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チェンジ・ロワイアル

1 : ◆5IjCIYVjCc :2021/03/10(水) 22:47:46 7NW6U4wM0
【当企画について】
・様々なキャラに別のキャラの体を与えてバトロワをする、という企画です。
・コンペ形式で参加者の登場話を募集します。
・初心者から経験者まで誰でも歓迎します。

【参加者について】
・このロワの参加者は皆、自分の体とは別人の体で戦うことになります。
・参加者として扱われるのは体を動かす精神の方のキャラクターです。
・精神と体の元になるキャラの組み合わせは自由です。

【ルール】
・全員で殺し合い、最後に生き残った1人が優勝者となる。
・制限時間は3日。
・優勝者だけが元の体に戻れる。
・優勝者はどんな願いでも叶える権利を得る。
・参加者は皆爆弾入りの首輪を嵌められている。これが爆発すると如何なる存在でも死亡する。
・主催者は権限により首輪を独自の判断でいつでも爆破することができる。
・主催者が「これ以上ゲームを続けることは不可能」と判断したらその時点で全参加者の首輪が爆破される。
・参加者は最初、会場のどこかにランダムにテレポートさせられる。
・NPCなどは存在しない。
・ゲームの進行状況等は6時間ごとに行われる放送でお知らせする。


【コンペについて】
・期間は一ヶ月程度を想定しています。より詳しい期日は後日お知らせします。
・参加者となるキャラの出展元に制限はありません。
・候補話は複数人登場するもの、死亡者が出るものなどどんな内容でもOKです。
・投下された候補話の中から>>1が選出して参加者を決定、名簿を作成します。
>>1が投下した話は確定枠ではありません。キャラ被り・身体被りも気にせずに書いてください。
・参加者の人数は生存者が50人前後と考えていますが、場合によってはこれよりも増減することがあります。
・制限については書き手ごとにおまかせします。
・アイテム等の説明は各々の判断で載せてください。

【支給品について】
参加者にはデイパックというどんなものでも入る小さなリュックが渡されます。その中身は以下の通りです。
・地図:会場について記されている。
・食料(3日分):ペットボトルの水やコンビニ弁当など。
・名簿:参加者の名前が羅列してある紙の名簿。最初は入っていません。本編開始とともに配布について放送でお知らせされます。
・ルール用紙:ルールについて書かれたA4サイズの紙。
・ランダム支給品:現実、フィクション作品などを出展とするアイテム。最大3つまで。
・身体の持ち主のプロフィール:このロワで与えられた体の元の持ち主について簡単に記してある。記載事項は名前、顔写真、経歴、技能といったものなど。


【地図について】
地図:ttps://w.atwiki.jp/changerowa/pages/17.html
・地図は上が北となります。
・川は基本的に北から南に向かって流れます。
・施設は自由に追加することが可能です。

【開始時刻について】
・開始時刻は夜中の24時からです。

【状態表について】
・状態表には以下のテンプレート例に示すように[身体]の欄を表記することを必須とします。
【状態表テンプレート例】
【名前@出典】
[身体]:名前@出典
[状態]:
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:
1:
2:
3:
[備考]

・死亡者が出た時は以下のように表記してください。
【名前@出典(身体:身体の名前@出典) 死亡】


まとめwiki:ttps://w.atwiki.jp/changerowa/


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2 : ◆5IjCIYVjCc :2021/03/10(水) 22:48:04 7NW6U4wM0

それでは、OPの投下します。


3 : ◆5IjCIYVjCc :2021/03/10(水) 22:49:18 7NW6U4wM0
そこは何もない暗闇の空間であった。
この場所には天も地も無かった。
地に足を付けて立っているのではなく、まるで浮遊しているような感覚で彼らはそこにいた。

彼らはそれぞれ、自分以外にもこの空間に誰かがいることは認識できた。
だが、そこにいるのが誰であるのかを確認することはできなかった。
この場にいる者達は皆、ただの黒い人影のように見えた。
それは自分自身も例外ではなかった。
自分の体に視線を向けても、薄暗い輪郭が「ぼやあ…」となっている様にしか見えなかった。

この場にはたくさんの人影があった。
その人数は多く、一目見ただけでは数え切れないほどであった。
彼らはまるで水中にただよう微生物のような状態でこの空間に存在していた。

『皆さんこんにちは。よく集まってくれました』

突如、誰かの声が響いた。
その声は脳内に直接響いた。

この声に対し、別の誰かが返事をしようとした。
だが、その誰かの声が聞こえることはなかった。

『皆さんにはこれから殺し合いをしてもらいます』

謎の声はそう宣言した。
その宣言にはすぐに注釈がつけられた。

『ただし、この殺し合いは特殊な形で開催することになりました』

『皆さんは自分とは別の人物の体で戦ってもらいます』

『そしてこの殺し合いに勝ち残ったただ1人だけが元の体に戻ることができます』

(殺し合いだって?)
(一体何を言っているんだ)
(別の体に入るってなんだよ)
(そんなことができるのか?)
(そもそもこの声誰なんだ?)

そんなことを思ってもこの場で口に出すことはできない。
声を出している人物を探そうとしても動くこともできない。

『いきなりこんなことを言われても訳が分からないかもしれません』

『そこで、こちらをご覧ください』

そう言われたと同時に、目の前に全身を映す鏡が現れた。
鏡に映る像は確かに自分とは別の人物になっていた。
この時ようやく、肉眼でも自分の姿が黒い影ではなく、はっきりと色のある体を確認することができた。
なお、この時点でも他の人物はまだ黒い影に見えていた。

どうやら今はまだ姿を確認できるのは自分だけのようだ。
そしてその自分の姿は確かに鏡に映っていたのと同じく、別人のものになっていた。


4 : ◆5IjCIYVjCc :2021/03/10(水) 22:50:08 7NW6U4wM0
『理解はできましたか?』

『皆さんの体は私たちの意思で自由にできます』

『元の体に戻りたかったら、戦って殺し合うしかありません』

『他人の体で戦うのは不便でしょうが、そこはご了承願います』

謎の声はあくまでも殺し合いこそがこの状態を解決する唯一の手段であることを強調する。

『まあ…これでもまだ私たちに逆らう人はいるでしょう。だから、もう1つ見せておきます』

次の瞬間、皆の視線が漂っていた者のうちの1人だけに引き寄せられた。
どれだけ距離が離れていようと、その人の姿ははっきりと捉えることができた。
そして、その人の首に金属製の首輪が出現した。

『皆さんにはこの首輪が巻かれています』

『そしてこの首輪の効果は…』

『ボンッ!』

小さな爆発音がした。
それは首輪が爆発した音だった。
首輪を着けられた人物は頭と胴が分かれた。
頭部は胴体から離れていき、そのまま宙を漂っていく。

『このように首輪には爆弾が仕掛けられています』

『この爆弾は私たちの意思でいつでも爆破することができます』

『私たちに逆った者はこのように始末することとなります』

『そうならないよう、皆さんには首尾よく殺し合いを進めてほしいものです』

謎の声は自らがこの惨劇を起こしたにも関わらず、平然とした丁寧な口調のまま説明を続ける。

『それから、優勝者には【どんな願いでも叶えられる権利】が与えられます』

『この権利のために戦うのもよいでしょう』

『簡単には信じられない人もいるでしょうから、これを見てください』

すると先ほど見せしめとして殺された人物の、離れていった頭部が胴体に引き寄せられるよう戻っていった。

頭と体は接合し、先までピクリとも動かなかったその人物の体は再び生を取り戻した。
蘇ったその人物自身も驚いたように自分の体を確かめるような挙動をする。

『このように私たちは死人をも甦らせることができます』

『これでもまだ信じられない人は、それでも構いません』

『この人は見せしめなので、もう一度殺しておきます』

その言葉で生き返った人物は慌てているような反応を見せる。
だが、そのことに関わらず爆発音は再び鳴ってしまった。
そして蘇った命は再び失われることとなった。

ルール説明はまだ続く。

『また、皆さんにはデイパックを支給します』

『この中には殺し合いに役立つアイテムやルール用紙などが入っています』

『その他の細かいルール等はこの用紙で確認をお願いします』

『ゲームの進行状況等は一定時間ごとに放送でお知らせします』

『それでは皆さん、この殺し合いが良きものとなるよう祈っています』

それらの言葉を最後に、ルール説明は締めくくられた。

同時に彼らの意識はゆっくりと、暗闇に溶けるように沈んでいった。

どうやら、戦いが始まる時が来たようだ。

【主催者】???


5 : ◆5IjCIYVjCc :2021/03/10(水) 22:50:41 7NW6U4wM0
これにてOPの投下を終了します。
続いて、候補作をいくつか投下します。まずは一つ目の投下です。


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6 : ◆5IjCIYVjCc :2021/03/10(水) 22:51:14 7NW6U4wM0
「…やれやれだぜ」

道路の上で大男が一人、そう呟いた。
彼は道路沿いに並んだ電灯の灯りを頼りに一枚の書類を読んでいた。
そこに貼られた顔写真は先ほどの謎の空間内において鏡で見た自分の姿と同じものであった。
頭の方へと手を伸ばし、写真の姿にある特徴的な髪型が本物であることを確かめる。

「どうやら、さっき見たものは夢じゃねえようだな」

その男…空条承太郎は自分が置かれた状況を受け止めた。
先ほどの説明通り、自分は確かに全くの別人の体になっていることを確かめた。

手に取っている書類、プロフィールによればこの体の男の名は燃堂力というらしい。
凶悪な顔つきをしているが、そこまで邪悪な男ではなくむしろ良い奴に分類されるらしい。
自分が持つスタンドのような特殊な能力のない普通の人間で、せいぜい常人より高い運動能力を持つ男であった。
他に特徴を挙げるとするならば、とんでもなくバカで心を読む能力があっても分からないくらい何も考えていないらしい。

(全く…厄介なことになったもんだ)

承太郎はこれまで、エジプトに向けてDIOを倒すために旅をしてきた。
そしてその目的は果たされ、これから日本に向けて帰還する予定だった。
だが彼は今、何者かによってこんな一風変わったルールの殺し合いの舞台に放り込まれてしまった。

(俺の体は今…どうなっている?)

承太郎が疑問に思うのは本来の自分の体の行方であった。

考えられる可能性の一つとして、この燃堂力という男と入れ替わっているということが挙げられる。

(だが…そうとは限らないかもしれん)

もし二人の人間の精神を入れ替えて殺し合いをさせるというならば、先の説明の際にそのことに言及してもいいはずだ。
説明では「別の人間の体で殺し合いをしてもらう」といったことしか言われなかった。

(それにこの燃堂力という男が俺の体に入っていてもいなくとも、俺の体の行方が分かるわけではない)

自分の体の行方について考えられる可能性は今のところ二つ挙げられる。
1.別の人間の精神が入れられた状態でこの殺し合いに参加させられている。
2.主催者が精神が無くなって抜け殻となった体を保管している

(…どちらにしろあまり良い状態とは言えねえな)

もしも前者だとした場合、見知らぬ他人が自分の体で殺し合いをしてしまうことも考えられる。
(燃堂力じゃないとしても)その見知らぬ人物が下手に動くことで殺害され、自分の体が使い物にならなくなってしまう可能性だってある。

後者だとした場合、これは自分の体が人質にされているも同然のことだと言える。
この場合では主催に反抗した時、抜け殻となった肉体だけを殺すと脅してくることが考えられる。

(だが、今はまだ深く考える必要はねえ)

見知らぬ他人に体を使われるということはお互い様なことだ。
自分だってこの燃堂力の体を傷つけて、一歩間違えれば死なせてしまう可能性がある。
いずれ体を返すつもりならば、傷つかないよう注意する必要があるのは全ての参加者に言えることなのだ。

そもそも承太郎はこの殺し合いを打倒しようと考えている。
つまり後者に関しては主催を倒した後から取り戻せばいいだけのことだとも言える。
脅してくるようならどうにかして先に取り戻してみせる。
その方法はこの戦いの中で自分の手で見つけ出してみせる。

50日間の旅を最後までやり遂げた自分なら、それも決して不可能とは言えない。

「スタープラチナ!」

そう叫ぶと承太郎の隣にスタンドの像が現れる。
その姿は本来のスタープラチナのままであった。
精神の力であるスタンド能力はたとえ他人の体でも問題なく使えるようであった。

「てめーらが何を企んでいるかは知らんが、この殺し合いは俺が必ずぶっ潰してやる」

顔を上げ、空の方へ向かって承太郎はそう宣言する。
それはこのゲームを仕組んだ主催者への宣戦布告であった。

(さてと…まずは協力者が必要だな)

これまでの旅でも仲間の協力があったからこそ目的を果たすことができた。
ならばこのような状況でも同じことが言えるだろう。
承太郎は協力者となる誰かを探すために道路の上を歩き始めた。

【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】
[身体]:燃堂力@斉木楠雄のΨ難
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:主催を打倒する
1:まずは自分に協力してくれる者を探す
2:主催と戦うために首輪を外したい
3:自分の体の参加者がいた場合、殺し合いに乗っていたら止める。
[備考]
・第三部終了直後から参戦です。
・スタンドはスタンド能力者以外にも視認可能です。


7 : ◆5IjCIYVjCc :2021/03/10(水) 22:52:18 7NW6U4wM0
一つ目の投下は終了です。
タイトルをつけ忘れていました。
タイトルは「Ψ強のスタンド使い」となります。

次に二つ目を投下します。


8 : 見るも無残な肉塊 ◆5IjCIYVjCc :2021/03/10(水) 22:52:51 7NW6U4wM0
鬼舞辻無惨は鬼である。
不死身の体を持ち、多くの人間の命を奪いながら1000年も生き続けた悪鬼である。

そんな無惨の弱点は日光である。
1000年間、無惨は日光を克服することだけを第一にして行動してきた。

おそらく、無惨は人間に戻る気はない。
不死身の鬼のまま日光を克服するつもりだ。

そして無惨はこのバトルロワイアルで不死身と日光の克服の両方の条件を満たす体を手に入れた。
だがその体は…

「フコッ、な〜〜〜、み〜〜〜〜、い〜〜〜〜〜(意訳:おのれ…!よくも私をこんな体に…!)」

無惨は地を這って動くことしかできない、体が崩れた『成れ果て』になっていた。

【鬼舞辻無惨@鬼滅の刃】
[身体]:ミーティ@メイドインアビス
[状態]:成れ果て、強い怒り
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:元の体に戻る。主催は絶対に許さない。
1:何とかして自由に動けるようになる
[備考]
・参戦時期は産屋敷邸襲撃より前です。
・ミーティの体はナナチの隠れ家に居た頃のものです。
・精神が成れ果てのミーティの体に入っても、自我は喪失しません。


9 : ◆5IjCIYVjCc :2021/03/10(水) 22:53:16 7NW6U4wM0
二つ目の投下は終了です。
次に三つ目を投下します。


10 : ◆5IjCIYVjCc :2021/03/10(水) 22:54:42 7NW6U4wM0
黒い髪に赤い服の女が山の中を傾斜を駆け下りていた。
女の手の甲には赤い紋章のようなものが浮かんでいた。
彼女はまるで恐ろしいものでも見たかのような表情で走っていた。
つまり、彼女は何から逃げているようだった。

「ぎゃあっ!」

そんな彼女の足を一本の矢が貫いた。
それは普通の矢ではなく、実体のないエネルギーの矢であった。
足を射られた女はそのまま坂を転がり落ちた。
そして木にぶつかることでようやく止まった。

「い、嫌…」

彼女に矢を放った張本人が追いついてきた。
そいつを一言で表せば、白い鎧武者のような姿をしていた。
そいつはまるでメロンの皮のような鎧を纏っていた。
そして顔は兜によって覆い隠されていた。

白の武者は自らの腰に巻かれたベルト――ゲネシスドライバーに手を伸ばす。
そして、そのベルトに付いたハンドルグリップを一回押し込んだ。

『メロンエナジー・スカッシュ!』

電子音声が流れ、武者が手に持つ赤い弓――ソニックアローの刃にエネルギーが充填される。

「やめっ…!」

女の最期の言葉をさえぎって、武者は弓についた刃を振るう。
エネルギーが解放され、刃からメロン色の斬撃が放たれた。

身を守るものもなく、斬撃は女の体を簡単に切り裂いた。
その斬撃は生身の体には強すぎたのか、女の体は切り裂かれたところから上と下で分かたれてしまった。
それだけでなく女が寄りかかっていた木も同時に幹を切断され、倒れていく。
切り口から噴き出た鮮血によって、白いライドウェアも鎧も赤に塗られていく。

(そんな…私がまた…)

女が最期に思い浮かべたのはこの会場に来る直前の、自分が死ぬ瞬間のことであった。



かつて女は自分の上司によって殺害された。
その理由は単純、弱いからであった。

彼女は元々、人を喰らう不死身の鬼であった。
だから決して普通の人間よりは弱くなかった。
だが彼女は自分よりも強い人間に出くわした時、逃げようと考えていた。
だから殺された。

そんな彼女はこのバトルロワイアルにおいて人間の体を持って蘇生された。
この戦いの舞台に降り立った直後の彼女は、恐怖心に満たされていた。
自らの魂に刻み込まれた死の記憶、自分の命を握っている爆弾首輪、傷ついても再生しない人間の体、
それらの要素が彼女の精神を追い詰めていった。

だからだろうか、自分の体がどこの誰で、どんなことができるのか確かめもしないで彼女は走り出した。
それは他の参加者を探し、殺すための行動であった。
ほぼ錯乱状態になった彼女は後先考えず主催の言いなりに殺し合いをしようとした。

そして彼女が見つけたのが先ほどの白武者であった。
最初は戦おうとした。
デイパックの中から金属バットを取り出し、それを持って殴りかかった。
だが、その金属バットはあっさりと破壊された。
瞬間、彼女は相手から大きなプレッシャーを感じた。

その後の判断は早かった。
武器を破壊され、自分はこのままでは相手に勝てないと無我夢中で逃げ出したところまでは良かった。
だが、相手が悪かった。
あっという間に追いつかれ、彼女は体を切断されてしまった。
これが鬼の体だったのなら再生することはできただろう。
しかし今の彼女はそんなことはできない人間の体であった。

せめてもう少し冷静に行動できればこんな結末にはならなかったであろうか。
けれども、一度起こった結果はもう覆せない。
かつてと同じく理不尽な運命を彼女は辿ってしまった。

そして女は無念のまま、その命を再び失った。

【零余子@鬼滅の刃(身体:遠坂凛@Fate/stay night) 死亡】


11 : 白い悪魔 ◆5IjCIYVjCc :2021/03/10(水) 22:55:16 7NW6U4wM0


白い鎧武者ことアーマードライダー斬月・真は変身を解除し、鎧の下にいた変身者の姿を見せる。
現れたのはほんわかした癒しの印象を持たせる、何の変哲もない普通の少女であった。
事実、少女は本来ならその見た目通りの心優しい性格の少女であった。
だが、この殺し合いにおいてはその精神は全く別の人物のものとなる。

少女――櫻木真乃の体に巣食った邪悪な心の名はン・ダグバ・ゼバ、グロンギの頂点に君臨する存在である。


「なるほど、リントも面白いものを作ったね」

ダグバが斬月・真に変身していた理由は単純、その力を試したかったからだ。
付属の説明書からこのベルトが戦極凌馬というリント(=人間)によって開発されたことやその使い方といったことは把握している。
その力を試すためならば相手は誰でもよかった。
さっきの女はたまたま出くわしたから殺しただけだ。

「…にしても、まさかリントの体でゲゲルをすることになるとはね」

グロンギは本来、体の中に仕込んだ魔石ゲブロンの力で怪人の姿に変身してゲゲル(=殺人ゲーム)を行う。
しかしこの場においては何者かにより何の変哲もないリントの体でゲゲルをやらされることになった。
グロンギの体でなくなったならば、ゲゲルを実行するのも難しくなってしまう。

「今は、これがあるからいいかな?」

だがダグバは今、魔石の代わりに自分に力を与えるための道具を手に入れていた。
もしグロンギの体のままであったのなら、これを使おうと思ったであろうか。
もしかしたら主催は自分にこれを使わせるためにリントの少女の体に自分の精神を封じ込めたのかもしれない。

「こんなゲゲルは初めてだけど…僕を笑顔にできるのなら、なんだっていいか」

ダグバはこんなルールの戦いでも楽しむことに決めていた。
たとえゲネシスドライバーがあっても本来の体でない以上、彼の実力は十分に発揮することはできない。
けれども戦いで優勝できればいつでも元の体に戻ることはできる。
元々行うつもりだったクウガとの決着はそれからでいいだろう。

「そういえば、クウガはここにいるのかな?」

ルール上、もしクウガがここに居たとしてもその中身はこれまでグロンギ達を殺してきたクウガではない。
そんなクウガが究極の闇を持つ存在になるかどうかは分からない。
仮にいたとしても、そもそも自分が究極の闇をもたらせる体ではないため、自分の期待通りの戦いを行うことはできないかもしれない。

「まあ、それはクウガがいたら考えることにしようか」

とりあえず今は状況に合わせて自分以外の参加者を殺しつくすことにする。
ダグバは先ほど殺した相手のデイパックを回収し、そして次の獲物を探すべくその場を立ち去った。


【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】
[身体]:櫻木真乃@アイドルマスターシャイニーカラーズ
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品×2、ゲネシスドライバー@仮面ライダー鎧武、メロンエナジーロックシード@仮面ライダー鎧武、ランダム支給品0〜4(零余子の分も含む)
[思考・状況]基本方針:ゲゲルを楽しむ
1:次の獲物を探す
[備考]
・48話の最終決戦直前から参戦です。

【ゲネシスドライバー@仮面ライダー鎧武】
エナジーロックシードを装填し、新世代アーマードライダーへの変身に用いられる変身ベルト。

【メロンエナジーロックシード@仮面ライダー鎧武】
エナジーロックシードの一種。
ゲネシスドライバーへの装填によりメロンエナジーアームズのアーマドライダーへ変身することができる。
ここにおいてはゲネシスドライバーとセットで一つの支給品となっている。

【ソニックアロー@仮面ライダー鎧武】
エナジーロックシードを用いて変身するアーマードライダーの専用武器。
エナジーロックシードによってエネルギーが供給される限り、ほぼ無限に矢を放ち続けることが可能。


12 : ◆5IjCIYVjCc :2021/03/10(水) 22:55:43 7NW6U4wM0
三つ目の投下は終了です。
最後に四つ目を投下します。


13 : 無能力者のΨ難 ◆5IjCIYVjCc :2021/03/10(水) 22:56:32 7NW6U4wM0
とある街中にラーメン店があった。
その店内でテーブルを挟んで二人の男女が向かい合って座っていた。
男の方は濃いピンク色の髪で、緑の眼鏡をかけ、頭には二つのアンテナのようなものがあった。
女はポニーテールの髪型をしており、どこかアホの子そうな表情をしていた。

「でーすーかーらー!わたしは斉木楠雄さんじゃないんですってば!」

「お?何言ってんだ相棒?どう見たって相棒は相棒じゃねえか」

二人は言い争っているようだった。

この戦いの舞台において、外見と内面は一致しない。
今言い争っている二人も実際は男の方が精神は女で、女の方が精神は男のものだった。
だが二人の内、片方はそのことを理解できてなかったようだった。

「さっき謎の空間の中で説明されましたよね!?わたしたちをここに拉致した何者かは別人の体にして殺し合いをさせようとしているんですよ!ほら、あなたの体も変わっているでしょ?ほら、そこの窓ガラスを見て確認してください!」

「お?」

女(中身は男)の方が顔を横に向け、窓ガラスの方を見た。
そこには現在の彼の姿が映っていた。

「おお、外から何か女が見てるな。誰だこいつ?」

「違う、そうじゃない!」

思わず大声でツッコんでしまう。

「いい加減に気付いてください!今のあなたは女の子の体になっているんですよ!自分の体をよく見てくださいよ!」

「お?おぉ…」

机の上をたたきながら激しい見幕で怒鳴られたことで、彼はようやく自分の体の方を確認した。

「……なんだこりゃあ!?俺に胸があるじゃねえか!?」

男は自分の体に驚いた様子を見せる。
そして彼は自らにあるその胸に向けて手を伸ばす。

「おお、こりゃ本物か?」

「………そういうのはあまり触らない方がいいですよ」

相手の女は心底疲れたかのように男に注意を促す。
どんなにデリカシーの無い行動でも、これまでの方がよっぽど酷かった。
もはや胸を触る程度のことに大きくツッコミを入れる気力はなかった。

このようなやり取りをしていた二人の名前は、男の方は燃堂力、女の方は柊ナナと言った。



(何でこんなことになってしまったんだ)

柊ナナは自らに降りかかった災難を呪った。

初めに彼女に話しかけてきたのは燃堂力の方からであった。
彼女は燃堂が自分の体の元の持ち主と知り合いなようだったから彼の話に応じた。
ラーメン店の中にいるのは彼の方から誘ってきたためだ。
本当は男だということは言動から推測した。
名前も席に着いた時に聞いておいた。
だが実際によく話してみると燃堂は想像以上のバカであった。

自分たちの現状を理解していないばかりか、こちらを体の元の持ち主である斉木楠雄だと思い込んでいた。
何度自分が違うことを説明しようとしても、『どう見ても相棒だから相棒』と言ってなかなか理解しようともしなかった。
それどころか、自分が女の体になっていることにも気づいてなかった。
心が読める能力者だと自称できる程観察力が優れている彼女でも、燃堂力が次にどんな言動をするかは全く分からなかった。
自分は空気が読めないと自己紹介したこともあるが、目の前の相手の方がよっぽど空気が読めていない。
NPCはいないはずなので、店主を呼ぼうとしていたことからルールも確認していないのだろう。
これらの態度はわざとやっていることも疑ったが、嘘をついている様には感じられなかった。
おかげで相当苦労させられた。
それでも、彼女はこの燃堂力とコミュニケーションをとる必要があった。


14 : 無能力者のΨ難 ◆5IjCIYVjCc :2021/03/10(水) 22:58:00 7NW6U4wM0


柊ナナという少女は人類の敵と呼ばれる能力者たちのための殺し屋である。
本来なら任務に戻るためにこのような殺し合いはすぐにでも終わらせなければなかった。
だが、彼女はある人物の存在を知ってしまった。

(わたしが体を使っている斉木楠雄という男…プロフィールによればこの男はあらゆる能力を使うことができる超能力者らしい)

プロフィールそのものは燃堂と遭遇するよりも前に読んでいた。
その時、自分の精神が入れられたこの体の元の持ち主が本来のターゲット以上に危険な能力者であることを知ってしまった。
もしこのプロフィールに書いてあることが本当ならば、その推定殺害人数は自分が知る能力者たち以上となるだろう。

(もし書かれていた内容が本当のことならば、わたしはこの斉木楠雄という男を殺さなくてはならない)

柊ナナはこの超能力者を殺害することを決意していた。

(燃堂…お前をまだ生かしているのはこの斉木楠雄という男について情報が欲しいからに過ぎない)

プロフィールによれば、超能力者斉木楠雄はテレパシー、サイコキネシス、瞬間移動、透視、その他様々な能力を持っているらしい。
今の自分がこれらの超能力を使えないということは、能力は精神に由来するものだということは分かる。
それから、プロフィールには他にも気になる記述があった。

(この男が持つ幽体離脱の能力…これを応用すればいくらでも他者の体と精神をシャッフルできる。もしかしたらこの殺し合いにはこの能力が使われているかもしれない)

柊ナナは斉木楠雄をこの殺し合いにおいて主催側の人物だと疑っていた。
けれども、そうだと決めつけているわけではない。
主催者がプロフィールに偽の情報を書いている可能性だってあるのだ。
仮に主催側の者だとして、自分に体を預けて殺し合いをさせる理由も思い浮かばない。
しかし主催の正体が全く分からない以上、本当に正体に繋がるか分からなくともいいから、小さくてもヒントになる何かが欲しいのだ。

(そういったことをはっきりとさせるためにも燃堂…お前の情報が必要なのだ)

そのために彼女は何とかして燃堂力とコミュニケーションを取ろうとしていた。
斉木楠雄の知り合いを名乗る彼ならば、この体の男が本当に超能力者かどうかを知っているかもしれない。
もしそうでなくとも、斉木楠雄が超能力者ならば身の回りで不可思議な現象が起きたことだってあるかもしれない。

もちろん、そもそも斉木楠雄が超能力者ではない可能性についても考えている。
もしプロフィール通りの超能力者が存在していたとしたらこれを政府が放っておくはずはない。
そして自分が元々居た学園に送られてくるだろう。
これまでにこの超能力者がそこに来なかったのはそもそも超能力者ではないか、これまで能力を隠蔽してきたのか、あるいはそもそも別世界の存在なのか、様々な可能性が挙げられる。
そういったこともはっきりとさせるために情報が必要だった。

そして、それは思っていたよりも前途多難なことになりそうだった。
燃堂力のバカさ加減にはもう飽き飽きしてきたところだった。
もしも自分が短気なサイコキラーだったなら既に殺していたかもしれない。
だが自分が殺しをするのはあくまで人類を救うためだ。
こんなつまらない理由で殺すわけにはいかない。
そう自分に言い聞かせて柊ナナは燃堂力との会話を続けていた。

「いやー、まさか俺が女と入れ替わるなんてよお。こーゆー映画あったよな」

「…まあ、入れ替わりだと明言されてはいませんけどね」

そしてようやく燃堂に自分の体の変化を理解させることに成功した。

「ともかく!これで分かりましたか?わたしが斉木楠雄さんではないことに」

「………おお!そーゆーことか!」

余計な労力を使ってしまった気もするが、これで次の話に進めそうだ。
こうして、柊ナナはようやく胸をなでおろすことが…

「おめーは相棒の弟ってことだな!」

「違う!」

まだ無理そうだった。


15 : 無能力者のΨ難 ◆5IjCIYVjCc :2021/03/10(水) 22:58:35 7NW6U4wM0
【柊ナナ@無能なナナ】
[身体]:斉木楠雄@斉木楠雄のΨ難
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:まずは脱出方法を探す。他の脱出方法が見つからなければ優勝狙い
1:何とかして燃堂の誤解を解く
2:誤解が解けたら斉木楠雄に関する情報を聞き出す
3:能力者がいたならば殺害する
4:斉木楠雄が超能力者であることが確定し、なおかつこの会場にいるのならば殺害する
5:4の時のためにも元の体に戻りたい
[備考]
・参戦時期はお任せします。
・斉木楠雄が殺し合いの主催にいるのではないかと疑っています。

【燃堂力@斉木楠雄のΨ難】
[身体]:堀裕子@アイドルマスターシンデレラガールズ
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:お?
1:お?
[備考]
・参戦時期はお任せします。
・殺し合いについてよく分かっていないようです。
・柊ナナを斉木楠雄の弟だと思っているようです。
・自分は今の身体の女と精神が入れ替わったと思っているようです。


16 : ◆5IjCIYVjCc :2021/03/10(水) 22:59:08 7NW6U4wM0
これにて投下は終了となります。
先述したように、これらの候補話は確定枠ではありません。
キャラ被りや身体被りといったことも気にせずに書いてください。
候補話は今から受け付けますので、興味を持たれた方は是非ご参加ください。


17 : ◆EPyDv9DKJs :2021/03/11(木) 03:30:26 yq8JA14M0
投下します


18 : 血脈に刻まれた因縁 ◆EPyDv9DKJs :2021/03/11(木) 03:33:06 yq8JA14M0
 舞台となる最南端の砂浜にて、海を眺める一人の男性がいた。
 丸太のようながっしりと鍛え抜かれた筋肉に、
 筋肉に見合うかのような二メートル近くの巨漢。
 逞しくも優しい顔つきをした青年の姿だが、

「まったく、下らない催しに巻き込まれたものだ。」

 見た目の好青年とは裏腹に言葉遣いは荒い。
 この殺し合いはそもそも精神は別の誰かのものだ。
 だから見た目での判断が役に立つことはない、その典型例か。
 精神の名前はDIO。一世紀を超える数奇な因果を経験した邪悪の化身。
 死して尚、世界が変わろうともジョースターとの因縁は断ち切れない存在だ。

「やはり俺とお前の関係は、此処でも断ち切れないらしいな。」

 デイパックに入っていた持ち主のプロフィール。
 最初見たときは疑ったが、水に反射した顔で確信は持った。
 肉体の名前はジョナサン・ジョースター。DIOの友にして永遠の宿敵。
 最初はこの状況や顔に困惑したが、冷静さを取り戻せばいつも通りだ。
 傲岸不遜に形を与えたかのような、いつも通りの振る舞いへと変える。
 何をするかは決まっている。優勝を目指す以外にあるものか。
 これだけの力を有した主催者にも興味があると言えばある。
 出会って懐柔してみたいものだ。

(必要なものは信頼できる友である、か。)

 いつだったか天国へ行く方法を記したことがあった。
 天国へ到達するための条件は此処にはほぼないに等しいので意味はなく、
 ただ、自分の思っていた期待をその爆発力で何度も裏切った存在。
 ある意味では、彼も信頼できる友だったのかもと思っただけだ。

「世界(ザ・ワールド)。」

 静かに自分のスタンドを、友の口で紡ぐ。
 王者たる黄金の色をベースとした、人型のスタンドが姿を現す。
 スタンドとは精神の具現化したものである。
 たとえ肉体が変わっても出せることは想定済みだったが、
 全てがそうと言うわけではない。

「……時が止められない、か。」

 元の身体……と言っても首から下はジョナサンだが、
 あのときは身体が馴染んでいくにつれて時を止める時間は伸びた。
 だが、今はその馴染む以前にDIOの側面は精神のみになる。
 ジョナサンの側面が薄れたことで時間停止ができるようになったわけで、
 身もふたもない言い方だが肉体的に純度百%ジョナサンでは時は止められない。
 同じタイプのスタンドに出会えば話は別かもしれないが。
 流石に其処までの期待はしない。

「人間の限界と言ったところだな。」

 やはり人間の身体は不便だ。
 ジョナサンに首だけにされようとも、
 承太郎に腹をぶち抜かれようとも。
 どれだけあがこうとも人間には限界がある。
 そこだけは変わらない。だからこそ舐めきって、
 痛い目を見るところまでがDIOのと言う人物だ。
 百年経とうと、絶対に反省も学ぶこともしないと言う。
 例外があるなら、それこそ今の肉体の本来の持ち主のみか。

「だが構わん。時を止めずともザ・ワールドは最強のスタンドだ。」

 射程は十メートル。パワー、スピードもスター・プラチナよりも上。
 近距離パワー型とは思えないほどのハイスペックを誇るのもザ・ワールドの強み。
 (なおパワーはパラメータ上ではB判定で負けてたりするが理由は永遠の謎)
 単純にして凄まじいスタンドとすれば、普通に脅威となるのは間違いない。
 時など止めれずとも十分すぎるぐらいの武器だ。

「久々に太陽を拝んでみるのもいいかもしれんな。」

 あれから百年以上日光を浴びたことがない。
 人間とは日光を浴びなければ体調を崩す生き物。
 百年ぶりに浴びるとどのような感想になるのか。
 ほんのちょっぴりだけ、それに興味があった。

 海を背にしながら、男は向かう。
 嘗てエジプトへ上陸した、星屑の十字軍が如く。

【DIO@ジョジョの奇妙な冒険】
[身体]:ジョナサン・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜3(確認済)
[思考・状況]基本方針:勝利して支配する
1:百年ぶりの日光浴にほんのちょっぴりだけ興味。
2:元の身体はともかく、石仮面で人間はやめておきたい。
3:部下がいた場合交渉してみるか。
[備考]
※参戦時期は承太郎との戦いで、ハイになる前
※ザ・ワールドは行使可能ですが、時間停止は出来ません
 ただし、スタンドの影響で『ザ・パッション』が使える か も


19 : ◆EPyDv9DKJs :2021/03/11(木) 03:35:09 yq8JA14M0
以上で投下終了です


20 : ◆OmtW54r7Tc :2021/03/11(木) 06:03:43 yPbZBtf.0
投下します


21 : 物々語 ◆OmtW54r7Tc :2021/03/11(木) 06:05:45 yPbZBtf.0
一人の、物憂げな表情をした少女がいました。
その少女は、ピンク色の髪をポニーテールでまとめ、瞳は紅色に輝いています。
胸は貧相だが、その愛嬌を感じさせる容姿は、美人系というよりはかわいい系の美少女といった感じだ。
そんな少女は、いったい誰でしょう。

そう、私です。

「…ま、今の姿は私じゃないんですけどねぇ」

そうつぶやく私、イレイナはため息をつく。

「肉体と精神が入れ替わる…またですか」

イレイナは以前、クノーツという街に訪れた際、骨董堂という怪しげな組織の手により、肉体と精神が友人と入れ替わってしまったことがあった。
あの時は知った者の身体だったが、今回は全くの他人だった。
一応、身体の持ち主のプロフィールらしき資料はあるのだが。

「アーチェ・クライン…ハーフエルフ?人間とエルフとの間に生まれた子供、ということでしょうか」

かつてイレイナは、とある町でこのハーフエルフという人種に会ったことがある。
その人物は、400歳以上のおばあさんだったが。

「長耳ではないんですねえ、人間の血の方が強いんでしょうか。ナターシャさんも、若いころはこんな感じだったのでしょうか」

プロフィールによれば、彼女は魔法を使えるらしい。
しかも、杖もなしでだ。
確かに、この身体からは強い魔力のようなものを感じる。
残念ながら杖は没収されてしまったので、これはありがたいところだ。

「ファイアボール」

試しに簡単な魔法を詠唱してみると、複数の火球が飛んでいった。
魔法の内容は、イレイナ自身は知らなくとも肉体が覚えていた。
魔法のまの字も知らない者ならともかく、同じ魔女であるイレイナは肉体の情報からこの肉体の持ち主の使う魔法を概ね理解できていたのだ。

「杖がないので私自身の魔法は使えませんが…まあ、良しとしましょうか」


22 : 物々語 ◆OmtW54r7Tc :2021/03/11(木) 06:08:33 yPbZBtf.0
身体のことが理解できたところで、早速出発…といきたいところだが。
その前に、気になることがあった。
少し離れたところに、イレイナのものとは別のデイパックがあった。
しかし、周囲に人がいる様子はない。
そして人の代わりに、箒がデイパックと共に置いてあった。
さらにその箒には、自分の首に巻かれているのと同じ首輪があった

「…なんでしょう、嫌な予感がします」

イレイナは、周囲の警戒をしつつそのデイパックを開ける。
そして、その中にあった肉体のプロフィールに目を通す。

「これは…!」

予感は、確信に変わる。
プロフィールには、二つの写真があった。
一つは箒。
そしてもう一つは…髪色以外、元のイレイナとそっくりな容姿の少女。
これが意味するところは。

「なに私のほうきに勝手なことしやがってるんですか!これ万死に値しますよ!」

イレイナはかつて、師匠であるフランのもとで修業をしていた際、とある魔法を開発した。
それは、物を擬人化させる魔法だ。
その名の通りあらゆる物を人格を持った人間に変身させてしまうというとんでもない魔法であるが…
まあつまり、今イレイナの目の前にある箒というのは彼女の箒であり、プロフィールに書いてある少女は擬人化した箒、通称『ほうきさん』である。
もっとも今は、魔法をかけられていないただの箒でしかないが。

イレイナはほうきさんのデイパックを探る。
そこには目当てとしていた杖…はなかったが、とある有用な物があった。
それは『物に命を吹き込む薬』。
前述の物を擬人化させる魔法の前身となった薬であり、人間にこそならないが物と会話ができるようになる。
これも、イレイナが修業時代に開発したものだ。

イレイナは、その薬を箒にかける。
おそらく、人格はほうきさんではない、別の誰かだろう。
エロいこと考えた中年オヤジとかの精神が入り込んでいないといいが…

「…私はイレイナ。私のほうきの中にいる人。喋れますから返事をしてくれませんか」
「…よう」

呼びかけると、返事はすぐに返ってきた。
声の感じからすると、若い男性といった感じだ。

「あなたは誰ですか」
「俺の名はチェスター・バークライト。今あんたが体借りてるやつとは…まあ、腐れ縁だ」


23 : 物々語 ◆OmtW54r7Tc :2021/03/11(木) 06:09:26 yPbZBtf.0
△▽△△△▽△▽▽△△▽△▽▽△▽△▽△▽△▽▽▽△▽△▽△▽△▽

「へえ、時空を超えた魔王討伐、ですか。それはまたなんとも、デンジャラスな旅をなさってたんですねえ」

チェスターの話を聞いたイレイナは、素直に驚いていた。
イレイナの世界にも魔族という種族はいたりするが、魔王が人類を脅かすような話は…少なくとも、イレイナが知る範囲ではない。
完全に、創作物の世界の話である。

「どうやら私とあなたは、全く別の世界から連れてこられてるようですね」
「そうだろうな。俺の世界じゃ、魔法を使えるのはエルフで人間は使えないが、あんたの世界じゃ逆にエルフが魔法を使えない種族らしいし」
「同じエルフと人間でそうまで違いが出るとは、不思議なものですねえ」
「…それよりあんた、この箒を人間に出来るんだろ?こんな姿じゃ不便だし、人間にしてくれ!」
「お断りします」

チェスターの懇願を、イレイナはあっさり拒否した。

「なんでだよ!?」
「そもそも、無理なんですよ。杖がない今、アーチェさんの魔法は使えても私自身の魔法を使うことはできません」
「うぐっ…」
「まあ杖があったとしてもできれば人間にしたくないなとは思うのですが」
「はあ!?」
「いやだって、あなたスケベそうですから。ほうきさんの身体に、よからぬことしそうですし」
「…………しねえよ」
「なんで今、ちょっと間があったんですか」
「いや、ほんとにしねえよ!安心しろ、こんなぺったんこの幼児体系、興味ねえから!」
「へし折られたいんですか」

結局、チェスターのたび重なる懇願にイレイナは折れ、杖が手に入ったら人間の姿にすることを約束するのだった。

「さて、それじゃあ杖が見つかるまで、私の足としてよろしくお願いしますね」
「お、おう…」
「…照れてるんですか?まあ、精神が別人とはいえ恋人の身体にまたがられるというのは興奮するかもしれませんが、暴れないでくださいね」
「んなっ!?あああアーチェとはそんなんじゃねえよ!誰があんなぺったんこ!」
「とりあえずその『ぺったんこ』って罵倒はやめてもらっていいですか。自分のことを言われてるようで傷つきますので」
「お、おう…」
「傷ついてへし折りたくなるかもしれませんので」
「やめろ!」

【イレイナ@魔女の旅々】
[身体]:アーチェ・クライン@テイルズオブファンタジア
[状態]:健康
[装備]:チェスター(ほうき)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:杖を探しつつ脱出の方法を探す
1:杖を探す
2:1を達成後チェスターを人間にする
[備考]
・杖がないのでイレイナ自身の魔法は使えませんがアーチェの魔法は使用可能です。
・物を擬人化させる魔法は、チェスター以外には制限により原則無効となります。

【チェスター・バークライト@テイルズオブファンタジア】
[身体]:ほうきさん@魔女の旅々(箒形態)
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、物に命を吹き込む薬@魔女の旅々、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:この世界から脱出する
1:イレイナと共に杖を探す
2:あ、アーチェが俺の上に…
[備考]
・参戦時期は本編終了後。
・箒形態なので自分の意思で動くことができません。

【物に命を吹き込む薬@魔女の旅々】
その名前の通り、かけた物に命が宿り、会話ができるようになる薬。
開発者であるイレイナは、これをさらに発展・改良させて物を擬人化させる魔法を生み出すことに成功した。
こちらは喋るだけなので上述の物を擬人化させる魔法と違って基本的には制限はない。


24 : ◆OmtW54r7Tc :2021/03/11(木) 06:10:16 yPbZBtf.0
投下終了です


25 : 名無しさん :2021/03/11(木) 11:59:35 rsW8e3Y.0
もうどうせ続かない新しい企画立ち上げるのやめろや
すぐ廃れるし人が分散するから他のにも悪影響だわ


26 : ◆7PJBZrstcc :2021/03/11(木) 19:22:20 CgNQ4OAI0
投下します


27 : 変わるもの 変わらないもの ◆7PJBZrstcc :2021/03/11(木) 19:23:22 CgNQ4OAI0
 いきなり始まった、どこの誰とも分からない相手と体を入れ替えての殺し合い。
 その状況に対し、心底から困惑している者がいた。

 その者の名前は産屋敷耀哉。鬼殺隊という、人を喰らう鬼を殺し、人々を守る組織の頂点である。
 彼は心底困惑していた。
 勿論殺し合いという行いを止めたい気持ちはあるが、それと同じくらいに自分はなぜここにいるのかと疑問に思っていた。

 なぜなら、耀哉は既に死んだはずだからだ。
 千年に渡る因縁の宿敵、鬼の首魁である鬼舞辻無惨の気を引くため、そして僅かでも痛手を負わせるために、彼は自分の妻と子供二人巻き添えにして自爆したのだ。

 一瞬、ここは実の家族と子供同然に思っている鬼殺隊を死に追いやり続けた自分を罰するための地獄かと考えた。
 しかしその考えをすぐに打ち消す。この体は間違いなく生きている。

 となると私は、どこの誰とも分からない人の体を勝手に使っていることになる。
 もしこの体が鬼殺隊の誰かの物なら、申し訳ないが殺し合いの打破、そして人を守る為に使わせてもらおう。

 そんなことを考えながら耀哉は、自分がいつの間にか持っていたデイパックを調べる。
 そして中から一枚の紙が出てきた。
 どうやらこの紙には、この体の本来の持ち主について書かれているらしい。
 一体どこの誰なのだろうか、と思いながら紙を読む。

 しかし、そこに書かれた名前を見たとき、耀哉が今まで考えていたことは全て吹き飛んだ。

『鬼舞辻無惨』
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 鬼舞辻無惨。
 その名前を見た瞬間、耀哉はさっきまでの思考が消し飛び、脳内が一瞬で怒り一色に染め上がり、地獄の亡者でもここまで出ないと確信するほどの怨嗟の叫びをあげる。
 手始めに目の前の紙を引きちぎり、どれほどジグソーパズルが上手な者でもくみ上げることは不可能なほど紙をバラバラにする。
 それから近くにあった木に対し、彼は全力で拳を叩きつけた。
 その衝撃で木はへし折れ、辺りには木が倒れたことによる轟音が響き渡る。
 そして耀哉は確信した。この体は間違いなく鬼舞辻のものだと。
 こんな怒り任せの拳で木を殴り倒せる存在など、鬼しかいない。
 これだけであの紙には一切の嘘が書かれていないことが分かる。
 
 だがそれは産屋敷家、ひいては鬼殺隊の悲願を侮辱することに他ならない。
 よりにもよって鬼殺隊の頂点―もう死んだはずなので元がつくが―の意識を、鬼の頂点の体に植え付けたのだ。
 それがどれほどの侮辱になるか、この殺し合いの主催者はおそらく知っているはずだ。

 私はいい。私は地獄に落ちて当然だ。それだけのことをした。
 だが私の家族、そして私の鬼殺隊(こどもたち)はそんな扱いをされる謂れはないはずだ。

「絶対に……絶対に許すものか……」

 今までの生涯でこれほどの怒りを覚えたことはない。と断言するほどに耀哉は怒り狂っていた。
 だが同時にこれは好機だ、と彼は気付く。

 何せ鬼の頂点の体を、鬼殺隊たる自分の意志で好きに扱えるのだ。
 殺すも生かすも自由自在。そして彼は鬼の弱点を知っている。
 鬼は日光に弱い。太陽の光を浴びるだけで、塵となって消滅する。
 つまり日当たりのいい場所に移動し、夜明けを待つだけで鬼殺隊の悲願は達成されるのだ。

 しかしそれはこの殺し合いを放棄することに他ならない。
 ならばどうする?

 決まっている。戦う。
 かつて夢見たように、鬼殺隊(こどもたち)と同じように人を守る。
 そして殺し合いを打破した後には、自殺しよう。
 それで全てが解決する。
 もし鬼の本能として自分が人を食べたくなってしまったら、その時も自殺しよう。

 傍から見れば狂気とも思える結論、しかし当人にとっては最善の行動方針が決定した。
 こうして彼は歩き出す。鬼殺隊の悲願の為に。

 鬼殺隊として、人を守る為に。


【産屋敷耀哉@鬼滅の刃】
[身体]:鬼舞辻無惨@鬼滅の刃
[状態]:健康、主催者への怒り(極大)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:鬼狩りとして戦った後、自殺する
1:まずは他の参加者を探す
2:腹立たしいが、これは好機
[備考]
参戦時期は死亡後です。
耀哉の周辺一帯に轟音が響きました。


28 : ◆7PJBZrstcc :2021/03/11(木) 19:23:49 CgNQ4OAI0
投下終了です


29 : ◆.EKyuDaHEo :2021/03/11(木) 19:52:14 xRfsA41A0
投下します


30 : 嵐を呼ぶあかいあくま ◆.EKyuDaHEo :2021/03/11(木) 19:52:53 xRfsA41A0
「この状況...困ったわね...」


穂群原学園の生徒で魔術師であり、アーチャーのマスターでもある遠坂凛は今の状況に凄く困っていた


「いきなり訳の分からないところにいると思ったら殺し合いをしろだなんて...」


突然殺し合いをしろと言われそのまま会場に放たれどうしろというのだ..
.というように遠坂は溜め息を吐いた
しかし、遠坂にとって殺し合いのことよりももっと困っていることがあった...それは...


「しかもよりによって変わりになる身体が子供...それもかなり幼い...」


そう、遠坂が一番困っていたことは自分の変わりになっている身体のことだ...見た目は幼稚園児ぐらいでじゃがいものような頭をしており、まゆげが太くふっくらとした頬の顔立ちをしており服装は赤いシャツに黄色い半ズボンを着用している少年、それは『嵐を呼ぶ5歳児』の身体だった


「こんな身体じゃろくに戦うこともできないわね...」


本来遠坂は魔術師であるためさまざまな能力が使える
指先から放つ「ガンド撃ち」、宝石に宿った念に乗せてそのまま魔力を開放することにより魔弾として戦闘に転用する「鉱石魔術」、そして自身が使える拳法の「八極拳」も扱うことができ、近接近戦も遠距離戦も戦える優れた魔術師だ
しかし、能力が使えると言ってもそれは自分の身体の話。今の遠坂の身体はただの一般人、それも幼い少年の身体なのだから能力は使えない、例え拳法が使えるとしても幼稚園児の力じゃダメージは全く与えることはできないだろう


「とりあえずデイパックに何か入ってないかしら......これは...身体の持ち主のプロフィール?」


デイパックの中を漁ると『身体の持ち主のプロフィール』というものが出てきた


「えっと私が借りてる身体の持ち主は...『野原しんのすけ』って子ね」


遠坂は野原しんのすけという少年のプロフィールを見ていく...すると気になるところがあった


「超人的な身体能力...それに何度も世界を救ったことがある!?...凄いわね...」


正直見た目は普通の幼稚園児だがプロフィールを見ると普通の幼稚園児とは思えない経歴や技能ばかり書いており、遠坂が心底驚いた


「...なるほどね、だいたいこの子のことは理解できたわ、にしても中々扱いずらいわね...まぁ幼稚園児だから無理もないんだろうけど」


遠坂は野原しんのすけのことについて大分理解できた、しかし身体が明らかに自分よりも小さいため中々扱うことができない


「しかもよりによって男の子とはね...何で女の子じゃないのよ!......あった...ってなにしてんのよ私は!///」


遠坂は何故男の子なのかと文句を言っていたが、ズボンを引っ張り女には付いてないアレがあることを確認すると、赤面になりながらこんなことをしている自分につっこんだ


「そういえばこの身体があるということはこの子も別の身体でこの殺し合いの中にいるということなのかしら...?」


身体がここにあるということはしんのすけが別の身体に変わってここにいてもおかしくないと遠坂は考えた


「探したいけど...姿が変わっている以上難しいわよね...」


例えこの殺し合いに巻き込まれていたとしても姿が変わっているためどの人物に変わっているのか分からない...むやみに動けば自分が危険な目に合う可能性もある...


「とりあえず他の参加者の様子を見ながら動くしかなさそうね...」


下手に動くこともできないため遠坂は他の参加者の様子を伺いながら行動することを決めた
幼き身体に変わってしまった彼女、これからどうなるのかは誰にも分からない...


【遠坂凛@Fate/stay night】
[身体]:野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:他の参加者の様子を伺いながら行動する
1:とりあえず様子を見ながら協力してくれる人を探す
2:士郎やセイバー、アーチャーがいたら合流したい
3:身体の持ち主(野原しんのすけ)もいるのなら探したい
[備考]
・参戦時期は少なくとも士郎と同盟を組んだ後
・野原しんのすけのことについてだいたい理解しました
・ガンド撃ちや鉱石魔術は使えませんが八極拳は使えるかもしれません


31 : 嵐を呼ぶあかいあくま ◆.EKyuDaHEo :2021/03/11(木) 19:53:14 xRfsA41A0
投下終了です


32 : ◆7PJBZrstcc :2021/03/12(金) 19:30:41 MypHyxIo0
投下します


33 : なんてったってアイドル(ただし、見た目のみ) ◆7PJBZrstcc :2021/03/12(金) 19:32:49 MypHyxIo0
 恐怖、決意、惨劇。そして入れ替わり。
 あらゆるものが渦巻く殺し合いの会場にある街の一角にて、参加者の一人である、外見は中学生くらいの少女は心底この場から去りたかった。
 それは殺し合いの中で殺人者に出会ったからだろうか。
 あるいは死体を目撃してしまったからだろうか。

 どちらも違う。彼女が目撃したものとは――

「き、君。なんだね、それは……?」
「これはキタキタ踊りというわが村に伝わる由緒ある踊りですぞ〜」

 少女より年上、成人した女性が葉っぱで出来た腰みのと胸当て、そして頭飾りをつけて奇怪な踊りを踊っている様だった。
 踊っている女は、当惑している、というかドン引きしている少女のことなどおかまいなしに問う。

「今私はキタキタ踊りの後世に伝える後継者を募集しているのですが、どうですかなお嬢さん?」
「い、いや遠慮しておくよ……。今でこそ少女の体だが、本当の私は男なのでね……」

 踊る女の問いかけを必死に躱す少女。
 そう、彼女の本当の性別は男。更に言うなら外見は中学生だが、中身は33歳のサラリーマンだ。
 なのでここからは、踊りたがらない少女のことは彼と称することにしよう。

「ほう、奇遇ですな。実は私も元の性別は男ですぞ」

 しかし踊りたがる女の方も元は男だった!

「しかしキタキタ踊りは本来若い女の子が踊るものでしてな。今が後継者を探すチャンスなのです。
 おまけにこの体の持ち主は、アイドルなる歌と踊りを嗜む者のようでしてな。これはもう天啓ですぞ〜」
「どう考えても天啓ではないと思うが……」

 どこか嬉し気な踊る女とは対照的に、どこか皮肉気な言葉を話す少女。
 そもそも体を入れ替えたのは殺し合いの主催者なので、天啓も何もないだろう。
 むしろ後継者のいないキタキタ踊りに対しての皮肉の方がそれらしい気さえしてくる。

 ここで種明かしをしておくが、踊りたがる女の体の本来の持ち主はヘレン。
 とあるプロダクションにてアイドルをしている、24歳の女性だ。もっとも、今は露出度の高い衣装で謎の踊りをしているという見る影もない姿だが。
 更に、踊りを拒む少女の本来の体の持ち主は二宮飛鳥。
 みくと同じプロダクションにて同じくアイドルをやっている、中学二年生である。

 そして今、アイドル二人の体を操っている男達の名前は――

「そういえば申し遅れましたな。
 私の名前はアドバーグ・エルドル。皆からはキタキタおやじなどとも呼ばれておりますぞ」
「これはどうも。私の名前は吉良吉影。杜王町という町でサラリーマンをしています」

 二人のアイドル、もとい二人の男が互いの名前を知った瞬間である。
 このまま二人はとりあえず情報交換をするのだが、その過程で恐るべきことに気付いた。

「う〜む、どうにも噛み合いませんな。
 私は日本などという国は聞いたことがありませんぞ。それに魔王ギリを知らないとは……」
「そうですね……最早異世界としか言えません」

 なんと、二人は違う世界の住人だったのだ。
 日本の住人である吉良と、典型的な剣とファンタジーな世界の住人であるおやじはその事実に驚きを隠せなかった。

「いやまあ、色々見てきましたからな。多少驚きはしますがそれだけですな。
 それに異世界ならば、キタキタ踊りを踊ってくださる女子もいるかもしれませんぞ〜」

 訂正。おやじはあんまり驚いていなかった。
 その様子に吉良は思わず尋ねる。

「その、あなたはなぜそこまでキタキタ踊りを踊らせようと――」
「聞いてくださりますか!?」

 軽い気持ちで尋ねた吉良が、思わず後悔してしまうほどの勢いを出しながら、おやじは語り始めた。

 曰く、キタキタ踊りとは元々彼の故郷、キタの町に伝わる聖なる踊りだった。
 その踊りを、当時キタの町長だった彼が町おこしの為に見世物にした。
 町おこし自体は成功したが、聖なる踊りを見世物にした罰か、踊り手たる女子が町に生まれなくなった。
 その責を負い、自らがキタキタ踊りの踊り手となるが、観光客は当然激減。町が寂れることになる。
 そして町長の座も追われてしまったのだ。


34 : なんてったってアイドル(ただし、見た目のみ) ◆7PJBZrstcc :2021/03/12(金) 19:33:18 MypHyxIo0

「ですので、私はなんとしても後継者を見つけ、世に広めねばならんのです」
「な、成程……」
「そこでこの殺し合いです。私が殺し合いをキタキタ踊りの力で止めれば、後継者になりたい女子もきっと現れる筈ですぞ」
「……まあキタキタ踊りはともかく、殺し合いは止めなければなりませんね。
 元の体も取り返さないといけませんし」
「ですな」

 吉良の言葉に深く頷くおやじ。
 自分と吉良、二人とも殺し合いに乗っていないと思ったおやじは共に行動することを提案。
 吉良は正直嫌そうだったが、単独行動する理由もないと判断したのか了承。
 こうして、二人は一緒に行動することとなった。
 だがその前に

「ところでエルドルさん、出発の前にトイレに行っても構いませんか?」
「分かりましたぞ。早く戻ってきてくだされ〜」

 おやじから了承を得て、トイレに行こうとする吉良。
 しかしここで問題が発生した。

「私は男子トイレと女子トイレ、一体どっちに入ればいいんだ……?」
「キラ殿の馴染んでいる方でよいのでは?」

 悩む吉良だったが、おやじの助言を受けて彼は男子トイレに入ることにした。





「ふぅ、全く何なんだあの女、いやあの男は」

 男子トイレの個室で一息を付く吉良。
 トイレに行きたいのは嘘ではないが、理由は用を足す為ではない。
 あることを確かめたかったからだ。
 断じて愚痴の為でもない。愚痴りたいのは事実だが。

「キラークイーン!」

 吉良が叫ぶと、それに応じて彼の背後に猫型の獣人のような何かが現れる。
 それはスタンド。超能力が具現化した、背後霊のようなものである。

 そもそも、吉良はおやじに嘘をつき、更に二つ隠し事をしている。
 隠し事の一つ目がこのスタンドについて。
 吉良は、おやじに対しスタンドのことは何一つ話さなかったのだ。
 続いて二つ目の隠し事は

「死んだ私が、見知らぬ少女の体に入ってなおスタンドが使えるか不安だったが、杞憂だったようだな」

 吉良が既に死んでしまっていること。
 彼は救急車に轢かれ、事故死したはずだった。
 だがここに、主催者の力かそれとも他の何かで生き返っている。
 そして彼がおやじについた嘘とは――

「これで殺し合いを勝ち抜くにあたり持っていた不安が一つ消えた」

 吉良は殺し合いに乗っている。
 優勝し、願いを叶えようとしているのだ。

 そもそも、吉良吉影という男は殺人鬼である。
 重度の手フェチで、その為に好みの女性の手を自分のものにするため、これまで48人の女性を殺した。
 その過程で邪魔な者も始末しているので、実際殺した数は更にその上を行く。

 その殺人が吉良と同じようにスタンドを持つ者たちにバレ、彼は追跡される立場となった。
 しばらく逃げ隠れするも逃げきれず、追跡者を返り討ちにしようとするも敗北。
 最後には救急車に轢かれ事故死。
 更に、今まで彼が殺してきた怨念か、誰とも分からない無数の手によって死後の世界に引きずり込まれることで決着した。


35 : なんてったってアイドル(ただし、見た目のみ) ◆7PJBZrstcc :2021/03/12(金) 19:33:45 MypHyxIo0

 はずだが、吉良吉影はここに蘇る。
 そこで彼は考えた。どうにかしてこの体で元の杜王町に帰れないかと。

 吉良は故郷である杜王町が好きだ。
 例え殺人犯として一部の人間に追われ、町の外に出ればいくらでも逃げようがあるにも関わらず町に固執するくらいには。
 だが故郷では彼は既に死人の扱いだ。

 そこで考えたのが、この少女の体で帰還することだ。これなら何の問題もない。
 しかし、何もしないまま帰っても彼の戸籍はどこにもないのだ。どう控えめに見ても親のいない中学生の誕生である。
 なので殺し合いを勝ち抜き、生活環境を整えてもらうのが彼の願いだ。
 だがいきなり馬鹿みたいに殺すのは得策ではない。
 まずは殺し合いに乗らない参加者と行動し、信用を得てからバレないように殺していくことにした。いわゆるステルスマーダーである。

「さて、そろそろ戻るとするか」

 とりあえずスタンドが使えることを確認した吉良は、トイレの個室から出ていく。
 用を足したわけでは無いが、彼は手を洗う。
 そうして自分の手を見たとき、ふと彼はこう呟いた。

「それにしてもこの手、中々に美しいな……」

 優勝し、新たな生活を始めたら手のスキンケアについて学ぼう。
 そんなことを考えながら、吉良はおやじの元へと戻っていった。


【アドバーグ・エルドル(キタキタおやじ)@魔法陣グルグル】
[身体]:ヘレン@アイドルマスターシンデレラガールズ
[状態]:健康
[装備]:腰みのと胸当て@魔法陣グルグル
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2、最初着ていた服
[思考・状況]基本方針:キタキタ踊りの力で殺し合いを止めて見せますぞ〜
1:キラ殿と行動する
2:体は返すつもりだが、その前にキタキタ踊りの後継者を見つけたい
[備考]
参戦時期は魔法陣グルグル終了後です。グルグル2や舞勇伝キタキタは経験していません。
ジョジョの奇妙な冒険の世界について知りました。ただしスタンドに関することは知りません。

【吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険】
[身体]:二宮飛鳥@アイドルマスターシンデレラガールズ
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:優勝狙い
1:しばらくはエルドル(キタキタおやじ)と行動しつつ、隙を見てバレないように参加者を殺していく。
2:エルドルが鬱陶しい
3:しかしこの少女の手、なかなか美しい
[備考]
参戦時期は死亡後です。デッドマンズQは経験していません。
パイツァ・ダストは制限により使用できません。
魔法陣グルグルの世界について知りました。


【キタキタ踊りをする際の衣装@魔法陣グルグル】
アドバーグ・エルドルに支給。
キタキタ踊りをする際の正式な衣装。外見はフラダンスをするときのような腰みのと胸当て。後、頭飾り。
キタキタおやじがキタキタ踊りを踊る際は腰みのと頭飾りだったが、体が女性の為サービスで胸当ても支給された。


36 : ◆7PJBZrstcc :2021/03/12(金) 19:34:10 MypHyxIo0
投下終了です


37 : ◆.EKyuDaHEo :2021/03/12(金) 19:45:16 azogUgiE0
投下します


38 : オラオラ主人公 ◆.EKyuDaHEo :2021/03/12(金) 19:46:11 azogUgiE0
「......お?」


少年、野原しんのすけは目を覚ました...立ち上がり辺りを見渡すと見たこともない景色が広がっていた


「ここ...どこ?ていうか何かいつもより背が高い気が...あ〜!!」


見たこともない場所にいることで困惑していたが、いつもより身長が高くなったように感じ不思議に思ってたいた
そしてしんのすけは今の自分の身体を見て驚いた、やたら筋肉質で山吹色の道着を着用している身体になっていた、その身体はサイヤ人の『孫悟空』のものだった


「お〜!なんだか分からないけどオラムキムキになってるゾ〜!」


自分の身体がいつもと違うことにしんのすけは困惑より嬉しがっていた


「これならお姉さんにもモテモテだゾ〜...ってそんなこと言ってる場合じゃないゾ」


さっきまで喜んでいたしんのすけだが突然誰か分からない身体に変わっていたのには困惑していた、そして近くに丁度鏡があり再び自分の容姿を確認する


「これ...誰...?見たこともない人の身体になってるゾ...?」


そう言いながらしんのすけは頬を引っ張る


「いてて...どうやら夢じゃないみたいですな...どうせ変わるなら綺麗なお姉さんが良かったゾ...」


どうせ入れ替わるなら男じゃなくてお姉さんが良かったと深く落ち込むしんのすけ、この状況でも冷静でお姉さんのことを考えるのは彼特有の性格なのかもしれない


「でもこのムキムキな身体なら正義のヒーローになれるかもしれないゾ!そんでもって綺麗なお姉さんをお助けできるかも!」


しんのすけは色んな人(お姉さんばかり)をお助けする自分を想像すると目を輝かせた


「お〜!そうと決まったら何かでじゅうりょくを試したいですな〜」


おそらくじゅうりょくではなく「実力」のことをいっているのだろう、力を試せるものを探し辺りを見渡すと偶然瓦があった


「お?...他に何もないしこれでいいや!よ〜し!アクショ〜ンチョップ!!!」


しんのすけは瓦を全部壊す勢いで思いっきり手を振り下ろした
しかし...


「ぬお〜〜!手が〜〜!!」


思いっきり振り下ろしたせいで手が真っ赤に腫れた
それだけではなく瓦は一枚すら割れていなかった


「い、一枚も割れてない...おかしいな〜、こんなにムキムキなのに...それに何かいつもより疲れるし何か動きにくい...」


しんのすけは何故割れないのか不思議で仕方がなかった、それどころかさっきまでは興奮したり困惑してたりで気づかなかったがいつもより疲労が激しく身体も動かしにくいという...
それもそのはず、確かに身体は孫悟空のもの...彼がやれば本気を出さなくても瓦なんて楽勝で割れていただろう、むしろ瓦どころか地面にも穴があくかもしれない
しかし、今の孫悟空の身体の持ち主はまだ幼稚園児のしんのすけ...彼は知能や力も幼稚園児並なため孫悟空の身体に慣れていないのだ...慣れればかめはめ波などの技も使えるかもしれないがそれはほぼ不可能に等しいと言っても過言ではない


「これは困りましたな〜...」


思ってたのと違うことにしんのすけは困惑した、考えていると母親から言われたことを思い出す


「そういえばかーちゃんがもし困ったことがあったら優しい人に頼りなさいって言ってたゾ、とりあえず誰か探しますかな!」


母親の教えを思いだし誰か頼れる人を探すことに決めたしんのすけ


「よーしそれじゃあ!出発おしんこ〜!!」


そう言いながらしんのすけは歩き始めた
しかししんのすけは理解していなかった...自分が殺し合いの場に連れてこられていることを...
殺し合いのことを理解できていない少年は無事帰ることができるのであろうか...


39 : オラオラ主人公 ◆.EKyuDaHEo :2021/03/12(金) 19:46:23 azogUgiE0
【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[身体]:孫悟空@ドラゴンボールZ
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:頼りになる人を探す
1:とりあえず誰か人を探す
2:とーちゃん達や風間君達がいたら会いたい
[備考]
・殺し合いについて理解していません
・身体に慣れていないため力は普通の一般人ぐらいしか出せません、慣れれば技が出せるかもです(もし出せるとしたら威力は物を破壊できるぐらい、そして消耗が激しいです)


40 : オラオラ主人公 ◆.EKyuDaHEo :2021/03/12(金) 19:46:38 azogUgiE0
投下終了です


41 : ◆L9WpoKNfy2 :2021/03/13(土) 01:28:02 PcNyOFtw0
投下します。


42 : 入れ替わって………る? ◆L9WpoKNfy2 :2021/03/13(土) 01:29:21 PcNyOFtw0
ここは会場内にある街中、そこに少女が立っていた。

この少女の名前はビュティ、かつてある男とともに悪しき帝国の野望をつぶした戦士の一人である、

そんな彼女は困惑していた、それはほかならぬ自分がいま置かれている状況によるものだった。

「まいったなあ……ボーボボもいないし、私一人だけじゃどうにもできそうにないし……」

彼女は本来戦う力を持たない一般人であり、それ故に自分一人では主催者を打倒することができないと考えているからだった。

しかし彼女はそれ以外にも悩んでいることがあった。それは……

「それに、今の私の姿はかなり変わっているし……ボーボボたち気づいてくれるかなあ……?」

それはこの会場に呼ばれた際に、別の人間の身体にされたことが理由だった。

今の彼女はサイドテールの髪形をしたピンクの髪に、ドクロマークの付いた手袋をした少女に変わっていた。
更に言うと、お胸に中々のモノを持った少女になっているのだ。

髪の色と性別自体は変わっておらず、声についても心なしか似ているように感じるものの、それ以外が大きく様変わりしている。
つまるところ、仲間たちが自分のことに気づいてくれるのか、それに悩んでいるのだ。

そうして彼女がいろいろと悩んでいると、突如として後ろの方から妙な歌が聞こえてきた。

そしてビュティが振り返ったとき、そこに現れたのは……。


43 : 入れ替わって………る? ◆L9WpoKNfy2 :2021/03/13(土) 01:30:06 PcNyOFtw0
「YO!そこの道行く兄ちゃん、姉ちゃん!」

「突き進むスタイル、確率、独立」
「時代の反響、一人の絶叫」

「このウマ社会に生まれたアタシ達若者」
「それでも耐えぬくアタシのスピリット、デメリット」

「これって純情?正常?ウマ参上、YEAH…!」

変なラップを歌っているコンペイトウみたいな生き物と、
それの頭をゴボウでリズミカルに叩きながら一緒に歌っている銀髪の女性だった。

「何やってんの首領パッチ君ーーー!!!」

ビュティはその光景に思わず全力でツッコミを入れてしまった。

そうすると銀髪の女性が彼女の方を振り返り、話しかけてきたのだ。

「お、その声はビュティじゃねーか。お前も呼ばれていたのか」

どうやらその女性の中の人は、ビュティのことをよく知っている人物のようだった。

「あれ?私のことを知っているけど、あなたは誰ですか?」

ビュティは彼女にそう尋ねた、当然ながらその中身が誰なのかに見当がつかなかったからである。


44 : 入れ替わって………る? ◆L9WpoKNfy2 :2021/03/13(土) 01:30:43 PcNyOFtw0
「オレ?首領パッチだけど」
「えーーー!!!そっちが首領パッチ君なの!!」

その発言にビュティはとても驚いた。いろいろな人が別の身体に入れ替えられていることは知っていたが、流石にここまで違う姿になっているのは予想外だったからだ。

…はっきり言うと、あの首領パッチがいかにもクールビューティな感じの女性の姿になっているのが衝撃的すぎたという訳である……。

「……あれ?となると今首領パッチ君の身体に入っているのは誰なの?」

そこでビュティは疑問に感じた。今目の前にいる女性が首領パッチなら、首領パッチの身体に入っているのは一体どんな人なのか、それが気になったのである。

「ああ、紹介するよ。コイツはゴールドシップといって、今オレが入っている身体の、本来の持ち主らしいんだ」
「この会場に呼ばれてすぐにコイツと出会い、そして意気投合して一緒に行動してたんだよ」

その疑問に対して首領パッチは、自分がいま入っている身体の本来の持ち主であると答えた。

また、この会場に飛ばされてすぐに彼女と出会い、意気投合して一緒に行動していることを説明した。

そうして彼が同行者の素性などについて説明を行った後、そのゴールドシップがビュティに近づいてきたのだ。

「ああ、アンタが首領パッチの言っていたビュティ、って奴か」
「アタシはゴールドシップ、よろしくな」

そう言って彼女が握手を求めてきたので、ビュティはそれに合わせて握手をしようとした。

すると彼女はビュティと手を合わせたとき、こんなことを口走ったのである。

「鳩」

彼女は握手する瞬間の手の形が、丁度影絵の鳥になることに気づいて発言したのだ。

そして、彼女のこの言葉を聞いた瞬間、ビュティはこう思った。

――― 「ああ………この人、見た目はまともだけど中身はボーボボや首領パッチ君と同じタイプの人だ……」と……。

はてさて、このハジケたヤツ二人とそれに振り回されるツッコミ役一人の珍道中は、この先どうなってしまうのか……。


45 : 入れ替わって………る? ◆L9WpoKNfy2 :2021/03/13(土) 01:31:22 PcNyOFtw0
【首領パッチ@ボボボーボ・ボーボボ】
[身体]:ゴールドシップ@ウマ娘 プリティーダービー(ゲーム版)
[状態]:健康
[装備]:ごんぼう@風来のシレン2 鬼襲来!シレン城!
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:コイツ(ゴールドシップ)とともにハジケ続ける。
1:コイツ(ゴールドシップ)……俺のハジケについてきやがる……!
2:ヒロインはこのアタシよー!
3:胸なんか無駄にデカくしちゃって……忌々しい小娘ね……!
[備考]
参戦時期は無印終了後、真説開始前。

【ゴールドシップ@ウマ娘 プリティーダービー(ゲーム版)】
[身体]:首領パッチ@ボボボーボ・ボーボボ
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:コイツ(首領パッチ)とともにはっちゃける。当然、殺し合いに乗るつもりはない。
1:コイツ(首領パッチ)……三日目の佃煮くらいノリに乗ってやがる……!
2:このビュティ、って奴のツッコミは獲物を見つけた時のハヤブサ並みに鋭いな……。
[備考]
・参戦時期はお任せします。

【ビュティ@ボボボーボ・ボーボボ】
[身体]:ほのか@デッドオアアライブ
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:ほかの仲間たちを探しつつ、生還を目指す。
1:ボーボボが来ていないか探す。
2:何やってんの二人とも!
3:ああ…この人(ゴールドシップ)はボーボボや首領パッチ君と同じタイプの人だ……。
[備考]
参戦時期は無印終了後、真説開始前。



【ごんぼう@風来のシレン2 鬼襲来!シレン城!】
ゴボウのこと。
本来は食べ物だが、装備して攻撃することもできる上にいくら殴っても折れないくらいに固い代物。
食べるとおなかが少しふくれる。


46 : ◆L9WpoKNfy2 :2021/03/13(土) 01:32:21 PcNyOFtw0
投下終了です

ありがとうございました。


47 : ◆OmtW54r7Tc :2021/03/13(土) 20:33:19 rh5vjFg20
投下します


48 : 炎の身体、炎の刀 ◆OmtW54r7Tc :2021/03/13(土) 20:34:24 rh5vjFg20
「ほう、なかなかいい身体くれるじゃねえか」

一人の男が、満足げにつぶやく。
男の名は、志々雄真実。
幕末、明治の世を生きる狂気の人斬りだ。
そしてそんな彼に渡された身体は…

「炎のエシディシ、柱の男か…西洋の古代の強者とは、面白え。一度死合ってみてえもんだ」

柱の男、炎のエシディシ。
怪焔王(かいえんのう)の流法(モード)と呼ばれる熱を操る戦闘スタイルを持ち、自らの血液を500℃まで上昇させることができる。

「時間の制限なく身体を燃やせるってわけだ。こりゃあいい」

元の身体の志々雄は、15分の戦闘で限界を迎えてしまう欠陥を抱えていた。
しかし今は、どれだけ戦おうが身体を燃やそうがそれ以上の時間戦うことができるのだ。
もっとも、その代わりに太陽という新たな弱点を抱えてしまったのだが。

「さて、行くとするか」

自身の身体の確認を終えると、志々雄は歩き出す。
彼の方針。
それは勿論、「弱肉強食」の摂理に従い、この場にいる参加者と、自分をこの場に呼び寄せた主催者共を皆殺しにすること。
とはいえ、主催者と戦うには首輪が邪魔なので、これを外せる技術や知識を持つ者はしばらく生かしてやるつもりではある。

「まずは刀を探さねえとな」

志々雄の支給品には、刀剣類は残念ながらなかった。
いや、一応刀自体はあったのだが…

「なにが『炎刀』だ。こんな刀があってたまるか」

彼に支給された刀は、四季崎記紀が作りし完成形変体刀十二本が一つ、炎刀「銃」であった。

【志々雄真実@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-】
[身体]:エシディシ@ジョジョの奇妙な冒険
[状態]:健康
[装備]:炎刀「銃」@刀語
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2(刀剣類はない)
[思考・状況]基本方針:弱肉強食の摂理に従い、参加者も主催者も皆殺し
1:まずはまともな刀を探す
2:首輪を外せそうな奴は生かしておく

【炎刀「銃」@刀語】
伝説の刀鍛冶、四季崎記紀が作りし完成形変体刀十二本が一つ。
「連射性と速射性と精密性」に主眼が置かれている。
回転式と自動式の連発拳銃からなる二丁拳銃からなる一対の「刀」。
回転式は装弾数6発、自動式は11発だが、アニメではそれ以上の連射をしている。
どう見ても刀に見えないが、別にこれは炎刀「銃」に限った話ではない。


49 : ◆OmtW54r7Tc :2021/03/13(土) 20:35:04 rh5vjFg20
投下終了です


50 : ◆/YA1Gzr0Nk :2021/03/13(土) 22:15:32 zxdLHwRU0
投下します


51 : ◆/YA1Gzr0Nk :2021/03/13(土) 22:16:30 zxdLHwRU0

「うーん……」

一人の少年が戸惑うような声を漏らしながら、自身の手をじっ、と見下ろす。
握ったり開いたり。
何度か繰り返したと思ったら、続けて虚空に拳を繰り出したり、飛んだり跳ねたり、最後には両の掌を自らの頬にパン!と大きな音を立てて叩きつけた。

「痛ぁ……」

当然痛みを覚えて反射的にまた声が漏れる。
しかしその声に混ざる感情は後悔や困惑のようなものではなく、喜びや達成感を覚えたものだった。

「はは、すごい。掌まで痺れる。生身の痛みなんて、もう3年ぶりくらいになるのかなぁ……
 じゃあ次は……!」

支給されたデイパックを漁り、ペットボトルに入った水を取り出す。
それを蓋を開けて地面に置くと、今度は両の掌を祈るような形でパン!と叩きあわせ、改めてペットボトルを手に取る。
すると中の水が突如、少年の顔を映す鏡のように綺麗に凍りついた。
じっくりとその中を、自身の顔形を確かめるように観察する。

「……鏡としては今一つ。硝石や青銅がないことを考えればまあ妥協点。体が変わっても錬金術は使えるか試す実験としてなら満点かな」

そう呟くともう一度手を叩き合わせ、今度は氷を水に戻し、一口飲んでから蓋をしてペットボトルをデイパックにしまう。

「ふぅ。ただの水がこんなに美味しい」

些細ながら久方ぶりに楽しむ食事に、口には出さないが少しだけこのふざけた催しの主に感謝してもいいかなどと思うが

(いや。許せないよね)

血が滲むほどに強く右手を握りしめる。
久方ぶりの肉体で、力加減を誤ってできた余計な傷だがそんなことは知ったことではない。

ヒトの体を勝手に弄り回したり、魂を置換したり、賢者の石の材料にしたり。
そんなのはもうたくさんだ。
魂を鎧に定着させた経験があるからこそ、強くそう思う。
……かつて、自分と同じく鎧に魂を定着させた殺人鬼にかけられた言葉をふと思い出す。

『その人格も記憶も兄貴の手によって人工的に造られた物だとしたらどうする?』

作り物の鎧の体どころか、別のアイデンティティすらある肉体を得て、揺らがないといえば嘘になる。

(僕は、アルフォンス・エルリックだ!そうでしょう?兄さん、ジェルソさん、ザンパノさん。それに、ニーナ)

ひりひりと頬が熱を持つ。
爪の食い込んだ掌が、鼓動にあわせて痛みを訴える。
飲み干した水が、清涼感ある味わいを口に僅かに残している。
夜の闇の中で僅かに覚える眠気すらも心地よい。
……この状態に魅力を覚えないとは、とてもじゃないが言えない。

それでも。
手足を失くした兄と共に、失くした体を取り戻すと誓った。
自分と同じく、元の体に戻りたいと願う仲間も得た。
助けてあげられなかった、女の子がいた。
だから、こんなところで足踏みなんてしてられない。

(にしても、僕の元の肉体ってどっちのことだろ?鎧がそうだと認識されてたらなんかヤダな……いや、別に殺し合う気はないからどうでもいい、か)

志を確かめたところで、ゆっくりと行動を始める。
まずは巻き付いた首輪に触れた。

(できればさっさと分解して外したいところだけども。魂を入れ替える大規模な錬金術なんてやる相手だし、対策してない訳がない。調べてからでないと。それに……)

続けていつの間にか身に着けていた腕輪に視線をやり、辟易するような表情になって、さらにデイパックからベルトのようなものを取り出して比較してみる。

(何となく似たような意匠のものが二つ。にしてもセンス最悪。兄さんとどっこいだよ。
 まあ、首輪と同じでよく分からないものだし、下手に手を出さないほうがいいだろうけど)

首輪に加えて気に食わないデザインの腕輪を強制的につけられてただでさえ悪いアルフォンスの気分がさらに落ち込む。

(ああ、それにしても)

その腕輪がこの肉体にとってどれほど重要なものか、彼はまだ知らない。

(無性にお腹すいたなあ。お肉が食べたい気分)

腕輪の名はネオアマゾンズレジスターといい、アルフォンスが久方ぶりに感じているもの……食欲を抑制するものである。
それも、人肉に対する衝動を。


52 : 失くしたはずの暴食(グラトニー) ◆/YA1Gzr0Nk :2021/03/13(土) 22:17:00 zxdLHwRU0
【アルフォンス・エルリック@鋼の錬金術師】
[身体]:千翼@仮面ライダーアマゾンズ
[状態]:健康、空腹感
[装備]:ネオアマゾンズレジスター@仮面ライダーアマゾンズ
[道具]:基本支給品、ネオアマゾンズドライバー@仮面ライダーアマゾンズ、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:元の体には戻りたいが、殺し合うつもりはない
1:首輪について調べて、錬金術で分解する
[備考]
・参戦時期は少なくともジェルソ、ザンパノ(体をキメラにされた軍人さん)が仲間になって以降です。




【ネオアマゾンズレジスター@仮面ライダーアマゾンズ】
アマゾンの食人本能を抑制する特殊薬剤を、定期的に装着者の体内へ自動で投与する機能を持つ一種の安全装置。
ネオとつくように改良型なのだが、それでも千翼の食人衝動を完全に御することはできない。

【ネオアマゾンズドライバー@仮面ライダーアマゾンズ】
千翼が仮面ライダーアマゾンネオに変身するのに用いるベルト。
ベルト中央部にある「インジェクタースロット」に注射器型ユニット「アマゾンズインジェクター」をセットし、スロットを上げてインジェクターの薬液を注入する事で、コアユニット「ネオコンドラーコア」から特殊パルスを発して装着者のアマゾン細胞を刺激し変身を行う。


53 : 名無しさん :2021/03/13(土) 22:17:29 zxdLHwRU0
投下終了です


54 : ◆EPyDv9DKJs :2021/03/14(日) 00:08:50 H7rtETnU0
投下します


55 : 我も紅に染まれ紅蓮に繋がれて ◆EPyDv9DKJs :2021/03/14(日) 00:10:41 H7rtETnU0
「おい……まじかよ。」

 鬱蒼とした森の中に、人影が一つ。
 白シャツに赤いサスペンダーつきのもんぺに、
 長い白髪をリボンで結んだ少女がそこに立つ。
 書類に目を通しながら、驚嘆と困惑の表情でまじまじと見る。
 少女の名前、と言うよりその身に宿っている精神は杉元佐一。
 アイヌの金塊争奪戦に身を投じた、不死身の杉元と呼ばれる男。

「不死身とか言ってたら本当に不死身になっちゃったのか!?」

 この身体の特徴は常軌を逸したもので、つい叫んでしまう。
 老いることなき不老不死、死ぬこともない不死身、再生する肉体。
 ある意味人類が最も欲したとも言うべき究極がこの身体にある。
 疑わしく思い、適当な木の枝を軽く突き刺して本当かどうかを試す。
 血が軽く出血する程度の軽微なものでも、すぐに治ることはない。
 だがその傷はどうか。ものの数分で傷口が塞がってしまう。
 これ永遠とも言うべき生、或いは死を謳歌する蓬莱人の権能の一つ。
 とは言え不死身を試すのはリスクもあるし、

(ま、でも流石に完全な不死身は許されないか。)

 何より回数制限がされていた。
 【死からの復活は二回まで。それ以上は再生できない】と注釈がある。
 永遠に死ななければ勝負にならない以上、仕方ないと言えば仕方ないことだ。
 元の持ち主には申し訳ないが、ある程度の無茶は今まで以上にはできる様子。
 他にも妖怪退治を生業としたお陰で炎も扱うことができたり飛ぶことも可能と、
 単に不死身にかまけてるわけでもないのも強みである。

「一体何したらこんなことができるんだか。」

 アイヌと言う神秘的な部族には出会ったが、
 どちらかと言えばアイヌは目に見えにくい所がある。
 一種のまじないと言った側面も強いが、これは目の前で起きた奇蹟。
 人の肉体に他人の精神を入れるなんてこと、到底できはしない。
 考えようにもこういうことに関して杉元は疎いので、ごちるだけだが。

 勿論主催者のことだけではない。
 指先から炎を出したり、飛翔で軽く空も飛べる。
 一切の原理不明不明。科学的なものでは証明のできないこの力。

(金塊の部分が願い事ってなっただけで、やってることは同じだ。)

 目つきが変わる。
 少女には似合わないとは言えない、凛とした表情。
 今後どうするかの方針。杉元は元軍人で場数は踏んでいる。
 生きるために相手を殺すことになる経験は十分にあり、
 金塊だって友人の妻の為に金が必要だからしてるわけだ。
 だから自分の害ある敵に対して容赦をするつもりはない。
 結果だけが変わり、過程がより血みどろになっただけ。

(問題は胡散臭いんだよなー……)

 願い事と言うふわりとしたよくわからないもの。
 できるからと言ってちゃんとしてくれるかもわからないし、
 それで金塊の在処を示しても、今までの争奪戦はなんだったのか。
 死者を悼むほど高尚な人間でもないが、血も涙もない冷酷にも非ず。

(何より、タイミングが悪いんだよ。)

 尾形がアシリパに撃たれた。
 厳密には間違って撃ってしまっただが、
 確実に失明し、かなりの出血をしてた記憶がある。
 あのままだと死に至る……アシリパが人殺しになってしまう。
 それだけは避けようとしたのに、このありさまだ。
 本当に叶えるにしろ叶えないにしろ、あのタイミングで連れてきた。
 故に抱く感情は一つ。

「責任は取ってもらうからな。」

 紅蓮のように燃える怒り、ただそれだけ。

【杉元佐一@ゴールデンカムイ】
[身体]:藤原妹紅@東方project
[状態]:怒り
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜3(確認済)
[思考・状況]基本方針:なんにしろ主催者を〆て帰りたい。身体は……最悪諦める。
1:とりあえず人を探す。
2:まじで不死身なのか? 試したいが試したくもない。
[備考]
※参戦時期は流氷で尾形が撃たれてから病院へ連れて行く間です。
※二回までは死亡から復活できますが、三回目の死亡で復活は出来ません。
※パゼストバイフェニックス、および再生せず魂のみ維持することは制限で使用不可です。
 死亡の際長くとも五分で強制的に再生して戻されますが、復活の場所はある程度移動可能です。
※飛翔は短時間なら可能です


56 : 我も紅に染まれ紅蓮に繋がれて ◆EPyDv9DKJs :2021/03/14(日) 10:58:21 H7rtETnU0
投下終了です
言い忘れてましたすみません


57 : ◆L9WpoKNfy2 :2021/03/15(月) 00:46:04 KHi6Cew60
投下します


58 : カサブタだらけの情熱を、忘れたくない ◆L9WpoKNfy2 :2021/03/15(月) 00:47:52 KHi6Cew60
ここは会場内のとある場所、そこでは銀髪の少女が涙を流しながら必死に走っていた。

その少女の名前、厳密にはその中に宿っている者の名前はライスシャワー。実力はあるもののどうにも不運が付きまとってしまうウマ娘である。
そしていま彼女が宿っている身体の名前はメジロマックイーン。ライスシャワーとは、とある宿命を持っているウマ娘である。

そんな彼女が、なぜ泣きながら走り続けているかというと、それは少し前のこと……

------------------------
ここはとある村にある民家の中、そこには奇妙な二人がいた。

一人は先ほど話したライスシャワーで、もう一人はライオンの頭をした獣人だった。
正確に言えば、上半身にカバの頭、下半身にブタの頭が付いた獣人だった。

「えっと……つまりフォルゴレさんの話を信じるなら、ライスとフォルゴレさんは別の世界から呼ばれたかもしれない、ということなんですね……」

「少なくとも私はそう思っているよ……それに、私はこれと似たようなことを経験しているからね」

獣人の名前はパルコ・フォルゴレ、女性達から熱狂的な人気を集めるイタリア出身の世界的映画スターである。

「しかし安心してくれ!このパルコ・フォルゴレが、君のことを絶対に守り通すと約束しよう!」
「えっと……じゃあ、よろしくお願いします……フォルゴレさん…」

この二人は会場に飛ばされてすぐに出会い、そしてお互いの目的を知って情報交換を行っているのである。

まあ、最初はライスシャワーが彼の異様な姿を見た瞬間恐怖を感じて全速力で逃げだしてしまい、彼の話を全然聞いてくれなかったり、
ようやく落ち着いた彼女にフォルゴレが名前を名乗った際に「誰?」って感じの反応をされてうなだれてしまったりなど紆余曲折あったのだが…。

ともかく、こうして安全そうな民家の中に入って二人で情報交換などを行っていたのである。


59 : カサブタだらけの情熱を、忘れたくない ◆L9WpoKNfy2 :2021/03/15(月) 00:48:35 KHi6Cew60
しかし突如として彼らの情報交換は終わりを迎えた。彼らの近くにあった窓が、ハサミのついた腕によって破壊されたのだ。

そしてそこから入ってきた怪物は、とても奇妙な姿をしていた。

頭部の額に当たる部分や胴体にも顔があり、また右腕はカニのハサミ、左腕には巨大な目玉が付いた怪物だった。

その怪物の名前はグズグズ……もといグラスゴスと言うモンスターといい、かつてあまりの弱さゆえにほかの魔物たちから日ごろ苛められ続けていたモンスターだった。
しかしある存在に「誰にもいじめられない、バカにされない力」を望んだことで強大な力を持った魔物へと変化したモンスターだった。

そうしてグラスゴスが彼女たちの姿を確認して襲い掛かったが、それはフォルゴレが彼の身体にしがみつくことで食い止められることになった。

「……ライスシャワーちゃん!コイツは私が食い止めるから、君は早くここから逃げてくれ!」

そして彼は叫んだ。早く逃げてくれと、そう叫んだのだ。

「でも、そうするとフォルゴレさんが「君を死なせたくないんだ!分かったら早く行け!」っ……ごめんなさい……!」

こうして彼女は、別の出口を使って脱出した。

そうしてこの建物の中には、フォルゴレと彼らを襲ってきた怪物が残っていた。

「お前は……おれに勝てると思っているのか……?」

不意に、怪物がフォルゴレにそう聞いた。
わざわざ自分の前に立ちふさがって、生きて帰れると思っているのかと、そう聞いたのだ。

「……勝てなくても、あの子を逃がすだけの時間は稼げるさ……!」

それに対してフォルゴレは、彼女を逃がせるのならそれは関係ないと、力強く答えるのだった……。

------------------------
そして舞台は現在へと戻り……

(……フォルゴレさん……本当にごめんなさい、ライスは……やっぱりみんなを不幸にさせてしまう存在なんだ……)

先ほどの民家から遠く離れた場所で、彼女はうつむきながら歩いていた。

そうして歩き疲れた彼女は、その場にへたり込んで涙を流し始めた。何故ならば……

(……ライスは、この世界にいないほうがいいのかな……?)

自分のせいで周りの人を不幸にしている、そしてそれが原因でフォルゴレがあのような目にあってしまったという自責の念に駆られたからだ。

そうして泣き続けている中、彼女はふとこう思った。

「このままでいいの?ほんとうに、あの人を見捨てていいの?」と……。

(……そんな訳はない……!フォルゴレさんは、必死にライスを笑わせようとしてくれた……そんな人を、見捨てていい筈がない……!)

そして彼女は、自分にできることはないかと考え、先ほどは確認できなかったデイバッグの中身を確認した。

そこにあったのは……。


60 : カサブタだらけの情熱を、忘れたくない ◆L9WpoKNfy2 :2021/03/15(月) 00:49:59 KHi6Cew60
------------------------
一方そのころ、先ほどの民家では……

そこには、全身がボロボロになったフォルゴレが、怪物のハサミによって首を絞められている姿があった。

「おれは、力を手に入れた……力があれば、すべて思い通りにできる……!」
「お前は……それだけの力を持っているのに……なぜ、自分のために使わない…!」

グラスゴスは、先ほど少女を助けたこの男にそう言った。

何故そうまでして誰かを救おうとするのか、なぜ自分のために使わないのか、彼にはそれが理解できなかったのだ。

「……知ってるかい?ライオンの牙に小鳥はとまらないけど、カバさんの牙には小鳥がとまるんだぜ」

それに対してフォルゴレは、息も絶え絶えになりながらもしゃべり始めた。
目の前の怪物に対し、あるたとえ話を始めたのだ。

「……それがどうした……?何の関係がある……?」

それを受けてグラスゴスは、訳の分からない様子で返していた。
彼の話したたとえ話が、自分の質問に何の関係があるのかが分からなかったからだ。

「私はね、そんなカバさんになりたかったんだ!優しくて、とても強い……そんなカバさんにね!」

その言葉とともにフォルゴレは、自分の首を絞め続けているハサミを全力で引きはがし、その拘束から脱出したのだ。

「……到底理解できない……お前は一体、何者なのだ……?」

グラスゴスは、フォルゴレが自分の拘束から抜け出したことに驚きながらも彼に問いかけをした。

「私が誰かって?絶世の美男子にしてイタリアの英雄……パルコ・フォルゴレさ!!」

そして彼は、膝を震わせながらも力強く立って、自分の名前を告げた。
自分の名前、そして異名を力強く、目の前の怪物に告げたのだ。

「……消えて、なくなれ……」

それに対して怪物は、両腕や胴体から無数の光弾を発射して彼を葬り去ろうとした。

そしてフォルゴレはその光景を見て、静かに目を閉じ始めた。


61 : カサブタだらけの情熱を、忘れたくない ◆L9WpoKNfy2 :2021/03/15(月) 00:50:36 KHi6Cew60
(……ここまでかな…ライスちゃんは、しっかり逃げてくれたかな……?「フォルゴレさん……!助けに来たよ……!」……!)

彼は驚愕した。何故ならば、先ほど逃がしたはずのライスシャワーがこちらに戻ってきたからだ。

「なんで戻ってきたんだ!このままでは君も「もうこれ以上、ライスのせいで誰かを不幸にしたくないの……!」……だからってこのままでは君も死んでしまうんだぞ!」

そしてフォルゴレは彼女に対して怒りをぶつけた。このままでは自分だけではなく君まで死んでしまうことになると、声を荒げて言ったのだ。

「死なないよ……ライスも、フォルゴレさんも!」

しかし彼女はその言葉に対し、お互いに死なないと、そう力強く答えたのだ。

そして怪物が放った弾がすべて彼女たちに向かった後、そこには……

「……ちょっと不安だったけど、何とかなったね……!」
「……本当に、何とかなった……これはビックリだ……!」

石でできた盾を構えたライスシャワーと、そんな彼女に守られているフォルゴレが一切ダメージを受けずに立っていたのだ。

「……どういうことだ……!ならばもう一度「それはもう、させないよ……!」……何だその光線は……?」

怪物がもう一度彼女たちに攻撃をしようとしたが、それを制するかのようにライスの持つ盾から光線が放たれたのだ。

そしてそれを受けた結果、グラスゴスの身体にある変化が訪れた。

「お、おれの身体が……石になっていく……!これは、どういうことだ……!」

何とグラスゴスの身体が徐々に石に変わり始め、そしてついには全身が石に変わってしまったのだ。

「……フォルゴレさん、今のうちに逃げるよ……!」
「あ、ああ……あの魔物は、どうするんだい……?」

そうして、グラスゴスの身体が完全に石になったことを確認したライスシャワーは、フォルゴレの手を握ってともにに逃げるように言った。
しかしそれに対してフォルゴレは、あの魔物をこの後どうするつもりなのかと、あのまま放ってホくのかどうかを彼女に尋ねた。

「あの石化は、しばらくすると解除されちゃうらしくて……残念だけど、今は逃げるしかないの……」
「……そうか」

ライスシャワーは彼の疑問に対して、打つ手がないから放っておくことしかできないと、そう答えた。
そしてそれを受けてフォルゴレはそれ以上何も言わず、彼女とともにその場を後にするのだった……。


62 : カサブタだらけの情熱を、忘れたくない ◆L9WpoKNfy2 :2021/03/15(月) 00:51:04 KHi6Cew60
------------------------
こうして何とか怪物から逃げ切れた後、彼女たちは気が抜けたかのように道端で倒れたのだった。

「……フォルゴレさん、大丈夫ですか……?」

ライスシャワーが、倒れ伏した彼を心配して声をかけた。

「すまないけど……今こそ…あの歌をうたってくれないか……!!」

それに対してフォルゴレは、自分がさっき教えた『あの歌』を歌ってほしいと頼んできた。

「え?ええ?えっと……あの歌を、歌わなきゃいけないの……?わ、わかった……!」

そうして彼女は困惑しながらも、『あの歌』を歌い始めた。

鉄の〜フォルゴ〜レ〜♪
無っ敵〜フォルゴ〜レ〜♪
鉄の〜フォルゴ〜レ〜♪
無っ敵〜フォルゴ〜レ〜♪
鉄の〜フォルゴ〜レ〜♪
パルコ・フォルゴレ〜♪

こうしてライスシャワーがあの歌を歌うと、フォルゴレは左腕を振り上げながら立ち上がり始めたのである。

「はっはっはっ、鉄のフォルゴレは無敵さ!!」

そう言いながらも彼の足はかなりガクガクとしており、明らかに無理をしているのは明白だった。

「(フォルゴレさん、私を心配させないために……!)……そうだね、フォルゴレさんは無敵の人だね……!」

それを受けてライスシャワーは、彼が無理をしていることに気づきつつもそれには触れずに彼を称賛した。

こうして彼らは、ともに生き延びることができたことを笑いあうのだった……。

【パルコ・フォルゴレ@金色のガッシュ!!】
[身体]:シシカバブン@格闘料理伝説ビストロレシピ
[状態]:満身創痍
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いは怖いし出来るなら戦いたくはないが、人々を守る。
1:私はスーパーヒーローだから、ファンが悲しむ真似は絶対にできないな。
2:この子(ライスシャワー)を、笑顔にしてあげたい。
3:できることならあの魔物(グズグズ)を止めたい。
[備考]
参戦時期は最終回後。
ライスシャワーとの会話で、『ウマ娘』に関する知識を得ました。
ライスシャワーに『無敵フォルゴレ』という歌を教えましたが、『チチをもげ!』はまだ教えていません。


【ライスシャワー@ウマ娘 プリティーダービー(ゲーム版)】
[身体]:メジロマックイーン@ウマ娘 プリティーダービー(ゲーム版)
[状態]:健康、疲労(中)
[装備]:メデューサ@パワーストーン2
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:死にたくないが、そのために誰かを殺すつもりもない。
1:死にたくないけど、そのために誰かを殺すなんてしたくない。
2:無事にこの身体を、メジロマックイーンさんに返さないと……!
[備考]
参戦時期は、菊花賞で勝利を収めたこと以外はお任せします。
パルコ・フォルゴレから『無敵フォルゴレ』という歌を教えられました。


【グズグズ(グラスゴス)@チョコボの不思議なダンジョン2】
[身体]:ファイブキング@ウルトラマンギンガS
[状態]:一時的な石化(数分後に解除される)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:かつて自分をバカにした者達も、自分をさいなむこの世界もすべて破壊する。
1:俺は力を手に入れた……!この力で、すべて破壊する……!
[備考]
参戦時期は少なくともチョコボたちに倒される前。
制限により、4メートルほどの大きさにされています。


【メデューサ@パワーストーン2】
髪の毛が蛇になった女性のレリーフが彫られた、大理石のような盾。

当然ながら盾として使うことができ、その他にも相手を一定時間石化させる光線を発射することもできる代物。


63 : ◆L9WpoKNfy2 :2021/03/15(月) 00:51:41 KHi6Cew60
投下終了です

ありがとうございました。


64 : ◆5IjCIYVjCc :2021/03/15(月) 01:09:42 pYAtT87s0
【お知らせ】
候補話の投下ありがとうございます。
二つ、コンペやルールに関することについてお知らせがあります。

1.コンペの締め切りについて
日程を変更する可能性もありますが、コンペの受付の締め切りを4月12日の0時0分までとします。

2.禁止エリアについて
ルールに下記のように禁止エリアについての事項を追加します。
・定期放送ごとに禁止エリアが3か所発表される。
・禁止エリアに立ち入ると首輪が5分後に爆破される。
・禁止エリアが有効となるのは放送から2時間後。


今後ともチェンジ・ロワイアルをよろしくお願いします。


65 : ◆8eumUP9W6s :2021/03/15(月) 07:51:13 7820xICc0
投下します、先に言うと、呪術廻戦のネタバレ注意です。


66 : 身体はお姉ちゃん、魂はお兄ちゃん ◆8eumUP9W6s :2021/03/15(月) 07:52:28 7820xICc0
「…悠仁…!どこだ悠仁!!お兄ちゃんはここに居るぞ!!!」

人気の無い森の中、童顔でローツインの髪型をした少女は、周辺を見渡した後一人叫ぶ。
…彼女の身体に入っている魂の名は脹相。特級呪物である呪胎九相図、その中の一番が受肉して誕生した人と呪霊のハーフであり、長男である。

そんな脹相は焦っていた。殺し合いに巻き込まれた事により、(少なくとも彼の視点からすれば)弟である虎杖悠仁と引き離される事になってしまったからであった。

(…付近には今は誰も居ないようだな。この身体の眼が良くて助かった)

しかし脹相は一旦落ち着き、現状把握に努め始める。

(もし弟が…悠仁までこの殺し合いに巻き込まれていたのなら、最優先で保護しなければ。
巻き込まれていないとしてもだ、兄として早急に、悠仁の元へ戻る必要がある。
…悠仁は優しい弟だからな。どちらにしても俺が人を殺す事を良くは思わない上に悲しむだろう。故に、殺し合いには乗らない。襲撃されても「出来る限り」殺しは控える。

…それに、この殺し合いには奴が…加茂憲倫が関わっている可能性がある。もしそうであれば、ここで禍根を絶つべきだ。
他の参加者を全員殺すのが、挑む手段としては一番手っ取り早いだろうが、使い慣れていない上に、呪力を血液へと変換できないどころか赤血操術が使えないだろうこの身体では…いや、本来の身体だろうと、俺一人では勝てないだろう。協力者は必要になる。居るのなら悠仁の捜索も行わなければならないしな。

…どう転ぶにせよ、俺のやる事は変わらない。身体が変わろうと、俺は全力でお兄ちゃんを遂行する!!)

あくまで冷静に判断を行いつつ、一人心の中で決意を固めた脹相は、支給されていた身体の持ち主のプロフィールを見る。

(…ゲルトルート・バルクホルン、妹が一人…か。)

そもそもの世界の成り立ちが大幅に異なるのもあり、脹相には彼女の…バルクホルンの経歴はあまり理解出来ず、また興味も無かった。ただ彼女に妹が一人居て、かつて妹が自身のミスによって意識不明の重体に陥いり、それが原因で一時期自暴自棄になっていたという情報は…何故か脹相の記憶に残った。それが偶然なのか、もしくは思う所があったのかは…脹相自身にもわからない。

(…まあいい。問題は技能の方だ。)

気を取り直した脹相は、技能についての確認を行う。

(…固有魔法…術式のようなものだろうか。それに、ユニットなる代物が有れば固有魔法の効果が上昇し、シールドなるものを使えて、飛ぶ事も可能…ユニットの捜索も必要になってくるな、これは。)

方針を決めていった脹相は、とりあえずバッグの中身を改めて確認する事とした。

【脹相@呪術廻戦】
[身体]:ゲルトルート・バルクホルン@ストライクウィッチーズシリーズ
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:どけ!!!俺はお兄ちゃんだぞ!!!
1:悠仁が居たら最優先で捜索。
2:殺し合いには乗らない。
3:「出来る限り」殺しは控える。
4:ユニットがバッグに無ければこれも捜索。
5:お前が関わっているのか?加茂憲倫…!!
6:どう動くにせよ協力者は必要になるだろう。
[備考]
※渋谷事変終了後以降からの参戦です。詳しい時系列は後続の人にお任せします。
※ユニット装着時の飛行は一定時間のみ可能です。


67 : ◆8eumUP9W6s :2021/03/15(月) 07:53:06 7820xICc0
投下終了します。


68 : ◆1qfrROV/6o :2021/03/15(月) 21:24:41 n9ZxhvMw0
投下します。


69 : 二人の切り札 ◆1qfrROV/6o :2021/03/15(月) 21:25:55 n9ZxhvMw0
「―――来い!アルセーヌ!!!」

主の呼び声に答え、一体のペルソナが姿を現す。
黒い仮面とシルクハットを被ったような頭部。
鮮やかな赤が目立つ、紳士服のような装い。
そして最も目立つ、怪盗のマントを模したような翼。
見間違えようはずもない。自分のペルソナ、アルセーヌだ。
パレス以外で呼び出すことができるのか少し不安だったが、どうやらここでは召喚が可能なようだ。

「……ペルソナは問題なく呼び出せる。
 つまり、肉体が違っていても心の力のペルソナには影響がない?」

推測するしかできないが、現在の状況から彼―――雨宮蓮はそう結論付けた。
しかし同時に、これが夢などではなく間違いなく現実であることも理解してしまった。
生き残って元の体に戻りたければ、自分以外全員を殺せと言われているのだ。

当然、彼がこんな催しに乗るはずもない。
おそらく主催者は、心の怪盗団が今まで改心させてきた人物たちに匹敵するようなロクデナシだろう。
『私たち』という表現を使っていたことから、敵はおそらく複数人いる。
何としてもこの馬鹿げたイベントを終わらせなければ。行動方針はすぐに固まったので、情報収集に入る。

「……ペルソナがアルセーヌしかいない?」

本来ペルソナは一人につき一体。一つの心に一つのペルソナというのが常識だ。
だが、彼は「ワイルド」という力により複数のペルソナを所有することが可能だった。
しかし今はアルセーヌ以外のペルソナの気配がない。
もしや連中はベルベッドルームやペルソナへの干渉も可能なのだろうか。
だとしたらかなり厄介な話になる。何か対策を考える必要があるかもしれない。

続いて支給品を確認する。
基本支給品はともかく、ランダム支給品の中に何か打開策になりそうなものがないだろうか。
そう思って一通り調べてみたが、刃物や銃火器のようなわかりやすい武器は入っていなかった。
普段自分がパレスで使っている武器と同じようなものがあれば、と思ったがそう上手くはいかないようだ。

その中に一つ、目を引かれるものを見つけた。
それは大きな漆黒のUSBメモリのようなものだった。
それだけなら意識するほどの物ではなかったが、彼の目を引いたのは大文字のJとJOKERの一文。
使い方はわからないが、自分のコードネームと同じ文字が刻まれたソレには何か因果を感じずにはいられなかった。

最後に、この体の本当の持ち主について確認する。
勝手に使わざるを得ない状況に一抹の申し訳なさを感じつつも、今はどうしようもない。

「……すみません。この体は必ずお返しします。」

あえて口に出して誓う。
できるかどうかではない。必ず成し遂げるのだ。
自分のためにも、この人のためにも。

そして確認した元の体の持ち主の書類には。
―――左翔太郎、という名前が記されていた。



【雨宮蓮@ペルソナ5】
[身体]:左翔太郎@仮面ライダーW
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2、T2ジョーカーメモリ@仮面ライダーW
[思考・状況]基本方針:主催を打倒し、この催しを終わらせる。
1:まずは仲間を集めたい。
2:怪盗団の仲間が巻き込まれていないか心配。
3:元の体の持ち主に対して少し申し訳なさを感じている。
[備考]
・参戦時期については少なくとも心の怪盗団を結成し、既に何人か改心させた後です。
・支給品は確認済みで、少なくとも武器や銃火器は入っていません。


70 : ◆1qfrROV/6o :2021/03/15(月) 21:26:34 n9ZxhvMw0
投下を終了します。


71 : ◆cd0OhGsgTM :2021/03/16(火) 00:44:26 5Oxyi8jo0
投下します


72 : Die Verwandlung ◆cd0OhGsgTM :2021/03/16(火) 00:45:32 5Oxyi8jo0
ある朝、グレーテ・ザムザが不穏な夢からふと覚めてみると、
自分の姿が一匹の、とてつもなく大きな甲虫に変わってしまっているのに気がついた。
おおきなこうらのような背中を下にして、仰向けになって、ちょっとばかり頭をもたげると、
まるくふくらんだ、何本もの弓型のすじにわかれて丸々と膨れ上がった、自分の桃色の腹部が見えた。
昨日までの足に勝るとも劣らない、生命力に満ち溢れた脚が目の前でひらひらしている。


いったい、自分の身の上に何事が起こったのか、と彼女は考えてみた。
そして深く考えるまでもなく、二つの意味で心当たりがあるのだ。
このような体になった実例、そして、このような体になるきっかけへの心当たりがあるのだ。



『毒虫』との生活が終わったことは当然、神に感謝すべき、喜ばしいことだと、一家三人ともがそう思っていた。
兄を称する『毒虫』が死に、シャルロッテ街を離れて希望に満ちた新生活が始まったばかりだったのだ。
先の見えない生活から解放され、訳も分からないほどの高揚感に包まれた結果として、おかしな夢を見たのだとばかり思っていた。

夢以外の何物でもないと思っていた。
そして夢ではなかったと思い知った。


グレーテがおぼろげながら覚えている夢の内容は、真っ暗闇の中で殺し合いをしろと命じられたこと。

そして……。

自身の姿が世にもおぞましい『害虫』に変わっていたことだった。


『キゥゥゥゥゥュュュュュ!!!!』

彼女は悲鳴を上げた。
彼女は悲鳴を上げたはずだった
それは悲鳴ではなかった。
人間の悲鳴ではなかった。

そこで、彼女の意識は途切れた。
この悪夢から醒める、そう思った。
そして、悪夢は続いた。


73 : Die Verwandlung ◆cd0OhGsgTM :2021/03/16(火) 00:46:34 nSS2mn7Q0
『あいつがグレゴールだなんてことがどうしてありうるでしょう!』

かつて、『毒虫』に吐き捨てた言葉の記憶が、今は存在すら怪しい脳にて響き渡る。

『もしあいつがグレゴールだったら、人間たちがこんな生物といっしょに暮らすことは不可能だって、とっくに見抜いていたでしょうし、
 自分から進んで出ていってしまったことでしょう!』

実の兄で、そして実の兄であるはずがない『毒虫』をにべもなく切り捨てたその言葉が、今度は自分自身に向けられるのだ。
好奇の目が、おぞましいものを見る目が、かつて自分自身が『毒虫』に向けた目が、自分自身に向けられるのだ。
人間がこんな生物と共存できるはずがないと、人間たちはグレーテを殺しに来るのだ。

味方となってくれる家族はいない。
いや、たとえ家族であろうとも味方となってはくれない。
それはグレーテ自身が、自分の意志を以って証明したことだ。


「キィ……キュィ……」
声が出ない。人間の声が出ない。
ただ信仰にすがるべく、『あぁ、神よ……』と言葉に出したはずだ。
それなのに、口から出るのは甲高く、人とはかけ離れた音響のみ。

当たり前だ。甲虫と人間では喉の作りが違う。
甲虫が言葉を話せるはずがない。人間のように言葉を話せるはずがない。



人間の指とはまるで異なる手とも足ともつかぬ、いわゆる脚をもぞもぞと動かす。
グレーテは人間である。人間であるはずだ。
だが、身体の感覚も、目に見える風景も、何もかもが異なっている。

人間の足は胸から四本も生えていたりはしない。
人間の口は左の歯と右の歯が生えていたりはしない。
人間の目は周囲360度の風景が万華鏡のように映ったりはしない。
人間の爪は地面を抉る二本のナイフのような爪であったりはしない。
人間の肌は緑や青や桃色でバリエーション豊かに彩られていたりはしない。


目の奥がひりひりする。
腹の先がこぼれ落ちそうになる。
こんな状況で、こんな身体で、喉が乾くのが、人間と今の身体をつなぐただ一つの共通点だと、そう思ってしまうほどにグレーテは憔悴していた。
ひりつくほどの渇きをいやすために、いつの間にか持っていた丈夫なデイパックを開かんとこころみた。
脚のツメが繊維に引っかかり、びりびりとデイパックの一部を破ることになったが、なんとか袋の口をひらくことに成功した。


74 : Die Verwandlung ◆cd0OhGsgTM :2021/03/16(火) 00:47:14 nCGyt9lo0
見慣れない容器に入った水と、見慣れない食料だ。
ドイツ帝国陸軍の最前線あたりで利用されている糧食だろうか。
明らかに庶民では手の出せない高級な携帯食だと分かる。

だが、嫌なことに、なぜか……いや、やはりというべきか。
食欲が湧かない。
おいしそうだと思わない。


ナポリタンと思われる太いパスタ、毎日のように食べていたポテトを揚げたもの、見慣れない白い粒の塊。
いずれも、ほとんど嫌気すらおぼえて、身体をそむけざるを得なかった。

唯一、ソースのかかった肉だけは食欲がそそられたが、
そのことは自身が肉をむさぼって生きる怪蟲になってしまったのではないかという不安をかきたてるだけだった。


食欲が湧かない。当然なのだ。
グレーテはあずかり知らぬことだが、この虫の主食は人間を含む動物の体液なのだから。
目の下に存在する口のような器官ではなく、頭部から生えた角を突き刺して血や肉汁を啜る。
そもそも食性が違うのだから、炭水化物を受け付けないのも何ら不自然なことではないのだ。

そんなことはつゆも知らないままに――仮に知っていたところで導き出す結論は変わらないものであるが――
もはやグレーテは、自身が人間のかけらもない存在と化したのだと認めざるを得なかったのだ。


『これは天罰なの? 神の与えたもうた試練なの? 因果なの?
 それとも、私は死んで地獄に落ちたの?
 電車の事故にでも巻き込まれて、何も分からないまま死んでしまったの?
 そして、兄を見捨てた罰に、責め苦を負わされているの?
 虫となって、ずっと苦しみ続けていたグレゴール兄さんを見捨てた罰を受けているの?』

もはや何が本当で、何が誤りなのかも分からない。
しかも、およそ人の考えるものではない肉体を与えられただけにとどまらず、殺し合いを求められている。
人間に見つかれば、きっと殺されてしまう。
こんなおぞましい虫が害を為さないはずがないと、駆除されてしまう。
是非はともあれ、グレーテはそう信じてしまった。


75 : Die Verwandlung ◆cd0OhGsgTM :2021/03/16(火) 00:48:47 nCGyt9lo0
それとも、と、さらに嫌な予感がする。
……これから出会う者たちは人間ではないのではないかと。
同じようなおぞましい蟲か、あるいは神話に描かれるような怪物たちが、肉を啜り、血を舐め、同族を喰らう。
それこそが、この殺し合いの場ではないのか、と。

この地にはどんなむごたらしい死が待ち構えているのだろうか。
この地にはどんなおぞましい怪物が放たれているのだろうか。
仮に生き残ったところで、私は私でいられるのだろうか。


何を成せばいいのかも分からないまま、グレーテはただただすべてに怯える。
もはや頭部と胸部の間にはまった首輪や、優勝者の願い事など、些細なことでしかない。
この生き地獄に呼び込まれた不条理を呪いながら、彼女は怯え続けるのだ。


【グレーテ・ザムザ@変身】
[身体]:スカラベキング@ドラゴンクエストシリーズ
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:絶望、過剰な怯え
1:ほかの生き物に怯える


※スカラベキング(肉体)の情報
登場作品:DQ10、DQウォーク、スーパーライト
DQ10ステータス 系統:虫系 非アクティブモンスター
Lv:90 HP:2797 MP:98 攻:363 守:335 重:612 Ex:1602 G:12 訓:2 通ドロ:大きなこうら レアドロ:破毒のリング
行動:攻撃、しっぽ爆弾、岩石おとし、吸血、腐食液etc...
DQ10まめちしき:甲虫型モンスター界に 君臨する帝王。 巨大な岩石を落として 攻撃する 怪力の持ち主。
DQ10みやぶる :どこにいても目立ってしまう あざやかボディの彼は 甲虫界の おしゃれキング。 以前はモデルもやっていた。
DQSLまめちしき:あざやかボディが目を引く甲虫型の魔物。甲虫界のおしゃれキングとして君臨し、しっぽには爆弾を仕込んでいる過激なヤツ。
DQWまめちしき:キングの称号を持つ 甲虫型の魔物。岩石おとしで敵をつぶす 怪力の持ち主。


76 : ◆cd0OhGsgTM :2021/03/16(火) 00:49:12 nSS2mn7Q0
投下終了します


77 : ◆vV5.jnbCYw :2021/03/16(火) 01:00:15 IpSPSBd20
投下乙です!!
まさかの有名な文学作品と有名ゲームのコラボ、文の中身からキャラ紹介まで、見とれてしまいました!!
どちらも好きな作品ですが、ロワでのコラボを見たことなかったので、「おおっ」って思いました。
こちらのロワで投下するかは分かりませんが、応援しています!!


78 : ◆NIKUcB1AGw :2021/03/16(火) 21:15:13 Q9RFFzXE0
投下します


79 : おねショタとは外見か中身か ◆NIKUcB1AGw :2021/03/16(火) 21:16:13 Q9RFFzXE0
街灯に照らされた市街地の道を、環いろはは自らが与えられた肉体のプロフィールを読みながら歩いていた。

「高町なのは……。この人も魔法少女なのかなあ……。
 でも、時空管理局所属とか書いてあるし……」

「高町なのは」なるこの体は、いろはや仲間たち同様魔法を使うことができるらしい。
ならば同じ「魔法少女」なのかといえば、それは疑わしい。
いろはが引っかかっているのは、「時空管理局」という名称だ。
様々な地域に魔法少女が存在している以上、どこかにいろはがまったく知らない魔法少女の組織があったとしてもおかしくはない。
だが「時空」を「管理」するというネーミングが、魔女を倒すという魔法少女の使命と明らかに結びつかない。
魔法少女とは無関係の組織と考えるのが自然だろう。

「時空ってくらいだから、ひょっとして別の世界の組織なのかな……。
 でも、別の世界なんてあるのかな……」

考え込むいろはだったが、現状では答の出しようがない。
とりあえず疑問を保留し、いろはは別の思考を始める。

「それにしてもこの体……。19歳らしいから、やちよさんと同じくらいか……。
 こんな状況で不謹慎かもしれないけど、ちょっと大人になった気分かも……」

中学生のいろはからみれば、19歳というのはだいぶ大人だ。
とうてい喜んでいい状況ではないとはいえ、何か急成長したようで意識するとテンションが上がってきてしまう。

「って、浮ついてもいられないよね。
 早く、元の体に戻る方法を見つけないと……」

いろはが気を引き締め直した、その刹那。
曲がり角から、少年が飛び出してくる。

「え?」

とっさのことに反応が間に合わず、いろはは少年と激突した。


◆ ◆ ◆


「魔法……ねえ……」

結城リトは、おのれに与えられた肉体の説明を見て呟く。
現在彼が宿る肉体は、まだ幼さの残る少年のもの。
本来の持ち主の名は、「ユーノ・スクライア」という。

「急に魔法とか言われても、ピンとこないけど……。
 まあ宇宙人がいるなら、魔法使いがいてもおかしくないか……」

リト自身は普通の人間だが、彼の周りには普通ではないものが大量にある。
ゆえに、おのれの知らない「魔法」という要素も割と素直に受け入れることができた。

「中身が俺でも、魔法使えるのかな……。
 全然使える感じはしないけど……。コツとかあるのかな?」

とりあえず手をかざしたり全身に力を込めてみたりしたリトであったが、魔法が発動する気配はない。

「うーん、わからん……。しょうがない、魔法のことは後回しだ。
 今は動こう」

リトが考えていたのは、自分以外にも周囲の人々がこの悪質なゲームに参加させられている可能性だ。
もし自分の大切な人たちが一人でもこの場にいるなら、命をかけてでも守らなければならない。
だが肉体と精神が一致しないこの状況では、知り合いを見つけるのは困難。
信用できる情報源もない以上、とにかく歩き回って情報を集めるしかない。

「っと、その前に武器くらいは確認しておくか。
 積極的に殺すつもりなんてないけど、身を守る必要はあるからな」

リトは、自分に支給されたカバンの中を探る。
すると、やたらとメカメカしい靴が出てきた。

「ジェットシューズ……。使えそうだな。
 さっそくはいてみるか」

同居人の発明で珍妙なアイテムに慣れているリトは、疑う様子も見せずにそれを装着する。
そして、電源をONにした。
その瞬間、爆発的な勢いで体が前進する。

「うわっ! これ、思ったより制御が難しい! このっ!」

自分の体重が本来より軽くなっているのを失念していたこともあり、リトはシューズの勢いに振り回される。
それでもなんとか体制を立て直し、スピードを調整しようとしていたその時。
曲がり角から、一人の女性が現れた。

「うわっ!」

慌てて止まろうとするが、間に合わない。
そのままリトは、女性に激突した。


80 : おねショタとは外見か中身か ◆NIKUcB1AGw :2021/03/16(火) 21:17:25 Q9RFFzXE0


◆ ◆ ◆


「いたた……」

衝突の勢いで転倒してしまったいろはは、頭をさすりつつ体を起こそうとする。
だが、下半身の感覚が何かおかしい。
悪い予感を感じつつ、いろはは状況を確認する。
その結果認識できたのは、少年が自分のスカートの中に顔を突っ込んでいるという現状だった。

「いやあああああ!!」

反射的にいろはは少年の体に蹴りを入れ、スカートの中から追い出す。
だがやってしまってから、乱暴が過ぎたのではないかと気づく。
直前の流れを考えれば、これは明らかに意図的なものではなく事故である。
それで蹴り飛ばしたのでは、向こうからしたらあまりに理不尽ではないか。
そもそもぶつかった結果スカートに顔を突っ込むというのが物理的におかしい気がするが、それはひとまず置いておく。

「ご、ごめんなさい! 大丈夫?」

少年の体を起こし、安否を確認するいろは。
それに対し少年……リトは、目を回しながらも答える。

「だ、大丈夫です……。よくあることなんで」


【環いろは@魔法少女まどか☆マギカ外伝 マギアレコード】
[身体]:高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:元の体に戻る。殺し合いには乗らない
1:少年(リト)に話を聞いてみる
[備考]
・参戦時期は、さながみかづき荘の住人になったあたり


【結城リト@ToLOVEるダークネス】
[身体]:ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのはA's
[状態]:健康
[装備]:ジェットシューズ@妖怪学園Y
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない
1:知り合いがいないか、情報を集める
2:女性(いろは)に話を聞いてみる
[備考]
・参戦時期は「ダークネス」終了後
・現状ではユーノの魔法は使えませんが、何らかのコツを掴めば使えるようになるかもしれません


【ジェットシューズ@妖怪学園Y】
姫川フブキが自ら開発し、愛用している靴。
靴底から空気を噴射することにより、高速移動及び短時間の飛行が可能となる。
ただしデリケートなのか調整が不十分なのか、故障しやすいという欠点がある。


81 : ◆NIKUcB1AGw :2021/03/16(火) 21:18:05 Q9RFFzXE0
投下終了です


82 : ◆ytUSxp038U :2021/03/16(火) 22:16:40 9PnLQDV60
投下します


83 : 殺し合い?そんなことよりゴブリンだ ◆ytUSxp038U :2021/03/16(火) 22:18:38 9PnLQDV60
厄介な体だ。
主催者によって与えられた肉体に抱いたのはそんな感想だった。

辺境の街の冒険者、ゴブリンスレイヤーは廃墟に置かれた鏡に映った自身の姿を見て低く唸る。
薄汚れた鉄兜と皮鎧を身に着けた、普段と変わらぬ装備の自分。
ではなく。
銀色の見慣れぬ鎧に身を包んだ、全くの別人の姿がそこにあった。
装備だけでなく身長も本来の肉体より高く、筋力も幾らか上に感じた。

しかしこれは良くない。

軽く体を動かしてみたが、目線が高いせいかどうにも違和感を感じる。
自分の技能の中では得意と言える投擲も、これでは少々難儀しそうだ。

問題はまだある。

バッグに入っていた説明書の情報が確かならば、この鎧は銀等級どころか金等級の冒険者でもおいそれとは手に入らない代物に思えた。
自身の鎧とは天と地ほどの差がある耐久力。
両腕の装甲からは炎や頑丈なロープを発射可能。
更には背中の奇妙な物体を使えば、空を飛ぶ事も出来るのだという。

普通に考えれば『当たり』の部類に入る支給品だが、ゴブリンスレイヤーにとっては違う。

「便利過ぎるな…」

ゴブリンスレイヤーは何も酔狂で質の低い装備をしている訳ではない。
理由は幾つかあるが、内一つに自分が死んだ後装備を奪われたとしても大して脅威にならないようにしている、というものがある。
強力な武器や防具がゴブリンの手に渡ってしまい、他の冒険者や村に被害が及ぶのを防ぐ為に、「銀等級らしくない」武具を身に着けているのだ。
確かにこの鎧があればゴブリン退治の効率もずっと良くなるだろうが、万が一奪われてしまえば逆にゴブリンによる犠牲者が増える事になる。
よって、この支給品はゴブリンスレイヤーからすれば『外れ』の部類に入ってしまう。

とはいえ使える装備である事は間違いない。
元の体を取り戻すまでは、この人物の肉体と装備を使わせてもらう。
小さくため息を吐き、どう動くかを考えようとした時、背後から何者かの気配を感じた。

「誰だ?」

バッグから取り出した剣を構え問い掛ける。
普段使っている中途半端な長さの銅剣よりも明らかに上等な武器だ。
既にこの廃墟内は隅々まで探索し、いざという時の退路も頭に叩き込んである。
戦闘か撤退か、相手の出方を窺うゴブリンスレイヤーに気配の主が姿を見せた。

「あっ、待ってください!貴方に危害を加える気はありません!」

現れたのは子どもだった。
ふわふわした髪の毛と丸い瞳が可愛らしい少女。
どこか慌てたように飛び出した相手の姿に、一瞬ゴブリンスレイヤーの反応が遅れる。

「私は誰かを傷つけるつもりはありません。なので…」
「……」
「あの……どうかしました?」
「…いや、すまない」

心配そうに自分を見上げる少女を見て、我を取り戻す。
この少女の声が、自分の知る人物に似ていたが故の、ゴブリンスレイヤーらしかぬ反応だった。
外見も年齢もまるで違うが、その声だけは。
自分の初めての仲間である神官の少女に、とても似ていた。


84 : 殺し合い?そんなことよりゴブリンだ ◆ytUSxp038U :2021/03/16(火) 22:20:05 9PnLQDV60
僅かばかりの動揺を振り払い口を開く。

「こちらも殺し合いとやらをするつもりは無い」

そう告げると少女は安堵したように笑みを見せた。

「良かった…あっ、ごめんなさい!変に驚かすような事をしてしまって」
「いや、いい」

頭を下げる少女を手で制す。
随分と生真面目な性格のようだった。

「お前は、何が起きているのか分かるか?」
「ええっと…殺し合い、のことですか?いえ、私にも何がなんだか…」
「そうか。だがゴブリンがいるのなら殺すだけだが」
「いえ、流石にゴブリンは関係な……はい?」
「ゴブリンがここにいないとは限らないだろう。ならば、連中を見逃す訳にはいかん」

ゴブリンスレイヤーとしては特に変わった事を言ったつもりはない。
だというのに、何故か少女の顔は引き攣っているように見えた。

「……」
「……」
「…………あの」
「何だ」
「ひょっとして……ゴブリンスレイヤーさん、ですか?」
「ああ」

嘘を吐く理由も無いので正直に答える。
どういう訳か少女は自分の言葉に頭を痛めてる様子だった。



少女の中身が自身の一党の神官であると知るのは、すぐ後の事だった。


【ゴブリンスレイヤー@ゴブリンスレイヤー】
[身体]:ディン・ジャリン@マンダロリアン
[状態]:健康
[装備]:マンダロリアンアーマー@マンダロリアン、ブラフォードの剣@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本方針:殺し合いに乗る気はない
1:お前も連れて来られていたのか
2:ゴブリンがいるなら殺す
[備考]
※参戦時期は2巻以降のどこか。

【女神官@ゴブリンスレイヤー】
[身体]:袴田ひなた@ロウきゅーぶ!
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:殺し合いはしない
1:ゴブリンスレイヤーさんも連れて来られたんですね…
[備考]
※参戦時期は2巻以降のどこか。

【マンダロリアンアーマー@マンダロリアン】
銀河系で最も硬いとされるベスカー鋼で作られたアーマーとヘルメット。
ライトセーバーをも防ぐ硬度を持つ。
背中にはミサイルを装填した遠隔操作も可能なジェットパックを装着し、両腕のガントレットには火炎放射器やグラップリング・ライン等が内蔵されている。

【ブラフォードの剣@ジョジョの奇妙な冒険】
黒騎士ブラフォードが生前から愛用していた剣。
死の直前、剣に刻まれた「Luck!(幸運を)」の言葉と、自らの血で書き足した「PLUCK(勇気をッ!)」をジョナサン・ジョースターに送った。


85 : ◆ytUSxp038U :2021/03/16(火) 22:21:05 9PnLQDV60
投下終了です


86 : ◆5IjCIYVjCc :2021/03/18(木) 01:07:00 /k8IPN3Y0
候補話の感想を投下します。

>血脈に刻まれた因縁
原作でも肉体を乗っ取ったことのあるDID様、だがジョナサン100%の影響で時間停止ができなくなるとは。
久しぶりの日光浴をするためには太陽が出るまで生き残らなくてはならないから頑張らないといけませんね。

>物々語
まさかの箒、いきなり無機物。
しかも知り合いの肉体に跨られるというのは穏やかな気分にはなれないでしょうね。

>変わるもの 変わらないもの
ぶち切れる御館様。
ここまで激情をあらわにするのは珍しいけど、今の状態を見れば当然のことかもしれませんね。

>嵐を呼ぶあかいあくま
男児になってしまったことで元の実力を発揮できなくなった女子高校生魔術師。
しんちゃんボディでりんちゃんの言動をする様子はなかなか想像しづらいです。

>なんてったてアイドル(ただし、見た目のみ)
キタキタおやじに引いてしまう吉良吉影、トイレはどっちに入るべきか気にする辺り生真面目さがうかがえます。
元の世界での自分の状態を鑑みれば今の身体で帰還することを考えるのは当然の帰結でしょうね。

>オラオラ主人公
一人称つながりの組み合わせで現れるとは。
元が子供だったせいで悟空の力を全く引き出せないのはかなりの痛手になるでしょう。

>入れ替わって………る?
絵面が簡単に想像できるほど全く違和感がない。
何気に初めて自分の体を使っている参加者に出会った首領パッチとゴルシだけども、ここまですぐに馴染めるのもそうそういないのでは?

>炎の身体、炎の刀
人間よりも食物連鎖が上にある生物になった志々雄様。
刀という名の銃を渡されたこと以外は好調な滑り出しと言えるでしょう。

>失くしたはずの暴食(グラトニー)
せっかく人間の体になれたのに、よりにもよって千翼の体になってしまったアルフォンス。
アマゾンの食人衝動等といった心配事がいっぱいです。

>我も紅に染まれ紅蓮に繋がれて
不死身の杉本、本当に不死身になるの巻。
流石に殺し合いのために回数制限がありますが、杉本なら大丈夫だろうという安心感があります。

>カサブタだらけの情熱を、忘れたくない
遂に出てきたウルトラ怪獣、しかも合体怪獣。
スケールダウンしていますがそれでも4メートルありますし、中のグラスゴスは全てを破壊しようとしているから危険性は相当なものでしょう。
そんな怪獣にも立ち向かおうとするフォルゴレ、そんな彼を助けようとするライスシャワー、どちらもかっこいいです。

>身体はお姉ちゃん、魂はお兄ちゃん
一見、兄を名乗る不審姉と化した感じになっている脹相。
こんな状況でも弟のことを考えているのはまさしく兄の鑑と言えますね。

>二人の切り札
ジョーカーの縁で繋がった2人の心と体。
翔太郎本人はいなくとも心にある正義は同じなので相性はバッチリと言えるでしょう。

>Die Verwandlung
かつての兄と同じく、虫の体となってしまった妹。
この特殊ルールの殺し合いだからこそ起こる因果応報ですね。
まあ、弱い体ではないようなのでそう簡単には死ななさそうですね。

>おねショタとは外見か中身か
体が変わってもラッキースケベ体質は変わらないリトさん、さすがです。
体の持ち主の本人たちが見たら気まずい感じになりますかね?

>殺し合い?そんなことよりゴブリンだ
ゴブスレさんがゴブリンの話しかしないことで気づけた女神官ちゃん、こんな独特の言動をする知り合いなら判別にそう苦労せずに済みますね。
こんなところでもゴブリンがいるかどうかを気にするゴブスレさんは通常運転にもほどがありますね。


87 : ◆ytUSxp038U :2021/03/18(木) 16:09:31 hrXECg/20
感想ありがとうございます
投下します


88 : お前の背にかかる期待に ◆ytUSxp038U :2021/03/18(木) 16:13:16 hrXECg/20
「ヌゥ、何と言う事だ…!」

小奇麗なアパートの一室。
洗面台に置かれた鏡の前で唸るのは、殺し合いの参加者である男。
男は目を見開き、驚愕の表情で己の姿を凝視していた。

ホッケーマスクに似た仮面。
白いコートを着たような屈強な体格。
何よりも異質な、背中にある巨大な掌。
怪人とも言うべき姿であるが、男が驚いているのは自分の姿が人間離れしているからではない。
その姿が、自身が幼き頃より知っている者であるからだ。

(間違いない、この肉体は我が弟ディクシアのもの!)

ディクシア。
それはこの男、オメガマン・アリステラの双子の弟。
地球での戦いで既に消滅したディクシアの肉体が、今度は実の兄に与えられたのだった。

「おのれ…!どこの誰かは知らぬが、我らをコケにするとは許さんぞ…!!」

自分に首輪を填め駒のように扱い、弟の肉体を殺し合いなどと言う低俗な遊びに利用する。
姿を見せない殺し合いの主催者に対し、アリステラ怒りが煮えたぎっていた。

(…だがこれはチャンスでもあるか)

怒りを抑えつつ、冷静に思考する。
主催者の言う「どんな願いでも叶えられる」、というのは実に魅力的だ。
本来であればオメガ・ケンタウリの六鎗客と共に地球へ赴き、正義超人の持つ友情パワーとサイコマンの研究所。
それらの秘密を手に入れるつもりであった。
しかし、殺し合いに勝ち残る事でオメガの民を救えるのならば、このチャンスを逃す手はない。
加えて与えられた肉体がディクシアのものであるのも好都合と言える。
これがもし名前も知らぬ弱小超人や、そもそも超人ですらない人間であったらアリステラと言えども優勝を目指すのは躊躇しただろう。
だが、ファイトスタイルを熟知した弟の肉体ならば話は別。
戦闘に多少の難儀はあれど、どこぞの馬の骨の肉体を与えられるのに比べたら十分勝機はある。

「良いだろう、未だ姿も見せぬ軟弱な貴様に従うのは癪だが、このゲームに乗ってやろう。
 だが勘違いするな!オレは断じて貴様に屈したのではない!全てはオメガの当主としての使命を果たす為だ!!」

どこかで参加者を監視しているであろう主催者に向けて叫ぶと、デイパックを担ぎ部屋を出る。

(オレは必ずオメガの民を救う力を持って帰る。その為にディクシアよ、お前の肉体を使わせてもらうぞ)

全ては故郷の星を救うため。
決意を新たにアリステラは歩き出す。

自分達が大魔王サタンの卑劣な策略に操られている事を知らないままに。


【オメガマン・アリステラ@キン肉マン】
[身体]:オメガマン・ディクシア@キン肉マン
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:優勝する
[備考]
※参戦時期は地球にやって来る直前。


89 : ◆ytUSxp038U :2021/03/18(木) 16:14:10 hrXECg/20
投下終了です


90 : ◆NIKUcB1AGw :2021/03/18(木) 22:10:31 J44gjmw20
投下します


91 : 復活のGであります! ◆NIKUcB1AGw :2021/03/18(木) 22:11:31 J44gjmw20
「なんというチャンスだ、これは……。
 地獄の日々を耐えてきた甲斐があった!」

暗闇の中、一人の男が歓喜に打ち震えていた。
男の名はギニュー。宇宙を恐怖で包んだフリーザ軍の中でも指折りの実力者であり、精鋭部隊「ギニュー特戦隊」を率いていた猛者だ。

彼には、唯一無二の能力があった。
それが「ボディーチェンジ」。自分と他人の体を入れ替えてしまうという技だ。
この技により強者に遭遇しては体を奪うというのを繰り返し、彼は組織内で地位を築いていった。
だがギニューを底辺まで転落させたのも、この技だった。
ある戦いにおいて、第三者の妨害によりギニューはカエルと体を入れ替えてしまったのだ。
ボディーチェンジの発動には、使用を口に出して宣言する必要がある。
言葉をしゃべれない動物になってしまっては、もうボディーチェンジは使えないのだ。
それ故、ギニューは残りの人生を無力なカエルとして過ごさざるを得なくなってしまった。

だがギニューは、この殺し合いに参加させられることで新たな体を手に入れた。
外見などどうでもいい。重要なのはしゃべることができるということだ。
これで、またボディーチェンジを使うことができる。
強い体を奪いさえすれば、優勝も難しいことではない。

(元の体に未練などないし……。優勝で叶えられる願いとやらは、超サイヤ人に倒されてしまったというフリーザ様の復活に使うか……。
 もう一度我々が、宇宙を支配するときが来るのだ!)

明るい未来を思い描くギニューの口からは、自然と笑い声が漏れる。

「ゲーロゲロゲロ……。って、またカエルかい!」


【ギニュー@ドラゴンボール】
[身体]:ケロロ軍曹@ケロロ軍曹
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝し、フリーザを復活させる
1:強敵と遭遇したら、ボディーチェンジで体を奪う
[備考]
・参戦時期はナメック星編終了後


92 : ◆NIKUcB1AGw :2021/03/18(木) 22:12:21 J44gjmw20
投下終了です


93 : ◆L9WpoKNfy2 :2021/03/20(土) 21:28:53 MRa4HpIQ0
投下します


94 : HEISEIのHENTAI ◆L9WpoKNfy2 :2021/03/20(土) 21:29:35 MRa4HpIQ0
ここは会場内の街の中、そこにこの男はいた。

縮れの強い癖毛と恰幅の良い体格をした姿をしており、何故か"パパイヤ"という言葉を連想させる姿をした中年男性だった。

そんな彼は今、怒りに打ち震えていた。

彼が怒りに打ち震えている理由、それは……

「フェチ撲滅特殊工作員ー!またテメエらかー!!オタク差別もたいがいにしやがれー!!!」

彼が元の世界で幾度となく戦ってきた組織がこの戦いの裏にいると思っているからである。

彼が言う組織『日本国政府フェチ撲滅特殊工作員』とは、この世からフェチやオタクをダメ人間をなくすために
フェチやオタクの排除と萌え撲滅を目論む組織である。

例を挙げれば、爆弾の入ったフィギュアを配布したり、コ〇ケを襲撃して中止に追い込もうとするなど、そういった過激な活動をしている組織だった。

この男は、今回のこの催しも彼らがオタクたちを撲滅するために始めたものだと判断したのだ。

「俺たちを様々なキャラクターにして殺し合わせることで、作品自体の品位を下げることで撲滅させるとは考えたじゃないか!」
「だが、俺たちはこんな事じゃくじけねえ!!オタク文化も、萌えキャラたちも絶対に守り通してやるからな!!」
「……もちろん、こんな高度なコスプレをさせてくれたのはありがたいと思っているがな!」

そして男は、天に向かって萌えに対する熱い思いを叫びながら宣戦布告のだった……。

―― 彼の名は山本一番星、"萌え"を誰よりも愛し、妄想に魂を燃やす妄想戦士である。

【山本一番星@妄想戦士ヤマモト】
[身体]:カゲン@劇場版仮面ライダージオウ Over Quartzer
[状態]:健康
[装備]:ゾンジスライドウォッチ&ジクウドライバー@仮面ライダージオウ Over Quartzer
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:"萌え"を守るために戦い抜く。
1:オタク文化を守る。
2:萌えキャラがいれば全力で守り通す。
[備考]
参戦時期は最終回後。
主催者に『日本国政府フェチ撲滅特殊工作員』がいると考えております。
自分たちの姿が返られたのを、『高度なコスプレを施された』と勘違いしております。

【ゾンジスライドウォッチ&ジクウドライバー@仮面ライダージオウ Over Quartzer】
 仮面ライダーゾンジスに変身するために必要なアイテム及びベルトのセットで、合わせて一つの支給品としてカウントされている。

 俗に『ネオライダー』と呼ばれる3人の仮面ライダーの力が宿っており、

 なお本来のゾンジスには両腕に真、ZO、Jのライドウォッチが付いているが
 主催者の手により全て外されている。


95 : ◆L9WpoKNfy2 :2021/03/20(土) 21:30:03 MRa4HpIQ0
投下終了です

ありがとうございました。


96 : ◆NIKUcB1AGw :2021/03/21(日) 15:05:27 9i/ZYNxA0
投下します


97 : 誕生! 究極大首領! ◆NIKUcB1AGw :2021/03/21(日) 15:06:35 9i/ZYNxA0
「いつ以来であろうな……。驚愕などという感情を抱くのは……」

丘の上にたたずむ、一人の男が呟く。
男の名は、JUDO。古の時代に地球へと降り立ち、配下の裏切りによって異次元に幽閉された超越存在である。
「魂の牢獄」と名付けられた異次元から脱出するために、JUDOは気の遠くなるような時間をかけて計画を進めてきた。
だがこの殺し合いの主催者は、JUDOの魂をあっさり牢獄から連れ去り、まったく関係のない肉体に宿らせてみせた。
それは人知を超越した力を持つJUDOでさえ、驚かざるを得ない行いであった。

「我らも知らぬ宇宙の果てで生まれた存在か、あるいは別の次元の存在か……。
 まあ、何でもいい。我を牢獄から解き放ってくれた例だ。
 この催しに付き合ってやろう」

かりそめの体で、JUDOは笑う。
いかに彼といえど、今は与えられた体が元々持つ力しか使えない。
本来なら傷一つつかないレベルの攻撃でも、あっけなく死んでしまう可能性もある。
それでもJUDOは、積極的に殺し合う道を選んだ。

「弱き体になったことを、面白いと感じてしまうとは……。
 牢獄があまりにも退屈すぎて、妙なことを考えるようになってしまったようだ」

今度は自嘲の笑みを浮かべながら、JUDOは支給品の一つを取り出す。
それを腰に巻くと、今度は1枚のカードを取り出してそれにセットした。

『KAMENRIDE DECADE!』

電子音声と共に、JUDOの体が黒とマゼンタを基調とした鎧に覆われていく。

「仮面ライダー……。我の体のプロトタイプたちが名乗っていた名か……。
 これはどうやら、並行世界で生み出された同名のシステムのようだが……。
 どれほどの力か、試させてもらおうか」

今、世界の破壊者が最悪の形で野に放たれた。


【大首領JUDO@仮面ライダーSPIRITS】
[身体]:門矢士@仮面ライダーディケイド
[状態]:健康
[装備]:ディケイドライバー@仮面ライダーディケイド
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:優勝を目指す
[備考]
・参戦時期は、第1部終了時点


【ディケイドライバー@仮面ライダーディケイド】
仮面ライダーディケイドの変身ベルト。
付属する「カメンライド・ディケイド」のカードをセットすることで変身できる。
クウガからキバのカードもいちおう付属しているが、力を失っている状態のため現状では紙切れ同然。


98 : ◆NIKUcB1AGw :2021/03/21(日) 15:07:48 9i/ZYNxA0
投下終了です


99 : ◆L9WpoKNfy2 :2021/03/21(日) 19:16:23 NWhGErOw0
申し訳ございません、>>94の内容に抜けがございましたので、以下のように修正をお願いいたします。

 俗に『ネオライダー』と呼ばれる3人の仮面ライダーの力が宿っており、

 俗に『ネオライダー』と呼ばれる3人の仮面ライダーの力が宿っており、他のライダーと違い武装を持たないが
 パワーや防御力に優れており、徒手空拳のほかにも緑のエネルギーを纏った引っ掻き技も繰り出すなどの荒々しい戦い方が特徴的。


100 : ◆NIKUcB1AGw :2021/03/21(日) 22:53:37 9i/ZYNxA0
もう1本投下させていただきます


101 : 見た目はゴリラ、中身もゴリラ、燃える瞳は原始のゴリラ! ◆NIKUcB1AGw :2021/03/21(日) 22:54:42 9i/ZYNxA0
不破諌。
特務機関「A.I.M.S」の元隊長であり、現在は街の平和を守るフリーの仮面ライダー。
ライダーの変身に用いるキーの物理プロテクトを強引にこじ開け、自動車のドアを素手でもぎ取る怪力の持ち主。
変身するライダーのフォームに「パンチングゴリラ」があるというのもあり、そのパワフルさを「ゴリラ」と揶揄されることもある。
そんな彼は今……。

「ウホォォォォォォォ!!(ふざけるな、ちくしょう!!)」

本物のゴリラになっていた。


【不破諌@仮面ライダーゼロワン】
[身体]:ゴリラ@魁!!クロマティ高校
[状態]:健康、逆上
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いをぶっ潰す!
[備考]
・参戦時期は劇場版「REAL×TIME」終了後。


102 : ◆NIKUcB1AGw :2021/03/21(日) 22:55:35 9i/ZYNxA0
投下終了です


103 : ◆5IjCIYVjCc :2021/03/22(月) 11:27:53 C8WVQvaI0
>お前の背にかかる期待に
弟にされた兄、兄弟の体を使っている分他の参加者よりは使い勝手が良さそうですね。
元々背中に大きな手があり、その状態をタイトルのように背に弟の期待がかかると表現するのはとても上手いと思いました。

>復活のGであります!
またまたカエルの体になってしまったギニュー隊長、喋れる分ただのカエルよりはまだましですね。
体を入れ替える能力を持つ者が解き放たれたら、このロワはより混沌としたものになるかもしれません。

>HEISEIのHENTAI
入れ替えではなくコスプレと解釈、現代人ならそう思っても仕方ないのかもしれません。
基本的に参加者が皆見た目とは違う行動をとる以上、知らなければ元キャラにとって風評被害となることに気づけるのは美点でしょう。

>誕生! 究極大首領!
おのれディケ…じゃなくてJUDO!
昭和と平成の違いはあれど、似たような能力と立場を持っていたことから体の相性が良さそうでだからこそ恐ろしいです。

>見た目はゴリラ、中身もゴリラ、燃える瞳は原始のゴリラ!
遂に本物ゴリラと化した不破さん。
バルカンには変身できないけどゴリラパワーで何とかでき…ますかね?

それでは、私も一つ投下します。


104 : ◆5IjCIYVjCc :2021/03/22(月) 11:28:52 C8WVQvaI0
殺し合いの舞台となったこの地で1人、青い髪をした少女がいた。
その少女はジャケットを身に着けており、容姿から年齢は中学生くらいだと推定される。

そして今、彼女の体を動かしている人物は元の持ち主とは打って変わってドス黒い精神を持った男であった。

彼の名はヴァニラ・アイス、DIOに仕えるスタンド使い達の中で最もDIOを狂信していた男である。


「おのれポルナレフ…!よくも私を…!」

そんな彼に残っていた最後の記憶は自分が死ぬ瞬間のことであった。
自分がDIOのような吸血鬼と同じく日光が弱点となる体質になっていたことに気づいてなかった。
そのために彼の体はポルナレフという男によって日光を浴びせられ、体は崩れ去ってしまった。
死体も残っていないだろう。

だから彼がここに来て最初に抱く感情はポルナレフへの憎しみとなった。
DIOから命じられ、自分が本来成し遂げるはずであった指令を果たせなかったことは彼の精神をより黒く染めていく。
彼の中で怒りがふつふつと湧き上がる。
だがこの場でポルナレフを確認できない以上、その怒りは彼の中でくすぶらせたままの状態にするしかなかった。


「私は…DIO様のためにもこの戦いを何としてでも勝ち残らなければならない!」

ヴァニラ・アイスはこの殺し合いに優勝するつもりでいた。

この戦いを主催した者は死亡した人間を蘇生できることを示した。
だが死体の残っていない自分ではそれが可能かどうか疑わしいところである。
優勝者はどんな願いでも叶えられると伝えられているが、その力が本当に何でもできるかどうかの確証は得られていない。
だから彼は自分に与えられた少女の体を手放すわけにはいかない。
殺し合いという面倒な催しをやらされていることは腹立たしいが、失われるはずだった自分の魂を生きている人間の体に入れたことに関してのみなら感謝してもよい。

優勝したらすぐに、たとえこの体のままであっても元居た場所に戻る。
そして自分の肉体を破壊したポルナレフも、まだ残っているジョースター3人も確実に殺す。
それがヴァニラの目標となっていた。

「スタンドは…使えるようだな」

ヴァニラ・アイスは自分の背後に自らのスタンドである『クリーム』を出現させる。
このクリームこそが彼の暗黒の精神の象徴であり、DIOのために敵を殺す凶悪なスタンド能力である。
一度敗れてしまったが、このクリームの暗黒空間に飲み込む能力さえあればヴァニラ・アイスは最凶のスタンド使いにだってなれる。

「だが…気になることはまだある。この小娘についてだ」

差し当たって、彼は今の自分の体の詳細を確かめようとした。
DIOが与えたような不死身の体ならともかく、普通の人間の体…それも元の自分よりも弱い体であった場合はたとえスタンドが使えたとしても簡単にやられてしまう可能性がある。
自分のスタンド能力の強さについては自負しているが、ポルナレフのように弱点を突いてくる者だっているかもしれない。
それを防ぐためにもこの体がどういった力を持っているか確かめる必要があった。

今の自分の体については何の変哲もない、特別な力なんて持っていない、ただの弱い日本人の少女としか感じられない。
だがわざわざこんな殺し合いの場において普通の人間の体を与えるとも思えない。

そんなことを考えながらデイパックから体の持ち主についてのプロフィール書類を取り出し、その内容に目を通す。
そこに書かれていたことは…

「…プリキュア?」

このような機会にならなければその名を知る由もなかったであろう。

みんなの『大好き』を守るために戦ってきた『伝説のパティシエ』の名がそこに記載されていた。


【ヴァニラ・アイス@ジョジョの奇妙な冒険】
[身体]:立神あおい@キラキラ☆プリキュアアラモード
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、スイーツパクト&変身アニマルスイーツ(ライオンアイス)@キラキラ☆プリキュアアラモード、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:優勝して速やかに帰還する
1:自分以外の参加者を殺す
2:念のためにプリキュアの力を試しておきたい
[備考]
・死亡後から参戦です。

【スイーツパクト&変身アニマルスイーツ@キラキラ☆プリキュアアラモード】
「キラキラ☆プリキュアアラモード」におけるプリキュアへの変身アイテム。
コンパクト型のアイテムであり、中に変身アニマルスイーツをセットして変身する。
ライオンアイスの場合はキュアジェラートとなる。
中にあるボウルをかき混ぜることでクリームエネルギーという攻撃にも使えるエネルギーを作ることも可能。


105 : ◆5IjCIYVjCc :2021/03/22(月) 11:29:28 C8WVQvaI0
投下終了です。
タイトルは「クリームの力」となります。


106 : ◆L9WpoKNfy2 :2021/03/22(月) 22:29:42 4gZLh17c0
投下いたします。

以前、コンペロワに投下したものをいくつか流用して手直ししたものになります。


107 : 怒りの荒野に、血なまぐさい風が吹く ◆L9WpoKNfy2 :2021/03/22(月) 22:31:30 4gZLh17c0
ここは会場のとある場所、そこには異様な風景が広がっていた。

「……もう、やめてぇ……お願いだからぁ……もう、出さ、な…でぇ…これ以上はぁ……おなかが……破裂しちゃうぅ……!」

そこには、角の生えた女性が男に陵辱されている姿があった。

しかし角が生えていたといってもその角はへし折られており、またその両手も不自然な方向に折れ、痛々しさを感じさせる姿になっていた。

更に言うと背中には何かしらの機械が取り付けられていたようだったが、それが完膚なきまでに破壊されていたのだ。

「何言ってやがんだ!いきなり人を殺そうとして、許すわけねえだろうが!おなかが破裂するだぁ?そのまま破裂しちまいな!!」

また、彼女を陵辱している男も異様な姿をしていた。

その男は赤と黒と銀色をした肌をしており、また赤くつりあがった両目と両肩にはリベット、そして尖った指先をした筋肉質な男だった。

そしてそれはまさに、特撮ヒーローを邪悪にしたような姿だった。

男の口ぶりからすると、女性の方が彼に襲い掛かった結果返り討ちにあい、結果このような状態となっているようだ。

「お、おおお!もうそろそろ、イクぞぉぉ――!しっかり受け止めろよ!!」

「イヤァァァ――!!もうナカに出さないで――!!」

そうしていると男が、そろそろ絶頂するという事を彼女に宣告しだした。

それに対し彼女が再び悲痛な声を上げるが、そんなことはお構いなしにと彼は自らの精を流し込んでいったのだった。

そうやって男がひとしきり彼女をレ〇プした後、彼は満足したらしく彼女のアソコから自らのペ〇スを引き抜いた。

それにより支えを失った彼女の身体は、力なくその場に倒れ伏したのだった。


108 : 怒りの荒野に、血なまぐさい風が吹く ◆L9WpoKNfy2 :2021/03/22(月) 22:32:19 4gZLh17c0
「痛い……痛いよぉ……もう、これ以上私にヒドイ事しないでぇぇ……」

そうしてうわごとのように男に嘆願するのだったが、男はそれを何も言わず見降ろし続けていた。

「もう……こんなことはしないからぁ……どうか、許してえぇぇ……」

それを受けてなお、彼女は目の前の男に許しを乞うた。

もうこれ以上、苦しい思いはしたくない……彼女はその一心で必死に嘆願し続けた。

すると……。

「……しょうがねえ、どうやら改心したみたいだし……命は助けてやるよ」

何と目の前の男が折れて、彼女を許すことにしたのだ。

「あ……ありがとうござ…ます……!」

それを受けて彼女は、息も絶え絶えになりながらも感謝の言葉を述べていた。

そうして感謝の言葉を述べていると、突如として目の前の男が彼女の頭をなで始めたのだ。

『なぜ自分の頭をなで始めたのか?』そう彼女が疑問に思っていたが、その答えはすぐに判明した。

「あっはっは……気が変わった、やっぱ殺すわ♪」

そういうと男は彼女の頭を掴み、指先に力をこめ始めたのだ。

「え……どうして……痛い痛いイタイィィィ!!」

それに対し彼女は抗議の声を上げようとしたが、彼が全力で頭を締め上げたことに対し苦悶の声を上げた。

そして……

グシャリ、という音とともに彼女の頭は砕け散ったのだった……。

【累の母@鬼滅の刃(身体:港湾棲姫@艦隊これくしょん) 死亡】


109 : 怒りの荒野に、血なまぐさい風が吹く ◆L9WpoKNfy2 :2021/03/22(月) 22:32:44 4gZLh17c0
そして彼女の頭を握りつぶした男は、興奮した様子で叫んでいた。

「ぐはは――!!弱気になったヤツにトドメさすってのが、一番気持ちイイぜ――!!」

そんな、どう見ても悪役にしか見えない彼の名はアーマージャック、(一応は)正義のヒーローである。

……自分の手柄を横取りしたといって他のヒーローをリンチしたり、助けた見返りがしょぼかったという理由で民間人を殺害したり、
挙句の果てには自分をたたえる歌を歌わなかったチビッ子を真っ二つにしたりなど極悪非道な行いをするが、一応は正義のヒーローである。

「あ゛〜、スッキリした!こうやってヒーローやってりゃあ大義名分のもと好き勝手やれるから、ヒーローさまさまだわ!!」
「それにさっきの奴はいきなり人に襲い掛かるようなキ〇ガイだから、ナニをしようが誰も文句は言わねえだろうし、万々歳だわ!」

……こんなことを言っているが、彼は本当に正義のヒーローなのである。筆者も信じられないが、正義のヒーローなのである。

そうやって興奮のままにひとしきり叫びまくっていたところ、彼はいきなり冷静になった。何故ならば……

「そういや確か、『優勝すればどんな願いでも叶える』って言ってたな。じゃあ、優勝して願いかなえてもらってから主催者ぶっ殺すか」

どうやら、自分が現在置かれている状況について思い出したようだ。

「そうと決まればさっそくほかの参加者見つけてぶっ殺すか。あと、いいオンナがいれば俺が満足するまでレ〇プしてからぶっ殺そう」

そうして彼は今後の目標を決めて、どこかへと歩きだした。

自分の下種な欲望のために、そしてすさまじいまでの殺人欲求を昇華するために。

そして、正義の名のもとに好き勝手やるヒーローが、今動き出すのだった……。

【アーマージャック@突撃!!アーマージャック】
[身体]:ウルトラマンオーブ・サンダーブレスター@ウルトラマンオーブ
[状態]:健康、主催者に対するストレス(大)
[装備]:馬のチンチン@魔界戦記ディスガイア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:主催者をぶっ殺す。そのために参加者を皆殺しにして優勝する。
1:みんなぶっ殺してやる。そのために会場内を探索する。
2:男はそのままぶっ殺す。女はレ〇プしてから殺す。
3:あ〜、早くだれかぶっ殺してえ〜。
[備考]
製作会社公認のパロディAV『悶絶!!アーマージャック』の要素も混ざっております。

【馬のチンチン@魔界戦記ディスガイア】
 ゾンビたちのボスに使われていたパーツの一つで、魔王すら恐れをなしたものスゴイ代物。

 装備すると攻撃力とスピード、命中率を上げることができ、また男女関係なく誰でも装備できる自慢の一品。

 ……どこに、どうやって装備するかは深く考えないほうがいいかもしれない…。


110 : ◆L9WpoKNfy2 :2021/03/22(月) 22:33:43 4gZLh17c0
投下終了です

ありがとうございました。


111 : ◆NIKUcB1AGw :2021/03/23(火) 00:17:00 bFJrVKUk0
投下します


112 : チョッパー×チョッパー ◆NIKUcB1AGw :2021/03/23(火) 00:18:12 bFJrVKUk0
とある民家の中に、一人の参加者がいた。
いや、「一人」ではなく「一匹」と言うべきか。
その参加者の肉体は、小動物にしか見えなかった。

「いやー、今度こそ本当に死んだと思ったんだがなあ。
 ついてるのか? まあついてるんだろうなあ」

肉体に宿る精神の名は、バリー。
人呼んで、「バリー・ザ・チョッパー」。
かつて人々を震いあがらせた連続殺人鬼であり、逮捕後は軍の人体実験に使われ、魂を鎧に定着させられるという数奇な運命をたどった男だ。
しかしその鎧とのつながりも断たれ、彼という魂は完全に消滅したはずだった。
だが気がつけば、彼はまた新しい肉体に宿っていた。

「まさか鎧の次は動物になるとは、さすがに思わなかったが……。
 まあ、殺しができりゃなんでもいいか!」

かつて自分と同じように鎧の体となった少年に対し、バリーは言った。
「我殺す、故に我あり」と。
バリーにとって、殺人こそがアイデンティティー。
肉体がどうなろうとも、彼の自我が揺らぐことはない。


◆ ◆ ◆


「ヒトヒトの実を食べ、人間に変身できるようになったトナカイ……?
 よくわかんねえが、軍が作ってた合成獣(キメラ)みてえなもんか?」

バリーはまず、おのれに与えられた肉体に関する説明文を読んでみることにした。
生い立ちなどはどうでもいいが、何か特別な能力があるなら知っておいた方がいいという考えである。

「より人間に近い姿と、獣の姿に変身できる……。おお、いいじゃねえか」

さっそくバリーは、変身を試してみることにする。
子供の背丈ほどだった肉体はみるみる大きくなり、ほんの数秒で筋骨隆々の巨漢へと変化した。

「ほほー! なかなかのもんだな!
 これならカバンに入ってた、クソ重い斧も使いこなせそうだぜ」

肉体の変化に満足したバリーは、意気揚々と斧を掲げる。

「いつもの得物と、ちょいと勝手は違うが……。まあ、贅沢は言ってらんねえよな。
 よし、さっそく殺しにいくか!」

斧を手にした大男が、夜の街へと繰り出していく。
その姿はまさに、「怪物」であった。


【バリー・ザ・チョッパー@鋼の錬金術師】
[身体]:トニートニー・チョッパー@ONE PIECE
[状態]:健康、人型
[装備]:魔神の斧@ドラゴンクエストシリーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:存分に殺しを楽しむ
[備考]
・参戦時期は、自分の肉体に血印を破壊された後


【魔神の斧@ドラゴンクエストシリーズ】
かつて魔神が振るっていたとされる、重厚な斧。
「会心の一撃」が出る確率が上がる代わりに、攻撃を外す確率も上昇する。
なお禍々しい名前と外見でデメリット能力つきだが、呪われてはいない。


113 : ◆NIKUcB1AGw :2021/03/23(火) 00:19:23 bFJrVKUk0
投下終了です


114 : ◆L9WpoKNfy2 :2021/03/23(火) 22:05:41 08Jz0OLY0
投下します


115 : 虚ろなる天空巨神 ◆L9WpoKNfy2 :2021/03/23(火) 22:10:05 08Jz0OLY0
ここは会場内にある山の中、そこには異様な存在があった……

それは黄色く発光する頭部を持つ人型の存在だった……

それは周囲にある木々や虫たちを胸から生やした白い手で飲み込み続けていた……

それはありとあらゆる命を飲み込む存在だった……

それは『無』そのものを実体化させたような、不条理な存在だった……

そしてその中身は、まだ世界が混沌としており、人と魔と神が争っていた時代に存在したものだった……

その存在は、我が子と自身の片割れの手で解体された破片の寄せ集めに過ぎなかった……

それでも、それは生きていたのだ……

その、太古の天空神はまだ生きていたのだ……

自身がすでに狂っていることも知らぬままに

「我ニ……ヲ捧ゲヨ…我ノ……ヲ地ニ…エヨ……」

自身がすでに神ではなく、今や別の身体に移し替えられていることも知らぬままに

「我ニ…物ヲ捧ゲヨ…我ノ言…ヲ地ニ伝エヨ……」

自身は『神』の残骸でしかないことも知らぬままに

「我ニ供物ヲ捧ゲヨ…我ノ言葉ヲ地ニ伝エヨ……」

その存在は叫び続けていた……

秩序と支配を叫び続けていた……

「進軍セヨ…我ハ……ヲ喰ラウ…」

その巨神『ウラヌス』は叫び続けていた……

【ウラヌス@LORD of VERMILION】
[身体]:虚空怪獣グリーザ(第二形態)@ウルトラマンX
[状態]:発狂
[装備]:『宇宙の穴を縫う針』@ウルトラマンZ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:『神』として復活を果たすために、全てを喰らい尽くす。
1:我ニ供物ヲ捧ゲヨ…我ノ言葉ヲ地ニ伝エヨ……
[備考]
発狂しているため、意思疎通は不可能です。
本来は実体がないため物理攻撃が一切通用しないのだが、制限により物理攻撃が通るようになっています。
また『宇宙の穴を縫う針』の関係上、支給品の数が減らされています。
その他、グリーザ本来の能力とウラヌス自身の能力である
『両腕で大地をかき混ぜることで、生命反応を持った岩山を作り出す能力』以外は使えません。

【『宇宙の穴を縫う針』@ウルトラマンZ】
グリーザの体内で生成される武器であり、無であるグリーザを唯一止められるとされる力。


116 : ◆L9WpoKNfy2 :2021/03/23(火) 22:10:45 08Jz0OLY0
投下終了です

ありがとうございました。


117 : ◆NIKUcB1AGw :2021/03/24(水) 00:35:58 bNjvgSq20
投下します


118 : 悪魔の中の悪魔 ◆NIKUcB1AGw :2021/03/24(水) 00:37:01 bNjvgSq20
森の中を、黄色い体のモンスターが走っている。
その息が乱れているのは、走っているからだけではない。
後ろから迫ってくる存在への恐怖。それが、彼の心拍数を跳ね上げていた。

「ちくしょう! ちくしょう! この体の能力さえあれば、女を好き放題できるのに!
 なんで最初に出くわしたのが、あんな化物なんだよぉぉぉぉぉ!!」

わめき散らしながら、モンスターに宿った男はなおも走る。
だが体力が底をつき始め、そのスピードはみるみる落ちていく。
一方、その後ろから追いかけてくる存在はいっこうにスピードを落とさない。
距離はどんどんと縮まり、とうとう追跡者の手が男の腕を掴んだ。

「ひいっ!」

おびえる男の目が、追跡者の姿を映す。
それはおどろおどろしい仮面と鎧に身を包んだ、すさまじい威圧感を放つ巨漢であった。

「ち、ちくしょう! こうなったらやってやる!
 くらえ、さいみん……」

逃げ切れないと観念した男は、自分から打って出ようとする。
だが彼が何かをするより早く、追跡者の空いている方の拳がその胸に叩き込まれた。
肋骨が砕け、心臓に突き刺さる。
口から血をあふれさせながら、男は絶命した。

【ヤバい人@デッドプール:SAMURAI(身体:スリーパー@ポケットモンスター) 死亡】


◆ ◆ ◆


「殺しは初めての経験やけど……。なんてことないなあ。
 せっかくの初体験なんやから、もっと面白そうな相手を選ぶべきだったわ」

自分が殺した相手の亡骸を見下ろしながら、追跡者は独白する。
彼の名は、アミィ・キリヲ。脆弱な体に狂気を隠した「悪魔」である。
もっとも、脆弱な体というのは現状には当てはまらないが。

「しかしまあ、ものすごい身体能力やなあ。
 大魔王っちゅうのも、はったりってわけやなさそうや」

彼に与えられた体は、「大魔王サタン」。
この世の全てを憎み、常に争いを巻き起こそうとする邪悪の化身である。

「歴代の魔王に、こんなのがおったって話は聞いたことがない……。
 ちゅうことは、別の世界の魔王なんかなあ?」

我ながら荒唐無稽な話だと感じるキリヲだが、根拠がないわけではない。
魔界では空想上の生物とされていた人間が、実在していたのだ。
魔界とは別に人間たちが住む世界も存在しているというのなら、悪魔たちの知らない世界が他に2,3個あったとしてもおかしくはない。

「まあそれはどうでもええねんけど……。この見た目だけはいただけんなあ。
 元の体とのギャップがひどすぎて、めまいがしそうや。
 優勝したら体力だけはこのままで、元の体に戻してもらうとかできへんかなあ」

のんびりとした口調で、キリヲは呟く。
たしかにそれは、凶悪さを前面に押し出したサタンの外見とは不釣り合いと言っていいだろう。

「まあ、今から優勝したときのこと考えてもしゃあないか。
 まずは勝ち残ってからやな……。
 ああ、楽しみやなあ」

ふいに、キリヲの声に闇が混じる。

「腕っ節だけで、どれだけの相手を絶望させられるか……。
 僕の腕の見せ所やなあ」


アミィ・キリヲ。
何よりも、他人の絶望した顔を見ることを喜びとする悪魔である。


【アミィ・キリヲ@魔入りました!入間くん】
[身体]:大魔王サタン@キン肉マン
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品2〜6
[思考・状況]基本方針:優勝を目指す
1:その過程で、参加者たちの絶望を楽しむ
[備考]
・参戦時期は、単行本20巻時点


119 : ◆NIKUcB1AGw :2021/03/24(水) 00:37:57 bNjvgSq20
投下終了です


120 : ◆EPyDv9DKJs :2021/03/25(木) 03:45:30 yIwy9ow60
投下します


121 : ◆EPyDv9DKJs :2021/03/25(木) 03:47:36 yIwy9ow60
 広々とした湖畔の近くにて、相対する二人の男女。
 双方整った顔立ちに、蒼をメインとした鎧と服装の美男美女。
 非常に見栄えは良いものの、当人らはそんなことを考える暇はない。
 既に戦いは始まっており、甲高い金属の音が静かな夜に響く。

「遅い!」

 蒼い鎧に身を包んだ男は剣と短剣による素早いラッシュ。
 片手には黒紫の短剣はいいとして、片方は巨大な赤い蝋燭。
 酷く場違いではあるのだが、刃が逆に存在する不殺の刀で防いだ彼女だからわかる。
 見た目は確かに蝋燭とふざけたものだが明らかに業物。しかも相当な代物だと。
 気を抜けば一瞬で決着がつきかねない中、なんとか攻撃を凌ぎ、逆刃刀を振るう。
 刃は逆に存在するので斬ることはなくとも鉄の塊。素直に相手も避けて距離を置く。

「聞かせてください。貴方は何故私を狙うのですか?」

 青いドレスの女性は距離を取らせて仕切り直しの状態にして訪ねる。
 乗る以上は相応の理由があってのはずだ。
 和解ができるのであればしたい。

「僕の身の上話を聞けば、殺されるとでもいうのか?」

「そうではありません。強要されて人を殺めるのは───」

「僕は裏切り者だ。手に掛けた人数も覚えていない。
 今更此処で屍を築いたところで、何も変わりはしない!」

 問答を早々に終わらせて再び軽やかな身のこなしで相手を翻弄する。
 精神体の彼、リオン・マグナスには恋愛とは違うが大切な女性がいた。
 だが実の父であるヒューゴに人質にとられ、彼に従ってスタン達を裏切った。
 誰を殺そうとも、誰を傷つけようとも。彼女を守るためならば兄弟でも殺す。
 その覚悟で彼女を守ろうと思っている。たとえ彼女がどんな風に思われようとも。
 だから此処で彼女以外ならば誰だろうと殺すつもりだ。

(お互い不慣れな身体でありながらこの身のこなし。
 精神である彼の剣術と身体の方が似てるんでしょうか……!)

 一発一発の不意打ちを凌ぎながら考える。
 彼女の推測は当たりだ。肉体、ランスロットと呼ばれる男性は剣と短剣の二刀流。
 リオンも後の数奇な運命の末に、剣と短剣との二刀流を用いる才覚を持つ。
 後なので完全とまではいかないが、その片鱗は少なからず存在している。
 加えてランスロットは鎧を装備しながらも有り余る異常な機敏さ。
 更に短剣の力による強化も相まって、戦局はかなり有利に進んでいる状態。

「ッ!」

 辛うじて致命傷は防いでこそいるが、
 完全な無傷とはいかずいくつか傷が刻まれる。
 この身体について彼女は名前しか知らない。
 得物と肉体となる人物の名前を見ただけで、
 それ以外の情報を得る前にリオンの襲撃に遭った。
 名前だけでも十分に優れた剣術を持ってると理解し、
 事実、その剣術については悪いわけではない。寧ろよいレベルだ。
 彼女が知る限り最も優れた存在だと。

(私も似ているはずですが、流石に武器の差が厳しい……!)

 しかし、言い訳になるがいかんせん得物の差が大きすぎる。
 不殺の志を持つ刀はかの緋村抜刀斎が使えば、
 人以外の物は斬ることができる謎の業物ではある。
 しかし剣はあれども刀である以上使い勝手の違いは、
 性能は十全に発揮できず、決して捨て置けぬ差に繋がっていた。
 何より、ただでさえ体の違いや武器の不慣れがあるのに更なる問題がある。
 この身体……アルトリア・ペンドラゴンと呼ばれる人物だが、
 彼女は人ではなく英霊、サーヴァントとしての存在になる。
 いかに最優とされるセイバーのアルトリアだとしても、
 マスター不在の野良サーヴァントではステータスは低下状態。
 他の参加者以上に能力低下が著しい状況だ。

(確かに彼のスピードでは逃走は厳しいでしょう。ですが我が王であるならば───)

 剣の一撃を防ぐと同時に押し出し、その反動でリオンに距離を取らせる。
 防戦一方だった動きから変わって不穏な動きに警戒してしまうが、
 その判断が失敗だ。

「何!?」


122 : ◆EPyDv9DKJs :2021/03/25(木) 03:48:41 yIwy9ow60
 相手は湖へと向かって走り出す。
 そして水の上を、彼女は文字どおり駆け抜ける。
 アルトリアの身体には湖の乙女の加護があり、
 水上でも地上と遜色ない移動が可能だ。
 氷を操るランスロットならば追撃は難しくはないが、
 あくまでできるだけであってリオンも完全に慣れたわけではない。
 姿が夜ともあってすぐに見えなくなると、追跡を諦めることにする。

「……湖を走れるとは想定外だ。」

 この殺し合い、ただでさえ情報が不足している中力も発揮できない。
 普段の戦い以上にハンデが多く、何が起きるかがより分からない。
 自分が発揮しきれないように相手も発揮しきれない可能性はあるが、
 そのせいで突然使えるようになったと言った不意打ちもありうる。

「資料を先に奪うだけでも考えておくべきか。」

 自分の弱点を教えるようなものなので、
 恐らく捨てたり処分してる参加者もいるだろうが、
 真正面から戦うよりもよほど賢い選択になるはずだ。
 幸い、ランスロットの身体は非常に機敏な動きができる。
 正面戦闘よりも資料を奪うの優先することも視野に入るはず。
 弱点を見つけてから戦えば、必要以上の消耗も避けられる。

『強要されて人を殺めるのは───』

「強要ではない。僕の意思だ。」

 何度やり直そうと、何度生まれ変わろうとも。
 自分は選択をする。どんな結果であろうともだ。


 ◇ ◇ ◇


 騎士王の身体を持った少女は湖を駆け抜ける。
 一先ず追撃は逃れたが、事態を先延ばしにしただけ。
 このまま放っておけば彼は参加者を減らす可能性も出てくる。
 なるべく避けたいところだが、現状ではそんな余裕はなかった。

(今は退くしかありません。王がカヴァスを連れていたように、
 共に立ち向かう同志から武器を譲り受けれるとよいのですが……)

 現状での解決は難しい。
 円卓の騎士たちのように、仲間を集めなければ。
 可能ならばランスロットやモルドレッドがいないことを願いながら彼女は湖を走る。

(王よ。嘗ての居城である私にその騎士王の力をお借りすることをお許しください。)

 彼女の名前はブリテンにあるとされる城、キャメロット。
 かのアーサー王が居城としていた拠点の一つが少女と言う形になった存在、城娘。
 だから名前だけで剣技の優れた存在であると言うことが理解できたのだ。
 性別は違えど、彼女がアルトリア・ペンドラゴン本人だと戦いの中で感じとれた。

「名も存じぬ一人の騎士、そしてこの悪趣味極まりない催しをした黒幕よ。
 私は人々の物語を守ります。あなた方の思惑通りに動くつもりはありません。」

 キャメロト城は厳密には形が存在しない城娘だ。
 城娘でありながらも、彼女は現に姿を現すことはできない。
 彼女は架空の存在。物語の世界でしか顕在することのない特殊な城娘だ。
 前例は存在する。天空の城ラ・ピュータ、月の都など物語の世界
 ないし何かしらの縁で繋がった夢でのみ存在が確立できる存在。
 そんな彼女が表舞台へ姿を見せた。しかしやることは一つだ。
 騎士として、いくつもの物語として語り継がれた存在として。
 人々の物語を───命を守る。それが城娘、キャメロット城の願いなのだから。


123 : ◆EPyDv9DKJs :2021/03/25(木) 03:51:45 yIwy9ow60
【キャメロット城@御城プロジェクト:Re】
[身体]:アルトリア・ペンドラゴン@Fateシリーズ
[状態]:マスター不在によるステータス低下、全身に裂傷(軽微)
[装備]:逆刃刀@るろうに剣心
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜3
[思考・状況]基本方針:一人でも多くの物語を守り抜く。
1:アーサー王、この身を必ず返しましょう。
2:共に戦う仲間を探す
3:できれば、よい剣が欲しいのですが。
[備考]
※参戦時期はアイギスコラボ終了後です。
※服装はドレス(鎧なし)です
※プロフィールをちゃんと読み終えてないため、
 風王結界、及び風王鉄槌にはまだ慣れていません。
 湖の乙女の加護は問題なく機能します。
 当然、約束された勝利の剣などもできません。

【リオン・マグナス@テイルズオブデスティニー】
[身体]:ランスロット@グランブルーファンタジー
[状態]:闇属性強化、
[装備]:着火剛焦(火は灯されてない)@戦国BASARA、パラゾニウム@グランブルーファンタジー、ランスロットの鎧@グランブルーファンタジー
[道具]:基本支給品
[思考・状況]基本方針:優勝し、マリアンを救う。
1:今更血に汚れて何が困る。
[備考]
※参戦時期はオリD版、スタン達と交戦中です
※より慣れれば本体の風、水、土、火属性のいずれかも発揮できます

【着火剛焦@戦国BASARA4】
松永久秀のお楽しみ(所謂ネタ)武器。
どう見てもクリスマスに用いる赤い蝋燭の巨大版。
だが何らかの手段で先端に火が付くと火属性の攻撃が発生する。
またどうみても刃はないが斬れるし耐久値も十分ある謎の業物。

【パラゾニウム@グランブルーファンタジー】
超高速演算能力を搭載した短剣と仰々しい代物だが、
ゴーレムに戦闘データを移す為のものであり、人にはただの質のいい短剣。
ただし闇属性の攻撃力強化の奈落の攻撃刃Ⅲ(特大)+闇属性の手数強化の闇の三手(小)のスキルがあり、
リオンは後に闇属性を主としてるため効果の恩恵がそれなりにある。
それなりと言うのは、ランスロットは闇属性が存在しないため。
流石に奥義は撃てない……と思う。

【ランスロットの鎧@グランブルーファンタジー】
ゲーム中において水属性のランスロットが用いる鎧。
ランスロットのスピードからそこまで重くないと思われるが、
それ以外特筆すべきことがない、青い鎧。

【逆刃刀@るろうに剣心】
緋村剣心が不殺の志として使う、刃が逆に存在する刀。
ただし人を斬らないだけでものに関しては切れ味はすさまじい。
後やっぱ普通に殴打すれば滅茶苦茶痛い。


124 : ◆EPyDv9DKJs :2021/03/25(木) 03:52:14 yIwy9ow60
以上で『ロード・キャメロット』投下終了です


125 : ◆L9WpoKNfy2 :2021/03/28(日) 21:51:41 vuEuX1gE0
投下します


126 : 人間の持つ輝き ◆L9WpoKNfy2 :2021/03/28(日) 21:54:54 vuEuX1gE0
「……なぜぼくは、こんな姿になっているんだろう?確かにぼくは人間になることを望んでいたけど……モシャスを覚えたいわけじゃないんだけどなぁ……?」

会場内にあるビル、その窓ガラスを見ながら彼はそう独り言を言った。

彼の名はホイミン。善良な心を持つ魔物であり、人間になりたいという願望を持っているホイミスライムである。

彼が何故そのような独り言を言っているかというとそれは彼の目線、正確に言えば窓ガラスに映った自分の姿が理由だった。

そこには長い縦ロールの金髪と豊満な胸を持ち、またボンテージ風のメイド服に網タイツとかなりセクシーな姿をした女性がいたのだ。

一見すると自分が人間になったと思うだろう、しかし彼女……もとい彼はそうではないと悟っていた。

何故ならば……

「この身体の持ち主……人間を…特に赤ん坊を生きたまま、じっくり溶かしながら食べるのを楽しむだなんて……なんて恐ろしいスライムなんだろう……!」

彼は支給されていたプロフィールにより、この身体の持ち主が、人間種等を嬲り殺しにすることを楽しむスライムであることを知ったからである。

彼はそれに恐れおののき、嫌悪感を示したのだ。

「……確かにぼくはスライムだし、この身体が強力なこともわかるし……この力があれば優勝できるのかもしれない……」

しかし一方で、この身体がいかに強力なものであり、また普段の自分では太刀打ちできないことにも彼は気づいていた。

『この身体があれば優勝して、人間になれるかもしれない』……彼はそう独り言を言った。

「……でも!たとえこんなことで人間になったとしても、ぼくはそれを認めない……認めちゃいけないんだ……!」

しかし彼はそれを認めるつもりはなかった。自分は昔から人間に憧れていた、だからこそ人のために力を尽くしたいと、そう考えていたからである。

『自分の力を人のために使う』……その誇りは、たとえどんな姿になろうとも捨てることのできないものだったからである。

そうして彼が決意表明を行うとともに、彼はふと気づいた。

「……もしかしたら、今のぼくとは逆に……魔物にされてしまって苦しんでいる人がいるかもしれない……!だったら、助けに行かなくちゃ……!」

今の自分とは逆に、怪物にされた人々がいるかもしれないと気づいたのだ。

そして彼は歩き始めた。人になりたいという願いと、人を助けるという思いとともに……。

そんな彼の背中にはドラゴンのような、神々しいオーラが映っていた……。

【ホイミン@ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち】
[身体]:ソリュシャン・イプシロン@オーバーロード
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:人間にはなりたいが、そのために誰かを襲うつもりはない。
1:ライアンさんのように、人を守るために戦う。
2:この身体の持ち主がいるのならば、警戒しないといけない。
3:やけに胸や足が強調されている気がするけど、何の意味があるんだろう?
[備考]
参戦時期はライアンの旅に同行した後〜人間に生まれ変わる前。
制限により、『ホイミ』などの回復魔法の効果が下がっています。
プロフィールから、『ソリュシャン・イプシロン』と彼女の持つ能力、異世界の魔法に関する知識を得ました。


127 : 人間の持つ輝き ◆L9WpoKNfy2 :2021/03/28(日) 21:55:03 vuEuX1gE0
「……なぜぼくは、こんな姿になっているんだろう?確かにぼくは人間になることを望んでいたけど……モシャスを覚えたいわけじゃないんだけどなぁ……?」

会場内にあるビル、その窓ガラスを見ながら彼はそう独り言を言った。

彼の名はホイミン。善良な心を持つ魔物であり、人間になりたいという願望を持っているホイミスライムである。

彼が何故そのような独り言を言っているかというとそれは彼の目線、正確に言えば窓ガラスに映った自分の姿が理由だった。

そこには長い縦ロールの金髪と豊満な胸を持ち、またボンテージ風のメイド服に網タイツとかなりセクシーな姿をした女性がいたのだ。

一見すると自分が人間になったと思うだろう、しかし彼女……もとい彼はそうではないと悟っていた。

何故ならば……

「この身体の持ち主……人間を…特に赤ん坊を生きたまま、じっくり溶かしながら食べるのを楽しむだなんて……なんて恐ろしいスライムなんだろう……!」

彼は支給されていたプロフィールにより、この身体の持ち主が、人間種等を嬲り殺しにすることを楽しむスライムであることを知ったからである。

彼はそれに恐れおののき、嫌悪感を示したのだ。

「……確かにぼくはスライムだし、この身体が強力なこともわかるし……この力があれば優勝できるのかもしれない……」

しかし一方で、この身体がいかに強力なものであり、また普段の自分では太刀打ちできないことにも彼は気づいていた。

『この身体があれば優勝して、人間になれるかもしれない』……彼はそう独り言を言った。

「……でも!たとえこんなことで人間になったとしても、ぼくはそれを認めない……認めちゃいけないんだ……!」

しかし彼はそれを認めるつもりはなかった。自分は昔から人間に憧れていた、だからこそ人のために力を尽くしたいと、そう考えていたからである。

『自分の力を人のために使う』……その誇りは、たとえどんな姿になろうとも捨てることのできないものだったからである。

そうして彼が決意表明を行うとともに、彼はふと気づいた。

「……もしかしたら、今のぼくとは逆に……魔物にされてしまって苦しんでいる人がいるかもしれない……!だったら、助けに行かなくちゃ……!」

今の自分とは逆に、怪物にされた人々がいるかもしれないと気づいたのだ。

そして彼は歩き始めた。人になりたいという願いと、人を助けるという思いとともに……。

そんな彼の背中にはドラゴンのような、神々しいオーラが映っていた……。

【ホイミン@ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち】
[身体]:ソリュシャン・イプシロン@オーバーロード
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:人間にはなりたいが、そのために誰かを襲うつもりはない。
1:ライアンさんのように、人を守るために戦う。
2:この身体の持ち主がいるのならば、警戒しないといけない。
3:やけに胸や足が強調されている気がするけど、何の意味があるんだろう?
[備考]
参戦時期はライアンの旅に同行した後〜人間に生まれ変わる前。
制限により、『ホイミ』などの回復魔法の効果が下がっています。
プロフィールから、『ソリュシャン・イプシロン』と彼女の持つ能力、異世界の魔法に関する知識を得ました。


128 : 人間の持つ輝き ◆L9WpoKNfy2 :2021/03/28(日) 21:56:40 vuEuX1gE0
すみません、通信障害により多重投稿されてしまったようですので
>>127についてはなかったことにしてください。

以上、投下終了です

ありがとうございました。


129 : ◆NIKUcB1AGw :2021/03/29(月) 00:44:26 pfgLkI8E0
投下します


130 : 見える世界、見えない世界 ◆NIKUcB1AGw :2021/03/29(月) 00:45:46 pfgLkI8E0
「ぐあああああ!!」

悲鳴嶼行冥がこのバトルロワイアルにおいて最初に行ったことは、苦悶の声を上げることだった。
彼は、物心つく前に視力を失っている。これまでの人生を、視覚を持たずに過ごしてきた。
しかし今回悲鳴嶼に与えられた体は、健常な視力を宿している。

その場が暗闇の屋外だったら、まだましだったのかもしれない。
だが悲鳴嶼のスタート地点は、明かりのついた屋内だった。
何の心構えもできていない状態で、未知の感覚が膨大な情報を送り込んでくるのだ。
いかに歴戦の強者といっても、悶絶するしかない。
目を潰したくなる衝動をかろうじて抑え込み、悲鳴嶼はその場に倒れ込んだ。


◆ ◆ ◆


胡蝶しのぶは、走っていた。
この場に到着してすぐ、誰かの悲鳴が耳に届いたからだ。
まさか開始数秒で殺人が起きるとも思えないが、何か不慮の事故があったのかもしれない。
そう考えると、しのぶは無視できなかった。
まだ、荷物の確認もしていない。
ゆえにしのぶはまだ、自分の精神が宿っている少女が何者なのかまだ知らない。
だが実際に体を動かしてみて、理解したことがある。
この体が発揮できる力は、異常だと。
いかに全集中の呼吸を常に保っていられるしのぶと言えども、さすがに体を別人のものにされてしまっては呼吸の精度が落ちてしまう。
だがそれでも、この体が発揮する筋力は常時のしのぶと互角……あるいはそれ以上だ。
とうてい、人間の体とは思えない。
かといって、鬼の体だとも思えない。
世界のどこかには、こんな肉体を持つ人間が存在したというのか。

(ダメね、よけいなことを考えてしまう……。
 今は、悲鳴をあげた人を助けることを考えないと)

おのれに気合いを入れ直し、しのぶは悲鳴が発せられたと思わしき建物に飛び込む。
手当たり次第に部屋をのぞいていくと、すぐに銀髪の青年が目をつぶって倒れているのを発見した。

「大丈夫ですか!」
「ああ、心配ない……。どなたか知らぬが、気遣い感謝する」

しのぶが声をかけると、青年は落ち着いた口調で返答してくる。

「別にケガをしたわけではないのだ。
 ただ盲目の身が突然見えるようになったために、その刺激に驚いてしまっただけのこと……。
 見ず知らずの方を心配させてしまって、申し訳ない」
「盲目……?」

しのぶの思考に、引っかかりが生まれる。
しのぶの身近にも、盲目の人物が一人いる。
そして目の前の青年の口調は、その人物のものにそっくりだ。

「あの……つかぬ事を伺いますが……。
 ひょっとしてあなた、悲鳴嶼さんでは?」
「何……? ひょっとしてあなたは、私の知り合いなのか?」
「私です、悲鳴嶼さん。胡蝶しのぶです」
「そんな……」

しのぶの名を聞き、悲鳴嶼に驚きの色が浮かぶ。

「おまえは……死んだはず……。
 いや、それを言うのであれば私もか……」
「え!?」

今度は、しのぶが驚愕に目を見開く。
悲鳴嶼と違い、彼女は死んでからこの場に連れてこられたわけではない。
彼女の最後の記憶は、他の柱たちと共に無限城へと落とされる瞬間だ。
もとより彼女は、おのれの命と引き換えに姉の仇を討つ気でいた。
ゆえに、自分が死んだという話にはまだ納得がいく。
しのぶが驚いたのは、悲鳴嶼も死んだという点だ。

「悲鳴嶼さん……。もう少し、詳しく聞かせていただけますか?」


131 : 見える世界、見えない世界 ◆NIKUcB1AGw :2021/03/29(月) 00:46:42 pfgLkI8E0


◆ ◆ ◆


「そうですか……」

悲鳴嶼の話は、しのぶに複雑な思いを抱かせた。
鬼殺隊全員の悲願である、鬼舞辻無惨の打倒は果たされた。
しかし柱のうち、時透は上弦の壱との戦いで討ち死に。
それ以外の柱も、無惨との戦いで重傷を負った。
悲鳴嶋には確認できなかったが、何人かは死亡している可能性が高いとのことだ。
無惨の討伐は、むろん喜ぶべきことである。
だが苦楽を共にしてきた仲間たちが何人も命を落としたとなれば、無条件に喜ぶ気分にはなれない。
むろん彼らも、自分と同様戦いの中で命を落とす覚悟はしていたはずだ。
それでも、割り切ることができないのが人間の感情というものだ。

「……それにしても、妙だな」

しのぶがしばらく沈黙していると、悲鳴嶼が口を開く。

「何がですか?」
「私は、おまえが死んでしまったことを知っている。
 時間のズレもそうだが……。もしおまえが死ぬ前にこの場に連れてこられたというのなら、
 無惨の城での戦いには参加しようがない。つまり、死ぬこともないということだ。
 これは明らかに矛盾している」
「……悲鳴嶼さんは、並行世界という言葉をご存じですか?」
「いや、聞いたことがないが……」
「まだ実証されていない、おとぎ話のようなものですが……。
 世界は一つではなく、似ているが微妙に異なる世界が無数に存在しているという考え方です。
 つまり無惨の城での決戦で私が何者かに連れ去られた世界と、連れ去られずにそのまま戦って戦死した世界が存在する……」
「私は後者、おまえは前者からここに連れてこられたということか……」
「そういうことになりますね。あまりに荒唐無稽な話で、信じられないかもしれませんが……」
「いや、信じるさ」

即座にそう返す悲鳴嶼に、しのぶはかすかに驚きを見せる。

「ちょっと意外です。悲鳴嶼さん、こういうのは信じない方かと思ってたので」
「何を言う。たしかに現実離れした話ではあるが……。
 そもそも鬼の血鬼術なども、この世の理から外れたもの。
 ならばどんな不可思議なことがあろうとも、私は受け入れよう。
 現に今も、他人の体に精神を入れられるという不思議が起きているわけだしな」
「たしかに……それもそうですね。
 ああ、血鬼術といえば……。この体の入れ替わりって、血鬼術によるものだと思います?」
「その可能性が高いとは思うが……。断言はできんな。
 どんな不思議が起こってもおかしくない状況となれば、我々がまったく知らぬ力によるものという可能性も否定できん」
「私も同じ意見です」
「だが、鬼であろうとなかろうと、このような行いは許されるものではない。
 私がすべきことは、首謀者を倒しこの無益な戦いを終わらせることだ。
 協力してくれるな、しのぶ」
「もちろんです」

悲鳴嶼からの確認に、しのぶは即答する。
その言葉に、偽りはない。
だが彼女の胸中には、言葉に出していない思いも渦巻いていた。

(悲鳴嶼さんが来た世界では、無惨は討たれた……。これはもう、確定した事実。
 しかし、私が来た世界では?
 私が欠けたことで、無惨が勝利してしまうかもしれない。
 それを防ぐために、私はなんとしても生きて帰らなければならない。
 死ぬために生き残るなんておかしな話だけど、それが私のやるべきこと……)

無意識に拳を握りしめるしのぶ。
その正面にいる悲鳴嶼は、かすかに悲しげな表情を浮かべた。


【悲鳴嶼行冥@鬼滅の刃】
[身体]:坂田銀時@銀魂
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:主催者の打倒
[備考]
・参戦時期は死亡後。


【胡蝶しのぶ@鬼滅の刃】
[身体]:アリーナ@ドラゴンクエストIV
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止め、元の世界に帰る
[備考]
・参戦時期は、無限城に落とされた直後。


132 : ◆NIKUcB1AGw :2021/03/29(月) 00:47:45 pfgLkI8E0
投下終了です


133 : ◆ytUSxp038U :2021/03/29(月) 02:56:00 yLcWwjyw0
投下します


134 : 女の子と化した先輩 ◆ytUSxp038U :2021/03/29(月) 02:59:11 yLcWwjyw0
「え、何これは…(困惑)」

とある民家の一室。
鏡の前で一人の参加者が呆然と突っ立っていた。
整った顔立ちに銀の長髪、赤い外套の下から覗く褐色の肌。
幼い身でありながら蠱惑的な色香を放つ少女。
声の主は彼女、もっと正確に言えば彼女の肉体に宿った『彼』であった。

彼の名は様々あるが、ここは国民的ホモビ男優として最も有名な『野獣先輩』と記させてもらおう。

野獣先輩は困惑していた。
いきなり知らない場所に連れて来られて殺し合えと命令された事にも、自分の身体がどこの誰かも分からないメスガキと化していたのだ。
夢でも見てるのかと思ったが、試しに頬をつねったら普通に痛かったので、残念ながら現実らしい。

「はぁー…(クソデカため息)。ア ホ く さ。こんなガキの体寄越されたって、何の役にも立たないってハッキリ分かんだね」

ホモである野獣先輩にとって、少女の肉体など与えられても全く嬉しくなかった。
これでは愛する後輩とのホモセックスもできやしない。
せめて男の肉体、それも自分好みのイイ男だったら、鏡を見ながら自慰行為を楽しめただろうに。
主催者兄貴(兄貴とは言ってない)のガバガバさに野獣先輩は呆れるばかりであった。

「あっそうだ(唐突)。そういやまだ支給品とかってのを見てませんでしたね…」

メスガキの体にばかり気を取られていて、デイパックの事をすっかり忘れていた。
早速中身を確認すると、身体の持ち主のプロフィールが記された紙を見つける。
何でも、クロエという名のこの少女は魔術なるものが使えるらしい。お前マジシャンみてぇだな。
ざっと情報に目を通していたが、最後の行を見た瞬間、野獣先輩は思わず紙を強く握り締め凝視した。

『この肉体は常に魔力を消費している為、魔力が空になった瞬間消滅します。他者の体液摂取などで魔力は補充可能です』

「は?(全ギレ)」

つまり放っておくと自分は死んでしまうとのこと。
何度読み直しても文面は同じだった。

「ふざけんな!(迫真)。こんなクソみたいなハンデつけるとか頭に来ますよ!」

余りにも理不尽な仕打ちをしてくる主催者に、野獣先輩はひたすら怒鳴り散らす。
しかしどれだけ吠えても現状が良くなる訳はなく、叫んだ所で時間の無駄でしかなかった。
とにかく、じっとしていてはいずれ魔力切れを起こし死んでしまう。
生き残る為にも行動しなくてはならないと、野獣先輩はため息と共に出発の準備をする。

「しょうがねぇなぁ(GKU)。ほら行くどー」

果たして野獣先輩はこの先どうなるのか。
それは神のみぞ知る事であり、当然GOは神なので知っている。

GO is GOD


【野獣先輩@真夏の夜の淫夢】
[身体]:クロエ・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[状態]:健康、魔力量(?)
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:生き残る
1:仕方ないから参加者を探して魔力を補充する
[備考]
※現在の魔力量は次の書き手にお任せします。


135 : ◆ytUSxp038U :2021/03/29(月) 03:00:48 yLcWwjyw0
投下終了です


136 : ◆7PJBZrstcc :2021/03/29(月) 19:23:12 6Qj8SZl20
投下します


137 : 悪ふざけギリギリ! ブッチギリのやべえ奴!! ◆7PJBZrstcc :2021/03/29(月) 19:25:32 6Qj8SZl20
 ここは殺し合いの会場にある街の施設の一つ、デパート。
 その中にある服飾品コーナーの一角、売り場に置かれている姿見の前に、一人の男が立っていた。

 まずは体ではなく精神の方を紹介するが、彼の名前は坂田銀時。
 彼はとある世界において、普段は万事屋という何でも屋を経営し、割とあくせく働いているがどこかちゃらんぽらんな男だ。
 しかし有事となれば、過去の経験で得た剣を以って仲間を、大事なものを、己の魂を守るために戦う侍魂を持った男でもある。

 そんな彼は今、焦っていた。
 先に言っておくが、殺し合いに焦っているわけでは無い。
 確かにいきなり殺し合いをしろ言われた時には驚いたが、歴戦の侍たる彼は戸惑いこそすれ怯えはしない。
 ならば何に焦っているのか。
 その答えは今の彼の体にある。

 銀時の体は、この殺し合いのルールに則り別人の体になっている。
 その体も銀時と同じく性別は男だが、後はなにもかもが違っていた。

 身長は銀時より10㎝以上低い163㎝となり、服装もとある惑星のジャージから、一昔前の警察官の制服変わっていた。
 腕まくりをし、前腕をみせつけるスタイルのおかげで見えるボーボーに生えた腕毛。足には下駄。
 そしてとどめとばかりに特徴的な、角刈りとつながり眉毛。

 そう、坂田銀時の体は今――

「おいィィィィ! 両さんじゃねえかァァァァァアアアアア!!」

 こちら葛飾区亀有公園前派出所の主人公、両津勘吉になっていた。
 これにはさすがの銀時も焦った。何せ自分の体があの両さんになっているのだ。
 前にマユゾンとかやったけど、その比ではない。
 いくらなんでも、ジャンプのレジェンド一角の主人公の体を勝手に使うのはヤバすぎる。
 銀魂 THE FINALのBlu-rayとかどうなるのか心配で仕方なかった。

「このままじゃ銀魂が両魂になっちまう。
 やべーよ。金魂でもアレなのに両って。もうほぼチ〇コってことになるじゃねーか」
「そんな卑猥な物になるわけねェだろ!! 両さんの体で何言ってんだアンタ!?」

 焦ってよく分からないことを言い始めた銀時に、どこからともなく入って来るツッコミ。
 声こそ違えど、銀時はこのツッコミを知っている。
 このツッコミの主こそ、人気投票において最後以外八位の座を守り銀魂を支え続け、第一訓から登場したあの男――

「お前、新八か!?」
「どういう紹介だよ」

 志村新八である。
 しかし、銀時は新八の姿を見て、またも固まってしまった。

 なぜならば、彼もまた違う人間の体となっていたから。そして体の本来の持ち主が問題だった。
 身長180cm近くの高身長。
 平成仮面ライダーの主演に抜擢されデビュー。
 そして今も活躍を続ける俳優であり、歌手としても活躍している彼の名前は――

「菅田将暉ィィィィィィィ!?
 新八が実写版になっちまった!! ゴリラのキャラデザ捨てやがった!!」
「いや、どうも違うみたいです」


【坂田銀時@銀魂】
[身体]:両津勘吉@こちら葛飾区亀有公園前派出所
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:元の体を取り返す
1:主催者を倒す。殺し合いには乗らない
2:新八が実写版になっちまった

【志村新八@銀魂】
[身体]:フィリップ@仮面ライダーW
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:主催者を倒す
1:銀さんと行動する
2:いや、体が実写版になったわけじゃないんで


138 : ◆7PJBZrstcc :2021/03/29(月) 19:26:40 6Qj8SZl20
投下終了です。
手間取ってしまい申し訳ありません


139 : ◆OmtW54r7Tc :2021/03/29(月) 22:20:22 LgwXTgtY0
投下します


140 : 犬と女子高生と不良 ◆OmtW54r7Tc :2021/03/29(月) 22:22:02 LgwXTgtY0
「くぅ〜ん…」

一人の女の子が、自身のデイバックを開ける。
その身体の中に入っている精神は、女の子ではない。
それどころか、人間ですらなかった。
彼の名はシロ。
カスカベに住む野原一家という人間の家で飼われている犬である。

(犬飼ミチル…しんちゃんがナンパしそうな女の子だなあ)

主人である野原しんのすけは、無類の女の子好きである。
このくらいの年齢の子は、おそらくストライクゾーンに入っているだろう。
もししんちゃんがここに呼ばれていて、自分にナンパを仕掛けてくるかもと思うと…想像して少しゾッとした。
主人に好かれるのは嫌ではないが、自分もオスであるし、そういう好かれ方をするのは勘弁である。

(舌で舐めた相手の怪我を癒す代わりに、寿命が縮む…この場合、犬の寿命と人間の寿命、どっちになるんだろう?)

ともかく、便利な能力ではあるが安易に使うべき能力ではないようだ。
さらに読み進めると、推定殺害人数15万人という物騒な記述もあった。
見た目や能力は優しそうだが、どうやらこの身体の本来の持ち主は相当危険な人物のようだ。

(ともかく、しんちゃん達もいるかもしれない!早速探しに行かなきゃ!)


「ワン!ワン!」

こうしてシロは、主人や他の野原家の面々を探しに、駆けだした。
四足歩行で。
人間の身体なので二足歩行もできはするのだが、そこはやはり犬としての慣れと言う奴だ。
もっとも、やはり犬の身体ではないので四足歩行でも普段より移動が遅くなってしまっているが。

(待っててね、しんちゃん)

シロは気づかない。
人間の女の子、それもミニスカートをはいた女の子の身体で四足歩行をするということが、何を意味するのかを。
そして、近くにそれを目撃している者がいることを。


141 : 犬と女子高生と不良 ◆OmtW54r7Tc :2021/03/29(月) 22:24:22 LgwXTgtY0
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

「ま、待ってくだしゃい〜!」

立派なリーゼントを揺らしながら、男が走る。
その男の名は、東方仗助。
しかし、それはあくまで肉体の方の名前である。
彼に入り込んでいる精神は…

「わ、わたしの身体でそんな走り方しないで〜」

そう、犬飼ミチルその人であった。
彼女は、シロが自分の身体で四足歩行、つまりはパンツ丸見えな状態で走っているのを目撃し、顔を真っ赤にしながら追いかけていた。

「待ってくだしゃい〜」

ミチルは気づかない。
今の自分が、はたから見れば女子高生を追い回すガラの悪い不良男子であることに。

【シロ@クレヨンしんちゃん】
[身体]:犬飼ミチル@無能なナナ
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない
1:しんちゃんや野原家の人たちを探す
[備考]
今のところは犬語でしかしゃべれませんが、慣れれば人間の言葉をしゃべれるかもしれません。
ヒーリング能力の寿命減少は、肉体側(人間)に依存します。

【犬飼ミチル@無能なナナ】
[身体]:東方仗助@ジョジョの奇妙な冒険
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いはしたくない
1:シロを追いかけて止める
[備考]
参戦時期は少なくともレンタロウに呼び出されるより前
自身のヒーリング能力を失いましたが、クレイジーダイヤモンドは発動できます。


142 : ◆OmtW54r7Tc :2021/03/29(月) 22:24:57 LgwXTgtY0
投下終了です


143 : ◆NIKUcB1AGw :2021/03/30(火) 00:21:03 d/V3d/uI0
投下します


144 : 仏と閻魔 ◆NIKUcB1AGw :2021/03/30(火) 00:21:59 d/V3d/uI0
会場内に設置された、とある寺。その中で、一人の青年が座禅を組んでいた。
容姿端麗なその青年に宿る人格の名は、シャカ。
女神アテナに仕え、地上を悪の手から守るために戦う戦士、聖闘士(セイント)。
その頂点に立つ12人の「黄金聖闘士」の中でも、最強の一角とされる強者である。

「やはりダメか……」

ふいに座禅を中断し、シャカが呟く。

「この体、小宇宙(コスモ)とはまた別種の力を感じるのだが……。
 私ではそれを引き出せん」

聖闘士は体内で「小宇宙」と呼ばれるエネルギーを燃やすことで、技を繰り出す。
だが、現在シャカが宿る体にはわずかな小宇宙しか存在しない。
これでは強力無比な彼の奥義も、まともに使うことはできない。
ならば体に宿る別の力を引き出せないかと試してみたのだが、結果は芳しくなかった。
そしてこの体は、身体能力を見ても凡人レベル。
本来シャカがまとうべき聖衣(クロス)も支給されておらず、とうていまともに戦うことなどできない状態だ。
一言で言えば、状況は劣悪。だが、「神に最も近い聖闘士」と呼ばれた男は取り乱さない。

「使えぬのなら仕方ない。ならば、わずかな小宇宙を少しでも高めることに集中するとしよう」

そう口にすると、シャカは再び座禅を組み始める。
この程度の苦難で、彼の心は揺るがない。
アテナの聖闘士として、使命を果たすべく悪を討つ。
シャカの取るべき行動は、ただそれだけだ。


【シャカ@聖闘士星矢】
[身体]:コエンマ@幽遊白書
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3(乙女座の聖衣はなし)
[思考・状況]基本方針:悪を討つ
1:戦いに備え、小宇宙を高める
[備考]
・参戦時期は、ハーデス編で死亡した後
・コエンマの体は霊界での赤ん坊の姿ではなく、人間界での美男子の姿です


145 : ◆NIKUcB1AGw :2021/03/30(火) 00:22:51 d/V3d/uI0
投下終了です


146 : ◆NIKUcB1AGw :2021/04/01(木) 21:46:43 x9kD7lSA0
投下します


147 : そらみみフォックス ◆NIKUcB1AGw :2021/04/01(木) 21:49:05 x9kD7lSA0
その女は、黒かった。
長い髪は黒く、衣服も上から下まで黒い。
その瞳もまた、吸い込まれそうな程に黒かった。
闇を固めて、美女の形に整えれば彼女の姿になるのだろう。
そんな風に思えるほど、彼女は黒という色と調和していた。
ただし……。

「なんやろな、これー。
 なんかすごい美人さんになっとるし、わけわからんわー」

現在彼女に入っている人格は、まるで黒くなかった。


【春日歩(大阪)@あずまんが大王】
[身体]:羽衣狐@ぬらりひょんの孫
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:状況がよくわかってない
1:とりあえず、その辺をうろついてみる


148 : ◆NIKUcB1AGw :2021/04/01(木) 21:50:10 x9kD7lSA0
続けてもう1本投下します


149 : CV:花江夏樹の面汚し ◆NIKUcB1AGw :2021/04/01(木) 21:51:17 x9kD7lSA0
「いける……!」

鳥束零太は、おのれの姿を確認して呟いた。
彼はスケベでどうしようもないゲス野郎ではあるが、平気で人を殺せるような外道ではない。
ならばそのつぶやきは、「この肉体なら殺し合いにあらがうことができる」という希望からのものか。
否、そうではない。

「なんかこの体、すごくモテそうな気がする!
 いや、厳密には男女関係なく人気者になれそうな気がする!
 この体なら、女の子のハートだって楽々ゲットできるはず!
 乗るっきゃない! このビッグウェーブに!」

鳥束に与えられた体。
それは、緑と黒の市松模様に染められた羽織をまとった、なぜか本来の鳥束とそっくりな声の青年だった。


【鳥束零太@斉木楠雄のψ難】
[身体]:竈門炭治郎@鬼滅の刃
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:女の子にモテる!
1:殺し合い? まあなんとかなるでしょ


150 : ◆NIKUcB1AGw :2021/04/01(木) 21:52:12 x9kD7lSA0
投下終了です


151 : ◆OmtW54r7Tc :2021/04/02(金) 18:21:54 d8Y8aceY0
投下します


152 : 天使で悪魔 ◆OmtW54r7Tc :2021/04/02(金) 18:23:53 d8Y8aceY0
「全く…こんな身体をよこしてくるなんて、気が利かないデビ」

一人の参加者が、自身の姿に愚痴をこぼす。
彼の名は、デビハム。
元々は、ハムスターであり、そして悪魔であった。
一言で言えば、悪魔のハムスターということになる。
彼は、恋とか愛という、いわゆるラブというものが大嫌いで、ハムスターたちのラブをぶっ壊すために各地で暗躍していた。
しかし、そのことごとくをハム太郎、リボンちゃんという二匹のハムスターに妨害され、そして最終的には天使のハムスター、エンジェルちゃんより二匹に託されたラブボムを食らい、天使の姿にされてしまった。
悪魔とは対極の存在である天使にされてしまったデビハムは、失意の日々を送っていたが…この殺し合いに呼ばれたのはそんな最中である。
そして、忌々しい天使の姿に代わり、新たなる身体を与えられたのだが…

「『天使の悪魔』ってなんじゃそりゃ〜!もっとまともな身体をよこせデビ〜〜!!」

その姿が、不満だった。
一応彼も、ハムスターとはいえ悪魔であるので、その身体が悪魔であることは分かっていた。
寿命を吸い取り、吸い取った寿命で武器を生成するという能力も悪魔らしくて嫌いじゃない。
しかし、その見た目は背中には白い翼、頭には天使の輪という、天使そのものの姿であり、それが彼には不満であった。

「まあいいデビ。優勝してもっと悪魔らしくてかっこいい姿にしてもらうデビ」

彼、デビハムは悪魔である。
ラブが大嫌いな彼は、仲良しこよしも大嫌いだ。
むしろ、他人が不幸になったりひどい目にあったりすることに喜びを見だす最低野郎である。
そんな彼であるので、他の参加者と協力して主催者を倒すなどという選択肢は始めからなかった。
与えられた姿に不満がなかったとしても、きっと優勝を目指していたことだろう。

「待っているデビよ、エンジェル!俺様はもっと悪魔らしくなって帰ってくるデビ!そして、今度こそハムたちのラブをみ〜んなぶっ壊してやるデビ!デ〜ビデビデビデビ!」

【デビハムくん@とっとこハム太郎3 ラブラブ大冒険でちゅ】
[身体]:天使の悪魔@チェンソーマン
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝してかっこいい悪魔の姿にしてもらうデビ
1:手始めに参加者のラブをぶっ壊してやるデビ
[備考]
参戦時期はハム太郎たちに倒されて天使にされた後


153 : ◆OmtW54r7Tc :2021/04/02(金) 18:25:06 d8Y8aceY0
投下終了です


154 : ◆s5tC4j7VZY :2021/04/03(土) 18:34:34 Pybmgh520
発想がとても面白いです!
投下させていただきます。


155 : 全員鏖殺だよ!若おかみ ◆s5tC4j7VZY :2021/04/03(土) 18:36:39 Pybmgh520
「不快」
不機嫌に言葉を放つのは両面宿儺。

その本来の姿は腕が4本。顔が2つある「呪いの王」
現在は特級呪物の己の指を喰らった虎杖悠仁の肉体を器としており、現世に顕現 している。
もっとも、普段は虎杖に抑え込まれており意識を表面に自由にだすことが叶わぬのだがーーーーー

そんな宿儺は現在ーーーーー女子小学生の体に宿された。

☆彡 ☆彡 ☆彡

「ちっ!威力が桁外れに落ちておる……つくづく、この俺を舐めてやがるな」

宿儺の眼前にあるのは、一刀両断されたバカでかい岩の破片の数々。
女子小学生の体に宿された宿儺が試みたのは自らの力の確認であった。

宿儺の能力の一つーーーーー「解」
それは、斬撃能力。手を振るうだけで対象を粉々に切り刻む能力。
宿儺にとって好む能力だが、どうやら威力に不満があるようだ……

「本来なら、このような岩など一瞬で卸すはずが、思いの他時間がかかった…それに、疲労も激しい……ちっ、小僧の体の方が幾分もマシと感じるとはな……」

とりあえず、疲労を回復するため、手ごろな岩に腰を下ろすーーーーー

☆彡 ☆彡 ☆彡

「どれ、とりあえず、このガキの体でも調べてみるとするか……」
披露の回復をし終えると気持ちを切り替え、宿儺はデイパックの中にあるプロフィールを確認する。

「何々……名は【関織子】と申すのか。旅館の若おかみ……食べがいがあるな。ふん。このような出会いでなければ、なんとも悦楽しやすい女のガキだ……」
プロフィールを読んだ宿儺は【食べること】ができないこと残念がる。

「今は、この体、俺様が守ってやろう……礼は後でたっぷりしてもらう」
体を守る代わりに後で悦楽させてもらうということを織子の承諾なしに勝手に決める……それが天上天下唯我独尊ーーーーー両面宿儺である。

「全員……塵殺(おうさつ)だ」

宿儺は宣言する。若おかみの笑顔とは程遠い笑顔で。

【両面宿儺 @呪術廻戦】
[身体]:関織子@若おかみは小学生(映画版)
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:主催もろとも全員、塵殺
1:全員、鏖殺
2:鏖殺後、本来の持ち主にこの体が戻ったら「おもてなし」をしてもらう

[備考]
渋谷事変終了直後から参戦です。
能力が大幅に制限されているのと、疲労が激しくなります。


156 : 全員鏖殺だよ!若おかみ ◆s5tC4j7VZY :2021/04/03(土) 18:36:53 Pybmgh520
投下終了します。


157 : ◆NIKUcB1AGw :2021/04/04(日) 00:23:00 zX.qv2J.0
投下します


158 : みんな社長で仮面ライダー ◆NIKUcB1AGw :2021/04/04(日) 00:23:59 zX.qv2J.0
「想定外の形での復活となったが……まあいい。
 重要なのは、この私が現世に舞い戻ったということだ!」

ほこりまみれの廃工場の中で、一人の男が声を張り上げる。
男の名は、檀黎斗。天才ゲームクリエーターにして、自分のゲームのためならどんな犠牲もいとわない外道である。
彼は仮面ライダーエグゼイドとの戦いに敗れ、自分を見限った同盟者にとどめを刺されて死んだ。
その後、数奇な運命の果てに復活を果たすのだが……今ここにいる黎斗は、死んだ時点までの記憶を持った状態である。

「さて、この体の持ち主は……。天津垓、か。
 ふん、技術力はそれなりにあるようだが……。
 利益なんてものに目がくらんでいるようでは、私の足下にも及ばないな」

自分に与えられた肉体の資料を確認した黎斗は、その体の主を鼻で笑う。
仮面ライダーへの変身システムを開発した一流企業の社長という点では、黎斗と同じ。
違うのは、求めるものが理想の作品か会社の利益かという点。
作品のクオリティーよりも利益を重視する人間など、黎斗にとっては軽蔑の対象に他ならない。

「まあせいぜい、君の体は私が有意義に使ってやろう。
 光栄に思うんだな。
 さて、支給品は……。ガシャットがあるといいんだが……」

続いて、黎斗はカバンをあさり始める。
出てきたのは、ケースに入ったカードデッキだった。

「仮面ライダーベルデ……。これも仮面ライダーか。
 まあ元々、仮面ライダーは都市伝説から取った名前だからな。
 残念ながら、私が権利を主張できるようなものではない」

若干口を歪ませつつ、黎斗はデッキをポケットに放り込む。

「では、そろそろ行こうか。とはいっても、しばらくは様子見かな。
 他の参加者にも仮面ライダーに匹敵するような装備が支給されていては、さすがに正攻法では手こずるからな。
 だが、最後に生き残るのはこの私だ!」

明確な根拠があるわけではない。しかし彼は、自分の勝利を信じて疑わない。
自分の才能に対する絶対的な自信こそ、檀黎斗という人間のアイデンティティーだからだ。

「そうだ、ここは彼の決め台詞を借りておくか……。
 このゲーム、ノーコンティニューでクリアしてやる!」


【檀黎斗@仮面ライダーエグゼイド】
[身体]:天津垓@仮面ライダーゼロワン
[状態]:健康
[装備]:ベルデのデッキ@仮面ライダー龍騎
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:優勝し、仮面ライダークロニクルの開発を再開する
1:しばらくは様子見。殺せそうな相手は殺しておく
[備考]
・参戦時期は、パラドに殺された後


【ベルデのデッキ@仮面ライダー龍騎】
TVスペシャルのみに登場した仮面ライダー、ベルデの変身アイテム。
かく乱やだまし討ちに向いたカードが多く付属しているのが特徴。


159 : ◆NIKUcB1AGw :2021/04/04(日) 00:24:55 zX.qv2J.0
投下終了です


160 : 名無しさん :2021/04/04(日) 01:09:37 ebXqdWAk0
投下乙です。
まさかのゲーム版ハム太郎×チェンソーマンとか、今年に入ってからコンペの度に殺し合いに巻き込まこれる上にとうとう宿儺に乗っ取られるまでに至ったおっことか、心(ゾンビ)技(ベルデ高見沢)体(1000%)全部糞社長ライダーとか、先月の投下から一層シュールな組み合わさが増えてきて良いですね。


161 : ◆5IjCIYVjCc :2021/04/05(月) 00:00:58 4FyVPa5Q0
>怒りの荒野に、血なまぐさい風が吹く
お前のような正義のヒーローがいるか。
とんでもない人物にウルトラの力が渡ってしまい、相当危険なことになりそうです。

>チョッパー×チョッパー
人間→鎧→人間トナカイ
同じ名前であることはこの話で初めて気づきました。
違いが大きくある体になっても殺人鬼としてぶれないのは本当に恐ろしい怪物になりそうです。

>虚ろなる天空巨神
何これヤバい。
周りの物を巻き込みながら動くというのはどんな参加者にも厄介なものになりそうです。
例の生首剣の元にもなった針を手にすることができる者は果たして現れるのでしょうか。

>悪魔の中の悪魔
催眠の力で好き放題は男の夢の一つかもしれませんが、この結果は運が無かったとしか言いようがありません。
大魔王パワーで絶望をもたらす、これも相当危険な参加者になりそうです。

>ロード・キャメロット
アーサー王(女(城))VSランスロット(名前違いの別人(中身はさらに別人))
円卓物語でもここまでややこしい話はなかった。
ステータスは低下していますが、マスターになれる人が見つかれば状況改善するかもしれません。

>人間の持つ輝き
人の姿にはなれたけど、種族としての人間にはなれていないホイミン。
どんな力だろうと自分が使えるなら人のために使うという誇りを貫くのは素晴らしいです。

>見える世界、見えない世界
初めて見たも同然な普通に見える視界、これまで見えないのが当たり前だったから刺激が大きくなるのは仕方のないことでしょう。
もし声が同じ体じゃなかったら気づかれない可能性があったかも。

>女の子と化した先輩
肌の色は似たようなものなのに、どうしてこうも印象が変わるのだろう。
中身が先輩だと、どんな体だろうと風評被害が大きそうです。

>悪ふざけギリギリ! ブッチギリのやべえ奴!!
Wが放送されていた当時の若い頃の実写版新八だろうと、新八であると分かるのはツッコミがあるからこそとも言えそう。
別作品でも同じジャンプに連載されたギャグ漫画であるからこそ、体の元の持ち主が分かるのはちょっとしたアドバンテージになりそうです。

>犬と女子高生と不良
絵面は大変なことになっているけども、自分の体で四足歩行されたらそりゃあ止めに入るでしょうね。
クレイジーダイヤモンドが発動できるのは元々似た能力を持っていることが関係してそうです。

>仏と閻魔
仏関連な名前での組み合わせ。
もし美男子じゃなくて赤ん坊の体だったら今よりも活動しにくいことになりそうです。

>そらみみフォックス
黒いのは見た目だけな一般人枠。
状況を分かってないままだとどんな体でも生き延びるのは難しくなりそうです。

>CV:花江夏樹の面汚し
ある意味では人気がある見た目になった鳥束。
でもそのままの言動をしていたら結局いつも通りの結果になりそう。

>天使で悪魔
天使(悪魔(天使(悪魔)))
元悪魔の天使が天使の悪魔になってしまい、天使なのか悪魔なのかややこしいことになっています。
なお、本人的には悪魔でありたい様子。

>全員鏖殺だよ!若おかみ
特級呪物は小学生!
全てが終わった後に今の体の元の持ち主にしようと考えていることは、やはり宿儺がとんでもない呪いであることを実感します。

>みんな社長で仮面ライダー
これぞ、悪の社長トリニティ!(違う)
今度配信されるエグゼイドとゼロワンのコラボ作品では天津垓に壇黎斗が感染する、みたいなあらすじらしいのである意味これと似たようなものと言えるかもしれません。


162 : ◆5IjCIYVjCc :2021/04/05(月) 00:03:15 4FyVPa5Q0
それでは、投下します。


163 : 雷の獣と下半身の獣 ◆5IjCIYVjCc :2021/04/05(月) 00:06:12 4FyVPa5Q0
とある森の中での出来事であった。

大きなネズミのような不思議な生き物が体を縮めて身を震わせていた。
ネズミの体は黄色の体毛に覆われていた。
尻尾はまるで雷の形をしていた。
その生物の名はピカチュウ、ポケモンである。

「ピカア!?(なんだよこの状況!?夢だよな!?夢であってくれよ!!お願い!!)」

そのピカチュウの体に精神が宿った者の名は我妻善逸、鬼殺隊士の一人である。

「ピカピィカ…(ようやく戦いが終わったと思ったのに…なんで俺が殺し合いなんてしなくちゃいけないんだ!)」

善逸に残る最後の記憶は鬼舞辻無惨を倒し、鬼にされた炭治郎が人間に戻り、全てが終わって竈門家に向かっている時のことであった。
本当なら善逸はそのまま竈門家に居着き、いずれは竈門禰豆子にプロポーズだってするはずだった。
だが、何者かにより彼はこの奇妙なバトルロワイアルの舞台に連れてこられてしまった。
夢だと思いたいが、こんな体になっても触れてくる周りの空気の感覚といったものは本物である。

(…やっぱり、これ確認した方がいいのかな)

善逸は自分に与えられたデイパックの方へおそるおそる近づきその中身を覗く。
そして、その中に入っていたプロフィール書類を確認する。

「ピカ?(ピカチュウ?ねずみポケモン?電気を作るって書いてあるけどどんな鼠だよ!?)」

その書類の内容に目を通して得られるのはピカチュウの生態についての情報が主なものとなっていた。
だがポケモンなんて知らない善逸にはその情報を上手く理解することはできなかった。

(蜘蛛にされかけたことはあったけど、鼠にされるとは思ってなかったな…鼠にしては妙に黄色いし大きくて変だけど)

善逸が思い起こすのはかつて那田蜘蛛山という場所で、鬼によって蜘蛛になってしまう毒を打ち込まれたことであった。
尤も、その時は自分の肉体が毒で変化していく様になっていたので、精神が直接動物の体に入れられている現状と比較する意味はあまりなさそうだが。

(俺、この体でどうすればいいんだよ。刀とか握れないし)

「ピカア…(それに言葉も喋れなくなってるし…)」

善逸の中で不安と恐怖が高まっていく。
鬼との戦いを生き延びた自分ではあるが、動物の体で同じことをもう一度できるかと言われても不可能であろう。
ましてやそんな状態であると、多くの人間が殺しあえと言われているこの島で生き延びられる自信なんて出てこない。
いっそのこと、やっぱり夢だと思ってこの場でじっとしていたい。

そんな風に考えている時だった。
近くで『ガサッ』と木の枝が何かに接触したかのような物音が聞こえた。


(誰かいるのか!?)

その考えは正しかったらしく、何者かが自分の方に向かって歩いてくる音が聞こえてくる。
音のしてきた方向に顔を向けると、人影が見えてきた。

その人物は天使であった。
背中にある白い羽と金髪の頭の上に浮かぶ輪がそのことを物語っていた。
ただし、頭の輪は一部だけ欠けていた。
もう一つ特徴について付け加えると、少年とも少女ともとれる容姿をしていた。


164 : 雷の獣と下半身の獣 ◆5IjCIYVjCc :2021/04/05(月) 00:07:47 4FyVPa5Q0
(え!?な、なんだこいつ!?男!?女!?どっちだ!?)

善逸はその天使を見て驚く。
これまで鬼といった人からかけ離れた姿をした存在を見てきた善逸だが、天使という種族を見るのは初めてであった。
中性的な容姿については、仲間である嘴平伊之助という前例を見たことがあるが、目の前にいる人物に関しては彼よりも判別がしづらいと感じた。

「おや?初めて見る生き物ですねえ?まるでリスのような…鼠のような…なんと不思議な生き物でしょう」

天使はピカチュウとしての善逸の姿を見て、そんな感想を呟いた。

「どうしてこのような姿をしているのか、どのような生態を持っているのか、とても興味深いですねえ」

(何言ってんだこいつ…)

ピカチュウ(善逸)の姿をその目で確認し、発した言葉は初めて見る生き物への好奇心を表すものであった。
自分たちは今、殺し合いを強制されているのにも関わらずそんなことを言う目の前の人物に対して微妙に複雑な気持ちになる。

(けど…こいつは殺し合いに乗っていないってことでいいのかな)

首輪を巻かれた参加者である自分を前にして、こんな言動をするということはこの天使は殺し合いに興味が無いのではという考えが浮かぶ。
何とかして自分の意思を伝えることができればこの戦いを止めるための協力を得られるかもしれない。
善逸は少し警戒を解き、目の前の人物の方へ近づこうとする。

「いやあ、それにしても何と可愛い姿をしているのでしょうか…」

突如、天使の目の色が変わった。
それまではただ未知の生物への興味関心だけだった天使の体を使う者の中に、おぞましい何かが現れていた。


「本当に愛おしい……」

(えっ?)

そう言うと同時に天使は自分が下に履いていたズボンを脱ぎ捨てた。

(えっ?えっ?)

あらわになった天使の股間から男の象徴とも言える肉の棒がそそり立つ。
それは善逸がこれまで見たこともない程の大きさを持っていた。

「大好きだぁーーーっ!!」

「ピカア゛ーーーーーーッ!」

天使は未知の生物目掛けて性的な意味で襲いかかってきた。




天使の体の元となった者の名前はクリムヴェール(通称はクリム)、とある世界において様々な種族の風俗嬢『サキュ嬢』をレビューする異種族レビュアーズの両性具有の天使である。

そんなクリムの体を動かしている者の名は姉畑支遁、網走監獄の刺青人皮を彫られた脱獄囚の一人であり動物学者。
あちこちで様々な動物を犯し、殺して回っていた変態狂人である。
その性質はたとえこのような殺し合いの場でも変わることはない。

そんな彼がこの戦いの舞台に降り立ってまず見つけた者がピカチュウ(善逸)であった。

最初はただ、本当に未知の生物に対する好奇心で近づいたのかもしれない。

だが、姉畑は性欲を抑えきれなくなってしまった。

たとえ天使の体になっていたとしても彼はその情欲に突き動かされる。




165 : 雷の獣と下半身の獣 ◆5IjCIYVjCc :2021/04/05(月) 00:09:46 4FyVPa5Q0
「おとなしくしなさいッ!大丈夫だからッ!大好きだからッ!」

「ピカア゛ーーーッ!ピカア゛ーーーッ!」

不用意に近づいてしまったことで善逸は姉畑に捕まってしまった。

天使の姿をしたこの変態が自分に一体何をするつもりなのか、善逸は察してはいたが理解したくはなかった。
普通に考えたら異常なことである、動物相手に劣情を催しているらしき相手に対して大きな恐怖心を抱く。
想像通りのことをヤられないためにも、抱きかかえられた腕の中で必死の抵抗でもがいていた。

一方、姉畑の方も捕まえられた獲物を逃さないために全力でこれを抑えようとする。
股間からいきり立つ肉の槍を振り回しながらも、どうにかして自分の望むことを果たそうとしていた。

次の瞬間、轟音が鳴り響いた。

「ピーーカアーーッ!!」

「うわあ!?」

突如として、2人の頭上から雷が落ちてきた。

この現象を引き起こしたのは善逸であった。
自らを捕らえて離さない腕から抜け出したいという思いがポケモンとしての技としての「かみなり」を無意識のうちに発動させたのだ。

姉畑はその衝撃により、思わず善逸をその手から放してしまう。

その隙に善逸は姉畑の手元から抜け落ち、地面に着地する。
その勢いのまま、逃げ出したいという思いから無我夢中で「でんこうせっか」を発動させる。
この技により木の上に移動、そのまま枝の上を伝って渡りその場から離脱していった。
こうして、善逸は姉畑から逃げることに成功した。

(なんなんだよあいつ!?動物相手に何考えているんだ!?いや俺は人間だけどさ!)

