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PSYREN聖杯戦争 CALL.2

1 : ◆wd6lXpjSKY :2015/06/08(月) 23:28:29 wgRrTpbU0

ここは嘗て週刊少年ジャンプで連載されていた『PSYREN -サイレン-』を核に様々なキャラを
多重クロスオーバー聖杯戦争に参加させるリレー小説企画です。
本編には殺人、流血、暴力、性的表現といった過激な描写や鬱展開が含まれている可能性があります。
閲覧の際は十分にご注意ください。

まとめwiki
ttp://www60.atwiki.jp/psyren_wars/pages/1.html

前スレ
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1406305939/


参加者


No.01:夜科アゲハ@PSYREN -サイレン-&セイバー:纒流子@キルラキル
No.02:紅月カレン@コードギアス 反逆のルルーシュ&セイバー:リンク@ゼルダの伝説 時のオカリナ
No.03:タダノヒトナリ@真・女神転生 STRANGE JOURNEY&アーチャー:モリガン・アーンスランド@ヴァンパイアシリーズ
No.04:浅羽直之@イリヤの空、UFOの夏&アーチャー:弩徹仙@天上天下
No.05:ウォルター・C・ドルネーズ@HELLSING&ランサー:レミリア・スカーレット@東方Project
No.06:朽木ルキア@BLEACH&ランサー:前田慶次@戦国BASARA
No.07:鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ&ライダー:モンキー・D・ルフィ@ONE PIECE
No.08:虹村形兆@ジョジョの奇妙な冒険&ライダー:エドワード・ニューゲート@ONE PIECE
No.09:犬飼伊介@悪魔のリドル&キャスター:食蜂操祈@とある魔術の禁書目録
No.10:暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ&キャスター:フェイスレス(白金)@からくりサーカス
No.11:エレン・イェーガー@進撃の巨人&アサシン:ジャファル@ファイアーエムブレム 烈火の剣
No.12:人吉善吉@めだかボックス&アサシン:垣根帝督@とある魔術の禁書目録
No.13:間桐雁夜@Fate/zero&バーサーカー:一方通行@とある魔術の禁書目録
No.14:美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語&バーサーカー:不動明@デビルマン


ttp://www60.atwiki.jp/psyren_wars/pages/25.html


2 : ◆wd6lXpjSKY :2015/06/08(月) 23:29:44 wgRrTpbU0

【暫定ルール】

・舞台はPSYRENの世界と位置づけします。

(原作のような荒れた未来ではなく一般的な世界と変わりません、ただ『別の時空』と考えてください。)
・NPCも存在しており、その世界の建造物などは各参加者版権作品の物も存在しているかもしれません。
・時間の区切り及び表記は下記のとおりとして扱い願います。

○時間表記/未明(0〜4)早朝(4〜8)午前(8〜12)午後(12〜16)夕方(16〜20)夜(20〜24)

・参加者には赤いテレホンカードが支給(勝手に)されています。
・サーヴァント消失6時間以内に公衆電話にでテレホンカードを使用すると現実世界へマスターは帰還できます。
・逆に未契約で6時間を経過するとマスターは灰になり、死亡します。
・死亡後参戦の場合は帰るべき場所に肉体が行けないため、死亡扱いとします。
・ルーラー的立ち位置は現時点で天戯弥勒です。ですが厳しく取り締まる気配はありません。
・所持金は原作の職及び立場に準ずる金額を支給されています。(後に救済要素をつけるかもしれません)
・令呪を三画使い切ってもマスターは消失しない。
・サーヴァント消失後マスターの令呪はそのまま残り、再契約もそれで行う。再配布などは基本的になし。
・マスターはサーヴァントのステータスを視認可能、クラスの視認は原則不可。
・イメージ的には月の聖杯戦争よりも冬木のイメージに近いと思います。

【PSI(覚醒等)について】

・ルールにも書いている通り世界観はサイレン世界の位置付けでありPSIの力に目覚めることも可能である。
・しかし全員が全員覚醒するわけではなく、NPCには『関係無い』ものとする。
・PSIに目覚める予兆があったとしても必ず目覚めるとは限らない。
・PSI粒子が溢れているエリアはマップ上に公衆電話がある地点とする。
・(A-1、A-4、A-8、B-3、B-7、C-2、C-5,C-7,D-4、D-6)
・そのエリアに滞在している≠必ずPSIの予兆が出る、であること。
・既に異能(非日常)の力を持っていればいるほど(強ければ強いほど)覚醒し難くなる。

【予約について】
・期限は一週間です。
・延長申請した場合は+一週間です。
・ゲリラ投下も可能ですが、予約することをおすすめします。
・その他については要相談、気軽に書き込んでください。


3 : ◆wd6lXpjSKY :2015/06/08(月) 23:33:31 wgRrTpbU0
テンプレは以上です。
これからもよろしくお願いします。


4 : 名無しさん :2015/06/09(火) 00:37:47 03omAOT20
スレ立て&テンプレ乙ですー
これからも応援しております


5 : 名無しさん :2015/06/18(木) 11:08:55 jb.yhJd60
延長します


6 : ◆wd6lXpjSKY :2015/06/20(土) 23:43:49 .i8ra82A0
モリガンの予約を解除して投下します。


7 : 神話前話 ◆wd6lXpjSKY :2015/06/20(土) 23:45:25 .i8ra82A0


「おいおっさん! コイツを診てくれ!!」


ドン!
勢い良く病院に転がり込んだライダーことルフィは近くに居た医者にタダノの治療を頼む。
息を切らしながら下を向いているがタダノを落とすことは無かった。
幾ら腕が疲れようがまどかを背負っていようが彼が甘えることは無かった。

守れるものは総て守りたい。
口には出さずそんな大層な思想をも持ち併せていないが彼の信条とでも言うべきか。
彼を彼としている行いがそれを許さない。
仲間を見捨てる行いなど彼という存在が赦す筈がない。英霊だろうが海賊だろうが関係ない。


「君は一体……いや、今はいい。私が見てあげるから君とお嬢さんは待っていなさい」

「ありがとうございます……その脇腹が」

「見れば解る。何に貫かれたのか斬り裂かれたのかは解らないけど……事情は後で聞こう」

「頼む、おっさん。俺の仲間なんだ、だから頼む」

「出来る限りのことはするが……まぁ大丈夫だと思って待っていなさい。


それだけ呟くと医者は担架に乗せられたタダノを奥へと運んで行った。
それを見届けるまどかには若干ではあるが安堵の表情が浮かぶ。
色々なことが起こり過ぎた時間ではあったがある程度の終着は見せてくれるようだ。

そんな彼女を支配する不安はキャスターに攫われたことではない。
仲間であり友達であり大切な存在である彼女が支配していた。


「ほむらちゃ……なんで……」


突然の襲撃。
聖杯戦争に参加していたことも驚きだが敵に回るとは想像もしていない。
心の何処かで自分を助けてくれると期待していたのかもしれない。
そんな幻想を簡単に壊された鹿目まどかの心は暁美ほむらに支配されていた。

自分が比較的安全な環境に移れたからこそ頭が急激に働き始める。
だけど、それはタダノ負傷やキャスターの拉致ではなくてもっと近しい存在のことばかり。
気付けば彼女のことを考えている、嫌ではないが理由が理由であり喜ばしいモノではない。

暁美ほむら。
貴方はどうして私を襲ったの。

「まどか」

願いを叶えるため。
そのためなら私を殺してもいいってこと……なのかな。

「まどか」

魔法少女にとって最後のチャンス。
死に物狂いになってまでも掴み取りたいモノ……なんだよね。


「まどか!!」


「ふぇ!?」


現実に引き戻された鹿目まどかは小動物のような声を挙げる。
集中していたようでライダーの呼びかけを無視していたようだ。
恐る恐る彼を見るが怒りの表情は浮かべていなく、寧ろ此方を心配していた。


「お前、キャスターに変なことでもされたか?」

「ううん、私は大丈夫です。だから、その……ごめんなさい」

「……そっか。ならいい。タダノの所に行くぞ」


麦わら帽子を被り直すとそれだけ呟いてライダーさんは歩き出しました。
大丈夫。嘘になる……のかな。
きっとライダーさんは私が嘘を憑いていることを知っているんだと思う。
でも、私が口に出さないから知らないフリをしていてくれてる。強い人だな、って思います。
頼れて、ついつい甘えちゃうぐらい強い人で……答えを全部導いて欲しいとも思っちゃう。


そんなことを秘めながら鹿目まどかはライダーの後を着いて行く。


8 : 神話前話 ◆wd6lXpjSKY :2015/06/20(土) 23:46:19 .i8ra82A0

黙って歩いていると目の前から点滴をしている少年が歩いて来た。
病院だから当然ではあるが年も近い見た目をしているため何処か親近感を感じてしまう。

だがこの少年もNPCと考えるとどうも違和感しか感じないのが正直な所である。
タダノと会話しても、店員と会話しても、通行人と会話しても。
どれも違和感を感じない。違いがあるとすれば聖杯の話題になるか否かのみ。

直感ではNPCやマスターといった見分けなど出来る方が難しいだろう。


「――運ばれた男の人の知り合いですか?」


「え……そ、そうです」


すれ違いざまに少年は鹿目まどかに語り掛ける。
その言葉に反応し足を止める彼女。近くで見れば更に同年代であることを感じる。

自発的に話し掛けるNPCも存在する辺りこの空間は現実と何が違うのか。
魔女の反応は感じないがその代わりにサーヴァントがいるぐらいだろうか。
そんなことを考えていると少年は更に言葉を紡ぐ。


「あの人、鉄骨に刺されたみたいに脇腹が裂かれていたけど大丈夫?」

「すごい傷ですよね……でもカエルさんみたいなお医者さんは大丈夫って言ってくれましたけど……」

「カエル顔……? でも、お医者さんが言うなら大丈夫だよね」


カエル顔の医者。
初対面で申し訳ないが彼を表す表現にはうってつけの言葉である。
緊張的な場面ではあるが彼のおかけで空気が和んでいる。
決して彼の顔を貶している訳ではないので、勘違いしないでもらいたい。


9 : 神話前話 ◆wd6lXpjSKY :2015/06/20(土) 23:47:06 .i8ra82A0

少年が言ったとおりタダノの傷は深い。
始まりの男である夜科アゲハが放った黒い流星の切れ味は尋常じゃ無いほどに鋭く。
直撃こそしていないがその痛撃でタダノは意識を手放している。

部外者から見れば貫かれただの斬り裂かれただの。
とにかく現実とはかけ離れた漫画や映画でしか見たことの無いような傷であった。
少年が気になってまどかに話し掛けるのも無理は無い。


「もしかして、普段からあんな危険なことに関わっているの?」

「え、いや……そんな訳はない、かな?」

「だよね……うん。突然ごめんね」


鹿目まどかの心臓は若干鼓動を早める。
下手に解答しては自分が聖杯戦争に参加していることをバラしてしまう。
出来るだけ慎重に……と考えていたが少年はあっさり納得し少し笑っていた。

現実を噛み締めながら鹿目まどかは思う。
願いは叶えたい。でも帰りたい。

二つの気持ちが渦を巻く中、その中心には暁美ほむらの存在が浮かぶ。

願いを叶えても。
元の世界に帰っても。

其処に暁美ほむらが居る保証は何処にも無い。


「じゃあ、行くぞまどか」

「あ……はい」

「まどかって言うんだね……僕は浅羽直之、って紹介しても意味無いよね」


笑い気混じりに浅羽は自分の名前を告げる。


「そう……かもね。それじゃ、さよなら? でいいのかな」

「うん。さようなら、まどかさん」


こうして二人の少年少女は出会いを果たす。
方やNPCと思い込んでいる鹿目まどかだがそれが幸せかもしれない。
敵に気付かないとはある意味で幸運なことである。
戦闘をサーヴァントに任せていればそれに越したことはない故に。

エレベーターのスイッチを押し到着するのを待つ。
その光景にライダーが少年のような瞳ではしゃいでいるのが印象深い。
頼れる存在だったり笑える存在だったりライダーの存在は鹿目まどかにとっての支えになっていた。














「君も参加者なんだねまどかさん……あの麦わら帽子のサーヴァントも強そうだったし」


ガコンと音を立てながら飛び出して来た冷たいお茶の缶がやけに冷たく感じた。
周りには誰もいなくて僕一人だけなのが聖杯戦争の境遇を表しているようで何だか虚しくなってくる。
エレベーターを見送りながら缶を開けてお茶を飲んだ。今日のお茶は冷たい。


10 : 神話前話 ◆wd6lXpjSKY :2015/06/20(土) 23:47:50 .i8ra82A0

病室に入室しベッドに腰掛けるまどかとそれを見ているライダー。
カエル顔の医者が言うに、タダノは別に死ぬ訳でもないし明日になれば動ける程度には治るとのことだった。
激しい運動は出来るだけ控えるようにと忠告されたが警察という職業柄厳しいかもね。と、言葉を添えられた。
まどかに何か聞き出したいような表情を浮かべていたが、彼女の悲しい瞳を前に諦め、間を空けた後に微笑む。

事情聴取などは明日にでも警察の方でやるだろうし、幸いこの病室に患者は居ないから泊まっていくといい。
そう言い残しカエル顔の医者が去ったのが数分前の出来事であった。

(ほむらちゃん……)

鹿目まどかが想うのは自分を攫ったキャスターではない。
勿論気になっているし、これからの戦いで関わるような何かを感じるがそれよりも濃い想い。
暁美ほむら。友達である存在からの襲撃は彼女の心に深い謎と闇を残している。

何故なのか。

参加していることにも驚いたが自分が参加している以上、友達が居ても不思議ではない。
いや、不思議である。鹿目まどかは自らの意思による参加ではなく巻き込まれての参加だ。
誰にも言っていないし、言える状況でも無ければ、参加している現状を報告することも出来ない。
その中で暁美ほむらが現れたのは何か特別な、偶然では片付けられない運命を感じてしまう。

運命を解体していくとそこには見滝原や魔法少女の共通項が浮かび上がっていく。
もしかしたら美樹さやかを始めとする他の友達も参加しているかもしれない。
巴マミならば頼れる先輩として自分を導いてくれるだろうか。既に死んでいる。
佐倉杏子なら不器用ながらにこの世界を生きているのだろうか。閉ざされた世界で。
美樹さやかならばいつものように笑顔で接してくれのだろうか。黒く穢れきったソウルジェムを携えて。

ここまで考えると全員に繋がる共通項が一つ浮かび上がってくるのは避けられない。
それは魔法少女ではない。軸である自分が契約していないために除外する。
すると点と点を結び合わせた時、中心にくる『存在』が一つ、まっさらな紙に絵の具を零すように。
どうしようもない現状を創り上げる一つの存在が彼女達を繋ぎ合わせているのだ。


「もしかしてキュゥべぇ……あなたが私達を聖杯戦争に参加させたの……?」


これはただの空論であり子供が将来の夢は海賊王だとか世界を統べるだとか同類である。
根拠も無ければ証拠も無く、なんでと聞かれれば無言になってしまう幼稚な発想と変わらない。
強いて言うならば直感だとか運命を感じるだとか、オカルト的な解答になりかねない。
そんなことを言われても困るだけである。最も話す相手がいない。いるとすればタダノだろうか。

「ライダーさん……?」

タダノは別の病室にて絶賛安静中ではあるが、この病室にはライダーが居る。
自分の境遇を考えるよりもまず、彼との情報共有に務めるべきだったとまどかは想う。
自分が攫われている間に何があったのか聞いておかなければならない。
そしてキャスターとのことや暁美ほむらのことを彼に伝えなければならない。
やらねばやらぬことを考え、振り向くとライダーは寝ていた。


11 : 神話前話 ◆wd6lXpjSKY :2015/06/20(土) 23:50:40 .i8ra82A0

ベッドの上で大の字、布団も掛けないで豪快に寝ていた。
その姿は聖杯戦争中でありながらも、何処かどうしようもなく笑みが溢れてくる光景である。
自分を助けるために無茶をしてくれたんだろう。頭が上がらない。

彼は強い。
それはステータスの話ではなく一人の人間として強く感じている。
どんな嵐に負けずに立ち向かう。ピンチの時には傍に駆けつけて一緒に居てくれる安心感。
空高くまで走りだすような勢いと世界中の海を股に掛けるような行動力は純粋に羨ましい。

自由の象徴でもある彼に鹿目まどかは意図せずに頼っている。
本来ならばマスターである自分がしっかりしなくてはならない、頬を叩いて切り替える。

外を見れば太陽も沈んでいる。
今日は色々なことがあった。明日がもっといい日になるとは限らないのだ。
寝れる時に寝てしまおう。いざという時に動けなければ迷惑を掛けてしまうから。
ボタンを押して部屋の電気を消すまどか。シャワーの一つでも浴びたいが朝に済ませよう。

布団の中に入り暖かい温もりを感じる。
身体の中から一気に疲れが溢れだし、眠気が一緒に襲って来た。
これならば早く寝れそうだ。そう想い瞳を閉じた彼女の聖杯戦争一日目は終了する。



「ほむらちゃん……」



最も何もかも忘れることなど不可能で。
今日起きた出来事総てが悪夢となって現れると思ってしまう程に、不安が心を支配していた。


12 : 神話前話 ◆wd6lXpjSKY :2015/06/20(土) 23:51:57 .i8ra82A0



【C-7/病院/一日目・夜】



【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]睡眠中、疲労(小)、不安
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:叶えたい願いはあるが人を殺したくないし死にたくもない。
0.今日は眠る。
1.キャスター(食蜂)への親近感、タダノへの攻撃、ほむらの襲撃などいろいろあって混乱。
2.起きたらタダノと会話をする。
3.聖杯戦争への恐怖はあるが、『覚悟』を決めたい。
4.魔女のような危険人物は倒すべき…?
[備考]
※バーサーカー(一方通行)の姿を確認しました。
※ポケットに学生証が入っています。 表に学校名とクラス、裏にこの場での住所が書かれています。
※どこに家があるかは後続の方に任せます。
※アーチャー(モリガン)とタダノは同盟相手ですが、理由なくNPCを喰らうことに少なくない抵抗感を覚えています。
※セイバー(流子)、ランサー(慶次)、キャスター(食蜂)を確認しました。
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』により食蜂に親近感を抱かされていました。
※暁美ほむらと自動人形を確認しました。


【モンキー・D・ルフィ@ONE PIECE】
[状態]睡眠中
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:まどかを守る。
1.寝る!!
2.タダノを攻撃した奴についてはアーチャー(モリガン)に任せる。
3.バーサーカー(一方通行)に次会ったらぶっ飛ばす。
4.バーサーカーに攻撃がどうやったら通るか考える。
5.タダノとの同盟や今後の動きについてはまどかの指示に従う。
6.肉食いたい。
[備考]
※バーサーカー(一方通行)と交戦しました。
 攻撃が跳ね返されているのは理解しましたがそれ以外のことはわかっていません。
※名乗るとまずいのを何となく把握しました。以降ルーシーと名乗るつもりですが、どこまで徹底できるかは定かではありません。
※橋を渡り、まっすぐ(ルフィ主観で)走っています。まどかがいる+市街地なので病院を見落とすことはないと思いますが実際どうなるかは後続の方に任せします。


[共通備考]
※タダノ&アーチャー(モリガン)と同盟を組みました。
 自分たちの能力の一部、バーサーカー(一方通行)の容姿や能力などの情報を提供しましたが、具体的な内容については後続の方にお任せします。


【タダノ ヒトナリ@真・女神転生 STRANGE JOURNEY】
[状態]魔力消費(小)、ダメージ(処置済み)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争に勝利する
1.気絶中
[備考]
※警察官の役割が割り振られています。階級は巡査長です。
※セイバー(リンク)、カレン、ライダー(ニューゲート)、刑兆について報告を受けました。(名前は知らない)
 ライダー(ニューゲート)のことはランサーと推察しています。
※ルフィの真名をルーシーだと思っています。
※ノーヘル犯罪者(カレン、リンク)が聖杯戦争参加者と知りました。
※まどか&ライダー(ルフィ)と同盟を結ぶました。
 自分たちの能力の一部、連絡先、学生マスターと交戦したことなどの情報を提供しましたが、具体的な内容については後続の方にお任せします。
※人吉、セイバー(纒流子)、ルキア、ランサー(慶次)、キャスター(食蜂)を確認しました。


13 : 神話前話 ◆wd6lXpjSKY :2015/06/20(土) 23:52:38 .i8ra82A0

病室に戻るとアーチャーさんが当然のように僕を待っていた。
眠りから覚めたあとに聖杯戦争の事を考えると僕は頭が少し痛くなっていた。

脱落者が出たということは戦闘が始まっていることを肯定している。
僕が眠っている間に殺し合いが行われているのは、常に背中に敵が潜んでいるようで落ち着かない。
気を紛らわせようとお茶を買いに行ったらまさか他のマスターと出会うなんて想像もしてなかった。

空気を入れ替えるどころか、ぞっとする体験だった。

唯でさえ急患のように運ばれてきた男の人も令呪を宿していたのに。
自分を含めると最低でも三人のマスターが病院に居ることになる。

「お茶、入ります?」

考えるだけで恐ろしい。僕はそっとアーチャーさんにお茶を差し出した。

「僕はいいよ。気持ちだけってことにしておいて」

手を数回顔の前で振り拒否られてしまった。
サーヴァントにはそもそも食事や給水は必要ないのかもしれない。

さて。僕はこれから何を話せばいいのか解っていなく、気付けば無言になっていた。







「学園のニュースについてだけど」

浅羽が黙っているのを感づいてかアーチャーは語り掛ける。

「屋上での爆発ですよね?」

「そう。解っているとは思うけど聖杯戦争参加者の仕業だと思っている」

日中に起きたアッシュフォード学園での屋上爆破事件は大々的に取り上げられている。
病院内を歩いても患者や医者、看護師の話題はそれ一色に近い状態だった。
当然ではあるが、日本の学園で爆破事件など起こることは滅多に無いケースである。
聖杯戦争に関わる世界ならではのイベントと言えよう。


14 : 神話前話 ◆wd6lXpjSKY :2015/06/20(土) 23:53:09 .i8ra82A0

屋上で戦闘を行った。つまり学園内にいる生徒には配慮したのだろう。
願いを求めて参加しているからにはなりふり構っていられない参加者もいると思っていた。
それは嬉しい誤算でもあるが、願いを求めて参加している以上、遊びではない。

浅羽もその参加者の一人であり、自らの意思で参加しているのだ。
などと考えるのは当然過ぎることであり、黙ってアーチャーの話に耳を傾ける。

「それで。僕達が遭遇した参加者は老人一人と理性を持ったバーサーカー、そのマスターだけ」

一人は老人。
浅羽がPSI粒子の影響で体調を崩していた時に現れた老人。
共闘を持ち掛け、あろうことかアーチャーに鞘替えを提案した人物だ。
アーチャーは彼とは異なる人種であり交渉は決裂、次に会う時は敵同士の関係になる。
サーヴァントを引き連れずに交渉を持ち掛け、内容も大胆であった。
それでも生身で仕掛けてきたことを考えると実力に相当の自信があるのだろう。

もう一人はバーサーカーとそのマスター。
理性を持った狂戦士は翼を操り腕を振るい大地を抉っていた。
バーサーカー同士の戦闘は一言で表せば圧巻であり、出来れば関わりたくない。

「情報が少ない――大胆に学園に出向いて情報収集をしようと思うんだ」

立ち回るにも圧倒的情報力不足は戦闘に響いて来るだろう。
彼らは知らないが、とあるキャスターは地力は最低層ながらも情報を駆使して学園を手球に取っていた。
お世辞にもステータスが高いとは言えないアーチャー。
無論、数値だけが総てではなく、数値だけで決着が着くなら戦闘は要らないだろう。

彼が提案したのは戦闘があったであろう学園への潜入だった。
犯人は現場に戻る。言葉通り他の参加者と遭遇出来るかもしれない。
戦痕から何か他サーヴァントに対する手掛かりを掴めるかもしない。
ニュースを見て同じことを考えた参加者が学園に来るかもしれない。

「だから君の答えを知りたい。夜の学園に潜入するのは行儀悪いってなら大人しく――」

一人で向かう。
言葉には出さずに、喉元で抑えこむ。
なるべくならマスターに負担は掛けたくない。
唯でさえイレギュラーである聖杯戦争だ。精神的負担は少ないほうが安全に決っている。

「夜の学園……なんだか、ワクワクしますよね」

その言葉にはどこか懐かしみを感じて、ちょっぴり切ない響きだった。

対する答えは笑みを含めた予想外な一声だった。
優等生風であるマスターからそんな答えが返ってくるのは正直に言って驚きである。
詮索はしないが有難い限りであった。

「後悔は無いね?」

「勿論です。殻に閉じ籠もってたら……何のために聖杯戦争に参加したか解らないから」

彼にはもう一度逢いたい存在がいる。
願いを叶えるために危険を承知で参加しているんだ。
黙っていたら何も変わらない、だから――。

窓の隙間から吹いてくる夜風が今日はやけに冷たく感じた。




【浅羽直之@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]健康
[令呪]残り3画
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯の獲得を目指す。
1.学園に向かう
2.アーチャーに運ばれてきた男(タダノ)とまどかのことを話す
[備考]
※PSI粒子の影響を受け、PSIの力に目覚めかけています。身体の不調はそのためです。
→念話を問題なく扱えるようになりました。今後トランス系のPSIなどをさらに習得できるかは後続の方にお任せします。
※学園の事件を知りました。
※タダノがマスターであることを知りました。
※まどか、ライダー(ルフィ)を確認しました。



【穹徹仙@天上天下】
[状態]健康
[装備]NATO製特殊ゴム
[道具]ダーツ×n本
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を目指す
1.学園に向かう。
2.マスターを守る。
[備考]
※学園の事件を知りました。


[共通備考]
※美樹さやか、不動明、間桐雁夜、一方通行の戦闘を目撃しました。


15 : ◆wd6lXpjSKY :2015/06/20(土) 23:54:53 .i8ra82A0
以上で投下を終了します。
新しい聖杯が建っていたりアニメも終盤とイベント尽くしでなによりです(?)


16 : 名無しさん :2015/06/21(日) 00:01:09 nFn0vRyc0
投下お疲れ様です
やっぱほむほむのことはまどかに影を落としてたのね
ルフィを称する彼女の言葉が素敵だ
それとこの事をきっかけにちょっと覚悟決まってきたかな…
浅羽たちはとりあえず学園へ向かうのか
こっちはこっちでほむほむたちとぶつかりそうだ


17 : ◆lb.YEGOV.. :2015/06/21(日) 00:45:28 qutsmEbk0
投下お疲れ様です
まどかはやはりほむら(アプ・チャーさん)の件が後を引いてますね
開幕から色々なイベントが立て続けに起こってまどかにとっては正に激動の一日でしたね
そして、浅羽は夜の学校に
ほむほむ、エレン、網を張るウォルター組とサイレン聖杯戦争1日目夜の部も目が離せないイベントが起きそうでとても楽しみです

感想ついでですが、フェイスレス、人吉善吉で予約いたします


18 : ◆wd6lXpjSKY :2015/06/21(日) 00:53:28 pFe662Dc0
感想とよやくありがとうございます!
個人事で申し訳ないのですが7月はきっと書けません(だからどうしたって話ですが)
少しだけ調子に乗ります。

ほむほむ、エレン、ジャファル、ウォルター、レミリア、カレン、リンク、浅羽、弩、モリガン、天戯弥勒で予約します。


19 : 名無しさん :2015/06/21(日) 17:31:04 nFn0vRyc0
おお、司令と善吉予約に加えまたもや大型予約が!期待です!


20 : ◆wd6lXpjSKY :2015/06/24(水) 21:26:51 W7TFbtic0
まだ期限はありますが先に延長申請します。


21 : ◆lb.YEGOV.. :2015/06/25(木) 01:11:29 bXakVEG.0
お待たせしました。フェイスレス・善吉投下します


22 : 背に腹は ◆lb.YEGOV.. :2015/06/25(木) 01:12:43 bXakVEG.0
『金のキャスターを中心とした大立ち回りはいかがでしたでしょうか』

『絡み合った運命は、またそれぞれに散っていきましたが、舞台はまだまだこれからでございます』

『第二の演目のメインキャストは闇夜の住人達と少年少女。ですがその裏、いたるところでも舞台は進行しております』

『これより始まりますのは銀のキャスターと"主人公"に立ち向かう一人の脇役が織り成す幕間劇』

『しばしの間ではございますが、どうぞご観劇くださいませ――』



フェイスレスとほむらに変装したアプ・チャーが街道を歩く。
アプ・チャーの背には浚われ、気を失っている人吉善吉の姿。
口許に血の朱が残る彼の毛髪には一部銀色のものが混じっている。
しろがねであるフェイスレスの血を経口摂取した事によるしろがね化が進行している証である。

(経過は上々、あとは僕の意識がマスター、確か学生証に人吉善吉って載ってたっけ。こいつを塗りつぶせるかどうかだ)

生命の水を飲んだ人間はその水に溶け込んだ人間の記憶や経験を強制的に引き継がされ、人格すらも変えられてしまう。
が、その度合いは純度などによって著しい変化があり、生命の水が混じった血を少量混ぜこんだものを摂取した程度では影響らしい影響を及ばさない。
フェイスレスが行った生命の水の混じった血液を直に飲ませる行為にしてもしろがね間では禁忌とはされているが、加藤鳴海、ルシール・ベルヌイユ、ジョージ・ラローシュらが行った際には人格の支配はもちろんの事、しろがね化の兆候も見られず、その影響力、支配力は未知数である。
しかし、フェイスレスはここに契約による魔力回路の接続を絡める事でその力を強める策に出た。
魔力回路の繋がった主従は時折相手の過去を夢などの形で幻視するなど、精神的な繋がりが強くなり、その分、主従間での精神的なアプローチはより大きな効果が見込める。
それを利用して大がかりな準備が必要なダウンロードを使わずとも、契約した主の精神を侵食し塗り潰す事ができると考えたのだ。

結果、善吉にはしろがね化の兆候が見られた。
それはフェイスレスの意識が彼を侵食している証左。
それでも、一抹の不安が残る。
かつて、人格のダウンロードを行ったにも関わらず、自身の意識に食い殺される事なく抗い、フェイスレスの計画を台無しにした一人の少年の姿がチラつく。

人吉善吉が才賀勝と同等とは思わない。
あの時とは状況は異なる。
それでも、かつての苦い敗北の記憶は、フェイスレスの頭に警鐘をならし続ける。
兆候が出ているとはいえ、善吉の髪は、白銀<しろがね>に染まりきってはいないのだから。

ん、と善吉が身動ぎをし、フェイスレスとアプ・チャーはその足を止める。

「おや、お目覚めのようだ。アプ・チャー、下ろしてやりな」

楽しそうなフェイスレスの声に従い、アプ・チャーが善吉を近くのベンチへと下ろす。
うっすらと善吉の眼が開く。
顔を照らす落ちかけの夕日に眩しそうに手を翳しながら、その意識を覚醒させていく。
目覚めた彼の目の前には面識はなくとも記憶の中で見知った男女の姿。

「おはよう、気分はどうだいマスター」
「ああ、悪くないぜ白金」

人吉善吉が知らない筈の、フェイスレスでもない彼の本当の名前で返答する。
記憶の引き継ぎは成功した。
だが、フェイスレスはまだ安堵をしない。

「それで、君は僕かい? それとも彼かい?」

おどけた調子で話しかけるも、サングラスの奥の瞳に油断の色は一切ない。
その質問の意味を理解している善吉は、その顔に不敵な笑みを浮かべた。

「カッ、悪いな。"俺"はまだ"俺"のままだ」

決して衆目に映る事のなかった戦いで、己が勝利した事を善吉が告げた。


23 : 背に腹は ◆lb.YEGOV.. :2015/06/25(木) 01:13:51 bXakVEG.0



殺風景な、人吉善吉の記憶の部屋。
ボロボロの姿で転がっているフェイスレスと、それを同じくボロボロの姿で見下ろす善吉。
その勝敗は明白だった。

「やんなっちゃうよ。こんな形で邪魔が入るなんてさ」

息も絶え絶えにフェイスレスが呟く。
仰向けに横たわっている彼に動き出す気配は見られない。

「いっつもそうなんだ、肝心なところで邪魔が入る」

僕の記憶も継承したんならわかるだろう?と、善吉に語りかける。
白銀、クローグ村の住人、才賀正二、そして才賀勝。
善吉の脳裏を駆け巡るのは、恋に敗れ続けた白金であり、ディーン・メーストルであり、才賀貞義であり、フェイスレスであった一人の男の歴史。
微かな歯車のかけ違いから発展した、どこまでも身勝手ではた迷惑だった恋の歴史。
その喜劇とも悲劇とも取れる気の遠くなるような道程に対して、善吉は語る舌を持たない

「まあ、今はいいさ。勝の時と違って君は僕を完全には消せた訳じゃないしね」

フェイスレスの体が床の下へと沈んでいく。
だが、沈みゆくフェイスレスの顔には笑みがたたえられている。
それはまだ、フェイスレスが善吉の精神の掌握を諦めていない証拠であり、まだ、掌握を行う術があることを言外に語っていた。

「君は僕に辛うじて勝った。君の欲視力とキャスターの宝具の影響でようやく僕に拮抗できたんだ。
なら、そのどちらかが無くなれば、君を支配するなんて容易い訳さ」

顔だけを動かして、フェイスレスは記憶の部屋の片隅で暢気にティータイムを満喫している女性、キャスターを見やる。
本人由来の異能を消し去ることは難しい。少なくともフェイスレスに出来る芸当ではない。
だが、キャスターの宝具であれば話は別だ。
キャスターが脱落する。ただそれだけで宝具の効果は消失する。
おまけにキャスターは複数の陣営、それも三騎士のクラスの主従ばかりから危険視されており、フェイスレスや善吉が自ら手を下さなくとも敗退する可能性もある。
生命の水による精神の上書きは現状対抗できているだけで、恒常的に無効化できた訳ではない。
拮抗状態を保たせていた支柱の一つが失われるだけで、再び善吉の精神を蝕みはじめ、塗り潰せると生命の水に溶け込んだフェイスレスの人格は確信する。

「さあ、ここからが大変だぜ善吉君。
なんてったって、あのキャスターを倒す前に、どうにかして僕を倒さなきゃいけなくなったんだから」

フェイスレスの口が三日月を描く。
至極困難な事に挑戦せねばならなくなった善吉を嘲笑う。

善吉を洗脳し、その生殺与奪の権利を自由に行使できるキャスターがいる限り、善吉が勝利を手にする可能性は低い。
だが、キャスターを倒そうものならば、精神侵食に対抗していた存在が消え、みるみる内にフェイスレスに己が人格を食い潰され"人吉善吉"という存在は消滅してしまうだろう。
そうなっては全てが終わりだ。

「生憎と僕は待つのになれてるんでね、その時が来るまでゆっくり、ゆっくりと待たせてもらうよ」

それじゃあまた。といい残し、フェイスレスが高笑いと共に消えていく。
記憶の部屋には善吉だけが取り残された。

辺りを見回す。
だが、そこには名前を忘れさせられたアサシンも、安心院なじみの姿もどこにもない。
不必要に外野や退場者が干渉し続けるのを嫌ったのか。
それとも、あの一瞬の出来事は残った記憶が見せた幻だったのか。
それは善吉自身にもわからない。
それでも、押し潰されそうな自分の心をあの二人が繋ぎ止めてくれた事は、純然たる事実としてここにある。
だからこそ、負けられない。
いいように操られて終わるような、無様な結果は見せられない。
部屋に強い光が差し込む。
目を覚ますときが近づいていると、本能的に察知する。

「それじゃあいっちょ、やってみるか」

部屋の扉に向けて善吉が歩を進める。
これから先、どれだけの苦難が待ち受けているかわからない。
だが、それは歩みを止める理由になどなりはしない。
何故なら、もし"彼女"であればこの程度の苦境で膝を折ることなど決してありえないからだ。
ならば、隣に立ち共に歩む事を望む自分が歩みを止める訳にはいかない。
扉の前でふとふり返る。
殺風景だった部屋の奥の奥、そこに凛と佇む一つの人影を見た。
決して忘れていい筈がない、"彼女"は人吉善吉にとって不可侵の聖域。

「行ってくるぜ、めだかちゃん」

ニヤリと挑戦的な笑みが浮かぶ。
視界が完全に白に染まった。


24 : 背に腹は ◆lb.YEGOV.. :2015/06/25(木) 01:14:36 bXakVEG.0



「ありゃりゃ。失敗か」

フェイスレスが大きく肩を落とす。
いかにも消沈しているかのような表情を浮かべているが、その真意はわからない。

「ま、駄目だった事をいつまでも嘆いていたって仕方ないや。
改めて初めまして善吉君。僕の記憶を引き継いでいるだろうから、大体の事は分かってるよね?」
「ああ、理解してるぜキャスター。あんたが不仲なマスターを謀殺したって事も、今は俺以外にマスターの候補がいないって事もな」

フェイスレスのサングラスの奥の瞳が細まる。
不測の事態に臨戦体制となっていたアプ・チャーを手で制し、フェイスレスは笑みを強める。

「そうそう、正直困ってるのさ。
僕は頑張って元のマスターと優勝しようと思ってたのに、なんだか知らないけど妙に嫌われちゃってね、挙げ句にこそこそと裏切るような算段までされちゃったんだよ。
なーんか隠し事大好きみたいな割には隠すの下手だし、流石に僕も危機感を覚えちゃったって訳」

おどけた調子で裏切りの経緯をフェイスレスがつらつらと語り出す。
フェイスレスの記憶を疑似体験した善吉もフェイスレスとその元マスター、暁美ほむらの主従仲が良くなかった事は理解している。
少なくとも出会った当初の短いやり取りの内にフェイスレスがほむらから一方的に嫌われていた事を鑑みるに、余程性格的な相性が悪かったのだろうと推察した。

「で、裏切られる前に裏切ったって事だろ」
「そうさ。僕だってマスターの都合のいい道具じゃないからね、これは聖杯戦争なんだ、味方とはいえやられる前にやるのは常識だろう?」

楽しそうに語るフェイスレスを見て、善吉が察する。
これは自身に対しての牽制であると。
今、善吉にはフェイスレスへの令呪が宿っている。善吉が「自害せよ」と命じればそれだけでフェイスレスは死亡する。
故にフェイスレスは「暁美ほむらの様な真似をするならば、同様に対処をする」と善吉に釘を刺しているのだ。
欲視力でフェイスレスの視界を盗み見る。
おちゃらけた態度とは正反対にその視線は間断なく善吉を見据え、少しでも不審な動きをすれば、直ちに"分解"で動きを封じ、令呪を使わせない腹積もりだ。

「それで今度のマスターは自分の思い通り、いや、自分とまるっきり同じ思考をする奴を用意しようと思った訳だ」
「そういう事さ、自分なら決して自分を裏切らないからね」

悪びれる様子の欠片もないフェイスレスに、過不可の人間とも友好的に付き合える度量を持つ善吉であっても不快感と脅威を覚える。
自分の目的の為なら誰かが不幸を被ることなど一切の考慮もしない極限にまで肥大化したエゴイズム。
それはさながら周りの全てを燃やし尽くしながら煌々と燃え続ける黒い太陽と形容できるほどだ。
改めて、このサーヴァントを野放しにする危険性を善吉は肌で感じた。

「でさ、本題なんだけど、この状況で君はどうするつもりだい、マスター。
君を動けなくしてもいいんだけど面倒だし、あまり手荒な真似はしたくないんだよね、僕」

黙ってフェイスレスのマスターとして共に聖杯戦争に臨むか。
動けないように丹念に分解されてただの魔力タンクになるか。
二つの選択肢を善吉に突きつける。

「そんなに心配するなよキャスター、態々脅さなくたってこっちももう決めてるんだ」

一歩、善吉がベンチを発ち、歩みを進める。

「お前はマスターがいないと魔力が足りなくて困る」

人吉善吉の顔に迷いはない

「俺はサーヴァントがいなきゃどうにもならない」

正面から、向かい合うようにフェイスレスと対峙する。

「利害は一致してるんだ、乗ってやるぜ、その話」

心の中で、少し前まで一緒にいた、アゲハやルキア達に謝罪を告げる。
恐らく彼らならば、この男の所業を許す訳はないだろう。もちろん善吉自身とてそうだ。
だが、善吉が今とれる最良の手段はこれしかない。
大事なのは意地を張って死ぬ事ではなく、生き残って聖杯を手にし、望みを叶えて帰還する事。
その為にも未だ侵食を続けるフェイスレスの生命の水と、自身の自由を奪うキャスターへの対処こそが彼にとっての最優先事項であり、その為ならば自分を乗っ取ろうとした相手との共闘も、必要な事だと割りきった。
浮かぶ渋面を不敵な笑みで塗り潰し、善吉はフェイスレスと共に歩み、機会を伺って打倒する道を選択した。


