた。
「あー! どうすんの!? 兄貴の名前が呼ばれていたら……」
 既に何人かの名前は聞き逃している。しかし、同じ事をもう一度伝えてくれるわけがない。
「ちょっと待って……確か名前はあいうえお順で呼ばれていたから……兄貴の名前は万丈目だから『ま』……」
 が、何とか落ち着きを取り戻し放送に集中する。

252がんばれ! ウルトラマンメビウス ◆7pf62HiyTE:2009/10/01(木) 10:56:33 ID:NI/rt1XU0


『ブレンヒルト・シルト』


「ブ……はひふへほだからまだ前……」


『武蔵坊弁慶』


「む……まみむめ……ということは……」
 この時点で万丈目の生存は確定した。
「ばんざーい! 兄貴は無事だわー! やったー!!」
 思わず大声を張り上げ喜ぶイエローであった。が、名前の読み上げは進んでおりこの瞬間に呼ばれた名前を聞き逃していた。
 そして、次の瞬間、彼の喜びは一転して落胆に変わる。

『遊城十代』

「わーい……え!? ええ!?」
 その人物の名はイエローもよく知る人物だ。万丈目の友人(本人は認めていないが)であり、数少ない自分の姿が見え声も聞こえる少年遊城十代だ。
「そんな……十代のダンナが……死んだって……!?」
 そのショックは大きく、それ以降の放送の中身など耳に入るわけもなかった。
「嘘でしょ……嘘って言ってくれよ……十代のだんなぁー!!」
 イエローは泣き叫んだ。
 過去に万丈目が光の結社によって取り込まれた際に、彼のエースカードであるおジャマ達が捨てられた事があった。
 その際にイエロー達は十代の協力を得て万丈目を元に戻す事が出来たのである。
 そういう経緯もあり、イエロー達にとってみれば十代も万丈目程ではないが大事な存在であった。
 その十代の死はイエローに大きなショックを与えた。万丈目が生きている喜びなどとうに消えている。何しろ、次の瞬間には万丈目や自分達が死んでいるかも知れないのだ。喜べるわけがない。
「無事でいてくれよー! 兄貴ー!!」
 そして泣き叫んでいる内に、
「うう……なんだ……この声は……」
 ずっと気を失っていた青年が目を覚ましたのである。
「ん……?」
「あれ……君は……?」
「……もしかして、オイラの姿が見える?」

253がんばれ! ウルトラマンメビウス ◆7pf62HiyTE:2009/10/01(木) 10:58:10 ID:NI/rt1XU0





 ミライとおジャマイエローは互いに自己紹介をした。
 ミライにしてみればカードゲームのモンスターが実体化というのは信じがたい話ではあるものの、元々の自分の世界でもマケット怪獣と呼ばれるデータに記録された怪獣を実体化したものがある為、その類のものだとミライは理解する事にした。
「というかオイラ達の存在を忘れるなんて酷いじゃない!」
「ごめん……僕も君達がいたなんて気が付かなかったよ……」
 ミライはこれまでカードという形で自分に支給された物があった事に気が付いていなかった。おジャマイエローに言われた事で彼の兄達、そしてそれとは別のカードの存在を知ったのである。
 もっとも、残るおジャマ2枚についてはデイパックから飛び出さなかった為、今もデイパックに眠った状態であるが。
「このカードについては知らないの?」
 と、ミライは飛び出した中身の1つであるカードをおジャマイエローに見せた。
「オイラは知らないわ……デュエルモンスターズのカードじゃ無いみたいだけど……」
 そのカードは『CONFINE VENT』と書かれている。意味を考えるならば『制限』という事だが、
「何かを『制限』する……? あれ、確か……」
 ミライは数時間前に遭遇した紫の髪の少女が『〜〜VENT』と呼ばれる技を使っていたのを思い出した。
「ひょっとしてクロノ君やあの子の持っている箱に関係するものなのかな……?」
 とりあえず『CONFINE VENT』というのがそれに関係するものだという事だと納得する事にした。と、

「……今更な話だけど、どうしてあの子は僕を襲ったんだろう……」
 今更ながらに少女が自分を襲った理由が気になった。いや、それ自体はあの時彼女を乗っ取った存在によるものだと納得出来ない事もない。
 しかし、冷静に考えてみればそれだとするなら不自然な話である。何しろあの時は逆にモンスターが少女を襲い始めたし、モンスターをメビウスが撃破した後、
『こっちも困ってたんだ。このままじゃモンスターに食われちまいそうだったんでなぁ……
 その点に関してだけは、感謝してやるよ。』
 奴は少女の口からそう語ったのである。更に言えば、少女自身も時間が無いと語っており、ミライの説得など全く聞く様子がなかった。
 この言葉から察するに、あの箱のモンスターを扱う為には参加者を餌にしなければならない可能性が高い。それ故に、少女は自分を襲いかかったのだろう。
 真面目な話、奴自身も襲われる事は想定外の出来事であったのだろう。
 モンスターは撃破した為、これ以上彼女が襲われる心配は無くなった。だが、彼女を操る奴がいる以上、一刻も早く彼女も助けにいかなければならないとミライは考えていた。

254がんばれ! ウルトラマンメビウス ◆7pf62HiyTE:2009/10/01(木) 10:58:47 ID:NI/rt1XU0

 と、ここでもう1つある事に気が付いた。何故、クロノ・ハラオウンは拡声器を使って自分達を含めた仲間を呼び寄せようとしたのだろうか?
 仲間を呼ぶ為―――確かにそれはあるだろうが、下手に呼びかけを行えば殺し合いに乗った危険人物を呼び寄せる事にもなりかねない。
 というより、実際に赤いコートの男を呼び寄せてしまい、ミライと行動を共にしていたアグモンは殺され、同時に呼び寄せた張本人であるクロノも殺されてしまった。
 つまりだ、拡声器を使うという行為はあまりにもリスクの高い手段であったのだ。ミライ自身もそれは理解していたものの、クロノにあった時には、
『でも流石クロノ君だね、こんな状況で周囲に呼びかけるなんて……普通は出来ないよ!』
 クロノの勇敢さを称えてはいた。
 だが、よくよく考えてみれば真面目で冷静沈着なクロノがそんな無謀な事をするだろうか? あまりにも不自然すぎる。
 しかし、仮に『そうせざるを得ない理由』があったとしたら?
「そうか……クロノ君が僕達を呼んだ本当の理由は……」
 クロノもまた例の箱を持っていた。つまり、彼の手元にも参加者を餌にしなければならないモンスターがいたという事だ。
 という事は呼び寄せた理由は参加者を集めて―――
 餌にする為? クロノがそんな事するわけがない、そんな事するぐらいなら自分自身を餌にするはずだ。
「仲間を集めてモンスターを撃退する為……」
 そう考えたミライであった。
 さて、そのクロノは例の箱を持っていって赤いコートの男に挑んだが敗れ去った。果たして箱のモンスターはどうなったであろうか?
 同時に撃破されたならばまだ良い、だが仮に未だ健在だとするならば? 恐らく、今も参加者を餌にしようとその牙をむける可能性があるだろう。
 また、同じ様な箱が2つだけとは限らない。他にも箱が存在する可能性がある。とうぜんその箱のモンスターも参加者を餌にしようとするはずだ。
 だとすればどうする? 考えるまでもない、その箱に宿るモンスターを撃破しなければならないだろう。
「わかった、クロノ君……」
 死んでいったクロノの為にも箱のモンスターは撃破する、ミライはそう心に決めた。
「だけど今は……」
 そして、

「そろそろ行かないと……!」
 と、ゆっくりと立ち上がる。
「ちょ、ミライのダンナ、一体どうしたの!?」
「ごめんおジャマイエロー、急がないといけないんだ」
 飛び出したデイパックの中身を急いで元に戻すミライであった。ちなみに、おジャマイエローは今の状態だと声は聞こえても物に干渉を行う事は出来ない様であった。
「急ぐって……」
「はやてちゃんを守らないといけないんだ……」
「って、ミライのダンナ怪我してるじゃないの!? そんな状態で……」
「うん、でも大丈夫、さっきのでもう十分休んだから」
 確かに幸か不幸か先程気絶した事とおジャマイエローと自己紹介などをした事によりある程度身体を休める事は出来ている。
 それでも先程のダメージが回復しきる筈が無いし、今更になって気が付いたがどうもこの場では何時もよりも力が出せないでいる。
 いや、それ以前にメビウスに変身していても何時もと大きさが変わらない事も気にはなっている。
 また、変身してまだ間もない為、今のところ再変身は不可能だろう。
 大男からアグモンを守る為に変身した後で赤いコートの男と遭遇した時には変身出来ず、少女と遭遇した時に変身した後で銀髪の男を追い掛ける際には変身出来た2つの状況を考えるに恐らくは再変身には時間が関係しているとミライは考えた。
 赤いコートの男と遭遇したのはアグモンを助けた時から約1時間……そして、先程変身したのは少女と遭遇した時から約2時間……つまり少なくても1時間以上長くても2時間置かなければ再変身は不可能ということだろう。
 時間以外にも変身出来なかった要因がもしかしたらあるかもしれないが、どちらにしても今の所変身が出来ない事だけはほぼ間違いない。
 真面目な話もう少し正確な制限を把握したいところだが下手に試すわけにもいかない以上、その辺は現状諦めるしかない。
 何にせよ現状を考えればおジャマイエローの言う通り無謀でしかない。
 だが、それでもミライは行く。ミライは人々を守る戦士なのだから、自分のダメージや状態を言い訳に守る事を止めたりはしない。
「そうだ、そういえばさっき放送あったよね」
「え?」
「聞き逃してしまったから教えてほしいんだ、移動しながらになってしまうけどいいかな?」
「わかったわ。でも、オイラも全部聞きとれたワケじゃないけど……」
「わかっている所だけでもいいから、大事な事なんだ」

255がんばれ! ウルトラマンメビウス ◆7pf62HiyTE:2009/10/01(木) 10:59:38 ID:NI/rt1XU0



 そして、おジャマイエローと共にミライは走り出す。あの銀髪の男からはやてを守る為に、参加者を餌にするモンスターを撃破する為に、そして仲間を集めこの殺し合いを打破する為に―――
 その最中、ミライはおジャマイエローから禁止エリアの情報を聞いたが、現状では自分達の近くには無い為大きな問題にはならないとミライは判断した。
「後は……誰が呼ばれていたかわかるかい?」
「オイラもあんまり聞き取れなかったけど……」
「覚えている範囲で良いから」
「ブレ何とかという人と……ムサ何とかという人……」
「ちょっと待って……」
 ミライは名簿を確認する。ブレンヒルト・シルトと武蔵坊弁慶の事で良いだろう。
「それから……十代のダンナが呼ばれていたわ……万丈目の兄貴の友だ……いや、ライバ……いや、むしろ敵だったかしら……」
「そうか……ところでその万丈目って人は……」
「オイラ達の兄貴で大事な相棒よ、今の所まだ無事みたいだけど……ミライのダンナ、何とか……」
「わかっているよ、きっと君の相棒も探して再会させてみせるから」
 万丈目がおジャマイエロー達にとって大事な相棒であり、先程呼ばれたらしい十代が万丈目の大事な友人だとミライは理解した。何にせよ何としてでも万丈目とおジャマイエローを再会させたいとミライは考えていた。
「後はちょっと誰が呼ばれたかは……」
「わかった……みんな無事だと良いけど……」
 真面目な話、死者を出してしまった事は悔しく思っている。しかし、今の自分がすべき事は泣く事ではなく、一刻も早く銀髪の男い追いつき彼からはやてを守る事だ。
 故に高町なのはやフェイト・T・ハラオウン、そしてヴィータ達の無事を願いながら足を進めていく。
「そういえば、おジャマイエローや万丈目君がいた世界ってどんな世界だった?」
 と、ミライはおジャマイエローの世界の事を聞く。
 おジャマイエローの話によると万丈目達は突如デュエルモンスターズのカードが実体化する異世界に飛ばされ、そこになのは達時空管理局の人達が助けに来たという話だった。
 ちなみにやって来たメンバーの中にはアグモンが話していたキャロ・ル・ルシエやエリオ・モンディアルの名前もあったが、
「キャロちゃんやなのはちゃん達が同じ管理局にいたの!?」
 アグモンの話ではキャロ達が管理局にいたという話は聞いていない。しかもクロノの口からもキャロの名前は出ていない。正直な所それが気になったのであるがそれ以上に、
「それにリンディ提督やクロノ君はいなかったの? 幾ら何でもそんな子供達だけを送り込む何て……」
 まだ幼いなのは達だけを送り込んだ管理局に憤りを感じていた。しかし
「ちょっと……ミライのダンナ……なのはとフェイトは兄貴達よりも年上で大人だったと思うけど……」
「!?」
 おジャマイエローの思わぬツッコミが入ったのである。
「……あれ? ……万丈目君って何歳だった?」
「確か17だったと思うけど……それがどうかした?」
「……なのはちゃん達って何歳ぐらいだった?」
「何歳かまではわからないけど……」
 おジャマイエローの話ではなのはとフェイトが万丈目よりも年上の大人で、スバル・ナカジマとティアナ・ランスターが万丈目と同じぐらいで、キャロとエリオが万丈目よりも何歳か幼い子供という事だった。
「そういう事か……」
 実の所、参加者が異なる時間軸から連れて来られている可能性自体はミライ自身もある程度推測出来ていた。だが、それでも多少状況が変わる程度で極端に変わるとは考えていなかった。
 しかしおジャマイエローの話から考えれば10年単位での時間軸の差異が出てくる事になる。10年の差異があるならば外見上にしても精神的な面にしても大きく変化が生じるに決まっている。
「ミライのダンナ、大丈夫?」
「うん、大丈夫」
 とはいえ、今のミライにはこれがどれぐらいの影響を及ぼすかはわからない。今はその事も頭に置いて行動するしかないだろう。
 とりあえず、おジャマイエローの世界の話は並行世界の事だと結論付ける事にした。
(そうだ……なのはちゃん達がどの世界から来たって関係ない……どの世界のなのはちゃん達でもきっと……それにキャロちゃん達も管理局にいるなら……)
 間違いなくこの殺し合いを打破する為に行動する―――ミライはそう信じている。
(だから僕は……僕のやるべき事をやるだけだ……!)
 故にミライは止まらない、あの銀髪の男からはやてを守る為に足を進めていた。その一方で、
(兄貴……十代のダンナが死んで……いや、兄貴の事だから泣いてないか……兄貴……どうしているの……オイラ達がいなくて泣いてなんかいないよね……)
 おジャマイエローは遠く離れた相棒の身を案じていた。

256がんばれ! ウルトラマンメビウス ◆7pf62HiyTE:2009/10/01(木) 11:00:37 ID:NI/rt1XU0



 ところが、ミライもおジャマイエローも気付かないある意味では不幸な事態が2つ起こっていた。
 1つはおジャマイエローが放送の一部を聞き逃していた為……はやて、フェイト等の死亡が伝えられた事は知らないという事。
 そしてもう1つは、はやての元へ向かったであろう銀髪の男が翠屋のある南へと進む方向を変えたのに対し、ミライ達は方向を変えることなく真っ直ぐ西へ進んでいた事だ。このまま進めば時期にE-1に入ってしまうだろう。
 とはいえ、ミライは気絶しており、おジャマイエローも禁止エリアの記憶や万丈目の心配、そして十代の死亡があった為聞き取れなかった事はある意味仕方がない。
 また、銀髪の男が既にミライが訪れた翠屋方面に向かう事など予想出来るわけもない為、これまた仕方がない話である。



 それでもミライ達は足を止めず、人々を守り殺し合いを打破する為に、離れ離れになった相棒と再会する為に行動するだろう―――故にこの言葉を―――





がんばれ! ウルトラマンメビウス
がんばれ! おジャマイエロー





【1日目 日中】
【現在地 E-2 西部 大通り】
【ヒビノ・ミライ@ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは】
【状態】疲労(中)、胸に切り傷(回復中)、30分変身不可(メビウス)
【装備】メビウスブレス@ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは
【道具】支給品一式、『コンファインベント』@仮面ライダーリリカル龍騎、
    『おジャマイエロー』&『おジャマブラック』&『おジャマグリーン』@リリカル遊戯王GX
【思考】
 基本:仲間と力を合わせて殺し合いを止める。
 1.銀髪の男(=セフィロス)からはやてを守る。
 2.一刻も早く他の参加者と合流して、殺し合いを止める策を考える。
 3.助けを求める全ての参加者を助ける。
 4.なのは、フェイト、ユーノ、はやて、キャロ、万丈目と合流したい。
 5.ヴィータが心配。
 6.カードデッキを見付けた場合はそのモンスターを撃破する。
 7.変身制限などもう少し正確な制限を把握したい(が、これを優先するつもりはない)。
 8.アグモンを襲った大男(弁慶)、赤いコートの男(アーカード)、紫髪の少女(かがみ)を乗っ取った敵(バクラ)やその他の未知の敵たちを警戒。
 9.自分の為に他の人間の命を奪う者達に対する怒り。
 10.さっき聞こえた鳴き声は一体……
【備考】
※メビウスブレスは没収不可だったので、その分、ランダム支給品から引かれています。
※制限に気が付きました。また再変身可能までの時間については最低1時間以上、長くても約2時間置けば再変身可能という所まで把握しました。
※デジタルワールドについて説明を受けましたが、説明したのがアグモンなので完璧には理解していません。
※おジャマイエローから彼の世界の概要や彼の知り合いについて聞きました。但し、レイと明日香の事を話したかどうかは不明です(2人が参加している事をおジャマイエローが把握していない為)。
※参加者は異なる並行世界及び異なる時間軸から連れて来られた可能性がある事に気付きました。またなのは達が10年後の姿(sts)になっている可能性に気付きました。
※スーパーにかがみが来ていたことに気付きました。
 また、少なくとももう1人立ち寄っており、その人間が殺し合いに乗っている可能性は低いと思っています。
※彼が倒れていたE-3大通りの近くに、デュエルディスク@リリカル遊戯王GX、
 治療の神 ディアン・ケト(ディスクにセットした状態)@リリカル遊戯王GXが放置されています。
 また、ミライはその存在に気付いていません。
※第2回放送を聞き逃しました、おジャマイエローから禁止エリアとブレンヒルト、弁慶、万丈目、十代の生死は聞きましたがそれ以外は把握していません。またおジャマイエローもそれ以上の事は把握していません。
 おジャマブラック、おジャマグリーンが放送内容をどれくらい把握しているかは不明です。

257 ◆7pf62HiyTE:2009/10/01(木) 11:06:08 ID:NI/rt1XU0
投下完了致しました。何か問題点や疑問点等があれば指摘の方お願いします。
今回のサブタイトルの元ネタは遊戯王デュエルモンスターズGX TURN-87・88『がんばれ! おジャマトリオ』からです(この2話は同一サブタイトルで(前編)、(後編)と付いていた)。

とりあえず(容量的にも内容的にも)重めの話が続いた感があるのでここらで軽めなのを目指してみた次第。

258リリカル名無し:2009/10/02(金) 11:34:16 ID:oWZZCgTY0
投下乙です
ミライは放送聞き逃したか、中途半端な情報がどう影響するか
それとミーラーイー、そっちには誰もいないぞー
しかもループしても大して何もない、おーい一人ぼっちになるぞー(精霊はいるが)

259リリカル名無し:2009/10/03(土) 14:13:32 ID:u4nMrFGM0
投下乙です
おジャマトリオが出て急に賑やかになったなw これがどう影響するのやら
半端な情報は不利だが今の所、危険人物と鉢合わせの危険はないな
でもこのまま空気になるかもなw

260 ◆7pf62HiyTE:2009/10/04(日) 17:53:38 ID:lDOMnsQ.0
金居分を投下します。

261MISSING KING ◆7pf62HiyTE:2009/10/04(日) 17:55:08 ID:lDOMnsQ.0
『貴方達が殺し合って、最後の1人になること以外に、このゲームに終わりなんてないのだから――。』

 その声と共に2度目の放送が終わった。D-5のとあるビルの中、1人の青年は何を思うのか―――
 彼は『金居』、人間の姿をしているものの彼は人間ではない。その正体はギラファクワガタムシの祖たるギラファアンデッド、アンデッドの中でも上級クラスとも言うべきカテゴリーKのアンデッドだ―――
 彼は元の世界へ帰還し二度とこの戦いに巻き込まれないようにする為に先程の放送を行った女性―――プレシア・テスタロッサの殺害を目論んでいる―――
 故に彼は集団に潜り込みつつ、参加者を減らしていきながらプレシアへの接触方法を模索していた―――

 その彼の手元では名簿と地図に放送で呼ばれた死亡者と禁止エリアに印が付けられていく、情報を纏めておく事は戦いにおいては基本的な事、それを怠るなど愚行以外の何者でもない。
 そしてパンに砂糖水を付けた物を食しながら考えていく―――
「あの女から見ても殺し合いは思ったよりも進んでいない様だな」
 その放送によると前の放送で語られた優勝者に与えられる御褒美によって殺し合いに乗った参加者が少ないと語られていた。そして、今度は何人か殺せば何かしらの御褒美を検討するという話が出たのだ。
 これについて思う事はあるものの、それについては今は置いておき、まずはこれが語られた背景を考えてみる。
 要するに放送で殺し合いに乗った人数がプレシアの想定よりも少なかったという事だ。考えてみればこれまでに金居が遭遇した面々で放送の御褒美に乗って殺し合いに乗ったと思われる人物は誰もいなかった。
 彼と行動を共にしていた高町なのは、シェルビー・M・ペンウッド、武蔵坊弁慶にその動きは見られなかった。
 また、先程ジョーカーとの戦闘で遭遇したギンガ・ナカジマ及びインテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシングの両名に関しても(ジョーカーを助けていた事が気になるがこれもひとまず置いておく)優勝を狙っているという様子は無かった。
 ちなみにジョーカーの真意は不明なので置いておくとして、金居自身にしても別に優勝での御褒美を狙っているわけではない為、これまた御褒美での影響は無いと言える。
 これから察するに最初の放送の時点での生き残り47人の中にいる殺し合いに反抗する連中(当然その総数は47より少ない)の中で御褒美での優勝狙いに切り替えた者は少ないと言えよう。
「1,2割と言ったところか」
 この数字を多いと見るか少ないと見るかは不明、だがプレシアの想定より少なかったと推測される。
 更に放送ではこんな事も語られていた。
『果敢に戦って死んだ者、仲間を庇って命を落とした者、些細なミスが命取りになった者、ほとんど事故のような形で死んだ者……』
 前者2つは戦いでの死亡が原因と見て良いが、後者2つはどういう事なのだろうか?
 『些細なミス』が戦いにおいてのものであればまだ良いが、本当にどうでも良い所での『些細なミス』だとしたら? そして事故のような形で死んだ者とはどういう事なのか?
「まさか不用意に禁止エリアに入る、もしくは建物からうっかり落ちて死んだ馬鹿な奴がいたとでもいうのか?」
 勿論、彼等の死に様などどうでも良い。重要なのは戦いとは全く別の所で死んだ者がいるという事である。これでは殺し合いが進んでいるとなど言えないだろう。
 故にプレシアは新たな御褒美の話を持ち出したのであろう。

262MISSING KING ◆7pf62HiyTE:2009/10/04(日) 17:57:22 ID:lDOMnsQ.0

 さてこの放送だけで考えてみた場合、疑問を感じないだろうか?
 最初の6時間で13人、次の6時間で9人、確かにペースは落ちているものの総数が減っている為、これではペースが落ちているとは言い難いはず、プレシア自身も順調と言っていた。
 にもかかわらず、更なる御褒美の話を持ち出し殺し合いを加速させようとする―――些か奇妙な話と言えないだろうか?
 しかし、金居にしてみればペースが落ちていると推測出来る。
 何しろ今回の死者9人の内3人の死亡には金居が大きく関わっている。つまり、金居の立ち回り次第で3人が死亡しなかった可能性があるという事だ。
 その3人を除けば残りは6人、そしてその中で些細なミスや事故で死んだ者を除けばその総数は2〜4人といった所だろう。最初の放送での死者13人から比較して飛躍的に減少してしまったと言わざるを得ない。
 しかし、恐らくこの事実に気付いている可能性があるのはプレシアを除くとその戦いでの生き残りである自分とジョーカーぐらいだろう。
 彼等以外は恐らくペースが落ちているとはまず考えないはずだ。
「むしろ逆にプレシア自身がペースを上げに出ていると見るはずだ、つまり……」
 ならばどう考えるか? ペースが落ちていないのにペースを上げにいっていると考えるだろう。つまり、殺し合いを更に加速させて早期の決着を狙っていると推測出来る。
 しかし、これはあくまでも『順調に進んでいる』と考えている者の推測だ、『順調に進んでいるわけではない』と考えている金居はどう思っているのだろうか?
「今の所はまだわからんか……」
 金居はその結論についてを出さない事にした。何しろ殺し合いを望んでいるならば状況がどうあれ殺し合いの加速の為に何かしら策を講じる事は十分に考えられるからだ。
 次の放送でまた動きが見られる可能性はある為、それを待ってから判断すれば良いと考えた。

 次に気になったのは呼ばれた死者の中になのはとペンウッドがいなかった事だ。
 なのはの所持品の中には学校で見付けたカードデッキがある。これはそれと契約しているモンスターの力を借りて仮面ライダーと呼ばれるものに変身する事が出来るものだ。
 が、実はこれには重要な問題があって、モンスターに餌を食わせなければ所有者自身が喰われる様になるという制限があり、説明書にも『12時間に1人、契約モンスターに「生きた参加者」を喰わせないと所有者が襲われるようになる』等とあった。
 金居はなのはにカードデッキの入ったデイパックを渡す前に説明書の存在に気付きそれを抜き取り自分が確認した後密かに処分しておいた。
 つまり、金居以外はモンスターに餌を食べさせなければモンスターが所有者を襲うという事を知らないのである。
 そして、金居の見立てでは放送を迎える前にモンスターがなのは達を襲うはずであった。何しろこの殺し合いが始まってから放送で12時間、誰かを食べさせていなければタイムリミットを迎えるはずだ。
「あの戦いの前に誰かが何者かを餌にしたか……」
 考えられる可能性は4つ、1つは自分達が学校に行く前に前の持ち主が誰かを餌にしたケース、これならばタイムリミットは放送後になるはずだ。
「後は……」
 残りの3つは何れも誰も餌にしていないケース、放送前にタイムリミットを迎えるパターンである。
 まずはなのは達は誰かを犠牲にしたパターン、つまり前述の死者の内の誰かを餌にした可能性。
 次に「生きた参加者」以外を餌にして切り抜けたパターン、説明書には「生きた参加者」とあったが餌であるならば代替えが利く可能性はある。それで何とかしたパターンだ。
 そして最後は……モンスターそのものを撃破して切り抜けたパターン。
 恐らくはこれらの内の何れかだろう。
「……一応頭には入れておくか」
 真面目な話、これらの内のどのパターンでも金居にとってはどうでも良い。だが、もし仮に切り抜けたとしたらカードデッキの制限を知る可能性が出てくる。
 最悪の場合は自分がそれを知った上で暴走を仕組んだ事を看破される可能性がある。つまり、金居が説明書を抜き取ったという事実にだ。
 最初から説明書など無かった―――そう説明して切り抜ける事も出来なくはないが、12時間以内に人殺しを強要するものなど説明無しではあまりにも不親切すぎる為、乗り切れる可能性は低い。
 そして同時に一度疑心を抱かれれば上手く切り抜けられようとも疑いの目はずっと向けられる。動きにくくなる事に変わりはない。
 勿論、これは最悪のパターンだ。あの2人ならば未だ気付かない可能性はあるだろう。だが、どちらにしても用心しておいた方が良い。

263MISSING KING ◆7pf62HiyTE:2009/10/04(日) 17:59:35 ID:lDOMnsQ.0

 さて、問題はここからだ。まずは金居の目的を達成する為にどうするべきかだ。
 もう一度触れておくが金居の目的は殺し合いの打破でも優勝でもなく『プレシアの殺害』だ。
 生き残るだけならば優勝を狙っても良いのではないのか? 確かにそう考える者も多いが実はそうではない。
 考えてみて欲しい、プレシアは何の前触れもなく金居を含めた60人を連れてきたのだ。理由すらもわからずにだ。

 いや―――実の所連れて来られた理由に関してはある程度推測が付く、彼女はどうやら参加者の1人であるフェイト・T・ハラオウンの母親だと放送で語られた。
 そしてフェイトにはなのは他数多くの仲間が存在し、彼等の多くがこの殺し合いに連れて来られている。
 同時に弁慶及びペンウッドとその仲間達も彼等の世界においてはなのは達の関係者であった。
 金居自身は接点は無かったが、キングとジョーカー、及び天道総司が彼女達と何かしらの接点があった可能性がある。
 つまり、プレシアはフェイト及びなのはの関係者、そしてその関係者からこの殺し合いのメンバーを選んだという事である。真面目な話金居にしてみれば完全なとばっちりだ。

 ここで冷静に考えてみよう。プレシアの目的は不明だが仮にこの戦いが如何なる形であれ終わりを迎えた後、その後はどうするだろうか?
 勿論彼女の目的が不明な以上断定は出来ない。だが―――もしかしたら再びこの馬鹿な遊戯を催す可能性はあるかも知れない。
 そうなれば再び自分が巻き込まれる可能性は十分にあり得る。当然だが金居はこんな事に何度も付き合うつもりはない。
 当然、2度も巻き込まれるとは限らないかもしれない―――しかし、並行世界から前触れもなく連れ去る力を持った彼女に対して永久に睨まれた状態は決して変わりはしない。
 殺し合いから解放されたとしても、何事もなく過ごせるとは限らない。下手な動き1つで自身の命は脅かされる―――結局の所何も変わりはしないのだ。首輪の有無など関係ない。
 そう、例えば元の世界に戻って全てのアンデッドを封印する寸前で彼女の気まぐれで消される可能性だってあるのだ。
 勿論、これは可能性レベルの話でしかない。しかし格下の人間であるプレシアに睨まれ続ける状況をギラファクワガタムシのアンデッドである金居が許せるはずがないだろう?

 だからこそ金居はプレシアの殺害を考えた。プレシアからその技術を奪えば二度と巻き込まれる事もなく本来の戦いに専念出来るだろう。
 しかし、未だその明確な方法は見えてこない。下手に殺し合いへの反抗グループにいたとしてもそれを良しとしないプレシアに首輪を爆破されて終わりを迎える。
 故に金居はそのグループの中に潜みつつ、グループの力を削ぎながら殺し合いを進行させ続けプレシアとの接触方法を探っているのだ。
 状況次第では優勝したタイミングでの接触での抹殺も視野には入れている。
 だがこの方法すらも正直可能性が低いと見ている。故に別の手段も模索しているのだ。

264MISSING KING ◆7pf62HiyTE:2009/10/04(日) 18:03:01 ID:lDOMnsQ.0

 その最中、放送で語られた新たな御褒美の話、勿論この時点では検討する程度の話なので実行されるのは早くて3回目の放送以降だ。
 しかし、この話は非情に興味深い話であった。
 プレシアは例として他の参加者の居場所を教える、支給品をもう1つ貰えるというのを出した。
 では、一体どうやって御褒美を与えるというのだろうか?
 その瞬間、プレシアもしくはその手下が接触をしてくるのでは無かろうか? どういう方法で仕掛けてくるかは不明だが、これはチャンスと言えないだろうか?
 プレシアとの接触の機会―――狙ってみる価値は十分にあるだろう。
 とはいえ、現状では実行されるかは不明、その条件も不明(例えば放送後3人殺したらという話なら下手に狙えるものではない)、接触の形すら不明である以上現状では過度な期待は出来ない。

 それ以前に逆にある懸念がある。
 金居と同じ事を考える参加者がいないとは言い切れない。プレシアはそれを考えていないのか? 殺し合いを打破する連中ではなく、殺し合いに乗っている連中が自分に牙を剥く可能性を考えていないのか?
 いや、考えていないならばあまりにもお粗末すぎる。
 つまり、この接触に関してもプレシアは何かしらの策を講じている可能性があるという事だ。どちらにしても過度な期待は決して出来ないという事だ。

 だが、光明が見えないわけではない。プレシアが今回の御褒美の話を持ち出したのは殺し合いの進度が悪かったからだ。
 首輪を爆破という直接的な手段ではなく、御褒美の提案という間接的な手段で殺し合いを促した。参加者と接触するというリスクを背負ってでもだ。
 だとすれば―――このまま殺し合いが長期化した場合、プレシアは殺し合いを促進させる為に次の手を打ってくるのでは無かろうか?
 特定の殺し合いに乗った参加者に意図的に力を与える、障害となる参加者を排除する為の刺客を送り込む、参加者の内の誰かを自分の側に引き込む―――考えられる手段は幾らかある。
 接触の回数が増えればチャンスも増える。その隙を突ける事が出来ればあるいは―――
(生かさず殺さずということか)
 当面の方針は定まった。金居は殺し合いの長期化を狙い、プレシアの介入をし向ける事にした。この手段がどれだけ有効かはわからないが試してみる価値はあるだろう。
 だが加減は難しいだろう。殺し合いが促進してしまえばプレシアの介入は無くなるし、かといって過度に進行が止まれば首輪を爆破されてそれで終わりだ。
 と言っても実際の所、すべき事が変わるわけではない。現状の金居の行動方針は実の所その目的を達する手段に合致している。能動的に他者と戦うわけでもなく、殺し合いに反抗するグループの妨害も暗にしているわけなのだから。
(だが、俺の策が読まれるわけにはいかない……)
 そして一番重要なのはこの事は決して口にしない事だ。プレシアは自分達を監視している以上、此方の言動は逐一把握している筈だ。故に一番重要なプレシアの抹殺に関する事だけは決して口にはしない。

265MISSING KING ◆7pf62HiyTE:2009/10/04(日) 18:05:36 ID:lDOMnsQ.0


 一方、金居は改めて自分の知る人物がこの殺し合いでどう動くのかを考える。
 天道……なのは達に語った通りこの殺し合いを打破する為に動く、考えるまでもない。
 キング……なのは達に語った通り面白ければ何でも良いと考える奴は間違いなく危険人物(具体的には予想仕切れないが)、これもほぼ間違いないだろう。
 ジョーカー……問題は奴だ。

 なのは達には死神及び勝ち残れば全ての生命が滅ぶと説明しているが、これはあくまでも金居の世界におけるジョーカーの立ち位置でしかない。
 しかし、この場で自分達の常識が適応されるとは言い難い。仮にこの場で奴が優勝したとしても世界が滅びるとは言い切れない。元の世界に戻ればアンデッドが多数居るわけなのだから。
 つまり、実の所なのは達に話した事は実は的を射てはいないのだ。とはいえ、金居としてはジョーカーを封印するつもりであるので奴を危険人物として話す事については全く問題はないわけだが(実際、それ程間違ってもいない)。
 だが、奴が本当に殺し合いに乗っているかどうかは正直わからない。と言うより真面目な話、殺し合いに乗っていない可能性はあった。
 金居は前にジョーカーに会いにハカランダに行った時にその場に何人か少女達がいた。そしてキングにあった時のその内の1人の少女の画像を見せられたのだ。
 キングによるとプロジェクトFがどうとかと言っており、同時に面白い鍵になると語っていた。
「そういえば……」
 今更ながらの話だが、ハカランダで見かけた1人の少女となのはの面影が重なったのを思い出した。勿論これだけでは似ているだけの別人としか思えない。何しろ見かけた少女となのはとでは10歳ぐらい歳が離れているわけだから。
 だが、参加者が異なる並行世界から連れて来られている事実から、異なる時間軸から連れて来られている可能性は十分にある。何しろ、なのはと弁慶の話では微妙に時間にズレを感じる事が出来るからだ。
 弁慶の話ではランク試験後の時間経過がそれほど長くない(その後初戦闘後連れて来られたという話)のに対し、なのはの話ではランク試験が様々な事件があった事が語られているからだ。
「となれば、あそこで見かけたのは……」
 その少女が約10歳のなのはの可能性はある。思い返せば見せしめで殺された少女(アリサ・バニングス)を幼くした少女もハカランダにいた様な気もする。
 さて、あの場にいたのがなのはとその友人達だと仮定する。もしジョーカーが名簿を見て彼女達の名前を見付けたらどう考える? 彼女達を守る為に戦う可能性、つまりジョーカーが殺し合いに乗っていない可能性があるという事だ。
 何しろあの男は表向きには相川始という人間として暮らしている。有り得ないとは言い切れない。
 勿論、これは仮定のレベルでしかない。だがあの戦いを思い出せば可能性は無いとは言えない。
 あの戦いではジョーカーを助ける様な形でにギンガとインテグラルが介入してきた。3者の間に何があったかは不明だが、ジョーカーとギンガ達は手を組んでいる可能性があるという事だ。
 当然、2人は殺し合いに乗っていないはずなのでジョーカーは殺し合いに乗っていないという可能性が強まる。
 ちなみにジョーカーから見て自分とキングは危険人物扱いされている可能性が高いので、ジョーカー及び彼女達が自分との戦いになった事については全く疑問はない。
「ジョーカーがどう考えていようが問題はないか」
 ここまで考えたものの、実際これ自体はどちらでも問題はないと金居は結論付ける事にした。
 殺し合いに乗っているならばそれなりに順調に殺し合いを促進させるだろうし、
 殺し合いに乗っていないのならば殺し合いに乗った者を止める為の対抗勢力と成りうる、
 どちらにしても自分やキングが奴の危険性を伝えているはずなので、最終的には奴が窮地に追い込まれる可能性が高い為、立場的にジョーカーの不利には変わりがない。当然、最終的には封印するつもりだ。

 むしろ組んでいた場合、別のある問題がある。
 金居がインテグラルを殺したのは危険人物であるアーカードを止められる彼女を排除する事で殺し合いを促進させる為だ。
 だが、彼女が自分の死の可能性を想定していたとしたら? 最悪の場合を想定して何かの策を打った可能性がある。それがどのようなものかはわからない。だが、仮にその策が実れば……アーカードが殺し合いを止める切り札と成りうる可能性がある。
 そして、もしその策が実行されるとすれば……その鍵を握っているのはジョーカーだ。ジョーカーが彼女と組んでいる場合アーカードの事を託された恐れがある。
「杞憂であればいいが……」

266MISSING KING ◆7pf62HiyTE:2009/10/04(日) 18:07:36 ID:lDOMnsQ.0

 ところで、金居の知り合いは自分の事をどう語るだろうか? ジョーカーについては前述の通りとして、天道とキングはどうするだろうか?
 天道については問題はないだろう、少なくても天道は自分の事を知らないはず。故に警戒される可能性は無い。
 キングに関しては……一応協力関係を結んではいたがが信用は全く出来ない。奴は面白ければ自分を陥れる事ぐらい平然と行う。とはいえ、自分もキングを危険人物と説明している為、ある意味お互い様と言える話ではあるが。

 その最中、金居は自分の身体の調子を確かめる。ダメージは回復済みですぐにでも行動出来る状態ではあるが、
「むやみやたらに変身は出来ないか……」
 金居は先程の戦闘の際、何時もより身体の調子が悪いのを感じていた。恐らく何かしらの制限がかけられているのだろう。
 考えてもみればそれも当然、制限が無ければ自分達アンデッドが圧倒的に有利だからだ。
 むしろそれ以上に気になったのは連続して変身(というより元のギラファアンデッドの姿に戻る)が出来ないという事だ。
 実際に先程からここに至るまで何度か変身を試みたもののそれは出来なかった。そして今もまた試したもののやはり変身が出来なかった。
 変身が出来ない状態で襲われれば危険なのは言うまでもない。他の制限はともかくこの制限だけは早めに確認しておきたい。
「同じ条件ならばジョーカーが有利になるからな」
 恐らくこれは自分達アンデッドや仮面ライダー、及びそれに準ずる者に課せられた制限だろう。という事は当然、変身回数が多ければそれだけ有利になるのは言うまでもない。
 ジョーカーこと始は通常での戦闘ではマンティスアンデッドの姿を借りたカリスに変身している。しかし彼には本来の姿であるジョーカーに変身(元に戻るという方が正確)する事が出来る。
 それ以前に始としての姿自体がヒューマンアンデッドの姿を借りたものでしかない。つまり……ジョーカーはアンデッドを封印したラウズカードの数だけ変身回数を有している事になる。
 勿論並のアンデッドではカリスには遠く及ばないが客観的に見てもヒューマンアンデッドよりも強いのは明白だし、上級アンデッドに変身したなら十分に脅威となりえる。
 ここまで言えばそれがどれだけ厄介かは容易に理解出来るだろう。
「……やはり最大の障害はジョーカーか」


 考えをまとめた金居は移動の準備を始める。当面の目的地は当初の予定通りB-8の工場だ、表向きには首輪を持っていって首輪解除の手掛かりを探すという事になっている。
 勿論、既に金居1人になった以上それに従う必要は無いわけだが、なのは達へのアリバイ工作もある為当面は従っておくべきだろう。
 さて、ここで金居は首輪解除の可能性を今一度考えてみる。勿論、それ自体はまず不可能だと既に結論付けている。
 しかし何事にも絶対という物はない。元々の自分達の戦いにしても根本的な異変がある以上何かのイレギュラーが起こる可能性がある。
 そう、万に一つ首輪爆破に失敗する可能性が無いとは言い切れないのだ。首輪の誤作動が起こらないとは言い切れない。勿論、そんなギャンブルなどするつもりはない為、金居がその賭けをするつもりはない。
 しかし、たった1つでも首輪爆破に失敗すればその時点で殺し合いは成立しなくなる。何しろ首輪が外れれば禁止エリアに逃げていればそれで生存は確定だからだ。
 プレシアがその可能性を見逃すだろうか? いや、見逃さないと考えて良い。では、そんな根本的なルール違反が起こればどうするか? 恐らくプレシア自身が直接手を下しに出るだろう。
 それは運良く首輪解除に成功出来た時にも同じ事が言える。つまりその後にはプレシアとの戦いが控えているという事だ。
 が、プレシアの力を踏まえるならばそれが困難な事であり勝率は限りなく低い事は容易にわかる。
 となるとどちらにしても金居の策……プレシアに近付く機会を得て彼女を抹殺する。これが現状で一番可能性のある手段だろう。
 勿論、他の手段を模索しないわけではないが現状はこのままいくつもりである。





 と、金居はデイパックの中身の再確認を済ませる。機会があればUSBメモリの中身も確かめておきたい所だと考えながら……
「……ん?」
 金居はある種の違和感を覚えた。
「待てよ……」





 ここで金居達は別行動を取る事になった時の事を思い出して欲しい。
 なのはとペンウッドは商店街や施設を回りそれから工場に向かい、金居と弁慶は首輪を持って直接工場へ向かうというものだ。
 金居の覚えた違和感にお気が付きだろうか?

267MISSING KING ◆7pf62HiyTE:2009/10/04(日) 18:08:28 ID:lDOMnsQ.0





 そう、金居と弁慶の2人組の目的を考えるならばあるべきはずのものがここにはないのだ。





「首輪が無いぞ……」





 金居の言う通り、彼の手元には首輪が無かった。弁慶のデイパックにも自分自身のデイパックにもだ。
 同じ事を書くが彼等の予定では『首輪を持って』工場に向かう手はずになっていたはずだ。
 ではその首輪は一体何処から手に入れるつもりだったのか? 学校にあった赤い恐竜の死体からだ。
 何故首輪の回収をし忘れるという事態になってしまったのだろうか?
 金居は首輪を解除する意思は無くなってはいたが集団の目的が首輪解除である以上、首輪の回収自体はやっておいた方が良いはずだ。
 誤解の無い様に言っておくが、金居は首輪の確保をしない様にし向けたりはしていない。首輪の解除の意思がなくなっていたが故に金居本人自身が首輪の確保の事を失念していただけである。
「だが奴等は揃いも揃ってそれを忘れていたというのか!?」
 しかしだ、自分以外の3人は首輪の解除を目指していたはずだ。なのに3人が揃いも揃って赤い恐竜から首輪を確保する事を忘れていたというのか? あまりにもお粗末な話だ。
 とは言え、元凶があるとすればそれはやはり金居だろう。別行動を取る前、金居は積極的に3人と接触し不和の種をばらまいていた。それ故に3人が各々考えすぎてしまい目下の目的である首輪の確保を失念してしまったのだろう。
 勿論首輪の解除の妨害は金居の目的に沿ってはいる。だが、この場で首輪の回収忘れはしてはならない失敗だったと言えよう。
 同行者だった弁慶がいない為失敗が露呈する事はないが、弁慶の死自体が想定外の出来事である為それは問題ではない。この事はどう見ても失敗だろう。
 が、失敗した事を悔やむつもりはない。問題はこれからどうするかだ、
「別に首輪が無くても構わないが……」
 前述の通り金居は現状首輪の解除を狙うつもりは無い為、首輪が必要では無くなっている。しかし、
「いや、やはり首輪はあった方が良いか」
 首輪を持っておいて損はないと金居は結論付けた。
 何しろ首輪の解除方法を模索しているというアリバイ作りの為には首輪はあった方が良いし、首輪解除を目論むグループとの交渉材料として首輪を所持しておいた方がよい。
 また、手元に首輪を抱えておけばその首輪は他の者には利用されない。つまり、暗に首輪解除の妨害を行う事が出来るという事だ。
 そして、今の段階では首輪解除は不可能と見ているが、今後状況がどう変わるかは読み切れない。念のため首輪を所持しておいた方が良いだろう。

 故に金居は再び学校への移動を始める。
 あの場には今現在赤い恐竜の他にギンガとインテグラル、そして弁慶の首輪付き死体があるはずだ。
 つまり運が良ければ4つ分の首輪を確保出来るという事だ。貴重な首輪、今後の為にも出来れば独占しておきたい所である。
 それに現在位置のD-5が学校のあるD-4に近いという事もある。あまりにも離れていればわざわざ戻ったりはしない。
 もっとも幾つかの不安材料はある。あの場にいた禍々しい気配の元凶やジョーカーと遭遇する可能性はあったし、既に首輪が彼等もしくは別の誰かによって確保されている可能性がある。
 だが、学校に戻った頃には1時間以上経過しているはずである。その頃には連中も学校から立ち去っている可能性もある。
 また、首輪が無くなっても別段問題はない。首輪があった方が良いとは思ったが解除を狙っていない以上絶対に必要というわけではないからだ。
「やれやれ、また学校に戻る事になるとはな……」
 そう毒づきながら学校へと足を進めていく。
「……待てよ、学校にパソコンぐらいあるはずだな」
 と、今更ながらに学校にUSBメモリの中身を調べられるパソコンが存在している可能性に思い当たった。
 実際学校にはパソコンがあるが、金居が学校にいた時はその事にずっと気が付かなかったし、知っていたなのはも金居が惑わせた為に話す機会を失い話す事が出来なかったのだ。
「全く、手痛い失敗だな……」
 そう呟きながらも今度学校に戻ったついでにUSBの中身も確かめておこう。後の事はそれから考えればいい、金居はそう思っていた。

268MISSING KING ◆7pf62HiyTE:2009/10/04(日) 18:13:46 ID:lDOMnsQ.0



 金居の犯したミスはもしかしたらミスとすら言えないささやかなミスかも知れない―――
 もしかしたら今後に関わる致命的なミスかも知れない―――
 今の金居の行動の何処かにも何かしらのミスはあるかも知れないし何のミスも無いかも知れない―――
 もしかしたら彼が起こした行動の中に既に致命的なミスはあったのかも知れない―――
 そして、それによって金居自身が消える要因になる可能性もあるかも知れない―――



 それを確かめる事は―――今は出来ない―――





【1日目 日中】
【現在地 D-5】
【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式×2、トランプ@なの魂、いにしえの秘薬(残り7割)@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、砂糖1kg×8、
    カードデッキの複製(タイガ)@仮面ライダーリリカル龍騎、USBメモリ@オリジナル、S&W M500(5/5)@ゲッターロボ昴、コルト・ガバメント(6/7)@魔法少女リリカルなのは 闇の王女、ランダム支給品0〜1
【思考】
 基本:プレシアの殺害。
 1.プレシアとの接触を試みる(その際に交渉して協力を申し出る。そして隙を作る)。御褒美の話については状況次第。
 2.基本的に集団内に潜んで参加者を利用or攪乱する、強力な参加者には集団をぶつけて消耗を図る(状況次第では自らも戦う)。
 3.利用できるものは全て利用する。邪魔をする者には容赦しない。
 4.学校に戻り死体から首輪を確保する。それが終わればUSBメモリの中身の確認を行う。
 5.工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す振りをする。
 6.もしもラウズカード(スペードの10)か、時間停止に対抗出来る何らかの手段を手に入れた場合は容赦なくキングを殺す。
【備考】
※このデスゲームにおいてアンデッドの死亡=カードへの封印だと思っています。
※最終的な目的はアンデッド同士の戦いでの優勝なので、ジョーカーもキングも封印したいと思っています。
※カードデッキ(龍騎)の説明書をだいたい暗記しました。
※殺し合いが適度に難航すればプレシアが介入してくると考えています。また、首輪を運良く解除出来てもその後にはプレシア達との戦いが待っていると考えています。
※参加者が異なる並行世界及び時間実から連れて来られている可能性に気が付きました。
※ジョーカーが殺し合いに乗っていないでインテグラルと組んでいた場合、アーカードを止める鍵になる可能性があると考えています。
※制限に気が付きました。また、変身時間の制限も元に戻った後50分は再変身出来ない所までは把握しました。なお、変身不能から丁度1時間経過した為変身が可能になりましたがまだその事には気付いていません。

269 ◆7pf62HiyTE:2009/10/04(日) 18:15:30 ID:lDOMnsQ.0
投下完了致しました。何か問題点や疑問点等があれば指摘の方お願いします。
今回のサブタイトルの元ネタは劇場版サブタイトル『MISSING ACE』からです。

……まぁ『MISSING』の意味合いとしては若干違うんですけどね(元ネタは『失われた』、こっちは『失敗』という意味なので……最後で本来の意味に無理矢理繋げたけど)。

270リリカル名無し:2009/10/04(日) 18:55:01 ID:XstaAf.g0
投下乙です
どれも小さなミスだが、さてどうなる。
たぶん赤い恐竜(ギルモン)から取らなかったのは自分達で埋葬したからじゃないかなあ。
(これ↑書いてからすごく考えが甘いなって思った、じゃあどこから取るんだよw)

271リリカル名無し:2009/10/05(月) 22:02:22 ID:t9ZKXPtk0
投下乙です
考察だけど純粋な対主催の考察とは言えないな
そして不和をまき散らすのに夢中でミスしたのは果してどう転ぶか?

272リリカル名無し:2009/10/06(火) 23:46:38 ID:1UwLZTn60
新しい予約来たな
それも気になる組み合わせが

273 ◆HlLdWe.oBM:2009/10/07(水) 09:16:45 ID:/v4OMBvM0
柊かがみで投下します

274Barrier Jacket & Guns ◆HlLdWe.oBM:2009/10/07(水) 09:17:53 ID:/v4OMBvM0

人生に分かれ道は付き物。
そして往々として人は分かれ道に差し掛かるたびに悩む。
当然だ。
その一歩で今後の運命が定まるとなれば慎重に道を見極めようとする行動は自然なものだ。
だが時と場合によっては己の直感を信じて即決した方が良い事もある。
しかし上手くいっていない時、特に不運な時ほど人は慎重になりがちだ。
そしてここに一人今後の展開を左右する分かれ道に差し掛かっている少女がいた。

『で、どうするんだ、宿主サマ?』
「…………」
『あまりのんびりしている時間はないんじゃねーの』
「……わ、分かっているわよ」

柊かがみ。
真紅の長袖セーターに漆黒のスカートとニーソックス。
それが今のかがみの服装――もといバリアジャケット(以下BJとする)。
本当はホテル・アグスタで拝借した従業員制服を着ているのだが、今はそれを窺い知る事はできない。
そしてよく見ると真紅のセーターの右袖が僅かながら裂けている事が確認できる。

実はこれが現在進行形でかがみが悩んでいる原因だった。

きっかけは魔法の知識をある程度持っているバクラが抱いた些細な疑問だった。
当初バクラは一抹の不安を抱きながらもかがみがあっさりとBJを展開できて順調だと思っていた。
だがすぐにどこか不可解な事に気付いたのだ。

なぜかがみはBJを展開できたのか。

バクラはここに連れて来られるまでキャロと一緒に行動してきた。
だから憑依すれば魔力があるかどうかはなんとなく分かる。
だがかがみに憑依した時は万丈目と同様に全く魔力が感じられなかった。
つまりかがみは魔力を持たない一般人という事だ。
その事はかがみの話を聞いたり、記憶を覗き見たりする事で確信している。

だがそれならBJを展開できるはずない。

BJを展開するには多少なりとも魔力が必要なはずだ。
それをかがみは魔力無しでやってみせたのだ。
バクラがその事に疑問を抱くのは魔法の知識が少しでもある者なら当然の成り行きだった。

余談だが今までにかがみ以外で魔力のない者がBJを展開した例が二つある。

一つ目はかがみの双子の妹である柊つかさの例。
つかさはフェイトから渡されたシーナのバリジャケットの展開に成功している。
この時近くには元の持ち主であるフェイトがいたが、当然バクラと同じ疑問を抱いた。
だがその疑問を誰かに伝える前に死んでしまった。
当事者のつかさも魔法の知識に疎い事に加えて最初は夢の出来事だと思っていたせいで深く考えなかった。
しかもシーナのバリジャケットはそれ自体がデバイスである。
つまりこの場合シーナのバリアジャケットの展開とはデバイスの起動と同意なのだ。
「シーナのバリアジャケット」という鎧型のデバイスのようなものなのでかがみと時とは事情は異なる。

二つ目は1st-Gの魔女ブレンヒルト・シルトの例。
ブレンヒルトは偶然拾ったバルディッシュを介してBJの展開に成功している。
だがこの場合もかがみとは事情は異なる。
ブレンヒルトは手持ちの1st-Gの賢石を媒介に概念の力を魔力に変換してBJを展開したのだ。
だから厳密に言うと魔力無しでの展開ではない。
もっとも魔力の変換効率は良いとは言えなかったので必要でない時は解除して力の消費を抑えなければならなかった。

275Barrier Jacket & Guns ◆HlLdWe.oBM:2009/10/07(水) 09:18:52 ID:/v4OMBvM0

つまり純粋に魔力無しでのBJ展開は柊かがみが最初の例なのだ。
もちろんその事実をかがみとバクラが知る由もない。
だがバクラはかがみにある事を確認するために一つの指示を出した。

セーターの袖をどこかに引っ掛けて引っ張れと。

そして、その結果にかがみは驚き、バクラは納得した。

結論を言うとセーターの袖は破れた。
本来ならあらゆる猛威を跳ね除ける奇跡の甲冑であるはずのBJ。
だがその辺りの出っ張りに引っ掛けられたセーターは過度の力が掛かった事で破れた。
それはもうあっさりと。
ビリビリというような音が聞こえたかの如く。
この地での命のあり様のごとく。
儚くも無残に破れた。

つまりこのBJは外見だけで中身がない只の張りぼてのようなものなのだ。
魔導師が纏うような防御力など期待できるはずもなく、精々一般の衣服程度の耐久力しか持ち合わせていなかった。
結局防御力に関しては気休め程度にしかなっていない事がこの件で判明した。
魔力無しでBJを展開できるなど上手い話だと思っていたが、とんだ落とし穴があったものだ。

だがこれは少々奇怪な出来事だ。
おそらく魔力がない者でもBJが展開できるように細工を施したのはプレシアで間違いない。
ではその細工がどこに施されたのか。
一番怪しいのは首輪だ。
参加者やデバイスに直接細工を施した可能性もあるが、それよりも首輪にそういう装置か術式を組み込む方が効率はいい。
だがいったいプレシアはどういう意図があってこのような細工をしたのか。
これは考えようによってはいろいろと面白い。

魔力保有者のBJがいつのまにか魔力枯渇で役立たずになっていたり。
本人にその気はなくてもBJが見せかけだったために思わぬ怪我を負わせたり。
単なる衣装替えに活用されたり。

だがこれらの例を考えてみると、実はデスゲームを否定する者にとっては若干不利な状況かもしれない。
仮に役立たずと知らないままにBJを展開していて被弾を止むを得ないと判断した場合。
相手が殺すつもりの者なら殺されてしまうが、逆に相手が殺すつもりのない者なら殺されない。
当然デスゲームに乗っている者の中に相手を殺す事を否定する者がいるはずがない。
つまり手加減を加えないデスゲームに乗っている者からにとっては相手を殺せる可能性が高まるのだ。

しかも本当に首輪にそのような仕掛けが施されているなら魔力のない者は複雑な立場にある。
首輪を解除すればその瞬間BJすら展開できなくなるからだ。
これはなかなか厄介なジレンマになりそうだ。

しかし本当の理由はこの奇妙な仕掛けを施した当人にしか知りえないところである。

この時バクラはいろいろと考えてみたが、結局明確な答えは出せずじまいだった。
それよりもBJがあまり役に立たないと知ったかがみの方が気掛かりだった。
今からかがみが向かおうとしている場所は乱戦の可能性があった。
現状王蛇より劣るベルデのデッキを使うしかないかがみは不安だったのだ。
だからバクラはなんとかしてかがみの士気を上げたいと考えた。
この状態で向かっても良い結果にはならないと判断したからだ。

『(だがどうする。頼みの綱の王蛇はしばらく使えない、そうなると別の武器……武器? そういや確か……)』

そこでバクラはある事に気付いた。

276Barrier Jacket & Guns ◆HlLdWe.oBM:2009/10/07(水) 09:19:56 ID:/v4OMBvM0

『なあ宿主サマよ』
「なによ、あともう少しだけ――」
『荷物の中身って全部確認したのか?』
「え?」
『よくよく考えてみればバタバタしていてまだ確認していない武器とかあるんじゃないのか』

それはまだ見ぬ支給品の存在。
実際かがみが今所持しているデイパックは数時間前にF-1の浜辺で拾ったものだ。
元々はかがみの物だったがLに取り上げられて回り回って戻ってきた物である。
ちなみにかがみはLに取り上げられる前はデルタの影響で好戦的になっていてその中身をよく確認していなかった。
そしてこうして手元に戻ってきてからもホテルで寛いだり、ライディングボードを見つけて使い方を調べたり。
つまりここまでよく中身を確認しないままの状態なのだ。
まだデイパックの中に使える道具が残っている可能性は十分にある。
かがみもバクラの助言には一理あると思った。
とりあえず支給品の確認の最中に襲われる事がないように適当な家屋に入る事にした。
この一帯の建物は先程のスバルとの戦闘やそれ以前の戦闘で大部分が倒壊していたが、一部はまだ使える状態だった。

「でもそんな都合のいい事なんてあるわけないじゃない。現に今だって私はこんな酷い目にばかり遭っているのに……」
『まあまあ、一応確認してみようぜ』
「はあ……それもそうね。えっと、まずは地図とか名簿とか食料とかメモ帳みたいなノート、それと筆記用具やらなんやらの一式」

適当な家屋に入るなり不安を隠せないかがみはさっそく一抹の不安をチラつかせていた。
だがその不安を誤魔化すようにバクラは実行を促し、結局バクラの信頼するかがみはデイパックの中身を漁り始めたのだった。
次々とデイパックの中身がテーブルの上に並べられていき、二人はそれを確認するのだった。

最初に確認した物は今身に付けている物。
まずは今着ているホテルの従業員の制服(ホテル・アグスタにて拝借)。
唯一信頼できるパートナーであるバクラが宿りし千年リング。
使用可能になれば無類の強さを授けてくれる王蛇のカードデッキ。
そしてその中に収められている未知のカードであるサバイブ“烈火”。
最後に右腕に付けている待機状態のストラーダ。

ここまではテーブルに並べずに調べ終えた。
万が一襲われた時にすぐに対処できるように配慮したためだ。

「で、それ以外の支給品が……私って結構いろんなもの持っていたのね」

そしてここからがデイパックの中に入っている物だ。
最初に取り出した物は地図や食料などの所謂「基本支給品一式」とか言われたりしなかったりする物。
二つのデイパックに共通して入っていたものなのでおそらく全員に配られた物だという事は容易に想像が付く。
その内訳は地図、名簿、食料(おそらく数日分)、時計、ランタン、筆記用具(鉛筆とメモ帳みたいなノート)、コンパス。
だいたいサバイバルに必要な最低限の物品が揃えられている。
その基本支給品一式が2セット。
スバルから奪ったデバイスのレヴァンティン(ストラーダ共々名称だけは聞き出せた)。
驚異の威力を誇るが今は補給を待つEx-st。
モンスターの力がなくていささか心許ないベルデのカードデッキ。
元々着ていた陵桜学園の制服(冬服、ボロボロで着られる状態ではない)。
スーパーの店員用の制服(一応まだ使える)。
戦闘に適しているのか今一つ不安なナンバーズスーツ(あまり着たくない)。
移動に便利なライディングボード。

そして――。

「……ちょっと、これってまさか!?」
『ああ、ビンゴだ。まさかオレも本当にあるとは思わなかったぜ』

――まだ確認していなかった支給品が二つもデイパックの底から出てきた。

277Barrier Jacket & Guns ◆HlLdWe.oBM:2009/10/07(水) 09:22:54 ID:/v4OMBvM0
一つは一丁の拳銃、名称はトカレフTT-33。
全長194mm・重量858g・口径は7.62mm×25・最大装弾数8。
ソビエト連邦陸軍が1933年に制式採用した軍用自動拳銃である。
本来必須なはずの安全装置すら省略した徹底単純化設計且つ生産性向上と撃発能力確保に徹した構造。
過酷な環境でも耐久性が高く、それに加えて弾丸の貫通力に優れている。
第二次世界大戦中〜1950年代のソ連軍制式拳銃として広く用いられた拳銃だ。
正確な総生産数は不明ながらコルト ガバメントと並んで『世界で最も多く生産された拳銃』と称される事もある。
さらに犯罪に使用される事も多く、これの元の持ち主が柄の悪い人物であった事からもそれは窺えるであろう。

だがかがみが驚いた支給品はむしろもう一つの方であった。
かがみを驚愕させバクラすらも震撼する程の支給品。

それは無骨な重機関銃、名称はブローニングM2重機関銃。
全長1560mm・重量38.0kg・口径は12.7mm×99・装弾はベルト給弾・発射速度は毎分650発。
現在において基本構造・性能・更新コストなどトータル面で他の追随を許さない重機関銃の傑作品である。
当然発射時の反動は桁違いだが地上戦闘用の三脚架がオプションとして付いているので問題はない。
さらに付随している弾丸300発は全て擬似的な耐魔加工が施されている。
その威力はエースオブエースとも称される高町なのはのシールドを紙のように撃ち抜くほどだ。
正直重火器の中でもトップクラスの破壊力を持ち合わせている事は間違いない。

「……凄い、こんなものまで支給されているなんて」
『運が向いてきたな。まったく今まで眠っていたのが嘘みたいだぜ』

バクラの発言ももっともである。
ライディングボード、トカレフTT-33、ブローニングM2重機関銃。
この3つが同じ人物に支給されるとは少々優遇されているとしか思えない。
だが最初にこれらが支給された人物は機動六課のエリオ・モンディアル。
正義感の強いエリオにとってこのような殺傷能力が高い支給品など災いの種でしかない。
そこまで考えて支給したとすればプレシアの思惑が計り知れよう。

実はこの中身を僅かながら確認した人物がもう一人だけいた。
それはかがみの荷物を取りあげたLだ。
しかしさすがに安全装置のないトカレフや威力が高すぎる重機関銃などLにとっても厄介な代物。
だからさっと見ただけで放置したままだったのだ。

『宿主サマ、まだこれでも不安か』
「冗談じゃないわ。これだけあれば私でも……そうよ、私はもう迷わないんだから……」
『その通りだぜ。オレも精いっぱいサポートするぜ』

最凶の武器に後押しされてかがみはすばやく荷物をまとめた。
今更ながらデイパックが明らかに容量以上のものが入る事に気付いたが、考えても仕方ないので無視する事にした。
この際あとで取り出すのが楽なようにいくつかデイパックの中身を整理しておいた。
そしてライディングボードに乗って移動を開始する頃にはもうかがみの顔に不安の色はなかった。

今まで不幸続きであったかがみだが、ここにきてようやく幸運の星が輝き始めたのかもしれない。

278Barrier Jacket & Guns ◆HlLdWe.oBM:2009/10/07(水) 09:24:25 ID:/v4OMBvM0


【1日目 午後】
【現在地 G6 T字路付近】
【柊かがみ@なの☆すた】
【状態】健康、肋骨数本骨折、万丈目に対する強い憎悪、バリアジャケット、1時間50分憑依不可(バクラ)
【装備】ホテルの従業員の制服、千年リング@キャロが千年リングを見つけたそうです、ストラーダ(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、カードデッキ(王蛇)@仮面ライダーリリカル龍騎(30分変身不可)、サバイブ“烈火”(王蛇のデッキに収納)@仮面ライダーリリカル龍騎、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具①】支給品一式、トカレフTT-33(8/8)@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS、ブローニングM2重機関銃(300/300)@幻想殺し、レヴァンティン(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、カードデッキ(ベルデ・ブランク体)@仮面ライダーリリカル龍騎、なのは(StS)のデイパック(道具②)
【道具②】支給品一式、Ex-st(残弾なし)@なのは×終わクロ、柊かがみの制服(ボロボロ)、スーパーの制服、ナンバーズスーツ(クアットロ)
【思考】
 基本:死にたくない。なにがなんでも生き残りたい。
 1.バクラ以外は誰も信じない(こなたやつかさも)。
 2.煙の上がった場所(=レストラン)にいる参加者を殺しに行く。
 3.2の後で映画館に向かう。
 4.同じミスは犯さないためにも12時間という猶予時間の間に積極的に参加者を餌にして行く。
 5.メビウス(ヒビノ・ミライ)を警戒。
【備考】
※デルタギアを装着した事により電気を放つ能力を得ました。
※一部の参加者やそれに関する知識が消されています。ただし何かのきっかけで思い出すかもしれません。
※「自分は間違っていない」という強い自己暗示のよって怪我の痛みや身体の疲労をある程度感じていません。
※周りのせいで自分が辛い目に遭っていると思っています。
※Lは自分の命が第一で相手を縛りあげて監禁する危険な人物だと認識しています。
※万丈目の知り合いについて聞いたが、どれぐらい頭に入っているかは不明です。
※王蛇のカードデッキには未契約カードがあと一枚入っています。
※ベルデのカードデッキには未契約のカードと封印のカードが1枚ずつ入っています。
※「封印」のカードを持っている限り、ミラーモンスターはこの所有者を襲う事は出来ません。
※変身時間の制限にある程度気付きました(1時間〜1時間30分程時間を空ける必要がある事まで把握)。
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。
※こなたとつかさの事は信用しないつもりですが、この手で殺す自信はありません(でもいざという時は……)。
※ベノスネーカーが疲弊しているため、回復するまではメタルゲラスを主軸として使っていくつもりです。
※バリアジャケットのデザインは、【●坂凛@某有名アダルトゲーム】の服装です。
※千年リングを装備した事でバクラの人格が目覚めました。以下【バクラ@キャロが千年リングを見つけたそうです】の簡易状態表。
【思考】
 基本:このデスゲームを思いっきり楽しんだ上で相棒の世界へ帰還する。
 1.かがみをサポート及び誘導して優勝に導く。
 2.万丈目に対して……?(恨んではいない)
 3.こなたに興味。
 4.可能ならばキャロを探したいが、自分の知るキャロと同一人物かどうかは若干の疑問。
 5.メビウス(ヒビノ・ミライ)は万丈目と同じくこのデスゲームにおいては邪魔な存在。
 6.パラサイトマインドは使用できるのか? もしも出来るのならば……。
 7.かがみが自分の知るキャロと出会った時殺しそうになったら時間を稼いで憑依してどうにかする。
【備考】
※千年リングの制限について大まかに気付きましたが、再憑依に必要な正確な時間は分かっていません(少なくとも2時間以上必要である事は把握)。
※キャロが自分の知るキャロと別人である可能性に気が付きました(もしも自分の知らないキャロなら殺す事に躊躇いはありません)。
※かがみのいる世界が参加者に関係するものが大量に存在する世界だと考えています。
※かがみの悪い事を全て周りのせいにする考え方を気に入っていません(別に訂正する気はないようです)。

【全体備考】
※魔力のない者がバリアジャケットを展開した場合それの強度は一般の衣服程度しかありません(またリカバリーできません)。

279 ◆HlLdWe.oBM:2009/10/07(水) 09:26:15 ID:/v4OMBvM0
投下終了です
誤字・脱字、疑問、矛盾などありましたら指摘して下さい
タイトルの元ネタは「セーラー服と機関銃」です

280リリカル名無し:2009/10/07(水) 09:47:12 ID:GAW30js60
投下乙です。
漸くマトモに使えそうな武器も見つかって何よりです。
果たしてこれでどれだけ戦えるか……

と、指摘が2点ほどあるんですが
今回の話はこれまで支給品の確認をしていなかったという前提で話を進めていますが、
『烈火』の中で支給品の確認を行ったという描写があるんですが(デルタギアが無い事を確認している。)。
しかも本編中で『道具なら全部確認したわよ、名簿も地図も含めて』と語られていますし。

もう1点は前の話では憑依不能時間が2時間30分、変身不能時間が1時間となっているのに、
この話では憑依不能が1時間50分(40分経過)、変身不能時間が30分(30分経過)とずれが生じているんですが……
これはどちらが正しいんでしょうか?

281リリカル名無し:2009/10/07(水) 12:56:03 ID:sxGU2rwM0
投下乙です
魔力のない者がバリアジャケットは防御能力皆無かよ。怖いな。しかしどういう意図だろうか気になる
上で言われてるけど確認ミスで武器が見つかったと思ったら前にちゃんと確認してたとかこれは厳しいか?

282 ◆HlLdWe.oBM:2009/10/07(水) 23:02:01 ID:/v4OMBvM0
>>280
指摘どうもです。
見落としていました、なので後半修正したものを1両日中に投下するようにします。
制限時間の表記は単なるミスです(修正内容によってどちらかに統一します)

283 ◆9L.gxDzakI:2009/10/10(土) 21:01:05 ID:FGRnLYbc0
八神はやて(StS)、シャマル、クアットロ、セフィロス分を投下します

284冥府魔道 ――月蝕・第二章 ◆9L.gxDzakI:2009/10/10(土) 21:01:51 ID:FGRnLYbc0
 ――やめろ、セフィロス!

 頭の中で、絶えず同じ声が響いている。

 ――今ならまだ引き返せる! そっち側に踏み込んじゃ駄目だっ!

 黒い髪を生やした男。
 ソルジャーの青色に瞳を染めて、背中にはアンジールのバスターソードを担いで。
 クラス1stへ上り詰めることを夢見て、遂にその境地へと至った若者。

 ――アンタ一体どうしたんだよ!? どうして英雄のアンタが、こんなことを!?

 ザックス・フェア。
 子犬のザックス。
 お調子者だが強い芯を持った、アンジールの夢と誇りを受け継ぐ後輩の名だ。
 あの炎のニブルヘイムの中、私に立ちはだかって敗れた男だ。

 ――引き返せ、セフィロス!

 もう1つの声を発するのは、やはり同じバスターソードを振るう者。
 金色の髪を逆立てて、同じく瞳にソルジャーの光を宿した、あの男。

 ――アンタは、ようやく大事なものを手に入れたんだろ……ようやく光を掴んだんだろ……!

 クラウド・ストライフ。
 セフィロスコピー・インコンプリート。
 アンジールの魂を継いだザックスの、更にその魂をも背負った若者。
 かつての私の操り人形であり、現在の私の宿敵となった男。
 誰よりも弱く脆い男のくせに、私の前に立ちはだかり、唯一この私を滅することのできた者。

 ――もうやめるんだ、セフィロスッ! また同じように闇に堕ちるのか! あの子の想いも……俺達の憧れも裏切って!

 うるさい。
 お前達に一体何が分かる。
 大切なものを喪いながらも、他の何かで埋め合わせる余地のあったお前達に何が分かる。
 私は独りだ。
 ザックスにとってのエアリスはいない。
 クラウドにとっての仲間はいない。
 愛すべき母の名も知らず、共に歩むべき親友からも逃げられ、世界の全てからも拒絶されて。
 この孤独と絶望の中で手に入れた、最後の光さえも失われた。
 他に一体何が選べる。
 他に一体どの道を歩める。
 この怒りと悲しみと憎しみの矛先、奴らに向けずして何に向ける。

 ――受け入れろ、セフィロス。

 あの男が哂っていた。

 ――お前は俺と同類だ……同じ殺戮の軌跡を歩むことでしか、救いを勝ち得ることはできないのさ。

 2人の友の片割れが。
 鮮血色のコートを纏い、茶色の髪を風に揺らせた、詩人かぶれのあの男が。
 同じ片翼を持って生まれ、救いを求めて剣を握ったジェネシス・ラプソードス。

 ――奪えセフィロス。その力で……英雄の剣で、全て。

 私に歩めるのは――この道しかない。

285冥府魔道 ――月蝕・第二章 ◆9L.gxDzakI:2009/10/10(土) 21:02:33 ID:FGRnLYbc0


「――はやてちゃんっ!」
 ばたん、と勢いよく響いた音と共に。
 喫茶翠屋の店内へと飛び込んできたのは、湖の騎士シャマルの茶色い制服姿だ。
 柔らかな印象を与えるその顔立ちに、今まさに浮かんでいるものは衝撃。
 穏やかな微笑の似合うその顔が、今は驚愕と絶望の混ざり合った色に歪んでいる。
 理由はわざわざ問いただすまでもない。
 八神はやても――そして同席していたクアットロもまた――彼女と同じ声を聞いていたのだから。
「フェイトちゃんとザフィーラが……ギンガも……十代君まで……!」
 わなわなと肩を震わせる。
 へなへなとその場にへたり込む。
 両の手を喫茶店の床へつくと、そのまま顔を俯かせる。
「やられたな……」
 つとめて深刻そうな声色で、はやてはシャマルへと応じた。
「フェイトちゃん達が別の世界から来たんやったら、戦力を失っただけで済む。同じ世界から来とった場合は……考えたくもないな」
「ええ……私も、チンクちゃんを喪いました……」
 今やナンバーズ唯一の生き残りとなったクアットロもまた、同じく掛けていた椅子の上で俯いた。
 暗い顔色、弱々しい声音。
 今にも泣き出しそうなその表情は、果たして本物かはたまたブラフか。
 同じ悲しげな表情とは裏腹に、はやては極めて冷静な脳内で、現状を速やかに分析する。
 いつ来てもお客の笑顔に溢れていた、高町夫妻の営む翠屋。
 その店内には場違いなまでの重苦しい気配、一体どこまでが本物か。
 確実に本気で死を悼んでいると断言できるのは、恐らくシャマルただ1人だろう。
 はやて自身はというと、せいぜい五分五分でしかない。
 仮にフェイト・T・ハラオウンが、本当に自分と同じ世界から来ていたとしよう。
 その場合は確かに悲しい。いくら疎遠になっているとはいえ、唯一無二と呼べる親友の片割れが、命を落としてしまったのだから。
 だが残る3人はというと、正直な話、どうでもよかった。
 ザフィーラは確実に同じ世界の人間ではない。よって赤の他人であり、それこそ戦力となる可能性がなくなったに過ぎない。
 ギンガ・ナカジマはどちらの場合にせよ、ただの部下に過ぎない女だ。今更その程度の人間の死を悲しむ余裕などない。
 遊城十代に至っては、面識すら全くない相手。もう本当にどうでもいいとしか言いようのない人間だ。
(まぁ、私がみんなをどう見とるかはどうでもええ……問題はクアットロやな)
 横目で機人の少女を見やる。
 もしもこの悲哀の表情が本物だったならば、その時は彼女を味方と認めてやってもいいだろう。
 冷徹にして嗜虐的なクアットロに、情が芽生えたことの証明になるからだ。
 だがそれは裏を返すなら、そうでなかった場合は、やはり自分達を騙していることに直結するということ。
「大丈夫か? クアットロ」
 労わるような声音を作り、震える少女へと問いかける。
 シャマルに同じことを尋ねなかったのは、特にアクションをかける意味がないからだ。
 仮にツッコまれたとしても、どう見ても大丈夫ではないから、という風に言い訳もできる。
「さすがに、妹を2人も喪ったのは悲しいですけど……チンクちゃんなら、こう言うはずです。
 くよくよしている暇があったら、自分の身を守ることを考えろ……もう私はお前を守ってやれないのだから……って」
「……そっか」
 気丈に振舞おうとするクアットロの肩を、右手でぽんぽんと軽く叩く。
 慈母のごとき微笑みを湛え、共感するようにスキンシップ。
 しかし。
 その実、その笑顔の裏では。
(駄目やな、こいつは)
 さっぱり共感などしていなかった。
 もう駄目だ。分かってしまった。
 こいつは絶対に味方などではない。
 シャマルからクアットロについて聞いた時、第一回目の放送の後、最初に立ち直ったのは彼女だったと聞いた。
 妹にしてパートナーであるディエチの死を悲しみながらも、自分達を励ましてくれた、と。
 そして今回も同じように、この場の3人の中でも最初に、立ち直る旨を口にした。
 頼りがいのある姿を見せるのは、信用を獲得するにはもってこいの振る舞いだろう。
 だが、それが最大の分かれ目だった。
 この時クアットロの取った行動は、あまりにもシチュエーションに合致していなかった。

286冥府魔道 ――月蝕・第二章 ◆9L.gxDzakI:2009/10/10(土) 21:04:08 ID:FGRnLYbc0
(見てみい、シャマルの顔を。家族っちゅうんは、普通はそない簡単に割り切れるもんとちゃうんや)
 シグナムとザフィーラ。
 彼女と同じく、これまでに家族を2人喪った女の姿を見やる。
 陳腐なたとえではあるが、まさに悲しみのどん底といったところだ。
 何か外部からの刺激でもない限り、向こう数分から十数分以内は立ち直れないだろう。
 これが普通の家族なのだ。
 兄弟にも等しきエリオを喪い、殺し合いに乗ったというキャロのように。
 ギンガという唯一血の繋がった姉を喪い、悲嘆に暮れているであろうスバルのように。
 なのはとフェイトという2人の母を喪い、泣きじゃくっているであろうヴィヴィオのように。
 シャマルと全く同じ境遇に置かれ、やり場のない怒りに震えているであろうヴィータのように。
 家族とは最愛の人間の1人だ。
 それを喪うということは、何物にも及ばぬ苦痛なのだ。
 それにひきかえクアットロは、あまりにも平然とし過ぎている。
(情に目覚めたとか言う割には、随分と冷淡な反応やないか)
 内心でせせら笑った。
 これがシャマルなら引っかかるだろうが、はやてを騙すにはあまりにもお粗末。
 何てことはない。
 空気を読めなかった。
 そして家族という概念に対し、あまりにも無知でありすぎた。
 それがクアットロの敗因だ。
(さて……クアットロの件はこの辺で切り上げておいて、と……)
 ひとまず彼女の立場についての結論が出たことで、次なる案件へと思考をシフトする。
 クアットロの扱いに関しては、疑いの度合いが濃厚から確証へと繰り上げになっただけだ。
 警戒を強める以外は、今まで通りで構わないだろう。
 どちらかと言えば自分より考えが顔に出やすいであろうシャマルにも、このことを伝えるべきかどうか、という懸念はあるが。
 ともあれ、今真っ先に考えるべき点はそれではない。それは彼女が落ち着いてからの話だ。
「クアットロ、代わりに外に出とってくれへん? 今はシャマルがこないな状態やから……」
「ええ、分かりましたわ」
 適当な理由をつけて人払いをする。
 からんころん、と喫茶店特有の音を立て、少女が扉の外へと出た。
 これから考えることには、余計な茶々を入れられたくない。
 クアットロに話すにしても、自分の中で考えをまとめてからだ。
 表面上はそっとシャマルの肩を抱え、店の中の方へと誘導する。
 先ほどまで自分達がついていた席に座らせながら、はやては1人思考の海へと意識を落とした。
(さっきの放送で分かったことがある)
 今回の焦点は、先ほどの第二回目の放送だ。
 禁止エリアと死者の発表。
 願いを叶えるというご褒美を提示したはいいが、思ったよりも殺し合いに乗る人数が増えなかった。
 そこで新たに、殺した人数に応じたボーナスを設けることにした。
 そして最後に追伸として、実の娘のフェイトが死亡してもそのまま放置した、と念を押す。
 内容の要点をまとめると、大体こうなる。
(プレシアが焦りを感じてるのは確かやな……そして、考えられる要因は2つ)
 1つは、思った以上に死者が出なかったということ。
 そしてもう1つは、殺し合いに積極的でない人間ばかりが生き残ってしまったということ。
 恐らくそのどちらもが正解なのだろうが、より濃厚だろうと推察できるのは後者だ。
 というより、前者の可能性が低い。
 一度目の放送までに死んだのは13人、二度目の放送までに死んだのは9人。
 全体の人数が同じなのだから、比率としてはさほど変わらないはずだ。
 故に問題なのは死者の人数というより、生き残った殺人者の人数にあると推測する。
 キャロがプレシアの口車に乗ったのはほぼ確定と見ていいが、それ以外の多くの参加者は、何とか踏みとどまってくれたということか。
 加えて言うなら、クアットロやキングも「積極的に」殺し合いに乗っているとは言いがたい。
 やはり可能性が高いのは後者と見て間違いないだろう。

287冥府魔道 ――月蝕・第二章 ◆9L.gxDzakI:2009/10/10(土) 21:04:39 ID:FGRnLYbc0
(にしても、2回も連続でルール追加を表明するのは、さすがに急ぎすぎにも思えるな。
 ねっとりじっくりやっとれば、禁止エリアも広なるし、痺れを切らして殺し合いに乗る連中が出てきたりするやろうに……)
 我知らず顔をしかめ、思考する。
 1日のうちに増加する禁止エリアの数は、3かける4の合計12。
 フィールド全体は81マスに仕切られているのだから、6日半も経てば移動可能なエリアは僅か3つになる。
 そうなれば、禁止エリアから逃げ切れずに死ぬ者も大勢出るだろう。
 食糧のあるエリアが全て通行不可になれば、飢え死にを避けるために優勝を目指し、ゲームに乗ろうとする人間も出るはずだ。
 つまり、こうして早期の決着を望まずとも、持久戦に持ち込めば、終盤には自ずと死者の出るペースも増すというもの。
 にもかかわらず、プレシアは2度に渡ってルールを改竄した。
 何日もかける覚悟があるならば、わざわざ結果を急ぐ必要もないはずなのに――
(――待てよ)
 は、と。
 軽く両目が見開かれる。
 不意に脳裏にひらめいた仮説が、表情に微かな驚きの色を宿らせる。
 仮にその認識が間違いだったならばどうか。
 何日もかける覚悟など、最初からなかったとするならば。
 元々このデスゲームが、短期決戦であることを念頭に置いてセッティングされていたとするならば。
 つまり。
(タイムリミットがあるっちゅうことか……?)