あまりの衝撃的な出会いにより、善逸は半ばパニック状態に陥り、とにかく逃げることだけを考えて動いてしまう。
姉畑から離れることはできたものの、それ以外のことはほとんど眼中に無いと言ってもいいような状態だ。

そして善逸は無我夢中のあまり一つ忘れていたことがある。
支給品の入ったデイパックを置いて行ってしまったのだ。
そのことに気づかぬまま、彼は木の枝の上を駆け抜けていく。

【我妻善逸@鬼滅の刃】
[身体]:ピカチュウ@ポケットモンスターシリーズ
[状態]:健康、恐怖、混乱
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]基本方針:殺し合いは止めたいけど、この体でどうすればいいんだ
1:今はとにかく逃げる。
[備考]
参戦時期は鬼舞辻無惨を倒した後に、竈門家に向かっている途中の頃です。
現在判明している使える技は「かみなり」「でんこうせっか」の2つです。
他に使える技は後の書き手におまかせします。



「逃げられてしまいましたか…」

姉畑は先ほど捕まえようとした生物を取り逃がしてしまったことに対し、残念そうに呟いた。

「しかし、雷が落ちたにも拘わらず無傷とは…どうやら書いてあったことは本当のようですね」

姉畑は既に自らに支給された体のプロフィール書類を確認していた。
そこに書かれていた内容の一つに、この天使の体は火や電気といった物理と闇属性以外の攻撃なら無効にできるというものがあった。
物理はともかく闇属性というのはよく分からないが、こうして雷が当たっても平気であったことから特性は本物であることが証明されていた。
先ほどは突然のことに驚いて手を放してしまったが、どうせ無傷で済むのならそうする必要もなかったかもしれない。


「おや?これは何でしょう?」

ふと、姉畑は足下に一枚の紙が落ちていることに気がついた。
それは善逸が忘れていったピカチュウの体のプロフィール書類であった。

「ピカチュウ…なるほど!あの生き物はピカチュウと言うのですか!」

その内容を読んだことで、姉畑はピカチュウというポケモンがどのような生き物であるのかを知った。
興味深いその情報から、姉畑は目を離せなかった。


166 : 雷の獣と下半身の獣 ◆5IjCIYVjCc :2021/04/05(月) 00:11:44 4FyVPa5Q0
「何々…ピカチュウは電気を作ることができ、雷を落とすこともできる!?」

「にわかには信じられませんが、こんな晴れた空で急に雷が落ちてくるなんてありえないでしょうから、きっと本当のことなんでしょうね」

「こんな不思議な生き物が存在していたとは!!」

姉畑はプロフィールを隅々まで読み込むことでピカチュウという生物への理解をより深くする。

「ああ…先ほど取り逃したのがすごく惜しいです。この生き物のことをもっとよく知りタイ…」

姉畑支遁は思いをはせる。
彼の中にある動物たちへの歪んだ愛は、こんな所で初めて知った生物に対しても向けられるようだ。

「そういえば、この殺し合いには他にも不思議な生き物がいるのでしょうか。だとしたらその生き物たちについても色々知ってみたいですねえ」

そして彼の想いはまだ見ぬ生物にも向けられる。
今はまだ先ほどのピカチュウしか見つけていないが、他にも未知の生物がいるという可能性は十分にある。
そうした生物も彼は(色んな意味で)知ってみたいのだ。

「おや、これは誰かの忘れ物でしょうか。何かに使えるかもしれませんし持っていきましょう」

姉畑は善逸が忘れていったデイパックにも気づき、これも回収する。

「さてと…まずはピカチュウからですねえ」

先ほど逃げていった方向の目星を付けて、姉畑は自分の欲望を果たすための活動を開始した。

【姉畑支遁@ゴールデンカムイ】
[身体]:クリムヴェール@異種族レビュアーズ
[状態]:健康、興奮気味
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2(我妻善逸の分を含む)、ランダム支給品0〜6
[思考・状況]基本方針:色んな生き物と交わってみたい
1:今度こそピカチュウと交わるために追いかける。
2:他の生き物も探してみる。
[備考]
網走監獄を脱獄後、谷垣源次郎一行と出会うよりも前から参戦です。
ピカチュウのプロフィールを確認しました。
周囲に雷が落ちた音が響きました。近くの誰かがこの音を聞く可能性があります。


167 : ◆5IjCIYVjCc :2021/04/05(月) 00:12:07 4FyVPa5Q0
投下終了です。


168 : ◆NIKUcB1AGw :2021/04/05(月) 22:24:17 eDffos0A0
投下します


169 : しょうもねえやつの激情 ◆NIKUcB1AGw :2021/04/05(月) 22:25:21 eDffos0A0
その男は、怒りに震えていた。
男の名は、バイコーン。かつては「憤怒の神」と呼ばれていた存在。
彼は超人を滅ぼすべきという調和の神の主張に賛同し、共に神の座を捨てて地上に降り立った。
しかしさんざん見下していた超人という存在に不覚を取り、仲間からもあきれられるような醜態をさらして絶命した。
そのはずだった。

「許さぬ! 許さぬぞ、下等な超人がぁぁぁぁ!!
 神であった我の命をもてあそぶだけでなく、畜生のごとく首輪をつけて殺し合えとは!
 おまけに、このような脆弱な体に魂を宿すなど……!」

バイコーンは、この殺し合いの主催者を超人であると決めつけていた。
まあ、彼の認識では自分に敵対する存在など超人しかあり得ないので、仕方ない面もあるが。

「やはり超人は滅ぼさねばならぬ……。
 ここにいる連中を皆殺しにした後で、我にこんな屈辱を味わわせたやつも殺す!
 たとえ肉体が弱体化しようとも、神は偉大であることを思い知らせてやる!
 もう二度と、失態は繰り返さぬわーっ!」

ありったけの怒りを込めて、バイコーンは叫ぶ。
しかし、見た目が「眠そうな目のトウモロコシ」では迫力も何もあったものではない。
この体の本来の持ち主なら、こう言うだろう。
「ピンとこんなー」と。


【バイコーン@キン肉マン】
[身体]:ピントコーン@妖怪ウォッチ
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:参加者も主催者も皆殺し
[備考]
・参戦時期は死亡後
・主催者は超人だと思っています


170 : ◆NIKUcB1AGw :2021/04/05(月) 22:26:34 eDffos0A0
投下終了です


171 : ◆5IjCIYVjCc :2021/04/05(月) 23:40:00 4FyVPa5Q0
投下します。


172 : 2021:令和の戦士 ◆5IjCIYVjCc :2021/04/05(月) 23:40:49 4FyVPa5Q0
一之瀬みのり/キュアパパイア

2021年2月28日から放送スタートした「トロピカル〜ジュ!プリキュア」の一員。
ポーカーフェイスで感情をあまり表情に出さないが、自分をしっかり持っているタイプ。
幼い頃から人魚姫の物語が大好きで、自分で人魚の物語を創作したこともある。
メンバーの中では3番目にプリキュアに覚醒し、変身前とは打って変わって表情豊かにトロピカったアクションを見せるようになる。

彼女はまさに、新時代のニチアサを切り拓く期待の新人の一人と言えるだろう。

そして、戦いの舞台となったこの島において、そんな少女の姿を確認することができた。
だが周知の通り、このバトルロワイアルにおいてその中身は全くの別物。

令和の歴史を新たに紡ぐ、伝説の戦士の体を手に入れた者は…

「ハア…ハア…おのれ常磐ソウゴ…!よくも俺たちの計画を滅茶苦茶にしてくれたな…!」

「SOUGOもいない今、醜い歴史を作り替えることができるのは俺だけだ!」

「プリキュアだとか何とかは知らないが、優勝できる力があるのならなんだっていい!」

「新たな時代、令和は……俺が作る!」

かつて平成時代をやり直そうとし、時の魔王によって計画を阻止された組織「クォーツァー」の残党であった。

【カゲン@劇場版仮面ライダージオウ Over Quartzer】
[身体]:一之瀬みのり@トロピカル〜ジュ!プリキュア
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、トロピカルパクト&変身ハートクルリング@トロピカル〜ジュ!プリキュア、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:優勝狙い
1:令和は俺が作る!
[備考]
・仮面ライダーゼロワンに遭遇する直前より参戦です。

【トロピカルパクト&変身ハートクルリング@トロピカル〜ジュ!プリキュア】
「トロピカル〜ジュ!プリキュア」におけるメイクコンパクト型のプリキュアへの変身アイテム。
変身ハートクルリングという指輪型のアイテムでオープンし、変身に用いる。


173 : ◆5IjCIYVjCc :2021/04/05(月) 23:41:07 4FyVPa5Q0
投下終了です。


174 : ◆NIKUcB1AGw :2021/04/06(火) 22:09:15 Xt1ogoCs0
投下します


175 : その炎、消しがたく ◆NIKUcB1AGw :2021/04/06(火) 22:10:17 Xt1ogoCs0
「炎の呼吸、壱の型! 不知火!」

人気のない森の中に、大音量の声と刀が風を切る音が響く。

「むう、やはり慣れた体でなければ、技のキレが落ちるな!」

大声で独り言をまき散らすその男の名は、煉獄杏寿郎。
炎の呼吸を修めた鬼殺隊の柱、「炎柱」である。
彼は鬼との壮絶な戦いの末、命を落としたはずだった。
だが気がつけば彼は別人の体を与えられ、殺し合いの場に立たされていた。

煉獄の常識からすれば、こんなことができるのは鬼の血鬼術以外あり得ない。
ゆえにこの殺し合いも、鬼によるものと彼は考えていた。
鬼殺隊の柱として、いや、そうでなくてもこのような悪事を見逃すわけにはいかない。
必ずや首謀者を討ってみせると、煉獄は決意していた。
とはいえ、煉獄は勇猛果敢であれど無謀ではない。
まずは、おのれの状態を確認することから始めた。

「そもそもこの体には、剣術の動きが染みついていない!
 説明書きによると、素手での戦いを得意とする御仁だったそうなので仕方がないがな!
 膂力自体は素晴らしいものがあるだけに、残念だ!」

煉獄に与えられた体の名は、相楽左之助。
喧嘩屋として名を馳せた後、世界中を旅してまた日本に戻ってきたという豪傑である。

「俺の相性がいいとは言いがたいが……。だからといって頼めば元の体に戻してくれるような善良な者なら、殺し合いなどさせるはずがない!
 元の持ち主には申し訳ないが、この体で戦っていくしかあるまい!」

煉獄の言葉に、迷いはない。
そもそもが、一度死んだ身だ。生への執着はさほどない。
鬼舞辻無惨の討伐も、きっと後を託した後輩たちが成し遂げてくれると信じている。
ゆえに、今は目の前の巨悪を倒すことだけに邁進できる。

「覚悟しておけ、この殺し合いを巻き起こした鬼よ!
 貴様の頸、この煉獄杏寿郎が必ず落としてみせる!」

どこかから監視しているであろう主催者に向かい、煉獄は堂々と挑戦状を叩きつけた。


ちなみに体の本来の持ち主と、ついでに彼に支給された刀の持ち主は、「煉獄」という名の戦艦と強い因縁があるのだが……。
煉獄本人にとっては、どうでもいいことであろう。


【煉獄杏寿郎@鬼滅の刃】
[身体]:相楽左之助@るろうに剣心
[状態]:健康
[装備]:無限刃@るろうに剣心
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:主催者の打倒
[備考]
・参戦時期は死亡後


【無限刃@るろうに剣心】
志々雄真実の愛刀。剣心の逆刃刀と同じく、刀匠・新井赤空の作品。
本来のコンセプトはあらかじめ規則的に刃を欠けさせておくことにより、それ以上の刃こぼれを防ぐというもの。
しかし志々雄が使い続けることによって斬られた人間の脂がその隙間に蓄積されるようになり、摩擦熱で炎を発する妖刀と化した。


176 : ◆NIKUcB1AGw :2021/04/06(火) 22:11:13 Xt1ogoCs0
投下終了です


177 : ◆IOg1FjsOH2 :2021/04/08(木) 20:47:49 0H6YSaXQ0
投下します


178 : 禁じられし厄災が強襲する ◆IOg1FjsOH2 :2021/04/08(木) 20:49:12 0H6YSaXQ0
この島に連れて来られた参加者達は殺し合いを強要されている。
バトルロワイアルにおいて殺し合いを拒絶し脱出を図る参加者もいれば
生き残りたいがために他者の命を奪おうと動く者だっている。

「やれやれ……こいつはヘヴィだぜ……」

現在、参加者の一人であるディアッカ・エルスマンは
他の参加者による襲撃を受けており、苦戦を強いられていた。
好戦的な参加者との遭遇を考慮に入れていなかった訳では無い。

ただ彼が予想していなかったのは――

「いきなり三人がかりは反則だろ!」

襲って来た参加者が三人組だったことだ。

「そらぁぁぁぁぁ!!滅殺ッ!!」

襲撃者の一人である紫色の肌をした大男の怪物がディアッカに向けて鉄球を飛ばす。
てっきゅうまじんと呼ばれるモンスターの攻撃に対し
ディアッカは後方にステップして回避するも束の間
遠距離から放たれた砲撃の雨がディアッカを襲う

「オラオラオラァ!!」

二人目の襲撃者である砲撃手は緑色の装甲に覆われ、遠距離に特化した重戦車のような仮面ライダー、ゾルダである。
ゾルダは両肩に装着された大砲でドカドカと撃ち続ける。

「はぁぁぁぁ!」

三人目の襲撃者が真紅の鎌を振るい、ディアッカに斬りかかる。
ヘッドフォンを付けたセミロングの少女、中野三玖は本来の人格なら決して見せないであろう
狂気を宿した表情を浮かべながらディアッカを睨みつけた。

襲撃者達の人格はオルガ・サブナック、クロト・ブエル、シャニ・アンドラスの三名であり
地球連合軍が作り出した強化人間、ブーステッドマンであった。
薬物投与や洗脳によって歪められた彼らは、このバトルロワイアルにおいても
一切躊躇する事無く、殺戮を楽しんでいた。

「ちっ、お前らの好き勝手させるかよ!」

幸いにしてディアッカに与えられた肉体は以前と殆ど同じ容姿で尚且つ、非常に身体能力が高い。
三人からの攻撃も致命傷を負う事無く、回避する事が出来た。
ディアッカは懐から拳銃を取り出すと目の前にいる少女に向かって引き金を引いた。

「可愛い子ちゃんを傷付けたくはないが撃たせてもらうぜ」

三発の銃弾が三久もといシャニに向かって放たれる。
軍人として訓練を積んできたディアッカは狙いを外さない、だが……

「効かないよ」

目に見えない何かによって銃弾は弾かれ、シャニの体を傷付けるには至らなかった。

「バリア……だと……?」
「やぁぁぁぁ!!必殺ッ!!」
「ぐぅっ!」

一番弱そうな相手を狙い、敵の数を減らす算段だったが上手く行かず
逆に隙を付かれ背後からクロトの鉄球の直撃を許してしまう。
怯んだディアッカにトドメを刺そうとしたその時、クロトに向かって砲弾が撃ち込まれた。

「オルガッ!てめえ!!」
「シャニ!てめえもウゼェ!」
「いって……」

今度はシャニに向かって砲弾を撃ち込むオルガ。
バリアによってダメージを無効化したシャニだったが
衝撃は殺しきれず、ふらついてペタンと尻もちをつく。

「おいおい仲間割れかよ、だがこっちに取って都合がいいぜ。あばよ!」
「あ、てめえ!逃げんじゃねえ!」

己の持つ脚力を最大まで駆使し全力でディアッカは逃走する。
クロトも追撃するが距離はドンドン離れ、完全に振り切る事に成功した。

「何とか助かったな……それにしてもあいつらの戦い方、見覚えがあるぜ。まさか……」

地球連合との戦いで何度か戦った三人組と酷似していた。
三人とも戦場で死亡したはずだ。
もしや主催者によって蘇生されたのか。

「……それが事実だとしたら相当厄介だぜ」

彼らの強さは嫌というほど体験している。
今度は勝てるかどうか分からない。
この殺し合い、一筋縄では行かない事を実感したディアッカであった。

【ディアッカ・エルスマン@機動戦士ガンダムSEED】
[身体]:エミヤ@Fate/stay night
[状態]:ダメージ(小)
[装備]:ベレッタ92(12/15発)
[道具]:基本支給品、予備弾数(30/30)、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いからの脱出。
1:同じ目的を持つ仲間を探す。
2:連合トリオを警戒する。
[備考]
本編終了後からの参戦です。


179 : 禁じられし厄災が強襲する ◆IOg1FjsOH2 :2021/04/08(木) 20:49:44 0H6YSaXQ0


「お前が邪魔するから逃げられたじゃねーか!バーカッ!!」
「うっせーよ!そんな所でちょろちょろするから悪いんだろうがッ!」
「…………」

その頃、クロトとオルガは獲物が逃げられた原因をめぐって言い争いをしていた。
シャニはそんな二人を無視してヘッドホンを付けて音楽を聴いていた。

「おい、シャニ!お前は何か言う事無いのか?」
「……疲れた」
「ハァッ!?」
「休む」

現在のシャニの肉体となっている中野 三玖は運動が苦手で体力が低い。
その影響を受けてシャニもすぐにスタミナ切れを起こし、休憩を取っていた。

「だったら俺も休むぜ」

オルガの肉体である北岡秀一も三久程では無いが身体能力が高い訳では無く。
多少なり戦闘後の疲労は残っていた。
不思議と声は依然と全く同じである。

「お前ら貧弱過ぎ〜」
「うっせーよ!こっちはお前みたいな化け物の体じゃねーんだよ!」

クロトだけは二人とは違い、てっきゅうまじんという強靭な肉体によって
全く疲れを見せる事無く、ピンピンとしていた。

「だったらお前達はそこで寝ていな。こっからは僕一人でやらせてもらうからね」
「おい、何を勝手に……」
「どーでもいいよ。好きにやろうぜ」
「ですね。ここには煩いのがいないし」

アズラエルの支配から解き放たれた以上、命令する奴はもういない。
首輪を付けられ、殺し合いを強要されてるとはいえ
誰とどんな戦いをしようと一切縛られないこの環境は
以前よりも遥かに自由となっている。

「まぁいいか。死にそうになったら戻って来いよ」
「僕がそんなヘマするかよ。じゃあな!」

戦闘への欲求を押さえ切れないクロトは颯爽と駆け出した。
強襲者は次なる獲物を見つけるまで止まらない。

【オルガ・サブナック@機動戦士ガンダムSEED】
[身体]:北岡秀一@仮面ライダー龍騎
[状態]:疲労(小)
[装備]:仮面ライダーゾルダのデッキ@仮面ライダー龍騎
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺戮を愉しむ。
1:他の参加者を皆殺しにする。
2:休憩を終えたら再び行動を起こす。
[備考]
参戦時期はオーブ解放作戦前からです。

【クロト・ブエル@機動戦士ガンダムSEED】
[身体]:てっきゅうまじん@ドラゴンクエストシリーズ
[状態]:健康
[装備]:てっきゅうまじんの鉄球@ドラゴンクエストシリーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺戮を愉しむ。
1:他の参加者を皆殺しにする。
2:獲物を探す。
[備考]
参戦時期はオーブ解放作戦前からです。

【シャニ・アンドラス@機動戦士ガンダムSEED】
[身体]:中野三玖@五等分の花嫁
[状態]:疲労(中)
[装備]:クレセント・ローズ@RWBY、小型ディストーションフィールド発生装置@機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-
[道具]:基本支給品、中野三玖のヘッドホン@五等分の花嫁
[思考・状況]基本方針:殺戮を愉しむ。
1:他の参加者を皆殺しにする。
2:休憩を終えたら再び行動を起こす。
[備考]
参戦時期はオーブ解放作戦前からです。


180 : ◆IOg1FjsOH2 :2021/04/08(木) 20:50:12 0H6YSaXQ0
投下終了しました


181 : ◆5IjCIYVjCc :2021/04/08(木) 21:11:57 jJOlDJ.w0
【お知らせ】
地図のマス目を10×10から8×8に変更します。

地図:ttps://w.atwiki.jp/changerowa/pages/17.html

唐突なことですみませんが、今後ともよろしくお願いします。


182 : ◆NIKUcB1AGw :2021/04/08(木) 21:35:01 G8uoUAWc0
変更了承しました

投下します


183 : そろそろ行こうか冥府魔道 ◆NIKUcB1AGw :2021/04/08(木) 21:36:07 G8uoUAWc0
その男は、魔王と呼ばれていた。
彼は魔物を率いて人間に戦争を挑み、世界を混乱に陥れた。
だが彼は、人間を滅ぼしたかったわけでも、魔物が支配する世界を作りたかったわけでもない。
男の目的は、最愛の姉を奪った怪物をもう一度呼び出し、復讐すること。
全ては、そのための準備に過ぎなかった。
しかしその悲願を達成する寸前で、彼は時空のゆがみに巻き込まれ……気がついたときには、この殺し合いに参加させられていた。


願いを一つ叶えられる。
それは男にとって、実に魅力的な言葉だった。
むろん、殺し合いを強制するような輩が素直に約束を守るのかという疑念はある。
だがそれを差し引いても、男はその魅力にあらがえなかった。
もう一度姉に会えるかもしれないという魅力には。


すでに自分は、目的のために何人もの人間を手にかけてきた。
自分の指揮する魔物たちに殺された人間となれば、もはや数え切れない。
今さら数十人上乗せしたところで、どうということはない。
男は、殺し合いに乗ることを選んだ。
異世界で自分と同じ「魔王」の称号を持っていた男の体を借り、呪われた武器を手にして。

男の名は、魔王。真の名は、とうの昔に捨てた。


【魔王@クロノ・トリガー】
[身体]:ピサロ@ドラゴンクエストIV
[状態]:健康
[装備]:破壊の剣@ドラゴンクエストシリーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:優勝し、姉を取り戻す
[備考]
・参戦時期は魔王城での、クロノたちとの戦いの直後
・ピサロの体は、進化の秘法を使う前の姿(派生作品でいう「魔剣士ピサロ」)です


【破壊の剣@ドラゴンクエストシリーズ】
絶大な攻撃力を誇る代わりに、呪いにより一定確率で動けなくなってしまう剣。
ただしピサロには「自分への呪いを無効化する」という特殊能力があるため、彼の体で振るう分にはデメリットは消失する。
「剣」と名付けられてはいるが、先端が斧のような形状になっている特異な外見が特徴。


184 : ◆NIKUcB1AGw :2021/04/08(木) 21:37:18 G8uoUAWc0
投下終了です


185 : ◆OmtW54r7Tc :2021/04/09(金) 22:47:12 68Y0ybyc0
投下します


186 : ◆OmtW54r7Tc :2021/04/09(金) 22:49:58 68Y0ybyc0
「ふざけた真似を…!」

ジューダスは、怒っていた。
彼は、カイルたちと共に神のたまごに乗り込み、フォルトナ神を倒した。
それと共にリアラは消え、歴史は修正されてジューダスもまた仮初の生を終え消えたはずだった。
にもかかわらず、こうしてまた生を受けた。
そして、殺し合いを命じられた。

再び蘇ったことについては、この際どうでもいい。
殺し合いについてはさすがにどうでもいいとは言い難いが…それでもやはり今は置いておこう。
今、一番問題なのは…

「なぜ女になっているんだ!」

彼が与えられた姿は、神崎蘭子という女性だった。
もっとも女性とはいっても、カイルよりも年下の子供だが。
アイドルという職業らしく、それが何なのかなどジューダスは知らないが、ふわふわとした服装はかつての仲間であるリアラを想起させた。
もっとも、リアラとは真反対の黒い服ではあるのだが。

「黒…黒か。僕への当てつけか?」

ジューダスはかつてリオン・マグナスと呼ばれていたころ、セインガルドの薔薇という異名で呼ばれたことがあった。
男装の麗人としての異名だ。
温泉で女湯に誤って入ってしまったとき、胸までタオルを上げてバレなかったこともあった。
そんな自分を女の姿に、しかも元の自分を象徴する黒い服装の女にするとは、まるで自分が女体化でもされたかのような気分だった。


187 : ◆OmtW54r7Tc :2021/04/09(金) 22:50:46 68Y0ybyc0
「まあいい。ともかく荷物を見てみるか」

主催者への怒りをひとまず抑えたジューダスは、デイバックの確認をすることにした。
武器を探していると、出てきたのは一本の剣だった。

「エターナルソード…なかなかの業物だが、それだけではなさそうだ」

ジューダスは感じていた。
その剣の不思議な力を。
この感覚は、リアラが使う奇跡の力に少し似ているようにも思える。
ともかく、強力な剣が手に入ったのは僥倖だ。
欲を言えば、短剣も欲しいところだが。

「そろそろ行くとするか」

剣の検分を終えると、ジューダスは歩き出す。
彼としては、今更自らの生に執着する気などない。
かといって、この殺し合いに加担してやるつもりもない。
この殺し合いを仕組んだ連中が、エルレインやフォルトゥナと繋がっていないとも限らないし、カイルたちが呼ばれている可能性もある。
自分はともかく、彼らは自分たちが守った歴史を紡いでいく者達だ。
こんなところで、死なせるわけにはいかない。

「僕たちの世界は、スタンたちによって救われ、そしてカイルたちによって紡がれなければならない。それを邪魔するヤツは・・・・この僕が許さない!」


【ジューダス@テイルズオブデスティニー2】
[身体]:神崎蘭子@アイドルマスター シンデレラガールズ
[状態]:健康
[装備]:エターナルソード@テイルズオブファンタジア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない
1:できれば短剣も欲しい
[備考]
参戦時期は旅を終えて消えた後

【エターナルソード@テイルズオブファンタジア】
時空を操る魔剣。
魔王ダオスの時空転移を封じるために精霊王オリジンの力を借りて作られた。


188 : ◆OmtW54r7Tc :2021/04/09(金) 22:52:54 68Y0ybyc0
投下終了。タイトルは【闇の炎に抱かれて消えろ!(やったぁ!スッキリですね♪)】です

続けてもう一本投下します


189 : へんしん ◆OmtW54r7Tc :2021/04/09(金) 22:54:06 68Y0ybyc0
『ねえ知ってる?メタモンくん』
『なんだい?コイキングくん』
『この世界にはミュウっていう幻のポケモンがいてね、そいつは全ての技を使うことができるんだってさ』
『へえ!?全ての技を!?』
『一つしか技が使えないメタモンくんとは大違いだね。ハハッ』
『むっ。そういうコイキングくんだってたいして技覚えないじゃないか』
『それでも君より多いよ。それに、進化したらいっぱい技覚えて強くなれるもんね』
『ムッカ〜!へんしんをなめるなよ!へんしんは、相手の姿だけじゃなくて技もコピーするんだ!君が言うミュウに変身すれば、僕だって全ての技を使える!ミュウと同じくらい、僕はすごいんだ!』

『へんしんこそ…最強の技だ!』

〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

「へんしん!」

その掛け声と共に、人間・神代剣の姿はスコルピオワームへと姿を変える。

「へんしん!」

支給品のサソードヤイバーにサソードゼクターをセットし、再び掛け声をあげると、その姿は仮面ライダーサソードへと変わる。

「こんなんじゃ…こんなんじゃダメだ!」

変身者…神代剣の肉体を借りたメタモンは、憤慨する。
自分は、あらゆる生物に変身することができた。
あらゆる技を使うことができた。
へんしんの技によって。
しかし、そのへんしんは失われた。
今の自分は、怪物とマスクマン、二つの姿にしか変身できない。

「僕はあらゆる生物に変身できなきゃいけないのに…そうでないと価値なんてないのに!」

焦燥を感じつつ、肉体のプロフィールに目を通す。
どうやらこの人間は、ワームという種族の生き物らしい。
そしてワームは、擬態の能力により姿を変えることができるという。
ただし、この世界では直接殺した相手でなければ擬態ができないらしい。

「殺さなきゃ…」

メタモンの胸中に、どす黒い殺意が芽生える。
殺して殺して殺しまくって。
変身できる姿を増やす。
あらゆる参加者に変身できるようになって。
へんしんという自らのアイデンティティを守らなければならない。

「いっぱい殺して、いっぱいへんしん…メ〜タメタメタ」

ポケモンだったころの名残を残すかのような狂った笑い声を上げながら、メタモンは殺戮の舞台へと足を踏み出すのだった。


【メタモン@ポケットモンスターシリーズ】
[身体]:神代剣@仮面ライダーカブト
[状態]:健康
[装備]:サソードヤイバー&サソードゼクター@仮面ライダーカブト
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:参加者を殺して、変身できる姿を増やす
[備考]
制限によりワームの擬態能力は直接殺した相手にしか作用しません

【サソードヤイバー&サソードゼクター@仮面ライダーカブト】
仮面ライダーサソードに変身するための変身ツールセット。


190 : ◆OmtW54r7Tc :2021/04/09(金) 22:54:42 68Y0ybyc0
二本目投下終了です


191 : ◆1qfrROV/6o :2021/04/10(土) 06:01:48 lqDGw/Ww0
投下します。


192 : Be The Double Effect ◆1qfrROV/6o :2021/04/10(土) 06:02:37 lqDGw/Ww0
最初、何を言われているのか理解できていなかった。
黒いモヤが消えて自分の姿を鏡で認識できるようになった時、その体はいつもの自分と何ら変わりないように思えたからだ。
会場に投げ出された直後に街中のガラスで顔を確認してみても、見慣れた顔だとしか感じなかった。

しかし、しばらく体を動かしていると微妙な違和感を覚える。
体を目で見るだけではわからなかったが、実際に動かしてみるとわかる。
例えるなら何かの歯車が少しズレているような、パソコンに適切なOSが入っていない為に動作にラグがあるような、そんな感覚。

やがて一つの可能性に思い至る。
だがそれは考えうる中で最悪の可能性だった。
反射する自分の顔を見なくてもわかる。急速に青ざめていることだろう。
どうかそれだけは間違いであってほしい、思い違いであってほしいと願いながら自分のデイバックを乱暴に漁る。
震える手で身体の持ち主のプロフィールが記載されている紙を見つけ、確認する。最悪の予想は、的中していた。

「―――これ……なーちゃんの、体……っ!」

声を震わせて掠れ声でつぶやく。
大崎甜花は、自分の意識が宿っているのが最愛の妹である大崎甘奈の体だと理解してしまった。
足腰から力が抜ける。自分の支給品が地面に散らかっているにも気づけないまま、その場にへたり込んでしまった。

妹の体がここにあるということは、既に甘奈は主催の手の内に落ちているということ。
甜花も殺し合いに巻き込まれているが、甘奈はもっとひどいことをされていないだろうか。
自分の身と同じくらいに、生まれてからずっと共に過ごしてきた妹のことが心配だった。

いや、もしかしたら甘奈もこの殺し合いに無理矢理参加させられてるかもしれない。
主催の男は確かこう言っていなかったか。『勝ち残ったただ1人だけが元の体に戻ることができる』と。
つまり甘奈も参加させられていたならば、どちらか一人しか生き残ることができない……?

「……そんなの、いやだよ……なーちゃん……!」

その前に、自分が生き残るために他の参加者を殺すことなど甜花にできるだろうか。
できるわけがない。死にたくはないが人殺しもごめんだ。
甜花の現状は八方塞がり。どうすればいいのかわからずその場でしばらく茫然自失としていた。


193 : Be The Double Effect ◆1qfrROV/6o :2021/04/10(土) 06:03:29 lqDGw/Ww0




「―――大丈夫か?」

「…………えっ?」

あまりのショックに目の前で話しかけられるまで相手の存在に気づけなかった。
知らない男の人だったが、その顔にはこちらを気遣うような気配があった。
もし殺し合いに乗っている人だったらどうしようとも思ったが、それならばわざわざ目の前に出てきて声をかけないだろう。
ひとまず怖い人ではないと判断するが、いきなり声をかけられてどうすればいいかわからず、またその場で静止してしまった。

「そんな顔してると、せっかくの綺麗な顔が台無しだぞ?
 ……って、今は別人の顔だっけか。すまん、忘れてくれ。」

「……ううん、大丈夫。……たぶん、元の体でも……おんなじ顔、だから……。」

そうして甜花は、自分の現状を目の前の男にぽつりぽつりと話し出した。
自分が双子の妹の体に宿ってしまったこと。
妹が今どんな状況なのか心配でならないこと。
当然死にたくはないが、そのために他人の命を奪わなければいけないのが嫌で、怖いこと。
自分が一体どうすればいいのか、何もわからないこと。
何故そんなことを話してしまったのかはわからない。だけど彼は何も言わずに聞いていてくれた。

「……こんな状況に巻き込まれたんだ。そりゃ怖いよな。
 でも、大丈夫だ。甜花は戦わなくてもいい。」

何を言っているんだろう、と首をかしげる。
このままでは殺されてしまうのではなかろうか。
そこに返ってきた返事は、甜花の予想していないものだった。

「俺が甜花のことを守る。いや甜花だけじゃない。
 甘奈も、この殺し合いに巻き込まれた人も守る。」

「―――正義のヒーロー、仮面ライダービルドが。」

そう言って彼は一枚の謎のカードをこちらに見せてきた。
そのカードには、特撮に出てくるようなヒーローだろうか?そのイラストが描かれていた。
顔の左側が赤で、左半分が青の変身ヒーロー。小宮果穂が見たらとても喜びそうな、そんな存在。

それを見た甜花は、この人も殺し合いに巻き込まれたからどこか変になってしまったのかと思った。
さっきまでの甜花の状態を思い返せば、他にそんな人がいたとしても無理もない。


194 : Be The Double Effect ◆1qfrROV/6o :2021/04/10(土) 06:04:29 lqDGw/Ww0


「あ、その顔は信じてないな?
 ちょっと待ってろ、今証拠見せてやるから。」

そう言って彼が取り出したのは、少し大きなベルトのバックルのようなものだった。
色はピンク……いや、マゼンタだろうか。
それを腰に当てると、自動的にベルトが伸びてきて腰に装着される。
ベルトが勝手に出てきたことに甜花が驚いてる間に、彼は先ほどのカードをそのままバックルの中に挿入した。

「―――変身!」

『KAMEN RIDE BUILD!』

『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イエーイ!』

一瞬でカードに描かれていたのと同じ姿に変身する。
冗談だと思っていた甜花も、実際に目の前で変身する瞬間を見せられて驚愕した。

「す、すごい……!ほんとに、変身……した。」

「信じてくれたか?」

そう言うとすぐに変身を解除して元に戻る。
自分が甜花を守る、本当にただその証明のためだけに彼は変身したようだ。
しかしそれでも疑問は残る。なぜ初対面の甜花に対してそこまでしてくれるのか。
そして何よりも―――

「…………戦うの……怖く、ないの?」

誰かに殺されるのも、誰かを殺さなければいけないのも怖い。
それが先ほどまで甜花が陥っていた恐怖の理由だ。
彼は怖くないのだろうか。純粋に、気になった。

「怖くない。……って、言いきったら嘘になる。
 大切なのは戦う理由だ。」

「……理由?」

「誰かの力になりたい。誰かを守りたい。それが俺の根っこにある戦う理由だ。
 俺が戦うことで、みんなが笑顔になると……俺も嬉しくなるんだ。」

「あ……。」

そう語る彼の顔はくしゃっとした笑顔で、本当に嬉しそうだった。
自分の行動で誰かが笑顔になる。そう聞いて甜花が思い浮かべたのはアイドルのステージだ。
アルストロメリアのライブで、ステージから見えるファンのみんなの笑顔。
横にいる甘奈と千雪の笑顔。ステージから戻ったときの、プロデューサーさんの笑顔。

「……戦うのとは、ちょっと違うけど……。
 誰かが笑顔になってくれると、うれしいのは……甜花も、わかる……かも。」

迷った末、甜花は彼を信じることに決めた。
ちょっと変な人ではあるけど、その思いは本物だと思ったからだ。

「えっと、その……改めて、大崎甜花……です。
 よろしく、お願いしましゅ……!あう……、嚙んじゃった……。」

「そういやちゃんと名乗ってなかったっけ。
 俺は桐生戦兎、天才物理学者の桐生戦兎だ。よろしく。」

名乗りながら手を差し伸べる戦兎をみて、自分が地面にへたり込んだままだったことに気づく。
少し恥ずかしくて目を逸らしながらも、その手を握り返して立ち上がる。
散らかったままの自分の支給品を片付けて、甜花は戦兎と共に歩き出した。
自分の妹の無事と、283プロのみんなは巻き込まれていないことを祈りながら。




◇◆◇


195 : Be The Double Effect ◆1qfrROV/6o :2021/04/10(土) 06:05:33 lqDGw/Ww0



甜花は訳あって顔が元の体とそっくりだったが、それは戦兎も同じだった。
その理由は桐生戦兎という人間の生い立ちと深く関係している。
何せ戦兎の顔は、後天的に別人の顔に変えられているのだから。

戦兎の今の肉体の本当の持ち主は佐藤太郎。
かつて、記憶をなくした葛城巧という男がエボルトという怪人の手によって顔を佐藤太郎と入れ替えられたことで生まれたのが桐生戦兎である。
つまり今の戦兎は体が違っていても顔は全く同じなのだ。

もちろん体は違うので、それによる不都合もある。
戦兎が変身する仮面ライダービルドは本来、ビルドドライバーとフルボトルというアイテムを用いて変身する。
しかしそのためには、人体実験を受けてネビュラガスという地球外の物質を注入し、ハザードレベルという数値が3.0以上に到達している必要があるのだ。
当然ながら佐藤太郎はそんな危険な人体実験を受けてはいない。

事態を把握した当初はどうしようかと頭を悩ませたが、幸運にもそれは自分の支給品が解決してくれた。
それは、ビルドドライバーとはまた異なるシステムで変身する変身ベルトだった。
しかもこのベルト、様々な仮面ライダーの姿と力を再現することができるという。
最初は半信半疑だったが、変身用のカードの中にビルドのカードも確かに存在していた。
それだけでなく、以前に別の事件で会ったことのあるエグゼイドや鎧武などのカードもあったのだ。
流石の戦兎も、このベルトは本物だと判断せざるを得なかった。
ぶっつけ本番で甜花の前で変身してみたが、ちゃんと変身できて内心では少し安心していた。



甜花に声をかけたのには、心配で見て居られなかったというのもあるがもう一つ理由がある。
地面に散らばっている甜花の支給品だ。
甜花は気づいていないようだったが、その中に戦兎が見たことのあるアイテムがあった。
仮面ライダー鎧武が変身に使っていたのと、同じ変身ベルトである。
もし傷心状態の甜花が自棄になってそのベルトを間違った方法で使わないかが心配だった。
最も、彼女と会話してみてその心配は杞憂だとわかったが。

彼女がそんなベルトを使う必要がないように、自分が守らなければ。
そんな気持ちを心の隅にしまいながら、戦兎は甜花と共に会場を移動し始めた。


196 : Be The Double Effect ◆1qfrROV/6o :2021/04/10(土) 06:08:05 lqDGw/Ww0
【大崎甜花@アイドルマスターシャイニーカラーズ】
[身体]:大崎甘奈@アイドルマスターシャイニーカラーズ
[状態]:健康、精神的疲労(小)
[装備]:戦極ドライバー+メロンロックシード+メロンエナジーロックシード@仮面ライダー鎧武
[道具]:基本支給品
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない。
1:戦兎さんと……一緒に、いる。
2:なーちゃん、大丈夫……かな……。
3:283プロのみんなは……巻き込まれてないと、いいな……。
[備考]
※自分のランダム支給品がどのようなものか気づいていません。


【桐生戦兎@仮面ライダービルド】
[身体]:佐藤太郎@仮面ライダービルド
[状態]:健康
[装備]:ネオディケイドライバー@仮面ライダージオウ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いを打破する。
1:甜花を守る。自意識過剰な正義のヒーローだからな。
2:他に殺し合いに乗ってない参加者がいるかもしれない。探してみよう。
[備考]
※本来の体ではないためビルドドライバーでは変身することができません。
※平成ジェネレーションズFINALの記憶があるため、仮面ライダーエグゼイド・ゴースト・鎧武・フォーゼ・オーズを知っています。
※ライドブッカーには各ライダーの基本フォームのライダーカードとビルドジーニアスフォームのカードが入っています。
※令和ライダーのカードが入っているかは後続の書き手にお任せします。


【戦極ドライバー@仮面ライダー鎧武】
ロックシードと呼ばれるアイテムでアーマードライダーに変身することができるベルト。
使用者の制限はかけられておらず、支給されたときからゲネシスコアが装着されているためエナジーロックシードも使用できる。

【メロンロックシード@仮面ライダー鎧武】
『メロンアームズ!天・下・御・免!』
ロックシードと呼ばれる変身アイテムの一つ。
戦極ドライバーにセットすることで、アーマードライダー斬月メロンアームズに変身できる。
決して「そういえば甜花ゴメンみたいなネタあったな」とか思ったわけではない。

【メロンエナジーロックシード@仮面ライダー鎧武】
エナジーロックシードと呼ばれる最新型ロックシードの一つ。
本来はゲネシスドライバーと呼ばれるドライバーに装着して使用するが、ゲネシスコアがあれば戦極ドライバーでも使用できる。

【ネオディケイドライバー@仮面ライダージオウ】
ジオウに登場した門矢士が使用する変身ベルト。
色がマゼンタに変更されており、より多くの仮面ライダーにカメンライドできる。


197 : ◆1qfrROV/6o :2021/04/10(土) 06:09:46 lqDGw/Ww0
投下を終了します。


198 : ◆ytUSxp038U :2021/04/10(土) 20:47:28 LmuN4XnI0
投下します


199 : 星狩りとアイドル ◆ytUSxp038U :2021/04/10(土) 20:50:32 LmuN4XnI0
「さぁて、どうしたもんかねぇ…」

真新しい民家のリビング。
ソファに寄り掛かり、そう呟いたのは一人の参加者。
『母性溢れる』といった表現が似合いそうな美貌と、女性らしい魅力の詰まった肢体の、年若い女。
だがここに彼女を良く知る者がいたら大層驚いただろう。
天井を睨みつけながら険しい顔を浮かべるその様は、本来の彼女からは程遠い姿だった。

しかし、それも当然である。
今この肉体に宿っている精神は、彼女とは全くの別人の男。
男は冷蔵庫から拝借した缶コーヒーを口に含み、思考していた。

(俺が持つ力もある程度は使える…。ってことは、ブラッドスタークになれるだけのハザードレベルは健在と見て良いだろうな。
 …だがこの身体から出る事はできない。つまりこの身体に憑依させられたまま、固定された状態ってとこかね…)

男が持つ能力の一つに、『他者の肉体への憑依』というものがある。
だがどういう訳か、今現在の肉体からは出ることができなかった。
主催者に何か手を加えられたのか、或いは自身を縛る首輪に仕掛けがあるのか。
どちらにせよ余計な真似をしてくれたものだと、ウンザリした気持ちになった。

それに与えられた肉体にも不満がある。
プロフィールに目を通したところ、この身体の持ち主はアイドルをしているらしい。
それも男が父親の振りをしている娘のようなネットアイドルではなく、煌びやかなステージ上で歌とダンスを披露する、正真正銘のアイドルとのこと。
それなりの運動能力はありそうだが、前々から憑依していた宇宙飛行士の肉体に比べるとどうにも違和感は否めない。
豊満な胸と尻の何とも言えない異物感に辟易しつつ、これからどうするかを考える。

別段、参加者を皆殺しにする事に抵抗は無いが、今の段階で殺し合いに乗るのは早計ではないだろうか。
主催者が何か強大な力を持っているとして、素直に優勝者の願いを叶えてくれる保証はどこにも無い。
仮に優勝して元いた場所に帰れたとしてもだ、その後またこうして首輪と他者の肉体で動きを封じられ、殺し合いだの何だのに拉致される可能性も十分あり得る。
一番良いのは主催者の持つ力を根こそぎ奪って、自分の本来の力を取り戻す。
それから主催者をきっちり始末した上で帰還することだ。
とはいえ現状では首輪を外す方法も、ここがどこなのかも、そもそも主催者の正体すら不明である。
故に暫くは有益な情報を持つ参加者との接触に動き、首輪を外して主催者の力を手に入れられるならそっちに、絶対に不可能と判断したならば優勝を狙う。
大まかな方針はこんなものだ。

(問題はブラッドスタークでどこまでやれるかだが……まぁ、何とかするしかねぇか)

残った缶の中身を一気に飲み干すと、軽やかな動きで立ち上がる。
とにもかくにも、まずは参加者を見つけなければ始まらない。
リョックを背負い、片手でボトルのような物を弄びながら玄関へと向かった。
その途中、壁に掛けられた鏡に映った自分の姿を覗き込む。

「ま、悪いが暫くの間お前の身体を使わせてもらうぜ、千雪」

殺し合いのせいで肉体を奪われた不幸な女に向けて、地球外生命体のエボルトは皮肉気に微笑んだ。


【エボルト@仮面ライダービルド】
[身体]:桑山千雪@アイドルマスター シャイニーカラーズ
[装備]:トランスチームガン@仮面ライダービルド、コブラロストフルボトル@仮面ライダービルド
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本方針:主催者の持つ力を奪い、完全復活を果たす
1:有益な情報を持つ参加者と接触する
2:今の所殺し合いに乗る気は無いが、他に手段が無いなら優勝狙いに切り替える
[備考]
※参戦時期は33話以前のどこか。
※他者の顔を変える、エネルギー波の放射などの能力は使えますが、他者への憑依は不可能となっています。
またブラッドスタークに変身できるだけのハザードレベルはありますが、エボルドライバーを使っての変身はできません。


200 : ◆ytUSxp038U :2021/04/10(土) 20:51:26 LmuN4XnI0
投下終了です


201 : ◆ytUSxp038U :2021/04/10(土) 20:54:19 LmuN4XnI0
すみません、支給品の説明忘れてました

【トランスチームガン@仮面ライダービルド】
葛城巧が開発した拳銃型の変身ツール。
ロストフルボトルをセットする事でトランスチームシステムの怪人に変身できる。
武器としても使用可能で、エネルギー弾を発射する他、煙幕を張って撤退する、特殊なガスを散布し人間をスマッシュにする等の機能がある。
一定のハザードレベルさえあれば人体実験を受けなくても変身できるが、感情の高ぶりでハザードレベルを上昇させる事も無い。

【コブラロストフルボトル@仮面ライダービルド】
トランスチームシステムの変身に用いられる人口フルボトル。
これをトランスチームガンにセットしトリガーを引くとブラッドスタークに変身できる。


202 : ◆NIKUcB1AGw :2021/04/10(土) 21:23:32 pe76pn520
投下します


203 : てめえの火はお呼びじゃねえよ ◆NIKUcB1AGw :2021/04/10(土) 21:24:24 pe76pn520
「ああ、まったくもって最悪だ」

男は、そう呟いてため息を漏らす。
男の名は、葛西善二郎。
日本の犯罪史に名を残すと言われているほどの、凶悪な連続放火犯である。
しかし彼には、「長生きする」という犯罪者らしからぬ目標があった。
大人数での殺し合いなど、その目標からあまりにかけ離れた行為だ。
おまけに、体を他人のものと交換されてしまったと来ている。
多少若返ったのはいいが、こんなつぎはぎだらけの怖い顔ではお姉ちゃんも寄ってきやしない。
何より……。

「この俺に、人を超えた力を使えってか」

葛西に与えられた体の名は、荼毘。
説明書きによると、炎を生み出す超能力を持っているとのこと。
一見、葛西との相性は抜群に見える。
だが、こんな体を与えるなど葛西にとっては侮辱以外の何物でもなかった。
人間であるまま、人間をやめた連中よりも長く生きる。それが彼の矜持なのだから。

「絶対に使わねえぞ、こんな力……。
 俺は俺の力だけで、生き残ってみせる」

自分に言い聞かせるように呟くと、葛西は歩き出す。

「さて……。まずは、何がなくてもタバコだな……」


【葛西善二郎@魔人探偵脳噛ネウロ】
[身体]:荼毘@僕のヒーローアカデミア
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:生還する。優勝か脱出かは問わない。
1:まずはタバコがほしい
2:肉体が持つ能力は使わない
[備考]
・参戦時期は本編終了後


204 : ◆NIKUcB1AGw :2021/04/10(土) 21:25:19 pe76pn520
続けて、もう1本投下します


205 : これが女幹部の生きる道 ◆NIKUcB1AGw :2021/04/10(土) 21:26:23 pe76pn520
チャンスかもしれない。
殺し合いの場に配置されたエルゼメキアの頭に浮かんだのは、そんな思いだった。
目の前で大切な人たちを殺されて心を折られ、故郷を人質にされ、彼女は憎き敵に仕えることを強いられた。
星喰いの怪物・マゼラ。文字通り、自分たちとは次元が違う存在。
あの怪物には、誰も勝てない。
ゆえに侵略した星の住人を早々に服従させ、滅亡を防ぐ。
それこそが最良の道だと信じ、エルゼメキアは残虐で傲慢な侵略者を演じ戦ってきた。

だがもし、この殺し合いを開いた者がマゼラと同次元の存在だとしたら?
数十人を対象にした空間移動に、肉体の入れ替え。
これだけのことができるなら、可能性は0ではない。
その力を借りることができれば、マゼラを葬り去る……あるいはそこまではできなくとも、弱体化させるくらいのことはできるかもしれない。
それができれば、宇宙に平穏がもたらされる。
もう自分も、望まぬ悪役を演じ続ける必要はない。
元々他人に憑依して操ることができるエルゼメキアにとって、自分のものではない体を動かすことはお手の物である。
与えられた体も、戦闘力はなかなかのものだ。
優勝は十分に狙える。エルゼメキアは、そう考えていた。

(悪いけど、他の参加者の人たちには犠牲になってもらう……。
 恨んでもらってかまわない。でも私は、やらなきゃいけないの!)

不確かな希望であることは理解している。
だがそれでも、彼女はそれにすがることを選んだ。
多数を救うために、少数を殺す。
その決意の元、エルゼメキアは動き出す。


【エルゼメキア@妖怪学園Y】
[身体]:ヨドンナ@魔進戦隊キラメイジャー
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝し、主催者の力でマゼラを打倒する
[備考]
・参戦時期はTVシリーズ序盤、来星ナユに憑依して活動していた時期


206 : ◆NIKUcB1AGw :2021/04/10(土) 21:27:24 pe76pn520
投下終了です


207 : ◆L9WpoKNfy2 :2021/04/10(土) 23:06:50 X6TNkUs.0
二作品ほど投下させていただきます。


208 : 自分のこととはいえ、それはそれでムカつくこともある ◆L9WpoKNfy2 :2021/04/10(土) 23:08:48 X6TNkUs.0
ここは会場内にある施設の一つ、大きな劇場の中にこの女性はいた。

花冠をかぶり、無数の花があしらわれた白いドレスをまとった女性だった。

身体の詳細より先に中身の方を紹介すると、彼の名前はハムレット。

シェイクスピアの四大悲劇の1つ『ハムレット』の主人公であり、
叔父によって毒殺された父の無念を晴らすために、その身を狂気に委ねた王子である。

そんな彼は今……

「コイツ、けっこうええチチしてるな〜。せっかくの機会じゃし揉みまくったろ」

今の自分の身体を思いっきり堪能していた。

……実をいうとこのハムレットは、ある漫画家がギャグマンガ調のストーリーで描き上げたヤツなので、
原点と比べておちゃらけた感じになっているのである。

「……おっと、こうしている暇はないんだった。一刻も早くデンマークへと戻り、にっくきクローディアスに復讐をせねば!」

そうしてしばらく自分のチチを揉みしだきまくっていた彼だったが、突然我に返り本来の目的を思い出すのだった。

「まずはここから脱出するために使えそうなものがないか、確認をせねば……」

そして自分に与えられた支給品などを確認するためにリュックを開くと、そこから何かがこぼれ落ちた。

「……何だこれは?」と彼がこれを拾い上げると、そこには彼がある意味知りたがっていたことが書かれていた。

「……なるほど、どうやらこれにはこの身体の持ち主のことが書かれているらしい、えっと何々……?」

『愛する者がある復讐の為、狂人になってしまった……
 そう思い、人生に絶望してしまった女性。
 小川のほとりで1人虚しく最後を迎える事となる。』

『あの人がおかしくなってしまった。
 あの人のいない人生なら私ももう生きている必要なんてないわ』

(な〜んかどっかで聞いたことがある話だな……と言うか私の身の回りに起きたことじゃないかコレ?)

そうやって彼が一通りプロフィールの内容を確認していると、ふとあることに気が付いた。

「……あれ、裏にも何かあるみたいだぞ?」

それは、このプロフィールの裏側にも何か書かれているという事だった。

そして彼は裏側を見て、驚愕に包まれることになった。

そこには……


209 : 自分のこととはいえ、それはそれでムカつくこともある ◆L9WpoKNfy2 :2021/04/10(土) 23:09:23 X6TNkUs.0

『欲望のままに私を抱いてぇ……あ、悪夢など……すべて忘れて……
 ほら見て……私のここもぉ……ハムレットを求めてる……
 あなたへの想いが溢れてるわ……お願い……』

この身体の持ち主が、恋人と思われる男と乳繰り合っている姿が写っていた。

……少しゲスな言い方をすれば、セッ〇スしている姿が写っていたのである。

彼はそれを見て盛大に噴き出した。

まさか乳繰り合っている姿が載っているとは思っていなかったからというのもあるが、
そこに自分の名前が書かれていることが一番の理由だった。

「恋人の名前が『ハムレット』って……もしかしてこの身体は、あのオフィーリアなのか!」
「でもあまりにも人相……というか体つきが違いすぎるし、もしかして別の作者が描いたヤツなのか?」

それらを受けて彼は、この身体の持ち主が自分の恋人である『オフィーリア』ではないかと考えた。
正確には"シェイクスピア"でも"みなもと太郎"でもない、別の人が描いた『ハムレット』でのオフィーリアではないかと考えたのだ。

そうしてしばらく頭を抱えていたハムレットだったが、少し考えた後立ち直り始めた。

「……まあなんにせよ、私のやることに変わりはないし、一刻も早く戻って復讐を果たさなければな……」
「それにこの身体なら叔父も私だと気づかずに近づくかもしれないし、ある意味では渡哲也に船かもしれん」

どうやら本来の目的を果たすことを優先するために、気持ちを切り替えることにしたらしい。

こうして彼は行動に移すことにした。一刻も早くデンマークに戻り、父の無念を果たすために……。

(まあ、実際のところはそうしないと父の亡霊が何するかわからなくて怖いからなぁ……)

内心、父が何をするかわからないという恐怖を抱えながら……。

【ハムレット@みなもと太郎の世界名作劇場】
[身体]:惑乱する哀女@Alice Re:Code
[状態]:健康、プロフィールの内容に対する動揺(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:父を毒殺したクローディアスに復讐をするために、まずは生還する。
1:何としても戻らないと、父が祟ってきそうで怖いんだよなぁ……。
2:この身体、オフィーリアなのか!……向こうの私、相当良い思いしてるなぁ……。
[備考]
参戦時期は、国外逃亡を図ろうとしたことでブチギレた父の亡霊に説教された後。
また、参戦時期の関係上オフィーリアが死んだことを知りません。
身体の持ち主のことを、『別の作者が描いたオフィーリア』だと認識しています。


210 : ◆L9WpoKNfy2 :2021/04/10(土) 23:10:10 X6TNkUs.0
投下終了です。

では続けて、もう一つの作品を投下します。


211 : プルンプルン物語 ◆L9WpoKNfy2 :2021/04/10(土) 23:10:47 X6TNkUs.0
ここは会場内にあるレストラン、そこにこの女性はいた。

胸の谷間や肩を露出した、ウェイトレス風の衣装をまとったアルビノの女性だった。

身体の持ち主については後述するので先に中身の方を説明すると、
今この女性の中に入っている者の名前は"ところ天の助"という男である。

身体の95%がところてんで、残りがゼリーで構成されたナマモノであり、賞味期限が30年前から切れているゴミである。

そんな彼は今、テーブル席に座りながら支給品やプロフィールなどについて確認をしているところだった。

「さて、まずはこの身体のプロフィールについて確認するか。えっと……なになに……?」

『自らが行った悪事を隠す為、全ての者を欺いてきた給仕。
 人を陥れ、愉悦に浸るその冷徹さは、加速をやめない。』

『あの人もあの人も、みーんな私のいうことを信じて動いてくれるの。
 これが楽しくってやめられないわぁ。うふふ』

そこには、胸やその谷間を強調するポーズをとりながら、口に手を当てて意地悪そうな笑顔をした女性の写真と、
彼女の悪事やその言動などについて記されていたのだった。

「こいつ……悪い女だなぁ……、ってなんでプロフィールに袋とじが付いているんだ?」

そうやって一通りプロフィールについて読み進めていると、最後のページに謎の袋とじが付いていることが確認できた。

「……"18歳未満は見ないでください"……?なんだか気になるし、念のため確認しておくか」

そう言って彼は、ちょうど支給品の中にあった包丁を器用に使って袋とじを開けた。するとそこには……

『貴方は平気ですの!?妻が他の男に陵辱されても!』
『いいね、興奮する。たっぷりと可愛がってもらいな!』
『んく……痛い……抜いて…抜いてください……!』
『痛がっているのも嘘かもしれないぞ。ガンガン突き上げてやれ!』
『こ、こんな凶悪なものっ……ダメですわ!やぁあぁあ、壊れるっ!壊れるぅうぅうぅ――ッ!』

この身体の持ち主がレストランの中で、自分の夫の目の前で客と思われる男性に強〇されている写真がセリフ付きで載っていた。

それを見たとき、彼は名指しで殺害予告を食らったときのように飲んでいるものをこぼしだした。

「どういう状況なのコレ!?企画モノのAVか何かなの!?」

そして自分の身体がビチョ濡れになっていることを気にも留めずに、盛大にツッコミを入れるのであった……。

「……まあ、そんなことはいいか……ここで重要なことはそこじゃないし」

しかし突如として彼女……もとい彼は落ち着いて、別のことに意識を向け始めた。

彼がここで重要視していたこと、それは……

「ここで一番重要なこと、それは……ところてん促進運動じゃあぁぁ――!!」

彼が元いた世界でも行っていた、ところてんを全世界の主食にする活動だった。

こうして彼は包丁をリュックしまった後、全力で走りだした。ところてんを主食にするべく、他の参加者を探すために。

そして、さっきこぼした飲み物のせいで胸のあたりから雫をたらし続けながら、彼は駆け抜けるのだった……。

【ところ天の助@ボボボーボ・ボーボボ】
[身体]:機軸の幕僚@Alice Re:Code
[状態]:健康、胸のあたりがビチャビチャ
[装備]:出刃包丁@現実
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:元の身体に戻りたいが、それはそれとしてところてん促進活動を進める。
1:肉を食うより寿司を食え!寿司を食うよりところてんを食せ!
2:コイツのプロフィール……随分とマニアックなシチュエーションだなぁ……。
3:ひとまず、ボーボボたちに会いたい。
[備考]
参戦時期は少なくともボーボボ一行に加わった後。
身体の関係上、プルプル真拳がほぼ使えません。
この身体の持ち主のことを、『そういう企画モノの女優』だと認識しています。


212 : ◆L9WpoKNfy2 :2021/04/10(土) 23:11:33 X6TNkUs.0
投下終了です

『プロフィールそのものに大きな反応をする展開、あまりないな』と思ったので、
この二作品を作成いたしました。

それでは、ありがとうございました。


213 : ◆5IjCIYVjCc :2021/04/11(日) 00:32:59 34VxAFxU0
3つほど投下します。


214 : その考え!人格が悪魔に支配されている! ◆5IjCIYVjCc :2021/04/11(日) 00:33:56 34VxAFxU0
あるところにエッチな女の子がいました。
その女の子は山中を水着姿で歩くような子でした。
しかし、彼女はエッチなことが好きな男の子の姿に変えられてしまいました。

ただし…


「エッチはエッチでもHellの方だがなぁぁぁーっ!」


『ヴヴン!!』

胸のスターターを引っ張ったことでエンジンが吹く音が鳴る。

ただの少年にしか見えなかった体から、チェンソーの刃が両腕、そして頭から生えてくる。

頭部の変化は大きく、人とかけ離れた異形の怪物のような姿となった。

「チェンソーを出せる体になれたことはありがてぇぇぇーっ!」

「だが首輪を勝手につけたことは許さねぇぇぇーっ!」

「参加者も主催者も全員三枚おろしにしてやるぜぇぇぇぇぇーっ!」

少女の姿でなくなった以上、以前のように不意打ちで攻撃を仕掛けることはできないかもしれない。

ならば、開き直って最初から殺しにかかればいいだろう。

今の彼女はまさに、チェンソーの悪魔と呼ぶにふさわしい、と言えるかもしれない。


【絵美理@エッチな夏休み(高橋邦子)】
[身体]:デンジ@チェンソーマン
[状態]:健康、チェンソーの悪魔に変身中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:皆殺しだぁぁぁぁぁーっ!
[備考]
・死亡後から参戦です。
・心臓のポチタの意識は封印されており、体の使用者に干渉することはできません。


215 : ◆5IjCIYVjCc :2021/04/11(日) 00:34:39 34VxAFxU0
投下終了です。

次の作品を投下します。


216 : 2匹で1隻 ◆5IjCIYVjCc :2021/04/11(日) 00:35:35 34VxAFxU0
「「ウキキ、ウキャキャ」」

ある場所にオランウータンが2匹いました。
その2匹は瓜二つな容姿をしていました。

オランウータンが2匹いる理由、それは片方がスタンド使いの本体で、もう片方は彼が出すスタンドそのものだからでした。

2匹が瓜二つな理由、それはオランウータンの体を動かしている人物?が、別の世界の彼自身だからでした。

彼の正体は「力」の暗示を持つスタンド使いで、DIOの部下の一人でした。


基本となる「ジョジョの奇妙な冒険」の世界において、「力」の暗示を持つスタンド使いはフォーエバーという名のオランウータンでした。
そのスタンド能力は、小さな船を巨大な貨物船に変化させて操るというものでした。

しかし、何らかの理由で発生した「うろ覚え」な平行世界において、フォーエバーに該当するスタンド使いは貨物船でした。
そしてこちらの方のスタンド能力は自分の上でオランウータンの姿をしたスタンドを操る、というものと思われます。

あいまいな言い方になるのは、貨物船がスタンド使いだということは周りが勝手に言ったことであり、本人(本船?)がそうだと認めたわけではないからです。
けれども、この場においては貨物船がスタンド使いであり、スタンドの像はオランウータンの方であるとされました。

そんな貨物船ですが、彼だってDIOの部下の1人(1隻?)です。
きっと、DIOのためになる行動をとることになるでしょう。

「「ウホホ、ウヘヘ」」

………本当にそうするつもりがあるのか、ちょっと怪しいかもしれない。

【貨物船@うろ覚えで振り返る承太郎の奇妙な冒険】
[身体]:フォーエバー@ジョジョの奇妙な冒険
[状態]:健康、スタンドを発動中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:DIOのためになるように行動?
[備考]


217 : ◆5IjCIYVjCc :2021/04/11(日) 00:36:20 34VxAFxU0
投下終了です。

3つ目の作品を投下します。


218 : 殺し屋の英傑 ◆5IjCIYVjCc :2021/04/11(日) 00:37:35 34VxAFxU0
「はっ!!ほっ!!たっ!!」

草原の上に青い服を着た金髪の青年がいた。
彼は空中に向かって拳を突き出したり、蹴りを放ってみたりと、拳法の動きをしているようだった。

「ぬう…やはり体を上手く動かせんか」

そう青年の体で呟いた男の名は桃白白、世界一の殺し屋と称される男である。
そして彼が使っている体の元の持ち主である青年の名はリンク、ハイラルという国の英傑である。

リンクは騎士の家系の生まれで彼自身も凄まじい剣の腕を持つ。
しかし、その体は桃白白の本来のものとは違い、素手で戦うための鍛え方はされていない。
桃白白が習得している武術、鶴仙流の戦い方に適したものではないのだ。

(この桃白白を殺し合いの場に連れてくるのはまだいい。私ならば優勝は間違いないだろうからな)

(首輪を勝手に着けたことも、どんな願いでも叶えられるという報酬が本物なら不問にしてやってもいい)

(だが、私の体をどこの青二才とも知れぬ奴のものにするとは…この催しを開いた誰かさんは私の強みを分かってないようだな)

桃白白は自分の力に絶対の自信を持っている。
しかし今の体は本来の実力を十全に発揮できないものとなっている。
殺し合いという実質数十人の人間の殺害依頼も、この状態では元の体の時よりも達成までに時間がかかってしまうだろう。

(それに…私も暇じゃないのだがな)

元々、桃白白はこの殺し合いに招かれるよりも前に、殺しの依頼を受けていた。
その依頼とは、レッドリボン軍による孫悟空という少年の殺害とドラゴンボールというものの強奪であった。
それ自体は既に達成され、後は破けた服が新たに仕立てられるのを待ち、奪い損ねたドラゴンボールを回収すれば終わることであった。
だが今はこの殺し合いのためにその依頼を達成できない状況にある。
元の依頼のためにもできればすぐにでもこんなところを去りたかった。

「しかし私は世界一の殺し屋桃白白、こんな状態だろうと標的はあっという間に殺してみせよう」

桃白白はデイパックの中から一本のナイフを取り出す。
素手で殺すことを主とするのは難しくなったが、剣を使うことができないわけではない。
剣術が得意だというこの青年の体であろうと、戦うことはそうは難しくなっていないだろう。
幸い武器も支給されており、殺すための手段はまだいくらでも選べる。
桃白白には、自分が全ての参加者を殺し尽くして優勝するという未来が見えていた。

(そして全てが終わった暁には、私をこんなふさげた催しに招いた奴等も、殺してやろう)

優勝し、体が戻り、報酬が得られたのならばもはや主催者に用はない。
自分の体を勝手に変えたこと、元の依頼を邪魔したことへの落とし前を付けさせるだけだ。

【桃白白@ドラゴンボール】
[身体]:リンク@ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド
[状態]:健康
[装備]:月光のナイフ@ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:優勝狙い。終わったら主催者も殺す。
1:まずは最初の標的を探す。
[備考]
・レッドリボン軍編で聖地カリンで孫悟空を殺したと思い、仕立て屋で服が出来上がるのを待っている間の時期から参戦です。

【月光のナイフ@ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド】
ゲルド族の繊細な彫刻が施された剣。
美しい曲線を持つ刃の切れ味は大変鋭い。
かつては祭事にも使われたと言われている。


219 : ◆5IjCIYVjCc :2021/04/11(日) 00:43:27 34VxAFxU0
投下終了です。


220 : ◆5IjCIYVjCc :2021/04/11(日) 00:44:05 34VxAFxU0
皆さんの登場候補話の投下に感謝しています。
予告していた通り、コンペ募集は本日が最終日となります。
候補話の投下はまだまだお待ちしております。
それでは、募集最終日もよろしくお願いします。


221 : ◆EPyDv9DKJs :2021/04/11(日) 13:41:37 kUpXaReQ0
投下します


222 : ゴーストアンドゴースト ◆EPyDv9DKJs :2021/04/11(日) 13:43:04 kUpXaReQ0
「これじゃ、やってることゴーストタイプのままじゃねえか!!」

 橋の下の草陰にて一人ごちる、青を基調とした学生服の青年。
 中身は青年ではなく一匹のポケモン……と言うのとも少々違う。
 この男、本来の名前は不明なので此処では個体名である『ゲンガー』と呼称する。
 ゲンガーは嘗てパートナーのポケモンを見捨てたことによって呪われてしまい、
 ポケモンであるゲンガーへと変えさせられた、元々は人間と言う存在。
 つまり彼は人間からポケモンになって、また人間に戻ったという状況。
 勿論身体は別だ。異能の力を持った鶴見川レンタロウと言う人物で、
 彼は幽体離脱の特殊能力を持っているのだが、それはゴーストタイプのようなもの。
 ゲンガーの頃から壁は通過できたし、道具も壁の中に持ち込めた(腹は減りやすかったが)。
 人間に戻ったという実感が余りにも沸かない、個人的には嬉しくない能力。

「いやでも便利っちゃ便利か? イジワルズとしては……」

 殴り返されないのは一つの強みとも思える。
 目の前に姿を見せずともいいと言うことは、
 自分がやっていたことの目的にはいいかもしれない。
 彼はゲンガーになってからポケモンたちが暮らす世界で、
 救助隊『イジワルズ』と言うものを結成していた。
 世界征服の為資金稼ぎとして救助隊をしていたが、
 名前の通り他者への妨害と言ったいくつもの悪行もある。
 殺し合いと言うレベルに発展したことはないものの、
 あるポケモンを広場から追いやったときは実質それに等しいものだ。
 人に害をなすことに対する抵抗感については余りない。

「……ッケ! 意地悪はやりたいようにやるから楽しいんだよ!」

 しかし、問答無用で人の身体を弄る相手。
 完全にやってることが呪いのそれと同じ。
 そんな奴の言うことを聞く義理はないし、
 嘗てのパートナーであるサーナイトを助けてからセンチな気分のまま。
 普段よりもそういう行為に対する忌避感が強い彼には、
 別段乗りたい気分でもなかった。

「と言うより、まず慣れねえとな。」

 橋を支える柱に手をかけながらなんとか立ち上がる。
 ゲンガーも人型とは言え全体的にずんぐりむっくり。
 久しぶりの人の身体はポケモンになった時よりも勝手が悪い。
 (と言うより本人がお世辞にも強くないとは言えゲンガーの素早さは、
  単純な数値だけで言えば新幹線を越すギャロップよりも早く、
  普通に考えればかなり身体の差ができてしまうのは当然である。)
 今の状態では満足に走ることもできず、このままだと参加者に出会うだけで詰む。

「おい、少しは静かにしろ。そんなだと敵に見つかって先制されるぞ。」

 背後から彼の頭を軽く叩かれ、心臓が飛び出しそうになる。
 想像以上に早い遭遇に、逆に悲鳴すら出てこない程に驚く。
 相手はそれを声に出さないようにしているのかと勘違いしたのか、
 『そうだ、そんな感じでいけ』と褒められる結果になったりもしたが。
 背後にいたのは片手には柄杓を持った、白い水兵服を着こなす黒髪の少女。
 見た目だけで言えばレンタロウの身体よりも少し幼いが、言葉遣いは男前だ。

「おお……人だ。」

 人と対面するのはいつ以来だろうか。
 どれだけゲンガーの姿で過ごしたか既に忘れたし、
 人だったころの姿なんてあんまり覚えてない気がする。
 だから出会い頭の一言は、意味の分からない一言が出てしまう。

「いや何を言ってるんだお前は。
 第一俺の身体は人じゃ……いや中身も人じゃないな。」

 何当たり前のことをと思っていたが、
 彼女も元は人でなければ、それ以前は生命ですらなかったようなもの。
 返事がはっきりとしない状態に陥る。

「なんか、お互い複雑みてーだな。」

「まあ、なんだ。適当に話し合いでもしねーか?
 こういう場所だと遠距離からの可能性もあるしな。」

「……なんか遠距離攻撃ばかり気にしてねーか?」

「索敵からの先制攻撃は普通に厄介だろ。」

「近づく前に石投げられたらたまったもんじゃあねえのは覚えがあるぜ。」

 一先ずはその場を離れて、
 ゲンガーは彼女と共に適当な民家に邪魔をすることにする。
 ……彼がまだ人の身体に慣れず難儀してたお陰で時間は食ったが、
 なんとかこうしてテーブルを挟んで向かい合う状況にまで持ち込む。

「悪い。ぽけもん……ってなんだ?」

「いやポケモンはポケモンだろーが。ポケットモンスター。」

「さっぱり分からん。」

「オレからしたらかんむすの方がさっぱりだぞ。」

 適当に席につきながら話し合ってみるが、
 互いの言っていることの話がかみ合わない。
 彼女、木曾の言う深海棲艦とか艦娘と言った概念など初めて聞くし、
 逆にゲンガーの言うポケモンとかの概念も彼女には初めて聞くものだ。


223 : ゴーストアンドゴースト ◆EPyDv9DKJs :2021/04/11(日) 13:43:26 kUpXaReQ0

「ま、お互い不思議な存在ってことでいこうか。」

 ざっくりとした結論で木曾は片づけてしまう。
 と言うより、艦娘の存在自体があやふやなものだ。
 戦艦の日向みたいに艦娘の在り方や敵の戦う理由を考えたりはしない。
 あるのは自分を指揮する提督に最高の勝利を与えてやること、それだけになる。

「だな。付喪神だっけか? そんな感じのポケモンもいるし近い奴ってことにするぜ。」

 ゲンガーも同じだ。
 そもそも人間が呪いでポケモンになる、
 十分非科学的なことを経験してきたわけだ。
 自分がポケモンの全てを分かってるわけではないように、
 きっと艦娘も知らない何処かの存在なのだろうと割り切る。
 ついでに言えば長いことポケモンになって人のいる場所ではどうなったか、
 その辺はさっぱり分からないのだから。

「んじゃオレは行くとすっかな。」

 話し合いも一先ず終わったことで、ゲンガーは先に席を立つ。
 流石にある程度歩いたおかげで、支え無しでも十分に歩ける状態だ。
 走ることについてはまだ出来そうにはないが、戦術は幽体離脱。
 本体の能力を気にしなくてもいいのは一つの強みだ。

「おいおい、一人で行くのかよ。」

「ん、一緒に来るのか?」

「一応艦娘だ。人類の為になる方を選択するだけさ。
 と言っても、今は艦娘どころか人類の敵たる舟幽霊だがな。」

 今の身体は村紗水蜜と言う、数々の船を沈めた幽霊の身体。
 艦娘としての装備と言ったものは一切ないとは言え、
 人を殺すのに特化した水難事故を引き起こす程度の能力。
 その権能があれば、十分な戦いは期待できるはずだ。 
 もっとも、艦船の名を持つ艦娘がその力を使うとは皮肉なものだが。

「生きづれえもんに生まれちまったな。」

「生きづらいと思ったことはないさ。あいつを気に入ってるからな。」

 提督に最高の勝利を与える。
 出会ったときに彼女はそう告げた。
 だから別に今の生き方に不満はない。

「ケケッ! なら、お前をオレの救助隊『イジワルズ』特別ゲストとして迎え入れてやるぜ!」

 救助隊バッジはないが彼も救助隊だ。
 誰かを助けるということには心得がある。
 ……善良か、と言われると少々語弊があるが、
 少なくとも乗らないと言う点においては十分善よりだろう。

「……いや、その名前やめないか?」

 当然、至極まっとうな突っ込みを入れられたが。

【ゲンガー@ポケットモンスター赤の救助隊/青の救助隊】
[身体]:鶴見川レンタロウ@無能なナナ
[状態]:人の身体による不慣れ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜3
[思考・状況]基本方針:イジワルズ特別サービス、主催者に意地悪してやる。
1:木曾と共にイジワルズとして活動する。
[備考]
※参戦時期はサーナイト救出後です。
 一応DX版でも可(殆ど差異はないけど)。
※久しぶりの人の身体なので他の人以上に身体が動かせません。
 代わりに幽体離脱の状態はかなり慣れた動きができます(戦闘能力に直結するかは別)。
 幽体離脱で離れられる射程は大きくても1エリア以内まで。

【木曾@艦隊これくしょん】
[身体]:村紗水蜜@東方project
[状態]:健康
[装備]:柄杓@東方project
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]基本方針:乗るつもりはないし、こいつ(ゲンガー)に付き合ってやるか。
1:艦娘がこの身体はまずいだろ。と言うかちょっと前(改装前)の俺と似てるなおい。
2:いやイジワルズの名前は流石に考え直せ。
[備考]
※参戦時期? は改二改装みです。

【柄杓@東方project】
村紗が持ってる柄杓。別段柄杓自体に特別な能力はないが、
舟幽霊である村紗は弾幕の際にこれを用いることもある。
(バケツを使うことも判明してるので柄杓が必須というわけでもない)


224 : ◆EPyDv9DKJs :2021/04/11(日) 13:44:10 kUpXaReQ0
投下終了です


225 : ◆NIKUcB1AGw :2021/04/11(日) 15:19:01 5po5mm7M0
投下します


226 : 笑う悪鬼 ◆NIKUcB1AGw :2021/04/11(日) 15:20:01 5po5mm7M0
「いやー、まさか俺がこんな姿になるなんてねえ。
 面白いことするじゃない」

暗い森の中で、ウサギのような姿の生き物が独りごちる。
その生物の中に入っている人格は、童磨。
十二鬼月の「上弦の弐」を務める、高い実力を持った鬼だ。

「まさかこんな愛らしい姿の動物が、強力な攻撃を放ってくるとは思わないよねえ。
 不意打ちし放題じゃないか。
 むやみやたらに殺すのは、俺の趣味じゃないけど……。
 ずっとこのままってわけにもいかないもんねえ。
 さっさと終わらせないと」

ひとしきりしゃべった後、童磨は腰を上げ……。

首をはねられた。

「は?」

鬼ならぬ今の体では、再生も叶わない。
自分に何が起きたのか理解できぬまま、童磨は命を落とした。


【童磨@鬼滅の刃(身体:擬態型@なんかちいさくてかわいいやつ) 死亡】


「この感触、いいねえ……」

童磨を斬った本人は、狂気じみた台詞を吐くと刀についた血を舐める。
彼の名は、鵜堂刃衛。人を斬る快楽に取り憑かれ、魔道に堕ちた剣客である。

「まさか死んだ後も、人斬りをやらせてもらえるとは思わなかったよ……。
 しかも、あの岡田以蔵の体を借りられるとは!
 おまけに超常の力まで身につけた状態とは、ずいぶんと気前がいい雇い主じゃないか!」

曲がりなりにも最高峰の鬼である童磨が、なぜ斬られるまで刃衛に気づけなかったのか。
それは刃衛が、アサシンのサーヴァントと化した岡田以蔵の体に宿る能力「気配遮断」を使用したからである。

「まあ、雑魚を狩るには便利だが……。
 強い相手とやるときには、こいつは必要ないな」

刃衛は単なる快楽殺人者ではなく、強い相手と戦いたいという剣客としての欲望も持ち合わせている。
その欲望を満たしてくれそうな相手を、不意打ちで殺してしまったのでは面白くない。

「いろいろ試してみたいこともあるし……。
 次に良さそうな相手を見つけたら、正面からいくとしよう。
 うふふふふ……」

不気味な笑い声を残し、刃衛は闇の中へ消えていった。


【鵜堂刃衛@るろうに剣心】
[身体]:岡田以蔵@Fateシリーズ
[状態]:健康
[装備]:虹@クロノ・トリガー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜5
[思考・状況]基本方針:殺し合いを楽しむ
1:以蔵の体で、いろいろ試してみたい
[備考]
・参戦時期は死亡後


【虹@クロノ・トリガー】
「太陽石」と「虹色のかけら」という、二つの秘宝の力で作られた日本刀。
SFC版では主人公・クロノの最強武器である。
基本攻撃力も十分に高いが、さらに「クリティカル発生率70%」というとんでもない効果が付属している。


227 : ◆NIKUcB1AGw :2021/04/11(日) 15:21:10 5po5mm7M0
投下終了です


228 : ◆8eumUP9W6s :2021/04/11(日) 20:59:22 zgXqa6Ug0
投下します。


229 : ◆8eumUP9W6s :2021/04/11(日) 21:00:58 zgXqa6Ug0
「…困りましたわね、まさかこのような……マジヤバな事態に巻き込まれてしまうとは…ようやく、ミロードの居場所がわかりましたと言うのに…」

会場の一角にある砂浜付近で、黒髪で癖っ毛であり、頬に絆創膏を付けた中性的な少女は指先を顎にあてながら思案をする。

(この現象は主催者が意図的に引き起こした物…と仮定すると、恐らく主催者は何らかの能力を行使して引き起こしている…んでしょか?
…どうにせよ、私はミロードの留守を任されている身。あの世界から引き離されたとはいえ…このような催しには乗れませんわ)

この身体の元の持ち主の名は管野直枝。
扶桑海軍のエースウィッチにして、第502統合戦闘航空団ことブレイブウィッチーズに所属している少女である。
そして今、管野の身体を動かしている精神の持ち主の名はリーゼ。
彼女は元は現実世界にて、人気MMORPGである「エルダー・テイル」のプレイヤーで、現実ではお金持ちな女子高生で、またゲーム内ではアキバの五大戦闘系ギルドの一つであるD.D.Dの幹部の一人にして教導部隊の隊長を務めていた。

だが2018年5月に、ゲーム内にて12番目の拡張パックである「ノウアスフィアの開墾」が適用されたその日彼女は、他のエルダー・テイルにログインしていたプレイヤー達共々ゲームと酷似した世界にアバターの姿のまま「冒険者」として転移させられてしまった。
転移後リーゼは、教導部隊隊長として活動しつつ、アキバの街に現れた殺人鬼を討伐する為に策を練りメンバーを募集しまた訓練を行う事でこれを見事成功させたり、D.D.Dのギルドマスターであるクラスティが武器のフレーバーの顕在化現象によって行方不明になってからは、四苦八苦しながら彼の代わりにギルドを切り回したり、その後勃発した「呼び声の砦」の攻略戦では自身の未熟さを実感しつつも同時に、自分にはまだ見えていないことがたくさんあることへの憧れと飛翔感を抱いたりと、様々な経験を重ねていた。
そして攻略戦後…通信装置が中国サーバーと偶然繋がった際、彼女はクラスティが中国サーバーに飛ばされていた事を知る。

明かされた状況が状況故に、その場では混乱し思わず気を遠くしてしまっていたのだが…その後にこの殺し合いに巻き込まれた結果、皮肉にも冷静さを取り戻す事が出来たのである。

(…不思議と声には、どこか親近感のような物を感じますが…やはり別人の身体、まずはこの身体での行動に慣れる必要がありますわね。
冒険者の身体でない以上、恐らくは死亡しても蘇生はされないでしょう。だからこの場は…慎重に動くべきですね。
……それに、出来れば着替えが欲しいところですわ…寒くはないとはいえ、このような格好…恥ずかしくって堪りませんわよ!)

そう思いながら彼女は、使い慣れた杖の女王の誇り(プライド・オブ・クイーン)か、最悪でも着替えか何かがある事を願いつつバッグの中身を見る事とした。

【リーゼ@ログ・ホライズン】
[身体]:管野直枝@ブレイブウィッチーズ
[状態]:健康、恥じらい
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:慎重に行動したいところですわ
1:まずはバッグの中身を確認したいところですわね。
2:できれば……早く着替えたいです。
3:この身体に慣れる必要がありますわね。
4:殺し合いには乗るわけには行きませんわ。
5:もしミロード(クラスティ)まで巻き込まれていたら…。
[備考]
※原作10巻である「ノウアスフィアの開墾」及びアニメの第2シリーズ25話「開拓者」にて、クラスティが中国サーバーに居ることを知った後からの参戦です。
※ユニット装着時の飛行は一定時間のみ可能です。


230 : ◆8eumUP9W6s :2021/04/11(日) 21:01:30 zgXqa6Ug0
投下終了します。
タイトルは「妖術師(ソーサラー)in魔女(ウィッチ)」です。


231 : ◆8eumUP9W6s :2021/04/11(日) 22:18:36 zgXqa6Ug0
投下します。


232 : ◆8eumUP9W6s :2021/04/11(日) 22:19:22 zgXqa6Ug0
「うーん…どうしよ、これだと…とてもじゃないけどストライカーが履けないや…」

青年は途方に暮れていた。
青年の肉体に宿った魂の名はエーリカ・ハルトマン。カールスラントのエースウィッチの一人であり、第501統合戦闘航空団。通称ストライクウィッチーズに所属するウィッチである。

「早くトゥルーデ達の所には戻りたい…けど、殺し合いには乗りたくないなあ」

ここに来る前、ハルトマンはネウロイにより撃墜されてしまい、ユニットが破損。救助を待つ身となっていた。
そんな中彼女はこの殺し合いに招かれ、気が付くとこの青年の身体に意識が入っていたのである。

(殺し合いに乗れば…トゥルーデやみんなのところに戻れる…かもしれないけど、そう簡単にいくかなあ?
仮に優勝できても、わたしが戻れる先があのネウロイに落とされたところからだったら…まったく意味がないもん。
…それなら、この首輪をなんとかして、脱出できる方法も探したほうが良さそう!
トゥルーデ達が巻き込まれてるかも…っていうのがちょっと怖いけど…その時はその時で、動こっと)

こうして方針を定めたハルトマンは、バッグの中身を確認する。
まず最初に彼女が確認したのは身体の持ち主のプロフィールだ。

「…へぇ〜、この身体の持ち主さん、操真晴人って名前なんだ。
…晴人(ハルト)…いい名前だねえ」

青年の名前を知ったハルトマンはそのまま彼の経歴に目を通す…も、一通り目を通した後、彼女は悲しげな表情を浮かべていた。

(…なんて言うかさ、よく頑張ったなあ…って。…「最後の希望」ってやつであるために…この人は、どれだけの無理をしてきたんだろ…。

……うん、気を取り直して続きを見てこう)

思う所が有ったのか、暫し沈黙するも…彼女はプロフィールの続きを見る事とした。

【エーリカ・ハルトマン@ストライクウィッチーズシリーズ】
[身体]:操真晴人@仮面ライダーウィザード
[状態]:健康、複雑な気持ち
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない
1:気を取り直して続きを見て、そこからバッグの中身を見よう。
2:元の世界に戻れても、ネウロイに落とされたあの場所に逆戻りする羽目になる気がする…。それなら首輪を外す方法探しながら、脱出手段を見つけちゃえばいいよね!
3:トゥルーデ達まで巻き込まれてないかが心配だなあ…もし巻き込まれてたら合流しなきゃ。
[備考]
※参戦時期は「RtB」ことROAD to BERLINの6話「復讐の猟犬」にてネウロイに撃墜された後からです。
※作中にて舞台になっている年代が1945年な為、それ以降に出来た物についての知識は原則ありません。
※晴人のアンダーワールドに巣食うウィザードラゴンの意識は封じられてはいませんが、ハルトマンとコミュニケーションを行う事は基本的に出来ません。


233 : ◆8eumUP9W6s :2021/04/11(日) 22:20:31 zgXqa6Ug0
投下終了します。
タイトルは「天使で悪魔で最後の希望」です。


234 : ◆5IjCIYVjCc :2021/04/12(月) 00:01:27 7U.LeP.c0
現時点をもって、コンペ募集を終了します。
皆様方、候補話の投下をありがとうございました。
これより作品の選出、名簿の調整を行います。
その後に初回放送話と共に本編予約を解禁します。
名簿は約一週間以内に確定する予定です。
それまで、またしばらくお待ちください。


235 : pvnMtkB20 :2021/04/12(月) 00:36:30 IicUsrZs0
・・・締め切りなのは把握していますが一応投下します




不幸・・・!!圧倒的不幸・・・!!

今、ある男はカジノ経営所の前に来ている

その男はグラサンをしていて貧相な茶色の羽織を着ているいかにも貧乏そうな男だった。
そう、身体の説明書にもそう書かれていた。

とても不幸な貧乏人で日々を段ボールで過ごしている。まるでダメな男、略してマダオと呼ばれていると、

・・・読んでいる男はとても共感していた。涙まで流している。理由はシンプルである。

(この人も・・・俺と同じ苦しみを味わってきたんだなぁ・・・!!)

そう、今中にある魂は伊藤開司、マダオと同じく生粋のお人好しなダメ男である。
彼もまた碌に働けないギャンブル中毒者である。

(・・・いや、同情して泣いている場合じゃねぇ、このままだと俺とこの長谷川さんも二人そろってお陀仏だ・・・!!俺が生き延びなくちゃな!!)

カイジは改めて誰も殺さずに生き残るのを誓う。主催者へこの殺し合いにより命を弄ぼうとしている事に対して怒りを抱きながら

(にしても開始地点がギャンブル場ってそれぞれの人に関係するところへワープさせているのか?・・・ん?)

足音が聞こえた、その足音に反応して振り返って見ると・・・

巨乳・・・!!圧倒的巨乳・・・!!

すらりとくびれたウエスト、オレンジ色の長いウェーブの髪、美しい顔、そして何より隠さずに堂々とビキニで包みながらも揺れている乳・・・!!

カイジは慌てて己の息子を鎮める事に全力を出していると・・・声をかけられた

「・・・お前、誰アルか?」



「やっぱりマダオの中にはマダオが入る運命だったってことアルな、プッ、笑えてくるアル」

「・・・神楽だっけ?俺凄く傷つくからそういうのやめてくれ・・・!!」
話しかけてきた女の名前は神楽、身体は麦わら一味のナミという女だったらしい

「いや、良かったアルなお前は、私なんかひ弱なボディでその癖にこんなにデカすぎる胸を背負わされてしまったアル。ペッタンは嫌だったけど流石にこれはデカすぎアル、ツッキーの気持ちが分かる気がするアル」
確かにデカい、ここまで大きいのは生では一度も見たことがない

「オマケにこんな棍棒を持たされてしまったネ、凄い脆そうな棍棒を」

武器として支給されていたのは魔法の天候棒、本来使いこなす人によっては魔法のように魔法を操れるが・・・使用者は天気についてはド素人の神楽である為碌に使えそうにない

「アンタはこれからどうするつもりだ?」
「・・・こんな殺し合い、許す訳にはいかないアル、絶対止めてみせるつもりネ

神楽は強く断言する。夜兎の血による殺人衝動にも抗った少女だ、この殺し合いにも当然抗うつもりだ、だが・・・

「そのための戦いにこの体が持ちこたえられるのか凄く不安アル・・・」
「・・・そうか、だったらこれやるよ」
「え?」

神楽に投げ渡された武器、それはモナドと言われる大きな剣だった

「何でもその剣は自分の身体能力を自在に変えれるらしい、今のお前には最も必要なもんだろ」
「・・・本当に良いアルか?」
「ああ、お前は信頼できる気がする、お前と話していると俺の仲間を思い出すしな」

カイジの今の仲間の一人にマリオという人間がいた。彼と今話している女の口癖はとても似ていた。それもまた親近感を抱かしていた。
「・・・お人好しなところまでそっくりアルな」
「言われ慣れてるよ、お人好しの言葉はな」

神楽は微笑みながら受け取りながらも悪い気持ちはしなかった。

「じゃあそろそろ」

ドスン

ふと気が付くととてつもない足音が聞こえた

その足音はだんだんと近づいてくる。そして後ろを振り向いてその足音の正体を見た。その時に出た感想は・・・

巨大・・・!!圧倒的巨大・・・!!

見た二人は唖然とせざる終えなかった。長髪の巨人が今こっちを向いて走ってきているのだ。
たまらず二人は猛ダッシュで逃げだすがそれを後ろから呼び止めてくる男がいた。

「その子を止めて!!早く!!」

「「え?」」

筋肉・・・!!圧倒的筋肉・・・!!

10tと書かれたハンマーを持ちながら呼びかけてきた男、いやセーラー服を着ているから女なのか・・・?を見た感想で即座に浮かんだものだった

「自己紹介遅れたわね!!私の名前はニコ・ロビン、身体は大神さくら、私も一瞬信じられなかったけど女なのよこの身体!!そして彼は広瀬康一、身体はエレンイェーガー!!身体が傷つくと巨人化する能力を持っているのよ!!情報交換中に検証をしてみたら制御できなくなってしまったのよ!!お願い、止めるのに協力して!!」

「「えええええええええ!?」」

果たして三人は本当に巨人を止める事が出来るのか?


236 : pvnMtkB20 :2021/04/12(月) 00:37:10 IicUsrZs0
【伊東開司@賭博堕天録カイジ】
[身体]:長谷川泰三@銀魂
[状態]:健康
[装備]:何かの銃、種類は後続に任せます
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2、サイコロ六つ
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らず生き残る
1:無理だろっ・・・!!今の装備では・・・!!
2:他に戻す方法載ってないのかよ!?
3:というか巨人!?ありえないだろそんな存在普通!?

時系列は24億手に入れてキャンピングカー手に入れてそこで寝ている時です


【神楽@銀魂】
[身体]:ナミ@ONEPIECE
[状態]:健康
[装備]:魔法の天候棒、モナド(スマブラバージョン)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:殺し合いなんてぶっ壊してみせるネ
1:元の体だったら楽だったのかもしれないけど・・・!!いや、やるしかないアルな!!
2:とりあえず止めたら何か食べたいアル、お腹すいたネ
3:銀ちゃん、新八、姉御、来ていないでいて欲しいアル・・・

時系列は将軍暗殺編直前です

【広瀬康一@ジョジョの奇妙な冒険、ダイヤモンドは砕けない】
[身体]:エレンイェーガー@進撃の巨人
[状態]:健康
[装備]:今は持っていない
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3←全部ロビンが回収しています
[思考・状況]基本方針:こんな殺し合い認めない←現在暴走中
1:うがああああああああああああああああ!!

時系列は第4部完結後です。故に霊波紋エコーズはAct1、2、3、全て自由に切り替え出来ます。

【ニコ・ロビン@ONEPIECE】
[身体]:大神さくら@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生
[状態]:健康
[装備]:10tと書かれた巨大なハリボテハンマー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いなんて許さない!!
1:早く康一君を止めなくては・・・!!
2:ナミの身体・・・誰が入ってるのかしら?一人で行動していない人だからいい人だと思うけど・・・
3:このハリボテ脅すつもりで持ってたけどやっぱり邪魔ね
4:こんなに動きやすいのはオハラにいたころぐらいかしら?体が軽い

時系列はちょうど二年後に麦わら一味に合流した後です。

服装は全員普段着です。悪魔の実は肉体依存なのでロビンは能力が使えませんが康一の霊波紋は精神依存なので使えます


237 : pvnMtkB20 :2021/04/12(月) 00:38:01 IicUsrZs0
本当に焦ったのですけど間に合いませんでした。とても悔しいです。せめて候補作品にでものせてください・・・


238 : pvnMtkB20 :2021/04/12(月) 00:38:36 IicUsrZs0
タイトルは「圧倒的・・・!!」です


239 : ◆5IjCIYVjCc :2021/04/12(月) 00:51:52 7U.LeP.c0
投下ありがとうございます。
せっかく書いてくださったので「圧倒的・・・!!」も候補作とします。
それから、名前にはトリップを使うことをオススメします。
トリップは「#〇〇〇」と入力することで出てきます。
〇〇〇には適当な文字列が入ります。
文字列は他の人に知られていないものを使うことをオススメします。
詳しくは掲示板の使い方の書き込み編を見てください。


240 : ◆P1sRRS5sNs :2021/04/12(月) 02:57:53 IicUsrZs0
分かりました。今の投稿はテストです。


241 : ◆5IjCIYVjCc :2021/04/13(火) 23:22:27 Adax1Gdw0
先に候補話の感想を投下します。

>しょうもねえやつの激情
名前にコーンが入っていたからなのかトウモロコシになってしまえばそりゃあ驚くでしょう。
こんな姿で神だと名乗っても信じてもらえなさそうです。

>その炎、消しがたく
煉獄さんが煉獄(船)を破壊した人に宿るという事態に。
戦い方の違う体だったせいで動きづらくても真っ直ぐに戦うことを選ぶのはさすが煉獄さんって感じがします。

>禁じられし厄災が強襲する
体が変わっても知り合い3人同士で合流できたのは大きい、と思いきや他2人が疲れたから単独行動をとるとは。
3人がかりでも逃げることに成功できたのはさすがサーヴァントの身体という感じがします。

>そろそろ行こうか冥府魔道
名前の通り、魔王として行動しようとするこの男は覚悟が決まっている感じがしますね。
体も魔王ですし他の人にとって強敵になりそうです。

>闇の炎に抱かれて消えろ!(やったぁ!スッキリですね♪)
既にある台詞を翻訳するというタイトルはこの組み合わせじゃないとできなさそうですね。
別人の身体でも、自分が女体化した気分になれる組み合わせもそうそうないでしょう。

>へんしん
とんでもないモンスターが誕生してしまった。
へんしんに拘りを持つあまりマーダー化してしまったメタモン、ライダーとワームの力を使いこなせるかどうかで今後が変わるでしょう。

>Be The Double Effect
2人だったのに1人の身体になってしまった大崎姉妹、そんな彼女に与えられたのはかつて呉島兄弟が使っていたアイテム。
ジンバーメロンセットが与えられたのはその辺の繋がりもありそうです。
そして顔だけでなく体も佐藤太郎になってしまった桐生戦兎、本当のビルドには変身できなくともネオディケイドの力が与えられたのは幸いでしょう。

>星狩りとアイドル
エボルト!!(戦兎の目に字幕が重なった画像)
最後に名前を呼ぶところに性格の悪さが感じられて良いですね。

>てめえの火はお呼びじゃねえよ
人間でいたいのに望まぬ形で異能を手に入れてしまった放火のおじさん。
せっかくの力を使わずにいるのはもったいない気もしますが、一度使ってしまえば自分が変わってしまったことを証明しているようで不愉快な気分になるという感じも確かにしますね。

>これが女幹部の生きる道
遂に出てきたスーパー戦隊要素のある話。
特撮とアニメの違いはあれど女幹部というものはいつでもどこでもいいものです。

>自分のこととはいえ、それはそれでムカつくこともある
自分の名前を呼びながら喘いでいる女の姿を見たらそれはそれは衝撃的でしょう。
体の元になったのが自分や原作とは別の世界の知り合いの同一人物だと考えられるのはギャグ漫画ならではですね。

>プルンプルン物語
エッチなシーンを袋とじ付録にする発想はなかった。
体の方のキャラはここで初めて知ったのですが、この顔で「殺してやるぞ天の助」の表情をしているところを想像すると笑ってしまいます。

>ゴーストアンドゴースト
元人間で元ポケモンで今は幽霊人間なゲンガーレンタロウ、意地悪と表現しているとは言え対主催でしょうから悪そうな奴同士の組み合わせなのに頼れそうな気もします。
艦娘から船幽霊となった木曾村紗、全く知らない相手の共通点を顔に見出すのは確かに今まで中々いませんでしたね。

>笑う悪鬼
いきなり童摩がやられたのには驚いた。放っておいたら擬態型の特性をとんでもない使い方をしそうでした。
そしてアサシンのサーヴァントの力を活用できるようになった鵜堂、気配遮断は暗殺にフル活用できるということを示してくれました。
強者相手には使わないようですが、それでもサーヴァントである以上十分に脅威でしょう。

>妖術師(ソーサラー)in魔女(ウィッチ)
個人的にそれなりに来ると思っていて来なかったMMORPGキャラの参加者。
格好の何に恥ずかしがっているのかと思って調べてみたけど、ひょっとして下のこと?

>天使で悪魔で最後の希望
ハルトさんからハルトちゃんに。いや、逆か?
晴人さんのこれまでの経歴を知って複雑な気持ちになれるのは優しい良い子って感じがします。
果たしてハルトマンは最後の希望になれるのでしょうか。

>圧倒的・・・!!
自分が死ねば体の持ち主も死ぬことになる点を心配するカイジは優しいですね。
巨乳に巨人に筋肉、タイトル通り圧倒的が詰まった話で面白いです。


242 : ◆5IjCIYVjCc :2021/04/13(火) 23:22:42 Adax1Gdw0
これにて感想の投下を終了します。
名簿や本編開始についてはもう少しお待ちください。


243 : ◆5IjCIYVjCc :2021/04/14(水) 22:19:40 R6WhL76Q0
自作の登場話の一部を修正したことを報告します。

>無能力者のΨ難
(この男が持つ幽体離脱の能力…これを応用すればいくらでも他者の体と精神をシャッフルできる。もしかしたらこの殺し合いにはこの能力が使われているかもしれない)
→(この男が持つ幽体離脱の能力…これを応用すればいくらでも他者の体と精神をシャッフルできるとプロフィールに書いてあった。もしかしたらこの殺し合いにはこの能力が使われているかもしれない)

>2匹で1隻
[備考]
・スタンドの像はフォーエバーのものとそっくりな姿になっています。


244 : ◆5IjCIYVjCc :2021/04/14(水) 22:21:08 R6WhL76Q0
お待たせしました。本編開始の準備が完了しました。
まずは本編ルールについて説明します。

本編開始にあたり、以下のようにルールについての追記事項があります。
これらの事項はまとめwikiの方にも更新されています。

ルール:ttps://w.atwiki.jp/changerowa/pages/16.html

【支給品について】
本編開始と同時に以下の支給品がデイパック内に転送されます。
この後投下する初回放送でもこのことについてお知らせします。
・コンパス:方位を知るためのアイテム。手持ちサイズの小さなコンパス。赤い針が北を指す。
・名簿:参加者の名前が羅列してある紙の名簿。五十音順で記されている。身体についての記載は無い。

【禁止エリアについて】
・禁止エリアに立ち入った場合、首輪は事前に警告音を鳴らす。


【時間表記】
深夜(0〜2)
黎明(2〜4)
早朝(4〜6)
朝 (4〜8)
午前(8〜10)
昼 (10〜12)
午後(12〜14)
夕方(16〜18)
夜 (18〜20)
夜中(20〜22)
真夜中(22〜24)


【本編用状態表】

【状態表テンプレート例】
【現在地/時間(日数、未明・早朝・午前など)】
【名前@出典】
[身体]:名前@出典
[状態]:
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:
1:
2:
3:
[備考]


【予約ルール】
・予約する場合は1週間を期限とします。
・1週間過ぎて何も連絡が無ければ予約は取り消しとなります。
・予約を延長する場合はもう1週間までとします。
・予約が入っていないキャラならば予約なしのゲリラ投下も可能です。


245 : ◆5IjCIYVjCc :2021/04/14(水) 22:21:39 R6WhL76Q0
次に初回放送を投下します。


246 : 初回放送 ◆5IjCIYVjCc :2021/04/14(水) 22:22:17 R6WhL76Q0
島全体に放送の開始を告げるチャイムが響いた。
チャイム音の響きが消えていくのと同時に、今度は男の声が聞こえてきた。

『皆さんこんばんは。いかがお過ごしでしょうか』

『まだ始まって間もないですが、既にやる気に満ち溢れている方もいるようでなりよりです』

『しかし、今回は皆さんに謝罪しなければならないことがあります』

『この殺し合いを行うにあたり不具合があったことが発覚したため、このように放送でお知らせすることになりました』

『皆さんに支給したデイパックなのですが…名簿が入っていなかったことが判明しました』

『既にこちらの方で名簿をデイパック内に転送したため、この放送が終わり次第確認していただければと思います』

『また、他にも一つ、新たな支給品が追加されることになりました』

『その支給品とは、方位を指し示すコンパスのことです』

『この広い島で迷わないようにと、新たに支給することが決定されました』

『これも名簿と同じく、デイパック内に直接転送されることとなります』

『それから最初の説明では伝えませんでしたが、定期的に行われる放送の際には禁止エリアが指定されることがあります』

『禁止エリアとは立ち入ると首輪が爆破されてしまう区域のことを指します』

『そこに立ち入った場合、首輪は警告音を出します。そしてその5分後に爆破されることになります』

『とは言っても、放送後すぐに指定された箇所が禁止エリアになるというわけではありません』

『放送での発表後から2時間程の猶予があります』

『放送時に指定された禁止エリア内にいる方は、その間にそのエリアから出ることになるでしょう』

『こちらはルール用紙にも詳細が書いてあるため、また確認をよろしくお願いします』

『この度はこちらの不手際でご迷惑をおかけし申し訳ありませんでした』

『引き続き、殺し合いの進行をよろしくお願いします』






『―――そういえば、私について教えていませんでしたね』

『私の名前はボンドルド。アビスの探掘家『白笛』です』

『そして今はこのバトル・ロワイアルの運営に携わる者の1人です』


『このような奇妙な催しに参加することになり、まだ不安な気持ちが拭えない方もいるでしょう』

『ですがご安心ください』

『皆さんに与えられた体は心を縛る枷などではありません』

『新しい未来を切り開くための鍵となるものです』

『この戦いを勝ち抜いた者はそれを手に入れることができると私は信じています』

『そして、皆さんの一人一人がその資格を持っているのです』

『それを手に入れるための勇気ある者に是非、私は会いたいものです』

『それでは、改めまして皆さんの健闘を、そしてこのバトル・ロワイアルが良きものとなることを祈っています』

その言葉を最後に、放送の終わりを告げるチャイムが島に鳴り響いた。


【現在判明している主催陣営】

【ボンドルド@メイドインアビス】


247 : 名簿発表 ◆5IjCIYVjCc :2021/04/14(水) 22:26:18 R6WhL76Q0
※()内は身体の元の持ち主の名前です。

6/9【鬼滅の刃】
〇鬼舞辻無惨(ミーティ@メイドインアビス)/●零余子(遠坂凛@Fate/stay night)/〇産屋敷耀哉(鬼舞辻無惨@鬼滅の刃)/●累の母(港湾棲姫@艦隊これくしょん)/〇悲鳴嶼行冥(坂田銀時@銀魂)/〇胡蝶しのぶ(アリーナ@ドラゴンクエストIV)/〇我妻善逸(ピカチュウ@ポケットモンスターシリーズ)/〇煉獄杏寿郎(相楽左之助@るろうに剣心)/●童磨(擬態型@なんかちいさくてかわいいやつ)
5/5【ジョジョの奇妙な冒険】
〇空条承太郎(燃堂力@斉木楠雄のΨ難)/〇DIO(ジョナサン・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険)/〇吉良吉影(二宮飛鳥@アイドルマスターシンデレラガールズ)/〇ヴァニラ・アイス(立神あおい@キラキラ☆プリキュアアラモード)/〇広瀬康一(エレン・イェーガー@進撃の巨人)
3/3【銀魂】
〇坂田銀時(両津勘吉@こちら葛飾区亀有公園前派出所)/〇志村新八(フィリップ@仮面ライダーW)/〇神楽(ナミ@ONEPIECE)
2/2【仮面ライダービルド】
〇桐生戦兎(佐藤太郎@仮面ライダービルド)/〇エボルト(桑山千雪@アイドルマスター シャイニーカラーズ)
2/2【クレヨンしんちゃん】
〇野原しんのすけ(孫悟空@ドラゴンボールZ)/〇シロ(犬飼ミチル@無能なナナ)
2/2【ゴールデンカムイ】
〇杉本佐一(藤原妹紅@東方project)/〇姉畑支遁(クリムヴェール@異種族レビュアーズ)
2/2【斉木楠雄のΨ難】
〇燃堂力(堀裕子@アイドルマスターシンデレラガールズ)/〇鳥束零太(竈門炭治郎@鬼滅の刃)
2/2【呪術廻戦】
〇脹相(ゲルトルート・バルクホルン@ストライクウィッチーズシリーズ)/〇両面宿儺(関織子@若おかみは小学生(映画版))
2/2【ドラゴンボール】
〇ギニュー(ケロロ軍曹@ケロロ軍曹)/〇桃白白(リンク@ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド)
2/2【鋼の錬金術師】
〇アルフォンス・エルリック(千翼@仮面ライダーアマゾンズ)/〇バリー・ザ・チョッパー(トニートニー・チョッパー@ONE PIECE)
2/2【無能なナナ】
〇柊ナナ(斉木楠雄@斉木楠雄のΨ難)/〇犬飼ミチル(東方仗助@ジョジョの奇妙な冒険)
2/2【るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-】
〇志々雄真実(エシディシ@ジョジョの奇妙な冒険)/〇鵜堂刃衛(岡田以蔵@Fateシリーズ)
1/1【Fate/stay night】
〇遠坂凛(野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん)
1/1【ONE PIECE】
〇ニコ・ロビン(大神さくら@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生)
1/1【ToLOVEるダークネス】
結城リト(ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのはA's)
1/1【アイドルマスターシャイニーカラーズ】
〇大崎甜花(大崎甘奈@アイドルマスターシャイニーカラーズ)
1/1【エッチな夏休み(高橋邦子)】
〇絵美理(デンジ@チェンソーマン)
1/1【うろ覚えで振り返る承太郎の奇妙な冒険】
〇貨物船(フォーエバー@ジョジョの奇妙な冒険)
1/1【御城プロジェクト:Re】
〇キャメロット城(アルトリア・ペンドラゴン@Fateシリーズ)
1/1【仮面ライダーSPIRITS】
〇大首領JUDO(門矢士@仮面ライダーディケイド)
1/1【仮面ライダーエグゼイド】
〇檀黎斗(天津垓@仮面ライダーゼロワン)
1/1【仮面ライダークウガ】
〇ン・ダグバ・ゼバ(櫻木真乃@アイドルマスターシャイニーカラーズ)
1/1【艦隊これくしょん】
〇木曾(村紗水蜜@東方project)
1/1【クロノ・トリガー】
〇魔王(ピサロ@ドラゴンクエストIV)
1/1【ストライクウィッチーズシリーズ】
〇エーリカ・ハルトマン(操真晴人@仮面ライダーウィザード)
1/1【テイルズオブデスティニー】
〇リオン・マグナス(ランスロット@グランブルーファンタジー)
1/1【テイルズオブディスティニー2】
〇ジューダス(神崎蘭子@アイドルマスター シンデレラガールズ)
1/1【突撃!!アーマージャック】
〇アーマージャック(ウルトラマンオーブ・サンダーブレスター@ウルトラマンオーブ)
1/1【とっとこハム太郎3 ラブラブ大冒険でちゅ】
〇デビハムくん(天使の悪魔@チェンソーマン)
1/1【賭博堕天録カイジ】
〇伊藤開司(長谷川泰三@銀魂)
1/1【ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち】
〇ホイミン(ソリュシャン・イプシロン@オーバーロード)
1/1【ペルソナ5】
〇雨宮蓮(左翔太郎@仮面ライダーW)
1/1【変身】
〇グレーテ・ザムザ(スカラベキング@ドラゴンクエストシリーズ)
1/1【ポケットモンスター赤の救助隊/青の救助隊】
〇ゲンガー(鶴見川レンタロウ@無能なナナ)
1/1【ポケットモンスターシリーズ】
〇メタモン(神代剣@仮面ライダーカブト)
1/1【魔法少女まどか☆マギカ外伝 マギアレコード】
〇環いろは(高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS)
1/1【魔法陣グルグル】
〇アドバーグ・エルドル(キタキタおやじ)(ヘレン@アイドルマスターシンデレラガールズ)

57/60


248 : ◆5IjCIYVjCc :2021/04/14(水) 22:29:05 R6WhL76Q0
これにて初回放送と名簿発表の投下を終了します。
予約解禁はこの後23:00からとします。

皆さまがたくさんの候補話を投下してくれたおかげでここまで来ることができました。
本当にありがとうございました。
今後ともチェンジ・ロワイアルをよろしくお願いします。


249 : ◆s5tC4j7VZY :2021/04/14(水) 22:53:46 LGQ.OJrc0
本格的なロワ開幕おめでとうございます!
チェンジロワのこれからの盛り上がりを心よりお祈り申し上げます。


250 : ◆5IjCIYVjCc :2021/04/14(水) 23:27:31 R6WhL76Q0
柊ナナ、燃堂力で予約します。


251 : ◆EPyDv9DKJs :2021/04/15(木) 03:40:11 fvgBYf4g0
DIO、杉元で予約します


252 : ◆ytUSxp038U :2021/04/15(木) 15:21:45 6FemIQ5g0
エボルトを予約します


253 : ◆.EKyuDaHEo :2021/04/15(木) 17:30:31 /wDFsxSg0
野原しんのすけ、煉獄杏寿郎を予約します


254 : ◆7PJBZrstcc :2021/04/15(木) 19:39:00 UAhvT/Hg0
遠坂凛、キャメロット、ン・ダグバ・ゼバで予約します


255 : ◆EPyDv9DKJs :2021/04/16(金) 01:47:53 5ffOQCJw0
投下します


256 : ◆EPyDv9DKJs :2021/04/16(金) 01:49:03 5ffOQCJw0
(胡散臭い話と思ったら、本当に胡散臭い奴が出てきたぞ。)

 放送が終わるとと杉元は空を見上げる。
 放送では耳障りのいい言葉を並べてたが、誰のせいでこうなったのか。
 資格だどうだと言うが最後の一言から、自分がそれに会いたいだけだろう。
 鶴見同様、私欲で行動して他人を巻き込む同類なのは想像に難くなかった。
 彼ら程でないにせよ、杉元も私欲で動いてるようなもので余り強くも言えないが。

(後は後ろにどれだけいるか、だな。)

 あくまでボンドルドは『この殺し合いに携わる者の一人】と言った。
 一人でこれを運営しているわけではないことが伺える。
 彼だけを何とかしようとしても後ろがどれだけいるのか、
 そこが分かるまでは無暗に戦うのは得策ではないだろう。
 不死身と呼ばれた時と違って、本当に不老不死と言えどもだ。
 寧ろ、不老不死だからと言って調子に乗らない方がいい。
 不老不死の人物の身体を用意してくるということは、
 渡しても問題ない存在がいるということなのだから。
 勿論、それは同じ土俵にいる参加者にも言えることだ。
 油断すれば死ぬ。金塊の時と何ら変わりはしない。

(とりあえずアシリパさんや白石はいないよな。)

 舗装された道を見つけつつ、その近くで名簿を取り出す。
 自分がいるとなれば身内がいる可能性はゼロではない。
 僅かばかりに不安になって開いた名簿に連れ添った仲間はいなかった。
 ……アシリパは。

「なんで先生いるの!?」

 姉畑支遁。別に先生と言う役職ではないが、
 余りのぶっ飛んだ行動の末についそう呼んでしまう入れ墨囚人の一人。
 立ったまま(色んな意味で)死んだはずで、自分もそれを目にしている。
 それが何故こんなところに、と言うより知り合いは彼だけしかいなかった。
 自分だって不老不死だ。見せしめにされた参加者のように復活した、
 と考えたって別におかしくはない。

「いやそれでもなんでだよ!?」

 アシリパや白石でも、尾形や鶴見でも、土方や牛山ですらなく。
 何故知り合いが姉畑だけなのか色んな意味で理解したくない。
 一応身を隠してると言うのに思わず突っ込んでしまう。

(いや、ちょっと待てよ?)

 確かにアシリパたちはいないのは良い事だが、
 冷静になって考えれば名簿には致命的な問題がある。
 『誰が、どの身体でいるのか』は記されてるわけではない。
 自分が杉元と表記されたように、精神側のみの情報だ。
 ───と言うことは、アシリパの身体になってる人の可能性。
 もしかしたら、自分の身体に誰かの精神が入ってしまった可能性。

(おい! これ、かなりまずい状況だぞ!?)

 精神が参加してた場合は一人を探す作業になる。
 この広さで六十人は十分きついが、身体だけだと格段に跳ね上がる。。
 残り五十九人をそ調べなければならないというとんでも作業だ。
 しかも放送内容からして、既に何人かはもうおっぱじめてる状態。
 もし乗ってる奴が自分達の身体だったらと思うと、目も当てられないことだ。
 勿論二人の身体を持った人物はこの舞台にはいないが、知る術は今の彼にはない。
 城とか船と言う名前について気にも留めず名簿をすぐにしまい、舗装された道へと飛び出す。
 自分のように殺し合いに懐疑的な参加者を探し、捜索範囲を広げていく。
 まずは参加者を目視しやすい見晴らしのいい場所、近くの海岸へと向かう。
 見晴らしのいい場所は狙撃の危険はあって寧ろ離れる方ではあるが、
 始まってそれほど時間がたってない今ならまだいる可能性はある。
 それに場数を踏んでない人だっているかもしれない。

「ってはやっ!?」

 走ってみれば異常なほどに身体が軽い。
 軍人である杉元も十分鍛えてるつもりだが、
 それにしたって彼女の身体は同じぐらいに動ける。
 身体が慣れてない都合本来ならより速く動けるものの、
 急いでる状況でこの身軽さは非常にありがたいものだ。

「君! 少しいいかな!」

 コンクリートの道路を駆けていると、
 森の入り口の方から一人の参加者が駆け寄る。

(うお、でけぇ……牛山と同じぐらいか?)

 杉元も当時の時代でならそれなりに身長は高い部類だが、
 相手の身長は二メートルはあるかと疑うレベルの巨漢だ。
 身体が十代半ばで成長が止まった少女だから、
 と言うところはあるのかもしれないが。

「空条承太郎、ヴァニラ・アイスの名前に覚えはないかな?」

 好青年のような何処か爽やかで、
 殺し合いの場では余り似合わない立ち居振る舞い。
 名乗らずに人を訪ねてることから自分のように、
 身内が参加していて焦ってるのかもしれないように思える。


257 : ◆EPyDv9DKJs :2021/04/16(金) 01:50:09 5ffOQCJw0
「いや、知らねえが……アンタの知り合い───」

 返事を終える前に頭上から迫る拳。
 焦ってると思いつつも警戒は怠ってなかったので、
 すんでのところでバックステップによって回避。
 コンクリートの道路に軽くクレーターが出来上がる。

「貴様、見えているのか。」

 先ほどの立ち居振る舞いも、
 好青年のような爽やかさは既に消え失せた。
 漂う殺気は入れ墨囚人に負けず劣らずのどす黒いもの。
 邪悪の化身、DIOがそこにいるだけ。

「何その背後霊!?」

 真っ先に突っ込みたかったのはスタンドだ。
 自分が炎や不老不死のように力があるとは思うが、
 最初に出会った相手も想像の斜め上の物に驚かされる。
 目に見える非科学的なものを次々と目にしていくと、
 世界はどれだけ知らないことだらけかと知識の浅さを感じてしまう。

「スタンド使いでもない貴様に見える。
 ボンドルドめ、どうやったかは知らんが余計なことを……」

 スタンド使い以外でもスタンドが見える様子。
 物質と同一になれるタイプでもないザ・ワールドだと、
 本来見ることなどあり得ないが、これだけの所業ができた運営だ。
 スタンドをある程度弄ることも不可能ではないのかもしれない。
 もっとも、見えたところでどうにかなるかは別だが。

「フン、まあいい。我が最大の宿敵は既に手中にある。
 このDIOが負ける道理など、最初から存在しないということだ。」

「つまり敵ってことでいいんだなてめえは!!」

 ザ・ワールドが先行し拳を振るう。
 無駄のない精密なストレートを済んでの所で躱す。
 だが向こうの慣れた動きと慣れてない杉元では、
 完全な回避はできずに時折頬をかすめる。

(なんだあいつ、動きが良すぎる!)

 当然だ。元々DIOはジョナサンの肉体を乗っ取っていた。
 身体の不慣れのハンディは遥かに少なく、と言うよりスタンドは精神の具現。
 肉体に依存してないその能力は、当然手足のように使うことが可能。
 もっとも首から上もジョナサンになってて厳密には違うので、
 多少ステータスは劣化しているが時期に慣れるだろう。

「確か、こうだっけか!」

 再び道路に拳を叩き込んだ瞬間、
 今度は杉元が炎を纏わせながらスタンドへと叩き込むも回避。
 だがその後も地面に叩きつけると同時に、更に火力を追加する。
 地面の隙間の中で数本の火柱が噴出。クレーターのコンクリートが勢いで弾け飛ぶ。
 僅かばかりだが、妹紅のスペルカード【虚人「ウー」】に少し似た攻撃だ。
 はじけ飛んだコンクリートの破片は熱を纏い弾丸のようにDIOの方へ向かう。

「ムッ!」

 ザ・ワールドが後退しながら拳のラッシュでコンクリートを払うが、
 DIOは顔をしかめて、少し急ぐ風に後退して距離を取っていく。

(なんだ? 炎が苦手なのか?)

 妙に警戒していた動きで、
 杉元も疑問を持たざるを得ない。

(ジョナサンの肉体を手に入れたからか。忌々しい百年まえの記憶が出てくる。)

 炎と言えば彼にとっては全てが苦い経験だ。
 一度目は慈愛の女神像に突き刺さったまま焼かれ、
 二度目は燃えたグローブに気化冷凍法を破られて、
 三度目は船の爆発で危うく終わりを迎えるところだった。
 百年後は波紋ですらちと手を焼いたと言ってしまう彼だが、
 改めてジョナサンの肉体となって、そのことを思い出してしまう。
 炎に対してろくな記憶がない。

「……スタンド以外でもそういった、個人個人の能力があるというわけか。」


258 : ◆EPyDv9DKJs :2021/04/16(金) 01:51:03 5ffOQCJw0
 石仮面に波紋。海の底に眠っていた間究極の生物が存在していたという噂も聞く。
 アヴドゥルのマジシャンズ・レッドのような余りの高温ではなさそうだが、
 今後は参加者の能力、或いは肉体の能力を理解する必要があると改めて理解する。

(とりあえず地上戦は不利だ。一旦飛ぶしかねえ!!)

 拳技に長けた岩息だってあんな威力の拳は出せない。
 相手の間合いに入って戦うこと自体が得策ではないし、
 妹紅の飛翔能力があるならば一方的な攻撃が可能なはずだ。
 試しに念じながら跳躍すれば、本当に空を飛ぶ。

(マジか! 蓬莱人すっげえ!)

 幻想郷の住人の多くの標準みたいなものだが、
 彼にとってはこれが蓬莱人の権能の一つと思っている。

「ふん、無駄無駄ぁ!!」

 だがそんな悠長な暇を与えてはくれない。
 地面にクレーターを作るザ・ワールドの蹴り。
 それと共にDIOは跳躍して空中で距離を詰めてくる。

(嘘だろおい! 五メートル以上は飛んでるだろうがどんな跳躍力だ!?)

「我がスタンドから逃れることは出来ん!
 フンッ! 無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ───ッ!」

 空中でザ・ワールドの無数の蹴り。
 残像も見えるほどの素早い一撃を前に、
 一気に間合いを詰められて対応が遅れた杉元はもろに受てしまう。
 数本の骨を折られながら、コンクリートの地面に叩きつけられてさらに転がる。

(クソッ、滅茶苦茶いてぇ!!)

 普通なら痛みのショックで気を失いかねないものだが、
 痛みに慣れた身体故か、それとも精神が屈強な杉元だからか。
 或いは両方の理由によってまだ十分に意識を保っている。
 問題はまだ動きに追いつかないその身体と言うべきか。

「反撃する暇も与えんッ! 死ねいッ!」

 再び顔を破壊しにかかるザ・ワールドの拳。
 高速で迫るそれに一瞬だが杉元は死を予感する。
 いや、厳密には死なない。まだ二回チャンスはあるのだから。
 だからこの場で殺されたとしても、最悪問題はないとも言えた。

(おい、何考えてんだ。)

 杉元は疑問を持った。
 死んでもチャンスがある。確かにそうだ。
 だからこそ───何故その前提で考えているのか。
 普通は命は一つだ。確かに死んでも恐らく次はあるのだろう。
 だが、この身体のことを知ってどこか甘えていたのではないか。

(不死身の杉元が負けて死を受け入れるだと?)

 もっと意地汚く生きあがく。
 撃たれようと、刺されようと、絶対相手をぶっ殺す。
 杉元佐一が何故不死身の杉元と呼ばれるようになったのか。
 異常なタフネスももちろんあるだろう。殺せる気がしない。
 何より当たり前の理由が一つある。シンプルかつ単純なそれが。





 ───殺される前に相手を殺すという、至極まっとうな理由。




「殺してみろッ!! 俺は───」

 それがあって生還し、初めてそう呼ばれることになるのだ。
 だから死から逃げ続けろ。不老不死や次があるとかそんなことは関係ない。
 不死身の杉元が、次があろうと訪れる死を受け入れてはならないと。
 生きあがく杉元に反応するかのように、炎の爆発が彼を中心に起こる。

「何!?」


259 : ◆EPyDv9DKJs :2021/04/16(金) 01:51:32 5ffOQCJw0
 爆風を防ぐことを専念し、
 スタンドに眼前で腕をクロスさせて防ぐ。
 爆風が収まれば杉元が上空へと舞うが、
 先ほどまでとは決定的に違うものがそこにある。

 炎が背中から羽の形を成す、紅蓮の翼。
 【不死「火の鳥-鳳翼天翔-」】と酷似したものだ。

「俺は、不死身の杉元だッ!!!」

 本来なら可愛らしい彼女の表情は、
 人を殺す眼差しをしながら火の鳥の弾幕を飛ばす。
 酷似したものだけあって火の鳥こそ正面に向けてるが、
 周囲に羽のような炎が無数に飛び散る、荒々しさが垣間見える一撃。
 パワーには優れてるが、殺し合いだけあって弾幕としての魅せはない。

「こいつ、これほどまでの力を!」

 スター・プラチナはザ・ワールドと同じタイプのスタンド。
 故に承太郎は止まった時の世界へと至れることができた。
 ならば、ザ・ワールドがスター・プラチナと同じタイプなのも事実。
 何が言いたいのかと言うと、弱点である『攻撃時触れる必要がある』もまた共通。
 普段ならば吸血鬼特有の再生能力に物を言わせてしまえばどうと言うことはない炎。
 だが今はジョナサン・ジョースターの肉体。そういったものには滅法弱くなっている。
 ましてやスタンドが見える状態だ。フィードバックがないから安心などと言えるはずもなく、

「チィッ! 無駄無駄無駄無駄無駄ァ───ッ!!」

 風圧のラッシュで固まった炎を散らす。
 今できる最善策であり、その効果はある程度は見込めた。
 火の鳥の弾幕は大分形を崩し、文字通りの火力の低下はある。
 だがあくまで低下。無効にまでは至れず火の塊を受けざるを得ない。

「ヌウウウウッ!!」

 再び両腕を交差させスタンドで防御する。
 生身で受けるよりはましだが皮膚が焼けていく痛み。
 流石のDIOも表情を歪ませずにはいられない。
 衝撃によりスタンドと共に大きく後退させられてしまう。

 攻撃を受けきって空を見上げるも、相手の姿は見えない。
 まだ夜間、あれほど目立つ姿を見失うことはそうないはず。

「逃げたか。」

 まだまだ戦えるようにも見えたが、
 火事場のバカ力と言った類のものだったらしい。
 素直に逃走したようだが、追跡する気は別になかった。
 単純に追跡が困難だから、と言うのは確かにある。
 一方であれほどの負傷。他の参加者にも狙われば終わりだ。
 支給品の確保にならなかったのは勿体ないが、別に大した問題ではない。
 ザ・ワールドの力はこの場でも十分に発揮できると分かっただけでも十分。
 承太郎と邂逅すればあの時とは逆に時を止める能力が発現するはず。
 時期に最盛期たる五秒まで戻せるだろう。

(早々に離れておく方がいいな。)

 散らした炎が辺りの草木に燃え移って火災が起きている。
 遠からずこの森は大炎上する。その前に逃げるのが先決だ。

「不死身のスギモト、と言ったか。」

 どういう意味で不死身なのだろうか。
 自分と同じ石仮面を被った存在なのか。それともただの鼓舞か。
 僅かながらの興味を持ちながら、スタンドの蹴りで跳躍しながらその場を離れる。
 風に晒され焼けた皮膚が染み、自分が受けた傷を物語っていく。
 人間は成長し続ける。ジョナサン・ジョースターはそういった。
 だが人の身体には限界がある。この傷、軽傷と呼ぶには言い難いものだ。
 もっとも、ジョナサンであれば火傷の痛みも乗り越えて立ち向かうのだろうが。

(しかし、誰かいるのか。)

 首に手を当て、そこにあるものを確かめる。
 ジョースターの血統の証である星形のあざ。
 普通ならばそれだけだが、ジョースターの血統と言うのは、
 不思議な電波のようなものを発信していることがある。
 同じあざを持った者、つまり何処かにジョースターの肉体を持った人物がいるようだ。

「承太郎かジョセフか、このDIOも知らぬ存在か……」

 なんにせよ警戒しておくことに越したことはない。
 ジョースター家はしぶとい。道下手に転がる犬の糞のような邪魔さだ。
 予期せぬ形でスタンド使いになっているかもしれないのだから。
 まさか、犬みたいな少女がその肉体を得てるなんて事実について、
 露とも知らず人間に戻った不死身の男はフィールドを駆け抜ける。


260 : ◆EPyDv9DKJs :2021/04/16(金) 01:52:23 5ffOQCJw0
【G-3とG-2の境界 道路/深夜】
【DIO@ジョジョの奇妙な冒険】
[身体]:ジョナサン・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険
[状態]:両腕火傷、疲労(小)、火に対する忌避感、スタンドON
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜3(確認済)
[思考・状況]基本方針:勝利して支配する
1:森から離れる。北西を目指す
2:百年ぶりの日光浴にほんのちょっぴりだけ興味。
3:元の身体はともかく、石仮面で人間はやめておきたい。
4:スギモトは放っておいてもいいだろうが、見つければとどめを刺す。
5:アイスがいるではないか……探す。
6:承太郎と会えば時を止められるだろうが、今向かうべきではない。
7:ジョースターの肉体にを持つ参加者に警戒。

[備考]
※参戦時期は承太郎との戦いでハイになる前。
※ザ・ワールドは出せますが時間停止は出来ません。
 ただし、スタンドの影響でジョナサンの『ザ・パッション』が使える か も。
※肉体、及び服装はディオ戦の時のジョナサンです。
※スタンドは他人にも可視可能で、スタンド以外の干渉も受けます。
※ジョナサンの肉体なので波紋は使えますが、肝心の呼吸法を理解していません。
 が、身体が覚えてるのでもしかしたら簡単なものぐらいならできるかもしれません。
※肉体の波長は近くなければ何処かにいる程度にしか認識できません。




 DIOが逃げる方角とは少しずれた近くの池。
 そこから這い上がるように出てくる姿がある。

「俺は、不死身の杉元だ……」

 杉元だ。
 空から攻撃を放ったのは良いものの、慣れない飛行と炎の威力の反動で、
 あらぬ方向へと飛んで行って、最終的にこの池へと落ちていた。
 やっと息ができるようになって空を仰ぎながら大きく息を吸う。

(クソッ、ホイホイと骨折りやがって。
 再生してるみてえだが、完全治癒までは絶対にかかるだろ……)

 さっきのように炎を出して、軽く暖を取りつつ服を乾かす。
 まだリザレクションはしてないと言えども、この傷は余り笑えない。
 この手の痛みについては争奪戦でも頬に剣は刺さるわ足を撃たれるわ、
 脳みそも削れるわではっきり言ってどっこいどっこいなので気にはしない。

(承太郎にヴァニラとか言ったな。そいつらも警戒しておかねーと……)

 探していたのは宿敵か味方か。
 どちらかは分からないがあれの見知った間柄だ。
 双方ともに味方であることを願いたいものの、
 当人と出会ったときはある程度警戒することにする。
 不死身に至った男は、一人池の傍で佇んでいた。

【F-3 池/深夜】
【杉元佐一@ゴールデンカムイ】
[身体]:藤原妹紅@東方project
[状態]:ダメージ(大)、骨折、霊力消費(中)、再生中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜3(確認済)
[思考・状況]基本方針:なんにしろ主催者をシメて帰りたい。身体は……持ち主に悪いが最悪諦める。
1:俺やアシリパさんの身体ないよな? ないと言ってくれ。
2:なんで先生いるの!? と言うかなんで先生だけ選んだ!?
3:不死身だとしても死ぬ前提の動きはしない(なお無茶はする模様)。
4:DIOの仲間の可能性がある空条承太郎、ヴァニラ・アイスに警戒。
5:って言うかこの入れ物炎の中でも無事って材質どうなってんだ。
[備考]
※参戦時期は流氷で尾形が撃たれてから病院へ連れて行く間です。
※二回までは死亡から復活できますが、三回目の死亡で復活は出来ません。
※パゼストバイフェニックス、および再生せず魂のみ維持することは制限で使用不可です。
 死亡後長くとも五分で強制的に復活されますが、復活の場所は一エリア程度までは移動可能。
※飛翔は短時間なら可能です
※鳳翼天翔、ウーに類似した攻撃を覚えました


※G-2 G-3で森が燃え広がり始めてます。


261 : ◆EPyDv9DKJs :2021/04/16(金) 01:52:54 5ffOQCJw0
以上で『反転世界』投下終了です


262 : ◆OmtW54r7Tc :2021/04/16(金) 19:51:03 y.bniIeA0
脹相で予約します


263 : ◆8eumUP9W6s :2021/04/16(金) 20:26:59 jT42cv9Y0
エーリカ・ハルトマンで予約します。


264 : ◆OmtW54r7Tc :2021/04/16(金) 21:09:36 y.bniIeA0
投下します


265 : 指と仇 ◆OmtW54r7Tc :2021/04/16(金) 21:11:30 y.bniIeA0
「両面宿儺、だと!?」

放送が終わり、名簿を眺めた脹相は驚愕する。
彼が知る名は一つだけ。
しかしその一つは、とても看過できる名ではなかった。

「この名前が『あの』宿儺だったとして…これはいったい何を意味する?」

両面宿儺。
それは、はるか昔に存在した呪詛師の名であり、呪いの王とも呼ばれた恐ろしい存在である。
宿儺は生前4本の腕を持っていたが、その腕に生えた4つの手にある20本の指は、千年経ってなお特級呪物として現存しており、凄まじい呪力を秘めている。

さて、ここで問題となるのはこの会場に送り込まれた両面宿儺がどういう状態なのかということだ。
宿儺は、元の世界でも他者の身体に精神を宿すということをしている。
そしてその宿主と言うのが、他でもない弟の虎杖悠仁だ。
悠仁は、20本の宿儺の指のうちの1つを飲み込んで以来、宿儺の精神を内に宿すようになった。
もっとも、悠仁の強靭な精神により、宿儺の精神は基本的には抑え込まれているのだが。
こういった事情を踏まえて、脹相は二つの可能性にたどり着いた

1. 虎杖悠仁から他の肉体へと指ごと移動させた
2. 指から精神だけ抜き取り、他の肉体に指なしで移動した

「…どっちにしても同じか」

そういって自嘲するような薄い笑みを浮かべる。
そう、同じことなのだ。
両面宿儺が参加者として連れてこられた。
それはつまり…

「虎杖悠仁…弟は死んだ。いや、殺された!」

虎杖悠仁は両面宿儺の宿主だ。
両面宿儺が参加者として呼ばれていて、その宿主である彼が五体無事か?
こんな殺し合いを企画する人物が、宿儺だけ連れ出して悠仁に手を出さないなんて都合のいいことが、有り得るか?
九分九厘、弟は殺されている。
脹相は、そう結論付けた。

「許さん!許さんぞボンボルド!俺はお前を、地の底までも追いかけて、ぶっ殺す!」


266 : 指と仇 ◆OmtW54r7Tc :2021/04/16(金) 21:12:22 y.bniIeA0
怒りの言葉を天に向けて叫ぶと、脹相は一度フウ、と息を吐く。
ともかく、殺し合いに乗らないという方針に変わりはない。
優勝者にはどんな願いも叶える権利が与えられるということだが、悠仁を殺した奴の手を借りて悠仁を生き返らせるなど、死んでもごめんだ。
しかし、方針に変わりはないとはいっても、考えなければいけないことは増えた。
両面宿儺のことだ。

先ほど考えた可能性のうち、1だとしたら指の数によっては脹相一人の手に負える相手ではない。
なんとか協力者を見つけるべきだろう。
逆に2の場合、呪力の核である指がない分、強さが肉体の人物のスペックに左右される可能性があり、脹相一人でもなんとかなるかもしれない。
ちなみに脹相は、2の可能性が高いと考えている。
それは決して希望的観測というわけではない。
脹相自身、精神が本来の肉体から離されているのだ。
他の参加者も同じ状態だというなら、宿儺も指と言う肉体から切り離されている可能性が高いと踏んでいた。
もっとも、宿儺については魂と肉体の在り方が少々特殊なので、例外処置が施されているという可能性もあるが。

「なんにしても、油断のならない相手ではある。今はできれば遭遇したくない所だ」

なにしろ、こちらも本来の戦闘能力を奪われているのだ。
放送前に支給品を確認するも、ユニットは見つからなかったことだし、身体に慣れてもいない現状では、宿儺が弱体化していたとしてもやられてしまう可能性が高い。
協力者を見つけるだけでなく、脹相自身も今の身体に慣れ、装備を整え、強くならなければならない。
宿儺を、そしてなにより主催者たちを倒すために。

「待っていろ悠仁。お兄ちゃんがお前の仇を討ってやるからな」

新たな決意を胸に、脹相は歩き始めた。


【C-3 山/深夜】

【脹相@呪術廻戦】
[身体]:ゲルトルート・バルクホルン@ストライクウィッチーズシリーズ
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3(ユニットはなし)
[思考・状況]基本方針:どけ!!!俺はお兄ちゃんだぞ!!!主催者許さん!!!ぶっつぶす!!!
1:殺し合いには乗らない。
2:「出来る限り」殺しは控える。
3:ユニットを捜索する。
4:両面宿儺を警戒。今は遭遇したくない
3:お前が関わっているのか?加茂憲倫…!!
4:どう動くにせよ協力者は必要になるだろう。
[備考]
※渋谷事変終了後以降からの参戦です。詳しい時系列は後続の人にお任せします。
※ユニット装着時の飛行は一定時間のみ可能です。
※虎杖悠仁は主催陣営に殺されたと考えています。


267 : ◆OmtW54r7Tc :2021/04/16(金) 21:12:55 y.bniIeA0
投下終了です


268 : ◆ytUSxp038U :2021/04/16(金) 21:44:34 DfGrEA8.0
皆様投下乙です
自分も投下します


269 : 始まりのクエスチョン ◆ytUSxp038U :2021/04/16(金) 21:46:23 DfGrEA8.0
「まさかお前も参加してるとはなぁ、戦兎ォ?」

民家を後にし数分後、人気の全く無い路地裏にて名簿を確認しその名前を見つけた途端、思わず口の端が吊り上がった。
283プロのお姉さん的存在として慕われているアイドルにはミスマッチな、悪意に満ちた笑み。
彼女をスカウトしたプロデューサーが見たら卒倒しそうな表情だが、現在彼女の肉体の持ち主であるエボルトにとって、そんなのもの知った事ではない。
殺し合いには桐生戦兎も参加している。その事実の方が遥かに重要だった。

戦兎は自分の計画に必要な駒の一つ。
普段であれば余計な事に戦兎を巻き込まれたとして頭を痛める所だが、今回に限っては戦兎の参加は運が良いと言える。
何せ戦兎は葛城忍や最上魁星と並ぶ天才的な頭脳の持ち主。
いずれはエボルドライバーの修復にも彼の技術力を利用するつもりでいたくらいだ。
そんな戦兎がここにいるのならば、首輪を解除できる可能性も高い。
問題は相手が素直に自分と協力してくれるかだが、これに関してエボルトはさほど心配はしていない。

「正義のヒーローが、アイドルを傷つける訳にはいかないよなぁ?」

会場のどこかにいる戦兎へ問い掛けながら、自身の細い指先を眺める。
この身体、戦闘には全く向いていないが利用価値は存分にある。
エボルトに与えられた仮の肉体であると同時に、戦兎への人質としても機能するのだ。
戦兎の事だから、中身がエボルトとはいえ一般人の身体を傷つける訳にもいかず、下手に手出しは出来ないだろう。
そこ突いて首輪の解除やその他諸々を“お願い”してやればいいだけ。

(ま、後はお前が俺と再会するまでに生きてるかどうかだが…)

戦兎には正義のヒーロー、仮面ライダービルドとしての力がある。
が、それは戦兎本人の――より正確に言うと葛城巧の――身体での話。
ネビュラガスを注入されていない別人の身体では、流石の戦兎もビルドには変身できない。
運良く万丈や北都の猿渡一海の身体でも与えられたか、ビルドに変身不可能な状態を補える武器でも支給されているか。
何にせよ戦兎を失うのはエボルトとしても避けたいので、自分の身を守れるくらいの方法は入手していると願いたい。
万丈よりは冷静に考えて行動するだろうが、それでも危機に陥っている参加者を見つけたら、勝機が無くとも見捨てられずに飛び込んでいくのだろう。
如何にも正義の味方らしい行動の果てに呆気なく死んでしまっては、エボルトとしても非常に困るのだから。

(となると、まずは戦兎を探すのが先決かね)

おかしな行動をさせない為にも、戦兎を手元に確保しておいた方が良いだろう。
名簿には他に知っている名は記載されていなかった。
貨物船や城が載っているのは少々気になったが、それより戦兎が優先だと頭から追い出す。
地図を取り出し、戦兎ならどこに向かうかを考える。
思考の最中、それにしてもとエボルトの頭には別の事が思い浮かんだ。
葛城巧の記憶を失い、佐藤太郎の顔に変えられ、今度もまたどこぞの別人の身体にされている。
桐生戦兎という人間は何ともロクな目に遭わないものだと、自分がしでかしたのを棚に上げてせせら笑う。


270 : 始まりのクエスチョン ◆ytUSxp038U :2021/04/16(金) 21:47:43 DfGrEA8.0
そうして地図を眺め続け、

「…………待て」

何かに気付いたように笑みを消した。

地図を仕舞うと周りに人がいない事を確認し、エボルトは右腕を掲げた。
少し力を込めると、掌に赤い光が纏わりつく。
殺し合いが始まって直ぐ、民家でも試した自身の能力の一つであるエネルギーの放射。
万全とは言えないが、ブラッド族の能力が使える事はハッキリと分かった。

そう、『何故か』使えるのだ。

「……」

懐に手を突っ込みトランスチームガンを取り出すと、衝撃で胸が揺れる。
それに構わず慣れた動作でボトルを装填し、待機音を待たずにトリガーを引いた。

「蒸血」

――MIST MATCH
――COBRA…C・COBRA…FIRE

黒い煙に包まれたエボルトの身体が一瞬で変化する。
桑山千雪の肉体から、血を被ったような色のボディと煙突のような角が特徴の怪人、ブラッドスタークへの変身が完了した。

三都を跨いでの暗躍時に使う姿となったエボルトは仮面の下で険しい顔を浮かべ、先ほど自身が考えたことを思い出す。
『ネビュラガスを注入されていない別人の身体では、流石の戦兎もビルドには変身できない』
これはつまり、別人の身体に戦兎の精神だけが移された、という状態である。
精神、若しくは魂とも言うべきか。とにかくこの殺し合い最大の特徴は、参加者の精神と肉体はまるっきり別人だということ。

ここでもう一度自身の状態を確認する。
エボルトに与えられた肉体の本来の持ち主の名は桑山千雪。
パンドラボックスを巡る戦いには何の関りも無いアイドルの女性。
だが何故かブラッド族の能力が使え、ブラッドスタークにも変身できる。
確かに石動惣一の肉体に憑依していた時にも、同様の事はできた。
しかし、それはあくまで自身のエネルギーを石動の身体に入り込ませ乗っ取っていたからだ。
トランスチームシステムで変身できたのだって、エボルトのエネルギーがあったから必要なハザードレベルを満たせた。
ブラッド族固有の憑依能力と違い、精神“だけ”が別の肉体に移され元の肉体の細胞が僅かな量すら存在しないのならば、能力の使用もブラッドスタークへの変身も不可能になっていなければおかしいではないか。
仮にもしプロフィールに記載されいないだけで千雪がパンドラボックスのエネルギーを浴びていたり、ファウストが行った人体実験の被験者であったとしても、エボルト自身の能力まで使える説明にはならない。

この疑問への答えは、既に見当が付いている。
最初に民家であれこれ考えていた時に、こう考えたではないか。
『この身体に憑依させられたまま、固定された状態』だと。
方法は不明だが石動の肉体に憑依していた時と同様の状態且つ、千雪の肉体を脱け出すのは不可能にされている。
となると、浮かんでくるのは新たな疑問。
何故エボルトには精神を別の肉体に移すのではなく、こんな方法を取ったのか。

(考えられるのは二つ。殺し合いを動かしてる連中がミスをしたか、それとも何らかの目的があって俺には別の処置をしたのか…?)

前者であれば、主催者の失敗を突き出し抜けるかもしれない。
だが60人もの参加者を集め殺し合いの運営をする連中が、こんなヘマをするだろうか。

次に後者。
何か特別な目的があるのか、若しくはエボルトに何かをさせたくて幾つかの能力やブラッドスタークへの変身を可能な状態にした。
具体的にどんな目的があるのかは全く分からないが。

主催者は単独でなく複数である事は、放送の時の口ぶりからしてほぼ間違いないだろう。
であるなら、果たしてエボルトへの処置は全会一致の案なのか。
若しくは他の連中とは別の思惑があり、独断でエボルトを参加させたのかもしれない。


271 : 始まりのクエスチョン ◆ytUSxp038U :2021/04/16(金) 21:48:59 DfGrEA8.0
(……ダメだな、情報が足りねぇ。単に俺の考えすぎって線も無いとは言い切れないか…)

幾つか答えが浮かぶが、それらは確かな証拠が無いただの推測。
今の段階で得られた情報と言えば、戦兎がいる事と主催者の内の一人の名前が分かった程度。
他はまだまだ謎に包まれ知る由も無い。
それに最初に集められた場所では、『別の人物の体で戦ってもらう』とだけ伝えられた。
ただ単にエボルトの場合は、千雪の身体に強制的に憑依した状態で殺し合う、というだけでそれ以上の深い理由など無いのかもしれない。

とにかく今は戦兎を見つけ首輪を何とかする。
それから他の参加者とも接触して、必要な情報を集めていけばいずれ答えも出るはず。

「一体全体、お前さんは何がしたいんだ?なぁ、ボンドルド」

変身を解くと建物同士の隙間から夜空を見上げ、どこかで自分達を見下ろしているだろう男に問いかける。
当然答えが返って来ることはなかった。


【D-7 路地裏/深夜】

【エボルト@仮面ライダービルド】
[身体]:桑山千雪@アイドルマスター シャイニーカラーズ
[装備]:トランスチームガン@仮面ライダービルド、コブラロストフルボトル@仮面ライダービルド
[状態]:健康
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本方針:主催者の持つ力を奪い、完全復活を果たす
1:首輪を外す為に戦兎を探す
2:有益な情報を持つ参加者と接触する
3:自身の状態に疑問
4:今の所殺し合いに乗る気は無いが、他に手段が無いなら優勝狙いに切り替える
[備考]
※参戦時期は33話以前のどこか。
※他者の顔を変える、エネルギー波の放射などの能力は使えますが、他者への憑依は不可能となっています。
またブラッドスタークに変身できるだけのハザードレベルはありますが、エボルドライバーを使っての変身はできません。
※自身の状態を、精神だけを千雪の身体に移されたのではなく、千雪の身体にブラッド族の能力で憑依させられたまま固定されていると考えています。
また理由については主催者のミスか、何か目的があってのものと推測しています。
エボルトの考えが正しいか否かは後続の書き手にお任せします。


272 : ◆ytUSxp038U :2021/04/16(金) 21:49:38 DfGrEA8.0
投下終了です


273 : ◆7PJBZrstcc :2021/04/16(金) 22:49:49 2KebD6qA0
投下します


274 : オラと剣士とアーマードライダー ◆7PJBZrstcc :2021/04/16(金) 22:50:37 2KebD6qA0
「とりあえず、士郎にセイバー。それからアーチャーはいないみたいね」

 会場にある山の中腹辺りで、野原しんのすけの体に入っている遠坂凛は名簿を見ながら呟く。

 殺し合いに知り合いがいないことを喜ぶべきか、それとも信頼できそうな相手がいないことを嘆くべきか。
 いや、同盟相手を無条件に信用するのもどうかと思うのでいて欲しいとは言わない。
 だが仮にも己の従者くらいはいないことを嘆いてもいいだろう、などと思考を回す凛。

 そんなことを考えながら彼女はとりあえず山を下り、町を目指すことにした。
 名簿に知人はいないが、気になる名前はある。変な意味ではなく。
 いや、貨物船とかキャメロット城とか、後デビハムくんみたいにおかしな名前で気になっているものもあるが。

 野原しんのすけ。
 今の凛の体の本来の持ち主が、この名簿に載っているのだから。
 彼女としてはやはり、探してあげたい。
 どんな体に入っているか知らないが、中身は五歳児だ。心配にもなる。

「本っ当に心の贅肉ね……」

 見も知らぬ少年を心配している自分を、嘲りながら山を下りていく凛。
 それからしばらくすると、上下に裂かれた少女の人影を見つける。

 殺し合いである以上、死人は出てもおかしくはない。
 のだが、その死体に凛は酷く見覚えがあった。

 彼女が持っている服を着ている。別に特注品ではないのだ、同じ服を着ている女子位いるかもしれない。
 彼女と同じくらいの背格好だ。そこまで特徴的な体格はしていない。
 彼女と同じくツーサイドアップの髪形をしている。同じ髪形の女子などいくらでもいる。
 彼女と同じ黒髪だ。日本人なら一般的だろう。

「え、いや、嘘でしょ……?」

 視界が訴えかけてくるものから必死に目を逸らしながら、凛は死体へと近づく。
 だが現実は非情だ。
 それを理解した時、彼女は思わず叫ぶ。
 そこにいるのは、彼女が毎日鏡で見る自分自身。

「わ、私の体が――――――――!!」

 遠坂凛が、そこで死んでいた。
 いくら遠坂は常に優雅たれ、という家訓があるとはいえ、自分の体が目の前で死んでいれば、叫び声の一つも上げてしまう。
 むしろ、叫びだけで済ませた彼女が凄いと言ってもいいかもしれない。
 しかし、声を上げてしまうというのは普通に考えれば悪手だ。

 ガサリ

 現に、誰かも分からない殺し合いの参加者を呼び寄せてしまったのだから。
 凛が物音に気付き、音のした方を向く。

「大丈夫でしょうか……?」

 するとそこには、金髪碧眼の剣を携えた美少女が、心配そうに凛を覗き込んでいた。
 その少女の体を凛は知っている。だから中身が違うと頭で理解していても、思わず呟いてしまった。

「セイバー……?」


275 : オラと剣士とアーマードライダー ◆7PJBZrstcc :2021/04/16(金) 22:51:09 2KebD6qA0





 騎士王の体を借るキャメロットは水の上を駆けた後、心持ち水際から離れて歩いていた。
 僅かとはいえ全身に傷を負った状態で、さっき戦った男とは違う参加者に不意打ちされることを恐れたのだ。
 何せ水の上には障害物がない。遠距離攻撃するにはもってこいである。
 その為水際を離れたのだ。

 そうしてしばらく歩いていると、森に差し掛かり始めた。
 そのタイミングで放送も流れ、合わせて自身のデイパックを調べようとしたところで、

「―――!!」

 誰かの叫び声が聞こえた。
 誰が、何を叫んだのかは分からない。しかし悲嘆に暮れているのは理解した。
 ならば騎士として望まれて生まれた彼女が、嘆いている誰かを見過ごすわけにはいかない。

 そう思ったキャメロットは声の元に急ぐ。
 そこに居たのは小さな少年。もっとも、見た目が幼くとも中身までそうとは限らないが。
 彼女は少年に話しかけた。

「大丈夫でしょうか……?」

 すると少年は茫然とした様子を一瞬見せた後、小さくキャメロットを見てこう言った。

「セイバー……?」
「……はい?」
「今の無し! 今の無し!!」

 キャメロットが呟きについて問おうとする前に、少年が無理矢理打ち切った。
 そのまま流れで互いに自己紹介。
 ここでキャメロットは目の前の少年の名前が遠坂凛で、本当の体は10歳以上年上なうえ、性別も変わっていることを知る。
 更に体の本当の持ち主である野原しんのすけが、この殺し合いに参加していることも知った。

 そして、キャメロットが扱う体が聖杯戦争という、願望器を賭けた殺し合いに参加していたことも。
 アーサー王伝説でも王は聖杯を求めていたが、探求の旅と殺し合いでは訳が違いすぎる。

「なぜ、そこまでして王は聖杯を?」
「さあ? というか私、セイバーの真名がアーサー王なのを今知ったくらいよ」

 キャメロットの心からの疑問に、凛の対応は少々そっけない。
 彼女としては本当に知らないので、答えようがなかったというのが一つ。
 なお、聖杯戦争とは関係ない場所で、同盟相手のサーヴァントの真名を知ったことに関しては考えないようにしている。
 実際、不可抗力なので仕方ない。生きて帰ったら何らかの施しを士郎にするつもりではあるが。

 もう一つは、キャメロットがもたらした情報に頭が追いつかなかったのだ。

 そもそも凛はキャメロットと違って、すんなりと事情を呑み込めない。
 まず城が擬人化した存在が、異世界からの侵略者と戦っている部分で衝撃だ。
 この時点で第二魔法に抵触する。

 第二魔法とは、凛の生家である遠坂家の悲願。並行世界への運営である。
 いや、完全な異世界である以上、並行世界より上かもしれない。

 さらにそれだけではなく

「サーヴァントの体まで自在に扱えるってどういうことよ……」

 サーヴァント。本来の意味では召使だが、凛の世界では違う意味も持つ。
 それは、魔術世界における最上級の使い魔。
 本来なら万能の願望器である聖杯の補助なくして人間には使役不可能な、あらゆる時代で名をはせた英霊である。
 超人的な肉体と経緯を持っている野原しんのすけとはいえ、サーヴァント相手と殺し合いをすれば勝つ道理はない。
 それほどに隔絶した存在なのだ。
 しかし殺し合いの主催者はこともあろうに、そのサーヴァントを殺し合いのファクターの一部として扱っている。

「これ、この殺し合いの主催者が聖杯戦争のシステムに干渉しているってこと……?
 それともあいつらが全然違う方法でセイバーを呼び出したとか……? どっちにしても滅茶苦茶よ……」


276 : オラと剣士とアーマードライダー ◆7PJBZrstcc :2021/04/16(金) 22:51:37 2KebD6qA0

 頭を抱え始める凛に、キャメロットは何も言えない。
 凛が何を言ってるのか、さっぱり理解できないから。
 とはいえこの状況で思索にふけりすぎるのは問題だ。
 なのでキャメロットは、無理矢理話を切り替えた。

「ところで、凛さんはなぜ先ほど叫んでいたのでしょうか?」
「……」

 キャメロットが質問すると、凛は死んだ目で、近くにある少女の死体を指さしながらこう言った。

「これ、私の体なの……」

 凛の言葉に、キャメロットは何も言えなかった。
 彼女だって、自分の死体を見て平静でいられるかは分からない。
 むしろ、叫び声だけですませた凛を凄いとさえ思う。

 すると、今度は凛が無理矢理話を切り替える。

「ところでキャメロット、あなたその刀使いにくくない?」
「はい。正直なところ、私には扱いにくいですね。
 申し訳ないのですが、代わりの剣があればいただけないでしょうか?」

 凛は決して剣の目利きができる訳ではないが、刃の部分が本来と逆の位置にあるのを見れば流石におかしいと気づける。
 更にキャメロットがこう言ったこともあって、凛は代わりになりそうな剣がないかデイパックを検める。
 すると――

「これは、素晴らしい剣です」

 凛がデイパックから取り出した剣に、キャメロットは惜しみない称賛を送った。
 それもそのはず。なぜならこの剣の名前は、はぐれメタルの剣。
 とある世界において、地上最強の剣と評されるほどの剣なのだから。

「ほら、あげるわよこの剣。
 その代わり、ちゃんと私を守りなさいよ」
「勿論です。騎士の誇りに掛けて、あなたに勝利を!」

 凛に剣を貰い、礼を言う少女。その様はまるで主従の様だ。

「「!!」」

 しかしここで、二人は唐突に寒気を覚える。

 二人はある可能性を考慮していなかった。
 それは殺し合いが生み出した極限状況故か。あるいは遠坂直伝のうっかりか。
 ともかく彼女達は考えていなかった。

「へえ、騒がしいと思って戻ってみたら、別のリントが来てたんだ」

 凛の叫びを別の誰かが聞き、ここに来る可能性を。


 やって来た参加者の外見は、アイドルといっても通じそうな程の美少女。
 腰には赤色をした、特徴的なベルト、ゲネシスドライバーとメロンエナジーロックシードを付けている。
 事実、この場にいる三人の内誰も知らないが、彼女はとある世界でアイドルをしている。
 どこか温和で、優し気な印象を人に与える少女だ。

 だがその外見とは裏腹に、目の前の少女が醸し出す雰囲気はとても冷たい。
 目の前に相対するだけで寒気を覚えるような、異様な殺気が少女から漂う。
 それもそのはず。なぜなら少女の精神は今、人間のものではない。

 人間を獲物とみなす種族、グロンギ。
 その頂点にして、同族すら理解を拒むほど純粋に殺戮を楽しむ異常者、ン・ダグバ・ゼバのものなのだから。

「あんた、私達に何か用?」

 凛がダグバに対し、警戒心をむき出しにしながら問う。
 しかし彼は意にも介さず、ロックシードを解錠。


277 : オラと剣士とアーマードライダー ◆7PJBZrstcc :2021/04/16(金) 22:52:03 2KebD6qA0

『メロンエナジー!』

 そのままベルトの右にある部分を、中央に押し込む。

『ソーダ!』

 すると虚空からメロンが彼の頭に落ち、そのまま変身。
 白を基調としつつ、薄緑を醸す鎧、アーマードライダー斬月をその身に纏った。

 そして、ゲネシスドライバーを使って変身することで装備される、ソニックアローを二人に構えながら、ダグバはようやく凛の質問に答えた。

「君達に、僕を笑顔にしてほしいんだ」

 ダグバの言葉に、思考が止まる二人。
 何を言っているのか、理解が及ばない。
 しかしこれだけは分かる。
 目の前の相手は、人を殺すことを楽しんでいると。
 ここで止めなければ、多くの人間が死ぬと。

「させません」

 故に、キャメロットは剣を以ってダグバに相対する。
 騎士として、一人でも多くの物語を守り抜く為に。

 そんな彼女の想いを、ダグバは決して理解できない。
 代わりに分かることはただ一つ。

「さあ、ゲゲルを始めよう」

 目の前の少女が、ゲゲルの相手をしてくれるということのみ。


【C-4 山/深夜】

【遠坂凛@Fate/stay night】
[身体]:野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん
[状態]:健康、精神的ショック(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:他の参加者の様子を伺いながら行動する
1:目の前の相手(ダグバ)に対処する
2:サーヴァントシステムに干渉している……?
3:私の体が死んでるなんて……
4:身体の持ち主(野原しんのすけ)を探したい
[備考]
参戦時期は少なくとも士郎と同盟を組んだ後。セイバーの真名をまだ知らない時期です
野原しんのすけのことについてだいたい理解しました
ガンド撃ちや鉱石魔術は使えませんが八極拳は使えるかもしれません
御城プロジェクト:Reの世界観について知りました。

【キャメロット城@御城プロジェクト:Re】
[身体]:アルトリア・ペンドラゴン@Fateシリーズ
[状態]:マスター不在によるステータス低下、全身に裂傷(軽微)
[装備]:はぐれメタルの剣@ドラゴンクエストⅣ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2、逆刃刀@るろうに剣心
[思考・状況]基本方針:一人でも多くの物語を守り抜く。
1:目の前の相手(ダグバ)に対処する
2:凛さんを守る
3:アーサー王はなぜそうまでして聖杯を……
[備考]
※参戦時期はアイギスコラボ終了後です。
※服装はドレス(鎧なし)です
※プロフィールをちゃんと読み終えてないため、
 風王結界、及び風王鉄槌にはまだ慣れていません。
 湖の乙女の加護は問題なく機能します。
 当然、約束された勝利の剣などもできません。
※名簿をまだ見ていません
※Fate/stay nightの世界観および聖杯戦争について知りました。


【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】
[身体]:櫻木真乃@アイドルマスターシャイニーカラーズ
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品×2、ゲネシスドライバー@仮面ライダー鎧武、メロンエナジーロックシード@仮面ライダー鎧武、ランダム支給品0〜4(零余子の分も含む)
[思考・状況]基本方針:ゲゲルを楽しむ
1:目の前の二人(キャメロット、凛)と戦う
[備考]
48話の最終決戦直前から参戦です。


【はぐれメタルの剣@ドラゴンクエストⅣ】
遠坂凛に支給。
攻撃力130。メタル系の相手に2の必中ダメージを与える効果を持つ。
公式ガイドブック曰く『地上』最強の剣。


278 : ◆7PJBZrstcc :2021/04/16(金) 22:52:33 2KebD6qA0
投下終了です


279 : ◆NIKUcB1AGw :2021/04/16(金) 23:11:57 t9PStf3M0
鳥束零太、我妻善逸予約します


280 : ◆ytUSxp038U :2021/04/17(土) 00:43:34 rSxZZjVo0
鬼舞辻無惨、アルフォンス・エルリックを予約します


281 : ◆ytUSxp038U :2021/04/18(日) 22:19:38 PDKIQwvU0
投下します


282 : もがき続けなければ始まらない ◆ytUSxp038U :2021/04/18(日) 22:21:59 PDKIQwvU0
「兄さんたちはいないか…」

名簿を確認し終えたアルフォンスはほっと胸を撫で下ろした。
こんなふざけた催しに、兄や幼馴染の少女が連れて来られていないのは喜ばしい事である。
だけど少しだけ不安にもなった。
エドワード達がいないのなら、自分だけで殺し合いを打破しなくてはならない。
もし仮にエドワードやマスタング大佐、つい最近仲間となった合成獣のおじさん達も参加していたなら、不謹慎ではあるが心強い仲間の存在に安心感を覚えていただろう。
だが彼らはこの場にはいない。

放送の男は本名か偽名かは不明だがボンドルドというらしい。
数十人の魂を入れ替える程の力をもった錬金術師なら、一度くらいは名前を耳にした事があるものだと思ったのだが、アルフォンスには聞き覚えが無かった。
ボンドルドの口振りからして他にも協力者がいるのは間違いなさそうだ。
その協力者というのはホムンクルスの親玉、お父様なのではないかと考える。
これだけの規模で悪趣味な催しを行う人物といえば、真っ先に浮かぶのは父に瓜二つの顔をしたあの男だ。
しかしお父様が殺し合いに関わっているとしたら、何故人柱候補である自分を参加させたのかが疑問である。
エルリック兄弟はお父様の計画に必要不可欠なはず。そんな大事な人材をわざわざ殺し合いの場に放置して命を落としてしまえば、計画が台無しになるのではないか。

(じゃあ殺し合いはホムンクルス達にとっても予想外ってこと?)

もしそうなら、貴重な人柱候補が消えてホムンクルス達も焦っているのだろうか。
そして、お父様をも出し抜いたのかもしれないボンドルドという男に改めて戦慄する。
果たして自分一人で得体の知れない主催者を倒せるのか、そんな後ろ向きな考えがよぎる。

「…って、こんな弱気じゃ駄目だ」

ついさっきまで主催者へ怒りを抱いていたというのに、早くも弱気になってしまってどうするのか。
きっとエドワード達は元いた場所でやるべき事をやっている。
なら自分も戦わなくてはいけない。
殺し合いにお父様が関与しているかはまだ分からないが、自分以外にも殺し合いを止めようと考えている人たちはいるかもしれないのだ。
自分一人では難しくても、協力すれば可能になるはず。
これまでの旅だって多くの人に支えられたからこそ、自分達兄弟はここまでやってこれた。
うじうじ悩んでいる暇があるなら、一つでも自分にできる事をやれ。
そう自分に言い聞かせ今一度気合を入れ直すと、再び名簿に視線を落とす。
仲間の名前は載っていないが、知っている名なら一つだけあった。

(同姓同名の別人…じゃあないよね)

バリー・ザ・チョッパー。
第五研究所で戦った元死刑囚。
アルフォンスと同じく鎧に魂を定着させられていたバリーも、新たな身体を得て殺し合いの参加者となったということか。
バリーはアルフォンスの目の前で、ホムンクルスのラストに殺されたはず。
しかし主催者はバリーがそのまま死ぬのを良しとはしなかったのだろう。

他人の手で何度も魂を弄ばれるバリーに、アルフォンスは複雑な思いとなる。
ハッキリ言ってアルフォンスは彼に良い印象は全く抱いていない。
一度共闘したとはいえ元は敵である上に、バリーの言葉のせいで兄に対しあらぬ疑念をぶつけてしまったのだから。
それでも、相手が誰であれ人の命を道具にして良い理由など無い。
けれどバリーの事だから、嬉々として殺し合いに乗った可能性が非常に高い。
どんな身体になっているかは分からないが、誰かを殺す気でいるのなら見過ごせないと警戒する。

「あと気になるのはこの身体か……」

今現在、自分が動かす身体を見下ろす。
ざっと見た感じ何の変哲もない、趣味が良いとは言えない腕輪以外は極一般的な少年の肉体。
だがこの少年の経歴は一般人とはかけ離れたものだった。
千翼(ちひろ)という名の彼は、アマゾンと呼ばれる人喰いの怪物を駆除してきたらしい。
分かったのはそれだけだ。
具体的にどうやってアマゾンを駆除したのかや、詳しい経歴は書かれていなかった。
加えてアマゾンについてもほとんど分からない。
どういった経緯で生まれたのか、外見はどんなものなのか、自我はあるのか等肝心な部分は記載されておらず、分かっているのは『人を喰う』という部分のみ。
アルフォンスにはその『人喰いの怪物』という記述がどうにも引っかかった。


283 : もがき続けなければ始まらない ◆ytUSxp038U :2021/04/18(日) 22:23:11 PDKIQwvU0
「……」

そっと自身の腹部に掌を当ててみる。
会場で目覚めてからずっと腹の虫が鳴り続け、今も空腹を訴えている。
身体の持ち主が食事の前に肉体を奪われたのだろうと余り深くは考えなかったが、プロフィールを見た後では何か嫌な予感がした。
これはあくまで自身の推測に過ぎないが、ひょっとして千翼自身もアマゾン…人を餌とする怪物なのではないか。
怪物の力を行使して同族を狩る者。それこそが千翼の正体なんじゃないか。
もしこの考えが正しければ、この空腹の正体とは……

「……止めよう、推測ばっかりで何の根拠もないじゃないか」

脳裏に浮かぶ嫌な考えを振り払う。
確かに空腹だが、それだけで千翼がアマゾンであると決まった訳ではない。
それにアルフォンス自身、ついこの間まで人間らしい感覚とは無縁の身体だったのだ。
久方振りの空腹感に少々動揺していたのかもしれない。
どうにもさっきから悪い考えばかりが浮かんでしまう。
これではいけないと地図を確認すると、丁度近くに村がある。
冷静に頭を回す為にも、まずはそこで腰を落ち着けてしっかり食事を取ろう。

最初の目的地を決め歩き出した。


◆◆◆


出発してから数十分が経過した頃、アルフォンスは到着した村で奇妙な生き物を発見した。

「な〜〜〜〜」

その姿を何と形容すればいいのだろか。
まず間違いなく人間ではない。
猫に似た耳と鋭い爪が生えた前足だけなら動物に見えなくも無い。
だが、ばっくりと割れた果実のような口はアルフォンスの知識にあるどの獣とも一致しなかった。

「な〜〜〜、み〜〜〜」

驚くアルフォンスに気付いたソレは、鳴き声らしきものを上げ爪を振る。
自分の事を敵だと思っているのだろうか。
こちらを見上げる片目からは、ソレが何を考えているのかは判断できなかった。

「君は…」

この生き物は合成獣ではないかと真っ先に思い浮かんだ。
それもかなり質の低い錬金術で生み出された生物。
であれば、こうまで肉体が崩壊しかかっているのも納得がいく。
動物同士を組み合わせたのか、或いは元となった人間の成れの果てなのか。
前者であっても気分の良いものではないが、後者ならば余計に悲惨だ。
好きでこんな姿になった訳ではないだろう。

果たして自分はこの合成獣をどうするのが正解なのか。アルフォンスは暫し迷う。
合成獣の首らしき部分にはアルフォンスの物と大きさこそ違うが、参加者の証である首輪が巻かれてあった。
であれば、今は合成獣とは無関係の人間の魂が入っている事になるが、一体どこの誰が合成獣の身体を動かしているのかが分からない。
殺し合いに乗っていないのか乗っているのか、もしかするとバリーの魂が入っている可能性も有り得る。
合成獣は奇妙な鳴き声を上げるばかりで、具体的に何を伝えたいのかさっぱりだ。
だけどアルフォンスには、己の理不尽を嘆いているように聞こえた。

――オニーチャン、アソボウヨ。オニーチャン

「――」

かつて救えなかった女の子の姿が思い起こされる。
実の父親の手で愛犬と共に錬成させられた、錬金術による悲劇の犠牲者。
あの時は彼女に何もできず、スカーに殺されるのも止められなかった。
目の前の合成獣はどうだろうか。
這って動くことしかできないこの身体では、あっという間に悪意ある参加者の餌食になってしまう。
そんな光景は御免だ。

(そうだ、そうだよね……)

合成獣の精神が危険な参加者ではないかという疑念が消えたわけではない。
けどそれは手を差し伸べない理由にはならない。
合成獣に精神を移された人と、元々の合成獣肉体の主。両方を救いたいとアルフォンスは思う。
傲慢だと言われたら否定はできない。
それでも兄が自分にしてくれたような、助ける為の錬金術と違い、身勝手な欲望で他者の魂を弄ぶ錬金術など、どうしても認められなかった。
それにこう考えるのはアルフォンスとしても決して気分の良いものではないが、仮に相手が危険人物であったとしても、この合成獣の身体ならば思うようには動かせないはず。
万一妙な行動を見せても、捕まえるのは難しくない。

膝を付くと、未だ爪を振るっている合成獣へと手を伸ばす。
その際掌を切られて軽く血が出たが、構うものかと合成獣の前足を強く握り締める。
またしても千翼の身体を傷つけてしまった事に心中で謝り、自分の手を振りほどこうと藻掻いている合成獣へ向け口を開いた。

「落ち着いて。僕は君を傷つけたりはしないよ」

合成獣が潰れていない右目を動かす。。
ギョロリとした瞳に射抜かれても、アルフォンスの視線は揺るがない。

「君が元の身体に戻りたいのなら、僕も一緒に方法を探す。絶対に」

力強く言い切ると、一人と一匹の間に沈黙が流れる。
ややあって、先に反応を見せたのは合成獣の方だった。


284 : もがき続けなければ始まらない ◆ytUSxp038U :2021/04/18(日) 22:24:32 PDKIQwvU0
「フコッ」
「うん」
「な〜〜〜、み〜〜〜、い〜〜〜」

藻掻く力が弱まったのを感じ握り締めていた手を離してやる。
相変わらず言っている意味は分からなかったが、もう抵抗する気はないのか爪を振るう事はしなかった。
アルフォンスは数年ぶりに生身の顔で笑みを作り、合成獣を優しく撫でた。

「ありがとう。僕はアルフォンス・エルリックって言うんだ。よろしくね」


◆◆◆


数千年という時間を生きて来たが、ここまで不快にさせられたのは初めてかもしれない。
自身を取り巻く現状に、鬼舞辻無惨はそんな事を思った。

竈門禰豆子が太陽を克服したと知り、歓喜に打ち震えた。
これで遂に忌々しい太陽を克服できる。
増やしたくもなかった鬼を作る必要もなくなる。
長年の悲願が成就する時がやっと来た。
柄にもなく気分が高揚していたというのに、気付けば真っ逆様に突き落とさた。
あのボンドルドと言う男のせいで。

ボンドルドは無惨へ殺し合いをしろなどと命令をしてきた。
ボンドルドは無惨に奴隷の証のような首輪を填めた。
ボンドルドは無惨の限りなく完璧な肉体を奪った。
ボンドルドは無惨へ犬にも劣る肉体を与えた。
どれか一つだろうと無惨にとっては万死に値するものを、ボンドルドは全てやってのけた。
最早どんな事情や目的があろうと関係無し。
ボンドルドを肉片一つ残さず磨り潰してやらねば、無惨の気は済まない。
どうやらボンドルド以外にも殺し合いに関わっている者がいるようだが、当然その者達も一人残らず殺す。

怒りを向ける対象は主催者のみにあらず。
己の肉体に我が物顔で入り込んでいる存在。
分を弁える事も知らない塵屑が、自分の身体で好き勝手やっていると考えるだけで怒りの余り発狂しそうになる。
特に鬼殺隊の連中が自分の身体に入っているとしたら、最悪所の話ではない。
自分一人の命で鬼殺隊の宿願が果たせるなら、などと言って自害するのは目に見えている。
異常者共がふざけた真似をする前に、一刻も早く参加者を皆殺しにして身体を取り戻したいのだが、それは不可能に近い。

無惨の身体は鬼どころか人ですら無い。
まともな獣の形すら保っていない、出来損ないと言うのが相応しい醜い姿だった。
這って移動するのがやっとの身体で皆殺しなど夢のまた夢。
元の身体ではないからだろう、配下の鬼に念を送っても一切反応が無い。
おまけにこの手では参加者に渡された袋も開けられず、支給品や名簿の確認も出来ない。

こうまでされたら嫌でも分かる。
殺し合いなどと言っていたが、ボンドルドが無惨に求める役割は圧倒的な力で参加者を虐殺することではない。
むしろその逆。一方的に狩られ、痛めつけられ、惨めに死んでいく哀れな獲物。
移動すらままならない弱者となった事で、思い出したくも無い過去の記憶が掘り起こされる。
病床に伏し、日に日に弱って行く人間だった頃の自分。
憐みと蔑みの目を向ける使用人達、青い彼岸花の詳細な情報も残さず死んだ役立たずの医者。
忌々しい過去を思い起こされ、ボンドルドへの怒りが一層沸き立つ。

そして今無惨を苛立たせているのが、目の前のアルフォンスという少年だった。
外見はどう見ても日本の人間だが、中身は異国の出身者らしい。
勝手に勘違いでもして、獣と化した無惨へ手を差し伸べてきた。
どこの誰かも知らない人間の子どもが自分へ同情を向けているという状況に、アルフォンスの頭部を握り潰してやりたい衝動に駆られる。
しかし、絶望的な状況で降って湧いた幸運を、一時の感情に任せて自ら捨てるような愚行を犯す訳にはいかない。
こんな得体の知れない生物も助けようとする甘い人間など、普段ならば何の価値も無しと切り捨てるが今回ばかりは都合が良い。
身体を取り戻すにしろ、主催者どもを殺すにしろ、まずは生き延びる必要がある。
如何にもお人好しな人間と思われるアルフォンスならば、こちらの言葉が通じずとも無惨を守ろうとするだろう。
問題点を挙げるとすればそのお人好しさ故に余計な面倒事へ首を突っ込む可能性が高そうであるが、この際贅沢は言ってられない。

無論、人間の庇護下に入る事への屈辱と怒りを感じていないと言えばば嘘になる。
完璧な存在である自分が人間如きに守って貰わねばならないなど、断じて有り得て良い事ではない。
だがしかし、今はその怒りをも飲み干し耐えるしかない。
生き延びて身体を取り戻すには、感情に身を任せて行動する訳にはいかないと、己に言い聞かせる。

(良いだろうアルフォンス。今は貴様の手を取ってやる。だからその命を懸けて私の役に立て。もし肉体を取り戻したその時にも貴様がまだ生きていたなら、私の手で終わらせてやろう)

全ては自分が生きるため。
ただ一つの、無惨にとっては絶対の目的を秘め、アルフォンスに鳴き返した。


285 : もがき続けなければ始まらない ◆ytUSxp038U :2021/04/18(日) 22:26:43 PDKIQwvU0
【B-5 村/深夜】

【アルフォンス・エルリック@鋼の錬金術師】
[身体]:千翼@仮面ライダーアマゾンズ
[状態]:健康、空腹感
[装備]:ネオアマゾンズレジスター@仮面ライダーアマゾンズ
[道具]:基本支給品、ネオアマゾンズドライバー@仮面ライダーアマゾンズ、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:元の体には戻りたいが、殺し合うつもりはない
1:首輪について調べて、錬金術で分解する
2:合成獣(無惨)に入った精神の持ち主と、元々の肉体の持ち主を元の身体に戻してあげたい。ただし殺し合いに乗っている可能性も考慮し、一応警戒しておく
3:殺し合いに乗っていない人がいたら協力したい
4:バリーを警戒。殺し合いに乗っているなら止める
5:冷静に考える為にも腰を落ち着け食事を取る
6:千翼の身体に僅かな疑念。アマゾンとは…
[備考]
・参戦時期は少なくともジェルソ、ザンパノ(体をキメラにされた軍人さん)が仲間になって以降です。
・ミーティを合成獣だと思っています。
・千翼はアマゾンではないのかと疑いを抱いています。
・支給された身体の持ち主のプロフィールにはアマゾンの詳しい生態、千翼の正体に関する情報は書かれていません。

【鬼舞辻無惨@鬼滅の刃】
[身体]:ミーティ@メイドインアビス
[状態]:成れ果て、強い怒り、激しい屈辱感
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:元の体に戻る。主催は絶対に許さない。
1:何とかして自由に動けるようになる
2:今はアルフォンスを利用。元の体に戻ったら殺す
3:支給品と名簿も確認しておきたい
[備考]
・参戦時期は産屋敷邸襲撃より前です。
・ミーティの体はナナチの隠れ家に居た頃のものです。
・精神が成れ果てのミーティの体に入っても、自我は喪失しません。
・デイパックを開けられなかった為、まだ中身を確認していません。



こうしてアルフォンス・エルリックは意図せず二つの災厄を背負い込んだ。
一つは鬼舞辻無惨。
平安の時代に生まれた鬼の始祖はその力を奪われても、心は折れていない。
もう一つは千翼。
アルフォンスが抱いた疑念は間違いではなく、千翼は人間とアマゾンとの間に生まれた怪物。
それも人間をアマゾンへと変える溶源性細胞のオリジナル。
普通の食事は受け付けない身体故に、アルフォンスはすぐ千翼の正体に気づく事になるだろう。
やはり千翼は人を喰う怪物であったと。
今はまだレジスターによりただの空腹に抑えられているが、限界は必ず訪れる。
いずれ襲いかかる食人衝動にアルフォンスは耐えられるのか。
何より生まれたこと自体が罪だと突き付けられた少年の身体を、アルフォンスはどうするつもりなのか。

その答えは、まだ誰も知らない。


286 : ◆ytUSxp038U :2021/04/18(日) 22:27:28 PDKIQwvU0
投下終了です


287 : ◆NIKUcB1AGw :2021/04/18(日) 23:09:01 2dAOBZE60
投下乙です

自分も投下させていただきます


288 : 知らない相棒 ◆NIKUcB1AGw :2021/04/18(日) 23:10:10 2dAOBZE60
「ふーむ……」

岩の上に腰を下ろし、鳥束は新たに支給された名簿を眺めていた。
自分の名前以外に、見覚えのある名前は一つ。
「燃堂力」。顔見知りではあるが友人の友人というレベルの関係性であり、深い付き合いはない。
正直、積極的に助けようという気にはならない。まあ、実際に出会った場合は協力してもいいが。
そんなことより彼にとって重要なのは、この場にどのくらいの女性がいるかだ。

「これはちょっと、悩ましいっすね……」

鳥束が引っかかっていたのは、「しのぶ」「蓮」「凜」など、男女どちらでも通用する名前がそれなりにいることだ。
これでは実際に会ってみないと、性別が判断できない。
あと、外国人の名前はそもそも男女の見分け方がわからない。バカだし。

「っていうか、よく考えたらこの状況じゃ中身と体の性別が一致してるとは限らないんすよね……。
 中身がめちゃくちゃ魅力的な子だったとしても、体がおっさんだったりしたらさすがにきついなあ……」

ひょっとして、この場でモテようとするのはかなり無謀な試みなのではないか。
そんな考えが、鳥束の脳裏をよぎる。

「いやいや、弱気になっちゃダメだ!
 せっかくめちゃモテボディー(推定)を手に入れた、千載一遇のチャンス!
 絶対に活かしてみせる!」

改めて決意を口にし、鳥束は立ち上がる。
その直後。

「ん?」

鳥束は、自分に向かって近づいてくる何かに気づいた。


289 : 知らない相棒 ◆NIKUcB1AGw :2021/04/18(日) 23:11:04 2dAOBZE60


◆ ◆ ◆


(しまったぁぁぁぁぁ!! 荷物置いてきちゃったぁぁぁぁぁ!!)

時は少し戻る。
ボンドルトによる放送を聞いた善逸は、自分が支給された荷物を置いてきてしまったことに気づいた。
取りに戻ること自体はできる。
だがそうしてしまえば、あの変態天使と再び遭遇してしまう可能性が高い。
今度も上手く逃げ出せるという保証はないのだから、それは避けたい。
そもそも、天使が自分の荷物を回収してしまっていることも考えられる。
その場合は、完全な無駄足だ。
総合的に考えて、戻るのは悪手である。

(どうすりゃいいんだよ、俺……。
 しゃべれもしない動物の体にされて、道具も何もなくて……。
 知り合いがこの場にいたとしても、確認もできないし……。
 このままただの変なネズミとして死んでいくのかなあ……)

悲観のあまり顔をしわくちゃにしながら、善逸はただ惰性で前進を続ける。
すると近くで、誰かが叫んでいるのが聞こえてきた。

(え? はっきりとは聞き取れなかったけど、今の声って……)

その声が聞き慣れたものであると判断し、善逸は急いで声の方向へ向かう。
そして彼の目は、一人の青年を捉えた。

赤みがかった、独特の癖がある髪。
額の痣。
黒と緑で構成された、市松模様の羽織。
見間違えるはずがない。
善逸が心の底から信頼する友の姿だ。

「ピカァァァァ(炭治郎ぉぉぉぉぉ)!!」

いても立ってもいられず、善逸は全速力で炭治郎に駆け寄る。
だがその様子を見た炭治郎から返ってきたのは、予想外の反応だった。

「えっ、何この動物! なんか泣いてるし、怖っ!」
「ピ!?」

一瞬思考停止に陥る善逸だったが、すぐに現状を正しく理解する。
自分がネズミになっているように、この場にいる人間は全て精神を入れ替えられている。
つまり目の前にいる炭治郎は、体こそ炭治郎だが中身は全くの別人ということになる。

(せっかくこれ以上ない味方を見つけられたと思ったのに……。
 こんなのありかよぉぉぉぉ!)

芽生えたばかりの希望を粉砕され、善逸はがっくりとうなだれる。
一方の炭治郎……もとい鳥束は、そんな善逸に冷めた視線を向ける。

(なんなんすか、こいつ……。こっちは動物なんかにかまってるヒマはないんすよ。
 さっさとかわいい女の子を見つけて……。ん? 待てよ)

いったんは善逸を無視して移動を開始しようかと考えた鳥束だったが、そこであることに気づく。
それは、眼前のネズミが首輪をつけていることだ。

(ということは、こいつも参加者……。
 となれば、今はこんな姿でも中身は美少女という可能性がある!
 そうでなかったとしても、よく見るとこいつはけっこうかわいい……。
 連れて歩けば、よりモテるかもしれない!)

わざとらしい咳払いで、いったん間を取る鳥束。
そして、満面の笑みを貼り付けて善逸に話しかける。

「いや、失礼しました。ただの野生動物かと思ったら、あなたも参加者だったんですね!
 きっと一人では心細くて、俺のところに駆け寄ってきたんですね!
 よかったら、一緒に行動しませんか!」

ガラリと態度を変化させた鳥束に対し、今度は善逸が冷めた視線を送る。
今の善逸に相手の心理を把握できるほどの聴覚はないが、それでも察せる。
たぶんこいつ、ろくでもないこと考えてる、と。

(一緒に行動したくねえ〜っ!
 でも一人でいるのもイヤだし!
 いちおう殺し合いに積極的じゃないのはたしかみたいだし、とりあえず組んでみてもいいか?
 炭治郎の体で変なことされても困るし!
 いや、でもな〜!)

愛想笑いを続ける鳥束の前で、頭を抱える善逸であった。


290 : 知らない相棒 ◆NIKUcB1AGw :2021/04/18(日) 23:11:45 2dAOBZE60


【F-3 山/森と草原の境目】

【鳥束零太@斉木楠雄のψ難】
[身体]:竈門炭治郎@鬼滅の刃
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:女の子にモテる!
1:殺し合い? まあなんとかなるでしょ
2:この小動物を連れていこう


【我妻善逸@鬼滅の刃】
[身体]:ピカチュウ@ポケットモンスターシリーズ
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]基本方針:殺し合いは止めたいけど、この体でどうすればいいんだ
1:この炭治郎もどきについて行くか、やめるか……
[備考]
参戦時期は鬼舞辻無惨を倒した後に、竈門家に向かっている途中の頃です。
現在判明している使える技は「かみなり」「でんこうせっか」の2つです。
他に使える技は後の書き手におまかせします。


291 : ◆NIKUcB1AGw :2021/04/18(日) 23:12:42 2dAOBZE60
投下終了です


292 : ◆5IjCIYVjCc :2021/04/18(日) 23:47:22 XSkqfIDY0
投下乙です
しかし一つ気になる点があります。
先の話の現在地が【F-3 山/森と草原の境目】となっていますが、F-3に山はありません。
申し訳ありませんがこの点について見直していただけると助かります。
お手数をおかけしてすみませんがよろしくお願いします。


293 : ◆NIKUcB1AGw :2021/04/18(日) 23:55:21 2dAOBZE60
申し訳ありません、ただの消し忘れです
【F-3 森と草原の境目】に修正させていただきます


294 : ◆5IjCIYVjCc :2021/04/19(月) 00:07:21 Kh3q3sdk0
迅速な対応をして頂きありがとうございます。


295 : ◆7PJBZrstcc :2021/04/19(月) 19:29:17 sHGqBRuI0
拙作『オラと剣士とアーマードライダー』にて、ダグバの状態表にミスを見つけたのでwikiにて修正しました


296 : ◆ytUSxp038U :2021/04/20(火) 00:34:49 qsrjwOQk0
ギニューを予約します


297 : ◆ytUSxp038U :2021/04/20(火) 12:55:14 qsrjwOQk0
投下します


298 : ギニュー 新たなる挑戦! であります ◆ytUSxp038U :2021/04/20(火) 12:58:21 qsrjwOQk0
「ケロン人だと…?聞いたことの無い種族だな」

プロフィール用紙を見て、ギニューはそう呟いた。
またしてもカエルの身体な事に頭を抱えたが、暫くはこれで殺し合いに臨むしかないのだ。
いずれは強い身体とボディーチェンジするとはいえ、現在のスペックくらいは把握しておくべきと身体のプロフィールを見る事にした。

そうして分かったのは、このマスコットキャラのようなカエルの名はケロロ軍曹。
驚いた事にケロロは軍に所属しており、しかも地球(何故かポコペンとルビが振ってある)侵略を目論んでいるのだという。
その他に家事が得意だの趣味はガンプラ作りだのと書かれていたが、どうでもいい情報なので無視した。

「フリーザ様を差し置いて地球侵略など身の程知らずどもが!しかも、軍曹でありながらこの程度の力しか無いとは使えん奴め!」

ケロロも決して体力が低い訳ではなく、そこいらの人間よりも遥かに打たれ強い。
だがカエルになる以前の身体と比べるとその戦闘力は雲泥の差がある。
こんな身体では一般戦闘員どころか精々雑用係が良い所だと憤慨するが、ボディーチェンジができるなら十分だと頭を落ち着ける。
二本足で歩き、人語を話せるだけでも幸運じゃないか。
どうせ強敵と遭遇したら早々にケロロの身体とはおさらばするのだから、それまでの辛抱だ。

ボンドルドによる放送が流れたのは、丁度そのタイミングだった。

放送を聞き終えたギニューは早速デイパックを開けてみる。
先ほどまでは無かった名簿用紙が存在するのを確認し、早速目を通した。

(オレの名はあるがケロロ軍曹とはどこにも載っていない…)

ボンドルドにより配布された名簿を確認し、分かった事は二つ。
まず一つ、名簿に載っているのは身体を動かしている精神の持ち主の名前のみ。
どの参加者に誰の身体が与えられたか、というのは記載されていなかった。
これに関してギニューはさほど重要視していない。
フリーザ一味の者が参加していたら合流も考えたが、生憎知っている名は一つも無い。

そしてもう一つは、ケロロの名前が載っていないこと。
当初ギニューは自分の精神はケロロの身体に、ケロロの精神はナメック星のカエルへと入れ替わったのだと思っていた。
しかし実際には殺し合いに参加しているのはギニューのみであり、ケロロは不在である。
ではケロロの精神はどこにあるのか。
一番可能性が高いのは、主催者の手で既に消されている事だろう。

(まぁ、仮に参加した所であんなカエルの体では、早々に踏み潰されるのが目に見えているがな)

ケロロの生死はどうでもいいが、ケロロの身体だけは殺し合いの場に存在するという事実は重要である。
それはつまり、殺し合いの為に身体だけを奪われた者がいるかもしれい。
名簿に名前が載っていない人物の身体が、参加者へ与えられている。

(ということは、ベジータや孫悟空の体がここにあるかもしれんか…)

邪魔さえ入らなければ手に入るはずだったサイヤ人の身体。
ベジータとボディーチェンジしたならば優勝も容易い。
そして孫悟空。
ナメック星でボディーチェンジした時はその力をロクに引き出せず、格下の地球人にも苦戦する羽目になった。
ギニューとしては非常に扱い辛い身体ではあるが、それでもケロロの身体に比べたら段違いの強さを持つ。
ベジータの身体が無かった場合の代わりとして、一応候補に入れておく。

とにかくまずは他の参加者を見つけなければ始まらない。
ベジータでなくとも強い体なら奪い、逆にケロロよりも弱い者ならば殺しておく。
そう考え支給された銃を装備する。
こんな玩具を使うのは気乗りしないし、平均サイズの銃でもこの手では少々持ち辛いが、今は仕方ない。
全てはフリーザ様復活の為と、ギニューは歩き出した。


【G-5/深夜】

【ギニュー@ドラゴンボール】
[身体]:ケロロ軍曹@ケロロ軍曹
[状態]:健康
[装備]:松平の拳銃@銀魂
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2、予備マガジン
[思考・状況]基本方針:優勝し、フリーザを復活させる
1:強敵と遭遇したら、ボディーチェンジで体を奪う
2:もしベジータの体があったら優先して奪う。一応孫悟空の体を奪う事も視野に入れている
3:ケロロの体でも殺せる参加者と遭遇したら殺しておく
[備考]
・参戦時期はナメック星編終了後

【松平の拳銃@銀魂】
幕府直轄の警察庁長官、松平のとっつぁんこと松平片栗虎の愛銃。
正式な種類は不明。


299 : ◆ytUSxp038U :2021/04/20(火) 12:59:28 qsrjwOQk0
短いですが投下終了です


300 : ◆OmtW54r7Tc :2021/04/20(火) 17:25:03 gF49qX4Q0
キタキタおやじ、吉良吉影、犬飼ミチル、シロで予約します


301 : ◆ytUSxp038U :2021/04/20(火) 17:57:33 qsrjwOQk0
自己リレーを含みますがエボルト、雨宮蓮、アーマージャックを予約します


302 : ◆OmtW54r7Tc :2021/04/20(火) 18:28:40 gF49qX4Q0
投下します


303 : 増え鬼 ◆OmtW54r7Tc :2021/04/20(火) 18:30:06 gF49qX4Q0
「ワン!ワン!ワン!」

シロは、必死で逃げる。
相も変わらず四足歩行で。
彼は、追われていた。
リーゼントの、不良学生に。

(ひーん!なんで追われてるんだ)

走りながら後ろを向くと、そこにはおっかない顔をした不良の男がこちらに向かって走ってきている。
しんちゃんの知人に不良の女子学生はいるが、あんな男が知り合いだった覚えはない。
いやまあ、こっちも向こうも元の身体は別なのだが。
だとしたら、あの不良の中の人が、自分の身体の人物に、恨みを持っている?

「ま、待ってくだしゃい〜!その身体、私の身体なんです〜!話を聞いてくだしゃい〜!」

不良男が、こちらにそう言ってきた。
私の身体?
ということは、あの不良男の中の人は、今の自分の身体である犬飼ミチルなのか。
なんだ、自分の身体を見つけたから追ってただけなのか。
中身も女の子みたいだし、安心…

『犬飼ミチル:推定殺害人数15万人』

(できるわけないいいいいいいい!余計にダメじゃんんんんんん!)
「なんでスピード上がるんでしゅか〜!?」

放送後も鬼ごっこを続ける両者は気づかない。
近くに、目撃者がいたことを。


304 : 増え鬼 ◆OmtW54r7Tc :2021/04/20(火) 18:31:18 gF49qX4Q0
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

「なんだったんでしょうな、今のは」
「バカな…今のは」

吉良吉影は動揺していた。
今、目の前を通り過ぎたのは間違いない。
東方仗助だ。
名簿で空条承太郎と広瀬康一の名前は確認したが、奴までいるというのか。

(いや、落ち着け。あいつの中身は別人。名簿を信じるならば、仗助本人はいない)

もしかするとあの仗助の中にいるのが承太郎か康一という可能性もあるかもしれないが、それならそれでやはり追う必要はない。
下手に接触して自分の正体が吉良吉影だとバレるわけにはいかないのだから。

「キラ殿?顔色が悪いようですが…そんな時はキタキタ踊りですぞ!」
「い、いや、遠慮しておくよ…」
「むう…もったいないですなあ。肉体のプロフィールによれば私とキラ殿の身体の持ち主はアイドル。キタキタ踊りを踊ればきっと華やかでしょうに」
「それはそうかもしれないが……む?」

吉良は自身が持つ肉体のプロフィールの紙に目を向ける。
これには、肉体の人物の詳細が書かれている。
つまり、先ほどの仗助の姿をした人物は東方仗助のプロフィールを持っている。
もし、そこに吉良のことも書いてあったら?
先ほどの人物はそれを読んでいるのでは?
読んでいなかったとしても、プロフィールがある限り自分の正体が多数に知れ渡るのでは?

「させるか!」
「キラ殿!?」

吉良は、走り出す。
先ほど走りすぎていった二人組を追って。

「待ってくだされキラ殿〜!」

そしてそんな吉良をキタキタおやじもまた追いかける。
むろん、キタキタ踊りを踊りながら。


305 : 増え鬼 ◆OmtW54r7Tc :2021/04/20(火) 18:32:31 gF49qX4Q0



「ワン!ワン!」

「パンツ隠してくだしゃい〜!」

「逃がさんぞ!」

「キタキタ〜〜!」

こうして奇妙な鬼ごっこは、参加者を増やしてさらに続くのであった…

【E-6 街/深夜】

【シロ@クレヨンしんちゃん】
[身体]:犬飼ミチル@無能なナナ
[状態]:疲労(中)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない
1:ミチルから逃げる
2:しんちゃんや野原家の人たちを探す
[備考]
今のところは犬語でしかしゃべれませんが、慣れれば人間の言葉をしゃべれるかもしれません。
ヒーリング能力の寿命減少は、肉体側(人間)に依存します。
犬飼ミチルを殺人鬼と勘違いしています。

【犬飼ミチル@無能なナナ】
[身体]:東方仗助@ジョジョの奇妙な冒険
[状態]:疲労(中)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いはしたくない
1:シロを追いかけて止める
[備考]
参戦時期は少なくともレンタロウに呼び出されるより前
自身のヒーリング能力を失いましたが、クレイジーダイヤモンドは発動できます。

【吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険】
[身体]:二宮飛鳥@アイドルマスターシンデレラガールズ
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:優勝狙い
1:東方仗助の姿をした人物と彼が持つ肉体プロフィールを処分する
2:しばらくはエルドル(キタキタおやじ)と行動しつつ、隙を見てバレないように参加者を殺していく。
3:エルドルが鬱陶しい
4:しかしこの少女の手、なかなか美しい
[備考]
参戦時期は死亡後です。デッドマンズQは経験していません。
パイツァ・ダストは制限により使用できません。
魔法陣グルグルの世界について知りました。

【アドバーグ・エルドル(キタキタおやじ)@魔法陣グルグル】
[身体]:ヘレン@アイドルマスターシンデレラガールズ
[状態]:健康
[装備]:腰みのと胸当て@魔法陣グルグル
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2、最初着ていた服
[思考・状況]基本方針:キタキタ踊りの力で殺し合いを止めて見せますぞ〜
1:キラ殿を追う
2:体は返すつもりだが、その前にキタキタ踊りの後継者を見つけたい
[備考]
参戦時期は魔法陣グルグル終了後です。グルグル2や舞勇伝キタキタは経験していません。
ジョジョの奇妙な冒険の世界について知りました。ただしスタンドに関することは知りません。


306 : ◆OmtW54r7Tc :2021/04/20(火) 18:33:06 gF49qX4Q0
投下終了です


307 : ◆5IjCIYVjCc :2021/04/20(火) 19:49:09 BTMKvOTI0
>反転世界
異能としての不死となっても「不死身の杉元」としての不死身であろうとするのはかっこいいです。
余波で森に引火してしまったことが今後どう影響が出るか見物です。
それからジョナサンの肉体を通じて仗助の体を察知しているDIO、血の繋がりというものがこんな形で作用するのは厄介なことになりそうです。

>指と仇
弟が既に死んでいると判断した脹相、両面宿儺がどういう存在なのか知っているからこそこの結論に達してしまったと思うと悲しい感じがします。
実際にはどんな状態になっているかは確かめようがないけど、弟思いであることには変わりなさそうです。

>始まりのクエスチョン
戦兎がいることを知ったエボルト、千雪さんの体を人質扱いするのは相変わらずといった感じがします。
力を何故か使えることに疑問を持ったりと、危険人物でありながらも考察要員にもなれそうです。

>オラと剣士とアーマドライダー
早くも出た自分の死体を発見してしまった参加者。
ショックを受けながらもキャメロットセイバーと立ち向かえるのは心の強さを感じます。

>もがき続けなければ始まらない
ミーティを合成獣の失敗作だと思い優しく手を差し伸べるアルフォンス、その獣の中身が無惨様なせいで素直にその優しさを褒められない感じがします。
アルを利用して生き延びようとする無惨様、状況が状況だから他人を利用せざるを得ないのはしょうがないです。

>知らない相棒
鳥束がろくでなしなことを察した善逸。
彼も女性に対してダメなところもあったから察知できたのかもしれない。
引き返すわけにはいかない以上、こんな相手でも頼りたくなります。

>ギニュー 新たなる挑戦! であります
ギニューさん、軍曹だからといって個人の戦闘能力が高いわけではないのです。
考えている通り、この会場には孫悟空などの戦闘力の高い体もけっこういるため、ベジータはともかくボディチェンジを狙う相手は選り取り見取りでしょう。

>増え鬼
推定殺害人数プロフィールに載ってるんかい!
シロにミチルに対する疑念を植え付けたり、吉良に自分についても書いてある可能性を考えさせたり、プロフィールの存在がこんな事態を引き起こすとは。
四足歩行の女子高生を追いかける不良を追いかけるアイドル2人、絵面がさらにヤバくなってきました。

改めまして、皆さま投下乙でした。
自分も投下します。


308 : 能力者たちはどこかにいる ◆5IjCIYVjCc :2021/04/20(火) 19:51:28 BTMKvOTI0
前回までのあらすじ 『違う、そうじゃない!』

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ボンドルドによる初回放送が行われた頃、柊ナナと燃堂力はまだラーメン店の中にいた。

(突然何事かと思ったが、名簿か…。確かにさっき中を見た時には入ってなかったな)

(アビスの探掘家、白笛…気になる単語もあるがそのことについて考えるのは後にしよう。この場に誰がいるのか気になるな)

(私が斉木楠雄の弟だと思われたままというのもあまり快くないが、それを正すよりも先に名簿を燃堂にも確認させた方がいいだろう)

「燃堂さん。私についての話は一旦後にしましょう。名簿が配られたらしいので知り合いがいないか確認しておきませんか?」

「お?何だよそれ?」

「そのデイパックの中に入っていますよ…(放送の話聞いてなかったのかこいつ…)」

燃堂がデイパックの中を開けたのを確認するとナナも同じように名簿を取り出す。
そして書かれてある名前から、自分と関わりのある人物がいるかいないかを確認する。
名簿を一通り見てみると、貨物船だのキャメロット城だの、明らかに名前としては不可解な単語が目に入った。
そのことについて深く考えると余計頭を痛めることになりそうなので今はスルーしておく。
そして上から順に名前を確認していくと、クラスメイトの一人の名前を見つけることができた。

(私の知り合いは犬飼ミチルだけか…)

犬飼ミチルは、柊ナナが初めてすぐに殺害するのではなく生かして利用すると決めた能力者。
何故そうすることになったのかについては、ここでは省略する。

(犬飼ミチルがこの場にいるとして、能力は使えるのか?)

次にナナが気にするのは犬飼ミチルが元と同じようにヒーリングの能力を使えるか否かということ。

柊ナナが現在体を使用している斉木楠雄という人物は超能力者であるとプロフィールにあったが、ナナ自身がその能力を使える気配はない。
このことから、ナナはプロフィールが本物ならその能力は精神に由来するものであると仮定している。
そして次に出てくる疑問はこの能力に関する仮定の法則は、自分が知る能力者たちにも適用されるのかということだ。

能力が精神に由来するものである場合、犬飼ミチルはこの戦いの場でも治癒能力を発動させることができるだろう。
しかし肉体に由来するものであった場合、彼女は能力を使うことができない状態にあると考えられる。
前者である場合、どんな体を使っているかによって変わってくるだろうが、上手く交渉すれば元のような関係を築くことができるかもしれない。
後者である場合だと、もしもの時の回復要員として利用することができないということになる。

(だが…この点については早急な判断はしない方がいいだろう)

能力者についてはまだナナも分かっていないことが多い。
今の自分がプロフィール通りの能力を使用できないからといって、先入観を持って事に当たるのは危険だろう。

もしもこの島で、自分が知る能力者の体を使っている参加者に出くわした時、能力を使えないと思ってうかつに近づいたら殺されてしまうなんてことも考えられる。
それにもしかしたらそんな自分の世界の能力者たちでも、精神由来と肉体由来の両方がいる可能性だってまだ考えられる。
能力の使用は可能か不可能か、そのことは直接確かめなければ意味が無いだろう。

(犬飼ミチルとの合流に関しては一先ず保留としておこう)

もし出会えれば協力者となってくれる可能性はあるが、積極的にそうする必要があるほどのメリットはないだろう。
放送によれば自分たちがいるこの島はコンパスが無ければ迷う可能性があるほど広いらしく、どこにいるのかも分からない人物との合流は簡単に狙えるものではない。
それに犬飼ミチルだって、柊ナナにとっては殺すべき人類の敵の一人である。
利用すると決めてはいるが、いずれは自分が殺害する対象だ。
せっかくの『犬』を失うかもしれないのは残念だが、大きく重要視するほどのものではないだろう。
犬飼ミチルについて考えるのは一旦ここで止めとする。



そして次は、自分がここで初めてその存在を知り、危険視している者についてだ。


309 : 能力者たちはどこかにいる ◆5IjCIYVjCc :2021/04/20(火) 19:52:35 BTMKvOTI0
(名簿には斉木楠雄の名前は見当たらない。果たして私はこれをどう判断すればいいのか)

この殺し合いには斉木楠雄が参加者として登録されていない。
とりあえずこの会場では柊ナナが体を使っている男には会えないということになる。
ならば、彼女はこの男に対してどのような扱いをするべきなのか。

(…やはり、情報が欲しいところだな)

前回でも思案していたように、柊ナナは斉木楠雄をただ超能力者として見ているのではなく、そのプロフィール情報が偽物である可能性も考えている。
だがその真偽は今もまだ、はっきりとしていない。
そして今、それを確かめるためには燃堂力は役立たないことにうすうす感づいていた。

「名簿によれば私の友達の犬飼ミチルちゃんもこの殺し合いに連れてこられているようです。燃堂さんの方はどうですか?」

だからアプローチの方法を変えることにする。
燃堂の方が期待できない以上、次は別の斉木楠雄の知り合いを見つけ、話を聞くのが良いだろう。
さすがの燃堂でも、名簿での知り合いの名前の有無は確認できるだろうから、先ほどはそうするよう行動を促した。
そろそろ確認を終えた頃だろうと思い、顔を上げると…


「ヌオオオオオオオ!!」


テーブルに備え付けられていたレンゲを力ずくで曲げようとしていた。



「何をやっているんですか!」

「お?」

名簿を確認するように言っていたのに、相手の想像もしていなかった行動によりまた声を張り上げてしまった。

「あー、この紙見たらよー、この女はエスパーアイドル?っつーのをやっててよー、スプーン曲げれるみてーだからオレっちにもできねーか試してたんだわ」

(………そういえば確かに今までこの女の体についてプロフィールを見てなかったな)

これまでは燃堂の言動に振り回されたり、放送や名簿の方が気になって、燃堂が使う身体の元の持ち主についてまで気が回らなかった。
おそらく、デイパックを開けた際に名簿より先にプロフィール書類の方を見つけたからこのような行動をとったのだろう。

「だからってなんでレンゲを曲げようと思うんですか…」

「いやー似たようなもんかなーって」

「というかエスパーがスプーンを曲げるっていったら念力で曲げるものでしょ…。力ずくでやっても意味ないですよ…」

「お?」

燃堂が何故力ずくで強引に曲げる方法を選んだのかについては考えたくもない。
それはともかくとして、ナナは先ほど燃堂が口走ったエスパーという単語も気になった。
もしかしたら、目の前にいる女(の身体の元の持ち主)は能力者かもしれないという考えが頭に浮かんできた。

「あの、私にもそのプロフィールを見せてくれませんか?」

「おう!いいぜ!」

ナナは燃堂からプロフィール書類を受け取り、その内容を目に通す。
…が、そこに書かれていた情報は彼女が想像していたものとは違うものであった。

(堀裕子、職業アイドル、年齢16歳、自らをエスパーユッコと称しスプーン曲げのためのスプーンを常に持ち歩いてる…か)

(………これを見た限りでは、このアイドルが能力者だということはあくまで自称であり、本物だとは思えないな)

てっきり自分に与えられたプロフィールと同じように、とんでもない能力者について書かれているのかと思ったが、それは杞憂であった。
プロフィールを隅々まで見てもこのアイドルが能力者であるといった記述は見当たらなかった。
自称しているところからすると、単なるキャラ付けか思い込みだと考える方が自然だろう。
よって、このプロフィールの人物はあくまで自称能力者な一般人だと判断することとした。

「ありがとうございました。もう結構です」

「お?そうか?」

本物の能力者ならば直接的にその情報を記すだろうが、そのような書かれ方はしていなかった。
もうこれ以上堀裕子という人物について考察する必要は無いだろうとプロフィールは燃堂へと返却することとした。




310 : 能力者たちはどこかにいる ◆5IjCIYVjCc :2021/04/20(火) 19:53:26 BTMKvOTI0
そして今度こそ本来するつもりだった話を切り出した。

「さてと…これを見てください。この中に燃堂さんの知っている名前はありますか?」

ナナは名簿を燃堂にも見やすいようにテーブルの上に広げ置いた。
先ほどのように一人で勝手に確認させようとしても別のことに興味を移してしまう可能性がある以上、こうしてでも確実に見せる形にする方がいいだろう。

「おー、こいつ見覚えあんなあ」

燃堂はそう言って一つの名前を指さした。
それは「鳥束零太」の名前であった。

「この鳥束零太という方は一体どのような人なのですか?」

「隣のクラスの転校生だべ。確かユーレーが見えるとか言ってたなあ」

「幽霊が?」

「まあインチキだろーがな!オレっちのシュゴレーはババアとか言ってたし」

(幽霊が見える…霊視というものか?)

(確証も無いしインチキと言われているが、ここで新たな能力者の存在を知ることになるとはな…)

(だが、この情報だけでは殺し合いに役立てることはできないだろうな)

幽霊というものが本当に存在するかどうかは証明することもできない。
本人に出会ったわけでもないから、鳥束零太という人物が本物の能力者かどうかも確かめようがない。
更にはこの場では身体が変わっていることもあり、本物だとしても能力が使えない可能性だって考えられる。
せっかくの情報だが、能力者としての利用は不可能と考えた方がいいだろう。
せいぜい本物だと確信を得られた時に、自分が殺害すべき人物候補に入るだけのことである。

(けれども…能力が本物かどうかはともかく、この鳥束零太には一つ気になることがある)

「鳥束さんは私の体である斉木楠雄さんと何らかの関係があったりしますか?」

「お?相棒とか?たまに話してるとこ見たことあるけどよー」

「…なるほど、そうですか」

(…ようやくこいつから有用な情報を引き出すことができたようだな)

柊ナナは燃堂から斉木楠雄に関する情報を聞き出すことを諦めることとした。
殺し合いのことも、特殊ルールのことも理解していないこのバカと会話を成り立たせるのはもはや不可能であろう。
ならばいっそ、斉木楠雄のことは別の人物から聞き出せばいいだけのことである。
そして今、それに該当しそうな者を知ることができた。

ナナは鳥束零太がどのような人物であるのかをほとんど知らない(今知ったばかりだから当然である)。
この広い殺し合いの舞台で出会えるかどうかは、犬飼ミチルについて考えた時と同様、簡単に狙えるものではない。
しかし、この人物は斉木楠雄絡みの情報の入手先としては燃堂力よりも役立つ可能性がある。
つまり、彼は名簿に記された名前の中でも捜索の優先順位は上の方にした方がいいのかもしれない。

斉木楠雄が本当に超能力者であるかどうかは、やはりプロフィールだけではいまいち真偽を確かめにくい。
この懸案事項を解決できるかもしれない突破口が見えただけでも、今回は良しとするべきだろう。



(後はこいつをどうするべきか)

ある程度の方針が固まったため、燃堂力はこれ以上自分が共に行動する理由はほとんどなくなったと言えるだろう。
むしろ行動を共にしたくない理由の方が数多く挙げられる。
しかし下手に置いていってしまうと今後何らかの良くない影響が出るかもしれないという予感もあった。

果たしてナナは燃堂をこの後どう扱うべきなのか、彼女自身も悩んでいた。


一方の燃堂の方はというと…

「ヌヌヌ…!」

再びレンゲを強引に曲げようとしていた。

「まだやっているんですか…。それ陶器だから無理に力を加えても曲がるんじゃなくて割れてしまいますよ…」

ナナはそれに対してツッコミを入れてしまった。

(全く、こいつの行動は本当に予測がつかないな。本来の姿は一体どんなものなんだ)

ふと、ナナは彼の元の体についても気になった。
今は可愛らしい容姿をしているが、これまでの言動から今とはかなりかけ離れた間抜けそうな顔のイメージが頭に浮かぶ。

そして、実際の燃堂の体は彼女が想像しているよりも凶悪そうな容姿をしている。
さらには、その体になっている参加者はこの殺し合いの舞台に存在している。
彼女がそれに出会えるか否かについては、また別の話になるだろう。


311 : 能力者たちはどこかにいる ◆5IjCIYVjCc :2021/04/20(火) 19:53:57 BTMKvOTI0
【E-1 街 ラーメン店内/深夜】

【柊ナナ@無能なナナ】
[身体]:斉木楠雄@斉木楠雄のΨ難
[状態]:健康、精神的疲労
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:まずは脱出方法を探す。他の脱出方法が見つからなければ優勝狙い
1:これから燃堂をどうするべきか
2:鳥束零太から斉木楠雄に関する情報を聞き出したい
3:斉木楠雄が本当に超能力者かどうかはっきりとさせたい
4:犬飼ミチルとは可能なら合流しておく。能力にはあまり期待しない
5:鳥束零太が能力者かどうかも一応確かめておきたい
6:首輪の解除方法を探しておきたい
7:能力者がいたならば殺害する
[備考]
・原作5話終了直後辺りからの参戦とします。
・斉木楠雄が殺し合いの主催にいる可能性を疑っています。
・超能力者は基本的には使用できません。
・ですが、何かのきっかけで一部なら使える可能性があるかもしれません。

【燃堂力@斉木楠雄のΨ難】
[身体]:堀裕子@アイドルマスターシンデレラガールズ
[状態]:健康
[装備]:陶器製のレンゲ(店内に備え付けられていたもので支給品ではない)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:お?
1:お?
[備考]
・殺し合いについてよく分かっていないようです。
・柊ナナを斉木楠雄の弟だと思っているようです。
・自分の体を使っている人物は堀裕子だと思っているようです。


312 : ◆5IjCIYVjCc :2021/04/20(火) 19:54:16 BTMKvOTI0
投下終了です。


313 : ◆.EKyuDaHEo :2021/04/20(火) 20:05:36 ZObSNuwU0
投下します


314 : 燃える決意 ◆.EKyuDaHEo :2021/04/20(火) 20:06:01 ZObSNuwU0
「はぁ...はぁ...疲れたゾ〜...」

しんのすけはあれから頼りになる人を見つけるために歩き続けていたが一向に見つからず、そして身体にも慣れていないため疲れが出ていた

「もう〜全然誰も見つからないゾ〜...どうしようかな〜...」

建物に寄りかかりながらそう呟いた、その時だった...

♪〜♪〜♪〜♪〜
『皆さんこんばんは。いかがお過ごしでしょうか』
「お?」

会場内に放送が鳴り響いた...


◆◆◆


『それでは、改めまして皆さんの健闘を、そしてこのバトル・ロワイアルが良きものとなることを祈っています』
♪〜♪〜♪〜♪〜
「ほうほう...全く分からなかったゾ」

放送が終わるとしんのすけは頷きはするが全然理解していなかった
見た目は大人でも中身は子供という逆コナンのような状態なので無理はない

「とりあえず人探し続けますかな〜!」

立ち上がり背伸びをして歩き出す、そうしようと思ったその時

「そこの青年!!」
「お?」

声が聞こえた方を振り向くとそこには赤い帯を頭に巻き付けた筋肉質の男がいた


遡ること5分前...


◆◆◆


315 : 燃える決意 ◆.EKyuDaHEo :2021/04/20(火) 20:06:15 ZObSNuwU0


「悲鳴嶼殿に胡蝶に黄色い髪の少年、それに...お館様までも...」

煉獄は放送を聞いて名簿を見ると同じ鬼殺隊の者達、そしてお館様、産屋敷耀哉までもがこの殺し合いの場に連れてこられていた

「お館様や鬼殺隊の者達とも合流したいが...この姿では厳しそうだ...」

お互い姿が変わっている以上仲間達と会うのは厳しいと判断した煉獄、そして...

「鬼舞辻無惨...!」

煉獄は無惨の名前を声に出すと同時に怒りが湧いてきた
鬼を誕生させた元凶でもあり、人々を鬼に変えて襲わせた人物、鬼舞辻無惨。
その無惨もこの殺し合いの場に連れてこられていた
鬼殺隊が自分含め4人しかいないこの状況で絶対に生き残らなければという想いが煉獄の心をさらに強くしていた
しかし今は身体が変わっているため下手に動くと致命傷を負うかもしれない、煉獄はそう考えると深呼吸をして落ち着きさっきの放送を思い返した

「先ほどの放送で言っていたボンドルドという男...」

さっきの放送で自分の名前を告げたボンドルドという男、煉獄はその男についてあることを思った

「鬼ではないのか...?」

煉獄はそう思った
それも無理はない、鬼を作った元凶である無惨も参加者として連れてこられている、無惨よりさらに強い鬼がいるとは聞いたことがない、そもそも鬼は無惨が誕生させた存在だ
そうなると上弦の鬼や他の鬼がこの殺し合いを作り無惨を呼んだという可能性も考えてみたがどう考えてもあり得ない
そもそも鬼達は無惨から血を分けて貰い上弦になることを望んでいる、無惨を殺し合いに参加させて殺すというのは100%ないといっても過言ではない

「だがどちらにせよこんな事態を起こす者だ、俺がすることは主催を滅するのみ!」

主催が鬼なのかどうかは分からない、しかしこんな事態を引き起こす主催は滅する必要がある、煉獄はそう考えを改めた

「とにかく、今は他の参加者と遭遇したいところだな...」

無惨をここに連れてこられる程の力をもっているであろう主催は自分一人では到底相手にできないだろう、身体が入れ替わって扱いにくいなら尚更だ、とりあえず協力してくれる人と遭遇したいと煉獄は考えた、確かに下手に出くわしそれが殺し合いに乗った者なら危険かもしれない...だがいつまでもこの姿で居るわけにもいかないし持ち主にも申し訳ない、そう考え辺りを見渡すと...

「む?」

煉獄が見つけたのは特徴的な髪型をしており山吹色の道着を着ていてガタイがよく、首輪をつけている男...この殺し合いの参加者だった

「ひとまずあの青年に伺ってみよう」

そう思い煉獄は男に声をかけた

「そこの青年!!」
「お?」

こうして二人は出会った...


◆◆◆


316 : 燃える決意 ◆.EKyuDaHEo :2021/04/20(火) 20:07:09 ZObSNuwU0


「オラに何か用?」
「うむ!君に聞きたいことがある!」

煉獄がそう言うとまず一つ目の質問をした

「まずは一つ目だ!君の名前を聞かせてほしい!」
「オラ野原しんのすけ!ふたば幼稚園のひまわり組に通ってる5歳だゾ!」
「...そうか...」

煉獄はしんのすけの自己紹介を聞いて深刻な顔をした

(5歳...精神と身体が入れ替わっているのは知っていたがこんなにも幼い少年まで連れてこられていたとは...)

5歳というあまりにも幼い年齢の子供が連れてこられていたことに心底驚いていた...

「おじさんどうかしたの?」
「いや!大丈夫だ!それに俺はおじさんではないぞ!俺は煉獄杏寿郎だ!」
「ほうほう、じゃあ煉獄のお兄さんですな〜」

そんな会話をしているとしんのすけが再び聞き返す

「そういえば煉獄のお兄さん、さっき一つ目の質問っていってたけどまだ何かあるんじゃなかったの?」
「いや!それに関しては解決したから大丈夫だ!」
「ほうほう、自分で解ケツできるのはいいことですな〜」

煉獄の返答にしんのすけは納得した
煉獄の2つ目の質問は何だったのか、それは『殺し合いに乗っているかどうか』
本来なら殺し合いの場で誰しもが聞く質問であろう...では煉獄は何故聞かなかったのか

それは『しんのすけが5歳』だからだ
5歳という小さな子供に殺し合いに乗るかどうか聞く以前に殺し合いを理解しているはずもない...例え教えてあげてもパニックになってしまえば殺し合いに乗ったものに見つかりやすくなってしまう...
ましてや殺し合いのことを知らなくても突然知らない場所に連れてこられたら混乱したり泣いたりするだろう...しかししんのすけはその様子は全くなく、それどころか明るく振る舞っていた...煉獄はそれを見て凄いと思った...

しかしやはり幼い子供を一人にしておくことはできないので煉獄はしんのすけに一つの提案をする

「しんのすけ少年!良かったら俺と一緒に行動しないか?」
「オラは出来れば綺麗なお姉さんとが良かったけど...お兄さんは頼りになる人なの?」
「うむ!例え何が起ころうと君は俺が守ろう!」
「おー!何だか正義のヒーローみたいですな〜」
「ひーろー?それはなんだ!」
「ヒーローっていうのは悪者を倒す正義の味方だゾ〜!」
「そうか!正義の味方か!素晴らしい言葉だな!」

しんのすけの言った正義の味方という言葉に煉獄は賛同した

「煉獄のお兄さん本当に頼りになりそうだから、オラついていくゾ!」
「うむ!そうするといい!」

そしてしんのすけが煉獄の提案に賛同し共に行動することになった

「ねぇ煉獄のお兄さん、煉獄のお兄さんはこれからどうするつもりだったの?」
「俺は主催を、つまり君の言う悪者を打倒しようとしている!」
「おー!だったらオラも一緒に戦うゾ〜!」
「何?」

しんのすけが煉獄と共に戦うということを言い出し煉獄は驚いた、確かに中々の筋肉質な大人の身体を持っているがそれでも中身は子供...どう考えても了承できなかった

「すまないがその提案には了承することはできない!」
「え〜何で〜?オラこんなに強そうな身体になったしオラも戦いたいゾ〜!」
「いくら身体が強そうな身体であっても君はまだ5歳だ、戦いに出すのは危険すぎる」
「オラ煉獄のお兄さんのお役に立ちたいゾ〜!オラも悪者をやっつけたいゾ〜!」
「しかし...」

確かに煉獄は主催を打倒するために人手が欲しかった、だからといって子供に戦わせたくはない...そう言おうと思った瞬間...


317 : 燃える決意 ◆.EKyuDaHEo :2021/04/20(火) 20:08:58 ZObSNuwU0

「オラだってやれば出来るゾ!ふんぬうぅぅぅぅ!!!」

ビュオォォォー!

「!?」

しんのすけが踏ん張ったと同時にとてつもない突風が煉獄を襲った...突然の突風に煉獄は驚いたが直ぐに足に力を入れ突風に耐えた...
突風が終わるとしんのすけは疲れたのか座り込んだ、しんのすけの周りの地面には多少ヒビが入っていた

「はぁ...はぁ...お?」
(今の突風は...しんのすけ少年が力を込めたと同時に出てきたが...それにしんのすけ少年の周りにヒビが入っている...これはもしかすると...)

しんのすけ自信もヒビが入っていることに気付き、煉獄は今の状況を整理するとしんのすけに近づいた

「しんのすけ少年!バックに持ち主のプロフィールというものが入っていなかった?」
「あるゾ〜、ほいこれ」

煉獄はしんのすけから現在しんのすけが入っている身体の持ち主『孫悟空』という人物のプロフィールを見た

(...なるほど、とても信じがたいが別の世界がありこのような者もいるのだな...)

煉獄は孫悟空のプロフィールを見て色々なところに目が入った、彼が人間ではなく『サイヤ人』という種族のこと、『かめはめ波』、『瞬間移動』などの技が使えること、そして何度も地球を救っていること...
煉獄のいた世界では『サイヤ人』という種族はいない、つまり別の世界がありそこに存在している種族だということ...にわかには信じがたいことだが実際目の前に孫悟空の身体を持ったしんのすけがいるのだから本当のことなのだろう

(ということはしんのすけ少年が孫悟空という者の身体に慣れ始めているということなのか...?)

さっきの出来事はとても一般人じゃできないことだし柱である自分でもそんなことはできない...そうなると孫悟空自身にそれほどの力があり、しんのすけがその身体に慣れ始めているという可能性が出てくる
そう考えるとしんのすけを鍛えればますます慣れていきさっきプロフィールで書いていた技を出せるかもしれない...そうなればしんのすけ自身で自分の身を守れるかもしれないし共に戦うこともできるかもしれない...しかし、やはり中身が子供なため不安の方が大きくなる...そこで煉獄はしんのすけに聞いた

「しんのすけ少年!君は何故そこまでして悪者と戦いたいのだ?」
「それは悪者は色んな人にひどいことをするからだゾ!そんな人達をおたすけするのが正義のヒーローなんだゾ!オラも正義のヒーローとして悪者をやっつけたいんだゾ!」

しんのすけの言葉は子供のような純粋さもあり誰かを助けたいという強い気持ちもあった、そしてそれを聞いた煉獄は...

「うむ!そうか!君の意見はとても素晴らしいものだ!そこまで言うのなら共に戦おう!」
「本当?わーい!わーい!」

正直子供を戦わせるのは危険すぎる...しかしここまで誰かのために頑張りたいという気持ちを踏みにじることは煉獄にはできなかった...
それもあって煉獄は了承した...無論、いざとなれば何があってもしんのすけは自分が守るという気持ちを持って...

「しかし、正直もっと人手が欲しいところだ!しんのすけ少年!共に協力してくれる者を探しに行こう!」
「ほーい!」

こうして二人は歩き始めた...やる気に満ちた炎のように燃え上がる決意を込めて...

【D-6 街/深夜】

【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[身体]:孫悟空@ドラゴンボール
[状態]:疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本行動方針:悪者をやっつける
1:煉獄のお兄さんについていく
2:困っている人がいたらおたすけしたい
[備考]
※殺し合いについて理解していません
※身体に慣れていないため力は普通の一般人ぐらいしか出せません、慣れれば技が出せるかもです(もし出せるとしたら威力は物を破壊できるぐらい、そして消耗が激しいです)
※自分が孫悟空の身体に慣れてきていることにまだ気づいていません

【煉獄杏寿郎@鬼滅の刃】
[身体]:相楽左之助@るろうに剣心
[状態]:健康
[装備]:無限刃@るろうに剣心
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:主催者の打倒
1:しんのすけ少年と行動する
2:他にも協力してくれるものを探す
3:信じがたいが別の世界があるのだな...
[備考]
※参戦時期は死亡後
※孫悟空のことについてだいたい理解しました


318 : 燃える決意 ◆.EKyuDaHEo :2021/04/20(火) 20:09:14 ZObSNuwU0
投下終了します


319 : 燃える決意 ◆.EKyuDaHEo :2021/04/20(火) 23:20:33 ZObSNuwU0
すみません、しんのすけの状態表の備考に
「※まだ名簿はみていません」
を追加します


320 : ◆ytUSxp038U :2021/04/21(水) 04:26:19 YEQj8Wyg0
投下します


321 : それぞれのジャスティス ◆ytUSxp038U :2021/04/21(水) 04:30:03 YEQj8Wyg0
「なんだよ、殺し合いっつった癖に誰とも会わねえじゃねーかよ。あーつまんね」

(一応)正義のヒーロー、アーマージャックはそうぼやく。
主催者による放送の後、適当な参加者を血祭りにあげようとブラついていたが、その間誰とも遭遇することなく時間ばかりが過ぎて行き、気が付いたら市街地を出て南に向かっていた。
やりたい放題できるとテンションが上がっていたのに、これでは興醒めも良い所だ。

「さっきの…ボンドルドだったか?わざわざつっまんねぇ放送しやがって!他にも仲間がいるみてえだが、お前は真っ先に殺すわ」

一応名簿は見たが、知っている名は一つも無かった。
尤も、誰が参加していようとアーマージャックにはどうでも良い事だった。
誰だろうと会う奴全員皆殺しなのだ。
あえて言えばただ殺すだけか、犯してから殺すかの違いがあるだけ。
ついでに元の身体の持ち主について記載された紙も、『怪獣から人々を守る』という記述を目にした途端、怒りで破り捨てた。
悪をぶち殺すのは自分のみで良いと思っているアーマージャックにとって、他のヒーローの情報など知りたくも無い。
放送では名簿以外にもあれこれ言っていたが、ほとんど適当に聞き流していた。
流石に禁止エリアに関しては注意した方が良いと頭の片隅に留めておいたが。

「あー誰でもいいからぶっ殺してぇ!こいつの切れ味を楽しみてえなぁ!!」

自分の支給品である刀を振り回し叫ぶ。
愛用のダブルスライサーでは無いが、これはこれで楽しめそうなので良しとした。
最初に殺した女のように素手で嬲るのも良いが、そればかりでは飽きてしまう。
折角の殺し合いなのだから、色々試してみた方が良いだろうとアーマージャックは思うのだった。

「大体俺様が出て来いって言ってんのに、誰も出て来ないのはおかしいよなぁ!?正義のヒーローの言う事に逆らうような悪はぶっ殺されても文句は言えねえよなぁ!!」

しかしアーマージャックの苛立ちとは裏腹に、参加者は全く姿を現さない。
いい加減ストレスで限界が近くなった時、ある事を思い出した。

「あ……そういやさっきの女の荷物、置いたまんまだったな…」

いきなり襲い掛かって来たので制裁も込めてたっぷり犯してやった、角が生えた女。
アーマージャックは知らないが名簿に累の母と載っている女も参加者なのだから、当然デイパックは所持していた。
これから行う大虐殺に気分が高揚するあまり、回収するのをうっかり忘れてしまった。
今から女の死体がある場所まで戻るのは面倒だが、戦利品を放置しておくのも気に入らない。
自分以外の誰かが図々しく持ち去る可能性だって十分ある。

「しゃーねぇ、戻るか。俺様の物を勝手に持って行こうって奴がいたら、ぶっ殺せばいいだけだしな」

デイパックに手を出そうとする輩がいたならば、この溜まりに溜まったストレスを発散する良い機会だ。
どうせだったら好みの女がいれば最高だと下品に笑いながら、アーマージャックは元来た道を引き返して行った。


◆◆◆


322 : それぞれのジャスティス ◆ytUSxp038U :2021/04/21(水) 04:30:56 YEQj8Wyg0
「ほぉ、こりゃ随分と酷い真似する奴がいたもんだ」

それなりの広さがある公園。
路地裏を抜けて来たエボルトが見下ろす先には、女の死体が一つあった。
頭部があったと思わしき場所には赤とピンクが混じった肉辺が散らばっており、元の顔は判別不可能である。
衣服は無理やり引き裂かれたのだろうか、病的なまでに白い裸体が余すことなく街頭に照らされていた。
よく見ると女の体は全身が全身が傷だらけで、両腕が有り得ない方向に曲がっている。
極めつけは女の下半身。
大きく開かれた股と、そこから仄かに漂う青臭さが鼻孔に侵入してくる。
女が何をされたかは明白だった。

「放送じゃあもうやる気満々な参加者もいるとか言ってたが、ちょいとやり過ぎじゃねえのか?」

殺すだけでは飽き足らず、惨たらしい凌辱行為にまで走ったのは間違いない。
どうやらただ単に願いを叶える為や生き残る為だけでなく、ゲーム感覚で殺し合いに乗った者もいるようだった。
血の気盛んなことでと呆れ交じりにに笑う。

「ま、お前にとっては気の毒だろうが、俺にとってはわざわざ首を落とす手間がはぶけたよ」

躊躇なく死体に手を伸ばすと、首に巻かれたリングを拾い上げる。
こびり付いたひき肉のようなモノを軽く振って落とすと、自身のデイパックに仕舞う。
これを戦兎に渡して解析ができれば、首輪の解除にぐっと近づくはず。
戦兎のことだから死体から首輪を回収するのに、相当抵抗を見せるだろう。

「そういう嫌な役目を引き受けてやったんだ。感謝して欲しいもんだね」

今も戦う力の無い連中を助ける為に奔走しているだろう男へ向けて、皮肉気に笑う。
死体の傍には手つかずのデイパックが投げ出されていた。
殺害者がうっかり忘れたのか、それとも拾う間もなくここから離れる必要に迫られたのかは知らない。
どちらにせよ、苦労せず使える道具が増えるのは良いことだ。
首輪と同じくそちらも回収しようと手を伸ばす。

「待て」

ピタリと、背後から聞こえた声にエボルトは動きを止める。
ゆっくり振り返ると、そこにいたのは一人の青年。
帽子の下から覗く瞳でエボルトを睨んでいる。
相手の険しい顔付きを見てエボルトは、即座にこの青年が何を考えているのか理解した。

「一応言っとくが、俺が来た時にはこのお嬢ちゃんはもうこうなってたよ」

特に焦らず弁明するが、青年の眼差しは変わらず、こちらを疑っているようだった。

「信じられないってんなら死体をよく見てみりゃ良いさ。それで分かるはずだぜ?」

ちょいちょいと手招きをしてやれば、青年は警戒を解かず慎重に死体の傍まで近づいた。

惨たらしいと言う他ない女の姿に青年、雨宮蓮は思わず顔を背けそうになった。
怪盗団のリーダーとしてシャドウとの戦いをそれなりにこなして来たつもりだが、本物の死体を直に見るのはこれが初めてだ。
最初に奇妙な空間に集められた時は、見せしめとして選ばれた人が殺されたと思いきや生き返り、再度殺されて混乱の方が強かった。
しかしこうして間近で死体を見ていると、自分は殺し合いに参加していると真に理解させられている気がしてならない。
顔があった部分に散らばるピンクの欠片と、むせ返りそうな死体の臭いに胃の奥から込み上げそうになるのを必死に抑える。

蓮はこの女性の事は何一つとして知らない。
善人だったかもしれないし、ひょっとしたら殺し合いに乗っていたのかもしれない。
だけど、どんな理由があったにせよ、こんな目に遭って良い理由は無いに決まっている。
蓮とて立派な高校生だ。性知識くらいはある。
だから目の前に横たわる女が、死ぬ前にどんな扱いをされたのかは想像がつく。
自然と拳を強く握り締めていた。
平然とこんな事をする何者かへの怒りが湧き上がる。
もっと早くに見つけていれば、助けられたんじゃないかと後悔が湧き上がる。
二つの感情が混ざり合うが、エボルトはお構いなしに問いかけて来た。

「で?俺が犯人じゃないって分かったか?」

その質問に蓮は――

→【分かった】
【分からない】

「…ああ、分かった」


323 : それぞれのジャスティス ◆ytUSxp038U :2021/04/21(水) 04:32:17 YEQj8Wyg0
その言葉は嘘でも適当に言ったのでもない。
死体となった女はほぼ間違いなく、性的に暴行されている。
既に乾いているが、股から流れ落ちている血と、顔を顰めたくなる青臭さがそれを物語っていた。
よって犯人は男性ということになる。
一方蓮の前にいるのは口調からして精神は男なのかもしれないが、身体は紛れも無く女性。
この時点で犯人からは外れる。

「分かってくれてなによりだ。疑われたままじゃあ俺も辛いんでねぇ」

軽薄な笑みを浮かべるエボルトに対し、蓮はまだ警戒を解いていない。
黙っていればおっとりした雰囲気の美人だが、中に入っている人物の言動が胡散臭過ぎて台無しだと思った。
蓮はこの女に対し――

【信じてみる】
→【警戒は解かず、もう少し話してみる】
【君可愛いね】

女が殺しの犯人でないのは分かった。
しかし、仮にも人が死んだというのに何故こうも飄々とした態度を取れるのか。
女への不信感が募りだす。
だが彼女は自分がこの地で初めて会った参加者。
怪盗団の仲間はこんな腐ったゲームには巻き込まれていない事は名簿で確認した。
だが主催者と戦うには、仲間を集めるべきだと思う。
もう少し情報交換をしてみる価値はある気がする。
それにもしも殺し合いに乗っているのなら、ここで止めなくてはならない。

「やれやれ、まーだ疑ったままか?悲しいねぇ、おい」

わざとらしく目元を拭う姿に、余計怪しさが増す。
ひょっとして中身は良い年のおっさんではないかという蓮の思考は、突如として中断された。


「な〜〜〜にしてんだこのコソ泥どもがっ!!!!」


広場に怒声が響き渡る。
ズシンズシンという擬音が似合いそうな程、見るからに怒り心頭といった様子で現れたのは、筋肉質の異形だった。
吊り上がった瞳で睥睨するこの異形こそ、デイパックの回収に戻って来たアーマージャックである。
アーマージャックは怒っていた。
自分の戦利品を勝手に持ち去ろうとする薄汚い悪党どもに。
同時に歓喜もしていた。
目の前にいるのは女。しかも顔と体共に最高のものを持っている。
まずは一緒に居る男を嬲り殺しにしてたっぷり怯えさせ、それからレイプしてやろうと意気込む。

「そこの女は俺が殺したんだ!だからそいつの荷物は俺の物に決まってるだろうがよ!!」

突如現れた宇宙人のような参加者に蓮は困惑するも、相手がこの死体を作った犯人だと知り睨み返す。

「何故この人を殺した?」
「あぁ?先に手を出してきたのはそいつだぞ?殺されて当然だろうが」
「にしちゃあ、仕方なく殺したって風には見えないこりゃ」
「何をほざいてやがんだこの女!正義のヒーローアーマージャック様のやる事にケチ付けようってのかぁ!?」

最初から殺すつもりだったが、アーマージャックはこの二人を絶対に許せない悪党と認識した。
刀を構えると嗜虐的な笑み(表情が変わらないので分かり辛いが)を浮かべる。
言動はヤクザも真っ青の滅茶苦茶っぷりだが、全身からは尋常でない程のプレッシャーが放たれていた。
アーマージャックの暴論に呆れていたエボルトだが、その威圧感に気を引き締める。
同様に蓮も並のシャドウを圧倒する程の力をアーマージャックから感じ、表情が強張った。

「どうやら面倒なのに当たっちまったみてえだな…」
「…下がっていてくれ。俺が相手をする」
「そいつは楽できそうで良いねぇ。だが、奴さんはそれを許しちゃくれないだろうよ」

言うや否や、活性化させたボトルをトランスチームガンに叩き込む。
どうしてこうなったのやら、と愚痴りたくなったが今はそんな場合ではない。

「蒸血」

――MIST MATCH
――COBRA…C・COBRA…FIRE

「…アルセーヌ!!」

ワインレッドの装甲を纏った怪人、ブラッドスターク。
シルクハットに似た頭部を持つペルソナ、アルセーヌ。
一瞬驚いて互いを見やるエボルトと蓮だが、すぐにアーマージャックへ向き直る。
話なら後で幾らでも聞ける。その為にはここを乗り切らねばならない。


324 : それぞれのジャスティス ◆ytUSxp038U :2021/04/21(水) 04:34:00 YEQj8Wyg0
真っ先に動いたのはブラッドスターク。トランスチームガンの引き金を引く。
蒸気を纏った硬化弾がアーマージャックの胴体に命中。
だがアーマージャックは銃弾の直撃に怯む所か、雄たけびを上げて突っ込んできた。

「エイハ!」

それを黙って見ている蓮ではない。
呪怨属性のスキルがアーマージャックに叩き込まれる。
だが相手は僅かに鬱陶し気に体を揺らすのみ。まともなダメージが無いことは一目瞭然だった。

「ウラァッ!!」

アーマージャックが振り下ろす刀を、ブラッドスタークはスチームブレードで受け止めた。
火花を散らしながら互いの刃をぶつけ合う。
数度の打ち合いでブラッドスタークは、相手の膂力のが上だと即座に理解。
まともに打ち合ってはこちらの腕が使い物にならなくなる故に、敵の刃を受け流す戦法に切り替える。

「ダセぇもん着込んでんじゃねえよ!すぐに中の服毎引き裂いて、たっぷり調教してやるよぉぉぉ!!」
「生憎だが、そんな気色悪い真似はお断りだねぇ!!」

アーマージャックの動きはまるで暴風のようだ。
技術も何もない、ただ力任せに刀を振るうだけのシンプルな戦い方。
しかし、与えられた肉体の能力によりたったそれだけでも十分過ぎる程の脅威となっていた。
対するブラッドスタークの動きは蛇のようである。
単純な肉体スペックではアーマージャックに及ばないが、それを補う技能により猛攻を巧みに躱し、受け流す。
そうやって凌いではいるが、長引けば確実にエボルトが不利となる。

だが忘れてはならない。
この場にはもう一人いることを。

「ペルソナ!」

再度アルセーヌのスキルを蓮は発動する。
攻撃の効きはかなり薄いが、アルセーヌのスキルはエイハのみではない。
ブラッドスタークと斬り合っているアーマージャックは、蓮の攻撃は脅威にならないと判断したのか、避ける素振りも見せない。
そしてスキルが発動しても、アーマージャックは何の痛みも感じない。
やはり取るに足らない雑魚と内心嗤うが、すぐにそれが間違いと気付いた。

「どうしたぁ!動きが鈍くなったんじゃないかぁ!?」

ブラッドスタークの言葉通り、アーマージャックの攻撃のキレが目に見えて落ちている。
あれ程の猛攻は幾らかの余裕を持って回避され、反対にスチームブレードの斬撃がいくつも命中する。
何をしやがったと蓮を睨みつけるが、返答代わりにスラッシュを放った。

「あああああああ!ウゼェなクソッタレ!!チクチクして気持ち悪いんだよ!!」

やはり効果は薄い。
しかしもう一つは効いたようだ。

スクンダ。敵一体の命中率と回避率を下げるスキル。
如何に強力な攻撃だろうと、当たらなければ意味は無い。馬のチンチンにより強化されていた命中率が下げられた。
見下していた相手からの思わぬ攻撃に歯?みするアーマージャックへ、何度目かの斬撃が当たる。
蓮の援護を受けたブラッドスタークだが、仮面の下では相変わらず険しい表情を作っていた。
確かにこちらの攻撃はよく当たるようになった。しかしほとんど効いていない。
まるで棒切れで大岩を叩いているような気分にになる。

それも当然。
アーマージャックに与えられた身体の名はサンダーブレスター。
ウルトラマンオーブが闇と光の力、ウルトラマンベリアルとゾフィーのカードでフュージョンアップした形態である。
それまでオーブを苦戦させた大魔王獣を、一方的に追い詰める程の戦闘力と耐久力を持つ。
殺し合いにおいては等身大にまでサイズが縮小されているが、その力は健在。
更に彼が装備している馬のチンチンは、その卑猥な名前とは裏腹に装着者を強化するアイテム。
ただでさえ強大な力を持つサンダーブレスターが、より強さに磨きをかけているのだ。

埒が明かないと判断したブラッドスタークは、アーマージャックへ向けて頭部を突きだす。
頭突き、ではなく、煙突型ユニットより煙が噴き出した。
黒く濁った気体が顔面に直撃しアーマージャックはのけぞった隙に、後方へ大きく転がり距離を取る。


325 : それぞれのジャスティス ◆ytUSxp038U :2021/04/21(水) 04:36:05 YEQj8Wyg0
――RIFLE MODE

「そうら!こいつは効くぜぇ!」

――COBRA!STEAM SHOT!COBRA!

耳をつんざく電子音声と共に銃弾が放たれた。
巨大な蛇の形となった弾丸は、アーマージャックを喰い殺さんと牙を剥き出しに迫る。

「ペルソナ!」

駄目押しとばかりに放たれるのは、スクンダ。
再度回避能力を削られたアーマージャックへ、エネルギー弾が直撃した。

これならいけたと思った。
倒せずとも相応のダメージは与えられていると。
しかしそんな期待は呆気なく打ち砕かれる。

「やっぱり無理か…」

うんざりした呟きがブラッドスタークから漏れる。
爆風が晴れると、アーマージャックの五体満足な姿が露わとなる。

「雑魚にしちゃあ良くやった方だがな、いい加減鬱陶しいんだよ!」

怒声と共に刀をブラッドスターク目掛けて投擲する。
横に飛んで回避するのと、アーマージャックが蓮の元へ急接近したのはほぼ同時。

「っ!!アルセーヌ!」
「消えろ!!」

咄嗟にアルセーヌを出現させはできた。だがそれだけだ。
アーマージャックの拳はアルセーヌに容赦なく叩き込まれた。

「がっ…」

ペルソナが受けたダメージのフィードバック。
人体を引き裂き、コンクリートも障子紙のように貫く拳を、防御もできずモロに食らった蓮はその場に崩れ落ちる。
すぐに立ち上がらなくては。
頭ではそう分かっているのに、身体は動いてくれない。

「身の程を知ったかよ雑魚が。なぁおいどんな気持ちだぁ〜?」

粘っこい嘲りと共にアーマージャックが蓮を見下ろす。
ギラギラとした人間のものではない瞳に宿る感情に、蓮は見覚えがあった。
理不尽を振りかざし、己の欲で他人を傷つける歪んだ大人。
パレスの主と同じだ。

――ELECTRIC STEAM!

電撃を纏った刃が振り下ろされるのを、アーマージャックは片腕で受け止める。

「ビリビリビリビリ、マッサージかこりゃよ!電気が好きなら、お前の×××に突っ込んで痺れさせてやらぁ!!」
「気色悪いにも程がある奴だなぁおい!!」

武器を自ら手放したアーマージャックは、自らの腕でスチームブレードとぶつかり合う。
だが不利なのは変わらずブラッドスタークの方だった。
どれだけ剣を振るっても皮一枚斬れない上に、アーマージャックの動きが激しさを取り戻す。
スクンダが切れたのだ。

二人の戦いを目にし、蓮は――

→【立ち上がる】
【もう諦めるしかない】

震える体に鞭を打って立ち上がる。
正直今でも変身した女への不信感は消えていないが、だからといって共闘した相手を見捨てるなど真っ平だ。
それに、自分を見下ろした男の目を見てハッキリと分かった。こいつは絶対に許してはいけない。
あの男を放置したら、もっと多くの人が死ぬ。
殺された女の人のように、歪み切った欲望の捌け口にされ絶望する人が大勢現れる。
そんな事は絶対にダメだ。

勝ち目は薄い。ペルソナチェンジが使えるならまだしも、アルセーヌだけでは厳しい。
やはり無理なんじゃないかと浮かんだ、弱気な心を押しのける。
あの日、秀尽への転向初日に自分がペルソナ使いになった瞬間を思い出せ。
理不尽で誰かを傷つける大人が、竜司をリンチし殺そうとした鴨志田が許せなかったから。
その想いは今も変わらない。
だから戦え。


326 : それぞれのジャスティス ◆ytUSxp038U :2021/04/21(水) 04:37:25 YEQj8Wyg0
そう己を鼓舞する蓮がふと視線をズラすと、戦闘の余波が原因なのか、殺された女性のデイパックの口が裂け中身が散らばっている。
その中に一つ、見覚えのある物が転がっていた。
アレを使えば勝てるかもしれない。だが絶対とは言い切れない。
むしろ使った所で何の意味もない可能性だってある。
だが他に良い案も無いのなら、賭けてみるのみ。

覚悟を決めた蓮は、『スキルカード』を掴み発動する。
対象は自身の分身。
アルセーヌに新たな力が宿るのを感じた蓮は、アーマージャックへ向き直る。
剛腕による連撃によりブラッドスタークが吹き飛ばされた。
共闘相手の危機に、蓮は迷わず叫んだ。

「ペルソナ!!」

アーマージャックの体を、何とも言えない気持ち悪さが包んだ。
いい加減蓮の存在が鬱陶しくなったアーマージャックは、先に始末しようと飛び掛かる。

「そろそろいい加減にしとけよ!」

――STEAM BREAK!COBRA!