25 : 背に腹は ◆lb.YEGOV.. :2015/06/25(木) 01:18:09 bXakVEG.0

「……正直、そういう反応は想定外だったよ」

自分のした事とはいえ、人格を乗っ取ろうとした相手に対し、善吉は自ら進んで共闘を受け入れた。
その行動にフェイスレスは微かに驚愕し、そしてその思いきりの良さに、かつて自分の思惑を滅茶苦茶にした男達の事が頭をよぎり、警戒心が頭をもたげる。
だが、それを微塵も表情に出すことはない。道化の顔に本心を隠すのは彼の十八番だ。

「でも、話が早いってのは助かるかな。オーケイさマスター、改めてヨロシク」

笑顔を浮かべ、フェイスレスが右手をさし伸ばす。
"分解"を知っているものであれば握手に応じようとした矢先に手の各間接をバラバラに分解される可能性を危惧するだろう。
実際、フェイスレスもそれを見越して相手がどういう反応をするか観察する事が目的だった。
仮に躊躇うようであれば、それは自分に心を許していない証拠であり、叛意ありとして早期に手を打つ必要がある。

「ああ、よろしくな、キャスター」

しかし、善吉は躊躇う素振りも見せずにその右手を取った。
善吉の欲視力はそのフェイスレスの目論みを看破していた。
故に躊躇なく右手を差し出し、握手をする。
当事者間の読み合いに関しては、善吉がフェイスレスの上をいく形となった。

(この調子なら、ひとまずは手は打たなくていいかな)

無邪気に笑顔を浮かべた仮面の裏でフェイスレスが思考する。
ほむらのようにあからさまな敵意がない事を確認し、当面は善吉をマスターとして行動する方向に予定をシフトしていく。
だが油断はできない。
少なくとも、人格を奪おうとした人間を相手が無条件で信用するような事はありえないとフェイスレスは断言できる。
仮に裏切るという手段に出るのであれば眼前の男はもう少し巧妙に動く事が予想できた。

(ほむらの時は彼女の知り合いのお陰で幸運が転がり込んできたみたいなもんだけど、そういうのが何度も起きるとは限らないしなぁ)

内に策を張り巡らす必要がある。
機会を待ち、飼い主を殺して檻から出ようとする獣を絡めとり、二度と出られなくする為の策を。

(……それに、勝の時と同じってわけでもなさそうだしね)

しろがね化の兆候が出ている事から人格の支配が完全に無効化された可能性は低いとフェイスレスは判断する。
ならば、人格支配を阻害する要因が善吉の中にある筈だ、それはなにか。

(ま、そのあたりもおいおい考えるとしようか)
「それじゃあ今後の事とかもあるからさ、ないとは思うけど盗み聞きされると厄介だし、詳しくは僕達の拠点で話そうぜ」

握手と思考を打ちきり、フェイスレスが指を鳴らす。
瞬間、背後に控えていたアプ・チャーが姿を消し、代わりに2体の人形が姿を現した。

「マスターは僕の記憶からこいつらの名前を知ってるから紹介の必要はないよね?
アノス、ケニス、彼が新しい僕のマスターだ。これから一緒に帰るから丁重に運ぶんだよ」
「「承知いたしやした、造物主様!」」

指示を受けた2体の人形が 善吉とフェイスレスを連れて宙を舞う。
善吉が見上げた空は既に日が暮れ、彼の行く末を表すかのように闇が侵食していく。
だが、広がるのは闇ばかりでさない。
点在する星々が暗がりの中で己の存在を主張する様にきらきらと瞬く。
それはまるで、挫けぬ意思で、その身一つでフェイスレスに立ち向かう善吉を象徴しているかのようだった。


26 : 背に腹は ◆lb.YEGOV.. :2015/06/25(木) 01:19:40 bXakVEG.0

【B-6/空/一日目・夜】

【人吉善吉@めだかボックス】
[状態]軽度のしろがね化
[令呪]残り二画
[装備]箱庭学園生徒会制服
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:キャスター(操祈)とキャスター(フェイスレス)を討伐し、最後には優勝する
1.陣地に帰還し、フェイスレスと今後の方針を話し合う
2.アゲハ達にあったらどう説明しよう?
3.キャスター(操祈)が討伐される前にフェイスレスをどうにかして脱落させたい
[備考]
※アッシュフォード学園生徒会での役職は庶務です。
※相手を殺さなくても聖杯戦争を勝ち抜けると思っています。
※屋上の挑発に気づきました。
※学園内に他のマスターが居ると認識しています。
※紅月カレンを確認しました。
※キャスター(操祈)を確認しました。
→加えて操祈の宝具により『食蜂操祈』および『垣根帝督』を認識、記憶できません。効果としては上条当麻が食蜂操祈のことを認識できないのに近いです。これ以上の措置は施されていません。この効果は未だ続いています。
※セイバー(リンク)を確認しました。
※朽木ルキア、ランサー(前田慶次)を確認しました。
※ライダー(ルフィ)を確認しました。
※フェイスレスと再契約しました。
※フェイスレスの血液を飲んだことでしろがね化が進行、記憶や知識も獲得しています。
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』による操作と『欲視力』により得た他者認識力により、フェイスレスの乗っ取りに抵抗しています。現状精神は乗っ取られていませんが、キャスター(操祈)が脱落し、宝具の効果が消滅した場合は精神が乗っ取られる確率が極めて高くなります。


【キャスター(フェイスレス)@からくりサーカス】
[状態]魔力充填(小)
[装備]特筆事項無し
[道具]特筆事項無し
[思考・状況]
基本:聖杯を手に入れる。
1.陣地へ帰還し、善吉と今後の方針について話し合う。
2.アプ・チャーを上手く使って美樹さやかを利用したい。
3.暁美ほむらの情報を得るために桃色髪の少女(まどか)と接触したい。
4.善吉に強い警戒心。裏切られる前に何か手を打ちたいが当面は様子見。
[備考]
※B-6に位置する遊園地を陣地としました。
※冬木市の各地にアポリオンが飛んでいます。
 現在、さやか、まどか、タダノを捉えています 。
※映像越しにサーヴァントのステータスを確認するのは通常の映像ではできないと考えています。
※ほむらから伝聞で明とルフィのステータスを聞いています。明についてはある程度正確に、ルフィについては嘘のものを認識しています。
※バーサーカー(不動明)を己の目で確認しました。
※暁美ほむらは何か隠し事をしていると疑っています。
※美樹さやかと暁美ほむらの関係を知りたがっています。
※ピンク髪の少女と暁美ほむらには繋がりがあると確信しています。
→アプ・チャーの報告から親しいものと認識。
※ランサー(慶次)と交戦しました。
※セイバー(流子)、アーチャー(モリガン)を確認しました。
※ほむらとの契約を破棄、善吉と契約しました。ほむらは死んだと思っています。
※善吉の精神が乗っ取れなかった事に対して、何らかの要因で生命の水による侵食が阻害されている事が原因であると推察しています。


27 : ◆lb.YEGOV.. :2015/06/25(木) 01:20:35 bXakVEG.0
以上で投下を終了いたします。
指摘等ありましたらよろしくお願いいたします。


28 : 名無しさん :2015/06/25(木) 05:11:55 YgbO8Zlg0
投下乙です!

>「過不可」
「過負荷」の誤字ではないでしょうか?

しっかり描かれていたフェイスレスの思考、そしてなにより善吉の決意が爽やかで良かったです
彼の心の中に凜と立つめだかちゃんも、また『めだかボックス』らしくて良い感じでした
しかし、自我の侵食に性格最悪の新サーヴァントと状況はまさに内憂外患
善吉ちゃんには頑張って欲しいですが、厳しそうですねえ……


29 : 名無しさん :2015/06/25(木) 21:14:49 xmwhUe2A0
投下乙です!
気になって仕方がなかったこの二人の激突の結果
そのどちらの株も落とさずに、新たな因縁と関係性を描き出していて感服しました
何より善吉がすげー面白い状況になってる
新たなる偽の相棒、太陽のような悪の司令官と互いににらみ合いながら進んでいく道を取ったか…どんな時でもあがき通そうとする善吉らしい選択の裏にていとくんの遺志があるようでやはりぐっときました
心の部屋に佇む凛とした影も良いなあ
フェイスレスも当然のように善吉への転送失敗は予期して次の手は画策していると、それでこそ我らが司令!勝に敗北したことを踏まえてるあたりもベネ
光のような一途さと闇にまみれた一途さと、この新たな組がもたらす混沌から目が離せなくなりました!


30 : 名無しさん :2015/06/25(木) 22:56:23 bVwVxk/s0
投下お疲れ様です。
どうなることかと思ってましたが、こうなりましたか。しかし討伐対象と共闘せねばならないとは善ちゃんほんと多難だなあ
フェイスレスの胡散臭さはやっぱり良いですね。今回、彼の顔無しの笑顔の下の画策や思惑が掘り下げられたのも面白かったです。
人形の王の操り糸から、善吉のパーソナルリアリティは逃れる事が出来るのか……
からくりサーカス成分とめだか成分がいい具合に混じり合って、大変読み応えのあるお話でした。


31 : ◆lb.YEGOV.. :2015/06/26(金) 01:08:05 wTxX.DXA0
皆さま感想ありがとうございます。

また誤字の指摘ありがとうございます。Wiki掲載版にてそちらの方は修正いたしました。
また、掲載に際して、フェイスレスの使役する自動人形に対して思い違い(宝具以外の自動人形まで出現したり消えたり自在にできると勘違い)していた為、
最後の地の分を若干ですが修正させていたしました。大筋に大きな変更はございません。


32 : ◆wd6lXpjSKY :2015/07/03(金) 22:28:51 Ry.sUgM.0
延長した身ですが全て書き終わっていません。
日曜に前編を投下して後編を後日投下するか、もしくは泣きの再延長をします。
申し訳ありませんが一週間ほど時間をください。


33 : ◆wd6lXpjSKY :2015/07/05(日) 21:59:08 zqwSR0z60
申し訳ありませんが再延長します。
破棄はしません……もう少しだけお付き合いください。


34 : ◆wd6lXpjSKY :2015/07/09(木) 01:12:05 hOUxmzu20
言い訳はしません。
一度前編という形で投下します。
破棄はしません、続きは今月中に出来たらいいな、レベルです。
申し訳ありませんが、私に付き合ってください。


35 : 月夜を彩るShuffle Beat ◆wd6lXpjSKY :2015/07/09(木) 01:13:26 hOUxmzu20

昼の学園が表だとするならば夜の学園は裏と表現するべきか。
吸血鬼が近付き悪魔が潜み未知なる座標が向かう魔の宝庫は表ではない。
だが裏と仮定する場合何が表であり何が裏であると言えるのか。その基準はどうなっているのか。

世界の理が回っている。それに従うならば参加者の数だけ世界が存在する聖杯戦争には何が真実と言い切れるのか。
ハイラルの勇者が理を司るのか。吸血鬼が闇を体現するのか。魔女が総てを包み込むのか。
それぞれが異なる世界の存在故に。
聖杯戦争に基準など必要なく死ぬ者から死んで行き、生きる者だけが明日を見る。
堕ちた鳥がもう二度と大空を飛べないように、蒼穹を感じれるのは限られた者だけである。



暁美ほむらはエレンに連絡を取った後、改めて職員室を物色していた。
鹿目まどかを始めとする三人の参加者の連絡先が手に入ったが欲を言えば情報はまだまだ掴み取りたい。
サーヴァントを失っている今、完全に窮地なる状況に立たされている彼女には焦りが出始めていた。
天戯弥勒と因縁を持つ男、夜科アゲハ。
彼の所在地を把握出来れば真実に辿り着ける可能性が飛躍的に上昇するだろう。
地獄から手を伸ばし、その手に収まったのは血と同じ赤を纏ったテレホンカード。
聖杯なる唯一無二の願望器を目指してはいるものの、疑念の目を向けずにはいられない。
それは嘗て彼女達魔法少女が一瞬の希望と未来の輝きを永遠の不幸と背負わされた閉ざされた世界が影響しているのだ。
願いがノーリスクで叶う筈がない、甘い話には毒が潜んでいる、ならば聖杯戦争にも、天戯弥勒に裏が存在する筈、と。

聖杯戦争に必要な対価を考えた時、犠牲になる参加者だけではどうも釣り合わない予感が胸を埋め尽くす。
願いを餌に殺し合わせるならば日常生活など不要であり、外部からの干渉を遮断した小島にで参加者を詰め込めればいい。

(例えば魔力や魔法……何かしらの力が必要とか)

魔法少女は願いの対価に小さいころ憧れた正義の魔法を身に付ける。
正義の力あってか一般人とは比べ物にならない程の能力であり、少女だろうが彼女達の世界水準を超えている。
しかし彼女達の世界であって、サーヴァントには到底及ばず、彼らの存在は規格外である。
暁美ほむらからしてみれば、彼らを召喚した時に使用した魔力は何処から来るのだろう。という疑問が生まれる。
もし魔法少女と同じように契約を交わしたなら、その願いの大きさは計り知れない。

聖杯が媒体だとすれば死んだサーヴァントは器に戻るのが道理であろう。
使用された魔力が還元すれば再びは器は器として機能されると考えて問題ない。
暁美ほむらの推測であって、そもそも聖杯自体がサーヴァントを呼ぶ媒体など真実でもなければ掠ってもいない可能性があるが。
更に言ってしまえば本当に聖杯が存在するかも怪しく、天戯弥勒の掌で踊っているだけの世界だって存在しているかもしれない。


36 : 月夜を彩るShuffle Beat ◆wd6lXpjSKY :2015/07/09(木) 01:14:16 hOUxmzu20

仮に聖杯が存在しないとして考える。
考えるまでもなく、結論はさっさと帰る。この一言で総てが終わるのだ。
願いが叶わないのならばこんな世界に居る必要なんて欠片も存在しない。
自分の思うように魔法が使えない空間に長居するほど暇でもなければ馬鹿でもない。
天戯弥勒に生命を握られている、暁美ほむらにとって時間停止に対する制限と軸移動の禁止は首に鎖を繋げられているのと同義。
このまま戦っていても碌な目に合わず、現に悪趣味な人形やそれを創り上げる気色の悪い魔術師を見てしまったんだ。
聖杯が無ければ帰る、鹿目まどかと美樹さやかにはどうせまた会えるのだ、そう何度でも。


(これが夜科アゲハの連絡先ね……ついでに人吉善吉のも手に入ったわ)


小萌先生の席から離れた場所のとある机を物色していると高等部一クラスの名簿が出て来た。
視線を流すと夜科アゲハの名前があり、さらに人吉善吉の名前も確認。その後引き出しを開けると取扱注意と書かれたファイルが一つ。
中を読むと各個人携帯の連絡先まで記載されており、自分の携帯に番号を落とすと何事もなかったように仕舞い込む。

(人吉善吉の連絡先まで手に入るとは儲けものね)

夜科アゲハと喧嘩をしていた一人の青年。
映像だけでしか知らないが聖杯戦争の参加者の時点で無関係ではなく、来るべき時を待っていればいずれ彼と関わるだろう。
最も暁美ほむらは彼が自分と別れたキャスターと再契約をしているなど微塵も知らない。
それに彼女は笑顔の道化師が死んだと思い込んでいるのだ。運命とは時に現実を悪い意味で助けてくれるものだである。
しかもその道化師は新たなる宿主との契約を結び、当面の間は現界出来る条件を揃えてしまった。
対する暁美ほむらはというと、新しいサーヴァントを手に入れるために四苦八苦している。

(……あんなのでも英霊なのよね。人形を使役する量の戦術は強いけれど美樹さやかのサーヴァントのような圧倒的力の前では多勢に無勢もいいところ)

遊園地で監視していたバーサーカー同士の戦いは圧巻の一言であった。
あの戦闘に奇怪な傀儡共が押し寄せても蹂躙されてしまうのが容易に想像出来てしまう。
最もケースバイケースであり、キャスターが創り上げる自動人形は多芸な幅を持っているのだ。
実際戦闘が始まればどう転ぶかなど誰にも予想することは不可能であり、常識は通用しないと考えて問題ないだろう。
そして聖杯に再び、思考を寄せてみる。


(脱落したサーヴァントの魂が素体となり願いを叶える……なら、今は不完全な状態)


聖杯戦争において他者のサーヴァントを殺すことはその魔力を聖杯に注ぎ込むことである。
格式を多いに上回る規格外な魔力で満ち、溢れんばかりに潤えば聖杯は聖杯としての機能を果たし願望器へと昇華するはず。
例えば現時点で天戯弥勒から聖杯を奪ったとしても願いを叶えることは不可能である。
それならば見知らぬ少女を誑かし、インキュベーターと契約を結ばさせて願いを叶え、絶望を押し付けた方が早い。
……そんな手段を取るはずがないのだが。

(インキュベーター……まさか、ね)

鹿目まどかと美樹さやか。そこに暁美ほむらを加えて何なら巴マミや佐倉杏子が居てもおかしくない。
美国織莉子を始めとする螺旋の軸から外れた主個性が参戦していても不思議には思わないだろう。
何の打ち合わせも無しに魔法少女の参戦が現段階で自分を含めて三名判明している。偶然とは思えない。
何かが彼女達に惹かれたのだろうか。共通項は契約と魔法少女、その先にある始まりの存在インキュベーター。
考えたくもないがこうも魔法少女が多いと悪魔が天戯弥勒に絡んでいるのではないかというくだらない幻想が生まれてしまう。
これで勝ち残れもせずに無残に死んでしまうと聖杯戦争は人生において最悪のイベントになるだろう。
逃げるには世界を移動する魔法ではなくてテレホンカードによる帰還に頼るしか無い。
聖杯を手に入れれば問題はないのだが、元から願いを叶えられない未来も想定しておくべきだ。
茶番だがそもそも願いを対価無しに叶えようとするのが茶番であり愚かであったのだ。
同じ結末を迎えるのは飽きた、次なる世界を理想郷にするためには無茶だろうが奇跡を掌に収めるしか無い。
そのためにはエレンからサーヴァントを奪い取るしか無い。彼の従者のクラスは不明だが時間が無いのだ。
元よりあのキャスターよりはマシだろう。

扉へ振り向くが彼が到着するにはまだ時間が掛かりそうである。






37 : 月夜を彩るShuffle Beat ◆wd6lXpjSKY :2015/07/09(木) 01:15:58 hOUxmzu20

それは心に安らぎを与えてくれる優しい音色だった。
学園から離れ、比較的森林が多い地帯へと避難し休憩を取っていた。
孤独の女王の魔の手に触れないための措置だったが、正解だった。
あのまま学園に残っていれば間違いなく戦闘に巻き込まれ無駄な血を流していただろう。
戦闘を行うことに文句はない、此方としても願いを求めて参加しているのだ。向かって来る敵は倒すまで。
だが無駄な血を流すことには繋がらない。戦力の浪費を好んで行うほど馬鹿ではない。
絶対的な軍略があれば常に優位に立てるだろうが生憎奇跡の伝道師たる零の仮面はこの場にいない。

現に居たとしても今のカレンではルルーシュに信頼を置くことは難しく、彼女と彼には時間と距離と対話が必要である。
嘘の仮面と真実の人間。
優しいことだけでは回らない世界、真なる平和と理想郷を勝ち取るためには聖杯を手に入れなければならない。

(ルルーシュ……)

無論対話が必要なだけであり、完全に彼女は彼を見限った訳ではない。

しかし他の参加者にとってルルーシュ・ランペルージの存在はどうでもよく、そもそも認知していない。
紅月カレンと言う参加者の来歴や日本とブリタニアの関係、黒の騎士団の活動やゼロの存在など知る必要がないのだ。
どんなドラマがあろうとそれは彼女の物語であり他人にとってそれは興味の無い幕間以下の雑音に過ぎない。
勝たなければ世界が危ないだの日本に未来は無いだの……他の参加者からすれば戯言なだけ。

世界にはキーパーソンが存在する。
物語の主人公は自分自身ではあるが、運命には台本のようなものが存在しており、残念ながら活躍度合いは個体によって別れてしまう。
総ての中心になる幻想殺しや偽りの仮面を付けた優しい悪逆皇帝。
幾度なく時間を渡り世界を救った覚悟在る青年と世界を包み込み座に到達した救済の女神。
世界の数だけ物語が在り対極的に見れば其処には主人公『格』と呼べる存在がある。


38 : 月夜を彩るShuffle Beat ◆wd6lXpjSKY :2015/07/09(木) 01:16:34 hOUxmzu20

数多の世界が綴られた聖杯戦争において主人公は存在するのか。
結論から言えばそんなの知ったこっちゃない。の一言で総てが終わってしまう。
世界の運命を背負っていようが、大切な存在が居ようが、叶えたい願いがあろうが此処では一人の役者に過ぎないのだ。
お前のドラマは俺には関係ない。
聖杯戦争に綺麗事は必要なく、血を流し最後に立っていた存在が願いを叶える。ただそれだけである。

そんな殺伐な世界で流れるオカリナの音色は紅月カレンの心に細やかな安らぎを与えていた。
適当な切り株に腰を下ろし今後の方針を考えていたが正直、詰まっている。
他の参加者を倒すにしても総てが初見では対策も戦略も練るには情報不足所ではない。
これまでの戦い総ての頭脳はゼロが担っていたこともあり、孤立である聖杯戦争では正面から戦うだけでは無駄な被害を被るだけ。
だが彼女が勝ち残るには戦うしか無い。つまり彼女らしく正面から倒していくしかないのだ。

「この曲……とても吹き慣れてる感じがする」

決意を決めたところで流れてくるオカリナの音色は己の世界を創造するように表現されている。
創作とは表現の塊であり音楽であろうが文章であろうが彼らは仲間だ。
文章でただ一発殴る動作だけでも人の数だけ表現があるように音楽もまた創作の一種。
譜面通りに吹いてもそれは最低限の音楽であり、自分の色を付着するには己の世界を音色に乘せて表現するしかない。
セイバーが吹くオカリナは優しくて、何処か懐かしさと寂しさを感じさせる音色であった。
まるで遠く離れた存在を感じるように、優しくて、懐かしくて、寂しくて、それでも絆は此処にあるような。

「私はそんなに音楽は知らないけど、やっぱこの音色が好き」

相手を持ち上げるために捻り出す感想ではなく、自然と出てくる偽りのない言葉。
演奏を終えたセイバーにカレンは何度聞いても飽きない創造に感心とも言える感想を告げた。
その言葉に対し、彼は優しい笑顔を見せるとバイクに跨り、エンジンキーを回す。
勇猛なる馬のような雄叫びを、エンジンを吹かしながら主へと視線を移し、後部座先に手を置いた。

「……そろそろ行こう、って話だよね」

彼の動きに対し一切の文句を言わずカレンは切り株から腰を上げるとバイクへ向かった。
森林の静けさ漂う環境から立ち上がり彼女たちが向かうは一度退避してきたあの場所である。

「私は日本を取り戻す――だから」

聖杯戦争に身を投入したのだ。
どれだけ策を練ろうと一介の兵士に出来ることは唯一つ。

戦うことだ。






39 : 月夜を彩るShuffle Beat ◆wd6lXpjSKY :2015/07/09(木) 01:17:39 hOUxmzu20

学園の職員室。

小萌先生の席に座っている暁美ほむらは再び聖書を片手に取りながら、エレンとの対話について考える。

「外国の少年……クラスが一緒だから同い年だとは思うけど」

年齢詐称の可能性もあるが同じクラスに在籍しているため同年代と考えるのが一般的であり理想である。
つまり日常世界に置いては対等な関係であり、接し方は普段男子生徒と会話する要領で問題ないだろう。

「……普段はそんなに男子生徒と会話していないわね」

と言いたい所だが暁美ほむらはお世辞にもコミュニケーション能力とやらが高くない人間である。
無関心を装いつつも実際には接し方が解らない難しい年頃な少女だ。
それは彼女が長い間病気で学校に通っていないことも影響しているが、含めても致命的である。
心を開ける人間は数える程しかいなく、『現在の彼女が心を赦す人間は誰一人として存在しない』のも辛い所。
鹿目まどかに真実を告げようが、彼女に要らぬ心配を掛ければそれこそ契約への引き金となってしまう。
美樹さやか、論外。

「まぁ何とかするしか無いわね。私にはサーヴァントが必要、これに変わりはないから」

天戯弥勒の言葉を信じるならばサーヴァントを失ったマスターは六時間後に灰となりこの世から消える。
信じるか信じないかは自由だが、彼にとって嘘を憑くメリットを考えた場合特段見当たらないので真実と考えてよい。
早急にサーヴァントを手に入れる必要があるため、エレンとの交渉に失敗は許されないだろう。

「方舟、ね……」

気分転換の感覚で聖書に目を通す彼女。
開いていたページにはノアの方舟が記載されており、耳にしたことのある単語であった。

仮に方舟が在るならば神話通り自分達を残酷な世界から運び出してくれるのだろうか。
鹿目まどかと共に魔女の存在しない、誰も不幸にさせない理想郷へと運んでくれるのだろうか。
もう一度心の底から笑顔になれるあの時間をもたらしてくれるのだろうか。

「なんて……ありもしない方舟に未来を託そうと思うなんて末期だわ。
 気を引き締めなさい暁美ほむら。私は奇跡をもう一度起こせるチャンスがあるんだから」

「なら方舟とやらに乗ってみるか、暁美ほむら」








空気が変わる。
辺りを包んでいた気の流れが一斉に同じ方向に統一され一片の狂いもなく焦点を彼に合わせた。
突然職員室に現れた彼は意味不明な言葉を呟きながら暁美ほむらに一歩近づく。
彼女は何も言わずに変身し、何時でも魔法を行使出来る状態へ己を持っていった。
何も言わなかったのではない、突然現れた彼に対し言葉を発せず、反射的に己の危険を感じたのだ。
理屈よりも先に本能が働き、言葉よりも早く行動し、己を契約者の真命たる魔法少女へと変身させたのである。


40 : 月夜を彩るShuffle Beat ◆wd6lXpjSKY :2015/07/09(木) 01:20:29 hOUxmzu20

「天戯弥勒……!」

現れた主催者に対し何も考えずに拳銃を構え銃口を彼の額に合わせ何時でも引き金を弾けるように。

「腕が震えて……いない、か。
 まぁそう構えるな。何もこの場で殺すなんて思っていないからな」

「それは逆に何時でも殺せると捉えていいのかしら」

「随分と強気だな……解釈は任せるさ」

最初に見かけた時は大分印象が変わる、そう思うぐらいに天戯弥勒の態度は軽い。
脳内に直接声が響いてきた時よりも重さを感じず、それでも完全に砕けきっている訳ではないが、
まだ会話が出来そうである。
引き金に指を引っ掛けたまま、暁美ほむらは彼に話し掛けた。

「突然現れて何のようかしら」

「方舟に乗ってみる気はないか……そう言った筈だが」

「冗談にしか聞こえない」

「あぁ。冗談だからな」

薄気味悪い笑みを浮かべながら天戯弥勒は暁美ほむらに返した。
その不適で何を考えているか解らない笑みはまるでキャスターのようで彼女の心は必要以上に苛つく。
今すぐにでも発砲したい所だが謎の多い聖杯戦争について言及出来るまたとない機会である。
己の荒波を鎮ませ彼女は冷静さを装い口を動かした。

「もう一度聞くわ。何しに来たのかしら」

「俺は監督役のようなものだからな。参加者の前に現れても構わないだろ」

「監督役を司るなら干渉はいいのかしらね」

「干渉するつもりはない。それに監督役と言ってはいるが俺は聖杯戦争の行く先を見つめ、選ぶだけだ」

彼女をおちょくるような態度で舞台の行く末を語る道化師の真意は未だ掴めず、霧に包まれている。
サーヴァント曰くイレギュラーなこの聖杯戦争。先が読めず、正直に言えば不安が心を埋め尽くしているのだ。
それなのに嘘か真かも解らない話を始める天戯弥勒に対し、暁美ほむらは戸惑ってしまう。
照準が逸れないようにグリップを強く握る。頬を伝う汗は誰も拭いてくれない。


「選ぶ……? 何を選ぶ……?」


思った言葉がそのまま口から漏れだし、静かな職員室の隅々にまで響き渡る。
聖杯戦争で勝ち残った者が願いを叶えられる、ならば選ぶとは一体何を選ぶと言うのだろうか。
優勝者を選ぶつもりならば参加者同士の殺し合いは茶番に成り下がってしまう。
主催者が願望器を捧げる対象を選ぶならば最初から選べ、私達を巻き込むな、誰だって思うのだ。
娯楽に付き合ってる暇は無く、優勝したとしても天戯弥勒に気に入られていなければ願いが叶わない。
そんな事実が真実ならば聖杯戦争何て茶番だ。
最初から夜科アゲハとやらと勝手にタイマンで喧嘩して、知り合い同士で馬鹿をやっていろ。それだけの話しである。


41 : 月夜を彩るShuffle Beat ◆wd6lXpjSKY :2015/07/09(木) 01:21:38 hOUxmzu20

「解釈は任せる……が、お前たち参加者が意欲を見せないならば俺が動くしか無いだろ?
 もうすぐ日が変わると言うのに脱落はサーヴァントが一騎だけだ、ペースが遅過ぎる。
 あまり俺を失望させないでくれよ? 何のために再現したと思っているんだ。
 願いがあるならば他者を喰らい、その身を汚してでも、悪魔になってでも聖杯に総てを捧げろ――期待しているぞ」


彼が発する言葉総てが意味不明であり、しかしながら総てに得体の知れない何かが篭っている。
質が悪い。質問をしたところで解答など返ってこず、代りに新たな疑問が生まれるだけであった。
何か一つでも有益な情報を聞き出そうとするも、時は止まってくれない。

目を離したつもりは一切ない。しかし彼女の前から天戯弥勒は消えていた。

一陣の風が吹いた訳でも無く、ドロンと言ったような煙幕も発生していない。
まるで最初から存在していなかったかのように彼は職員室から消えていた。

彼は結局の所、気まぐれか何かで目の前に現れたのだろうか、暁美ほむらは考える。
方舟の冗談から始まり監督役の努めとして参加者の動向を見に来ていた。これだけならばまぁ納得は出来る。
しかしキャスターと共に遊園地で監視していた時、天戯弥勒を捉えていた映像は無かった。
干渉するのが不自然で無ければ他の参加者に接触している映像が一つぐらいは撮れていても可笑しくない。
寧ろ不自然である。このタイミングで自分の前に現れる意図が不明なのである。

関係は不明だが始まりの儀式と仮称する天戯弥勒の宣言。
その時、彼の事を知っているのはおそらく夜科アゲハただ一人だ。
彼の前に現れないで、暁美ほむらと言う一人の魔法少女の前に現れる理由が全く解らない。

「監督役の努めならサーヴァントの一人や二人持って来い……言い過ぎかしら」

そうなら大変有難いのだが、文句も言っていられまい。
サーヴァントはこの後手にいれれば問題ないのだ。そうでなければ死んでしまう。
灰になる未来など認めない、黙って帰る選択は最後まで取っておきたい。

開かれた職員室の扉へ身体を向かせると彼女は口を動かした、


「初めまして――エレン・イェーガー」








42 : 月夜を彩るShuffle Beat ◆wd6lXpjSKY :2015/07/09(木) 01:22:25 hOUxmzu20

館に帰還するため歩いていたウォルターを止める声が一つ。
姿や気配は一切見せず、声だけが彼を止めるために響いていた。
背中に隙など存在せず、後を付けられていることも無い。不意に声を掛けれる存在など一つしかないだろう。


「これはレミリアお嬢様……貴方も帰宅途中でしたか」


ライダーとの交戦を終えた後、それぞれ動いていた闇夜の主従が合流を果たす。
本来ならば館で合流する予定であったが、早くなった所で問題はない。

「首尾はどうかしら」

「血液の確保は出来ていませんが……アーチャーを一人確認いたしました。
 マスター共に若い日本の学生でしょうな」

「そう……やっぱり学園に向かった方が盛り上がるわね」

「ええ私もそう思います。ですが、やっぱりとはニュースを指しているのですか」

「それもそうだけど……夜科アゲハと遭遇したの」

それぞれの成果もとい出来事を簡潔に交換し、現状とこれからの策を考える。
学園で起きた荒れ事に関しては夜が生業の彼女達にとって絶好の狩場と成り得る、吸血鬼ならば。
闇夜を主役に活躍する彼女は日中よりも更に絶大的な戦闘能力を保有する。
事件現場である学園に向かえば少なくとも戦闘痕から他の参加者の手掛かり或いは消息が掴めるかもしれない。

そして参加者の多くが学生、説いう仮設が語らなくして生まれつつ在る。
最初に出会った海賊のサーヴァント、そのマスターは男の学生であった。
ウォルターが遭遇したアーチャーとそのマスター、両者日本の学生風な容姿であった。
レミリアが邂逅した夜科アゲハ、現状この聖杯戦争の裏に最も近い学生。

「夜科アゲハ……天戯弥勒に唯一面識がありそうな参加者と言えば解るよね」

夜科アゲハ。
この言葉を耳にしたウォルターの口角が自然に上がり、夜に緊張感を齎す。
聖杯が言い伝え通りならば、それを持ち主かのように振る舞う天戯弥勒は何者なのか。
そもそも聖杯戦争のシステムを用いて本当に願いが叶うのか、或いは叶える気が彼に在ると言うのか。
聖杯戦争に潜む闇、即ち天戯弥勒の真意に近づけるたった一つの鍵。
それが夜科アゲハだ。現状唯一と思われる主催者との関係者であり、接触は是非とも行いたい所。

「これは興味深い」

「えぇ。彼や天戯弥勒はサイキッカーと呼ばれる超能力者。
 聖杯については……彼の知っている天戯弥勒からは聞いた事がない」

「つまり、有益な情報は持っていない、と」

「彼も情報が欲しいみたい。
 でも、天戯弥勒が接触する可能性が高いのは間違いなく彼よ。勿論生命は奪っていない。
 貴方が言っていた学園に使い魔を放ち探索と罠を張る案だけど――直接行った方が早くないかしら」


43 : 月夜を彩るShuffle Beat ◆wd6lXpjSKY :2015/07/09(木) 01:23:08 hOUxmzu20

提案に意義を唱える邪教徒などこの場には存在しない。
元よりレミリアとウォルターの二人だけ、レミリアの提案に意義を唱えるとしたら彼しか発言権を持たない。
しかし彼がそんなつまらない言葉を発する訳もなく、夜に相応しい妖気と艶を含んだ笑みを浮かべ、無言で彼女に頷く。

戦争が始まる。否、既に開戦は告げられており、戦人が勝手に微温湯に浸かっていただけだ。
願いを対価無しに叶えるなど奇跡、それも『これは偶然ではなく必然だった』『まるで最初から運命が決まっていた』。
『仲間たちが掴んだ勝利の鍵』『意地で掴みとった唯一無二の奇跡』などと言った創作の妄言ではなく真の奇跡。
本来在り得ないであろう一種の世界線の話を無理矢理にでも己の世界に引きずり込み、座に憑かせる強行だ。
ウォルターもレミリアも。天戯弥勒と夜科アゲハでさえ本来の座では聖杯を手にすることがない。触れることすらない。

これより吸血鬼は夜を舞台に学園へ向かう。
其処に戦はあるのか、刺激はあるのか、そんなことはどうでもよく、脚本家にしか解らない。
その脚本家の存在も危うい此度の聖杯戦争に当たり前や常識と言った概念は存在しなく。
先を見据えることなど参加者には不可能であり、泥に塗れてでも聖杯を掴み取る覚悟が無ければ死んでしまう。

吸血鬼が求めるのは――何だ。
聖杯戦争に召喚されたサーヴァント、其処には聖杯を求める戦でしかない。
所詮は二度目の生だ、ならば骨の髄まで愉しんでも構わないだろう。誰も止めやしないのだ。
愉しめ、常夜総ての主役はこの吸血鬼に在る、夜は私の時間だ、雑兵は下がれ、力無きものは砕け散れ。








「早速他の参加者に遭遇するなんて……運命って奴かしら」

学園に吸血鬼が到着した時。
時を同じくして一台のバイクが校庭に停まり、二人の男女が現れた。
心が踊る、思えば戦争と銘を翳しているが、戦闘を行ったのはライダーとの一戦のみ。
欲している、欲しているのだ。身体が、生命が、魂が刺激を求めて疼いている。

夜は私の時間。
この闇こそが私を一番美しく輝かせてくれる最高の瞬間だ。
時計の針を止めて、永遠の刹那をこの光に弱い白く鮮やかな肌で一生抱きしめていたい。

「……ウォルター。あのサーヴァントは私に頂戴」

「かしこまりました」

得物を前にし高ぶる鼓動は抑えようもなく、得物を狩ることでしか終わらない。
自分でも何故高揚しているか解らず、普段とは言動や思考も違ってくるかもしれない。
本来在り得ぬ話ではあるが、レミリアは主であるウォルターに命令を下す。彼も承諾した。

対する男女の主従は自分達の発言の有無に関わらず話を進める敵のサーヴァントに対し呆れとも言える表情を浮かべた。
戦闘することに意義はないが、もう少し正規な順序というか、話そうと思わないのか。
思わない、少なくとも紅月カレンは、黒の騎士団には必要なかった代物だ。
目的のためならば手段は選ばない、実質NPC以外に被害を与える存在が居ないのだ、思う存分戦える。
彼女は戦闘狂の類ではない、けれど叶えたい願い在る故に、この戦に馳せ参じた。


44 : 月夜を彩るShuffle Beat ◆wd6lXpjSKY :2015/07/09(木) 01:23:45 hOUxmzu20

緑のセイバーが盾と剣を取り出す。
その剣、真名を開放していないため、本来たる輝きを宿していない。
だが宝具だ、その逸話、成り立ち、業……真の力を開放していなくてもサーヴァントが操る最高の武具だ。
油断など出来ず、したところで自分に得など一切存在しない、そう思い慢心しないランサー。

「今夜は愉しい夜になりそうね」

言葉と同時に片手をセイバーに翳すランサー。するとその腕には光が収束し始め、一つの球体が完成していた。
魔力から構成されるエネルギー体を弾丸のように飛ばしセイバーの身体を貫かんとする。
常人では目に捉えられないような速度で進む弾だが、サーヴァントにとって見切れぬ速度ではない。
マスターであるカレンに被害が及ばぬように数歩前に出ると、セイバーは盾を突き出し弾を防ぐ。
辺りに音が響くがダメージの類は一切発生しておらず、盾に直撃した弾は消えていた。

「ならこれはどうかしら」

翼を広げ空に舞い上がったランサーは両腕を突き出し再度、魔力を収束させる。
その密度は単発であった先ほどよりも濃く、色彩も深くなり夜に輝く一つの星と見間違えるほどに。

収束する魔力から察するに攻撃は単発ではなく複数、それも一撃二撃といった優しい数ではなく無数の嵐。
「セイバー……下がっていろ? ……うん」
カレンの前に腕を伸ばしこれ以上の踏み込みを抑制し、後退させる。
一発ならば防げるが嵐となると話は別だ。盾では防ぎきれる面積に限界が生じてしまうのだ。
己は魔力に対する力が備わっているため直撃しても問題はないだろうが、マスターは別である。
サーヴァント同士の戦いで守りながら戦うのは自分にも、そしてマスターにも危険を伴わさせてしまう。

しかし後退させたところで目が届く範囲に留まってもらわなくてはならない。闇討ちに対応出来ないから。
マスターを信頼していない話ではないが、自分が動けない時に他者に襲われれてしまえば救援には迎えない。
敵のマスターは戦闘に参加する意思を見せていないが油断と過信は禁物である。
老体と云えどサーヴァントに対峙しても恐怖を見せず、此方の動きを目で追っており、漂わせる空気も一般の其れに括れない。
カレンを一人にしたとして、老体が仮に攻めの動きに出る可能性を考えると……どちらにせよ危険には変わりない。