「ホントに使えない子ばっかりねぇ……」
 ぽつり、と。
 つまらない、とでも言いたげに。
 微かな声で呟きながら、かつりと足で小石を蹴る。
 ふらふらと周囲の見回りをしながら、不満げにクアットロが呟いた。
 言うまでもなく、先ほどまでのリアクションは演技である。
 今更手駒が1人減ろうが2人減ろうが、さして悲しむこともないのだ。
(これでナンバーズはクアットロを除いて全滅……ちょ〜っとばかり、まずいことになっちゃったかもしれないわねぇ)
 悲しみの代わりに浮かんだのは焦りだ。
 これでチンクの呼びかけに応じる必要がなくなったのはいいが、そのチンク本人まで死んでしまったとなるとさすがにまずい。
 確実に使える手駒は、これでアンジールとルーテシアの2つ。
 しかも失ってしまった2つの駒は、中でも最も扱いやすかった「家族」という名の駒だ。
 それが頼れないとなると、これまで以上に他の連中に頼らなければならない。
 となれば当然、クアットロにかかる面倒も増すということ。
 ディエチ1人の時はさほど気にもならなかったが、2人目の犠牲者が出たとなれば、さすがに自覚せざるを得ない。
 父たるスカリエッティは一体何を考えていることやら。
 正直、文句の1つでも言ってやりたくなった。
(そういえば、さっき言ってたボーナスだけど……あれ、3回目の放送より前の死者も対象になるのかしら?)
 ふと、先の放送を思い出す。
 第三回目の放送以降は、殺した人数に応じて何らかの特典を用意する、というやつだ。
 一見殺し合いとは無縁に思えるこのグループだが、実は既に殺害数のストックが1つだけある。
 はやてがキングなる男に騙され、うっかり殺してしまった恐竜の分だ。
 これからクアットロが出す予定の死者はともかくとしても、果たしてこの恐竜の分のボーナスはもらえるのだろうか。
 もし本当にもらえるのなら、その分有利に立ち回ることができるだろう。
 プレシアの言うとおり、今のうちに何か考えておくか。
 そんな風に考えながら、何の気なしに大通りの方へと視線を向ける。

288冥府魔道 ――月蝕・第二章 ◆9L.gxDzakI:2009/10/10(土) 21:05:35 ID:FGRnLYbc0
 と。
 その、瞬間。
「え……?」
 目に留まる、影があった。
 視界の中に飛び込んできたのは、大通りの上を歩く1つの人影。
 影は漆黒と白銀を纏う。
 月なき朔の宵闇を思わせるコートと、細い銀月を思わせる見事な長髪。
 異性が一目でも見れば、たちまちに心奪われため息を漏らすであろう絶世の美男。
 されどクアットロにとっては、大きく異なる意味合いを持つその姿。
(まさか……セフィロス!?)
 それはアンジールから聞かされた男。
 それは雷神の目の前に姿を現した男。
 それは翠屋にメモを残していった男。
 容赦のない危険な存在として、メモリーに焼き付けていたあの男。
 その、セフィロスだ。
 川上で一瞬の邂逅を果たしたあの男が、ここまで追いかけてきたというのか。
「っ!」
 瞳が動く。
 青が煌く。
 魔性の光を湛えた視線と、クアットロの視線が重なる。
 まずい。気付かれた。
 あの男に関する情報は、アンジールから聞かされたものが全てだ。
 機動六課の面々に混ざっていたこと以外、詳しいことはまだ分からないという。
 だが六課とかかわりがあるということは、間違いなくあれは自分の敵だ。
 そして彼の最後に記憶したセフィロスは、敵と定めた相手には、躊躇も容赦もなく牙を剥いていた。
 もたもたしていては殺される。
 アンジールと互角以上に戦える実力者だというのなら、まともに戦っていては勝ち目がない。
 頬に浮かんだ冷や汗を弾けさせ、身を翻さんとした。
「おい」
 その、矢先。
 投げかけられた、声に。
 びくり、と。
 震える身体が、静止する。
 動けなかった。
 たかが一声かけられただけだというのに。
 高々一度声をかけられただけで、全身の人工筋肉が萎縮した。
 ぎこちない動作で首を後ろへと振り返らせれば、コートの裾を翻すセフィロスが、一歩一歩と近づいてくる。
 恐らく竦み上がっていた時間は、本来なら僅か一瞬で済んだのだろう。
 こうして振り返ることをしなければ、運がよければ逃げ切れたかもしれない。
 だが、もう駄目だ。
 見てしまったからには。
 無言の圧力を察知してしまったからには、硬直時間は一瞬から数瞬へと跳ね上がる。
 そうなれば、多分、逃げ切れない。
「近くにいるんだろう。八神はやての元へと連れて行け」
 ちゃき、と鳴る刃金の音。
 見れば首筋に向けられたのは、左手に握られた一振りの刃。
 あの男の雷撃を真っ向から凌いだ、妖しき紫の光を放つ魔剣。
「は……はい……」
 それをゼロ距離に突きつけられては、他に返せる言葉などなかった。
 聞き届けた命令を、即座に忠実に実行する。
 男に刃物を向けられて、ぎくしゃくとした仕草で歩む様は、第三者の目にはさぞ滑稽に映るだろう。
 放っておいてくれ。
 たとえかっこ悪かろうと、こちらは生きるか死ぬかの瀬戸際なのだ。
 強い奴には逆らわない。生き残るにはそれが最善の道だろうが。

289冥府魔道 ――月蝕・第二章 ◆9L.gxDzakI:2009/10/10(土) 21:07:09 ID:FGRnLYbc0
 やがて翠屋へと帰還を果たし、正面玄関の前に立つ。
「は、はやてさん……えーっと、その……」
「無用だ」
 ドア越しに状況を説明する前に、短く告げるセフィロスが手を伸ばした。
 空いた右手でドアノブを掴み、くるりと捻って扉を開ける。
 からんころん、という鐘の音と共に。
 視界に飛び込んできたものは、未だ席について俯いたままのシャマルと、それを慰めるような姿勢をとるはやて。
 茶髪の六課部隊長は、一瞬突然の来訪者に目を丸くし。
 それもほんの一瞬のうちに掻き消え、真剣な眼差しを男へと向け。
「……来たか」
 開口一番に発した、僅か3文字の言葉だった。



 改めて向かい合ってみると、相当な威圧感を感じるものだ。
 セフィロスと名乗った男を前に、八神はやてはそう実感する。
 恐らくは特別頭の回る方でもないだろうが、生半可な嘘ならば、即座に見抜かれてもおかしくない。
 全身ずぶ濡れという情けない姿でありながら、それを全く感じさせない存在感。
 戦士としての力量は、ヴォルケンリッターの将・シグナム以上か。
 それだけの実力の持ち主ならば、おのずと風格もついてくるというもの。
 この男、なかなかの強敵らしい。
 僅かな緊張を胸の内へと隠し、相手の話へと耳を傾ける。
 聞けば彼は次元漂流者で、「八神はやて」によって保護され、機動六課に一時的に所属することになったのだそうだ。
 そしてジェイル・スカリエッティの軍勢と戦い勝利を収め、その後自身の複雑な身の上故に、雪の日にミッドを発ったという。
「どや、シャマル?」
「そうね……やっぱり私達の世界でも、そんな話はなかったわ」
 いくらか落ち着いた様子のシャマルが、はやてを見上げて確認に応じる。
 予想以上に早かったセフィロスとの再会による刺激は、彼女にいい方向の刺激を与えたようだ。
 落ち込んでる場合じゃなくなった、と言わんばかりに、こうしてまともに会話に参加できるようになっていた。
「私かて同じや。残念やけど、私ら2人とも、セフィロスさんのことは知らんのですよ」
 現在この翠屋の店内では、3人の人間が対話を行っている。
 1人ははやて、1人はシャマル。そして最後の1人がセフィロス。
 はやてとセフィロスは、互いに立ち話の状態だ。
 未だ信用できる相手とは限らない。故に即座に逃げ出せるよう、席に座ることは避けたのである。
 もっとも、シャマルは椅子に腰掛けたままなのだが。
 そしてクアットロはというと、無用な刺激を与えないようにと、再度外へと出しておいた。
 彼のいたという世界でも、やはり彼女は管理局の敵だったらしい。ややこしい要素は排除しておいた方がいい。
「もう1人の八神はやてにも会ったが、あれも私のことを知らなかった」
「それについては、ある程度察しがついとるんです」
 今度ははやてが説明する番だ。
 これまでに目の当たりにした認識の差異を、これまでに出会った人数分だけ説明する。
 八神はやての世界では、機動六課が解散してから、既に数ヶ月が経過していた。
 シャマルの世界でもJS事件は解決しているが、六課は未だに存在しており、同時にセフィロスの認識する時期ともまた異なる。
 遊城十代なる少年の世界では、六課は解散しているが、少なくともそれから数年は経っているようだ。
「タイムスリップか?」
「というより、パラレルワールドなんやと思います」
 この殺し合いに集められた参加者達は、それぞれ別々の世界で生きてきた人間であり、
 互いに面識のある人間同士も、異なる歴史を歩んだ平行世界から集められている可能性が高い。
 これまでの情報を統合し、はやてが至った結論だ。
 セフィロスの会ったという幼いはやてが、自分の知らない仮面ライダーなる存在を知っていたことも、更にそれを裏付けた。

290冥府魔道 ――月蝕・第二章 ◆9L.gxDzakI:2009/10/10(土) 21:07:53 ID:FGRnLYbc0
(見た感じ、友好的には見えるんやけどな……)
 改めてはやては、このセフィロスという男を見定める。
 彼の語った話が本当ならば、その世界に住んでいる「八神はやて」とは、それなりに親しい間柄だったらしい。
 まさか恋人とまではいかないだろうが、友人と呼ぶに値するだけの信頼関係では結ばれていたようだ。
 単独でもそこそこ生き残れそうでありながら、わざわざろくに戦えない、もう1人のはやてを守っていたことからもそれが伺える。
 となれば、利用するのは思ったよりも簡単かもしれない。
 そう考えていることさえ悟られなければ、強力な味方になってくれるはずだ。
 ならばこれを見逃す手はない。何としても自分の元に引き入れなければ。
 どこまでの指示を許容してくれるかは分からないが、それは追々確認していけばいいだろう。
「では、あのクアットロは何だ。何故敵だった奴と行動を共にしている」
 と、その問いかけに我に返った。
 そう言えば彼女との関係は、まだセフィロスには説明していなかったことを思い出す。
「ああ……クアットロもまた、私らとは別の世界から来とるようなんですよ。
 何でも、管理局の更生プログラムの申し出を受け入れ、悔いを改めた世界から、だとか」
 本来なら、アリサの蘇生に並ぶ平行世界説の最大の証明がこれだ。
 クアットロのいる世界は、シャマルのそれと時期的には似通っているものの、その一点で大きく異なっていた。
 他の世界では最後まで頑なに受講を拒否していた彼女が、罪を受け入れ改心したという世界なのだそうだ。
 もっとも、それもまた、あくまで本人の言い分に過ぎない。
「せやけど当然、そないな都合のいい話を鵜呑みにしたわけやないんです」
「はやてちゃん!」
 シャマルから抗議の声が上がる。
 当然だ。彼女ははやてとは違い、クアットロの言い分を信じ込んでいるのだから。
 人を疑えと言うのは簡単だが、それでは今後シャマルとの仲がこじれる可能性もある。
 だからこれから言うことは、セフィロスを納得させた後で、そのための方便だと弁解しておこう。
「今はまだ泳がせとるけど、妙な真似をしようもんなら、ちゃんと切って捨てるつもりで――」





 ――斬。





 鳴り響いたのは剣閃の音。
 直前に視界にとらえたのは、デバイスが戦闘モードへと移行する輝き。
 接近戦は苦手だった。というより広範囲攻撃しかできない自分は、他のあらゆる技術に自信がなかった。
 そんな極端な騎士であっても、自分がSSランクを取得した実力者であることは理解している。
 10年前までのSランク級から、1ランク上げられるだけの成長は遂げたつもりだ。
 故にその過程で培った反応速度が、自分の命を救っていた。
 避けられないことは分かっている。
 だから抜刀される前に、すぐ脇に座る女の肩を掴んだ。
 条件反射的な動作だった。

「……え……?」

 横一閃に振り抜かれた斬撃を、シャマルの身体で受け止めていた。

 咄嗟の、判断だった。

291冥府魔道 ――月蝕・第二章 ◆9L.gxDzakI:2009/10/10(土) 21:08:33 ID:FGRnLYbc0

「正宗を抜いておくべきだったな」
 眼前のセフィロスが口にしたのは、字面通りの刀剣の名前なのだろうか。
 薔薇を象った紫の太刀筋は、はやてを切り裂くには至らず、シャマルを傷つけたのみに留まる。
 妖艶に輝く魔性の刃を、赤き鮮血がつぅっと伝った。
「はや、て……ちゃ……?」
 困惑も露わなシャマルの声。驚愕も露わなシャマルの顔。
 制服の胸元は瞬きの間に断ち切られ、豊かな谷間が外気に晒されている。
 されど、よほどマニアックな男でもない限り、それに欲情することはないだろう。
 風の癒し手の豊満なスタイルには、もはやその本来の魅力は宿されていない。
 真一文字の刀傷は、深々と血肉を引き裂いていた。
 一直線に引かれた真紅のラインから、どくどくと赤い蜜がしたたっていた。
 その痛みさえも、既にシャマルの意識からは、驚愕によって押しやられているらしい。
「……何の真似や」
 そのシャマルの驚愕さえも、意に介さぬ冷徹な声だった。
 淡々とした口調と鋭い眼光。
 家族を盾にするという凶行への弁明など、更々する気もなさそうな態度と共に、八神はやては問いかける。
 仲間であるはずのこの自分に、いきなり刃を抜いたセフィロスへと。
「お前が下手な真似をしなければ、寸前で剣を止めるはずだった」
 淡々と。
 仲間を切り捨てるという凶行への弁明など、やはり更々する気などないといった態度で。
 無感情なポーカーフェイスが、低い声で言葉を紡ぐ。
「そうしてお前の真偽を確かめるつもりだったが……もはやその必要もなくなった」
 流水のごとき青の光。
 シャマルの方へと向けられる魔性の視線。
 主に裏切られ盾とされた、哀れな従者の姿を見やる。
 どくどくと流れる血液が、管理局の制服を赤黒く染めた。
「私の知る八神はやてとは、愚直なまでのお人よしだ。
 何がきっかけなのかは知らんが、他者を利用し陥れることを嫌い、他者を切り捨てることを嫌い……
 ……たとえ自分が傷つこうとも、その目に映るもの全てを、その手で守り抜こうとしていた」
 それはあるべきはやての姿。
 かつてはやてであったもの。
 父と母と足の自由を失い、孤独に生きてきた過去と。
 夜天の書の新たな主となり、愛すべき家族と出会った誕生日の夜と。
 嘆きと闘争の果てに出会った、銀髪と黒装束の悲しき娘と。
 出会ったばかりの5人目の家族との、あまりにも早すぎた聖夜の別れ。
 だからかつてのはやてはその道を選んだ。
 自分と同じ悲しみは、誰にも味わわせたくはないと願った。
 故に時空管理局へと入局し、命を守る者とならんとした。
 嗚呼、されど。
 最後の夜天の主の心には、今や根深き影が巣食ってしまった。
 もう二度と失いたくないと思った大切なもの。
 白熱の閃光を纏う漆黒の魔獣。
 怪獣王ゴジラへの報復を果たすために――愛する家族を取り戻さんとするために。
 歪んだ愛は憎しみへと変容し、八神はやてを鬼へと変えた。
 復讐のため、一切の良心を捨て去った姿に。
 修羅をも食らう羅刹となり、屍の山を築き上げる姿に。
 かつての面影は、どこにもない。
 故に。
 自らと同類であるが故に。
 同じでなかったはずのものが、同じ闇へと堕ちたが故に。

「お前は――『八神はやて』ではない」

 片翼の天使は、静かに言い放った。

292冥府魔道 ――月蝕・第二章 ◆9L.gxDzakI:2009/10/10(土) 21:09:40 ID:FGRnLYbc0
 くわ、と瞠目する夜天の主。
 冷徹さを貫いていたその表情に、微かな感情の揺らぎが宿る。
 両の肩がわなないた。握られた右手がほどかれた。
 支えを失ったシャマルの身体が、ごろりと無造作に床に転がる。
「……随分と勝手な言い草やな……」
 それは刹那の間であったか。
 それは永劫の間であったか。
 やがて口を開いたはやての、双眸が細く引き絞られていく。
 そこに宿されていたものは、先ほどまでの平静ではなく。
 ぐっと奥底に噛み締められた、しかし誤魔化しようのない鋭き怒り。
「確かに私は変わった。変わらなければならんかった。
 せやけどそれは、好きで選んだ道やない。たとえそれが冥府魔道であろうとも、それ以外に選べる道なんてなかったからや……」
 嗚呼、確かにそれは認めよう。
 八神はやては確かに変わった。
 大切な家族を取り戻すために、手段を選ぶことをやめた。
 数多の怪獣達を蹂躙し、惨たらしくその尊厳を陵辱し、心無き操り人形へと変えた。
 そうまでしてでも、取り戻したかった。
 血の赤にべっとりと染まったこの顔に、かつての笑顔は浮かばない。
 死の赤にべっとりと染まったこの心に、かつての優しさは今はない。
 だが、それでも。
 それは八神はやてを捨てるための変化ではない。
 それは八神はやてに戻るための変化に過ぎない。
 何物にも変えがたき半身を奪い返し、かつての日常を取り戻すための戦いだ。
「何も知らんお前に……そないなことを言われとうない……!」
 一度外道に堕ちた者は、二度と正道には戻れないのか。
 血と骨で築かれた外道の仮面は、二度と剥がれることはないのか。
 八神はやてを捨てた者は、八神はやてには戻れないのか。
 そんなことは認めない。
 そんなことを決めつける権利は、誰にもありはしない。
 お前のような殺人者に、それを決めつける資格などない。

「私は私や! どんなに腐って汚れようとも、他の何者でもない『八神はやて』や!
 たった1つ残された私の存在……あの子らが身を挺して守った私の存在……誰にも否定なんてさせへんッ!!」

 怒りと殺意の滲む声で。
 右手を己の胸に突いて。
 遂にはやては絶叫した。
 冷徹な仮面の下に宿る激情を、漆黒の魔剣士へとぶちまけた。
 言い終えると同時に身を翻す。
 背中に負ったデイパックの肩紐を掴み、強引に己が身より引き剥がす。
 びゅん。
 フルスイングで、投擲。
 ばりん。
 鳴り響いたのはガラスの音。
 烈音と共に打ち砕かれたのは、席のすぐ横に張られた窓ガラスだ。
 店外へ弾き出された鞄を追うように、ソファー状の席を駆け上がる。
 窓枠へと片足をかけたはやては、そこで再びセフィロスを睨んだ。
「生憎と、私の手元には接近戦用の武器しかない……お前と戦ったところで、命の保障がないんは分かっとる……」
 一太刀で分かる。相手は剣術系の接近戦型だ。
 素人目だが、恐らく攻撃速度はシグナムと互角。
 いかにデルタギアがあるとはいえ、ろくに技術や経験のない格闘戦を挑むには分が悪い。
 故にここは逃走を選ぶ。
 たとえみっともない選択だとしても、次に確実に打ち倒すために、今はあえて背中を向ける。
「せやけどな……」
 ああ、認めよう。確かにこれは自分のミスだ。
 相手の残虐性を読みきれなかったが故に、こんな結果を迎えてしまった。
 自分の正体を確かめるために、わざわざ刃まで向けるような相手であったことを読みきれなかった。
 だが、このままでは終わらない。
 絶対にただでは終わってやらない。
「次に会うときは必ず殺す! お前は私の手で、絶対にブチ殺したるッ!!」
 憤怒と憎悪に歪んだ顔で。
 セフィロスを指差すはやての形相に、やはりかつての面影はなかった。

293冥府魔道 ――月蝕・第二章 ◆9L.gxDzakI:2009/10/10(土) 21:11:42 ID:FGRnLYbc0


「――逃げるで、クアットロ!」
 ばりんとガラスの音が鳴った後、クアットロの元に現れたはやては、何故か店の裏側からやって来た。
「ど、どうしたんですか急に……セフィロスの説得は……?」
「失敗した! アイツの思考を読みきれんかった私の落ち度や……早いとこ逃げんと殺される!」
 片手に掴んでいたデイパックを背負いながら、眼前で早口で捲くし立てるはやて。
 軽く取り乱してみせたクアットロだったが、実際にはこの返答の予想も、ある程度ついていた。
 何せわざわざ窓ガラスから脱出してきたのだ。何らかの緊急事態でない方がおかしい。
 故に内心では冷静に、駆け出すはやての後へと続く。
 相手の油断を誘うため、わざと驚いた顔をしながら。
「に、逃げるってどこへ?」
「東の橋や! このままスマートブレインに直行する!」
「あっ……そういえば、シャマル先生は!?」
「アイツにやられた! もう助からん!」
「っ……そんな……!」
 驚愕と悲嘆の表情を作った。
 わざとそのように装った。
 自分の語った設定上では、彼女は更生した自分を支えてくれた恩人だ。
 故に敬愛するシャマル先生の死を嘆き悲しむかのように、わざと泣きそうな顔を演出する。
「ぼさっとしとったらあかん! 追いつかれたら、シャマルの犠牲まで無駄になる!」
 叱咤するはやての声は力強い。
 本来なら大切な人間であるはずのシャマルを喪ってなお、その声には覇気が残されている。
 冷酷なまでの余裕。
 これがクアットロ自身であればまだ納得がいった。
 だが相手は、本来お人よしであるはずの八神はやてだ。
 そもそも彼女が自分の知る彼女ならば、シャマルを見捨てて逃げたりはせず、無謀な戦いにも身を投じたはずだった。
 やはり異なる世界のはやてには、人格形成の上で何らかの変化があったのか。
 これまで抱いていた疑念が、更にその色を濃くしていく。
(適度に甘ちゃんが抜けて魅力的になったのは確かだけど……)
 共に戦うというのなら、喜ばしい変化だ。
 この八神はやてならば、余計な情に流されることなく、現状のように常に生き残ることを優先して行動するだろう。
 だが。
 その一方で、異なる感情を抱いたのもまた事実。
(……そろそろ切り時かしらね?)
 これでこいつの失態は二度目だ。
 一度目はキングに騙された時。
 そして今回、セフィロスに敵と認識されたのが二度目。
 ヴィータにもセフィロスにも恨まれ、キングには殺人を犯したという証拠を握られた女。
「くそっ……なんでよその世界の私は、あんな危ない奴を仲間に引き入れたんや……!」
 悪態をつくはやてを見やる。
 彼女には敵が多すぎる。
 改心した善人を装い、集団にもぐり込むことを目的とした自分には、いい加減邪魔な存在になってきたのではないか。
 ならば近いうちに、手を切った方が得策ではないか。
 エリアの境界を跨ぎ、廃墟と化した街並みへと踏み込んだ頃。
 クアットロの脳内では、冷徹な思考が渦を巻いていた。

294冥府魔道 ――月蝕・第二章 ◆9L.gxDzakI:2009/10/10(土) 21:13:28 ID:FGRnLYbc0
【1日目 日中】
【現在地 F-3】
【八神はやて(StS)@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS】
【状態】健康、スマートブレイン社への興味
【装備】ツインブレイズ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式×3、スモーカー大佐のジャケット@小話メドレー、主要施設電話番号&アドレスメモ@オリジナル、
    医務室で手に入れた薬品(消毒薬、鎮痛剤、解熱剤、包帯等)デルタギア一式@魔法少女リリカルなのは マスカレード、
    デルタギアケース@魔法少女リリカルなのは マスカレード、カリムの教会服とパンティー@リリカルニコラス
【思考】
 基本:プレシアの持っている技術を手に入れる。
 1.スマートブレインに向かう。その道中でクアットロと情報交換を続ける。
 2.ヴィータを戦力に加える。
 3.クアットロを利用する(おかしな行動は絶対にさせない)。
 4.ある程度時間が経ったらメールの返信を確かめる(多少遅くなっても良い)。
 5.セフィロスを許さない。絶対に自分の手で殺す。
 6.キングの危険性を他の参加者に伝え彼を排除する。もし自分が再会したならば確実に殺す。
 7.首輪を解除出来る人&プレシア達に対抗する戦力の確保。
 8.以上の道のりを邪魔する存在の排除。
【備考】
※プレシアの持つ技術が時間と平行世界に干渉できるものだと考えています。
※ヴィータ達守護騎士に優しくするのは自分の本当の家族に対する裏切りだと思っています。
※キングはプレシアから殺し合いを促進させる役割を与えられていると考えています(同時に携帯にも何かあると思っています)。
※ヴィータと戦う事になったのはキングが原因だと断定しました(その事を許すつもりはありません)。
※自分の知り合いの殆どは違う世界から呼び出されていると考えています。
※放送でのアリサ復活は嘘だと判断しました(現状プレシアに蘇生させる力はないと考えています)。
※プレシアの目的はアリシア復活で、その為には普通の死ではなく殺し合いによる死が必要だと考えています。
※プレシアには他にも協力者がいると考えています。
※施設には何かしらの仕掛けが施されている可能性があると考えています。
※キングのデイパックの中身を全て自分のデイパックに移して、キングのデイパックも折り畳んで自分のデイパックに入れています。
※図書館のメールアドレスを把握しました。
※シャマル、クアットロと情報交換しました。
※クアットロは善人のふりをして自分を騙していると確信しました(ただし、ある程度利用出来るとは思っている)。
※エネルは海楼石を恐れていると思っています。
※放送の御褒美に釣られて殺し合いに乗った参加者を説得するつもりは全くありません。
※この殺し合いにはタイムリミットが存在し、それが決して長いものではないという可能性に気付きました。

295冥府魔道 ――月蝕・第二章 ◆9L.gxDzakI:2009/10/10(土) 21:14:21 ID:FGRnLYbc0
【クアットロ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】左腕負傷(簡単な処置済み)、脇腹に裂傷(掠り傷程度)、眼鏡無し、髪を下ろしている、キャロへの恐怖と屈辱
【装備】私立風芽丘学園の制服@魔法少女リリカルなのは、ウォルターの手袋@NANOSING、
    血塗れの包丁@L change the world after story
【道具】支給品一式、クアットロの眼鏡、大量の小麦粉、セフィロスのメモ
【思考】
 基本:この場から脱出する。
 1.スマートブレインに向かう。その道中ではやてと情報交換を続ける。
 2.はやての信頼を固めてとことん利用し尽くす。が、そろそろ切り時か……?
 3.首輪や聖王の器の確保。
 4.生きているフェイトが(StS)の方だった場合、接触は避ける。
 5.ギルモンの分のキルスコアが活かせるよう、ボーナスの内容を考える。
【備考】
※参加者は別々の世界・時間から連れて来られている可能性に至りました。
※アンジールからアンジール及び彼が知り得る全ての情報を入手しました(ただし役に立ちそうもない情報は気に留めていません)。
※アンジールの前では『アンジールの世界のクアットロ』のように振る舞う(本質的に変わりなし)。
※基本的に改心した振りをする(だが時と場合によれば本性で対応する気です)。
※デュエルゾンビの話は信じていますが、可能性の1つ程度にしか考えていません。
※この殺し合いがデス・デュエルと似たもので、殺し合いの中で起こる戦いを通じ、首輪を介して何かを蒐集していると考えています。
※デュエルモンスターズのカードとデュエルディスクがあればモンスターが召喚出来ると考えています。
※地上本部地下にあるパソコンに気づいていません。
※制限を大体把握しました。制限を発生させている装置は首輪か舞台内の何処かにあると考えています。
※主催者の中にスカリエッティや邪悪な精霊(=ユベル)もいると考えており、他にも誰かいる可能性があると考えています。
※優勝者への御褒美についての話は嘘、もしくは可能性は非常に低いと考えています。
※キャロは味方に引き込めないと思っています。
※シャマル、はやて(StS)と情報交換しました。


 何が何だか分からなかった。
 シャマルはただひたすらに混乱していた。
 第二回目の放送が流れた時、読み上げられた4つの名前。
 10年来の仲間と同志。
 機動六課で知り合った部下。
 この殺し合いの場で、共に戦うと誓った少年。
 またしても、守れなかった。
 シグナムやなのは達のみに留まらず、ザフィーラ達の命までも救えなかった。
 悲哀と自責が胸中で渦巻き、精神の均衡が崩れ去っていく。
 そこに現れたのがあの男。
 銀髪と黒衣のあの男。
 いきなり刃を向けられた。
 いきなり胸元を切り裂かれた。
 いきなりはやてに盾にされた。
 いきなりはやてに使い捨てられた。
 信じていた主の裏切りと、眼前に散った血液の花弁。
 まともな思考力を奪い去るには、十分すぎる衝撃の連続。
 ガラスの割れる音と共に、はやてが1人で逃げていく。
 はやての姿が見えなくなると同時に、胸の激痛を知覚していく。

296冥府魔道 ――月蝕・第二章 ◆9L.gxDzakI:2009/10/10(土) 21:15:12 ID:FGRnLYbc0
「く……ぁ……あぁぁ……っ」
 呻きが上がった。
 のた打ち回った。
 焼け付くような傷の痛みと、気が抜けるような失血感。
 このままではまずい。確実に死ぬ。出血多量で命を落とす。
 急速に実感していく死の恐怖。
 それをもたらすのは頭上の男。
 死期を早めるのは銀髪の剣士。
 無慈悲に。無情に。
 見上げた先の漆黒の袖が、刃を掴んで振り上げられる。
 あれを食らえば、今度こそ自分は死ぬだろう。
 あれが刺されば、今度こそ自分という存在は消えるだろう。
「い……いや……いやぁ……」
 そんなのは嫌だ。
 死んでしまうのは嫌だ。
 自分が消えてしまうのは嫌だ。
 うっすらと目尻に浮かぶ透明な雫。
 内腿をじわりと濡らす金色の液体。
 どくどくと乳房の谷間を這う鮮血。
「た、すけ……て……たすけて……だれか……っ……」
 死にたくない。
 何が何でも死にたくない。
 怖い。
 怖い。
 死ぬのが怖い。
 誰でもいい。誰か私を助けてくれ。
 高町なのは。
 フェイト・T・ハラオウン。
 ヴィータ。
 ユーノ・スクライア。
 スバル・ナカジマ。
 キャロ・ル・ルシエ。
「はやてちゃん……」
 か細い声でその名を呼ぶ。
 消え入る声で主を呼ぶ。
 されど、声に応える者はなく。
 されど、この身はこれほどまでに孤独。
「たす、けて……はやてちゃん……」
 どうして。
 どうして誰も助けに来てくれない。
 どうしてはやては自分を助けに来てくれない。
「はやて、ちゃん……」
 信じていたのに。
 愛していたのに。
 愛してくれると言っていたのに。
 たとえ世界が違っても、家族であることに変わりはないと言っていたのに。
「はや、て……ちゃ……」
 なのに何故自分はこんなにも孤独だ。
 何故こんなにも無様な姿を、たった独りで晒さなければいけない。
「わたし……」
 嫌だ。
 こんな結末を迎えるのは嫌だ。
 死にたくない。
 死にたくない。
 死にたくない。
 死にたくない。
 死にたくない。
 死にたくない。
 死にたくない。
 死にたくない。
 死にたくない。
 死にたくない。
 死にたくない。
「しに、たく……な……」
 ぐさり。

297冥府魔道 ――月蝕・第二章 ◆9L.gxDzakI:2009/10/10(土) 21:16:40 ID:FGRnLYbc0


 湖の騎士の心臓は、はたとその鼓動を停止させた。
 左胸を一直線に貫いた刺し傷からは、とめどなく血液が流れ出している。
 横薙ぎに切り払った傷痕と合わされば、さながら不恰好な十字のようだ。
 弔いのような。
 呪いのような。
 死と鉄の臭いの漂う湖に浮かんだ屍へと、深々と刻み込まれたブラッディ・クロス。
 血溜まりに仰向けに横たわるシャマルだった亡骸を、セフィロスは静かに見下ろしていた。
 シャマルは死んだ。
 風の癒し手はこの手で殺した。
 血と涙と小水にまみれた無様な死体を、たった今この手とこの刃で生み出したのだ。
 決定的とも言える殺人を。
 ヴィータの時には未遂に終わった仲間殺しを。
 かつての仲間達との明確な決別の証を、遂にこの翠屋に刻みつけたのだ。
「………」
 僅かに、額に皺が寄る。
 微かに、顔がしかめられる。
 ざく、と。
 乱暴に叩きつけられた憑神刀(マハ)の切っ先が、木製の床へと突き刺さった。
 てらてらと輝く赤黒い血が、魔性の凶器を染め上げていく。
(まだ悔やむか)
 自問した。
 ほんの僅かに揺らぎを浮かべる、己自身の形相へと。
 ほぼ無表情でありながら、今にも泣き出しそうな気配を宿した相貌へと。
 まだ痛むのか。
 まだ苦しむのか。
 八神はやてという形に、決別の刃を向けたことを。
 八神はやてという形を、この手で明確に否定したことを。
 ようやく見つけた居場所を手離し、仲間に牙を剥くことを。
 いずれまた杯を交わそうと誓った、暖かな居場所を捨てたことを。
(今さら何を怖れている)
 弱い心だ。
 いつの間に自分はこんなにも腑抜けた。
 そんなこと、今に始まったことではないではないか。
 かつてニブルヘイムを訪れた自分が、迷いなく選び歩んだ道ではないか。
 何を迷うことがある。
 何を悔やむことがある。
 剣を取れ。
 前へ進め。
 それ以外に道などない。
 それ以外に救いなどない。
 母なるジェノバの意志を貫く他に、この冷たき孤独の殻を破る術などない。
 幾度となく胸の中繰り返し。
 突き立てた切っ先を抜き放つ。
 かつり、とブーツの音が鳴り、翠屋の店外へと足が向けられた。
 からんころんという音と共に、扉を開いたその先には、既にはやて達の姿はない。
 少しばかり間を空けすぎた。恐らく今から追いかけても、そう簡単には見つけられないだろう。
 だが、扉越しに聞こえた口やかましいやり取りから、スマートブレインなる場所が目的地であることは分かっている。
 ならば今すぐに見つけることはできずとも、時間をかけさえすれば、見つけること自体は難しくない。
 やがて自分とあのはやての出来損ないは、再び相まみえることになるだろう。
 そうなれば恐らく両者共に、出会った瞬間に殺し合う。
 その時こそが、彼女の最期だ。
 あのどこまでも八神はやてに近い姿をしながら、どこまでも八神はやてとかけ離れた女の最期の時だ。
 今度は取り逃がしはしない。
 確実に殺してみせる。
 誰でもない己自身の、この手で。

298冥府魔道 ――月蝕・第二章 ◆9L.gxDzakI:2009/10/10(土) 21:18:28 ID:FGRnLYbc0
【1日目 日中】
【現在地 F-2 翠屋玄関】
【セフィロス@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】
【状態】疲労(中)、魔力消費大、全身にダメージ(小)、僅かな動揺、全身ずぶ濡れ、ジェノバ覚醒(ジェノバとしての思考)
【装備】憑神刀(マハ)@.hack//Lightning
【道具】支給品一式×2、トライアクセラー@魔法少女リリカルなのは マスカレード、
    正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
【思考】
 基本:全ての参加者を皆殺しにする。
 1.はやて(StS)とクアットロを追って殺す。
 2.今はまだアンジールは殺さない。ぎりぎりまで生かし、最高の痛みと苦しみを味わわせる。
 3.はやて(StS)、アーカード、仮面ライダーの娘(=柊かがみ)、アレックスは優先的に殺す。
【備考】
※身体にかかった制限を把握しました。
※アレックス(殺し合いには乗っていないと判断)が制限を受けている事を把握しました。
※参加者は別々の世界・時間から連れて来られている可能性に至りました。
※トライアクセラーで起動するバイク(トライチェイサー@魔法少女リリカルなのは マスカレード)は
 立体駐車場に埋もれていると思っていますが、運転はできないので無理に探すつもりはありません。
※「仮面ライダーリリカル龍騎」における仮面ライダーの情報を得ました。
※デスゲームと仮面ライダーの殺し合いに関係があるのではないかと思っています。
※アーカードの弱点が心臓である事を見破りました。
※はやて(StS)を本物の「八神はやて」ではないと認識しました。
 また、ヴィータもはやて(StS)を偽物のはやてと見なしている可能性が高いと思っています。


 瞳孔の開いた虚ろな視線が、じっと天井を仰いでいる。
 生命の光の宿らぬ瞳は、二度と安らかな眠りに閉じられることはない。
 かくて喫茶店の店内には、たった1つの亡骸のみが残される。
 シャマルの最大の不幸は、自分の持っていた支給品の効力を、最後まで確認できなかったことだろう。
 具体的に言うならば、あのハネクリボーというカードだ。
 遊城十代の相棒たるそのカードは、特殊効果を持ったモンスターだ。
 それを発動することができたなら、セフィロスに浴びせられた攻撃を、少なくとも一度は無効化できたはずなのだ。
 しかし、悲しいかなシャマルはそれを知らなかった。
 ラッキーカードとなるべきそれは、かくして役立つことなく終わった。
 あるいはその目でカードの精霊を知覚してもなお、玩具が武器として使えるという非常識な可能性を、信じきれなかったのかもしれない。
 いずれにせよ、彼女はここで命を落とした。
 心優しき風の癒し手は、二度と微笑むことはない。
 銀幕芝居の綴り手に利用され、堕ちた夜天の主に見捨てられ。
 しかしそれらを自覚することもかなわず。
 誰からも助けられることなく、極大の死の恐怖の中、孤独にその生涯を終えたのだ。
 そう。
 どれほどもしもを重ねても、そこにさしたる意味はない。
 意味を持つのは事実だけだ。
 シャマルが命を落としたという事実。
 セフィロスがはやてと敵対したという事実。
 それがこの場に残された、たった2つの価値ある真実。
 かくして月は闇へと沈んだ。
 湖の騎士の命を贄とし、今ここに完全なる月蝕は成った。
 銀月の魔剣士の気高き心は、今や朔よりも暗き深淵の中。
 全ての良心としがらみを捨て去り、かつて星の破壊者として怖れられた堕天使へと、完全に戻ってしまったのだ。
 英雄と謳われた人間・セフィロスは。
 今はもう、どこにもいない。


【シャマル@魔法少女リリカルなのはStrikerS 死亡】
【残り37人】
※F-2の翠屋店内に、シャマルのデイパックが放置されています。

299 ◆9L.gxDzakI:2009/10/10(土) 21:19:05 ID:FGRnLYbc0
投下終了。
地味にキャラに失禁させたのはこれが初めてです

300リリカル名無し:2009/10/10(土) 21:31:12 ID:N/YE/4FU0
投下乙です、
いやいやいやいや、失禁についてツッコもうか空気読んで触れないでおこうかと考えたけど自分から言うなー!!
それはともかくやはりというか何というか惨劇の犠牲者はシャマルだったか……しかも支給品放置かよ……
で、生き残ったクアットロもはやて見限りそうだし……なんか色んな意味ではやて涙目だなぁ……
セフィロスは……もう戻れないのかなぁ……

……って第二章って事は第三章とか終章とかってあるの!?

大筋には影響しないとは思いますが1点ほど指摘を、
チンクが死亡したのは放送後なので、現時点(というより放送)でチンクが死亡したのをクアットロ達が知るのは無理があるとは思うのですが。

301 ◆9L.gxDzakI:2009/10/10(土) 21:41:09 ID:FGRnLYbc0



……ごめんなさいごめんなさいごめんなさいまた間違えた!orz
修正版を用意しておきます。

302リリカル名無し:2009/10/10(土) 22:28:15 ID:CtJAqqCU0
投下乙
シャマルの最期が某ロワの末路にかぶって見える
シャマル先生は絶望の中で孤独に死んでいく運命なのか

はやてとクアットロが互いに「駄目だこいつ。早くなんとかしないと」状態なのが笑った
まあクアットロは余計なことしなければ普通に対主催に取り入れるがはやては地味に包囲網形成されつつあるからなあ

303 ◆HlLdWe.oBM:2009/10/11(日) 15:16:34 ID:5Eq0uUv60
だいぶ遅くなってすいません。
>>273-279の修正版投下します。
ほぼ全文投下することになるのでこちらで。

304Barrier Jacket & Guns(修正版) ◆HlLdWe.oBM:2009/10/11(日) 15:20:01 ID:5Eq0uUv60

人生に分かれ道は付き物。
そして往々として人は分かれ道に差し掛かるたびに悩む。
当然だ。
その一歩で今後の運命が定まるとなれば慎重に道を見極めようとする行動は自然なものだ。
だが時と場合によっては己の直感を信じて即決した方が良い事もある。
しかし上手くいっていない時、特に不運な時ほど人は慎重になりがちだ。
そしてここに一人今後の展開を左右する分かれ道に差し掛かっている少女がいた。
場所はどこかの一軒家。
目の前には数多くの道具。
そんな状況で少女は――。

「――大丈夫、もう迷わないって決めたから」

その胸に秘めし決意を言の葉にした。

305Barrier Jacket & Guns(修正版) ◆HlLdWe.oBM:2009/10/11(日) 15:22:08 ID:5Eq0uUv60


     ▼     ▼     ▼


柊かがみ。
真紅の長袖セーターに漆黒のスカートとニーソックス。
それが今のかがみの服装――もといバリアジャケット(以下BJとする)。
本当はホテル・アグスタで拝借した従業員制服を着ているのだが、今はそれを窺い知る事はできない。
そしてよく見ると真紅のセーターの右袖が僅かながら裂けている事が確認できる。

それが始まりだった。

きっかけは魔法の知識をある程度持っているバクラが抱いた些細な疑問だった。
当初バクラは一抹の不安を抱きながらもかがみがあっさりとBJを展開できて順調だと思っていた。
だがすぐにどこか不可解な事に気付いたのだ。

なぜかがみはBJを展開できたのか。

バクラはここに連れて来られるまでキャロと一緒に行動してきた。
だから憑依すれば魔力があるかどうかはなんとなく分かる。
だがかがみに憑依した時は万丈目と同様に全く魔力が感じられなかった。
つまりかがみは魔力を持たない一般人という事だ。
その事はかがみの話を聞いたり、記憶を覗き見たりする事で確信している。

だがそれならBJを展開できるはずない。

BJを展開するには多少なりとも魔力が必要なはずだ。
それをかがみは魔力無しでやってみせたのだ。
バクラがその事に疑問を抱くのは魔法の知識が少しでもある者なら当然の成り行きだった。

余談だが今までにかがみ以外で魔力のない者がBJを展開した例が二つある。

一つ目はかがみの双子の妹である柊つかさの例。
つかさはフェイトから渡されたシーナのバリジャケットの展開に成功している。
この時近くには元の持ち主であるフェイトがいたが、当然バクラと同じ疑問を抱いた。
だがその疑問を誰かに伝える前に死んでしまった。
当事者のつかさも魔法の知識に疎い事に加えて最初は夢の出来事だと思っていたせいで深く考えなかった。
しかもシーナのバリジャケットはそれ自体がデバイスである。
つまりこの場合シーナのバリアジャケットの展開とはデバイスの起動と同意なのだ。
「シーナのバリアジャケット」という鎧型のデバイスのようなものなのでかがみと時とは事情は異なる。

二つ目は1st-Gの魔女ブレンヒルト・シルトの例。
ブレンヒルトは偶然拾ったバルディッシュを介してBJの展開に成功している。
だがこの場合もかがみとは事情は異なる。
ブレンヒルトは手持ちの1st-Gの賢石を媒介に概念の力を魔力に変換してBJを展開したのだ。
だから厳密に言うと魔力無しでの展開ではない。
もっとも魔力の変換効率は良いとは言えなかったので必要でない時は解除して力の消費を抑えなければならなかった。

306Barrier Jacket & Guns(修正版) ◆HlLdWe.oBM:2009/10/11(日) 15:24:49 ID:5Eq0uUv60

つまり純粋に魔力無しでのBJ展開は柊かがみが最初の例なのだ。
もちろんその事実をかがみとバクラが知る由もない。
だがバクラはかがみにある事を確認するために一つの指示を出した。

セーターの袖をどこかに引っ掛けて引っ張れと。

そして、その結果にかがみは驚き、バクラは納得した。

結論を言うとセーターの袖は破れた。
本来ならあらゆる猛威を跳ね除ける奇跡の甲冑であるはずのBJ。
だがその辺りの出っ張りに引っ掛けられたセーターは過度の力が掛かった事で破れた。
それはもうあっさりと。
ビリビリというような音が聞こえたかの如く。
この地での命のあり様のごとく。
儚くも無残に破れた。

つまりこのBJは外見だけで中身がない只の張りぼてのようなものなのだ。
魔導師が纏うような防御力など期待できるはずもなく、精々一般の衣服程度の耐久力しか持ち合わせていなかった。
しかも魔力がないのでリカバリーも出来ない状態だった。
結局防御力に関しては気休め程度にしかなっていない事がこの件で判明した。
魔力無しでBJを展開できるなど上手い話だと思っていたが、とんだ落とし穴があったものだ。

だがこれは少々奇怪な出来事だ。
おそらく魔力がない者でもBJが展開できるように細工を施したのはプレシアで間違いない。
ではその細工がどこに施されたのか。
一番怪しいのは首輪だ。
参加者やデバイスに直接細工を施した可能性もあるが、それよりも首輪にそういう装置か術式を組み込む方が効率はいい。
だがいったいプレシアはどういう意図があってこのような細工をしたのか。
これは考えようによってはいろいろと面白い。

魔力保有者のBJがいつのまにか魔力枯渇で役立たずになっていたり。
本人にその気はなくてもBJが見せかけだったために思わぬ怪我を負わせたり。
単なる衣装替えに活用されたり。

だがこれらの例を考えてみると、実はデスゲームを否定する者にとっては若干不利な状況かもしれない。
仮に役立たずと知らないままにBJを展開していて被弾を止むを得ないと判断した場合。
相手が殺すつもりの者なら殺されてしまうが、逆に相手が殺すつもりのない者なら殺されない。
当然デスゲームに乗っている者の中に相手を殺す事を否定する者がいるはずがない。
つまり手加減を加えないデスゲームに乗っている者からにとっては相手を殺せる可能性が高まるのだ。

しかも本当に首輪にそのような仕掛けが施されているなら魔力のない者は複雑な立場にある。
首輪を解除すればその瞬間BJすら展開できなくなるからだ。
これはなかなか厄介なジレンマになりそうだ。

しかし本当の理由はこの奇妙な仕掛けを施した当人にしか知りえないところである。

この時バクラはいろいろと考えてみたが、結局明確な答えは出せずじまいだった。
それよりもBJがあまり役に立たないと知ったかがみの方が気掛かりだった。
今からかがみが向かおうとしている場所は乱戦の可能性があった。
それが原因で現状王蛇より劣るベルデのデッキを使うしかないかがみは不安だったのだ。
だからバクラはなんとかしてかがみの士気を上げたいと考えた結果、思いついたのがBJであった。
だがそれは結局ほとんど何の役にも立たなかった。
この状態で向かっても良い結果にはならない。
そう判断したからこそバクラはひとまず近くの家屋での休息を提案したのだ。

『(だがどうする。頼みの綱の王蛇はしばらく使えない、そうなると……)』
「……バクラ」
『ん、どうした』
「――大丈夫、もう迷わないって決めたから」

そのかがみの言葉は今までのどの言葉よりも重かった。

307Barrier Jacket & Guns(修正版) ◆HlLdWe.oBM:2009/10/11(日) 15:27:04 ID:5Eq0uUv60


     ▼     ▼     ▼


かがみは知っていた。
まだデイパックの中に有力な武器が眠っている事を。
もちろんその事はバクラも知っている。
ではなぜ今までその武器を使おうとしなかったのか。

それはかがみ自身の覚悟の問題だった。

数時間前F-1の浜辺でかがみは拾った2つのデイパックの中身の確認作業を行った。
そこでいろいろと使える武器がある事に気付き、とりあえずEx-stを使おうと思った。
その後ホテルで寛いでから落ち着いたところでライディングボードの乗り方をほぼ習得した。

だがこの時点でかがみの所持するデイパックの中には他にも使える武器が2つあった。

一つは一丁の拳銃、名称はトカレフTT-33。
全長194mm・重量858g・口径は7.62mm×25・最大装弾数8。
ソビエト連邦陸軍が1933年に制式採用した軍用自動拳銃である。
本来必須なはずの安全装置すら省略した徹底単純化設計且つ生産性向上と撃発能力確保に徹した構造。
過酷な環境でも耐久性が高く、それに加えて弾丸の貫通力に優れている。
第二次世界大戦中〜1950年代のソ連軍制式拳銃として広く用いられた拳銃だ。
正確な総生産数は不明ながらコルト ガバメントと並んで『世界で最も多く生産された拳銃』と称される事もある。
さらに犯罪に使用される事も多く、これの元の持ち主が柄の悪い人物であった事からもそれは窺えるであろう。

そしてもう1つはこの会場に於いて破格の代物であった。

それは無骨な重機関銃、名称はブローニングM2重機関銃。
全長1560mm・重量38.0kg・口径は12.7mm×99・装弾はベルト給弾・発射速度は毎分650発。
現在において基本構造・性能・更新コストなどトータル面で他の追随を許さない重機関銃の傑作品である。
当然発射時の反動は桁違いだが地上戦闘用の三脚架がオプションとして付いているので問題はない。
さらに付随している弾丸300発は全て擬似的な耐魔加工が施されている。
その威力はエースオブエースとも称される高町なのはのシールドを紙のように撃ち抜くほどだ。
正直重火器の中でもトップクラスの破壊力を持ち合わせている事は間違いない。
並み居る強者が制限を受けている現状でこれにまともに対応できる者はほんの数人しかいない。
大抵の者はただ無限とも思える銃弾に蹂躙されるのみ。
これはそれ程の威力を秘めた武器なのだ。

308Barrier Jacket & Guns(修正版) ◆HlLdWe.oBM:2009/10/11(日) 15:30:03 ID:5Eq0uUv60

ではそのような支給品がなぜ今まで日の目を見る事がなかったのだろうか。

ライディングボード、トカレフTT-33、ブローニングM2重機関銃。
まずこれらの道具を最初に支給された者は機動六課の若き槍騎士エリオ・モンディアルであった。
残念ながらエリオはこの地に転送されて早々にかがみの悲鳴を聞いたために結局デイパックの中身は確認しないまま死んでいった。
だが例えエリオが中身を確認したとして、これらが活躍したかどうかは疑問である。
エリオは機動六課の一員であり、当然誰かを殺す事には抵抗がある。
常に非殺傷設定のデバイスを用いている事からもそれは明らかだ。
つまりエリオにとってこれらの支給品は災いの種以外の何物にもならなかったに違いない。

そして次にこれらを手にした者は他ならぬ柊かがみであった。
だがその時はデルタのベルトの副作用で攻撃的な性格に変貌したためデイパックの中身を確認しなかった。

その後の戦闘でかがみが気絶すると、次にこれらを手にした者はLであった。
Lはかがみとは違って一応中身の確認を行った。
だがトラックに劣る移動手段や安全装置のない銃や過剰な威力を誇る機関銃などLにとってはまとも扱えないものばかりであった。
だからすぐにデイパックに戻して首輪の調査に取り掛かったのだ。

そして件の支給品の入ったデイパックは再びかがみの手に渡る事になる。
今回は正常な判断ができる状態だったので中身を確認している。
だがこの時はまだ使う気にはなれなかった。
それはこなたやつかさの存在が原因であった。
この時かがみはこのような威力の高い武器で万が一こなたやつかさを傷つけてしまう事を恐れていた。
それはほんの些細な心の有り様ではあったが、ある意味大きなものだった。
だからかがみは威力を自由に調節できるEx-stを選んだのだ。
バクラはもったいないと思ったが、そのうち考えを改めさせる機会もあると思って強く言わなかった。

だが今は状況が変わった。
こなたもつかさも自分のいた世界のこなたやつかさではない事が分かったからだ。
だからもう気を配る必要など無い。
限りなく本物に見えても所詮は偽物。
このデスゲームの中では生き残るために殺すのも止むを得ない。
そうしなければ殺す側から死ぬ側になるのは明白だ。

だからこそかがみはもう迷わないと決めたのだ。

309Barrier Jacket & Guns(修正版) ◆HlLdWe.oBM:2009/10/11(日) 15:36:45 ID:5Eq0uUv60


     ▼     ▼     ▼


市街地の面影を半ばなくしたG-6エリア。
その中で奇跡的に家の形を保っている一軒の家屋。
そこから一人の少女は旅立っていく。
今まで荷物の整理をしていたが、そのおかげでいろいろと気持ちの整理も付いたようだ。
見えない同行者も自分が何もしないうちに少女がやる気になってくれて満足しているようだ。
その少女の顔に迷いはない。

その少女――柊かがみ。
今まで周りに翻弄されて不幸続きのかがみ。
悲壮な決意を固めた彼女に幸運の星が輝き始める刻は来るのだろうか。

310Barrier Jacket & Guns(修正版) ◆HlLdWe.oBM:2009/10/11(日) 15:39:27 ID:5Eq0uUv60


【1日目 日中】
【現在地 G6 T字路付近】
【柊かがみ@なの☆すた】
【状態】健康、肋骨数本骨折、万丈目に対する強い憎悪、バリアジャケット、2時間憑依不可(バクラ)
【装備】ホテルの従業員の制服、千年リング@キャロが千年リングを見つけたそうです、
    ストラーダ(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
    カードデッキ(王蛇)@仮面ライダーリリカル龍騎(30分変身不可)、サバイブ“烈火”(王蛇のデッキに収納)@仮面ライダーリリカル龍騎
【道具①】支給品一式、トカレフTT-33(8/8)@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS、
     ブローニングM2重機関銃(300/300)@幻想殺し、レヴァンティン(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
     カードデッキ(ベルデ・ブランク体)@仮面ライダーリリカル龍騎、なのは(StS)のデイパック(道具②)
【道具②】支給品一式、Ex-st(残弾なし)@なのは×終わクロ、柊かがみの制服(ボロボロ)、スーパーの制服、ナンバーズスーツ(クアットロ)
【思考】
 基本:死にたくない。なにがなんでも生き残りたい。
 1.バクラ以外は誰も信じない(こなたやつかさも)。
 2.煙の上がった場所(=レストラン)にいる参加者を殺しに行く。
 3.2の後で映画館に向かう。
 4.同じミスは犯さないためにも12時間という猶予時間の間に積極的に参加者を餌にして行く。
 5.メビウス(ヒビノ・ミライ)を警戒。
【備考】
※デルタギアを装着した事により電気を放つ能力を得ました。
※一部の参加者やそれに関する知識が消されています。ただし何かのきっかけで思い出すかもしれません。
※「自分は間違っていない」という強い自己暗示のよって怪我の痛みや身体の疲労をある程度感じていません。
※周りのせいで自分が辛い目に遭っていると思っています。
※Lは自分の命が第一で相手を縛りあげて監禁する危険な人物だと認識しています。
※万丈目の知り合いについて聞いたが、どれぐらい頭に入っているかは不明です。
※王蛇のカードデッキには未契約カードがあと一枚入っています。
※ベルデのカードデッキには未契約のカードと封印のカードが1枚ずつ入っています。
※「封印」のカードを持っている限り、ミラーモンスターはこの所有者を襲う事は出来ません。
※変身時間の制限にある程度気付きました(1時間〜1時間30分程時間を空ける必要がある事まで把握)。
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。
※こなたとつかさの事は信用しないつもりですが、この手で殺す自信はありません(でもいざという時は……)。
※ベノスネーカーが疲弊しているため、回復するまではメタルゲラスを主軸として使っていくつもりです。
※バリアジャケットのデザインは、【●坂凛@某有名アダルトゲーム】の服装です。
※千年リングを装備した事でバクラの人格が目覚めました。以下【バクラ@キャロが千年リングを見つけたそうです】の簡易状態表。
【思考】
 基本:このデスゲームを思いっきり楽しんだ上で相棒の世界へ帰還する。
 1.かがみをサポート及び誘導して優勝に導く。
 2.万丈目に対して……?(恨んではいない)
 3.こなたに興味。
 4.可能ならばキャロを探したいが、自分の知るキャロと同一人物かどうかは若干の疑問。
 5.メビウス(ヒビノ・ミライ)は万丈目と同じくこのデスゲームにおいては邪魔な存在。
 6.パラサイトマインドは使用できるのか? もしも出来るのならば……。
 7.かがみが自分の知るキャロと出会った時殺しそうになったら時間を稼いで憑依してどうにかする。
【備考】
※千年リングの制限について大まかに気付きましたが、再憑依に必要な正確な時間は分かっていません(少なくとも2時間以上必要である事は把握)。
※キャロが自分の知るキャロと別人である可能性に気が付きました(もしも自分の知らないキャロなら殺す事に躊躇いはありません)。
※かがみのいる世界が参加者に関係するものが大量に存在する世界だと考えています。
※かがみの悪い事を全て周りのせいにする考え方を気に入っていません(別に訂正する気はないようです)。

【全体備考】
※魔力のない者がバリアジャケットを展開した場合それの強度は一般の衣服程度しかありません(またリカバリーできません)。

311 ◆HlLdWe.oBM:2009/10/11(日) 15:39:57 ID:5Eq0uUv60
投下終了です

312リリカル名無し:2009/10/11(日) 16:07:36 ID:StOLl8h60
修正版投下乙です。
問題は無くなったと思います。

只、話の内容とは別に幾つか気になる点があります。
Hl氏にも事情がある為、遅くなってしまった事自体理解出来るのですが、
今回も一両日中と言っておきながら一言の連絡も無しに此処まで遅れてしまっています。
また、今回に限らず『Round ZERO 〜 JOKER DISTRESSED』、『誇りの系譜』、『いきなりは変われない』において期間超過し、破棄後再予約後投下しています。
勿論、Hl氏自身は予約しても構わないと言っていますが、穿った見方をすると緩やかな予約延長にしか見えません。

それからこの部分に関しては個人的な主観でもあるのですが、Hl氏の書きたい展開の為に無理のある展開が増えてきている様な気がします。
例えば『誇りの系譜』においてのキース・レッドが都合良くブレンの持つベガルタを手に入れ、特にダメージの無くすぐさまアレックスと遭遇するという展開(が、此方に関してはブレン撃破という所までに修正された)、
『いきなりは変われない』においてのレイの暴走(『99%』では何とか可能性を探る様になっていたのに、この話ですぐさま結論を出してしまった)する展開、
よく読めば納得出来ないわけではないですが、少々前の描写をないがしろにし過ぎている気がします。
特にレイの暴走に関しては『99%』が無かった場合(つまり予約合戦に勝った)の展開を無理矢理通した様な気すらします。

対主催涙目、マーダーに都合の良い展開にする関係上ある程度は仕方が無いと思いますがもう少し前の話の描写にも気を遣って欲しいと思います。
また、前述の通り予約期間を毎回毎回超過しこちらの良心に甘えるのはどうかと思います。
既に投下された話の修正を求めるつもりは全くありませんが、この企画がリレー企画だということをもう少し考えて下さい。

313リリカル名無し:2009/10/13(火) 11:34:35 ID:BKJNLtJ.0
遅ればせながらお二方投下乙

>Barrier Jacket & Guns
ブローニングM2重機関銃なんてなんでなのはクロスに出ているんだ!?
超常な奴らがいるにしても明らかハイスペックだろwww

>冥府魔道 ――月蝕・第二章
駄目だこいつら…早くなんとかしないと…
だがハヤテの言い分も理解できるなー

314リリカル名無し:2009/10/14(水) 02:18:20 ID:eQionUyk0
遅れたけど投下乙です
シャマルは無残に死んだな。ああ、ロワだからの一言で済ませられないほどむごいな
セフィロスはあのはやてでは無理だったか。しかし同類か、なるほどな
そして陰険コンビはもう詰んだかもしれないな

315 ◆7pf62HiyTE:2009/10/15(木) 13:48:24 ID:lZx9OA5U0
浅倉威、柊かがみ、相川始、スバル・ナカジマ分を投下します。

316[5RIDERS] ◆7pf62HiyTE:2009/10/15(木) 13:50:05 ID:lZx9OA5U0
 F-6―――そこにはレストランがあった。しかし、今はもうその面影を残すだけである。
 参加者の1人が他の参加者を誘き寄せる為にレストランを燃やしたのだ―――彼等と戦う為に。
 その参加者は彼の世界において『仮面ライダー』として戦っていた。
 その世界の『仮面ライダー』は各々の願いを叶える為に他の『仮面ライダー』12人との戦いを強いられていた―――もっとも、彼にとっては願いなど割とどうでも良く戦う事が出来れば良かったわけだが。
 彼の起こした炎と煙は思惑通り多くの参加者の眼に留まり、彼等の行動に大きな影響を与え、煙も収まろうとする中―――3人の『仮面ライダー』の力を持つ参加者がそこに集おうとしていた―――





 浅倉威はその瞬間を待っていた―――
 彼こそがレストランに炎を放った張本人―――彼に言わせれば祭の主催者(勿論この殺し合いの主催ではない)と言えよう。
 前述の通り、彼はその世界の仮面ライダーとしてはある種異質で叶えるべき願い事を持たず純粋に戦いそのものを求めていた(ある意味戦い自体が彼の願いと言えよう)。
 元来の彼はイライラしたという理由だけで無差別に暴行を加え数多くの殺人を犯していた。その彼にとって仮面ライダー同士の戦いは大きな悦びを与えた。
 だが、この場に来てからは仮面ライダーに変身する為のカードデッキは奪われ、マトモに使える武器があってもすぐさま失ってしまい、他の参加者を誘き寄せる囮でしかない女子供に付きまとわれと彼にとってはまさしくイライラすべき状況であった。
 しかし意外にも今の彼の心に苛立ちは無く、むしろ高ぶりを感じていた。
 確かな予感があったのだ、もうじき自分を満たす戦いが起こると―――
 既にこの場には自分以外に戦いを求める参加者が来ている。この後にも煙に引かれてやって来た参加者が来るだろう―――
 そいつが自分達を殺しに来た参加者であろうとも、殺し合いを止める為に自分達を止めようとする参加者であろうとも構わない、せいぜい自分を楽しませて欲しいと思っている。

 さて、先に書いた通り彼の手元には仮面ライダーに変身する為のカードデッキはなく、武器自体も無い事も無いが彼ににとっては正直不満な装備ではある。
 厳密に言えば(彼の世界の物とは違うが)仮面ライダーに変身する為のベルトはあるにはあるが、現状使える気配はない為無いのと同じと言っていいだろう。
 彼の目から見ても力を持った参加者―――例えば神と名乗り雷を操る様な奴を相手にするには心許なさ過ぎるだろう。言ってしまえば仮面ライダー及びそれに準ずる力を持った参加者と戦いになるとは正直思えない。
 が、彼にとってはそんな事など大した問題ではないだろう。確かにあまりにも分が悪い時は逃げる場合もある。しかし、この程度の不利などむしろ戦いを楽しむ為の要素の1つだと思っているだろう。
 仮にの話だが、彼が仮面ライダーの力を使う為に3体のモンスターと契約していて彼等に餌を与えなければならない状況にあったとする。そして、そこに都合良く餌に出来る3体のモンスターを見付けたとしよう。
 彼ならばその3体のモンスターを自身の持つ3体のモンスターの餌にしようと戦いに挑むだろう、例え自身のモンスターが自分を餌にしようと襲いかかったとしても、その辺の人間達を餌にした方が確実であったとしてもだ。
 彼にとって重要なのは戦いを楽しめるかどうかだと言える、故にこの場においても戦えない女子供等を襲ったりしなかったのである(囮扱いにはしたが)。

317[5RIDERS] ◆7pf62HiyTE:2009/10/15(木) 13:51:20 ID:lZx9OA5U0

「……ん?」
 ふと浅倉が東の方を見ると遠くに浴衣を着た少女が北に向かって歩いているのが見えた。彼女は浅倉と共に行動していたシャーリー・フェネットである。
 さて、浅倉が『普通の参加者』であれば今の彼女の状態に違和感を覚えるであろう。
 浅倉はシャーリーの他に幼子であるヴィヴィオとも行動を共にしていた。その後、浅倉は2人の所から去っていったわけだが普通に考えれば2人はずっと一緒にいるはずである。つまり、彼女が単独で移動しているのが不自然という事である。
 が、浅倉は『普通の参加者』ではない。ヴィヴィオと一緒で無かった事など全く気にしていない―――いや、もしかしたらヴィヴィオがいない事にすら気付いていないかも知れない。
 真面目な話、戦えない普通の少女であるシャーリーなど浅倉にとってはどうでも良かった。むしろ浅倉は彼女自身ではなく別の物に興味を引かれた。
「……あんなに物あったか?」
 それは、遠目から見ても彼女が多くのデイパックを持っていた事である。正確な数はわからないが確実に4つ以上はあった。
 しかし、2人のものを合わせても2つにしかならない。一体彼女は何処から他のデイパックを手に入れたのであろうか?
 真っ先に考えられるのは彼女自身が他の参加者から奪った可能性だがその可能性は低いだろう。彼女が戦いを望んでいる様子は無かったし、それ以前に使える武器は2人の所を去る時に浅倉が持っていったはずだからだ。
 しかし、浅倉にとってはどうやって手に入れたかなどどうでもよかった。重要なのはこれから彼女を追ってデイパックを確保するべきかどうかである。武器が手に入るならば手に入れておきたい所ではあるが―――
「別にいいか……」
 浅倉は敢えて彼女を放置する事にした。
 ここで彼女を追い掛けている間に戦いが始まり、自分が戻った時には既に戦いが終わっているという可能性があったのだ。折角の祭に主催者がいないというのはあまりにもお粗末な話であろう。
 何より、今まで戦いに恵まれていない中、折角の戦いの機会を逃すなど浅倉には耐えられなかったのだ。
「待てよ……」
 浅倉はある事に気が付いた。シャーリーは何処に向かっているのだろうか? 確かあの方向には温泉があったはずだ。
 温泉にはある参加者が向かっていたはずである。それは最強の仮面ライダーらしい天道総司と彼を保護していたらしいキングの2名だ。2人と遭遇した時には断られたものの後で戦いたいとは考えていた。
「頃合いだな」
 既に出会ってから6時間以上、傷の手当ても済んで十分に戦える状態の筈だ。奴の所に向かって戦うという選択肢も良いと考えていた。仮に天道が戦えなくてもその時はキングと戦えば良いだろう。
「だが……」
 が、正直な所市街地の中にはまだまだ戦える参加者が数多くいる筈だ、わざわざそれに背を向けたくはないとも考えていた。
「今は良いか……」
 とはいえ今重要なのは目先に迫った戦いである。先の事など戦いが終わってから改めて考えれば良い話だ。

 気を取り直し、浅倉は周囲を見回す。こうしている間にも煙に引かれた参加者がやって来るかも知れないのだ。そして、ほんの一瞬だが人影らしきものが見えた。
「どうやら来た様だな」
 一瞬だった為、どういう人物かまではわからない。だが、そいつが何かの殺意を放っていたのを感じた。間違いなく自分と戦ってくれる奴だ。
 近くの建物に引き籠もった『奴』も時期に出てくるだろう。間もなく自分が待ちに望んだ祭が始まるのだ、高ぶりを抑えずにはいられない。そして浅倉は呟く―――

「イライラさせるなよ」

318[5RIDERS] ◆7pf62HiyTE:2009/10/15(木) 13:52:17 ID:lZx9OA5U0





『なぁ、今アイツ宿主サマを見ていなかったか?』
「まさか、ちゃんと隠れていたわよ。大体、見られていたなら私達を追い掛けて来るはずでしょ」
『だと良いけどな』
 建物の影から柊かがみと彼女の持つ千年リングに宿るバクラが浅倉の様子を確認していた。
「それにしても……アイツが火を放ったみたいだけど……正気とは思えないわね……」
『そんだけ自信があるって事だろ、そんな事より早く探したらどうだ?』
「はいはい」
 かがみはブローニングM2重機関銃を配置できる場所を探す、この場に置いて最強クラスの火力を持つこの武器だが問題が1つあった。
 それはその重量(38.0kg)と大きさ(1560mm)故、手でもって使う事は不可能だという事である。
 厳密に言えば手に持って扱える参加者がいないではないが、一般人それも女子高校生が扱う事などまずありえない。自分の体重と同じぐらい(あくまでもかがみの実感)の物を扱えるわけがない。
 それ以前にこの機関銃は本来狙撃用の武器である。故にこの武器を配置すべきポイントを探しているのである。
 その最中、リングが妙にざわつくのを感じていた。
「ちょっとバクラ、何やってんのよ?」
『俺様じゃねぇよ……ん……』
 と、千年リングの中に映るモンスターベノスネーカーとメタルゲラスが蠢いていた。
「どういうこと? 餌だったらさっき食べさせたはずでしょ?」
 彼女の手には浅倉の世界に存在するカードデッキがあった。
 この場においては参加者ならば誰でもそれを使って仮面ライダーに変身する事が出来るが、カードデッキと契約しているモンスターに『生きた参加者』を食べさせなければ自分自身が襲われるという制限が説明書に明記されていた。
 しかし、かがみはつい1時間半前に参加者を食べさせている。少なくとも今餌が必要という事は無いはずである。
『もしやアイツがコイツらの相棒とか言うんじゃねぇんだろうな』
「そんな都合の良い話があるわけないでしょ……それよりどうしようかしら……」
 かがみとしては参加者を殺さないで無力化してからモンスターの餌にしたかった。説明書では『生きた参加者』と指定されていた為死んだ参加者では餌として認められない可能性があったからだ。
 機関銃の威力は絶大、しかし一撃で即死にしてしまう恐れすらある。
『その辺は宿主サマの判断に任せるぜ、運良く瀕死で済むかもしれねぇからな。それよりも問題はコイツが通じなかった場合の話だな』
 いかに強力な武器であっても当たらなければ無意味、幾ら300発付属しているとは言えその発射速度は毎分650発、連続で発射した場合30秒弱で撃ち尽くしてしまう。貴重な武器である事に変わりはない。
 通じなかった場合、発射場所を悟られ逆にこちらが危機に追い込まれてしまう。そうなれば残る手持ち武器で戦うしかない。
 だが、機関銃が通用しなかった相手に残る手持ち武器である拳銃やライディングボード(移動手段ではあるが砲撃装置でもある)等が何処まで通じるかはわからない。
「でもこれは使えないでしょ」
 かがみの手元にはストラーダ、そしてレヴァンティンといったデバイスがある。しかし魔力を扱う術のないかがみにとっては無用の長物でしかない。
『(……本当にそうか? いや、コイツらにはまだ何かあるはずだ……何か見落としているはずだ……? 何を見落としている……?)』
 バクラはデバイスを使う方法があるのではと考えていた。
 実は魔力のない者がデバイスを使う方法はある。それはデバイスの中に内蔵されているカートリッジの魔力を利用する事だ。これを行う事で限定的ではあるが魔法を使う事が出来る。
 勿論、使えた所で素人のかがみの力になるとは言い切れない。しかし、魔力の扱えるキャロ・ル・ルシエと行動を共にしていたバクラならばある程度サポート出来るし、最低限バリアジャケットの力を発揮する事が出来る。
 だが、2人はカートリッジシステムの存在には気付いていない。そもそもストラーダとレヴァンティンにカートリッジシステムがある事に気付いていない。
 それもそのはずレヴァンティンはこの場で初めて見たものだし、ストラーダの方は万丈目準の記憶で見ていたがカートリッジをロードする所は見ていなかったからだ。
 いや、それ以前にかがみはカートリッジシステムの存在を知らないし、バクラにしてもフェイトと戦った時にバルディッシュのカートリッジをロードしたのを見た程度の記憶しかなかったのだ。