アーマージャックの拳が蓮へ届くより先に、エネルギー弾がぶち当たる。
吹き飛ばされるアーマージャックは、さっきは感じなかった痛みに呻いた。

「いでででで!!な、何でこんな痛いんだよ!?」

何度攻撃を受けてもノーダメージだっただけに、いきなり感じた痛みに混乱する。
スキルカードによりアルセーヌが新たに習得したスキルは『ラクンダ』。
敵一体の防御力を下げる効果により、サンダーブレスターの耐久力を弱体化させた事により、やっとマトモなダメージを与える事ができた。

「よし、これで……」

続けてスキルを放とうとするが、蓮は息が上がっている。
フィードバックのダメージは無視できるものではない。
それでもここでアーマージャックを倒さなくてはと己を奮い立たせる。

「ここいらが引き時か…」

だが蓮がスキルを放つ前にブラッドスタークが動いた。
いつの間にか蓮の隣に並び、トランスチームガンの引き金を引く。
銃口から噴射された黒い煙があっという間に二人を包んだ。

「あっ!逃げる気かテメェら!」
「これ以上戦っても勝てる気がしないんでね。お前とは二度と会わない事を祈ってるよ。CIAO(チャオ)♪」

煙に向けて慌てて手を伸ばすが、何かを掴むことは無く、視界が晴れた時には二人の姿は消えていた。
自分に舐めた真似をした連中を逃がした。
ストレス発散どころか余計にイライラが溜まる結果となり、アーマージャックは地団駄を踏む。

「ふっ、ふざけやがって〜〜〜〜!!!このままで済むと思うなよあいつらぁあああああああ!!絶対調教してやる!!!」

こうまで自分をコケにした連中は絶対に許さない。
身勝手な正義のヒーローの叫びが、虚しく響いていた。


【E-7 公園/黎明】

【アーマージャック@突撃!!アーマージャック】
[身体]:ウルトラマンオーブ・サンダーブレスター@ウルトラマンオーブ
[状態]:疲労(小)、ダメージ(小)、ラクンダにより防御力低下、主催者に対するストレス(大)、さっきの二人組(エボルトと蓮)に対する苛立ち(大)
[装備]:馬のチンチン@魔界戦記ディスガイア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:主催者をぶっ殺す。そのために参加者を皆殺しにして優勝する。
1:みんなぶっ殺してやる。そのために会場内を探索する。
2:さっきの二人は絶対に殺す。特に女の方は徹底的に調教してから殺す。
3:男はそのままぶっ殺す。女はレ〇プしてから殺す。
4:あ〜、早くだれかぶっ殺してえ〜。
[備考]
製作会社公認のパロディAV『悶絶!!アーマージャック』の要素も混ざっております。
ラクンダの効果はまだ続いていますが、長くは続きません。

※付近に物干し竿@Fate/stay night、累の母のデイパック(基本支給品、ランダム支給品0〜2、中身が散らばっている)が落ちています。

【物干し竿@Fate/stay night】
佐々木小次郎の愛刀である五尺余りの備中青江。


◆◆◆


327 : それぞれのジャスティス ◆ytUSxp038U :2021/04/21(水) 04:39:59 YEQj8Wyg0
「はぁ…何とか生き延びれたな」

薄汚れた部屋で、変身を解いたエボルトは疲れ切ったように言う。

トランスチームガンの機能を使ってあの場から離脱し、近くの建物に身を潜めた。
本当はもっと遠くまで移動したかったが、主催者に細工でもされたのかここまでが限界だった。
どうやらそこは喫茶店のようで、今はその二階、屋根裏部屋にいる。
一応少し前まで自分も喫茶店のマスターをしていたので、こんな状況でなければ他店のコーヒーにも興味は出たかもしれない。
そんなどうでも良い事を思いつつ、ベッドに腰掛ける青年へ口を開く。

「あんなのと遭遇するなんざ、お互い災難だったとは思わないか?」

青年、蓮はその言葉に「そうかも」とだけ返す。
逃げ延びた当初は、何故か自分が居候している喫茶店が殺し合いの会場に存在していたのだから、目を見開き固まったものだ。
しかも自分の部屋である屋根裏の私物まで、ほぼ忠実に再現されている。
わざわざ殺し合いの為にこうして用意するとは、主催者は相当趣味が悪いらしい。

「ま、何にせよ暫くは休んだ方が良いだろうよ。そんなフラフラで出て行ったって返り討ちに遭うだけだぜ」

自分の隣に腰掛けた女の言葉に、蓮は押し黙る。
本音を言えば今すぐにでもさっきの男を止めたい。
しかしこれだけ消耗した状態で出て行ったとしても、何も出来ずに今度こそ殺されてしまうのは確実だ。
女の言う通り今は休むのが一番なのだろう。

胡散臭い相手ではあるが、こうして助けてもらったのは事実。
信用はできないが、礼くらいは言うべきだと思う。
蓮は女へ――

→【礼を言う】
【礼を言わない】
【俺のベッドだよ?】

ありがとう、と告げると同時に体の力が抜けた。
いい加減体力の限界が来たようだった。
自分の物ではない体で無茶をしてしまった事に、今更ながら申し訳ないと思う。
元の体に戻れて、この体の持ち主に会うことができたら、その時はちゃんと謝ろう。
そんな事を考えながら、蓮の体は横に倒れた。

「……は?」

ポカンと間抜けな表情で、エボルトは蓮を見る。
この青年は疲労の余り意識を手放したらしい。
それは良いが倒れた先は自分の、正確に言えば千雪の膝の上だった。

「おいおい……」

意図せず膝枕の体勢になってしまい、天を仰ぐ。
先ほどの異星人らしき男といい、この青年といい、自分を女扱いしてくるのは勘弁して欲しかった。
エイリアンとはいえ自分の元々の性別は男だ。

一先ずこれからどうするかを考える。

先ほどの戦闘で理解したが、あの異星人のような参加者が他にもいるのなら、やはりブラッドスタークだけで生き残るのは厳しい。
いずれは主催者と戦い力を奪う気でいる以上、先ほどよりも苦戦は免れないだろう。
尤も今の身体では仮にエボルドライバーを取り戻せたとしても、肝心の変身が可能かは微妙なところである。

(どっかでフルボトルでも手に入れば少しはマシになるか…。後はこいつみたいな戦力になる参加者を引き入れて何とかするしかねえな)

蓮を助けたのは何も情が湧いたとかそんな理由ではない。
ただ単に利用価値があるから。
奇妙な人型を出す能力が無ければ、先ほどの戦闘はもっとロクでもない結果になっていたかもしれない。
どうやら自分を完全には信用していないようだが、別にそこまで深い関係を築くつもりは無い。
上手く事を運ぶ為の駒として利用できればそれでいいのだから。

死体から支給品を手に入れられなかったのは残念だが、首輪を入手できたので良しとした。
後はこれを戦兎の所へ持って行ってやればいいだけだが、今どこにいるのかは不明。
足手纏いの一般人を守るのに気を取られ死ぬ、何て事態にはなってない事を祈る。

(にしても、さっきの奴は今頃怒り狂ってるだろうな。こんな女の身体なんぞに入れられたせいで、面倒なのに目を付けられちまった…。まぁ安心しろよぉ千雪。あんな奴の玩具にされるのは俺も御免なんでね)

ロクでもない性格の癖に能力は一級品。
できれば他の厄介な参加者と相打ちになって死んで欲しいものだ。

「まぁ、今は俺も休むか。不便だねぇ、人間の体ってのはよ」

とりあえずは自分の膝の上で、呑気に寝ている青年をどかす事から始めよう。


328 : それぞれのジャスティス ◆ytUSxp038U :2021/04/21(水) 04:41:06 YEQj8Wyg0
【D-6 純喫茶ルブラン/黎明】

【エボルト@仮面ライダービルド】
[身体]:桑山千雪@アイドルマスター シャイニーカラーズ
[状態]:ダメージ(小)、疲労(大)
[装備]:トランスチームガン@仮面ライダービルド、コブラロストフルボトル@仮面ライダービルド
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1、累の母の首輪
[思考・状況]
基本方針:主催者の持つ力を奪い、完全復活を果たす
1:今は休む。、暫くしたらこいつ(蓮)と話してみる
2:首輪を外す為に戦兎を探す。会えたら首輪を渡してやる
3:有益な情報を持つ参加者と接触する。戦力になる者は引き入れたい
4:自身の状態に疑問
5:今の所殺し合いに乗る気は無いが、他に手段が無いなら優勝狙いに切り替える
[備考]
※参戦時期は33話以前のどこか。
※他者の顔を変える、エネルギー波の放射などの能力は使えますが、他者への憑依は不可能となっています。
またブラッドスタークに変身できるだけのハザードレベルはありますが、エボルドライバーを使っての変身はできません。
※自身の状態を、精神だけを千雪の身体に移されたのではなく、千雪の身体にブラッド族の能力で憑依させられたまま固定されていると考えています。
また理由については主催者のミスか、何か目的があってのものと推測しています。
エボルトの考えが正しいか否かは後続の書き手にお任せします。

【雨宮蓮@ペルソナ5】
[身体]:左翔太郎@仮面ライダーW
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、体力消耗(小)、SP消費(中)、睡眠中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2、T2ジョーカーメモリ@仮面ライダーW
[思考・状況]基本方針:主催を打倒し、この催しを終わらせる。
0:……
1:まずは仲間を集めたい。
2:この女の人は余り信用できない。けど助けてもらった事には感謝している。
3:元の体の持ち主に対して少し申し訳なさを感じている。元の体に戻れたら無茶をした事を謝りたい。
[備考]
・参戦時期については少なくとも心の怪盗団を結成し、既に何人か改心させた後です。
・支給品は確認済みで、少なくとも武器や銃火器は入っていません。
・スキルカード@ペルソナ5を使用した事で、アルセーヌがラクンダを習得しました。

【スキルカード@ペルソナ5】
任意のスキルをペルソナに覚えさせることができるアイテム。

【純喫茶ルブラン@ペルソナ5】
元は四件茶屋の裏路地にある喫茶店。
マスターの佐倉惣治郎は保護観察中の主人公を居候として、二階に住まわせている。


329 : ◆ytUSxp038U :2021/04/21(水) 04:41:50 YEQj8Wyg0
投下終了です


330 : ◆ytUSxp038U :2021/04/21(水) 23:47:32 YEQj8Wyg0
状態表に抜けがあったのでwikiにて修正しました


331 : ◆ytUSxp038U :2021/04/23(金) 12:13:30 EyNbfOwc0
坂田銀時、志村新八を予約します


332 : ◆ytUSxp038U :2021/04/23(金) 22:31:10 EyNbfOwc0
投下します


333 : ◆ytUSxp038U :2021/04/23(金) 22:33:34 EyNbfOwc0
これはとんでもなくヤバい。いや、ヤバいなんてもんじゃあない。
自分達に襲い掛かった災難に、銀時は他人の体で青褪めた。

自分の体は両さんになり、新八は実写版と化している。
ジャンプの大先輩と、人気絶頂のイケメン俳優の体を勝手に使うのは、散々パロディネタをやってきた銀時としても焦らずにはいられない。
銀魂 THE FINALのBlue-ray発売中止だけで済めばまだマシな方だ。
秋○治先生もこれには激怒するのではないか。
幾ら実写版で新八役だったとはいえ、これには相手の事務所も法的措置を取るのではないか。
というか菅○将暉のファンに新八諸共刺されるんじゃないか。
次々と浮かんでくる最悪の未来図に、銀時は二日酔いでないにも関わらず吐きたくなってきた。

「おいどうすんだよこれ。あれか?日頃の行いが悪いから天罰でも下ったって言うのか?
 勘弁してくれよ神様。これからは心を入れ替えて家賃はなるべく払うし、従業員への給料も気が向いたら払うからよ」
「いや全然心入れ替えてねーよ。仮にも従業員の目の前でとんでもないブラック発言しちゃってるよこのマダオ」
「大体両さんだけでもヤベーのに、菅○将暉まで出て来ちまうとかもうどうにもならねーよ。
 両魂どころかもうこれ菅○くんのチ○コだよ。菅○くんのチ○コなんて全然勝てる気がしねーよ。ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロングアトミックバズーカくらいの破壊力じゃねーか」
「長ぇよ!ってかチ○コチ○コしつけーよ!しょうもねえ下ネタと菅○くんを合体させんじゃねぇ!それこそ訴えられるわ!!
 …いや、僕も最初は勘違いしたんですけど、この体はフィリップ君って言うらしいんですよ」

一頻りツッコむと新八は自分の体のプロフィールを銀時に話す。
現在新八が入っている体は実写版でも菅○将暉でもなく、フィリップという名の少年だと言う。
何でもフィリップは風都という街で相棒と共に探偵をしており、街に出没する怪人と戦うヒーローでもあるとのこと。
更に驚くべき事にフィリップは、『地球の本棚』という特殊な精神世界に入り込み、あらゆる情報を手に入れられる能力まで持っているらしい。

「おいおい、何だよその如何にも主人公って感じの盛りまくった設定は。新八の面影がゼロになっちまってるしよ」
「ですよね…。僕もプロフィール見た時は驚きましたし。ただその地球の本棚っていうのをどうすれば使えるのか分からなくて…」

地球の本棚を使えば殺し合いを止めるのに有益な情報が手に入るかもしれないと思ったが、一体どうやって入り込むのかは書かれていなかった。
どうやったら入り込むかが分からなければ、折角の能力も宝の持ち腐れでしかない。

少々落胆して新八が肩を落とした時、主催者による放送が流れた。


○○○


334 : ◆ytUSxp038U :2021/04/23(金) 22:34:46 EyNbfOwc0
「神楽ちゃんまで巻き込まれてるなんて…」

放送が終わり早速名簿を確認した所、知っている名はお互いのもの以外にも一つあった。
どうやら万屋メンバーの一員であるチャイナ娘、神楽も参加しているらしい。
姉である志村妙やその他に知り合いはいなかったので安堵はしたものの、新八としては会場のどこかにいる神楽の安否が気になった。

「神楽ちゃんは大丈夫かな…」
「あいつの事だから、麗子さんとかジョディとか纏の体になって有頂天になってんじゃねーの?
 『遂に私の時代が来たアル!姉御のオッパイ程度じゃ1万個でも私には敵わないネ!』とか言ってよ」
「何でこち亀キャラ限定なんですか。あと今の台詞、姉上に知られたら冗談抜きで殺されますよ。
 ってそうじゃなくて!神楽ちゃんだって別人の体になってるんなら、普段みたいに戦えないかもしれないですよ!」
「……」

神楽が夜兎族としての戦闘力を発揮できるのは、当然元の肉体の時だ。
どこの誰かも分からない、それこそ殴り合いの喧嘩すらロクにした事も無い人間の体入ってしまえば、神楽とてどうなるか分からない。
ひょっとしたら今この瞬間にも危機に陥っているのではと、嫌な想像が?き立てられる。

不安気な新八とは裏腹に、銀時は面倒そうに頭をかく。
自身の天然パーマとは違うゴツゴツとした角刈りの感触が手に伝わって来た。
しかし彼の眼は先程までとは違い、真剣なものと化していた。
銀時は確かに糖尿病持ちのちゃらんぽらんな男だが、仲間が危機かもしれないと知り、何感じないような男ではない。

「しゃーねぇ。ならとっとと神楽の奴を探すぞ。檸檬ちゃんの体にでも入って暴れられたら、ゴリラが抹殺されちまうよ。
 両魂から魂を取られて、去勢された状態になっちまう」
「いつまで下の話を引き摺ってんすかあんたは」

とにかくまずは自分達の仲間を探しに行く。
やるべき事は決まった。
と、ここで銀時が再度名簿に目をやり、芋虫のように太い眉毛を顰めた。

「しっかしこの名簿……ほとんど知らない連中ばっかりなのに、どうも気になるんだよなぁ」
「え、銀さんもですか?…実は僕も名簿を見てると違和感と言うか、知らないはずなのに、見覚えがあるみたいな気がするんですよね…」

二人揃って訝し気に名簿を眺める。
神楽以外に知っている名はないはずなのに、妙な引っ掛かりを感じていた。

「この悲鳴嶼さんなんて全然知らない奴なのに、どうも他人とは思えないしよ。自分のグッズだけ売れ残ってる事に泣いてんだろーな悲鳴嶼さん。
 念仏を唱える振りをして、内心ではグッズ買わなかった連中への呪詛を唱えてるんだろーぜきっと」
「いや何で知らない人なのに、妙な所だけ詳しいんですか」
「下手したらグッズ完売という夢を叶える為に、優勝を目指すかもしれねーよ悲鳴嶼さんは」
「そんなくだらねー事で殺し合いに乗る訳ねえだろ!どんなイメージ持ってんだよ悲鳴嶼さんに!悲鳴嶼さんはそんな人じゃねーよ!!」
「おいおい、お前に悲鳴嶼さんの何が分かるってんだよ」

会った事も無い相手へ謎の疑いを持つ銀時には、新八も反射的にツッコんだ。
結局違和感の正体も分からないので、解決のしようもない。
二人とも、何とも言えない気持ち悪さだけがじっとりと頭に残った。

「そういや両さんの体に気を取られて、まだ何が入ってんのかちゃんと見てなかったわ。ぱっつぁんはどうよ?」
「僕はもう確認しときましたよ」

そう言って新八がデイパックから取り出したのは三つの支給品。
鍔の無い刀、緑色のUSBメモリ、スロットらしきものが2つある赤い機械。
2つはフィリップが怪人と戦う際にヒーローへ変身する道具らしい。

「ただこれ、僕だけじゃ使えないみたいなんですよね…。左さんって言うフィリップ君の相棒が一緒じゃないとダメみたいで…」
「何だそりゃ。左曲がりなんて名簿に載って無いぞ、おい」
「銀さん、左です。余計なのが付いちゃってます」

名簿に左翔太郎の名は無いが、翔太郎の体に参加者が入っている可能性はある。
もしその者と協力できたならヒーロー、仮面ライダーへ変身し戦えるのだろう。
尤も、翔太郎の体に入っている者が殺し合いに乗っているかもしれず、その場合は当然協力など不可能であろうが。


335 : ◆ytUSxp038U :2021/04/23(金) 22:36:07 EyNbfOwc0
続いて銀時がデイパックの中を漁ると、出て来たのは刀。
間違いなく当たりの支給品だ。
自分自身の体では無いが、化け物染みた体力の持ち主である両さんの体なら大抵の敵に襲われても刀を振るって対処できる。
他には無いかと奥まで手を突っ込むと、何かが手に触れた。
その感触に銀時は目を見開いて、ソレを取り出す。

傷の無い薄いレンズ。
特徴の無い地味なフレーム。
ほぼ毎日目にしている……

「し、新八!?お前の体が出てきやがった…!!」
「いやまた本体ネタかよォォォォオオオオオオオオオ!!!」

声の限り新八はツッコむ。
何故わざわざ自分のメガネを支給するのか。それのよりによって銀時に。
主催者にどんな意図があるかは知る由も無いが、単なる嫌がらせとしか思えない。

「まさか早速自分の体を取り戻せるとは、運が良いじゃねーかぱっつぁんよ」
「どこがだよ!?何で別人の体になっても執拗にこのネタで弄られんだよ!もう皆本体ネタは飽き飽きしてんだろーが!!」
「しかしボンドルドの野郎、新八の体を物みたいに扱いやがって…。くっ、許せねえ…!」
「くっ、じゃねーよ!んな半笑いで言っても説得力ねーんだよ!」

ギャグ漫画の住人の宿命故か、こんな状況でも普段のノリでツッコミを入れてしまった。
早くも精神的に疲れてしまった新八だが、気を取り直して銀時と共に出発の準備をする。(メガネは一応受け取った)
神楽の無事を祈る新八に釣られてか、銀時も無意識に険しい表情を浮かべる。
両さんや菅○くんの体に気を取られ忘れそうになったが、今自分達がいるのは殺し合いの場。
この先何が起こるのか予想もつかない。
改めてロクでもない事に巻き込まれたと、小さくため息をついた。


【G-7 デパート 服飾品コーナー/深夜】

【坂田銀時@銀魂】
[身体]:両津勘吉@こちら葛飾区亀有公園前派出所
[状態]:健康
[装備]:朱雀@クロノトリガー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:元の体を取り返す
1:主催者を倒す。殺し合いには乗らない
2:新八と共に神楽を探す
【備考】
※メタ知識が制限されています。参戦作品(精神・身体両方)に関しては、現状では「何となく名前に見覚えがある気がする」程度しか分かりません。
こち亀に関してはある程度覚えているようです。

【志村新八@銀魂】
[身体]:フィリップ@仮面ライダーW
[状態]:健康
[装備]:フーの薄刃刀@鋼の錬金術師
[道具]:基本支給品、ダブルドライバー@仮面ライダーW、T2サイクロンメモリ@仮面ライダーW、新八のメガネ@銀魂
[思考・状況]基本方針:主催者を倒す
1:銀さんと行動する
2:銀さんと一緒に神楽ちゃんを探す
3:左翔太郎さんの体も誰か入ってるのか気になる
※メタ知識が制限されています。参戦作品(精神・身体両方)に関しては、現状では「何となく名前に見覚えがある気がする」程度しか分かりません。
こち亀に関してはある程度覚えているようです。

【朱雀@クロノトリガー】
現代の北の廃墟にある宝箱を正しく開けると入手できる刀。
クリティカル時に4倍のダメージを与える効果がある。

【フーの薄刃刀@鋼の錬金術師】
リン・ヤオに仕える老人、フーが使う武器。

【ダブルドライバー@仮面ライダーW】
仮面ライダーWに変身する為のベルト。
憑依する側がドライバーに自分のメモリをスロットに装填することで、メモリがもう一方(肉体のベースとなる方)のドライバーに転送され、そちらも自身のメモリを装填し、バックルを展開することで変身完了する。
憑依する側の人間はメモリ装填時に昏倒し、変身後は反対サイドの肉体へ意識を移動させている。
今ロワではフィリップの体の持ち主の傍に翔太郎の体の持ち主がいる時のみ変身が可能となる。

【T2サイクロンメモリ@仮面ライダーW】
風の記憶を宿した次世代タイプのガイアメモリ。
Wへの変身の他に、ロストドライバーがあれば仮面ライダーサイクロンへの変身が可能。
またT2ガイアメモリの特性により、適合する人間にはスロット処置をせずとも体内へ侵入、サイクロンドーパントへ変身する。

【新八のメガネ@銀魂】
新八の本体。それ以上でもそれ以下でもない。


336 : ◆ytUSxp038U :2021/04/23(金) 22:38:21 EyNbfOwc0
投下終了です
タイトルは「こち亀の載ってないジャンプなんて玉子丼から卵を抜いたみたいなもん」です


337 : ◆ytUSxp038U :2021/04/24(土) 00:46:05 XckmoVEk0
「こち亀の載ってないジャンプなんて玉子丼から卵を抜いたみたいなもん」の誤字脱字と状態表をwikiにて修正しました
大崎甜花、桐生戦兎を予約します


338 : ◆8eumUP9W6s :2021/04/24(土) 10:44:52 XCn6Yah60
>>263
すみません、昨日は予約を延長する前に寝落ちしてしまいました。
可能なら予約を延長したいのですが、不可能なようなら一旦破棄させてくださると助かります。


339 : ◆5IjCIYVjCc :2021/04/24(土) 10:56:32 1NHK1dPo0
>>338
今くらいの時間ならまだ延長しても大きな問題はありません。
作品の投下をお待ちしております。


340 : ◆8eumUP9W6s :2021/04/24(土) 10:57:41 XCn6Yah60
>>339
ありがとうございます。
では予約を延長させて貰います。


341 : ◆NIKUcB1AGw :2021/04/24(土) 22:26:46 SajPAJ/Q0
魔王、ホイミン、志々雄予約します


342 : ◆ytUSxp038U :2021/04/25(日) 20:05:30 NgTYqTf.0
>>337の予約にデビハムくんを追加します


343 : ◆NIKUcB1AGw :2021/04/25(日) 23:27:40 nxWThuBE0
投下します


344 : ホイミンはこんらんしている! ◆NIKUcB1AGw :2021/04/25(日) 23:28:42 nxWThuBE0
とある公園のベンチ。
ホイミンはそこに腰を下ろし、新たに支給された名簿を確認していた。

「とりあえず……知ってる名前はないみたいだなあ。
 あと、この体の中身もいないみたい……」

殺し合いに知り合いが参加させられていないこと、そして残虐な性質らしい本来の肉体の持ち主がいないことに、ホイミンはホッと胸をなで下ろす。
もっとも、彼の親しい存在といえば共に旅をした戦士・ライアンくらいしかいないのだが。
なお「貨物船」や「キャメロット城」という名前が気になったが、「物質系のモンスターかもしれない」という結論で落ち着いた。

「さて、そろそろ移動を……」

名簿をしまい、立ち上がろうとするホイミン。
だがその直後、彼の魔物としての感覚が何かを察知した。

(何か……怖いものがこっちに来る!)

弾かれたように立ち上がると、ホイミンは近くにあった遊具の陰に身を隠す。
一目散に逃げるという選択肢もあったが、下手に背を向けるよりは隠れる方が生存確率が高いと判断したのである。
ホイミスライムは元々、素早い魔物ではないというというのも影響しているかもしれない。

やがて、恐怖の正体が闇の中から姿を現す。
それは不気味な剣を携えた、銀髪の青年だった。

(ピ……ピサロ様ぁぁぁぁぁ!?)

驚愕のあまり、眼球がこぼれ落ちそうなほどに目を見開くホイミン。
彼が見たのは、紛れもなく魔物を統べる王・ピサロの姿だった。
人間に憧れているとはいえ、今のホイミンの魂はまだ魔物としてのもの。
本能レベルで、自分たちの支配者であるピサロへの畏怖が根付いている。

(ほ、本物だよね!? 肖像画でしか見たことないけど……。。
 こんな怖いオーラ出してるんだから、間違いないよね!?)

混乱のあまり、ホイミンは「この場にいるものは、みな肉体と精神を入れ替えられている」という前提を忘れていた。

(ど、どうしよう! 見つかったとして……僕もいちおう魔物だから、殺されたりはしないかな……。
 いや、こんな体じゃ怪しまれて殺されちゃうかも……。
 念のため、このまま隠れてやり過ごした方が……。
 いやでも、それだとピサロ様を敵だと判断したことになっちゃうよね。
 見つかったら問答無用で斬られるかも……)

さらにパニックを深め、まとまらないまま思考を広げていくホイミン。
しかし、その思考は強制的に中断させられる。
その場に、新たな人物が現れたからだ。


345 : ホイミンはこんらんしている! ◆NIKUcB1AGw :2021/04/25(日) 23:29:45 nxWThuBE0

「おまえさんか、殺気をダダ漏れにしてやがるのは」

それは強靱な筋肉に包まれた肉体を、惜しげもなくさらした巨漢だった。
古代の魔人・エシディシの肉体に魂を宿した魔性の剣客・志々雄真実である。
志々雄の姿を確認したピサロ……もとい魔王は、無言で斬りかかる。
志々雄はその斬撃を、紙一重で回避した。

「ははっ! いい腕してるじゃねえか!」

楽しそうに笑いながら、志々雄はホイミンが隠れている遊具の方へ視線を向ける。

(え? あの人、僕に気づいて……)
「そこに隠れてるやつ! 刀か、その代わりになるような刃物があれば俺によこせ!
 よこさねえなら、てめえから殺す!」
「ひいっ! は、はい!」

すっかり弱気になっていたホイミンは、志々雄の迫力に圧倒されてしまう。
言われるがまま、ホイミンは自分のカバンに入っていた剣を投げ渡そうとする。
しかし剣は思ったほど飛ばず、地面に突き刺さってしまう。

「ちっ! ちゃんと投げやがれ!」

悪態をつきながら、志々雄は猛然と走って剣を回収する。
それを手にして、志々雄は剣がさほど飛ばなかった理由を理解した。

「なんだこりゃ……。でたらめな重さじゃねえか。
 からくりが仕込んであるせいか?」

志々雄が手にした剣の名は、エンジンブレード。
一般的な刀の、数十倍の重量を持つ代物である。

「だがこいつの体なら、使いこなせる。
 いい体を引き当てて助かったぜ!」

上機嫌でブレードを構える志々雄。
それに対し、魔王は離れた位置から彼に向かって手をかざす。

「試してみるか……。マヒャド」

次の瞬間、魔王の手から冷気と氷が激しい勢いで放たれた。
マヒャド。氷の嵐を巻き起こす、吹雪系の上級呪文である。
放たれた嵐は、志々雄を直撃する。

「む……」

魔王は思わず、眉をしかめる。
嵐がやんだとき、そこにあったのは凍り付いた志々雄の姿などではなく、全身から蒸気を吹き上げた志々雄だったのだ。

「ハーッハッハッハ! どんなタネの妖術か知らねえが……。
 この体を凍らせるには、温度がぬるすぎたみてえだなあ!」

一切のダメージを感じさせぬそぶりで、志々雄は突進する。
その勢いのまま放たれた一撃を、魔王は破壊の剣で受け止める。

「せいぜい楽しませてくれや、色男ぉ!」
「やかましい男だ……」

戦いはまだ、始まったばかり。


◆ ◆ ◆


(どうしよう……。今のうちに逃げた方がいいのかな……)

そしてホイミンは、戦いを見ながらまごまごしていた。


346 : ホイミンはこんらんしている! ◆NIKUcB1AGw :2021/04/25(日) 23:31:14 nxWThuBE0

【F-8/街・公園】

【ホイミン@ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち】
[身体]:ソリュシャン・イプシロン@オーバーロード
[状態]:健康、混乱
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:人間にはなりたいが、そのために誰かを襲うつもりはない。
1:ライアンさんのように、人を守るために戦う。
2:この状況、どうすればいいんだ!?
[備考]
参戦時期はライアンの旅に同行した後〜人間に生まれ変わる前。
制限により、『ホイミ』などの回復魔法の効果が下がっています。
プロフィールから、『ソリュシャン・イプシロン』と彼女の持つ能力、異世界の魔法に関する知識を得ました。
ピサロに対する畏怖から、彼を精神も本人だと思い込んでいます。


【志々雄真実@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-】
[身体]:エシディシ@ジョジョの奇妙な冒険
[状態]:健康
[装備]:エンジンブレード@仮面ライダーW
[道具]:基本支給品、炎刀「銃」@刀語、ランダム支給品0〜2(刀剣類はない)
[思考・状況]基本方針:弱肉強食の摂理に従い、参加者も主催者も皆殺し
1:銀髪の男(魔王)を殺す
2:首輪を外せそうな奴は生かしておく


【魔王@クロノ・トリガー】
[身体]:ピサロ@ドラゴンクエストIV
[状態]:健康
[装備]:破壊の剣@ドラゴンクエストシリーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:優勝し、姉を取り戻す
1:挑んできた男(志々雄)を殺す
2:剣を渡した相手(ホイミン)も、後で殺す
[備考]
・参戦時期は魔王城での、クロノたちとの戦いの直後
・ピサロの体は、進化の秘法を使う前の姿(派生作品でいう「魔剣士ピサロ」)です


【エンジンブレード@仮面ライダーW】
仮面ライダーアクセル・照井竜が使用する剣。
変身すると自動的に出現するタイプではなく、照井はバイクに積んで持ち運んでいる。
エンジンメモリやW用のガイアメモリをセットすることでそのメモリに応じた技を発動させられるが、今回は付属していない。
重量は20㎏または30㎏(一般的な日本刀が1〜1.5㎏)とされており、凡人に使いこなせる武器ではない。
しかし照井は、何度か変身前の生身の状態でも使用している。


347 : ◆NIKUcB1AGw :2021/04/25(日) 23:32:35 nxWThuBE0
投下終了です


348 : ◆ytUSxp038U :2021/04/28(水) 00:11:01 PeOWCFHo0
投下します


349 : 天使が殺しにやって来る ◆ytUSxp038U :2021/04/28(水) 00:12:29 PeOWCFHo0
『大崎甜花』『桐生戦兎』
名簿に載っている名で知っているものは二つ。
自分の名前と、ついさっき出会った正義のヒーローを名乗る青年。

ボンドルドと名乗った男の放送が終わった後、甜花は戦兎と共に通りがかったアパートの中にいた。
街のど真ん中よりも、身を隠せる場所で確認した方が良いという戦兎の提案に特に反対する理由も無く、こうして名簿に目を通している。

貨物船だのキャメロット城だのと明らかに人名では無いものが載っているのには首を傾げたが、それよりも妹や283プロのアイドル、プロデューサーが殺し合いに不参加である事に一先ず安堵した。
しかし、直ぐに新たな不安が浮かび上がる。
妹の体はここにあるのに、精神は参加させられていない。
殺し合いの会場にいないのなら、考えられる場所は一つ。
やはり最初に予想した通り、主催者達に捕まっているのかもしれない。

放送でボンドルドの参加者へ語り掛ける声は、殺し合いの主催者とは思えないほど穏やかなものだった。
それが甜花とってはたまらなく恐ろしい。
あんな優しい雰囲気で殺し合いを強要し、自らの行いへ微塵も疑いを抱いていない異常性。
そんな男の元で甘奈は一体何をされているのか、考えるだけでも震えが走る。
体を入れ替えるだけではない、もっと惨たらしい目に遭っているのではないか。
自分とは正反対の天真爛漫な妹が、今この瞬間にも苦痛と恐怖で泣き叫んでいるかもしれない。

最悪の光景が次々と浮かび上がり、甜花の顔は一気に青褪めた。
まだ甘奈が主催者に捕まっていると確証があるわけではないが、無事だという保証も無い。
殺し合いが始まってすぐの時と同じ恐怖がぶり返した甜花は、震える声で同行者に助けを求めた。

「……せ、戦兎さ「最っ悪だ……」え……」

思わぬ反応に甜花は身を強張らせて戦兎を見る。
そこには苦虫を噛み潰したような険しい顔で、名簿を睨む戦兎の姿があった。
先程までの人懐っこい笑みを見せていたのとは正反対の雰囲気に、甜花はただ困惑するばかりだった。

とはいえ戦兎がそんな反応をするのも無理はない。
自らの目的の為に桐生戦兎というヒーローを創造した最悪の宿敵、エボルトの名が名簿にハッキリと載っている。
自分の知っている者が参加している可能性を考慮していなかった訳ではない。
だが、どうしてよりにもよってこの男が参加しているのか。
キルバスとの戦いの後、もう地球を襲う気は無いと言い残し去って行ったと万丈からは聞いている。
しかし、旧世界で散々エボルトの掌の上で踊らされた戦兎からすれば、そう簡単に信じられるはずがない。
むしろこの機会に優勝してキルバスをも超える力を手に入れようと、参加者へ牙を剥く可能性の方が遥かに高い。

(でもあいつも参加者である以上は別人の体に入ってるんだよな…。…いやもっと最悪じゃねえか…!)

元の体でないのなら大幅に弱体化しているのではと一瞬期待したが、それはそれでマズいと思い直す。
別人の体という事は仲間である万丈達や仮面ライダーとは無関係の一般人、それこそ甜花や彼女と同じ事務所のアイドルの体にエボルトの精神が入っている可能性も十分あり得る。
そうなってしまえば迂闊に手出しは出来ない。
そしてエボルトのことだ、間違いなくこちらが攻撃できないと分かって立ち回るのは安易に想像できる。
もしも同じブラッド族であるキルバスや伊能の体に入っているなら遠慮なく倒せるが、その場合エボルトは弱体化どころか完全体と謙遜ない力で暴れ回れるということ。
どっちにしろ厄介な事に変わりは無い。

(あーくそっ!何でよりにもよってアイツを参加させたんだよ……)

殺し合いの参加者としては正しい選出なのかもしれない。
それを理解した所で、エボルトへの筆舌に尽くし難い感情はどうにもできないのだが。


350 : 天使が殺しにやって来る ◆ytUSxp038U :2021/04/28(水) 00:14:00 PeOWCFHo0
「……あ、あのっ……」
「えっ、あ、ああどうした?甜花」
「……せ、戦兎さん、凄く恐い顔してたから、大丈夫かなって……」

渋面を作っている戦兎へ、戸惑いながら甜花が話しかけた。
こちらを見上げる不安気な表情に、失態を悟った戦兎は心中で自身を責める。
一般人の身でありながら殺し合いに参加させられ、更には妹まで巻き込まれているかもしれない。
そんな彼女を守ると誓っておきながら、余計不安にさせてどうするのか。
エボルトの存在に気を取られて過ぎていた事を反省する。

「悪い、怖がらせちまったな…」
「う、ううん。甜花は大丈夫、だよ……。あ、あのね、戦兎さんに聞きたいことがあったんだけど……」

そうして甜花は名簿に甘奈の名前が載っていなかった事、やはり妹は主催者に捕まっているのではないかと話す。
戦兎が再度名簿を見ると、自分の体の本来の持ち主である佐藤太郎の名も見当たらない。
甘奈や佐藤太郎と体が入れ替わったという単純な話ではないようだ。
となるとやはり甜花の言うように、ボンドルド達に捕まっている可能性が高い。

「ひょっとしたら、俺たちに対しての人質にするつもりなのかもな…」

ボンドルドら主催者側の人間は殺し合いが円滑に進むのを望んでいる。
故に戦兎や甜花のような殺し合いに消極的な参加者が増えるのは好ましくないだろう。
そういった者たちを「やる気」にさせる為として、爆弾付きの首輪以外にも人質をチラつかせて揺さぶりをかける気でいるのかもしれない。
或いは甜花と甘奈のような、家族が殺し合いで怯える様を見せつけて愉悦に浸るといった悪趣味極まりない動機が無いとも言い切れない。

「じゃあやっぱり、なーちゃんは……!」
「いや、まだ本当にいると決まった訳じゃない。こいつはあくまで仮説だからな」

それに、と一度言葉を切り、安心させるように笑みを向ける。

「最初に言っただろ?甜花と甘奈も、殺し合いに巻き込まれた人達も必ず守るって。
 約束を破ったら正義のヒーロー失格だからな」

力強く言い切った戦兎の姿に、小さくあっと声を漏らす。
適当な誤魔化しを言ったのでは無く、本心からそう告げたのだと思えるような、彼を信じてみようと思わせてくれた笑み。
少しだけ不安が薄れていくのを感じた甜花は、そこで我に返る。
さっき信じると決めたばかりなのに、取り乱してしまった。
何だか情けなくなって縮こまる甜花だが、戦兎からは「気にしてない」と言ってもらえたので、どうにか持ち直す。

とりあえず落ち着いた甜花に安心しつつ、戦兎の頭には別の考えも浮かんでいた。。
先ほど自分は甘奈が人質として囚われているかもしれないと言った。しかし、主催者がわざわざ生かしておくような真似をするだろうかと。
ボンドルド達は殺し合いが順調に進む事を望んでいる。それは間違いない。
だがそれなら人質など用意せずとも、最初からエボルトのような人殺しに何の抵抗も無い連中を大勢参加させればいいだけの話だ。
放送でボンドルドは、『既にやる気に満ち溢れている者がいる』と口にしていた。
そんな参加者が複数人いるのなら、放っておいても殺し合いは勝手に進むだろう。
ならば、甘奈や佐藤太郎は殺し合いに不要として既に始末されているのかもしれない。
無論、そんな事をを甜花に話すつもりは無い。
確証がある訳でもないのに、「お前の妹はもう死んでいる」などと言って甜花の精神に負担を掛ける訳にはいかないからだ。
今はあくまで可能性の一つとして、自身の胸に留めておくに限る。

(そもそも何で殺し合いなんて始めたんだろうな……)

ボンドルドとその仲間が殺し合いを計画した理由が分からない。
もっと言えば、何故参加者の精神を別の肉体に移し替えるという手間を掛けた上で殺し合わせるのだろうか。


351 : 天使が殺しにやって来る ◆ytUSxp038U :2021/04/28(水) 00:15:08 PeOWCFHo0
(『心を縛る枷』、それと『新しい未来を切り開くための鍵』…。重要なのは自分以外の体で戦う過程…?別人の体でも精神の作用によって出てくる違いを見る為か…?)

桐生戦兎という人間の体は元々葛城巧という男のものである。
以前、エボルトがエボルトリガーの力を取り戻した際に葛城の記憶が蘇った事で、戦兎の意識が一時的に失われた事があった。
しかし同じ体でありながら、葛城ではビルドのジーニアスボトルを起動できず窮地に追い込まれた。
愕然とする葛城に対し、万丈は「誰かを守りたいという気持ちが足りないからだ」と言い放った。
下らない精神論、と一笑に伏せる事はできない。
事実、万丈の言葉で戦兎が己の意識を取り戻してからはジーニアスボトルを使えるようになったのだから。

(別人の体で精神を高める……?)

自身の経験に当て嵌めて考えてみるがどうにもしっくり来ない。
やはり今はまだ判断材料が圧倒的に不足しているようだ。
これ以上は考え込んでも無駄と思考を打ち切る。

それと同じタイミングで甜花が意を決したように問い掛けて来た。

「……戦兎さんっ。あのね、えっと……嫌じゃなかったらだけど……戦兎さんのこと、もっと教えて欲しいなって……」
「へっ?それは…」
「あっ、ちっ、違うの……!変な意味じゃなくて…か、仮面ライダーってどんなのとか全然知らないし、さっき戦兎さんが恐い顔で名簿を見てたのと、関係あるのかなって思って……あうう」
「ああ、そういう事か」

特に断る理由もないが、細かく説明しては長くなるため掻い摘んで話した。 
万丈龍我を始めとする仲間達との出会い。エボルトという地球外生命体と戦って来たこと。
そしてエボルトが殺し合いに参加していることを。
既に戦兎が変身する瞬間を見たとはいえ、他にもヒーローがいて、しかも宇宙人と戦っていたという話には甜花も驚きを隠せず、その宇宙人が会場のどこかにいるという事実に身震いする。
同時に険しい顔で名簿を睨んでいた理由に納得がいった。

「やっぱり、その人……じゃなくて、宇宙人は殺し合いに乗ってるのかな……?」
「あいつの事だからその可能性はかなり高……いや、どうなんだろうな。もっと慎重に動くか…?どの道危険な事に変わりはないけど……」

エボルトの行動に頭を悩ませるが、どんな方針であれ警戒するに越したことはない。

その後、大まかにどう動くかを話し合った。
最も重要なのは首輪を外すこと。
これがある限り、主催者に捕えられているかもしれない甘奈達を助けようにも敵の意思一つで勝負が決まってしまう。
よって首輪の解除はこの先の戦いにおいて必要不可欠な要素である。
実際に首輪を外せるかどうかは、天才物理学者の腕の見せ所になるだろう。
それと並行して殺し合いを止める為の仲間を探す。
殺し合いに否定的な考えの自分達がいるのだから、他にも主催者を倒そうとしている参加者がいる可能性は高い。

出発の準備をしてアパートを後にする。
それからすぐの事だった。彼らが奇妙な参加者と遭遇したのは。


◆◆◆


「ムムム、あいつらは参加してないデビか…」

名簿を確認したデビハムは、そこに自分を敗北に追い込んだ二匹のハムスターの名が無い事に少しばかり落胆していた。
もしも二匹が参加していたら、この機会にたっぷりと仕返しをしてやるつもりだったが、それは叶わないようである。
だがいないのならば仕方ないと割り切る。
どうせ優勝して悪魔らしい姿にしてもらってからでも、復讐は果たせるのだから。
むしろこんな天使のような姿よりも、恐ろしい悪魔の姿で現れた方があの二匹も恐怖で慄くに違いない。
彼らとエンジェルが自分の新たな姿に怯える様を想像し、デビハムは少しだけ気分が良くなった。

「体はともかくこの武器は持ち帰りたいデビねぇ。オイラに相応しい武器を寄越した事には、礼を言ってやっても良いデビ〜」

そう言って手に持った刀を掲げた。
支給された黒い刀身の武器をデビハムはすっかり気に入っていた。
早くこれを使って参加者のラブを壊したいと邪悪に笑う。

意気揚々と刀を振り回し数分が経過した時、目当ての存在を見つけた。

道の反対側から歩いてくる二人の参加者。
殺し合いの最中だというのに仲良しこよしでつるんでいる光景が、デビハムには気に喰わなかった。
しかも相手が一組の男女というのも、忌々しい二匹のハムスターを思い起こさせ不機嫌になる。

(まぁいいデビ。オイラに出会ったことを精々後悔するデビよ〜!)

こちらに気付いた二人が足を止めた途端、デビハムは斬りかかった。


◆◆◆


352 : 天使が殺しにやって来る ◆ytUSxp038U :2021/04/28(水) 00:16:10 PeOWCFHo0
「うおっと…!」
「きゃっ…」

甜花を引き寄せて後方に飛ぶ。
咄嗟の判断力はビルドとして戦い続けた経験の賜物だ。
振り下ろされた刃は人体を斬り裂くことなく、地面に叩きつけられた。

「ムキ〜!避けるなんて生意気デビ!」
「いや避けるに決まってるでしょ…」

地団駄を踏むデビハムに呆れる戦兎だが、その表情は険しい。
相手は一見すると女にも見える少年であるが、背に生えた翼と頭上の光輪からただの人間で無い事が分かる。
それに有無を言わさず斬りかかって来た。殺し合いに乗っているという事は疑う余地も無い。
すぐ傍で怯える甜花の存在が戦兎の戦う意思を強くする。
彼女や他の巻き込まれた人達を守る為にも、この少年を放置する選択肢など戦兎には無い。

「甜花は下がっててくれ。俺はこのお子様の相手をする」
「え……あ、うん……分かった……。戦兎さんも、気を付けて……」

少し躊躇したものの、自分が近くに居ては戦えないと理解し物陰に隠れる。
背後で心配そうに様子を窺う甜花に一度笑みを見せると、即座にデビハムへと向き直る。

「こら〜!オイラを無視してカッコつけるなデビ!何なんデビかお前は〜!」
「ラブ&ピースの為に戦う正義のヒーローってとこかな?」

あえて挑発するようにキザなセリフを口にすると、取り出したカードを構える。
自分の物とは違うが、このベルトもまた仮面ライダーのもの。
人々を守る為の力だと言うのなら、同じライダーとして今はその力を貸してもらう。

「変身!」

『KAMEN RIDE BUILD!』

『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イエーイ!』

ベルトは違えど戦兎のもう一つの姿とも言えるヒーロー、ビルドへの変身が完了する。
相手の変貌に口をあんぐりと開けていたデビハムは、ハッと我に返ると怒りを隠そうともせずに襲い掛かった。

「ラブもピースもオイラは大っ嫌いデビ!」

ソードモードのライドブッカーで、迫りくる刃を防ぐ。
華奢な体躯とは裏腹の重い一撃。ビルドの腕に痺れが走った。
歯を食いしばり両腕に力を込めて、刀を押し返す。
相手の体勢が崩れた所で斬りかかるも、容易く防がれた。

(どんな力してんだよ!?)

刀を叩っ斬る勢いで斬り付けたというのに、相手はびくともしない。
ただの人間で無いとはいえその細い体のどこにそんな力が有るのか、戦兎は内心驚愕するばかりだった。
デビハムが剣を強く押し返し、ビルドは体勢を崩される。

だがビルドの力はただ武器を振るうだけではない。
横凪に振るわれた刀が当たるより先に、左足で跳躍する。
ラビットフルボトルの成分により強化されたジャンプにより、デビハムの頭上へ軽々と到達した。
自身を見上げるデビハムへ向けて、ガンモードへと変形したライドブッカーの引き金を引く。

「のわーっ!?飛び道具は卑怯デビよ〜!」

口調は慌てているが、銃弾は全て斬り落とされた。
ビルドは着地と同時に再度跳躍し銃弾を放ち、また跳躍しては銃弾を…と縦横無尽に飛び跳ねながら銃撃を繰り返す。
同じくデビハムも頭上から降り注ぐ弾丸を斬り落とし続ける。
膠着状態となった戦況を変えたのは、デビハムだった。


353 : 天使が殺しにやって来る ◆ytUSxp038U :2021/04/28(水) 00:17:23 PeOWCFHo0
「いい加減にするデビ!うろちょろして鬱陶しいデビ!!」

痺れを切らしたデビハムは純白の翼を広げ、ビルド目掛けて飛び上がる。
迫るデビハムへビルドは右足を突きだした。
デビハムの大剣とビルドの蹴りがぶつかり合う。
タンクフルボトルの装甲、その右足底にある履帯が回転し出し斬撃が受け流される。
しかし、徐々に回転の勢いが弱まって行く。
驚くべきことに、デビハムは己の腕力で強引に回転を止めると、力任せに刀を振るった。

「ぐあああっ!?」

一撃を食らい地面に叩きつけられるビルド。
体が痛みを訴えて来るが、相手は待ってくれない。

「デ〜ビデビデビ!どんどんいくデビー!!」

剣を構えたデビハムが、ビルド目掛けて急降下してくる。
地面すれすれの位置を通過する刀を、横に転がる事で回避。
ビルドが立ち上がった時には、既にデビハムは上空にいた。

「にゃははははは!いい気味デビ〜♪」
「……とんでもない悪ガキじゃねえか……」

悪態を吐きいても状況は変わらない。
ホークガトリングやフェニックスロボなら空中戦に持ち込めるが、ベストマッチフォームのカードは無し。
ではこのまま銃を撃ち続けるか、再度跳躍するか。
いっそここでジーニアスのカードを使うか。

「いや、ここはアンタの力を借りる!」

新たなカードをドライバーに叩き込み、その力を開放する。

『KAMEN RIDE GHOST!』

『レッツゴー!覚悟!ゴ・ゴ・ゴ!ゴースト!』

赤と青の装甲から、黒とオレンジを基調としたボディへと変化する。
フードを脱ぐと現れたのは天を突く一本角。
エニグマ事件の際に共闘した並行世界の戦士、仮面ライダーゴーストの姿があった。

またもや姿が変化した事に驚くデビハムへ、ゴーストは浮遊し接近する。
我に返ったデビハムが剣を振り回すが、ゴーストの胸部アーマーから複数体のパーカーが飛び出した。
パーカー達はまるで意思を持っているかのような動きで、デビハムを妨害する。

「ふわふわして邪魔デビ〜!?」

捉え所の無い動きで周囲を飛び回るパーカー達に、デビハムは苛立つ。
その間にゴーストは次の手に出た。

『FAINAL ATTACK RIDE GO・GO・GO GHOST!』

ゴーストの背後に浮かんだ眼のような紋章のエネルギーが右脚へと集まる。
ようやくパーカー達を振り払ったデビハムへと、ゴーストの飛び蹴りが迫った。
オレンジ色のエネルギーを纏った右脚を、デビハムは刀を構えて防ぐ。
眼魔と呼ばれる怪人を屠って来た、所謂“必殺技”とも言うべき飛び蹴りの威力は凄まじく、刀越しにデビハムへと衝撃が伝わる。
しかしデビハムも甘んじて相手の攻撃を受け入れる気は無い。
血管が浮き出る程に力を込め、ゴーストを押し返し吹き飛ばさんとする。

「んぎぎぎぎぎぎぎ…!!」
「ク、ソッ…!」

拮抗する二人だが、やがて限界が訪れる。
相手の力に耐え切れなくなり、両名同時に後方へと吹き飛ばされた。
地面に激突する寸前で、ゴーストは何とか体を浮遊させたが、デビハムは背中から叩きつけられた。


354 : 天使が殺しにやって来る ◆ytUSxp038U :2021/04/28(水) 00:18:51 PeOWCFHo0
「痛たたたた!?痛いデビ〜!何て暴力的な奴なんだデビ〜!」
「先に仕掛けてきたのはそっちでしょーが…」

今ので幾らかダメージを与えられたかもしれないが、相手はまだまだ戦闘不能には程遠い。
生身でありながらライダーと互角以上に渡り合うとは、やはり一筋縄ではいかないようだった。
次に繰り出す手を模索しながら、ライドブッカーに手を伸ばす。
しかし、これ以上戦いが長引くことはなかった。

「ぐぬぬぬ…!きょ、今日はこれくらいにしといてやるデビ!ありがたく思えデビ〜!!」

捨て台詞を吐きリュックから取り出した玉のような物体を叩きつけるデビハム。
相手が何かをする前に阻止しようとゴーストが走る。
だがそれより早く玉から煙が発生し、一瞬の内にデビハムの姿は消えていた。
どこかに隠れて攻撃の機会を窺っているのだろうか?否、これと同じようなものを戦兎は知っている。
トランスチームガンやネビュラスチームガンに搭載された、撤退用の機能。
つまりデビハムは――

「逃げやがった……」


◆◆◆


「くぅ〜、悔しいデビ…!」

デビハムは建造物に囲まれたエリアから、緑が生い茂るエリアへと移動していた。
本当ならばさっきの二人のラブをぶち壊し、優勝に一歩近づいたはずなのに、みっともなく逃げる羽目になってしまった。
屈辱的な結果だがあれ以上続けても確実に勝てるかどうかは分からないと言う事は、デビハム本人も理解している。
天使の悪魔は『寿命を吸い取り、武器に変える』という非常に強力な異能を持つ。
しかしこの能力は相手に直接触れなければ発動しない。
先ほどの男は全身をスーツで覆っていた為、触れても寿命は吸い取れない。
更に原理は不明だがカードを差して変身するらしい奇妙な道具があり、他にもまだ変身できる力を持っている可能性が高いと見た。
一緒にいた女の方は生身だったのでそちらを狙って寿命を奪う事も考えたが、一緒にいる男が他にどんな力を持っているか分からない以上はあまり無茶はできない。
こんな事なら最初に刀を使わず、寿命を吸い取っていれば良かったと後悔するがもう遅い。

(ムムムムム…!オイラとした事が、かっこいい体が手に入るチャンスと知って少し浮かれてたデビ。反省反省デビ……)

殺し合いにてデビハムに与えられたのは実に使えるモノばかりだ。
天使の悪魔の体は先ほどの戦闘で寿命を奪う能力こそ使えなかったものの、その身体能力は人間とは比べ物にならない。
翼と光輪以外は華奢な少年にしか見えないが、彼は人知を超越した怪物なのだから。
更に足首に巻き付けているのはアトラスアンクルと言うアイテム。
装備した者の力を上昇させる効果により、天使の悪魔の身体能力を底上げしている。
極め付けは手に持った刀。
偉大なる航路で数少ない大業物の一本。
いずれも殺し合いにおいては非常に有利となる代物ばかりだが、先の戦闘の結果は良いとは言えない。
自身の油断か、厄介な相手だったからか、両方なのか。
どんな理由にせよ体や武器が強いだけでは、殺し合いは勝ち抜けないと分かった。

「ならこっからはオイラらしいやり方で、みんなのラブをぶっ壊してやるデビ!覚悟しろデビ〜!」

参加者のラブを壊す方法は、何も直接手に掛けるだけではない。
例えばさっきの二人。彼らが実は殺し合いに乗っている、と他の参加者に吹聴したらどうなるか。
ラブ&ピースの為に戦うヒーローが他の者から疑われ、拒絶され、絶望する。
その光景を想像しただけでデビハムは機嫌が良くなっていく。
それからさっきの男といた少女のように、戦う力を持たない参加者も使い道は有る。
人質として捕え、他の者を殺してこいなどと命令してやるのも実に面白い様だ。

「デ〜ビデビデビ!そうと決まれば早速行動……の前に、ちょっと休むデビ〜」

【D-3/深夜】

【デビハムくん@とっとこハム太郎3 ラブラブ大冒険でちゅ】
[身体]:天使の悪魔@チェンソーマン
[状態]:ダメージ(中)、疲労(中)
[装備]:秋水@ONE PIECE、アトラスアングル@ペルソナ5
[道具]:基本支給品、ドロン玉×1@ペルソナ5
[思考・状況]基本方針:優勝してかっこいい悪魔の姿にしてもらうデビ
1:今はちょっと休みたいデビ
2:オイラらしいやり方で参加者のラブをぶっ壊すデビ
[備考]
参戦時期はハム太郎たちに倒されて天使にされた後

【秋水@ONE PIECE】
ワノ国の剣豪リューマの愛刀だった大業物21工の一振り。
恐竜に踏まれようと1ミリも曲がらないとされる程の硬度がある。

【アトラスアングル@ペルソナ5】
メメントスで手に入るアクセサリーの一つ。
装備すると力+10の効果がある。

【ドロン玉@ペルソナ5】
ボス戦など一部の戦闘を除き、確実に逃走する潜入道具。
今ロワでは使用者をランダムに一つ先のエリアへ転移させる。


◆◆◆


355 : 天使が殺しにやって来る ◆ytUSxp038U :2021/04/28(水) 00:21:27 PeOWCFHo0
デビハムの姿が完全に消え、市街地は静けさを取り戻す。
変身を解いた戦兎は体に残る痛みに顔を顰めた。
あのまま戦い続けていたらどうなっていたのだろうか。
勿論負けるつもりは無かったが、少年の力を考えると苦戦は免れなかったように思える。

「戦兎さんっ……!だ、大丈夫……?」

戦兎が生身に戻ったので、一先ずは大丈夫と判断した甜花が駆け寄る。
既に戦兎が変身する所を見ているとはいえ、実際に戦う場面は初めて見た。
激しい剣戟や銃弾が飛び交う戦場に、顔が青褪めている。
それでも自分を守る為に戦った戦兎の身を案じ、飛び出したのだった。

「ああ、大丈夫大丈夫。これくらいは慣れてるしな」
「で、でも……斬られたり、落とされたりして……」
「心配すんなって。ほんとに大丈夫だからさ」

余計な心配を掛けさせまいとする戦兎の姿に、甜花は何も言えなくなる。
さっきの戦いを物陰から見ている間、戦兎が斬られ地面に叩きつけられた瞬間小さく悲鳴が漏れた。
あんな傷ついてまでも自分を守り、こうして逆に気遣われてしまった。

(甜花は、このままでいいのかな……)

この先もずっと戦兎だけに戦わせて、自分はこそこそ隠れている。
主催者に捕まっているかもしれない甘奈を助ける時も、全部戦兎任せ。
それでいいのだろうかと甜花は悩む。
だが支給品に銃などの武器は入っていなかったし、仮にあっても軍人や警察官でない自分に扱えるのかは疑問である。
しかし、戦兎の戦いを見ている内に甜花はある可能性に気付いた。
自分が持っている変わった装飾のバックルらしき物と、メロンが描かれた錠前。
ひょっとしてこれらは、仮面ライダーに変身する道具なのではないかと。
外見は戦兎が持っているマゼンタのバックルとは全く異なるし、戦兎が使っていたカードも見当たらない。
けれどバックルの中央部にある窪みは、丁度錠前の形と一致するように見える。
だからもしも錠前を正しくはめ込んでみたら、自分も仮面ライダーに変身できるのかもしれない。

(でも、変身したら……戦わないといけない……)

仮面ライダーになると言うのは、先ほどの戦兎のように危険な参加者を止める為に戦うという事である。
コントローラーを手に画面の中のモンスターを倒すのとは全く違う。
自分の拳で殴り、剣で斬り、銃で撃つ。そして同じように殴られ、斬られ、撃たれて、下手をすれば命を落とすことだってあり得る。
そう考えると甘奈を失うかもしれないと思った時とは別の、自分が死ぬかもしれないという恐怖が湧き上がる。
それに幾ら仮面ライダーになったとしても、素人の自分がマトモに戦えるのか分からない。
自分が飛び出して行ったって、ただ戦兎の足を引っ張るだけなんじゃないだろうか。
だったら大人しく隠れている方が正しいのだとは思う。
だけど本当にそれで良いのかと問い掛ける自分も、確かに存在している。

(……甜花に、できることなんて、あるのかな……)

いったいどうするのが正解なのか。
答えは簡単には出せそうもなかった。


356 : 天使が殺しにやって来る ◆ytUSxp038U :2021/04/28(水) 00:22:03 PeOWCFHo0
【D-2 街/深夜】

【大崎甜花@アイドルマスターシャイニーカラーズ】
[身体]:大崎甘奈@アイドルマスターシャイニーカラーズ
[状態]:健康、精神的疲労(小)
[装備]:戦極ドライバー+メロンロックシード+メロンエナジーロックシード@仮面ライダー鎧武
[道具]:基本支給品
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない。
1:戦兎さんと……一緒に、いる。
2:なーちゃん、大丈夫……かな……。
3:283プロのみんなは……巻き込まれてなくて、よかった……。
4:甜花に、できることなんて……あるのかな……。
[備考]
※自分のランダム支給品が仮面ライダーに変身するものではないかと考えています。
※参戦時期は後続の書き手にお任せします。


【桐生戦兎@仮面ライダービルド】
[身体]:佐藤太郎@仮面ライダービルド
[状態]:ダメージ(中)、疲労(中)
[装備]:ネオディケイドライバー@仮面ライダージオウ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いを打破する。
1:甜花を守る。自意識過剰な正義のヒーローだからな。
2:他に殺し合いに乗ってない参加者がいるかもしれない。探してみよう。
3:エボルトの動向には要警戒。誰の体に入ってるんだ?
4:翼の生えた少年(デビハム)は必ず止める。
[備考]
※本来の体ではないためビルドドライバーでは変身することができません。
※平成ジェネレーションズFINALの記憶があるため、仮面ライダーエグゼイド・ゴースト・鎧武・フォーゼ・オーズを知っています。
※ライドブッカーには各ライダーの基本フォームのライダーカードとビルドジーニアスフォームのカードが入っています。
※令和ライダーのカードが入っているかは後続の書き手にお任せします。
※参戦時期は少なくとも本編終了後の新世界からです。『仮面ライダークローズ』の出来事は経験しています。


357 : ◆ytUSxp038U :2021/04/28(水) 00:22:47 PeOWCFHo0
投下終了です


358 : ◆8eumUP9W6s :2021/04/30(金) 20:55:00 Y9o7jEr20
投下します。


359 : ◆8eumUP9W6s :2021/04/30(金) 20:57:21 Y9o7jEr20
「うーん…入ってたのはこの三つ、かぁ。
ストライカーが無かったのは…この身体だと履けそうにないし、それはまあいっか」

バッグの中身を確認したエーリカ・ハルトマンは、操真晴人の身体を使い取り出した三つのランダム支給品を見つめる。

一つ目はウィザードライバーと云う操真の身を「仮面ライダーウィザード」なる存在へと変える為のベルトらしき物、またセットとして「ドライバーオンウィザードリング」と「ハリケーンウィザードリング」なる指輪も付属していた。

(ハリケーン…ブリタニア語で云う台風…の事かな?)

二つ目は、ウィザードライバーに対応していると思われる「サンダーウィザードリング」なる指輪だった。

(サンダー…ブリタニア語で雷…使ったらペリーヌのトネールみたいな事、出来たりしそうだなあ)

そして三つ目は…この身体の元の持ち主である『操真晴人』の好物であるプレーンシュガーのドーナツであった。

「…お腹すいたし、甘いのは好きだけどさぁ…なんというか、申し訳ない気持ちになるんだよねー…」

ハルトマンは先程目を通した操真晴人の経歴を思い出す。
彼がプレーンシュガーを好んで食べる理由は、幼き頃の彼に今は亡き両親が初めて食べさせてくれたドーナツがプレーンシュガーで、それをうまそうに食べてる自分を嬉しそうに眺めている両親を見るのが嬉しかったから、出かけるたびにねだっていたらいつのまにやら大好物になっていたから…と載っていた。

プレーンシュガーを食べている間、操真晴人が何を思っていたかまでは、彼のプロフィールには書かれていない。だが操真晴人にとってこのプレーンシュガーはただの好物ではなく、亡き両親との思い出の食べ物である事は…ハルトマンには理解出来た。

だが、彼女が甘党であることも、小腹が空いていてそれを解消するには食べた方がいいのもまた事実である。
それ故に悩んでいたハルトマンであったが…。

『皆さんこんばんは。いかがお過ごしでしょうか』

チャイム音と同時に、放送が始まった。


360 : ◆8eumUP9W6s :2021/04/30(金) 20:58:03 Y9o7jEr20
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(なるほど…あのボン…ボンボルド?いやボンドルドだっけ…とりあえずその人が主催の一人だってのはわかったよ)

放送が終わった後、ハルトマンは名簿を確認する。

(…んー…わたしの知ってる名前は無い、かなぁ。
……扶桑人っぽい名前の人、多くない?)

まず真っ先に自分の知る名前がない事を確認したハルトマンは、名簿について率直な感想を抱く。

(…「貨物船」、とか「キャメロット城」とか…後「木曾」…もそんな感じな気がするかも?とにかく、人の名前じゃなさそうなのも何個かあるねー。
文字はカールスラント語で書かれてるけど…わたしならともかく、他の人もこれだと…多分読めないよね?…なら人によって書かれてる文字の言語が違ったりするのかな?
後「DIO」や「大首領JUDA」みたいに本名じゃなさそうなのもある…名前に大首領って、どういうことだろ?
それと…ンから名前が始まる人とか、現実に居るもんなんだね…世界は広いなあ。
他には…待って、「デビハムくん」はくんまで名前だったりする?…変なのばっかだ)

などと考えていたハルトマンであったが、ここである点に気付く。

(…そうだ、操真…操真晴人って名前は、この名簿には…載ってない、かぁ…。
もし載ってたら合流なりなんなりしようかなあ…とか思ってたけど、まあ巻き込まれてない以上は……)

晴人の名前がない事に複雑な表情を浮かべるハルトマン。しかしここでふと気付く。

(身体の元の持ち主の名前が載ってないって事は…ひょっとしたらトゥルーデやミーナ、さーにゃんや宮藤や…みんなの身体が他の参加者達の身体になってたりする…?
……どうしよう!もし殺し合いに乗るような奴の身体がみんなの内誰かのだったら…下手な事出来ないなー…。
…うーん、考えてもキリがなさそう。殺し合いに乗らずに協力してくれそうな相手に、みんなの身体の内誰かのが与えられてるかもしれないしね)

思考を一旦切り替えた後、再びハルトマンは考える。

(…そういえばさっき、見せしめにされて……殺されちゃった人は、この名簿に載ってるのかな?
それとも…見せしめだから載ってないのか…?)

その光景を思い出し自然と主催への怒りが湧き上がってくるハルトマン。それを抑えながらも疑問はさらに派生する。

(あの時の主催側の発言からして…多分だけど、見せしめにされちゃった人もわたし達みたく身体が入れ替えられてたんだよね…。
……あの時点だと黒い影にしか見えなかったけど…もし、もし見せしめにされた相手が───操真や、みんなの内誰かだったら…。
…もしそうなら、どんな事情があれど、わたしは主催を許さない。そうじゃなくたって…絶対に、ここで止めないと…!)

ハルトマンは決意する。彼女は人の為に怒り、悲しめる人間だ。経歴を見るという形で「操真晴人」という青年の事を知った時点で…彼女の中には既に、彼を他人だと切り離して割り切る選択肢は存在していないのである。


361 : ◆8eumUP9W6s :2021/04/30(金) 20:58:31 Y9o7jEr20
(…まあこれも置いとこう。後は…あの放送ではあのボンなんとかは
『そして今はこのバトル・ロワイアルの運営に携わる者の1人です』
って言ってたよね、他に誰が関わってるんだろ…うーん…)

考えてみるも、彼女が知っていてかつ思い浮かんだ相手の中には…殺し合いの運営に携わったりしそうな相手は一人を除いて居なかった。
最も彼女は誰かを守る為なら規則やルールを平然と破るタイプの人間な為、軍上層部からの受けは悪いのだが。
(マロニー元空軍大将ならひょっとして…いや、あの人だって軍人なら…こんな殺し合いなんかに加担なんてしない筈…。それに、そういう私情があったとしても、それならわたしだけを参加者にするのはなんか不自然なんだよねー…みんな参加者にするんなら、わかるけどさ。
どちらかって言うと、わたしより操真の方に、そういう逆恨みしてそうな奴らが多そうだって…思うなあ。あんだけ色んな目に遭ってたみたいだし)

そう思いながらハルトマンはまた経歴を見る。
そこには簡素な記述だが、操真晴人がワイズマン…もとい笛木奏が率いていたファントム以外にも、様々な敵と戦ってきた事が書かれていた。

(そいつらや笛木が主催側にいないといいなぁ…居たら多分、わたしの身体や操真の…意識?人格?精神?魂?こういう時なんて表すんだろ。…とにかくそれも、消されてそうだし……。
…あー、やめやめ!暗い事や頭使う事ばっか考えても疲れるだけだから…今は置いとこう)

とりあえず一旦思考を切り替えたハルトマンは、再びプレーンシュガーのドーナツを食べるかどうかで悩んだ末…とうとう空腹に耐えれずに、それを頬張る事に決めたのであった。


362 : ◆8eumUP9W6s :2021/04/30(金) 20:58:47 Y9o7jEr20
【C-7 海沿いの砂浜/深夜】

【エーリカ・ハルトマン@ストライクウィッチーズシリーズ】
[身体]:操真晴人@仮面ライダーウィザード
[状態]:健康、決意、複雑な気持ち
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ウィザードライバー&ドライバーオンウィザードリング&ハリケーンウィザードリング@仮面ライダーウィザード、サンダーウィザードリング@仮面ライダーウィザード
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない
0:このドーナツ…甘くて美味しいなあ。
1:試しに変身してみるのもいいかも?
2:元の世界に戻れても、ネウロイに落とされたあの場所に逆戻りする羽目になる気がする…。それなら首輪を外す方法探しながら、脱出手段を見つけちゃえばいいよね!
3:トゥルーデ達の身体が使われてないかが心配だなあ…もし悪用されてたら、止めないと。
4:他の参加者と会ったら、色々話し合う必要があるね〜…わたしひとりじゃ色々限界があるよ。
5:もし操真や501のみんなが殺されてたら…わたしは主催を許さない。
[備考]
※参戦時期は「RtB」ことストライクウィッチーズ ROAD to BERLINの6話「復讐の猟犬」にてネウロイに撃墜された後からです。
※作中にて舞台になっている年代が1945年な為、それ以降に出来た物についての知識は原則ありません。
※晴人のアンダーワールドに巣食うウィザードラゴンの意識は封じられてはいませんが、ハルトマンとコミュニケーションを行う事は基本的に出来ません。
※操真晴人の肉体の参戦時期は「仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマン対エグゼイド&ゴーストwithレジェンドライダー」以降です。また経歴の記述については、正史(確定してるのはウィザード本編、MOVIE大戦アルティメイタム、戦国MOVIE大合戦のウィザードパート、小説 仮面ライダーウィザード)以外の作品にも触れられているようですが、具体的にどうなっているかは後続にお任せします。

【ウィザードライバー&ドライバーオンウィザードリング&ハリケーンウィザードリング@仮面ライダーウィザード】
仮面ライダーウィザードハリケーンスタイルに変身するために必要なアイテム3つ。一つの支給品扱いである。
ウィザードライバーはウィザードに変身する為のツールで、本来なら装着型ではないが今ロワでは主催の手により装着型(ただし一度装着すると以降は本来と同じく内蔵型となる)へと改良されている。普段は通常のベルトとして、バックルの手形部分のみが出現している。その状態でも一部の魔法は右手のリングを使えば使用可能である。
ドライバーオンウィザードリングを用いる事でベルトが完全に出現する。
ウィザードリングを使用する際は、右手にはめた物の場合は手形部分をかざした時の向き、左手の場合は左方向にしないと使用する事が不可能な他、同じ方向の魔法を連続使用したい場合は手形を一度逆向きにしてからすぐに戻す必要がある。
なお、手形の向きはバックルの左右に備わっているレバーを上下へと動かす事で変更可能。
ちなみに音声が煩いが、流れる音声は魔法の呪文を短縮した物である。
ハリケーンウィザードリングは使用するとウィザードの姿を風属性のハリケーンスタイルへと変えて、風や大気等の操作や、風を纏う事による高速移動や飛行を可能とする効果がある。

【サンダーウィザードリング@仮面ライダーウィザード】
使用すると稲妻を放つことが出来る。また風の力を加えた場合は強力な竜巻を発生させる事も可能。

【ど〜なつ屋 はんぐり〜のプレーンシュガードーナツ@仮面ライダーウィザード】
作中にて操真晴人のお気に入りである店で売られているドーナツ。
彼に取っては、プレーンシュガーのドーナツは今は亡き両親との思い出の味である。
ちなみに現実でも「仮面ライダーウィザード プレーンシュガードーナツ」という商品名で発売されていた事がある。


363 : ◆8eumUP9W6s :2021/04/30(金) 21:00:06 Y9o7jEr20
投下終了です。問題があるようなら修正及び破棄させて貰います。
タイトルは「魔女、考察を重ねる」です。


364 : ◆EPyDv9DKJs :2021/05/01(土) 03:11:52 buyJDlxc0
木曾、ゲンガー、刃衛で予約します


365 : ◆ytUSxp038U :2021/05/01(土) 14:06:16 npk9LGZU0
檀黎斗、グレーテ・ザムザを予約します


366 : ◆ytUSxp038U :2021/05/06(木) 19:55:55 vQHIbkhY0
延長しておきます


367 : ◆5IjCIYVjCc :2021/05/06(木) 23:25:20 I3VR8vVU0
>燃える決意
煉獄さんと合流できたしんのすけ、悟空の力も引き出せ始めて幸先よくなりそうです。

>それぞれのジャスティス
見た目がアイドルの女性だからとんでもない奴に体を狙われる(意味深)なエボルト、流石の彼でもアーマージャックの言動は嫌悪感がすごいでしょう。
最後の膝枕は見た目と中身のギャップを考えると羨ましいのかそうでないのかわからなくなりそう。

>こち亀の載ってないジャンプなんて玉子丼から卵を抜いたみたいなもん
銀魂の再現率がすごい。
悲鳴嶼さんのグッズの売り残りを話のネタにしているが、果たして本人の現状を知ったらどんな反応をすることやら。

>ホイミンはこんらんしている!
知っている魔王に出会ったことで心底驚いているホイミン、相手の中身も魔王なせいで別人なことに気づけないとは。
エシディ志々雄まで現れたことえ場はさらに混乱の渦に巻き込まれていく…

>天使が殺しにやって来る
ボンドルドの言葉からある程度考察を進める戦兎、エボルトのこともあり中々悩みは尽きなさそうです。
デビハムくん相手の戦いではゴーストのカードも使ってみたりとネオディケイドの力を着実と引き出していってます。

>魔女、考察を重ねる
確かに名乗ったのは1回だけだからボンドルドを正確に聞き取れないのも無理はない。
ウィザードとしてはハリケーンスタイルに絞られるとは、元の体でできたことからの縁だろうか。

皆さま、投下乙でした!
産屋敷輝哉、絵美理で予約します。


368 : ◆EPyDv9DKJs :2021/05/07(金) 03:02:42 FX9U1k5w0
投下します


369 : Sea Tripper ◆EPyDv9DKJs :2021/05/07(金) 03:05:03 FX9U1k5w0
(『未来を切り開くため』か。)

 名簿を眺めながら木曾は先の放送を振り返る。
 ボンドルドの言いたいことは少しだけわかる気はする。
 水難事故を起こす程度の能力。艦娘には恐ろしくもあるが、
 同時に深海棲艦相手にも非常に有効打となりうる能力、
 陸上の敵もいるので一概に便利とも言い切れないところだが、
 将来的にはこの力が扱えるのであればいいと思えなくもない。

(よく言うよ。)

 だが出てくるのは溜息だ。
 人の未来を勝手に捻じ曲げようとして、
 未来を切り開くなんて言われても大して響かない。

『それを手に入れるための勇気ある者に是非、私は会いたいものです』

 それは単に自分が見たいだけで、
 到達した奴の矜持とかは一切関係ない。
 中身も感情も、欠片すらこもってなさそうな言葉。
 空洞のような演説に、木曾は軽く苛立つ。

(だが疑問だな。)

 勇気ある者に会いたい。
 確かにその為に行動をするのはわかるが、
 殺し合いでそれを見るには非効率極まりない。
 参加者は数えてみれば六十名、肉体側も含めれば恐らく百はある。
 世界中から精神、或いは肉体の為に拉致して首輪や肉体を入れ替える手段を確保。
 その上で殺し合いの舞台を用意して、得られるのがたった一人だけ。
 稼ぎ目的の遠征を戦艦に任せるようなハイコスト・ローリターン。
 と言うより、現状では殺し合いでなければならない意味を感じられない。
 これについては運営も一人でやってるわけではないとみていいので、
 他の誰かが目的にしていることは想像つくが。
 あくまでボンドルドは表に出せる存在、
 といったところなのだろう。

(いや、待てよ?)

 ボンドルドは勇気あるものに会いたいと言った。
 一方で『一人の勇気ある者』とは一言も言ってない。

(まさかとは思うが……)

 別に優勝なんてしなくてもいいから会いに来てくれ。
 そうとも受け取れるような言葉が微妙に引っかかる。
 自身も目的にしてるが、首輪の解除は茨の道とも言えるだろう。
 機械に強い相手を見つけて、そいつを信頼して解除できるかの神頼み。
 解析や解除の途中で爆破される可能性、そこらへんも含めると此方も至難の業。
 ある意味では、こういう困難を乗り越えるのもまた『勇気ある者』と言えるのではないか。

(可能性としては悪くない、か?)

 ガチガチに固められれば手の出しようはないが、
 ボンドルドが目的のために参加者内で解決できる程度の首輪にしていれば。
 一部の参加者と接触すれば解決できる可能性があるのではないか。
 所詮は敵の言葉の深読みだ。過信はできないが、元々手持ちの情報では無策にも等しい。
 一抹の望みでも縋りたくなるのが、常日頃神頼みする艦娘としてはよくあるもの。
 もっとも縋るのが相手の手抜きを期待すると言う、
 余り手放しに賞賛していいものでもないが。

(大淀や明石がいればよかったんだけどな。)


370 : Sea Tripper ◆EPyDv9DKJs :2021/05/07(金) 03:06:41 FX9U1k5w0
 上からの任務や通信、
 多種多様な立ち回りを得意とする軽巡洋艦。
 或いは多数の装備の回収によって、艦娘でも極めて機械弄りに長けた工作艦。
 彼女らのような存在がいれば心強かったが、此処には自分だけ。

(ま、あいつらいなかったら詰むしな。俺だけで済んだと思おう。)

 重要な役割を担ってると言うことは、
 いなくなれば鎮守府の機能はほぼ止まってしまう。
 上からの任務や報酬、装備開発だって滞ってしまえば地獄絵図。
 エース級の重雷装巡洋艦も大概だが、最悪それは姉妹艦がで済んだと思うべきところだ。
 ……一部装備改修には彼女がいるのは内緒だが。

「って名簿見てねーのか?」

「いや久々に人の道具使うと慣れねえんだよ。」

「お前よく身体のプロフィール見れたな。」

「向こうがこうなるの予想してか、最初っから握らされてたんだよ。」

 デイバックの開け方が非常に拙い高校生。
 とも受け取れるような光景が目の前で繰り広げられてる。
 本人はいたって真面目なので笑うつもりはない。

「ついでだからちょっと離れる。」

「ん? ああ。」

 何しに席を立ったのかは疑問だが、
 何も変わった様子はなく戻ったのもあって、
 特に気にすることなく名簿にちゃんと目を通す。

「一先ずメモしておくか……」

「ん? 何のメモだ?」

「この身体でできることメモをするだけだ。
 いちいち長いプロフィールを見る手間が面倒だからな。」

『口にしたらやばそうなのを纏めておくから、余計なことは言うなよ。』

 そう言いながら紙を見せつつ、人差し指を立てる。
 無線とか常日頃使う都合、電波の傍受とかそういうのに敏感だ。
 会話も傍受されてる可能性はあるから、なるべく相手に情報を渡したくない。

「ケケッ! オレは能力の方が本領発揮しやすいから困らねえけどな。」

 首をブンブンと縦に振りつつ、
 一先ず普段通りの返し方をする。

「で、知り合いはいたか?」

 一通りメモしつつ身内の件も訪ねておく。
 木曾の方は身内はいないのと、艦船から人の形を得た艦娘であるからか、
 城だの貨物船だのそういった存在についてすら特に思うところはない。
 呂500と言った人の名前と比べる場合だと明らかに異質なのもいるので、
 奇妙な名前の連中も、船の名前で呼ばれる艦娘からすれば似たようなもの。
 故に特に気にすることはなかった。

「一匹いるにはいるが、ポケモンの上で固体名なんだよなぁ。」

 個体での名前、つまり名簿にゲンガーがあるとしても、
 相手にとってそのゲンガーがイジワルズのゲンガーなのか、
 そういうのが一切判断できないということである。
 なので参加者がポケモンだとして知り合いと言う保証はない。

「そりゃ当てにならねえな。で、何の能力なんだそいつは。」

「聞いたって此処では別の身体で関係ねーだろ?」

「今のところ俺は関係あると思っている。」

「理由は?」

「お前も俺も肉体と共通点がある。」

 木曾は船に纏わる存在であり、肉体の村紗は船を沈める船幽霊。
 ゲンガーはゴーストポケモンであり、肉体のレンタロウも能力が幽体離脱。
 どちらも精神と肉体の側面に、ある程度の共通点が存在している。
 まだ二人だけで確信ないが、参加者は何かしら共通点で選ばれた説であれば、
 相手の能力をある程度絞り込んで対策ができなくはないからだ。
 思い込みは厳禁だが、あると警戒しておくに越したことはない。
 特に特殊能力を持った二人からすれば能力は初見殺し。
 予想ができる状態であるだけでもアドバンテージに繋がる。

「ケケッ、そういうことか。まあ確かに、
 ピカチュウって言えば電気能力だからな。
 水の能力のそっちには敵でないことを願いたいもんだな。」

「いない奴のことは今は良いから、その知り合いの個体名はなんだ?」

「いやだからピカチュウって───」


371 : Sea Tripper ◆EPyDv9DKJs :2021/05/07(金) 03:08:54 FX9U1k5w0
「……いないぞ。」

 静寂。
 冗談交じりで言ってるのかとゲンガーは苛立ちそうになったが、
 ふざけて言ってない真顔を前に、逆に言葉を失いつつ名簿を渡す。

「ケッ! よく見ろよ。ピカチュウってちゃんとあるじゃあねえか。」

「……ちょっと待て。おれの名簿と違うんだが。」

「え。」

 木曾が持つ名簿を見せる。
 見てみれば大半の名前が自分が見ていたものと違う。

「おい、もう一度漁れ!」

「お、おう!」

 二人ともこれが何かは察していた。
 とは言え念のためゲンガーにデイバックの中を確認してもらう。
 調べてみればあった。名簿と同じようなものがもう一つ。
 こっちは木曾に渡されたものと同じになる。

「お前が見てたのはこっちのは名簿じゃあない、支給品か。」

 ゲンガーが見ていたのは通常の名簿ではなく『肉体側の名簿』と言う支給品。
 丁度精神でポケモンがメタモンだけ、肉体でピカチュウだけと言う偶然の一致から
 ピカチュウの名を聞くまで木曾も気づかないまま話を進めかけていた。
 肉体側の名簿、これがあれば情報アドバンテージとしては───

「び、微妙に使えねえ。」

 今一つで木曾も額に手を当てる。
 確かに情報のアドバンテージとしては悪くないが、
 木曾は上の方にあるが肉体側の村紗は下の方に位置しており、
 肉体側も精神側同様五十音順に名前が並んでいるのがわかる。
 つまり同じ位置にある名前が、参加者の身体にはならない。
 顔写真もなければ、誰がどの肉体なのか判断もつかなかった。

「アーボやチャーレムがいなかっただけましってことにするか。」

 身内がいないので焦る必要はない。
 という観点で見れば不安要素が一つ取り除けたとも言える。

「俺にとっては不穏しかねえけどな。」

 木曾の場合は別だが。
 まさか深海棲艦、しかも姫である港湾棲姫がいるとは。
 陸だし肉体とは言え近しい人物の説を提示している都合、
 人類の敵のような存在に渡されてる可能性があると不穏だ。

「ケケッ! 名簿関係で得た情報を纏めると……」

 一つ、精神側の参加者の肉体も何人かいること。
 今は関係ないが、参加者の肉体が誰かに渡された人にはありがたいことだ。
 同時に自分たちの仲間である人物は肉体を含めていないということ。

 二つ、大崎やチョッパーなど類似した名前が存在してること。
 血縁かは不明だが、恐らく支給された身体もその人物の可能性が高い。
 分かったところで役に立つかは今一つであることは否めないが。

 三つ、精神にメタモン、肉体にピカチュウと港湾棲姫がこの場にいること。
 いずれの能力は強力で、メタモンについては能力から特に用心しておきたい。

 四つ、肉体となるレンタロウの知り合いにナナ、ミチルも参加していること。
 レンタロウの経歴から出会ったとき一悶着あることは覚悟しなければならない。
 (同じ幻想郷の出身である妹紅については深い面識がないからか記載はない。)

「こんなところか?」

「なんか不穏な情報しか得てない気がするんだが?」

 殺し合いである以上悪意のある人間は参加するだろうが、
 最初に出会った彼の肉体も、相当な問題を抱えた人物ではある様子。
 頭が痛くなることばかりだ。

「!?」

 突如、チンと言う鈴のような音が響く。
 参加者が忍び込んでいたのかと咄嗟にゲンガーは立ち上がるが、

「いや多分電子レンジの音だぞ。弁当を温めてた。」

「飯かよ! 食ってる場合かよ!?」

 木曾の言葉でこけそうになる。
 さっき席を立ったのはそういうことらしいが、
 後出しとは言え先行き不安の状況で食う余裕があるのか。
 なんて思いはするがちゃっかりレンジの所までついて行く。

「逆だ逆、今のうちに食っておくんだよ。
 放送内容から既に殺し合いは始まってる。
 見るに堪えない死体だって十分あり得る状況で、
 これからまともに飯が食える機会は恐らくないぞ。
 戦闘糧食みたいな気軽な食事ができる手段もなさそうだしな。」


372 : Sea Tripper ◆EPyDv9DKJs :2021/05/07(金) 03:10:27 FX9U1k5w0
 飯を食う暇もないぐらい探さなければならない人物がいない、
 今だけは誰が何処に行くかの当てがない現状を考えれば、
 最初にして最後の、落ち着いてできる普通の食事の時間。
 特に肉体側も焦らなければならない要素は少ない。

「俺はカレーにするから、お前はハンバーグ弁当でいいか?」

「いや、それ両方ともお前のだろ。」

「別にいいさ。待つのも面倒だし時間の無駄だ。
 足りなければ乗った奴から奪えばいいだけだし、
 どうしても思うとならあとで弁当を渡してくれ。」

 人である以上同じ食料が渡されているなら、
 貰うなり何なりすれば結局変わりはしない。
 カビゴンならまだしも人並みの食事ですむことも考えれば、
 別に気を付けるべき部分でもないと思い受け取ることにする。

「ま、それもそうだな。」

 二度手間とか面倒なのは避ける。
 救助隊でも厳しいものはなるべく受けない。
 にしのどうくつのほぼ最下層まで護衛とか、
 一体何を考えてそんなところにパートナーがいるのか。
 甚だ疑問になるような高難易度の救助や依頼も存在するので、
 言い分は十分に理解して弁当を受け取る。

(おー。)

 食卓に着いて蓋を開ければ、湯気と共に舞い込むソースの香り。
 人の食事なんてものとは一切無縁の生活を続けてきた彼にとって、
 こういうものが食べられるのは久しく、鼻腔を刺激してくる。
 最後に食べたのはいつかなんて既に忘れており、
 早く早くと割り箸を割ってハンバーグを切ろうとする。

「いただきます。」

 しかし向かいの木曾が手を合わせてから食べるのを見て、
 一旦箸を置いて自分も同じようにしてから食事を再開する。
 人としての当たり前なことも忘れかけていたことを、
 この身体になってから次々と思い出させてくれる。
 ハンバーグを軽く切り、温められた野菜と一緒に口に含む。

(あ〜〜〜うめぇ〜〜〜。)

 デミグラスソースが野菜を引き立たせながら、
 噛むたびに味が広がるハンバーグに顔がほころぶ。
 タネやきのみ、リンゴ、時折ベトベターフード……殆ど似たようなものばかり。
 確かにそれで生きていけてたわけなので左程不満はなかったが、
 ポケモンになってからと言うもの、食に対する楽しみが薄れるのは当然で、
 コンビニ弁当でも人の技術が培った料理を食べられるのはそれだけで幸せだ。

「随分うまそうに食うな。」

 好きなものを食べて喜ぶ高校生の図。
 とでもいうべき殺し合いとは縁遠い光景だ。

「ケケッ! 草食みてーな環境だったからな!」

 薄味のポテトもソースのお陰で薄い方が相性がよく、
 容器破損を避けるためのパスタも、ケチャップの甘みが久しい感覚だ。
 白米も進まない筈がなく、食えば食う程に箸は進んでいくと言うもの。
 屈託のない姿に、つい木曾も微笑を浮かべながらカレーを口にする。
 心なしか、いつも食べるカレーよりもおいしく感じていた。

 ◇  ◇  ◇


「で、どこ行くんだ?」

 食事も終えて集落を出て外へ出る二人。
 木曾はコンパスを片手に地図を広げ、ゲンガーが前を先行する。


373 : Sea Tripper ◆EPyDv9DKJs :2021/05/07(金) 03:12:49 FX9U1k5w0
「位置的にD-8、東端か此処は。」

「ってことはこっちに参加者は余り来なさそうだな。」

「根拠は?」

「狭いと敵と遭遇するに決まってるからな。」

「確かに。」

 モンスターハウスに突っ込んだ時は狭い通路へ逃げるのが定石。
 だが逃げた先でもポケモンに出会って壊滅する。救助隊にはよくある。
 壁をすり抜けできる彼にとって確かに縁遠いことではあるが、
 仲間のチャーレムやアーボはそういうわけにはいかない。
 追い込まれる状況にはしない立ち回りは大事だ。
 そして、このエリア周囲は二つの橋だけが徒歩で移動可能なルート。
 かなりの確率で敵との遭遇が懸念されるとも言える。

「一先ず方角的に南下して近い街に……ん?」

「どうした?」

「いや、いるもんだな。参加者。」

 橋に差し掛かろうとしてたところ、
 逆に橋からやってくる参加者の影。
 妖怪になった都合視力はよくなってる木曾は視認できて、
 逆に人間になったゲンガーはまだ相手の姿が見えない。
 地図をしまいながら相手の姿を窺う。

「なら、とりあえず声かけてみるか。」

「大声で声かけるなよ。隠れてる敵だっているかもしれ───」

 木曾が言葉を終える寸前、
 ゲンガーの身体が突如浮遊感を覚える。
 今の身体で浮遊はできるはずがなかったが、
 地上から数メートルは離れた位置まで浮かんでいる。
 レンタロウではなく、木曾───ひいては村紗の能力の一つだ。
 村紗と言うよりは、幻想郷の妖怪なら大抵は持ってる飛行能力だが。
 そして二人がいたところを、虹色の刃の一閃空を裂く。

「言った傍から敵かよッ!!」

「うふふ。いい反応と能力を持っている。
 これならば、先程の奴よりも楽しめそうだな。」

 初撃を避けられたが笑みを浮かべるは、
 人斬りの英霊に宿った人斬り鵜堂刃衛。
 寧ろこうでなくては面白くないと言うもの。
 先の奴とは違う、困難な存在との死合う果てに得る勝利。
 あれがたまらなく愛おしくて人斬りをやってるようなものだ。

「とりあえず一度お前を逃がすぞ!」

 幽体離脱の能力では本体が無防備だ。
 相手の動きは明らかに守りながら戦えない身のこなし。
 このまま文字通り彼を抱えての戦いは困難とも言える。

「そんなに重いならば一部もらっておこうか。」

 この空中で、相手と視線が合うことに木曾は目を張る。
 自分が空を飛べるように相手もそれぐらいの跳躍が可能なのは、
 あり得ないことではないと思っていたが予想以上のスピードだ。
 岡田以蔵は決してステータスが高いサーヴァントとは言えないが、
 筋力は並だとしても敏捷に限ればかなりのものになる。

「クソッ! 着地は自分で何とかしろ!」

「え!?」

 いやそんな無茶なことを、
 なんて抗議しようとしても問答無用で投げ飛ばされる。
 まだ慣れてないのに着地とか無茶言うなと思ってたが、
 運よく足から着地することはできて大事には至らない。

「おい! もうちょっと丁寧に───ヘブッ。」

 抗議しようと空を見上げると同時に頭に何かがぶつかる。
 一体なんだと思って手に取ったそれに、絶句せざるを得ない。
 こんなところにあってはいけない、人の左腕。
 状況から誰のものかなど、最早語るまでもない。

「グァ、ッ……!!」


374 : Sea Tripper ◆EPyDv9DKJs :2021/05/07(金) 03:14:26 FX9U1k5w0
 首輪より少し上の首に赤い筋を刻まれながら木曾は苦痛に歪む。
 腕を挟んでなければゲンガーの所に落ちたのは首なことが、首筋から流れる血が物語っている。
 骨と言うのは結構頑丈で、骨があっては腕を斬り落とすのは難しい。
 普段の彼ならば容易だろうが、普段ではないのがこの場の参加者の共通事項だ。

「これくらいッ!」

 苦痛に歪みながらも木曾は最低限の怯みにとどまり右ストレートを叩き込む。
 空中で攻撃直後の二重苦の中では回避は間に合わず、
 拳は頬に吸い込まれるように叩き込まれ、地面へ勢い良く吹き飛ぶ。
 村紗は妖怪で、常日頃からアンカーを持ち歩く船幽霊でもある。
 並の妖怪以上にパワーは優れており、華奢な少女とは思えぬ威力を出す。

「腕、返せ!」

 返事を待たずにゲンガーから奪って切断面を合わせる。
 切断面を合わせてみると、僅かではあるが腕が接合していく。

(妖怪だしできるか試したが、案外できるな。)

 妖怪であるが故に致命傷でもなければ、
 ある程度の傷は再生できるかもしれない試みは成功だ。
 確かに接合そのものはしたが、右腕のような自由かつパワフルとまではいかず、
 まだ接合しきれてないのか血液が一部から漏れている。
 幻想郷の妖怪と言うのは本来は肉体が損壊しての死亡は稀な部類になる。
 船幽霊である村紗もその例にもれることはないからか、通常あり得ない治り方をしていく。
 だが一方で、船幽霊はこの舞台にいる蓬莱人と違い再生が得手と言うわけではない。
 ついでに言えば、その稀も此処では稀ではない。
 首をはねられれば死ぬ。心臓を止めれば死ぬ。
 過信は出来るものではなかった。

「お前は今すぐ撤退してからの援護だ、急げ!」

 勿論その

「お、おう!」

 護衛撤退できる仲間はいないのが不安ではあるが、
 此処は他に参加者をいないことを願うしかない。
 言われると同時に、ゲンガーはその場から離脱する。
 見てるだけで心配になりそうな拙い走り方と共に。

「俺は強い奴と戦うのが目的だ。
 逃がさずとも俺は材料にもならん人質など取らんさ。」

 人質を取るのはあくまで相手を本気にさせる為。
 勝つための人質を取ると言った行為を求めない彼なりの美学。
 端から見ればまともに見えるが、この男は当然まともではない。
 人斬りは所詮死ぬまで人斬りとは言ったが、死して尚変わることはなく。
 寧ろ、新たな境地である今を楽しもうとすら思っている狂人だ。

「なぁに、勝つための布石だ。
 それにあいつがいるとやりづらくてかなわない。」

 水難事故を起こす程度の能力。
 水難事故と言えば津波や濁流と言ったものや、
 一般家庭だと風呂による水死もよくある事故だ。
 津波のような弾幕で仲間を巻き添えにしてしまうものを、
 能力で動けなくなりがちな彼といては相性が最悪だ。
 そういう意味でも、引き離さざるを得なくなる。

「そうか。では死合う……と言いたいが、
 柄杓では戦いにくいだろう。支給品に何かないのか?」

「そんな暇くれるってのか。随分優しいな。」

「言っただろう。俺は強い奴と戦うのが目的だ。
 一方的な戦いもつまらんからな。それに先の対応、
 少なくとも場数を踏んだ奴とみてもよさそうだ。」

「先に仕掛けておいて、よく言うな。」

 そんな奴を一方的に嬲っても面白味もない。
 完全に舐められた扱いで眉をひそめる。

「初撃も避けれぬ奴に期待ができると思うのか?」

「まあ、そこについては否定はしないさ。」

 先制攻撃と言えば重雷装巡洋艦の十八番。
 先に沈んだ奴のことをいちいち気にする余裕はない、
 と言えば確かに十分納得できるものではある。


375 : Sea Tripper ◆EPyDv9DKJs :2021/05/07(金) 03:14:57 FX9U1k5w0

「だが、後悔しても知らねえぞ。」

 柄杓を使えるかどうか怪しい左手に任せ、
 デイバックを降ろしてから引き抜いたのは黄土色に輝く刀。
 虹に負けず劣らずの眩い輝きを放っており、
 双方が優れた業物だと認識するのは当然だ。
 嘗て空の民が用いた最終兵器が一つ『八命切』。
 虹を相手するに相応しい相手とも言える。

「この虹と言い貴様の刀、
 どちらも生前では見ることのないものだ。
 うふふ……この場は実にいい場所だな。」

「言ってやがれ!」

 肉薄と同時に袈裟斬り。
 抜刀斎の速度でもある程度対応していた彼に、
 対応できないわけではなく難なく防ぐ。

「うふ、ふ、ふ、ふ! 重い! 実に重い!」

 手が痺れるような重い一撃。
 元の身体であれば今ので腕が折れていた可能性もある。
 故に、気分が高揚するというもの。

「だが太刀筋は甘い!」

 後方へと下がり鍔迫り合いをやめ、
 続けざまに横薙ぎに虹を振るう。
 二階堂平法における一文字の型だ。

「ッ!」

 木曾もなんとか刀を挟むことで一撃を防ぐも、
 防ぐと同時に次は右側からの八の型である袈裟斬り。
 飛び退いたものの、完全には避けれず腹部に赤い筋ができてしまう。

「遅い、遅いぞ。今のお前ではたばこ一本吸いきる前に殺せてしまうぞ!」

(こいつ、剣術に長けてやがるのか!)

 木曾も軍刀を持ってる身ではあるが、
 艦娘とは常に砲雷撃戦で戦う立場。刀を振るう機会はほぼ皆無だ。
 時折振るいこそしたが、それだけで優れた剣技に至れるはずもなし。
 二階堂平法の使い手、元新選組、剣術を模倣できる岡田以蔵の身体。
 それらを前に剣術で勝てる要素は何処にあるだろうか。
 攻撃を何とか防ぐ、凌ぐ、躱す……防戦一方だ。
 それができてるだけでも相当ではある。

(このままだと、押し切られる!)

 一度空中に逃げて体勢を立て直す。
 今度は五メートル以上とさらに高く飛び射程外を目論む。、

「その手は既に見切っている!」

 今度は飛んだと同時に刃衛が先に上空へ行く。
 重力を合わせた虹による唐竹割りが襲いかかる。
 天星器でなければ、間違いなく刀で防いでも砕かれていた一撃だ。

「やっぱり、重い……!」

 だが砕けなかったとは言え衝撃は当然存在している。
 地面もない空中でこの重い一撃を踏み留まるなどできず、
 着地こそしっかりしているが殆ど叩きつけられたに近しい威力だ。
 足がゆっくりと鈍痛を起こし、崖際へと追い込まれる。

「料理も冷めれば味気なくなるものだ。終わりとするか。」

「勝手にまずいと認識してるんじゃねえよ。
 寝かせたらうまくなるカレーを知らねえのか、貴様は。」


376 : Sea Tripper ◆EPyDv9DKJs :2021/05/07(金) 03:16:30 FX9U1k5w0
 刀を地面へと突き刺し、
 開けっ放しにしていたデイバックから柄杓を取り出して刃衛へと向ける。

「まさか、その柄杓で戦うつもりではあるまいな?」

 或いは刀との二刀流とも一瞬よぎったが、
 場違い極まりない代物に興ざめもいい所だ。
 明らかに不服そうな顔を浮かべている。

「遠いからできないと思っていたんだよ、俺は。」

「……何の話だ?」

「万が一空振りだったなんて笑えもしない。
 そんな風に思ってできなかったからこうして、
 何とかこうして近づいた今なら感じるんだよ。
 『ああ、確かに書いてあった通りだな』ってな。」

「だから何の話だと聞いて───」





「これが俺とコイツ(村紗)の、砲雷撃戦だッ!!」

 柄杓を思いっきり振るうと同時に、
 『背後に広がる海から』飛び交う無数の水の弾丸。
 木曾の背後は海。村紗の水難事故の起こす程度の能力が最も発揮できる範囲だ。
 別に彼女は水がなくても水を生成できる。船幽霊だったがゆえにそういう力があるから。
 だが、使えても身体が慣れない今使ったところで、微弱な力しか使えない可能性もあった。
 肝心な戦闘で通用しない攻撃をしても、僅かなダメージの可能性を実戦で使うのは不安材料でしかない。
 故に、彼女はその力が一番発揮できそうな、海の傍までなんとか攻撃を凌ぎながら移動していた。
 相手のことだから言えばそこまで行かせてくれたかもしれないが、
 ただでさえ武器を出す暇を与えた相手にこれ以上してもらって勝てたとして、
 この先勝てるとは到底思えなかったがゆえにこういう行動を取った。

「うふ、うふわははは!! そんな隠し玉があったかゔぷ!」

 無数に飛び交う人並みのサイズの水玉の一発が被弾する。
 一発で全身を殴られたかのような重い一撃を受けて大きく後退するも、
 表情はなおも歓喜に染まっていて笑い声を挙げずにはいられない。
 続けて襲い掛かる水の弾幕を両断して道を切り開く。

(とにかくあいつに勝つにはこの力が頼みの綱……何処まで使いこなせるかだ!)

 柄杓の向きを反対へ向けて逆方向に振るい、
 同じように反対に柄杓を向けて逆方向に振るう。
 そうして海から無数の弾幕が飛び交う光景は、
 さながら【浸水「船底のヴィーナス」】と言ったところか。
 但し、非常に見栄えも弾幕の密度も大雑把ではあるし、
 元は空中で下から狙う不意打ち特化のスペルカードだが。

(此処に来て飛び道具は厄介だな。)

 刃衛は飛び道具が苦手、
 と言うよりも余り撃たれる経験が少なかった。
 撃たれる前に相手の動きを封じてから斬る都合、
 どうあっても撃たれること自体の経験が浅いのだ。
 どうしようもない程ではない。達人ともなれば自然と分かるものだが、
 水と言う視界を妨害しやすい弾幕では、その点を鈍らせてくる。

「ヌゥ!」

 弾幕を斬って肉薄するも、
 その先にも弾幕があることに気付かず被弾して吹き飛ぶ。
 衝撃のあまり鼻血が流れるが、笑みはやはり崩さない。

「攻略しがいがあると言うものだ!」

 劣勢とは思わない。逃げるしかないとは考えない。
 わざと相手へ文を贈ることで警備を厳重にさせ、
 困難なものにしてから攻略するのが黒笠の本懐。

 二度も受ければ弾幕に対する理解は早い。
 前進をしながら弾幕を華麗に回避していく。
 グレイズと呼ぶには無理のある被弾もしているが、
 先ほどのような大きなダメージには至らない。

(破れかぶれでやるもんじゃあないな……!)

 迫る刃衛を前に柄杓での応戦は厳しい。
 空中へと投げるように柄杓を飛ばすと同時に八命切を引き抜き先に仕掛ける。
 パワーだけで言えばこちらが上回ってるので、先に仕掛ければ防がれても怯みやすい。
 目論見通りに互いの得物がぶつかり合い甲高い音を響かせる。

「ついに届いたぞ、この間合い!」

 差kに仕掛けられたが、間合いに入れば剣術の差で此方が上回る。
 相手は剣術に長けてはいないのだから土俵は此方へと変わった。

「……届いたと本当に思うのか?」


377 : Sea Tripper ◆EPyDv9DKJs :2021/05/07(金) 03:17:42 FX9U1k5w0

 だと言うのに、この状況でするとは思えないような不敵な笑み。

「何を───ガッ!?」

 刃衛の突如顔面に叩きつけられる柄杓。
 この水の弾幕の中で近寄れる奴などいるはずがない。
 だが目の前の相手は片手は八命切を、左手は手ぶらだ。
 一体だれがと思って視線をわずかに上へ向ければ、そこには確かにいた。

「ケケケッ! 『たたきつける』って奴だぁ!!」

 先ほど彼女が逃がした青年───ゲンガーだ。
 この弾幕の密度、通常ならとても仲間との連携は取れない。
 だが幽体離脱は幻想郷風に言えば『当たり判定が存在しない』とほぼ同義。
 ゆえに弾幕もお構いなしで、ゴーストタイプだった都合動きもこっちの方が機敏だ。
 木曾は彼の霊体を見かけた瞬間、賭けに近いが柄杓を投げて彼に任せた。
 出会って時間は短く、そういう連携が取れるとは余りあてにしていなかったが、
 幽体離脱してるのに戦場に戻ってきたなら、何もしないのはないと信じた結果だ。

「貴様、さっき逃げた……」

「オレはイジワルズのゲンガーだ!
 邪魔をするのがオレの本分なんだよ!」

 たかが柄杓と言っても顔面へのフルスイング。
 ダメージがないとは言い切れないし、この状況では致命的な隙。

「いいぞゲンガー!!」

 隙を見逃さず腕を斬り落とす勢いで刀を振るう。

「おおお!!」

 後退と同時に右腕と刀だけを引き、
 残る左腕は右腕を守るように間に挟まる。
 嘗て抜刀斎に右腕を使い物にならなくされた影響か、
 利き腕だけは失わないようにと言う考えが咄嗟に働く。
 結果、左腕はやり返されるかのように泣き別れて空中を舞う。

「畳みかけるから渡せ!」

 まだゲンガーへと刀を投げ、

「ケケッ!」

 同じように柄杓を投げ返し、
 共にそれを受け取って攻めに入る。

「うふ、そうかそういう力だったか!
 だがそれには致命的な欠点があるぞ!」

 言うが否や、刀を受け取ったゲンガーの方を狙う。
 いかに身体が英霊だとしても、ルールが違う霊体化だ。
 魔術的要素が絡まない以上サーヴァントの一撃であっても、
 レンタロウの能力である幽体離脱に物理攻撃は決して加えられない。

「な───」

 そう、霊体には。
 彼は八命切の柄を狙い横薙ぎを振るった。
 剣術に関してはこの中で一番素人のゲンガーにとってそれは重く、
 あらぬ方向へ八命切を弾き飛ばされてしまう。

「やっべ!」

(連携は期待できそうにないか!)

 ゲンガーの視線は完全に八命切の方だ。
 相手を倒せるであろう一番の武器を手放してしまった、
 その状況では相手の刀を掴むと言った他の思考は鈍りやすい。
 もっとも、相手の刀を掴んだりといった行動はやろうとしても、
 太刀筋から掴むことができるかも怪しいので別に責めることはなく。
 刃衛が武器への対処を優先したお陰で彼女の方は動ける。
 柄杓をキャッチし再びそれを振るう───





 寸前、身体が一瞬だけ身動きが止まる。
 金縛りにあったとも言うべきかのように身動きが取れない。

(な、身体が───!?)

 心の一方。
 刃衛の瞳を見たことで起きる、簡潔に言えば一種の瞬間催眠術。
 二階堂平法の技で、元は敵や政府のブタ共を逃がさないために使うもの。
 生前ならまだしも、別人の岡田以蔵の身体でもできるかどうか、
 流石の刃衛もこれが成立するかについては賭けだった。
 事実、金縛りの具合は明らかに浅く殆ど一瞬しか起きない程度。
 だがその一瞬さえあれば成立する。サーヴァントの身体であれば。
 新選組由来の片手平突きが、刹那の間に木曾の胸を貫く。

「───」

「何だと───ッ!?」


378 : Sea Tripper ◆EPyDv9DKJs :2021/05/07(金) 03:19:29 FX9U1k5w0
 肉を裂かれる音で、
 ゲンガーも起きた事態に気付く。
 鮮血が噴き出し海の方へとたたらを踏む。
 何とか踏みとどまったが、今のは完全に致命傷だ。
 本来であれば殺すことは容易ではない幻想郷の妖怪も、
 この場であれば致命傷を受ければ助かることはない。

「死ねえいッ!!」

 だが念には念を入れられる。抜刀斎との敗因は二段構えの技、双龍閃。
 勝ったと思った瞬間こそが敗因となることを理解している。
 故に引き抜くと同時に、横薙ぎに振るい腹部に二つ目の真一文字の傷。
 防御もないまま今度は深々と斬られ、大きくのけぞる。
 さらにそこから唐竹割りによる十文字の型でとどめを刺す。





「ッ……それで、俺を殺したつもりかッ!!」

 妖怪であろうと今受けた傷は完全に致命傷だ。
 命の燈火が消える。夜の海で灯台が消えるかのような。
 だが踏みとどまる。文字通りの意味でも、精神的な意味でも。
 だって、まだ『致命傷でしかない』じゃあないか。
 艦娘は戦場であれば、どれだけ致命傷であろうと最期まで抗う。
 弾避けの壁になる。申し訳程度の砲撃で敵の装甲を削ってやる。
 大破であろうと役割と言うものが存在し、幾度となく行った。
 身体が違うからとか、そういう言い訳はどうでもいい。
 今はこいつを倒すことだけを考える、戦場の艦娘。
 水上でも、地上でもそれは変わらない。

「お前だけは沈めるッ!!」

「何!?」

 柄杓を思いっきり振りかぶると同時に、海水が龍の如く刃衛の周囲を飛び交う。
 完全に不意の一手にブレーキは間に合わず、渦へと吸い込まれて文字通りの巻き添え。
 水の勢いはやむことなく、その勢いのまま木曾は柄杓を振るいながら回転する。
 【溺符「ディープヴォーテックス」】に酷似した、巨大な渦潮の弾幕。
 止まると同時に水は彼方へと飛び立ち、渦潮はハリケーンの如く飛んでいく。



 叩きつけたり溺れさせる目的で彼方へと飛ばした彼女だが、
 既に彼の肺を埋め尽くすような水が叩き込まれているのだ。
 肺に水が溜まれば、一瞬で陥った酸素欠乏で既に心停止を起こしている。
 既に溺死しているなど、気付くこともないまま。

 サーヴァントと言う英霊の身体により、
 新たな境地へと至ることができた人斬り『黒笠』。
 だが皮肉にもその幸運のパラメータの低さによって、
 一抹の可能性すら喪ったと彼は思っていたのだろうか。
 川の氾濫を利用して薫を攫い抜刀斎を本気にさせた彼が、
 よもや水難事故の力に敗北する皮肉を以って、第二の終焉を迎える。



【鵜堂刃衛@るろうに剣心 死亡】



「……彼岸の向こうで、この木曾を沈めたこと、誇るが───いい……」

 致命傷の中で【溺符「ディープヴォーテックス」】の真似事ができただけでも奇跡に等しい。
 とうに身体は限界を迎えており、ついに足を踏み外して海へと身を投げ出す。

「木曾オオォォォ───ッ!!」

 霊体となったゲンガーが手を伸ばす。
 本来ならば無茶な飛込みは自殺行為だが、
 霊体である以上ある程度の浮遊ができる。
 だから空中で掴むということも可能。
 特にゲンガーは元々ゴーストタイプのポケモン。
 人の姿よりもこの状態の方が十分に扱える。
 だから動きは通常時よりも遥かに優れた動きだ。


379 : Sea Tripper ◆EPyDv9DKJs :2021/05/07(金) 03:22:21 FX9U1k5w0
 だが、優れた動きだからと言って常人離れのスピードではない。
 幽体と言う重力の影響を受けない状態の自分と受ける木曾の身体。
 同じになることなんてあるはずがなく、先に木曾が沈んでその後を追う。

(な───)

 追うように海へと飛び込んだが、言葉を失う。
 月明りだけが頼りとなる海では、彼女の姿は殆ど見えないのだ。
 何処までも暗い海が続き、手探りで探そうにも幽体では触れられない。
 逆に触れられるようにすれば今度は水の抵抗で探すのが困難になる。
 悲しいことに、彼女を見つけられるような状況ではなかった。

「おい! 返事をしろよ!」

 船幽霊なら水中で喋るぐらいわけがないはずだ。

「木曾! いるんだろ!!」

 声だってきっと届く。だからできる限りの大声と共に探す。

「返せよ、おい……」

 しかし声は返ることはなく、彼女を見つけることも叶わず。





「……畜生ッ!!」

 何の結果も得られないまま漠然と時間が過ぎながら、
 ゲンガーは苛立ちと共に幽体離脱をやめ、近くの壁へと拳を叩きつけた。
 世界征服が目当ての悪だが、それでも救助隊で助けることには多少の心得はある。
 人助けが仕事でありながらも任務は失敗、しかも再挑戦する権利はなければ、
 その助けるべき彼女が何処にいるのか、生きてるのかさえ分からない。
 誰かを助けられずにこんなに悔しいと思えたのは、初めてではないかと思う程に。
 サーナイトを助けることができたあの時のようなことは、今回は訪れなかった。

【D-8 集落の何処か/一日目 黎明】

【ゲンガー@ポケットモンスター赤の救助隊/青の救助隊】
[身体]:鶴見川レンタロウ@無能なナナ
[状態]:人の身体による不慣れ、悲しみ、精神疲労(大)、手にダメージ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2、肉体側の名簿リスト@オリジナル
[思考・状況]基本方針:イジワルズ特別サービス、主催者に意地悪してやる。
1:……。
2:ピカチュウとメタモン、港湾棲姫には用心しておく。(いい奴だといいが)
[備考]
※参戦時期はサーナイト救出後です。一応DX版でも可。(殆ど差異はないけど)
※久しぶりの人の身体なので他の人以上に身体が慣れていません。
 代わりに幽体離脱の状態はかなり慣れた動きができます(戦闘能力に直結するかは別)。
 幽体離脱で離れられる射程は大きくても1エリア以内までです。


380 : Sea Tripper ◆EPyDv9DKJs :2021/05/07(金) 03:22:41 FX9U1k5w0
※D-8の草原に木曾のデイバック(基本支給品(食料少し減)+木曾のメモ+ランダム支給品×0〜1)、
 及び八命切@グランブルーファンタジーがあります。
 木曾のメモは『これを読む奴、口にはしないのと信用できる奴にだけ見せろ。』との注意書きと、
 『ボンドルドは優勝しなくても構わない可能性』が現在記されています。
※柄杓は海の底へと消えました。回収は困難です

※【溺符「ディープヴォーテックス」】により、
 大きめの渦がD-8周辺で発生して空を飛んでます。
 行先は不明ですが、誰かが見るかもしれません。
 行先に刃衛(岡田以蔵)の死体、虹が落ちるかどうかは不明です。

【肉体側の参加者名簿@オリジナル】
チェンジ・ロワにおける肉体側の名前のリスト。
役に立ちそうで此方も五十音順で並んでるため、
自分や知り合いの身体があるかを判断するか程度のもの。
まあつまるところ当たりに見せかけた何とも言えないもののだが、
肉体が参加してる人にとっては割と大事な支給品かもしれない。

【八命切・轟天@グランブルーファンタジー】
覇空戦争時代、空の民が星の民との戦いで用いた切り札たる十の武器の一つ。
触れえくもの全てを引き裂く刀とされると言う話がある程の武器ではあるが、
古戦場から発掘したそれは元来の性能と程遠いか、話が嘘かは不明だが噂通りの力はない。
土属性として鍛えられたため土属性の力を強化することが可能。










 沈みながら、木曾は暗黒の海を流れていく。
 嘗て船幽霊であった彼女が戻る場所のように、
 艦船として死地とも言うべき水底へとその姿は消えていく。
 手を伸ばすが、その手を握る相手は誰もいない。

(沈むって言うのに、悪くない感じなのは身体の影響か……)

 すまないと思った人物はいくらでもいるが、
 先のことを思うと顔が浮かんでくるのは三人だ。
 この場で仲間となったゲンガー、持ち主である村紗水蜜。
 そして、最高の勝利を与えると約束したはずの提督の三人。
 せめて、誰かを守るために戦って沈めただけましと思おう。
 目を閉じて、光が遠のく世界の底へと向かう。
 軽巡洋艦としての木曾が辿った道のように。









 船幽霊が出没するある地域には、こんな言い伝えがある。



 もしも船幽霊と出会ったときの対処法として、相手を『じっと睨め』と。



 さすれば、船幽霊はいなくなる……そんな話があると言う。










【木曾@艦隊これくしょん 轟沈】


381 : ◆EPyDv9DKJs :2021/05/07(金) 03:24:38 FX9U1k5w0
投下終了です
ポケモン世界の食肉文化についてですが
作中でも基本曖昧なのと、ゲーム(剣盾)にもハム等あるようなので、
一先ずは食肉文化はある、と言う解釈をしています
(ゲンガーの出身が『食肉文化のないポケモン世界』かも不明のため)


382 : ◆EPyDv9DKJs :2021/05/07(金) 06:19:29 FX9U1k5w0
あ、すいません状態表等の修正があります
【D-8 集落の何処か/一日目 黎明】

【ゲンガー@ポケットモンスター赤の救助隊/青の救助隊】
[身体]:鶴見川レンタロウ@無能なナナ
[状態]:人の身体による不慣れ、悲しみ、精神疲労(大)、手にダメージ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2、肉体側の名簿リスト@オリジナル
[思考・状況]基本方針:イジワルズ特別サービス、主催者に意地悪してやる。
1:……。
2:ピカチュウとメタモン、港湾棲姫には用心しておく。(いい奴だといいが)
3:木曾のメモのこと、覚えておかないとな。
[備考]
※参戦時期はサーナイト救出後です。一応DX版でも可。(殆ど差異はないけど)
※久しぶりの人の身体なので他の人以上に身体が慣れていません。
 代わりに幽体離脱の状態はかなり慣れた動きができます(戦闘能力に直結するかは別)。
 幽体離脱で離れられる射程は大きくても1エリア以内までです。
※木曾から『ボンドルドが優勝を目的にしてない説』を紙媒体で伝えられてます。
 (この都合盗聴の可能性も察してます)

※D-8の草原に八命切@グランブルーファンタジーがあります。
※柄杓は海の底へと消えました。回収は困難です

です。結構やばいミスして失礼しました


383 : 名無しさん :2021/05/07(金) 19:22:19 ttxNHxYA0
投下乙です
肉体名簿、便利なようで使いづらいってさじ加減がいい感じだな
そして遂に本編で死亡者出たか
全力で戦い抜いた木曾と刃衛に敬礼
木曾に手が届かなかくて悔しがるゲンガーが切ないな
見た目はレンタロウなのに


384 : ◆P1sRRS5sNs :2021/05/08(土) 04:21:41 K87llWeg0
神楽、伊東開司、康一、ロビンで予約します


385 : ◆5IjCIYVjCc :2021/05/11(火) 23:06:38 ZXdC2ZYA0
>367の予約から絵美理を外します。


386 : ◆OmtW54r7Tc :2021/05/11(火) 23:14:32 7OMF84zI0
ゲリラで投下します


387 : 自分探しの旅 ◆OmtW54r7Tc :2021/05/11(火) 23:17:51 7OMF84zI0
「これは…どう判断すればいい?」

ジューダスは、名簿を見て顔をしかめる。
彼が知る名前は二つあった。
「リオン・マグナス」…かつての自分の名前。
「ジューダス」…この殺し合いに連れてこられる直前まで名乗っていた自分の名前。
とりあえず、リオン・マグナスが同姓同名の別人とはさすがに思えない。
これは自分のことで間違いないだろう。
しかし、このリオン・マグナスは果たして今この場にいる、【H-4 砂浜】にいる自分自身のことを指しているのか否か。

「考えられる可能性は、こんなところか」

1.リオン・マグナスは過去の同一人物で、ジューダスこそが自分を指す名前である。
2.リオン・マグナスこそ自分を指す名前であり、ジューダスは関係ない別の人物である。

「もしも前者なら…まずいことになるかもしれない」

過去の自分が消えることで未来の自分も消えるかもしれない。
ジューダスが考えているのは、そんなことではない。
元の世界でやるべきことを果たし消えた彼に、自分の生に今更しがみつく理由などないのだから。

ジューダスが警戒しているのは、歴史改変。
もしもこの場に過去の自分がいるならば、そいつが死んだとき歴史が変わってしまうかもしれない。
スタン達を裏切る前から連れてこられているならば彼の不在によりグレバムを倒せない事態に陥るかもしれないし、かつての自分の様に死んだ後に蘇らされた存在だとしても厄介だ。
もし蘇らせた連中がエルレインと関係ない人物で、この場所が彼女の干渉ができない世界だったならば、ここで死んだとき、エルレインによる死者蘇生が行われない可能性があり、そうなるとジューダスとしてカイルの旅に同行できなくなってしまう。
それによって、エルレインとフォルトゥナ神の野望を止められない事態になれば…全ては無駄になる。(実際、ジューダスがいなければカイルはダリルシェイドで長期間投獄されるか、ストレイライズ神殿でバルバトスに殺されてるかして、エルレインの野望を止められなかった可能性が高い)

「探すしかないな…『リオン・マグナス』か『ジューダス』を」

こうしてジューダスは、文字通りの意味で『自分探しの旅』を始めるのであった。

【H-4 砂浜/深夜】

【ジューダス@テイルズオブデスティニー2】
[身体]:神崎蘭子@アイドルマスター シンデレラガールズ
[状態]:健康
[装備]:エターナルソード@テイルズオブファンタジア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない
1:自分の名前を知る意味でも、リオン・マグナスかジューダスを見つけたい
2:もしもリオン・マグナスが過去の自分ならば歴史改変を阻止するために守る
3:できれば短剣も欲しい
[備考]
参戦時期は旅を終えて消えた後
名簿上の自分の名前がリオン・マグナスとジューダスのどちらか分かっていません


388 : ◆OmtW54r7Tc :2021/05/11(火) 23:18:32 7OMF84zI0
投下終了です


389 : ◆5IjCIYVjCc :2021/05/13(木) 21:52:33 QtSa3K2A0
>Sea Tripper
ついに出てしまった本編死者、マーダーと対主催が相打ちになるとは。
関係が良好であっただけに、ゲンガーのショックも大きいでしょう。
肉体名簿の情報はまだ役に立ちませんが、場合によっては活かせる時も来そうです。
空飛ぶ水の渦がどこに行ってしまうのかも見ものです。

>自分探しの旅
過去の自分の名前があることに気づいたジューダス、
ただでさえ名前だけでは現状が判断しづらいこのロワでは色々と心配になるのも無理はないでしょう。

それでは、投下します


390 : 正義のためなら鬼となる ◆5IjCIYVjCc :2021/05/13(木) 21:53:31 QtSa3K2A0
「……この鞄は一体どうなっている?これは二輪車のようだが…」

産屋敷輝哉が一先ず怒りをある程度落ちつけた後、彼は無惨のプロフィール以外の支給品も確認することにした。
戦闘には鬼としての体が使えるだろうが、念のため他に自分が何を使えるのかを確認しておきたかった。
そして、輝哉がどこか驚いた様子で呟いた理由、それは中から出てきたものが明らかにデイパックの体積と合っていないからであった。

輝哉に支給されたアイテム、それは派手な色に塗装されたバイクであった。
もっとも、輝哉自身はバイクといったものをよく知らない。
ただ、形状からこれが乗り物であることについては予測がつく。

説明書を読んでみると、そのバイクの名称がマシンディケイダーというものだと分かった。
使い方については、付属していた説明書を読めばある程度は分かるものであった。

それはそれとして、これらが手で持ち運べるサイズのデイパックに収納できていたことについても疑問が出る。
手を突っ込んで引っ張り出してみたら、突然そこに現れたかのように出てきたために驚いてしまった。
果たしてこれをどうしたものかと輝哉が考えていた、その時であった。

『皆さんこんばんは。いかがお過ごしでしょうか』

島全体を対象とした、放送が始まった。



放送が終わった後に輝哉はデイパックの中から名簿を取り出してその内容を確認することにした。
ボンドルドについて等、まだ考察したり確認しておきたいことは他にもあるが、一先ずはこの殺し合いにどんな人物がいるのか確認することを優先した。
そこに書かれていた名前は、彼を大いに驚かせるものであった。

「善逸…しのぶ…行冥…それに杏寿郎…!君たちも巻き込まれているのか…!」

我妻善逸、胡蝶しのぶ、悲鳴嶼行冥…輝哉が鬼舞辻無惨を倒すために後を託した鬼殺隊員達の内の三人。

煉獄杏寿郎…かつて上弦の参の鬼と出くわし、その鬼から竈門炭治郎達を守り、輝哉と同じく既にその命が失われたはずの者。
おそらくは自分と同じく主催者によってその魂を仮の体に入れられたものであろうと考えられる。

このような事態になることは全く想像していなかったわけではない。
だが、可能性は考えていたからとは言え、それが現実であると認識するとさすがに心はかき乱されることとなった。
鬼殺隊の隊士(こども)達が巻き込まれているというのは彼にとって望ましくないことであったからだ。

「………あの子たちに、今の私の姿は見せにくいな」

彼らならば殺し合いには乗らず、人々を守るために行動するだろう。
だが、今の輝哉は鬼の首魁、鬼舞辻無惨の体となっている。
もしこの姿を見られたら、気づかずに襲いかかってくることもあり得るかもしれない。
正体を分かってもらえたとしても、自分の命を狙ってしまったことを気に病むこともあるかもしれない。

(……けれども、あの子たちならきっと分かってくれる。そう、信じるしかない)

出会えば良くないことが起きる可能性があるとはいえ、彼らが輝哉にとって頼りになる仲間であることには変わらない。
無事であることの確認もかねて、合流を目指し、共に殺し合いの打破のために動くべきであろう。


391 : 正義のためなら鬼となる ◆5IjCIYVjCc :2021/05/13(木) 21:54:21 QtSa3K2A0


そして、輝哉の心を揺さぶる名前は他にもあった。
その名を見ると、名簿用紙を持つ手に力が入り、くしゃりと紙にしわが入る。

「鬼舞辻無残、お前もここにいるのか…!」

輝哉が現在体を使用しており、鬼殺隊の宿敵である鬼舞辻無残がこの殺し合いの参加者となっていることを知った。

(くっ…これでは私が自殺するだけでは本当に無惨を滅ぼしたことにはならない…!)

輝哉がこの機会に肉体を滅ぼそうと考えていた相手の魂は、別の体を持ってこの殺し合いの舞台に存在している。
このままでは、輝哉が考えていたように自殺することで肉体は滅びても鬼舞辻無惨はまだ生きていることになってしまう。
それにもし無惨が優勝することを許してしまうと、(本物だと仮定した場合)願いによって自分の肉体を復活させることも考えられてしまう。

(無惨…お前は今、誰の体を使っている?)

必然として、無惨の魂は一体どのような肉体に宿っているのかという疑問が出てくる。

(この状況が単純な入れ替わりだとしたら、無惨の体は私のものになっていると考えられる)

輝哉自身が無惨の肉体になっている以上、このように考えるのが自然だろう。
むしろそれならば幸運な方だ。
産屋敷輝哉は鬼舞辻無惨を倒すためならば自分の命を捨てられる。
病弱で簡単に動けないものである自分の体に無惨の魂が封じ込められているのならば、その体ごと滅するという手段を輝哉は選べる。

(だが…果たして事態はそう単純なものなのだろうか)

最初の殺し合いの説明の際、暗闇で謎の声(ボンドルドと同一人物だろうか?)は『別の人物の体で戦ってもらう』と言った。
つまり、2人の人物同士で精神と身体の入れ替わりが為されているとは明言されていないのである。

そして、件の輝哉の肉体は戦うなんてことは不可能な体である。
そんな体を殺し合いの参加者に与えるだろうかという疑問が浮かび上がってくる。

そもそも、産屋敷輝哉は鬼舞辻無惨を巻き込んで自爆しており、体は死して失われているはずなのである。
人を蘇生することができる謎の能力を持った主催ならそれを復元することもできるかもしれない。
だが、その体は爆弾により木端微塵になっていることを考えると、いくら主催でも復元することは難しいかもしれない。

どちらにせよ、輝哉の体を殺し合いの参加者とすることは考えにくいことなのである。
よって、鬼舞辻無惨はこの殺し合いにおいて輝哉のものとはまた別の人物の体を与えられている可能性も考えた方が良いだろう。
そのように仮定すると、今度はまた別の問題が浮かんでくる。

(最悪の可能性は、もし無惨が使用しているものが何の罪の無い者の体であった場合だ)

無惨が一般人の身体になっていたと仮定すると、人を守る鬼殺隊としてその体ごと殺すわけにはいかなくなってしまう。
無惨本人にその気があるかどうかは判断できないが、人質としても機能してしまう。

(それに、無惨が鬼殺隊のこどもたちの体となっている可能性も否定できない)

無惨の現状が分からぬ以上、そのような可能性も頭に浮かんできてしまう。
もしこの可能性が現実のものだとしたら、鬼殺隊士が鬼から人を守るために身に着けた力を無惨が人を殺すために使われる、なんてことも考えられる。
それはまさしく、鬼殺隊の尊厳を踏みにじる行為であろう。

(ならば、一刻も早く無惨を探し出すしかない!)

鬼舞辻無惨が今どこにいて、どんな状態で、何をしているか分からない以上、輝哉が抱く危惧をなくすためには本人の現状を把握するしか他ない。
もしかしたら、殺害することに遠慮なんていらない、鬼のように元から人間を害する存在の体になっている可能性も考えられる。
だがその場合だと無惨が殺し合いの優勝を狙って人々を傷つける恐れがある。
どのような可能性にせよ、鬼舞辻無惨は輝哉にとって絶対に放ってはおけない存在であった。




392 : 正義のためなら鬼となる ◆5IjCIYVjCc :2021/05/13(木) 21:56:21 QtSa3K2A0

(しかしボンドルドと言ったあの男…私をこのような気分にさせ、絶対に滅ぼさなければならないと思った者は無惨以来だ)

輝哉の中でこの殺し合いの首謀者たちへの怒りが、特に放送を通じてより助長させようとしているボンドルドへの怒りがより大きなものとなっていく。
その男は、無惨と同じく輝哉にとって絶対に許してはいけない存在の一つとなった。
そして、ボンドルドの声は輝哉の声とどこか似ているように感じた。
穏やかな口調も相まって、ボンドルドが名乗るまではまるで自分が先ほどの放送を行っているかのように錯覚しかけた。

(分からないのは、奴の正体とその目的だ)

怒りは大いに溜まってはいるが、それはそれとして主催者の正体と目的についての疑問はまだ残っている。
行っている所業から鬼のように人智を超えた力を持っているのは分かる。
だが、奴らはその鬼の首魁である鬼舞辻無惨をも殺し合いの参加者として巻き込んだばかりかその肉体と魂を分けてこの舞台に解き放っている。
主催が持つ力は輝哉の想像をはるかに超えたものかもしれない。

(……それでも、私のやることは変わらない。鬼殺隊として、無惨から…そしてボンドルド、お前たちの魔の手からも人々を守ってみせる)

輝哉はマシンディケイダーに跨り、説明書片手にエンジンをかける。
突然機体から音が出たことに驚くが、一応はこれで正常に動いている。
今はまだ森の中にいる輝哉だが、急いで探し人を捜索するためには未知の乗り物も使う。
森の外を見てみると、丁度灰色をした道となるものが見えるため、まずはそこを目指すのが良いだろう。
輝哉は改めて殺し合いを止める決意と怒りを胸に宿して進み始めた。


【B-5 森と草原の境目 道路近く/深夜】

【産屋敷耀哉@鬼滅の刃】
[身体]:鬼舞辻無惨@鬼滅の刃
[状態]:健康、主催者への怒り(極大)、マシンディケイダーに搭乗中
[装備]:マシンディケイダー@仮面ライダーディケイド
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:鬼狩りとして戦った後、自殺する
1:他の参加者を探す
2:鬼舞辻無惨を優先的に探す
3:鬼殺隊士達とも合流しておきたい
4:3の際には自分だと説得をする必要もあるだろう
5:急ぐためにこの乗り物を使ってみる
6:腹立たしいが、これは好機
[備考]
参戦時期は死亡後です。
耀哉の周辺一帯に轟音が響きました。


【マシンディケイダー@仮面ライダーディケイド】
仮面ライダーディケイドが使用するバイク。
境界や表裏の区別を持たないと言われているクラインの壺というものに通じており、エネルギー供給は無尽蔵となっている。
また、仮面ライダーディケイドが特定のアタックライドカードを使用すると他の仮面ライダーが使用するマシンに変化する。
最高時速は350km/h


393 : ◆5IjCIYVjCc :2021/05/13(木) 21:56:55 QtSa3K2A0
投下終了です。


394 : ◆ytUSxp038U :2021/05/14(金) 19:51:19 GspY6wmw0
長期間のキャラ拘束申し訳ありません。予約を破棄します


395 : 名無しさん :2021/05/15(土) 07:37:09 h6yDJeq20
>>384の予約期限過ぎてる


396 : ◆5IjCIYVjCc :2021/05/15(土) 13:49:31 Ze1Ttxjw0
既に指摘されていますように、>>384の予約から一週間が過ぎています。
このまま連絡が無ければこの予約は破棄となります。
本日中までにご連絡いただければ、延長は可能とします。
破棄とする場合でも同キャラに予約が入らなければ投下は可能ですので、もし執筆を進めておられるのであれば作品の投下をお待ちしております。


397 : ◆P1sRRS5sNs :2021/05/15(土) 23:50:02 6KZ4LRZk0
連絡忘れてしまい申し訳ございません!!>>384です!!延長します!!


398 : ◆cd0OhGsgTM :2021/05/16(日) 20:26:59 SlQlEPYI0
犬飼ミチル、吉良吉影、アドバーグ・エルドル、シロ、グレーテ・ザムザ
ゲリラで投下します


399 : Bad Communication ◆cd0OhGsgTM :2021/05/16(日) 20:28:11 SlQlEPYI0
虫に変えられて、半ば錯乱状態にあった私だが、放送により、強制的に現実へと引き戻された。
いや、本当に現実なのかは私にはもう分からなくなってきている。
放送の内容は、絶望を深めるには十分すぎるものだった。


既に一部が破け、中身が見えているデイパック。
すでに口にし、破棄した食料品は製品として洗練されすぎていて、
何マルク積めばこれほど贅沢な品が手に入るのだろう、という考えがよぎってしまうほどには非現実的な品だった。
それだけでも訳が分からない代物だというのに、いつの間にか名簿とコンパスが追加されていたのだ。
現代は科学が発展し、数十年前には思いもよらなかったことが次々と可能になっているが、
それでも無から物を作り出すような荒唐無稽な現象を起こせるわけではない。
たとえ千年経っても、人類には不可能であろう現象を、主催者なる者は気軽に見せつけてくる。


悪夢だ。
いとも簡単に起こされる超常現象も、殺し合いをするという状況も、この姿も、何もかもが悪夢そのものだ。


名簿は見ない。見たくない。
仮に、知り合いがいたとして、どんな言葉を投げかけられるだろうか。
仮に、知り合いがいたとして、どんな態度で姿を現せばいいだろうか。


父母や友人、同僚、下女がいたとして、私が私とみなされなかったとき、正気でいられるだろうか。
それならば、せめて何も知らないまま、何も知られないままでいたい。
そう思うのは、おかしいことだろうか。

兄の件がなければ、必死でここにいるのは私だと訴えたことだろう。
この身体の中にいるのは、一人の人間なのだとまわりに訴えたことだろう。
おそらく、そう訴えていたであろう兄がどのような末路をたどったか。
……恐怖で身体がぶるりと震える。
それでも、ただ一人、私一人だけは、私を人間だと思っていたい。

そのような、ささやかな祈りを乞う時間すら、私には与えられなかった。


400 : Bad Communication ◆cd0OhGsgTM :2021/05/16(日) 20:30:43 SlQlEPYI0
「ャンッ! キャッッ! キャインッ! ィャン!」
「ハァ、ハァ、ま、待てェ〜、止ま゛って〜!」


町の入り口に差し掛かったあたりで聞こえてきた悲鳴と怒号。
おそるおそる、入口の角から通りをのぞき込むと、ほぼ四つ足で転びながらも必死で走る少女が、建物の角からこちら側……町の出口に向かってきていたのだ。
息を切らして声がかすれてしまっているのだろうか。
まるで壊れかけた蓄音機、ぶつ切りの悲鳴をあげているといった様相だ。
少女は町の入り口に陣取る私の姿を見て、びくりと驚き、止まる。
だが、その後ろからは、紺色の軍服を着こみ、髪の毛が銃口のように飛び出した大男が、その凶悪な形相を真っ赤にして追ってきていて……。


そうだ。私たちは殺し合いをしているのだ。
すでにやる気に満ち溢れている者がいるのだと、主催者は言っていた。
その答え合わせが目の前の光景であり、あの少女は大男に目を付けられた犠牲者で、今まさに凶行がおこなわれようとしている現場なのだ!
そして、私だって例外ではなくその犠牲者になりうるのであって……!


「キャ゛ン! ィ゛ャン゛!」
「キィ゛ィ゛!」
(ヒィッ……!)


少女が、もはや悲鳴にもなっていない悲鳴をあげる。
もはやぼろぼろと言っていい姿の少女。
ぬぐう暇もないのか、涙と鼻水が体腔の周囲をわずかに濡らしている。
苦しげに息を切らして、べろんと舌を垂らしている。
呼吸すらロクにできていないのではないか。
がくがくと震える手は、それを支える身体ごと、今にも崩れ落ちてしまいそうだ。
何度も転んだのか、石畳で擦りむいたのか、その手や足には無数の擦り傷が生まれ、流れ出す血が美味しそうだ。
私は触角を開き、その奥にある口を左右に開口する。


「キィ゛ィ゛、キキキィ゛ィ゛ィ゛!?」
(今、私は何を……!?)

自分の思考への理解が追い付かない。
今、何を考えた?


401 : Bad Communication ◆cd0OhGsgTM :2021/05/16(日) 20:33:09 sYAsTnfw0
「ャン! キィャイン!」
「こ、こぉらぁ゛! ゼェ、その子、から、ハァ、離れてくだ、しゃい!」


息を切らし、顔を真っ赤にしながらも追いついてきた強面の男が、私を追い払おうとする。
どう見ても、傷ついた少女を化け物が捕食しようとしている場面だ。
捕食者はこの男ではなく、私なのだ。

複眼に映るその光景。
大男が四方八方から自身を睨みつけているように錯覚してしまう。
少女が私に怯えているように見えてしまう。

だがしかし、同時にこの男も、捕食者なのだと、私はそう思ってしまった。
無意識か反射なのか、少女の血に気付いた男が、舌なめずりをしたように見えたからだ。


少女が再び、悲鳴をあげて転がりながら四つ足で走り出す。
そのパニックは私にも伝染する。

ぶるりと身体が震える。よたよたと必死で方向転換し、慣れない身体を動かして逃亡する。
擦り減った心はもう限界だったのだろうか。
失禁してしまった。真実はどうあれ、私はそう思った。

実際のところ、排出したのは尿どころではなかった。
腹部そのものを、地面にぼとりと排出していた。


再び少女が逃げたことに面食らっていた男が、さらに驚きの声をあげ、数秒固まる。

驚きたいのは私だ。
信じられないのは私のほうだ。
なぜ腹が落ちるのか。
この身体はいったいどうなっているのか。
まるで虫からトカゲに変身したかのような錯覚を覚えるが、ただ一つ、逃げる時間を稼げたのは確かなのは感謝するべきなのだろうか。

複眼に映る私の腹部は、まるで生きているように、ドクッドクッと波打っている。
大男は目を見開くも、私を追う選択はとらないようだった。
再び少女を追おうと駆け出し、ひとまず事態が収拾したことに安堵した。


どこまで気楽な気分が抜けていなかったのだろう。
この私の思い通りにならない身体が、そんな甘いことを許してくれるはずがないのに。


私の腹部は、次の瞬間、爆弾のように破裂した。


402 : Bad Communication ◆cd0OhGsgTM :2021/05/16(日) 20:36:32 SlQlEPYI0
大男が爆発に巻き込まれて動かなくなった。
そこに新たに現れた少女が、信じられないような化け物を見る目で、私を睨みつけていた。


(わ、私じゃないわ! 私は何もしてないじゃない! 私は誰かを傷つける気なんかなかったのに!
 なんで!? どうして!? 見ないで、見ないでよ!! 私は化け物じゃない! 人間なのに!
 来ないで、誰か、来ないで! 助けて! イヤだ!)


複眼に映る光景が、少女たちの目で塗りつぶされる。
十分に血を通わせられない脳に、恐怖が押し寄せる。
一人の人間が一度に受け取るにはあまりにも膨大な感情に、こころが押しつぶされる。

そして私は、その場から逃げ出した。


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


403 : Bad Communication ◆cd0OhGsgTM :2021/05/16(日) 20:39:47 sYAsTnfw0
東方仗助は、少女を追って走り続けている。
どうにもそのしゃべり方にはとてつもない違和感を覚えるが、中身が違っている以上、仕方がない。
私に背を向けているため聞き取りづらいが、なぜか四つん這いで先頭を走っている女こそが、その元の身体らしい。
――あと後ろから追ってくるエルドルが騒がしいのも声を聞き取りづらい原因ではある。
――なぜ踊りながら走ってくるのだ!?

ひとまず後ろに関心を割くのは精神力の無駄だと判断し、前方に集中する。
女、そして仗助は建物の角を曲がり、町の出口のほうに向かっていく。


「こ、こらぁ゛! ゼェ、その子から、ハァ、は、離れてください!」

仗助の怯えの混じった声に、足を止める。
どうやら第三者がいるらしい。
これだけ騒いでいれば、見つかって当然なのかもしれないが……。


(な、なんだあれは? 新手のスタンドか?)
建物の影から慎重に事態を覗き見れば、街の出口近辺に巨大な虫が鎮座していた。
その虫は仗助に怯えたのか興味がないのか、くるりと方向転換すると、ずるりと腹部を切り離し、そのまま立ち去っていく。
残された腹部は生きているかのように、不気味に蠢いている。


(一体なんなんだ……? とても生き物とは思えん。どうしたものか……)
逡巡していると、仗助が再び女を追おうと走り出す。
これはいかんと再度自身も動こうとしたそのときだった。
不気味に蠢く虫の腹部が、突如爆発したのだ。


(あれを初見で防ぐのは厳しいだろうな)
背後から完全に不意打ちをくらった格好になった仗助は、吹き飛ばされて入口の柱に頭をぶつけ、ぐったりと動かなくなった。
下手人の虫は、脚を止めている。
こちらを観察しているのだろうか。隙を見せないように、こちらも睨み返した。

「な、なんですかな、今の音は!?」
だが、エルドルが奇妙な舞とともに現れると同時に、慌てて立ち去っていったようだ。


「エルドルさん、事態は急を要する。
 門のところに爆発物が仕掛けられていたらしく、男が一人巻き込まれたようだ。
 あなたの支給品に救急箱のようなものはないか?
 私は、彼の支給品を探ってみる」
「支給品ですな? しばしお待ちくだされ!」


404 : Bad Communication ◆cd0OhGsgTM :2021/05/16(日) 20:43:25 SlQlEPYI0
状況はあまりに不可解。
身体を切り離して爆発させるなど、生物としてはおおよそまともな生態ではない。
スタンドなのか、あるいは支給品なのか、それとも参加者なのか、まさかの原生生物か。
巨大な頭部に阻まれて首輪の有無を確認できなかったのは痛い。
ただ、降って湧いたチャンスなのは確かだ。
無論、救急箱など探すつもりはない。
目当ては、東方仗助のプロフィール。


幸運なことに、この負傷は爆傷に分類される。
キラークイーンの能力を用いて、ダメ押しに小爆発を起こせば、先の爆発のダメージを回復しきれずに倒れたと偽装することができる。
問題は、エルドルはスタンドを視認できるのか? という一点だ。

エルドルが経歴を偽って話しているとは考えていない。
経歴を誤魔化すためだけに、キタキタ踊りなどというけったいなダンスを考えつき、実際に踊りだす狂人がいるとは思えない。
あれは相当年季の入った……そんなことは心底どうでもいい。
話は逸れたが、たとえばエルドルに資質がなくとも、元の身体の持ち主に資質があれば、視認できてしまう可能性がある。
拙速は避けなければならない。


『彼の持ち物に、救急箱はなかった。
 彼を助けるために、エルドルさんが誰かほかの人を探しに行ってはくれないか。
 キタキタ踊りの後継者選出とやらで磨かれたあなたの交渉力こそがカギになりそうだ。
 私は、ここで彼の容態を見張っているよ』

そして、エルドルが十分に離れてから、容体が急変して死亡したという偽装し、殺害する。
その後、爆発を仕掛けた参加者が再び襲ってきたように偽装工作をし、物陰で監視するのがいいだろう。
ここは町だ。隠れる場所などいくらでもあるし、凶器が爆発物なら偽装工作などお手の物だ。

エルドルのような善良でマヌケな参加者であれば偽装を真実とみなすだろう。であれば姿を現せばよい。
逆に乗り気な者や、偽装を見抜くような注意深く疑り深い者がくれば、そっと離れてしまえばよい。
もちろん、承太郎や宏一といった、私の正体を知る者を連れてきた場合は言うまでもない。

これでいこう。


405 : Bad Communication ◆cd0OhGsgTM :2021/05/16(日) 20:44:29 SlQlEPYI0
粗があるのは認めよう。
たっぷり時間をかけて考えれば、より合理的で安全なやり方も思いつくかもしれない。
だが、私の正体を暴く可能性のある者、何より私を殺した男の姿をした者と行動するストレスを負いたくはない。


大義は得ている。仗助の支給品を探ることを、咎める者などいない。
プロフィールを探し当て、私は紙を開いた。


【E-5 街入口/黎明】
【犬飼ミチル@無能なナナ】
[身体]:東方仗助@ジョジョの奇妙な冒険
[状態]:左背面爆傷、気絶、疲労(大)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いはしたくない
1:シロを追いかけて止める
[備考]
参戦時期は少なくともレンタロウに呼び出されるより前
自身のヒーリング能力を失いましたが、クレイジーダイヤモンドは発動できます。

【吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険】
[身体]:二宮飛鳥@アイドルマスターシンデレラガールズ
[状態]:疲労(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品、東方仗助の肉体プロフィール、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:優勝狙い
1:東方仗助の肉体プロフィールを確認する
2:鬱陶しいエルドル(キタキタおやじ)を遠ざけ、東方仗助の姿をした人物と肉体プロフィールを処分し、偽装する
3:バレないように参加者を殺していく。
4:しかしこの少女の手、なかなか美しい
[備考]
参戦時期は死亡後です。デッドマンズQは経験していません。
パイツァ・ダストは制限により使用できません。
魔法陣グルグルの世界について知りました。

【アドバーグ・エルドル(キタキタおやじ)@魔法陣グルグル】
[身体]:ヘレン@アイドルマスターシンデレラガールズ
[状態]:疲労(中)
[装備]:腰みのと胸当て@魔法陣グルグル
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2、最初着ていた服
[思考・状況]基本方針:キタキタ踊りの力で殺し合いを止めて見せますぞ〜
1:支給品を確認する
2:体は返すつもりだが、その前にキタキタ踊りの後継者を見つけたい
[備考]
参戦時期は魔法陣グルグル終了後です。グルグル2や舞勇伝キタキタは経験していません。
ジョジョの奇妙な冒険の世界について知りました。ただしスタンドに関することは知りません。


406 : Bad Communication ◆cd0OhGsgTM :2021/05/16(日) 20:46:08 sYAsTnfw0
【E-5 街道/黎明】
【シロ@クレヨンしんちゃん】
[身体]:犬飼ミチル@無能なナナ
[状態]:疲労(大)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない
1:ミチルから逃げる
2:しんちゃんや野原家の人たちを探す
[備考]
今のところは犬語でしかしゃべれませんが、慣れれば人間の言葉をしゃべれるかもしれません。
ヒーリング能力の寿命減少は、肉体側(人間)に依存します。
犬飼ミチルを殺人鬼と勘違いしています。


【D-5 街道/黎明】
【グレーテ・ザムザ@変身】
[身体]:スカラベキング@ドラゴンクエストシリーズ
[状態]:恐慌、体力減少
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:絶望、過剰な怯え
1:この場から離れる
[備考]
しっぽ爆弾は体力を減少させます。切り離した腹部は数時間ほどで再度生えてきます。


407 : ◆cd0OhGsgTM :2021/05/16(日) 20:46:57 UIr45JMM0
投下終了します


408 : 名無しさん :2021/05/17(月) 11:14:13 CwCqC6nM0
投下乙です
グレーテの心理描写が真に迫っていて引き込まれました
彼女がいた時代背景をうまく反映していたと思います
吉良の悪賢さと若干の余裕の無さも読んでて緊張感でました
戦力的にはともかくスカラベキングの身体は外れですねぇ


409 : 名無しさん :2021/05/17(月) 21:32:37 a.MV4ZJQ0
投下乙です
グレーテが一人だけノリが違ってなんかもう他の参加者とは根本的なところでわかりあえなさそうなところがいいですね


410 : ◆NIKUcB1AGw :2021/05/19(水) 22:26:33 /KFeDsdE0
リト、いろは、檀黎斗予約します


411 : ◆NIKUcB1AGw :2021/05/21(金) 23:07:29 hnhUwtXs0
投下します


412 : 仮面に隠れた悪意を見せずに ◆NIKUcB1AGw :2021/05/21(金) 23:08:52 hnhUwtXs0
「宇宙人かあ……」
「魔法少女かあ……」

いろはとリトは、とりあえずお互いの素性を相手に伝えていた。
いろはの語る「魔法少女」。
リトの語る「宇宙人」。
共に常人には、にわかに信じることができない情報だ。
しかし二人は、どちらも殺し合いに呼ばれる前から非日常に身を置いていた者同士。
相手の話を、素直に受け入れることができた。
なおお互い肉体の年齢と中身の年齢がずれていてややこしいため、敬語は使わないということになっている。

「さて、とりあえずお互いのことはわかったけど……。
 これからしばらく一緒に行動してもらえるかな、環さん。
 この場が殺し合いである以上、一人よりは二人の方が安全なはずだからさ」
「うん、それは私からもお願いしようと思ってたよ。
 どれくらいの人が殺し合いに積極的なのかわからないし、信頼できそうな人とは離れない方が……」

二人の会話が続いていた、その時。

『皆さんこんばんは。いかがお過ごしでしょうか』

放送が始まった。


◆ ◆ ◆


「俺の知ってる人はいないみたいだな……」
「私の友達や家族もいないみたい」

放送終了後、二人は新たに出現した名簿に目を通していた。
幸いなことに、二人と関わりの深い人物は参加させられていないようだ。
だが、まだ安心はできない。
名簿にはリトといろはの名前はあっても、二人が現在宿っている肉体の名前はなかった。
すなわち、ここに記されているのは精神が参加している者だけ。
知り合いの肉体が参加させられている可能性は、依然残っているのだ。

「本当に知り合いがいないか確認するには、片っ端から他の参加者に接触していかなきゃならないのか……。
 大変だけど、やるしかないな……!」
「待って。気持ちはわかるけど、焦るのはよくないよ」

名簿をしまい移動を開始しようとするリトを、いろはが静止する。

「仮に大切な人の体があったとして、戦う力がなくちゃ守ることはできない。
 結城さんのその体は魔法少女……じゃなくて魔法使いらしいけど、結城さんじゃ魔法は使えないんでしょ?」
「そうだけど……じゃあどうすれば!」
「武器があるか、確認すればいいんだよ」

そう告げながら、いろはは宝石のような赤い球をリトの前にかざす。

「それは……?」
「私の荷物に入ってた、レイジングハートっていう魔法のアイテム。
 持ち主が魔法を使うのを助けてくれるんだって。
 結城さんの荷物には、その靴以外に何か入ってなかった?」
「そういや、これ見つけた時点でそれ以上確認してなかったな……。
 待って、今確かめる!」

慌てて荷物を確認するリトの姿を眺めながら、いろははふと今の自分に思いを馳せた。

(なんか今の私、すごくしっかりしてるなあ……。やちよさんみたいだよ。
 普段の私なら、こんな状況になったらもっと取り乱しそうなのに……。
 大人の体になったせいで、心も体に引っ張られてるのかな)

面白いような怖いような、複雑な感覚に囚われるいろは。
その視線の先では、リトが何やらギクシャクした動きを見せている。

「どうしたの? 変なものでも入ってた」
「いや、その……。まあ、変ではあるかも……」

煮え切らない態度を見せるリトに対し、いろはは無言で彼の腕をデイパックから引きずり出す。
その手に掴まれていたのは、扇情的なデザインの下着(もちろん女性もの)だった。

「…………」
「いや、俺は悪くないから! 悪いとしたら俺の荷物にこれ入れた人だから!」

変質者を見る目を自分に向けてくるいろはに対し、リトは必死で弁解する。

「あと、他にもあったから! ほら、これ!」

なんとか流れを変えようと、リトは三つ目の支給品をいろはに見せた。
それは、奇妙な物体だった。
幾何学的な模様が描かれた透明な板に、グリップが取り付けられている。
まるで拳銃の持ち手の部分だけを取り付けたような形状だ。
そしてグリップには、デフォルメされたヒーローのようなイラストが描かれている。

「なんだろう、これ。全然使い方が想像できないけど……。
 これも魔法のアイテム?」
「えーと、説明書によると……」

リトが説明書を読み上げようとした、その時。

「それは……ガシャットか!」

突如、第三者の声がその場に響く。
反射的に二人が声の方向へ顔を向けると、そこには高級そうなジャケットに身を包んだ男が立っていた。


413 : 仮面に隠れた悪意を見せずに ◆NIKUcB1AGw :2021/05/21(金) 23:09:52 hnhUwtXs0


◆ ◆ ◆


檀黎斗は、「それ」を目の前にして冷静さを保てなかった。

「バカな、これは……。仮面ライダークロニクル!」

黎斗の人生をかけた作品であり、完成させることができなかったゲーム、「仮面ライダークロニクル」。
その完成品が今、彼の前にあるのだ。

「パラドが完成させたのか……?
 だとしたら、私の想定とは別物になっている可能性が……。
 そもそもこれが完成しているということは、それなりの時間経過が……。
 そういえば、失念していた!
 私としたことが、生き返ったことに舞い上がって時間経過のことを考えずにいたとは……」
「え、生き返った!?」
「あの、そろそろそちらの素性を聞かせてもらいたいんですが……」

一方的に黎斗の独り言を聞かされ続けていたリトといろはも、さすがに疑問を抑えきれなくなり黎斗に尋ねる。

「ああ、失礼した。私は……」

ある程度落ち着いた黎斗は、おのれの身の上を説明し始める。
自分がゲーム会社の社長であること。不慮の事故で命を落としたが、別人の体に宿って生き返っていたこと。
もちろん、おのれの本性については伏せている。
元々自ら本性を現すまで、部下たちや衛生省の関係者を完全に欺いていたほどの演技力を持つ黎斗である。
純真な少年少女たちをだますことなど、造作もない。

「死者の蘇生……。この殺し合いの首謀者は、そんなこともできるってことですか……」
「まあ、元の体で生き返らせることが可能かはわからないがね」

衝撃を隠せないいろはに対し、黎斗は飄々と告げる。

「さて、私については話したんだ。次は君たちの話を聞かせてもらおうか」
「あ、そうですね。それじゃあ、私から……」

いろはとリトは、お互いに話した情報を黎斗にも伝える。

(魔法使いに、宇宙人か……。初めて聞く話ではないが……)

黎斗は仮面ライダークロニクルの参考とするために、過去の「仮面ライダー」に関する都市伝説を一通り調べている。
その中には魔法使いとされるライダーや、地球外生命体と接触したライダーの話もあった。

(とはいえ、私が知っている話とはまた毛色が違うな。
 無事帰ったときに、新作ゲームに活用させてもらおう。
 さて……)

自分に包み隠さず情報を提供してくれたお人好したちを見ながら、黎斗は考える。
この二人、ここで始末しておくべきか。

(いや、まだその必要性は薄い。ここで手を下さなくてもいいだろう)

少年の方は、ちょっと隙を見つければ簡単に殺せるだろう。
だが女の方は、「魔女」や「ウワサ」なる怪物たちと戦ってきた経験があるらしい。
その実力は未知数だ。
ゲンムになれるならともかく、初めて変身するライダーで勝てる保証はない。
勝ったとしても、無傷ではすまないだろう。
数十人での殺し合いとなれば、長丁場になることは十分に予想できる。
序盤から戦闘をしかけて体力を消耗するなど、後先考えないバカか本物の殺人鬼がやることだ。
本気を出すのは、人数が減ってから。
それまでは善良な人間を装い、消耗を最小限に抑えるのが得策だ。

「檀さん、どうかしました?」

沈黙を続ける黎斗を不審に思い、リトが声をかける。

「いや、今後について考えていただけさ。
 不安にさせたようならすまないね」

薄っぺらな笑顔を浮かべ、黎斗は答えた。


414 : 仮面に隠れた悪意を見せずに ◆NIKUcB1AGw :2021/05/21(金) 23:11:00 hnhUwtXs0


◆ ◆ ◆


「本当に一人で行くんですか、檀さん。
 やっぱり、俺たちと一緒に行動した方が……」
「悪いが、私は個人主義者でね。他人と歩調を合わせるのは苦手なんだ」

数分後、黎斗は二人と別れ、また一人で行動を取ることを決めていた。
猫をかぶり続けるのには慣れているが、お人好したちと行動を共にしていてはよけいなトラブルに巻き込まれる恐れがある。
それよりは単独行動を貫いた方がいいと判断した結果だ。
もちろんその真意は二人に伝えず、適当にごまかしている。

「でもやっぱり、一人は危険ですよ!」
「心配ご無用。私にも、戦闘力を強化できるアイテムが支給されているからね」

なおも食い下がるいろはに、黎斗はベルデのデッキを見せつける。

「とはいえ、君たちに協力したくないわけではない。
 次の放送があるあたりで一度合流して、情報を交換しようか。
 集合場所は……そうだな。わかりやすいあそこがいい」

黎斗が指さした先。そこには、巨大な風車のついた建造物があった。

「あそこですね……わかりました」
「では、健闘を祈る。生きてまた会おう」

そう言い残すと、黎斗は足早に二人の元から去ろうとする。
だがそれを、リトが呼び止める。

「あ、そうだ! これ、仮面ライダークロニクル!
 あなたが作ったゲームなら、あなたが持っておくべきなんじゃ……」
「ふむ……」

一瞬考え込む黎斗だったが、すぐに首を横に振る。

「それは誰かが完成させた仮面ライダークロニクルだ。
 私のオリジナルではない。そんなものに、こだわりはないよ。
 君が持っていてくれたまえ」

そう告げると、黎斗は今度こそその場から立ち去った。

(情報が手に入るならよし。それまであの二人が生き残れなかったとしても、頭数は減る。
 どちらに転ぼうと、悪い話じゃない)

黎斗は、醜悪に笑う。その笑みを、背後にいる二人は知るよしもなかった。


415 : 仮面に隠れた悪意を見せずに ◆NIKUcB1AGw :2021/05/21(金) 23:12:02 hnhUwtXs0


【D-4/街】
【檀黎斗@仮面ライダーエグゼイド】
[身体]:天津垓@仮面ライダーゼロワン
[状態]:健康
[装備]:ベルデのデッキ@仮面ライダー龍騎
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:優勝し、「真の」仮面ライダークロニクルを開発する
1:人数が減るまで待つ。それまでは善良な人間を演じておく。
[備考]
・参戦時期は、パラドに殺された後


【環いろは@魔法少女まどか☆マギカ外伝 マギアレコード】
[身体]:高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[状態]:健康
[装備]:レイジングハート@魔法少女リリカルなのは
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:元の体に戻る。殺し合いには乗らない
[備考]
・参戦時期は、さながみかづき荘の住人になったあたり


【結城リト@ToLOVEるダークネス】
[身体]:ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのはA's
[状態]:健康
[装備]:ジェットシューズ@妖怪学園Y
[道具]:基本支給品、エッチな下着@ドラゴンクエストシリーズ、仮面ライダークロニクルガシャット@仮面ライダーエグゼイド
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない
1:知り合いの肉体がないか、情報を集める
[備考]
・参戦時期は「ダークネス」終了後
・現状ではユーノの魔法は使えませんが、何らかのコツを掴めば使えるようになるかもしれません


【レイジングハート@魔法少女リリカルなのは】
意志を持つ魔法補助アイテム「インテリジェントデバイス」の一つ。
待機モードでは数センチの宝石のような形状だが、起動すると機械的な杖となる。
なお今回はユーノにより遺跡から発掘される以前から持ち込まれているため、なのはとユーノに関する記憶はない。


【エッチな下着@ドラゴンクエストシリーズ】
その名の通り、エロティックなデザインの下着。
作品によっては、低確率で敵を見とれさせ、行動を封じることがある。
どう考えても戦闘時に着用するような衣服ではないが、安物の鎧より守備力が高かったりする。
その理由については、度々議論が行われている。


【仮面ライダークロニクルガシャット@仮面ライダーエグゼイド】
檀黎斗が開発していた現実拡張型ゲームで、彼の死後データを奪ったバグスターたちによって完成し、発売された。
起動すると、劣化版仮面ライダーと言える存在である「ライドプレイヤー」に変身できる。
同作品の仮面ライダーと違い変身ベルトは必要なく、ガシャットを起動するだけで変身が可能。
本来は変身しただけでゲーム病に感染してしまうというリスクが存在するが、
今回は治療手段がないためこの機能については削除されている。


【風都タワー@仮面ライダーW】
D-4に設置された、風都のシンボルである建造物。
巨大な風車が最大の特徴である。
一度仮面ライダーエターナルによって破壊されたが、その後再建された。


416 : ◆NIKUcB1AGw :2021/05/21(金) 23:13:02 hnhUwtXs0
投下終了です


417 : ◆P1sRRS5sNs :2021/05/22(土) 23:53:44 ZILqg/xA0
本当に遅れてしまいすみません!!投下します!!


418 : ◆P1sRRS5sNs :2021/05/22(土) 23:55:21 ZILqg/xA0
本当に遅れてすみません!!投下します!!


419 : ◇P1sRRS5sNs :2021/05/22(土) 23:56:16 ZILqg/xA0
c-8エリア・・・

超デカい巨人が追いかけてくるのに対し、三人…伊東開司、ロビン、神楽は逃げている、それも超スピードで、神楽と開司が出会ったのはD-8エリア、小さい島の南端の村のギャンブル場だったのである。そこの付近にいたロビンと康一が話し合っている時に巨人を試した結果暴走してロビンが逃げた先に二人がいたという訳だ

「はぁ…!!はぁ…!!何で逃げるアルか!?あいつを止めなくちゃいけないはずアル!!」

止めて欲しいと頼んだのはロビンである。勿論彼女もそうして欲しいはずなのだが…

「仕方がねぇだろ…!!今は逃げるしかない…!!今挑むには場所が悪すぎるッ…!!…見えてきたッ!!」

近くの大きな湖をみて…開司の目が光った…!!

「…成程、考えたわね、暴走している今なら落とし穴は通じるかもしれないわ…!!でも私達はどうするのかしら!?」
「神楽、一旦ロビンさんにモナドを渡せ…!!」
「わ、分かったアル!!」

ロビンにモナドの剣を投げ渡した!!

「これは…!?」
「ロビンさんよぉ…!!俺達をぶっ飛ばすイメージを念じてくれ!!そして湖の向こうの海に飛ばしてくれ!!」
「えっ…分かったわ…ぶっ飛ばす!!って口が勝手に!?」

それと同時に剣が赤く発光し、元々凄まじい筋肉を持つ今のロビンの肉体に力が漲る、

そして思いっきり二人を湖の向こうへ投げ飛ばす…!!そしてその時にモナドの説明書も渡された…!!
(撃、斬、翔、盾、疾…!!この五つの能力を上げるのね、なら今の私に使うべき能力は…!!)

「走る!!…また勝手に口が言ったわね」

今度は忍者のように湖を走る!!まるで忍者のように!!
…意識がある巨人ならばジャンプして乗り越える事が出来るだろう、だが今の始祖の巨人には操るほどの精神力はない、故にそのまま追いかけて湖の中に入り沈んでいく…
だが始祖の巨人は普通の大きさではない、奇跡か偶然か分からないが頭だけ出して何とか死なない状態にはなった。

(…今なら!!)
ロビンは何と走った勢いのまま口に入って突っ込んでいった!!巨人の手が妨害しようとするが水に阻まれ阻害が遅れた!!

一方で投げ飛ばされて海に入り衝撃を和らげ、そして陸地に上がった神楽と開司は…!!

「マダオ!!私も助けに行きたいアル!!どうすれば良いアルか!?」
「…気持ちはわかるがその方法がな…待てよ」


改めて開司は自分の荷物を見てみた、そしてあった物は…
「タケコプター…!?これなら…!!」
「私も持ってたアル!!助けに行くネ!!」

二人はタケコプターを使い康一の元へ向かう…その時!!

ロビンは何と康一を抱え巨人の口からジャンプして脱出した!!翔の力を使ったようだ
そして飛び出したロビンの両手を二人が握り陸地へ向かっていった…


420 : ◇P1sRRS5sNs :2021/05/22(土) 23:57:25 ZILqg/xA0
「…成程、ナミの身体に入ったのは神楽、そして貴方は伊東開司というのね」

そしてちょうどアナウンスが陸地に着いたころに流れ…それと同時に名簿が配られた

「…何が新しい未来アルか、冗談もいい加減にするがヨロシ、私達に本来あるはずの未来をめちゃくちゃにしようとしている奴に言われたくないネ」
「絶対に許されないわね、お二人の知り合いは?」
「俺はいねぇ…神楽?その暗い顔は…まさか」
「…銀ちゃんと新八、私の大切な万事屋のメンバーが参加させられてたアル」

神楽は大切な仲間が今どんな境遇になっているのかを心配していた、信用できる誰かと会えたのか、そして二人に相応しい身体が使えてるだろうか、二人は共に侍として一緒に背中を何度も預けた大切な仲間だ、強さは信用している、が、それは心と体が最強の相性だった時のみだ、今自分が考思っているように戦えてないように、他の二人も同じ思いをしているかもしれない、そして殺人者に遭遇した時に二人は闘う事が出来るのだろうか
…もっとも、その二人は偶然遭遇してそれぞれある意味相応しい体を手に入れてメタネタでギャグを連発するぐらい余裕があるのだが…その事を神楽は知る由がない

「そうか…無事に会えると良いな、で、その茶髪の男が広瀬康一か」
「ええ」

彼は枕を使って寝かされていた。

「…近江彼方という少女が使っていた枕らしいわ、何でもラブライブ、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会という世界の物らしいわ」
「ラブライブ?じゃあそれに関する人も参加させられているのか?」
「本当にそうとは限らないわね、例えばこのモナドって本来はシュルクという少年が持っているらしいじゃない、でも実際に彼は参加していない、持ち物に世界の制限はないと考えてもいいわね」
「…確かにそうらしいな、このタケコプターもドラえもんというロボットが持っているらしい」

「ただし、今私が話した説明も精神に限った話よ、ラブライブ、シュルク、ドラえもんの人達も身体だけなら参加させられているかもしれないわ」
「だよなぁ…、まず俺達の身体が何処にあるか知りたいよな」
「考えられるのはまず一つは私達に対する人質になっている事ね、殺し合いを促進させるために私達を脅す可能性があるわ、そしてもう一つはそのまま殺されているか、残念だけど一番可能性が高いわ、殺し合いを促進させるためには人質を使うより殺し合いに積極的な人を参加させた方が簡単だから、他にも私達の肉体も誰かの魂が入れられて殺し合いに参加している可能性もあるけどこれが一番厄介かもしれないわ、もしかしたら殺人者の精神が入れられているのかもしれない」
「マジかよ…もし殺人者の魂が入れられてたら俺の仲間に顔向け出来ねぇな…例え俺が殺していなくても俺の身体が人を殺したのは事実だからな…」
「そうね…身体の確保は最優先、そして主催者の目的を探り、そして打倒する事よ」
「そうだな…ってそういうのは」

地面に開司は書き始めた
『筆談で話すべきじゃなかったのか?主催にバレたら殺され』
『それはないわ、だったら私達みたいな戦闘力がそれなりにありながらも殺しを嫌だと考える人はそもそも参加させるはずがないわ、ただ殺し合いを見たいだけならね、私達が抗う事も想定しているはずよ』
『じゃあ何のために俺達は…!!』
『一つに考えられるのは私達が抗う様子を見てあざ笑う為、もう一つは私達の心が折れる様子を見たいのか、それとも私達には計り知れない目的があるのかしら…?』

「ん、んっ…」
「康一!!目が覚めたアルか!?」


421 : ◇P1sRRS5sNs :2021/05/23(日) 00:00:22 53xrfKSw0
「皆さん!!えっと…神楽さんと開司さんですよね?僕のために本当にすみませんでした!!」
「いいって事よ…、オメェが何とか無事で良かった」

とってもいい人達だと僕は思った、この二人には仗助君や承太郎さんみたいな正義の強い意志を感じられる。最初に会ったロビンさんもそうだった、多くの人達を守ろうとする人にこの殺し合いが始まってすぐ会えたのは本当に運が良かったと考えるべきかもしれない
…いや、何言ってるんだ僕は、そもそもこの殺し合いに巻き込まれた時点で不運では?
それとも逆に多くの人を守る為に戦える自分がいる事が幸運だというべきか…

「康一君、これが名簿よ、知り合いはいるかしら?」

成程、どうやら五十音順になっているんですね…き、吉良吉影!?

「…最悪だ!!」
「どうしたアルか!?」
「知り合いは一人いました、承太郎さんはとても強く頼りになる人です、DIOは確か億泰君のお兄さんが化け物って言ってたような…そして一番危険な男がここにいました!!吉良吉影!!奴はサイコパスの殺人鬼です!!」
「「「!?」」」

僕は詳しく吉良吉影について詳しく話した…!!奴はもっとも倒さなければいけない相手だと理解してもらう為に…!!

「信じられねぇ…!!そんな奴がこの世にいるのかよ…!!」
「人の姿をした悪魔とはその男の事を指すかもしれないわね…一刻も早く無力化…もしくは」

殺すと言いかけロビンは口を止めた…殺人、勿論やってはいけない行為であることは確かだ。だが…

「ねぇ、皆、一つ今から大きn「『貴方達は悪党に会った時、殺す覚悟がある?』だろ?ロビンさん」」
「…えっ?」

ロビンがしようとした質問は全て開司に読まれていた…

「確かにどうしようもない悪党もいるよな…、俺も闇の中で生きてきた中で嫌って程見てきた、だがな…!!それでも殺す事は許されねぇと俺は、何でかって言うとそいつと同じ穢れた魂になるからだ」

その話を聞き、ロビンは自分が穢れているとでもいうつもりなのかと思った。ロビンは幼いころにオハラの生き残りとして常に追われながら生きてきた。故に生き残る為ならなんでもした…バロックワークスにいた時は人殺しもいとわなかった、副社長という立場であった以上クロコダイルに劣らぬ者として見てもらう為に仕方がなかったのだ
だが麦わら一味となった今、そこまで殺す事に積極的ではない、しかし今の立場を考えるとこの場で殺さずに生き残る事は甘いのではないかとも思う。

「…何れにしてもまずは誰かと接触をしなくちゃいけないわね…そして情報を得なければいけないわ」
「私がまず銀ちゃんや新八が何処にいるか知りたいネ!!」
「僕は吉良吉影が何処にいるか、そして誰の身体に…!!ってしまった!!」
「「「え?」」」

「冷静に考えると僕達は吉良吉影を見つけたとしても傷つける事すら出来ないかもしれない…!!」
「確かにな、そいつが死んだとき、それと同時にその体が死ぬ…!!」

すると開司は…!!ハッとして筆談をし始めた…!!同時にロビンもそれを察した…!!

『…ロビンさん、もしかして主催が俺達の身体を入れ替えた理由って…!!』
『…一番納得がいく理由ね、私達は多くの人を守りたい、でもそれには無害な人の身体も守らければ守るとは言えない、だけど殺戮者にとってはどんな身体だろうとどんな人と体でも殺せる…!!殺し合いを促進させるためにはうってつけの方法かもしれないわ、最低で狡猾な奴らね』

『じゃ、じゃあ銀ちゃんの身体がその吉良ってクソヤローの身体に宿ったら…!!どうすれば良いアルか!?』
『…どうにか戻せる手段がないかな、それと同時に身体の情報も知る方法があるといいんだけど…!!』


422 : ◇P1sRRS5sNs :2021/05/23(日) 00:00:52 53xrfKSw0
「ん…?皆ちょっと見てくれるかしら?」

ロビンは巨人化によって中断されていたカバンを探る作業をした時…あるカメラを見つけていた

「このカメラは…おくれカメラ、何でも人の過去を映す物…らしいわ」
世界の歴史を探っているロビンにはうってつけのアイテムだろう
「…ちょっと待て、もしかしたらソイツ…!!俺をまず撮ってくれ!!」
「分かったわ、設定は…1時間前にしてみるわ」
一時間前を撮る事を設定し…その様子を取ってみた。
そこに映っていたのは…開司と神楽が話している様子だった。
「成程、ギャンブル場の前で長い時間話していたのね」
「ああ、分かり合う為には深く話すのが大事だと思ってな」
「…ねぇ、私達が目を覚ましたのは3時間前よね?」

(注、因みにこの時間計算は投稿話+深夜が過ぎた時間を合わせています)

「ああ、そうだな、そう考えると…!!5時間前に設定して俺を撮ってみてくれ!!」

すかさず撮ってみるとそこに映っていたのは…!!

「やっぱり!!俺がマリオ達とキャンピングカーで寝ている姿だ!!」
「これが開司さんの身体ですか…頬の傷は色々あったと考えときますね」
「でもこうやって精神の過去の姿が見えたという事は…!!俺達は相手の精神が誰なのかを探る手段が手に入れたっ!!」

朗報である。これなら善人を装う悪党の姿も暴くことが出来る。

「そう簡単にはいかないようね、このカメラ、10時間前までしか探れないみたい」
「じゃあ本当に早く多くの人に会う必要があるな…」

行動方針を決めた所で…一つ問題がある

「私達がしなくちゃいけない事は分かったネ、多くの人をコッソリ写真を撮りながら接触、そして私達と同じ意思を持つ人とは協力、悪意を持つ人は行動不能に持ち込むようにする。でもその為に私達はいつ頃…この島を出ていくつもりアルか?」

そう、それが一番の問題だ、俺達は現在孤島にいる。地図を見る限りこのエリアで他の人に接触するのは難しい。それに時間に限りがある以上向こうに行くとしたら早めに行かなければならない、が…そのためには道路を使えば簡単だった。だが…!!実はロビンさん達が話していたのはD-7エリアの砂浜だった、そこで話した結果康一が暴走、やむを得ず道路を通り今いる島へ逃げたのだがその結果道路はバキバキになってしまい壊れてしまったらしい。

その為に直接飛ぶしか今の所方法がない、主催が直す可能性はあるとしてもな…現在俺達が持っている者はタケコプター×2、モナド、おくれカメラ、ロビンさんからもらった何故か妙に俺に縁がある気がする銃、魔法の天候棒、複数のサイコロ…更に全く役に立たないだろうハリボテハンマー、枕、更に康一のカバンから超硬質ブレード、そして広瀬康一の霊波紋…これでどうやって向こうに行くべきか…

タケコプターでは4人纏めて運ぶためには馬力が足りない、とかいってモナドを使うダッシュは体力を著しく消費してしまう。そんな時に殺人者に遭遇したら本当に何もできないまま殺されてしまう可能性がある。康一の巨人化も制御できない現状を考えるとあてにするのは難しい

「なぁ康一、お前の文字による吹っ飛びで向こうまで飛べるか?」
「できると思います、ただ…」
「ただ?」
「正確なコントロールは出来ません。下手したら僕たち四人がバラバラになってしまうかもしれませんし、着地場所によってはケガをしてしまいます」
「そうか…」

他に荷物がないかを探ろうとした時…ロビンが声を上げた。


423 : ◇P1sRRS5sNs :2021/05/23(日) 00:01:33 53xrfKSw0
「…ねぇ、それ以前に私達はここを早く出るべきなのかどうか考えてみる必要があるんじゃないかしら?」
「ロビンちゃん何言ってるアルか?早く出なくちゃ他の参加者の情報を探る時間が減ると分かってるんじゃないアルか?」
「確かにそうかもしれないわ、でもそもそもこの島に誰がいるかどうか私達康一君を鎮める為に行動してて確認できてない、もしかしたらその参加者の力を借りればより楽に本島に行けるかもしれないわ…ただし、確かに参加者は本島の方が圧倒的に多くいる可能性が高いわ、下手したら私達以外にはいないかもしれない…でもそれだけがメリットじゃないの」
「他に何があるんだ?」
「私達の身体を慣らす特訓も出来る。今の所開司以外、全員本来の身体とは大きく異なるようね?そうなると慣らさなければ感覚の違いで致命的な間違いをするかもしれないわ、でも、それだけ時間は消費してしまうけど」
「確かにロビンさんの言葉は正しいですけど…それでも吉良の犠牲になる人が増えるよりは慣れていなくても動いた方が良い気がします…」
「そうアル!!銀ちゃん、新八が早くどうなってるのか知りたいネ!!」
「その銀時さんや新八君がもし貴女が死んだ事を聞いた時どう思うかしら?多くの人を助ける為にはまず生きる事が大前提だと私は思うわ…」
「…確かにそうかもしれないアル、私は一番身体とのギャップが凄いから…否定できないアル」
「勿論、出来る限り多くの人を助けたいという思いは私も同じだわ、だから早く出る事も否定しない、でも焦りすぎは良くないと考えたのよ…開司君、貴方はどう思うかしら?」
「…分からねぇ、駄目な時には慎重に、いける時にはいっきに突き進むべき、それが賭け事の基本だと俺は思ってる、今の状況は良いと思うが、俺達四人の状況は悪いかどうかは分からねぇ、それにもしこの島に人がいたらどんな人かによっては対処を早くする必要があるかもしれねぇ、例えばもしそいつが危険人物だったら体力の回復と体を慣れさせている可能性がある、そして俺達と同じ正義の心を持つ奴がいて、そいつがもし島を渡る能力が無かったらそいつは橋が直らない限り向こうに渡れなくなる…そして更にそもそも能力がない奴がいたとして、そこに殺人者がやってきたら…ほとんど逃げ場が無しに殺される事になる…が、そもそも本当にいるかどうかが分からない以上、探してみるしかそいつに会う方法はない、だが人に会うことを目的にするなら本島に渡った方が良いかもな…」

一体どうすればいいのか…そう思った時、ふとサイコロが目に映った。それを見て開司は…!!

「皆、俺に考えがある…このサイコロで決めないか?」
「「「え?」」」
「ロビン、神楽、お前ら二人で丁か半、どちらかを選べ、そのどちらかによって俺達が今からどうするかを決める…一応神楽と康一、三人中二人が本島を出たいと考えているという理由から神楽が先に決めてくれ」
「…ギャンブルで決めていいのかしら?重要な事を」
「それ以外で俺は決められない、何方ともメリットがあるからな…それに俺はギャンブルは強い、24億手に入れた男だぜ…俺は」

「…分かったアル、じゃあ…半」
「私は丁になるのね」

シャカシャカシャカ…
コップに入れられた五個のサイコロが揺れる…このサイコロは四人の運命をどう決めるのか
そして巨人化した康一を鎮めるとき、あれだけ目立った姿を見た人が全くいないという事が本当にありえるのだろうか?


424 : ◇P1sRRS5sNs :2021/05/23(日) 00:22:16 53xrfKSw0



【伊東開司@賭博堕天録カイジ】
[身体]:長谷川泰三@銀魂
[状態]:健康
[装備]:何かの銃、種類は後続に任せます
[道具]:基本支給品、タケコプター、、サイコロ六つ、シグザウアーP226
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らず生き残る
1:本当に出るべきか・・・!!今いる島を探すか・・・!?
2:ロビンさんはなかなか頭が良いな、頼りになりそうだ
3:マリオ達の身体が巻き込まれてないことを祈るぜ…!!
4:もし俺の身体が殺人をおかしてたらどうしようか…吉良の身体に入ってない事を願うぜ

時系列は24億手に入れてキャンピングカー手に入れてそこで寝ている時です


【神楽@銀魂】
[身体]:ナミ@ONEPIECE
[状態]:健康
[装備]:魔法の天候棒、モナド(スマブラバージョン)
[道具]:基本支給品、タケコプター
[思考・状況]基本方針:殺し合いなんてぶっ壊してみせるネ
1:この賭けで私達の今後が決まるアルな
2:銀ちゃん、新八、今会いに行くアル、絶対生きてろヨ
3:どちらにしてもお腹が空いたアル、今持ってる食べ物じゃ満腹になりそうにないネ
4:私の身体、無事でいて欲しいけど…ロビンちゃんの話を聞く限り駄目そうアルな

時系列は将軍暗殺編直前です

【広瀬康一@ジョジョの奇妙な冒険、ダイヤモンドは砕けない】
[身体]:エレンイェーガー@進撃の巨人
[状態]:健康
[装備]:今は持っていない
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1、近江彼方の枕、超硬質ブレード
[思考・状況]基本方針:こんな殺し合い認めない
1:吉良吉影を一刻も早く探さなくちゃ多くの犠牲者が出る!!
2:皆さん、僕を戻してくださって本当にありがとうございました
3:承太郎さん、早く貴方とも合流したいです!!
4:DIOも警戒しなくちゃいけない…

時系列は第4部完結後です。故に霊波紋エコーズはAct1、2、3、全て自由に切り替え出来ます。

【ニコ・ロビン@ONEPIECE】
[身体]:大神さくら@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生
[状態]:健康
[装備]:10tと書かれた巨大なハリボテハンマー
[道具]:基本支給品、おくれカメラ(ドラえもん)
[思考・状況]基本方針:殺し合いなんて許さない!!
1:慎重に行動しなければ死んでしまう、考えて行動する必要があるわ
2:いい人に会う事が出来たのは運が良かったのかもしれない、でもこれからはどうなるかしら?
3:ハナハナの力がない事が予想以上に不便ね…
4:こんなに動きやすいのはオハラにいたころぐらいかしら?体が軽い
5:私、そして私達の仲間の身体が悪用されなければいいんだけど…

時系列はちょうど二年後に麦わら一味に合流した後です。

服装は全員普段着です。悪魔の実は肉体依存なのでロビンは能力が使えませんが康一の霊波紋は精神依存なので使えます
全員の共通目的は殺し合いの破壊です。

ラブライブ、ドラえもんのキャラの肉体がこの殺し合いに参加していると考えています。

現在島に通じる道路は壊れており、主催が直さない限り通れません。

そして、今からこの四人の運命を投稿者に決めてもらおうと考えています。
このスレの後に誰かの予約が入り、その後にまた予約が入るか、入らずにその予約したキャラの文が投下されるかで四人の運命を決めます。

予約が入った場合は島に留まり、入らなかった場合は島を脱出します。また、脱出する場合、康一、ロビンのどちらかから脱出に使えるアイテムが出てきます。

タイトルは「ジャスティスフォーの運命、丁か、半か」です。


425 : <削除> :<削除>
<削除>


426 : ◆5IjCIYVjCc :2021/05/24(月) 20:15:41 issuRsIA0

投下乙です!

>Bad Communication
ミチルちゃん大ピンチ!
悪意は無くとも恐怖のあまり爆弾技を使ってしまい状況を悪化させてしまったグレーテ。
今回は死人は出ませんでしたが、次以降の展開が大変なことになりそうです。

>仮面に隠れた悪意を見せずに
慎重さゆえに今回は見逃すことにした黎斗、果たしてこの判断は吉と出るか凶となるか。
そしてリトさんの支給品がある意味ではToLOVEるらしいものって感じがします。

>ジャスティスフォーの運命、丁か、半か
康一の暴走も止まり落ち着いて話すことができた四人、名簿や支給品を確認できたこともあり今後の動きを安定させられそうです。
おくれカメラを参加者判別アイテムとして利用するというのは考えつきませんでした。
参加者やその参戦時期によってはとんでもない写真が撮れそうです。


DIO、貨物船を予約します。


427 : ◇P1sRRS5sNs :2021/05/24(月) 22:55:45 GpNdU/3Q0
ジャスティスフォーの運命、丁か、半か、を予約した者です。
遂に予約が入りました、ここから更にまた新しい予約が入ったら四人は島に留まり、そのまま文章が投下されたら島を出る事になります!!


428 : ◇P1sRRS5sNs :2021/05/24(月) 22:56:15 GpNdU/3Q0
予約→投下、です。間違えました


429 : 名無しさん :2021/05/25(火) 06:32:52 WKcjvdJs0
多分本人なのだろうと思うが、投下宣言した時と、それ以降の書き込みでトリップのつき方がおかしいのはなんでだ?


430 : ◆5IjCIYVjCc :2021/05/26(水) 18:34:47 FIP1AY.M0
◆P1sRRS5sNsさんへ

指摘されているトリップがおかしいという点についてですが、もしかしてトリップキーが消えてしまったのでしょうか?
もしそうであれば以前使っていたものと同じ文字列を「#〇〇〇」という形で改めて入力すればまた同じトリップが出てきます。
もし以前使っていた文字列を忘れた、メモが無いなどといった場合は前とは違う新しいトリップを使うことを提案します。

これらの推測が間違いで何か別の事情があるのならばすみません。
お手数かけますが連絡のほどをよろしくお願いします。


431 : ◆P1sRRS5sNs :2021/05/27(木) 00:36:10 W/dRXCaA0
了解しました。今同じトリップが出るか確かめ中です…


432 : ◆P1sRRS5sNs :2021/05/27(木) 00:37:31 W/dRXCaA0
あっ、同じトリップが出ました!!今後はコピーして打たずに文字列で打つようにします!!


433 : ◆5IjCIYVjCc :2021/05/31(月) 20:39:05 X7BWsytQ0
予約を延長します。


434 : ◆5IjCIYVjCc :2021/06/02(水) 20:36:04 sW6ow8/w0
投下します。


435 : うろ覚えでも思い出したいDIO様と奇妙な獣 ◆5IjCIYVjCc :2021/06/02(水) 20:37:09 sW6ow8/w0
杉元佐一とDIOの戦いの余波で炎が燃え広がっていく島の南西に位置する森、
DIOはそこから脱出するべく森の中の道路の交差点を西(彼が進んできた方向から左)に曲がった。
そのために進む距離はそれほど長くなく、移動時間も短く済んだ。

(………この森はもう終わりだな)

後ろを振り返ってみれば、森からは大量の煙が立ち昇っている様子が見える。
DIOが移動している間も炎はどんどん燃え広がっていた。
消火設備の無いこの島では、これを止めることはできないだろう。
DIOは別に自然に対する保護意識といったものはこれっぽちも無いため、森が燃えていることに対して特に関心はない。
せいぜい逃げ遅れた者は炎に耐性でもない限り死ぬしかないなと思うだけである。
その場合だと自分が手を下す手間が省けたと言えるが、奪えるはずの支給品が燃える可能性もある。
もしそうなっていたら多少は残念だとも思うが大した問題ではない。
これ以上森に対して気に掛ける必要はないだろう。

DIOは先ほどから考えていた通り、杉元含む他の参加者の捜索のために炎を背に向けて歩き出した。



(ここは…だいたいG-2の辺りか)

DIOは地図を見ながら自分の現在地について予測を立てる。
森の中から道路に沿って歩いていたDIOは、その道路の曲がり角の付近に差し掛かった。
DIOは元々この戦いを島の南にある広い砂浜からスタートしており、そこから道路に沿って森の中を通過し、現在の場所まで来た。
そのため地図から現在地を予測することは容易であった。

地図を見てみると、曲がり角を曲がったその先には街があることが分かる。
建物が多い街には人が集まる可能性が高い。
取り逃がした杉元がそこに向かうことや、ヴァニラ・アイスがいることも考えられる。
DIOにとって良い結果になるか、それとも悪い結果になるか、どちらにしても行くだけの価値はあるだろう。

DIOはそんなことを考えながらそのまま道路を曲がっていった。
……が、曲がった直後で彼は足を止めた。

(……何かいるな)

道路の先に視線を向けるとその上に何者かがいるのが見えた。
DIOはそれが一体誰であるのかを確かめるために目を凝らす。

(………あれは猿か?種類はオランウータンのように見えるな)

(しかしあの顔…どこかで見たか?)

そこにいたのは一匹のオランウータンであった。
そして、DIOがそのオランウータンの顔を見た時、謎の既視感があった。
どこか不思議な気分になりながらも、とりあえずDIOはオランウータンの様子を観察する。

(あのオランウータンの首輪、そしてデイパック…奴も参加者のようだな)

オランウータンは道路沿いに設置された電灯を背もたれに座っていた。
手には本を持っており彼の目線はそちらの方に向き、DIOがいることには気づいていない様子であった。

彼が読んでいるものは漫画のようであった(表紙には女性が一人描かれている)。
彼の隣にはデイパックが開けっ放しの状態で置かれていた。
そして、彼の周りには様々な支給品と思われるものが散らばっていた。

手に持っている漫画の別巻と思われるものが数十冊(これらの表紙にも同じ女性が描かれている)、
分厚い辞書と思われる書物、
プロフィール書類や名簿、地図といった紙類の物、
中身がまだ残っているだろうに倒れていたりひっくり返った状態にあるペットボトルやコンビニ弁当、

どうやらこのオランウータンは、デイパックの中身をとりあえずひっくり返してぶちまけたようであった。

(一体どんな奴が畜生の体を与えられたかと思ったが…たいした者ではなさそうだな)

オランウータンの動きを見てDIOはそう判断する。
本を読んでいることから一応知性があることは見て取れる。
けれども、こうして周りを散らかし、こんなところでのんきに漫画を読んでいるという点から自分の状況を分かってないように思える。
少なくとも、空条承太郎やヴァニラ・アイスではないだろう。
そう判断したDIOは次の行動に移るべくオランウータンの方へと近づいていった。


436 : うろ覚えでも思い出したいDIO様と奇妙な獣 ◆5IjCIYVjCc :2021/06/02(水) 20:38:19 sW6ow8/w0



DIOはオランウータンの方へゆっくりと近づき、即座にスタンドを発動させ、その拳を相手の方へ向けて放つ。

杉元を相手した時のように、空条承太郎とヴァニラ・アイスの名前を出して反応を伺うことも考えた。
しかし、彼がいつからここに居たかは知らないが、こんなところで1人(1匹?)漫画を読んでいるような者が誰かに出会えるとは考えにくい。
それに、オランウータンの体では言葉を発することもできないだろう。
よって、今回は相手の情報には期待せず、ただ殺害するだけと決めた。
杉元を相手した時のように不意打ちも避けられ、逆に自分が傷を負うことになるのはDIOとしても避けたいところであった。


だが、そんなDIOに対してオランウータンがとった行動は彼にとって想像外のものであった。

「ウキャアア!!」

どこからともなく突然、漫画を読んでいるオランウータンとは別のオランウータンが現れた。
第2のオランウータンは先ほどからいた方のオランウータンの隣に突然現れたように見えた。
2匹のオランウータンは、瓜二つの容姿をしていた。

「何ッ!?」

DIOが放ったザ・ワールドの拳は止まらずに突如現れたもう1匹の方へと向かっていく。
それに対してオランウータンは落ちていた辞書を拾い上げ、それを盾のように構えて拳を迎え撃つ。

「「ウキャアアアアア!!」」

オランウータンの目論見通りか、辞書はスタンドの拳をギリギリで防ぐことに成功した。
…だが、ザ・ワールドのパワーは凄まじく、辞書で受け止めたからとはいえ勢いを失くすことはできなかった。
そして発生した衝撃により、オランウータンたちは後方に吹き飛ばされていった。



(何だ今のは?オランウータンが分身しただと?)

突如発生した予想だにしない出来事により、DIOの中に困惑の二文字が生じる。
一方オランウータンの方は吹き飛ばされた先の方で仰向けに倒れていた。
先ほど出したもう1匹の方は先ほどの攻撃の影響で消えたようであった。
今のままでは彼もすぐ反撃することはできないだろう。

(……どうやら、これを確かめる必要があるようだな)

DIOはコンクリートの道路に落ちていたオランウータンの身体のプロフィール書類を拾い上げた。
何故いきなり相手が分身したのか、その理由を知るためには書類を読みその身体にどんな能力があるのかを確認するのが手っ取り早い。
持ち主であるオランウータン本人を遠くに吹き飛ばされた今こそが書類を読むチャンスであった。

そして、その中身を読んでみて唯一解消できた疑問は、自分が何故相手の姿に既視感を抱いたかということであった。

(『力(ストレングス)』の暗示を持つオランウータンのスタンド使い、か。…そういえば、確かにそんな奴もいたな)

プロフィールを読んだことで、DIOは相手がかつてエンヤ婆が自分のためにジョースター一行への刺客として放ったスタンド使いの1人(1匹)であることにようやく気づいた。
その名前がフォーエバーであることや、能力は巨大な貨物船を操ることなどといったことも思い出せた。
DIOにとってフォーエバーとは数十日も前に彼の役にも立たずに敗れ、そして死んでいった者であったため、書類を読むまで思い出せなかったのも無理はないであろう。

だが、これらの情報は相手が分身したことへの説明にはならない。
フォーエバーには船を操る能力は有っても分身する能力なんて無いのだ。

(…ならば、今のスタンドのように分身を出すのは奴自身の能力ということか?)

当然、このように考えるのが自然となる。
DIOもまた、精神由来の能力であるザ・ワールドをこの場で使えるようになっている。
オランウータンの精神となっている何者かも同じように精神由来の分身能力を持っているのではないかとDIOは考えていた。

(ならば、奴の能力で何匹まで分身できる?)

DIOは相手の能力が分身だと仮定したまま警戒を強める。
そして、その能力がどれだけ分身を生み出せるかにより相手の脅威度も変わる。
DIO自身が時間停止できないという点から相手も能力が弱体化している可能性も考えられるが、どちらにしろ分からないことが多い今は警戒するに越したことはない。
そんな風に考えながら、DIOは相手の様子をうかがっていた。

DIOがそのように考えを巡らしている間に、オランウータンの方はようやく起き上がることができていた。
ふらついた状態ではあるが、何とかして立ち上がっていた。




437 : うろ覚えでも思い出したいDIO様と奇妙な獣 ◆5IjCIYVjCc :2021/06/02(水) 20:40:53 sW6ow8/w0

「さあ、来るがよい!」

DIOはそんなオランウータンたちから目を離さずに、次にとる行動を待つ。
だが、彼らがとった行動はDIOが思っていたものとは全く別のものであった。

「……貴様、何をしている?」

オランウータンは手に先ほどザ・ワールドの拳を防いだ辞書を持ち、ページを開く。
そして、その中身をDIOに見せつけるように前に突き出した。
意気揚々と迎え撃つつもりだったDIOもこの行動にはあっけにとられる。
そんなことも気にせず、オランウータンは辞書の中にある単語を指さす。(ちなみに、辞書は英和辞典である)

DIOはザ・ワールドの目を凝らして相手が指さす単語を読み取る。

(何かを伝えようとしている?)

オランウータンが指さす単語は一つだけでなく、いくつかの単語を組み合わせて文を作ろうとしているようであった。
動物の身体ならば喋れないのは仕方ない、情報を伝える手段も限られるだろう。
DIOはとりあえず警戒はしたまま相手が文を作るのを待った。
※ここから先、英和辞典への指差しで作られた文は『』内で日本語で表現されることとなります。


『私はあなたの味方です』

「何だと?」

『協力させてください』

まさかの申し出にDIOは驚く。
自分の方から攻撃した相手が敵意や殺意を抱くのではなく、このような提案が出てくるのは全くの予想外であった。

「貴様…それは私が何者かを知ってのことか?」

DIOは怒気を僅かに含ませた声で尋ねる。
この時点では相手が伝えたことは命乞いのはったりの可能性を考えていた。
そんなDIOの質問に対しオランウータンは辞書から単語を一つ指差す。

『Yes』

それは肯定を意思を示していた。

「ほう…ならば当てて見せよ」

DIOは足下に落ちていた相手の分の名簿を拾い上げ、それを投げてよこす。
オランウータンもまたDIOの意図を察し、ひらひらと自分の方へ飛んできたその名簿を受け取る。
そして、その中から一つの名前を指さした。
その名前は『DIO』であった。

(命乞いのために適当なことを言っているわけではない…か。いや、『言って』はないな)

オランウータンはDIOのことを知っているようであった。
60人いる参加者の中からすぐに的確に当てたため、ちゃんと相手がDIOだと気づいた上で行っているのだろう。
気付く要因となったのはスタンドのザ・ワールドを見たことと考えられる。
そうでなければジョナサンの姿をしたDIOをDIOだと認識することは難しいだろう。
分身(?)能力もスタンド能力によるものだと考えれば精神由来の力として説明がつく。

「貴様は何を企んでいる?」

しかし、そういったことが分かったからと言って、簡単に相手を信じるようなことはできない。
最初に攻撃を仕掛けたのは自分であるが、その後に協力するという申し出をするのはやはり不可解であった。

『私はあなたの部下です。協力するのは当然のことです』

「……どういうことだ?」

また、新たな謎が増えた。
この殺し合いの場においてDIOの部下はヴァニラ・アイスただ1人だけのはずである。
だいたいヴァニラが持つ能力はクリームというスタンドであり分身能力ではない。
それにヴァニラがオランウータンの身体になったからといってこれまでのような行動をとるはずがない。
そもそもDIOは分身能力を持つ部下がいたなどという記憶はない。
相手の身体であるフォーエバーはDIOの部下であったかもしれないが、それを理由にそうと名乗るとも思えない。

「貴様は何者だ」

当然、DIOもこのように質問をすることとなる。
それに答えるためにオランウータンは名簿の中から一つの名前を指さす。
その名前は『貨物船』であった。

「……………貴様、ふざけているのか?」

『No』

貨物船は否定の意思を示す。

DIOの中で疑問点がさらに増えていく。
その名前は明らかに人名としておかしいものであったため、最初に名簿を見た時はスルーしていたものだった。
しかしここで、それが自分の名前であると示す者が現れた。
さすがのDIOでもここまで奇妙な参加者に出会うことになるとは思っていなかった。




438 : うろ覚えでも思い出したいDIO様と奇妙な獣 ◆5IjCIYVjCc :2021/06/02(水) 20:42:42 sW6ow8/w0

(何なのだこいつは…。やはり殺すべきか?)

DIOに貨物船なんて名前の分身能力を持つ部下がいた記憶はない。
ザ・ワールドのスタンドの像を知っていることも不可解である。
覚えていなかっただけで一応末端の部下であり、貨物船は殺し屋としての通り名とかそんなものなのかもしれない。
それでもやはり、こちらが全く知らないのに部下を名乗ることの怪しさの方が勝っている。
本来なら今のうちに殺してしまった方が正解なのだろう。

(だが、こいつの能力は使えるか?)

目の前にいる相手は怪しさ満点だがスタンドと思わしき能力を持っている。
そんな彼は自分の方から協力を申し出ている。
ひょっとしたら殺し合いにおいても何か役に立つ可能性もある。

「貴様は本気でこのDIOに従うつもりがあるのか?」

「ウホッ!」
『Yes』

「このDIOのために命をかける覚悟があるのか?」

「ウヘッ!」
『Yes』

「このDIOが死ねと命じればすぐに命を捨てられるか?」

「ウハッ!」
『Yes』

問答をいくつか繰り返した結果、言葉だけなら一応忠誠心があるように感じられる。
だがそれだけではまだ、DIOの信用を得るためには全然足りない。

「念のため、何か行動で示してもらおうか」

「ウキッ!」
『分かりました。私の支給品を全て差し上げます』

「ふむ………」

DIOは貨物船の分のデイパックを拾う。
漫画本はかなりの数があるがその表紙からそれらがセットで一つの支給品とされていることが推測できる。
相手が持っている辞書と合わせて現在判明している貨物船の支給品は二つ、つまり相手の支給品はまだ一つ残っている可能性が考えられる。
貨物船もそれを分かっていたために支給品を渡すと宣言した。

「だが、これだけじゃあまだ足りんな」

支給品は受け取ったが、それで完全に忠誠心があることを証明できたとは言い難い。
だからと言って、貨物船に他に何かができるかというとそれも少ない。
ならばここはDIOの方から貨物船を試すまでだ。

「これを飲んでもらおうか」

そう言ってDIOは自分のデイパックからワイン瓶を一本取り出した。
ザ・ワールドを用いてその瓶のコルク栓を抜く。
中のワインをグラスに注ぎ、少し離れた貨物船にも届く場所に置く。

「ウホォ?」

貨物船は不思議に思いながらもグラスを持ち口を付ける。
貨物船はそのままワインを一気に飲み干す。

「ゲフッ」

「ほう…文句も無しに飲むとは。忠誠心はこれで良しとしてやろう」

DIOはそのことを確認するとかすかに笑い、静かに告げる。

「言い忘れたがそのワインには特殊な毒が入っている。合図一つで理性を失う化け物になり、やがては死に至る毒だ」

「ウキャア!?」

貨物船もこれには驚きの声を上げる。

「そうならないためにも私に逆らうようなことは絶対にしないことだ」

「ウキッ!」
『私は絶対に裏切りません』

「まあ、毒については心配する必要は無い。貴様が私の信頼を得られればすぐにでも解毒剤を渡そう。それまでしっかりと働いてもらうぞ」

「ウキィ?」

「だが、もしこのDIOを満足させる働きができなければ…裏切るような真似をしたら…その時は分かっているな?」

「ウキッ!!」

貨物船は敬礼のポーズをとる。
それが脅迫の効果があったものによるかは不明だが、とりあえずはこれでよしとした。



ちなみに、DIOがしたワインについての説明には嘘が含まれている。
確かにそのワインは合図一つで理性を失い化け物になる代物なのは確かなことだ。
だがその効果が出るのは全ての生物に対してでは無い。
エルディア人という特殊な人種にしか効かない。
解毒剤なんてものも存在しない。
合図をする人物もジーク・イェーガーというたった一人のエルディア人にのみ限られる。
しかし今回はその効果が出る必要は無い。
ある程度脅しの効果があればそれで十分だと判断している。


439 : うろ覚えでも思い出したいDIO様と奇妙な獣 ◆5IjCIYVjCc :2021/06/02(水) 20:43:53 sW6ow8/w0




DIOはまだ貨物船を完全に信用したわけではない。
ヴァニラ・アイスほどの忠誠心があるかどうかもここではすぐに確かめることはできない。
けれどもDIOは一先ず、脅迫も効いているものとし、貨物船を名乗る謎のオランウータンを自分の味方とすることにした。
奇妙な巡り合わせだが、これもまた運命というものであろう。

(この貨物船とやらはまだ何かを隠しているかもしれない。ワインで縛るのも何時かは無理が来るだろう。だが、何を考えていようと問題ない)

DIOが貨物船の仲間入りを認めたのはあくまでも利用するため。
そこに情なんてものは存在しない。
最終的に殺すことにも変わりはない。
本当に従うつもりがあるのならばとことん使いつぶすまでである。



新たな出発が始まる前に、DIOは地面に落ちているとある物を指さしながら一言付け加えた。

「ああ…それとこの漫画は置いていくぞ。戦いには邪魔だからな」

「ウキャ!?」

貨物船はこの時、ワインを飲まされた時よりも悲しそうな顔を見せた。


【F-2とG-2の境目付近 道路/黎明】

【DIO@ジョジョの奇妙な冒険】
[身体]:ジョナサン・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険
[状態]:両腕火傷、疲労(小)、火に対する忌避感、困惑気味
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ジークの脊髄液入りのワイン@進撃の巨人、ランダム支給品×0〜3(確認済)
[思考・状況]基本方針:勝利して支配する
1:貨物船を従えておく。
2:貨物船が裏切るような真似をしたら殺す。
3:役立たないと判断した場合も殺す。
4:何故そこで悲しそうな顔をする?
5:百年ぶりの日光浴にほんのちょっぴりだけ興味。
6:元の身体はともかく、石仮面で人間はやめておきたい。
7:スギモトは放っておいてもいいだろうが、見つければとどめを刺す。
8:アイスがいるではないか……探す。
9:承太郎と会えば時を止められるだろうが、今向かうべきではない。
10:ジョースターの肉体にを持つ参加者に警戒。
[備考]
※参戦時期は承太郎との戦いでハイになる前。
※ザ・ワールドは出せますが時間停止は出来ません。
 ただし、スタンドの影響でジョナサンの『ザ・パッション』が使える か も。
※肉体、及び服装はディオ戦の時のジョナサンです。
※スタンドは他人にも可視可能で、スタンド以外の干渉も受けます。
※ジョナサンの肉体なので波紋は使えますが、肝心の呼吸法を理解していません。
 が、身体が覚えてるのでもしかしたら簡単なものぐらいならできるかもしれません。
※肉体の波長は近くなければ何処かにいる程度にしか認識できません。
※貨物船の能力を分身だと考えています。

【貨物船@うろ覚えで振り返る承太郎の奇妙な冒険】
[身体]:フォーエバー@ジョジョの奇妙な冒険
[状態]:健康、ダメージ(中)、ジークの脊髄液入りのワインを摂取、酒酔い
[装備]:英和辞典@現実
[道具]:基本支給品、ワイングラス
[思考・状況]基本方針:DIOのためになるように行動
1:DIOと共に行動。
2:漫画を置いて行ってしまうのが少し残念。
[備考]
・スタンドの像はフォーエバーのものとそっくりな姿になっています。
・一応知性はあるようです。
・DIOがした嘘のワインの説明を信じています。

※G-2部分の森は火が全体に燃え広がりました。
※G-3部分の森も今もなお火は燃え広がり続けています。
※G-4の辺りの森にも燃え移りそうです。

※『ふたりエッチ62冊@斉木楠雄のΨ難』がG-2の道路に放置されています。


【ふたりエッチ62冊@斉木楠雄のΨ難】
原作の第230χ(斉木楠雄のΨ難では話数をχで表す)に一コマだけ登場した漫画セット。
同名の漫画は現実にも存在するが、ここで支給されているものは鳥束零太の私物のため斉木楠雄のΨ難からの出典となっている。
原作においては断食修行をやらされることになった鳥束がこっそり持ち込もうとしたが見つかって没収されるという形で登場。
アニメ版では単なるエロ本に変更された。

【英和辞典@現実】
普通の英和辞典。
けっこう分厚くて大きい。

【ジークの脊髄液入りのワイン@進撃の巨人】
ジーク・イェーガーの脊髄液が含まれたワイン。
エルディア人がこれを飲むとジークの叫びにより無垢の巨人にされてしまう。
ジークの脊髄液で出現した無垢の巨人はジークが自由に操れる。
ワイングラスも一つセットで支給されている。


440 : ◆5IjCIYVjCc :2021/06/02(水) 20:44:25 sW6ow8/w0
投下終了です。


441 : 名無しさん :2021/06/03(木) 21:14:26 wBfiLy3g0
乙です
DIOの傍若無人さと利口さがうまく表現されてたと思います
優勝狙いのマーダーから来る冷徹さもひしひしと感じられこちらも緊張しました
貨物船くん毒気の抜けたフォーエバーらしく愛着と同情心を持ってしまったよ
ラストの本の廃棄からのやり取りに和まされました
アイテム出典も含め、状態表も実に良かったです


442 : ◆ytUSxp038U :2021/06/16(水) 13:12:55 8vM.4lc20
バリー・ザ・チョッパーを予約します


443 : ◆ytUSxp038U :2021/06/19(土) 20:50:42 fMFjgvHs0
>>442の予約に桃白白とメタモンを追加し延長しておきます


444 : 名無しさん :2021/06/23(水) 14:42:57 4SdekZqc0
中々面白い設定だし続いて欲しい
応援してます


445 : 名無しさん :2021/06/23(水) 15:10:55 nyoSlVvA0
投下します


446 : 殺してあげると彼らは言った ◆ytUSxp038U :2021/06/23(水) 15:16:29 nyoSlVvA0
バリー・ザ・チョッパーにとって殺し合いとはどんなものだろうか。
本人に尋ねればきっとこう答えるだろう。「別にいつもと変わらない」と。
ただの人間であった頃も、鎧に魂を定着されてからも殺しの衝動だけは失わなかった。
だからもしもこれが殺し合いでなかったとしても、バリーは目に付く者を殺して回ったに違いない。
わざわざ殺し合えと言われずとも、自分が生きているなら嬉々として他者を手に掛けた。
「我殺す、故に我あり」。
そこに悩みや葛藤など微塵も無く、そもそもそんなものを抱く暇があったら新しい獲物を探すのに時間を費やす。
殺し合いを運営する側にとっては実に扱い易く、手頃な人材と言えるだろう。
放っておいても勝手に暴れ回り殺し合いを促進してくれるのだから。

そのバリーは現在、民家を後にし意気揚々と参加者を探している。
毛に覆われた肌に伝わる夜風の冷たさ、担いだ斧のズッシリとした重み、鼻孔に漂ってくる会場の匂い。
久方振りの感覚を懐かしみながら、これから行う殺しに胸を弾ませていた。
普段使っている肉切り包丁ではないが、この斧で斬り殺した時はどんな手応えだろうか。
鎧ではなく獣人と言うべき体はどれ程の力を発揮できるのか。
考えてみれば鎧だった時と違い、痛みや疲労も感じるのだ。
その辺りにも注意を払っておいた方が良いかもしれない。

(それにもう一つの得物は趣味に合わねえからな)

バリーに支給された武器は魔人の斧以外にもある。
それは赤い番傘。
一般的な傘と違い驚くほど頑丈な傘は、バリーの腕力で振るえば十分立派な凶器と化す。
更に驚くべき事に、傘には銃も仕込んであった。
強力な事には違いないだろうが、バリーにとって殺人で快楽を得られるのは刃物で相手を切り刻んだ時である。
撲殺も射殺も好みには合わない。
斧も慣れない武器ではあるが、相手を斬り殺せるのだから番傘よりはずっと良いと判断した。

奇妙なチャイム音が鳴り響いたのは丁度その時だった。


『それでは、改めまして皆さんの健闘を、そしてこのバトル・ロワイアルが良きものとなることを祈っています』

再度チャイムが鳴り響き放送が終わった。
ボンドルドの言葉の意味はハッキリ言って意味が分からない。
心を縛る枷?未来を切り開く鍵?
抽象的な言葉をつらつら並べず、もっと直接的な言葉で言って欲しいものだと内心呆れる。
とはいえ何の目的で殺し合いを開いたかなど、特段知りたいものでもない。
もし具体的に殺し合いを開いた理由を説明された所で、大して思う事も無かっただろう。
バリーにとっては自分が殺しをできるという一点のみが保障されていれば問題ないのだから。

今の放送で重要な事は二つ。
名簿とコンパスが手に入ったことと、禁止エリアの存在だ。
尤も後者は次の放送まで必要も無いのだが。

「おっ、本当に入ってるな」

早速デイバックの中身を確認してみる。
すると確かに、最初に見た時には存在しなかった2つの道具があった。
誰が参加していようと方針を変える気は無いが、見ておいて損は無いだろうと名簿を開く。

「へー、あのガキも参加してんのか」

自分の名前以外で知っているものは一つだけ載っていた。
アルフォンス・エルリック。
第五研究所で出会った錬金術師であり、以前の自分と同じ鎧の身体を持つ少年。
こんな所でも一緒になるとは何とも奇妙な縁だが、それ以上アルフォンスに関して思う所はない。
一度ホムンクルス相手に共闘したとはいえ、元々は敵同士。
もしも惚れた相手であるリザ・ホークアイ中尉がいたら少しは悩んだかもしれないが、彼女は不参加である。
よってアルフォンスに会ったら迷わず殺すし、自分と会う前にアルフォンスが死んだとしても、精々「運が悪かったな」とだけ言って流すだろう。


447 : 殺してあげると彼らは言った ◆ytUSxp038U :2021/06/23(水) 15:18:29 nyoSlVvA0
「しっかしあんなガキ参加させて何の意味があるんだ?」

自分達が参加させられたのはルールの制定されたスポーツではなく、ありとあらゆる手段を用いて生き残る殺し合い。
そんなものに何故アルフォンスを招いたのだろうか。
親しい間柄ではないが、アルフォンスは殺人鬼の自分とは正反対に位置する少年。
殺し合いなのに殺しを嫌う奴を連れて来て一体何の意味があるのか、バリーにはさっぱり分からない。
だったら研究所の番人仲間であったナンバー48でも参加させた方が殺し合いも順調に進むだろうに。

「ボンドルド、だったか?訳の分かんねえ兄ちゃんだな」

錬金術師であろう男の考えが理解できず、そんな呟きが出る。
ボンドルドが本当に錬金術師なのかどうかは分からない。
そもそもバリー本人は錬金術師ではないので、錬成の詳細な法則など全く知らない。
だが他者の肉体を入れ替えたり、デイバックの中へ何時の間にかアイテムを出現させる能力の持ち主など見当が付くのは錬金術師くらいのものだ。
なので多分錬金術師だろうと決めつけた。
放送時の口振りからして他にも仲間がいるらしいが、そいつらも錬金術師なのだろうか。
ひょっとすると、自分をこき使っていたホムンクルスが裏で糸を引いている可能性もある。
あの得体の知れない連中ならば、確かに殺し合いを開くくらいの事はやりそうではあった。

しかしそうなると余計にアルフォンスを参加させた意味が分からない。
錬金術師であるあの少年ならば、真っ先に首輪を解除しようとするはず。
首輪は参加者達の抵抗を抑制する重要な枷。
それを外されれば殺し合いの進行に支障が生じ、ボンドルドらの思惑も潰れてしまう。
にも関わらずアルフォンスを参加させたのは、絶対に首輪を解除されない自信でもあるのだろうか。
それとも別人の身体にされた事でアルフォンスの錬金術は封じられたのかもしれない。

「まっ、俺は殺しができればどっちでもいいんだけどな」

思い浮かんだ疑問もバリーにはさほど重要でもなく、あっさりと切り替える。
すると今度は別の疑問が出て来た。

「そういや生き残れたら元の体に戻すとか言ってたが…どっちの体だ?」

バリーには知る由も無いが、それはアルフォンスも抱いた疑問。
肉屋を営みその裏で殺人を行っていた人間のバリー。
第五研究所の番人をし、マスタング大佐らと共闘した鎧の身体のバリー。
果たしてボンドルド達はどちらを元の体として見ているのかと首を傾げる。
別に今更人間の体に未練は無い。
あんな腐敗が酷い肉体に戻されるなどこっちから願い下げである。
そう考えると鎧の身体の方が遥かに良いのかもしれない。
疲れも痛みも感じず、食事や睡眠をとる必要も無い、便利と言えば便利な身体だ。

若しくは、今自分が入っている獣人の身体のままにしてもらう事もできるかもしれない。
その為にまずは適当な参加者を数人殺して、この身体の性能を確認しておく。
鎧の身体よりも便利且つ気に入ったのならこのままで良い。
気に入らなかったら元の体に戻してもらうが、そうでなければ元の持ち主であるチョッパーとやらは運が悪かったと言う事で体はバリーが頂く。

しかし油断は禁物である。
チョッパーの身体はそこいらの人間などよりもずっと強靭だが、決して不死などではない。
むしろ鎧の身体であった時には気にしなかった痛みや疲れにも気を払う必要がある。
運良く三度目の生を手に入れても、ほんの僅かな失敗で今度こそ本当に死ぬかもしれない。

だからといって今更生き方を変えるつもりは無い。
油断も過信もできない。けれど殺しを楽しむ事だけはどうしても捨てられない。
ホークアイ中尉に協力している時はなるべく殺しを控えていたが、やはり自分は好きに殺して回る方が性に合っているとバリーは思う。

「悪いな、姐さん。俺から殺しを奪っちまったらただの抜け殻しか残らねぇんだ」

その言葉には、惚れた女に対する決別を込めていたのかもしれない。
結局自分はこういう生き方しかできないし、他の生き方を探す気はさらさら無い。
ほんの僅かな感傷を振り払うと、名簿を仕舞い改めて出発の準備をする。


448 : 殺してあげると彼らは言った ◆ytUSxp038U :2021/06/23(水) 15:20:05 nyoSlVvA0
地図によると現在バリーがいるのはC-5にある村。
民家が建ち並ぶ以外に、これと言って目立つ施設は無い。
参加者が多く集まるであろう街に移動し、そこで思う存分殺そうと考えた。

(いや、ここで待ち伏せするのも良いか?)

これだけ民家があるのだから隠れる場所には困らない。
もう少し待ってみて、誰も来なかったら改めて街に向かうのも有りかもしれない。


しかしそれ以上考える必要は無くなった。
バリーの視界に参加者の姿が映ったからだ。

(おっ!早速誰か来やがったな!)

嬉々として斧を構え、現れた者の姿をハッキリと見る。
やって来たのは金髪の青年。バリーの知っている顔ではない。
向こうもバリーに気付いているだろうに、微塵の動揺も感じさせない表情でこちらに近付いて来る。
どうやら不運にも殺し合いに巻き込まれた一般人などではなく、自分と同じ殺しに慣れている者らしい。
青年に対する警戒を上げつつ、軽い調子でバリーは声を掛けた。

「よう兄ちゃん。こんな真夜中に一人で歩いてちゃ危ないぜ?」

青年は立ち止まりバリーをじっと見据える。
お世辞にも友好的とは言えない、まるで観察するかのような冷たい視線だった。
まるでホムンクルスや、連中と繋がりのある研究者共のようだ。
青年が向ける目にそんな感想を抱く。

(さて、この兄ちゃんはどう出る気かねぇ…)

青年が次に出る行動を楽し気に窺う。
手に持っている湾曲剣で襲い掛かるか?なら返り討ちにして殺す。
殺し合いなんて下らないと説得してくるか?耳を貸さずに殺す。
実は今の冷静な立ち振る舞いは全て虚勢であり、背を向けて逃げ出すか?じゃあ背中から斬り付けて殺す。
どんな行動を取ろうと結局殺す事に変わりは無い。

「まさか最初に出会ったのが、お前のような化け物とはな」

それまで黙っていた青年が口を開く。
明らかに相手を見下すような笑みを浮かべていた。

「まぁ、標的が誰だろうと私にとっては関係ないことだ。人間だろうが化け物だろうが報酬さえ支払うのならば、な」
「何だ兄ちゃん、殺し屋か何かなのか?」
「そうとも。お前に一つ良い提案をしてやろう」

人差し指を立て尊大に言い放つ青年。
どうせロクでも無い事だろうなと思いつつ、バリーは耳を傾ける。


449 : 殺してあげると彼らは言った ◆ytUSxp038U :2021/06/23(水) 15:22:11 nyoSlVvA0
「報酬も無しに殺しなど全く馬鹿げているが、今回だけは特別サービスだ。大人しく支給品を全て私に寄越せ。そうすれば今ここでお前を殺してやろう」
「はぁ?それのどこがサービスなんだよ」
「抵抗せずに差し出すのであれば、余計な苦痛や恐怖を感じる事無く一瞬で死ねるのだぞ?
 それに世界一の殺し屋である私の手に掛かって死ねるなど、お前のような化け物には勿体ない程の幸福だとは思わんのか?」

想像以上に酷い提案にバリーは思わず呆れ返った。
青年は冗談でも悪ふざけでも無く、本気で言っているらしい。
どうやらこの青年の身体に入っている者は随分と人間性に問題があるようだと、殺人狂である自分の事を棚に上げてそう思った。
当然ながら青年の提案を受け入れる気など毛頭ない。
世界一の殺し屋だか何だか知らないが、そんな提案を受け入れるなど余程の間抜けか自殺志願者くらいだろう。

「…兄ちゃんの言いたいことは良く分かった。けどよ、それよりもっと良い提案が俺からあるぜ。
 大人しくここで俺にぶった斬られて、兄ちゃんが持ってる物を全部俺が頂くってのはどうよ?」

ニヤリと、口の端を吊り上げ挑発する。
青年の顔からはそれまでの尊大極まりない笑みが消えた。
自分の素晴らしい提案を蹴った畜生に対する不快感でも味わっているのだろう。

ヒヤリとして殺気が体毛に覆われた肌を刺す。
世界一かどうかは知らないが、半端な腕しか持たない三流の殺し屋でないのは確かなようだった。
最初の獲物として悪くない。
自然と舌なめずりする。


「どうやら体が化け物ならば知能まで低下するらしいな」

不愉快さを隠そうともせずに桃白白は吐き捨てる。
どうせ皆殺しにするとはいえ、自身の提案を無下にされれば苛立ちも湧くというもの。
世界一の殺し屋という称号と己の腕に絶対の自信を持っている桃白白らしい怒りだった。

桃白白にとってこの催しは最初から気に入らないものだ。
どんな願いでも叶える権利という報酬。それは良い。
むしろこの自分に殺しをさせるなら、それくらい価値のあるものを用意するのは当然である。
しかしだ、事前に依頼もせず勝手に拉致し、飼い犬のように首輪を付け、挙句の果てにどこの馬の骨とも知れぬ若造の身体へ魂を閉じ込められる。
ただでさえプライドの高い桃白白がこれらの所業を許せるはず無かった。
そこへ来てふざけたバリーの態度。
これ以上話をしてやる価値も無い相手と見做した。

(まぁ良い。準備運動くらいにはなるだろう)

殺し合いが始まってすぐ、身体を軽く動かしてみたがそれだけでは足りない。
やはり実戦でどれ程使い物になるのかを試すのが一番である。
そういう意味ではバリーは丁度いい相手なのかもしれない。
有象無象の雑魚に比べれば、少しくらいは頑丈な方が準備運動に持ってこいだ。

「来るがいい」
「言われなくてもそのつもりだぜっ、と!!」

言うや否やバリーが飛び出す。
巨体に似使わぬ素早い動きで一直線に向かい、己の得物を振るう。
分厚い刃が振り下ろされる先は、桃白白の頭部。
直撃すれば果実を叩き割ったかのように、端正な顔は一瞬で肉片に変わる事間違いなし。
但しそれはあくまで『当たったら』の話であるが。


450 : 殺してあげると彼らは言った ◆ytUSxp038U :2021/06/23(水) 15:24:02 nyoSlVvA0
迫る刃に焦りを見せず桃白白は数歩下がる。
斧は桃白白の頭部どころか髪の毛一本すら斬ること無く、空気のみを斬り裂いた。
とはいえそれくらいはバリーも予測済み。
仮にもプロの殺し屋がたった一撃も避けられず死亡、などと無様な結果となっては拍子抜けも良い所。
一歩踏み込み再度斧を叩き込む。
生半可な力では構えるだけでも一苦労だが、ヒトヒトの実の力で獣人の姿へと変化したトニートニー・チョッパーの肉体ならば無問題。
重さを感じさせない速度で、毛むくじゃらの剛腕を振るう。

だが桃白白には届かない。

「んなくそっ!」

容易く躱された二撃目に悪態を吐き、されど攻撃の手は緩めない。
まるで棒切れでも振り回しているかのような速度で、魔神の斧が縦横無尽に空気を斬る。
型も何もない滅茶苦茶な、されどたった一撃でも食らえば致命傷は免れないバリーの攻撃。
それら全てを桃白白は涼しい顔で避ける。
無駄な動きの無い、最小限の動作のみで躱しているのだ。

「…成程」

ぽつりと呟かれた言葉に構わず、バリーは斧を振るった。

「もらったぁ!」

斧が顔面に迫る。
ギラギラと鈍い輝きを放つ刃を目前にし、尚も桃白白に焦りは無い。
バリーの攻撃を極めて冷静に見据えている。

「思ったよりも大した体だ」
「ぎぇっ!?」

バリーの横腹に鋭い痛みが走った。
何時の間にか自身の横に移動していた桃白白が剣を振るったのだ。
追撃を防ぐために痛みを押して腕を振るう。
桃白白にはあっさり避けられるが、その隙にバリーも距離を取る。
頭部をかち割るはずが何故反対に斬られたのか、バリーの頭に困惑の感情が浮かぶ。

(私ほどでは無いが、若造にしては良く鍛えられているではないか)

桃白白は本来の身体の持ち主である青年、リンクを称賛する。
剣術を主体とした鍛え方をしているリンクの肉体は、鶴仙流の武術とは相性が悪い。
しかし、決して弱い訳では無い。
バリーの攻撃も冷静に見切れるだけの動体視力は、ハイラルの魔物と戦いで高められた力。
余分な脂肪を削ぎ落し、しなやかな筋肉の付いた体は実に軽やかな動きを可能としている。
更にバリーへと見せた奇妙な動きの正体はジャスト回避。
敵の攻撃をギリギリまで引き付け躱す事で、まるで周囲の時間がスローモーションになったかの如き速さで攻撃が可能となる。

(それに引き換え……所詮は馬鹿力だけの獣か)

自分を挑発したバリーの実力はどれ程のものかとほんの僅かだが興味もあったが、とんだ見込み違いだったと失望する。
力だけならリンクよりも上の肉体を与えられながら、やっている事と言えば癇癪を起した子供のように斧を振るうだけ。
それで皮一枚すら斬れないのだから何とも情けない。

桃白白は知らない事だが、バリーの持つ魔神の斧は一撃の破壊力こそ強力だが、その代償として攻撃の命中率を著しく低下させるデメリットがある。
加えてバリー自身が使い慣れている凶器は肉斬り包丁であり、斧ではない。
自らの武器が原因でバリーは不利になってしまっているのだった。

「わざわざ攻撃させてやったんだ。今度はこちらの番だな」
「うぉっ!?」

桃白白が握るのは美しい装飾が施された湾曲剣。
これ以上バリーの好きにさせてやる必要も無くなった今、リンクの剣術がどれ程のものかを確かめさせてもらう。


451 : 殺してあげると彼らは言った ◆ytUSxp038U :2021/06/23(水) 15:25:29 nyoSlVvA0
桃白白が握るのは美しい装飾が施された湾曲剣。
これ以上バリーの好きにさせてやる必要も無くなった今、リンクの剣術がどれ程のものかを確かめさせてもらう。

「せいっ!はっ!」

月光のナイフは美しさだけが全ての代物ではない。
人間や怪物をも真っ二つにできる切れ味を誇るゲルド族が使用する立派な武器だ。
それをリンクの身体で扱えば十分過ぎる程の凶器と化す。
『剣術』という点において、リンクは英雄と呼ぶに相応しい程の腕を持っているのだから。

「ク、クソッタレ…!」

縦横無尽に振るわれる刃、と言えばバリーが振るっていた魔神の斧も同じ。
しかし桃白白が余裕を持って斬撃を躱していたのに対し、バリーは焦りの表情を露わにしてどうにか斬撃を凌いでいる。
どうにか致命傷となる一撃は斧で防ぎ、されどその全てを防ぐ事はできず身体の各所に赤い線が走る。
戦闘が不可能になる程の重い傷は今の所ない。
だが一つ、また一つと傷は増えていく。

「どうした?それで精一杯か?」

嘲る桃白白に言い返してやる余裕はバリーにない。
チョッパーのタフな身体のお陰で無数の切り傷にも耐えられてはいる。
だが久しぶりに感じる傷の痛みは、やはり気持ちの良いものではない。
このまま防戦を続けたとして、恐らくは先に限界を迎えるのは自分の方だろう。

(折角生き返ったってのにもう死ぬのか!?冗談じゃねえ!!)

まだ自分はこの場所で一人も殺していないのに。
こんな偉そうな口調の自称世界一の殺し屋の手に掛かってお終いなど絶対に御免だ。
バリーの心中の叫びも空しく、状況はまるで好転する気配が無い。

「そこだっ!」
「げっ!やべぇっ!?」

掬い上げるように剣が振るわれる。
焦りからかほんの一瞬対処が遅れ、その結果バリーの手から魔神の斧が弾かれた。
得物を拾いにいく隙を与えてやる程桃白白は甘くない。
両腕で防ごうものなら、その腕ごと斬り裂かんばかりの速さで剣がバリーに襲い掛かった。
最早逃げ場無し。
バリーの脳裏に諦めの二文字が浮かび上がりかけ、ふと自身の身体はどんなものかを思い出す。
今でこそ雪男のような姿を取っているが、最初に体のプロフィールを確認していた時は別の姿をしていた。
斬り裂かれるまさにその時、バリーは咄嗟に体を変化させた。

「なにっ!?」

桃白白の剣がバリーを斬り裂く事は無かった。

目を見開く桃白白の視線の先には雪男のような巨体の怪物。
ではなく、まるでマスコットキャラクター染みた外見の珍獣がいる。

バリーがした事は至って単純。
トニートニー・チョッパーが普段から変化しているこの姿に変身した。
大柄な人型から小柄な姿へ急激に縮んだ事で、剣はバリーの体を斬る事無く頭上を通過するだけで終わった。

バリーの行動はまだ終わっていない。
小さい姿のまま駆け、地面に転がる魔神の斧を掴む。
再度体を巨大化させると、桃白白目掛けて大きく横薙ぎに振るった。
迫りくる斧を受けてやるつもりの無い桃白白は当然回避しようとする。
だが今度はバリーの方が一手早く、避け切れないと悟り月光のナイフで防いだ。

「ぬおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」

防御したまま桃白白が後方へと吹き飛ぶ。
余りの勢いに受け身もマトモに取れず、桃白白は民家の壁に背中を打ち付けた。
チョッパーの肉体による恩恵だけではない。
魔神の斧による会心の一撃により、この戦闘で初めて桃白白にダメージを与える事ができた。


452 : 殺してあげると彼らは言った ◆ytUSxp038U :2021/06/23(水) 15:27:10 nyoSlVvA0
痛みに呻きながらもどうにか立ち上がる。
自分にふざけた真似をした化け物を斬り殺してやると剣を構え直す。
が、今の一撃が余程協力だったのか、月光のナイフは半ば程で刀身が折れていた。

「今度こそもらったぜぇええええええええっ!!」

すかさずバリーが襲い掛かる。
散々自分の体を斬った相手に持ち直す時間を与えてやるつもりは無い。
武器を破壊された今こそがチャンス。
今度こそぶった斬ってやろうと突っ込んだ。

(馬鹿め…!)

対する桃白白に焦りは無い。
剣を破壊されたのは確かに痛手である。
だがそれだけだ。自分まだ生きている、十分戦える。

左手で月光のナイフ以外に支給されたある物を握り締める。
最初にデイバックからそれを見つけた時は、馬鹿にしているのかと主催者に呆れと怒りを抱いた。
まるで子供が暇つぶしに作ったような、ガラクタ同然の人形が複数入っていたのだから。
しかし同封していた説明書によると、これでも立派な武器であると分かった。
この人形の正体は高性能な小型の爆弾。
参加者一人程度、一瞬で吹き飛ばす程の威力がある。
人形の有用性を理解した桃白白はいざという時の為に、服の裏に忍ばせておいた。

桃白白が殺しで使うのは、最も信頼を置く自身の肉体を駆使した武術である。
とはいえ何も他の道具を一切使わないという事は無い。
必要とあればナイフも、銃も、爆弾も使う。
この場でもそれは変わらない。使える物は全て使い勝利する。

いい加減決着を付けようとバリーが斧を振りかぶる。
だが終わらせたいのは桃白白も同じ。

(死ね…!!)

取り出した爆弾をバリー目掛け投擲――





      『CLOCK OVER』





するより早く、桃白白の意識はブツリと途切れた。


453 : 殺してあげると彼らは言った ◆ytUSxp038U :2021/06/23(水) 15:28:06 nyoSlVvA0
「……は?」

訳が分からない。
バリーの脳内は無数のクエスチョンマークで埋め尽くされている。
目の前の光景は殺意に溢れていたバリーの心へ急ブレーキを掛けた。

今の今まで殺し合っていた青年が倒れている。
頭部と胴体が泣き別れし、切断面から溢れる血が地面を赤く汚している。
転がった青年の頭部と目が合う。
その顔に浮かぶのは自身の勝利を信じて疑わない笑み。
きっと彼は自分に何が起きたのかを知る事無く、殺し合いから退場したのだろう。
それこそ最初に提案してきた、余計な苦痛や恐怖を一切感じる事無く。

誰がどう見たって青年は死んでいる。
しかし、これをやったのはバリーでは無い。
確かに首をぶった斬ってやるつもりでいたが、その前にズルリと青年の首が落ちたのだ。
自分で無いなら誰がやったのか。その答えはすぐに分かった。

倒れた青年の背後に、何時の間にか何もかが立っている。
その姿は何と言えば良いのだろうか。
紫色の鎧らしきものに全身を包んだ存在。
鎧と言ってもバリーやアルフォンスが魂を定着させられていた物と違い、どこかスマートな印象のある姿だ。
何より特徴的なのは頭部。
昆虫の尻尾にも似た奇妙なデザインの装飾が施されていた。
右手には一本の剣が握られている。
軍人が使うサーベルや、以前牢から出してやったリンという糸目の青年が持っていた剣とも違う、これまた奇妙な得物。
良く見ると刃から真っ赤な液体が滴り落ちているのが分かる。

成程、あれで青年の首を落としたのかと納得がいき、
そこで翠色の目とバリーの目が合う。

(あっ、やべぇ。こいつやべぇ)

そう思うのとほぼ同時に、バリーは魔神の斧を鎧目掛けて投げつける。
回転しながら自身に向かってくる斧を鎧が避けるのを見る事無く、投擲するや否やバリーは背を向け駆け出していた。
武器を手放してしまう事など些細な問題でしかない。
生きていればもっと使いやすい武器を手に入れる機会は幾らでもあるが、死んだら叶わないのだから。

必死に両脚を動かすがこれでは追いつかれるかもしれないと焦りが浮かぶ。
もっと速く逃げる方法は無いかと必死に模索し、一つ思い付いた。
確かチョッパーは今の巨体と小柄な姿の他にもう一つ変身できるはず。
走る速度は緩めないまま、一か八かとその姿へと変化する。

「うおおおおおおっ!こりゃ速ぇな!!」

四足歩行のトナカイとなったバリーは先程よりも速く走る。
元は人間だった自分がこうして獣の姿で上手く走れるのは、命の懸かった状況故の火事場の馬鹿力が発揮されたのか。
何にせよ今はあの紫鎧から逃げるのが先決だと、ただひたすらに夜の草原を駆け抜けた。


454 : 殺してあげると彼らは言った ◆ytUSxp038U :2021/06/23(水) 15:30:49 nyoSlVvA0
◆◆◆


「へんしん!」

掛け声と同時に姿が変わる。
神代剣という茶髪の青年から、今自分が殺した金髪の青年へ文字通り変身を遂げた。
殺した相手に擬態できるというのはどうやら本当らしい。

「ダメだダメだ!もっと大勢殺さなきゃ…!」

『へんしん』のレパートリーが一つ増えた程度で、メタモンは喜びはしなかった。
多くの生物に姿を変える事ができた元の体に比べれば雲泥の差がある。
だからこそ、自分以外の参加者全てを殺すと決意したのだ。
それなのに殺せたのは一人だけ。
もう一体の人でもポケモンでもない生物には逃げられてしまった。

(クロックアップ、だっけ。確かに便利だけど……)

ワームの固有能力、そしてマスクドライダーシステムに搭載された機能。
それを発動した時はでんこうせっか以上の速度で動く事ができた。
非常に強力だが問題もある。
サソードに変身し続けてライダーフォームに変身、クロックアップを使い金髪の青年を斬り殺した。
これはポケモンバトルではなくルール無用のバトルロワイアル。不意打ちにも躊躇は無かった。

青年を仕留めると続けてもう一体も殺そうとしたのだが、クロックアップが勝手に解除されてしまった。
更にに逃げた毛むくじゃらの生物を追おうにも、何故かクロックアップが発動せず困惑し、あっという間に逃げられた。
まさかこのまま永久に使えなくなったのでは無いだろうが、連続での使用は制限されているようだ。
恐らくはワームに変身した際にも同様の制限が課せられるだろう。

(…まぁいいや。便利だって事には変わりないんだ。それに早い段階で制限に気付けたのは良い事だよね)

逃げられた悔しさは残っているが、いつまでも引き摺っているのも良くない。
強引に思考を切り替え、放送の後で確認した名簿の中身を思い出す。
載っている名で知っているものは一つ。ゴーストタイプのポケモン、ゲンガー。
尤も、参加しているのが自分と顔見知りのゲンガーとは限らないのだが。

「せめて苦しまずに殺してあげるよ、ゲンガー君。同じポケモンのよしみで、ね…」

神代剣の姿に戻ると、会場のどこかにいるポケモンへ殺意を向ける。
その顔は見た者に怖気を走らせる程醜悪なものであった。


【桃白白@ドラゴンボール 死亡】


【B-5 草原/深夜】

【バリー・ザ・チョッパー@鋼の錬金術師】
[身体]:トニートニー・チョッパー@ONE PIECE
[状態]:疲労(大)、全身に切り傷、獣型
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、神楽の番傘(残弾100%)@銀魂、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本方針:存分に殺しを楽しむ
1:今はとにかく逃げる
2:使い慣れた得物が欲しい
[備考]
・参戦時期は、自分の肉体に血印を破壊された後


【C-5 村/深夜】

【メタモン@ポケットモンスターシリーズ】
[身体]:神代剣@仮面ライダーカブト
[状態]:健康
[装備]:サソードヤイバー&サソードゼクター@仮面ライダーカブト
[道具]:基本支給品×2、ジャスタウェイ×3@銀魂、魔神の斧@ドラゴンクエストシリーズ、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:参加者を殺して、変身できる姿を増やす
1:ゲンガーを見つけたら苦しめずに殺してやる
[備考]
制限によりワームの擬態能力は直接殺した相手にしか作用しません
クロックアップの持続時間が通常より短くなっています。また再使用には数分の時間を置く必要があります
現在リンクに変身可能です

【神楽の番傘@銀魂】
神楽が日除けに使っている傘。
弾丸を弾きコンクリートも粉砕する程に頑強である。
銃を仕込んでおり柄の先端からマシンガンのように発射が可能。

【ジャスタウェイ@銀魂】
ジャスタウェイとは、ジャスタウェイである。それ以上でもそれ以下でも、それ以外の何物でもない。
その実態は高度にユニット化され、組み立てが簡便かつ携行も容易な小型高威力の対人・対物殺傷・破壊用爆薬。
外見は子どもが適当に工作したような気の抜ける顔の人形らしき物体。


455 : ◆ytUSxp038U :2021/06/23(水) 15:31:57 nyoSlVvA0
投下終了です


456 : ◆vV5.jnbCYw :2021/06/23(水) 17:13:21 /MJkT3n.0
投下乙です。
別の体を使っての戦いと言う、極めて異常なシチュエーションがフルに伝わってきました!
殺人鬼と殺し屋の戦いは互いの性格や武器を活かしていて見ごたえがありました。
しかしメタモンやべえ!犯罪者以上にサイコしてるポケモンとかもうやだこんなとこ。


457 : ◆ytUSxp038U :2021/06/24(木) 00:28:05 TxbS3WbE0
感想ありがとうございます
ヴァニラ・アイスを予約します


458 : ◆ytUSxp038U :2021/06/25(金) 23:06:59 Ejwwmfx20
投下します


459 : 待っててDIO様!キュアヴァニラ爆誕!? ◆ytUSxp038U :2021/06/25(金) 23:08:37 Ejwwmfx20
「ボンドルドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!」

火山の噴火。
ヴァニラ・アイスの状態を表すとしたら、その言葉が相応しいだろう。

己の内から湧き上がる怒りのまま、目に付く物を手当たり次第に破壊する。
拳を振るえば壁が吹き飛び、地団太を踏むと床が砕け散る。
それらの破壊行為を中学生程の少女が行っているのは、何とも異様な光景だった。
本来ならば活発で皆に好かれそうな少女の顔は、悪魔も裸足で逃げ出しそうな程に怒りで歪んでいる。

何故こうなったかを説明するには、少し時間を遡らなければならない。

立神あおいという少女のプロフィールを読んだヴァニラは、早速プリキュアとやらの力を試してみる事にした。
伝説のパティシエだの笑顔を届けるスイーツだのの説明文は、ヴァニラからすれば下らないの一言でしかない。
しかし、常人を超えた戦闘力を手に入れられるというのが事実ならばプリキュアに変身する価値は大いにある。
優勝し主の元へ戻る為には、スタンドだけでなく使える物は全て利用し勝ち残る必要があるのだから。

変身するには専用のアイテムを用いるらしく、デイバックの中を確認する。
出て来たのは派手な装飾のコンパクト。
更に変身の際には特別な詠唱まで行わなければならないとのこと。

(本当にこんな物で力を得られるのか…?)