「さぁ遊びましょうか、剣士さん」

剣を握る手に力を込め月を背景に浮かぶ紅い少女を見つめる。
セイバーの視線と全神経は彼女に注目しており、余程のことが無い限り視界から消えることはない。
敵に背中を向けることもなく、彼は駆け出し荒れ狂う弾幕の中へ己の身を投じた。

「弾幕に自分から突っ込むなんて面白いことするのね……!」

躱さず単身乗り込んでくる輩は生前の記憶でも珍しく、心が躍動する。
戦いを楽しんでいるのだ。次はどうする、どの手でくる、どうやり返せばいいのか。
思考の渦が戦を中心に渦巻き、セイバーとの戦のみに全思考が傾いているのだ。
サーヴァントになってから戦闘に好意的になったような気がするが、今はそんなことを考えている時間も惜しい。

セイバーは盾を構えながら弾幕の中を走り、ランサーの元へ己の身体を動かす。
盾で防ぎ切れない弾幕は剣で受け流し、跳ね返し、斬り落とす。
嘗てその刀身に魔力を宿し、一種の魔力放出として放っていた剣ならば実体を持たぬ塊も斬れるのだ。
弾幕とて例外ではなく、■■の剣に恥じない力を発揮し、単身ながら嵐に走るセイバーを守る攻防一体の武具。


45 : 月夜を彩るShuffle Beat ◆wd6lXpjSKY :2015/07/09(木) 01:24:32 hOUxmzu20

弾幕が数発身体を掠るが気にするほどの傷は受けない、対魔力なるサーヴァントの力によって。
極論防がなくてもいいのではないか、しかし油断と過信、そして慢心は足元を掬われる原因となってしまう。
有利な状況に酔いしれ他者を見下し、それでいて足元を掬われ結果として窮地に立たされては笑いものである。

気付けばセイバーは何一つ手を抜かず、大地を飛び、ランサーに対して剣を振ろうとしていた。
刀身に月が反射し闇夜を美しく照らす。剣の美しさと月の灯り、暗い夜。

「――!?」

その刀身に反射する光の中に一つ、いや二つだ。
小さな、とても小さいが紅の輝きが二つ灯っており、その持ち主はセイバーが今正に斬らんとしている対象の少女だ。

小さな紅い瞳を輝かせ、口からは小さくも鋭利な牙のような歯を覗かせ、背景になっている月が演出を担う。
其れは闇夜に輝く孤独の女王、誰一人として触れることを許されない紅い吸血鬼。

危険を直感で察知し、逸早く斬り付けるセイバーだが弾幕によって剣先を物理的に流されてしまう。
剣の一振りは少女に当たること無く宙を斬ってしまい、彼女と違い飛行能力を持たない彼は落下するしか方法がない。
よって追撃は不可能であり、寧ろされる側の彼は身動きの取れぬ空中で来るであろう攻撃に備えんと武具を身体に寄せた。

「……?」

しかし追撃は発生せず、依然として少女は宙に浮かんでいた。




ドクン。




月並みで幼稚な表現ではあるが、その光景を見てセイバーの心臓は短く、強く跳ねる。
瞳に映るランサーは追撃することなく、ただ独り宙で嗤い、その右腕に魔力を集中させていた。
その密度は弾幕なぞ比ではなく、サーヴァントと呼ばれる故の規格外な魔力を宿らせている。


「今夜は月が綺麗ね。紅く見えちゃうぐらいに――冗談だけど」


血の如く紅い魔力が夜空を飾る星々のように数多の粒子となりて突き上げられた右腕に収束していく。
球体ではなく得物を捉え、その心臓を貫くような鋭利な形状へと紅い粒子が形を形成し始めた。
数は三つ、例え一つを防いで躱したとしても三つ分の攻撃を捌ききれるだろうか。
弾幕のような攻撃ならば構わないがそうもいかない――空気が変わった。


「初お披露目……私の力」


口から零れる言葉には笑みと感情の昂ぶりが込められている。
早く、あぁ早く。そうだ、今直ぐにでもこの魔力を開放し己がサーヴァントたる所以を証明して見せたい。
収束する力はその矛先を求めて、爆発寸前の火薬のように、得物を待ち侘びていた。


「逃げてもいいけど無駄よ……この槍は貴方を夜から逃さない」


三つの魔力はセイバーを裁く魔の槍となって上空に形成された。
突き上げた彼女の右腕が振り下ろされれば、審判の一撃は連撃となりて彼を貫くだろう。


46 : 月夜を彩るShuffle Beat ◆wd6lXpjSKY :2015/07/09(木) 01:25:01 hOUxmzu20

「避けれるものなら避けてみて」

無邪気に嗤うように。
純粋な楽しみから生まれる好奇心を以ってランサー、レミリアは宝具を発動していた。


「月は貴方を見ている……この運命から逃れられるかしら」


放たれた三つの結晶――運命の槍はセイバーに吸い込まれるように推進する。
まるで最初から彼に刺さっていたかのように、何事も無いように彼一直線に飛んでいるのだ。
彼は察する、この一撃は躱せない。

何かが次元を歪ませているから。

セイバーは時の勇者と讃えられたとある世界の救世主である。
時空を行き来しハイラルを包む闇を祓った勇気の黄金三角を宿した存在である。
魔力や異能に耐性或いは関わりが在ったため、歪んだ槍の異常さを彼は察知した。
その紅蓮たれる魔力で構成された紅い槍、小柄な少女、闇夜に浮かぶ赤い瞳――英霊の候補は大分絞られた。

そしてランサーはその真たる名を開放した。

神鎗――スピア・ザ・グングニル。

オーディンが所有していた逸話を持つ神話の神鎗の名を宿したレミリア・スカーレットの宝具。
血のように紅く、後ろに聳える月までもが紅く見えてしまう程に濃い、濃い、濃い紅色。
紅――彼女の雰囲気から表せば赤の方が適切だろうか。見た目幼い吸血鬼はその幼さ故の不気味さを醸し出している。
手が滑っても許されるような、不安や失敗さえも正当化してしまうような愛嬌さ。

「踊りなさい――言ってみたかったのよね」

幾ら可愛く役者のように台詞を吐こうが、セイバーの状況に変わりはない。
彼は迫る槍から感じる禍々しさを直感で感知し之は避けれぬ必中の裁きと認識し盾を背中に戻した。
宝具となれば弾幕のようにはいかず、防げる保証など存在しない。
永劫の旅を共にしてきた盾であるが、宝具へ昇華されていない現状を考えると槍を防げるとは思えない。
ならばどう対処するか。

因果の逆転を兼ねる槍を回避するのは至難の業であり、突発的に行える芸当ではない。
直前とは言え、その性質に気付けただけでもよしとするしかなく、黙って貫かれるよりはマシである。

だが彼が取る行動は最初から決まっており、宝具を粉砕するのは同じ宝具だ。




「――っ」




その輝きは常夜を照らす永劫たる黄金の輝き。
媒体の大きさは月よりも遥かに小さいながら、その輝きに吸血鬼は声を漏らし瞳を閉じる。

何だあの光は。
何だあの輝きは。
何だあのサーヴァントは。

「魔を祓う……剣?」

何だあの剣は。


47 : 月夜を彩るShuffle Beat ◆wd6lXpjSKY :2015/07/09(木) 01:25:39 hOUxmzu20

瞳を閉じたい程に、目を背けたい程に輝く剣。
高まる魔力の密度は通常の其れとは違い、周囲だけが別次元に感じる程の神々しさ。

腰を落とし、剣を後方へ伸ばすように構え迫る神の三撃槍を見つめる時の勇者。
一撃を放つために大地を削りながら後退する軸足に体重を乘せ――溢れる魔力を今此処に開放する。

まず一つ目の槍は半月を描く軌道の剣先によって裂かれ、構成していた魔力が粒子のように夜を赤く染め上げた。
続く二撃も動き続ける剣が横から一閃し行き場を無くした魔力は雪のように儚く大地に赤を落とす。

三撃目。

二撃を斬り捨てた勇者はその勢いを殺さず、身体ごと動かし己を剣と共に後ろへ。
再度正面を見た時、それは回転の力を剣に上乗せした勇者が幾度なく愛用した伝家の宝刀。

「運命を超越して無傷……その『退魔の剣』は流石と言うところかしら、ハイラルの勇者さん」

クルクルと子供が木の棒を拾い、振り回すように赤い槍を回すレミリアの表情は悪い笑顔。
宝具を正面から潰されたことに対して怒りや悲しみではなく、純粋なる興味と楽しみが顔に浮かんでいる。
噂に聞く退魔の剣とやらをこの目で見れたこと。
多くの世界で闇を祓い、人々に黄金の輝きと永劫たる未来を見せ続けたあの時の勇者で出会えたのだ。
本来有り得ない邂逅だ、こればかりはサーヴァント化したことを、聖杯戦争に感謝するしか無いだろう。

「ふふ……さぁて。この先はどうしま――そう」

これからどうしましょうか。
セイバーの険しい表情から彼も己の真名――までは判明していなくても近しい所まで辿り着いているようだ。
歴戦の武具の中から退魔の剣を選んだのだ、己が邪なる存在で構成されていると感じ取ったのだろう。
そしてその予測は確信に変わる。

「炎……生憎吸血鬼だけど私は其処まで弱くないの」

戦場に流れる激しい旋律は炎となって具現化しレミリアを多い囲む。
しかし吸血鬼と云えど、彼女にとって炎は然程脅威ではなく、この程度なら対魔力なる防壁で対応可能だ。
依然として空で嗤う少女の表情は黒い笑みであり、まるで何を見据えているような悪い瞳。

「私の相手もいいけれど貴方のマスター……大丈夫かしらね」

「――ッ」

弾幕と神槍。
迫る裁きと対峙していた時、セイバーの視界からマスターであるカレンの存在は消えていた。
少女の薄ら嗤いの籠もった言葉を耳にし意識が覚醒するように脳内は白く包まれ、彼は後ろへ振り向いた。


其処にはワイヤーによって右腕が血塗れになっていた己のマスター。
足は崩れ大地に腰を落としており、その近くには応戦したのだろうか拳銃は転がっていた。
セイバー自身、総てを目撃していないため何が起きたか分からないが、月夜の中に赤く光るワイヤーが物語る。
接近した執事がワイヤーでカレンの右腕を斬り付けたのだろう。迫る銃弾を回避する常人離れした身体能力を以って。
月明かりだけでは常夜総てを照らすのは無理があり、鋭利なワイヤーは肉眼で捉えることは出来ない。

故にカレンはウォルターに対処する術もなく、個人としての完成度は彼が圧倒的に上回っただけの話しである。

セイバーは即座に弓を構えると、予備動作無しにウォルターへ射出するが彼は矢を数歩下がるだけの行動で回避した。
追撃を挟まずセイバーは再度オカリナを吹き炎をウォルターとカレンの間に発生させ接触を断絶させる。
彼自身は走り出し無言でカレンを担ぐように広い上げるとそのまま学園内に向かう。
カレンは小さな声でありがとうと呟き己の無力さを噛み締めていた。
何も出来ずに傷だけを負った己が情けない、これでは願いを叶えるどころか朝日を拝めるのも危うい。
情けなくても声も出せないまま、セイバーに担がれながら彼女は学園の中へ踏み入った。


48 : 月夜を彩るShuffle Beat ◆wd6lXpjSKY :2015/07/09(木) 01:26:30 hOUxmzu20

「お怪我は……要らぬ心配でしたかな?」

「見ての通りよ。貴方にも言っておくけど私に炎は効かないと考えてもらっていいわ」

「それを私に伝えてどうしろと?」

「さぁ、自分で考えることね……それと、私に気遣って彼女を殺さなかったことには礼を言うわ」


炎に包まれながら吸血鬼と執事は何かを含んだ言葉を交わす。
彼は本当に彼女を心配しているのか、彼女は彼に説明したのか忠告したのか。
闇夜にせせら嗤う声は真実か偽りか、聖杯戦争に置いて真なる敵は一体誰なのか。

「それにしても学園の中に逃げるのは悪手じゃないかしらね」

「血を辿れば居場所の特定も容易いでしょう」

炎を遮って追撃することも可能だが無理に追う必要もなく、レミリアは黙って彼らを見逃した。
最優のサーヴァントたるセイバーが相手だとお世辞も死合を有利に進ませるなど言えない。
けれど彼女は楽しんでいるのだ、その顔は嗤い、その心は初めての玩具を与えられた子供のように輝いている。

「狩りとは言わないけれど、彼女には此処で退場してもらいましょうか」

「ええ。あの傷では聖杯戦争を生き残るにも傷が深すぎる」

利き腕の粉砕は戦争において致命的な痛手となる、日常生活でさえ不便になるのだ、生命の賭博では邪魔にしかならない。
余程の馬鹿か筋金入りの夢追い人でも無ければ諦めて幕を引くだろう。しかし彼女はどの人間なのだろうか。
少なくとも拳銃を持ち込んでいる或いは所有している以上、事情に詳しいか裏側の人間だ。
ならば退けない理由もあるかもしれないが――此方には関係のない話しである。

「じゃあ行きましょう。
それにしても建物の中に入るなんて……ふふ。
このまま『館』の中で苦しむってのもそれはそれで愉しい結末ね」

槍を消滅させ、朽ちた魔力の結晶が雪のように舞い散る中でレミリアは学園を見つめる。
何を思って逃げたかは不明だし解るつもりもないが、もし、もしもの話しだ。

生命からがら逃げ込んだ場所が『吸血鬼住みし赤い館』だとしたら。

「どんな顔をするか愉しみで……あぁ、愉しみ」

喘息を漏らし潤いを秘めた小さい瞳を細々とさせながら彼女は――。



「避けなさいっ! ウォルター!!」


49 : 月夜を彩るShuffle Beat ◆wd6lXpjSKY :2015/07/09(木) 01:26:51 hOUxmzu20

学園で一騒動が発生する少し前に。
架空世界の夜空を吹き抜ける影が一つ。

それは隼ではない。
子供が後部座席で妄想しながらガードレール等の上を走る忍者でもなく。

(――気持ちいい)

腰に纏った立体機動装置の重さを感じさせない程の爽快感。
遂に外に出ることが出来た開放感から少年は満面の笑みで夜空を翔けていた。

(溜まっててたモン全部ぶっ飛ぶぐらいには最高だ)

トリガーを引く指の感覚も。
重力に引かれるこの感覚さえも己を興奮させる刺激となっている。

電信柱を掻い潜り、屋根の上を傳い、宙を蹴る。その姿は空想上の忍者とも捉えられる。
暗闇なのが幸いし、人々に感知されていないのが彼にとっての救いであった。
目撃され情報が拡散されれば一躍有名人となりエレン・イェーガーとしての知名度はこの世界において爆発的に上昇する。
そうなれば他の参加者から目を付けられてしまい、己を破滅へと導くことになる。
何のためにアサシンが彼を隠蔽させ続けたのか、総てが無駄になってしっまうのだ。
故に月明かりしか無いこの常夜は彼に味方しており、彼は堂々と空を飛べるということになる。

「アサシンには悪いことしたけど……俺だって黙ってるままじゃないんだ。
 これじゃあ何のために聖杯――なんのために……?」

彼の自分に対する態度は正直に言って不愉快であり、理解に苦しんでいた。
圧倒的圧力で密室に閉じ込め必要以上の外部との接触を断たせる。
その癖に口数は少なくて、精神面を支えることも無ければ、外出を強制的に阻止してくる。

エレンにとってジャファルは気に食わない教官と同等かそれ以下の捉え方をしてしまう存在になっていた。

「……俺のためだってのも解る」

その態度と行いが自分を守ることだとエレンは理解していた。
彼が部屋で腐っている時、とある夢を見た。

その青年は捨て子で、拾われた人間は心を何処かに忘れてしまった闇の住人。
冷徹なる殺人鬼へと育てられた彼は感情の代わりに闇の業を身に纏ってきた。
依頼があれば王族だろうと殺し、組織の人間だろうが命令が下れば殺害してきた。

そんな殺人鬼の元に一人の少女が現れる。
その少女は優しく、太陽のように眩しい笑顔を持った闇の世界とは対極の存在であった。
彼女と行動を共にしていくにつれ殺人鬼は言葉にし難い暖かい感情を感じるようになる。
そんな彼女を殺害する命令が下った時、彼の中で何かが動き始めた。

来る決戦の月夜。
彼は彼女に暗殺命令が下されたことを話し――組織と敵対する道を選んだのだ。
きっと彼にとって初めて感情に身を任せた行動だったであろう。理屈では説明出来ない何かが彼を動かした。

「誰にでも大切な人はいる……っ」

その後は思い出す気にもならない。
決して訪れぬハッピーエンド、運命分岐点は彼の在り方を変えた。けれど、最後まで幸せにはなれない。
彼は血を浴び過ぎた、人を殺し過ぎた。
再び陽の光を浴びれる程真っ当な人生を送っていない、太陽を感じることさえ運命は許してくれなかった。

(ごめん)


50 : 月夜を彩るShuffle Beat ◆wd6lXpjSKY :2015/07/09(木) 01:27:50 hOUxmzu20

心で謝る、念話は飛ばさず、思いは伝わらないがエレンは独り呟いた。
だが、彼は戻らない。気付けば学園の前に降り立ち、玄関から中に入る。
事件の影響もあって学園内から人の気配は感じず、お構いなしに土足で侵入し職員室を目指す。
所々ガラスが割れていたり、校庭にクレーターが出来ていたりと非日常を感じさせていた。

階段一つ一つを昇る足が軽い。
このまま天井と言う名の壁を突き破り天元と言う名の蒼穹へ飛び出してしまう程に軽い。
楽しいのだ。
彼は聖杯戦争に参加して日常を感じてしまった、巨人の存在しない世界を感じてしまった。
明日に怯えること無く、安心して眠れる世界を、優しい世界を知ってしまった。
ミカサやアルミンはいない。それでも彼はこの世界に一定以上の理解と感情を抱いてしまったのだ。
戻りたくても戻れない、いや本当あのか、戻る気がないのか戻れる気がしないのか。

「ふぅー……」

辿り着いた職員室前。
此処の中に入れば自分を呼び出した小萌先生が居る筈だ。

改めて考えると、先生の連絡一つで飛び出すのは異常であった。
学園でテロと同義級の事件が起きているなら尚更であり、行きたくも無ければ呼びもしないだろう。
罠だ。誰がどう見ても聞いても考えても感じても、罠である。

エレンは気付いていない、気付きたくないのかもしれない。
小萌先生は自分に接触してくれた数少ない存在である。
外出を許されぬ環境で日々過ごす変わらない一日を変えてくれる彼にとっての救世主である。
その一声が彼の起爆剤となりアサシンの言い付けを破るまでして行動するにまで至ったのだ。

それもあるが本当は。

聖杯戦争に参加してから初めて誰かに必要とされたのが嬉しかった。
誰一人として知り合いがいないこの世界は不安に包まれており、憩いの場何て何処にも無かった。
従者であるアサシンは口数が少なく、自分に総てを話してくれない不器用な男。
彼に総ての責任を押し付けるつもりはないが、自分を苦しめる大きな理由になっていた。
そんな環境の中で、自分を呼んでくれた小萌先生の存在は太陽のように輝いていたのだ。
必要とされているのが嬉しかった。この世界に自分の価値が在ったことが嬉しかった。

感じていたい、刹那の一時を永遠に抱いて噛みしめたい。
この輝きを更に浴びるにはこの扉を開ければいい、自分を待っていてくれる人がいる。

そして。


「初めまして――エレン・イェーガー」


彼の学園生活が始まった。


51 : ◆wd6lXpjSKY :2015/07/09(木) 01:29:11 hOUxmzu20
以上で一度投下を終了します


52 : 名無しさん :2015/07/09(木) 02:13:01 fx6WTi7A0
おおおお、投下乙です!
前篇とはいえ濃い、濃いなあ!
特にここへ来て夜の主従が本領発揮というか生き生きしてきましたね!月を背負い嗤うレミリアの姿がひと際妖しく輝いてみえます。
レミリア対リンクの、互いの宝具の解放による衝突はまさしく光と闇のそれ。しかし月と夜がある以上、やはり勇者といえど劣勢ですね。
闇に乗じて一撃をくらわせるウォルターからの、学園への追跡劇の予感と闖入者の気配、わくわくします
そしてほむほむが弥勒と接触だと…これは読めなかった。白ひげみさきち会合でも踏みこまれたこの世界のあれこれに、ほむほむもまた思いを巡らせていますが、舞台の背景が少しずつライトをあてられて行っているようでこちらも気になる。
そしてそこへ向かうエレン、夜の街を立体起動装置で駆ける彼は、ある意味原作よりも子供らしさを表出させているのかもしれません。ジャファルの夢にも触れながら、気持ちのままに少しずつ戦争へと関わっていくエレンの今後はいかに。
後編もすごく楽しみです!


53 : 名無しさん :2015/07/09(木) 17:42:31 0IfWwN.o0
投下乙です!
レミリアもリンクも宝具発動は初かな?発動描写がカッコ良すぎで興奮しました
後編楽しみです!


54 : 名無しさん :2015/07/09(木) 18:45:00 AqrZbpQ60
投下お疲れさまです
夜ならではの吸血鬼の美しい戦い、情景描写に魅せられました
カレンの述懐に対する言葉のないリンクの優しさ強さもしみじみ来ます

ついに主催者と接触したほむらもですが、個人的にはやはりエレンが一番気になるかな。彼の中でも様々な思いが渦巻いてるみたいですけれども、選択し、進むことができるのか。
後編も楽しみに待ってます、無理をなさらず


55 : ◆wSaCDPDEl2 :2015/07/21(火) 00:18:47 dfUpTw4c0
tst


56 : ◆wd6lXpjSKY :2015/07/21(火) 00:20:29 dfUpTw4c0
感想ありがとうございます。
今月中に完成&投下は私の都合で不可能となったので、再度分割いたします。
身勝手で申し訳ない。


57 : 巨人が生まれた日 ◆wd6lXpjSKY :2015/07/21(火) 00:25:43 dfUpTw4c0

扉を開けたエレン。彼を待っていたのは年上の教師ではなかった。
一人の少女が此方を向いて立っていた。
彼は小萌先生なる存在の見た目を把握していなかったが、目の前の少女が先生ではないことぐらい解る。
ミカサのように綺麗な黒髪の少女を無言で数秒見つめた後に、声を出した。

「えっと、誰だ」

自然と出て来た疑問は何故目の前に少女が居るのか。
学園は事件が起きた背景もあって、職員室に入るまでは人影一つなかった。
そもそも小萌先生は何処に居るのか。
それらをまとめて一言で少女に投げ掛けた。

「私は美樹さやか。貴方と同じクラスの……保健委員よ」

髪をかきあげながら名乗った美樹さやかは真剣に彼を見つめていた。
吸い込まれるような瞳は何処か強い自己主張を秘めているようで視線を逸らす気はないらしい。

「美樹さやか? 俺はエレン・イェーガー……あれだ、ドイツから来た」

「勿論知っているわ。体調を崩して休んでいる所悪いのだけれど少し用事があったの」

彼は本来ドイツとは関わりのない世界から聖杯戦争に望んでいる。
長い間、閉じ篭もり蓄えた知識によって彼は文明を超えて会話が出来るようになっている。
前までの彼なら出会い頭に調査兵団だのトロスト区だの言い放っていただろう。
しかし壁の内側でもない世界ではただの妄言にしかならない。
聖杯戦争に置いて自分を隠すには文明の知識を得ることが一番利口だろう。

エレンは用事があると言った彼女に対し、中身を聞き出すため口を開く。

「用事ってなぁ美樹さやか。こんな時に呼び出すか普通?」

「逆に聞くけどこんな時に呼ばれたら普通は来るかしら」

(うわっ……)

感じの悪い女だ。
短いやりとりの中でエレンが感じた美樹さやかの印象である。
元々呼び出したのは彼女であり、応じたのが自分だ。つまり発端は彼女。
可怪しいのは彼女で自分は寧ろ被害者ではないのか。
けれど応じた自分も自分であり、言い返せない状況が歯痒い。

「まぁいいわ。それで、貴方はなんで休んだのか聞かせてもらうわ」

「それは体調を崩したってお前も言っていたよな。その通りだよ」

嘘である。
堂々とサーヴァントに外出するなと言われたので学園を休みましたなど言えるはずがない。
適当且つそれらしい言葉で取り繕うしかないだろう。


58 : 巨人が生まれた日 ◆wd6lXpjSKY :2015/07/21(火) 00:27:03 dfUpTw4c0

「でも元気よね」

「よ、夜だしな。薬飲んで一日寝てれば大分治るだろ」

「随分と重い荷物を持っているようだけど、病み上がりの人が持てるかしら」

エレンが腰にぶら下げている謎の装置を指さしながら美樹さやかは疑問を述べた。
この場を流したい彼は立体機動装置についてどう説明するか迷っている。
適当な言葉が見つからず、頭を回転させるがそれらしい解答は浮かんでこない。
沈黙は流石に疑われてしまうため、何とか返したいが喉元で全てが詰まってしまう。

「よくみたらワイヤーかしら……それに刃も」

「――っ!」

「そのジャケットの裏の翼……まるで何処かの軍隊みたいね」

「か、かっこいいだろ!」

「そうかもしれないけど私には武器を持った兵士にしか見えないわ。
 日常とはかけ離れている装備なんて何処から入手したのかしらね。
 貴方が独自のルートで手に入れたか、ゲームやアニメの世界に憧れてコス――」

「そう、コスプレだよ! 俺は調査兵団に憧れてるから立体機動装置や自由の翼を持っているんだ!」


「――プレなんて有り得ないわ。導かれる答えは最初から貴方が聖杯戦争の参加者であることしか考えられないわ」


美樹さやかの言葉を聞き終えた時、エレンの鼓動は一瞬止まり、一拍も置かずに激動する。
頭の回転もままならないまま解答を続けていた。
それが間違いだったのだろうか。今の彼にそんなことを考えている余裕はない。

沈黙は肯定に繋がる。現状だと嘘を憑いていると認めてしまうことになるため焦っていた。
出てくる言葉は解答になっておらず、幼い子供のように単純で会話にならない程に短い。
挙句の果てに立体機動装置や自由の翼など、他の世界には存在しない単語を使ってしまう。

自分で焦っていることに気付くが、止めることは出来ずに穴へ嵌っていく。
身動きが取れなくなっていたところに告げられる聖杯戦争の響き。
何故美樹さやかが聖杯戦争を知っているかは不明だが、自分の所在が知られている。

この事実が彼の心を煽り、焦りと不安と恐怖心。負の感情を加速させていた。

「せ……聖杯戦争ってなんだ……?」

「とぼけないで。どんなに嘘を並べようと貴方の身ぐるみを剥がして令呪を見れば一発で解るのよ?」

「身ぐるみを剥がすって物騒だな……」

(やばいやばいやばい、なんだこいつ、どうして俺が聖杯戦争に参加していることを知っているんだ!?
 今まで接触した人はそんなこと一つも言わなかったし襲いもしなかった……)


59 : 巨人が生まれた日 ◆wd6lXpjSKY :2015/07/21(火) 00:27:33 dfUpTw4c0

美樹さやかの意識を聖杯戦争から逸そうととぼけるが、彼女は譲らない。
会話の主導権を握られてしまい、強く言葉の端を切られると、声が震えてしまう。

この状況はエレン・イェーガーにとってメリットは存在せずに。
美樹さやかと名乗った少女によって優しい世界は残酷な世界へと変貌し始める。

「サーヴァントは何処にいるのかしら。紹介しなさい」

「だからサーヴァントってなんだよ!? 俺は何も知らないぞ!?
 令呪とか聖杯戦争とか……お前はさっきから何を言って――マジかよ……」

せめて声量だけでも彼女を圧倒するように声を張り上げるエレン。
守ったら負けてしまう。唯でさえ主導権を握られている今、受け身のままではいずれ崩されてしまう。
ならば、強引にでも押し切ってしまえば流れを何とか此方に引き寄せれると思ったが、世界は其処まで優しくないらしい。

「私に時間は無いの――もう一度聞くわ。貴方のサーヴァントは何処にいる」

「銃……ッ」

時間が無いと告げた美樹さやかはエレンに銃を向ける。
黒光りがまるで先の見えない今後を示すような闇で意識が奪われてしまう。
引き金を引かれれば間違いなく死ぬ。

どうにか銃口を逸らさせようと口を開くも肝心の言葉が出て来ない。
何を言えばいいのか解らないのだ。どう説得すれば彼女を落ち着かせれるのか。
思考の海に飛び込むも見つかる宝はどれも説得力に欠ける瓦礫のようで。
そもそも時間が無いと告げた美樹さやかが待ってくれるはずもない。

「サーヴァントの居場所を教えればそれだけで貴方は解放されるの」

(どうする……素直に言うか? でも俺はアサシンの居場所を知らない。
 でも、黙ってれば撃たれる……のか、っくそ解かんねえ。大体なんでこいつはサーヴァントの情報を欲しがってんだ……)

時間が無いと彼女は言った。
何か急いでいると考えるのが普通であり、エレンもその線が最初に思い浮かんだ。
時間は夜、それも日付が数時間で変わる深夜帯で何を急ぐというのか。

(朝に弱い……あれか、吸血鬼って奴。
 暁美ほむらは吸血……有り得ないな。こいつはサーヴァントじゃない)

テレビやネットを介してエレンには様々な知識が蓄積されている。
本来彼の知らない世界の文明を把握しているのは、家に閉じ籠もっている間が暇なため。

(普通の人間が吸血鬼みたいな生物なわけが……まてよ、俺は巨人だ)


60 : 巨人が生まれた日 ◆wd6lXpjSKY :2015/07/21(火) 00:28:12 dfUpTw4c0

サーヴァントならば人外が居ても可笑しくはないと考える。
しかしマスターは完全に人間かどうかとなった時、エレン自身の存在が浮かんでくる。
彼は巨人になれる人間である。この聖杯戦争には多くの世界から参加者が招かれているらしい。
ならば吸血鬼になれる人間が居ても不思議ではないのだろうか。

(……解るわけ無いよな……ははっ)

心の中で自分を対象に笑う。
考えても答えは出ない。今まで何度も感じている。
この場面は考える場面ではなく、銃を向けられている現状に抗う場面である。
そのためにも暁美ほむらの興味を何とか逸らす必要があるのだが彼女は止まらない。

「言えないのかしら……解らないなら解らないと言いなさい……。
 貴方のサーヴァントは何処かしら、エレン・イェーガー……はやく言いなさい!」

美樹さやかが話している間に校庭から聞いたこともない轟音が響いて来る。
その音を聞いてから、彼女の言動が荒くなった。

黙っているエレンに対して優しい言葉を掛ける訳でもなく、再度通告する。
どうやら聖杯戦争関係者と特定されているのは確定事項らしい。
どう取り繕っても意味が無いと判断したエレンは覚悟を決める覚悟をしながら口を開く。

「そうだ……今は何処にいるか知らない」

「呼び出すことは可能よね、呼びなさい」

「喧嘩……したんだ」

「黙りなさい。私は子供と話しているつもりはないの。
 喧嘩したから呼べない? 貴方は何のために聖杯戦争に参加しているのか知りたいわね。
 率直に言うわ、帰りなさい。喧嘩の一つで自分のサーヴァントに見限られる人間が生き残れるとは思わない」

「……そんなの解らないだろ」


「それも子供みたいな発言ね……まぁいいわ。
 今日はごめんなさい、そして――さようなら、エレン・イェーガー」


ごめんなさいとさようなら。
その言葉の意味を理解する時間は無い。

まるで少しの間、たった数秒の感覚を失った気になる。
その光景が突然ワープしてきたようで、瞳を閉じたつもりはないが信じられない。

「あ、アサシン……!?」

エレンの目の前には美樹さやかではなく、彼のサーヴァントであるアサシンが立っているのだ。





61 : 巨人が生まれた日 ◆wd6lXpjSKY :2015/07/21(火) 00:28:51 dfUpTw4c0

(エレン・イェーガー……使えない男)

エレンと会話をしている時、暁美ほむらは苛ついていた。
サーヴァントが見当たらないと思えば、喧嘩したと言っている。
そんな子供の言い訳が通用すると考えたかは不明だが、正直に言って馬鹿だ。

聖杯戦争においてサーヴァント無しで勝ち抜くなど不可能である。
そうでなければ自分がこうして必死に新しいサーヴァントを探す理由が無い。

(令呪を使用させてでも呼んでもらう)

令呪の命令は絶対である。
強制的にサーヴァントを呼び出しさえすれば此方の勝ちである。
時間を止めて背後を取る。後部に銃口を押し当てサーヴァントと交渉する。
従わなければエレンを殺す、と。
自分と契約を交わさせ、エレンは公衆電話で聖杯戦争から退場してもらう。

(手始めに――)

時間が止まる。
暁美ほむらだけが認識を許された隔絶世界の中で、彼女は一人歩く。
楽にエレンの背後を取ると、銃口を持ち上げ、瞳を大きく開く。


意味が解らない。
目の前に存在する男の姿を見た彼女が本能で感じた感想。


この空間つまり職員室には暁美ほむらとエレン・イェーガーの二人しか存在しない。
少し前に天戯弥勒が居たがそれは今になれば関係のない話。
暁美ほむらが数分前に立っていた場所で剣を持つ男が一人、首を狩り取るように武器を振るっていた。
西洋の剣よりは短く、かと言ってナイフよりは長い得物。


62 : 巨人が生まれた日 ◆wd6lXpjSKY :2015/07/21(火) 00:29:34 dfUpTw4c0

黒き男は何時現れたのか。
暁美ほむらとエレン・イェーガーが問答をしている間に扉は開いていない。
無論窓も開いておらず、この場に侵入するのは不可能である。

可能性が在るとすれば天戯弥勒のように突然現れる方法だろう。
サーヴァントならばワープの一つや二つ出来ても不可解ではない。
目の前に起こる非現実は全て現実であり、受け入れる必要が在る。

「時間と止めていなかったら私は死んでいた……ッ」

汗が身体全体を包み込む。
偶然だ、この生命は偶然助かった。
時間を止めていなかったら自分は首を斬り落とされて死んでいた。

サーヴァントはアサシン。
暗殺者ならば背後を取るのも容易なのか。
少なくとも気配を感じなかったため、彼女が知りうる中では最上位の強者。
狂戦士はその名の通り圧倒的破壊力を証明するならば、暗殺者は音を、全てを殺せるのだろう。

「勝てない……っ、此処まで来て……私には時間が無いのに」

撤退。
彼女が選んだ行動である。
エレンを人質に取ったところで、サーヴァントに勝てる自信が沸かない。
問答無用で殺しに掛かる暗殺者と交渉出来る気がしないのだ。

残された時間は少ない。
しかし死んでしまえば全てが終わる。
願いを叶えるどころか、明日を迎えることも出来ない。

職員室の扉を雑にこじ開けると彼女は廊下へ飛び出した。
校庭ではサーヴァント同士の戦闘が起きている。
それも感じる魔力の強さから宝具でも開放したのだろうか。
彼女の本能が告げている、この場所は危険だ、と。

とりあえず玄関の近くへ足を運び、周囲の様子を伺う。
学園内に侵入されていれば窓からでも這い出て逃げればいい。

階段を飛び降りた矢先、暁美ほむらは一つの異物を見つける。

「これは……血……保健室に向ってる?」





63 : 巨人が生まれた日 ◆wd6lXpjSKY :2015/07/21(火) 00:30:04 dfUpTw4c0

「アサシン……なぁ、アサシン。お前何で……ひっ」

自分の前に現れたサーヴァントを見てエレンは声を掛ける。
美樹さやかが消えた事には驚いたが、それよりもアサシンへの対処である。
自分は黙って家を飛び出した。言い付けを破り外へ出た。

アサシンの出方を伺おうと声を出すが返ってきたのは無言で睨まれる行為。
鋭い眼光は対象を殺す機械のように冷たく、無機質で潤いのない瞳。
自然と声が漏れてしまう。やばい、自分は何かされると。

「……逃げるぞ」

「は……え?」

「……」

「わ、わかったよ……」

剣を懐に戻しながらアサシンは短く呟くと顎で扉を指しエレンを誘導する。
殴られるぐらいの覚悟をしていたエレンだったが少なくとも痛みを感じなくて済むようだ。
何に対して逃げるかは解らないがアサシンが言うからには危険なのだろう。

ならば黙って扉を抜ければいい。

思えば今日は色々なことがあった。いや、外に出れた。
一度外出を試みた時、アサシンに止められた時は情けなかった。
現実と現状に戸惑う自分が小さくて、それでも暖かさを感じながら一人腐ってる自分が情けなかった。

この世界にみんなが居れば。
どれだけ幸せだろうか。巨人の居ない優しい世界に。

聖杯を勝ち取れば、世界から巨人を駆逐出来る。
壁の外で堂々と暮らせる日が、大切な存在を奪い続けた巨人を駆逐出来る日が来る。

だから自分一人で腐る訳にはいかない。
幻覚を見た時、自分の気合を入れ直した。
逃げない。みんなが巨人と戦っているなら。

「俺はこの聖杯戦争で戦い続けてやる」



「なら戦ってこい、エレン・イェーガー」



何が起きたか解らなかった。
聞こえた声に反応することもなく立ち止まっていた。
首根っこをアサシンに掴まれ後ろに投げられた。
机の上に置いてある小物をぶち撒けながら壁に激突した。痛え。


64 : 巨人が生まれた日 ◆wd6lXpjSKY :2015/07/21(火) 00:30:38 dfUpTw4c0

アサシンは軽く跳躍してから誰かを斬ろうとしていた。
いや、頭に剣を刺そうとしている。
美樹さやかが帰ってきたと思ったけど、違うみたいだ。

頭が大分回って来た。
気付けば魔力をたくさん感じる。
美樹さやかと話していた時は気にしていなかったけど。

バチバチと電流が走るような音が響いた。
見ればアサシンの剣が何かに防がれている。
サーヴァントの攻撃を防ぐってことは相手もサーヴァントだな。

俺は顔を出して覗いてみた。
サーヴァントならある程度目視出来るからどんな奴か見てやる。

「サーヴァントじゃない……!?」


「俺は天戯弥勒……知っているよな?」





浅羽は夜風を浴びながらフェンスを掴んでいた。
アーチャーと一緒に学園近くのビルの屋上に上がり、フェンスの隙間から世界を覗く。
人通りは思ったよりも多くない。架空世界は都会なイメージがあったが、学園事件の関係で人が少ないようだ。

フェンスから数歩離れると、近くで弓を引いているアーチャーに視線を移す。
得意料理みたいな手際の良さで、弓矢を発現したアーチャーは学園を対象に弓を引いている。


65 : 巨人が生まれた日 ◆wd6lXpjSKY :2015/07/21(火) 00:31:27 dfUpTw4c0

浅羽の目からすれば学園で赤い光が動いているようにしか見えない。
尋常無い魔力を感じたため、サーヴァント同士の戦いだと解ったが、本来は何も気づかなかっただろう。
夜の学園に潜入して花火で遊んでいる生徒が居る。そんな感覚だ。

アーチャーは何か考えているような表情だった。
具体的に言えば若干口元が緩んでいるけど、其れ以外は真剣其の物。
浅羽は自分で何を考えているか解らなくなるが、アーチャーは何か考えているのだろうと思う。

聖杯戦争でも浅羽をリードしてくれているため、常に物事を考えているのだろう。

「さようなら――御老人」

小さく呟くと、アーチャーは矢を離し必殺の一撃が放たれた。

その瞬間だけ時間が止まったかのように空気や音が消えた。
小さい頃耳元で縄跳びを力一杯振り回すとふぉんふぉんと風を斬る音が聞こえる。

アーチャーが矢を離した時、この辺りを包む風を斬っていた。
近くから音が消える感覚には慣れそうにもないと浅羽は思った。
しばらくしてからアーチャーは苦い表情を浮かべて浅羽に話し掛ける。