319[5RIDERS] ◆7pf62HiyTE:2009/10/15(木) 13:53:06 ID:lZx9OA5U0
「となると後は……」
 取り出したのは2つのカードデッキ、片方はかがみ自身に支給され一度は手放したものの再び戻ってきた王蛇のデッキ、もう片方は万丈目に押しつけられる形で入手したベルデのデッキだ。
 しかしこれらにも問題がある。それはこの場では変身解除後、ある程度時間をおかなければ変身出来ないからだ。王蛇の方は先程スバル・ナカジマと戦う際に使用しており、当面は使えそうにない。
 一方、ベルデのデッキの方は契約モンスターを失っておりせいぜいちょっと強い鎧程度の能力しかない。
「まだ変身出来ないのかしら……?」
『出来たとしてもまだ早いだろうがな……わかってると思うが変身すれば猶予時間は一気に減るぜ?』
 変身及びモンスターの力を行使した場合、猶予時間は1分につき10分消費する。残り猶予時間を有効に利用する為には変身時間は出来うる限り抑えておきたい所ではある。
「どれぐらい残っているかしら?」
『さぁな、まだ7,8時間ぐらいって所か?』
「……わかってないの?」
『宿主サマが時計見てねぇから正確な時間なんてわかるわけねぇだろ、俺様だって一々気にしていられねぇし』
 スバルとの戦いに要した時間、つまり変身時間を2人は正確に把握していない。変身した瞬間と変身を解いた時間を確認しておけば割り出せるがかがみは変身する時も解除した時も一切時計を見ていなかった。
 手痛いミスに思えるが戦いの前に一々時計を見ていられるわけもないし、変身を解いた時もすぐにでもスバルを喰わせられると思っていた為やはり時計は見ていなかった。
 真面目な話をすればチンクを喰わせてから変身及びモンスターを使役した時間は15〜30分といった所だろう。つまり猶予時間としては2時間半〜5時間消費した事になる。
 また、その後からここまでの時間を消費した事も忘れてはならない。
「まあいいわ、ここで餌にすれば何の問題も無いわ」
『上手くいけばいいがな……』
 その最中、
『(そういや、ここに来る途中誰とも会わなかったな……見たところここにも他に誰かが来た様子もねぇし……)』
 かがみ達はスバルとの戦いの後、ここに辿り着くまでに他の参加者を見てはいない。
 アカデミアを訪れた時にはそこにはスバルとチンク以外に少なくても2人の参加者がいたとバクラは見ている。1人はかがみの友人である泉こなた、スバルの話ではかがみの事は彼女から聞いたという話だったのでスバルが保護したと見て間違いない。
 さて、詳しい事は不明だがこなたはスバルと別行動を取っている様だった。バクラから見て、お人好しのスバルがこなたをたった1人で行動させるとは思えなかった。つまり、こなたの傍で彼女を守っている参加者がいるとバクラは見ているのだ。
 ではその2人はどうしたのであろうか? 戦いの起こったアカデミアに残るとは思えない。何処かへと避難したと考えて良いはずだ。
 さて、仮に彼女達がここの煙を確認したらどうするだろうか? 仲間に会えると考えて移動する、もしくは殺し合いに乗った参加者が集まると考えてそこを避けるかのどちらかだろう。
『(もしくは何処かに隠れたか……まぁいいさ、生きているならいずれ会える……ひょっこりここに現れるかも知れねぇしな……)』

320[5RIDERS] ◆7pf62HiyTE:2009/10/15(木) 13:54:00 ID:lZx9OA5U0

 その一方、バクラは狙撃ポイントを探しているかがみを見ながら考えていた。
『(宿主サマがやる気になってくれたのは良いが……わかっているのか……宿主サマが思っている程俺様達は有利じゃねぇって事に……)』
 かがみは煙に引かれた参加者達などバクラや機関銃の力を借りれば簡単に仕留められると考えている様だった。真面目な話メビウスでも倒せると考えている。それはバクラへの信頼や強力な武器によるものと言えよう。
 勿論、バクラ自身もそれには同意している。しかし、
『(その圧倒的な状況で宿主サマはスバルを逃がしているんだがな)』
 バクラはかがみの実力について不安を感じていた。
 スバルとの戦いを思い出して欲しい。あの時、スバルは殆ど丸腰でかがみは持っている武器が殆ど使える状態であった。
 ちなみにその時点では拳銃と機関銃、及び武器としてのライディングボードは使わなかったが、機関銃はあの場で使える代物ではなかったし、ライディングボードはむしろ移動手段であった為、拳銃程度の違いしか無い為それ程問題ではない。
 普通に考えればスバルが負ける可能性が高い状況だったのだ。
 だが、結果はどうだろう? スバルを取り逃がしてしまい、かがみの方は無駄に戦力を浪費してしまった状態だ。それだけではなく、千年リングとバクラ自身の存在までバレてしまっている。
 それ以前にスバルは本気で戦ってはいないのが見てわかった。スバルはかがみの説得を優先していたわけなので当然の話ではある。勿論、これ自体はスバルの甘さで片付けて良いだろう。だが、重要なのは『スバルが本気を出していなかった』事だ。
『(奴が本気を出していたら……俺様達の方が負けていたかも知れねぇんだぜ)』
 バクラの推測は正しい。スバルがかがみもバクラも殺すつもりで向かってきたならば違う結果もあり得る。
 確かにスバルは丸腰だったが、バクラもかがみも知らない切り札があった。それはスバルの戦闘機人としてのIS振動破砕、それを発動したとすれば、かがみもバクラの宿る千年リングも只では済まない可能性が高かった。
 勿論、バクラはスバルが戦闘機人である事もそんな切り札を隠していた事も知らない。しかし、何度と無く自身が有利な状況から逆転された経験を持つバクラがその可能性を忘れるはずもない。
『(つまり、奴の甘さが俺様達を生かしたって事もあるって事だ……これから戦う奴がそんな甘い奴だとは考えるなよ……)』
 かがみはこれまでの経緯から他人を信用していない状態ではある。しかし、心の何処かで相手を甘く見てはいないだろうか? その甘い考えが自身を危機に追い込む可能性はある。
 特に、殺し合いに乗った参加者との戦いがかがみの思い通りにいくとは思えない。
『(……場合によっては考えた方が良いかも知れねぇな)』
 バクラの頭の中に、かがみを斬り捨て新しい宿主を探すという考えが生まれていた。真面目な話、かがみの精神状態はバクラの目的にとって都合が良いものであった。
 しかし、バクラ自身かがみの考え方には気に入らない部分はあったし、スバルとの戦いでの事から正直実力的にも不安がある。自由に乗っ取りが出来るならまだいいがそうではない為正直もどかしい所だ。
 真面目な話、バクラはかがみと心中するつもりは全く無い。状況次第だが新たな宿主を見付け、かがみをモンスターの餌にする事も視野に入れている。
『(けどそんな都合良い奴がいるとは限らねぇしなぁ)』
 とはいえ、簡単に宿主に出来る奴がいるとは思えない。かがみを見付ける事が出来たのは幸運が重なったからだ、それが今後も続くとは限らない。
『(この戦いでは俺様はまだ出られそうにねぇ……宿主サマ……アンタの実力をここで見極めさせて貰うぜ……)』
 バクラの思惑に気付く事無く、かがみは機関銃の狙撃ポイントを探していた。

 バクラさえいれば大丈夫だというすぐにでも砕けそうな硝子の絆を信じて―――

321[5RIDERS] ◆7pf62HiyTE:2009/10/15(木) 13:55:04 ID:lZx9OA5U0





 レストランの近くの建物にて相川始は1人静かに10枚のラウズカードを眺めていた―――
 彼は浅倉とは違う世界においての『仮面ライダー』と言われる存在―――いや、それは恐らく正しくは無いし本人もそれを認めたりはしないだろう。
 その世界の『仮面ライダー』は人々を守る為に鎧を纏い、アンデッドを封印したり、怪物達を倒していく戦士達の事だ。
 始は自身の正体であるジョーカーの力で偽りの戦士カリスの姿を取っているに過ぎない。それ以前に人間相川始の姿ですら偽りのものでしかない。
 前述の通り彼の正体は最強にして最悪のアンデッドジョーカーだ。そんな自分が人間の姿をして人間の中で暮らしている事など滑稽極まりない話である。
 ジョーカーを知る者は彼を警戒し最悪の存在だと他の参加者に伝えている。実際、始は優勝を目指し何人かの参加者を襲撃していた。
 だが、彼の真意は少し違う―――それは栗原遥香と栗原天音の元に帰る為である。
 始自身は気が付いているかどうかは不明だがそれはジョーカーとしての思考と言うよりは人間相川始の思考に近いと言える。

 もっとも―――彼の真意はどうあれ、彼自身はこれまで優勝を目指して戦ってきた事に変わりはないし、色々思う事はあるものの現状これからも戦いを続ける事には変わりはない―――少なくとも彼はそう思っている。

 彼はカードを見つめながら感じていた。自分の中にある忌まわしき衝動が確かに強まっているのを―――
 ジョーカー―――自分自身の本能が戦えと叫んでいるのを感じていた。しかし始はそれを抑え込む。
 ジョーカーの力を使えば今よりもずっと簡単に優勝に近付くのはわかっている。抑え込むメリットなど殆ど無いと考えて良いはずだ。それでも始は自分の本能を拒絶する。
 何故彼は自分の本能を忌まわしいと考えていたのだろうか? それは何時からだったのだろうか? きっとそれはハートの2のアンデッド、ヒューマンアンデッドを封印した時からなのだろう。
 考えてみればそれからはあまりジョーカーの姿に戻ってはいない。まさか奴の影響を受けたとでも言うのだろうか?
 思い返せば奴と遭遇した時、大した抵抗もされずあっさりと封印する事が出来た。かつてのバトルファイトの勝者にしてはあまりにも呆気ない幕切れだと言えよう。
「馬鹿馬鹿しい……」
 例えこの心境が奴の影響であったとしてもそれが偽りの心だというのは自分自身がわかっている。所詮自分はヒューマンアンデッドではなくジョーカーでしかない、人間ではなく何者にもなれない怪物なのだ。
 真面目な話ヒューマンアンデッドを封印した後も始にとって人間などどうでも良い存在だった。では、今の始の目的となっている栗原母子についてはどうなのだろうか?
 正直な所始自身もよくわかっていない。そもそも彼女達の所に行く事となったのは自分達アンデッドの戦いに巻き込まれて死んだ栗原晋の行動によるものだ。
 彼は死の間際、始に家族の写真を渡しそこに写る遥香と天音の事を託したのだが、始には彼が何故その様な事をしたのか理解出来なかった―――その後、始は栗原母子の所に現れ、ハカランダに住む事になったのである。
 最初は興味を持ったからだったんだろう。だが、いつしか彼女達は始にとってかけがえのない存在となっていった。
 他の人間がどうなろうと知った事ではなかったが天音が怪物に襲われた時にはカリスとなって助けに行った事もある。また、そんな彼女達には自分の正体を知られたくは無かった。
 彼女達が自分の正体を知ったとしたらどうするであろうか―――自分を拒絶するだろうというのは想像に難くなく、始にはそれが耐えられなかった。
「俺は人間じゃないのにな」
 何故そう考えるのに至ったのかはわからない。それがヒューマンアンデッドの影響であれ栗原一家の影響であれ偽りの心だというのはわかっている。
 その一方で、その偽りの心を否定したくはない自分もいる。それがジョーカーとしての本能を拒絶しているのかも知れない。

322[5RIDERS] ◆7pf62HiyTE:2009/10/15(木) 13:55:51 ID:lZx9OA5U0

 そんな始の脳裏には最期まで自分を更正しようとした馬鹿な少女の姿が浮かんだ。
「ギンガ……」
 ギンガ・ナカジマは殺そうと襲いかかってきた自分を助け、説得しようとし、自分の危機の時には戦いに乱入してその結果命を落とした。
 勿論、最初に助けた時には自分の正体を知らず、単純に傷ついた者を助けたかったからなのだろう。
 しかし、彼女は自分が怪物だと知っても、襲いかかってきた襲撃者だと知っても、これから先も人を襲うと宣言しても自分を説得しようとし助けようとし命を落としたのだ。本当に馬鹿だとしか言いようがない。
 仮に自分がジョーカーの姿で本能のままに殺戮を繰り返していてもきっと自分を助ける為に自分を止めようとする、そんな気がした。
「スバルか……」
 彼女が最期に気にしていたのは5人、その中でも特にスバルの事が気になった。
 勿論、天音の友人と同じ名前のフェイト達や自分が別れる切欠となったキャロが気にならないわけじゃない。だが、ギンガの弟か妹らしいスバルがどういう人物なのかがどうしても気になったのだ。
 考えてみれば晋が栗原母子の事を自分に託した時と状況が似ている気がする。会ってどうするかはわからないし会えるかどうかもわからないが、出来うるならば会いたいと考えていた。

「……行くか」
 十分に時間は過ぎた。浅倉が起こした火に引かれ自分同様参加者が集まる頃だろう。
 これから先の事などわからない、本当に優勝を目指すかどうかもわからない、このままジョーカーの本能に飲まれるかもわからない。だが、このまま燻っていても答えなど出ないだろう。

 偽りの英雄は静かに戦場へと向かう―――





 F-6に浅倉威、相川始、柊かがみの3人の参加者が集結した。いや、厳密にいえばかがみの傍にはリングに宿るバクラがいたし、始の中にはジョーカーの本能が蠢いていた。
 つまりこの場には計5人の意思が集結したという事になる(ジョーカーの本能をカウントして良いのかは微妙だが)。
 そして、更に2つの虫を模した小さな機械もこの戦場近くに潜んでいた。カブトムシを模したカブトゼクター、バッタを模したホッパーゼクターである。
 これらは始の世界においてラウズカードを使う仮面ライダーとはまた別系統の仮面ライダーに変身する為に必要な存在であり、浅倉と始が所持するそれぞれのベルトに対応している。
 だが、変身する為にはもう1つ必要なものがあった。それは変身する為に必要な資格を有しているかどうかである。
 各々のゼクターは彼等が資格を有するかどうかを見極めようとしているのであろう。仮に資格を有するのであれば彼等は遠慮無く力を貸すはずだ。

 ―――王蛇、ベルデ、カリス、カブト、ホッパー―――奇しくもこの地に5つの『仮面ライダー』が集結した。彼等の戦いの行方がどうなるのかはまだわからない。1つ確かなのは―――





 この戦いに『正義』は無いという事だ―――





【1日目 午後】
【現在地 F-6 レストラン跡前】
【浅倉威@仮面ライダーリリカル龍騎】
【状態】右手に火傷
【装備】ライダーベルト(カブト)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、マシンガンブレード@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式、ヴィンデルシャフト@魔法少女リリカルなのはStrikerS、肉×10kg、魚×10kg、包丁×3、
    フライパン×2、食事用ナイフ×12、フォーク×12
【思考】
 基本:戦いを楽しむ。戦える奴は全員獲物。
 1.レストランの火災につられた参加者と戦う。
 2.今はまだ始とは戦わない。本気になった始に期待。
 3.レストランの戦いの後は天道達のいる温泉に向かうか? それとも市街地で他の参加者を捜すか?
 4.王蛇のカードデッキ、及びカブトのベルトに填める物(カブトゼクター)を探す。
 5.回復した天道と戦う時にはベルトを返した上で戦う。
 6.なのは(StS)と遭遇した時にはヴィヴィオの名前を出してでも戦ってもらう。
 7.キング、鎌を持った奴(キャロ)、なのは、フェイト、はやて、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、ユーノと戦う。
 8.首輪にイライラ、外したい。
 9.プレシアには「規定の人数を殺害した参加者には、望む人間の居場所を教える」という特典を採用してほしい。
【備考】
 ※プレシアは殺し合いを監視しており、参加者の動向を暗に放送で伝えていると考えています。
 ※ヴィンデルシャフトのカートリッジシステムに気付きました。
 ※カブトに変身できる資格があるかどうかは分かりません。
 ※なのは、フェイト、はやては自分の知る9歳の彼女達(A's)とヴィヴィオの言っていた大人の彼女達(StS)の2人がいると考えています。

323[5RIDERS] ◆7pf62HiyTE:2009/10/15(木) 13:56:29 ID:lZx9OA5U0

【現在地 F-6 レストラン付近】
【柊かがみ@なの☆すた】
【状態】健康、肋骨数本骨折、万丈目に対する強い憎悪、バリアジャケット、1時間40分憑依不可(バクラ)
【装備】ホテルの従業員の制服、千年リング@キャロが千年リングを見つけたそうです、
    ストラーダ(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
    カードデッキ(王蛇)@仮面ライダーリリカル龍騎(10分変身不可)、サバイブ“烈火”(王蛇のデッキに収納)@仮面ライダーリリカル龍騎
【道具①】支給品一式、トカレフTT-33(8/8)@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS、
     ブローニングM2重機関銃(300/300)@幻想殺し、レヴァンティン(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
     カードデッキ(ベルデ・ブランク体)@仮面ライダーリリカル龍騎、なのは(StS)のデイパック(道具②)
【道具②】支給品一式、Ex-st(残弾なし)@なのは×終わクロ、柊かがみの制服(ボロボロ)、スーパーの制服、ナンバーズスーツ(クアットロ)
【思考】
 基本:死にたくない。なにがなんでも生き残りたい。
 1.バクラ以外は誰も信じない(こなたやつかさも)、バクラがいれば他に何もいらない。
 2.機関銃の設置ポイントを探す。
 3.レストランに集まった参加者を皆殺しにする。
 4.戦いの後で映画館に向かう。
 5.同じミスは犯さないためにも12時間という猶予時間の間に積極的に参加者を餌にして行く。
【備考】
※デルタギアを装着した事により電気を放つ能力を得ました。
※一部の参加者やそれに関する知識が消されています。ただし何かのきっかけで思い出すかもしれません。
※「自分は間違っていない」という強い自己暗示のよって怪我の痛みや身体の疲労をある程度感じていません。
※周りのせいで自分が辛い目に遭っていると思っています。
※Lは自分の命が第一で相手を縛りあげて監禁する危険な人物だと認識しています。
※万丈目の知り合いについて聞いたが、どれぐらい頭に入っているかは不明です。
※王蛇のカードデッキには未契約カードがあと一枚入っています。
※ベルデのカードデッキには未契約のカードと封印のカードが1枚ずつ入っています。
※「封印」のカードを持っている限り、ミラーモンスターはこの所有者を襲う事は出来ません。
※変身時間の制限にある程度気付きました(1時間〜1時間30分程時間を空ける必要がある事まで把握)。
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。
※こなたとつかさの事は信用しないつもりですが、この手で殺す自信はありません(でもいざという時は……)。
※ベノスネーカーが疲弊しているため、回復するまではメタルゲラスを主軸として使っていくつもりです。
※バリアジャケットのデザインは、【●坂凛@某有名アダルトゲーム】の服装です。
※千年リングを装備した事でバクラの人格が目覚めました。以下【バクラ@キャロが千年リングを見つけたそうです】の簡易状態表。
【思考】
 基本:このデスゲームを思いっきり楽しんだ上で相棒の世界へ帰還する。
 1.当面はかがみをサポート及び誘導して優勝に導くが、場合によっては新しい宿主を捜す事も視野に入れる。この戦いが正念場か?
 2.仮に新しい宿主が見つかった場合はかがみはモンスターの餌にする。
 3.万丈目に対して……?(恨んではいない)
 4.こなたに興味。
 5.可能ならばキャロを探したいが、自分の世界のキャロと同一人物かどうかは若干の疑問。仮にかがみが自分の世界のキャロと出会った時殺しそうになったら時間を稼いで憑依してどうにかする。
 6.メビウス(ヒビノ・ミライ)は万丈目と同じくこのデスゲームにおいては邪魔な存在。
 7.パラサイトマインドは使用できるのか? もしも出来るのならば……。
【備考】
※千年リングの制限について大まかに気付きましたが、再憑依に必要な正確な時間は分かっていません(少なくとも2時間以上必要である事は把握)。
※キャロが自分の知るキャロと別人である可能性に気が付きました(もしも自分の知らないキャロなら殺す事に躊躇いはありません)。
※かがみのいる世界が参加者に関係するものが大量に存在する世界だと考えています。
※かがみの悪い事を全て周りのせいにする考え方を気に入っていません(別に訂正する気はないようです)。

324[5RIDERS] ◆7pf62HiyTE:2009/10/15(木) 13:57:23 ID:lZx9OA5U0

【現在地 F-6 レストラン付近の建物入口】
【相川始@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】健康、背中がギンガの血で濡れている、言葉に出来ない感情、浅倉に対する憤り
【装備】ラウズカード(ハートのA〜10)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式×2、パーフェクトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、
    ゼクトバックル(ホッパー)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、録音機@なのは×終わクロ
【思考】
 基本:栗原親子の元へ戻るために優勝を目指す?
 1.レストランの火災につられた参加者を待つ
 2.その後アンデッドの反応があった場所、もしくは他の施設に向かう。
 3.アンデッド、エネル、赤いコートの男を優先的に殺す。
 4.見つけた参加者は全員殺す?
 5.アーカードに録音機を渡す?
 6.あるのならハートのJ、Q、Kが欲しい。
 7.ギンガの言っていたスバルが気になる。また他の4人(なのは、フェイト、はやて、キャロ)も少し気になる。彼女達に会ったら……?
 8.浅倉のことは気に食わないが、今は戦うつもりはない。気持ちを整理する時間が欲しい。
【備考】
※自身にかけられた制限にある程度気づきました。また、ジョーカー化の欲求が強まっている事を自覚しました。しかしジョーカーに戻るつもりは全くありません。
※首輪を外す事は不可能だと考えています。
※「他のアンデットが封印されると、自分はバトルファイト勝者となるのではないか」という推論を立てました。
※相川始本人の特殊能力により、アンデットが怪人体で戦闘した場合、その位置をおおよそ察知できます。
※エネルという異質な参加者の存在から、このバトルファイトに少しだけ疑念を抱き始めました。
※ギンガを殺したのは赤いコートの男(=アーカード)だと思っています。
※主要施設のメールアドレスを把握しました(図書館以外のアドレスがどの場所のものかは不明)。





 さて―――ここで1つ浅倉がシャーリーを見かけた時の事を思い出して欲しい。
 シャーリーは合計で5つのデイパックを所持していた事だ。彼女が何故それだけのデイパックを入手していたのかはここでは語らない。
 問題は入手した時点ではその中に『ある物』があったが、それは彼女が此処まで移動する途中で落としてしまった。
 その『ある物』は実は仮面ライダーの力を強化する為の道具であり、更に言えば状況的にこの場所に来る可能性はあった。
 しかしその『ある物』はこの場には来ていない。果たしてそれは何処で何をしているのだろうか?

 ここから先はある1人の少女の物語だ。
 それは浅倉が見かけたシャーリーの友人で、
 かがみがつい先程まで戦った相手で、
 始を最期まで説得しようとしたギンガの妹、
 そんな少女の物語である―――

325希望 ◆7pf62HiyTE:2009/10/15(木) 14:01:25 ID:lZx9OA5U0
 とある世界で起こった話をしよう。
 その世界には1人の少年がいた―――彼は妹が望む世界を手に入れる為に魔女から力を受け取りある帝国へと戦いを挑んだ。
 1人の少女がいた―――彼女は火事の時に自分を助け出した少女に憧れ、その少女と同じ魔導師となった。
 2人は出会う―――少年の持つ力の調査と監視の為に少女は彼の前に現れた―――
 学校・事件・戦闘の日常の中で少年と少女は心を通わせ互いの正体や秘密を知りながらも関係を深めていった。
 しかし度重なる日々の中で少年は多くの物を失っていった。
 友人を傷付け救う為に自分に関する記憶を奪い、7年来の親友とは敵同士となり、そして初恋の少女に大量虐殺の罪を負わせ彼女を自らの手で殺してしまった。
 それだけではなく、一番に守りたいと思った妹すらもその親友によって射殺された。そして少年は親友を憎悪の捌け口にする前に親友を撃ち殺していた。
 発狂すらも出来ずに少年は全てを失ってしまったのだ。いや、更にその後には少女の属する組織による罰が待っていた―――
 少女はそれを拒んだ。故に少年を守ろうとした―――相棒や仲間、憧れの人を敵に回し、組織を裏切る形になっても、家族と別れる事になったとしても―――
 少女の想いは少年に届き―――少女は少年の生きる意味となった―――

 それはきっと絶望の中から生まれたささやかな―――










「とりあえずこれで大丈夫かな?」
 スバルはG-6にある幾つかの店から先程骨折した左腕への添え木を見つけ出し、他にも治療に使えそうな救急箱も確保していた。
 真面目な話、戦闘機人である彼女には普通の医薬品は使えない。しかし、他の仲間達の治療には必要な代物である。
 勿論、先程までいたデュエルアカデミアで治療道具は確保していたが、治療道具はあるにこした事はない。

 さて、これからどうするかだ。
 襲撃者であるかがみを止めるには今の装備では無謀以外の何者でもない。実の所建物を回っている最中にもかがみの姿を確認してはいたが今接触しても無駄だとはわかっている為、気付かれない様に何とか細い路地に入る等してやり過ごしている。
 その為、まずは現状の仲間であるルルーシュ・ランペルージ、泉こなた、リインフォースⅡ、早乙女レイとの合流を優先すべきだろう。
 襲撃があった事で4人とも逃げたはずだ。こなたとレイが心配ではあったがルルーシュとリインがいれば少なくてもやられはしないはずである。
 そして合流して、手当てを行ってからかがみを追えば良いだろう。行き先に関してはかがみと彼女を唆したであろうバクラの会話から北の煙の方だというのはわかっている。
 が、実の所今後を踏まえるならばもう1つやらなければならない事があった。それはかがみの襲撃によって散らばってしまったチンクの荷物の確保である。
 彼女の荷物の中でどうしても必要なものがあった―――それが2つの首輪である。殺し合いの打破の為には首輪の解除が必須、その為には解析用の首輪が必要だ。
 今後も運良く首輪が手に入るとは限らないし、それ以前に死んだ人と遭遇する事自体あまり望んではいない。
 また、この首輪を見逃すという事は首輪の持ち主であるフェイト、ミリオンズ・ナイブズ、そして2つの首輪を持って来て、最後に自分を守る為に死んだチンクの死を無駄にするのと同義だ、それは決して許されない。
 その為、どうしても1度アカデミアに戻りたい所ではある。
 が、あくまでも当面の優先順位は仲間達との合流、そしてかがみを止める事である。何しろこれ以上こなたの友人で只の少女である彼女に人を殺させるわけにはいかないからだ。

326希望 ◆7pf62HiyTE:2009/10/15(木) 14:02:15 ID:lZx9OA5U0


 何はともあれ仲間を捜さなければならないわけだが……
「問題は何処に行ったかだけど……」
 地図を確認し、4人が向かったと思われる方向を考える。
「多分リイン曹長だったら煙が上がった方向には行かないと思うけど……ルルーシュが何か考えてそこに向かう可能性はあるし……ん、ちょっと待って……」
 この瞬間、スバルは根本的な間違いに気が付いた。
「そうだ……4人が一緒だとは限らないんだった……」
 スバルがかがみと対処している時にもルルーシュ達の心配はしていたが、リインが一緒ならば大丈夫だとかがみへの対処に専念していた。
 しかし、冷静に考えてみるとこの仮定にはある重要な前提が欠けている。それは4人が一緒にいるという前提である。
 思い出して欲しい、かがみの襲撃時他の4人が何をしていたのかを。
 こなたとレイは『手分けして』デュエルアカデミアの内部を調べていたし、ルルーシュは保健室に向かっていた筈である。リインがこなたと同行している以外はバラバラだったはずだ。
 その状況で襲撃が起きたとしよう。バラバラに逃げる事が危険なのは言うまでもないが、合流してから一緒に待避するという余力なんてあるわけ無いだろう。恐らくは各々が必死に逃げなければならないはずだ。
「大丈夫かな……みんな……」
 スバルは4人が殺し合いに乗った参加者に襲われても大丈夫かどうかを考えた。
 ルルーシュ―――武器もあるし、絶対遵守のギアスもあるが、腕の怪我が心配
 こなた―――リインが付いているが正直心許ない(リインには悪いけど)
 レイ―――武器として使えるらしいカードがあるが、こなた同様心許ない
 真面目な話どれも同じぐらい心配である。どちらにしても誰が何処に逃げたのかがわからない以上このまま探すしかないだろう。

327希望 ◆7pf62HiyTE:2009/10/15(木) 14:03:27 ID:lZx9OA5U0


 その一方、スバルはかがみの事を考える。何が彼女をあそこまで追いつめてしまったのだろうか?
 真面目な話をすれば、彼女が殺し合いに乗った決め手はバクラの存在だ、彼に唆された事で殺し合いに乗ったという事でほぼ間違いないとスバルは考えている。
 だが冷静に考えてみれば、果たして本当にそれだけで彼女が殺し合いに乗るだろうか?
 こなたから聞いた限りでは彼女は怒りっぽいけど根は優しい人だったはずだ。
「……ある意味ではティア……だよね……」
 そういう人物像からスバルの脳裏には自分の相方であるティアナ・ランスターが連想される。冷静に考えてみれば自分とこなたにも髪の色や眼の色とかが同じという共通点もあった気がする。
「あれ? もしかして、あたしとこなたって似ている?」
 ……実際、ルルーシュもこなたと話をしていた時そんな事を思ったわけだが、この場ではその事自体はどうでもいい。
 本題に戻そう。例えばの話、ティアナが妙なリングに宿る人物に唆されたぐらいで殺し合いに乗ったりするだろうか? まず有り得ない。彼女の性格を考えれば思い詰めて間違いを犯す事はあっても、冷静な彼女がその言葉に騙される事はまずないはずだ。
 かがみとティアナを同列に論じれない事はわかっている。しかし、かがみとティアナが似たタイプの人間ならば彼女だってそう簡単に口車に乗せられるとは思えない。
 つまり、要因は別の所にもあるという事である。ここで先程のかがみの言葉を思い出す、
『どうせほとんど無傷のアンタには分からないだろうけど、現に私はもう何度も殺されかけてるの!
 迷ったら殺される! 気を許したら騙される! だから私はみんなを殺す!』
 この言葉から察するに彼女は何度と無く他の参加者に騙され襲われ命の危機に遭遇したのだろう。それ故に良心は駆逐され過度の不信状態に陥ってしまったという事なのだろう。
 その心の隙を突いてバクラが彼女の信頼を得て、彼女を殺し合いに乗せたというのは想像に難くない。
 となると厄介な話である。バクラに単純に操られているだけならばリングから引き離せば済む話だが、こうなると引き離しただけでどうにか出来るとは思えない。メンタル面での彼女のケアを行わなければならないだろう。
 勿論、それ以前に彼女を無力化しなければならないという問題がある。だが、冷静に考えればこれも一苦労だろう。
 隙を見せれば先程の同様モンスターに喰われて終わり、武器を持っていたとしても先程同様いつの間にか彼女に奪われる、さらに彼女はアガデミアを一撃で崩壊寸前まで追い込むほどの強力な武器を持っていた。
 他にも何か武器を持っている可能性があったしバクラの宿っているリングにも何か隠された力があるかも知れない。
 勿論、倒すだけならば極端な話戦闘機人の力である振動破砕を使えばまだ何とかなるかもしれない。だが、それを使えばかがみも只では済まない。かがみを殺すわけにはいかない以上当然この手段は使えない。
「困ったなぁ……」
 どちらにしても仲間との合流を考えなければならないだろう。


「そういえば……」
 その一方、スバルは今更ながらにチンクが持っていた名簿の事を思い出した。実の所そこに書かれてあった内容に引っかかっていた事があったのだ。その名簿を改めて見てみる。
 その名簿には協力者、保護対象、要注意人物がグループ分けして記載されていた。その内訳は以下の通りだ、

 協力者……高町なのは、シグナム、八神はやて、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、クロノ・ハラオウン、ユーノ・スクライア、矢車想
 保護対象……エリオ・モンディアル、キャロ・ル・ルシエ、柊つかさ、柊かがみ、泉こなた
 要注意人物……遊城十代

328希望 ◆7pf62HiyTE:2009/10/15(木) 14:04:52 ID:lZx9OA5U0

 まず、この名簿がチンクのものではない事は一目瞭然だ。彼女ならばクアットロ、ディエチ、ルーテシア・アルピーノ、ゼスト・グランガイツの名前が出てこないのは不自然だからだ。では、これは一体誰が所持していた名簿だったのだろうか?
 いや、実の所それについてはある程度推測が付く。チンクはある人物の首輪を所持していた事を思い出して欲しい、そうフェイトの首輪を所持していたのだ。
 つまり、チンクはフェイトの死体から首輪を手に入れ、さらに彼女のデイパックをも確保したという事だ。前述の名簿は彼女のデイパックに入っていたという事だろう。
 今となってはチンクがどういうスタンスだったかはわからない。クアットロを託した事から優勝狙いという事は無いと思うが、自分達管理局と敵対していないという保証は何処にもない。
 真面目な話、チンクがフェイトを殺して首輪を手に入れたという可能性はあった。だが、正直スバルはそれを信じたくはないし、今はその事は重要ではないのでそれについては考慮しない。
 さて、問題の名簿がフェイトが所持していたものだとするならば協力者に上げられた人物に説明が付く、矢車以外は何れも管理局の仲間だ(フェイトの名前が無いのは自分自身の名前だったからだろう)。
 ここで気になるのは自分とティアナの名前が無く、エリオとキャロが保護対象扱いになっていた事だ。しかしこれについても納得のいく説明が付く。
 単純な話、機動六課設立前の時期から連れて来られたのだろう。だとすれば自分達の扱いにも説明が付く。
 さて、実の所引っかかった所というのはここからだ。保護対象の中にはこなた、かがみ、つかさの名前があった事だ。
 一体何故彼女達の名前があったのだろうか?
 フェイト自身が知っていた、もしくは3人の世界のなのはと会った? その可能性は低いだろう、それなら自分とティアナの名前が無いのが不自然だ。
 結論は単純だ、フェイトがその3人を知る参加者と遭遇したという事だろう。そしてそれに該当する人物は1人しかいない。
 こなたと遭遇した? こなたは自分と殆ど一緒だったためそれは有り得ない。
 かがみと遭遇した? フェイトならばかがみのケアをちゃんと行ってくれるはず、かがみの様子を見る限りそれは無い為これも除外される。
 フェイトと遭遇したのは恐らくつかさだったのだろう。それもかがみ同様、自分とティアナの事を知らない世界から連れて来られたのだろう。
 なお、スバルは前述の仮説を立てたが実はフェイト自身が3人の事を知っていてなおかつ、自分とティアナを知らない世界から連れて来られたという可能性もあるし別の可能性もある。しかし、この状況下でこの考えに至れるスバルではなかった事を記しておく。
「もしも、フェイトさんがつかささんを保護していたら……」
 この仮説自体が断言出来るものではないが可能性は十分あると考えている。が、この仮説通りだとしたら正直不味い事になる。
 何しろ、チンクを保護したタイミングから考えてフェイトの死亡はその数時間前だと考えられる。となれば、その後つかさはずっと1人という可能性が高い。
 こなたの話ではつかさは大人しく心優しい少女らしい、そんな彼女がたった1人でこの殺し合いに耐えられるとは思えない。極端な話、かがみと同じ状態に陥る可能性はあると考えている(信じたくはないが)。
「それに……」
 問題はもう1つある。名簿には要注意人物としてレイの仲間である十代の名前があった。レイの話では殺し合いに乗る人物ではないはずだ。では何故、フェイトからは要注意人物扱いされているのだろうか?
 だが、ここでレイから聞かされたある話を思い出して欲しい。それは『フェイトは敵に操られている可能性がある』という話だ。仮に十代もそう考えていたとしたらどうだろうか?
 十代はフェイトを止める為に彼女と交戦した可能性がある。だが、何も知らないフェイトから見れば彼が殺し合いに乗っていて襲いかかってきたという風にしか見えないだろう。
 故にフェイトは十代を要注意人物として扱ったのだろう。
「こういうのって本当はティアの方が得意分野だよね……」
 ここまで考えて、今更ながらにスバルはそう思った。

329希望 ◆7pf62HiyTE:2009/10/15(木) 14:05:39 ID:lZx9OA5U0


 さて、スバルは正直途方に暮れていた。状況は自分が思っていた以上に悪化している可能性が高いからだ。
 実の所、ルルーシュ達4人が無事に逃げ出したという可能性も正直微妙な話である。放送で十代の死を知らされたレイが暴走する可能性があったのだ。信じたくは無いが彼女がこなたやルルーシュを襲う事もあり得る。
 更に、この間にもかがみが他の参加者を襲う可能性は十分にあり得る。スバルの知る限りアカデミア周囲にいる可能性が高い参加者は少なくても4人以上いる。
 まずは前述のこなた、ルルーシュ、レイの3人、そして数時間程前にアガデミアから去っていたシャーリーだ。シャーリーに関しては立ち去ってから大分時間が経過しているから遠くに行っている可能性はあったが断定は出来ない。
 かがみが彼女達に遭遇したら恐らく襲いかかるのはいうまでもない。
 不安はあるものの遭遇したのがルルーシュもしくはレイならば対処出来るかもしれない。ルルーシュはギアスを、レイはカードを使えば対処出来るだろう。
 逆にかがみを殺す可能性も無いではないが、バクラがいるならばかがみを死なせるはずが無い為その可能性は低いだろう(バクラ頼りになるのは正直不服だが)。
 問題はシャーリーとこなたと遭遇した場合だ。彼女達ならばあっさり殺される結果になるだろう。無力なシャーリーは言うまでも無いが、こなたの場合はリインがいるから大丈夫じゃないのか?
 いや、恐らくリインがいても無理だろう。別にリインの力を信じていないわけではない。
 仮にこなたとかがみが出会えばこなたは警戒せずに接触するはずだ、当然リインも警戒を解くだろう。その一瞬の隙を突いて―――まさしく先程の自分とほぼ同じ結果になる。
 その為、出来るだけ早く、それもかがみと再会する前にこなたとは合流しなければならないだろう。
「でも……どうやって説明しよう……」
 だが、再会したら再会したで別の問題がある。かがみの件をどう説明すればいいかがわからないのだ。
 彼女がチンクを殺したという事実がある以上黙っているわけいはいかないし、こなたの安全を考えるならば話さないわけにはいかない。
 一応、全部バクラのせいだと説明しても良いが、理由はどうあれて聞かされたこなたがショックを受けるのは想像に難くない。
 それに仮にバクラをかがみから引き離したとしてもかがみの状態が変わるとは限らない。それでもこなたを殺すというかがみの姿を見たらどれだけ辛い事だろう。

 正直な所、自分の無力さを感じずにはいられない。
 最初に赤い吸血鬼からこなたを守った以外は何も出来ていないではないか。むしろ自分の判断の甘さで悪い結果すら引き起こしている気がする。
 かがみに並行世界の話をした時にしてももう少しやりようがあったのではないだろうか。こなたやルルーシュ達がそれ程ショックを受けていないと思い込んで、その重要さを甘く考えていたのでは無かろうか?
 彼女はそれを聞いてハッキリとこなたもつかさも別人だと決めつけ殺す意思を固めたのだ。
 ルルーシュの様に異なる並行世界の人物でも同じだと言える人物がいるとしても全部が全部そうとは限らない。自分だってルルーシュが自分が彼の世界の自分と知って絶望する姿を考えていた、十分にあり得た話だった筈だ。
 いや、真面目な話今でもルルーシュやこなたが内心ではそれでショックを受けているのかも知れない。それを自分は忘れてしまってはいなかっただろうか?

330希望 ◆7pf62HiyTE:2009/10/15(木) 14:07:21 ID:lZx9OA5U0
 結局の所、チンクを死なせる結果になった事もスバル自身の見極めが甘かったからでしかない。
 スバルがかがみの身に起こった事をもう少し深く考えていればかがみの凶行を察知出来、自分を助ける為にチンクを死なせる事も無かったはずだ。
 幾らバクラが元凶だと考えていても、自分に全く原因は無かったと考える程スバルは愚か者ではない。自分の悪かった所はある程度認識出来ている。
 更にいえばだ、かがみによってレヴァンティンが奪われたが、スバルがルルーシュの助言を聞かなければもっと悪い状況になっていた事もあり得る。
 ルルーシュに指摘されるまではレヴァンティンはこなたが所持し、スバル自身は質量兵器であるライフルを持っていた。スバル自身もその装備が合わない事はわかっていたが、こなたに戦わせず、なおかつ最低限守らせる為の配慮であった。
 しかしルルーシュはこなたを戦わせたくないなら自分の力を分けずこなた自身の力を0にしてでも10の力で守り抜けと言った事で、レヴァンティンをスバルが、銃をルルーシュが持つ事になった。
 仮にルルーシュからの指摘が無くスバルがずっとライフルを持っていたらどうなっていただろうか?
 考えるまでもなくライフルが奪われただろう。そして、その銃を使ってかがみは多くの参加者を殺しに行くのは想像に難くない。レヴァンティンならば魔力の持たないかがみでは十分に使えない。
 なお、こなたのレヴァンティンの有無が問題になるがそもそもこなた自身が魔力を持たないし、それ以上に守る上ではある程度頼れるリインがいる為、大した違いは無いと考えて良いだろう。
 つまり、結果としてルルーシュの助言が状況の悪化を僅かに防いだという事である。その助言が無い、もしくは助言を聞かなければどうなっていたか―――考えたくもない。
 とはいえ過去の失敗を何時までも悔やんでも仕方がない、重要なのはこれからだ。しかし、やはり先は全く見えていない。スバル自身は仲間と力を合わせればどんな困難でも乗り越えられると考えているが現実はそう甘くはない。
『殺らなきゃ殺られるの! 他の脱出法を探してる時間なんてないのよ!』
 これは先程のかがみの言葉だがこの言葉は真理を突いている。
 認めたくはないが殺し合いに乗った参加者を完全に無力化しなければ他の参加者が殺されるのは言うまでもない。
 スバルはこなたと遭遇した吸血鬼を振動破砕である程度ダメージを与えていたが、奴の再生能力を考えるならば既に身体は万全のはずだ。当然その後は他の参加者を殺し回っているだろう。
 ルルーシュとディエチが遭遇した金髪の男にしてもその実力を考えるに未だ健在のはずだ。当然彼は今も他の参加者を殺し回っている筈だ。
 そしてチンクの両腕を焼き落とす程の重傷を負わせたらしい参加者もいる。詳しい事は全く不明だが、奴を放置すればまた多くの参加者が殺されてしまう。
 更に万丈目準やヴァッシュ・ザ・スタンピードといった殺し合いに乗った参加者が数多くいるし、プレシア・テスタロッサの言っていた御褒美を得る為に殺し合いに乗った仲間だっているかも知れないし既に何人かが殺されている可能性はある。
 同時に時間が無いというのも確かな話だろう。14時間経過した段階で60人中少なくても23人もの参加者が殺されている。
 単純にペース計算をすると48時間ぐらいで10人前後になるぐらいのペースだ。
 残り34時間で仲間を集めて脱出法を確保出来るかどうかもわからないし、仮に出来たとしてもその段階では犠牲者があまりにも多すぎる。
 その方法が全く見えていないわけではない。しかし、かがみの襲撃1つだけでそれが殆ど崩壊してしまっている。不安材料がある中でここから再び立て直すのがいかに困難な事か……正直不安になってくる。


 勿論スバル自身は諦めるつもりは全く無い。だが、自分の力で本当にそれが出来るのだろうか……仲間を集める事すら出来ないのでは無かろうか……

『どうした、それで終わりか!? 『この』スバル・ナカジマは武器を失った程度で戦えなくなる臆病者だったか!?』
『なんだか、スバルって本当にアニメのヒーローみたいだね』
『決意も、行動も……お前が“スバル・ナカジマ”なら、できるはずだ』

 脳裏に浮かぶのは形は違うが何れも自分を評価した言葉だ。
 だが違うのだ、自分はそんな立派なものじゃない。それはこの結果が証明している。

331希望 ◆7pf62HiyTE:2009/10/15(木) 14:09:22 ID:lZx9OA5U0


 考えれば考える程深みに嵌ってしまう……とはいえ何時までも立ち止まるわけにはいかない。気を取り直して名簿をデイパックにしまう。
「あ……これ……」
 と、デイパックの中から小さな指輪を何気なく取り出した。それはスバルの瞳と同じ色をしたエメラルドの指輪。
 それが何の力も持たない普通の指輪だというのはわかっているし、ルルーシュ達もそれには同意していた。
 何故か自分の指に合致するが、少なくてもスバルには全く心当たりがない。真面目な話、自分が今後これを身に付ける可能性が全く想像出来はしない。それでも―――

 指輪を見ていると深く沈んでいた心境が晴れていく気がした―――
 その指輪が自分に力を与えてくれると感じた―――
 そして、自分を励ましてくれると感じた―――

 それはきっと気のせいだ、この指輪にはそんな力はない。極端な話、世間一般に存在する指輪と殆ど何も変わらないはずだ。だが、この指輪には間違いなく『想い』が込められていると―――

『たとえどんな世界にいようと、お前はお前だ。いつも笑顔で、楽しそうで……精一杯真っ直ぐに生きてる、スバル・ナカジマだ』

 何故かルルーシュの言葉が脳裏によぎった―――先程までだったら重荷に感じたであろうその言葉が今では大きな支えになる気がする。
 ならば最早立ち止まるわけにはいかない。例えこの先が困難であったとしても、方法が見えなくても、傷つき倒れそうになっても、精一杯やり抜こうとスバルは思う。


 指輪を再びデイパックにしまい、仲間達の捜索を始めた。今いる場所はG-6の大通りから外れた道路。
 大通りは何か戦いがあったせいか荒れており移動には適さず、また何かと目立ち殺し合いに乗った参加者に見つかる可能性がある為、大通り外れの路地を通る事は十分に考えられる。
 優先順位としては先程想定した危険を考えてこなたとシャーリーだ。ルルーシュとレイには悪いとは思うが、今のかがみと遭遇する可能性を考えると仕方が無いだろう。
「一番良いのはみんなが一緒にいる事だけど……そこまで都合良くは……」
 と、歩いていると何かが飛んでいるのが見える。
「あれ……?」
 スバルがその場所にたどり着いたら『それ』はスバルの前まで近付いてきて、スバルが手を伸ばしたら素早くそこに止まった。
「これって……!」
 スバルにはそれに見覚えがあった。『それ』は銀色のカブトムシを模した機械ハイパーゼクターだ。時空間をワープする能力を持ったそれは現状では数少ない脱出の手掛かりである。
「ちょっと待って、どうしてこれが……」
 確かハイパーゼクターはルルーシュが持っていた筈である。脱出の鍵となり得る要素をプレシアに知られるのは不味い為、現状でルルーシュが出す可能性は低いはずだ。
「まさかルルーシュに何かあったんじゃ……」
 予想していたとは言え、その可能性はスバルに不安をよぎらせる。それでも冷静に周囲を見回すと、
「あれ……まさか……」
 そこには気になる店があった。その店の名前は『アニメイト』、スバル自身にとっては未知の店の名前ではある。しかし、
「まさかこなた……」
 そう、こなたがアニメやマンガ及びゲームが好きなのはよく知っている。そして『アニメイト』といういかにもアニメに関係する物がありそうな店だ。こなたがそれに引かれて入っていった可能性は十分にあり得る。
 この非常時にそんな馬鹿な真似をするだろうか? 正直そうは思うが、もしもかがみがこれを発見した場合、その名前に引かれて入り不幸にもそこにいるこなたと鉢合わせになる可能性はある。今こなたとかがみを出会わせるわけにはいかない。
「まさか……これを教えるつもりだったの……?」
 銀色のカブトムシは答えない、故に真実はわからない。

 それでも、仲間達と合流し守る為にスバルは迷うことなくアニメイトへと踏み込んだ。

332希望 ◆7pf62HiyTE:2009/10/15(木) 14:10:10 ID:lZx9OA5U0

【1日目 午後】
【現在地 G-6 アニメイト入口】
【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康、全身にダメージ小、左腕骨折、ワイシャツ姿、若干の不安と決意
【装備】なし
【道具】支給品一式(一食分消費)、スバルの指環@コードギアス 反目のスバル、添え木に使えそうな棒、救急道具
    炭化したチンクの左腕、チンクの名簿(内容はせめて哀しみとともに参照)、ハイパーゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【思考】
 基本:殺し合いを止める。できる限り相手を殺さない。ルルーシュを守る。
 1.アニメイトに入り、こなたやルルーシュ達を探す。
 2.ルルーシュ達と合流し、かがみを止めにいく。出来ればこなたとシャーリーを優先して探したい。
 3.ルルーシュに無茶はさせない、その為ならば……。
 4.こなたを守る(こなたには絶対に戦闘をさせない)。が、かがみの事はどう説明するべきか……
 5.アーカード(名前は知らない)を警戒。レイにも注意を払う。
 6.六課のメンバーとの合流とつかさの保護。しかし自分やこなたの知る彼女達かどうかについては若干の疑問。
 7.もしも仲間が殺し合いに乗っていたとしたら……。
【備考】
※質量兵器を使う事に不安を抱いています。
※参加者達が異なる時間軸から呼び出されている可能性に気付きました。
※仲間(特にキャロやフェイト)がご褒美に乗って殺し合いに乗るかもしれないと思っています。
※自分の存在がルルーシュの心を傷付けているのではないかと思っています。
※ルルーシュが自分を守る為に人殺しも辞さない及び命を捨てるつもりである事に気付いています。
 でもそれを止める事は出来ないと考えています。また、自分が死ねばルルーシュは殺し合いに乗ると思っています。
※ルルーシュの様子からデュエルアカデミアから出て行ったのはシャーリーだと判断しています。
※自分に割り振られた調査エリアを調べ終えました。何かを見つけたか否かは後続の書き手さんにお任せします。
※万丈目とヴァッシュが殺し合いに乗っていると思っています。
※アンジールが味方かどうか判断しかねています。
※千年リングの中に、バクラの人格が存在していることに気付きました。
 また、かがみが殺し合いに乗ったのは、バクラにそそのかされたためだと思っています。但し、殺し合いの過酷な環境及び並行世界の話も要因としてあると考えています。
※救急道具は及び棒はG-6にある幾つかの建物から見付けました。










 少年と少女の話には続きがある―――
 その3年後、少年は少女に指輪を送った―――

 その指輪は少女の瞳の色と同じエメラルドがあしらわれたもので特別な力など何もない。
 しかし、その指輪は2人の絆であり、そしてこれからを象徴するものだろう。
 勿論、エメラルドだったのは少女の瞳の色と同じだったからだろう。だが、その2人にとって相応しい物と言えよう。
 宝石にはそれにまつわる言葉や意味が存在する―――エメラルドが意味するのは『新しい始まり』、そして―――





 ―――『希望』

333 ◆7pf62HiyTE:2009/10/15(木) 14:21:22 ID:lZx9OA5U0
投下完了しました。>>316>>324がライダーパートである前編『[5RIDERS]』(約28KB)で、>>325>>332がスバルパートである後編『希望』(約23KB)です。
サブタイトルの元ネタについては『[5RIDERS]』が仮面ライダー龍騎のTVSP版サブタイトル『[13RIDERS]』です。『希望』については特に元ネタありません。
何か問題点や疑問点等があれば指摘の方お願いします。

ちなみに当初は3RIDERSだったんですが、調べてみたら5つライダーいたし強引に5人分の意識があると解釈出来るので5RIDERSになりました。
ていうか……何時になったらこの人達戦いを始めるんだろう……

334リリカル名無し:2009/10/16(金) 19:05:31 ID:d4uB4u1Q0
投下乙です
ああ、浅倉、始、かがみんの三すくみの舞台は整った
三人が三人とも病んでるなw
支給品もごちゃごちゃしだしたが以外とすっきりしてるような
そしてスバルはルルーシュらと合流することができるか?
先が気になります

335リリカル名無し:2009/10/17(土) 10:59:53 ID:F7Jo/lwE0
投下乙です
3すくみ、まず動くのはかがみかな
スバルは早いこと合流できそうだな、なんか悪い予感がするのは気のせいか

336リリカル名無し:2009/10/17(土) 19:21:30 ID:KMDiVXb2O
投下乙です
役者は舞台に揃ったか
このロワ初の大規模ライダーバトル勃発か?
そしてスバルやルルーシュ達はどうなるんだろう

337STRONG WORLD/神曲・最終楽章 ◆vXe1ViVgVI:2009/10/24(土) 17:08:33 ID:Ii3Py09k0
長らくお待たせしました。
それでは新庄・運切、ヴァッシュ・ザ・スタンピード、エネルを投下します

338STRONG WORLD/神曲・最終楽章 ◆vXe1ViVgVI:2009/10/24(土) 17:11:03 ID:Ii3Py09k0
 繰り広げられた惨劇は数知れず、濃密な12時間は激流の如く流れていった。
 人々を狂わせ、絶望に追いやり、殺害していく凄惨なデスゲーム。
 誰の力を持ってしても未だ阻止する事が叶わない狂気の宴。
 単純な死者の数だけでは数えられない、様々な傷を負った参加者達がこの会場には蔓延っている。
 大切な仲間を失った者、擦れ違いの末に心を破壊されてしまった者、元から有していた狂気を更なる深淵へと沈降させた者……沢山の被害者達がこの場には存在した。

 今回の御話は、そんな被害者達の一人である青年の話。

 人の身に抑え込むには余りに強過ぎる『力』を得てしまった青年。
 比喩ではなく、真の意味で天災と化してしまった青年。
 青年は動かない。
 自分の『力』が暴発でもしてしまえば、それに巻き込まれ必ず惨劇が発生するから……その事を理解しているからこそ、青年は動かない。
 何十秒も何十分も何時間も……ただ無言で青色の空を見上げ、時を過ごす。
 その傍らに座る不思議な体質を有した少年を尻目に、青年は寸分と動かず座り込む。
 殺し合いの会場とは思えない程の静寂が二人を包んでいた。
 ずっと、ずっと、ずっと―――誰とも遭遇する事なく、誰とも言葉を交わす事なく、二人は時間を浪費していった。
 そして、青年が神社に辿り着いてから四時間程が経過したその時、遂に静寂は切り開かれる。
 唐突に、前触れなく始まった放送によって―――彼等は再び現実と直面する事となったのだ。



□ ■ □ ■



「そんな……」

 忌々しげな愉悦を隠そうともせず、プレシア・テスタロッサは死者の名前を告げていった。
 宣告された死者の数は9名。
 六時間前の放送で読まれた死者を合わせれば既に22人もの人々が死亡している事となる。
 時間にして12時間。
 余りにも多い犠牲者の数に、そして何より死者として告げられた名前の一つに―――新庄・運切は茫然と言葉を失っていた。

「……フェイトさん……」

 自分を襲撃した後、彼女はどのように行動し、どのように死んでいったのか……新庄に知る術はない。
 『フェイト・T・ハラオウン』がもうこの世に存在しないという事が、ただ一つの事実として後に残される。
 どうしようもなくやるせない感情が新庄の心を包み込んでいた。

『新庄』

 そんな彼女の傍ら、狙撃銃型のデバイスが声を上げる。
 それは無機質ながらも何処か焦燥の色が含まれた言葉。
 だが、自失状態にいる新庄はその言葉を知覚する事が出来ない。
 澄み切った虚空を見詰め、余りに残酷な現実に胸を痛め続けていた。

『新庄』

 再びの呼び掛け。しかしながら彼女は動かない。
 視線を固定したまま、その瞳に少しずつ涙を貯めて、座り込んでいる。
 マズい―――と、デバイスながらにストームレイダーは感じ取った。
 此処で立ち止まっていられたら、色んな意味でマズい。
 それを理解しているからこそ、デバイスは再び口を開く。
 この場から移動しなくては、その一心を伝える為に声を張り上げる。

『新庄!』

 これまでの人間的ながら冷静な口調とは違った、まるで警告音のような強い語気が備えられた一言。
 その一言に新庄も漸く反応をしてくれる。
 ビクリと肩を揺らした後に新庄は、幾分か覇気の落ちた瞳をストームレイダーへと向けた。

339STRONG WORLD/神曲・最終楽章 ◆vXe1ViVgVI:2009/10/24(土) 17:12:46 ID:Ii3Py09k0
「ストームレイダーさん……」
『新庄、Ms.フェイトの死がショックなのは分かります……。ですが、何よりも先ず行わなくてはいけない事が今はある筈です』
「行わなくては……いけないこと……?」
『あと一時間でこのエリアは禁止エリアとなります。道中で何が発生するかは予想ができません。
 万が一のことを考えて、今すぐにでも動き出すべきです』

 そう、それは先の放送で告げられた事項の一つ―――『禁止エリア』。
 放送の中でプレシア・テスタロッサが悠然と語っていた筈であったが、やはりと言うべきか、フェイトの死を知った事により新庄・運切は禁止エリアについてを失念していた。
 このまま失意に溺水されてはこの男は死亡してしまう……そう思考したからこそ、ストームレイダーは指示を促したのだ。

「禁止エリア……」
『そうです。今は一秒でも早く行動を始めなくてはいけません』
「そう……だね、泣いてなんていられない。泣いてる間に死んじゃったなんて、フェイトさんに合わす顔がないもんね……」

 そう言うと、新庄は力無い笑みを浮かべながら立ち上がった。
 その拍子に、頬を伝い地面へと落下する一筋の涙。
 渇いた地に吸い込まれた水滴に一度視線を傾け、新庄は前を見る。
 フェイトの死を受け入れる事はまだ出来ない。
 だが、此処で膝を折り命を失う事もまた―――出来る筈がない。
 今は思考を停止させてでも動く時だ。
 元の世界に生還する為にも、また生きて『彼』と会う為にも、動かなくてはいけないのだ。

「行こう、ストームレイダーさん。取り敢えずこのエリアを抜けなきゃ」

 彼、いや彼女は立ち上がった。
 小難しい理屈はなく、ただ生きる為に。
 知人との死別という重い重い枷を背負いながらも、前へ進もうと決心した。
 ただ行動を始めるには一つ、大きすぎる問題が存在し―――


「……という訳なんですが……あの、その……あなたも一緒に行きませんか?」


 ―――その『問題』の主へと新庄は声を掛けた。
 神の社に寄りかかり、まるで死んでしまったかのように座り続ける男へと、新庄は向き直った。



□ ■ □ ■



 何処か夢心地でヴァッシュ・ザ・スタンピードは放送を聞いていた。
 何よりも人間の死を嫌う彼であったが、驚く程にその反応は鈍い。
 反応無しと言っても過言ではなかった。
 今回の放送で呼ばれた死者の中で彼が知る者は二人。
 その両名とはアレクサンド・アンデルセンとフェイト・T・ハラオウン。
 片やこの殺し合いで出会い協力関係を組んだ男、片や自分の暴走によりその命を奪ってしまった少女であった。
 その両名の名前を聞いてもヴァッシュは反応を見せる事はない。
 死人の如く虚ろな瞳で、前方を埋め尽くす森林を見詰めているだけ。
 ただ、それだけであった。

「……という訳なんですが……あの、その……あなたも一緒に行きませんか?」

 そんなヴァッシュに声を投げ掛ける者が一人、新庄・運切だ。
 新庄は困ったような顔を浮かべながら、ヴァッシュへと視線を向けていた。
 彼がヴァッシュに話し掛けたのは、これで二回目。
 約四時間振りに行われた会話であった。

「……僕は……後で行くよ。君は先に行っていると良い」

 正直なところ、新庄とストームレイダーの会話をヴァッシュは聞いていなかった。
 ただ新庄の言葉から彼が伝えたようとしている内容を予測し、答えを返した。
 新庄の方を見ようともせず、ただただ言葉を紡く。

「で、でも……!」
「僕と君が一緒に行動できない事は分かっているだろ? 何かあれば僕は君を殺してしまう……だから先に行ってくれ。大丈夫、僕は後から脱出するよ」

 ヴァッシュの言ってる意味は理解できる。
 一定の距離まで接近すると突如として出現する謎の白刃。この存在の所為で新庄はヴァッシュに近寄る事すら出来ない。
 ただそれでも見捨てる訳にはいかないと、今の今まで何をするでもなく、傍らで座していたのだ。
 しかし、流石に今回は話が違った。
 共に行動をしていれば、何かのアクシデント―――例えば殺戮者により襲撃など―――で彼の身体が白刃の領域に侵入してしまう可能性も充分にある。
 侵入した結果に待ち受けるは死。
 あの幾数もの白刃が新庄の五体全てを貫通し、容易く絶命へと至らせるだろう。
 ヴァッシュの意志に反した圧倒的な破壊……それが現在の彼の肉体に架せられた十字架。
 新庄は勿論、ヴァッシュにすらどうする事もできない、呪詛の如く『力』であった。

340STRONG WORLD/神曲・最終楽章 ◆vXe1ViVgVI:2009/10/24(土) 17:14:15 ID:Ii3Py09k0
「さぁ、早く行くんだ」

 ならば、新庄に選択できる道は一つ―――ヴァッシュを置いて先にエリアから脱出する事のみ。
 それでもまだヴァッシュと行動したいのなら、常に死を覚悟した状態で未来を進むしかない。
 それは非常に危うい……文字通り『死』と隣り合わせの状態。
 単独で行動するよりも、何倍も何十倍ものリスクを背負わなければならない、茨の道である。

『新庄、彼の言うとおりです。今は急がなくては……』
「でも……だけど……」

 だが、その事実を理解していて尚、新庄は一人で動き出す事が出来ずにいた。
 確信がないからだ。
 自分が動いた後、眼前の男が本当にこのエリアから脱出する確信が。
 寧ろ今までの彼を見る限り、自らの死を選ぶ可能性も大いに有り得る。
 それは……それだけは許せない。
 誰が許そうと、新庄・運切の心が許さない。
 だから新庄は動けずにいた。
 誰も死なせない事を信条とする彼だからこそ、この場を一人で去る事ができずにいた。

「さぁ行け……行くんだ……」
「だけど……!」

 共に行けないのは分かっている。
 でも此処で、こんなところで見捨てる為に自分は何時間も彼の側に居たわけではない。
 彼を元気付ける為に、彼のその空っぽの笑顔を何とかしたくて、自分は此処に居たのだ。
 その方法は思い浮かばないが、絶望の渦中に居る彼を救いたくて―――自分は此処に居たのだ。



「僕は―――」



 と、新庄が開口したその瞬間、



『Caution―――上です!』



 ―――彼の手中にある狙撃銃が敵の襲来を知らせた。
 その警告に新庄は思考を中断。
 目を見開きながら狙撃銃が告げた上方へと視線をやる。
 それはヴァッシュも同様。虚無の瞳に僅かな光を灯し、顔を上に向ける。
 そして二人の視界にある光景が飛び込む。
 青白い発光体が自身の真上にて爛々と輝きを放っている謎の光景。
 二人はその不可思議な光景に数瞬の間、我を忘れて見とれてしまい、そして―――光球が光線となり、二人目掛け降り注いだ。



□ ■ □ ■



「ヤハハハハハ! 思い知ったか、神の社に座する不届き者達よ!!」

 新庄達から100m程離れた森林の中、そこに神・エネルは立っていた。
 愉快げに笑い声を上げながら、自身が放った攻撃の残滓を見詰める。
 『神の裁き(エル・トール)』―――それが新庄達を襲った光線の正体。
 神の社にたむろする不届き者達への神罰を、エネルは自らの手で行使したのだ。
 勿論、彼等の存在にはエネル自身、マントラの力によりとっくのとうに気付いていた。
 だが、遠方からの攻撃では目的地である神社その物まで破壊する恐れがある。
 いや、如何に自身の能力が制限されているとはいえ、建物の一つや二つ十中八九全壊してしまう。
 だからこそ、わざわざ接近し不届き者達を殺害しようと考えていたのだが―――それも徒労に終わった。
 神社が設置されているエリア・A-4が禁止エリアと決定されてしまったからだ。
 忌々しい首輪が存在する限り、全能たるエネルであっても禁止エリアに留まる事は不可能。
 ならばせめてと、神社に居る二人の不届き者へと神の裁きによる殺害を決行したのだ。

「ヤハハ! 不運であったな、名も知らぬ青海人共よ!」

 神社は破壊してしまっただろうが、結果として、二人の参加者を殺害する事ができた。
 この十二時間様々な戦闘を繰り広げたがエネルはたった一人の死者しか出していない。そんなエネルにとっては将に僥倖。
 この中盤に来て、一気にスコアを伸ばしたエネルであったのだが―――



「む?」



 ―――一頻りの高笑いを行った後で、その異変に気が付いた。

341STRONG WORLD/神曲・最終楽章 ◆vXe1ViVgVI:2009/10/24(土) 17:15:49 ID:Ii3Py09k0
「『声』が……消えない?」


 そう、今し方消し去った筈の『声』が健在しているのだ。
 それも二つ共。先の場から一歩たりと動く事なく、存在している。
 回避を行っていないという事は、命中はしているという事。
 あの『ヒライシン』とやらが神社に設置されているのなら兎も角、その他に雷を防ぐ術は無い筈だ。
 何が起きたのだ? と、首を傾げ思考に入るエネル。
 だが、その思考も熟考に至る事すらなく打ち切られる。
 関係ないのだ。
 神社に『ヒライシン』があろうと、その攻略法は既に把握している。
 先程のように許容量を越えた電圧を浴びせ掛け、破壊すれば良いだけだ。
 結局のところ何も変わらない。
 たった数十秒、『声』の主達の人生が延長されただけだ。
 エネルは早々に思考を遮断し、哀れな不届き者達を殺害する為に、再び能力を行使する。
 それは先ほど放った雷撃―――神の裁き(エル・トール)よりも更に強力な一撃。
 人間という種族で有る限り、決して耐えられる訳がない電撃。
 避雷針すらも破壊可能な、現在のエネルが発動できる最強のアウトレンジ攻撃。
 龍の形を模した雷―――『雷龍(ジャムブウル)』。それをエネルは放とうとしていた。

「……『声』が一つ移動したか……だがもう遅い」

 唐突に動き始めた『声』の片割れ。
 しかしその速度は余りに遅すぎる。
 制限下に置かれて尚、エネルの攻撃範囲は他をずば抜けて広大だ。
 ほんの十数メートルの移動など焼け石に水と言っても良い。
 動揺の欠片も見せる事なく、右手の剣を振り上げるエネル。
 それは雷龍(ジャムブウル)を発動する為に必要な予備動作。
 背中の太鼓を二つ叩き、雷の龍を召喚しようとしたエネル…………であったが、何故か途中でその動きを止めてしまう。

 音が聞こえたからだ。

 日の遮られた森林の奥底から、何かが崩れ落ちるような轟音が―――、

「……ほう」

 轟音の聞こえる先へと目を凝らしながら、エネルは不遜な笑みを浮かべた。
 そして、手中の剣をクルクルと回転させ、油断なく構えを取る。
 『それ』がエネルを襲撃したのは、その行動から僅か数秒後。
 森林の彼方から―――刀剣のように洗練された白翼が出現した。
 それも一本ではなく、二本、三本、四本……およそ十にも及ぶ白刃が、木々を切り裂きエネル目掛けて襲来した。

「……面白い……」

 触手のように変幻自在に動くそれらを前にしても、エネルの余裕は揺らがない。
 寧ろ愉しげに笑いながら、白刃を待ち受ける。
 そして群中の中、先陣を切って急迫する白色の刃を渾身の力で―――叩き伏せた。
 接触、衝撃。
 甲高い金属音と共にエネルの胸板へと迫っていた切っ先が逸れ、後方に聳える木々へと突き刺さった。
 初撃の回避は成功―――同時にエネルは疾走を始める。

(何処の誰だか知らないが、なかなかに面白い能力を持っているじゃあないか……!)

 肉迫する白刃の数々を体捌きと迎撃を持って回避していくエネル。
 エネルは、弾幕の如く迫るそれらの隙間を縫うように進んでいく。
 目指すはこの攻撃を行っている『声』の元。
 おそらく神社にいた『声』の片割れがこの白刃の主。
 移動した方か、未だ当初の位置から微動だにしない方か……制限下に在る今、そのどちらかまでは判断できない。
 ただ、見てみたかった。
 これ程の能力を持つ人間の姿を、エネルは見てみたかった。
 数分の剣戟の末にエネルは白翼の根元へと辿り着く。
 そこに居たのは、ド派手な髪とド派手なコートを纏った男。
 男は左腕を必死に抑え、座り込んでいた。

「面白い身体を持っているじゃあないか、青海人」

 男の周囲に佇む白刃に目をやりながら、エネルは笑う。
 あの白刃はスピード、切れ味共に相当な物。
 常人であれば一歩と移動する事すら出来ずに切り刻まれているだろう。
 だが、エネルは常人でもなければ、並大抵の達人とも一線を画している。
 ゴロゴロの実の能力を抜きにしたとしても、かの麦藁海賊団船長と正面から戦闘できるだけの戦闘技術を有しているのだ。
 その身体能力を充分に活かせば、先程のような剣幕ぐらいであれば対処は可能。
 その事をエネル自身、自負しているからこそ、彼の余裕は途切れを知らない。
 プラントという圧倒的力を前にしても、不遜な笑みを張り付かせていられる。

342STRONG WORLD/神曲・最終楽章 ◆vXe1ViVgVI:2009/10/24(土) 17:17:22 ID:Ii3Py09k0
「その刃でエル・トールを防いだのか? どうやらあの男のようなゴム人間という訳ではなさそうだが……」

 とはいえ、エネルが油断しているかと言えば、それもまた違う。
 エネルは慎重に眼前の男の事を観察していた。
 軽く見渡した限りでは周囲に『ヒライシン』があるようには思えない。
 『ヒライシン』が無いという事は、エル・トールはこの男が自力で防御したという事。
 過去の経験からして多少の警戒をするに越した事はない。
 そうでなくても自分の能力は謎の制限を受けているのだ。
 全能の神であろうと警戒を覚えるのは間違いではない。

「ヤハハ……少し興味が沸いたぞ。この場が禁止区域となるまであと五十分程度……脱出の時間を除いても三十分は大丈夫であろう。
 ―――遊んでやるぞ、青海人」

 顔を愉悦に歪めたままエネルは告げる。
 全能たる神として、圧倒的強者として、眼前の男と相対する。
 警戒はあれど勝利への確信は揺らがず、暇つぶしと称して勝負を挑む。
 遊びという言葉に裏はない。
 男の後方に浮かぶ十数の白刃を前に、ただ純粋な娯楽を目的として戦う気であった。

「……止めろ……」

 対する男が告げた言葉は短小なもの。
 耳を澄まさねば聞こえない程の声量で男は言葉を紡ぐ。

「……早く……今直ぐに此処から離れてくれ……」

 歯を食い縛り、冷や汗を顔中に流しながら男はエネルを睨んでいた。
 その瞳に含まれる嘆願の感情にエネルは直ぐさま気が付いた。
 呆れたように息を短く吐き、エネルが口を開く。

「何だ命乞いか? 残念であったな、私に見付かった時点で貴様に未来はない! ヤハハハハハハ! 己の不幸を呪うが良い!!」

 男の言葉をエネルは命乞いと判断した。
 何の事はない、自分を前にすれば誰もが行う当然の行為。
 自然の摂理と言っても何ら遜色はない。
 どんな能力者かは知らないが、実力の差を読み取るだけの知能は持っているらしい。

「行くぞ! 3000万ボルト・雷獣(キテン)!!」

 軽快な打音と共に、エネルの背中に備わった太鼓が変貌を見せる。
 男に向けて一直線に走り出す獣を象った雷。
 だが、膨大な閃光と轟音を前にして男は不動。
 ただじっと、迫り来る雷を見詰め続け―――突然その左腕が跳ね上がった。
 ビクリと、まるで痙攣を起こしたかのように唐突に、大きく、左腕が跳ね上がった。
 そして、男に迫る雷獣が―――直進を止めた。
 いや、正確に言うならば止めさせられた。
 それはまるで壁にぶち当たったかのように……雷獣は形を崩し、そのまま宙へと霧散したのだ。

「チィッ!」

 お返しとでも言うかのように殺到する数本の白刃を、エネルは舌打ちと共に回避していく。
 身を翻し、剣で叩き落とし、地面を踏み抜き、その全てを器用に避わすエネル。
 全力で地面を踏み抜き、十メートル程の距離を一気に跳躍。
 距離を取ると同時に、剣を握る手とは逆の左手を掲げ、雷へと変化させる。

「神の裁き(エル・トール)!」

 そして、白刃の主向けて一閃。
 半壊の森林を燃やし尽くしながら、雷が円柱状に赤コートの男へと直進していった。
 が、この雷もまた、先程の雷撃同様に不可視の防壁に阻まれる。
 残光を撒き散らし、またも虚空へと消失していった。

343STRONG WORLD/神曲・最終楽章 ◆vXe1ViVgVI:2009/10/24(土) 17:18:32 ID:Ii3Py09k0
(チッ、何なのだ。あの見えない謎の壁は? おそらくは実の能力だろうが……全容が見えん)

 現状では完璧に能力を抑え込まれてるエネルであったが、今までのような醜態を晒す事はない。
 敵を冷静に観察し、能力の考察を進めていく。
 ゴム人間に避雷針……その二つの存在により、彼は自身の能力にある『弱点』という概念を知った。
 その経験は彼自身も気が付かない内にではあっが、彼の精神を成長させていた。
 能力に対する自信はそのままに、ただ能力を過信する事はなく……彼は『考えて』戦うという事を、モンキー・D・ルフィとの戦い、そしてこのバトルロワイアルから学習していた。
 間隙なく繰り広げられる白刃の波を回避し続けながら、エネルは思考を回していく。

「ならば、これでどうだ」

 思考に用いた時間はほんの数秒。
 その数秒という短い間に、エネルは謎の防壁に対する打開策を考え付いた。
 後は試行するのみ。熾烈極まる攻撃の雨の中、エネルは再び距離を取る。
 ジェネシスの剣が再度その背中の太鼓―――その全てに叩き込まれた。

「1億2000万ボルト……雷獣(キテン)・雷鳥(ヒノ)・雷龍(ジャムブウル)!!」

 そうして出現するは三種の形状に区分けされた雷の塊。
 それぞれが青白く発光しながら、まるで意志を持つかのように別々の進路を進んでいく。
 雷獣と雷鳥は正面から、雷龍は上方から男へと向かっていった。

 ―――エネルの考えた、不可視の防壁を破る策は二つ。

 一つは正面からの純粋な力による防壁の破壊。
 一つは上方からの防壁自体を避けての攻撃。
 正面からは雷獣と雷鳥を突撃させ破壊を試みる。
 雷龍は上方に迂回させ、男の真上から攻撃を行う。
 上手くいけば三つの雷撃が命中、失敗したとしても上方から攻めた雷龍は命中する筈だ。

「くっ……!」

 此処にきて、ようやく男の表情に焦燥感が浮かんだ。
 その男の表情を見て、エネルは自身の策に小さな自信を覚える。
 当たる……少なくとも片一方は当たる。
 エネルの表情に凄惨な笑みが張り付いた。
 その視界の中では、既に二匹の雷が不可視の壁に激突していた。
 今までで一際大きな閃光と雷音が森林を駆け抜けるが―――やはり突破には至らない。
 雷獣と雷鳥は形を崩し、虚しくも空中へと散っていった。

(ふん、力押しは効かんか……だが、こちらはどうだ!)

 しかし、神の攻撃はこの程度では終わらない。
 雷の龍が標的を焼き殺すべく上空から急降下。
 男の真上から一直線に急迫していく。
 防壁があるだろう地点を越えて尚、雷龍はその勢いに陰りを見せる気配すらない。
 自身の予測が正解であったとエネルは確信した。

(なかなかに愉快な能力であったぞ、青海人……だが、相手が悪かったな! この戦い、私の勝ちだ!)

 ―――確かにエネルの予想は当たっていた。
 エンジェルアームの力により形成された不可視の防壁は、確かにヴァッシュの正面にのみ設置された物。
 真上からの攻撃には対応する事が出来ない。
 このまま進めば、ヴァッシュの身体をその雷により焼き尽くす事が出来るだろう。
 その点に於いてはまさに正解。エネルの考え通りであった。



 ―――だが、まだ足りない。



 確かに『防壁を突破する事』は出来るだろう。
 だが、ヴァッシュを殺害するにはまだ足りない。
 もう一つ、ヴァッシュには現状を打開する手段を有しているからだ。
 それはヴァッシュ自身に埋め込まれていた、彼自身の力。
 この殺し合いの場で手に入れた『兄の力』とは別の、彼自身の力。
 彼自身が生まれ落ちた時から有していた、災厄の種。



 ヴァッシュは、『その力』を―――使用した。

344STRONG WORLD/神曲・最終楽章 ◆vXe1ViVgVI:2009/10/24(土) 17:20:26 ID:Ii3Py09k0
「何……だと……?」


 思わず、エネルは言葉を零していた。
 奴の頭上に降り落ちた筈の雷龍。
 自分の予想通り、奴の上方には防壁はなかった。
 あと十数メートルの所までは接近したのだ。
 そう、あと十数メートル進めば奴の命を摘む取ったというのに―――消失した。
 当たると確信していた雷は、謎の光球に飲み込まれ消失してしまった。
 自身の元に帰還する事もなく、まるで存在自体を抹消されてしまったかのように、消えた。
 奴の右腕から放たれた光球により、消されてしまったのだ。

「馬鹿な……! 我が雷が……!」

 その変化は余りに唐突であった。
 十数に及ぶ刃を生み出していた奴の腕とはまた逆の側―――右腕が変化を見せた。
 左腕と同様にまるで天使の如く白羽を発生させ、だがしかし左腕のような刃とは全く異なった、変化。
 それは、まるで、砲台のような姿形を取っていた。
 そして、砲台から発射される極光。
 極光は雷龍と接触すると同時に光球となり、周囲の空間ごと雷を飲み込んだ。
 ほんの一瞬、刹那にも満たない時間で―――シャムブウルはこの世界から消滅したのだ。


「くっ、ならば……直接電撃を叩き込んで……!」


 焦りと共に駆け出そうとした時にはもう遅い。
 エネルが足を踏み出す前に勝負は殆ど決していた。
 敗因は、ヴァッシュの砲撃に虚を突かれ、この戦闘中常に動かし続けていたその足を止めた事。
 たった数秒の静止とはいえ、数々の白刃が彼の身体を包囲するには余りに多すぎる時間。
 前後左右上下に至るまで―――白刃が、エネルの周囲全てを覆い尽くした。
 逃げ道は、ない。
 ヴァッシュの左腕から生えた数十に及ぶ刃が、エネルを完全に包囲していた。

「……ぐ……おお……!」

 必死の形相で、顔中から汗を流しながらヴァッシュは苦悶を口から吐き出した。
 まるで痛みに耐えるような苦しみに満ちた声。
 そんなヴァッシュを、そして自身を囲め刃の数々を、エネルは呆然と見詰める。
 敗北という受容するには余りに大きい現実を前に、エネルは自失状態で立っていた。



 負けたのか?
 全能である筈の自分が、こんな所で、あんな男に?
 自分が、超越者たる自分がこんな遊戯の中で―――死ぬのか?