どう見ても子供が遊ぶような玩具と、ふざけているとしか思えない詠唱。
何の力無い小娘の体を寄越した訳では無いだろうと考えていたヴァニラも、これには少々疑わしく思う。
これで何の成果も得られなければとんだ時間の無駄だが、本当に力を得られるなら大きな収穫だ。
とにもかくにも試してみなくては始まらない。

プロフィールにはご丁寧に唱える言葉まで記載されていた。
それらを覚えると、スイーツパクトを開く。



「キュアアラモード・デコレーション!アイス!」

結んでいたリボンが弾け、ボリュームのある髪の毛が靡いた。
同時にライオンをイメージしたアイスの形の結晶、アニマルスイーツを手に取り、スイーツパクトにはめ込む。
すると手には瞬時に小さなスティックが現れた。

「自由と、情熱を!レッツ・ラ・まぜまぜ!」

パクトの中にある星型のボタンを二つとも押す。
ボウルのような部分から溢れた光を、先ほどのスティックでまぜる。
さながらパティシエがクリームをまぜるかのように。

まぜて出来上がった光はボウルから溢れ出し、軌道を描いてこちらに戻って来る。
少女の体を包んだ光は、一瞬でその姿を変化させた。

アイスクリームを模したバルーン状のスカート。
ファーの付いた青い皮のジャケット。
仕上げとばかりにスティックをで星の形を作り、グローブとブーツを身に着ける。
髪はライオンの鬣のように更にボリュームあるものとなり、ピョコンと耳が飛び出た。
頭部には百獣の王の証である王冠が、小さいながらも金色の輝きを放つ。

「キュアジェラート!できあがり!」

青い尻尾を振るい堂々と宣言する。
精神は違えど、立神あおいが変身する戦士、キュアジェラートの姿がそこにあった。


460 : 待っててDIO様!キュアヴァニラ爆誕!? ◆ytUSxp038U :2021/06/25(金) 23:09:54 Ejwwmfx20
「……嘘では無かったようだな」

冷静に己の状態を確認するヴァニラ。
もしプリキュアの情報が出鱈目だったら怒りでスイーツパクトを粉微塵にしていたが、それをせずには済んだようだ。
どう考えても戦闘に赴く服装では無いが、これがただの仮装で無い事はヴァニラにも分かる。
プリキュアに変身した途端、体が妙に軽くなった気がずっとしているのだ。

(試してみるか)

どうやらヴァニラがいる場所は監獄のようであり、囚人を閉じ込めておく牢が通路の奥まで続いている。
握り拳を作り、傍に会った扉に叩きつける。
囚人の脱走を防ぐための頑丈な扉が、たった一撃で吹き飛んだ。
扉の真ん中には拳の形に凹みができている。
続いて軽く助走を付け走り出すと、あっという間に通路の最奥まで到着した。
ただの少女には不可能な所業。
月並みな喩えだが、これは確かに超人と呼ぶに相応しい身体能力。

「フン、使い物にはなるようだな」

主の手で吸血鬼へと生まれ変わった元の肉体が至上なのは言うまでも無い。
しかしこの肉体の有用性は認めざるを得ない。
ならばプリキュアの力は優勝する為に、存分に使ってやるのみ。
体の元の持ち主が、何の為にプリキュアとして戦っていたかなどヴァニラにはどうでもいい事だった。

奇妙なチャイムが鳴り響いたのはその直後のこと。
ボンドルドと名乗る男が語る追加事項が流れ出す。

重要なのは前半の内容、次の放送後に指定される禁止エリア、それにコンパスと名簿の入手。
後半の内容は恐らく殺し合いを開いた目的に関係する事だろうが、ヴァニラにとって重要なのは一刻も早く帰還することのみ。
主催者達の思惑など知った事では無い。

(ジョースターどもがいれば都合が良いのだがな…)

主に楯突く連中も参加しているのなら、この機会に纏めて始末できる。
特にポルナレフ。あの男だけはこの手で確実に殺さねばならない。
一抹の期待を抱きながら、名簿を手に取る。
他人の体に魂を移し替えるだけでなく、物体の転移も可能なスタンドの持ち主が主催者側にいるらしい。
自分の知らない強力なスタンド使いの存在にほんのちょっぴり気を取られつつ名簿を開き――一直後思考が塗り替えられた。

「なん……だと……!?」

限界まで見開かれた視線の先にあるのは、今この瞬間も彼を支配する三文字。
『DIO』。
唯一にして絶対の、主の名が記されていた。

名簿に載っているということはつまり、DIOもまた殺し合いに参加している事に他ならない。
その事実を認識した瞬間、抑えきれない、抑える気も無い激情にヴァニラは駆られた。
後は冒頭の通りである。

「ふざけるなよタンカスがっ!DIO様をこんなゴミにも劣る児戯に巻き込んだ罪、決して許さんぞ!!」

生き返らせた事には感謝してやっても良いと言ったが、前言撤回。
ボンドルド達はこの世で最も罪深い行為に手を染めた。
DIOが参加者としてこの地にいるのなら、自分と同じ状態になっているのは間違いない。
即ち、飼い犬のような首輪を填められ、本来の肉体を奪われた挙句どこの馬の骨とも分からぬ塵芥の肉体に魂を閉じ込められている。
主が今もどこかでそんな屈辱を味わっているなど、ヴァニラにとっては我が身を引き裂く以上の思いだった。

主催者達が強力なスタンド、若しくはそれに類する何らかの力を手にしている事は認めよう。
だが、たったそれだけでDIOを追い越した気でいるのなら、勘違いも甚だしい。
この世界を支配する者とされる者で二分するならば、前者はDIOただ一人、後者は自分を含めた全てである。
殺し合いをしろと命令するのも、他者へ首輪を填めて駒のように扱って良いのはDIOのみ。
世界の頂点に君臨するたった一人の主にのみ許された権利を、連中はさも自分達のものだと言わんばかりに奪った。
許さない、許して良い訳が無い。
主をコケにした代償、奴らの死を以て支払わせてやると硬く決意した。


461 : 待っててDIO様!キュアヴァニラ爆誕!? ◆ytUSxp038U :2021/06/25(金) 23:10:50 Ejwwmfx20
「DIO様…」

崇拝する主に思いを馳せる。
肉体が別人と化してもクリームを出せたのと同じく、DIOも体が変わってもスタンドは使えるだろう。
だからといって安心などできるはずが無い。
今のDIOはどんな奴の体になっているのか全く見当もつかない。
プリキュアのように特殊な力を持った人間ならまだしも、骨と皮だけの小汚い浮浪者の体になっている可能性も否定できないのだから。
例えどんな状況だろうと、DIOならば必ず最後に勝利を手にするとヴァニラは自信を持って言える。
しかしだ、他人の体で戦うという特殊な状況下では万一の事が起きないとも限らない。
故に一刻も早くDIOの元へ馳せ参じる必要がある。

ヴァニラが懸念する事はもう一つある。
それは“DIOの体には別の参加者が入っている”、という可能性。
DIOの体に入っている者が殺し合いにおいてどんなスタンスかなどどうだっていい。
主催者に反抗しようが、嬉々として殺し合いに乗っていようが関係ない。
尻を拭き終えたちり紙以下のゴミクズが、我が物顔でDIOの体を操っている。
それだけで主催者同様生かしてはおけない。
しかし如何に中身が別人だとしても、体は紛れも無く主のもの。
怒りに任せて攻撃するなど決してあってはならない。

「ならば立神あおい、貴様の力の出番と言う訳か」

現在変身中のキュアジェラートは、DIOの館の番鳥であったペット・ショップと同じく氷を操る技を持つ。
その力を使い、DIOの体を発見したなら即座に氷漬けにして余計な傷を負わせず身動きを封じる。
後はデイパックの奥底に仕舞いっておく。

「こんなモノまで出て来たんだ。参加者一人を入れるくらい問題無いだろう」

チラリと見る先にあるのは、明らかにデイバックのサイズとは不釣り合いな重火器。
スイーツパクト以外に支給された物品だった。
どんな仕掛けかは不明だがこんな大きさの物が入るならば、人間一人くらい余裕で入るはず。
氷漬けにするというのでもDIOの体に攻撃する事に変わりは無く、こんな方法を取るなどヴァニラ自身許せない。
だが今は他にマシな手段が思い付かない以上、こうするしかない。
DIOの体で好き勝手に暴れるゴミをのさばらせておく方がヴァニラにとっては耐え難いのだから。

DIOとの合流を目指しつつ、道中邪魔な参加者は全て始末する。
殺し合いを止めるなどど生っチョロい戯言を抜かす輩は勿論、
【どんな願いでも叶えられる権利】という甘言に釣られ優勝を目指す、野良犬の糞に集る小蝿の如き連中も生かす価値無し。
但し首輪の解除が可能な人材、こればかりは別だ。
最終的にボンドルド達を殺す為には、奴らが付けた枷を外さなくては意味が無い。
それが可能な参加者を見つけたら慎重に吟味し、殺すかDIOの元へ連れて行くかを決める。
何の役にも立たないカスをDIOの視界に入れるなどそれだけで不敬の極み、真にDIOに会わせるだけの価値があるかどうかの判断は自分に掛かっている。

「そして空条承太郎……貴様がDIO様に辿り着く事は断じて有りはしない。私が確実に殺してやる」

寄生虫のようにDIOにへばりつく忌々しいジョースターの血族。
承太郎も参加しているのならまたとない好機。
他の連中はいないようだが、殺し合いから帰還次第すぐに承太郎の後を追わせてやる。

みんなの笑顔を守る為に戦った伝説のパティシエ。
その力が今、ただ一人に勝利を捧げる為の暴力として、この地に惨劇を引き起こそうとしていた。


【B-1 網走監獄/深夜】

【ヴァニラ・アイス@ジョジョの奇妙な冒険】
[身体]:立神あおい@キラキラ☆プリキュアアラモード
[状態]:健康、キュアジェラートに変身中
[装備]:スイーツパクト&変身アニマルスイーツ(ライオンアイス)@キラキラ☆プリキュアアラモード
[道具]:基本支給品、回転式機関砲(ガトリングガン)@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-
[思考・状況]
基本方針:DIO様以外の参加者を殺す
1:DIO様の元に馳せ参じ指示を仰ぐ
2:自分以外の参加者を殺す。但し、首輪を解除できる者については保留
3:DIO様の体を発見したらプリキュアの力を使い確保する
4:空条承太郎は確実に仕留める
[備考]
・死亡後から参戦です。

【回転式機関砲(ガトリングガン)@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-】
甲鉄艦(ストンウォール)、元込式施条砲(アームストロング砲)と並ぶ幕末三大兵器の一つ。
車輪が二つ付いた、武田観柳が愛してやまない兵器。

【網走監獄@ゴールデンカムイ】
北海道の東都、網走に明治23年に建てられた日本最北端の牢獄。
徒刑・流刑、懲役12年以上となった重犯罪者を収監する日本一か国で厳重な監獄と言われている。


462 : ◆ytUSxp038U :2021/06/25(金) 23:11:41 Ejwwmfx20
投下終了です


463 : 名無しさん :2021/06/28(月) 13:00:34 hxHyrARA0
乙です
変身前の口上激しく笑わせていただきました
中身はひたすらむさ苦しい男なんだよなー
優れた能力を持っているのに中身は残念なDIO狂信者な彼の特色がよく伝わりました
ドス黒い敵意がないまぜになった戦略性ある分析も読み応えあり色々期待できそうです


464 : ◆ytUSxp038U :2021/06/30(水) 11:01:45 atb0LZSM0
感想ありがとうございます
悲鳴嶼行冥、胡蝶しのぶを予約します


465 : 名無しさん :2021/06/30(水) 15:33:18 16uYS.e.0
チェンジロワ、鬼滅勢が名簿を見ての反応が実に楽しみ


466 : ◆ytUSxp038U :2021/07/05(月) 00:54:31 RKu3SSDg0
投下します


467 : もう道は選べない ◆ytUSxp038U :2021/07/05(月) 00:57:19 RKu3SSDg0
不愉快。
放送を聞き終えた悲鳴嶼に宿る感情はその一言に尽きた。
見るとしのぶも同様の思いなのだろう。
正面に居る異国の少女は、育ちの良さを窺える可憐な顔を顰め宙を睨みつけている。

「ぼんどるど……いえ、ボンドルド。あの男が殺し合いの首謀者ですか…」
「うむ、奴の口振りからして他にも仲間がいるのは間違いないだろうがな」

放送をした男、ボンドルドの声はとても穏やかなものだった。
まるで泣きじゃくる乳児をあやす親のような。
道に迷った子の手を取り導く善人のような。
殺し合いの首謀者という立場とは、余りにも噛み合わない声色の持ち主。
何よりボンドルドの声は酷く似ている。
鬼殺隊の頂点、産屋敷耀哉と全く同じと言っていい程にそっくりだった。

それが二人には酷く気に入らない。
自分達がお館様と呼び慕う男は、鬼殺隊の隊士達を我が子のように思い、慈しむ心の持ち主。
何度柱の者達が彼の存在により救われたか。
既にこの世を去った今でも彼への忠義と恩義は無くしていない。
そんな人と同じ声で殺し合いを強要されたのだ、不快に感じるのは当然と言える。

「…奴への怒りは直接相対した時にぶつけるとして、まずは名簿とやらを確認するのが先だな」
「…ですね」

ボンドルドは放送のみで姿を見せず、今どこにいるかも不明。
ここで怒り喚き散らしても、それはただ無駄に時間を消費するだけ。
いずれ倒す為にもまずは頭を落ち着け、情報を整理する必要がある。
悲鳴嶼の提案にしのぶも異論は無く、デイパックの中を確認する。
先程までは影も形も見当たらなかった名簿が存在しているのには少し驚いたが、他人の体と入れ替える術を使うのだから他に何か力を持っていても不思議では無いとあっさり受け入れた。

(これは……)

名簿を見た悲鳴嶼は早速奇妙な感覚に陥った。
殺し合いに連れて来られる以前は盲目であり、当然文字など見る事は不可能だった。
それがどうだ、今は目に入る文字全てを正しく認識できる。
まるでずっと前から文字を当たり前のように見、学んできたかのように、並んでいる名前を読むことができるのだ。
これも別人の体になった影響か、それとも首謀者どもが何か得体の知れない細工を自身に施したとでも言うのか。
何とも言えない気持ち悪さが悲鳴嶼を襲うが、そんな不快感はとある名を発見した途端に吹き飛んだ。


468 : もう道は選べない ◆ytUSxp038U :2021/07/05(月) 00:58:27 RKu3SSDg0
「なに…!?」
「そんな……!?」

知っている名は4つ。
我妻善逸、煉獄杏寿郎、産屋敷耀哉、そして鬼舞辻無惨。

この内善逸はまだ良い。
悲鳴嶼としのぶ、それぞれの異なる時間軸においてあの少年は存命だった。
自分達以外に鬼殺隊の仲間が巻き込まれているのは良い事とは言えないが、上弦との戦いを経験し柱稽古にも参加した彼ならば、そこいらの鬼程度は軽くあしらえるはず。
それはそれとしてなるべく早めに合流しておきたい所だが。

だが煉獄と耀哉、何故既にこの世を去っているはずの二人の名があるのか。
前者は上弦の参との戦いで命を落とし、後者は無惨を巻き込み文字通りその身を散らした。
どちらも生きているはずが無い。
尤も、死者が参加していると言うのならそれは悲鳴嶼にも当て嵌まること。
指一本動かす力も出せず、己の生命が終わる瞬間を確かに実感した。
あの時救えなかった子供たちが迎えに来てくれたのは、絶対に幻などでは無いと言い切れる。
つまり煉獄達も自分のようにあの世から引き戻された、或いはまだ生きている頃の時間軸から連れて来られたという事になる。
どちらにせよ悲鳴嶼達にとっては許し難い。

(ボンドルド…お前はどこまで…!!)

煉獄がどんな想いで最後まで己の使命を全うしたのか、
耀哉がどんな想いで妻子諸共自爆し、無惨討伐を鬼殺隊に託したのか、
それをロクに知りもせず彼らの命を都合の良い駒として利用する。
若しくは知って尚も躊躇なく煉獄達を殺し合いなぞに巻き込んだ。
彼らの死を、戦いを、生きた証を踏み躙る所業に、悲鳴嶼は血管が浮き出る程に拳を強く握り締めた。

(それに鬼舞辻無惨、奴もいるのか…)

死闘の末に討伐した鬼殺隊の怨敵。
ボンドルドにとっては無惨すらも目的の為の駒でしかないらしい。
再びあの怪物と戦わなければならない事に自然と顔が強張る。
そして同時に、別の問題も発生する。

「…悲鳴嶼さん。無惨もここにいるという事は、私たちのように別の誰かの体になっているんでしょうか?」
「ああ。奴も参加者としてこの地にいる以上、それは間違いないだろう」
「……少し、厄介な事になりますね」

無惨の魂が別人の体に入っているならば、鬼の肉体で発揮できた桁外れな力は発揮できないだろう。
問題は、誰の体に入っているのかが現時点では全く分からないこと。
仮に配下の鬼の体だとすれば一切躊躇せず頸を斬れる。
もしも無惨が悲鳴嶼の体に入っていたとしても、その時は悲鳴嶼自身が好機と見て斬りに行く。
殺し合いが無ければ死者としてこの世を去っていた身、無惨を殺せるなら自分の体くらい惜しくは無い。
だが、鬼や鬼殺隊とは一切関係の無い人間の体だったならどうだ。
幾ら精神が無惨とは言っても、何の罪も無い無辜の民の頸を斬り落とすなど言語道断。
鬼殺隊としてそんな事は決してあってはならない。

「何にせよ、まずはお館様や煉獄達を探す事から始めるぞ」
「はい。会場を歩いていれば必然的に無惨とも遭遇するはずでしょうし」

殺し合いの舞台にいる以上、無惨は自分達から逃げ切る事は不可能。
加えてこの地は一定時間が経過する毎に立ち入り禁止区が追加されていく仕組みになっている。
無惨がどれだけ生きる事に固執した生物であろうと、限界は必ず訪れる。

無惨の追跡と並行し鬼殺隊の者らを捜索する。
特に優先すべきは、やはり耀哉だろう。
戦い慣れている善逸と煉獄ならば体が変わろうと大抵の事態は切り抜けられるはず。
しかし耀哉は違う。
病魔に侵されていたいた彼は素振りをしただけで膝を着く程であり、末期には体を起こす事ですら他人の手を借りねばならぬくらいに弱っていた。
たとえ健常な肉体の持ち主の体を与えられていたとしても、悪意を持った参加者に襲われた時にどこまで対応できるのか不安がある。
何より、あの時は無惨を倒す為の一手としてああいう方法しか無かったとはいえ、二度も彼に死んで欲しくない。
悲鳴嶼としのぶ、共通の想いだった。


469 : もう道は選べない ◆ytUSxp038U :2021/07/05(月) 01:00:05 RKu3SSDg0
「悲鳴嶼さん、出発の前に少しだけお時間を頂けます?やっておきたい事があるので」
「…医療品の入手か?」
「はい。この先使う機会は多いでしょうし、準備しておいて損は無いかと」

最初にこの建物に飛び込んだ時は何の施設かを確認する余裕など無かったが、落ち着いて見回すと病院である事が分かった。
それならばここで包帯や消毒液、その他必要と思われる物資を確保しておくべきと判断した。
自分達だけでなく、仲間や他の殺し合いに反対する参加者が負傷していたら、即座に治療に移れるよう医療品は必要不可欠である。

「分かった。一人で大丈夫か…とは愚問か」
「ええ。この娘、とっても強いみたいですから」
「ならば私の方も使えそうな物が無いか探しておく」
「では集め終えたら、またこの部屋に戻って来ましょう」

そう言って部屋を出て行くしのぶを見送ると、悲鳴嶼も別方向を探索する。
医学の知識があるしのぶと違い、自分では薬の正確な種類など判断できない。
付いて行っても足を引っ張るだけだと考えての、別行動だった。

ジャラリ、と装備した武器が鈍い音を出す。
自身もしのぶも本来の得物である日輪刀は支給されなかった。
だが代わりを果たせる物は手に入れられた。
分厚い刃の包丁らしき物を頑丈な鎖を巻き付けた。
自身の日輪刀に多少近い形状となったので、ある程度はこれまでと変わらぬ戦い方ができるだろう。

(とはいえ、この体でどこまで本来のように戦えるか……)

体の持ち主の詳細は放送前に確認した。
悲鳴嶼の精神が入っている体の持ち主の名は坂田銀時と言う人間。
万屋…所謂何でも屋を営んでいるが、家賃を滞納したり糖尿病持ちだったりとだらしない私生活を送っている男。
しかし仲間を生かす為に自らの手を汚した過去を持ち、己の侍魂に従って守りたいものを守る生き様は悲鳴嶼からしても一人の戦士として尊敬に値する。
刀を主武装とする銀時の体は、剣術を得意とする鬼殺隊の隊士と相性が良い。…但し、悲鳴嶼だけは少々違う。
悲鳴嶼が使う日輪刀は鎖で繋がれた斧と鉄球という、数ある日輪刀の中でも非常に特異な形状をしている。
鉄球を豪快に振り回す戦法(スタイル)は銀時の体に馴染んでおらず、恐らくは元の体に比べると技の精度の低下は免れない。

(それにいずれ元の持ち主に体を返す以上、余計な傷を付ける訳にはいかん)

これが自分の体ならば腕がもげようと戦い続けるが、他人の体でそんな無茶はできない。
名簿を見る限りどうやら殺し合いには銀時も参加しているらしく、説明書の記載通りの人物ならば心強い仲間となってくれるだろう。
が、そこで自分が体を酷使して欠損だらけとなっていたらどうなるか。
幾らなんでも自分の体をそんな粗末に扱われて、良い感情を抱けるはずも無い。

慣れぬ体で傷が付かないように気を使いながら戦う。
何ともやり辛いが悲鳴嶼自身、銀時の体をボロ雑巾のように変えてしまっては申し訳が立たない。
直接会ってはいないが、無事に体を返し仲間の元へと戻って欲しいと思いを馳せた。

「……」

ふと、考えるのは薬の入手に向かった仲間のこと。
無惨を倒した事を聞かされたしのぶが内心で何を思ったのか、悲鳴嶼は薄々と勘付いていた。
幼少の頃より彼女を知っているのだ。何を考えているかの予想は何となく分かる。
恐らくしのぶは何としても生きて帰ろうとするだろう。
無惨との戦いに鬼殺隊が勝利する。
その結末を変えない為に、元の世界で上弦の弐に喰われ死ななければならないから。

悲鳴嶼とてその考えは十分理解できる。
もしもしのぶが殺し合いで死んでしまったら、彼女が来た世界での鬼との戦いはどうなるか。
例えばだが無限城での死闘で上弦の弐が倒される事無く、悲鳴嶼達が倒した上弦の壱の加勢に来たとしたら?
四人掛かりで、玄弥と時透の犠牲を経てようやく倒せたあの場にもう一体上弦が現れるなど悪夢としか言いようが無い。
下手をすれば悲鳴嶼と不死川も無惨に辿り着く事無く殺されるかもしれない。
たった一つボタンの掛け違いが起こるだけで、鬼殺隊の勝利は無に還されるかもしれないのだ。
ならば、しのぶが死ぬ為に元の世界に帰ろうとするのは間違っていないのだろう。

「……」

それでも。
間違っていないと理解して尚も、悲鳴嶼は悲しみを抱かずにはいられない。
姉の仇を討つ。
ただそれだけを胸に生きて来た彼女を止める権利など、誰にも無い事くらい分かっている。
今更生き急ぐな等と言うのは、しのぶの覚悟を否定する行為でしかない。
そう分かっていても、

「――しのぶ」

幼い姿のしのぶが目の前にいるような。
今にも泣き出しそうな少女が自分を見上げているような。
柱合会議の後で、ほんの一瞬だけ感じたしのぶの姿が、今でも心に深く刻まれていた。


470 : もう道は選べない ◆ytUSxp038U :2021/07/05(月) 01:03:35 RKu3SSDg0
◆◇◆


「こんな所ですかね」

今後必要となるだろう医療品をデイパックに詰め、しのぶは一息つく。
治療に使うとはいえ余り多く持っていけばかさばる為必要最小限に、と当初は思っていたがその問題はあっさり解決した。
主催者によって配られた支給品袋は、実に不思議な事にどれだけ物を入れても重みを一切感じない。
どんな仕掛けになっているかは不明だが、物資の持ち運びに困らないのならしのぶにとって都合が良かった。

(まぁ、だからと言って全部持っていく気は無いですけど)

病院内には未だ手つかずの薬や包帯が残っている。
ここにある物を根こそぎ回収してしまえば、今後病院に立ち寄った参加者が治療できない事態となってしまう。
故に必要な分だけを取り、残りはこのままにしておいたのだった。

改めて病院内を見回したしのぶから、感嘆のため息が漏れた。
内部は隅々まで清掃が行き届いており、白一色の内装も併せて非常に清潔な場所に感じられた。
しのぶ自身が運営する蝶屋敷だって、当然常日頃から清潔を心掛けている。
しかしこの場所は、それを凌駕する程に徹底しているようだ。
驚いたのはそれだけでは無い。
診察室にあった医療器具は、しのぶの知識にある物を遥かに超える高性能な代物ばかり。
都会にある最高峰の病院でもここまでの設備は有り得ない。
凄い、を通り越して、異常だとすら感じられる程である。

(それにこの体も…)

現在しのぶの精神が入っている体の名はアリーナ。
サントハイムと言う王国の姫君。
聞き覚えの無い異国の、それも王族の少女の体であると知った時には流石に驚いた。
姫という肩書だが城内で大人しく過ごしているような人物ではなく、むしろその反対。
城を脱け出して自ら冒険に行く、『おてんば』という言葉がピッタリの人物なのだとか。
おまけにこのアリーナ姫、武術大会で優勝を掻っ攫う腕っ節を誇るらしいのだから、ここまで破天荒な御方となれば笑うしかない。
しのぶにとって問題なのは、経歴に偽り無くアリーナは武術を得意とした人物であることだ。
刀で突く攻撃を主体とした蟲の呼吸との相性は、言うまでも無く最悪。
支給品には刀があったが、アリーナの体では自身の技の真価を発揮するのはまず不可能だろう。
恐らくもう一つ支給されていた刃の付いた籠手らしき武器の方が、アリーナとは相性が良い。
尤も、体を動かす精神が自分では宝の持ち腐れだろうと、しのぶは自嘲気味に思う。

そして改めて、殺し合いで最も異常な存在へ考えが向く。

「ボンドルド…」

あの男は何者なのだろうか。
あの男が所属している主催者達とは如何なる集団なのだろうか。
他者と肉体を入れ替え、異なる時間・世界から自分達を連れ出し、未知の設備が備えられた施設を配置する。
何よりも、死者の蘇生すら造作ない。
耀哉も煉獄も、そして少し先の未来では悲鳴嶼も死んでいる。
前者二人はひょっとしたら死亡する以前の時間から参加している可能性もあるが、悲鳴嶼からは確かに自分は死んだと聞かされた。
それに自分達は最初に集められた空間で、首輪を爆破された人間が生き返る様をハッキリと目撃している。
ボンドルド達は明らかに無惨を遥かに超える力の持ち主だ。


471 : もう道は選べない ◆ytUSxp038U :2021/07/05(月) 01:05:22 RKu3SSDg0
「……」

死者の蘇生。
その言葉に引き摺られるように思い出すのは、最愛の家族。
鬼に殺された両親と姉も、主催者の力を以てすれば生前と変わらぬ姿をもう一度見る事ができるのかもしれない。

馬鹿な事を、と自身の考えを即座に否定する。
仲間や罪の無い人々を殺して得た奇跡に何の意味がある。自分の剣は人を苦しめる鬼を殺す為のもの。
たとえ本来の体でなく、日輪刀が手元に無いとしても鬼殺隊である事に変わりは無い。
一瞬でも下らない事を考えてしまうとは、殺し合い想定外の事態に少なからず動揺していたのだろう。
柱にあるまじき失態に、これでは駄目だと強引に思考を切り替える。

(そういえば、あの男もいるのかしら……)

無惨がいるならば、配下の鬼も同じく参加しているのかもしれない。
であれば、姉の仇である上弦の弐がこの地で暴れ回っている可能性もある。
しのぶは上弦の弐の名前を知らない。
だから名簿を見ても本当にいるのかどうかは分からず、仮にいたとしても今は別人の肉体に入っている。
これでは姉が死の間際に伝えた特徴も意味が無い。
とはいえ絶対に参加していると決まった訳では無いので、この考えは杞憂で終わるのかもしれないが。

(……どちらにせよ、殺し合いを止め、生きて帰る方針に変わりはありませんね)

悲鳴嶼が来た世界のように、自分の世界も無惨の死という結末で戦いを終わらせる。
それには生還し、当初の予定通り上弦の弐に自身を喰らわせ殺さなくてはならない。
もし自分が殺し合いで死んでしまったら、悪い方向に戦いが狂い、無惨の勝利という最悪の結果になってしまうかもしれない。
加えて、しのぶが殺し合いで死ねばアリーナ姫はどうなるのか。
名簿に名は載っておらず今どこにいるのか見当もつかないが、もし生きているのならば無事なままの体を返してあげたいと思う。
そう遠くない内に鬼に喰われて死ぬ自分とは違いアリーナには未来がある。
アリーナの人生をこんなふざけた催しのせいで失わせない為にも、しのぶは死ぬ訳にはいかない。

「……」

ふと考えるのは、この場で再会した仲間のこと。
彼が元いた世界で死んだのならば、自分の世界の彼も同じく無惨と戦い死んでしまうのだろう。
悲鳴嶼の死因に繋がったのは無惨の攻撃もあるが、上弦の壱との戦いで痣を発現させた事による代償と聞いた。
その行動を間違っているとは思わない。
むしろ上弦の壱という強敵相手に、出し惜しみするという愚行を犯す方が大間違いだ。
無惨との戦いは全員が死を覚悟して臨んだこと。
だからきっと、悲鳴嶼は己の選択を後悔などしていないはず。

(――悲鳴嶼さん)

それでも。
後悔していないと思って尚も、しのぶは悲しまずにはいられない。

両親を殺した鬼から助けてくれた力強い背中。
カナエと二人で何度も鬼殺隊に入れてくれるよう頼み続け、やっと認めてくれた時の嬉しさ。
柱合会議の後で、いつかの時のように名前を呼んでくれた彼が、この世を去るのだと思うと。
どうしようもなく胸が締め付けられた。


472 : もう道は選べない ◆ytUSxp038U :2021/07/05(月) 01:06:06 RKu3SSDg0
【D-2と3の境界 聖都大学附属病院/深夜】

【悲鳴嶼行冥@鬼滅の刃】
[身体]:坂田銀時@銀魂
[状態]:健康
[装備]:海楼石の鎖@ONE PIECE、バリーの肉切り包丁@鋼の錬金術師
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本方針:主催者の打倒
1:しのぶと共に鬼殺隊の仲間を探す。(最優先はお館様)
2:無惨を要警戒。倒したいが、まず誰の体に入っているかを確かめる
[備考]
・参戦時期は死亡後。
・海楼石の鎖に肉切り包丁を巻き付けています。


【胡蝶しのぶ@鬼滅の刃】
[身体]:アリーナ@ドラゴンクエストIV
[状態]:健康
[装備]:時雨@ONE PIECE
[道具]:基本支給品、鉄の爪@ドラゴンクエストIV、病院で集めた薬や包帯や消毒液
[思考・状況]
基本方針:殺し合いを止め、元の世界に帰る
1:悲鳴嶼さんと一緒に鬼殺隊の仲間を探す。(最優先はお館様)
2:無惨を要警戒。倒したいが、まず誰の体に入っているかを確かめる
3:もしも上弦の弐がいたら……
[備考]
・参戦時期は、無限城に落とされた直後。

【海楼石の鎖@ONE PIECE】
偉大なる航路の一部で産出される鉱石を鎖状に加工した物。
海と同じエネルギーを発しており、悪魔の実の能力者がこの石に触れると海に落ちた状態と同じに陥り、能力が使えなくなる。
またダイヤモンド並の硬度があり、破壊は困難。

【バリーの肉切り包丁@鋼の錬金術師】
バリー・ザ・チョッパーが愛用している得物。
分厚い刃で人体も容易く斬れる。

【時雨@ONE PIECE】
海軍のたしぎが持つ業物の刀。

【鉄の爪@ドラゴンクエストIV】
鉄で鋳造された爪型の武具。武道家のキャラクターが装備する。
籠手の手の甲の先に鉄製の長い爪が付いており、これで相手を斬り裂いたり、刺突したりして攻撃する。

【聖都大学附属病院@仮面ライダーエグゼイド】
鏡灰馬が病院長を務める大型総合病院。
地下深くにはゲーム病患者に処置を施す為の特別エリア、CRが設けられている。
CRにはドレミファビートの筐体も設置されているが、ポッピーはいないし神が出てきたりもしない。多分。


473 : ◆ytUSxp038U :2021/07/05(月) 01:08:22 RKu3SSDg0
投下終了です

杉本佐一、鳥束零太、我妻善逸、姉畑支遁、ギニューを予約します


474 : ◆EPyDv9DKJs :2021/07/07(水) 06:03:31 Ip1QvNZ20
投下します


475 : 宿命をまた呼び覚ます ◆EPyDv9DKJs :2021/07/07(水) 06:06:24 Ip1QvNZ20
 F-7の橋を駆ける鼠色の外套を羽織った学生。
 奇抜な恰好だが、燃堂力の身体となった空条承太郎だ。
 表情は冷静……と言うより仏頂面ではあるものの、僅かな焦りがある。
 と言うのも、走る前まではゆっくりと移動しながら名簿を眺めていた。
 だかその名簿の内容が、予断を許さないものだったからだ。

(こいつはちょいとヘビーすぎるぜ。)

 一つはこの身体の持ち主が、燃堂がいると言うこと。
 殺し合いには乗らないのは間違いないとしても基本は一般人。
 どんな身体であれ、精神的な経験は少なからず響いてくる。
 いきなり武器を使う状況になっても、初見で使いこなすのは難しい。
 承太郎でも節制やゲブと言った初見の結果窮地に陥った経験は少なくない。
 戦いとは一切無縁の日常を過ごしている彼が強い身体を得たとしても、
 自衛できるのかは怪しいのでなるべく早く見つけておきたい。
 ……かなりバカだと記されてるので、話が通じるか不安だが。
 とは言え、これはほんの序の口とも言える問題。
 他の抱える問題の方が遥かに頭を抱えたくなる。

(まさかいるとは思いたくなかったぜ……DIO!)

 自分の手で倒したはずのDIOの復活。
 嘘の名簿とは思わない。参加者を動かす為なら、
 敵の名前よりもホリィや仲間の方がよほど効果的だし、
 そも承太郎はボンドルド達を倒す側。そんなことせずとも動く。
 なので、死亡したはずのDIOがいることはまず事実だろう。

 それだけでもかなりヘビーなものなのだが、
 当然向こうはどの人物の身体なのかは分からない。
 ジョースターの血筋による波長もこの身体には当然ないので、
 現状ではDIOを探す手がかりは何一つないと言うこと。
 スタンド使いは一般人との見分けがつかないのが一つの強み。
 テニール船長やスティーリー・ダンも初見は敵と気づけなかった、
 即ち、奇襲性はかなり高い。スター・プラチナと同等のパワーとスピード、
 そこに奇襲性まであっては参加者は勿論のこと、承太郎も対応に遅れかねない。
 DIOの身体が陽を浴びれる身体ならば、日中でも殺し合いを進めていく。
 早急に何かしらの探す手段を見つけなければかなり厄介になる。
 幸い鼠色の外套が速度を強化できた為生身でも相当な速度だ。
 なぜこのような効力があるのかは謎だが、
 スタンドを考えるとおかしいとは思わない。

(そして、どうやって蘇ったかだ。)

 何よりの問題。何故DIOがいるのか。
 太陽に照らして灰にしたはずのDIOを、
 ボンドルド達は蘇らせたと言うことになる。
 一体どのような手段を以って蘇生したのか。
 これについてはあまり考える必要もない気はする。
 相手は精神を別の人間の身体へと入れられる技術を持つ。
 となれば、死んだ精神であろうと呼び戻せるとしてもおかしくはない。
 物質となる船や城も、付喪神と言う存在があるとされてきたことを考えれば、
 それらが参加者として記されていることにも納得がいく。

(───まさか、野郎の考えていたことに近いのか?)

 問題は、DIOを復活させてまで殺し合いをする理由。
 この殺し合いの目的のために態々DIOを復活させた。
 そう考えると、真っ先に思い当たるのが一つ存在する。

『必要なものは『わたしのスタンド』である』

 エジプトで焼却した、DIOの日記。
 天国へ向かうためのDIOが記した、恐らくは進化の為の標。
 殺し合いのルールには精神と言っていたが、実際は魂と仮定するなら。
 この殺し合いはひょっとして『天国へ行く方法』なのではないか。


476 : 宿命をまた呼び覚ます ◆EPyDv9DKJs :2021/07/07(水) 06:07:59 Ip1QvNZ20
 必要なものに『自身のスタンド』がある。
 ザ・ワールドはスター・プラチナを使える以上DIOも使えるはず。
 同時に、スター・プラチナとザ・ワールドは同じタイプのスタンド。
 場合によっては自身がこの条件に該当される可能性もある。

 必要なものに『極罪を犯した36名以上の魂』がある。
 罪人の魂には強い力が宿ると記されていたがこの場には合計六十人。
 全員が極悪人ではないだろうが、あくまで強い力が宿るのが罪人なだけ。
 罪人に限らず強い力を持った魂が、参加者の中に含まれる可能性は否定できない。
 或いは、個々の魂を強くするために肉体と精神を入れ替えたと言うのもありうる。

 必要なものに『十四の言葉』がある。
 自身は勿論のこと、DIOもこの言葉を確実に覚えている。
 これの意味自体は何なのかは、未だにさっぱりではあるのだが。

 必要なものに『勇気』がある。
 スタンドを捨て去る覚悟と言ったもの。
 これは少なくともDIOはそうするつもりだろうが、
 自身にその気があるかどうかと言われると少し怪しくもあるが、
 どちらかと言えば、スタンドを『失う』と言う意味に差し替えた方がいい。
 単純にスタンドが発現できなくなる状態になったその時が『勇気』なのだろう。
 スタンドを奪える参加者がいて、本当の意味で失う可能性もなくはない。

 不明なものは二つある。
 一つは『信頼できる友』が必要なこと。
 前者にDIOの交友関係は不明だ。参加者の中にその友がいるかもしれない。
 或いは、その友となりうる人物の肉体と言う可能性だってあるのだから。
 自分の場合友となる参加者はいないが、友の定義とは果たして何なのだろうか。

 もう一つ必要なものに『場所』である。
 『北緯28度24分西経80度36分の次の新月を待つ』という条件。
 今の月は新月ではあるものの、この舞台はそもそも虫や動物すら見かけない場所。
 生命が何一つない状況の異常さを思えば、新月の次が新月のままであることもありうる。
 本来ならば場所はフロリダのケープ・カナベラル。此処は似ても似つかない場所ではあるものの、
 多くの条件が満たされてしまっている中楽観視できるかと言われると、正直怪しくもあった。

(野郎は、DIOか俺のどちらかに天国に到達してほしいのか?)

 態々DIOを蘇らせてまでやるなんて、
 殺し合いの促進だけならばほかにもいるはずだ。
 それこそ殺人鬼やギャングと言った血の気のある奴を。
 あえて死者のDIOを選ぶ理由の筆頭はこれ以外に思いつかない。

(やれやれだぜ。)

 自分が生き残って万が一天国へ行ってしまっても、
 DIOを野放しにしてDIOが天国へ到達しても。
 それは結局運営の企み。どっちであれ掌の上と言うこと。
 天国へ到達した瞬間、何が起きるのかは分かったものではない。
 新たな生物へと進化する。人間である自分が無事でいられるか。
 DIOが吸血鬼で目指したものを、人間が耐えられる保障はない。

「ん?」

 走ってる途中、近くに転がる物に気付く。
 それは兎……と言っていいのか怪しいが、それに近い生物の首。
 遠くない位置に、首から下も横たわっている。
 最早その名前すら知られることはないだろう、
 童磨が宿っていた擬態型の死体がそこにあった。

「既に乗った参加者はいたとは聞いてたが……」

 即座にスタンドで周囲の様子をうかがう。
 場所は開けた草原。身を隠せる場所はなく、
 下手人は近くにはいないことはすぐにわかる。

「背後から一撃か。」

 抵抗した形跡もなく、
 首から下の方の足元は草を踏んだ跡が強く目立つ。
 殺し合いに巻き込まれて錯乱したとかであれば、
 もっと外傷が目立つし、何よりデイバックが野放しだ。
 死にたくないのであれば回収するのが当然である。
 それと躊躇せず首を切断できることを考えるに、
 普段から殺し慣れているタイプとみていい。

「早いところ倒しておきてーが……どっちへ行ったかだな。」

 殺し慣れてるとなれば相当な手練れになる。
 倒しておかなければ被害は拡大する一方。
 しかし北上したのか、街へ南下していったのか。
 参加者が集まる場所を目指すなら街ではあるが、
 待ち伏せすると言う意味合いにおいては橋の方も有力になる。

(一先ず回収しておくか。)

 デイバックもだが、
 首が切断されてることで容易に回収できる首輪も拾っておく。
 首輪のサンプルとしてとっておけば後々役に立つだろう。


477 : 宿命をまた呼び覚ます ◆EPyDv9DKJs :2021/07/07(水) 06:09:04 Ip1QvNZ20
「てめーがどんな奴かは知らねえし、
 逆に極悪人の可能性もあるが……礼だけは言っておくぜ。」

 もう届かないだろうがせめて一言だけは言っておく。
 何も言わず持ってくのは、後味のよくないものを残すがゆえに。
 墓ぐらいはとも思ったものの、あまり時間もないので諦める。

(さて、どっちへいくか。)

 どちらにせよ装備してる外套の恩恵で、
 向かうのにそう遠くはないだろう。
 どちらを選んでも問題なく行動可能だが、
 承太郎が選ぶ方角は果たして。

【F-7 橋の近く/一日目 深夜】

【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】
[身体]:燃堂力@斉木楠雄のΨ難
[状態]:健康
[装備]:ネズミの速さの外套(クローク・オブ・ラットスピード)@オーバーロード
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2(確認済み)、基本支給品&ランダム支給品×0〜3(童磨の分、未確認)、童磨の首輪
[思考・状況]基本方針:主催を打倒する
1:まずは自分に協力してくれる者を探す。
2:主催と戦うために首輪を外したい。
3:自分の体の参加者がいた場合、殺し合いに乗っていたら止める。
4:DIOは今度こそぶちのめす。
5:天国……まさかな。
[備考]
※第三部終了直後から参戦です。
※スタンドはスタンド能力者以外にも視認可能です。
※ジョースターの波長に対して反応できません。
※ボンドルドが天国へ行く方法を試してるのではと推測してます。

【ネズミの速さの外套(クローク・オブ・ラットスピード)@オーバーロード】
承太郎に支給。ラキュースが装備する鼠色の外套のマジックアイテム。
移動速度や敏捷性、回避力を上昇させる。


478 : ◆EPyDv9DKJs :2021/07/07(水) 06:09:36 Ip1QvNZ20
以上で投下終了です


479 : ◆5IjCIYVjCc :2021/07/07(水) 20:29:06 4TZfncL.0
投下乙です。
しかし、先の話において気になる点が一つあります。
話の中で承太郎は童磨の支給品を回収していますが、>>226の童磨退場話における状態表から、鵜堂が童磨の支給品を回収したと思われます。
支給品周りの描写は先に書かれた方の話が優先されますので、申し訳ありませんがこの点を見直していただけると幸いです。
お手数をおかけしてすみませんが、よろしくお願いします。


480 : ◆EPyDv9DKJs :2021/07/07(水) 20:42:54 Ip1QvNZ20
こちら修正部分になります。お手数おかけしました

「背後から一撃か。」

 抵抗した形跡もなく、
 首から下の方の足元は草を踏んだ跡が強く目立つ。
 殺し合いに巻き込まれて錯乱したとかであればもっと外傷が目立つ。
 躊躇せず首を切断できた状態であることを考えるに、
 普段から殺し慣れているタイプとみていい。

「早いところ倒しておきてーが……どっちへ行ったかだな。」

 殺し慣れてるとなれば相当な手練れになる。
 倒しておかなければ被害は拡大する一方。
 しかし北上したのか、街へ南下していったのか。
 参加者が集まる場所を目指すなら街ではあるが、
 待ち伏せすると言う意味合いにおいては橋の方も有力になる。

 首が切断されてることで容易に回収できる首輪も拾っておく。
 首輪のサンプルとしてとっておけば後々役に立つだろう。

「てめーがどんな奴かは知らねえし、
 逆に極悪人の可能性もあるが……礼だけは言っておくぜ。」

 もう届かないだろうがせめて一言だけは言っておく。
 何も言わず持ってくのは、後味のよくないものを残すがゆえに。
 墓ぐらいはとも思ったものの、あまり時間もないので諦める。
 精々首を近くへ置いてやるぐらいだ。

(さて、どっちへいくか。)

 どちらにせよ装備してる外套の恩恵で、
 向かうのにそう遠くはないだろう。
 どちらを選んでも問題なく行動可能だが、
 承太郎が選ぶ方角は果たして。

【F-7 橋の近く/一日目 深夜】

【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】
[身体]:燃堂力@斉木楠雄のΨ難
[状態]:健康
[装備]:ネズミの速さの外套(クローク・オブ・ラットスピード)@オーバーロード
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2(確認済み)、童磨の首輪
[思考・状況]基本方針:主催を打倒する
1:まずは自分に協力してくれる者を探す。
2:主催と戦うために首輪を外したい。
3:自分の体の参加者がいた場合、殺し合いに乗っていたら止める。
4:DIOは今度こそぶちのめす。
5:天国……まさかな。
[備考]
※第三部終了直後から参戦です。
※スタンドはスタンド能力者以外にも視認可能です。
※ジョースターの波長に対して反応できません。
※ボンドルドが天国へ行く方法を試してるのではと推測してます。

【ネズミの速さの外套(クローク・オブ・ラットスピード)@オーバーロード】
承太郎に支給。ラキュースが装備する鼠色の外套のマジックアイテム。
移動速度や敏捷性、回避力を上昇させる。


481 : ◆5IjCIYVjCc :2021/07/07(水) 20:49:46 4TZfncL.0
対応ありがとうございます。


482 : ◆ytUSxp038U :2021/07/08(木) 00:21:07 ghWEPE4A0
投下します


483 : Winding Road ◆ytUSxp038U :2021/07/08(木) 00:22:27 ghWEPE4A0
「あれは…」

ボディーチェンジの対象となる強者、又はケロロでも殺せる参加者を探していたギニュー。
カエルの頃よりマシとはいえ体が小さく歩幅も狭いせいで、移動にもいくらか時間が掛かっていた。
つくづく使えん奴だとケロロに悪態を吐き、ふとあるものが目に入った。

遠くの方から煙が上がっている。
しかもよく目をこらせば、時折橙色のナニカが揺らめいているのが分かった。
それは火だ。
ギニューが見つめる先、森林エリアが燃えている。

(戦闘による被害、それとも意図的に燃やしたのか?)

どちらが原因にせよ、参加者の手によるものなのは間違いない。
ということは、あの近辺には森を燃やした何者かがまだいる可能性が高い。
或いは燃やした本人でなくとも、火災から逃げようとする参加者を見つけられるかもしれない。
獲物を探していたギニューには降って湧いたチャンス。
当初は街を目指そうと考えていたが、急遽変更し森へと向かう。

最も望ましいのはベジータの体があること。
次点で孫悟空、もし二人の体が無くともケロロより使える体があれば良い。
銃を油断なく構えながら、ギニューは川を越える為に道路を走った。


もしもこの先に起こる事をギニューが知ったとしたら、
果たして彼は別の選択肢を取っただろうか。


◆◆◆


484 : Winding Road ◆ytUSxp038U :2021/07/08(木) 00:23:11 ghWEPE4A0
「マジかよ…」

殺し合いに拉致されてまだ数時間しか経過していない。
なのに自分はその短時間でどれだけ驚くのだろうかと、杉元はそんなどうでもいい事を思った。

DIOとの戦闘後、傷を癒し妹紅の力で暖を取っていた。
傷に関しては放っておいても勝手に再生するので杉元自身が何かをする必要は無く、強いて言えば再生し切る前になるべく激しい動きをしないよう努めるくらいか。
その間、念の為デイパックの中身を確認した。
支給品などは既に把握しているが、さっきはデイパック諸共池に落ちてしまったのだ。
この入れ物が自身の炎を浴びても無事だったとはいえ、水が入り中身が使い物にならなくなっているのかもしれない。
故にこうして調べてみたのだが…

(ほんっとに材質どうなってんだ…?)

杉元の心配は全くの杞憂に終わった。
デイパックが濡れているのはあくまで外側のみ。
取り出した食料にも支給品にも被害は無く、水滴一つ見当たらなかった。
どうなっているのか不思議でならないが、便利であるのには違いない。
ボンドルド達を叩き潰した後は、この入れ物を持って帰るのもいいかもしれない。

「取り敢えず、こいつは使い物になるみたいだな」

そう言って無事を確認した、光沢を放つ回転式拳銃を見やる。
杉元に馴染み深い二十六年式拳銃ではなく、初めて見るタイプの銃だった。
されど銃という使い慣れた武器であるのに変わりは無い。
装填されているのもこれまた特殊な弾丸らしく、対象の神経組織を破壊する効果があるらしい。(説明書を読んだ時は思わず「恐っ!」と叫んだ。)
濡れておじゃんにならずに済んだ事へ安堵し、付属していたホルスターに突っ込む。
以前、水の中で銃を撃ち壊してしまった苦い思い出があるので、余計にホッとしているのかもしれない。
その時は尾形に皮肉をぶつけられ、これみよがしに鼻で笑われた。

「……思い出すんじゃなかった」

あの男の薄ら笑いが脳裏に浮かび、思わず顔を顰める。
自分が消えた事に仲間達は困惑しているだろうが、何とか尾形を無事に病院まで届けて欲しいものだ。
あいつには聞きたい事、言いたい事が山ほどある。
生還し知りたい情報を聞き出せたら、この手で確実に殺す。
自分を殺そうとしたのもあるが、それ以上にアシリパを利用し人殺しにしようとした件は絶対に許せない。
忌々しい宿敵をぶち殺す光景を思い浮かべ、その瞬間が待ち遠しいとばかりに犬歯を剥き出しにして笑う。

「…っと、あんまのんびりもしてられねぇか」

先程の戦闘で放った炎が木々に燃え移り、現在進行形で火災が起きている。
できれば食事も済ませ少しでも体力を回復させておきたいが、残念ながらそんな余裕は無い。
呑気にヒンナヒンナと舌鼓しているせいで逃げ場が無くなりました、となっては流石に笑えない。
それにのんびりしていれば再びDIOと遭遇する可能性だってある。
無論負ける気は無いが、傷が完治していないまま戦って勝てる程温い相手で無いことも分かる。
尤も炎に何かしらのトラウマを持っていそうなDIOのことだ、とっくに森から離れているのかもしれないが。

とにかく今は燃え盛る森から迅速に離れるのが先決である。

「こりゃアシリパさんに怒られちまうな」

故意で無いとはいえ森に火を付けてしまった。
自然に敬意を払うアイヌの少女が知ったら、ストゥでしばかれるのは間違いない。
苦笑いを浮かべながら、荷物を纏めて移動を開始した。

それからすぐの事だった。
杉元が奇妙な参加者と出会ったのは。


◆◆◆


485 : Winding Road ◆ytUSxp038U :2021/07/08(木) 00:24:16 ghWEPE4A0
何でこんな事になったのだろう。
自問自答した所で答えは出ず、善逸はもう何度目かのため息を吐く。
本当ならば今日は愛しの禰豆子に求婚をするという、生涯で最も大事な日となったはず。
それなのに奇妙な生物の体にされて殺し合いを強要され、変態天使に後ろの処女を狙われる。
人生最高の日が一転して人生最悪の日と化した。

「ピィカ〜…(ああ畜生、何でこんな目に…)」
「おや、そんなに俺と一緒にいるのが嬉しいんすか?ご安心ください!あなたは命に代えてもこの俺が守ってみせます!」
「ピカピーカ!(嘘くせぇぇぇ!顔も声も炭治郎なのにめちゃくちゃ胡散臭いよこいつ!)」

ニカリと白い歯を露わにして微笑む少年、鳥束零太に、うんざりした思いをぶつけるかのように鳴き声を上げた。
それをどう勘違いしたのか、鳥束は、「うんうん、そんなに嬉しいんすね〜」とほざいている。
これが炭治郎本人ならば一緒にいてこの上なく心強いが、残念ながら中身はどこの誰とも知れぬ胡散臭い輩。
本来であれば関わり合いになどなりたくないが、そうも言ってられないのが現状である。

悩みに悩んだ末、結局善逸は鳥束と行動を共にする事を決めた。
理由としては、やはり炭治郎の体に入っているのが大きい。
自分と出会ってもいきなり殺そうとはしなかったので、殺し合いには乗っていないと思われる。
では安全な人物かと問われれば肯定はできない。
最初の遭遇の時からガラッと態度を変えたように、きっと何かロクでもない考えの元行動してるに違いない。
何となくだが、女性に対しやましい事をしでかしそうな気がしてならないのだ。
それが果たして同族嫌悪に近いなにかになるのかどうかはともかく、炭治郎の体でそんなふざけた真似をさせる訳にはいかない。
加えて、主催者が治療したのか炭治郎の体は無惨と戦う前の状態に戻っている。
炭治郎が健常な体に戻れば、きっと皆喜ぶだろうし、自分だって嬉しい。
その為にも、鳥束が馬鹿をやらかして炭治郎の体をズタボロにされるのを防ぐ。

(それにどうにかして名簿を見せてもらえればなぁ…)

ボンドルドと名乗った、鳥束に負けず劣らずの胡散臭さの塊のような男。
奴によると名簿が配られたらしいが、支給品を入れ物ごと紛失した善逸には確認する術が皆無である。
体がここにあるのだから炭治郎本人も参加しているかもしれないし、他に知り合いがいても不思議は無い。
最悪の場合、禰豆子まで巻き込まれている事だって有り得なくは無いのだから。
参加者名簿を確認するには鳥束に頼んで見せてもらうのが一番手っ取り早い。
が、善逸に与えられた体は人語を話せず、意思疎通もままならない。
どうにかジェスチャーで伝えようとしたのだが、

『いやいや、お礼なんていいっすよ。男として当然の事をしたまで、みたいな?』

と、こちらの意図は全く伝わらず、非常にウザい笑みを返された。

(はぁ〜…マトモな奴はいないのかよぉ〜……)

変態天使の次は友の体でよからぬ事を考えてそうな男。
ひょっとしてこの先もロクな参加者と出会わないのだろうか。
そう考えると益々気が滅入った。

(うんうん、出だしは順調っすね)

皺だらけの顔で歩く善逸とは正反対に、鳥束は上機嫌でずんずんと進んでいた。
殺し合いという異常事態でも冷静さを見失わず人助けをする。
これで黄色い生物に入っている女性の好感度を確実に稼げたはず。
仮に中身が男だとしても、マスコットキャラクターのような外見の動物を連れていれば、きっと向こうから女性が集まって来るに違いない。

(うっしゃぁ!このまま女の子達にモテまくって、鳥束ハーレムを建造してやる!)

斉木楠雄がここにいれば毒交じりのツッコミを食らいそうな決意を抱く。

(…にしても、何だかさっきから妙な匂いがするんすよねぇ)

訝し気に鳥束は鼻をこする。
それは炭治郎の嗅覚が桁外れに優れているが故の事だった。
が、鳥束は「夜風に当たって風邪でも引いたんすかね?」と盛大に勘違いをしていた。

そうして力強い足取りでどれくらい歩いただろうか。
一人と一匹は森から煙が上がっているのに気付いた。


486 : Winding Road ◆ytUSxp038U :2021/07/08(木) 00:25:31 ghWEPE4A0
「ピカァ〜?(あれって…燃えてるのか?)」
「…ちょっとマズいっすね」

先程までは能天気丸出しだった鳥束も、これには真面目に考える。
楽観的に考えていたが、これは紛れもなく正真正銘の殺し合い。
この地には他者の命を奪う事にほんの僅かな罪悪感すら抱かぬ悪党がごろごろいるかもしれないのだ。
それなら森に放火するような危険人物だって参加していても不思議は無い。

(ここは急いで離れないと……いやでも、もし逃げ遅れた奴がいたら…)

燃え盛る森の中に取り残された参加者がいるのだとしたら、ここで見捨てるのは流石の鳥束でも流躊躇する。
だがその為に自ら飛び込んで焼け死ぬのも御免被る。
そもそも逃げ遅れた奴なんてのがいなかったら、それこそ無駄足だ。

どうしようか悩む思考は、不意に聞こえた草木を踏む音によって中断された。
音がした方へ鳥束が視線を向けるのに釣られ、善逸も同じ方向を見る。

二人の視線が向かった先には、白い髪を結い、凛とした顔立ちの少女が立っていた。

(って、女の子発見!!しかもかなりの美少女じゃないっすか!!)

ハーレム候補(仮)の出現に鳥束のテンションは爆上がりした。
今すぐにでもお近づきになりたい心をどうにか落ち着かせ、先程善逸に取ったのと同じ「紳士」な振る舞いを行う。
焦ってガツガツしてしまえば、幾らモテオーラ(鳥束命名)を放っている体でも、幻滅されてしまうだろう。
故にここは爽やかな笑みを浮かべ話しかけようと口を開いた。

「そこで止まれ」
「…え!?ちょ、ちょっとタンマ!俺は別にやましい事は……」
「良いから大人しくしろ」

少女は鳥束の行動を制止し、銃を突きつけた。

爽やかな笑みから一転、慌てて両手を上げ敵意が無い事を伝える鳥束。
だが少女…杉元は銃を下ろさず警戒心を露わにしている。
鳥束にとって不幸だったのは、杉元がDIOと遭遇していたこと。
好青年な振る舞いでこちらの警戒心を緩めつつ、必要な情報が無いと分かれば即座に殺しに掛かる邪悪な男。
そんな相手と一戦交えたばかりなのもあり、杉元は他参加者への警戒を自然と強めていた。

黒光りする銃口を前に、鳥束の額から一筋の汗が滴り落ちる。
こんな所で死んでしまえば鳥束ハーレムは儚い夢で終わってしまう。
そうならない為にどうにか警戒を解こうとした時、足元から黄色い塊が杉元に飛び掛かった。

「ピィ〜カァ〜!!(お姉さあぁぁぁぁぁぁぁん!!!)」
「うおっ!?何だこい……あらやだ可愛い」

善逸だ。
ここまでロクでもない奴にしか出会えてなかった所へ、唐突に現れた美少女。
精神的に参っていた善逸にとって少女の存在は、タガが外れるのに十分過ぎた。

「ピカチュウ!ピカピ〜!(お姉さぁん!俺もうほんとに辛かったよぉ〜!だから俺と結婚して!この通りだから!)」
「あらまあとってもモフモフ。犬、いや兎、か?…あれ?首輪があるって事はお前も参加者?」
「ピカ!?ピカチュウゥゥゥゥゥ!!(って、禰豆子ちゃんがいながら何馬鹿な事言ってんだ俺ぇぇぇぇ!!ああでも、女の子に触られる感触が〜!)」

高音で鳴き散らす善逸をつい抱きかかえる杉元。
その光景を鳥束は目を見開き焼き付ける。
彼らの様子に何か不審な点でも見つけたからか?
否、この男がそんな真面目に観察などするはずが無い。


487 : Winding Road ◆ytUSxp038U :2021/07/08(木) 00:26:46 ghWEPE4A0
(こ、この光景は…!)


〜〜鳥束視点による妄想〜〜

黄色い髪の美少女「いや〜ん、お姉さまのお肌、とってもスベスベですぅ」
白い髪の美少女「あらあら、そんなに触ったらくすったいじゃない」
黄色い髪の美少女「だってぇ、こーんなに触り心地がいいですもの」
白い髪の美少女「ひゃんっ!も、もうっ!そんなエッチな触り方して!」

〜〜妄想終わり〜〜


(ウオォォォォォオオオオオ!!)

心の中で拍手喝采を浴びせる。
女子と絡むのが何よりも好きだが、女の子同士の絡みを見るのも鳥束は大好きだった。
こんな光景を見れるだけでも、ここに連れて来られて良かったと涙ぐむ。
が、ふとある可能性に気付く。

(待てよ?もしあの動物の中身が女の子じゃなく男だったら…)


〜〜鳥束視点による妄想2〜〜

黄色い髪の汚いおっさん「ぶへへへ。お嬢ちゃんの肌、スベスベで気持ちええのぉ」
白い髪の美少女「ヒィッ!い、いや…触らないで……」
黄色い髪の汚いおっさん「ヒヒ、すぐに体中おっちゃんの色で染めてやるからなぁ」
白い髪の美少女「嫌ァァァァ!!誰か、誰か助けてぇ!!」

〜〜妄想終わり〜〜


「こいつはめちゃ許せねえっすよおおおおおお!こんなエロ漫画みたいな事が現実で起きるなんて!!」

勝手な妄想に鳥束は怒りを燃やす。
実際にはピカチュウの中身は美少女でもおっさんでも無いのだが、鳥束が知る術は無い。
鼻の下を伸ばしていたと思いきや、唐突に叫び出した鳥束を、杉元と善逸は白い目で見る。
先程までは錯乱していた善逸も鳥束の醜態を前にし、却って冷静になっていた。

(何だこいつ……)

慌ただしい鳥束に杉元は呆れつつ考える。
殺し合いに乗っているかどうかはまだハッキリと分からない。
だがDIOとは別の意味で危ない輩に思えてくる。
正直関わりたい人間では無いが、放置して後々自分やアシリパの体に危害を加えられるのも困る。
それにこの黄色い動物に関しても聞いておきたい。
どうにか落ち着かせ、ついでにさっきからずっと抱いてるであろう勘違いを解くべく話しかけた。

「おい」
「おおおおおおおおおおっ!…って、あ、はい!何でしょうか!?君のような可愛い娘の頼み事なら大歓迎なんで!」
「一応言っとくが、俺は男だぞ」
「え゛っ?……いやいや!そんなご冗談を……」
「初対面でそんなアホみてえな冗談言う訳ねえだろ」

ビシリ、と固まる鳥束、呆れる程に分かりやすい反応だった。
鳥束は中身が女の子でも体はおっさん、という事も有り得ると考えていたが、その逆を失念していた。
体は絶世の美女でも、中身はむさ苦しい男。
そんな状態になっている参加者もいる事が、すっぽり頭から抜け落ちていたのだ。

「そ、そんなぁ……」

さっきまでの上機嫌はどこに行ったのやら。
これ見よがしに項垂れ、辛気臭い雰囲気を醸し出す。
幾ら体が美少女でも、中身が男では嬉しくない。
早くもモテまくる計画が頓挫しかかった時、鳥束は杉元の服に血が滲んでいるのに気付いた。
その瞬間、天啓が閃いたとばかりに勢い良く立ち上がった。


488 : Winding Road ◆ytUSxp038U :2021/07/08(木) 00:27:48 ghWEPE4A0
「あんた!怪我してますよね!?」
「ん?ああ、だったらなんだ?」
「脱いでください」
「は?」

何故唐突に脱がねばならないのか。
意味が分からず聞き返す。

「俺、傷の具合を見るのがめっちゃ得意なんすよ!だからほら!早く脱いで!男同士なんだから問題無いっすよね!?」
(こ、こいつ……!)

杉元にも善逸にも、鳥束の意図は嫌でも理解できた。
この男、相手の精神が男なのを良いことに少女の裸を拝む気らしい。
ある程度の人となりを知っていた善逸も、まだ名前すら知らぬ杉元も、呆れるどころか一周回って感心してしまいそうな程、清々しいまでのゲスっぷりだった。

血走った目でにじり寄る鳥束へ、杉元は心底嫌そうな顔で対処し――



「ハァ、ハァ、見つけましたよ…!!!」


事態は更に面倒な方へ転がり出す。


息を切らせながら現れた人物に、杉元達の視線が集まる。
男にも女にも見える中性的な容姿と砂金のように輝く金髪。
背中に生えた純白の翼。
一部が欠けてはいるものの、頭上に浮かぶのは紛れも無い光輪。
おとぎ話に登場する天使がそのまま現実に飛び出して来たかのような者がいた。

天使は汗を拭い、キラキラとした瞳で杉元らを熱っぽく見つめる。
どうしてそんな目で見るのか分からず首を傾げたが、ふと相手の視線が自分の腕の中に向けられているのに杉元は気付いた。
腕の中にスッポリ収まっている黄色い珍獣は、顔を真っ青にしガクガクと震えている。
その尋常でない様子に杉元は、自分と出会う前に黄色い珍獣が危害を加えられたのではと気付いた。
外見だけなら人畜無害そうな天使だが、中身もそうだとは限らない。
それはDIOが証明している。

「心配すんなよ」

珍獣を安心させるように一撫ですると、天使へ向けて銃を突きつける。

「おい、こいつに何する気だ?」
「いえいえ!誤解なさらないでください!私はその子を傷つけるつもりなんてこれっぽちも無いんです!」
「ならどうしてこいつはこんなに怯えてるんだよ?」
「そ、それは…少し驚かしてしまっただけなんです!私はただ、自然界を逞しく生きる動物が好きなだけだ!好きで好きで堪らないんだぁ!」
「………ん?」

何だろう、今の言葉に引っ掛かりを感じる。
動物が好き。それ自体は別に良い。
かく言う自分も可愛い動物にときめく事があるし、美味しく頂くという意味でも嫌いじゃない。
だがこの天使の「好き」に込められた感情は、何かがおかしい。
普通の人の感性とは大きくズレたナニカがあるような。

(……おい、まさか)

丁度自分はそれに該当する人物を知っている。
その人物は何の因果かこの殺し合いに参加している。
いやしかし、まさかこんなすぐに再会するなんて事は無いだろう。
まさかとは思いつつも、嫌な予感がしてならない。
恐る恐る尋ねてみた。


489 : Winding Road ◆ytUSxp038U :2021/07/08(木) 00:29:19 ghWEPE4A0
「なぁ、もしかして……姉畑先生、か……?」
「えっ!?ど、どうして私の名前を…?」

なんてこったい。
当たってしまった予想に頭を抱えたくなる。
同時に黄色い珍獣が怯えている理由にも納得がいった。
きっと彼は出会い頭に黄色い珍獣とウコチャヌプコロしようと襲い掛かり、逃げられたのだろう。
一度死んでも変態的な動物愛は健在らしく、素直に感服した。

「あなたは一体誰なんですか?私の知り合いは一人もいないはずですが…」
「は?いやいや何言ってんだよ。俺は――」

杉元佐一だ。そう言おうとして気付いた。
確かに自分は谷垣の冤罪を晴らす為に追跡していたのもあり、姉畑支遁を知っている。
が、反対に姉畑は杉元を全く知らない。
顔を合わせたのと言えば、羆とにしがみついていた所を助けに入った時のみであり、マトモな会話は無く、
姉畑が『成し遂げた』際には思わず感激し走り寄ったが、その時には既に逝っていた。
これでは杉元の事を分かろうはずも無い。

言葉に詰まった杉元を訝し気に見ていたが、すぐに興味は黄色い珍獣…善逸へと戻った。
姉畑がここまで走って来た目的は一つ、この愛くるしい獣と思う存分交わること。
これ以上は待ちきれないと言わんばかりに、豪快にズボンを脱ぎ捨てた。

「さぁ今度こそ、一つになりましょう!!!」

「ビガァーーーーーーッ!(嫌だーーーーーーッ!)」
(な、何じゃありゃぁああああああああああああああああっ!!?!)

凶器、いや、最早兵器と呼ぶのが相応しいモノが露わになる。
浮き出た太い血管が波打ち、天を睨み上げる大蛇の如き迫力。
三十年式歩兵銃で突っ込んだら、露助どもに大砲で迎え撃たれた気分だ。
これ程の化け物染みた巨根は、さしもの杉元でも見た事が無い。

『男にとって最も大事なのはチ○ポだ』

いつだったか、酒の席でのチ○ポ先生の有難いお言葉が頭をよぎる。
まさかあの時のチ○ポ講座をこんな所で思い出すとは、予想外にも程がある。
笑みを浮かべ親指を立てる牛山のイメージを頭から追い出し、この場にいる額の痣が特徴的な青年がやけに静かなのに気付く。
スケベの集合体に手足が生えているような人間性の持ち主だが、姉畑のような人物を前にしたなら流石に危機感を持つはず。
余計な事を喋らず相手の出方でも窺ってるのかと思い、青年をチラリと見やる。
青年は杉元の予想とは違う有様となっていた。

「う、嘘だ……あんな大きさ…反則もいいとこじゃないっすか……エクスカリバー……いや…エクスカリ棒……」

鳥束はショックで膝を着いていた。
女にも見えるクリムの容姿に、「今度こそ体と中身が一致するっすか!?」と懲りずに期待を抱いた。
それが大きな間違いだった。
可愛らしい顔立ちにはミスマッチな巨大兵器の出現に衝撃を受け、ついでに自身のモノとは比べ物にならないサイズ差に敗北感を勝手に味わいこの様である。

「ピ、ピカチュゥゥゥゥゥ!!(く、来るなーーーーーーっ!!)」

叫ぶ善逸の体から電気が迸り、姉畑目掛けて電撃が放たれた。
電撃の名は『10まんボルト』。
ピカチュウの代名詞と言っても過言ではないわざである。
鳥束のヘタレた姿など善逸の眼中に無い。
未遂に終わったとはいえ一度襲われたのも有り、姉畑への恐怖は杉元らの何倍にも感じていた。
あのバカデカいモノで貫かれたら、後ろの純潔を失う所の話ではない。
こんな小さい体でアレを受け入れられるとは到底思えず、純潔のみならず命まで失ってしまう。
だから心の底から拒絶する。
その感情に反応してか、善逸からはピカチュウが得意とするわざが自然と発動されたのだった。


490 : Winding Road ◆ytUSxp038U :2021/07/08(木) 00:30:52 ghWEPE4A0
「うおおっ!?めちゃくちゃ痺れたぞオイ!」

善逸の体に電気が走った瞬間、杉元は咄嗟に腕を離した。
見た事の無い動物だとは思ったが、こんな芸当までできるとは思っていなかった。
電気を発生させるナマズがいるのは聞いたことがある。
だが、地上の生物がこんな強力な電撃を放つなど、殺し合いに拉致される以前の自分ならばきっと鼻で笑っただろう。

「ううむ、やはり電撃を放つ力がピカチュウ君には備わっているようですねぇ。いやー、実に興味深い!」

が、もっと驚くべきこと。
それは今の電撃を受けたにも関わらず、五体満足で目を輝かせる姉畑の存在である。
天使の体に備わる物理と闇属性以外へ耐性。
それを知らぬ善逸達は愕然とした表情となる。
よくよく考えれば最初に襲われた時にもかみなりを落としたというのに、何事も無かったかのように追いかけて来たのだ。
その時点でおかしいと考えるべきだったと後悔しても今更の話だ。

涙目で怯える善逸を見下ろし、どうすべきかを杉元は思考する。
杉元としては出来る事なら姉畑は殺したくない。
獰猛な羆相手に『やり遂げた』勇姿には、思わず感動してしまったし。
決死の覚悟で『繋がった』のに、想いは羆に届かなかったのは何とも言えない切なさを覚えた。
しかしだ、この地でも無差別に動物を襲い、しかも参加者とまで強引にウコチャヌプコロする気だと言うのは、幾ら何でも見過ごせない。

(悪いな先生。殺しはしないが、少し大人しくしててもらうぜ…!)

死なない程度にボコって縛り上げる。
今はこれでどうにかしようと決め、善逸を庇うように前へ出る。

杉元の耳に、パキリという音が聞こえたのはその瞬間だった。

「っ!そこに隠れてる奴、出て来い!」

杉元が怒声を浴びせると、動揺する気配が木々の陰から感じられた。
善逸と姉畑も新たな参加者の存在は無視できないのか、杉元と同じ方向へ視線が動く。
鳥束だけは未だショックから回復しておらず、ブツブツと何かを呟いている。
相手をしている余裕など無いので、全員から無視されているのはご愛嬌。
一方隠れている何者かからのリアクションは無かったが、やがて腹を括ったのか姿を見せた。

「バレてしまっては仕方あるまい!全員動くな!」

現れた者は隠れていた事への釈明もせず、銃を突き付け恫喝する。
その姿に杉元達は最早何度目になるのかも分からない、驚きを受けた。
乱入者はざっくり言うと、人型のカエルとも言うべき見た目をしている。
全体的に緑色の体をしており、腹部と口の周りは白い。
頭には星型のマークが付いた帽子らしき物を被っている。
杉元達の知っているカエルよりもずっと大きく、人間の子どもくらいのサイズだ。


491 : Winding Road ◆ytUSxp038U :2021/07/08(木) 00:31:52 ghWEPE4A0
驚きの視線を集めるカエル、ケロロ軍曹の体に入ったギニューは舌打ちをしたい気分だった。
参加者を探しに森へ近づいた所、複数人の声がした為そちらへ近づいた。
木々の間に身を隠し、慎重に様子を窺ったまでは良い。
だがそこで目撃したのは、下半身を丸出しにした天使が怪しい動きで少女や黄色い動物に迫るという、全く持って理解し難い光景。
流石のギニューも、何とも言えない異様な絵面に動揺し、結果うっかり音を立ててしまうミスを犯したのである。

(電気を出す兎…兎?まぁ兎でいいか。の次は二足歩行で喋るカエルかよ…。これで化け物みたいな虫でも出てきたら、笑うしかねえぞおい…)

次から次へと現れる珍獣に、頭が痛くなってくる。
見ているだけなら面白いがカエルが手にしているのは拳銃。
見た事の無い種類の銃に少しばかり違和感を感じ、何かに気付いたように顔を引き攣らせた。

「おお……」

ここには病的なまでに動物を愛する変態がいるのだ。
そんな人物へ、二足歩行のカエルという劇薬を与えたらどうなるか。
結果は考えるまでも無い。というか考えたく無い。

「何と愛らしい……」

案の定と言うべきか、ギニューは姉畑の興味の対象になってしまった。
キラキラどころかギラギラした目を向けられ、興奮の余り口の端からは涎が垂れている。
そそり立つ巨砲は未だ萎えず、むしろさらに硬度と大きさを増したかのような錯覚を抱かせる威圧感が放たれていた。
そんな危険人物にギラついた欲望を向けられたギニューはたまったものじゃない。
後ずさりながらも、銃口は正確に姉畑へ向けられている。

「き、貴様!動くなと言ったはずだぞ!」
「ツルツルしてそうな体に可愛らしい手足、それに言葉が通じる!何て素晴らしい!!」
「こ、この変態天使がぁあああああああああっ!!」
「もう我慢できない!大好きだーーーーーーっ!!!」

飛び掛かる姉畑へ引き金を引く。
発射された弾丸は天使の華奢な肉体に…傷一つ付けられなかった。
そんな馬鹿なと驚愕しながら、二発、三発と続けて撃つ。
だが姉畑の体は血の一滴も流れていない、全くの無傷。
一体どうなっているのかギニューはただ混乱した。

天使の体に物理攻撃である銃を防ぐ力は無い。
だというのに姉畑が無事でいられるのは、白く細い指に填めている指輪の効果である。
とある世界に存在した、射撃武器から身を守る力を持ったこの支給品のおかげで、ギニューの攻撃を無効化したのだった。

そうとは知らずパニックになるギニューの背後へと姉畑は跳ぶ。
ギニューが振り向く隙を与えず、抱き着くようにして動きを封じた。
クリムの体も決して大柄とは言えないが、子ども程度の体格でしか無いケロロの体を押さえ付けるなど容易い。
まして今の姉畑は見た事も無い珍獣と交われる機会に、興奮が最高潮まで達している。
この機を逃してたまるかと持てる力を限界まで引き出し、藻掻くギニューを拘束した。

「離せ!離さんか貴様ァアアアアアアアアアアアアッ!!!」
「暴れないで!大丈夫だから!大好きだから!!」


492 : Winding Road ◆ytUSxp038U :2021/07/08(木) 00:33:02 ghWEPE4A0
※大変お見苦しい光景ですので、音声のみでお楽しみください。

 またウコチャヌプコロは相手の同意を得てから行いましょう。


〜〜〜〜


「大好きです!大好きィイイイイイイイイッ!」

ズ プ リ

「ぎゃああああああああああああ!!?!」

「おお、何て温かい……。まるで母の温もりに包まれているかのような心地良さ…」

ズチュ、ズチュ、ズチュ

「がぁあああああ……!?尻が、尻が…裂けるゥゥ……!」

「対照的に、冷たくてぷにぷにしたこの肌の触り心地……」

ギチュ、ギチュ、ギチュ

「おごぉおおおおお…!?は、腹が…腹が破れる……!!」

「これ以上は持ちません!私の愛を受け取ってくださああああああああああああい!!!」

パン!、パン!、パン!、パン!

「ぎえええええええええ!!動きが急に速く…!?」

ド ビュ ッ

「ひぎぃいいいいいいいいいいいいい!!?!」

「ふう……」


〜〜〜〜


493 : Take Me Under ◆ytUSxp038U :2021/07/08(木) 00:37:23 ghWEPE4A0
「あ、姉畑先生…ここでもやりやがった…!」

物凄いものを見てしまった杉元から震えた声が出る。
善逸と、何時の間にか起き上がっていた鳥束は顔を真っ青にしている。
特に善逸は自分もあんな目に遭うのかと思うと、恐怖で情けなく失禁してしまいそうだった。

(オレは何をやっているのだ……)

一方で尻から白濁液を流し、倒れ伏したギニューは自分の情けなさに泣きそうだった。
殺し合いに招かれ、フリーザ復活のチャンスを与えられたというのにこの様。
戦って死ぬならまだしも、こんな気色悪い天使に辱められる醜態を晒すとは、己自身を嫌悪する。
こんな姿をフリーザが見たら、きっと心底軽蔑されるに違いない。
ならばこのまま、何もかもを投げ出してしまおうかという、自暴自棄な考えまで浮かび――

(……オレは今何を考えた?)

確かに自分は情けない敗者になった。それは認めよう。
確かにフリーザが今の自分を見て良い感情を抱きはしない。それも認めよう。
しかし、しかしだ。自分まだ生きている。
尻と腹から凄まじい激痛がするが、それでも生きている。
こんな状態でもやれる事はある。

(一度辱められただけでフリーザ様の蘇生を諦めるだと…?ふざけるな…!俺はまだやれる…!!)

ほんの一瞬でもふざけた考えを持ってしまった自分自身へ喝を入れ、デイパックへと手を伸ばす。
例え復活したフリーザに醜態を知られ、切り捨てられるのだとしてもだ。
それは諦める理由にはならない。
何故なら自分はギニュー特戦隊の隊長。フリーザによって選ばれたエリート戦士。

(ならばこの命、最後までフリーザ様の為に使うまでよ!)

「くらえぇええええええええええええっ!!」

激痛を押し殺して姉畑から距離を取り、デイパックから取り出した物を投げつける。
出した後で暫し気が抜けていた姉畑は反応が遅れた。
投げつけた物体から光が溢れ出し、姉畑を包み込む。
銃は効かなかった。だが別の武器ならばどうだ。

「痛っ!痛い!というか熱い!熱いィイイイイイイ!!」

光の直撃を受けた姉畑は地面を転がり、痛みに悶えた。
天使の体でも耐性が無い攻撃に、全身が焼け爛れている。
シミ一つ無い白い肌が一瞬で変貌し、動物からの反撃をしょっちゅう受けていた姉畑もこんな激痛は初めてだった。
ギニューが投げた物、それはメギドボムという名の小型爆弾。
この爆弾は敵の耐性に関係無くダメージを与える、心の怪盗団がシャドウ相手に用いる武器の一つ。
メギドボムが効くかどうかは賭けであり、最低でも目眩ましになれば十分だったが、姉畑には予想以上の効果を発揮した。

思わず駆け寄ろうとした杉元と、ギニューの視線がかち合う。
その瞬間、杉元は心臓が跳ね上がるような感覚がした。
あれ程の凌辱を受けて尚、このカエルの目は死んでいない、勝利を諦めていない。
こういった手合いは今まで腐る程見て来た。
そしてそれがどれだけ厄介なのかも身に染みている。


494 : Take Me Under ◆ytUSxp038U :2021/07/08(木) 00:38:28 ghWEPE4A0
「クソッ!!」

足元にいた善逸を掴み、ギニューの視線から逃れようと横に跳ぶ。
ギニューは杉元が善逸を掴み上げた途端に舌打ちして目標を変更する。
狙うはもう一人の人間、鳥束零太。
状況の変化に戸惑いその場に突っ立っている鳥束は絶好の的でしかない。

杉元が何かを叫ぶ。だがもう遅い。


「ボディーチェーーーーンジ!!」


両手を大きく広げたギニューから光が放たれる。
一直線に向かってくる光へ鳥束が危機感を覚えた時には、既に己の体へ直撃していた。
悲鳴を上げる間も無く、何が何だか分からないまま急速に鳥束の意識は失われた。
僅か一瞬の出来事。その一瞬の間に全ては完了した。

「ふん、ようやくマトモな体を手に入れられたか」
「いってぇええええええええええええええ!!!ケツがめちゃくちゃ痛いんすけど!?どうなっちゃったんすか俺!?」

杉元には目の前に広がる光景の意味が分からない。
カエルが何か光を放ち、それが痣のある少年にぶち当たった。
その直後、カエルは思い出したかのようにケツを押さえて悶絶している。
光が当たったはずの少年に外傷は見当たらず、至って冷静に自身の体を観察しているような素振りだ。

あの光は何だったのか。
少なくともよからぬナニカであるのはほぼ間違いなさそうだ。
困惑の中でふと気づく。
ギャーギャー喚くカエルの口調、あれは痣の少年と同じではないかと。
その痣の少年の佇まいは女好きを絵に描いたようなものとは一変している、恐ろしく冷たい雰囲気があった。
杉元の困惑に気付いていないか意図的に無視しているのか、少年は尻の痛みに嘆くカエルへ足早に近づくと、容赦なく蹴り飛ばした。

「ぐえっ!?あああああああ!!ケツに響くううううううう!」
「ケロロ、お前はもう用済みだ。中にいるアホ丸出しの地球人諸共死ね」

少年…炭治郎の体を手に入れたギニューは冷たく告げる。
自身のデイパックを回収し、拾い上げた銃をケロロの体へ入った鳥束へ向けた。

姉畑に凌辱されたケロロの体はもう使い物にならない。
そう身を以て理解したギニューが、ボディーチェンジを決行するのに迷いは無かった。
体を入れ替える候補は二人、杉元と鳥束。
最初は杉元を対象としたのだが、相手が善逸…ピカチュウを掴み上げた為に断念した。
ピカチュウは電撃を放つなど能力が有り、戦闘力が皆無で無い事は隠れ見ていた事で知った。
しかし、ピカチュウはケロロと違い人語を話せない。
これでは今後強者と遭遇しても、ボディーチェンジが使えなくなる。
万が一杉元がピカチュウを盾にでもしてボディーチェンジしてしまったら、それこそ取り返しが付かない。
故に杉元を諦め、棒立ちしていた鳥束と体を入れ替えたのだった。


495 : Take Me Under ◆ytUSxp038U :2021/07/08(木) 00:39:44 ghWEPE4A0
そしてボディーチェンジが済んだ以上、ケロロの体に未練は無い。
殺害に微塵の躊躇も存在しない。
殺し合いが始まって精々数時間しか入っていなかった体だ、愛着など湧くものか。
そもそもギニューがケロロの体に価値を見出していたのは、ボディーチェンジが出来るという一点のみ。
他に役立つ能力も無い体など、さっさと切り捨てるに限る。
引き金に掛けた指を動かす。

(まさか……入れ替わった…?)

その光景を、杉元は両の目でハッキリと見ていた。
彼は何が起こったのかを正しく認識できてはいなかった。
唐突に口調も雰囲気も変化したカエルと少年。
どうなっているんだと混乱する頭は、やがて一つの答えを導き出した。

即ち、ボンドルド達が参加者に行った他者との肉体入れ替え。
それと同じことが、目の前で起きたのでは無いかと。
荒唐無稽極まりない考えだ。
殺し合い以前の自分ならばきっと考え付かなかった発想だし、もし誰かが同じ事を考え付いたら脳の病気を疑っただろう。
だがしかし、自分はこの数時間で非常識な存在を呆れる程に目撃している。
背後霊を呼び出す英国風の男、電気を出す珍獣、人語を話すカエル、そして不老不死の少女の体へ入った杉元自身。
神秘のオンパレードのような事態が続いているのなら、主催者と同じように体を入れ替える力を持った参加者がいたとしても何らおかしくない。
そしてその考えが正解だとしたら、今殺されそうになっているのはあのエロの化身のような少年という事になる。
少年に良い感情は抱いていない、身を挺して助けたいと思う程に大切な存在でもない。
が、殺し合いに乗っているであろう、カエルに入っていた人物の好きにさせてやる気も、杉元には無い。

決断してからの行動は速かった。
右腕が電光石火の勢いで跳ね上がり、引き金が引かれる。
殺られる前に殺れ、数多の戦場で杉元を生かして来た絶対の言葉に従った結果だ。
通常であれば.387弾が装填された銃より発射されたのは、神経断裂弾。
対未確認生命体用に開発された特殊弾は、人間一人を仕留めるのに過剰な威力を誇る。
グロンギ族のラ・ドルド・グを死に追いやった程の銃弾だ。
自他共に射撃の腕が低いと認めざるを得ない杉元だが、この距離で外すような素人でもない。
外すことなく、一人の参加者の命を確実に奪うと確信していた。

もしもの話になるが。
ギニューが本来の体ならば銃弾程度、何ら脅威にならなかった。
余裕を持って軽く頭をずらして避けたり、指で弾いて防ぐ事だって簡単だ。
仮に弾が直撃したとしても、マトモな傷は付けられず、ほんの少しだけ痒いと感じるのが関の山だろう。
けれど、現在ギニューが入っている体は紛れも無い人間だ。
常人よりもずっと高い身体能力を有していようと、決して不死身では無い。
斬られれば血が出るし、撃たれて当たり所が悪ければ死ぬ。
まして頭部を直撃されたら即死は免れない。

そんなか弱い人間の体でギニューは、身を捩って神経断裂弾を『避けた』。

「はぁ!?」

驚愕の声が杉元の口から飛び出す。
ギニューの頭部を抉り脳みそを撒き散らすはずだった弾は、背後にある大木へ命中。
木の皮が弾け飛び、木片がパラパラと地面に落ちる。
ギニュー本人に被害はゼロ。

自身の背後で弾けるような音がしたのを聞き取り、
視線をズラせば、杉元のピンと伸びた腕の先に銃が握られているのを確認。
銃口から煙が立ち昇り、ツンとした火薬の臭いが鼻先を突く。
自身が銃で狙われたのだと、ギニューは理解する。


496 : Take Me Under ◆ytUSxp038U :2021/07/08(木) 00:41:25 ghWEPE4A0
敵が何をしたのか、その答えを高速回転する杉元の脳がはじき出す。
自分の銃の腕が下手過ぎたから外した?違う、そこまで間抜けじゃない。
発射された弾丸を避けた?違う、そうじゃない。
発射される直前に身を捩って弾丸を避けた。これか。
文字にすれば単純極まる行動。
しかし、それを実際の行動に移すのは簡単では無い。
杉元が銃を撃った時、ギニューはどんな状態だったか。
意識は完全に鳥束へ向けられていたはずだ。
杉元が狙ったのはそこ。こちらへ意識が向けられる前に仕留められる、完璧なタイミング。

杉元の判断は間違っていなかった。
もし、ここにいるのがギニューでなければ。
或いは竈門炭治郎の体に入っていなければ。
弾丸はほぼ確実に敵対者を貫き、神経をズタズタにしていた。
立っているのは杉元だけのはずっだった。
だがそうはならなかった。この結果に杉元は驚愕する。

(今のはなんだ…?)

もう一人、表情を驚き一色に染めている者が存在した。
それは弾丸を躱した他ならぬギニュー自身である。

用済みとなったケロロを射殺する寸前、ギニューは奇妙な臭いが漂うのを嗅ぎ取った。
今まで一度も嗅いだことの無い臭い、それが何故いきなり現れたのか分からず首を傾げる。
ただ分かる事は一つ。その臭いは非常に良くないものだと本能で理解する。
このまま臭いが漂ってくる場所、今いる所へ立っていては悪い事が起こるに違いない。
そんな予感に急かされるまま咄嗟に身を捩り、銃弾が通過したのはその直後。
謎の臭いを嗅いだ事で、ギニューは迫る死を回避できたのだった。

この臭いを嗅いだのはギニュー自身の力ではない。
元々は鳥束に与えられた体、竈門炭治郎が持つ力である。
炭治郎は一般的な人間を遥かに超える、優れた嗅覚を持つ。
その力は自然界に存在する匂い、人工物の匂いのみならず、生物の感情すらも嗅ぎ分ける事が可能なほど。
ギニューが嗅いだのは、杉元が放つ殺意の臭いとでも言うべきもの。
向けられる殺意を臭いとして感知し、攻撃の回避へと繋がった。
これが鳥束であれば謎の臭いに困惑するばかりで、回避など出来なかっただろう。
鳥束自身は霊能力者ではあるが、特別戦闘に優れた訳では無い。
だがギニューは違う。
フリーザの配下として幾つもの惑星で戦って来た戦士。
殺意を察知しながら何の反応も出来ないような素人など、とっくの昔にフリーザに切り捨てられいる。

一発の弾が発射され、しかしそれは避けられた。
双方にダメージは無く、戦闘に支障は無い。
どちらも驚愕こそあれど、杉元がギニューへ向ける殺意は消えておらず、
またギニューも仕掛けて来た杉元へ殺意をぶつける。
最早、衝突は避けられず、互いに避けるつもりは毛頭ない。

逸る鼓動と熱くなる頭を落ち着かせ、杉元は敵を睨みつける。
最初の一発で仕留められなかったのは痛い。
だがいつまでもソレを引き摺ったってどうにもならない。
今ので向こうの意識は完全に杉元へ向けられた。
間違いなく、こちらを全力で潰そうとするだろう。
ならばこちらも全力で迎え撃ち、今度こそ殺す。
姉畑や、カエルの体で痛みに泣き叫ぶ奴の事も気掛かりだ。
モタついてはいられない。
銃を握る手に力が籠り出す。

ギニューもまた、動揺を抑え敵を睨みつける。
どうやらあの奇妙な臭いは、新しく手に入れた体に備わる力らしい。
その証拠に、先程よりもより「殺意の臭い」が濃くなった。
臭いを放つのはこちらを撃ち殺そうとした白髪の少女。
あの変態天使や黄色い獣、今はケロロの中に入っている奴よりも戦い慣れた人間のようだ。
油断はできない。
この体もケロロに比べればずっとマシだが、脆弱な地球人な事には変わらない。
だが今はこの体で戦うしかない。


497 : Take Me Under ◆ytUSxp038U :2021/07/08(木) 00:42:26 ghWEPE4A0
爆発寸前の風船のように、二人の殺意が膨れ上がる。
彼らはお互いの名前も知らないが、重要なのはそこじゃない。
杉元にとってギニューは殺し合いに乗った人物であり、
ギニューにとって杉元は優勝する為に排除すべき障害のひとつ。
ただそれだけを理解できれば問題無い。

杉元佐一とギニュー。
蓬莱人と鬼狩りの肉体を得た両者は共に睨み合い。

戦闘が始まった。


「シッ!!」

先手を打ったのは杉元。右腕はそのまま、ぶら下げていた左腕を跳ね上げる。
再度コルト・パイソンの引き金を引き、神経断裂弾を撃つ。
攻撃は銃のみにあらず。
無手の左掌から放たれるのは火球。
藤原妹紅の妖術により生み出したソレもまた、ギニューを焼き殺さんと迫る。

弾丸により神経を破壊されるか。
それとも火球により姉畑と同じく皮膚を焼かれるか。
或いは両方か。

「それも臭いで分かるぞ!」

結果はそのどれでもない。
己へ向けられる濃厚な死の臭いを嗅ぎ、瞬時に回避へ移る。
火球は市松模様の羽織を僅かに焦がし、銃弾は髪の毛を数本落とす。
ただそれだけだ。致命傷どころかかすり傷にも程遠い。

ギニューの動きはただ避けてお終いではない。
杉元の攻撃とほぼ同時に駆け出していた。
炭治郎の体はケロロよりも速く走り、獲物へ一直線に突っ込んで行く。

馬鹿正直に突っ込む相手へ容赦はしない。
三度引き金を引こうとする杉元。
が、ここで予想外だったのは、ギニューの動きが予想以上に速いこと。
炭治郎の額に浮かび上がる炎のような痣。それによる身体能力の強化が為されているからだ。

今度はギニューの番である。
右手に持つのは支給品である松平の拳銃。
それを刃物で突き刺すかの如き勢いで、杉元目掛けて突きだした。

「死ねぃっ!!」

トリガーを引いたのは言葉の後か前か、或いは同時か。
狙うは杉元の頭部。
命中すればその可愛らしい顔にきれいな風穴ができる。
但しあくまで『命中すれば』の話である。
予想外の速さとはいえ接近する敵。
拳銃という分かりやすい凶器。
それらに何の対処もしないような愚鈍ならば、『不死身』などと呼ばれる事無く、どこぞの戦場でくたばっている。


498 : Take Me Under ◆ytUSxp038U :2021/07/08(木) 00:43:49 ghWEPE4A0
「舐めんなぁっ!!」

ガキン、と金属同士がぶつかり合う。
ギニューが撃った弾は明後日の方向へ向かい、木の枝の一番先にある葉を落とした。
回避は間に合わないと悟った杉元は、されど勝負を諦める事無く対処に回った。
己の銃、コルト・パイソンをギニューの銃へ叩きつけ、強引に射線をスラし、弾に肉が抉られるのを防いだ。
ぶつけ合った衝撃で、グリップを握る二人の手に痺れが走る。
それを無視し動き出す。こんなものに一々気を回す余裕は無い。
至近距離で互いの得物を振り回した。

杉元が銃口を向ければ、今度はギニューが銃を叩きつけ射線から逃れる。
相手の舌打ちを聞き流し、ギニューの銃が火を吹く。
しかし弾が当たった先は地面。杉元が銃底を振り下ろして叩きつけたからだ。
ギニューが悪態を吐く暇も無く、コルト・パイソンが顔面へ突き付けられようと動く。
だが弾は発射されない。自身の顔面へ振り下ろされた銃を、コルト・パイソンの銃身で防いだからだ。

金属同士が軋む音が二人の鼓膜へ伝わって来る。
リボルバーとオートマチック、それぞれの銃身で短剣のように鍔迫り合う。
互いに歯を剥き出して、眼前の敵を威嚇する。
まるで獰猛な獣のようだった。

「ガァアアアアア……!」
「シィイイイイイ……!」

唸った所で勝機は得られない。
このまま拮抗していては埒が明かないと判断したのはどちらが先か。
一手早かったのは杉元だ。
自由に動かせる左腕に炎を纏う。
DIOとの戦いを経て能力の使用にも慣れて来たからか、こんな状況でもすぐさま炎を出現させられた。
揺らめく炎に包まれた拳を、ギニューへと振るう。
顔を狙ったその一撃を、後方へと下がる事で避けた。
顔面のすぐ近くを炎が通過し、その熱さに表情が歪む。
その一瞬、ギニューが銃に掛ける力が揺らいだ。

僅か一瞬でも杉元には十分な好機。
ありったけの力でギニューの銃を押し返すと、向こうの体制が崩れる。
決定的な隙だ。

杉元の右脚がうねりを上げて放たれる。
蓬莱人の身体能力でプラスされた一撃が、ギニューの脇腹へ叩き込まれた。
呻きを漏らしながら横へ吹き飛ぶ。

一撃を与えた杉元だが、喜びの表情は無い。
彼は気付いていた。
蹴りを叩き込んだ時、ギニューは自ら飛び衝撃を緩和したと。
その証拠にあっさりと体制を立て直している。

戦いは終わっていない。
杉元へ向き直ったギニューは、直ぐに次の手へ打って出た。
炎を放たんとする杉元の頭上目掛けて、持っている銃を大きくぶん投げた。
これには杉元も一瞬固まる。
自らの武器を何故わざわざ手放すのか。もしや弾切れか?
だとしてもなんで何であんな所に投げる?
疑問に対する答えはすぐに分かった。
ギニューの行動に固まる自分、紛れも無い隙を晒した杉元へ敵が急接近してきたからだ。


499 : Take Me Under ◆ytUSxp038U :2021/07/08(木) 00:45:08 ghWEPE4A0
(クソッ!大馬鹿かよ俺は!)

まんまと敵の行動に気を取られた自分自身を罵倒する。
その間にもギニューは再度杉元の目前へと迫った。
銃を手放したギニューはどう攻撃するのか。
拳か?蹴りか?新たな武器を取り出すか?
答えはどれも不正解だ。
ギニューは自らの額を杉元の額へ力いっぱい叩きつけた。

「がっ……」

ギニュー、いや、この場合は炭治郎だろう。
何と言う石頭か。
鉄棒で殴られたかのように、杉元は視界がふらついた。
眼前の敵を見据えねばならないというのに、頭がグラグラと揺れて気持ちが悪い。
呻く杉元を尻目にギニューは先程上空へ投げた銃をキャッチする。
実に丁度いいタイミングで落ちて来た。

揺れる杉元の視界に移ったのは自信へ向けられる銃口。
そして勝利を確信したギニューの笑み。
腹正しい程に口の端を吊り上げた少年が、引き金を引いた。

銃声が響く。
弾丸は人体を貫いた。
血と肉が地面に飛び散って、緑の草を赤く汚す。
硝煙と血のすえた臭いが、ギニューの鼻孔へ侵入する。


「こ、この女……正気か…!?」

弾丸は確かに当たった。

咄嗟に銃身を咥えて、強引に銃口の狙い目をズラした杉元の頬を。


「ほれは、ふひみのふひほほふぁ!!(俺は、不死身の杉元だ!!)」


右の頬が吹き飛び歯肉が剥き出しとなり、呂律が回らなくなって。
それで尚も杉元は咆える。
頬が吹き飛んだ少女の顔は非常に痛々しい。
だがそれだけだ、死んではいない。
頬を吹き飛ばした程度で藤原妹紅は殺せない、杉元佐一は止められない。

再び炎を纏った左腕が振るわれる。
直撃すれば顔面は焼かれ、頬が吹き飛んだ杉元よりもずっと醜い面になる事間違いなし。
ギニューの銃は上下の歯で万力のようにガッチリと固定され取り出せない。
よって武器を手放す事を選択。拳銃一丁と己の命、どちらが重いか考えるまでも無い。
上体を大きく逸らす。それだけでは足りない。
両脚の筋肉を総動員し背後へ大きく跳ぶ。
致命傷は避けられたが、無傷とはいかなかった。
炎に中てられた顎から首にかけての部位がヒリヒリと痛む。

(野郎……!)

顔面丸ごと焼き潰してやるつもりで放ったが、結果は乏しくない。
ギニューは妹紅の炎やDIOの背後霊のような、目に見える特殊な力は出していない。
強いて言えば体を入れ替える術だが、戦闘中にポンポン使用できる類では無いだろう。
だが強い。ここまででロクなダメージを与えられていない。
杉元から見てもギニューの戦闘技術は厄介の一言に尽きる。
それも当然のこと。
ギニューはボディーチェンジによる強者との肉体交換のみで、ギニュー特戦隊隊長の座に就いた訳ではない。
ボディーチェンジした後も肉体を鍛え、技を磨き、一味の中でも上位の力を維持し続けたからこそ、
フリーザ直々に認められるまでに至ったのだから。


500 : Take Me Under ◆ytUSxp038U :2021/07/08(木) 00:46:15 ghWEPE4A0
(イカレてるのかこの女は…!)

そんなギニューからしても、杉元は脅威と認識された。
炎を操る能力も、良く鍛えられた体術も見事なものだとは認める。
だが、それだけでは何ら恐れるに足りない。
ギニューが警戒するのは、杉元の勝利への執念。
先程銃弾を逸らしたのだって、ほんの僅かに行動が遅れていれば頬じゃなく脳が吹き飛んでいた。
にも関わらず、何の躊躇も無しに行動に移れる決断力。
こういう手合いは下手に生かしておけば、こちらを殺すまで何度も食らいつく。
確信を持って言える事だ。

ここから先は更なる激戦にもつれ込む。
そう予感させる緊迫した空気は、互いに望まぬ形で霧散された。

「ひええええええええええええ!!助けてくれっす〜〜!!!」

気の抜けそうな悲鳴が響き渡る。
声の主は二人の戦闘にすっかり置いて行かれた鳥束であった。
ケロロの体を引き摺り、必死に何かから逃れようとしている。

「ああああ…何て、何て醜い……殺さなくては…絶対に……!」

ボロキレのようになったケロン人を狙うのは、変態天使こと姉畑。
キラキラしていた目は血走っており、手に握られているのははドリルのような形状の剣。
善逸やギニューに欲情していた時とは別の方向に、危険な雰囲気を醸し出している。

全身が焼け爛れた姉畑は激痛の余り、自分はここで死んでしまうのではと悲観した。
折角ポケモンやまだ見ぬ生物と交わるチャンスを得られたのに、人型カエルに一発射精しただけで終わり。
そんなのはあんまりだと年甲斐もなく涙が零れそうになる。
だが、ふと自身の支給品の存在を思い出す。
説明書通りならば助かるかもしれない物がデイパックに入っているのだ。

(死ねない、私はまだ死にたくない…!もっと沢山の大好きな動物と交わりたいんだ…!!)

一抹の可能性に賭け、その支給品をデイパックより取り出した。
手にしたのは瓶に入った青い液体。
現代人が見たらブルーハワイのシロップを連想させる青さをしている。
姉畑はコルクを外すと、怪しげな色の液体を一気に飲み干した。

「な、何と言うことだ…!!」

焼け爛れていた肌が見る見るうちに回復し、元の白い肌となる。
あれ程の傷をものの一瞬で完治するなど、どんな医者でも不可能だ。
奇跡のようなアイテムの存在を姉畑は心より感謝した。
傷も治った所で、悶え苦しむ鳥束を見ると、ある感情が浮かび上がった。

「わ、私は何て事を…許されない…こんな醜い事は許されない……!!」

ブツブツ呟きながら、デイパックより取り出したドリル状の剣を強く握る。
この異様な状態こそ姉畑が網走監獄送りになった原因であり、冤罪を掛けられた谷垣が殺されそうになった原因でもある。
尾形曰く、「出すものを出した」事により、己の所業のおぞましさに向き合わされた状態とも言うべきか。
この状態の姉畑はウコチャヌプコロした動物を惨殺する異常者と化す。
それは中身が人間であっても容赦せず、鳥束が入っているケロロ目掛けてドリルを振り下ろさんとした。


501 : Take Me Under ◆ytUSxp038U :2021/07/08(木) 00:47:35 ghWEPE4A0
「醜い!消し去らなければぁっ!!」
「ピカァアアアアアアアアアアアアアアッ!!!(やめろおおおおおおおおおおおおおおっ!!!)」
「あぅんっ!!」

ドリルで貫こうとした姉畑は、背後からの衝撃によろけた。
体当たりを仕掛け姉畑の凶行を阻止したのは黄色いポケモン、ピカチュウの体に入った善逸だ。

善逸もまた、杉元達の戦闘やいきなり様子がおかしくなったカエルと炭治郎に困惑していた。
だが彼も杉元同様、鳥束達の体が入れ替わった事に薄々気付いた。
ゲスなスケベ野郎だが悪人ではないはずの鳥束が、態度を豹変させカエルを殺そうとしたのは幾らなんでも唐突過ぎたし、
尻の痛みに悶絶するカエルの口調が鳥束のものと全く同じになったのも明らかにおかしい。
何よりも、殺気を振り撒き杉元とぶつかり合う炭治郎の姿と、自身と共に行動していた炭治郎の姿は中身が別人と考えた方が、荒唐無稽だが納得できる。

そして鳥束の精神が入っていると何となく分かった以上、殺させる訳にはいかない。
逃げ出したくなる程の恐怖を押し殺して止めに入れたのは、仮にも上弦や無惨との戦闘を経験してきたおかげだろう。

「なひひふぇんふぁへんふぇい!ひははんふぁはふぁひひゃふぇえはほ!?(何してんだ先生!今はんな場合じゃねえだろ!?)」

姉畑の悪癖を知っているとはいえ、この非常時にまでそれは無いだろと杉元は頭を抱える。
自身への警戒が薄れた瞬間、ギニューは杉元達から離れる。
気付いた杉元が追おうとすると、何かを投擲し牽制した。
姉畑に使った爆弾かと身構えるが、投擲したものの正体は拳銃の予備マガジン。
既に銃が手元から失われている以上、弾だけ持っていても使い道など皆無。
手放すのに何の躊躇も無い。

次いでギニューは更に支給品を取り出す。
姉畑に使った爆弾かと杉元が身構えるが、その予想は大きく外れた。
出て来たのは何と巨大な魚。
シートとハンドルを付けたトビウオが現れた。

「はぁあああああああ!?」
「な、何て素晴らしい…!」

一体幾つ珍獣が飛び出すんだと目を剥く杉元。
ついでに姉畑は新たな巨大動物の出現に鳥束への殺意を忘れて目を輝かせていた。
彼らのリアクションには一切構わず、トビウオに乗ったギニューはハンドルを握る。
それに反応してか、トビウオは空へと浮かび上がった。

「まひやはへへふぇへ!(待ちやがれテメェ!)」
「断る!だが次に会った時こそ貴様らの最後だ!」

トビウオの腹を軽く蹴ると、あっという間に杉元達の前から飛び去った。
何で魚が空を飛んでるのかとか、どうしてあんなにデカいんだなどの疑問はもうどだっていい。
一々ツッコんでいたらキリが無い。
飛行能力ならば杉元にもある。
こちらも飛んで追いかけようとするが、姉畑の存在がそれに待ったを掛ける。
ここに善逸達を置いて行けば姉畑にナニをされるか分かったもんじゃない。
かといって連れて行こうにも、ギニューとの戦闘中善逸達に気を回さなければならなくなる。
それに鳥束の方は重症。
さっきは喧しく痛みを訴えていたが、そんな体力も無くなって来たのか徐々に静かになっている。

(わざわざ助けてやる義理はねぇが……)

それでも見捨てる事に抵抗があるのは、アシリパと共に旅をしてきた影響だろうか。


502 : Take Me Under ◆ytUSxp038U :2021/07/08(木) 00:50:22 ghWEPE4A0
「ひょうはねぇ、ひふほ!(しょうがねぇ!いくぞ!)」
「ピカ!?(うえっ!?)」
「ひ、ひぎぃ…。もっと優しく…ケツに響くっす…」

二匹の珍獣を持ち上げるとその場を去る。
ついでにギニューが落としていった銃も回収する。
ここから北西の方角に行けば街があるのは地図で確認済み。
街ならば病院の一つや二つくらいは有るはず。

「待ってください!私はまだピカチュウ君と……」

こちらの逃走に姉畑が気付くが無視。
彼と一緒に行動しては善逸達が常に危険に晒される。
姉畑はギニューが乗っていたトビウオを追うか、こちらを追うかで悩んでいるようだった。
ならその隙にさっさと行かせてもらう。
蓬莱人の身体能力ならば姉畑を撒くのも容易い。

(ほんっとうに、面倒なもんに巻き込まれちまったよクソッタレ!)

改めて殺し合いへの悪態を内心で吐き捨て、杉元は全速力で駆けだした。


【F-3とE-3の境目 道路/黎明】

【杉元佐一@ゴールデンカムイ】
[身体]:藤原妹紅@東方project
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、骨折、霊力消費(小)、右頬に銃創、再生中
[装備]:神経断裂弾装填済みコルト・パイソン6インチ(4/6)@仮面ライダークウガ
[道具]:基本支給品、神経断裂弾×36@仮面ライダークウガ、松平の拳銃@銀魂、予備マガジン、ランダム支給品×0〜2(確認済)
[思考・状況]
基本方針:なんにしろ主催者をシメて帰りたい。身体は……持ち主に悪いが最悪諦める。
1:こいつら(善逸と鳥束)を連れて街を目指す。病院くらいあるだろ、多分。
2:俺やアシリパさんの身体ないよな? ないと言ってくれ。
3:なんで先生いるの!? できれば殺したくないが…。
3:不死身だとしても死ぬ前提の動きはしない(なお無茶はする模様)。
4:DIOの仲間の可能性がある空条承太郎、ヴァニラ・アイスに警戒。
5:この入れ物は便利だから持って帰ろっかな。
[備考]
※参戦時期は流氷で尾形が撃たれてから病院へ連れて行く間です。
※二回までは死亡から復活できますが、三回目の死亡で復活は出来ません。
※パゼストバイフェニックス、および再生せず魂のみ維持することは制限で使用不可です。
 死亡後長くとも五分で強制的に復活されますが、復活の場所は一エリア程度までは移動可能。
※飛翔は短時間なら可能です
※鳳翼天翔、ウーに類似した攻撃を覚えました
※鳥束とギニュー(どちらも名前は知らない)の体が入れ替わったと考えています。

【鳥束零太@斉木楠雄のψ難】
[身体]:ケロロ軍曹@ケロロ軍曹
[状態]:精神的疲労(大)、肛門裂傷(大)、内臓にダメージ
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本方針:女の子にモテる!
1:ケツとお腹がめっちゃ痛い…
2:モテる計画が……
[備考]
※ボディーチェンジによりケロロの体に入れ替わりました。

【我妻善逸@鬼滅の刃】
[身体]:ピカチュウ@ポケットモンスターシリーズ
[状態]:精神的疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本方針:殺し合いは止めたいけど、この体でどうすればいいんだ
1:このお姉さんに付いて行く。こいつ(鳥束)大丈夫かな…
2:炭治郎の体が……
3:どうにか名簿を確認したい
[備考]
参戦時期は鬼舞辻無惨を倒した後に、竈門家に向かっている途中の頃です。
現在判明している使える技は「かみなり」「でんこうせっか」「10まんボルト」の3つです。
他に使える技は後の書き手におまかせします。
鳥束とギニュー(名前は知らない)の体が入れ替わったと考えています。


◆◆◆


503 : Take Me Under ◆ytUSxp038U :2021/07/08(木) 00:51:48 ghWEPE4A0
「ああ、皆行ってしまいました……」

取り残された姉畑はがっくりと肩を落とす。
ギニューを追うか、それとも善逸達を追うか。
体は一つしか無いので、どちらか一方は諦めなければならない。
最初の目的であるピカチュウと交わってみたいが、あの巨大なトビウオも捨てがたい。
どっちにすれば良いんだと迷った挙句決められず、結局どちらにも逃げられてしまった。

「だって仕方ないじゃありませんか。どっちも魅力的なんだもの、大好きなんだもの」

言い訳したらどっちもひょっこり戻って来る、
何て都合の良い展開が起きるはず無く冷たい風が吹くだけだった。

「ええーい!くよくよしてたってしょうがない!」

気合を入れ直すように、自身の頬をはたく。
逃げられたのは残念だが、収穫もあった。
ここにはピカチュウだけじゃなく、喋るカエルや空飛ぶトビウオなど見た事の無い神秘的な動物がまだまだ沢山いるのだ。
それらもポケモンなのか、若しくはポケモンとはまた別の種族なのか。
興味は尽きず、まだ見ぬ動物たちと愛を交わせると想像しただけで股座がいきり立つ。

「待っててくださいね愛おしい動物たち!君達全員と交わるまで、私は絶対にしにませんよーっ!!」

全ての参加者にとって傍迷惑極まりない決意を固める姉畑であった。


【F-3 森と道路の境目/黎明】

【姉畑支遁@ゴールデンカムイ】
[身体]:クリムヴェール@異種族レビュアーズ
[状態]:疲労(中)、未知の動物の存在への興奮、一発射精したのでスッキリ
[装備]:ドリルクラッシャー@仮面ライダービルド、逸れる指輪(ディフレクション・リング)@オーバーロード
[道具]:基本支給品×2(我妻善逸の分を含む)、青いポーション×2@オーバーロード、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
基本方針:色んな生き物と交わってみたい
1:どこへ向かいましょうか?
2:ピカチュウや巨大なトビウオと交わりたい。他の生き物も探してみる。
3:喋るカエルは次に出会ったら…
4:何故あの少女は私の事を知っていたのでしょう?
[備考]
網走監獄を脱獄後、谷垣源次郎一行と出会うよりも前から参戦です。
ピカチュウのプロフィールを確認しました。
周囲に雷が落ちた音が響きました。近くの誰かがこの音を聞く可能性があります。


◆◆◆


戦場から離れたギニューはトビウオを降り、デイパックに仕舞った。
このトビウオ、移動手段としては申し分ない。
ケロロの体の時はトビウオが大きすぎて乗りこなすのは難しそうだったが、こうして地球人の体になった今ならばその心配も無用となった。
しかし、これを気軽に乗り回す気は無い。
巨大な魚に乗って空中を移動するなんて目立って仕方がない。
好戦的な参加者からすれば、どうぞ撃ち落としてくださいと言っているようなものだろう。

「ふぅ…」

近くにあった川の水を掬い、顔に浴びせる。
戦闘の後だからか、冷たい水が心地よかった
杉元に焼かれた箇所を冷やす意外にも、怒りに支配されていた頭を冷やし、冷静さを取り戻す目的もある。

先程の戦闘で自ら退いたのはそれが原因だ。
傷一つ無くピンピンした姉畑を目にした途端、ギニューの中に湧き上がったのは耐え難い屈辱と怒り。
自分にあんなふざけた真似をしたこの変態だけは生かしておけない。
今すぐ嬲り殺しにしてやると、杉元との戦闘中だというのに意識が持っていかれた。
が、その怒りを僅かに残った冷静な部分が押し留めた。
怒りに身を任せて姉畑を殺しに掛かり、致命的な隙を杉元に晒す。
そんな事態になるのはマズい。

(次に会ったら必ず殺す。だが奴の死はあくまで通過点に過ぎん!)

ギニューの目的は優勝してフリーザを蘇生させること。
姉畑殺害に拘る余り、足元を掬われてはならない。
殺したい程の怒りは健在だが、それだけに囚われるつもりはギニューにはなかった。

(新たな体は手に入ったが、このガキの体で優勝は難しいだろうな……)

鳥束から奪ったプロフィールで、体の持ち主の詳細は把握した。
決して弱いとは言わないが、とりたて強いとも言えない。
それがギニューの竈門炭治郎への感想。
鬼という化け物と戦って来ただけあって、身体能力はナメック星で戦った地球人程では無いが高い。
優れた嗅覚の有用性は、杉元との戦闘で十分理解できた。
しかし炭治郎の本領でもある『呼吸』と『透き通る世界』、これらをどう使えば良いかが分からない。
ただ単純に深呼吸すれば身体機能が強化される、などではあるまい。
炭治郎が所属していた鬼殺隊なる組織の人間ならばともかく、
具体的にどうすれば『呼吸』や『透き通る世界』を使えるかがプロフィールに記載されて無かった以上、ギニューに知る術は無い。


504 : Take Me Under ◆ytUSxp038U :2021/07/08(木) 00:53:06 ghWEPE4A0
(まぁいい。炭治郎よりも強い体を見つけたら、再びボディーチェンジすれば良いのだからな)

鳥束のデイパックに入っていた刀を腰に差す。
炭治郎ら鬼殺隊の人間は剣術が得意らしい。
ギニュー自身は武器に頼らない肉弾戦が好みだが、今はそんな拘りは捨てる時。
銃だろうが刀だろうが爆弾だろうが、使える物は全て使う。
優勝するのに手段など選んでいる場合か。

「再び銀河にフリーザ一味の名を轟かせる為に、もう暫くお待ちくださいフリーザ様…!」

全ては偉大なる宇宙の帝王の為に。
優しき少年の体は、邪悪な精神の器として参加者に牙を剥こうとしていた。


【E-4 池/黎明】

【ギニュー@ドラゴンボール】
[身体]:竈門炭治郎@鬼滅の刃
[状態]:疲労(中)、首から顎にかけて火傷、姉畑への怒りと屈辱(暴走しない程度にはキープ)
[装備]:竈門炭治郎の日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品×2、メギドボム×2@ペルソナ5、トビウオ@ONE PIECE、ランダム支給品0〜2(鳥束の分)
[思考・状況]
基本方針:優勝し、フリーザを復活させる
1:強敵と遭遇したら、ボディーチェンジで体を奪う
2:もしベジータの体があったら優先して奪う。一応孫悟空の体を奪う事も視野に入れている
3:可能であれば『呼吸』や『透き通る世界』を使えるようになりたい
4:変態天使(姉畑)は次に会ったら必ず殺す。但し奴の殺害のみに拘る気は無い
5:炎を操る女(杉元)にも警戒しておく
[備考]
参戦時期はナメック星編終了後
ボディーチェンジにより炭治郎の体に入れ替わりました

【コルト・パイソン6インチ@仮面ライダークウガ】
1955年にアメリカで開発された回転式拳銃。.357口径弾使用。
未確認生命体鎮圧用として支給された主武装。
ペガサスフォームへ変身時のクウガに譲渡し、ペガサスボウガンに変化させるのにも使う。

【神経断裂弾@仮面ライダークウガ】
対未確認生命体用の特殊弾。
撃ち込んだ弾丸が体内で連鎖的に炸裂することで、グロンギの驚異的な回復力の源である神経組織を破壊し、ダメージを与える。

【ドリルクラッシャー@仮面ライダービルド】
ビルドの基本武装である可変型武器。
ドリル状の刃で斬り裂くブレードモード、ドリルパーツを外し組み立て直す事で変形完了するガンモードの2形態がある。
戦兎や万丈は変身前にも度々使っていた。

【逸れる指輪(ディフレクション・リング)@オーバーロード】
王国の裏組織・八本指、警備部門の六腕の一人であるデイバーノックが装備している指輪。
射撃武器に対する守りを得る。

【青いポーション@オーバーロード】
錬金術溶液と魔法を組み合わせて生成したポーション。
即効性が高く即座に効果が現れるが、その分値段もかなり張る。

【竈門炭治郎の日輪刀@鬼滅の刃】
竈門炭次郎が刀鍛冶の里で手に入れた日輪刀。
縁壱零式の内部に隠されていた戦国時代の刀を、鋼鐵塚蛍が研ぎ直し再び使えるように仕上げた。
鍔は煉獄杏寿郎の遺品が使われている。

【メギドボム@ペルソナ5】
シャドウとの戦闘時に使う消費アイテム。
敵全体に属性無視の攻撃を与える。

【トビウオ@ONE PIECE】
トビウオライダーズが乗り物としているトビウオ。
人を乗せられるほどの大きさで、トビウオライダーズはシートとハンドルを付けてさながらバイクのように乗り回している。
一度飛び立てば5分間は飛行し続ける事ができる。空中で旋回したり上昇したりと飛行能力は高い。


505 : ◆ytUSxp038U :2021/07/08(木) 00:54:07 ghWEPE4A0
投下終了です


506 : 名無しさん :2021/07/08(木) 11:35:11 Diiyk0S.0
投下乙です。
やりやがったよ姉畑先生!!
姉畑先生×ケロロinギニューとかどこに需要あるんだよとか思いながらも、
全力でウコチャヌプコロしていて草生えました!

ウコチャヌプコロだけではなく、ウコチャヌプコロされながらも逆転の手を考えるギニュー、
戸惑いながらも最適解を見出す杉元など、見ごたえのある要素が多い話でした!!
改めて大作の投下乙です!!


507 : ◆ytUSxp038U :2021/07/09(金) 11:45:24 KIRf6KvU0
感想ありがとうございます。励みになります

野原しんのすけ、煉獄杏寿郎、エボルト、雨宮蓮、グレーテ・ザムザ、絵美理を予約します


508 : ◆ytUSxp038U :2021/07/12(月) 15:30:41 kLUwTymA0
投下します


509 : 燃え上がるこの想いの果て ◆ytUSxp038U :2021/07/12(月) 15:32:21 kLUwTymA0
「お?シロのお名前があるゾ?」

ボンドルドを倒す決意を胸に、手を取り合ったしんのすけと煉獄。
二人がまず最初に行おうとしたのは、協力できる仲間を探すことだった。
鬼殺隊の炎柱としての実力を持つ煉獄、地球の危機を何度も救った孫悟空の体を持つしんのすけ。
そんな二人の力を以てしても、苦戦は免れないであろうボンドルドら主催者。
更には別人の体になっているとはいえ、鬼の首魁である鬼舞辻無惨も参加している。
そういった者達と戦い勝利するには、仲間の存在が必要不可欠。
なので手始めにお互いの知り合いで信頼できる人物を探そうという話になった。
が、話を聞くにしんのすけはまだ名簿の確認をしていないとのこと。
煉獄に促されるまま名簿を見て、そこに飼い犬の名があるのを見つけたのだった。

「白?いや、シロか。しんのすけ少年の知り合いか?」
「オラんちで飼ってるペットだゾ。お尻合いよりももーっと深い関係ですな〜」
「ぺっと?…飼っていると言う事は犬か何かか?」
「そうだゾ〜」

ふむ、と顎に手を当て煉獄は考える。
しんのすけの知り合いも巻き込まれている可能性は考慮していた。
だがまさか、両親や友人ではなく飼い犬とは。

「しんのすけ少年。念の為、そのシロという犬の事を教えてくれないか?」

特に断る理由も無いので、快く答える。
元は捨てられていた所をしんのすけが拾い、一度は母であるみさえに反対されたものの紆余曲折を経て野原家の一員になったこと。
その名の通り白くふわふわとした毛皮が特徴で、メスの可愛い犬が好きな困った奴だと肩を竦めながら説明した。
この場にしんのすけを知る者がいたら、「お前にそっくりだろ」と呆れ交じりにツッコんだだろう。

(ボンドルド…一体何を考えている?)

しんのすけの説明を受けた煉獄は一つの疑問を抱く。
ボンドルドはどういう基準で参加者を選出したのか?
殺し合いには自身を含めた鬼殺隊の人間が数名、それに無惨が参加している。
この内無惨の参加は理解できる。
殺し合いをさせるのならば、鬼殺隊の宿敵であるあの存在ほど条件に合う者もいまい。
体が変わろうと関係なく、暴虐を振り撒いているのだろう。
次に自分たち鬼殺隊。これも納得はできないがある程度理解はできる。
この地に無惨や人を襲う鬼が参加者しているのなら、当然自分達はそれらの参加者を容赦なく斬る。
鬼殺隊にとっては己の責務を全うしているに過ぎないが、ボンドルドからすればそれもまた参加者同士の殺し合いだ。
ボンドルドの言い成りになる気など毛先程も無いとはいえ、結果的には主催者の望む殺し合いという形になる。
だから自分達を参加させる理由も分からなくはない。
しかし、それらに当て嵌まらない者達もいる。

(しんのすけ少年と、その飼い犬。何故彼らを参加させた?)

野原しんのすけとシロ。
この5歳児と犬まで参加しているのは、余りにも不可解でならない。

(不謹慎ではあるが、しんのすけ少年の体である孫悟空という人物が参加するのならばまだ分かる。しかし……)

しんのすけは別人の体にされる異常事態でも自分を見失わず、力強い言葉で協力を約束してくれた。
幼いながらも、大人顔負けの勇気の持ち主である。
それでも彼はまだ5歳。
殺し合いの正確なルールを理解していない。
というかこれが殺し合いである事自体を分かっていない。
これでは如何に孫悟空という強力な肉体があっても、ボンドルド達の望む殺し合いには発展しないのではないか。
おまけに人間でも鬼でもない、犬まで参加させる事に何の意味があるのかも分からない。

(それとも…ただ殺し合わせるだけが目的では無い…?)

そもそもの話。
ただ単に参加者同士を殺し合わせるだけが目的なら、鬼殺隊やしんのすけ達を参加させる理由は皆無である。
それより人殺しに躊躇の無い危険人物で固めた方が手っ取り早いはず。
だが現実に自分達はこうして殺し合いに参加させられている。
殺し合いに反対する者や、殺し合い事態を理解していない者もボンドルド達にとっては必要な人材として集められたということか。
参加者全員に共通している、別人の体に精神を移された。
この工程こそが殺し合いのキモであり、他人の肉体で殺し合いという極限状態の中を生き抜く。
その果てにボンドルド達が欲するなにかが手に入るとでも言うのだろうか。
どれだけ考えても明確な答えは出ず、疑問ばかりが浮かんでくる。


510 : 燃え上がるこの想いの果て ◆ytUSxp038U :2021/07/12(月) 15:33:15 kLUwTymA0
(…どの道、俺がやる事に変わりは無いな)

あれこれ考えても正解が何かは分からない。
だがそれは、殺し合いを止めるという決意には何ら影響しなかった。
結局のところ、ボンドルドが何を考えていようと関係無いのだ。
人の命と尊厳を踏みにじった時点で、煉獄にとっては敵でしかないのだから。

(となると、シロの事も見つけてやらねばな)

しんのすけから聞く限りでは、凶暴性など無い普通の犬。
飼い主同様に元気いっぱいな性格で会場を駆けているのか、或いは殺し合いに乗った者に追い回されているのかもしれない。
どちらにせよ放って置くつもりはなく、保護してしんのすけと会わせてやりたい。
犬とはいえしんのすけにとっては大切な家族。
こんな場所で死に別れて良い理由などあるものか。

「煉獄のお兄さん?どうかしたの〜?」
「いや気にするな!シロ以外に知っている名は見つかったか?」
「無かったゾ…お?他にもカバンに何か入ってるゾ」
「む?しんのすけ少年はまだ支給品を見ていなかったのだな!ならば今の内に確認するといい!」

悟空の体にすっかり気を取られてしまい、デイパックの確認を忘れていた。
『しきゅうひん』と言うのに一瞬ハテナマークが浮かんだが、カバンの中身の事だと理解、
中身をゴソゴソと漁ってみる。

「お?なんだこれ?」
「箱…だな」

しんのすけが取り出したのは箱、というよりタッパーだろう。
かなり大きめのサイズでズッシリと重みがある。
何が入っているのやらと不思議そうに開けてみた。

「お〜!お肉がいっぱいだゾ〜」
「成程、食料だったか」

タッパーの中には肉がギッシリと詰まっていた。
紐で上部を縛り袋のような形になっている。
しんのすけが一つ摘まみ上げてみると、弾力がぶるんと揺れた。
肉は肉でも見た事の無い、何の肉か分からない。
だが見ていると妙に食欲を刺激される。
試しに一口齧ってみた。

「いや〜ん、とってもプルプル〜」

柔らかさに思わず、しんのすけは頬を赤らめ腰をくねらせた。
傍から見れば大の大人が奇行に走ったかのようだが、中身が子どもであると知っている煉獄からすれば微笑ましいものである。

「煉獄のお兄さんも食べてみれば〜?」
「良いのか?これはしんのすけ少年のものだろう?」
「だいじょぶだいじょぶ〜。美味しい物は皆で食べた方がもっと美味しいってとーちゃんも言ってたゾ?」
「はは!しんのすけ少年の父上は良い事を仰る御仁だな!ではその言葉に甘えるとしよう!」

煉獄から見ても謎の肉は美味そうに見えた。
それに、これから戦いに臨むのならば腹ごしらえをしておいて損は無い。
戦いに勝つにはしっかりとした食事を取っておくのも、重要な要素である。
肉を支給されたしんのすけ本人も進めてくれたのもあり、一つ手に取った。
実際に持ってみると外見よりも重さがあるのが分かる。
さて一体どんな味かと期待しつつ、豪快に齧りついた。


511 : 燃え上がるこの想いの果て ◆ytUSxp038U :2021/07/12(月) 15:34:45 kLUwTymA0
「美味い!!」

元気の塊のような声が出る。
率直で、実に分かりやすい感想だった。
しかしだ、煉獄としては肉の味は「美味い」の一言に尽きるのだから仕方ない。
たった三文字に、溢れんばかりの驚きと喜びが詰まっている。

「美味い!実に美味い!よもやこれ程美味な肉があったとは!」
「ほーほー、それは何よりですな。良かったらもう一つどうぞ〜」
「おお!それは有難い!できる事なら甘露寺にも食べさせてやりたいくらいだ!」
「オラももう一個食べちゃお〜っと」

二人ともすっかり肉の魅力に憑りつかれたのか、夢中で食べる。
肉は驚くほどに柔らかい。
陳腐な喩えだが、口に入れた途端にとろけだす程だった。
何をどうすればここまでの柔らかさになるのか。
それに味も文句なしに美味い。
以前、列車で食べた弁当とはまた違った美味さの肉に少しだけ感動する。
無限に等しい胃袋を持つ悟空の体だからか、しんのすけはまだまだ余裕で食べれそうだった。
が、不意に食べる手を止めると、残った肉を見て何かを考える。

「うーん……」
「どうしたしんのすけ少年?」
「…このお肉、残りはシロに取っておきたいゾ…。だから……」
「む!ならば心配するな!俺はもう十分食べた!」

少しだけ言いにくそうにするしんのすけの様子に察し、皆まで言うなばかりにと返す。
家族にもこの美味しさを分けてやりたい少年の気持ちを無視するような、大人げない真似をする気は無い。

「おー!ありがとごぜます〜」

礼を言いタッパーに蓋をする。
二人で結構な量を食べたが、シロの分としては十分な数が残っている。
後はシロ本人を無事見つければ良いだけだ。

「食事も済んだ事だし、改めて出発するぞしんのすけ少年!まずは君の愛犬のシロを探しに行こう!」
「ほっほーい!…あれ?でも煉獄のお兄さんにも探したい人がいるんじゃないの?」

首を傾げるしんのすけ。
その言葉通り、煉獄は鬼殺隊の仲間との合流を急ぎたいと考えている。
しのぶと悲鳴嶼の実力の程は理解しているし、善逸もまた己に出来る事を全力でやっているはず。
だが彼らがどんな体に入っているのか分からない以上、絶対に大丈夫だとはさしもの煉獄も言えない。
それにお館様こと耀哉、彼は元々病人だ。
仮に健康な体を与えられているとしても戦闘に関しては全くの素人、不意を取られる危険は十分ある。

「確かに皆を全く心配していないと言えば嘘になる!しかしだ!
 俺は君の仲間として、しんのすけ少年の家族を見つけてやりたいと思っている!」

それは嘘偽りない本心だった。
家族を理不尽に奪われる、そんな者は鬼殺隊で数え切れない程に見て来た。
かくゆう煉獄自身も、最愛の母を病で亡くしている。
だからこそ、こんな理不尽な催しで少年に同じ悲しみを味あわせたくは無いと、そんな思いが込められた故の決断だった。

「ほうほう。煉獄のお兄さんがシロを探してくれるなら〜、オラもお兄さんがお友だちを探すのをお手伝いするゾ〜!」
「それは嬉しいなしんのすけ少年!ならば俺は、君を無事に家族と再会させると約束しよう!」
「お約束ですか〜。それなら……」

何かを思い付いたしんのすけは、煉獄に手招きするようなジェスチャーをする。
煉獄は不思議に思いながらも、そっと顔を近づけた。
するとしんのすけは内緒話をするように、煉獄の耳に口を近づけ…

「フゥ〜♥」
「ぬおっ!?」

吐息を吹きかけた。
ゾワリとした感触に煉獄は思わずのけ反る。

「いきなり驚いたぞ!しんのすけ少年!」
「あは〜ん、オラのかわいいお茶目だから許して〜ん♥」

悪びれず、何故かしんのすけは顔を赤らめる。
これが友人である風間トオルであれば息を吹きかけられた途端に恍惚の表情で崩れ落ち、
羞恥からしんのすけに激怒しただろう。
煉獄はあくまで子どものちょっとした悪戯と受け止め、怒りの感情は無かった。


512 : 燃え上がるこの想いの果て ◆ytUSxp038U :2021/07/12(月) 15:35:57 kLUwTymA0
「…ん?今のをやりたかっただけか?」

しんのすけが耳打ちをしようとしたので、てっきり大事な話があるのかと思った。
が、実際は悪戯されただけであり、何がしたかったのかと困惑する。
別に話が無いならそれでも問題ないのだが、少しだけ引っかかった。

「ハッ、オラとした事がついやっちゃったゾ…。ねーねー煉獄のお兄さん、お約束するんだったらやらなきゃいけないのがあるゾ」

再び煉獄に顔を近づけ耳打ちをする。
今度は吐息を吹きかけず、しんのすけなりに真面目に話した。

「何と…そのような動作が必要だとは初耳だ!」
「んも〜、お兄さんったら遅れてる〜。オラと父ちゃんはいっつもやってるんだから〜」
「父上と、か……」

煉獄はしんのすけの父がどんな人物なのかは知らない。
だがしんのすけの口振りからして、家族仲が非常に良いと言う事は十分窺える。
仲睦まじい父子。
しんのすけが持っているのは、自分と父の間からは失われたもの。
今でも父を尊敬し、家族として愛しているのは変わらない。
だけど、家族として理想の形にあるとはお世辞にも言えない。
自分の死後に我が家に何か変化が起きたかは分からないし、ひょっとしたら父が炭治郎に迷惑を掛けてしまったかもしれない。
それを考え、ほんの一瞬だけ煉獄の表情に影が差した。
しかししんのすけが気付く間もなく、すぐに元通りになる。
自分のせいで不安にさせる訳にはいかないのだから。

それよりもとしんのすけが話した事を考える。
何でも男同士で約束をする時は、特別な動きをしなければならないらしい。
それが少なくとも野原家ではお馴染みなのだと、どこか得意気に説明された。

「承知した!俺も男として一度決めた約束を果たす為に、君の言う通りにやってみよう!」
「煉獄のお兄さんはノリがいいですな〜」

快く承諾してくれたからか、しんのすけも上機嫌になった。
しんのすけの説明通りにすべく、お互い向かい合う。
そして一瞬の沈黙の後、

「「男同士の!」」
「「お約束ぅうううううううううううううう!!!」

互いに大股開きで膝を曲げ、腕と腕を強くぶつけ合う。
反対の腕は斜め上へピンと伸ばしている。
まるでアクション仮面がお馴染みのポーズをした時のような、綺麗な角度だった。
これこそしんのすけがひろしと度々行っている、男同士のお約束のポーズ。
これ以外にも様々なポーズのバリエーションが存在するが、その全てがみさえからは「他所ではやらないで」と釘を刺されている。

ポーズをし終えて、さていい加減移動するかとなった時、
煉獄の雰囲気が変わった。
先程までの朗らかさは鳴りを潜め、警戒するように一点を見つめる。

「お兄さん?」

突然の態度に困惑するしんのすけも、何があるのかと煉獄が見ている方へ顔を向ける。
そこにはこちらへ走って来る、巨大な虫の姿があった。


◆◆◆


513 : 燃え上がるこの想いの果て ◆ytUSxp038U :2021/07/12(月) 15:37:29 kLUwTymA0
目を覚ます。
真っ先に飛び込んで来たのは、見覚えのある天井。
部屋の中は暗く、窓から差し込む月の光で僅かに照らされているのみ。
居候先である喫茶店の屋根裏。
保護観察中の自分にあてがわれた自室。

この部屋にも何だかんだ慣れて来た気がする。
初めてここに来た時は酷い有様だった。
埃まみれでガラクタが散乱状態。
何年も使っていない事は一目で分かった。
とはいえ暴行の前科が付いた自分をわざわざ引き取ってくれる人間がいただけでも有難いことだ。
面と向かって家主に文句など言えるはずも無い。

あれから数ヶ月経ったが、屋根裏部屋は最初に比べるとかなりマシになった。
こまめに掃除しているおかげで綺麗になり、私物も増えた。
仲間からのプレゼントや、自身が購入した物が飾られていて、味気無さも幾らか薄れている。
今では怪盗団の作戦室としても機能し、新しい仲間が出来た際には歓迎会を開いたりもした。
後はエアコン…は無理だとしても、扇風機くらいは買っておきたい。
バイトを増やすか、メメントスで資金集めに奔走する必要がありそうだ。

…そういえば、あれは夢だったのだろうか。
よくよく考えればおかしな出来事の連続だった。
自分がどこの誰かも分からぬ他人の姿になり、殺し合いを強要される。
竜司が見たら鼻の下を伸ばしそうな美人が特撮のキャラクターのような姿になり、性犯罪者のような言動の怪物と戦う。
おまけにパレスではない現実世界で、自分はペルソナが使えた。
幾らなんでも詰め込み過ぎだ。
モルガナに知られたら、「疲れてるんだろ、今日はもう寝ようぜ」と返されるに違いない。

学校に行くまではまだ時間がある。
寝直せばあの奇妙な夢の続きが見れるかもしれない。
だからこのまま…

【目を閉じる】
→【あれは夢じゃない】

上体を起こし頭を振る。
馬鹿な事を考えてしまった。
あれが夢?そんな訳があるか。
さっきの戦いで受けた傷の痛みは未だ体に残っている。
女の人の死体も、人を人とも思わぬ宇宙人のような男もハッキリと記憶に焼き付いている。
自分がいる屋根裏部屋は本物なんかじゃない。
ボンドルドが用意した殺し合いの会場の一施設。
その証拠に、ここにはモルガナがいない。
現実世界では黒猫の姿をしている彼は、常に自分と行動を共にしている。
モルガナの存在までは主催者といえど再現する気は無かったのだろう。

ベッドから起き上がり、軽く体をほぐす。
全身に鈍い痛みと倦怠感が圧し掛かる。
顔を顰めながら部屋を見回すと、自身の机に目が留まった。
学生の本分である勉強以外に、パレスで使う潜入道具の作成もここで行っている。
ここが自分の部屋を忠実に再現しているのならば、使える道具も入っているんじゃないか。
そんな期待と共に、机の引き出しを開けてみる。
期待に反して出て来たのはひとつだけ。
シャドウとの戦闘で不利になった際に使う、逃走用の道具のみ。
確かもっと沢山作り置きしていたはずだが、そこまでこちらが有利になるようにはしてくれなかったらしい。
落胆するも、何もないよりはマシと思い直して懐に仕舞う。

そこでようやく気付く。
ここには自分以外にもう一人、あの飄々とした態度の女性がいたはずだ。
屋根裏部屋に彼女の姿はない。
まさか自分が寝ている間に、何かあったのだろうか。
信用するには怪しい要素が多すぎる人物だが、アーマージャックとの戦いでは共闘した相手。
何よりここまで運んでくれたのは彼女である。
死んで欲しいとは1mmも思っちゃいない。
不安に急かされるまま、一階へ続く階段を早足で降りた。


514 : 燃え上がるこの想いの果て ◆ytUSxp038U :2021/07/12(月) 15:38:24 kLUwTymA0
「よう、もう起きたのか」

カウンター席に彼女はいた。
少し焦って降りて来た自分へ、軽く手を上げて反応したのは、紛れも無くさっき共闘した女性。
喫茶店の内装も、鼻孔をくすぐるコーヒーの香りも、全て自分の記憶にあるルブランそのままだった。
そんな店内で女性が何をしているかと言うと、食事をしている。
スプーンで掬ったソレを口に運び、味わうようにゆっくりと咀嚼する。
何を食べているのかと視線を移せば、皿に盛られたカレーだった。

「いやはや恐れ入ったよ。俺も料理にゃそこそこ自身があったんだが、このカレーには負けるね」

こちらの気を知ってか知らずか、呑気にカレーを絶賛する女性。
マイペースさに呆れを通り越して感心してしまう。
ともかく無事であったのは何よりだ。
安心すると思い出したように体の節々が痛む。
「どれくらい寝てた?」と聞いてみた。

「数十分ってとこだな。まだ一時間も経っちゃいねぇ」

女性の返答に納得する。
成程たったそれだけしか寝てないのなら、傷も疲れも健在だろう。
ではもう少し寝て体力の回復に努めようかと考え、腹の虫が鳴いた。
女性がカレーを食べる姿に自分も食欲を刺激されたのかもしれない。
その彼女はカレーを全て食べ終え、デイパックから出した水で喉を潤している。
細い指先で唇の水滴を拭う様に、一瞬ドキリとする。
祐介風に言えば絵になる、というやつだろうか。

「腹が減ってんならお前も食ったらどうだ?まだ残ってるぜ」

クイ、と顎で示された先にあるのは、カウンターの奥にある鍋。
そこからカレーをよそったという事か。
意地を張っていらない、と言う理由も見当たらないので、言葉に甘えて自分も食事を取る事にする。
皿にご飯を盛りつけ、上からカレーをかける。どちらも大盛だ。
どちらも湯気が出ており空腹を刺激する匂いが鼻の中を駆け抜けた。
相変わらず明かりはガラス越しに照らされる月の光しか無いので少々見辛いが、電気を付けるのが如何に危険かは理解しているので我慢する。
他の参加者に、自分達はここにいますよと堂々と知らせるようなものだ。
友好的な者ならともかく、アーマージャックのような危険人物まで呼び寄せてしむのはマズい。
引き出しからスプーンを取り出すと、カウンターに腰掛ける。

「いただきます」

一口頬張ると、その美味さにたちまち頬が緩んだ。
肉の旨味と野菜の甘味、辛さの中にある確かなコク。
食べ慣れた、されど毎日食べても飽きない味。
紛れも無い、ルブランのマスター佐倉惣治郎の手作りカレーだった。
もしここに双葉がいても、これは正真正銘惣治郎のカレーだと言うに違いない。

わざわざ鍋を設置していたので予想はしていたが、まさかカレーの味まで忠実に再現するとは、
ボンドルド達は妙な所で拘るらしい。
ふと店内を見渡せば、入口近くに一枚の絵が飾られている。
その絵も自分が良く知るもの。
斑目を改心させた後、祐介から譲り受けた「サユリ」だ。

余りの再現度の高さに、何とも複雑な気持ちになる。
カレーが美味いのは良い。
さっきからスプーンで口に運ぶ手が止まらない程だ。
だけど、このカレーは惣治郎本人が作るからこそ意味がある。
ぶっきらぼうで、初対面の印象はお世辞にも良いとは言えない人だが、何だかんだ自分の為に世話を焼いてくれる。
コーヒーの淹れ方やカレーのレシピも教えてくれた。
そんな双葉も大好きな惣治郎の味を、殺し合いの主催者なんかが再現したのは正直気分の良いものではない。
それにサユリだってそうだ。
あの絵がどんな思いを込めて書かれたものなのか、祐介がどんな思いであの絵を取り戻そうとしたのか。
きっと主催者にとってそれらの事情はどうでも良く、ただの飾りとしか見ていないのだろう。
そう考えると酷くやるせない気持ちになる。

「そんな辛気臭い顔するなよ。これでも飲んで元気だしな」

声と同時に何かが自分の前に置かれた。
湯気が漂うカップの中には真っ黒い液体。
何時の間にやらカウンターの向こうに女性が立っている。
どうやら彼女がコーヒーを淹れてくれたらしい。

「味は保障するぜ。これでもちょっと前までは喫茶店のマスターだったしなぁ」

喫茶店に居候している自分と、喫茶店のマスターだった女性。
何とも不思議な縁があったものだ。
であれば、言葉通り味に問題は無いのだろう。
仮にも喫茶店の店主でありながらコーヒーの味が最悪、なんて事あるわけない。
「ウチは狭い店だが、それでもコーヒーには拘りがある」と惣治郎にも言われた記憶がある。
ルブランは女性の店では無いが、それでも彼女の拘る淹れ方の味を堪能させてもらう。
いただきますと告げ、カップに口を付けた。


515 : 燃え上がるこの想いの果て ◆ytUSxp038U :2021/07/12(月) 15:39:52 kLUwTymA0
「ぶほぉっ!?」

一口。
たったの一口で噴き出した。

胸を叩いてむせるのをどうにか抑える。
口の中で苦みと痺れが絡まり合い、絶妙なまでのマズさが作られた。
デイパックから出した水で、口内のマズさを洗い流すように飲む。
何だこれは。
マズい。マズ過ぎる。
自分も初めてコーヒーを淹れた時は酷い味になったが、それを上回る酷さだ。
こんな腕で良く喫茶店のマスターを名乗れたものだと逆に感心する。

「おいおい!んなリアクション取る事ねぇだろ!折角ここにあった良い豆を使ったんだぜ?
 そこに俺の腕が合わされば、きっと最高の味が……ぶほぉっ!?」

女性もまた一口飲んだだけで噴き出した。
自分と同じように水を流し込むように飲んでいる。

「ああクソ、上手くいかねぇもんだな。千雪の体で淹れたからか?」

ブツブツと愚痴る女性。
別人の体で淹れたのが原因だと思っているらしいが、濡れ衣も良い所ではないかと思った。
マズいコーヒーのせいで何とも言えない空気が流れるが、それを気にしていないかのように女性はこちらと目を合わせる。
ゾクリとした感覚が背中に走った。

「さぁて、ちょいとゴタゴタしちまったが…。そろそろお互いを知る為に“お話”しようじゃないか」

何故だろう。
まるで自分を捕食しようと、巨大な蛇が口を広げているような錯覚を覚えるのは。


◆◆◆


「そこの者!そのまま聞いてくれ!」

夜の街に響くように煉獄は声を張り上げる。
彼が見つめる先に存在するのは一体の異形。
街灯の光に照らされる緑色の手足と、青い頭部。
このような生物は煉獄の知識に無い。
まさしく化け物と形容すべき姿だ。
されど化け物を前にし、煉獄に怯えは微塵もあらず。
何故なら彼は鬼殺隊の柱。
その剣を以て化け物を狩り、人々を守る男。
化け物を怯えさせる事はあれど、怯える事は断じて無い。

「俺の名は煉獄杏寿郎!ボンドルド達を倒し、殺し合いを止めるべく戦うつもりでいる!
 ここにいるしんのすけ少年も同じ思いだ!」

化け物を前にした煉獄が取った行動。
それは相手との対話を試みる事だった。
もし相手が鬼であれば、問答無用と刀を抜いただろう。
この巨大な虫らしき異形が人を襲っていたら、その時も同様に斬りかかった。
が、煉獄は虫の体に赤い輪のようなものが巻かれているのに気付いた。
自分達のとは大きさが違うが、殺し合いの参加者の証である首輪であると判断。
そこから導き出される答えは一つ、目の前にいる存在は体は化け物でも、その精神は巻き込まれただけの人間の可能性が高い。
ひょっとすると、鬼殺隊の仲間達やシロが入っているやもしれない。

「君も殺し合いに反対の姿勢ならば、俺達と共に来ないか!?」

だからまず対話から始める。
自分達の知っている者ならば名前に反応するだろうし、
知らない者でも殺し合いをする気が無いのなら正面から堂々と向き合い、警戒心を解く。
虫の体に入っている者が戦いとは無縁の参加者で、己に降りかかった災難に我を忘れているのならば落ち着かせ、
間違いを犯すのを阻止する。

「もしも君自身が戦いとは無縁の者だとしても安心してくれ!俺が必ず君の事も守ってみせる!」

力強く言い切り、相手の出方を待つ。
向こうが友好的だったり、自分達の知っている者ならば問題は無い。
錯乱しているのならば全力で落ち着かせ、安心させてやらねばなるまい。
もしも自分から進んで殺し合いを肯定する輩、或いは無惨だったならば、容赦せず斬りに行く。
相手がどう反応しようとすぐ動けるように、煉獄は冷静に巨大な虫を見据える。

「ほっほーい虫さーん!オラ達と一緒に行こうよ〜。タイのまたずれヨガおけけって言うし〜」
「…ん?それを言うなら旅は道連れ世は情けではないのか?」
「そうとも言う〜」
「そうとしか言わんぞ!」

煉獄に便乗するようにしんのすけも虫へ声を投げかける。
元々大抵の事には物怖じしない性格もあって、巨大な虫に驚きこそすれど恐がりはしていない。
だからこの虫と共に行動する事になっても、しんのすけ的には一切問題無かった。

一方で煉獄達の言葉を受けたグレーテは困惑していた。

自分が引き起こした爆発で、一人の男に重傷を負わせた罪。
現れた少女が向ける、警戒・恐れ・嫌悪が詰まった視線。
爆発する腹部という、生物ならば有り得ない器官の虫の体にされたという現実。
それら全てから目を逸らし、目的地も決めず必死に逃げて来た。


516 : 燃え上がるこの想いの果て ◆ytUSxp038U :2021/07/12(月) 15:41:12 kLUwTymA0
自分の知る都会の街並みよりも、発展した雰囲気のエリアをただひたすらに駆けて、
その先で二人の男を見つけた。
どちらもガタイが良く、片方は腰に剣のような物を差している。
新たな参加者との遭遇にグレーテから、虫の鳴き声で小さく悲鳴が漏れる。
しかし、グレーテの怯えとは裏腹に、男たちが巨大な虫を嫌悪する様子は見られない。
そればかりかこちらを安心させるような言葉を掛け、同行を提案してきたではないか。
予期せぬ相手の反応に、グレーテの心には困惑とほんの少しの期待が浮かび上がる。

何故彼らはこんな醜い姿の自分を見ても恐れないのだろうか。
それだけでなく、どうしてそんな気遣う言葉を向けてくれるのか。
もしや何か裏があるのでは?
甘い言葉で誘い、油断した所を仕留める気なんじゃないのか?
それか何かのよからぬ事情に自分を巻き込む魂胆でもあるのか?
だけど、仮にそうだとしてもあそこまで堂々と馬鹿正直に言う必要があるか?

…もしも、彼らの言葉に偽りが無いのなら。
本当に自分へ危害を向ける人達で無いのなら。
差し伸べられた手を取ってみて良いのかもしれない。
これ以上、一人で怯え、絶望しなくて済むのかもしれない。

僅かな希望に縋るように、グレーテは煉獄達にゆっくりと歩み寄る。
眩しい笑みを見せる二人の男へキィと鳴き、



――『あいつがグレゴールだなんてことがどうしてありうるでしょう!』

凍り付いたように動きを止めた。

――『もしあいつがグレゴールだったら、人間たちがこんな生物といっしょに暮らすことは不可能だって、とっくに見抜いていたでしょうし、自分から進んで出ていってしまったことでしょう!』

思い起こされるのは他でもない、グレーテ自身の言葉。
どうして忘れてしまったのか。
醜い虫と化した、兄だったものに自分が何をしてきたか、どんな感情を抱いたのかを。

普通の人間がこんな化け物と共にいるなど、土台無理な話だ。
それは他ならぬグレゴールと、彼の家族であるグレーテ達が証明している。
毒虫と化したグレゴールに自分達は何をした?
優しい言葉を掛けてやったか?
いつか必ず戻ると励ましてやったか?
例え人間に戻れなくとも、家族の愛は変わらなとでも言ってやったか?
そんな訳あるか。
そもそもグレゴールを見捨てるべきだと真っ先に言ったのはグレーテだと言うのに。

きっとこの男たちも同じだ。
最初は暖かく迎えたとしても、すぐに疎ましく感じ排除しようとするに決まっている。
邪魔に感じたグレーテを、腰に差した剣で斬り殺すのだ。

(いや…そんなのは絶対にいや…!死にたくない…!!)

体が巨大な毒虫となった事に絶望しても、死ぬ事だけは避けたかった。
どれだけ醜い姿に成り果てようと、命を落とすという事だけは受け入れられない。
自身に集まる好機と嫌悪の視線に対してとは別の、己の死という恐怖にグレーテは囚われる。
死にたくない。
その想いを爆発させるかのように叫んだ。

「キィ゛エ゛アァ゛ァ゛ァ゛ッ!!」

「なにっ!?」
「お!?」

驚愕の声が煉獄としんのすけから出たのは、グレーテが突如叫んだから、出はない。
彼らの頭上、月が浮かぶ夜空より二人目掛けて無数の何かが落下してきたからだ。
それは雨でも雪でも無く、岩石だった。
近くの建造物が瓦礫が降り注ぐならまだしも、何故何もない空間から岩石が落ちて来るのか。
スカラベキングの技によるものだとは知らぬ煉獄は、ただ驚愕するばかりだった。
だが驚いてばかりもいられない。
このまま直撃すれば全身を叩き潰され、二人とも命は無い。
即座に剣を抜き放つ。


517 : 燃え上がるこの想いの果て ◆ytUSxp038U :2021/07/12(月) 15:42:26 kLUwTymA0
───炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり

刃が放たれる。
自身を中心とし、炎が渦巻くかのような剣技。
たった一つでも直撃すれば重症を免れない岩石の嵐が、たった一本の剣により吹き飛ばされる。
馬鹿げているとしか思えぬそれを可能にするのが煉獄の力。
が、此度は少しばかり結果が違った。

(っ!踏み込みが浅い…!)

ただ一つ、しんのすけに襲い来る岩石を斬り損ねた。
煉獄自身が未熟という訳では無い。
むしろ他人の体でありながら、一つを除いて防ぎ切った技量は見事と言う他ないだろう。
問題があるとすれば煉獄ではなく、煉獄に与えられた体のほう。
喧嘩屋、相楽左之助にある。
左之助の身体能力は非常に高く、特に膂力は煉獄も称賛する程である。
だが左之助は己の拳を武器にした肉弾戦を最も得意とする男。
武器を使った機会と言えば精々がろくに手入れのされていない斬馬刀を振るったくらいであり、刀とは無縁の戦い方をしてきた。
そういうのは友である緋村剣心や、犬猿の仲である斎藤一の担当だ。
戦い方が根本的に違うが故に、煉獄の動きへ左之助の体が付いて行けない。

尤もそれを理解した所で、煉獄に言い訳をする気は無い。
斬り損ねたのは己の未熟と受け止め、今はしんのすけを助ける為に動く。
その想いとは裏腹に、しんのすけへの直撃は避けられそうになかった。
煉獄の目の前で岩石はしんのすけの頭を――

「うわぁああああああっ!」

潰す事無く、しんのすけの拳により粉砕された。

「ぬおおお……やっぱり痛いゾ……」

拳を押さえて蹲るしんのすけの周りには、岩石の破片が転がっていた。
何が起きたのかは明白。
しんのすけの、というよりは孫悟空の力により迫る死を回避した。
煉獄と遭遇した時、しんのすけは自身の体に力を込めて突風を巻き起こした。
本人が理解して行ったのでは無いが、それは悟空の体に宿る『気』を開放した事による現象。
その際に煉獄が推測したように、しんのすけが悟空の体へ徐々に慣れてきている。
元々悟空は幼少時からコンクリートを素手で破壊する程のパワーを持つ。
岩を粉砕する程度、悟空本人にとっては呼吸をするのと同じくらい簡単な事だろう。
とはいえ、悟空の力を完全に引き出せるかと言えば否である。
その証拠に、岩を破壊した拳には鈍い痛みが走っている。

「無事かしんのすけ少年!」

駆け寄り無事を確かめる。
拳を痛めた以外に傷は無く、命に別状は無い。
ホッとしたのも束の間、再度グレーテに対処すべく向き直る。
今の落石は相手が鳴いた直後に起こった。
故意か事故かまでは分からないが、グレーテの攻撃を受けたのは確かだ。

グレーテもまた困惑し、恐怖を抱いていた。
落石を引き起こす能力があるなど彼女は知らなかった。
一体この虫はなんなのか。
兄が変貌した毒虫よりも、もっとおぞましい化け物だとでも?
恐ろしいのは今の落石を防いだ男二人も同様であった。
普通の人間は素手で岩を砕いたりはできない。
普通の人間はあんな細い剣で岩を斬り払ったりは不可能だ。
なのに彼らはやってのけた。
この男たちも、人の皮を被った化け物なんじゃないか。

自分の考えにグレーテの体が再び震えだす。
こんな恐ろしい連中の近くにはいられない。
手を差し伸べてくれたという事実にすら目を背けて、グレーテは逃げ出そうとした。

「虫さん待ってー!」

当然黙って逃走を見送る気は無い。
一足先にしんのすけが走り出し、捕まえようとする。

「しんのすけ少年!」

不用意に近づいてはと言いかけ、しかしその先が続く事は無かった。


「よおおおおおおやく見つけたぜぇぇぇぇぇっ!!」


何かが、煉獄としんのすけを遮るかのように現れた。


◆◆◆


518 : 燃え上がるこの想いの果て ◆ytUSxp038U :2021/07/12(月) 15:45:04 kLUwTymA0
「成程、ペルソナねぇ…」

蓮から得られた情報にエボルトはそう独り言ちる。
食事を済ませた後、情報交換を持ち掛けた所、向こうも聞きたい事があったらしくこれを承諾。
アーマージャックとの戦いで見せた力に関してある程度は聞き出せた。

ペルソナ。
それは人間の心の奥底に眠るもう一人の自分。
自らの仮面を引き剥がし、反逆の意思に目覚めた証。
アルセーヌと呼んでいたシルクハットの怪人こそ、蓮のペルソナだという。
本来ならばペルソナは認知の世界、パレスやメメントスと言う特殊な空間でなければ使えないはず。
しかしここでは問題なく使えるらしく、恐らくはボンドルド達に何か細工をされたと蓮は説明した。

ペルソナに認知の世界。
どちらも興味深いが、エボルトには更に重要な情報があった。

話しをしていて明らかになったが、蓮はスカイウォールを全く知らない。
常識的に考えて有り得ないことだ。
十年前、石動惣一に憑依したエボルトがパンドラボックスを操作して引き起こした大事件。
多数の犠牲者を出し、後に『スカイウォールの惨劇』と名付けられた出来事により日本は東都・西都・北都の三つに分かれ、今日まで混沌を極めていた。
日本国民にとっては、生物は呼吸をしないと死ぬとの同じくらい、スカイウォールの存在は当然の事実として根付いている。
にも関わらずスカイウォールを見た事も無ければ、聞いたことも無い。
こんな状況でつまらない冗談を言っているとも思えず、さてこれはどういう事なのかと頭を回す。
答えは直ぐに出た。

(つまりこいつは別の世界の人間。主催者どもはエニグマみてぇな装置、若しくは能力を持ってるって事か)

エニグマ。
それは最上魁星という男が開発した並行世界移動装置。
以前エニグマの起動に巻き込まれた万丈が別の世界、スカイウォールの存在しない日本へ転移されてしまった事があり、
反対に自分達の世界へ、パラドという別世界の住人が現れるという事件が起きた。
最終的にエニグマは破壊され、最上の野望も戦兎と異世界のライダー達により阻止され事件は収束を迎えた。
あの時は計画の要になる予定の万丈が失われるかもしれないと焦ったものだ。
戦兎やパラドの前では余裕ぶっていたが、内心はヒヤリとしていたのを思い出し苦笑いを浮かべる。

とにかく確かなのは、蓮はエボルトがいた地球とは違う、並行世界の住人だということである。
それならばスカイウォールを全く知らないのにも納得がいく。
最初から存在しないのだから、知らなくて当然だ。

(それぞれ別の世界から参加者を集めた…。随分とまぁ手間を掛けたもんだねぇ)

仮にエボルトと戦兎以外の参加者がそれぞれスカイウォールの無い世界の出身者だとして、
自分、蓮、アーマージャック、ついでに死体となっていた女。
この時点で4つの並行世界をボンドルド達は把握している事になる。
そこへそれぞれの体の持ち主も別の世界の住人だとすれば8つに増え、まだ見ぬ他の参加者も合わせれば一体幾つの世界から参加しているのか見当もつかない。
そんな手間暇を掛けてまで殺し合いを開き、ボンドルド達は何を手に入れようとしているのか。
まぁどうせロクなもんじゃ無いだろうなと呆れたように笑った。


519 : 燃え上がるこの想いの果て ◆ytUSxp038U :2021/07/12(月) 15:47:23 kLUwTymA0
ちなみに蓮に対してはスカイウォールの存在も含めて、エボルト自身の事もある程度は話してある。
一時期は喫茶店のマスターをやりつつ、三都を渡り歩いて自分を売り込み、傭兵の真似事をしている。
今はどこぞのアイドルの体にされているが、元の性別は立派な男。
殺し合いに乗る気は無く、ボンドルド達を倒した上での帰還を目的にしているなど。

嘘は言っていない。
ただ幾つか伏せている情報があるだけだ。
どうせここで猫を被っても、戦兎がエボルトへの警戒を呼び掛けているのなら余り意味は無い。。
恐らくだが、美空に憑依したベルナージュから自身の正体についても聞かされている可能性が高い。
いざ戦兎と再会とした時には蓮もこちらを今以上に警戒するかもしれないが、すぐに殺しに掛かる可能性は低いと見ている。
戦兎も蓮も、目の前で困っている人間を見捨てられないお人好し。
そんな連中が、エボルトの精神が入っているとはいえ、本来なら戦いとは無縁の女性の体を傷つけようとするか?
断じて有り得ないと言い切れる。
事を有利に運ぶ為に、千雪の体は目一杯活用させてもらう。

ついでに並行世界に関する情報くらいは共有しておいても問題は無いと判断し、蓮に説明した。
案の定と言うべきか、蓮は目を見開いて驚いている。
認知の世界も所謂異世界というものだが、並行世界ともなるとスケールの大きさに混乱した。
ペルソナや認知世界など十分非日常を味わって来たとはいえ、複数の並行世界の住人を集めての殺し合いという大きな事態にまで発展するとは思わなかった。
これ程の大掛かりな舞台を用意するボンドルドと、まだ顔も名前も知らない協力者達。
そんな連中を相手に、果たして自分は勝てるのだろうかと、不安が胸をよぎる。
異世界の知識が豊富なモルガナや、怪盗団の頭脳担当である真がいれば、強大な敵が相手だろうと何か良い考えを思い付けるかもしれない。
だがその一匹と一人所か、怪盗団のメンバーは自分を除いてここにはいない。
アルセーヌ以外のペルソナを封じられ、恐らくはベルベットルームへの干渉も不可能にされている。
ボンドルド達がどれだけ厄介な存在かを改めて思い知らされ、蓮は戦慄した。

それぞれ殺し合いに考えを巡らせている中、不意にエボルトが険しい顔で入口のドアを見やった。

「…ちょいと外が騒がしくなって来たな」


520 : ◆ytUSxp038U :2021/07/12(月) 15:48:48 kLUwTymA0
地の底から響くような音が鼓膜を震わせる。
獣の唸り声かと思わせるその音は、煉獄と相対する一人の参加者から発せられていた。
胴体と下半身は人間のソレだ。
だが頭部と両腕は明らかに人間ではない。
本来頭髪がある部分からは巨大な刃が突き出ており、両腕からは同じく奇妙な剣が生えている。
現代人が見たらチェンソーだと分かるその刃は、煉獄の知識には存在しないもの。
なので奇妙な刃と認識。

「煉獄のお兄さ「こちらは大丈夫だしんのすけ少年!君はそっちを頼む!だが無理はするな!危ないと分かったらすぐに退け!」

こちらへ振り返ったしんのすけの言葉を遮り叫ぶ。
虫のような異形の所へしんのすけ一人を向かわせる事に不安が無いと言えば嘘になる。
しかし、こちらに近付ける方が遥かに危険であった。
殺気を隠そうともしないこの怪物は、例え悟空の力に慣れて来ていようとしんのすけの手には余る。

「一応聞いておく。君は殺し合いに乗っているのか?」
「つまんねぇこと聞くんじゃねぇぇぇーっ!テメェら纏めて三枚おろしにしてやるぜぇぇぇーっ!」
「そうか。ならば斬らせてもらおう!」

それ以上の問答は無意味と判断。
斬るか斬らないか、選択すべきは前者。
鬼相手では一瞬の判断の遅れが即座に自分や仲間の死に繋がる。
急ぎ片付ければ、それだけ早くしんのすけの加勢へ行ける。ならばやるべき事は一つのみ。

既に得物は抜いている。
弱肉強食の野望の元血を吸って来た幕末の亡霊の愛刀が、今は人々の命を守る為に振るわれた。
慣れぬ体であっても、踏み込みは力強く、狙いは正確無比。
怪物の巨大な頭部を地に落とさんと頸を狙う。
鬼との戦いで頸を斬り落とすのは常識。得物は日輪刀でなくとも、頸を落とされ生きていられる生物はいない。
だが怪物との戦いというのはいつだって一筋縄とはいかないのが世の常である。
無限刃は怪物の頸に届く事無く、両腕のチェンソーによって阻まれた。
煉獄が相対するのは取るに足らない雑魚にあらず。
人知を超えた正真正銘の化け物、チェンソーの悪魔を宿した少年。
そのチェンソーの悪魔の力を我が物として扱うのは殺人鬼、絵美里。
主催者も含めたバトルロワイアルの関係者全ての死を望む狂気の女は、そう簡単に頸を落とされてやる程甘くは無い。
絶えず回転し続けるチェンソーの刃に、煉獄は刃のかち合いはせず後ろへ下がる。
敵の刃とマトモに打ち合っていては、こちらの得物が先に破壊される。
支給された刀はこれ一本のみ。ここで武器を失うのは煉獄としても避けたい。
尤もそんな事情など絵美里には知る由も無く、知った所で何が変わる訳でも無いが。

「逃げんじゃねぇぇぇーっ!」

振り下ろされるのは右手のチェンソー。
腕の真ん中からバックリと飛び出る光景は痛々しい。
しかし絵美里に痛がる素振りは全く無い。
彼女にとっては煉獄を殺せればそれで良いのだから。


521 : ◆ytUSxp038U :2021/07/12(月) 15:50:03 kLUwTymA0
身を捻りチェンソーの刃を回避、すれ違いざまに斬り付ける。
手応えは浅い。無限刃は胴体の肉を僅かに斬り付けただけ。
とはいえ斬られたという事実に変わりなく、絵美里の機嫌がちょっぴり低下。振り下ろされたチェンソーが横薙ぎに払われる。
姿勢を低くし凌ぐ煉獄。逆立った左之助の髪の毛が数本落ちる。

―――炎の呼吸 弐の型 昇り炎天

攻撃の直後、一瞬の硬直のタイミングでせまる斬り上げ。
股から頭頂部までを両断せんとした一撃を防ぐのは、頭部のチェンソー。
刃が当たるその直前に、頭部を真下へと振るった。刀とチェンソーがぶつかり、火花が散る。
両腕で刀を握る煉獄と違い、絵美里は両腕が自由。
頭部の刃に阻まれた煉獄を挟み撃ちにせんと、左右からチェンソーが迫る。

―――炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり

だがしかし、この程度で倒せるような弱者だったら、煉獄は柱の座に就いてなどいない。
左右と正面。広範囲からの攻撃に対処可能な攻防一体の剣技。
両腕のチェンソーは弾かれ、頭部のチェンソーも押し返される。
左之助の膂力で放たれた技により、チェンソーの悪魔の体がグラついた。
この機を逃す愚策は犯すまい、更に一歩踏み込んだ。

―――炎の呼吸 壱ノ型 不知火

炎の呼吸の基本となる技。
相手へ接近し斬り付けるという、文字にすれば実に単純明快。
しかし、煉獄が放てば敵を燃やし尽くさんと迫る炎の如き速さで迫り、反撃を決して許すことなく斬り殺す。

「あっっっっっぶねぇなクソ野郎がぁぁぁぁぁーっ!!」

崩れた体勢から上半身を強引に捻っての防御。
無茶苦茶にも程があるが、それを現実に行ってみせたのはチェンソーの悪魔の身体能力があってこそ。
煉獄の一撃を防いだ絵美里は即座に反撃に打って出る。
両腕をピンと伸ばすと片足を軸にし、その場で回転し出した。
出来損ないのバレリーナのようだが、それを鼻で笑えはしない。

「回る回る回るぜぇぇぇーっ!」

回転の速度はあっという間に早まり、その状態のまま煉獄へと接近。
触れれば裁断機に掛けられた肉のような末路を迎えるだろう。

―――炎の呼吸 伍ノ型 炎虎

それを煉獄は真っ向から迎え撃つ。
放つ技は大振りな動作の斬りかかり。
猛虎が獲物へ食らいつき、噛み砕く様を幻視させる一撃。
高速回転するチェンソーと激突し、火花を散らし、その動きを強引に止めた。
叩きつけられた一刀の威力は生半可なものではない、チェンソーに若干の凹みが生まれる。
まだ終わらない。
地面を砕かんばかりに力を込め追撃に移る。


522 : 燃え上がるこの想いの果て―Burning My Soul― ◆ytUSxp038U :2021/07/12(月) 15:55:06 kLUwTymA0
―――炎の呼吸 壱ノ型 不知火

「クソがぁぁぁっ!!」

それを防ぐ事が出来たのはチェンソーの悪魔の反応速度がズバ抜けているからか。
交差させた両腕に無限刃を阻まれる。
絵美里その体勢のまま両腕の力で押し返そうとする。
が、煉獄が後退する方が早い。
唸りを上げる二本のチェンソーは空を斬るに終わった。

「苛つかせる野郎だなテメェはよぉぉぉーっ!」

地団太を踏み、分かりやすく苛立ちと悔しさを見せつける。
バトルロワイアルが始まって数時間が経過。
その間誰とも遭遇せずステレスばかりが溜まり、やっと獲物見つけたと思ったらそいつは余計な抵抗ばかりで大人しく斬られようとしない。
折角チェンソーの悪魔の力を手に入れたというのに、これでは意味がないと憤慨する。

(…やはりな。思った通りだ)

怒る絵美里とは対照的に、煉獄は冷静に相手を見据えていた。
これまでの攻防で分かった事がある。
チェンソーの悪魔の力自体は煉獄よりも上だろう。
だが、戦闘に関しては素人。技術に関しては煉獄に及ばない。
絵美里はあくまで殺人鬼。殺す者ではあっても、戦う者ではない。

力任せのごり押しでは、いずれ限界が来る。
ならば勝機は十分あると、無限刃を構え直し、


「うわぁああああああああああああ!?」


直後、悲鳴が鼓膜を叩いた。


時間を少し遡る。

煉獄が絵美里と対峙している時、しんのすけはグレーテを捕まえようとしていた。
突然現れたチェンソーの頭部と両腕を持つ怪物。
そんな人外と戦っている煉獄への心配はある。
しかし、彼は「任せる」と言った。
出会ってまだほんの数時間しか経過していないが、それでも自分を一緒に悪者を倒す仲間として認めてくれた男からの信頼だ。
その言葉に逆らってグレーテを無視し、煉獄の元へ戻るのは、彼の信頼への裏切りになる。
幼いながらも様々な騒動に巻き込まれ、その度に善人・悪人と関わって来たしんのすけだからこそ、煉獄の言葉を受け止められたのかもしれない。

「虫さん待て待てー!」

そして任されたからには、それに応えなければならない。
しんのすけはこの巨大な虫が悪者であると断定できなかった。
確かに自分達は突如振って来た岩石により、命を奪われそうになった。
だけど、最初に煉獄が一緒に行こうと声を掛けた時、しんのすけの目にはこの虫が自分達の方へ歩み寄ろうとしているように見えた。
だから岩を落としたのだって、もしかしたら悪気があってやったんじゃないのかもしれない。
見た目はアクション仮面に登場する敵キャラクターのようだが、「他人を見た目で判断しちゃいけません」と前々からみさえに注意されている。
だから逃げずに自分達ともう一度話をして欲しかった。

「キィィィィッ!!」

とはいえしんのすけの想いなど、グレーテには知る由も無い。
或いは知ろうともしないのか。
グレーテには自分以外の、いや、虫となった自分も含めて全部が恐怖の対象だった。
剣を持った男は、いきなり現れた化け物と戦っていて自分を追う余裕は無い。
けどもう一人の男は追いかけてきている。
きっと岩石を砕いた拳で、今度は自分を殴り殺すに違いない。
恐怖に心を支配されたグレーテにはそうとしか見えなかった。
何より殺し合いが始まってから今までずっと、異様な渇きを感じる。
過剰な怯えと収まらない渇きが、グレーテから冷静さを奪っていた。

(いや…!お願いだから来ないで!)

「キィ゛ィィ!」
「おわぁっ!?」

自分へ手を伸ばすしんのすけを近づかせまいと、グレーテは前脚を振り回した。
まるで髭のようにも見えた緑の脚は、鋭利な凶器としてしんのすけに襲い掛かる。
相手に命中させるかどうかなど考えてもいない、ただ闇雲に振り回すだけの攻撃。
それ故にどこへ避ければ良いのか分かり辛く、どうにか躱すもしんのすけの体に小さな切り傷が生まれる。
しかしこのくらいの痛みならどうという事は無い。
前脚を振るい続けるグレーテを捕まえるべく、しんのすけは手を伸ばした。


523 : 燃え上がるこの想いの果て―Burning My Soul― ◆ytUSxp038U :2021/07/12(月) 15:57:00 kLUwTymA0
「キィエ゛ァ゛ァ゛ァ゛アッ!!(来るなぁああああああっ!!)」

が、その行動はグレーテの恐怖心を余計に刺激した。
グレーテ自身はしんのすけを追い払おうと、無我夢中になったが故の攻撃だったのだろう。
頭部にある触覚。昆虫の脚にも見えるソレをしんのすけへと伸ばす。
獣の爪のように鋭く尖った先端は、しんのすけの肩へ深々と刺さった。

「うわぁああああああああああああ!?」

しんのすけの口から悲鳴が飛び出す。
瓦や岩を殴った時とはまた別の、肉に異物が食い込む激痛。
悪戯のお仕置きでげんこつをしょっちゅう食らっているが、それとは比較にならない。
グレーテへ伸ばした手を戻し、触覚を抜こうと掴んだ。

「あ、あれ……」

激痛の元である触手を引っこ抜くべく力を込めたが、どういう訳だか力が入らない。
逆に力が抜けてしまい、腕がだらんとぶら下がる。
力が入らないのは腕だけでなく、体中が急にダルく感じられた。
視界がグラつき、足元が覚束ない。
何がどうなっているんだと、考えようとしても思考が纏まらずぼんやりしてきた。

(これ、なに…?)

困惑しているのはしんのすけだけではない。
触手を突き刺したグレーテも、自らの攻撃を理解していなかった。

グレーテにしてみれば、ただしんのすけを追い払う為に行っただけのこと。
しかし触手を突き刺した事で、グレーテは奇妙な感覚を味わっていた。
しんのすけが目に見えて疲弊していくに連れ、自分の中に何かが流れ込んでくるのを感じた。
不思議な事に、グレーテを苛んでいた渇きが徐々に癒され、体の底から力がみなぎるかのようだった。

これらの現象が、キングスカラベの特技である吸血を行ったせいであること、
キングスカラベの主食である生物の体液を吸い取ったからだとは、グレーテもしんのすけも気付かない。

(分からない…分からないけど……もっと飲みたい……)

死への恐怖は消えていない。
が、己の渇きが癒された事に、何とも言えない心地良さを覚える。
その心地良さをもっと味わいたいが為に、グレーテはしんのすけの血を一心不乱に吸い続けた。
或いは意識していないだけで、恐怖を紛らわせる理由があったのかもしれない。

その光景は煉獄も目撃していた。
仲間の少年が襲われている。
やはり彼だけを行かせた自分の判断は軽率だったか、などの後悔をしている余裕は無い。
すぐにでもしんのすけの所へ駆け付ける必要がある。
問題は今目の前にいる相手がそれを許してくれるような甘い輩では無い事だ。

「逃げんなコラァァァーッ!」

怒声と共に振るわれたチェンソーを躱す。
だが絵美里の本命はそこじゃない。
刃から伸びたチェーンが無限刃に巻き付いた。
しんのすけへ気が取られていた煉獄は反応が遅れ、一瞬の間にチェーンが巻き取られる。

「これでテメェは丸腰だぁぁぁーっ!」

武器を奪われた煉獄を嘲笑い、今度こそ仕留めんと迫る。
絵美里の言う通り、煉獄に支給された武器は無限刃一本。
仮にデイパックに入っていたとしても、取り出すより先に絵美里のチェンソーの餌食となるだろう。
煉獄に戦う手段は無い。


524 : 燃え上がるこの想いの果て―Burning My Soul― ◆ytUSxp038U :2021/07/12(月) 15:58:12 kLUwTymA0
「否!武器ならまだ残っているぞ!!」

叫ぶや否や、絵美里目掛けて自ら突っ込む。
無手となっても鍛えられた左之助の肉体と、培ってきた技は健在。
チェンソーが己の肉を引き裂くよりも一歩先へ、絵美里の懐へと潜り込む。
急接近した煉獄はがら空きの胴体目掛けて、拳を叩き込んだ。

「ごはぁっ!?」

苦悶の声を無視し、煉獄は幾度も拳を叩き込む。
肉を殴る感触が伝わって来る。
決して気持ちの良いものではないが、悪鬼を滅ぼす為ならば構わない。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

相楽左之助の体は剣術には向いていない。
しかし、左之助本人が得意とする肉弾戦を行う場合にはこの上なく優秀な肉体となる。
剣を得意とする煉獄では、左之助が習得した『二重の極み』を使うのは非常に困難だ。
だが『二重の極み』が使えずとも、左之助の拳は十分立派な武器となる。
その威力は、チェンソーの悪魔にも通用する程であった。

(相楽左之助!貴方の力を、今は俺に貸してくれ!)
「はぁっ!!」

殴り、殴り、何度も殴り。
最後に渾身の一撃をぶつける。
針のような歯が生え揃った口から低い呻き声を出し、絵美里は大きくよろける。
同時に、チェーンの拘束が緩むのをしかと見た。
柄を掴み取り、チェーンを斬り裂く。
再び己の手に戻った刀を構え、やはり剣は馴染んでいない体に少しばかりの苦笑いを浮かべる。

(だが!今こそ好機!)

慣れぬ体でありながらも、呼吸を最大限に練り上げる。
全身の筋肉が膨れ上がるかの如く張り詰め、全てを焼き尽くす炎のような闘気が溢れ出す。
この一撃を持って、決着をつける。

―――炎の呼吸 奥義 玖ノ型 煉獄

自らの家名を冠した最大の一撃。
アスファルトを抉り、周囲の建造物をも巻き込まんばかりに突進する。
圧倒的な「力」を前に、されど絵美里は再び両腕を交差させ防御の姿勢を取る。
炎の呼吸の奥義に対し反応できただけでも、チェンソーの悪魔の力が如何に強大かが分かる。
しかし煉獄には関係ない。
敵が防御を取るのならば、それ以上の威力を以て真正面から打ち砕くのみ。

「てっ、てめぇえええええええええええええっ!!?!」

チェンソーが砕け散る。
全身の力を総動員して振るった刃は、この瞬間悪魔を超えた。
絶叫する絵美里に為す術は無く、胴体を大きく斬り裂かれる。
煉獄の放った斬撃はそれだけに留まらず、絵美里の体を大きく吹き飛ばした。
街灯をへし折り、オフィスビルに突っ込むとそのまま動かなくなった。

「倒したのか…?」

手応えはあった。
だがあれ程の力を持つ怪物だ。まだ生きていても不思議は無い。
できれば死んだかどうかを確認しておきたいが、今は一刻を争う事態だ。
すぐにしんのすけを助けなければ、手遅れとなってしまう。
僅かに後ろ髪を引かれる思いとなりつつも、煉獄はしんのすけの元へ走る。

「しんのすけ少年!」

飛び掛かる勢いでグレーテを斬り付けた。
無限刃はスカラベキングの頭部へ傷を作る。
小さく悲鳴を上げ、しんのすけに刺していた触手を離すグレーテ。
巨大な虫へ注意を払いながら、煉獄はしんのすけの体を抱き起こした。
顔色は悪いが息はある。


525 : 燃え上がるこの想いの果て―Burning My Soul― ◆ytUSxp038U :2021/07/12(月) 15:59:18 kLUwTymA0
「しっかりしろしんのすけ少年!」
「…お?煉獄のお兄さん……?オラ、何だかフラフラするゾ…」
「遅れてすまない!だが良く頑張ったな!」
「いや〜、それほどでも〜…」

しんのすけの無事に一先ず安堵する。
だがこれで全て丸く収まった訳ではない。
振り返りグレーテを警戒し睨む。
冷静さを完全に失っているが故の行動だったのか、それとも最初から殺すつもりだったのか。
どちらだろうとこのまま放置してはおけない。

(いやぁ!痛い!痛い!!)

グレーテに付けられた傷は今すぐ死に至るようなものではない。
しかし刀で斬られたという事実は、グレーテを再び恐怖のどん底に突き落とすのに十分な効果があった。
渇きが癒されるのが心地良かったとはいえ、今更ながらしんのすけを攻撃した事に後悔する。
あれでは煉獄の怒りを買って当然だ。
それを理解しても、死にたくなという思いだけは変わらない。
恐怖に突き動かされるように前脚を振り回す。

グレーテにとっては決死の抵抗も、煉獄にすれば見切るのは容易い。
しんのすけを座らせると、煉獄はグレーテを――



「痛かったぜクソハチマキ野郎ぉぉぉっ!!」


轟音が響く。
先程頭から突っ込んだオフィスビルから、怪物が再び姿を現した。

「なにっ!?」

稼働音が鳴り響き、頭部と両腕のチェンソーが回転する。
何度も殴りつけ、斬り裂いた胴体には傷一つ見当たらない。
粉砕したはずのチェンソーまで復活している。
さっきまでの煉獄との戦いは全て嘘だったのかと思ってしまうくらいに、チェンソーの悪魔からは傷が全て消え失せていた。

煉獄の攻撃は間違いなく絵美里に直撃した。
事実、吹き飛ばされた絵美里はチェンソーの悪魔の変身が解除された姿で、冷たい床の上に横たわっていた。
炎の呼吸の奥義を受けて尚も息が合ったのは、それだけチェンソーの悪魔の生命力が高かったからか、
或いは煉獄本人ではなく左之助の体で放った為に技の精度が落ちたのか、その両方か。
いずれにせよ絵美里はまだ生きていた。生きていただけで、立ち上がるだけの力は残されていなかった。
それだけ傷は深く、何より血が足りない。
このまま死んでたまるかと薄れる意識を殺人への執念で繋ぎ止める絵美里は、プロフィールに記載されていた情報を思い出す。
絵美里の精神が入った少年、というよりはチェンソーの悪魔の特性。
彼ら悪魔にとって血こそが己を動かすガソリンの役割を果たす。
生物問わず、血さえ補給できればまた立ち上がれる。
丁度近くには三人の参加者がいるが、立ち上がる事すら困難な傷ではどうしようもない。
だが手はまだ残されていた。

(こういう時の為に寄越したってのか…?)

デイパックに震える手を突っ込み、目当ての物を取り出す。
赤い液体が一杯に詰まったパウチ。輸血パックであった。
主に医療現場で使用されるその支給品は、今の絵美里にとってはどんな金銀財宝よりも価値があるもの。
確かにこれは自分に、チェンソーの悪魔には必要な品だと納得しつつ、パウチを破いてがぶ飲みする。
鉄の味が笑ってしまう程美味に感じ、死に体だった殺人鬼の傷が見る見るうちに塞がって行く。

「ついでにこれも食っとくぜぇぇぇ……」

取り出したのは何の変哲も無い紙袋。
しかし中身は普通とはかけ離れたモノ。
人間の手首が入っている。
これは作り物では無い、とある殺人鬼が恋人として愛を注いでいた本物の人間の手首。
食人行為は絵美里の趣味では無いが、今はこの場を切り抜ける為に少しでも己の糧にしておきたい。
噛み砕くと防腐剤の刺激と臭みが口の中に広がった。
マニキュアの施された爪を飲み込み終えると、立ち上がり胸のスローターを引っ張る。

「うっしゃあ!復活完了!」

チェンソーの悪魔への再変身を果たし、自分に舐めた真似をした男を今度こそ殺すべく動き出した。

そうして復活した絵美里と再び対峙する煉獄。
上弦の鬼にも匹敵する再生能力を目の当たりにし、驚きこそしたがすぐに気を引き締める。
やはり確実に滅ぼすには頸を斬らなければと剣を構えた。

こちらへ向かってくるチェンソーの悪魔に、グレーテの恐怖は頂点に達した。
自分の姿も大概だが、あの参加者も化け物と呼ぶに相応しい姿だ。
殺気を振り撒き両腕を振り回す様は、これまで遭遇したどの参加者よりも危険だと一目で分かる。
煉獄はチェンソーの悪魔に対処しようとし、しんのすけは明らかに体力を消耗している。
逃げるならば今しか無いと、脇目も振らずに駆け出した。


526 : 燃え上がるこの想いの果て―Burning My Soul― ◆ytUSxp038U :2021/07/12(月) 16:00:25 kLUwTymA0
一つ失態があるとしたら、誰もが彼女のデイパックの傷に気付かなかったこと。
最初にグレーテが爪でデイパックを引き裂いた時に出来た破れ目。
無理も無い。そんな所に一々注意を向けていられる程、余裕のある者はいなかった。
逃げる為に、自分に近づけさせない為に激しく動き続けた事で、傷は少しずつ広がった。
そして今、チェンソーの悪魔から少しでも遠ざかろうと移動を開始した時に、デイパックの破れた箇所から彼女の支給品が飛び出し、地面に落ちた。

グレーテが故意に引き起こした事では無い。

「なっ!?」
「うわぁ!?」

しかし、煉獄達には不運としか言いようのない、最悪のタイミングで起こった。

地面に落ちた物。
とある宇宙に生息する植物種は、即座に成長し無数の蔓を伸ばした。
蔓は二人の男、煉獄としんのすけの全身に巻き付き動きを封じる。
サイヤ人の肉体に少しずつとはいえ慣れて来たしんのすけなら、素手で引き千切れたかもしれない。
だが今は血を吸われて力が出ない。
左之助の体と煉獄の技、二つが合わされば即座に脱け出す事も出来ただろう。
しかしだ、それでもタイミングが悪過ぎた。
予期せぬ場所から現れた植物、それに一瞬、本当に僅かな間のみ意識を取られた。

煉獄にはその一瞬が余りにも致命的であり、

「死にやがれぇぇぇーっ!!」

チェンソーの悪魔にはその一瞬だけでも十分だった。


チェンソーが振り下ろされ、鮮血がアスファルトに飛び散る。

「煉獄のお兄さあああああああああああああああああんっ!!!」

絶叫が夜の街に木霊する。
蔓に絡め取られた腕を必死に伸ばす。
今のしんのすけには、逃げて行ったグレーテなどもう頭から消え失せている。
眼前で起こった悲劇の前には、グレーテの事を考える余裕は一瞬で吹き飛んだ。

煉獄が斬られた。
拘束していた蔓も一緒に斬られ、緑の汁が地面に染みを作っている。
蔓の汁以上に地面を染め上げているのは、煉獄から流れ出す血だ。
チェンソーは煉獄の肉を深く斬り裂いた。
常識で考えればどうやったって助かりはしない。

「はっ……はっ……」

そんな常識は知った事かとばかりに、煉獄は立つ。
開けた上半身も、悪一文字が記された上着も真っ赤に染まっている。
辛うじて両断される事だけは防いだ胴体は、僅かに皮数枚で繋がっているに過ぎない。
ただ立っているだけでも尋常では無い負担が圧し掛かる。
それでも刀だけは決して落とすまいと、強く握り締めた。
左之助の超人的な体力と、煉獄自身の気力。
その二つのみで、自身の命を繋ぎ止めている。

「マジかよテメェ…」

流石の絵美里も、この時ばかりは異様な高さのテンションは鳴りを潜め絶句した。
自分とここまで渡り合ったのは、生前にお見合いをしたピエロメイクの殺人鬼くらいだ。
あの男とて、こんな重症では立ち上がれないだろうに。
だが殺人鬼ならではの観察眼で、煉獄の状態を把握する。
まだ息はある。しかしそれだけだ。
あれでは満足に刀を振るう事だってできやしない。
結局は無駄な足掻きでしかない。

「いい加減に、くたばれよぉぉぉーっ!」

体を斬っても生きてるなら、頭を斬ればいい。
死にかけの分際で自分を睨むその気に入らない顔を、ミンチのようにしてやろうとチェンソーを振るう。
煉獄に避けるだけの力はもう残されていない。
刀で防御しようと、さっきとは反対に今度は無限刃が砕け散るのはほぼ確実だ。
何をどうしたって無意味。最早煉獄に打つ手は無し。
今度こそ自分の勝利と、ここまで梃子摺らされた男の死を確信した。

「死ねやクソハチマキがぁぁぁーっ!!」





「ペルソナッ!!」
――STEAM BREAK!COBRA!

唐突に絵美里の動きが鈍る。
血を補給し絶好調だったはずの肉体が、何故また不調を引き起こしたのか。
疑問に思う間もなく、絵美里の体は吹き飛ばされる。
哀れな獲物を喰わんとする巨大な蛇。そう錯覚してしまいそうな形のエネルギー弾が直撃したからだ。
アスファルトを転がりながらも、痛みを押し殺しどうにか立ち上がる。
散々煉獄相手にしたように両腕で防御を取っていたら良かったのだろうが、モロに食らってしまった。
不意打ちをして来た奴がいる。そう認識すると怒りで歯を打ち鳴らす。
どこの誰がふざけた真似をしたのかと顔を上げると、目に映ったのは二人、いや三人の乱入者。
帽子を被った青年、青年に付き従うかのように佇む長大なシルクハットの怪人、赤い鎧のようなものを纏った者。
ここに来ての新たな獲物の参戦に、チェンソーが一際大きく唸りを上げた。


◆◆◆


527 : 燃え上がるこの想いの果て―Burning My Soul― ◆ytUSxp038U :2021/07/12(月) 16:02:05 kLUwTymA0
近くで恐らく戦闘が起きている。
そうエボルトに告げられた時点で、自分の答えは決まっていた。

「一応言っておいてやるが、もし殺し合いに乗った奴と遭遇してもマトモに戦り合って勝てるなんて思わないこった」

反論はできない。
アーマージャックとの戦いで受けた傷は癒えておらず、疲労も無視できないくらいに残っている。
だからここでの正しい選択は、ルブランから出ずに体力の回復に努めること。
外で何かのトラブルに陥っている人達には悪いけど、今は自分の身を優先する。
多分エボルトもそうするのが一番だと言いたいのだろう。

だけど、

→【助けに行きたい】
【やっぱり寝よう】
【食後のデザートがまだだった】

今戦っているだろう参加者がどんな人なのかは知らない。
けどここで見捨てるような真似だけは絶対にしたくなかった。
それをするのは、ペルソナ使いになった時の決意を、前科持ちになった原因であるあの時の事件で女性を助けようとした自分自身を、
否定する事に繋がってしまうと感じた。
万全の状態とは言えないし、ペルソナチェンジも使えない。
翔太郎さんの体でまた無茶をしてしまうかもしれない。
それでもじっとしてはいられなかった。

「そうかい。ま、お前ならそう言うんじゃないかとは思ってたがな」

呆れるようなエボルトの言葉。
自分程の傷は負っていないが、アーマージャックと戦った時の疲労は抜け切っていないはず。
ならば自分の我儘に付き合わせるのも気が引けるので、彼にはここで待っていてもらった方が良いかもしれない。
まだ完全には信用できないが、自分のせいで危険な目には遭って欲しくないのだから。

「おいおい、そうツレないこと言うなよ。お前一人を向かわせて死なれちゃ俺もちょいと目覚めが悪いんでね。
 折角だしつきあってやるさ。なぁ、相棒?」

馴れ馴れしく自分の肩に手を置き、そう告げて来た。
一体全体いつ相棒になったのかは謎である。
あとできればあんまり顔や体を近づけないでくれると助かる。
中身は男だが、体は立派な女性。
顔は間違いなく美人だし、ゆったりした服の上からでも分かるくらいにスタイルも抜群だ。
精神が男だと分かっていても、思春期の高校生には刺激が強い。

「さて、と。そんじゃあさっさと行くか。だが俺もお前も万全とは言い難い。そんな状態でアーマージャックみたいな奴と戦っても勝ち目は薄い。
 無理だと分かったらすぐに退かせてもらうぜ。お前がどんだけ渋ってもな」

釘を刺すような言葉に頷く。
殺し合いに乗った者を放置するのは正直気が引ける。
しかし無茶をした所で今のままでは分が悪いのは理解している。
優先すべきは殺し合いに乗っていない人を助けること。
自分でもエボルトの言葉をすんなり受け止められているのに、ほんの少しだけ驚く。
これもまた、怪盗団のリーダーとしての経験が実を結んでいるという事になるのだろうか。

「素直に聞き入れてくれて何よりだよ。無駄な言い争いは俺も避けたいんでね」

そう言ってエボルトは懐から銃を取り出した。
スロットらしき箇所にコブラの装飾がされたボトルをはめ込む。
「蒸血」。そう言って引き金を引くと、あっという間に姿が変わった。
アーマージャックと戦った時と同じ、赤い装甲を纏っている。
認知の世界に行くと怪盗服に変わる自分達とは違う、正に「変身」といった感じだ。
双葉が見たらハイテンションで「変身ヒーローキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」と興奮するだろう。
ヒーローという柄では無いと思うけど。
この姿はエボルトが『仕事』をする際のものらしく、奇妙な銃も彼のいた地球で、ある科学者が開発した物だと説明を受けた。

『ンッ、ンンッ!やっぱりこっちの声の方がしっくり来るな』

首元にあるパイプを操作するような仕草をしたかと思えば、いきなりエボルトの声が変わった。
女の人の声から、渋みのある壮年男性のような声だ。
ポカンと間の抜けたような顔の自分へ説明してくれたが、首元のパイプには変声機能が搭載されており、その動作チェックをしたとのこと。
『良い声してるだろぉ?』と何故か自慢気に言ってきたが、ノーコメントとしておく。
ただ不思議と今の声の方がエボルトにはピッタリな気がした。
彼の放つ飄々とした、それでいて真意の見えない不気味な雰囲気には合っていると思う。
本人にそう伝える気は無いが。


528 : 燃え上がるこの想いの果て―Burning My Soul― ◆ytUSxp038U :2021/07/12(月) 16:04:10 kLUwTymA0
全身が真っ赤な姿を見ていると、何となく杏を思い出す。
あっちも全身真っ赤な怪盗服を纏い、シャドウを華麗にしばき倒していた。
とはいえ同じなのは色だけであり、ボディスーツのような杏の怪盗服と違い、エボルトの姿は中の性別が分からないような装甲服。全くの別物だ。
けどエボルトが現在入っている体の持ち主、アイドルをしているという女性なら、杏の怪盗服も着こなせるんじゃないだろうか。
ボディーラインがピッチリと浮き上がるあの怪盗服を着た姿を思い浮かべ、そんな妄想している場合ではないと即座に頭から追い出す。

とにかく準備は整った。
これ以上誰も犠牲者を出さない為に、エボルトと共に夜の街を駆けた。


◆◆◆


――ICE STEAM!

バルブを回し、スチームブレードを地面に突き立てる。

不意打ちによる射撃では絵美里にダメージこそ与えたものの、倒すには至らなかった。
威勢よく駆け付けたが蓮もエボルトものんびり戦っている余裕は無い。
だから一気に押し切る。

アルセーヌが放ったスクンダにより絵美里の回避能力は削られている。
効果が切れる前に勝負を決める必要があった。
スチームブレードから発生した冷気が地面を伝わり、チェンソーの悪魔の足元へ到達。
人間の面影を残す下半身を凍らせ動きを封じた。

「冷てっ!?」

痛いくらいに冷えた両足に悲鳴が出る。
この凍結も長続きはしない。ましてチェンソーの悪魔ならば強引に氷の拘束を脱け出せる。
そんな隙をくれてやる気は毛頭ない。
スチームブレードとトランスチームガンをライフルモードへ組み替える。
照準を合わせ、蓮もまたアルセーヌのスキルを放った。

「奪え!」
――COBRA!STEAM SHOT!COBRA!

スラッシュとエネルギー弾が絵美里を仕留めんと襲い来る。
だが絵美里は攻撃が放たれるより先に行動を起こしていた。
氷を脱け出すのは間に合わない。
そう判断すると、両腕を地面に勢い良く突き刺した。
チェンソーの悪魔怪力を以てして、まるでアイスクリームを掬うような感覚でアスファルトの地面を掬い上げた。
即席の盾に阻まれ、絵美里への攻撃は通らない。
コンクリート片が飛び散る最中に拘束を脱し、絵美里は近くの街頭へと飛び上がった。

(クソがぁぁぁーっ!苛つくぜぇぇぇーっ!)

肝心な所でとんだ邪魔が入った。
全員ぶち殺してやりたいが、このまま暴れるのは得策でないとは絵美里も分かっている。
煉獄に斬られた際の傷は塞がったとはいえ、疲労までは消えていない。
新たに参戦した奴らの力は未知数。
ひょっとしたらとんでもない隠し玉を持っている事も有り得る。
全参加者、そして最終的にはボンドルド達をも殺す方針なのに、こんな序盤で脱落するのは御免だ。
街灯を思い切り蹴り飛ばし、撃ち落とそうとしてきた蓮達を妨害する。
そして彼らに背を向けた。

「っ、待て!」
「うるせぇボケェェェーッ!そこの死に掛け野郎でも見とけやぁぁぁーっ!」」

チェーンをビルの屋上の柵に引っ掛ける。
蓮達は絵美里の言葉で煉獄に気を取られ足が止まっている。
チェーンを巻き上げビルの屋上へ到達すると、今度は別の屋上の柵へ引っ掛けた。
そうやって移動し続け、絵美里は戦場を後にした。

(覚えとけよテメェらぁぁぁーっ!次に会ったら全員三枚おろしにしてやるぜぇぇぇーっ!)


【D-6とD-7の境目付近 ビルの屋上/黎明】

【絵美理@エッチな夏休み(高橋邦子)】
[身体]:デンジ@チェンソーマン
[状態]:疲労(大)、チェンソーの悪魔に変身中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、輸血パック×4@現実、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本方針:皆殺しだぁぁぁぁぁーっ!
1:今は一旦退くぜぇぇぇぇーっ!
[備考]
・死亡後から参戦です。
・心臓のポチタの意識は封印されており、体の使用者に干渉することはできません。
・女性の手首@ジョジョの奇妙な冒険を食べました。


529 : 燃え上がるこの想いの果て―Burning My Soul― ◆ytUSxp038U :2021/07/12(月) 16:07:08 kLUwTymA0
○○○


意識が薄れていく。
あれ程体中に走っていた激痛も、今では感じられ無くなっている。
自分の体が浮いているかのような、奇妙な解放感。
この感覚は覚えがある。
上弦の参との戦いの後に感じたものと同じ。死が迫っているというやつだろう。
よもや人生で二度も死を経験する事になるとは思いもしなかった。

無念だと思う。
殺し合いを阻止できず、ボンドルド達に己の刃が届くことは無かった。
相楽左之助の肉体を巻き添えで傷つけてしまい、無事返す事もできない。ただただ申し訳なさが募る。
この地にいる鬼殺隊の仲間と再び顔を合わす事も、元居た場所で家族や、痣の少年ともう一度言葉を交わす事も叶わない。
そして鬼舞辻無惨。
決して生かしては置けない宿敵を放置したままこの世を去る。
何と悔しいことか。

「煉獄のお兄さん!」

それに何より、この少年を置いて行くのは心残りでならない。

「男同士のお約束は破ったらいけないんだゾ…!!こらーっ!寝るなーっ!」

ああ、それを言われてしまうと謝る他無い。
一緒に彼の家族を探して、あの美味い肉を食べさせてやれなくてすまない。
共に悪と戦い、肩を並べて勝利の喜びを分かち合うのは不可能になった。
本当に残念だ。
力強さを感じさせる瞳からは大粒の涙が零れていた。拭ってやりたいが、もう指一本動かせない様だ。
ふと彼の後ろに立つ二人の人物に気付く。
名前も知らない者達だが、こうして助けてくれたのならばこの先きっと彼の力になってくれるはず。

もう自分に残された時間はほんの僅か。
本当ならば言いたい事、伝えたい事が沢山ある。
だけど全てを伝えるのはできそうもない。
だからせめて、これだけは伝えたい。

「しんのすけ…強く……胸を張って……強く生きろ……君の勇気は……きっと……」

何かを変えるだけの力がある。
そう言葉を続けようとしたが、もうこれ以上は声も出ず。
眠るように瞼が閉じられた。


○○○


男が泣いている。
ハチマキをした男の人に縋りついて大泣きしている。
その光景を見て思う。
どうして自分は助けられなかったんだと。

これ以上は誰も死なせたくない。
そう決意しておきながらこの様だ。
自分達が到着した時には、既にこの人は生きているのが不思議なくらいの大怪我を負っていた。
それに対して自分は何もできなかった。
ペルソナチェンジが使えたならば、回復スキルを持つペルソナならば彼を助けられたかもしれない。
或いは仲間のペルソナなら何とかなった可能性もある。
しかし自分が使えるペルソナはアルセーヌのみ。
敵を攻撃し、敏捷性を削ぎ、耐久力を落とすことはできても、傷を治すことはできない。

アーマージャックに殺された女の人も、目の前で力尽きた男の人も、
そもそも最初に見せしめのように殺された人だって助けられなかった。
ペルソナ、弱い自分に、理不尽な世界に反逆する力。
それを手にしておきながらこれか。

自分の無力さがどうしようもなく許せなくて、殴りつけてやりたいくらいだった。


○○○


530 : 燃え上がるこの想いの果て―Burning My Soul― ◆ytUSxp038U :2021/07/12(月) 16:10:25 kLUwTymA0
(間に合わなかったか。ま、死んじまったもんは仕方ねぇ)

自分達は間に合わなかった。
それに関してエボルトが特別思うことは無い。
戦力になりそうな参加者を一人失ったのは残念と言えば残念だが、そう後を引く程の事でもない。
どうせ探せば変わりは幾らでも見つけられる。
尤も失ったのが戦兎だったなら、流石に頭を抱えただろうが。

(とりあえず収穫はあったか)

介入して得られたものは主に三つ。

まず一つは煉獄の支給品。
彼が使っていたであろう刀はともかく、他にも役立ちそうな支給品がデイパックに眠っているかもしれない。
出来ればフルボトルの一つでも入っていて欲しいものだ。

二つ目。煉獄の首輪。
戦兎に渡す為の首輪は既に入手しているが、多く持っていて困る物ではない。
仮に一つ目の首輪の解析に失敗したとしてももう一つあれば問題は無いのだし、
それ以外にも武器や交渉の材料として使い道はある。
しかし累の母と違い、煉獄の首輪を手に入れるにはこちらで首を斬らなければならない。
蓮や、今も縋り付いている男の反感を買うかもしれない。
全く人間は面倒な生き物だよと、内心で呆れる。

三つ目。煉獄に縋りついて大泣きしている男。
この男に関しては不確定要素が多い。
一体どれ程の力があるのか。力があるとして強さはどれくらいか。
というか体が持つ力をどこまで引き出せる?
精神は誰が入っているのか。男?それとも女?
口調からして戦兎ではないだろう。どことなく子どもっぽい気がする。

地球で暮らして10年が経過したが、その間子どもは中々厄介な存在だと知った。
こちらの言う事を素直に聞いているかと思えば、突拍子も無い行動に出る事もある。
御するのは容易いと高を括ると、後々苦労する。そういう生き物だ。
石動惣一に代わって美空を育ててやった中で学んだ事の一つ。
もしオレンジの胴着姿の男の中身が子どもだとしたら、さて自分はどう声を掛けてやるべきか。
この男が使い物になるかならないかは、ここからの対応次第である。

(何にせよだ、俺の為に精々役立ってくれよ?)

悲しみと無力感に暮れる少年達を尻目に、仮面の下で蛇は邪悪に笑っていた。



【煉獄杏寿郎@鬼滅の刃 死亡】


【D-6 街/黎明】

【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[身体]:孫悟空@ドラゴンボール
[状態]:体力消耗(中)、貧血気味、右手に腫れ、深い悲しみ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、水水肉@ONE PIECE、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本行動方針:悪者をやっつける
1:煉獄のお兄さん…
2:困っている人がいたらおたすけしたい
3:シロを探す
[備考]
※殺し合いについて理解していません
※身体に慣れていないため力は普通の一般人ぐらいしか出せません、慣れれば技が出せるかもです(もし出せるとしたら威力は物を破壊できるぐらい、そして消耗が激しいです)
※自分が孫悟空の身体に慣れてきていることにまだ気づいていません。コンクリートを破壊できる程度には慣れました。が、その分痛みも跳ね返るようです。
※名簿を確認しました

【エボルト@仮面ライダービルド】
[身体]:桑山千雪@アイドルマスター シャイニーカラーズ
[状態]:ブラッドスタークに変身中、ダメージ(小)、疲労(大)
[装備]:トランスチームガン@仮面ライダービルド、コブラロストフルボトル@仮面ライダービルド
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1、累の母の首輪
[思考・状況]
基本方針:主催者の持つ力を奪い、完全復活を果たす
1:胴着の男(しんのすけ)に対処。どうしようかねぇ…
2:首輪を外す為に戦兎を探す。会えたら首輪を渡してやる
3:有益な情報を持つ参加者と接触する。戦力になる者は引き入れたい
4:自身の状態に疑問
5:アーマージャックを警戒。できればどこかで野垂れ死んで欲しい
6:今の所殺し合いに乗る気は無いが、他に手段が無いなら優勝狙いに切り替える
[備考]
※参戦時期は33話以前のどこか。
※他者の顔を変える、エネルギー波の放射などの能力は使えますが、他者への憑依は不可能となっています。
またブラッドスタークに変身できるだけのハザードレベルはありますが、エボルドライバーを使っての変身はできません。
※自身の状態を、精神だけを千雪の身体に移されたのではなく、千雪の身体にブラッド族の能力で憑依させられたまま固定されていると考えています。
また理由については主催者のミスか、何か目的があってのものと推測しています。
エボルトの考えが正しいか否かは後続の書き手にお任せします。
※ブラッドスタークの変声機能(若しくは自前の能力)により声を変えています。(CV芝崎典子→CV金尾哲夫)。
※参加者がそれぞれ並行世界から参加していると気付きました。


531 : 燃え上がるこの想いの果て―Burning My Soul― ◆ytUSxp038U :2021/07/12(月) 16:13:11 kLUwTymA0
【雨宮蓮@ペルソナ5】
[身体]:左翔太郎@仮面ライダーW
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、SP消費(小)、無力感
[装備]:煙幕@ペルソナ5
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2、T2ジョーカーメモリ@仮面ライダーW
[思考・状況]基本方針:主催を打倒し、この催しを終わらせる。
1:また助けられなかった……
2:まずは仲間を集めたい。
3:とりあえずエボルトと行動。信用して良いのか…?
4:元の体の持ち主に対して少し申し訳なさを感じている。元の体に戻れたら無茶をした事を謝りたい。
5:アーマージャックは必ず止める。逃げた怪物(絵美里)も警戒。
[備考]
参戦時期については少なくとも心の怪盗団を結成し、既に何人か改心させた後です。フタバパレスまでは攻略済み。
支給品は確認済みで、少なくとも武器や銃火器は入っていません。
スキルカード@ペルソナ5を使用した事で、アルセーヌがラクンダを習得しました。
参加者がそれぞれ並行世界から参加していると気付きました。

※煉獄の死体の傍に無限刃@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-、デイパック(基本支給品、ランダム支給品0〜2)が落ちています。


◆◆◆


走る、走る、走る。
脇目も振らずにグレーテは走る。
自分以外の参加者から、剣を持った男と素手で岩を砕いた男から、異形の頭と腕を持つ化け物から。
差し伸べられた手を自ら拒絶したという現実からも、逃げ続ける。
死ぬのは恐い。恐くてたまらない。
バトルロワイアルに参加した瞬間から抱き続けるその感情は、今でも変わらない。

ただ一つだけ、最初の時とは違うものがある。
それは――

(さっき飲んだの、凄く美味しかった)


【D-6 街と草原の境目(西側)/黎明】

【グレーテ・ザムザ@変身】
[身体]:スカラベキング@ドラゴンクエストシリーズ
[状態]:恐慌、体力減少
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:絶望、過剰な怯え
1:この場から離れる
2:喉の渇きが消えた…何だか良い気分…
[備考]
しっぽ爆弾は体力を減少させます。切り離した腹部は数時間ほどで再度生えてきます。
デイパックの破れた傷が広がっています。このまま移動し続ければ他にも中身を落とすかもしれません。
血の味を覚えました。

【水水肉@ONE PIECE】
ウォーターセブンの美しい水に漬けた名物料理。
とろけるような柔らかさが自慢。

【煙幕@ペルソナ5】
怪盗団の潜入道具の一つ。
敵の追尾から逃れ、一時的に見つからなくなる。

【女性の手首@ジョジョの奇妙な冒険】
吉良吉影が恋人として持ち歩いていた手首。パン屋「サンジェルメン」の紙袋に入っている。
これを重ちーに間違って持って行かれたのを切っ掛けに、吉良の平穏な暮らしは崩壊を始めた。

【ダヅールの種@To LOVEる】
「ダークネス」で登場した宇宙植物。
地面に叩きつけると衝撃で急速に発芽して、相手の身体に絡みついて動きを止める。
原作での被害者はティアーユとお静の二名。


532 : ◆ytUSxp038U :2021/07/12(月) 16:15:27 kLUwTymA0
投下終了です
途中でタイトル付けるの忘れたけど、>>520から『燃え上がるこの想いの果て―Burning My Soul―』でお願いします


533 : 名無しさん :2021/07/12(月) 17:28:14 8NQhboW60
乙です
嗚呼……良テンションコンビの片方が……
前世と変わらない煉獄さんの鮮やかな生き様や、怪虫相手にも親しげにコミュニケーションを試みるしんのすけに和まされました
過酷な現実を前により伝わる蓮の信念や、悪党ながらも高い協調性を見せるエボルトも見てて心地良かったです
そんな中で絵美里のノリのいい殺意とグレーテの排他ぶりが異彩を放っていて話の良いスパイスになっていたと思います


534 : ◆vV5.jnbCYw :2021/07/12(月) 21:20:37 okqHO.aw0
大作連投乙です!!
前パートのアーマージャック戦もそうでしたが、
姉畑先生VSギニューの性の戦い、煉獄さんと絵美里の刃の戦い、
そしてペルソナ5特有の迷言付き選択肢など、
盛り上がるだけではなく投下主の原作愛を感じる要素満点でした。
ビルドは良く知らないのですが、悪役でも露骨に殺意を示さず、協力もするエボルトが特にいい味出してました。

次の話も楽しみにしています。


535 : ◆s5tC4j7VZY :2021/07/17(土) 22:28:07 Z3Et5hZc0
皆様投下お疲れ様です!
どの話も楽しく読ませていただいています。

そして、採用ありがとうござます!
リオン・マグナス、大首領JUDO、両面宿儺で予約します。


536 : ◆s5tC4j7VZY :2021/07/19(月) 19:28:04 pdyCh84E0
投下します。


537 : 両頭の蛇 ◆s5tC4j7VZY :2021/07/19(月) 19:28:41 pdyCh84E0
強者ーーーーー強い者。他にまさる力や権力をもつ者。
デジタル大辞泉より引用。

『それでは、改めまして皆さんの健闘を、そしてこのバトル・ロワイアルが良きものとなることを祈っています』
ボンドルドの放送が終わると、リオンは名簿の確認を行う。
その名簿には大切な女性の名前は記されていなかった。

「……これで、僕の進む道は決まった」
優勝して彼女の元に戻る。

「他人など……僕には必要ない」
僕は”アイツ”と違う―――

リオン・マグナスは他の参加者と協力してボンボルド達に立ち向かう道でなく全てを斬り捨てる道を選択する。
全ては守るべき女性の元に戻るために―――

☆彡 ☆彡 ☆彡

「あれは……」
次なる相手を探しに歩いていたリオンの目に映るのは黒とマゼンタを基調とした鎧を身に纏う者。

「……」
男は悠然と歩いている。

(……鎧か。やはり無理に闘うより先に情報を得るとするか)
そう―――先ほどの戦闘の反省。
情報不足だったこともあり、女騎士をみすみす逃がしてしまった。

(このランスロットという男の体……俊敏さがあるだけでなく僕の剣技とも相性がいい。あえて惜しむなら闇属性を有してないことか……)
女騎士との戦闘後、自身の肉体の情報を読み漁ったリオンは自身の得意とする闇属性を有していないことに少し不満を持つが、総合的に判断すれば”外れ”ではないことにホッとする。

(だが、この男の生い立ち……僕とは真逆だな)
ランスロットの生い立ちは自分と比較するとまるで違う。
なんでも、国に仕える騎士団長のこの男は、祖国を守るために幾多の困難に立ち向かったらしい。

(僕が護るのは国ではない。たった一人……それだけだ。そして、必要なのは僕の力だけだ)
ランスロットは騎士団の仲間と護っていたらしい。
だが自分は違う。
所詮、自分は裏切り者の駒の一つ。
大切な人を護るのに仲間は必要ない―――

(……ん?なぜ、奴はデイパックを……)
隙を生じるのを隠れて観察していたが、鎧の男は適当な大きさの石の近くにデイパックを置きだしたのだ。

そして―――

「どうした?コソコソしていないでかかってこい」
鎧男が話しかけてきたのだッ!

「!?」
(チッ!気づかれたか。……まぁいい。ならこちらから行くだけだ!)
リオンは鎧男―――JUDOに攻撃を仕掛ける。

―――ダッ!
リオンはJUDOに駆け寄ると―――

「―――飛燕連脚!」
回し蹴りがJUDOの首・顎と多連ヒットする。

(よし、狙い通り。これで―――)
人体の急所の一つである首・顎への攻撃は勝敗を決しやすい。

(終わりだッ!)
宙に浮いた相手にダメ押しのパラゾニウムによる顔への一刺し―――

―――が。

ガシィィィ!!!

「なッ!?」
(馬鹿なッ!?急所をモロに受けたはず!?)
パラゾ二ウムを掴まれて驚愕するリオン。

―――ビュッ!
JUDOの鋭い蹴りがリオンの脇腹にヒットする。

「ガハァ!?」
痛みに耐えきれず、パラゾ二ウムを手放して後方へ吹き飛ぶ―――

「剣術使いか……」
JUDOはパラゾ二ウムを眺めると、襲撃してきたリオンへ投げ返す。
そして自身も支給品の一つであるライドブッカ―を取り出す。

ライドブッカ―をソードモードに変形させると―――

「我を楽しませてみろ」
……今度はJUDOがリオンに襲い掛かる。

「ぐッ……くッ!」
リオンは投げ返されたパラゾ二ウムを握りしめると迎撃態勢をとる。

剣と剣がぶつかり合う―――

☆彡 ☆彡 ☆彡


538 : 両頭の蛇 ◆s5tC4j7VZY :2021/07/19(月) 19:29:06 pdyCh84E0
剣と剣の攻防が続く―――

「魔神剣!」
地面を這う衝撃波がJUDOに襲い掛かると鎧を切りつける。
ダメージが通っているのか小さいながらも火花が舞い散る。

続けさまに空襲剣からの飛燕連斬とJUDOを斬り刻む。
細かいが傷を負わせることができている。
JUDOも剣を扱うが、まだ肉体が完全には馴染んではいない。
かたや、リオンの剣技にランスロットの肉体は相性が良いのもあってか、JUDOの剣の腕前を上回る。

(どうやらコイツ……体は頑丈だが、剣の腕前はそこまで上ではなさそうだ)
JUDOとの斬り合いを通じてリオンは相手の剣技の腕を推し量る。

(これなら、……イケるッ!!)
リオンはJUDOの剣を捌くと―――

「虎牙破斬!」
流れるように斬り上げからの斬り下げ―――逆袈裟斬からの左袈裟斬がJUDOの体を切り裂く。
鎧を包まれているため血ではないが激しい火花が飛び散る。

そしてダメ押しのタックル。

華奢のように見えるランスロットだが、平民出身から騎士団長まで上り詰めた肉体は伊達じゃない。

JUDOはその鍛え上げられた筋肉のタックルに後ずさりする―――

―――が。

「剣技はそちらの方が上か……」
JUDOはリオンの剣技の技量を把握すると即座に戦術を変える―――

ライドブッカ―ソードモードをブックモードに変形させると―――

スッ―――
一枚のカードを手に取り、ディケイドライバーに投入する。

―――ファイナルアタックライド ディケイド。
音声が流れる。

ディディディディケイド―――

「な……なん……だ?」
(これは、晶術なのか?)
JUDOとリオンの間に大量のカードがずらりと並ぶ。

見たこともない現象にリオンは一瞬―――ほんの一瞬だが防御の動作を遅れてしまう。

「はぁ!!!」
JUDOは高くジャンプすると蹴りの体勢でカードに突進する。
その蹴りは幾重にも重ねられているカードを通り抜けたことにより力が蓄えられ―――

「ディメイションキック」

それは仮面ライダーを代表する蹴り技―――

”ライダーキック”である。

「ぐッ!!!!!」
蹴りを喰らったリオンは吹き飛び―――

轟音が鳴り響くほどの大爆発をした―――

☆彡 ☆彡 ☆彡


539 : 両頭の蛇 ◆s5tC4j7VZY :2021/07/19(月) 19:29:31 pdyCh84E0
―――スタッ。

「大体分かった」
JUDOはリオンとの戦闘を通じて己が封じられている肉体のスペックを把握し終えると、振り返らず、次の楽しみを探しに歩み出す。

―――が。

―――ピタっ。
JUDOはその歩みを止める。

「……ほう。まだ生きているか」
JUDOが振り向くとそこには―――

―――リオン・マグナスが立っていた。

ディメイションキックを受けて、ランスロットの鎧は見るも無残に粉々に破壊された。
しかし、それを引き換えにリオンは、ぼろぼろの体だが、なんとか着火剛焦とパラゾ二ウムを構えて立ち上がることができた―――

「……」
「巧みな剣技はワームにしては上出来だが、我はもはや貴様に興味はない」
次の闘争がある―――
JUDOは終わらせようとリオンの首を折ろうと首を掴んだ。

そのとき―――

「……ピコピコハンマー」
「!?」
JUDOの頭上に大きなピコピコハンマーがピコン!!!と叩く。

それは、決死の火事場の晶術……!!

威力などないようなものだが、流石のJUDOもピコピコハンマーには一瞬呆気にとられる。

その隙をリオンは見逃さない―――

―――リオンの魂が宿るランスロットの肉体には闇属性は存在しない。
だが、死の淵に立った所為か、それともボンボルドのいう『新しい未来が切り開いた鍵』なのか今は判断がつかないが、パラゾ二ウムのスキルが―――

「今、万感の想いをこの技に込めて……」

「!?」
(我の体が……震えている?)
リオンのただならない纏う空気にJUDOの体全身に震えが駆け巡る。

リオンの着火剛焦に纏まりつくと―――

―――魔人闇!!

鋭い突きがJUDOの体を突き貫く―――

「消え去れ……この想いと共に……!」

―――ズボッ!

鎧ごと貫いた着火剛焦を引き抜くと、JUDOは掴んでいた首を離すとうつ伏せに倒れる。

それを見届けると、リオンの体から精気が抜け落ち―――

ふふ……さよならマリアン……それにしても最後に浮かぶ顔が能天気で図々しくてなれなれしいナイト気取りのお前だとはな……スタン

ドサッ―――

リオン・マグナスは斃れた―――
しかし、その表情は穏やかな笑みであった―――

なぜならどんな結果であろうと、自分の意思で選択したのだから―――

【リオン・マグナス@テイルズオブデスティニー 死亡】

☆彡 ☆彡 ☆彡


540 : 両頭の蛇 ◆s5tC4j7VZY :2021/07/19(月) 19:30:00 pdyCh84E0
「この我を一瞬でも気絶させるとは。この感じ……懐かしい肌触りだ。思いの外、愉しめたぞワームよ」
そう、リオンの魔人闇を受け、JUDOはほんの数分だが意識を落とした。

(我がいる世界とは異なる次元にはワームでありながらプロトタイプ達と同等……いや、それ以上の存在がいるということか……面白い)
JUDOは喜ぶ。
無数の次元の存在に―――

「優勝後は、次は我がこの催しを開くのも一興か……」
おそらく、この催しに選ばれなかった世界はまだたくさんあるはずだ。
自らが主催者兼参加者となれば、今回、ボンボルド達に選ばれなかったまだ見ぬ強者と闘うことも可能だろう。

「これなら飽きることはなさそうだ……」
優勝後はボンドルド達が持っているであろう次元に干渉する力を奪う。
その力を使い、尽きることがない闘争(バトルロワイアル)を楽しむ。

実現した暁にはJUDOを包み込んでいる無限の飽きが満たされるであろう―――

JUDOにとって人間は供物でしかない―――

―――竜の餌。

その認識が変わりつつある。

「……それで次は貴様か」
JUDOは戦闘の構えをすると大樹の枝に座る着物姿の少女を見上げる。

「許可なく見上げるな、不愉快だ―――小僧」
―――座っているのは両面宿儺。

☆彡 ☆彡 ☆彡


541 : 両頭の蛇 ◆s5tC4j7VZY :2021/07/19(月) 19:31:08 pdyCh84E0
スタッ―――

座っていた枝から地面に着地すると宿儺はJUDOを見据える。

「……」
JUDOは構えを解かない。

眼前に立つのは取るに足らないワームの少女。
しかし、JUDOは相手の姿に油断しない。
なぜなら、その相手は自分と対等に渡り合える程のオーラを発しているのだから。

「オマエは強い。だから俺もオマエと全力で殺れるなら殺り合いたいと思っている」
身勝手で残虐な宿儺だが、強者にはそれなりの敬意を払う一面も持っている。

「何がいいたい」
JUDOは宿儺の言葉に疑問を投げかける。

そのとき―――

―――パンッ

宿儺は両手を型で組んで合わせる。

―――ゾクッ!!!
「!!」
JUDOは宿儺の仕草に素早く後ろに下がり距離をとる。

「ム……ウ」
(この我が……”死”を感じた……だと?)
それは、今まで味わったことがないといっても過言ではない。

「ふん……まったく、不愉快よな」
「?」
攻撃を仕掛けぬ宿儺にJUDOは訝しむ。

「俺も貴様も完全に力が戻ってはいない。今、ここでやり合ってもツマラン。そうではないか?」

「……」
(確かに我が力は我がもって力と成す……)
JUDOの力は強大だ。
仮に”ツクヨミ”の体を以ってJUDOの力を奪っとしても力の差は歴然としており、ましては人の体にとってはそれは―――唯の猛毒に過ぎない。

JUDOは宿儺の指摘を一蹴することができず、沈黙するしかない―――

JUDOの現在の肉体である門矢士は自身を模した仮面ライダーに近い存在だけあって悪くはない。しかし、『神の器』として適合した村雨良に比べると、現状の力では、やはりいささか物足りぬのが先の男との戦闘の結果が物語っている。

「だが、互いにこの身では元の力は出せないだろう?」
そう、ボンボルド達により魂は別の器に縛られている。
宿る魂が元の肉体でない以上、それは叶わぬ机上の空論。

「先ほどの放送で痴れ者が申していた。『新しい未来を切り開くための鍵』と。それに関係しているかはまだ分からんが、肉体が違っていても元に近い力を取り戻す方法はあるようだ。貴様も身に覚えがあるのではないか?」

「ム……」
宿儺の言葉通りかリオンと戦う前よりは肉体が馴染み、力を取り戻していることにJUDOは気づく。

「どうやら、多少は力が戻ったみたいだな。つまり、そういうことだ。だから、次に出会えば、力が戻っていようが、いないが、心行くまで殺し合う。……どうだ?お前も始まったばかりで死ぬのは悔いが残るであろう?」

JUDOと宿儺は”従う者”(BADAN・呪霊)ではない―――”従わせる者”(大首領・呪いの王)
そして互いは”食いつくす者”

「良いだろう。では、次に対峙した時、雌雄を決するとしよう」
JUDOも今、目の前の者と殺し合っても負けるとは思っていない。
だが、『魂の牢獄』で暇を持て余していたため、この状況を楽しみに感じているのもまた事実。
故にJUDOは宿儺の提案を受け入れた。

もはや2人に問答は必要ない。

JUDOは若おかみの姿をした呪いの王に背を向けると、新たな闘争を求めに歩く―――


542 : 両頭の蛇 ◆s5tC4j7VZY :2021/07/19(月) 19:31:47 pdyCh84E0
【D-5 草原/黎明】

【大首領JUDO@仮面ライダーSPIRITS】
[身体]:門矢士@仮面ライダーディケイド
[状態]:負傷(中) 疲労(小)
[装備]:ディケイドライバー@仮面ライダーディケイド ライドブッカ―@仮面ライダーディケイト
[道具]:基本支給品×2(リオン)、アタックライド@仮面ライダーディケイト
[思考・状況]基本方針:優勝を目指す
1:闘争を楽しむ
2:宿儺と次出会ったら、力が戻った・戻ってないどちらせよ殺し合う
3:優勝後は我もこの催しを開いてみるか
[備考]
参戦時期は、第1部終了時点
【ディケイドライバー@仮面ライダーディケイド】
仮面ライダーディケイドの変身ベルト。
付属する「カメンライド・ディケイド」のカードをセットすることで変身できる。
クウガからキバのカードもいちおう付属しているが、力を失っている状態のため現状では紙切れ同然。
戦いを重ねるごとに力が戻っていき、(クウガからキバ)のカードを使用することが可能となります。
現在は”クウガ”が使用可能。

【ライドブッカー@仮面ライダーディケイド】
可変型の武器。
カードを保管・携帯するためのブックモード、斬撃用のソードモード、銃撃用のガンモードの3タイプに変形することができる。

【アタックライド@仮面ライダーディケイド】
ディケイドが持つ特殊な攻撃技。
カードをドライバーに読みこむことで発動できる。
所持しているのは以下のカード
スラッシュ:斬撃効果を増大
ブラスト:分裂させた銃身から光弾を発射
ファイナルアタックライド:必殺技ディメンションキック
てれびくん:11人の仮面ライダーによる同時必殺技※最強コンプリートフォームでないと使用不可

☆彡 ☆彡 ☆彡


543 : 両頭の蛇 ◆s5tC4j7VZY :2021/07/19(月) 19:34:12 pdyCh84E0
―――スタスタスタ。

JUDOを見送った宿儺は逆の方向へと歩く―――

(ふん……不快極まる)
宿儺は己の提案にいら立つ。

―――普段の自分ならしないであろう行動に。

(おそらく、俺がヤツにこのような提案をしたのは多少なりともこの娘の精神と交わっている所為か……)

現在、宿儺の魂は別の体、関織子の肉体に宿っている。
そして当然ながら、若女将こと関織子の体には呪力はない。
しかし、交通事故での九死にて得た霊界通信力―――
幽霊や魔物を見ることができ話せる能力。
その力が”呪霊”にも働いた。
だから、”解”などといった宿儺の能力を発動することが出来ている。

そして織子は若女将として、客の笑顔のためには全力で取り組む。
織子の肉体に宿る宿儺もまた、それを抗う事ができず笑顔のために行動を起こした。

そう―――JUDOの笑顔は”飽きの渇きの解消”

JUDOは酔狂なヤツだ。
己の魂が遥かに弱い肉体に宿ることになったにもかかわらず、この状況を楽しんでいる。
その笑顔を見るために、ここで殺し合うという選択を宿儺は選べなかった。

「―――我に対して”呪い”のつもりか小娘」
それは、体を奪われている若おかみの決死の抵抗か―――
それとも、ボンボルドが『新しい未来を切り開くための鍵』とやらに関わっているのか、現状は不明だ。

「まぁよい。どちらにせよ我が敗れることはありえぬのだから―――な」

そう、天上天下唯我独尊。
それが両面宿儺なのだから―――

【D-5 草原/黎明】

【両面宿儺 @呪術廻戦】
[身体]:関織子@若おかみは小学生(映画版)
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:主催もろとも全員、塵殺
1:全員、鏖殺
2:非常に忌々しいが参加者を笑顔にさせる(余りにも不快が強ければ鏖殺)
3:JUDOと次出会ったら力が戻った・戻ってないどちらせよ殺し合う
4:鏖殺後、本来の持ち主にこの体が戻ったら「おもてなし」をしてもらう

[備考]
渋谷事変終了直後から参戦です。
能力が大幅に制限されているのと、疲労が激しくなります。
参加者の笑顔に繋がる行動をとると、能力の制限が解除していきます。


544 : 両頭の蛇 ◆s5tC4j7VZY :2021/07/19(月) 19:34:23 pdyCh84E0
投下終了します。


545 : 名無しさん :2021/07/19(月) 20:45:24 Ek0t8Iyw0
投下乙です!

リオン、相手が悪かった…
おっこの霊界通信力が呪力と結びつけられるのはなんとなく予想がついたが、若おかみとしての精神まで宿儺に影響を与えるとは、おっこすごい


546 : ◆s5tC4j7VZY :2021/07/20(火) 20:49:36 ESZBg/Ko0
感想ありがとうございます。

両頭の蛇
そうですね……予約で残った3人を見た時、リオン……こりゃあ、相手しんどいぞと自分でも思っちゃいました。
おっこの”おもてなし”はお客さんたちに影響を与えていくので、その肉体に宿った宿儺も影響を受けていくという展開にしました。
ただ宿儺的には今はまだ不快としか思ってなさそうですが(汗)


547 : ◆ytUSxp038U :2021/07/22(木) 00:28:23 3xLWcGMk0
投下乙です

アルフォンス・エルリック、鬼舞辻無惨を予約します


548 : ◆ytUSxp038U :2021/07/28(水) 12:55:18 gkAVyKtk0
投下します


549 : 禁忌の身体 ◆ytUSxp038U :2021/07/28(水) 12:56:23 gkAVyKtk0
一つ不愉快な事があれば、二つ三つと連鎖して起こるらしい。
民家にてアルフォンスが開いた名簿を見て不意にそう思った。

この出来損ないの体では鞄を開くのもままならなかったが、それを察したであろうアルフォンスが私の鞄を開き、中身を取り出した。
どうやら壊滅的に愚鈍な人間、という訳ではなかったようだ。
鞄を開けるよう仕草で伝えるという、余計な手間を私に取らせなかった点は評価してやっても良い。

アルフォンスが私に向けて開いた名簿。
そこには見過ごせない情報が幾つもあった。

私の名前が載っているのは当たり前として、やはりと言うべきか鬼殺隊の連中の名もあった。
奴らが参加している可能性は勿論考慮していた。
とはいえ、こうしてその事実を目の当たりにされると、どうしようもなく苛立ちが湧き上がる。
しかもだ、よりにもよって鬼狩り共の頭である産屋敷。
奴がこの地にいるなどふざけているにも程がある。
無駄に隊士を差し向け、ただただ無意味にその命を散らし、それを数百年にも渡って繰り返す異常者の極みのような存在。
それが産屋敷だ。
私が殺し合いにいると知ったなら、嬉々として命を狙いに来るだろう。
最悪の場合、奴が私の体に入っている可能性も無いとは言い切れない。
奴の事だ、きっとこの機会に自分諸共私の体を消滅させるに違いない。
そうなる前に急ぎ体を取り戻すか、最低でも私の体に入っているどこぞの塵屑を確保し、余計な真似をできないようにせねばなるまい。

鬼殺隊の人間は産屋敷のみではない。
産屋敷のような狂人を親のように崇める、これまた救いようの無い隊士。
その中でも特に狂っている柱もまた、殺し合いの参加者として名を載せられていた。
だがその者は猗窩座既に殺され、この世にはいないはず。
なのに何故名簿には名がある?
猗窩座が確実にトドメを刺したかも、死体の確認すらマトモに出来ない役立たずの駄犬だったから、そう言い切るのは容易い。
が、真実は違うのだろう。
なにせ名簿に載っている死者の名は炎柱以外にもあるからだ。

累の母親、零余子。
前者は累共々鬼殺隊に斬られ、後者に至っては私が手ずから殺した鬼。
あの二体まで殺し合いにいるというのならば、流石に認めなくてはならないのだろう。
ボンドルド達は死者を蘇生させる力を我が物にしているのだと。
最初に集められた奇妙な空間で見せられた、死人が生き返る光景。
あれはくだらない幻覚などではない、本当に死から蘇ったのだろう。

死者の蘇生などはこの私の力を以てしても不可能だ。
ならボンドルド達は、非常に不愉快極まりないが、私の想像を超える力を有しているに違いない。
「どんな願いでも叶える」、あの言葉も間抜けな人間をそそのかすつもりで言った戯言ではなく、
真にあらゆる願いを叶えられる自信があるからこその言葉、ということか。
尤も、奴らが馬鹿正直に優勝者の願いを叶えてやるかどうかは疑わしい所だが。

(しかし…何故わざわざ蘇生させてまでこいつらを参加させた?)