「殺せなかったみたいだ。千里眼でもあれば大分確率は上がるんだろうけど」

その言葉にどう反応すればいいか解らなく、浅羽は下を向いてしまった。
聖杯戦争を勝ち抜くには誰かを殺すのは必然になる。その現実が重くなる。
矢では殺せなかったようだが、これからは戦闘する機会も増えるだろう。

御老人と言っていた。この世界で出会った特徴的な老人は病院の屋上で会っている。
聖杯戦争の参加者だった。学園で戦っていたのはどうやらあの老人だったようだ。
顔を知っている人間を殺す。その感覚や感触はどんなものなのか。考えたくもない。
出来れば誰も死なない世界が望ましい。そんな綺麗事が実現する筈もない。

「……もう少し此処に居ようか」

黙っている浅羽に気を遣ってアーチャーは時間を取る提案をした。
その言葉に浅羽は首を縦に振り、再びフェンスに近づく。


66 : 巨人が生まれた日 ◆wd6lXpjSKY :2015/07/21(火) 00:31:49 dfUpTw4c0

穴に指を入れて力強く覗いてみる。
学園に先ほどのような赤い光はなく、この場所からだと平穏に見えていた。

「此処なら戦闘が起きても有利に戦えるからね」

隣に来たアーチャーはタンクを指差しながら発言した。
ビルの屋上にはスプリンクラー用の貯水タンクが備わっている。
それが有利に戦える理由になるらしいが浅羽は何も知らないため疑問に思う。

ふと空を見上げてみる。綺麗な夜空だった。
月がはっきりと見える雲一つ無い綺麗な満月の夜。

「……誰だろう?」

もう一度学園を見下ろしてみると校庭に誰かが来たようだ。
戦っていた人物か、新しく来た人かは解らない。
などと考えていたら、急に光に包まれていた。

後に浅羽は思う。
この時、自分は何で暗い校庭で人影を見つけることが出来たのか。





セイバーに抱えられたカレンは保健室で止血を行い、包帯で自分の腕を包んでいた。
肉が露見しているため、現状でも応急処置にしか過ぎず、病院に行く必要が在る。
セイバーはカレンの手当を申し出るが、これを一蹴……でもないが断った。

自分のミスで怪我をした。
だからこの傷は自分で処置をする。

不覚だった。

ウォルターと呼ばれていた老人は優れた身体能力を持ち合わせていた。
見た目からは想像出来ない速さで此方に近付き、ワイヤーを自在に操っていた。
銃弾をも躱す動体視力は信じられず、まるでギアスの加護を受けているかのようであった。


67 : 巨人が生まれた日 ◆wd6lXpjSKY :2015/07/21(火) 00:32:28 dfUpTw4c0

圧倒的戦力差を感じ取ったカレンは何も出来ないまま、右腕を粉砕されてしまった。

「情けない……悔しい……ッ!」

使える左拳を強く握る。
銃弾を躱す人間に勝てる程カレンは強くない。負けるのは必然であった。
けれど何も出来ずに負けてしまった自分が情けない。
勝率など存在すらしていないが、それでも正面から負けた。

「生かされた……」

ウォルターは自分を殺すことも可能だった。簡単なまでに。
それでも殺さなかったのはランサーが戦闘を楽しみたいから。
マスターが死ねば基本サーヴァントも消えてしまうから。それだけの理由。
自分には何一つ関係なく、敵の娯楽のために生かされている。

戦争で戦う戦士にとってそれは侮辱と変わらない。

「――」

その姿を見てセイバーは何を思うのか。
宝具まで発動した戦闘はランサーとセイバー、共に大きな傷は負っていない。
必中の魔槍と放たれる弾幕、吸血鬼のような赤い瞳と鋭い牙。
ランサーの正体は確定に近いが、この先どうすればいいのか。

カレンを連れたまま戦闘を行うのは無理だ。
傷つけてしまったのは己の実力不足が原因である。
また戦闘が始まれば助けれる保証など存在しない。だから。

「バイクで病院に向かう?」

セイバーの提案にカレンは反応した。
ランサーの目を盗み、バイクを回収し腕を診てもらう打算らしい。
その提案にカレンは喜ぶが、言葉には出さない。
心の中で何度も、運ばれている時に何度も思っていたことを口に出す。


68 : 巨人が生まれた日 ◆wd6lXpjSKY :2015/07/21(火) 00:33:00 dfUpTw4c0

「この傷は病院に行っても行かなくても変わらないよ。
 完治するには数日じゃ足りない、聖杯戦争は終わっているかもしれない」

セイバーの提案を断ったカレンは更に紡ぐ。

「私には……私の日本には時間が残されていないってのは言ったことあるよね。
 ルルー……セロも居なくなった今、黒の騎士団は壊滅状態に近いの」

自分で自分を苦しめながらカレンは喋る。

「聖杯があれば日本を取り戻せると思った。願いが叶えられるんだからね。
 でも、この怪我じゃ無理。セイバーの足を引っ張るだけ。だから私は自分に出来る事をする」

自分に出来る事。それは小さいけれど夢へ繋がる大きな一歩。

「やっぱり聖杯に頼るのが可笑しかったよ……はは。
 私は元の世界へ帰って、自分の力で黒の騎士団を再建して、日本を取り戻す」

本来通りに努力することだ。
夢物語を追いかけないで、自分の手で届く範囲から地道に頑張っていく。
人生は長い、そして積み上げが大切である。
世界中に住んでいる人間全員がギアスを持っているワケでもない。

「ごめんね……最後までわがままで」

自分の不甲斐なさに謝罪をするカレン。
セイバーには迷惑ばかり掛けていた聖杯戦争であった。
恩の一つも返せないまま退場と考えると、本当に情けない。


69 : 巨人が生まれた日 ◆wd6lXpjSKY :2015/07/21(火) 00:33:40 dfUpTw4c0

その言葉にセイバーは責めることもなく、優しい笑顔で返答した。
カレンの心は暖かくなるが、余計に自分の無力さを感じてしまう。

けれど引き摺る訳にはいかない。
彼女にはこれから日本を取り戻すために再びブリタニアと戦わなければならない。
黒の騎士団のエースとして、何時迄も席を開けている訳にはいかないのだ。
ゼロが失脚し、恐らく藤堂を始めとする戦力もブリタニアに大きく削られている筈。
自分だけが平穏な学生生活を送る訳にもいかない。


「でも聖杯戦争から還るにはサーヴァントを失わなければならない」


「誰!?」


保健室に響く知らない女の声に振り向いたカレンはメスを握り叫んだ。
拳銃は校庭に忘れてしまっため、先手を撃つことは出来ない。
セイバーも剣を取り出し、その対象に注目していた。

「私は暁美ほむら……サーヴァントを失ったマスターと言えば解るかしら」

其処には黒い髪を持った少女が一人。名は暁美ほむらと言うらしい。
サーヴァントを失ったマスター。
天戯弥勒の言葉を信じるならば、その身体は六時間後に消滅すると言う。
そしてその六時間以内に再契約を結べなかった場合、身体は灰になる。
回避するには公衆電話を使用し元の世界へ還るか、新しい契約を結ばなくてはならない。

「……私は突然現れたあんたを信用出来ない」

「でしょうね。立場が逆なら私もそう思うわ」

「でも」

「それでも」

「私はあんたを信用しなくちゃいけない」

「貴方は私を信じるしかない」





70 : 巨人が生まれた日 ◆wd6lXpjSKY :2015/07/21(火) 00:34:23 dfUpTw4c0

剣を引き抜いた後、壁を蹴りもう一度攻撃を加える。
質量を持った光に阻まれ失敗、床を削るように後退し相手の出方を伺う。

「サーヴァント。
 その攻撃が一般人と思われる俺に通用しないのはどんな気分だ?」

魔術とは違う異能を操る天戯弥勒は目の前のアサシンを挑発した。
本来サーヴァントの攻撃を人間が防ぐのは有り得ない……話でもないが普通は有り得ない。
元々天戯弥勒の正体が不明なため、明確な答えを導くことは不可能だが主催者特権だろうか。

「向かってくるか」

アサシンは天戯弥勒の言葉に耳を傾けずに、再度接近する。
その速度は普通の人間の肉眼では捉えられない速度である。
吸血鬼のレミリアと違って夜の恩恵を絶大に活かせはしないがアサシンは闇を生業とする。
深夜の影響によって彼の身体は本来の時間、つまり自分の世界を思う存分発揮出来る時。

天戯弥勒が飛ばす光の枝を剣で流し、懐に飛び込む。
首を掻っ切ろうと横に振るうが、枝に防がれてしまう。
剣と枝の衝突を支点とし、右足で床を力強く蹴ると、下半身を上に上げる。
そのまま回らず、空中で体勢を維持しながら、力を下方向へ流し、下半身を元の場所へ戻す。
つまり勢いを利用した踵落としを天戯弥勒の脳天へ叩き付ける。

その一撃は大きな轟音を響かせる。
衝撃の余波は職員室に置かれているデスク類を振動させ一部を壊滅させる程。
人間ならば頭蓋骨粉砕、死へ直結するが天戯弥勒は生きている。
しかもダメージを喰らった素振りを見せず、アサシンの足首を掴んだ。

子供が落ちている石を拾い投げるような軽さでアサシンを投げ飛ばす。
アサシンは壁に激突することなく、足と腕を壁に貼り付け、力だけでもう一度天戯弥勒に向かう。

腕を振るい、机の上に残ってある小物を天戯弥勒の視界にばら撒く。
目眩ましになれば儲け物だが光の枝は全てを貫いており、無意味。
別の机を蹴り飛ばすも、天戯弥勒は拳で殴り返すように机を返す。

この攻撃にアサシンは剣で机を一閃。
二つに裂けた机は窓ガラスに直撃し、破裂音を響かせながら外へ落ちていった。

「俺を殺してみろアサシン」


71 : 巨人が生まれた日 ◆wd6lXpjSKY :2015/07/21(火) 00:35:10 dfUpTw4c0

接近してくるアサシンの攻撃を天戯弥勒は枝で防いだ。
両者、身体は近く、手が届きそうな範囲ではあるが、攻撃は届いていない。

「黙っていろ、直ぐに殺してやる」

アサシンの刃が届くよりも早く、天戯弥勒は力の収束場を己に展開させる。
つまり、自分の身体を中心にエネルギーフィールドを球体状に発現させ、アサシンを吹き飛ばした。
見たことのない攻撃を受けたアサシンは受け身を取り、転がることなく立ち上がる。


戦闘を見ているエレンは別次元を感じ、黙って立体機動装置を装着していた。


落ちている椅子を天戯弥勒へ投げると、球体のフィールドはこれを弾いた。
防壁となっているようだ。
接近戦しか行えないアサシンには邪魔な壁となるが、関係ない。
自分達の前に現れた主催者。碌な事が起こらないだろう。
今すぐにも無力化し、今回の聖杯戦争に問い質したいところだが、無理そうだ。


「さて、少しは話させてもらおうか」


気付けばアサシンは無数の光の枝に包囲されていた。
少しでも動けば己を刺し殺すために一斉に動き出す、と言ったところか。
自然にエレンの前を陣取り、異常事態に備えるアサシン。
どうやらこの場は天戯弥勒の言うとおりにするしかないようだ。

「エレン・イェーガー。お前は聖杯戦争で何をした」

「……俺?」

「そうだ、お前に聞いている。お前の言葉で答えろ」

突然の指名に驚いたエレンはアサシンの背中を見つめる。
此方に振り向く素振りを見せないため、信頼でもされているのだろうか。
天戯弥勒は自分の言葉で答えることを所望している。ならば。

思っていることをありのままにぶちまけてやる。

「俺はアサシンに命令されて……無理やりずっと家に閉じ籠もっていた」

「……!」

「そうか……ならお前は何のために聖杯戦争に参加している」

思っていることを、あったことをありのままに言葉にする。
アサシンの身体が少し動いたようだが気にしない。


72 : 巨人が生まれた日 ◆wd6lXpjSKY :2015/07/21(火) 00:35:32 dfUpTw4c0

「巨人を駆逐するのに聖杯を手に入れるためだ」

「では戦え」

「別に俺達が全員倒す必要はないだろ」

「力無き者に聖杯が勝ち取れると思っているのか」

「俺一人じゃ巨人を全て駆逐することは出来ない。それと一緒だ」

天戯弥勒の煽りを流しつつ、エレンは返答する。
思ったよりも頭は透明に物事を考えられるようになっている。
理由としてはアサシンに責められなかったことが大きい。
子供の考えではあるが、説教を覚悟していため、それが無いと気分が楽になっているようだ。

戦闘を目の前にしても、自分の考えを主張出来るぐらいにはなっている。

「そうか……お前が望めばサーヴァントを変えてやろうと思っていたが……どうする」

マスターを縛るサーヴァント。
行動を制限するサーヴァント。

従者としての立場を超越した行いはマスターに多大な精神的負担を掛ける。
エレンも戦争と平穏の狭間に揺れ、仲間の幻覚を見る程に精神を摩耗させていた。
その小さな亀裂につけ入れるように割り込んでくる天戯弥勒の提案。

エレンにとってその提案は受け取るべき物だ。
この提案を受け入れれば自分は楽になる。楽に行動出来る。自由に行動できる。
アサシンは振り向くつもりはないようだ。武器を構え硬直状態である。

エレンは思う。
答えは最初から決っている。ありのまま思っていることをぶち撒けてやる。
アサシンは嫌な奴だ。
それでも俺のことを思ってくれる大切なサーヴァントだ。


「うるせえ……うるせえ!
 俺と一緒になったサーヴァントにケチつけてんじゃねえ!!」


怒号を聞いたアサシンはエレンへ振り向かないまま口元を緩めた。
何を言うかと思えばこの男は……とでも思っているのだろうか。
誰にも知られない感情を抱いたまま、アサシンは天戯弥勒のフィールドを壊すために仕掛ける。


73 : 巨人が生まれた日 ◆wd6lXpjSKY :2015/07/21(火) 00:36:04 dfUpTw4c0

どうやらタイミングは奇跡的にエレンの言葉と重なったらしい。
演出にしては出来過ぎているぐらいに丁度いいこの瞬間、アサシンの宝具発動と重なっていた。

アサシンの宝具は任意では発動出来ない。強いて言えば常に発動している事象だ。
その効果を発揮するのは確率の問題であり、その方程式は不明である。
また確率も高い訳ではない。

剣を手元で何度か回し真上に投げる。
綺羅やかに刀身は職員室の全てを映し出し、アサシンの手元に再び収まった。

「……は?」

「宝具か……来い死神」

エレンは己の目を疑った。
アサシンが剣を手元で回し、それを投げて手に取るまでの間。
彼の身体が影のように何重にも見え、分身が誕生しているようだった。
けれど目を擦ってもう一度見ると、当然のようにアサシンは一人であった。
天戯弥勒の呟きからすれば宝具らしいが、聞く前に光の枝が動き出していた。

枝はアサシンを貫くために一斉に彼へ動き出した。
鋭利な先端は床や机を貫きながら、勢い衰えること無くアサシンへ向かうがそれは無意味。
枝が全て動き切った時、その場所にアサシンは存在していない。

「お前を――引き摺り出す」

アサシンが現れたのは天戯弥勒の背後、それも真上。
暗殺者の名に恥じること無い隠密行動、気配を消した移動は戦闘中でも発揮される。
球体を破壊するために彼が振り下ろす剣は宝具を帯びた必殺の一撃である。

一瞬。
たった一瞬である。

運良くその光景を目撃した人物は皆口を揃えて言う。
あの暗殺は一振りの攻撃でありながら無数の一撃を加える必殺の一撃、と。

「死ね」

球体を全方位から攻撃するように無数の斬撃が天戯弥勒へ襲い掛かる。
アサシンが右斜めから落下するように攻撃したかと思えば、左上に現れもう一撃加える。
その後も何度も何度も、肉眼で捉えられない速度で攻撃を繰り返す。

音だけが響く中、エレンが気付いた時には天戯弥勒を包んでいたエネルギーフィールドは破壊されていた。

その瞬間はたった一秒にも満たない刹那である。
死神――暗殺者であるジャファルの異名だ。
指令は絶対であり、得物は確実に殺す黒い牙が誇る四牙の一人死神ジャファル。
彼の瞬殺は相手が認知することなく無数の斬撃を浴びさせ絶命させる必殺の一撃である。

「次はお前を殺す」


74 : 巨人が生まれた日 ◆wd6lXpjSKY :2015/07/21(火) 00:36:28 dfUpTw4c0

身体を包むエネルギーフィールド――PSIが崩れた今、天戯弥勒を守る壁は存在しない。
光の枝が展開されるよりも早くアサシンは剣を握り、天戯弥勒の首を狙う。
必殺の宝具は発動しないが、人間一人の首を取るには容易い状況であるはずだったが流石主催者と言うべきか。

光の枝がアサシンに急速で向かっていたため、これを防ぐために剣を引き戻す。
正面から防ぐことには成功するが、急な防御であるため、踏ん張ることも出来ずに飛ばされてしまう。
その方向は窓、アサシンは窓ガラスを突き破り外へ飛び出してしまった。

「アサシン! っくそ!」

飛ばされたアサシンを心配して声を張り上げるが、エレンに助ける余裕は存在しない。
ブレードを取り出すと、天戯弥勒を視界から逃がさないように捉える。
次にやられるのは自分だ、一瞬の隙も見せてはならない。

「話の続きだが……お前は閉じ籠もっている間、何をしていた」

「随分と戻るな。俺はテレビ見てたり寝てたりしてたよ」

「元の世界でもそんなことをしていたか?」

「は? テレビ何て存在してないし毎日存分寝れる生活はしていない」

「聖杯戦争の生活――ずっとしたくはないか?」

「――っ」

言葉が詰まってしまう。
これが漫画やアニメの世界ならばかっこ良く言い切る場面だろう。
そんな生活は要らない、俺に必要なのは仲間だ。青臭い言葉を叫ぶ場面だ。
だが言葉が素直に出て来ない。
エレン自身、今の生活は悪くなかった。
出来るならば、この世界に全員招待したいぐらいだった。それ程までにこの世界は優しい。

「お前が望むなら一生生活させてやることも可能だ」

「……ミカサやアルミン達はどうなる」

「お前の仲間か?
 望むならお前が指定した人間全てをこの世界に召喚……招くことも可能だが」


75 : 巨人が生まれた日 ◆wd6lXpjSKY :2015/07/21(火) 00:36:57 dfUpTw4c0

天戯弥勒の発現にエレンの心臓が跳ね上がる。
今、この男は何を言った。

「え……もう一回」

「お前が望むなら仲間と共にこの生活を提供してやる」

その言葉は儚くて、永遠に求めていた神の一声だった。

「……い、いいのか」

「俺の条件を飲めば、な」

エレンは何も考えること無く本能が赴くままに発言していた。
それはアサシンの命令に従って何もせずに時間を流していたあの日々と一緒だった。
今のエレンは天戯弥勒の言葉に踊らされている。
現実に直面している筈だが、甘い夢が近くに現れ難しく考える事を放棄していた。

天戯弥勒の条件とは何なのか。
エレンに思い当たる節など存在しないが、早く発言しろと本能が叫んでいる。
何だってしてやる、ダカラ早く、早く喋ろ。

天戯弥勒が口元を緩ませた時、エレンは唾を飲み込んだ。



「エレン・イェーガー……黙って死んでくれ」










「――は?」





頭が嘘なくらい真っ白になった。
追い打ちを掛けるように自分へ伸びてくる光の枝を防ぐためとりあえずブレードを構える。
しかし枝は無常にもエレンの両肩を貫き、鮮血が宙を舞う。


「あ、あああああああああああああああああああああああああああああ」


痛みで我を取り戻したエレン。
肩に刺さっている枝を見つめた後、痛覚が反応し、痛みによって叫び声を上げてしまう。
天戯弥勒の条件に言い返すことも出来ずに、意識を失わないように踏ん張るだけで精一杯であった。


76 : 巨人が生まれた日 ◆wd6lXpjSKY :2015/07/21(火) 00:37:29 dfUpTw4c0

下がった顔を上げると天戯弥勒は嗤っていた。
その笑みは邪悪で、それでも純粋のように見えるドス黒い笑顔。
天戯弥勒が何を考えているか何て解りたくもないが、彼の発現は気になる。

天戯弥勒は宙に浮かびながらエレンに話し掛ける。

「俺と世界のために死んでくれ、エレン・イェーガー」

「は、っあ……あああああ……ックソォ!!」

光の枝はエレンに刺さったまま移動を開始し、窓ガラスを突き破りエレンを外に連れ出した。

「本日二回目の外だ、喜べ巨人」

天戯弥勒の煽りに反応することは出来ない。
自分の呼吸を整えていたエレンは周囲を見渡す。
両肩に刺さった光の枝を支点として、自分は宙に浮いているらしい。

足が大地に着いていないため力が入らない。
立体機動装置で宙をかけることは度在ったが、黙って留まることは少ない。
妙な感覚に違和感を感じながらも、エレンは口を頑張って動かす。

「し、死んでたまるぁ……」

「なに、いずれ死ぬ運命を少し早めるだけだ。
 俺と俺が望む世界のためにお前には光の礎となってもらう」

誰がお前のために死んでやるか。
言い返したいが、意識が薄れていく。

「エレンッ!!」

地上ではアサシンが無数の光の枝に対抗しながら叫んでいる。
エレンを救出に向かいたい所だが、枝がその道を阻み、邪魔している。

グラウンドを縦横無尽に駆け回り、枝を斬り裂いているがその数は衰えない。


77 : 巨人が生まれた日 ◆wd6lXpjSKY :2015/07/21(火) 00:37:55 dfUpTw4c0

「誰も助けることは出来ないぞ、このまま死ぬか」

「誰が死ぬかよ……」

「なら代りにお前の世界に残っている奴らを殺す」

「――」

「お前のために何人死んだと思っている?
 今更な話だろう。お前が俺の条件を断ったから殺す。
 今までと変わらないんだよ。お前のために仲間が死ぬ、それだけだ」

「――」

何を喋ればいいか解らない。

「――」

この男、天戯弥勒は今何と言ったのか。
自分の耳が痛みによって可笑しくなったのではないかと錯覚したいぐらいだ。

「――」

お前の世界に残ってい奴らを殺す。
天戯弥勒は言った。言葉通りならミカサやアルミン達を殺すのだろうか。
許されるか、許される筈がない。死んでいい生命などあるものか。

「ふざけるな」

自分のために何人死んだ……それは解らない。
巨人になれる自分のために多くの犠牲があったのは事実である。
リヴァイ班を始めとする多くの調査兵団がエレンのために死んでいる。
だけど。けれど。そのために更なる生命が無駄になっていい理由にはならない。

「させるもんかよ」

仲間はもう誰も失いたくない。
母のように、マルコのように、リヴァイ班のように、自分のために犠牲になってくれた人のように。
もうこれ以上自分のために死ぬ生命を見たくない。
そのためには巨人を駆逐する。そしてその前に目の前の男を殺さなくてはならない。
しかし今のエレンは無力な人間である。両肩を固定され宙に浮いているこの状況で何をするのか。
立体機動装置での一撃はおそらく無力だろう。アサシンの攻撃を防ぐ天戯弥勒に自分の攻撃が通るとは思えない。
頼れるアサシンは地上で天戯弥勒の枝――生命の樹と戦っているため、加勢は不可能である。


78 : 巨人が生まれた日 ◆wd6lXpjSKY :2015/07/21(火) 00:38:25 dfUpTw4c0

自分に出来る最大火力と言えば――考えるまでも無かった。

(ミカサ、アルミン、みんな……俺、間違ってた)

この生命を救うために犠牲になった人々。
彼らは何のために自分を守っていたのか。

(聖杯戦争での日常……これがずっと続けばいいと思ってた。
 でも、この世界は別に優しい世界じゃなかった)

囚われたこの地平を、壁に包まれた世界を巨人から取り戻すための希望だから。

(俺だけずっとこのままでいい……ははっ、ジャンに殺されちまう。
 本当は平和な世界何て何処にも存在しないのにさ。
 壁と巨人が無くなればすっかり腑抜けになっちまった……死に急ぎ野郎と言われた俺が)

自分には何が出来る。
巨人を駆逐するために自分だけに出来ることは何だ。
殺すための技術か、いいや違う。
お前にはお前だけの翼が在るはずだ。籠の中では物足りない大いなる翼が背中に宿っている。
自由の翼は飾りではない。調査兵団の意地を、人類の意地を見せつけろ。

(もう少し待っててくれ……俺だけがこんな平穏な世界に浸っているわけにもいかないしな。
 聖杯を持ち帰って、みんなで明日に怯えること無く笑顔で過ごそうぜ。
 俺はお前らに海を見せてやりたい。なぁ、アルミン……海は本当に綺麗で何処までも広がっていたよ)

右腕を自分の顔に近付けるエレン。
痛みで少しでも動かすと激痛が走る。しかし甘えてはいけない。
此処で自分が踏ん張らなければ仲間が死んでしまうのだ。
これ以上天戯弥勒の言葉に踊らされてたまるか。意地を見せろ、男の挟持を果たせ。

(だからまずは――天戯弥勒を殺すッ!)


79 : 巨人が生まれた日 ◆wd6lXpjSKY :2015/07/21(火) 00:39:23 dfUpTw4c0

無意味な死で在ったと言わせない。
自分のために死んでくれた人々のためにも死ぬわけには行かない。
エレンには元の世界へ帰り、人類の希望を巨人から取り戻す努めが在る。

巨人を駆逐すると誓ったあの日から。
握り締めた決意は左胸に宿っている。人類のために犠牲になる覚悟が。
その努めを果たすためにも自分だけこの優しい――どうしようもない残酷な世界で死ぬ訳にはいかない。

「ははっ……っし」

右腕を口元まで寄せたエレンは天戯弥勒を睨む。
その眼光にはお前の思い通りには絶対ならねえ。強い意志が込められている。

呼吸を整えるように、一息吸い込むとエレンは叫んだ。
仲間の元へ声を届けるぐらいの大声で。

「俺は死なねえ、テメェを殺してやる……殺してやる!!」

その決意、殺せるなら殺してみろ。

(なんでこんなに熱くなってるか意味分かんないな……いや、聖杯戦争自体意味分かんないか)

考えれば不可解だらけである。
自分は何故、聖杯戦争に参加しているか。最初の時点で謎が多い。
それを解明するためにも天戯弥勒の口から真実を聞かなくてはならない。
つまり、どの道こんな所で死ぬわけにはいかないのだ。

エレンの発言に対し、天戯弥勒は嗤っていた。
その顔は当然のように笑み。何かを企んでいて、見透かしているような笑み。

エレンは息を再び大きく吸い込むと自分の右腕に囓り付いた。
己の身体に傷を与え、彼に与えられた神秘の力を此処に魂現させるために。


「そうだ……その力を俺に見せてみろッ!
 お前は俺が選んだ一つの鍵、その力を発動してみせろ!
 クハハ……ハハハハハハハハ!! 選ばれた巨人、エレン・イェーガー」


一筋の雷鳴が轟いた時、この物語を終焉へと動かす一つの歯車が回った。


80 : ◆wd6lXpjSKY :2015/07/21(火) 00:40:04 dfUpTw4c0
以上で終了です。
出来る限り次の投下を早く出来るように何とかします。だから、もう少しお付き合いください


81 : 名無しさん :2015/07/21(火) 05:31:14 QChR5K/o0
投下乙です!
おおお、熱い!すげー熱い!
ここへ来てエレンがめっちゃ少年主人公してる…!
ほむらとの接触、現れたジャファル、続く弥勒との問答に再び固める決意と、この世界におけるエレン・イェーガー再誕と呼ぶにふさわしい舞台でした
自分と共にいてくれるサーヴァントと言われ口元を緩めるジャファルもいいなあ。弥勒相手に臆せず戦いを挑む姿もまた渋い

そしてほむらとカレンはどうなるのか…こっちもこっちでまさかの展開ですね、浅羽たちの動きと合わせて気になります

最後に、エレン視点の地の文の中で、名乗られた「美樹さやか」と本来の「暁美ほむら」呼称が混在してるように思われます


82 : 名無しさん :2015/07/21(火) 21:47:45 xdJ3rTbc0
投下お疲れ様です。
弥勒の考えが気になります、参加者の前に現れては、何かしら煽るような言動を見せ……聖杯問答で考察されたいくつかは彼の心中に肉薄しているのか。
ほむほむも不測の事態に遭遇しまくりだなあ。とりあえずジャファル強奪は失敗か、上手くいかないものだ
そしてそのジャファルとエレンが今回は魅せましたね。
特にエレン、引きこもってぐじぐじしていたことも、無駄ではなかったか。ここへ来て決意を新たに、己の内面と外の世界を見つめ直し、奮起する姿はまさしく主人公。
彼もまたサイレン聖杯の熱い展開を彩る一役者でした。
続きも楽しみに待っています。


83 : 名無しさん :2015/07/22(水) 15:39:10 iMbIgb1Q0
投下乙です
まずはジャファル初戦闘おめ、ほむらをびびらせ、天城弥勒相手に一矢報いる姿は流石の正統派アサシン
そしてこの話、エレンは舞台に上がろうとしてカレンは舞台を降りようとしてるんですよね、その対比が上手いなあとうならされます
エレンがこの戦争で巨人として振る舞えるのか、はたまた無意味な死を迎えるのか
そしてカレンは無事に舞台を降りれるのか、さらに波乱があるのか

今回一番好きなシーンは他の人も書いていますが、ジャファルが口元を緩めるシーンですね、、恥ずかしながら原作は未把握ですが、彼のカッコよさとエレンとの主従関係の希望を感じさせてくれます
続きも楽しみにしながら、ゆっくり(サイレン原作を読み直しながら)待っています、


84 : 名無しさん :2015/07/23(木) 19:30:54 QjdPAVow0
投下乙です

毎日痛快エブリデイな引きこもり生活を捨て、苛烈な闘争の中に身を投じようとするエレンのこれからに期待せざるを得ない


85 : 名無しさん :2015/08/03(月) 23:16:16 UJAS8eHc0
気付けばスレ建て1年経ってました。
たしか二次二次名簿確定して予約解禁なる前に建てた記憶があります。
あれからめっちゃ聖杯系スレ増えてなんか1年ってあっという間ですよね。最近よく思います。
二次二次とは全く別色の当聖杯戦争ですが、これからも暖かく見守ってください。

それで、7月中は投下出来ないとか言いながら何か2回投下してました。ワケ解かんないですね……w
と言っても長期予約していることに変わりはなく、長い間拘束して大変申し訳ありません。

日曜日には最後まで終わって投下していると思います。だからもう少しだけ付き合ってください。
では、投下します。(ただ、切れは悪いです)


86 : 紅蓮の座標(前編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/03(月) 23:18:32 UJAS8eHc0
モリガンが月夜を感じている時、使い魔がキャスターの居場所を発見していた。
北の方角にある温泉に彼女達は移動しているらしく、同行者もいるらしい。

学生のマスターと大柄なサーヴァント。
聞けば一度交戦しているあのライダーが、キャスターと共に行動しているのだ。
同盟を組んだか偶然居合わせたかは不明だが、このままキャスターに攻め入ると彼らとも戦わなくてはならない。

「ちょっと骨が折れそうね」

モリガンのマスターであるタダノは現在病院で安静を取っている。
考えなしに魔力を使い込んでは、彼の身体に悪い影響を与えてしまう。
しかし手を抜いた状態でキャスターとライダーの相手をするのは危険だ。

キャスターならば度外視な魔術を所有されていない限り、なんとかなる。
ライダーの相手をするならば、宝具の開放を行ってしまう可能性が高い。
足枷を考えた場合、今のモリガンはお遊び程度の戦闘しか行えないのだ。

「普段なら楽しい方にお邪魔するんだけど……」

空中で急停止し、西の方角へ振り向き、人差し指を唇に当てる。

「あっちも楽しそう……ふふっ」

タダノに負傷を負わせるきっかけとなったキャスターには痛い目を見てもらわないと困る。
しかし、西の方角から溢れ出る魔力はモリガンの好奇心を奪っている。
本調子で戦えない今、彼女は西へ誘われていく。

「ちょっとだけお邪魔しようかしら」



  ◆  ◆  ◆


87 : 紅蓮の座標(前編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/03(月) 23:21:49 UJAS8eHc0

日付が変わる前の深夜。
月が世界を照らす今宵の宴に、遅れて現れた少年エレン・イェーガー。
彼が守りたい全ての存在を心の中で描きながら、巨人が誕生した。


「ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」


雷鳴と共に誕生した体長十五メートル級の巨人は己の存在を主張するように吠える。
大気を振動させる咆哮は学園の窓を次々と破損させ巨人の規格外さを示しているようだ。
その巨人が誕生した理由――天戯弥勒を殺すため。


(天戯弥勒……アイツはミカサやアルミンを殺すって言った。
 平行世界だか多元世界だか知らねえけど、アイツなら何でも出来そうだ。
 俺の大切な仲間を殺すならその前に俺が――殺す!)


躊躇う必要などない。
エレンは自分を聖杯戦争に巻き込んだ張本人に鉄槌を下すだろう。
天戯弥勒が元の世界に趣き、仲間を殺すならば黙って見過ごせる訳もなく此処で殺す。
殺してしまえば聖杯に辿り着けないかもしれないが、仲間の生命には釣り合わないのだ。
願望器と云えど、多くの犠牲が生まれてしまえば血で創られた偽りの世界になってしまう。

エレンを守るために多くの犠牲が生まれた。
今更甘い戯言を言うつもりはない。
だが、エレンはまだ生きている。帰れば仲間がいる。
彼らにはまだ時間と希望が残されているのだ。聖杯が無くても進める意思が残っている。
此処で天戯弥勒を殺し聖杯戦争が白紙になったとしても、未来は残されている。

殺せ、戸惑うな。
此処は引く場面ではなく、選択をする場面だ。
雌型の巨人と対峙した時、自分が巨人になるのが遅かったからリヴァイ班は全滅した。
巨人化すれば生き残った……一つの可能性であり、エレンは胸の中で自分を責める。

(もう迷わねえ殺す――い、いない?)

視界に映るのは半壊している学園だけ。
光の枝でエレンを刺していた天戯弥勒が目の前から消えていた。
巨人化に伴い、一瞬ではあるがエレンの視界は途切れていた。
そのタイミングで見失った可能性も在るが、こうも音沙汰無く消え去ることが出来るのか。

「無事かエレン」

大きな図体で辺りを見渡しているエレンの肩にアサシンが飛び乗ってきた。
天戯弥勒失踪に伴い、彼が展開していた光の枝も消えたようだ。

(あの光……魔力の他に何かを帯びていた)

天戯弥勒と交戦する中で刃が通らなかったエネルギーフィールド。
魔力とは異なる異物で構成されていた力は天戯弥勒の能力なのか。
魔術と云っても世界の数だけ数多の流派が存在している故に正解を当て嵌めるのは至難の業である。
次は必ず仕留める。今はそれだけで充分であった。

『俺は無事だアサシン。天戯弥勒が何処に行ったか解るか?』

『アイツは消えた……俺にも行方は解らない』

最初は全く出来なかった念話も今では呼吸をするように行える。
エレンは肩に乗ったアサシンに天戯弥勒の行方を聞くが彼も知らないようだ。
暗殺者の目を盗み消えることが出来る天戯弥勒は何者なのか。
職員室に現れた時も突然の出来事、天戯弥勒は移転する能力を持っているかもしれない。

『そっか……じゃあ俺、もとに戻るか』

『そうだな。その身体は目立つからな――守れ、エレン!』

比較的平穏な状態で会話をしている中、アサシンは突然声を荒げ剣を引き抜いた。
エレンに防御の命令を下した後、彼の肩を蹴り地上へその身を落とす。
対の剣を構え、対象を殺すために動いたようだ。


88 : 紅蓮の座標(前編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/03(月) 23:23:21 UJAS8eHc0

命令されたエレンは何から身を守ればいいか解らず戸惑ってしまう。
アサシンが飛び降り、向かっている先を見ると一人の少女が浮かんでいた。

(浮かんでいる……?)

翼を宿した少女は妖しい笑みを浮かべてアサシンを待ち受けている。
エレンの脳内に走る情報によりサーヴァントと断定、天戯弥勒の他にも敵が潜んでいた。
他の参加者とは友好を築けるのならば同盟を結びたいと思っていたが時間が無い。
放たれる魔力と殺気から相手は此方を敵と断定している。

「私も混ぜてもらってもいいかしら」

「断る」

「残念……でも運命は決っているの」

アサシンが到達するよりも早く少女は掲げた右腕を振り下ろす。
すると上空に構成されていた赤い槍が少女の前へ放たれた。
空気を斬り裂くその一撃は異常な程魔力を纏っておりアサシンの顔が歪む。

(宝具――ッ!)