 ―――この時エネルは、今までの人生で初めての思考を行っていた。
 四方に敷き詰められた鋭い刃の数々。
 全身の雷化が可能であれば容易に脱出できる状況……だが制限下に居る今、それは不可能。
 刃は徐々にではあるが包囲の幅を狭め、覆い隠すようにエネルへと近付いていく。
 手を動かすスペースすら存在しない。
 まさに手の打ちようがない状況であった。

(我は……我は神なるぞ!! こんな……このような下らん遊戯で…………死ぬ訳が……!)

 沸き立つ感情とは裏腹に、現状を打開する方法は欠片も思い浮かばず。
 憤怒に顔を染めるエネルを尻目に、刃はゆっくりとゆっくりと距離を詰め―――遂にその身体に触れる。
 背中、胴体、胸部……雷化する手足と顔面を除く全ての部位に、白刃がめり込んでいく。
 白刃により形成される、小さな、本当に小さな切り傷。
 その傷から浮かぶ珠の如き小さな血液。
 貯まった真紅が重力に引かれ、細い筋となり下方へ流出していく。
 痛覚とさえ呼べない掻痒感が身体中を駆け巡っていった。

 その掻痒感が、エネルには溜まらなく嫌だった。

 一思いに突き立てるのならば、まだ良い。
 恐怖を覚える暇すらなく、一瞬で絶命に至れるからだ。
 だが、現在エネルが置かれている状況はどうだろうか。
 ゆっくりと身体に侵入してくる十数の白刃。
 それは、ヴァッシュが自身の信念を貫こうと足掻き続けている証拠なのだが……今のエネルにとっては逆効果でしかない。
 逃亡する手だても無ければ、勝利を掴み取る手段もない。
 何もする事ができず、ただ緩慢に『死』を待つだけの状況。
 それは、最強という『死』から最も遠方に位置し続けていたエネルが味わう、初めての感覚であった。
 『死』に対する『恐怖』を―――エネルはこの時、確かに『恐怖』を感じていた。

345STRONG WORLD/神曲・最終楽章 ◆vXe1ViVgVI:2009/10/24(土) 17:21:38 ID:Ii3Py09k0
「や、止めろ……」

 その口から漏れたのはか細く弱々しい言葉。
 だが、白刃は進行を止めない。
 ゆっくりとではあるが、ヴァッシュの意志とは反して、進んでいく。
 胴体から流れ出る血量が少しずつ少しずつ増加し、掻痒感が歴然とした痛みに変貌していく。
 エネルの心中を蝕む恐怖が、その範囲を広大なものへとしていった。
 あと数センチ刃が進めば、彼の命は終焉を迎える。
 遅々として迫る最期の瞬間を、彼は恐怖の渦中で待ち続け、そして―――


「ダメだ!!」



 ―――寸前、放たれた声により白刃が一瞬だけ動きを止めた。
 声が放たれた先には一人の男……新庄・運切。
 新庄は身体中を土や木の葉で汚しながらも、其処に立っていた。
 立って、精一杯といった様子で声を張り上げていた。

「ダメだ……ダメですよ! これ以上……これ以上、人を殺したらあなたは……!」

 哀願の色さえ含まれたその言葉は、エネルにも、そしてヴァッシュにも届いていた。
 誰も殺さない、誰も殺させない、何より彼にこれ以上苦しんで欲しくない……自身の想いを言葉に変換し、新庄は声を投げ掛ける。

「くっ……ぐっ……!」

 だが、その想い虚しく、白刃は直ぐさま侵攻を再開してしまう。
 ヴァッシュの意志に従う事なく、ただ殺意を持ってエネルを攻め立てる。
 彼にはその侵攻速度を緩める事しか出来ない。
 どうしても、矛先を阻止する事は出来ないでいた。

「う……あああああああああああ!!」

 幾ら叫べど、幾ら念じれど、左腕は命令を受け入れない。
 その時動いたのは、彼自身の力が秘められた右腕だった。
 右腕から発生した白色の翼が、ヴァッシュの後方に佇む神社を襲撃し、粉砕。
 神社を細かい木片の山々に変え、再び彼の右腕へと戻っていく。
 後に残された物は、木屑と化した神社だった物のみ。
 そして、散らばる木片の一欠片に、ヴァッシュは自身の左腕を―――突き立てた。
 宙を舞う鮮血と共に、陸に上げられた魚の如く跳ね回る左腕。
 白刃が、動きを止めた。

「ああ、あああああああああああ!!!」

 何度も、何度も、何度も、ヴァッシュは木片へと腕を突き立てた。
 その行為の度に鮮血が地面に吹き飛び、左腕が跳ね上がる。
 左腕が跳ね上がる度に白刃は少しずつ後退していく。
 痛みに悶えながら白刃が、元の左腕の形へと戻っていった。
 そして―――

「ハッ……ハッ……ハッ……ハッ……」

 ―――数十に渡る自傷の末に、白刃はヴァッシュの左腕へと帰還しきった。
 再度変化する様子はなく、夥しい量の血を外へ流しながら、左腕が震える。
 ヴァッシュは大きく深く息を吸い、精根突き果てた様子で地面に座り込んだ。
 それは新庄も同様。
 窮地からの解放を認識したが故か、彼もまた身体を弛緩させ地面に座り込む。

 ただ一人、エネルだけがその場に立ち尽くしていた。

 屈辱に唇を噛み締め、エネルは殺気と憤怒と……幾分かの恐怖が込められた視線をヴァッシュへとぶつける。
 ギリ、と手中のレイピアを握り締め、エネルは屈辱を晴らす為、構えを取った。

「止めた方が……良いよ……」

 そんなエネルに赤コートの男が一言、声を掛けた。
 変わらぬ虚無を瞳に宿し、空っぽな笑顔をエネルへと向ける。

「こっちのトリガーにも……指がかかっているのさ……」

 空っぽな笑顔と共に、白色の砲台と化した右腕を向けて―――ヴァッシュはエネルに笑い掛けた。
 全てを消し去るその砲台を前に、エネルは唇から血を滲ませる。


(……我は……我は神なるぞ……! 何故、私が青海のサル如きに……! 何故、私が……!)


 屈辱……ただただその感情がエネルの心を騒めき立たせていた。
 一秒、二秒と白色の砲台を睨み付けるエネル。
 そうして一分程の時間が経過したその時―――エネルの手から真紅の聖剣が落下した。
 膝を付き、地面に拳を叩き付ける『神だった男』が、そこには居た。

346STRONG WORLD/神曲・最終楽章 ◆vXe1ViVgVI:2009/10/24(土) 17:23:14 ID:Ii3Py09k0
□ ■ □ ■



 終わった、と新庄は地面にへたり込みながらも、安堵の息を吐いた。
 始まりは上空からの謎の攻撃。
 一瞬死さえも覚悟したが、この攻撃はまるで見えない膜に弾かれたのように、外れていった。
 同時に、その瞬間視界を覆い隠したのは彼の右腕から発現した白色の翼。
 その翼は自分の身体を易々と弾き飛ばし、森林の奥底へと退避させた。
 戦闘に巻き込ませないよう彼が行ったのだ、と気付いたのは異次元バトルを観戦し始めて直ぐの事。
 異次元バトル……まさに今回の戦闘はそう敬称するのが相応しいと思う。
 幾度と放たれる青白い閃光に、それを防ぐ目に見えない膜。
 彼の左腕から出現した何本もの刃を易々と回避し続け、隙を塗って反撃を行う襲撃者。
 とても自分が介入できる域を遥かに越えていた。
 まさに次元が違う戦闘であった。

「こっちのトリガーにも……指がかかっているのさ……」

 しかし、その戦闘にも終焉の時は訪れた。
 武器を手放し、四つん這いの状態で悔しさに呻きを漏らす襲撃者。
 襲撃者の身体には微小ながらも山のような傷が残されており、そこから夥しい量の真紅が流出している。
 屈辱に満ちた呻き声だけが、場を支配していた。

「……君がなぜ殺し合いに乗ったのか、僕には分からない……」

 そんな静寂の場で最初に口を開いたのは、彼だった。
 疲労困憊の顔に淋しげな笑顔を映し、呻く襲撃者に声を落とす。

「……でも、もう止めにして欲しい……もう誰も殺さずに生きて欲しいんだ……」

 その儚げな笑顔に、やっぱり不安が募る。
 もしこのまま彼と別れて、本当に『生』の道を選択してくれるのか?
 このまま独り禁止エリアに残り、『死』を受け入れてしまうのではないか?
 ただ、それだけが不安で仕方がない。
 どうすれば良いんだろう?
 彼が確実に未来を掴んでくれる方法、それが知りたい。
 考える。彼の笑顔を視界に映しながら、ただひたすらに考える。
 共に行動する事は困難の極み。
 でも、彼を独りにして本当に禁止エリアから脱出してくれるのか分からない。
 知りたかった。
 彼が必ず明日へと歩んでくれる方法……それを―――、


『……新庄、これ以上は危険です。今すぐにでも行動しなければ……』
「……だってさ。さぁ、行くんだ。そして誰も殺さずに生きてくれ……お願いだ……」


 ―――あ、


「貴様……名は何という……」


 ―――思い付いた、彼を救う方法を。


「……ヴァッシュ・ザ・スタンピードだ……」
「そうか……ヴァッシュ・ザ・スタンピード。次に……次に会った時は覚悟しておけ……! 絶対に殺す……絶対に殺してやるぞ……!」

 ふと見ると襲撃者さんが立ち上がり、彼から距離を開けている。
 おそらく逃亡する気なんだろうが、彼はそれを阻止しようとしない。
 ただ笑顔で、襲撃者の事を見詰めていた。
 今だ。
 今しかタイミングはない。
 今ここで言わなければ、この方法はもう使えない。


「―――ぼ、僕……僕、この人の事を監視します!」


 ―――そう、これが今僕に考えられる唯一の方法。
 この人を死なせない、唯一の方法。


『新庄!?』
「え…………い、いきなり何言ってんの、君!?」
「だ、だって、この人が本当にあな……ヴァッシュさんの言う事を聞くか分からないじゃないですか! だ、だから僕が監視します! この人が他の参加者を殺さないよう、僕がずっと監視してます!」

 彼……ヴァッシュさんは驚愕の表情でこっちを見ている。
 それはそうだろう。
 今まで無言で成り行きを見守っていた人間が、突然殺人鬼と行動したいと言い始めたのだ。
 驚くなという方が無理のある話だ。

347STRONG WORLD/神曲・最終楽章 ◆vXe1ViVgVI:2009/10/24(土) 17:25:10 ID:Ii3Py09k0
「いやいやいやいや! 何言ってんのさ!? さっきの戦い観てたよね!? この人、凄んごい危ない人なんだよ!?」

 ヴァッシュさんの言いたい事は分かる。
 このターバンを頭に巻いた男の人は、確実に殺し合いに乗っている。
 今はヴァッシュさんを前にしているから大人しいが、二人きりになったとしたら、絶対に僕を殺害しようとする筈だ。
 それくらいの事は僕にだって理解できる。

「大丈夫ですよ。仮に僕が襲われたとしても、ヴァッシュさんの『能力』があるじゃないですか。『参加者の現在地と生死を把握できる能力』が!」
「……は……?」

 ―――だから、不確かな物ではあるが、対処法も考えてあった。
 その対処法とは、ずばり虚言。
 この襲撃者に、嘘の事実を認識させるのだ。
 ヴァッシュさんに『能力』があると。
 別々に行動をしていたとしても、ヴァッシュさんはコチラ側の情報を逐一入手できる―――そんな『能力』を持っていると、襲撃者に認識させる。
 そうすれば襲撃者は迂闊に僕へと手を出せなくなる筈だ。
 その『嘘の能力』が抑止力となり、襲撃者は僕を殺害する事が出来なくなる。
 ヴァッシュさんとの戦闘に敗北し、ヴァッシュさんに殺され掛けたこの人なら……ヴァッシュさんに『恐怖』を覚えていたこの人なら、その効果は特段高くなるだろう。

「お願いしますよ、ヴァッシュさん。ヴァッシュさんの存在が、この人の凶行を止める抑止力なんです。
 だから―――絶対に死なないで下さいね」
「…………そういう、事ね……分かったよ、君の考えは良く理解できた……」

 ヴァッシュさんは諦めと呆れを混合させ、降参だと言わんばかりに軽く両腕を上げた。
 どうやら、僕のこの行動の意図に気付いてくれたらしい。

「そういう訳だから、君よろしくね。この子……」
「新庄です」
「そう、新庄君のこと守ってやってよ。君の能力なら楽勝だろ?」
「ふ、ふざけるなよ……! 何故、私が貴様の命令に従わねばならん!」
「……言っただろ、こっちのトリガーには指が掛かってるって。やろうと思えば何時でもやれるんだよ、僕は」
「なっ……!」
「でも、命までは奪わない……だから、その代わりに言う事を聞いてよ。安いもんだろ? 未来の代価にしてはさ」
「っ……!」
「ちなみに、君が手に掛けたにせよ、他の人が手に掛けたにせよ、新庄に何かあった場合はそれ一切君の責任ね」
「……!」
「もっとも失敗したら地獄の底まで追い掛けてくから、そのつもりで」
「…………」


 それからの展開は思った以上に迅速なもので……僕達は直ぐにヴァッシュさんと別れる事となった。
 襲撃者……エネルさんは、ヴァッシュさんの脅し文句が効いたのか、二人きりになっても何ら手を出してくる様子はない。
 ヴァッシュさんという抑止力は予想以上の効果を引き出しているらしい。

(これでヴァッシュさんも……)

 この摩訶不思議な状況に陥った今、ヴァッシュさんも『死』を選択する事はない筈だ。
 ヴァッシュさんという抑止力が存在するからこそ、僕はエネルさんに殺害されずに済んでいる。
 だからこそ、ヴァッシュさんが『死』を選択する事はない。
 他人の死を嫌うあの人だからこそ、絶対にその選択だけはしない筈だ。

(頑張って、下さい……)

 取り敢えずの進路は南。
 これからの行動については禁止エリアを抜け出た後に考えれば良いだろう。
 空には太陽が爛々と山吹色の輝きを見せている。
 四時間振りに踏み出した殺し合いの場は、内で行われてる凄惨な催しに反し、何処までも澄み切っていた。

348STRONG WORLD/神曲・最終楽章 ◆vXe1ViVgVI:2009/10/24(土) 17:26:28 ID:Ii3Py09k0
□ ■ □ ■



 木漏れ日が降り注ぐ森林の中にて、エネルは憤怒に顔を赤らめていた。
 後方を歩くは貧相な青海のサルが一人。
 殺害するに一秒と掛かる事もない、だが手出しができない青海人。
 いやそれどころか、他の殺人鬼から、守護すらしなければならない相手だ。
 何故ならこの青海人が死ねば、自分もまた殺されるから。
 あのヴァッシュ・ザ・スタンピードという男により、殺されるからだ。

(くそっ……どうしてこうなった……! 何故、神たる私が青海人の言う通りに動いているのだ……!)

 奴の『能力』とやらで、自分達の現在地は常に把握されているらしい。
 おそらくは心網(マントラ)のような能力なのだろう。
 だが、奴等の話しぶりからするとその効果範囲は会場全域。
 全ての参加者が制限下に置かれている今、その射程は脅威的なものだ。
 奴のみが制限の外に居るのか、それとも制限が設けられてでさえそれだけの効果範囲を持つのか……どちらにせよ、奴が異常な能力を有している事だけは確か。
 左腕を幾多もの白刃に変化させる能力、雷すら防ぎきる不可視の防壁、会場の全域を覆う索敵能力、そして……我が雷龍(ジャムブウル)を消滅させた光球。
 奴が様々な能力を有している、それだけは確固たる事実であった。

(こんなガキを……何故私が……)

 別段、恐れる事はない筈だ。
 この青海人を殺害し、再びヴァッシュ・ザ・スタンピードと合間見える事だって可能。
 先は奴の能力を読み違えた事から敗北を喫したが、その勝敗は均衡の上にあった。
 もう一度戦闘すればどうなるかは分からない。
 いや、充分に勝機は在る。
 分かっている。
 それは分かっているのだが……身体は動かない。
 後ろの小僧を殺害しようと考える度に、先の光景が頭をよぎってしまうのだ。


 謎の光球が雷龍(ジャムブウル)を消し去った、その光景が―――、


 数十もの刃が自分の身体を完全に包囲した、その光景が―――、


 薄皮を貫く刃の感覚が―――、



 ―――どうしても頭をよぎる。


 そして、その光景が頭をよぎる度に、身体が震え、脚がすくみ、冷や汗が噴き出す。
 この吐き気を催す感情は何なのだ?
 今までの人生で一度たりとも経験した事のない感情。
 あのゴム人間を前にした時さえも、こんな感情は覚えなかった。
 これは、この感情は―――何なのだ……!
 分からない。
 幾ら考えれど、この疑問に対する答えは出ない。
 ただ思い出されるは、何時ぞやか、ある男が放った一言。

『下の海には……もっと怪物みてぇな奴らがうじゃうじゃいるんだ!!』

 ただその言葉だけが何度も、何度も、頭の中で鳴り響く。
 何故、今更になって奴の言葉などを思い出すのか……それすらも分からない。
 私は……私は一体どうしてしまったのだ?
 訳が分からない。
 ただ纏まらない思考のまま、道なき森林を歩いていく。
 まるで青海のサルを守るかのように周囲を警戒しながら、進んでいく。
 これから先どう動いていくのか―――その思考さえ停止させたまま、その思考さえ謎の感情に遮られたまま、進んでいく。
 心に虚無を宿したまま、先へと進んでいく―――

349STRONG WORLD/神曲・最終楽章 ◆vXe1ViVgVI:2009/10/24(土) 17:29:30 ID:Ii3Py09k0
【一日目 日中】
【現在地 A-4 森林】

【エネル@小話メドレー】
【状態】疲労(大)、胸に大きな打撲痕、身体中に切り傷(小)、『死』に対する恐怖
【装備】ジェネシスの剣@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
【道具】支給品一式、顔写真一覧表@オリジナル、ランダム支給品0〜2
【思考】
 基本:主催者も含めて皆殺し。この世界を支配する。
 0.何なのだ、この感情は……!
 1.このサルを守るのか……?
 2.ヴァッシュに復讐したいが……
【備考】
※心網の索敵可能範囲がおよそ1エリア分である事に気付きました。
※漆黒の鎧を纏った戦士(=相川始)、はやてと女二人(=シャマルとクアットロ)を殺したと思っています。
※身体に掛けられた制限及びゴロゴロの実の能力を駆使しても首輪を外せない事に気付きました。
※なのは(StS)の事は覚えていますが、彼女と会ったのが何時何処でなのかは覚えていません。
※なのは・フェイト・はやての3人が、それぞれ2人ずついる事に気付いていません。
※背中の太鼓を二つ喪失したことにより、雷龍(ジャムブウル)を放つ事ができなくなりました。
※ヴァッシュに『参加者の現在地と生死を把握できる能力』があると思っています。

【新庄・運切@なのは×終わクロ】
【状況】全身に軽度の火傷、全身に軽い打撲、全身ずぶぬれ、男性体
【装備】ストームレイダー(15/15)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】なし
【思考】
 基本:出来るだけ多くの人と共にこの殺し合いから生還する。
 1.ヴァッシュを死なせない為にも、生き残る
 2.エネルと行動。彼が人を殺さないように監視する
 3.レイが心配。
 4.フェイトさん……
 5.ヘリコプターに代わる乗り物を探す
 6.弱者、及び殺し合いを望まない参加者と合流する。
 7.殺し合いに乗った参加者は極力足止め、相手次第では気付かれないようにスルー。
 8.自分の体質については、問題が生じない範囲で極力隠す。
【備考】
 ※特異体質により、「朝〜夕方は男性体」「夜〜早朝は女性体」となります。
 ※スマートブレイン本社ビルを中心して、半径2マス分の立地をおおまかに把握しました。
 ※ストームレイダーの弾丸は全て魔力弾です。非殺傷設定の解除も可能です。
  また、ストームレイダーには地図のコピーデータ(禁止エリアチェック済み)が記録されています。
 ※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。




□ ■ □ ■



 これからどうしようか、とヴァッシュは一人で歩きながら考えていた。
 自分の左腕は、やはり意志に反し行動する。
 先の戦闘だって、新庄の言葉がなければ確実に殺害していた。
 左腕から生えた白刃で彼の身体をめった刺しにし、殺害していただろう。
 あの言葉があったからこそ、ギリギリの所で踏みとどまれたのだ。
 あの言葉があったから―――、

「やっぱり……駄目だよ……」

 ヴァッシュはポツリと呟いた後、歩みを始める。
 目的地など無い。
 でも新庄の為にも死ぬ事は出来ない。
 ただ誰とも会わないよう、ただ誰も傷付けないよう……それだけを考えてヴァッシュは歩く。
 不意に開けた森林にすら気付く事なく、その瞳に何も映さず、ヴァッシュは進んでいく。
 変わらぬ後悔を背負ったまま、ヴァッシュ・ザ・スタンピードは昼の森林を突き進む。

【一日目 日中】
【現在地 A-4 草原】

【ヴァッシュ・ザ・スタンピード@リリカルTRIGUNA's】
【状態】疲労(大)、精神疲労(大)、悲しみ、融合、黒髪化四割
【装備】ダンテの赤コート@魔法少女リリカルなのはStylish
【道具】なし
【思考】
 基本:新庄を死なせない為にも、とりあえず生き残る。
 1.今のところは、誰にも遭わないようにしたい。誰にも迷惑をかけたくない。
【備考】
 ※第八話終了後からの参戦です。
 ※制限に気付いていません。
 ※なのは達が別世界から連れて来られている事を知りません。
 ※ティアナの事を吸血鬼だと思っています。
 ※ナイブズの記憶を把握しました。またジュライの記憶も取り戻しました。
 ※エリアの端と端が繋がっている事に気が付いていません。

350STRONG WORLD/神曲・最終楽章 ◆vXe1ViVgVI:2009/10/24(土) 17:34:01 ID:Ii3Py09k0
これにて投下終了です。
前後編になる場合は、>>346からを後編ということでお願いします

351リリカル名無し:2009/10/24(土) 17:49:01 ID:1XseuodU0
投下乙です。

エネル完全敗北! 太鼓を失ったお陰で実質パワーダウンでしかも新庄の機転で動きにくくなってしまったとは……
でも新庄……本当に大丈夫なのか……
ヴァッシュはとりあえずこのまま死ぬ事は無くなったけど……完全復活は遠いか……
それにしても制限ありとはいえAAはチート過ぎるなぁ……

あ、そういやまた1つ施設が崩壊してしまったね……

352リリカル名無し:2009/10/24(土) 18:14:51 ID:5UJnztfc0
投下乙です
エネルも強者だがヴァッシュはそれ以上にヤバいからなあ
本音言うとここでエネルが良い様にされたのは残念だけど仕方ないか
でも新庄君、度胸あるな

ああ、また施設が崩壊したのか、もう少しで禁止エリア指定でゆっくり余生を過ごせたのに

353リリカル名無し:2009/10/24(土) 22:47:59 ID:N2.NImwIO
投下乙です
いかにもヴァッシュと新庄らしい平和的な判断。これでヴァッシュも生きる目的が出来たか
一方でエネルもエネルらしい結果だなぁ。
力にものを言わせて神を名乗ってはいたものの、やはりガンフォールやルフィと比べると人間としての心は弱いわけだし
自分より遥か上を行く力に恐怖心を植え付けられればこうなるのも仕方ないか
エネルと新庄のぎくしゃくコンビの今後に期待w

いくつか質問です
エネルの雷龍は、太鼓そのものが変質したものなのでしょうか?
太鼓から出撃した雷が雷龍であって、太鼓はその発生源だと思っていたのですが…
それと、太鼓を叩く組み合わせで雷龍や他の雷獣を使い分けていたエネルが、雷龍を出す為の太鼓を失ったということは、他の雷獣も全て使用不可になったということでしょうか?

354 ◆vXe1ViVgVI:2009/10/24(土) 23:13:00 ID:zIEErQxgO
携帯から失礼をば。

>>353
えーこれは自分の主観での回答になってしまいますが、雷龍などは太鼓そのものが電撃に変換されて発生する技だと考えています。
自身の身体(装飾品や服なども含み)を炎なり雷なりに変化させて、技を発動させたり、攻撃を無効化させたりするのがロギア系な訳ですし。
あと雷龍の太鼓が消滅しても、雷獣や雷鳥の発動には問題ないという事でお願いします。
原作描写を見る限り、雷龍を発動する際に叩いてる太鼓と、雷獣や雷鳥を発動する際に叩いてる太鼓は違っていますしね。
これも主観からの意見ですが、なのロワ内に於いてはそんな感じで判断して下さい

355リリカル名無し:2009/10/25(日) 15:59:50 ID:bvDWtUaMO
マジレスするとエネルの太鼓は自分でつくった電気を溜め込んでる乾電池の役割
ストックしておいた電池が無くなっただけで、別にジャムブウルが出せなくなる訳じゃない筈

356 ◆7pf62HiyTE:2009/10/26(月) 19:51:35 ID:XKp2CptY0
八神はやて(StS)、クアットロ分を投下します。

357銀色クアットロ ◆7pf62HiyTE:2009/10/26(月) 19:55:24 ID:XKp2CptY0





―――This world is a stage and every man plays his part―――





          ―――この世は舞台、人は皆それぞれの役を演ずる―――











 F-4に1人の女性が歩く―――その方向はF-5にあるスマートブレインのある東に向いていた。
 目的はそこで首輪解除の手掛かりを得る事―――『だった』。
 その理由は簡単な事、彼女の手には何も無かったのだ。いや、荷物だけではなく胸にも斬られた傷があり、今も出血を続けている。
 それでも足を止めるわけにはいかない、何故なら後方には今にも自分の命を脅かそうとする漆黒の剣士が迫っているのだ。追いつかれたらどうなるかなど考えるまでもない。
 真面目な話『奴』の思惑に乗る形になっている為、正直悔しさと怒りを感じている。それでも自身の目的を果たす為には足を止めるわけにはいかない―――





 彼女―――■■■■■は何処で間違いを犯したのだろうか?





   ★   ★   ★   ★   ★

358銀色クアットロ ◆7pf62HiyTE:2009/10/26(月) 19:57:15 ID:XKp2CptY0





 ひたすらに八神はやてとクアットロは東へと走っていた。その道中はやてはクアットロに翠屋で起こった事を説明していた。
 まずはセフィロスの境遇の話―――彼の世界のはやてに保護され機動六課に入りそしてJS事件後この場にやって来たそうだ。
 とはいえはやてもシャマルもセフィロスの存在など知らなかったし、セフィロスの方もこの場でもう1人のはやてと出会ったが彼女もセフィロスを知らずそれとは別に仮面ライダーを知っていたという話だった。
 さて、はやて達にしてみればその事は並行世界で説明できるためその事をセフィロスに説明したわけだが……
「……でも、普通に話出来たんでしたらどうして?」
 クアットロの指摘はもっともだ。セフィロスの境遇や彼と情報交換出来たならばはやての味方になる事はあっても敵になる事は無いはずだ。しかしはやてからの返答はない。
「……まさか私がいた事が原因なんですか?」
 悲しそうな言葉で問いかけるクアットロ、敵であるクアットロと行動を共にしていた事が彼の逆鱗に触れてしまったのだろうか?
「まぁ、全く違うわけではないけどな……」
 はやてによるとクアットロと同行している事を指摘され、その事について説明している際にいきなり襲いかかってきたのだ。それによりシャマルが致命傷を負い、逃走を余儀なくされたのである。
「あの……今すぐにでも戻ればまだ助けられ……」
「シャマルは私を守る為に盾になってくれたんや! シャマルの為にも今は逃げるんや!」
 シャマルを助けたいと語るクアットロに対しはやては声を強く訴える。
(そうや……シャマルの犠牲を無駄にするわけにはいかん……何としても奴を仕留めんと……)
 はやての内心にはセフィロスに対する怒りがあった。が、それはシャマルを殺された事によるものではない。
 あの男は自分が『八神はやて』ではないと完全否定したのだ。他者を平気で斬り捨てる自分は『八神はやて』ではないと―――
『他者を利用し陥れることを嫌い、他者を切り捨てることを嫌い……
 ……たとえ自分が傷つこうとも、その目に映るもの全てを、その手で守り抜こうとしていた』
 そうだ、確かに昔はそうだっただろう。その当時の自分しか知らない人間にしてみれば信じられないのも無理はない。
 だが、ゴジラの封印の為に犠牲になった家族を助ける為には仕方がなかったのだ、自分だって誰も犠牲にしない方法があるならばそれを実行していただろう。
 大体、自分が本当に守りたかったものは何も変わっていない。それは自分の家族であり、彼女達を助け守る為に赤の他人を犠牲にする事を否定する謂われは全く無い。
 そもそもの話、何よりも大切な家族は犠牲にして名前すら知らないその他大勢を助けてへらへら笑っている自分などどう考えたって自分ではない。
 何も知らない奴に自分を否定されるいわれは全く無い。何としてでも奴は自分の手で仕留めなければならない―――はやてはそう考えていた。

「……でも、どうするんですか?」
「どうするって、何をや?」
「敵になったんだったら何れはどうにかしないといけないんですよね? 止める方法なんてあるんですか?」
 セフィロスを殺すと頭で考えた所でそれは困難な事だ。推測レベルだがあの男の実力はほぼ確実にシグナム……いや、恐らく高町なのは及びフェイト・T・ハラオウン以上と考えて良いはずだ。
 勿論、本来の武器が無ければその実力は発揮出来ないだろうが、奴の口ぶりから考えて既に自身の実力を発揮出来る武器―――正宗と言ったかそれを所持している筈だ。
 いや、それ以前にシャマルを斬る時に使われた刀ははやての目から見ても明らかに異質な武器だった。
「クアットロ、奴の武器は見たか?」
「ええ……何かは知りませんけど異様な感じが……」
 紫の光を放つ魔剣―――本来の武器であろう正宗を使わず敢えてそれを使っているのが少し引っかかるが、それは強力な武器に違いない。
 また正宗の事も踏まえ奴は本来の力をほぼ発揮出来ると考えて良いだろう。

359銀色クアットロ ◆7pf62HiyTE:2009/10/26(月) 19:58:13 ID:XKp2CptY0
 対してこちらはどうだろうか? こちらは自身のデバイスを奪われている為本来の実力は発揮出来ないし仮にデバイスを手に入れて全力を出せる状態でも正直厳しいというのが本音だ。
 しかしそれでも奴を倒す手段を考えなければならない。はやての脳裏には3つの方法が浮かんだ。
 1つ目―――度重なる激闘で疲弊した所を仕掛ける。
 2つ目―――なのは及びフェイトクラスの強さ(最低でもヴィータ以上)を持つ参加者2名以上で一斉に仕掛ける。
 3つ目―――遠距離からの強力な攻撃で仕留める。
 だが、1つ目の方法は状況頼みというあまりにも都合がよい話なので除外する。
 その為必然的に残る2つの手段という事になる。しかし、2つ目の方法も正直厳しいだろう。
 セフィロスとある程度戦える参加者としては最低でもヴィータ以上の強さが必要だ。正直な所スバルやチンク辺りでは心許ない。
 だが、それ程の強さの参加者などどれだけ残っている? はやての知る限りなのは、フェイト、ヴィータ、ゼスト・グランガイツぐらいだ、聖王状態になれる場合のヴィヴィオを入れた所で5人しかいない。
 また、運良く合流出来ても各々のデバイスが無ければ実力が発揮できない為その意味でも難しいだろう。
 更に言えば、正直な所セフィロスは自分自身の手で仕留めたい為、違う方法をとりたいと考えている。
 では3つ目だが、要するに近接戦を得意とする相手に馬鹿正直に近接戦を仕掛ける必要は無いという話だ。遠距離からの強力な攻撃を仕掛ければいかに強力なセフィロスでも仕留められるはずだ。
 この方法の最大の利点は条件さえ揃えばはやて1人でも実行に移せるという事だ。遠距離からの攻撃は自身の得意分野、十分に有効な手段だ。
(その為に必要なのは……夜天の書、そいつがあれば勝機はある!)
 必要なのははやて自身のデバイスである夜天の書だ。他のデバイスではセフィロスを仕留める程の威力を出せる保証がないが、夜天の書ならばそこから必要な魔法を読み込めば十分にいけるはずだ。
 制御について不安はあるが、セフィロスを仕留められるならば多少の犠牲は問題ではない。
(とはいえ……どちらにしても困難な話やけどな……)
 しかし何れの手段を執るとしても困難な事に変わりはない。
(まずは大至急で戦力を確保せなあかん……けどなぁ……)
 優先すべきは戦力の確保、セフィロス対策の意味でもそれ以外の分野でも必要な人材だ。
 シャマルを失った今、自分の傍にはどう考えても此方を利用するだけしてボロ雑巾の様に捨てるつもりとしか思えないクアットロだけだ。
 もっとも、クアットロの手口は参加者を口車や演技で此方を騙したり操ったりするもので実質的な戦闘力は戦闘機人の中では最弱の部類、直接戦闘になればまず勝てるはずだ。それがわかっているクアットロがここで仕掛ける可能性は低いだろう。
 恐らくクアットロの場合セフィロスに追いつかれた時に自分を盾か囮にして切り抜けようとするはずだ。そんな事など誰がさせる、その前に逆にシャマル同様盾になってもらおうと考えていた。
 クアットロの利用価値はその知略とチンクに対する人質と盾役程度だ、その時までせいぜい利用させてもらう。
 話を戻そう、今後の為にもクアットロ以外の戦力の確保は急務。気になるのは戦力になる人物が殺し合いに乗るかどうかだ。放送でのプレシアの言葉によって殺し合いに乗った人物が増えた可能性はある。
(流石に騎士ゼストやヴィヴィオ辺りは無いやろけどな……なのはちゃんとフェイトちゃん辺りは読み切れん……ヴィータは……)
 ヴィータに関しては五分五分と言った所だろう。確かに『八神はやて』の名前が呼ばれた事で殺し合いに乗る可能性は十分にある。
 だがヴィータは少なくても自分……『八神はやて』を偽物だと思い込んでいる。つまりヴィータが既に死亡した『八神はやて』を自分……偽物の『八神はやて』だと判断しているならば……可能性は十分にある。
(あの場にはヴィータはおらんかった……ヴィータがあの状況から私が殺されたと思ってくれたなら……後はどうやって味方に引き込むかやな……)
 自分を敵視している以上、自分が目の前に現れたらもう片方が死んだと判断されてしまう。そうなればその時点で殺し合いに乗る可能性が高い。
(いや、もう片方の私がどんな私かはヴィータは知らん……ならば……)
 ヴィータに対しては最初に出会った時の自分ではなく、もう片方の『八神はやて』として接する事を考えた。つまり死亡した『八神はやて』を自分だと思い込ませるのだ。
(上手くいけばヴィータに関する問題はクリアや……)

360銀色クアットロ ◆7pf62HiyTE:2009/10/26(月) 19:58:52 ID:XKp2CptY0

 そんな中、はやてはクアットロがちゃんと後方を走っているのを一目確認し、
「そういやクアットロ、さっきの放送で何か気になった事は無かったか?」
「そういえば新しいボーナスを検討するとかどうとか言っていた様な……それでちょっと気になる事が……」
「何かあったんか?」
「ええ……殺し合いに乗った人ってもう何人も殺している人いるはずですわよね? その人達にボーナスを手に入れたら面倒な事になるんじゃ……」
「つまり、今までの分も対象になるかやな……確かにその懸念はあるな……」
 仮定の話だが、これまでの死者も対象になるならばその殺害者に御褒美が与えられる。そうなれば殺し合いに乗っている参加者が有利になるのは言うまでもない。
「……とはいえ、それについては今言っても仕方がないな。大体放送の時点では検討すると言っただけやろ? 具体的な事は次の放送を待ってもええと思うが?」
「そうですわね……」
「むしろ私が気になったんは『また』御褒美の話を持ち出して来たってことやな」
 はやては2度目の御褒美の話からタイムリミットが存在する可能性をクアットロに説明する。
「成る程……で、そのタイムリミットって何時ぐらいなんですか?」
「今のペースだけを見れば48時間で残りは10人前後……決着が着くのは大体60時間……」
「……でもそれじゃ長いから御褒美の話を持ち出したんですよね……だとしたら48時間ぐらいかしら?」
「最終的なタイムリミットはその可能性が高いな。プレシア自身は余裕持ってもっと早く決着を着けたいと考えるだろうから……ペースを上げる理由に説明が付くな」
「それなら最初から食料を1日分にするなり、禁止エリアを一気に6つ付けるなりすれば良かったんじゃ……」
「んな事は知らん。でもな、制限時間があるといってもそれはこっちも同じや、プレシアから見れば最終的に首輪を爆破すれば済む話なんやからただ逃げれば良いって事にはならんからな」
「つまり、制限時間内に何とかする方法を見付けると?」
「そうや、具体的な時間をクアットロの仮説通り48時間にするとして、残り35時間でどうにかせなあかん……もっと短いかも知れんしな……」
「あんまり時間ありませんわね……」
 そう、残り35時間程度で戦力を集め、殺し合いに乗った参加者を全て排除し、同時進行で首輪の解除を行い、更にプレシア・テスタロッサの元に辿り着く方法を見付け実行に移さなければならない。
 それだけではなく、プレシアの所に辿り着いてからは交渉するにせよ打倒するにせよ何かしら戦いが待っている。十分な戦力が無ければ返り討ちに遭うだけだ。
 約13時間の戦果で得た物はあまりにも少ない、1つだけでも困難な事を残り35時間で全て実行するには時間が少なすぎる、正直無謀としか言いようがない。
 更に言えば、タイムリミットが迫る中で参加者が多く残っているならば再びプレシアが何か仕掛けてくる可能性がある。状況の厳しさに拍車をかけるのは言うまでもない。


(せやけどやるしかない……私は何としてでもプレシアの元に辿り着いてシグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラを取り戻さなければならないんや……その為やったら誰を犠牲にしたって構わん……なのはちゃんやフェイトちゃん達であってもな……)
 何を犠牲にしても成し遂げる―――そう考えたはやての脳裏にセフィロスの言葉が響く、
『お前は――『八神はやて』ではない』
 その言葉ではやての中に怒りが湧き上がってくる、
(巫山戯るな……何も知らん奴が偉そうに『私』を語るなや……『私』の何を知っているというんや……『私』を否定した事……絶対に後悔させてやる……!)

361銀色クアットロ ◆7pf62HiyTE:2009/10/26(月) 19:59:34 ID:XKp2CptY0







何時もの彼女であれば何の問題も無かった―――







だが、怒りは冷静な判断力や注意力を低下させてしまった―――







それでも人の知る『八神はやて』を演じて切れていれば何の問題も無かった―――







しかし、彼女は演じきる事が出来ず他人から見ればあまりにも醜悪な自分を晒してしまった―――







「え……」







故に―――『それ』に気付く事が出来ず―――

362銀色クアットロ ◆7pf62HiyTE:2009/10/26(月) 20:07:49 ID:XKp2CptY0







「がはっ……」







激痛が走った瞬間になって初めて気が付いた―――







だがそれで終わる事はなく、次の瞬間には何かに蹴り飛ばされた衝撃を受け―――アスファルトの床を転げ回ったのだ。


「ぐっ……」
 激痛が走る中考える。一体何が起こったのか?
 セフィロスがもう追いついてきたというのか?
 それとも全く別の殺し合いに乗った参加者が襲ってきたというのか?
 あまりにも突然の事にクアットロを盾にする事すら出来なかった。
 胸が血で赤く染まっている。どうやら胸を何かで斬られた様だ、そしてそのまま傷口を蹴り飛ばされたのだろう。
 だが、前を斬られたのだとしたら何故それに気が付かなかったのだ?
 何故相手の蹴りに気が付かなかったのか?
「ちょっと待て……」
 いや、1人いるではないか、相手に察知されることなくそういう行動を取れる人物が……





「……これはいただきますわよ」





 声だけがはやての耳に響く―――そういえばいつの間にか持っていたはずのデイパックが無くなっている。恐らくさっきの事で思考が追いつく前に奪ったのだろう。
 そいつが誰なのかは考えるまでもない。つい先程まで自分と話していた奴だ、





「クアットロ……!!」

363銀色クアットロ ◆7pf62HiyTE:2009/10/26(月) 20:15:42 ID:XKp2CptY0





 彼女の姿は見えない、それでもはやては虚空にいるであろう彼女を睨み付ける。
「思ったよりも簡単に上手くいきましたわね」
 声だけだが彼女には余裕が感じられる。
「シルバーカーテンを此処で使ってきたか……」
「あら? 私はちゃんと後ろを走っていましたわよ?」
「アホ言え……それはシルバーカーテンを使った幻やろ……恐らく本物は姿を消して密かに前に来てタイミングを見計らっていたって所やな……」
「大体正解ですけど、仕掛ける直前まではちゃんと後ろにいましたわよ。だってそうじゃないと声の方向でバレるでしょ?」
「くっ……」
「何にせよ気付くのがほんのちょっと遅すぎましたわねぇ」
「やっぱり改心したという話は嘘やったんやな」
「そもそも最初から私の話なんてこれっぽっちも信じてなかったくせに」
 確かにクアットロが改心したという話は嘘だと判断していた。その為、絶対に何かを企んでいる事も考えていたし武器に関しても何か隠し持っている事ぐらいは予想出来た。
 だが、まさかこのタイミングで直接仕掛けてくる事は想定していなかった。
 考えてみて欲しい、クアットロの立場にしてみれば自分は十分に利用価値があるはずだ。味方のグループに入り込むのであれば自分を敵に回すなど愚行でしかない。そんな事をすれば自分や機動六課を利用する事など不可能になるからだ。
 真面目な話クアットロが単身で生き残る事など不可能に近い。彼女の味方となりそうなのはチンクとルーテシア・アルピーノぐらいだ。
 機動六課の面々は言うまでもなく敵と認識しているし、それ以外の参加者も彼女達経由で危険性を把握している可能性は高い。
 ならば何故このタイミングで折角得た六課とのパイプを斬り捨てたのだろうか?
「腑に落ちない顔していますわねぇ、まさか私がこのタイミングで裏切るとは思ってなかったんですかぁ?」
「ああ……動くのは他の仲間と合流してからやと思っとったわ……」
「私だってもう少し付き合っても良かったんですよ、実際さっきまでは協力的だったじゃありませんでしたか? 一応言っておきますけどはやてちゃん達に話した事は大体本当の事ですよ? キャロが殺し合いに乗っている話は事実ですからね」
 確かに先程までのクアットロの態度は協力的だったし話している内容も大体真実と考えて良い。嘘だったら露呈した段階で自分が窮地に追い込まれるからだ。少なくてもキャロが殺し合いに乗ったのは確かな話だろう。
「でも幾つかは嘘吐いているんやろ?」
「それはご想像にお任せしますわ……極端な話、生き残れるんでしたらこのままずっと協力していても良かったんですよ? その為だったら多少利用されるのもやぶさかではありませんでしたし」
「そんな言葉信じると思うか?」
「私だって1人で行動するより他人と組んだ方が生き残れるのはわかっていますわ……可能性が高い手段を執るのは別におかしい事じゃないでしょ?」

364銀色クアットロ ◆7pf62HiyTE:2009/10/26(月) 20:21:39 ID:XKp2CptY0
「……そこまでわかっていて何故今裏切ったんや?」
「それはひょっとしてギャグで言っているんですか? 言ったはずですわよ、可能性が高い手段を執ると……
 はやてちゃん……私を利用するだけ利用してボロ雑巾の様に捨てようって考えていましたわね?」
「!!」
「しかもセフィロスに追われているこの状況……シャマル先生に続いて今度は私を捨て石にするつもりなんじゃありませんか?」
「くっ……待て、今何て言った!?」
 クアットロの言葉にはやてが驚愕する。
「あらあら、まさか本当にシャマル先生を盾にしていたとはねぇ……」
 楽しそうに語るクアットロの声が響く。はやては『やられた』と言わんばかりの表情で、
「くっ……カマをかけたんか?」
「割と適当に言っただけなんですけど……正直どっちでも良かったですしね、とはいえ予想は付いていましたわよ」
(何故や……何故私がシャマルを盾にした事がわかった?)
 はやてには何故自分の行動が読まれたのかがわからなかった。クアットロにはセフィロスの攻撃でシャマルがやられた事しか話していないはずだ、自発的に庇ってきたとは考えなかったのだろうか?
「バレていないと本気で思っていたんですかぁ? はやてちゃんが本当はシャマル先生を家族ではなく只の手駒だと思っている事を」
「何故わかったんや……」
 はやてにはその理由がわからなかった。確かにはやてはこの地にいるシャマル達が違う世界から連れて来られている事を知っていたし、彼女達は本当の家族じゃないから利用する手駒程度にしか考えていなかった。
 しかし、少なくともシャマルに対しては彼女の家族を演じ切れていたはずだ。家族愛を理解出来ないであろうクアットロが見破れる筈がない。
「まぁシャマル先生は最期まで気付かなかったんでしょうけど……はやてちゃん貴方の態度、私から見ても明らかに不自然だったんですのよ?
 キャロみたいに殺し合いに乗った参加者を平気で斬り捨てる様な事、少なくても私の知る彼女はそんな事言わないはずですわ。だって私の知るはやてちゃんは甘々な人間なんですのもの。
 まぁそれだけだったら甘さを捨てるほどやさぐされる何かがあった程度で済むんでしょうけど……ついさっき確信しましたわ、はやてちゃん……貴方、元の世界でシャマル先生達を失っていますわね?」
 はやてが驚きの表情を見せるが、それに構うことなくクアットロの話は続く。
「故にこの地にいるシャマル先生達を本物だと認めなかったと……認めてしまうのは死んだシャマル先生達に対する裏切りだと……まるで死んだ恋人のそっくりさんが現れた時の心境ですわね」
「違う! 死んでなんかない! まだ助けられる!」
 図星を突かれてしまいはやてはついつい本音を口にしてしまう。
「あらあら……これも推測レベルの話だったのに……まさかこれも当たりだったとはねぇ? もしかして、貴方の世界のシャマル先生達を助ける為にプレシアの技術を奪おうって考えているのかしら?」
「ぐっ……」
 はやての表情に悔しさが滲み出る。
「ちなみに失ったって思ったのは、失っていない状況なら例え違う世界の人でも変わらないと考えると思ったからですわ。まぁ、私にとっては間違いでも構いませんけど。
 重要なのははやてちゃんがシャマル先生達を便利なアイテム程度にしか考えていないという事」
「そうや、何故それがわかったんや!?」
 既に冷静沈着な部隊長の姿はない。

365銀色クアットロ ◆7pf62HiyTE:2009/10/26(月) 20:28:59 ID:XKp2CptY0





「……簡単な事ですわ……だって、はやてちゃん―――





 シャマル先生が目の前で殺されたって言うのに全く悲しそうな顔していないんですもの」





 その通り、はやてはセフィロスによってシャマルが斬られても彼女を犠牲にした事については殆ど意に介してはいなかった。
 その時はセフィロスに自分を否定された怒りと迫り来る脅威から逃げるのに夢中で悲しみの演技をする余裕など無かった。
「……おい、別に私がシャマル達をどう扱おうがお前にとってはどうでもいい話やろ? それとお前の行動に何の関係がある?」
「ちょっと考えればわかる事ですわ。自分の家族すらボロ布の様に扱うんですもの……私をどう扱うか何てすぐに推測付くとは思いません?」
 と、クアットロの声が少し小さくなっている。距離を取っているのだろう。
「クアットロ……何をする気や?」
「今にもセフィロスが迫っているんですよ? 逃げるに決まっているじゃありませんか?」
「私にトドメを刺さんでええんか? 私はお前を許すつもりはない……絶対にこ……」
「それはセフィロスから逃げ切ってから言ってください」
 その言葉を聞いてはやてはクアットロの狙いに気が付いた。
「私を囮にする気か!?」
「ええ、はやてちゃんがセフィロスを引きつけている間に私は悠々と逃げさせてもらうと、その間にまた新しい手駒を探しますわ」
「お前の口車に乗る参加者がいるとは思えんがな」
「シャマル先生は騙されていましたけどねぇ……まぁ、仮にそうでも管理局の甘ちゃん達だったら少なくても殺すって事は無いと思いますわ」
「くっ……」
 その通りだ、殺し合いに乗っていなければなのは達はクアットロを警戒する事はあっても殺す事だけはまず有り得ない。
「あ、仮にはやてちゃんが運良く合流して私を殺す様言っても同じ事だと思いますわよ。むしろ彼女達と仲違い起こす事になるだけじゃないかしら?」
「う……」
 何しろゴジラのいる元の世界でもなのは達とは衝突していた。知っていても可能性が低い上、ゴジラを知らない彼女達ならば甘さを捨てるとは思えない。
「きっとみんなセフィロスと同じ事言うんじゃないかしら? 『貴方は『八神はやて』じゃない!』ってねぇ」
「黙れ……」
「まぁ仲違いは幾らしても良いですけどお願いですから私達の足を引っ張らないでもらえます?」
「足を引っ張る? それはむしろお前やろ?」
「何を言うのやら、ここまで自分が信用されていないのにそんな無茶はしませんわよ……大体はやてちゃんがもう少し冷静になっていればヴィータちゃんとも敵対せずに済んだでしょうし、セフィロスだって味方に引き入れたかもしれないじゃないですか?」
「違う、ヴィータの事は全部キングのせいや! それにセフィロスの件だって奴が危険人物……」
「そうでしょうか? 私やシャマル先生のいた世界のはやてちゃんだったらヴィータちゃんとも仲違いせずにすんだでしょうし、セフィロスだって変な気は起こさなかったと思いますけど?
 まぁ、否定したいんだったら否定しても構いませんわよ。でも、仲違い起こすとわかっていて本音を隠さないのはどうなのかしら? 敵である私にすらバレているんじゃ只の大根役者ですわね」
「お前が言えた事か!」
「それにしてもシャマル先生やヴィータちゃんも災難ですわねぇ、主や家族と思っていた人にボロ雑巾扱いされて……ちょっと同情しますわ」
「心にも無い事を……」
「ともかく、先にスマートブレインで待っていますわ。頑張ってセフィロスから逃げてくださいね」
「その言葉忘れるなよ……」
 と、姿は見えない為実際の所は不明だがクアットロが離れていくのを感じるが、

366銀色クアットロ ◆7pf62HiyTE:2009/10/26(月) 20:31:55 ID:XKp2CptY0





「そうそうはやてちゃん、もう一言追加良いですか―――





貴方はまた―――守れないかもね―――」





「クアットロー!!!」





はやての叫びが空しく木霊した。





   ★   ★   ★   ★   ★





 結局の所、はやての失敗はクアットロに対する見極めの甘さと自身の本心を隠しきれなかった事だ。

 確かにクアットロが警戒すべき相手だというのは理解していただろう。しかし、それは一体どういう意味だっただろうか?
 その口車で人を惑わし騙し扇動する―――その狡猾な手口や性格ばかりを警戒していなかっただろうか?
 クアットロが幻覚を操るISシルバーカーテン、それを使う可能性を考慮に入れていただろうか?
 クアットロ程度ならば何をしてきても自分の力で簡単に抑えられると甘く見てはいなかっただろうか?

 はやて自身クアットロの能力と直に接触したのは初めて遭遇した時だけ、しかもその時はまだクアットロの正体も知らない状態だった。後はJS事件での戦いでのデータや事件後に得た資料で得た知識しかない。
 能力よりも性格や悪行の方が印象付いていた為どうしてもシルバーカーテンに対する警戒は甘くなってしまう。他の参加者も大体同じ印象を持っていただろうからはやてだけが悪いとは言わないがやはり警戒は怠るべきではなかった。
 また自分ならば抑えられるというのも驕りとしか言いようがない。知略戦を別にしても、通常の戦闘能力を甘く見てはいけなかった。
 確かにクアットロの能力は戦闘向けではないがそれでも彼女は前線に出る事のある戦闘機人だ。並の人間よりは当然身体能力は上であるし前述の通りシルバーカーテンは健在だ。
 対してはやては魔力こそ参加者中でもトップクラスだがデバイスのない状況では無意味とまではいかないがあまり役には立たない。しかも彼女も後方で指揮をする事が多く最前線で戦う事は少ない、故に直接的な戦闘力は一般人並と考えて良い。
 それでも何時ものはやてならばまだクアットロの殺気を察知出来た可能性はあった。だが、前述の通りセフィロスから逃げる事を重視していた為にクアットロに対する警戒が若干甘くなっていた。
 その僅かな隙を突かれたのがこの結果である。

 いや、仮にそうでも自身の本心を悟られなければまだクアットロがはやてを見限らない可能性はあった。自分には十分に利用価値があるからだ。
 少なくとも彼女自身は本心を終始隠し通す事が出来たと考えていた。少なくともシャマルは最期の瞬間まではやての本心には気付いていなかった。
 しかし、彼女の根底にあるものだけはどうしても言動に表れてしまう。その不自然さは特に親しくはないクアットロにすら不信感を抱かせてしまった。冷静に見極めれば見破る事自体は難しく無いだろう。
 勿論、クアットロの視点から見た場合、部隊長の思考としてはあながち間違っているとは言えない。その為、セフィロスがやって来るまでは違和感レベルの話だった。
 が、決定的だったのはシャマルに対しての反応だ。セフィロスに対する感情のあまりはやては遂に本心を隠そうとはしなかった。シャマルに対して一切悲しみを向けなかったのである。
 それが決定的だった。クアットロははやての本心を察した―――それははやてがクアットロを敵だと断じたのと殆ど同じ理由。本当に大切な存在ならばもう少しシャマルに対して悲しみを向けるはずだからだ。
 いくらクアットロが家族に関する知識に乏しくてもそこまで不自然な事をされれば流石に気付く。
 せめて演技でももう少しシャマルに対して悲しみを向けていればクアットロに見破られる事は無かっただろう。
 セフィロスに対する怒りがそれを忘れさせたのか、本当の家族に対する裏切りだからやらなかったのか、それは今となってはどうでもいい話だ。

367銀色クアットロ ◆7pf62HiyTE:2009/10/26(月) 20:39:28 ID:XKp2CptY0



―――結局の所、彼女は皆の知る『八神はやて』を演じきる事が出来なかったという事だ―――



 ここまでの体たらくは全てそれが原因だ。
 ヴィータを守る為とは言え赤い恐竜を殺したばかりに彼女から偽物扱いされたのも、
 キングに振り回され最初の6時間を殆ど無為に過ごしたのも、
 セフィロスの行動に対しシャマルを盾とした事で彼に自分を否定されたのも、
 クアットロに自分の本心を見抜かれ見限られ道具を奪われたのも、



 勿論、彼女の心情はわからないではない。どんなに堕ちても自分は自分、それを否定する者は許せないだろうし、堕ちた経緯だって客観的には理解出来る。
 しかし、真面目な話何も知らない他人が彼女を認めるかどうかは全くの別問題だ。
 それでなくても元の世界でのフェイト達とも衝突を起こしていたのだ、何も知らない彼女達が今のはやてを理解出来るわけがないだろう?
 結論を言えばヴィータやセフィロスに偽物扱いされ、クアットロからも今後も問題を起こす可能性を指摘されて当然の話だ。





   ★   ★   ★   ★   ★





 胸の傷は浅く血こそ止まっていないが動けなくなる程のものじゃない。
 それでも状況は最悪だ、道具は全て奪われ後方にはセフィロスが迫っている。
 足はクアットロが待つと言っていたスマートブレイン方向に向いているが、このまま移動すべきかどうかはわからない。何処かに隠れて治療する傍らやり過ごした方が良いかも知れない。
 もう少しクアットロに対する警戒を強めるべきだっただろう、最悪道具を奪われる事は避けられたはずだ―――


 只々悔しかった―――
 認めたくなかった―――
 しかし、もっともな指摘だった―――


 そうだ、悔しいがクアットロの言う通りだ。
 昔の自分だったらヴィータに偽物扱いされる事も無かったしセフィロスにも自分を否定される事は無かっただろう。
 せめてシャマルが死んだ事に対してもう少し悲しみの演技をしていればクアットロに自分の本心を見破られる事も無かっただろう。

 だが、そんな事など出来るわけがない。
 今の自分は家族を取り戻す為に他者を犠牲にしているだけであってそれを否定される謂われなんて無い。
 この場のシャマル達に対して悲しむという事は元の世界のシャマル達に対する最大の冒涜だ。

 自分は『八神はやて』だから大丈夫だと思っていた―――
 しかしそんなのは幻想に過ぎなかった―――
 今の自分がなのは達と合流しても火種を増やすだけかも知れない―――
 指摘したのが最悪の敵だったのが最大の皮肉でありそれが正直気に入らなかったが―――

 それでも諦めるつもりなど毛頭無い―――絶対にプレシアの元に辿り着く―――
 例え世界中の人間が自分の敵に回ったとしても―――絶対に家族を取り戻す―――


「まだや―――八神はやては―――私はまだ終わってない―――」

368銀色クアットロ ◆7pf62HiyTE:2009/10/26(月) 20:44:00 ID:XKp2CptY0


 そう口にしてもたった1人という状況はあまりにも辛い―――
 この分ならばクアットロの指摘通り仲間達はきっと自分を否定するだろう―――
 仮になのは達が自分の世界から来ていても衝突する可能性は高い―――
 嗚呼、まさしく孤立無援の状況だ―――
 幾ら冷徹になろうとも本質はまだ20前後の少女でしかない―――


「リイン……」


 口にしたのは彼女の世界において唯一健在な家族の名前だ。彼女は一体どうしているのだろうか?
 参加者名簿には無いから無事なのだろうか?
 ユニゾンデバイスとして誰かに支給されているのだろうか?
 勿論、仮に支給されていたとしても自分の世界の彼女かどうかはわからない、しかしシャマル達と違いそうではないという保証もない。
 支給されていないならば元の世界で1人寂しい想いをさせているだろう、支給されているならばこの過酷な状況だ、どちらにしても心配だ。
 何故今の今まで存在を忘れていたのだろうか? きっと、家族を取り戻せると思い熱が入りすぎて忘れていたのだろう。
 だが、全てを失い傷ついた状態になって―――今更ながらに会いたくなったのだろう―――
 そんな都合の良い話などあるわけがない―――孤独な主は一人歩き続ける―――

 一筋の風が吹いた―――
 それは何を意味するのだろうか―――



【1日目 日中】
【現在地 F-4】
【八神はやて(StS)@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS】
【状態】胸に裂傷(比較的浅め、出血中)、スマートブレイン社への興味
【装備】無し
【道具】無し
【思考】
 基本:プレシアの持っている技術を手に入れる。
 1.このままスマートブレインに向かうか? それとも何処かに隠れて治療をしつつセフィロスをやり過ごすか?
 2.ヴィータ等戦力及び首輪解除出来る人を集めたいが……
 3.夜天の書等遠距離攻撃に向いたデバイスの確保。
 4.セフィロスを許さない。絶対に自分の手で殺す。
 5.キング、クアットロの危険性を伝え彼等を排除する。自分が再会したならば確実に殺す。
 6.メールの返信をそろそろ確かめたいが……
 7.以上の道のりを邪魔する者を排除したいが……
 8.自分の世界のリインがいるなら彼女を探したい。
【備考】
※プレシアの持つ技術が時間と平行世界に干渉できるものだと考えています。
※ヴィータ達守護騎士に優しくするのは自分の本当の家族に対する裏切りだと思っています。少なくても現状改めるつもりはありません。
※キングはプレシアから殺し合いを促進させる役割を与えられていると考えています(同時に携帯にも何かあると思っています)。
※ヴィータと戦う事になったのはキングが原因だと考えており彼を許すつもりはありませんが、自分にも原因があったのを自覚しました。
※自分の知り合いの殆どは違う世界から呼び出されていると考えています。
※放送でのアリサ復活は嘘だと判断しました(現状プレシアに蘇生させる力はないと考えています)。
※プレシアの目的はアリシア復活で、その為には普通の死ではなく殺し合いによる死が必要だと考えています。
※プレシアには他にも協力者がいると考えています。
※施設には何かしらの仕掛けが施されている可能性があると考えています。
※図書館のメールアドレスを把握しましたが、メモが無い為今も覚えているかは不明です。
※シャマル、クアットロと情報交換しました。
※エネルは海楼石を恐れていると思っています。
※放送の御褒美に釣られて殺し合いに乗った参加者を説得するつもりは全くありません。
※この殺し合いにはタイムリミットが存在し恐らく48時間程度だと考えています(もっと短い可能性も考えている)。
※自分の考え方が火種になっている事を自覚し、仲間にも拒絶される可能性がある事を認識しました。

369銀色クアットロ ◆7pf62HiyTE:2009/10/26(月) 20:54:24 ID:XKp2CptY0





 はやてに傷を負わせ道具を奪う事に成功したクアットロはスマートブレインで大いに喜んで―――





「もう二度とやりたくありませんわ……こんな分の悪すぎる賭けなんて……!!」





 ―――はいなかった。彼女はG-4のアパートの一室にて自分の作戦が上手くいった事に安堵していたのである。今回の事による疲労も決して少なくはない。
 さて、何故クアットロははやてに話した通りスマートブレインに向かわずに南下してアパートに来たのだろうか? クアットロ視点で振り返ってみようか―――





   ★   ★   ★   ★   ★





 クアットロははやての後方を走りながら考えていた。
 このままはやてと同行して利用し続けるべきか、それともこの場で彼女を斬り捨てるべきかを―――
 単独で生き残れる可能性が低い以上、数少ない手駒は有効利用しておきたい所だ。
 その一方で、今のはやてを見る限りこのまま同行し続けて大丈夫なのかという懸念もあった。
 甘さが無い分戦力としては頼れる反面、不用意に敵を作り続けているような感じがしたのだ。
 はやて視点から見れば味方であるはずのヴィータやセフィロスを敵に回してしまっており、キングからは危険人物の証拠を握られているのだ。
 味方同士が潰し合いする分には一向に構わないし望む所ではある―――が、自分に被害が及んでは正直困る、それならば止めて欲しいと考えている。
(どうしましょうかねぇ……)
 と、走りながらはやてを見ていると、ある違和感を覚える。
(あれ? 何か妙ですわね……)
 その違和感の正体にはこの時点では気が付いていなかった。さて、移動しながらはやてとクアットロは情報交換を進める。その際にセフィロスが襲いかかってきてシャマルがはやてを守る為に盾になった事を聞いたが、
(そこがわからないんですよね……どうしてあの男がはやてさんに襲いかかったのかが……)
 自分を危険視するのであればまだわかる。話し合いの後セフィロスが自分に襲いかかってくるのであれば自分的には良くないが理解出来ない事ではない。
 だが、はやての言葉から察するにセフィロスははやてに襲いかかって来たという事である。
(はやてさんは危険人物だからって思っていますけど、そんな筈無いんですけどね……)
 自分から見れば危険人物だが、アンジールによるとセフィロスは機動六課に味方していたらしい。だとしたら少なくても機動六課に刃を向ける可能性は低いはずだ。
 セフィロスが自分には思いっきり刃を向けていたのに対しはやて達には話し合いをしようとしていたことからもそれは明らかだろう。
 更に言えばだ、どうやらセフィロスはもう1人のはやてと出会ったらしい。
(でも、もう1人のはやてさんは既に死んでいる……セフィロスが殺したのかしら……いや、でもそれならこっちのはやてさんもすぐに殺すだろうし……
 それ以前に……どうも聞く限りセフィロスってはやてさんに執着していた様な気がするんですけ……)
 この瞬間、クアットロの脳裏にある考えが浮かぶ。
(……あれ? そういえば……)
 クアットロはセフィロスが何者かに残したメモの存在を思い出した。あれを信じるならばセフィロスはその時点では誰かと同行していた可能性が高い。
 しかし、出会った時にはセフィロスは単独で行動していた。これは何を意味しているのだろうか?
 セフィロスがメモを残した相手はもう1人のはやてでは無かったのだろうか?
(……もしかして、セフィロスとはやてさんって恋人同士だった……馬鹿馬鹿しいですわね)
 自分で言っていて馬鹿な考えだと思ったが、セフィロスがはやてと浅からぬ関係だというのはほぼ確実だろう。
 だがそうなると尚のことセフィロスがはやてに刃を向けた事が不可解だった。

370銀色クアットロ ◆7pf62HiyTE:2009/10/26(月) 20:58:08 ID:XKp2CptY0

(まぁ考えても仕方がありませんわね……あーあ、折角の手駒だったのに……)
 情報交換をしつつもクアットロはシャマルを失った事について正直悔しい想いをしていた。勿論、只の手駒程度にしか考えていなかったがそれでも貴重である事に変わりはない。
(大体、シャマル先生の有用性って十代君達と違って結構高いんですよ? そう簡単にこんな都合の良い手駒が手に入ると思っているんですか?
 でも正直面倒ですわね、ヴィータちゃんを味方にするとしても……ヴィータちゃん視点で見れば家族は全滅って事になるわけですから殺し合いに乗りかねま……)
 ヴィータは生き残っているはやてを偽物だと思っている。仮にシャマルの死を知ればヴィータの家族は全滅ということになり、家族の安全を気にすることなく彼女達を生き返らせる為に殺し合いに乗りかねない。
 と、ここまで考えてクアットロは先程感じた違和感の正体に気づき、
『追いつかれたら、シャマルの犠牲まで無駄になる!』
 そして、脳裏に移動を始めた時のはやての言葉が響く。
(異常ですわね……)
 シャマルを自分の目の前で殺されたにも関わらず、はやてが怒りながらも冷静に対処している事が明らかにおかしかったのだ。
(幾ら甘さが消えたからって、自分の家族が目の前でやられて冷静でいられるなんて明らかに変ですわよ)
 勿論、自分は姉妹達が目の前でやられても動じたりはしないが、少なくても普通の人間ならば自分の家族がその様な目に遭えば間違いなく動揺し冷静な判断力を失うはずだ。
 クアットロの知るはやてが家族に対しても非情となるのは明らかに不自然だ。
(シャマル先生達を家族と思っていなかったという事でしょうけど……)
 確かに異なる並行世界から連れて来られているならば別人扱いしても不思議ではない。しかし、普通に並行世界から連れて来られているならば大した差異等無く、『なんか不思議な話だね』程度の話で済むだろう。
 大体、外見上は全く同じ人間で殆ど同じ記憶を持っているのだ、別人と思う可能性の方が低いだろう。
(つまりはやてさんはシャマル先生を別人だと認識していたと……でもどうして?)
 ちなみにクアットロもシャマルもはやてが自分達とは違う並行世界から連れて来られた事は聞いていてもそれがどういう世界かは詳しくは知らない。
 はやては彼女達及びセフィロスにゴジラの事やそれを封印する為にシャマル達を犠牲にした事を説明していないのだ。
(自分の立場で考えてみますわね……もしこの地にいる聖王様が自分の世界の彼女じゃなかったら……)
 クアットロは当初、聖王の器ことヴィヴィオの確保を視野に入れていた。しかし、仮に彼女が自分の世界の彼女では無いならば彼女に固執する事に意味はないと考えている。
(仮に私と同じ事考えたとしても……肝心な所が抜けているのよね……何故に家族にすらそういう扱いをするのかが……待って……)
 クアットロの脳裏にルーテシア・アルピーノの姿が浮かんだ。彼女は自分の母メガーヌ・アルピーノを助ける為に自分達に協力しているのだ。
 クアットロ視点から見れば家族を助ける為に必死になるルーテシアの姿など正直滑稽な姿でしかないがその事は大した問題ではない。
 問題は家族を助ける為ならば人は幾らでも必死になれるという事だ。
 そう、はやてが家族を助ける為に必死にならないなど明らかに不自然なのだ。
(大体わかりましたわ……)
 この瞬間、クアットロの中で全ての歯車が噛み合った。
 恐らくはやては元の世界でシャマル達家族を失ったのだろう。
 それ故に彼女は甘さを捨てシビアな思考をする様になったのだろう。
 そんな彼女の目の前に並行世界のシャマル達が現れた。
 しかし、彼女にとってはそれは姿が同じだけの別人にしか見えなかったのだ。
 故に彼女にとってはシャマルすらも只の手駒でしか無かったのである。
(わかってしまえば何て事はありませんでしたわね……それにしてもシャマル先生には本当に同情しますわ……まさか自分の主によって捨て駒にされるなんてねぇ……)
 この仮説を信じるならばあの場で起こった事もある程度予想が付く。理由はどうあれ家族すらも手駒としか考えないはやてなど誰がどうみてもはやてだと思えるわけがない。
 つまり、セフィロスがはやてを偽物だと認識したのは当然の結果だとクアットロは結論付けた。

371銀色クアットロ ◆7pf62HiyTE:2009/10/26(月) 20:59:44 ID:XKp2CptY0

(さて……問題はこれからですわね……)
 この瞬間、クアットロははやてを斬り捨てる事に決めた。
 甘さがないのは有り難かったが正直家族まで平気で斬り捨てる様な人物など他の仲間と合流しても火種にしかなりはしない。
 それ以前に、家族すら手駒としか思わない人物が敵である自分を信用する事などまず有り得ない。このまま同行し続けた所でシャマル同様利用されるだけされてボロ雑巾の様に捨てられるのが関の山だ。
 勿論、この状況下で生き残る為に管理局の連中と手を組むのは仕方ないと思っていたし、その為ならば利用されるのも仕方がないとは思っていた。だが、だからといって命まで捨てるつもりは全く無い。
 正直な所、はやてが得た死者のボーナスは惜しいが、確実なものではないし同行し続けるリスクを考えれば捨てても問題はない。
(別れるだけならば簡単なんですけどね……)
 単純に別れるだけならばシルバーカーテンを使ってそのまま別方向に逃げれば済む話だ。しかし出来るならばはやての道具は手に入れておきたいと考えていた。
(使える武器はシルバーカーテンと包丁……出来るかしら……仮にはやてちゃんがシルバーカーテンを見破ったら終わり……いや、今ならば……)
 状況的に今は移動に集中しており更にはやては今はセフィロスに対する怒りのあまり自分への注意が甘くなっている。
 このタイミングでの奇襲が成功する可能性は高いと言える。
 だが果たしてそれが上手くいくだろうか?
 何時ものクアットロであれば平然と奇襲を仕掛けていただろう、しかし彼女自身この場に来てから他の参加者との接触に2度失敗している。1度目は神父、2度目はキャロに対してだ。
 だが、2度の失敗の原因は油断と慢心と見極めの甘さだ、全力を持って油断と慢心を捨てればきっと上手くいくはずだ。
 しかしあのはやての事だ、自分がこのタイミングで仕掛けてくる事を読んでいる可能性は十分にあり得る。
 シルバーカーテンを使った所で見破られる可能性は無いとは言えない、身体能力で勝っていても相手は部隊長、侮って良い相手ではない、もしかしたら自分の知らない必殺の切り札を抱えている可能性も十分にある。
 故に失敗した場合はすぐにでも逃げ出すつもりでいた、シルバーカーテンを駆使すれば逃げ切れる可能性は高いだろう。
 真面目な話、接近戦など得意分野ではない。正直な所、負ける可能性のある戦いなどやりたくはない。
(お願い……私の存在に気が付かないで……!)
 前方のはやてはひたすらに走っており後ろを見ていない。

(IS発動……)

 その瞬間、クアットロの姿が消えすぐ隣りに幻のクアットロの姿が現れた。本物の自分を消した上で幻の自分を出したのだ。傍目から見ればISが発動している様には見えない。
 そして、それから暫くの間はこのまま走りつつはやてと話を続けた。下手に会話が止まり疑われたらその時点で失敗に終わるからだ。
 勿論走りながらもクアットロはデイパックから唯一の武器である包丁を取り出しそれを構える。
 その最中、はやてが一瞬だけクアットロの方を向いた。
(気付いた……?)
 しかし特別気にする様子もなくそのまま走り続けクアットロははやてと話を進めていく。そして会話が途絶えた時、
(今ならいけるかしら……?)
 と、飛行能力を使いすぐさまはやての真横まで移動する。後方からではあまりダメージを与えられない事を考え多少のリスクは承知の上で比較的正面から仕掛けるつもりだ。
(……気付いている様子はない……いけますわね……!)
 前方に回り込みながら包丁を構えつつ移動を続け―――はやてが自分の間合いに入ってきた時に―――



 一息に包丁を振り下ろした。



 包丁は見事にはやての胸を切り裂いた。元々血に濡れており切れ味の鈍った包丁ではそう傷は深くはない。だが斬られた張本人は何が起こったのかがまだ理解できていないようだ。
(もう一撃!)
 そしてそのままクアットロは斬りつけた傷口に―――蹴りを入れた。
 その衝撃によってはやてはアスファルト上を転げ回る。そして、激痛と衝撃で理解が追いつかない隙を付き―――彼女のデイパックを奪い去ったのだ。
 そしてシルバーカーテンは解除しない(後方を走っている自分の幻は消した)でそのまま間合いを取り―――


「……これはいただきますわよ」


 このタイミングではやてに声をかけたのである。後は前述の通りの会話を行いそのまま立ち去ったのである。

372銀色クアットロ ◆7pf62HiyTE:2009/10/26(月) 21:01:41 ID:XKp2CptY0
 では、何故すぐに立ち去らずはやてと悠長に会話をしていたのだろうか?
 勿論、自分にしてやられたはやての顔を眺めて愉悦に浸りたいというのも無いではない。しかしそれが副産物でしかない。
 その目的ははやてを挑発すると同時にかく乱する為である。挑発を行う事ではやての冷静な判断力を失わせかく乱する事で自分の次の目的地を悟られない様にするという事だ。
 はやてを逆上させる方法は種明かしをすれば簡単な話だ。とはいえ推測程度の話を彼女自身が裏付けてくれたためついつい調子に乗って喋りすぎた様な気はするが。
 何にせよ良い具合にはやてが怒ってくれたのは好都合だった。最後にスマートブレインで待つと伝えてあの場から離れたのである。それでも最後は調子に乗りすぎたと今では少し反省している。
 その後はスマートブレインには向かわず南下しアパートでデイパックの中身の確認と簡単な休憩をすることにしたのである。
 スマートブレインに向かわなかったのは逃げる時にセフィロスに自分達の目的地がスマートブレインである事を知られた可能性があったからだ。今の段階で奴と遭遇するわけにはいかない。
 なお、はやてを殺さなかったのは彼女に語った通りセフィロスに対する囮にする為である。彼女が逃げ続ければそれだけ自分の逃げる時間が稼げるからだ。
 逃げ切られた場合は自分の危険性を伝えられるがよくよく考えてみれば自分の立場を考えればそれは元々、大きなデメリットにはなりえない。
 むしろはやてを殺すとなると流石に時間がかかる可能性が高い。その間にセフィロスに追いつかれれば全く意味がない。御褒美のチャンスを逃すのは惜しいが生き残るのであれば間違った選択とは言えないだろう。





   ★   ★   ★   ★   ★





「それにしても……ここも酷い有様ですわねえ」
 アパートの一室の壁には大きな穴が開けられていた。恐らく何か戦いがあったのだろう。
「……まぁそれほど酷くはないみたいですけど」
 と、クアットロははやてから奪ったデイパックの中身を確認する。その中身に関してはほぼ彼女語った通り、クアットロの妹ディードの武器であるツインブレイズが手に入ったので今後は包丁の代わりにそれを使えば良いと考えたぐらいで特別目新しい物は……
「切り札は無いと……取り越し苦労だったかし……あら?」
 と、1枚の封筒を取り出し中身を確かめる。
「え? もしかしてこれ……」
 そこには30以上の英数字の羅列があった。
「こんなこと一言も言っていませんでしたわよね……それにこの数字……もしかして電話番号とか何かのアドレスなのかしら?」
 勿論、ジェイル・スカリエッティの戦闘機人である彼女が実際に使った事は無いが電話やコンピュータ程度の一般常識知識はある。数字が電話番号を、英字が通信機のアドレスという事は少し考え推測出来た。
 しかも、その紙のある列の横に『図書館』と書かれていた事から、この地にある各施設の電話番号等を示した者なのだろう。
「……でも、他の場所がわからないんじゃ意味ありませんわよね? それに折角の情報端末も見つからないと意味無いだろうし……」
 ちなみにアパートの中にもパソコンはあったが攻撃の影響で破損している為利用は不可能である。仮に利用出来ても、クアットロは気付いていなかったが……

373銀色クアットロ ◆7pf62HiyTE:2009/10/26(月) 21:02:25 ID:XKp2CptY0
「まあ、それに関してはあそこに向かってからでいいですわ」
 クアットロは次の目的地をH-2及びI-1にある船着き場及び客船に定めていた。
 はやてを斬り捨てる時点で困ったのが今後の行動方針である。何しろこの時点でクアットロの味方と言える参加者はチンクとルーテシア、そしてアンジールだけになってしまった。
 しかもルーテシアに関しては優勝の御褒美を狙う可能性が高い為正直味方かどうかも微妙である。
 勿論殺し合いを止めようとしている管理局の連中ならば少なくとも自分を殺す事は無いが、これまで通り手駒に出来るかは正直微妙。接触については慎重にいきたい所だ。
「チンクちゃんとディエチちゃんが上手く私を守ってくれと頼み込んでくれれば良いですけど、そんな都合の良い話なんてありませんわよねぇ」
 それに市街地には数多くの危険人物がひしめいている。現状で市街地を彷徨くのは自殺行為以外の何者でもない。
 ならばいっそ暫くは隅の方にあり人の出入りが少ないであろう船着き場や客船に引き籠もっているのも1つの手段ではないだろうか?
「出来ればシャマル先生の首輪も手に入れたいですけど……」
 その一方で機会があれば翠屋で犠牲になったシャマルの首輪も確保したいと考えていた。とはいえそれに関しては状況次第で良いだろう。
 引き籠もった後はメモを利用し他の施設に連絡を取って情報収集を行うなり、施設を調べて武器を探すなりすればいいだろう。
 そんな中、クアットロはデルタギアのユーザーズガイドに目を通す。はやてからもある程度説明されていたが詳しい事は何も知らないので確認した次第だ。仮面ライダーの力を信じるならば大きな力となりうるのは明白だが―――
「使うのは避けた方が良さそうですわね……」
 その理由はデモンズスレートと呼ばれる危険なシステムの存在だ。システムに適合しなければ闘争本能のままに戦いを繰り返す可能性がある。そんな危険なシステムを使う気にはなれない。
 かといってその辺の一般人に渡して暴走に巻き込まれるのも避けたい所だ。
「普通の人間じゃなければ使えるのかしら……例えば、チンクちゃんとかタイプゼロだったら……」
 チンクもしくはタイプゼロことスバル・ナカジマであればデルタギアを制御出来るのではと考えた。仮に2人と運良く遭遇出来たら渡すのも1つの手だろう。
「私から渡されてタイプゼロが使うとは思えませんけど……」
 せめてデモンズスレートを避ける方法は無いのかとユーザーズガイドを眺めているとある事に気が付く。
「結局の所、デルタギアっていうのはこの3つセットの総称なのよね」
 デルタギアを構成しているのは携帯電話型(音声入力式で一般にあるのとは違うが)ツールのデルタフォン、デジタルビデオカメラ型ツールのデルタムーバー、そしてベルト型ツールのデルタドライバーだ。
 デルタムーバーを取り付けたデルタドライバーを装着しデルタフォンをデルタムーバーに接続する事でデルタに変身する事が出来る。そしてデルタムーバーとデルタフォンを接続したものを銃及びポインターとして使用し戦うわけだが、
「……変身しないでこれを使う事って出来ないかしら?」
 クアットロが気になったのは変身しないでデルタフォンとデルタムーバーを使えるかである。使えるならば携帯電話とデジタルビデオカメラを手に入れた事になり今後にとって有用と言える。
 余談だが、ユーザーズガイドを見るまではデルタフォンが携帯電話という事には気付かなかった為正直驚いていた。
 そして2つを接続したものが銃として使えるならば遠距離攻撃可能な武器を手に入れた事になる。
 更に言えば変身をしていないわけなのでデモンズスレートの影響を受ける事もない。
「……まぁ、これに関しては後で確かめればいいですわね」
 勿論この場で都合良く携帯電話等を利用出来るわけが無いだろうし単独の銃として利用出来るかもわからない。今は移動を優先しその後でゆっくりと確かめれば良いだろう。

374銀色クアットロ ◆7pf62HiyTE:2009/10/26(月) 21:04:06 ID:XKp2CptY0

 休憩もそこそこにクアットロは再び移動を始めた。セフィロスが方向を変えてやって来たりや他の危険人物と遭遇したりする可能性はあった為、周囲への警戒は怠らず何時でもシルバーカーテンを展開する用意はしておく。
 その中で考えるのはどうやって生き残って脱出するかだ。今後はそれを最優先に考えていった方がよい。
 優勝を狙えるならばそれでも良かったが単独で行うのはまず不可能。やはり今後も他のグループに入って行動した方が良い。
 グループに入ったならばそのグループと一時的に協力して脱出を目指しても良いし、タイミングを見計らって裏切っても構わない。とはいえ前述の通りそうそう都合の良い話があるとは思えない為当面は人との接触は避け単独行動を取るつもりだ。
 その間に脱出の糸口や首輪の解除方法を見付けるという事だ。時間はあまり無い為、当面はそれに集中する。
 ある程度時間が経ち状況が変わった所で動けば良いと考えていた。
 さて、優勝するにせよ脱出するにせよ問題となるのはセフィロスやキャロ等といった殺し合いに乗った参加者だ、交渉が通じない以上排除するしかない。
 そういえばセフィロスの刀とキャロの持っていた鎌はどことなく似ていたのを今更ながら思い出したが、
「……って、どうでもいいですわよね、どっちにしても鬼に金棒とか何とかに刃物という感じで厄介な事に変わりはないわけですし」
 何にせよ、クアットロの戦闘力ではどんなに武装強化しても返り討ちに遭うのがオチだ。互いに潰しあってくれれば良いだろうがそうそう都合の良い話は無いだろうし、最終的には1人は生き残る為それを倒す必要が出てくる。

 が、実の所クアットロには1つだけ秘策があった。
「アンジール様だったらセフィロスにも対抗出来るはず……」
 アンジールはセフィロスの事を宿敵と言っていた。その口ぶりから彼の実力はセフィロス並、クアットロの知る限りセフィロスに対抗出来る唯一の参加者と言えよう。
 そしてセフィロスの実力はクアットロの見立て参加者中最強、故にアンジールがセフィロスを仕留められれば他の参加者など恐れるに足りない。
 都合がよい事にアンジールは自分を妹だと思い込んでいる。彼が自分に牙を剥く可能性は限りなく低い。
「アンジール様と合流したい所ですわね……」
 とはいえアンジールと上手く合流出来るとは思えないし、彼とてすぐに死亡するかも知れない。当面は他の参加者とのパイプが必要になってくるだろう。
 となるとシャマル達と接触した時の様に善良な自分を演じる必要がある。シャマルや遊城十代に対しては上手くいったがはやてには通用しなかった。もっと完璧に演技するべきだったと思っている。
 ちなみにフェイトに関する嘘についてはもう気にする必要は無いだろう。知る人物は既に死亡しているか自分の本性を知ったからだ。
 その一方でキャロに対して本性を見せたのは失敗だったと今では反省している。もっとも、仮に演技した所で同じ結果だっただろうが……


「……今更な話ですけどドゥーエ姉様って結構大変な事してたんですのね……」
 そんな中脳裏に浮かぶのは2番目の姉であり自分への教育も担当したドゥーエの事だ。
 その能力は変身能力で長い間諜報活動を行っているそうだ。
 具体的な事についてはスカリエッティとウーノ以外は把握していない為クアットロもその内容を知らない。とはいえクアットロ自身その事にはあまり興味はなかった。
 だが、今回シャマル達の目の前でやっている事はまさしくドゥーエの行っている事と同じと言える。それがどれだけ大変な事かをクアットロは身をもって知ったのだ。
 勿論、ドゥーエの場合は彼女のISであるライアーズ・マスクで外見は幾らでも誤魔化せる。しかし敵には等しく残酷というその本心まで隠すのは並大抵の事ではない。
 それを何年間もの長い間続けるのはどれだけ大変なのだろうか? そんな事をふと考えてしまい、
「今度戻ってきた時、少し労った方が良いかしらねぇ……」
 らしくないとは思いつつもほんの少しだけ元の世界で今も諜報活動しているであろう姉の事を考えたクアットロであった。

375銀色クアットロ ◆7pf62HiyTE:2009/10/26(月) 21:06:31 ID:XKp2CptY0



【1日目 日中】
【現在地 G-4】
【クアットロ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】疲労(中)、左腕負傷(簡単な処置済み)、脇腹に裂傷(掠り傷程度)、眼鏡無し、髪を下ろしている、キャロへの恐怖と屈辱
【装備】私立風芽丘学園の制服@魔法少女リリカルなのは、ウォルターの手袋@NANOSING、ツインブレイズ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
    
【道具】支給品一式×4、クアットロの眼鏡、大量の小麦粉、セフィロスのメモ
    血塗れの包丁@L change the world after story、スモーカー大佐のジャケット@小話メドレー、主要施設電話番号&アドレスメモ@オリジナル、
    医務室で手に入れた薬品(消毒薬、鎮痛剤、解熱剤、包帯等)デルタギア一式@魔法少女リリカルなのは マスカレード、
    デルタギアケース@魔法少女リリカルなのは マスカレード、カリムの教会服とパンティー@リリカルニコラス
【思考】
 基本:この場から脱出する。
 1.船着き場及び客船に向かい当面はそこに引き篭もり情報収集を行う
 2.アンジール及びチンクとの合流、特にアンジールはセフィロス対策の為どうしても合流したい。
 3.他の参加者との接触は現状避けるが、味方に出来そうな連中と遭遇した場合は出来るだけ本性を隠し信頼を固めた上で利用し尽くす。
 4.デルタギアの各ツールを携帯電話、デジカメ、銃として利用出来るかを確かめたい、変身ツールとしてチンクかタイプゼロに使わせても大丈夫だろうか?
 5.首輪や聖王の器の確保、シャマルの首輪を確保したいが……(後回しでも良い)
【備考】
※参加者は別々の世界・時間から連れて来られている可能性に至りました。
※アンジールからアンジール及び彼が知り得る全ての情報を入手しました(ただし役に立ちそうもない情報は気に留めていません)。
※アンジールの前では『アンジールの世界のクアットロ』のように振る舞う(本質的に変わりなし)。
※基本的に改心した振りをする(時と場合によれば本性で対応する気ですが極力避けるつもりです)。
※デュエルゾンビの話は信じていますが、可能性の1つ程度にしか考えていません。
※この殺し合いがデス・デュエルと似たもので、殺し合いの中で起こる戦いを通じ、首輪を介して何かを蒐集していると考えています。
※デュエルモンスターズのカードとデュエルディスクがあればモンスターが召喚出来ると考えています。
※地上本部地下、アパートにあるパソコンに気づいていません。
※制限を大体把握しました。制限を発生させている装置は首輪か舞台内の何処かにあると考えています。
※主催者の中にスカリエッティや邪悪な精霊(=ユベル)もいると考えており、他にも誰かいる可能性があると考えています。
※優勝者への御褒美についての話は嘘、もしくは可能性は非常に低いと考えています。
※キャロは味方に引き込めないと思っています。
※シャマル、はやて(StS)と情報交換しました。
※キングのデイパックの中身は全てはやて(StS)のデイパックに移してあり、キングのデイパックははやて(StS)のデイパックに入っています。
※この殺し合いにはタイムリミットが存在し恐らく48時間程度だと考えています(もっと短い可能性も考えている)。





 仮にこの殺し合いが舞台であるならば参加者は役者と言えるだろう―――
 もっとも―――それがどのような役なのかは誰も知り得ない話ではあるが―――
 だが、今も舞台は止まることなく役者達は各々の役を演じ続けている―――



 その終幕は―――遙か遠い―――

376 ◆7pf62HiyTE:2009/10/26(月) 21:08:02 ID:XKp2CptY0
投下完了しました。何か問題点や疑問点等があれば指摘の方お願いします。
今回のサブタイトルの元ネタは手塚治虫のマンガ『七色いんこ』からです。
なお、今回約51KBと分割が必要になりますので分割点の指定を、>>368まで(つまりはやて状態表まで)が前編(29KB)で>>369以降が後編(22KB)です。

クアットロをメインにすると何故かサブタイトルにクアットロと入れたくなるのは何故だろう?