十二鬼月ですらない、累の家族ごっこに振り回されていた女。
一体全体こいつのどこに参加者としての価値を見出したというのか。
こいつよりならば、まだ累本人を参加させた方がマシだろうに。
零余子にしたってそうだ。
下弦の肆の座を与えてやったというのに今の地位に胡坐をかき、鬼狩り共から逃げ続けた臆病者。
この私の血を与えられていながら、それが如何に栄誉なのかも理解できない塵屑なんぞを参加させて何になる?
現に主である私が耐え難い屈辱を受けているのにも関わらず、あの女共はどこで遊び惚けているのか、一向に私の前に姿を見せないではないか。
何と使えぬ連中だ。あんな女たちを生き返らせてボンドルドは何がしたいのか、理解に苦しむ。
殺し合いを開催する狂人の考えなど分かりたくも無いが。

(他にいる鬼は童磨か…)

上弦の弐である奴もこの地に招いたというのは分からんでもない。
少なくとも零余子のような腑抜けよりはずっと使い物になる。
例え鬼の肉体でなくなったとしても、私の為に人間どもを皆殺しにするだろう。
しかしだ、あの男を傍に置いておけば苛立ちの原因となるのも事実。
人形染みた空虚な笑みと共に紡がれる言葉の数々は、耳に入れるだけでうんざりする。
それでも、出来損ないの肉体となった私に残された数少ない駒であるのは確か。
あれでも黒死牟に次ぐ実力者なのだから、早々に敗退するような無様は晒さないはず。


550 : 禁忌の身体 ◆ytUSxp038U :2021/07/28(水) 12:57:44 gkAVyKtk0
配下の者どもの事へ考えを巡らせている最中、アルフォンスが話しかけて来た。
人語は話せぬが言葉の内容は理解できると見たのか、私の名前を爪で指してくれと言う。
体がマトモなもの且つ、名簿が無かったならば「月彦」と名乗っていたが、生憎と今の肉体は畜生以下の肉塊。
とはいえ名を尋ねられるくらいは予想が付いた事なので、特に躊躇もせず名前を指さした。
当然それは本名ではない。
鬼狩りどもがいる状況で不用意に「鬼舞辻無惨」を名乗る訳にはいかない。
故にここは「産屋敷耀哉」の名を使った。
本名を隠す為とはいえ、よりにもよって異常者の名を騙らねばならんのには不快感で吐き気がする。
そんな私の内心に気付く素振りも見せず、アルフォンスは呑気に礼を言って来た。

名簿の確認を終えると、次にアルフォンスが開いたのは参加者に与えられた肉体の詳細用紙。
嫌悪感しかない出来損ないの肉体だが、一つくらいは使える力が無いとも言い切れない。
正直全く期待はしていないが、万一の可能性もあるのでアルフォンスと共に紙へ目を通す。

「これって…!?」

詳細用紙に記されていた内容にアルフォンスが驚愕の声を出した。
無理もないことだ。
何せ内容が正しければ、この出来損ないの肉塊はボンドルドによって造られたと言うのだから。
元はミーティという人間の小娘だったらしいが、とある実験の被験者となり、今の姿に変わったらしい。
ミーティの辿った末路を読み進める中で、『アビス』という単語を見つけた。
これは先の放送でボンドルドも口にしていたものだ。
意味は分からないが、ボンドルドを知る上で外す事の出来ない要素ではないかと考える。
奴が所属する組織の名か?
いや、放送でボンドルドは『探掘家』を名乗っていた。
であれば『アビス』というのは奴が活動をする場所、地下空間か何かを差しているのか?
尤もただ穴に入って調査をするだけの人間ではないだろう。
ミーティを人から醜悪な出損ないに造り変え、殺し合いの開催という大それた真似をしている。
それだけの能力と人脈を持った男が関わっているのなら、『アビス』というのもろくなものじゃないだろうよ。

とにかくこのミーティがボンドルドと関係した存在というのは理解した。
ならミーティの肉体を詳しく調べれば、ボンドルドに繋がる重要な情報を手に入れる事が出来る。
…と短絡的な参加者ならばそう決めつけるだろうな。
生憎私はその可能性は低いと考えている。
本当に重大な秘密がミーティに隠されているのなら、わざわざ参加者として会場に放り込むような愚行を犯すとは思えない。
ミーティの肉体から得られる情報はボンドルドにとって何の痛手にもならないからこそ、参加者の肉体として私の精神を閉じ込め、
ボンドルド自身の名を記した詳細用紙を配布したのではないのか。

「となると…ミーティの参加はボンドルドにとって重要な事じゃない…?」

私と同じ事を考えていたのだろう。
呟かれたアルフォンスの言葉にほんの少しだけ感心する。
成程、頭の回転の速さも悪くはないようだ。
この程度の事にも気付かず嬉々としてミーティの肉体を調べようとする馬鹿なら、その空っぽな頭を突き刺してやりたくなったが、
流石にそこまでどうしようもない能無しでは無いということか。

ミーティの件は一旦置いておき、支給品の確認に移った。
鞄からアルフォンスが取り出した品々を、説明書と共に一つずつ見やる。
その中に一つ、今の状況を好転させるかもしれないものがあった。
上手くいけば這って移動するしかないこの身体も少しはマシになるだろう。
しかし確実に事が上手くいくかどうかは賭けになる。
ならばまだ使うべき時ではない。

鞄の中身を全て確認し終えると、アルフォンスの腹の虫が鳴った。
余程空腹だったのか、気恥ずかしそうに自身の鞄から食料を出し始める。
私の分も出そうとしたが、頭を横に振りその必要は無いと訴える。
今は食事を取りたい気分ではなく、肉体が鬼で無いとはいえ人間と同じ物を口に入れる気になどなれない。
アルフォンスは少しばかり渋ったようだが、しつこく食事を勧める真似はしなかった。
いいからさっさと食って耳障りな腹の虫を何とかすれば良いだろうに。

「じゃあ…いただきます」

遠慮がちにしつつ、食料に口を付けた。
味わうようにゆっくりと咀嚼していたが、急にその動きがピタリと止まる。
徐々に顔を青褪めさせると、アルフォンスは口に含んでいた物を全て吐き出した。

余程口に合わなかったのか?


◆◆◆


551 : 禁忌の身体 ◆ytUSxp038U :2021/07/28(水) 12:58:47 gkAVyKtk0
今口に含んだばかりのサンドイッチを吐き終えると、アルフォンスは震える手で水を取り出した。
喉にこびりついた汚物を洗い流すかのようにがぶ飲みする。

久方振りの食事に浮かれていた心は一瞬で消え失せた。
今だけは同行者がどんな気持ちで自分の醜態を見ているかにも、気を回す余裕が無い。
それ程までにアルフォンスの、というより千翼の身体は普通の食事という行為を拒絶していた。
パンの柔らかい触感、トマトとレタスの瑞々しさ、厚切りハムの噛み応え、チーズの濃厚なしょっぱさ。
それら全てが酷く不快だった。

大量の水分を取ったアルフォンスは自身に起きた災難に、ただ困惑する。
サンドイッチ自体におかしな所はない。
むしろ殺し合いという状況でなければ、もっと大喜びで齧りついていた。
なのに吐き出してしまった。
食べかけのサンドイッチを見ると、それだけで胃がムカムカしてくる。
支給された食料に問題が無いのなら、原因は身体の方ということなのか。

何故千翼の身体は食事を受けつけないのだろうか。
プロフィールにはそういった事情は何も書かれていなかった。
だがアルフォンスには一つだけ心当たりがある。

(アマゾン……)

人喰いの怪物、アマゾン。
その生態についてアルフォンスは詳しい所を全く知らない。
ただ『人を喰う』という部分、そして殺し合いが始まってから絶えず襲い掛かって来た空腹、
それらが一つの推測を打ち立てたではないか。
千翼の正体はアマゾンで、彼は言わば同族狩りをしていたのではないか、と。
確証の無いただの気にし過ぎとして深く考えないようにしていた。
しかし他ならぬ千翼の肉体が、己の考えは真実である可能性が高いと告げてしまった。
何故普通の食事は受け付けない?
答えは至って単純、千翼が人間を主食とする生物だから。
ふと掌を見ると、さっき付いた切り傷がもう塞がっていた。
幾ら小さな傷でもこんな短時間で完治するなど、どう考えたって常識では有り得ない。
これもまた千翼がアマゾンだからなのか。
それを強く否定できるだけの根拠は、アルフォンスには無かった。

(…もし、この空腹が人間を食べたいっていう千翼の訴えなら……)

果たして自分はそれに耐える事が出来るのだろうか。
一刻も早く首輪を外してボンドルド達を倒し、元の体を取り戻す。
言葉にすれば簡単だが、実際の道のりはとても険しい。
もしも、ボンドルド達に辿り着く前に空腹へ負けてしまったら?
その時自分は一体どうなるのだろうか。

先の見えぬ自分自身への不安に、アルフォンスはブルリと身体を震わせた。


◆◆◆


552 : 禁忌の身体 ◆ytUSxp038U :2021/07/28(水) 12:59:47 gkAVyKtk0
アルフォンスの様子がおかしい。
水を必死に飲んだかと思えば何かを考え込み、不安そうに己の肉体を見下ろしている。
食事が口に合わなかった、などの間抜けな理由では無いらしい。
奴の様子からして恐らく食料ではなく、肉体の方に何らかの問題があるのだろう。

普通の食事を受けつけない肉体。
私にも一つだけ思い当たる節がある。

アルフォンスの精神が入っている肉体は、鬼ではないか?
そう考えれば納得がいく。
人間の血肉を喰らって生きる鬼ならば、人間が普段食べているものを身体が拒否するのも当然の話。
だが私はアルフォンスの肉体である小僧、あのような者を鬼にした覚えは全く無い。
ならばこの小僧は私以外の手の者が生み出した化け物、ということになる。
思い浮かぶのは未だ顔も見せぬ忌々しい男、ボンドルド。
ミーティを出来損ないに変えるような実験をしていたのなら、人造の人喰い生物を生み出す事も可能なのではないだろうか。

…誰が生み出したにせよ、私にとっては良い展開ではない。
アルフォンスの肉体は腹の虫をしつこく鳴らして空腹を訴えている。
その空腹を満たすには普通の食事ではなく、人間の肉を喰わねばならない。
だったら適当な参加者を見つけてそいつを喰えば良いだけの事だが、そんな簡単に済む話なら私はこうして頭を痛めてはいない。
アルフォンスはほぼ間違いなく人間を喰うのを拒否する。
このお人好しなガキはどれだけ空腹に苛まれようと、決して他の参加者共を己の糧にしようとはしない。
私に言わせればくだらないにも程がある考えだが、こいつが食人を拒否し続ければどうなるかを考えると全く笑えない。
空腹の余りまともな判断もできず、それが私に危害が及ぶ結果に繋がるのではないか。
空腹で我を忘れて私を喰おうと襲い掛かるのではないか。
当初はそれなりに使えると思っていたアルフォンスだが、今やいつ爆発するかも分からない厄介な存在となった。
こんな奴からは迅速に離れるべきなのだろうが、アルフォンスの元を去ったとしても次に出会う参加者が同じように私を保護しようとするとは限らない。
出会い頭に殺される可能性だってあり得る。

この問題を解決する術が一つある。
それは私の支給品である、『ネコネコの実』を食べることだ。
悪魔の実という食べれば特殊な力を手に入れられる果実。
説明書き通りの効果を発揮するのなら、獣人とやらに姿を変えられるらしい。
カナヅチになるという弱点こそ出来るものの、まともな移動が可能となり、参加者を皆殺しにできる力を身に着けられる。
真実ならば今の私にとっては何よりも価値のある支給品である。

しかし、しかしだ。
恐らく悪魔の実は元々人間が食べるからこそ効果を最大限に発揮できるもの。
こんな肉塊がネコネコの実を食べたとして、本当に力を得られるのか疑問が浮かぶ。
もしネコネコの実を食べてもロクに力を使えなかったら、無駄に弱点が一つ増えただけで終わるではないか。
まぁこんな肉体では悪魔の実を食べずとも、泳ぐ事など不可能ではあるのだが。
それに説明書きの記述が全てデタラメだという可能性も否定できない。
ボンドルドのように性根の腐り切った輩ならば、虚偽の説明で無駄にこちらの期待を煽るくらいはするだろう。
とにかく、確実に力を得られる確証もない今の時点でネコネコの実を食べるのは避けたい。

アルフォンスも今すぐに空腹で暴走する、という事にはならないだろう。
だが近い内にロクでもない末路になるのは目に見えている。

その瞬間が来る前にどう動くべきか、決めねばなるまい。


◆◆◆


553 : 禁忌の身体 ◆ytUSxp038U :2021/07/28(水) 13:00:30 gkAVyKtk0
アルフォンスにも無惨にも知らない事があった。
それは千翼の肉体が普通の食事を拒絶した理由である。

答えは千翼がアマゾンだから、ではない。
確かにアマゾンは個体によって差はあるが、皆食人衝動を抱えている。
しかし人間と同じ物を食べられないという訳ではない。
レジスターによりアマゾンの本能を抑え、人肉以外のタンパク質を代用エネルギーにする個体だっていた。

千翼が人間の食事を受け付けない理由とは、幼少期のトラウマが原因となっている。
幼い千翼は目の前で母親がアマゾンに喰われる瞬間を目撃した。(実際には千翼自身が喰らおうとしたのだが、ここでは割愛する)
それ以来、何かを口に含んで食べようとすると過去の光景が蘇り、結果食事という行為自体に強い嫌悪感を抱いてしまった。
つまりアマゾンの肉体だから食事を受け付けないのではなく、精神的な理由により食事を受け付けないのである。

だが現在のアルフォンスの状態と照らし合わせると、実に不可解な話ではないだろうか。
アルフォンスには千翼の肉体のみが与えられ、精神は完全にアルフォンス本人。
にも関わらずアルフォンスは千翼同様、食事を受け付けられなくなった。
今の千翼は千翼本人の精神が入っていない、言わば抜け殻とでも言うべき状態。
それがどうして、あたかも千翼の精神が残っているかのような影響をアルフォンスに与えたのだろうか。

その答えを示す参加者が一人存在する。
名を両面宿儺。ボンドルドによって集められた者の中でも屈指の力を持つ呪いの王。
現在の宿儺はおっここと関織子という少女の肉体に精神を幽閉され、大幅な弱体化を余儀なくされている。
重要なのは宿儺の身にも奇怪な影響が出ているということだ。
おっこもまた千翼と同じく精神が無い、肉体のみの抜け殻である。
だというのに宿儺は「他者を笑顔にする」行動を取りだした。
まるでアルフォンス同様に、おっこの精神が残っているかのような影響を受けて。

これらの奇妙な現象もまた、ボンドルドの想定する所なのか。
それを知る参加者は未だ現れていない。


【B-5 村/黎明】

【アルフォンス・エルリック@鋼の錬金術師】
[身体]:千翼@仮面ライダーアマゾンズ
[状態]:空腹感、自分自身への不安
[装備]:ネオアマゾンズレジスター@仮面ライダーアマゾンズ
[道具]:基本支給品、ネオアマゾンズドライバー@仮面ライダーアマゾンズ、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:元の体には戻りたいが、殺し合うつもりはない
1:首輪について調べて、錬金術で分解する
2:合成獣(無惨)に入った精神の持ち主と、元々の肉体の持ち主を元の身体に戻してあげたい。ただし殺し合いに乗っている可能性も考慮し、一応警戒しておく
3:殺し合いに乗っていない人がいたら協力したい
4:バリーを警戒。殺し合いに乗っているなら止める
5:もしこの空腹に耐えられなくなったら…
6:千翼はアマゾン…?
7:一応ミーティの肉体も調べる…?
[備考]
・参戦時期は少なくともジェルソ、ザンパノ(体をキメラにされた軍人さん)が仲間になって以降です。
・ミーティを合成獣だと思っています。
・千翼はアマゾンではないのかと強く疑いを抱いています。
・支給された身体の持ち主のプロフィールにはアマゾンの詳しい生態、千翼の正体に関する情報は書かれていません。
・千翼同様、通常の食事を取ろうとすると激しい拒否感が現れるようです。

【鬼舞辻無惨@鬼滅の刃】
[身体]:ミーティ@メイドインアビス
[状態]:成れ果て、強い怒り、激しい屈辱感
[装備]:
[道具]:基本支給品、ネコネコの実@ONE PIECE、ランダム支給品0〜2(確認済み)
[思考・状況]基本方針:元の体に戻る。主催は絶対に許さない
1:何とかして自由に動けるようになる
2:今はアルフォンスを利用。だがこのまま一緒にいるのは危険か?
3:ネコネコの実の力が本当ならば食べてみる。が、今すぐ食べる気は無い
4:部下に苛立ち。何故あんな使えない女共を蘇生させた?
[備考]
・参戦時期は産屋敷邸襲撃より前です。
・ミーティの体はナナチの隠れ家に居た頃のものです。
・精神が成れ果てのミーティの体に入っても、自我は喪失しません。
・名簿と支給品を確認しました。
・アルフォンスの肉体(千翼)を鬼かそれに近い人喰いの化け物だと考えています。

【ネコネコの実@ONE PIECE】
動物系の悪魔の実。モデル豹(レオパルド)。
大柄な人獣へと変身し、鋭利な爪や強靭な尾と足で攻撃する。


554 : ◆ytUSxp038U :2021/07/28(水) 13:02:37 gkAVyKtk0
投下終了です


555 : ◆ytUSxp038U :2021/07/28(水) 13:07:23 gkAVyKtk0
すみません、状態表を少し修正します

【アルフォンス・エルリック@鋼の錬金術師】
[身体]:千翼@仮面ライダーアマゾンズ
[状態]:空腹感、自分自身への不安
[装備]:ネオアマゾンズレジスター@仮面ライダーアマゾンズ
[道具]:基本支給品、ネオアマゾンズドライバー@仮面ライダーアマゾンズ、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:元の体には戻りたいが、殺し合うつもりはない
1:首輪について調べて、錬金術で分解する
2:ミーティ(無惨)に入った精神の持ち主と、元々の肉体の持ち主であるミーティを元の身体に戻してあげたい。ただし殺し合いに乗っている可能性も考慮し、一応警戒しておく
3:殺し合いに乗っていない人がいたら協力したい
4:バリーを警戒。殺し合いに乗っているなら止める
5:もしこの空腹に耐えられなくなったら…
6:千翼はアマゾン…?
7:一応ミーティの肉体も調べる…?
[備考]
・参戦時期は少なくともジェルソ、ザンパノ(体をキメラにされた軍人さん)が仲間になって以降です。
・ミーティを合成獣だと思っています。
・千翼はアマゾンではないのかと強く疑いを抱いています。
・支給された身体の持ち主のプロフィールにはアマゾンの詳しい生態、千翼の正体に関する情報は書かれていません。
・千翼同様、通常の食事を取ろうとすると激しい拒否感が現れるようです。
・無惨の名を「産屋敷耀哉」と思っています。

【鬼舞辻無惨@鬼滅の刃】
[身体]:ミーティ@メイドインアビス
[状態]:成れ果て、強い怒り、激しい屈辱感
[装備]:
[道具]:基本支給品、ネコネコの実@ONE PIECE、ランダム支給品0〜2(確認済み)
[思考・状況]基本方針:元の体に戻る。主催は絶対に許さない
1:何とかして自由に動けるようになる
2:今はアルフォンスを利用。だがこのまま一緒にいるのは危険か?
3:ネコネコの実の力が本当ならば食べてみる。が、今すぐ食べる気は無い
4:部下に苛立ち。何故あんな使えない女共を蘇生させた?
[備考]
・参戦時期は産屋敷邸襲撃より前です。
・ミーティの体はナナチの隠れ家に居た頃のものです。
・精神が成れ果てのミーティの体に入っても、自我は喪失しません。
・名簿と支給品を確認しました。
・アルフォンスには自身の名を「産屋敷耀哉」だと偽っています。
・アルフォンスの肉体(千翼)を鬼かそれに近い人喰いの化け物だと考えています。


556 : ◆ytUSxp038U :2021/07/30(金) 00:07:30 wP.fQi7s0
柊ナナ、燃堂力、大崎甜花、桐生戦兎を予約します


557 : ◆ytUSxp038U :2021/07/31(土) 18:06:09 3PjO8XrI0
投下します


558 : 無能力者とヒーロー ◆ytUSxp038U :2021/07/31(土) 18:07:26 3PjO8XrI0
「仮面ライダービルドこと桐生戦兎は新世界にてキルバスとの激闘の後、再び万丈と男二人のむさ苦しい生活を送っていた。
 馬渕由衣から積極的なアプローチを受ける万丈を恨めし気に眺めると言う屈辱的な毎日を過ごしていた戦兎はある日、
 ボンドルドと名乗る謎の男の手によってバトルロワイアルへ拉致される」
「…いや何で幻さんがナレーションやってんだよ」
「ってか恨めし気になんかしてねぇっての!」
「まぁそう言ってやるなよヒゲ。戦兎が嫉妬しちまうのも無理はねぇ。
 特に…俺とみーたんのラブラブな光景なんざ女っ気のまるでない戦兎には刺激が強すぎるだろうしな!」
「そりゃお前が一方的に付き纏ってるだけだろ」
「バトルロワイアルで戦兎は佐藤太郎の体になり、ビルドの変身能力を失ってしまった…。しかし異世界のライダー、ディケイドのベルトを手に入れ打倒主催者を誓う。
 そんな戦兎が出会ったのはとあるアイドルの少女、大崎甜歌。果たして戦兎は彼女を守り、無事元の世界に戻ることができるのか!?
 そして戦兎と甜歌、二人っきりで何も起きないはずがなく…」
「起きねーよ何も!何で最後に不穏なもん入れてんだよ!?」
「ハッ!まさか戦兎…みーたんの事もいやらしい目で見てやがったのかテメェ!」
「だからそれはお前の事だろ…」
「なぁ、ディケイドって誰だ?そんな奴いたか?」
「俺だってさっき初めて知ったよそんなライダー……。とにかくどうなる31話!?」


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559 : 無能力者とヒーロー ◆ytUSxp038U :2021/07/31(土) 18:08:21 3PjO8XrI0
天使の悪魔との戦闘後、戦闘音を聞きつけ他の参加者も集まって来るかもしれないと判断し、戦兎と甜歌は移動していた。
友好的な者が来るなら良いが、逆に殺し合いに乗った危険人物まで複数呼び寄せる危険もある。
どんな状況であろうと甜歌を守る方針を変える気は無いとはいえ、負傷したままでの連戦はなるべく避けたい。
それに天使の悪魔ことデビハムも、一体どこへ逃げたのか分からない以上、追跡のしようも無い。
長居は無用と二人は戦闘の痕が残る市街地を後にしたのだった。

「っと、甜歌、もっとしっかり掴まって無いと振り落とされるぞ?」
「う、うん……」

戦兎の注意を受けて、縮こまりながらも素直に従う。
肩にちょこんと置いていただけだった手を戦兎の腰に回し、強く掴んだ。
それを確認し戦兎はアクセルを踏み込む。

二人は今、戦兎の支給品であるバイクに乗っていた。
どう見てもデイパックの大きさとは不釣り合いな乗り物が出て来た時は、二人揃って顔を引き攣らせた。
天才物理学者を名乗る戦兎としてはこの不思議な鞄がどういう仕組みになっているのか、隅から隅まで調べ尽くしたい欲求が湧いて来る。
但しそれは殺し合いを止め、元の体に戻り帰還してからの話となるが。

(これも俺の知らない仮面ライダーが使ってたのか…)

戦兎が運転しているバイクの名はライズホッパー。
飛電インテリジェンス社長にして仮面ライダーゼロワンの変身者、飛電或人の専用ビークルである。
エニグマ事件の際に並行世界の仮面ライダー達の存在を知った戦兎だが、ディケイド同様初めて聞く名のライダーだった。
ともあれ自分が開発したマシンビルダーにも引けを取らない性能は、移動手段として役立つ。
ディケイドライバーと同じく、今は並行世界のライダーの力を貸してもらう。

街灯に照らされた夜の街を走りどれくらい経過しただろうか。
冷たい夜風を浴びながら、甜歌があるものの存在に気付いた。

「あっ、せ、戦兎、さん…!あれ…」

甜歌が見つめる方へ戦兎も視線を向ける。
目に入って来たのは学校らしき建物。

「甜歌が通ってる学校か?」
「う、ううん…違う、けど…。でも、あ、あそこだったら、保健室があるだろうし、戦兎さんの手当ても出来るかなって…」
「別にこれくらい大した傷じゃ…」
「だ、だめ、だよ…!ちゃんと手当てしないと……!…あっ、ご、ごめんなさい…」
「いや、謝らなくても大丈夫だけど…」

少し強めの口調となった甜歌に戦兎は少々面喰う。
だが彼女の言う事も間違ってはいない。
エボルトやさっきの天使のような少年を始めとして、この先もああいった手合いと戦うならば傷を放って置くのは良いとは言えない。
それに襲撃を受けたばかりで甜歌も精神的に疲弊してるはず。
ならここで休んでも良いかもしれない。

「それじゃあ…ちょっと寄って行くか」
「あ、うん…!」

校門前でバイクを降りるとデイパックに仕舞う。
マシンビルダーのようにスマホへ変形は出来ないが、デイパックのおかげで自由に持ち運びが可能なのは有難い。
下駄箱が建ち並ぶ玄関を抜け校舎内へと足を踏み入れた。
当然の事だが中は静まり返っており、本来ここにいたであろう生徒や教員の姿は無い。
非常灯のみが僅かに照らすだけで、後は暗闇が広がるだけ。
襲われても直ぐに対処できるようディケイドライバーを巻き、校舎内を慎重に歩いた。

数分後、保健室の札を見つけると、そっと引き戸を開け中の様子を見る。
先客がいないのを確認すると中の椅子に腰かけ、ようやく一息ついた。
当初の目的であった戦兎の手当てをする為に、甜歌は棚から包帯や消毒液などを取り出す。
そうして痣や切り傷の出来た箇所に包帯を巻き始めた。が、

「あー、甜歌。もう少し緩めてくれるか?」
「あう…ごめんなさい……」

危なっかしい手付きでやったせいか、包帯をキツく巻き過ぎてしまったり、
反対に緩め過ぎてほどけてしまったりする始末。
それでもどうにか、時には手当てされてる戦兎に手伝ってもらいながら粗方の処置を終えた。

(やっぱり甜歌はダメダメだよ……)

手当てすると意気込んでおきながら却って戦兎に手間を掛けさせてしまった。
もし甘奈や千雪ならばもっと手際よくできたはず。
そう思うと甜歌は益々自分が情けなく感じた。
戦兎だけに戦わせるだけで、ただ守ってもらっているばかりの自分。
そんなのは嫌だから何か出来ることは無いかと考え、せめて傷の手当てくらいはしてあげたいと思い付いた。
その結果がこれでは何も意味はない。


560 : 無能力者とヒーロー ◆ytUSxp038U :2021/07/31(土) 18:09:38 3PjO8XrI0
(やっぱり、変身して戦った方が良いのかな……)

自身のデイパックに仕舞われた物へ意識が向かう。
ハッキリとした確証は無いが、恐らくは仮面ライダーに変身する為の道具。
最初に戦兎と出会った時には甘奈の事で頭がいっぱいになり、デイパックの中身を地面にぶちまけていた。
その時に戦兎も甜歌が仮面ライダーの変身道具らしき物を支給されているのに気付いたはず。
にも関わらず、戦兎からは支給品への言及は一度もされていない。
その理由にも甜歌は薄々気付いている。

(多分、甜歌の為…だよね…)

戦兎は会ったばかりの甜歌を守ると言ってくれた。
その戦兎が、甜歌が仮面ライダーとなり自ら戦場に出向く事を良しとするか?
否、絶対に反対するだろう。
きっと戦兎は甜歌が仮面ライダーに変身したせいで危険に晒されたり、誰かを傷つける事になるのを防ぐ為に、
あえて支給品の事に触れなかったのだ。
そんな風に気遣ってくれるのは純粋に嬉しい。
だが一方で本当に仮面ライダーの力を使わないままで良いのかという疑問も浮かぶ。
だから甜歌は思い切って自分から聞いてみる事にした。
あの奇妙なバックルと錠前が、仮面ライダーと関係したアイテムなのかどうかを。

「…あ、あのっ!戦兎さ「待った。誰か来たみたいだ」ふぇ…?」

意を決して口を開いたが、警戒し窓から外の様子を窺う戦兎に遮られた。
誰か来たという言葉に甜歌の心臓が跳ね上がる。
またさっきの危ない天使が来たんおだろうか。
それとも戦兎の宿敵であるエボルトかもしれない。
途端に甜歌は不安気な表情となる。

「…甜歌はここで待っててくれ。俺が行って対処する」
「えっ、で、でも…」
「大丈夫だ。まだ危険な参加者だって決まった訳じゃないしな。それにいざとなったら変身してどうにかするさ」

戦兎の言葉は正しい。
もし相手が殺し合いに乗っていた場合、自分が近くに居ては邪魔でしかない。
ならさっきの戦闘の時と同じく、自分は隠れて待っていた方が良い。
それは甜歌も十分理解している。
自分も付いて行くなどと言って戦兎を困らせてはいけない。
そう分かっている。

「……うん、分かった。戦兎さんも、気を付けて…」

だから、そんなありきたりな言葉で送り出す以外にやれる事なんてない。
不安気な表情の裏で、胸がチクリと痛んだ気がした。


◆◆◆


561 : 無能力者とヒーロー ◆ytUSxp038U :2021/07/31(土) 18:10:54 3PjO8XrI0
「ふぬぬぬぬぬぬ…!!」

鼻息を荒くして自分の手元に夢中になっている同行者を見て柊ナナは思う。
やはり自分は判断を間違えたのではないかと。

「今度は何を始めたんですか燃堂さん…」
「お?いやー、さっきの蓮華じゃ全然曲げられなかったからよ、違うもんならできんのかなって」
「まだ諦めてなかったんですか…。というか今持ってるそれって…」
「おう、鞄漁ってたら出て来たんだよ」

意気揚々と棒を振り回す燃堂に、最早何度目か数えるのも馬鹿らしくなって来たため息をつく。
ラーメン屋で蓮華を全く曲げれなかったからいい加減諦めたと思ったが、そんな物分かりの良い男では無かった。

(スプーンどころか最早食器ですら無い…大体もし曲げられたとしても、もうそれ超能力じゃなくただの握力だろ…)

内心でツッコミを入れるも燃堂がそれに気付くはずも無い。
仮に直接言葉に出してやったとしても、果たしてまともに届くかどうか。
この男の非常識っぷりには最早怒る気にもなれない。

悩みに悩んだ末、ナナは燃堂と行動を共にする事に決めた。
無論、燃堂と一緒にいる事で起きるメリットとデメリットを考えた場合、圧倒的に後者が勝る。
超が複数付く程のバカっぷりに、今後も振り回されるのを想像しただけで頭痛がする。
それでも同行を決めたのは、燃堂を一人にした際の不確定要素が余りにも大きいから。
人の心を読む能力があると豪語する程の高い観察力と推理力を持つナナを以てしても、燃堂が殺し合いで何をしでかすのかは全く分からない。
そんな男を一人で好きに行動させてしまえば、回り回ってナナにとんでもない厄介事が降り掛かる事態に発展しかねない。
根拠の無い、言うなればただの悪い予感でしかないが、絶対に有り得ないとは言い切れないのが燃堂の恐ろしい所だ。

(それにこいつを連れていれば鳥束零太から情報を引き出すのも多少は安易になるはず。知人の同行者となれば無下には扱わないだろう…)

だから燃堂と共にいる事にも少しはメリットがある。
というかそうでも考えなければやっていられない。

「フギギギギギギ!」

横目で燃堂を見てみれば、相も変わらず棒を曲げるのに精を出している。
余程力んでいるのか目は異様に血走り、歯茎を剥き出しにして唸り声を出していた。
元は可愛らしいアイドルの少女だというのに台無しも良い所だった。
いっそこのまま力み過ぎて血管が一斉に切れ逝ってしまえば、自分も肩の荷が下りるんじゃないか。
ナナが投げやりな思考になってきた時、唐突に燃堂が顔を上げ何かに気付いた。

「お?何時の間にか学校まで来ちまってたのか?」

燃堂の言葉でナナも少し遅れて気付く。
自分達の目の前には少年少女が勉学や部活動に勤しむ為の場、学校があった。

「あれ?でも何時もの学校に行く道とは違ったような…気のせいか」
「待ってください。ここって燃堂さんが通っている学校何ですか?」
「おうよ!俺っちが相棒と出会ったのもこのPK学園なんだぜ」
「そうなんですか。(何だそのふざけた名前は…)」

呑気に校舎を見上げる燃堂を尻目にナナは考える。
外観と内部は同じかもしれないが、ここは燃堂が通っていた本物の学校ではないだろう。
参加者に縁のある施設を再現しただけの偽物。
それが能力者のてによるものか、それとも純粋な技術力によるものかまでは今はまだ知り様が無い。

「…って何勝手に進んでるんですか!?」

思考に耽るナナを放置して校門を抜ける燃堂。
ちょっと目を離した隙に一人で好き勝手に動く燃堂へ、お前は園児かとツッコミそうになる気持ちをぐっと堪える。

「いや〜、ずっとスプーン曲げやってたら腹減っちまってよ。さっきもラーメン食えなかったし、売店でコロッケパンでも買おうかなって」
「こんな真夜中に売店なんかやってる訳ないでしょう…大体食べ物なら鞄に入ってるじゃないですか…」

相も変わらずマイペースな言動に、もう何度目かの呆れ交じりのツッコミをぶつける。
とはいえナナとしてもPK学園に立ち寄るのに異論はない。
保健室に行けば応急処置用の治療具が手に入る。
調理室に行けば包丁や果物ナイフ等の刃物が手に入る。
実験室に行けば様々な用途のある薬品類が手に入る。
この先どんな能力者が待ち受けているか分からず、場合によってはボンドルド達主催者と相対する可能性もある。
その時の為に使える手段は一つでも多い方が良い。
それにここで待っていれば鳥束が現れるかもしれない。
自分の母校が殺し合いの施設として存在したら気にはなるはず

(まぁ鳥束が現れなくとも物資の調達をしておいて損は無いだろう)

何故か棒を振り回しながらズンズン進む燃堂に並び、中に入ろうとする。
しかし二人の足はすぐに止められた。
正面玄関から一人の男が姿を現したからだ。


562 : 無能力者とヒーロー ◆ytUSxp038U :2021/07/31(土) 18:12:18 3PjO8XrI0
「そこで止まってくれ。幾つか聞きたい事がある」

派手な色のツナギにマゼンタのバックルという奇妙なファッションに反して、真剣な表情で問い掛けて来た。
新たな参加者の出現にナナは警戒すると同時に内心安堵していた。
燃堂力というウルトラ級のバカと違い、こうしてマトモな参加者と出会えたのは喜ばしい。
いきなり襲い掛からず対話を試みたという事は殺し合いには乗っていない、少なくともすぐにこちらを殺す気は無いはず。

(どちらにせよ普通に話が通じる相手なのは違いない。ここは…)

相手の警戒を解こうと口を開く。
が、それより早く行動する者がいた。

「何だオメー?見た事ない顔だな」
(なぁ!?こいつはまた勝手に…!)

ナナの警戒など知った事かと言わんばかりに、スタスタと男へ近づき顔を覗き込む。
男の方もこういった反応は予期してなかったのか、明らかに困惑していた。

「もしかして転校生か?にしちゃあ老けてるけどよ」
「いや俺は…って老けてるって何だよ!?初対面で言う事じゃねーだろ…」
「お?じゃあ新しい先公かなんかか?」

何と燃堂、男をPK学園の関係者と思っているらしい。
あんな派手なツナギの教師がいる訳ないだろだの、そもそもここはバトルロワイアルにおける一施設で本物の学校じゃないだの、
そういった言葉がナナの頭にポンポン浮かんでくるが、口に出した所で無駄に疲れるだけなので黙っていた。
燃堂のすっとぼけた発現の数々に男も対処に困っているようで、助けを求めるようにナナへ視線をやった。
正直その気持ちは嫌になる程分かる。

(まぁ相手の警戒が若干揺らいだのは良しとするか…)

「ちょっと燃堂さん!そっちのお兄さんが困ってるじゃないですか!」
「けどよー…」
「い・い・か・ら!ここは私に話をさせてください!」
「お?」

間の抜けた表情の燃堂を押しのけ男と向き合う。
今は体が変わっているが問題は無い。
とっくに慣れた、「空気の読めない能力者、柊ナナ」の仮面を被る。

「自己紹介が遅れました!柊ナナと言います!
 あなたも私と同じように殺し合いを止めようとしているのなら、名前を教えてもらって良いですか?」


◆◆◆


柊ナナ、燃堂力。
少年の身体になった少女と、少女の身体になった少年。
学園の来訪者二名と軽く情報交換をし、どちらも殺し合いには乗っていない事が分かった。
というか片方は自分達が殺し合いに巻き込まれた事を理解していなかったが。
いずれにせよ一先ず危険は無いと判断した戦兎は、二人を連れて甜歌の元へ戻った。
戦兎と共にやって来た見知らぬ男女に甜歌は少し身構えたが、天真爛漫を絵に描いたようなナナの態度にどうにか警戒心も解れた。

それぞれ椅子やベッドに腰を下ろし、改めて自己紹介を行う。
すると早速問題が発生した。

「えっと、念の為にもう一度聞きますけど…皆さんは本当に能力者や人類の敵を知らないんですか?」

揃って首を横に振る戦兎と甜歌。
彼らの予期せぬ反応にナナは困惑する。
能力者の存在はとっくの昔に全国民に知れ渡っている。
燃堂のようなバカならまだしも、戦兎達が能力者の存在を把握していないのはどう考えても妙だ。

だがその疑問は瞬時に解決する事になる。

「なぁ、その能力者とかってのは、ナナからすれば誰もが知ってて当たり前の存在なのか?」
「え?そりゃあもう…」
「……そっか。…皆に聞いておいて欲しい話があるんだ」

何故ナナにとっては常識である能力者や人類の敵を、自分達は知らないのか。
その理由に戦兎は心当たりがあった。
答えは実に単純、ナナは戦兎や甜歌とは別の世界の出身だから。
最上魁星との戦い、そして新世界を創造した事で戦兎は並行世界の存在を認知している。
その時の経験をざっと説明した。


563 : 無能力者とヒーロー ◆ytUSxp038U :2021/07/31(土) 18:13:16 3PjO8XrI0
「並行世界、ですか…」

有り得ない話、とは言い切れない。
戦兎達が並行世界の出身ならば、能力者を知らないのも当たり前の話で、
政府が斉木楠雄の存在を把握していなかったのも、斉木がナナとは別の世界の出身だから。
そう考えると話の辻褄は合う。
今の話で他にも気になる部分がある為、詳しく聞いてみる事にする。

「あの!戦兎さんの言う仮面ライダーって人達のこと、もっと教えてくれませんか?」
「へっ?」
「人類の敵のような怪物達と戦うヒーロー…すっごくかっこいいじゃないですか!だから詳しく知りたいなって思いまして!」

身を乗り出して目を輝かせるナナに、戦兎は少々引き気味となるが断る理由も無いので承諾する。
先程甜歌にしたのと大体同じ内容をナナにも話した。
ちなみに燃堂は並行世界の話の時点で理解が追い付いていないのか、ずっとポカンとした表情でいた。

粗方話し終えた戦兎へ、ナナは続けて頼みごとをした。

「戦兎さん、その、もしよろしければ仮面ライダーへの変身を見せて頂けませんか?」
「ここで、か?」
「はい!今の話を聞いてたらこの目で見たくなっちゃいましたので!」

戦兎としてはライダーの力を無暗矢鱈と見世物のようにするのは気が進まない。
だが相手は何も邪な気持ちで変身する所を見たい訳ではなく、純粋な好奇心というやつだろう。
であるならば、一度くらいは良いかと自分を納得させる。
それに甜歌と同じく、ライダーの姿を見て安心感を覚えてくれるなら、これくらいはお安い御用だ。

一旦廊下へ出ると、三人の前で戦兎はカードを構えた。
少しばかりムズムズしながら、慣れて来た動作でドライバーにカードを装填する。

「変身!」

『KAMEN RIDE BUILD!』

『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イエーイ!』

電子音声が響くと共に、一瞬でビルドへと変身完了する。
戦兎の変身を見るのはこれが三度目となる甜歌からしても、やはり驚きの光景だった。
赤と青の装甲を纏った戦士の姿にナナは目を輝かせる。
傍から見ればヒーローの登場に胸を躍らせているようだ。
尤もその内心は違う。

(成程、戦兎自身の能力ではなくあのバックルの力で変身するのか)

冷静にビルドの姿を観察する。
今はまだその気は無いが、今後戦兎達とは敵対する時の可能性、
そして彼と同じ仮面ライダーを相手取る必要が出て来る時の為にこうして変身をせがんだ。
今見た限りでは能力者と違い、バックルなどの道具を用いて戦う。
ならもしもの時はバックルを破壊すれば、仮面ライダー力は瞬く間に失われるだろう。

(そう簡単に破壊させてもらえる程、脆弱な相手でないだろうがな)

ビルドと言うライダーは具体的にどんな性能があるのか。
それに関しては今後も戦兎と行動をしていれば、詳しく知る機会は幾らでも訪れる。
ふと、今の光景を見た燃堂はどんな反応をするのか気になった。
燃堂はとんでもないバカだが、目の前で人が変身する瞬間を見たのなら、流石に普通じゃないと感じるはずだ。
そうなればいい加減、今が異常な事態だと考えるかもしれない。
ほんの僅かな期待を込めて燃堂を見る。

「あれ?お前誰だ?」
「…は?」
「桐生のやつ急にどこにいっちまったんだ?さっきまでいたのによー」

訂正。普通じゃないのは燃堂の方だった。
この男、戦兎と戦兎が変身したビルドをそれぞれ別の人物だと思っているらしい。
斜め上にも程がある反応に、ナナは思わずズッコケそうになる。

「あ、あの…戦兎さんならそこに……」
「お?何言ってんだお前?桐生と見た目が全然違うじゃねえかよ」
「ひぃん……」

甜歌と燃堂のやり取りに戦兎は仮面の下で顔を引き攣らせる。
馬鹿だ筋肉馬鹿だと散々万丈に呆れて来たが、まさかもっと酷い人間がいるとは。
疲れたような顔のナナを見て、彼女がここまで燃堂に振り回されてきたのを理解した。


○○○


564 : 無能力者とヒーロー ◆ytUSxp038U :2021/07/31(土) 18:16:33 3PjO8XrI0
「まさか燃堂さんがあそこまでとは…」
「で、でも、悪い人じゃない…よね?」
「ええ。悪人じゃないのは確かなんですが…」

ため息を吐くナナに、つい苦笑いを浮かべる甜歌。
あの後どうにか戦兎とビルドは同一人物だと三人で燃堂に伝えた。
とはいえ当の燃堂は何を考えてるか分からない表情で「お?」と言っていたので、本当に理解したのかは微妙な所である。
燃堂への説明に長々と時間を使ってしまったせいか、三人ともすっかり疲れてしまった。
そこで戦兎が一度休憩しようと提案し、ナナ達もこれを承諾。
その際ナナが「お花を摘みに行ってきます」と断りを入れ、今は甜歌と二人でトイレに向かっていた。

「ご、ごめんねナナちゃん…。甜歌の代わりに言ってくれて…」
「いえいえ。私もトイレに行きたかったですし。それに、アイドルの女の子に恥ずかしい思いはさせられませんよ!」
「う、うん。ありがとう…」

一息付けると気が緩んだせいか、尿意を催した。
それを戦兎たち男性に伝えるのも恥ずかしくてもじもじしていた甜歌を見兼ねたのだろう、
ナナが代わりに伝えてくれた。

「そう言えば燃堂さんの身体もアイドルをやっている方らしいですけど、ひょっとしてお知り合いだったりします?」
「ううん、知らない娘だよ。多分、違う事務所のアイドルだと思う……。あっ、ここかな…」

保健室を出てそれ程時間を掛けずにトイレは見つかり、男子用と女子用に別れて入る。
これもナナが甜歌を気遣った故の行為であり、幾ら元は女性とはいえ体は男性な自分と共に女子トイレに入るのは気分のいいものではない。
だから自分は男性用の個室で用を足すとナナに言われた。

「はぁ…」

一人になると改めて思う。
自分が如何に情けないのかを。
殺し合いに反対の人達と出会えたのは良いことだ。
ナナは自分と同年代だというのに、こんな状況でも明るく振舞い、他者への気遣いだってできる。
燃堂は殺し合いを全く理解していないのは流石にどうかと思うが、殺し合いにおいてもマイペースぶりを貫く姿勢は素直に凄い。
どちらも自分とは大違い。

「なーちゃん…」

果たしてこんな様で自分は本当に良いのだろうか。
ボンドルド達に捕まっているかもしれない妹の元へ辿り着けるのか。
そんな後ろ向きな姿勢では駄目だと分かっていても、頭に浮かぶのはネガティブな考えばかりだった。

同じ頃、男子トイレに入ったナナは手洗い場の前にじっと佇んでいた。
設置された鏡に映る己の姿、というよりは斉木楠雄の姿を険しい目で睨みながら一人考える。
ナナは甜歌と違い用を足す為にトイレを訪れたのではない。
手に入れた情報を一人で整理する時間が欲しかったからだ。
最初に戦兎や甜歌のような者と会えていれば、無駄に疲れる事も無かったろうに。
今更それを言った所でどうにもならないが。

(並行世界の話が事実だとして、私はこの地にいる能力者をどうするべきか…)

ナナが能力者を殺すのは、彼らが世界を脅かす人類の敵であるからに他ならない。
ここで問題になるのはその定義を並行世界の能力者にも当てはめて良いのか?という疑問だ。
例を挙げれば斉木楠雄。
プロフィールが真実ならば、彼はナナが潜入している学校のクラスメイトよりも遥かに危険な超能力者。
しかし、ナナの生きる世界とは無関係の、並行世界の出身者ならば殺す必要があるだろうか。
どれだけ危険な力が有ろうと、自分の世界とは一切関りの無い人物。
殺し合いから無事に脱出できれば、並行世界の人間と会う事は二度とない。
ならば無視しても良いのではないか。
そんな考えが頭をよぎるが、


565 : 無能力者とヒーロー ◆ytUSxp038U :2021/07/31(土) 18:17:31 3PjO8XrI0
(…いや、方法は不明だが並行世界を移動する力を持つ者がいるのはほぼ間違いない。何らかの要因でこちらの世界に並行世界の能力者がやって来ないとも限らないだろう)

エニグマのような巨大装置か、個人の能力によるものかは分からない。
だが並行世界の人々を拉致する術を主催者が有しているのなら、自分の世界へ並行世界の能力者を送り込む事も可能ではないか。
そうして現れた者が、新たな人類の敵になるのでは?
この可能性を見過ごす事はできない。

(やはり能力者は殺しておくべきだな)

それが並行世界か自分のいた世界の出身かは関係ない。
人類の敵となる可能性を持つ能力者は、誰であろうと生かしておけないのだから。
そうなると主催者達が持っているであろう並行世界を移動するナニカも、どうにかする必要がある。
装置であれば破壊し、能力者ならば殺す。
生きて帰れたとしても再び同じように殺し合いに拉致されたら元も子もない。
そういった事態を防ぐ為には、やはり大本である主催者をどうにかしなければ。
そして警戒すべきは主催者や斉木楠雄だけではない。

(地球外生命体のエボルト…。戦兎の説明通りならば危険極まりない存在だ…)

桐生戦兎…仮面ライダービルドを語る上でエボルトの存在は決して避けては通れない。
それ程に因縁深い相手だ。

10年もの間地球に潜伏し、三都を跨いで暗躍し続けた狡猾さ。
ビルドら複数の仮面ライダーを相手取り、幾度となく辛酸を舐めさせた戦闘力。
何よりも、数多の惑星を吸収し己の糧にする異常な生態。
そんな危険過ぎる異星人も参加者として会場のどこかにいる。
このままエボルトを放置し、何かの間違いが起きてナナのいた世界に渡って来る、などとなっては目も当てられない。
能力者同様、確実に始末しておかなければならない相手と気を引き締め直す。

加えてナナ達と会う前に戦兎と甜歌を襲ったという少年。
天使の翼と光輪を持ち、変身した戦兎と渡り合う身体能力のある、殺し合いに乗った参加者。
こちらも警戒しておかねばならない。

(まぁ、戦兎の協力が得られたのは悪くない)

ライダーの力を使い戦力になるのは勿論のこと。
首輪を外せるかもしれない技能があるのは非常に大きい。
得意気に天才物理学者を自称した時は内心白い目を向けたが、本当に解除できるなら間違いなく自分にプラスとなる人材。
暫くは友好的な態度で接し、信頼を得るのに務めておこう。

(桐生戦兎、か…)

ふと、先程の情報交換を思い出す。
仮面ライダーに関して説明を受けていた際、戦兎はこう言った。
ラブ&ピースの為に戦うヒーロー、それが仮面ライダービルドだと。

確かに戦兎はヒーローとして世界を救ったのだろう。
エボルトのような邪悪な異星人を倒すだけの力を持っているのだろう。

だがそれでも、

「本当にラブ&ピースだけで救えるのなら、こんな事にはならないだろうよ」

冷たく吐き捨てた言葉は、殺し合いに巻き込まれた事へ向けたものか。
或いは、ナナ自身の境遇へ向けたのか。


○○○


566 : 無能力者とヒーロー ◆ytUSxp038U :2021/07/31(土) 18:19:11 3PjO8XrI0
「あーっ!」
「うおっ!?急に叫ぶんじゃないよ心臓に悪い…」

保健室にて少女二人の帰りを待つ男達。
唐突に叫び出した燃堂へ、戦兎は何事かと呆れる。
燃堂が何を考えているかは自分の頭脳を以てしても全く理解できない。
ある意味では戦兎が最も苦手とする人種かもしれなかった。

「うっかり忘れてたけど、俺っちは売店に用があったんだった」
「はぁ?いや何で売店に…」
「思い出したらまた腹が減ってきやがった!ちょっくら行って来るぜ!」
「ちょ、おい!」
「うおおおおおおおお!待ってろコロッケパアアアアアアアアン!」

戦兎が止める間もなく大急ぎで部屋を飛び出して行った。
余りの自由奔放さに呆れを通り越して感心してしまいそうになる。
仮にも殺し合いの場で、夜の学校を駆け回る少女、の身体をした男。
他の参加者が目撃したら怪しさで警戒する事間違いなし。

(…いや、ある意味俺らと会えて良かったのかもな…)

もし燃堂が殺し合いに乗った輩に良からぬ事を吹き込まれ、暴走してしまっていたら?
その結果、誰かの命を奪う事にまで発展してしまっては洒落にならない。
そう考えると最初に出会ったのがナナで、次に出会ったのが自分と甜歌なのは幸運なのかもしれないと思う。
殺し合いに巻き込まれた時点で、既に幸運とはかけ離れている気もするが。

(柊ナナ、か…)

甜歌と共に席を外している少女。
殺し合いという陰惨な場には不釣り合いな明るさと、それでいて他者への気配りもできる優しさ。
見せしめで人が殺される瞬間を見せつけられても恐怖に屈せず、殺し合いを止めたいと決意する強さの持ち主。
だが戦兎には何かが引っかかる。

(本当にそれだけの娘なのか…?)

確かな証拠があってナナを疑っているのではない。
なのにナナをどこか信じきれないのは、戦兎の勘が彼女への警戒を呼び掛けているからだ。
科学に携わる者が非化学的な勘に振り回されるなどあってはならない。
以前の戦兎ならば馬鹿げた妄想として、機にも留めなかっただろう。

しかし現在の戦兎には。
エボルトに幾度も騙され、利用され、踊らされるという過程を経た戦兎には、己の勘を無視する事はできなかった。
それに旧世界での戦いでは、やむを得ない理由があったとはいえ仲間である滝川砂羽の裏切りが起きた事もあった。
故に、ナナを100%信じられるとは残念ながらまだ言えない。

だからと言って今すぐナナを強く警戒するつもりはない。
「お前は怪しいと俺の勘が告げている」などの理由で拒絶すれば信頼を失うのはこちらの方だし、
戦兎とて初対面の相手からそんな事を言われれば、ふざけるなと言い返す。
それに、ただ単に自分が神経質になっているだけという可能性も捨てきれない。
万丈達はおらず、本来のビルドにも変身出来ない。
そんな状況でエボルトを含めた多くの問題に対処しなくてはならないのだから、必要以上に気が張っていて、
余計な疑いをナナに抱いているやもしれないのだ。

(単なる俺の思い過ごしなら良いんだけどな…)

柊ナナは信頼できる人間であって欲しい。
一抹の疑念を抱きながらも、戦兎は密かにそう願った。


567 : 無能力者とヒーロー ◆ytUSxp038U :2021/07/31(土) 18:22:17 3PjO8XrI0
【E-2 街 PK学園高校/黎明】

【柊ナナ@無能なナナ】
[身体]:斉木楠雄@斉木楠雄のΨ難
[状態]:健康、精神的疲労
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
基本方針:まずは脱出方法を探す。他の脱出方法が見つからなければ優勝狙い
1:学園にいる者たちと行動。正直嫌だが燃堂とも
2:鳥束零太から斉木楠雄に関する情報を聞き出したい
3:斉木楠雄が本当に超能力者かどうかはっきりとさせたい
4:犬飼ミチルとは可能なら合流しておく。能力にはあまり期待しない
5:鳥束零太が能力者かどうかも一応確かめておきたい
6:首輪の解除方法を探しておきたい。今の所は桐生戦兎に期待
7:能力者がいたならば殺害する。並行世界の人物であろうと関係ない
8:エボルトを警戒。万が一自分の世界に来られては一大事なので殺しておきたい
9:天使のような姿の少年(デビハムくん)も警戒しておく
10:可能であれば主催者が持つ並行世界へ移動する手段もどうにかしたい
11:学園内で物資を調達しておく
[備考]
・原作5話終了直後辺りからの参戦とします。
・斉木楠雄が殺し合いの主催にいる可能性を疑っています。
・超能力者は基本的には使用できません。
・ですが、何かのきっかけで一部なら使える可能性があるかもしれません。
・参加者が並行世界から集められている可能性を知りました。

【燃堂力@斉木楠雄のΨ難】
[身体]:堀裕子@アイドルマスターシンデレラガールズ
[状態]:健康
[装備]:如意棒@ドラゴンボール
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:お?
1:お?
[備考]
・殺し合いについてよく分かっていないようです。
・柊ナナを斉木楠雄の弟だと思っているようです。
・自分の体を使っている人物は堀裕子だと思っているようです。
・桐生戦兎とビルドに変身した後の姿を、それぞれ別人だと思っているようです。


568 : 無能力者とヒーロー ◆ytUSxp038U :2021/07/31(土) 18:22:52 3PjO8XrI0
【大崎甜花@アイドルマスターシャイニーカラーズ】
[身体]:大崎甘奈@アイドルマスターシャイニーカラーズ
[状態]:健康、精神的疲労(小)
[装備]:戦極ドライバー+メロンロックシード+メロンエナジーロックシード@仮面ライダー鎧武
[道具]:基本支給品
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない。
1:戦兎さんと……一緒に、いる。
2:なーちゃん、大丈夫……かな……。
3:283プロのみんなは……巻き込まれてなくて、よかった……。
4:甜花に、できることなんて……あるのかな……。
5:ナナちゃんと、燃堂さん……凄いな……。
6:戦兎さんに……支給品のこと……聞きそびれちゃった……。
[備考]
※自分のランダム支給品が仮面ライダーに変身するものではないかと考えています。
※参戦時期は後続の書き手にお任せします。
※参加者が並行世界から集められている可能性を知りました。

【桐生戦兎@仮面ライダービルド】
[身体]:佐藤太郎@仮面ライダービルド
[状態]:ダメージ(中)、疲労(小)、応急処置済み
[装備]:ネオディケイドライバー@仮面ライダージオウ
[道具]:基本支給品、ライズホッパー@仮面ライダーゼロワン、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:殺し合いを打破する。
1:甜花を守る。自意識過剰な正義のヒーローだからな。
2:他に殺し合いに乗ってない参加者がいるかもしれない。探してみよう。
3:首輪も外さないとな。となると工具がいるか
4:エボルトの動向には要警戒。誰の体に入ってるんだ?
5:翼の生えた少年(デビハム)は必ず止める。
6:ナナに僅かな疑念。杞憂で済めば良いんだが…
[備考]
※本来の体ではないためビルドドライバーでは変身することができません。
※平成ジェネレーションズFINALの記憶があるため、仮面ライダーエグゼイド・ゴースト・鎧武・フォーゼ・オーズを知っています。
※ライドブッカーには各ライダーの基本フォームのライダーカードとビルドジーニアスフォームのカードが入っています。
※令和ライダーのカードが入っているかは後続の書き手にお任せします。
※参戦時期は少なくとも本編終了後の新世界からです。『仮面ライダークローズ』の出来事は経験しています。
※参加者が並行世界から集められている可能性を知りました。

【如意棒@ドラゴンボール】
孫悟空が以前使っていた伸縮自在の棒。本来はカリン塔と神の神殿とをつなぐための道具。
地球と月の間の距離までは伸ばせるが、今ロワでそこまで伸ばすのは不可能。

【ライズホッパー@仮面ライダーゼロワン】
ゼロワンの専用ビークル。
普段は衛星ゼアに収納されているが、飛電ライズフォンをゼロワンドライバーにオーソライズした後、バイクアプリを起動することで地上まで射出…
といった工程から分かるように本来はゼロワンドライバーを起動できる或人専用のバイク。
ロワでは或人もゼアも存在しない為、バイク形態のまま参加者に支給されている。
通常のエンジンによる駆動の他に、超圧縮噴流を後部スラスターから噴射することで、滑るように疾走することや、ジャンプすることも可能。
制御装置がフロント部に内蔵されている。

【PK学園高校@斉木楠雄のΨ難】
斉木楠雄達が通学する開校20年以上の私立高校。S県左脇腹町南部に位置する。校舎は4階建て。
クラスには「○(1)組」「+(2)組」「巛(3)組」「□(4)組」「☆(5)組」がある。2χの時点で全校生徒数は542名。


569 : ◆ytUSxp038U :2021/07/31(土) 18:25:26 3PjO8XrI0
投下終了です

自己リレーとなりますがこのまま
柊ナナ、燃堂力、大崎甜花、桐生戦兎、杉元佐一、鳥束零太、我妻善逸、DIO、貨物船を予約します


570 : ◆EPyDv9DKJs :2021/08/01(日) 11:59:13 1KMf3MbY0
キャメロット城、遠坂凛、ン・ダグバ・ゼバ、バリー・ザ・チョッパーで予約します


571 : ◆s5tC4j7VZY :2021/08/02(月) 18:57:52 z7kNsdaQ0
投下お疲れ様です!

禁忌の身体
生きるためにめっちゃ考察している無惨様は一見対主催に見える不思議さが!
あれでも黒死牟に次ぐ実力者なのだから、早々に敗退するような無様は晒さないはず。
↑放送後の無惨様の反応が実に楽しみな自分がいます(笑)
そして、自分の話(元の持ち主の影響)を絡めていただき有難うございます。
正直、他の書き手様から若おかみことおっこの字が見れたこと嬉しく思います。

無能力者とヒーロー
ライダーへの変身を頼みつつ実は変身方法をチェックするナナはやはり策士な一面がよく出ていて息を呑みました。
また、燃堂の行動に心労を重ねる姿にはちょっとフフッと読んでいて笑みが出ました。
「本当にラブ&ピースだけで救えるのなら、こんな事にはならないだろうよ」
↑ナナの境遇を知ればこの言葉は本当に深さが増しますね……あの時、ライダー(正義のヒーロー)のような存在が救っていれば今の道を進んではいないでしょうから……


572 : ◆ytUSxp038U :2021/08/03(火) 01:24:32 ouO5XsHo0
感想ありがとうございます
精神が肉体の持ち主の影響を受ける、という設定が出た宿儺inおっこはチェンジロワにおけるキーパーソンだと思ったので、
拙作にも取り入れさせてもらいました。

投下します


573 : Vは誰の手に/開幕のベルが鳴る ◆ytUSxp038U :2021/08/03(火) 01:26:08 ouO5XsHo0
「やっと着いたか」

バトルロワイアル開始から約4時間が経過。
そう遠くない内に太陽が会場を照らすだろう前に、DIOは市街地へ足を踏み入れた。

この数時間の間にDIOが出会った参加者は少ない。
炎を操り不死身を自称する少女、スギモト。
どういう訳か自分の部下を名乗り、協力を申し出て来たオランウータン、貨物船。
以上、1人の1匹のみ。
部下であるヴァニラとの合流も、ジョースターの血統たる承太郎の始末も未だ叶わず。
されどDIOに焦りや苛立ちは微塵もない。
過程がどうあれ最後に勝利するのは紛れも無くこのDIOである。それが疑いようも無い事実だと確信しているが故に。

デイパックから水を取り出すと両腕に掛ける。
焼かれた箇所が冷やされる感触を味わい、ペットボトルに残った水を喉を鳴らして飲む。
血では無く水で喉の渇きを潤すなどいつ以来だろうか。

「思いの外時間が掛かった…いや」
(それにしては疲労がほとんど無いな)
「ウキ?」

主の言葉に首を傾げる獣には構わず、己に与えられた仮初の肉体を眺める。

杉元との戦闘後、燃え盛る森から街まで足を速めていたのだが、思ったほどの疲労は無かった。
人間を超越した吸血鬼の肉体とは比べ物にならない、人間の脆い肉体。
しかし、簡単に使い物にならなくなるような貧弱な肉体では断じてない事は、DIO自身が良く知っている。
丸太のように太い腕、大地を力強く踏みつける両足、衣服が裂けんばかりに盛り上がった筋肉。
DIOの生涯の宿敵、ジョナサン・ジョースターの肉体はちょっとやそっとの移動で音を上げるはずがないのだから。
学生時代にはラグビー部のエースに輝く程の、恵まれた体格をもつ男。
そんな男が波紋戦士としての修行で更に鍛え上げたこの体。
『人間』としては最高峰の体力がある、それはDIOとしても認めよう。

「皮肉なものだな」

ジョナサンがここまで鍛え上げたのは何故か。
それはディオ・ブランドーを己の手で討つ為に他ならない。
それがどうだ。
あの沈みゆく船の中でも、このバトルロワイアルでも、鍛えに鍛えたジョナサンの肉体はDIOを殺す為でなく生かす為に存在する。
これを皮肉と言わずに何と言う。

(お前の肉体を奪った俺が、今度はお前の肉体に閉じ込められる。随分と出来過ぎた話じゃあないか、ジョジョ)

ボンドルドはDIOの素性を詳細に把握した上でジョナサンの肉体を与えた。
どんな意図があるにせよ、随分と趣味の悪い真似をする。
ある意味では、これ以上ない程に相応しい肉体。
そう思ってジョナサンの身体を与えたのかもしれない。

「しかし残念だなぁジョジョ。道に投げ捨てられた残飯を掻き集める浮浪者のような必死さでお前が習得した波紋も、俺にとっては無用の長物でしかないんだよ」

吸血鬼を倒す為に編み出された戦闘技術。
DIOに言わせれば時代遅れの、フーフー吹くだけのカビが生えたお遊戯。
嘗ての自分を追いつめたというのを抜きにしても、使う気はこれぽっちも起きやしない。
何故なら波紋などはDIOにとって最大の力、ザ・ワールドの足元にも及ばないからだ。
例え肉体が変わろうとも、その精神がDIOである限り決して失う事の無いスタンド。
時を止められずとも、他の追随を許さないこのスタンドがあれば十分。

身体だけを残して逝った男への嘲りもそこそこに、さてどこへ向かうかを思考する。
街ならば森だの海岸だのよりも、参加者が集まる確率は高い。
承太郎と交戦すればザ・ワールドは再び時を止める力が発現し、名実ともに最強のスタンドへと戻る。
ヴァニラと首尾よく合流できるのも良し。
身体が変わろうとスタンドが使えるのはDIO自身が証明済み。
クリームの力はここでも問題無く発揮できるだろう。
二人がいなくとも、多くの参加者をみつけられたら問題無い。
有象無象の輩など、このDIOの為に死ねば良い。

(ここから一番目立つ建造物は…あれか)

目的地を決め悠々と歩き出す。
貨物船に一々声を掛ける真似はしない。
そんな手間を掛けずとも、忠誠を誓った主の後へ続くのは至極当然のこと。

街は未だ暗闇に覆われているが、DIOに躊躇は無い。
吸血鬼にとっては夜こそが自分達の時間。
人間の体になろうとも、その考えは変わらなかった。


◆◆◆


574 : Vは誰の手に/開幕のベルが鳴る ◆ytUSxp038U :2021/08/03(火) 01:27:25 ouO5XsHo0
「ただいま戻りましたー!ってあれ?」

元気いっぱいに男性陣の待つ保健室へ戻って来たナナ。
その後ろからちょこんと甜歌が顔を覗かせる。
用を足すと偽り情報を整理し終えると、何食わぬ顔で甜歌と入り口で落ち合った。
まさかこの明るくて優しい少女が、見ていない所で能力者の抹殺を改めて決意していたなどとは露知らず、
男の人の身体だと大変じゃなかったのか、という少々ズレた心配をしていた。

「燃堂さんはどこです?」

部屋の中にいるのは戦兎のみ。
もう一人の男である燃堂の姿はどこにも見当たらない。
この数時間で慣れてしまったが、あの男はじっとしている事ができないのかと顔には出さず呆れる。

「あー…。あいつなら売店に行くって飛び出してったよ」
「えっ、えぇ……こんな暗いのに…?」
「あぁ…。そういえばそんな事言ってましたね…」

最初に学園を訪れた時の言葉を思い出し、苦笑いを浮かべる。
食料ならデイパックに入っているだとか戦兎が言うより早く、脇目も振らずに出て行ったに違いない。
だが燃堂の突飛な行動は今に始まった事では無いし、段々慣れて来たのかナナは余り驚かなくなった。
慣れた所で嬉しくも何ともない、というのがナナ本人の率直な想いである。

「そっ、そんなにお腹が空いてたのかな…?」
「最初に私と燃堂さんが遭遇した場所はラーメン屋さんだったんですけど、そこで食べれなかったのが響いたんじゃないでしょうか?」
「いやそりゃ食えないだろうよ。店員なんている訳ないんだし…」

燃堂の破天荒ぶりにはただ呆れ返るばかり。
そんな話をしていると保健室の扉が開かれた。
肩を落として、見るからに消沈した様子の燃堂が入って来る。

「おかえりなさい。どうしました?そんな暗い顔して」
「店員のおばちゃんがいなかったしよぉ、俺っちの財布も無くなってたしで買えなかった…」

当たり前だろとでも言いたげな顔をする三人。
とはいえ、燃堂の事だから無理やりにでも売店に押し入ると思っていたナナには少し意外な答えだった。
とんでもないバカだが、それくらいの常識は流石にあるらしい。
個人によって差はあれど傲慢な面を持つクラスメイト達に比べると、多少はまとも。
燃堂への評価を少しだけ見直した。

「食べ物だったら燃堂さんにも支給されてるはずですよ。ちゃんとバッグの中を見てください」
「お?…おぉ!マジで入ってるぞ!」

ナナに促されてデイパックをよく確認してみる。
燃堂にだけは食料を渡さない、なんて悪質な行為はされておらず、他の参加者同様弁当が入っていた。
ようやっと空腹を満たせると歓喜し、蓋を開いて即座に箸を付けた。
まるで丼物をかき込むかのような豪快な食べっぷり。
仮にもアイドルの身体でしていい行為ではないが、それを咎めた所で無意味だろう。

燃堂が食事に夢中になっている間に、ナナは話を切り出す。

「ところで、戦兎さん達はこの後具体的にどう動くかを考えてたりはしますか?」
「ん?ああ。少し休んだら工具か何かを探そうと思ってたよ」
「工具…あっ、そういう事ですね!」

今の状況で工具が必要と聞き、パッと浮かんだ用途は二つ。
一つは武器の確保。
ドライバー、レンチ、スパナ。殺傷能力は十分あり、状況によっては尋問にも使える。
但し戦兎は既に仮面ライダーへの変身道具という、これ以上ないくらいの武器を手にしている。
よって違う。
正解は二つ目、首輪を解除する為に使うからだ。

「流石に何の道具も無しでいきなり外す、ってのは無理だからな」
「分かりました!探す時は私もお手伝いしますね!ちなみに他に必要な物ってありますか?」
「後は……首輪のサンプル、かな…」

どこか気まずそうに答えた。
必要な道具が揃ったとしても、ぶっつけ本番で首輪の解除を行うのは危険過ぎる。
たった一つの間違いで即座に爆破し、命を落としてしまっては、どれだけ後悔しても遅い。
安全を期すには、事前に内部の構造を詳細に調べた上で首輪解除に取り掛かるのが最善の道。
その為に首輪のサンプルは必要不可欠である。

戦兎が憂うのはサンプルを手に入れる方法に関してだ。
会場に都合よ参加者に填められているものと同じ首輪や、首輪の設計図があるとは思えない。
となれば入手する方法はただ一つ、他の参加者を殺して奪う。
そうする必要があると言うのは理解している。
だが理解しているからと言って、進んで行いたい事ではない。
幾ら悪人とはいえ命を奪い、首輪を人体から切り離さなければならないのだから。
それでも、ボンドルドによって命を脅かされた者達を解放するには、やるしかないのだ。


575 : Vは誰の手に/開幕のベルが鳴る ◆ytUSxp038U :2021/08/03(火) 01:28:26 ouO5XsHo0
(…というような事で悩んでいるんだろうな)

戦兎の葛藤をナナはすぐに見抜いた。
言葉は途切れが悪く、表情には翳りがある。
そんなあからさまな反応をされて、何も問題ありませんと考える方が間抜けだ。
ナナからした戦兎の抱える迷いなど、「甘い」の一言で切り捨てるようなものでしかない。
確かに人間の頭部を斬り落とすのは気持ちの良い作業とは言えないし、ナナとて無意味ににそんな残虐行為に手を染めたいとは思わない。
しかし、必要であると確信したなら躊躇せず実行に移せる。
無駄な感傷や迷いのせいで取り返しの付かない事態を引き起こすなど三流のやる事。
自分は決してそんな失敗はしない。

(それでも、暫くは戦兎の甘さに付き合ってやらなければならないか)

首輪の解除が可能かもしれない人材と簡単に手を切る気は無い。
もし首輪のサンプルが手に入りそうな状況で戦兎が渋り続けるなら、こちらでフォローする必要がある。
叶うなら、余計な手間を取らせずにさっさと覚悟を決めてもらいたいものだ。

(まぁ、確実に外せる保障も無いが)

話を聞いた限り、仮面ライダーとしての戦いに使う武器や強化アイテムの作成を引き受けていたと言う戦兎の技術力はかなり高い。
しかしそれは首輪を解除できる絶対の根拠にはならない。
ボンドルドが用意した首輪が、戦兎の頭脳を上回る程の技術で作られていないと言い切れるか?
そもそも首輪の解除は絶対に不可能だと確信しているからこそ、技術者である戦兎を参加させたのではないのか。
参加者がどう手を尽くそうとボンドルドには無駄な足掻きでしかないのなく、打つ手なしと判断したならその時は…。

(今から最終手段を考えても仕方ない…)

バトルロワイアルはまだ序盤。
あらゆる面で情報が不足している現状で、優勝の可能性を考えるのは気が早過ぎる。
首輪に関する考えを一旦打ち切った。
戦兎が険しい顔で外を覗き込んだのは丁度その時だった。

「…話は一旦終わりだ。また誰か近付いて来てる」

聞いて直ぐにナナは姿勢を低くし、外からは見えない位置に移動する。
甜歌もまた慌てて隠れ蹲った。
弁当を食べ終えた燃堂だけは間の抜けた顔で首を傾げていたが、ナナが強引に引っ張り頭を下げさせる。
この状況で燃堂に一々ツッコミを「入れる余裕は無い。

「何人ですか?」
「見た感じは…男が一人みたいだ」
「こ、今度も、ナナちゃん達みたいに、協力してくれる人、かな…?」
「それはまだ分からない。さっきと同じく、まず俺が出て確かめて来る」

ナナには戦兎の提案を反対する気はない。
相手が友好的な人間ならば交渉役を引き受けても良いが、殺し合いに乗った危険人物と真正面から戦うのは避けたいところだ。
斉木の持つ超能力が使えるならまだしも、そうでないのに仮面ライダーのような力を持った参加者と真っ向からぶつかって殺せるかどうかは微妙である。
ならここは自分達4人の中で、唯一仮面ライダーへ変身できる戦兎に対応を任せる。
とはいえその間何もしていなという訳ではない。
万が一相手が殺し合いに乗っていた場合、戦兎をすり抜け自分達にも被害が及ぶようなら、相応の対処が必要となる。
既に確認している支給品を意識しつつ、戦兎へ頷き返す。

「じゃあ行って来る。もしマズいと思ったら三人で逃げてくれよ」
「そんな…戦兎さんを置いて行くのは…」
「心配すんな。こんな所で死ぬ気は無いって」

一度甜歌へ笑みを向けると、急ぎ足で保健室を出る。
その後ろ姿を不安気に見送る甜歌の肩へ、ナナは気遣うように手を当てた。

「戦兎さんならきっと大丈夫ですよ。それにもしかしたら私達と同じ、殺し合いを止めようとする人かもしれないですし」
「うん…そう、だけど…」
「なぁ、いつまでこうしてんだ?誰か来たんなら俺っちも見て来てやろうか?」
「すみませんが今は大人しくしてください」

ナナの言葉を受けても、依然として甜歌の表情は暗い。
無理も無いかと納得する。
甜歌は戦兎やナナのような非日常に位置する人間とは正反対の、血生臭い世界とは無縁の少女。
正真正銘の一般人が殺し合いに巻き込まれ、双子の妹の身体になってしまったとあれば内心穏やかとはいくまい。
何故そんな一般人を参加させたのかは謎であるが、それに関しては今は後回しだ。
果たしてどんな人物がやって来たのか。
今の自分が取れる手を思い浮かべながら、そっと様子を窺った。


◆◆◆


576 : Vは誰の手に/開幕のベルが鳴る ◆ytUSxp038U :2021/08/03(火) 01:29:34 ouO5XsHo0
正面玄関を抜け外へ出た戦兎は一人の男と対峙している。
太い首には参加者の証である首輪。
顔付きからして日本人ではないだろう。佐藤太郎の身体を上回る長身に、服をはち切らんばかりの筋肉。
今が殺し合いでなければその見事な肉体美に、つい怯んでいたかもしれない。

「突然申し訳ないが、ちょっと聞きたいことがあるんだ」
「何…?」

名乗りもせずにいきなり質問をぶつけるとは、初対面だというのに随分と不躾な人間だ。
人によっては激怒させかねない行為だが、この男相手には不思議と怒りが湧かない。
その理由は男が浮かべる表情にあった。
相対する者の心を落ち着かせ、自然と警戒心を下げてしまいそうな微笑み。
正に親しみ溢れる好青年といった立ち振る舞い。
名前も知らない男だが、彼ならば信用しても良いのでは?
きっと彼を見、話をすればそんな思いが生まれ出て来るのかもしれない。

「実は人を探していてね。もし知っているなら是非教えてもらえるかい?」

そんな男を、戦兎は強く警戒した。

「へぇ、知り合いが巻き込まれたのか?」

言葉を返した裏では、ツナギの下を緊張で汗が滴り落ちた。
この感覚はナナに感じた時と同じ、戦兎の勘が男への危険を訴えている。
但し、それはナナの時よりももっと大きい。
語彙力の低い万丈風に言えば「マジヤベェ」感じ。
同じような得体の知れなさを持つ存在を戦兎は知っている。

「ヴァニラ・アイスと空条承太郎。彼らの名に聞き覚えは?」
「…いや、どっちも名簿に載ってるのを見ただけだ」
「そうか。ところで…」

一旦言葉を区切り、戦兎の目を見据えて口を開いた。

「君はどうしてそんなに、こちらを警戒しているのかな?」
「…あんたと、似たような奴を一人知っている」
「ほう?」
「あたかも自分は味方だって顔で近づいて、あっという間にこっちの心に入り込んで…
 そのくせ内心じゃあ他人を利用するか滅ぼすかの二択でしか見ていない、最悪の野郎だよ」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


男の表情が歪んでいく。紳士然としていた笑みは、恐ろしい程冷たいものに。
周囲の空気が異様に重い。男の放つ威圧感が、戦兎の周囲を支配下に置いたかのようだ。
自分の直感が今回は正しかったと理解する。
この男は危険だ。人の命を涼しい顔で踏みにじる、エボルトと同様の存在。

「成程。君の警戒は――」
「ッ!!」

一人で納得したように頷き、戦兎の方へ歩を進める。
男は一見無防備だが、見たままを受け入れる気はない。
何をする気かは知らないが、このままじっと突っ立っていてはきっとマズい事になる。
逸る心に急かされるようにカードをドライバーへ叩き込んだ。

「――間違っていない」
「変身!」

『KAMEN RIDE BUILD!』

『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イエーイ!』

ドゴォという、拳で殴りつけたとは思えない、だが確かに拳で殴りつけた音。
殴ったのは男…DIOのスタンド、『世界(ザ・ワールド)』。
殴られたのは変身した戦兎…ディケイドビルド。
装甲越しに感じる打撃の痛みに、戦兎の口から小さい呻き声が漏れる。
けれど戦兎は運が良い。DIOがスタンドを出現させるよりもほんの少しだけ早く、ビルドへの変身が完了できた。
己の直感に身を任せた結果、生身でザ・ワールドの一撃を受けずに済んだのだから、幸運と言う他ない。

(グッ、危なかった…。後ちょっと変身が遅れてたら、こんなもんじゃ済まなかったな…)

ほんの僅かな行動の遅れで命を落としていたという事実。
背筋が寒くなるのを感じ、戦兎は改めて自分の判断は間違っていなかったと安堵した。
相対する男の傍には、自身を殴りつけた筋骨隆々の大男が佇んでいる。
増援に現れた男の仲間、ではあるまい。
首輪を着けていないことから、アレは相手が何らかの能力で出現させた人型物体であると推測する。


577 : Vは誰の手に/開幕のベルが鳴る ◆ytUSxp038U :2021/08/03(火) 01:30:43 ouO5XsHo0
「ふむ?その姿は何だ?」

本来であれば今の一撃で胴をブチ抜いて、趣味の悪い服と同じ色に染めてやるつもりだった。
結果はスギモトの時と同じく失敗。
失敗はしたがそれを引き摺りはしない。些細な事を未練たらしく気にし続けるのは馬鹿らしい。
それより目の前の奇妙な鎧を纏った男に興味がある。

(我がスタンドが当たる直前、奴は腰の機械にカードを入れた。スギモトのような能力ではなく、支給品によって力を得たか)

参加者はスタンド以外にも力を持っている。
最初に交戦したスギモトが良い例だ。
だが中には戦兎のように、支給品を使い特別な力を行使する者もいるらしい。

知った所でDIOのやる事は変わらない。
どんな道具を使った所で、自分と、自分のスタンドに勝つなど不可能。
雑魚が必死こいて小細工をしようと、圧倒的な力の前には児戯にすらならないのだから。
その纏った装甲を粉砕し、今度こそ殺してやるまで。

それは学園内でこちらを覗いてる連中も同様だ。

「ウキャァ!」
「なっ!?猿!?」

校門の裏から飛び出して来た大きな影。
一般的にオランウータンと呼ばれる動物の出現に戦兎は虚を突かれる。
戦兎の驚愕はお構いなしに、オランウータン姿のスタンド使い…貨物船は校舎内へ突入した。
それを黙って見過ごす気は戦兎に無い。
が、貨物船を阻止しようと伸ばした手は、ザ・ワールドの拳に弾かれた。

「お前…!」
「中にいる参加者を全員殺せ。一人も逃がすな」
「ウキ!」

主の命に威勢よく返す貨物船を感慨無く見送り、目の前の敵へ向き合う。
さっきスタンドの拳を当ててやった際、校舎の中から物音と、何者かの影が動くのをDIOは見逃していない。
念の為見えない位置に待機させていた貨物船を向かわせ、自分は変身した男を殺す。
中の連中を貨物船が皆殺しにするのが最も望ましく、返り討ちにあったとしても疲弊させていればそれはそれで良い。

冷静なDIOとは反対に戦兎は焦っている。
急いでさっきのオランウータンを追わなければ甜歌たちが危ない。
だが今対峙している敵はそう易々と倒されてはくれないだろう。

(とにかく、今は急いでこいつをどうにかするしかねぇ…!)

逸る想いをそのまま闘志に変える。
守ると約束した少女、僅かに疑わしいがそれでも仲間の少女、能天気にも程があるが悪人ではない少年。
死なせたくない彼らの為に、立ち塞がる敵目掛けて戦兎は駆け出した。


578 : Vは誰の手に/開幕のベルが鳴る ◆ytUSxp038U :2021/08/03(火) 01:31:49 ouO5XsHo0
先に仕掛けたのはビルド。
既にソードモードへ変形させたライドブッカーで斬り掛かった。
が、振り下ろしかけた剣の向きを急速に変え、防御の姿勢を取る。

瞬時に刃を伝わる衝撃。
ザ・ワールドの繰り出したストレートによるものだ。
数あるスタンドの中でも、スタープラチナと並ぶ破壊力を秘めた拳。
それを防いで尚も曲がらず、砕けないのは大ショッカーの作り出した武器であるが故か。

「一発防いだ程度で安心してもらっては困るなァ〜〜?」
「くっ…!」

右拳が防がれたのなら次は左拳。それから右、また左と連打が放たれる。
徐々に速さを増す拳にビルドの防御は付いて行けない。
距離を取らねばならないと判断。
仰向けに倒れ込むように上体を大きく逸らすと、ザ・ワールドの拳がビルドの胴体があった箇所を通過した。
足底に装着されたキャタピラが急回転し後方へ下がる。

奇怪な移動方法を、指を咥えて間抜けのように見送るDIOではない。
相手はまだスタンドの射程距離内。
すぐさまザ・ワールドを向かわせ、キャタピラのついた足をへし折らんと蹴りを放った。

「おっ、と!」
「ムッ!?」

ザ・ワールドの蹴りは空を切るに終わった。
ラビットフルボトルの能力により、ビルドはバネで大きく跳躍。
地上に立つDIOを見下ろす形となる。
だがこの程度の距離は、ザ・ワールドの脚力があればすぐに追いつく事が可能。
空中飛行したスギモトと同じように、はたき落とさんと両足に力を込める。

『FINAL ATTACK RIDE BUI・BUI・BUI BUILD!』

敵が追いかけて来るなど戦兎は当に予測済み。
DIOが近づく前にカードをドライバーに読み込ませた。

ビルドから発生したエネルギーが巨大なグラフを形作る。
グラフはビルドをターゲットへ発射する滑走路の役割を果たし、加速したビルドがDIOへと迫る。
ピンと突きだした足底のキャタピラは火花が散る程に回転中だ。
ザ・ワールドが拳で迎え撃つならば、真正面から削り潰す。

「チィッ!!」

ビルドの蹴りへそのまま拳を振るうのも、両腕で防ぐのも得策ではない。
よって回避行動へ集中する。
玄関付近へ植え付けられた木々。
その内の一本をスタンドで引っこ抜き、ビルドの顔面へ投擲。
かすり傷にもならないがほんの僅かに気を逸らす事には成功、体勢が若干崩れた隙に大きく横っ飛びし蹴りを躱した。

技が空振りに終わった直後には隙ができるもの。
仕留められずに地面へ着地したビルドの背へ、DIOが仕掛ける。
しかし戦兎は避けられた時点で既に次の手を考えていた。
敵は強いが手数はこちらが勝っている。

『KAMEN RIDE EX-AID!』

『マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクションX!』

ザ・ワールドの攻撃をすれすれの所で躱すのは新たな姿のライダー。
ピンクのカラーのスーツに、ゲームコントローラーを模したアーマー。
逆立った髪の毛と、コミックブックのキャラクターのような目はビルドには存在しなかったもの。
エニグマ事件の際に共闘した戦士の一人、仮面ライダーエグゼイドである。

接近するザ・ワールドをエグゼイドはアクロバティックな動きで引き離す。
ゲームエリア内のブロックを移動する時のような縦横無尽さだ。
仮面を叩き割らんと放たれたストレートをジャンプして回避、そのついでにザ・ワールドの頭部を軽く踏みつけて飛び越える。


579 : Vは誰の手に/開幕のベルが鳴る ◆ytUSxp038U :2021/08/03(火) 01:33:19 ouO5XsHo0
スタンド越しに頭を踏まれる感触が伝わったDIOにしてみれば不愉快極まりない。
子ども染みた安い挑発だ。
しかし、このDIOをコケにしておきながら何の咎めも無しに終わらせられる訳が無い。
死を以て償わせるのみ。

DIOの怒りなど知った事では無いエグゼイドは更にカードを取り出す。
ビルドの攻撃は躱された。なら別のライダーで決めれば良い。

『FINAL ATTACK RIDE E・E・E EX-AID!』

片足にエネルギーが収束され、DIO目掛けて叩きつけんとする。
対するDIO。姿は違うが先程同様に破壊力を高めた蹴り技と察知。
今度は回避ではなく真っ向から迎え撃つ事を選択。
スタンドを操作し、校門に設置された門扉を引き剥がす。
マイティクリティカルストライク、そう呼ばれるエグゼイドの技と、ザ・ワールドがバッターのようなフォームで振りかぶった門扉が激突する。

「ぐあっ!」
「チッ…」

門扉はザ・ワールドが掴んでいた箇所以外は粉砕された。
仮にもバグスターを撃破してきた技とぶつかり合ったのだ。
スタンドのフィードバックにより、DIOの両腕に痺れが走る。
だがザ・ワールドの腕力で思いっきり振るわれた門扉を叩きつけられ、エグゼイドは大きく吹き飛ばされた。
このままでは地面に激突するのは確定。
そうなる前に立て直そうと、歯を食い縛りカードを読み込ませる。

『KAMEN RIDE GAIM!』

『花道!オンステージ!』

巨大な果実が展開し、上半身を覆う鎧と化す。
青いスーツにオレンジの装甲を纏うのは、嘗て沢芽市にて戦いを繰り広げた戦士。
仮面ライダー、或いはアーマードライダー鎧武。
地面にガッシリと両足を着け、情けなく転がるのを防いだ。
右手には銃と刀が一体化した『無双セイバー』、左手にはカットしたフルーツのような刀身の剣『大橙丸』。
二振りの得物を手に、油断なくDIOへ構え直す。

「見事だ」

パチパチパチと、乾いた拍手を鎧武へ向ける。
命の取り合いという極限状態にいるにも関わらず、余裕を感じさせる不敵な笑みを浮かべて。
内心の焦りを隠す為の強がりか。
それとも、己の力へ絶対の自信を持つが故の態度なのか。
間違いなく後者だと戦兎は睨む。
人型実体の強力さももちろんだが、それ以上にこの男からは得体の知れない存在感をヒシヒシと感じる。
相対しているだけで全身が強張る程の「圧」を振り切るように、言葉を返した。

「アンタに褒められても全然嬉しくないけどな」
「本心から告げている事だ。道具の力に頼り切るだけでなく、君本人が上手く使いこなしているのだから、な」
「…アンタには言っても無駄だろうけど、仮面ライダーの力ってのはただの道具じゃない。誰かの力になって、笑顔を守る為のもんだ」
「ほう…、仮面ライダーか……」

DIOの口元が大きく弧を描く。
クツクツと漏れるのは低く、悪意に満ちた笑い声。
聞いている戦兎はどうしようもなく、不安を掻き立てられる。


580 : Vは誰の手に/開幕のベルが鳴る ◆ytUSxp038U :2021/08/03(火) 01:34:48 ouO5XsHo0
「何が可笑しい…?」
「いやなに、君の言う仮面ライダーの力…」


『ETERNAL』


「このDIOも使ってみようと思っただけだ」

無機質な電子音声が鳴り響く。
発生源はDIOが右手に握り締める、白いUSBメモリらしき物。
同時に左手は腹部に当てる。
その手にはスロットが付いた、赤い奇妙なナニカ。
左端から飛び出したベルトが腰に巻き付き、すぐに左手で支える必要は無くなった。

「それは…!?」

驚愕に戦兎の両目が見開かれる。
DIOが持つアイテムに見覚えは全く無いが、一体どういうものなのか見当が付く。
自動でベルトが飛び出す仕組み、スロットらしき物が付いたナニカ、そのスロットの箇所にピッタリ合うだろうメモリ。
分かりたくないが、それでも戦兎の脳は瞬時に答えを弾き出した。
種類こそ違うものの、あれは自分と同じ…。

「フフ、では私もこう言わせてもらおう。――変身」

『ETERNAL』

ロストドライバーに装填された、「永遠」の記憶を持つガイアメモリはその力を解放した。
ジョナサンの肉体は余すところなく真珠色の装甲に覆われる。
その上から全身を覆い隠すのは、白を際立たせる漆黒のローブ。
己に楯突く愚者を睥睨する黄色い複眼の上には、天を突く王冠の如き三つの角。
蒼く燃え盛る炎が刻印された四肢と、黒いコンバットベルトが巻かれた胴体は、ジョナサンの肉体で変身したせいだろう。
嘗て変身した者達と比べ、マッシブな印象を見る者に与える。

「ほぉ…もっと窮屈なものだと思っていたが、案外動き易いじゃあないか」

変身した己の状態に、悪くない評価を下した。
後はどれだけ使い物になるかを実践するだけ。
何時の間にか出現したコンバットナイフを持ち、ザ・ワールドと共に鎧武を見下ろす。

「最っ悪だ…」

よりにもよって敵もライダーの力を手にしていた。
その光景を前に呟かれた戦兎の嘆きは、仮面ライダーエターナルの猛攻にかき消された。


◆◆◆


「はぁ、はぁ…ま、まだ追って来るの…!?」
「大丈夫ですか甜歌さん!足を止めちゃだめですよ!」
「何で学校に猿がいやがるんだ?俺っちがいっちょ相手に…」
「馬鹿な事言ってないであなたも走ってください!」

真夜中の学校には不釣り合いな喧噪。
青褪める甜歌をどうにか支え、意気揚々と腕を振り回す燃堂へ語気を荒げて制止する。
チラリと背後へナナが視線を向ければ、一頭のオランウータンが執拗に自分達を追いかけて来た。

戦兎がライダーへ変身する光景を見ていたナナ達は、来訪者が友好的な人物ではないと分かった。
このまま戦兎の様子を隠れて見るか、戦兎に言われた通り自分達だけで移動するかを思案していたが、
学校内へオランウータンが突撃して来た瞬間、ナナは二人を強引に立たせて逃走を開始した。
しかしこちらにとっては運が悪くすぐに見つかってしまい、こうして鬼ごっこをしている。

(まさか動物まで参加しているとは…。多分中身は人間なのだろうが…)

オランウータンは戦兎を攻撃した男に指示を受けていた。
と言う事は人語を理解し、命令に従うだけの知能の持ち主、人間の精神が入っている。
若しくはあの男が動物を操る能力を持っている可能性もある。


581 : Vは誰の手に/開幕のベルが鳴る ◆ytUSxp038U :2021/08/03(火) 01:36:15 ouO5XsHo0
(だが後者ならば、戦兎を攻撃したあの奇妙な人間を出現させる以外にも能力があると言う事になる。
 複数の能力の持ち主というなら、斉木という例があるが…)

それらに関して今は置いておくとして、この状況をどうするを考える。
すると突然、前方に新たな侵入者が現れた。
侵入者はナナ達目掛けて、勢い良く両足を突きだした。

「うおわっ!?」
「ねっ、燃堂さんっ…!?」

咄嗟に如意棒を構えた燃堂が盾となり、少女二人への被害は防いだ。
一方で燃堂は思った以上の力に押され転倒、後頭部を床に打ち付けた。
ジンジンと伝わる鈍い痛みに悶絶する。
もし常人離れした身体能力が有る燃堂本人の身体ならば、オランウータンの蹴りにも耐えきれたかもしれないが、
堀裕子の身体でそういった真似は無茶でしかない。

甜歌と共に燃堂を起こしながら、ナナは侵入者を見る。
驚いた事に侵入者の姿は、ナナ達を追いかけて来たオランウータンと瓜二つであった。
まさかとは思うが、殺し合いには複数のオランウータンが参加しているとでも言うのか。

(いや違う!片方には首輪が無い!)

巨大な頭部を支える首には首輪が巻かれている。
但しそれは追いかけて来た方のオランウータンのみだ。
燃堂へ殴りかかったオランウータンには参加者の証を身に着けていない。
ではこいつは何者だ。
会場に生息する野生動物ではないはず。
突然現れた事からして、参加者のオランウータンが何か関わっているのは確か。
となると答えは絞られてくる。

(こいつは参加者のオランウータンが作り出した分身のようなもの。つまり能力者か…!)

この場合、肉体であるオランウータンと精神である何者か。
一体どちらが能力の持ち主なのかはともかくとして、面倒な事には変わりない。
本体である参加者のオランウータンを殺せば、ほぼ間違いなく分身も消える。
しかしナナは動物の持つ身体能力を過小評価してはいない。
凶暴さを剥き出しにして襲い掛かって来られたら、人体など容易く引き裂かれてしまう。

厄介な事になったと、内心で舌打ちする。

(どうしよう……)

オランウータンに挟まれ、甜歌は震えていた。
絶体絶命の状況に命の危険を感じているから、というだけではない。
この事態を引き起こした原因の一端は自分にあると考えているからだ。

外人らしき大男に戦兎が攻撃されるのを見た瞬間、立ち上がりかけ悲鳴を上げてしまった。
その時はナナが即座に口を押えたが、それのせいで校舎内にいる自分達の存在が気付かれたのだ。
それをナナと燃堂に責められるような事は言われなかったが、誰のせいでこうなったかは二人も分かっているはず。

(甜歌のせいだ…甜歌のせいで……)

自分の迂闊な行いがこの事態を招いた。
そのせいで彼らの命が失われたらどうする気だ。
心の内から湧き上がる、甜歌自身を責め立てる声。
戦兎に守られるだけの役立たず。そればかりか、仲間の命まで危険に晒す厄介者。
今の自分にはそんな言葉が相応しい。
だがどれだけ後悔しても、それで目先の問題は解決しない。

じゃあどうする?

(……変身すれば、ナナちゃん達を、助けられる…?)

未だデイパックの奥底に仕舞われたままのバックルと錠前
仮面ライダーに変身する為の道具とほぼ辺りを付けているそれらを使えば、何とかなるかもしれない。
けれども変身して、それで終わりとはいかない。
危機を脱するにはライダーとして戦う必要がある。
ステージの上でマイクを握っていた手は、誰かを傷つける為に振るう。
同じように、相手も自分を傷つけ、殺そうとしてくる。
そう考えるとどうしようもなく恐い。

だけど。
戦兎は今も甜歌達を守る為に戦っている。
ナナは甜歌を気遣ってくれて、何とかしようと頭を回している。
燃堂は自分が前に出る事で、甜歌達への攻撃から守ってくれた。
そんな人達を死なせたくない。

何よりここで恐怖に屈して何もしないままでいたら、
自分はもう二度と甘奈や千雪の顔を見れないような、そんな後ろめたさを一生抱えるような気がした。


582 : Vは誰の手に/開幕のベルが鳴る ◆ytUSxp038U :2021/08/03(火) 01:37:22 ouO5XsHo0
凛々しくいよう、強くなろう。
自然と浮かび上がる、アルストロメリアのデビュー曲の一節。
自分は凛々しくもないし、強くもないけど、

(なーちゃん、千雪さん)

今だけは、誰かを守れる存在になりたい。

「甜歌…やってみる…!」

『メロン!』

戦極ドライバーが腰に巻かれ、握り締めたロックシードをバックルの窪みに填める。
予想した通りピッタリと嵌った。
頭上には突如としてジッパーのような穴、『クラック』が出現し、その場にいる者全ての視線を集めた。

『ロックオン!』

戦兎の変身する姿を思い出す。
カードをバックルに挿入し、続けて両サイドのレバーを押し込んでいた。
であれば、このベルトで変身するのにも、何かもう一つアクションがいるはず。
一番可能性のありそうな部分、窪みの右に付けられたナイフのような装飾。
それを思い切って動かしてみた。

『ソイヤッ!』

果実にナイフを入れたように、ロックシードが割れ断面図が露わとなる。
同時にクラックから出現したのは、巨大なメロン。
威風堂々と現れたメロンはゆっくりと降下し、そのまま甜歌の頭部を覆い隠した。

「えっ?えっ?えぇっ!?」

巨大メロンが展開し、上部を覆うアーマーと化す。
純白のボディにメロンの皮のような、緑の網目柄の鎧。
節々と兜には、高貴さを漂わせる金の装飾。

『メロンアームズ!天・下・御・免!』

アーマードライダー斬月。
鳴り響く音声がその存在を堂々と知らしめた。

「ウキ!?ウキィ!?」
「甜歌さんも、仮面ライダーの変身道具を…!?(いやなんだ今の変身の仕方は…)」
「お?また急に出てきやがって、誰だ?」

三者三様のリアクションが甜歌を引き戻す。
果実を頭から被るという冗談のような変身の仕方には困惑したが、無事仮面ライダーにはなれた。
ここからはその力で、二匹のオランウータンをどうにかしなければ。

「よ、よし…!バトル、スタート…!」

自身を奮い立たせて、左手に持つ盾、メロンディフェンダーを振り回した。


◆◆◆


583 : Vは誰の手に/開幕のベルが鳴る ◆ytUSxp038U :2021/08/03(火) 01:38:23 ouO5XsHo0
桐生戦兎とDIO、二人の戦いは激化していた。
片や20以上の世界を旅し、平成ライダーと呼ばれる戦士の力を己のものとして使うディケイド。
片や数あるガイアメモリの中でも上位の能力を持ち、一度は風都の仮面ライダーを敗北に追いやったエターナル。
どちらも本来の変身者ではないが、それがハンデとなる事はない。

「そらそらどうしたァッ!すっトロいぞッ!」
「クソッ!こいつ…!」

DIOが振るうのはエターナル専用ナイフ、エターナルエッジ。
リーチでは鎧武が持つ剣に大きく劣る。だが至近距離での戦闘においては取り回しが効く分、アドバンテージを得られるのはナイフだ。
切っ先を鎧武へ向け、幾度となく突きを繰り出す。
人体のみならず、並の盾や装甲では障子を指で突き破るような気安さで、穴だらけになるだろう。

残像すら見える程の速さで刺殺さんと襲い掛かるナイフを、鎧武は両腕の剣で防ぐ。
時折刃が装甲を斬り裂くが、致命傷となるものは確実に防いでいた。
身体を変えられようと、エボルトとの死闘を制した経験は失われていない。
宿敵との戦いで培った技能は、強敵を前に実を結んでいた。

だがこの程度でDIOをどうにかできると思っているのなら、それは余りにも愚かしいと言う他ない。

「ザ・ワールド!」
「ッ!?」

DIOの召喚に応じ、出現するのは三角形のマスクを着けた大男。
戦兎にとっては既に見慣れた、されど微塵も油断できない異能。
エターナルに変身していてもスタンド能力の行使には一切問題無し。満足気に口元を歪め攻撃を仕掛けた。

「無駄無駄無駄無駄無駄ッ!」

連続で放たれる弾丸の如き拳を大橙丸で防ぐ。
その間にもエターナルはナイフを振るい、鎧武は無双セイバーで防御。
そうやって猛攻を凌いではいるが、少しずつ、確実に鎧武へのダメージは蓄積していった。

仮面の下で戦兎は歯噛みした。
敵は一人。だが本体とスタンドが同時に攻撃する事で実質2対1の状況を作らされている。
エターナルの斬撃も、ザ・ワールドの殴打も、片腕ずつで防ぐには荷が重すぎる。
これではいずれ大きな一撃を食らうか、防ぎ切れず腕を潰されるか、その両方か。

どれも御免だと鎧武は新たな手に出る。

「こいつで…どうだっ!!」

エターナルへ向けて自らの頭部を突きだした。
戦いを諦め首を落としてくれとでも言うつもりか?
違う。胸部を覆うダイラング、肩部を覆うダイスリープ、そして頭部を守るダイカブト。
各部の装甲が姿を変え、頭部をすっぽり覆い隠す巨大オレンジと化した。
その珍妙な姿に一瞬呆気に取られたエターナルへ、鎧武は巨大オレンジを回転させ頭部を振り下ろした。

この巨大な果実を防ぐのにエターナルエッジは小さ過ぎる。
ではザ・ワールドで粉砕するか。
否、防ぐ為の方法なら他にもある。

エターナルは自らが羽織うマントを前面に翳し、巨大オレンジを迎え撃つ。
布一枚で防御する気など有り得ない、気が狂っているとしか思えない光景。
だがその有り得ない事を実現させてしまうのが仮面ライダーだ。

回転する巨大オレンジはエターナルを押し潰す事も、装甲を削り取る事も出来ていない。
たった一枚のマントに阻まれ、エターナルへ傷一つ付けられない。
オレンジの下で困惑しているだろう相手を嗤い、ナイフへエネルギーを籠める。
蒼く揺らめく炎のようなエネルギーは斬撃となり鎧武を斬り裂いた。

短い悲鳴と共に鎧武は吹き飛ばされた。
巨大オレンジは再度展開され、鎧武を守るアーマーとなる。
ふらつきながら、剣を突き立て立ち上がる。呑気に寝転がっている余裕は無い。
鎧武が立ち上がるのをわざわざ待つ事も無く、エターナルは動いていた。


584 : Vは誰の手に/開幕のベルが鳴る ◆ytUSxp038U :2021/08/03(火) 01:39:51 ouO5XsHo0
『ETERNAL MAXIMAM DRIVE』

エターナルメモリをエッジのスロットに差し込むと電信音声がそれに答える。
メモリから溢れたエネルギーは全身を駆け巡り、やがて右脚へ収束された。
これが、今のエターナルが出せる最大の技。

己の内から力が溢れるのを両手を広げて迎え入れる。
一瞬の沈黙の後、天目掛け大きく跳んだ。
見下ろす先には自身を見上げる哀れな果実の戦士。
エターナルの蹴りが、罪人を処刑するギロチンの刃のように、鎧武へ振り下ろされた。

「させる、かよ…!」

『FINAL ATTACK RIDE GA・GA・GA GAIM!』

カードを読み込んだディケイドライバーが、鎧武の必殺技を解放する。
無双セイバーと大橙丸、それぞれの柄頭を連結させナギナタモードへ変形、
大橙丸の刀身へエネルギーを集中させる。
こちらへ襲い来る蒼い炎目掛けて、オレンジ色のエネルギー刃を横薙ぎに振るった。

激突する蹴りと斬撃。だが拮抗はすぐに崩れた。

「いけないなァ?私ばかりに気を取られては」

鎧武の背中に鈍い痛みが伝わった。
何が起きたと考えるまでもない。ザ・ワールドを背後からけし掛けたのだ。
卑怯などとは微塵も思わない。
人間どもが汗と泥にまみれるスポーツでもなければ、誇りだなんだのに拘る『決闘』とかいうたわけたものでもなく、
殺し合いに卑怯もクソも有りはしないではないか。

足先に集中されたエネルギーが鎧武の胴体へ直撃する。
全身を大きく動かしたエターナルは∞軌跡を描くように、跳び回し蹴りを叩き込んだ。
仮面ライダーエターナルとしてはここで終わらせるだろうがDIOは違う。
ザ・ワールドの正確無比なアッパーが、鎧武を空中へ打ち上げた。
連続して受ける痛みにロクな反応も取れず、鎧武はされるがままだ。
無防備なアーマードライダーへ、DIOは容赦せず追撃する。

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄」

機関銃さながらの速度で放たれるラッシュ。
防御も取れずモロに受けてしまえば、鎧武の装甲でも衝撃は殺し切れない。
血のように火花が散り、各部を守る筈の装甲は凹み、或いは砕けた。

「無駄ァーーッ!!!

最後の一発を叩き込むと、鎧武は後方へ大きく吹き飛ばされた。
地面に叩きつけられ、数度転がった所でようやく止まった。
余程地面へ激突した時の衝撃が大きかったのか、ディケイドライバーは外れ変身解除されている。
うつ伏せに倒れ、全身を苛む激痛に最早悲鳴も出せず、

「ぐ……あ……」

小さく呻くのが精いっぱいだった。

「んっん〜〜。仮面ライダーの力とやら、中々良いものではないか」

ボロキレのようになった戦兎を見下ろし、DIOは上機嫌でエターナルの力を称賛する。
最初に説明書を読んだ時は大して期待はしていなかった。
DIOにとっての最強とは己のスタンド一つ。
だから精々吸血鬼でない肉体を、ダメージから守る鎧になれば良いとしか思ってはいなかった。
だが蓋を開ければ良い意味で予想を裏切られた。
窮屈そうに思えた変身後の姿も、意外と着心地は悪くない。

DIOは知らないが、今のエターナルはブルーフレアという状態になっている。
これはメモリの適合者のみが引き出せる、エターナルの力を限界まで発揮させる事が可能な形態だ。
基本形態を上回るスペックに、非常に高い防御力を誇るエターナルローブ。
何より各部に取り付けられたマキシマムスロットは、ブルーフレアでなければ使用できない。
何故DIOがエターナルの真の力を引き出せたのか。
彼が大道克己に匹敵、或いは凌駕する程の「悪」として、エターナルメモリを引き寄せたからか。
それとも何か別の要因により、DIOにとっての運命のガイアメモリとなったのかは定かではない。


585 : Vは誰の手に/開幕のベルが鳴る ◆ytUSxp038U :2021/08/03(火) 01:41:26 ouO5XsHo0
(少しばかり出来過ぎている気がしないでもないがな…)

エターナルメモリは元々DIOの支給品であった。
しかし説明書も同封しておらず、何の用途があるかも分からなかった為、使い道は無い物としてデイパックの奥底に仕舞われていた。
メモリの真価を知ったのは貨物船と遭遇した時だ。
献上されたデイパックから見つけたのはロストドライバーと説明書き。
仮面ライダーに変身する為の道具を持った貨物船とこんなに早く出会えたのは、少々都合が良すぎる気がした。
あくまでただの偶然か、何者かの筋書き通りに踊らされているからか。
後者であれば面白いとは言えない。
DIOは利用してやる側の者であって、される側ではないのだから。

(まぁいい。今はこいつが先だ)

視線の先で倒れ伏す戦兎はまだ諦めていないのか、痛みを堪えてディケイドライバーに手を伸ばそうとしている。
DIOにしてみれば見苦しいことこの上なく、侮蔑の対象以外の何物でもない。
ドライバーを掴んだ手をそのまま踏みつけてやった。

「ぐぁっ…」
「そういえばさっき誰かの力になる為だとか抜かしていたが…下らんなァ〜〜〜。ちっぽけな人間らしい、実に下らん考えだ」

DIOの嘲笑に戦兎は顔を歪めるだけで何も言わない。
痛みのせいで言い返す事もままならないのだ。
それでもディケイドライバーを掴む手だけは決して離さなかった。
これがDIOの手に渡る事だけはあってはならない。
それに自分にはまだやらなければいけない事が残っている。
甜歌を家族の元へ帰してやらなければ、ボンドルドを倒し殺し合いを終わらせなければ。

(だから…まだ死ぬ訳にはいかねぇんだよ…!)

そんな戦兎の思いを踏み躙るかのように、DIOが足の力を緩めてやりはしない。
DIOにとっては戦兎が使っていた仮面ライダーのバックルを使える道具として見ているだけで、戦兎の命など何の価値もない。
これ以上この男と話を続けても時間の無駄。
早々にトドメを刺し、貨物船と合流する。
自らこのDIOの為に命を捧げるとまで言い出したのだ。
一人も殺せず主人に尻拭いをさせるような無能でない事を証明して欲しいものである。

「ヒーローごっこも終わりだ。死ねぃッ!」

無力なヒーローの成れの果てへ、ザ・ワールドの手刀が振り下ろされ――


DIO目掛けて炎が奔った。


「何ィ!?」

突然の事にスタンドの動きも止まる。
エターナルローブを翻し炎を防ぐ。鎧武の巨大オレンジを防いだ防御力に翳り無し。
炎であろうと焼かれる事無く、完璧な防御となる。
それでも脳裏には、数百年前の忌々しい記憶がまたもや再生される。
どうにもジョナサンの肉体となってから、過去の事ばかりを無駄に思い出してしまいがちだ。

炎が消えるとローブをどかし、襲撃者の正体をこの目で確かめんとする。

「よう」

目と鼻の先に少女がいた。
犬歯を剥き出しにした獰猛な笑みを浮かべ、生意気にもこのDIOを睨みつけている。

「貴様ッ…!!」

その顔面を叩き潰してやろうと振るわれた拳を皮一枚の所で避け、
バネのような勢いで後方へと跳んだ。
右腕にはさっきまで地に伏していた戦兎が、腰に腕を回された状態で回収されており、
その手にはディケイドライバーがしっかりと握られてた。

この少女をDIOは知っている。

こいつは殺し合いでDIOが最初に遭遇した参加者だ。
こいつはこのDIOに苦い記憶を思い出させ、余計な火傷まで負わせた。
こいつは有ろうことかこのDIOに向かって不死身を名乗ってみせた。

この白髪のガキの名は

「スギモト…また貴様か…!」

「腕を焼かれるだけじゃ足りなかったみてぇだな、DIO」


不死身の杉元、参戦。


◆◆◆


586 : Vは誰の手に/開幕のベルが鳴る ◆ytUSxp038U :2021/08/03(火) 01:42:29 ouO5XsHo0
「え、えいやっ…!このっ…!」
「キッ!ウキキ!」

我武者羅に振るわれる盾をオランウータンが躱す。
そこへもう一体のオランウータンが襲い掛かり、それを盾で防ぐ。
再度襲われそうになる前に、右手の剣を振り回し牽制。

同じ行動の繰り返しを前に、ナナは冷静に考える。

(状況が好転したとは言えないな。変身者が一般人の甜歌では無理もないが)

まさか戦兎だけでなく甜歌まで仮面ライダーになるとは思わなかった。
何故甜歌が変身道具を持っている事を戦兎が言わなかったのか少し気になる。
意図的に隠していたのか、戦兎自身知らなかったのか。
それらについては生きていれば幾らでも聞く機会がある。

今の状況は良くなったとは言えない。
ライダーの力を得たとはいえ、甜歌は元々戦いとは無縁の少女。
どうにかオランウータンを近寄らせまいとはしているが、動きは素人そのものだ。
正直自分が変身した方がマシな気さえする。
オランウータンの方も変身した甜歌を警戒しているのか、それ程積極的には手を出してこない。
だがそれも長くは続くまい。
甜歌が所詮素人でしかないと分かれば、二匹揃って苛烈に攻撃してくるだろう。
その際ベルトを破壊でもされたら、今度こそ打つ手なしで殺される。

自分はここからどうするべきか。

甜歌と燃堂を見捨てて、自分だけさっさと逃げる選択肢もある。
が、それは最後の手段だ。
自分一人逃げた後で、外の戦闘を終わらせた戦兎が甜歌達から事情を聞けばどうなるか。
当然ナナの信頼は地に落ちる。
首輪解除が可能かもしれない人間と、ここで縁を切るのは幾らなんでも早計過ぎる。
更にもし戦兎達に、「柊ナナは平然と他者を見捨てる偽善者」とでも悪評を流されたら自分は非常に動きづらくなってしまう。
そうなっては犬飼ミチルでも流石に庇いきれない。

ではここでナナがやるべき事は何か。

(この猿を排除すること、だな)

ここで甜歌に協力すれば生き残った際に、彼女からの信頼を強く得られる。
そうなれば甜歌を気にかけている戦兎もナナを邪険にする気は、今後起こらないはず。
元より能力者は全て殺すと決めていたのだ。
人間だろうと猿だろうと関係無い。能力者は一人も生かしてはおけない。

「燃堂さん。ちょっとお願いがあるんですけど…」
「お?」

燃堂に今の状況を説明してやる時間はない。
そんな無駄な事をしているよりも、もっとマシな事に頭を回すべきだろう。
この男は戦力として数えるには不安要素が大きい。
だが、燃堂の持つ支給品には価値がある。

「鞄の中身、今すぐ私に見せてもらえますか?」


◆◆◆


587 : Vは誰の手に/開幕のベルが鳴る ◆ytUSxp038U :2021/08/03(火) 01:43:20 ouO5XsHo0
「アンタは…」
「細かい話は後だ。ただこれだけは聞かせてくれ。あんたは殺し合いに乗ってんのか?」
「……んな訳ないでしょーが。アンタこそどうなんだよ?」
「乗ってたら真っ先にあんたを殺してるよ」

軽口を返しつつ、瞳は真っ直ぐにDIOを見据える。
まさかこんなに早く再会するとは思わなかった。
というかカッコつけて出てきたものの、自分の放った炎は防がれてしまっているではないか。
支給品の入れ物といい、あの外套といい謎材質のオンパレードかよと思う。

ウコチャヌプコロの被害を受けたカエルの治療の為に、病院を探していた最中、
激しい音が聞こえたのでこっそり様子を見てみたら、けったいな鎧っぽいのを着た奴らが派手に殺り合ってる光景が飛び込んで来た。
しかも白い方は見覚えのある背後霊を出していて、中身は英国紳士の皮を被った危険人物と悟った。
これで相手も殺し合いに乗っているのなら危険人物同士相打ちにでもなれば万々歳だが、どうも違うらしい。

DIO曰く、この傷だらけになった青年は誰かを守る為に戦っているとのこと。
暫し躊躇したが、結局こうして助けに入った。

(ここに来てからこんなんばっかだな)

ウコチャヌプコロされたカエルの次はこの青年。
見ず知らずの奴の為に駆け回り、飛び込んでいく自分につい苦笑いを浮かべた。
しかし、杉元とはそういう男だ。
敵に対しては周囲が恐れる程に、情け無用で殺しに掛かる。
その反面仲間や、死ぬべきではない、死なせたくないと思った者に対しては、情を忘れない。

「ま、とりあえずはこいつをどうにかするか」

仮面越しにあからさまな殺意をぶつけてくるDIOへ、炎を出現させた両腕を構えた。

杉元の乱入にDIOは、折角機嫌が良かったのを害されてしまい、一転して冷めた表情となっていた。
だが慌てる事も無ければ、子ども染みた癇癪を起したりもしない。
どの道再会したら殺してやろうと思っていた相手。
その機会が早くも訪れただけに過ぎない。

「来るが良い。貴様らがどう足掻こうと、このDIOが勝利するという結果は揺るがん」

煩わしい過去を思い出させる炎使い。
満身創痍の正義のヒーロー。
身の程知らず共へこのDIOの力を骨の髄まで味合わせ、今度こそ確実に殺してやろう。





588 : Vは誰の手に/開幕のベルが鳴る ◆ytUSxp038U :2021/08/03(火) 01:44:05 ouO5XsHo0
「ピィ〜カ〜…?(お姉さん、本当に大丈夫かな…)」

廊下を駆けながら善逸は杉元への心配を口にした。

戦兎を助ける為に介入を決断した杉元は、二匹の同行者を戦闘には参加させなかった。
ピカチュウの体である善逸はまだしも、ウコチャヌプコロされた鳥束は足手纏いにしかならず、
戦闘中に巻き添えを喰らって死なれでもしたら困る。
だからといって一匹でそこいらに放置すれば、悪意を持った参加者にとって絶好の獲物を用意するのと同じ事になる。

よってここは杉元一人が戦闘に介入し、善逸は鳥束を背負い目の前に会った大きな建物へ先に入っている事となった。
幸いケロロの身体はピカチュウとあまり変わらない大きさ。
背負って運ぶのもそれ程苦にはならない。

「あ…見えるっす……全裸のナースさん達が…俺のケツを優しく撫でてくれるのが…」
「ピカピカチュウ!(思いっきり幻覚見てんじゃねーか…。しかも何だよその天国は!?俺だって見たいわそんなもん!)」

今は自分が鳥束を守るしかない。
ポケモンの身体では荷が重過ぎるが、自分だって鬼殺隊の端くれだった男。
たった一人の命も守れないようじゃ禰豆子に告白する資格も無いに決まってる。

どうにか自分に喝を入れて、善逸は足を速めた。

彼らはまだ知らない。
校舎内も安全とは言えず、既に戦闘が行われている事を。
鳥束の知人である燃堂が、校舎内にいる事を。
斉木楠雄の肉体となった少女が、鳥束を探している事を。





589 : Vは誰の手に/開幕のベルが鳴る ◆ytUSxp038U :2021/08/03(火) 01:46:12 ouO5XsHo0
帝王は己の勝利を疑わず、
ヒーローは倒れ伏し、
不死身の兵士は戦意を滾らせ、
アイドルは勇気を振り絞り、
無能力者はこの場での最適解を見出し、
少年は未だ事態を正確に把握せず、
無機物のスタンド使いは主の命に従い、
鬼狩りは背負った命を守る為走り、
霊媒師は傷の痛みに悶絶する。

この戦いは始まりに過ぎない。
精神と肉体の入れ替えを巡るバトルロワイアルの、ほんの一端でしかない。

誰が勝利を手にするのか。
誰が敗北を味わうのか。

望む望まないに関わらず、答えを知るその瞬間は必ず訪れる。


【E-2 街 PK学園高校(校門付近)/早朝】

【桐生戦兎@仮面ライダービルド】
[身体]:佐藤太郎@仮面ライダービルド
[状態]:ダメージ(大)、全身打撲、疲労(大)
[装備]:ネオディケイドライバー@仮面ライダージオウ
[道具]:基本支給品、ライズホッパー@仮面ライダーゼロワン、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本方針:殺し合いを打破する。
1:DIOを倒す。この娘(杉元)は信用しても大丈夫か?
2:甜花を守る。自意識過剰な正義のヒーローだからな。
3:他に殺し合いに乗ってない参加者がいるかもしれない。探してみよう。
4:首輪も外さないとな。となると工具がいるか
5:エボルトの動向には要警戒。誰の体に入ってるんだ?
6:翼の生えた少年(デビハム)は必ず止める。
7:ナナに僅かな疑念。杞憂で済めば良いんだが…
[備考]
※本来の体ではないためビルドドライバーでは変身することができません。
※平成ジェネレーションズFINALの記憶があるため、仮面ライダーエグゼイド・ゴースト・鎧武・フォーゼ・オーズを知っています。
※ライドブッカーには各ライダーの基本フォームのライダーカードとビルドジーニアスフォームのカードが入っています。
※令和ライダーのカードが入っているかは後続の書き手にお任せします。
※参戦時期は少なくとも本編終了後の新世界からです。『仮面ライダークローズ』の出来事は経験しています。
※参加者が並行世界から集められている可能性を知りました。

【杉元佐一@ゴールデンカムイ】
[身体]:藤原妹紅@東方project
[状態]:疲労(中)、ダメージ(小)、骨折(大分治った)、霊力消費(小)、右頬に銃創(普通に喋れる程度には治った)、再生中
[装備]:神経断裂弾装填済みコルト・パイソン6インチ(4/6)@仮面ライダークウガ
[道具]:基本支給品、神経断裂弾×36@仮面ライダークウガ、松平の拳銃@銀魂、予備マガジン、ランダム支給品×0〜2(確認済)
[思考・状況]
基本方針:なんにしろ主催者をシメて帰りたい。身体は……持ち主に悪いが最悪諦める。
1:DIOを殺す。こいつ(戦兎)は敵じゃないだろ、多分。
2:俺やアシリパさんの身体ないよな? ないと言ってくれ。
3:なんで先生いるの!? できれば殺したくないが…。
4:不死身だとしても死ぬ前提の動きはしない(なお無茶はする模様)。
5:DIOの仲間の可能性がある空条承太郎、ヴァニラ・アイスに警戒。
6:この入れ物は便利だから持って帰ろっかな。
[備考]
※参戦時期は流氷で尾形が撃たれてから病院へ連れて行く間です。
※二回までは死亡から復活できますが、三回目の死亡で復活は出来ません。
※パゼストバイフェニックス、および再生せず魂のみ維持することは制限で使用不可です。
 死亡後長くとも五分で強制的に復活されますが、復活の場所は一エリア程度までは移動可能。
※飛翔は短時間なら可能です
※鳳翼天翔、ウーに類似した攻撃を覚えました
※鳥束とギニュー(どちらも名前は知らない)の体が入れ替わったと考えています。


590 : Vは誰の手に/開幕のベルが鳴る ◆ytUSxp038U :2021/08/03(火) 01:48:04 ouO5XsHo0
【DIO@ジョジョの奇妙な冒険】
[身体]:ジョナサン・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険
[状態]:エターナルに変身中、両腕火傷、疲労(中)、火に対する忌避感
[装備]:ロストドライバー@仮面ライダーW、T2エターナルメモリ@仮面ライダーW
[道具]:基本支給品、ジークの脊髄液入りのワイン@進撃の巨人、ランダム支給品×0〜1(確認済)
[思考・状況]基本方針:勝利して支配する
1:スギモトと仮面ライダー(戦兎)を殺す。
2:貨物船を従えておく。
3:貨物船が裏切るような真似をしたら殺す。
4:役立たないと判断した場合も殺す。
5:百年ぶりの日光浴にほんのちょっぴりだけ興味。
6:元の身体はともかく、石仮面で人間はやめておきたい。
7:アイスがいるではないか……探す。
8:承太郎と会えば時を止められるだろうが、今向かうべきではない。
9:ジョースターの肉体にを持つ参加者に警戒。
10:仮面ライダー…中々使えるな。
[備考]
※参戦時期は承太郎との戦いでハイになる前。
※ザ・ワールドは出せますが時間停止は出来ません。
 ただし、スタンドの影響でジョナサンの『ザ・パッション』が使える か も。
※肉体、及び服装はディオ戦の時のジョナサンです。
※スタンドは他人にも可視可能で、スタンド以外の干渉も受けます。
※ジョナサンの肉体なので波紋は使えますが、肝心の呼吸法を理解していません。
 が、身体が覚えてるのでもしかしたら簡単なものぐらいならできるかもしれません。
※肉体の波長は近くなければ何処かにいる程度にしか認識できません。
※貨物船の能力を分身だと考えています。
※T2エターナルメモリに適合しました。変身後の姿はブルーフレアになります。


【E-2 街 PK学園高校(校舎内)/早朝】

【柊ナナ@無能なナナ】
[身体]:斉木楠雄@斉木楠雄のΨ難
[状態]:疲労(小)、精神的疲労
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3(確認済み)
[思考・状況]
基本方針:まずは脱出方法を探す。他の脱出方法が見つからなければ優勝狙い
1:大崎甜歌に協力して、能力者の猿(貨物船)を殺す。その為に燃堂の支給品も確認する
2:鳥束零太から斉木楠雄に関する情報を聞き出したい
3:斉木楠雄が本当に超能力者かどうかはっきりとさせたい
4:犬飼ミチルとは可能なら合流しておく。能力にはあまり期待しない
5:鳥束零太が能力者かどうかも一応確かめておきたい
6:首輪の解除方法を探しておきたい。今の所は桐生戦兎に期待
7:能力者がいたならば殺害する。並行世界の人物であろうと関係ない
8:エボルトを警戒。万が一自分の世界に来られては一大事なので殺しておきたい
9:天使のような姿の少年(デビハムくん)も警戒しておく
10:可能であれば主催者が持つ並行世界へ移動する手段もどうにかしたい
11:学園内で物資を調達しておく
[備考]
・原作5話終了直後辺りからの参戦とします。
・斉木楠雄が殺し合いの主催にいる可能性を疑っています。
・超能力者は基本的には使用できません。
・ですが、何かのきっかけで一部なら使える可能性があるかもしれません。
・参加者が並行世界から集められている可能性を知りました。
・貨物船の精神、又は肉体のどちらかが能力者だと考えています。

【燃堂力@斉木楠雄のΨ難】
[身体]:堀裕子@アイドルマスターシンデレラガールズ
[状態]:疲労(小)、後頭部に痛み
[装備]:如意棒@ドラゴンボール
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:お?
1:お?
[備考]
・殺し合いについてよく分かっていないようです。
・柊ナナを斉木楠雄の弟だと思っているようです。
・自分の体を使っている人物は堀裕子だと思っているようです。
・桐生戦兎とビルドに変身した後の姿を、それぞれ別人だと思っているようです。
・斬月に変身した甜歌も、同じく別人だと思っているようです。


591 : Vは誰の手に/開幕のベルが鳴る ◆ytUSxp038U :2021/08/03(火) 01:49:19 ouO5XsHo0
【大崎甜花@アイドルマスターシャイニーカラーズ】
[身体]:大崎甘奈@アイドルマスターシャイニーカラーズ
[状態]:斬月に変身中、疲労(小)、精神的疲労(小)、自責の念、決意
[装備]:戦極ドライバー+メロンロックシード+メロンエナジーロックシード@仮面ライダー鎧武
[道具]:基本支給品
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない。
1:甜歌も、戦わないと……!
2:戦兎さんと……一緒に、いる。
3:なーちゃん、大丈夫……かな……。
4:283プロのみんなは……巻き込まれてなくて、よかった……。
5:ナナちゃんと、燃堂さん……凄いな……。
[備考]
※自分のランダム支給品が仮面ライダーに変身するものだと知りました。
※参戦時期は後続の書き手にお任せします。
※参加者が並行世界から集められている可能性を知りました。

【貨物船@うろ覚えで振り返る承太郎の奇妙な冒険】
[身体]:フォーエバー@ジョジョの奇妙な冒険
[状態]:健康、ダメージ(中)、ジークの脊髄液入りのワインを摂取、酒酔い
[装備]:英和辞典@現実
[道具]:基本支給品、ワイングラス
[思考・状況]基本方針:DIOのためになるように行動
1:DIOの命令に従い、建物内の参加者を殺す。
2:漫画を置いて行ってしまったのが少し残念。
[備考]
・スタンドの像はフォーエバーのものとそっくりな姿になっています。
・一応知性はあるようです。
・DIOがした嘘のワインの説明を信じています。

【鳥束零太@斉木楠雄のψ難】
[身体]:ケロロ軍曹@ケロロ軍曹
[状態]:精神的疲労(大)、肛門裂傷(大)、内臓にダメージ
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本方針:女の子にモテる!
1:ケツとお腹がめっちゃ痛い…
2:モテる計画が……
[備考]
※ボディーチェンジによりケロロの体に入れ替わりました。

【我妻善逸@鬼滅の刃】
[身体]:ピカチュウ@ポケットモンスターシリーズ
[状態]:精神的疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本方針:殺し合いは止めたいけど、この体でどうすればいいんだ
1:建物の中でお姉さん(杉元)を待つ。俺がこいつ(鳥束)を守らないと…
2:炭治郎の体が……
3:どうにか名簿を確認したい
[備考]
参戦時期は鬼舞辻無惨を倒した後に、竈門家に向かっている途中の頃です。
現在判明している使える技は「かみなり」「でんこうせっか」「10まんボルト」の3つです。
他に使える技は後の書き手におまかせします。
鳥束とギニュー(名前は知らない)の体が入れ替わったと考えています。

【ロストドライバー@仮面ライダーW】
ダブルドライバーのプロトタイプで外見も同様だが、メモリスロットが右側にしか無い。
ダブルドライバーと同様に普段はバックルの状態で携帯され、腹部に当てることで自動的にベルトが伸長して装着される。

【T2エターナルメモリ@仮面ライダーW】
『永遠』の記憶を内包したガイアメモリ。
T2ガイアメモリ共通の特性として、適合した人間と惹かれ合うというものがある。


592 : ◆ytUSxp038U :2021/08/03(火) 01:49:49 ouO5XsHo0
投下終了です


593 : ◆5IjCIYVjCc :2021/08/03(火) 23:20:23 BOzQThSE0
まずは、本編話の感想を投下しようと思います。

>殺してあげると彼らは言った
殺し屋としての経験とリンクの身体だからこそできることでバリーを追い詰めていく桃白白、
その強さは恐ろしかったですがクロックアップにより漁夫の利されてしまう。
ゲンガーも名指しで狙うようになり、メタモンは更に危険なモンスターへと進化していきそう。

>待っててDIO様!キュアヴァニラ爆誕!?
見た目的には問題ないのに、中身のことを考えると変身シーンで妙な笑いがこみ上げてきてしまう。

>もう道は選べない
悲鳴嶼さん人生の大半を盲目で過ごしてきたから文字よめないだろうから名簿読む時どうしようと思ってたけど、見れば分かる不思議名簿で安心。
海楼石の鎖を岩の呼吸のための装備として扱うという手は思いつかなったです。

>宿命をまた呼び覚ます
そういえば確かにこのタイミングの承太郎ならこういう考察できますね。(私は忘れてました)
素早いラッシュを繰り出せるスタープラチナ、運動能力の高い燃堂の身体、移動速度を上げる外套、スピード特化の戦士が誕生した気がします。

>Winding Road、Take Me Under
やりやがった!姉畑の野郎遂にやりやがった!ギニューに同情したのは多分これが初めてかもしれない。
しかしそれでもめげずにボディ・チェンジを発動して戦いを挑むのはやはりギニューも歴戦の戦士であることを実感しました。
代わりに掘られた痛みを引き受けることになった鳥束、ご愁傷様です。

>燃え上がるこの想いの果て、燃え上がるこの想いの果て―Burning My Soul―
手を差し伸べた相手の行動で、最悪の状況になってしまった。
煉獄さんがいなくなってしまった状態でエボルトに出会ってしまったしんのすけ、果たしてこの出会いによって殺し合いにどんな影響が出るのでしょうか。
エボルトの身体が千雪な点にも今後のしんのすけの出方に注目です。
絵美理が女性の手首を食べたことには一瞬驚いたけど、邦子作品の登場人物なら、まあ、こういうことやる。

>両頭の蛇
戦いの中で少しずつ力を解放するようになったJUDOディケイド、今回リオンを脱落させたことも相まって、戦いが進むにつれて更に脅威になりそう。
優勝したら自分でロワを開くなんてことも考えているため、いつかこの企画の第二弾をやるのもいいかも、なんてことを私も思いました。
参加者の笑顔になる行動をすると能力解放されるようになった若おかみ宿儺、こういった縛りを発生させるという、このロワの新たな醍醐味が発見された瞬間な感じがします。

>禁忌の身体
千翼にあった拒否反応が自分にも出るようになったアルフォンス、本来は全くの無関係のはずであった千翼に近づいて行っている感じがします。
ミーティの身体で悪魔の実食べたら一体どうなるんでしょう。…本当にどうなるんだ?

>無能力者とヒーロー
開幕がビルド風なことには笑わせられました。
ようやく落ち着いて話ができる相手に会えたナナ、燃堂の対処も1人でやらずに済み、疲れを落とすこともできそうです。
しかしたとえ平行世界の相手であろうと能力者ならば殺害を決意するとは、果たしてこの選択はどんな風に作用するのでしょうか。

>Vは誰の手に/開幕のベルが鳴る
まさかの変身DIOエターナル、しかもブルーフレア。とんでもなく恐ろしいマーダーが新たに誕生してしまった。杉元がこなければ戦兎もやばいところだった。
そして校舎内でもついに誕生した甜花斬月、頭からメロンを被ることを突っ込まれてはいるが、これで多少は戦力になるでしょう。
そして貨物船と同じく校舎内に入ってきた善逸と鳥束、身体のこともあって学校が何か小さな動物園化してきている感じがします。


594 : ◆5IjCIYVjCc :2021/08/03(火) 23:20:52 BOzQThSE0
改めまして、皆さま投下乙でした!
wikiの編集をしてくださった方もありがとうございます。

吉良吉影、アドバーグ・エルドル、犬飼ミチル、アーマージャックで予約します。


595 : ◆P1sRRS5sNs :2021/08/06(金) 01:05:34 GbhrEOH.0
さて、私も久しぶりに投下します!!

神楽、伊東開司、康一、ロビン、エーリカ・ハルトマン、ゲンガーで予約します!!


596 : ◆EPyDv9DKJs :2021/08/06(金) 09:11:59 O9Jc2pHo0
投下します


597 : ◆EPyDv9DKJs :2021/08/06(金) 09:12:30 O9Jc2pHo0
 橋を越えてから、バリーは焦り気味で振り返る。
 殺人鬼だった男は、殺人鬼に追われてるかのような反応だ。
 鎧の敵は少なくも追ってきてる様子はなく、一先ず姿を通常の状態へと戻す。
 (本来トナカイであるチョッパーからすればさっきまでの姿が通常なのだが)
 咄嗟ともあって四足歩行でも動けたものの、やはり二足歩行の頭脳強化の時が一番いい。

「撒けたか?」

 武器を捨ててでもあの場は放棄せざるを得ない。
 敵のやってきた行動が、完全に読めなかった。
 瞬きしない間に敵が死んでいた、あれはそうとしか言えない。
 あれに対する理解がなければ、現状アレに勝つのは難しいだろう。

「とりあえず落ち着て思い返すか。」

 先ほどの状況を振り返ってみる。
 参加者なら首輪を狙えばだれでも殺せそうなものだが、
 勝てる見込みはがあったとしても限度と言うものがある。
 まず何をしてくるかが分からない。これでは確実に後手に回り、
 後手になった時点で首を刎ねられて死ぬ。文字通り先手必勝の力。
 あれでは大抵の参加者は知らず知らず即死するワンサイドゲームだ。

「大方、制限はあんだろなぁ。」

 でなければ、自分も今頃殺されていたはずだ。
 連発はできず一呼吸か、数分か、数時間かは分からない。
 鎧の身体が無敵でないように、何かしらのデメリットはあるはず(と言うかなくては困る)。
 分からない現状は、武器を捨ててでも逃げて正解だった。

「とは言え、この身体で対処するのは難しくねえか?」

 一対一で出会えばまず切られて死ぬ。
 肉体の変化どうこうで解決できるものではないし、
 必要なのは武器だけではなく、鎧等防御面を確保する必要がある。
 今となっては魂を移された鎧の姿が恋しくなるものだ。

(あんまししたくねえけど、賭けるか。)

 武器は肉体はあれど、やはり斬るのが主義。
 となれば今は何処かの徒党を組む参加者に一旦取り入るべきかと考える。
 集団でいれば鎧に真っ先に狙われる確率は下がるし、漁夫の利も十分に狙うことができる。
 アルフォンスみたいな人がいい奴なら、場合によっては武器すら譲ってくれるはず。

「つってもちょっとまずいな。」

 そうなると困るのがその名前にある。
 アルフォンスは知らなかったが、それは当人が認めるように田舎者であるだけ。
 バリー・ザ・チョッパーは殺人鬼として名を挙げたのでは色々不安だ。
 唯一自分が知っているアルフォンスも共闘した間柄ではあるものの、
 自分が友好的な参加者と言ってくれる可能性があると伝えるとも限らない。

(偽名もリスクあるしどうすっか……お?)

 山から響く、女性の悲鳴。
 叫び声は酷く苦痛に溢れたものだが、
 いい声してんなぁと山を眺めながらバリーは思う。
 数秒で消えるものかと思えば、なんだか異様に悲鳴が長い。
 五秒、十秒過ぎても延々と叫び声が麓にまで届く。

「なんだなんだ?」

 山で何が起きているのか。
 半分興味本位、運が避ければ漁夫の利で武器確保。
 そんな軽いノリで悲鳴のある場所に様子を伺いに向かった。


 ◇ ◇ ◇


 例えるならばセイバーとアーチャーの戦いと言うべきか。


598 : ◆EPyDv9DKJs :2021/08/06(金) 09:13:50 O9Jc2pHo0
 キャメロットとダグバによる戦いが始まり、遠坂はそれを見届ける。
 マスターとサーヴァントだった時の視点としては余り変わらない光景ではあるが、
 かといって元の身体と違って魔術によるサポートとかはできない。
 いかに多くの経験をしてきた奇想天外な人生を送った五歳児でも、
 純粋な力と力がぶつかり合う場においては余りにも戦力外だ。

「凛さん、下がってください!」

 ソニックアローから何度も放たれる矢を打ち払いながらの警告。
 元の世界で召喚したのがアーチャーだけあって味方としては頼もしかった攻撃は、
 この場では遠距離攻撃を所持して実に恐ろしいものだと改めてわかる。

「え、ええ! 分かってるわ!」

 すぐに射線に入らないよう適当な樹木を盾にして身を隠し、
 それの確認を終えれば次が撃たれる前にキャメロットが踏み込む。
 アルトリアの敏捷はステータスが低下してると言えども、
 元々のステータス上は上になるクーフーリンを超える程のものになる。
 十分な速度を上乗せした状態ではぐれメタルの剣を振るう一撃は、
 サーヴァントと言う最上級の使い魔を証左するに値する重いものだ。
 ソニックアローで防がれると同時に衝撃が周囲へ軽く伝わる。

「うん、思った通りだ。」

 重い一撃だが、仮面の奥では笑みを絶やさない。
 見えずとも相手の表情がどういうものか言葉だけでわかる。
 城の記憶を振り返っても、あれほどの邪悪さを感じた人物はいない。
 一方で、その身体は自分たち同様に他人の身体の事実がある。
 持ち主が遠坂同様に参加者としている可能性もゼロではない。
 いなくとも、殺し合いなんてものとは無縁の人の可能性もあるだろう。

「ハッ!!」

 だが、キャメロットの振るう剣に迷いはなかった。
 鍔迫り合いを払う形で制し、続けざまに横薙ぎの一撃。
 当たる直前にギリギリ後退したことで、装甲を掠める程度にとどまる。

 操られてるとかであれば、
 数少ない交流相手のラ・ピュータからの又聞きで聞いた、
 殿と呼ばれる人物のように助けようとすることはあっただろう。
 だが、状況が違う。アレは止まらない。現実における武人の名を冠した大型兜のように、
 殺すか殺されるか。その二択以外でこの殺し合いと言う物語は結末を迎えない。

「逃がしません!」

 後退しても即座に距離を詰めていく。
 得物の都合もあれば相手は遠距離攻撃を所持する。
 距離を取られればそれだけ不利になるのは目に見えており、
 それを実行できるだけの身体能力がサーヴァントの、アルトリアの基本ステータス。
 ダグバも横薙ぎに刃のついたソニックアローを振るうも、身を翻す跳躍による回避。
 即座にバックステップによる着地をダグバがしたと同時に、姿勢を低くしたままの切り上げ。
 着地したばかりで姿勢が安定してなかったのもあってか、
 先ほどのように弓で防ぐと、怯んだように軽く後退する。

「まだ究極の闇には遠いけど、楽しいよ。」

「私は、欠片も楽しいとは思っていません。」

 異界から訪れた英傑アトナテスのような、
 名のある武人との手合わせであれば幾らでも受けよう。
 今のダグバのような嬉々として人を殺そうとする輩となど、
 これっきりにしたいぐらいほどの嫌悪感が表情に出る。

「もっと僕を笑顔にしてよ。」

「くどい!!」

 言葉を遮るような袈裟斬り。
 今度は鍔迫り合いをせず同じようにバックステップでよけられ。
 そのまま空へ矢を放てば拡散し、無数の矢が降り注ぐ。
 即座に迎撃にかかるも、一発だけ頬を掠めて赤い筋が刻まれる。

(ちょっとまずいわ。)

 木陰からひょっこりと顔だけ出して様子を伺う遠坂。
 キャメロットとダグバの戦いは優勢のように見えて彼女が押されつつある。
 矢をすべて打ち落とし、そのまま肉薄してから何度か続く剣劇も、

『メロンエナジースカッシュ!』

 攻撃の合間にベルトのコンプレッサーを押し込まれ、
 ベルトからけたたましい音声と共に弓を振るえば、緑色の衝撃波が彼女を襲う。
 剣を構え、近くの樹木を盾にするも衝撃波は木を圧し折るように裂いてキャメロットも吹き飛ぶ。
 起き上がろうとするところへソニックアローに備わったアークリムと言う刃による斬撃の一撃。
 辛うじて武器を挟む形で攻撃を防いで、蹴りでどかして起き上がる。

(やっぱりって思うべきなのかしら。)


599 : ◆EPyDv9DKJs :2021/08/06(金) 09:16:23 O9Jc2pHo0
 あれは間違いなくセイバーの肉体であるはずだ。
 自己紹介時に互いに支給されたプロフィールも見たが、
 ステータスやマテリアルの内容は完全にサーヴァントのそれのはず。
 であれば、サーヴァントと正面戦闘で互角に戦える人間などそうはいない。
 彼女のいた世界でも勝てると言えば勝てる人物は確かにいるにはいるが、
 あくまでそれらは初見殺しや相性の問題と言った条件を満たしてる場合のみ。
 現実的に言えば、戦闘機に何も持たず生身で挑むのと同義であるのに等しい。

(考えたら当たり前の事じゃない。)

 今の彼女の身体はバーサーカーの攻撃を防ぐだけの筋力も、
 クーフーリンと戦える敏捷もない……そしてその答えに気づく。
 寧ろ、何故気付かなかったのかと疑問にすら思う。

(サーヴァントなんだから、マスターが必要不可欠でしょ。)

 サーヴァントはマスターの魔力供給なしでの現界は長時間できず、
 マスターがいないのではマスター適正によるステータスの恩恵もない。
 可能とするのは主に単独行動のスキルを保有するサーヴァント、とりわけアーチャーのみ。
 殺し合いが始まってから時間はそこまでたってなくとも、
 サーヴァントの身体のままである以上、そのルールから離れられない。

(かといって、それができるかって言うとね……)

 だったら自分マスターになってしまえばいい。
 遠坂本来の身体であればそれを選んでいただろう。
 それであれば間違いなく最優のサーヴァントの名に恥じない強さになる。
 だが、その身体はすぐそばで上半身と下半身が泣き別れで発見された。
 誰が参加者だったかは知らないが、その身体があれば最適だったろうに。
 今の身体のしんのすけならどうか。確かにセイバーは燃費がいいのは、
 パスがつながってない士郎がマスターであっても十分に戦えていた。
 これはアルトリアの身体はマーリンが弄ったことで竜の炉心を持ち、
 魔術回路を用いず生きてるだけでもある程度魔力を確保することができる。
 しかし、肝心の契約自体がこの場でできるのかについては疑問ではあったりはする。
 契約してしまえば、ともすれば蹂躙できてしまえる。それだけセイバーの性能は破格だ。
 ついでに言うと契約する暇を、相手がくれるかどうかも疑問である。
 なお体液の類による供給は一般人なので意味はなく、
 魔力があったとしても他人の身体かつ子供なので論外だ。

(他の手段、とっとと探さないと。)

 今の自分にできるのは支給品をもう一度確認することだけだ。
 宝石のような魔力の塊。それさえあればある程度脱することができる。
 さっきは剣を優先していたのでまだ確認はしきれてなかったが、
 この状況を打開できる手段がなにかあるはずと漁ってみたところ、

「……えっ。」

 別の意味で、見つけてはならない物を見つけた気がした。


 ◇ ◇ ◇


 一方、二人は。

(ダメージは軽微のはずなのに、身体が重い!)

 ソニックアローの斬撃を防ぐが、
 先ほど以上に思うように身体が動いてくれない。
 サーヴァントの欠点を理解してない彼女は内心焦り出す。

「どうしたんだい? さっきよりも弱ってるみたいだけど。」

「貴方に答える理由は、ありません!!」

 なんとか押し返して斬りかかる。
 一撃目の袈裟斬りは難なく防がれ、
 次の横薙ぎの一撃は逆に相手の攻撃で弾かれ、
 ドライバーによって跳ね上がった威力の蹴りを叩き込まれる。

「グアッ……!」

 大地を転がり、勢いを利用しすぐに立ち上がると、
 再び降り注ぐ矢の雨を迎撃しても先ほど以上に被弾が多い。

(最悪、凛さんだけでも。)

 暗い中下山するのは危険だし、他の参加者との遭遇もありうる。
 だからなるべくつかず離れずの距離を保たせていたが、
 このまま戦ってもじり貧で勝てるとも思えない。
 人を守る為であれば、命を犠牲にしてでも守る。
 それが兜と戦う城娘としての役割だ。

 ……まあ、彼女は物語の世界から出られないので、
 基本的に兜と出会うことは稀なのだが。


600 : ◆EPyDv9DKJs :2021/08/06(金) 09:17:06 O9Jc2pHo0
「凛さ───」

「キャメロット! ちょっと一旦逃げるからお願い!」

「え? あ、は、はい!」

 先に彼女から呼ばれて、
 提案を出せないまま彼女を脇腹に抱えて一度逃げる。
 サーヴァントだけあって常人離れした下山をするが、
 直ぐにダグバも二人をアーマードライダーのスペックをもって追走する。

「あの、凛さん。一旦と言いましたがどうするんでしょうか!」

「少し距離を稼いだ後、渡す物を飲んで!」

 一旦と言った以上は対抗策があると言うこと。
 どういうものかを期待してたが 予想してたものと違う。
 ドーピングのような類に感じてしまい、微妙に忌避感がある。

「えっと、それはどういう……」

「説明する暇がないわ! とりあえず、
 今の状況をましにできる可能性があるから!」

 要領を得ないものではあるが、
 このまま二人で逃げ切ると言うのは当然できない。
 リオンの時のように加護での逃走経路も間に合うことはないだろう。
 まあ、弓があるので水上にいれば逃げ切れる保証もないが。

 できることなら契約できるかを試したいが、
 この状況で喋れば間違いなく舌を噛みかねないので、
 選択肢に入れることすらできない。

「……分かりました、打開できるのであれば!」

 元より捨て身の特攻を覚悟していた。
 それと比べれば大分ましな結果になる可能性。
 スピードを思い切り出して、距離を取ってその飲み物を渡される。
 渡されたのはビンに注がれている紅い色をした飲み物。
 飲み物と言うべきなのか、どこかゲル状にも見えなくはない。

(ミード……なわけないですよね。)

 蜂蜜酒がこんな一杯程度の瓶に収めるとは思えない。
 今は一刻の猶予もなく、品がないとは思いつつコルク栓を抜いて一気飲みする。
 味ははっきり言ってわからない。なんと形容すればいいか表現がしがたい。
 ただ、口にしただけで馴染むように消えていくそれに気持ち悪さを感じ、

「グッ───アアアアアアアアアアッ!?」

「え!?」

 それとほぼ同時に突然の苦痛にのたうち回るキャメロット。
 何が起きたか追いついたダグバは理解はできなかったが、
 これについては飲ませた遠坂本人も想定してない出来事だ。

(予想してた展開と全然違う!? っていうかまずい───あれ?)

 隙だらけの彼女に遠坂が一番焦るも、ダグバは動かない。
 ズ・ゴオマ・グも苦痛の果てにズでありながらゴも倒したクウガと戦える成長をした。
 きっと彼女の状況はその類と思い、とどめを刺すことはせずに笑顔で眺めて結果を待つ。
 一応、攻撃するなら遠坂も残った支給品で妨害するつもりではあった。
 それがアレに通じるかどうかは別ではあるとして。

「ギッ、アアアアアアアアアッ!!」

(なんか攻撃してこないのは助かるけど、
 キャメロットのこれはどういうことなの!?)

 悶えるキャメロットに冷や汗が止まらない。
 無論遠坂はキャメロットに毒を飲ませたわけではない。
 いや、毒であった方がある意味まともだったとも言えるか。
 口にしたものは、彼女の世界で言えば第三魔法に匹敵する代物だ。
 ───魂を物質化。それをかの世界で造られたものを『賢者の石』として呼ばれた。
 一応、類似した手段をアトラム・ガリアスタと言う魔術師もやっていたが
 あれはマナの結晶であって、賢者の石とは比べるまでもないことだ。

 サーヴァントには魂食いでも魔力供給が可能だ。
 人間の魂と言うものは、それだけのエネルギーがある。
 多数の人間の魂が宿っている賢者の石を体内に供給すれば、
 現状一番魔力供給となりうる手段だろうと彼女に飲ませた。
 しかし、説明書だけでは理解しきれないものだって存在する。
 賢者の石は複数の人間の魂が宿る。魂から意志は取り除かれてるわけではない。
 体内へ取り込めば、石の中に残る魂との肉体争奪戦が繰り広げられる。


601 : ◆EPyDv9DKJs :2021/08/06(金) 09:17:36 O9Jc2pHo0
(内側から響くこの声、は……!!)

 故に今、彼女は石に潜む人の悲鳴に苛まれていた。
 無数の苦悶の声に気が狂いそうになる。
 反応から遠坂も理解しきれてない事態だとは察したが
 何を飲まされたのかは僅かながらに疑いたくなるものだ。
 少なくとも、まともなものとは言えないものだろう。

「アアアアアアアアアア!!」

 山中へ響くような悲鳴は今も続く。
 宝玉のような碧眼は限界まで開くが、その瞳は今は何も映してない。
 今映るのは、脳裏に浮かぶ無数の嘆き声の前に疲弊していく自分の姿だけ。

『……私は───ッ。』

 無数の声に心が壊れそうになったからか。
 走馬灯のように思い出すのは、嘗ての城としての記憶。
 厳密に言えば、彼女は複数の名を持った記録を持つキャメロット城だ。
 故に竜宮城を筆頭とした『物語にしか存在しない架空の城』となる存在であり、
 同時に物語のキャメロットとしての多くの物語に紡がれた、数々の騎士の物語を記憶する。

『私は、キャメロット……!』

 苦悶する声の中、彼女は崩壊しそうな心の中で言葉を紡ぐ。
 敬愛するランスロットに抵抗もできず殺されたガレス、
 ランスロットと会うことが叶わず散って行ったライオネル、
 何より、平和だったブリテンを滅びに至らせてしまった我が王アーサー。

『数々の騎士たちを招き入れた城であり!
 三十の国を傘下に収めた、アーサー王の居城ッ!!』

 数々の騎士たちの嘆きや苦しみを彼女は数々の物語で聞き届けた。
 城ゆえに介入することはできず、ただずっとそれを見続けてきたと言うことになる。

『三十の国治めた我が王の居城なればッ!!
 この程度の人数を治めずして、何が城かッ!!!』

 一体どれだけの騎士が、民が滅びの道を辿ったのか。
 数々の物語を内包したキャメロットだからこそ、
 そして数多くの人から存在を願われた城ゆえに、

「アアアアアアアアアアッ!!」

 この声に耐えきれると言うものだ。
 叫びながらはぐれメタルの剣を拾いなおして無理矢理立ち上がる。
 端正であるはずの顔は眉間にしわが寄る程に苦悶に満ちており、息遣いも荒い。

「だ、大丈夫なのキャメロット!?」

「一応は、大丈夫です!」

(相手が見過ごしてくれたのが救いでしたね……)

 普通だったらあの時点で既に死んでいただろう。
 明らかに異様な光景に映って攻撃しなかったのか、
 ほっといても死ぬと言う思い込んでいたからか。
 相手を知らない以上知る由もない。

(何を飲んでしまったか分かりませんが───)

 リオンと戦った時よりもずっと好調だ。
 減る一方だった魔力が供給されたことで、

「ハッ!」

 さっきよりも明らかに機敏な動きで一撃を叩き込む。
 すんでのところで回避行動に出ていたためかすり傷、

「?」

 にはならなかった。
 何故か脇腹をえぐるような痛みと衝撃が襲いダグバが大地を転がる。
 アーマードライダーの鎧がなかったら、致命傷は免れなかった一撃。
 本人は避けたつもりだったのに、何故か間合いを見誤った。
 気になって起き上がりながらキャメロットを見れば、

「へぇ、そんなこともできるんだ。」

「え?」

 彼女すら気づいてない変化に気付く。
 ダグバの視線……と言っても仮面越しなので見えないが、
 視線の先と思しきはぐれメタルの剣を見やる。

「!?」


602 : ◆EPyDv9DKJs :2021/08/06(金) 09:18:53 O9Jc2pHo0
 いや見れない。
 彼女が持っているはずの剣はどこにもない。
 だが、この手に握っている感触は残ったままだ。

「これは一体……」

(あれはセイバーの!)

 風王結界(インビジブル・エア)。
 剣に風を纏わせることで剣を透明にし、
 武器の間合いを把握させないようにするための宝具。
 (厳密には別の理由があるのだがそれについては割愛)
 彼女の握る剣は、完全に無色透明と化して姿が見えなくなっていた。
 だから間合いを見誤った、と言うより見えてないからわかるはずがなく、
 アサシンのように長さを把握するようにしていたわけでもない。
 攻撃を避けれなかったのは、そういうことである。

(いずれにせよ、早期決着をつけなければ!)

 いつまたあの不調を起こすか分からない。
 此処で仕留めるべく、見えない剣を構えながら迫る。
 見えなくとも剣の間合いは既に分かっているので、
 間合いを勘違いすると言うことはない。

「強くなったんだね。」

 姿勢を低くした状態で肉薄し、剣による足払いを狙う。
 それをダグバはジャンプで回避して、跳躍しながら矢を連射。
 一発目と二発目は剣で弾き、三発目は撃たれる前に跳躍し追いつく。

「ハアアアアアッ!」

 宙を舞衣あがりながら切り上げる。
 剣は見えないが直感に近いもので一撃を防ぐ。

『メロンエナジースカッシュ!』

 返しのようにコンプレッサーを操作して必殺技を放つ。
 先ほどは防ぐ以外で対応しきれなかった攻撃ではあるが、
 空中で身を翻し、華麗に避けながら勢いのまま頭上を取る。
 殆どぎりぎりである為髪が少し切り落とされたが、ダメージと呼べるものではない。
 頭上の斬撃が迫るのを防ごうと弓を構える、

「そこ!!」

 寸前に翻した勢いで頭へと叩き込まれる踵落とし。
 剣では防がれると咄嗟に判断して足技を狙ったが、それは正しかった。
 本来ならばキャメロットは剣術一辺倒になる。
 だから蹴りと言う選択肢自体があまり出てこないものだが、
 これはセイバーが所有するスキル『輝ける路』が働いている。
 直感の亜種となるそれは低下してるにせよ、元は未来予知に等しかった程のもの。
 刹那の間に最適を選べる場面においては、十分に発揮できるものになっていた。

 頭に蹴りを叩き込まれ、大地へと叩きつけられるダグバ。
 重力のまま落下して剣を振り下ろすも転がる形で回避。
 起き上がりながらその背中を狙ったソニックアローの連射。
 連射される矢を振り返りながら弾くと迫るアークリムの刃。

「クッ!」

 ギリギリ間に合い、剣を挟んで致命傷を防ぐ。

『メロンエナジースカッシュ!』

「!」

 再びけたたましい声とともにソニックアローが黄緑のオーラを纏う。
 即座にサイドステップで距離を取ると、同時に横薙ぎに振るわれる一撃。
 ダグバを飛び越えるように跳躍して背後から斬りつけるが、
 斬月の背中は割と装甲が分厚く、ダメージとしては軽微だ。

(調子は良くなったはずですが、詰めきれない……)

 確かに先程と違い優勢ではあるものの、
 確実に追い詰めてると言う実感は感じられない。
 相手の表情が伺えないから読み取れない、と言うのもあるか。

「!」

 着地しながら振り向くと、
 突然ダグバが距離を取りながらソニックアローをブーメランのように飛ばす。

(此処で弓を捨てた!?)

 無制限に撃てる弓矢を捨てるメリットは何か。
 理由は分からないまま飛んできたソニックアローを弾く。

「もっとリントのものを使ってみないとね。」

 弓を弾き飛ばせば、ダグバは別の物を握っていた。
 手に収まるか収まらないか程度の、八角形の道具。
 中心のから放たれるのは、眩い極太の閃光を放つ黄緑の光線。

(な……)

 幻想の世界で数々の異変を解決した魔法使いのマジックアイテム『ミニ八卦炉』は、
 魔力の代わりにロックシードのエネルギーを吸い取ってその力を発揮する。
 最大火力は流石に抑えられてるが、人一人殺すのには十分な火力だ。


603 : ◆EPyDv9DKJs :2021/08/06(金) 09:19:28 O9Jc2pHo0
「セイバー!!」

 突然の攻撃に、遠坂はキャメロットであること忘れて叫んでしまう。
 だが声をかけても遅い。今から回避行動を取っては間に合わない。
 よしんば間に合ったところで、半身が吹き飛んでる可能性すらある。

(何故でしょう。)

 自分の命は此処で終わり。
 そう確信を持ててしまう程の攻撃だ。

(無理なはずなのに───)

 交流がその出自の都合少ない彼女でなくとも、
 城娘でも大型兜でも、ここまでの芸当ができるのはほぼ存在しない。
 だから対応できる術と言うものを彼女は知らなかった。

(抗えと、身体が動く!)

 不可視となった剣先を向かうレーザーへと構える。
 死を恐れることを、敗北を恐れることのない精悍な顔つきで剣を引く。

(我が王……改めて私に力を!)

 剣を突き出すと、はぐれメタルの剣が姿を露わになる。
 露わになったところで、何ら意味などない行為と思われるだろう。
 だが、違う。

「───爆ぜよ、風王結界!!」

 同時に剣を覆っていた風は一直線にレーザーへ、ダグバの方へと向かう。
 風王鉄槌(ストライク・エア)───セイバーの宝具の一つである風王結界、
 それを解放する際に発生する暴風を相手へとぶつけて攻撃手段に転換させる技。
 この土壇場で、今現在唯一使える宝具からの技を放つことができた。

「ハアアアアアアアアアアッ!!!」

 魔力放出の上位スキルたる『竜の炉心』と賢者の石で確保した魔力も伴って、
 少なくともマスター不在の状態でありながら放てる威力ではなかった。
 山道をえぐり、木々を揺るがす威力では遠坂も直視できる状態ではない。
 破壊力を伴った暴風は、レーザーを両断するように突き進む。
 風の破砕槌は勢いは止まることを知らず、

「!」

 やがて根本にいるダグバにまで吹きすさぶ風が到達する。
 暴風に衝突したダグバは、その勢いのまま吹き飛ぶ。
 山から離れるように、その身は彼方へと消えていった。










 派手な戦いが終わってあたりを見渡せば、周囲は荒れに荒れていた。
 ミニ八卦炉のレーザーで木々は燃えており、風王鉄槌による抉れた地面。
 他にも戦いの痕跡となるクレーターと言ったものがあり、ミニ八卦炉のレーザーは木々を焼き払い、
 僅かながら燃え始めている状態で、見事なまでの戦闘の痕跡が見受けられる。

(……あれは、だめでしょうね。)

 倒せたかどうかと言えば、恐らくだめだろう。
 いくら今できる最高の状態で放った風王鉄槌でも、
 ミニ八卦炉のビームで威力が削られた状態での被弾。
 更にはぐれメタルの剣を以てしても破壊出来なかった装甲。
 今度は打撃である以上ダメージは十分だが、とどめを刺す威力には至らない。

(事実上、私の負けですね。)

 賢者の石を口にしたとき、
 攻撃されれば確実に死んでいた。
 相手が何を理由に攻撃しなかったかは不明だが、
 油断ありきの勝利、といったものになる。
 その上とどめはさせずじまいで相手は彼方へ飛んだ。
 動ければそのまま殺戮を続けるであろう存在を逃がす形になる。
 勝てたと手放しで喜べるものではなかった。

(それにしても、何故それを言葉にしたんでしょうか私は。)

 事が終わって冷静になれば、キャメロットは戸惑った。
 先程彼女は風王結界の名前を口にしているものの、
 その名前については知らない。何故それを紡いだのか。
 物語の城ゆえに口上や芝居がかった台詞などは好きだが、
 思い付きと呼ぶには余りにもしっくりくる不思議な感覚。

(今のは私? それとも……)

「あいつ、どうなったの?」

 木陰から覗いてた遠坂が戻ってくる。
 暴風の中とても目を開けていられないともあって、
 今の惨状を見ても理解は追いつかない。

「一応の手ごたえはありましたが、
 装甲を砕けたわけではないので倒せてはないかと……とは言え、
 軽傷で済ませられるものではないとも思います。人であればの話ですが。」


604 : ◆EPyDv9DKJs :2021/08/06(金) 09:20:25 O9Jc2pHo0
「今は退けただけ、よしとした方がいいわ。」

 あんな魔術でも上位にあたるであろう攻撃、
 対魔力を持ってる彼女の身体でも当たれば危うい。
 連発されて辺りを焼け野原にされるよりはずっとましだ。

「キャメロット。今は離れるわよ。
 このままだとやばいことになるから。」

 ゆっくりとではあるが、焼かれた木から火が昇り始める。
 山火事になるのは時間の問題だし、支給品の水の消耗も避けたい。
 早急にこの場から離れなければならない。

「ところで凛さん。何を飲ませたのですか?」

 彼女を抱えて移動しながら、キャメロットは下山していく。
 その途中、先程飲まされたものを尋ねた。

「……怒ってる?」

「最適と思ってのことだとは思いますので、
 責めるつもりはありませんが……薬物なのでしょうか。」

 流石に隠すわけにはいかないので、
 ある程度火元から離れた河原で事情を伺う。
 特に包み隠すことなく、賢者の石を説明する。

「つまり私が口にしたのは、人間だったもの……ですか。」

 何も知らず飲んだものが人間の魂を素材としたもの。
 カニバリズムの趣味もなければ、人を何とも思わないかのようなものを口にした。
 吐き出すことはできないし、その魂で得たものを消費していく。
 サーヴァントでもそれを割り切れない者は多いだろうに、
 人の物語を守る目的のキャメロットにとっては、余計に割り切れない。

「黙っててゴメン。急いでたから……」

「いえ。必要だと判断しての合理的なもの。
 凛さんの行動は理にかなっているかと。」

 結局なければ勝てなかった戦いだ。
 明らかな劇薬ではあるものの後遺症は特にない。
 それに魂の自我が残ってることも知らなかったようだし、
 悪意はなかったのだから責めるつもりはなかった。

「それにしても第三魔法まであるとは思わなかったわ……」

 サーヴァントと言う類似したものはあれど、
 第三魔法をこんな形でお目にかかることになるとは。
 ボンドルドはなんでもありか。不明な第四魔法も知ってるのではないかと、
 頭が痛くなることばかりだ。

「とりあえず……」

 現状ダグバを倒しきれるか怪しい。
 勝てたのは運が良かっただけであって、
 現状で再戦を挑むのは無策にもほどがある。
 もう一つか二つ、突破できる手段を持っておきたい。
 できることなら他の参加者と出会い、協力者を探す。

「お、まじで人がいた。」

「!」

 新たな声にキャメロットが声の方角を睨む。
 草陰からひょっこりとその愛嬌のある顔を出すバリー。
 見た目のせいで、二人して何とも言えない表情になる。

「……何あれ。使い魔?」

「さ、さあ。首輪から参加者のようですが。
 少なくともカヴァスではありませんよね?」

「あんな犬がいるわけないでしょ。」

 少なくとも首輪から自分たちと同じ立場は分かる。
 とは言えその奇抜な見た目のインパクトは強い。

「おーい、そっちは乗ってねえんだよな殺し合い。」

 複数人でいることから協力関係、
 つまり殺し合いに否定的だと見て良さそうだが油断はしない。
 殺人鬼と大胆でありつつも、意外と慎重に物事を考えられるのがバリーだ。

「ええ。私はキャメロット城。こちらは遠坂凛さんです。」

(……この様子だと俺を敵って認識はなさそうだな。)

 アルフォンスなら隣の子供(中身はともかく)を放っておくわけがない。
 剣を持った相手がいるから別れた線もありえなくはないものの、
 兄やマスタングもいないし、自分一人の為に別行動するとも思えない。
 (まあ完全に彼の人間関係を把握できてるわけでもないが。)


605 : ◆EPyDv9DKJs :2021/08/06(金) 09:21:01 O9Jc2pHo0
(後は賭けだな。)

「俺はバリー・ザ・チョッパーって言うんだけどよ。」

 ルールには進捗状況を伝える放送があると言う。
 どのような内容かは不明だが参加者を焚きつけるもののはず。
 例えば家族とか兄弟とか、そういう奴の死を突きつけて動かす。
 だからアルフォンスや他の参加者の名前を騙って出会わずとも、
 その放送で露呈するリスクが存在するなら、同名だと誤魔化せる方がまだ安全だ。

「チョッパーさんですね。それを尋ねることから、同志とお見受けします。」

(お、大丈夫そうだな。)

 別の世界の殺人鬼のことなど、
 当然知るはずもなく、特に何事もなく二人には受け入れられた。
 人とは違う身体と言うところが、同情を誘ったようでもある。
 ……此処へ来る前も鎧姿なので、微妙に的外れだが。

「ところでおたくらはどうするつもりだ?」

「現在山間の中腹で山火事が起きてます。
 早急に下山をしたいのですが、バリーさんは道は分かりますか?」

 地図以外の情報がない山をルートも分からずに動くのは極めて危険だ。
 方角的に麓の方から来たとみていいので尋ねてみるが、

「俺はこれで獣道を移動してきたから、正規ルート知らねえぞ。」

 そう言って脚力強化(ウォークポイント)へと変化。
 急激な肉体変化には二人は驚かされるが、この見た目がむしろ普通だ。
 この身であれば、人が通れるような道を渡ってなくてもおかしくない。

「一先ず私は凛さんを抱えて下山します。」

「俺は?」

「すみません。両手を塞ぐわけにはいかないので自力でお願いできますか?」

「ま、妥当か。」

 脚力強化で気楽に移動できる方だ。
 どっちに一人での下山を任せるかは当然ではある。

「ああ、そうそう。下山したらキャメロットに試したいことあるから。」

 先程は余裕がなかったが、今は余裕がある。
 下山もすればサーヴァントとの契約はできるのか。
 試すに越したことはないだろう。

「試したいこと、ですか? それはどういう……」

 何かを尋ねようと思っていたものの、
 バリーがじーっとキャメロットに視線を向けている。
 何か変なものでもついているのかと、全身を見渡すも分からない。

「あの、バリーさん。顔に何かついてますか?」

「いや、知り合いを思い出しただけだから気にすんな。」

「そうですか。それで凛さん、試したことは……」

 二人を静かに眺めるバリー。
 特別似ていると、言うわけではない。
 ただ、バリーは彼女を思い出していた。
 以前惚れた女性、リザ・ホークアイのことを。
 顔つきは少し幼すぎるが、金髪で凛とした美人の女性と言うところは一致している。

(ま、姐さん程じゃあねえけどな。)

 とは言え残念ながらお眼鏡にはかなわない。
 仮に惚れたとしても、それを振り払ってでも人を殺す。
 なし崩しでアルフォンスの味方だったが、彼は善人ではない。
 ただ人を斬りたくて殺して死刑になった殺人鬼なのだから。
 とは言え、多少似た要素は都合がいい。もしアルフォンスと出会っても、
 彼女がホークアイの代わりを務めてると思わせる要因になりうる。

(にしても、信用してなさそうだなこりゃ。)

 もう一つ、バリーが見ていたのは持ってる得物の剣。
 どう奪おうものかと考えてはいるが、彼女は周囲に気を配ってる。
 その周囲には、自分の存在すらもあるのを軽く察していた。
 一見普通の見た目でも殺し合いに乗ったダグバに出会った都合、
 どうしてもキャメロットは多少の疑念を捨て去ることができない。
 両手で塞がることを避けようとしたのもの、その理由から来ている。
 特にモードレッドの裏切りによって最終的にブリテンは崩壊した。
 裏切りと言うものに警戒をしたくなるのも無理からぬことだ。

(素直にしばらく様子見しとくか。)


606 : ◆EPyDv9DKJs :2021/08/06(金) 09:22:55 O9Jc2pHo0
 この先交流で誰かから武器を得られる可能性はある。
 その時までじっくり待っておけばいいだけのことだ。
 殺人鬼はひっそりと、虎視眈々とその機会を伺う。





 さて、キャメロットが口にした賢者の石。
 ただの賢者の石か、それともお父様の切り分けた強欲が潜んでいるか。
 どちらか分かるものは誰一人いないまま、山風が吹いていく。

【C-4 空中/黎明】

【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】
[身体]:櫻木真乃@アイドルマスターシャイニーカラーズ
[状態]:ダメージ(中)、脇腹に強い打撲痕、消耗(大)
[装備]:ゲネシスドライバー@仮面ライダー鎧武、メロンエナジーロックシード@仮面ライダー鎧武、ミニ八卦炉@東方project
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品×0〜3(零余子の分も含む)
[思考・状況]基本方針:ゲゲルを楽しむ
1:二人(キャメロット、凛)と戦う。特に一人(キャメロット)。
[備考]
※48話の最終決戦直前から参戦です。
※東の方角へと吹き飛びました。
 具体的な着地点は後続の書き手にお任せします。

【C-4 山/黎明】

【遠坂凛@Fate/stay night】
[身体]:野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん
[状態]:健康、精神的ショック(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜1(確認済み、現在の状態で使用可能な武器)
[思考・状況]基本方針:他の参加者の様子を伺いながら行動する
1:参加者で契約って結べる? 試しておかないと。
2:サーヴァントシステムに干渉しているかもしれないし第三魔法って、頭が痛いわ。
3:私の体が死んでるなんて……
4:身体の持ち主(野原しんのすけ)を探したい。
5:アイツ(ダグバ)倒せてないってどんだけ丈夫なの。
6:後でバリーからも話聞かないといけないわね。
[備考]
※参戦時期は少なくとも士郎と同盟を組んだ後。セイバーの真名をまだ知らない時期です。
※野原しんのすけのことについてだいたい理解しました。
※ガンド撃ちや鉱石魔術は使えませんが八極拳は使えるかもしれません。
※御城プロジェクト:Reの世界観について知りました。

【キャメロット城@御城プロジェクト:Re】
[身体]:アルトリア・ペンドラゴン@Fateシリーズ
[状態]:マスター不在によるステータス低下、全身に裂傷(軽微)、ダメージ(大)、精神疲労(大)、複雑な心境
[装備]:はぐれメタルの剣@ドラゴンクエストⅣ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2(確認済み、剣以外)、逆刃刀@るろうに剣心
[思考・状況]基本方針:一人でも多くの物語を守り抜く。
1:今は休憩を。
2:凛さんを守る。
3:アーサー王はなぜそうまでして聖杯を……
4:バリーさんは信用したいのですが、先程の件があって少し不安。
5:……大丈夫なのでしょうか、賢者の石。
[備考]
※参戦時期はアイギスコラボ(異界門と英傑の戦士)終了後です。
 このため城プロにおける主人公となる殿たちとの面識はありません。
※服装はドレス(鎧なし、FGOで言う第一。本家で言うセイバールート終盤)です
※湖の乙女の加護は問題なく機能します。
 約束された勝利の剣は当然できません。
※風王結界、風王鉄槌ができるようになりました。
 ある程度スキル『竜の炉心』も自由意志で使えるようになってます。
※賢者の石@鋼の錬金術師を取り込んだため、相当数の魂食いに近しい魔力供給を受けています。
 また、この賢者の石にグリードが存在してるかどうかは後続の書き手にお任せします。
※名簿をまだ見ていません。
※Fate/stay nightの世界観および聖杯戦争について知りました。

【バリー・ザ・チョッパー@鋼の錬金術師】
[身体]:トニートニー・チョッパー@ONE PIECE
[状態]:疲労(大)、全身に切り傷、頭脳強化(ブレーンポイント)
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、神楽の番傘(残弾100%)@銀魂、ランダム支給品×0〜1
[思考・状況]
基本方針:存分に殺しを楽しむ
1:あの鎧野郎(メタモン)をどうにかしたいので一度集団に紛れ込んでおく。
2:武器を確保するまでは暫くなりを潜めた方がよさげか。
3:いい女だが、姐さんほどじゃねえんだよな。後もう少し信用されておきたい。
4:使い慣れた得物が欲しい。
[備考]
参戦時期は、自分の肉体に血印を破壊された後。



※C-4ダグバのミニ八卦炉のレーザーが撃たれました。
 夜間ともあって誰か見ているかもしれません
 『黎明』C-4を中心に山火事が発生してます。


607 : ◆EPyDv9DKJs :2021/08/06(金) 09:24:21 O9Jc2pHo0
【ミニ八卦炉@東方project】
元は零余子が持ってた支給品。霧雨魔理沙の生活必需品でありマジックアイテム。
森近霖之助が緋々色金を使って作り上げた万能ツールと言っても過言ではない。
コンロ、扇風機、魔除け、マイナスイオンを出すなどとにかくできることが多い。
同時に高出力のレーザーを放つことが可能で、ダグバはロックシードのエネルギーで代替している。

【賢者の石@鋼の錬金術師】
遠坂の支給品。等価交換の原則を無視した錬成が可能になる錬金術増幅器。
生きた人間の魂物質化させて凝縮させたもので、生きた人間が材料のエネルギー体。
材料となった人間の魂はエネルギーとして消費されるまで生きたままであり、
原作で賢者の石を取り込んだリンは魂だけになった苦痛の声に発狂しかけた。
マルコーやお父様が所持してた物のように、石とは言うが半液状であっても石扱い。
なお、この賢者の石が『強欲のグリード』を内包しているかは現時点では不明。
普通にいないかもしれない。もしくはサーヴァントと言う特異体質故に、
意識が目覚めるのが遅れてるだけかもしれない。


608 : ◆EPyDv9DKJs :2021/08/06(金) 09:29:07 O9Jc2pHo0
以上で『Mighty Wind』投下終了です


609 : ◆ytUSxp038U :2021/08/06(金) 15:28:01 EjpLXksE0
投下乙です
退けられたとはいえ、着実にアーマードライダーの力を使いこなしているダグバはやはり危険ですね…
ステータス低下の問題も解決し、肉体の影響が出始めているキャメロットは有力な対主催者。ただ賢者の石の影響で今後どう転ぶのか目が離せません
後やっぱり殺人鬼なんだけどバリーは嫌いになれないというか、不思議な魅力がありますね。キャメロットに少しだけ中尉を重ねるのが好き

野原しんのすけ、エボルト、雨宮蓮を予約します


610 : ◆NIKUcB1AGw :2021/08/07(土) 18:19:56 Zfj6UBzI0
銀時、新八、ホイミン予約します


611 : ◆ytUSxp038U :2021/08/08(日) 11:07:33 oUdRGZLY0
投下します


612 : エボルトのパーフェクトえいゆう教室 ◆ytUSxp038U :2021/08/08(日) 11:08:42 oUdRGZLY0
どうすれば良いんだろうか。
泣いている男を前に、自分は未だ何も出来ずにいる。
分からないのだ、彼に何と声を掛ければ良いのかが。

泣いている胴着の男も、命を落としたハチマキの男の事も、自分は何も知らない。
到着した時にはもうほとんど手遅れだった。
チェンソーの化け物をエボルトと共に退けたものの、男の人を助ける事はできなかった。
彼らは殺し合い以前からの仲なのか、それともここで知り合った仲なのか、
自分達が来る前に何を話して信頼を高めたのか、何一つとして知らない。
そんな何も知らない自分が、悲しみに暮れる彼に慰めの言葉を掛けた所で、却って怒らせるのではないだろうか。
その気はなくとも、不用意な言葉が余計に彼を傷つけてしまうかもしれない。
そう考え、口から言葉が出ずにいる。

と、このような自分の悩みなどお構いなしに、赤い同行者は口を開いた。

『泣いてるとこ悪いが、そろそろ移動するぞ』

渋みを感じさせる声で胴着の男へ移動を促す。
無神経と思わないでもない。
だが彼、エボルトの言う通りこの場から離れた方が良いとは思う。
こういう場面でハッキリと言える度胸は、自分にはまだ足りてなかったようだ。

胴着の男は困惑したようにこちらを向く。
泣き腫らした瞳には、隠しようも無い警戒と恐怖が宿っていた。
無理も無いだろう。
仲間を殺されたばかりで、どこの誰かも知らない男と全身真っ赤の怪人に話しかけられたら、誰だってそうなる。

「お、おじさんたち…だれ…?」
『自己紹介は後だ。ちょいと派手に暴れたみたいだからな、余計な奴まで呼び寄せるかもしれねぇ』
「おじさんたちも、悪者なの…?」
『おいおい、こんなイケてる悪者がいる訳ねぇだろ?』

呆れたように肩を竦めるエボルト。
相も変わらぬ胡散臭い仕草に、心なしか向こうの警戒度が上がった気がする。
それを自覚してるのかしてないのか、ハチマキの男の人を背負った。
胴着の男があっと声を漏らすのを無視し、自分へ指示を出した。

『とりあえずルブランに戻るぞ。こいつは俺が運ぶから、お前は荷物を頼む』

ハチマキの男をここに放置する気はエボルトにも無いようだ。
自分としても野晒しにするのは避けたい所だった。
エボルトに頷き返し、デイパックと刀を回収する。
それから未だ立てずに視線をウロウロさせている胴着の男へ

→【肩を貸す】
【早く立つよう促す】
【こいつは置いて行こう】

彼の大きな肩へ腕を回し、立ち上がらせる。
まだ警戒しているようだが、「今は自分達を信じて欲しい」、と目を見て告げた。
暫し黙っていたがやがて力なく頷き、こちらが手を貸さずとも立てるようにはなった。
格闘家か何かだろうか、胴着の下の筋肉は男の自分から見ても見惚れそうなくらいにガッシリとしている。

『そんじゃあ、さっさと行くぞ』

エボルトの号令に従い三人揃って移動する。
先頭はエボルト、真ん中は胴着の男、そして最後尾は自分。
エボルトに背負われたハチマキの男を、胴着の男はどんな思いで見ているのだろう。
彼の背中は、とても小さく見えた。

幸いな事に移動中はトラブルも無く、無事にルブランへ戻って来れた。
その間、誰も口を開きはしなかった。


◆◆◆


613 : エボルトのパーフェクトえいゆう教室 ◆ytUSxp038U :2021/08/08(日) 11:10:51 oUdRGZLY0
『悪いな、お前の部屋を使っちまってよ』

階段を降りて来たエボルトへ、気にしなくて良いと返す。
ハチマキの男は屋根裏部屋のベッドに横たわっている。
本当ならばきちんと埋葬してあげるのが良いのだろうが、今はとりあえず外に放置するのを防いでおいた。
チラリと胴着の男を見ると、テーブル席で縮こまっている。
ルブランに来てからも彼が口を開く事は無く、ハチマキの男を屋根裏部屋に寝かせて良いかと聞いた時、力なく頷いた程度だった。

きっと自分が思うよりもずっと、深い悲しみを味わっているのだろう。
だが永久にこのままともいかない。

『さて…幾つか聞いておきたい事がある。辛いだろうが、このままだんまりを決め込まれちゃこっちも困るんでね』

珍しく真剣な雰囲気でエボルトが言う。
何故か未だに変身を解かず、赤い装甲を纏った…ブラッドスタークという名らしい姿のままだ。
少々気にはなったが今は胴着の男から話を聞く方が大事。
男の方も特に何も言って来ないのは、仲間が死んでしまった悲しみが大きく、こちらの容姿を気にする余裕が無いのだろう。

『まずは名前を聞かせちゃくれねぇか?それから、お前の持ってる鞄に紙みたいなのが入ってたら、それも見せてくれ』
「……オラは、野原しんのすけ。5歳、だゾ…」

驚くべき事に彼、しんのすけは幼稚園児くらいの子どもだった。
話し方からして肉体よりも幼い精神が入っているとは予想していたが、まさか一桁の年齢とは…。
こんな小さな子供まで巻き込むとは、ボンドルドは相当なろくでなしだ。
今まで改心させてきたパレスの主といい勝負、下手をすればそれ以上の悪党。

それからしんのすけがデイパックから取り出した紙、体のプロフィールにエボルトはざっと目を通した。
気になる内容でも記されていたのか、何かを思案する仕草を見せた。
自分も少し気になったが、それは後で教えてくれと頼めばいい。

名前を教えてくれたしんのすけは事の経緯を話してくれた。
幼い事も有り要領を得ない部分が幾つかあったものの、大体は分かった。

ボンドルドの放送が終わってすぐ、しんのすけはハチマキの男、煉獄という人に会った。
煉獄さんは自分も戦うと告げたしんのすけの言葉へ最初は渋っていたが、「悪者をやっつける仲間」と認め、行動を共にしていた。
その道中、巨大な虫を見つけ仲間に誘ったが、虫は大暴れして逃げようとした。
更にギザギザした頭の怪物――恐らくはチェンソーの怪物――まで現れ、煉獄さんが戦った。
だが煉獄さんは怪物に斬られ、その直後に自分達がやって来た。
大まかな内容はこうだった。

巨大な虫やチェンソーの怪物も気掛かりだが、確かな事は煉獄さんのお陰でしんのすけは今も生きている。
最後まで戦い抜いた煉獄さんへ、思わず尊敬の念を抱いた。
同時に、そんな人を助けられなかったと、またもや後悔の念が浮かび上がった。
と、しんのすけの話に何か考え込んでいる様子のエボルトが、またもや質問を口にした。

『なぁ、しんのすけ。煉獄はお前に「悪者をやっつける」、そう言ったんだよな?』
「…うん、そうだゾ」
『他に何か言わなかったか?その悪者が何の為に俺達をここへ連れて来たのか、とか』

質問にしんのすけは首を横に振る。
その返答に対しエボルトは再度考え込むような仕草を見せ、自分の方を向いた。
…彼の考えている事は自分にも分かった。
しんのすけは自分達が殺し合いに参加しているという事を、理解できていない可能性が高い。
無理もない、しんのすけは余りにも幼い。
大人でさえ動揺し我を忘れるかもしれないのに、まだ5歳のしんのすけが殺し合いの事を知ったら大パニックになるだろう。
いや、そもそも5歳児に殺し合いだと理解しろと言う方が難しい。
きっと煉獄さんもその辺りを考慮して、しんのすけに真実を告げようとはしなかったはず。
しんのすけの精神に余計な負担をかけさせない止めにも、「悪者をやっつける」、そのシンプルな言葉だけを伝えたに違いない。

だがその煉獄さんも命を落としてしまった。
人が死ぬのを間近で見たしんのすけを、これ以上誤魔化すのは正しいのだろうか。
それともいい加減本当の事を教えてやるべきなのか。
どちらにすべきかを、エボルトは無言で問うてくる。
エメラルドグリーンのバイザーを見つめ返し、自分の答えは、

→【殺し合いの事を教える】
【殺し合いの事を教えない】
【これは全て夢だと誤魔化す】

やはり本当の事を言った方が良い気がする。
しんのすけがパニックになるかもしれないが、だからと言って事態をきちんと把握できないままでいるのも危険過ぎる。
たとえ5歳の子どもであっても、今が本当に危ない状況だと伝えなければ、今度どんな目に遭うか分かったものじゃない。
エボルトへ頷き返すと、即座にしんのすけへ向き直った。


614 : エボルトのパーフェクトえいゆう教室 ◆ytUSxp038U :2021/08/08(日) 11:12:08 oUdRGZLY0
『しんのすけ、この際きっちり話しておくが、お前の言う悪者はバトルロワイアルってやつを開催して、俺達はその参加者に選ばれちまったんだよ』
「ハンドルロマンティック?」
『バトルロワイアルな。簡単に言うと、煉獄みたいに俺達に死んで欲しくて集めたってとこかね』
「え……」
『皆を殺さなきゃ家には帰れない。そういう悪趣味なゲームなのさ』

何を言っているのか分からない。しんのすけの表情はそう物語っている。
ただ何一つとして理解できていない訳では無いのだろう。
煉獄さんのように死ぬ、その言葉に顔が青褪めていた。

「で、でも煉獄のお兄さんは……そんなこと言ってなかったゾ…」
『お前を無駄に恐がらせない為だろ。悪気があった訳じゃねぇ』

煉獄さんは悪意を持って真実を語らなかったのではない。
ただしんのすけの心を案じていたから、それは知っておいて欲しかった。
だが知った所でしんのすけの顔は晴れず、俯いて震えだした。
…やはりまだ伝えるべきでは無かったのだろうか。
自分の軽率な判断を後悔しそうになった時、エボルトが驚くべき事を口にした。

『ま、丁度良かったのかもな』

エボルトの言葉に思わず首を傾げる。
一体全体何が良かったのか。
今の話でそんな言葉が出る部分など無かったはずだが。

『殺し合いに巻き込まれた時点で、ロクでもない目に遭うのは避けられない。
 となると、煉獄がどれだけ誤魔化したとしてもだ、遅かれ早かれ真実を知る時は必ず来るはず。
 だったら後々になって知るよりも、早めに気付いた方が受けるショックも少ないだろう。
 だから煉獄は実に良いタイミングで死んでくれたよ。時間が経ってから余計な説明をせずに済んだんだからなぁ』

……。
言いたいことは分かる。
どれだけ隠しても、いずれはこれが殺し合いだと知る時は来る。
その衝撃は後になる程大きくなる。
それは違うと言う気はない。
だけど、そんな言い方は無いだろう。
煉獄さんを失ったばかりのしんのすけへ言うには、余りにも無神経な言葉。
思わずエボルトへ反論しそうになったが、それより早く動く者がいた。

「ちっとも良くなんかないゾ!!」

しんのすけだ。
青褪めていた顔には憤怒の表情が浮かび、エボルトへ掴みかからんとばかりに迫っている。
きっとしんのすけは、煉獄さんの死を軽く見るようなエボルトの言葉に怒りを覚えたのだろう。

「煉獄のお兄さんが死んで、オラは全然嬉しくなんかない!!」
『だろうな。嬉しかったらあんなに泣いちゃあいないだろうしなぁ』

激怒するしんのすけへ、尚も軽い態度で接するエボルト。
やれやれとでも言いたげなその仕草は、しんのすけの怒りを余計に煽るだけではないのか。
分からない。わざわざ怒らせるような態度を取って何がしたいんだ?
エボルトの真意が読めず混乱する。

『で?どうするんだ?』
「えっ…?」
『煉獄が死んで悲しい。それで次はなんだ?俺に怒鳴ってお終いか?
 煉獄を殺したチェンソーの怪物や、お前らが倒したがってた“悪者”はどうするんだ?』

冷水を掛けられたようにしんのすけの動きが止まる。
投げかけられた言葉にどう返せばいいのか分からないのか、視線が泳ぎ、後ずさった。


615 : エボルトのパーフェクトえいゆう教室 ◆ytUSxp038U :2021/08/08(日) 11:12:57 oUdRGZLY0
『まさか、今更になって恐くなったってのか?テレビの中のヒーローみたいに、皆で悪者をやっつけてそれで終わりだとでも?
 だとしたら考えが甘すぎる。だから煉獄も最初はお前を戦わせたくなかったんだろうな』
「オ、オラは……」
『まぁ5歳児にはちょいと荷が重過ぎるからなぁ。それにボンドルドを倒したいと思ってるのはお前だけじゃない。
 後は全部こっちにぶん投げて、事が済むまで菓子でも食いながら引き籠ってるのもお前の自由だ』

エボルトの言葉はまるで蛇のように、しんのすけを締め付けている。
相手が反論もできない内に、続けて言葉を紡いだ。

『ただ覚えておけ。お前が戦いを辞めるのは勝手だ。けどそうなった場合、誰が煉獄の代わりに戦うと思う?』

しんのすけは答えない。
元より答えが返って来るのを期待してなかったのか、エボルトは構わずに言う。

『そんな都合の良い奴は誰もいない。煉獄が最後に後を託したのは俺でもこいつでもない。お前だよしんのすけ。
 あの状況で戦う力のあった俺達じゃなく、お前に託して死んだんだ。
 なのにお前が戦いから逃げたとなりゃ、煉獄は一体何の為に死んだんだろうなぁ?
 …あいつの死を無意味にしたくなかったら、お前が戦うしかないんだよ』

しんのすけの耳元に顔を近づけ、囁きかける。
その姿は余りに邪悪なものだった。
案の定と言うべきか、しんのすけは何も言わずに俯いている。
…もうこれ以上エボルトには任せておけない。
何故仲間を失ったばかりの子どもが、こんな風に追いつめられなくてはならないんだ。
しんのすけからエボルトを引き離そうと立ち上がり、

『何時まで迷っている?』

その言葉に動きを止めた。
何時の間にかエボルトは真剣な眼差しになっている。

『お前だって分かっているはずだ。煉獄が考え無しにお前を言葉を遺したんじゃないってな。
 あいつの事をほとんど知らない俺にだってそれくらいは察せるんだ。俺よりも長く煉獄といたお前が気付かない訳がない。
 お前の中じゃあ逃げるなんて選択肢は最初から無い。煉獄の言葉はお前の心に届いてるはずだ。
 だから煉獄の死を軽く見た俺の言葉に怒ったんじゃないのか!?』
「それは…」

さっきとは打って変わって、しんのすけに喝を入れるような事を言っている。
分からない。エボルトがしんのすけをどうしたいのか分からない。
心を弄びたいのか、立ち直らせたいのか。
前者なら許せない。けど後者ならば、自分も同じ想いだ。
だから、

→【しんのすけの力になる】
【しんのすけの力にはなれない】 
【面倒になってきたから寝よう】

しんのすけが煉獄さんの意思を継ぐというのなら、自分は全力で支える。
もし戦いを辞めたいと言っても責めはしない。
煉獄さんが守った命を散らさない為に、もうこれ以上誰かをしなせない為に、
しんのすけは必ず守る。
そうハッキリと伝えた。

「オ、オラは……オラは……」


○○○


616 : エボルトのパーフェクトえいゆう教室 ◆ytUSxp038U :2021/08/08(日) 11:14:02 oUdRGZLY0
野原しんのすけが人の死を間近で見たのはこれが初めてではない。

以前、戦国時代にタイムスリップした時、しんのすけは一人の侍に出会った。
鬼の如き強さを持つ一方で、女性への免疫が極端に低い。
敵への容赦の無さと、民草を思いやる気持ちを忘れない、武士の鑑のような男。
男は合戦の最中、偶然にもしんのすけのお陰で命を救われた。
それを切っ掛けに男としんのすけは、年齢も生きる時代も越えた友情を結んでいった。

だがその友情も長くは続かなかった。
敵国との戦にて、相手の総大将を殺さずに勝ちを収め、城に戻っている最中のことだった。
男は何者かに鉄砲で撃たれ、しんのすけの目の前で息絶えたのだ。
大粒の涙を流すしんのすけへ、短刀と、礼の言葉を遺して。

それと同じような事がバトルロワイアルでも起こった。
共に過ごした時間は短いものの、確かな友情を築き合った男との別れ。
煉獄杏寿郎もまた、しんのすけに言葉を遺しこの世を去った。

二人ともまだ生きていたかっただろう。
やりたかった事も、会いたい人もいたはずだ。
なのにどちらも、未練や後悔を口にはせず、笑みを浮かべて逝った。

しんのすけはおバカで、良くも悪くも周囲を振り回す、まさに“嵐を呼ぶ”少年。
だけど彼は決して人の心が分からないような人間ではない。
5歳という幼い年齢ながらも、心の底では理解しているのだ。
煉獄はどんな気持ちで「胸を張って生きろ」と伝えたのか。
あの、青空侍はどんな気持ちで短刀を託したのか。

彼らがしんのすけを信頼しているからだ。
自分がいなくなっても、しんのすけならきっと大丈夫だと信じているから、
己の死に絶望する事をせず、大きな勇気を持つ少年に看取られ眠りについた。
彼らがしんのすけを「おたすけ」したのと同じく、しんのすけもまた知らず知らずのうちに彼らを「おたすけ」していたのだ。

赤い鎧のおじさんは、厳しい言葉だけど、しんのすけを立ち直らせようとしてくれた。
帽子のお兄さんは、会って間もないしんのすけの力になると言ってくれた。
彼らにここまで言わせておいて、それでも逃げるのか?

「オラは…逃げたくないゾ……」

煉獄の死を乗り越えられた訳じゃない。
それに、自分やシロが死んでしまうのだって恐い。

「困ってる人をおたすけするのが、正義のヒーローだから…」

「オラも、煉獄のお兄さんみたいな、かっこいいヒーローになって、皆をおたすけしたいから…!」

だけど困っている人がいるのなら、
傷つけられて泣いてる人が今もどこかにいるのならば、おたすけするのがヒーロー。
煉獄が言った「胸を張って強く生きる」ことになるはずだから。

ス、と手を差し伸べられる。
しんのすけが顔を上げると、帽子のお兄さんが笑みを浮かべていた。
「今後ともよろしく」。告げられたのは、しんのすけを仲間と認める言葉。
しんのすけもまた笑みを浮かべ、手を握った。


○○○


617 : エボルトのパーフェクトえいゆう教室 ◆ytUSxp038U :2021/08/08(日) 11:15:42 oUdRGZLY0
単純な連中で助かった。

握手する少年達を視界に収め、エボルトは仮面の下で冷たく笑った。

最初にしんのすけが5歳と知った時は少しばかり悩んだ。
多分子どもだろうとは思っていたが、まさかここまで幼いとは予想してなかったのだから。
幾らサイヤ人という戦闘民族の肉体があったとしても、余計な子守に手を焼かされるのは勘弁して欲しい。
だからスマッシュに変えて、アーマージャック辺りに特攻させようかとも考えた。

だがしんのすけの様子を思い返し、捨て駒にする考えへ待ったをかける。
市街地での戦闘でしんのすけはチェンソーの怪物に襲われ、同行者の死を間近で見る羽目になった。
普通の5歳児であればもっとパニックになって泣き喚いたり、恐怖でこちらの話にも全く耳を貸さないものだろう。
しかし、しんのすけは泣いてはいたものの煉獄へ必死に声をかけ、自分達を警戒してはいたが会話にも応じた。
加えて悲劇が降り掛かった直後にも関わらず、しんのすけなりに事の経緯を説明してみせた。
それらの事から、しんのすけは一般的な幼稚園児に比べると子どもらしからぬ精神を持っていると感じられた。

そこから先は少々賭けになったが、しんのすけを立ち直らせる為に幾つか言葉をぶつけた。
少し前に戦兎がハザードトリガーを制御出来ず、人を殺めた事があった。
そのショックですっかり腑抜けになってしまったが、そのまま戦いを放棄されては計画にも支障がでるので、
「石動惣一」として戦意を取り戻させ事なきを得た。
今回しんのすけにやったのはそれの焼き直し。
始めに相手の怒りを引き出し、続いて頭を冷まさせ、最後に喝を入れる。
蓮が丁度良いアシストしたのも都合が良かった。エボルトの予想通りに。
安っぽい言葉を適当に並べただけで簡単に立ち直るのだから、実に呆気ない。

(後はどの程度戦えるかだな)

現状ではしんのすけは孫悟空の力をほとんど、若しくは全く引き出せていない可能性が高い。
もし悟空の力が使えるのなら、煉獄が死ぬような事態は防げていたはずだろう。
時間経過で体に慣れれば、一定の力を引き出せるのかもしれない。
だが一定以上の力は恐らく使えなくなる。
プロフィールの内容通りなら、悟空の力は一人の参加者が持つ物としては余りにも強過ぎる。
仮にしんのすけが悟空の力を100%使えるようになったら、バトルロワイアルはほぼ出来レースと化す。
そんな状況をボンドルドが望んでいるとは思えず、しんのすけがある程度の力を引き出せるようになれば、
その時点で打ち止めとなるよう制限が課せられているとエボルトは推測する。

(首輪を外せば、制限ってやつも解除される、か?)

首輪に参加者の力を抑制する機能が搭載されている、という可能性は十分あり得る。
反抗者が出ないよう牽制し、殺し合いに支障を来す能力も封じられる。一石二鳥だ。
だがもしも参加者が首輪の解除に成功すれば、それら二つが同時に失われる。
主催者にとっては非常によろしくない事態となる。
であれば、そんな万一のトラブルを防ぐ為に、首輪とは別の方法で能力の制限が行われている可能性も捨てきれない。
これについてはどちらが正しいかまだ断定できないが。

(仮に首輪が外れて制限が解かれたら、俺の場合はどうなる?)

まずブラッド族の能力がほぼ全て取り戻され、千雪の体を出て行く事も可能。
それにハザードレベルの調整も行えるのだから、仮面ライダーエボルへも変身出来る。
尤も肝心のエボルドライバーは葛城巧に破壊された上でどこかに隠されている為、手元には無い。
もし修復された状態で支給品にされていたとしても、変身するにはハザードレベル5.0以上が必要不可欠。
自分の知る限り、万丈ですらまだそこまで到達してはいない。
支給された所で宝の持ち腐れでしかないドライバーよりも、銃やナイフの方が他の参加者にとっては有難いだろう。
とはいえ、一応は支給されている、若しくは主催者の手に渡っている可能性も考慮しておくべきか。

現在エボルトの戦力は、ある程度使える元々の能力とブラッドスターク。
こちら側へ引き込んだペルソナ使いの蓮と、制限下にあるがサイヤ人の肉体を持つしんのすけ。
まぁ悪くはないと言える。


618 : エボルトのパーフェクトえいゆう教室 ◆ytUSxp038U :2021/08/08(日) 11:18:56 oUdRGZLY0
しんのすけは困っている人をおたすけしたいと言った。
ならその正義感と力は、自分の為に精々役立ってもらおうじゃないか。

(そうやって俺を「おたすけ」できるんだから、お前にとっても本望だろう?)

しんのすけの決意も何もかも全て、エボルトは利用できるかできないかの二択でしか見ていない。
感情を得ていない星狩りの男にとっては、ラブ&ピースなど何の価値も見いだせないのだから。

(さて、と、いい加減変身を解くか)

ブラッドスタークのままでいたのは単純に気分の問題だ。
千雪の姿よりは馴染み深い姿と声の方が、しんのすけを立ち直らせるのに丁度良いと思った。
ただそれだけの理由。
トランスチームガンを操作するとあっという間に変身が解除され、千雪の姿を晒す。
ゴタゴタしたが収穫はあった。
後は休んで疲労を抜いておくかと考えた瞬間、

「!?」
「なっ…」

いきなりしんのすけが至近距離へ迫った。
狭い室内で、エボルトが僅かに気を抜いたタイミングとはいえ、驚くべき速さだ。
一体全体何をする気かと、エボルトはトランスチームガンを構えかけ、蓮もしんのすけへ手を伸ばそうとする。
二人の緊張が高まる中、しんのすけは――


「おねえさ〜ん♥オラにお名前おしえておしえて〜ん♪」

鼻の下を伸ばしてナンパしていた。

予想外にも程があるしんのすけの行動に、蓮は思わずズッコケた。
だが男だと思っていた赤い鎧の中身が、実は美人な女性だった。
これはしんのすけにとって見逃せない。
野原家の男特有の女好きは、バトルロワイアルにおいても健在だった。

大柄で筋肉質な男が腰をくねらせ、いやらしい笑みで女性に迫る。
他人が見たら通報されるのは確実。
一方体は大人で中身は子どもな相手に言い寄られている当のエボルトは、思いもよらぬ相手の行動へ、

「……はぁ?」

そんな間の抜けた声を出すしかなかった。


619 : エボルトのパーフェクトえいゆう教室 ◆ytUSxp038U :2021/08/08(日) 11:19:31 oUdRGZLY0
【D-6 純喫茶ルブラン/早朝】

【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[身体]:孫悟空@ドラゴンボール
[状態]:体力消耗(中)、貧血気味、右手に腫れ、悲しみと決意
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、水水肉@ONE PIECE、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本行動方針:悪者をやっつける
0:おねえさ〜ん♥
1:逃げずに戦う
2:困っている人がいたらおたすけしたい
3:シロを探す
[備考]
※殺し合いについてある程度理解しました。
※身体に慣れていないため力は普通の一般人ぐらいしか出せません、慣れれば技が出せるかもです(もし出せるとしたら威力は物を破壊できるぐらい、そして消耗が激しいです)
※自分が孫悟空の身体に慣れてきていることにまだ気づいていません。コンクリートを破壊できる程度には慣れました。が、その分痛みも跳ね返るようです。
※名簿を確認しました。

【エボルト@仮面ライダービルド】
[身体]:桑山千雪@アイドルマスター シャイニーカラーズ
[状態]:ダメージ(小)、疲労(大)
[装備]:トランスチームガン@仮面ライダービルド、コブラロストフルボトル@仮面ライダービルド
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1、累の母の首輪
[思考・状況]
基本方針:主催者の持つ力を奪い、完全復活を果たす
0:何だこいつ…
1:蓮としんのすけを戦力として利用。
2:首輪を外す為に戦兎を探す。会えたら首輪を渡してやる
3:有益な情報を持つ参加者と接触する。戦力になる者は引き入れたい
4:自身の状態に疑問
5:アーマージャックを警戒。できればどこかで野垂れ死んで欲しい
6:出来れば煉獄の首輪も欲しい。どうしようかねぇ
7:ほとんど期待はしていないが、エボルドライバーがあったら取り戻す
8:今の所殺し合いに乗る気は無いが、他に手段が無いなら優勝狙いに切り替える
[備考]
※参戦時期は33話以前のどこか。
※他者の顔を変える、エネルギー波の放射などの能力は使えますが、他者への憑依は不可能となっています。
またブラッドスタークに変身できるだけのハザードレベルはありますが、エボルドライバーを使っての変身はできません。
※自身の状態を、精神だけを千雪の身体に移されたのではなく、千雪の身体にブラッド族の能力で憑依させられたまま固定されていると考えています。
また理由については主催者のミスか、何か目的があってのものと推測しています。
エボルトの考えが正しいか否かは後続の書き手にお任せします。
※ブラッドスタークに変身時は変声機能(若しくは自前の能力)により声を変えるかもしれません。(CV芝崎典子→CV金尾哲夫)
※参加者がそれぞれ並行世界から参加していると気付きました。

【雨宮蓮@ペルソナ5】
[身体]:左翔太郎@仮面ライダーW
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、SP消費(小)、無力感と決意
[装備]:煙幕@ペルソナ5
[道具]:基本支給品×2、T2ジョーカーメモリ@仮面ライダーW、無限刃@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-、ランダム支給品0〜4(煉獄の分を含む)、
[思考・状況]基本方針:主催を打倒し、この催しを終わらせる。
1:まずは仲間を集めたい。
2:とりあえずエボルトと行動。信用して良いのか…?
3:しんのすけの力になってやりたい。
4:元の体の持ち主に対して少し申し訳なさを感じている。元の体に戻れたら無茶をした事を謝りたい。
5:アーマージャックは必ず止める。逃げた怪物(絵美里)も警戒。
[備考]
参戦時期については少なくとも心の怪盗団を結成し、既に何人か改心させた後です。フタバパレスまでは攻略済み。
支給品は確認済みで、少なくとも武器や銃火器は入っていません。
スキルカード@ペルソナ5を使用した事で、アルセーヌがラクンダを習得しました。
参加者がそれぞれ並行世界から参加していると気付きました。


620 : ◆ytUSxp038U :2021/08/08(日) 11:20:20 oUdRGZLY0
投下終了です


621 : ◆NIKUcB1AGw :2021/08/08(日) 23:31:12 a7Jiv3fw0
投下乙です!
エボルトは安定の悪辣振りだけど、しんのすけにとってプラスになってるのは間違いないのでなんとも複雑……
そして千雪の姿を見たら、そりゃしんのすけはそうなるわなw

では、自分も投下させていただきます


622 : 時事ネタを後から読むときは思い出話に付き合うつもりで ◆NIKUcB1AGw :2021/08/08(日) 23:32:57 a7Jiv3fw0
前回までのあらすじ

他人の体に意識を移し、殺し合いを行わせるというおぞましい企画に参加させられてしまった銀時。
彼に与えられた体は、「人類史上最高の召喚魔術師」と言われるソロモン王のものであった。
その体を用い、人理焼却を始める銀時。
しかしその前に、七つの特異点を乗り越えた人類最後のマスターが立ちはだかり……。


623 : 時事ネタを後から読むときは思い出話に付き合うつもりで ◆NIKUcB1AGw :2021/08/08(日) 23:33:40 a7Jiv3fw0


「立ちはだからねーよ!!」


ここは会場南東の市街地。
移動中突如としてでたらめなあらすじを語り始めた銀時に対する、新八のツッコミが上記の叫びである。

「なんなんですか、その与太話は!
 合ってるの、冒頭だけじゃないですか!」
「なんかこう、映画館の方からビビッと電波が来たんだよ。
 いや、我ながらいい出来だと思うよ?
 沖田も絶賛だね、これは!」
「沖田さん関係ないでしょ! なんであの人の名前が出てくるんですか!」

ひとしきりツッコミを入れた後、新八はため息を一つ挟んで話を仕切り直す。

「それで銀さん、僕らはどこに向かってるんです?」
「別にどこにも。適当に歩いてるだけだ」
「適当!? 適当だったの!? 一切の迷いなく歩き出すもんだから、てっきり明確な目的地があるものだと思ってましたよ!?」
「馬鹿野郎、おまえ、神楽を探すにしたってなんの情報もないんだぞ。
 参加者のスタート地点に法則性があるのかどうかもわからねえし、他の参加者の位置を知る手段もねえ。
 適当でもなんでも、歩き回って情報を集めるしかねえだろ」
「一理ありますけど……。だからって何の根拠もなしに歩き回るのはさすがに……」
「困ったとき、最後に頼れるのはおのれの直感だ。
 悲鳴嶼さんもそう言っていた」
「悲鳴嶼さんはもういいんだよ!
 あんまり存在しない記憶乱発すると、虎杖くんに怒られるぞ!」
「誰だよ、虎杖くん!」
「知らねえよ! なんか頭に浮かんだんだよ!」

そんな会話を続けること、数十分。

「しかし、誰とも会いませんねえ」
「会場が広いんじゃねえの?
 今の時代、地図なんてほとんど見ねえからなあ。縮尺がよくわかんねえよ」
「それは時代と言うより、銀さん個人の問題じゃ……」

会話が、ふと途切れる。
きっかけは、小さな音だった。
二人が通りがかった酒屋の前に置かれたケースが、地面に落ちた音だ。
風はない。二人が触ったわけでもない。
ならば、第三者の行動の結果である可能性が高い。
だが銀時達が視線を向けても、そこには誰の姿もなかった。

「え……? ひょっとして、幽霊?」
「いや、この状況で幽霊怖がらないでくださいよ。
 警戒するべきは、他の参加者のアクションって可能性でしょ。
 たとえば、誰かが見えない攻撃を飛ばしてきたとか……」

新八がそう呟いた瞬間、残っていたケースがまとめて崩れ落ちた。
それと同時に、ケースの横で空間に何かが浮かび上がる。

「ち、違うんだ!
 ただ様子を見てただけで、攻撃するつもりは……」

やがてそれは、扇情的な服を着たナイスバディーの美女となった。

「新八、おまえまさか……。
 童貞力を極めて、二次元から女の子を召喚する能力を……」
「そんな能力覚醒してねーよ!!」


624 : 時事ネタを後から読むときは思い出話に付き合うつもりで ◆NIKUcB1AGw :2021/08/08(日) 23:35:06 a7Jiv3fw0


◆ ◆ ◆


「はじめまして! 僕、ホイミン!
 この体は悪いスライムみたいだけど、僕は悪いスライムじゃないよ!」

数分後。
とりあえずお互い敵意がないことを確認したホイミンと銀時+1は、自己紹介を行っていた。

「僕ってことは、元は男か? いや、僕っ子って可能性もあるが」
「あんまり性別気にしたことないけど……。いちおうオスになるのかな」
「マジか……。TSスライム娘とは、矢吹先生も恐ろしいキャラを生み出したもんだぜ……」
「いや、矢吹先生関係ないから! それだと矢吹先生が黒幕みたいになっちゃうじゃないですか!」
「やぶき?」
「ああ、ごめん。気にしないで」

会話が理解できずに首をかしげるホイミンを、新八がフォローする。
なおスライムという点をスルーしているのは、銀時達がホイミンやその肉体をそういう天人だと思い込んでいるためである。

「しかし、ホイミン……。ホイミンなあ。
 どっかで聞いたことあるような気がするんだよなあ」
「そうなの? でも僕、人間の知り合いはライアン様しかいないけど……」
「ドラ……いや、たまクエスト……? うう、頭が……」
「ちょっと大丈夫ですか、銀さん。
 さっきからおかしい……っていうか、僕も変なことばっかり言っちゃうし、記憶に障害でも発生してるんですかね」
「ありえねえ話じゃねえな……。何せ、他人の体に魂ぶち込まれてるんだからよ。
 そういや、土方の野郎と体が入れ替わったこともあったなあ……」
「あの……。よくわからないけど、大丈夫?」

またしても会話についていけず、ホイミンは困惑する。

「ああ、ごめんごめん。
 それで、ホイミンくんはまだ他の参加者には会ってなかったの?」

何気なく質問を投げかけた新八であったが、その瞬間ホイミンの顔が青ざめる。

「それが……」

ホイミンは、これまでの出来事を説明する。
殺し合いが始まって早々、魔物の王であるピサロに遭遇したこと。
恐怖に駆られ隠れたところ、そこに筋骨隆々の凶暴そうな男が現れピサロと戦いはじめたこと。

「で、しばらくは二人が怖くて隠れたままでいたんだけど……。
 アイテムの中にこれがあったのを思い出したんだ」

そう言って、ホイミンは額に輝く星のマークを指さす。

「あ、それ支給品だったんだ。てっきりそういう紋様とかなのかと……」
「俺はてっきり鼻くそかと」
「あんな綺麗な星形を描く鼻くそがあってたまるか!」
「アンチバリア発生装置、っていうんだって。
 これを使ってる間は、姿が他の人に見えなくなるんだ。
 それを利用して逃げ出したってわけ」
「なるほど、それでさっき姿が見えなかったのか」
「そうそう。使える時間には制限があるらしいから、節約した方がいいんだろうけど……。
 初っぱなからすごい人たちに遭遇しちゃったから、怖くてさあ……」
「あー、それなんだけどよ」

突如、今までとは明らかに異なる真剣な口調で語りはじめる銀時。
それにただならぬものを感じたホイミンと新八は、口を閉じて彼に注目する。

「おまえの言ってること、ちょっとおかしくねえか?」
「え? ど、どこが?」
「ここにいる連中は、みんな体を別人のものに交換されてるはずだぜ?
 おまえが見かけたっていう、えーと、ピガロだっけ?」
「銀さん、ピサロです」
「そうそう、そのピサロだけ中身がそのまんまってことはねえだろう」
「あーっ! そうか!」

銀時に指摘されたことで、ホイミンはようやく自分の思い違いに気づく。

「そういえば、名簿にはピサロ様の名前はなかった……。
 あったら見逃すはずがないよね……」
「決まりだな。そいつはピサロの体に押し込められた別人だ」
「でも、それはそれで厄介じゃないですか?」

ここで、新八が話に口を挟む。

「ホイミンくんは、そのピサロの体に入った誰かの迫力におびえて隠れてたわけでしょう?
 つまり、中身もそうとうヤバい人ってことになりません?」
「まあ、そうなるわな」
「そんな危険な存在を放置してていいんですか?」
「おいおい、新八くん。何が言いたいのよ」
「ここまで言えばわかるでしょ。その危険人物を討伐すべきじゃないかってことです」


625 : 時事ネタを後から読むときは思い出話に付き合うつもりで ◆NIKUcB1AGw :2021/08/08(日) 23:36:07 a7Jiv3fw0

真剣な顔で言い放つ新八に対し、銀時は一つため息を漏らす。

「ほっときゃいいじゃねえか。
 ピサロの中に入ってるのも、相手の筋肉モリモリマッチョマンの変態も危険人物なんだろ?
 勝手に潰し合わせておけよ」
「でも、勝ち残った方がその後殺し合いに乗ってない人を襲う可能性は高いでしょう。
 放置するには、リスクが高すぎます」
「まあ、正論だがな……」

新八と会話しながら、銀時はホイミンに視線を向ける。
彼は、顔を青ざめさせてブルブルと震えていた。
先ほど体験した恐怖から、まだ立ち直れていないのだろう。
彼を連れて恐怖の原因のところまで引き返すというのは、酷な話だ。

「わかったわかった。じゃあ俺が一人で様子見てくる。
 おまえらはこの辺で、適当に時間潰してろ」
「え? なんで銀さん一人でってことになるんですか?」
「ホイミンは戦えるような精神状態じゃなさそうだし、おまえの体も仮面何たらに変身できないんじゃ戦闘力ほぼゼロだろ。
 一緒に行ったって危険なだけだ」
「それはそうですけど……」
「その点、俺の体は両さんだぜ?
 地球滅亡規模の天変地異でも起きねえかぎり、死ぬことはねえよ」
「す、すごい説得力だ……」

汗を浮かべながら、真顔で呟く新八。
一方ホイミンは、意味がわからずただ戸惑うばかりである。

「つうわけでよ、具体的な場所教えてくれや、ホイミン」
「えーと……地図でいうとこの辺かな、たぶん」
「ずいぶんと曖昧だな、おい」
「しょうがないじゃない! あの場から逃げるのに必死で、方角とか気にしてなかったんだもん!」
「わかったよ。そんじゃちょっくら、行ってきますか」

軽い口調で言いながら、銀時は軽くストレッチして体をほぐす。

「そんじゃ、なるべく早く戻ってくるぜ。
 まああまりに俺の帰りが遅いときは……俺のことは気にせず、移動してくれ」
「ちょ、銀さん!? 別れ際に死亡フラグ立てないでくださいよ!」

新八の声を背に浴びながら、銀時はロケットのごとき勢いで走り出した。

「うーん、人間とは思えない加速……。さすがは両さんの体……」
「なんか、つい流されちゃったけど……。本当に一人で行かせてよかったのかな」
「まあ、大丈夫だと思うよ。体も中身も、強さは折り紙付きだから」

心配そうなホイミンに、新八は穏やかな口調で答える。

「それじゃ、どこか建物の中にでも入ってようか。
 路上でずっと立ってるのも何だし」
「そうだね。それにしても、ここは変わった建物ばっかりだねえ」
「ホイミンくんの星では、こういう建物はなかったの?」
「星?」

会話を続けながら、残された二人も夜の街を歩き始めた。


626 : 時事ネタを後から読むときは思い出話に付き合うつもりで ◆NIKUcB1AGw :2021/08/08(日) 23:37:30 a7Jiv3fw0
【G-7 市街地/黎明】

【坂田銀時@銀魂】
[身体]:両津勘吉@こちら葛飾区亀有公園前派出所
[状態]:健康
[装備]:朱雀@クロノトリガー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:元の体を取り返す
1:主催者を倒す。殺し合いには乗らない
2:公園で戦っているという二人の様子を見に行く
3:神楽を探す
【備考】
※メタ知識が制限されています。参戦作品(精神・身体両方)に関しては、現状では「何となく名前に見覚えがある気がする」程度しか分かりません。
こち亀に関してはある程度覚えているようです。


【志村新八@銀魂】
[身体]:フィリップ@仮面ライダーW
[状態]:健康
[装備]:フーの薄刃刀@鋼の錬金術師
[道具]:基本支給品、ダブルドライバー@仮面ライダーW、T2サイクロンメモリ@仮面ライダーW、新八のメガネ@銀魂
[思考・状況]基本方針:主催者を倒す
1:銀さんの帰りを待つ
2:神楽ちゃんを探す
3:左翔太郎さんの体も誰か入ってるのか気になる
※メタ知識が制限されています。参戦作品(精神・身体両方)に関しては、現状では「何となく名前に見覚えがある気がする」程度しか分かりません。
こち亀に関してはある程度覚えているようです。
※地球の本棚は現状では使えないようです。今後使えるか、制限が掛けられているかは後続の書き手にお任せします。


【ホイミン@ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち】
[身体]:ソリュシャン・イプシロン@オーバーロード
[状態]:健康
[装備]:アンチバリア発生装置@ケロロ軍曹
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:人間にはなりたいが、そのために誰かを襲うつもりはない。
1:ライアンさんのように、人を守るために戦う。
2:銀さんの帰りを待つ
[備考]
参戦時期はライアンの旅に同行した後〜人間に生まれ変わる前。
制限により、『ホイミ』などの回復魔法の効果が下がっています。
プロフィールから、『ソリュシャン・イプシロン』と彼女の持つ能力、異世界の魔法に関する知識を得ました。


【アンチバリア発生装置@ケロロ軍曹】
他者から自分の姿を認識できなくする装置。
ホイミンには、ケロロ軍曹の階級章と一体化したものが支給されている。
体、もしくは衣服のどこかに貼り付けることで使用が可能。
回転させることでスイッチのオン・オフを切り替える。
制限として、合計で4時間以上使用するとバッテリー切れで使用不能となる。
また本来は特定の相手にだけ見えるように設定することもできるが、そういった細かい調整もできなくなっている。
あくまで視覚をごまかすだけなので、それ以外の感覚で見つけられてしまう可能性はある。
また、好奇心の強い人間には無効化されてしまう。


627 : ◆NIKUcB1AGw :2021/08/08(日) 23:38:39 a7Jiv3fw0
投下終了です


628 : ◆ytUSxp038U :2021/08/09(月) 00:24:53 NAugsDW.0
投下乙です
開始早々中の人ネタをぶち込む銀さんで草。
前話書いた自分が言うのも何だけど、ここだけ完全にいつもの銀魂で妙な安心感がありますね
ただ強マーダー同士の戦闘を様子見する気の銀さん、無事に生きて帰って来て欲しいけどどうなるのか…

姉畑支遁を予約します


629 : ◆ytUSxp038U :2021/08/10(火) 15:02:33 /axukVnk0
投下します


630 : どこへ行くの姉畑先生 ◆ytUSxp038U :2021/08/10(火) 15:04:00 /axukVnk0
「あああああああああああああっ!!醜い!醜いィイイイイイイイイイイイイイッ!!!」

嫌悪感に突き動かされるまま、何度もドリルクラッシャーを振り下ろす。
高速回転する刀身が肉を斬り裂き、激痛を訴えるような鳴き声が耳に入るも無視。
一刻も早く己の犯した罪の証を消し去らなければという強迫観念は、彼自身にも止められない。
やがて、体中を貫かれた相手はピクリとも動かなくなった。
スマッシュと呼ばれる怪人にもダメージを与えられる武器で痛めつけられたのだ、
一般的な生物が耐えられるはずがない。

「はぁ、はぁ、はぁ………あっ!?またやってしまった…」

正気に戻り、自身の悪癖がまたも起きてしまったと落ち込む。
だが今更後悔した所で、失われた命が戻ってくることは無い。

目の前に横たわる一頭の馬は間違いなく死んでいた。

少し前、姉畑はピカチュウとトビウオのどちらを追うかで悩んでいた。
既にどちらにも逃げられてしまったが、だからと言って簡単に諦められるはずも無い。
今すぐにでも彼らと交わりたいが、片や超人的な身体能力の少女に連れて行かれ、もう片方もかなりの速さで飛び去った。
自分の二本足だけで追跡するのは少々厳しい。
と、姉畑は自分がまだピカチュウ(善意)が落としたデイパックの中身を確認していない事に気付いた。
銃弾を防ぐ指輪や、傷を一瞬で治す液体があるくらいだ。
追跡に役立つ支給品があるかもしれないと、期待を膨らませデイパックの口を開いた。

「おお、これは…!」

出て来たものに目を輝かせる姉畑。
彼の目の前には一頭の馬がいた。
鋼のように鍛え上げられた肉体を持つその馬は、どこかふてぶてしさを感じさせる表情で姉畑を見下ろしていた。
全速力の馬は人間とは比べ物にならない。立派な移動手段として役に立ってくれるだろう。
但しそれは他の参加者に限っての話だ。
変態動物愛好家の姉畑にとっては移動手段なんぞより、「交わる」為に現れてくれたという感激の方が圧倒的に大きい。
どうやらポケモンでは無いようだが、大好きな動物である事に違いは無い。
一度は沈静化した巨砲が再び臨戦態勢に入る。

明かな危険人物を前に、馬も大人しくはしていられない。
何とこの馬、人間のように二本足で立ち上がったかと思えば、前足をボクサーのように振るい姉畑を近づけさせまいとする。
物理耐性が無い天使の身体に蹄が直撃すれば、大怪我になる事間違いなし。
だがこの程度で諦めるような姉畑ではない。

「…仕方ありません。出来れば傷つけずに愛を確かめ合いたかったのですが…」

悲しみを携えながらドリルクラッシャーをガンモードへ変形させる。
近付くのが困難なら、距離を取って動きを止めれば良いだけ。
銃口から発射された光弾が四肢を貫き、馬は悲鳴と共に崩れ落ちた。
間違っても足を吹き飛ばさないように威力を調整し、グリップに搭載されたアシスト機能により正確な射撃が可能となったが故の結果だ。
姉畑の生きた明治時代には有り得ない性能の武器だが、本人は動物の動きを止めるのに使えるのならそれで良いと、深くは考えていない。

「さぁ今度こそ、私と愛し合いましょう!」

その後の展開は最早言うまでもない。
熱っぽく見つめる先には、姉畑の愛を今か今かと待ちわび(ように姉畑には見えた)ひくつく馬の菊門。
受け入れる準備が万端ならば迷う必要は無しと、己の分身を突き入れた。
その勢いたるやかの戦国武将、森長可が敵兵へ十文字槍を突き刺すが如き勢いであった。
腸内へ異物が侵入してきた痛みと不快感に馬は叫ぶ。
足が全て使い物にならなくなっても、胴体を幾度も跳ね上げ抵抗する。
しかしそれでも姉畑を止めるには至らない。
負けじと腰の動きを速め、暴れ馬を愛の力を以て鎮めんとする様は、ブケパロスを乗りこなそうとするアレクサンドロス大王の勇姿を髣髴とさせるものではないか。


631 : どこへ行くの姉畑先生 ◆ytUSxp038U :2021/08/10(火) 15:05:15 /axukVnk0
「あおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

やがて絶頂に達した姉畑は、一体どちらが獣なのか分からない咆哮を上げる。
馬の腸内を満たす粘っこい白濁液。
竿と玉の大きさに比例し凄まじい量だった。
人間の男に凌辱の限りを尽くされた馬はショックですすり泣いた。ちなみに性別は男である。
馬の不運はまだ続いた。
射精の余韻を暫し味わった後に、ふと我に返った姉畑の心を占めるのは果てしない嫌悪感。
自身の罪の証を消し去らねばとドリルクラッシャーを振り下ろした。

「さて…これからどうしましょうか」

馬への罪悪感はあるものの、何時までも引き摺った所でどうにもならない。
それよりピカチュウ達をどうするかが大事だ。
先程は直ぐに追いかけようとしていたが、本当にそれで良いのかという疑問が浮かぶ。
短時間に二度も射精したのが、冷静さを取り戻した原因かどうかは神のみぞ知る。

ピカチュウの所に行けば何故か姉畑を知っていた少女がいるだろうし、
トビウオの所に行けば額に痣がある少年がいる。
思い返せば二人ともかなり戦い慣れているようだった。
一方の姉畑は行動力に満ち溢れているが、戦闘が得意という訳ではない。
主催者に与えられたクリムヴェールの肉体とて、精力は中々だが戦闘に関しては素人。
そういった荒事はレビュアー仲間のスタンク達に任せていたのだから、当然と言える。

もしピカチュウやトビウオに追いついたとしても、少女や少年に妨害されるのは間違いない。
強力な耐性があるクリムの身体でも、素手や鈍器で殴られたり、刃物で斬られたら人間と同じく死に至る。
そんな目に遭うのは御免だ。

一応姉畑も武器は持っているが、果たして戦い慣れた彼らにどこまで通用するのか。
それに姉畑の目的はあくまで動物と交わる事であり、誰彼構わず殺して回る事では無い。
流石に向こうから襲って来たなら反撃はするが、自分から人を殺そうなどとは思わなかった。

ふと視線を移せば、燃え盛る森が目に入る。
動物たちの住処がこうして失われるのはとても心が痛い。
クリムの身体ならば炎の中でも平気だが、火災のせいで倒れた木の下敷きとなってしまえば助からない。
なるべく早めに移動しなければならないだろう。

「ううむ、私は一体どこへ向かうべきか…」

自分の行き先を決められず悩む姉畑。
例えどこに行こうとも、彼の存在が新たな騒動を引き起こすのは確実だろう。

【F-3 森と道路の境目/早朝】

【姉畑支遁@ゴールデンカムイ】
[身体]:クリムヴェール@異種族レビュアーズ
[状態]:疲労(中)、未知の動物の存在への興奮、二発射精したがまだ余裕
[装備]:ドリルクラッシャー@仮面ライダービルド、逸れる指輪(ディフレクション・リング)@オーバーロード
[道具]:基本支給品×2(我妻善逸の分を含む)、青いポーション×2@オーバーロード、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:色んな生き物と交わってみたい
1:どこへ向かいましょうか?
2:ピカチュウや巨大なトビウオと交わりたい。他の生き物も探してみる。
3:喋るカエルは次に出会ったら…
4:何故あの少女は私の事を知っていたのでしょう?
5:人殺しはやりたくないんですが…
[備考]
網走監獄を脱獄後、谷垣源次郎一行と出会うよりも前から参戦です。
ピカチュウのプロフィールを確認しました。

※ダイアン@こちら葛飾区亀有公園前派出所(善逸の支給品)は死亡しました。
※G2〜G4までの森で火災が起き続けています。
※F3〜4の森にも燃え広がる可能性があります。

【ダイアン@こちら葛飾区亀有公園前派出所】
コミックス56巻、『わがままダイアン号の巻』に登場。両津勘吉が名馬オークションで競り落としたイギリスの競走馬。
実力は確かだがわがままに育てられたせいで、前の飼い主に手放された。
高級ホテルでの滞在やカルビとロースの要求、事あるごとに暴力を振るうなどのやりたい放題に加え、
レース出場時にギャラを要求する厚かましさに激怒した両津に投げ飛ばされ怪我を負う。
走れなくなったダイアンに代わり、急遽中川に作らされたダイアンそっくりのロボットをレースに出すが、最終的にはインチキがバレてしまい競馬界を追放された。
その後は生活費の為に両津に芸を覚えさせられる場面でこの回は幕を閉じる。


632 : ◆ytUSxp038U :2021/08/10(火) 15:06:14 /axukVnk0
投下終了です


633 : ◆5IjCIYVjCc :2021/08/10(火) 23:01:05 8Sq21qPU0
予約を延長します。


634 : ◆P1sRRS5sNs :2021/08/14(土) 00:10:34 aKoXeWNo0
予約を延長します。


635 : ◆5IjCIYVjCc :2021/08/16(月) 22:27:16 aC2TAZ820
予約分を投下します。


636 : 吉良吉影はシンデレラに憧れる ◆5IjCIYVjCc :2021/08/16(月) 22:29:31 aC2TAZ820
この殺し合いにおける共通の支給品である身体のプロフィールには、様々な情報が記されている。
彼(もしくは彼女)がどこで生まれ、どんな人生を歩んできたのかについて簡単に書かれている。
その身体の持ち主に何らかの能力を有している場合、その能力の使い方などについても記載されていることもある。
(ただし、これらの情報は稀に、一部隠されていることもあるようだ)

そして、これらのプロフィールには、その身体の元となる人物に関係のある人物の名が書かれていることがある。
例えば、彼ら彼女らをこの世に生み出した親の名前、親しくしている者の名前、逆に酷く関係の悪かった者の名前、その他色々…
とにもかくにも、プロフィールの人物の人生に対して、何かしらの影響のある者の名が、『経歴』の欄に必要なものとして書かれている事例は少なくないことだ。

現時点においても、参加者であるゲンガーが持つ鶴見川レンタロウのプロフィールには、彼の知り合いであり同じく参加者である柊ナナと犬飼ミチルの名が記されていることが判明している。
しかもそのプロフィールには名前だけでなく、彼が彼女らとどのような関係にあったのかについても記されていたらしい。


そして今、この場にいる吉良吉影が持つ二宮飛鳥という少女のプロフィールにも、彼女と何かしらの関係がある者の名前が記されていた。
例えば、アイドルのユニットを組んだことがある者として「神崎蘭子」や「一ノ瀬志希」等々、他にも様々な彼女と関わりのある者たちの名前がいくつか記されている。
そこにあった名前は、二宮飛鳥のアイドルとしての仕事仲間についてのものがほとんどであった。
とは言え、そんなアイドルたちについての情報は名前や関係がどれほど良好かといったもの等だけであり、彼女らがこの殺し合いの参加者となってないため、これらは吉良にとって役に立つ情報とは言えない。

彼女たちがどのような人物ということについては、いずれ杜王町での静かな暮らしに戻る予定の吉良には関係ない。
せいぜい、アイドルであるため、今の吉良と同じく美しい手と顔を持っているだろうという点にしか彼は彼女らに対して興味はわかない。

だが、例え情報は少ししか無くとも、プロフィールに本人以外の名前が記載されることがあるという事実は、やはり吉良吉影にとってかなりまずいことになる。

かつて吉良を追跡していた空条承太郎や東方仗助、広瀬康一といったスタンド使い達…
実際に関わっていたのはほんの1か月程度のことと言えど、その期間の間に彼らは吉良を追い詰めた。
中でも、東方仗助は吉良のキラークイーンとは全くの正反対な能力を持つ、いわば彼の天敵と言ってもいいほどの存在だ。
このひと夏の出来事は、吉良にとっても、そして彼と追跡劇を演じてきた関係者達にとっても、けっしてこれが軽い出来事とは言えない。
彼らの人生を物語として語り継ぐとするならば、吉良吉影との戦いの記録は外せないものとなるだろう。

よって、仗助のプロフィールにはどこかに「吉良吉影」の名前が記されていても不思議なことではない。
だからこそ、吉良はここで倒れた仗助の身体の参加者からプロフィールを抜き取り、その内容を確認していた。

そして、彼の不安はものの見事に的中していた。

(くっ、やはりあったか……)

仗助のプロフィールにおいて「吉良吉影」の名前が現れている部分は存在していたのだ。
例えば、靴のムカデ屋での出来事のこと。
東方仗助はここで初めて吉良吉影の顔と名前を知った。
例えば、バイツァ・ダストを解除された後に起きた、吉良吉影と東方仗助の最後の戦いのこと。
この戦いの中で、仗助は満身創痍になりながらも吉良を追い詰めてきた。
そして、プロフィールにおける東方仗助の経歴は、この吉良との最後の戦いについての記載が最後のものとなっていた。


プロフィールにはそこまで事細かに情報が記されているわけではない。
しかし、この仗助のプロフィールでは「吉良吉影」のことを「殺人鬼」、もしくは「悪のスタンド使い」と称している。
これを読んだ人間はきっと、「吉良吉影」という名の人物をどこにでもいる普通のサラリーマンだとは思ってくれないだろう。
プロフィールの内容について唯一吉良にとって幸いだったと言えることは、このプロフィールにはキラークイーンの能力についての情報が全く無かったことだけだろう。


637 : 吉良吉影はシンデレラに憧れる ◆5IjCIYVjCc :2021/08/16(月) 22:30:35 aC2TAZ820
とにかく、仗助のプロフィールはやはり彼の目的の障害になるものであることを吉良は確認できた。
吉良は急ぎつつ、なおかつ慎重に、アドバーグに気づかれないよう仗助のプロフィールを自分のデイパックの中へと移す。
プロフィールの情報については、あとは紙をキラークイーンの第一の爆弾で処理し、そしてこれを見た可能性がある仗助の身体の参加者を始末すれば問題は解決したと言っていいだろう。

◆◇◆

「キラ殿、そちらの方はどうでしたかな?」

しばらくして、アドバーグは吉良の後ろから話しかけてきた。
どうやら彼も支給品の確認を終えたようであった。
幸いにも、吉良が東方仗助のプロフィール書類を隠したことについては気づいていないようであった。
吉良自身もプロフィールを移した後はもう一度デイパックの中に手を入れ、何かを探るような動作をしていたため、誤魔化すことはできただろう。
アドバーグは今、吉良の行動に関しては、デイパックの中で目的の支給品を探していたものであると思い込んでいるだろう。

「ああ…残念ながら彼の持ち物には救急箱は無く、他に治療に使えそうな道具も見つからなかった」

当然、吉良はこのように答える。
実際には、そんな物は全く探していなかったのにも関わらず。

「そうでしたか…私の方もそういったものは見つかりませんでしたぞ。せめて薬草でもあればと思いましたが…」

そう答えるアドバーグには吉良の思惑に感づく様子は見られない。

「その代わり、このようなものが見つかりましたぞ。」

「……ふむ、これは何でしょうか?」

吉良が次の言葉を紡ごうとする前に、アドバーグは先に一つの支給品を見せてきた。


その支給品は、端的に言えば鏡であった。
その鏡は円形であり、鏡を囲む枠には内側の金の部分に謎の文字が刻まれていたり、外側の緑の部分には青い宝玉が装飾として取り付けられている。
吉良は何気なしにその鏡を覗いてみる。

「……待て、これは一体どういうことだ?この鏡は何を映し出している!?」

そこに映っていた姿は、吉良の今の姿ではなかった。
ヘアーエクステを持つ女子中学生のアイドルではなかった。
けれども、その姿は彼にとってとても見慣れたものであった。

そこに映っていたのは金髪の男であった。
その男はどくろ柄のネクタイにスーツを身にまとっていた。

そこに映っていたのは、吉良吉影の本来の姿であった。


「その鏡はラーの鏡と言いまして、どうやら我々の元の身体を映してくれるようです」

「………どうやらその通りのようですね。しかし驚きましたよ、まさかこの戦いで私の元の顔を見れるとは思っていませんでした」

吉良は鏡をまじまじと見ながらそこに映っている鏡像が自分の顔であることをよく確認する。
その鏡像は自分が死亡した時の川尻浩作の顔ではない。
かつて『振り向いてはいけない小道』で引きずり込まれる直前にも戻った、エステ『シンデレラ』で変える前の自身の本来の『吉良吉影』としての顔である。


試しに鏡の角度を少し変え、後ろに倒れている東方仗助の方を見てみる。
すると、そこに映る像もまた仗助のものではなく、小柄な高校生の少女が映る。
その少女の姿はやはり、先ほど仗助が追いかけていたものと同じであり、彼…否、彼女は自分の身体の参加者を追いかけていたことがはっきりと分かった。


「お、そうだ。せっかくなので私の元の顔も見ておいてほしいですぞ」

吉良がラーの鏡を見ている途中、アドバーグは横から割り込んで鏡に自分の顔が映るようにする。
そこに映る像もやはり、長髪の美女の姿ではない。

髪の毛なんて一本も残っていない、禿げた小汚い変態的な格好の髭おやじがそこに映っていた。

「……………何と、言えばいいのでしょうか。その、こんな姿でキタキタ踊りの後継者を探しても、断られてしまうのでは…?」

「な…!あなたまでそんなことを言うのですか!?」

「(しまった、つい本音が)い、いえ、やはりあなたの言った通り、女性の姿になっている今こそ後継者探しのチャンスなのではと思いまして」

「うーむ…確かにそうなのですが、そんな風に言われるとどこか複雑な気持ちですぞ…」

(やはり、別の事を言うべきだったか…?)

吉良はこの支給品確認の後、キタキタ踊りも口実の一つにアドバーグをこの場から遠ざけるつもりだった。
だが今の発言が失言となり、少々説得にてこずりが出るかもしれない。
まあ、その時はその時である程度は修正可能だろう。


638 : 吉良吉影はシンデレラに憧れる ◆5IjCIYVjCc :2021/08/16(月) 22:31:33 aC2TAZ820


少し落ち込んだ様子のアドバーグをしり目に、ラーの鏡を見ながら吉良吉影は考える。

(しかし…まさかこんなものがあるとはな。いや、むしろ今のうちに見つけられて幸いだったと思うべきか)

吉良吉影にとって自分の正体の隠匿は何事にも優先される。
そんな中で発見された、身体を変えられる前の姿を映し出す鏡の存在、
このことを知ったその瞬間、吉良はこれによって自分の正体が暴かれる可能性を思い浮かべた。
だが少なくとも、今はその心配をする必要は無い。
現在この場におり、吉良吉影の本来の顔を確認した者はアドバーグ・エルドルただ1人。
アドバーグは当然吉良吉影の正体を知らない。
顔を知ったからと言って、それだけで彼が吉良を警戒する理由にはならないのだ。

この戦いの場において、吉良にとってこの鏡の存在を知られることを危惧する存在は2人だけ。
自身の顔を知っているはずの空条承太郎と広瀬康一だ。
ラーの鏡を通じて顔を見られれば、自分が彼らと敵対していた『吉良吉影』本人であることを確定させられてしまう。
同姓同名の別人だとでも言ってごまかすこともできない。
逆に、この鏡を遠くから、なおかつ自分の存在を察知していない参加者に向けて使用することで承太郎や康一の現在の姿をこちらが一方的に把握することができるかもしれない。
そう考えるとやはりラーの鏡という特殊な道具の所在を把握できたのは吉良にとってかなり利点となっている。

(この鏡についてはとりあえずこれでよしとするか。ならば次は…)

「エルドルさん、あなたに頼みがあります」

「何でしょうか?」

吉良はここで、前から考えていた目的である、アドバーグ・エルドルをこの場から遠ざけるための行動に出た。
アドバーグはまだ、ラーの鏡の他にあと1つ存在するかもしれない支給品についての話は出していない。
そして、吉良は今はその話を出させるつもりはない。
会話の流れで鏡についての話に時間を割くことになった分、気絶中の仗助(ミチル)が時間経過で目覚めないようにするためにも、その遅れを取り戻さなくてはならない。

「先ほども言ったように、私も彼も、そしてあなたも治療に使える道具は持ってない。だから、彼を助けるためにエルドルさんが誰かほかの人を探しに…」

ここで一度、吉良は自分の言葉を止めた。
アドバーグに向けて顔を上げようとした時に、一つ異常を感じたからだ。

(な、何だこれは?体が動かん…!?)