自分に備えられた対魔力のスキルも飾り程度にしかならない、覚悟を決める。
少女へ飛んでいる最中ではあるが、腕を前で組み槍から耐える体勢に移行する。
気休め程度にしかならないが、直撃よりは遥かにマシと判断し、次なる一手を張り巡らせる。
槍を受けた後どうするか、そもそも動けるのか、相手を殺せるのか。

様々な可能性を模索している中、アサシンにとって予想外の結果となる。
赤い槍が自分を無視して後方へ飛んで行った。自分から外れていたのだ。
横を通り過ぎる時、魔力と単純な速度の影響か風圧により吹き飛ばされそうになるも耐え抜く。

何にせよ外れたならばそれは運が良かった結果だけが残る。
剣を少女の首元へ走らせ、狩り取ろうとするも数多の球体が阻む。
少女は両腕から弾幕と呼ばれる魔力の球体を射出し、アサシンの身動きを止めた。
アサシンは剣で弾幕を弾き続け、損傷は無い。
しかし何時迄も空中に留まっていられる訳もなく、大地に足を落とす。

「……ランサーか?」

「さぁどうかしら。それよりあの巨人は貴方の知り合い?
 頭を潰したはずなんだけど超再生能力……でもサーヴァントの類ではないのね」

「ァァアアアアアアアアアアアアアアア」

赤槍から少女をランサーのサーヴァントと推測したアサシン。
その問に少女は白を切る。そして後方の巨人について逆に聞く。
少女が語る頭を潰すと超再生能力の単語を聞いたアサシンは後ろへ振り返った。

「エレ――マスター!」

赤槍が額に突き刺さり、叫ぶ巨人の姿が瞳に映る。
蒸気のような白い煙を発しながら痛みに苦しんでいるが傷は再生されている。
巨人の能力は夢で認識した程度ではあるが、魔力にも対抗出来るようである。

(痛え……けど、倒れるまではいかない)


89 : 紅蓮の座標(前編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/03(月) 23:24:06 UJAS8eHc0

エレンは痛覚で意識が飛ばないよう、己に喝を飛ばし拳を少女へ振り下ろした。
少女は簡単に避け、拳は大地を殴り付け、辺りに震動を発生させる。
アサシンは大地を蹴り上げ跳躍することで震動から回避、そのまま巨人の左肩へ移動した。

「マスター……そう。
 巨人がマスターだなんて面白いわね……いや、巨人に変身出来る少年か」

宙に漂う少女は一人納得するように嗤いながら巨人の正体に興味を馳せていた。
少女の言動からエレンとアサシンは人間状態であるエレンの素性が割れていると認識した。
つまり事前に情報を掴まれていたか、この短時間で知られたかの二択。

アサシンによる籠城によってエレンは必要以上に表へ出ていない。
その際に右腕の令呪は隠しており、アサシンも魔力を発していない。
普段の生活に置いてエレンを聖杯戦争の参加者と見抜くのは有り得ないはず。
ならば残されている答えはこの学園での戦闘である。

天戯弥勒の力によりエレンは職員室の窓を突き破り宙に固定された。
反逆するために巨人化。この瞬間を目撃されていればエレンが巨人の正体であると解る。

「マスター……お前のマスターは何処にいる」

「答えると思っているのかしらね。普通は答えないと思うけど」

「……あの老人は何処にいると聞いている」

「……あら。何処で見られていたのかしら」

アサシンのマスターの身元が割れているなら。
少女のマスターをアサシンは目撃している。

早朝の段階でアサシンは情報収集の際に少女とライダーの交戦を目撃している。
あの時は宝具を使用していない小手調べ程度の戦闘だった。
今回は初手から全開を発揮しており、夜になると本調子になる類のサーヴァントだろうか。
近くに立っていた老人の存在を訪ねても少女は答える素振りを見せなかった。

「まぁいいわ。だって貴方はこれから私と遊ぶのだから。
 私のマスターが何処にいようが関係ないってことなの」

「そうか、俺は既にお前のマスターを見つけているがな」

「な、――ッ!」

会話の幕切れはアサシンが投げた剣。
吸い込まれるようにランサーへ投げられた剣、それを追い掛けるようにアサシンは巨人の肩から飛んだ。
手に握るは対の片割れ、投擲はあくまで気を逸らすための捨て牌である。
会話の中で相手に攻める形で無理矢理切り上げたことによって動揺を誘う。
剣はランサーへ向かっているが方角が同じなだけであり、本命は学園の柱、更に奥に潜む人間。

「気付かれていましたか……」


90 : 紅蓮の座標(前編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/03(月) 23:25:27 UJAS8eHc0

ランサーのマスターである老人――ウォルターが柱の影から最小限の歩数で現れた。
彼が前まで隠れていた柱はアサシンの投擲によって貫通穴が出来ていた。

滴る血滴を、左肩を抑えながら登場した執事。
傷の割には余裕な素振りを見せ、アサシンに襲われた状況ではあるが顔は嗤っていた。

(それにこのアサシンはどうやら私達を何処かで見ていた……。
 私の傷は遠方からの狙撃、つまりアーチャーの攻め手と見る。
 アーチャー……なるほど)

その傷を創った存在に心当たりが在る。
しかしそれを知るのはウォルター自身だけである。
言葉に出しても意味が無い、伝わらないならば声に出す必要がない。

「アサシン……私を殺すと?」

「その前に私がアサシンを殺すから安心しなさい」

「そうですか……なら今宵の獲物は巨人……クク。
 吸血鬼が現代を彷徨うなら巨人の一体や二体問題無いと言うか」

ウォルターが声を出した時。
アサシンの剣をランサーが赤い槍で防いだ瞬間であった。
火花とも捉えられる魔力の煌きが溢れる中、ランサーは可愛い笑みを浮かべアサシンを見つめる。
見た目だけなら幼い少女、けれど真は赤い月の眠らない妖女。
英霊である以上、その背景に彩られた歴史の重さは伊達ではなく、見た目で判断すれば首を狩られるだろう。

挑発に近い宣言を受けたアサシンは黙って剣に力を込める。
ギリギリと音を立てる剣と赤槍、どちらも引くつもりはないが宝具は規格外である。
男と女の均衡は徐々に女に傾き始めているのだ。

単純な数値で言えば筋力値はランサーが上である。
CとB、数字にすれば三十と四十と称されるステータス。

しかしそれは飾りである。
現実の戦において数値など飾り、現場で使えなければ意味を成さない。
数値が低いから正面でぶつかれば負ける。それはそうであると言えるが、必ずしも、というわけではない。
全ての現象が混ざり合っての結果であり、肌で空気を感じていない人間が何を言おうがそれは雑音と同義である。
つまり、ステータスが全てではなく、戦場は常に流動的である。
単純に数値だけで戦を語る者に舞台の終局を見る資格など無く、その身で戦を感じていない存在が口を出すな。

「――押し返す」

「出来るかもね。でも、貴方は空を飛べない」


91 : 紅蓮の座標(前編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/03(月) 23:26:15 UJAS8eHc0

ランサーは身体に宿った翼を使役し宙を翔けることが出来る。
しかし暗殺者であるアサシンに宙を飛ぶ術など知っている訳もなく、彼は大地へ落ちていく。
力を踏ん張るにも足場が無く、彼は黙って落下するしか無い。
その隙を見逃さないランサーは槍で追撃を試みようとアサシンの額目掛け突きを放つ。
突きを首捻りによって回避に成功するアサシンだが、その顔は浮かばれない表情で。

「チッ」

切先はアサシンの衣服に刺さっており、ランサーは黒い笑みを浮かべて大胆に槍を引き上げた。
動きによりアサシンの身体は上に上がると、勢いを殺すことなく後ろへ飛ばされる。
その先には学園――職員室の窓があり、アサシンはガラスを破って再び職員室へ踏み入ることになった。

アサシンを飛ばしたランサーは槍を演舞のように扱い、一度構えを取り形を整えた。
すると自分の身を闘争の渦中へ投げ出す如くアサシンを追うように宙を掛け職員室へ飛んで行った。


『アサシン! 大丈夫か、おい!!』


飛ばされたアサシンを見て念話を飛ばすエレンだが反応はない。
言葉では説明しにくいが魔力のパスは切れていない。つまり、まだ生きている。
サーヴァントは規格外の存在である。たかが窓ガラス如きで致命的な傷を負うことはないと思うが。自己解決する。

アサシンとランサーの交戦は手を出せなかった。
巨人となった今、巨体ではアサシンの邪魔をする可能性が大いに在ったから。
それにサーヴァントに傷を負わせることは不可能であろう。
一説によると神秘を秘めていないとダメージが通らないと言うのだ。
実際に感じたことが無いため、何とも言えないが自分の攻撃が聞かないのなら意味が無い。

(巨人は神秘に溢れているんじゃないか……次、試してみるか)

宝具の一撃も再生出来た巨人なら此方の攻撃を与えるのも可能ではないか。
淡い希望を抱きながらエレンはアサシンを追うために巨人状態を解除しようとするがそんな時間は無い。







「上から一方的に見下ろす景色は美しいか?」







「ウ……ア……?」

自然と漏れた声、ゆっくりと顔を左へ向けると肩の上に一人の老人が乗っていた。
袖を破り左肩の止血をしているのが印象的なその男が腕を動かすと巨人の視界は赤に染まる。

「!?」

エレンが気付いた時には既に左目が潰されていた。
痛みを追い掛けるように腕で目を覆うが、痛みが和らぐ訳ではない。
生きている右目に映るは赤い一筋の糸――ワイヤーである。


92 : 紅蓮の座標(前編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/03(月) 23:27:06 UJAS8eHc0

ワイヤーを視線で辿るとその元は肩に乗っている老人だ。
当然ではあるがこの状況でエレンに害を与える存在は一人しかいなく、正体は老人だ。
月夜に似合う不敵な笑みを浮かべた直後、腕を天に伸ばしながらエレンの元を離れる。

「ウヴォアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

老人は重力に身を任せ――エレンの左肩にワイヤーを突き刺したまま飛び降りたのだ。
抉れる音を響かせながら崩れていく巨人の左腕。
鮮血が舞い、赤く夜を染め上げ、剥がれた皮膚から見える肉塊が生々しい。

飛び散った鮮血は大地に落ちると、焼けるような音を上げ蒸発していく。
その光景を不思議そうに見つめるウォルターはワイヤーを数回動かし、見上げる形でエレンを見る。
数秒前に破壊した左腕が何事も無かったように修復されているのだ。
更に見上げるとどうやら左目も再生されているようで、巨人とやらは傷に強いらしい。

(ランサーの宝具の傷も再生していたところを見ると、魔力に耐性がある)

冷静に。
目の前に化け物が存在しようと決して焦ることはなく、冷たく、冷静に見極める。
戦場は常に動き続ける。流れを読み違えた者から死んでいくのが理だ。
だが、どうにも予測出来ないことだって存在するのが戦場である。

「――――――――――――ッ!!」

吠えるエレンは己の右脚を高く上げると元の場所へ戻すように下げた。
大地を突き破るように轟音を響かせ、砂塵が舞い、岩が飛び散り、地面が抉れる。
誕生した風圧は学園どころか近辺一帯を震動させ、月夜に舞い降りた宴を現実へ叩き付ける。
戦場においてエレンに一番近い場所にいたウォルターは、震動を全身で浴びることになり、無慈悲に吹き飛ばされる。

身体は大地を何度も跳ねるように転がり続けるが、その際に手頃な岩片を掴む。
岩片を逆手に持つと、自分の身体が大地に向き直す瞬間に腕を振り下ろし岩片を大地に突き刺す。
大地を抉り続けながら、岩片を抑止力代わりに活用し、己の速度を強制的に減速させる。
自分は足の裏を大地に付け、中腰となり、重心を下に委ねることで更なる負荷を以って減速に拍車を掛ける。

大地を滑走する中、エレンを視界に捉えたウォルターはワイヤーを右手に見える学園の柱に掛ける。
抑止力となっていた岩片が負荷に耐え切れず、弾け飛ぶと同時にウォルターは全力で大地を蹴り上げた。
ワイヤーの先に移動するように跳んだ身体が重力に蝕まれようと、我構わずと謂わんばかりに跳び続ける。

「さぁ私は此方だがお前は何処を殴っている?」

数秒前にウォルターが滑走していた地点をエレンの拳が通り過ぎていった。
エレンの追撃を躱したウォルターは己の身体が学園の壁に近づくと、それを蹴り上げ、更に上へ登る。
窓の縁を力強く掴むと、腕の力と蹴り上げる脚の力を利用して、映画のように壁を登り彼は屋上へと到達する。

空を見上げると、月が総てを笑うような美しい夜であった。
大地を転がり、滑走し、跳び続けたことによって衣服に付着した砂塵等を腕で払う。
汚れが落ちる訳などないが、戦場に似合わない仕草はエレンを挑発させる充分な材料であった。


「今日は月が美しい……最後の夜がこんなにも美しい夜とはな。
 名も知らない哀れで醜い化物よ、お前に夜明けは訪れないさ」


鮮血を帯びたワイヤーが地獄へ誘う赤い蜘蛛の巣のように月に反射していた。


  ◆  ◆  ◆


93 : 紅蓮の座標(前編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/03(月) 23:28:44 UJAS8eHc0

吹き飛ばしたアサシンを追い掛けるように職員室へ踏み入ったランサーは荒れた部屋を見渡す。
自分がアーチャーの襲撃にあった辺りで学園内から感じた魔力は此処から溢れていたと確信する。
吹き荒れたオフィス用品、めくれた床、割れた窓。
戦闘痕から察するにアサシン或いは時の勇者を始めとするサーヴァントが交戦していたのだろう。

「………………」

神鎗を構え、息を殺し周囲を警戒する。
どの方角から攻められても対処出来るように、右手には槍を、左手は何時でも弾幕を放てる体勢へ。
魔力が感じられないがアサシンが職員室へ来てからランサーが追い掛けるまで数秒しか経過していない。
短時間でこの場所から離れることなど不可能に近い。職員室の扉は開いているが血痕が見当たらない。
流石に間接的とは言え宝具の一撃を身に感じたアサシンだ。血の一つや二つ出ているだろう。

ならば部屋に忍んでいるに違いない。
確信しているものの何処に居るかは把握出来ていなく、容易に背後を取られてしまう。

「――――――――ゥ!!」

暗殺者と云えど英霊の背後を奪うのは簡単なことではない。
気付いた時には刃が首裏へ迫っており、ランサーが取った行動は左手からエネルギー体を放つこと。
無論、ランサーの左手はアサシンの方へ向いておらず、強いて言えば首だけ振り向こうとしている状態だ。

無理矢理エネルギー体を放ったことによって生まれる衝撃の力を利用して、己の身体を強引に右へずらす。
アサシンの刃はランサーの左腕を縦に流れるように一閃し、鮮血が職員室を飛び舞う。
放った一撃の勢いを殺さず、軸足を中心に回転するとランサーの左脇腹に蹴りを叩き込む。

身体を折り曲げられたランサーは唾を撒き散らしながら天を仰ぐ形で机の上に乗り上げてしまう。
更に追い打ちを掛けるべく、アサシンは跳び、ランサーの心臓目掛けて剣を振り下ろす。
ランサーは弾幕を本来の役目通り、壁として使用するために自分とアサシンの間に魔力の川を作る。
アサシンは空中で行動を変えることも出来ず、損傷覚悟で弾幕へ己の身を投げる。

(狭い空間じゃ不利なのは私ね……)

対魔力と呼ばれる飾りを最大限に活用した、正面からの魔力突破。
嘗て魔防と呼ばれる数値がスキルへと昇華したアサシンは弾幕を正面から受けランサーを狙う。

「調子に――乗るなッ!」

天井を仰いでいる体勢でランサーは己の証である神鎗を放つ。
溢れ出る魔力は赤い雪のように粒子をばら撒きながら弾幕の川を超えアサシンに迫る。
対するアサシンは剣でその一撃を防ぐか、必中の神鎗は止まらない。
刀身を流れるように逸れた神鎗はアサシンの左肩を貫き、そのまま彼を天井まで運ぶ。
天井に突き刺さった神鎗と貼り付けられたアサシンの瞳はランサーを捉えている。


94 : 紅蓮の座標(前編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/03(月) 23:33:44 AGF3Fv4E0

斬られた左腕を右指で辿り、血が塗り付いた指を加えるアサシン。
その表情は生まれて初めて玩具を与えられた幼い子供のように狂いの無い笑顔。
人差し指を唇に密着させ、間を感じた後に上へ伸ばすと、掌に魔力を収束させる。

「次で貴方はお終い。この夜は貴方にとって最後の月夜になる」

一点に収束する魔力は球体を創り上げ伸びるように変化し一つの槍を精製する。

「私が貴方を終わりにしてあげる」

「お前が死ね」

吸血鬼が支配していた空間を斬り裂く一陣の風が吹き荒れる。
アサシンの腕から放たれた剣は何事にも止められることなく吸血鬼の左目を貫く。
怒りを表すように槍を床に突き刺した吸血鬼――ランサーは左目を抑え痛みから叫んでいた。


「ふっぅ、ふぅ……許さない、許さない……ッ」


呼吸を整えるが痛みが和らぐことはない。
この瞳が回復するには時間が必要であり、少なくとも夜明けまで待たなくてはならない。
己が主役となれる闇夜から幕を引くことになるとはお笑い者だ。
愚民どもに指を指されても仕方がない人徳無き王のように。


「死ね! 貴方は、お前は死になさいッ!」


アサシンが放った剣を風と表現するならランサーが放った槍は……何だろうか。
風を越すものならば嵐と表現したいところだがそぐわない。
槍は槍でありその一撃は空間を斬り裂くどころか総てを無かったことにすると錯覚する世界の確変。
神鎗はアサシンの腹を突き破り、ランサーは跳躍すると槍を掴み己の重さで天井に貼り付け状態であるアサシンを引き摺り下ろす。

「――――――――ッ」

声にならない叫びを上げるアサシン。
彼の身体は左肩を槍に突き刺され天井に貼り付け状態だ。
そこに追い撃ちを掛けるように腹に槍が突き刺さる。
身体の中で臓器が潰れる音を響かせながら血液を含む体液を職員室の床へぶち撒ける。
この時点で死亡段階だが英霊である以上、人間よりも耐久力は遥かに高い。
生命の火が消えないアサシンに水を吹っかけるようにランサーはまた追い撃ちを掛ける。

アサシンの腹に突き刺さる槍を掴み、己の重さを利用し下へ全体重と力を流す。

ズズズと鈍い音を響かせながらアサシンの身体は下へと動いて行き、やがて天井から開放される。
臓器を身体の中でぐちゃぐちゃにされながら開放されたアサシンを待っていたのは復讐鬼のような形相を浮かべたランサー。

消えなさい。

小さな言霊が宙へ消えた直後。

槍の持ち手で顔面を強打されたアサシンは数分前と同じように窓を突き破って外へ放り出された。


 ◆  ◆  ◆


95 : 紅蓮の座標(前編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/03(月) 23:36:40 AGF3Fv4E0

生まれて初めて生で巨人を見た。ビルより高い訳でもなく、リアルな大きさだった。
テレビで見たウルトラマンやゴジラのように巨大な存在が校庭に現れたのを見て、浅羽は夢を見ている気分になる。
当然夢ではなくて現実であり、巨人の咆哮が耳にビリビリとノイズを発生させている。

思わず耳を塞いで目を瞑る。
隣に立っているアーチャーは特段リアクションをする訳でもなく、黙って巨人を見つめていた。
矢を放ったあとにアーチャーは学園がおかしいと呟いてから何処か難しい顔をしている。

おかしい。

浅羽にとっては聖杯戦争自体がおかしいので、何がおかしいが解っていない。
どうしてですかと聞くと、魔力反応が急に膨れ上がったとアーチャーは言っていた。
確かに魔力反応が大きくなっているのは身で感じているので解る。
けれどそれはサーヴァントが増えただけであり、別におかしいこととは思わなかった。

疑問が晴れないまま月夜を見上げていると、校庭が突然幾つもの筋を浮かび上がらせるように輝いた。
目を疑ったが現実であった。ビルの屋上から眺めていると綺麗だがそんな感想は直ぐに消える。

バリバリと空を引き裂くような雷が轟いた後、校庭に巨人が立っていた。

何が起きたか解らない。
浅羽は前にアーチャーが言ったことを思い出し、一人納得することになる。

おかしい、と。

そして何か見の危険を感じて振り返った浅羽。其処には天戯弥勒が立っていた。


  ◆  ◆  ◆


96 : 紅蓮の座標(前編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/03(月) 23:37:50 AGF3Fv4E0

アーチャーは巨人を目撃した直後に嫌な予感を感じて振り向いていた。
浅羽よりも先に振り向いていた彼は黙って現れた男を見つめている。
止まること無く溢れ出る水をバックコーラスに、彼らは口を動かす。

「主催者が堂々と登場して問題ないのかい?」

「お前らの自由を尊重して必要以上の干渉はしていないんだ。
 少しぐらい出歩いても裁かれないんだよ。俺が裁かない限りな」

「君は不思議なことだらけだ。僕達英霊を召喚している以上それは聖杯の力だろう。
 でも、君は何のために聖杯戦争を開いているんだ。
 嘗ての人間のように根源に辿り着くみたいな理由ではないだろうね」

「根源か……それも悪くないか。
 俺が求めるものはお前ら参加者には関係のないことだ」

「だったら僕達の魂を以って器を満たせばいいじゃないか。
 なんでこうも面倒なやり方をしているんだ。
 戦争の形を取らなくても君がそのまま英霊を全員消せばいいだろうに」

「器――聖杯を見ていないお前たちが何を考察出来るんだ」

「……なに?」

アーチャーと天戯弥勒のやりとりを黙って聞いていた浅羽。
当然のように理解出来ていなく、頷くことさえ許されない。
知識がある程度参加した段階で脳内に直接叩きこまれたようにぼんやりと存在していた。
その外付けにあった知識を頼りに紐を解いてみる。

主催者。
天戯弥勒は聖杯戦争を開いた男である。

干渉。
始まりの儀式以降天戯弥勒を見かけていない。

英霊。
アーチャーを始めとする歴史の誇り。

聖杯。
願望器と呼ばれる多くの人々が求める夢の扉。

根源。
なんのだろう。

結論として、答え何て出る訳が無かった。


「お前達は聖杯を見ていない。それがどんな形状をしているか知らない」

「まさかホムンクルスが型どってるとか言うのかい?」

「そう思うか? 俺は思わないがな。
 それよりも俺が此処に来た理由、知りたいだろう? 天の獄に触れた人間を見に来た」

「天の獄……?」

「比喩みたいなものだから気にするな。超能力に覚醒し始めている浅羽直之」


言葉遊びのように、役者のように語り続ける天戯弥勒の真意は見えない。
曇りや霧ではなく闇だ。見える希望すら存在しない。
聖杯が嘗てとある世界で行われた器とは違いホムンクルスが使われていないことは解った。ただそれだけである。
天の獄と言われても何一つ解らないが、浅羽を襲った風土病は天戯弥勒謂わく超能力らしい。

「超能力……」

左掌を開けて中心を見つめながら呟く浅羽。
自分はその領域に踏み入ったことに対し何とも言えない感情を抱いていた。
瞳に宿すのは濁りか潤いか。空を見上げても隣に彼女はいない。

誰も反応しなくて、気付いてもくれない。この月夜の下で彼はひとりぼっちだろうか。


97 : 紅蓮の座標(前編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/03(月) 23:39:59 AGF3Fv4E0
短い上に中途半端ですが一度終了します。
最後は日曜に投下します。されてなければ容赦なく煽ってください。


98 : 名無しさん :2015/08/04(火) 00:37:00 TMhKG33k0
投下乙です!
サイレン聖杯名物熱い展開が続く!解放され再誕した巨人の威容と奮迅もさることながら、ウォルターとレミリア、夜の主従も美しい
ジャファルが魅せるなー、レミリアとの戦闘は実に血沸き肉踊ります
ウォルターとエレンの交戦も、その圧倒的なスケール差を余すことなく描いてること以外にも、ヘルシング機関ゴミ処理係が巨人と交戦してると考えるとすごくクロスオーバーって感じで良い!
いよいよ戦いもたけなわになってきたところで今度は浅羽たちの前に現れた弥勒、色んな要素が同時進行してて目が離せません
どうか無理なさらず、続きは楽しみに待ってます


99 : 名無しさん :2015/08/04(火) 22:00:12 xhjUXxwY0
投下お疲れ様です
ここへ来てエレン・ジャファルの舞台が続く感じですね!
巨人化してウォルター翁と戦うエレンは圧倒的な覚悟と重量を感じられてかっこいい、レミリアとジャファルの互いの傷を度外視したような血みどろの戦いも燃えます
お嬢様はしかし強い!ランサーのクラスに恥じぬ戦いぶりです…
浅羽組の前に現れた主催も気になります、少しずつこの聖杯戦争のからくりも一端が明かされつつあるのだろうか…


100 : ◆wd6lXpjSKY :2015/08/09(日) 23:23:32 JAD3B81A0
どこぞのみたいにぐだぐだ引っ張って申し訳ありません。
予約分、最後の投下します


101 : 紅蓮の座標(後編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/09(日) 23:24:31 JAD3B81A0

時間は遡り巨人が生まれる前。
無言で三人乗りを続けて時間が経過した後、彼女達はバイクから降りた。

一人は黒髪の魔法少女。
一人は赤髪のテロリスト。
一人は伝説の時の勇者である。

今もアッシュフォード学園で血を振り撒いているランサーと交戦した紅月カレンとセイバー。
サーヴァント同士の戦いはどちらも譲らない己と己のぶつかり合いであった。
しかしマスター同士の戦いは現実悲しく軍配は敵に上がり、カレンは右腕を負傷した。
ワイヤーによって斬り裂かれた右腕は肉が露出し骨も見える程に抉り取られていた。
学園の保健室で応急処置を済ませ、止血は終わったが根本的な解決には至っていない。

このままでは後遺症が残り、これからの人生にとって嬉しくない干渉が起きてしまう。

聖杯を手に入れれば願いを叶えることが出来る。
けれど死んでしまえば、願いを叶えるどころか、甘い願いに溺れることさえ許されない。

カレンは選んだ。
元の世界に戻り、己の力で願いを叶えることを。
黒の騎士団はまだ終わってはいない。火はまだ消えていない。
反逆の狼煙を上げれば、もう一度私達は戦える。日本を取り戻すために死力を尽くす。

聖杯を諦め、世界に戻る決意。

幻想を見限り、己の足で現実へ帰ることを選んだ紅月カレン。
願いを叶える反則級の力を持った聖杯を諦めるのは一生に一度の奇跡を溝に捨てるのと同義である。
奇跡を成すためには、ゼロのように何重にも策を張り巡らせて世界を掌握するしかない。
その手間と時間を吹き飛ばし結果だけを手に入れる、それが聖杯。

聖杯を捨てたカレンが拾い上げるように手を伸ばすのが公衆電話の扉。
全ての始まりを司る赤いテレホンカードを鍵として扱い、世界の扉を開く。
実際に帰れるかどうかは不明だが、どの道現状の傷で聖杯戦争を勝ち抜くなど不可能である。
悪魔のようなアーチャー。結界を破る女のセイバー。学園に巣食うキャスター。
他にも多くの強敵が潜む中で、自分の傷は戦争に着いて行けずに足を引っ張ってしまう。


102 : 紅蓮の座標(後編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/09(日) 23:25:34 JAD3B81A0

セイバーにも願いがあるかもしれない。
なら、自分が枷になってしまえば、彼に迷惑を掛けてしまう。
有りもしない奇跡に縋ったのだ、最後くらいは自分の手で選択するべきだ。

「暁美ほむら。
 私はあんたのことをよく解っていない。でも、願いが在るのは解った」

「ええ。言ったように私は救いたい人がいる」

保健室で出会った彼女達は対照的だった。
舞台から降りるためにサーヴァントとの別れを選んだ紅月カレン。
舞台から降ろされないためにサーヴァントを求めていた暁美ほむら。
エレン・イェーガーの従者を奪い取る作戦が失敗してしまった暁美ほむらに訪れた好機。
学園内に落ちている血を辿った結果、保健室で応急処置を行っている紅月カレンと接触。
数少ないやりとりがあっただけだが、彼女達の目的と行動は一致していた。
その時のやりとりを思い出す。


  『貴方は私を信用しなくてはならない』

  『そうだね……セイバーを素性の知らないあんたに譲らないといけないんだよね。
   どう思う? あんたが私の立場なら』

  『信じないわ。それでも帰るためにはセイバーと縁を切らなければならないのは事実。
   どうであれ私は元の世界に帰るために行動すると思う』

  『……聞くけど、あんたの願いはなに』

  『大切な人を救うためよ。
   彼女を救うためなら神に逆らっても、この身を悪魔に売ろうと構わない』

  『それだけ思える大切な人があんたにはいるのね』

  『そうよ。世界中探しても一人しかいない私にとって大切な人。
   全世界に自慢してやりたいぐらいだわ……だから、その人のために私は聖杯戦争を続けなければならない』
 
  『じゃあその人を救うためにあんたは他の人を』『舞台から削ぎ落とす』『……!』

  『当然よ。貴方だって戦う理由が在ったんでしょうに、紅月カレン。
   いや、在ったんじゃなくて今も在るのよね。貴方は戦場を変えるけど私は此処に残る』


記憶を振り返るにはまだそれ程時間が経っていない。
カレンは今を生きる存在であり、過去を振り返るにはまだ速い。
意識を再び現実へ戻すと、暁美ほむらとの会話を続ける。

「あんたにとってその人がどれぐらいの存在かは解らないよ。
 でもさ、誰かのために頑張れるってのは良いことだと思う。
 それが聖杯戦争じゃなかったら精一杯応援するし協力もしたと思う」

「……そう。当然だけど出会いが違っていたら別の関係が築けたかもしれないわね。貴方はもう帰るけど。
 私はセイバーと一緒に聖杯を手に入れるわ。貴方が向こうの日本で戦うように私も、願いのために戦うわ」


103 : 紅蓮の座標(後編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/09(日) 23:26:04 JAD3B81A0

月夜を背景にまるで役者のように言葉を並べる暁美ほむら。
その言葉は台本に書かれている誰かが用意した台詞ではなく、己の信念を込めた迷い無き言葉。
彼女の中に存在する鹿目まどかのためならば彼女はどんな罪をも引き受けるだろう。

紅月カレンはこの戦場《聖杯戦争》では戦えない。だが暁美ほむらはまだ戦える。
それが結果であり全てであり、剣が託される結末へと物語は動きだす。

紅月カレンが、退場する役者が残す言葉など存在しない。
言葉を紡ぐぐらいなら黙って降壇し己が必要とされている次の戦場へ移るべきだ。
聖杯戦争。
紅月カレンが協力出来ることは無い。
そもそも有りもしない奇跡に縋って夢を見たのが間違いだった。
関係のない人間を殺してまでも叶えたい願いだっとのか。
夜科アゲハと人吉善吉を始めとする他世界の日本人を殺してまでも聖杯を手に入れるのが正しい選択なのか。

彼女は黒の騎士団として戦っていた。
その活動が実を結びゼロが加入した今、確実に日本奪還へと物語は動いている。
現状で紅月カレンが黒の騎士団を離れるのは、残された者に多大な影響を与えているのだ。
ルルーシュ不在の今、油を売っている暇など無く、聖杯に眩み日常を過ごしている暇何て無い。


「ねぇセイバー……迷惑しか掛けなかったね」


視界の照準を暁美ほむらからバイクの隣に立っているセイバーへ移す。
多くを語らない時の勇者は黙って紅月カレンを見つめていた。

「セイバーのオカリナ、とっても好きな音色だったよ。
 特に森で聞いた曲……サリアさんだっけ。うん、よく解らないけど心に響く音楽だった」

「……」

「なんかごめんね。結局私はセイバーの足を引っ張ってるだけだった。
 私が居なかったら少女のランサーにも勝ててたと思う。本当にごめんね」

セイバーは強い。
魔術的知識や概念が備わっていない紅月カレンがマスターでも一線を張れる程には強い。
けれど聖杯戦争における戦績は実力に伴わず、白星と呼べる実績は無い。
そのことを紅月カレンは気にしていた。もし自分が魔術師だったら。
ギアスでもあれば違った未来を手に取れたかもしれないが、その未来を掴み取ることは出来ない。

紅月カレンの言葉を黙ってセイバーは聞いている。
ただ、首を振ることによって彼女が枷になっていたことを否定していた。


「あはは……やっぱセイバーは優しいよね。一緒に来てってお願いしたいぐらいには頼れる存在だった。
 でもね。私は帰るよ。聖杯に頼らないで皆と一緒に日本を取り戻すだから――勝って」


104 : 紅蓮の座標(後編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/09(日) 23:26:30 JAD3B81A0

彼女は戦場を去る。
けれどセイバーは残りこの聖杯戦争に再び身を投げる。
仕える主は変われど、主を守る剣として戦場に名を馳せるだろう。

紅月カレンの言葉を聞いたセイバーは歩き出し、彼女の目の前にまで来ると腕を差し出す。
彼女は一瞬戸惑うも表情を和らげ微笑むと、その手を握った。


「ありがとうセイバー……貴方のことは忘れないから。私は貴方のことを忘れない」


繋がれた手はたった数日のみで築かれた淡い絆。
それでも他の誰にも断ち切れない永遠の絆を感じて。

手を離すと紅月カレンは再び微笑むと振り向いて歩き出す。
一歩一歩が重く感じるほど時の流れが遅い。

公衆電話に辿り着くまでどれ程掛かったのかは誰にも解らない。
扉に触れ中に入ると始まりの赤いテレホンカードを取り出す。
運命を弄ばれた神の一品を紅月カレンは無言で公衆電話に差し、受話器を取る。

終わる。

どうなるかは不明だがこれで紅月カレンの聖杯戦争が幕を閉じる。
そして日本開放のために黒の騎士団の戦いが幕を開ける。

「ねぇ暁美ほむら。セイバーのこと……頼んだよ」

世界を去る前に。
紅月カレンは暁美ほむらに語り掛ける。
その中身は自分と別れるセイバーのこと。託した剣のこと。
これから戦う暁美ほむらに頼む必要は無いかもしれないが、口が動いてしまった。

言葉を受けた暁美ほむらは固まりながらも口を動かす。
短いながらも分かりやく、彼女の覚悟が伝わる言霊である。

「頼まれる筋合いは無いかもしれないけど……貴方も私も簡単に諦められる程単純じゃないわ」





「そう……うん、そうだよね――ねぇセイバー、ありがとう。そしてさようなら」




受話器を耳に当てた時、紅月カレンはこの舞台から姿を消した。




  
  ◆  ◆  ◆


105 : 紅蓮の座標(後編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/09(日) 23:26:57 JAD3B81A0

地上より月に近いアッシュフォード学園付近のビルの屋上。
夜風に吹かれている彼らは巨人の咆哮を背景に会話を進めていた。

「超能力……あの風土病は力の産声だった」

「そうだ。慣れない力で脳がな」

天戯弥勒が語る超能力。
彼曰く浅羽直之は超能力に覚醒したらしく天の獄に触れたらしい。
天の獄が何かは不明だが、それによって体調を崩したのは間違いないだろうとアーチャーは判断する。

「天の獄を教えてもらってもいいかな」

「自分で考えろと言いたいところだが……この世界の一部に蔓延る特別な粒子だ」

「意外と教えてくれるんだね君は」

「これでも主催者だからな……急に襲って来たアサシンとは大違いだよアーチャー」

浅羽直之は粒子に触れた。天戯弥勒の言葉を借りればだがアーチャーの目に粒子など映っていなかった。
タイミングとしてはバーサーカー同士の戦闘よりも前で、老人と接触した辺り。
一部に蔓延る。言葉から察するに架空世界全土に広がっている訳ではなさそうだが。

アーチャーは一度浅羽の方へ振り向き、彼の顔色を伺う。
良い顔色とは言えないが悪くもないといったところであり、確認すると再び天戯弥勒を視界に捉える。
アサシンは彼と戦ったらしいがその気持は解る。
不可解な聖杯戦争に何か裏があるのではないか、だどしたら糸を引いているのは天戯弥勒かもしれない。

聖杯戦争は碌でもない。
存在するはずの無い奇跡に縋る哀れな現実逃避を正当化した戦争だ。
唯でさえ退けぬ状況を必然的に生み出すと言うのに聖杯が存在するかも怪しいのだ。
先の対話から聖杯は存在することが確定しているが、どうも信じ切れないと言うのが本音である。


106 : 紅蓮の座標(後編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/09(日) 23:27:28 JAD3B81A0

「主催者が狙われない理由も無いからね。
 別に天戯弥勒が退場しようが聖杯が満たされれば僕達は構わない。
 

 どうして僕達の前に姿を現したか聞かせてもらおうか」

「簡単だ、力に覚醒し始めている浅羽直之を見に来ただけだ。
 そしてその力を俺自身の目で見るために一つ小さな戦闘でも仕掛けようと思ってな」



言葉を耳にしてから考えるよりも早く身体が動いていた。
ゴムを瞬時に引っ張ったアーチャーはダーツの矢を乘せ天戯弥勒の額へ放つ。
空間を弾く音が屋上に響き、ダーツは常人には見えない速度で風を斬っていた。
天戯弥勒は口角を少し上げ喜びのような表情を見せると少しだけ首を傾けた。
僅かな動作だけでダーツを躱し、外れたダーツはスプリンクラーのタンクに直撃した。
生まれた穴から水が流れ始め、屋上が水浸しになるのは時間の問題だろう。


「浅羽くん! 少し下がって」


一息。
天戯弥勒を目の前にしながらアーチャーは一呼吸置いて己の状態を集中へ誘う。
ゴムごと後ろに引いた右手に魔力を収束させた彼が創るは水弾。
氣を極限にまで高めた水弾を水を用いず魔力だけで精製したアーチャー。

右足を大きく後退させ左腕を突き出し右腕と平行に構え、狙いを天戯弥勒に定める。
水滴が屋上に落ちると同時に右腕からゴムを離し水弾を射出。

ダーツの矢が風を斬るなら水弾は世界を弾けさせる。
射出された三連弾に対し天戯弥勒はアサシン戦と同様にPSIの力によって己を中心にエネルギーフィールドを展開。
水弾が到着するよりも早く展開され、水弾はフィールドの表面に接触すると大気を破壊するような轟音を響かせる。
弾け飛んだ水弾は雨のように屋上に降り続け、奥に潜む天戯弥勒を演出しているようだ。
まるで雨のように此方には干渉してくるが、此方が手を伸ばそうにも全体を掴めない。

水が振り続ける中、アーチャーは走り出し天戯弥勒と距離を詰める。
弓兵の称号を持つアーチャーだが、彼にとっては遠距離よりも中距離の方が己の真価を発揮出来るレンジである。
面白半分に天戯弥勒が右腕から光の枝を延ばしてくるが、触れる前に水弾を弾き相殺させる。


107 : 紅蓮の座標(後編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/09(日) 23:27:53 JAD3B81A0


水弾だけではなく矢を放ち、戦闘によって生まれたコンクリートなど様々な物を天戯弥勒にぶつけるが傷を与えられない。
天戯弥勒を退けるには今よりも強い力で攻撃しなければならないようだ。


「火力不足だぞアーチャー。俺に通用させるには程遠いな」

「言ってろ――次で壊す」


宣言したアーチャーは屋上を駆けていた足を止めて天戯弥勒に冷たい視線を飛ばす。
その先に見える浅羽の無事を確認するとアーチャーは一瞬だけ笑顔を見せ、武人の顔へ切り替える。

彼が力強く左足を踏み込むとその衝撃からコンクリートが捲れ浮かび、彼の前方に残骸が浮かび上がる。
浮かび上がるのは残骸だけではない。鈍い音と共に響く水面を叩く音――スプリンクラーのタンクから漏れた水も浮かび上がっている。
アーチャーの右掌には先程と同様に水弾が練られているが、あれは何も無い空間から魔力で精製した水弾だ。

周囲に水が満ちている恵まれている状況こそが、彼が真なる力を発揮出来る戦場だ。
氣の練度を高め創り上げた水弾と共に右腕を大きく引き、左腕を突き出し天戯弥勒に向けてゴムの射出ラインを整える。
一寸の狂いも無く天戯弥勒を捉えた射線。彼を逃がさないように鋭い視線を飛ばすアーチャー。
 
時を同じくして学園で巨人が咆哮を上げた時。
それを引き金に水弾がアーチャーの元を離れ、天戯弥勒に向けて蒼き一矢が放たれた。

風を斬るだとか、世界を弾けさせるだとか。
そんな言葉を使うよりも、思いつくよりも早く水弾は天戯弥勒のエネルギーフィールドに着弾していた。
耳に水弾の衝突音が聞こえたかと思うと、その時点で主催者を覆う結界は消え去っていた。
超能力で展開されていたエネルギーフィールドはガラスのように割れ散り屋上に散乱している。
水弾名残の水滴が月夜と残骸に反射し降り注ぐ。中心に立っている天戯弥勒を照らしているようだった。


「雨の中で裸だと風邪を引くよ……どうする?」


障壁を破壊して尚アーチャーは水弾を練り上げ天戯弥勒に対し構えを取っている。
先の手は此方が抑えている。相手の動向を伺ってから対処を行える射程範囲だ。
後の先など考える必要も無く、天戯弥勒はアーチャーのレンジに捉えられていた。

「また壊されたか。
 やはり適当に発動したPSIだけではサーヴァント格の攻撃を防げないみたいだな」

(また――僕は今壊したばかりだ。つまり天戯弥勒は既に他のサーヴァントと交戦している……って言ってたか)

アサシンと交戦していた事を仄めかしていた天戯弥勒。
彼の言葉を信じるならば正午の段階で暗殺者が一人脱落しており、生きているのは一人だけ。
アーチャーとて最大級の攻撃は行っていないが、比較的力に優れないアサシンが障壁を破壊すること。
現状最後のアサシンはどうやら戦闘能力に長けた存在なんだろうか。

「…………まぁ、いいだろう。俺も暇じゃないんだアーチャー、浅羽直之。
 目醒めた力をどう使うかはお前ら次第だ。
 理想郷に招かれるような能力者になることを少しだけ期待しておこうか」

「天戯弥勒……一体何を言って――っ」

言葉を言い切るよりも早く吹き荒れる風が屋上ごと彼らを包み込む。
天戯弥勒を中心に円を描くように風が吹き荒れ、彼に比較的近い場所にいたアーチャーは腕で風に耐える。
目を薄ら開けてみると目の前に天戯弥勒の姿は無く、最初から存在していなかったように消えていた。


108 : 紅蓮の座標(後編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/09(日) 23:28:53 JAD3B81A0

風が止むと腕を降ろし、水が溜まった屋上を歩きながら天戯弥勒が立っていた場所に向かう。
障壁を構成していたPSIとやらの破片が蒸発するように消えていた。
魔術とは異なる概念を持った超能力の使い手が天戯弥勒らしい。
そしてその超能力に目覚めているのが浅羽直之だと天戯弥勒は言っていた。

風土病と扱われていた体温の急激な上昇と脳の圧迫。
それは未知に触れた結果耐性の無い人間が襲われてしまう人種の篩分けだ。
浅羽は体調を崩し発熱等で済んだが、耐性がまるで無い人間は脳が焼き切れ絶命してしまうかもしれない。

彼が生き残ったのは偶然か必然かは不明だ、それこそ神にでも聞かなければ真実は得られない。
しかし浅羽は日常から非日常へ踏み入った存在でもある。
一夏の経験と思い出が何らかの結果や耐性となって彼に力を貸してくれたかもしれない。