377リリカル名無し:2009/10/26(月) 23:02:53 ID:ty4B0O/Q0
投下乙です
はやては冷徹と言ってもクアットロには敵わないか
どこか詰めが甘い気がする、元が善なだけに本当の悪には弱いのかもな
さて撒き餌になったハヤテの運命やいかに?

378リリカル名無し:2009/10/27(火) 19:43:04 ID:ICqhoptsO
投下乙です。
取り敢えずはやてざまあwww
うん、このはやては痛い目見て良かったと思う。マジで
まぁ、ある程度は自分の置かれている状況が理解できたようで何より。
今回の出来事が改心フラグへと繋がるのか、逆に更なるドグサレフラグと繋がるのか……

379リリカル名無し:2009/10/30(金) 17:00:07 ID:3X4JzpUU0
投下乙
一言だけ
はやてざまあwww

380 ◆vXe1ViVgVI:2009/11/01(日) 17:44:42 ID:PJsGq3XY0
アレックス、L、金居、アーカードを投下します

381Change the world 〜変わる世界〜 ◆vXe1ViVgVI:2009/11/01(日) 17:46:57 ID:PJsGq3XY0
 G-4に位置する市街地を、一台の大型トレーラーがエンジン音を撒き散らしながら走行していた。
 その運転席に座するアレックスは、危なげない手捌きでトレーラーを操り、目的の地を目指していく。
 時折後方を振り返るのは、仲間の生存が心配だからか。
 満身創痍のLを保護してから、もはや二時間以上もの時間が経過している。
 いまだ命を保っている事さえ殆ど奇跡に等しい。
 加えて、現在生死の境目をさ迷っている男は、非常に優れた頭脳を有しているのだ。
 他を遥かに上回るその頭脳は、このデスゲームを転覆させるに必要不可欠な存在となる筈だ。
 喪失する訳にはいかない、必ず延命させねばならない男。
 心配するなという方が無理であろう。

(地上本部まではおよそ3km程か。10分もあれば辿り着くだろうが……)

 殆ど表情には出さねど、アレックスは焦燥を感じていた。
 運転席に設置されたデジタル型の時計を見るに、放送の時間も近い。
 あれからザフィーラはどうなったのか。
 果たしてLの命を救う事は出来るのか。
 機動六課の面々は無事なのか。
 焦燥を覚える要素は山のように存在した。
 心内に溜まる焦りに乗じて、アクセルを踏む力は強くなる。
 それに伴い、段々と加速していくトレーラー。
 けたたましいエンジン音が昼間の市街地に吸い込まれ、消えていく。
 苛立ちに眉を顰めながら、トレーラーの操作を続けるアレックス。
 彼の首輪から放送が流れ始めたのは、それから凡そ数分後の事であった。
 この放送にて呼ばれる死者の中でアレックスの知人は四名。
 その過酷な現実に直面した時、アレックスはどのような感情を覚えるのか?
 それはまだ、彼自身でさえ予想する事が出来ないだろう感情。
 『戦いの神』としてではなく『機動六課隊員』として、彼は仲間の死を知る。
 第一回放送時の死者を聞いた際は、殆ど動揺を見せなかった。
 さて今回は―――?



 ―――時間は刻一刻と、流れていく。



□ ■ □ ■



 放送に対する考察を終えてから数分後、金居は学校に向けて足を進めていた。
 灰色のコンクリートで舗装された大通りに沿って、ひたすらに前進。
 周囲に警戒を飛ばすのも忘れずに、クワガタ型の始祖たるアンデットが昼間の市街地をひた歩いている。

382Change the world 〜変わる世界〜 ◆vXe1ViVgVI:2009/11/01(日) 17:49:00 ID:PJsGq3XY0
(それにしても、なぜ俺は首輪の回収を忘れていたのか……)

 足を動かしながら、金居はある疑問について頭を悩ませていた。
 それは失念していた首輪の存在について。
 奢りでも何でもなく、金居は自身が高等な頭脳を有していると自覚している。
 だからこそ、今回の失念が彼に与えた衝撃は大きい。

(まさか思考の内容についてまでも制御下に置かれている? ……バカな、流石にそれは有り得ない。
 洗脳による思考の束縛ならまだしも、首輪や脱出に関する考察が出来て『首輪の回収』という思考のみを忘れさせるというのは……いや、だが……)

 『首輪の回収』という重大な事項を忘却する自分に、金居はどうしても作為的なもの感じずにはいられなかった。
 首輪について思い出せなかったのは、あの場に居た四人全員。
 弁慶のような単細胞ならまだしも、高町なのはやペンウッドのようなそれなりに頭の切れる奴等までもが、首輪の存在を思い出せなかったのだ。
 流石に不自然さが覚えずにはいられない。

(……万が一、という事も考えておいた方が良いか……)

 思考の末に辿り着いた答えは保留。
 金居自身は殆ど有り得ない事だと考えているが、現状では明確な答えは導けない。
 プレシアが人の思考回路を操るだけの『力』を持っている可能性もあれば、偶然に偶然が重なり自分達四人全員が首輪という存在を忘れていたという可能性もある。
 どちらか一方の可能性を切り捨てるには、余りに時期尚早。
 選択肢の一つとして残しておいても、何ら問題は無いだろう。

「……と……着いたな」

 『首輪の忘却』についての軽い考察を終えたその時には、既に金居は学校の付近へと到着していた。
 思考への集中により散漫となっていた警戒心を、最大限にまで上げる金居。
 校門の影に隠れ膝を付くと、顔の半分を門柱から突き出し敷地内の観察を始めた。
 金居は、広大な校庭の隅々にまで視線を送っていく。

(……チッ、やはり居やがったか……)

 そして、金居は発見した。
 校庭のド真ん中にて、悠然と無防備に立ち尽くす男の姿を。
 そして、一目で理解する。
 奴が、奴こそが、あの『禍々しい気配』の根源だと。
 あの紅コートの男は危険だと。
 あの男は、不死者である筈の自分の生命を脅かす存在だと……金居は本能で感じ取った。
 その頬から、一筋の汗が流れ落ちる。

(……接触は……しない方が得策だな……)

 その決断は迅速なものだった。
 危険だと分かっている相手へと、わざわざ出向く道理もない。
 危険だと分かっている相手に、わざわざ遭遇する必要もない。
 金居は、発見から数秒とせずに接触を諦め、立ち上がる。
 あの男もずっと学校に居る訳ではない筈。
 少しの間この近隣の市街地に身を隠し、適当な頃に再び訪れれば良い。
 弁慶達の首輪が奪われるかもしれないが、それはそれで諦めるしかない。
 あの男と接触してまで、首輪を入手しようとは思わない。
 首輪が入手できなかったその時は、USBの中身だけでも確認して、直ぐに立ち去ればいいだけの話だ。
 確かに無駄な時間の浪費は惜しいが、身の安全には及ばない。
 勝機がない……とまでは思わないが、あの異様な雰囲気を醸し出す男と戦闘して無事で済むとも思えない。
 まだ中盤とも言えるこの戦い。無駄なダメージを負う事は避けたい。
 それは不死者たるアンデットであろうとも、だ―――。


 ―――そう理屈づけ、金居は学校に背を向ける。
 あの異様な男の存在は確かにイレギュラーであったが、予想の範囲外と言う訳ではない。
 学校に進路を変更した時点で、最悪の展開の一つとして、頭の片隅には置いてあった。
 予想をしてあったからこそ、悠然とした心持ちで対処できる。
 あの男の発見は、何ら今後に影響する事項では無い。

383Change the world 〜変わる世界〜 ◆vXe1ViVgVI:2009/11/01(日) 17:50:56 ID:PJsGq3XY0
(……さて、何処で時間を潰すかな)

 校門から少し離れた場所で首を回し、周囲を見回す金居。
 手頃な建物は直ぐ発見できた。
 それは何の変哲もない平屋建ての平凡な民家。
 その民家へと金居は悠然と歩を進める。
 金居の表情に焦りはなく、また確かな余裕が見て取れた。
 そう、金居の判断に間違いはない。
 学校にいるアーカードとの接触を避けた事も、アーカードが消えるまで待機を選択した事も、何ら間違いではない。
 むしろ現状からすれば的確な判断。
 流石は、あの熾烈なバトルファイトを最終盤まで生き残るアンデットと言えよう。


 だが、ただ一つ、金居は重大な見誤りをしていた。


 いや、これを見誤りと言うには余りに酷か。
 不運……そう、金居は不運だっただけなのだ。
 彼の行動に間違いはなく、ただただ不運だった。
 その頭脳を持って立ち回るには、その判断を持って回避するには―――余りに相手が悪すぎた。
 吸血鬼の始祖たる化け物から逃亡を成功させるには、彼の最適な判断を持ってしても、全てが足りない。
 吸血鬼の『第三の目』からは、逃げ切れない。

 轟音と共に、彼の右手側から、白銀の十字架が飛来した。

 十字架は、金居の直ぐ手前の地面に突き刺さり、彼の足を止める。
 金居は、十字架の直ぐ手前の地面に立ち止まり、呆然と飛来物を見詰める。
 十字架を投擲した男は、数秒前まで学校と市街地とを区切っていたコンクリートブロックを踏みしめながら、金居に向けて笑顔を飛ばす。
 急変を見せる事態に、さしもの金居も動きを忘れ、立ち尽くしていた。
 制止する彼の世界を再び動かしたのは、鮮血の如く紅を身に纏った男の一言。

「さて、私はお前に聞かなければならない事がある」

 クワガタムシの始祖を前に、吸血鬼の始祖は語る。
 紅色のコートを棚引かせ、紅色の瞳を歪ませて、万にも及ぶ命を啜ってきた口を開く。

「我がマスターを、インテグラル・ファルブルケ・ヴィンゲーツ・ヘルシングを殺したのは―――貴様か?」

 頬に残る涙の残滓を拭き取ろうともせず、吸血鬼はただ一つ、問い掛けた。
 心の奥底にたぎる憤慨を、一縷たりとも面に出す事なく―――不死王は不死者の前に降臨した。



□ ■ □ ■



「ふむ、そうか。貴様が訪れた時には既にインテグラルは殺されていたか」
「ああ、そうだ。……すまないな。お前の知人だと知っていれば、首輪のサンプルを取ろうとは考えなかった」

 邂逅から数分後、不死者と不死王は肩を並べて市街地を歩いていた。
 歩きながら行われているのは、互いが持つ情報の交換。
 遭遇時とはまるで正反対の、比較的穏やかな雰囲気が二人の間には流れていた。

「……それにしても少し予想外だったな」
「何がだ?」
「いや、ペンウッドの話していたお前とはまるで印象が違っていてな。
 奴の話によると、アーカードという吸血鬼は確実に殺し合いに乗っているとの事だったが」
「流石はペンウッドだ。良く分かってるじゃないか。まさにその通り、私は殺し合いに乗っていた。
 そしてこの十二時間、闘争に闘争を重ね、人々を殺害して回ったよ」

 男が口にした最初の問いに、金居は平然と嘘を吐いた。
 アーカードに発見された事に多少の動揺は感じていたものの、頭脳は普段通りに動いてくれた。
 冷静に思考し、動揺を心中に留め、嘘の解答を導き出したのだ。
 勿論アーカードにその虚言を見抜く術は無く、完全にではないだろうが、金居の言葉を信じてしまう。
 本心はどうあれ、表向きは主催への対抗を方針とする二人。
 二人は互いが持つ情報を交わし合いながら、市街地を歩き始めた。

「……その吸血鬼が何故主催者に対抗する道を選んだんだ? この十二時間の間に……お前に何があった」

 素直に情報交換に応ずるアーカードを前にして、金居は違和感を覚えずにはいられなかった。
 そして、ある種の……俗に嫌な予感と云われる感情を感じていた。
 登場時の行動は常軌を逸していたが、それ以外はペンウッドの話とは正反対の紳士ぶり。
 しかしながら、ペンウッドやインテグラルという人物に付いてもしっかりと把握している。
 本人しか知る筈の無い情報を有し、だが事前に聞いた人物像とはまるで違った男。
 眼前の男が本当に『アーカード』なのか……金居には判断する事が出来なかった。

384Change the world 〜変わる世界〜 ◆vXe1ViVgVI:2009/11/01(日) 17:52:16 ID:PJsGq3XY0
「対した事ではない。ただ主人の命令に従ったまでだ」
「……命令……? だが、お前の主は学校で死んでいたのでは……」
「そう、死んでいたよ。そして最期の最期、燃え尽きる寸前の篝火で伝えたのだ。私に、主人の言い付けすら守れなかった私に……最期の命令(オーダー)を遺して死んでいったのだ」

 アーカードの言葉に金居の疑念は溶け去っていった。
 確かに金居の一撃はインテグラルの胸元を貫いた。
 だが即死だったかと問われれば、彼自身確信は持てない。
 死に至る寸前に、何らかのメッセージを残す事は可能だったのかもしれない。
 つまりはそうだ。
 自分は、最強の吸血鬼と、それを止める唯一の『鍵』とを引き合わせてしまったのだ。
 吸血鬼の殺戮劇を続行させようと行った事が、結果としてその幕を下ろすきっかけとなってしまった。
 そして誕生したのは、殺し合いを阻止せんと行動する不死王。
 優勝を目指す者達からすれば、厄介この上無い存在。
 主催者に対する者達からすれば、これ以上無い程に心強い味方。
 『鍵』を破壊したつもりが、二人を引き合わせす結果となった。
 自身の行動が齎した現状に、思わず金居は歯噛みする。

「……参加者だ」

 そんな金居を尻目に、アーカードは行動を始めていた。
 唐突にある方向……市街地の南側へと視線を向け、そこに建ち並ぶビル列を見詰める。
 そのアーカードの異変に金居も気付くが、彼の行動が何を意味するかまでは分からない。

「何を言っている? 何処にも人の気配はないが……」
「音だ。南の方からうっすらとだがエンジン音が聞こえる。おそらく大型車……この会場内で仕入れたか、支給されたかのどちらかだろう」

 アンデットである金居も、常人とは比較にならない程の感覚神経を持っている。
 だが、その聴覚を総動員してもエンジンの音などは感じ取れない。
 この察知能力、流石は最強の吸血鬼と言ったところか……と、僅かな感心と脅威とを覚える金居であった。

「少し見てくる」

 一言そう告げると、アーカードはビルの一つへと近付いていく。
 そして、それがさも当然のように―――ビルの壁へと『垂直』に立ち上がった。
 重力という概念をまるで無視した行動。
 その光景に金居は目を見開き、驚愕を面に出していた。
 悠然と歩を進めながら壁を登っていくアーカード。
 その身体が屋上へと到着したのはほんの十数秒後の事であった。

「あそこだな。人数は二人……一人は死にかけか」

 とはいえ、屋上からであっても市街地を見渡す事は不可能。
 建ち並ぶ多種多様の建造物が阻害し、市街地の全貌を把握することは出来ない。
 ましてや、走行する車両の発見など出来る筈もない。
 その筈なのだが―――アーカードの表情と発言は、捜索の成功を告げている。
 小さく頷くと、アーカードは寸分の躊躇いも見せずに屋上から飛び降りた。
 重力に引かれ、その落下速度はどんどんと加速していく。
 だが、アーカードは動揺する様子を全く見せず、そして優雅に着地した。
 多大な衝撃がその両脚に掛けられた筈なのに、身じろぎ一つしない。
 それどころかその様子はまるで羽毛が舞い落ちたかの如く。
 アーカードは再び金居の前へと現れた。

「南東に約1km……そこを漆黒のトレーラーが走っていた。中には男が二人。一人は無傷、一人は死にかけだ。
 おそらくはあの高層ビルでも目指しているのだろう。接触するぞ」
「……この位置から良く見付けられたな」
「意識して隠れているのならまだしも、あれだけ大っぴろげに動いているのだ。吸血鬼の『第三の目』からは逃れられんよ」

 そう言い放つと、アーカードは金居に背を向け、市街地の奥へと進んでいく。
 その後ろ姿を見詰めながら、金居は思考する。
 どうやってこの化け物を殺害するか―――ただそれだけをひたすらに考える。

385Change the world 〜変わる世界〜 ◆vXe1ViVgVI:2009/11/01(日) 17:53:43 ID:PJsGq3XY0
(ペンウッドの言う通りだな……コイツは大した化け物だ)

 遭遇から僅か十数分であったが、金居はアーカードの異常性を充分に理解していた。
 完璧に隠れていた筈の自分を易々と見付け出した察知力。
 制限下に在りながら1km先のエンジン音を聞き取る聴覚。
 建ち並ぶビルの数々を物ともせずに1km先を走る車を発見し、その状況すらも把握した視覚。
 成る程、化け物という言葉が此処まで当てはまる者もそうは居ないだろう。


 だが―――


(―――殺す方法がない訳ではない)

 そう、この殺し合いに参加させられている時点で断定できる。
 こいつは死ぬ。
 ペンウッドの口は、まるで打つ手がない最強の化物のように語られていたが、それは違う。
 こいつは死ぬのだ。少なくとも首を斬り落とせば、こいつは死ぬ。
 首輪が装着されてる時点で、それは自明の理。
 殺せる存在なのだ。
 自分達アンデット同様、制限によりこいつは『殺せる存在』に成っているのだ。

(……だが、慎重に動く必要はあるか……)

 とはいえアーカードが難敵であることもまた事実。
 単純な不意打ちではおそらく殺害には至らない。
 行動を起こす時は慎重に慎重を喫し、攻撃する時は全力に全力を込めた一撃により一瞬で終わらせる。
 まともな戦闘になれば無駄な被害を被るのは分かりきっている。
 下手すれば『死』に繋がる程の傷を負う可能性すらある。
 この状況を切り抜けるには、慎重さを欠いたら話にもならないだろう。

「おい、不死者(ノストラフィラ)。置いてくぞ」

 アーカードの声に思考を打ち切り、金居は足を動かし始める。
 焦る必要はない。
 じっくりと機が熟すのを待てば良い。
 ……そう考え、金居はアーカードと行動を共にする。
 自身の行動が招いた状況に頭を悩ませながらも、金居は動く。
 優勝し自分達の世界を手に入れる為―――ただそれだけを望みクワガタムシのアンデットは前に進む。



□ ■ □ ■



 アレックス達が地上本部に辿り着いたのは、放送が終わってから約十分後の事であった。
 到着したアレックスはLを背負い、出来るだけ振動を与えないよう走り出した。
 地上本部の医務室は一度だけ利用した事がある。医務室に着くのに大した時間は掛からなかった。
 Lをベッドの一つに寝かせると、アレックスは治療を開始する。
 治療器具も設備も充分。ただ足りない物はアレックスの知識のみ。
 如何に知識を振り絞ろうと、応急手当ての範囲を出る事はあらず。
 だがそれでもと、出来る限りの治療をアレックスはLへと施していく。
 アレックスの手が止まったのは、Lの身体が包帯と湿布に覆い隠されたその時。
 溜め息と舌打ちとを吐き捨て、アレックスは付近に置かれた回転椅子へと腰を落とした。
 その表情は……悔しさに満ちた物であった。

「……無理か……」

 手は尽くした。彼の持つ知識の限りに、治療は行った。
 だが、到底足りない。余りに時間が経ち過ぎている。
 もはや応急処置でどうこうなる状況を逸脱していた。
 救えない。
 自分では、この命を、救えない。
 ―――その事実がアレックスの感情を蝕んでいた。

「……済まない、ザフィーラ」

 思い出されるは、数時間前自分に全てを託して殿を勤め、そして先の放送で呼ばれてしまった守護獣の姿。
 恐らくはあの紫色の大蛇との戦いで死亡したのだろう。
 自分が残っていれば、とは言わない。
 ただその最期の頼みを叶えられなかった事、それが、それだけが悔やまれる。

「機動六課の奴等も殆どが死亡した……残るはヴィータ、キャロ・ル・ルシエ、スバル・ナカジマのみか」

 死に掛けのLを見詰めながら、アレックスは一人言葉を紡ぐ。
 放送で告げられた、新たなる世界で出会った仲間達の死。
 何もせずにいた自分がいる一方で、死者の数は膨れ上がっている。
 仲間の殆どは死亡し、自分はのうのうと生き延びている。
 何が違ったのか。
 死んだ仲間達と自分とでは何が違ったのか。
 分からない、分かる訳のない問いが脳裏に纏わりついていた。

「闘争……」

 思えば自分はこの殺し合いの場で闘争らしい闘争をしていない。
 唯一の闘争はセフィロスやシグナムの三つ巴のみ。
 その三つ巴も結果として逃亡を選択した。
 闘争を運命付けられた自分とは思えない、此処までの道のりであった。

386Change the world 〜変わる世界〜 ◆vXe1ViVgVI:2009/11/01(日) 17:54:18 ID:PJsGq3XY0
「これは運命から逃れられたという事なのか……?」

 自問に対する解答は瞬時に思い浮かんだ。
 アレックスは自嘲の念と共にその答えを口にする。

「……違うな」

 違う、自分は運命から逃れられてなどいない。
 心の奥底で求めている。
 闘争を、血湧き肉踊る闘争を……求めている。
 だが―――

「だが、俺は……決めた」

 そう、自分は決めた筈だ。
 運命に縛られた闘争は、もうしないと。
 奴等と同様に、自分の意志による闘争を行おうと……新たな世界に飛ばされた時に誓った。
 だから、この殺し合いに於いても無駄な戦闘はしない。
 プレシア・テスタロッサを―――闘争を強制させる魔女を打倒する為に、力を振るう。
 心中に宿る渇望などは二の次だ。
 死んでいった仲間の為に―――、

 眼前で死へと向かっている仲間の為に―――、

 そして―――

(―――俺は……俺の為に……力を使う)

 『戦いの神』としてではない。
 キース・シルバーとしてではない。
 ただ一人の意志を持った人間・アレックスとして、力による自由ではない、真なる自由を勝ち取る為に―――戦おう。

「だから……済まない」

 Lのデイバックを回収し、アレックスは立ち上がる。
 今この場に居続けたところで、彼に出来る事は何も無い。
 出来うる限りの治療はしたのだ。
 しかし、それでもLの命を救う事は不可能であった。
 これ以上アレックスに出来る事といえば、その死の瞬間を看取る事のみ。
 だが、その行動には何ら意味が無い―――と、アレックスは冷徹に断定する。
 そうして無駄に時間を浪費するならば、一分一秒でも早く行動を始めるべきだ。
 その一分一秒で救える命が有るかもしれない。その一分一秒で打開が可能な状況が有るかもしれない。
 ならばこそ、今は動く時だ。

(取り敢えずは地上本部の内部を捜索するか。何か出て来るかもしれん)

 緩慢なる死へと向かうLを放置し、アレックスは出口へと近付いていく。そして扉は開く。
 外に広がるは今までの世界とは別の新たな世界。
 仲間達の死を背負い戦う事を決意したアレックスの、新たな闘争の世界。
 彼はその世界へと踏み出した。



【1日目 日中】
【現在地 E-5 地上本部内部】
【アレックス@ARMSクロス『シルバー』】
【状態】健康、疲労(小)
【装備】なし
【道具】支給品一式
【思考】
 基本:この殺し合いを管理局の勝利という形で終わらせる。
 1.地上本部の中を探索する
 2.自分の意思による闘争を行う。
 3.六課メンバーと合流する。
 4.キース・レッドに彼が所属する組織の事を尋問する。その後に首輪を破壊する。
 5.東側に医療設備が偏っているのが気になる。
 6.このまま行動していてキース・レッドに出会えるのだろうか。
【備考】
※身体にかかった制限を把握しました。
※セフィロスはデスゲームに乗っていると思っています。
※はやて@仮面ライダー龍騎は管理局員であり、セフィロスに騙されて一緒にいると思っています。
※キース・レッド、管理局員以外の生死にはあまり興味がありません。
※参加者に配られた武器にはARMS殺しに似たプログラムが組み込まれていると思っています。
※殺し合いにキース・レッドやサイボーグのいた組織が関与していると思っています。
※他の参加者が平行世界から集められたという可能性を考慮に入れました。
※ザフィーラから第1放送の内容とカードデッキに関する簡単な説明を聞きました。
※市街地東側に医療設備が偏っていることから、西側にプレシアにとって都合の悪いものがあるかもしれないと推測しています。



【黒の騎士団専用トレーラーの状態】
※トレラーは地上本部入り口前に放置されています。
※内部のコンピューターのOSは地球及びミッドチルダのものと異なります。
※機械設備や通信機能は全てコンピューター制御です(ただし居住スペースはその限りではない)。ギアス世界のOSを知る者もしくはOS自体を書き換えない限り使用不可能です。
※ベノスネーカーとの接触でエンジン部に多大なダメージを負いました。このまま走らせるとエンジン部が爆発する可能性が非常に高いです。アレックスはこの事にはまだ気づいていません。

387Change the world 〜変わる世界〜 ◆vXe1ViVgVI:2009/11/01(日) 17:55:17 ID:PJsGq3XY0
□ ■ □ ■



 そして、死に掛けの探偵が残された医務室。
 治療を施されたとはいえ、重傷のその身体はゆっくりと死へと進んでいく。
 唯一の味方も離れていった。
 もはや手の尽くしようはなく、世界最高と云われた探偵は再び黄泉の世界へと引きずられようとしている。
 もはや誰にも手の尽くしようはない。
 もしこの場に医師が居たとしても、そのボロボロの身体を一目見ただけで、直ぐさま諦めてしまうだろう。
 医者と言えど全ての人間を死の淵から救える訳ではない。
 どうしようも無い、どう治療しても救う事が出来ない患者は居るのだ。
 今のLなど、将にそうだ。
 医者には、いや人間にはどうする事もできない状況。



 ―――そう、人間にはどうする事もできない状況であった。



「なあ金居、人間を殺すのは何だと思う?」


 だが、どうだろう?
 彼等のような人外の化け物達にとっては、Lは本当に手の尽くしようのない患者なのか?
 彼等のような死を知らぬ化け物達にとっては。Lは本当に手の尽くしようのない患者なのか?
 答えはノーだ。

「……今は謎掛けなどをしている場合では無いと思うが」
「答えは簡単だ。『あきらめ』さ、『あきらめ』が人を殺す。絶望的な状況であきらめなかった者のみが、生を掴む事が出来る。
 あきらめを拒絶した時、人間は人道を踏破する権利人となりうるのだ」

 何時のまにか、医務室に二人の男が立っていた。
 男達は死に掛けのLを見下ろしながら、言葉を交える。
 片や呆れの色を、片や興味の色を、その表情に浮かべながら、二人はそこに居た。

「この男は助からないな。治療した痕があるが……おそらくは諦めたんだろう。まぁこの様子なら仕方ないだろう。
 血の臭いを辿って此処まで来たが……無駄手間だったな」
「そうかな? この男はまだあきらめていないぞ。こんな状況に陥りながら、未だ『生』を掴もうとしている」
「……確かにあきらめは人を殺す。だが、あきらめなかったからといって、人間が生き延びられる訳ではない。
 意志だけではどうにもならない事もある。そうだろ? 」
「そうだ。あきらめなかったからといって、必ず生き延びられる訳ではない。だが、あきらめなかった者が機会を得るのだ―――今回のようにな」

 吸血鬼のその行動を、不死者は止める暇もなかった。
 Lの首元に顔を近付け、刃物のように洗練された牙を血管へとめり込ませる。
 そして―――噴き出したその真紅吸い上げた。
 Lの身体を循環し続ける血液が、吸血鬼の喉を通り過ぎ、浸透する。
 血液を通貨とした魂と命の同化。
 人間を超越する為の儀式。
 これが男の生存できる唯一の方法。
 Lは、Lの諦めなかった心が―――最後のチャンスを掴み取ったのだ。






「あの男は放っておいて良いのか?」

 数分後の市街地、アーカードと金居の二人がそこを歩いていた。
 ポツリと放った金居の問にアーカードは笑顔を浮かべる。
 そして、ゆっくりと振り返り、その視線を金居へと合わせた。

「さあな。奴がどうなるかは私にも分からん。
 だが、最低限の書き置きはしておいた。奴がどう行動するかは、奴自身が判断をする事だ。
 理性の欠片もないグールになる可能性だってあるし、吸血鬼になったとしても、化け物の身体での『生』を望むかは分からない。
 化け物となった自分に悲観し、自らの死を選ぶ可能性も十二分に有り得る」

 心底楽しそうにアーカードは語る。
 男の―――最期まであきらめる事をしなかった男の、その可能性を、その選択を待ち望む。

「まぁ良いがな。俺としては奴の生存を願うまでだ。……それともう一人の男の事だが」
「トレーラーは入り口に止まっている。おそらくこのビルの内部でも探索しているのだろう」
「接触はしないのか?」
「探すのが面倒だ。あれだけ広大なビルになると、人一人を見つけ出すの流石に難しい。その全身に大量の血液を纏っているのならまだしもな」
「ならば工場への到着を先に目指すか……まぁ良いだろう」

 二人のアンデットが市街地を歩いていく。
 互いの目指すものは正反対。
 なれど不死王は不死者の真意に気が付く事がなく、主の命を守る為に進んでいく―――

388Change the world 〜変わる世界〜 ◆vXe1ViVgVI:2009/11/01(日) 17:57:13 ID:PJsGq3XY0
【1日目 日中】
【現在地 E-5 市街地】
【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式×2、トランプ@なの魂、いにしえの秘薬(残り7割)@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、砂糖1kg×8、
    カードデッキの複製(タイガ)@仮面ライダーリリカル龍騎、USBメモリ@オリジナル、S&W M500(5/5)@ゲッターロボ昴、コルト・ガバメント(6/7)@魔法少女リリカルなのは 闇の王女、ランダム支給品0〜1
【思考】
 基本:プレシアの殺害。
 1.プレシアとの接触を試みる(その際に交渉して協力を申し出る。そして隙を作る)。御褒美の話については状況次第。
 2.基本的に集団内に潜んで参加者を利用or攪乱する、強力な参加者には集団をぶつけて消耗を図る(状況次第では自らも戦う)。
 3.利用できるものは全て利用する。邪魔をする者には容赦しない。
 4.隙を見てアーカードを殺害する。
 5.アーカードの隙を見て、USBメモリの中身の確認を行う。
 6.工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す振りをする。
 .もしもラウズカード(スペードの10)か、時間停止に対抗出来る何らかの手段を手に入れた場合は容赦なくキングを殺す。
【備考】
※このデスゲームにおいてアンデッドの死亡=カードへの封印だと思っています。
※最終的な目的はアンデッド同士の戦いでの優勝なので、ジョーカーもキングも封印したいと思っています。
※カードデッキ(龍騎)の説明書をだいたい暗記しました。
※殺し合いが適度に難航すればプレシアが介入してくると考えています。また、首輪を運良く解除出来てもその後にはプレシア達との戦いが待っていると考えています。
※参加者が異なる並行世界及び時間実から連れて来られている可能性に気が付きました。
※ジョーカーが殺し合いに乗っていないでインテグラルと組んでいた場合、アーカードを止める鍵になる可能性があると考えています。
※制限に気が付きました。また、変身時間の制限も元に戻った後50分は再変身出来ない所までは把握しました。なお、変身不能から丁度1時間経過した為変身が可能になりましたがまだその事には気付いていません。
※プレシアに思考を縛る力があるかもと考えています

【アーカード@NANOSING】
【状況】健康、昂ぶり、アンデルセンの死への悼み、セフィロスへの対抗心
【装備】パニッシャー(砲弾残弾70%/ロケットランチャー残弾60%)@リリカルニコラス
【道具】支給品一式、拡声器@現実、首輪(アグモン)、ヘルメスドライブの説明書
【思考】
 基本:インテグラの命令(オーダー)に従い、プレシアを打倒する。
 1.プレシアの下僕を誘き寄せるために、工場に向かい首輪を解除する。
 2.積極的に殺し合いに乗っている暇はないが、向かってくる敵には容赦しない。
 3.工場へ向かう道中で、首輪を解除できる技術を持った参加者を探してみる?
 4.セフィロスは自分の手で殺す。アンデルセンを殺した奴も殺す。
【備考】
※スバルやヴィータが自分の知る二人とは別人である事に気付きました。
※パニッシャーは憑神刀(マハ)を持ったセフィロスのような相当な強者にしか使用するつもりはありません。
※第1回放送を聞き逃しました。
※ヘルメスドライブに関する情報を把握しました。
※セフィロスを自分とほぼ同列の化物と認識しました。
※今回のゲームはプレシア単独で実行されたものではなく、共犯者ないし部下が協力していると考えています。
 また、首輪が解除された場合の主催者の対処法が、「刺客を送り込んで強制的に排除させる」というものだと考えています。

389Change the world 〜変わる世界〜 ◆vXe1ViVgVI:2009/11/01(日) 17:57:57 ID:PJsGq3XY0
□ ■ □ ■



 再び場所は移り変わり地上本部の医務室。
 そこには世界最高の頭脳を持つ男が一人横になっている。
 男が眠るヘッドの横に設置された寝頭台には、一枚の紙が残されていた。
 それは真祖たる吸血鬼が置いていったメッセージ。
 化け物となった男に問う、最後の判断。その内容は以下の通りである。


『もしお前が食人鬼(グール)とならず、吸血鬼になったとしたならば伝えておく。
 判断しろ。化け物として生きるか、それとも人間の尊厳を持ったまま死ぬのかを。
 判断しろ。闇の元でしか生きていけない下等な存在となるのか、人間としてのお前で居続けたいのかを。
 なに、死を選んだとしても大した苦痛はない。普段通りに日の下へ身体を放り出せば良いだけだ。
 たったそれだけでお前は死ぬ事ができる。痛みは一瞬だ。一瞬でお前は元あった通りに塵となれる。
 機会は与えた。後の判断をするのは全てお前だ。
 お前自身が、お前自身の意志を持って、日か影かどちらかの世界を選べ』

 吸血鬼となってしまうのか、理性の欠片もない食人鬼(グール)となってしまうのか……それは誰にも分からない。
 ただ一つ確かな事は、Lは以前のような生き方は望めないという事のみ。
 日の当たらない建物の中、Lの世界が変わっていく―――。



【1日目 日中】
【現在地 E-5 地上本部・医務室】
【L@L change the world after story】
【状態】全身打撲(治癒中)、全身裂傷(治癒中)、中程度の出血(治癒中)、右足粉砕(治癒中)、気絶中、吸血鬼orグール化
【装備】全身に包帯と湿布
【道具】支給品一式×2、首輪探知機、ガムテープ@オリジナル、ラウズカード(ハートのJ、Q、K)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、レリック(刻印ナンバーⅥ、幻術魔法で花に偽装中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(シグナム)、首輪の考察に関するメモ、ランダム支給品(ザフィーラ:1〜3)
【思考】
 基本:プレシアの野望を阻止し、デスゲームから帰還する。デスゲームに乗った相手は説得が不可能ならば容赦しない。
※以下気絶前の思考。
 1.機動六課隊舎でザフィーラ達を待ちながら、首輪の解析。
 2.メタルゲラスがかがみを連れてきたら、改めて拘束するなり、落ち着かせるなりして、尋問。
 3.10時までにザフィーラ達が来たら、ミラーモンスターを倒しにかかる。来なかったら、鏡のない部屋に引きこもる。
 4.以上のことが終わったら、船を調べに、その後は駅を調べにいく。
 5.通信で誰かと連絡がついたら、その人と情報交換、味方であるなら合流。
【備考】
※参加者の中には、平行世界から呼び出された者がいる事に気付きました。
※クアットロは確実にゲームに乗っていると判断しています。
※ザフィーラ以外の守護騎士、チンク、ディエチ、ルーテシア、ゼストはゲームに乗っている可能性があると判断しています。
※首輪に何かしらの欠陥があると思っています。
※アレックスからセフィロスが殺し合いに乗っているという話を聞きました。
※吸血鬼になるかグールになるかは、後の書き手に任せます

390 ◆vXe1ViVgVI:2009/11/01(日) 18:01:46 ID:PJsGq3XY0
投下終了……ですが、早速ミスを発見したので修正を。

アレックスとLの状態表を以下の通りに修正お願いします。


【アレックス@ARMSクロス『シルバー』】
【状態】健康、疲労(小)
【装備】なし
【道具】支給品一式×3、首輪探知機、ガムテープ@オリジナル、ラウズカード(ハートのJ、Q、K)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、レリック(刻印ナンバーⅥ、幻術魔法で花に偽装中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(シグナム)、首輪の考察に関するメモ、ランダム支給品(ザフィーラ:1〜3)
【思考】
 基本:この殺し合いを管理局の勝利という形で終わらせる。
 1.地上本部の中を探索する
 2.自分の意思による闘争を行う。
 3.六課メンバーと合流する。
 4.キース・レッドに彼が所属する組織の事を尋問する。その後に首輪を破壊する。
 5.東側に医療設備が偏っているのが気になる。
 6.このまま行動していてキース・レッドに出会えるのだろうか。
【備考】
※身体にかかった制限を把握しました。
※セフィロスはデスゲームに乗っていると思っています。
※はやて@仮面ライダー龍騎は管理局員であり、セフィロスに騙されて一緒にいると思っています。
※キース・レッド、管理局員以外の生死にはあまり興味がありません。
※参加者に配られた武器にはARMS殺しに似たプログラムが組み込まれていると思っています。
※殺し合いにキース・レッドやサイボーグのいた組織が関与していると思っています。
※他の参加者が平行世界から集められたという可能性を考慮に入れました。
※ザフィーラから第1放送の内容とカードデッキに関する簡単な説明を聞きました。
※市街地東側に医療設備が偏っていることから、西側にプレシアにとって都合の悪いものがあるかもしれないと推測しています。


*****


【L@L change the world after story】
【状態】全身打撲(治癒中)、全身裂傷(治癒中)、中程度の出血(治癒中)、右足粉砕(治癒中)、気絶中、吸血鬼orグール化
【装備】全身に包帯と湿布
【道具】なし
【思考】
 基本:プレシアの野望を阻止し、デスゲームから帰還する。デスゲームに乗った相手は説得が不可能ならば容赦しない。
※以下気絶前の思考。
 1.機動六課隊舎でザフィーラ達を待ちながら、首輪の解析。
 2.メタルゲラスがかがみを連れてきたら、改めて拘束するなり、落ち着かせるなりして、尋問。
 3.10時までにザフィーラ達が来たら、ミラーモンスターを倒しにかかる。来なかったら、鏡のない部屋に引きこもる。
 4.以上のことが終わったら、船を調べに、その後は駅を調べにいく。
 5.通信で誰かと連絡がついたら、その人と情報交換、味方であるなら合流。
【備考】
※参加者の中には、平行世界から呼び出された者がいる事に気付きました。
※クアットロは確実にゲームに乗っていると判断しています。
※ザフィーラ以外の守護騎士、チンク、ディエチ、ルーテシア、ゼストはゲームに乗っている可能性があると判断しています。
※首輪に何かしらの欠陥があると思っています。
※アレックスからセフィロスが殺し合いに乗っているという話を聞きました。
※吸血鬼になるかグールになるかは、後の書き手に任せます

391リリカル名無し:2009/11/01(日) 19:05:48 ID:C9Opkzmg0
投下乙です。
なんかLが大変な事になっているぞ!
吸血鬼化→少なくても次の放送まで地上本部に引き籠もらざるを得ない。しかも確かルーテシアが18時のタイミングで地上本部破壊を狙っていたはず。
グール化→無差別マーダー化(でもキャラ崩壊になるよなぁ……アリなのかなぁ……)
吸血鬼化で脱出さえ出来れば対主催強化になるが……それにしても、ダメージ意外とでかかったんだなぁ……。
確か設定では処女・童貞だったら吸血鬼化(でなければグール化)らしいが……Lはどっちだ?
どっちにしてもアレックスと再会した時はビックリ間違いないだろうなぁ、両名とも地上本部にいるから可能性はありそうだし。

そして金居とアーカードというどうやって殺せばええねんコンビ誕生、果たして金居はアーカードを仕留める事が出来るのか?
学校の首輪は確保出来なか……あ、アーカード持っているから問題ないか。

392リリカル名無し:2009/11/02(月) 15:44:56 ID:BfvJNT5Q0
投下乙です
瀕死のLがまさかこんなふうになるとは・・・
そして金居とアーカードがコンビを組むとか予想外だった・・・

393 ◆7pf62HiyTE:2009/11/20(金) 14:43:23 ID:ox9acKfQ0
フェイト(A's)、キャロ分を投下します。

394命の理由 ◆7pf62HiyTE:2009/11/20(金) 14:47:33 ID:ox9acKfQ0



 ―――耳なんて傾けずすぐにでも殺せば良かったのかも知れない―――



「手を……組む……?」
 フェイト・テスタロッサは目の前の少女の言葉に戸惑いを覚えた。自分は先程この少女を死んでくれと言ったはずだった。にもかかわらず少女の返答は拒否ではなく協力の打診だった。
「……どういう意味だ?」
 故にフェイトは聞き返す。
「言葉通りの意味です。私もエリオ君を生き返らせたいんです」
 疑問は氷解した。つまり彼女も自分と同じなのだ、彼女もまた『エリオ』を生き返らせる為に殺し合いに乗っているのだろう。だが、
「そんな言葉だけで信じられると?」
 身を守る為のその場しのぎの嘘という可能性は十分にあった。故に素直に信じたりはしない。
「せめて話だけでも聞いてください!」
「聞いたって意味はない!」
 少女は対話を求めているがフェイトにしてみれば最終的には殺すつもりなのだ。故に彼女の言葉に耳を傾けようとはしない。



 ―――いや、話を聞く事自体を拒否したかったのかも知れない―――



「話を聞いて駄目ならそれでも構いません! エリオ君が生き返るんだったらフェイトさ……ちゃんが優勝したっていいんですから!」
 が、少女は頑として対話を求めていた。その姿勢にほんの少し親友の姿が浮かんだもののすぐにそれを振り払う。
「……だったらその鎌を解除してくれ。それなら話を聞いても良い」
 それでも彼女の姿勢には心を動かされた。故に話ぐらいは聞いても構わないと考えた。とは言え幾ら話をするといっても相手が武器を構えていては話など出来はしない。故に解除を求めたのだ。
「わかりました」
 少女は鎌を元の待機状態に戻した。
「……オ君、少しだけ待っていてね」
 待機状態に戻す際、何か口にしていた気もしたが敢えて気にしない事にした。
 ちなみにフェイト自身としては少女の持っている鎌を出来るならば手に入れたいと考えていた。元々自分のデバイスであるバルディッシュが鎌である事もあり自分に合っていると考えたのだ。
 また、少し見ただけだがあの鎌の雰囲気から強大な力を持っているのがわかった。故に優勝する為に是非とも手に入れたいと考えていた。

 正直な所、フェイトは内心では安堵していた。先程の白い龍との戦いで受けたダメージからまだ回復しきっていないからだ。
 話を聞く前は短時間で勝負を着ければ良いと考えていたが少女の状態と武器を見る限りそれは厳しいと考えていた。負けるつもりは無かったが大きな被害を受ける可能性があった。これでは今後戦い抜く事など出来やしない。
 体力の回復と温存の為、ある程度時間を稼ぐという意味でも話を聞く位は良いだろう。
 また、手を組むという言葉を信じるならば他の参加者に関する情報を得られる可能性がある。知っている人物を殺す事に関しては正直気が引けるが、勝ち残る為には情報はどうしても必要だ。

395命の理由 ◆7pf62HiyTE:2009/11/20(金) 14:48:25 ID:ox9acKfQ0



 ―――それでも、何処か情報交換を拒否したい自分がいた気がした―――



「それで……手を組むというのは本気なのか?」
「はい」
 その言葉を聞きフェイトの方もオーバーフラッグを仕舞う。勿論いざという時には何時でも仕掛けられる様にはしておく。
 そうして2人の少女に寄る情報交換が始まった―――
 まずは少女―――キャロ・ル・ルシエからの話だ。彼女はどうやら管理局の機動六課という部署に所属しているという話で同じ機動六課の仲間としてスバル・ナカジマと既に死亡しているエリオ・モンディアルとティアナ・ランスターがいるという話だ。
 そしてスバルの姉であるギンガ・ナカジマ、ある事件で知り合った友人ルーテシア・アルピーノ、その事件で保護したヴィヴィオ、そしてその事件の関係者であるゼスト・グランガイツ、クアットロ、チンク、ディエチの事が大まかに語られていった。
 なお、フェイト、高町なのは、八神はやて及びその仲間達に関しては管理局でも名前が知られているという話である。闇の書事件等の事を考えれば有名になってもおかしくは無い為フェイトはそれで納得した。
 同時に、フェイト自身も自分の知り合いについての説明をしないで済んだのは正直有り難かった。引っかかる所が無いでは無いがとりあえず気にしない事にした。



 ―――いや、それについて考えたくなかったのかも知れない―――



 両名の元々の知り合いについては把握出来た。今度はこの場に来てから誰と遭遇したかである。
 キャロが出会った人物は金髪の男性、インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲート・ヘルシング、ギンガ、エネル、エネルに立ち向かっていった男性、漆黒の鎧を着た男性、天道総司、キング、クアットロである。
 危険人物は金髪の男性、エネル、漆黒の鎧を着た男性、キング、クアットロという話だ。後の人物は殺し合いに乗っていないという話だが全員殺す以上それは重要ではない。
 一方のフェイトが出会ったのは早乙女レイ、新庄・運切、遊城十代、柊つかさであり、何れも危険人物では無い事を少女に説明した。同時に4人の内新庄と十代かつかさのどちらかを仕留めた事を話した。
 ちなみにこの時、フェイトは名簿を見ながら説明をしたわけだがどことなくその手は震えていた。



 ―――考えたくはなかったのだろう、その事に関して―――



「それで……これからどうするつもりだ?」
「それについては1つ考えがあります」
 フェイトとしては身体を休めた後他の参加者を襲うぐらいの考えしか無かった。しかし、キャロには何か作戦がある様だった。
 キャロによると今自分達がいる聖王のゆりかごは古代ベルカの戦艦という話らしい。本来であれば、動かす為には聖王が必要らしいがこの場では誰でも動かせる可能性があるとのことだ。
 つまり、自分達でゆりかごを動かして他の参加者を襲撃するという話だ。これならば余程強力な参加者で無い限り太刀打ち出来ないだろう。
 しかし、その話が真実ならばゆりかごは大きく戦力バランスを崩すものだ。最初にゆりかごを動かした参加者が殺し合いを制するといっても過言では無い。
 が、キャロにしてみれば動かせなくても問題はない。ゆりかごを抑えておく事が自分達にとって大きなアドバンテージとなる事に変わりはないという事だ。理由は幾つか存在する。
 1つ目はゆりかご内部の設備を自分達で独占できるという事、自分達の戦力アップを考えるならば十分に有益だろう。
 2つ目は他の参加者にとってもゆりかごは重要施設という事、キャロの話ではゆりかごは次元航行船らしく、殺し合いに反抗する参加者達にとっても重要な施設だそうだ。
 他の参加者が脱出の為にゆりかごを目指す可能性があり、そこを自分達で迎撃するという事だ。これならば下手に参加者を捜すよりも都合が良いだろう。
 優勝を目指す自分達にしてみれば殺し合いからの脱出は非情に困る事態だ。とはいえ自分達にとっても有用である以上現状破壊するのは有効ではない。現段階ではゆりかごを自分達で押さえておくのが有効だろう。
 勿論自分達で使えないとなれば他人に使われない程度に破壊しておく事も視野には入れておく。
 フェイトはキャロの案を受け入れる事にした。そうそう簡単にゆりかごが動かせるとは思えないが、疲弊している現状を考えると今は力を蓄えておくべきだからだ。
 だが、本音を言えば今すぐにでも他の参加者を殺しに向かいたかった―――

396命の理由 ◆7pf62HiyTE:2009/11/20(金) 14:49:15 ID:ox9acKfQ0



 ―――そうしなければすぐにでも崩れてしまいそうな気がしたから―――



 余談ではあるが、フェイトにしてもキャロにしても放送はすぐだと思っていた。しかし実際にはこの時点ではまだ放送は流れていなかった。
 極端な話、キャロが地上本部の魔法陣でこの場に転移した後、ある参加者が魔法陣を確認しそこに至る道の破壊、転移後ある参加者と戦い勝利し身を休め始めるぐらいの時間はあったのだ。
 故にここまでの情報交換を行っても放送の時間を迎えてはいなかったのである。
 しかし、時の流れを止める事など誰にも出来はしない。ついにその瞬間が訪れる―――



 ―――結局の所、避ける事の出来ない問題だったのだ―――



 2度目の放送が終わった。そこで伝えられた死者は9名、とはいえ優勝を目指す2人にとってはさして重要ではない。死んだ者が誰であったとしても最終的には生き返らせれば済む話だからだ―――
 ―――が、フェイトにとってはやはり辛い話であった。
 死亡者の中にははやて、ザフィーラの名前があがった。最終的に殺すつもりであっても死んだという話は聞いていて気持ち良いものでは無い。
 いや、むしろ彼女達を生き返らせる為にも絶対に自分が優勝しなければならないだろう。



 ―――そう考えていたのはもっと重要な問題から目を背けたかったからかも知れない―――



 実の所、ある参加者の名前が呼ばれるまではフェイト自身も冷静でいた。しかし、ある参加者の名前が呼ばれてからは冷静さが消えていたのだ。
 それ故、何故か新庄の名前が呼ばれなかった事もこの時点ではあまり考えられなかったのだ。
 だが、現実は非情でありそれは容赦なく少女に向けて突きつけてくる。



「フェイトちゃん……1つ聞きたいんだけど……」



「な……何を……?」



「今、フェイトちゃんの名前が呼ばれていたんだけど……これってどういう事?」



 そう、放送ではフェイト自身の名前が呼ばれていた。しかし現実には自分はこうして生きている。名前が呼ばれるなんて事は有り得ない。
 いや、先程の戦いで自分が死んだと処理されたと考えられないこともない。しかし、自分の母親であるプレシア・テスタロッサがそんなお粗末なミスをするとは思えないし考えたくもない。
 それ以前にもっと確実かつ単純な答えがあるではなかろうか?
 だが、正直な所それを口にしたくはなかったし考えたくも無かった。

397命の理由 ◆7pf62HiyTE:2009/11/20(金) 14:51:47 ID:ox9acKfQ0



 ―――言ったら全てが終わってしまうと思った―――



 だが―――



「今呼ばれたのはクローンの私だ……」



 ―――答えないわけにはいかなかった。



「クローン……ってどういう事?」
「名簿には私の名前が2つあるんだ、片方は母さんが何か理由があって作ったクローンなんだ……きっと呼ばれたのはクローンの……」



 フェイトは何としてでも早々にこの話題を切り上げたかった。その先に関する事に触れられたくなかったから―――だが、



「じゃあ……名簿になのはちゃんとはやてちゃんの名前が2つあるのはどういうこと?」
「!!」



 フェイトの言葉が止まる。いや、答えはわかっている、しかしそれだけは言ってはならない。それでも……



「私と同じだ……なのはとはやてもクローンに……」
「……じゃあ、今呼ばれたはやてちゃんや前の放送で呼ばれたなのはちゃんは……」
「それは……」



 思い出して欲しい、フェイトは2つある自分達の名前について片方は自分達のクローンだと解釈していた。
 フェイトの方針を決める切欠となったのは最初の放送で伝えられたなのはやシグナム達の死亡だ。彼女達の死亡によりフェイトは彼女を生き返らせる為に殺し合いに乗ったのだ。
 だが、シグナムやクロノ・ハラオウンの死亡となのはの死亡には大きな違いが存在する。
 当たり前の話だがこの場にはシグナムや大抵の参加者は1人しかいない。しかしなのは、フェイト、はやての3名についてはこの場に2人存在する。
 何故わざわざこんな真似をしたのかは不明、フェイトの仮説通りクローンの可能性はあるだろう。
 しかしどちらにしても確実な事がある。それは『名前を呼ばれただけではどちらが死亡したのかは判別不明』という事である。
 故にだ、なのはの死亡を伝えられただけでは本物のなのはが死んだのかクローンのなのはが死んだのかが判別がつけられないはずだ。

398命の理由 ◆7pf62HiyTE:2009/11/20(金) 14:52:51 ID:ox9acKfQ0

 つまり―――今現在も本物のなのはは生きている可能性があるという事だ。

 ほんの少し冷静に考えればその可能性に至れただろうし、なのはが死んだと考えたくないならば真っ先にその結論に至るべきだっただろう。
 しかし現実に彼女はその可能性に至れなかった。というより、今この瞬間明確に指摘されるまではこの場になのはとはやてのクローンが存在する可能性を忘れていた、故に気付けなかった。
 いや、気付けなかったというのは正確ではない。本当ならば頭が少し冷えた段階で気付けるはずだった。しかし彼女はずっとそれを考えたくなかったのだ。考えた時点で全てが終わるから―――

 簡単な理屈だ、本物のなのはが生きている時点で彼女の目的は破綻してしまうからだ。
 客観的に考えれば、全員を生き返らせる以上本物のなのはが生きていようが死んでいようが関係はない。しかしフェイトにとって『高町なのは』は何よりも特別な存在だ。
 極端な話、他の誰の名前が呼ばれたとしてもなのはさえ無事ならば殺し合いに乗らない可能性はあった。
 全員生き返らせるというのは後付の話でしかない。なのはを生き返らせると考えた時に全員生き返らせられると考えたからそう考えたに過ぎない。フェイトにとって最も重要なのはなのはを生き返らせる事だ。
 故になのはが生きている可能性がある以上彼女の目的の大部分は消えてしまう。いや、シグナム達を生き返らせる以上消えてしまうという事はないだろう。
 だが―――シグナム達を生き返らせる為に『高町なのは』を殺す―――幾ら生き返らせると言っても今生きているなのはを殺す事に関してはどうしても肯定出来なかった。

 間違っているならば今からでも正せばいい。本物のなのはが生きている可能性があるならば今からでもその可能性に懸けても良い。しかし今のフェイトにはそれがどうしても出来なかった。
 故に今生きているなのはを本物だと認めるわけにはいかない―――故に、



「今生きているなのははクローンだ……」



 証拠なんて何もない、それでもそう言わずにはいられなかった。クローンのなのはなら殺しても何の問題も―――



 ―――しかし、そう口にした瞬間、自分の頭の中で何かが崩れていくのを感じた。



(クローンだから殺して……いや……駄目だ……そんな事は……)



 フェイトはプレシアの娘であるアリシアのクローンとして産み出されている。故にクローンの否定はそのまま自分の否定に繋がる。



(でも……クローンじゃなかったら……私は……)



 しかし、クローンを否定しなければ自分の目的が破綻する。せめぎ合う2つの考えがぶつかり合い、



「あ……あぁ……なのは……」



 フェイトは混乱の渦へと陥っていった。恐らく暫くはまともに思考出来ない―――『はずだった』―――

399命の理由 ◆7pf62HiyTE:2009/11/20(金) 14:54:25 ID:ox9acKfQ0










 その瞬間、何かが落ちる音がした―――





 何が起こったのかフェイト自身もわからなかったが―――





 足下を見るとそこには見慣れたものがあった―――





 それは自分の右腕だ―――





「あ……ぐぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」





 そして漸く右腕の辺りに激痛が奔るのを感じた。

400命の理由 ◆7pf62HiyTE:2009/11/20(金) 14:55:37 ID:ox9acKfQ0





「ごめんね『エリオ君』、今度は上手くやるからね」





目の前を見るとキャロが血に濡れた鎌を構えて立っており、すぐさま振り下ろそうとしていた。





「くっ……!!」





 フェイトは何とか後方に跳び距離を取った。





「何をするんだ!?」
「……貴方とは組めません」
 キャロが口にしたのは同盟の拒否だった。
「どういう意味だ?」
「言葉通りの意味ですよ。貴方とは組めないから……殺します」
 フェイトには理解出来なかった。そもそも同盟を提案したのはキャロの方だったではないか。なのに何故彼女の方から同盟を拒否されなければならない?
「巫山戯るな! 組みたいと言ったのはキャロの方じゃないか! どうして……」
「……クローンのなのはちゃんだったら殺しても構わない……そう考えていたんですよね?」
「うっ……そ、それがどうしたんだ! キャロには関係の無い話だろう!」
「関係ない? 関係ならありますよ」
「どういう事だ!?」
「貴方には教えません。フェイトさんの皮を被った偽物には」
「なっ……私はフェイト・テスタロッサだ! 私は偽物なんかじゃない!!」
「違います、フェイトさんだったらクローンだから殺して良いなんて言うはずありません! もうこれ以上……その姿とその声で私『達』の前に存在しないでください」
「何を言っている!?」
「エリオ君とフェイトさんに対する冒涜だって言っているんですよ」
 キャロの手から何発もの魔力弾が発射されフェイトの方に向かって飛んでいき―――炸裂した―――

401命の理由 ◆7pf62HiyTE:2009/11/20(金) 15:00:29 ID:ox9acKfQ0









 恐らくフェイトと同様にキャロの突然の凶行に疑問を持っている方はいるだろう。そこでここまでの話をキャロ視点で振り返ってみよう。


 と言っても手を組んで互いに情報交換に入るまでの事については彼女自身が口にした通りだ。
 エリオを生き返らせる為にフェイトと組むのは本心からの言葉だったし、フェイトに語った通り最後に自分が死んでもフェイトが生き返らせてくれるならばそれで良かった。
 その為、何とか話は聞いて貰えたので内心で安堵していた。

 さて、少々脱線するがキャロは目の前にいるフェイトをどういう風に捉えていたのだろうか?
 キャロの知るフェイトは自分よりもずっと大人だ、しかし目の前のフェイトは自分と同じ歳ぐらいの少女である。これは一体どういう事なのだろうか?
 ここで名簿にフェイト達の名前が2つあったのを思い出しある仮説を導き出したのだ。
(もしかして……フェイトさん達は子供の頃と今の2人いるの……?)
 目の前にいる少女のフェイトの存在からフェイト達は約9歳と約19歳の彼女達がいると考えたのだ。
 勿論、この仮説から他にも大きな可能性を見い出せるだろうが、今のキャロはそれ以上の事は考えてはいなかった。単純に自分の知る19歳、目の前にいる9歳の彼女達がいると考えていた。

 さて、キャロとフェイトは情報交換に入るわけだがここで1つの問題が出てくる。
 それはフェイト達の事はどう説明するべきなのかという話だ。キャロの知るフェイト達は機動六課の隊長陣である。しかし当然の事だが10年前のフェイトにそれを説明するわけにはいかない。
 キャロ自身もどういう事なのかわからない以上説明しきれないのだ。かといって自分達の目的にとってそれが重要というわけではない。相手が誰であろうとも全員殺す事には変わらないからだ。
 故に正確な説明に関してはスバル達やJS事件の関係者といったフェイトがまず知らないであろう人物に留め、なのは達は六課でも有名な人達という風に説明したのだ。
 正直その説明で納得して貰えるかは微妙だったがフェイトは理解して貰えた様だった。

 その後も順調に情報交換が進み、ゆりかごを抑える作戦も説明した。これに関してもキャロ自身全く嘘は吐いていない。フェイトと組んでゆりかごを押さえ今後に備えるつもりはあったのだ。

 が、実の所キャロは名簿を見ながら説明を行う際にある違和感を覚えていた。しかし、その時点では特に気に留めていなかった。



 そして放送の瞬間が訪れる。死者の名前が伝えられるものの優勝して全員生き返らせれば良い以上、キャロにとっては確認以上の意味はない。
 自分を見捨てたであろうギンガ達の事が気になったが、罰が当たったということで納得する事にした。正直な所、自分を見捨てた彼女達を生き返らせるかどうかは迷ってはいたがそれは後から考えることにした。

 そんな中、キャロある事に気が付いた。それは―――

(フェイトさんの名前が呼ばれたけど……)

 放送でフェイトとの名前が呼ばれていた。が、目の前には現にフェイトがいる。いや、これ自体はもう片方の―――自分の知るフェイトの方が死んだと解釈すれば良い。
 何しろフェイト達は2人ずつ呼ばれているわけだから片方が死んでももう片方が生きている事に何の疑問もない。

 だが、重要なのはそんな事ではない。最初の放送ではなのはの名前が呼ばれていた。少なくとも片方のなのはが死亡しているのは間違いないだろう。
 しかし、もう片方のなのはは生きているはずなのだ。そして、その事を考えた瞬間、違和感の正体に気づいたのだ。

(あれ……確かなのはちゃんを生き返らせる為に殺し合いに乗ったんだよね?)