その時、吉良は体をほとんど動かせなくなっていた。

「オリャア!!」

自身の異常に気付いた直後、どこからか第三者の声が聞こえた。


「キラ殿!危ない!」

謎の声が聞こえたアドバーグは突然叫びながら吉良を突き飛ばした。
突き飛ばされた直後には『プツリ』と何かが切れる音が聞こえた。
そして、突き飛ばされたことでしりもちをつく直前、吉良はアドバーグの側頭部に高速で『何か』が飛来し、直撃したのを見た。

「はらほらひ〜…」

頭を打たれたアドバーグは目を回して倒れ、しばらくの間動かなくなった。


◇◆◇


639 : 吉良吉影はシンデレラに憧れる ◆5IjCIYVjCc :2021/08/16(月) 22:34:42 aC2TAZ820

テレビで大活躍!子供たちの間でも人気爆発!
正義のスーパーヒーロー、アーマージャック!
君も当然、大好きだよね?
え?何だって?
『アーマージャックなんて知らねーよ』だと?
『今の時代のスーパーヒーローはセイバーとかゼンカイとかトリガーとかだよ(後もうすぐリバイスね)』だって?
何でそんなこと言うんだい?
いいから『アーマージャック大好き』って言っとけよ☆
『大好き』って言わないとアーマージャックに酷い目にあわされちゃうぞ☆



冗談はさておき、アーマージャックは今、かなりストレスが溜まっている。
せっかく見つけた獲物が抵抗してきたうえに、舐めた態度をとって逃げて行ってしまったからだ。

かなりイライラしていたアーマージャックだが、とりあえず本来の目的であった自分が殺した女の支給品の回収は思い出せた。
回収の際にランダムに支給されるアイテムが一つ、盗られていたことに気づいた時はストレスが更に溜まったが。

とにかく、アーマージャックは落とした刀の回収も、戦利品として最初に殺した女が持っていた支給品も(一つ除いて)手に入れることもできた。
アーマージャックは支給品の確認を終えた後、次の標的を探すために移動し始めた。
第一の狙いはもちろん、さっき自分を虚仮にした帽子の黒い男と胸のでかい片おさげ女だ。
だけどそいつらは煙に紛れて逃げていったから今はどこにいるのか分からない。
逃げていった方向も分からないからしらみつぶしに探すしかない。

公園でやることを終えたアーマージャックはとりあえず西方向へと移動を開始した。
その方向へ進んだのは何となく感覚で選んだだけであり、特に大した理由は無い。
どちらにせよ、アーマージャックは自らの目的のために殺し合いの参加者を探さなければならない。

動き始めたアーマージャックはなるべく早歩きで街道を駆け抜けていく。
プロフィールを破り捨てたアーマージャックは知らないことであったが、ウルトラマンオーブ・サンダーブレスターの元々の走行速度はマッハ3.5であった。
今は公平な殺し合いのために光と闇の巨人としての身体は縮み、走力もだいぶ落ちていたが、それでもウルトラの脚力はかなりの速度で走ることを可能にしていた。
それだけでなく、装備している馬のチンチンの効果によりスピードはさらに上がっている。
だからこそ、今のアーマージャックは暴走車も同然の速さを持っていた。


そんなこんなで移動していたやがて、アーマージャックは自身がいる街エリアの正式な出入口付近にまで近づいてきた。

殺し合いの会場となっているこの町には近代的な建物が立ち並ぶ街のエリアが3つ存在している。
それらの街の正式な出入口とされているのは、島中に張り巡らされている道路と繋がっている箇所である。
それを示すため、出入り口には門も設置されている。
とは言っても、町に出入りする際にはこれを潜り抜けなければならないなどというルールは存在しない。
アーマージャックも一度はそういったものに気づかずに街の外に出たことがあった。

そんなアーマージャックは、その門に向かって近づいてきていた。
そして、少し離れた建物のかげから門のすぐ近くにいる者達を発見した時、アーマージャックは自分の感覚を信じてよかったと思えた。

そこに居たのは2人の女であった。
片方はまだ中学生くらいに見え、性知識といったこもまだ知ったばかりだろう(調教の時が楽しみだ)。
もう片方は露出の多い、サンバのような恰好をしている長髪の女だ(誘ってんのか?)。

彼女らはまさに、アーマージャックにとってちょうどいい格好の獲物であった。
もし今の彼に舌が存在していたら、舌なめずりをしていたことであろう。
だからアーマージャックはその女たちをここで捕まえることに決めた。
自分が抱えるストレスを全て彼女らにぶつけて解消する、
それはまさしく、自分が気持ちよくなるためだけの邪悪な願いだ。

だが、ここで彼は真正面から挑むようなことはしない。
前回出会った赤い装甲を身にまとった女のように、抵抗して逃げられる可能性もある。
そのため、目的のためになるべく相手が気付かないうちに無力化する必要がある。

そこでアーマージャックは一つ、ある方法を思いついた。
その方法では二つの支給品を使用する。
ここで使うのは、先ほど回収した殺した女(累の母)の支給品であったものだ。

アーマージャックはそれらの支給品で準備を終えると建物のかげから少し身を乗り出す。
そして、2人の女に向かって攻撃を開始した。




640 : 吉良吉影はシンデレラに憧れる ◆5IjCIYVjCc :2021/08/16(月) 22:35:46 aC2TAZ820
ここでいったん、視点を吉良吉影サイドに戻そう。


「エルドルさん!?今のは一体…?」

突き飛ばされた吉良は地面にしりもちをついて座り込む。
そしてすぐに立ち上がり、いつでも動けるよう意識しながら辺りを見渡し、先ほどの暴挙を行った下手人を探す。

アドバーグは死んではいないが、気絶しているようだ。
これが一般的な感性の持ち主であれば突然の出来事にうろたえ、倒れた相手の方へと心配して駆け寄るだろう。
だが、今は謎の存在から攻撃を受けており、自分への追撃を警戒すべきだ。
気を失った者への気遣いをいちいちしていたら自分の身は守れない。
まあ…自分のことを庇ったため、キラークイーンを出さずに済んだ点については感謝してもよいだろう。
とにかく、そちらの方は一旦意識の外に移し、自分の安全のための行動を優先する。

そして、アドバーグを打った下手人自体はすぐに見つけられた。
そいつがいたのは、前にも吉良が一旦隠れた建物の近くであった。

(何だあいつは?また新手のスタンドのような…。いや、あの姿はまるで特撮番組の宇宙人ようだ)

そこに居た存在こそ、筋骨隆々の身体に主に赤と黒の体色を持つ銀色の顔のエイリアン――アーマージャックであった。
(宇宙人という単語を思い浮かべた瞬間、吉良は写真の父親から聞いたミキタカという宇宙人を名乗るスタンド使いらしき者のことが頭によぎったが、今はそのことは気にしないこととする。)

「へっへっへ!!上手くいったようだな!あー…でも、まだ小さい方が残っちまったか…。まあ、こっちはこっちで弱そうだしいっか!」

「………」

ろくでもないことを言っているアーマージャックを睨みながら、吉良は周りの様子を見て先ほど何が起きたのかを考える。

(…アドバーグはあの木の棒に打たれたようだな)

エイリアンの少し前の方を見てみると、球が連なっているように掘られている木の棒が落ちていることが確認できた。
どうやらそれが先ほどアドバーグの顔を打った凶器だと思われる。

そして、その木の棒には糸が結び付けられていた。
その糸を目で追い、それが伸びてきた先を確認してみると、アーマージャックの手にたどり着く。
どうやらアーマージャックは木の棒を投げて相手にぶつけた後、糸を用いてそのまま自分の手元へと回収しているようであった。
先ほど体を動かせなくなっていたのもその糸の仕業だろうか。
突き飛ばされた後に聞こえた音は、自身を拘束していた糸が切れた音だったのだろうか。

だが、不可解な点がまだ一つあった。

「……その糸は一体どうなっているんだ?ひょっとしてお前はスタンド能力者なのか?」

「はあ?スタンド?何言ってんだこのガキ」

アーマージャックは木の棒を結び付けた糸を握っていたわけではなかった。
その糸は、アーマージャックの手から直接出ているように見えた。
それは決して目の錯覚ではなく、糸は確かにアーマージャックの右手の指先から出現していた。
そしてこの能力はウルトラマンオーブ・サンダーブレスターとしての能力ではないものだ。


ここでネタばらしをしてしまえば、アーマージャックは今、『悪魔の実』を食すことによって能力者となっていた。
アーマージャックが食べた悪魔の実の名は『イトイトの実』、食せば体から糸を出して操れる糸人間となる。
食べれば泳げなくなるという弱点はあるが、どうせ今は他人の身体であり、殺し合いの後に元の身体に戻ってしまえば関係のないことだ。

また、イトイトの実の能力で出した糸に結び付けた木の棒の名はストゥ。
アイヌ民族の社会において窃盗や殺人などの悪い行いがあった場合に制裁を加えるための物である。
乱用は許されない。

アーマージャックは先にエクステの少女(吉良吉影)の方から狙った。
理由としては、もう片方が露出の多い、裸も同然な丸腰の恰好をしていたため抵抗されても取り押さえるのは簡単だと考えたからだ。
だから左手から出した見えない糸(本来のイトイトの実の能力者が"寄生糸(パラサイト)"と名付けていたもの)を少女に寄生させ、右手の糸でストゥを結び、作戦を実行した。
まあ、彼にとってはどちらも弱そうに見えたため、狙いは別にどちらでもよかったわけだが。


641 : 吉良吉影はシンデレラに憧れる ◆5IjCIYVjCc :2021/08/16(月) 22:36:58 aC2TAZ820
(しかしまいったな…もう少し早く行動するべきだったか。いや、いずれにせよこいつがここにたどり着くのは時間の問題だったか)

喜々とした様子のアーマージャックとは対照的に、吉良吉影は内心かなり焦っている。
ここで仗助を殺そうとした時に第三者がやってくるという可能性は想像していなかったわけではない。
アドバーグがまだいるうちに来たのだってただの偶然だ。
もし何者かが来たとしても、その時はその時で計画を練り直すまでであった。

だが、実際にこの場に現れた者は、吉良の想像をはるかに超えるほどの醜悪さを持っていた。

また、アーマージャックは門の近くに倒れている男の存在に気付くと、さらに上機嫌な様子で口を開く(開いている様には見えないが)。

「おいおい!よく見りゃそこに死体が転がってるじゃねえか!もしかしてお前らが殺ったのか〜?なら、そんな悪い子には"お仕置き"が必要だよなあ!!」

「………」

吉良はアーマージャックが被せようとしてくる濡れ衣に対して何も言うことは無い。
こういった輩にこんなことで反論したとしても相手が聞く耳を持つことは無いだろう。
こっちが余計なストレスをためないよう今は聞き流すまでだ。
そもそも、吉良は本当なら今目の前にいるアーマージャックのような者に、この殺し合いで出会いたくはなかった。
アーマージャックは明らかに殺し合いに乗っており、それを隠すそぶりも無い。
同じ殺し合いに乗っている者でも吉良とは正反対だ。
考えなしに無差別に人を襲い、自分が目立ち狙われることも厭わない愚か者だ。

(…こいつ、元から宇宙人だったのか?)

吉良は抱えていたラーの鏡に目の前のエイリアンが映るように構え、そこに映る像をちらりと見る。
そこには、現在のようなつり目の顔ではないが、人間のものとはかけ離れた、角や銀髪・銀の肌を持つ黒のゴーグルのような目を持つ宇宙人のような顔あった。
その言動からてっきり人間の男、それもかなり下劣な者だと思っていた。
人間じゃなくても人間の女に欲情するのかと疑問を抱いたが、とりあえず『そういうもの』もいるのだろうと置いておく。正直、納得したくはないが。


……そう、相手は明らかに少女の姿の吉良吉影に欲情していた。
その証は、見れば否応なしに視界に入る、相手の股間にあった。
アーマージャックは巨大な陰茎を持っていた。
それはまるで、獣のように巨大な代物であった。
しかも、それを勃起させていた。
そして先ほどの「調教する」という発言、
この言葉から相手が自分に何をしようと考えているのか、精神衛生にかなりの悪影響を及ぼす想像が頭を横切る。
ただでさえこいつのせいで今の状況になっているのもあり、吉良の中でアーマージャックはクソカスの中のクソカス、今まで自分が会った者の中でも最底辺の存在だと見なした。

「………私はここで誰かと戦うつもりはなかった。他人と争うことはむなしい行為であり、私の心の平穏に大きな害となるものだ。だが…お前のようなものは決して見逃してはくれないのだろうな」

「ああっ!?何急に長ったらしく喋ってやがる!?逃がさないなんて当たり前のこと言うんじゃねえ!この島にいる女は全員、俺に調教されるべき肉便器なんだよお!!」

「……やはり、お前のような奴はそうくるか」

本心としてはこの殺し合いでも争いというものは避けたかったが、このような場合は仕方がない。
このような状況になってしまったのは、ただ運が悪かったとしか言いようがない。

吉良は戦いのために手に持つラーの鏡を一旦脇に置く。
鏡が地面と接触し、『コトリ』と音がしたその瞬間、
アーマージャックもまた動き出した。

◆◇◆


「くらえ!!」

アーマージャックは先ほどと同じように糸を結び付けたストゥを少女に向かって投げつける。
同時に、拘束のための見えない糸も飛ばす。
アーマージャックは他にも物干し竿という刀を所有しているが、彼は女は斬らない主義であり、刀が無ければ困る前回の戦いのような場面でもないため今回は使用しない。
それに、うっかり自分の攻撃で死なせてしまうとその後の『お楽しみ』が減ってしまう。(死姦がアーマージャックの趣味にあうのかも不明だ。)
先ほどの初弾がサンバ女の頭に当たった時はアーマージャックも一瞬ヒヤッとした気持ちにさせられた。
幸いその攻撃は致命傷にはいたらず、気絶だけで済んでいるみたいだが。
だからこそ、アーマージャックは相手に致命傷を負わせないように、なおかつ確実に大きなダメージを与えられるように絶妙な力加減でストゥを投げる。

「むうっ…!」

糸による拘束は上手くいったようで、少女は何とかして動こうともがく様子を見せる。

ストゥはそんな少女の首から下の体の方へと向かって行く。
アーマージャックは今度こそ自分の狙い通りの攻撃ができたと内心でほくそ笑む。
だが…

「『キラークイーン』!」


642 : 吉良吉影はシンデレラに憧れる ◆5IjCIYVjCc :2021/08/16(月) 22:41:56 aC2TAZ820
「はあっ!?」

少女――吉良吉影が叫ぶと同時に彼女(彼)の隣にそこにいなかったはずの人型が現れる。
猫のような頭部を持つその人型、スタンド『キラークイーン』は高速で飛んできたストゥをその手で弾き返す。
アーマージャックはキラークイーンを見て驚きの声を上げる。
それは、ただ相手が特殊な能力を持っていたという点への驚きだけではなかった。

「おい、どういうことだ!?なんでてめえもあの帽子野郎みてえな能力を持ってんだ!?てめえあいつの仲間か!?」

アーマージャックがキラークイーンを見て思い出したのは、前に公園で自分を虚仮にした者の1人、雨宮蓮(アーマージャックは名前を知らない)であった。
アーマージャックは吉良のキラークイーンを蓮が出したシルクハットのペルソナ――『アルセーヌ』と同じようなものだと考えた。

「何っ!?私のような能力だと!?そいつの能力を持った者の名前は何だ!」

「ああんっ!?知るか!」

吉良もまた、アーマージャックの言葉に対して驚きの声を上げる。

(この街にスタンド使いがいたということか…!?帽子のスタンド使い…まさか、空条承太郎か?いや待て、こいつスタンドが見えているのか!?)

吉良が戦いの中でも維持していた冷静さが乱される。
自分がいた街にスタンド使いがいたこと、目の前の相手がスタンド使いの可能性があること、どちらも吉良にとってはかなり重大な問題だ。
ただ、目の前のアーマージャックはスタンドを先ほどは知らないと言っていた。
これに関しては、前にアドバーグへの疑いの際に考察したように、肉体の影響でスタンドが見える可能性なのかもしれない。
現に、指から糸を出すというまるでスタンド使いのような芸当を目の前の相手は行っている。
その能力が肉体由来なのか、精神由来なのか吉良には分からない(実際にはもっと別の要因によるものだが)。

それよりも、吉良の気持ちを焦らせるのは、相手がこの街でスタンド使いに会った可能性が高いという事だ。
発言にあった特徴からは空条承太郎が連想できるが、この戦いでは奴も身体が変わっているはずであり、必ずしも帽子を被っているとは限らない。
しかしそれでも、自分以外のスタンド使いの存在は吉良に大きな焦燥感を与える。
件のスタンド使いが自分と敵対していた承太郎や康一という可能性もまだ否定できないからだ。

(いや、今は心を落ち着かせるんだ…!まずはこの状況をどうにかしなければ話にならない…!)

吉良はキラークイーンを操作し自分の周りをその手で払わせる。
同時に糸が切れる音が聞こえ、拘束が解かれ、吉良は再び体の自由を取り戻す。

「ちきしょう!それで切れんのかよ!むかつくな〜おい!」

(…この街にスタンド使いがいるのならば、私は一刻も早く脱出した方がいいだろう。そのためにも、こいつはすぐにでも倒す!)

「ああっ!くそっ!てめえのせいで腹立つこと思い出しちまったじゃねえか!俺をムカつかせた罰はしっかりと受けてもらうからなあ!!」

静かに改めて決意を固める吉良とは対照的に、アーマージャックは感情のままに怒声を上げる。



「うおおおおおおお!!」

アーマージャックはさらに声をさらに大きく、荒げながら吉良の方へと走り、接近戦を仕掛ける。
前回の戦いにおいて、アーマージャックは蓮のペルソナによって何度か攻撃を受けた。
その攻撃はどれもアーマージャックにとって脅威には感じなかったが、それらが中距離から放たれていたことは覚えていた。
アーマージャックはペルソナとスタンドを混同している。
そのためか、キラークイーンにも中距離攻撃の手段がある可能性も考えている。
それが効果のあるものかどうかはともかく、攻撃を受けないに越したことはない。
実際のアーマージャックは怒りで頭が沸騰しているような状態のため、ここまで細かいことを常に考えて戦っているわけではない。
けれどもほとんど無意識のうちに、前回の戦闘経験からアーマージャックは中距離からの攻撃を警戒した立ち回りをしようとしていた。

「おりゃあ!!」

アーマージャックは左の拳を握りしめ、それを吉良に向けて放つ。

キラークイーンが腕を交差し、吉良からその攻撃を守る。
キラークイーンはアーマージャックの攻撃を受け止めても、それによって傷つくことは無い。
スタンドに攻撃できるのはスタンドだけであり、そのルールはウルトラマンの肉体が相手でも適用される。
しかし…

「ぐおっ…!!」

防御してもパンチの衝撃は殺しきれず、吉良は後ずさりしてしまう。

(こいつ、何てパワーだ!スタープラチナやクレイジーダイヤモンドにも匹敵するのではないか!?)

本来の巨人としての体ならば15万トンの腕力を持つ、サンダーブレスターのパンチの威力は凄まじく、近接タイプのスタンドでもその攻撃は完全には防ぎきれない。


643 : 吉良吉影はシンデレラに憧れる ◆5IjCIYVjCc :2021/08/16(月) 22:43:26 aC2TAZ820
「こっちもだあ!」

次にアーマージャックは糸で右手にストゥを引き戻し、これを握りしめて吉良に向けて振り下ろす。
吉良はそれをキラークイーンの左手で受け止めた。



吉良はこの後も同じように、アーマージャックの攻撃する場所に合わせて次々と攻撃を防いでいった。

「ああああぁぁぁ!!本当にうざってええええぇぇぇ!!いい加減にそれを止めろおおおぉぉ!!!」

攻撃を何度もキラークイーンで防がれることに、アーマージャックのストレスは更に溜まる。
右手のストゥも、左手の拳も、アーマージャックは何度も吉良に向かって振るう。
しかし、どの攻撃も本体である吉良には届かない。
怒りのあまり、今後の調教のために即死させないよう絶妙な手加減をしようという考えも頭から消えかけている。

そんなアーマージャックに対し、吉良の中にもまた焦りが現れ始めていた。

(くそっ…こいつはやはり、パワーもスピードも高すぎる!奴ら(承太郎と仗助)のスタンドのように、ただ単純に強い!)

吉良はアーマージャックの猛攻に対してキラークイーンで防ぐことしか対処できなかった。
本当なら、キラークイーンの手で触れることによって相手の肉体を内部から爆破して殺害するべきだ。
アドバーグも気絶しているこの状況なら能力の正体がばれる可能性も低い。
だが、アーマージャックに対して爆破能力を行使しようとしても相手の攻撃が先に当たってしまうだろう。
逃げようとしても、糸の拘束能力で動きを止められてしまう可能性もある。
はっきり言って今の吉良は余裕が無い状態だ。
現在もなお、だんだんと後ずさりさせられている距離は伸びている。

(だが、まだ私の手が尽きたわけではない)

アーマージャックの攻撃をギリギリのところであしらいながらも、吉良は自分の行動を起こすチャンスを待つ。

「ちきしょおおぉー!こうなったら…!」

アーマージャックは一旦吉良への攻撃の手を止め、後ろの方へと下がる。
そして役に立たないと判断したストゥを投げ捨て、デイパックの中から物干し竿を取り出した。
女は斬らない主義のアーマージャックでも、そのことは忘却の彼方になっている。
完全に少女(吉良)のことを斬り捨てる気でいる。

(今だ…!)

吉良が攻撃の機会と見たのは、刀が取り出されたその瞬間であった。



『ボゴオォッ』


「………は?」

そんな音が聞こえたと同時に、アーマージャックは自分の体に対して大きな違和感を持つ。

その違和感は、自身の下半身部分から伝わってきていた。

恐る恐る下の方を見て、その違和感の正体が分かった。


下半身をよく見てみると、自分がつけていたペニス…馬のチンチンが半分以上消滅していた。


644 : 吉良吉影はシンデレラに憧れる ◆5IjCIYVjCc :2021/08/16(月) 22:45:25 aC2TAZ820
「………ぎゃああああぁぁぁ!!!俺のチ〇コがああああぁぁぁ!!!」

違和感の正体に気づくと同時にアーマージャックに激痛が走る。
例え本来は支給品であり、自身のものでなかった馬のチンチンでも、性感帯の刺激による快楽を伝えるためか神経は肉体に接続されていたようだ。
アーマージャックの悲鳴が辺りに響く。
アーマージャックは股間を抑えながら悶絶して仰向けに倒れる。

『コッチヲ 見ロ』

そんな声がどこからともなく聞こえて来た。
声は今まで聞いたことのないものであり、この場にいる人間から発せられたものとは思えなかった。

「ああっ!?!」

アーマージャックは痛みに耐え混乱した状態のまま声の方向へと顔を向ける。
そいつは、倒れたアーマージャックの顔のすぐ横に居た。
それは、どくろの顔やまるで戦車のようにキャタピラのついた謎の物体であった。
先ほどの声はその物体から発せられたようだった。

『コッチヲ見ロ!コッチヲ見ロォ!!』

物体はそう叫びながらアーマージャックの顔に飛びつく。

「うわああああ!?!」

キャタピラに顔をこすられながらアーマージャックは叫ぶ。

「この…離れろお!!」

アーマージャックは股間を抑えていた手を顔に引っ付く物体を掴む。

「うおおおおお!!」

アーマージャックは強引に物体を顔から引き離し、それを放り投げようとする。

『カチッ』

アーマージャックが手を放す直前、物体からまるでスイッチが入ったかのような音が聞こえた。

「おりゃあ!!」

『ドグオオオ!!』

「ぐああっ!!」

アーマージャックが物体を投げると同時に、何と物体から爆風と爆炎が生じた。
アーマージャックはその爆炎に驚き、怯んでしまう。

その爆風はアーマージャックに対して致命的な攻撃とはなっていない。
完全に無傷というわけではないが、ある程度はオーブ・サンダーブレスターとしての皮膚が爆炎を防いでいる。
それでも、火傷としてのダメージにはしっかり負っていた。
馬のチンチンが破壊されたためにその効力も切れ、防御力が下がった分爆炎のダメージが増えている。



(やれやれ…何とかうまくいったようだな)

爆弾に振り回され、もだえるアーマージャックの様子を見て吉良は自分の溜飲が下がっていることを実感する。

先ほど馬のチンチンを破壊した物体はキラークイーンの左手から発射された爆弾、シアーハートアタックである。
吉良は先ほどアーマージャックが刀を取り出そうとした隙を付いてシアーハートアタックを発射した。
キラークイーンの手で触れて爆弾にできるものが無い以上、自分に使える手段は第二の爆弾であるシアーハートアタックしかないと判断した。
元の世界では弱点が露呈したために使いものにならず、使用するのは久しぶりのことであったが、初見の相手であるアーマージャックには十分効果を発揮したようであった。
シアーハートアタックが相手の陰茎(馬のチンチン)に当たったのは狙ったわけではない。
シアーハートアタックは温度の高いものを優先的に攻撃する性質がある。
先ほど興奮して勃起状態になっていたこともあり、その部分の体温が他の部分よりも高くなっていたのだろうか。
とにもかくにも、吉良は何とか危機的状況を脱っすることはできた。


「ああくそっ!なんだこいつは!どっから出てきた!!」


645 : 吉良吉影はシンデレラに憧れる ◆5IjCIYVjCc :2021/08/16(月) 22:46:34 aC2TAZ820
『コッチヲ見ロォ――』

アーマージャックは今もシアーハートアタックに翻弄されている。

先ほどからずっと興奮したまま吉良に襲い掛かってきていたアーマージャックの体温はかなり高くなっている。
シアーハートアタックはアーマージャックをロックオンにしたまま止まらずに突撃する。

「この、うらあっ!!」

股間部の激痛に耐えながらもアーマージャックはシアーハートアタックをどうにかしようと奮闘する。
倒れていた状態から立ち上がり、シアーハートアタックを蹴り飛ばす。
だが、蹴り飛ばすだけじゃシアーハートアタックは止まらない。

『カチッ』
『ボグオオォ!!』

「ぐあああっ!!」

シアーハートアタックはたとえ触れたのがほんの一瞬だけでもアーマージャックの体温に反応し爆弾のスイッチが入る。
そして爆風や爆炎により相手の体表を傷つけていく。

(こいつ、かなり頑丈さまで兼ね備えているのか…?シアーハートアタックの爆発を何度か喰らっているのに耐えられるとは…)

シアーハートアタックの爆発は相手の体にダメージを与えているが、それは人間を相手にした時よりも小さく、吉良は相手の厄介さを改めてよくかみしめる。

それでも何度かの爆発でダメージは与えられているため、このまま離れて逃げてしまえばいつかシアーハートアタックでも仕留めきれるかもしれないという思いが頭をよぎる。

(だが、その方法をとるわけにはいかないな)

シアーハートアタックには弱点がある。
高温の物体を優先して攻撃するという性質は、言い換えれば高温の物体を他に用意でき、それを囮にすることができれば簡単に逃れられるということだ。
以前、吉良自身では気づいていなかったこの弱点を広瀬康一突かれ、そこから吉良吉影の正体を暴かれることに繋がった。
アーマージャックが弱点に気づくかどうかはともかく、吉良の安心のためにもシアーハートアタックだけにこの場を任せるわけにはいかないのだ。

(ここはやはり、キラークイーンの第一の爆弾でこいつを仕留める!!)

第一の爆弾を直接相手の体に触れさせ、内部から爆発させることができれば頑丈な体を持つ宇宙人が相手でも消滅させられるだろう。
次に選択するべきことは、第一の爆弾は手持ちの物体から作って使用するか、相手の体を直接触れて変化させて爆破するかという点だ。
どちらを選ぶとしても、ここで重要となるのは吉良自身が持つ支給品の存在だ。
前者の場合、爆弾にした物体をアーマージャックにぶつけなければならない。
しかし、アーマージャックはシアーハートアタックから逃れようと激しく動き回っており、今の距離から単純に爆弾を投げつけても確実に当てて仕留められる保証は無い。
猫草のようなものがあればもう少し何とかなったかもしれないが、そのための手段は無い。

そして吉良は今、支給品を後者の方向性で使用することを考えていた。



「こうなったら…こうすりゃいいだけだろうがあああ!!」

アーマージャックは叫び、自分の指先から糸を放出する。
その糸はアーマージャックを襲うシアーハートアタックに絡みついていく。

『コッチ…ヲ…見ロ…』

「いい加減に止まりやがれえええぇぇ!!」

アーマージャックは腕を前に出し、シアーハートアタックが進もうとする方向とは逆方向に糸により引っ張られる力が働くようにする。
シアーハートアタックは今、アーマージャックの顔の辺りまでもう少しの点で動きを止められている。
それでもなお、シアーハートアタックは温度感知により前に進もうとしている。

「うおおおおぉぉぉ!!!」

このままでは埒が明かないと判断したアーマージャックは力を振り絞り、糸を出す両腕を大きく振った。

「おおおおおおお!!!」

アーマージャックは叫び、腕を限界を超えた力で回す。

そして、遠心力により、シアーハートアタックが絡みついた糸は遂にアーマージャックに対して外側の方へ向き、
シアーハートアタックもアーマージャックから引き離される。

「おおおおおおりゃあああぁぁ!!!」

アーマージャックはハンマー投げの要領でシアーハートアタックを糸ごと振り回す。
そして、ありったけの力を以て絡みつかせた糸を切り離し、シアーハートアタックをどこか遠くへと放り投げた。
アーマージャックは遂に、シアーハートアタックに力技で勝ったのであった。


646 : 吉良吉影はシンデレラに憧れる ◆5IjCIYVjCc :2021/08/16(月) 22:48:12 aC2TAZ820

「ぜえ、ぜえ…へ、へへ…。やったぜ…」

アーマージャックは心と体の疲労で倒れこむ。
胸のカラータイマーの光も、青から赤の点滅へと変わっている。
今回のような無茶ができたのは、オーブ・サンダーブレスターが持つ高い腕力があったからであろう。
さもなければ、このような方法でシアーハートアタックから逃れられることはできない。
イトイトの実を摂取していたことも彼にとっては大きかった。

だが、アーマージャックは一つだけ注意すべきものに目を向けていなかった。
パニックのままシアーハートアタックとの戦いが始まってしまったせいで、彼は自分が元々戦っていた少女のことを忘れかけていた。


「………あ、今度は、何だ、ありゃ」

倒れていたアーマージャックの視界に突如、新たに黒色をした細い謎の物体が現れた。
その物体は、アーマージャックの体へと降ってきた。

「ぐあっ!なんだこれは!?」

黒い物体はまるでタコやイカが持つ触腕のように、アーマージャックの体を締め付けてきた。
アーマージャックはこれに対し抜け出そうと必死にもがくが、それは中々難しかった。

そんなアーマージャックの下へと、少女―吉良吉影が近づいてくる。
彼は、先ほどまでは所持していなかった謎の『筒』をその手に抱えていた。

「どうやら、上手くいったようだな」

「……おい、こいつはてめえの仕業か!?さっさと外しやがれ!!」

アーマージャックは怒りを叫ぶ。
しかし、吉良吉影はただ冷たい目を相手に向けるのみであった。


吉良がアーマージャックへと使用した品の名は『月に触れる(ファーカレス)』。
無数の触腕を操る筒状のアビスの遺物であり、中の触腕は極めて強靭で伸縮性も高い。
(正確には遺物ではなく、アビスの原生生物由来の加工物を筒に詰めた物。アビスでしか採取できないため遺物と扱われる)

吉良はアーマージャックを確実に仕留めるために、この遺物の触腕を用いて相手の体の拘束を試みた。
どうやら目論見通りにいったらしく、アーマージャックは体を動かせないようであった。

「………さてと、これでようやく君を殺せる時が来たというわけだな」

吉良はキラークイーンを出現させ、ゆっくりとアーマージャックの方へと距離を詰めていく。
シアーハートアタックも丁度このタイミングで放り投げられた場所から戻ってきたため、これはキラークイーンの左手へと戻しておく。
強敵であったためだいぶ遠回りとなってしまったが、これで邪魔者を除くことができる。

吉良は目の前の相手のせいで本来の予定が完全に狂ってしまっていた。
こいつが現れなければ、仗助の殺害も完了し、心の平穏を得ることができたはずだった。
アドバーグが気絶させられたことはまだ都合が良かったことと言える。
おかげでキラークイーンの能力を奴に見せずに済んだ。
それでも、吉良にとってアーマージャックがしたことは許しがたいことだ。
そして何よりも吉良にとって厄介であったことは、相手が単純に強かったという点だ。
接近戦に持ち込まれた時はかなり焦ることにもなった。
だが、それももう終わりだ。
動けない相手にキラークイーンで触れて爆破すればそれでもう終わりであるのだ。



(ちくしょう…!どうして俺がこんなことに…!)

完全に相手に逆転された状態になったアーマージャックは大きな屈辱感を味わっていた。
自分が調教するはずだった相手に身動きを封じられ、見下される。
それだけでなく、相手は自分を殺せる自信を持っている。
か弱い獲物だと思っていた相手が、今は死神に見える。
アーマージャックの中に『恐怖』の感情が現れる。

「…こっちに、来るんじゃねえ!!」

アーマージャックは倒れたまま寄生糸を発生させ、吉良の元に向かわせる。
見えない糸はたとえこの状態でも相手の体に寄生できる。

「…残念ながら、お前のしていることは無意味だ」

前の時と同じように、キラークイーンが吉良の周りで手刀を振るい、寄生糸を断ち切ってしまう。
先ほど入手したばかりで鍛えてもいないその糸は、たとえ見えなくとも破壊力Aを持つスタンドの攻撃で簡単に切れてしまう。


「…最後に少し、教えておこうか」

吉良がボソッと呟いた。


647 : 吉良吉影はシンデレラに憧れる ◆5IjCIYVjCc :2021/08/16(月) 22:51:34 aC2TAZ820
「私の名は『吉良吉影』。本来の性別は男。年齢33歳。かつては杜王町北東部の別荘地帯に自宅を構えていたが……とある事情で『川尻家』に移り住むこととなった。
「それに伴って仕事も『カメユーチェーン店』とは別の会社の社員をやることになったよ……次は、もう一度『中学生』をやることになるのだろうな。」
「ただ、今度は『女子中学生』となるからこれまでの男としての常識を改める必要もありそうだ。この体は『アイドル』だったらしいし目立たないための立ち振る舞いも初めは神経を使いそうだな……」

「きゅ、急に何を言っているんだてめえ…」

突然相手が長話をし始めたことにアーマージャックは戸惑う。
同時に、先ほど自分を殺すと宣言した相手の突然の話に不気味さを感じる。
そのためか、相手が実は男だったことへの驚きの方が薄くなってしまう。

「いや、お前に私の計画を邪魔されたことが腹立たしかったからな。始末する前に私のことを説明することでお前がしでかしたことを知ってもらおうと思ったんだ」

「………何だよ、やっぱあいつはてめえが殺ったってことかよ!」

「ひょっとして仗助のことを言っているのか?残念ながら、君のせいで『まだ』やるべきことをやれていないのだがね」

「はっ!てめえはやっぱ極悪人のクソガキじゃねえか!正義のヒーロー様に躾けられるという役割を放棄して恥ずかしくねえのか!!なあ!!?」

「……お前のくだらない理論はもう聞き飽きたよ」

「もがっ!」

キラークイーンの足がアーマージャックの顔を踏みつける。

「さてと…最後に一つ、教えておこう。私のスタンド『キラークイーン』は触れた物を何であろうと爆弾に変える能力を持っている」
「これからお前は私の爆弾で内部から消し飛ばされる。どれだけお前が頑丈であろうと、関係なしにな」

「な、何だとお…!」

吉良の言葉にアーマージャックはうろたえる様子を見せる。
口では強がっているが、その体は震えている。
かつて吉良は絶望した者の様子を『「肥えだめ」で溺れかけているネズミ』と表現したことがあるが、アーマージャックはまさにそのネズミに近づいてきている。
自分をかなり不快な思いにさせた者がこのような状態になるのは、吉良としてもなかなか爽やかな気分になっていく。

(さてと、何を爆弾にするべきか………む?)

爆弾を用いて殺害するだけなら選ぶのは何でもいい。
相手の体に直接触れる選択肢だってある。
ただ、明らかに強姦魔然とした相手の体に触れるのはどこか汚らわしい気もする。
先ほどシアーハートアタックが真っ先にペニスを破壊しに行ったのだって許容はまだ本当は出来ていない。

そんなことを考えていたその時、吉良はあることに気づいた。


「う〜ん……」

(………アドバーグが目覚め始めている!?時間をかけすぎたか!)

戦いにより移動していたため、少し離れた距離で倒れていた状態のアドバーグ・エルドルが目覚めかけていた。
(ちなみに東方仗助の方は一応まだ気絶したままの状態のようであった)
これは、吉良にとって少々まずい状況だ。
アドバーグがスタンドを視認できるかどうかはともかく、キラークイーンの能力がバレるようなことになってはならない。
幸い、彼はまだ意識が朦朧としているらしく、吉良とアーマージャックの現状に気づいていない。
急いで殺害すればまだギリギリ気づかれないだろう。

「話はこれで終わりだ!『キラークイーン』!」

吉良はキラークイーンの足をどかし、爆弾に変えるために構え、指をアーマージャックの方へと向ける。

「あっ…!」

キラークイーンの手はアーマージャックの顔の方へと向かって行く。
もはや、アーマージャックの命は風前の灯火。

吉良吉影も、自分の勝利を確信していた。


◇◆◆

「う〜ん…あ痛たたた……」


648 : 吉良吉影はシンデレラに憧れる ◆5IjCIYVjCc :2021/08/16(月) 22:53:13 aC2TAZ820
頭を打たれたアドバーグ・エルドルはしばらくしてようやく目が覚めた。
側頭部にはまだ痛みが残っており、その部分に手を伸ばしてさする。
触ってみるとそこには大きめのこぶができていた。

吉良を突き飛ばす直前、アドバーグはこの世の者とは思えない人物を見た。
赤・黒・銀の体表を持つ筋骨隆々でつり目の怪人物。
アドバーグはそいつを魔物の一種か何かかと思った。
その魔物らしきものに対してキタキタ踊りを見せればよいだろうと思った瞬間、相手の方に先手を取られてしまった。
アドバーグに確認できたのは、そいつが何かを投げたことと、それが吉良に当たりそうになったということだけ。
彼は吉良をとっさに突き飛ばすことしかできなかった。

「…………そうだ!キラ殿は!?」

しばらくボーっとしていたアドバーグであったが、やがて自分の同行者のことを思い出した。
先ほど襲撃してきた存在は真っ先に吉良を狙ってきた。
それを庇って、自分が倒れたものであるから、せめて無事でいてほしいとアドバーグは思った。
何なら、自分を置いて逃げ出してもいいと考えていた。
自分が無事に目覚められた理由は今は考えない。
とにかく、辺りを見回して吉良が今どこにいるのかを探そうとした。


『ザンッ!』

「今の音は!?」

その音はアドバーグの後方から聞こえて来た。
まるで、何かが切断されるかのような音であった。
おそるおそる振り返り、アドバーグはその音の正体を確かめようとする。

「………へ?」

アドバーグは思わず、そんな間の抜けた声を漏らしてしまう。
そこで彼が見たものは…
































アーマージャックの右手から出現した光輪によって、吉良吉影の左腕が切断されている光景であった。


◆◆◇


649 : 吉良吉影はシンデレラに憧れる ◆5IjCIYVjCc :2021/08/16(月) 22:55:19 aC2TAZ820
(死ぬのか?…俺様がこんなところで!?)

キラークイーンの手が自分に迫ってくるのを見て、自身の死を確信していたのはアーマージャックも同様であった。
触れた物を爆弾に変えて消滅させてしまう能力なんてものはにわかには信じがたい。
しかし、相手の言っていることがただのはったりだとも思えなかった。
少女は明らかに、自分を殺しきれるという自信に満ちあふれているように見えた。
『手で触れただけで爆弾にする能力』なんて信じず鼻で笑えば済む話という考えも思い浮かぶが、少女の『凄味』がそれを否定しているような気がした。
そういえば先ほどのキャタピラがついた謎の物体も爆発を起こしていた。
あれも同じ能力によるものだろうか?

(くそっ!まだ女は1人しか楽しめていないのに…!こんなところで死んでたまるか!!)


その瞬間、アーマージャックの中では様々な想いが渦巻いていた。

弱そうな相手に敗北し、手も足も出ない状態にされたことに対する大きなる悔しさ・屈辱、
不可思議な能力により訳も分からないうちに自分の命が刈り取られるという恐怖、

しかしそれでもまだ、アーマージャックは諦めていなかった。

『それ』が思い浮かび上がったのはほんの一瞬のことであった。
死が目前に迫る中、生存本能に押されたアーマージャックの脳はフル回転を始め、自身の生存のための手段を導こうとする。
そこでアーマージャックが見たものは、俗に言う『走馬灯』というものだったのだろう。
走馬灯を見る理由には、死が目前に迫った瞬間に今までの経験や記憶の中からそれを回避する方法を探すためだという説がある。
けれども、自身の記憶の中からは現状を打破する方法は見つからない。
これまでの戦いで、アーマージャックはほとんど一方的に怪獣や宇宙人たちを殺してきた。
そこに、自身のピンチを打破する手段は無かった。

しかし、それはあくまで『自分自身』の記憶の中での話であった。
アーマージャックが見た記憶の中には、この状況をひっくり返す手段が確かに見つかっていた。


しかし、それはアーマージャックにとって『存在しない』記憶であった。




その記憶の中で、アーマージャックは巨大な怪獣と戦っていた。
そこでは、アーマージャックは本来の身体とは別の身体で戦っていた。

否、それはアーマージャックの身体ではない。
記憶も、アーマージャックが経験したものではない。

それは、『ウルトラマンオーブ・サンダーブレスター』の戦いの記憶であった。

そこでサンダーブレスターが戦っていた怪獣は、全身からたくさんのとげを生やした禍々しい姿の大怪獣、
『大魔王獣 マガオロチ』だ。

アーマージャックは記憶の中で、その戦いのほんの少ししか見れていない。
それでも、『自分の死を回避する方法』を見つけ出すのは十分であった。

そしてその方法を実践したその瞬間、
アーマージャックは自分の中で『何か』が切れたように感じた。

◆◇◇

「……う、うぐあああああああ!!何だこれは……一体何が起こったッ!!?」

「はあ…はあ…へ、へへへ………ひひひひひひひ!!はははははははははははははは!!!」

「キ、キラ殿ーーーッ!!」

吉良は一瞬、自分に起きたことを理解できなかった。
吉良の左腕は、二の腕の先から綺麗に切断されていた。
腕の切り口は、高熱により焼かれてしまったようでほとんど出血がない。
これは切り飛ばされた部分も同様だ。
しかし焼かれている分、吉良の左腕にはかなりの激痛が走っている。
その痛みは、歯を食いしばって耐えないと今にも気を失ってしまいそうなほどだ。
髪の左の方のエクステや、左耳の一部も切られている。
そんな吉良の様子を見て、アーマージャックは狂気的な笑い声を上げる。
アドバーグは驚き、慌てて吉良の下へと駆けようとする。


アーマージャックがここで使用した技の名は『ゼットシウム光輪』、
サンダーブレスターが持つ、切断力のある赤色の光輪を作り出す必殺技だ。
この技の記憶を見たアーマージャックはすぐさま右手でこれを発動させた。
そして、右腕を振るうことで自身を拘束していた『月に触れる』をはぎとり、その勢いのまま吉良の腕も切断したのであった。

「くそっ!貴様…よくも私の腕を…!」

「ああああっ!うがあああああっ!!」

吉良は腕を抑えたまま後ろへと後ずさる。
アーマージャックは右手からゼットシウム光輪を発動させたまま腕をさらに振り回すことで全身に纏わりつく『月に触れる』を全て焼き切って剥ぎ取る。
まだ残っている部分も締め付ける力が弱まったために後は力づくで抜け出せる。
アーマージャックは立ち上がり、吉良の目の前へと向き直る。
その姿は前に立ちふさがった時よりもなお色濃く、そして別次元な雰囲気をした、邪悪なプレッシャーを醸し出していた。


650 : 吉良吉影はシンデレラに憧れる ◆5IjCIYVjCc :2021/08/16(月) 22:56:24 aC2TAZ820
(こいつ、まだ能力を隠し持っていたのか!?いや、土壇場で使えるようになったのか!)

吉良は今、痛みに耐えながらかろうじて立ち上がっている状態だ。
先ほどシアーハートアタックで攻撃した時とは立場が逆の状態になっていた。
それでもまだ吉良はアーマージャックに目線を離さずに睨みつける。

「キラークイーン!!」

吉良はキラークイーンの手をもう一度自らの敵の方へと向かわせる。
左腕は失われているため、必然的に攻撃に使えるのは右手のみだ。
目覚めたアドバーグに能力を見られるなんてことを気にする暇はない。
この緊急事態においてそんなことを考えて隙を見せるわけにはいかない。

「があああああっ!!」

対するアーマージャックは拳を握りしめ、咆哮と共に全力でパンチを繰り出した。

「な、ぐっ、おおおおおおおお!!」

キラークイーンの手とアーマージャックの拳がぶつかり合う。
その瞬間、凄まじい衝撃力が発生した。
キラークイーンはスタンドでないものによる攻撃に傷つくことは無い。
しかし、防御のために動いたわけでもないため、相手のパンチの勢いをほとんどを消せなかった。
パンチの衝撃を吉良はほとんど喰らってしまい、さらに後ろの方へと吹っ飛ばされてしまう。

「ぐうっ!」
吉良は足から着地したものの、激痛により体が怯み、両膝と右手を地面へとついてしまう。


「ハア……ハア……コロス…コロス…コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス、コロス!!!」

一方、アーマージャックの方は突如壊れたラジオのように同じ言葉を繰り返し始めた。
そこには、知性というものが全く感じられず、まるで獣のようになっていた。

「これ以上キラ殿に手は出させませんぞ!私の渾身のキタキタ踊りを見よ!」

アーマージャックの前へとアドバーグが現れ出る。
そのまま彼は「ピ〜ヒャラ〜」という効果音と共に激しく踊り始める。
どうやら自分の踊りでアーマージャックを引き付けるつもりのようだ。

「ジャマダ!!ドケ!!」

「ぐあああっ!!」

しかしアーマージャックはそんな踊りには目もくれず、腕を振り払ってアドバーグを横へと吹っ飛ばしてしまう。
普段のアーマージャックなら、美しい容姿の女性がきわどい恰好でその踊りを披露すればむしろ喜んでレイプを仕掛けることであろう。
けれどアーマージャックはそんな素振りは一切見せず、目の前の女の姿をした相手を薙ぎ払って遠くへどかしてしまった。



今のアーマージャックは、一種の『暴走状態』にある。
アーマージャックはこれまでサンダーブレスターの『ウルトラマンとしての技』を使ってこなかった。
せいぜい、その強力な身体能力に身を任せるまでであった。
説明書も破り捨てたため、技の使い方も知らない。
けれどアーマージャックは命の危機に瀕して、とっさに技を発動させることができた。
そのためか、アーマージャックはオーブ・サンダーブレスターにほんの少し『近づいた』。

サンダーブレスターはかつて、本来の変身者である『クレナイ・ガイ』も力を制御できずに暴走したことがある。
闇の力に飲まれたサンダーブレスターは、敵である怪獣どころか周りの街をも見境なしに破壊した。
今のアーマージャックはその時のサンダーブレスターに近い状態だ。

自分が『死』に近づいたことによる『恐怖』、
自分をこんな目に合わせた相手への『怒り』や『悔しさ』、
そういった負の感情やそれによるストレスが、二度の戦いによってついに限界に達していた。

これまでアーマージャックがサンダーブレスターになりながらも理性を保っていたのは、そもそも彼が闇に近い狂気に満ちた人物であったからかもしれない。
自分のことを正義のヒーローだと思い込むその性質が、力を制御する方向に作用していたのかもしれない。
だが今回において、アーマージャックは暴走した。
それは、ウルトラマンの力を使った事や限界以上に溜まったストレスといった要因が重なったと考えられる。
それ以外にも要因が考えられる可能性はあるが、とにかく今、アーマージャックは自分の本来の欲望も忘れて、ただ1人の標的の命を狙う存在となっていた。



「エルドルさん!(くそっ!よりにもよってあんな遠くへ吹っ飛ばされるのか…!)」


651 : 吉良吉影はシンデレラに憧れる ◆5IjCIYVjCc :2021/08/16(月) 22:58:30 aC2TAZ820
吉良は今の絶望的状況を脱するために、キラークイーン第三の爆弾である『バイツァ・ダスト』の使用を考えていた。
この時間を巻き戻す能力があれば、今の状況をやり直すことができる。
時間が戻れば切断された左腕も元に戻せる。

バイツァ・ダストを発動させるために必要な条件は吉良が心から絶望すること、そして非スタンド能力者の無力な人間が側にいることだ。
吉良はその人間を爆弾に変え、時間を吹っ飛ばし、その人物だけが巻き戻る前の時間を知る状態にできる。
さらにこの能力は周りの人間も全て吹っ飛ばし、巻き戻った地点から元の時間に戻れば『固定された運命』に従ってもう一度敵を吹っ飛ばし、確実に殺害することも可能なのだ。

今の状況で、バイツァ・ダストに使える人物はアドバーグ・エルドルただ1人だ。
時間が戻った後に自分の能力をどう誤魔化すかはその時考えればいいことだとも思っていた。

しかし、アドバーグは薙ぎ払いで吹っ飛ばされ、街道に面した建物の壁にぶつかり、その壁にもたれかかる形となっている。
窓ガラスにぶつかったのか、そのガラスには網目状にひびが入っている。
一応、今回も命に別状はないようだ。
けれども、今の吉良がいる場所からは距離があり、自分が移動するよりも先にアーマージャックが自分に攻撃してくるだろう。
吉良はアドバーグには変に出しゃばらず、真っ直ぐに自分のいる方へと向かってきてほしかった。
しかし、そんな『もしも』を考えても現状は変わらない。

(こうなったら…最後の賭けだ!)

吉良は目線をアーマージャックの後方にある近くの門の方へと向け、そこにいるはずの人物を見る。
そこにいるはずなのは、吉良が殺害するつもりであった東方仗助の身体の参加者だ。
その人物は吉良吉影が殺人鬼だという情報を見た可能性があり、時間の巻き戻しをやらせたらより自身にとって不利なことになるかもしれない。
しかし、吉良に一番近い場所にいる人物はもう仗助しか残っていない。
もし、相手の精神がスタンド使いだったらバイツァ・ダストを使用できない可能性もある。
スタンド使いではないにしても、肉体が元はスタンド使いの東方仗助のものであることが影響して使えない可能性も考えられる。
その点についても、吉良のこの判断は大きな『賭け』と言えるものであった。



「大変……だ。わたしが……助けな…きゃ」

吉良が門の近くをよく見てみると、いつの間にかに東方仗助(犬飼ミチル)は意識を取り戻して立ち上がっていた。
左肩を手で押さえてふらつきながらも、彼女は顔を真っ直ぐに視線を一点に集中させていた。
ミチルが見ている一点、それは先を切断された吉良の左腕の部分であった。

ミチルが目を覚ましたのは、先ほどアドバーグ・エルドルがアーマージャックに薙ぎ払われて建物にぶつかったタイミングのことであった。
そして彼女が真っ先に目にしたのは、巨体を持つ赤黒いエイリアンの背と、その向こうに左腕を失った少女の姿であった。

ミチルはなぜいつの間にかこんな状況になっているのかは理解できない。
自分の身体で逃げる者を追いかけ、
途中で巨大な虫に出くわし、
その直後大きな音がしたとともに吹き飛ばされ、
頭を打って気を失ったところまでは覚えている。
だけど今目にした二人の人物はどちらも彼女には初見のものだ。

それでも、ミチルは左腕の無い少女が絶体絶命のピンチであることはすぐに分かった。
ミチルは自分のヒーリング能力でその少女を助けようと思った。
ミチルは今、身体が変わっている状態で自分の能力が使えるか否かについては考えていない。
とにかく、急いで少女の下へと向かおうとしていた。
そして、ミチルが立ち上がったそのタイミングで、件の少女もまたミチルの方へと顔を向けたのであった。


「………………何、だと?どういうことだ?一体何故だ!?」

「え?」

ミチルを見たその瞬間、少女は表情を大きく変えた。
ミチルを見る前、少女は何かに助けを求めている顔をしていた。
その顔には、生き続けようとする意志が強く感じられた。

しかし、ミチルを見たその瞬間、彼女は驚愕の表情を見せた。
まるで、この世のものでは無い者を見てしまったかのように。

「何故クレイジーダイヤモンドがここにいる!?」

それが、彼女(彼)の最期の言葉となった。

◇◇◆◇

吉良吉影がバイツァ・ダストの発動を狙い、ミチルが吉良吉影を助けようと思った時、アーマージャックはトドメの必殺技の発動を開始していた。
暴走しているアーマージャックであるが、必殺技の使い方はゼットシウム光輪と同じくほぼ本能的に分かっていた。


652 : 吉良吉影はシンデレラに憧れる ◆5IjCIYVjCc :2021/08/16(月) 23:00:54 aC2TAZ820
「アアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛……!!」

低い唸り声と共にアーマージャックの両手に相反する二種類のエネルギーが集まっていく。
右手に闇、左手に光のエネルギーがチャージされていく。
広がる両手からほとばしるエネルギーがアーマージャックの前で白と赤黒いリング状の雷として形成される。
雷のリングが一瞬で収束し、それとともにアーマージャックは両手を十字に組む。

「デュワアアアアアアアアァァァァ!!!」

前面に再び雷の輪が形成される。
アーマージャックが叫ぶと同時に輪の中央に位置する左手から光線が発射される。
これぞまさしく、サンダーブレスターの文字通りの必殺技『ゼットシウム光線』である。

そして、赤黒い雷を伴ったその光線は真っ直ぐに吉良吉影の下へと飛んでいった。



もし、ここで自分の身を守ることに能力を使っていれば彼は生き延びられたのであろうか。
光線をスタンドで防げるかどうかは分からない。
スタンドを使わずとも、ギリギリで横に移動して躱すこともできたかもしれない。
けれど、そうはならなかった。


東方仗助の身体からクレイジーダイヤモンドが出現するのを見て、吉良吉影は足を止めてしまった。
最後まで生き延びて見せるという、自分の目的も一瞬だけ忘れてしまった。
本来ならこの島にいないはずの、自分を追い詰めた男の精神を象徴するそのスタンドを見て、吉良吉影は精神を大きく乱された。
吉良吉影の命運を分けたのは、そのほんの一瞬の出来事であった。

アーマージャックから放たれた光線は真っ直ぐと進み、吉良の少女としての身体を貫いた。
そして彼女(彼)は胸に大きな穴を開けて後方へと倒れ伏し、二度と動くことは無かった。






「そ、そんな…キラ殿が、やられてしまった……!」

アドバーグは吉良が倒れる瞬間を見てしまった。
吹き飛ばされた後の彼はすぐに元の場所へと戻ろうとしたが、間に合わなかった。
光線に貫かれた吉良は既に物言わぬ骸だ。

「くっ…こうなったらせめて私が仇を………ん?」

悲劇を起こした下手人である人外の巨漢を睨むアドバーグ。
しかし彼の視線は別の人物の方へと向く。
その人物は先ほど吉良が治療(実際には殺害)しようとしていた男(精神は女)だ。

「早く、早く助けなきゃ…!」

その人物――犬飼ミチルは吉良吉影の遺体の方へと向かう。
明かな致命傷を負わされた相手でも、彼女はまだ治療を諦めていなかった。
ミチルは相手のことを何も知らない、だけど治療の手段があるならば、助けないわけにもいかなかった。

「そこの方、何をしているのですか!まだ魔物はそこにいるのですぞ!あなただって怪我をしているじゃありませんか!早くそこから逃げ……………あれ?」

アドバーグはアーマージャック(アドバーグは魔物だと思っている)がまだ何か仕掛けてくることを警戒してミチルに注意を促そうとする。
しかし、アドバーグが視線を変えてみると、アーマージャックの様子がおかしいことに気づいた。

『ドサッ』

アーマージャックの胸のカラータイマーの赤の点滅が止まった。
それと同時にアーマージャックは仰向けに倒れ伏した。
そして、アーマージャックの体から光が立ち昇った。

「………え!?に、人間!?」

光が消えた後にそこにいた人物は、さっきまでそこにいた赤黒い巨漢とは全く違う姿をしていた。
そこにいたのは、ただの人間の男であった。
突然の敵の姿の変化に、アドバーグ・エルドルはただ困惑するしかないのであった。




653 : 吉良吉影はシンデレラに憧れる ◆5IjCIYVjCc :2021/08/16(月) 23:05:41 aC2TAZ820
アーマージャックが変化した人間の男、その名前は『クレナイ・ガイ』、
ウルトラマンオーブの正体である。
この殺し合いにおいて、アーマージャックは『ウルトラマンオーブ・サンダーブレスター』として身体を与えられた。
しかし今、エネルギー切れなのかアーマージャックはウルトラマンから人間の姿に変化してしまった。

倒れたアーマージャックの体の横には二枚のカードが落ちている。
それらのカードにはそれぞれ、光と闇のウルトラ戦士の姿が描かれている。
宇宙警備隊の隊長でありウルトラ兄弟の長男、ゾフィー。
史上初めて悪の道に堕ちたウルトラマン、ウルトラマンベリアル。
サンダーブレスターの変身に使用される二人分のウルトラフュージョンカードがクレナイ・ガイとしての身体から分離されて地面に落ちていた。


ここで一つ、問題が生じる。
サンダーブレスターは本来、オーブの本来の姿ではない。
ゾフィーとベリアルのカードがあって初めて変身できる形態である。
つまり、戦いの中で『変身解除』が行われる可能性もあるはずであり、実際に今回の戦いの後でクレナイ・ガイの姿に変わっている。
それでも、この殺し合いにおいてアーマージャックの身体は『ウルトラマンオーブ・サンダーブレスター』として登録されている。
他の場所に存在する、身体側の参加者名簿にもその名前で記載されている。
しかし今回の戦いの結末によって、アーマージャックの身体は『クレナイ・ガイ』のものになってしまっている。
つまり、身体の名前が異なるものに変わってしまい、このままでは登録されている身体の名前の通りではなくなってしまうのだ。

けれども、この問題を解消する方法は一応、一つだけ存在する。
アーマージャックに残された最後のランダム支給品、
その正体は所持している本人はまだ知らない。

その支給品の名は『オーブリング』、ウルトラマンオーブの変身アイテムである。
これに先ほど分離した二枚のカードをダブルリードすれば、アーマージャックは再びサンダーブレスターの身体へと戻ることができるのだ。

ただし、今の彼は気を失っているため、すぐに元に戻ることはできない。
これからサンダーブレスターが復活するかどうかは、まだ先の事と言える。
その前にはまず、アーマージャックが無事に目覚める必要もある。
光と闇の巨人の復活には、まだ少し時間がかかりそうだ。



「お願いです…早く、目を覚ましてください…!」

犬飼ミチルは自身の能力を用いての治療を必死に試みていた。
はたから見れば、大柄な男子高校生が女子中学生の体を舌で舐めまわすという、変態的な行為をしているように見えるその光景はミチルにとっては治療現場だ。
そして、腕を切断され、胸に穴の開いた少女の体は、確かに修復されていた。
千切れ飛んで行った腕も、少女の体に引っ張られて戻ってきていた。
しかしそれは、犬飼ミチルの能力によるものではなかった。

ミチルの後ろには、今の彼女と同じくらい大きな体格を持つ人型の何かがいた。
その人型こそ、吉良吉影が死の直前に目撃したスタンド『クレイジーダイヤモンド』であった。
少女(吉良吉影)の肉体の損傷を修復していたのもこのスタンドの仕業だ。

ただし、犬飼ミチルはこのスタンドの能力によって修復が行われているとは思っていない。
そして、スタンドの像が出現していることにも気がついていない。

なのになぜスタンド能力は発動しているのか、
その理由は彼女は元々人を癒すヒーリング能力を有していたことに起因する。
精神の像であるスタンドの力を扱う上で重要なことは、できて当然と思い込む精神力にある。
自分がヒーリング能力を使えていると思い込んでいるからこそ、犬飼ミチルはクレイジーダイヤモンドに気づかずにその能力を行使することを可能としている。


「…やっぱり、ダメなんですか」

だが、例え体は修復できても、失った命までは取り戻せない。
少女の遺体は、欠損していた部分や穴の部分はおろか、ボロボロになっていた衣服まで完全に修復されていた。
綺麗に直ったその体は、今にも動き出しそうなほど死を感じさせない。
けれども、この体に存在した魂は戻ってこない。


654 : 吉良吉影はシンデレラに憧れる ◆5IjCIYVjCc :2021/08/16(月) 23:06:43 aC2TAZ820
「…ごめんなさい」

自分に非が無くとも、そんな言葉を呟かずにはいられない。
犬飼ミチルはこの少女の体に宿っていた者のことを全く知らない。
この人物がどす黒い魂をもって、彼女の殺害を計画していたことなんて想像もつかない。
それでも、彼女は助けられずに失われた命のために、悲しみの涙を流した。


斯くして、シンデレラの偶像の身体を手に入れようとした殺人鬼の魂は、この場から消失していた。
その魂が一体、今はどこに行ってしまったのか、「安心」のある場所にはたどり着けたのか、
いずれにせよそれを証明する方法は、今はまだ存在しない。



【吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険(身体:二宮飛鳥@アイドルマスターシンデレラガールズ) 死亡】





【E-6 街入口付近/早朝】

【アドバーグ・エルドル(キタキタおやじ)@魔法陣グルグル】
[身体]:ヘレン@アイドルマスターシンデレラガールズ
[状態]:疲労(中)、側頭部にこぶ、背中に大きな痛みと小さい無数の裂傷、混乱気味、深い悲しみ
[装備]:腰みのと胸当て@魔法陣グルグル
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1、最初着ていた服
[思考・状況]基本方針:キタキタ踊りの力で殺し合いを止めて見せますぞ〜
1:突如人間の姿に変わって倒れた魔物(アーマージャック)に警戒
2:キラ殿…
3:体は返すつもりだが、その前にキタキタ踊りの後継者を見つけたい
[備考]
※参戦時期は魔法陣グルグル終了後です。グルグル2や舞勇伝キタキタは経験していません。
※ジョジョの奇妙な冒険の世界について知りました。ただしスタンドに関することは知りません。


【犬飼ミチル@無能なナナ】
[身体]:東方仗助@ジョジョの奇妙な冒険
[状態]:左背面爆傷、疲労(大)、深い悲しみ
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いはしたくない
1:助けられなくてごめんなさい…
2:シロを追いかけて止める
[備考]
※参戦時期は少なくともレンタロウに呼び出されるより前
※自身のヒーリング能力を失いましたが、クレイジーダイヤモンドは発動できます。
※クレイジーダイヤモンドが発動できることには気づいていないようです。


【アーマージャック@突撃!!アーマージャック】
[身体]:ウルトラマンオーブ・サンダーブレスター@ウルトラマンオーブ
[状態]:疲労(大)、ダメージ(小)、全身のいたるところに火傷、気絶、クレナイ・ガイの状態へと弱体化、主催者に対するストレス(大)、二人組(エボルトと蓮)に対する苛立ち(大)、イトイトの実の能力者、ガキ(吉良吉影)に対する怒り(大)
[装備]:馬のチンチン@魔界戦記ディスガイア
[道具]:基本支給品、オーブリング@ウルトラマンオーブ
[思考・状況]基本方針:主催者をぶっ殺す。そのために参加者を皆殺しにして優勝する。
1:…………
2:さっきの二人は絶対に殺す。特に女の方は徹底的に調教してから殺す。
3:男はそのままぶっ殺す。女はレ〇プしてから殺す。
[備考]
※製作会社公認のパロディAV『悶絶!!アーマージャック』の要素も混ざっております。
※身体の持ち主のプロフィールは破り捨てました。怪獣と戦っていたという事以外知りません。
※装備している馬のチンチンはほとんど破壊されている状態のため本来の効果を発揮しません。
※ゼットシウム光輪、ゼットシウム光線を使いましたが、今後も自分の意思で使えるかどうかは後続の書き手におまかせします。
※【クレナイ・ガイ@ウルトラマンオーブ】の姿になっています。オーブリングと近くに落ちているウルトラフュージョンカードを使えばサンダーブレスターに戻れます。
※近くにゾフィーとウルトラマンベリアルのウルトラフュージョンカード@ウルトラマンオーブが落ちています。
※悪魔の実の能力者になりました。水の中に落ちた場合、泳げずに溺れてしまいます。


※周囲に【ラーの鏡@ドラゴンクエストシリーズ】、【ストゥ(制裁棒)@ゴールデンカムイ】、【物干し竿@Fate/stay night】、【月に触れる(ファーカレス)@メイドインアビス】、吉良吉影のデイパック(残りランダム支給品0〜2)が落ちています。


655 : 吉良吉影はシンデレラに憧れる ◆5IjCIYVjCc :2021/08/16(月) 23:07:29 aC2TAZ820


【ラーの鏡@ドラゴンクエストシリーズ】
アドバーグ・エルドル(キタキタおやじ)への支給品。
「真実を映し出す」と言われている伝説の鏡。
原典においては何かに化けている魔物や、姿を変えられた者の正体を暴いて元に戻す効果がある。
ここにおいては、殺し合いの参加者の姿を映すと元の身体での姿が映るようになる。
ただし、その身体を元に戻す効果は無い。

【イトイトの実@ONE PIECE】
元は累の母への支給品。
超人系に分類される悪魔の実。
食べると糸人間んとなり、体から糸を作り出してそれを自在に操る能力を得る。
悪魔の実共通のデメリットとして、食べると水の中を泳げないカナヅチとなってしまう。

【ストゥ(制裁棒)@ゴールデンカムイ】
元は累の母への支給品。
アイヌの社会において、村人の中に窃盗や殺人など悪い行いがあった場合に制裁を加えるための物。
乱用は許されない。

【月に触れる(ファーカレス)@メイドインアビス】
吉良吉影への支給品。
ボンドルドが持つ武装の一つ。
無数の触腕を操る遺物で、極めて強靭で伸縮性も高い。
正確には遺物ではなく、原生生物由来の加工物を筒に詰めたもの。
アビスでしか採取できないので遺物とされる。
扱いにくさ故に等級は二級だが、ボンドルドは無数の自分を使ってこの遺物の要領を掴み、効果を劇的に高めるに至った。
ここにおいては初見でも扱いやすいよう、主催により少し調整が施されている。

【オーブリング@ウルトラマンオーブ】
アーマージャックへの支給品。
ウルトラマンオーブの変身アイテム。
光るリングの部分に二枚のウルトラフュージョンカードをダブルリードすることでフュージョンアップしたウルトラマンオーブへと変身する。
この殺し合いにおいては、変身できる形態はサンダーブレスターに限定されている。
もしゾフィーとベリアル以外のカードが存在したとしてもリードできないようになっている。


656 : 吉良吉影はシンデレラに憧れる ◆5IjCIYVjCc :2021/08/16(月) 23:08:45 aC2TAZ820
投下終了です。


657 : ◆5IjCIYVjCc :2021/08/16(月) 23:11:52 aC2TAZ820
【追記】
今回投下した「吉良吉影はシンデレラに憧れる」は、>>636-643を前編、>>644-655を後編とします。


658 : ◆ytUSxp038U :2021/08/18(水) 00:18:29 V3skjHyQ0
投下乙です
ラーの鏡という今ロワ屈指の便利アイテムを見つけたは良いものの、吉良の幸運はそこで切れてしまったようですね
クレイジーDの存在が死に繋がったのは因果を感じました
アーマージャックが今後はガイさんの姿で下衆な行動に出るかもしれないのは、色んな意味で酷い絵面になりそう

環いろは、結城リトを予約します


659 : ◆P1sRRS5sNs :2021/08/20(金) 23:52:34 vwCqZLqY0
ようやく出来ました!!投下します!!


660 : ◆P1sRRS5sNs :2021/08/20(金) 23:54:01 vwCqZLqY0
出た目は…5、4、6、4、4
つまり…半
「…分かったわ、出るのね、この島を」
「そうなるようだな」
四人はここに方針を固め…すぐに島を出る事にした。
そして少しでも楽に向こうに向かう為に改めてバックを見ることにしたが…
その中で見つける事が出来たもの、それが…
「僕のバックから何かバックル?ベルトみたいなものが出てきました、それからこの剣は…?水勢剣流水?他にも三冊のワンダーライドブック?という物がついてます」
「そのベルトにその本が嵌りそうよ…順番があるそうだわ、右からピーターファンタジスタ、ライオン戦記、天空のペガサスの順に装填するそうよ、そして剣を刺して再び抜くと変身できるみたいね、仮面ライダーブレイズという姿に…仮面ライダー?」
「俺は仮面ライダーについて知らねぇが…強くなれるのか?」
「私も知らないネ、でもなんかカッコいいアル、変身してみろヨ」
「は、はい…」
それぞれの本を嵌め…ベルトを腰につけ…抜刀!!
「えっと…どういえばいいんでしょうか…身体が変わってるんだから…変身!!」
その瞬間エレンの身体が青く光り、そして変わる
『流水抜刀!蒼き野獣の鬣が空に靡く!ファンタスティックライオン!』
『流水三冊!紺碧の剣が牙を剥き、銀河を制す!』
妙な音声と共に変わった姿…、精神、広瀬康一の愛する女性がいて、更に真面目で礼儀正しい性格がひきつけたのか、身体、エレンイェーガーの立場である騎士団という要素がひきつけたのか、それともどちら共の要素が合わさったのかが分からないが…その姿は大切な人を守る為に戦う剣士、仮面ライダーブレイズであった。
「おお!!なかなかかっこいいネ!!強さも上がってるアルか?」
「はい…!!力が湧いてきます!!」
「でも多用は控えた方が良いかもしれない、体に負担がかかるって書かれてるわ」
「そうですか…ん?ペガサスって確か飛べますよね…なら向こうまで簡単に飛べますよ!!」
「よし、向こうに行く手段は確保したな」
「…皆、少し待ってくれないかしら?」
「何アルかロビンちゃん、チンチロで決めた事覆すつもりじゃ…」
「分かってるわ、ただ、最後に大ジャンプして、おおざっぱにでもこの島周りを把握しておきたいって考えたのよ」
島の探索はしなくていい、ならせめて少しでも把握しておきたいと考えたのだ。
「それくらいなら時間はあまりかかりませんね、やってみますか!!」
作戦はこうである、カイジの肩の上から神楽がジャンプし、そのジャンプした神楽の肩にのって変身している康一がジャンプし、更にモナドを使いジャンプしたロビンが康一の肩に乗って周りを見渡すという訳だ。
「来い、神楽!!」
「分かってるアル!!ほっ!!」
作戦決行…
「康一!!」
「はい!!はっ!!…ロビンさん!!」
「分かってるわ!!飛ぶ!!…はあっ!!」
そしてロビンが飛び…あたりを見渡してみた…!!
(巨人から逃げる時にも確認していた道がどのように繋がるか、逃げる事に集中していた為に分からなかったけど…向こうにも本島以外のこの島よりは大きな島があるわね、その島はどうしようかも相談しようかしら、そして人の把握…向こうの本島には誰もいない…いや、壊れてしまったあの橋の付近に青年が一人いるわ…、あの黄色い髪の少年は!?近づいてきてる!!対処しなくちゃいけない!!)
それぞれが着地してまずロビンが第一声を上げた!!


661 : ◆P1sRRS5sNs :2021/08/20(金) 23:55:36 vwCqZLqY0
「来てる!!黄色い髪の少年が一人!!」
「分かってます!!僕は詳しく見えてました!!青を基調とした学生服の青年ですよね!?」
康一は飛翔機能を確かめる為に一瞬空を飛んで周囲を見ていたのだ、その為に彼の事も把握していた。
「よぉ…オメェ等の話は聞かせてもらったゼ」
その少年は何と警戒せずに直接声をかけてきた
「…何で警戒しないで声かけてきたんだ?」
「ケケッ!オメェ等は集団で行動をしていたし、寝ていたそのツリ目の奴を介抱している様子だったし、その会話内容も聞かせてもらったらとても危険な奴等とは思えなかったしな、それに…」
更に…これは紙に書かれていたが
『オメェ等は紙に筆談していた時があったからな、それは主催の連中に反抗する気がなくちゃしないだろ?』
「…ちょっと待ちなさい、何で私達の状況をそこまで把握しているのかしら」
「俺の身体の特技、幽体離脱を利用させてもらってな、元々アイツがなくなって後に巨人がこの島にやってきて避難していて、それがいなくなった後にしばらくこの島の様子を見た後にお前達四人を見つけて、しばらく幽体になって話を聞いてみたという訳だ」
「マジかよ、気づかなかったネ…信じてみてもいいみたいアルな、ここまで情報を大っぴらに言えるなんて、敵とは思えないネ」
「…一応写真を撮らせてくれ」
「写真?あーあのカメラの事か?良いぜェ、俺と一緒にいた仲間の事も分かるだろうしな」
カシャッ
おくれカメラで…7時間前、5時間前、3時間前の姿を撮ってみた…
「…何だこれ?紫の…ポケモン?他にも紫の蛇やピンクの…謎の生物?全く意味が分からな」
「おー!!オレの本来の姿も元の世界の仲間もバッチリ写ってやがる!!本当に聞いていた通りのカメラなんだな!!」
「カメラに関する話も聞いてたのね」
そして、五時間前の写真には謎の少女と出会って笑顔で会話している場面、三時間前の写真には海に沈もうとしている少女を見て悲痛な表情で叫んでいる姿が写っていた
「この少女…誰だ?」
「そいつの名前は木曾、オレの救助隊『イジワルズ』の特別ゲスト…だった奴だ」
ゲンガーはすべてを話した、木曾との邂逅、そして意見交換、強い奴目当ての人斬りに襲われ相打ちで…死んでしまった事
「…助けれなかった、アイツを…!!きっと俺達を縛り上げている主催に対抗できるほど頭が良く気前良く飯までくれるいい奴だったアイツをっ!!」
四人はその話を聞きながら思い出していた…それぞれ目の前で人の命が失われていくのを助ける事が出来なかった思い出がある。カイジは石田光司、ロビンはハグワール・D・サウロ、神楽は江華、康一は虹村形兆、それぞれ命を助けた人、友達、母、親友の兄、と縁が深い人をみすみす失いそうになった時、何も出来なかったのだ…
「つれぇよな、自分が無力だと…俺もそんな思いした事があるからよく分かる」
「だからこそ悲しみしか生まないこの殺し合いを認めちゃいけないわ、戦わなければいけない!!」
「ゲンガーさん…!!一緒に行きましょう!!貴方なら信用が出来ます!!」
「主催の奴等ボコボコにしてやるアル!!その木曾って奴の本当の仇!!討ってやるアル!!」
「テメェ等…よし、主催者の連中に意地悪…いいや意地悪じゃすまさねぇ!!完全に邪魔者になってやるよォ!!」
五人は心を一つにしてこの殺し合いに抗う事を決める、これ以上悲しみを生まない為に…
「ジャマモノーズ!!結成d」
「「「「あっ、その名前は嫌(だ)(よ)(アル)(です)」」」」
団名は拒否されたが


662 : ◆P1sRRS5sNs :2021/08/20(金) 23:57:02 vwCqZLqY0
「これはッ…!?肉体側の名簿表!?」
「凄ェだろ?名簿とは一致している訳じゃねぇらしいが…少しは何か推測することが出来るはずだ」
圧倒的情報アドバンテージ…!!戦いにおいて必要なものは何か…!?一つ、それは力の強さ…、二つ、頭の良さ…!!そして三つ目は情報量…!!情報があってこそ頭の良さは活かすことが出来、力差もひっくり返すことが出来る…!!
彼らが手に入れたものはこれを知らない相手に対し情報のアドバンテージを得る事が出来たという事…!!だが大切なのはその情報をどう生かすか…!!早速考察が始まった!!
「お前等、肉体に仲間がいたか?…俺はいなかっ「「仗助君…!!(チョッパー…!!)」」…二人共いたのか…!!」
そう…ロビン、康一にはそれぞれトニー・トニー・チョッパー、東方仗助の身体が殺し合いに使われている事を知った…!!更に…
「銀ちゃん、身体も殺し合いに使われちゃってるアル…」
神楽はその心配をしていた…
それだけではない、考察はまだ続く
「ケケッ!!他にも何かないか?木曾は身体と精神には共通点があるように入れられているって言ってたな、テメェ等はどう思う?」
「その木曾という人が言った通り、精神と肉体が何か関係があるように入れられているというのは正しいと思うわ、例えばカイジ君とその肉体の長谷川さんはニートという共通項がある」
「それはないアル、私とナミちゃんに共通点が何処にあるか言ってみろヨ、精々女繋がりしか繋がってないネ」
「…ええ、確かに共通点だけではないと思う、この私もそうだもの、だから恐らく…共通点だけではなく、身体と精神の特徴が逆であるのも法則ではないかと思うわ、例えば私の肉体、本来はナミと同じスタイルの身体だったのよ、だから逆に全く女性らしくない肉体の少女に精神を移されたんじゃないかしら?そして貴方は運動神経が高い格闘系の少女、だから頭脳系で格闘には向いてないナミの身体に入れられたことになった…と思うわ」
「成程な…ん?だったら康一、お前とエレンの繋がりは何だ?プロフィール見る限り家族の敵討ちの為に巨人と戦い続けたらしいが…お前の人生別にそこまで壮絶でもないだろうし、家族の類似もないし、性格も全く似てなさそうだが…」
「…声」
「え?」
「似てる気がするんです、彼と僕の声、僕の本来の身体で出せる声と彼の声は非常によく似ていて、なので今だしている声はかなり本来の声に近くだせています」
「成程な…他にも何かあるかもしれない…例えば名前繋がりとか、多分ロビンさんの仲間のチョッパーは多分このバリー・ザ・チョッパーって人が中にはいってる可能性がある…」
「どうか危険人物じゃなければいいんだけど…」
「早く会いたいところだな…他になんか持ちものないか?」
「ああ、他にも二つあってな、一つは後で使いたいと考えてほっといて、もう一つはそもそも必要ないと思ってほっといたんだけどよぉ…まずこの本みたいなやつ…スペクター激昂戦記って奴があるが?」
…妖怪、亡霊としての要素が引き寄せたのか、その力は仮面ライダースペクターの力が込められているワンダーライドブックだった。
「この本…僕が使えそうです!!譲ってもらえますか?」
「ケケッ!!くれてやってもいいが…こういう時は相応の物が必要じゃねぇか!?」
「は、はい…こ、この枕でもどうですか!?」
「枕かよ!!…まぁいい、休憩の時の仮眠には使えそうだしな、ほれ、やるよ」
「ありがとうございます!!」
これでブレイズはスペクター激昂戦記の力も扱えるようになった
「で、もう一つの力が…この悪魔の実って奴だ…オレが知っている木の実とは全く違う奴なんだけど…誰か知ってるかコイツを」
「…それはっ!!」
ロビンは驚愕せざる終えなかった。それも無理はない、何故ならその実は…ロビン自身が口にしたハナハナの実そのものだったから
「その実は私が元の世界で食べてたものよ、譲ってくれるかしら?」
「さっき言ったよな?そういうんだったら何かk」
「じゃあその悪魔の実、貴方は使いこなせるのかしら?その実は特殊能力が身につく代わりに一生カナヅチになってしまうのよ?」
「一生カナヅチだと!?」
「ええ、だから能力を生かせなかったらただのカナヅチとして終るわよ?それでもいいのかしら?だったら私がそれを使った方が宝の持ち腐れにならずに済むんじゃないかしら?」
「…仕方ねェな、いいぜ、くれてやるよ」
これでロビンは本来の能力の元である悪魔の実を取り戻すことが出来た…だがまだ食べない、もしかしたらこの泳げる肉体を生かす時が来る可能性があるからだ。最後の切り札としてとっておくことにしている…すると彼女は紙を取り出し…こう書き始めた
『ねぇ、皆、この悪魔の実…実はある一つの事を示しているの、聞いてもらっていいかしら』
『何だ?」
『私達の身体は…』





『もうとっくに殺されているかもしれない』
『『『『え』』』』


663 : ◆P1sRRS5sNs :2021/08/20(金) 23:57:32 vwCqZLqY0
…そう、既に彼女の身体は…亡くなっている可能性が高いという事を
『悪魔の実は本来の能力者が死んだ後にどこかでまた生まれ、次の能力者が生まれるのが普通なのよ、勿論、私の精神自体は生きてるけど、身体が死んだから新しいこの実が生まれたと考えると…やっぱり私の身体は死んでいると考えられるわ』
『成程な…そしてそれが俺達の身体だけ例外なわけないから殺されていると考えた方が筋が通ってるという訳か』
『ええ、勿論私だけが例外で殺されている方が嬉しいわ、貴方達は普段の日常に戻れるんだから、私はもう…』
ロビンは自分の身体の少女のプロフィールをみている、学生の中での生き残りを賭けた無法の「コロシアイ学園生活」の中最後まで殺しをせずに誠実な仲間思いのまま死んでしまったいい子だったという、彼女の精神がもし生きているのならば返してあげなければならない、そうなると私は…
(ルフィ…皆…私は皆ともう会えないかもしれないわ)
一瞬ネガティブになりそうだったが…すぐに使命感で打ち消した
(いえ、だったらナミ、そしてチョッパーの身体と精神を元の世界に返さなければ、それが私に居場所をくれた麦わらの一味に出来る最後の恩返し…!!やり切ってみせる!!)

「所でオレ等はこれからどうするつもりだ?」
「ああ、今から本島に向かって多くの人に接触するつもりだ、この島に人があとどれくらいいたのかは気になったがな」
「ああ、それなら問題ないゼェ、お前らに話しかけてもらう前にこの島を軽く一周してきた、誰もいなかったぜ!!」
「そうか…それなら良かった」
「ただ…」
「ただ?」
「あの本島だけじゃない、もう一つ島が目の前にあって気になってたんだけど…どうする?」
「あー…いや、俺達も実はその島はどうしようかと思ったんだが…それでも本島の方が接触はしやすいと考えてスルーしてたんだ」
「そうかァ…幽体離脱してみてみたら音も聞こえたし、人もいたような気がしたんだけどなぁ…」
「人がいた!?…じゃあ早くその人とも接触する必要があるわね」
「待つアルロビンちゃん、まず約束を守るのが第一アル」
「ええ、まずは向こうの本島に向かってからそのもう一つの島をどうするか考えましょう?さっきの確認の時に向こうの本島にもう一人いたのよ、その人がどんな人なのかによっては仲間に加えない?」
「良いですね!!そうしましょう!!」
「さて、いよいよ俺達はこの島を離れる事になる…だがその前にお前等に言っておく事がある」
その時カイジが急に改まって何かを言おうとした、康一には何かを問おうとしているように見えた。
「お前達は今からこの島を出る事になる…!!誰も人がいないから恐らくここにいれば俺達は安全な立場にいるままでいられる…!!もし危険人物がやってきたとしても監視していればカメラで先手もとれるし、不意打ちに会う事もない…!!そしてこの島にずっといれば敵が来るまでは死体を見る事もない…!!もしかしたらこのまま殺し合いに長い間無関係でいる事も出来るかもしれないんだ、だが俺達はその安寧から自ら血生臭いだろう戦地に出る事になる、覚悟できてるよな?」
実際その通りだったようだ…カイジさんはこのメンバーで唯一戦闘らしい戦闘を経験したことがないはず。それなのにそういう覚悟を決める事が出来るとは、どれ程の修羅場をくぐってきたんだろう…
「何言ってるアルか!!銀ちゃんや新八も心配だし、それ以前にそんな一つの場所にじっとしていられるタチじゃないネ!!私が死を恐れる女の子だと思ってるアルか!?」
「無残に死んでいく人なんて生きていく中で幾度も見てきたわ、でもそんな人を少しでも少なくするためになら命だってかけてもいい…死んだとしても、身体を返せなかったという悔いが出来ること以外、悔いは残さないわ…勿論、残すつもりはないけど!!」
「僕も前までの自分だったら怖がってこの島にいる事を選んでいたかもしれません…ですが!!今の僕だったらやらなくちゃぁいけないという思いの方が強いです!!力がない過去の僕みたいな人が怖がっているかもしれない!!そんな人の為に力になれるのは力を持っている僕だけです!!その為なら心臓をささげてもいい!!」
「ケケッ!!オレがそれくらいでビビると思ってんのかよ!!オレはイジワルズのリーダーとしての誇りがある!!どんなに強い奴らがいたとしても、必ず目的を成し遂げて調子に乗ってる主催の連中の邪魔をしてやらぁ!!」
良かった…全員しっかり覚悟した上でこの島を出るつもりだ。これなら外に出ても大丈夫そうだ。康一の言い方に何か違和感を覚えたが…まぁいいか


664 : ◆P1sRRS5sNs :2021/08/20(金) 23:58:34 vwCqZLqY0
「よし、これなら大丈夫だな、でも行く前に…まず目標を決めよう、今から何をしに行く為に外に出るのか、俺はこの聖都大学附属病院に早急に向かい、治療手段を確保するべきだと思う、そこでしばらく待機しながらこの殺し合いに抗う人達を集めて、ある程度集まったら改めて様々な情報を話し合い、殺し合いに乗っている奴等を鎮静化していこうと思うんだがどう思う?」
「ええ、確かにそれでいいと思うわ、でもその前にもう一つの島も知りたいわね、人がいるのは確かなんだから」
「ああ、だからここは二手に分かれようと思う、そのもう一人の男に接触して、それによって行動を決めよう、で、その島に行く前に書き置きを残す為に…これを使おう」
「…なんだ?このデカい人形みたいな段ボールは」
「何でもかすみんBOXという奴らしい、ロビンさんの最後の支給品だったんだ、正直使用用途に困ってたんだが…ここにもし他の参加者がこの島に来た時にどう行動すればいいのかを書いた書き置きを残しておこう、しっかりひと工夫もしてな」
「一工夫?」
「確かに必要ね、もし私達が何処に行くのかを書いた紙をそのまま残したら、危険人物にそのまま場所に向かわれてしまう、で、どうするつもり?」
「…ロビンさん、あのぬい「嫌よ」…いや、お願いだ「やだ、絶対離さない」工夫の為に必要なんだよっ!!」
「マダオ、流石にそれは可哀そうアル」
「うーん…開司さんはどのような作戦を行うつもりなんですか?」
「ああ、このBOXとセットであった寝そべりぬいぐるみ、中須かすみを紙の上に置いておくんだ、危険人物はBOXを除いてこのぬいぐるみがあったら馬鹿らしいと考えて興味が失せると思うが、一方で普通の参加者はこの下に何かがあると考える可能性が高いと考えたんだけど…どうだ?」
「可愛い物好きの危険人物がいたらどうするつもりアルか?その作戦」
「いや、少しは普通の参加者に情報を伝えやすくする可能性を高めたいと思ってな」
「だったら偽の紙を表面上に置いといて箱の下や表面の裏側に本当の居場所を載せた紙をおくのはどうだ?」
「それだと普通の参加者も騙されるだろ…安心しろ、例え危険人物が病院に近づいたとしてもそれを見分ける方法は考えてある、だから…ロビンさん」
「…分かったわ…その代わり持ってきてもらうように書き置きに追加してもらわなくちゃ許さない」
「ロビンさんって可愛い物が好きなんですね…意外でした」
「人は見かけによらないって事だ…後、それも信用できるかの指針にするのもいいな、持っている方が信用できる可能性が高い」
「オレはそれには反対するぜェ!!もし仮にそれに爆弾とかの罠がしかけられたらどうするつもりだ?更にそれがもし戦いに巻き込まれて無くなったのを俺達が誤解するんじゃないかって考えたら病院に近寄れなくなるだろ?」
「罠は入る前にカメラを撮る過程でチェックするし、ロビンさんがその場にいたら能力で目とかを生やして観察すればいい、それにあくまでもぬいぐるみは相手を信用する為の方法の一つとして考えると追記するさ、持ってこれなくてもいい、出来るなら持ってきて欲しい、ってな」
「成程な…分かったぜ、それで書き置きは結局どう書くんだ?」
「ああ、『この書き置きを見ている人が、殺し合いに乗っていない人だと信用した上でここに書き残す。俺達は今聖都大学附属病院にいる。多くの人数が集まっていると信じて書き残している。もしアンタが俺達と合流したいんだったら、上にあったぬいぐるみを持って病院に来てくれ、最悪持ってこれなくても大丈夫だ、後この書き込みは捨ててくれ』これでどうだ?」
「良いですね!!これでいきましょう!!」


665 : ◆P1sRRS5sNs :2021/08/20(金) 23:59:22 vwCqZLqY0
…こうして書き置きを残した後、沈んでいってしまった木曾への黙祷(本当は埋葬したかったが…遺体がない為に出来なかった)そして食事をした後…いよいよ本島へ向かう!!
まず、カイジとロビンは体重が重い為にタケコプターを使用し空を飛ぶ、次にナミは運動もかねてモナドを使い海を走り、そして康一はファンタステックライオン…否、飛び立つ前にロビンが説明書を見て、三冊だと負担が大きいが、二冊だと負担を和らげることが出来る事を知り、ペガサスの本だけを使う事にした…つまりライオンペガサスにフォームチェンジし、ゲンガーを抱えながら飛び…無事、本島に着陸した。
「着いたわね…行くわよ」
五人は…まず、先ほど見かけた青年に…声をかける事にした。その青年は注意深くこっちを見ると…おそるおそる声をかけてきた。
「あ、あの…貴方達は…殺し合いには乗ってる?」

「俺達はのってない…そう言うアンタはどうなんだ?」

「わたしものってないよ!!主催の事、許せないって考えてたし…皆さんも主催のこと許せない人だったらわたしも同行していいかな?」

(一応殺し合いにはのってない雰囲気だし、人相を見る限りいい人だと言うのは分かる…だが話し方に違和感があるな…どういう事だ?)

カイジは今まで様々な悪党と出会い、命をかけて賭け事を行ってきた…だから感の良さを使ってどんな人なのかを察する事が出来る。だから多分信用出来ると踏んだ、しかしそれでも何か違和感を感じていた。それは…
「なぁ…その話し方、なんで女っぽいんだ?」
「え?だって私は」
「言わなくていいアル、マダオ、恐らくこの人中に女の人が入ってるアル」
「なんだと!?」
「な、何で分かったの!?胸大きいから分かったの!?」
「いや、それは関係ないわ、ただ…女である私にも何となく推測は出来てたわ」
「え!?あんたおん…ゲフンゲフン、やっぱり女の人は分かってくれるんだね!!」
「つまり、性別も身体に入る基準ではなかったという事ですね」
その後、写真を撮り、彼女も良い人である事は読み取る事が出来た、そして5人は今までの事を話した…
「成程、巨人は康一君だったんだね、渦巻きはゲンガー君の仲間の戦闘でできた物、そして…」
『精神と肉体の考察もそこまで出来たなんて凄いね、僕はずっと島をどうしようか考えていただけだったのに』
「そう言えばお前見えてたんだよな?巨人の事、何で何もしようとしなかったんだ?」
「うん、わたしも変身してそちらに行こうとしたんだけど…それでこの肉体で何を出来るのかを知ってからやろうと思ったらこの肉体に備わっていた魔力が切れて倒れちゃったんだよね…本当に誰かに襲われなかったのは奇跡だよね、目が覚めたらどちら共消えてて…様子を見に行こうとしたら皆が来たんだよ」
「魔力の回復の仕方なら説明書に載ってたわよ、しっかり見なさい」
「うん、反省してる…それで、これからはどうするの?」
そしてこれからの作戦も説明し…
「さて、これからチーム分けだ、それぞれの戦闘力を基に分けてみた、まず、仮面ライダーに変身できるハルトマンと康一は必ず分かれて、次に生身で戦闘力があるロビンと神楽も分かれて、最後にほとんど戦闘力がない俺とゲンガーも分かれる、頭脳担当のロビンと俺も分かれる必要があると考えた、その結果…俺、ナミ、康一が病院へ、ハルトマン、ロビンさん、ゲンガーはもう一つの島に向かってくれ、後、モナドは神楽に譲ってくれ、ハナハナがあるから大丈夫だろ?」
「分け方に筋が通ってるわね…いいわよそれで、必ず戻ってくるわ、精神と肉体にもまた考察が思い浮かんでいるけど、早急だから病院に行ってから話すわね」
「そうか…三人とも、絶対に死ぬなよ…死んだら全て終わりだからな…!!」
「もし銀ちゃんや新八がいたらよろしくアル!!(何でこのマダオ意外と頭の切れはいいのにマダオなんだろ?)」
「承太郎さんにあえたらよろしくお願いします!!」
「ええ、チョッパーはシカの姿をした獣人よ、出来る限り見つけておいて」
「また会おうね!!皆!!」
「ケッ!!お前等もくたばるんじゃねーぞ!!」
こうして六人は三人ずつ分かれて行った…強力な対主催達の運命は殺し合いを光へと導けるのか…!?


666 : ◆P1sRRS5sNs :2021/08/21(土) 00:00:25 BwKabpJA0
以上で文の投下は終了です!!状態表もすぐ投下します。


667 : ◆P1sRRS5sNs :2021/08/21(土) 01:00:54 BwKabpJA0
【C-7、砂浜/早朝】

病院直行組

【伊東開司@賭博堕天録カイジ】
[身体]:長谷川泰三@銀魂
[状態]:健康
[装備]:シグザウアーP226@現実、超硬質ブレード@進撃の巨人
[道具]:基本支給品、タケコプター@ドラえもん、サイコロ六つ@現実、肉体側の名簿リスト@オリジナル
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らず生き残る
1:速やかに病院に向かい、治療手段の確保、危険人物もいる覚悟もしなくちゃな
2:ロビンさんはなかなか頭が良いな、頼りになりそうだ、話も聞くことが出来たらいいが…
3:マリオ達や俺の身体が巻き込まれてなくて良かったぜ…俺が死んだら24億は頼んだぞ二人とも…
4:道中に人がいたら無視は出来ないな

時系列は24億手に入れてキャンピングカー手に入れてそこで寝ている時です

【シグザウアーP226】

1983年にシグザウアー社が開発した自動拳銃。P220の改良型である。
長時間水や泥の中に浸けた後でも確実に作動するほど堅牢であり、耐久性は非常に高い。
予備弾倉×3が同梱。
…どこかでこの説明を見たことがないだろうか?そう、実はこの銃はアニロワ3rdの時開司が所持していた銃でもあるのだ。

【神楽@銀魂】
[身体]:ナミ@ONEPIECE
[状態]:健康
[装備]:魔法の天候棒@ONEPIECE、モナド@大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL
[道具]:基本支給品、タケコプター@ドラえもん
[思考・状況]基本方針:殺し合いなんてぶっ壊してみせるネ
1:早く病院に行って、悪党どもにめちゃくちゃにされるのを防がなくちゃ皆助からないネ!!
2:銀ちゃん、新八、今会いに行くアル、絶対生きてろヨ、後身体もな!!
3:やっぱり皆での食事は楽しかったアル!!
4:私の身体、無事でいて欲しいけど…ロビンちゃんの話を聞く限り駄目そうアルな

時系列は将軍暗殺編直前です

【広瀬康一@ジョジョの奇妙な冒険、ダイヤモンドは砕けない】
[身体]:エレンイェーガー@進撃の巨人
[状態]:健康
[装備]:今は持っていない
[道具]:基本支給品、仮面ライダーブレイズファンタステックライオン変身セット&スペクター激昂戦記ワンダーライドブック、
[思考・状況]基本方針:こんな殺し合い認めない
1:吉良吉影を一刻も早く探さなくちゃ多くの犠牲者が出る!!
2:僕が二人を守り切ってみせます!!この仮面ライダーの力で!!
3:三人とどうか無事に合流出来ますように…そして承太郎さん、早く貴方とも合流したいです!!
4:DIOも警戒しなくちゃいけない…
5:この身体凄く動きやすいです…!!背も高いし!!仗助君の身体良い人に使われていると良いんだけど…

時系列は第4部完結後です。故に霊波紋エコーズはAct1、2、3、全て自由に切り替え出来ます。
そして巨人化は現在制御は出来ません。そして参加者に進撃の巨人に関する人物も身体もない以上制御する方法は分かりません。ただしもし精神力が高まったら…?その代わり制御したら3分しか変化していられません。そう首輪に仕込まれている。
戦力の都合で超硬質ブレード@進撃の巨人は開司に譲りました
また、仮面ライダーブレイズ、ファンタステックライオンへの変身が可能になりました。

【仮面ライダーブレイズ変身セット@仮面ライダーセイバー】

水勢剣流水とワンダーライドブック三つ(ライオン戦記、天空のペガサス、ピーターファンタジスタ)のセット、仮面ライダーブレイズ、ファンタステックライオンへの変身を可能にする。三冊だと負担がかかるが、それ以外、二冊、一冊では負担が少ない。ただし、このロワではライオン戦記がなければ変身は出来ない制限がある。
そしてこのロワで聖剣は継承しなければ使えない、つまり康一から託されなければ使えなくなっている

【スペクター激昂戦記ワンダーライドブック@仮面ライダースペクター×ブレイズ】
仮面ライダースペクター、ディープスペクターの力を宿している本で、仮面ライダーブレイズスペクター激昂戦記へ変身が可能、この姿は紫煙をまとった格闘戦が可能になる。そしてこのロワオリジナル設定として、ワンダーライドブックのページを押すと一定時間ゲキコウスペクターへとなり、紫の翼が生えて空中戦が可能になる。


668 : ◆P1sRRS5sNs :2021/08/21(土) 01:02:04 BwKabpJA0
島捜索組

【ニコ・ロビン@ONEPIECE】
[身体]:大神さくら@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生
[状態]:健康
[装備]:10tと書かれた巨大なハリボテハンマー@ONEPIECE
[道具]:基本支給品、おくれカメラ@ドラえもん、ハナハナの実@ONEPIECE
[思考・状況]基本方針:殺し合いなんて許さない!!
1:すぐ島の様子を見て被害が無いように戻らなければいけないわね
2:いい人に会う事が出来たのは運が良かったのかもしれない、でもこれからはどうなるかしら?
3:ハナハナの力、いつ取り戻すべきかしら
4:こんなに動きやすいのはオハラにいたころぐらいかしら?体が軽い
5:チョッパーの身体…どうか悪用されてませんように

時系列はちょうど二年後に麦わら一味に合流した後です。

【おくれカメラ@ドラえもん】

このロワでは参加者の精神を写す。このカメラによって参加者の精神がどういう人なのかを探る事が出来る。ただし七時間過ぎるとこのロワの動きだけしか知れなくなる。

【ゲンガー@ポケットモンスター赤の救助隊/青の救助隊】
[身体]:鶴見川レンタロウ@無能なナナ
[状態]:人の身体による不慣れ、高揚している、精神疲労(大)、手にダメージ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、近江彼方の枕@ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会、八命切@グランブルーファンタジー
[思考・状況]基本方針:イジワルズ特別サービス、主催者に意地悪してやる。
1:こいつら六人と共にイジワルズ改めジャマモノーズとして活動する。
2:ピカチュウとメタモン、港湾棲姫には用心しておく。(いい奴だといいが)
3:木曾のメモのこと、覚えておかないとな。
4:こいつらを見るとアイツ等を思い出すな…(主人公とそのパートナー達の事です)
5:何でオレが付けた団名嫌がるやつ多いんだ?

備考
※参戦時時期はサーナイト救出後です。一応DX版でも可。(殆ど差異はないけど)
※久しぶりの人の身体なので他の人以上に身体が慣れていません。
 代わりに幽体離脱の状態はかなり慣れた動きができます(戦闘能力に直結するかは別)。
 幽体離脱で離れられる射程は大きくても1エリア以内までです。
※木曾から『ボンドルドが優勝を目的にしてない説』を紙媒体で伝えられてます。
 (この都合盗聴の可能性も察してます)


669 : ◆P1sRRS5sNs :2021/08/21(土) 01:17:04 BwKabpJA0

【エーリカ・ハルトマン@ストライクウィッチーズシリーズ】
[身体]:操真晴人@仮面ライダーウィザード
[状態]:健康、決意、
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ウィザードライバー&ドライバーオンウィザードリング&ハリケーンウィザードリング@仮面ライダーウィザード、サンダーウィザードリング@仮面ライダーウィザード
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない
0:早く島へ向かってすぐに病院に行かなくちゃ…!!
1:この仮面ライダーの力で二人はわたしが守るよ!!
2:元の世界に戻れても、ネウロイに落とされたあの場所に逆戻りする羽目になる気がする…。それなら首輪を外す方法探しながら、脱出手段を見つけちゃえばいいよね!
3:トゥルーデの身体が…!!悪用されてないことを信じるしかないよね?
4:他の良い参加者と会えて色々話せて良かった!!色々話し合えたし、運が良かったかも
5:もし操真やトゥルーデ、そして今いる仲間の仲間が殺されてたら…わたしは主催を許さない。
[備考]
※参戦時期は「RtB」ことストライクウィッチーズ ROAD to BERLINの6話「復讐の猟犬」にてネウロイに撃墜された後からです。
※作中にて舞台になっている年代が1945年な為、それ以降に出来た物についての知識は原則ありません。
※晴人のアンダーワールドに巣食うウィザードラゴンの意識は封じられてはいませんが、ハルトマンとコミュニケーションを行う事は基本的に出来ません。
※操真晴人の肉体の参戦時期は「仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマン対エグゼイド&ゴーストwithレジェンドライダー」以降です。また経歴の記述については、正史(確定してるのはウィザード本編、MOVIE大戦アルティメイタム、戦国MOVIE大合戦のウィザードパート、小説 仮面ライダーウィザード)以外の作品にも触れられているようですが、具体的にどうなっているかは後続にお任せします。

【ウィザードライバー&ドライバーオンウィザードリング&ハリケーンウィザードリング@仮面ライダーウィザード】
仮面ライダーウィザードハリケーンスタイルに変身するために必要なアイテム3つ。一つの支給品扱いである。
ウィザードライバーはウィザードに変身する為のツールで、本来なら装着型ではないが今ロワでは主催の手により装着型(ただし一度装着すると以降は本来と同じく内蔵型となる)へと改良されている。普段は通常のベルトとして、バックルの手形部分のみが出現している。その状態でも一部の魔法は右手のリングを使えば使用可能である。
ドライバーオンウィザードリングを用いる事でベルトが完全に出現する。
ウィザードリングを使用する際は、右手にはめた物の場合は手形部分をかざした時の向き、左手の場合は左方向にしないと使用する事が不可能な他、同じ方向の魔法を連続使用したい場合は手形を一度逆向きにしてからすぐに戻す必要がある。
なお、手形の向きはバックルの左右に備わっているレバーを上下へと動かす事で変更可能。
ちなみに音声が煩いが、流れる音声は魔法の呪文を短縮した物である。
ハリケーンウィザードリングは使用するとウィザードの姿を風属性のハリケーンスタイルへと変えて、風や大気等の操作や、風を纏う事による高速移動や飛行を可能とする効果がある。

【サンダーウィザードリング@仮面ライダーウィザード】
使用すると稲妻を放つことが出来る。また風の力を加えた場合は強力な竜巻を発生させる事も可能

服装は全員普段着です。悪魔の実は肉体依存なのでロビンは能力が使えませんが康一の霊波紋は精神依存なので使えます
全員の共通目的は殺し合いの破壊です。

ラブライブ、ドラえもん、スマッシュブラザーズ、グランブルファンタジーのキャラの肉体がこの殺し合いに参加していると考えています。

現在島に通じる道路は壊れており、主催が直さない限り通れません。

そして今までの話し合いの情報は全て全員が共有しています

【中須かすみセット@現実&ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会】

中須かすみの寝そべりが書き置きの上にあるかすみんBOXがC-8の池の前に置かれています。










否、実は一部の表記に間違いがある。


670 : ◆P1sRRS5sNs :2021/08/21(土) 01:32:41 BwKabpJA0
それは、伊東開司の表記にある。

思い出してほしい、カイジはこの殺し合いがあった時にどこにいたのか

そう、ギャンブル場である。そのギャンブル場には何でも博打の為の道具がある。それにあのサイコロも例外ではない、くすねる事も可能である。

支給品が二つしか配られなかったのでは?否、三つ配られている

その三つ目は相手を退ける事が可能な代物でもあるがこちらにもリスクがある道具だ。


ではその三つ目を何故ずっと隠しているのか?それは本当にこちらが手がなくなった時、相手が表情を見て、こちらが諦めきっているのを悟った時に繰り出すことで相手の不意を突くことが出来るからだ

つまり本当の状態表はこうである。

【伊東開司@賭博堕天録カイジ】
[身体]:長谷川泰三@銀魂
[状態]:健康
[装備]:シグザウアーP226@現実、超硬質ブレード@進撃の巨人
[道具]:基本支給品、タケコプター@ドラえもん、サイコロ六つ@現実、肉体側の名簿リスト@オリジナル、ランダム支給品1(他の書き手に任せますが、リスクがあるが強力な何かでお願いします)
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らず生き残る
1:速やかに病院に向かい、治療手段の確保、危険人物もいる覚悟もしなくちゃな
2:ロビンさんはなかなか頭が良いな、頼りになりそうだ、話も聞くことが出来たらいいが…
3:マリオ達や俺の身体が巻き込まれてなくて良かったぜ…俺が死んだら24億は頼んだぞ二人とも…
4:道中に人がいたら無視は出来ないな
5:この最後の切り札…使う時が来なければいいんだけどな…

時系列は24億手に入れてキャンピングカー手に入れてそこで寝ている時です。

最後の最後まで手を考えている男である。流石駆け引きの修羅場を生きてきた男だ。だがそんな彼にもきずかなかったことが幾つかある。ただこれは仕方がないのだ。

一つ目はおくれカメラの事である。

あのカメラは本来人ではなく、場所の過去を撮る物である。

だがなぜ人の過去を撮るのか?それは場所の過去を撮る場合、「主催者達にとって不都合だからである」

もし場所を撮る事が可能の場合、この土地がどのように来たのかが探られてしまうからである。

果たしてこの場所を探られる事に不都合があったのか?もっとも、それに気づけないのは本来の仕様を知らないから当然ではあるが

そしてもう一つ気づけなかった事…それは頭脳のキレが少し落ちている事である。

あの書き置きのやり方、少しお粗末ではないかと思わなかっただろうか?もし危険人物がBOXの底が気になる人が出て、ねそべりだけ邪魔だからどかされて紙が露わになってしまったらどうなってしまうのだろうか?その為の手段も考えているとは言ったが、ならいっそのこと残さなければいいだけである

では何故あのやり方をしたのか…それは開司だけのせいではないかもしれない

そう、伊東開司は駆け引きの世界で生きてきたが…肉体、長谷川泰三はギャグマンガの世界で生きたマダオである。

その影響が精神まで干渉しあうようになってきているのか…それはまだ分からない、何故なら



このチェンジバトルロワイヤルは…まだ始まったばかりだからだ


671 : ◆P1sRRS5sNs :2021/08/21(土) 01:33:05 BwKabpJA0
タイトルは「分かつ希望の光、輝くのか、消えるのか」です。


672 : ◆5IjCIYVjCc :2021/08/21(土) 02:01:16 sJq5itHk0
投下乙です。
しかし、申し訳ありませんが一つ頼みがあります。
私は現在、ロビンと神楽に支給された品が何であるのかがよく分からなくなっています。
私はこれまで、話の描写からロビンの支給品は「10tと書かれた巨大なハリボテハンマー」、「おくれカメラ」、「シグザウアーP226」の3つだと考えており、まとめwikiの支給品一覧にもそのように記載していました。
しかし、今回新たに最後の支給品として「かすみんBOX」が登場しました。
つまり先ほど挙げた3つの支給品はどれかが間違っていることになります。

今のところ、私は「シグザウアーP226」が元々神楽に支給されたものだと考えていますが、確証が持てません。
そのため、まとめwikiの支給品一覧のページを確認して、間違いのある部分があったら知らせてもらえると助かります。

お手数をかけることになりますが、どうか連絡のほどをよろしくお願いします。


673 : ◆P1sRRS5sNs :2021/08/21(土) 12:08:09 BwKabpJA0
お答えします!!

最初に開司が出た「圧倒的…!!」の小説を見れば分かるんですが、カイジはシグザウアーP226を『何かの銃』という形で最初から持ってます。なのでロビンはその銃を持っていたわけではないはずですが…

確認してくださると嬉しいです!!


674 : ◆P1sRRS5sNs :2021/08/21(土) 12:31:06 BwKabpJA0
追記

ごめんなさい!!そうなると今度はタケコプターがおかしくなりますよね!!

なので二つセットになって神楽に配布されていたことにします!!文章も訂正します!!


675 : ◆5IjCIYVjCc :2021/08/21(土) 12:35:25 sJq5itHk0
質問の回答ありがとうございます。

今回私が勘違いすることになったのは、このスレの>>422において銃をロビンから渡された描写があること、そして>>424の状態表において「何かの銃」と「シグザウアーP226」を別々に持っていたことが理由でした。
現在、まとめwikiに収録済みの「ジャスティスフォーの運命、丁か、半か」において該当部分の文章・状態表がともに修正されていることを確認しています。

この度は私の都合でお手数をおかけして申し訳ありませんでした。


676 : ◆P1sRRS5sNs :2021/08/21(土) 12:45:50 BwKabpJA0
追記

本当に再び追記申し訳ございません、私自身も神楽からもらったという追記を直していたのを忘れてました

なので再び直します


677 : ◆5IjCIYVjCc :2021/08/21(土) 13:38:17 sJq5itHk0
修正、確認しました。
ありがとうございました。


678 : ◆P1sRRS5sNs :2021/08/21(土) 17:52:30 BwKabpJA0
他にも『分かつ希望の光、輝くのか、消えるのか』に様々な追記修正を行いました。今後分かれた六人がどうなるのかを考えてくださると嬉しいです。

ですがゲンガーとハルトマンに関しては何方共全く詳しく知らないので口癖におかしい所があったら注意してくださると嬉しいです。

それから◆ytUSxp038Uさん、一つ意見したい事があるのですが…

戦兎が仮面ライダークローズの出来事を経験したとされていますがそうなると平成ジェネレーションズFOREVERも経験したことになります。(仮面ライダークローズは平成ジェネレーションズFOREVERの後日談なので)

この事が何が不味いのかというと、戦兎はFINALのライダーだけではなく他の全ての平成ライダーの事を知っている事になります。詳しく知ったわけではないのですが、常盤ソウゴ、仮面ライダージオウは変身者もしっていますし、同時変身までしています。

つまりカメンライドできるライダーの数はエグゼイド・ゴースト・鎧武・フォーゼ・オーズだけでは収まらないという事です。このことはどうするのでしょうか?

それからもう一つ、最強フォームはジーニアスだけ唯一なれるそうですが…エグゼイドのハイパームテキも知っていなければいけないと思います。FINALのラストバトルの時、トドメのダブルキックの時、ビルドはラビットタンクスパークリングで、エグゼイドはハイパームテキだったので

どうするつもりなのか教えてくださると嬉しいです。

そして、薄々気づかれているでしょうが何故ラブライブに関係する物が多いのかというとラブライブがかなり私大大大大大好きなんです、ですがキャラの肉体や精神が殺されるのが嫌だったのでアイテムという形で出しました。だからって他のキャラが嫌いなわけでは絶対ないですけど
なので違和感を感じた方には申し訳ございません(ですが実を言うと朝香果林@ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会[身体]ロロノア・ゾロ@ONEPIECE、ベジータ@ドラゴンボール超[身体]朝香果林@ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会、ナミ@ONEPIECE[身体]エマ・ヴェルデ@ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会、矢澤にこ@ラブライブ![身体]月野うさぎ@セーラームーン、高咲侑@ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会[身体]矢澤にこ@ラブライブ!、飛電或人@仮面ライダーゼロワン[身体]宮下愛@ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会等、不破諌@仮面ライダーゼロワン[身体]松浦果南@ラブライブ!サンシャイン!!、平安名すみれ@ラブライブ!スーパースター!![身体]ウルトラマンギンガ@ウルトラマンギンガ等、結構よさそうな組み合わせも山ほど考えてはいたんですけどどうなるかを考えて投稿が出来なかったのが悔しいです。皆さんもキャラへの愛着故にパロロワに投稿するかどうか迷う事ありますか?出来るなら意見を聞きたいです)

あ、ですがキャプテン・マーベラス@海賊戦隊ゴーカイジャー[身体]モンキーDルフィ@ONEPIECE、カーズ@ジョジョの奇妙な冒険[身体]カカシ@NARUTO等も思いついてましたから時間があったら投稿してみたかったかもです


長文失礼しました。これからも皆さん頑張ってください!!


679 : ◆ytUSxp038U :2021/08/21(土) 21:29:48 eW7xh7ds0
ご意見ありがとうございます

質問を質問で返す形となり大変申し訳ないのですが、
氏は「ネオディケイドライバーは戦兎本人が知っている仮面ライダーにしかカメンライドできない制約がある」と勘違いしてはいないでしょうか?
自作にて戦兎はゴースト・エグゼイド・鎧武と平ジェネFINALで共闘したライダーにカメンライドしました
ですがそれは「平ジェネFINALに登場したライダーにしかカメンライドできない」のではなく、話を作る上でこれらのライダーが丁度良いと私が判断したからです
今後の展開によってはジオウなどのライダーに変身させるかもしれませんし、その際には必要と感じたら平ジェネFORVERに関する補足も入れるつもりです

最強フォームで唯一ジーニアスになれるのも、他のライダーの最強フォームのカードまで支給するのは過剰戦力だから、
戦兎が本来変身するビルドの最強フォームのみに留めた、という理由だと考えています
(これに関しては戦兎と甜歌の候補話を投下した◆1qfrROV/6o氏の考えと食い違う部分があるかもしれないので、絶対とは言えませんが)
ハイパームテキの存在を知っている=ハイパームテキに変身できないのはおかしい、と言う意見は自分には分かりかねます

もし私が氏の意見に見当違いな答えを返しているのでしたら、その時は謝罪させて頂きます
また平ジェネFORVERの出来事に関して戦兎が一切触れていないのが不自然であれば、wikiの拙作にて加筆を行います

連絡をお願いします


680 : ◆P1sRRS5sNs :2021/08/21(土) 22:33:34 BwKabpJA0
返答ありがとうございます。…成程、改めて読み返してみますと、『平成ジェネレーションズFINALの記憶があるため、仮面ライダーエグゼイド・ゴースト・鎧武・フォーゼ・オーズを知っています』『ライドブッカーには各ライダーの基本フォームのライダーカードとビルドジーニアスフォームのカードが入っています』とはなっていますが、知らないライダーには変身が出来ないとは書かれてなかったです…ごめんなさい!!知っているから変身が出来るのではなく、話の流れで変身する対象に選んだという事ですね!!わかりました!!早とちりしてしまいすみません!!

ですが…やはりジオウも知っているには加えるべきではないかとは思いました。W主人公を務めた作品におけるもう一人の主人公ですから、正直ジオウの通常フォームってそんなに強くないから戦力の増加にはつながりませんし、仮面ライダークローズを経験したという証明にもなりますし…
そして最強フォームにムテキを加えた方が良いのでは?は忘れてください!!カードとして最初からなかったんですね!!すみません!!

では失礼します


681 : ◆ytUSxp038U :2021/08/21(土) 22:45:10 eW7xh7ds0
返答ありがとうございます。納得頂けたのなら幸いです
ただ氏の仰るように、平ジェネFORVERを経験済みでジオウらと面識があると記載しなかったのはこちらのミスです。申し訳ありません
wikiの状態表にて修正を行います


682 : ◆1qfrROV/6o :2021/08/22(日) 19:52:19 J1TUg6cU0
戦兎と甜花の候補話を投下した者です。

ネオディケイドライバーでの変身については概ね◆ytUSxp038Uさんの仰る通りで
最強フォームについては過剰戦力だと思ったためにジーニアスフォームのカードのみを支給しています。
(会場のどこかにハイパームテキのカードが存在すれば、それを入手して変身できる可能性はあると思います。)
平ジェネFinalの出来事から、面識のあるライダーなら能力も知っている為
戦いやすいだろうと思いステータスに記載しただけなので、変身自体はライダーカードさえあれば可能です。

また平ジェネFOREVERの話については、少し調べていただくとわかるのですがTV本編とはリンクしていない可能性が高いです。
監督の話などから察するに、FOREVERの彼らは「仮面ライダービルド」「仮面ライダージオウ」という作品の中からアタル君の世界に現れたと考えられます。
「仮面ライダーは、現実の存在じゃない」というセリフがあるように、この作品を正史に組み込んで話を描くのは難しいと思い
候補作の段階では意図的に平ジェネFOREVERについてボカシて、ジオウとの面識などについても記載しないようにしています。
(逆に平ジェネFinalについてはビルド本編と密接に関係した話になっている為、自作でもその経験があったことを描写しています。)

もちろんこれは二次創作なので、後続の方が平ジェネFOREVERも正史として組み込んで話を書くのであればそれでも全然いいとは思います。
候補作の時点ではこういうつもりで書いていた、程度の話として受け止めていただけると幸いです。


683 : ◆ytUSxp038U :2021/08/22(日) 22:21:43 hJe4pLlA0
ご連絡頂きありがとうございます

私としては今後平ジェネFORVERのネタをロワ本編に組み込むかどうかは、全くの未定となっています
もしかしたら平ジェネFORVERについて触れるかもしれませんし、反対に一切触れない可能性もあります
なので、既に収録作品の状態表を修正しましたがそれらは一旦削除し、
もし平ジェネFORVERに関して触れる展開を入れた話を投下した際に改めて、平ジェネFORVERを経験済み・ジオウとの面識があるといった説明を備考に付け加える形を取りたいと思います

ただこれはあくまで私が戦兎を登場させる話で、平ジェネFORVERに関するネタを書いた場合の話です
他の書き手の方が、平ジェネFORVERは正史に組み込まれないパラレル作品として扱うのであっても問題はありませんし、
正史として組み込む場合であっても、◆1qfrROV/6o氏の仰る通り良いと思います

何だかややこしくしてしまい申し訳ありません
ご意見とご返答をくださった◆P1sRRS5sNs氏、連絡をくださった◆1qfrROV/6o氏、改めてありがとうございました

投下します


684 : Animal Change 〜一歩前進?〜 ◆ytUSxp038U :2021/08/22(日) 22:23:59 hJe4pLlA0
「じゃあ、入ろっか」
「お、おう」

心なしか緊張しているリトとは反対に、いろはは臆さず足を踏み入れる。
まず目に入ったのは綺麗に並んだソファー。
年季が入っているのだろう、パイプ足の部分が少々錆び付いていた。
自動販売機の明かりが、奥に続く通路を照らしている。
室内を見回しているリトへ声を掛けた。

「それじゃあまず、一階からだね」
「ああ、分かったよ」

警戒しつつも及び腰にはならず、並んで歩き出した。

黎斗と分かれた後、二人は自分達がいる市街地を調べてみることにした。
もしかしたら黎斗以外にも参加者がいるかもしれないからだ。
気味が悪いくらいに静まり返った街を歩き続け、やがてとある施設を発見した。
警察署。警察官の勤務場所として広く知られる建造物だ。
こんなものまであるのかと少しばかり驚いているリトへ、いろはは警察署の探索を提案した。
ここへ駆け寄り警察に助けを求める、といった理由では勿論ない。
バトルロワイアルの一施設に警察の人間がいるはずはなく、そもそも警察が介入してどうにかなる案件ではないだろう。
周囲にある民家と比べて目立つこの施設なら、参加者が立ち寄る可能性も高い。
もし誰もいなくても、身を守る武器が手に入るかもしれないのだ。

(にしても、凄いな環さんは…)

隣を歩く女性を見上げ、思わず感心する。
殺し合いの最中とはいえ、警察署に忍び込むという行為にリトは少しばかり抵抗があった。
なのにいろははこうして堂々としている。
自分に支給品の確認を促した時といい、こんな状況でも冷静さを失わないのは、魔法少女としての場数を踏んできているからだろうか。
仮にも高校生の自分が年下の少女に引っ張られる形となっているのは、何とも情けなく感じる。

(まぁ、そういうのは今に始まった事じゃないか…)

妹を始めとして、自身を取り巻く少女達の顔がポンポン浮かぶ。
いろはに見えないように苦笑いを浮かべつつ、しかしいざという時は自分も出来る事をやらねばと気を引き締める。
魔法を使えず武器らしい武器も持っていないが、女の子一人に押し付けてじっとしているだけ、というのは御免だ。


粗方の部屋を調べ終えた二人は、一階の待合室で腰を下ろしていた。
自分達以外に参加者はおらず、人がいた形跡も見当たらなかった。
念の為に署内の電話を使ってみたが、どれも反応は無し。
外部との連絡手段を絶つくらいは当然やっているだろうと予想できた為、これに関してはさほど落胆しなかった。
では何か役立つ物は見つけられたのかと言えば、あるにはあったと言う所か。
警察官の基本的な装備である警棒、日本警察が正式採用している拳銃。
以上をそれぞれ二つずつ手に入れられた。

「何だろうな…もっといっぱいあるイメージだったんだけど…」
「うーん、そこまで都合良くはいかないね」

警察署と言うからにはもっと沢山の銃火器や防弾シールド等があると考えていた為、この成果には肩透かしを食らう。
とはいえ何も見つからないよりはマシだ。
ついでにもう一つ、武器として使える物を発見する事ができた。
ただそれは警察が使うイメージとはかけ離れた物だったが。


685 : Animal Change 〜一歩前進?〜 ◆ytUSxp038U :2021/08/22(日) 22:26:14 hJe4pLlA0
「何でこんなのがあるんだろ……」
「さぁ……」

草刈り用鎌と分銅を鎖で繋いだ、所謂鎖鎌と言う武器。
漫画で忍者が使っていそうな物が何故警察署にあったのか。
ミスマッチにも程があるが、一応何かの役に立つかもと思い回収した。
一応は、放置して後々危険な参加者に拾われるのを防ぐ事にもなる。

互いのデイパックに回収品を仕舞うと、いろはは改めて自分の状態に頸を傾げた。

(自分で言うのも何だけど、今日の私、本当に凄い落ち着いてるなぁ)

もしも普段のいろはであればリトと同じく、殺し合いであろうと警察署に忍び込み銃を持ち去るなど、少々腰が引けていただろう。
それがどうだ。少しも取り乱さず、身体は幼いが中身は年上の少年を引っ張っている。
これでは本当にやちよのような、「頼れるお姉さん」になったようだ。
魔法少女としてリトを守らなければという義務感のようなものが、いろはに冷静さを齎しているのか、
それとも高町なのはの肉体となった事で精神に影響が及んでいるのか。

(大丈夫、だよね……?)

後者の可能性を考え、いろはは少しだけ恐くなった。
今はまだ冷静な思考ができるという程度の影響しかない。
だが長くなのはの肉体に入っていたら、別の影響も受けてしまうのではないか。
思考も、下手をすれば記憶までもが環いろはから高町なのはに塗り替えられてしまい、
みかづき荘の皆や、ういの事を忘れてしまう可能性が無いとは言い切れない。
二度も妹の記憶を失い、更には大切な友だちの事まで頭から抜け落ちるなどいろはには耐えられない。

「環さん?大丈夫か?」

掛けられた言葉にいろははハッとして声の主を見る。
急に黙り込んだいろはを心配してか、リトが不安気に見上げていた。
余計な心配をかけさせてしまったと申し訳なく感じる。
今考えたのはいろはの推測に過ぎない。
確たる証拠もないのに不安がっていては、リトも迷惑だろう。

「何でもない、大丈夫だよ」

自身の考えを話してリトを混乱させるつもりはなく、笑みを浮かべて誤魔化した。
リトの方も少々釈然としないものがありつつも、笑みを向けて来た相手に食い下がる事はしなかった。
すっかり慣れてしまった愛想笑い。
身体が変わってもこういう部分は変わらないんだなと、自嘲気味な思いが浮かんだ。


◆◆◆


686 : Animal Change 〜一歩前進?〜 ◆ytUSxp038U :2021/08/22(日) 22:28:04 hJe4pLlA0
「うわっ…」
「おっきいねぇ…」

警察署を後にした二人は黎斗の指定した合流場所、風都タワーに来ていた。
橋を渡って街の外に向かおうかとも考えたが、今から出て行っては黎斗との合流に間に合わなくなるかもしれない。
自分達が出会った唯一の参加者だ、待ち惚けさせて無駄に関係をギクシャクさせたくも無い。
ならここは一足先に風都タワーへ赴き黎斗を待ち、合流し情報を交換した上で街の外へ出ようとなった。
それに風都タワーは黎斗が合流場所に選んだだけあって、ここら一帯で最も目を引く建造物だ。
ならば自分達が警察署を探索している間に、誰かが訪れていたとしても不思議は無い。
或いは黎斗以外の参加者がやって来る可能性だってある。
親しい者の身体が巻き込まれていないかを確認したいリトとしては、そんな悠長なと思わないでもなかったが、
一人で焦って飛び出し、いろはや黎斗へ迷惑を掛けたいとも思わない。
よってここはいろはの提案に賛同した。

到着し風都タワーを見上げると、その大きさに感嘆の声が漏れる。
遠目にも姿を確認出来た事から分かってはいたが、間近で見るとやはり迫力を感じる。
付近の高層マンションを容易く追い越し、巨大な風車がゆっくりと回転している。
今が殺し合いなどでなければ観光気分で眺めていられただろうが、残念ながら呑気に見上げ続けている訳にもいかない。

自動ドアを抜けエントランスホールへ入る。
当たり前だが本来いるであろう受付スタッフは影も形も見当たらず、照明がチケット売り場を寂しげに照らしていた。
いろはが真っ先に確認したのは入口近くにある案内板。
タワー内部の説明が簡易に記されたそれには、展望台の事も書かれていた。
特に第二展望台は街全体を見渡せるとのこと。
であれば付近の様子をチェックするのに丁度良いと判断、リトも特に断る理由は無く、早速移動する事となった。

エレベーターへ足を運ぶ最中、リトはふとある事を思った。
自分もいろはも殺し合いに乗らず元の体に戻ろうとしている。
だが主催者達がそんな真似を許すはずは無く、仮に戻れる方法が見つかったとしても、首輪を爆破されればジ・エンドだ。
ならば先に首輪を外す必要があるのだが、リトにそんな技能は無い。
首輪解除が可能な人物で真っ先に思い付くのはララだ。
発明家でもある彼女ならば首輪をどうにかできるかもしれない。
尤も、ララ本人は殺し合いには不参加である為、彼女の力を借りるのは不可能であるが。

(…いや何考えてんだよ俺!ララや皆が巻き込まれて良いはず無いだろ!)

ほんの一瞬でもララの不在を残念がった自分へ怒りを抱く。
殺し合いのせいで彼女達が傷ついたり、誰かを傷つけなければならない状況に追い込まれるなどあっていいはずが無い。

「結城さん?どうしたの?」

自然と険しい表情になっていたのだろう。
警察署の時とは反対に、いろはが心配そうに見つめていた。

「あ、いや、この首輪を外すにはどうしたら良いのか分かんなくてさ…」
「首輪、かぁ…」

顎に手当てて考え込む。
いろは自身に首波を外せる能力は無い。
スマホの操作にも苦戦するというのに、精密機械の解析など不可能である。

「誰か機械に強い人に任せるくらいしか今は思い浮かばないかな」
「そっか…。まぁそうだよな……いや待てよ?」

何かを思い出したようにリトはデイパックを開く。
取り出したのはユーノ・スクライアのプロフィール用紙。
プロフィールを凝視するリトに、何が書かれているのかといろはも覗き込む。
最初に確認した時はそこまで深く考えていなかったが、ユーノが使える魔法に一つ、首輪をどうにかできるかもしれないものがあった。
経歴の欄を見ると、ユーノは初めて地球に来た際、魔法で動物の姿になっていたと記されている。


687 : Animal Change 〜一歩前進?〜 ◆ytUSxp038U :2021/08/22(日) 22:29:57 hJe4pLlA0
「動物?ライオンとかに変身したの?」
「いや、もっと小さい…フェレットになったみたいだ」
「フェレット……あっ、そういう事か」

いろはもリトが何に気付いたのかを察した。
ユーノの肉体に填められている首輪は、人間の子ども用サイズと言うべき大きさ。
だがもしも今の身体よりも小さい、フェレットの姿になれば人間サイズの首輪も外れるのではないか。
試してみる価値は十分ある。
問題はどうやったらフェレットに変身できるかがさっぱり分からないことだ。

「肝心の魔法の使い方が分からないんじゃあ、意味ないか…」
「うーん…集中してイメージしてみる、とか?」
「イメージ?」
「うん。自分が動物の姿になる瞬間を強く思い浮かべれば、何か起きるんじゃないかな?」

そう言われて思い出すのは、以前に何度か人間以外の姿に変身してしまった時のこと。
ネズミのような小さい動物になった事もあれば、妹の下着という生物ですらないものになったこともある。
下着はともかく、ネズミになった際の感覚は役に立つかもしれない。

集中してあの時の感覚をイメージする。
人間の手足から、小さな動物の足へ。
人間の体から、毛に覆われ尻尾が生えた体へ。
自分の肉体がまるっきり別の生物へと変わった感覚を、頭に強く思い浮かべる。
すると奇妙な事に、ある言葉が思い浮かんだ。
それはリトの知らない言葉。だが疑問を抱くより先に、奇妙な言葉を自然と口に出していた。

「“――――”」

何かの呪文にも聞こえる言葉だった。
それが引き金となったのか、リトの姿はあっという間に変化した。
少年の肉体が見る見るうちに縮み、人間のものとはかけ離れた形へとなる。
リトが立っていた場所には、柔らかそうな体毛に覆われた一匹の小動物がいた。

「わっ!凄い、ほんとに変身しちゃった…」
「お、おお…成功したのか…」

フェレットの姿となったリトを両手で抱きかかえ、まじまじと見つめるいろは。
魔法少女への変身と違い、人間からまるっきり別の生物へと姿を変える魔法など見るのは初めて。
驚きと興味の入り混じった瞳を、可愛らしい動物になった同行者へ向けた。
間近に迫るいろはの顔に気恥ずかしさを感じたリトは、誤魔化すように体をさする。
動物となったからか服は消えていた。
だが変わらずに身に着けている物も一つ。

「首輪は…外れてないか……」

フェレットの小さな首には、これまた小さくなった首輪が巻かれている。
変身して首輪を外す目論見はあっさりと失敗したようだ。
これくらいは主催者も想定済みだったのだろう。
ガックリと肩を落とすリトに、いろはは苦笑いを返す。

「あ、でも魔法が一つ使えるようになったから、全部が無駄だったって訳じゃない、と思うよ?」
「んー…まぁ、それもそっか」

果たして使い道があるかどうかは不明だが、それでも魔法が一つ使用できるようになったのは収穫だ。
そう自分を納得させる。


688 : Animal Change 〜一歩前進?〜 ◆ytUSxp038U :2021/08/22(日) 22:32:29 hJe4pLlA0
首輪が外れないと分かった以上は、フェレットのままでいる必要も無い。
元の姿に戻るには、多分さっきとは反対に人間に戻った瞬間をイメージすればいいはず。
そうすればまた何かの呪文が浮かび上がるかもしれない。
知らないはずの呪文が何故いきなり頭に浮かんだのかは分からないけど、今の所は特に悪い影響は無い。
とにかく一旦人間の姿に戻ろうと、いろはの手の中から地面へ飛び降りようとした。

が、結城リトという人間は女性を目の前にして穏便に事を運べた試しが無い。
此度も彼にとっては不運極まりない体質により、思わぬトラブルが発生した。

「へっ?」
「えっ?」

リトが飛び降りた先は地面ではなく、いろはの胸元。
無自覚に管理局の制服を開けさせ、下着に包まれた乳房の隙間へと頭から突っ込んだ。

「…!!!?!ちょ、結城さん…!」
「うわぁああああああああ!?ご、ごめん!すぐに出るから…!」

慌てていろはの胸元を脱出しようとする。
しかしその動きによりフサフサとしたフェレットの毛がいろはの柔肌を刺激し、こそばゆい感覚を与える。
激しく動く尻尾は、まるで筆でなぞるかのような感触で乳房を這い回った。

「はあぁ…やっ、あぅ…!」

自分の体で無いとはいえ、受ける感触は本物。
本人の意思とは無関係に熱い吐息が漏れる。
だがリトとてわざとやっているのではない。
急いで脱け出そうと動いている。
可愛らしい動物とはいえ立派な鋭い爪が生えている。
万一にも爪で引っ掻きいろはの身体に傷をつけてはならないと、前足の肉球部分を先に服の外へ出そうとした。

「んあああああっ!!」

突き上げた前足の肉球は乳首を擦るように当たった。
痺れるような未知の刺激に、一際甲高い嬌声が響く。
またもやよからぬ事をやってしまったリトは、強引にでも、されど相手の身体に傷を付けないように脱け出そうとする。
その間、いろはの嬌声が更に大きくなったが、どうにか胸元を脱出し、地面に落ちた。

「いてて…」

上手く着地出来なかったせいで、背中を打ち付けてしまった。
しかし痛みに気を取られている場合ではない。
リトが出て行ったものの、これまで味わった事のない刺激を受けたいろはは腰を抜かしてしまった。
自分の足元にいる存在に気付かずに。

「ぎえええ!つ、潰れる…!」

腹部へ圧し掛かる重みにリトは呻き声を上げる。
いろはの尻に圧し潰される形となってしまい、ジタバタと体を動かす。
このままではフェレットの姿のまま死に、いろはを人殺しにしてしまう。
それはダメだとどうにかいろはに気付いてもらおうと、必死に前足を振り回した。

「ひううううっ!?結城さ…擦ら…ないでぇ…!」

下着越しにフェレットの前足で撫でられる。
またもや襲い掛かる刺激に、いろはは息も絶え絶えに叫んだ。

肉体が変わろうとも、リトの天性の才と言うべきテクニシャンぶりは健在。
もしここにデビルーク星の第三王女がいたら、畏敬と興奮の混じった熱い視線をぶつけていただろう。





689 : Animal Change 〜一歩前進?〜 ◆ytUSxp038U :2021/08/22(日) 22:36:22 hJe4pLlA0
「本っっっっ当にごめん!」
「……」
「謝って済むような事じゃ無いのは分かってる。でも、酷いことをしてごめん…!」

額を床に擦り付ける勢いで頭を下げるリト。
謝罪の相手は勿論、赤面しそっぽを向いているいろはだった。

どうにか人間の姿に戻ったリトはすぐさまいろはへ頭を下げた。
これまでにも自分の体質のせいで、多くの異性へセクハラ同然の事をしてきた。
それが今回も起こり、こうしていろはにまで辱められてしまった。
最初にスカートへ頭を突っ込んでしまった時の比では無い。
例え故意に引き起こした訳でなくとも、自分のせいでいろはを傷つけてしまったのは事実。
許してもらえるはずが無いとは分かっているが、精一杯の謝罪をした。

リトの真剣な様子を見て、いろはは一度ため息をすると口を開いた。

「もういいよ、頭を上げて?結城さんがわざとやったんじゃないのは分かってるから。
 それに、そういう事をするような人じゃないのも、一緒にいて知ってるし…」
「え、で、でも俺…環さんの胸に突っ込んだり、スカートの中にも…」
「わ、わざわざ言わなくてもいいから…!」
「あっ、ご、ごめん」

正直頬を叩かれるか、心底軽蔑されると思っていたリトからすれば意外な答えだった。
だがいろはとしてはリトが悪意を持って女性を襲うような人物でない事はこの数時間で理解できた事だし、
先程のハプニングだって、慣れないフェレットの身体が原因の事故のようなもの。
変に誤魔化さず誠心誠意謝ってくれる人を突き放すような真似は、いろは自身やりたいとは思わない。

「そ、それより、いい加減展望室に行こ?」
「あ、うん…」

気まずくなってしまった空気を無理やり打ち切るように、エレベーターへと向かう。
いろはが許してくれたとはいえ、やはりリトは女の子に恥ずかしい思いをさせた事を気にしているようで表情が暗い。
けれどそんな風に気にするのなら、やはり彼は悪い人では無いんだなと思った。

(それにしても…やちよさんが知ったら何て言うんだろう)

魔法少女の先輩であり、信頼できる仲間。
そしてみかづき荘の皆を纏めるお姉さんのような人。
彼女がいろはとリトの間に起きた事態を知ったらどう反応するのか気になった。
「環さんにこういうのはまだ早いわ」、とお説教を受けるだろうか。
「ウチの環さんに手を出すなんていい度胸ね」、とリトへの怒りを燃やすかもしれない。

どちらにしても良い結果にならないのはほぼ確実。
生きて帰れてもこの事は知られないようにしようと、密かに誓ういろはだった。


【D-4 街 風都タワー/早朝】

【環いろは@魔法少女まどか☆マギカ外伝 マギアレコード】
[身体]:高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[状態]:健康、精神疲労(小)、羞恥心
[装備]:レイジングハート@魔法少女リリカルなのは
[道具]:基本支給品、警棒@現実、ニューナンブM60(5/5)@現実、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:元の体に戻る。殺し合いには乗らない
1:結城さんと行動。展望室へ移動する
2:檀さんと合流し情報を交換したら、街の外へ出る
[備考]
・参戦時期は、さながみかづき荘の住人になったあたり

【結城リト@ToLOVEるダークネス】
[身体]:ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのはA's
[状態]:健康、魔力消耗(小)、いろはへの罪悪感
[装備]:ジェットシューズ@妖怪学園Y
[道具]:基本支給品、エッチな下着@ドラゴンクエストシリーズ、仮面ライダークロニクルガシャット@仮面ライダーエグゼイド、警棒@現実、ニューナンブM50(5/5)@現実、鎖鎌@こちら葛飾区亀有公園前派出所
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない
1:環さんと行動。展望室へ移動する
2:知り合いの肉体がないか、情報を集める
[備考]
・参戦時期は「ダークネス」終了後
・フェレットへの変身魔法が使えるようになりました。コツを掴めば他の魔法も使えるかもしれません。
・フェレットになっても首輪は外れないようです。

【鎖鎌@こちら葛飾区亀有公園前派出所】
葛飾署の女子薙刀部に対抗する為に、両津が設立した鎖鎌部にて使っていた物。
当然部員は集まらず、巻き込まれたボルボや左近寺も呆れていた。

【葛飾署@こちら葛飾区亀有公園前派出所】
E-5に存在する施設。
主に両津のせいで何度も燃やされたり、爆発させられたり、崩壊させられたりしている不憫な署。
一度は新葛飾署として巨大なうさぎの形になったが、後に元の姿へ戻っている。


690 : ◆ytUSxp038U :2021/08/22(日) 22:37:11 hJe4pLlA0
投下終了です


691 : ◆5IjCIYVjCc :2021/08/22(日) 23:32:29 nPw1yceA0
投下乙です。
しかし、先の話で一つ気になる点があります。
作中描写では葛飾署は街中にあるようですが、これが存在するとされているE-5に街はありません。
もしかしたらE-4と書くところを間違えてしまったのでしょうか?
そうでなかった場合はすみません。
申し訳ありませんがこの点に関して連絡を頂けると幸いです。
お手数をおかけすることになりますがどうかよろしくお願いします。


692 : ◆ytUSxp038U :2021/08/22(日) 23:36:45 hJe4pLlA0
申し訳ありません、E-4と間違えていました
wikiにて修正しておきます


693 : ◆5IjCIYVjCc :2021/08/22(日) 23:50:04 nPw1yceA0
連絡ありがとうございます。
修正の方も確認しました。


694 : ◆ytUSxp038U :2021/08/23(月) 00:34:28 6HArk8/20
産屋敷耀哉、メタモンを予約します


695 : ◆5IjCIYVjCc :2021/08/24(火) 16:24:52 3Ef8cobc0
「吉良吉影はシンデレラに憧れる」の状態表において、アドバーグ・エルドルとアーマージャックの[状態]にダメージ(大)を追記修正したことを報告します。


696 : ◆5IjCIYVjCc :2021/08/25(水) 21:06:38 TlfdmWR.0
これまで投下された本編話の感想を投下します。

>Mighty Wind
賢者の石を摂取してしまったセイバー・キャメロット、窮地を脱するためとはいえ中々とんでもないものを取り入れて今後が心配になることに。
ン・ダグバ・真乃もどこへ飛んで行ったのやら…

>エボルトのパーフェクトえいゆう教室
「万丈だ」(幻聴)
そしてやっぱり千雪ボディにナンパをはかるしんのすけ、
さっきの「おじさん」と同一人物であることには気づいているのかいないのか。

>時事ネタを後から読むときは思い出話に付き合うつもりで
ホイミン・イプシロンがただの可愛いヒロイン状態に。
冒頭のソロモンなあらすじには笑ってしまいました。
銀さんは両さんならまあ大丈夫だろといった感じになってますが、果たしてそう上手くいくでしょうか…

>どこへ行くの姉畑先生
またかよ!としか言いようがないことをしでかす姉畑先生、
こんなことをしている間にも他の獲物はさらに遠くに行ってしまうだろうに…

>分かつ希望の光、輝くのか、消えるのか
まさかの誕生、康一・ブレイズ・イェーガー。
中の人的には同期の戦隊イエローな気がしますが。

>Animal Change 〜一歩前進?〜
動物に変身してもラッキースケベを起こす安定のリトさん、
何かこうしたやり取りを見ると、どこか安心な気持ちになる気がします。

改めまして、皆さん投下乙でした!


697 : ◆ytUSxp038U :2021/08/25(水) 23:12:27 K2NR7aME0
感想ありがとうございます
投下します


698 : Good morning my fear ◆ytUSxp038U :2021/08/25(水) 23:15:55 K2NR7aME0
何者かが近付いて来る。
そう気付いたメタモンの動きは迅速だった。

金髪の青年を殺し、次の獲物を見つけようと村を出てどれ程経過した頃か。
草むらを歩き続け、ようやく街灯と道路という人工物が目に入った時、メタモンの耳は低い唸り声のようなものを拾った。
一瞬、先程逃がした獣かとも思ったが、よく聞けばこれは車やバイクのエンジン音と分かった。
サソードヤイバーのような、不思議な武器が支給されるくらいだ。
乗り物が支給された参加者がいたって何もおかしくはない。

そして参加者の皆殺しを目的としているメタモンにとって、この機会を逃す選択肢は存在しない。
大分時間も経過しており、マスクドライダーシステムのクロックアップも再度使用可能になっているはず。
もしまだ使えないとしても、その時はワームに変身すればいいだけ。
茂みの中を這い回るサソードゼクターをキャッチし、道路上に躍り出た。

「へんしん!」

『HENSHIN』

ゼクターをサソードヤイバーに填め込むと、全身がヒヒイロカネの装甲に覆われる。
バイザーと上半身の各部を走るチューブが特徴の、重厚な鎧を纏った姿。
道路上に現れた奇怪な参加者に、バイクの運転手も気が付いたのだろう。
強化された視力により、ハンドルを握る男の驚いた顔がよく見えた。
相手の反応などメタモンにはどうでもよく、続けてサソードヤイバーを操作した。

「キャストオフ!」

『CAST OFF』

『CHANGE SCORPION』

サソードゼクターの尾の部分を力強く押す。
全身に電流が流れ、身体を覆っていた分厚い装甲が一気に吹き飛んだ。
装甲は前方にいるバイクへと迫る。
本来であれば変身者を守る装甲として存在したパーツは、バイクの運転手を攻撃する凶器と化した。
弾丸の如き勢いで殺到する装甲を前に、運転手は咄嗟にバイクから飛び降り地面を転がる事で避けた。
横倒しになったバイクがアスファルトを転がり、不快な擦れる音がする。

だがメタモンには想定の範囲内。
今ので殺せなくとも、本命は別にある。

「クロックアップ!」

『CLOCK UP』

タキオン粒子が全身を駆け巡る。
体勢を立て直そうとする男が、道路を転がるバイクが、風を受けて揺れ動く草花が、
異様な程ゆっくりに感じられた。
加速した時間内へと侵入したメタモンは、金髪の青年の時のように男の頸を落とさんとする。
相手は余計な苦痛を感じる事無く死に、自分はまた一つ変身できる姿が増える。
男目掛けてサソードヤイバーを振り下ろそうとし、


699 : Good morning my fear ◆ytUSxp038U :2021/08/25(水) 23:17:29 K2NR7aME0
「えっ?」

ゾクリと悪寒が走った。

クロックアップ中の自分を視認するなど不可能の筈。
事実、金髪の青年は何が起きたのかを理解出来ずに死んだ。

なのに何故、この男は自分を両の目でハッキリと見ているのか。

相手の予期せぬ反応にメタモンの動きが止まる。
それは戦闘中においては致命的な隙。
クロックアップへの過信もあったのかもしれない。
動揺は全身に伝わり、次の行動へ中々移ってくれない。

「ガァッ!?」

胸部への痛みに呻き吹き飛ばされた。
クロックアップが解除されたのと、男が拳を突きだしたのはほぼ同時だった。

一方相手の男、産屋敷耀哉もまたこの状況に困惑していた。
見慣れぬ二輪車をどうにか走らせていた所へ、突然現れた何者か。
その者は奇怪な鎧らしきものを纏ったかと思えば、鎧が吹き飛び下から別の鎧のような姿が現れた。
更に驚くべきは、明らかに人間のものでは無い速さで自分に迫り、剣を振り下ろさんとした事だ。

もし耀哉が元々の肉体でこの場にいたとしたら、為す術なく斬首されていただろう。
いや、それ以前に吹き飛んだ装甲を躱す事すら叶わず、全身を粉砕されたに違いない。
だがそうはならなかった。
皮肉な事に、鬼舞辻無惨の肉体を与えられたからこそ耀哉は助かった。

クロックアップは既存の物理法則を凌駕した高速移動だ。
行動の全て、思考や感覚が極限まで引き延ばされる。
発動中は周囲の全てがほぼ止まっているに等しいと言っても過言ではない。
同じくクロックアップや同レベルの高速移動能力、若しくは時間そのものを完全に停止させる力が無ければ、対処は非常に困難である。
だが何事にも例外は存在する。
千年の時を生きて来た鬼の始祖、鬼舞辻無惨。
その身体機能は人間のソレを遥かに超えた、ある種の完成された肉体を持つ。
生命力や腕力のみならず、桁外れに高い感覚を以てすればクロックアップ中の相手を補足する事も可能。
現に仮面ライダーディケイド、門矢士は超感覚を持ったライダーの力でクロックアップを打ち破った経験がある。

敵の能力の詳細は知る由も無いが、無惨の肉体の恩恵により死を回避できたのは理解した。
よりにもよって怨敵のお陰で助かったというのは腹立たしいが、それより眼前の敵の対処が先。
有無を言わさず殺しに掛かって来たと言う事は、殺し合いに乗った者か。
鬼殺隊の者ではないだろう。肉体と精神がそれぞれ別人だと分かっている以上、身体が無惨だからと言って問答無用で攻撃はしないはず。

(何者かは知らないが、危険であるのは確かだ…!)

無惨や配下の鬼ならば、殺すのに何の躊躇もない。
違ったとしても、放って置くつもりはない。
刀をまともに振れぬ身なれど、自分だって鬼殺隊の人間。
人々を守る為に、戦う覚悟などとっくにできている。


700 : Good morning my fear ◆ytUSxp038U :2021/08/25(水) 23:19:02 K2NR7aME0
拳がサソードへと放たれる。
飾り気のないストレート。
だが先程咄嗟に拳を突きだした時とは違い、明確な殺意を乗せたその一撃は、直撃すればヒヒイロカネの装甲とてどうなるか分からない。
まして無惨の肉体ならば、単純な打撃すら生物を即死させる威力がある。

迫る拳をサソードは顔を右に逸らして躱す。
顔面スレスレを通過した拳に、仮面越しにも関わらず風が叩きつけたような感触を受ける。
クロックアップが時間を置かなければ使えない以上、肉体のスペックを総動員して対処する他ない。
反対の腕が振るわれたのを、状態をのけ反らせて避けた。

今度は自分の番とサソードヤイバーで斬り付けてやりたいが、それは叶わず。
のけ反った体勢のサソードへと振り下ろされる拳。
体全体を左に倒すとそのまま地面を転がる。
耀哉の拳は轟音を立てて、アスファルトを叩き割った。

起き上がったサソードはすぐさま後方へと大きく跳んだ。
そうしなければ即座に殺される事は明らかだからだ。
跳躍した直後、自身がいた場所へ耀哉が迫り踏みつけた。
子どもが凍った水溜まりを踏み割るような容易さで、道路が粉砕される。

外見はただの人間だというのに、大型ポケモンにも匹敵する程の破壊力。
冗談のような存在を前にメタモンは仮面の下で冷汗を流す。
打撃の威力も、攻撃の速度も恐ろしい程の脅威。

それでもメタモンが一撃も受けずに済んでいる理由。
それは耀哉が戦闘に関しては全くの素人だからだろう。
如何に強力な肉体でも耀哉自身に戦闘の経験が全く無い以上、繰り出す攻撃はシンプルに殴る・蹴るといったものに限られてくる。
動きは異様に速い。だが素人の攻撃故にある程度は読むことができる。
加えてメタモンはポケモン同士のバトルを幾度も経験済み。
少なくとも耀哉よりは場数を踏んできている。

尤も、無惨の肉体を前に戦闘経験だけで勝てるのなら、鬼殺隊は数百年前にとっくに勝利を収めている。
このままサソードで戦っていても、クロックアップが使用可能になる前に殺されてしまう。
そう考えたメタモンは一度変身を解除し、迅速にワームへ変身しようと決定。
幸い支給品には金髪の青年から奪った爆弾がある。
これで敵を足止めし、その隙にワームとなり、後はクロックアップで一気に仕留める。
もしも爆弾でそのまま死んだなら、それはそれで嬉しい展開だ。
戦況を変える為に、デイパックへ手を入れる。

その時メタモンは見た。
敵の右腕が異様に波打つのを。

爆弾を取り出しかけたメタモンは、急かされるようにサソードヤイバーを操作する。
ポケモンというのは百種類以上存在し、姿かたちは千差万別。
必然とポケモンが使う技の種類も多岐に渡る。
それぞれの個体にある程度共通している事だが、相手の体力を一撃で奪うような強大なわざは、発動前に体にエネルギーを溜めたりだとか何らかの動作を行う場合が多い。
現在メタモンが相対している男はポケモンではない。
しかし背筋を凍り付かせるこの感覚は、ポケモンが高威力のわざを放つ前兆と似通っていた。


701 : Good morning my fear ◆ytUSxp038U :2021/08/25(水) 23:19:55 K2NR7aME0
「プットオン!」

『PUT ON』

脱ぎ去った装甲を再度纏った直後、サソードは後方へ大きく吹き飛んだ。
装甲は砕け散り、受け身も取れず地面に叩きつけられる。
サソードの変身が解け、神代剣の姿が露わとなった。
痛む体へ冷たい夜風が容赦なく当たる中、メタモンは見た。
敵の腕が奇怪な形へ変化しているのを。
所々の筋肉が剥き出しとなり、上から覆う外骨格には牙が突き出ている。
長さも倍以上になっており、腕と言うよりは触手と言った印象を受ける。
距離を取ったメタモンへ攻撃が届いたのも、あれだけ長ければ納得がいく。

変形した腕を見て、自分の判断は間違っていなかったと理解した。
耐久力に優れたマスクドフォームでさえこれなのだ。
俊敏性を上げる代償に耐久性を落としたライダーフォームでは、もっと深い傷を負っていたかもしれない。

無惨は攻撃の手段として、己の肉体を触手へ変形させ振るう戦法を取る。
プロフィールに書かれていた情報を思い出した耀哉は、試しに腕へ力を込めてみた。
結果は見事変形に成功し、メタモンへと触手を叩きつけた。
腕が醜悪な触手へなったというのに、耀哉は体への違和感を一切感じていない。
それどころか、ごく自然なものとして触手を操作できている。
怨敵の肉体に馴染んでいると実感し、実に不愉快だった。
だがどれだけ嫌悪しようとも、無惨の身体抜きでは戦えない。
その事実に胸の内から湧き上がる感情を押し殺し、今は目の前の敵に集中する。

(彼は、人間なのか…?)

地面に倒れ伏すのは紫の鎧ではなく、白い服の青年。
外見はどこからどう見ても人間、鬼には見えない。
あの鎧は何だったのかと考える耀哉の目にふと入ったのは、奇妙な装飾が施された剣。
そこで気付く。鎧は一瞬で消え去ったが、剣は消える事無く残ったまま。

(そういえば…戦闘中に何度かあの剣を触っていたが…)

もしや、鎧や高速移動は剣の力が齎したものではないか。
では青年は鬼では無く、道具の力で姿を変えただけの人間なのか。
なら剣を奪うか破壊しさえすれば、青年は戦う術を失うのでは。
そう考え、攻撃の手を止める。

その判断は誤りだった。
真に相手を止めたいのであれば、変身が解けようとも躊躇せず殺すべきだった。
そう責めるのは酷かもしれない。
自身の知識に無い、マスクドライダーシステムという未知の技術を前にして、一切動揺するなというのも難しいのだから。

体中の痛みへ歯を食いしばってメタモンは立つ。
凶暴な野生のポケモンと遭遇した時には、同じくらいの痛みを味わった事だってある。
それに立てるということは、まだ負けてはいないということ。
未だ消えぬ戦意に背中を押されるように、もう一つの「変身」を実行する。


702 : Good morning my fear ◆ytUSxp038U :2021/08/25(水) 23:20:57 K2NR7aME0
「へんしん!」

肉体が一瞬で変わる。
神代剣から、人間とはかけ離れた化け物へと。
鈍い光沢を放つ銀色の身体。
右腕には巨大な爪が、左腕には蠍の胴体部に似た装甲。
兜を髣髴とさせる頭部で耀哉を睨む異形。
神代剣という擬態を解いたその名はスコルピオワーム。

「なっ!?」

相手は道具の力で変身した人間、そう考えていた耀哉は驚愕する。
さっきの鎧とは違い、今のは明らかに肉体を異形の姿へと変化させた。
目の前に立つのは正真正銘の化け物。だが鬼とは何かが違う気がする。
何にせよ、敵が人で無いのなら生かす理由は無くなった。
禰豆子のように人を襲わないよう己を抑えるような者であれば、人でなくとも手助けをしよう。
しかし青年は我を失った様子は無く、明確に己の意思でこちらを殺そうとした。
ならばここで仕留める以外に道はない。
触手に変えたままの腕を叩きつけんと振るった。

「クロックアップ!」

メタモンの狙いはスコルピオワームに変身し、それで終わりではない
マスクドライダーシステムのクロックアップは、元々ワームが持つ能力。
宣言に応えるように、スコルピオワームは加速した時間の中へと入り込む。

恐ろしいことに、やはり相手はクロックアップ中の自分を補足している。
おまけに振るわれた触手の速度も異常だ。
クロックアップを発動しているにも関わらず、尚も速いと認めざるを得ない速度でこちらへ迫っている。

「だけどまだこっちの方が速いんだ!」

相手は間違いなく強敵。しかし、それでもクロックアップを凌駕するまではいかない。
限られた時間内に取れる手段は多くない。故に無駄な動きはできない。
スコルピオワームは耀哉目掛けて頭部を大きく振るった。
すると何という事か、垂れ下がっていた辮髪が鞭のように伸び、耀哉へと一直線に向かって行く。
触手がスコルピオワームへ到達するより先に、辮髪は耀哉の頭部を貫通した。

「ぐぁっ!?」

クロックアップが解除され、耀哉は激痛に声を上げる。
古今東西、脳を串刺しにされ無事でいられる生物など存在しない。
いるとすれば本物の化け物くらいであり、耀哉の肉体と化した無惨はそれに当て嵌まった。
辮髪を掴むと突き刺さった先端を抜き出す。
貫通した箇所は瞬時に再生を開始し、完治を待たずに耀哉は辮髪を大きく振り回した。

「うわあああ!?」

敵の悲鳴など手を緩める理由にならない。
まるでハンマー投げをするかのように、辮髪を掴んだまま回転する。
勢いを付けてから手を離してやると、スコルピオワームは大きく投げ飛ばされた。





703 : Good morning my fear ◆ytUSxp038U :2021/08/25(水) 23:23:20 K2NR7aME0
あっという間に離れていくスコルピオワームから視線を外し、耀哉は倒れたバイクを起こして跨る。
投げ飛ばした敵を追いかけて、トドメを刺す為か?

否、すぐにここから離れる為だ。

「ハーッ、ハーッ、ハーッ……!」

エンジンを掛ける耀哉の息は荒く、額には汗が滲んでいる。
立っているだけで体がフラつき、とてもじゃないが戦闘どころか移動すら難しそうな様だ。
戦闘による疲れが原因では無い。
絶えず襲い来る頭痛、原因はそれである。
まるで頭の内側から虫が食い破ろうと暴れているかのように酷い痛みだ。
辮髪で貫かれた傷は、既にほぼ塞がっている。
なのに痛みはまるで治まらず、むしろ少しずつ悪化しているようにすら感じた。

「これは……なんだ……?」

あの怪物に何をされたのか。
それとも鬼の食人衝動が起きているのか。
或いは、無惨の肉体に精神を入れられたせいで拒否反応が発生したのか。
何が正解か分からない。ただここでじっとしてもいられない。
本音を言えばさっきの怪物を確実に仕留めたい。
だが今の状態では無惨の肉体でも絶対に勝てるとは言えず、再びあの高速移動をされたら勝ち目は薄い。
だから大きく投げ飛ばして自分との距離を離した。
とにかく一度この場を離れた方が良いだろう。
頭痛が続いたまま、他の危険な参加者や無惨本人と出くわすのもマズい。

(あの子達のようには、いかないな……)

仮にも鬼殺隊の長の初戦闘が、こんな情けない結果に終わった。
何と無様なものだと自嘲しながら、バイクを走らせた。





耀哉を蝕む頭痛の原因。
それはスコルピオワームの辮髪に付着した毒だ。
だがこの毒はただ単に激痛を与え苦しめるだけの効果ではない。
その真価は、相手を洗脳する事にある。
思考を完全に塗り替え、スコルピオワームの忠実な僕へと変貌させてしまうのである。

では何故耀哉は未だ洗脳されていないのか。
その答えは単純明快、身体が無惨だからだ。
正史において無惨は鬼殺隊との最終決戦において、人間に戻る薬と老化を早める薬を打たれている。
肉体を大幅に弱体化させられ敗北へと繋がったのだが、実の所これらの薬の効果も永続的に続いた訳ではない。
時間さえ掛ければ己の力を使い薬の効果を完全に除去し、元の限りなく完璧に近い肉体を取り戻す事だってできた。
つまり薬の効果を打ち消さんとした時のように、今も無惨の体内ではスコルピオワームの毒を除去しようと働きかけが起きている真っ最中なのである。

しかし、スコルピオワームの毒は決して生半可な効果しか持たないような、脆弱なものではない。
嘗て、天道総司や加賀美新を苦戦させたカッシスワーム…乃木怜治をも支配下に置く程の力が有る。
もしも毒の除去ができなければ、産屋敷耀哉はスコルピオワームの僕として猛威を振るうだろう。
その事実を知らず、鬼の肉体を得た鬼狩りの長は戦場を後にした。


◆◆◆


704 : Good morning my fear ◆ytUSxp038U :2021/08/25(水) 23:24:18 K2NR7aME0
「いった〜!!?!」

背中から地面に叩きつけられ、痛みに悶絶するメタモン。
ワームに変身したままだった為、命に別条がないのは不幸中の幸いだった。
だからと言ってこの痛みも、短時間で二度も地面に叩きつけられるのも、気持ちの良いものではない。

変身を解くと背中をさすりながら上体を起こし、周囲を見回す。
木々が自分を取り囲んでいることから、ここはどうやら森の中らしい。
ワームの肉体なら大丈夫だったとは思うが、木に突き刺さっていたらと考えるとゾッとする。

「失敗しちゃったなぁ…」

殺してへんしんの姿を増やすはずが、返り討ちに遭ってしまった。
クロックアップまで使ったというのにこの様。
散々な結果に肩を落とすも、何一つ収穫が無かったわけでは無い。
制限時間を抜きにしても、クロックアップは絶対無敵の力ではない。
さっきの男のように、食らいついて来る参加者がいると分かっただけでも儲けものだ。

(……やり方を変える必要があるかな)

クロックアップで不意打ちを狙うだけでは限界がある。
ならばサソードやワームだけでなく、剣や金髪の青年…リンクの姿も有効活用するべきだろう。
殺し合いには反対の立場を装って近付き、隙を見せた所を仕留める。
そうしてへんしんできる姿を増やしていって、また新たな獲物に近付き騙す。
騙し討ちも今後は行った方が良いのかもしれない。

「そうと決まったら早く動かなきゃ、だよね」

へんしんできる姿を増やすには、直接相手を殺さなければならない。
だが殺し合いに乗っている参加者が自分一人では無い以上、今もどこかで誰かが死んでいるのだろう。
それは非常によろしくない事態だ。
時間が経てば経つほど、変身できる姿が失われていくなどメタモンには耐えられない。
だから急いで他の参加者と接触したいが、痛む身体は休息を訴えて来る。

今は無理をしてでも参加者との接触を図るか、それとも大人しく休むか。
さてどちらが正しい選択なのかと悩む。
最も正しい選択、今からでも殺し合いを止めるという考えは微塵も思い付かなかった。


【C-5 道路/黎明】

【産屋敷耀哉@鬼滅の刃】
[身体]:鬼舞辻無惨@鬼滅の刃
[状態]:疲労(小)、毒による激しい頭痛、主催者への怒り(極大)、マシンディケイダーに搭乗中
[装備]:マシンディケイダー@仮面ライダーディケイド
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:鬼狩りとして戦った後、自殺する
1:今はこの場を離れる
2:鬼舞辻無惨を優先的に探す
3:鬼殺隊士達とも合流しておきたい
4:3の際には自分だと説得をする必要もあるだろう
5:急ぐためにこの乗り物を使ってみる
6:さっきの青年(メタモン)を警戒。次に出会えば仕留める
6:腹立たしいが、これは好機
[備考]
参戦時期は死亡後です。
スコルピオワームの毒に侵されています。現在無惨の肉体が抵抗中ですが、完全に除去されるか否かは不明です。


【C-6 森/黎明】

【メタモン@ポケットモンスターシリーズ】
[身体]:神代剣@仮面ライダーカブト
[状態]:疲労(中)、ダメージ(大)、背中に鈍痛
[装備]:サソードヤイバー&サソードゼクター@仮面ライダーカブト
[道具]:基本支給品×2、ジャスタウェイ×3@銀魂、魔神の斧@ドラゴンクエストシリーズ、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:参加者を殺して、変身できる姿を増やす
1:休むか、それとも無理してでも動くか、どうしよっかな
2:状況を見て人間の姿も使い、騙し討ちする
3:ゲンガーを見つけたら苦しめずに殺してやる
4:さっきの男(耀哉)を警戒。今度は迷わずクロックアップで頸を斬る
[備考]
制限によりワームの擬態能力は直接殺した相手にしか作用しません
クロックアップの持続時間が通常より短くなっています。また再使用には数分の時間を置く必要があります
現在リンクに変身可能です


705 : ◆ytUSxp038U :2021/08/25(水) 23:24:59 K2NR7aME0
投下終了です


706 : ◆5IjCIYVjCc :2021/08/26(木) 01:03:22 WpPX/5n20
投下乙です!

>Good morning my fear
ディケイドクウガのペガサスフォームと同じ理論でクロックアップに対抗するとは、
もしこれができなかったらさすがの無惨の身体でも危ないところだった。
しかし毒による洗脳という要素まででてきて、お館様がどんどん不穏な方向へ行っている感じがします。


707 : ◆5IjCIYVjCc :2021/08/26(木) 01:03:44 WpPX/5n20
絵美理で予約します。


708 : ◆ytUSxp038U :2021/08/26(木) 17:42:07 JZUknzRc0
感想ありがとうございます

柊ナナ、燃堂力、大崎甜花、桐生戦兎、杉元佐一、鳥束零太、我妻善逸、DIO、貨物船を予約します


709 : ◆P1sRRS5sNs :2021/08/27(金) 04:21:43 0FT3eSzA0
感想ありがとうございます!!

実を言うとそれもありかと考えたんですけど…エレンの身体がジュラガオーンの鎧を身に着けてもかっこ良くないのではと考えました。

所で◆ytUSxp038U さんに質問です。ヴァニラアイスの所持品は現在二つで終わっていますが、出来るのならばもう一つだけつけ足してもよろしいでしょうか?

そうすれば空条承太郎、ヴァニラアイスで予約したいと考えています。

返信お待ちしてます


710 : ◆ytUSxp038U :2021/08/27(金) 11:06:01 BQ2XDkTE0
私個人としては構いません
ただ二ヶ月も前に投下した作品に、今更ランダム支給品がもう一つあったと修正して良いものか、
企画主である◆5IjCIYVjCc氏の判断を待ってからでもよろしいでしょうか

お手数をお掛けしますが、連絡をお待ちしております


711 : ◆5IjCIYVjCc :2021/08/27(金) 11:48:09 q3ZIu.JE0
◆P1sRRS5sNsさん、◆ytUSxp038Uさんへ
支給品に関する描写は基本的に先に書かれた方が優先されるため、本来なら支給品を新しく付け加えるのは不可能です。
しかし今回の場合は、付け加えても他に大きな修正が必要になるとは考えにくいため、◆ytUSxp038Uさんが修正するのならば新たに付け加えることも可能とします。


712 : ◆5IjCIYVjCc :2021/08/27(金) 11:49:12 q3ZIu.JE0
【追記】
予約を入れる場合は、改めて予約を宣言することをお願いします。


713 : ◆ytUSxp038U :2021/08/27(金) 13:01:35 BQ2XDkTE0
連絡ありがとうございます
wikiにてヴァニラの状態表を修正させて頂きます


714 : ◆5IjCIYVjCc :2021/08/27(金) 13:29:51 q3ZIu.JE0
修正確認しました。

自分の予約分を投下します。


715 : ◆5IjCIYVjCc :2021/08/27(金) 13:30:21 q3ZIu.JE0
ここは、よくある普通の殺し合いの世界…
そしてここは、戦いの舞台となったこの島において最大の広さを持つ街…
今回の物語はここから始まる。


716 : ◆5IjCIYVjCc :2021/08/27(金) 13:32:27 q3ZIu.JE0


「うおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

大小様々な建物の上を次から次へと飛び移って行く一体の異形、
チェンソー頭の怪人…絵美理はただひたすらに、がむしゃらに街中を駆け抜ける。

腕から出すチェーンを駆使し、建物から建物へと、
まるで某調査兵団が行う立体起動のように、彼女はアクロバティックに宙を舞い踊る。

やがて彼女は、一つの建物の屋上でようやくその足を止める。
それはただ、戦いで溜まった疲労を回復させるためのひと時の休息を求めてのことであった。
無我夢中に移動していたためか、彼女が辿り着いたその建物は街の東端に近いところに存在していた。

彼女がいるその建物の二階の窓ガラスには、これを所有している会社の名前なのか「283」という文字が大きく取り付けられている。
もっとも、絵美理は屋上にいるためこの文字の存在には気づいていなかったが。

絵美理はそのビルの屋上の上でチェンソーの悪魔への変身を一旦解除し、デンジ少年の姿へと戻る。
ちょっと不本意ではあるが、変身による体力と血の消耗を抑えるためだ。
次に彼女はその場でどっかりと座り込み、その勢いのまま仰向けに倒れた状態へと移行する。

「………………ああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「疲れたあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

絵美理は雄叫びを上げた。
屋上で発せられたその大声は周りによく響いた。
そしてその声には、悔しさの感情が多分に含まれていた。

「あいつらよくも邪魔してくれたなああああああぁぁぁ!」
「絶対許さねええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇ!」
「やっぱ三枚おろしじゃ足りねえええええぇぇぇぇ!!あいつらは千切りだああああああぁぁぁぁーっ!!!」

絵美理は先ほどの戦いにおいて邪魔をしてきた者達に対して怨嗟を吐く。
彼女からしてみれば彼らのせいで獲物を仕留めきれたかどうかも分からず、
人数による不利で逃げるしかなく、他の獲物を取り逃がした形になるからだ。

「あああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」




「………………でも、私は次にどうするべきなんでしょう」

先ほどまで叫び騒いでいた絵美理は、突如「スン…」といった風な表情になって落ち着いた。
もしこの場に誰かがいたら「うわぁ!いきなり落ち着くな!」と逆に叫ぶことになったかもしれない。

されど彼女は埼玉県の川越市民、他の県や市町村の常識で推し量ること等はできない。
対抗できるのはアメリカ合衆国民くらいのものだ。
…何か風評被害が過ぎるような気がするが、彼女の生まれ育った世界ではそういうものなのだ。


「……少し寝ましょうか」

絵美理は疲れからか少々眠たくなってきた。
なので今はただ、体力の回復と頭を冷やすために、この場で仮眠をとることを決めた。
そのまま彼女はまぶたを閉じ、すぐに眠り始めたのであった。





717 : ◆5IjCIYVjCc :2021/08/27(金) 13:33:09 q3ZIu.JE0

約30分後…


「…そろそろ起きましょうか」

絵美理は目を覚ました。
彼女の疲労はだいぶ回復されたようであった。

「よっこいしょっと」

そのまま彼女は立ち上がって辺りを見回し始めた。
屋上は眠り始める前と何ら景色は変わっていない。
幸い、寝ている間に誰かがこの場に来ることはなかったようだ。


「………………ん!?」

ふと、建物の外の方を見てみると、一つの異常が起きていることに絵美理は気づいた。
それは彼女がいた場所から見て東の方、それも草原を越えた少々距離の離れている海での出来事であった。

「あっちに……誰かいるのかああああああぁぁぁぁぁぁぁーっ!?」

絵美理は『それ』が起きているのは人為的な要因である可能性を考えた。
次の獲物の存在を感じ取ったことで、彼女のテンションを上げるスイッチが入った。

「よっしゃ行くぜえええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

『ブウン!!』

やる気の出た絵美理はすぐさま胸のスターターを引き直して再び悪魔へと変身する。
そしてすぐに屋上から飛び降り、チェーンの引っ掛けで安全に着地する。

そしてその勢いのまま街を抜け、外の草原の方へと飛び出し駆けていった。


◇◆


草原を走り続けた絵美理はやがて、とある岬へと辿り着いた。
それは、地図から見ればD-8の草原地帯とされる場所にあった。


そして、彼女が出会った『それ』の正体とは…


718 : ◆5IjCIYVjCc :2021/08/27(金) 13:33:42 q3ZIu.JE0
「いらっしゃいませ」(幻聴)




空中を飛びながら移動する『巨大渦潮竜巻』であった。


その巨大渦潮竜巻(以下、竜巻と表記)は舞台全体の小島と中島を繋ぐ道路橋よりも手前に存在しており、
北から南の方へと移動しているようであった。
そしてこの竜巻は現在、絵美理がいる岬のすぐ前にあった。

「貴様が…この場所のボスか!?」

絵美理はこの空飛ぶ渦潮に対し、意気揚々と立ち向かうつもりであった。
この竜巻が人為的に引き起こされたものであるという確信は彼女にはない。
ただ何となく、これを攻撃すれば何かが出てくるのではないか、
もしかしたら中にこれを操っている主がいるのではないか、そんな気がするだけだ。


「まずは…こっちのターンだあぁぁぁぁぁぁ!!」

来るはずもない返事もまたず、絵美理は攻撃を仕掛け始める。
絵美理は両腕のチェンソーをふかしながら岬から走り跳び、竜巻の方へと向かって行く。
そして彼女は確かに竜巻までへと届き、その大量海水の塊に確かにチェンソーの刃を通した。

『ディープヴォーテックスは海水を1mL失った!』

しかし、そんなことで竜巻を倒すことなどできるわけがない。
絵美理の刃はその海水をただかすらせるだけにとどまる。

自然発生の災害を人間一人の力で止めることは100%不可能だ。
(今回の竜巻は人為的に発生したものであるが)
たとえチェンソーの悪魔の力があったとしても無理なことだ。
(デンジは『台風の悪魔』が起こした台風をその悪魔を殺すことで止めたことはあるが)


とにかく、このままでは絵美理は竜巻に飲まれ、中の海水に包まれて溺死してしまう。
単純に考えれば、その可能性が一番高かった。
だが…


『絵美理は12836mm吹っ飛ばされた!』

「ぐあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

突如、絵美理の体に『何か』が高速でぶつかってきた。
その衝撃で彼女は後ろへと吹き飛ばされる。

そして、絵美理にぶつかってきたその『何か』は竜巻の中から衝突してきたようであった。

「やっぱり…中に何かいるようだなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

絵美理は自身が受けたダメージから竜巻の中に何者かがいることを確信した。
彼女は先ほどの攻撃の際、自身が竜巻に飲まれる可能性のことは考えていなかった。
この結果になったのはただの偶然だ。

だが絵美理はそんなことは微塵も思い浮かべず、ただ目の前にいるであろう相手を殺すことに意識を集中させる。

しかしここで一つ、問題が出てくる。
絵美理は竜巻の中にいると思い込んでいる敵の姿を視認していない。
このことから彼女は、敵は竜巻の中に隠れ潜んでおり、自分から姿を現すことはないだろうと考える。

また、絵美理は先ほど竜巻に対して決定的な攻撃をすることができなかった。
このため、自分のチェンソーでその敵を引きずり出すことも不可能であろうと考えていた。




719 : ◆5IjCIYVjCc :2021/08/27(金) 13:34:58 q3ZIu.JE0
「だが…全く手が無いという訳じゃねえぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

絵美理は両腕のチェンソーをしまい、デイパックの中から自分の最後の支給品を取り出す。
それは、手の平サイズの円柱状の物体であり、全部で3つあった。

「っらあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

絵美理はその物体を3つとも握りしめ、全て竜巻に向かって投げつけた。
そして、その物体は竜巻の中へと吸い込まれていった。

次の瞬間のことであった。


『ディープヴォーテックスは海水を405782476mL失った!』

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!!!!」(幻聴)


轟音と閃光と共に、竜巻の中心で大爆発が起きた。
爆風により渦潮を構成する大量の海水は吹き飛ばされ、竜巻の形を保てなくなっていく。
自然物ならともかく、ただ1人の参加者によって発生したその竜巻は大爆発に耐え切れなかった。

そして同時に、竜巻のあった部分から黒い影のようなものが飛び出してきた。
どうやら『それ』も、爆風によって吹き飛ばされたもののようであった。
それは、絵美理のいる岬の方に向かって飛んできた。


「今だ!死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

絵美理は『それ』を確認するとすぐさま両腕のチェンソーを展開し、地面を蹴って大きく跳躍する。
彼女はそのまま『それ』の方へと向かって行き、両腕を振ってその刃で『それ』を切り裂いた。
『それ』は黒い着物の人間の男であった。


「止めてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーっ!!!!」(幻聴)


男は体を首を切断され、その頭と胴が泣き別れた状態で地面の方へと落ちていった。
彼が手に持っていたと思われる虹色に輝く刀もまた降ってきて、男の死体に近い地面に突き刺さった。

◆◇

絵美理が投げた物体、それは「炸裂弾」という名の爆弾であった。
これを投げつけることで竜巻を破壊し、中にいる人間を引きずり出す完璧な作戦…

…と彼女は思い込んでいる。


実際には、絵美理が攻撃した男は竜巻の主ではない。
それどころか、彼女は男を殺せてはいない。

吹き飛ばされてきたその男は渦潮の竜巻に巻き込まれたことで大量の海水を飲み、溺死している。
チェンソーによって分断されたその体は、約2時間前に骸と化したものだ。
一応、先ほど絵美理が竜巻に突っ込んだ際に偶然ぶつかった『何か』の正体はこの男の骸ではあったため、彼女がこの死体によって吹っ飛ばされたのは確かである。
だがそれは、男が彼女に攻撃したということにはならない。


720 : ◆5IjCIYVjCc :2021/08/27(金) 13:35:36 q3ZIu.JE0

「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!やったぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

しかし絵美理はそれらの事実に気づいていない。
死を確認できてない先ほどのハチマキ男と違い、彼女はようやく自分が殺せたということを実感し喜んでいる。

「あっ!しかもこいつデイパックを二つも持ってんじゃねえか!よっしゃラッキーイイイイイイィィィィィッ!!」

男の所持品が一つ多いことに気づくと絵美理はさらに喜びの雄たけびを上げる。
ここから言えることは、男は既に誰かを殺害してその荷物を奪っていたということだ。
絵美理がこれを見つけられたのはただの偶然であるが、それでも自身の戦力が増えるのは喜ばしいことである。

「…………………ん?ちょっと待てよ?」

ここで絵美理は一つ、あることに気づく。

「さっきの爆弾の威力ヤバ過ぎだろ!どこが護身用だああぁぁぁぁぁ!?」

先ほど絵美理が竜巻の破壊に使用した炸裂弾は、彼女が思っていたよりも凄まじい爆発を起こしていた。
説明書には護身用と書いてあったそのアイテムであるが、どう考えても護身用と呼ぶにはとてもオーバーな高威力であった。

「し、しまったあぁぁぁぁぁぁ!!こんなに強いなら…一つくらい残して置けばよかったあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

ここで絵美理が後悔するのは、竜巻相手に炸裂弾を三つ全て使ってしまったこと。
あんな威力があったのならば一つ二つ残しておいても目的は果たせたのではないかという考えが浮かぶ。
今後の戦いのために残せなかったことに、残念な気持ちが湧き出てくる。

「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!悔やんでも…悔み切れん!!」

絵美理の絶叫が辺りに響く。






「でもまあいっか♪過ぎたことをくよくよしてもしょうがないよね♪」

しかし絵美理は、深く考えることを止めた。
こんなことで気に病む暇があるのなら、さっさと次の行動に移った方がいいだろう。


「よーし♪それじゃあ次の獲物をぶっ殺しに行こっかー♪」

絵美理は男が持っていた荷物を全て回収すると、そそくさとその岬から立ち去るのであった。



【D-8 草原 岬/早朝】

【絵美理@エッチな夏休み(高橋邦子)】
[身体]:デンジ@チェンソーマン
[状態]:ダメージ(中)、疲労(小)、チェンソーの悪魔に変身中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、輸血パック×4@現実、虹@クロノ・トリガー、ランダム支給品0〜2(鵜堂刃衛の分)、ランダム支給品1〜3(童磨の分)
[思考・状況]
基本方針:皆殺しだぁぁぁぁぁーっ!
1:次の獲物を探すぜぇぇぇぇぇーっ!
[備考]
※死亡後から参戦です。
※心臓のポチタの意識は封印されており、体の使用者に干渉することはできません。
※女性の手首@ジョジョの奇妙な冒険を食べました。
※炸裂弾@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-は全て使用したため、一つも残っていません。
※鵜堂刃衛(身体:岡田以蔵)を殺したのは自分だと思い込んでいます。鵜堂の名前までは分かってません。

※D-8で発生し、空を飛んでいた【溺符「ディープヴォーテックス」】による大きめの渦は消滅しました。


【炸裂弾@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-】
絵美理への支給品。
元赤報隊準隊士の月岡津南によって作られた爆弾。
ここでは新型の炸裂弾が三つ支給されている。
新型炸裂弾はたった三つで志々雄真実の全財力の五分の三をつぎ込んだ甲鉄艦『煉獄』の外壁に穴を開け、沈没させてしまうほどの破壊力があった。
このとてつもない高威力から、護身用として渡され、これを使用した相楽左之助も「どこが護身用だオイ」とツッコミを入れている。


【283プロ@アイドルマスターシャイニーカラーズ】
D-7の街の東端辺りに設置されたアイドル事務所。
建物は3階建てで、1階にはペットショップや靴屋、本屋が軒を連ねているのが見て取れる。
事務所となっているのは建物の2階から3階と思われる。
2階の窓ガラスには「283」と黄色の数字で大きく取り付けられている。


721 : ◆5IjCIYVjCc :2021/08/27(金) 13:36:23 q3ZIu.JE0
投下終了です。
タイトルは「妹が書いた痛いSS『エロネード』」となります。


722 : ◆P1sRRS5sNs :2021/08/27(金) 22:02:57 0FT3eSzA0
5IjCIYVjCcさん、ytUSxp038Uさん、本当にありがとうございます。追記もしてくださって本当に嬉しいです。

改めて、空条承太郎、ヴァニラアイスを予約します


723 : ◆ytUSxp038U :2021/08/28(土) 11:09:43 PThugg820
投下乙です
ロワを読んでいるはずが、邦子作品の動画を視聴していると錯覚してしまいました。
再現度の高さに草生える。
炸裂弾こそ使い切ってしまいましたが、大量の支給品を手に入れ絵美里の危険度が更に跳ね上がりましたね…。

投下します


724 : Dのステージ/迷いを捨てた火花が今、散った ◆ytUSxp038U :2021/08/28(土) 11:15:57 PThugg820
戦兎は両腕を幾度も振るい続ける。
少しでも動きを緩めれば相手の強烈な一撃を食らうのは確実。
動くたびに全身に刻まれた傷が痛み、疲労で息も上がっている。
それでも戦わなければ、生き残る事も、守る事もできない。

「フン、生っチョロいぞ!」
「クソッタレが…!」

獣のように咆え、炎に包まれた両腕を叩きつける。
不死身の異名を持つ杉元の戦意を消すのは安易ではない。
全身に細かい切り傷を作りながらも、眼前の敵を地獄に叩き落とさんと苛烈に攻め続ける。
だが届かない。永遠の記憶、その力を纏った帝王は兵士の猛攻を児戯同然と見下していた。
何度炎を放とうとも、DIOの身を守る漆黒のローブに阻まれる。
杉元だけに相手を押し付ける気は毛頭ない。しかし戦兎も眼前の敵を相手にするだけで手一杯だった。
世界の名を冠する力が拳を放つ。それも一発二発どころではない。
機関銃もかくやといった勢いの拳を、歯を食い縛り両腕の爪で防ぐ。
嘗て共闘した、メダルで変身する戦士の力。
それが今はザ・ワールドの拳を何とか防ぎ、爪は徐々に破損していく。

「無駄無駄無駄無駄無駄ッ!!」
「ぐ、あぁああああああああああああっ!!」

とうとう爪が砕け散り、遮る物の無くなった拳が戦兎…ディケイドオーズの身体へ到達する。
800年前の錬金術師が生み出した装甲は致命的なダメージこそ防いでいる。
だがそれでも、これまでの戦闘における傷が蓄積した身には堪えた。
殴り飛ばされ無様に地面を転がる。
一瞬、杉元がこちらに意識を向けるも直ぐに戦闘へ引き戻された。
エターナルに変身したDIOを前に余所見など自殺行為でしかない。
蓬莱人の肉体は2回の復活を許してはいるものの、その奇跡に頼り切るつもりはない。
杉元にとっての不死身とは死んでも生き返るのではなく、敵を殺して生き残る事に有るのだから。

体中の痛みを押し殺し、戦兎は立ち上がる。
死んでいないのなら上出来だ。
敵は強大。宿敵である星狩りの怪物にも全く引けを取らない程。
ならばこちらも切り札を切らせてもらおう。
取り出したカードに描かれているのは、自身が変身する戦士、その中で最も強大な力を持つ姿。
戦況を一気に変えられるだけの力を、今解放した。

『KAMEN RIDE BUILD!』

『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イエーイ!』

『FORAM RIDE BUILD GENIUS!』

『完全無欠のボトルヤロー!スゲーイ!モノスゲーイ!』

ビルドの基本形態であるラビットタンクフォームと違い、白一色に染められた装甲。
60本ものボトルが全身に、複眼があった箇所にも例外なく突き刺さった。
パンドラパネルを再構築させ生み出した特殊なフルボトルにより誕生した、ビルドの最終形態。
ジーニアスフォームがここに顕現した。

「貴様、その姿は…」
「また随分トンチキな恰好になったな、おい」

ジーニアスフォームのディケイドビルドが放つ存在感は、DIOと杉元も無視できない。
二人分の視線を集める戦兎は、決着を付けるべく駆け出した。





725 : Dのステージ/迷いを捨てた火花が今、散った ◆ytUSxp038U :2021/08/28(土) 11:17:12 PThugg820
校舎内を走る一匹の獣。
黄色い体に長い耳、ギザギザとした尻尾は既存の動物には有り得ない特徴だ。
背にはカエルらしき生物が緑色の肌を更に青白くして、しがみついていた。
ポケモンとケロン人の肉体にそれぞれ精神を閉じ込められた、善逸と鳥束である。

ピカチュウの長い耳が何かの音をキャッチした。

音の発生源は直ぐ近くにある部屋からのようだった。
先客の存在に心臓が跳ね上がる。
部屋にいる者が殺し合いに乗っていない、友好的な参加者ならば何の問題もない。
しかし聞こえてくる音からして、穏便に事を済ませられそうも無い事は嫌でも分かる。
恐らく戦闘が起きているのだろう。
殺し合いに抗う者と乗った者の争いか、又は乗った者同士で血みどろの屠り合いを引き起こしているのか。
どちらにせよ建物内も安全では無い。
無視して別の部屋に行く事も出来るが、もし戦っている参加者が自分の知り合いなら、
禰豆子が巻き込まれているのだとしたらという可能性を考えれば、善逸は確かめずにはいられない。

気付かれないように近付き、恐る恐るドアの隙間から室内を覗いた。





「ウキャア!」
「て、てりゃぁっ…!」

机と椅子の残骸がそこかしこに散らばっている。
アーマードライダー斬月が振るった剣は躱され、オランウータンが突き出した拳は盾で防がれる。
代り映えのしない攻防を一体どれくらい続けただろう。

「ふぅ、ふぅ…」

傍から見れば単純な攻防も、甜歌にとっては命懸けだ。
二匹のオランウータンの眼光、初めて経験する戦闘、一歩間違えば即座に殺される恐怖。
それらに心を蝕まれる。しかし戦いを放棄する事は絶対にできない。
スーツの下で汗ばみながら、震えを消し去るように剣の柄を強く握った。

「ウキ……」

剣を構える斬月を睨みつけ、貨物船は思考する。
巨大なメロンを被り姿を変えた事には驚いた。
スタンド使いとはどこか違う敵を警戒しながら戦っていたが、その内貨物船はある事が分かった。
多分相手は戦いに関しては素人の可能性が高い、と。
盾や剣を振るう動きは、ただ我武者羅にこちらを近づけさせまいとしているだけ。
本人なりに必死に戦っているのかもしれないが、嘗て自分を破壊したスタンド使い達のような気迫は感じられない。
であるならば、チマチマと様子見しつつ手を出すより、分身と二匹掛かりで攻め立てた方が手っ取り早いんじゃあないだろうか。
それに今の姿へ変わるのに使った道具、あれは中々興味深い。
主に献上すればきっと喜んでくれるはず。
ならあの奇妙なベルトは壊さないようにしなくては。
決断するや否や、貨物船は分身と共に斬月へ襲い掛かろうとした。

「甜歌さん避けてください!」

突然背後から飛んできた指示へ、甜歌は咄嗟に横へと跳んだ。。
机の残骸だらけの床へ転がった直後、教室内の空気が一気に下がったような感覚がした。
恐る恐る顔を上げると、目に映ったのは信じられない光景。
自分達を殺そうとしていた二匹のオランウータン、その両方が飛び掛かろうとした体勢のまま、綺麗に凍っていたのだから。





726 : Dのステージ/迷いを捨てた火花が今、散った ◆ytUSxp038U :2021/08/28(土) 11:18:23 PThugg820
「ウオォオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!!!」

拳の応酬。そう文字にするのは簡単だ。
しかし実際に行われているのは、苛烈極まりない、激戦と呼ぶに相応しい光景。
ビルドジーニアスとザ・ワールド、彼らが放ったストレートの数は百をとっくに超えている。
丸太の如き太さのザ・ワールドの腕に比べれば、ビルドジーニアスに分が悪いと思われるだろう。
だが実際に分が悪いのはザ・ワールドの方であった。
拳と拳がぶつかり合い、その度に本体へのフィードバックでDIOの手に鈍い痛みが襲い来る。

「こ、こいつ…!!」

DIOには到底受け入れられない事実だ。
敵は最強のスタンド、ザ・ワールド以上の破壊力とスピードを持つ。
自らのスタンドに絶対の自信を持つDIOにとって、これほど屈辱的な事があろうか。
歯が砕けんばかりに噛み締めても現実は変わらない。
通常のビルドを遥かに上回るスペックを持つビルドジーニアス。
加えて、60本のフルボトルの性能を自在に操るというビルドジーニアスの固有能力。
この力を使い、戦兎はドラゴンフルボトルの成分を引き出している。
友であり相棒でもある男、万丈龍我にも引けを取らないレベルに格闘能力を強化しているのだ。
蒼いエネルギーを纏った拳は、DIOという邪悪の精神の具現を打ち倒さんと攻め立てる。
変身方法こそ違うものの、葛城親子の頭脳の結晶と、友の力。
この二つが揃った今の戦兎は、負ける気がしなかった。

「ウラァッ!」
「ヌゥッ!?スギモト、貴様…!!」

DIOが対処すべきは戦兎のみではない。
至近距離からエターナルの顔面に向けて火炎が迸る。
ダメージこそゼロに等しいが、仮面越しに伝わる熱さは不快以外の何物でもない。
振り下ろしたエッジは左腕で防御される。
ドーパントや仮面ライダーにも有効な刃は肉を容易く貫くが、杉元が気にする素振りは無い。
炎を纏った右拳をエターナルの腹部目掛けて突きだすも、蹴り上げられた敵の左脚に妨害された。

(この女ァ…!)

DIOは気付いていた。
杉元はロストドライバーとメモリを破壊しに来ていると。
戦兎が腰の機械にカードを入れて変身した瞬間を見た杉元は、DIOも同じく腰の機械で姿を変えたと察した。
故に、敵の戦力を削ぐ為にドライバーの破壊を狙うのは至極当然。
そんな真似を許す気は微塵もない。
だが先程まではザ・ワールドの力の前に戦兎は手も足も出ず、DIOも余裕を持って杉元の相手をしていた。
それが一転、ザ・ワールドは徐々に追いつめられ、どうしてもそちらに意識を持って行かれるDIOも、杉元に手を焼いている。
時を止められない以上、現状を打破する術は無く、忌々しさに表情が歪み、

(…いや、待て)

ス、と元の引き締まった表情へと戻った。
時は止められない。だが、打つ手なしと断じるには早過ぎるのでは?

(可能なはずだ。ザ・ワールドとエターナルが合わされば……)

エターナルの力は身体能力の強化や、高い防御力のマントだけではない。
ディケイド鎧武へ放った、蒼いエネルギーの斬撃。
あのエネルギーを、エターナルエッジ以外に流す事も可能なはず。


727 : Dのステージ/迷いを捨てた火花が今、散った ◆ytUSxp038U :2021/08/28(土) 11:19:24 PThugg820
(試してみるか)

さっきと同じ感覚で、メモリからエネルギーを引き出す。
蒼く揺らめく炎のようなエネルギーは、DIOの意思に従いザ・ワールドへと流れ込む。
ザ・ワールドの拳が蒼く燃え盛った。
ザ・ワールドを焼き尽くす炎ではない、更なる力が齎された証だ。

「なに…?」

殴り合う相手の変化に戦兎は怪訝な視線を向ける。
蒼く燃える拳が、ビルドジーニアスとぶつかり合う。
炎が見掛け倒しでない事は即座に理解した。

「くっ、こいつ強くなってる…!?」

今の今まで拳の威力も速さも、勝っていたのはビルドジーニアスの方。
ならばこれは何だ。
ザ・ワールドのラッシュは勢いを増し、ビルドジーニアスへと襲い来る。

「ほう…こういった使い方も悪くはないな」

自身の考えが正しかった事に満足気な笑みを浮かべるDIO。
ブルーフレアとなったエターナルに宿る総エネルギー量は、レッドフレアとは比べ物にならない程莫大。
風都の仮面ライダー、Wの究極の姿であるエクストリームと同等と言っても過言ではない。
加えて、DIOが使っているのはT2ガイアメモリ。
試作品であるT1メモリと違い、ブルーフレアのエネルギーにも余裕で耐えられる。

「っ、だからって負けられるかよ…!」

対するビルドジーニアス、強化されたザ・ワールドを前にしても引くつもりは無し。

「フン、随分と粘るじゃあないか」

DIOからすれば無駄な抵抗にしか見えない。
一度はザ・ワールドを凌駕した。それは認めてやろう。
だがその差は一瞬でひっくり返された。やはりこのDIOに勝てる道理などない。

「貴様もだ。チンケな炎しか出せぬのなら、ケーキの蝋燭にでも灯しているのが似合いだぞ?」
「チッ!」

DIOが余裕を取り戻し、杉元へとエッジを突き刺す。
顔を逸らして躱す。頬に赤い線が生まれるなど些細なこと。
足に力を込めて跳躍、蓬莱人の身体能力を駆使しエターナルの頭上を飛び越し背後へ着地。
すかさず迫るエターナルの回し蹴り。12tのキック力の前には蓬莱人と言えども、紙のように引き裂かれる。
それを杉元またもや跳躍、何と伸ばされたエターナルの脚の上に着地した。
不安定な位置で、顔面目掛けて蹴りを繰り出す。だが到達はしない。
エターナルは伸ばした脚とは反対の、軸となった足の踵で地面強く踏みつけ一回転する。
バランスを崩された杉元は落下、地面へ体が付く前に刺し殺そうと、エターナルはエッジを持った右手を伸ばす。
だがDIOが感じたのは肉を突き刺す感触ではなく、金属同士がぶつかる感触。
回避は間に合わないと悟った杉元は咄嗟にコルト・パイソンを抜き放ち、銃身で刃を防いだのだった。
地面を転がり距離を取りながら、引き金を引く杉元。
銃弾を斬り落としつつ、DIOは追撃を仕掛ける。

「ム…?」

しかし体へ違和感が生じた。
視線を移せば、ビルドジーニアスが腕から伸ばした蔓のようなもので、ザ・ワールドを拘束するのが見えた。

ローズフルボトルの力を引き出し、相手の動きを封じたビルドジーニアス。
とはいえ長くは続かないだろう。
ブルーフレアのエネルギーを纏ったザ・ワールドならば、いとも簡単に引き千切られる。
その前に勝負を決めるべくカードを取り出した。

ビルドジーニアスの力は現在の戦兎が使えるライダーの中で最も強力だ。
その反面、気軽には使えない事情も存在する。
ネオディケイドライバーの説明書に記されていた、一つの制限。
ジーニアスのカードを使ってた場合、変身していられるのは極短い時間内のみであり、時間を過ぎれば強制的に通常のビルドへ戻る。
加えて再変身するにも、ある程度の時間を置かなければならない。強力故に課せられた制限。

一刻も早く決着を付けようと、カードをドライバーへ挿入しようと手を伸ばす。

「ウキャキャ!」
「は、離して……!」

カードを叩き込もうとした手が凍り付いたように止まった。
正面玄関から飛び出して来たのは一匹のオランウータン。
DIOの指示を受け校舎内へ侵入した貨物船だ。
出て来たのはその一匹のみではない。
少女が一人、貨物船に担がれ戦兎達の前に姿を現した。





728 : Dのステージ/迷いを捨てた火花が今、散った ◆ytUSxp038U :2021/08/28(土) 11:20:49 PThugg820
使える武器が入っていて助かった。
冷気を放つ杖を眺め、ナナは内心で安堵した。

ナナの要求に燃堂は特に反対する事も無く、デイパックを寄越した。
燃堂のなかでは未だに、ナナは斉木楠雄の弟という事になっている。
親友の弟の頼みとあらば、快く聞き入れてやるのが自分の勤め。
そんな風に語る燃堂へ適当に相槌を打ちつつ、礼を言って中身を素早く確認した。
そうして発見したのが、氷の結晶のような先端の杖だった。
燃堂曰く、妙に冷たいからスプーン曲げを試すのに使う気は起きず、適当に仕舞っていたらしい。
こいつが持っても宝の持ち腐れだなと、内心呆れつつ貨物船へと杖を振るった。

「フリーズロッドって言うみたいで、今みたいに相手を凍らせる効果があるみたいです」
「そ、そうなんだ…ゲームの装備みたいだね……」
「まぁ、仮面ライダーがいるくらいですし、こういう魔法の杖があっても不思議はないですね!」

貨物船の動きを封じたナナは、立ち上がった甜歌と言葉を交わす。
ナナが見た限り、どうやら二匹の猿も甜歌が戦いの素人と気付いたようだった。
ほんの少し遅れていたら、仮面ライダーに変身していてもどうなっていたか分からない。

「ありがとう、ナナちゃん。甜歌の方が助けられちゃったね…」
「そんなこと無いですよ!甜歌さんが変身してなかったら私も燃堂さんもどうなっていたか…。
 それにまだ終わってません。この杖、そう長く相手を凍らせる事はできないみたいなんです」

だから、と続くナナの言葉は唐突に遮られた。


「さ、斉木さん…?」


か細い声がナナの鼓膜へ届いた。
甜歌でも燃堂でもない、教室内の人間のものではない声が。
振り返ると、扉の隙間から小さな影が顔を覗かせているのが見えた。
新たな侵入者に身構えるナナ達。
だがヨロヨロとふらつきながら姿を見せた存在に、三人は呆気に取られた。

「え…?カ、カエル…?それに…何?」
「お?何だありゃ?宇宙人か?」

緑色のカエルらしき存在と、その後ろから慌てて出て来た黄色い動物のような生物。
オランウータンだけでなくこんな姿の生物まで参加者にいたとは予想外だ。
奇妙な二匹の登場にナナ達は困惑する。

「ピカピカ!(おい!何してんだよ!)」

幽鬼のような足取りで教室内の人間に近付く鳥束を、善逸は慌てて止めようとする。
さっきまで自分の背で幻覚を見ているかのようにブツブツ言っていたのに、どうして急に動き出したのか。
善逸の困惑など知ったことではないとばかりに、斉木楠雄はある一人の参加者を凝視していた。
その人物とは柊ナナ。正確に言えばナナの肉体である斉木楠雄をだ。
見るからに戸惑っている相手へ、鳥束は救いを求めるように震える手を伸ばす。


729 : Dのステージ/迷いを捨てた火花が今、散った ◆ytUSxp038U :2021/08/28(土) 11:21:55 PThugg820
「さ、斉木さん…お願いしますよ……いつもの超能力で…俺のケツを……」

鳥束が斉木へ求めるのは、自身の傷の治療。
万能の超能力者である斉木ならば、どんな重い傷でも一瞬で治すことくらい訳ない。
しかしそれは、ここにいるのが斉木本人だったらの話だ。
肉体は斉木でも、精神は無能力者のナナに超能力は現在全く使用できない。
そもそも殺し合いの参加者は、肉体と精神がそれぞれ別人だと、鳥束自身も知っているはず。

尤も今の鳥束の状態を考えれば、無理も無い話かもしれない。
最初はモテまくる計画を立てるくらいに浮かれていたが、今や計画は完全に頓挫したと言っていい。
モテオーラを放っていた青年の肉体から、人語を話す人型カエルという不気味な姿に変えられ、
尻と腹部をこれまで味わった事が無い激痛が苛んでいる。
更には、未だに自身の腹の奥底に粘着力の強い精液が残っている、おぞましい感覚。
鳥束自身がウコチャヌプコロの被害にあった訳では無いが、ボディーチェンジによりウコチャヌプコロの痛みを丸々引き受ける羽目になった。
悲惨な状態に肉体のみならず、精神的にもすっかり参っていた。
それこそ全裸のナースに慰められるという、ふざけた幻覚に逃げるくらいに。

そんな時に斉木の姿を見たのだ。
精神は別人と言う事を忘却したのか、或いは不都合な現実から逃避しているのか、
こうして救いを求めている。

一方でナナは困惑するばかりだった。
突然現れたカエルのよな生き物が、何故か自分へ助けを求めている。
しかもあろうことか、このカエルは確かに「斉木さん」と口にした。
自分の知る限り、斉木と親交がある人間は二人。
内の一人は殺し合いが始まってからずっと、行動を共にしている。
となれば必然ともう一人の男に絞られる。

(まさか、こいつは鳥束零太なのか…?)

PK学園にいれば鳥束がやって来る可能性はあると踏んでいた。
しかしまさか、こんな状況で出会うとは思いもしなかった。
突然の事態にナナの意識が貨物船から外れる。
それが大きな失敗だった。

凍らされながらも貨物船は意識を保っていた。
体は指一本動かせないが、頭を働かせるのはできる。
このままでは凍ったままの自分は、トドメを刺されるのを待つばかり。
そう悲観したが嬉しい事に、新たな参加者の存在により敵は意識を持って行かれた。
チャンスは今しかない。
凍り付いた体が徐々に熱を取り戻し、動き出す時を今か今かと待っている。

そしてその時は来た。


730 : Dのステージ/迷いを捨てた火花が今、散った ◆ytUSxp038U :2021/08/28(土) 11:22:42 PThugg820
「ウキャアアアアア!!」
「ウキ!ウキィイイイイイイ!!」
「ひっ、きゃっ…!」

凍結から解放され、貨物船は即座に分身と共に甜歌へ飛び掛かった。
不意を突かれた甜歌が地面に押し倒される。
余計な抵抗をされる前に、急ぎ事を済ませなければならない。
貨物船は斬月の腰へ手を伸ばし、ドライバーを力任せに剥ぎ取った。
メロンの装甲が消え、ライドウェアのみとなる斬月。
その姿も長くは続かず、すぐに生身である甜歌の姿へと戻った。

「甜歌さん!」

我に返り、貨物船を再び凍らせるべく杖を構える。
が、二度も氷漬けにされてたまるかと、貨物船は捕えた甜歌を盾にした。
人質の存在がナナへ待ったを掛けた。
このまま杖を振るえば甜歌まで氷漬けとなる。
暫しの躊躇、貨物船はその隙を見逃さない。

「ウキッ!」
「ッ!?」

甜歌を捕えた本体に代わり分身が動く。
床に転がる机や椅子の残骸、その中からへし折れた机の脚を手に取る。
先端が鋭利になっている脚ならば、人間一人を刺し殺すのが可能。
オランウータンの腕力で投擲する。狙いはフリーズロッドを持つナナだ。
標的となったナナは、分身が残骸を手にした時点で既に動いていた。
自らの身体を倒し床を転がり、残骸を回避した。

ナナの命は奪えなかった。

だが別の者は殺せた。


「びゅっ」

運悪くナナの背後にいた為に、机の脚が突き刺さった。
口内に侵入し、下を貫き綺麗に貫通する。
勢いは死なず小さな体は教室の奥へと吹き飛ばされ、そのまま動かなくなった。

彼にとっては不幸であり、そしてある意味では幸運だろう。

鳥束零太は死ぬ事で、己の身体を蝕む痛みから解放されたのだから。


【鳥束零太@斉木楠雄のψ難 死亡】





(しまった!鳥束が…)

有益な情報を持っているだろう人間の死に、ナナは己の失態を呪う。
その間にも貨物船は次の手に出る。
甜歌を捕えたまま教室を飛び出し、正面玄関へと走った。
向こうが気付き阻止しようとするも、分身が砕け散った机を投擲し妨害する。
仮に追いついても甜歌を抱えている限りは、迂闊に凍らせられないだろう。

「お、降ろして…!」

必死に藻掻く甜歌を無視し、貨物船は外の戦場へと姿を見せた。





731 : Dのステージ/迷いを捨てた火花が今、散った ◆ytUSxp038U :2021/08/28(土) 11:26:04 PThugg820
「甜歌!?」

ナナ達といたはずの少女が捕まってしまっている。
一体中で何があった、ナナ達はまだ校舎の中か?
疑問を口に仕掛けたが、実際に声として出ることは叶わなかった。

「無駄ァッ!」
「ぐあっ!?」

無駄のないストレートがビルドジーニアスの装甲を叩く。
ローズフルボトルの拘束を脱したザ・ワールドによるものだった。
火花を散らしながら後退し、ビルドジーニアスの姿に変化が起きた。
全身に突き刺さったフルボトルは消滅し、ボディも赤と青の二色へと変わる。
ジーニアスフォームの制限時間が切れたのだ。

「ウキ!」

戦兎の動揺を引き出した貨物船は、DIO向けて片手を差し出す。
全身を白い装甲で覆っていた為、一瞬迷ったもののザ・ワールドを出現させている事からDIOと判断。
掌には甜歌から奪い取った戦極ドライバーとロックシード。
DIOの役に立つ、己の掲げる方針に従い奇妙な道具を献上した。
部下が差し出した物を手に取り、DIOは小さく鼻を鳴らす。
ディケイドとエターナルという戦士の存在を把握しているDIOには、その使い道が直ぐに分かった。
形こそ違うが、恐らくはこれらも仮面ライダーへ変身する為のアイテム。
チラリと視線を横にやれば、哀れに思う程怯えている少女が一人。

「今度は猿かよ……ってかあの娘は…?」
「甜歌…!」

何時の間にやら戦兎の隣に並んだ杉元が訝し気に眉をひそめる。
そちらはともかく、戦兎の反応を見るに少女は奴の仲間。
意図せず人質を取った形となったDIOは、ふと自身の支給品を思い出す。
ジークなる者の脊髄が入ったワイン、エターナルメモリ、そして最後の支給品。
いずれは3つ目の支給品も使ってみようかと考えていたが、今が丁度いいかもしれない。
仮に失敗しようが大した痛手にはならない。
早速試そうと、まずは一度エターナルの変身を解きジョナサンの姿へと戻った。

「その小娘を押さえていろ。私から視線を逸らさせるな」

指示を受け、貨物船は甜歌の顔をDIOの方へ固定する。
必死に身を捩らせ抵抗しているが、精々子猫が暴れている程度のかわいいものだ。
大柄なオランウータンの力には敵いそうも無い。
デイパックから小瓶を取り出すと甜歌へ近付ける。
当然黙って見ている戦兎達ではない。

「フン、暫し待っていろ」
「DIO!甜歌に何しやがる…!」
「ウキィ!」
「おわっ!?もう一匹いやがったのか!?」

邪魔しに来ることなど分かっていた。
ザ・ワールドと貨物船の分身が戦兎と杉元を足止めする。
拳をライドブッカーで防ぎ、ジャンプして飛び掛かって来た所を後退して躱す。
DIOの目的が何かは分からないが、甜歌へロクでもないことをしでかそうとしているのは確実だ。
焦る心とは裏腹に、傷と疲労で身体は油の切れた機械のように動きのキレが落ちている。

「クソッ!どけ…!!」

戦兎の叫びを雑音と聞き流し、小瓶の蓋を開ける。
長く時間を掛けるつもりはない。
DIOは顔を逸らそうとする甜歌の鼻元へ、小瓶の中身を嗅がせた。


732 : Dのステージ/これが私の幸福論 ◆ytUSxp038U :2021/08/28(土) 11:29:56 PThugg820
○○○


頭がボーッとしてくる。
今が凄く危ないことになってるのに、何だかふわふわしてきた。
お部屋のベッドに横になってるみたいな、なーちゃんと千雪さんがギュッてしてくれてるみたいな。
そんな感じがしてくる。

だけどふわふわしたのは直ぐに消えて、代わりに体が熱くなってきた。
甜歌の目の前にいる男の人。
プロデューサーさんよりもずっと大きな体の、外人さん。
その人を見ていると、頬が火傷しそうなくらいに火照ってきた。
心臓がバクンバクンって、壊れちゃいそうな程に鳴っている。
何だか初めてステージに上がった時みたい。

おかしいな。

すぐ傍で戦兎さんが戦ってるのに。
ナナちゃんと燃堂さんが学校の中にいるのに。

男の人のことばっかり考えちゃう。

変だな。

なーちゃんの事が心配で心配でたまらなかったのに。
恐い目に遭ってるのなら、絶対に助けたかったはずなのに。

男の人のことしか考えられなくなりそう。

「君の名を教えてくれるかな?」

問い掛ける男の人の声。

耳が蕩け落ちそうだ。
死んでも良いから、耳元で永遠に囁いて欲しい。

ああ駄目だ。
甜歌はこの人のことしか考えられない。
この人に愛されたい。

その為なら、何をしたって構わない。


○○○


733 : Dのステージ/これが私の幸福論 ◆ytUSxp038U :2021/08/28(土) 11:30:57 PThugg820
「大崎甜歌…でしゅ…。あう、また噛んじゃった……」
「甜歌、か。君の可愛らしい顔を、隠さずにこのDIOへもっと見せてくれないか?」
「か、可愛いなんてそんな……でも、嬉しいな…にひひ……DIOさんに可愛いって言われちゃった…」

これは一体なんだ?
目に映る光景が悪い冗談としか思えず、戦兎は己の正気を疑いかけた。
歯の浮くような台詞を平然と口にするDIO、顔をトマトのように赤くし、恍惚の表情でDIOの言葉に悶える甜歌。
さっきまでの戦闘など無かったかのような、余りにも異質なナニカが繰り広げられている。

「いや何だよこの状況」

さっきまでの緊迫した空気を纏めて吹き飛ばしたかのような光景に、杉元は真顔で呟く。
正直その言葉には戦兎も激しく同意したい。
だが呆けている余裕などない。
甜歌の様子は明らかに異常だ。
DIOが甜歌に近付けた小瓶らしきもの、アレのせいでおかしくなったのか。

「DIO、お前甜歌に何をしやがった…!?」
「随分人聞きが悪いじゃあないか、確か…戦兎と言ったか。私は愛を向けてくれる甜歌と話をしているだけだぞ?」
「そ、そうだよ戦兎さん…。DIOさんは甜歌の、だ、大好きな人なんだから、悪く言うなんて酷いよ…」

耳を疑うような甜歌の言葉に戦兎は二の句が継げなくなった。
一体全体何をどうすれば、DIOを大好きな人なんて言えるのか。
戦兎はこれと少し似た状況を知っている。
仲間や、守るべき人々の思考を狂わされた事件。
ブラッド族の伊能の罠に嵌り、窮地に陥ったあの戦いが嫌でも思い起こされる。

「DIO!お前は…!」
「フフ…。なァ甜歌。残念だが私と君の仲を快く思わない者がここにはいるらしい」
「えっ…。そ、そんな……。甜歌は、DIOさんと一緒にいられないの…?」
「なに、悲しむ必要はない。我々の障害は我々の手で消し去ってやればいいだけのこと。
 例えばそう…今も私への敵意を緩めようとしない、奴をな」

弾かれたようにDIOの言葉が指し示す相手、戦兎を睨みつける。
普段の大崎甘奈が浮かべることは有り得ないであろう、憎しみに満ちた表情だった。
ス、とDIOが甜歌へ差し出したのは、元々彼女の支給品である戦極ドライバーとロックシード。
これを使って排除しろというDIOの意思を、甜歌に断るという選択肢はない。
むしろ自分と愛する男の邪魔となる存在を始末できると、大喜びしそうな程だった。

プレゼントを与えられたかのような、歓喜に満ちた笑みでドライバーを受け取る。
ベルトが腰に巻かれると、ロックシードを填め込む。
仲間を守る為ではない、ただ一人に愛を捧げる為の変身だ。


734 : Dのステージ/これが私の幸福論 ◆ytUSxp038U :2021/08/28(土) 11:31:55 PThugg820
「変身!」

『メロンアームズ!天・下・御・免!』

斬月への変身が完了するや、無双セイバーを抜き放つ。
自分とDIOの仲を引き裂こうと言うのなら、絶対に許せない。
これまで自分を守ってくれた男への怒りを刃に乗せ、斬り掛かった。

「やめろ甜歌!お前はDIOのせいでおかしくなってる!」
「うるさい…!DIOさんの敵は、甜歌の敵なんだから…!」
「ぐぁ……!」

貨物船を相手にした際の比ではないくらい、猛烈に剣を振るう。
一切の容赦なしに襲い来る攻撃に戦兎は為す術が無い。
普段の戦兎ならばもっと余裕をもって対処できただろう。
だが、傷は重く疲労はピークに達し、何より甜歌を攻撃する事への躊躇が判断を鈍らせる。
とうとう一撃を受け、装甲から血しぶきのように火花が散る。

「よく分かんねぇが、あいつがロクでもねぇ真似しやがったな…!」

これ以上は見ていられないと、杉元は二人のライダーの戦闘に介入せんとする。
白いのに変身した少女はどうやら赤青の仲間だったらしいが、DIOにいらんことをされておかしくなったといった所と推測する。
彼らとはまともな自己紹介もしていないが、確かなのは敵はDIOと、何故か服を着ているデカい猿。
奴らの思惑通りに潰し合わされるのを、黙って見ていることはできない。
とにかく戦兎と呼ばれた赤青を、白いのから引き離そうとした。

「ウキャア!」
「っ!邪魔だ!」
「ギャンッ!?」

余計な手出しはさせまいと貨物船が立ち塞がった。
一々構うつもりは無く、炎を纏わせた拳を顔面に叩き込んでやる。
短い悲鳴を上げ、殴られた箇所を抑える貨物船。
不甲斐ない部下と入れ替わるように、ザ・ワールドが蹴りを放った。
杉元は痛みに悶絶中の貨物船の背後へ跳び、即席の盾とした。
固い足底に蹴り飛ばされ、貨物船はまたもや情けない悲鳴を上げる羽目になった。

「飼い猿の躾がなってないんじゃねぇのか?」
「貴様の減らず口もそろそろ飽きて来た所だ。――変身」

エターナルへの二度目の変身を果たす。
こちらを見下すDIOの態度に、うんざりしてるのは俺も同じだと吐き捨てる。
いい加減焼き殺すなり撃ち殺すなりしてやりたいが、そう簡単に殺されてはくれないのだ、この紳士の皮を被った悪党は。
傷は治っても疲れは消えない。
圧し掛かる疲労を考えないようにして、炎を生み出す。

DIOが変身するのを見た甜歌は早々に決着を付けようと決めた。
自分達の愛を邪魔する者は多い。
なら戦兎を急ぎ片付け、DIOに加勢しなくては。
胸の内から湧き上がるDIOへの愛に急かされるまま、カッティングブレードを操作する。

『メロンスカッシュ!』

「DIOさんの邪魔をする戦兎なんて…大っ嫌い…!」

無双セイバーに緑色のエネルギーが集まる。
アレをまともに受ける訳にはいかず、戦兎もカードを取り出す。


735 : Dのステージ/これが私の幸福論 ◆ytUSxp038U :2021/08/28(土) 11:33:01 PThugg820
「――っ」

だが脳裏に浮かぶのは、最初に出会った時の甜歌の姿。
妹の身体となり、どうしていいか分からず泣きそうになっていた。
必ず守り、無事に家族と再会させると誓った。
そんな甜歌を傷つけるなど、そう思うとカードを持つ手が動かなくなる。

「やああああああああ!」

戦兎の葛藤ごと斬り捨てる勢いで、無双セイバーが迫る。
もうカードを挿入する余裕は無い。
守るべき少女の、殺意が籠った一撃を前に、

「……クソッ」

ただ小さく自分への悪態を滲ませた呟きが漏れる。
刃が到達すると、痛みに意識が薄れていく。
ただでさえDIOとの戦いで傷ついていた体は、ここに来て限界を迎えた。
ビルドの装甲が消滅し、生身の身体を晒しながら戦兎は崩れ落ちた。
己を見下ろす白い武者を引き戻そうと、手を伸ばしたまま、プツリと意識が途絶えた。

「っ!おい!」

倒れた戦兎へ杉元は叫ぶが、反応は一切返って来ない。
まさか死んだのか。それとも気絶しただけか。
後者ならば今すぐ駆け付ける必要がある。
だがそれを実行に移すには、エターナルとザ・ワールドの猛攻を掻い潜らなければならない。
困難を極める所の話ではない。
殴り掛かれば、自分以上の速度で殴り返され、斬られ。
炎を放てば、黒い布で防がれ。
飛行して距離を取ろうとすれば、二人掛かりで妨害される。
最初に戦った時はザ・ワールドを操作するのみだったが、今はDIO本人も積極的に戦闘を行っている。
それもこれもあの白い姿になっているのが原因だ、あんな道具支給するとかふざけんな、
そんな悪態をボンドルドにぶつけてやりたくてしょうがない杉元であった。

倒れ伏す戦兎へ確実にトドメを刺そうと、甜歌は無双セイバーを振り上げる。
大ダメージの後には追撃を仕掛けて仕留める。ゲーム内でのお約束。
同じ事を戦兎へ行うべく、無双セイバーを握る手に力を籠めた。


「ピィ〜カァアアアアアアアア!!」

「ヌゥ!?」

「ウキャァッ!?」

「ひゃぅっ!?」

轟音が鳴り響き、天から雷が落ちて来た。
地上の者を断罪するかのような光はDIOへと直撃する。
エターナルに変身している為、大きなダメージは無い。代わりに体へ多少の痺れは起きているが。
一方生身で受けた貨物船は全身の痺れにピクピクと痙攣していた。
直撃こそしなかった甜歌も突然の雷鳴に驚き、跳び上がりそうになった。
一体何が起きたのかと恐る恐る振り向けば、正面玄関から二人の人間と一匹の獣が姿を見せた。

先程まで甜歌と共に校舎内へ居たナナと燃堂、同行者を失った善逸である。
甜歌が攫われた後、ナナはまず善逸をどうするか考えた。
鳥束と思わしきカエルの死を嘆いているようだったが、人語は話せない。
だが言葉を理解はできるようで、殺し合いに乗っていない事は確認できた。
次に甜歌を追うか、自分達だけで学園を脱出するかの二択だが、ここで問題が発生。
何と燃堂が甜歌を攫った猿を追いかけ、教室を飛び出した。
ナナの制止も空しく、「俺っちからは逃げられねえぞゴルァ!」とあっという間に走り去った。
これにはナナも頭を抱える。ここで自分だけ脱出すれば、甜歌と燃堂を見捨てたようなものと戦兎に見られるかもしれない。
ならば自分も彼らを追うしか無いと腹を括り、善逸と共に急ぎ燃堂へと追いつき、今に至る。

しかし、外の様子はナナが思っていた以上に面倒な事態へと発展していた。


736 : Dのステージ/これが私の幸福論 ◆ytUSxp038U :2021/08/28(土) 11:34:05 PThugg820
(どういうことだ?何故甜歌が戦兎を殺そうとしている?)

さっきはナナ達を守る為に変身したと言うのに、今は仲間である戦兎へ剣を振り下ろそうとしていた。
戦兎本人に事情を聞くのが手っ取り早いのだろうが、彼は意識を失っているのかピクリとも動かない。
少し離れた所には戦兎や甜歌とは違う姿の、仮面ライダーらしき者。
そいつと相対する白髪の少女。
ついでに甜歌を連れ去ったオランウータンもいた。

何が何やら混乱しそうになるが、まずは目先の問題からと、戦兎の前に出る。
首輪解除が可能であろう人材を死なせる訳にはいかない。

「どうしちゃったんですか甜歌さん!戦兎さんは一緒に戦ってくれる仲間じゃないですか!?」
「…オメー、桐生に何しやがった?それに大崎はどこやった?」

ナナに並んで燃堂も口を開く。
非常に珍しく、これまでのバカ丸出しの雰囲気は鳴りを潜め、真剣な表情となっている。
未だに変身後の甜歌を別人と考えているのは、燃堂らしいと言えばらしいが。

仲間だった二人から詰問される甜歌は、怒りと悲しみに支配されていた。
DIOと自分を引き裂こうとする戦兎は敵。
なのにこの二人は戦兎を庇おうとしている。
どうして皆邪魔ばかりするんだろう。
自分はただ、大好きなDIOと一緒にいたいだけなのに。

「今は何を言っても無駄だ!この野郎におかしくされちまったみたいだからよ!」

声を張り上げ甜歌の状態を教えるのは杉元。
新たに現れた少年少女に見覚えは無かったが、善逸と一緒にいるのならとりあえず敵ではないと判断。
杉元の言葉を受け、ナナは目下最大の脅威はローブを纏った仮面ライダーと認識する。
一方で杉元の言葉を理解したのかしてないのか、燃堂が斬月へと殴りかかった。

「桐生から離れやがれオラァッ!」

如意棒を威勢よく振り回して突撃する。
だが悲しいかな、元の体ならまだしも堀裕子の体でアーマードライダーを相手取るのは無謀と言う他ない。
メロンディフェンダーであっさり防がれた上に、そのまま押し返される。
校舎内で打ち付けた後頭部がまたもや地面に激突し、痛みにのたうち回った。

(…どうやら今の甜歌は敵と見るしかないか)

そう判断してからの動きは早かった。
斬月が次の行動を起こすよりも先に、何とかしなければならない。
燃堂の手から落ちた如意棒を拾い上げ、斬月へと向ける。
デイパックの中身を見せて貰った時、この棒の説明書も確認していたのが功を為した。

「伸びろ!如意棒!」

言葉へ応えるかのように、如意棒は斬月へと伸び、先端で胴を強く突いた。
予想外の攻撃に腹部が痛み、甜歌は小さく悲鳴を漏らす。
これだけで終わらせるナナではない。
如意棒を投げ捨てると、すかさずフリーズロッドを振りかぶった。


737 : Dのステージ/これが私の幸福論 ◆ytUSxp038U :2021/08/28(土) 11:35:50 PThugg820
「ごめんなさい甜歌さん…。少しの間、大人しくしててください!」

杖が放つ冷気に当てられ、斬月が一瞬で凍り付いた。
仮面ライダー相手に効くかどうかは賭けの部分もあったが、無事効果はあった。
それにこれはあくまで動きを止めるだけであり、命は奪っていない。
後々戦兎と余計なトラブルを起こさない為にも、今は甜歌を殺すつもりはなかった。
とはいえ状況は未だ良くないままだ
フリーズロッドの力は長続きせず、戦兎は重症。
黒いローブの仮面ライダーは健在で、多分敵では無いだろう白髪の少女は幾つも傷を負っている。
ローブのライダーはオランウータン諸共始末したいが、現在の戦力でそれは難しいだろう。
だから

「今はこの場を離れましょう!」

撤退するしかない。
幸い、逃げるのに適した物がナナには支給されていた。
燃堂と出会う前に確認した時は、思わず唖然としたが。

デイパックに手を突っ込み、目当ての物を引っこ抜く。
出て来たのはデイパックの大きさとは不釣り合いな物体。
巨大な瓶のような形のナニカだ。
いや、良く見れば瓶の下には車輪が付いているし、瓶の内部にはハンドルやシートがある。
この奇妙な物体の正体は自動車だった。

「お?また変なのが出やがったぞ?」
「説明は後でしますから、今は早く乗ってください!」

戦兎を担いでシートへ座らせると、ナナも運転席へ座る。
奇妙な車に目を丸くしていた燃堂も、ナナに叫ばれるままシートへ座った。
未だに殺し合いを理解していない彼だが、戦兎が傷だらけで倒れていた事も有り、一刻を争う事態だとは何となく分かっていた。
乗り込むのを確認するとエンジンを吹かす。
この車、驚いた事に明治時代の代物らしい。
何でこんな骨董品を寄越したんだと呆れながらも、ハンドルを握り締める。
万一の場合を考えて、ご親切に付属していたマニュアルの中身を頭に入れておいて正解だった。

「愚かな、逃がすものかっ!」

ナナ達の逃走を見逃してやる程、DIOは間抜けでは無い。
すかさずザ・ワールドを操作し、ふざけたデザインの車を中にいる連中諸共スクラップに変えようとする。
だがDIOが動くことくらい、敵もまた十分に分かっていた。

「悪いがそいつらは殺らせねぇよ!!」

爆発が起こる。
何が起きた。爆弾か?新手の襲撃か?
違う、杉元だ。
取り巻く一切合切を吹き飛ばすように、炎の爆発が杉元を中心に巻き起こった。
この現象をDIOは知っている。
最初に戦った時にも見せた、自身へ火傷を負わせた忌々しい力。

「オオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

上空へ舞い上がった杉元の背には、燃え盛る翼があった。
【不死「火の鳥-鳳翼天翔-」】。
藤原妹紅のスペルカードと酷似した技。
一度はDIOを驚愕させた力が、再び放たれる。

「またそれを使うか…だが!」

『ETERNAL MAXIMAM DRIVE』

「このDIOを滅すには至らんッ!!」

あの時と違うのは、DIOが新たな力を手にしている事。
エターナルエッジのスロットにメモリを差し込むと、エネルギーが一気に溢れ出す。
ディケイド鎧武を下した時の蹴り技ではない。
エッジにエネルギーを纏わせ、斬撃として放つ技だ。
これもまたディケイド鎧武相手に使った戦法だが、今回はマキシマムドライブとして放つ力。
威力も範囲も、数倍強化されている。


738 : Dのステージ/これが私の幸福論 ◆ytUSxp038U :2021/08/28(土) 11:38:02 PThugg820
蒼い斬撃と火の鳥の弾幕が激突する。
紅と蒼、異なる二色の炎は、互いに拡散せず、相手を飲み込まんとせめぎ合う。
ある種の幻想的な光景だが、DIOはこのまま杉元の炎と真正面からぶつかり合う気は無い。
ザ・ワールドを跳躍させ杉元を攻撃する。
そうすれば戦兎の時同様、拮抗はいとも簡単に崩れるのだ。
真正面からの戦いに拘るような、そんなゴミにも劣る考えはDIOに無い。
重要なのは勝利するという結果のみ。

「ザ・ワール「今だ黄色いの!ぶちかませっ!」!?」

DIOが素直に真っ向勝負をする気が無い事は、安易に予想が付いた。
二度殺し合って分かったが、この男はロクな性格をしていない。
紳士の振りをして騙し討ちし、倒れた戦兎を嬲り、少女を自分の道具のように洗脳する。
そんな男が、わざわざ真正面からのぶつかり合いに乗ってくれるとは到底思えない。
おまけに自分との戦闘中、DIOは常に背後霊(スタンド)を出現させていた。
なら、DIO本人だけでなく、背後霊にも常に注意を払っておくのは当然だ。

「ピィ〜カァ〜…!!(うううううう!!畜生!やってやる!やってやるよこの野郎!!)」

杉元の指示を受けた善逸は、体中に電気を奔らせる。
恐怖が無い、と言えば嘘になる。
正直今でも戦うのは恐いし、白い仮面と鎧の男からは逃げ出したかった。
だけど、それでも善逸にだってDIO達を許せない気持ちはあった。
同行者を殺された。
別に仲良くしてた訳じゃないし、今でも胡散臭い奴だと思っている。
それでも殺されて良い理由なんて無かった。
理不尽に命を奪われて良い理由なんて、一つも無い。

「チュゥウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!!!(くらえええええええええええええっ!!!)」

怒りをぶつけるかのように、電撃がザ・ワールドへと放たれた。
10まんボルト。ピカチュウが使うわざの中でも、最もメジャーなもの。
ポケモンバトルで勝利する為ではない。悪を倒す為に今、ザ・ワールドへと到達した。

「GUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!?!」

炎の弾幕と違い、風圧のラッシュを起こしても電撃は無効化できない。
ザ・ワールドの全身を包み込む電撃に、さしものDIOも絶叫する。
スタンドのフィードバックに加え、エターナルに変身している為、生身で受けるよりはずっとダメージは軽減される。
だが決して無視できるものでもない。

そして必然的に拮抗は崩れる。
蒼い斬撃により威力は半減された。
だが完全には消し去っていない。
地上の敵を焼き潰す翼が、DIOに叩き込まれた。

杉元は弾幕がDIOへ直撃するよりも先に行動を起こした。
相変わらず反動は大きかったが、二回目ともなるとその辺りにも注意が行く為、吹き飛ばされないよう力んで耐えた。
地上に降り立つと急ぎ善逸を回収し、屋根に飛び乗った。
今は一々中に入る手間すら惜しい。
巨大な瓶の上はしっかり掴まっていなければ振り落とされそうだ。
最悪の場合飛べば良い自分とは違い、善逸が落っこちたら一大事なので車内へ放り投げてやった。

「良いぞ出せ!…ところで運転できるのか?」
「…何事もチャレンジですので!」

思わずツッコむ杉元をスルーし、ナナは自動車を急発進させる。
見た目は珍妙な上に遥か昔に製造された物だが、速さは確か。
排気ガスを噴射し、学園を後にした。


739 : Dのステージ/これが私の幸福論 ◆ytUSxp038U :2021/08/28(土) 11:39:29 PThugg820
◆◆◆


運転に集中しながらも、ナナの頭には別の事が浮かんでいた。
学園で殺された鳥束らしきカエル、そしてカエルが言った内容。

(いつもの超能力で傷を治してくれ、か…)

あの言葉が真実だとすれば、やはり斉木は本物の能力者ということになる。
できればより詳しく聞いておきたかったが、残念ながらもうそれは叶わない。
それに鳥束自身が本物の霊能力者かどうかも、知る機会は失われた。
自分達と遭遇する前に何があったかは知らないが、鳥束は重症を負っていた。
更にこちらを本物の斉木楠雄だと思い込むくらいに、正気を失っている様子だった。
そんな状態で出た言葉。
精神的に弱っていたが故の世迷言と取るべきか。
はたまた弱っているからこそ、前々から知っている超能力に縋りついたのか。
果たしてどちらが真実なのか、ナナを悩ませる。

考えるべきことは他にもある。

恐らくは洗脳された甜歌。
手酷くやられ意識を失っている戦兎。
炎を操る能力者と思わしき少女と、電気を操る謎の生物。
分身能力を持つオランウータンを従える、能力者にして仮面ライダーの大男。

考えなければならない事が山ほどあり、つい頭が痛くなってくる。

(…今は学園から少しでも遠ざかる事に集中しよう)

問題に対処するには、何よりもまず生き延びなければならない。
脳裏に浮かぶ問題を振り払うかのように、運転するスピードを一段上げ、街の外へと飛び出した。


【E-2 街の出口付近の道路/早朝】

【柊ナナ@無能なナナ】
[身体]:斉木楠雄@斉木楠雄のΨ難
[状態]:疲労(中)、精神的疲労、運転中
[装備]:サッポロビールの宣伝販売車@ゴールデンカムイ、フリーズロッド@ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本方針:まずは脱出方法を探す。他の脱出方法が見つからなければ優勝狙い
1:今は学園から離れる
2:斉木楠雄はやはり超能力者なのか?もっと詳しく聞きたかったが…
3:犬飼ミチルとは可能なら合流しておく。能力にはあまり期待しない
4:首輪の解除方法を探しておきたい。今の所は桐生戦兎に期待
5:能力者がいたならば殺害する。並行世界の人物であろうと関係ない
6:エボルトを警戒。万が一自分の世界に来られては一大事なので殺しておきたい
7:天使のような姿の少年(デビハムくん)も警戒しておく
8:可能であれば主催者が持つ並行世界へ移動する手段もどうにかしたい
[備考]
・原作5話終了直後辺りからの参戦とします。
・斉木楠雄が殺し合いの主催にいる可能性を疑っています。
・超能力者は基本的には使用できません。
・ですが、何かのきっかけで一部なら使える可能性があるかもしれません。
・参加者が並行世界から集められている可能性を知りました。
・貨物船の精神、又は肉体のどちらかが能力者だと考えています。

【燃堂力@斉木楠雄のΨ難】
[身体]:堀裕子@アイドルマスターシンデレラガールズ
[状態]:疲労(中)、後頭部に腫れ、乗車中
[装備]:如意棒@ドラゴンボール
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本方針:お?
1:お?
[備考]
・殺し合いについてよく分かっていないようです。
・柊ナナを斉木楠雄の弟だと思っているようです。
・自分の体を使っている人物は堀裕子だと思っているようです。
・桐生戦兎とビルドに変身した後の姿を、それぞれ別人だと思っているようです。
・斬月に変身した甜歌も、同じく別人だと思っているようです。


740 : Dのステージ/これが私の幸福論 ◆ytUSxp038U :2021/08/28(土) 11:40:39 PThugg820
【桐生戦兎@仮面ライダービルド】
[身体]:佐藤太郎@仮面ライダービルド
[状態]:ダメージ(極大)、全身打撲、疲労(極大)、気絶、乗車中、ジーニアスに2時間変身不能
[装備]:ネオディケイドライバー@仮面ライダージオウ
[道具]:基本支給品、ライズホッパー@仮面ライダーゼロワン、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本方針:殺し合いを打破する。
0:……
1:甜歌を正気に戻す。あいつの手を汚させる訳にはいかない。
2:甜花を守る。自意識過剰な正義のヒーローだからな。
3:他に殺し合いに乗ってない参加者がいるかもしれない。探してみよう。
4:首輪も外さないとな。となると工具がいるか
5:エボルトの動向には要警戒。誰の体に入ってるんだ?
6:翼の生えた少年(デビハム)は必ず止める。
7:ナナに僅かな疑念。杞憂で済めば良いんだが…
[備考]
※本来の体ではないためビルドドライバーでは変身することができません。
※平成ジェネレーションズFINALの記憶があるため、仮面ライダーエグゼイド・ゴースト・鎧武・フォーゼ・オーズを知っています。
※ライドブッカーには各ライダーの基本フォームのライダーカードとビルドジーニアスフォームのカードが入っています。
※令和ライダーのカードが入っているかは後続の書き手にお任せします。
※参戦時期は少なくとも本編終了後の新世界からです。『仮面ライダークローズ』の出来事は経験しています。
※参加者が並行世界から集められている可能性を知りました。
※ジーニアスフォームに変身後は5分経過で強制的に通常のビルドへ戻ります。また2時間経過しなければ再変身不可能となります。

【杉元佐一@ゴールデンカムイ】
[身体]:藤原妹紅@東方project
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、霊力消費(大)、全身に切り傷、再生中、乗車中(屋根に)
[装備]:神経断裂弾装填済みコルト・パイソン6インチ(3/6)@仮面ライダークウガ
[道具]:基本支給品、神経断裂弾×36@仮面ライダークウガ、松平の拳銃@銀魂、予備マガジン、ランダム支給品×0〜2(確認済)
[思考・状況]
基本方針:なんにしろ主催者をシメて帰りたい。身体は……持ち主に悪いが最悪諦める。
1:今は退いとく。こいつら味方で良いんだよな?
2:あのカエル(鳥束)がいないって事は……。
3:俺やアシリパさんの身体ないよな? ないと言ってくれ。
4:なんで先生いるの!? できれば殺したくないが…。
5:不死身だとしても死ぬ前提の動きはしない(なお無茶はする模様)。
6:DIOの仲間の可能性がある空条承太郎、ヴァニラ・アイスに警戒。
7:この入れ物は便利だから持って帰ろっかな。
[備考]
※参戦時期は流氷で尾形が撃たれてから病院へ連れて行く間です。
※二回までは死亡から復活できますが、三回目の死亡で復活は出来ません。
※パゼストバイフェニックス、および再生せず魂のみ維持することは制限で使用不可です。
 死亡後長くとも五分で強制的に復活されますが、復活の場所は一エリア程度までは移動可能。
※飛翔は短時間なら可能です
※鳳翼天翔、ウーに類似した攻撃を覚えました
※鳥束とギニュー(どちらも名前は知らない)の体が入れ替わったと考えています。

【我妻善逸@鬼滅の刃】
[身体]:ピカチュウ@ポケットモンスターシリーズ
[状態]:疲労(中)、精神的疲労(中)、乗車中
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本方針:殺し合いは止めたいけど、この体でどうすればいいんだ
1:お姉さん(杉元)達と行動。あいつ(鳥束)、守れなかった……
2:炭治郎の体が……
3:どうにか名簿を確認したい
[備考]
・参戦時期は鬼舞辻無惨を倒した後に、竈門家に向かっている途中の頃です。
・現在判明している使える技は「かみなり」「でんこうせっか」「10まんボルト」の3つです。
・他に使える技は後の書き手におまかせします。
・鳥束とギニュー(名前は知らない)の体が入れ替わったと考えています


◆◆◆


741 : Dのステージ/これが私の幸福論 ◆ytUSxp038U :2021/08/28(土) 11:41:52 PThugg820
「全く…忌々しいな」

変身を解除し、杉元らが逃げて行った方を見る。
既に奴らの姿は影も形も見当たらない。
積極的に探す必要も無い相手と見ていたが、こうも苦い思いをさせられれば流石に苛立つというもの。
できれば今すぐに殺してやりたいが、受けた傷と蓄積した疲労は無視できない。
全身の痺れも非常に鬱陶しい。
結局今DIOに出来ることと言えば、不機嫌そうに鼻を鳴らすくらいだった。

「しかし…仮面ライダーの力、思った以上に役立つではないか」

炎の弾幕が直撃したにも関わらず、こうして五体満足なのもエターナルに変身していたからだ。
マキシマムドライブで弾幕の威力を削ぎ、エターナルローブで被害を最小限に留められた。
おまけにエネルギーを纏わせザ・ワールドを強化できる。
エターナルの力はこの先も十分役に立つだろう。

「ウキャ…」
「ひぃん、逃げられた…」

役立つと言えば、この一匹と一人。
仮初の下僕どもはどこまで使い物になるのやら。
ようやく痺れから幾らか動けるようになった貨物船を見やる。
校舎内の参加者は全員殺せと指示したが、マトモに果たせていない。
本来であれば役に立たないと処分するのに何の抵抗もない。
とはいえ、何一つとして為す事の出来ない救いようの無い無能、という程でも無い。
甜歌と仮面ライダーの道具を持ってきた点、そこだけは評価してやる。
尤も、大目に見てやるのはこれが最初で最後。
使えないと判断したら即座に切り捨てる方針に変わりは無い。

「ご、ごめんなさい…甜歌…DIOさんの為にも勝たなきゃならなかったのに…」
「そう落ち込まないでくれ、甜歌。君の愛は疑っていない。次は上手くやってくれると期待しているよ」
「う、うん…!DIOさんの為に、が、頑張るね…!」

意気込む少女を、内心で壊れかけた玩具を見るような冷めた視線を向ける。
肉の芽を植え付けたのではなく、支給品によりDIOの為に働くよう仕向けた。
効果がいつまで続くのかは、説明書にも記載されていなかった。
死ぬまでこの上体なのか。時間経過で徐々に弱まるのか。
ひょっとしたら数分後には正気に戻る可能性とて否定できない。
だとしても何も問題も無いが。
仮面ライダーに変身しようと、中身は戦兎のように戦い慣れた者ではなく、非力な小娘。
反抗された所で何の脅威にもならない。
効果が永続的なものならば結構なことだ。適当な駒として使ってやるのみ。


ふと、戦場跡と化した校門へ光が差してるのに気付く。
振り返れば、遥か彼方に太陽がゆっくりと顔を覗かせていた。

夜明けだ。
百年ぶりの陽の輝きがDIOへと降り注ぐ。

久しく感じる眩しさに目を細め、
新たな始まりを告げるかのような光景を、ただじっと見つめていた


742 : Dのステージ/これが私の幸福論 ◆ytUSxp038U :2021/08/28(土) 11:43:48 PThugg820
【E-2 街 PK学園高校(校門付近)/早朝】

【DIO@ジョジョの奇妙な冒険】
[身体]:ジョナサン・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険
[状態]:両腕火傷、体中に痺れ、疲労(大)、火に対する忌避感
[装備]:ロストドライバー@仮面ライダーW、T2エターナルメモリ@仮面ライダーW
[道具]:基本支給品、ジークの脊髄液入りのワイン@進撃の巨人
[思考・状況]基本方針:勝利して支配する
1:夜明けか…。
2:貨物船と甜歌従えておく。
3:どちらも裏切るような真似をしたら殺す。
4:役立たないと判断した場合も殺す。
5:学園から逃げた連中への苛立ち。次に出会えば借りは返す。(特にスギモト、黄色い獣(善逸)仮面ライダー(戦兎))。
6:元の身体はともかく、石仮面で人間はやめておきたい。
7:アイスがいるではないか……探す。
8:承太郎と会えば時を止められるだろうが、今向かうべきではない。
9:ジョースターの肉体にを持つ参加者に警戒。
10:仮面ライダー…中々使えるな。
[備考]
※参戦時期は承太郎との戦いでハイになる前。
※ザ・ワールドは出せますが時間停止は出来ません。
 ただし、スタンドの影響でジョナサンの『ザ・パッション』が使える か も。
※肉体、及び服装はディオ戦の時のジョナサンです。
※スタンドは他人にも可視可能で、スタンド以外の干渉も受けます。
※ジョナサンの肉体なので波紋は使えますが、肝心の呼吸法を理解していません。
 が、身体が覚えてるのでもしかしたら簡単なものぐらいならできるかもしれません。
※肉体の波長は近くなければ何処かにいる程度にしか認識できません。
※貨物船の能力を分身だと考えています。
※T2エターナルメモリに適合しました。変身後の姿はブルーフレアになります。

【貨物船@うろ覚えで振り返る承太郎の奇妙な冒険】
[身体]:フォーエバー@ジョジョの奇妙な冒険
[状態]:疲労(中)、ダメージ(大)、ジークの脊髄液入りのワインを摂取、酒酔い(多少は醒めた)
[装備]:英和辞典@現実
[道具]:基本支給品、ワイングラス
[思考・状況]基本方針:DIOのためになるように行動
1:DIOの命令に従う。
2:漫画を置いて行ってしまったのが少し残念。
[備考]
・スタンドの像はフォーエバーのものとそっくりな姿になっています。
・一応知性はあるようです。
・DIOがした嘘のワインの説明を信じています。

【大崎甜花@アイドルマスターシャイニーカラーズ】
[身体]:大崎甘奈@アイドルマスターシャイニーカラーズ
[状態]:疲労(大)、DIOへの愛(極大)
[装備]:戦極ドライバー+メロンロックシード+メロンエナジーロックシード@仮面ライダー鎧武
[道具]:基本支給品
[思考・状況]基本方針:DIOさんの為に頑張る
1:DIOさん大好き♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥
2:戦兎さん……どうしてDIOさんに酷いことするの……?
3:ナナちゃんと燃堂さんも……酷いよ……。。
4:なーちゃんは……。
[備考]
※自分のランダム支給品が仮面ライダーに変身するものだと知りました。
※参戦時期は後続の書き手にお任せします。
※参加者が並行世界から集められている可能性を知りました。
※ホレダンの花の花粉@ToLOVEるダークネスによりDIOへの激しい愛情を抱いています。
 どれくらい効果が継続するかは後続の書き手にお任せします。

【ホレダンの花の花粉@ToLOVEるダークネス】
宇宙植物の一種。
この花から出る花粉は女性が吸い込むと、目にした男性に猛烈に惚れ込んでしまう効果がある。
しかし、既にその目にした男性に恋心を抱いている女性が吸い込んでも効果はない。

【フリーズロッド@ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド】
ヘブラ山山頂の氷を精錬して作られたといわれる、超低温の冷気を広範囲に発射する魔法の杖。
使い続けていれば込められた冷気が減少し、完全に尽きると砕け散る。

【サッポロビールの宣伝販売車@ゴールデンカムイ】
ビール瓶の形をしたボディを取り付けた自動車。
アシリパを攫った第七師団を追跡する際に、白石が発見したのを海賊房太郎が運転した。


743 : ◆ytUSxp038U :2021/08/28(土) 11:44:29 PThugg820
投下終了です


744 : ◆NIKUcB1AGw :2021/08/29(日) 00:44:59 m1Gh5cWw0
投下乙です!
全話から引き続き、DIOエターナルの脅威が圧倒的すぎる
対主催サイドは、全滅を避けられただけでも大健闘か

ダグバ、予約します


745 : ◆ytUSxp038U :2021/08/30(月) 01:44:39 75cZzTtQ0
感想ありがとうございます。

また支援画像を作ってくださった◆EPyDv9DKJs氏に、この場を借りて御礼を申し上げます。
まさか自分の作品がああいった形で支援してもらえるとは思わず大声を出しました。
本当にありがとうございました!