アーチャーは天戯弥勒との戦闘を行っている間、特に障壁が展開されてからマスターに対する注意が逸れていた。
目の前に現れた主催者、そして牙を剥き始めた舞台の上の道化との戦いに集中するため。
天戯弥勒は人間であるかどうかさえ不明であるが、サーヴァント相手に正面から戦えるのだ。
強い。彼を物語から排除して聖杯を霞む取るのは至難の業であるようだ。


「そろそろ病院に戻ろうか。少ない時間だったけど収穫は大きい――チィッ!」


アーチャーが振り返った時、彼の瞳に映ったのは風によってフェンスの向こう側に飛ばされた浅羽直之の姿。
こうも鮮明に捉えることが出来るとは。己の無力を無理やり茶化したアーチャーは跳躍するように数歩でフェンスに到達。
勢いを殺すこと無く、フェンスを蹴り上げ一気に上昇しフェンスの上に立つと落ちていく浅羽に身体の向きを合わせた。

それから行動までに数秒と掛からなかった。
まるで背中に翼を宿したかのようにアーチャーは跳んでいた。
身体を大きく広げ風をその身で受けながら彼が目指すはマスターである浅羽直之。

落下している浅羽がアーチャーに気付いたようで、一瞬ではあるが視線が交差した。
何が起きているか解らないような表情であったが、アーチャーが自分を助けるために行動しているのを知って多少だが表情が緩む。


109 : 紅蓮の座標(後編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/09(日) 23:29:39 JAD3B81A0

アーチャーは落ちて行く状況の中、腕を伸ばすが浅羽には届かず一度空を掴むだけに終わる。
埒が明かないと判断した彼は左掌に魔力を収束させ水弾を練り上げると、身体を折り曲げ無理やり上半身を背後に向けた。
ギチギチと音を立てながらゴムを引き、それを離す。
水弾はビルへ直撃し、弾ける音を響かせながら大気を揺るがしていた。
アーチャーは水弾の反動を利用し、身動きの取れない空中で常識外れの加速を付加させる。
弾かれた身体は浅羽に吸い込まれて行き、その距離は腕が届く範囲にまで近付いていた。

「浅羽くん、この手を!」

伸ばした腕が掴んだのは空。
距離は完璧であり、浅羽の腕が掴めない理由は彼らに存在しない。
あるとすれば外部からの強い因子による干渉だけである。

空中を落下して行くアーチャーと上昇していく浅羽。


「――サーヴァントッ!?」


アーチャーの視界に割り込んできたのは身体を大胆に露出した緑のサーヴァント。
悪魔のような翼を宿した女は控えめに言っても人間には見えない。
英霊であるが故に人間ではないのだが、あのサーヴァントは人種を超えている。
直感で判断すると悪魔のような種族としか言えないが、重要なのは其処ではない。

自分のマスターが攫われたこの状況でアーチャーは水弾を飛ばそうとするが、運が悪い。
地上に激突せんと右腕で街灯を掴み、身体を柱に垂らす形となって身動きが取れない状況になってしまう。

ぶら下がりながら顔を上げるとサーヴァントに抱き抱えられ上昇していく浅羽の姿。
降りたばかりだが再び高い地点にまで到達しなくてはならないようだ。

大地に降りたアーチャーは屋上へ上がるためビルの中へ走りだした。


【C-3/ビル・入り口/一日目・夜】


【穹徹仙@天上天下】
[状態]疲労(小)、魔力消費(中)
[装備]NATO製特殊ゴム
[道具]ダーツ×n本
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を目指す
0:浅羽を救出する。
[備考]
※学園の事件を知りました。
※PSIの存在を知りました。
※巨人を目撃しました。
※天戯弥勒と接触しました。


110 : 紅蓮の座標(後編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/09(日) 23:30:47 JAD3B81A0

気付けば空中に吹き飛ばされ、気付けばサーヴァント――異なるアーチャーに身体を抱えられていた浅羽。
大胆に強調されている胸元に顔を抑え付けられ上手く呼吸が出来ない。
上がり続ける心拍数は呼吸出来ない故か、将又別の理由でもあるのだろうか。

少なくとも生命がこの瞬間だけは無事であることが証明されている。
再び屋上へ連れて来られた浅羽は翼のアーチャーと対面し、彼女の言葉を待っていた。

「急にごめんなさいね。ちょっとお願いがあるの」

人差し指を唇に当て小悪魔風な物言いで迫る翼のアーチャー。
その仕草と言葉で説明出来ない妖気に頭がクラクラとなってしまう浅羽。
彼は知らないが小悪魔風ではなく目の前にいるアーチャーは立派な悪魔である。

「これから貴方のサーヴァントが来るよね? 少しの間でいいから協力をお願いしたいの」

浅羽の背後に周り腕を回したアーチャーは彼の耳元で囁いた。
返答をしようにも浅羽は脳が上手く回らない感覚に陥り、意識を途絶えさせないだけで精一杯である。
魅了された状態で真っ当な返答など最初から出来る訳が無いと言うのに。


「ちょっと度が過ぎたキャスターを懲らしめるの。
 私一人じゃ寂しいから貴方達もお願い――だから一緒に戦ってくれるように説得してちょうだい」


【C-3/ビル・屋上/一日目・夜】


【浅羽直之@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]魔力消費(中)、魅了状態(一歩手前)
[令呪]残り3画
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯の獲得を目指す。
0:???
[備考]
※PSI粒子の影響を受け、PSIの力に目覚めかけています。身体の不調はそのためです。
→念話を問題なく扱えるようになりました。今後トランス系のPSIなどをさらに習得できるかは後続の方にお任せします。
※学園の事件を知りました。
※タダノがマスターであることを知りました。
※まどか、ライダー(ルフィ)を確認しました。
※巨人を目撃しました。
※天戯弥勒と接触しました。
※モリガンを確認しました。

【アーチャー(モリガン・アーンスランド)@ヴァンパイアシリーズ】
[状態]魔力消費(中) 、右肩に裂傷(回復中)
[装備]
[道具] なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を堪能しマスターを含む男を虜にする
1:アーチャー(弩)と共にキャスター(みさきち)を殺しに向かう。
2:上記討伐が不可能と判明した段階で撤退する。無理はしない。
3:タダノが少し心配だが、ライダー(ルフィ)に任せる
[備考]
※セイバー(リンク)、カレンを確認しました。(名前を知りません)
※リンクを相当な戦闘能力のあるサーヴァントと認識しています。
※拠点は現段階では不明です。
※NPCを数人喰らっています。
※ライダー(ニューゲート)、刑兆と交戦しました。(名前を知りません)
※C-4の北東部から使い魔の蝙蝠を放ち、バーサーカー(一方通行)を探させています。
 タダノから指示を受けたため、他の用途に使うつもりは今のところありません。
※まどか&ライダー(ルフィ)と同盟を結ぶました。
 自分たちの能力の一部、連絡先、学生マスターと交戦したことなどの情報を提供しましたが、具体的な内容については後続の方にお任せします。
※人吉、セイバー(纒流子)、ルキア、ランサー(慶次)、キャスター(食蜂)を確認しました。
※アゲハの攻撃はキャスター(食蜂)が何らかの作用をしたものと察しています。
※セイバー(纏流子)と交戦しました。宝具の情報と真名を得ています。
※C-6を中心に使い魔の蝙蝠を放ち、キャスター(食蜂)を捜索しています。
※巨人を目撃しました。
※アーチャー(弩)を確認しました。


111 : 紅蓮の座標(後編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/09(日) 23:31:38 JAD3B81A0

消えた。
最初から存在しなかったように消えた。
公衆電話を使った紅月カレンは映画で見るような粒子状となって徐々に消える姿ではなく、一瞬で消えた。

その光景を見ていた暁美ほむらは先程まで居たのに、舞台から降りてしまった紅月カレンを見て何とも言えぬ感情を抱く。
聖杯戦争と云えど脱落する時は呆気無いものである。テレホンカード一つでさようなら、ということ。
在るかどうかさえ不明な奇跡に縋った夢彷徨い人の最後にしては呆気無いものであった。

暁美ほむらがこれから取る行動。
過程はどうであれサーヴァントを手に入れた彼女は時間切れによる灰化を心配しなくてもよい。
明日の正午には遊園地にて美樹さやかから同盟の可否を聞く審判の時が来る。
それが最後の会話になるかもしれないが、鹿目まどかを守るための仕方がない手段である。

(遊園地……キャスターが死んだなら気味の悪い人形も消えているわよね)

遊園地を徘徊する古ぼけた人形達。
彼らを見ていても何一つ心が安らがない。寧ろ気分が悪くなってくる。
創造主が創造主なら造られる人形もまた創造主に似た気に食わない存在であった。
キャスター達の最後の時を見れなかったのは残念だが、碌な死に方ではないことを祈る。
とても英霊だとは思えないあの男。もう座とやらから呼ばれないことも祈っておこう。


「これからはよろしく頼むわセイバー。
 道中で話したけれど私には大切な人――聖杯戦争にも参加している鹿目まどかを救うために戦う」


振り向いた先には紅月カレンから譲り受けた新たなる従者、セイバーが立っていた。
最優のサーヴァントと呼ばれるだけあって性能はキャスターよりも確実に上だ。
正面からの戦闘にも充分に対応出来る心強い仲間を得ることが出来た。
当初の予定だとエレン・イェーガーのサーヴァントを奪うつもりであった。
結果として手に入るのはアサシンだったが、無理矢理契約を結ぶよりは遥かにマシな結果である。

暁美ほむらの言葉を聞いたセイバーは黙って頷く。
自己主張が無い訳ではなく、セイバーにも大切な存在はいた。
守る立場のことも解るが故にマスターである暁美ほむらに反論はない。

「ありがとう……何だか知らないけれど私は貴方と一度会ったことが在るような気がするの」

ある程度意思を無視して勝手に決まった感じがあるマスターを受け入れてくれたセイバーに礼を告げる。
そして保健室で出会った時から思っていたことを虚空に呟くように一人で語りだした。


112 : 紅蓮の座標(後編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/09(日) 23:32:22 JAD3B81A0


「私が契約を結んだのはキャスターでそれだけ……でも貴方達を見た時、何処かで会ったような気がしたの」

月夜を見上げてその光を全身で受け止める。
視線の先に月を捉えながら暁美ほむらは言葉を紡ぐ。

「インキュベーター……あとで詳しく話すけどどうしようもない屑が私に聖杯戦争の話を振って来たの。
 その時に手にしたのは赤いテレホンカードではなくてゴフェ……?」

彼女の記憶に眠る聖杯戦争との異なる出会い。
インキュベーターから貰い受けた媒体を呟こうとした所で脳内に雑音が生まれる。
言葉を呟こうとする程、雑音は膨れ上がり脳内を圧迫していく。
それは航海中に嵐に襲われるかのような不条理な外部因子による干渉のような。
何が起きているか不明ではあるが、暁美ほむらは語りを続けた。

「……とにかく私は聖杯戦争に参加した。
 気付けば天戯弥勒の言葉ではなくて、私は神殿で目を覚ましたの」

「………………」

「神殿で私は剣を引き抜いた。そして、貴方に出会ったの――と言う世迷い言よ。気にしないで」

一人言葉を吐き終えた暁美ほむらは一度微笑むと気を引き締め直し、セイバーの前まで歩く。
辿り着くと先程の紅月カレンの真似ではないが腕を差し出しながらセイバーに語り掛ける。

「形だけの関係でも構わない。だから、聖杯戦争の間は私に力を貸してセイバー」

暁美ほむらの身体は小さい。
胸部を指している訳ではなく、全体が小柄であり、正しく少女の身体である。
小さい彼女であるがその言葉の中には芯が通っており、とても力強い意思を感じる。
差し出された腕をセイバーは拒むことなく、彼もまた腕を差し出し握り返す。

「ありがとう……出会いが聖杯戦争じゃなければゆっくり出来たのだけれど、それどころじゃないわね。
 巨人に対して注意しながら撤退して適当な宿で休息を取るの。明日には遊園地に向かうわ……急で申し訳無いけれど付き合って貰うしか無いの」

学園から脱出出来たのも巨人が出現し吸血鬼のランサーを引き付けてくれた功績があったから。
紅月カレンから聞くと彼女とランサーは敵対しており、彼女の傷はランサーのマスターから受けた物であった。
ならばランサーは紅月カレンに止めを刺すと思われるが突然現れた巨人と交戦を始めたため、無事に逃げることが出来た。

巨人を見てからセイバーの表情に曇が入り、何か思うことが在るようだ。
しかし無駄な魔力の消費を避けたいため、討伐には向かわない。
セイバーは暁美ほむらのサーヴァントであり、決定権は暁美ほむらに委ねられている。

職員室に入っていた留守電の中に一つ、病院からのメッセージがあった。
アッシュフォード学園の生徒である鹿目まどかが入院した旨、伝えるメッセージ。
運が暁美ほむらに味方し始めたのか、苦労すること無く鹿目まどかの居場所を掴むことが出来たのだ。
もう一人男子生徒が入院しているらしいが、名前は忘れている。

彼女の行動。
明日の正午に美樹さやかとの同盟返答を待ち、結果はどうであれその後病院に向かい、鹿目まどかと接触する。

総ては鹿目まどかのために暁美ほむらの理は回り続ける。


113 : 紅蓮の座標(後編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/09(日) 23:32:41 JAD3B81A0



【B-3/公衆電話前/一日目・夜】



【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]疲労(中)
[令呪]残り3画
[装備]ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]グリーフシード(個数不明)@魔法少女まどか☆マギカ(二つ穢れが溜まりきっている)
[思考・状況]
基本:聖杯の力を以てまどかを救う。
1:巨人に警戒しつつ撤退する。
2:2日目正午には遊園地に辿り着き、美樹さやかと対話を行う。
3:上記終了後病院に向かい鹿目まどかと接触。
4:キャスターに対するかなり強い不快感。
[備考]
※自分の能力の制限と、自動人形の命令系統について知りました。
※『時間停止』はおよそ10秒。連続で止め続けることは難しいようです。
※アポリオン越しにさやか、まどか、タダノ、モリガン、アゲハ、流子、ルキア、慶次、善吉、操祈の姿を確認しました。
※明、ルフィのステータスと姿を確認しました。
※美樹さやかとの交渉期限は2日目正午までです。
※美樹さやかの存在に疑問が生じています(見たことのない(劇場版)美樹さやかに対して)
※フェイスレスは武将風のサーヴァント(慶次)に負けて消失したと思っています
※一瞬ソウルジェムに穢れが溜まりきり、魔女化寸前・肉体的に死亡にまでなりました。それによりフェイスレスとの契約が破棄されました。他に何らかの影響をもたらすかは不明です。
※エレン、さやか、まどかの自宅連絡先を知りました。
※ジャファル、レミリア、ウォルターを確認しました。
※天戯弥勒と接触しました。
※巨人を目撃しました。







【セイバー(リンク)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
[状態]魔力消費(小)、疲労(小)
[装備]なし
[道具]バイク(盗品)
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに全てを捧げる
0:カレンの意思を引き継ぎ、聖杯戦争を勝ち抜く。
1:暁美ほむらに従う。
[備考]
※アーチャー(モリガン)を確認しました。
※セイバー(纒流子)を確認しました。
※夜科アゲハの暴王の流星を目視しました。
※犬飼伊介、キャスター(食蜂操祈)を確認しました。
※人吉善吉、アサシン(垣根帝督)を確認しました。
※垣根帝督から食蜂操祈の能力を聞きました。
※朽木ルキア、ランサー(前田慶次)を確認しました。
※ウォルター、ランサー(レミリア)を確認しました。
※巨人を目撃しました。


114 : 紅蓮の座標(後編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/09(日) 23:34:01 JAD3B81A0


怒りと共に組んだ腕を鎚のように振り下ろす巨人。
屋上の淵に当たるも勢いが殺されることは無く、壁ごと削りとって大地まで落ちる。
攻撃の標的対象であったウォルターは階段を降り学園の中へ移動していた。


「ヴォアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」


自分の攻撃対象が消えたことに対して雄叫びを上げる巨人。
こんなところで油を売っている暇など存在しない。一刻も早く天戯弥勒を殺さなければならないのだ。
老人が攻めてくる理由は十中八九聖杯戦争の参加者であるからだろう。
ならば拒む理由も道理も存在しないが、時間を取られては苛立ちしか生まれない。

「よく吠える化物だ」

階段を一跳びで一気に降りたウォルターは吠える巨人に対し悪態をつく。
その生体は不思議であるが碌な物ではないだろう。
吸血鬼が現代を彷徨うなら巨人の一つ可笑しくないと納得するしかあるまい。

「――血か」

廊下を曲がったところで血痕を発見する。
適切な処置を行わずに移動していたのか、何点にも溢れており、マーキングのようになっている。
学園に逃げ込んだ怪我人はランサーと交戦していたセイバーのマスターしか思い浮かばない。
つまり紅い髪の少女が血痕の持ち主であると断定出来る。

「この状況で見つけるとはね。全く時間が無いんだがね」

血痕を頼りに廊下を走るウォルターはワイヤーを広げ角を曲がる。
曲がった地点の右先で血痕は切れており、場所は保健室であった。
左足で廊下の床を蹴り上げ、軽く跳んだ彼は右足で保健室の扉を蹴り破るように突入。

何時でも殺せる状態で突入したが時は既に遅かった。
保健室には誰もいなく、窓が開いているだけであり、どうやら逃げられた後であった。


115 : 紅蓮の座標(後編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/09(日) 23:35:17 JAD3B81A0


紅い髪の少女が保健室に居なかったことは別段問題ではない。
今やるべきことは巨人を殺すことであり、撹乱するために学園内に移動した。

外から内部を視認するなど透視能力でもなければ不可能である。
戦闘した感覚から巨人にそのような能力は無いと思われるため、後はどのようにして攻めるか。
小回りは圧倒的にウォルターが有利だが範囲と威力は巨人が圧倒的に上回っている。

その場で足踏みをされるだけでも、人間にとっては大きな脅威となってしまう。
ワイヤーを用いて中距離からの攻撃が好ましいが、人間と巨人の中距離は異なる。
火力も違うため、巨人を殺せるかどうかも解らない。


「――私を喰らう気か、そうかそうか」


一段と増して暗い保健室。
窓を見ると巨人が口を開けてウォルターを覗きこんでいた。
その光景を見たウォルターは本能で跳び上がり、蛍光灯を素手で握り込む。

数秒前まで彼が立っていた地点を巨人の拳を通り過ぎた。
学園の窓と壁を破壊しながら突き進む拳は直撃しなくても風圧だけで人間を殺せる兵器である。

蛍光灯を離し巨人の腕に着地したウォルターは手を軽く捻りワイヤーを動かした。

「――――――――ッッ!!」

すると巨人の拳が簡単に斬り落とされた。
痛みによって声にならない叫びを上げる巨人だが、ウォルターには何の関係も無い。
構わず巨人の腕上を走り、最終地点は巨人の首。

保健室を飛び出したウォルターは巨人の首を斬り落とさんと行動をするが、巨人は的ではない。

巨人は力づくで腕を天高く振り上げ、その上に立っていたウォルターを空中へ放り投げる形に追い込む。
この時ウォルターの顔が歪むが巨人には何の関係も無い。

逆の腕をラリアットの要領で空間ごと削り取るように振るう。
ウォルターは苦し紛れにワイヤーを網状にし打撃の軽減を図るが気休め程度だろう。

無慈悲にもラリアットが直撃し、彼の身体は大地を転がるように校庭を跳ね上げていた。

追撃の手を休まず走りだす巨人だが、胸に小さい衝撃が生まれる。
何かと思い優しく掴んでみると、腹を大きく抉られていたアサシンの身体であった。
何が起きているか解らなく戸惑った巨人はその場で足を止め緊急停止。
校庭を大きく削りながら止まった彼を待っていたのは顔面目前に迫っていた赤い槍。


「貴方もアサシンも死になさいッ!!」


巨人はその一撃を既に受けていた。
ランサーが放った神鎗によって顔全体が吹き飛ぶとそのまま倒れこむ。
回復が追い付かず、巨人化出来る限界を超えてしまい身体中から蒸気が溢れだす。
説明は不可能だが魔力に対する回復は物理単体よりも大きく疲労するようだ。


116 : 紅蓮の座標(後編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/09(日) 23:36:03 JAD3B81A0

うなじがら這い上がるように出て来たエレンの視界には上空に聳える赤い槍。
今にも自分を貫かんとしているようで、魔力によって震えている光景が興奮しているようにも見える。
エレンが直感で感じ取ったのは自分は此処で死ぬという簡単で曖昧なこと。

視線を横に逸らせば明らかに致命傷を負っているアサシンの姿。
左肩と腹から大きく血を流しており、人間ならばとっくに死んでいる出血量である。
信じたくはないがアサシンはランサーとの戦いにおいて敗戦を喫したのだろう。

本来アサシンの能力値はランサーよりも劣る。
寧ろエレンが見ていた段階で善戦していたジャファルが強かっただけのこと。
弱肉強食。聖杯戦争は遊びではなく戦争だ。弱い者から脱落していくのが条理である。

「ウォルターは――生きているようね」

「はは……あのジジィ化物かよ……」

ランサーの視線に促されて自分の首を傾けたエレンの視界には倒れているウォルターの姿。
遠目でも解る程度には肩で息をしているのが伺えるのだ。あの男は生きている。
直撃とまではいかないが、巨人の攻撃を受けて生きているとは信じ難い存在だ。
別次元の人間が彼処まで強いならお前らが俺の世界に住みやがれ、心で叫びたい。

唯でさえ巨人化直後によって意識の霧が晴れない中、追い打ちを掛けるように現実がエレンを追い込む。
このまま倒れた方が楽ではなかろうか。そんな現実逃避の信号が脳内にで発信されている。


「今宵の宴はまぁ樂しかったわ。貴方達の死を以って終わりにしましょう」


現実逃避をする前に現実から終わってくれるようだ。
ランサーが黒い笑みを浮かべながら囁くように今宵の賛辞を送っている。
終劇は役者の死を以って。
物語における部の〆にしては定番である一区切りの幕切れだ。
脱落した者は舞台から除外され、生き残った者は舞台の上で演じ続ける。

聖杯を求めたエレン・イェーガーの戦いはこれにて終劇を迎える。
彼が死ぬことによって世界に残されたミカサ達を始めとする仲間も終劇を迎える。
壁に閉ざされた世界を包む謎の真理に触れられないまま、多くの人間が巨人に怯えて死を待っている。

(それでいいのかよ)

此処で死ねば自分は死ぬ。当然だ。
世界に残されているミカサやアルミン、リヴァイ兵長を始めとする仲間はどうなる。
最強のリヴァイ班は自分を生存させるためにその生命を散らした。
彼らだけでは無く、多くの兵士がエレンを守るために死んだ。

(俺が死ねば誰が――誰が責任取ってくれんだよ)

首から下げている鍵が月に反射する。
自分には謎を解き明かす使命が、役目が残っている。
黙って投資した人物達はエレンに一種の賭けを行った。
何が起こっても不思議ではない世界で、信じられもしない巨人人間に総てを投げ売った。

(死ねねえ……俺が死んだら誰が)


117 : 紅蓮の座標(後編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/09(日) 23:36:57 JAD3B81A0

エレンが死ねば巨人に変化出来る存在はアニ、ライナー、ベルトルトの三名のみ。
同じ同期の仲間では在るが、人類の敵である。
ライナーとベルトルトはエレン自身の目で確かめていないが、黒に近いらしい。

(誰が!)

エレンが死ねば人類は巨人の生態に関する情報が急激に減ってしまう。
そうすれば唯でさえ調査兵団に対し高まっていた不信感が膨れ上がり排除されてしまう。
仲間の居場所を殺してしまう。


(誰が!)


ミカサ、アルミン、ジャン、コニー、サシャ、クリスタ、ユミル……マルコ。
序にアニとライナーとベルトルトも加えてやるよ。
その他の同期の奴らもだ。
リヴァイ兵長にハンジさん。エルヴィン団長にピクシス指令やキース教官。ハンネスさんもだ。
オルオさん、ペトラさん、グンタさん、エルドさん。
そして母さんと父さん。
俺のために死んだ人と今も生きている人達。


(誰が!)


俺って知らない間に色んなモン背負ってた。
ゲロ吐きそうだ、どうしてこんなにクソ重たいモン背負ってんだよ……なぁ。
お前もこっち来いよアルミン、海が綺麗だぜ。
汚いのはもう捨てて新しいマフラー買ってやるからよ、ミカサ。


(誰が!)


……来れる訳ないよなぁ、自分だけ逃げるってことだもんな。
はは……悪い、聖杯は持ち帰れそうにない。
けど、俺が生きて帰ったら一気にシガンシナ区まで攻め込むぞ。
俺が得た知識をアルミン達に伝えればきっと今より強い兵器が完成する。
ライナー達も俺が説得してやる――出来なかったらあの人殺しの屑共は俺がこの手で殺す。

だから俺は死ねねえ。当然だよな。
こんな優しい世界から抜け出してやる、俺が生きるのは此処じゃ無え。
捨てて来たモン全部もう一回背負い上げて全部成し遂げてやるよ――だから。


「俺が此処で死んだら誰が巨人ぶっ殺して世界を救うんだよ!! いい加減にしやがれ、死んだ奴がヘラヘラして生意気ぶっ込んでじゃねえ!!」


右腕に齧り付いたエレンを雷撃のような閃光が包み込む。
その光景を間近で目撃したランサーは顔を引き攣らせ神鎗を放つ。

「なら貴方も死人の仲間入りよ――さようなら」


118 : 紅蓮の座標(後編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/09(日) 23:37:56 JAD3B81A0

時空を斬り裂く因果律を超えた一撃は空間を抉り取るようにエレンに迫る。
その数は三つであり、一つでも喰らえば彼は絶命する。

巨人化する段階で先に両腕を己の目の前で盾になるように配置し、到達を防ぐ。
しかしそれは気休めにもならなず、巨人の腕を貫通してエレン本体に直撃するだろう。
威勢良く啖呵を切ったエレンだがその生命は此処で潰えるようだ。彼だけならば。


「最後まで世話の焼ける奴だな」


この場で戦うのはエレンだけではない。
ジャファルは死に体である身体を無理矢理動かし、エレンの前に現れた。
その傷と出血量では明らかに限界を超えているが彼は黙って剣を引き抜き槍を迎え撃つ。

残像。
ジャファルを見ていたランサーは目の錯覚に陥った。
嘗ても目撃したジャファルの宝具が宝具としての性能を魂現する瞬間だ。
その一撃は絶対必中の神鎗をも――破壊する。

剣を己の一部のように空中へ放り投げ消えたジャファル。
気付けば神鎗の上に現れており、総てを乘せた一撃を上から叩き落とし神鎗を破壊。

着地すると同時に右足で半円を描くように大きく引き摺り砂塵を巻き起こす。
砂塵の中に身を隠したジャファルは瞬速でもう一つの神鎗の背後に姿を現していた。

「事象を連続で引き起こした……っ」

瀕死の状態で己の生業を連続で成立させるジャファルに驚きの声を上げるランサー。
因果律を覆す神鎗を破壊することは己もまた因果律を超えた必殺の一撃を放つと同義。
ジャファルがその宝具を簡単に発動出来ればランサーはとっくに死んでいる筈だ。
今もランサーが生命を感じているのはジャファルに決め手となる宝具が簡単には発動出来ないから。

因果律を覆す一撃――ジャファルは運命に叛逆し破壊し続けている。


119 : 名無しさん :2015/08/09(日) 23:38:40 JAD3B81A0



「でも最後の一撃はどうするのかしら」

「――決っている」

「な……貴方は……ッ!」


残る一撃を破壊出来る程奇跡は起きない。
死神ジャファルの必殺は二度までしか発動せず、最後の一振りは通常の攻撃だ。
因果律に干渉出来る筈もなく、止める手段は無い。

ならば勢いだけでも殺す。

「自分を盾にして……」

ジャファルの上半身に深く突き刺さる神鎗。
赤い槍は彼が吐く鮮血よって更に赤く染め上がっている。
一度ならず二度目の直撃によってジャファルが現界出来る許容範囲が確実に崩れ去ってしまった。

放たれた神鎗はエレンに向けて発動した絶対必中の一撃。
ジャファルが貫かれようと、神鎗は本来の結末であるエレンに向かって尚も動いてる。
それはジャファルも解っていた。理解していながらその身体で引き受けた。

彼ごとエレンを貫くために動く神鎗。
巨人の両腕が組まれた硬い壁に直撃するが、神鎗は止まらない。
巨人の肉を抉り、骨を削り進んで行くが、エレン本体に辿り着く前に神鎗は雪のように赤く散り散りとなって消えた。

巨人と云えどエレン・イェーガーに変わりはないため、因果律の結果は満たされている。
直撃こそしなかったものの、この場面から叛逆の狼煙を上げるには無理がある。

総てを悟っているジャファルはエレンの首裏まで無理矢理自分の身体を動かすと、剣でうなじを切り取りエレンを取り出した。


「逃げろ。それだけの時間は稼いでやる」

「……お前馬鹿かよ……何勝手に死に急いでんだよ」


身体中を鮮血で赤く染め上げ今にも死にそうなジャファルがエレンに逃亡を促す。
死にそうなのは自分の癖に他人を優先するジャファルにエレンは反論するが声は小さい。
彼も解っている。巨人の力だけではランサーに敵わない。
条件が悪すぎる。絶対必中の槍と小柄な上に飛行出来る翼。総てがエレンにとって不利。

このまま戦っても負け戦。
少しでも可能性が在る方に賭けるべきだが、エレンは馬鹿である。
例え正しく判断出来ようと、状況と情に流される男である。

『俺も戦う、一緒に戦って此処から逃げるぞ』

そう宣言するだろう。
しかし彼が言い放つ瞬間より先に光の枝は背後からエレンを貫いていた。










「あ…………みんな…………………ごめ……………………な」


120 : 紅蓮の座標(後編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/09(日) 23:40:29 JAD3B81A0

それからの結末は誰でも想像可能であった。
絶命したエレンを見たジャファルは限界を超えた身体を動かし天戯弥勒を殺しに掛かる。
しかし瀕死の状態では戦闘がままならず、終始天戯弥勒が圧倒し続ける展開が続く。

神はジャファルを見放したのか、頼みの宝具も発動せず、エレン同様光の枝に腹を突き刺された。
神鎗二撃と光の枝一撃。
三度の攻撃を身体に受けたジャファルは遂に動きを止め、身体が粒子状へと変化していく。
魔力が途切れ英霊としての現界を終え、再び座へと帰還する神座の万象。

その光景を天戯弥勒は高笑い一つで見下していた。

「じゃあな死神。
 お前の人生は呪われているんだ。コイツのようなガキを少しでも生活出来ただけマシと思え」

最後に聞いた言葉は記憶に記録を拒否する雑音だ。
ジャファルは最後の力を振り絞り剣を投擲し、天戯弥勒の首を狙うも光の枝に弾かれて終わる。
舌打ちを行い、最後の最後まで天戯弥勒を睨み続けるジャファル。
彼が最後まで心配していたのはエレンの安否であった。



「王家の力を得ないお前が見せる神話を楽しみにしていたが……幕切れはこんなもんか。
 真実に辿り着いていない今のお前にしては努力した方だが……所詮は始祖の力を操れない木偶か」


エレンの身体を右肩に担いだ天戯弥勒は巨人の結末に対し勝手に評価を始めた。
この言葉を聞いているのはランサーだけであり、観客もまた彼女一人。
主催者の襲来。参加者への干渉。マスターとサーヴァントの殺害。
流れるように引き起こる現象に頭を悩ませたいが、そんな時間は無いだろう。

「随分と勝手に暴れる主催者ね……それがPSIって力かしら?」

「どうせエレン・イェーガーはお前の神鎗で死んでいたさレミリア・スカーレット。
 お前は夜科アゲハから俺の力を聞いたらしいが……どうだ、実際に実物を見た感想は」

「……ご想像にお任せするわ」
(こいつ……総てを見透かしているつもりかしら?)

日中に接触した夜科アゲハの存在を天戯弥勒は知っていた。
あの場を目撃している人間は居なく、使い魔一つ反応が無かった。
当然ではあるが、天戯弥勒は架空世界を、聖杯戦争を監視している。


「まぁいい。
 それにしても今日は月が美しい夜だな。まるで今にも落ちて来そうなぐらいに」

「詩人みたいな物言いね。貴方ってロマンチスト?」

「喩え話だ、少しでもいいから頭の中に引っ掛けておけ。
 夜はお前の時間だがそれは永遠では無いことだ。訪れない時も在る」

「――それって何のことかしら」

「さぁな。俺は主催者らしくまた消えるとしよう」

「は、ちょ、待ちなさ――っ、身勝手な男ね」


レミリアが言葉を掛けた時、既に天戯弥勒は消えていた。
最初から居なかったかのように、風のようにその場から消え去っていた。


121 : 紅蓮の座標(後編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/09(日) 23:42:02 JAD3B81A0


残されたレミリアは倒れているウォルターの元へ駆け付ける。
意識を失っているようだが、息は在るらしく、しぶとい老人だ。
出血量から見て巨人の一撃を受けたらしいが……どうして生きているのかが謎だ。


「人間も進化している……のかしら」


一人呟くが彼女の言葉に反応する存在は居ない。
校庭に残されたのは彼女一人と荒れ果てた土地と建物だけ。
明日から学園は問答無用で閉鎖だろう。校舎は半壊し校庭は未開拓地のように荒れている。

レミリアは小柄な身体でウォルターを担ぎ上げると飛翔し、館へと飛び立つ。
アサシンは死んだが、狙撃してきたアーチャーや時の勇者が潜んでいるかもしれない。
負傷し魔力を消費した今、例え夜だとしても無駄な戦闘は避けたいところである。

仕方なく飛翔するレミリアは一つ、小さなことだが一つ思い出す。


「天戯弥勒……あの少年の身体を持って行ったのかしら、ね」





【紅月カレン@コードギアス反逆のルルーシュ 退場】
【ジャファル@ファイアーエムブレム烈火の剣 死亡】
【エレン・イェーガー@進撃の巨人      退場】






【ランサー(レミリア・スカーレット)@東方project】
[状態]左肩貫通、左目失明(両方共回復中)魔力消費(大)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:ウォルターのためにも聖杯戦争を勝ち抜く
1:ウォルターを運び館へ戻る。
2:殺せる敵から殺していく。
3:天戯弥勒に警戒。
[備考]
※アーチャー(モリガン)を確認しました。
※夜科アゲハを確認しました。
※天戯弥勒がサイキッカー(超能力者)と知りました。
※天戯弥勒を確認しました。



【ウォルター・C・ドルネーズ@HELLSING】
[状態]疲労(極大)出血(大)両腕にヒビ、肋骨骨折(少々)魔力消費(大)
[令呪]残り3画
[装備]鋼線(ワイヤー)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:全盛期の力を取り戻すため、聖杯を手にする
0:気絶中。
[備考]
※浅羽、アーチャー(弩)を確認しました。



[共通備考]
※虹村刑兆&ライダー(エドワード・ニューゲート)と交戦、バッド・カンパニーのビジョンとおおよその効果、大薙刀と衝撃波(震動)を確認しました。
※発言とレミリアの判断より海賊のライダーと推察しています。
※巨人を目撃しました。
※エレン、アサシン(ジャファル)を確認しました。
※カレン、セイバー(リンク)を確認しました。



※アッシュフォード学園は6割程度全壊しています。


122 : 紅蓮の座標(後編) ◆wd6lXpjSKY :2015/08/09(日) 23:42:30 JAD3B81A0
一旦終了して個別エピ投下します


123 : 私だけのWORLD END ◆wd6lXpjSKY :2015/08/09(日) 23:43:53 JAD3B81A0

戦線を放棄したゼロは何を考えているか何て解らなかった。
藤堂さんに全指揮権を与えても、黒の騎士団にとってゼロ不在に傷は深過ぎた。
別に藤堂さんを見下している訳じゃない。あの人は凄い人だから。

でも、誰がゼロの代りになれるの。

扇さんから言われた通り私はゼロを追った。

遺跡の中で出会ったスザクとゼロ。
スザクが撃った銃弾はゼロの仮面に当たって遂にゼロの素顔が顕になった。

その時は信じられないってのもあったけど、頭が働かなかった。
だって生徒会の副会長であるルルーシュだったから。

そこからもう、私は考える事を放棄していた。

そして気付けばセイバーが居た。

セイバーは私に気を遣ってくれた。
聖杯っていう何でも願いが叶う願望器を手に入れるために戦ってくれる。
ギアスみたいな超常現象に私も触れるのか、なんて思ってた。

ゼロのことで頭が一杯だった私をセイバーは励ましてくれた。
吹いてくれたオカリナの音色が今も記憶に残っているの。
私は辛い時もそれを思い出して頑張ろうと思う。

それが私が見た短くて長い夢の話で――――――。







「……ちょ、なにこの匂い!?」


目が覚めた紅月カレンを出迎えたのは鼻に残るキツイ匂いだった。
辺りを見渡せばホテルの一室だと解るが、匂いの理由にはならない。
隣のベットに視線を送ると衣服や荷物が散乱しており、正体が自ずと近付いて来る。


124 : 私だけのWORLD END ◆wd6lXpjSKY :2015/08/09(日) 23:45:02 JAD3B81A0


生活にだらしがない人間を一人しっている。
散乱している衣服から同じ人間だと推測し、ベッドの奥にあるピザの箱で確信した。


「C.C.! アンタこれ放置しないでよ!」

「全く寝起きでうるさい奴だな……」


カレンの怒号に反応したのか、シャワー室の奥から一人の女性が現れた。
裸でシャカシャカと歯を磨いており、端的に言ってだらしない女性であった。
これでも日本を開放するための組織、黒の騎士団の一員である。

「ベッドの上に食べ物を置くな! ついでに片付けなさい!」

「お前は本当に私の母か何かか?」

「願い下げだよっ!」

バン、とベッドを叩きその勢いで立ち上がったカレンは冷蔵庫から水を取り出す。
何気ない日常の動作で水を飲むがとある異変に気が付いた。
無い。無いのだ。

「右腕に傷が無い……?」

「……? どうしたんだカレン。子犬みたいにか弱い瞳をして」

「私の右腕はあの老人に……でも、え……?」

「おい、どうしたんだ」

アッシュフォード学園にてランサーのマスターに遣られた傷が無い。
そもそも此処は何処なのか。

紅月カレンの記憶には聖杯戦争で戦っていた記憶が存在している。
そしてもう一つ、黒の騎士団壊滅後にC.C.と共に反逆の時を待って活動している記憶も存在している。
自分で自分が解らなくなるカレンだが、無理矢理納得する。

C.C.との記憶は聖杯戦争中に抜け落ちていた記憶に違いない、と。

ならばカレンは夢でも見ていたのだろうか。
偽りのアッシュフォード学園の生活も、セイバーとの出会いも全部夢なのか。


125 : 私だけのWORLD END ◆wd6lXpjSKY :2015/08/09(日) 23:45:44 JAD3B81A0

虚ろな瞳をしているカレンを心配してC.C.が顔を覗き込む。
しばらくしてから気付いたカレンは驚いたリアクションを取るとベッドに腰を落とす。
一呼吸置いてから彼女は考えた。

C.C.に聖杯戦争のことを聞いてみるのはどうだろうか、と。

ギアスを知っている彼女だ。聖杯戦争について何か知っているかもしれない。
カレンは確信が欲しいのだ。聖杯戦争が実在する事実と証拠が。
自分が体験してきた戦争は実在する。セイバーの存在は偽りではない。

「ねぇC.C.」

「ピザはやらんぞ」

言え。
言ってしまえ。
だが切口が見付からないのだ。突然聖杯戦争の話を振ってどうするのか。
自分も元々は知らないで巻き込まれたのだ、何を言えばいいか解らない。

セイバーのことか、天戯弥勒のことか、ランサーのことか、人吉善吉のことか、夜科アゲハのことか。

「……お前、本当に大丈夫か?」

C.C.が柄にもなく心配しており、自分が不安定なことを再度認識するカレン。
セイバーとの思い出を話すべきだろうか。
剣を持った時の勇者は月夜を暴れる吸血鬼と戦ったお伽話を話そうか。
それとも森の中で吹いてくれた心安らぐ音色のことを話そうか。


「――ううん、なんでもない」


夢なら夢のままでいいかもしれない。
無理に話した所で、誰かに同意を求めても何も得ない。
自分を満足させるためだけの活動は必要ないとカレンは思い出す。
ゼロが現れた時、黒の騎士団の活動を批判していた。
小さいと、市民を巻き込むな、と。

C.C.を聖杯戦争に巻き込む必要は無いし、そんなことで悩んでいる時間はない。

黒の騎士団は必ず復活する。
その時にルルーシュを再びゼロとして迎え受け、黒の騎士団は日本を開放するために再びブリタニアと戦うのだ。
それにC.C.に話しても「殺し合い? 実は私も参加した記憶があってだな――」と茶化されるかもしれない。

紅月カレンは前を向く。
日本を開放するために、日本人の誇りを取り戻すために、明日を取り戻すために。
セイバーは今も暁美ほむらの剣となって聖杯戦争の中で戦っているだろう。

彼の戦場が聖杯戦争なら紅月カレンの戦場はこの世界である。

カーテンを開けると、前と同じように月夜が輝く美しい夜空である。
きっとセイバーも遠いこの空の下で同じ空気を吸っている。世界は違えど繋がっている。

「……ん?」

ふとポケットに異物感を感じたカレンは異物を取り出し目視する。
すると見慣れた物が木製で精製された模造品が混入していたのだ。表情が緩む。
セイバーが森の中でくれたのであろう――オカリナを見つめながら紅月カレンは再び黒の騎士団として活動を再開した。



【紅月カレン@コードギアス反逆のルルーシュ 生還】


126 : ◆wd6lXpjSKY :2015/08/09(日) 23:46:13 JAD3B81A0
以上で投下を終了します。
この度は色々と申し訳ありませんでした。


127 : 名無しさん :2015/08/10(月) 19:21:19 KAamy0Ww0
大作の投下、本当に乙です…!
何と言っていいかわからないけど、色んな物語が動き、また幾つかが終わりましたね…
魅入られた夢から目を覚ますこともまた強さ。カレンの物語は、サイレン聖杯ならではの途中退場という形で新たな息吹を感じさせてくれました
ほむほむとの会話やリンクとの別れは何とも胸に来る
そしてエレンとジャファルもここで退場か…引きこもり組だったのが嘘みたいに、今回の投下で熱い展開と存在感を見せてくれたと


128 : 名無しさん :2015/08/10(月) 19:26:46 KAamy0Ww0
途中送信失礼!
→思います。
主人公らしく彼らしく奮起し戦ったエレン、彼のそばで刃を振るい力となり続けたジャファル、奇妙な絆で結ばれた二人の姿は、中心で物語を盛り上げてくれました!
中途で潰えたとはいえ、彼らの戦いに拍手を送りたいです


129 : 名無しさん :2015/08/12(水) 21:35:49 HZGakxAc0
おお、投下来てたのか!乙です
カレンはここで退場か。彼女なりの答えというやつですかね
個別エピローグを見るにこれもまた一つの選択ですな
エレンとジャファルは惜しいが、しかし本当に魅せてくれました
比較的フリーな位置にいた浅羽たちも、弥勒との接触やモリガンの介入によっていよいよ渦中に引っ張り込まれた感じ。弩の対弥勒戦も熱かったです
連作の投下改めてお疲れ様でした


130 : ◆lb.YEGOV.. :2015/08/15(土) 01:23:10 aL4XuVwE0
大作お疲れ様です!
エレン・ジャファル・カレンと三人も脱落者の出る怒涛の展開。
先に進むために決断できたカレンと違って、志半ばのエレンとジャファルは無念のリタイアとなってしまいましたね…
身体をお持ち帰りされたエレンがどうなるのか今後の展開が気になります。
また戦闘面ではレミリア主従が魅せてくれましたね。
素の身体スペックという面では主従合わせてこの聖杯戦争ではかなり上位に食い込むタッグだけに本気を出した時の強さをまざまざと見せつけられました。
そしてそして主催と接触したりモリガンにみさきち包囲網に巻き込まれそうになったりと波乱続きの浅羽主従。
様々な人物が入り乱れる読み応えのあるお話でした。

それと予約解禁から数えて本日で一周年おめでとうございます。
記念というわけではありませんが、浅羽・弩・モリガンで予約いたします。


131 : 名無しさん :2015/08/15(土) 04:02:40 BXV66zrE0
おお、また予約が!