 フェイト自身は全員を生き返らせると言っていたがその中でもなのはが別格なのは明白だ。言い方は悪いが他の連中はついでと言っても良いだろう。
 が、実際はもう片方のなのはは生きている筈、フェイトはこれをどう捉えているのだろうか? いや、それ以前にもっと重要な事がある―――

402命の理由 ◆7pf62HiyTE:2009/11/20(金) 15:02:08 ID:ox9acKfQ0



 ―――フェイトは2つある自分となのは、はやての名前をどう捉えているのだろうか?―――



 前述の通り、キャロは19歳と9歳の2人がいると考えていたがそれは目の前のフェイトに出会えたから導き出せた説だ。逆を言えば出会うまではその説など全く考えもしなかった。
 もっとも―――キャロ自身この場に来てから早々に金髪の男性に襲われ、それ以降も危機の連続だった為考える余裕なんてなかったわけだが。
 さて、フェイト自身も名簿を確認しているはずであり、同時に自分の名前が2つある事を奇妙だと思うはずだ。
 フェイトはこれをどう解釈したのだろうか? 何しろ解釈次第では死んだなのはを生き返らせる為に生きているなのはを殺すという矛盾を抱えてしまうのだ。
 いや、実の所キャロの脳裏にはフェイトが導き出しそうな仮説が浮かんでいた。



 ―――が、同時にそれは決してフェイトが口にしてはならない最悪の仮説だったのだ―――



 キャロは自分自身の名前が呼ばれて動揺しているフェイトに問う、



「今、フェイトちゃんの名前が呼ばれていたんだけど……これってどういう事?」



 キャロは内心で願う、彼女が考え得る最悪の答えを口にしない事を―――しかし、



「今呼ばれたのはクローンの私だ……」



 クローン―――つまりフェイトは2人いる自分達の内片方はクローンだと解釈したのだ。ここで重要なのはなのはに関しても片方はクローンだと解釈しているという事だ。
 この解釈ならばフェイトの目的に際しなのはを生き返らせる為にもう片方のなのはを殺すという矛盾は発生しない。あくまでも片方がクローンであるならば本物ではない為何の問題も発生しないからだ。


 しかし、その解釈がキャロにある結論を出させてしまったのだ。その結論は目の前にいるフェイトと組む事は決して許されない、それはエリオと自分の知るフェイトに対する最大級の侮辱だからだ。



 少し本筋から逸れる話になるが重要な話なのでお付き合い頂きたい。
 キャロが生き返らせたい人物であるエリオ・モンディアルは厳密に言えばエリオ・モンディアルではない。
 彼の両親が病死した息子であるエリオ・モンディアルのクローンとしてプロジェクトFの技術で産み出されたのがキャロの言うエリオ・モンディアルなのだ。
 だが、ある研究機関がその事実を突き止め、それにより両親から引き離され、研究機関では非人道的な扱いを受ける事となった。
 言うまでもないがその扱いを受ける理由は彼がクローンだからに他ならない。勿論、クローン技術が違法である以上ある意味では当然の扱いではある。
 が、当の本人であるエリオにしてみればたまったものではない。その影響で重度の人間不信に陥ったわけだが当然の話と言えよう。
 そんな彼を保護したのがフェイトだったのだ。
 プロジェクトFの名が示す通りフェイト自身も元々アリシアのクローンとして産み出されており、一方でプレシアに自分を否定されたという経緯がある。それ故エリオや(部族を一人追い出された)キャロを保護し深い愛情を注いでいた。

403命の理由 ◆7pf62HiyTE:2009/11/20(金) 15:05:02 ID:ox9acKfQ0



 ここまで書けばキャロが何故フェイトに刃を向けたのかを理解出来るだろう。
 フェイトが2人いるなのはの内片方はクローンだと解釈したからだ。
 死亡したなのはが本物かクローンかは判断は付けられない。しかし、フェイトは死亡したなのはを生き返らせる為にもう片方の生きているなのはを殺すという選択を選んだのだ。
 つまり、どちらにしてもフェイトにしてみれば死亡したなのはが本物でもう片方はクローンという解釈をしたと見て良い。
 いや、これだけならば穿った見方でしかない。この後にフェイト自身が上手くフォローを入れればまだ共闘出来ただろう。
 が、愚かにもフェイトははっきりと今生きているなのはをクローンだと言い切ったのだ。フェイトの話を聞く限り証拠は何処にも存在しないのはわかっている。
 つまり、フェイトは今生きているなのはをクローンと断定する事でなのはを殺す理由を正当化しようとしたと言えよう。

 キャロにはそれが許せなかったのだ。
 クローンだったら死んでも構わない?
 クローンだから殺しても何の問題もない?
 巫山戯るなと思った。
 それはクローンであるが故に辛い幼年期を過ごしたエリオやフェイトに対する最大の侮辱、エリオやフェイトが大切な存在であるキャロにとっては許せる話ではない。
 いや、これが赤の他人であればまだ良かったかもしれない。だが、一番の問題はそれを口にしたのがフェイトだという事実だ。
 姿が幼くなった以外は全く同じ外見、同じ声の彼女がそれを口にしたのが許せなかったのだ。


 断言しよう―――キャロはその少女を『フェイト』とは認めない―――『フェイト』と同じ姿をした別の少女だと断定した。


 彼女と組んだ方が今後有利になるだろうし、この場で彼女と敵対する事が愚行だという事は理解している。
 しかし彼女と組む事だけは有り得ない、それはエリオとフェイトに対する最大の裏切りだからだ。
 殺し合いに乗った自分が言うのもおかしな話だと正直思うが、彼女は人の命を一体何だと思っているのだろうか?
 クローンだから死んでも良い? 死んだ人を全員生き返らせるからお前も死ね?
 考えれば考えるほど命というものを馬鹿にしているとしか思えない。誰かを生き返らせるという事がどれだけ重要な事かわかっていないのではないか?
 これは推測でしかないが彼女は死んだ人は極悪人であっても生き返らせるつもりだろうと考えていた。証拠は何もないが彼女の口ぶりからそう考えても全く不思議はない。
 しかし、キャロ自身はそんなつもりなど無い。キングや金髪の男性、クアットロ等を生き返らせるつもりなど全く無い。そんな奴らの為に誰かが死ぬのだから生き返らせない方が良いに決まっている。
 誤解のない様に書いておくがあくまでも生き返らせないのは殺し合いを楽しむ極悪人であって、スバルやティアナといった仲間は生き返らせる事に変わりはない。

 ここからは余談になるが今のキャロは『全員』を生き返らせる事に関しては懐疑的である。何故なら全員生き返らせると言いだしたのは金髪の少女、彼女の発言を信用する気など最早無い。
 そもそも61人で殺し合いをしていて60人死者を出しておいて60人全員生き返らせるなんて殺し合いの意味が無くなるだろう。冷静に考えれば誰でもわかる話だ。
 とはいえプレシアの言葉を過大解釈して複数人の復活が不可能とは言い切れない為、最低限仲間や友人数人を生き返らせる事自体は可能かも知れない、キャロにしてみればそれで十分だ。
 いや、極端な話1人だけで良いのだ。キャロにとってはエリオの復活こそが目的だからだ。その為ならばスバルやルーテシア達と二度と会えなくても構わない。

 閑話休題、金髪の少女の返答から彼女を決別する事にしたキャロは絶対に彼女を殺すつもりでいた。フェイトと同じ姿をした全く異質の存在など許すつもりなど無い。
 別に彼女がフェイトのクローンだから殺すというわけではない。彼女の言動と存在がエリオとフェイトを侮辱しているから殺すに過ぎないのだ。
 勿論、戦いになれば勝てるかどうかはわからない。しかし、エリオとフェイトの為にも絶対に勝たねばならないのだ。
 幸いどういう理由か不明だが彼女に隙が見えた。故にすぐさま『エリオ』を起動し攻撃に入る事が出来た。狙いは右肩からの袈裟切りだったが慣れない武器故狙いが逸れて右腕を斬り落としたに過ぎなかったのだ。
 それでも逃がすつもりはなく彼女に追い打ちをかけたのである。

404命の理由 ◆7pf62HiyTE:2009/11/20(金) 15:06:25 ID:ox9acKfQ0






「やった……?」
 しかし爆煙が晴れた時には既にそこには誰もいなかった。着弾する直前にプロテクションを発動して防いだのだろう。だが、
「中に逃げたんだね……」
 床には血痕が残っていた。恐らくはゆりかご内部に逃げたのだろう。
「逃がさないよ……ん?」
 と、地面の上には金髪の少女の右腕が落ちている。それを見たキャロは何発の魔力弾を直撃させそれを無惨な肉片に変えた。最早腕の面影など無い。
「……何も残させないよ」
 フェイトの形を成している只の腕の存在すら許せない、金髪の少女に対する憎悪はそれ程までに大きかったのだ。キャロは残った肉片を踏み潰していった。そして、金髪の少女の存在を抹消する為にゆりかご内部へと踏み込んでいった。

 キャロが金髪の少女を否定したのは命を侮辱したからだ。クローンならば殺しても構わない、全員生き返らせるから全員殺しても構わない、確かに侮辱していると言えよう。
 が、客観的に言えばエリオを生き返らせる為に参加者を殺そうとしているキャロも命を侮辱していると言える。
 だが、キャロは自分の行動が正しいと確信している。それ故に並大抵の説得など通じない。
 いや、厳密に言えばフェイトならばキャロの行動を諫め説得する事も出来たかも知れない。
 しかし最早それは叶わない事だ。何故ならこの場にいるフェイトの内片方は既に死亡し、もう片方はフェイトでは無かったのだから。
 故に、今のキャロを止める事など限りなく不可能に近いだろう。

「行くよ、エリオ君」

 『エリオ』にそっと口づけをしながら金髪のナニカを探す少女がいた。
 ロストロギアとはいえ武器でしかない物を自分の大切な人物と呼ぶ等最早普通の状態ではない。
 それは彼女がエリオと呼ぶ憑神鎌によるものなのか? いや、幾ら憑神鎌がエリオという損失で起動したとは言えそこまでの力など無い。もしかすると―――



 ―――キャロは憑神鎌を起動する前から壊れていたのかも知れない―――



【1日目 日中】
【現在地 I-5 聖王のゆりかご入口】
【キャロ・ル・ルシエ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】疲労小、魔力消費小、歪んだ決意、フェイト(A's)に対する強い嫌悪感と憎悪
【装備】憑神鎌(スケィス)@.hack//Lightning
【道具】支給品一式×2、かいふくのマテリア@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、葉巻のケース@NANOSING、オーバーフラッグの仕込み刀@魔法妖怪リリカル殺生丸
【思考】
 基本:エリオを蘇らせるためこの殺し合いに優勝する。殺し合いに乗った悪人以外は蘇らせても良い。
 1.金髪の少女(フェイト(A's))の存在を抹消する、バラバラの肉片になるまで破壊する。
 2.ゆりかごを利用し他の参加者を一網打尽にする。
 3.相手が機動六課の仲間であろうとも容赦はしない。
 4.次にキング、クアットロと会った時は、絶対に逃がさない。
【備考】
※別の世界からきている仲間がいる事に気付いていませんが、なのは、フェイト、はやてに関しては19歳の方と9歳の両方が来ていると考えています。
※憑神鎌(スケィス)のプロテクトは外れました。また、憑神鎌をエリオと思っている節があります。
※自分の決断が正しいと信じて疑っていません。
※この会場内の施設は全て偽物だと思っています。
※フェイト(A's)はフェイトの皮を被った偽物だと確信しました。存在を許すつもりはありません。

405命の理由 ◆7pf62HiyTE:2009/11/20(金) 15:07:35 ID:ox9acKfQ0




 ―――只逃げるしか無かった―――



 キャロの豹変があまりにも恐ろしかった。その姿に自分を虐待するプレシアの姿が重なったのだ。
 いや、それ以上に恐ろしい存在なのかも知れない。今にして思えば彼女はあの鎌を『エリオ君』と呼んでいた気がする。武器に自分の大切な人の名前を付けるなんてどう考えても普通じゃない。
 故にプロテクションでキャロの弾を防いだ後は只逃げるしかなかった。
 だが、キャロは自分を殺す為にすぐにでも追い掛けるだろう。彼女を仕留めない限り自分に先は無い。
 状況は最悪、それでなくても疲労の激しい状態だったがその上先程の斬撃で利き腕を失い、今も腕からは血が流れている。

 その最中フェイトは冷静に考える。何故、キャロは掌を返したかの様に自分を襲ったのだろうか?
 いや、その理由はキャロ自身が語ってくれたからわかる。自分の存在が『フェイト』とエリオを侮辱しているからだろう。


『フェイトさんだったらクローンだから殺して良いなんて言うはずありません!』


 その通りだ、自分で言っておいて何だがクローンのなのはだったら殺しても良いなんてどう考えたって自分じゃない。それなら自分を『フェイト』じゃないと言って当然だ。
 それがエリオの侮辱に繋がる理由はきっとエリオはプロジェクトFで産み出されたクローンだったんだろう。故にキャロは自分の言葉が許せなかった、大切な人を侮辱されたんだから当然だ。
 そんな事は分かり切っている。フェイト自身どうしてさっきあんな事を口走ったのかなんて―――



 ―――違う、本当はわかっていた。それが本心からの言葉じゃない事に―――



 ―――認めたくなかったんだ、今も本物のなのはが生きている事を―――



 本物のなのはが生きている可能性があるならばそれを信じるべきだった。しかしフェイトにはそれが出来なかった。
 その可能性を信じるという事は自身の行動の意味がなくなるからだ。全員生き返らせるから無意味ではないはずだが、その切欠はなのはである事に変わりはない。
 極端な話、なのはが生きているならば行動を改める可能性があったが、フェイトには最早それは許されなかったのだ。
 何故か? 既にフェイトはその為に人を殺しているからだ。放送前にも2人殺したと思っていたし、放送後に関してもどういう理由かは不明だが新庄は生きていたが十代は死亡している。つまり、十代を殺した時点でフェイトは後戻りが出来なくなったのだ。
 故に本物のなのはが生きていると認めてはならない。フェイトは最早全員生き返らせる為に全員を殺さなければならないがそもそもの切欠であるなのはを殺す事なんて出来やしない。
 だからこそ生きているなのはをクローンと断じる事で納得しようとした。しかしクローンだから殺して良いなんていう理屈が通用しないのは自分自身の存在が証明している。
 極端な話、クローンのなのはであってもなのはである事に変わりはないはずなのだ、にもかかわらずフェイトはそれを否定してしまった。
 いや、それ以前に最初からなのはが2人いる事はわかっていたしどちらが本物かクローンかはわかっていなかったはずだ。つまり、なのはが死亡してもそれが本物かどうかなんてわからない。
 どうして本物のなのはの生存を信じようとしなかったのだろうか? いや、クローンだから死んで良いという理屈にはならないから意味の無い話か―――

406命の理由 ◆7pf62HiyTE:2009/11/20(金) 15:09:15 ID:ox9acKfQ0

 何にしても一つだけ確実な事がある。



 ―――自分は『フェイト・テスタロッサ』ですら無いという事だ―――



 考えてみれば当然の話だ。なのはの生存の可能性を信じる事が出来ず、クローンだから殺しても構わないなんてどう考えても『フェイト』の考えじゃない。
 最初はもう片方の自分がプレシアの作ったクローンだと考えていた。しかし違ったのだ、クローンは自分の方だったんだ。そう考えれば全てに辻褄が合う。
 本物の『フェイト・T・ハラオウン』もしくは『フェイト・テスタロッサ』だったら絶対に殺し合いに乗ったりなんかしないし、なのはの生存も信じる事が出来ただろう。
 同時にクローンだから殺しても大丈夫なんて絶対に考えたりしない。
 あまつさえ死者蘇生が可能だからって全員生き返らせる為に全員殺す発想なんてしないはずだ。
 だが、自分はそうしなかった。それは自分が中途半端に記憶等を引き継いだクローンだからだ。

 きっとプレシアは殺し合いを促進させる為に『フェイト』のクローンをである自分を送り込んだんだろう。中途半端な記憶等しか持たない自分はなのは達の死亡で殺し合いに乗ると読んだ上でだ。
 そして思惑通り自分は殺し合いに乗って十代を殺した―――十代を殺せば今度はレイが殺し合いに乗る。出来損ないのクローンにしては十分過ぎる戦果だ。
 単純な話プレシアに踊らされていただけだったのだ。


 だが、仮に自分がクローンであっても本心は変わらない。
 フェイトは単純にみんなで元の世界に帰りたかっただけだった。クローンであってもその心だけは本物、誰にも否定させやしない。
 いや、今でも全員殺して全員生き返らせたいとは思っている。だがクローンにしろ本物にしろもう1人のなのはを殺す事なんて出来やしない。
 しかし、仮に全員生き返らせたとしても自分の願いは叶わない。何故ならクローンの自分がなのは達の中に入る事なんて出来やしないからだ。その場所にいるべきなのは本物の『フェイト』でなければならない。
 行動に意味が無いとは言わない。が、仮に達成しても自分は決して救われないのだ。何故、本物のフェイトが死んでクローンの自分が生きているのだろうか? あまりにも理不尽すぎる。

407命の理由 ◆7pf62HiyTE:2009/11/20(金) 15:11:07 ID:ox9acKfQ0



 ―――どうしたらいいんだろう?―――



 優勝して全員生き返らせてもクローンである自分には居場所はない。だけどなのは達と一緒に元の世界に帰りたい。
 でも、クローンであってもなのはを殺す事なんて出来ない。
 正直な所、殺してしまった十代や彼を守ろうとしたレイ、襲ってしまった新庄とつかさにはすまないと思う。
 何より、『フェイト』の存在を汚した事で本物の自分とエリオ、そしてキャロには許されない事をしたと思う。
 右腕を失ったのは天罰、フェイトはそう考えていた。

 それでも、歩みを止めるわけにはいかない。何故なら自分が出来損ないのクローンだとしても生きている事に変わりは無いのだから―――しかしこれからどうするべきなのかはわからない―――


「教えてよ―――なのは―――」



 ―――彷徨える少女の呟きに答える者は―――此処にはいない―――



【現在地 I-5 聖王のゆりかご内部】
【フェイト・T・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】
【状態】疲労大、魔力消費大、全身にダメージ大、左腕に軽い切傷(治療済み、包帯代わりにシーツが巻かれている)、右腕欠損(出血中)、激しい感情と絶望、キャロに対する強い恐怖
【装備】オーバーフラッグ(仕込み刀なし・カートリッジ残量0)@魔法妖怪リリカル殺生丸
【道具】支給品一式、医療品(消毒液、包帯など)、パピヨンスーツ@なのは×錬金
【思考】
 基本:皆で一緒に帰りたいが……。
 1.ひとまずキャロから逃げる。仕留められる自信は無い……
 2.皆を殺して最後の一人になり皆を生き返らせたかったが……自分には居場所がない……
【備考】
※死亡したフェイトが本物の自分で、自分は殺し合いを促進させる為にプレシアによって送り込まれたフェイトのクローンだと考えています。
※なのはとはやても1人はクローンなのではと思っています。現在生きているのは本物かクローンかの判別はついていませんがどちらにしてもなのはは殺せないと考えています。
※十代を殺したのは自分だと思っています。
※激しい感情から小さな矛盾は考えないようにしています。追及されるとどうなるか不明。
※なのはが一番強いと思っています。
※トライデントスマッシャーを修得しました。
※キャロの知り合いについて把握しましたが、自分の知り合いに関しては六課でも有名な人としか聞かされていません。

408 ◆7pf62HiyTE:2009/11/20(金) 15:17:07 ID:ox9acKfQ0
投下完了しました。何か問題点や疑問点等があれば指摘の方お願いします。
今回のサブタイトルの元ネタはStrikerS第13話『命の理由』からです。

ちなみにここ最近予約しなかったのはスパ■ボNE●をプレイしていたからです。プレイしている間に今回の話が浮かびクリア後執筆しましたとさ。
ていうか、何でスパ■ボプレイしてこんな話思いつくんだ???

409リリカル名無し:2009/11/20(金) 20:14:37 ID:KVpB7XqwO
投下乙です!
結局コンビは結成されずか。
それにしてもキャロが怖すぎる…

410リリカル名無し:2009/11/20(金) 21:37:27 ID:9zjTxXlU0
投下乙です
キャロはかなり壊れてるな
子供フェイトも揺れてるけど改心してくれるだろうか?
長い目で見れば対主催陣にとってはありがたいが

411 ◆HlLdWe.oBM:2009/11/22(日) 00:31:26 ID:SlSGaxSo0
シャーリー・フェネット、早乙女レイ、ルルーシュ・ランペルージ、泉こなた、ヴィヴィオ、スバル・ナカジマ、ルーテシア・アルピーノで投下します

412崩落 の ステージ ◆HlLdWe.oBM:2009/11/22(日) 00:32:44 ID:SlSGaxSo0
「私、ずっと前からルルの事が好きだったの!!!」

それは乙女の秘めたる想いだった。
きっかけは無愛想だった彼の意外な優しさ。
そして気付いた時にはもう彼の事を好きになっていた。
最初は気付かれないようにしていたが、それはもはや限界。
心の内から溢れる想いを抑える事はもう出来ない。

だからシャーリーはその想いをルルーシュに打ち明けた。

そこに後悔はない。
あとは答えを聞くだけ。
ただひたすら待つ。
水泳の試合の時以上に心臓の鼓動を強く感じた。
本当は1分も経っていないが、その時間がまるで永遠とも思えた。

そしてルルーシュはその真摯な想いに答えを返した。

「俺もだよ、シャーリー」

ここに乙女の願いは成就した。

「ルル、ありがとう」

それはまるで夢のような瞬間だった。


     ▼     ▼     ▼

413崩落 の ステージ ◆HlLdWe.oBM:2009/11/22(日) 00:35:15 ID:SlSGaxSo0


シャーリー・フェネットは逃げていた。

「はっ……はぁ……ぁ……ひぃ……」

その姿は一見すれば酷いものであった。
あれほど鮮やかだったオレンジ色のロングヘアはところどころチリチリに焦げて振り乱れるままになっている。
温泉で手に入れた新品の浴衣も埃や焦げ目で随分とみすぼらしいものに変わり果てている。
しかもよく見れば顔には恐怖の表情が現われて汗や涙でその深刻さは増していた。
もうそこに以前のような健康的なシャーリーの姿はなかった。

そもそも逃げるという行為は一人では出来ない。
逃げるものと追うものの二者によって初めて成り立つ行為だ。
だが必ずしも追うものが形あるものとは限らない。
目に見えぬ精神的な重圧、忌避したい出来事、避けられぬ運命。
それらの場合は他人にとっては当事者一人での苦悩と見えるが、当事者自身にしてみれば確かに自分を追うものなのだ。

最初シャーリーは目に見えぬ形なきものに追われていた――所謂『罪悪感』というものだ。

これより少し前にシャーリーは赤いジャケットの少女を撃っていた。
撃たれた少女はその場では死ななかったが、撃った本人であるシャーリーにはその生死を確認するだけの冷静さは残っていなかった。
シャーリーは自分が人殺しになったと思いこみ激しいショックを受けていた。
ついこの間までは普通の恋する女子高校生だったシャーリーにとってそれは受け止めるには重すぎるものであった。
だからシャーリーはその場からすぐに立ち去った。
少女を殺したという罪悪感から逃れるため、人殺しを犯してしまった自分から逃げるため。
そして同行者であるヴィヴィオを見失ったシャーリーにもう満足に考えるだけの余力は残っていなかった。
唯一考える事ができたのは天道総司への謝罪。
シャーリーが一方的に親の仇ゼロだと勘違いして勝手に決め付けて憎悪を向けた男性、天道総司。
天道に謝りたいという想いからシャーリーは天道がいると思われる北の温泉に向かった。

だがその途中で新たなものに追われる事になった――今度は目に見える形あるもの。

新たに追うものの姿は妖しいものであった。
幼い体躯、腰までかかる藤色の髪、肩を曝け出す扇情的なゴスロリファッション。
特に藤色の髪は風の戯れるままに靡かせて、まるで獲物を惑わすような古の怪物メドゥーサの蛇の頭のようである。
そして追うものの顔には能面のような無機質な表情が貼り付いていて、シャーリーは一層恐怖を感じていた。

シャーリーは追うものを撃退しようと僅かな気力を振り絞って抵抗を試みた。
今使える武器は少女を殺した銃。
必死に逃げる、銃を撃つ、見えない壁に弾かれる。
逃げる、撃つ、弾かれる。
逃げる、撃つ、弾かれる、逃げる、撃つ、弾かれる。
逃げる、撃つ、弾かれる、逃げる――撃てない、弾切れ。
だから咄嗟に使えなくなった銃を投げた――何か光に当たって破壊された。
おもむろにデイパックに手を突っ込んで触れた物を投げた――何かのバッグみたいだが先程と同じように破壊された。
もっと大きな物ならと思ってデイパックを投げた――投げた拍子に落ちたもう一つと一緒に拾われた。
そこで投げるのを止めた――それはつまり抵抗を諦めた事と同意だ。

これ以上投げたら拾われて不利になる。
それに加えてあれは自分がレイを殺した手掛かりになるかもしれないものだ。
だからもう無駄な抵抗は止めて逃げ切る事だけに専念した。

あとはもうただ走るだけ――後ろを振り返る余裕など無い。
ただ走った――どこにいるか分からなくても一心不乱に走った
そして気付いた――もう誰も追ってこないと。
だが安心はできない――どこかに隠れないと。

そこでふと目の前に何やら派手な建物が見えた。
看板には「アニメイト」と書かれていて店の周囲には何かのキャラクターのポスターが貼られていた。
今のシャーリーに複雑な思考など無理だ。

シャーリーは目に付いたという単純な理由でアニメイトに入っていった。


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414崩落 の ステージ ◆HlLdWe.oBM:2009/11/22(日) 00:37:15 ID:SlSGaxSo0


早乙女レイは瀕死の状態にあった。

(……寒い……な)

左胸には真っ赤な銃痕が4つも穿たれて、そこから生の証である赤い血が流れ出ていた。
そのせいで元から赤かったジャケットはさらに赤く染まり、今では黒ずんでさえいる。
そしてレイを中心に冷たいコンクリートの上には盛大に血だまりが作られている。
もう既に意識も朦朧としていて身体を動かす事はもちろん、腕一本はおろか、指一本すら動かす事も出来ない状態であった。
今レイの頭を駆け巡るものは『冷たい』という感触だけ。
もう致死量に匹敵する程の出血の上に野晒しの状態で風に当たり続けている。
既に身体は冷えきってもう感覚まで無くなりかけている。

「……ぅ……ぁ……」

当然満足に声を出す事も叶わない。
もう以前のような年相応に快活な声をレイから聞く事はない。
今は微かな呻きを漏らすのが精一杯な状態だ。
これでは例え誰かが近くを通ったとしてもレイが自分の居場所を相手に教える事は出来ない。
もう既に生きる望みを放棄しているレイはただ漫然と死を待つだけの存在だった。

だから目の前に影ができた時、心底驚いた。

まだ太陽が沈む頃でない事は微かに感じる日の光の暖かさと周囲の明るさで把握していた。
だが今それが一瞬にして消え去って影が降りた。
それはつまり誰かがレイに気付いて近くまで来たという証拠。
おそらく今レイは誰かに見降ろされているのだろう。
そのせいで影が遮られているのだ。

(やった、助かった、これは、きっと死んだ十代様が助けてくれているんだ……ありがとう、十代様、十代様、十代様――)

その時レイは歓喜のあまり最期の涙を流した。


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415崩落 の ステージ ◆HlLdWe.oBM:2009/11/22(日) 00:38:49 ID:SlSGaxSo0


ヴィヴィオは幼い身体で懸命に治癒魔法を行使していた。

「お願い、目を覚まして……」

その相手は以前一度だけ目にした少年、ルルーシュ・ランペルージ。
少し前まで行動を共にしていたシャーリー・フェネットと関係の深い人物だ。
ヴィヴィオがルルーシュの治療を決意したのは自分も何か皆の役に立ちたいと強く願ったからである。
デスゲームが始まってもう半日以上が経過している。
だが今までヴィヴィオは守られてばかりで何もしていない。
ヴィヴィオはそれが嫌だった。
自分だけがいつまでも守られてばかりで皆に迷惑をかけているのが嫌だった。
あの強くて優しいなのはママやフェイトママのように自分も誰かの役に立ちたい。
いつしか守られてばかりのヴィヴィオはそう強く思うようになっていた。

「だからヴィヴィオもがんばる」

再会したルルーシュの状態はかなり酷いものだった。
本当ならソファーのような柔らかい場所に寝かすべきだが、その移動すら命取りになりかねない。
だからこうして入口から少し離れた場所の固い床に寝かしておくしかない状況からもルルーシュの危うさが窺い知れる。
リインのヒーリングで命を繋いだもののまだ完全に助かるには至らないのだ。
だがここで一筋の光明が存在した。
それはシャーリーがヴィヴィオの身を案じて置いていった道具。
ヴォルケンリッターの湖の騎士『風の癒し手』の二つ名を持つシャマルのアームドデバイス、クラールヴィントだ。
クラールヴィントは本来の持ち主シャマルに合わせて癒しと補助に特化したデバイスとなっている。
つまりこれを上手く使えればルルーシュの傷を癒す事が出来るかもしれないのだ。

しかしここで問題があった。
それは誰がクラールヴィントを使うかという事だ。
この場でルルーシュに治癒を施せそうな人物はリイン、こなた、ヴィヴィオの3人だけ。
だが一番適任であるリインは先のヒーリングで既に魔力はほぼ使い切って、しばらく休息しないと満足に動けない状態だった。
そしてこなたはそもそも魔力を持たないので上手く発動できる保障がない。
そうなると残りの一人ヴィヴィオに白羽の矢が立つ事になる。
しかもヴィヴィオの魔力資質はシャマルと同じ古代ベルカ式であり、クラールヴィントを使うのに適している。
ただヴィヴィオ自身が聖王状態以外では一度も魔法を使っていないという事が不安の材料だった。
だが今は悩んでいる猶予はない。
それにヴィヴィオは初めて自分が役に立てる事を全力全開でやりきる気持ちは十分あった。
そしてヴィヴィオの強い要望もあってこなたとリインはルルーシュの治癒を任せる事にしたのだった。

その結果、クラールヴィントでの治癒は上手く進んだ。

ここに来る前に聖王として覚醒して多種多様な魔法を使ったおかげである程度魔法を使う下地ができていた事は幸いだった。
ヴィヴィオは自分が誰かの役に立てた事がこの上なく嬉しかった。
きっとなのはママもフェイトママもこんな気持ちだったのかな。
徐々に顔色の良くなるルルーシュを見ながらヴィヴィオは静かにそう思うのだった。


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416崩落 の ステージ ◆HlLdWe.oBM:2009/11/22(日) 00:42:02 ID:SlSGaxSo0


ルルーシュ・ランペルージが目覚めた瞬間に目にしたものは『眼鏡をかけた貧弱そうな少年』のポスターだった。

「…………?」

そのポスターをよく見れば描かれている人物は少年ともう一人、主面をした女性も一緒にいた。
構図としては少年が女性に対して傅くようなものになっている。
それを見た瞬間ルルーシュはどこか他人とは思えない不思議な感じになったが、すぐにどうでもいい事だと忘れる事にした。

「……ん、ここは――」
「ルルーシュ!!」

ルルーシュは自分がどうなったのかまるで記憶がなかった。
だからまずは現在地を確認しようとしたのだが、その疑問はすぐ傍で待機していた青髪の少女によって遮られた。
その少女を見た瞬間ルルーシュの緊張は半ば解けた。

「こなた……か?」
「うん、そうだけど……も、もしかして記憶喪失!?」
「いや、その服、どうしたんだ」

泉こなた。
オタクの知識が豊富なこと以外は普通の女子高校生。
そしてこのデスゲームにおいて行動を共にする新生黒の騎士団の一員。
よくよく思えば以前も気絶から回復した時こなたが傍にいたなとルルーシュは思い出していた。
その時はスバルもいたが、今はいない。
だがもうすっかり見慣れたはずのこなただが、今のルルーシュは少し戸惑わざるを得なかった。
なぜならこなたの服装が気絶する前と全く違っていたからだ。

「あ、この制服? えっと、いろいろあってね。それにしても、まさかこの制服をこんなところで着る事になるなんて……」

こなたが口籠るように言い訳を言っているが、ルルーシュが戸惑ったのも無理はない。
今こなたが着ている制服は元々着ていた陵桜学園のものではない。
白を基調として水色の襟と胸元の臙脂のリボンが特徴的なシャツ、襟と色を合わせた水色のスカート。
それは某有名アニメ涼宮ハル○の憂鬱に出てくる北校の制服を再現したものだ。
ちなみに主人公の涼宮ハル○仕様として黄色のカチューシャと団長の腕章もオプションで付いていた。

(腕章に書かれた文字は『団長』か? だが黒の騎士団に団長などいないぞ。あとで言っておくか)

だがそれが示すものが黒の騎士団ではなくSOS団という事をルルーシュは当然知らない。
もちろんこなたは詳細は思い出せないまでも腕章の由来ぐらいは知っているが、自ら進んで制服の説明をする気はなかった。
なにせ着替えた理由がデュエルアカデミアの一件や全力逃避行のせいで制服が埃や汗で汚れたためとは言い出し辛かった。
ちなみにヴィヴィオも着ている服があまりにもみすぼらしかったので見かねて着替えを用意してあげた。
一仕事終えて汗をかいていたヴィヴィオはこなたの勧めに従って今はプリズム・アー○のフェルの衣装を着ている。
そもそもこなたがこの制服を着るのはこれが初めてではない。
以前にもコスプレ喫茶で同じ制服を着ていたから自然とこの異常な状況下で懐かしさを覚えていた。
この非常事態で着替えたのはそんなささやかな日常を思い出したかった面もあったかもしれない。

417崩落 の ステージ ◆HlLdWe.oBM:2009/11/22(日) 00:42:56 ID:SlSGaxSo0

「それよりも起きていて平気なの?」
「ああ、身体を起こすぐらいならどうにか」
「そうか、ホント良かった。あとでヴィヴィオちゃんに御礼を言っておくんだよ」
「ヴィヴィオ? 確かスバルが言っていた女の子の名前だな、なぜその名前が出てくるんだ?」

そしてルルーシュは知った。
死にかけていた自分の命を懸命に救ってくれた3人の少女の功績を。

「そうか、お前らのおかげか」
「私は運んだだけだよ。本当に頑張ったのはリインとヴィヴィオちゃん」
「だがお前が俺を見捨てないでくれたから俺は今もこうして生きているんだ、だから感謝しているよ」
「そんな……それに御礼なら皆が起きてからの方がいいよ」

こなたの言葉でルルーシュはようやく気が付いた。
この周囲には自分とこなたの二人以外誰もいないという事に。
こなたの話通りなら少なくともリインとヴィヴィオがいるという事だが。

「リインとヴィヴィオはどうしたんだ?」
「あの二人なら奥の事務室で眠っているよ。特にヴィヴィオちゃんは初めてなのに無理するから余計にハラハラしたよ。リインも――」
「リインならここにいますよ」

いきなり少々舌足らず声が上空から声が上空からこなたの発言も遮った。
そこにいたのはまさしく今話題に挙がっていた功労者の一人。
茶色の士官服に身を包んだ妖精のようなユニゾンデバイス、リインフォースⅡだ。

「リイン! もう動いても平気なの」
「お気遣い感謝です。まだ本調子ではないですけど、動くぐらいなら問題な――」

だがこなたの発言を遮ったリインもまた別の人物に発言を遮られる事になった。
その人物は正面入り口の自動ドアを潜って飛び込んできた不意の来客。
それは全身掠り傷だらけの浴衣を着た少女だった。

「誰かいるの!?」

だがこの3人の中で唯一ルルーシュだけはその少女を知っていた。
いや知っていたどころではない。
その少女はルルーシュと同じ世界の人物で、そして数時間前にデュエルアカデミアの前で最悪な別れ方をしてしまった人物なのだ。

「まさか、シャーリー!?」

こうしてルルーシュとシャーリーは二度目の再会を果たす事になった。


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418崩落 の ステージ ◆HlLdWe.oBM:2009/11/22(日) 00:45:53 ID:SlSGaxSo0


シャーリーとルルーシュはお互いに思いもかけない状況に戸惑っていた。

「うそ、なんでルルがこんなところに……」
「シャーリー、なんでここに……」

それは唐突すぎる再会だった。
確かにシャーリーは少し前まではルルーシュに会おうと行動していた。
だが今は事情が違う。
人殺しの罪で汚れた今の自分にルルーシュに会って裁く資格など無いと思った。
だからこの再会はシャーリーにとっては望まぬ再会だった。
一方のルルーシュはいつか再びシャーリーに会わなければいけないと思っていた。
だがそれはもう少し先になると考えていた。
だからこの再会はルルーシュにとっては早すぎる再会だった。

「シャーリー、聞いてくれ」
「な、に?」

だが似ているようだが二人の間には大きな違いがある。
それは覚悟の重さ。
シャーリーはルルーシュと会って裁くと決めてはいたが、その決意はあやふやなものだった。
つまり覚悟ができていなかった。
それに対してルルーシュはシャーリーに会えばどうするかはっきりと決めていた。
つまり覚悟ができていた。
この差は大きい。
だからこの時、先に言葉をかけたのはルルーシュの方だった。

「俺はゼロだ。君のお父さんを殺した仇、ゼロだ」
「…………」
「だから君に裁かれても仕方ない。だがせめてこのデス……ぅ――」
「ルルーシュ!?」

不意にルルーシュの声が呻き声に変わる。
それは無理もない。
治癒魔法で回復したとはいえそれは最低限命が助かったという事でしかない。
案の定その顔は蒼白だった。
咄嗟に傍にいたこなたが腕を伸ばして支えようとしたが、ルルーシュは敢えてそれを断った。
そこにはルルーシュの決意があった。

「ありがとう、こなた。だが、これくらい大丈夫だ」
「ルル……その腕……」
「ああ、ちょっとな……だけど、最後まで聞いてほしい……ぐっ……」

419崩落 の ステージ ◆HlLdWe.oBM:2009/11/22(日) 00:46:44 ID:SlSGaxSo0

右腕の喪失を気遣ったシャーリーの優しさに感じ入りつつルルーシュはまだ弱っている身体を無理やり起こそうとした。
だがそんな無理は現実という道理に阻まれた。
怪我が完治していない身体での急激な体勢移動はルルーシュに立ち眩みという仕打ちを与えた。
だが倒れそうな身体に差し伸べられる手があった。
今度はこなたではない――シャーリーだった。

「シャーリー!?」
「ルル、ルル、ルル、ルル、ルルゥゥゥウウウ……――」

泣いていた。
シャーリーはルルーシュの身体を抱きしめて支えながら泣いていた。
それをルルーシュは拒まなかった。
拒む理由など無いからだ。

「シャーリーもういいんだ、もう」
「でも、ルル……私、人を撃っちゃったの……赤いジャケットの女の子を、だから」
「俺のせいだ、シャーリーは悪くない」
「ルルのことも撃とうとした」
「だが君は思い止まってくれたんだろう、だから俺は生きている」
「でも、私は……」
「俺が許す、君の罪は全部俺が――」

そしてルルーシュは残った右腕でシャーリーを強く抱きしめた。
そこにある感情を知っているのはルルーシュだけ。

「朝は必ず来る」
「え?」
「朝は来る。忘れる事なんて出来ない悲しい事はたくさんあるが、それでも朝は来る。だから無理して抑え込むな」
「……そうだね、私もそう思うよ」

『朝は来ますよ』――それはルルーシュが以前ギアスで記憶を失くしたシャーリーに言われた言葉だった。
だからこれは過去のシャーリーへのせめてもの償い。
ルルーシュは何も言わずただシャーリーを抱きしめ続けていた。


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420崩落 の ステージ ◆HlLdWe.oBM:2009/11/22(日) 00:51:30 ID:SlSGaxSo0


スバル・ナカジマはアニメイトの裏口の前で立ち往生していた。

(やっぱり誰かいる……もしかしてルルーシュ達かも……)

スバルがここに辿り着いたのは少し前になる。
柊かがみとの戦闘のせいで離ればなれになった仲間を探している最中にハイパーゼクターを見つけたのがきっかけだ。
そのハイパーゼクターは何かを教えるように頻りにスバルをアニメイトに誘おうとしたのだ。
アニメイトはスバルの仲間であるこなたに関係ありそうな建物。
だから入ろうとしたのだが問題があった。

正面の自動ドアが開かなかったのだ。

無論一般的なガラスでできた自動ドアだから壊して入るのは簡単だが、それでは元から目立つ建物がさらに目立ってしまう。
それにもしも中にルルーシュ達が避難していた場合、正面の入口を破壊する事は好ましくない出来事になってしまう。
どうしようか悩んでいたスバルに助け船を出したのはまたしてもハイパーゼクターだった。
その銀色の甲虫が示す先には裏口があった。
表が無理なら裏と思い立って裏口に回り込んで今に至る。
しかし残念ながら裏口も固く鍵を掛けられていて侵入者を許そうとはしなかった。
だがそれは裏返せば誰かが中にいる証拠でもある。
そしてここは表の正面口と違って裏口なので目立つ心配はあまりない。

(……別にいいよね)

スバルはここに至って裏口を壊して中に入る事を選択した。
軽く周囲に誰もいない事を確認して拳を構える。
骨折している左腕に響かないように注意しながらゆっくりと右手に魔力を込める。
そして一気に繰り出そうとして――

「ちょっとスバル待った!!」
「え!?」

――突然開いたドアに顔面強打される事で中断された。

「え、あ、ごめん」

そして中から現れたのはスバルが探していた一人、泉こなただった。
こなたはドアに付いていた覗き穴でスバルの強行突破を察して急いでドアを開けたのだ。
だがその時スバルの顔に勢いよく扉がぶつかる事まで気が回らなかった。
だからこなたは少々気不味い表情を浮かべている。
スバルとしてはそれについてはあまり気にしていない。
とりあえず他の仲間の事や制服が変わっている事が気に掛かったが、何よりもまずは無事に再会できて安堵した。
お互いの無事を確認すると自然と笑顔になった。

こうしてスバル・ナカジマと泉こなたも意外な形で再会を果たす事になった。


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421崩落 の ステージ ◆HlLdWe.oBM:2009/11/22(日) 00:52:36 ID:SlSGaxSo0


今から思えばこの時誰もが油断していたのだろう。
思いもかけぬ再会に心が安らいで気が緩んでいたのだろう。

だから誰も気付く事ができなかった。

一途な願いを叶えるために殺人を犯す小さな魔導師の存在を。
全てを無に帰す地獄の業火を。


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422崩落 の ステージ ◆HlLdWe.oBM:2009/11/22(日) 00:53:23 ID:SlSGaxSo0


「ルル、ありがとう」

シャーリーはこれから死にゆくものとは思えないほど安らかな表情を浮かべていた。
これも咄嗟に掛けたギアスのおかげか。
本当なら再びシャーリーにギアスを掛けたくはなかった。
だがこうするしかなかった。
突然起こった地震並みの揺れとアニメイト全体の倒壊。
降り注ぐ瓦礫の雨と押し寄せる炎の波。
どれも防ぐ事など出来なかった。
魔眼を備えようともこの身は人の域を出ない。
金髪の男や赤いコートの男と同じように人の域を超えた怪物には為す術がなかった。

唯一出来た事はシャーリーをしっかりと抱きしめてやる事だけ。
『幸せな夢を見ろ』という最期のギアスを掛けたのはその時だ。
これから死ぬ運命を変えるのは不可能だった。
だがせめて死ぬまでは辛い思いはしてほしくなかった。
もうシャーリーは十分辛い目に遭ってきたのだから。

たぶん俺に告白する夢でも見ているのだろうか。
ふとそんな気がした。
だがシャーリーすまない。
夢の中の俺なら君の想いに答えてやれるだろう。
だが現実の俺はそれには答えられない。

なぜなら俺が愛する者は唯一人あいつしかありえないからだ。
こんな状況だからこそ初めて分かる事もある。
自分がどれだけあいつの笑顔や行動に救われてきたか。
もうあんな風に口喧嘩する事も笑い合う事もできないんだな。

――好きだったんですね、その人のこと。

ああ、そうだ。
俺はスバル・ナカジマという女性を心から愛している。
だがその想いも死んでしまえばそこで終わりだ。

「最期にあいつの顔、見たかったな……」


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423崩落 の ステージ ◆HlLdWe.oBM:2009/11/22(日) 00:55:35 ID:SlSGaxSo0


ルーテシア・アルピーノはヴィヴィオを背負って聖王のゆりかごへ向かっていた。

なぜ北へ向かっていたはずのルーテシアがこのような状態になっているのか。
それにはいくつかの理由があった。

【放送前後のルーテシアの動向】

元々ルーテシアの目的地はC-9にあるスカリエッティのアジトであった。
目的は本来ならば生体ポッドの中にいるはずの母メガーヌ・アルピーノがいないという証言の確認。
誰にも会わないままアジトに辿り着き、さらに見慣れた場所ゆえに万事順調に進んで第二回放送前には目的は果たせた。
その結果、メガーヌの姿はどこにもない事が判明した。
これで転送前のプレシアの発言と天上院明日香の発言の裏付けが取れた。
しかしだからと言ってルーテシアの行動方針に変更があるわけではない。
あくまで全ての参加者は別々の世界から連れて来られたという事を再認識しただけだ。

それから行われた第二回放送に関してはプレシアからの提案以外は特に興味を引かれるものはなかった。
敢えて言うなら取引を交わした一人ブレンヒルトの死亡だが、それも最初から乗り気でなかったので特に思う事はなかった。
そして放送後ルーテシアは周辺の探索に勤しむ事にした。
ルーテシア自身の体力は全参加者から見れば下位であるが、それを補う足としてマッハキャリバーというデバイスがある。
このデバイスのおかげで行動距離はずいぶんと広くなっているのだ。

目下ルーテシアの探しているものは大きく二つに分けられる。
一つはキース・レッドに頼まれているキース・シルバーや『ベガルタ』『ガ・ボウ』の情報。
だがこれはそもそも乗り気ではないので正直どうでもいいとさえ思っている。
そしてもう一つこそ本命、つまりイフリート以上の戦力の確保。
確かにイフリートの力は並みの参加者にとっては脅威となるだろう。
だがあの剣士のように対抗できる参加者がまだいるかもしれない。
さらに召喚の際に要するタイムラグと疲労も無視できるものではない。
何よりイフリートを渡してくれたキース・レッドはもしもの時に備えて既に何か対策を講じている可能性は十分にある。
つまりイフリートの力を過信して安易に頼ってばかりはいられないという事だ。

それらを探している最中にルーテシアは温泉に向かっていたシャーリーと出会ったのだ。
この時ルーテシアはキース・レッドとの取り決め通り会場の北を中心に捜索するつもりだった。
だが森の中より市街地の方が見つかり易そうと考えてD-5の橋を渡って北西方面に向かおうとしていた。
その途中で出会ってしまったシャーリーは運が悪かった。
シャーリーを発見した時、ルーテシアはある作戦を思いついた。

――撒き餌だ。

わざとシャーリーを生かして逃がす事で近くの参加者を引き寄せて、そこでイフリートを召喚して一掃するという算段だ。
上手くいけば殺した参加者から有能な道具が手に入る可能性もある。
ルーテシアはその作戦を思いつくと即座に実行に移した。
適度に攻撃射出魔法トーデス・ドルヒを放ちつつ付かず離れずの距離を保って追いかける。
もう既にマッハキャリバーの扱いにも慣れてきたのでシャーリーと違ってルーテシアの疲労は微々たるものだった。
シャーリーは最初こそ銃撃や投擲で難を逃れようとしていたが、全て失敗に終わると後は逃げるだけに徹するようになった。
この際見た感じ役に立ちそうになかった弾切れの銃とバッグ以外は何かに使えると思って拾っておいた。
だがバッグを投げた時に零れ落ちた1枚のカードの存在にはシャーリーもルーテシアも気づく事はなかった。
しばらくそれを続けていたが、予想に反していつまで経っても誰も現れなかった。
実際は数人気づく可能性があったのだが、各々の事情で気付く事はなかった。
だからこの地獄のような鬼ごっこはかなりの間に渡って続いたが、最終的に途中で中断された。

その原因は早乙女レイにある。

424崩落 の ステージ ◆HlLdWe.oBM:2009/11/22(日) 00:57:31 ID:SlSGaxSo0

【エボニーの試射】

ルーテシアがシャーリーを追いかける事を中断したのは瀕死のレイを発見したからだ。
当然ルーテシアの前を走っていたシャーリーも気づく可能性はあったが、逃げる事で精一杯だったので気づく事はなかった。
しかもレイが倒れていた場所は二人がいた道から少し離れた場所だったから尚更だ。
この時ルーテシアはシャーリーが既に限界に近いと勘付いていた。
だから少しぐらい目を離してもすぐに見つかると高を括ってレイの方に向かったのだ。

ルーテシアがレイに興味を持ったのは荷物を回収する事に加えてエボニーの試し撃ちをしておこうと思ったからだ。
キース・レッドから貰い受けたもう一つの武器、黒鍵を思わせる拳銃エボニー。
質量兵器が殺傷能力に長けている事はルーテシアも知っていたが、実際の威力までは知らない。
だから本番で不覚を取らないように一度試し撃ちをして威力などを確認したいと考えていた。
そこで発見したのが瀕死の状態のレイ。
動かない的として適任な上に参加者殺害によるプレシアからの見返りも期待できる。

そして十分に近づいたところでエボニーを撃った。
レイは最期まで何をされるか分かっていないようだったが、ルーテシアには関係ない事だった。
結局片手で撃てば無理そうだが、両手で撃てば問題ないという結論に至った。
残念ながらデイパックはなかったのでここでの目的は終わった。
そしてシャーリーの行方を探るのだが、意外にもすぐに見つける事ができた。

その原因はスバル・ナカジマにあった。

【イフリートの召喚】

ルーテシアがシャーリーの居場所を見つける事ができたのはスバル・ナカジマの行動のおかげだった。
スバルが裏口で盛大にドアにぶつかった時、ちょうどルーテシアがアニメイトの前を通っていたのだ。
奇妙な音に気を引かれてアニメイトの中を注意深く覗き込んだところ、店内にいるシャーリーとルルーシュを発見できたのだ。
ちなみにこの少し前にスバルは正面の入口に来ている。
だが日の光の加減で中の様子が見えなかった事に加えて自動ドアが反応しない時点で裏口に回ってしまった。
この時ドアを叩けば中にいるこなた達が気づく可能性はあった。
だがシャーリーとルルーシュの感動の再会劇に気を取られてついに正面入り口にいたスバルに気付く事はなかった。
その時とは違ってルーテシアはドアに張り付き目を凝らす事で中の様子を把握できた。
この瞬間スバルとこなたは裏口で談笑していて死角にいて、ルルーシュとシャーリーは感動の再会の真っ只中。
それはまさにタッチの差としか言いようがないタイミングだった。

そして炎の魔人による蹂躙が始まった。
もう撒き餌も頃合いだと判断するとイフリートを召喚して外から一方的にアニメイトを破壊。
天高く振り上げられた剛腕から繰り出される槌の如き一撃でアニメイトはほぼ倒壊。
さらに灼熱の業火を思わせる「地獄の火炎」による焼き払いで残骸は灰塵と化した。
まるで元から会場には地図の通りそんな建物は存在しなかったかのように。
そしてアニメイトを襲撃したルーテシアは北へ戻らず、さらに南下して聖王のゆりかごに向かう事にした。

その理由はヴィヴィオにある。

425崩落 の ステージ ◆HlLdWe.oBM:2009/11/22(日) 00:58:10 ID:SlSGaxSo0

【聖王のゆりかごの利用】

ルーテシアが聖王のゆりかごを目指す契機となったのはヴィヴィオを発見したからだ。
あの後少々やりすぎた感を抱きながらルーテシアはアニメイト跡地で何か使えるものが残っていないか探した。
だがイフリートの力によってデイパックは中の道具諸共ほとんどが灰となり、死体も炭化していた。
辛うじて回収できたのはなぜか無傷だったトランプのカードと、少し離れた場所に落ちていて無事だったアサルトライフル。
その二つは途中で拾ったデイパックと一緒に自分のデイパックに入れておいた。
そして予想外の収穫は唯一の生存者ヴィヴィオである。
なぜかバリアジャケットのような服を着ていたのでそのおかげかとも思ったが、どうも違うらしい。

なぜヴィヴィオは無事なのか。
それはヴィヴィオ自身と装備していたクラールヴィントのおかげだ。
あの時ヴィヴィオは迫り来る危機に対して無意識で「聖王の鎧」を発動させていた。
ひとたび危険が迫れば本人の意思とは関係なくその身を守るという古代ベルカ王族が遺伝子レベルで所有している自動防衛能力。
それに加えてクラールヴィントが自主的に発動させた防御魔法。
この2つの防護のおかげでヴィヴィオは無事だったのだ。
そして襲撃時にアニメイトの一番奥に位置する事務室にいたのも幸いだった。
そのおかげで地獄の火炎はヴィヴィオに至るまで瓦礫に阻まれて威力は半減していたからだ。
だが今は直前にルルーシュへの治癒魔法も行使していた事もあって多大な魔力を消費したために意識を失っている。

しかしルーテシアにとってはそのような事情はどうでもよかった。
重要なのはヴィヴィオを保護できたという事。
聖王の器であるヴィヴィオは聖王のゆりかごを起動するための鍵である事はルーテシアもチンクから聞かされて知っていた。
そのヴィヴィオは今自分の手元にある。
つまりこのまま聖王のゆりかごに行けば、その強大な戦艦の力を手に入れる事ができる。
それはイフリートよりもさらに強力な力であり、おそらく実現すれば生存している全参加者で太刀打ちできる者はいない。
だからルーテシアはヴィヴィオを背負って聖王のゆりかごに向けて移動しているのだ。

その先にある希望を信じて。

426崩落 の ステージ ◆HlLdWe.oBM:2009/11/22(日) 00:58:48 ID:SlSGaxSo0


【1日目 午後】
【現在地 G-7 大通り上(南下中)】
【ルーテシア・アルピーノ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康、魔力消費(中)、疲労小、キャロへの嫉妬、ヴィヴィオを背負っている
【装備】マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ウィルナイフ@フェレットゾンダー出現!
【道具①】支給品一式、召喚マテリア(イフリート)@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、
     エボニー(9/10)@Devil never strikers、エボニー&アイズリー用の予備マガジン×1、レイとフェイト(A’s)のデイパック(道具②と③)、
     レギオンのアサルトライフル(100/100)@アンリミテッド・エンドライン、ラウズカード(クラブのK)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具②】支給品一式、SIG P220(8/9)@リリカル・パニック、情報交換のまとめメモ(内容は[[守りたいもの]]参照)
【道具③】支給品一式、フリーズベント@仮面ライダーリリカル龍騎、光の護封剣@リリカル遊戯王GX
【思考】
 基本:最後の一人になって元の世界へ帰る(プレシアに母を復活させてもらう)。
 1.どんな手を使っても最後の一人になる(自分では殺せない相手なら手は出さずに他の人に任せる)。
 2.南に向かい聖王のゆりかごを起動させる。
 3.18時に地上本部へ行き、キース・レッド他集まった参加者をイフリートで一網打尽にする。
 4.3がキース・レッドに察知された時の保険として一応キース・シルバーと『ベガルタ』『ガ・ボウ』を探す(割とどうでもいい)。
 5.もしもレリック(刻印ナンバー?)を見つけたら確保する。
【備考】
※ここにいる参加者は全員自分とは違う世界から来ていると思っています。
※プレシアの死者蘇生の力は本物だと確信しています。
※ユーノが人間であると知りました。
※マッハキャリバーは参加者の時間軸の差異に気付いています。

【ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康、疲労小、魔力消費大、シャーリーへの心配、悲しみ、決意、浅倉に対する複雑な感情、気絶中
【装備】クラールヴィント@魔法少女リリカルなのはStrikerS、フェルの衣装、レークイヴェムゼンゼ@なのは×終わクロ
【道具】支給品一式、ヴィヴィオのぬいぐるみ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
 基本:六課の皆と一緒に脱出する。
 1.シャーリーお姉さんを助けたい、ルルお兄さんも助けたい。
 2.ママ達がいなくなってもヴィヴィオがんばる!
 3.天道お兄さんを助けたい、浅倉お兄さんともお話したい。
【備考】
※浅倉は襲い掛かって来た矢車(名前は知らない)から自分を救ってくれたヒーローだと思っています。
※浅倉をまだ信頼しており、殴りかかったのは何か理由があるのだと思っています。
※矢車とエネル(名前は知らない)を危険視しています。キングは天道を助けてくれるいい人だと思っています。
※この場にもう1人なのはやフェイトがいる事に気付いていません。
※クラールヴィントは浅倉を警戒しています。


     ▼     ▼     ▼

427崩落 の ステージ ◆HlLdWe.oBM:2009/11/22(日) 01:00:02 ID:SlSGaxSo0


泉こなたが目覚めた瞬間に目にしたものはこちらの顔を心配そうに覗き込むスバルの顔だった。

「え、私、なんで……」

こなたは意識を失う前の出来事を懸命に思い出そうとした。
ルルーシュとシャーリーの再会に水を差してはいけないと思ってリインを連れて外に見張りに行こうとした。
一応なぜかシャーリーが持っていた自分のデイパックと護身用にアサルトライフルは持ち出した。
そして静かに事務室に移動。
それから二人の邪魔にならないように配電盤を操作して自動ドアが開かないようにセット。
次いでソファーの上でまだ眠っているヴィヴィオを確認してから裏口に向かった。
そこで鍵が掛かったドアを無理やり開けようとする何者かの存在に気付いた。
恐る恐る覗き穴から確認するとそこにはドアを拳で破壊しようとしているスバルがいたので急いでドアを開けて再会した。

そこで記憶は途切れていた。

「スバル、ここはどこ?」
「アニメイトから少し離れたところ。たぶん見つかってはいないと思うよ」

その言葉は暗に自分達が追われているという事を意味していた。
そしてスバルの左腕には骨折を処置したと思われる包帯が巻かれていた。
おそらく必死に守ってくれた証なのだろう。

「え、もしかして私達襲われたの?」
「うん、誰が襲ったのかは分からなかったけど……ただ炎の巨人を操っている事だけ分かったよ」

よくゲームで見る召喚士みたいな人をこなたは一瞬思い浮かべた。
だがそれよりも気になる事があった。
それは仲間の安否だ。

「スバル! ほ、他の皆は無事!?」
「お、落ち着いてこなた。私はこなたを守って逃げるだけで精一杯だったけど、リイン曹長なら無事だよ。
 最初の攻撃を無理して防いでくれたせいで今はまだ寝ているけどね」
「え、リイン以外は……?」

その言葉を聞いた瞬間、スバルの顔が一気に青ざめるのがよく分かった。
今までこなたとリインが無事で安心していた顔にはもう未知の怖れしか見えなかった。

「う、うそ……もしかして、アニメイトにまだ誰かいたの!?」

その時こなたは悟った。
これから自分の言う事はスバルを深い悲しみに追いやるだろうと。
だがいつかは分かってしまう事だ。
それならば早いうちに知らせた方がいい。
だからこなたは重い口を開いた

「アニメイトには……ルルーシュとシャーリーとヴィヴィオが残っていたんだ……」
「え――?」

その言葉はスバルがまたしても仲間を守れなかった事を意味していた。


【早乙女レイ@リリカル遊戯王GX  死亡確認】
【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反目のスバル  死亡確認】
【シャーリー・フェネット@コードギアス 反目のスバル  死亡確認】

428崩落 の ステージ ◆HlLdWe.oBM:2009/11/22(日) 01:01:34 ID:SlSGaxSo0


【1日目 午後】
【現在地 G-6 市街地】
【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】全身ダメージ小、左腕骨折(処置済み)、ワイシャツ姿、質量兵器に対する不安、若干の不安と決意、仲間の死によるショック
【装備】添え木に使えそうな棒(左腕に包帯で固定)
【道具】支給品一式(一食分消費)、スバルの指環@コードギアス 反目のスバル、チンクの名簿(内容は[[せめて哀しみとともに]]参照)、
    ハイパーゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、救急道具、炭化したチンクの左腕
【思考】
 基本:殺し合いを止める。できる限り相手を殺さない。ルルーシュを守る。
 1.う、うそでしょ……。
 2.かがみを止めにいく。
 3.こなたを守る(こなたには絶対に戦闘をさせない)。が、かがみの事はどう説明するべきか……。
 4.アーカード(名前は知らない)を警戒。レイにも注意を払う。
 5.六課のメンバーとの合流とつかさの保護。しかし自分やこなたの知る彼女達かどうかについては若干の疑問。
 6.もしも仲間が殺し合いに乗っていたとしたら……。
【備考】
※参加者達が異なる時間軸から呼び出されている可能性に気付きました。
※仲間(特にキャロやフェイト)がご褒美に乗って殺し合いに乗るかもしれないと思っています。
※自分に割り振られた調査エリアを調べ終えました。何かを見つけたか否かは後続の書き手さんにお任せします。
※万丈目とヴァッシュが殺し合いに乗っていると思っています。
※アンジールが味方かどうか判断しかねています。
※千年リングの中に、バクラの人格が存在している事に気付きました。また、かがみが殺し合いに乗ったのはバクラにそそのかされたためだと思っています。但し、殺し合いの過酷な環境及び並行世界の話も要因としてあると考えています。

【泉こなた@なの☆すた】
【状態】疲労小、仲間の死によるショック
【装備】涼宮ハル○の制服(カチューシャ+腕章付き)、リインフォースⅡ(疲労大、気絶中)@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS
【道具】支給品一式、投げナイフ(9/10)@リリカル・パニック、バスターブレイダー@リリカル遊戯王GXジェットエッジ@魔法少女リリカルなのはStrikerS、救急箱
【思考】
 基本:かがみん達と共に家族の元に帰る為、自分の出来る事をする。
 1.うそ、みんな死んじゃったの……?
 2.落ち着いたらこれまでの事をスバルと話し合う。
 3.リインが心配。時間が経ってから後でフェイトとプレシアの関係を確認してみる。
 4.アーカードとエネル(共に名前は知らない)、浅倉、キング、レイを警戒。特にレイとアーカードにはもう会いたくない。
 5.かがみん達……大丈夫だよね?
 6.おばさん(プレシア)……現実とゲームを一緒にしないで。
【備考】
※参加者に関するこなたのオタク知識が消されています。ただし何らかのきっかけで思い出すかもしれません。
※いくつかオタク知識が消されているという事実に気が付きました(スバル達に話すつもりはありません)。
※かがみ達が自分を知らない可能性に気が付きましたが、彼女達も変わらない友達だと考える事にしました。
※ルルーシュの世界に関する情報を知りました。
※この場所には様々なアニメやマンガ等に出てくる様な世界の人物や物が集まっていると考えています。
※地図に載っていない施設が存在しているのを確信しました。
※PT事件の概要(フェイトとプレシアの関係は除く)をリインから聞きました。
※自分に割り振られた調査エリアを調べ終えました。何かを見つけたか否かは後続の書き手さんにお任せします。
※ヴィヴィオ及びクラールヴィントからこれまでのいきさつを聞きました。浅倉、エネル、キングを警戒しており、矢車(名前は知らない)と天道についての評価は保留にしています。
【リインフォースⅡ:思考】
 基本:スバル達と協力し、この殺し合いから脱出する。
 1.落ち着いたらこれまでの事を話し合う。
 2.はやて(StS)や他の世界の守護騎士達と合流したい。殺し合いに乗っているならそれを止める。
【備考】
※自分の力が制限されている事に気付きました。
※ヴィヴィオ及びクラールヴィントからこれまでの経緯を聞きました。

429崩落 の ステージ ◆HlLdWe.oBM:2009/11/22(日) 01:02:28 ID:SlSGaxSo0

【チーム:黒の騎士団】
【共通思考】
 基本:このゲームから脱出する。
 1.これまでの情報を纏める。
 2.首輪解除の手段とハイパーゼクターを使用するためのベルトを探す。
 3.首輪を見つけた時には機動六課か地上本部で解析する。
 4.それぞれの仲間と合流する。
【備考】
※それぞれが違う世界の出身であると気付きました。
※デュエルモンスターズのカードが武器として扱える事に気付きました。
※デュエルアカデミアにて情報交換を行いました。内容は[[守りたいもの]]本文参照。
※「月村すずかの友人」からのメールを読みました。送り主はフェイトかはやてのどちらかだと思っています。
※チーム内で、以下の共通見解が生まれました。
 要救助者:万丈目(注意の必要あり)、明日香、かがみ、つかさ、ルーテシア
 合流すべき戦力:なのは、フェイト、はやて、キャロ、ヴィータ、シャマル、ユーノ、チンク、クアットロ、C.C./(フェイト及びクアットロには注意の必要あり)
 危険人物:赤いコートとサングラスの男(=アーカード)、金髪で右腕が腐った男(=ナイブズ)、炎の巨人を操る参加者
 以上の見解がそれぞれの名簿(スバル、こなた、レイ)に、各々が分かるような形で書き込まれています。


【全体備考】
※アニメイトは全壊・全焼して灰塵と化しました(跡地にルルーシュとシャーリーの焼死体があります)
※以下のものが焼失しました。
 ブリタニア軍特派のインカム@コードギアス 反目のスバル、シャーリーのデイパック(支給品一式、デュエルアカデミア売店の鍵@リリカル遊戯王GX)、ルルーシュのデイパック(支給品一式、洞爺湖@なの魂、小タル爆弾×2@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、インテグラのライター@NANOSING、医薬品一式、メス×3、医療用鋏、ガムテープ、紐、おにぎり×3、ペットボトルの水、火炎瓶×4、シーツ数枚)
※【C-9 スカリエッティのアジト】と【G-6 アニメイト跡地】の間のどこかにレッド・デーモンズ・ドラゴン@遊戯王5D's ―LYRICAL KING―が落ちています。
※リインフォースⅡのお出かけバッグとゼロの銃(0/10)は破壊されました。

430 ◆HlLdWe.oBM:2009/11/22(日) 01:03:28 ID:SlSGaxSo0
投下終了です
誤字・脱字、矛盾、疑問などありましたら指摘して下さい

431リリカル名無し:2009/11/22(日) 04:01:55 ID:vTi/FUnw0
>>命の理由
投下乙です。
キャロもフェイトももう壊れかけだなぁ……。
どっちも精神的にイっちゃってるだけに暗い未来しか思い浮かばない。
キャロはこのままだと完全に精神の壊れた狂人ルートまっしぐら。
フェイトは実際まだ誰も殺してないにも関わらず、知らずに絶望。
別な意味で心が壊れてしまった者同士の行く先に期待です。
あ、ゆりかごに向かうルーテシアもある意味では似た者同士か。

>>崩落 の ステージ
投下乙です。
ここでまさかの黒の騎士団の戦力ダウン。そして頭脳であるルルーシュの死亡。
ルルーシュとシャーリーの死には何か心に来るものを感じました。
というか今回死んだ三人はどこか皆切ないなぁ。
果たして今まで一緒に居た仲間の死にスバルとこなたはどうするのか。
ルーテシアとヴィヴィオの動向も気になるなぁ……

432リリカル名無し:2009/11/22(日) 09:23:17 ID:SlSGaxSo0
>>408
投下乙です
キャロはだんだん狂っていくなあ、しかも憑神鎌にエリオを投影して愛でているよ…
歪んでいるがある意味では幸せそうだな
それに対してフェイトは悲惨としか言いようがない…もう自己否定まで入っていているよ…

それにしても誰だ、フェイトに殺し合いを決意させたのは!(HlLdWe.oBMとかいう書き手だな、あの時夢枕になのはを立たせたばかりに…)
それにしても誰だ、キャロをここまで追い込んだのは!(そういやHlLdWe.oBMとかいう書き手もエネルや始で追い込んでいた記憶が…)
それにしても誰だ、この二人を会わせたのは!(前の作者…つまりHlLdWe.oBMとかいう書き手だ…)

433 ◆HlLdWe.oBM:2009/11/22(日) 10:06:22 ID:SlSGaxSo0
追記:一応>>429の最後に服装の説明入れておきます

【涼宮ハル○の制服(カチューシャ+腕章付き)】
某有名アニメ涼宮ハル○の憂鬱に出てくる主要人物が通っている県立北高校の女子用の制服を再現したもの。
水色と白のセーラー服とスカートで、胸元の臙脂色のリボンが特徴的。
ただし涼宮ハル○(CV:平野綾)仕様という事でオプションとして黄色のカチューシャと『団長』と書かれた腕章が付いている。
こなたはアルバイトのコスプレ喫茶でこの衣装を着用している。

【フェルの衣装】
某18禁ゲームプリズム・アー○に出てくる自称「自称天才魔法操者」フェル(CV:水橋かおり)の衣装を再現したもの。
先が二つに分かれた大きな薄紫色の帽子と背中の大きな薄橙色のリボンが特徴的。

434リリカル名無し:2009/11/22(日) 12:20:48 ID:sBTquaRE0
投下乙です

とうとうルルーシュ×スバルのカップル崩壊か
今まで盛り上がってた二人だったが死に目に会えずにルルーシュ死亡か
最後にシャーリーに救いがあったのとスバルへの思いを確認出来ただけマシだろうけど
残されたスバルとこなたとリィンはどうするか?
それにしてもここの紫ロリは容赦ないなw

435リリカル名無し:2009/11/22(日) 12:31:18 ID:xSjN7Xks0
投下乙です。

ギアス組は2人同時退場か……まぁ両者共にボロボロだった事を考えるとある程度満足した分幸せだったか?
レイ……ああ、そんなのもいたね。まぁ前回の時点でほぼ死にかけだったんだから死者スレで仲良くやれや(酷)。
スバルとこなたは無事再会……流石に今回の戦力ダウンは(今までに比べたら)大した事無いけど……ダメージでかいよな……双方共に情報交換して更に落ち込みそうだ……
ルーテシアは万事上手く行ってゆりかごへ……でもそこにはマーダーが2人いるし時間的に先に起動もしくは破壊される恐れがあるのでした(何しろ『命の理由』はまだ放送後間もないが、今回は既に放送から約3時間経過しているのだから)。

436リリカル名無し:2009/11/22(日) 12:32:21 ID:xSjN7Xks0
……が、やはり色々気になる点が、

1.支給品や思考に色々不備がある。
 ●アサルトライフルはこなたが護身用に持ち出したという描写が成されている筈なのに持っているのは何故かルーテシアになっている。
 ●シャーリーが持っていた道具の内フェイトとレイのデイパックとその中身をルーテシアが回収したのはわかるがルルーシュのデイパックにあるはずのラウズカードもルーテシアが所持しているのは不自然(他の道具はアニメイトと共に燃え尽きた事からも)。
  真面目な話、レイが移したという可能性も無いではないが彼女の心理状態から道具の沢山ある使い道のわからないカードを移すとか思えない(また、支給品の書かれている位置からもそれは明らか)。
 ●スバルの思考からアカデミアに戻っての首輪の回収が抜け落ちている。
 ●シャーリーと数キロに渡って追いかけっこしたにも拘わらずルーテシアの疲労や魔力消費が少ない気がする(マッハキャリバーのサポートがあるとは言え、結構攻撃はしていたし、イフリートも召喚しているからやはり不自然。)

2.シャーリー&ルーテシアの遭遇位置からアニメイト及びレイの現在位置まで話をもっていくのは不自然すぎる。
 ●シャーリーの位置は『[5RIDERS]』(大体14時〜14時30分頃)の時点でF-7(浅倉が確認している)で温泉のある北に向かっている。
 ●ルーテシアは放送前にアジトに到着し、その後周囲散策後、D-5の橋を目指していた。
 ●となると恐らく2者の遭遇位置はD-7辺り(F-7より約2km離れている)のはずで当然『[5RIDERS]』の時よりもある程度時間経過している
 ●その後追いかけっこをしたが何故かアニメイト方向に移動していた。偶然という線もあるだろうが……
 ●そしてアニメイトまで移動、遭遇位置から考えると3kmは離れている。
 ●シャーリーがアニメイトに入ったのは出来すぎている。(仮に目立つとしても、そういう知識のないシャーリーはいきなり入るのは無理があるのでは?)
 ●ルーテシアがレイを見付け移動してスバルを発見する描写が些か不自然(アニメイトのあるG-6近辺まで移動しておいて、G-7のレイを殺してすぐさまG-6のスバルを見付けるのは無理があるのでは?)
 ●移動範囲からレストランに近付きそうだが何故かそちらには一切向かわない。
 ●スバルは『希望』の時点でアニメイト前に到着しているはずなのにその段階でシャーリーが到達しているのは不自然すぎる。
  描写を見る限りシャーリーが来て、こなたが封鎖してからスバルが到着したのだろうが、『希望』の時間は『[5RIDERS]』と大差が無いはず。
  仮にある程度差があったとしても前述の通りシャーリーは単純計算して5km移動しているはずなのでそれを約1時間で行うのは厳しい。
 ●更に言えば『想いだけでも/力だけでも』から『[5RIDERS]』の時間経過は50分と明確にされている為、『希望』での描写が大幅に遅れるのは考えにくい(可能性は無いではないが、いち早くこなた達を探すならば悠長にしているとは思えない。)

 以上の点を踏まえると今回の話は大幅に無理がある。
 結局の所、今回の話はルルーシュとシャーリー(ついでにレイ)を綺麗な形で退場させるという展開を優先させたかったとしか思えない。
 同時にシャーリーの持っている道具の殆どをこなた&スバルに渡さず、ヴィヴィオ(と多くの武器)をルーテシアに確保させゆりかごに向かわせたいという狙いが透けて見えた。
 前にも指摘されていたと思うが、氏の話はマーダー強化、対主催涙目の展開にしたいが為に無理のある展開が多すぎる。
 勿論ロワである以上はそれはある程度仕方がないのは理解している。だが、その為に強引な展開を行って良いという話にはならない。序盤ならともかく既に2度目の放送を終えた中盤なのだ。
 こういうのは暴論なのかも知れないが氏は他の書き手を信用していないとしか思えない(『99%』の展開を無視したとしか思えない『いきなりは変われない』での描写という前科もある)。

 正直な所予約の段階でこういう無茶をするのは予想出来ていた。そうならない事を願ってはいたが正直な所残念である。
 誤解しないで頂きたいが、別にルルーシュとシャーリーを殺した事に異を唱えているわけではない、むしろ綺麗な結末であった為それ自体は乙である。(例えばルーテシアとシャーリーの遭遇位置がアニメイト近くならば何の問題もない。)
 だが、それに至るまでの過程に無茶がありすぎるのだ、『ロワだからマーダー優遇で当然、対主催涙目で何が悪い』? だからといって何をやっても良いという事にはならない。
 その辺をもう少し考えて欲しいと思う。

437リリカル名無し:2009/11/22(日) 12:36:12 ID:xSjN7Xks0
……ところで、こなたが着ているハル○の制服だが一応クロス作品の中に『ティアナ・ランスターの憂鬱』というハル○クロスがあったのだが……アレはあくまでもアニメイトにあったハル○の制服でクロス作品は関係なし?

438 ◆HlLdWe.oBM:2009/11/22(日) 18:11:54 ID:SlSGaxSo0
途中ですが返答を議論スレに書き込んだので確認してください
なお返答は議論スレにお願いします

それとすいませんんが、今後から指摘して修正してほしい時は根拠として該当部分を提示してください
その方がスムーズに対処できるので

439 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/04(金) 15:54:11 ID:RQTpi1sw0
ヴィータ投下します

440 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/04(金) 15:54:48 ID:RQTpi1sw0

『貴方達が殺し合って、最後の1人になること以外に、このゲームに終わりなんてないのだから――』

このデスゲームの主催者であるプレシアの声はそれを最後に再び聞こえなくなった。
それはつまり二回目の放送が終了した事を意味する。
おそらく次にプレシアの声を聞く事になるのは6時間後に行われる三回目の放送。
それまでに今度は何人の死者が出るのだろうか。
少なくともF-4にある建物で身を休めているヴォルケンリッターの一人『鉄槌の騎士』ヴィータはそこまで考える事はできなかった。
今のヴィータはほぼ無防備。
しかし落ち着いて放送を聞くために適当な建物に入っていたので今のところ襲撃される心配はあまりないのは幸いだった。
ちなみに魔力消費を抑えるためにバリアジャケットを解除しているので今のヴィータは私服姿だ。
白地に黒の髑髏がプリントされたTシャツ、黒っぽいスカート、黒白模様のハイソックス。
一見すると普通の子供みたいだが、その纏う雰囲気は尋常でない。

(……はやて……それにザフィーラ)

八神はやてとザフィーラ。
偽りの主と盾の守護獣。
その二人の死はヴィータに多大な影響を与えていた。
それは怒りと悲しみが混じり合い、ヴィータ自身もどう表現していいか分からなかった。
あらかじめ知っていても、偽者だと分かっていても、それでも『八神はやて』の死はヴィータに重く圧し掛かってきた。
そして夜天の書の守護騎士として長く苦楽を共にしてきた蒼き狼の死もまた重いものだった。
ヴィータは歯を食いしばり静かに二人の死を受け止めるしかなかった。

これで残った守護騎士は自分とシャマルだけ。

(シャマル、無事でいろよ)

川辺で見かけたシャマルはもう一人の偽者のはやてと一緒にいた。
今も一緒にいるかどうかは知らないが、少なくとも二回目の放送で呼ばれなかったのでその時点で生きている事は確実だ。
そしてはやての名前が一人しか呼ばれなかったという事は、シャマルと一緒にいたはやて、つまりギルモンを殺したはやても生きているという事になる。
さらにセフィロスも同様にあの爆発で死んでいない事もこれで分かった――元よりあの程度で死ぬとは思っていなかったが。

「あれ、確か……」
「どうしたんだアギト? 何か気になる事でもあんのか?」

放送後の沈黙を破るかのように机の上に座っていた同行者は何やら疑問の声を上げていた。
『烈火の剣精』アギト。
川で拾ったセフィロスのデイパックの中にいたユニゾンデバイス。
その数少ない知り合いであるルーテシアとゼストもまだ生きている。
だからヴィータは死者以外の事で何か気が付いたのだと解釈していた。

「いや、死んだ奴の中にアンデルセンっていたんだけど……」
「ああ、そういやいたな。そいつがどうしたんだ?」
「さっき思い出したんだけど、グラーフアイゼンを持っていた奴がアーカードにそう呼ばれていた気が――」
「な、なんだってぇぇぇぇぇえええええ!!!!!」

グラーフアイゼンを所持していたアンデルセンが死んだ。
それはつまり現在グラーフアイゼンがどこにあるか全く分からなくなったという事だ。
まだアンデルセンが生きていれば当人を探せばよかったが、死んでしまってはどうにもならない。
アンデルセンの死体と一緒にどこかに放置されているのか、アンデルセンを殺した参加者が拾ったのか。
どうやら愛用のデバイスを手にするにはまだまだ時間が掛かりそうだ。

「とりあえずごちゃごちゃしてきたからまとめるか」

確かに今までいろいろな参加者と出会ってきた。
信頼できる者、圧倒的な力を持つ者、主の顔を被った者。
実にいろいろな者がいた。
この辺りで一旦誰が信用できて誰に気を付けるべきか考えをまとめるのも一つの選択だ。
そうする事で何か分かる事もあるかもしれないから。

441 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/04(金) 15:55:21 ID:RQTpi1sw0

まずは確実に信用できるのはシャマルとミライの二人。
次点で時空管理局の奴ら。
具体的に言うと、高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、ユーノ・スクライアの3人。
セフィロスのデイパックの中にあった名簿、そして先の放送でなのはもフェイトも二人のうち片方が死んだ事は知っていた。
それがどういう事なのかはまだはっきりと分からないが、今は深く考えないでおく事にした。
とにかく元々全てが終わった後には皆で平和に暮らしていくために管理局に出頭するつもりだったのだ。
そのためにその時の事を考えてリンカーコアを奪う際には極力不要な血を流さないようにしてきた。
そういう事情もあるので今は敵対関係だが少なくとも見ず知らずの連中よりは信頼できる。
それは直接戦ったヴィータ自身がよく知っていた――本心では認めたくないが。

次に危険人物だが、こっちは信用できる奴より多い。
ギルモンを殺した偽者の八神はやて。
剣と盾を使う金色のカブトムシの怪人。
アグモンとクロノを殺したアーカード。
はやてを攫おうとしたアレックス。
シグナムを殺した仮面ライダーなる紫髪の少女。
もう一人の偽者の八神はやてを殺したアンジール。
そしてセフィロス。
実際目にしたりアギトから話を聞く限り偽者のはやて以外はどれもヴィータ一人で勝てる相手ではない。
辛うじてセフィロスとアレックスは話し合いの余地がありそうだが、残りの5人はそんな可能性は皆無だ。
たとえ相棒のグラーフアイゼンがあったとしても勝てる自信はない。

「そういや……なあ、アギト」
「ん? なんだよ」
「ルーテシアとゼストについてもう少し詳しく聞かせてくれよ。外見とか、一人で戦う力があるのかどうかとか」

その質問に対して一瞬アギトは迷う素振りを見せたが、すぐに話してくれた。
ルーテシアは9歳程度の少女、肩まで伸びた藤色の髪と綺麗な赤い瞳、おそらく戦う力はない。
ゼストは30歳程度の男性、茶色掛かった黒髪と精悍な顔つき、身体が悪く満足には戦えない。
ルーテシアとゼストについて新たに分かった事は以上だった。
願わくは一緒に戦えるなら心強いかと思ったが、これではあまり期待はできそうになかった。

「どっちも当てには出来ないか。ルーテシアは寧ろヴィヴィオと一緒で保護対象だな」

ヴィヴィオ。
目の前で殺されたギルモンが託した願い。
放送で名前を呼ばれなかったのでまだ生きているが、未だに行方に関する手掛かりは皆無の状態だ。
本当なら早々にこの場所を引き払って探しに行きたいところだ。
ポケットに入れている核鉄のおかげでもう怪我もだいぶ治っている。
だが単純にそうもいかない。

「誰かに会うにしてもどこに行けば会えるんだ?」

今までのように闇雲に探し回っているだけでは時間の浪費。
なんとかして上手く探し出す方法を見つけたいところだ。
とりあえず何か分かるかと思って地図を眺めてみた。
9km四方の土地を9×9に区画分けした会場。
そのうちB-1とD-3とH-4は既に禁止エリア、A-4とA-9とE-6もこれから順次禁止エリアになっていく。
普通に考えれば参加者が集まりそうな場所と言えば中心地だが、果たしてそんな単純でいいんだろうか。
いつもこういう事はシグナムやシャマルに任せていたヴィータにとってこれは慣れない事だった。
そして案の定思考の迷路に迷い込んでただただ悩み続ける始末。
同行者のアギトもアギトで同じように悩んでいるのでしばらくはこの状態が続くと思われた。

「がはっ……」

それを終わらされたのは意外にも聞き覚えのある呻き声と人が倒れる音、そして――。

「……これはいただきますわよ」

――なぜか虫唾が走る馬鹿にしたような嘲りだった。


     ▼     ▼     ▼

442 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/04(金) 15:56:12 ID:RQTpi1sw0


『クアットロ……!!』
『思ったよりも簡単に上手くいきましたわね』
『シルバーカーテンを此処で使ってきたか……』
『あら? 私はちゃんと後ろを走っていましたわよ?』
『アホ言え……それはシルバーカーテンを使った幻やろ……恐らく本物は姿を消して密かに前に来てタイミングを見計らっていたって所やな……』
『大体正解ですけど、仕掛ける直前まではちゃんと後ろにいましたわよ。だってそうじゃないと声の方向でバレるでしょ?』
『くっ……』
『何にせよ気付くのがほんのちょっと遅すぎましたわねぇ』
『やっぱり改心したという話は嘘やったんやな』
『そもそも最初から私の話なんてこれっぽっちも信じてなかったくせに』

『腑に落ちない顔していますわねぇ、まさか私がこのタイミングで裏切るとは思ってなかったんですかぁ?』
『ああ……動くのは他の仲間と合流してからやと思っとったわ……』
『私だってもう少し付き合っても良かったんですよ、実際さっきまでは協力的だったじゃありませんでしたか? 一応言っておきますけどはやてちゃん達に話した事は大体本当の事ですよ? キャロが殺し合いに乗っている話は事実ですからね』
『でも幾つかは嘘吐いているんやろ?』
『それはご想像にお任せしますわ……極端な話、生き残れるんでしたらこのままずっと協力していても良かったんですよ? その為だったら多少利用されるのもやぶさかではありませんでしたし』
『そんな言葉信じると思うか?』
『私だって1人で行動するより他人と組んだ方が生き残れるのはわかっていますわ……可能性が高い手段を執るのは別におかしい事じゃないでしょ?』
『……そこまでわかっていて何故今裏切ったんや?』
『それはひょっとしてギャグで言っているんですか? 言ったはずですわよ、可能性が高い手段を執ると……
 はやてちゃん……私を利用するだけ利用してボロ雑巾の様に捨てようって考えていましたわね?』
『!!』
『しかもセフィロスに追われているこの状況……シャマル先生に続いて今度は私を捨て石にするつもりなんじゃありませんか?』
『くっ……待て、今何て言った!?』
『あらあら、まさか本当にシャマル先生を盾にしていたとはねぇ……』
『くっ……カマをかけたんか?』
『割と適当に言っただけなんですけど……正直どっちでも良かったですしね、とはいえ予想は付いていましたわよ』

『バレていないと本気で思っていたんですかぁ? はやてちゃんが本当はシャマル先生を家族ではなく只の手駒だと思っている事を』
『何故わかったんや……』
『まぁシャマル先生は最期まで気付かなかったんでしょうけど……はやてちゃん貴方の態度、私から見ても明らかに不自然だったんですのよ?
 キャロみたいに殺し合いに乗った参加者を平気で斬り捨てる様な事、少なくても私の知る彼女はそんな事言わないはずですわ。だって私の知るはやてちゃんは甘々な人間なんですのもの。
 まぁそれだけだったら甘さを捨てるほどやさぐされる何かがあった程度で済むんでしょうけど……ついさっき確信しましたわ、はやてちゃん……貴方、元の世界でシャマル先生達を失っていますわね?』

443 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/04(金) 15:56:47 ID:RQTpi1sw0

『故にこの地にいるシャマル先生達を本物だと認めなかったと……認めてしまうのは死んだシャマル先生達に対する裏切りだと……まるで死んだ恋人のそっくりさんが現れた時の心境ですわね』
『違う! 死んでなんかない! まだ助けられる!』
『あらあら……これも推測レベルの話だったのに……まさかこれも当たりだったとはねぇ? もしかして、貴方の世界のシャマル先生達を助ける為にプレシアの技術を奪おうって考えているのかしら?』
『ぐっ……』
『ちなみに失ったって思ったのは、失っていない状況なら例え違う世界の人でも変わらないと考えると思ったからですわ。まぁ、私にとっては間違いでも構いませんけど。
 重要なのははやてちゃんがシャマル先生達を便利なアイテム程度にしか考えていないという事』
『そうや、何故それがわかったんや!?』


『……簡単な事ですわ……だって、はやてちゃん―――シャマル先生が目の前で殺されたって言うのに全く悲しそうな顔していないんですもの』


『……おい、別に私がシャマル達をどう扱おうがお前にとってはどうでもいい話やろ? それとお前の行動に何の関係がある?』
『ちょっと考えればわかる事ですわ。自分の家族すらボロ布の様に扱うんですもの……私をどう扱うか何てすぐに推測付くとは思いません?』
『クアットロ……何をする気や?』
『今にもセフィロスが迫っているんですよ? 逃げるに決まっているじゃありませんか?』
『私にトドメを刺さんでええんか? 私はお前を許すつもりはない……絶対にこ……』
『それはセフィロスから逃げ切ってから言ってください』
『私を囮にする気か!?』
『ええ、はやてちゃんがセフィロスを引きつけている間に私は悠々と逃げさせてもらうと、その間にまた新しい手駒を探しますわ』
『お前の口車に乗る参加者がいるとは思えんがな』
『シャマル先生は騙されていましたけどねぇ……まぁ、仮にそうでも管理局の甘ちゃん達だったら少なくても殺すって事は無いと思いますわ』
『くっ……』
『あ、仮にはやてちゃんが運良く合流して私を殺す様言っても同じ事だと思いますわよ。むしろ彼女達と仲違い起こす事になるだけじゃないかしら?』
『う……』
『きっとみんなセフィロスと同じ事言うんじゃないかしら? 『貴方は『八神はやて』じゃない!』ってねぇ』
『黙れ……』
『まぁ仲違いは幾らしても良いですけどお願いですから私達の足を引っ張らないでもらえます?』
『足を引っ張る? それはむしろお前やろ?』
『何を言うのやら、ここまで自分が信用されていないのにそんな無茶はしませんわよ……大体はやてちゃんがもう少し冷静になっていればヴィータちゃんとも敵対せずに済んだでしょうし、セフィロスだって味方に引き入れたかもしれないじゃないですか?』
『違う、ヴィータの事は全部キングのせいや! それにセフィロスの件だって奴が危険人物……』
『そうでしょうか? 私やシャマル先生のいた世界のはやてちゃんだったらヴィータちゃんとも仲違いせずにすんだでしょうし、セフィロスだって変な気は起こさなかったと思いますけど?
 まぁ、否定したいんだったら否定しても構いませんわよ。でも、仲違い起こすとわかっていて本音を隠さないのはどうなのかしら? 敵である私にすらバレているんじゃ只の大根役者ですわね』
『お前が言えた事か!』
『それにしてもシャマル先生やヴィータちゃんも災難ですわねぇ、主や家族と思っていた人にボロ雑巾扱いされて……ちょっと同情しますわ』
『心にも無い事を……』
『ともかく、先にスマートブレインで待っていますわ。頑張ってセフィロスから逃げてくださいね』
『その言葉忘れるなよ……』


『そうそうはやてちゃん、もう一言追加良いですか―――貴方はまた―――守れないかもね―――』


『クアットロー!!!』


     ▼     ▼     ▼

444 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/04(金) 15:57:21 ID:RQTpi1sw0


既に血痕のみを残して誰もいなくなった道路の前に聳え立つ建物の中でヴィータは身体の中から溢れ出る激情に呑まれかけていた。

「……うそだろ、シャマルまで……しかも、あの偽者のはやての奴、シャマルを捨て石にしただって……」

しかも話の流れから察すると、シャマルを殺したのはセフィロスで逃げた二人を追ってこちらに向かっているらしい。
ここでセフィロスを説得するために待つ事も出来るが、シャマルを殺した者とどう顔を向ければいいか分からない。
そしてクアットロと偽者のはやてはスマートブレインという場所に向かうらしい。
まだ今なら逃げた二人に追いつけるが、追いついたところでどうすればいいのか分からない。
ギルモンとシャマルの仇を取る事も出来るが、なぜかあと一歩決心が付かない。

「どうしたらいいんだよ!!!」

ヴィータはいくつもの選択肢を目の前にして動けないでいた。

一方アギトもまた悩んでいた。
自分達が潜んでいた建物の前で繰り広げられた一部始終は興味深いものだった。
見つからないように壁越しに声だけしか聞けなかったが、それでもどんな状況かは把握できた。
その上でアギトはヴィータとは別の事で悩んでいた。
正直なところアギトはクアットロが嫌いだが、反面クアットロが自分より遥かに頭が良い事も知っている。
もしかしたらルーテシアやゼストを見つけ出す方法を考え付くかもしれない。
しかも都合の良い事にこのヴィータはクアットロの事を知らないようなので、要らぬ争いが起きる可能性も低い。
先程ヴィータに二人の事を聞かれた時に適当にぼかしたところもクアットロなら上手く汲んでくれるはず。
だが今この建物の前で起きた出来事に対してヴィータがどのような感情を抱いたか定かではない。

(どうすりゃいいんだ……?)