檀黎斗を予約します


746 : ◆NIKUcB1AGw :2021/08/30(月) 23:43:20 TRBoOCjI0
投下します


747 : 気まぐれコンタクト ◆NIKUcB1AGw :2021/08/30(月) 23:44:48 TRBoOCjI0
ダグバが気がついたとき、そこは河原だった。

「あれ? えーと……。ああ、そうだそうだ」

一瞬自分の置かれた状況がわからなくなったダグバであったが、すぐに思い出す。
自分はあの騎士との戦いで、強烈な風の一撃を食らい吹き飛ばされたのだと。
その勢いのまま山を転がり落ち、麓の川まで到達して気絶していたらしい。
体への負担はかなりのものだったはずだが、肉体に深刻な欠損は見られない。
斬月・真の装甲のおかげだろう。

「さて……どうしようかな……」

空に視線を向けながら、ダグバは呟く。
むろんあの騎士ともう一度戦って、今度こそ倒したいという気持ちはある。
だが空の様子からして、もう夜明けが近い。
自分はそれなりの時間、気を失っていたことになる。
おそらくあの騎士達も、どこかへ移動してしまっているだろう。
そうなると、探すのは手間だ。
それならばいっそのこと、他の参加者の捜索に切り替えた方がいいのかもしれない。
自分を楽しませてくれる参加者は、きっと他にもいるだろうから。

「まあどっちにしろ、何の当てもないから適当に動くしかないんだけどねえ。
 たまには、運試しでもしてみようか」

そう独りごちながら、ダグバは近くにあった木から枝をもぎ取る。
そしてそれを、地面に垂直に立てる。
ダグバが手を放すと、支えを失って枝は地面に倒れる。
指した方向は、東。

「川を渡れってことか……。
 そうなると、新しい獲物を探すことになるかな。
 まあ、それも面白い。
 とはいえ、どうやって渡ろうか」

見たところ川の深さは、明らかに歩いて渡れるものではない。
本来のダグバであればこの程度の川を泳いで渡るのは造作もないだろうが、今は貧弱なリントの体である。
アーマードライダーへの変身で身体能力を補ったとしても、一戦終えて消耗した現在の体力では向こう岸まで泳ぎ切れるか怪しいところだ。
面倒だが、遠くに見える橋まで迂回するのが無難か。
そう結論づけそうになったダグバだったが、あることを思い出す。

「そうだ、あれが使えるんじゃないか?」

そう呟いて彼が取り出したのは、丸められた赤い布。
広げると、それはふわりと宙に浮く。
「魔法のじゅうたん」。元は零余子に支給されたアイテムである。

「いやあ、誰が作ったんだろうなあ、こんな面白いもの。
 それじゃ、出発!」

上機嫌な声を漏らすと、ダグバはじゅうたんに飛び乗る。
そして、川に向かって突っ込んでいった。


748 : 気まぐれコンタクト ◆NIKUcB1AGw :2021/08/30(月) 23:45:57 TRBoOCjI0


◆ ◆ ◆


無事に川を渡ったダグバは、そのまま東へ直進。
やがて、C-5にある村へとたどり着く。
あまり高く飛べない魔法のじゅうたんは建物が密集した場所での移動には向かないため、ダグバはそれをしまい自分の足で探索を開始する。

「ふうん……。血のにおいがするね……」

ダグバがまず反応したのは、村のどこかから漂ってくる血のにおい。
どうやらここでは、すでに戦闘が行われていたらしい。
ダグバは迷わず、においの元を探し始める。
程なくして彼は、首を落とされた青年の死体を発見した。

「ああ、もう殺された後か。残念だなあ」

筋肉の付き方などを見ると、青年はかなり屈強な戦士だったようだ。
しかし、死んでしまっているのではもう戦えない。
荷物も殺した相手が持ち去っているようだし、これ以上ここにいても仕方ない。
あっさりと死体への興味を失ったダグバは、探索を再開する。
あの青年を殺した参加者がまだ近くにいるかもしれないし、まったく関係ない参加者が村を訪れている可能性もある。
誰でもいいから、戦う相手を見つけたい。
その思いを胸に、ダグバは建物を一軒ずつ調べていく。
だが彼の思いとは裏腹に、生きている参加者はいっこうに見つからない。
その代わり彼は、興味深いものを見つけた。

「なんだろうね、これは……」

そこは、役場の一室であった。
ダグバにとって未知の物体が敷き詰められたそこは、村内に放送を行うための放送室だ。

「けっこう大がかりな仕組みみたいだけど、さすがにわからないな……。
 このベルトみたいに、説明書きがあれば……あ、あった」

壁にこの施設に関する説明が貼られているのに気づいたダグバは、それに目を通してみる。

「なるほど、広範囲に声を届けられる施設なのか……」

説明は、機械知識が皆無と言っていいダグバにも理解できるほど丁寧に書かれていた。
これは、参加者に使ってもらいたいのだろう。
そう判断したダグバは、説明に従いスイッチを押していく。

「あー……。これでいいのかな。
 まあ、いいと判断して話をするね。
 僕は今、建物が密集してるエリアの役場ってところからしゃべってるよ。
 他の参加者に会えなくて困ってるなら、僕のところまで来てほしいな。
 しばらくはここに留まるつもりだから。
 僕を笑顔にしてくれる存在が来るのを、待ってるよ」

そこまでしゃべると、ダグバはマイクの電源をオフにした。

「さて……それじゃあしばらく待ってみるかな。
 面白いのが来てくれるといいんだけど。
 それまで、どうやって時間潰してようかなあ」

満足げな態度を見せながら、ダグバは放送室を後にする。
彼の放送に応える者は現れるのか。
あるいは、無為に時間を過ごすだけで終わるのか。
答は、神のみぞ知る。


749 : 気まぐれコンタクト ◆NIKUcB1AGw :2021/08/30(月) 23:47:19 TRBoOCjI0


【C-5 村/早朝】

【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】
[身体]:櫻木真乃@アイドルマスターシャイニーカラーズ
[状態]:ダメージ(中)、脇腹に強い打撲痕、消耗(中)
[装備]:ゲネシスドライバー@仮面ライダー鎧武、メロンエナジーロックシード@仮面ライダー鎧武、ミニ八卦炉@東方project
[道具]:基本支給品×2、魔法のじゅうたん@ドラゴンクエストシリーズ、ランダム支給品×0〜2(零余子の分も含む)
[思考・状況]基本方針:ゲゲルを楽しむ
1:放送を聞いた参加者が来るのを待つ
2:見失った二人(キャメロット、凛)と再戦する。ただ見つける手段がないので、また会えればいいなという程度。
[備考]
※48話の最終決戦直前から参戦です。

※ダグバの放送が、どこまで届いているかは不明です。本人もよくわかっていません。


【魔法のじゅうたん@ドラゴンクエストシリーズ】
空を飛ぶ魔法がかけられたじゅうたん。
水上の移動も可能だが、あまり高くは飛べないため森や山に進入することはできない。
丸まったまま開かない不具合はないのでご安心を。


750 : ◆NIKUcB1AGw :2021/08/30(月) 23:47:58 TRBoOCjI0
投下終了です


751 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/01(水) 01:03:02 132AijAI0
脹相で予約します。


752 : ◆ytUSxp038U :2021/09/02(木) 17:57:42 /Rb2GaF.0
投下乙です
空飛ぶ絨毯にはしゃぐアイドルと、絵面だけなら可愛いが中身は邪悪なグロンギなんだよなぁ…
真乃の声で放送したら、割と参加者が集まりそう

投下します


753 : 宣戦布告のGame master! ◆ytUSxp038U :2021/09/02(木) 17:59:50 /Rb2GaF.0
重厚な蒼の鎧に身を包んだ青年。倒れ伏したその表情には、どこか穏やかな笑みがあった。
青年の傍に立つ、黒とマゼンタを基調とした鎧の者。外見やベルトは違えど、その姿は仮面ライダーを髣髴とさせる。
最後の一人、和服らしきものを着た少女。小学生程のの年齢にも関わらず、少女の顔に怯えは見当たらない。
それどころか相手を値踏みするような、傲慢さが宿った不敵な笑みをマゼンタのライダーへ向けている。
画面に映し出された三人に、黎斗は小さく唸る。

「迂闊に近寄らなくて正解だったか…」

いろは達と別れ街を出た後、橋の上で閃光が煌めくのが遠目からでも分かった。
何者かが戦闘を行っていると察した黎斗は、デイパックから支給品を取り出した。
カードデッキ以外に支給されたのは、高性能な機能のカメラ。
しかもただ撮影するだけでなく、コウモリのような姿となり偵察も行える優れモノだ。
序盤は基本様子見で動くつもりの黎斗としては、こういった機械の存在は有難いと言える。

早速コウモリに変形させると、戦闘が行われている場所付近へ行くよう指示を出した。
暫し待っていると、相手に気付かれないギリギリの距離で撮影を終えたコウモリが戻って来た。

蒼い鎧の青年が具体的にどれ程の実力者だったのかは知らない。
だが生身でライダーと戦えるくらいの力は有していた事が伺える。
ひょっとしたいろはのように、魔法を使う者だったのかもしれない。

ガシャットを用いて変身するのとは別の、未知のライダー。
それに少女の体でありながら、堂々とした佇まいの何者か。
いずれも楽に殺せそうな相手でないことは確か。
だがバトルロワイアルとは、何も黎斗一人で他の参加者全員を始末するというルールではない。
あらゆる手段を用いて、最後の一人になるまで生き残ればいい。
であるならば、消耗した所を狙うか、他の参加者を炊き付けて潰し合わせるという方法を取っても問題は無い。
とりあえず今は危険な参加者二名の情報が手に入ったのを良しとする。

(しかし先の事を考えると、このカードデッキの力にも慣れておく必要があるな)

仮面ライダーの力が手元にあるのはいいが、これは使い慣れたゲンムではない。
万が一不覚を取り、二度目のゲームオーバーとならない為にも、ベルデの力をある程度は使いこなせるようにしておきたい所だ。

「だが…何故カードデッキを支給した?」

黎斗も、そして仮の肉体である天津垓も仮面ライダーの変身者である。
この内ゲーマドライバーやガシャットを支給しないのは理解できる。
あれで変身できるのは適合手術を受けた者や、宝生永夢のように特殊な事情を持つ人間のみ。
CRとは無関係の天津の肉体では、ゲーマドライバーを使った所で無駄にダメージを負うだけなのだから、わざわざ支給する必要は皆無だろう。
ではプロフィールに記載されていた、天津自身が変身する仮面ライダーサウザーならばどうだ?
天津が最も使い慣れているサウザーのドライバーと、プログライズキーなる道具。
それらを支給すれば、天津の戦闘力を最大限に発揮できるはず。
だが実際に支給されたのは、ベルデという全く別のライダーへ変身するアイテム。
一体何故、天津とは無関係のライダーに関わる道具を寄越したのだろうか、それが黎斗には疑問だった。

「………最初から、強過ぎる装備があってはつまらない、からか?」

例えばだが。
自分がバトルロワイアルの主催者で、永夢を参加者として招いたとする。
その際ゲーマドライバーは良いとして、Lv.99のマキシマムマイティアクションXガシャットを最初から所持するのを許容できるか?
否である。永夢は最高のモルモットとして興味深い人間だが、だからと言ってそれは贔屓が過ぎる。
むしろマイティアクションX以外のガシャットは全て没収し、初期状態でスタートさせてやるだろう。
ゲームも同じだ。
ニューゲームでいきなり最強クラスの装備を所持しているなど、ゲームの面白さを著しく損なう。


754 : 宣戦布告のGame master! ◆ytUSxp038U :2021/09/02(木) 18:00:56 /Rb2GaF.0
(つまり、サウザーというライダーでは少々強過ぎるから、別のライダーにしたということか)

サウザーの能力がどれ程のものかは知る由も無いが、一応は納得がいく。

改めて考えると、バトルロワイアルとは少々大掛かりなゲームだ。
そしてゲームとは即ち、過程がどうあれ最終的にはクリアが可能でなければならない。
どれだけ高難度であったり、クソゲーと呼ばれる質の低いものであっても、エンディングに辿り着けるよう設定されている。
そもそもプレイヤーのクリアが考えられていなければ、どれだけハイクオリティであってもゲームとしては認められない。
最後の一人になるまで殺し合い、優勝者にはどんな願いも叶えられる報酬が待っているというシンプルなルール。
だがシンプル=簡単とはならない。
例を挙げると、黎斗が最初に市街地で出会った少女と少年。
魔法少女のいろはと、普通の少年のリト。
二人が殺し合えばどちらが勝つか、考えるまでも無くいろはの圧勝だろう。
普通に考えればリトに勝ち目は無いが、バトルロワイアルが優勝というクリアを前提としたゲームである以上、
リトのような特殊な力を持たない参加者でも、勝ち残れるような調整を施されているはず。
肉体を変えられた事により、元々使っていた能力が使えなくなった者。
反対に、元は一般人だが肉体のお陰で能力が使えるようになった者。
ライダーへの変身アイテムを支給し、能力者との差を埋めることだって可能だ。

(何より一番は、首輪という全参加者共通の弱点があるということ)

どれだけ強力な肉体だろうと、首輪が爆発すればゲームオーバーは確定。
実力で劣っても上手く首輪を狙えば、弱者でも勝利を収められるシステム。
それなりにだが、よく考えられていると感心する。
消滅するはずだった自分へ復活の機会を与えた事にも、まぁ感謝してやっても良い。

「しかし…」

クワッと目を見開き、天を睨み上げる。

「ゲームマスターであるこの私に首輪を填め、一介のゲームプレイヤーと同列に扱った屈辱は許し難い…!覚悟しておけ!」

檀黎斗という人間は紛れも無く天才である。
正史において、とある監察医からは「生まれる時代を間違えた」と言われる程に、他の追随を許さない才能の持ち主。
そしてそれに比例し、プライドも人一倍高い。
ボンドルドの持つ技術力は認めよう。
自分に復活の機会を与えてくれたのも認めよう。
だからと言って、都合よく命令を聞くロボットになったつもりは一切無い。

ゲームクリアを果たした後は、神の才能を持つ自分を愚弄した罪、その身を以て償わせてやる。
そんな宣言を、今もどこかで見下ろしているだろう主催者へ叩きつけた。


【D-5 橋の上/黎明】

【檀黎斗@仮面ライダーエグゼイド】
[身体]:天津垓@仮面ライダーゼロワン
[状態]:健康
[装備]:ベルデのデッキ@仮面ライダー龍騎、バットショット@仮面ライダーW
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:優勝し、「真の」仮面ライダークロニクルを開発する
1:人数が減るまで待つ。それまでは善良な人間を演じておく。
2:次の放送が流れるあたりにいろは達と合流。
3:優勝したらボンドルド達に制裁を下す。
[備考]
・参戦時期は、パラドに殺された後
・バットショットには「リオンの死体、対峙するJUDOと宿儺」の画像が保存されています。

【バットショット@仮面ライダーW】
フィリップが開発したメモリガジェットの一つ。
高い画像分析能力や撮影能力、撮影機能のデジタルカメラ形態、ギジメモリのバットメモリをインサートすることで変形するコウモリ型形態の二形態がある。
更に敵への目眩ましとなるフラッシュや超音波を発することも可能。
バットメモリとのセットで支給された。


755 : ◆ytUSxp038U :2021/09/02(木) 18:02:22 /Rb2GaF.0
投下終了です


756 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/03(金) 23:42:58 RUOWOKjI0
すみません、再び延期します


757 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/05(日) 00:00:39 QX19SoWU0
投下します。


758 : 兄と姉の探し物 ◆5IjCIYVjCc :2021/09/05(日) 00:01:43 QX19SoWU0
C-3の南側…
山の頂上付近から少し南の方へと下ったその場所に、どこか古き良き趣きを感じさせる家屋があった。
かつて、竈門という一家が悲劇に見舞われ、現在はこの場所に移されたその建物の中には、一人の少女がいた。
その少女こそ、名簿にあった呪いの王の名前を見つけたことで、主催者たちに対する怒りをより高めることになった『兄』、脹相である。

「…………誰もいない、か」

現在の脹相の目的はただ一つ、ボンドルドら主催陣営の者達を確実に潰すことだ。
そして、そのための協力者を探すために、彼は現在いるこの山中を歩き回り、やがてこの家を見つけた。
だが、ここで脹相が期待する味方となれそうな者は一人もいなかった。
それどころか人っ子一人見かけなかった。
他に発見できた役に立ちそうなものとしては、元の住民が薪割りのために用意したと思われる斧が一つだけだ。
脹相は一応、もしもの時のための武器にはなるだろうと、その斧を持っていくことにした。


「しばらくここにいるとするか」

脹相は少しの間この家の中に居ることにした。

脹相は今、戦いのための準備が不十分な状態にある。
現在の荷物は軽く見て、ユニットというものが無いのは確認したが、実際にはどんな支給品があるかについてはまだよく分かっていない。
そのため、今回は他の誰かがこの家を見つけて訪ねてくるのを待ちながら、自身が使える品を整理して使い方等を調べる時間とした。


「……まずはこいつからか。これは外れと見るべきか?」

最初に脹相がデイパックの中から発見したのは、紫色の悪魔を模したかのようなマスコットキャラクターのぬいぐるみだった。

「名前はデビ太郎のぬいぐるみ、元の持ち主は大崎甜花…確かこの名前は名簿にあったな」

ぬいぐるみの説明書で分かったことは、これがどうやらこの殺し合いの参加者の一人の私物であるということだった。
ただし、これはあくまでもただのぬいぐるみであり、特別な効果は何もない。
本来の持ち主についても、ただそうだと書いてあるだけでどういう人物なのかについての記載は無い。
ただ、このぬいぐるみは一応その大崎甜花という人物にとってお気に入りのものであるらしい。

まあ、だからといって脹相は、会ったことも無い人物に気をつかおうといった考えはない。
せいぜい、その甜花とやらが自分に協力するのならば一応返してもいいだろうという考えは浮かぶ。

「………俺に協力しなければこれは返さん、とでも言ってみるか?」

そんなことも考えながら、脹相はぬいぐるみをしまい、次の支給品の確認に移った。


脹相が次に取り出した支給品、それは一丁の小銃であった。
しかしその銃は脹相が前にいた時よりも、古い時代の銃であった。
その銃の名は「三十年式歩兵銃」、明治時代当時における帝国陸軍の主力武装の一つである。
もっとも、脹相は銃に詳しいというわけではないため、そんな細かいところには気づかなかったが。

「銃か…そういえばプロフィールにこいつ(バルクホルン)はユニットで空を飛行しながら銃で戦うと書いてあったな」

脹相はふと、そんなことを思い出す。
今は手元にユニットとやらは無いが、一応身体の戦い方に合うように銃を自分に渡したのかと考える。


「後に残ったのはこいつか。だが、これは鞄…なのか?」

最後に出てきた支給品は、青いラインの入ったアタッシュケースのような形状の道具であった。

「なぜ鞄の中から鞄が…む?」

不思議に思いながらそのアタッシュケースをいじっていると、その形状が変化した。

「なるほど、これも武器だったという訳か」

アタッシュケースだと思っていたそれは、下の方から展開し、銃の形に変形した。
こっちの銃の名は「アタッシュショットガン」、主に仮面ライダーバルカンが使用していた武装である。

「なるほど、こっちの方が威力は高いのか。だが、その代わりに反動もかなり大きい…扱いには要注意という訳か」

説明書を読んでみると、ショットガンの注意事項も記載されていた。
この銃の反動はかなり高く、生身である飼うのはかなり危険な代物だと書いてある。
けれども、今の脹相の身体はウィッチであるゲルトルート・バルクホルン、それもその固有魔法は怪力である。
そしてこの固有魔法はユニットの力で増幅できるらしい。
ならば、反動を防ぐために、このショットガンはユニット装着時に装備するものとすれば良いだろうか。

「とりあえず、使えそうな物はここまでか」


759 : 兄と姉の探し物 ◆5IjCIYVjCc :2021/09/05(日) 00:03:21 QX19SoWU0
全てのランダム支給品の確認を終えた脹相は、見つけた物で武装することとした。
どの武器も脹相の戦闘スタイルには合ってないが、本来の自身の術式が使えない以上これで戦うしかない。
斧は手に持ち、歩兵銃は負い革(ベルト)に逆の腕を通して背負う。
アタッシュショットガンは(今は無い)ユニット装着時用とし、今はぬいぐるみと共にデイパックの中に仕舞っておく。
結論としては、やはりユニットという道具はこの身体での戦いには必須なものであり、捜索も続けるべきと考える。


「……そろそろ移動するべきか」

支給品確認も兼ねて人がこの場に来るのを待ってみたが、特に誰が来る気配はない。
さすがにこれ以上待つよりは、自分から行動して人を探した方がいい頃合いだろう。
書置きか何かを残すことも考えたが、そういったことに使える道具も無い。
脹相は荷物をまとめて外に出た。



外に出てすぐ、脹相はある異常に気付いた。

「………?今、何か音が」

初めは、小さな音であったために気づかなかったが、音は確かに聞こえて来た。
どうやら離れた場所から聞こえてきていたために、音は小さく聞こえたようだった。

まるで、何かと何かがぶつかり合うかのような音、
それは明らかに、戦闘行為によって発生した音であった。
脹相がこれに気づき、顔を音の方向へと向けた、その瞬間のことであった。

「!?」

脹相は、黄緑色の光を見た。
しかし、その光は真っ直ぐに進んでいなかった。
光は何かに斬られたかのように、辺りに拡散していた。
拡散した光はたくさんの木々へと当たり、そこに火をつけた。
ただし、離れた場所にいる脹相に見えたのはほんの一部のみであったが。

(向こうで戦闘が行われている!)

脹相はそのことを理解し、すぐにでも向こうの様子を確認しに行こうと考えた。
しかし、光の正体はこの距離では彼にはまだ分からない。
それでも、レーザーのように何らかの強力な能力か兵器かという想像はつく。

(……今、あの光を放った奴はどういうスタンスでいる?)

向こうには少なくとも、2人以上の参加者がいることが分かる。
戦闘になったということは、1人は殺し合いに乗っている人物である可能性が高い。
先ほど光を放ったと思われる人物が、危険人物であることも否定できない。
その人物が強力な力を有していることが考えられるため、警戒するに越したことは無い。
相手がこちらに気づき、レーザー光で遠距離から攻撃してくることも考えられる。

脹相は一旦斧をデイパックにしまい、遠距離対策に歩兵銃をいつでも撃てるような状態にする。
そして、なるべく向こうにいる者達に気づかれないようにと、慎重に移動をし始めた。



しかし、音と光が来たと思われる場所にたどり着いたその時、脹相が見たのは彼が考えていたものとは異なる光景であった。

「……誰もいない?」

その場所は、確かに戦闘が起きた跡が残っていた。
周囲では離れた所からでも見えたように木々は燃え盛り、山火事の状態となっている。
地面もあちこち抉れており、クレーターが出来ている箇所もあった。
だが、その場所には人の気配も全くなかった。

否、気配はなかったが、『人』は確かにそこにいた。
しかし、それは…


(あそこに死体が…!なるほど、あいつがここで殺された者ということか)


脹相は少し離れた場所に女が1人分転がっているのを発見した。
黒髪ツインテールの赤い服の女は、その身体を真っ二つに切断されていた。
誰がどう見ても、その女は確実に死んでいた。


760 : 兄と姉の探し物 ◆5IjCIYVjCc :2021/09/05(日) 00:06:41 QX19SoWU0
脹相は、この女がここで起きた戦闘での敗北者であると判断した。
その死体へと近づいて、女の身に何が起きたのかを確認しようとする。


(綺麗に切断されている…まさかこれは宿儺の仕業か?確定はできないが、可能性は考えておくべきか)

脹相は両面宿儺が切断の術式を有していることを思い出す。
宿儺であれば、こんな風に女を殺害することも可能だろうと考える。
もしこれが宿儺の仕業だとしたら、数時間前に考えていた宿儺の状態は、指ごと他の参加者へ移されたものである可能性が高くなる。
だどすれば、宿儺の状態はより厄介な方であったと言えるだろう。
けれども、断定できない以上、この考えは憶測の域を出ないことになるが。

(宿儺かどうかはともかく、この近くには殺し合いに乗っている者がいる。しかもそいつは荷物もしっかり奪っている)
(火を放ったのがこの女かそれとも違うのかはともかく、相手はそのための道具も持っていることになる。おそらく、今の俺より戦力は上だ)
(………ひょっとして今はまずい状況か?ならばここはすぐにでも離れるべきか)

女を殺した人物は近くにいる、と脹相は考えている。
立ち止まっていては、この場所に戻ってきて自分と戦闘になる可能性もある。
だが、人の身体を真っ二つに切断する能力(または道具)を有しており他にもレーザー兵器(仮)を持つ相手とこれまで使ったことのない斧や銃で戦うことになる自分、
こんな今の自分がその危険人物と戦って、必ず勝てるとは言えない。
情けない話ではあるが、ここは一度退くのが正解だと判断した。
いずれ殺し合いを潰すつもりならば、女を殺した人物を完全に放っておくわけにもいかないが、自分が殺されてしまえば元も子もない。
それよりも、協力者探しを優先した方がいいだろう。

自分より強い危険人物がいる可能性もそうだが、周囲で火がさらに辺りに燃え移り始めたのもここから離れる理由だ。
水を用いて消化しようとしても、量が足りないだろう。
せめてここにいた者がどの方向へと向かったのかも知りたいが、それを調べる間に炎が自分を取り囲むだろう。
逆に、脹相が思う危険人物がいないと考えられる場所、それは彼がこの場へと来た道、竈門家へと続く方向だろう。
少なくとも今、彼にとって考えられる安全な場所はその竈門家だけだ。

(…念のため首輪も回収しておこうか)

主催者たちに抵抗するため、自分の首輪を無効化する方法は知っておきたい。
自分の手では解除することは難しいが、そのための技術を持っている人物に渡して解析してもらうのも手だろう。
脹相は先ほどの家で入手した斧を取り出し、これを女の死体の首目掛けて振り下ろして切断する。
そして、切断された首へと手を伸ばし、首輪を取り外して自分のデイパックの中へと仕舞う。

もうこの場で、彼がすべきことは無い。
殺し合いに乗ったであろう者が自分に気づく前に、速やかにこの場を離れるだけだ。

脹相は木々を燃やす炎と女の死体を背に、自分が来た山道へと引き返していった。





【C-4 山/黎明】

【脹相@呪術廻戦】
[身体]:ゲルトルート・バルクホルン@ストライクウィッチーズシリーズ
[状態]:健康
[装備]:竈門炭治郎の斧@鬼滅の刃、三十年式歩兵銃(装弾数5発)@ゴールデンカムイ
[道具]:基本支給品、デビ太郎のぬいぐるみクッション@アイドルマスターシャイニーカラーズ、アタッシュショットガン@仮面ライダーゼロワン、零余子の首輪
[思考・状況]基本方針:どけ!!!俺はお兄ちゃんだぞ!!!主催者許さん!!!ぶっつぶす!!!
1:殺し合いには乗らない。
2:「出来る限り」殺しは控える。
3:先ほど自分がいた住居へと戻る。
4:近くにいるであろう危険人物(仮)に警戒。
5:4の人物が両面宿儺である可能性も考えておく。
6:ユニットを捜索する。
7:両面宿儺を警戒。今は遭遇したくない
8:お前が関わっているのか?加茂憲倫…!!
9:どう動くにせよ協力者は必要になるだろう。
[備考]
※渋谷事変終了後以降からの参戦です。詳しい時系列は後続の人にお任せします。
※ユニット装着時の飛行は一定時間のみ可能です。
※虎杖悠仁は主催陣営に殺されたと考えています。


761 : 兄と姉の探し物 ◆5IjCIYVjCc :2021/09/05(日) 00:08:14 QX19SoWU0

【竈門炭治郎の斧@鬼滅の刃】
支給品ではなく、竈門家の中で入手した道具。
竈門炭治郎が『鬼滅の刃』第一話で冨岡義勇との戦いに使用したものと同じもの。

【デビ太郎のぬいぐるみクッション@アイドルマスターシャイニーカラーズ】
アイドルマスターシャイニーカラーズ作中に登場する悪魔モチーフのマスコットキャラクターのぬいぐるみクッション。
ここにおいては、大崎甜花の私物のぬいぐるみが支給されている。

【三十年式歩兵銃@ゴールデンカムイ】
明治時代の帝国陸軍で採用された日本のボルトアクション式小銃。
日露戦争においても主力小銃として使用された。
陸軍軍人の有坂成蔵(現実においては有坂成章)によって開発されたため、別名「有坂銃」とも呼ばれる。
あらかじめ三十年式実包が5弾装填されている。

【アタッシュショットガン@仮面ライダーゼロワン】
仮面ライダーバルカンが主に使用する可変式の武器。
防御力の高いアタッシュケース状態から展開・変形し、高威力の銃として使用することができる。
初期型は反動が凄まじく、使用した仮面ライダーバルカン シューティングウルフを吹っ飛ばすほどであったが、その後仮面ライダーバルキリーでも扱えるよう調整が施された。
ここにおいては、その反動の大きい初期型が支給されている。

【竈門家@鬼滅の刃】
C-3の南寄りの山の中腹あたりに建てられた民家。
かつては竈門一家が平穏に暮らしていたが、鬼舞辻無惨の襲撃によりそれは崩れてしまった。
ここにおいて、中でその際の血が辺りに飛び散っているということはない。


762 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/05(日) 00:08:46 QX19SoWU0
投下終了です。


763 : ◆OmtW54r7Tc :2021/09/05(日) 05:25:28 twAfJz9.0
ゲリラで投下します


764 : 笑顔と呪いの二律背反 ◆OmtW54r7Tc :2021/09/05(日) 05:27:20 twAfJz9.0
「不愉快だ」

両面宿儺。
現在は小学生の女の子の姿になった呪いの王は、その表情を小学生女児らしからぬ様子で歪ませながら、短い呟きをもたらした。
彼は、JUDOとの邂逅を果たした後、その時感じた違和感から、改めて今の肉体の持ち主である関織子のプロフィールを読んでいた。
その結果、色々と不愉快な可能性が浮かび上がってきた。

一、 先ほど推測した通り、JUDOとの邂逅で感じた違和感は、この子娘の精神の影響である

若おかみとしてお客様の笑顔の為に全力で取り組む。
肉体の持ち主である関織子の精神は、この自分を持ってして影響を与えるほどのものであった。
このままこの小娘の精神の侵食を許すのは、厄介だ。
何故なら、JUDOのような特異な条件で笑顔になるような奴は稀で、多くの参加者は自分や他者を害したり殺したりして笑顔になどならないだろうと推察できるからだ。
そして、やろうと思えば少女の精神を封じ込めることは可能だろう。
虎杖悠仁の時と違って、精神の主導権はあくまで自分にあるのだから。
しかし、そうはいかない可能性に、気づいてしまった。

二、 自分が呪力を操れるのは、関織子の霊界通信力による影響の可能性がある。そして関織子の霊界通信力は、彼女の精神が影響で発現した後天的なものである可能性が高い

関織子は、若おかみになる前、事故により両親を失っている。
そして引き取られた祖母が経営する温泉旅館にて、ウリ坊や美陽といったユーレイと出会った。
それまで霊感などなかったというのに、見えるようになったというのだ。
この辺りの記述を読んだ宿儺は、関織子のこの霊界通信力が、事故のショックによる精神的なものだと推察した。
そして、呪力としてこの霊界通信力を使った時に感じた妙な不安定さ。
最初は、呪力と似て非なる力を呪力として使ったことによる不安定さだと思っていた。
しかし違う。
確かにそれも原因の一つかもしれないが、不安定な理由は、それだけではなかったのだ。

「この小娘の霊界通信力とやら…おそらく事故のショックによる一時的なものだろうな。小娘の精神が落ち着けばいずれ消え去る、非常に不安定な力だ」

プロフィールにそこまで詳しくは書かれていないが、宿儺の推察は当たっていて、関織子の霊界通信力は、いずれ消え去ることになる。
その原因は、若おかみとして精神的に成長し、友達も増え、彼氏もできたおっこの精神の成熟にある。
そしてこれが何を意味するかを知ったからこそ、両面宿儺は不愉快だった。

三、 呪力の代替となる霊界通信力は、関織子の精神があってのものである。つまり、下手に彼女の精神を封じ込めようとすれば、呪力を行使できなくなる可能性がある

「厄介な呪いをつけてくれたものよ…不快だ」

小娘の精神の影響を受ければ、人殺しができないかもしれない。
かといって小娘の精神を封じ込めれば、呪力を使えないかもしれない。
なんとも面倒な縛りを受けたものだ。
とりあえず、小娘の精神の影響を受けすぎず、かといって封じ込めず。
生かさず殺さずというバランスを取るしかないだろう。


『あー……。これでいいのかな。』


宿儺が考察を終えた直後、その放送は響いた。


765 : 笑顔と呪いの二律背反 ◆OmtW54r7Tc :2021/09/05(日) 05:28:35 twAfJz9.0

〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

宿儺はたった今流れてきた声の内容について考える。
一見すると、無力な少女が仲間を集っているようにも聞こえる。
しかし、その割には発言の内容に、ところどころ不穏なものがある。
特に最後の言葉。

『僕を笑顔にしてくれる存在が来るのを、待ってるよ』

この発言が不穏だ。
ニュアンス的に、おそらく今の放送を流した奴は、先ほどのJUDOに近い、闘争により渇きを癒すタイプだろうと推測できる。

「笑顔にしてくれ…か。まあ、行ってやるとするか」

少女の精神に引きずられるように、宿儺は歩き出す。
引きずられていると自覚しながら、それを拒むことが許されない自分に、不愉快さを感じながら。

【D-5 草原/早朝】

【両面宿儺 @呪術廻戦】
[身体]:関織子@若おかみは小学生(映画版)
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本方針:主催もろとも全員、塵殺
1:放送の主(ダグバ)のもとへ向かう
2:全員、鏖殺
3:非常に忌々しいが参加者を笑顔にさせる(余りにも不快が強ければ鏖殺)
4:関織子の精神は、生かさず殺さず
5:JUDOと次出会ったら力が戻った・戻ってないどちらせよ殺し合う
6:鏖殺後、本来の持ち主にこの体が戻ったら「おもてなし」をしてもらう

[備考]
渋谷事変終了直後から参戦です。
能力が大幅に制限されているのと、疲労が激しくなります。
参加者の笑顔に繋がる行動をとると、能力の制限が解除していきます。
関織子の精神を下手に封じ込めると呪力が使えなくなるかもしれないと推察しています。


766 : ◆OmtW54r7Tc :2021/09/05(日) 05:29:12 twAfJz9.0
投下終了です


767 : ◆OmtW54r7Tc :2021/09/05(日) 08:38:39 twAfJz9.0
すみません、先ほど投下した自作ですが、おっこに対する描写を映画ではなく原作基準で書いてしまっていたため、一部修正します

>プロフィールにそこまで詳しくは書かれていないが、宿儺の推察は当たっていて、関織子の霊界通信力は、いずれ消え去ることになる。
>その原因は、若おかみとして精神的に成長し、友達も増え、彼氏もできたおっこの精神の成熟にある。
>そしてこれが何を意味するかを知ったからこそ、両面宿儺は不愉快だった。

この部分をこのように修正します

>宿儺の推察は、ある意味で当たっている
>別の並行世界の話ではあるが、おっこは宿儺のいうように霊界通信力を失う
>その原因は、若おかみとして精神的に成長し、友達も増え、彼氏もできたおっこの精神の成熟にある
>そしてこれが何を意味するかを知ったからこそ、両面宿儺は不愉快だった。


768 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/05(日) 20:26:38 QX19SoWU0
本編感想を投下しようと思います。

>Dのステージ/迷いを捨てた火花が今、散った Dのステージ/これが私の幸福論
て、甜花ちゃんが洗脳された…!
鳥束も死に、DIO有利のシリアス時空になったところで、突然のサッポロビールカーの登場。
最後の最後で、これに全部気持ちが持っていかれてしまいました。

>気まぐれコンタクト
ダグバの放送、内容も殺し合いたいと言っているわけじゃないから、
真乃のほんわか声によりただ聞いただけじゃ警戒心も無く釣られて行ってしまいそう。

>宣戦布告のGame master!
ついに黎斗まで主催に怒り始めた。
前々から思っていましたが、このロワの参加者は主催への殺意が高めな気がします。

>笑顔と呪いの二律背反
おっこの影響により、さらに影響が複雑になってきた宿儺。
気づきにくいだろうダグバの放送の真意を察するのは流石呪いの王って感じがします。

改めまして、皆さん投下乙でした!


769 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/10(金) 23:57:37 xudm7N2w0
遅れてすみません!!投下します!!


770 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/10(金) 23:58:11 xudm7N2w0
空条承太郎は今、島の外周を回っている。
その理由はシンプル、DIOをぶちのめす為以外他にはない
橋を渡るべきか、町に向かうべきか…考えた結果、橋を渡り向こうに行くことにした。
理由は一つ…まずDIOを倒す事を優先したためである。
死体があった場所で霊波紋、スタープラチナを出現させて周囲の環境を探る事にしたのだが…その近くで激しい激闘をしていたのを音によって察することが出来た。少し近づいてその様子、会話も見て、聞いてみたが…どうも二人とも危険人物であることは伺えた、そして他の声は聞こえない…というより戦いの音のせいで聞こえないのだ。(因みに二人の戦い方からあの死体はその二人が生み出したわけではないと考えた)勿論その場に行って調べるのも良いかと考えたが…それより気にしなければいけないことがあった。
(だんだんと晴れてきていやがるな…)
その時、ふとDIOの事でふと考えたのだ。
確かにDIOがもし日光に問題がない身体になったとして…いつでも自由に行動が出来るようになるのは事実だ。だが…そうなったとしてもずっと浴びてこなかった人がいきなり日光を浴びて普通に行動できるという事になるのだろうか?否だろう、目に太陽の光が全く慣れていないのだから、そう考えるとDIOは太陽が現れる前である今は建物の外で活動していると考えるのが筋ではないか?また、自分の支給品から考えるに、それぞれの支給品にはそれぞれに縁があるものが支給品として渡されている可能性が高い。となるとDIOには石仮面が渡されて吸血鬼に早々になっている可能性もあるのでは?
そうなると日が出る前に建物の外を探ったほうがDIOを見つける事が出来る…DIOは時間停止の能力と圧倒的なパワーをもつ霊波紋、世界をこの殺し合いでも持っているだろうことは自分が自分の霊波紋を出せている事から推測できる。そうなるとそれに対抗できるのは恐らく自分の霊波紋だけ、つまり自分だけしかいない、霊波紋は霊波紋でしか対応できないのだから
…この時一つ読み間違いをしている、時間停止に似たクロックアップができるサゾードになれるメタモンや時間停止による一撃にも耐えきれるであろう仮面ライダーに変身できる人達が多くいる事を彼は知らない、更に霊波紋は実は他の人でも視認&接触が可能である事、DIOが時間停止を使えていない事もまだ知らない…故にDIOに対抗できる人がこの殺し合いには何人かいるなか、DIOに対応できるのは自分しかいないと考え、その為にDIOを優先して倒す方に思考を切り替えてしまったのだ。勿論、いったん外を見た後に再び様子を見に行くのには変わりはないが…後回しにしてしまったのは事実である。
この結果、激戦が起こっている二人の近くに銀時、新八、ホイミスライムがいる事を知らずにいる。
この事がどのような結果を及ばすのかは分からないが…それはまた別の話である
そして現在砂浜の様子を探っている所である。その時…足跡が砂浜に残っているのを見つけた。その足跡は一部分が燃えきっている森へ続いていた、霊波紋で潜んでいる人がいない事、つまり罠ではない事を確認、そして現在は燃えているそれに向かって歩いて行く事にした…誰か人がこの先にいる可能性がある事を示しているからだ。都合がいいのか、その先には道が開けていた…











否、承太郎がただ霊波紋だけに頼るような男だったら50日間の旅の間に襲い掛かってくる様々な霊波紋使いを倒せるはずがない。
ポルナレフから聞いていたのだ、アヴドゥルやイギーを殺した霊波紋使い、ヴァニラアイスは音も視覚的にも消える霊波紋の使い手であると
承太郎はその足跡の近くにある程度歩いた後にその続いている方向にめがけて砂を投げかけた…
その砂が一瞬で消えた瞬間に即座に動いた
「スタープラチナ・ザ・ワールド!!」
即座に時間を止めてその隙に別方向に回避、草原がある場所に移動した。
その闇から現れたのは、背中まで届く長い青髪のウェーブヘアを広がったアップ髪、頭には黄色のリボンを付けている八重歯の可愛らしい女の子、そして…
「承太郎…何故私の攻撃を避ける事が出来た!?貴様の霊波紋では今の攻撃は避けることなどできるはずがない!!」
「…テメェのどす黒い精神に似合わねぇ身体だな、ヴァニラアイス」
そんな容姿に似合わぬ邪悪の化身…、そしてアヴドゥルとイギーの仇であるヴァニラアイスであった。


771 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/11(土) 00:02:56 qaI6NC5I0
ヴァニラアイスは今、島の外周を回っている。
その理由はシンプル、敬愛するDIO様に合流に指示を聞く為である
だがDIO様がどこにいるかは今の所情報は全くない…
その為、アイスはかつてポルナレフを追い詰めてきた際に使った戦法を思い出し、島を渦巻き状に回りながら中央に近づいて、確実に近づくことにしたのだ。
勿論アイスもこのやり方に穴がある事を知っている。このやり方ではもしかするとDIO様が自分が移動した場所へ後から来ることも十分にあり得る。あの時とはエリアの広さが違うのだから、その為、アイスはプリキュアに変身し、スピードを上げて移動する事でその可能性を減らす事にした…そのおかげで現在G-2へと素早く移動する事が出来た。
(ふむ…やはりこの力は良い…が、恐らくこの力は女性専用…もう一つの力なら問題はないだろうが…元の世界に戻った際にDIO様の為にこの力を使い役に立てないのは残念だ)
そう、アイスはバックを一回目に探った時には見つからなかったが…それだけでは妙に重さにギャップを感じたのだ。その結果…もう一つのアイテムを見つけ、それも試してみたが…それもかなりの力を秘めていた(最初は動きにくくなるのではと考えていたが)。これだけ多くの力を支給したことだけはボンドルドに礼をしてやってもいい(無論DIO様を殺し合いに巻き込んだ以上殺すのに例外はないが)
(…ん?)
ライオンは視覚ではなく、聴覚や嗅覚を使い狩りをし,最終局面で視覚を使うという、その為に聴覚が異常に発達しているのがライオンである。その力を内包したプリキュアである今のアイスには砂浜を歩く何者かの音が聞こえていた…炎の燃えている音がうるさかった為に霊波紋で延焼していた木の全てを飲み込んで消火した後に後ろに隠れて様子を見てみると
(あの腑抜けたような馬鹿面の男…あの霊波紋…空条承太郎!?)
その見た男の霊波紋は…DIOから教えられた通りの霊波紋、星の白銀の姿を模しており…つまりそれはあの男の中身が空条承太郎である事の証明であった。
アイスはこの早い発見を喜んだ…承太郎の首はDIO様に合流する際の最高の手土産になるだろうと…
さて、こうなるとどうやって殺すかを考える必要がある。星の白銀はシンプルなパワー型…だけに過ぎない、特に特殊な能力はないと聞いている、アイスはそれをDIOから聞いた時…心底見下した
(フン、体格だけはDIO様の霊波紋に似通ってるだけの下位互換か…所詮DIO様に遠く及ばぬ癖に邪魔をしようとする愚かな下郎に相応しい霊波紋だな)

そして今へ戻る…
なら取るべき手段は一つ、森の茂みの木を巻き込まない道を霊波紋、クリームで通り、そのまま通ってきた承太郎を粉みじんにしてやる

だが結果は承太郎に回避されて現在に至る
「どうやって避けた…!!私の霊波紋を…!!」
「さぁな、テメェに言う筋合いはねぇ」
「まぁいい…貴様は霊波紋だけ、今の私には霊波紋だけじゃない力がある!!ここで貴様を殺しDIO様に捧げる!!」
「さっさと来やがれ、ヴァニラアイス!!アヴドゥルとイギーの仇…俺も討たせてもらうぜ!!」
今、因縁がある霊波紋使いが激突する!!


772 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/11(土) 00:12:01 qaI6NC5I0
「ガアアアアアアアッ!!」
まずはアイスが咆哮をしながらインファイトを仕掛けてきた!!
キュアジェラートの強烈な咆哮は化け物さえも怯ませる、承太郎も一瞬だが怯んでしまい、気がついたら懐へもぐりこまれていた!!
(くっ!!)
慌てて自らの強靭な身体を利用し素手で受け止め…
ボキィ!!
(!?)
侮っていた、今のアイスはただの少女ではなくプリキュアなのだ、素手では受け止めてはいけなかった!!
(何てパワーだ…!!コイツ!!何か力を手に入れやがった!!霊波紋でも、仮面ライダーでもない別の力を!!)
承太郎は霊波紋で殴り飛ばして距離を置こうとしたが…
(何だ…手が冷たく…凍ってきてやがる!?コイツ!!氷を操る能力を手に入れやがったのか!?)
次々と凍っていく承太郎の手…!!慌てて一瞬で凍った手を霊波紋に殴らせて壊して今度は足で蹴飛ばして距離…を…!!



寒気がする、先ほどまで手が凍らされていたからではない、何かが背後にいる為に感じる寒気だ、承太郎はそう直感で感じた
ほんの一瞬…ほんの一瞬だけ何かが背後に触れた瞬間…!!
「スタープラチナ!!ザ・ワールド!!」
即時を止めた…!!
(霊波紋と本人による連携か…!!もし気づくのが遅れていたら背中が削れてそのまま身体ごと…!!だがこれで俺の能力はバレるだろうな、こいつはDIOの側近、恐らく時を止める能力の事は把握しているはずだ…さて…)
「オラオラオラオラ…オラァ!!」
渾身のオラオララッシュ…いやラッシュとは言えないな、何度かぶん殴り、その後森の中へ逃げた…ここなら森の状況でクリームがどこに来ているのかを読み取れるからだ、そして…
(時は動き出す)
時間停止を解除した
「うぐぬぁぁぁぁ!?」
身体に似合わぬ声を出しながら吹き飛んでいくアイス、砂浜へ突っ込んだ…
(時間停止にも…制限がかかってやがる、1秒しか止める事が出来そうにねぇ…!!)
時間停止にも制限がかけられている事を悟るが…問題はない、そもそも今までは特殊能力なしのまま頭脳などを生かし闘ってきた…だから時間停止が難しくなっても問題はない
「何だ…その能力…!!貴様に特殊能力はなかったはずじゃなかったのか!?」
(あ…?知らねぇのか?…コイツ、時間停止を)
一瞬知らなかったことに驚いたが…それも無理はないと考えた、DIOが信じるのは己のみ、どんな部下であろうと信用はしない、その為に能力も明かさなかったと考える方が正しかったという訳だ
その時、アイスは…急にバックを探り始めた
「テメェ…何するつもりだ?」
「お前の能力、未知数である以上…戦力はプリキュアだけじゃない方が良いと思ってな」
取り出した物は謎の銀色の扉が中央にあるベルト、そして黄色いリングを指にはめた…



彼の身体である立神あおいはプリキュアとしてキラキラルをうばう存在に対して仲間と一緒に全力で戦い倒してきた…だが実際にはキラキラルをうばう存在だけではない他にも様々なアクトも戦ってきた。鴉天狗、クック、闇の鬼火、ミデン…だがその時は彼女達だけではない、プリンセスプリキュア、Hugっとプリキュア等他のプリキュア達と一緒だった。その中で魔法使いプリキュアは一番縁があるプリキュアだったといえるだろう。上記の四つの悪と戦うとき必ず一緒にいた。そしてその中で多くの魔法を見てきた。彼女もまた魔法に縁があったと言えるだろう。

その縁に惹かれたのか、どうなのかは分からない、寧ろライオンの力にも惹かれているのかもしれないし、その二つが合わさったのか、手に入れた力は…

彼はあの言葉を、変身の言葉を知らない為に何も言わず…指輪をベルトにはめた
『Set!!Open!!L!I!O!N!!LION!!』
開かれたライオンのレリーフ、そして黄色い魔方陣がプリキュアである少女の身体を包み込む。そして現れた姿は黄色い鬣と装甲、緑色の目をしており、その容姿は紛れもない、古の魔法使い、仮面ライダービーストであった。


773 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/11(土) 00:19:49 qaI6NC5I0
「やれやれだ…オメェ戦力が増えたって言ったよな…てことは…!!」
そう、プリキュアに変身したまま仮面ライダーにも変身した存在…さらに霊波紋も健在である。
(コイツは少し…いや、かなりヘビーだぜ…!!)
ビーストは専用武器であるダイスサーベルを取り出し…斬りかかってきた!!
承太郎は後ろへ回避!!霊波紋の白刃取りで防ぐがその瞬間剣を持っていないもう片方の手で殴り掛かってきた!!
(プリキュア+仮面ライダーの力じゃ恐らく殴られたら即死だ、足で蹴りとば…駄目だ!!もし受け止められて凍らされたら手足が動かせずにクリームに暗黒空間に飛ばされる!!となると…クソッ!!何度も使うと見破られるかもしれねぇが!!)
「スタープラチナ・ザ・ワールド!!」
時を止めて殴り飛ばす!!そして時は動き出すが…!!
だがその瞬間、聞こえてくる…死神(霊波紋)の音が!!
ガオン!!
木の合間へ飛び込んでジャンプし緊急回避!!
だが左足の腿の部分がほんの少し削れてしまった…!!
(くっ…!!厄介すぎる!!過剰戦力にも程があるんじゃねぇか!?)
こうなると戦略もしっかり考えなければいけない…
(また使うか、ジョースター家に伝わる戦略…)
ジョースター家に伝わる戦略、それは…
(逃げる!!)
承太郎はネズミの速さの外套を纏い、逃げ始めた!!
「逃げられると思っているのかぁぁぁぁ!!」
ビーストは霊波紋を身にまとい突撃する。この姿をアイスは完璧だと考えている、何故なら自らの欠点を克服しているからだ
以前、ポルナレフと戦った時、自分の霊波紋、クリームで相手を飲み込もうとした時、どうしても相手の様子を確認する為に顔をさらけ出さなければいけなかった、その隙に剣を突っ込まれ、吸血鬼でなければ死ぬダメージを食らわせられたことがあった
だがこの仮面をかぶった状態ならばある程度ダメージをくらっても持ちこたえられる。故にダメージに耐えながら相手を飲み込むことも可能にしたのだ。
だが承太郎も何故か素早い、身体能力がかなり上昇しているのに追いつかない、何か特殊なアイテムを使っているのだろう、ならばこちらもスピードを速くするのみ、こちらも新たな能力を使うのみ
ビーストはポケットに入れた変身用の指輪ではないもう一つの赤い指輪を使う事にした
『バッファ!ゴー!!バ-バ-バ-バ-バ-バッファ!!』
纏うは赤い牛のマント、バッファマントである。突進力の増加によるスピードの増加を狙う。
そうしてあともう少しで飲み込める…と考えた瞬間

気がついたら離れていた。
どういう事かと普通の人なら考えるかもしれないがアイスはもう何度も見た為に能力はもう察していた。
(恐らく奴の霊波紋の能力は時間停止、時を止めて自由にその間に動ける能力…だがそうなると厄介だ、このまま追いかけっこをしていると追いつけそうにない…つまり何れ逃げられる可能性が高い…ならば)
ビーストは霊波紋を解放し分離させ、承太郎の先の方へ飛ばし、先へ行くのを止めた…


774 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/11(土) 00:23:44 qaI6NC5I0
「背後を絶ったつもりか?ヴァニラアイス!!」
「確実にお前を殺す為にな」
アイスは別の指輪、緑の指輪を使う
『カメレオン!ゴー!カ-カ-カ-カ-カメレオ!!』
カメレオンのマントを身に纏い透明化!!と同時に霊波紋も再び暗黒空間に身を隠す…
これで透明な敵、それも二人を相手にしなければいけなくなったが…承太郎は動じない
殺気を感じれるから…という理由ではない、対抗する策を思いついていたからだ。
ビシィィィィィィ!!
急速なスピードで息を吸い上げる!!かつて正義を倒す為に息を吸い上げた時のように!!
勿論今回は相手の霊波紋を吸う事が出来る訳がない、だが…その息を生かして!!
ビュオオオオオオオ!!
吐き出して周囲のエリア全体に風を吹かせる!!
「くっ…!!」
ほんの少しの衝撃だがアイスの透明化が解除!!承太郎はその時のカメレオンマントの出した舌の長さから恐らく長い舌を生かして拘束しようとしたと推測し、霊波紋がどこまで近づいているのかを察知し、霊波紋の突進を再び避けた!!
「やはり小細工は通じないか、ならば」
『ランドドラゴン!ダン・デン・ドン・ズ・ド・ゴーン!ダン・デン・ド・ゴーン!』
ウィザードスタイルへと変化、強靭なパワーとドラゴヘルクローの爪で襲い掛かる!!
(心臓貫かれたら死ぬな…コイツは!!)
かとかいってラッシュをすることも出来ない、何故ならある程度相手は鎧で守られているからだ、そして持ちこたえられている間にクリームに飲み込まれて死ぬ。また、時間停止して攻撃してもいいが、連続で時間を止める事が出来ない、つまりクリームに飲み込まれそうになった時の回避手段がなくなる…つまり結局逃げるしかない
…いいや!!一つだけ不意をつけた攻撃手段がある!!それは!!
「流星指刺!!」
大振りな攻撃の隙をついて一撃!!鎧を貫いて利き手がある右肩にダメージを負わせた!!
だが効き手ではない左手による刺突が承太郎の右肩を大きく刺す!!
「ぐああっ!!」
利き手じゃない為に深くは刺さらなかった上、即座に蹴飛ばして距離をとったためがそれでもダメージを受けた
そしてこの不意打ちは何度も通じない…結局逃げるしかない
(チッ、氷を爪全体的に纏わせることは出来なかったか…まだ調整が上手くいかないか)
アイスが時間停止に対する対抗策として考えたのは動きを封じる事だった。動きを封じれば時間停止をしようと意味がなくなるからだ。その為にはこの氷の力は相応しいと言えるだろう。
そしてその為の方法として氷を直接纏わせて攻撃する事が一番だと考えたが…そう簡単に当たらせてくれないらしい
ならこっちは攻撃が当たらない距離から攻撃をし続けるべきだな
そう考えたアイスは新たな指輪を身に着けて…ベルトにはめた
『ファルコ!ゴー!ファファファファルコ!』
ファルコマントを身に纏い、空を飛翔!!そして空から氷の粒を無数に飛ばしてくる!!その姿はDIOの忠臣の霊波紋使い、ペットショップを思わせるだろう
(くっ!!)
承太郎は本当に避けるしかすべがない、何故なら本当なら周りの木を流星指刺で切り落として投げる事による攻撃もしたいが、もうアイスの霊波紋が周辺の木を暗黒空間にバラまいているからだ。その為に逃げるしかないが…そこへ霊波紋も回り込んでくる!!
それもよけなければならない、が…正直体力がもう限界に来ている、さっきから生身の肉体で逃げ続けている為だ…
(そろそろ離脱した方が良いな…アイスが近くにはいない今がチャンスだな!!)
時間停止を発動!!回り込んで突破…が!!
ピキピキッ!!
「!?」
時間停止を解除した瞬間に足を固められた!!
(お前の歩ける幅、そしてスピードも何度も繰り返し逃げているのを見てきたからな…どこに時間停止が終わった後にいるのかぐらい推測は出来た)
そしてそのまま背中を、腕を、脚を固めさせられた…
「くっ…この姿は…」
「イエスキリストは罪を犯してはりつけの刑で死んだ罪人だ…DIO様に歯向かうという罪をも犯した貴様に相応しい死に方だろう?」
降りてきたアイスが今の承太郎を嘲笑う。まさに承太郎は十字架に磔にされているかのように氷に捕らわれていた。
『ハイパー!ゴー!ハィハィ、ハィ、ハイパー!!』
ビーストの最強フォーム、ビーストハイパーに変身し、ミラージュマグナムを構え、リングを銃に嵌める。そして後ろからは霊波紋が承太郎を飲み込もうとして構えている。死ぬほどのダメージを与えて殺すつもりだ。
「死ね、空条承太郎、地獄のような痛みに苦しみ、DIO様に逆らった事を後悔しながらなぁ!!」
今にも最大威力の必殺技をくらわせて殺す気だ…その時、承太郎は口を開いた


775 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/11(土) 00:30:10 qaI6NC5I0
「待ちな、ヴァニラアイス…お前、この殺し合いの主催に憤りを感じていないか?DIOを巻き込んでいるんだぜ?」
「何だ承太郎?命乞いか?まさかDIO様のいうジョースターの血族がそのような事を言うとはな」
「そんなわけがねぇだろ…俺はこの殺し合いにおける考察を死ぬ前に伝えておきたいと考えただけだ、少なくとも主催の連中が許せねぇというのはお前も同じようだしな」
「ほう…いいだろう、少しでも情報が欲しいのは事実だしな、だが信用するかどうかはこの私が判断する!!…が、その前に」
ピキピキピキッ!!
「私がDIO様の身体を守る為に常に気を使っていた太陽の光の事を見逃すと思っていたのか?朝日が当たるよう調整して逃げていたことは褒めてやる、そして会話で時間稼ぎをして溶け切った時に逃げるつもりだったんだろうが、それを許すつもりはない、念入りに足と手は凍らさせてもらう」
「成程な…やれやれ、予想以上に抜け目ない奴…降参だ、だが情報だけでも聞いてけ、まず一つ、知ってるか?この殺し合いにはある陰謀が隠されている可能性がある事を」
「陰謀?どういう事だ?」
「俺は旅の途中に霊波紋について調べてみた時、『天国への行く方法』という霊波紋が必要になる謎の本について調べたんだがな…それに書かれていた条件の一つに極罪を犯した36名以上の魂が必要と書かれていた」
「それがどうした?」
「分からねぇか?今の殺し合いには魂の存在が深く関わっている事を、俺達は魂をいじくられて互い別の身体にいるんだぜ?本来の身体じゃないからこそ魂が輝くと考えてな」
「…それが主催を殺す事にどのように繋がるというのだ?」
「ああ、つまり主催の中には霊波紋使いがいる可能性があるという訳だ、今ふと考えたんだが、もしかすると俺達の霊波紋も他の参加者に見えるようになっているかもな」
「成程な、他に情報はあるのか?」
「あるぜ、もう一つ…お前とお前の肉体に何か共通している事、何かあるか?」
「…そういえばこの肉体の人物がプリキュアに変身する為のエネルギーがクリームエネルギーで、私の霊波紋はクリーム…確かに共通点はあるな」
「俺とこの肉体の燃堂と不良面…だけじゃねぇ、あまり認めたくないが声が似ている気がする、というように恐らく共通点が精神と肉体にはある可能性が高い」
「成程な、そう考えるとDIO様が現在どのような人物の中にいるのかは考える事が出来るという訳か」
(そう考えるとDIO様にはそれにふさわしい身体であってくれているはずだ…たとえそうであろうと許す気は毛頭ないがな)
「あとこれが最後の話だ…コイツをくれてやる」
「これは…首輪か」
「ああ、コイツはたまたま死んで残っていた死体から回収した物でな、コイツを分解すればきっとお前達の首輪を解析できるはずだ」
「貴様の霊波紋では分析できなかったのか?」
「生憎いくら分析できても知識が詳しくなくてな、ただ、いくつか分かった事がある、一つは今の首輪から霊波紋を使えば聞こえてくるかすかな音がこの首輪からは全く聞こえない、という事だ、恐らく生体反応によって電源のオンオフを切り替えているな、もう一つはこの首輪はとても頑丈であるという事、流星指刺で斬ろうとしたが切り跡を残す事しかできなかった…つまり分析は簡単に出来ないという訳だ」
(そうか…となると私の霊波紋も器用なことは出来ない、ほんの一部だけ飲み込める事は難しい以上…やはりDIO様の最強の霊波紋でどうにかしてもらうしかないな)
「これで話は以上だ…」
「そうか…情報を提供したことだけは感謝してやる、改めて死ね、空条承太郎」
『ハイパー! 』
指輪を銃に嵌めて魔力を貯め始める、それが貯めきった時、最大威力の銃撃を生身の承太郎に遠慮なく解き放つつもりだ
氷漬けにされて動けない承太郎は何もできないまま無情にもチャージ時間は過ぎ去っていき…ついに貯まりきって…
『マグナムストライク!』
解き放たれた…それと同時に霊波紋が承太郎を飲み込もうと突撃した
「やれやれだ、情報提供をしてやった奴に対する情けはねぇって事か」
そして今の言葉が、承太郎の最期の言葉になった…













「分かりきっていたけどな」
…ありのまま起こった事を話そう、何も動けないまま銃撃にさらされていたはずの承太郎は














いつの間にか目の前から姿を消していた


776 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/11(土) 00:46:33 qaI6NC5I0
承太郎はアイスが仮面ライダーに変身したのを見て、奴を倒す為には完全に油断させなければいけないと考えていた。
何故なら防御面から考えるのならば霊波紋がアイスを守るし、更にプリキュアや仮面ライダーの姿が防御のために機能する。その為に少なくとも霊波紋の防御だけは無くさなければいけないと考えたのだ。
そう、だから変身しなかったのだ、もし変身した場合、アイスは霊波紋にこもりながら攻撃してくる方針に切り替えていただろうから
そうなると勿論逃げ切れるがそれでは倒せない、だからこらえるしかなかったのだ、生身の肉体で
承太郎が話で時間を稼いでいたのは全体的に溶ければ逃げる事が出来るからではない、少なくとも腰の氷だけが解ければ十分だったからだ。アイツが飛んでくるのを待っていたからだ。
そのアイツはアイスが銃撃を発射し、一瞬光で目を瞑った時に大分薄くなっていた腰の氷を破壊し…ベルトを巻き付けて、自らベルトに装填した。その瞬間
承太郎は時を止めて…たまたま読んだことがあった小説のタイトルと同じ言葉を言った
「変身」
『HENSHIN』
その姿は銀色の分厚い鎧に纏われていく、生身の肉体が変化した影響で氷と生身が分断されていき、押しのけられた氷がひび割れていく。
それでもまだ氷の堅牢は承太郎を縛るが…完全に解き放つ手を承太郎は知っていた。凍らされていながらも力強く腕を動かして、その角を逆方向に動かせた
『CAST OFF』
その瞬間、完全に氷を重い鎧と共に解き放つ、そしてアイスの背後に回ると同時に時間停止が解けた


「何だと…!?」
アイスは意味が分からなかった、完全に行動を封じていたはずの承太郎が消えていたのだ。
もちろん攻撃によって肉体がバラバラになった可能性があるが、それは血が飛び散っていない事から否だと分かる。
霊波紋が飲み込んだからいないという訳ではない、まず銃撃で致命傷を負わせてから飲み込むつもりだったからだ。
アイスはどういうことか分からず呆然としていたが…後ろに鋭い気配を感じ、不と振り向いてみた
その目に映ったのは、水色の目、スマートな体躯、そして太陽の輝きにより赤く輝いた鎧、それはまるで太陽の加護を受けているようにアイスには見えた。
そう、それはDIOにとって忌まわしき太陽の神と言われ、天の道を往き、総てを司る承太郎によく似た男が変身していた、マスクドライダー、
『CHANGE BEETLE』
またの名を、仮面ライダー…カブト


『クロックアップ』
即座に時間流を歪めると同時に呆然としていたアイスをカブトクナイガン、クナイモードで何度も切り裂く…
『1、2、3』
更にスイッチを順に押していくと同時に角を中間の位置に戻す、そして
「ライダー…キック」
『RIDER KICK』
エネルギーをためた回し蹴りがアイスの胸を穿つ。
仮面ライダーカブトとしてはここで終わらせるだろうが承太郎は違う。
吹っ飛んでいこうとするアイスに対し…最強のラッシュを喰らわせる!!
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァァァ!!」

そしてクロックアップは解除され、ビーストハイパーは飛んでいく、自らはなった銃撃へと
それにぶつかり…
「ぐああああああああああああああ!!」
盛大に大爆発を起こし…
先程までの火災、霊波紋クリームによる飲み込み、そして今の爆発によって…完全に森林は全て何もかも消えてただの原っぱになった…
それと同時に辱めを受けた馬も巻き込まれて消えていった…その姿を見られる事よりは消えた方がいいと死んだウマも思っているだろうから喜んで成仏しただろう…


777 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/11(土) 01:17:25 qaI6NC5I0
「やれやれだぜ」
承太郎は変身解除し…倒れている女の子を拾い上げた
(…良かった、何とか生きているみたいだな)
身体が生きている事に安堵し…アイスの全てのアイテムを回収した
よくこんな爆発の中一切燃えずにいられるなと考えながら…肉体のプロフィールを確認した
(やっぱりな…俺の勘は当たっていたようだ)
そう、承太郎は最初にプリキュアの容姿を見た時、身体の少女は姿に似合ったいい子である事を直感で読み取れたのだ、だから最初の時間停止の時、首をクナイガンで切り裂くという考えを持たなかったのだ。
そしてその直感は当たっていた、彼女の身体、立神あおいは仲間と共に人々の思いを守る為に勇敢に戦っていたが普段は荒々しいが優しい女の子だったのだ。
(楽しいんだろうな?テメェ等は?白く輝くキャンパスをどす黒く、赤く染める事がなぁ…!!)
承太郎は激怒している…!!正義を邪悪で汚して楽しんでいる奴等に対して…!!
とりあえずアイテムは全て回収し、戦力は奪えた…だが霊波紋だけは奪えない、そしてそれを打ち消せるアイテムも持っていない、だが…
その代わりに相手を隷属させるために相応しいアイテムなら持っていた
その名は愛染香、嗅いだ人が目にした男に惚れてしまうアイテムである。
承太郎は一瞬だけ強制的に頭を揺らせて目を覚めさせて愛染香の匂いを嗅がせながら自分の事を見せて、それと同時に即腹パンで再び気絶させる。アイスの意識があったかどうかなんて曖昧になる程の時間で行われたが承太郎の事だけは愛染香を吸いながら目に焼き付けた。
そして愛染香をアイスの鼻に空になったバックの紐で括りつけて常に匂いを嗅がせることにしたと同時に霊波紋を出して手で鼻栓をした…
承太郎は正直これが本当に効くのかは不安視している。身体は女でも精神は男だからだ。それに奴の狂信はポルナレフからよく聞かされている。それを上書き出来るほど効力があるのかも分からない、オマケにこの面はお世辞にもカッコいいとは言えない、効力が半減していないかと思うと不安である。
さて、それはともかくこの戦利品をどうするべきか考えていた。
まずこの仮面ライダービーストの変身アイテムは…しばらくは自分が持つことにしよう、また、このランドドラゴンリングは本来仮面ライダーウィザードが使用するべきものらしい、偶然持っていたグラビティリングとの相性がもし良かったとするならウィザードの変身者の力になるだろう。もしそれに会えて、正しく力を使っているのならば譲ろう、だがこのプリキュアに変身できるアイテムは…
少し考えた後に…決めた。このアイテムは信頼できる正義の少女に会えた時に渡すことにした。
きっとその方が立神あおいという少女も喜ぶと考えたからだ。
そして回転式機関砲もポケットにしまう事にする。
これで承太郎が使えるアイテムはネズミの速さの外套、カブト変身セット、ビースト変身セット、回転式機関砲など、大分豊富になった。
…所持品の数が合わないだろうって?そう、アイスと出会う前に持っていたアイテムは首輪以外持っているのはカブト変身セット、ネズミの速さの外套、愛染香、グラビティリング…四つである。
本来は三つしか持っていないはずの承太郎が何故四つ持っているのか、それはカブトゼクターが理由である。実はカブトゼクターは本来童磨に支給されている物だった。だがその童磨は殺されバック事回収されたが…カブトゼクターは何と意志を持ったまま支給されており、回収されたと同時にバックの中から脱出していたのだ、グラビティリングもついでにくすねながら、カブトゼクターは正義の仮面ライダーとして戦ってきた。故に悪の所持品であること等認めない、故に脱出して天道の元にいこうと考えたが…本当にいるのかなんて今のゼクターには分からないのだ。その為にまず正義の為に戦っている人の力になる事にしたのだ。
そして童磨の遺体から離れた承太郎を見つけて…所持してもらう事にしたのだ。


778 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/11(土) 02:08:25 qaI6NC5I0
こうして童磨の遺体から離れた承太郎を見つけて…所持してもらう事にしたのだ。
承太郎は所持品の確認を終えて…ひと息をつくと…
(…ぐううううううっ!!)
身体の疲れ、痛みが一気に響いてきた
長時間氷に閉じ込められたことによる凍傷、更に打撃や爪の刺突によるダメージ、アイスの霊波紋のダメージも0ではない
今はかろうじて精神力で無理やり気絶をしてはいけないと考えて起きていられるが下手したら気絶してしまいそうである。
だが今の承太郎はここで気絶はしていられない理由があった。
アイスに凍り漬けにされていた時、霊波紋も同時に動きを凍らされていたのだ、恐らくクリームエネルギーという特別な力だった為に止める事が出来たのかもしれないが…霊波紋は凍らされている間に聞いていたのだ…最寄りにあった学校の会話を!!
勿論距離が距離なので詳しく聞けたわけではない、だが大雑把に話を切り取って把握できたのは
DIOがその場にいた
それと誰か…恐らく正義の為に戦っている誰か達がいたがその人達は車で逃げた
そして女の子が洗脳されてDIOの元にいる
以上である。
DIOが近くにいる以上早く向かわなければならない。そして倒さなければいけない、だが今は身体が限界…!!その上今の爆発でDIOが様子を見に来る可能性もある…ならばその車に乗った人達と接触して本当に正義か悪か確かめて正義だった場合は保護してもらった方が良い…今は早く休む場所を手に入れる必要があるからだ
承太郎はアイスをお姫様ごっこして抱えた。もし背負っていて目が覚めて愛染香が聞いていなかった場合即クリームに飲み込まれて死ぬからだ
そして彼女をほっとくという考えは、殺すという考えはない、何故なら立神あおいという少女にこの身体は返さなければならない、と決意している為である。

眩い黄金の精神を秘めた青年はどんなに傷つこうとも、背負っても、ただ進み続ける。この残酷な殺し合いに光を灯せると信じて


779 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/11(土) 02:15:32 qaI6NC5I0
タイトルは「類似するDとJ/高速の光 見逃すな」 です、元ネタは仮面ライダーWのタイトルと仮面ライダーカブトの歌の歌詞をアレンジしたものです。
何故W風タイトルにしたのかはDのステージ/迷いを捨てた火花が今、散った、Dのステージ/これが私の幸福論に類似した個所を増やしたかったからという理由があります。

すぐに状態表も投下します


780 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/11(土) 03:30:58 qaI6NC5I0
【G-4 森/早朝】
【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】
[身体]:燃堂力@斉木楠雄のΨ難
[状態]:全身凍傷、右肩に大きく刺された痕、右手、左足の腿が少し削れている、肉体の重度の疲れと痛み
[装備]:ネズミの速さの外套(クローク・オブ・ラットスピード)@オーバーロード
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品1、童磨の首輪、仮面ライダーカブト変身セット@仮面ライダーカブト、仮面ライダービースト変身セット@仮面ライダーウィザード、グラビティウィザードリング@仮面ライダーウィザード、愛染香@銀魂、スイーツパクト&変身アニマルスイーツ(ライオンアイス)@キラキラ☆プリキュアアラモード
[思考・状況]基本方針:主催を打倒する
1:DIOから逃げた車に乗っている人達を追って…場合によっては早く休憩しなくちゃいけないな
2:主催と戦うために首輪を外したい。その為にこの指輪を上手く壊さなくちゃいけないな
3:立神あおいの為にアイスを今は守らなくちゃいけねぇ…!!どうにか精神を切り離せねぇかな…!!
4:自分の体の参加者がいた場合、殺し合いに乗っていたら止める。
5:DIOは今度こそぶちのめす…が、今は休憩を優先した方が良いな…!!
6:天国……まさかな。
[備考]
※第三部終了直後から参戦です。
※スタンドはスタンド能力者以外にも視認可能です。
※ジョースターの波長に対して反応できません。
※ボンドルドが天国へ行く方法を試してるのではと推測してます。
【ネズミの速さの外套(クローク・オブ・ラットスピード)@オーバーロード】
承太郎に支給。ラキュースが装備する鼠色の外套のマジックアイテム。
移動速度や敏捷性、回避力を上昇させる。
【仮面ライダーカブト変身セット@仮面ライダーカブト】
童磨に支給。仮面ライダーカブトに変身する為に使うアイテム。カブトゼクターは本編終了後の世界から連れてこられた。銃や斧、クナイに変形出来るカブトクナイガンも装備している。クロックアップはサゾードと同じく持続時間が通常より短くなっています。また再使用には数分の時間を置く必要があります
【仮面ライダービースト変身セット@仮面ライダーウィザード】
ヴァニラアイスに支給、仮面ライダービーストに変身する為に使うアイテム。銀色の扉を模したデザインのビーストドライバーにビーストリングを嵌めて変身、魔法を発動する際にはドライバーの両サイドの穴にそれぞれ対応したリングをはめ込んで発動する。ファルコ、カメレオン、ドルフィン、バッファ、ウィザード、ハイパー、全てのマントの装備&フォームになれる仕様になっている。それになる為のファルコ、カメレオン、ドルフィン、バッファ、ランドドラゴン、ハイパー、全てのリングも付いている、ダイスサーベルやミラージュマグナムもセットである。今回のロワではビーストキマイラの意志はないようであるがもしかすると?そして重要なのはハルトマンのウィザードドライバーと違い、今ロワでは主催の手により常に装着型であるように改良されており、ドライバーオンウィザードリングは必要がない。
【グラビティウィザードリング@仮面ライダーウィザード】
童磨に支給、仮面ライダーウィザードランドドラゴンが重力の魔法を使えるようになる。
【スイーツパクト&変身アニマルスイーツ@キラキラ☆プリキュアアラモード】
「キラキラ☆プリキュアアラモード」におけるプリキュアへの変身アイテム。
コンパクト型のアイテムであり、中に変身アニマルスイーツをセットして変身する。
ライオンアイスの場合はキュアジェラートとなる。
中にあるボウルをかき混ぜることでクリームエネルギーという攻撃にも使えるエネルギーを作ることも可能。
【ヴァニラ・アイス@ジョジョの奇妙な冒険】
[身体]:立神あおい@キラキラ☆プリキュアアラモード
[状態]:肉体に中度のダメージ、気絶
[装備]:愛染香@銀魂
[道具]:なし
[思考・状況]
基本方針:DIO様以外の参加者を殺す
1:気絶中
[備考]
死亡後から参戦です。
現在愛染香を大量に吸収中です。もしかしたら空条承太郎の事を大好きになっているかもしれません。
エリア状況
【G-2〜G-4】
もうほとんど荒地になりました、切り株も少しは残っている可能性はあります。

後、後でウィキの方で幾つか文を直します


781 : 名無しさん :2021/09/11(土) 03:47:24 qaI6NC5I0
追記

【愛染香@銀魂】
一種の惚れ薬で、匂いを嗅いだ時に目の前にいる相手を好きになる


782 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/11(土) 04:15:13 ZNb7ihbM0
すいません、せっかく投下してもらったところを何ですが、「類似するDとJ/高速の光 見逃すな」において気になる点があります。

今回、承太郎とヴァニラはただ単純に移動しただけで【G-2】の森にたどり着いています。
しかし、私は彼らが前回までの話における現在地であった【F-7】、【B-1】から出発してこの場所に深夜の時間帯から早朝の時間帯までにたどり着けるとは、いくらスピードが上がっていたとしても間に合うとは私には考えにくいです。
前回の話が深夜の時間帯終了で、仮に2人とも午前の1〜2時くらいに移動を開始したとして、第一回放送が始まる午前6時までの約4〜5時間以内にこの話における出来事全てを完了させることはできないのではと感じました。

また、承太郎が島沿いに移動して【G-2】にたどり着いてのならば、深夜の時間帯に【H-4】の砂浜にいるジューダスに出会う可能性がまだ存在しており、この点を無視することはできません。
この点に関しては、たまたま互いの存在に気付かずに出会えない結果となったと考えたり、それとは別にジューダスの方は気づいており後からの話で彼にどんな影響があったかを描写するという手段はとれます。

ですが、やはり今回の話における現在地【G-2】と二人の前回までの現在地【F-7】・【B-1】は第一回放送までの時間内に到着可能で、戦闘も完了できる距離だとは考えにくいです。

また、話の序盤の方で承太郎が童磨の死体があった場所で周囲を探り、二人の危険人物の存在を察知する描写がありますが、これは【F-8】にいる志々雄真実と魔王のことでしょうか?
この点に関しても、承太郎のその時の位置から二人の存在を察知できる距離だとは私には考えにくいです。
最後の方にも承太郎がスタンドの耳で学校での会話を聞いた描写もありますが、森から街までそれが可能なほど距離が近いとも考えにくいです。


また、カブトゼクターは元々童磨の支給品だったとされていますが、童磨のランダム支給品は現在絵美理が全て所持しています。
もう一つ言えば、絵美理が回収する前に、童磨の支給品は鵜堂刃衛が登場話において全て回収・所持していました。
支給品に関する描写は先に書かれた話が優先されます。
回収されたと同時に脱出したのであれば、「笑う悪鬼」の状態表において鵜堂刃衛の所持するランダム支給品の数が「0〜4」となってなくてはいけません。
以前、ヴァニラ・アイスの状態表においてランダム支給品の数を修正することを認めましたが、今回はこの手段を使えません。
鵜堂刃衛が所持する童磨のランダム支給品描写は登場話におけるものであり、それが投下されてから時間が経ち過ぎているため、もしこの話の書き手の方が許可したとしても、私としてはその修正を認めることができません。
そのため、カブトゼクターに関しては、元は童磨の支給品であったとすることはできないというのが私の考えです。


申し訳ありませんがこのままでは本編の話として採用・収録することはできません。
せっかく書いてもらったところ、このような話になってしまい申し訳ありません。
本編の話として採用するのならば修正をお願いしたいと考えています。
疑問点や意見等があればそれも言ってください。

お手数をおかけすることになりますが、どうか連絡のほどをよろしくお願いします。


783 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/11(土) 04:21:27 ZNb7ihbM0
【追記】
承太郎とヴァニラの移動時間について、私の考えを書いておきます。
私は、2人が【G-2】に島に沿って移動した場合、たどり着き、出会った頃に放送が始まる時間になってしまうと考えております。
しかし、他の書き手の方々にとってはこのような時間や距離の感覚が異なる可能性もあります。
この点に関して他の書き手の方々からも意見があれば欲しいところです。


784 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/11(土) 04:23:44 ZNb7ihbM0
【追記②】
それから現在、チェンジロワのまとめwikiの編集権限は当面の間は管理者のみとしています。
これは一応、近頃パロロワwikiに荒らしが出たためでもあります。
今後しばらくの間、投下された話の編集・修正は私が行うこととします。

疑問点・意見、まとめwikiで編集・修正してほしい場所等々はこのスレに書き込むか、
もしくは私のTwitterにDMかリプライを送ってください。
今回の機会に私のTwitterアドレスもここに記載します。
Twitterアドレス:@QYRa7ustrPjN10c


785 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/11(土) 06:48:27 ZNb7ihbM0
すいません、先ほど書き込んだ承太郎とヴァニラの移動時間・距離についての私の考えを訂正します。
私としましては、承太郎が【F-7】から西に向かって島沿いに移動した場合、放送時には【H-3】の砂浜辺りにたどり着くと考察します。
また、ヴァニラは【B-1】から南に向かって島沿いに移動した場合、放送時には【G-1】と【G-2】の境目の砂浜付近にたどり着くと考察します。


786 : 名無しさん :2021/09/11(土) 07:33:32 zSPohAPA0
すみません、投下内容とは別でちょっと苦言を
◆P1sRRS5sNs氏は、コンペでの遅刻投下から、今回までの本編3話に至るまで、全ての投下で期限過ぎに投下しています
コンペの方はともかくとして、本来1週間の期限であるところを更に1週間延長してそれでも間に合わないをこれだけ繰り返すというのは、少々怠慢なのではないかと思います
投下宣言時点で完成しきってないからか、途中から投下の間隔が空いているのも気になりますし
1週間という期限をもう少し気にして執筆してほしいなと思います


787 : 名無しさん :2021/09/11(土) 07:38:00 zSPohAPA0
それと、投下間隔のことでもう一つ気になってるんですが、元からあるものに付け足すだけの状態表で1時間以上かかるというのも気にかかります
もしかして、状態表も一から書いてるとかじゃないでしょうか?
前回の話の状態表をコピペして、そこに付け足す形にした方が早いと思われます


788 : 名無しさん :2021/09/11(土) 15:05:57 VXPRcmG.0
そもそもスタンドは幽波紋ですし、ジョジョ本編でも幽波紋と使うのは最初の方だけのはずです。ジョジョを一度でも読んだならば有り得ないミスだと思いますが。


789 : 名無しさん :2021/09/11(土) 17:08:46 zSPohAPA0
既に指摘されてること以外で、以下の点が気になったので指摘させてもらいます

・DIOを最優先で倒すためとはいえ、他の悪の存在を察知した承太郎がそれをスルーするのはらしくない気がする
・「DIOが日光を嫌がるかもしれないから夜は逆に建物の外にいるのでは?」と思考した結果、朝になった時に隠れる遮蔽物がない砂浜に探しに向かうのはおかしい


790 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/11(土) 17:32:09 ZNb7ihbM0
すいません、私からも内容についてもう少し気になった点を指摘させてもらいます。
承太郎は前回の深夜時間帯の話「宿命をまた呼び覚ます」において、【F-7】の橋を西から東へ渡って東南の島へと移動しています。
そして、承太郎はこの島の中で、童磨を倒した相手(鵜堂刃衛)を自分で倒すべく、北か南のどちらかに行こうとする描写があります。
しかし、「類似するDとJ/高速の光 見逃すな」においてはやっぱり先にDIOを探そうとして西に行こうとしている描写になっており、この行動には違和感を感じます。


791 : 名無しさん :2021/09/11(土) 20:48:38 VXPRcmG.0
ヴァニラアイスではなくヴァニラ・アイスであることと、本編で一度もヴァニラ・アイスのスタンド名「クリーム」は出ていないので承太郎が名前を知っているのはおかしいことも気になります。


792 : ◆OmtW54r7Tc :2021/09/12(日) 06:05:51 stP9ikv60
シロ、産屋敷耀哉で予約します


793 : ◆OmtW54r7Tc :2021/09/12(日) 06:07:21 stP9ikv60
シロ、産屋敷耀哉で予約します


794 : ◆OmtW54r7Tc :2021/09/12(日) 07:33:25 stP9ikv60
投下します


795 : 増え鬼Ⅱ ◆OmtW54r7Tc :2021/09/12(日) 07:34:33 stP9ikv60
「急がなければ…」

マシンディケイダーを走らせた産屋敷耀哉は、町へと急いでいた。
無惨の身体は強力ではあるが、唯一の弱点が日光なのだ。
夜が明ける前に、どこか建物に避難する必要がある。

「ん?」

そんな産屋敷の目の前に、一人の少女が現れた。
いや、現れたというより、地面に倒れていた。

「大丈夫かい?」

産屋敷は倒れている少女に近寄る。

「くぅ〜ん…ワゥ!?」

少女は、声をかけられて目を開き…目の前に現れた化け物に仰天する。

「グルルルル…」
「そう警戒しないでくれ、こう見えても私は、殺し合いに乗るつもりなどないのだから」
「く、くぅーん…?」

産屋敷の言葉に、少女は毒気を抜かれた様子だ。
普通なら、こう言われたくらいで信じることなどできない。
しかし何故だか、この見た目の割に穏やかな男の言葉を聞くと、妙な安心感があった。

「ところで聞きたいのだけど、お日様から身を隠せるような建物に、心当たりはあるかい?」
「ワン!」


796 : 増え鬼Ⅱ ◆OmtW54r7Tc :2021/09/12(日) 07:35:41 stP9ikv60
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

大きな虫の化け物や、殺人鬼・犬飼ミチルから逃げ出した僕、シロはあの場所から離れた後、追ってきてないのを確認すると、そういえば逃げてる途中で何か放送があったな、と思い改めて荷物を確認した。
そしてそこで名簿を確認し、主人である野原しんのすけの名前を見つけた。
しんちゃんを探さなきゃ!と意気込んだはいいものの、しかし先ほどまでの逃走で疲れていたために倒れてしまい…
そんなところを、今一緒にいる男が発見し、彼の頼みで近くの民家に案内し、今に至るというわけだ。

「どうもありがとう」
「ワン!」
「ここまでの道中の歩き方や、その喋り方…君の中にいるのは、犬なのかい?」
「ワン、ワン!」
「そうか…自己紹介といきたいところだけど、人間の言葉を喋れないなら難しいかもしれないね」

産屋敷にそう言われて、シロははっとする。
そ、そうだ。
普段の癖でつい犬の言葉で喋っていたが、今のこの肉体は人間。
ちゃんと、人間の言葉で喋らないと。
えーと、人間の言葉、人間の言葉…
まずは…自分の名前を…

「シ・ロ」
「…シロ?君の名前は、シロっていうんだね?」
「そ・う」
「じゃあシロ、もう名簿は確かめたかい?この中に、君の知る名前はあるかな?」
「し・ん・ちゃ・ん」
「しんちゃん…そんな名前は名簿に…いや、この野原しんのすけっていうのがそうなのかな?」

その後も、産屋敷とシロは色々と話をした。
元々知能の高いシロは、産屋敷との会話の中でどんどん人間の言葉を上達させていった。

「すごいね、もうそんなに流暢に喋れるようになるなんて」
「うん、産屋敷さんのおかげ!うーん、人間と話をできるなんて、気持ちがいいな!しんちゃんとも、お喋りしたい」
「しんのすけ君…ご主人のことが、大好きなんだね」
「うん、ちょっと変わってるし、散歩をサボろうとしたりもするけど、大好きなご主人様!…ふああ」
「喋り疲れたのかな?朝までもう少しあるし、今のうちに眠っておくといい」
「うん、そうする〜」

そういうとシロは、身体を丸めるようにして眠りについた。
そして産屋敷は、そんなシロを優しいまなざしで見つめるのであった。


797 : 増え鬼Ⅱ ◆OmtW54r7Tc :2021/09/12(日) 07:36:31 stP9ikv60
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

『私は太陽を克服する。その為に…鬼を増やさなければ』

『産屋敷、鬼を増やせ』

うるさい、貴様の指図など受けるか

『へんしんする為の素体を集めてきてよ。できれば強い奴がいいな。だから…』

『鬼を増やしてよ』

うるさい、奴と同じことを言うな


『鬼を増やせ』『鬼を増やしてよ』『鬼を増やせ』『鬼を増やしてよ』『鬼を増やせ』
『鬼を増やしてよ』『鬼を増やせ』『鬼を増やしてよ』『鬼を増やせ』『鬼を増やしてよ』
『鬼を増やせ』『鬼を増やしてよ』『鬼を増やせ』『鬼を増やしてよ』『鬼を増やせ』
『鬼を増やしてよ』『鬼を増やせ』『鬼を増やしてよ』『鬼を増やせ』『鬼を増やしてよ』
『鬼を増やせ』『鬼を増やしてよ』『鬼を増やせ』『鬼を増やしてよ』『鬼を増やせ』
『鬼を増やしてよ』『鬼を増やせ』『鬼を増やしてよ』『鬼を増やせ』『鬼を増やしてよ』



「黙れぇっ!」

そう叫ぶとともに、産屋敷ははっとする。
シロが眠っている間、見張りをしていたはずが、疲れからか、つい寝落ちしてしまったらしい。

「シロ?」

周囲を探す。
しかし、シロと呼ばれる犬の精神が入った少女の姿は、どこにも見当たらない。
いったいどこに…

「ん?これは…」

そんな時、ふと、自分の口回りに血がついているのに気付いた。
しかしこれは、特に珍しいことではない。
病弱な自分は、吐血してこのように口回りを血で汚すことは、珍しくなく…

「…いや、違う!」

違う。
今の自分は、病弱な産屋敷耀哉ではなく、鬼舞辻無惨なのだ。
それにこの血は…自分のものではなくて。

「まさか…それならこれは…!」


798 : 増え鬼Ⅱ ◆OmtW54r7Tc :2021/09/12(日) 07:37:29 stP9ikv60
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

時間は少し遡る。
シロは目を覚ます。
外を見てみると、だいぶ明るくなってきているが、夜明けはもう少し先といった感じだった。

「お腹空いたなあ」

荷物に入っている食料を口にする。
しかし…物足りない。
まるで満たされなかった。

シロは、民家を出て歩き出した。
そうして、しばらく歩いていると…

「!人間の…匂い」

喫茶店らしきものが見えてきて。
そこから、2,3人ほどの人間の匂いがする。
シロは思わず、ゴクリと喉を鳴らす。

人間を、食べたい。
人間の肉を、血を、喰らいたい。

「ワン!ワン!」

野生の本能が目覚めたからか、再び犬語を喋りながら、シロは喫茶店へと走る。
そういえば、肉を食べるためにみんなでアタミってとこを目指したこともあったっけ。
…みんなって、誰だっけ。

『■■一家、ファイヤー!』

「ふぁい、やあ」


【D-6 純喫茶ルブラン前/早朝】

【シロ@クレヨンしんちゃん】
[身体]:犬飼ミチル@無能なナナ
[状態]:疲労(小)、鬼化
[装備]:
[道具]:基本支給品(食料0)、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:??????
1:喫茶店(ルブラン)にいる人間を喰らう
2:■■■■■や■■家の人たちを…どうするんだっけ
[備考]
人間の言葉をそれなりに話せるようになりました。
ヒーリング能力の寿命減少は、肉体側(人間)に依存します。
犬飼ミチルを殺人鬼と勘違いしています。
鬼化により記憶の一部が欠落しつつあります


799 : 増え鬼Ⅱ ◆OmtW54r7Tc :2021/09/12(日) 07:39:05 stP9ikv60
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

産屋敷がシロを喰い、シロは鬼になった。
結論だけをいえば彼らの間に起ったことはそれだけであり、それが今回の物語だ。
では、何故そうなったのか。

この世界では、肉体と精神が別の参加者たちが、殺し合いをしている。
しかし、肉体側の人物の人格が全く反映されないわけではなく、精神側の人物が肉体の人物の精神の影響を受けるという事態がいくつか確認されている。
産屋敷についても例外ではなく、彼は肉体である鬼舞辻無惨の精神の影響を受け、無惨の野望の為に鬼を増やすという行為に出てしまったのだ。

しかし、いくら無惨の肉体とはいえ、さすがにこれは影響が強すぎると考える者もいるだろう。
実際その通りで、無惨の精神の影響は非常に微弱で、産屋敷を乗っ取るなど到底不可能なはずだった…本来ならば。
しかし、彼の身体に異物が入り込んだ。
そう…メタモンことスコルピオワームの、洗脳毒だ。
スコルピオワームの洗脳毒は、受けたものを意のままに操るものだ。
その毒性は非常に強力なものの、無惨の身体のおかげで産屋敷はギリギリのところで洗脳の影響を逃れ、毒の影響を除去していた。
しかし…無惨の肉体は彼を救ったが、無惨の精神は、それを許さなかった。

そもそも、洗脳毒によってメタモンの下僕になったとして、彼の為に動く従者が取る行動は何であろうか。
主人に代わり、他の参加者たちを殺す?いいや違う。
メタモンが望むのは、変身手段を増やすこと。
そして変身手段を増やすには、メタモン自身が参加者を殺さなければならない。
従者が殺してしまえば、それはメタモンの意に沿わない行動となってしまうのだ。
だから…従者の取る行動は変身候補を生きて確保すること。
そしてどうせ確保するなら、強い素体が望ましい。
へんしんが最強の能力であることを、証明するために。
だから…産屋敷の脳内に現れたメタモンは命令した。
『鬼を増やしてよ』と。
一応言っておくが、メタモン本人は鬼のことなど当然知らない。
鬼を知っているのは、あくまで産屋敷が脳内に生み出したメタモンである。

鬼舞辻無惨とメタモン。
それぞれの野望の為に、両者は同じ願いを抱いた。
そしてその願いは…共鳴した。
メタモンの『鬼を増やしてよ』という願いは、同じ『鬼を増やせ』という願いを持つ無惨の精神を、引き上げ。
引き上げられた無惨の精神もまた、スコルピオワームの毒性を押し上げ。
互いに影響を及ぼし合ったその結果、疲れから意識を手放してしまった産屋敷の精神を、一時的に奪うことに成功した。
…成功して、しまったのだ。


800 : 増え鬼Ⅱ ◆OmtW54r7Tc :2021/09/12(日) 07:40:40 stP9ikv60
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

「私は…なんてことを…なんてことを!!」

自分のしてしまったことに気づいてしまった産屋敷は驚愕し、そして絶望する。
鬼殺隊を束ねてきた自分が…よりにもよって自分が…他者を鬼にしてしまうなんて。
やはり無理だったのか。
無惨の肉体を御するなどというのは、無謀だったというのか。

「…いつまでも、取り乱している場合ではないね」

シロは、そう遠くへはいっていないだろう。
すぐに見つけて、そして…殺さなければ。
それが、自分にできる償いだ。

「急がなければ」

夜明けは近く、太陽にさらされれば、無惨の肉体は消滅し、それと共に自分の配下となってしまったシロも消えるだろう。
しかし、それまで待っているなどという悠長なことをするつもりはない。
そうして待っている間に、シロが人を襲っている可能性もあるからだ。

「シロ、本当に済まない。私は君を殺す。そして、その後は…私自身の命も」

【D-6 町/早朝】

【産屋敷耀哉@鬼滅の刃】
[身体]:鬼舞辻無惨@鬼滅の刃
[状態]:疲労(小)、絶望(大)、毒による激しい頭痛、主催者への怒り(極大)、マシンディケイダーに搭乗中
[装備]:マシンディケイダー@仮面ライダーディケイド
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:シロを殺した後、自殺する
1:シロを見つけて、殺す
2:シロ殺害後、自身も死ぬ
[備考]
参戦時期は死亡後です。
スコルピオワームの毒に侵されています。現在無惨の肉体が抵抗中ですが、無惨の精神と共鳴した結果毒が強化され、精神が弱ったり意識を失うと理性を失います。二重人格みたいなものと考えると分かりやすい
彼が死んだとき、鬼化させたシロも死ぬのかは不明です。


801 : ◆OmtW54r7Tc :2021/09/12(日) 07:41:18 stP9ikv60
投下終了です


802 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/12(日) 18:23:47 fRI12sUk0
◆5IjCIYVjCc さん、そして他の皆さん方、様々な指摘、本当にありがとうございました。

実を言うと今回のssは自分の趣味を優先した所があります。
なので少し無理筋があったとは考えていました。なので承太郎を無理やり危険な人物が近くにいるのを無視させて別の方向へ移動させたのは申し訳なく思います。ですが距離に関しては私が読み間違えてしまった所があります。二次元の超能力によるパワーアップした速度、そして承太郎の霊波紋星の白金の聴力を高く考えすぎていました。更にアイテムについても実を言うと絵美理の戦力を削る考えだったのですが、アイテムに関してもそのような制約があったのは初めて知りました。今後気をつけたいと考えています。そして霊波紋の呼称についてはそこまで原作を意識していたつもりはなかったのです。が、確かにそれを考えた方がジョジョらしくはなりましたね…私漫画としてはジョジョが大好きなので、それが書きたいと思う理由になっていました。ですがその結果多くの方を不快にさせてしまい、申し訳ございません

その為、様々な指摘を受けて、ssを修正したいと思います

①承太郎は志々雄真実と魔王の激闘、DIO達と戦兎達の戦いが霊波紋でも聞こえていなかった事にします。なので銀時達に気づかなかった過程もなしでお願いします。その為、承太郎は激戦の後に病院へ向かい治療を優先する方向で直します
②承太郎の所持品を①仮面ライダーカブトセット、②愛染香、③ネズミの速さの外套の三つにしてカブトゼクターの脱出はなかった事にします。また、カブトセットにカブトエクステンダーを追加してG-3エリアに向かう事にします
③アイスの変身セットにキマイライズリングを追加してビーストキマイラを召喚してそれに乗ってG-3エリアに向かう事にします
④そして一番の問題点である何故か西へ向かう事になった承太郎ですが、その道理が通る理由を考えました。それは…DIOの館がG-4エリアの近くにあるという事です。勿論そのままDIOの館という名前ではDIOが気づいてそこに向かうと考える可能性が高い為に物語に矛盾が生じる為、DIOの館という名前ではなく本来の館の名前で表示されていて、DIOは覚えていなかったためにDIOの館だと気づかなかったが、承太郎はDIOを倒した後に館を詳しく調べていた為に名前を知っていて向かう事にした、とします。
方針を変えた理由は橋の方向へ向かっていた時に木曾VS鵜堂刃衛を鵜堂刃衛が襲い掛かるまでの様子を康一が巨人化で壊れた場所まで橋を渡り近づいて、『写真に写っていた、機械でも読み取れなかったハエの特徴を正確に読み取って図鑑で調べられるレベルでスケッチ』出来るほどの視力を持つ霊波紋を使い一部始終を見届けてゲンガーを追いかけようとしたが橋が壊れている為に向こうまでは行く事は諦めてDIOの館の方へ向かったことにします

やはり私が一から書き直した方がよろしいですよね?返信お待ちしてます


803 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/12(日) 18:33:41 fRI12sUk0
追記、襲い掛かるまで→襲い掛かってから、です。また、同時に童磨を殺したというのを鵜堂刃衛が行ったとも、殺害現場から島までの距離からの推測から考えて、殺した奴を追いかける事は終わりにさせます。


804 : 名無しさん :2021/09/12(日) 18:55:49 pOT3LQrU0
ジョジョに対する明らかな理解の不足が露呈された以上やり直しても何らかのミスが出る可能性は高いので普通に破棄したほうがいいと思います。誤字も多いですし。あと遅刻が多発している理由も説明を願います。


805 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/12(日) 21:46:26 XqNWQwow0
◆P1sRRS5sNsさんへ、連絡ありがとうございます。
展開の修正案、確認しました。
すいませんが、もう少し違和感を感じる部分があるため指摘させていただきます。

・橋について
まず、そもそもの話として、主に【C-8】が大部分を占める東の小島において、橋が壊されたのは【C-7】の部分一か所だと私は考えていました。
「ジャスティスフォーの運命、丁か、半か」における【D-7】から島に移動した康一とロビンの描写からそのように推測していました。
そのため、壊れた道路橋は島の西側にある部分だけで、【D-8】〜【E-8】にかけた南の橋は無事だと考えていました。
しかし今回の修正案を確認したところ、氏はその南部分の橋も壊されたという考えなのでしょうか?
これまでの小島に関係した話を確認しても、南の橋が破壊されたという描写は見受けられません。
【D-7】の砂浜からスタートしていることから、康一に南の橋が壊せるとも考えにくいです。
仮に、深夜・黎明の時間帯で南の橋が壊れて渡れない状態であったとすると、今度は鵜堂刃衛が東の小島に来られないことになり、「Sea Tripper」の描写と矛盾してしまいます。
そのため、承太郎が橋を渡ることはできないと判断し、巨人(康一)を追いかけないとすることには違和感を感じてしまいます。


・DIOの館について
承太郎が【G-4】にある「DIOの館」に行こうと考えたという点に関しても指摘したいことがあります。
地図上に「DIOの館」の名前があったことにすると、今度は深夜から黎明にかけての時間帯にその【G-4】に近い【G-2】付近にいたDIOが地図を見て何故その名前に反応しなかったのかという違和感が出てきてしまいます。

もっとも、この点に関しては参加者が持つ地図における施設の表記に関して企画主の私が明言していなかったことにも大いに責任があります。
このロワにおいて、施設は本編中で後付けできるものとなっており、それらの施設の名が地図に書いてあるかどうかについては曖昧な状態になっていました。
そのため、今更なことですが、この機会に地図上における施設表記についてはっきりとしたルールを設けようと思います。


【地図について(追加事項)】
・殺し合いの舞台における施設は、参加者が誰か1人でも足を踏み入れると、全参加者分の地図にその名前と位置が新たに浮かび上がる。


このようなタイミングでルールを追加することになってしまい申し訳ありません。
これまで氏が書いてきた話の描写から、氏は地図における施設の名前は初めから書いてあったものと考えていたのでしょうか。
ですが、この後付けのルールによりその考えと修正案の内容を否定するような形になってしまったことにも重ねてお詫び申し上げます。
この新ルールについても、何か疑問点・意見があればどうぞお申し付けください。


以上が、今回の修正案の気になった点となります。
多くの指摘を受けながらも、それに合わせて修正案を考えてきてくださり、連絡していただいたことには感謝しております。
しかし、修正するには話を一から書き直さなければならないような事態になってきたことも事実です。
この提案をするのは少々心苦しいですが、今回の話は破棄とすることも選択肢に入れなければなりません。
ですが、より違和感のないよう修正できるのならば、それで問題はありません。
破棄するか否かについての判断は、最終的にはその話を書いた書き手の方に決めてもらわなければなりません。

せっかくの修正案に色々と指摘する形になってしまい申し訳ありません。
疑問点・意見等があれば遠慮なくお申し付けください。
またのご連絡をお待ちしております。


806 : 名無しさん :2021/09/12(日) 22:05:34 stP9ikv60
>>805
「DIOの館」については、「DIOの館」とは別に正式名称があって、その正式名称をDIOは知らなかったが承太郎は知っていたことにする、と説明していますよ


807 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/12(日) 22:16:22 XqNWQwow0
>>806
すいません、今回の修正案でDIOの館にDIOの名前が入っていないことに気づかず、今回のような指摘をしてしまいました。
それも知らずに見当違いな指摘をしてしまい本当に申し訳ありませんでした。


808 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/12(日) 22:30:07 XqNWQwow0
私の勘違いとは別に、地図に関する新ルール追加については実際に行おうと考えております。
こんなタイミングでこれを発表してしまうのは我ながらさすがに良くないことなのでは?という思いもあります。
ですが、この曖昧な部分をはっきりさせておきたいのも事実です。
この点について意見があればどんなことでも遠慮なくお申し付けください。


809 : 名無しさん :2021/09/12(日) 22:34:36 pOT3LQrU0
>>808
いいと思います。それから、wikiで霊波紋をスタンドに変更すべきだと思います。


810 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/12(日) 22:45:07 fRI12sUk0
◆5IjCIYVjCcさん

返信ありがとうございました。
…本当に申し訳ございません。
成程、確かに康一その二つの島を繋ぐ道路は壊れてはいなかったです。ごめんなさい、地図をよく見ていなかったせいで勘違いをしてしまいました。
ではその道路は鵜堂刃衛が通るついでに背後から死体を置き去りにしたままにしてしまった為に足跡の匂いから追跡される可能性がある為に追いかけられるのを防ぐ為に通れなくしたという設定を作ってよろしいでしょうか?ランダム支給品にはまだ指定がないはずですし、一通りしゃべった童磨を見たという事は人が動物の中に入っていたのを見ている為にそれを警戒しても筋は通るはずです。

そしてもう一つ、地図についての設定ですが、先ほどの修正に書かれているように、地図に『DIOの館』とは書かれていません。私達がいる現実でもどんな館や家にも様々な家の名前があるはずです。DIOの館というのは通称であるはずです。なのでその家は通称ではなく家の名前で書かれている為に、細かく詳しく調べていなかったDIOは反応しなかったのですが、承太郎はDIOを倒した後にスピードワゴン財団が詳しく調べる必要がある為に家も調べておりそれを承太郎が知っていた為にDIOは反応せず承太郎は反応したという解釈にしようと考えたのですがどうでしょうか?

ですがそれよりあなたが新たに追加した設定を見るに誰かがそこに入る必要があるみたいですね、ならばその踏み入れた人としてジューダスを追加した方がよろしいでしょうか?

返信お待ちしてます


811 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/12(日) 23:30:41 fRI12sUk0
追記

打っている間に地図に関する修正案について把握してくださってありがとうございます。
では橋についての修正案をよろしくお願いします


812 : ◆ytUSxp038U :2021/09/13(月) 00:16:17 vSQcRZN60
野原しんのすけ、エボルト、雨宮蓮、シロ、産屋敷耀哉を予約します


813 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/13(月) 00:40:54 ozzMwQ/w0
返信ありがとうございます。

ですがすいません、新たな修正案への返答の前にもう一つ気づいたことを指摘させてもらえませんか。

・カブトエクステンダーについて
カブトエクステンダーについてWikipediaなどで調べてみた所、キャストオフしてエクスモードになれば空中飛行が可能とありました。
そのため、仮に橋が破壊されていたとしても飛行して島の中に入れる可能性があると考えられます。
これを防ぐためにエクスモードを制限により使用不可にした場合、今度は900km/hの最高時速を失ってしまいます。

私は初めに修正案を見た時、
「木曾と鵜堂の戦闘終了を確認した後の【2〜4時】の黎明の時間帯で【D-8】辺りの道路橋から出発したとして、流石のカブトエクステンダーでも【G-4】辺りに放送までの到着&戦闘完了は難しいのでは?」
「いや、エクスモードを使えばできるか?」
と考えていました。
しかし、エクスモードを使用すると東の小島に入れる可能性が思い浮かび、気になってしまったためここに書かせていただきました。
仮にエクスモードの『飛行機能だけ排除』もしくは『加速だけは可能』という形にしたとしても、そんなピンポイントな制限は違和感があるような気がします。
そのため、「カブトエクステンダーでは違和感なく【G-4】まで移動させることは難しいのでは?」という考えが浮かび上がってきました。

私の考えについて疑問点・意見等があれば遠慮なく言ってください。
飛行能力についても、私がWikipedia等で調べただけの情報であるため、誰か私よりもカブトの設定に詳しい方がいて、何か間違いがある場合はこの考えに指摘をお願いしたいです。
ですがどうか、この点についても考慮のほどをよろしくお願いしたいと思います。


・鵜堂刃衛について
橋を通れなくした犯人が鵜堂刃衛だとすることは一応可能とします。
しかし、その場合では鵜堂がそのような工作を行う様子を回想ではっきりと描写することをお願いしたいです。
現在の絵美理が持つ鵜堂のランダム支給品の描写については、その話が投下されれば修正しようかと思います。


・ジューダスについて
はい、追加についてはそれで構いません。
しかしこの場合ですと、話の登場人物や展開が大きく変わるので「類似するDとJ/高速の光 見逃すな」はこの時点で破棄されたという扱いになります。
これは前述の鵜堂刃衛についての描写追加にも言えることです。
そのため、投下を行いたい場合には改めて話の登場人物たちの予約をすることをお願いします。

また、地図に関する新ルールはこれで正式に採用とさせていただきます。


・投下の時間間隔について
話の内容とは関係の無いことについてですが、私も気になったため話させてください。
何度か指摘されている、SSの投下間隔が空いていることについてです。
投下の際に1レスごとの時間間隔が空いていることから、氏はSSが完成していない状態で投下を始めているのではと推測されているようです。

このことについて、失礼な推測ですが、メモ帳やWord等のツールは利用しているかどうか疑問に思いました。
投下時間間隔から、まるでSSを直接スレの書き込み欄にリアルタイムで書きながら投下しているように感じました。
少々気になったため、普段はSSをどうやって書いているのか知りたいと思いました。
余計なお世話かもしれませんが、メモ帳やWordを利用していない場合はこれを使って話を書くことをオススメします。
この推測については、間違っていて実際は氏もこれらのツールを利用していた場合は、本当に失礼いたしました。

しかしやはり、投下開始の宣言は、SSが状態表まで完成した状態で行うことをお願いしたいです。
間に合わなかった場合は予約は破棄されることとなります。
ですが予約が破棄されたとしても、他に誰も予約しなければ投下は可能ですので、執筆を続けていればSSの投下をお待ちすることができます。

また、これについても余計なお世話かもしれませんが、改行で段落ごとに空白の行をもっと入れれば話が読みやすくなるかと感じます。
これについては、他の方々が書くSSを参考にしていただければと思います。

また、投下終了の宣言は、状態表の投下まで終えてから行うことをお願いします。



今回の指摘、質問への解答はこれで以上です。
重ね重ね、何度も修正を要請してしまい申し訳ありません。
またのご連絡をお待ちしております。


814 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/13(月) 03:51:57 FxPNgvpQ0
◆5IjCIYVjCcさん

返信ありがとうございました。

分かりました。では仮面ライダーWに登場したハードボイルダー(ダッシュブーストユニット付き)に所持品を愛染香から変更させたいと思います。

それから鵜堂刃衛についてですが、そうなると死者を予約する事になりますが大丈夫でしょうか?ならば投稿する小説を分けてまず鵜堂刃衛と空条承太郎で予約して橋爆破&DIOの館へ向かう承太郎を大分時系列を遡って投稿、その次に館に向かい、ヴァニラ・アイスVS承太郎として、空条承太郎、ヴァニラ・アイス、ジューダス、として予約しなおした方がよろしいのでしょうか?

ですがそうなると少し困る事があります。というのももし鵜堂刃衛、空条承太郎で予約してそれを投下する前に予約を破棄していたヴァニラ・アイス、ジューダスを他の小説に予約されてしまうともう完全に戦闘描写を放棄せざる終えないと思うととても辛いのですが…

出来るのならば四人纏めて予約して投下していった方が良いのかもしれませんが許されるでしょうか?

そして投稿時間についての話です。

私は実を言うと様々な事情で忙しく、頻繁にかける時間がない立場でございます。その中で小説、特にパロロワが好きなので自分のその物語の一つを作ってみたいと思い、投稿したいと考え、時間を少しでも多く使い投稿してきました。ですがどうしても予想していたssの長さから凝った物を作りたいと考えてしまい、結局投稿の時間が遅れてしまい、もし予約を破棄した際にその破棄した瞬間に予約をされた場合、全てのssを書いた時間が台無しになるのを恐れてしまい、締め切り日当日の深夜ギリギリに小説の一部を投稿するぐらいでしか間に合わせているつもりにするしか方法がない程追い込まれてしまいます。
ですが実際には全く間に合っていないというべき状況である事も把握しています。貴方の優しさによって許されているのでとてもありがたくと同時に申し訳なく思います。

今後は皆さんが不快に思っている状況を考え、潔く破棄して、再予約をしていい時間になったら再び再予約して投稿していくようにします。

では失礼します


815 : ◆EPyDv9DKJs :2021/09/13(月) 05:23:40 wwjA7zPA0
◆P1sRRS5sNs氏の >>810 及び>>814 の修正案なのですが、
少し気掛かりなことがあったのでお尋ねします。

①DIOの館について
>>805 における追加事項(仮)とされている、
『施設は後付けで地図上に表記される』と言う件は、
 >>814 の発言から『ない』と言うことを前提で話させていただきます。

DIOの館が地図上に載ってる場合だと、
承太郎は現在位置より館へ近かったはずなのに、
それを放っておいて東へ進んだ後、Uターンすると言うことになります。
これだと承太郎の移動の仕方にDIOの館があるとしても、疑問が残ってしまいます。

それとDIOの館はあくまで承太郎たちにとってはそう呼ばれるが本来の名前で表記、
ということについては一応納得します。康一も名前は知ってるのにスルーしていますからね。
ですが、態々ボンドルド達が伝えにくいような名前にすると言う意図が分かりかねます。
寧ろ参加者が集まるようにDIOの館と表記するのが自然……と言う感じですね。
こうすればDIOと関わった杉元、ナナと言った人物が向かう可能性だってあることですから。
これについては『承太郎にだけ伝わるようにした主催の誰かがいる』とか、
そういう風に受け取れる……という見方も一応できなくはありません。
しかし原作でも、ゲームでもいずれもDIOの館かそれに近しい名前の中、
一度も表記されたことのない名前で通す、と言うのはちょっと無理があります。
私がジョジョの把握が甘くて、実は出てたとかありましたら、すみません。

後、これ言ってしまうと前述の意味がないのですが、
DIOの館が地図上に載ってる場合だと、杉元や姉畑は網走監獄、新八や蓮は風都タワーと、
知ってる施設が地図上に最初からあるのに言及がなかったことになるため、
>>805 の追加事項(仮)を採用しない場合多くの話に齟齬が発生してしまいます。
なので、DIOの館が地図上に載っていると言うことは正直難しいことになります。
一応承太郎の支給品が『施設を全て表示した地図』とかそういうのであれば、
DIOも他の参加者も施設に気付かない上で承太郎にだけ伝わる、ということが成立しますが。

②鵜堂刃衛について
鵜堂刃衛と言う人物は自分から殺しの難易度をあえて高めてしまう程に強敵や困難を好み、
その中で殺しを達成すると言う、一つの美学を持ち合わせている人物と私は感じてます。
追跡されることを警戒するよりも追ってこい、と言わんばかりに誘ってくる印象がありまして、
追跡を逃れるため橋を壊して移動不可にする、という行動について今一つ納得ができません。

ですが、これについてはあくまで私が原作を読んで得た見解によるものです。
氏が鵜堂刃衛に対するイメージと一致するわけではないことは当然のことですし、
逆に近しい場合だとしても、氏が何かしらの理由付けもあることとは存じています。
ただそのことについての明言が二回に渡り一つもなかったため、
このように質問させていただきました。

この手の質問について不慣れの為、拙い所がありましたら申し訳ありません。
非常に細かいと言うことについては重々承知しております。
ですが、承太郎も刃衛も此方の執筆によるものともあって、
無言でいるわけにはいかないと判断して行動させていただきました。

最後に二つほど

リアル事情で忙しいことは分かります。
実際自分も書いてた話が何度か没になったので、危惧する気持ちも凄くわかります。

ですが多くの書き手もまた同じく多忙な時間の中ルールを厳守して、
予約が被ることを危惧しながらも執筆されている、ということもまた事実です。
氏だけそこを厳守しない、と言うのについては申し訳ありませんが擁護できません。
此方について私が特別被害を被ったとかそういうわけではないため、
これ以上言うつもりはありませんが。

後氏のリレー作品ですが、結果的に(現時点では)没になってますし、
思うところは確かに、正直なこと言うと滅茶苦茶多かったのは否定しません。
(所謂指摘部分ですが、まあ大体言われてしまったので割愛します)
後氏は『不快』と言われてますが、今回のは『不可解』が正しいかと……野暮と言うものですが。

ですが、承太郎とヴァニラの組み合わせと言う実は結構珍しい対戦カード、
獰猛な獣とも言えるヴァニラにビースト、自分の道を進む承太郎にカブト、
ディオを彷彿とさせる凍結の戦術にジョジョらしい何か喩えとする言い回し、
決してつまらない話をしていたわけではないし、楽しませていただいたのもまた事実です。
拙作をリレーしてくださったことについては本当にありがとうございます。

それでは、長文失礼しました。


816 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/13(月) 19:10:32 ozzMwQ/w0
◆P1sRRS5sNsさんへ
連絡ありがとうございます。
これまでのレスから私が感じたこと話させてもらいます。


・鵜堂刃衛について
鵜堂刃衛に回想で橋を壊させるということについてですが、>>815の指摘から、確かにこのように考えると鵜堂にやらせるのは不自然かもしれないと私も感じました。
そのため、私からもこのことについてはどうか考慮のほどをよろしくお願いしたいです。
予約に入れるかどうかについても、もう少し考え直す必要があるかもしれません。


・予約について
氏は自身や他の書き手による予約によっては書いたSSの描写を完全に放棄しなければいけない可能性を危惧しているようですが、そうなってしまった場合はしょうがないとしか言いようがありません。
この企画は複数人参加のリレー形式のSSであり、自分が想定していた展開にできないといったことはざらにあります。
私自身も、自分より先に予約されたことで自分がやりたかった展開を書けなくなった経験はよくあります。

ですが、私の個人的な意見としては、「空条承太郎VSヴァニラ・アイス」の展開を書くということに、そこまで焦る必要はないかと感じます。
二人が生きてさえいれば、望む展開を書くチャンスを得られる可能性は十分にあります。
それこそ、第一回放送や第二回放送が終わった後、さらに言えばにこのロワ全体の流れの終盤となるタイミングに書くチャンスが巡ってくるかもしれません。

もちろん、他の書き手の方が書いた話で2人が出会う前にどちらか(もしくは両方)が死亡してしまう可能性も考えられます。
しかし、このような可能性についてできることはただ、そうならないように祈るだけです。

申し訳ありませんがこの点についてはただ1人の書き手だけを特別扱いするようなことはできません。
辛いことになる可能性も十分考えられますが、非情でしょうがその時は諦めるしかありません。

4人まとめて予約可能かという点については、それだけならば可能とします。
ただし、そのようにする場合は1週間〜2週間以内に最後まで話を書き切れる見通しが立ってからとしていただきたいです。
これは、たとえ予約する人数が1人か2人だとしても、そのようにお願いしたいです。
遅刻を繰り返されてしまうとこのような注意喚起も必要となってしまいます。
それこそ、ようやく執筆の見通しが立ったのに、先に予約されるというということが起きる可能性もありますが、その時も潔く諦めるしかありません。
だからといって、本当にそんなことが起きるかどうかはまだ分からないため、今はまだあまり心配する必要は無いかと思います。


・話の展開について
これも私の個人的な意見であり、ここで言うようなことでもない気がして、今でも言いにくい事だと感じていますが、この機会に話させてもらいます。

今回の話で多くの指摘を受けることになってしまったのは、「空条承太郎VSヴァニラ・アイス」という展開を無理矢理にでも書こうとしてしまったからなのでは?と私は思いました。
二人を戦わせるため強引に、遠かったり前回の話とは正反対な場所(今回の場合は【G-4】)に移動させようとしてしまったために、齟齬が多くなってしまったのでは?と感じます。
話を根本的に否定するようで申し訳ありませんが、この前提となる展開についても見直すことが必要かもしれないと感じました。
もちろん、どうしてもこの展開で書きたいのであれば、これ以上それを否定することはありません。


817 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/13(月) 19:12:35 ozzMwQ/w0
・投下の時間間隔について
氏はSSを書いた時間が台無しになることを恐れて話の一部を先に投下することで間に合わせているつもりにしているとありますが、申し訳ありませんがこれは少々迷惑な行為であると言わざるを得ません。
一回の投下に何時間もかけられてしまうとその間他に書き込みたいことが合っても待たされてしまうことになります。
投下がいつ完了するのか分からない状況では話の収録の準備もできません。
気になる点があって指摘したくても、それも待たされてしまいます。
これでは、私が一度疑った直書き(リアルタイム書き投下)とほとんど変わらないと感じます。
直書き(リアルタイム書き投下)とそのデメリットについて知らない場合は、2chパロロワ事典@wikiの下記URLのページを見てもらいたいです。
URL:ttps://w.atwiki.jp/wiki11_row/pages/126.html

せっかくだから長い話を書きたいという気持ちも分からなくはないですが、だからといって特別扱いはできません。
凝った内容にしたいのであれば、期限内で執筆可能な短い内容のSSを投下するという手段も考えられます。
例えば、「戦闘がこれから始まる一触即発の状態になった」といったところで話を区切って終わらせるという手段も考えられます。
短いSSを投下した後に、別の書き手が予約してしまうことで自分が想定していた展開にできない・準備して書いていた話や時間が無駄になるという恐れもあるかもしれませんが、その場合は前述したように諦めるしかありません。

どうしても長いSSを書きたいのであれば、予約する前にあらかじめある程度SSを書き進めておくという手段があります。
ただし、この手段では自分より先に予約を入れられてしまうことが考えられ、氏がそれを恐れていることも分かります。
ですが、そのような経験は先ほども述べたように私にもありますし、他にも多くの書き手が同じような思いをしたことがあると考えられます。
もう一つ言わせてもらいますと、本当にそういったことが起こるかどうかは分からないものです。
私は実際、この手段で長めのSSを書けたことはあります。
実際に起こるかどうか分からないことに恐れる気持ちは分かりますが、それで期限に間に合わずに上記の直書きのような行動をされるのは困ります。

リレー企画である以上思うようにいかないようなことは多いでしょうが、1人で書いているわけでないため必然なことでもあります。

ですが、先ほど予約についての話で前述したように、書きたい展開があるのならば、該当する参加者が生存状態にあれば執筆するチャンスはいくらでもあります。
場合によっては自分が書く前に死亡してしまったり、自分が書いても今回のように厳しい意見もあるでしょうが、焦るようなものではないと思います。

一度書いたものが投下できない無駄なものになったとしても、リレーが上手くいけばそれをリサイクルして活用するチャンスが巡ってくる可能性も考えられます。
もし活用できないとしても、そのSSを書いたという経験は確かに蓄積されるものだと思います。
没になったものを人に見せたいと思うならば、この後提案する没SSまとめに収録するという方法があります。

何はともあれ、一度書いたSSは簡単には無駄にならないものであると、私は思います。


・没となったSSまとめについて
今回のことをきっかけに、まとめwikiにて番外編として没となったSSのまとめページを新たに作成しようかと計画しています。
せっかく書いていただいたものですし、何らかの形で残すという手もあるのではと思い、このような案を出させてもらいました。
しかし、その没SSの収録を、それを書いた書き手の方が望まないのであれば、収録はしない方向で行こうと考えています。

ここにおいてSSを収録するSSの例は、以下のように考えています。

【今回のように議論の結果破棄されることになった本スレでのSS】
【書いたはいいけど他の人が先に投下したことで没にするしかないSS】

没にするSSで、収録してほしくて、本スレに投下することができないだろうものを収録する場合は、
以前アドレスを載せた私のTwitterのDMから連絡・書き込み・収録するという手順を取れば良いかと考えています。

このことについてもどうか連絡と疑問点・意見があればそれを言うこともよろしくお願いしたいです。



以上で、今回の連絡を終了とします。
書いてくださった話に対して、何度も否定的な意見をしてしまい本当に申し訳ありません。
ですが私としては氏の執筆活動は今後も応援していきたいと思います。
疑問点・意見があれば遠慮なくお申し付けください。
またのご連絡をお待ちしております。


818 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/14(火) 00:19:57 4aS44Qvk0
◆P1sRRS5sNsさん、◆5IjCIYVjCcさん、へ

成程、確かにお二人の話は分かりました。
まず◆5IjCIYVjCcさんの意見は把握しました。なのでそれを踏まえてssも書きたいと思います。

なので、四人纏めて改めて予約したいと思います。

ですが今回はさすがに大丈夫だと思います。何故ならもうこの際書きますが、バトルの描写はもう既に書いているのをそのまま使うつもりなので、移動に関して辻褄が合うように改変したいと考えています。

最後に、確かに今回様々なツッコミが入ってしまったのは無理筋を通してしまった私の責任です。責任をもってしっかり多くの人に納得していただけるssを描いてみせます。そしてもう遠方ではなく近辺でのssを書くことを誓います。

改めて、空条承太郎、ヴァニラ・アイス、鵜堂刃衛、ジューダスで予約します!!


819 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/14(火) 11:59:47 PTPiRCbA0
◆P1sRRS5sNsさんへ
すいません、せっかく予約していただいたところに何ですが、もう少し言わせてもらいたいことがあります。

確かに私はどうしても書きたいなら強く否定するつもりは無いといった旨の事は伝えました。
しかし、「前提となる承太郎とヴァニラを戦わせる展開に無理があるのでは。もう少し見直した方がいいのでは」という意見に対して、明確な言及が無いことには少しもやっとした気持ちにさせられます。

ただ、これについては私の方が言葉足らずだったような気もします。
私の意見について具体的な形にすると、
「無理に二人を戦わせる必要は無いのでは」
「今すぐ戦わせなくてもいいのでは」
「二人の戦いに繋がるような話にする手段もあるのでは」
という形になります。

無理に出会わせなくとも、対比する等何らかの形で描写する手段があることも考えられます。
その具体的な例を出すのは問題があるような気がしますので今のところはここに書くつもりはありません。

これらの意見を出したのは「二人が戦わないようにすると不自然な点を減らせるかもしれない」という考え方もあることを明示したかったからです。

申し訳ありませんが、これらの意見についてもう少しあなたの考えをお聞かせ願えないでしょうか。
どうかよろしくお願いします。


それからまた個人的な意見を言わせてもらいますと、
「二人の移動と戦闘が劇中時間の放送まで違和感なく完了できるのかどうかまだ微妙な気がする」と私は感じています。

正直に言いますと、>>818から元の話でのバトル描写を流用するつもりだと捉えられますが、
それで違和感なく話を仕上げられるかどうかについてもまだ懐疑的な部分があります。

予約では近辺の話にするつもりだとありますが、これは2人のうちどちらの近辺の話にするつもりなのかによって話がかなり変わってくると考えられます。
ここからは2人がライダーに変身する展開はそのままという前提で話させていただきます。
仮に承太郎の近辺の話にする場合、ヴァニラをビーストキマイラに乗せたとしても、距離的に第一回放送にまで移動や戦闘の完了まで間に合わないような気がします。
ヴァニラの近辺の話にする場合、承太郎がカブトになる展開はそのままだとしても、第三の支給品の選択によってはまだ違和感なく仕上げられるよう可能性も考えられるので承太郎の移動についてはまだ指摘するつもりはありません。

予約されたばかりのことに対してこのような意見を述べるのは、我ながらかなり失礼な行為だとは思います。
ですが、どうしても気になってしまったため、ここに書かせていただきました。
もちろん、違和感なく話を仕上げるのならばそれで問題はありません。

また、>>817で提案した、没になったSSをwikiに専用ページを作って収録しても大丈夫か否かについても答えを聞かせてもらいたいです。


それから、これは少々今更なことな気もしますが、前回投下されて没になった話の内容においてもう少し気になった点が出てきたため、ついでにここで話させてもらいます。

・森の消滅とダイアンの死骸について
前回の話において、馬のダイアンの死骸が戦いの余波で【G-2〜G-4】森と共に消し飛ばされる描写があります。
しかし、ダイアンの死骸は姉畑と一緒に【F-3】にあるはずなのでこの描写にはおかしい点があると感じます。
また、その範囲の森は全て消し飛んだとありますが、いくらクリームの飲み込みやライダーキックとラッシュの衝撃によって爆発が起きたとしても、そこまで広範囲の森が消し飛ぶとは私には少々考えにくいです。
もしこの部分についても流用するつもりがあるのならば、この点についても考慮することをお願いしたいです。


今更ですが、何度も何度も長文による指摘を失礼いたしました。
予約されたばかりで投下もされていない話に対して、否定的で失礼な意見をしてしまったことについても深くお詫び申し上げます。
ですが、私が伝えたいことが一部伝わっていないよう感じたため、このようなメッセージを送らせていただきました。
意見・疑問点があればどうか書き込みのほどをよろしくお願いしたいです。
またのご連絡をお待ちしております。


820 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/14(火) 22:46:50 PTPiRCbA0
◆P1sRRS5sNsさんへ
すいません、もう少し追記しておきたいことがあります。

>>815で指摘された鵜堂刃衛の行動案に矛盾がでる可能性についても言及がなかったため、もう少し氏の考えをお聞かせ願えますでしょうか。


821 : ◆ytUSxp038U :2021/09/14(火) 23:30:22 WuO.fHTk0
投下します


822 : MAD QUALIA ◆ytUSxp038U :2021/09/14(火) 23:32:34 WuO.fHTk0
「う〜ん、辛さの中に毒があって、実に美味しいですな〜」

それを言うなら毒じゃなくてコクだろ。

トンチキな言い間違いをする少年へ、エボルトは内心でツッコむ。

頬杖を突くエボルトが見つめる先には、呑気にカレーを頬張るしんのすけの姿があった。
エボルトも先程食したカレーを提供したのは、カウンターの反対側に立つ蓮。
情報交換を済ませ、気が抜けたのか腹の虫が鳴ったしんのすけの為に大盛でよそってやった。
体は大人でも中身は5歳児の子どもには食べきれない量かもしれないが、無限の胃袋を持つ悟空の肉体ならば無問題。
あっという間に平らげ、今は二杯目を口に運んでいる。

食事自体は別に問題は無い。
今後の為にも体力は付けておいてもらわないと困る。
ただ一つ、エボルトを辟易させているのは…

「ねーねーおねえさ〜ん。オラのお口に〜、「しんちゃんア〜ン」ってしてぇ〜ん」

これだ。
だらしなく顔を緩ませ、ふざけた要求をしてくる。
この少年、こちらの体が女だと判明した途端にこうしてやたらと絡んで来るのだ。
体は女でも中身は男だと説明したが、理解したのかしてないのか、変わらずにこちらを女扱いする。
うんざりしたようにため息を吐いた。

「自分で食べれるだろうが」
「いや〜ん、生け簀ゥ」

何が生け簀だ、それを言うならイケずだろ。

言葉には出さずに呆れるエボルトの前へ、コーヒーカップが差し出された。
チラリと視線を上げれば、湯気の昇るポットを手にした蓮がいた。
喫茶店に居候し、店の手伝いをしていただけあって何とも様になっている。
しんのすけの言動に振り回され気味の自分を労わるつもりで淹れたのだろうか。
理由は何でもいいが、一言礼を言い口をつける。

(へぇ…)

悪くない味だ。
苦みが強いがむせはせず、口の中に香ばしさが広がる。
正直言って自分が淹れたものより、遥かに上等だった。
隠れ蓑に過ぎないとはいえ、喫茶店のマスターが高校生の店番にコーヒーで負けるのは、少々納得がいかなかったが。

(ま、それはどうでもいいとしてだ)

余計な思考を投げ捨て、新たに得られた情報を整理する。
考えを纏めるのにカフェインの接種は丁度良い。


823 : MAD QUALIA ◆ytUSxp038U :2021/09/14(火) 23:33:39 WuO.fHTk0
まずしんのすけが悟空の力を現段階でどれくらい引き出せるか。
これに関しては予想通り、ほとんど使えないらしい。
煉獄と共に大きな虫と遭遇した際に、岩石を素手で壊したとは聞いた。
だがその程度では特に驚きには値しない。
岩を破壊する程度、ライダーシステムでも十分可能。
それに破壊したものの、拳が酷く痛んだとのこと。
これではまだ戦力としては数えられない。

次にしんのすけの知り合い。
該当するのは一人、ではなく、一匹。
シロというペットの犬が参加していると言った。
ボンドルドがどんな理由で参加者を選出しているのか理解に苦しむ。
殺し合いを促進させるなら、他にもっと良い人材は幾らでもいるだろうに。
しんのすけと共にいた煉獄の仲間も参加しているらしいが、詳細を聞く前に死んでしまった為、知る由も無い。

しんのすけに関しては今の所これ以上の情報は無い。
しかしそれとは別に興味深い発見があった。

(あんな仕組みがあるとはねぇ)

思い浮かべるのは参加者共通の支給品、会場の地図だ。
情報交換を終え、次はどこを目指そうかと地図を取り出した。
すると驚くべき事に、殺し合いが始まってすぐに確認した時には記されていなかった複数の施設の名が載っていたのだ。
これまでずっと地図はデイパックに仕舞ったままにしていた。
何者かが後から付け足すなど不可能なはずだが、これもまた主催者の仕業と考えれば納得がいく。
名簿とコンパスをデイパック内に転送するくらいだ、地図にこういった仕組みを施すくらい容易だろう。

確認の為に蓮としんのすけの地図も見たが、やはり自分と同じように複数の施設の名が新たに載っていた。
その中で自分達が知るものは三つ。
一つ目は今いる喫茶店、ルブラン。
二つ目は蓮の体の持ち主である左翔太郎が住む街、風都のシンボルであるタワー。
そして三つ目はエボルトの体の持ち主、桑山千雪が所属する283プロダクションの事務所。
これらの施設の存在から推測できるのは、会場には参加者と関りが深い施設が複数再現されているということ。
であるならば、エボルトのいた世界の施設もどこかにあるのかもしれない。
石動の店であるnascitaか、東都の首相官邸か、もしかするとファウストの研究所かもしれない。
流石にスカイウォールは無いだろう。
あんなものがあったら、会場に転移された時点で真っ先に気付く。

(しかしまぁ…殺し合いの運営をする側としちゃあ、ちょいと抜けてるんじゃねぇのか?)

最初から地図に記載するのではなく、後から付け足し、
名簿やコンパスといった重要な支給品を渡し忘れる。
仮にも殺し合いというデスゲームを運営する者としては、どうにも脇が甘い気がする。
主催者がボンドルド一人でないのはほぼ間違いないが、もしかすると主催内部でもちょっとしたゴタゴタがあったのだろうか。
もしそうならこっちにとっては都合が良い。
ボンドルドらを排除し力を奪う取っ掛かりになり得るかもしれない。

(……いや、ちょっと待て。名簿を後から寄越したのは、他に理由があるのか?)

ふと、エボルトの脳裏にある考えが浮かんだ。
主催者はゲームが始まって一定の時間が経過してから名簿を渡した。
単なる入れ忘れと断定するのは容易い。
だが名簿を最初から支給しなかったのは、主催者も誰が参加するのかを把握できていなかったからではないだろうか。
その理由に関しては二つの仮説が立てられる。


824 : MAD QUALIA ◆ytUSxp038U :2021/09/14(火) 23:34:29 WuO.fHTk0
仮説その1。
参加者を選出した者と、それ以外の者の情報共有ができていない。
それぞれバトルロワイアルを運営するにあたって協力しているとはいえ、仲良しこよしとはなっていないのではないか。
参加者の選出という最も重要な事前準備に関わらせてもらえず、名簿を後から配布するような下っ端仕事をさせられている者がいる。
殺し合いの主催者といえども、決して対等な関係は築けていないという事だ。

仮説その2。
本来参加させるはずだった者が参加できる状態では無くなり、慌てて名簿を作り直した。
既に分かり切っている事だが、参加者達は皆別人の肉体に精神を閉じ込められている。
どんな方法で肉体を入れ替えたかは置いておくとして、実際には現在参加している者達以外にも、参加者として選ばれた者達がいたのではないだろうか。
例えばだが、しんのすけの肉体の持ち主である孫悟空、彼もまた別人の体に精神を閉じ込められ参加させられる予定があったとする。
しかし、いざ殺し合いの直前になって肉体と精神の入れ替えに不具合が起こり、悟空は死亡、或いは参加できる状態では無くなってしまったとしたら?
参加させる予定の者が死んだなら、当然名簿も作り直しを余儀なくされるだろう。

また、二つ目の仮説が正しかったなら、そこから更に別の仮説も浮かび上がる。
エボルトは本来殺し合いに参加する予定は無く、元々参加するはずの者が死んだ為に急遽穴埋めとして参加させられたのではないだろうか。
根拠としてはやはり自分の今の状態だ。
まだ蓮と出会う前に、エボルトは千雪の肉体にも関わらずブラッド族の能力が使える理由を、「この身体にブラッド族の能力で憑依したまま固定されている」と推測した。
何故エボルトにだけは他の参加者と違う処置を施したのか。
理由は至って単純。急ごしらえで用意した参加者であるエボルトには、他の参加者のように精神を別の肉体に移す時間が無かった。
だからエボルト自身の能力を利用する形で、別人の体になったという体裁だけは保たせた、といった所か。
千雪の体を選んだのは、参加者としてアルストロメリアの大崎甜歌がいるからその縁かもしれない。

(…まぁ、結局はただの推測でしかないんだがな)

長々と考えてはみたものの、ハッキリとした証拠は一つも無い。
深い理由は何もなく、名簿はうっかり配布し忘れてましたというお間抜けなオチである可能性とて十分ある。
主催者に関する情報の多くは謎に包まれたままだ。
もっと多くの参加者を見つけるか、或いはバトルロワイアルが進んで行けば自ずと手に入るのかもしれない。

コーヒーを再度口に含み、チロリと唇を舐める。
何気ない仕草に二人の少年がドキリとしたのを意に介さず、片手で白色の容器を転がす。
ロケットフルボトル。石動の記憶から抽出した60本のフルボトルの一つ。
しんのすけに支給されていたのを譲渡され手に入れた。
出来ればこの調子で他のフルボトルやエボルドライバーも取り戻して所だと思いながら、カップを持ち上げる。

その時だ。

外から異様な気配を感じ、次の瞬間、入口のガラスをぶち破って何かが現れたのは。


◆◆◆


825 : MAD QUALIA ◆ytUSxp038U :2021/09/14(火) 23:35:18 WuO.fHTk0
『■■■■■!またシロに餌あげるの忘れたでしょ!』
『え〜、オラ今忙しからかーちゃんがやっといて〜』
『テレビ見てるだけだろーが!』
『オラ、えっちゃんのお天気コーナー大好きなの』

誰かが怒られている。
でも誰だっけ?思い出せないや。
お腹がペコペコになり過ぎてるから、よく分かんない事を考えちゃうのかな。

僕のお腹はギュルルルって、凄い音を立てている。
早く人間をいっぱい食べたいなぁ。
喫茶店から漂う人間の匂いにつられて、僕の口からは涎がたくさん垂れて来た。

我慢できなくて、ガラスのドアに突進して中に入った。
割れたガラスでちょっと切っちゃったけど、あっという間に痛くなくなった。
でも今はそんなのどうでもいいや。

喫茶店の中には匂いの通り三人の人間がいた。
綺麗な女の人、ムキムキな男の人、帽子を被ったお兄さん。
女の人はお胸とお尻が大きくて、とっても柔らかそうだった。
噛み千切ったら凄く美味しいんだろうなぁ。
男の人は筋肉ムキムキで噛み応えがありそう。
いっぱいいっぱい噛んでから、飲み込まなくちゃ。
お兄さんは分かんないけど、食べることに変わりは無い。

やっぱり最初は柔らかそうな女の人がいいな。
そう思って僕は、女の人目掛けて飛び掛かった。


◆◆◆


826 : MAD QUALIA ◆ytUSxp038U :2021/09/14(火) 23:36:40 WuO.fHTk0
飛び込んで来た者は少女の姿をしていた。
ふわふわとした癖っ毛に、人懐っこい印象のパッチリとした瞳。
だが今の少女を見て人畜無害と判断する人間はいないだろう。
だらしなく開かれた口からは鋭い牙が覗き、涎をボタボタと溢している。
四つん這いの姿勢で唸る姿は、獲物を前にした肉食獣のようだった。

「グガァアアアアアアアッ!!」

不運が重なり鬼と化した犬、シロは目の前の“肉”目掛けて飛び掛かった。
ここにいるのは自分の腹を満たすご馳走。
鬼となったシロにはそうとしか見えていない。

しかし彼らは黙って自分の死を受け入れる以外に選択肢の無い、哀れな餌では無かった。

突如現れた少女は殺気を自分へ向けている。
そう認識した瞬間に、エボルトは動き出していた。
手に持ったカップをシロへ投げつける。
まだ中身の入っていたカップは、黒い液体を撒き散らしながらシロの顔面に当たった。
陶器が顔に当たる痛みも、コーヒーの熱さもシロは気にならない。
だが一瞬動きが鈍ったのは事実。
椅子を蹴り倒し、エボルトは背後のテーブルへと身を躍らせる。
勢い良く噛みついたシロの口の餌食になるものはなく、ただ空気を切り裂いたのみで終わった。

「随分な挨拶だなぁおい!」

テーブルに身を横たわらせたまま、エボルトは右手をシロに向けた。
ついさっきまでコーヒーカップを持っていた場所には、地球に来てからの愛銃が握られている。
トリガーを引くと、トランスチームガンが火を吹く。
三発の高熱硬化弾は、犬飼ミチルの肉体など容易く貫くだろう。
発射された銃弾を躱すなど、人間には不可能。
だが鬼には関係ない。
顔を横に動かし、胴体を捩じる。
標的を仕留め損ねた銃弾は、コーヒー豆の入った瓶を破壊し、破片が床に散らばった。

獲物に思わぬ抵抗を受けたシロ。
顔を動かすと、驚きで固まっている胴着の男と目が合う。
女の人を最初に食べれなかったのは残念だが、“肉”は一つでは無いのだ。
その太い首を食いちぎってやろうとし、

「ペルソナ!」

突如現れた怪人に妨害された。

シルクハットに似た頭部を持つペルソナ、アルセーヌのスキルがシロへと放たれる。
獣の勘と、鬼となったことで強化された感覚。
これら二つによりシロは蹴りを食らう事無く背後へ跳んだ。
長い足による一撃は空を切り、されどしんのすけから脅威を引き離すのには成功。
蓮とシロの僅か一瞬の攻防。エボルトが動くには十分な時間だった。
トランスチームガンには既に、活性化させたコブラロストフルボトルが装填済みだ。


827 : MAD QUALIA ◆ytUSxp038U :2021/09/14(火) 23:38:03 WuO.fHTk0
「蒸血!」

――MIST MATCH
――COBRA…C・COBRA…FIRE

排気口と頭部の角、セントラルスタークより蒸気が噴射される。
間近で受けた熱気に短い悲鳴を漏らすシロを、バイザー越しに見据え前蹴りを放った。
硬い靴底に蹴り飛ばされ、冷たいアスファルトを転がるシロ。
変形させたトランスチームライフルを構えブラッドスタークがガラス片を踏み砕き外へ出ると、すぐに体勢を立て直した。

「ワン!ワン!」

下着が見えるのもお構いなしで四つん這いとなる少女へブラッドスタークが呆れるより先に、シロが仕掛けた。
飛び掛かって右手を振り下ろす。
ただそれだけの動作だが、速さは人間所か動物のソレよりずっと上。
ブラッドスタークは数歩横に移動する事で躱し、ほんの一瞬前に立っていた場所のアスファルトが砕け散る。

一度避けられても、シロに苛立ちは有れど大きな動揺は無い。
両脚に力を込めブラッドスターク目掛けて突撃。
今の相手は柔らかくて美味しそうな胸と尻が、ゴツゴツとした装甲で隠されている。
まずは余計な物を剥ぎ取ってやろうと、大きく口を開く。
眼前に迫るシロの口へ、ブラッドスタークはトランスチームライフルを翳す。
上と下、閉じられた歯と歯の間にスチームブレードの刃が挟まり、仮面を噛み砕かれるのを防いだ。

牙に伝わる異物の感触に顔を顰め、噛み砕かんと顎に力を込める。
が、異物の感触はあっという間に消え失せた。
刃が砕けたのではない、シロの牙がドロリと溶けたのだ。
スチームブレードに組み込まれた機能で刃を急速加熱し、軽く動かすとシロの下顎はバターのように斬り落とされた。
アーマージャックのような耐久力があるならまだしも、ミチルの体には十分過ぎる効果がある。

口半分を失った相手へブラッドスタークは攻める手を緩めない。
ブレードを胴体へ突き刺し、コブラロストフルボトルをスロットに叩き込む。

――COBRA!STEAM SHOT!COBRA!

至近距離から発射されたエネルギー弾により、シロは大きく吹き飛ばされた。
通常のスマッシュならばこれで片が付く。
残念ながら此度の敵はそう簡単にはいかないようだった。
吹き飛ばされても地面に叩きつけられる前に、空中で体を一回転させ着地。
またもや四つん這いとなり唸り声を出す。
斬り落とした顎も、溶かした歯もとっくに元通りとなっている。
ミチルが着ていた学校の制服はエネルギー弾のせいで焼け落ちたが、所々で晒された素肌は無傷。
ボロボロの制服とはミスマッチな白さの肌に、ブラッドスタークは目を細めた。

「ペルソナ!」

その声と、シロが動き出すのはほぼ同時だった。
ブラッドスタークとは別の、自身を狙う気配を察知し大きく跳んだ。
これで完全に攻撃を避けたつもりだったが、そうはいかなかった。
体の内に痛みが走った。
怨み、妬み、絶望感といった負の感情が混ぜ合わさったエネルギーがシロを蝕んだ。

エボルトに少し遅れてルブランを出た蓮は、敵へと躊躇せずペルソナのスキルを放った。
マハエイハ。
エイハよりも広範囲の敵に呪怨属性の攻撃を叩き込むスキル。
バトルロワイアルに巻き込まれるより以前に、メメントスで手に入れたスキルカードを使って習得させていたのが功を為した。


828 : MAD QUALIA ◆ytUSxp038U :2021/09/14(火) 23:39:29 WuO.fHTk0
謎の痛みを与えたのが帽子の青年だと分かると、シロはそちらへ疾走する。
対する蓮も続けてスキルを放った。
スラッシュ。物理属性のスキルがシロへと襲い掛かる。
しかし当たらない。蓮がアルセーヌの力を行使するより、シロの動きの方が速い。
敏捷性を削るスクンダを放つ余裕は無い。
ペルソナによる攻撃を中断し、蓮は回避行動に移る。

(っ!駄目だ、速過ぎる…!)

翔太郎の肉体は決して身体能力が低い訳では無い。
師である鳴海荘吉が直々に鍛えた甲斐も有り、高いレベルで体術を会得している。
翔太郎の身体能力と、シャドウ相手に培った蓮の戦闘経験なら、例えペルソナが無かったとしても並の相手には引けを取らない。
だが蓮が今相手にしているのは人間を超越した化け物、鬼だ。
鬼になったばかりのシロの力は、十二鬼月や無惨といった面子の足元にも及ばない。
しかしそれは、決してシロが脅威にならないという事では無い。
たとえ下級の鬼でも、その身体能力と生命力は人間を超えているのだ。

折角引き入れた戦力がこのまま殺されるのを、黙って見ているエボルトではない。
敵は顎を斬り落とされても、エネルギー弾の直撃を食らっても殺せなかった。
ならば確実に殺せる部分を狙うだけ。
どれだけ再生能力に優れていようと、首輪が爆発すればくたばるだろう。
というかそうでなければ首輪の意味が無い。
左腕に銃身を置き、スコープを覗き込み、トリガーに指を掛けた。

大口径の銃弾が首輪を貫き爆発…とはならなかった。

鬼になって強化された感覚が、シロへ命の危機を伝えた。
己の感覚に従い、シロは蓮の着ているベストの裾を咥えると背後へと思いっきり放り投げた。
女子高生が顎の力だけで成人男性を投げ飛ばすなど、鬼になっていなければ不可能な芸当だ。

「っ!!?!」
『おいおい!?』

こちらへ突っ込んでくる蓮に、エボルトは狙撃を中断せざるを得なくなった。
ブラッドスタークに変身している自分はともかく、生身の蓮はタダでは済まない。

「ペ、ルソナァッ!!」

激突の直前に間一髪でペルソナを召喚する。
主の意思に従い、アルセーヌは蓮をキャッチして地面に下ろした。
パレスにいる間は現実世界とは違い、怪盗団として超人的な身体能力を発揮できた為、今のように放り投げられても受け身を取れたはず。
しかしここはパレスでない上に、自分の体は左翔太郎という別人のもの。
アルセーヌを召喚できていなかったらと思うと、背筋が寒くなる。

ブラッドスタークと蓮、シロがそれぞれ構え直す。
先手を切るのは誰か。
ブラッドスタークの銃弾か、蓮のペルソナか、シロの牙か。
そのどれでもない。
突如始まった戦闘に置いて行かれた4人目が、ここに来て動き出した。


829 : MAD QUALIA ◆ytUSxp038U :2021/09/14(火) 23:40:42 WuO.fHTk0
「こらーっ!そこのおねえさん!お兄さん達をいじめるなーっ!」

眉を吊り上げ元気いっぱいに乱入してきた胴着の男、しんのすけ。
いきなり女子高生くらいの女の子が入って来たかと思えば、自分達に襲い掛かり戦いとなった。
急展開に軽く混乱していたが、女の子は自分と一緒に戦ってくれると言った二人を傷つけようとしているのは確か。
煉獄のように逃げずに戦うと決意したしんのすけに、大人しく隠れている気は無く、自ら戦場に顔を出した。

新たに参戦した“肉”へ、シロは歯を剥きだしにして威圧する。
ようやく腹を満たせると思ったのに、余計な抵抗ばかりされて一向に食べられない。
治まる気配のない空腹がシロを苛立たせ、“肉”への殺意を滾らせる。
蓮もまた、しんのすけの乱入に焦りを覚えながらアルセーヌのスキルを放とうとし、ブラッドスタークは極めて冷静に照準を合わせる。

「オラだって…オラだって皆をお助けするゾ!ひっさつ…」

それぞれの緊張感が高まる中、しんのすけは…


「ケツだけアタッーーーーック!!!」

勢い良く尻を露出させた。
上半身は屈み、引き締まった尻を相手へ堂々と突き出す。
鍛え上げられたサイヤ人の肉体に相応しい、ガッチリとした漢の尻だった。

「ほらほらほらほら!ブリブリー!ブリブリー!」

両手を上下に振り、尻を突きだした姿勢のまま接近するしんのすけ。
余りに珍妙な光景を前に、蓮は顔を引き攣らせ、エボルトも思わず頭を抱えた。
一方で迫る尻を前にしたシロは固まっている。
しんのすけのおバカな行動に唖然としているからか?
それも間違ってはいないが、もう一つ大きな理由があった。


○○○


『ほーらほらー!ブリブリー!』
『たいやいー!』
『くぉら■■■■■!人前でお尻出すなって前から言ってるでしょ!■■■■が真似したらどうするの!』
『んもー、かーちゃんはおケツはデカいのに心は狭いですなー』
『…ほっほーう、言ってくれるじゃないの」
『ハッ!?い、今のはオラの可愛いジョージだゾ〜』
『それを言うならジョークでしょ〜?…もう遅い!』
『ぬおおおおおお…!ゆ、許して〜……」

(なに…これ……)

頭の中に何かが浮かび上がる。
誰かが怒られているみたいだけど、誰なのか分からない。
分からない人の事なんて考えたってどうにもならないはず。
なのに、僕の頭には知らない人達の事が浮かんでいた。

何がどうなっているのか分からない。
分からないけど、どうしてか、胸がざわざわしてくる。

こんな事になってるのも、きっとお腹が空いているからだ。
やっと人間を食べれると思ったのに、何時まで経っても食べさせてくれない。
撃ったり斬られたり、気持ち悪い痛みに襲われたり。
凄くイライラする。
頭に浮かぶ知らない人たちの事も、今は邪魔に感じてイライラする。

早く、早く人間を食べなきゃ。
そう思った時、僕の耳に何かの音が聞こえた。

今度は何だろうと音のした方を見ると、男の人がバイクに乗ってやって来た。

僕はこの人を、違う、この御方を知っている。
僕を鬼にしてくれた御方。

僕の大切な、ご主人様だ。


○○○


830 : MAD QUALIA ◆ytUSxp038U :2021/09/14(火) 23:42:34 WuO.fHTk0
嬉しそうに目を輝かせ、こちらに駆け寄って来た。
まるで自分の主人への信愛を示すかのようなポーズ、所謂「おすわり」をする。

そんなシロの姿に、耀哉はただただ胸が痛くなるばかりだった。

シロがそう遠くへは行っていないと考え、バイクを走らせ街中を捜索していた耀哉。
ふと聞こえて来たのは、誰かが戦っているであろう激しい音。
猛烈に嫌な予感を抱きスピードを上げ、到着した先でシロと三人の参加者を見つけた。

無惨の血を与えられ鬼と化した者は皆、無惨への忠誠心を植え付けられる。
すぐ傍に居た自分を襲わず、わざわざ外に人間を探しに行った事からも予想はできた事だ。
耀哉自身が望んで行ったことでは無いが、心優しい犬の体と心を変貌させてしまったのは紛れも無い事実。
どれだけ後悔しても時は戻せない、耀哉が犯した罪は無くならない。
だからせめてもの償いをし、悪鬼と化したこの身を滅ぼすまで。

「すまないシロ…」

己の罪の象徴である犬へ、自然と呟きが口から漏れる。
その言葉に強く反応する者がいた。

「シロ…?シロ!」

しんのすけだ。
家族の名が出た事に驚愕し、耀哉へと近づく。
その後ろからは同じく驚いた表情の蓮と、仮面で表情の読み取れないエボルトが続いた。

「お、おじさん、今シロって…」
「君は……そうか、君がしんのすけか……」

相手の反応を見て、耀哉はこの胴着姿の男こそ、シロの飼い主であるしんのすけと察した。
またもや耀哉の胸が締め付けられ、途方も無い罪悪感が湧き出す。
しんのすけとシロはこんなにも近くにいたのだ。
自分が鬼にさえしなければ、再会し互いの無事を喜び合っていたはずなのに。
現実には鬼と化した姿を家族に見せるという、残酷な結果となってしまった。
心が挫けそうになるが、鬼にした罪から逃げる訳にはいかない。
しんのすけへ重い口を開いた。

「すまないしんのすけ、シロは……私のせいで鬼に、人を喰う怪物となってしまった……」
「え……?」

何を言われたのか分からず、しんのすけは凍り付く。
だが思い返してみれば、確かにシロの行動は怪物としか言いようがないものだ。
明らかに人間のものでは無い身体能力、どれだけ傷つけられても一瞬で治る体。
何よりも、問答無用で自分達に襲い掛かった。
信じたくはない。しかし信じるしかない光景を目の当たりにしている。


831 : MAD QUALIA ◆ytUSxp038U :2021/09/14(火) 23:43:31 WuO.fHTk0
「な、なんで……なんでシロに酷いことしたの…?」

質問には答えず、ただすまないと告げることしかできなかった。
ボンドルドのせいで無惨の肉体にされたからだとか、そんな言い訳を口にする気はない。
全ては自身の無謀さが引き起こしたこと。

「…しんのすけ。全ては私の愚かさが招いたことだ。だからせめて、シロが君を傷つける前に、私の手で終わらせる」
「っ!?」
『撃っても斬っても死ななかった奴をどうする気だ?』
「鬼は太陽の光が弱点だ。だが、この場では恐らく首輪の爆発でも死ぬだろう。…その後で、私も日の下に出てこの身を朽ち果てさせる」
「何か、何か無いのか?元に戻す方法は……」

縋るような蓮の言葉に、耀哉は黙って首を横に振った。
珠世のような知識の持ち主がいれば、人間を鬼に戻す薬が開発できるかもしれない。
だがそれだって今すぐに可能な訳ではないし、そもそも薬ができるまでにシロが、そして耀哉自身が理性を保てる保証は何処にも無い。
下手な希望を与える事は、後々になってより大きな絶望と化す。
だからこそ耀哉は、自分一人が罪を背負いここで終わらせる事を決意しているのだった。

「だ、ダメだゾ……シロは…!」

大切な家族が殺される。
そんな事は絶対にさせないと、しんのすけは耀哉を阻止しようとする。

「来るな!!」

怒声を放ち、しんのすけを近づけさせまいとする。
一瞬、相手の動きが止まった隙に、耀哉は未だ「おすわり」をしたままのシロを抱きかかえその場を離れた。
シロを殺す事に変わりは無いが、家族の前で行う必要はない。
しんのすけ達から離れた場所で殺し、その後すぐ自分も死ぬ。
胸中で幾度も謝罪を繰り返しながら、しんのすけ達に背を向けた。


○○○


832 : MAD QUALIA ◆ytUSxp038U :2021/09/14(火) 23:45:04 WuO.fHTk0
このままではシロが殺される。
大切な家族と、二度と会えなくなってしまう。

確かにシロは怪物になってしまったのかもしれない。
だけど、それでもしんのすけにとっては野原家の一員なのだ。

だから死なせたくない、助けたい。

だけどシロを抱えた耀哉の動きは速くて、あっという間に背中が遠ざかって行く。
一緒にいる仲間の二人でも追いつけないのだろう。

しかし追わなければ、止めなければシロは殺される。

その事実が、しんのすけの心へ深い悲しみと怒り、焦りを生み出す。
それに呼応するかのように、脳裏へ幾つもの光景が蘇った。


『心配しないで、ちょっと休むだけ……。ちょっと休んだら…また…頑張れるから……』

人形の少女が目の前で消えていく。


『お前の言う通り、最後までそれを使わないで良かった……』

侍が目の前で力尽きる。


『しんのすけ…強く……胸を張って……強く生きろ……君の勇気は……きっと……』

一緒に悪者を倒すと約束した剣士が、目を閉じる。


そうして最後に浮かんだのは、しんのすけの記憶には無い光景。

『やっ、やめろフリーザーーーーーッ!!!!!』
『悟空ーーーーーーっ!!!!!』

男の人が殺された。
誰なのかは知らないけど、その光景はしんのすけの心を大きく揺さぶった。

シロも同じように死んでしまう。
同じように殺される。
そんなのは嫌だ。

―――絶対に嫌だ!!!


○○○


833 : MAD QUALIA ◆ytUSxp038U :2021/09/14(火) 23:46:33 WuO.fHTk0
「シロから離れろぉおおおおおおおおおおオオオオォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」

爆発が巻き起こる。
否、しんのすけを中心に光が溢れ出している。
アスファルトは紙の様に捲れ上がり、周囲の建造物にもヒビが入った。

「なっ…!?」
『こいつは……』

驚く仲間の声も、今のしんのすけには届かない。
シロを助ける。
その思いだけに突き動かされ、駆け出した。

爆発的な加速で耀哉の元へと到達する。
驚愕に目を見開いたその顔面へ、拳が放たれた。
咄嗟に片腕を顔の前に翳せたのは、無惨の肉体による恩恵だろう。
しかし、孫悟空の拳は生半可な抵抗など真正面から捻じ伏せる。

防御に翳した腕がへし折れ、肉と血が撒き散らされる。
真っ直ぐに突き進んだ拳は耀哉の頬へと到達。
痛みを感じる間すら与えず、脳を激しく揺らし、

「――――ッ!!!!!!!」

鬼狩りの首領を、盛大に殴り飛ばした。

「はぁ、はぁ、はぁ……お…?」

吹き飛ぶ耀哉を見送る事無く、しんのすけはドッと崩れ落ちた。
体が鉛のように重たい。
巨大な虫に刺された時も同じように体がフラついたが、あの時よりももっと疲労が圧し掛かっている気がする。

悟空の体に宿る気の解放。
しんのすけが無惨の肉体である耀哉を殴り飛ばせた理由はそれだ。
だがしんのすけは悟空の体に完全に慣れてはいない。
そんな状態で気を一気に解き放ち、無事ではいられなかった。
体力の消耗は激しく、荒い呼吸を繰り返す羽目になっている。

物凄く体がダルいけど、シロは助けられた。
その事には一先ず胸を撫で下ろす。
そうして顔を上げると、

「ガギィイイイイイッ!!」

こちらを噛み殺そうと迫るシロがいた。


834 : MAD QUALIA ◆ytUSxp038U :2021/09/14(火) 23:47:44 WuO.fHTk0
「おわぁ!?やめるんだゾ!シロ!」

しんのすけの抗議を無視し押し倒す。
体格で勝るとはいえ、消耗が激しい体では鬼を前に力負けした。
とにかくシロを落ち着かせようと手を伸ばすが、すぐに間違いだったと思い知る。

伸ばされた腕に躊躇なく噛みついた。

「う、わああああああああああ!!?!」

しんのすけの絶叫が街に響き渡る。
牙が肉を貫き血が噴き出る。
絶えず激痛を訴えるのは、しんのすけの左腕。
虫に刺された時の比ではない痛みに、しんのすけの頭が真っ白になっていく。

元の飼い主の悲鳴を聞いても、シロが大人しくなる気配はない。
むしろその悲鳴が心地良いとさえ感じていた。

(よくも、よくも僕のご主人様を!!)

今のシロにとって耀哉は自分を鬼にしてくれた、絶対の忠誠を誓う主。
記憶が欠落しつつあるシロには、主を傷つけようとしたしんのすけは敵でしかない。
絶対に許せない、喰い殺してやる。
湧き上がる怒りのままに、まずは腕をを噛み千切らんとした。

だがそれを許さない者達がここにはいる。

――ICE STEAM!

シロの凶行を止めるかのように、電子音声が響く。
トランスチームライフルの銃口から発射されたのは、冷気を纏った特殊弾。
今まさにしんのすけを殺そうとしていたシロへ着弾した。
只の銃弾ならば即座に再生するが、これは殺す為に撃ったのではない。
チェンソーの悪魔と戦った時と同じく、敵を凍らせて動きを止める為だ。

「キャンッ!」

体が凍り付き悲鳴を上げるシロ。
尤も鬼の身体能力を以てすれば脱け出すのは容易い。
それを邪魔する者がいなければ、の話になるが。

「ペルソナ!!」

主の指示を受けて、アルセーヌのスキルが発動される。
シロ目掛けて放たれる一本の針。
胸部に突き刺さった針はシロの体へ溶けるようにして消えていく。

「クゥン……」

鋭い痛みが体中を駆け巡ったかと思えば、急激にシロの意識は薄れていく。
酷く傷ついたのような表情を浮かべる男を睨みながら、シロの瞼が閉じられた。

「シロ…?シロ…!?」
「大丈夫、眠っただけだ」

慌てるしんのすけを落ち着かせようと声を掛ける。
蓮の言葉に嘘偽りは無い。
現にシロは死んではおらず、寝息を立てていた。
蓮が放ったスキルの名は夢見針。
敵一体を睡眠状態にするスキルだ。
シロが危険な怪物になってしまったとしても、しんのすけの家族を殺す真似は蓮にはできなかった。
だからと言って放置する訳にもいかず、一先ず眠らせるという手段を取った。

「そっか……お兄さん、ありが……」

礼の言葉を最後まで言い切る事無く、しんのすけも意識を手放した。
急激な体力の消耗に左腕の傷、怪物となったシロに襲われたりとで心身ともに限界が来たのだろう。
グッタリとしたしんのすけを蓮は慌てて抱き起す。
死んではいないようだが、屋内で休ませる必要があるようだ。
殴り飛ばされた人も気になるが、先にしんのすけとシロをルブランの中に運ぼうとする。


835 : MAD QUALIA ◆ytUSxp038U :2021/09/14(火) 23:48:49 WuO.fHTk0
『どうやら、もうひと働きしなきゃならんようだぜ』

うんざりしたようなエボルトの呟き。
バイザー越しに見つめる先には、起き上がった耀哉がいた。
シロを殺させない為とはいえ、思いっきり殴り飛ばされたのだ。
怒っているならどうにかしなければと、蓮が口を開きかける。

「っ…」

言葉が出て来ない。
自分達を見つめる耀哉の顔を見てしまったからだ。
さっきまでの耀哉は酷く苦しそうな、辛そうな表情だった。
なのに今は、ゾッとする程に無表情。
まるで機械のような無機質な瞳が蓮達を射抜いた。


○○○


産屋敷耀哉という人間は決して心が脆弱な者ではない。

隊士達の絶望を我が事のように感じ取り、少しでも悲しみを癒そうとする慈愛さ。
先祖代々の呪いに蝕まれながらも、弱音を吐かずに戦い続ける強さ。
何より、覚悟していたものとはいえ無惨討伐の布石として、妻子諸共自爆する執念。

病弱な身でありながら、耀哉は間違いなく強者だった。

しかし、此度の殺し合いは耀哉の心をへし折るかのような不運に幾度も見舞われた。

よりにもよって宿敵の肉体に精神を入れられるという、尊厳を破壊するかの如き目に遭い、
宇宙よりの侵略者の毒により、知らず知らずの内に体を乗っ取られ、その挙句に罪の無い参加者を鬼へと変えてしまった。
追いかけた先には鬼と化したシロを、家族であるしんのすけと再会させてしまう始末。
愛する家族が鬼にされる絶望を味わった。
風柱の不死川実弥を始め、そういった境遇の者は鬼殺隊にも大勢いた。
二度と彼らのような犠牲者は出すまいとしていたというのに、今回は自分が新たな犠牲者を生み出してしまった。

誰よりも無惨討伐を望んでいた耀哉だからこそ、深い絶望を味わった。

そこへ悟空の肉体による渾身の一撃を受けた。
本来の力には程遠いが、それでも耀哉の意識を僅かな間奪うだけの威力はあった。

弱り切った精神と、失われた意識。
今も耀哉を蝕むスコルピオワームの毒が、絶好の条件が揃ったタイミングを見逃すはずは無く、耀哉本来の意識は闇に閉ざされた。

もしもの話になるが。
耀哉がメタモンと遭遇していなければ。
スコルピオワームの毒を受けていなければ。
保護したシロをしんのすけと再会させ、互いの無事を喜ぶ光景を暖かく見守れただろう。
煉獄の死をしんのすけと共に悲しみ、その意思を継いだしんのすけの心強い仲間となれただろう。

だが現実はそうならなかった。

【太陽を克服する為に鬼を増やせ】
【へんしんする姿を増やす為に鬼を増やせ】

繰り返される言葉に従い、眼前の者達を鬼にすべく駆け出す。
今の耀哉は鬼殺隊の頂点ではなく、鬼の始祖として蓮達に牙を剥いた。


○○○


836 : MAD QUALIA ◆ytUSxp038U :2021/09/14(火) 23:50:02 WuO.fHTk0
「ペルソナ!」

耀哉と視線が合った瞬間、蓮は反射的にスキルを放った。
直感的に理解したのだ、この男は非常に危険な相手だと。
パレスの主と対峙しているような、全身に怖気が走るような感覚。
いや、下手をすればこれまで改心させてきた連中とは比べ物にならないかもしれない。
危機感に急かされるようにスクンダを放ち、相手の敏捷性を削いだ。

一方でスキルを食らった耀哉は体が重くなるような、不快な感触を味わった。
だが関係無い。
多少は遅くなったかもしれないが、無惨の肉体はこの程度では止められない。
右腕を触手に変えて振り下ろす。

――ELECTRIC STEAM!

電撃を纏った銃弾が三発連続で発射され、触手を貫く。
傷自体は弾が通り抜けるより早く塞がった。
しかし電撃により動きが僅かばかり鈍り、着弾の衝撃で狙いが逸れる。
蓮を切り裂き、傷口から血を混入させる触手は地面を砕き散らすに終わった。

反対の腕を触手に変え、トランスチームライフルを連射するブラッドスタークへ伸ばす。
銃弾は大半がはたき落とされ、命中してもダメージは無い。
姿勢を低くしあえて突っ込み、紙一重で触手を躱す。
顔のすぐ横を通過した左腕の触手へ、スチームブレードで斬り裂く。
やはりダメージはゼロ。
刃が肉を奔った瞬間に再生が開始されるのだ。

片方の触手を避けたと思えば、もう片方の触手が迫る。
跳躍し回避に移るブラッドスターク。背中の僅か数ミリ下を触手が通過した。
地面に到達するまでの僅かな間に狙いを付け、トリガーを引いた。
狙いは耀哉の顔面。
黙っていればさぞや女性受けしそうな、端正な顔が吹き飛ぶ。
それもほんの一瞬の事、再生の完了した瞳でブラッドスタークを見据え触手を伸ばす。

『っとォ!休憩くらいさせて欲しいもんだ!』

各部の排気口から蒸気を噴射させ、触手を再び躱す。
すれ違いざまに斬り裂き、もう片方の触手を振るう一瞬の間に発砲、そしてまた躱す。
これをブラッドスタークが幾度も繰り返し、蓮もまたスクンダとラクンダを連発する。
アルセーヌのスキルを受けて尚もこの強さだ。
これでスキルの効果が切れれば、厄介所では無い程の強さとなるだろう。
故に幾度もスキルを重ね掛けし耀哉の力を削ぐ。
されど戦況は一貫してこちらが不利。
このままでは自分の体力と精神力が尽きるのが先と、蓮は焦りを覚える。

エボルトもまた忌々し気に舌打ちを零す。
戦闘データをフル稼働で集約し、胸部装甲に搭載されたスチームジェネレーターにより出力の強化、
加えて本来は敵に放射するブラッド族のエネルギーを、自身の肉体へ流し込んで身体能力を底上げ。
ブラッドスタークの機能とエボルトの能力を使っても、まるで勝てる気がしない。
スペックで劣るブラッドスタークで、強化形態のビルドやスクラッシュドライバーの変身者を相手取って来ただけあり、エボルトは格上との戦闘に非常に慣れている。
しかしだ、アーマージャックといいこの触手男といい、こうも面倒な相手にばかり出くわせば仮面ライダーエボルの力が恋しくなってくる。


837 : MAD QUALIA ◆ytUSxp038U :2021/09/14(火) 23:50:56 WuO.fHTk0
『まぁ、そんなこと言っても始まらねぇがなァ!!』

蛇の意匠が施された胸部装甲が発光し、何かがうねりながら飛び出した。
それは大蛇だ。
ブラッドスタークの胸部装甲と同じ、エメラルドグリーンの巨体を持つコブラ。
突如出現した化け物を前にしても耀哉は怯まない。
表情を変えず両腕を振り回した。
コブラはブラッドスタークらの盾となり、巨体を切り裂かれる。
ブラッドスタークの能力で召喚したエネルギー体故に、悲鳴を上げる事も無く切り離された頭部から炎を吐き出した。

「ペルソナァッ!」

すかさず放たれるは、アルセーヌのマハエイハ。
全身を包む炎と、広範囲に効果を及ぼす呪怨属性のスキル。
倒せるとは思っていない。
僅かとはいえ隙を作れるのならば十分だ。

――ROCKET!STEAM SHOT!ROCKET!

装填されたフルボトルの成分が、トランスチームライフルの銃弾を強化する。
銃口より発射されたのは大口径のエネルギー弾ではなく、煙を噴射しながら突き進むロケット弾だ。
己を消し飛ばさんとする強化弾を冷静に捉え、焦る事無く耀哉は身を捻って躱す。
標的を見失い、そのまま付近の民家を吹き飛ばすと思われた。
だがロケット弾は軌道を変えて上昇し、真下の耀哉目掛けて一直線に向かって来た。
追尾機能付きの強化弾だとは知る由も無く、気付いた耀哉が触手を振るうのと着弾したのは同時だった。

爆風により視界が塞がれる中、ブラッドスタークはバイザーの赤外線センサーを即座に起動。
着弾地点より煙を裂く勢いで触手が伸ばされるのを見た。
回避行動に移ろうとし、すぐにその必要は無いと分かった。
触手はブラッドスタークや蓮とは別の方向に伸ばされている。
触手の先端が巻き取ったのは、耀哉が放置していたマシンディケイダーだ。
まるでコードを巻き取るかのように、マシンディケイダーを絡め取った触手が着弾地点へと戻って行く。
次の行動を警戒するブラッドスタークと蓮だが、敵のアクションは一向に起きない。
油断なくトランスチームライフルを構えながら近づくと、納得したように武器を下ろした。

『…やれやれ、好き放題やるだけやって、逃げたか』

ブラッドスタークが見下ろす先には、地面に空いた穴。
ロケット弾はマンホールの蓋と周囲のアスファルトを吹き飛ばし、下水道への入り口を作っていた。
耀哉はバイクを回収し、この穴から逃走したのだろう。

(だが、逃げる必要があったか?)

認めるのは癪だが、今の戦闘は明らかにこちらが押されていた。
なのに何故敵は逃走を選択したのか疑問に思った時、ふと顔を上げる。
遠くの方から光が街に降り注いでいる。
夜明けの時が来たのだ。


838 : MAD QUALIA ◆ytUSxp038U :2021/09/14(火) 23:52:05 WuO.fHTk0
◆◆◆


濁った水の流れる道を、耀哉はバイクで走り続ける。
ロケット弾が当たる直前、首輪を守るように肉の鎧を首元に纏わせ死を回避した。
着ていた服は所々焼け落ちたが、傷はとうに再生している。

太陽の光が会場を完全に照らし出すにはまだ猶予はあった。
だが何かの間違いが起きて、陽光がこの身を焼き尽くす事態にならないとも限らない。
多少強引にでも戦闘を続けるか、万が一の可能性を考慮し撤退するか。
耀哉が選んだのは後者だ。
皮肉な事に、無惨本人も同じ選択をしただろう。

スコルピオワームの毒に思考を塗り替えられた耀哉は、参加者を鬼にしようと動いている。
その為にはまず、耀哉本人が生き延びなければならない。
生きてさえいれば鬼を増やす機会は幾らでも訪れる。死んでしまえば不可能。
故に今は自身の生存を最優先とした。

毒に思考を塗り替えられた状態が永遠に続く事は無い、いずれは理性を取り戻す。
その時耀哉は何を思うのだろうか。
シロを殺せず、自身を殺せず、徐々に行動が無惨へと近づいてる自分自身に、何を感じるのか。


【D-6 下水道/早朝】

【産屋敷耀哉@鬼滅の刃】
[身体]:鬼舞辻無惨@鬼滅の刃
[状態]:毒により理性消失、疲労(中)、絶望(大)、シロとしんのすけへの罪悪感(大)、毒による激しい頭痛、主催者への怒り(極大)、マシンディケイダーに搭乗中
[装備]:マシンディケイダー@仮面ライダーディケイド
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:鬼を増やす
1:今は太陽の光を避けて移動
[備考]
参戦時期は死亡後です。
スコルピオワームの毒に侵されています。現在無惨の肉体が抵抗中ですが、無惨の精神と共鳴した結果毒が強化され、精神が弱ったり意識を失うと理性を失います。二重人格みたいなものと考えると分かりやすい
彼が死んだとき、鬼化させたシロも死ぬのかは不明です。

※下水道がどこまで続いているかは後続の書き手に任せます。


◆◆◆


839 : MAD QUALIA ◆ytUSxp038U :2021/09/14(火) 23:52:59 WuO.fHTk0
「ほらよ、食っとけ」

エボルトに投げつけらた物をキャッチする。
何なのかと見てみると、お菓子のケースのようだった。
何故こんなものを?
疑問を視線で訴えると、エボルトは肩を竦めて答えてくれた。

「そいつを食えば幾らか体力が回復するんだとよ。少しでも持ち直しといたほうが良いだろ」

そう言うエボルトは頬をモゴモゴさせている。
既に一つ食べたのだろうか。
食べ物で体力回復などまるでゲームの世界の設定みたいだが、実際パレス内では自分達も食べ物やドリンクで傷を癒していた。
自身の体験に当て嵌めてみると、このお菓子の効果も本物なのかもしれない。
エボルトに礼を言い、中から一つ取り出して口に放り投げる。
甘酸っぱい味と、ゴムのような弾力があった。
どうやらグミらしい。
しんのすけが起きたら食べさせてもらえるか、後でエボルトに頼んでみよう。

あの後、自分達は気絶したしんのすけと睡眠中のシロをルブランの二階まで運んだ。
先程の男の人の話によると、鬼とやらになったシロは太陽の光を浴びると死んでしまうらしい。
それが本当ならばあのまま外に放置しておく訳にはいかず、こうして屋内へ移動した。
カーテンを閉め、更に部屋に飾ってあった怪盗団マークのポスターを窓枠に貼り付け日除けにする。
煉獄さん遺体はエボルトがデイパックに入れ、ベッドにはルブランの備品であるタオルで止血したしんのすけが、ソファーにはシロが横たわっている。
遺体を物のように扱うのは気が引けたが、今は仕方ない。後できちんと埋葬したい所だ。

男の人はシロを元に戻す手段は無いと言っていた。
それが事実かどうかは分からないが、はいそうですかと大人しく受け入れるなどお断りだ。
しんのすけの為にも、どうにかシロを元に戻す方法を探さなければと決意する。
とはいえ、今のシロが危険な事は否定できない。
目が覚めたら、きっとまた襲い掛かるだろう。
それを防ぐ為に支給品の一つである、腕時計の形をした不思議な機械、そこから発射されたワイヤーで、拘束している。
説明書によると、この道具は左翔太郎が使っていたらしい。

それにしても何故あの男は突然こちらを攻撃したのだろう。
しんのすけに殴り飛ばされ敵意を抱いた?
それにしては相手から怒りのようなものを一切感じなかったのは奇妙だ。
一体何がどうなっているのか、考えても答えは出て来なかった。

「何にせよだ、暫くは休んどこうぜ?いい加減クタクタだ」

確かにアーマージャックとの戦闘に始まり、連戦による疲労は無視できないくらいに蓄積している。
考える事、やらなければいけない事は山のようにあるけど、それらをこなすにはしっかりと体を休めるのが必須。

椅子の背もたれに寄り掛かり、静かに目を閉じた。





840 : MAD QUALIA ◆ytUSxp038U :2021/09/14(火) 23:54:38 WuO.fHTk0
壁に背を預けながらエボルトは考える。
先程戦った男の変貌には、何故か既視感のようなものがあった。
あの男とは初対面のはずだがと、過去の記憶を幾つか思い浮かべ、ああと納得がいった。

似ているのだ、ハザードフォームのビルドに。

ハザードトリガーというアイテムを使ったビルドの強化形態。
ハザードレベルを一時的に上昇させるが、代償として理性を失い、敵味方関係無く全てを殺すまで戦い続ける暴走状態になってしまう厄介な形態だ。
さっきの男はビルドでは無いが、しんのすけの攻撃を受けて意識を失い、人が変わったように攻撃を仕掛けるのはハザードフォームと確かに似ている。
ということは、最初に死にそうな顔でシロを殺そうとしていた方が本来の人格で、意識を失くすなどの条件が揃えば、無差別な殺戮マシーンと化すのだろう。

(面倒な置き土産を残してくれたもんだよ、全く……)

呑気に眠りこけるシロを見て、ため息を吐きたくなった。
鬼、というのが具体的にどんな性質なのかは知らない。
もっと情報を引き出したかったが、後の祭りだ。
蓮やしんのすけはシロを元に戻したいと考えているだろうが、そう上手くいくとは思えない。
人間を怪物に変えるのは案外簡単だ。
だが反対に、怪物を人間に戻すのは難しい。
ファウストを使って散々スマッシュを生み出して来たが、連中とて無事人間に戻れても重度の記憶障害や身体障害に陥る者も多々いたし、
注入したネビュラガスの量によっては人間に戻った途端に死に至る者だって存在した。
シロは元々人間では無く犬だが、鬼から元に戻すのが困難のは同じ。
必死に方法を探し回っても、結局見つからなければどうするつもりなのか。
その時に起こりえる事態を考え、嘲笑うかのように小さく笑った。

(どうせ最後は処分する以外に選択肢が無いんなら…)

有効的に使ってから、死なせてやるか。

口には出さず、眠り続ける鬼を冷たく見下ろした。


841 : MAD QUALIA ◆ytUSxp038U :2021/09/14(火) 23:55:13 WuO.fHTk0
【D-6 純喫茶ルブラン/早朝】

【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[身体]:孫悟空@ドラゴンボール
[状態]:体力消耗(特大)、貧血気味、右手に腫れ、左腕に噛み痕(止血済み)、悲しみと決意、睡眠中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、水水肉@ONE PIECE、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本行動方針:悪者をやっつける
0:……
1:逃げずに戦う
2:困っている人がいたらおたすけしたい
3:シロは怪物なんかじゃないゾ…
[備考]
※殺し合いについてある程度理解しました。
※身体に慣れていないため力は普通の一般人ぐらいしか出せません、慣れれば技が出せるかもです(もし出せるとしたら威力は物を破壊できるぐらい、そして消耗が激しいです)
※自分が孫悟空の身体に慣れてきていることにまだ気づいていません。コンクリートを破壊できる程度には慣れました。が、その分痛みも跳ね返るようです。
※名簿を確認しました。
※気の解放により瞬間的に戦闘力を上昇させました。ですが消耗が激しいようです。

【エボルト@仮面ライダービルド】
[身体]:桑山千雪@アイドルマスター シャイニーカラーズ
[状態]:疲労(極大)
[装備]:トランスチームガン@仮面ライダービルド、コブラロストフルボトル@仮面ライダービルド、ロケットフルボトル@仮面ライダービルド
[道具]:基本支給品×2、ピーチグミ×4@テイルズオブディスティニー、ランダム支給品1〜3(シロの分)、累の母の首輪、煉獄の死体
[思考・状況]
基本方針:主催者の持つ力を奪い、完全復活を果たす
1:休む。いい加減疲れちまったよ
2:蓮としんのすけを戦力として利用。
3:首輪を外す為に戦兎を探す。会えたら首輪を渡してやる
4:有益な情報を持つ参加者と接触する。戦力になる者は引き入れたい
5:自身の状態に疑問
6:アーマージャックを警戒。できればどこかで野垂れ死んで欲しい
7:出来れば煉獄の首輪も欲しい。どうしようかねぇ
8:ほとんど期待はしていないが、エボルドライバーがあったら取り戻す
9:シロに使い道はあるか?
10:今の所殺し合いに乗る気は無いが、他に手段が無いなら優勝狙いに切り替える
[備考]
※参戦時期は33話以前のどこか。
※他者の顔を変える、エネルギー波の放射などの能力は使えますが、他者への憑依は不可能となっています。
またブラッドスタークに変身できるだけのハザードレベルはありますが、エボルドライバーを使っての変身はできません。
※自身の状態を、精神だけを千雪の身体に移されたのではなく、千雪の身体にブラッド族の能力で憑依させられたまま固定されていると考えています。
また理由については主催者のミスか、何か目的があってのものと推測しています。
エボルトの考えが正しいか否かは後続の書き手にお任せします。
※ブラッドスタークに変身時は変声機能(若しくは自前の能力)により声を変えるかもしれません。(CV:芝崎典子→CV:金尾哲夫)
※参加者がそれぞれ並行世界から参加していると気付きました。


842 : MAD QUALIA ◆ytUSxp038U :2021/09/14(火) 23:56:30 WuO.fHTk0
【雨宮蓮@ペルソナ5】
[身体]:左翔太郎@仮面ライダーW
[状態]:ダメージ(中)、疲労(極大)、体力消耗(中)、SP消費(大)、無力感と決意
[装備]:煙幕@ペルソナ5、スパイダーショック@仮面ライダーW
[道具]:基本支給品×2、T2ジョーカーメモリ@仮面ライダーW、無限刃@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-、ランダム支給品0〜3(煉獄の分を含む、刀剣類はなし)
[思考・状況]基本方針:主催を打倒し、この催しを終わらせる。
1:とりあえず休んでおこう。
2:まずは仲間を集めたい。
3:とりあえずエボルトと行動。信用して良いのか…?
4:しんのすけの力になってやりたい。一緒にシロを元に戻す方法を探そう。
5:元の体の持ち主に対して少し申し訳なさを感じている。元の体に戻れたら無茶をした事を謝りたい。
6:アーマージャックは必ず止める。逃げた怪物(絵美里)やシロを追いかけて来た男(耀哉)も警戒。
[備考]
参戦時期については少なくとも心の怪盗団を結成し、既に何人か改心させた後です。フタバパレスまでは攻略済み。
支給品は確認済みで、少なくとも武器や銃火器は入っていません。
スキルカード@ペルソナ5を使用した事で、アルセーヌがラクンダを習得しました。
参加者がそれぞれ並行世界から参加していると気付きました。

【シロ@クレヨンしんちゃん】
[身体]:犬飼ミチル@無能なナナ
[状態]:疲労(中)、鬼化、空腹、服がボロボロ、ワイヤーで拘束中、睡眠中
[装備]:
[道具]:
[思考・状況]基本方針:??????
0:……
1:人間を喰らう
2:■■■■■や■■家の人たちを…どうするんだっけ
3:ご主人様(耀哉)を攻撃した胴着の男(しんのすけ)は許さない
[備考]
人間の言葉をそれなりに話せるようになりました。
ヒーリング能力の寿命減少は、肉体側(人間)に依存します。
犬飼ミチルを殺人鬼と勘違いしています。
鬼化により記憶の一部が欠落しつつあります

【ロケットフルボトル@仮面ライダービルド】
ロケットのエレメントを主成分とするフルボトル。
ビルドドライバーに特定のボトルと共にセットすれば、ベストマッチフォームに変身出来る他、
トランスチームガンやネビュラスチームガンに装填すれば、エネルギー弾に成分を付与できる。

【ピーチグミ@テイルズオブディスティニー】
テイルズシリーズでお馴染みの回復アイテム。6個入り。
ピーチ味は体力を50%回復させる。

【スパイダーショック@仮面ライダーW】
フィリップが開発したメモリガジェットの一つ。
通常の時計機能に加え、温度・湿度・気圧の計測、追跡マーカーなどの機能が付いた腕時計形態、ギジメモリのスパイダーメモリをインサートする事で変形するクモ型形態の二形態がある。
超合金ハイメタル製の強化ワイヤー・マイクロワイヤーやとウィンチ・ビーコンビットを射出可能。
ワイヤーはドーパントすら拘束できる程頑丈。
スパイダーメモリとのセットで支給された。


843 : ◆ytUSxp038U :2021/09/14(火) 23:57:32 WuO.fHTk0
投下終了です


844 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/15(水) 00:17:46 InhxghnY0
すいません、こんなタイミングで何ですが、もう少し◆P1sRRS5sNsさんに話したいことがあります。

ただ、この話をしてしまうと氏を悲しませてしまうのではないか、言わない方がいいのではないかという気持ちもあります。
ですが、もっと直接的に言わないとこの件について決着をつけるのが難しいとも感じたため、話させてほしいです。


私は、本音を言いますと、承太郎とヴァニラを今回の話で戦闘させるべきではないと考えています。

かなりの遠距離で離れた位置にいる二人を引き合わせようとしてしまうと、どうしても不自然な描写が出てきてしまうと考えられます。
展開のためにキャラクターを動かしてしまうと、どうしてもそのような弊害が出てきてしまうのだと思います。
少なくとも私には、今回の話でそれを完全に解決するための方法を想像できません。

一応、二人の位置を近づけるだけの方法なら私にも思いついていますが、それを言ってしまうのは展開潰しな気がして言いづらく、
そもそもその私が思いついたその方法自体、不自然な点があるものです。

氏が前に案に出したビーストキマイラやハードボイルダーを使う方法も、本当に不自然なところはないとは、実は自信をもっては言えません。
ジューダスをDIOの館に入れる方法を使うにしても、ジューダスがそこに入るまでの時間のことを考えると、2人がそこまで間に合うかどうか怪しいと感じてしまいます。
戦闘の場所を変えるとしたら、今度は2人をそこまでどうやって違和感なく移動させるのかという問題が出てきます。
鵜堂刃衛に橋を破壊させることについても、これに対して不自然な行動だと感じる方もおられます。
そもそも、既に退場した人物にこのような行動をさせること自体、実のところ本当に認めてもいいかどうか迷うラインにあります。

これを言ってしまうのは書き手として問題があるとは思いますが、このままで本当に不自然な点をなくすことができるのか、現状は怪しく感じています。
一度書いたバトル描写を使うことにこだわってしまうと、よりそのようなことになってしまうのではと思います。

実のことを言うと、没SSまとめをwikiに作ることを提案したのは氏が書いたSSを無駄にしないためにと思ったからです。
一度投下したものを無駄にしたくない気持ちは私にも分かります。
そのためどうにかしてwikiにSSを残せるよう考えた結果、このような案を出すことになりました。
重ねて申し上げますが、前回の没SSをこの形でwikiに収録しても良いか、答えをお聞かせ願います。

これも重ねて言いますがもちろん、本当に不自然な点を全て解決できる話の展開案があるのならばそれで構いません。
ただ、それを行うのはかなり難しいことであると私は感じます。
本当に2週間以内でそれが可能なのかも心配です。

結論を言いますと、承太郎とヴァニラをこのタイミングで戦わせることはほぼ不可能であると私は思います。

このような事態になってしまったことに責任を感じるのは分かりますが、
この「承太郎VSヴァニラ」という前提条件があると、本当に多くの人が納得できるSSを書くことは困難なことであると感じます。


せっかく予約していただいたところこのような口出しをしてしまい本当に申し訳ありません。
ですが私は氏がSSを書くこと自体は絶対に否定しません。
このまま予約分が投下されて、それに何も不都合がなければそのまま採用させていただきます。
しかし本当にこのままで大丈夫なのか不安な気持ちを隠しきれないのも本音です。

何度も同じような書き込みをしてしまい申し訳ありません。
重ねて言いますが、私のこの「戦闘の前提条件を排除する」という意見に対して、氏の考えを聞かせてください。
どうかよろしくお願いします。


845 : 名無しさん :2021/09/15(水) 00:27:13 3G3h12cI0
とりあえず、投下乙です
ひとまず犠牲は出なかった、が…
お館様もシロも、これからどうなるんだろうな…
大好きなご主人様がしんのすけからお館様にすり替わってるの、「NTRやん…」って思ってしまった

しかしルブラン組、蓮とエボルトはもう4回くらい戦闘してるし
しんちゃんは煉獄さん失って間もなく最悪の再会するし
最初の6時間からみんな心身ともに忙しすぎる…


846 : ◆vV5.jnbCYw :2021/09/15(水) 17:27:53 oX88olss0
投下お疲れ様です!!
私はビルドは見たことないのですが、
それでも書き手さんのビルドに対する造詣の深さが良く伝わってくる一作でした。


847 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/16(木) 12:34:01 jpkQJWGc0
改めまして、「皆さん投下お疲れ様です!」と言わせてください。

これから、感想を投下しようと思います。

>増え鬼Ⅱ
シロが鬼化してしまうという衝撃展開!
まさか無惨の身体の性質とスコルピオワームの能力がこんな形でかみ合ってしまうとは。
ルブランの前にたどり着いたこともあり、嫌な予感はしていましたが…

>MAD QUALIA
やはり起こってしまったシロの襲撃。
だけど、しんちゃんがシロの命を輝哉から救うことになるとは。
悟空のフリーザ戦での記憶が思い浮かんだこともあり、これは熱い展開ではありますが…
鬼化は治ってなく、輝哉が洗脳人格のまま去ってしまったこともあり、不穏な空気はまだまだ漂っていると感じられます。


これにて、今回の感想の投下を終わります。


少し遅れましたが、この場を借りて皆様にお詫び申し上げたいことがあります。
先日は、SSの投下があった直後に他の方への指摘用の長文を投下してしまい申し訳ありませんでした。
今後はこのような事態を引き起こさないように留意いたします。


848 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/16(木) 12:59:43 jpkQJWGc0
【報告】
◆P1sRRS5sNsさんへの連絡です。
今回は、「分かつ希望の光、輝くのか、消えるのか」についての話です。
この話の最後の方においてエーリカ・ハルトマンはトゥルーデ(=ゲルトルート・バルクホルン)の髪色を「赤い髪」と言っていますが、私には彼女の髪色は「茶」や「ブラウン」である方が適切であるように思えます。
そのため、この部分の「赤い髪」を「茶髪」に修正したことを報告いたします。
このことについて、他に適切な表現があると感じた方はお申し付けください。

また、まとめwikiに「没SSまとめ」のページを作成し、ここに「類似するDとJ/高速の光 見逃すな」を収録しました。
このことについても何か意見があれば遠慮なくお申し付けください。


849 : ◆ytUSxp038U :2021/09/16(木) 13:16:36 OkP.JXlM0
皆様感想ありがとうございます

悲鳴嶼行冥、胡蝶しのぶ、デビハムくんを予約します


850 : ◆1qfrROV/6o :2021/09/20(月) 17:22:43 2n4OyQoo0
野原しんのすけ、エボルト、雨宮蓮、シロを予約します。


851 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/21(火) 00:13:54 Dfy59/JE0
◆P1sRRS5sNsさんへ
すいません、「類似するDとJ/高速の光 見逃すな」においてもう少し気になった点があります。
この話において、ヴァニラはDIOの能力の正体を知らないと描写されていることについてです。
原作のジョジョの奇妙な冒険においては、ダービー兄がDIOのスタンドの秘密を知っているという描写があります。
そのため、ダービー兄よりもDIOに近い立場にいたヴァニラがDIOの能力の正体を知らないというのは、少し考えにくいかもしれません。
ただ、ヴァニラがDIOの能力を知っているかどうかについては、別に原作において言及されていないはずなので、「絶対におかしい!」とまでは言うつもりはありません。
けれども、少し気になったためどうかこの点についても氏の考えを聞かせてくれませんか?
この部分についても流用するつもりがあるならば考慮のほどをお願いします。
これについては、他の方の意見もあれば聞かせてもらいたいと思います。

また、氏が確認したかどうか不明瞭な、他の指摘のスレ(>>819>>844、他の方のスレですが>>815についても)を、もしもまだ確認していない場合は連絡のほどをよろしくお願いしたいです。
返答する時間が無いのならば、せめて確認したことだけでも報告してください。
ただ、指摘された事項に対して返答がないと、本当に確認したかどうかこちらには分からなくなります。
そのため、指摘された部分についてはなるべく全て、よほど言いがかりなことではない限り、どのような考えを持っているか、修正するとしたらどうするつもりなのか、連絡をお願いします。
このように、予約期限であっても連絡のレスが書き込まれることがあるので、本スレは定期的に確認することをオススメします。


852 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/21(火) 00:15:14 Dfy59/JE0
【連絡】
投下時間の間隔が空くことを防ぐために、新しくルールを設けようかと考えています。
これは、全ての書き手の方に言えることであります。


SSの投下宣言がされた後、途中で投下が一定時間されなかった場合、未完成のまま投下を始めたと見なします。
未完成のままの投下を始めたと見なす時間の間隔の基準は、20分までを考えています。
これは、状態表の投下にも言えることとします。
この時間を超えた場合、それまで投下された話は全てなかったこととします。

話を投下したい場合は、最初の投下宣言からやり直してください。
このような事態になり、予約の時間も超過していた場合は、予約も破棄という扱いになります。
もちろん、予約が入らなければゲリラ投下という形になりますが投下は可能です。


ただ、私自身「わざわざこのようなルールを設ける必要性はあるのか?」という疑問もあります。
そのため、この投下の際の新たなルール案についても、何か意見があれば誰でも遠慮なくお申し付けください。


853 : ◆ytUSxp038U :2021/09/21(火) 13:27:59 iN6kYYXU0
投下します


854 : ◆ytUSxp038U :2021/09/21(火) 13:28:50 iN6kYYXU0
草原地帯にそびえ立つ白亜の建物。
聖都大学附属病院を、一人の少年が見上げていた。

「病院デビか…」

肉体の名は天使の悪魔、バトルロワイアルの参加者としてはデビハムくんと呼ばれているハムスターだ。

次の行動を起こす前に、どこか一休みできる場所を探していたデビハム。
幾ら何でも遮蔽物も何もない草原のど真ん中に居続けるのは無防備であるし、
かと言って街に戻れば再び戦兎達と遭遇する羽目になるかもしれない。
どこか手頃な民家でも無いかと辺りを見回していた所、少し離れた場所に白い建物があるのを見つけ、そこを目指し歩いて来たのだった。

「ヌフフ、良い所を発見したデビ」

ロクでもない悪戯を思い付いた、悪童のような笑みを浮かべる。
病院ならば当然数々の医療品が置いてあるはず。
怪我をした参加者は治療の為に病院を目指そうとするだろう。
だがいざ到着した時、目当ての薬や包帯が根こそぎ奪われていたらどうなる?
治療に必要な器具が一つ残らず破壊されてしまえば、さぞやショックを受けること間違いなし。
他人の落胆や怯え、絶望を好むデビハムにとっては最高の光景だ。
それに治療ができず怪我を負ったままの参加者が増えるのは、優勝を目指すうえでも都合が良い。

「デ〜ビデビ!そうと決まればいざ突撃デビ〜!」

自身の悪辣な策を実行に移そうと、デビハムは意気揚々と病院へ足を踏み入れた。

病院内は無人にも関わらず電気が付いており、壁や床の白さを際立たせていた。
受け付けや自動販売機には目もくれず、姿勢を低くして奥へと移動する。
通路の角に身を隠し、そっと様子を窺う。
院内は静まり返っており、見た感じでは人がいる形跡は無いように思えた。

(しめしめ、今の内に…)

「コソコソ何をしているんですか?」

背後から掛けられた声に、心臓が飛び出しそうになった。
ぎゃっと叫んで振り返ると、デビハムのすぐ後ろに声の主がいた。
青いとんがり帽子とカールした髪が特徴的な少女。
少女は貼り付けたような笑みを浮かべながら、見るからに動揺しているデビハムへ言葉を続けた。

「驚かせてしまってごめんなさい。ただ、貴方がネズミのようにコソコソとしていたものですから」
「ネッ、ネズミとはなんデビか!オイラは立派なハムスターだデビ!あんな薄汚いのと一緒にするなデビ!」
「ハム…?まぁそれはともかく、何をしに来たのか、教えて頂けますか?」

活発そうな見た目とは裏腹に、少女は丁寧な口調で尋ねる。
尤も目が全く笑っておらず、どこか寒気を感じるが。
薄ら寒い笑みの裏に自分への警戒があると察したデビハムは、向こうが手を出すより先に寿命を全て奪ってやろうかと考える。
が、直ぐにそれでは駄目だと思い直した。
短絡的に襲い掛かるだけでは殺し合いには勝ち残れないと、さっきの戦闘で痛感したではないか。
優勝するにはもっと頭を働かせ、ラブを破壊していかなければならない。
熱くなりかけた頭を落ち着かせて、デビハムは口を開いた。

「いきなり失礼な女デビね!オイラはただ休める場所を探しに来ただけデビ!
 それに今は殺し合いなんだから、他の参加者に襲われないようコソコソ隠れたっておかしくないはずデビ!」

自分にやましい所は何も無いとでも言うように、堂々と言い切った。
デビハムと少女の間で、暫し視線がぶつかり合う。
これでもまだ疑うようなら、デビハムの方が苛立ちの余り刀を抜いてしまいそうだったが、
第三者の出現によりその必要は無くなった。

「誰か来たのか?」

通路の奥から現れたのは、銀髪で何となくだらしのなさそうなオーラの男。
されど力強さの感じられる瞳で少女とデビハムを交互に見やった。





855 : ◆ytUSxp038U :2021/09/21(火) 13:29:47 iN6kYYXU0
「と、いう訳デビ。聞くも涙、語るも涙の話でオイラの瞳はウルウルデビよ〜…」

話し終えるとデビハムはこれ見よがしに目尻を指で擦る。

しのぶと合流した悲鳴嶼からも警戒されたが、内心の動揺を悟られないように、「自分は殺し合いには乗っていない」と告げたデビハム。
ついでに自分の名前も教えてやると、二人揃っておかしなものを見る目を向けた。
名簿を確認した時は鬼殺隊の人間や無惨が載っていた事へのインパクトに埋もれていたが、デビハムくんという奇妙な名前の持ち主とこうして対面しているのだ。
それはともかく、悲鳴嶼はデビハムの傷と着ているスーツの汚れを指摘し、ここに来る前に何があったのかと尋ねた。
この質問はデビハムにも十分予想できたことであり、尚且つチャンスだと顔には出さずほくそ笑む。
悲しさと悔しさを滲ませた表情でデビハムは、これまでの経緯を説明した。

殺し合いが始まって暫く経った後、街で泣いている少女を発見した。
きっと殺し合いに巻き込まれた恐怖で怯えていると考えたデビハムは、少女を保護しようと近づいた。
「甜歌」と名乗ったその少女は、初めの内は気弱な雰囲気でいたが、デビハムがちょっと隙を見せた途端に本性を現した。

「その少女はデビハム君を油断させ、仲間である男が殺そうと襲い掛かった、ですか…」
「そうデビ!オイラの優しさを踏み躙った、とんでもない女だったんデビ!」
「ふむ…名簿にも大崎甜歌と桐生戦兎の名は載っている。その二人組が偽名を名乗っていない限りは、本名だろう」

手にした名簿を確認し、顔を上げた悲鳴嶼へ大きく頷いてみせる。

甜歌に戦兎と呼ばれた男は、油断し切っていたデビハムを殺そうとしてきた。
つまり二人はグルであり、甜歌が非力な少女の振りをして油断を誘い、無防備となった所を戦兎が殺すという卑劣な手を用いる危険人物とのこと。
幸いデビハムに与えられた体は、人間よりも遥かに優れた能力の悪魔。
傷を負いながらもどうにか戦兎達の元を逃げ出せたのだと言った。

「これでオイラの話は終わりデビ。今思い出しても本当に酷い奴らデビ!」

ヂビハムがそう締めくくると、しのぶは横目で悲鳴嶼を見やる。
視線を受けた悲鳴嶼が小さく首を振ると、そうだろうなと内心で同意した。

二人にデビハムの話を完全に信じる気は無かった。

デビハムは自身を騙して襲った二人組の危険性を力説していたが、その話が真実だと裏付ける証拠は一つも無い。
服の汚れや怪我、病院で休もうとしていた理由付けにはなるが、それだけでは根拠が余りにも薄い。
むしろ実はデビハムの方が殺し合いに乗っており、戦兎と甜歌を襲ったが返り討ちに遭い、その腹いせに悪評を流している、
という可能性とて十分にある。

自分の立場が悪くなると嘘を吐く者は、しのぶも悲鳴嶼も嫌と言う程知っている。
前に那田蜘蛛山でしのぶが遭遇した鬼など、その典型的な例だ。
自分に勝ち目が無いと分かった途端、つらつらと嘘を並べて生き延びようとした救いようの無い卑劣な少女だった。
それに悲鳴嶼は鬼殺隊の一員となる切っ掛けである事件の影響で、非常に疑り深い性格となった。
一度死んだ身とはいえそう簡単に己を変えは出来ず、何より殺し合いという異様な状況では、相手を疑う事も重要だと理解している。
そんな悲鳴嶼から見て、デビハムという少年はいまいち信用に欠ける存在のように見えた。
無論、全ての人間がどうしようのない嘘つきなどとは微塵も思っていない。
しかし、炭治郎や玄弥といった者達と比べると、やはりどこかデビハムの言葉には疑わしいものを感じるのも事実。

(だが、この少年が真実を言っている可能性も否定はできないか)

デビハムが真実を言っている証拠は無いが、嘘をついている証拠も同じく無い。
だからデビハムの言う通り、本当に戦兎達が危険な参加者だとしても不思議はないのだ。
桐生戦兎と大崎甜歌、彼らがどんな人間なのか、デビハムの話が真実か否かを確かめるには実際に会ってみるしかないだろう。

(ならば、真実が明らかとなるまでデビハムからは目を離さん方が良いな)
(今はそれしかないですね…)

「事情は分かりました。デビハム君の言うその男女二名には警戒しておきましょう」
「うんうん、それが良いデビ!」

貴方の事も警戒してますけどね、と口には出さずデビハムへ笑みを向けた。

その後、休みたいと言ったデビハムは病室のベッドへ靴も脱がずに横になった。
しのぶからは怪我の手当てを提案されたが、天使の悪魔の肉体は人間よりもずっと頑丈だから、少し横になれば大丈夫だと断った。


856 : ◆ytUSxp038U :2021/09/21(火) 13:30:50 iN6kYYXU0
欠伸をしてくつろいでいるデビハムを尻目に、悲鳴嶼としのぶは今後何処へ向かうかを話し合った。
デビハムの話の真偽を確かめる為に、彼がいた市街地へ行き戦兎達を探す。
それともお館様こと耀哉との合流を急ぐか。
どちらにすべきかと地図を広げ、奇妙な点に気付いた。
デイパックの中身を確認した時と今とで、地図に記載されている情報が明らかに違う。
最初に見た時には無かった施設の名が複数載っている。
とはいえ異常な力と技術力を持つボンドルドが用意したものだ、これくらいの仕掛けがあったとしてもそう驚きはしない。
ただ新たに記載された施設の中に一つ、二人の目を引くものがあった。

「竈門家だと?もしやこれは…」
「炭治郎君と禰豆子さんが生まれ育った家、なんでしょうか…?」

聖都大学附属病院の北東に位置する施設。
その名から二人が連想するのは、鬼殺隊に所属する兄妹だ。
何故わざわざ炭治郎の実家を会場に設置したのかは分からない。
それに仲間の生まれ育った家を殺し合いの場なんかに再現したのも、ハッキリ言って気分が悪い。
しかし竈門家の存在は二人にある考えを抱かせた。

「悲鳴嶼さん、お館様達が竈門家に向かっているとは考えられませんか?」

殺し合いに参加している鬼殺隊の者達も、竈門家と聞いて真っ先に連想するのは炭治郎と禰豆子だろう。
自分達の仲間の実家が施設として存在するならば、念の為にそこを目指す可能性はある。

「ああ。だが問題は、お館様達が地図の仕掛けに気付いているかどうかだが…」

参加者に配られた地図は時間差で施設が記載される仕組みだ。
このため後からもう一度地図を確認しなくては、新たな施設の存在を確認できない。
もし耀哉達が地図の仕掛けに気付いていなければ、竈門家に向かっても時間を無駄にしただけで終わってしまう。
それなら南西にある街に行った方が人と出会う確率は高い。

一体どこへ向かうべきか。
二人は頭を悩ませていた。


地図を広げて頭を突き合わせる鬼狩りを眺めながら、デビハムは一人考える。
まずはあの二人に戦兎達への不信感を植え付けてやった。
後は戦兎達と争い合って共倒れすれば万々歳だが、油断はできない。
自分の嘘がバレてしまえば、却って敵を増やす事に繋がってしまう。
そうならないように、今後の立ち回りも慎重に行わねばと気を引き締めた。

(いざとなったら、この身体の力を試す実験台にでもしてやるデビ)

悲鳴嶼達には二つの情報を伏せている。
一つは天使の悪魔が持つ、寿命を吸い取って武器へと変える能力のこと。
相手に直に触れるだけで一気に寿命を奪い取る力の存在を、わざわざ教えてやる必要はどこにもない。
もしこの力のことを知られたら、万が一戦闘になった時、相手はデビハムに触れられないよう立ち回るだろう。
そんな面倒な事態になるのは御免だ。
だからしのぶが手当てを提案して来た時も、意図せずこちらの手に触れ能力がバレるのを防ぐ為に断った。

もう一つは支給品のドロン玉。
戦兎との戦闘から撤退する際にも使ったアイテムだ。
場所を指定できないデメリットがあるものの、優秀な緊急脱出用の道具の存在もまた、悲鳴嶼達に教えてやるつもりはない。
こちらは残り一つのみ。無駄遣いは出来ない。

(そういやオイラもこの後どこに行くかは、まだ決めてなかったデビ)

市街地へ行き、悲鳴嶼達と戦兎達を潰し合わせるのも手だ。
だが戦兎達が今も街へいるとは限らない。
それよりもっと他の参加者を探して、戦兎達の悪評をばら撒いたり、或いは他の方法で参加者のラブを壊すか。
さてどうしようかと、デビハムも頭を悩ませるのだった。


857 : ◆ytUSxp038U :2021/09/21(火) 13:31:47 iN6kYYXU0
【D-2と3の境界 聖都大学附属病院/黎明】

【悲鳴嶼行冥@鬼滅の刃】
[身体]:坂田銀時@銀魂
[状態]:健康
[装備]:海楼石の鎖@ONE PIECE、バリーの肉切り包丁@鋼の錬金術師
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本方針:主催者の打倒
1:竈門家へ向かうか否か、どうすべきか
2:しのぶと共に鬼殺隊の仲間を探す。(最優先はお館様)
3:無惨を要警戒。倒したいが、まず誰の体に入っているかを確かめる
4:デビハムの話には半信半疑。桐生戦兎と大崎甜歌に会い、真相を確かめたい
[備考]
・参戦時期は死亡後。
・海楼石の鎖に肉切り包丁を巻き付けています。

【胡蝶しのぶ@鬼滅の刃】
[身体]:アリーナ@ドラゴンクエストIV
[状態]:健康
[装備]:時雨@ONE PIECE
[道具]:基本支給品、鉄の爪@ドラゴンクエストIV、病院で集めた薬や包帯や消毒液
[思考・状況]
基本方針:殺し合いを止め、元の世界に帰る
1:竈門家に行くか行かないか、どうしましょうか
2:悲鳴嶼さんと一緒に鬼殺隊の仲間を探す。(最優先はお館様)
3:無惨を要警戒。倒したいが、まず誰の体に入っているかを確かめる
4:もしも上弦の弐がいたら……
5:デビハム君の話には半信半疑。桐生戦兎と大崎甜歌に会い、真相を確かめたい
[備考]
・参戦時期は、無限城に落とされた直後。

【デビハムくん@とっとこハム太郎3 ラブラブ大冒険でちゅ】
[身体]:天使の悪魔@チェンソーマン
[状態]:ダメージ(中)、疲労(中)
[装備]:秋水@ONE PIECE、アトラスアンクル@ペルソナ5
[道具]:基本支給品、ドロン玉×1@ペルソナ5
[思考・状況]基本方針:優勝してかっこいい悪魔の姿にしてもらうデビ
1:今はちょっと休みたいデビ。この後どこに行くかも考えとくデビ
2:オイラらしいやり方で参加者のラブをぶっ壊すデビ
3:アイツら(戦兎と甜歌)の悪評をばら撒いてやるデビ
[備考]
参戦時期はハム太郎たちに倒されて天使にされた後。


858 : ◆ytUSxp038U :2021/09/21(火) 13:33:28 iN6kYYXU0
投下終了です。
タイトルは「たとえば絶対嘘だろって話に限って実は本当だったと思いきややっぱり嘘だったていう探り合い」でお願いします。


859 : ◆OmtW54r7Tc :2021/09/21(火) 18:33:35 5okMrwAs0
投下乙です
まあこの二人はデビハムのこと信用しないだろうなあ
かといって現時点で嘘と断じるほどの情報もないし、そう落ち着くのも納得
デビハム、自分でコンペ出しつつもマイナーそうだし選ばれないかなと思ってたし、選ばれたとしても把握してる人少なそうだなって思ってたんですが
この方は前回も今回もデビハムのキャラをしっかり再現してて原作ファンとして嬉しく思います

それと話変わりますが、件の承太郎ヴァニラの予約、期限が過ぎました
スレを今に至るまで全然見てないのか、企画主さんの再三の呼びかけにも無反応です
今日の日付が変わるまでに反応がないようなら、もう破棄していいと思います


860 : 名無しさん :2021/09/21(火) 18:45:20 X5ELKGV.0
賛成です。追加でもしも予約が破棄されたら件の書き手の作品予約投稿を制限すべきだと思います。


861 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/21(火) 18:55:59 Dfy59/JE0
>>818の予約期限が超過しています。
申し訳ありませんが、この予約は無効とします。

日付が変わるまで待つことも考えましたが、初めの頃ならともかく、何度も期限切れを起こされるのも困ります。
そのため、今後は期限についてこれまでよりも厳しくさせていただこうと考えています。
しかし、これは投下自体を禁止するものではありませんので、同キャラに予約が入らなければ投下は可能です。

また、キャラの拘束期間が長くなってしまったため、◆P1sRRS5sNs氏に一部のキャラの予約禁止措置を行おうと思います。
予約禁止の該当キャラは空条承太郎、ヴァニラ・アイスです。
今回の予約禁止期限は2週間、2021/10/7(火)までと考えています。
この期間の間、該当トリップによる予約が入っても無効とさせていただきます。
あくまで禁止としたのは予約のみであり、これらのキャラを含む話を同キャラに予約が入らなければ、ゲリラ投下が可能です。
また、該当キャラ以外の予約も可能です。

これらのことについて何か疑問点・意見等があれば遠慮なくお申し付けください。
特に、予約禁止についてはこれで期限の長さのバランスがとれているのか、そもそもこのタイミングで行ってもよいのか、という思いもあります。
そのため、他の方の意見があればどうかよろしくお願いします。


862 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/21(火) 23:27:44 PINyP6s60
すみません、◆5IjCIYVjCc さんにお話があります
予約というのは一週間以内だったはずです。まだ今日は期限のはずです。私はたった今投下しようと考えていました
まだ、時間が残っていたはずなのに予約を消されるのはとても辛く思います
どうかご一考ください


863 : 名無しさん :2021/09/21(火) 23:32:54 i8Hpwbys0
禁止されたのは予約だけなんだから、今すぐ投下すればいいぞ


864 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/21(火) 23:35:39 PINyP6s60
名無しさん!!アドバイスありがとうございます!!
では今すぐ投下します!!


865 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/21(火) 23:36:38 PINyP6s60
(…決まりだな、橋の方へ行くか)

承太郎は何方の方へ向かうべきか、それを考えてみた結果、まず一番簡単に見渡すことが出来る橋をスタンドで見渡して誰もいなかったのならば町の方へ向かう事を決めた。
この死体の出血の量から考えるにまだ殺した奴はそこまで遠くに行っていない、ならばすぐ見た後に町を見てもおかしくはないはずだ。
その結果、支給されていたバイクを使って橋の方へ向かい、渡る直前で一旦停止…大分向こうに誰かいるのを見つけた…ソイツは刀をぶら下げていた。

(…限りなく黒に近いかもな、あの歩き方は殺し慣れているような奴がしやすい歩き方だ)

よし、接触するべき奴は見つけた、後はダッシュブーストユニットを付けて一気に追いかけるか?そう考えて一旦降りてダッシュブーストユニットを取り出した…だが付けるのかどうかで少々迷いが生じた、あまりにも早すぎるスピードである事を知っていたからだ…そういう躊躇いが一瞬承太郎の行動を止めてしまった…本当にどうするべきか考え、ふと一度橋の方を見てみたら

音もなく橋の大半が消えていた

(…追っ手が来ている、そんな予感がかすかにしたんだが…まさかあんな遠くから俺を補足するとはねぇ)

鵜堂刃衛は人斬りという大罪を常に犯し続ける男、周りの気配を読むのに元から長けている上、心眼のスキルも肉体には宿っている。
だが流石にあんな遠くから見られるのは予想外であった。今までこんな経験はなかったと言えるだろう。
…ん?承太郎はスタンドを使っているから鵜堂刃衛が見えているのだろう、だが刃衛は何故承太郎がいる事が見えているのか?
これもまた肉体が理由である。
肉体の持ち主、岡田以蔵は『他人の剣技を直に手合わせせずとも見ただけで再現する事が可能な特殊な才能をも併せ持つ』これは目がかなり良くなければ出来る訳がないのだ。
なので勿論スタープラチナ程鮮明ではなく、ぼやけるが様子は見る事が出来た。

そして鵜堂刃衛は捕捉した男をどうするべきか、考えた結果…放置する事にした。

理由は二つある。
一つ目の理由、それは、相手は自分が知らない能力を持っている事が明らかであるからだ。
確かにぼやけていたがあの男には何か紫の霊みたいな者がいたのを見えた。それも背後から、無から突然生えてきたように見えたのだ。
つまりあれは守護霊であると把握した。
となるとどのような事をするのかが分からない、元の世界の場合は大方武器を振るってくると読めるが、この世界では謎の能力がある事を自らの身体とアイテムによって知った。
剣での殺し合いならどんな剣技でもこの肉体の能力で対応できるが、それに関係ない能力を使うのならば派手に死合う事も出来ず嬲り殺しにされる可能性がある。
強い奴と戦うのは好きだがなぶられる趣味はない。
となると相手の能力がどのような物なのかを詳しく知るまでは後回しにした方が良い。
この可能性は勿論今うっすらと気配をスキル、心眼によって感じた為に狙っている獲物にもある、が、今は獲物がどんな能力を持っているかはまだ分からない、能力を把握してから対応を考えてからでも遅くはないだろう。
二つ目は今気配を捕捉している島の端にいる二人と戦うと決めていたからだ。
その予定をわざわざ遠くにいる人に予定を狂わせられるのは面白くない。
だが問題はあの男が特殊なアイテムや技能を使って俺を追ってくることだ。

下手すると一瞬で追いつかれる可能性がある。

(だとするなら…追う事が出来ないようにするか、コイツを使って…)

取り出したのは、ひみつ道具の一つ、地球消しゴム、地図の土地を作り替える事が出来る驚異的なアイテムである。
本来なら地球エンピツも付随されているが主催はそれを持たせなかったらしく、消す事しかできなくなっている。

また、消せる範囲も狭まっており、人がいる場所は消しても無効になるように作られていて、その上三回しか地図に干渉が出来ないようになっている。
勿論無効になった分も干渉の一回になっている。つまり簡単に使う事が許されないという事だ。
だが今は橋に自分以外いない事は分かっている。
つまり今が使い時という訳だ。
今の自分の位置は橋を三分の二過ぎた所だ。
対して奴はまだ橋にも載っていない。
そこで今まで渡ってきた橋の三分の二…くっ、消す範囲が広すぎるようだな、一回分無効化されて損したようだ、ならば三分の一でいいか、自分のいる所から三分の一の長さの橋を消し去ると…音もなく橋の半分が消えうせた

以上が橋の大半が消えた真相である。


866 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/21(火) 23:36:55 PINyP6s60
(…これじゃあ渡れそうにねぇな)

承太郎は正直腰が抜けそうになる程驚いている。
今まで様々なスタンドの使い手に会ってきたが、こうも一瞬で音もなしに場所を消す事が出来るのは遥かに想定を超えていた事だからだ
恐らく追おうとした奴が行ったのだろう、いくら何でも追おうとしたタイミングで消えた事が偶然では都合がよすぎる。
つまりアイツは追われる何かがあった…誰かを殺した可能性が極めて高いという事だ。
(とりあえず限界まで橋を渡って様子を見てみるか)
消えてしまった部分の近くまで支給されたバイクを再び使い追いかけてみる事にした。
説明を忘れていたが今説明しよう、そのバイクの名前はハードボイルダー、いかにもハードボイルドが乗りそうな名前をしている。本来の使用者はハードボイルドではなくハーフボイルドと言われる半熟卵であった、承太郎は一見するとハードボイルドみたいな硬派だと考えられやすいだろう。だが実は情に厚く、小さな犠牲も見逃せない優しさ、そしてゲームを全くプレイしたことがない為にある程度やらなければできない、などポンコツである部分も意外にあると考えると彼もハーフボイルドに相応しいのかもしれない。

そして彼は限界まで近づく為に跨り走り始めた…

(追って来れないようだな…飛ぶアイテムを使ってこないかと考えたが杞憂で終わったようだ)
今追おうとしてくる奴は切断された場所までは近づいてきているが…それ以降は何もしてこない、ただしこちらの様子を伺っているようだが
(まぁいい、この間を飛び越えてまで邪魔してくるなら相手してやってもいいだろう、一番はサシだが乱戦も面白いしな、うふふふふ…)
こうして彼は…今目の前で地図を見ていた先ほどから感じていた気配の正体である二人組と死合うべく刀を抜いた…

【D-8、橋の上/黎明】
【鵜堂刃衛@るろうに剣心】
[身体]:岡田以蔵@Fateシリーズ
[状態]:健康
[装備]:虹@クロノ・トリガー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜4、地球消しゴム@ドラえもん
[思考・状況]基本方針:殺し合いを楽しむ
1:まずは近くにいる二人を楽しむ
2:あの青い霊を出す男に警戒、どうしても追ってくるなら相手にしてやろう
3:ひみつ道具ねぇ…異世界には奇怪なものがあるようだな
4:この身体は本当に便利だ、元の世界に持ち帰りたいねぇ
[備考]
参戦時期は死亡後

(やはり無理なようだな、これから先に行くのは…)

改めて橋のギリギリまで近寄ってみたがやはりこの隙間を飛び越えられそうにないようだ、バイクを限界まで加速してバイクを捨ててジャンプするのもいいかもしれんがそれでも向こう岸まで届く可能性は低い、あの力を使っても届かないだろう


(恐らくアイツはあの二人を狙うようだな…くそっ、俺のスタンドでは遠距離の人への援護は難しい…名前も知らねぇ二人だが…勝てる事を祈るぜ…)

空条承太郎はこれからの激戦を見る事しかできない。その悔しさを噛みしめながら…あの刀を持った危険人物をスタンドを使い観察する事にした。

【E-8、橋の上/黎明】
【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】
[身体]:燃堂力@斉木楠雄のΨ難
[状態]:健康
[装備]:ネズミの速さの外套(クローク・オブ・ラットスピード)@オーバーロード
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1(確認済み)、童磨の首輪、ハードボイルダー@仮面ライダーW
[思考・状況]基本方針:主催を打倒する
1:助けに行けなくてすまねぇ…勝ってくれ
2:まずは自分に協力してくれる者を探す。
3:主催と戦うために首輪を外したい。
4:自分の体の参加者がいた場合、殺し合いに乗っていたら止める。
5:DIOは今度こそぶちのめす。
6:天国……まさかな。
[備考]
※第三部終了直後から参戦です。
※スタンドはスタンド能力者以外にも視認可能です。
※ジョースターの波長に対して反応できません。
※ボンドルドが天国へ行く方法を試してるのではと推測してます。
【ネズミの速さの外套(クローク・オブ・ラットスピード)@オーバーロード】
承太郎に支給。ラキュースが装備する鼠色の外套のマジックアイテム。
移動速度や敏捷性、回避力を上昇させる。
【ハードボイルダー@仮面ライダーW】
承太郎に支給。仮面ライダーダブルが使用するバイク。内部構造により排気ガスはほぼゼロまで抑えられていて、ダッシュブーストユニットを付けてスタートダッシュモードになるとかなりの超スピードで加速する事が出来る。


867 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/21(火) 23:39:49 PINyP6s60
以上がSea Tripper の直前の話、タイトルは『追跡するJ/闇へ消える辻斬り』です

では後半も投下しますが、更に追加人物として姉畑支遁も加えます!!


868 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/21(火) 23:40:56 PINyP6s60
(…すまねぇ)
承太郎は刃衛と木曾の戦いの全てを見届けた。
その果てに…相打ちになってしまった事も
承太郎は何もすることが出来なかった事を強く悔やんだ…そしてそれと同時に彼女のような犠牲を決して増やさないようにする為に戦うと改めて誓った。

(そしてあの死体を作ったのはあの剣士で間違いないようだな)

戦いのさなか、あの剣士の刀の色が詳しく見れたわけではないが大雑把に見てあの死体の血の色と一致していたのをみた。
勿論元々赤い刀だったのかもしれないが、抜いた時に血が垂れているのも見逃さなかった。
よってアイツがあの死体を作った可能性は大きくなった、というより確定だと考えても良いだろう。
ともかくこれで犯人捜しはおしまいという訳だ。
しばらく渦潮にアイツは巻き込まれているが抜き出してきそうにない、つまり溺死していると推測出来るからな

さて、これからどうするべきか、そう考え地図を見たら…

(この建物…さっきまで地図にあったか?…待て…この建物の名前…!!DIOがいた館じゃねぇか!!)

空条承太郎はDIOを死闘の果てに撃破した後、奴がどのような場所にいたのか詳しく調べる必要があった。
その為に住所やDIOがいた館の正式名称を知る必要があった。
その時に知ったのだ。
DIOの館の本来の名前を、この地図にはその名前が記されている。
完全に一致している以上間違いなく自分が知っている館で間違いないだろう。
この事を受けて様々な事を考察しなければならない事が出てきたが…その前にやはり館には一刻も早くいかなければならないと考えた。
何故ならその館には何が置いてあるのかが分からないからだ。
もしかしたらDIOに縁があるものとして石仮面や天国への行き方が載った本等が置かれているかもしれない。
特に石仮面は危険だ。
被った人物が吸血鬼になる入った人がふと好奇心から被り吸血鬼が増えてしまうかもしれないだろう。
そうなる前に一刻も早く壊す必要があるだろう。
承太郎はこのバイクに先ほどつけようと考えたダッシュブーストユニットを付ける覚悟を決めた。
元々このバイクは凄まじいスピードで走行できていたが、これを付けるとさらに加速する事が出来る。
だがそれと同時に乗りこなすのも難しくなる。
DIO戦の時のバイク運転とはわけが違う、ハイリスクハイリターンだ。

(…大丈夫だ、俺の精神力を信じろ、俺は今まで星の白銀を使いこなして様々なスタンド使いを倒してきた。その時に俺のスタンドが暴走する事はなかった、だから俺はどんなスピードのバイクでも乗りこなせる!!)

承太郎は覚悟してハードボイルダーに乗り…電源をつけて運転し始めた!!


869 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/21(火) 23:41:32 PINyP6s60
さて、承太郎は運転しながらも幾つかの考察をし始めた。
1:何故急に地図に建物の場所が写ったのか、その写る為の仕組みがどのような物なのか?
2:何故海に沈んでいった女の首輪は爆発しなかったのか?
3:そして何故DIOの館をわざわざ本名で記してDIOの館と記さなかったのか?

まずは一つ目である、この急に地図に場所が浮かび上がる仕組みはどのような仕組みなんだろうか?

可能性として考えられるのは幾つかある、一つ目は元々その場所に建物はあったが、その場所に踏み入れた人物が現れた瞬間にその場所が地図に描かれるという考えだ。
何故そうしなければ浮き上がらないのは…恐らく誰かがその建物に入らないとこの殺し合いに意味がない物だから書かれていないのだろう。
だから殺し合いに意味があるものになった為に地図に写された…というのはどうだろうか?
他にもう一つ考えられるのは主催の連中がその地に急に参加者の世界と同じ建物を創造したって所だろう、この殺し合いのエリアは誰が作ったのか…恐らく主催の連中が作ったんだろう、ならばそれが急に作る事も可能である可能性は高いだろう。
だが殺し合いに主催が介入するとは思えねぇ(殺し合いが全く行われなくなった…等殺し合いそのものに支障が生じない場合を除いてな)恐らく殺し合いには影響がないように創造されているだろうな、誰にも創造をしたと気づかれないようにな
どのように創造したか…は恐らくそのようなアイテムを使っているんだろう、橋の一部を一瞬で消せるアイテムもあるんだ、逆に創造するアイテムもあってもおかしくない
まぁ場所に関してはこんな所だ、次は首輪の爆破についてだ
初めに見せしめが殺されたのを見た時、あの首輪の爆破力はなかなかだった。それこそ爆破されたら相手は誰も生き残れねぇだろうなと思えるくらい
恐らく逆らった相手に対して抑えるつもりの楔として大きな効果があるだろうな…だがここに気になる事がある、逆らうというが具体的にどんなのがある?
この首輪を破壊しようとする事、主催の所に殴り込みをかけた時、そして…このエリアから脱出しようとした時、だろうな
だがそれで気になる事がある、あの海に沈んでいった女が沈んでいく中しばらく時間が過ぎても…水柱が浮かぶことはなかった
何でだ?海からこの殺し合いに脱出される事はもっとも主催にとって望ましい事ではないはず、脱出ではなくても、海に隠れ続けながら殺し合いを逃れ続けるという芸当を出来る奴もいる可能性もあるんだぞ?
生きてるにしても死んでるにしても長時間海にいる事自体が主催にとっては好ましくないはずだが…
そう考えた時…一つの可能性が思い立った。

(もしかするとこの首輪は嵌められている人の生体反応を読み込んでいる…?だから死んだ為に首輪の機能が切れて爆破しなかった…?)

そう思い一旦急停止した後に童磨の首輪を取り出して…遠距離に置いた後石を投げてぶつけて衝撃を与える作業を三回連続して行ってみた、が…

(何も起きねぇ…生体反応を感知していないからか?)

何も起きなかった…

(となると…もし海にずっとい続けた場合はそれを呼吸数等の条件から察知して爆発して脱出を防ぐ…という感じか?この方法なら主催の連中が何もせずとも逆らった人を殺すことが出来る…やれやれだ、そう簡単に首輪に手を出せそうにないな…)

再びバイクを走らせ…考察も再開した。


870 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/21(火) 23:41:46 PINyP6s60
(そして三つ目…何でDIOの館の表記がわざわざDIOの館と表記せずに本当の名前で表記されているんだ?)

一番これを考えるのは難しい、仮にだ、絶対になる事はないがもし自分が主催側になった時にDIOの館を表記するのならば絶対にDIOの館と表記する。
何故ならそうすればDIOに関する人物が多く集まり…殺し合いが加速するだろうからだ。
更にDIOの家臣も集まりやすいだろう、そうする事でDIOの戦力が増えて殺し合いの犠牲者も増えるだろう。それを何故こうも分かりにくくするのか…?
承太郎はしばらく考え続けた…その結果、出た結論は

(もしかすると…後出しで人を集めるつもりか?)

今までの時間で恐らくDIOは様々な人物に接触しているはずだ。
まず間違いなく殺戮を振りまいているだろう。
その結果…接触した人はDIOに関する情報を求めるはずだ、特に殺されかけた相手はリベンジする為にDIOが来るであろうこの館を訪れるはずだ、そうして多くの人にDIOが接触した後に館を「DIOの館」と表記、その結果、多くの接触した人やDIOの部下が一斉に館に向かうだろう、その結果…大規模な殺し合いが起こるという訳だ…
勿論必ず殺し合いになるとは限らないが、後出しで名前を出したら間違いなく詳しく館の名前を把握していない可能性が高いDIOでもその場に向かうはずだ。そうなる以上殺し合いになるに違いないからな
という意図で…DIOの館の表記をわざわざ別名で表記した、と推測した。
勿論これが本当に正しいのかは分からない、が、一番納得出来る考えだと推測した。

以上が今までの考察すべき事を推測した結論である。
もう少し考えるべきことはあるかもしれないがこれ以上考えるのは…いよいよ間近になってきたDIOの館の様子を伺ったからにすることに決めた。

そして、DIOの館が何故地図に写ったのか、気になる人もいるだろう、その写った理由…それは単純である。


871 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/21(火) 23:43:05 PINyP6s60
(そして三つ目…何でDIOの館の表記がわざわざDIOの館と表記せずに本当の名前で表記されているんだ?)

一番これを考えるのは難しい、仮にだ、絶対になる事はないがもし自分が主催側になった時にDIOの館を表記するのならば絶対にDIOの館と表記する。
何故ならそうすればDIOに関する人物が多く集まり…殺し合いが加速するだろうからだ。
更にDIOの家臣も集まりやすいだろう、そうする事でDIOの戦力が増えて殺し合いの犠牲者も増えるだろう。それを何故こうも分かりにくくするのか…?
承太郎はしばらく考え続けた…その結果、出た結論は

(もしかすると…後出しで人を集めるつもりか?)