132 : ◆A23CJmo9LE :2015/08/15(土) 20:03:04 WLNoVjLk0
遅ればせながら投下乙です
ほむらの呼び出しに始まり、モリガンにレミリアといった気儘な女傑が加速させた物語、とても読みごたえがありました!
引くことを決めたカレンと対照的に他の主従は熱い戦いを見せてくれましたね
覚醒したエレン、それとわたり合うウォルター翁、色々と絡んでくる弥勒などが個人的には印象に残りました
そして弥勒の言動、エレンの行方、リンクに対したほむらの言葉など今後が楽しみになる回でもありました

予約解禁1周年ということで、おめでとうございます
本編も2日目がうっすら見えてきたかな
しかし早いなあ、もう1年かぁ
私も夜科アゲハ&纏流子、間桐雁夜&一方通行で予約させていただきます


133 : ◆A23CJmo9LE :2015/08/20(木) 21:59:02 EqFyZY8s0
話の流れ的に矛盾が生じそうなので予約を破棄します
申し訳ない

代わりというとなんですが、人吉善吉&フェイスレスで予約します


134 : ◆lb.YEGOV.. :2015/08/22(土) 23:31:00 6UjQRHBY0
申し訳ありません、期間内に書きあげられなさそうですので、延長いたします


135 : ◆A23CJmo9LE :2015/08/27(木) 22:59:55 0pG9Cg9A0
投下します


136 : Masquerade ◆gEOm2Ceipc :2015/08/27(木) 23:01:05 0pG9Cg9A0

「ようこそ、マスター。いや、おかえり、かな?
 ここが僕の陣地、そうだな……『真夜中の遊園地』なんてどうだい?」
「…まだ真夜中って言うには早いぞ」
「気分、気分。ネーミングなんてそんなものさ」

誰もいないゲートをくぐり、並んで入場。
入り口近くのスタッフルームらしき部屋は通り過ぎ、奥へと進んでいく。
遠くに見覚えのある観覧者が見える。
妙な位置にメリーゴーラウンドがある。
猛獣のような怪物が数体闊歩している。
ジャグラーが、マイマーが、アクロバッターが、ギャンブラーが、フォトグラファーが……
様々な人形が配置されていた。

(なるほどね、キャスターの工房。
 十三組の十三人がいた時計塔なんかよりよっぽど悍ましいな)

笑えないジョークとブラックユーモアがごった煮になったような光景。
道化師(ホワイトフェイス)ならぬ無表情(フェイスレス)にもなるというもの。

「とりあえずここの控室で、食事でもとりながら話そうか。お腹空いてるだろ、マスター?」

不意の襲撃を避けてか、入り口から即座にはたどり着けない施設で腰を落ち着ける。
そして待たせていた人形が持っていたコンビニ弁当を差出して、席に着くよう促す。

「盗ったのか、これ」
「まさか。フツーに買ってこさせたんだ。識ってはいるだろうがすごいだろう、僕の人形は?
 見ても触っても人形だなんてわからない。おつかいだって簡単さ」

弁当を渡してきた人形を見る。
肌の生々しさ、動きの滑らかさは確かにヒトとそう変わらない。
ただ、その眼が死んでいた。
表情もなく、感情など感じられるはずもなく、なにより

(なんて殺風景にみえるんだよ…)

『欲視力』で覗くことはできた。
だが、その見方はあまりにも簡素で、味気ない映り方しかしていない。
人形の眼にはきっと、悲惨なトラジェディも、愉快なコメディも、愛する人の笑顔も、憎い人の死に顔も同じようにしか映らない。
死んだ眼で、死んだように景色を見る人形はやはり生きていないのだと、善吉はそう感じた。

「どうしたんだい?僕らに気を使う必要は無いぜ?
 サーヴァントにも人形にも食事はいらないからね」
「ん、ああ。オーケー、もらうよ…箸ないのか。てか冷てえし」

渡された弁当を開けて、食べる前に苦情を言う。
食べられなくはないが……

「あ、こいつチンしてもらうのはともかく箸まで忘れやがったのか。
 ごめんよマスター。くり返しになるけど、僕らは普通こういうの食べないから。
 初めてのおつかいだったんだ、許してやってくれ……お前たち、その辺からフォークでも何でもいいから探してきなさい。
 ……ああ、アプ・チャー、君は残れ!」

はい。
わかりました。
造物主様の御心のままに。
飛び出していく人形に、周囲にいた人形も続く…アプ・チャーだけは呼び止めて、席に着かせる。

「おあずけになっちゃうけど、作戦会議だけでも始めようか。
 現状の再確認は必要かい?」
「俺の方はいらねえな。おかげ様でお前の記憶はおおむね把握してるからよ」


137 : Masquerade ◆A23CJmo9LE :2015/08/27(木) 23:01:41 0pG9Cg9A0

望まず得た知識と記憶。
それによってかつてのマスターの謀殺やそれに至る経緯はおおむね把握している。

「うん、僕の方も見ていたから大体問題はない。
 いやー、やっぱり『僕』は話が早くていいね」
「ああ、そうだな…!」

皮肉の通じないサーヴァントに僅かに苛立つが、しかたない。
これくらいは想定の範囲だ。抑えなければやってられない。

「現状、マスターの明確な敵は一組。あの綺麗な金髪のキャスター。
 それから敵になる可能性が高いのが、君と仲の良かったセイバーのマスターが攻撃しちゃった警官。
 それに彼と組んでた麦わら帽子のサーヴァントもかな。
 セイバーの方はどうなるか読めないねえ。なにせアプ・チャーが銃人形で攻撃して、君はそのマスターになってるんだから」
「アゲハ…ああ、セイバーのマスターだけど。
 あいつは悪いヤツじゃない。話せばわかってくれる」

話せばわかってくれる……とは思う。
問題は話を聞いてくれるかどうかだが。

「ああ、そうそう。セイバーね。
 マトイちゃん、って呼ばれてたっけ?フルネーム分かる?」

サングラスの下から鋭い眼光をのぞかせ、セイバーの真名を探る。
善吉は他のサーヴァントの真名を聞かれるという二度目の経験に僅かに懐かしさのようなものを覚え、そして悩む。

(あいつら、真名隠す気なかったっぽいしな……
 もしかして偽名か?いや、そういう駆け引きするタイプじゃないな)

一度は組んだ…今も行動を別にしているが、別段悪意はない。
そんな相手の重要な情報を漏らすのはどうかと思うが……

「纏流子、っていうらしい。俺に聞かなくても多分特に隠さない気がするからあんまり意味のある情報とも思えないが」
「うん。見てるだけでもダダ漏らしだったからね。
 二人きりならともかく、別のサーヴァントの前でも晒すっていうのは怪しいと思って確認してみたけど。
 纏流子…ねぇ…」

顎に手を当て考え込む。
偽名の可能性は?別の英霊の名を騙っている可能性は?
しかし善吉の反応を見る限り違うのか。
となると……

「知ってるのか?」

生命の水により得た記憶、知識は完璧ではない。
少なくとも聖杯に由来する知識…様々なサーヴァントの特徴などの知識は得られていない。
そのため自らの知る英霊、例えば前田慶次などならともかく、知らない英霊について考察することは善吉にはできなかった。
その死角となった知識を持つであろう、キャスターはどうなのか。
纏流子という英霊を知っているのか。

「……昔々、人がまだ裸の猿だったころ。宇宙の彼方からある生命体が飛来しました。
 それは人に衣服を与え、文明を発展させました。しかしそれは人間を、ひいては星を餌にし、自らの発展の糧にするためだったのです。
 その地球外生命体から地球を、そしていつか征服されていたかもしれない星々を救った英雄の名が纏流子ちゃん。
 与えられた衣服を自ら纏い、その力と一つになりながらも星の種の一つであることを望んだ。父の遺志を継ぎ、巨大な鋏を剣として戦った立派な立派なヴァルキリーだねえ」
「……あいつ、そんなすごいやつだったのか!?」

キャスターの口から語られる纏と見てきた彼女が一致しない。
振る舞いも服装も、ちょっとした不良女子高生といった感じだった。

「人類が発展すると、世界を滅ぼすのは簡単になる。核ミサイルのスイッチを三つ四つ押せばあとは流れるように人類は滅ぶだろう?
 僕だってあと一歩で世界を滅ぼすところまではいったんだ。
 逆にね、そうなると世界を救うのも簡単になってなかなか英雄なんて出て来なくなるんだ。
 スイッチを押そうとしたお偉いさんをSPが羽交い絞めにでもしたら、世界は救えるだろうが、英霊には足り得ない。
 もし、彼女が本当に纏流子なら近現代の英雄だけど上等な英霊だろうね。
 異星における原初の一《アルティメット・ワン》、原初生命戦維というタイプ・アースたり得た存在を滅ぼし、地球以外の幾つもの星を救った、一級品のセイバーだと思うよ」

んー、殴り合いたくはないかなー、とぼやくキャスター。
未だ全力を出していないのか、サーヴァントと化して大きく弱体化しているのか、計りかねる善吉。
恐らくあのランサーは五分だった、と思い返し……


138 : Masquerade ◆A23CJmo9LE :2015/08/27(木) 23:02:07 0pG9Cg9A0

「そういえばランサーの方はいいのか?あれとの距離感は微妙だけど無視はできないだろ?」

屋上から放り投げられたり、味方してくれたり、こっちはマスターを気絶させたりとなんとも言い難い関係ではある。
しかしそう剣悪ではなかった…と思う。
しかし即座に敵に回ることもないとは言いかねる。そういえばどこにいったのか。
様々な疑問が走る。

「ランサー…ああ、あいつね。それなら心配いらないぜ、マスター。
 もう、僕たちがやっちまったからね」

にぃ、と邪悪な笑みを浮かべ自慢げに告げる。
その言葉には、流子の偉業を聞かされ、それとわたり合っていただけに驚きを隠せなかった。

「な、お前慶次に勝ったのか!?」
「慶次…あいつ前田慶次だったのか。なーんか調子よくなかったみたいだし、協力してどうにかね。
 ……驚いてるねぇ、いいねぇ。僕はもの凄いんだ、識ってても知らなかったかい?」

宝具たる人形を行使しての辛勝だが、それでも勝利は勝利。
カピタンの報告を信じるなら落とした、はずだ。

「あいつ、さっき言った流子とほぼ互角だったはずだ…
 それに勝てたのかよ、ホントに?」
「戦いは数だよ、マスター。意外と格下でも押し切れるもんさ。
 しかし、そうか。互角か。宝具なしじゃ計りかねるからなぁ。
 もしかするとマスターからの魔力が足りてないとか?ならセイバーも意外といけるかな?」

殴り合いで勝てなくはないかもしれない
しかしわざわざ相手の土俵に乗るのも馬鹿らしい。
まずは足元を固めようと、思考を続ける。

「話は変わるけどさ、あのキャスターの能力は?
 今までのはともかく、そっちは明確に敵だろ?」
「あいつか…」

ある意味で味方以上に扱いに困る存在。
倶に戴く天はない敵ではあるが、同時に今の善吉が善吉であるための生命線。
そこに気づかれれば厄介なことになる。
どこまで話すか、どこまで把握されているのか。

「心を操る能力だ。それは知ってる。それがどこまで出来るのかは分かりかねるな」
「ああ、そこまでは僕も掴んでるんだけどね。どういうことをやってたかな?」

能力について詰める。
ここで選択肢をミスるわけにはいかない。

「NPCの行動を操ってたな。車運転させたり、パシリみたいに使ってたな。
 あとは、忘れねえ。危うく舌噛んで自決させられとこだったんだよ…!」

苛立ち露わに吐き捨てる。
殺されかけた、その思いを込めてそれ以上の所業はなかったと暗喩する。

「なるほど、そーいう。マスターに使ってくる厄介なタイプか。
 逆にサーヴァントには効かない可能性があるのかな?」
「断言はできねえな。そういえばランサーがあいつは人を操るのにリモコンが必要だって言ってた。
 でもあの橋だとなしでも使ってたし、違うかも」
「ん?んー、魔術師の霊装か?あった方が効率はいいけどなくてもやれないことはないってやつ。
 キャスターだし、暗示とかの魔術かな。それじゃあセイバーやランサーには効かないのも当たり前だ。対魔力あるんだから」

思考を巡らせるキャスター。
そこへ逆に善吉が問う。

「お前の人形を操ることはできると思うか?」
「無理だろうね。自動人形も所詮は人形、人と同じ感じ方や反応をすることはない。
 そう見えても、そう見えるだけで、作ったやつがすごいだけだよ」

ちらり、と同席しながらも沈黙を守るアプ・チャーを見て言葉を続ける。

「人のモノの見かたはそれぞれだけど、人形にとってその景色は単一の情報さ。
 人形の見方は変わらない。なにより、彼女たちは誰が自分の主か『理解』している。
 僕にも、君にも逆らうことはないから安心しな」
「戦いは数、なんだろ?それが逆転しないか心配したけど……」
「大丈夫さ……うん、キャスターは敵じゃなさそうだ。こっちの話に移ってもいいかな?」
「ああ。なんだ?」


139 : Masquerade ◆A23CJmo9LE :2015/08/27(木) 23:03:03 0pG9Cg9A0

ふう、と心中で息をつく。
情報を散発的に与えて、なるべく整理させない。
曖昧な情報と、矛盾する情報を並べて先行きを不透明にする。
こちらから話題を誘導し、キーワードから離していく。
記憶の操作という金のキャスターの能力の一端を伏せ、この銀のキャスターが行った記憶のダウンロードとの繋がりを連想させないようにする。
どうにか上手くいって次の話題に流すことはできたようだ。

「君が直接接触していないサーヴァントについてになる。
 僕自身、コイツはやばいと思ったサーヴァントが二騎と、前のマスターに僕じゃ勝てないと言われたのが一騎。
 …このアプ・チャーの格好の意図は掴めるね?」
「暁美ほむら、だっけか?彼女の知り合いと組もうってんだろ。なるほど、敵わない相手がいるから、戦いは数ってか。
 ここの人形の軍団じゃ足りないくらいなのか」

コイツの言葉を信じるならあのランサーに勝てたというのだ。
にもかかわらずこの発言は弱気が過ぎるか、はたまたランサーに勝ったというのはハッタリか?

「一個確認したいんだ。あの麦わら帽子のサーヴァントのステータスはどうだった?
 彼女には僕がこの陣地で闘ってもまず勝てない、と言われたのさ。
 戯言だとは思うが、念には念を入れてね」
「麦わらか…どうだったかな…?」

戦闘を見てはいないから何とも言いかねる。
速度はかなりのものらしいが、ステータスとしてそこまで圧倒的だった印象はない。

「はっきりとは覚えてねえ。けど、逆に言うならそこまでインパクトのある数値じゃなかったってことだぞ?
 極端に高かったり低かったりしたら憶えてるはずだし」
「そうだね。じゃあ、やっぱりあれはでまかせか。ありがとうね、安心できた。
 とはいえ、厄介なのが二騎いるの事実だ」
「どんなやつなんだ?」

セイバーやランサー相手にも不敵な、悪辣な笑みを絶やさないこのサーヴァントが言う難敵とはどんなものか。
誰かと組もうとまで言わせるのは何者か。

「どっちもバーサーカーのクラスさ。真名は分からないけどね」
「バーサーカー?意外だな……」
「キャスターと言っても人形造りが中心の錬金術師だからね、僕は。
 普通なら不利がつく対魔力は気にしないけど、その分魔術的な罠は作れないから、単純なゴリ押しができるのがちょっと苦手なんだ。
 ……とはいえそんな脳筋な理由じゃないけど」

とりあえずこれ見てよ、とアポリオンのモニターをつけようとするが、そこへ一体の人形が入ってくる。

「造物主様、土産物コーナーにキャラものですがありました!
 お箸とスプーンとフォーク、どれになさいますか!?」

与えられた任務をこなし、どことなく誇らしげな人形。
それに対応するためにモニターの操作をやめる。

「だってさ。どれがいい?マスター」
「箸でいいや…うわ、デビルダセえ」

よくわからないカエルの様なキャラクターがプリントされた明らかなキッズ向けのもの。
まあ使えればこの際何でもいいか、と常温で僅かに温まりつつある弁当を開く。


140 : Masquerade ◆A23CJmo9LE :2015/08/27(木) 23:03:24 0pG9Cg9A0

「あーこれは食事中に見るにはキツイな。腕ボキボキ折りながら闘うのとか、蟲がわらわらとか嫌でしょ?」
「まあ、食事時に見たくはないな」
「簡素に口頭で。一人は白髪にそうだな、体格はやせ形。
 能力はよくわからないし、後で確認するとして。
 一番厄介なのはアポリオンを破壊してのけたことだ」

生前、しろがねが作った小型の自動人形、戦闘用蟲目とやり合ったときも敗れはしなかった。
そもそもナノサイズの自動人形、アポリオンを何の設備もなしに認識した時点でとんでもない。
見えない物を見切る技能、生前一度たりとも破壊されなかったアポリオンの破壊。
耳目をつぶす、天敵と言える。

「アポリオンを…?まさか素手でか!?」
「うん。話が早くて助かるよ。と言ってもそういう精密作業特化というわけでもなく、この映像はバーサーカー同士の戦いなんだけど。
 それにも勝ったかなりやばいヤツだよん。ほとんど相手の攻撃も効いてなかったみたいだし、多分数でせめても相当な質がないと駄目だろうね。
 それこそアポリオンをつぶしたようにプチっ、とやられかねない」

その闘争の派手さももちろん、まさかアポリオンがやられるとは思わなかった。
あれのせいで敵視されている可能性も否めないし、対策は必須。

「妙な黒い翼みたいなのも出していてね、それでもう一騎のバーサーカーを一蹴した。
 アレは科学(ぼく)の領分のようであって、そうでないような……よくわからないものだったからなぁ。
 あれの正体がわかれば、真名も行けると思うんだけど」

謎の翼、防御能力。
その力の正体がわからないうちは迂闊に手を出すのは避けることにする。

「もう一騎のバーサーカー。こっちが前のマスターの知り合い、さやかちゃんだったかな?
 その娘と一緒にいる、饒舌な奴。恐らく、悪魔だ」
「悪魔?悪魔憑きとかそういう奴か?」
「多分違うんじゃないかなあ。そういう人間の想念で生み出されたのは偽物の悪魔だ。
 僕ら錬金術師の中にもそういう悪魔を従えたのはいたらしいね。ニコラス・フラメルとかドクトル・ファウストとか。
 だからまあ、僕もちょっとくらいそういう知識は齧ってるけど……アレは、違う」
 
おそらく今は相応にスペックが落ちているだろうが……

「真性悪魔、と呼ばれるものに近い、はず。異なる文明、惑星の高次生命体や、古代の神に匹敵する超抜種」
「……つまり?」
「全開なら神霊と渡り合う規格外の化け物だ。
 姿から察するに人間の肉体を使って魔人化してるみたいだし、なによりサーヴァント化でそこまではいかない…といいんだけど」

そのはず。
いや、だがグリモワールに記された大悪魔フラウロスは確かレフという魔術師の姿をとって聖杯に関わったらしいね。
もしあのバーサーカーがそのレベルの悪魔で同じことをしているとしたら、厄介なんて言葉じゃ収まらない。
……まあそのフラウレスはサーヴァントに敗れたみたいだし、こっちも別のバーサーカーに負けてたし大丈夫、のはず。
悪魔が、目覚めなければ。


141 : Masquerade ◆A23CJmo9LE :2015/08/27(木) 23:04:00 0pG9Cg9A0

「まあ、推察にすぎないことでビクビクしても仕方ない。
 端的に言うとあいつは『悪魔(デモン)』なのさ。自動人形の天敵のね」
「ああ、いたな。そんなの。なるほど、それで組みたがってたのな」
「そうさ。そしてそれには暁美ほむら、アプ・チャーを僕のマスターだと思わせた方が都合がいい。
 ……もうわかるよね?僕が君にどうしていてほしいかさ」

少女の友人の死をひた隠し、その戦力を利用しようとする。
正直気が進まないなんてもんじゃない。反吐が出る。
……だが、ここで刃向かっても何もできはしない。
手足を『分解』されて倉庫にでも放り込まれるのがオチだ。
なによりこのサーヴァントを出し抜くには協力者が必要不可欠。
アゲハたちとの距離感は微妙だし、あいつらがここに来る保証もない。
だが、美樹さやかと組むというなら彼女らを陣地内に導くくらいはできるはず。
そこで、暁美ほむらの死というカード―というのは不謹慎だが―を使えば、協力を得られるかもしれない。

「カッ、わかったよ。どうせキャスターのクラスじゃ碌に動けねえ。
 俺もおとなしく引きこもりやってるさ……今からか?」
「明日の正午までには訪ねてくる。少なくともそれまでは舞台袖にいてほしいかなあ。
 ああ、安心してよ。ちゃんと護衛はつける。来な、ブリゲッラ」

虚空に声を響かせ、宝具を解放。
現れたのは目深に被った帽子にコートの男性型人形。

「ブリゲッラ・カヴィッキオ・ダ・ヴァル・ブレンバーナだ。ついて来い」

フェイスレスに一礼だけして、部屋から出る。
善吉も仕方なく、急いで弁当をかっ込み、後に続く。

(よく言うぜ。護衛?見張りの間違いだろ)

そう心中で毒づく……それを見透かしつつも、フェイスレスは何も言わない。
そしてアプ・チャーと二人になった部屋で一人で思考を進める。
気にかかるのは、未だに自分色に染まらないマスターのこと。

(なーんかあるよね…やっぱり心を操るっていうキャスターかなァ)

生命の水は心を溶かし、保存する万能の溶媒だ。
それを口にしたものの心を、溶けた心が支配すれば主従は逆転する。
ディーンのように。ワンくんのように。

(舌を噛み切れ、と命じられたらしいね。それが変に影響してんのかな?
 散発的過ぎて分っかんねーんだよな、キャスターについては。
 むしろ何でもできそうで、何ができないのやら)

しかしそちらに意識を裂き過ぎるわけにもいかない。
アポリオンを壊したバーサーカー、悪魔(デモン)と天敵がいるのだ。
それに

(纏流子、ねえ。あの鋏、あれは……武器なんだろうけど。
 自動人形はあれを武器として認識するかな?微妙なとこだ)

認識するなら有利なのだが…おそらく駄目だろう。
マリオネットに付いた兵器すらそう認識しないのだ。
巨大な鋏というのは、言い方は悪いが滑稽な外観をしている。
自動人形は、彼女のことも観客としてしまうだろう。

(まあそれはまだいいんだけど。
 問題は『鋏』っていうのは『糸』を切るものである、ってことだ。
 人形遣いが糸を切られちゃ、マリオネットは木偶人形になっちゃうよ)

自動人形はフェイスレスが造物主だと『理解』している。
だが、彼に反旗を翻した人形も少ないがいるのだ。
もし、『糸』を人形が、己の意思で動き出すなら。

(面倒だよなァ。真っ向勝負なんて真似は避けるべきか)

情勢は正直言って芳しくない。
内憂を断つために犠牲にしたものは大きい。

(ほむらを切るためとはいえ、銃人形で一帯を攻撃しちゃったのはイタイよなぁ。
 まどかって言ったか、彼女とは仲良く出来ないだろうし、ちょっと敵が増えちまった)

とはいえ聖杯戦争としてみればもとより全員敵。
ほむらを切るのを前提として、ほむらの知り合いを利用しようというなら、あまり多くほむらを知る者がいても困る。

(敵は多い。そして、バーサーカーまで敵に回すわけにはいかない。
 となると、さやかとまどか。二人が合流するのはなんとしても阻まないと)

アポリオンの映像を確認。
橋の騒ぎの顛末を追う。

(病院かな、目的地は。やばいな、確か朝にはバーサーカーはあそこにいた。
 ひょんなことで合流されると面倒だぞ……)

敵戦力の増大を妨害する。
同時に敵に打撃を与える。
そのためには……


142 : Masquerade ◆A23CJmo9LE :2015/08/27(木) 23:04:18 0pG9Cg9A0

「アプ・チャー」
「はい」
「美樹さやかちゃんのところへ。まどかちゃんが金髪のキャスターに攫われたから助けに行こう、って」
「わかりました」

そうアプ・チャーに指示を出す。
嘘はついていない。ただ、もうそれは過去のことなだけで。
鹿目まどかは病院に向かったはず。
そしてあのキャスターは川下に行った。
概ね逆方向。
これで合流を遅らせる。
それに、心を操るというキャスターはとりあえず消してみれば、何か善吉に影響を及ぼすかもしれない。
……たとえば彼が、僕になるとか。
もしキャスター攻めに反対したならそれは確実。
万一に備えてブリゲッラも置いた。抑え込める、はず。

「ひとまずはこんなところかな」

しかし座して待つわけにはいかない。
攻め入るターゲットのキャスターを探す。
合流されないよう、まどかたちにも目を張っておく。アプ・チャーの演技の完成度を上げるためにも必要だ。
…横槍があるとコワイので、下手に白いバーサーカーには近付かないでおく。
そして、セイバーなどの不意の来客があった場合も考えておかないといけない。

「誰かいるか〜い?」
「はい。いかがされましたか造物主様」
「オルセンの近くに落とし穴とかを用意しといて。できないなら待ち伏せとか、そういうお・も・て・な・しの準備を」
「かしこまりました」

人形が飛びだしていく。
駒の配置はよし。
あとは、そこへの案内人。
来客を信用させて、奈落へ導くガイドがいる。
自らの顔へ手を伸ばし、皮膚を引き伸ばし……

「…………よし、こんなモンだろ。鎧とかバカでかい刀とかは…人形から作ればいいか」

前田慶次の凛々しい顔に、黒い太陽とまで称された邪悪な笑みが浮かんだ。



【B-6/遊園地/一日目・夜】


【キャスター(フェイスレス)@からくりサーカス】
[状態]魔力充填(小)、前田慶次の顔
[装備]特筆事項無し
[道具]特筆事項無し
[思考・状況]
基本:聖杯を手に入れる。
1.アプ・チャーを使って美樹さやかを誘引し、キャスターとぶつける。
2.アポリオンを巡らせ、キャスターと鹿目まどかの動きに目を配る。
3.もし陣地を訪れる者がいた場合、慶次の顔で騙して罠にはめる。
4.善吉に強い警戒心。裏切られる前に何か手を打つ。とりあえずキャスターにちょっかいかけてみようか。
[備考]
※B-6に位置する遊園地を陣地としました。
※冬木市の各地にアポリオンが飛んでいます。
 現在、キャスター(操祈)、まどかを優先的に探させています。
※映像越しにサーヴァントのステータスを確認するのは通常の映像ではできないと考えています。
※ほむらから伝聞で明とルフィのステータスを聞いています。明についてはある程度正確に、ルフィについては嘘のものを認識しています。
※バーサーカー(不動明)を己の目で確認しました。
※暁美ほむらは何か隠し事をしていると疑っています。
※美樹さやかと暁美ほむらの関係を知りたがっています。
※ピンク髪の少女と暁美ほむらには繋がりがあると確信しています。
→アプ・チャーの報告から親しいものと認識。
※ランサー(慶次)と交戦しました。
※セイバー(流子)、アーチャー(モリガン)を確認しました。
※ほむらとの契約を破棄、善吉と契約しました。ほむらは死んだと思っています。
※善吉の精神が乗っ取れなかった事に対して、何らかの要因で生命の水による侵食が阻害されている事が原因であると推察しています。
※流子、慶次の真名を知りました。
※バーサーカー(一方通行)にアポリオンが破壊されたことを確認、強く警戒。
※バーサーカー(明)は真性悪魔に近い存在と推察。悪魔という存在と、なによりデモンであるため警戒。
※流子の来歴から人形遣いの天敵になるのでは、と警戒。


143 : Masquerade ◆A23CJmo9LE :2015/08/27(木) 23:04:57 0pG9Cg9A0

「基本的にはここにいろ」
「スタッフの仮眠室か?まあ思ったよりまともで安心したぜ」
「なにか用事があれば声をかけろ。そこらの人形に食事の手配くらいならさせる。
 …それと、これは餞別だ。万一の護身用くらいにはなるだろう」

ポイ、と放ってよこしたのはシンプルなリボルバー。
本来なら銃人形に取り付けるべきものだが、外して単独で扱えるようにしたものだ。

「気前がいいな。それとも余裕ってやつか?」
「自動人形に銃は意味をなさない」
「っと、そういえばそうだ」

フェイスレスの記憶より得た知識。

自動人形の黄金律(ゴールデンルール)、人間に恐怖を与えるため観客の目に留まらぬ速度で動いてはならない。
逆に観客でないもの……武器を持った敵に対して人形は恐るべき速度を発揮する。
銃を向ければ、このブリゲッラも凄まじい速さを見せるだろう。

「…でもお前はこの銃を向けてほしそうだな」
「……なんだと?」

フェイスレスの知識を動員し、慣れない手つきで銃を検め、細工などないのを確認。
一応、武器として問題なく扱えそうだ。

「ここに来るまでに見た人形とは違うんだな……お前は上等な人形だからかな。
 ばっちり分かるぜ、お前の世界の見方が…随分ひねくれてるな」

相手の視界を覗くスキル、欲視力。
他の人形の殺風景な見方とは違い、このブリゲッラの目線は強く武器を意識している。
そこにあるのは、侮蔑のような、嫌悪の様な。
未練の様な、後悔の様な。
なにやら複雑な思いだが、それでも武器との闘争を望んでいるのは明らかだった。

「コイツをお前に向けるってことは害意アリ、ってことだ。
 そうなったらお前は俺をとんでもない速度で取り押さえるんだろうな……お前の望みどおりに」
「バカなことを。私がフェイスレス様の障害を望むなど――」
「そうじゃない。お前が望んでるのは、人間に武器を向けられることさ」

立ち去りかけていたブリゲッラは向き直る。
戯言と払いのけるためか…聞き流せないほどの何かを感じたか。

「俺がお前に銃を向けたら、意気揚々とお前は全力を見せるんだ。
 そして言うんだろ?お前が武器を向けたせいでこんなにも圧倒的な力を披露できたんだぞ、って」
「…黙れ」
「相手に武器を向けたのが、相手のパワーアップに繋がるなんて皮肉だよな。
 実際にあったらお笑い草だぜ」
「黙れと言っている!」

貫手。
ノーモーションで素早く繰り出されたそれは容易に躱せるものではない。
しかし善吉は欲視力により僅かな初動と狙いを感知し、鍛えた格闘技能でもってそれを見切ってみせる。
そしてカウンターの上段回し蹴り。
つま先を喉元で寸止めし、不敵な笑みを浮かべる。

「なにか思い当たる節でもあったか?」
「…ふん」

バシリ、と足を払いのけ苛立った目線を向ける。
しかしフェイスレスからの命を思い出し、攻撃衝動を懸命に抑える。

「カラリパヤット…いやサバットだな。悪くない腕…いや足前か。
 少し興味が湧いたが、おまえに無用な危害を加えることをフェイスレス様は望まん」
「カッ、よく言えたもんだ」
「ああ。無用な危害なら、加えん」

再び目をぎらつかせるブリゲッラ。
やるか、と構える善吉だが、相手は踵を返して部屋の出口へと向かう。

「言われたと思うが、フェイスレス様の許可なく濫りに外出はするな。
 適当な書物と寝床はあるだろう?それで今晩は無聊の慰めとするがいい。
 ……どうしても退屈だというなら、わたしが寝かしつけてやってもいいが」

そう言い残して仮眠室から出て行くブリゲッラ。
扉近くで、善吉が勝手に行動しないよう見張ってはいるのだろうが、同じ空間に身を置くことはしないと決めたようだ。


144 : Masquerade ◆A23CJmo9LE :2015/08/27(木) 23:05:17 0pG9Cg9A0

「おいおい、護衛じゃねえのか…ま、一人のがいいけどよ」

実際それを望んで挑発的なアクションをした…ということにしておこう。
小さく笑みを浮かべて、部屋の中央に立つ。
そして構えて……少しばかり型とシャドーを繰り返す。
そして確信。

「ずいぶんと速くなってる。強くなってる」

僅かながら進行したしろがね化。それによる身体能力の向上。
ブリゲッラとの小競り合いで確信した。
これがなければいくら欲視力で狙いが分かっても躱してカウンターなどできはしなかったろう。

「このこと、あいつは知ってるのか……いや、知らない訳ねえよな」

だが、それでも。ただ身体能力が上がるだけでは読めないことがある。
善吉の鍛えた技能や欲視力がそれだ。
こちらはフェイスレスの知識や技能を奪っているが、向こうはこちらの技能を知らない。
そこを利用して、少しでも優位に立たねば。

「『分解』…っとと。うわ、失敗した…!」

渡された銃を『分解』しようとしてみる…が上手くいかない。
熟練の軍人なら時計のように滑らかにバラせるが、にわか知識の『分解』に不慣れな作業、見慣れない銃と悪条件が合わさり上手くいかない。

「考えてみたらいきなり銃器の『分解』はやべえか。暴発するかもしれねえし。弾抜いて練習だ」

慣れれば上手くなる。努力は裏切らない。
そしてあいつから奪った技術で、あいつに勝つのを想像して……口元を大きく歪めた。

(……あれ?俺ってこんなタイプだっけ?人の力パクってにやにやしたり、やたら挑発するような……)

フェイスレスは善吉の知識を得ていない。
善吉はフェイスレスの知識を得ている。
正の影響として豊富な知識を得た。
…なら負の影響は?
Dランク相当の精神汚染スキル、200年にわたり積み上げた罪悪。
その経験値も望まず獲得している。
それを、『欲視力(パラサイトシーイング)』と『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』という借り物の力で辛うじて抑えているだけ。
片鱗は銀色となった髪と同様滲みだす。

悪平等(ぼく)はこの眼でどんなふうに世界を見ているのだろう?
白銀(ぼく)はどんな思いで世界を見てきたのだろう?

(ッ…!落ち着け!俺は、人吉善吉(おれ)だ!悪平等(ぼく)でも白銀(ぼく)でもない!)