幻惑の罠を発端とする街角で起きた機動六課部隊長斬り捨て事件。
その事件の一部始終を聞いていた鉄槌の騎士と烈火の剣精。
今二人のバトルロワイアル放浪ツアーは岐路に差し掛かっていた。

445 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/04(金) 15:57:54 ID:RQTpi1sw0


【1日目 日中】
【現在地 F-4 ビル密集地のどこかの建物1階にある部屋】
【ヴィータ@魔法少女リリカルなのはA's】
【状態】疲労小、左肩に大きな切り傷(治りかけ)、セフィロスへの恐怖
【装備】イカリクラッシャー@魔法少女リリカルなのは STS OF HUNTER、ゼストの槍(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ヘルメスドライブ(約4時間30分使用不可、レーダー破損中につき数時間使用不能、核鉄状態)@なのは×錬金、アギト@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式×2、デジヴァイスic@デジモン・ザ・リリカルS&F
【思考】
 基本:はやての元へ帰る。とりあえず殺し合いに乗った奴以外とは戦わない。
 1.シャマルが、死んだ……!?
 2.セフィロスを待つか、クアットロを追うか、はやてを追うか、あるいは……?
 3.ヴィヴィオ(もし見付けたらギルモンの代わりに守ってやる)、ミライ、ゼスト、ルーテシアを探す。
 4.アーカード、アンジール、紫髪の少女(かがみ)はぶっ殺す。
 5.出来ればセフィロスを止めたいが……。
 6.グラーフアイゼン、どこにあるんだ?
【備考】
※ここにいる『はやて』は全て偽者だと思っています。
※ヘルメスドライブの使用者として登録されました。
※セフィロスと出会う前のセフィロスの動向をある程度把握しました。
※今のところ信用できるのはミライ、なのは、フェイト、ユーノ、ルーテシア、ゼストのみ。
※注意するべき人物:はやて、カブトムシの怪人、アーカード、アレックス、仮面ライダーなる紫髪の少女、アンジール、セフィロス。
【アギト@魔法少女リリカルなのはStrikerS】の簡易状態表。
【思考】
 基本:ゼストとルーテシアと合流し2人を助ける。
 1.クアットロを追いかけるべきか否か。
 2.もう少し様子を窺いつつもとりあえずヴィータに協力。
 3.ゼストとルーテシアが自分の知る2人か疑問。
【備考】
※アギトの参戦時期はシグナムと共にゼストの所に向かう途中(第23話)からです。
※参加者の状況が自分の知る彼等と異なる事に気付いており、ゼストとルーテシアも自分の知る彼等と異なる可能性に気付いています。但し具体的な事は分かっていない為、今の所他の参加者に話すつもりはありません。
※デイパックの中で様子を伺っていた為、ヴィータに発見されるまでのセフィロスの動向をある程度把握しています。
※ヴィータの言ったはやてが『偽物』である事については否定的です。

446 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/04(金) 16:00:03 ID:RQTpi1sw0
投下終了です
タイトルは「機動六課部隊長斬り捨て事件〜バトルロワイアル放浪ツアー、街角に待ち受ける幻惑の罠、鉄槌の騎士と烈火の剣精は聞いていた〜」です
誤字脱字、矛盾、疑問などありましたら指摘して下さい

447リリカル名無し:2009/12/04(金) 17:47:12 ID:AWM8LTIg0
投下乙です、まず一言……

サ ブ タ イ ト ル 長 す ぎ る

それはともかく、まさかクアットロもはやてもヴィータとアギトに聞かれていたとは夢にも思うまい。
問題はヴィータがどうするかだが……何にせよはやてがシャマルを捨て石にしたのは事実だからなぁ。
他の問題が仮に誤解とかでどうにかできてもこれはどうにもならんしな……
で、セフィロスと接触しようがはやてを探そうが現状どうにもならない罠……
仮にスマートブレインに向かってもはやてに会える保証は無いしな(はやてはどうするか思案しているはず、クアットロはそもそもそっちに向かっていない。)

……なんかヴィータが悩んで終わりってオチ、前にもあった様な気がする。

1点だけ些細な質問ですが、なのはの死亡が伝えられたのは第1放送ですけど、
確かヴィータはなのは死亡の部分は聞き逃していたはず(『アナタハマタマモレナイカモネ』にてシグナム〜ナイブズの間を聞き逃したと描写されている)ですし、
アギトもルーテシアとゼストの無事しか把握出来なかった(『烈火(Side V)』参照)とあったはず。
これはアギトが名簿を見てなのはが呼ばれた事を思い出してそれで補完したという解釈で良いですか?
……どっちでも大筋に関わらない本当に些細な疑問ですね(片方死んでようがもう片方いるしなぁ……)。

448リリカル名無し:2009/12/04(金) 18:04:13 ID:AWM8LTIg0
……と思ったら今回の本編中に
『セフィロスのデイパックの中にあった名簿、そして先の放送でなのはもフェイトも二人のうち片方が死んだ事は知っていた。』
とありました。つまりセフィロスの名簿でなのは死亡を補完したと……あれ? でもセフィロスも幼はやても放送聞いてなかったよな……(『絶望の罪人』参照)
……やっぱりアギトが思い出したのか?

449 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/04(金) 21:05:14 ID:RQTpi1sw0
名簿の件は自分の勘違いでした
なので>>441のうち

>セフィロスのデイパックの中にあった名簿、そして先の放送でなのはもフェイトも二人のうち片方が死んだ事は知っていた。
>それがどういう事なのかはまだはっきりと分からないが、今は深く考えないでおく事にした。
>とにかく

までを削除する事で対応します
それに伴って状態表に

※第一回放送についてはシグナムからナイブズの間に呼ばれていた名前を聞き逃しました。

を追加します。

450リリカル名無し:2009/12/04(金) 21:18:09 ID:a8mjkUdY0
投下乙

あの場面に居て聞いてたのかよ
ヴィータの性格だとこのまま・・・・
アギトはアギトでクアットロに頼るのか。俺でも躊躇するわw

451 ◆Vj6e1anjAc:2009/12/25(金) 10:18:38 ID:RLyMJxRw0
メリークリスマス!
というわけで、フェイト、キャロ、ルーテシア、ヴィヴィオ分を投下します

452 ◆Vj6e1anjAc:2009/12/25(金) 10:20:28 ID:RLyMJxRw0
タイトル長杉と警告食らったので本文に記載。
「ロリッ!幼女だらけのクリスマスパーティー 〜ボインもあるよ!〜」です。


 それは小さな願いだった。

 何事もない穏やかな日々、ずっと求め続けていた温もり……何よりも愛しかった日々に、暗く、静かに落ちた影……

 運命という名の鎖を断ち切る力を、この手に得ることができるなら、全てを捨てても構わないと思った。

 嗚呼――なのに、何故。

 私は、こんな所へ来てしまったのだろう――



 ただひたすらに、這いずるように逃げていた。
 カートリッジはない。自分の得意とするタイプの武器じゃない。
 何より、今も傷口から流れる血が、体力と思考力を根こそぎ奪い続けている。
 こんな状況で挑んだところで、まともに勝てるはずもない。
 故に見つからないようにすることだけを考えて、みっともなく逃げ続けていた。
 巨大な戦艦の内部を歩いていく。
 ふらふらとした足取りで、がらんどうの闇の中を進んでいく。
 もう自分がどこにいるのかも、どの道筋を辿れば出られるのかも分からない。
 有体に言えば、迷っていた。
 これだけうろつき回ったのだ。右腕から溢れる血痕の道も、ぐちゃぐちゃに混線していることだろう。
 唯一救いがあるとするならば、そうして追っ手をかく乱できたことくらいか。

 何故、自分は逃げているのだろう。
 ふと、ぼやけた脳内で思考する。
 出来損ないのはずの自分が、何故この期に及んで逃げているのだろう。
 もはや居場所なんてないのに。
 人殺しの罪を犯した自分を受け入れる者など、誰もいないというのに。
 生きていく意味も、共に生きたいと思える仲間も、全てなくしてしまったというのに。

 命は何にだって一つだ。
 他の何かで代用できる命などない。命はそれぞれに等価値なんだ。
 そんな言葉を、どこかで聞いたような気がする。
 他人に命の品定めをされ、結果捨てられた自分にとって、その言葉はひどく優しく聞こえた。
 けれど。
 だからこそ、今になって理解できる。
 命の価値を決めるのは、他人ではなく自分自身。
 すなわちそれは、自分を無価値だと決め付けるのは、他ならぬ自分自身だということ。
 自分は無価値だ。
 まるで命に意味を見出していない。
 まるで生きようとしていない。
 幾度となく迷い悩んでも、大切な人達に支えられ、その度に道を切り拓いてきた。
 しかしそれは裏を返せば、他人という存在がいなければ、今の自分は存在しえなかったということ。
 ■■■■・■・■■■■■という人間は、いわばファミレスのガラスコップ。
 色とりどりのドリンクを、他人から注がれることがなければ、ただ透明で空っぽなだけの存在。
 他人の存在なしにしては、何の個性も得られず、何も決められず、何を為すこともできはしない。
 観賞用にも使えぬコップに、一体どれほどの意義がある。
 たった独りの空虚な自分に、一体どれほどの価値がある。
 死ねばいいのに。
 死ねば助かるのに。
 死んでしまえば、少なくともこの苦痛と絶望からは、解放されるというのに。

 嗚呼。
 なのに、何故――死ぬことは、こんなにも、怖い。

453 ◆Vj6e1anjAc:2009/12/25(金) 10:22:08 ID:RLyMJxRw0
.
 今ここで自分の命が失われれば、何もかもが虚無へと還る。
 右腕を苛む痛みも、誰からも愛されぬ悲しみも、あっという間に捨て去ることができる。
 けれどそれは、他の全ても捨てる選択肢だ。
 大切な人に出会えた喜びの記憶も。
 大切な人と培ってきた楽しい思い出も。
 大切な人を救いたいと願った真っ直ぐな意志も。
 何より、この身体と魂を持って生まれた、■■■■・■・■■■■■という存在そのものも。
 自分なんて大嫌いなのに。
 自分であることがひどく苦痛なのに。
 自分が消えてしまうのが、怖い。
 憎しみや悲しみだけでなく、喜びさえも消え去って、何もなくなってしまうのが怖い。
 無様なものだ。
 死にたいくらいに絶望してなお、死ぬのは怖いと足掻いている。
 生きていても仕方がないのに、生きていたいともがいている。
 本当に。
 なんて、無様。

「……?」

 かつり、かつり、かつり、と。
 不意に、微かな靴音が聞こえてくる。
 追っ手のそれではない。あの巨大な鎌を引きずる、がりがりという音が聞こえてこない。
 こっそりと物陰から顔を出し、ばれないように正体を伺う。
 そこに歩いていたのは、1人の少女。
 きっと自分と同い年くらいの、紫色の髪の女の子。

 フェイト・T・ハラオウンのそれと同じ――赤い瞳をした女の子だった。



 インテリジェントデバイス・マッハキャリバー。
 あのへなちょこな新人のデバイスにしては、大した速度を持っている。
 胸元にぶら下がる水晶へと視線を落とし、ルーテシア・アルピーノは思考した。
 先のアニメイト襲撃から数時間が経過した今、彼女は聖王のゆりかごへと到達していた。
 マップ上の区切りで言えば、2マス分を斜めに突っ切ったことになる。
 多少時間はかかったものの、歩幅の狭い子供の自分では、徒歩でならもっと時間がかかったことだろう。
 最悪、途中で疲弊していたかもしれない。
 それを考えれば、第3回目の放送よりも早く、ここまで辿り着けたことは、僥倖としか言いようがなかった。
 眠るヴィヴィオを背中に担ぎ、薄暗いゆりかごの廊下を進んでいく。
 足元に血痕が見えたのが気にかかったが、さして重要なことではないと判断。
 恐らく戦闘でもあったのだろうが、血を流しているということは、手負いの死に損ないなのだろう。
 仮に加害者がいたとしても、自分にはイフリートという味方がいる。
 何せ本来なら制限の対象である召喚獣だ。そうそう簡単に遅れを取る場面は想像できない。
 そうこう考えているうちに、目当ての玉座の間へと到着。
 天井の高い殺風景な部屋に、ぽつんと飾り気ない椅子だけが置かれた場所だ。
 聖王とはあくまで主権者ではなく、強力な兵器でしかなかったことが、否応なしに理解できる。
 かつり、かつりと靴を鳴らし。
 入り口から、灰色の玉座へと到着。
 この部屋に血の痕は見られなかった。ということは、ここは無人なのだろう。
 誰かが隠れていて、物陰から襲いかかってくる――その可能性を排除できただけでも、幾分か安堵できた。
 かちゃん、と鳴る音。
 座らせた器を、椅子に備えられた拘束具をもって固定。
 首にかけたマッハキャリバーを端末とし、ゆりかごを起動せんと準備に取り掛かる。

454 ◆Vj6e1anjAc:2009/12/25(金) 10:23:18 ID:RLyMJxRw0
「………」
 ふと。
 意識のない横顔を見て、思った。
 この娘もまた、自分と同じだったのではないかと。
 たとえ偽りのものであったとしても、ヴィヴィオはあの女を――高町なのはを母親として慕っていた。
 彼女もまた、自分の母と引き離され、1人その背を追い続けていたのではないのかと。
 眠る母を蘇らせるべく、孤独に戦う自分と同じ存在ではないのか、と。
 同情はする。
 大切なものを失い、それを取り戻したいと願う気持ちは理解できる。
 その命を奪うということは、その意志を否定することではないのか、ということも、理解している。
 しかし、してやれるのは同情だけだ。
 今は確かに殺さない。ヴィヴィオが死ねば、聖王のゆりかごは起動しなくなる。
 だが、この戦艦が他の全ての参加者を抹殺すれば、ルーテシアは迷うことなくその首を刎ねるだろう。
 誰だって我が身が一番可愛いのだ。
 自分の母親の命を救うためなら、他人の願いだって踏みにじってみせる。
『プログラム構築、完了』
 マッハキャリバーの音声が響く。
 もやもやした気分を振り払い、己がデバイスへと意識を向けた。
 組んだプログラムは2つだ。
 基本となる聖王のゆりかご起動のためのものと、最終防衛手段としての、聖王モードへの強化改造用のもの。
「あとは……レリック」
 準備は整った。
 残るはヴィヴィオを改造するための材料――レリックさえ手に入れば、すぐにゆりかごを飛び立たせることができる。
 拘束はしておいた。必要なレリックは、今から探しに行けばいい。
 行動方針を定め、今まさに振り返らんとした。

「――来てたんだね、ルーちゃん」

 その、瞬間。
 背後から聞こえる、声。
 入り口からかけられた呼び声に、反射的に身体の回転速度を上げる。
「来てたのなら、挨拶くらいしてくれてもいいのに」
 そこに立つのは桃色の少女。
 淡い桜色の髪の少女。
 自分と同じくらいの身体を、どこぞの伝統衣装に包んだ娘。
「貴方……六課の」
 機動六課、ライトニング04。飛竜フリードリヒを駆る竜召喚士。
 確か、名はキャロ・ル・ルシエとかいったか。
 執務官の保護者と、赤毛の友人に囲まれた、幸せたっぷりな笑顔を浮かべていた無知な餓鬼だ。
 その、はずだった。
「来てたって分かってたら、ちゃんとおもてなししたんだよ? ひどいね、ルーちゃんは」
 であれば、今まさに歩み寄ってくるこいつは何だ。
 黄金と漆黒で彩られた、その禍々しきデスサイズは一体何だ。
 何より、その顔。
 くすくすと笑うその表情。
 果たして彼女の笑う顔は――これほどに空虚なものであったか。
 いかに無知な子供といえど、その顔には確かに温もりがあった。
 笑顔を浮かべるに相応しいだけの幸福感が、そこには確かに宿されていたはずだ。
 なら何故、今の彼女はそんな笑顔を浮かべられる。
 喜びも何も込められていないような、虚ろな目をすることができる。
 何故、そんな。
「……嫌な顔」
 吐き気を催すような、忌々しい笑顔を浮かべられる。

455 ◆Vj6e1anjAc:2009/12/25(金) 10:24:18 ID:RLyMJxRw0
「仕方ないよ、エリオ君が死んじゃったんだもの」
 感情の希薄な声でキャロが言った。
 エリオとは、確か例の赤毛の少年の名か。
 ライトニング03、エリオ・モンディアル――違法技術・プロジェクトFの遺産。
 富豪の家に生まれた御曹司である、本来のエリオのコピーとして生まれた、長槍を振るう少年騎士の名だ。
 そういえば、彼もまた放送で名前を呼ばれていたか。
 最初の放送で呼ばれた死者など、ほとんど忘れかけていた。
「エリオ君が死んじゃって、私はとっても悲しかった……だから、決めたの」
 ぶん、と巨大な鎌を振るう。
 身の丈の倍ほどはあるであろう、死神の大鎌を難なく構える。
 込められるのは禍々しき魔力。
 顕現するのは奇妙な魔法陣。
 ミッド式ともベルカ式ともつかぬ、極彩色をしたそれは、さながらコンピューターのデジタル紋様。
「エリオ君を取り戻そうって――みんな殺して優勝して、エリオ君を生き返らせてもらおうって」
 ああ、そうか。
 ようやく合点がいった。
 その言葉を耳にしたことで、ようやく理解することができた。
 彼女の顔に浮かぶ表情は。
 そのいけ好かない嫌な目は。
「そう……貴方も、私と同じになったの」
 他ならぬ、自分自身のそれだ。
 大切なものを失って、他の全てに価値を見出せなくなった、空虚でがらんどうな目だ。
 かけがえのない者と一緒に、心までも殺されてしまった、何もない空っぽな人間の放つ視線だ。
「そうだね……今の私なら、ルーちゃんの気持ちが理解できる」
 くすくす、とキャロが笑う。
 どうりで気に食わないわけだ。
 自分と同じ存在など、到底好きになれるわけがない。
 他ならぬルーテシア自身が、現状の自分を嫌っているのだから。
 心のない自分が許せないからこそ、死せる母を蘇らせて、自分を変えようとしているのだから。
「それにルーちゃんだからこそ、私の気持ちも分かるよね?」
 ああ、そうだとも。
 その動機は痛いほど分かる。
 自己の半身とでも言うべき存在をなくす痛みは、現在進行形で味わっている。
 ましてや、彼女は自分の保護者すらも喪った。
 フェイト・T・ハラオウンの名前は、二度目の放送で読み上げられていた。
 半身と半身を失ったのなら、なくしたものは合計して一身。
 自己の存在そのものすら、揺るがしかねない強烈な痛みだ。
「だから死んで。私のことを思うなら、私のために、ここで私に殺されて」
 そしてその要求も、理解できる。
 自分以外の人を殺せば、大切な人が蘇る――同じ立場に立たされたなら、自分だってそうするだろう。
 否、それどころか、自分も同じ立場に立たされている。
 しかもかのプレシア・テスタロッサが、人を殺せば願いを叶えると、直接顔を合わせて約束したのだ。
「……悪いけど、それは無理」
 だからこそ、返事も決まっている。
 ヴィヴィオの時の焼き回しだ。
 キャロの境遇に同情はするが、それ以上のことなどしてやらない。
 彼女のために殺されてやらない。
 彼女の願いの礎になどならない。
「私にも、退けない理由があるから」
 逆にこの場でキャロを殺して、自分の願いの礎にする。
 大体、彼女に自分の気持ちが分かるなら、こちらも同じ想いで戦っていると分かっているはずなのだ。
 それを知ってなお、こちらの願いをないがしろにするというのなら。
 そんな自分勝手な女になど、誰が従ってやるものか。

456 ◆Vj6e1anjAc:2009/12/25(金) 10:24:50 ID:RLyMJxRw0
「お願い、イフリート……」
 す、と宝珠を懐から取り出す。
 ルーテシアの指先で光り輝くのは、紅蓮の召喚獣を封じ込めたマテリア。
 灼熱纏いし地獄の鬼神――イフリートを呼び出す魔法の宝石だ。
 小さな珠へと魔力を込める。
 召喚の力を具現化する。
 リンカーコアより力を注ぎ、異界の門を叩いて開く。
 荒ぶる火炎の獣の声を、内に聞いたその瞬間。
「――遅いよ」



 “死ヲ刻ム影”!



 痛烈な衝撃が、胸元を襲った。
「――ッッ!?」
 じわり、じわりと。
 激烈な衝撃が身体を襲う。
 強烈なエネルギーが身体を蝕む。
 魔力が表皮から体内へと浸透し、内側でのたうち回る不快な感触。
 熱い無数の手が臓物をえぐり、容赦なく五体を陵辱し尽くす感触。
「データドレイン、って聞いたことある?」
 苦痛と不快感の向こうから声が聞こえる。
 艶っぽい吐息に混じったキャロの声が、波動を押しのけ響いてくる。
「使うにはたくさんの魔力を消費しなきゃいけないんだけど……
 命中すれば、魔力結合の組成を書き換えたり、壊したりすることができるんだって」
 くすくす、と笑いながら声が迫った。
 かつり、と靴を鳴らしながら足音が迫った。
 一歩一歩着実に、悶え苦しむルーテシアへと歩み寄る。
「リンカーコアの機能だって、停止させることができるらしいよ?」
 突きつけられたのは絶望的事実。
 くわと瞳が見開かれた。
 全身の体毛が総毛立った。
 脳の思考は一瞬停止し、目の前が真っ暗になったような錯覚を受ける。
「ん……んうぅ……っ」
 喘ぎにも似た苦悶の吐息。
 よがるように身をくねらせる。
 なるほど、不快感の正体はそれか。
 刹那の思考停止の間を置いて理解した。
 全身を這いずり回る奔流が、体内を侵食していくのが分かる。
 魔力の源泉たるリンカーコアが、その感覚を喪失していくのが分かる。
 ぽとり、とマテリアを床に落とした。
 召喚獣の声は既に聞こえなかった。
 シャットアウト。
 全ての機能は停止する。
 動力炉は静かに動きを止め、バイパスは残らずシャッターを下ろされた。
 我が身を駆け巡る魔導の力が、軒並み遠退いていく脱力感。

457 ◆Vj6e1anjAc:2009/12/25(金) 10:25:24 ID:RLyMJxRw0
「世界は広いよねぇ、ルーちゃん」
 その言葉を皮切りに、全ての責め苦は終了した。
 解放される。
 全身を這う衝撃と圧力による拘束から、小柄な身体が解き放たれる。
 されどリラックスすることもできず、その身は床へと投げ出された。
 ばたん、と鳴る音。
 それが自身が床に倒れた音だと理解するのにも、更に一瞬の間を必要とした。
 顔中に浮かんだ脂汗に、前髪が鬱陶しくへばりつく。それを払うことすらもかなわない。
 身体が重い。
 息が苦しい。
 節々が痛い。
 五体に満足に力が入らない。
 暴漢に囲まれ犯し尽くされた後のような、苦痛と脱力と疲労感。
 投げ出された華奢な体躯が、びくんびくんと痙攣した。
「私もすっごく疲れたけど……これでルーちゃんは、しばらく一切の魔法が使えない」
 霞がかかった意識の中で、エコーを伴う声が響いた。
 ぐっ、と前髪が鷲掴みにされる。
 ぐい、と顔面が引き寄せられる。
 だん、と右足が腹を踏みつけた。
「私の勝ちだね」
 にぃ、と口元を吊り上げるキャロの顔を、黙って見上げることしかできなかった。
 ああ、忌々しい。
 身体にまるで力が入らない。
 魔力の使えない餓鬼などこんなものか。
 リンカーコアの機能を封じ込められただけで、こんなにも自分は弱くなるのか。
 まともに働かなくなった思考の中、ぼんやりと恨み言を捻り出す。
 相手の言葉に従うのなら、条件はさほど変わらないはずだった。
 珠のような汗を浮かべるキャロもまた、膨大な魔力を消耗しているはずなのだ。
 されど、違う。
 相手の魔力量は僅かでしかなく、ゼロのルーテシアよりは多い。
 おまけにその手には死神の鎌。
 完全に無手のルーテシアとは、比べ物にならないアドバンテージ。
 完全に、詰みだ。
 悔しいが、認めるしかなかった。
「時間も惜しいから、さくっと殺しちゃいたいんだけど……何か言い残したいことはある?」
 嫌な笑顔で彼女が囁く。
 嫌な瞳で問いかけてくる。
 ああ、自分もこんな目をしていたのだろうか。
 こんながらんどうの視線を向けて、多くの人を傷つけたのだろうか。
「……くたばれ」
 呪いの言葉を投げつける。
 それが最期の抵抗だ。
 ああ、くそ。
 忌々しいったらありゃしない。
 こんなところで終わるのか。
 こんなところで自分は死ぬのか。
 あれほど大勢殺したというのに、こんなに呆気ない形で殺されてしまうのか。
 母を助けることもできないままに。
 心を手にすることもかなわないままに。
「ふふっ……じゃあね、ルーちゃん」
 金色の刃が迫り来る。
 漆黒の殺意が襲いかかる。
 これで何もかも終わりか。
 この9年間の人生の足跡は、全て無駄に終わってしまうのか。
 何も為せず、何も掴めず。
 たった1つの大切な命すら、守ることもできないままに。
 最期の瞬間、脳裏に浮かんだものは。
(母さん――)
 最期まで求めて止まなかった、愛しき母親の笑顔だった。

458 ◆Vj6e1anjAc:2009/12/25(金) 10:25:58 ID:RLyMJxRw0


 ごとり、と鈍い音が鳴る。
 ぶしゅう、と噴水の音が鳴る。
 赤い血霞の中に佇むのは、嗜虐的な笑みを浮かべた可憐な少女。
 竜鱗の右手に携えるのは、命を刈り取る死神の刃鎌。
「あははははっ! やった、やっと殺せた! 見てた、エリオ君? 私もちゃんと殺せたよ!」
 無邪気な笑い声が木霊する。
 瞳を閉じた王者の前で、壊れた少女が笑いを上げる。
 キャロ・ル・ルシエとルーテシア・アルピーノ。
 互いに異なる組織に属し、互いに大切なものを失った召喚士は、いわば宿敵と呼べる間柄であっただろう。
 されど一たび世界を違えれば、運命が定めたルーテシアの敵はキャロではなかった。
 少女の携える大鎌は、太古の昔より蘇りし魔具――<死の恐怖>憑神鎌(スケィス)。
 本来あるべき世界においては、かのエリオ・モンディアルが操っていたものだ。
 そして死神の処刑鎌(デスサイズ)の世界において、ルーテシアの敵はそのエリオだった。
 同じ巫器(アバター)に選ばれた者同士、彼らは互いに刃を交え、激しくしのぎを削り合った。
 そして今、ここに少女は散る。
 同じ世界のキャロ・ル・ルシエと。
 違う世界のエリオ・モンディアル。
 母を求める少女は逝く。
 ルーテシア・アルピーノという少女は、二重の宿命に討たれたのだった。





【ルーテシア・アルピーノ@魔法少女リリカルなのはStrikerS 死亡確認】





 ぴ、ぴ、ぴ、ぴ。
 聖王のゆりかごの玉座の間に、電子音声が鳴り響く。
 コンソールを操る指先は、鋭く禍々しき黄金の爪。
 憑神鎌の籠手を身につけたキャロが、1人キーボードを叩いていた。
 ヴィヴィオの座る玉座には、紐の千切れたマッハキャリバーが置かれている。
 生前のルーテシアが何やら操作をしていたので、もしやと思い調べてみたが、やはり当たりだったようだ。
 本来スバル・ナカジマの首にぶら下がっているはずのデバイスには、
 ゆりかご起動とヴィヴィオの改造のためのプログラムデータが保存されていたのだ。
 この娘もさっさと殺してしまおうと思っていたが、思わぬ置き土産が手に入った。
 ならば、このまま死なせるのは惜しい。
 たとえ小型のレプリカといえど、聖王のゆりかごの力が手に入れば、ぐっと楽に殺しができるはずだ。
 ヴィヴィオの方は言うまでもない。
 エース・オブ・エース――高町なのはと互角に渡り合う戦闘力を我が物にできるのだ。これ以上美味い話はあるまい。
(最後の仕上げ――レリックもちゃんと手に入った)
 にやり、と口元に三日月を描き、虚ろな視線を下方にずらした。
 足元にごろりと置かれているのは、煌々と輝く血塗れの宝石。
 莫大な魔力量を内包した、深紅に煌くロストロギア――レリック。
 これはキャロの支給品でも、ましてやルーテシアの支給品ではない。
 否、ルーテシアの持っていたものという範疇ならば、ぎりぎり後者に近いだろうか。
 これは彼女の体内から、直接摘出したものだ。
 先ほど遭遇したルーテシアだが、そこにはキャロの認識と大きく食い違うところがあった。

459 ◆Vj6e1anjAc:2009/12/25(金) 10:27:18 ID:RLyMJxRw0
 額に刻まれた紋様が消えていなかったのだ。
 JS事件が終わった後の世界からやって来たキャロの認識では、既にそれは消えていたはずだった。
 しかし、その赤い模様が、まだルーテシアの額に残されている。
 首を落とした後でもしやと思い、身体をぐちゃぐちゃに抉ってみれば、案の定そこにはレリックがあった。
 再び埋め込まれたのか、あるいは過去の時代からやって来たのか。
 どういう理屈かは知らないが、ともかくもこうしてキャロは、血みどろの肉塊からお宝を発掘したのだ。
 今や生首と元の形すら判然としないミンチになったルーテシアに、内心で感謝する。
 こうなれば後はこっちのもの。
 ゆりかごのコンピューターにマッハキャリバーのデータを流し込み、レリックを用いて聖王ヴィヴィオを覚醒させる。
 次元航行艦の操舵技術を持っていない以上、すぐにはゆりかごを動かせないのが玉に瑕だが、
 それもクアットロ辺りを捜して脅せば解決するだろう。
「もうすぐだよ、エリオ君。もうすぐエリオ君に会える……」
 ひょい、と宝石を拾い上げ。
 聖王の玉座へと捧げながら。
 ぽつり、とキャロが呟いた。
「うふふ……」
 ぴ、と。
 それが最後のスイッチだった。
 プログラムの片割れが起動する。
 魔力の結晶が発光し、王者の肉体へと溶け込まんとする。
 データドレインの影響を受け、不能になっていないかと不安に思っていたが、どうやら杞憂に終わったようだ。
 リンカーコアと魔力回路を蝕んだそれも、ぎりぎりレリックには届かなかったらしい。
 ともあれ、これで全てが上手くいった。
 全てがキャロに味方していた。
 運が向いてきたらしい。何もかもが、彼女の思うままに運んでいる。
 最強の味方を手に入れたとあれば、もはやキャロ・ル・ルシエに敵はいない。
 たとえキングだろうがクアットロだろうが、あの金髪の男や鎧だろうが。
 聖王と憑神鎌――2つの力を手に入れたキャロに、もはや死角はありはしない。
「あはははははは」





 ――ずどん。





「は」
 その、はずだった。

460 ◆Vj6e1anjAc:2009/12/25(金) 10:27:52 ID:RLyMJxRw0


 あれ……
 一体、何が起こったんだろう……
 何だかよく分からないけど、胸がすごく痛い。
 すぅっと力が抜けていって、身体を起こすこともできない。
 おかしいな。
 一体、どうしちゃったのかな。
 早く立たなきゃいけないのに、身体がぴくりとも動かない。
 エリオ君を助けなきゃいけないのに、身体が起きたくないみたい。

 ――キャロ。

 エリオ、君……?
 よかった……また、会いに来てくれたんだね……
 待ってて、エリオ君。もう少しで、また一緒になれるから。
 このゆりかごでみんな殺せば、生き返らせてあげられるから。

 ――もうやめるんだ。こんなことをしちゃいけない。

 ……え……?
 何で……?
 どうして、急にそんなことを言うの?
 私のしたいようにすればいいって、エリオ君は言ってくれたじゃない。
 なのに、何で……そんなことを……?

 ――確かに、そう言ったかもしれない……でも、これは本当にキャロの望んでることなの?

 おかしなことを言うんだね、エリオ君。
 私はのぞんで殺し合いに乗ったんだよ?
 私はエリオ君のためなら、他の人を殺してもいいって、自分からそうおもったんだよ?

 ――なら、何故……君は今、泣いているの?

 これは……たぶん、胸が痛いから。
 私の目が涙でかすんでるのは、胸がきゅうに痛んだから……

 ――そうじゃない。君はルーを殺した時から、ずっと涙を流していた。
 こんなことをしたくなかった、殺したくなんてなかった……
 実際に人を殺しちゃった瞬間に、自分でも気付かないうちに、君はそう思って、泣いてたんだよ。

 ……?
 よく、分かんない。
 エリオ君のいってること、むずかしくて、よく分からないよ。

 ――僕も君の涙は見たくない。だから、もう休むんだ。もう、無理をしなくていいんだよ。

 ……まぁ、いいや。
 やっと、またあえたんだもんね。
 ずっと会いたかった、エリオ君に。
 なんだか、ねむくなっちゃった。
 エリオ君は、もういなくなったりしないよね?
 私をおいていっちゃったりしないよね?
 あんしんして、ねちゃってもいいんだよね?

 ――大丈夫。もう、大丈夫だから。もう僕は、どこにも行ったりしないから。

 よかった……やっと、ゆっくりやすめる……
 えへへ……あんしんしたら、よけいにねむくなっちゃった。
 ありがとう、エリオ君。
 いっしょにいるっていってくれて。
 わたしといっしょにいてくれて。

461 ◆Vj6e1anjAc:2009/12/25(金) 10:28:31 ID:RLyMJxRw0
 ――僕は、ここにいるから。





 だいすきだよ……エリオくん――





【キャロ・ル・ルシエ@魔法少女リリカルなのはStrikerS 死亡確認】







「やっ、た……」
 蚊の哭くような掠れ声で。
 全てを傍観していたフェイト・T・ハラオウンは、1人満足げに呟いていた。
 あのルーちゃんなる少女を目撃した瞬間から、何もかもが彼女の思うままに進んでいた。
 腕を切り落とされたこの身では、キャロとまともに戦えない。
 ならば彼女とぶつけ合わせて、生き残った方を殺せばいい。
 幸いあれから時間が経っただけあって、一発分の弾丸を撃つだけの魔力は回復していた。
 それを確実に命中させるために、この瞬間を待ち続けた。
 案外一方的な勝負になってしまった時には、さすがにもう駄目かとも思ったが、上手いこと警戒を解いてくれたことが幸いした。
 ああ、それでももう駄目なようだ。
 がちゃり、とオーバーフラッグを取り落とす。
 魔力はちゃんと回復したが、体力はこれっぽっちも残っていない。
 ちゃんと止血をしておけばよかったと、今頃になって気付く辺り、もう自分は終わりなのだろう。
 生き残るための戦いの果てに、無理をして命を落とすなど、本末転倒もいいところではないか。
 それでも、最後に残された力を振り絞り、這うようにして歩みを進める。
 ふらふらとよろめき、血の雫の道を作りながら。
 黒服のミンチを通り過ぎた辺りで、遂に両足が動かなくなった。
 どさり、と倒れたのろまな身体を、左腕だけで引きずった。
 胸を撃たれた死体の脇を、芋虫のようにして進んでいく。
「ん……」
 光り輝く宝石の向こうで、微かに声が漏れていた。
 震える瞼の向こうには、新緑の色と烈火の色。
 グリーンとレッドのオッドアイが、柔らかな金髪を揺らして開く。
「ひっ……」
 びくり、と身体を震わせる。
 まぁ、普通はそうなんだろうな。
 傍らには風穴の空いたキャロの死体、向こうにはぐちゃぐちゃの肉塊になったルーテシア。
 普通なら、誰もが嫌悪して当然の惨状。
 それでも平然としているのだから、いい加減自分の感覚も麻痺してきたと見て間違いない。
「……フェイト、ママ……?」
 そう呼ばれて、我に返った。
 自分よりも年下のこの少女は、ようやく自分の存在に気付いたらしい。
 言うことを聞かぬ首を強引に持ち上げ、顔と顔とを向き合わせる。

462 ◆Vj6e1anjAc:2009/12/25(金) 10:29:11 ID:RLyMJxRw0
「やっぱり……君が、ヴィヴィオなんだね……」
 彼女のことは聞いていた。
 このヴィヴィオという娘のことは、生前のキャロから聞かされていた。
 未来のなのはが養子として引き取り、彼女と自分をママと呼び慕う少女。
 過酷な運命を辿った先に、彼女と深い絆で結ばれた少女。
 それが、ヴィヴィオという娘だった。
「待って、て……今……外す、から……」
 手探りで玉座を弄り、拘束を解く。
 身体を固定していた手枷が、かしゃんと音を立てて解除される。
 これでヴィヴィオは自由だ。
 身を縛る枷もない。命を狙う敵もいない。
 心残りがあるとすれば、キャロが最後に施した処置だ。
 何をしたかは知らないが、あれはさすがに戻せない。もはや、時間が残されていない。
「フェイトママ……どうしたの……? どこか、痛いの……?」
「うん……多分、私は……もう……死んじゃう、から……」
 そうだ。
 ここまでに自分は血を流しすぎた。
 もはやこの命は風前の灯火。残り数分ともたず消えるだろう。
「そんな……やだ、やだよフェイトママ! せっかく……せっかく会えたのに……!」
 ああ、嬉しいな、と。
 不謹慎かもしれないが、そう思えた。
 こんなことになってなお、自分を求めてくれる人がいる。
 こんな空虚な自分のために、涙を流してくれる人がいる。
 こんな人殺しの命を、惜しんでくれる人がいるのだ。
「最後に、1つ……お願い、したい……ことが……あるんだ……」
 まだくたばるわけにはいかない。
 まだ意識を手放すには早い。
 最後の力を出しきった身体から、更に力捻り出す。
 魔力が生命力に変わるなら、それを使ったって構わない。
「私のっ、こと……嫌いに……ならないで、ほしいんだ……
 私は、なのはを助けたくて……人を、殺しちゃった……
 許されないって、分かってても……独りで……いるのが……耐えられ、なかった……」
 言えば嫌われるかもしれない。
 幻滅され、嫌悪されてしまうかもしれない。
 フェイトママを信じていたヴィヴィオを、裏切ることになるだろう。
「わがまま、だってことは……分かってる……
 でも……私の、こと……こんなに、悪い私でも……こんなに……弱い、私でも……嫌いに……ならないで……
 誰からも、愛されなくて……誰からも嫌われて、死ぬなんて……そんなの……寂しすぎるから……」
 それでも。
 だとしても。
 言わずに死ぬことはできなかった。
 こんな小さな子を騙して、聖人君子のふりをして死ぬなんてことは、もっと耐えられなかったから。
 ああ、分かっている。
 これも所詮は自分のためだ。
 最期まで自分可愛さに、懺悔することしかできなかったのだ。

463 ◆Vj6e1anjAc:2009/12/25(金) 10:29:49 ID:RLyMJxRw0
「嫌わないよ……フェイトママを嫌いになんて、なれないよ……! だから……だから、死なないでっ!」
 ああ、もうそれだけで十分だ。
 一体その一言で、どれだけ救われたことだろうか。
 これでもう安心して逝ける。
 死の恐怖とだって向き合うことができる。
 何者でもないあやふやな存在でなく、フェイト・T・ハラオウンとして死ぬことができる。
 世界でたった独りになったと思っていた。
 それでも、自分は独りじゃなかった。
 こんなに愛してくれる人に、自分は看取ってもらえるのだ。
 こんなに幸せな気持ちで、自分はなのは達の元へと旅立てるのだ。
「ありが、とう……」
 できるなら、もう泣かないでほしい。
 自分を愛してくれる人が悲しむ顔は見たくない。
 その涙を拭いたくて、重い左手を持ち上げる。
「最期に……会え、て……」
 本当に――よかった。





「フェイトママァァァァァァァ――――――ッ!!!」





【フェイト・T・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's 死亡確認】
【残り:30人】




.

464 ◆Vj6e1anjAc:2009/12/25(金) 10:30:32 ID:RLyMJxRw0


 意識を取り戻した瞬間、最初に知覚したものは、見覚えのある天井だった。
 続いて両手が動かないことに気付き、目の前にレリックがあることに気付く。
 何故、私はまたここにいるのだろう。
 何故、あの聖王のゆりかごにいるのだろう。
 昔の夢でも見ているのだろうか。
 愛するママと、本当の家族になった瞬間の夢を、今まさに見ているのだろうか。
 しかしそんな考えは、充満した鉄の臭いに断ち切られた。
 機動六課のキャロ・ル・ルシエが、背中に穴を空けて死んでいる。
 自分をさらった少女の身体が、ぐちゃぐちゃのひき肉みたいになっている。
 そして――死んでしまったはずのフェイトママが、腕から血を流して苦しんでいた。
 目の前にいたフェイトママは、何故か小さな子供のようになっていた。
 どうしてそんなことになってしまったのか。確かにそれは気になった。
 だが、重要なのはそこではなく、彼女の命が消えようとしていること。
 そして数分と経たぬうちに、フェイトママは事切れた。
 この目の涙を拭うこともできず、命を落としてしまったのだ。
 もう、何を叫んだかも分からない。
 ひたすらにフェイトママの名を叫んでいただけなのかもしれない。
 ただひたすらに悲しくて、ただひたすらに苦しかった。
 やがて胸に沸き上がるのは、かつて経験した激情の奔流。
 変わっていく。
 身体と心が、変わっていく。
 抑えきれぬ感情と共に、身体を駆け巡った凄まじいエネルギー。
 それがいけないことだとは分かっていた。
 それを取り込んでしまった結果、なのはママを傷つけたことも覚えていた。
 この力は殺戮を呼ぶ。
 かつて古代ベルカの地を、究極の闇の淵へと落とした、凄まじき戦士の力が蘇る。
 また、大勢の人々を傷つけてしまう。
 それでも。
 そうだと分かっていても。
 もう、拒むことはできなかった。
 拒む理由が見つからなかった。
 今度は自ら望んで、なのはママを裏切ってしまった。





 そうして私は――この怒りと憎しみを、受け入れた。







 コンシデレーション・コンソール。
 特定の条件下を満たした対象の自我を奪い、怒りや悲しみの感情を増幅。
 情動のバランスを欠いた人造魔導師を暴走させ、自己の生存を度外視した破壊活動を強要するための技術である。
 かつてルーテシアを狂わせ、意のままに操った悪魔の技術は、今まさに古代の聖王へと向けられていた。

465 ◆Vj6e1anjAc:2009/12/25(金) 10:31:25 ID:RLyMJxRw0
 幼く小さな娘の姿は、もはやどこにも残されていない。
 巨大戦艦の玉座に立つのは、美貌と豊満な肢体を持ち合わせた1人の女性。
 金の長髪をサイドポニーにし、しなやかなスタイルを黒の騎士甲冑に包み。
 その双眸に宿すのは、緑と赤の危険な光。
 聖王ヴィヴィオ、遂にここに覚醒す。
 世界に究極の闇すらもたらす、凄まじき戦士の再誕だ。
「………」
 金のポニーテールを揺らし、恐怖の聖王が歩みを進める。
 堂々とした立ち振舞いには、あどけない童女の面影はない。
 存在そのものがプレッシャーの塊。下手に触れようものなら、即座に圧殺されんばかりの圧倒的存在感。
 ぐい、と。
 何かに導かれるようにして。
 さぞ大事そうにキャロが抱いていた球体を、強引にその手から引ったくった。
「許さない……」
 ぽつり、と呟く。
 かっ、と発光。
 稲妻と闇色に染まる憑神鎌(スケィス)が、一瞬にして臨戦態勢へ移行。
 心に虚がいるのなら、とっくに条件は満たしている。
 心の力がいるのなら、この憤怒と憎悪を刃としよう。
「なのはママとフェイトママを傷つける人は……もう絶対に許さない!」
 復讐だ。
 この身を突き動かすのはその一念だ。
 もはや許しておくわけにはいかない。
 自分の大切なものを奪うというのなら、ぶち殺してでも止めてみせる。
 誰も手出しができないように、1人残らずぶち殺してやる。
 かつてのゆりかご攻防戦の折、クアットロに洗脳されたヴィヴィオは、一時的にそれまでの記憶を喪失していた。
 その方がまだよかったのかもしれない。
 殺し合いという状況が飲み込めないままに、大人しくしていた方がよかったのかもしれない。
 されど、今は違う。
 それでは面白くないと踏んだ主催者側が、記憶喪失の措置を無効化する仕掛けを組んだのだろうか。
 今のヴィヴィオには、確固たる戦う理由がある。
 記憶に残る愛する母を、血に染まってでも救う覚悟が。
 沸き上がる怒りと憎しみに従い、母の敵を皆殺しにする意志が。
「みんな、みんな……殺してやるッ!!」
 かつり、かつりと歩き出して、聖王は玉座の間を後にした。
 先ほどゆりかごを起動させようとはしたが、その時謎のエラーが発生し、起動シークエンスが中断された。
 死んだ人間の数が足りないのか、はたまた特定の時間を過ぎる必要があるのか。
 いずれにせよ、まだ時期ではないということなのだろう。
 であれば、動かぬ居城に用はない。
 自ら戦場へとうって出て、直接標的を抹殺する。
 古代の聖王と、古代の刃鎌。
 最強にして禁断の組み合わせが、今まさに野へと解き放たれた。

466 ◆Vj6e1anjAc:2009/12/25(金) 10:31:59 ID:RLyMJxRw0
【1日目・夕方】
【I-5/聖王のゆりかご・玉座の間】
【ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康、聖王モード、洗脳下による激しい怒り
【装備】レリック(ルーテシアの体内にあったもの・シリアルナンバー不明・ヴィヴィオと融合している)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
    憑神鎌(スケィス)@.hack//Lightning、  
【道具】支給品一式、フェルの衣装、クラールヴィント@魔法少女リリカルなのはStrikerS、レークイヴェムゼンゼ@なのは×終わクロ、
    ヴィヴィオのぬいぐるみ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
 基本:ママの敵を皆殺しにする
 1.なのはママとフェイトママを殺した人は優先的に殺す
 2.頃合を見て、再びゆりかごを動かすために戻ってくる
【備考】
※浅倉は襲い掛かって来た矢車(名前は知らない)から自分を救ってくれたヒーローだと思っています。
※浅倉をまだ信頼しており、殴りかかったのは何か理由があるのだと思っています。
※矢車とエネル(名前は知らない)を危険視しています。キングは天道を助けてくれるいい人だと思っています。
※クラールヴィントは浅倉を警戒しています。
※ヴィヴィオの身体に適合しないレリックと融合しました。どのような弊害が生じるかは、後続の書き手さんにお任せします。

467 ◆Vj6e1anjAc:2009/12/25(金) 10:32:35 ID:RLyMJxRw0


 最初に入ってきたルーテシアは、キャロに首を落とされ死んだ。
 続いて入ってきたキャロは、フェイトに背後から撃たれて死んだ。
 続いて入ってきたフェイトは、斬られた傷からの出血で死んだ。
 最後まで残っていたヴィヴィオは、戦うために自ら出ていった。
《気をつけてください、相棒……》
 そしてそれら全ての経緯を、横から俯瞰する者がいた。
 正確にはそれは人ではなく、インテリジェントデバイスのAIなのだが。
 スバル・ナカジマが走具――マッハキャリバーは、遥か彼方の相棒を想う。
《今の彼女と……ヴィヴィオと戦ってはいけない》
 それは警告。
 凄まじき戦士と出会ってはいけない。
 聖王ヴィヴィオと戦ってはならない。
 全てを見ていたマッハキャリバーだからこそ、その理論的危険性を理解できる。
 高町なのはと互角の実力者の手に、魔導師殺しのデータドレインが渡ったのだ。
 たとえ一度の戦闘において、一撃ずつしか撃てずとも、聖王の圧倒的戦闘スキルをもってすれば、命中させることなど容易いこと。
 そして魔法を封じられれば、勝てる可能性は微塵も残らない。
 否、生き延びる保障すらありはしない。
《我々では――彼女には、勝てない》


【全体の備考】
※聖王のゆりかごの起動には、特定の条件を満たす必要があります。少なくとも、現段階では起動しません。
※聖王のゆりかご・玉座の間に、以下のものが散らばっています。
 フェイト・T・ハラオウン(A's)の死体、キャロ・ル・ルシエの死体、ルーテシア・アルピーノの死体、
 首輪(ルーテシア)、オーバーフラッグ(仕込み刀なし・カートリッジ残量0)@魔法妖怪リリカル殺生丸、
 支給品一式、医療品(消毒液、包帯など)、パピヨンスーツ@なのは×錬金、憑神鎌(スケィス)@.hack//Lightning、
 マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ウィルナイフ@フェレットゾンダー出現!、
 キャロのデイパック(支給品一式×2、かいふくのマテリア@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、
 葉巻のケース@NANOSING、オーバーフラッグの仕込み刀@魔法妖怪リリカル殺生丸)、
 ルーテシアのデイパック(支給品一式、召喚マテリア(イフリート)@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、
 エボニー(9/10)@Devil never strikers、エボニー&アイズリー用の予備マガジン×1、
 レギオンのアサルトライフル(100/100)@アンリミテッド・エンドライン、
 ラウズカード(クラブのK)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、支給品一式(名簿の裏に記述あり、内容は情報交換のメモと同じ)、
 SIG P220(8/9)@リリカル・パニック、情報交換のまとめメモ(内容は[[守りたいもの]]参照)、
 支給品一式、フリーズベント@仮面ライダーリリカル龍騎、光の護封剣@リリカル遊戯王GX、レイとフェイト(A’s)のデイパック)

468 ◆Vj6e1anjAc:2009/12/25(金) 10:33:20 ID:RLyMJxRw0


 それは小さな願いでした。

 何事もない穏やかな日々、大好きなママと過ごす日々……何よりも愛しかった日々に、暗く、静かに落ちた影……

 私の力で、誰かを救うことができるなら、ママの助けになることができるなら……どんなにつらくても、頑張ろうと思えました。





 だけど――もう、いいんです。





 願いなんて……もう、どこにもありません――

469 ◆Vj6e1anjAc:2009/12/25(金) 10:33:56 ID:RLyMJxRw0
投下終了。
皆様、よいお年を!

470リリカル名無し:2009/12/25(金) 11:54:10 ID:3ODJRloo0
投下乙です。メリークリスマス、クリスマスに新戦士登場おめでとうございます。
で、サブタイトルに反して内容は思いっきりハード。

まさかのマーダー全滅(いや、ルーテシアかキャロ、そしてフェイトの内1〜2人ぐらいの退場は予想していたけど。)。まぁ、ルーテシアもやりたい放題やったし、キャロもフェイトもやりきっただろう。
が、フェイト死亡を引き金に最強にして最悪マーダーヴィヴィオアルティメットフォーム誕生(クウガかよ!?)
今のヴィヴィオを止められるのは……セフィロスだけか(え!?)
まぁ、真面目な話……今のヴィヴィオとセフィロスがガチで戦ったらどっちが強いのかは本当に興味深い……。
幸い大半の支給品はゆりかごに放置プレイだからそれが救いか……マッハキャリバーの声はスバル&こなたに届くのか……

どうでも良いがフェイトもいきなりヴィヴィオからママと言われて疑問に感じなかったんだろうか……まぁいいか些細な事だし。
……それにしてもフェイトとキャロはルーテシアが到着するまで(3〜5時間ぐらい)延々とゆりかご内で追いかけっこしていたというのか……

というわけで良いお年を(まだ1週間ぐらいあるけど。)

471リリカル名無し:2009/12/25(金) 18:33:20 ID:85Ecyvv.O
ここにきて変身…
まさかViVidを意識してるのか!?

472リリカル名無し:2009/12/26(土) 15:09:59 ID:var4Pxrw0
投下乙です
ヴィ ヴィ オ 覚 醒 !?
そろそろマーダーも脱落する頃かなあと思っていたら一気に3人も脱落している!?
そしてそれ以上にヤバい聖王降臨、幸いなのはなのはとフェイトの敵優先ということぐらいか…
それにしても3人の死に様が実によかった
でもキャロはもう堕ちるところまで堕ちていたんだなあ、レリック取り出すためにルーテシアの死体を斬り裂くとか本編のキャロからは想像できないわ
これでレリックなかったら「中に何もありませんよ」みたいなセリフが聞けたんだろうか

473リリカル名無し:2009/12/26(土) 21:15:38 ID:TbLUtGIY0
投下乙です。
一気に3人死亡か……
母親を思い死んでいくルーテシアに、エリオを思って死んでいくキャロ。
最後はヴィヴィオのお陰で自分を見失わずに逝けたフェイトと、どれも心に来る退場でした。
特にキャロのラストからフェイトのラストにかけては涙が出てきました。
そして今回の唯一の生き残りであるヴィヴィオがついにアルティメット化!
果たしてヴィヴィオはどんな戦乱を巻き起こしてくれるのかw

474 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/30(水) 01:12:23 ID:AGNIFyj60
ゼスト・グランガイツ、高町なのは(StS)、シェルビー・M・ペンウッド、C.C.、天道総司、キングで投下します

475 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/30(水) 01:13:09 ID:AGNIFyj60

『現在あなたがいるエリアは禁止エリアに指定されています。30秒以内に退去してください』

それは聞き覚えのない若い女性の声だった。
ふと声の主が誰なのかという疑問を抱いた。
だがそれもすぐに規則正しい機械音にかき消された。

――……ピ、ピ、ピ。

それはまるで死刑台へのカウントダウン。

476 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/30(水) 01:13:59 ID:AGNIFyj60


     ▼     ▼     ▼


「これは、ひどいな」

万丈目と別れたゼストは数時間ぶりに商店街に戻っていた。
そして目の前の光景には絶句せざるを得なかった。
双龍の対決を遠目に見ていたからある程度の覚悟はしていたが、これは想像以上だった。
もうそこに商店街の面影はほとんど見られなかった。
小さなスーパーも、華やかなティックも、C.C.が待っているはずの家電量販店も、どこにもなかった。
辛うじて被害を免れた両端部分を除いて商店街のありとあらゆる店舗は全て瓦礫と化していた。
火が回ったのか所々焦げ跡や煙が目に映ったが、幸い小規模なものに収まったようで火事には至っていない。
それでも商店街が壊滅状態である事実に変わりはない。
だが放送で名前が呼ばれなかった以上C.C.があの災厄から逃れた事もまた事実だ。
問題は今どこにいるかだ。
どこかにいるかもしれないと期待しつつゼストが跡地での捜索に取りかかろうとした時、視界に白い物が横切った。
よく見れば僅かに残っている壁の一部に貼られたメモのようだ。
しかも何か文字が書かれている。

「ん、これは?」

それは書き置きだった。
しかもゼストの行動を根本から揺るがすような。

477 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/30(水) 01:15:26 ID:AGNIFyj60


     ▼     ▼     ▼


「…………」
「…………」

そこそこの規模のスーパーの周囲を歩いている一組の男女。
だがその男女の外見は異色だった。
一人は茶髪で若干童顔、赤いジャケットにネックレスや指輪にピアスなどの大量のアクセサリで自身を派手に着飾った青年。
一人は緑の髪に金色の瞳で額には奇妙な文様、白い拘束服を身に纏った不思議な雰囲気を持つ少女。
青年の名はキング、万物の始祖たる不死の生物アンデッドだ。
少女の名はC.C.、コードの力を宿す不老不死の魔女だ。
そんな異色の組み合わせはかなり目を引くものになっていた。
しかし当事者であるキングとC.C.は常日頃から唯我独尊でいるせいか自身の見た目については一切気にしていなかった。

(あれは結局無駄足だったが、さてこれからどうするべきか)

これからの行動を模索しつつC.C.はここまでの事を思い返していた。
あれは二回目の放送が行われる少し前。
ここより北に位置する商店街の跡地で南の方で起こった爆発を察知した事が発端だった。
高町なのは、シェルビー・M・ペンウッド、C.C.、天道総司、キング。
一癖も二癖もある5人が一堂に会したのは幾重にも重なった運命の悪戯か、はたまた龍による導きか。
お互い簡単に自己紹介を終えたところで南の方から聞こえてきた爆発音。
当然無視する事は出来ず、当初はゼストを待つ組と爆発地点に向かう組で別れるつもりだった。
だが結果的にそうする事はなかった。
なぜなら理由はバラバラだが全員が爆発地点に向かうと主張したからだ。

なのは曰く、唯一の回復手段を持つ自分が適している。
天道曰く、おばあちゃんが言ってい(ry
ペンウッド曰く、ここまで大して役に立っていない自分こそ行くべきだ。
キング曰く、怪我人やおじさんより僕の方がいいよ(本心はなんか面白そうだから)。
C.C.曰く、貴重な情報源である高町なのはと離れる事は避けたいから同行する。
それに加えてお互い怪我や疲労を考慮したりして一向に決まる気配がなかった。

結局話し合っている時間が惜しいと云う結論に至ったので5人全員で黒の騎士団専用車両の場所に向かう事になった。
ゼストに関しては商店街から黒の騎士団専用車両に着くまでに合流すればいいとなった。
だが予想と反してゼストに会えないまま黒の騎士団専用車両に着いてしまった。
そこでプレシアによる二回目の放送が行われた。
放送による感情は各々いろいろあったが、ひとまず爆発地点に向かう事で合意した。
ゼストにはあらかじめ商店街跡地に書き置きを残してきたので大丈夫だと判断した。
それから数十分後、件の爆破地点に到着した。

爆破地点であるE-2とE-3の境界線付近を通る大通り上の状況は酷いものだった。
周囲を見渡してみれば何か爆発した跡がアスファルトの上に鮮明に残っていた。
ひび割れたアスファルト、一ヶ所を中心に描かれる火薬による黒い花火、そして一帯に散らばる機械の残骸。
それらはそこで何かが爆発した事を雄弁に示していた。

到着するなり早速誰かいないか捜索したが、途中ペンウッドが焦って何度か転んだ以外は特に何もなく、結局収穫はなし。
そこで事前に決めていた通りスーパーでひとまず休息を兼ねた情報交換をする流れになった。
だがまずはスーパーの安全を確認した方がいいという事で中と外に別れて調べる事になった。
そこで天道と以前訪れた事のあるなのはとペンウッドが中を、C.C.とキングが外を、それぞれ調べるために一度別れた。
何かあればトランシーバーで連絡を取る手筈になっているので各個撃破される心配もない。

478 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/30(水) 01:16:58 ID:AGNIFyj60

(正直なところゼストにピザの借りを返したら、さっさとルルーシュを探しに行きたいが……全くどこで何をしているのやら……)

二回目の放送を乗り越えたと言っても油断はできない。
ギアスと頭脳を除けばルルーシュはただの童貞のもやしっ子でしかない。
手足となる参加者を見つけていればいいが、そうでなければいつ殺されてもおかしくない。
だから出来る限り早くルルーシュと合流したいが、あまり勝手な行動は天道達が許さないだろう。
デイパックの中でクシャクシャになっていたカードデッキの説明書きを渡したが、その程度でこちらの要望が通るとは思えなかった。

「……このまま離れるのもいいかもしれないな」

そんな事は出来ないと分かりつつも呟かずにはいられなかった。

「ん、何か言った?」
「なんでもない。気にするな」
「あ、そう。そういやさ、一つ気になっている事があるんだけど……」

さもキングは何気なく聞いた風を装っているが、どう見てもそんな風には見えない。
いつ切り出したら面白そうかタイミングを見計らっていた気がする。
それは単なる長年の勘でしかないが、さりとて無視すれば後々面倒になりそうなのでとりあえず聞くだけ聞いてみる事にした。

「ミラーモンスターに襲われたにしてはさ、君の身体、綺麗すぎない? まるでミラーモンスターが君を避けたみたい」

キングの言いたい事は分かった。
確かにミラーモンスターに襲われたにしてはC.C.の身体は傷一つない状態だ。
だがそれはなのはが身を挺して必死に守ってくれた事が大きい。
とりあえずその事を言おうとしたが、キングの言葉はまだ続きがあった。

「それに僕見たんだよね。君の身体に付いた傷が何もしていないのに勝手に治っていくところ。これってどういう事なんだい?」

その時のキングの顔は吐き気を催すほど憎らしいものだった。
キングは全部分かった上でC.C.に尋ねている。
おそらくその答えも薄々感づいているようだが、敢えて知らない風を装ってC.C.に答えを言わせたがっている。
性根が腐っているとはこういう奴にこそ相応しい言葉だとC.C.は心底思った。

「私は不老不死の魔女だからな」

結局誤魔化すのも面倒なので本当の事を言った。
だがよく考えてみればキングはアンデッドという不死の生物だとか。
つまりはC.C.とキングは似た者同士とも言える。

「へぇ、不老不死か。なに、つまりそんな顔しておいて実際はおばあちゃん?」
「ふん、それならお前はおじいちゃんだな」

C.C.にしてみればこれはいつもの皮肉でしかなかった。
このような異常な状況下ではついつい日頃の行動が懐かしくなる。
これは反射に近い行動だった。

だがキングにしてみればそうではない。
自ら最強であるキングを名乗るほど自信に満ち溢れている王にとってその言葉は決して皮肉で済むようなものではなかった。
半歩先を歩くC.C.はキングの表情の変化に気付く事はなかった。

479 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/30(水) 01:18:11 ID:AGNIFyj60


     ▼     ▼     ▼


「おい、高町。俺様とペンウッドはあっちを調べておくから、奥の事務室は頼んだぞ」

そして一方スーパーの中では3人による調査が進められていた。
ここまで3人一緒に内部を調べていたが、ここで天道は二手に分かれる事を提案してきた。
むしろ提案と言うより命令に近い気がしない事もないが。

「え、私だけですか?」

確かに二手に分かれて探った方が効率は上がるだろう。
この分け方にも別に問題はない。
だがなぜこのタイミングで天道がそんな事を言ったのか。
その理由は全く分からなかった。

「おばあちゃんが言っていた……絆とは決して断ち切る事の出来ない深いつながり。例え離れていても心と心が繋がっている……ってな」
「て、天道さん……唐突になに言って――」
「先はまだまだ長いんだ、あまり無理はするな」

言いたい事を言い終わると天道はペンウッドを連れて別の部屋に移動していった。
後に残されたのはなのは一人。
だがなのはは天道が何を言いたかったのか分かっていた。
だから今は黙ってその言葉に甘えさせてもらう事にした。
天道の言葉を借りるなら先はまだまだ長いのだ。

「今は私一人だけ」

一番奥の事務室には当然だが誰もいなかった。
念のためケリュケイオンで調べてみても気になる点はなかった。
これでなのはの担当は終わり。
あとは皆と合流するだけだ。
しかし合流まではまだ少しばかり時間がある。

「ちょっとだけ、ちょっとだけなら……いいかな……」

いつのまにかなのはは一人静かに泣いていた。

「弁慶さん……ザフィーラ……ギンガ……はやてちゃん…………フェイトちゃん……ッ!!!」

放送が終わってから今までなのはは涙一つ見せなかった。
それはキングの動向を警戒したりペンウッドの様子が気掛かりだったり理由はいろいろあった。
だが一番の理由は皆に心配を掛けたくなかったという事になる。
いつ狙われるかもわからないこの場所で不用意に隙を見せてはいけないという責任感がなのはを気丈にさせた。
だが時空管理局のエースと言っても突然の親友の死は大きな衝撃だ。
まるで心にぽっかり空洞ができたみたいだった。

「――――――――――」

その空洞を埋めるかのように泣いた。
この涙は悲しみの涙に非ず、もうこれ以上犠牲は出さないという決意の涙。
だが今だけは『時空管理局のエース高町なのは』ではなく、ただの『高町なのは』でいたかった。
そして泣いた後の瞳には――強い意志が宿っていた。

480 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/30(水) 01:19:21 ID:AGNIFyj60


     ▼     ▼     ▼


情報交換。
それは複数の人物が自分の知っている情報を各々提示する事でより多くの情報を得るイベントを指す。
単体では意味を為さない情報でも2つ3つと合わさる事で新たに判明する事もある。
情報交換とはそういう相乗的な面も持ち合わせている。
今回スーパーに集った5人は周囲及び内部の安全を確認すると、改めて情報交換を行う事にした。
放送前に商店街跡地でも行っていたが、あの時は簡単な自己紹介だけだったので今回はもっと詳しい人物相関や今までの出来事などにも触れていくつもりだ。
それに際して事前にいくつか決まりを設けた。

・発言者の話が終わるまで他の者は口出ししない(話の腰が折られる事を回避するため)。
・もし発言者の情報に意見があるなら話し終えてから設ける質疑応答で対応する。
・参加者は自分と同じ世界の人物つまり自分が知っている人物を想定して話す(平行世界は後から考えた方が賢明だと判断したため)。
・他の参加者から聞いた情報の場合、この場にその情報を伝えた者がいるならそれは省く(情報提供者からの方が詳しく聞けるため)。
・とりあえず商店街での情報交換以前の段階の情報を前提で話す(商店街での情報交換が不完全のためこの場できちんとした認識を構築するため)。

この5項目を急場の骨子として情報交換は始まった。

一人目の発言者は高町なのはで発言内容の概略は以下の通り。

・スタート地点はF-2の翠屋。支給品が杖(非デバイス)とデルダギア(説明書は途中まで読んだ)であると確認した後、移動開始。
・銃声と叫び声を聞きつけたので現場に駆けつけたところ紫髪の女子高校生に出会う。
・一悶着の後に彼女は紫の大蛇となのはから奪ったデルタギアを使って逃亡。(金居とペンウッドにはその際に出会う)。
・情報交換をした後に施設を回りつつ工場を目指す途中でスーパーに到着。内部を探索したところで弁慶に出会う。
・学校上空にドラグレッダーを発見。すぐさま現場に急行したが誰もいなかった(回収物:龍騎のカードデッキ、デイパック×3、赤い恐竜と黄色い恐竜の死体)。
・第一回放送後、二手に別れる事にした(なのはとペンウッドはこのまま施設巡り、金居と弁慶はまっすぐ工場に向かう)。
・商店街に到着。そこでC.C.と出会う。
・商店街を探索した直後にミラーモンスターに襲われてフリードで応戦、今に至る。

その後の質疑応答と参加者観。

・プレシア→PT事件の概要を説明(ただしフェイトの出自に関してはぼかした)。
・紫髪の女子高校生→誰も知らない。
・紫の大蛇→元々は浅倉が持っていたカードデッキが使役するミラーモンスター(by天道)。
・参加者が別世界から集められた(知り合いと思っていてもそうではない可能性がある)→全員概ね納得。
・金居→バトルファイトの勝者になりたがっているから皆と協力して元の世界に帰還できる方が得と判断しているなら一応信用できる(byキング)。
・赤い恐竜→ギルモン。死因の傷は八神はやてに因るもの(byキング)。
・黄色い恐竜→アグモン(第一回放送で呼ばれた死者のうち5人が知らない名前はアグモン/神崎優衣/殺生丸/ミリオンズ・ナイブズの4人で、同じく死者として呼ばれたギルモンと似た体型な事から黄色い恐竜=アグモン)。
・『銀色の鬼は危険人物でペンウッドとグルかもしれないby金居』→事実無根。悲しむ素振りを見せなかったのは行動で報いたいと思ったから(byペンウッド)。
・情報処理室→他の施設にもパソコンがある可能性は大きい(by天道)。
・ギルモンの首輪→自分達で仮にも整えた死体を傷つける事はしたくなかった。

・友好:(もう一人のなのは)、フェイト、(もう一人のフェイト)、はやて、(もう一人のはやて)、ユーノ、(クロノ)、(シグナム)、ヴィータ、シャマル、(ザフィーラ)、スバル、(ティアナ)、(エリオ)、キャロ、(ギンガ)、ヴィヴィオ、ペンウッド、天道≪金居情報≫、(弁慶)
・要注意:クアットロ、銀色の鬼?、金居
・それ以外:チンク・(ディエチ)・ルーテシア≪どういう行動を取るか判断しきれない≫、ゼスト≪元の世界では既に死亡している≫、アリサ、プレシア、紫髪の女子高校生≪保護対象≫、ギルモン・アグモン≪死体で発見≫

481 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/30(水) 01:20:03 ID:AGNIFyj60

二人目はシェルビー・M・ペンウッドで発言内容の概略は以下の通り。

・スタート地点は不明。遠くないところから聞こえてきた銃声と叫び声の元へ向かう(金居とはその途中で出会う)。
・ミラーモンスター出現の気配を察知すると大蛇がなのはに襲いかかる場面に遭遇。金居がなのはを救う。
・情報交換をした後に施設を回りつつ工場を目指す途中でスーパーに到着。内部を探索したところで弁慶に出会う。
・学校上空にドラグレッダーを発見。現場に急行したが誰もいなかった(回収物:龍騎のカードデッキ、デイパック×3、ギルモンとアグモンの死体)。
・第一回放送後、二手に別れる事にした(なのはとペンウッドはこのまま施設巡り、金居と弁慶はまっすぐ工場に向かう)。
・商店街に到着。そこでC.C.と出会う。
・商店街を探索した直後にミラーモンスターに襲われて応戦、今に至る。

その後の質疑応答と参加者観。

・ミラーモンスター出現を察知する→タイガのカードデッキの複製
・『銀色の鬼がギルモンとアグモンを殺したかもしれないby金居』→少なくともギルモンは違う(byキング)。

・友好:(インテグラル)、(ティアナ)、スバル、ヴィータ、天道≪金居情報≫、(弁慶)
・敵対:アーカード、(アンデルセン)
・要注意:銀色の鬼?
・それ以外:紫髪の女子高校生≪保護対象≫、ギルモン・アグモン≪死体で発見≫

三人目の発言者は天道総司で発言内容の概略は以下の通り。

・スタート地点はおそらくA-6付近。どう行動するべきか考えている最中に黒い鎧の仮面戦士に不意打ちを食らって川に転落。
・どうにか川から上がって温泉に辿り着いたところで意識を失う。
・目が覚めるとオレンジの少女(なぜか父の仇ゼロと誤解される)に襲われるが、浅倉とオッドアイの女の子が現れたのでとりあえず逃げる(少女とは途中で別れる)。
・駐車場に止めてあったカブトエクステンダーで南下したところで桃色髪の少女に出会う。直後に再び意識を失う(第一回放送を聴き逃す)。
・目が覚めるとなぜか温泉に戻っていてキングがいた。
・エネルの仕業と思われる落雷を確認。エネルの元に向かうべく温泉を出発。
・その途中フリードとドラグレッダーの戦いを発見。商店街に向かってモンスターとの戦闘。そして今に至る。

その後の質疑応答と参加者観。

・黒い鎧の戦士→相川始(byキング)。
・オレンジの髪の少女とゼロを憎む理由→シャーリー・フェネット。ゼロの行動で父を失ったから(byC.C.)。
・オッドアイの女の子→ヴィヴィオ(byなのは)。
・桃色髪の少女→キャロ・ル・ルシエ(byなのは)。

・友好:なのは、(もう一人のなのは)、フェイト、(もう一人のフェイト)、はやて、(もう一人のはやて)、(クロノ)、キャロ
・敵対:浅倉、相川始
・要注意:(矢車)
・それ以外:アリサ、シャーリー、ヴィヴィオ

482 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/30(水) 01:20:38 ID:AGNIFyj60

四人目はキングで発言内容の概略は以下の通り。

・スタート地点は不明。開始直後にエネルに襲われるが何とか逃げ切る(暗かったので姿は見ていない)。
・E-5の地上本部付近で八神はやてがギルモンを殺害する場面に遭遇。その現場を携帯のカメラで撮影する。
・その際見つかったため余計な揉め事を避けるために何とか言い包めて同行する事になる。
・地上本部捜索中に最上階で発見した転移装置が原因ではやてと離ればなれになり、Dライン上の川付近に転送される。
・第一回放送後、川に沿って移動中に気絶した天道を発見する。
・治療のために温泉に向かっている途中で鎌とマントを持った魔法を使う危険人物に襲われかけるが、バイクで振り切る。
・その後に浅倉・ヴィヴィオ・シャーリー一行と遭遇。行き先が違うためすぐに別れた。
・温泉にて天道の手当てをした後、温泉でくつろぐ。
・天道が目を覚ます。直後にエネルの仕業と思われる落雷を確認。エネルを放っておけないという天道の意見で温泉を出発。
・その途中フリードとドラグレッダーの戦いを発見。商店街に向かってモンスターとの戦闘。そして今に至る。

その後の質疑応答と参加者観。

・エネル→電撃を操る危険人物。キング以外誰も知らない。
・はやて→何か事情があったのか本人に会った時にきちんとお話したい(byなのは)。
・転移装置→『魔力を込めれば対象者の望んだ場所にワープできます』という看板あり。転移先に望んだ場所は守護騎士の元。
・キャロの行方→天道を見つけた時は近くに誰もいなかった。
・鎌とマントを持った魔法を使う危険人物→勘違いだと思いたいがフェイトの可能性がある(byなのは&天道)。
・浅倉・ヴィヴィオ・シャーリー→ぱっと見た感じヴィヴィオは浅倉を慕っている様子。シャーリー共々酷い目に遭っているようには見えなかった。

・友好:金居
・敵対:フェイト?、エネル、はやて
・要注意:浅倉
・それ以外:ギルモン≪死体≫、ヴィヴィオ・シャーリー≪浅倉と同行≫

最後はC.C.で発言内容の概略は以下の通り。

・スタート地点はA-4の神社。ゼストと出会う。
・それぞれの探し人に会うために都市部に向かうが、市街地で強大な魔力行使による光を確認したので危険と判断。
・第一回放送後、腹ごしらえのために商店街に向かう。
・商店街の安全を確認するとゼストは一足早く役に立ちそうな黒の騎士団専用車両を取りに向かう。
・なのはとペンウッドに出会う。再び商店街を探索した直後にミラーモンスターに襲われて応戦、今に至る。

その後の質疑応答と参加者観。

・ゼスト→高町なのはが復讐鬼と化した世界から来た。
・市街地での強大な魔力行使による光→直接目にしていないが確かに魔力は感知した。場所が特定できなかったので様子見に徹した(byなのは)。
・黒の騎士団専用車両→ゼロをリーダーとする集団である黒の騎士団が所有する大型トレーラー。内部に色々と役立つ物(首輪の解析など)がある。

・友好:ルルーシュ、(カレン)、シャーリー、スバル、ゼスト、ルーテシア≪ゼスト情報≫
・敵対:なのは
・それ以外:(もう一人のなのは)・フェイト・(もう一人のフェイト)・はやて・(もう一人のはやて)・ユーノ・(クロノ)・(シグナム)・ヴィータ・シャマル・(ザフィーラ)・(ティアナ)・(エリオ)・キャロ・(ギンガ)・クアットロ・チンク・(ディエチ)≪ゼスト情報≫

そして5人の意見を総合してできたものが以下の通り。

友好的:なのは、(もう一人のなのは)、フェイト、(もう一人のフェイト)、(もう一人のはやて)、ユーノ、(クロノ)、(シグナム)、ヴィータ、シャマル、(ザフィーラ)、スバル、(ティアナ)、(エリオ)、キャロ、(ギンガ)、ヴィヴィオ、ペンウッド、天道、(弁慶)、ゼスト、(インテグラル)、C.C.、キング、ルルーシュ、(カレン)、シャーリー
敵対的:アーカード、(アンデルセン)、浅倉、相川始、エネル
要注意:クアットロ、はやて、銀色の鬼?、金居、(矢車)
それ以外:チンク・(ディエチ)・ルーテシア、紫髪の女子高校生、ギルモン・アグモン

483 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/30(水) 01:22:13 ID:AGNIFyj60


     ▼     ▼     ▼


次いで話は支給品に移った。

なのはの所持品:デイパックと基本支給品一式×1、グロック19、ケリュケイオン、フリードリヒ、ヘアバンド。

「ケリュケイオンとフリードリヒ……それとヘアバンドは私がこのまま持っていますね」
「ああ、その方がいいだろう。なにせお前しかそれを扱えないからな」

ブーストデバイスであるケリュケイオンと白銀の飛竜フリードリヒ。
その力を最も引き出す竜魂召喚を扱えるのは5人の中ではエース級の魔導師である高町なのはのみ。
だからこの天道の返事は当然とも言える答えだった。

「それにしてもなんだいヘアバンドって? プレシアももっとマシな物入れたらよかったのにさ」

一方でキングはなのはの所持品の中にあったヘアバンドを見て奇妙なものを見たかのような表情を浮かべていた。
確かに殺し合いを促したいなら何の仕掛けもないヘアバンドを支給する気が知れない。
だが他の人から見れば何の変哲もないヘアバンドでもなのはにとってはかけがえのないものだ。
それをキングは無神経に嘲笑っていた。
大切なヘアバンドを侮辱された事になのはは一瞬不快な感情を覚えたが、すぐに気持ちを抑えた。
今は下手に言い争っている場合ではない。
だからキングの揶揄は無視してペンウッドの方に身体を向けた。

「あとこの銃は、ペンウッドさんが持っていて下さい」
「わ、私が!?」

そう言ってなのはが差し出したのはグロック19だった。
さすがにいきなりだったのでペンウッドは怪訝な表情を浮かべた。
ペンウッドの常識では銃器は手頃な武器に入るからだ。

「ええ、私が持っていても上手く使う事はできないですから。だからもしもの時の護身用に持っていて下さい」
「高町君」
「さっきは守ってもらってありがとうございました。だから今度は私が守る番ですけど、さすがに絶対とは言い切れません。
 ここはそういう場所ですから……だから万が一に備えていて下さい」
「ああ、分かった。私も精いっぱい抵抗して自分の義務を果たそうじゃないか」

実を言うとなのはにとってこの銃は苦い経験を思い出させるものだった。
だからこそこの銃を持つ人は今度こそ守りたいと強く思った。
同じく知り合いが銃で苦い経験をしたC.C.はなのはが纏う雰囲気の変化を感じ取って声を掛けた。

「その銃、もしかしてさっき話した紫髪の少女のものか」
「ええ、あの時は何も分からなかったけど、今ならあの少女が何を言っていたのか分かるんです」

なのはは後悔していた。
あの時紫の髪の少女は混乱して勘違いしていると思っていたが、実際は嘘などついていなかったのだ。

――私は……人を殺しちゃったの……! エリオを殺しちゃったの!!
――私のせいで……私がいなければ、エリオは死なずに済んだのに! こんな私が、許されていい訳がない!!
少女には傷はなかったのに近くに出来ていた不自然な血だまり。
――私と一緒にいたら……なのはまで死んじゃうから……! もう嫌なのよ……これ以上私のせいで、誰かが死ぬのは……
突然襲いかかって来た紫の大蛇(天道曰く、浅倉の使うカードデッキのモンスター)。
――な……何……また……!?