今までの時間で恐らくDIOは様々な人物に接触しているはずだ。
まず間違いなく殺戮を振りまいているだろう。
その結果…接触した人はDIOに関する情報を求めるはずだ、特に殺されかけた相手はリベンジする為にDIOが来るであろうこの館を訪れるはずだ、そうして多くの人にDIOが接触した後に館を「DIOの館」と表記、その結果、多くの接触した人やDIOの部下が一斉に館に向かうだろう、その結果…大規模な殺し合いが起こるという訳だ…
勿論必ず殺し合いになるとは限らないが、後出しで名前を出したら間違いなく詳しく館の名前を把握していない可能性が高いDIOでもその場に向かうはずだ。そうなる以上殺し合いになるに違いないからな
という意図で…DIOの館の表記をわざわざ別名で表記した、と推測した。
勿論これが本当に正しいのかは分からない、が、一番納得出来る考えだと推測した。

以上が今までの考察すべき事を推測した結論である。
もう少し考えるべきことはあるかもしれないがこれ以上考えるのは…いよいよ間近になってきたDIOの館の様子を伺ったからにすることに決めた。

そして、DIOの館が何故地図に写ったのか、気になる人もいるだろう、その写った理由…それは単純である。


872 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/21(火) 23:43:34 PINyP6s60
必要なものは 『わたしのスタンド』である
『ザ・ワールド』
我がスタンドの先にあるものこそが 人間がさらに先に進むべき道なのである

必要なものは 信頼できる友である
彼は欲望をコントロールできる人間でなくてはならない
権力欲や名誉欲 金欲・色欲のない人間で
彼は人の法よりも 神の法を尊ぶ人間でなくてはならない
いつかそのような者に このDIOが出会えるだろうか?
必要なものは 『極罪を犯した36名以上の魂』である
罪人の魂には 強い力(パワー)があるからである
必要なものは 『14の言葉』である
「らせん階段」 「カブト虫」 「廃墟の街」 「イチジクのタルト」 「カブト虫」
「ドロローサへの道」 「カブト虫」 「特異点」 「ジョット」 「天使(エンジェル)」
「紫陽花」 「カブト虫」 「特異点」 「秘密の皇帝」
わたし自身を忘れないように
この言葉をわたしのスタンドそのものに 傷として刻みつけておこう
必要なものは 『勇気』である
わたしはスタンドを一度捨て去る『勇気』を持たなければならない
朽ちていくわたしのスタンドは 36の罪人の魂を集めて吸収
そこから『新しいもの』を生み出すであろう
「生まれたもの」は目醒める
信頼できる友が発する 14の言葉に知性を示して…
『友』はわたしを信頼し わたしは『友』になる
最後に必要なものは 場所である
北緯28度24分 西経80度36分へ行き……
次の「新月」の時を待て……
それが『天国の時』であろう……

ジューダスが長時間考えた上で出た結論、それは

(…さっぱりわからない)

以上である。

(スタンドというのは今回俺が手に入れた物だろう、他には…やけにカブトムシの言葉の協調が激しい気がするが…それ以外14の言葉を考えてみてもスタンドという言葉がある為に俺の世界の物では絶対にないと確定している以上俺の世界の知識を元に考えても意味はないだろう事が読み取れる。そして、権力欲や名誉欲 金欲・色欲のない人間で、彼は人の法よりも 神の法を尊ぶ人間でなくてはならない…というがそういう人間って本当にいるのだろうか?基本的にどんな人間にも欲が欠ける事はありえない、正義感があるやつにも必ず誰かを愛する心があった…だがそういう人も修行僧等なら意外といるかもしれないが…この殺し合いにそういう人物が招かれたところで何もしない可能性の方が高い以上招かれていない可能性が極めて高い…『極罪を犯した36名以上の魂』に関しては筋が通るがな、この俺も罪人そのものだからな、そして罪人だけが多く集まった方が殺し合いも促進するだろう、が、これも断定するわけにはいかないな、やっぱり多くの人に接触する必要性が極めて高いな、そしてそれによって罪人ばかり集まっているのかも知る事が出来るだろう、が、総合してみるとそもそも天国がどういう物なのかも、どういう目的なのかも全く分からなかった、だから一旦後回しにすることにしよう、そして…一番気になるのはやはりこのDIOという名前だ、こいつの日記も見たが…なる程、邪悪と断定して間違いないようだ、参加者としてこの世界にいる以上対処しなければいけないだろう、他にも空条承太郎という敵対した人物もいたらしい、そいつに会って話も聞いてみたいところだ。ヴァニラ・アイスという狂信者の部下にも警戒しなくちゃな…そしてこういう邪悪にとっての天国…ろくでもないものであるのは確かだ、阻止するべきだな…そういえばこのスタンドで出来ること、結局分からなかったな…ん?)
その時、スタンドは…何と自分の意志で

『おマエが…オレのツカイてカ…ジューダス』
「え?喋った?」
しゃべり始めた。


「なる程、予想以上に能力が豊富だな…使いこなせる自信がない…」
『シラン…おマエがドうにかシロ…』

大分無愛想でしゃべり方もぎこちなくて聞き取りにくかったがどうにかスタンドの能力を把握できた…偶然か奇跡か分からないが自意識があるスタンドが手に入って良かったという所だ。
だがこの喋り方は他の人に会った時に怖がらせてしまう可能性があるな

「よし、お前はしばらく喋らないでくれ、喋ってほしい時は頼むから」
『ワカ…った…』
こうして黙ったスタンドを消した…

(このスタンドはCDを使うのか…そういえば肉体の人物はアイドルだったな…つまり、アイドル→音楽→CD…という解釈でこのスタンドになったのか?…薄すぎないか?繋がりが、それに俺との繋がりがないような…もしくは俺の魂に彼女も少なからず残っていてそれによってこのスタンドが?…考える必要があるがとりあえず今は良いか)



とりあえずこれ以上の熟考は後回しにして、DIOを倒するために屋敷を出る事にした時だった

玄関付近が騒がしくなってきたのは


873 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/21(火) 23:44:36 PINyP6s60
承太郎は現在、館の様子を外から探っている所である。本来は警戒しながらもすぐにDIOの館に入るはずだったのだが…
その時奇妙な事が起きた、館の近くにある森から出ていた炎が一瞬で消えていたのだ。
その時…足跡が砂浜に残っているのを見つけた。
その足跡はDIOがいる館へと繋がっていた。
つまり先客がいるという事だ。
それも入るのを躊躇わせたが、それより一瞬で消えた炎の謎を探る事を優先する事にしたのだ。
森のエリアをスタンドで潜んでいる人がいない事、つまり罠ではない事を確認、そしてその森の中へ歩いて行く事にした…誰か人がこの先にいる可能性がある事を示しているからだ。
都合がいいのか、その先には道が開けていた…











否、承太郎がただスタンドだけに頼るような男だったら50日間の旅の間に襲い掛かってくる様々なスタンド使いを倒せるはずがない。

ポルナレフから聞いていたのだ、アヴドゥルやイギーを殺したスタンド使い、ヴァニラ・アイスは匂いも視覚にも消えるスタンドの使い手であると、そして一瞬で炎を消す事もアイスのスタンドなら可能である事も

承太郎はその足跡の近くにある程度歩いた後にその続いている方向にめがけて砂を投げかけた…

その砂が一瞬で消えた瞬間に即座に動いた

「スタープラチナ・ザ・ワールド!!」

即座に時間を止めてその隙に別方向に回避、草原がある場所に移動した。
その闇から現れたのは、背中まで届く長い青髪のウェーブヘアを広がったアップ髪、頭には黄色のリボンを付けている八重歯の可愛らしい女の子、そして…

「承太郎…何故私の攻撃を避ける事が出来た!?貴様のスタンドでは今の攻撃は避けることなどできるはずがない!!」
「…テメェのどす黒い精神に似合わねぇ身体だな、ヴァニラ・アイス」

そんな容姿に似合わぬ邪悪の化身…、そしてアヴドゥルとイギーの仇であるヴァニラ・アイスであった。


874 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/21(火) 23:44:46 PINyP6s60
ヴァニラ・アイスは今、島の外周を回っている。
その理由はシンプル、敬愛するDIO様に合流に指示を聞く為である
だがDIO様がどこにいるかは今の所情報は全くない…

その為、アイスはかつてポルナレフを追い詰めてきた際に使った戦法を思い出し、島を渦巻き状に回りながら中央に近づいて、確実に近づくことにしたのだ。

勿論アイスもこのやり方に穴がある事を知っている。

このやり方ではもしかするとDIO様が自分が移動した場所へ後から来ることも十分にあり得る。

あの時とはエリアの広さが違うのだから、その為、アイスはもう一つの力である獣を召喚してそれに跨り全力で走らせる事でG-2へと素早く移動する事が出来た。

(ふむ…もう一つの力、姿を変えずとも獣を召喚とはなかなか優れた力だ…元の世界に戻った際にDIO様の為にこの力を使い役に立てないのは残念だ)

そう、アイスはバックを一回目に探った時には見つからなかったが…それだけでは妙に重さにギャップを感じたのだ。

その結果…もう一つのアイテムを見つけ、それも試してみたが…それもかなりの力を秘めていた(最初は動きにくくなるのではと考えていたが)。

これだけ多くの力を支給したことだけはボンドルドに礼をしてやってもいい(無論DIO様を殺し合いに巻き込んだ以上殺すのに例外はないが)

(…ん?)
ライオンは視覚ではなく、聴覚や嗅覚を使い狩りをし,最終局面で視覚を使うという、その為に聴覚が異常に発達しているのがライオンである。
その力を内包したプリキュアである今のアイスには砂浜を歩く何者かの音が聞こえていた…炎の燃えている音がうるさかった為にスタンドで延焼していた木の全てを飲み込んで消火した後に後ろに隠れて様子を見てみると

(あの腑抜けたような馬鹿面の男…あのスタンド…空条承太郎!?)

その見た男のスタンドは…DIOから教えられた通りのスタンド、星の白銀の姿を模しており…つまりそれはあの男の中身が空条承太郎である事の証明であった。
アイスはこの早い発見を喜んだ…承太郎の首はDIO様に合流する際の最高の手土産になるだろうと…
さて、こうなるとどうやって殺すかを考える必要がある。
星の白銀はシンプルなパワー型…だけに過ぎない、特に特殊な能力はないと聞いている、アイスはそれをDIOから聞いた時…心底見下した
(フン、体格だけはDIO様のスタンドに似通ってるだけの下位互換か…所詮DIO様に遠く及ばぬ癖に邪魔をしようとする愚かな下郎に相応しいスタンドだな)

そして今へ戻る…
なら取るべき手段は一つ、森の茂みの木を巻き込まない道をスタンド、クリームで通り、そのまま通ってきた承太郎を粉みじんにしてやる

だが結果は承太郎に回避されて現在に至る

「どうやって避けた…!!私のスタンドを…!!」
「さぁな、テメェに言う筋合いはねぇ」
「まぁいい…貴様はスタンドだけ、今の私にはスタンドだけじゃない力がある!!ここで貴様を殺しDIO様に捧げる!!」
「さっさと来やがれ、ヴァニラ・アイス!!アヴドゥルとイギーの仇…俺も討たせてもらうぜ!!」

今、因縁があるスタンド使いが激突する!!


875 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/21(火) 23:45:18 PINyP6s60
「ガアアアアアアアッ!!」
まずはアイスが咆哮をしながらインファイトを仕掛けてきた!!

キュアジェラートの強烈な咆哮は化け物さえも怯ませる、承太郎も一瞬だが怯んでしまい、気がついたら懐へもぐりこまれていた!!

(くっ!!)

慌てて自らの強靭な身体を利用し素手で受け止め…

ボキィ!!

(!?)

侮っていた、今のアイスはただの少女ではなくプリキュアなのだ、素手では受け止めてはいけなかった!!

(何てパワーだ…!!コイツ!!何か力を手に入れやがった!!スタンドでも、仮面ライダーでもない別の力を!!)

承太郎はスタンドで殴り飛ばして距離を置こうとしたが…

(何だ…手が冷たく…凍ってきてやがる!?コイツ!!氷を操る能力を手に入れやがったのか!?)

次々と凍っていく承太郎の手…!!慌てて一瞬で凍った手をスタンドに殴らせて壊して今度は足で蹴飛ばして距離…を…!



寒気がする、先ほどまで手が凍らされていたからではない、何かが背後にいる為に感じる寒気だ、承太郎はそう直感で感じた

ほんの一瞬…ほんの一瞬だけ何かが背後に触れた瞬間…!!

「スタープラチナ!!ザ・ワールド!!」

即時を止めた…!!

(スタンドと本人による連携か…!!もし気づくのが遅れていたら背中が削れてそのまま身体ごと…!!だがこれで俺の能力はバレるだろうな、こいつはDIOの側近、恐らく時を止める能力の事は把握しているはずだ…さて…)

「オラオラオラオラ…オラァ!!」

渾身のオラオララッシュ…いやラッシュとは言えないな、何度かぶん殴り、その後足である文字を書きながら森の中へ逃げたここなら森の状況でクリームがどこに来ているのかを読み取れるからだ、そして…

(時は動き出す)

時間停止を解除した

「うぐぬぁぁぁぁ!?」

身体に似合わぬ声を出しながら吹き飛んでいくアイス、砂浜へ突っ込んだ…

(時間停止にも…制限がかかってやがる、1秒しか止める事が出来そうにねぇ…!!)

時間停止にも制限がかけられている事を悟るが…問題はない、そもそも今までは特殊能力なしのまま頭脳などを生かし闘ってきた…だから時間停止が難しくなっても問題はない

「何だ…その能力…!!貴様のスタンドに特殊能力はなかったはずじゃなかったのか!?」
(あ…?知らねぇのか?…コイツ、時間停止を、ダービーが知ってる様子だったからより近い立場であるコイツなら知っていてもおかしくはないと考えたが)

一瞬知らなかったことに驚いたが…それも無理はないと考えた、DIOが信じるのは己のみ、どんな部下であろうと完全に信用はしない、その為に能力も明かさなかったと考える方が正しかったという訳だ、わざわざ説明する性格には思えないし、説明した所でじじいのパーミットパープルで白状させられる可能性を考えると部下に能力を説明する必要性はないしな…そうなるとダービーが能力を知っていたのは…恐らくDIOが何らかの理由で時間停止をしていたのを見て、ダービーはその様子から推測したという所か、頭が良いからな、あの男

その時、アイスは…急にバックを探り始めた
「テメェ…何するつもりだ?」
「お前の能力、未知数である以上…戦力はプリキュアだけじゃない方が良いと思ってな」

取り出した物は謎の銀色の扉が中央にあるベルト、そして黄色いリングを指にはめた…



彼の身体である立神あおいはプリキュアとしてキラキラルをうばう存在に対して仲間と一緒に全力で戦い倒してきた…だが実際にはキラキラルをうばう存在だけではない他にも様々なアクトも戦ってきた。
鴉天狗、クック、闇の鬼火、ミデン…だがその時は彼女達だけではない、プリンセスプリキュア、Hugっとプリキュア等他のプリキュア達と一緒だった。
その中で魔法使いプリキュアは一番縁があるプリキュアだったといえるだろう。
上記の四つの悪と戦うとき必ず一緒にいた。
そしてその中で多くの魔法を見てきた。彼女もまた魔法に縁があったと言えるだろう。

その縁に惹かれたのか、どうなのかは分からない、寧ろライオンの力にも惹かれているのかもしれないし、その二つが合わさったのか、手に入れた力は…

彼はあの言葉を、変身の言葉を知らない為に何も言わず…指輪をベルトにはめた

『Set!!Open!!L!I!O!N!!LION!!』

開かれたライオンのレリーフ、そして黄色い魔方陣がプリキュアである少女の身体を包み込む。そして現れた姿は黄色い鬣と装甲、緑色の目をしており、その容姿は紛れもない、古の魔法使い、仮面ライダービーストであった。


876 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/21(火) 23:46:12 PINyP6s60
「やれやれだ…オメェ戦力が増えたって言ったよな…てことは…!!」

そう、プリキュアに変身したまま仮面ライダーにも変身した存在…さらにスタンドも健在である。

(コイツは少し…いや、かなりヘビーだぜ…!!)

ビーストは専用武器であるダイスサーベルを取り出し…斬りかかってきた!!
承太郎は後ろへ回避!!スタンドの白刃取りで防ぐがその瞬間剣を持っていないもう片方の手で殴り掛かってきた!!

(プリキュア+仮面ライダーの力じゃ恐らく殴られたら即死だ、足で蹴りとば…駄目だ!!もし受け止められて凍らされたら手足が動かせずに暗黒空間に飛ばされる!!となると…クソッ!!何度も使うと見破られるかもしれねぇが!!)

「スタープラチナ・ザ・ワールド!!」

時を止めて殴り飛ばす!!そして時は動き出すが…!!
だがその瞬間、聞こえてくる…死神(スタンド)の音が!!
ガオン!!
木の合間へ飛び込んでジャンプし緊急回避!!
だが左足の腿の部分がほんの少し削れてしまった…!!

(くっ…!!厄介すぎる!!過剰戦力にも程があるんじゃねぇか!?)

こうなると戦略もしっかり考えなければいけない…

(また使うか、ジョースター家に伝わる戦略…)

ジョースター家に伝わる戦略、それは…

(逃げる!!)

承太郎はネズミの速さの外套を纏い、逃げ始めた!!

「逃げられると思っているのかぁぁぁぁ!!」

ビーストはスタンドを身にまとい突撃する。この姿をアイスは完璧だと考えている、何故なら自らの欠点を克服しているからだ
以前、ポルナレフと戦った時、自分のスタンド、クリームで相手を飲み込もうとした時、どうしても相手の様子を確認する為に顔をさらけ出さなければいけなかった、その隙に剣を突っ込まれ、吸血鬼でなければ死ぬダメージを食らわせられたことがあった
だがこの仮面をかぶった状態ならばある程度ダメージをくらっても持ちこたえられる。故にダメージに耐えながら相手を飲み込むことも可能にしたのだ。
だが承太郎も何故か素早い、身体能力がかなり上昇しているのに追いつかない、何か特殊なアイテムを使っているのだろう、ならばこちらもスピードを速くするのみ、こちらも新たな能力を使うのみ
ビーストはポケットに入れた変身用の指輪ではないもう一つの赤い指輪を使う事にした

『バッファ!ゴー!!バ-バ-バ-バ-バ-バッファ!!』

纏うは赤い牛のマント、バッファマントである。突進力の増加によるスピードの増加を狙う。
そうしてあともう少しで飲み込める…と考えた瞬間

気がついたら離れていた。
どういう事かと普通の人なら考えるかもしれないがアイスはもう何度も見た為に能力はもう察していた。

(恐らく奴のスタンドの能力は時間停止、時を止めて自由にその間に動ける能力…だがそうなると厄介だ、このまま追いかけっこをしていると追いつけそうにない…つまり何れ逃げられる可能性が高い…ならば)

ビーストはスタンドを解放し分離させ、承太郎の先の方へ飛ばし、先へ行くのを止めた…

「背後を絶ったつもりか?ヴァニラ・アイス!!」
「確実にお前を殺す為にな」

アイスは別の指輪、緑の指輪を使う

『カメレオン!ゴー!カ-カ-カ-カ-カメレオ!!』

カメレオンのマントを身に纏い透明化!!と同時にスタンドも再び暗黒空間に身を隠す…
これで透明な敵、それも二人を相手にしなければいけなくなったが…承太郎は動じない
殺気を感じれるから…という理由ではない、対抗する策を思いついていたからだ。


877 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/21(火) 23:46:40 PINyP6s60
ビシィィィィィィ!!

急速なスピードで息を吸い上げる!!かつて正義を倒す為に息を吸い上げた時のように!!
勿論今回は相手のスタンドを吸う事が出来る訳がない、だが…その息を生かして!!

ビュオオオオオオオ!!

吐き出して周囲のエリア全体に風を吹かせる!!

「くっ…!!」

ほんの少しの衝撃だがアイスの透明化が解除!!
承太郎はその時のカメレオンマントの出した舌の長さから恐らく長い舌を生かして拘束しようとしたと推測し、スタンドがどこまで近づいているのかを察知し、スタンドの突進を再び避けた!!

「やはり小細工は通じないか、ならば」

『ランドドラゴン!ダン・デン・ドン・ズ・ド・ゴーン!ダン・デン・ド・ゴーン!』

ウィザードスタイルへと変化、強靭なパワーとドラゴヘルクローの爪で襲い掛かる!!

(心臓貫かれたら死ぬな…コイツは!!)

かとかいってラッシュをすることも出来ない、何故ならある程度相手は鎧で守られているからだ、そして持ちこたえられている間にクリームに飲み込まれて死ぬ。また、時間停止して攻撃してもいいが、連続で時間を止める事が出来ない、つまりクリームに飲み込まれそうになった時の回避手段がなくなる…つまり結局逃げるしかない
…いいや!!一つだけ不意をつけた攻撃手段がある!!それは!!

「流星指刺!!」

大振りな攻撃の隙をついて一撃!!鎧を貫いて利き手がある右肩にダメージを負わせた!!
だが効き手ではない左手による刺突が承太郎の右肩を大きく刺す!!

「ぐああっ!!」

利き手じゃない為に深くは刺さらなかった上、即座に蹴飛ばして距離をとったためがそれでもダメージを受けた
そしてこの不意打ちは何度も通じない…結局逃げるしかない

(チッ、氷を爪全体的に纏わせることは出来なかったか…まだ調整が上手くいかないか)

アイスが時間停止に対する対抗策として考えたのは動きを封じる事だった。動きを封じれば時間停止をしようと意味がなくなるからだ。その為にはこの氷の力は相応しいと言えるだろう。
そしてその為の方法として氷を直接纏わせて攻撃する事が一番だと考えたが…そう簡単に当たらせてくれないらしい
ならこっちは攻撃が当たらない距離から攻撃をし続けるべきだな
そう考えたアイスは新たな指輪を身に着けて…ベルトにはめた

『ファルコ!ゴー!ファファファファルコ!』

ファルコマントを身に纏い、空を飛翔!!そして空から氷の粒を無数に飛ばしてくる!!その姿はDIOの忠臣のスタンド使い、ペットショップを思わせるだろう

(くっ!!)

承太郎は本当に避けるしかすべがない、何故なら本当なら周りの木を流星指刺で切り落として投げる事による攻撃もしたいが、もうアイスのスタンドが周辺の木を暗黒空間にバラまいているからだ。その為に逃げるしかないが…そこへスタンドも回り込んでくる!!
それもよけなければならない、が…正直体力がもう限界に来ている、さっきから生身の肉体で逃げ続けている為だ…

(そろそろ離脱した方が良いな…アイスが近くにはいない今がチャンスだな!!)

時間停止を発動!!回り込んで突破…が!!
ピキピキッ!!

「!?」

時間停止を解除した瞬間に足を固められた!!

(お前の歩ける幅、そしてスピードも何度も繰り返し逃げているのを見てきたからな…どこに時間停止が終わった後にいるのかぐらい推測は出来た)

そしてそのまま背中を、腕を、脚を固めさせられた…

「くっ…この姿は…」

「イエスキリストは罪を犯してはりつけの刑で死んだ罪人だ…DIO様に歯向かうという罪をも犯した貴様に相応しい死に方だろう?」

降りてきたアイスが今の承太郎を嘲笑う。まさに承太郎は十字架に磔にされているかのように氷に捕らわれていた。

『ハイパー!ゴー!ハィハィ、ハィ、ハイパー!!』

ビーストの最強フォーム、ビーストハイパーに変身し、ミラージュマグナムを構え、リングを銃に嵌める。
そして後ろからはスタンドが承太郎を飲み込もうとして構えている。
死ぬほどの苦痛を与えて苦しませながら殺すつもりだ。


878 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/21(火) 23:47:40 PINyP6s60
「死ね、空条承太郎、地獄のような痛みに苦しみ、DIO様に逆らった事を後悔しながらなぁ!!」

今にも最大威力の必殺技をくらわせて殺す気だ…その時、承太郎は口を開いた


「待ちな、ヴァニラ・アイス…お前、この殺し合いの主催に憤りを感じていないか?DIOを巻き込んでいるんだぜ?」
「何だ承太郎?命乞いか?まさかDIO様のいうジョースターの血族がそのような事を言うとはな」
「そんなわけがねぇだろ…俺はこの殺し合いにおける考察を死ぬ前に伝えておきたいと考えただけだ、少なくとも主催の連中が許せねぇというのはお前も同じようだしな」
「ほう…いいだろう、少しでも情報が欲しいのは事実だしな、だが信用するかどうかはこの私が判断する!!…が、その前に」

ピキピキピキッ!!

「私がDIO様の身体を守る為に常に気を使っていた太陽の光の事を見逃すと思っていたのか?朝日が当たるよう周りの木々が消えるように調整して逃げていたことは褒めてやる、そして会話で時間稼ぎをして溶け切った時に逃げるつもりだったんだろうが、それを許すつもりはない、念入りに足と手は凍らさせてもらう」
「成程な…やれやれ、予想以上に抜け目ない奴…降参だ、だが情報だけでも聞いてけ、まず一つ、知ってるか?この殺し合いにはある陰謀が隠されている可能性がある事を」
「陰謀?どういう事だ?」
「俺は旅の途中にスタンドについて調べてみた時、『天国への行く方法』というスタンドが必要になる謎の本について調べたんだがな…それに書かれていた条件の一つに極罪を犯した36名以上の魂が必要と書かれていた」
「それがどうした?」
「分からねぇか?今の殺し合いには魂の存在が深く関わっている事を、俺達は魂をいじくられて互い別の身体にいるんだぜ?本来の身体じゃないからこそ魂が輝くと考えてな」
「…それが主催を殺す事にどのように繋がるというのだ?」
「ああ、つまり主催の中にはスタンド使いがいる可能性があるという訳だ、今ふと考えたんだが、もしかすると俺達のスタンドも他の参加者に見えるようになっているかもな」
「成程な、他に情報はあるのか?」
「あるぜ、もう一つ…お前とお前の肉体に何か共通している事、何かあるか?」
「…そういえばこの肉体の人物がプリキュアに変身する為のエネルギーがクリームエネルギーで、私のスタンドはクリーム…確かに共通点はあるな」
「俺とこの肉体の燃堂と不良面…だけじゃねぇ、あまり認めたくないが声が似ている気がする、というように恐らく共通点が精神と肉体にはある可能性が高い」
「成程な、そう考えるとDIO様が現在どのような人物の中にいるのかは考える事が出来るという訳か」
(そう考えるとDIO様にはそれにふさわしい身体であってくれているはずだ…たとえそうであろうと許す気は毛頭ないがな)
「あとこれが最後の話だ…コイツをくれてやる」
「これは…首輪か」
「ああ、コイツはたまたま死んで残っていた死体から回収した物でな、コイツを分解すればきっとお前達の首輪を解析できるはずだ」
「貴様のスタンドでは分析できなかったのか?」
「生憎いくら分析できても知識が詳しくなくてな、ただ、いくつか分かった事がある、一つは今の首輪からスタンドを使えば聞こえてくるかすかな音がこの首輪からは全く聞こえない、という事だ、恐らく生体反応によって電源のオンオフを切り替えているな、もう一つはこの首輪はとても頑丈であるという事、流星指刺で斬ろうとしたが切り跡を残す事しかできなかった…つまり分析は簡単に出来ないという訳だ」
(そうか…となると私のスタンドも器用なことは出来ない、ほんの一部だけ飲み込める事は難しい以上…やはりDIO様の最強のスタンドでどうにかしてもらうしかないな)
「これで話は以上だ…」
「そうか…情報を提供したことだけは感謝してやる、改めて死ね、空条承太郎」
『ハイパー! 』

指輪を銃に嵌めて魔力を貯め始める、それが貯めきった時、最大威力の銃撃を生身の承太郎に遠慮なく解き放つつもりだ

氷漬けにされて動けない承太郎は何もできないまま無情にもチャージ時間は過ぎ去っていき…ついに貯まりきって…

『マグナムストライク!』

解き放たれた…それと同時にスタンドが承太郎を飲み込もうと突撃した

「やれやれだ、情報提供をしてやった奴に対する情けはねぇって事か」

そして今の言葉が、承太郎の最期の言葉になった…













「分かりきっていたけどな」
…ありのまま起こった事を話そう、何も動けないまま銃撃にさらされていたはずの承太郎は














いつの間にか目の前から姿を消していた


879 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/21(火) 23:48:31 PINyP6s60
承太郎はアイスが仮面ライダーに変身したのを見て、奴を倒す為には完全に油断させなければいけないと考えていた。
何故なら防御面から考えるのならばスタンドがアイスを守るし、更にプリキュアや仮面ライダーの姿が防御のために機能する。
その為に少なくともスタンドの防御だけは無くさなければいけないと考えたのだ。
そう、だから変身しなかったのだ、もし変身した場合、アイスはスタンドにこもりながら攻撃してくる方針に切り替えていただろうから
そうなると勿論逃げ切れるがそれでは倒せない、だからこらえるしかなかったのだ、生身の肉体で
承太郎が話で時間を稼いでいたのは全体的に溶ければ逃げる事が出来るからではない、少なくとも腰の氷だけが解ければ十分だったからだ。
アイツが飛んでくるのを待っていたからだ。
そのアイツはアイスが銃撃を発射し、一瞬光で目を瞑った時に大分薄くなっていた腰の氷を破壊し…ベルトを巻き付けて、自らベルトに装填した。
その瞬間承太郎は時を止めて…たまたま読んだことがあった小説のタイトルと同じ言葉を言った

「変身」

『HENSHIN』

その姿は銀色の分厚い鎧に纏われていく、生身の肉体が変化した影響で氷と生身が分断されていき、押しのけられた氷がひび割れていく。
それでもまだ氷の堅牢は承太郎を縛るが…完全に解き放つ手を承太郎は知っていた。
凍らされていながらも力強く腕を動かして、その角を逆方向に動かせた

『CAST OFF』

その瞬間、完全に氷を重い鎧と共に解き放つ、そしてアイスの背後に回ると同時に時間停止が解けた


「何だと…!?」

アイスは意味が分からなかった、完全に行動を封じていたはずの承太郎が消えていたのだ。
もちろん攻撃によって肉体がバラバラになった可能性があるが、それは血が飛び散っていない事から否だと分かる。
スタンドが飲み込んだからいないという訳ではない、まず銃撃で致命傷を負わせてから飲み込むつもりだったからだ。
アイスはどういうことか分からず呆然としていたが…後ろに鋭い気配を感じ、ふと振り向いてみた
その目に映ったのは、水色の目、スマートな体躯、そして太陽の輝きにより赤く輝いた鎧、それはまるで太陽の加護を受けているようにアイスには見えた。
そう、それはDIOにとって忌まわしき太陽の神と言われ、天の道を往き、総てを司る承太郎によく似た男が変身していた、マスクドライダー、

『CHANGE BEETLE』

またの名を、仮面ライダー…カブト


『クロックアップ』
即座に時間流を歪めると同時に呆然としていたアイスをカブトクナイガン、クナイモードで何度も切り裂く…

『1、2、3』

更にスイッチを順に押していくと同時に角を中間の位置に戻す、そして

「ライダー…キック」

『RIDER KICK』

エネルギーをためた回し蹴りがアイスの胸を穿つ。
仮面ライダーカブトとしてはここで終わらせるだろうが承太郎は違う。
吹っ飛んでいこうとするアイスに対し…最強のラッシュを喰らわせる!!

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァァァ!!」

そしてクロックアップは解除され、ビーストハイパーは飛んでいく、自らはなった銃撃へと
それにぶつかり…

「ぐああああああああああああああ!!」

盛大に大爆発を起こし…
先程までの火災、スタンドクリームによる飲み込み、そして今の爆発によって…完全にG-4の森林は全て何もかも消えてただの原っぱになった…

「やれやれだぜ」
承太郎は変身解除し…倒れている女の子を拾い上げた
(…良かった、何とか生きているみたいだな)
身体が生きている事に安堵し…アイスの全てのアイテムを回収した
よくこんな爆発の中一切燃えずにいられるなと考えながら…肉体のプロフィールを確認した
(やっぱりな…俺の勘は当たっていたようだ)
そう、承太郎は最初にプリキュアの容姿を見た時、身体の少女は姿に似合ったいい子である事を直感で読み取れたのだ、だから最初の時間停止の時、首をクナイガンで切り裂くという考えを持たなかったのだ。
そしてその直感は当たっていた、彼女の身体、立神あおいは仲間と共に人々の思いを守る為に勇敢に戦っていたが普段は荒々しいが優しい女の子だったのだ。

(楽しいんだろうな?テメェ等は?白く輝くキャンパスをどす黒く、赤く染める事がなぁ…!!)

承太郎は激怒している…!!正義を邪悪で汚して楽しんでいる奴等に対して…!!
とりあえずアイテムは全て回収し、戦力は奪えた…だがスタンドだけは奪えない、そしてそれを打ち消せるアイテムも持っていない

(どうするべきかな…コイツを)
このままでは目が覚めた瞬間、また敵になるだろう
どうするべきか…すると、ある少女が声をかけてきた、それは…


880 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/21(火) 23:50:09 PINyP6s60
「大丈夫か?アンタの身体?」
「…テメェか」

先程の戦いのさなか、二階の窓から様子を見た男、ジューダスであった。
ジューダスは玄関付近が騒がしくなったと同時に二階から様子を見たのだ。
その時に背後霊を出しながら戦っている様子が見えた。
さっき自分の身体に宿った物と同じである。つまり二人はスタンド使いである事は把握できた。そしてその戦いのさなか、青い髪の少女の戦いの様子を日記に書かれている様子を比較してみた結果、アイスが中に入っていて、それと対決している男が空条承太郎である事はある程度推測出来た。

ならジューダスは何故承太郎の援護をしなかったのか、理由は簡単である。
承太郎もまたジューダスに気が付いたのだ、だがもし援助されると作戦が無意味になる可能性を考え、地面に足で来るなと書いておいたのだ
正直賭けであった。もし相手が殺し合いに乗るような人物だった場合、無視する可能性が高いからだ、だが…

「テメェはあの文字を読んで理解してくれたという事は…殺し合いにはのっていないと考えていいんだな?」
「ああ、アンタが悪を倒す為に戦ってきたのも知ってる、空条承太郎…後すまない、僕が名乗るのを遅れていた、僕はジューダス、それともリオン・マグナスかな?」
(二つ名前の候補がある事はどういうことなのかは後で聞くとして…俺の名前まで…何で知っていやがる?…アイツはDIOの館から出てきた…まさか)
「お前…もしかしてDIOの日記を読んだか?」
「正解だ、その言い方だとお前も日記について知ってたようだな」
「ああ、この世界に来る前に読んだことがあってな…そこにはヴァニラ・アイスについての事も書かれていただろう?」
「ああ、この少女の中にいる奴だろ?コイツをどうにかしたいと考えていないか?」
「…オメェにどうにか出来るのか?」
「まずは…スタンドを取り除いた方が良いよな?」
ジューダスの背後から現れたのはスタンド、ホワイトスネイクだった
「何だと…!?お前…スタンド使いだったのか?」
「まぁな、さっきスタンド使いになったばっかりだけど」
「なった…?そういえばスタンド使いになる為の方法について考えたことがなかったな」
「それになる為のアイテムも館にはあったぞ、詳しくは館で説明するが…その前に」

ジューダスはアイスの額に手を当てて…中からDISCを引っ張り上げた、それにはアイスのスタンドが書かれていた。


881 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/21(火) 23:50:34 PINyP6s60
「これでこの男はもうスタンドを使えないはずだ、そう僕のスタンドが教えてくれた」
「名前は何て言うんだ?」
「ホワイトスネイクというらしい」
「ホワイトスネイク?タロットにもエジプト9栄神にも当てはまらねぇな、まさかグヌム神やトト神がそれにあたるのか?」
「いや、その二つとも違うと思う、日記を見る限り僕のスタンドと同じものを使う人はいなかったからな、とにかく、そういう話も含めて館でしよう、もう一つ処理した後に」
「もう一つ?」
「ああ、僕の所持品の一つ、愛染香という物があって、何でも使われた相手は強制的に見た相手に対して惚れてしまうらしい、それをコイツに使って惚れさせといた方が良いと思うんだが」
「成程な…で、誰に惚れさせるんだ?コイツを」
「いやアンタしかいないだろう、僕の今の身体を見てくれ、女性だぞ?」
「いやそういうが俺の面を見ろ、惚れられるような顔していると思うか?それに俺とこいつは因縁がある。もしかすると俺の事を好きになっているうちにふとDIOへの忠誠心が燻った時に忠誠心が愛を上回るかもしれねぇ…同性だろうと問題はないはずだ、同性愛って言葉もどっかで聞いたことあるしな」
「どこで聞いたんだ?」
「…忘れた(アレッシー倒した後にそこに住んでいた人からじじいとアヴドゥルがどうなっていたのかを聞かされた…とは言えねぇよな)」
「まぁいいか、じゃあ僕に惚れさせてくれ(何で苦虫を噛み潰したような顔しているんだ?)もし効かなかったら予備の二個も使おう」

承太郎は一瞬だけ強制的に頭を揺らせて目を覚めさせて愛染香の匂いを嗅がせながらジューダスの事を見せて、それと同時に即腹パンで再び気絶させる。
アイスの意識があったかどうかなんて曖昧になる程の時間で行われたがジューダスの事だけは愛染香を吸いながら目に焼き付けた。
そして愛染香をアイスの鼻に空になったバックの紐で括りつけて常に匂いを嗅がせることにしたと同時にスタンドを出して手で鼻栓をした…

「アンタもスタンドで鼻栓しておけ、ジューダス、自分も嗅いで惚れたらシャレにならねぇぞ」
「分かった…それより今からどうする—」
「…ぐううううううっ!!」
「承太郎!?」
「くっ…すまねぇがどこか治療出来る所に連れてってくれねぇか…?長時間氷に閉じ込められたことによる凍傷や更に打撃や爪の刺突によるダメージ、アイスの霊波紋のダメージも0ではないからな…早く治さなくちゃ今後万全に戦えねぇ…」
「だよな…僕が加勢していたらきっと軽傷ですませる事が出来たはずだったんだけど…分かった、じゃあまず館に向かって僕のバックを取ってから地図に載っている病院へ向かおう、表にあったバイクは僕が運転する」
「ありがとな…」
「肩を貸そうか?」
「大丈夫だ、俺はコイツを運ばなくちゃいけねぇからな…」
「分かった」

…承太郎がジューダスを信用した理由は単純明快、こんなにボロボロな自分を殺そうとしないからである。足文字の指示も聞いてくれたことも理由である。

こうして玄関へ向かっていった時である。二人は出くわしたのだった



「あ、あの…お二人はここで何をしていたんですか?」
妙に股間の部分が濡れている可愛らしいが怪しい雰囲気を纏う天使に


882 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/21(火) 23:51:45 PINyP6s60
時は遡る
姉畑はこれからどこへ向かうべきか、考えて…とりあえず近くの全く知らない館に向かう事を決めた。
正直性欲は全く衰えていないし、身体の傷も青いポーションで回復している。
だが全く疲れていないわけではない、その為に館で軽く休憩する事にしたのである。


「ぐああああああああああああああ!!」
「!?」

その時大きな悲鳴と同時に何かが爆発した音が聞こえたのであった
姉畑はそれに驚いたと同時に…何か戦いが行われている事を察し、一旦館へ向かう動きを止めて音を聞いていたが…その後、何も戦闘音が聞こえなかったために館へ向かう足を動かして…

偶然だが、鉢合わせする事になった

そして二人は同時に出会った天使をみて…感じたのは

((コイツ…何故かヤバい気がする…))

本能が告げていた、コイツは人殺しをしているような殺気は感じない、だが、それに似た何かヤバい奴なんじゃないかという雰囲気を感じざる終えなかった。何故感じるのかは分からないがそれでも感じずにはいられないのだ

黄金の精神を秘めた旅人、蘇ったかつての「裏切り者」、そして戦力も何もかも奪われた惚れ薬を吸わされ続けている狂信者、そして動物に対する異常性愛を抱えている変態
この四人が一堂に会する事になったが果たして何が起こるのだろうか、その前に一言、承太郎はまず言った

「…テメェが誰かは知らねぇが、まずは鼻栓しろ、話はそれからだ」


883 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/21(火) 23:54:20 PINyP6s60
【G-4  DIOの館の前/早朝】

【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】
[身体]:燃堂力@斉木楠雄のΨ難
[状態]:全身凍傷、右肩に大きく刺された痕、右手、左足の腿が少し削れている、肉体の重度の疲れと痛み
[装備]:ネズミの速さの外套(クローク・オブ・ラットスピード)@オーバーロード
[道具]:基本支給品×2、ハードボイルダー@仮面ライダーW、童磨の首輪、仮面ライダーカブト変身セット@仮面ライダーカブト、仮面ライダービースト変身セット@仮面ライダーウィザード、、スイーツパクト&変身アニマルスイーツ(ライオンアイス)@キラキラ☆プリキュアアラモード
[思考・状況]基本方針:主催を打倒する
1:…とりあえずコイツからも情報を聞こう、ヤバい奴な予感しかしねぇが…
2:ジューダスは今の所、信用できる、一緒に行動しても大丈夫だろう、他に話さなくちゃいけない事は色々あるが
3:主催と戦うために首輪を外したい。その為にこの指輪を上手く壊さなくちゃいけないな
4:立神あおいの為にアイスを今は守らなくちゃいけねぇ…!!どうにか精神を切り離せねぇかな
5:自分の体の参加者がいた場合、殺し合いに乗っていたら止める。
6:DIOは今度こそぶちのめす…が、今は休憩を優先した方が良いな…!!
7:天国……まさかな。ジューダスとも相談してみるか
[備考]
※第三部終了直後から参戦です。
※スタンドはスタンド能力者以外にも視認可能です。
※ジョースターの波長に対して反応できません。
※ボンドルドが天国へ行く方法を試してるのではと推測してます。

【ネズミの速さの外套(クローク・オブ・ラットスピード)@オーバーロード】
承太郎に支給。ラキュースが装備する鼠色の外套のマジックアイテム。
移動速度や敏捷性、回避力を上昇させる。

【仮面ライダーカブト変身セット@仮面ライダーカブト】
童磨に支給。
仮面ライダーカブトに変身する為に使うアイテム。
カブトゼクターは本編終了後の世界から連れてこられた。
銃や斧、クナイに変形出来るカブトクナイガンも装備している。クロックアップはサゾードと同じく持続時間が通常より短くなっています。
また再使用には数分の時間を置く必要があります

【仮面ライダービースト変身セット@仮面ライダーウィザード】
ヴァニラ・アイスに支給、仮面ライダービーストに変身する為に使うアイテム。
銀色の扉を模したデザインのビーストドライバーにビーストリングを嵌めて変身、魔法を発動する際にはドライバーの両サイドの穴にそれぞれ対応したリングをはめ込んで発動する。
ファルコ、カメレオン、ドルフィン、バッファ、ウィザード、ハイパー、全てのマントの装備&フォームになれる仕様になっている。
それになる為のファルコ、カメレオン、ドルフィン、バッファ、ランドドラゴン、ハイパー、全てのリングも付いている、ダイスサーベルやミラージュマグナムもセットである。
今回のロワではビーストキマイラの意志はないようであるがもしかすると?そして重要なのはハルトマンのウィザードドライバーと違い、今ロワでは主催の手により常に装着型であるように改良されており、ドライバーオンウィザードリングは必要がない。

【スイーツパクト&変身アニマルスイーツ@キラキラ☆プリキュアアラモード】
「キラキラ☆プリキュアアラモード」におけるプリキュアへの変身アイテム。
コンパクト型のアイテムであり、中に変身アニマルスイーツをセットして変身する。
ライオンアイスの場合はキュアジェラートとなる。
中にあるボウルをかき混ぜることでクリームエネルギーという攻撃にも使えるエネルギーを作ることも可能。

【ヴァニラ・アイス@ジョジョの奇妙な冒険】
[身体]:立神あおい@キラキラ☆プリキュアアラモード
[状態]:肉体に中度のダメージ、気絶
[装備]:愛染香@銀魂
[道具]:なし
[思考・状況]
基本方針:DIO様以外の参加者を殺す?
1:気絶中
[備考]
死亡後から参戦です。
現在愛染香を大量に吸収中です。もしかしたらジューダスの事を大好きになっているかもしれません。
エリア状況


884 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/21(火) 23:54:33 PINyP6s60

【姉畑支遁@ゴールデンカムイ】
[身体]:クリムヴェール@異種族レビュアーズ
[状態]:疲労(中)、未知の動物の存在への興奮、二発射精したがまだ余裕
[装備]:ドリルクラッシャー@仮面ライダービルド、逸れる指輪(ディフレクション・リング)@オーバーロード
[道具]:基本支給品×2(我妻善逸の分を含む)、青いポーション×2@オーバーロード、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:色んな生き物と交わってみたい
1:鼻栓?どういう事です?
2:とりあえずこの二人と色々情報交換してみましょう、休憩しながら、爆発についても知れるでしょうし
3:ピカチュウや巨大なトビウオと交わりたい。他の生き物も探してみる。
4:喋るカエルは次に出会ったら…
5:何故あの少女は私の事を知っていたのでしょう?
6:人殺しはやりたくないんですが…
[備考]
網走監獄を脱獄後、谷垣源次郎一行と出会うよりも前から参戦です。
ピカチュウのプロフィールを確認しました。

【ジューダス@テイルズオブデスティニー2】
[身体]:神崎蘭子@アイドルマスター シンデレラガールズ
[状態]:健康
[装備]:エターナルソード@テイルズオブファンタジア、ホワイトスネイク@ジョジョの奇妙な冒険、ストーンオーシャン
[道具]:基本支給品、藤の花の薬@鬼滅の刃、愛染香@銀魂×2、弓と矢@ジョジョの奇妙な冒険、ダイヤモンドは砕けない
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない
1:自分の名前を知る意味でも、リオン・マグナスかジューダスを見つけたい
2:今は承太郎と一緒に行動したいが…コイツはどうしようか…すごく信用できない…
3:もしもリオン・マグナスが過去の自分ならば歴史改変を阻止するために守る
4:DIOの連中はかなり厄介な脅威だな…部下を一人早く対処出来て良かった
5:本当は色々と話さなくちゃいけないがその前にまず病院だな
6:できれば短剣も欲しい、あのクナイガン譲ってくれないかな?
[備考]
参戦時期は旅を終えて消えた後
名簿上の自分の名前がリオン・マグナスとジューダスのどちらか分かっていません

【愛染香@銀魂】
強力な惚れ薬で、匂いを嗅いだ時に目の前にいる相手を好きになる
【藤の花の薬@鬼滅の刃】
鬼滅の刃202話で登場した薬、鬼化した者を元の人に戻す効果がある。
【聖なる弓矢@ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない】
宇宙から飛来した隕石からもたらされたウィルスに染まった岩石から作られた矢に弓を付加した物、矢じりで体に傷をつけられ、死亡しなかった者にはスタンドが発現しスタンド使いになれる。素養がなければ傷の大小に関わらず死亡したり、発現したスタンドを制御しきれずに死亡してしまう。この弓矢は虹村形兆が持っていた弓矢である。

【G-2〜G-4の森のエリア】
もうほとんど荒地になりました、切り株は少しは残っている可能性はあります。


885 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/22(水) 00:01:25 erztnJXc0
タイトルは『交わる二つのJ/天国に向かう条件』

です、天国に向かう条件という部分は偶然にも原作のストーンオーシャンで天国に行く時に必要だったものであるスタンド、ホワイトスネイクとジョースターの血統が近くに揃ったことがタイトルの由来です。

精一杯つじつまが合うように調整しました!!特に破綻していなければ採用してくださると嬉しいです


886 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/22(水) 00:32:06 erztnJXc0
追記、ジューダスの一人称は僕であってますよ?

闇の炎に抱かれて消えろ!(やったぁ!スッキリですね♪)

を見てください


887 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/22(水) 00:46:07 erztnJXc0
ツイッターでジューダスの話し方に関して違和感があるという方がいたので一応追記しておきました


888 : ◆OmtW54r7Tc :2021/09/22(水) 01:47:27 NisFapDA0
おそらくその指摘をしたのは僕のことでしょうが、一人称については、前半が俺になってたのでそこに関しての話です
一人称以外にも、他人の呼び方が基本お前や貴様のジューダスがアンタと承太郎を呼んでることや、時々カイルっぽい軽い口調になってるとこが気になりましたが…
アンタ以外の口調の違和感については無視しようと思います
キャラの喋り方は、人によって印象が違うものですし、完璧にコピペしろというのも難しいですし、許容範囲ということで気にしないことにしました

それと予約期限についてです
予約期限7日を、もしかして日付で数えているのでしょうか
予約期限7日というのは、24×7=168時間のことです
つまり、2021/09/14(火) 00:19:57から168時間後の2021/09/21(火) 00:19:57ということになります
はっきりそういう明言もなかったことですし、今回は仕方ないかもしれませんが、次回から気を付けてくださいね


889 : 名無しさん :2021/09/22(水) 08:11:04 JDSxW5wM0
企画主が何度も返答してくれってレスしたのを悉く無視した件には何も言わないんですね
単にスレを見てないから気付かなかったのかもしれませんが、「連絡できずにごめんなさい」の一言も無いのは流石に首を傾げましたよ


890 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/22(水) 14:10:55 m.SvutO.0
JDSxW5wM0さん、ご指摘をありがとうございます。ssを作る為に集中していてレスを見ていませんでした

様々な指摘を受けている中それに気づかず、連絡をせずssを作ってしまい、本当に申し訳ございません。

ですが、それでも矛盾がないように書く努力はしてみました。

もう今後はこのような無理筋になるようなssを書かないことを誓います。多くの方に迷惑をかけてしまい、本当に申し訳ございません。


それからジューダスについては実を言うと全くと言ってもいいほど知りません。なのでおかしい所があったら修正してくださると嬉しいです。
よろしくお願いいたします。


891 : 名無しさん :2021/09/22(水) 17:29:29 AbCgqfkY0
>>890
大丈夫ですよ。>>889みたいな無神経の発言は気にしないでください。
これからも応援してます!


892 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/22(水) 19:08:05 fF1wPAi20
◆P1sRRS5sNs氏へ

「追跡するJ/闇へ消える辻斬り」と「交わる二つのJ/天国に向かう条件」についてですが、結論から申し上げますと、申し訳ありませんが本編として採用することはできません。

話の内容を確認したところ、矛盾がないように努力して書いてきたことは伝わりました。
移動に必要な距離と時間について矛盾がないよう修正したことは確認しました。
しかし、それでもなお気になる部分はまだ残っています。
ですが、今回採用しないと決めたのはSSの内容だけが理由ではありません。
これからいくつか、氏の書くSSを採用しないと決めた理由等をいくつか述べたいと思います。

【「空条承太郎VSヴァニラ・アイス」という展開について】
先に言っておきますと、私は氏が書こうとしている「承太郎VSヴァニラ」の展開をもう受け入れられません。
先ほども言いましたが、移動に関する矛盾を解消しようとする努力は伝わりました。
しかし、そのためだけに他のキャラを、さらに既に死亡した者まで巻き込むのは問題があるように思えてきました。
修正のための議論が始まった頃はまだ許容の範囲内でしたが、今は違う思いになっています。
今の私は、「承太郎とヴァニラを第一回放送前の早朝の時間に戦わせようとすると、話は破綻する」と思っています。
何度も言いますが、展開のためだけにキャラを無理矢理動かすのは問題があることだと思います。
しかもそのために、死亡者だけでなく、未把握のキャラを未把握のままで動かそうとするのはかなり問題がある行為だと思います。

議論の初めの頃は修正を求めていましたが、予約されてからこの一週間で今の私は全て破棄するべきだと思うようになってきました。
今後、氏による「1日目早朝に起こる承太郎VSヴァニラ」の展開の話が改めて投下されたとしても、私はそれを採用しようと思えない可能性が高いです。

【ジューダスについて】
今回氏はジューダスのことを全く知らずに書いたと言いました。
書きたい展開のためだけに知らないキャラを全く把握せずに書くことは、はっきり言って許容できません。
しかも、そういったキャラの描写の修正を他人に任せようとするのは書き手として怠慢であると感じられます。

二次創作におけるキャラクターの完全再現は難しいことだと思います。これは、私にも言えることであります。
ですが、執筆の際に元のキャラを把握してなかったことを公言してしまうのは問題のある行為だと思います。
今後は、このようなことが無いよう注意してください。

【鵜堂刃衛について】
鵜堂刃衛についても、案が出たばかりの頃は私も軽い気持ちで認めてしまいましたが、現在はこれは認めない方が良かったのではという思いでいます。
死亡話を書いた◆EPyDv9DKJs氏の指摘>>815により、鵜堂刃衛にこの行動をさせるのは問題があるかもしれないという思いが私にも出てきました。
私としては、鵜堂刃衛の行動については、私よりも彼を退場させた◆EPyDv9DKJs氏の意見があればそれを優先したいです。
そのため、今回の話における鵜堂刃衛の行動については、該当トリップによる指摘が無い限りは私の方から何かを言うつもりはありません。

しかし、私の企画主としての意見が、既に死亡した者を回想で行動させるのは問題があるようという思いに変わってきているのが現状です。
例えば、死ぬ前はどういう思いでいたのか等を描写したいと思ったのなら許容範囲内でしょう。
しかし、「特定のキャラを特定の場所に移動させるため」という理由だけで死亡者を動かすのは釈然としない気がしてきました。
以前、鵜堂刃衛の予約を許可したことを撤回するようなことを書いてしまい申し訳ありません。
ですが、私としましては、鵜堂刃衛がこのような行動をするか否かに関わらず、ここで死亡者を動かすことはやはり認められないという思いとなっています。

【DIOの館について】
今回の話ではDIOの館が本来の名前で地図に記されるとありましたが、>>815で指摘されているように原作に登場していない名前で通すというのは私にも無理があるように思います。
仮にDIOの館の名で地図に記したら、その場合だとDIOは黎明に地図を確認した時に何故これに気づかなかったという問題が出てきます。
氏がDIOの館について本来の名前で記されたように描写したのはこれを気にしての事なのでしょうか?
しかし上記のように考えると、DIOの館を黎明に地図に記すということは、やはり無理があることではないのかと思い直してきました。


893 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/22(水) 19:16:24 fF1wPAi20
[続き]
【私からの連絡について】
本当なら、鵜堂刃衛やDIOの館の表記についてだけでなく、様々なことについてこのスレに書き込んだ連絡(>>819>>820>>844>>851)を読んでもらい、そこから議論を行いたいと思っていました。
>>851にも書いたように、本スレは予約期限中の書き手の方であっても連絡事項が書かれることがあります。
しかし、それらの連絡は無視され、先にSSが投下されてしまいました。

私はまとめwikiの方にも連絡事項を書き込んで、氏の連絡を促していました。
しかし、氏はそれらにも気づかなかったということでしょうか。
SSを書く上で、前の話の出来事や状態表を確認するために、本スレかwikiのどちらかは必ず確認すると思います。
私はまとめwikiに「◆P1sRRS5sNsさんへのお知らせ」のページを氏が予約した日の翌日に作成したのですが、これも気づかなかったのですか?
一応、私が一日遅れてページを作成したことでタイミングが合わなかったということも考えられます。
氏が本当に気付かなかったのか気づいた上で無視してしまったのか、それを証明する手段はありません。
本当に気付いていなかったのならば失礼いたしました。
人のことを疑うような書き込みをし、様々な方のお目汚しをしてしまうことにも心からお詫び申し上げます。


ですが、これまでの連絡に何の反応も示さずに投下してしまうのは、はっきり言って信用を失う行為です。
気づいてなかったのであれば、投下の前に他に何か連絡が無いかこれまでのスレを遡って確かめてください。
さらに言えば、氏が確認しているはずの>>816で私が書いた「空条承太郎VSヴァニラ・アイスの展開は無理があるのでは」という意見に対して予約の際に何の言及もなかったこともかなり気になります。
これを書き込んだ時は「どうしても書きたいのであれば否定することは無い」と言いましたが、この発言も撤回させてもらいたいです。
「このタイミングで承太郎とヴァニラを戦わせるのは無理があるからやらない方が良い」というのが今の私の意見です。
本当なら予約の前に、もう少し議論を行いたかったです。

【他の内容について】
他にもSSの内容や描写について指摘したいことはありますが、今回はひとまずここまでとします。
先に言っておくと、主に指摘したいと思っているのは今回登場した支給品についての話です。
これについては私の方で少し調査したいこともあり、長くなる可能性もあるため、少々時間がかかると思います。
そのため、支給品等の他の内容についての指摘は、今回の話が長くなってきたこともあるため、またしばらくしてから改めて投下しようと考えています。


894 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/22(水) 19:18:08 fF1wPAi20
【まとめ】
最後にもう一度言いますが、今回投下された二つの話はどちらとも採用するつもりがありません。
修正も受け付けないつもりです。
矛盾を直そうという努力は分かりましたが、申し訳ありませんが私はこれで納得することができませんでした。

以前の自分の発言を撤回するようなことを書いてしまったことについてもお詫び申し上げます。
ですが、これまで書いたように「承太郎とヴァニラが長距離移動して早朝に戦うことになる」という展開を受け入れることが出来ないのが私の現状です。
申し訳ありませんが今回の話は初めから、前回の話から流用した部分も含めて全て破棄としてもらいたいのが私の希望です。

これまで氏がSSを書いたり、指摘に対して対応してきた時間を無駄にするような結論を出してしまい申し訳ありません。
前の連絡にも書きましたが、破棄になったとしても無駄にならないようにという思いで私はまとめwikiに没SSのまとめページを作成しました。
今回の話もそのページにまとめるつもりでいますが、このことについても何か意見があれば連絡をください。

重ねて言いますが、せっかく書いて来てくださったのにこのような話になってしまい本当に申し訳ありません。
ですがこれ以上話をこじれさせないためには、私がスレ立て人としての最終決定権で初めからなかったことにするしかないのではという思いがあります。

これまで投下された話を全て否定しまうも同然なことを言ってしまい申し訳ありません。
もっと早い時点でこれまで書き込んだことを言えていれば、ここまでこじれて長引くことも無かったのではと思っています。
今回のような事態になったことは私の対応にも問題点があったと感じられます。
今後はこのような事態を防げるように十分注意していきたいと思います。

意見・疑問点などがあれば誰でも遠慮なくお申し付けください。
またのご連絡をお待ちしております。


895 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/22(水) 19:35:17 fF1wPAi20
[追記①]
【予約期限について】
予約期限についてですが、>>888で指摘されているように日付ではなく時・分・秒で数えるものです。
以前、氏に向けて「今日中に連絡したら予約延長を認める」と言ったことはありますが、これは初めての本編投下であったため大目に見て認めたことであり、日付が期限の基準だと示すものではありません。
その時にもし勘違いさせてしまったのであれば申し訳ありません。
今後はこの点についても注意してください。

また、昨日連絡した予約禁止は現在も続いています。
こちらについては時間ではなく日付の期限となります。
そのため、◆P1sRRS5sNs氏の承太郎とヴァニラの予約解禁は、10/8(水)を予定しています。


896 : 名無しさん :2021/09/22(水) 19:35:38 LEgPJxkg0
>>894
大賛成です。個人的には件の書き手は書き手の域に達しておらず投稿も含め一定期間制限すべきだと存じます。期限を守らない、返信を読まない、原作の理解が不十分であるなどの問題点が多くこのまま進めてもまた今回のような事態になる可能性は高いと思います。


897 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/22(水) 19:37:45 fF1wPAi20
[追記②]
【ヴァニラの支給品について】
私は今、これまでの話の発端であった、「ヴァニラのランダム支給品の追加」を認めるべきではなかったと考えております。
これを認めていなければここまで話がこじれることは無かったでしょう。

そのため、◆ytUSxp038U氏にも連絡したいことがあります。
現在、ヴァニラの前話である「待っててDIO様!キュアヴァニラ爆誕!?」における状態表を再修正することを考えています。
ですが、これについては私の一存で決めることでは無いと思いますので、◆ytUSxp038U氏の意見も聞きたいと思っています。
この点について、どうか連絡のほどをよろしくお願いします。


898 : ◆ytUSxp038U :2021/09/22(水) 20:13:00 RO5YThnw0
>>897
はい。私としてもヴァニラの支給品の再修正に異論はありません。

また今回の一連の騒動の原因として、私が◆P1sRRS5sNs氏の要望に軽い気持ちで応じてしまった事をお詫び申し上げます。
あの時に私がキッパリと支給品の追加を断っていたら、こうも話が長引くことは無かったはずです。

企画主である◆5IjCIYVjCc氏、時間を掛けて修正を行った◆P1sRRS5sNs氏、他書き手と読み手の皆様、
大変申し訳ありませんでした。


こんな状況で言うのもなんですが、ギニューを予約します


899 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/22(水) 20:40:18 fF1wPAi20
>>898
返答ありがとうございます。
まとめwikiの方にて修正したことを報告します。


900 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/22(水) 23:08:31 fF1wPAi20
「追跡するJ/闇へ消える辻斬り」と「交わる二つのJ/天国に向かう条件」における支給品について私が気になった点について記します。
これらの話は既に没としていますが、これらの指摘は今後の執筆の際の参考にしていただけたらと思います。

【地球消しゴムについて】
正直に言いますと、この地球消しゴムのような地形を変えてしまうようなアイテムの支給は許可できません。
また、調べてみた所このひみつ道具は山のような土地を削ることができるものであり、橋のような人工の建造物を消す効果があるとは思えず、今回の展開に合った道具であるとは考えにくいです。
ただ、この指摘についてはあくまで私が調べた限りのものであるため、誰かドラえもんの設定や描写に詳しい人がいて、実際には人工建造物も消せるというのならばこれ以上問題にしません。
しかし、やはり私としては地形に直接干渉できるような支給品は許可できません。

【弓と矢について】
弓と矢については、参加者に使用した場合オリジナルのスタンドを発現してしまうことが考えられます。
しかし、そんなオリジナルのスタンドが登場してしまうような展開になることは、私としては許可できません。


以上の理由から、今後は【地球消しゴム@ドラえもん】、【弓と矢@ジョジョの奇妙な冒険】については支給品とすることを禁止にしようと考えています。

それからもしも、またこれからのロワの進行に応じて私が許容できないと感じた支給品が登場すれば、それを支給品とすることを禁止にするかもしれません。
また、登場していなかったとしても、私の独自の判断で禁止支給品についてのお知らせする可能性もあります。
禁止支給品については、まとめwikiのルールのページに記そうと考えています。


【支給品の数について】
話を確認してみたところ、ジューダスの支給品の中で今回新たに登場したものが「ホワイトスネイクのDISC」、「藤の花の薬」、「愛染香」、「弓と矢」の4つとなっています。
しかし、ジューダスの前話「自分探しの旅」においてジューダスの残りランダム支給品は2つであり数が合いません。
そもそも、参加者一人につきランダム支給品は最大3つまでです。
今後支給品について描写する際は数についても気をつけてください。


また、これについては今回の話というより、◆P1sRRS5sNs氏がこれまで書いてきたSSに深く関わる話として書かせてもらいます。

【コンペ未参戦作品出典の支給品について】
これについて言及するのは今更な気がしますが、◆P1sRRS5sNs氏がこれまでコンペ時点では存在しなかった出展作品から支給品を出したことについて話させてください。
正直に言いますと、このような行いは本当は私にとってあまり好ましくないものでした。
しかし、今までこの点に関してルールを設けていなかったため、後から言うのもどうだろうと思いこれまでは言及してきませんでした。

そのため、この機会に、もうこれ以上支給品について下記のようなルールを追加しようと思います。

・2021年9月22日現在、既に登場している参戦作品以外からの出展で支給品を登場させることを禁じます。

既に支給品が出てしまった【ドラえもん】【ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会】【仮面ライダーセイバー】については一応禁止にはしません。
ですが、私としてはなるべく、支給品はコンペ時から存在した作品を出展としていただきたいと思っています。
強制まではしませんが、念のためご考慮願いたいです。


とりあえず、今回の話はここまでとさせていただきます。
他にも支給品について気になる箇所が出てきたら再び連絡するかもしれません。
意見や疑問点がある方は誰でも遠慮なくお申し付けください。


901 : <削除> :<削除>
<削除>


902 : 名無しさん :2021/09/22(水) 23:47:09 mM8VNr.Q0
企画主含めこれだけ多くの書き手さんに迷惑をかけておいて出てくる言葉がそれなのはどうかしているとしか言いようがないですよ
あなたの書いた話がキャラクターの口調、原作知識、企画における整合性とどれを取ってもあまりにも稚拙で、その上決められた期限も守らない、スレに書き込まれている自分宛のレスも見ないほど意識が低いからここまで長く議論になっているということを自覚していますか?
もし自覚がないのでしたら、氏は作品の前にご自分の人間性を見直した方がいいと思います


903 : 名無しさん :2021/09/22(水) 23:54:17 LEgPJxkg0
これは管理人に連絡をすべき案件では?


904 : 名無しさん :2021/09/23(木) 00:05:34 //szFdpg0
大人しく管理人案件
もはや話し合いすら出来ない企画荒らし


905 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/23(木) 00:41:55 T1YLa5ys0
まず【「空条承太郎VSヴァニラ・アイス」という展開について】反論を述べさせていただきます


では質問ですが今の私は、「承太郎とヴァニラを第一回放送前の早朝の時間に戦わせようとすると、話は破綻する」と思っています、と書かれていますが、それは何を根拠にしているのでしょうか?
確かに私が最初に投下したssは酷い物だったと思います。承太郎にどう考えてもおかしく繋がらない行動をさせていました。ダッシュだけでとんでもない距離を動かせてました。なのでssとしては破綻していたと言えます
だからしっかり刃衛を追いかけました。そして音もなく橋を消して、追いかける事が出来ない状況も作りました。スタンドの視力もいかして刃衛が死ぬのを見届けました。だから新たな目的としてDIOの館まで早急に行くという目的を作りました。早急に行くという目的の為に870km/hものスピードで動ける為の道具を使うようにしました。そうして館の近くに行く事になりました。

一方でヴァニラ・アイスは変身前でも速度が不明だけれども疲れる事はまずないであろうキマイラを召喚してそれに乗って動いて、更にDIOに早く出会う為という早く動く理由も作りました。

こうして二人が森で出会いました、もう一度聞きます。どこが破綻していますか?

詳しく説明してください。

鵜堂刃衛とジューダス、更にその二人について

まず一つ質問ですがそこまで不自然な動きをさせていましたか?刃衛は刀での戦いではない特殊能力との戦いは今までの戦いとしては例外として回避する為にアイテムを使った、そしてジューダスはエリア直ぐ近くに館があった為に入った。

合理的ですよね?どこが不自然ですか?教えてくださると嬉しいです。他にも先ほど説明した二人も自然な形になっていますよね?どこが『展開のためだけにキャラを無理矢理動かすのは問題があることだと思います。』と言いますがどこが無理やりでしょうか?

確かに承太郎VSヴァニラアイスをしたいという思いはありました。ですが二回目のssはその為に強引に不自然にならないように書いたつもりです。館に長時間いるジューダスも考察の為にいた、として理由も付けました。本当に不自然な所が何処にあるのでしょうか?

そして一番◆5IjCIYVjCcさんに聞きたい事があります。

◆5IjCIYVjCcさんは私のssをしっかり読んだ上でなかったことにしようとしているのか?という事です。

その根拠として、DIOの館についての項目を見ましたがそれが何故『DIOの館』という名前じゃなく「本来の名前」で載っている事を不自然であると書かれていましたが、それについては承太郎が『後出しでDIOの館を記して、記されているまでの間でDIOが接触した人達が一斉に集まる事で殺し合いを加速させるのではないか?』という推測を立てて、不自然にはならないようにしてあるはずです。

それについて触れた上で不自然で、その理由を詳しく説明してくださったら納得できます。ですが触れずに不自然と言われるのは、しっかり見ていないのでは考えてもおかしくないですよね?

更にもう一つ追加させていただきますが、弓と矢、ホワイトスネイクのDISCというのは正直意味が分かりません。どういうことですか?ホワイトスネイクのDISC何てどこにも出ていません。ホワイトスネイクはDIOの館にあった弓と矢でジューダスが目覚めたスタンドです。弓と矢なんて支給品に含んでいません。館にあった物です。しっかりと支給品の数も考えた上でエターナルソード、藤の花の薬、愛染香の三つに考えたんです。これもssをしっかり見ていない根拠の一つです。以上二つのssをしっかりとを見ていない根拠があるのにssを本編で採用されないと決められるのはとても理不尽だと言い切れます。

因みに今からssはしっかりと見た上で決めましたと言っても無駄ですからね?もうアイテムの所の時点で見ていないのがバレバレですし、私がその指摘をする前に貴方はssを本編で採用しないと決めたんですからね?


906 : 名無しさん :2021/09/23(木) 00:47:04 weA5y86E0
>>901の時点で無条件破棄+永久追放でいいと思います
話を通す通さない以前にこの人物を抱えておくことで企画が被る不利益の方が大きいかと


907 : 名無しさん :2021/09/23(木) 01:08:40 JNfWTg4I0
後はもう管理人さんに対処を任せよう
この人にこれ以上構っても無駄にスレが荒れるだけだろうし


908 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/23(木) 01:11:00 T1YLa5ys0
更に支給品についてですが、地球消しゴムは範囲や回数を制限して、何回も使用が出来ないように考えています。橋をなくすというのはその削る描写の延長線上として消したと考えました。

弓と矢はオリジナルスタンドが生まれなければいいんですよね?要は制限を付ければ大丈夫ですよね?

それなのに支給品としての存在そのものをなかった事にするのは極端と思います。

最後に一番聞きたいのが『「承太郎とヴァニラが長距離移動して早朝に戦うことになる」という展開を受け入れることが出来ないのが私の現状です。』

とありますが、これはもはや◆5IjCIYVjCcさんが納得できない展開だからssを否定しているのでは考えざるおえません。

破綻しているのではという反論については先程の説明の反論があるのならばそれを聞きますが、それがないとするのならば、ssが否定される理由が分かりません。

ある特撮の映画で描かれていますが、『物語の登場人物にとって作者は神だ』という言葉がありますが、それを『物語の登場人物は物語が続いていくと作者の手を離れて動き出す』という結論が出ています。

これがキャラ破綻しているssなら確かに異常事態ですが、破綻していない限りはssとしては成立しているはずです。それが作者の考え通りにいかない事があってもそれは仕方がないはずです。それなのに本編として認めないと言われるのは理不尽な扱いだと思います。

…ですが、これについて、本当に私が一番悪い事があるのは自分でも分かっています。ジューダスについてです。

これについてはもう完全に私が悪いです。ジューダスについては私は全く知らず、『自分探しの旅』等のジューダスが出るssだけを読んで書いてしまいました。そのせいで性格として破綻させてしまったのは申し訳ございません。悪いのは私以外ありえず、異常事態を自ら起こしてしまいました。

その上他の方に直してもらう事を頼みたいという大変失礼な事をしてしまいました。これについては必ず私がテイルズオブデスティニー2についての動画を多く見て口調を知り、必ず修正します。見た方が不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません。


909 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/23(木) 01:29:29 T1YLa5ys0
そして本当に最後に一つだけ話させてください。

私はfF1wPAi20さんにヴァニラ・アイスの支給品について許可をもらってssを書きました。

ですがそれを取り消されたらもうアイスはビーストに変身できません。本当にssはすべて廃棄せざる終えなくなります。一つの創作物を書いた人にとってその創作物は子供です。それが納得できない理由で殺されるのは親にとってとても辛いです。

そもそも私が初めてssを投下した際に遠距離同士で投下をしてはいけないとは聞かされていません。もしそうだとしたらまず間違いなく承太郎VSヴァニラ・アイスを書くことはなかったです。

勿論それについてやり方が強引だったのは完全に私の間違いです。なので全力で修正したのに本編ではなかったことにされてしまい、とても辛いです。

>>901については思わず辛かったために強く言葉を言ってしまいました。申し訳ございません。ですがそれくらい本当につらかったんです。

それなのに永久追放や管理人に対処してもらう等言われてしまい、それについても本当に辛いです。せめて反論の部分をしっかり見ていただきたいと考えています

予約期限についても自分が勝手に時・分・秒で数えるものであると知らずにいた事も申し訳ないです。そして今までのスレをあまり振り替えってみていなかった為に結果的に無視して投稿している事になってしまった事も信用を失う事になってしまい、本当に申し訳ございません

ですがssは本編に採用してもらいたいという思いは変わりません。

勿論反論があるならぜひお願いします。その反論が筋が通っていたのなら私はssが採用される事をきっぱりと諦めます。

どうかよろしくお願いします


910 : 名無しさん :2021/09/23(木) 02:48:19 LxFwIR7c0
※当板内において、各企画における最終決定権はスレ立て人に存在するものとします。

と言うスレではなく掲示板そのもののルールがあるんだよね
つまりは、そういうことで


911 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/23(木) 03:11:08 T1YLa5ys0
…今ふと、最後に思った質問を◆5IjCIYVjCc さんにします。

もしかして話の筋が通っている、通ってない以前の問題として、「空条承太郎VSヴァニラ・アイス」そのものが駄目という事ですか?

どうであろうとも今のロワの時間帯での戦いそのものが駄目という事ですか?

それが◆5IjCIYVjCc さんの決定なら…私はもう何も言わず諦めます。◆5IjCIYVjCc さんの決定が一番になる以上もう何も言えないので…

ですがそれならばせめてヴァニラ・アイスの支給品だけは変えないでいただきたいです。

それがどんなものに変わろうとも構いませんが、ほんの少しだけでも可能性だけをお願いします。

本当に迷惑をかけてしまいすみませんでした…


912 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/23(木) 03:49:20 aZrNduiY0
先に、結論から述べさせてもらいます。
今回、◆P1sRRS5sNs氏は反論に則して過度な暴言と捉えられる発言をこのスレに書き込みました。
SSの内容の良し悪し以前に、この態度は大きな問題であると感じられます。
破棄にされたことを悲しいと感じたとしても、私の考えに不十分な点があったことに怒りを感じたとしても、やはり感情的になってスレの書き込みを行うのは、書き手として大問題であると思います。
そのため、今回のSSはやはり破棄とさせていただきます。
また、このことを鑑みて、他の方の提案も考慮し、◆P1sRRS5sNs氏には無期限でSSの投下を禁止にしようと考えています。
その期限をどれくらいの長さにするかは、まだ未定とさせていただきます。

期限はあくまでも未定であり、他の方の意見や氏の態度等を考慮しながら具体的な長さを決めていこうかと思います。
ですが、今後も問題を起こす可能性があるとみれば、他の方の提案にあるように永久に投下禁止とすることも考えています。


913 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/23(木) 03:49:45 aZrNduiY0
また、氏の反論についても私から解答できることを答えさせていただきます。

DIOの館についてですが、確かに私はSSの読み込みが不十分であったようです。その点については謝罪します。
しかし、私としましては「先に本来の名前を出して後から名前をDIOの館にする」という推測に関しては許容できません。
実際に後出しで地図上の名前を「DIOの館」にするかどうかはともかく、結局初めは本来の館の名前として載っていることは変わりはないと見ます。
それならば、>>815の指摘や私が>>892で言ったように、原作に無い名前で通すのは無理があると思います。

また、話が破綻していると感じることについてですが、これは前述の話と繋がっています。
>>892で述べたように、DIOの館を出すとしたらやはりDIOが黎明に気づかないのがおかしな点になるのでは?というのが私の考えです。
移動速度と距離については、一応クリアしているとは思います。今回破綻と感じたのは、この部分についてではありません。
しかし、今回に関してはDIOの館に関する描写がまだ不十分であると感じました。

鵜堂刃衛の動きについては、>>892で言ったように私としては彼の死亡話を書いた書き手の方の意見を優先しようと思っています。
私としましては、今回の話の中で彼の動きが不自然という話をしたつもりはありません。
今のところは該当トリップによる指摘も無いので、私はここでは鵜堂刃衛の行動に不自然は無いとしておきます。
私がここで問題視したのは、「承太郎を北に行かせないためだけに、退場させた人とは別の書き手が既に退場した鵜堂刃衛を過去回想で本当に動かしていいのか」という点です。
以前は許可しましたが、やはり問題のある行いなのではという思いが私には出てきました。

また、確かに私はジューダスの支給品描写についても同じように読み込み不足で勘違いしていたようです。この点についても謝罪します。
ですが、この場合ですと弓と矢についてはジューダスにホワイトスネイクの能力を与えたという展開となり、これについてはやはり異を唱えさせてもらいます。
スタンドというのはジョジョの奇妙な冒険原作において本体が持つ精神の像であり、スタンドDISCでも挿入されない限り他人のスタンドは使えないと思われます。
私が「ジューダスはホワイトスネイクのDISCを手に入れた」と勘違いしたのは、「ジョジョ原作で既出のスタンドを扱うにはスタンドDISCを挿入するしかない」という思い込みがあったためです。
これの言い方を変えると、ジューダスがホワイトスネイクを使うには、スタンドDISCの挿入という展開でないと認められないということにもなります。
このため、、ジューダスが矢によってホワイトスネイクが発現したという展開については、やはり許容することはできません。
発現しているのがジューダスである以上、このスタンドが『エンリコ・プッチが持つものと同じスタンド能力』であるとは言えません。
もしもこれが『ホワイトスネイクに似た見た目と能力を持つ別のスタンド』だとしても>>990で言ったようにオリジナルのスタンドの発現という展開になり許容できません。
よって、支給品ではなく施設に存在した品だとしても、やはり弓と矢の登場は許可できません。

地球消しゴムに関しては、たとえ範囲や回数の制限がかけられていたとしても、私個人としては地形を操作できるアイテムをあまり採用したくないという思いがあります。
これに関しては一応、氏の意見も取り入れ、完全には支給禁止とせず他の方の意見があれば受け付けようかと思います。


914 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/23(木) 03:50:35 aZrNduiY0
そして、遠距離にいる者同士の話の予約・投下についてですが、確かにこれを禁止はしていません。
ですが、これは遠距離にいる者同士をこれまでの流れを無視して簡単に出会わせても良いという意味ではありません。
もう一つ言わせてもらいますと、遠距離にいる者同士は別に直接出会わせなくとも、何ならその場から移動させなくとも二人を描写する手段は存在したと思います。

今回の話に関して言えば、例えば、承太郎が南東でカブトに変身し、ヴァニラが北西でビーストに同時刻に変身するだけの話であれば採用したでしょう。
出会って戦うことになったとしても、例えば、ヴァニラがワープアイテムを使って承太郎の元に移動する展開ならば、まだ許容の範囲内でした(むしろ予約された当初はこういう話を書くつもりなのかと思っていました)。
そして今回、頑張ってビーストキマイラとハードボイルダーを使えば何とか移動の距離と時間については解決できるという結論は、一応今のところは許容範囲内であります。
ですが、やはりそれ以外の部分についてはまだ問題があるように感じられ、私としてはこれ以上議論を長引かせても、何度も修正案を出させたとしても、承太郎とヴァニラを戦わせようとする限り、私が納得できる答えはもう出てこないのではないのかと判断いたしました。

ですが、重ねて言いますが、今回に関してはSSの内容の良し悪しよりも書き手の態度に大いに問題があると感じられます。
問題ある態度の中には、ジューダスに関する指摘に対する>>890の解答で、>>892で書いたように未把握だと公言し、キャラ描写の修正を他人に任せようとしたことも含まれます。
今回の破棄に関して言えば、もはや話が破綻しているかどうかよりも、この態度の問題の方が最終的な結論に達した理由の大部分を占めます。
どれだけ破棄にされるのが辛いと言われても、この件がある以上譲歩することはできません。
私の考えに氏が納得がいくか否かに関わらず、今回の話はどうしても採用することはできません。
これ以上暴言を吐くようなことがあれば、投下禁止を無期限ではなく永久とすることも考えます。
これでもまだ文句があるのならば、私としてはもうまとめwikiの没SSまとめページへの収録で妥協してくださいとしか言いようがありません。
ここならば一応、話は形に残せるかと思うのですが、この点についても何度も意見を求めています。

今回の私からの話はこれで以上とします。
一応、他の書き手の方々から私の決定に対して何か意見があれば受け付けるつもりではあります。


915 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/23(木) 03:52:31 aZrNduiY0
【追記】
ヴァニラの支給品に関しては、今のところはこの再修正を行ったままとさせていただきます。
この件に関しては、私としては◆P1sRRS5sNs氏がこれ以上問題を起こさないと見れるのであれば、一応再々修正を行うことも考えておきます。
ですが、やはり元々ヴァニラの支給品の数を決めたのは◆ytUSxp038U氏であるため、この件については◆ytUSxp038U氏の意見も聞きたいところです。
結論としましては、ヴァニラの支給品に関しては現時点では保留とさせていただきます。
同じことを何度も聞くようで、お手数をおかけすることになってすみませんが、この件についてどうか◆ytUSxp038U氏の連絡をよろしくお願いしたいです。


916 : ◆P1sRRS5sNs :2021/09/23(木) 04:57:59 T1YLa5ys0
…なる程、◆5IjCIYVjCc さんの意見は分かりました。

確かにそうなっても仕方がないですよね

本当にごめんなさい、私は考えるより先に感情で動きやすいと言われています。

なので考えるよりまず先に行動して、先の事を見ていない…その結果結局締切ギリギリまで間に合わなかったり、ssに矛盾や間違いがあったり、先の言葉で嫌な思いを◆5IjCIYVjCcさんにさせてしまったりしてしまうんです。

ジューダスに関しても無責任すぎると考えなかった自分がバカだったんです。

本当自分ってどうしてこうなんでしょうね

このスレを見ている皆さん、自分のわがままで迷惑をかけてしまい本当にすみませんでした。
ですがどうか最後のお願いです。作者が駄目でもキャラの事は憎まないでください。
私は紛れもない迷惑を皆さんにかけてしまいました。ですがカイジ達は無関係です。

どうか丁寧に、自分みたいに頓珍漢なssでめちゃくちゃにしないでくださると嬉しいです。

自分はしばらくこのスレ、いや、掲示板をこのコメントへの返信を最後に見ないと思います。
自分が関わったら皆さんに迷惑がかかる事をもう起こしたくないからです

このロワssが最後まで完遂して皆さんが楽しむ事が出来ますように願います。


さようなら、ありがとうございました


917 : ◆ytUSxp038U :2021/09/24(金) 00:43:44 hyihU7hY0
>>915
連絡が遅れてすみません。

ヴァニラの状態表ですが、私は再々修正する必要は一切無いと考えております。
◆P1sRRS5sNs氏のやりたかった展開を潰す形となり申し訳ありませんが、ここまで話がこじれてしまった現状を見て、やはりヴァニラの支給品追加を承諾すべきではなかったと後悔しております。
今後似たような事が起きないとも限らない為、ヴァニラの状態表は再修正したままの方が良いというのが自分の考えです。

また繰り返しとなりますが、私の軽率な判断が今回の事態を招いたことを謝罪します。
大変申し訳ありませんでした。


投下します


918 : スニッファー ◆ytUSxp038U :2021/09/24(金) 00:45:53 hyihU7hY0
「ギニュー!!」

自らの名を叫び、ポーズを取る。
正面の鑑に映るのは、何とも奇妙な体勢をしている一人の少年。
我ながら見事に決まったとギニューは自画自賛した。
が、満足気な笑みは即座に不満気なものへと変わる。

「やはりオレ一人ではしっくり来ないな…。いや、そもそも炭治郎の体でこのポーズは何か違う気がする…。新しいものを考案すべきか?」

ブツブツと呟くギニューが現在いるのは、E-4に位置する葛飾署の更衣室。
杉元との戦闘から離脱したギニューは、池の反対側にある街を訪れていた。
トビウオに乗ればあっという間に着けるだろうが、なるべく他者の注意を引く真似を控えたい為にこれは却下。
少し離れた位置にある橋を渡り、到着した先で見つけた葛飾署に立ち寄ったのだった。

署内を探索する最中、何故ポーズを取ったのか。
理由は単純、自分は気合を入れる為だ。
変態天使こと姉畑に凌辱され、ほんの一瞬とはいえフリーザの蘇生を諦めてしまった。
そんな不甲斐ない己へ喝を入れ直す為に、特戦隊のファイティングポーズを取った。
とはいえ、そこから新ポーズの考案やらに考えが行ってしまったのは、誰よりもファイティングポーズに強い拘りを持っているギニューらしいと言えばらしいのかもしれない。

「ム、いかんな。今はそんな事を考えている場合ではない」

我に返ったギニューは、これではいかんと頭を振り更衣室を出る。
葛飾署に寄った目的は参加者を探して殺す事と、武器の確保。
恐らくは銀河パトロールの本部のような場所だろうと考え、ならばそれなりの装備があるかもしれないと期待していた。
それに参加者がいるのなら好都合。
強者ならばボディーチェンジして炭治郎の体とはおさらばだ。
反対に弱者ならば炭治郎の体に慣れておく為の、手頃なサンドバッグにしてやろう。

邪悪な笑みを浮かべ歩き出した。


「シケているな…」

デスクが並ぶ部屋にて、奥の課長専用の席へドッカリと座り込んだギニューは不満を隠さずにぼやく。

署内を隅々まで探し歩いたが、参加者どころか虫一匹すらいない。
おまけに武器も光線銃一丁すら見つからない始末。
とんだ時間の無駄だった。

唯一の収穫と言えば、食堂らしき場所の冷蔵庫に入っていたケーキ。
生クリームをふんだんに使用したソレを、適当に拝借したフォークで刺して口に運ぶ。
ゆっくり味わうように咀嚼すると、想像以上に美味だった。
甘いものが好物のギニューをして唸らせる味は、亀有公園前派出所勤務である秋元麗子が作った味を忠実に再現したが故のもの。
そんな事情を知る由も無いギニューはただ、エネルギー補給と今後の景気付けも兼ねてケーキの味を堪能するのだった。

ケーキを食べ終えると、フォークを乱暴に起き立ち上がる。
他に収穫が無い以上、もうここにいる必要は無い。
デイパックを背負い葛飾署を出ようとした。


919 : スニッファー ◆ytUSxp038U :2021/09/24(金) 00:46:47 hyihU7hY0
「ん?」

ふと、何か違和感を感じ振り返った。
視界に移るのは、人っ子一人いない部屋。
署員が使っていたであろう机が並んでおり、どれも綺麗に整頓されている。
否、一つだけ違う。
入り口近くの机だけ引き出しが半開きになっていた。
大抵の人間は特に気にも留めないだろうが、ギニューには引き出しの状態が妙に気になった。
他の机はキッチリと引き出しが閉まっているからか、余計に一つだけ半開きなのが引っかかる。
近付いて引き出しを全開まで開ける。
中身は幾つかのペンが入っているだけで、特別な物は皆無。

「気のせい…、いや待てよ?もしやこれは…」

ある可能性に気付いたギニューは集中して鼻を動かす。
鼻孔に侵入してくるのは、葛飾署内の匂い、自分が食べたばかりのケーキの匂い。
そして、嗅ぎなれない匂いが二つ。

「っ!やはりか…!」

疑惑は確信に変わった。
自分がここを訪れるより先に、別の参加者が葛飾署へやって来ている。
引き出しが半開きなのも、先客が部屋を調べた時にきちんと閉め忘れたからだろう。
ということは、武器が一つも見つからなかったのもそいつらが持ち去ったからか。

腹正しいが、参加者の手掛かりを得たギニューは慎重に匂いを嗅ぎ分けながら出入り口へと走る。
外に出ると夜風に流されたのか、匂いは消えていた。
しかしギニューに落胆は無い。

(タイミングからして、オレが渡って来た橋には行っていないだろう。もしそうならオレと鉢合わせするか、橋を渡る姿をオレが見ているはず。
 となると行き先は……)

ギニューが見つめるのは巨大な風車が取り付けられた塔。
距離からして隣のエリアにあるようだが、ここからでも存在を確認出来るくらいに大きい。
葛飾署に寄った連中はあの塔に向かったとギニューは推測する。
匂いが署内に残っていたということは、葛飾署を出てからまだそう時間は経っていないはず。
連中がまだ市街地にいるとすれば、最も目立つ建造物に向かう可能性は高い。
あれ程の存在感を放つ建造物だ、念の為に確認するくらいはやるだろう。

(それにこの辺りの匂いは既に消えているが、移動すればまだ微かでも匂いが残っているかもしれん)

もし塔には行っていないとしても、匂いさえ嗅げれば行き先を絞り込める。

疲労はある程度癒え、糖分接種でエネルギーも万端。
殺す準備はとっくにできている。

「顔も名前も知らないが、オレに存在を察知されたのが運の尽きだ!フリーザ様復活の礎となるがいい!」

刀を強く握り直し、風車の塔目掛けてギニューは駆け出した。


920 : スニッファー ◆ytUSxp038U :2021/09/24(金) 00:47:39 hyihU7hY0
【E-4 街 葛飾署前/早朝】

【ギニュー@ドラゴンボール】
[身体]:竈門炭治郎@鬼滅の刃
[状態]:疲労(小)、首から顎にかけて火傷、姉畑への怒りと屈辱(暴走しない程度にはキープ)
[装備]:竈門炭治郎の日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品×2、メギドボム×2@ペルソナ5、トビウオ@ONE PIECE、ランダム支給品0〜2(鳥束の分)
[思考・状況]
基本方針:優勝し、フリーザを復活させる
1:風車の塔(風都タワー)へ向かう
2:強敵と遭遇したら、ボディーチェンジで体を奪う
3:もしベジータの体があったら優先して奪う。一応孫悟空の体を奪う事も視野に入れている
4:可能であれば『呼吸』や『透き通る世界』を使えるようになりたい
5:変態天使(姉畑)は次に会ったら必ず殺す。但し奴の殺害のみに拘る気は無い
6:炎を操る女(杉元)にも警戒しておく
[備考]
参戦時期はナメック星編終了後。
ボディーチェンジにより炭治郎の体に入れ替わりました。


921 : ◆ytUSxp038U :2021/09/24(金) 00:48:21 hyihU7hY0
投下終了です


922 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/24(金) 16:12:48 2hyiAoRE0
>>917
連絡ありがとうございます。
ヴァニラの状態表については現在の状態のままとします。

また、◆P1sRRS5sNs氏の投下禁止期間についてですが、>>916でこれを最後にこのスレと掲示板を見ないとあり、復帰の意思は現状無いと判断されるため無期限のままとします。

最後に、この度はSSの破棄を巡ってお騒がせしたことを私からも謝罪します。
申し訳ありませんでした。
改めて、今後はこのような事態を招かないように十分注意することを宣言します。


923 : ◆NIKUcB1AGw :2021/09/24(金) 21:42:18 WN2gOceE0
企画主様及び関係書き手の皆様、本当にお疲れ様でした。

◆ytUSxp038U様、投下乙です
炭治郎の嗅覚、バトルロワイアルという場では地味に有能スキルですね
このままリト&いろは組と対面となるのか……

そしてヴァニラ・アイス予約させていただきます


924 : ◆NIKUcB1AGw :2021/09/26(日) 23:07:18 YwyiS7ro0
投下します


925 : 未知との遭遇 ◆NIKUcB1AGw :2021/09/26(日) 23:08:14 YwyiS7ro0
監獄を出たヴァニラ・アイスは、南へと向かっていた。
すでに地図は確認済みだ。
地図に記された「網走監獄」の文字と周囲の地形から、ヴァニラは現在地がB-1であることを理解した。
目的の都合、他の参加者との接触を多くしたいヴァニラにとって東に進んで山に登るのは好ましいルートではない。
そうなると南にまっすぐ進むか、山を迂回しつつ北に進むかだ。
その二択ならば、市街地に続く南のルートの方が好都合。
以上が、ヴァニラがこのルートを選んだ理由である。

「む?」

エリアの境目を跨いだあたりで、ヴァニラはあるものを発見した。
それは、巨大な円盤状の物体だった。
円盤が直接地面に接しているのではなく、脚のようなパーツがいくつも伸びて地面に突き立てられている。
海岸線に鎮座するその様は、まるで海から上陸したカブトガニのようにも見える。

「あれは……建物なのか……?」

まだ距離はあるが、入り口らしきものが見える。
おそらくは中には入れるのだろう。

「普段なら、あんな怪しい建物になど入りたくはないが……。
 わずかにでもDIO様がいる可能性がある以上、調べないわけにはいかん……。
 行くしかあるまい!」

走るペースをさらに上げ、ヴァニラは謎の建物へと急いだ。


926 : 未知との遭遇 ◆NIKUcB1AGw :2021/09/26(日) 23:09:13 YwyiS7ro0


◆ ◆ ◆


「ふむ……。ここは軍事施設か何かか?」

建物の中に入ったヴァニラは、その内部を見渡しながら呟く。
彼の推察は、あながち間違ってはいない。
このバトルロワイアル会場においては施設として設置されているが、これは本来侵略者の軍勢が用いる宇宙船なのだから。

「武器の一つでもあれば、わざわざ来た甲斐があったというものだが……。見つからんな。
 まあ無尽蔵に手に入るとも思っていなかったが……」

容易に武器が入手できたのでは、支給品の意味合いが薄くなる。
ゆえに武器の現地調達は不可能か、あるいは限られた場所でのみ可能だろうとヴァニラは考えていた。
その限られた場所がここではないかと彼は推察していたが、その読みは外れていたことになる。
だが武器の代わりに、ヴァニラはあるものを見つけた。


「なんだ、これは。まるでSF小説に出てくる機械だな。
 この建物自体が、SFじみているのはたしかだが……。
 こんなそのまんまのものが出てくるとはなあ」

それは、小さなドーム型の機械だった。
正面には扉がついており、中に入れるようだ。
そして上部にはチューブが取り付けられ、壁まで伸びている。

「なになに、治療装置?
 この中に入れば、どんな傷でも癒やせる、だと?」

そばに置かれていた説明書きを読んだヴァニラは、怪訝な表情を浮かべる。
吸血鬼ならともかく、人間の体がそう簡単に再生するはずがない。
どんな怪我でも直せる装置など、ヴァニラの知る人間の科学力では絶対に不可能だ。
だからといって、嘘八百と断じるのも早計だ。
すでに彼は、プリキュアという未知の力に触れている。
ならば一般社会の水準をはるかに超えた未知の科学が存在する可能性も、軽々しく否定はできない。
判断にはさらなる情報が必要と考え、ヴァニラは説明を読み進める。

「ただし回復には、怪我の重さに応じて相応の時間が必要……。
 そしてこの殺し合いの最中、一度しか使用できない……。
 ふむ……」

ヴァニラは考え込む。
この説明が本当だとして、装置を最大限に活かす方法はこの施設に立てこもって他の参加者を待ち構え、ダメージを受けたら装置で回復するというやり方だろう。
装置は持ち運べるようにはできていない。
別の場所で重傷を負ってからここまで戻ってこようとしても手遅れになる可能性があるし、他の参加者がすでに使ってしまっているという事態も発生しうる。
だがヴァニラの方針上、籠城戦をするわけにはいかない。
それに、治療に時間がかかるというのも問題だ。
治療が終わるまでは、完全な無防備。
装置は銃弾くらいなら跳ね返しそうだが、爆弾やバズーカでも持ってこられたら無抵抗のまま殺されてしまう。
安全に使うには守ってくれる味方が不可欠であり、少なくとも現在は単独で行動しているヴァニラには使いづらい。
となるといっそ、他の参加者に利用されないよう破壊しておくべきか。
だが、それも最悪の事態を想定すれば避けたいところだ。
彼にとって考えたくない可能性であるが、DIOが脆弱な体を与えられ、重傷を負ってしまう可能性もある。
そういった事態を考えれば、治療の手段を潰すのはためらわれる。

「万全とは言いがたいが、放棄するには惜しい……。
 なんとも中途半端な回復手段を用意しおって……。
 こうやって葛藤させるのが狙いか!
 くそっ、忌々しい!」

八つ当たりで壁を殴りつけると、ヴァニラは装置を放置して部屋を出た。


927 : 未知との遭遇 ◆NIKUcB1AGw :2021/09/26(日) 23:10:08 YwyiS7ro0


◆ ◆ ◆


ヴァニラが最後に訪れたのは、巨大なモニターとコンピューターが置かれた部屋だった。

「いよいよ本格的に、SFになってきたな……。
 いったい何に使うのだ、これは」

ヴァニラはまだコンピューターが一般に普及していない、1980年代の人間である。
21世紀の地球すらはるかに上回る、フリーザ軍の技術を理解できるはずもない。

「試しに何か押してみるか……。
 どうせ用途もわからん代物なのだ。
 壊れたとしてもかまうものか」

ヴァニラは、コンピューターのボタンを適当に一つ押してみる。
すると、あっさりモニターが起動した。
そこに映し出されたのは、ずらりと並んだ名前だ。

「フリーザ軍構成員名簿……?
 フリーザという国はなかったはずだから……。個人の軍隊か?」

名簿の一番上にある名前は、「フリーザ」。
それが、ヴァニラの考察を裏付ける。
それに続く名前は「ザーボン」「ドドリア」。そして……。

「ギニュー?」

ヴァニラはリュックを開け、そこから名簿を取り出す。

「やはり、参加者か。DIO様と承太郎以外の名前はうろ覚えだったが……」

勘に頼ってなんとかコンピューターを操作し、ヴァニラはギニューのデータを開く。
体が他人のものになっている現状ではデータのほとんどは役に立たないだろうが、それでも有用な情報は得られるかもしれない。
スタンドとプリキュアの力がある以上負ける気はしないが、これだけ未知のものが多く存在しているのだ。
自分の思いもよらぬ、異様な能力を持っている者がいる可能性もある。
どんな些細なことでも、事前に情報を手に入れておくに越したことはない。

「なんだ、この怪物は……」

データを開いたヴァニラの第一声が、それだった。
彼にその言葉を言わせたのは、ギニューの外見だった。
毛髪がなく、血管が浮かぶ頭部。
側頭部からは角が生えている。
おまけに、皮膚の色は紫。
とうてい、人間とは思えない姿である。
もっともかつてのDIOが生み出した屍生人(ゾンビ)の中にはギニューよりグロテスクな外見のものがゴロゴロしていたのだが、
復活後のDIOが生み出した異形といえば後頭部に女の顔がついたヌケサク程度。
ヴァニラが異形に慣れていないのも無理はない。

「こんな化物じみた体にDIO様の精神が押し込められているかもしれないと考えると、吐き気がするな……。
 そうでないことを祈るしかないが……」

悪態を突きつつ、ヴァニラは情報を読み込んでいく。

「戦闘力12万、と言われてもな……。
 基準がわからん……。
 そもそも戦闘力は肉体依存だろうしな……。
 むう、ボディーチェンジ?」

得意技の欄に書かれたフレーズに、ヴァニラの目が止まる。
データには、具体的にそれがどんな技なのかは書かれていない。
だがそのフレーズは、否が応でも現在ヴァニラ達が置かれている状況とのつながりを想起させる。

「察するに体を入れ替える能力か……?
 もしやこいつがボンドルドに協力して、我々の体を入れ替えたのか?
 そして何らかの使命を帯びて、自らも殺し合いに参加した……。
 あるいは裏切られ、殺し合いに放り込まれたか……」

ヴァニラはそう推察するが、根拠に乏しいことは彼自身にもわかっていた。
ギニューも完全な被害者であり、ボンドルドはまったく異なる方法で肉体と精神を入れ替えたという可能性も十分にある。
ゆえに、あくまで仮説の一つという位置に留めておく。

「さて、他には参加者の名前はないようだな……。
 まあものはついでだ。最後に、ボスのフリーザとやらの顔を見ておいてやるか」

軽い気持ちで、ヴァニラはフリーザのデータを開く。
直後、その行動を後悔することになるとも知らずに。


928 : 未知との遭遇 ◆NIKUcB1AGw :2021/09/26(日) 23:11:11 YwyiS7ro0


◆ ◆ ◆


数分後、ヴァニラは全力疾走で宇宙船から遠ざかっていた。

「認めん! 認めんぞ!
 この私が、ただ顔写真を見ただけでぇぇぇぇぇ!!」

モニターに表示されたフリーザの画像を見た途端、ヴァニラは全身を悪寒が駆け抜けるのを感じた。
そして同時に、思ってしまった。
「この怪物は、DIO様に匹敵する悪のカリスマなのでは」と。
そんなもの、存在してはならないというのに。

「頂点は常に一人! DIO様なのだ!
 それを疑うなど、あってはならん!
 DIO様! 一刻も早く、DIO様にお会いしなければ!
 直接DIO様に接すれば、こんな愚かな考えなど消し飛ぶはず!
 DIO様ぁぁぁぁぁ!!」

他に誰もいない海辺に、ヴァニラの絶叫が響き渡った。


【C-1 草原/黎明】

【ヴァニラ・アイス@ジョジョの奇妙な冒険】
[身体]:立神あおい@キラキラ☆プリキュアアラモード
[状態]:疲労(小)、精神的動揺、キュアジェラートに変身中
[装備]:スイーツパクト&変身アニマルスイーツ(ライオンアイス)@キラキラ☆プリキュアアラモード
[道具]:基本支給品、回転式機関砲(ガトリングガン)@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-
[思考・状況]
基本方針:DIO様以外の参加者を殺す
1:DIO様の元に馳せ参じ指示を仰ぐ
2:参加者は見つけ次第殺す。但し、首輪を解除できる者については保留
3:DIO様の体を発見したらプリキュアの力を使い確保する
4:空条承太郎は確実に仕留める
[備考]
・死亡後から参戦です。
・ギニューのプロフィールを把握しました。彼が主催者と繋がっている可能性を考えています。


【フリーザの宇宙船@ドラゴンボール】
C-1に存在する施設。
フリーザ軍がナメック星侵略の際に使用した、大型宇宙船。
内部には治療カプセル(一度のみ使用可能)やフリーザ軍の主要メンバーのプロフィールが記録されたコンピューターなどがある。
戦闘ジャケットなどの武装は置かれていない模様。
なお動力部分は完全に取り外されているため、乗り物として使うことは不可能。


929 : ◆NIKUcB1AGw :2021/09/26(日) 23:11:45 YwyiS7ro0
投下終了です


930 : ◆1qfrROV/6o :2021/09/27(月) 00:09:34 96nYDTIw0
予約を延長します。


931 : ◆c4nYy47bT. :2021/09/27(月) 02:27:23 R0TeLY7M0
投下します


932 : ◆c4nYy47bT. :2021/09/27(月) 02:28:51 R0TeLY7M0
すみません。書き込むスレを間違えました。


933 : 名無しさん :2021/09/27(月) 07:13:01 uBn5vvfs0
すみません、地図についてなんですが
キャラが施設に踏み込むことで追加されていくというルールを追加するのなら、初期地図と、追加施設の登場タイミングとかをまとめた方がいいのではないかと思いました


934 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/27(月) 19:59:58 eDhzsmQ.0
>>933
ご意見ありがとうございます。
ご要望に応え、まとめwikiの地図のページに初期地図と施設の追加時期まとめを追記しました。

また、地図について一つ、新たにルールを付け加えようと考えています。

・参加者が持つ地図に表記が追記される施設は、出展元が存在するもののみとする。

wikiの地図においては、出展元が存在しない施設は青丸で表しています。
そのようになっている部分は、参加者用の地図には記されません。

また、施設追加時期について◆ytUSxp038U氏に質問したいことがあります。
「Animal Change 〜一歩前進?〜」で追加された「葛飾署@こちら葛飾区亀有公園前派出所」ですが、作中描写を見ると、この施設が地図に追加されたタイミングは黎明と早朝、どちらとも捉えられるのではないかと感じました。
細かいことかもしれませんが、よろしければこの施設が追加されたタイミングについて氏の考えを聞かせてもらえないでしょうか。
今のところwikiでは黎明だとしていますが、この私の考えに誤りがあると感じれば連絡をお願いできますでしょうか。
お手数をおかけしますが、よろしくお願いします。

また、その他にもこれらの点について何か意見や疑問点等があればお申し付けください。


935 : ◆ytUSxp038U :2021/09/28(火) 12:12:27 2WIMjvq.0
>>934
連絡が遅れてすみません。
葛飾署を訪れたタイミングに関しては、黎明で問題ありません。


936 : ◆5IjCIYVjCc :2021/09/28(火) 22:13:24 b6U5a8Fw0
>>935
連絡ありがとうございます。


937 : 名無しさん :2021/09/29(水) 18:45:28 /74nkZvY0
精神と肉体とで色々数えてみた

【主人公(精神側)】 11/11
〇空条承太郎/〇坂田銀時/〇桐生戦兎/〇野原しんのすけ/〇杉本佐一/〇柊ナナ
〇結城リト/〇アーマージャック/〇伊藤開司/〇雨宮蓮/〇環いろは

【主人公(肉体側)】 18/20
〇ジョナサン・ジョースター/〇東方仗助/〇左翔太郎/〇フィリップ/〇竈門炭治郎/〇坂田銀時
〇斉木楠雄/〇デンジ/〇ウルトラマンオーブ・サンダーブレスター/〇千翼/〇操真晴人/〇門矢士
〇野原しんのすけ/●ケロロ軍曹/〇両津勘吉/〇エレン・イェーガー/●リンク/〇孫悟空
〇高町なのは/〇関織子




男女比(精神)…男43,女15,その他2(メタモン、貨物船)

男女比(肉体)…男35,女22,その他3(スカラベキング、クリムヴェール、擬態型)


ピカチュウはちょっと悩んだがしっぽが雷型と描写されてたのでオス判定


938 : 名無しさん :2021/10/03(日) 13:45:04 UvZWx/Bc0
まとめ乙


939 : ◆ytUSxp038U :2021/10/03(日) 14:39:49 l6HqnZmw0
空条承太郎、志々雄真実、魔王、坂田銀時を予約します。


940 : ◆5IjCIYVjCc :2021/10/03(日) 16:24:19 fqZS9kfA0
伊藤開司、神楽、広瀬康一、メタモンで予約します。


941 : ◆1qfrROV/6o :2021/10/04(月) 06:49:46 TTWt37ZY0
投下します。


942 : 逆境の中で研ぎ澄まされし爪 ◆1qfrROV/6o :2021/10/04(月) 06:50:32 TTWt37ZY0



◇◆◇



「―――いくぜ、フィリップ。」

―――ああ、これは夢だ。
ひと目でそうだとわかる。雨宮蓮の脳内には存在しないはずの記憶。
今の自分の肉体の本当の持ち主、左翔太郎の記憶に違いない。根拠はないが、何故かそう確信できた。

ベルトのバックルのような赤いアイテムを、慣れた手つきで腰につける翔太郎。
そこから勝手に伸びてくるベルト。反対の手の中には、蓮の支給品に入っていたのと同じJOKERの文字が刻まれたメモリ。
……そして隣には、もうひとり同じベルトを装着した少年。彼の手にも、同じような緑のメモリが握られている。

『サイクロン!』『ジョーカー!』

少年が手に持っていたメモリの、スイッチのようなものを押す。
続けて翔太郎も同じように、自分のメモリのスイッチを押した。
起動音のような音声がメモリの名前を読み上げ、空気を震わせる。

「―――変身!」

声が重なる。背中合わせに線対称のポーズをとる2人。
少年はそのままメモリを、腰のベルトの右側のスロットへと挿入した。
機械音と共にメモリがスロットへと収まる。直後、緑のメモリが少年のベルトから翔太郎のベルトへと転移した。
……そして意識を失い、その場に倒れこむ少年。

転移してきたメモリを再度スロットへと押し込み、反対側に自分のメモリも挿入する翔太郎。
挿入口が垂直に上を向いていたベルトのスロットを、外側に向けて広げるように倒す。
アルファベットのLが鏡合わせになったような形のスロットが、Wの字のような形に変形する。

『サイクロン!』『ジョーカー!』

繰り返される起動音。鳴り響く音と共に、翔太郎の体が何かで包まれていく。
―――そこにいたのは右半分が緑、左半分が黒の装甲に包まれた一人の戦士。

「―――さあ、お前の罪を数えろ!」





……決め台詞の直後に視界がホワイトアウトする。夢として見ていた記憶の、シーンが切り替わる。
次に現れた光景は、どこかの建物の中。何かの事務所のように見える場所。
そこで翔太郎が、紅蓮の装甲を纏った女性型の怪物と闘っている。

もう一人の少年は近くにいない。おそらくそれが原因で先ほどの戦士に変身することができず、押されている。
生身での格闘戦は分が悪いのか、徐々に部屋の隅へと追い詰められていく。
……押され気味の格闘戦の最中、何かに気づいた翔太郎が目を見開いた。

直後に敵の回し蹴りを喰らい、その攻撃の勢いのまま部屋の隅へ飛ばされるも、回転して受け身をとる。
床に何かが突き刺さっているのが見えた。すぐさまそれに手を伸ばし、拾い上げる。
ゆっくりと立ち上がり、先ほどまで追い詰められていたとは思えない不敵な態度で敵と相対する翔太郎。

「―――どうやら切り札は、常に俺のところに来るようだぜ……!」

『ジョーカー!』

拾い上げたのは、前の記憶でも使っていたジョーカーのメモリ。
スイッチを押す。起動音が鳴る。
反対の手に元々持っていた、先ほど変身した時とよく似たベルトのバックルを腰に当てる。

相違点は、鏡写しだったL字のスロットが片側ひとつに減少している所だろう。
バックルからベルトが勝手に伸びてくる。巻き付いた直後に、メモリを差し込む。
ひとつのみのスロットを、先ほどと同じように斜めに倒す。

『ジョーカー!』

再度繰り返される起動音。漆黒の装甲で覆われていく翔太郎の体。
現れたのは先ほど変身した戦士の、左半身を鏡写しにしたような黒の戦士。

「お前は……!?」

相対していた紅蓮の怪物が呟く。
それに答えるように、翔太郎は己の―――変身した自分の名前を名乗った。

「―――仮面ライダー……ジョーカー!」


943 : 逆境の中で研ぎ澄まされし爪 ◆1qfrROV/6o :2021/10/04(月) 06:51:46 TTWt37ZY0



◇◆◇



「―――ん……。」

ゆっくりと意識が覚醒する。
部屋を見渡してもそこは見慣れない場所ではなく、しばらく生活を共にしたルブランの屋根裏。
そこにある椅子に座って自分は休んでいる。……正確には本物のルブランではないけれど。

日光を防ぐために窓を塞いでいるが、それでもほんの少し隙間から見える陽ざし。
完全に朝になっていることがわかる。
今度こそ夢ではないことを認識し、蓮の意識は完全に目覚めた。

「…………仮面ライダー、ジョーカー。」

忘れてしまわないように、夢の内容を反芻する。
おそらくは体の本来の持ち主、左翔太郎の戦いの記憶。
なぜ自分がそれを垣間見たのかはわからない。だがこんな状況だ。
体を入れ替えた殺し合いの主催者が、何かしらそういう細工をしていてもおかしくはないだろう。

そして思い出す。初めて見た記憶の中にあった『見覚えのある』物。
慌てて自分のデイバックを手に取り、中に手を伸ばした。
しばらくバックの中を漁る。手探りで中を探し、目的のアイテム『2つ』を見つけ取り出した。

ひとつはジョーカーの文字が刻まれた漆黒のメモリ。
どういった原理なのかはわからないが、おそらくエボルトが変身する際に使っているボトルのようなものなのだろう。

―――そしてもうひとつ。L字のスロットがひとつだけついている真紅のバックル。
左翔太郎が、仮面ライダージョーカーを名乗る戦士に変身した際に使っていたベルト。
間違いなく、記憶の中で蓮が見たのと同じものだ。

記憶を垣間見た今ならわかる。このアイテムを自分に支給したのは、主催による意図的なものだろう。
元の体の持ち主が使っていたアイテムが、これほど支給されているのが偶然なわけがない。
それに、もう一つ理由がある。

今現在ソファーの上で眠っているシロ。
その体を拘束しているスパイダーショックも蓮の支給品だ。同じく、元は左翔太郎の物。
このアイテムには、それがどのようなものかわかる説明書がちゃんとついていた。

……だが、メモリとベルトのバックル。
この2つのアイテムには、そういった説明書の類が一切付属していなかったのだ。
スパイダーショックと見比べてみると、いっそ不自然なほど。

―――まるで、自分が左翔太郎の記憶を見ることができたとき、初めて使い方がわかるように。
そう、意図的に説明を不足させることで、アイテムの力を封印させていたとしか思えない。
こんなことをして主催にどんなメリットがあるのかはわからない。
そもそもとして、別人の体に無理矢理精神を入れての殺し合いから意味不明なのだから。

だがそれでも。もしこの力を最初から自分が使えたならば、もっと多くの人を助けられたかもしれないのに。
もし煉獄さんの時にこの力があったなら……。考えても詮無いとはわかっていても、やるせなさと主催への怒りは抑えきれなかった。
そんな後ろめたい気持ちを抱えながら、ベッドで眠るしんのすけの顔を見やる。


944 : 逆境の中で研ぎ澄まされし爪 ◆1qfrROV/6o :2021/10/04(月) 06:53:46 TTWt37ZY0
……とそこで、はたと気づく。
ベッドで寝ているしんのすけと、ソファーで拘束されているシロ。
二人の他にもう一人、この場にいるべき人間の姿が見当たらない。

「……先に起きたのか?」

この殺し合いが始まってから、紆余曲折あってずっと共にいるエボルトの姿がないのだ。
もしかしたら下にいるのかもしれない、と思い椅子から立ち上がる。
……しんのすけも起こすべきだろうか、ともう一度そちらに顔を向けた。



 起こして一緒にエボルトを探そう。
>そっとしておこう。
 あえてシロを起こしてみよう。



そっとしておこう。
しんのすけの心身へのダメージは、自分やエボルトの比ではないはずだ。
休めるうちにできるだけ休ませてやりたい。

ひとりで屋根裏を出て階段を下りる。
入り口などが凄惨な状況になってしまったルブランを見ると、まるで自分のことのように胸が傷んだ。
エボルトの姿は、カウンターの方へ歩いていくとすぐ見つかった。
夜中に目覚めた時のように、カウンター席の向こう側に立っている。

「よ、お前さんも起きたか。」

少し前にも同じような会話をした気がする。
今度は何をしているのか、と手元を見ると……無事だったコーヒーメーカーと豆が置いてあるのが見えた。
前に飲んだ彼のコーヒーのことを思い出して苦い顔になる。
あまり思い出したくないので、あえてそれには触れずに自分がどれくらい眠っていたのかを尋ねた。

「おいおい、そんな顔しなくてもいいだろ?ま、寝てたのは1〜2時間ってとこだな。もう完全に陽が昇っちまってるよ。」

そう答えると彼は作業を再開した。
どうやら、以前に蓮が入れたコーヒーが自分の物よりも美味しかったのを気にしているらしい。
これはそのリベンジも兼ねているようだ。あの味より下のコーヒーを作るほうが難しいと蓮は思うのだが。

……そんなエボルトの工程は、まだ惣治郎に教わっている途中の身である蓮の眼から見ても、思う箇所が多々あった。
もし惣治郎がこれを見たら「これじゃ豆が泣いてるぞ」と嘆くことは想像に難くない。

「……その豆を使うなら、そのお湯の温度は高すぎる。それに、豆の重さも計量が必要だ。」

「……ほう?」

見ていられずについ口をはさんでしまう。
惣治郎に教わったことを、ひとつずつエボルトに伝える。

挽いた豆をドリッパーに入れる前にドリッパー全体を温めること。
ドリッパーの中に入れた豆を平坦にならすこと。
他にも挙げればキリがないが、ツッコミどころだらけのエボルトのコーヒー淹れに横からアドバイスを送り続けた。

「―――よし、淹れたぜ。」

ついにエボルトのコーヒーが淹れ終わった。
二人分のカップにそれぞれコーヒーを注ぐ。
……緊張の一瞬。同時にカップを取り、口に運ぶ。

「……悔しいが、コーヒーに関しちゃお前さんのほうが上手みてぇだな。」

……どうやら今回はコーヒーを吐き出さずに済んだようだ。
この香りと柔らかなコク。ジャマイカ産のブルーマウンテンの味だ。
自分が惣治郎の教えを実践して、初めに淹れた豆もこれだった。
あの時は自分も惣治郎に豆が泣いていると言われたものだが、その時に比べれば蓮も上達しているはずだ。


945 : 逆境の中で研ぎ澄まされし爪 ◆1qfrROV/6o :2021/10/04(月) 06:56:01 TTWt37ZY0



「……さて。じゃ、少しばかし真面目な話をするか。」

コーヒーを味わっていると、急にエボルトが顔をあげてこちらを見据える。
捕食する前の蛇のようなその視線は、数時間前にここで話した時と同じだ。

「別に難しい話をするつもりはねぇよ。ただ、流石にこのボロボロの喫茶店からは移動するべきじゃねえか?って話だ。」

……それは、蓮も少し思っていたことだった。
先ほどのシロの襲撃で入口のガラスは割れ、床には割れたガラスやカップの破片が飛び散っている。
椅子やテーブルも少し倒れて凄惨な状態、更に外と吹き抜けなのだ。
ここを拠点にしていくには、少々不安があった。

だが今は既に朝日が差している。
日中動けないシロがいる以上、ここを動くわけにはいかない。

「それくらいわかってるよ。移動するにしても今じゃねえ。少なくとも日が暮れてからだ。」

……正直、意外に思った。
これまで共に過ごしてきたエボルトの性格を思えば、シロのことを内心疎んじてるのではと思っていたからだ。
いや、おそらくそれは間違ってはいないだろう。なのになぜ、日が暮れてからなのだろうか。

「お前さんはまず、自分の体をちゃんと鑑みるべきだな。今すぐ動けるほど、お前もしんのすけも万全な状態じゃねえだろ?」

そう言われて、思い出したかのように体の節々が痛みを主張してきた。
思わず顔を顰める。その様子を見て呆れたようにエボルトが言葉を続けた。

「どうあれ、まずは体を休めるのが最優先だろ。それに、戦いが激しくなるのは昼間よりも夜だと思うぜ。」

「移動するための足もまだないからな。行動を起こすのは今じゃねえ。」

その意見には納得できた。
シロを鬼に変えた先ほどの男のように、夜中しか動けないが凶悪な参加者もいるのだ。
それに、参加者の命を奪うことを目的とするならば陽射しが差す日中よりも夜中のほうが襲撃しやすいはずだ。
……まあ、今まで戦ってきた相手はそんな暗殺者の常識みたいなものとは無縁の狂人ばかりだったが。

「……ま、そういうこった。今相棒のするべきことは、休んで体力を回復させることだよ。」

休息の後に取るべき行動の指針、ということならばルブランからの移動についての話は納得できた。
エボルトの相棒になったつもりはないのだが。
……でもこの催しが始まってからの共闘の数々を思えば、頭ごなしに否定できるものではないかもしれない。

「そうつれないこと言うなよ。これからも頼むぜ、相棒?」

そう言いながら彼はこちらに手を伸ばしてくる。握手しようぜ、と言いたげな顔で。
……蓮は今まで、この男との共闘についてどう考えればいいか悩んでいた。
単刀直入に言ってこの男は胡散臭い。だがこの男がいなければピンチだった場面は数えきれないだろう。
怪盗団の仲間たちほどの仲間意識は正直ない。それでもこの男との共闘は今後も必要だとは連にもわかる。

―――そう、いうなれば主催を打倒するための、一時的な共犯関係。
完全に信用はしないが、そういう関係ならば受け入れられるかもしれない。
……そう思って、あえてその差し出された手を握り返してみた。


946 : 逆境の中で研ぎ澄まされし爪 ◆1qfrROV/6o :2021/10/04(月) 06:58:19 TTWt37ZY0




―――我は汝……汝は我……

―――汝、ここに新たなる契りを得たり

―――契りは即ち、 囚われを破らんとする反逆の翼なり

―――我、「道化師」のペルソナの生誕に祝福の風を得たり

―――自由へと至る、更なる力とならん……

>道化師のペルソナ「マガツイザナギ」を獲得しました





今の声は―――
以前、どこかで耳にした声が頭に響く。
握手に応じた蓮を見てエボルトが驚いた表情を浮かべていたが、そんなこと頭からすっぽ抜けていくほどの衝撃だった。

新たに自分の内に宿った力を確認する。
道化師……アルカナで表すならば、愚者の逆位置とでもいったところか。
自分のコードネームのジョーカーがワイルドカードや切り札の意味を表すならば、道化師はババ抜きで使うピエロのジョーカーだろう。
なるほど、この胡散臭いエボルトという男を表すにはこれ以上ないアルカナだ。

おそらくこれは、ベルベッドルームの住民から自分へ向けた干渉があったとみるべきだろう。
牢獄の主と、双子の看守の顔を思い出す。
おそらく殺し合いの主催から彼らへも何かしらの干渉があったはずだが、ひとまず無事ではあるようだ。
確かに蓮の記憶にある彼らは、こんなことをされて黙っているようなタマではない。

今までは、自分の内に宿るペルソナをアルセーヌ以外全て奪われ、ベルベットルームへの接触も禁じられていた。
だが―――蓮のワイルドの力そのものがなくなってしまったわけではない。
ならば、複数のペルソナを獲得できた今ならきっと―――



「……いつまでぼーっとしてんだ?そろそろ放してくれると嬉しいんだが。」

そう言われてハッとする。自分が彼の手を握ったままだったことに今更気づいた。
こちらを白い目で見るエボルトと目が合う。慌てて手を放す。
これは流石に恥ずかしい。エボルトが男性だと頭ではわかっていても、体は成熟した女性なのだ。
少し顔に血が上るのを感じた。そんな熱を冷ますように、時間が経って冷めたコーヒーを体に流し込む。
そうして自分を落ち着けながら、改めて獲得したペルソナのステータスを確認した。

―――これは……。スキルもステータスも、アンバランスなほど攻撃に偏ったペルソナだ。
その威力はアルセーヌの比ではない。だが、アルセーヌが覚えているラクンダやスクンダのような、搦手を一切覚えていない。
スキルの燃費も劣悪だ。何も考えずにこのペルソナを乱用したら、蓮のSPはあっという間に尽きてしまうだろう。
ハイリスクハイリターン。正しく『切り札』として、要所要所で最小限に使っていく必要があるだろう。

「ま、俺の話したいことはそんなとこだ。上に戻って、今のうちにもう少し休んどけ。」

そう言うとエボルトはコーヒーメーカーとカップを片付けはじめる。
連のほうがルブランに詳しいから自分が片付ける、ととっさに主張する。
だが蓮の方がダメージがデカいのだからさっさと休めと言われてしまい、正論すぎて何も言えず屋根裏部屋へと帰ってきた。


947 : 逆境の中で研ぎ澄まされし爪 ◆1qfrROV/6o :2021/10/04(月) 07:00:38 TTWt37ZY0



「―――うう、ん……。」

「……すまない、起こしたか。」

部屋に戻ってくると、ちょうどしんのすけが目を覚ましていた。
下で長時間会話をしていたから、起こしてしまったのかもしれない。
申し訳ないことをした。

「大丈夫だゾ……。それより、お兄さんたちは……。」

そう言ってしんのすけが起き上がろうとするので、慌てて止めた。
自分たちの中で一番重症なのはしんのすけなのだ。無理して起き上がらなくていい、と伝えてもう一度寝かせ布団を被せる。
喉が渇いたとのことなので、基本支給品から水を取り出してしんのすけに飲ませた。

「俺たちは下でコーヒーを飲んでいただけだ。アイツもすぐに戻ってくる。」

シロもまだ眠っている。
自分たちもまだ体を休めるつもりだから、もう少し寝ていると良い。
そう伝えると、しんのすけは安心したように目を閉じて再び眠り始めた。

それを見届けて蓮も椅子に戻る。
……新しいペルソナと、仮面ライダーの力。これで今度こそ―――
目を瞑りそこまで考えたところで、蓮の意識は再び闇に落ちていった。



【D-6 純喫茶ルブラン/朝】

【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[身体]:孫悟空@ドラゴンボール
[状態]:体力消耗(大)、貧血気味、右手に腫れ、左腕に噛み痕(止血済み)、悲しみと決意、睡眠中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、水水肉@ONE PIECE、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本行動方針:悪者をやっつける。
0:もう少しだけ休むゾ……。
1:逃げずに戦う。
2:困っている人がいたらおたすけしたい。
3:シロは怪物なんかじゃないゾ……。
[備考]
※殺し合いについてある程度理解しました。
※身体に慣れていないため力は普通の一般人ぐらいしか出せません、慣れれば技が出せるかもです(もし出せるとしたら威力は物を破壊できるぐらい、そして消耗が激しいです)
※自分が孫悟空の身体に慣れてきていることにまだ気づいていません。コンクリートを破壊できる程度には慣れました。が、その分痛みも跳ね返るようです。
※名簿を確認しました。
※気の解放により瞬間的に戦闘力を上昇させました。ですが消耗が激しいようです。


948 : 逆境の中で研ぎ澄まされし爪 ◆1qfrROV/6o :2021/10/04(月) 07:02:41 TTWt37ZY0
【エボルト@仮面ライダービルド】
[身体]:桑山千雪@アイドルマスター シャイニーカラーズ
[状態]:疲労(大)
[装備]:トランスチームガン+コブラロストフルボトル+ロケットフルボトル@仮面ライダービルド
[道具]:基本支給品×2、ピーチグミ×4@テイルズオブディスティニー、ランダム支給品1〜3(シロの分)、累の母の首輪、煉獄の死体
[思考・状況]
基本方針:主催者の持つ力を奪い、完全復活を果たす。
1:もうちょい休む。ここまでボロボロだと、拠点の移動が必要かもな。
2:蓮としんのすけを戦力として利用。
3:首輪を外す為に戦兎を探す。会えたら首輪を渡してやる。
4:有益な情報を持つ参加者と接触する。戦力になる者は引き入れたい。
5:自身の状態に疑問。
6:アーマージャックを警戒。できればどこかで野垂れ死んで欲しい。
7:出来れば煉獄の首輪も欲しい。どうしようかねぇ。
8:ほとんど期待はしていないが、エボルドライバーがあったら取り戻す。
9:シロに使い道はあるか?
10:今の所殺し合いに乗る気は無いが、他に手段が無いなら優勝狙いに切り替える。
[備考]
※参戦時期は33話以前のどこか。
※他者の顔を変える、エネルギー波の放射などの能力は使えますが、他者への憑依は不可能となっています。
またブラッドスタークに変身できるだけのハザードレベルはありますが、エボルドライバーを使っての変身はできません。
※自身の状態を、精神だけを千雪の身体に移されたのではなく、千雪の身体にブラッド族の能力で憑依させられたまま固定されていると考えています。
また理由については主催者のミスか、何か目的があってのものと推測しています。
エボルトの考えが正しいか否かは後続の書き手にお任せします。
※ブラッドスタークに変身時は変声機能(若しくは自前の能力)により声を変えるかもしれません。(CV:芝崎典子→CV:金尾哲夫)
※参加者がそれぞれ並行世界から参加していると気付きました。

【雨宮蓮@ペルソナ5】
[身体]:左翔太郎@仮面ライダーW
[状態]:ダメージ(中)、疲労(大)、体力消耗(中)、SP消費(小)、無力感と決意
[装備]:煙幕@ペルソナ5、T2ジョーカーメモリ+ロストドライバー@仮面ライダーW
[道具]:基本支給品×2、スパイダーショック@仮面ライダーW、無限刃@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-、ランダム支給品0〜2(煉獄の分、刀剣類はなし)
[思考・状況]基本方針:主催を打倒し、この催しを終わらせる。
1:もう少し休んでおこう。
2:まずは仲間を集めたい。
3:エボルトと行動。信用した訳ではないが、共闘を受け入れる。
4:しんのすけの力になってやりたい。一緒にシロを元に戻す方法を探そう。
5:体の持ち主に対して少し申し訳なさを感じている。元の体に戻れたら無茶をした事を謝りたい。
6:アーマージャックは必ず止める。逃げた怪物(絵美里)やシロを追いかけて来た男(耀哉)も警戒。
7:新たなペルソナと仮面ライダー。この力で今度こそ巻き込まれた人を守りたい。
[備考]
※参戦時期については少なくとも心の怪盗団を結成し、既に何人か改心させた後です。フタバパレスまでは攻略済み。
※スキルカード@ペルソナ5を使用した事で、アルセーヌがラクンダを習得しました。
※参加者がそれぞれ並行世界から参加していると気付きました。
※ルブランのコーヒーを淹れて飲んだためSPが少し回復しました。
※翔太郎の記憶から仮面ライダーダブル、仮面ライダージョーカーの知識を得ました。
※エボルトとのコープ発生により「道化師」のペルソナ「マガツイザナギ」を獲得しました。燃費は劣悪です。
※現在の使用可能ペルソナ及びスキルは以下の通りです。
○アルセーヌ(愚者)
・エイハ   ・マハエイハ
・スクンダ  ・夢見針
・ラクンダ  
・スラッシュ 
○マガツイザナギ(道化師)
・木っ端微塵斬り  ・ヒートライザ
・マハジオダイン  
・チャージ     
・コンセントレイト 

【シロ@クレヨンしんちゃん】
[身体]:犬飼ミチル@無能なナナ
[状態]:疲労(中)、鬼化、空腹、服がボロボロ、ワイヤーで拘束中、睡眠中
[装備]:
[道具]:
[思考・状況]基本方針:??????
0:……
1:人間を喰らう
2:■■■■■や■■家の人たちを…どうするんだっけ
3:ご主人様(耀哉)を攻撃した胴着の男(しんのすけ)は許さない
[備考]
※人間の言葉をそれなりに話せるようになりました。
※ヒーリング能力の寿命減少は、肉体側(人間)に依存します。
※犬飼ミチルを殺人鬼と勘違いしています。
※鬼化により記憶の一部が欠落しつつあります。


949 : ◆1qfrROV/6o :2021/10/04(月) 07:05:25 TTWt37ZY0
投下を終了します。


950 : 名無しさん :2021/10/04(月) 07:23:12 acmjaQXw0
投下乙…といいたいところなんですが
すみません、時系列朝は放送後の時系列になってしまうので、放送が投下されるのを待つべきなのでは


951 : ◆1qfrROV/6o :2021/10/04(月) 07:30:45 TTWt37ZY0
申し訳ありません、放送の時間を失念しておりました。
時間帯を早朝に変更し、休息時間についてのエボルトのセリフを以下に変更します。

「おいおい、そんな顔しなくてもいいだろ?ま、寝てたのは30分くらいってとこだな。もう完全に陽が昇っちまってるよ。」

ご迷惑おかけしました、申し訳ありません。


952 : ◆ytUSxp038U :2021/10/06(水) 15:50:30 CzoVfmN.0
投下乙です
道化師のアルカナにマガツイザナギ、おまけに『共犯者』と足立を連想させるワードでニヤリとしました。
コーヒーを淹れる件がマスターとのコープをちゃんと進めているのが分かって好き。

投下します


953 : BLADE CHORD ◆ytUSxp038U :2021/10/06(水) 15:52:18 CzoVfmN.0



――絡み付く闇を切り裂いて





「……街に向かうか」

北上するか、南下するか。
思考の末、承太郎が選んだのは後者だった。

兎のような参加者を殺した者が、橋で待ち伏せしている可能性も十分ある。
しかし必ずしも獲物が引っかかるとは限らない。
60人もの参加者が会場で散り散りになっているのなら、何人かは件の橋を渡るだろう。
だが一体いつ、どのタイミングで渡るかは承太郎にも姿を見せていない殺害者にも分かり様は無い。
ひょっとしたら待ち伏せてはみたものの、数時間経っても蟻一匹現れない、なんて事も無いとは言い切れないのだ。
それよりならば街の方が、参加者が集まる可能性は高いと見て向かったかもしれない。
無論承太郎とて100%の確率で殺害者が街へ行ったとは断定できないが、現在彼は一人きり。
エジプトでの旅を共にした仲間がいれば、二手に別れる選択肢もあっただろうが、いない人間を頼っても仕方ない。

(どのみちグズグズしてる暇はねぇ)

ここで自分が悩むのに時間を掛ければ掛けるほど、対処が遅れ被害は広がる。
故に決断は迅速に、だ。
元々桁外れの体力を持つ燃堂の体に、身体能力を強化する支給品を装備しているのだ。
さほど時間は掛からずに街へ到達できるだろう。

北上を選ばなかった事へ僅かに後ろ髪を引かれながらも、街へ向けて駆け出した。

結論から言えば承太郎は判断を間違えた。
何せ彼が追跡しようとしていた殺害者、鵜堂刃衛は南ではなく北へ向かったのだから。
承太郎が選択した南とは反対の方向だ。
北上した刃衛は、打倒主催者を誓う木曾とゲンガーの二名と戦闘となり、最終的には木曾に相打ちに持ち込まれバトルロワイアルから退場した。

もしもの話ではあるが、承太郎が北上を選んでいた場合、木曾の命は助かったかもしれない。
人斬りとして名を馳せた刃衛とて、艦娘とポケモンのコンビに近接最強のスタンドを持つ承太郎が加勢しては流石に分が悪い。
上手く行けば三人で押し切り刃衛を討伐、倒せずとも撤退に追い込む事だって可能だったはず。
その後は無事に情報交換を済ませ、共に殺し合いを阻止する仲間となれただろう。
加えてC-8エリアにいた伊藤開司らとも合流し、その中には未来の時間軸において出会うはずのスタンド使い、広瀬康一もいた。
更には島を移動した先にいたエーリカ・ハルトマンとも互いに敵意が無いことを確認し、大人数のグループを結成できた。

これらは全て、現実には起こらなかった話。
だが承太郎を責めるのは酷と言うものだろう。
如何なる時も冷静沈着な承太郎と言えども、未来を見通すことまでは不可能なのだから。


◆◆◆


954 : BLADE CHORD ◆ytUSxp038U :2021/10/06(水) 15:53:35 CzoVfmN.0
暴風が巻き起こる。
剣と剣が幾度もぶつかり合い、甲高い金属音が絶えず打ち鳴らされる。
正々堂々の試合、などと言う生温いものではない。
片方の命が奪われるまで終わらない、正真正銘の殺し合い。
はしゃぐ子供の声や、のんびりと散歩する老人の姿こそが相応しい公園は、今や二人の剣士による戦場と化していた。

「そォらよっ!」

威勢良く振り下ろされるは志々雄真実の剣。
筋骨隆々の見た目に違わず、豪快な一撃だ。
ただ単に力強いだけではない。
一瞬で距離を詰める速さと、的確に頭部を狙った正確さが合わさっている。

「フン……」

一刀両断の惨き目を回避したのは、薙ぎ払うかのように振るわれた魔王の剣。
相手の剣を真正面から受け止めるのではなく、横這いから叩きつけるように振るい狙いを逸らす。
一瞬、がら空きとなった胴体へ、剣を握るのとは反対の手を翳した。

「マヒャド」

至近距離から志々雄へ叩きつけられる冷気の嵐。
鍛えに鍛えた彫像の如き肉体が、氷に覆われた。
だがそれも僅かな間のみであるのは承知している。
この男に氷結呪文の効果はほとんど期待できないが、ほんの少し動きを止めるには問題ない。
生者の命を刈り取るように、右手の剣を首目掛けて振るった。

「ハッ、甘ぇな」

首を落とされる寸前に、体の自由を取り戻した志々雄は頭部を軽く後方へと引く。
刃は薄皮を切り裂くに留まり、少量の血が魔王の頬に降りかかった。
瞬間、鋭い痛みが頬に走る。
まるで火花が顔に散ったかのようだった。

何の痛みだと考える余裕は無い。
敵の剣の切っ先が、こちらの顔面目掛けて突き出された。
己の持つ剣を顔の前に動かし串刺しになるのを防ぐ。
刀身へ走る衝撃に、柄を掴む手の力が僅かに緩む。
力の拮抗が崩れた好機に、志々雄は突き刺す力を強めた。

「チッ」

舌打ちと共に魔王は脚へ力を込める。
前方から掛かる力に逆らわず、むしろ志々雄の腕力に身を任せるかのように体全体を後方へと動かした。
吹き飛ばされる、否、後方へと大きく跳躍し志々雄と距離を取る。
二人の戦闘の余波を受け揺れ動くブランコを背に、魔王は構え直す。
急接近し懲りずに剣を振るうだろうと思われた志々雄は、魔王の考えに反して近寄って来ない。
剣を持つのとは反対の左手、その人差し指を魔王へ向けた。
もしやこいつも魔法を使うのかと警戒する魔王は、次の瞬間目を見開いた。

「なに…!?」

左手の指の爪がパカリと開いた。
まるで口や瞼を開けるかのような自然な動作で、だ。
古今東西、爪が開閉する生物など見た事も聞いたことも無い。
開いた爪からは赤黒い塊が連続して魔王へ放たれた。
それは血だ。咄嗟に身を捩らせ魔王に命中しなかった血が地面や周りの遊具に飛び散り、グツグツと溶かしていく。


955 : BLADE CHORD ◆ytUSxp038U :2021/10/06(水) 15:54:42 CzoVfmN.0
血の連射を魔王はひたすら動き回って回避する。
斬り落としながらの接近も考えたが、血によって武器が溶かされる可能性を考えると実行へ移すのに躊躇した。
しかし打つ手は有る。
この身体の持ち主、ピサロの力は魔法を放つだけではない。

「ハッ!」

勢いを付けて上空へ跳び上がる。
見下ろす先には所々が破壊された公園と、相対中の敵。
地上の志々雄へ剣を振るうと、不可視の刃が放たれる。
しんくう波。ピサロが使う特技の一つ。
弾丸の如き血とすれ違いながら、志々雄を八つ裂きにせんと襲い来る刃。
それを前にしても志々雄に焦りは無い。

「丁度いい、試してやるか」

『HEAT MAXIMAM DRIVE』

デイバックから取り出した小型の物体を己の得物、エンジンブレードに装填する。
この剣がただ振り回すだけではない、何かの仕掛けが施された武器である事は手にした時点で分かっていた。
魔王との斬り合いの最中もエンジンブレードを注意深く観察し、柄の部分を折り何かを装填する仕掛けに気付いた時、ふと思い浮かんだのは自分の支給品。
銃の癖に「炎刀」という名のぶざけた武器以外に、用途不明の機械。
説明書によるとソレ単体では何の役にも立たないとのことだが、エンジンブレードのギミックでピンと来た。
試すのに躊躇は無い。もし見当違いな考えだったとしても別に良い。
敵の攻撃に対処する術は他にもあるのだから。

「壱の秘剣―――」

剣から聞こえた奇妙な声。
同時に刀身が紅く染まり力が宿る。
血の赤ではない、自身を阻む全てを焼き潰す、炎の紅だ。
己の予想が当たった事へ満足気に笑みを浮かべ、その力を解放した。

「焔霊!!」

炎を纏った刃が、真空の刃を斬り払った。
しんくう波を掻き消した炎は勢いを弱めず、魔王を焼き殺さんとする。

「マヒャド!」

冷気の嵐が吹き、魔王に到達する前に炎は勢いを殺された。
残る炎は剣を振るい掻き消す。
これも破壊の剣という得物を手にしているからこそ出来たこと。

夜の戦場において囂々と燃え盛る剣はやがて勢いを弱め、消えて無くなる。
同時にエンジンブレードから小型の機械が排出された。

この機械の名はヒートメモリ。
ドーパントへの変身に用いるメモリと違い、ダブルドライバー専用として開発された6本のメモリの内の一つ。
通常であればダブルドライバーかロストドライバーに装填するのだが、それとは別の使い道もある。
それがエンジンブレードへの装填だ。
エンジンブレードはエンジンメモリというギジメモリ以外にも、仮面ライダーWが使用するメモリを装填し、その力を付与する機能が搭載されている。
以前、エンジンブレードの本来の使い手である照井竜がフィリップからサイクロンメモリを渡され、風を纏った刃でウェザードーパントを攻撃した事があった。
同じように、ヒートメモリの力で今度は炎をブレードに纏わせたのだ。

「クク、中々面白い仕掛けじゃねぇか」

排出されたヒートメモリをキャッチし、志々雄は口の端を吊り上げる。
本来志々雄の秘剣は愛刀である無限刃が無ければ発動できない。
その問題はエンジンブレードとヒートメモリという、志々雄の生きた時代には無かった未知の道具によって解決した。


956 : BLADE CHORD ◆ytUSxp038U :2021/10/06(水) 15:55:41 CzoVfmN.0
「ま、一回ごとに出し入れしなきゃならんのは、ちと面倒だがな」

志々雄のボヤきに魔王は反応を見せない。
ただ地上に降り立ち、再度しんくう波を放った。
今度はメモリを装填する隙など与えないとばかりに迫る刃。
対する志々雄は嘲るような笑みを浮かべ、魔王へと駆け出す。
馬鹿正直に突っ込んだ所で切り刻まれるだけだが、魔王の攻撃を甘んじて受け入れる気は一切無い。
しんくう波は目には見えないが、視界に映る情報のみに頼り切るだけなら血で血を洗う幕末の時代を志々雄は生き延びれなかっただろう。
空気の揺れ、肌に伝わる殺意、そして己の直感。
それらを総動員し、どこから不可視の刃が襲い来るのかを察知した志々雄は身を大きく捩らせる。
夜風を受ける巨体はまるで軟体動物の様に、人間ではあり得ぬ動きでしんくう波を躱した。
全身の関節を無視したかのような挙動に魔王が驚くより早く、エンジンブレードが端正な顔を叩き斬らんと迫る。
魔王もまた破壊の剣を以て迎え撃たんとし、

「うおっ!?」

突如聞こえた声に魔王、そして志々雄も動きを止めた。
声を発したのは彼らではない。
となると第三者が戦闘を隠れて見ていた事になる。
声のした方には、公園にある一際巨大な木の物陰。
その一部が削られているのは、志々雄が躱したしんくう波が標的を見失った結果、あらぬ方向に当たったせいだろう。
二人が意識を集中すれば、確かにそこから何者かの気配がする。
志々雄にエンジンブレードを渡した女と違い、偶然しんくう波が当たるまで二人に気配を気取られなかった。
先程の女よりも手練れなのは間違いない。

「よう、コソコソしてねぇで出て来いよ。遠慮しないで混ざったらどうだ?」

まるで友人を飲みに誘うかのような気軽さで、志々雄は隠れている人物に声を掛ける。
声色には隠す気も無い殺意と、幾分かの期待があった。
最終的には自分以外の全参加者を始末するとはいえ、その過程を存分に楽しむ気でいるからだ。
どうせ殺すなら、強者との斬り合いを味わってから殺すに限る。
当然取るに足らない弱者だろうと容赦はせず、道端の石ころを蹴り飛ばすかのように排除するが。

「……」

同じく魔王も戦闘を一時中断し、隠れている者の出方を窺う。
相手が何者にせよ、漁夫の利を狙うつもりで機会を窺っていたのなら、逆に志々雄諸共殺す気だ。
彼は志々雄とは違い、戦闘自体に喜びなど一切感じていない。
魔王にとって参加者の排除とは、優勝し願いを叶えるまでの過程に過ぎないのだから。
ラヴォスへの復讐が姉の蘇生に変わっただけで、その道程に無数の屍を作り上げるのは変わらない。

二人から殺意を向けられた人物は、やがて観念したのかゆっくりと姿を現した。


957 : BLADE CHORD ◆ytUSxp038U :2021/10/06(水) 15:56:46 CzoVfmN.0
「どーもー、通りすがりのお巡りさんでーす」

出て来たのは二人よりも背の低い中年の男。
角刈りと太い眉毛の男は志々雄たちへ軽く手を上げて見せた。

「団地のおばちゃん達から、隣の公園でバカ騒ぎしてる奴らがいるって通報受けてやって来ましたー。
 しっかしいかんよー君達、こんな夜中にチャンバラごっこなんぞしちゃ。夜更かししたいんなら帰ってこち亀でも見なさいって。今なら24時間限定で読み放題だから」
「テメェが警官?その面でか?それなりに笑えるぜ、冗談にしちゃあよ」
「おまっ、両さんdisるんじゃねーよ。ったく、大体なんだよその恰好は?ターちゃんの真似事ですかコノヤロー。
 だったら今すぐジャングルに帰れ。ここはコンクリートジャングルであってお前の故郷のジャングルじゃっ――!?」

最後まで言い切らず背後へと跳ぶ。
今の今まで立っていた場所へは鈍い銀の刀身、エンジンブレードが叩きつけられていた。
ペラペラと訳の分からないお喋りを続ける男を強引に黙らせた志々雄は、相手の反応に期待通りだと笑う。
急接近による不意打ちにも見事に反応した男は、刀に手を掛けこちらを見据えている。
おちゃらけた警官ではない、歴戦の剣士を髣髴とさせる雰囲気だ。

「口の減らないただのオヤジって訳じゃあねぇようだな」
「…へっ、騒音騒ぎに露出だけじゃ済まなくなっちまったぞ、おい」

自称警官の男の雰囲気が変わり、魔王も構え直す。
三人の剣士が睨み合い、それぞれの得物を握る手に力が込められた。
警官…銀時は全く持って面倒な事になっちまったと内心で愚痴りながらも、瞳は志々雄と魔王の一挙一動を見逃すまいとしている。

が、戦いの火蓋が切って落とされる事は無かった。


「待ちな。テメーらに聞きたい事がある」


更なる乱入者によって、高められた緊張に水を差された。

新たに公園を訪れたのは一人の男。
その風貌は、如何にもとしか言いようが無い程に凶悪だった。
ガッチリとした体格や、醸し出される威圧感は、男が凶悪な指名手配犯と言っても誰もが納得しそうなくらいである。
水を差されて少々不機嫌な志々雄や、相も変わらず無表情で殺意をぶつける魔王。
一方の銀時は男の凶悪な風貌に、「パコさんの仲間か?」と少々ズレた感想を抱いた。

「北の道路に転がっていた仏、ありゃテメーらが殺ったのか?」

男の質問に銀時らは揃って首を傾げる。
どうやら誰かが既に殺されていて、自分達はその犯人と疑われているらしい。
だとすれば大間違いだ。

「知らねぇな。生憎こっちはまだ一人も殺せてないんでね」
「そこの筋肉モリモリマッチョマンの変態に同意するみてーでアレだが、俺でもねーよ。
 誰が犯人かの推理は俺じゃ無く、コナンくん辺りにでも任せといてくれや」

志々雄と銀時とは違い、魔王は無言。
わざわざ答える必要も無い、どうでも良い事だからだろう。
バトルロワイアルに自分と関係のある者は誰一人として参加していない。
だから誰が死のうとどうでもいい。
精々、一人殺す手間が省けたと思うくらいか。


958 : BLADE CHORD ◆ytUSxp038U :2021/10/06(水) 15:57:38 CzoVfmN.0
三者三様の反応を見比べながら、承太郎は考える。
自分が首輪を回収した死体は背後から刃物で首を斬られていた。
現在、公園にいる三人の男は全員が剣や刀を所持し、容疑者に当て嵌まる。
その内二人は無罪を主張し、残る一人は無言。
太眉の男が持つ刀は兎のような参加者殺害の凶器と一致しそうではあるが、当の本人はこちらの質問に困惑している様子が見られた。
ほとんど裸の大男も恐らく嘘は言っていない。
今も殺気を駄々洩れにしている人物が、殺し一つを誤魔化すのも不自然だろう。
残るは無言の男だが、彼は承太郎の質問などどうでもいいとばかりに殺気をぶつけて来る。
これでは話もままならない。

「まぁ、そんな話はどうでもいいじゃねぇか」

承太郎の思考を打ち切るかのように、志々雄が口火を切る。
志々雄にとって誰がどこで死んだかなど興味はない。
そもそも死んだということはソイツは所詮弱者、わざわざ気にかけてやる必要がどこにあるというのか。
志々雄が興味を示すのは生者のみ。

「ノコノコと殺し合いに顔を出して来たんだ。腕に覚えがねぇ訳じゃあ無いんだろ?」
「テメェ…」

隠す気も無い殺気を叩きつけられ、承太郎も自然と臨戦態勢に入る。
太眉の男はまだしも、後の二人は間違いなく殺し合いに乗っている。
兎のような参加者を殺したか否かに関わらず、承太郎が倒さなければならない相手ということ。
ならばする事は一つしかない。

「始める前に確認しときてぇ。そっちのアンタは殺し合いに乗って無いのか?」
「あたりめーだろ。両さんの体で人殺しなんてしちまったら、ジャンプを永久追放されちまうよ。ゴリラも新連載はマガジンでやる羽目になっちまう。
 五等分の銀さんでも始めろってのか?」
「…言ってる意味は理解できねーが、今はそれだけ分かりゃあいい」

戦意が公園に満ち溢れる。
殺し合いを潰さんとする者、殺し合いに勝ち残らんとする者。
決意、野望、願い。それぞれを秘めた男たちが、互いの獲物を睨みつける。

「ピサロだピンサロだか忘れちまったが、んな力んでちゃあ色男が台無しだぜ?」

鞘から刀を抜き放ち、銀時は普段通りの軽口を叩く。
こういった場面でも己のペースは崩さない、それもまた銀時が持つ強さの証。

「フン……」

返答代わりに軽く鼻を鳴らし、魔王は破壊の剣を構える。
敵が誰だろうと関係無い、老若男女人間化け物問わず己の願いの犠牲となるべし。

「俺の機嫌に水を差したんだ。その分楽しませろよ?」

エンジンブレードを肩で担ぎ、首をゴキリと捻る。
弱肉強食、最後に立っているのは強き者だけ。
そしてそれは自分だと、その目が語っていた。

「御託はいらねぇ。来な」

バッサリと切り捨てる承太郎の言葉。
それが始まりの合図となった。
朱雀が、破壊の剣が、エンジンブレードが、スタープラチナが。
それぞれの持つ力が振るわれ――激突した。


959 : BLADE CHORD ◆ytUSxp038U :2021/10/06(水) 15:58:45 CzoVfmN.0
「オラァ!」

先手を打ったのは承太郎のスタープラチナ。
数あるスタンドの中でも屈指の破壊力を誇る拳を、邪悪を叩きのめすべく放つ。
最初の一撃で終わりならばそれに越した事は無いが、そう簡単に済む相手でない事は承太郎にも分かっていた。

「シャァッ!」

志々雄を殴り飛ばすはずの拳はエンジンブレードによって阻まれた。
スタープラチナの拳はパワー・スピード共にただの人間が真っ向から対処できるものでは無い。
にも関わらず志々雄はそれをやってのけた。

「あん?何だそりゃ?妖術か何かか?」

承太郎の傍らに立つ拳闘士を、志々雄は訝しげに見やる。
その反応から相手はスタンド使いでは無いと悟った。
ホル・ホースのエンペラーのように武器の形状をしたスタンドなのかとも思ったが、違うらしい。
スタンド使いでないというのにスタンドを認識し、あまつさえ生身でスタンドに干渉した。
自然と導き出される答えは一つ、スタープラチナがボンドルドに何らかの細工をされている。

だが今はそれらの事情は後回しだ。
スタンド使いで無くとも、殺し合いに乗った参加者を野放しにするつもりは微塵も無い。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!」

一発でダメなら二発、まだ足りないなら三発、それでも無理なら四発と連続して殴りつける。
その全てが志々雄には届かない。
棒切れを振り回すかのような気安さでエンジンブレードを巧みに操り、拳を全て防ぐ。
柱の男の肉体、十分な硬度と切れ味を持つエンジンブレード、何より志々雄自身の技量。
それら三つが合わさったからこそ可能な芸当だった。

「悪くねぇ拳だ。安慈ともいい勝負が出来るぜ」

余裕綽々の志々雄に承太郎の視線が険しくなる。
金で雇われたスタンド使い共とはひと味もふた味も違う強敵を前に、されど臆さず拳を放つ。



ガキンガキン、と金属同士が幾度もぶつかり合う。
刀と大剣、互いの得物が衝突する度に打ち鳴らされる音が響く。

片や攘夷戦争数多の敵を斬り伏せてきた白夜叉。
片や人生の大半を復讐の為の魔道に費やしてきた魔王。
技量も扱う武器の性能も互いに引けを取らない。

「オォッ!」
「っと…!」

爆発的な加速で踏み込み、銀時へと剣を振るう。
後退する余裕は無いと判断し、真正面から刀を叩きつけた。
ビリビリとした衝撃が互いの腕に走る。
僅かに魔王が押された。志々雄との戦闘による疲労がある分、不利は否めない。

両手で柄を握り締め、銀時は魔王の剣を押し返す。
魔王の腕が跳ね上がり、刀を阻む物が無くなった。
刀は吸い込まれるように魔王の胴体へと向かって行く。

鮮血は――無い。
銀時の腕も同様に跳ね上がり、魔王への一撃は届かなかった。
斬られる正にその直前、魔王は銀時の手首を蹴り上げ狙いを大きく逸らしたのだ。

手首の鈍い痛みに構うより先に、銀時は強引に地面を転がりその場を離れる。
顔を上げると目に入ったのは、自分へ向けて剣を振り被る魔王の姿。
一息くらい付けさせろよと胸中で愚痴りながら、朱雀を叩きつけた。


960 : BLADE CHORD ◆ytUSxp038U :2021/10/06(水) 15:59:59 CzoVfmN.0
「つくづく面白い体してやがるぜ!柱の男ってのはよ!」

志々雄の五指の爪が開き、ミミズのようなモノが飛び出して来る。
それは血管だ。
まるで鞭のようにしなりながら承太郎へと迫る。
先端から零れる血が地面を溶かすのを目撃し、スタープラチナでの迎撃を一旦中断した承太郎は生身のまま血管を躱す。
外套の恩恵により身体能力が強化された今なら、これくらいは可能である。

無論、回避のみに専念するつもりは無い。
スタープラチナで手頃な遊具を引っこ抜き応戦に入った。
長い2本の板、シーソーをスタープラチナの怪力で振り回せば立派な凶器と化す。
時には志々雄の血を防御し、その隙を縫ってシーソーを叩きつける。

シーソーがグズグズと溶かされ、或いはエンジンブレードで斬られ使い物になら無くなれば、
今度はブランコを引き千切る。
鎖鎌を扱うかの如く鎖を振り回し、左右同時に志々雄へ放つ。
だが届かない。志々雄の剣技、柱の男の身体能力、その両方に容易く対処される。

嘗て、ジョセフ・ジョースターと死闘を繰り広げた柱の男エシディシ。
その肉体が現在、ジョセフの孫へと牙を剥いた。



同じく、人間と魔王の戦闘も激しさを増していた。
互いの体には幾つもの切り傷が生まれているが、そのどれもが致命傷には程遠い。
しかしどちらが不利かは明白だった。

(クソッ!やり辛ぇ…!)

内心で悪態を零しながら、数えるのも馬鹿らしくなってきた魔王の攻撃を防ぐ。
戦って分かったが、両津の体は思ったよりも動かし辛い。
確かに両津は超人的な身体能力の持ち主であり、その点は銀時にとっても有難い。
だが両津は銀時の体と比べると背が低く、腕も短い。
これが単なる移動や食事など日常の動作ならば、それ程問題視はしなかっただろう。
しかし戦闘となれば話は別。
刀の届く範囲が普段と違う、視線の高さが普段よりも低い。
これらの微妙な違いが、戦闘時に悪影響を齎している。

加えて、両津がどれだけ高い身体能力を有していようと人間であることに変わりは無い。
対する魔王の肉体は正真正銘の魔族。
根本的な部分で肉体の力強さも頑丈さも、両津の上を行く。

それでも魔王とここまで渡り合えているのは銀時自身の技量があるから。
その拮抗もここにきて崩れた。

「バイキルト」

呪文を唱え、銀時に斬り掛かる。
再度防ごうとするが、重い。
一撃一撃がこれまでの比では無く重い。
歯を食い縛って刀を構えるが、そんなものは無意味とばかりに攻め立てられる。

「クッ、ソ…!」

攻撃力を2倍にする魔法の効果とは露知らず、銀時から苦悶の声が出る。
横薙ぎを防ぐと腕が痺れ、次いで振るわれた剣への防御が遅れる。
咄嗟に身を捩るも躱し切れず、胴体に鋭い痛みが襲い来る。
尤もこれしきでは死に至らない。

だが次の一撃はそうはいかなかった。

斜め上から振り下ろされる剣。
防御。無理だ、腕の痺れで一手遅れた。
回避。それも不可能、こちらも僅かに遅い。

対処が間に合わなかった銀時の左肩から刃が食い込み、そのまま心臓へ到達せんと駆け抜けた。

「ぐ、ああああああああああっ!!!」


961 : BLADE CHORD ◆ytUSxp038U :2021/10/06(水) 16:01:03 CzoVfmN.0
その光景を、その悲鳴を承太郎も認識していた。
ろくな自己紹介もしていないが、この場で最も信用できる男が死にかかっている。
何とかしなければ手遅れになってしまう。
そう分かっていても、救出には行けない。
迫る血管を引っぺがした遊具で防ぎ、舌打ちする。

「余所見してんじゃねぇぞ!!」

その通りだ。
志々雄を相手に他へ気を回す余裕は皆無。
ならばどうする。あの男は助からないと諦め、今は自分の戦いのみに集中するか?
違う。たった一つだけ手はある。

(使うしかねぇか…!!)

正直言って、この状況で本当に使用できるかは分からなかった。
肉体が変わろうとスタンドを使えたとはいえ、何らかの不具合が起きている可能性は十分ある。
だがこの状況で使わないという選択肢は存在しない。
僅かな疑念を振り払い、その名を叫ぶ。


「スタープラチナ・ザ・ワールド!」


時が止まる。

志々雄が、銀時が、魔王が。
虫の鳴き声やゆるやかに吹く夜風さえも止まり、辺り一面静寂に包まれる。
承太郎だけに侵入を許された世界。
とはいえ長くは続かない。
時は止められた、されど感覚で分かるのだ。

(長くは止められねぇようだな…)

恐らくだが、今の自分では2秒が限界。
DIOとの戦いでの時よりも、短い時間しか止めることが出来ない。
燃堂の体となった影響か、これもまたボンドルドによってスタンドに干渉されたのが原因なのか。
後者であれば気に喰わないが納得はできる。
時を止めるというのはシンプルに強力な異能だ。何の枷も付けないというのは、バトルロワイアルをワンサイドゲームにしかねない。

それはともかく、僅かな時間の中で承太郎が取れる手段は一つ。
スタープラチナの拳を全力で叩き込んでやる、ただそれだけだ。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
 オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
 オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァーーーーーッ!!!!!」

スタープラチナのラッシュが志々雄にブチ当たる。
時間停止中の攻撃故に防御も回避も不可能な、無防備な状態。
そこへスタープラチナの拳を何十発も受けては、柱の男の肉体と言えどただでは済むまい。

そして、時は動き出す。

「ガ――――ッ!!!?!!」

何が起きたのかも理解できず、悲鳴を上げる事も叶わず、
志々雄は大きく吹き飛ばされる。
公園の柵を突き抜け、アスファルトの上を通過し、道路の反対側にあった商店のガラス戸をぶち破っても止まらず、
その姿は見えなくなった。


962 : BLADE CHORD ◆ytUSxp038U :2021/10/06(水) 16:02:08 CzoVfmN.0
「なんだと…!?」

剣が動かない。
心臓を斬り裂くはずの刃は、到達する前に止められている。

「ぐぎぎぎぎぎ…!!!」

驚愕する魔王が見つめる先には、血走った目で鼻息を荒くする銀時。
自身の体に食い込んだ剣を、心臓に到達させないように、左手で刀身を掴んでいた。
掌からは血が溢れるが、お構いなしに力を込める。
一体全体どこにそんな力があるのか。
そもそもバイキルトで強化された攻撃を素手で受け止めるなどあり得ない。

「貴様は…」

信じられない者を目の当たりにする魔王。
それはこの戦闘中に、彼が初めて見せた隙だ。
銀時はその隙を見逃すような愚鈍ではない。

「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

朱雀を振るう。
魔王の回避も防御も許さない、まさしく神速の一撃。
今この瞬間に限り、人間の一刀が魔族の反応を超えた。

「ガッ…!?」

魔王の胴体に刻まれる赤い線。
単なる悪足掻きとするには、その一撃は重過ぎた。
ピサロの肉体を以てしても、意識が奪われそうな激痛が魔王を襲う。
土壇場でのクリティカル攻撃、そこへ加わる朱雀の効果による4倍のダメージ。
この状況でクリティカルを引き出すのは銀時の幸運、と言うよりは悪運によるものか。

痛みに苛まれながらも魔王は倒れない。
こんな所で死ぬわけにはいかないと己に喝を入れ、剣を持つ手に力を込める。

「オォォォラァァァッ!!」

衝撃が頭部へ走ったかと思えば、視界がグルグルと回転する。
志々雄と戦っていた承太郎に殴り飛ばされた、と理解する間もなく公園内の藪に頭から突っ込んだ。

(あれで仕留められたとは言えねーが…)

志々雄も魔王も大ダメージこそ与えただろうが、確実に倒したとは言えない。
出来れば追撃してトドメを刺しておきたいが、今は斬られた男の治療が先だ。
助けてやる程の間柄では無いが、このまま見捨てては目覚めが悪い。
制服の上着を脱ぐと、斬られた箇所をキツく縛り付ける。
これだけでは気休めに過ぎないが、何もしないよりはマシだ。
どこか治療できる場所へ運ぶ必要がある。

「あー…クソッタレ。両さんの体を傷モノにしちまったよ。これじゃあジャンプオールスターズで銀魂だけハブられちまう」
「ここじゃあ治療もままならねぇ。アンタを別の場所に運ぶから、少し黙って大人しくしてな」
「……助かるぜ兄ちゃん。顔はパコさんでも、心は仏だよこりゃ」

背負った銀時の意味不明な言葉を聞き流し、承太郎は夜の街へと駆け出した。





963 : BLADE CHORD ◆ytUSxp038U :2021/10/06(水) 16:03:11 CzoVfmN.0
「ベホマ」

藪の中から光が発せられたかと思えば、男が一人、五体満足で立ち上がる。
回復呪文により傷を癒した魔王は、公園には自分以外誰もいなことを確認した。

「…逃がすものか」

吹き飛んで行った巨漢はともかく、後の二人はまだそう遠くへは行っていないはず。
怪我人を連れ歩いているなら、追いつく事は十分可能だ。

疲労はあるがまだ戦える。
ならば問題無しと、獲物の追跡を開始した。





自分に圧し掛かる瓦礫を鬱陶し気にどかし、志々雄はのっそりと立ち上がる。
全身が痛むが傷が徐々に塞がっているのも分かる。その内全快するだろう。

「何をされた?」

首を傾げ自分が吹き飛ばされる瞬間を思い出す。
気が付けば、本当に気が付いたら体中に痛みが走り殴り飛ばされていた。
敵が何らかの小細工をしたのだろうが、それが具体的にどんなものなかが分からない。
超高速で拳を放った、などとは次元が違う、もっと得体の知れないナニカを食らったかのような気持ち悪さだ。

「それに何で追って来ねぇ?」

殴るだけ殴ってトドメを刺さずに放置とは、幾らなんでも判断が甘い。
そこまで考えが回らないような間抜けとは思えなかったが、実際待ってみても、あの男がやって来る気配は無い。
何故そんな真似をしたのか疑問だが、直ぐに答えが分かった。
きっと奴は太眉の自称警官を助けるのに夢中で、こちらを放置せざるを得なくなった、そんな所か。
他人に構ってトドメを刺さずに退くとは、志々雄に言わせればくだらないの一言に尽きる。

(まぁ、抜刀斎ほど甘い野郎じゃあ無さそうだがな)

戦闘を通じてハッキリと分かった。
あの男は拳の一発一発に明確な殺意を籠めている。志々雄を倒す為なら、殺す事になっても躊躇はしない。そんな容赦の無さがあった。
そういった手合いは志々雄としても大歓迎だ。抜刀斎の掲げる不殺などと言う温い戯言よりも、遥かに好感が持てる。

借りはキッチリ返しておきたいが、率先して探す気はほとんどない。
お互い生きていればいずれまた会えるだろう。ならばその時に改めてどちらが勝つかを決めるまで。
仮に向こうが自分と再会せず死んだとしても、それはそれで構わない。
決着を付けられないのは残念と言えば残念だが、所詮はその程度の弱者だったというだけのこと。

「何にしろまだ始まったばかりなんだ。精々楽しませてもらうぜ」

月の光を背に悠々と戦場を去って行く。
弱肉強食。志々雄が掲げる絶対の世の理。肉体が変わろうと、それだけは決して変わらなかった。


964 : BLADE CHORD ◆ytUSxp038U :2021/10/06(水) 16:04:06 CzoVfmN.0
【F-8 街/黎明】

【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】
[身体]:燃堂力@斉木楠雄のΨ難
[状態]:疲労(中)
[装備]:ネズミの速さの外套(クローク・オブ・ラットスピード)@オーバーロード
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2(確認済み)、童磨の首輪
[思考・状況]基本方針:主催を打倒する。
1:男(銀時)を治療できる場所まで連れて行く。
2:まずは自分に協力してくれる者を探す。
3:主催と戦うために首輪を外したい。
4:自分の体の参加者がいた場合、殺し合いに乗っていたら止める。
5:DIOは今度こそぶちのめす。
6:天国……まさかな。
[備考]
※第三部終了直後から参戦です。
※スタンドはスタンド能力者以外にも視認可能です。
※ジョースターの波長に対して反応できません。
※ボンドルドが天国へ行く方法を試してるのではと推測してます。
※時間停止は現状では2秒が限界のようです。

【坂田銀時@銀魂】
[身体]:両津勘吉@こちら葛飾区亀有公園前派出所
[状態]:疲労(中)、左肩に斬傷(大)、左手に切り傷、出血中(応急処置済み)
[装備]:朱雀@クロノトリガー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:元の体を取り返す
1:今はこの兄ちゃん(承太郎)に任せるしかねぇか…
2:主催者を倒す。殺し合いには乗らない
3:神楽を探す
[備考]
※メタ知識が制限されています。参戦作品(精神・身体両方)に関しては、現状では「何となく名前に見覚えがある気がする」程度しか分かりません。
こち亀に関してはある程度覚えているようです。

【魔王@クロノ・トリガー】
[身体]:ピサロ@ドラゴンクエストIV
[状態]:疲労(中)、魔力消費(中)
[装備]:破壊の剣@ドラゴンクエストシリーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:優勝し、姉を取り戻す
1:逃げた男たち(承太郎と銀時)を追って殺す
2:剣を渡した相手(ホイミン)も、後で殺す
[備考]
※参戦時期は魔王城での、クロノたちとの戦いの直後
※ピサロの体は、進化の秘法を使う前の姿(派生作品でいう「魔剣士ピサロ」)です

【志々雄真実@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-】
[身体]:エシディシ@ジョジョの奇妙な冒険
[状態]:疲労(中)、ダメージ(大)、再生中
[装備]:エンジンブレード+ヒートメモリ@仮面ライダーW
[道具]:基本支給品、炎刀「銃」@刀語、ランダム支給品0〜1(刀剣類はない)
[思考・状況]基本方針:弱肉強食の摂理に従い、参加者も主催者も皆殺し
1:参加者を探して殺す
2:首輪を外せそうな奴は生かしておく
3:戦った連中(承太郎、銀時、魔王)を積極的に探す気は無い。生きてりゃその内会えんだろ

【ヒートメモリ@仮面ライダーW】
熱き記憶を宿したガイアメモリ。
Wのソウルサイドをヒートサイドに変化させる他、エンジンブレードに装填し力を付与する事も可能。


965 : ◆ytUSxp038U :2021/10/06(水) 16:04:43 CzoVfmN.0
投下終了です


966 : 名無しさん :2021/10/06(水) 17:50:08 M0vdFEfw0
投下乙です
志々雄にエンジンブレードとなると、やっぱそれも来るのか…
志々雄、肉体も装備もむっちゃ恵まれてるな
両津の身体は身体能力高いしそんなに不便ないかと思ったら、意外とそうでもないんだな
調べてみたら銀さん177cm、両さん161cm…そりゃやりづらいわ
大魔王からは逃げられないなんて言葉もあるが、ジャンプ主人公の二人は果たして逃げられるだろうか


967 : 名無しさん :2021/10/07(木) 00:21:03 Ji0/faqY0
投下乙です
素晴らしいバトルでした!


968 : ◆OmtW54r7Tc :2021/10/07(木) 20:35:06 ynJehUSE0
ジューダス予約します


969 : ◆OmtW54r7Tc :2021/10/07(木) 22:16:59 ynJehUSE0
投下します


970 : (何かある)かもしれない探索でいけ ◆OmtW54r7Tc :2021/10/07(木) 22:18:59 ynJehUSE0
名簿を確認したジューダスは、南の砂浜を更に南下していた。
そうして眼前に見えてきたのは、海。
勿論泳ぐためにきたのではない。
彼が用があるのは、この海の先である。
地図によれば、この殺し合いの場は海に囲まれた島であり、周囲は海で囲まれ、そこから奥がどうなっているのか不明だ。
故にジューダスは、島の外周部近くに自分が配置されたことと、とある支給品の存在から、海の先に何があるのかを調べることにしたのだ。

「…無駄足に終わらなければいいのだがな」

そういいながらジューダスは、とある支給品を取り出した。
それは、ハートのマークが刺繍された袋だった。

「ラブボム…本当にこんなもので空を飛べるというのか?」

支給品の説明にはこうあった。

【ラブボム】
その名の通りハムスターのラブがつまった爆弾よ♡
これを食べると、天使になれるの♡
天使になると、空を飛べたり、悪しき力や魂を察知できたり、お得なことがたっくさん♡
さあ、グイっといって、レッツエンジェル♡

「……………」

正直、胡散臭いことこの上ない。
そもそも、爆弾なのに食べるとはどういうことだ。
身体の中で爆発し粉々…という結末はシャレにもならない。
とはいえ、この支給品の効果を当てにして海までやってきたのは事実。
いつまでも躊躇していても仕方ない。
覚悟を決め、ジューダスはラブボムを…食べた。

「これがラブの味というわけか…甘ったるいな」

それは、甘党のジューダスでも胸やけしてしまいそうなくらい、甘ったるかった。

「く…身体が…熱い…!」

続いて、身体が熱くなってくる。
自分の身体が、変りつつあるのを感じていた。


そうして身体に変化が起き始めてから数分後。
ジューダスは、天使になっていた。


971 : (何かある)かもしれない探索でいけ ◆OmtW54r7Tc :2021/10/07(木) 22:19:42 ynJehUSE0
「…なるほど、確かに天使、だな」

背中には翼が生え。
頭には星のブローチのようなものがついたハチマキのようなものが。
そしてそのハチマキにくっつく形で、頭上には天使の輪が浮いている。
黒いゴシックドレスに身を包んだ神崎蘭子の姿とは対称的な装いだが、それがある意味蘭子の魅力を引き立てていた。

「なるほど、この翼で飛ぶのか」

しかしジューダスはそんな自身の姿に頓着することなく変化した身体の性能を確かめていた。
女にされたのに比べれば、天使の輪や羽が付加されるのはまだマシで、今更怒る気にもなれなかった。

「コツはつかんだ。さっそく行くとするか」

空を飛ぶ練習をある程度こなすと、ジューダスは会場の外へと続く海へと飛び出していった。
そうして出発してすぐは、順調に海を渡っていた。
しかし、異変が起こるのにそう時間はかからなかった。

「高度が…下がっていく?」

ジューダスの身体は、海の奥へ進めば進むほど、その高度を下げていた。
なんとか上に飛翔しようとしても、重力で押さえつけられたかのように上昇ができない。
やがて、曲げていた足が地面に着水する直前辺りで、元来た道を引き返す。
そうすると、今度はどんどん高度が上がっていき、無事に砂浜へと戻ってきた時には最初の高度に戻っていた。
砂浜に戻ってきたジューダスは、ため息をつく。

「…なるほど、飛翔高度に制限がかかっているのか」

ジューダスは天使になり、空を飛ぶことが可能になった。
しかし、その高度には制限がかかっており、地面から一定以上離れての飛行はできなくなっていた。
そして、この「地面」とは、どうやら「水」は含まないらしい。
海の底を地面として認識するらしく、海の水深が上がるほど高度が下がっていったというわけだ。

「飛翔高度は…2メートルといったところか。無駄足に終わったが、制限が分かっただけよしとするか」

海の調査が失敗に終わったジューダスは、気を取り直して地図を見る。

「…気のせいか?最初に見た時にはなかった表記があるように見えるが」

地図の変化に疑問を感じつつ、ジューダスは海を離れて北上した。


972 : (何かある)かもしれない探索でいけ ◆OmtW54r7Tc :2021/10/07(木) 22:20:31 ynJehUSE0


××××××××××××××××××××××××××××××××

それから数時間。
北上したジューダスは、G-4の橋付近に来ていた。

「…この数時間、やはり地図の情報が増えている」

ジューダスは考える。
地図に増える情報は、一斉に増えるわけではなく、不規則的に、ポツポツと増えている。
その増え方の間隔に、一定性はないように思える。
だとしたら、考えられるのは…

「誰かが足を踏み入れることで、浮かび上がる…か?」

確証はないものの、頭に浮かんだ仮説をもとに改めて地図を見る。
ここから西の森には、特に施設が増えている様子はない。
仮説が事実なら、誰も足を踏み入れていないか、あるいは何もないか。
しかし、南西エリアにポツンと存在しているそれなりの規模の森に、何もないとは思えない。
当初は北の街を目指していたし、そこに増えた葛飾署という施設も気になるが…

「何かあるかもしれない…探っておくか」

こうしてジューダスは、未だ何が眠っているか未知数の森へと足を踏み入れるのだった。


【G-4 森/黎明】

【ジューダス@テイルズオブデスティニー2】
[身体]:神崎蘭子@アイドルマスター シンデレラガールズ
[状態]:健康、天使化
[装備]:エターナルソード@テイルズオブファンタジア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない
1:森に何かあるか探る
2:自分の名前を知る意味でも、リオン・マグナスかジューダスを見つけたい
3:もしもリオン・マグナスが過去の自分ならば歴史改変を阻止するために守る
4:できれば短剣も欲しい
[備考]
参戦時期は旅を終えて消えた後
名簿上の自分の名前がリオン・マグナスとジューダスのどちらか分かっていません
天使の翼の高度は地面から約2メートルです
天使化により、意識を集中させることで現在地と周囲八方向くらいまでの範囲にいる悪しき力や魂を感知できるようになりました。


【ラブボム@とっとこハム太郎3 ラブラブ大作戦でちゅ】
ハムスターのラブを集めて作られた、デビハムを倒すための切り札
これを食らったデビハムは、ラブパワーを浴びて天使となった
ラブボムを食らった天使の技能というのは特に描写がないが、同じ天使であるエンジェルちゃんを参考にすると、「空を飛べる」「悪しき力(作中ではデビハム)の居場所を感知する」がいった能力が使えると思われる。


973 : ◆OmtW54r7Tc :2021/10/07(木) 22:21:05 ynJehUSE0
投下終了です


974 : 名無しさん :2021/10/07(木) 22:41:06 Ji0/faqY0
投下乙です
うん、そりゃ「ボム」って名前のものを食べるのは躊躇するよな……
天使蘭子は、これはこれでありですね


975 : ◆OmtW54r7Tc :2021/10/07(木) 23:11:49 ynJehUSE0
すみません、細かいとこですが、ラブボムの出展、ラブラブ大作戦じゃなくてラブラブ大冒険でした


976 : ◆5IjCIYVjCc :2021/10/10(日) 15:17:10 .vnN7mpg0
投下します。


977 : ◆5IjCIYVjCc :2021/10/10(日) 15:17:59 .vnN7mpg0
ロビン、ゲンガー、ハルトマンと別れたカイジ、神楽、康一の3人は現在、西に向かって進んでいた。
彼らの目的地はD-2とD-3の境目にある施設、聖都大学付属病院だ。
3人はそこで、もしもの時の治療手段の確保を目的としている。

そして、カイジ達病院に向かおうとしている3人は今、地図とコンパスを頼りに急ぎ足で歩いている。
彼らの現在地は、C-6とC-7の境目に差し掛かる道路の上だ。
その場所からは右側に森、左側に街が見える。

そんな3人の下に、一つの人影が近づいてきていた。

「…………あっ!二人とも、一旦止まってください!森の方から誰か近づいてきています!」
「何だって!?」
「本当かネ康一!」

康一が叫び、他の2人も足を止める。

これまで、彼らはただ単に歩いていたわけではない。
康一が持つスタンド『エコーズ』をACT1で上空に飛ばし、それで周囲の様子を俯瞰しながら進んでいた。
これで危険人物が進行方向にいないかサーチしながら進もう、ということだったのだ。

だが、彼らのいる場所からは森や街の中はたくさんの木々や高い建物に遮られてよく見えなかった。
何より距離がそれなりに離れていることもあり、その中を確認することができなかった。

しかし今回、その森の中から人が現れたことにより、康一はその存在に気付き声を上げた。
これに関しては、あらかじめ備えておいた対策が功を制したと言えよう。

「……男は真っ直ぐこっちに向かってきていて、このままでは接触は避けられないと思います。多分、奴は僕たちの存在に気付いていると思います」
「………俺もそいつを確認できた。康一の言う通りみてえだな」
「私にも見えたネ。あの青い服の男のことアルか?」
「ええ…その通りです」

最初に発見した康一だけでなく、カイジと神楽もその男の姿を認識する。

「それから…どこか、調子が悪そうです。まるで、さっきまで誰かと戦ってたけど負けてしまったかのような…」
「どういうことネ?あいつは誰かに襲われたってことアルか?」
「だが、あいつが殺し合いに乗っていて、誰かに襲い掛かって返り討ちにあったとも考えられるんじゃねえか?」
「……確かに、僕が見た感じではその辺りの判断はつけられないと思います」

まだ少し離れている分、2人がよく見えない分の情報を康一がエコーズの目で確認し伝える。
一応それで、男がダメージを負っているらしいことは知れた。
しかし、殺し合いの場である以上カイジが推測したようなことも考えられる。

「絶対に俺たちの味方になってくれるとはまだ言えねえんじゃねえか………?」
「けれども、もし味方になってくれるなら治療してあげるべきではないでしょうか?」
「……どうするネ、マダオ、康一。あいつも一緒に病院に連れて行くアルか?」

3人は、その男を自分たち一行の中に入れるかどうか悩んでいた。
もし味方になってくれる者であれば、自分たちの行き先でもある病院に連れていき、然るべき治療を受けさせるべきだろう。
だが、もし殺し合いに乗っているような者であれば、下手に近づいて自分達が攻撃されたら、病院に向かうための時間のロスにもなってしまい問題だ。
だからといって、見つけてしまった以上ただ放置するわけにもいかない。


「……やっぱり、あれを使って確認するしかねえな」

ならば、その男も自分たちの存在に気付いている以上、彼らが男に対して使える手段は1つだけだった。


978 : ◆5IjCIYVjCc :2021/10/10(日) 15:18:40 .vnN7mpg0

◇◇◇◆

「よかった……!人がいた…!」

男は、カイジ達の姿がはっきりと見える距離まで来て、とても嬉しそうな様子を見せる。
ダメージを負った体で、とても辛そうな様子も見せながら、男は感激していた。

「ねえ!君たちは殺し合いに乗って…」
「そこを動くな…!!」
「え?」

男が3人に向かって話書けようとしたその瞬間、カイジが男に向かって叫んだ。
カイジは同時に、手に持ったシグザウアーの銃口を男の方へと向けた。
カイジの言葉を聞くと同時に、男の顔から喜びが消える。
そして、銃を向けられたこともあり、言われた通りにその足をその場で止めてしまう。


「ちょ、ちょっと……なんでいきなりそんなこと言うの?僕は助けてほしいだけなのに…」

男は先ほどまでとは打って変わって、今にも泣きそうな、悲しそうな顔を見せる。
そこには明らかに、3人を非難しているかのような感情も含まれていた。

「いや………確かにいきなり拒絶して悪かった。お前は今、俺たちが殺し合いに乗っているかどうか聞こうとしたんだろ?」
「う、うん……」
「先に言っとくが俺たちは殺し合いに乗っていない……。だが、俺たちはお前が殺し合いに乗っているかどうか分からない…」

カイジは男に対して、何故自分が先ほどの発言をしたのかを説明する。
同時に、先ほど男に向けた銃も下げ、あくまで自分たちに今すぐ攻撃する意思は無いことを伝えようとする。

「そんな……僕は殺し合いなんてしたくないよ!」

当然、それだけで納得されることはない。
カイジの言葉に対し男は怒っている様子を見せる。

「ああ…俺たちもそれを信じたい。だけど、その前に確かめたいことがあるんだ」
「確かめたいこと?」

カイジはそう言うと、一つのカメラを取り出した。
そして、それを男の方へと向けてシャッターを切った。

「え?な、何?何で写真を撮るの!?」

カイジの行動に対し、男は驚きうろたえた様子を見せる。


「………何だこいつは?」
「カイジさん、どうでした?」
「私たちにも見せてほしいネ」

カイジは先ほどカメラで撮影した写真の中身を確認する。
神楽と康一もカイジの下へと近づき、同じく写真を確認しようとする。

「ねえー!何をやっているのー!?」
「ごめんね。もうちょっとだけ待っていてね」

3人の行動に疑問を浮かべる男に対し、康一がまだ待機を望むことを伝える。
康一は相手の様子から精神年齢は低めだと判断して、少し優しめの口調で話した。


「こいつは何だ…?スライムか何かか………?」
「…何にしろ、こいつはゲンガーみたいに人間じゃなかったみたいネ」
「………本体が写っているわけではありませんし、スタンドとかではないと思いますね」

困惑した様子の男をよそに、カイジらはカメラで撮った写真を確認する。

そこには、紫とも、ピンクともとれる体色をした不思議な生き物が写し出されていた。

「ねえ!どうしたの!?何を見ているの!?今ゲンガーって聞こえたよ!?ひょっとして会ったの!?」
「………ん?ゲンガー?」

男のその発言に、カイジが反応した。

「………おい!ちょっとお前に聞きたいことがある!お前、ひょっとしてポケモンじゃないのか!?」

1枚目の写真を確認し終えたカイジは、男に対して質問を投げかける。

「え!?何で分かったの!?そのカメラに何かあるの!?」
「………なるほど、そうだったか」

男はかなり驚きながらも、カイジの質問に肯定の答えとなる言葉を発する。
それを聞いたカイジはどこか納得した様子を見せる。


979 : ◆5IjCIYVjCc :2021/10/10(日) 15:20:00 .vnN7mpg0


カイジは先ほど、自分の所持品であるおくれカメラを使用した。
この場にあるおくれカメラには、何故か本来のこの道具には無い性質がある。
この場においては、本来の場所の過去を写す効果ではなく、被写対象の人物の過去を写す道具となっている。
その効果を利用して、男の正体と過去を探ったのだ。
今回写した写真には、7時間前(殺し合いが始まる前)の男の様子が写し出されている。

1枚目の7時間前の写真から、男が人間ではないことを知った。
そして、先ほどゲンガーの名前に反応したことから、相手がポケモンであると推測した。
推測通り、その予想は当たっていたのだ。

「ねえ!君の名前は何て言うの!?」
「えっと…僕はメタモンだけど…」
「そうか分かった!これからまた写真を撮るぞ!」
「え!?何で!?」
「いいから待っているネ!」

男――メタモンに対してもう少し待つよう指示した3人は続いて5時間前のメタモンの写真も撮影した。


………この時彼らには、少し油断というものがあったのかもしれない。
1枚目の写真だけでは、メタモンが殺し合いに乗るような存在かどうかは分からない。
だけども、これまでのメタモンの様子から、彼は危険人物ではないのだろうと思っていた。
前回出会ったゲンガーのように、彼も協力者になりえる存在になることを心の隅で期待していた。
ただ念のため、他の写真も確認して、自分たちの予感を正しいものにしようとしていた。

だからこそ、2枚目の5時間前の写真を見た時、彼らは大いに驚かされることになった。


「……………はあ!!?」
「こ、これは一体どういうことネ!!?」
「そ、そんな……何故だ!?」


そこには、今のメタモンの身体のはずである金髪に青い服の男が、全身を紫色の鎧に身を包んだ謎の人物の前で首を切断された状態で死んでいる光景が写っていた。

◆◇◇◇

「おい……どういうことだ…!何でお前が死んでいるんだ!!」

驚きのあまり、カイジは手に持ったおくれカメラの写真をメタモンの方へと見せる。

「え!?そ、その写真をどうやって撮ったの!?」

本来、撮影されるはずの無い写真を見たメタモンは驚いた様子を見せる。
だが、そこには写真にあるように自分が死んでいるという光景に対する驚きは無かった。

「お前…一体何があったネ!?こいつに殺された後に生き返ったアルか!?」
「いや…殺し合い中に生き返りなんて認められるのか!?ましてや…首を切断されて首輪と頭が離れてしまっているのに!」

写真を見たことで混乱しているのは、カイジ・神楽・康一の3人も同じであった。
あまりにも予想だにしなかったその光景に、軽いパニック状態に陥っている。

「それにこの鎧野郎…ひょっとして仮面ライダーじゃねえのか!?」
「え!?こいつが!?仮面ライダーは聖剣に認められた正義の味方のはずじゃあ…」
「いや、確かハルトマンは聖剣関係ない仮面ライダーだったはずネ。確か魔法使いとか言って…」

写真から得られる情報の思いがけなさにより、3人は自分達が得られた情報を上手く整理できていなかった。


「………………なるほどね。君たちは知ってしまった、ということなのかな」

他が混乱している最中、メタモンは何かを理解したのかそう呟いた。
その言葉に反応し、3人も一旦会話を止め、メタモンのいる方へと振り向いた。
その時のメタモンは、とても冷たい目をしていた。


「……………おい、何でお前が『それ』を持っている?」

カイジ達が少し目を離した隙に、メタモンはあるものを手に持っていた。
それを見た時、3人はさらに驚かされることになった。
メタモンが持っていたものは、一振りの剣であった。

それも…2枚目の写真の中でメタモンを殺害したはずの仮面ライダーが所持していた紫色の剣であった。

「へんしん」


980 : ◆5IjCIYVjCc :2021/10/10(日) 15:21:58 .vnN7mpg0

『HENSHIN』

メタモンはもう片方の手に持ったサソリ型のデバイス、サソードゼクターをその剣【サソードヤイバー】にはめ込む。
それと同時にメタモンの、金髪で青い服の男…リンクとしての姿を鎧で包んでいく。
そこに現れたのは、身体に走るチューブが特徴的な、重厚な鎧姿の戦士であった。

だが、この瞬間のメタモンの"へんしん"は、まだ終わってはいない。


(……!何か、まずい!!)

突然の出来事に一瞬呆けていた康一だが、何か悪い予感を感じ取った。
彼は慌てて聖剣ソードライバーと取り出し、これを腰に装着する。
『ライオン戦記!』
そして、ライオン戦記WR(ワンダーライドブック)も取り出し、これをベルトの中央部に挿し込んだ。

「変身!」

『流水抜刀!』

「はあッ!」

康一が水勢剣を横に一閃し、剣から聖なる水のエネルギーが解き放たれる。


それと同時に、メタモンはサソードゼクターの尾の部分を強く押した。

「キャストオフ」

『CAST OFF』

『CHANGE SCORPION』

電子音声が鳴り響くと同時に、鎧の戦士に更なる変化が現れる。
全身を覆っていた重厚な装甲が吹き飛んだのだ。

吹き飛ばされた装甲は、前にいる3人の下へと弾丸のように高速で飛んでいく。
だが、水勢剣から放たれた水のエネルギーが、それらの装甲を防ぐ。
それと同時に、康一の全身をその水のエネルギーが包み、彼もまた鎧の剣士へとその姿を変える。

『ライオン戦記!』

『流水一冊!』

『百獣の王と水勢剣流水が交わる時 紺碧の剣が牙を剥く!』


康一が変化した鎧の剣士『仮面ライダーブレイズ ライオン戦記』は剣の一閃で防ぎきれなかった分の装甲を、その体を盾にして他の2人に当たらないように防いだ。

「くっ…!」

だが、ブレイズとなっても、その装甲によるダメージを完全に軽減することはできなかったようだ。
状況がよければ、自分のスタンドも活用してこの装甲の弾丸によるダメージをより軽微なものにできたかもしれない。
しかし、今回はエコーズをまだ離れた場所の監視目的で遠くに飛ばしており、呼び戻すことは間に合わなかった。
装甲の弾丸に押されてしまったブレイズは、少しだけ後ずさりをさせられてしまう。

「……………おいおい、マジかよ……!」
「こいつは……まさか!」

先ほどのほとんど一瞬の出来事についていけていなかったカイジと神楽は、恐る恐る康一の背越しにメタモンのいる方向へと顔を向けた。


そこに立っていたのは、2枚目の写真でメタモンであるはずの男を殺した紫の仮面ライダーと思わしき人物であった。

◇◆◇◇

けれども、現状に驚かされていたのは、カイジ達3人だけでなかった。


「………え!?き、君も『へんしん』できたの!?」

紫の仮面ライダー――サソードに変身完了したメタモンは、ブレイズへと姿を変えた康一を見て声を上げる。
この声には、驚きだけでなく喜びの感情も含まれているようであった。

「…でも、今やらなきゃいけないことは!」

ほんの一瞬だけ、メタモンはどこか呆けていたかのような感じとなっていた。
けれども、彼はすぐに体勢を戻し次の行動へと移ろうとしていた。


981 : ◆5IjCIYVjCc :2021/10/10(日) 15:23:13 .vnN7mpg0


「………はっ!エコーズ!あいつを止めるんだ!」

メタモンがほんの一瞬隙を見せた時、康一も何とか自分の体勢を持ち直すことができていた。
上空に行っていたエコーズを近くへと呼び戻し、メタモンの方へと向かわせる。
同時に、自らは水勢剣をその手に構え、少し離れたメタモンのいる方へと走り出した。

康一はもはや、先ほどとは打って変わって、メタモンのことを敵とみなしていた。
写真から得られた情報はまだ脳内で整理がついていない。
だが、現在の相手の様子から、また先ほど装甲を飛ばす攻撃があったこともあり、相手が自分達に対して敵対行動をとろうとしていることは判別できた。
何故こんなことになってしまったのかはまだ考える余裕が無いが、ただこの瞬間は戦わなければいけないことは判断できた。

しかし…

「クロックアップ!」

『CLOCK UP』

メタモンが言葉を叫び、電子音声が鳴ったその瞬間、メタモンが変身したサソードがその場から消えた。
それは、康一がエコーズと共にメタモンのいた場所へと辿り着いた時と同時であった。

「な!?」

康一とエコーズはメタモンに対し同時に攻撃を仕掛けたのだが、突如その場から消えられたことでそれは空振りに終わる。

「な、何が起こった!?」

メタモンが消えた時の様子は、カイジと神楽も目撃していた。
辺りを見渡し、彼らは見失った相手の姿を探す。

「………あっ!マダオ!あいつは後ろネ!」
「えっ、後ろ!?」


その時、神楽はほんの一瞬だけ未来を見た。
それは彼女が持つモナド(のとある世界におけるレプリカ)が見せた『未来視(ビジョン)』であった。

彼女が見たもの、それは自分たちの後ろに先ほどの紫の仮面ライダーが立っている光景であった。
見ることが出来たのはその場面だけであったが、彼女はそれを元に行動することができた。
神楽は、相手が自分たちの後ろにいるのはおそらく不意打ちを狙ってのことだろうと思った。

そして神楽はとっさに後ろを振り向きながら、カイジを守るように出てモナドを体の前で構えた。

次の瞬間のことであった。


『カシャ』

「……………へ?」

カメラのシャッターが切られる音が聞こえた。
それは、カイジが持つおくれカメラの音では無かった。
そして、その音が聞こえると同時に、ある異常が起きていた。


神楽の持つモナドが、まるで初めからこの世界に存在していなかったかのように、その手の中から消え失せていた。


◇◇◇◆

「お、おい…神楽、お前、モナドはどうした?」
「分からないアル!さっきまで確かに持ってたはずなのに!」

まさかの出来事に、カイジと神楽は狼狽する。
だが、どれだけ彼らが慌てて探そうとしても、モナドが見つかるようなことはなかった。

「み、皆さん!あいつの手を見てください!」

康一がカイジと神楽の向こう側を指さしながら叫ぶ。
その言葉に従い、2人はその方向へと顔を向ける。

そこには確かに、神楽が未来視で見た通り、紫の仮面ライダー…サソードへ変身したメタモンが確かにそこにいた。
その手には、変身に使った剣の他にも、また別の品がもう片方の手に握られていた。

「そのカメラ……まさか、それもひみつ道具か!?」

メタモンが持っていたものは、黒色をした一台のカメラであった。
そのカメラはカイジが持つおくれカメラと違い、一見だと何の変哲もないような普通のカメラに見えた。
だが、先ほどカメラのシャッター音が聞こえると同時にモナドが消えた以上、その現象を引き起こしたものはそのカメラであるとしか考えられなかった。
そんなカメラを見たカイジに、自分が所持するものと同じひみつ道具の一種なのかという考えが浮かぶ。


982 : ◆5IjCIYVjCc :2021/10/10(日) 15:25:25 .vnN7mpg0


「ええ……何で僕がこっちに来ることが分かったの?君たちもさっきの奴みたいに見えていた…わけじゃないのかな?」

メタモンはそんなカイジの言葉を無視し、相手が何故自分のことを追えたのかについて疑問を持つ。


「おい!待ちやがれ!」

今度はカイジの方が神楽を自分の後ろに置いて守れる位置に移動し、メタモンの前に躍り出る。
おくれカメラは放るように地面の左手に置く。
そして、先ほど出会ったばかりの時のようにメタモンに向けて手に持ったシグザウアーの銃口を向けて両手で構える。
そこには、その時とは違い相手に対してはっきりとした怒りと敵意が存在していた。

「今度は脅しじゃすまさねえぞ…!」

カイジは自分が手に持つ中の引き金に指をかける。
明らかにメタモンが自分達に対して何かしたのが確かな以上、少なくとも何らかの行動は起こさなければならないと判断した。
彼はそのまま躊躇なく、その銃を相手に向けて発砲した。


だが、その弾丸は相手の命を奪うどころか、ダメージを与えるまでに至らなかった。
少々開いた距離からでは、初めて使う銃で真っ直ぐ弾を飛ばすことはできない。
銃弾は狙いを外れて相手の横をただ通り過ぎる結果となる。

「うわっ!」

けれども、発砲されたことに驚いたメタモンは自分が手に持つカメラを庇うような動きをとりながら怯んだ。

「エコーズACT2!!」

その僅かな隙に、メタモンから見て神楽とカイジの後方にいた広瀬康一は攻撃を仕掛けようとした。
康一はエコーズをACT2へと変え、メタモンの方へと向かわせる。
エコーズのパワーはACT3の方が高いのだが、今この瞬間は射程距離が足らず、せめてACT1よりはパワーの高いACT2で向かわせる。
同時に、康一もブレイズに変身した状態のままメタモンのいる方へと走って向かう。

「このっ…!」

だが、メタモンもまた康一が動き出していることに気付き、それに対抗するための行動をとる。
メタモンはカメラを持つ手を自らのデイパックの中に入れ、カメラの代わりに別の物を取り出す。

「えいっ!!」

メタモンは康一に向かってそれを投げつけた。

(…!? これは一体!?)

相手が投げつけてきた物を見て、康一は虚をつかれる。
それは、円柱の体に細い手と半球の頭だけが取り付けられた、まるで子供が作ったガラクタのような人形であった。
戦いの最中に突如視界に入ってきたその珍妙な物体に、彼もまた意識を乱される。

(何だか分からないけど、こんなもの…!)

一瞬驚かされはしたが、これだけで康一は自分の突撃を止めようとしない。
真っ直ぐに飛んできたその人形を、康一のエコーはぶつかる直前に思いっきり払いのけた。
その人形は、康一達から見て右手の方向へと飛ばされる。
次の瞬間であった。


『ドオン!!』

人形…ジャスタウェイは爆発した。

「うわあっ!」

ジャスタウェイの爆風が一番近い位置にいた康一を襲う。
エコーズにより少し距離を離されたことで爆発の直撃は免れていた。
しかし、発生した爆風はブレイズの装甲越しでもその大きな衝撃は康一のエレンとしての身体に響く。

「うおぉっ!?」
「きゃあっ!?」

爆発の影響があったのは康一だけではない。
彼の後ろにいたカイジと神楽もまた爆風の衝撃により怯んでしまう。


「こいつ、爆弾まで………!」

康一は爆弾に怯んだものの、他の2人よりも先に、すぐに体勢を立て直して相手の方に向かい直る。

だが、彼はメタモンの行動を見て我が目を疑うこととなる。

(………な!?こ、こいつ、何をしているんだ!?)

爆風によって相手の姿が視界から一瞬遮られ、向き直したその時、
メタモンは仮面ライダーサソードの変身を解除し、リンクの姿へと戻っていた。

(でも、だからと言って、ここで止まるわけには……!)

何故わざわざ強い力を得られるはずの仮面ライダーへの変身を解除したのか、
人の姿になられてはこのまま剣で斬ろうにも躊躇の気持ちが生まれてしまう。
だが、相手の行動を理解できなくとも、康一は勢いをつけれメタモン相手に何とか斬りかかろうとする。


983 : ◆5IjCIYVjCc :2021/10/10(日) 15:26:14 .vnN7mpg0


「へんしん!」

メタモンは、先ほどサソードに変身した時と同じ言葉を発した。

「な!?」

発した言葉の通り、メタモンの姿は青服の男から別の姿へと変わっていった。
だが、それは先ほどまでのサソードの姿ではない。
それは、銀の体色をしたサソリのような異形の姿の怪物、スコルピオワームだ。

「ぐっ…!」

それでも、康一の勢いは止まらず、水勢剣の刃がスコルピオワームの身体を切る。
けれども、ワームとしての身体は普通の人間のものよりも硬く、致命傷には至らない。
康一の攻撃は、スコルピオワームの体表の上で火花を散らしながら浅い斬り傷を作るにとどまる。


「クロックアップ!」

またもやメタモンは、「へんしん」の時と同じく、先ほども叫んだ言葉を発する。
そしてやはり、それと同時にメタモンは瞬時に康一の目の前から消える。

「ぐあっ!?」

しかも今度はただ消えるだけでなく、康一の頭に大きな衝撃が走る。
康一が感じたその衝撃は、拳によって殴られたかのようなものであった。
ブレイズの仮面越しで威力は軽減されていたが、それでも多少の衝撃は届いていた。
その衝撃により、康一は右の方に転倒してしまう。

「あの野郎…!まさか、またやる気か!」

その光景は、怯みから立ち直ったカイジも目撃していた。
ほんの少し前とは姿形は全く異なるものとなっていたが、相手が発した言葉から先ほどと同じ行動をとるつもりでないかという推測が頭に浮かぶ。
「クロックアップ」と叫んだ時、メタモンは一瞬で自分たちの後ろに回り込んでいた。
カイジは今回もその時と同じく相手は後ろに回り込むつもりなのかと思い、自身の手の中の銃を構えながら再び振り向いた。

「………どこにいった!?」

だが、そこに敵はいなかった。
カイジはただ、誰もいない空間に銃を突きつける結果に終わる。

「マダオ!そっちじゃないアル!こっちネ!」
「ど、どっちだ!?」

メタモンの現在地は神楽の方が先に気づいたが、焦ったカイジはそれに着いて行けず、神楽の言う方向へとすぐに顔を向けることはできなかった。

『カシャ』

そして、カイジが一瞬焦ったその隙に、またもやカメラのシャッターが切られる音が鳴った。
それは、先ほどモナドを消した時に響いたものと同じものであった。
そのシャッター音は、今のカイジから見て右側、方角で言えば北となる方から聞こえた。


カイジがそっちの方に顔を向けてみると、そこには確かにスコルピオワームと化したメタモンがいた。
そして、その手にはやはり、先ほどモナドが消えた時と同様に黒いカメラが握られていた。

 ◆
◇◇◇

「くっ…!」

敵に位置を認識できたカイジは、再び手に持ったシグザウアーの引き金に手をかける。
今度こそ対抗するため、相手に向けて発砲を試みようとする。
しかしここで、メタモンはカイジらにとって予想外の行動にとる。

メタモンは、そのスコルピオワームの身体の背を向けながらカイジ達から離れるように走り始めた。
相手は明らかに、この場から逃げ出そうとしていた。


「はあっ!?」
「あいつ何のつもりネ!?」

てっきりこれから攻撃を仕掛けられると思っていただけに、相手のその行動に2人は拍子抜けさせられてしまう。

「くそっ!逃がすか!」

カイジは相手を逃がさまいと、手に持ったシグザウアーをもう一度発砲する。

「ぐっ…!」

今度は先ほど撃った時とは異なり、一応は相手の体に当たりはした。
だが、元々少々離れていたこともあり、標準も上手く定まらず、銃弾は相手の左肩の辺りを掠めるにとどまる。
痛みは感じたのか、小さかったが苦しそうな声を漏らす。


984 : ◆5IjCIYVjCc :2021/10/10(日) 15:28:00 .vnN7mpg0

「私だって…!」

神楽もまた、カイジに続いてメタモンに攻撃をしかけようとする。
モナドは消されてしまったが、神楽にはまだ魔法の天候棒が残っている。
神楽自身は使い方をまだ理解しきれていないが、そもそもこれは自分の今の身体の元であるナミが使っていた武器である。
この天候棒を、身体が覚えている分だけでも何とかして使うことを試みる…

「うおりゃあああああああああっ!!」

なんてことはできなかった。
神楽は、この時点では、使い方は身体が覚えているなんてことまで考えは及んでいなかった。
彼女は天候棒を、打撃武器として使用できるよう振りかぶりながら、メタモンに向かって突進していく。

「お、おい神楽!危ねえからそっちに行くな!」

神楽が前に出たことにより、カイジはシグザウアーを持つ手を下げてしまう。
この状態で撃ってしまえば、銃弾が神楽に命中する可能性があるからだ。

そんな神楽に対し、メタモンは一回だけちらりと視線を移す。
その時も、彼はまだ背中を向けて走り続けている。
…いや、彼は追跡を逃れるためか、一つだけある行動をとった。

メタモンは再び、デイパックの中からジャスタウェイを取り出し、これを後ろに向けて投げつけた。

「うおあっ!?」

投げつけられた物が視界に入った瞬間、神楽は急に足を止めた。
それはかつて、坂田銀時が記憶喪失になった時に働いていた工場で作られていた物体。
彼女には、そのジャスタウェイが爆弾であるという知識があった。

危険を感じ取った神楽は方向転換し、メタモンの方に背を向けて慌ててカイジのいる場所へと戻る。
そして、彼女が直前までいた場所にジャスタウェイは落ち、その衝撃でまたもや爆発が起こる。

「あうちっ!」

その爆風により神楽は背中から衝撃をもらい、それによってバランスを崩し前のめりに転倒する。

「この……!逃がすか!!」

この事態に対し、康一はまだ諦めまいとブレイズに変身した状態のまま代わりにメタモンへの追撃を行おうとする。
痛みは完全に引いたわけではないが、それに耐えながら走って相手に追いつこうとする。

だが、メタモンはさらにジャスタウェイを取り出し、これを投げつける。
ただし今回は、自分を追う康一を直接狙ったものではない。
メタモンは自分の少し後ろの地面にジャスタウェイを落とし投げる。
ジャスタウェイはそこそこ勢いを付けながら地面に突き刺さるように激突する。

そしてジャスタウェイは、地面を抉るように爆発し、土や砂が勢いよく辺りに飛び散る。
康一の視界は、その爆発によって発生した砂煙に覆われ、それと爆風に押されて前に進みにくくなり、足を止められる。

「………くそっ!」

一部始終を見ていたカイジは、悔しさのあまり声を上げる。
砂煙が晴れた後、メタモンは既に遠くの方にまで走り去ってしまっていた。
カイジが見れたその時には、相手は森の中へと入って行ってしまっていた。
森の中は、たくさんの木々による影もあってか暗くなっているよう見えた。
肉眼では、森の奥の方に消えてしまったメタモンの行方をこれ以上追うことはできなかった。

◇◇◇


「康一、どうだ?」
「………ダメです。あいつは見つかりません。もう、どこに行ってしまったのかも分かりません」

康一はブレイズの変身を解き、エコーズを再び飛ばし、現在地の草原から森の中を探らせる。
しかし、それでもメタモンの姿を見つけることはできなかった。
多くの木々に視界を遮られ、遠距離用のスタンドの探索でも森の中を奥深くまで見通すことができない。
相手も全速力でさらに奥の方に行ってしまったためか、人影一つも見つけられない。


985 : ◆5IjCIYVjCc :2021/10/10(日) 15:30:37 .vnN7mpg0


(…そういえば、さっきもあいつはあのカメラを使っていたみたいだよな。まさか、他に何か消されたか?)

ふと、先ほどメタモンが自分たちの側方に移動した際に、シャッター音が鳴っていたことを思い出す。
最初にその音が聞こえたと同時に、カイジを庇って前に出た神楽の持つモナドが消えた。
その時と同じように、相手は自分たちの持ち物を消したのではないかということがカイジに思い浮かぶ。
先ほどは自分たちが攻撃されるかと思いそこまで思考が追い付いてはいなかった。
今、そのことに気づいたことで何か無くなっている物はないかと辺りを見渡す。
そして、メタモンによって消された物が何であるかはすぐに分かった。

「おくれカメラが、無い!なるほど…そういうことだったのか…!」

カイジが地面に置いたおくれカメラもまた、初めからこの場なかったかのように消えていた。
それと同時に、カイジは相手が何故先ほどのような行動をとったのか、その理由を察した。

「どうしたマダオ!?あのカメラもあいつに消されたアルか!?」
「ああ…。おそらく、これがあいつの主目的だったんだ…!」
「まさか、おくれカメラを消すためだけに仮面ライダーに変身したのか!?」
「そういうことだ。それに、その前は自分が殺し合いに乗っていることを隠して俺達に近づこうとしていたんだ…!」

カイジ達は、メタモンが何故先ほどのような行動をとったのか、その推測を話し合ってまとめる。
メタモンは最初、無害な者を装ってカイジ達に近づこうとしていた。
さらに言えば、奴は既に自分が殺した人物の姿に化けていた。
おそらく、その人物に成り代わることを目的として殺したのだろう。
おくれカメラが写したのはその殺害の決定的瞬間であった。
カイジ達の反応から自分の正体がバレることを察したメタモンは、元から考えていた作戦(おそらく不意打ち)を実行することを諦めた。
そして、自分の正体を見抜いた道具であるおくれカメラをここで始末することを最優先としたのだ。

次に3人は、メタモンが使っていた能力についての話を始める。

「あいつの本来の姿…この殺し合いで最初に与えられた身体は…名前は分かんねえが、おそらくあの銀色の怪人だ」
「てことは、他人に化ける能力も、クロックアップとか言ってた能力も、あの怪人の力ってことカ?」

「あのクロックアップという能力…僕が見たところでは瞬間移動の類ではありません。あいつが移動する際、確か、残像のようなものが見えた気がします」
「それはつまり…超高速で動けるようになる能力ということか?」
「今のところは…僕もそんな風に考えています」
「なるほど…そう考えると合点はいくな」

「そういやあいつ、紫のライダーに変身していた時もクロックアップを使っていたよな。音声も鳴っていたし…ライダーと怪人の両方で使えるということなのか?」
「だとしたら…かなり厄介アルな」
「連続で使っていなかったところを見るに、一応の使用制限はあると思いますが…」
「それを怪人とライダーの姿で使い分けることで補っているってことなのか?どちらにしろ気を付けるべきか」

「それと、あいつの人に化ける能力…あれもこれからよく警戒しなければならねえ」
「人に化ける…擬態……ひょっとして、あの身体の怪人の名前は名簿にあった『擬態型』だったりするのでしょうか?」
「そうかもしれねえな。けれどあの怪人が一体何にしろ、あの力でまた別の奴に化けて近づいてくる可能性も考えられる。怪しいと思ったらすぐにでも行動しなくちゃならねえ」


986 : ◆5IjCIYVjCc :2021/10/10(日) 15:32:29 .vnN7mpg0


「……そういえば俺ら、あいつの前でゲンガーの名前出しちまった!もしかしたら、俺たちに化けてゲンガーに近づいて襲いかかるんじゃねえか!?」
「いや…それだけじゃありません。この殺し合いでは共通点のある者同士で精神の入れ替えが行われている可能性がある…もしかしたらあいつは同じポケモンであることを理由に、能力を知っているかもしれないゲンガーを口封じしに行くかもしれない…!」

「それにあいつは、『アイテムを消滅させることができるカメラ』や爆弾まで持っていやがる。下手に近づきゃ、また何か消されるかもしれねえぞ」
「あの爆弾…確かにジャスタウェイとか言った奴だったネ。まさかあんなものまで支給されているなんて…」
「神楽さん、あの爆弾について何か知っているのですか?」
「ジャスタウェイはジャスタウェイ以外の何物でもないし、それ以上でもそれ以下でもないネ。とりあえず、爆弾って思っておけばそれでいいアル」
「お、おう……分かった」
「…カメラのこと、ロビンさんに謝るべきでしょうか」
「……ああ、ここであのカメラを失ったのは痛いな」


「…結局のところどうするネ、やっぱ今すぐ森の中に入ってあいつを追った方がいいアルか?」
「だが…病院はどうする?俺たちはもう、そっちの方に行くって書き置きも残しちまった。それに、森の中に入ったってあいつに追いつけるとも限らねえ」

彼らが悩むのは、逃げていったメタモンを追跡・対策と当初の目的である病院への直行をどうするか。
メタモンのような危険人物を放っておけば、自分達の知らぬ間に犠牲者が出る可能性がある。
だが、書き置きを残したこともあり、やはり先に病院で治療手段を確保しておきたいという思いもある。


ここで、カイジが提案を出した。

「……なあ、ここは一旦二手に分かれねえか?お前ら2人で先に病院に向かってくれねえか?」
「私ら2人でって…マダオはどうするつもりネ?」
「…俺はゲンガーたちのいる方に戻って、メタモンのことを伝えに行く」

「ちょっと待ってください!ここで1人で行動するのは危険です!」
「私も反対ヨ。お前はただでさえ私らより戦いは苦手なはずアル。もしもの時はどうするつもりネ」

その提案には、当然異が唱えられる。
ただでさえメタモンのような危険な存在がさっきまで近くにいたというのに、単独行動をしてしまえば襲われる確率はより上がる。
それに、この中で特に戦闘経験のないカイジをそんな状況には晒せない。

「いや…あいつらと分かれた砂浜からはあまり離れてねえ。まだ遠くには行ってないだろうから早めに合流できるはずだ。それに、俺のような足手まといがいるよりはお前たちが安全に病院に辿り着けるかもしれねえ」
「そんなだったらさっきの戦いでモナドを消された私の方が足手まといアル!ゲンガーたちの方には私が行くネ!」
「………神楽、お前の武器は今、その使いこなせない天候棒だけだろ?銃のある俺の方が1人でも戦えるんじゃねえか?」
「お前…!マダオのくせに…!」
「ちょ、ちょっと2人とも…落ち着いて…」

誰が1人で引き返すか、その議論はだんだん口論じみた剣呑な雰囲気のものになってきている。
ただしそれは、互いが互いに相手のことを思って1人で行こうとして起きていた事態だ。


987 : ◆5IjCIYVjCc :2021/10/10(日) 15:33:37 .vnN7mpg0

「とにかく!ゲンガーたちには俺が知らせに行く。お前たち2人なら病院まで安全にたどり着けるはずだ。頼むから、ここは俺にやらせてくれ…!」

カイジは、自分が1人で連絡しに行くことを譲らない。
神楽と康一はまだ納得した様子を見せていない。
だが、カイジの気迫に押されて2人もその提案を受け入れる方に気持ちが揺らいでいた。

「……カイジさん、本当にそれで大丈夫ですか?」
「ああ、そもそも俺はせっかくのおくれカメラをみすみす消されちまっている。その責任を取る意味も込めて俺に行かせてくれ」
「………そんだったら、私だってモナドを…」
「神楽、お前の気持ちは分かった。だが、ここは俺が行くべきだと思う。何か、そんな気がするんだ」

「……神楽さん、行きましょう。こんなところでもたもたして手遅れになったらそれこそまずいです」
「………そうアルな」

神楽の方がまだ納得の色を見せていないが、一応はここからは康一と2人で行動することを了承した。

◇◇ ◇

3人は草原から道路の上に戻り、そこから二手に分かれることになった。

「それじゃあカイジさん、一先ずお別れですね。皆さんのこと、よろしくお願いします」
「康一、お前も気を付けて行けよ」
「………カイジ、マダオの身体を下手に扱うなヨ」
「…………ああ、神楽。分かっているさ。長谷川さんの身体は大切にする」

「それから、もし俺達が再会できたとしても、メタモンの野郎が化けているかもしれねえから十分注意してくれ」
「ええ…そちらこそ、気を付けてくださいね」

どこか言いよどみながらも、カイジは2人に対しての別れの挨拶を返す。
そして、2人が西に向かって走り去るのを確認しながら、カイジもまた東に向かって元来た道を引き返していく。

(……………言い方、悪かったかもしれねえな)

カイジは、先ほどの会話において、自分の話の運び方が少々強引で、2人の意見を無視するような形になり、言葉にトゲがあったことを悔いる。

(でも……これは俺がやらなくちゃならねえ)

それでもカイジは、一時的に1人となるリスクを背負っても今回の選択をした。


(…もしもこれを使う時としたら、あいつらには…いや、誰だろうと仲間には見せられねえ)

カイジはそんなことを考え、ある物を取り出して見つめながら歩いていた。
今回、カイジが1人で戻ることを選択したのは何もモナドやおくれカメラのことで責任を感じたからだけではない。

カイジは、切り札にするつもりであるリスクがある支給品を隠し持っている。
そのリスクとは、簡単に言えば体に害があるというものだ。


988 : ◆5IjCIYVjCc :2021/10/10(日) 15:35:44 .vnN7mpg0
『それ』は、体内に直接差し入れることで、超人がごとき力を得ることができる。
しかしその代わり、使用者には『それ』に含まれていた人体に有害な毒素までもが入って来ることになる。
その毒素は精神に影響を与え、高確率で中毒性を引き起こし、場合によっては使用者が暴走したり、乱用を繰り返せば死に至る可能性もある。
それこそまるで、麻薬のような代物だ。
もしカイジがこれを使うとした場合、その悪影響を受けることになるのはカイジだけでなく、身体の長谷川泰三もまた同様だ。

だからこそ、カイジはこれを皆に話さなかった。
こんなものを切り札として温存しておきたいと言えば、味方からの信用を失うかもしれない。
ましてや、長谷川泰三と知り合いであった神楽にはなおさら秘密にしようと思っていた。
知り合いの身体にこんな麻薬と同等なものを使用されると思って、いい気分にはならないだろう。
本音としてはこんなものは使わずに終われば良いとは思っている。
ただ、念のため取っておくと既に心の中で決めてしまった以上、今更捨てるか壊すという選択肢を取るのは心理的に少々難しかった。

それに、現在のカイジはたった一人の状況だ。
本当にもしものことがある場合、銃だけでなくその支給品で戦う必要性が出てくるかもしれない。
そんな状況になったらやはり、自分がこれを使うところを人に見せにくいという思いが彼にある。

戦力の分散には不安な思いもあるが、こうなってしまった以上仕方がないと納得するしかない。
心残りは少々あるが、現状ではこれが最良の選択だと思うしかない。

そんな風に考えながら、カイジはその『リスクある支給品を眺める』

それは、まるでUSBメモリのような形をしたアイテムであった。
そのメモリには、アルファベットの「W」の文字が書かれている。
その「W」は日光、雨、雷、竜巻であしらったデザインで描かれている。


そしてカイジはそこまで考えが及ばず、そもそもこの推論が間違いの可能性もあるが、
もしかしたらこの支給品こそが、カイジと神楽を運命的に引き寄せたのかもしれないのだ。

その支給品の名は『T2ウェザーメモリ』。
使用者を『ウェザードーパント』という強力な怪人に変身させるためのアイテムだ。


【C-6とC-7の境目 道路/早朝】

【伊藤開司@賭博堕天録カイジ】
[身体]:長谷川泰三@銀魂
[状態]:健康
[装備]:シグザウアーP226(残弾:13/15、予備弾倉×3)@現実、超硬質ブレード@進撃の巨人
[道具]:基本支給品、タケコプター@ドラえもん、サイコロ六つ@現実、肉体側の名簿リスト@オリジナル、T2ウェザーメモリ@仮面ライダーW
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らず生き残る
1:すぐに戻ってゲンガー達にさっきのことを知らせなくては……!
2:神楽、康一、病院の方は任せた…!
3:メタモンの野郎…こんな時に狙ってくるんじゃねえぞ…!
4:メタモンが味方に化けて近づいてくるかもしれねえ…気を付けなくては
5:ロビンさんはなかなか頭が良いな、頼りになりそうだ、話も聞くことが出来たらいいが…
6:マリオ達や俺の身体が巻き込まれてなくて良かったぜ…俺が死んだら24億は頼んだぞ二人とも…
7:道中に人がいたら無視は出来ないな
8:この最後の切り札(T2ウェザーメモリ)…使う時が来なければいいんだけどな…。長谷川さんの身体にも悪いし…
[備考]
※時系列は24億手に入れてキャンピングカー手に入れてそこで寝ている時です。
※【おくれカメラ@ドラえもん】は消えました。カメラが破壊・消滅したとしても元に戻ることはありません。
※T2ウェザーメモリと適合するかどうかは後続の書き手にお任せします。


989 : ◆5IjCIYVjCc :2021/10/10(日) 15:36:27 .vnN7mpg0


【C-6 道路/早朝】

【神楽@銀魂】
[身体]:ナミ@ONEPIECE
[状態]:健康、気分が落ち込み気味
[装備]:魔法の天候棒@ONEPIECE
[道具]:基本支給品、タケコプター@ドラえもん
[思考・状況]基本方針:殺し合いなんてぶっ壊してみせるネ
1:カイジ…なんで1人になるネ
2:早く病院に行って、悪党どもにめちゃくちゃにされるのを防がなくちゃネ
3:メタモンの野郎…今度会ったらただじゃおかないネ
4:銀ちゃん、新八、今会いに行くアル、絶対生きてろヨ、後身体もな
5:私の身体、無事でいて欲しいけど…ロビンちゃんの話を聞く限り駄目そうアルな
[備考]
※時系列は将軍暗殺編直前です
※【モナド@大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL】は消えました。カメラが破壊・消滅したとしても元に戻ることはありません。


【広瀬康一@ジョジョの奇妙な冒険、ダイヤモンドは砕けない】
[身体]:エレンイェーガー@進撃の巨人
[状態]:頭部に痛み(既にだいぶ引いてきている)
[装備]:今は持っていない
[道具]:基本支給品、仮面ライダーブレイズファンタステックライオン変身セット&スペクター激昂戦記ワンダーライドブック、
[思考・状況]基本方針:こんな殺し合い認めない
1:吉良吉影を一刻も早く探さなくちゃ多くの犠牲者が出る!!
2:僕が神楽さんを守り切ってみせます!!この仮面ライダーの力で!!
3:メタモンにまた会ったら絶対に倒さなくては!
4:メタモンが僕らの味方に化けて近づいてくる可能性も考えておかなきゃ
5:三人とどうか無事に合流出来ますように…そして承太郎さん、早く貴方とも合流したいです!!
6:DIOも警戒しなくちゃいけない…
7:この身体凄く動きやすいです…!!背も高いし!!
8:仗助君の身体良い人に使われていると良いんだけど…
[備考]
※時系列は第4部完結後です。故にスタンドエコーズはAct1、2、3、全て自由に切り替え出来ます。
※巨人化は現在制御は出来ません。参加者に進撃の巨人に関する人物も身体もない以上制御する方法は分かりません。ただしもし精神力が高まったら…?その代わり制御したら3分しか変化していられません。そう首輪に仕込まれている。
※戦力の都合で超硬質ブレード@進撃の巨人は開司に譲りました
※仮面ライダーブレイズ、ファンタステックライオンへの変身が可能になりました。


990 : ◆5IjCIYVjCc :2021/10/10(日) 15:39:18 .vnN7mpg0



「あーあ、失敗しちゃったなあ…」

メタモンは、森の奥の方で岩の上に腰かけて休んでいた。
その姿は、先ほどまで"へんしん"していたリンクの姿ではない。
現在のメタモンは、最初の姿であった神代剣の姿に戻っていた。

今回、メタモンが元々しようとしていたことは、おおむねカイジらが推測した通りのものである。

森の中であらかじめリンクの姿をとり、殺し合いに反対する者達に自分の正体を隠して接近しようとしていた。
怪しまれないよう、デイパックの中身も一つにまとめておいた。
ただ…実は今回に関して言えば、不意打ちをすることは計画に入れていなかった。

「一緒に行きたかったなあ……あの声は多分、さっきいた村の方からだったよね…」

メタモンはカイジらを発見する少し前、西の方からある声を聞いた。
彼が聞いたのは、ほんわかした雰囲気を感じさせる女の子の声であった。
どうやらその女の子は、何らかの放送機器を使って声を届けていたようであった。

ただし、メタモンはその放送の細かい内容までは聞き取れなかった。
距離があったことや木々によってほとんどの音が遮られたためか、その声はかすれたものに聞こえた。
それにより内容がほとんど分からないため、放送の主が何のために声を届けたのかも分からない。。
ただ、声の聞こえてきた方角から、その放送は自分が数時間前にいたC-5の村からなのではという推測は立つ。

自身の目的から鑑みれば、すぐにでもその声の主を殺しに行くべきだろう。
だが、声の主が殺し合いに乗っているかいなか分からないという状況がメタモンを迷わせた。
メタモンは体に大きなダメージを負っており、下手に真正面から戦えばクロックアップがあったとしても敗北することも考えられた。
その女の子が殺し合いに乗っているとすれば、罠を仕掛けるなどで待ち構えている可能性も考えられた。
人がいることは分かっても、相手の戦力が分からない以上その村の方に向かうことに躊躇が生まれた。
もしも今、自分が大ダメージを負っている状況じゃなければ、相手が戦うために待ち構えていたとしても1人で行こうとしただろう。
だが、このダメージにより自身が敗北する可能性を考えてしまったため、足を止めてしまった。

そんな風に考えてしまい、どうしようか悩んでいたところ、メタモンは森の中から外を見て、少し離れた所にまた別の人々を発見した。
それこそが、病院へと向かおうと東から西に向かって動いていたカイジ一行であった。
そこでメタモンは、この3人に先ほど聞こえた声のことを話し、共に村の方へ行くことを提案しようと考えた。
こんなところで3人組で行動していることから、おそらくは殺し合いに乗っていないのだろうと推測した。
上空の方で何か変なものが浮かんでいたことにも気づいてはいたが、時間が惜しいのでそれ以上は気にしなかった。
少々距離があったのに何故か早めに気づかれたが、相手の方から自分の方へ近づいてきてくれたため好都合ではあった。
銃口を向けられたりもしたが、今の状況では警戒してしまうのも無理はない。
銃自体はすぐに降ろしてくれたため、ちょっと気に障る程度で今は特段気にすることでもなかった。


991 : ◆5IjCIYVjCc :2021/10/10(日) 15:42:28 .vnN7mpg0


だが、一つのカメラが全てを変えてしまった。
彼らが持っていたその道具は、メタモンが今の擬態元であるリンク(の身体となった桃白白)を殺害した瞬間を写した。
この姿の人物が死んでいるところを見られてしまった以上、これを誤魔化す方法も思いつかなかった。
だからメタモンは、この瞬間だけはそのおくれカメラをどうにかすることとした。

おくれカメラを奪い取る選択肢を取らなかったのは、前回の男のような反撃をされることを恐れてのものだ。
相手の手の内が分かってないのに下手に近づき、このダメージのある体に攻撃をもらえば、こちらが敗北してしまう可能性がある。
これと同じ理由で、今回は3人の殺害を狙うことも止めておいた。
既に自分という存在を認知されてしまった以上、3人同時に相手しなければならず、今の自分の状態で全員を殺せる確率は低くなっている。
1人を殺せたとしても、その隙に他の2人に袋叩きに合う可能性だって考えられる。
だからこそ今回は、自分の正体を見抜けるおくれカメラをここで消すことに疲れた体でも全力を注いだ。
そしてそれ自体は、達成することができた。

「でも、このカメラを余分に使っちゃったなあ…ジャスタウェイも全部使い切っちゃったし…」

けれども、メタモンは今回の結果は失敗に終わったと考えていた。

メタモンがおくれカメラを消すために使用した支給品、奇しくもそれもまたカメラであった。
そのカメラの名は『ハチワレが杖で出したカメラ』、ひみつ道具などではない。
その名前からは想像できないが、このカメラには写した対象を完全に消してしまうという効果があった。
最初におくれカメラによって写真を撮られた際は、このカメラの効果を知っていたことで少し慌ててしまった。
ただし、その強力な力があるためか、このカメラには制限が課せられていた。
例えば、参加者や首輪を消してしまうことはできない。
大きな建物や橋、山といった消してしまえば地形を変えてしまうようなものも対象外だ。
さらには、使用回数も最大3回までに制限されていた。

今回においては、初めは相手が持つおくれカメラだけを消すつもりだった。
しかし自分がそのために後ろに回った瞬間、まるで未来でも見たかのように3人の内唯一の女性(神楽)が大きな剣を持って飛び出した。
そのせいで、おくれカメラを消すつもりだったのにその剣を消してしまった。
最終的におくれカメラも消せたからいいものの、自分が持つカメラも使用できるのがあと1回までとなってしまった。
それからは、3人の行動に対して咄嗟の対応で乗り切るしかなかった。

それだけでなく、ジャスタウェイも全て使い切ってしまった。
逃げるための目くらましのためとは言え、咄嗟の状況でつい使用してしまった。
これも、神楽による行動が無ければこうなることは無かっただろう。
だけどメタモンは相手を恨むことは無い。
むしろ、武器を1つ消してしまったことで自分が殺す前に別の相手に殺されないか心配している。


992 : ◆5IjCIYVjCc :2021/10/10(日) 15:43:11 .vnN7mpg0

「そう言えばあの人たち、ゲンガーに会ったんだよね。でも、あっちの方かあ…」

先ほどの出来事において、ゲンガーの名前が出ていたことはメタモンも覚えていた。
その名前を先に聞いた時は、絶対に自分の手で殺してあげたい相手なこともあり、喜びの感情もあった。
…だが、その名を出した3人は東の方から、つまり自分が行こうと思っていた村と正反対の方向から来ていた。
彼らがゲンガーに出会ったと考えると、ゲンガーもまたここから東の方にいる可能性が高い。

これらの要素により、メタモンは自分が進む方向についてかなり悩まされることになった。

ゲンガーを探しに行くなら東に行かなければならない。
放送の主を探しに行くなら西に行かなければならない。

そして、選択肢は一応他にも考えられる。
先ほど見つけた3人もまた、ここで逃がしてしまえば自分が殺すより先に死んでしまう可能性がある。
その内1人の男はライダーに変身したり空飛ぶ変なもの(スタンドのこと)を操っていたこともあり、そう簡単には死なないだろう、たぶん。
だが、それ以外の2人に関しては戦う時に生身だったり、持っている武器も上手く使いこなせていなかったようだったこともあり、再会する前に死んでしまわないか少々心配だった。

3人に関しては自分の存在を認知されただけでなく、擬態できる姿の一つを知られてしまった。
自分が擬態できること言いふらされてしまうと思うと、どうにも彼らを追った方がいいのではないかという思いが出てきて不安になる。
ただ、今すぐ戻ったとしても、対策を講じられて返り討ちにされるとか、そもそも既に逃げてしまっており追跡不可能なことも考えられる。

「そもそも、今すっごく疲れているんだよなあ……本当にどうすればいいんだろう……」

さらに言えばメタモンは、その体に大きなダメージを蓄積している。
今回積極的に戦うことを選ばず、目的を果たしたら逃げることに集中したのもこのためだ。
先ほどの3人と交渉してから休憩しようかとも思っていたが、それは叶わなかった。

身体を痛めながらも、クロックアップも駆使しながら、全速力で走って逃げて来たこともあり、その疲労はピークに達していた。
村やゲンガーがいると思われる方向に行こうとしても、そもそもそれに身体がついていけない可能性があるのだ。
急ぎたいと思っても、それを実現することができないのかもしれないのだ。
今のメタモンは、言わば八方塞がりの状況にあった。


「………だけど、あの青いの、仮面ライダー…だっけ。いいなあ。僕もあの仮面ライダーに『へんしん』したいなあ……」

そしてメタモンは最後に、先ほどの攻防で見た青いライダーのことについて考えていた。
ライダーに変身した男は、腰に巻いた妙なベルトに小さな本のようなアイテム、そして青い剣をベルトから抜刀することで変身していた。
まさか自分が持つサソードゼクター以外にも『へんしん』を可能とするアイテムが存在していたことには驚かされた。
それと同時に、メタモンはその『へんしん』があったという事実に心を踊らされた。

「あのベルトとか、欲しいなあ…絶対に手に入れなくちゃなあ…」

メタモンは次の行動はどうするかを悩み、決断することができなかった。
しかしそれでも、新たに現れた自分の『へんしん』を増やせる可能性が現れたことにメタモンの気持ちは大いに弾んだ。
この殺し合いにいるメタモンは、自身の『へんしん』のためならば何だってするつもりだ。
メタモンは、絶対に先ほどの男からあの仮面ライダーに『へんしん』するためのアイテムを殺して奪うことを決意していた。

そして、その対象はそのライダー…ブレイズだけにとどまらない。
自分や先ほどの男だけでなく、他にも『へんしん』のための支給品が存在するかもしれないことをメタモンは考える。
もしかしたら、仮面ライダー以外の何かに『へんしん』できるものだってあるかもしれない。
そんな未知の支給品に対してもまた、メタモンは絶対に手に入れてみせる。
それらのアイテムがもし主を選ぶようなものであれば、擬態を使ってでも絶対に自分のものにしてみせる。

たとえ今はまだ動けなくとも、メタモンのその決意だけでも固いものとした。


993 : ◆5IjCIYVjCc :2021/10/10(日) 15:43:55 .vnN7mpg0

【C-6 森/早朝】

【メタモン@ポケットモンスターシリーズ】
[身体]:神代剣@仮面ライダーカブト
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、背中に鈍痛、胸の辺りに斬り傷、左肩に痛み
[装備]:サソードヤイバー&サソードゼクター@仮面ライダーカブト
[道具]:基本支給品×2、魔神の斧@ドラゴンクエストシリーズ、ハチワレが杖で出したカメラ(残り使用回数:1回)@なんかちいさくてかわいいやつ、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本方針:参加者を殺して、変身できる姿を増やす
1:あの仮面ライダー(ブレイズのこと)、僕も『へんしん』したい
2:居場所が大体予想ついたし、ゲンガーを探しに行きたい
3:でも、さっき聞こえた(たぶん)村の放送?も気になる。そっちにも行ってみたい
4:だけどそもそも、疲労もダメージも大きいし休んだ方がいいのでは
5:休むか、それとも無理してでも動くか、どうしよう…
6:状況を見て人間の姿も使い、騙し討ちする
7:ゲンガーを見つけたら苦しめずに殺してやる
8:さっきの男(耀哉)を警戒。今度は迷わずクロックアップで頸を斬る
9:自分の正体を知った人たち(カイジ、神楽、康一)の口を封じておきたいけど…
10:他にも『へんしん』ができるアイテムがあったら手に入れる
[備考]
※制限によりワームの擬態能力は直接殺した相手にしか作用しません
※クロックアップの持続時間が通常より短くなっています。また再使用には数分の時間を置く必要があります
※現在リンクに変身可能です
※ブレイズのような、アイテムが資格者を選ぶようなタイプの仮面ライダー等の変身者を殺害した場合、その変身資格を擬態によって奪い取れるかもしれません。


【T2ウェザーメモリ@仮面ライダーW】
伊藤開司への支給品。
『天気』の記憶を内包したガイアメモリ。
T2ガイアメモリ共通の特性として、適合した人間と惹かれ合う。
またT2ガイアメモリの特性により、適合する人間にはスロット処置をせずとも体内へ侵入、ウェザードーパントへ変身する。
ただし、これを使ってドーパントへ変身するとメモリの毒素に精神や身体が影響を受ける。
場合によっては暴走して無差別に暴れ回る可能性もある。

【ハチワレが杖で出したカメラ@なんかちいさくてかわいいやつ】
メタモンへの支給品。
写真を撮った被写体を消去する効果のあるカメラ。
制限により参加者、首輪、山や橋など地形に関わる大きな物体等は消すことができないようになっている。
また、使用回数は3回までとなっている。
このカメラを出した杖が破壊された場合、カメラは消滅するが、その杖がこの舞台に存在するかどうかは現状不明とする。
原典において、カメラが無くなっても消えた被写体が元に戻った描写はない。
ここにおいても、カメラが破壊・消滅したとしても消えたものは元に戻らない。


994 : ◆5IjCIYVjCc :2021/10/10(日) 15:46:02 .vnN7mpg0
投下終了です。
タイトルは「蠍の剣士、厄災となりて。」とします。

また、スレがそろそろ埋まり切りそうなため、2スレ目に移行しようかと思います。


995 : ◆ytUSxp038U :2021/10/10(日) 17:06:16 iQMAZTFY0
投下乙です。
メタモンは傷と疲労、それにおくれカメラの存在が足を引っ張りキルスコアは挙げられなかったか。
ただおくれカメラを失ったのは対主催者にとって痛手ですね…。
カイジも責任を感じてるのは分かるけど、単独行動がどう影響するのか。

志々雄真実を予約します。


996 : ◆ytUSxp038U :2021/10/10(日) 21:04:15 iQMAZTFY0
投下します


997 : World is mine ◆ytUSxp038U :2021/10/10(日) 21:06:10 iQMAZTFY0
包装を剥がすと出てきたのは白と黒の物体。
丸めた米を黒い海苔で包んだ、日本人に馴染み深い食べ物。
参加者の基本食料として支給されたおにぎりへ、豪快に齧りつく。
咀嚼すると塩を効かせた白米の旨味と海苔の風味が、口いっぱいに広がった。
具は赤々とした梅干しだ。
程良い酸味が白米の甘みを引き立てている。

戦場と化した公園を後にし、志々雄は目に付いた適当な施設に立ち寄っていた。
「万屋銀ちゃん」の看板を掲げたその場所は、先程公園にいた自称警官が営むかぶき町の何でも屋。
そうとは知らぬ志々雄にとっては、ただ疲労を癒す為に腰を下ろした場所でしかない。

糖、の一文字が掲げられた下の椅子にドッカリと座り、食事を取っている。
承太郎によって受けた傷は放って置いても再生するのだが、疲れまでは抜けない。
次の戦いへ備える為にも、余計な疲労は抜いておくに限る。
勝利を手に入れるにはただ闇雲に戦闘を吹っ掛ければ良い、というものではない。
しっかりとした食事を取り、己の糧にする事もまた、戦の基本である。

おにぎり一つを平らげると、飲料が入った容器に口を付ける。
室内にあった白い箱から出てきたものだ。
その箱とは現代人なら誰もが知る冷蔵庫なのだが、明治時代で知識が止まっている志々雄は知らなかった。
紙製の容器を破り、喉を鳴らして中身を飲む。
元の住人の好物であるいちご牛乳を味わった志々雄は、露骨に顔を顰めた。

「何だこりゃ。ガキが飲むもんじゃねぇか」

ドギツい甘さは好みに合わず、それ以上口を付ける気にはならなかった。
代わりに二つ目のおにぎりを取り出し食らう。
今度の具は焼き鮭だ。
油がのった身が口の中でホロホロと崩れる。
口直しには丁度いい。

食事をしながら志々雄は殺し合いに関して考えを巡らせる。
志々雄に与えられたエシディシの肉体が如何に強力かは、先の戦闘で十分理解した。
とはいえ太陽の光という弱点は、どうにも厄介なものだ。
この弱点がある限り、日中は必然的に屋内か、日を遮れる場所にしか行けない。
但し、これに関しては支給品を使えばある程度の問題は解決する。
その支給品とは鎧。それも戦国時代の武将が身に着けていた甲冑とも違う、恐らくは異国の鎧だ。
エシディシの大柄な肉体をもスッポリと覆い隠すだろう鎧を着れば、太陽の光が燦々と降り注ぐ屋外だろうと移動は可能。
尤も、その場合は鎧を破壊されないよう気を配る必要が出て来る。
雑魚の一刀や銃撃など恐れるに足りないが、志々雄がこの地で出会った者はいずれも油断ならない力の持ち主。
馬鹿デカいだけの鎧など、いとも容易く破壊されることだろう。

日中の移動に関しては一先ず置いておき、続いて今後はどう動くかを考える。
志々雄の方針は参加者・主催者を皆殺しにすること。
それは変わらない。
ただこの殺し合い、どうやら自分が思っていた以上に面白い催しのようだと実感している。


998 : World is mine ◆ytUSxp038U :2021/10/10(日) 21:07:27 iQMAZTFY0
例えば志々雄が手に入れた、からくり仕掛けの剣。
赤い機械を装填する事で、刃に炎を付与する事ができる。
無限刃のように斬った相手の油を染み込ませた刃を発火させるのとは違う、未知の技術だ。

例えば公園で戦った男達。
剣を交えた銀髪の男は、掌から冷気を放出する奇怪な能力を見せた。
次に戦った凶悪な面の男は、安慈に負けず劣らずの拳を持つ背後霊らしき大男を従えていた。
しかもあろうことか、柱の男の肉体を大きく吹き飛ばす程の技まで放ってみせたのだ。
自身の仮の肉体であるエシディシ同様、未知の異能の持ち主達に興味が湧く。

そして最も驚くべきは、ボンドルドと名乗った男が持つ力。
肉体を別人の者に入れ替える術、どれだけ物を入れても重さに変化が無い鞄、複数の奇妙な能力の持ち主を一か所に集める組織力。
何より異常なのは、死者を蘇生させる事すら造作ない事だ。
最初に殺し合いについて説明を受けた空間で、何者かを殺し、即座に生き返らせたのは志々雄もハッキリと目撃している。
だがそんな事をせずとも、ボンドルドが死者を生き返らせられるのは分かっていた。

何せ志々雄自身が、本来であれば生きているはずの無い人間なのだから。

(あれは夢でも幻でもねぇ。俺は確かに、抜刀斎との斬り合いで死んだ)

抜刀斎こと緋村剣心との決戦において、志々雄は文字通り燃え尽きこの世を去った。
そして次に目を覚ました時、彼は死した罪人が苦痛を与えられる場所、地獄にいたのだ。
その地で由美や方治など、死して尚も自分に付き従う配下を引き連れ新たな国盗りを始めようとした矢先に、バトルロワイアルへと連れて来られ今に至る。
出鼻を挫かれた事へ多少の苛立ちはあったが、ただ一人の強者だけが生き残る屠り合いというのは自分好みである。

この地には未知の技術や異能がゴロゴロ存在する。
それらを凌ぐ程の強大な力を、ボンドルドは保有している。
ならばその力、この志々雄真実が一つ残らず奪い取るのみ。
そうして奪った力で、新たな国盗りを始めるのだ。

いや、そもそも地獄から自分の魂を引き上げるのが可能なら、反対にこちらから地獄へ攻め込む事だって出来るのではないか。
ならば手に入れた技術や知識を手土産に方治達の所へ戻り、改めて閻魔相手に地獄の国盗りと洒落込むのも悪くない。
いざこれからと言う時に志々雄が消え、連中もとんだ肩透かしを食らった事だろう。
部下の期待に応えてやるのも、上に立つ者の務めだ。
地獄を支配下に置いたなら、今度は天国を落とすか。
釈迦の元でぬるま湯に浸かっている腑抜けどもの楽園を、地獄がマシと思える程の戦場へ塗り替えてやるのもまた一興。

「楽しくなってきたじゃねぇか」

高揚を抑え切れず、自然と笑みが浮かぶ。
それは冥府の住人ですら裸足で逃げ出しそうな程に、凶悪なものだった。


999 : World is mine ◆ytUSxp038U :2021/10/10(日) 21:09:55 iQMAZTFY0
【G-8 街 万屋銀ちゃん/早朝】

【志々雄真実@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-】
[身体]:エシディシ@ジョジョの奇妙な冒険
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、再生中
[装備]:エンジンブレード+ヒートメモリ@仮面ライダーW
[道具]:基本支給品、炎刀「銃」@刀語、アルフォンスの鎧@鋼の錬金術師
[思考・状況]基本方針:弱肉強食の摂理に従い、参加者も主催者も皆殺し
1:参加者を探して殺す
2:首輪を外せそうな奴は生かしておく
3:戦った連中(承太郎、銀時、魔王)を積極的に探す気は無い。生きてりゃその内会えんだろ
4:未知の技術や異能に強い興味
5:日中の移動には鎧を着る。窮屈だがな
[備考]
※参戦時期は地獄で方治と再会した後。

【アルフォンスの鎧@鋼の錬金術師】
人体錬成により肉体を失ったアルフォンスが、魂を定着させられた鎧。
元々はエルリック兄弟の父、ホーエンハイムのコレクションの一つ。
当然だが血印は無い、ただの鎧である。

【万屋銀ちゃん@銀魂】
坂田銀時がかぶき町で営業している何でも屋。スナックバーであるスナックお登勢の二階にある。
アニメ版ではこの一枚絵が映された状態で幕が開けるという、お馴染みのやり取りで有名。


1000 : ◆ytUSxp038U :2021/10/10(日) 21:10:35 iQMAZTFY0
投下終了です


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