おそらく商店街でドラグレッダーがいきなり餌を求めて暴れ出したように紫の蛇が暴れてエリオはそれを止めようとして喰われてしまったのだろう。
先程の戦闘と天道からの証言でその推測は容易に立てられた。

――な、何……なのは、まさかあんた……転校したばっかりだからって、もう私の名前忘れちゃったの……!?
――あんた、まさか……私が解んないの!? こんな時に……冗談はやめてよ!!
――な、何……何それ……こんな時に、そんな冗談やめてよ……! あんたは、陵桜高校3年B組の、高町なのはでしょ!?
――……そんな……なのはが……こんな事言う人だったなんて……

484 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/30(水) 01:23:08 ID:AGNIFyj60

陵桜高校3年B組に転入してきた高町なのは。
それがあの少女にとっての『高町なのは』なのだ。
ただでさえあの時の彼女はエリオが死んだ事への負い目で精神状態が不安定だった。
そんな時に知り合いの『高町なのは』に会えたと思ったところで、つい自分は知らないと言ってしまった。
これではあのような事態になったのも無理はない。
ここにいる参加者が別世界から来ている事には既に気付いていた。
その時は別世界でもそこまで影響ないだろうという結論に至ったが、それでは甘かった。
現にこうしてなのはと少女の間には誤解が生じて、少女は混乱と絶望の中に堕ちていってしまった。
これこそプレシアの思惑。
なのはは迂闊にもまんまとその策略に乗せられてしまったのだ。

「だから今後あの少女に出会えたら私、まずはきちんと話して謝りたいです」
「そうか……まあせいぜい取り零すなよ」

C.C.の言葉は妙に意味深だが、その真意を知るのは発言した当の本人だけだった。

「よし、次は俺だ」

天道の所持品:デイパックと基本支給品一式×1、龍騎のカードデッキ、爆砕牙、カブトエクステンダー、ゼロの仮面、『SEAL―封印―』『CONTRACT―契約―』のカード

天道の支給品はよく分からないものもあったが、ある一つを除いてそのままという事になった。
その一つとはゼロの仮面。
C.C.からの申し出だった。

「天道、その仮面は私にくれないか」
「ああ、いいだろう。ただしシャーリーと再会した時はきちんと説明してもらうからな」
「別に構わないが、シャーリーと私で面識がないぞ。まあなんとかなるだろ。仮面の代価にこのスティンガーを5本やるよ」

今後の事を考えると是が非でもルルーシュのためにここはどうにかしてゼロの衣装は揃えておきたかった。
それはスティンガー5本で手に入るなら安いものだ。
シャーリーの説得という厄介な仕事もあるが、それは実際会った時にまた考えればいいだろう。

「あ、僕はこの携帯電話だけ」

キングの所持品:携帯電話

「そういえば貴様、デイパックはどうしたんだ?」
「はやてが全部預かるって言うからはやてが持ったままだよ」

かなり辟易した様子だったが、一応キングは聞かれた事には答えていた。
携帯の映像については先程確認したところ『相川始の変身シーン』『はやてがギルモンを殺すシーン』の二つだけだった。

「次は私かな。私の所持品は今もらった仮面とこの――」

続いてC.C.が支給品の説明をしようというところで異変は起きた。
突如5人の真上に設置された天井の蛍光灯が衝撃を受けて割れたのだ。
思わず振りかかる破片を避けるために5人が方々に散って天井を見上げた次の瞬間――。

――乾いた炸裂音と共に部屋は白い煙に包まれた。

485 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/30(水) 01:24:09 ID:AGNIFyj60


     ▼     ▼     ▼


「――ッ、ん、こ、ここは……」

聞き覚えのない声と痛みに起こされたC.C.は自分がどこか道路の上に放り出されている事に気付いた。
最新の記憶では自分は高町なのは達とスーパーの事務室で情報交換をしていたはず。
それがいきなり外、しかも道路に置き去り状態、さらに隣では同じように訳が分からない顔をしているペンウッドもいた。
どうやらこの場所にいるのは二人だけのようだ。
何がどうなっているのか全く分からなかった。

だが次の瞬間、C.C.をさらに混乱させる声が耳に飛び込んできた。

『現在あなたがいるエリアは禁止エリアに指定されています。20秒以内に退去してください』

それは死へのカウントダウン。

「え、こ、これは――」

ようやくペンウッドも現状を理解したらしい。
これは紛れもなく首輪の爆弾のタイムリミット。
だが悠長にその事を考えている猶予はない。

「走るぞ、ペンウッド!!!」

だがどこに走ればいい?
唯一分かっている事は現在二人がいる場所が禁止エリアに指定されていて、20秒以内に退去しないと首輪を爆破されて死んでしまうという事だけだ。
こうしている間にも残り時間はなくなっている。
とりあえずどの方向へ向かって走るべきか四方を見渡し時、C.C.の目に信じられないものが飛び込んできた。

「ゼ、ゼロ!?」

それは何メートルか離れた所に立っていた。
見慣れた黒いマントに黒い仮面を身に付けた黒の騎士団のリーダーゼロ。
それに気付いたC.C.はひどく驚いた。

「こっちだ、ペンウッド!!」

いきなり現れたゼロに対して湧き上がる疑問は無数にある。
だがどれもこの場で死んでしまっては聞けなくなる。
どういうつもりかは知らないがゼロがいる場所は禁止エリア外のはず。
だからそこまで辿り着く事ができれば……。

486 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/30(水) 01:25:01 ID:AGNIFyj60

『10』

そこまで考えたところ僅かに足が鈍った。
このまま禁止エリアにいれば長年の願い、自らの死が叶う。
死、それは待ち望んだ甘美な響きだった。

『8』

だがその誘惑は一瞬で払った。
今の自分は昔のようにただ漫然と惰性で生を送っている身ではない。

『5』

ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
愚直なまでに妹の幸せを願う青年と出会ってから自分は少し変わった気がする。

『4』

以前なら考えられないような心境の変化。
それをもたらしたルルーシュに抱く感情が何なのか。

『3』

それはまだはっきりとは分からない。

『2』

「よし!!!」

途中で迷っていた分だけペンウッドが一歩先んじてゼロの脇を通り過ぎた。
てっきり何かしてくるのかと思ったが、意外にも何の行動も起こさなかった。
だが油断は禁物、もう猶予も残り僅か。
あとは一心に走って禁止エリアから――。

「――ガッ!?」

一瞬何が起こったのか分からなかった。
いきなり顔面に衝撃が走った。
視界はブラックアウトして意識は一瞬何処か遠いところに飛んでいった。
それが勢いよく走っていた自分と突然空中に現れた何かがぶつかったせいだと気付いたのはもう身体が衝撃で後方に倒れている最中だった。

『1』

もうここから体勢を立て直すのは無理だ。
それならばせめて最期に悪足掻きぐらいしてみようか。
いつでも出せるように懐に忍ばせておいたスティンガーを両手で取り出す。
投擲の構えなど関係ない。
狙った的は目の前だ。

『0』

(ルルーシュ、死ぬなよ……)

487 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/30(水) 01:26:04 ID:AGNIFyj60


     ▼     ▼     ▼


ペンウッドは目の前の光景に言葉が出なかった。
ギリギリだったとはいえC.C.も爆発を回避できるはずだった。
だがそれは叶わなかった。
全身黒尽くめのゼロという謎の人物のせいで。
そしてペンウッドは見た。
C.C.の首輪が爆発して拘束衣の少女の首と胴体が分かれる瞬間を。
最期の抵抗に放ったスティンガーはゼロに届く前に何かに弾かれて傷一つ負わす事も出来なかった。
その様子を見る前に死んだ事がせめてもの救いだったのかもしれない。

「ほぅ、生き残ったのはペンウッド君か、おめでとう。ならば勝利した君にはこれを送ろう」

いきなりデイパックを3つよこしたゼロに思わず不信の目を向ける。
そういえば目覚めた時、自分もC.C.もデイパックを持っていなかった。
おそらく予めゼロが回収していたのだろう。
それをわざわざ返すとは何が何だかさっぱりだ。

「ど、どういう意味だ……」
「なに、簡単な事だ。今のは余興、どちらが早く禁止エリアから脱出できるかというゲームだ」
「な、なん……だと……」
「結果は君の勝利だ、おめでとう。残念ながら敗北したC.C.君には罰ゲームとして禁止エリアでの死を与えた」

つまりこういう事か。
目の前のゼロは単なる余興でC.C.とペンウッドを競わせて高みの見物をしていたと。
そして先にペンウッドが到着した事を確認すると後ろから来たC.C.が禁止エリアから出る事を妨げた。
ある意味ペンウッドが殺したとも言えなくもないが、今はそこまで考えられない。

「ああ、そうそう。スーパーに戻っても誰もいないぞ――全員もう死んでいるからね」
「な、そんな事が――」
「これがその証拠」

そう言ってペンウッドの目の前に掲げられた物はキングが持っていたはずの携帯電話の画面。
そしてそこに次々と死体が映し出されていく。
右脇を斬られて血を流して倒れている天道総司の死体。
身体中至る所を斬られて全身血に塗れて倒れている高町なのはの死体。
そして今しがた絶望の中で死んでいったC.C.の死体。

(天道君、なのは君、C.C.君――!?)

そこでペンウッドは気付いた。
スーパーに集った者は自分を含めて5人。
つまり後一人足りない。

「まあ余計な詮索はなしにしてもらおうか」

その瞬間、ペンウッドの思考を読み取ったかのようにゼロが有無を言わさぬ圧力をかけてきた。
目と鼻の先まで近づけられたゼロの仮面。
その見えない圧力にペンウッドは黙るしかなかった。

「よし、面白いこと思い付いた。どちらが多く参加者を殺せるか勝負しようか」
「そ、そんな――」
「断るならここで殺してもいいんだよ」

一度口から出かけた否定の言葉を飲み込んでペンウッドは悩んだ。
もう頼れる仲間は全員死んでしまった。
今の状態は完全に孤立無援状態。
ここで都合よく助けが現れる事などありえない。

「わ、わかった! 勝負すればいいんだろう」

それならばこの申し出を受ける事も仕方のない事なのかもしれない。

「そうこなくちゃ。じゃあ期限は次の放送まで。精々がんばってね」

ゼロが後姿を向けた。
これでようやくこの重圧から逃れられる。
ペンウッドはほっとしてゼロと反対の方向に――。

488 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/30(水) 01:26:47 ID:AGNIFyj60

「――嫌だ!!」

決意と共に放たれたのは一発の銃弾。
そこには先程までの優柔不断な中年軍人の姿はなかった。
そこにいたのは一人の男。
もうペンウッドに迷いはない。

「どういう事かな?」

絶対的強者の位置でゼロはペンウッドの行動を咎めた。
決死の思いで放たれた銃弾は空中に現れた物体で防がれていた。
だがそれを見てもペンウッドは引き下がらなかった。

「そんな申し出は聞けないね!!」
「へぇー、意外だね。てっきり何もできない奴だと思っていた」
「私は無能かもしれんが、卑怯者ではないよ」

ここで逃げる事は出来ない、それだけは出来ない。

「私は駄目な男だ、無能だ、臆病だ。自分でも何故こんな所にいるのか分からんほど駄目な男だ。
 生まれついての家柄と地位だけで生きてきたも同然だ。
 自分で何もつかもうとしてこなかった、いつも人から与えられた地位と仕事をやってきた」
「うん、僕もそう思うよ」
「だから、せ、せめて、仕事は、この仕事だけは全うしなきゃならんと思う」
「立派な心掛けだね。で、その仕事って何さ?」
「最期まで抵抗して義務を果たす――貴様を葬り去る事だ!!」

そして引き金を引いた。
何発も何発も何発も。
銃弾が尽きるまで撃ち続けた。
ゼロをこのまま行かせるわけにはいかない。
唯その一心で。
高町なのは、天道総司、キング、C.C.、4人も殺人を犯した危険人物を野放しにしてはいけない。
もうこの命はないも同然。
最期に刺し違えてでも――。

「ああ、もういいよ」

何事もなかったかのようにゼロの声が聞こえてきた刹那、何かが飛んできた。
目に留まらぬ速さで放たれた投擲物を避ける暇はなかった。
それはひどくスローに見えたが、なぜかペンウッドの身体は思うように動いてくれなかった。
そして真っ直ぐ首輪に向かって飛んできて到達した瞬間、再びあの光景を目にした。
見渡す限り虹色に輝く上下左右の感覚がない不思議な空間。
そして目の前に青と銀色の巨人の姿がぼんやりと見えた。
なぜかそれが以前ここで聞いた温かな声の主――ウルトラマンヒカリであると分かった。
そして今回もヒカリはペンウッドに向かって何か話している。

だが今その声は聞こえない。
何かを伝えようとしているが何も伝わってこない。

(奇跡は何度も起きないか)

そしてペンウッドの意識は戻る。

(すまん、皆、すまんな)

朦朧とする意識の中でペンウッドの首輪は爆発した。

489 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/30(水) 01:27:34 ID:AGNIFyj60


     ▼     ▼     ▼


『お前の探しものはスーパーにある(面倒になる前に先に言っておく。あいつはお前の世界の奴ではなく安全だ) byピザの代価』

残された書き置きにはそう書かれていた。

「ピザの代価となればあいつに間違いないな」

ゼストはメモを見て、これがC.C.によって書かれた物である事を確認した。
さてどうするか。

「どちらにせよ行くしかないか。だがもしも高町が悪鬼でないなら、俺は――」


【1日目 日中】
【現在地 C-3 商店街跡地】
【ゼスト・グランガイツ@魔法少女リリカルなのは 闇の王女】
【状態】健康
【装備】ブリッツキャリバー@魔法妖怪リリカル殺生丸
【道具】支給品一式
【思考】
 基本:高町なのはの捜索・抹殺? プレシアの抹殺。ルーテシアの保護。
 1.スーパーに行って高町なのはの正体を見極める。
 2.落ち着いたらC.C.及びブリッツキャリバーから彼等の世界について詳しく確認する。
 3.その後、軍事基地に向かい万丈目と合流する。
 4.カードデッキ及び千年リングを見付けた場合は破壊・処分する。
 5.行動を共にする仲間を増やす(市街地は危険そうなので武装が整うまでは基本的に避けたい)。
 6.なのはと戦う事になればギア・エクセリオンの発動も辞さない――己の命を削ってでも。だが、仮に彼女が自分の世界の彼女では無いとしたら―――?
【備考】
※C.C.との協力関係はギブアンドテイクという暗黙の了解の上に成り立っています。
※ギア・エクセリオンによる負担の程度は不明(ゼストは自分のデバイスのフルドライブ同様に命を削る可能性もあると推測)。
※プレシアにはスカリエッティと同等かそれ以上の技術があると思っていますが、プレシアを全く信用していません。
※ヴィータとプレシアの間で何らかの約定があったかもしれないと考えています(並行世界の彼女の可能性を考えています)。
※スバルが『スバル・ナカジマ』の名前である事に疑問を抱きました(並行世界の彼女の可能性を考えています)。
※カードデッキの制限と千年リングについての情報を把握しました。
※参加者が異なる並行世界から連れて来られている可能性を知りました。
※プレシアは殺し合いの早期決着を望んでいると考えています。
※エリアの端と端が繋がっている事を知りました。

490 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/30(水) 01:28:55 ID:AGNIFyj60


     ▼     ▼     ▼


「まあまあだったかな、意外と楽しめたからいいか」

先程C.C.とペンウッドを殺したゼロの衣装を着た人物――キングはあの爆発現場に戻っていた。
カブトエクステンダーを押しながら地面に視線を落として何かを探す仕草をしていた。
キングは探しているのだ。
先程ここで捜索している時に見つけたあるものを。
そしてそれは程なく見つかった。

「お、あった、あった」

それは血痕。
だいぶ薄くなっているが道路上を東の方にのびていた。
キング以外にこれに気付いた者はいない。
なぜならこの血痕は捜索現場の最東端付近にあるので捜索時お互い別々の箇所を探していた4人は全く知らないのだ。

「さて、この先にあるのは何かなっと。それにしても放送後は上手くいかなかったけど、情報交換の時の様子は面白かったな」

――貴様、浅倉達に会っていたのか!?
――怒らないでよ。今まで話す機会がなかったんだから。文句なら自分に言いなよ。
――ヴィヴィオは、その、どんな様子だったの。

あの時の天道となのはの様子は実によかった。驚きと不安を必死に押し隠そうとしている様は見ていて非常に楽しかった。

――でも、やっぱり私ははやてちゃんを信じます。
――へぇ、この画像を見てもまだ信じるんだ。
――あのはやてちゃんが理由もなく誰かを殺すなんて信じられません。だから今度会ったら絶対にお話を聞かせてもらうつもりです。

確たる証拠を見せられても尚親友を信じようする姿。その儚い姿は思い出しただけで笑いが込み上げてくる。

――……キングさん、その人の姿はそれ以上分からなかったんですか。
――うーん、なにせ天道を連れていてバイクで振り切ろうと必死だったからねー。もしかして心当たりでもあるの?
――その、フェ、フェイトちゃんに似ているところが……。
――高町、やはりお前もテスタロッサに思い至ったのか。
――でも、フェイトちゃんがそんな!?
――俺も同感だ。八神の時とは違って今回は情報があやふやだ。まだ可能性の一つでしかない。

もう一人の親友が殺し合いに乗ったかもしれないという不安を垣間見せた瞬間、笑いを堪えるので必死だった。

「と、ここが終点か。なんだ、誰かいるのかと思ったら違ったのか」

いろいろ思い返しているうちにキングは血痕の終点に辿り着いていた。
だがここでキングはこれが終点ではなく始点である事を確信した。
理由は血痕の規模。
ここの血痕は明らかに爆発地点よりも派手だ。
つまり血痕の主はここで傷を負ってそのまま移動して先程の場所で爆発に巻き込まれたと考えるのが自然だ。
ここに向かっている最中にそんな気はしていたが、一応確認のため来てみれば案の定だった。
だが誰かはいないが、何かはあった。

「それにしても何だろう? 腕に嵌める物みたいだけど……それにカードも……あれ? 確かどこかにそういう話が……」

『CROSS-NANOHA』で見かけた記憶があるが、さすがにあの量だ。
流し読みではどこに書かれていた内容かすぐに思い出す事は不可能だった。
少なくとも自分の事が書かれた『MASUKARE-DO』とルルーシュの事が書かれた『HANNMOKU NO SUBARU』にはそのような物は出ていなかった。

「あとで探してみようかな。えっと、こうかな。『治療の神 ディアン・ケト』発動! なんて――え?」

キングは不細工な絵柄のカードに苦笑しつつ適当に腕を振ってそれらしい掛け声をかけてみた。
果たしてそれはキングの意図しないところで発動キーと認識され、知らず知らずのうちにカードの効果の恩恵を受けた。
この場合は傷を負っていないので体力の回復しか効果はなかった。
別に大して疲れていないが、それでもこのカードの効果で僅かな疲れが癒されていくのは感じた。

「へぇ、凄いじゃん。もし戻っても回復していなかったらこれ使ってあげよう」

そう言ってバイクに跨ったキングは携帯を取り出した。
そこにはいくつものキングが気に入った動画や画像が収められている。
先程もC.C.とペンウッドの死の瞬間の画像は写メで保存済みだ。
逆にヴィータとギルモンの画像のように使い道がなくなれば順次消去している。

「それにしてもこの画像、我ながらよく撮れたな――本物みたい」

キングは携帯に映した高町なのはと天道総司の『偽の死体の画像』を見つつ一人悦に入っていた。

491 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/30(水) 01:29:50 ID:AGNIFyj60


     ▼     ▼     ▼


「…………」
「…………」

先程まで5人が集っていたスーパーは打って変わってひどく静かになっている。
これまで幾人もの来訪者がそのつど内部を調べたせいもあって店内に残された品物はあまりない。
当然ながら明かりは付いておらず、誰が見ても寂れているという印象を受ける。
だが誰もいないというわけではない。
一番奥の事務室。
そこに一人静かに回復魔法を掛け続ける高町なのはの姿があった。
ただし身に付けている衣服は機動六課の制服ではなく一風変わった着物に変化している。
そして両手を翳した先で横になっている人物は天道総司。
このような状況になったのはやむを得ない理由があった。

今より少し前に目覚めた時の高町なのはの見た目は酷いものだった。
機動六課の制服は無残にも切り裂かれて衣服の役目を果たす事叶わず、その上茶色だった生地は真っ赤な血で染まっていた。
ただ幸い身体自体に傷は一つもなかった。
あくまで服がボロボロにされただけ。
思わず年頃の女性らしく声を上げそうになったが、そこは歴戦のエース。
喉元まで上がった声を押し留めて気持ちを落ち着かせた。
そしてようやく周囲の様子を確認する余裕を取り戻して、近くに天道がなのはと同じように血まみれで倒れている事に気付いた。
だが天道はなのはと違って本当に傷を負っていた。
どうやら治りかけていた合流前に負ったという脇の傷が強い衝撃によって開いたようだ。
さっそく治癒魔法を行使して治療に掛かったところで違和感を覚えた。
そしてその違和感の正体がペンウッドとC.C.とキングの姿がどこにもない事だとすぐに気付かされた。。

――いったい気を失っている間に何があったのか。

この状況で目覚めれば誰もが思い浮かべる疑問を当然なのはも思い浮かべていた。
だがその疑問は最悪の形ですぐに解けた。

『連れは預かった。返して欲しければ天道の傷を治して大人しく待っていろ byゼロ』

そんな言葉が書かれたメモが一枚置いてあった。
この場合連れとは単純に考えればペンウッドとC.C.とキングだが、そう簡単ではない。

当初なのはは今回の騒動はキングが仕組んだ事だと考えていた。
その最たる理由はこの事務室で見つけたパソコンに入っていた一通のメール。
『月村すずかの友人』という特定の参加者にしか分からない宛名から自分達に向けて送られたメールである事はすぐに分かった。
そこにはいくつか項目があったが、その中の一つにキングに注意しろという内容があった。
先程のキングの話から察するにこのメールの送り主は八神はやての可能性が高い。
これを素直に受け取るならキングはプレシアに立ち向かう集団に不和の種を蒔く危険人物という事になる。
だがキングの話が本当なら逆にはやてが自分に不利な情報を持っているキングの信用を下げるために送信したとも考えられる。
一応キングとC.C.が帰ってくる前に密かに一番キングの事を把握している天道にこの事を相談してみた。

492 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/30(水) 01:31:03 ID:AGNIFyj60

そしてしばらく様子を見るしかないという結果に至った。

確かにキングは怪しいが、はやてがギルモンを殺した画像という物的証拠もある。
さらにもし仮にキングが危険人物だとしても今の段階で手を出すのは得策ではない。
正体が露見したキングが形振り構わず攻撃してくれば無傷で対処する事など不可能だろう。
だから今は下手にこちらから手を出すより皆に注意を促して何もできないように見張る方がいい。
幸いキングは自分から積極的に参加者を殺そうという気はないように見えた。

そしてその結果が今の状況だ。

だが今回の行動がキングの仕業だとしたら腑に落ちない点がある。
なぜこのタイミングで行動を起こしたのか。
なぜ天道となのはを荷物をそのままで放置したのか。
第一このような事をすれば真っ先にキングが疑われる事はキングも分かっているはず。
もしキングの仕業なら痕跡すら残さずにやっているはず。
だからキングが犯人だとどうしても断定できないでいた。

「……いったい、どうすれば」
「…………」

天道にもこの事を話したが、返事をする事なく黙ったまま。
一度シャワーを浴びて着替えるために少し離れたが、帰ってきても天道に変化はなかった。
幸いボロボロになった制服の代わりとなる衣服があった。
最初は一風変わった着物で躊躇いがあったが、着てみると意外と動きやすく且つ腰布もきちんと機能して安心した。
結局こうして天道の治療を行っているが、下手人の言葉を信じてこのままこの場で治療をしつつ待つべきかどうか悩むところだ。
とりあえず天道が満足に動けるようになるまではどちらにせよ動く事も儘ならない。

(それにヴィヴィオも……)

ここにきて初めてつかんだヴィヴィオの消息。
数時間前ではあるが、それでもいくらか安心できた。
一緒にいる人物が凶悪犯である事が気掛かりだが、なんとか上手くやっているらしい。

(ごめんね、ヴィヴィオ。なのはママ、もう少し迎えに行くのが遅くなりそう。だから無事でいてね)

だがなのはは知らない。
数時間後、そのヴィヴィオが聖王として覚醒する事に。
この時はまだなのはを含めて誰も予想すらしていなかった。


【1日目 日中】
【現在地 D-2 スーパーの事務室】

493 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/30(水) 01:31:43 ID:AGNIFyj60

【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康、プレシアに対する怒り、キングへの疑念、困惑
【装備】とがめの着物@小話メドレー、すずかのヘアバンド@魔法少女リリカルなのは、ケリュケイオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、フリードリヒ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式
【思考】
 基本:誰の命も欠かす事なく、出来るだけたくさんの仲間を集めて脱出する。なんとしてもヴィヴィオを救出する。
 1.ひとまず天道の治療を行う。その後でどうするか改めて相談する。
 2.出来る限り全ての戦えない人を保護し、仲間を集める。
 3.フェイトちゃん、はやてちゃん……本当にゲームに乗っているの?
 4.早く騎士ゼストの誤解を解かないと……
【備考】
※金居とキングを警戒しています。また紫髪の女子高校生(柊かがみ)を気に掛けています。
※フェイトとはやて(StS)に対して僅かな疑念を抱いていますが、きちんとお話して確かめたいと考えています。

【天道総司@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康、疲労(小)、右脇腹負傷(治癒中)
【装備】カードデッキ(龍騎)@仮面ライダーリリカル龍騎
【道具】支給品一式、爆砕牙@魔法妖怪リリカル殺生丸、スティンガー×5@魔法少女リリカルなのはStrikerS、『SEAL―封印―』『CONTRACT―契約―』@仮面ライダーリリカル龍騎
【思考】
 基本:出来る限り全ての命を救い、帰還する。
 1.???
 2.天の道を往く者として、ゲームに反発する参加者達の未来を切り拓く。
 3.カードデッキとモンスターについて調べる必要がある。
 4.エネルを捜して、他の参加者に危害を加える前に止める。
 5.キングは信用できない。常に警戒し、見張っておく。
 6.この集団は信用出来そうだが、仲間にしてやるか……?
 7.カブトセクターを始めとする各ゼクターを取り戻す。
【備考】
※身体がいつものように動かない事を知りました。
※首輪に名前が書かれていると知りました。
※キャロがエネルと共にいて、かつ危険な状態に置かれている可能性が高いと踏んでいます。
※ドラグレッダーはなのはと天道に、城戸真司の面影を重ねているようです。
※カードデッキ(龍騎)には、「契約」のカードと「封印」のカードが一枚ずつ入っています。
※SEALのカードがある限り、モンスターは現実世界に居る天道総司を襲う事は出来ません。
※天道自身は“集団の仲間になった”のではなく、“集団を自分の仲間にした”感覚です。
※C.C.からカードデッキの説明書きを受け取りました。


【チーム:スターズチーム】
【共通思考】
 基本:出来る限り全ての命を保護した上で、殺し合いから脱出する。
 1.これからどうするか?
 2.協力して首輪を解除、脱出の手がかりを探す。
 3.出来る限り戦えない全ての参加者を保護。
 4.工場に向かい首輪を解析する。
【備考】
※それぞれが違う世界から呼ばれたということに気付きました。
※チーム内で、ある程度の共通見解が生まれました。
 友好的:なのは、(もう一人のなのは)、フェイト、(もう一人のフェイト)、(もう一人のはやて)、ユーノ、(クロノ)、(シグナム)、ヴィータ、シャマル、(ザフィーラ)、スバル、(ティアナ)、(エリオ)、キャロ、(ギンガ)、ヴィヴィオ、ペンウッド、天道、(弁慶)、ゼスト、(インテグラル)、C.C.、キング、ルルーシュ、(カレン)、シャーリー
 敵対的:アーカード、(アンデルセン)、浅倉、相川始、エネル
 要注意:クアットロ、はやて、銀色の鬼?、金居、(矢車)
 それ以外:チンク・(ディエチ)・ルーテシア、紫髪の女子高校生、ギルモン・アグモン

494 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/30(水) 01:32:45 ID:AGNIFyj60


     ▼     ▼     ▼


Q.キングの基本方針は?
A.このデスゲームを滅茶苦茶にして楽しむ事。

Q.なぜキングはデスゲームを滅茶苦茶にすると言いつつもデスゲームを進めるような行動が多いの?
A.手っ取り早く滅茶苦茶にして楽しむなら参加者を弄る事が最も効果的だと思った&その方が面白いから。

Q.第二回放送後、キングは何かしたの?
A.特に何もしなかった……というよりも出来なかった。
A-1.なのは:ギンガ、ザフィーラ、フェイト、弁慶、はやての計5人、特にフェイトとはやてとは10年来の親友なのでその訃報は特に堪えていたから期待していたが、合流した当初からキングについては懐疑的だったため容易に近づけなかった。
A-2.天道:特に心を乱すような死亡者がいなかった。むしろ浅倉との対決に期待。
A-3.ペンウッド:インテグラルの死によって最凶の吸血鬼であるアーカードの歯止めがなくなった事で人一番怯えていたから一番期待していたが、キングの行動を予想していた天道が終始キングが近づく機会は与えなかった。
A-4.C.C.:特に心を乱すような死亡者がいなかった……というより『CROSS-NANOHA』読んでもどういう人物かよく分からない。

Q.爆発地点でキングは何をしていたの?
A.終始それとなく警戒されていたので少々苛立ちながらも何か面白い物がないか探していた。

Q.爆発地点でキングは何を見つけたの?
A.ヒビノ・ミライの血痕(捜索区域は分担制だったのでキング以外に気付いた人はいなかった)。
A’.ハンドグレネード(1発で数十人の意識を失わせる事が出来る代物。厳密にはペンウッドの支給品。ペンウッドが転んだ時にこっそり一つ盗んだ)。

Q.スーパーの周囲の偵察や知らないうちになのはとペンウッドが平常心を取り戻していた時、キングはどんな心境だったの?
A.はっきり言って面白くなかった&だからある計画を実行する気になった。

Q.なぜキングはチーム・スターズから脱退したの?
A.浅倉を連れて来て天道と戦わせるため(元々期待していた上にそろそろ浅倉も何人か殺しているだろうから良い頃合いだと思った)。あとチーム・スターズに入った覚えはない。

Q.情報交換はキングにとって面白くなかったの?
A.それなりに面白かったが、もうキングは浅倉と天道の対決の方が遥かに楽しみだった。
A’.キングが話した内容には所々嘘が混じっている(全部嘘でないのはその方が信憑性があるから)。

Q.なぜキングはこんな方法を取ったの?
A.皆を気絶させた方が余計な手間を掛けずに出ていけると思ったから。

Q.どうやってキングは4人の意識を失わせたの?
A.まず適当なところで蛍光灯を念動力で壊して皆の注意を上に逸らす。次に皆に気付かれない位置でハンドグレネードを作動させて意識を失わせた(この時キングは息を止めていた&アンデッドなので僅かに効きにくかったので意識を失う事はなかった)。

Q.なぜあのタイミングだったの?
A.C.C.がマントを出して皆の気がそれに向いていたから(単に自分の番が終わってペンウッドの番が回るまでならどこでもよかった)。

495 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/30(水) 01:33:21 ID:AGNIFyj60

Q.なぜキングは天道の傷を開いたの?
A.そうすればしばらく動けないから(浅倉を連れてくるまで動かないでほしかった&動いたら探すのが面倒)。

Q.なぜキングはなのはを殺さずに残したの?
A.天道の傷を治療させる(だいたい戻ってくる頃には完治させているはず)&浅倉に同行していたヴィヴィオをネタに揺さぶるため。

Q.なぜキングは偽の死体の写真を撮ったの?
A.あとで何かに使えると思ったから(なのはに付いていた血は天道の血)。

Q.なぜキングはC.C.とペンウッドを連れ出したの?
A.禁止エリアに入った時の首輪の反応を確かめたかったから。

Q.なぜキングは二人を投げ入れて生還レースを行ったの?
A.ただの余興。それ以上でもそれ以下でもない。敢えて言うなら本当に首輪が爆発するか確かめるため。

Q.なぜキングはペンウッドに『どちらが多く参加者を殺せるか勝負しよう』と言ったの?
A.仮面ライダーに変身する道具を手に入れるため(このまま天道と浅倉を会わせても浅倉が仮面ライダーに変身できなければ面白くない。他の参加者から奪う手もあるが、運良く変身道具を持った参加者に会えるかどうか分からない。それならばプレシアが言っていた見返りを利用する手がある。ペンウッドが首尾よく殺人を犯して褒美をもらえそうなら変身道具をもらうように仕向けるつもりだった)。

Q.なぜキングはペンウッドを最終的に殺したの?
A.申し出を受けない時点で興醒めした&本当に無理やり首輪を外そうとすると爆発するのか確かめるため。

Q.結局首輪について何か判明したの?
A.禁止エリアに30秒以上滞在する&首輪を割る程の大きな衝撃を与えると爆発する。不老不死の奴でも死ぬ。

Q.デイパックいっぱい持っているけど必要ないんじゃないの?
A.なぜ持っていないかと聞かれるのが億劫だから一応持つ事にした(面白い事になりそうなら誰かにあげてもいい)。

Q.なぜキングはゼロの仮面と衣装を着たままバイクに乗っているの?
A.仮面ライダーみたい&周囲の反応を楽しみたいから(仮面を被ってバイクに乗っているから)。ただし邪魔なら脱ぐ。

Q.これからキングはどこへ行くの?
A.浅倉がいそうな場所(いざとなったら魔力を持つものを使って地上本部最上階の転移装置を使う)。

Q.キングは最後の一人になるつもりなの?
A.当たり前。

Q.この質問と回答って信頼していいの?
A.どうなんだろう?

496 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/30(水) 01:37:29 ID:AGNIFyj60


【1日目 日中】
【現在地 E-3 大通りの近く】
【キング@魔法少女リリカルなのはマスカレード】
【状態】健康、上機嫌、ゴジラへの若干の興味
【装備】ゼロの仮面@コードギアス 反目のスバル、ゼロの衣装(予備)@【ナイトメア・オブ・リリカル】白き魔女と黒き魔王と魔法少女たち、キングの携帯電話@魔法少女リリカルなのは マスカレード、カブトエクステンダー@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具①】支給品一式、おにぎり×10、ハンドグレネード×4@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ギルモンとアグモンとC.C.のデイパック(道具②③④)
【道具②】支給品一式、RPG-7+各種弾頭(榴弾5/照明弾2/スモーク弾2)@ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL、トランシーバー×2@オリジナル
【道具③】支給品一式、菓子セット@L change the world after story
【道具④】支給品一式、スティンガー×5@魔法少女リリカルなのはStrikerS、デュエルディスク@リリカル遊戯王GX、治療の神 ディアン・ケト(ディスクにセットした状態)@リリカル遊戯王GX
【思考】
 基本:この戦いを全て滅茶苦茶にする。
 1.浅倉を迎えに行って天道と戦うように御膳立てする。
 2.はやての挑発に乗ってやる。
 3.浅倉とキャロに期待。
 4.シャーリーに会ったらゼロがルルーシュだと教える。
【備考】
※制限が掛けられている事に気がつきました
※携帯には『相川始がカリスに変身する瞬間の動画』『八神はやて(StS)がギルモンを刺殺する瞬間の画像』『高町なのはの偽装死体の画像』『天道総司の偽装死体の画像』『C.C.の死の瞬間の画像』『シェルビー・M・ペンウッドの死の瞬間の画像』が保存されています。
※首輪に名前が書かれていると知りました。
※全ての参加者の性格と、おおまかな戦闘スタイルを把握しました。特に天道に関しては、念入りに調べてあります。
※ゼロの正体がルルーシュだと知りました。
※はやての事はゲームの相手プレイヤーという感覚で見ています。


【C.C.@コードギアス 反目のスバル  死亡確認】
【シェルビー・M・ペンウッド@NANOSING  死亡確認】

【全体備考】
※D-2寄りのD-3にC.C.も死体(首と胴体が分かれている)が放置されています。
※D-3寄りのD-2にナイトブレスを付けたペンウッドの死体(首と胴体が分かれている/近くに)が放置されています。
※グロック19(0/0)はペンウッドの死体の傍に放置されています。

【ハンドグレネード@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
セインが時空管理局地上本局の指揮管制室を制圧した際に使用したハンドグレネード。
弾頭部分には化学兵器(毒ガス)が装填されており、2発だけで指揮管制要員数十名を一瞬で無力化した。
この毒ガスは分析によれば「致死性ではなく麻痺性」と言われていた(バリアジャケットに対毒ガス用術式を施す事で回避可能)。

【とがめの着物@小話メドレー】
奇策士とがめが着ている着物。一風変わった意匠だが機能性に問題はない。

497 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/30(水) 01:38:30 ID:AGNIFyj60
投下終了です。
誤字・脱字、矛盾、疑問などありましたら指摘して下さい。

498リリカル名無し:2009/12/30(水) 09:32:45 ID:kWziqxls0
投下乙です。
このメンツならばキングは手を出せない……そう考えていた時期が私にもありました……
なのに(予約の時点から予想出来たけど)内容はキング無双。(まぁ、予約の時点からゼストかキング(もしくはC.C.が)による無双だとは思ったけど)
そしてC.C.退場でギアス組は全滅(そういや退場タイミングはルルシャリと殆ど同じだったのか)。C.C.のメッセージは何とかゼストに伝わったのが幸いか……(というかゼストの出番これだけかよ)
ペンウッドもウルトラマンヒカリになることなく退場か(ギリギリ禁止エリア内じゃないからナイトブレスは回収可能みたいだけど)

流れ的にしゃーないとはいえマーダー(に準ずる人達)ばかりに戦力が集中する状況どうにかならんのか……冗談とか抜きにして無理ゲーっぽくなってきたぞ……

それから天道が役立たずな気がするのは気のせいなんだろうか……まぁデッキの説明書がまだ使えてGET出来たのは幸いか……ただ……ゼスト(デッキは壊す!)が来たら衝突の元になりそうな気が……

最後に1つ割とどうでも良い指摘ですが、サブタイトルが無い気がしますがサブタイトルは何ですか?

499リリカル名無し:2009/12/30(水) 09:58:55 ID:kWziqxls0
>C.C.退場でギアス組は全滅(そういや退場タイミングはルルシャリと殆ど同じだったのか)。
……しまった『日中』だから同じじゃねぇ、むしろルルシャリ(退場話は『午後』)より前じゃねーか。

500リリカル名無し:2009/12/30(水) 16:38:37 ID:QtMSEcswO
投下乙
ペンウッドとC.C.退場か
ペンウッドは原作を思わせる勇敢な死に様でした
ヒカリはどうなるんだろう
まさかのキングゼロ化には笑ったw
そうかキングは反目のスバル知ってるからゼロの喋り方意識するだけでいいんだもんな
にしてもキング+ゼロって組み合わせが悪質過ぎるw

501リリカル名無し:2009/12/30(水) 20:33:11 ID:aYsHX8nE0
投下乙です。
ルルシャリにロリっ娘三人に続いてC.C.とペンウッドも退場で残り人数も減り、
クライマックスに近づいてきた感じだろうか。というか放送終わってからの死亡者の勢いが凄いw
既に放送後の死亡者10人だから、この勢いで行けば第一回放送よりも死亡者が出るかも?w
そして久々にキングが活躍したわけですが、やはりキングは悪質の一言に尽きる!
C.C.におじいちゃんって言われたのがきっかけでC.C.を余興の対象にしたのかな?
にしてもC.C.はルルじゃないとは気づいていたものの、信頼していたゼロに殺された訳だから浮かばれないなぁ。
ペンウッドはペンウッドで最後まで勇敢だったし、流石ウルトラマンに選ばれただけの事はある。
ナイトブレスは一応意思持ち支給品だから、ハイパーゼクターみたいに自力で飛んで行くことも出来るか
そして今回一番の目玉はやはりキングの暗躍と、ゼロになったキング。
仮にも王の資格を持ったルルがゼロの正体だと考えると、自ら王を名乗るキングがゼロになったのは皮肉だなぁ。
撃つ覚悟しか無さそうな悪質なゼロが今後どんな行動に出るのか楽しみです。
あとバイクにも乗ってるから仮面ライダーゼロかw

502 ◆HlLdWe.oBM:2009/12/30(水) 23:52:38 ID:AGNIFyj60
すいません、タイトル忘れていました。
タイトルは「キングの狂宴/狙われた天道」です

あと情報交換の部分で若干ミスがあったので修正したものを上げておきます。
それに追随して状態表も修正しますが、基本的に大筋に変化はありません。

503リリカル名無し:2009/12/31(木) 00:48:43 ID:L8/ucxBU0
あ、そういえばキングが元々着ていた衣装も所持品に追加した方がいいっぽいかも?
既に気づいていたなら申し訳ないです。

504 ◆7pf62HiyTE:2010/01/05(火) 20:47:17 ID:1Jtbl6vI0
新年明けましておめでとうございます。
スバル・ナカジマ、泉こなた分を投下します。

505Blue Swear―――蒼い誓い ◆7pf62HiyTE:2010/01/05(火) 20:49:10 ID:1Jtbl6vI0
 ―――求めていたのは何だろう?―――





「リイン―――あのおばさん確か放送でこんな事言っていなかったっけ―――」
 泉こなたはリインに放送でプレシア・テスタロッサがフェイト・T・ハラオウンの事を娘だと言っていた事についてリインフォースⅡに確認する。

 この時、スバル・ナカジマはアニメイト跡地である物を探していた。探す物が物だった為、こなたの手伝いをスバルは断っており、こなたはリインと共に傍で待っていた。
 リインは魔力の消耗が激しかった為、休息及び周囲の警戒とこなたの護衛の為彼女の傍にいる。

 こなたの問いに対し、リインは言いにくそうな顔をしていたが、
「本当はリインの口からは言いにくい事ですけど……」
 放送での言葉でフェイトに疑心を持つ可能性は否定出来ない。フェイト個人の事情をむやみに明かしたくはなかったが、誤解を招かない為にリインは今まで伏せていたプレシアとフェイトの関係を話す事にした。
 プレシアがアリシア・テスタロッサ復活の為にフェイトを作った事、そしてアリシアでは無かったフェイトを嫌悪しその存在を否定した事を―――
 アカデミアで聞いた時同様プレシアの心情そのものは理解出来なくはない。だが、こなたはなおの事憤りを感じていた。
 アリシアの代わりとしてフェイトを作った事自体に関しては別段気にしていない。似たような話を何処かで聞いた事はあるのでこなたにとっては大した問題ではない。こなたが憤ったのは別の事だ。
 自分がアリシアの代わりとして作り出しておいて、望んだ物と違ったら捨てるという事だ。あまりにも身勝手過ぎるではないか?
 そもそも、フェイトはアリシアの外見を持っていて、アリシアの記憶も完全ではないもののコピーは出来ている。にもかかわらずプレシアはそれを認めなかった。
 いや、月並みな話だが誰もアリシアの代わりなど出来ないからそれ自体は別に良い。しかし、失ったアリシアを求める余り周囲に対して我が侭が過ぎるのではないか?
 自分が生み出したフェイトやPT事件に巻き込まれた人達を何だと思っているのだろうか? 何故、そこまでしてアリシアを求めるのだろうか?
 いや、何となくだが只アリシアが生き返ってもプレシアは満たされないのでは? プレシアが本当に求めている物は―――
「結局はアリシアちゃんを生き返らせたいんじゃなくて、アリシアちゃんのいた頃に戻りたかっただけじゃないのかなぁ?」





 ―――時間は遡る―――





「ルルーシュとシャーリーとヴィヴィオがいた……?」
 アニメイトを炎の巨人が襲った際、スバルはこなたとリインを守る為にすぐさまアニメイトから撤退した。
 その時点では彼女達を守れた事に安堵していたが、こなたから聞かされた話は彼女に大きなショックを与えた。信じがたい話ではあったがそれは真実だろう。あの炎では既に3人とも―――
 だが、何故この3人なのだろうか? 行動を共にしていたルルーシュ・ランペルージと一緒なのはまだわかる。
 しかしシャーリー・フェネットとヴィヴィオの名前が何故出てくる? 近くにいたであろうシャーリーはまだ良いが、ヴィヴィオも近くにいたというのか?
 また、早乙女レイの名前が出てこないのも気になる、彼女は何処に行ったのだろうか?
 その最中、リインが意識を取り戻す。疲労こそ大きかったもののダメージは少なかった為すぐさま目を覚ますことが出来たのだ。
「スバル……こなた……何かあったですか……?」

506Blue Swear―――蒼い誓い ◆7pf62HiyTE:2010/01/05(火) 20:51:25 ID:1Jtbl6vI0



 込み入った話になりそうだった為、別行動を取ってからの互いの出来事を整理する事にした。まずはこなた達の話だ。
 2人は担当していた場所の探索を終えた後、外の煙を確認しスバル達と合流する為にエントランスに向かった。その際にレイとも合流した。
「今にして思えば、レイにもう少し気を配れば良かったと思う……」
 放送で遊城十代の名前が呼ばれていた。その事でレイはショックを受けていたのだろう。彼女の一人称が『私』から『ボク』に変わっていたのがその現れかも知れないとこなたは語った。

 その後、気絶していたルルーシュを発見したが、その後目を覚ましたルルーシュがいきなりレイに『俺に従え』とギアスをかけようとしたのだ。
 この時点ではルルーシュの奇行の理由がわからなかったが、恐らくシャーリーと会った時に何かあったのだろう。
「それにレイの状態に気づいていたと思うし」
 実際、現場こそ見なかったがギアスを放った要因はその瞬間レイがルルーシュに拳銃を向けていたのもある。
 とはいえ、ルルーシュの行動理由に気付いたのはあくまでもヴィヴィオからシャーリーとのいきさつを聞いた時だという事を補足した。スバルもシャーリーとのいきさつは把握している為それは理解した。

 さて、そのタイミングで何者かの襲撃により瓦礫が崩落しルルーシュの腕から再び出血し気絶したが、更に悪い事が起こった。
 ギアス自体は不発に終わったが、その事でレイが逆上しルルーシュに向けて発砲したのだ。
 銃弾はリインが防いだものの危険な状況は変わらない。こなたは気絶したルルーシュを背負い荷物を何も持たずそのままアカデミアから逃げだしたのである。
「あれ、だったらどうしてこなたのデイパックがここにあるの?」
「あー……うん、実はあたしもなんでかはわからないんだけど……」

 逃げたこなた達はアニメイトの前でヴィヴィオと遭遇しレイから身を隠す為に一旦アニメイトに入った。そして、ルルーシュの手当てをする傍らヴィヴィオと彼女が持っていたクラールヴィントから詳しい事情を聞いたのだ。
 彼女は最初に浅倉威という男性と出会い、その後半裸の男とスーツの男に襲われた。
 その後、温泉で天道総司とシャーリーと出会い、天道が去った後3人で彼の後を追った。
 そしてその天道を連れて温泉に向かうキングと遭遇した。キングは天道を治療すると言っており、天道をキングに任せ3人は市街地に向かった。
 その後、浅倉が暴れだし2人の元を去っていき、ヴィヴィオの前にザフィーラが現れたがすぐに消えたという話だった。
「ねぇ、こなた達の話を聞く限り浅倉って人危なさそうな気がするけど……気のせい?」
「気のせいじゃないと思う」
「どうしてザフィーラいきなり消えたんですかね?」
「近くで戦いがあって、ヴィヴィオ達を巻き込まない様にしたんじゃないのかな?」

 浅倉やザフィーラ、そしてメールにあったキングが気にならないではないがひとまず保留にし話を進めていく。
 その後、2人は駅へ向かいその近くに15人以下になれば開く車庫の存在を確認してデュエルアカデミアに向かい―――

「ルルーシュと出会った―――でも、どうして? 確かルルーシュの友達だったはずじゃ……」
 スバルにはその状況は把握していたがその理由はどうしてもわからなかった。その時のルルーシュの表情から何か悲しい事があったのはわかるが、その事はどうしてもルルーシュに聞けなかったのだ。

「……」
 こなたの表情が重い。こなたはその理由を知っている、だがそれはこなたの口から語って良い事ではなかった。しかし、誤解に巻き込まれた者もいる以上、誤解を解く為には説明しなければならない事だ。
 その一方、事情の知らない小娘が口に出来る程軽い事ではない事は理解している。
「ルルーシュ……ごめん」
 一言彼に謝罪した。自分の判断で口にして良い事ではないが、スバルにルルーシュの事について誤解して欲しくなかったのだ。ルルーシュが誰よりも守りたかった人に―――故に―――

「ちょっと長くなるけど―――」

507Blue Swear―――蒼い誓い ◆7pf62HiyTE:2010/01/05(火) 20:52:36 ID:1Jtbl6vI0





 ―――一旦、舞台を戻そう―――





 スバルはこなたの証言を元に瓦礫や炭化した物体をどけていきある物を探していた。
「ルルーシュ……ヴィヴィオ……シャーリー……」
 炎の巨人の規模を考えれば何も残らず灰になっている可能性は高い。それでも、スバルは探していたのだ。
「!! もしかしてこれ……」
 そうして『それ』は見つかった―――いや、正確には『それらしい』物だ。
 それはルルーシュとシャーリーの遺体である。スバルは首輪を回収する為にここに来たのだ。

 当初の予定ではアカデミアに戻りそこに放置している2つの首輪を回収するつもりであった。だが事態は急を要する上、倒壊する可能性があるアカデミアにこなたを連れて戻るのは危険だ。
 故に、チンクには悪いがアカデミアには戻らず、アニメイトにある首輪を回収する事にしたのだ。
 正直な所、仲間の死体から首輪を取る事には抵抗はある。ましてはスバルの首輪採集の手段はあまりにも残酷なものだ。
 スバル達の手元には都合の良い刃物はない為首輪採集は難しい。しかしスバルには自身のIS振動破砕がある。これを使い頭部を破壊すれば首輪採集は可能だろう。
 だが、あまりにも強力すぎる為、首輪までも粉砕してしまう可能性はあった。いや、それ以前に死体とはいえそれ以上傷付けたくは無かった。
 しかし脱出の為には首輪は確保しなければならない。その為にルルーシュ達の死を無駄にする事だけは決して許されない。故に死体の破壊という残酷な行為をスバルは行おうとしていたのだ。

 が、結論を言えばスバルが振動破砕を使う必要は無かった。その理由は簡単な事、既に2人の遺体はバラバラになっていたからだ。そして、その残骸の中に2つの首輪があったのだ。
 何故、2人の遺体がバラバラになっていたのだろうか?
 2人の傍にはシャーリーが所持していたルルーシュとシャーリーのデイパックがあった。重要なのはルルーシュのデイパック、その中には小タル爆弾と火炎瓶があった。そう、炎がデイパックを焼いた際にそれらに引火し爆発したという事だ。
 業火と至近距離からの爆発、これらにより2人の遺体はバラバラとなって焼かれ、どれが誰のどの部位のものかの判断がつけられなくなってしまったのだ。
 あまりにも無惨な話と言える、しかし不幸中の幸いか首輪は頑丈だったせいかその形を保っていた。スバルはその2つの首輪を手に取って眺める。

「守れなくてごめん……」


 こなたはスバルにルルーシュがこの殺し合いに連れて来られるまでに何をしてきたのかを話した。
 妹ナナリー・ランペルージと共に祖国に捨てられ日本に送られ、その日本もその祖国によって侵攻を受けた事、
 魔女C.C.と出会い彼女からギアスを与えられ、最愛の妹ナナリーが望む優しい世界を手に入れる為に漆黒の魔王ゼロとなって立ち上がった事、
 仮面を身に付け素顔を隠し、多くの者を騙し続け、数多の犠牲を出してきた事、
 心を傷付けてしまったシャーリーの記憶、初恋を抱いた皇女の命、そして親友との絆を自身の行動によって失い続けていった事を―――

 客観的に言えば、ルルーシュのしてきた事は決して許される事ではなく、同時にそれによって自身の大切な物を失うというのは自業自得でしかない。


 ―――だけどルルーシュはずっとその事を悔やんでいたよ
 あたしが口にして良い事じゃないけどさ―――


 こなたはそう口にし、それらの事やこの場に来てからも自分を守る為にディエチが犠牲になった事を語った時のルルーシュは辛そうにしていた事を話した。

508Blue Swear―――蒼い誓い ◆7pf62HiyTE:2010/01/05(火) 20:53:37 ID:1Jtbl6vI0


 ―――これはあたしの想像だけど……ルルーシュもきっとあたし達と同じだったと思う―――
 ―――あたしがかがみんやゆーちゃん達、それにお父さんやゆい姉さん達と楽しく過ごす様に―――
 ―――きっとルルーシュもナナリーちゃんやシャーリー達とそうしたかったんだと思うよ―――
 ―――もしかしたら、同じ立場だったらあたしだってそうしていたかも知れないし―――


 ―――それって、そんなにいけないことなのかな?―――


 ルルーシュの世界にいた自分は彼の事を何処まで知っていたのだろうか? いや、ルルーシュの様子を見る限り、きっと全てを知っていただろう。
 恐らく、その世界の自分はそれでも彼を守ろうとしていたのだろう。
 ここにいる自分でもルルーシュの心情はある程度理解出来る。家族や友人といった身近な人間の幸せを願うのは誰だって同じだ。
 スバル自身詳しくは知らないがフェイト・T・ハラオウンやシグナム達がPT事件や闇の書事件を起こしたのと何も変わらない。
 行動そのものは許されざる事であっても、その根底にある願いだけは誰にも否定する事は出来ないのだ。
 故に、スバルはルルーシュの行動を否定したりはしない。

 だが、ある程度の理解は出来ても所詮そこまで、一般的な見解の域を出るものではない。
 助けたいとは思っても、具体的にどうすれば良かったのかは全く答えられないし安易に答えてはいけないと感じた。
 彼を助ける事が出来たのはやはり彼の世界にいた自分でしかないという事だ。

 確かにルルーシュはどんな世界にいても変わらないと言ってくれたが自分が彼の知る自分では無い事を知って全くショックを受けないわけがない。
 あれだけの目に遭ってようやく出会えた自分がルルーシュの事を全く知らないと知ったらどれだけ辛いだろう? 一番支えてあげられる人物がそうではなかったと知ったら―――考えるまでもない。
 何より辛いのはそんな彼を真の意味で助けてあげられない事だ、スバルはそれが何よりも辛かった。


 守れなかった少年とその友人の首輪を眺めながらスバルは自分の無力さを悔やんだ。何度と無く同じ事を感じては立ち直ってきたが辛い現実に直面する度にまたしても同じ事を感じてしまう。
 今回に関しても何処かに自分のミスがあったかも知れない。仮の話だがアニメイトに踏み込む時に周囲をもう少し注意深く警戒していたならば違う結果もあり得たかも知れない。
 ある意味ではルルーシュ達を殺したのは自分と言える、それはとても辛い事だ。

509Blue Swear―――蒼い誓い ◆7pf62HiyTE:2010/01/05(火) 20:54:27 ID:1Jtbl6vI0

 だが、いつまでも俯いているつもりはない。
 そんな姿をルルーシュが望むか? シャーリーが望むか? ヴィヴィオが望むか? チンクが望むか? 死亡した高町なのはが望むか? ティアナ・ランスターが望むか? ギンガ・ナカジマが望むか?
 答えは否、断じて否、誰もそんな事を望んだりはしない。

『いつも笑顔で、楽しそうで……精一杯真っ直ぐに生きてる、スバル・ナカジマだ』

 そうだ、皆それを望むはずだ。ならばどうするかなど考えるまでもない、最後の最後まで精一杯生きるだけだ―――

『……進むことだけが、その死者への弔いだと思っていた』

 こなたに自身の事を語る時、ルルーシュはそう口にしていた。死んでしまった者はそれ以上前に進む事は出来ない。ならば生きている者が前に進まなければならないだろう。
 ここで足を止める事など論外だ、死んでしまった者達の為にも生きている自分達は前に進む―――精一杯生きるのだ。
 そうしなければ彼等の死が無駄になってしまう、それこそ彼等に対する最大の裏切り、絶対に許されない。

 その為にも、何としてでもこの殺し合いを破壊しなければならない。スバルは決意を新たにした。


 その最中、スバルは改めて考える。一体誰が炎の巨人を繰り出したのだろうか? 巨人そのものは参加者というより何かの召喚獣と言った所だろう。
 と、ここでスバルの脳裏に2人の召喚術師が浮かび上がる。だが、すぐさまそれを否定した。炎の巨人は2人が使役するものではないからだ。
 その一方で冷静に考えてみる。召喚術師の召喚がそのまま使えるという事があるだろうか? デバイス同様他の人に使える様にしつつ本人にはそう簡単に使えない様にした方が自然だ。
 更にこの場では他にも召喚を行う方法が存在する事をスバルは把握している。1つがデュエルモンスターズのモンスター、そして仮面ライダーの繰り出すモンスターだ。
 だが、スバルの見立てではどちらも違う様に思えた。仮面ライダーのモンスターにしてはあまりにも大きすぎだし、デュエルモンスターズのモンスターだと考えるには引っかかる点があったのだ。
 なお、スバルはチンクの両腕を焼いたのもあの炎の巨人だと考えている。チンクからは詳しくは聞けなかった為断定は出来ないが瞬時にチンクの両腕を一気に炭化させた事からその可能性は高いだろう。
 だとすればデュエルモンスターズのモンスターの可能性は低くなる。レイの話ではカードによる召喚は使い捨てらしいからだ。故に同じカードが複数無い限りその可能性は低いと言えよう。
 が、召喚方法が他に無いとは言えない。何者かが他の召喚手段を使い召喚を行った可能性はあるし、もしかしたら自分の仮説そのものにも何処か穴があるかも知れないだろう。

 これ以上考えても仕方が無いと思い、残るヴィヴィオの遺体を探す事にした。
「たしか事務室に寝かせていたって言っていたから……この辺かな?」
 事務室があったであろう場所に向かうが、
「え?」

510Blue Swear―――蒼い誓い ◆7pf62HiyTE:2010/01/05(火) 20:55:24 ID:1Jtbl6vI0





 ―――再び時間は遡る―――





「それで、ルルーシュとシャーリーの間に何があったの?」
 こなたからルルーシュの動向を聞いたスバルとしてはその事について何か思う所はある。しかし、今重要なのはアカデミアにてルルーシュとシャーリーの間に何が起こったのかだ。
「ルルーシュの話だと、シャーリーの記憶を消したという事だったよね」
「確かゼロがシャーリーのお父さんを殺して、ルルーシュがゼロだという事をシャーリーが知って傷付けた……という話でしたよ」
「だけどシャーリーはルルーシュの事を覚えていたらしいんだ。でも、ルルーシュがゼロだという事は知らなかったらしいんだ」
「ヴィヴィオの話では天道って人の事をゼロだと呼んでいたらしいですよ」
「ちょっと待って……どうして天道という人をゼロって呼んだの?」
「「さぁ?」」
 ゼロの仮面を天道が持っていたからなのだが、その事を知らない3人にはその理由がわからなかった。
「あれ、おかしくない? ルルーシュの話が事実だったらシャーリーがそこまでルルーシュに会いたが……あ!」
 スバルはその理由に気が付いた。
「そういう事だったんだ」
「え、どうしたの?」
「一人で納得してないで説明してくださいよ!」
「うん……」
 スバルは2人に参加者は異なる平行世界だけではなく、異なる時間軸から連れて来られている可能性がある事を話した。そして今回の事はそれによるものだという事を話したのだ。
 つまり、ルルーシュが連れて来られたのはシャーリーの記憶を消した後から、一方シャーリーは記憶を消される前からだという事だ。
 こなた達もその事はある程度予想できていたためその事については容易に理解出来た。
「だからあの時、ルルーシュは……」
 スバルがルルーシュからその可能性を聞かされたのはシャーリーがアカデミアを去った後、ルルーシュもそこでその事を知ったからスバルに話したのだろう。

 ともかく、シャーリーはあの場でルルーシュがゼロだと知り、ルルーシュに自分を殺すかと迫られそのまま去っていったという事だ。
 その後、アニメイト前にヴィヴィオを置いて再びアカデミアに向かったという話だった。
 一方でヴィヴィオはこなた達と合流したわけだが、そこでルルーシュの治療を行う一方で服を着替えたのだ。

 その後、治療が終わりルルーシュの意識も戻り一段落付いたらシャーリーが戻ってきたのだ。その際に今度は2人でちゃんと話し合い無事に和解出来たのだ。
「で、2人の邪魔にならない様にと思ってあたしとリインは戸締まりしてヴィヴィオが眠っているのを確認してから見張りに行こうとしたら」
「あたしがいたと……」

 こなた達のいきさつは以上の通りだ。さて、ここでこなたの持っているデイパックの問題が出てくる。これは見張りに行く際にシャーリーが持っていたのを持ち出したという話だが、
「他にもルルーシュが持っていたはずのライフルも持って行ったんだけどね……でも、途中で落としたみたいだけど」
「でも、こなた達の話が確かならレイが持っているんじゃ……」
「何でシャーリーが持っていたのって話だよね」
「……あ!!」
「どうしたんですかリイン曹長?」
「こなた! 確か彼女こう言っていたですよ、赤いジャケットの女の子を撃ったって……」
 赤いジャケットの女の子が示す人物、それはレイの事に違いない。レイが持っている筈の荷物をシャーリーが持っていた事から考え、シャーリーがレイと遭遇した際に彼女を射殺しその後倒れたレイの荷物を持ち去っていったのだろう。
 シャーリーがアカデミアに向かっていた事からレイと遭遇する可能性は高いのでこなた達もそれを予想していた。
 もっとも、その結末に関してはレイがシャーリーを殺す事しか予想していなかった為、逆の可能性は全く考えていなかったわけであるが。
「シャーリーがレイを撃ったのは……ルルーシュを守る為だったのかな……」
「衝動的だったと思うですよ」
 レイがルルーシュを殺そうとしていたのは間違いない。その事を知ってシャーリーは衝動的に彼女を撃ったのだろう。アニメイトでの彼女の様子から強いショックを受けていたのは明らかだ。
 レイの凶行を止める事が出来ず、またシャーリーに彼女を撃たせ死なせてしまった事についてスバルはまたしても沈んだ気持ちになった。
 こなたにしてもヤンデレ化したレイには二度と会いたくはなかったが死んで欲しいと思ってはいなかった為、やはりショックを受けていた。当然、リインにしても仲間だった人物の死を望むわけがない。
 とはいえ何時までも悲しんでいるわけにもいかない為話を進めていく。

511Blue Swear―――蒼い誓い ◆7pf62HiyTE:2010/01/05(火) 20:56:19 ID:1Jtbl6vI0



 今度はスバルの方で起こった事だ。探索を終えて戻るとエントランスには悲しげな表情をしたルルーシュがいた。これまでの話を統合して、シャーリーとルルーシュが出会い別れたのだろう。
 その後スバルはシャーリーを探しに周辺を回ったが彼女と出会う事は出来ず、その代わりに全身に火傷を負い両腕を失ったチンクを見つけた。

「火傷? それってもしかして……」
「多分……アニメイトを焼いたのと同じ可能性が高いと思います」
 その後、彼女を連れてルルーシュの元に戻り、ルルーシュは保健室に向かった。そしてチンクから詳しい話を聞いたのだ。
 チンクの話では天上院明日香、ユーノ・スクライア、アンジール・ヒューレーが味方でアレクサンド・アンデルセン、ヴァッシュ・ザ・スタンピード、黒いコートの少年は殺し合いに乗っているという話だった。黒いコートの少年は恐らく万丈目準の事だろう。
 そして放送後、新たな来訪者が現れたのだ。
「じゃあその人が?」
「はい……」
 その来訪者の攻撃によりアカデミアは致命的な打撃を受け、さらに来訪者の繰り出したモンスターにチンクが殺されたという話だ。そして、その来訪者は仮面ライダーに変身し襲いかかって来たのだ。
 スバルは戦いにこなた達を巻き込まない為にアカデミアから離れたのである。

「その人はどんな人だったですか?」
「そ、それは……」
「さっきからどうも歯切れが悪いですけど、どうしたんですか?」
 リインの指摘通り、新たな来訪者の話になってからスバルは何処か口ごもっていた。その様子を見て、
「……っち?」
 こなたが口を開いた。
「こなた?」
「どっちだったの?」
「『どっち』って事は2人まで絞ったって事ですよね? どういうこ……」
「……かがみんだったの? それともつかさだったの?」
 こなたの示した答えはどちらも自身の友人だった。
「ちょ……まさかこなた、自分の友達が殺し合いに乗っているなんていうんじゃないですよね? 駄目ですよ、そんな事言ったら……スバルも違うって否て……」
 そこまで口にしてリインも何故スバルの歯切れが悪くなったのかに気が付いた。
「ち、違うですよね。シャマルかヴィータだったんですよね? だから言い辛かったんですよね?」
 だが―――
「かがみさんだった……」
 それはまさしくこなたの推測通りだった。
「そっか……」
 意外にもこなたは落ち着いていた。
「で、でも、かがみさんが殺し合いに乗っていたのはバクラが操っていたからだから……」
 何とか取り繕うとするものの、
「大丈夫、予想していなかったわけじゃないからさ。みんな殺して全部元通りにするとか考えたり、違う世界の連中だから殺しても大丈夫だって考えたりとかさ……」
 そう答えるこなたに対しこれ以上強くは言えなかった。
 柊かがみとの戦いでレヴァンティンを奪われ、左腕も負傷したものの何とか対処した後、こなた達を探していたらアニメイトの前でハイパーゼクターを見つけ、中に入ろうとして、
「あたし達に出会ったわけだ」

 そんな中、スバルは1枚の名簿を取り出す。それはチンクが所持していた既に死亡しているフェイトの名簿である。そこには彼女が協力者、保護対象、要注意人物がグループ分けして記載されていた。
「あれ? あたしやかがみん、それにつかさの名前があるよ。もしかして……」
 それを持っていたのは自分の世界のフェイトなのではと考える。しかし、
「あ、でもスバルの名前が無いから違うか」
 小早川ゆたかのクラスにスバル達が転入していた事から、そのフェイトがスバル達を知らないのはおかしいと考え自身の仮説をすぐさま否定した。
「……多分、フェイトさんはつかささんに会ったと思います」
 スバルはつかさはフェイトに保護されたのではと考えていた。しかし、チンクがフェイトの首輪を持っていた事を踏まえ彼女の死亡は恐らく最初の放送からそう間もないタイミングだと推測される。
 つまり、つかさはそれ以後独りぼっちになっている可能性が高いという事だ。
「つかさ……」
 それを聞いてもこなたは何処か落ち着いていた様だった。


 そして、周辺への警戒を怠らず再びアニメイトへと向かったのである―――

512Blue Swear―――蒼い誓い ◆7pf62HiyTE:2010/01/05(火) 20:56:51 ID:1Jtbl6vI0





 ―――再び舞台は戻る―――





 こなたはかがみとつかさの事を考えていた。かがみが殺し合いに乗り、つかさは保護してくれた人を失ったという状況、気にならないわけがない。当然ショックを受けていないはずがないし信じたくはない内容だ。
 このタイミングでリインからプレシアとフェイトの関係を確認しようとしたのはその事から一旦思考を外す為のある種の逃避だったのかも知れない。
 とは言え、何時までも逃避するわけにはいかない。かがみとつかさの事について真剣に考えていかなければならないだろう。

 ところで、何故こなたは襲撃者がかがみかつかさのどちらだと考えたのだろうか? 友達を信じるならばその思考に至ったりはしないのではなかろうか?
 勿論、こなただって友達を疑いたくはないし出来れば違って欲しいと思っていた。
 だが、ルルーシュから親友と敵対しているという話、リインから家族が凶行に及ぶ可能性があるという話を聞き、レイやシャーリーが凶行に及んだという現実を目の当たりにしたのだ。故に自分達が例外とは思えなかった。
 いや、それ以前にもしかしたらこなた自身でさえも殺し合いに乗っていた可能性があったのだ。

 赤いコートの男をこなたのナイフで殺してしまったら?
 スバルが自分を助けてくれなかったら?
 ルルーシュから彼自身の話を聞かなかったら?
 リインから彼女の家族の話を聞かなかったら?
 逃げている最中にヴィヴィオを保護出来なかったら?

 これらの事が無ければ今のこなたは無かったと言っても良い、何かが違えば違う結果もあったという事だ。
 それは間違いなくかがみ達にも言える事だ。半日を越える時間の中での出来事次第でどうなるかなど誰にも予想出来ない。

 普通の少女達が何故嬉々として殺し合いに乗る? 有り得ないのではなかろうか? そこまでして彼女達にとって何の意味があるというのか?
 単純な理由だ、こなた達の望みは元の日常への帰結。プレシア・テスタロッサの言葉を信じるならば優勝することでそれは叶えられるだろう。
 死んだ人達を全員生き返らせる、それが不可能ならば殺し合いに参加していた記憶を全て消して貰う、そうすれば何の問題もなく元の暮らしに戻れると考えてもおかしくはない。
 参加者が異なる世界から連れて来られているならばなお都合が良い、違う世界の人物ならば自身の世界には何の影響も無いのだから。


 故にかがみ達が殺し合いにのっても何の不思議も無いという事だ。


 本題に戻ろう。スバルが襲撃者の話の際に口ごもる様子を見てこなたは気づいたのだ。襲撃者は自分の友人だと―――
 リインから家族が殺し合いに乗る可能性を聞かされていた為、スバルとリインは自分達の仲間が殺し合いに乗っていたとしてもそれを受け入れる事が出来ると考えていた。故に言葉を濁す可能性は低い。
 また、襲撃者が未知の人物であったとしても、外見やその能力はわかっていただろうからやはり言葉を濁す理由はない。
 となれば言葉を濁す理由は自分にかがみかつかさが殺し合いに乗っていた事を聞かせたくなかったからだろう。
 スバルが伏せようとした気持ちは理解出来るし、こなたにしてもその事を出来れば信じたくはない。だがそれでなくても足手纏いとなっている自分がこれ以上負担になる事は許されない。故にこなたは非情な現実を受け入れる事にしたのだ。


 スバルによるとかがみは何度と無く殺されそうになりその心の隙をバクラに突