疲れてるだけだ。
落ち着けば問題ない。
フェイスレスをどうにかできれば大丈夫。
そう、自分に言い聞かせていると……

「取り込み中かしら?失礼するわよ」

扉を開け、黒いロングヘアの少女が入って来る。

「ん、暁美…じゃない。えっと、アプ・チャーか」
「ええ、まあどちらで呼んでくれても構わないわ」

ふぁさり、と長い髪を一撫で。既に暁美ほむらの役に入りきろうとしているようだ。
堂々と歩み、善吉に近付く。

「どうしたんだ?いきなり」

善吉としては望まぬ来訪だ。
一人で気分を落ちつけたかったが…追い払うべきか。

(…ホントに疲れてる、っつーか憑かれてるというべきかもしれねーな)

自己嫌悪、ならばいい。
これがフェイスレスの影響なら吐き気がする。
そんな思いを抱く自分にまた苛立つ負のループに入りかけるが、いつのまにやら文字通り目と鼻の先まで近づいたアプ・チャーにそれどころではなくなる。

「お、おい!なんだよ」
「イヤかしら?もう少し起伏に富んだ体型の方が好み?」


145 : Masquerade ◆A23CJmo9LE :2015/08/27(木) 23:05:38 0pG9Cg9A0

確かにめだかちゃんはスタイルいいし、暁美の体格はスレンダーだけど…

「そうじゃなくって!」
「しっ。静かに」

叫ぶ善吉の唇に指を当て黙らせる。
そして小さな声で話し始めるアプ・チャー。

「自動人形はゾナハ蟲…アポリオンで出来た擬似体液で動くわ。
 だからある程度はアポリオンの有無が分かる。この距離で、小声なら私たち以外に聞かれる心配はない」
「なんだよ?フェイスレスに聞かれちゃ困る内緒話か?自動人形が」
「ええ、そうかもしれない」

表情を変えない人形だが、声色はどことなく悪戯染みている気がした。

「ブリゲッラとのやり取りを聞いていたわ。
 …あなた、他の人間や人形がどんなふうに世界を見ているか分かるの?」
「ん。それは…まあなんとなくな」

欲視力による駆け引きを盗み聞きされていたか。
出来れば貴重な手札をばらすことはしたくないと、曖昧な物言い。

「なら答えて。私の見ている世界と、あなたの見ている世界がどう違うのか。
 そして、それはなぜ違ってくるのか」
「え?」
「答えなさい!」

小声だが、強い意思のこもった声。
それに気圧され、アプ・チャーの視界を覗く。

「…あんたの見てる世界は、やっぱり俺の見てるのより殺風景だ。
 ものの見方が画一的で、ただそこにある像しか見てない。
 なんていうか、情動がない、まさしく人形的な見方だよ」
「あなたならどう見るの?」
「…あの観覧車を見ると、ガキの頃乗ったのを思い出して懐かしい気持ちになる。
 遊園地の思い出がよみがえるんだ。
 人が一人一人見える物が違うっていうのは、その景色と、過去の自分の思いをフィルターにして重ねて見るから違うんじゃないか、なって」

思い返す。
しみついた技巧は俺のものだ。
何より、めだかちゃんに並びたい、その思いも俺のものだ。
その願いは、偽りの記憶なんかよりよっぽど重い思い。

「…そう」

アプ・チャーも一人納得したか善吉から視線を外す。
そして窓からのぞく星を見る。

「もう一度、お願い」

小さな呟きに改めてアプ・チャーの眼を通じて星を見る。

「どこか…遠くを見てる感じだ。今までと全然違う」
「星を見てるなら当然でしょう」
「いや、物理的にじゃなくてだな、思い出にふけるようというか…」

口にして奇妙に思う。
失礼ながら人形にも思い出などあるのかと。
暁美ほむらの姿をしているからつい、それなりの態度をとってしまったが…
戸惑う善吉をよそめに、自分に言い聞かせるように話し出すアプ・チャー。

「いつか、星空を眺めた。フランシーヌ様はそれを綺麗だと言っていたっけ。
 ギュンター公も、たしか……」

その横顔には、人形らしからぬ表情には人形らしからぬ感情が浮かんでるような気がしてはっとする。
しかし瞬きした刹那には彼女は離れ、扉の前に立ち、再び無表情になっていた。
それはアプ・チャーの人形らしさか、暁美ほむらの無感情さか。
知るのは彼女だけ。

「……もし糸が切れたなら、借りは返す。私がフェイスレスなど関係ない、と思えたなら」

そう言い残して去っていく。
元通り一人になった善吉。

「…なんだってんだ」

まあ、無意味ではなかった。
彼女のおかげで自分以外の何かに呑まれずには済んだ。
誰かに助けられてばかりだ。
情けないとは思うが……頼るのを恥と思うなとめだかちゃんに言うならこれくらいは併せのむ。
……それにしても

「人形、か……随分暖かいし、柔らかかったな…どこまで暁美ほむらを再現してんのかな…?」


146 : Masquerade ◆A23CJmo9LE :2015/08/27(木) 23:05:54 0pG9Cg9A0





【B-6/遊園地/一日目・夜】

【人吉善吉@めだかボックス】
[状態]軽度のしろがね化
[令呪]残り二画
[装備]箱庭学園生徒会制服
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:キャスター(操祈)とキャスター(フェイスレス)を討伐し、最後には優勝する
1.瞬くは様子見。室内で身体能力の確認や、『分解』の練習など
2.アゲハ達にあったらどう説明しよう?
3.キャスター(操祈)が討伐される前にフェイスレスをどうにかして脱落させたい
[備考]
※アッシュフォード学園生徒会での役職は庶務です。
※相手を殺さなくても聖杯戦争を勝ち抜けると思っています。
※屋上の挑発に気づきました。
※学園内に他のマスターが居ると認識しています。
※紅月カレンを確認しました。
※キャスター(操祈)を確認しました。
→加えて操祈の宝具により『食蜂操祈』および『垣根帝督』を認識、記憶できません。効果としては上条当麻が食蜂操祈のことを認識できないのに近いです。これ以上の措置は施されていません。この効果は未だ続いています。
※セイバー(リンク)を確認しました。
※朽木ルキア、ランサー(前田慶次)を確認しました。
※ライダー(ルフィ)を確認しました。
※フェイスレスと再契約しました。
※フェイスレスの血液を飲んだことでしろがね化が進行、記憶や知識も獲得しています。
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』による操作と『欲視力』により得た他者認識力により、フェイスレスの乗っ取りに抵抗しています。現状精神は乗っ取られていませんが、キャスター(操祈)が脱落し、宝具の効果が消滅した場合は精神が乗っ取られる確率が極めて高くなります。


147 : ◆A23CJmo9LE :2015/08/27(木) 23:07:12 0pG9Cg9A0
投下終了です。
途中でトリをミスりましたが、気になさらないで頂ければ幸いです
指摘等あればお願いします


148 : ◆wd6lXpjSKY :2015/08/27(木) 23:29:12 sa5P9Xjc0
投下お疲れ様です。
読んでいると次に何が起きるかわからなくてハラハラしてました。
自動人形から見える景色は色の無いつまらない世界なんだろうなぁ。
流子ちゃんの生き様を文字で表すとすごいのなんの……正面からは戦いたくないですよね。
デモンは自動人形にとって悪魔となるのかならないのか。さやかちゃん含めて気になります。
そして人吉!気をしっかり持って……君がデモンになってしまいそうでこわい。
予約されていたのは人吉とフェイスレスですが、他のキャラや人形にも光が当てられていました。
物語も加速に乗ってそろそろ折り返しになるかもしれないですね。


149 : 名無しさん :2015/08/27(木) 23:47:36 f7ihgfaU0
投下お疲れさまです!
おもしれーなあ!このコンビ、互いに警戒しまくってることも含めて面白い!
何より、こんなところでもクロスオーバーが…
語られる人衣一体の英雄の伝説、フェイスレスから見たそれぞれの英雄。白ひげの時もだけど、サーヴァントによるサーヴァント考察はすごくわくわくします
『鋏』はここでも生きてくるのか、確かにマリオネットは糸で操られるもんなあ
そしてデビルマンの考察の中で『悪魔(デモン)』にぐっと来た!人形を破壊する者、か……
そして善吉もまた、欲視力で様々な視界を覗くと
それがすごく上手く今回の話のキーになってますね
司令の『理解』によるコントロール権ロックといい、各スキルの見せ方が本当に上手い
そしてブリゲッラにアプ・チャーさんと自動人形たちも舞台に上がり始めましたね…!
両者ともからくりサーカスで大好きな人形だったので読んでて嬉しかったです
善吉に侵食を始めた金の呪いといい、見ごたえたっぷりでした!


150 : 名無しさん :2015/08/28(金) 01:02:30 ZRKkzxoI0
投下乙です。
濃い設定のクロスだなーと感心してしまいました。
視界を覗き見ること、人間とオートマータの観ているものの違い、ハサミ、人形の糸、デモン、とよくもまあこうワードを繋げていけるものだ……。
善吉の手に汗握る精神的攻防にこちらもはらはらします。黒い太陽に焼きつくされないように、或いは自身がその黒い炎に染まってしまわないように戦わなければならないのはハードモードですね。
しかし、そこへ差し込んだ一筋の光明がまさかアプ・チャーとは…彼女の口からフランシーヌ人形や、ギュンターおじさんの名前が出たことにちょっとじわっと来ました。


151 : 名無しさん :2015/08/28(金) 04:35:26 T/2vFOyc0
メンタルアウト、欲視力、そしてフェイスレスの分解や白銀化
善吉が主人公のごとくどんどんパワーアップしてくw
ただしもれなく顔無しに飲み込まれるというデメリット付きだけどw
そしてアプ・チャーさんがヒロインみたいになってきた
お前はどこまで主人公ぽくなるんや善吉!


152 : ◆A23CJmo9LE :2015/08/28(金) 21:03:07 9PHu0bL20
感想ありがとうございます!
拙速を尊んだせいでやっぱり随所にミスがありますね…
観覧車はともかく、白金を白銀にミスってるのはダメすぎる

それから善吉の状態表に「銃人形のリボルバー(6/6)」を装備として書き加えたいと思います。

・銃人形(ヒュジプーペ)の銃@からくりサーカス
通常のリボルバーと機能は変わらない。
ただし元はフェイスレスが道具作成したものであり、サーヴァントにもダメージを与えることが可能。


といった感じで。
wiki収録時に誤字と共に修正しておきます。
これも含めて何か指摘などあればお願いします。


153 : 名無しさん :2015/08/29(土) 02:49:10 eZSMcIsY0
弟の名前がお兄ちゃんになってたのか…w


154 : ◆lb.YEGOV.. :2015/08/30(日) 01:25:06 t0ozPMRg0
投下お疲れ様です。

人吉の抱えた爆弾の深刻さが段々と浮彫になってきましたが、フェイスレス側はフェイスレス側で新たな内憂を抱える可能性が出てきましたね。
確かにアプ・チャーさんの中の記憶の比率だとフランシーヌのギュンター公に関しての方がフェイスレスに比べたら圧倒的に多いもんなぁ。
そして最後の4人も3人目まで登場しましたね。人吉に煽られまくったブリゲッラさんは暗い喜びを知った後っぽいのでより鬱屈してそうだ。
裏でフェイスレスも暗躍してますし、二日目午前ごろから動き出しそうな展開がどうなるか楽しみです。

それと私事で申し訳ないですが、予約分がまだ書きあがっておりませんので、泣きの再延長をさせていただければと思います。
長期間キャラを拘束してしまい大変申し訳ないです。


155 : 名無しさん :2015/08/30(日) 02:29:13 ryZFX63Q0
お気になさらず、楽しみに待ってます


156 : ◆lb.YEGOV.. :2015/09/06(日) 02:50:25 vQLDkPSE0
予約に加えて再延長をしてしまったうえで大変申し訳ないのですが現状話がまとまりきらなくってしまいましたので、予約を破棄させていただきます。
企画にご迷惑をおかけしてしまい重ね重ね申し訳ありません


157 : ◆A23CJmo9LE :2015/09/14(月) 18:45:42 GEkaB2kU0
暁美ほむら&リンクで予約します


158 : ◆wd6lXpjSKY :2015/09/14(月) 21:26:38 KNd.hNr20
迷惑なら実質1ヶ月も予約した>>1がいるので……w

アゲハ&流子、ルキア&慶次で予約します


159 : 名無しさん :2015/09/20(日) 14:18:21 h/daRi/w0
予約延期します


160 : ◆A23CJmo9LE :2015/09/21(月) 16:24:37 mEjvPpLY0
投下します


161 : Surgam identidem ◆A23CJmo9LE :2015/09/21(月) 16:26:06 mEjvPpLY0

夜の道をバイクが駆ける。
乗っているのは一組の男女。
緑衣の男が運転し、紫衣の少女が後方を確認するように半身で、座席後部に座っている。

「あの巨人もやられたみたいね」

はっきりとは見えないが、姿が確認できなくなったことと、苦しげな反応で察しはつく。
融けるように消えた巨人の方が、小兵の槍兵に敗れたのだろう、と。
目測で15m弱、建物5〜6階くらいの高さだったろうか。
あそこまで大きな怪物は、それこそワルプルギスの夜くらいしか見たことがない。
それだけのサイズ差を覆すとは、さすがにサーヴァントか。

……いや、あるいはまさかマスターの方が倒したということもあるのか。

(それはない、と思いたいわね。あの巨人には私も…武装を使い切って渡り合えるかどうか。
 ワルプルギスほどではないと思うけど、苦戦は必須。そんなマスターは、そうはいないであってほしいわね)

巴マミなどと違って武装を消耗するスタイルなのだから、難敵が続くと息切れする。
そういう意味ではあの巨人の消失は助かる。
一時的な戦闘不能でなく、脱落しているといいのだが。

「あなたならあの巨人にも勝てたかしら?」

もしまだあれが残っていても大丈夫か?
そんな程度の確認。
その問いには答えず、ただエンジンの排気音を高く上げ、加速させる。
その程度、障害にはならないと体現する。

「そう。助かるわ」

思えば真っ当な協力者を得られるなど初めてではないか。
佐倉杏子はそれなりに頼りにはできたが、それでも扱い難いところはあった。
あのキャスターを引いてからは美樹さやかもマシに思えたが…
実力の面では比べるべくもない。
キャスターのように無為な反抗もしない。
最優のクラス、なんて嘯くのも納得だ。


162 : Surgam identidem ◆A23CJmo9LE :2015/09/21(月) 16:26:43 mEjvPpLY0

夜風と歓喜を心地よく感じて走り続ける。
頬に感じる風に、ヘルメットをしていないことに気づくがご愛嬌だ。
後方への警戒は怠っていないが、それでも戦闘がひと段落したならそうそう危機が訪れることはあるまい。
どちらが残っているにせよ、無傷ではないはずだから。
……住宅街から外れ、なんとなく寂れてきたところでバイクが止まる。

「宿泊地は見つかった?」

目的は告げてある。
タクシーの運転手でもなし、あてのない捜索だったが。
贅沢は言わない。
おんぼろのビジネスホテルくらいなら上々、ネットカフェや漫画喫茶でも構わない、この際カプセルホテルくらいなら妥協する。
現代の英霊ではないように見えるセイバーの方が、自分より先にそうした施設を見つけるのは意外だったが、サーヴァントの観察力の賜物か。
などと考えながらリンクの示した先に目を向けると


休憩 2時間 3500円
   3時間 4200円
宿泊     7000円〜


「…………い、や。あのね?これは、セイバー…ちょっと、その」

確かに宿は宿だ。ホテルだと言われれば間違っているわけではない。
セイバーは気づいて、自身は見落としたのは無意志のうちに視界から外していたのだろうか。
邪気なく、純粋に休憩もできるようなのにここではダメなのかと、疑問を持ったようで首をかしげるセイバーへの応答に困る。

(値段自体はネットカフェよりは高い。普通のと比べると…ホテルによりけりかしら。まあそれはいいとして。
 ほかに施設が見つかるとも限らないし、寝泊り自体は普通にできるでしょうし……)

気後れはする。
武器を求めて暴力団の事務所や、自衛隊の基地や、米軍の駐屯地などには入ったことがあるが、こういった施設に入るのはそれとは違う後ろめたさがある。
しかし選り好みはしないと決めたのだ。
一晩休むだけなら問題ない、はず。
……セイバーにその気がなければ、だが。

(そういうタイプには見えないし、ココがそういうものだと知らないみたいだし…ええ、大丈夫)

でももしそうなったら最悪令呪の使用も考えよう、などと若干失礼な思考を巡らせながら

「いえ、いいわ。ここで一晩休みましょう」

若干声を震わせてそう答える。
一番安い部屋でお願い、と命じてセイバーを先に向かわせる。
忍び込んで利用させてもらうこともできなくはないが、今は余計な茶々なく休養したい。
己がサーヴァントには苛立たされ、まどかを攫ったキャスターを長距離追い、魔女にまでなりかける。
学園までの長距離を移動し、エレン・イェーガーや天戯弥勒との邂逅、闘争。
魔法少女であっても、疲労は溜まる。
特に今は一手のミスが即、敗北に繋がりかねない状況だ。
まどかが病院にいる、という職員室への連絡は気にかかるが、このコンディションで向かっては碌なことにならない。
逆に、暫くは病院から動かないということ。心配ではあるが、居場所が分かっているのは大きなメリットだ。
慌てることもない。まずは体調も態勢も十分なものにしておこう。

停めたバイクを盾の中にしまい、セイバーの後を追う。
中ではスタッフが胡乱なものを見る目でセイバーとやり取りをしているようだったが、連れがほむらであることを確かめ、その服装を見ると何かを察したように手を動かしだした。
部屋を決め、案内しようと申し出る男に断りを入れて二人だけで部屋に向かう。
一応はサービス業にあたると思うし、余計な干渉などしないだろうがそれでも年齢など探られては面倒だ。
少しでも遠ざけておくに越したことはない。
そのためにセイバーだけを先行させたし、今も断ったのだ。

(そういえば魔法少女の恰好のままだった)

車上では遭遇戦や追っ手を警戒しての戦闘態勢だったが、バイクを降りてからは別に元の服装でも構わなかった。
解くのを忘れたのは緊張していたのだろうか。

(もしかして、それで何だか納得したようなふうだったの?)

個性的な緑衣を纏った美青年。
アニメキャラのような紫を基調にした服装の美少女。
コスプレ好きのカップルとでも思われたか。


163 : Surgam identidem ◆A23CJmo9LE :2015/09/21(月) 16:27:03 mEjvPpLY0

(……前向きにとらえましょう。これがもしあのキャスターだったら泊まることなんてできなかったでしょう)

あの男とこんなところに入るなんて想像するだけで虫唾が走るが。
あの老人が少女を連れて入ってきたなら、まず間違いなく通報される。
セイバーと二人だからこそ、未踏の施設でも無事入れたと、考えよう。

(ジャグジーとかベッドのサイズとかのオプションで値段が変わるのね。
 それに学割……さすがに14歳の学生証を提示するのはまずいでしょうけど、そんなのあるなんて知らなかった)

おそらく大学生なら問題ないのだろうが……
こういうところは20歳からだったか、18歳からなのか、はたまた結婚可能な16歳なら入れたりするのか。
などと益体ない考えを巡らせながら歩いていると、部屋の前で立ち止まったセイバーにぶつかってしまった。

「セイバー?入らないの?」

この部屋ではないのかと確かめるが、ルームナンバーはあっている。
鍵が合わなかったのか、とノブに手を伸ばそうとすると、セイバーがそれを制する。
その緊迫した振る舞いにただならぬものを感じ、ソウルジェムを手に魔力を探る。

(……何かある。けれどもそんなに強いものじゃない。
 何かが燃え尽きた後の残火のような、花が咲いて散った後のような……何かの名残)

異界というほどのものではない。
強大な、魔女以上のナニカがこの部屋で我が物顔で振る舞った…そんな気配が残っている。

「セイバー、何か…いえ間違いなくサーヴァントでしょうけど。
 それがいた気配はするけれど、もうここにはいない。敵はいないはずよ。
 罠があるのは否定できないけど……こんなところには仕掛けないでしょう」

人の多い学園や病院などならまだわかるが、ここは待ち伏せるに適した地とはいいがたい。
気配が薄いのもアサシンのことを警戒すべきかもしれないが、一騎は脱落しもう一騎はたしかエレン・イェーガーのサーヴァントだ。
ここにいるわけがない。
だから大丈夫だ、と述べるがそれでも最低限の警戒は怠らない。
緑衣の勇者が先行し、万一の罠に備える。
といってもそれは杞憂で部屋には何の仕掛けも残ってはいないのだが。

「大丈夫そうね……食事でもとって、休みましょうか」

部屋に入り、真っ先にルームサービスのメニューを確認。
どうみてもインスタントな代物が並んでいるが、こだわっても仕方ない。
適当にいくつか見繕って注文する。

「どうせすぐ来るでしょうけど……
 シャワー、浴びてくるわ。受け取りお願い」

そういって一人でバスルームに向かい、備え付けのタオルなどを確認しながら考え事にふける。
疲労は確かにあるし、そういう意味では汗を流したくはあるが、一人で思考に没頭したかったのが大きい。

(どこまで話すか。まどかの存在について、彼女を守るのが目的で、願いであることまではっきりと言った方が…?
 美樹さやかに同盟の申し入れをしていたことは伝えなきゃいけないでしょうけど)

大切な存在のことを明かすのは、いうなればアキレス腱を晒すに等しい。
一切信が置けないキャスターには伏せていたが、このセイバーにならある程度は明かしてもいいかもしれない。
少なくとも明日には遊園地に向かうといっているのだからその目的と、美樹さやかのこと、彼女の従えるサーヴァントについては話すべきだ。
彼女との個人的な因縁や、自身の抱える事情については……話さなくてはならない、ということではないがどうするか。

(美樹さやかとはあまり親しくはない、程度は知っておいてもらった方がいいわね。
 それ以上は…どうしても聞きたいというなら、話すかも?といったくらい、かしら。
 それに、そうね。インキュベーターのことを少し話題にあげたはず)

些細な雑談、程度のつもりだったが


164 : Surgam identidem ◆A23CJmo9LE :2015/09/21(月) 16:28:26 mEjvPpLY0

(ずば抜けた魔法少女の才のあるまどか、インキュベーターにとってイレギュラーであろう私。
 そして私の知らない、おそらくはインキュベーターも知らない何かについての知識を持つ、美樹さやか。
 何らかの意図を感じる人選ではある。
 それに、『方舟』。天戯弥勒の発言にもあった、聖書にある『救済』の象徴。
 その材料はゴフェルという木だとも書いてあった。
 セイバー、私、ゴフェル、インキュベーター……何か、あった気がするのよね……)

初めて会った気がしない、緑衣のセイバー。
魔法少女という存在の邂逅。
そのわずかな手掛かりは手繰るべきか。
だとするなら、インキュベーターのことも相談するべきか。

(報告事項は食事をしながらある程度は伝えましょう。
 相談は…彼がどこまで話をしてくれるか、ね。
 それがすんだら、さすがにもう寝てしまいたい…)

正午には遊園地に向かう。
万一、だが美樹さやかのサーヴァントとの交戦もないと断言はできない。
まどかのことがある以上、ないとは思うがコンディションを整えておくに越したことはない。




【B-3/ラブホテル、シャワールーム/一日目・夜】


【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]疲労(中)
[令呪]残り3画
[装備]ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]グリーフシード(個数不明)@魔法少女まどか☆マギカ(二つ穢れが溜まりきっている)、バイク(盗品)
[思考・状況]
基本:聖杯の力を以てまどかを救う。
1:シャワーを済ませたらセイバーと少し話して、そのあとはもう寝る。
2:2日目正午には遊園地に辿り着き、美樹さやかと対話を行う。
3:上記終了後病院に向かい鹿目まどかと接触。
4:キャスターに対するかなり強い不快感。
[備考]
※自分の能力の制限と、自動人形の命令系統について知りました。
※『時間停止』はおよそ10秒。連続で止め続けることは難しいようです。
※アポリオン越しにさやか、まどか、タダノ、モリガン、アゲハ、流子、ルキア、慶次、善吉、操祈の姿を確認しました。
※明、ルフィのステータスと姿を確認しました。
※美樹さやかとの交渉期限は2日目正午までです。
※美樹さやかの存在に疑問が生じています(見たことのない(劇場版)美樹さやかに対して)
※フェイスレスは武将風のサーヴァント(慶次)に負けて消失したと思っています
※一瞬ソウルジェムに穢れが溜まりきり、魔女化寸前・肉体的に死亡にまでなりました。それによりフェイスレスとの契約が破棄されました。他に何らかの影響をもたらすかは不明です。
※エレン、さやか、まどかの自宅連絡先を知りました。
※ジャファル、レミリア、ウォルターを確認しました。
※天戯弥勒と接触しました。
※巨人を目撃しました。


165 : Surgam identidem ◆A23CJmo9LE :2015/09/21(月) 16:28:46 mEjvPpLY0




◇  ◇  ◇



部屋に残った、わずかな魔力の残渣。
ベッドからほのかに漂う情事の名残。
それに加えて今朝の邂逅が、リンクに一人のサーヴァントを思い出させていた。
カレンに従い、登校したときに刃を交えたアーチャー。
対魔力に加えて精神干渉への耐性から受け付けなかったが、妖しい美貌と振る舞いによる魅了を行う女性。
彼女がここにいたのだと確信する。

体液の授受による魔力の交換…いや、彼女の魔性に魅入られたNPCを彼女は喰らい、一方的に奪ったのだろう。
誘われた誰かは、美しい花に引き寄せられ、精も魂も貪りつくされた。
……戦略としては間違っていない。
だが個人的な好悪をいうなら、圧倒的な嫌悪。
ただ一人の英雄として、あのアーチャーを許したくはない。
幸い、今度のマスターは以前までと違い魔力は潤沢。
友人を助けるために戦うというなら、魂喰いを強要されることもないだろう。
方針としてほむらに従うに否はない。
だが、我儘を言うならば。
次にまみえたとき、アーチャーはこの手で打ち倒す。



【B-3/ラブホテルの一室/一日目・夜】


【セイバー(リンク)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
[状態]魔力消費(小)、疲労(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに全てを捧げる
0:カレンの意思を引き継ぎ、聖杯戦争を勝ち抜く。
1:暁美ほむらに従う。
2:アーチャー(モリガン)に対する強い敵意。
[備考]
※アーチャー(モリガン)を確認しました。
※セイバー(纒流子)を確認しました。
※夜科アゲハの暴王の流星を目視しました。
※犬飼伊介、キャスター(食蜂操祈)を確認しました。
※人吉善吉、アサシン(垣根帝督)を確認しました。
※垣根帝督から食蜂操祈の能力を聞きました。
※朽木ルキア、ランサー(前田慶次)を確認しました。
※ウォルター、ランサー(レミリア)を確認しました。
※巨人を目撃しました。






【地域備考】
※B-3のラブホテルの一室でモリガンが魂食いと、行為をした名残があります。
 感知能力に優れたものなら部屋の近くにくればわかります。
 サキュバスの体液を利用した魔術や礼装など、何らかの形で利用できるかもしれません。


166 : ◆A23CJmo9LE :2015/09/21(月) 16:29:33 mEjvPpLY0
投下終了です。
指摘などあればお願いします。


167 : 名無しさん :2015/09/21(月) 17:28:35 Q2wQkhK20
投下お疲れ様です
ほむほむとリンク、ぎこちないながらフェイスレスよりはさすがに信頼関係を築けてますな
でもラブホテルはひどいwwくそ真面目に悩んでるほむほむがちょっと可愛いww
うんまあ、フェイスレスとこんなとこ入りたくないよなあ…犯罪臭以前に何を仕込まれるかわかったもんじゃねえや
残り香はモリガン姐さんのもんでしたか。リンクの清廉さが眩しいぜ


168 : 名無しさん :2015/09/21(月) 22:58:30 iYZhvcn20
投下乙
どこ泊るんだと思ったらよりによってそういう場所か…まあリンクなら全然心配しないでよさそうだけど。
ほむらもちょっとずつ、この聖杯戦争の深部に近づきかけてる感じかな?
アサシンクラスへの警戒や、遭遇した組の情報から現状を推測するあたりが面白いです。
そしてモリガン周りも地味にフラグが積み重なって行ってる感じ。


169 : ◆A23CJmo9LE :2015/09/24(木) 19:02:50 rfde98zc0
ウォルター&レミリアで予約します


170 : ◆wd6lXpjSKY :2015/09/24(木) 20:17:46 UP7aEtYI0
予約からルキアと前田健太を外します。
感想は投下出来た時に……


171 : ◆wd6lXpjSKY :2015/09/24(木) 20:18:49 UP7aEtYI0
マエケン参戦していませんね……w


172 : ◆A23CJmo9LE :2015/09/24(木) 23:37:13 rfde98zc0
短いですが、投下します


173 : 運命「ミゼラブルフェイト」 ◆A23CJmo9LE :2015/09/24(木) 23:38:12 rfde98zc0

ヘルシング邸。
再現された都市の森深くにある、大きな屋敷。
英国王家につかえるヴァンパイアハンターの名を冠するが、その持ち主は他界しており今は老執事が一人で管理している。
……いや、正確にはもう一人。すでに死んだ人物も住み始めたのだが。

「…ん、ここは」
「おはよう、ウォルター。と言っても、まだ日付が変わる前。あれからほとんど経っていないけれど。
 …寝てなさい、ひどい傷よ。咲夜を喚んで治療させたかったのだけれど、あなたの私も魔力消費が激しすぎるからむしろそれをすると寿命が縮むわね」

ベッドの上で目覚める。
傷口には不格好にガーゼが、腕と胸部は包帯で固定されていた。
皹の入った骨への処置のつもりだろうか。

「ごめんなさいね、何せ私も片眼で……遠近感がつかめないからそんな風になってしまったわ。
 見えていればこんな不格好にはならなかったわよ、ホントよ?」
「いえいえ、お嬢様のお気持ちはいかな名医にも処方できないものですから。
 こちらよりも、その傷は…その零体化などなさらずとも問題ないものでしょうか?」
「月の光こそ、私にとっては何よりの薬なの。こうさせていて頂戴」

窓際に用意した椅子にちょこんと座る。
憂い気に月を眺める幻想的な風景をいつまでも見ていたいと思うが、悲しいかな時は無限ではない。

「私が意識を失ってから、どうなりました?」
「どうということはないわ。
 巨人もアサシンも落ちた…ただその下手人が天戯弥勒ということを除けば、大局はきっとあなたの予想通り。
 この目は対価に持っていかれたけれどね」

忌々し気に拳を握り、表情にも力がこもる。
その怒りは横槍を入れた天戯に対するものか、はたまたいずれ癒えるとはいえ傷を残した暗殺者に対してか。

「そういえばあのセイバーについてですが。
 負傷したマスターの後取らしいものは保健室にあったのですが、すでに逃げた後だったようです。
 いやはや面目ない」
「そう。時の勇者はお姫様を守って夜の街へ、といったところかしら。
 あの崩落に巻き込まれていれば幸いだったけど、うまくはいかないわね。
 撃ってきた、たぶんアーチャーだったと思うけど、あのサーヴァントは…」
「おそらく私が昼に会った者でしょうな。追撃がなかったとなると、何か別の問題が生じましたかな」

一息。
敵対していたサーヴァントを中心に現状を確認。
アサシンが全滅したのは大きい。
これで動きの自由度は大幅に増す。
しかし、状況は許しても、体の方はそうはいかない。

「ウォルター、傷はどの程度のもの?」
「腕も肋骨も恐らくはヒビ程度です。支障ない、とは言えませんが戦闘不能ではありません」

そう嘯くウォルターにレミリアが近づく。
右手を上げ、人差し指を親指に引っ掛けて、デコピンの構え。
軽く胸部を小突く。

「ッ!うっ、ぐぁ…」
「こんな小さな女の子の指先一つでダウンするくせに強がっちゃって。
 それに吸血鬼をなめないことね。あなた、どちらかというと出血の方がまずいわよ。
 …それに情けない話、私の目の方は早くても夜明けまでは治らないでしょうね。
 例外があるとしたら、令呪を魔力として治癒にあてた場合かしら」

苦しげにうめくウォルターを半分楽し気、半分悔しげに眺めながらベッドに腰掛ける。


174 : 運命「ミゼラブルフェイト」 ◆A23CJmo9LE :2015/09/24(木) 23:38:47 rfde98zc0

「業腹だけど、私たちは現状戦闘不能というざるを得ない。
 朝まで回復にあてたとして、動ける可能性があるのは私だけ。
 それも魔力不足で、日の下という強力な枷付きでの戦線復活。
 このままでは実質明日の夜まで動きがほぼ取れない」

ベッドの上で足をプラプラと揺らしながら愚痴るように見通しを述べる。
ウォルターはまだ続く痛みに呻いて答えられない。
サーヴァントの膂力だ。加減したとはいえ痛い。とても痛い。

「仮に無理やり昼から動いたとして。
 海賊のライダー、魔を断つ時の勇者。いずれもそのコンディションで勝つのは難しい。
 そして、人間でしかないあなたの傷は癒えるわけがない。
 マスターの実力はピンキリのようだけど、昨晩の餓鬼が操る兵隊の銃火をその傷でしのげる?無理でしょうね。
 そしてさっき言ったけれど、天戯弥勒はアサシンを殺したわ、
 わかる?サーヴァントと渡り合う、人間なの。
 そして夜科アゲハはその男を敵視し、同類の超能力者だという。彼もまたサーヴァントと渡り合う実力があると考えてしかるべき」

万全ならば蹴散らすのも難しくはない。
傷さえ、癒えれば。
だがこれは遊戯ではない、戦争なのだ。
敵は待ってくれない。
万一ここがばれて襲撃されれば、即座に窮地に陥る。

「私から提案する方針は三つ。
 一つ。先の述べたようにこのまま休息をとる。最も消極的で、最も見返りが少ない。
 ただし当然危機に飛び込むわけではないから、敵の同士討ちを待つという意味では一番賢いかもね。
 もし敵が襲撃して来たら、令呪で私の傷を癒すしかないかしら」

外的な要因と良くも悪くも触れない。
時間対効率は良くないが、一番気が休まる方針だろうか。

「二つ。あなたへの輸血、および私の回復のために輸血用の血液確保に動く。
 病院を目指してもいい。救急車を呼ぶのも手かしら。タクシーの方がいいかもしれない。
 リスクは言うまでもなく、移動中に敵に見つかる可能性。
 それからたしか、アーチャーは病院に向かっていた、のよね?特にそこと鉢合わせする危険が大きいかしら。
 妥協点としては私だけ適当に血を吸い、魔力と傷を癒す。この際こだわってはいられないわね」

無論吸血の後に病院を目指し、ウォルターの治療にあたってもいい。
だがそうなると病院に拘束されかねないのも欠点か。
今のところどちらの案も魅力的には思えない、ようやく声が出せるようになりそう己がサーヴァントに答えようとするが

「そして三つめ」

声が、出せなくなった。
いつの間にかベッドに横たわる自身の上に乗り、顔をのぞき込む吸血鬼。
その深紅の瞳に吸い込まれるような気すらして、魅せられる。
ああ、これが魅了の魔眼か、と呆けた頭に思いが流れる。

「その歳でまさかとは思うけれど。ウォルター、あなた童貞かしら?」
「…は?」
「重要なことよ。吸血鬼にとっては特にね」

くすり、と笑う。
幼い容貌に似合わぬ妖艶な振る舞いに、年甲斐もなく心臓が高鳴るのを他人事のように認識する。

「体液による、魔力の交換。私とあなたで交わり、魔力を増す。
 もしあなたの体に魔術回路が眠っていればそれをこじ開けることもできるかもしれないわね」

ちろり、と舌をのぞかせ、息を荒くしウォルターにしなだれかかる。
胸元の包帯に指を這わせ、耳を牙で甘噛みしながら囁く。

「血は命の通貨。私があなたの血をすすり、あなたが私の血を飲めば、あなたは私の眷属となる。
 喰屍鬼(グール)になるか、死者に留まるか、はたまた即座に死徒として目覚めるか。
 素質によるけれど…私のチカラは運命を操る程度の能力。
 変えられた運命の流れによってはのたれ死ぬさだめが人妖と化すこともある」

柔らかい肢体をくねらせ、甘い吐息で誘うそれはまるで蛇のよう。
禁断の果実を差し出し、口にするか否か問う。

「思うところはあるでしょう。
 だから私はただ戦略的な意味のみ告げる。
 …当然あなたの傷は吸血鬼としての治癒力で癒えるでしょう。肉体もまた、全盛期のそれに近づくはず。
 魔力量も増大するかもしれない。
 …けれどそれはあくまでうまくいけばの話。素質なく、喰屍鬼と化せば、真っ当な死徒になるのに数年はかかる。
 死徒になれたとしても、主従そろって吸血鬼となるのはすなわち日光をはじめとする多くの弱点もともに抱えることになるということ。
 もし決断するなら、この夜が山場になるわ。さあ……」

どうする?
汝、カインの子なりや?


175 : 運命「ミゼラブルフェイト」 ◆A23CJmo9LE :2015/09/24(木) 23:39:06 rfde98zc0

【B-1/ヘルシング邸/一日目・夜】


【ランサー(レミリア・スカーレット)@東方project】
[状態]左肩貫通、左目失明(両方共回復中)魔力消費(大)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:ウォルターのためにも聖杯戦争を勝ち抜く
1:ウォルターの選択を待つ。
2:殺せる敵から殺していく。
3:天戯弥勒に警戒。
[備考]
※アーチャー(モリガン)を確認しました。
※夜科アゲハを確認しました。
※天戯弥勒がサイキッカー(超能力者)と知りました。
※天戯弥勒を確認しました。



【ウォルター・C・ドルネーズ@HELLSING】
[状態]出血(大)両腕にヒビ、肋骨骨折(少々)、以上全て応急処置済み、魔力消費(大)、疲労(極大)
[令呪]残り3画
[装備]鋼線(ワイヤー)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:全盛期の力を取り戻すため、聖杯を手にする
1-a:このまま館で休養をとる。
1-b:病院、あるいはそれに準ずる施設に向かい血液確保。ランサーとともに傷を癒す。
1-c:ランサーに身を任せ、吸血鬼と化す賭けに出る。

[備考]
※浅羽、アーチャー(弩)を確認しました。



[共通備考]
※虹村刑兆&ライダー(エドワード・ニューゲート)と交戦、バッド・カンパニーのビジョンとおおよその効果、大薙刀と衝撃波(震動)を確認しました。
※発言とレミリアの判断より海賊のライダーと推察しています。
※巨人を目撃しました。
※エレン、アサシン(ジャファル)を確認しました。
※カレン、セイバー(リンク)を確認しました。


176 : ◆A23CJmo9LE :2015/09/24(木) 23:42:24 rfde98zc0
以上で投下終了となります。
指摘などあればお願いします。


それから
朽木ルキア&前田慶次、鹿目まどか&モンキー・D・ルフィ、美樹さやか&不動明
虹村刑兆&エドワード・ニューゲート、犬養伊介&食蜂操祈、間桐雁夜&一方通行、タダノヒトナリで予約したいと思います


177 : 名無しさん :2015/09/25(金) 01:42:51 YA5rWagI0
投下乙です
今度の掘り下げは吸血鬼主従かーと思ってたらこっちはガチでインモラルな方向に…!?いや、作中も言われてた通り合理的な手段ではあるのでしょうが、絵面が…成功すれば確かにかなりの強化と回復が見込めますけれども。
あくまで執事であろうとしてきた老ウォルターですが、戦闘への渇望がどう選択させるのか…

そして、続いての大規模な予約も楽しみです!


178 : ◆wd6lXpjSKY :2015/09/26(土) 19:57:45 LDUKFpoM0
予約を一度破棄します
来月に帰ってきます


179 : ◆A23CJmo9LE :2015/09/26(土) 22:36:43 m1CYofj20
予約からヒトナリを外します


180 : <削除> :<削除>
<削除>


181 : <削除> :<削除>
<削除>


182 : 名無しさん :2015/09/28(月) 00:20:10 iIRE8F0s0
レミ組投下乙です
学校での戦いでは勝利者側に立った彼らですが、やはり今後を考えるとダメージがでかいですね…
そして交合が真面目な戦略の一つとなってるのがまた
お嬢様のしぐさが実に妖しく艶めかしい…


183 : ◆A23CJmo9LE :2015/10/01(木) 21:21:50 NAQZI0Fk0
延長をお願いします


184 : ◆A23CJmo9LE :2015/10/08(木) 23:10:54 EfJAoGMA0
投下します


185 : MEMORIA ◆A23CJmo9LE :2015/10/08(木) 23:11:52 EfJAoGMA0

◇  ◇  ◇


静かに移りゆく遠い記憶の中
思い出に寄り添いながら君を想えるなら



◇  ◇  ◇


主従の繋がりは架け橋だ。
力と、願いと、想いを共有する。

人間も、サーヴァントも、夢の中で自我が曖昧になると……
自分ではない誰かの遠い記憶や思い出に、想いを馳せることがある。

これはそんな幕間の物語。



◇  ◇  ◇


186 : MEMORIA ◆A23CJmo9LE :2015/10/08(木) 23:12:32 EfJAoGMA0
◇  ◇  ◇


〜一輪の花〜

いつも見慣れてる窓辺に映った、沈む君の横顔
涙声さえ冷たく飲み込んだ、その瞳は明日を向いていた

今にも枯れてしまいそうな君の無邪気な姿がもう一度見たくて
君の力になりたいんだ


◇  ◇  ◇

通常サーヴァント眠りを必要としない。
しかし魔力の倹約などには当然有効な行為である。
特に前田慶次にとっては。
『休息・眠りの一時 誘うは魅惑の夢心地(ゆめごこち)』。
彼の急速な自然回復能力が宝具にまで昇華されたものだ。
マスターとの合流までほんの少しでも傷を癒そうと再度発動、件の睡眠の状態にある。




「恋次…死神になろう」



おお?これは…夢か。
あれは、少しばかり昔のマスターだな。



「…ああ――死神になろう」



力を求める姿勢は昔から変わらないんだな。
悪くねえ仲間もいるじゃないの。




「…朽木家に、養子に来いと言われた」



ん、いいとこに養子縁組か。
…ただ、そのせいで仲間とはお別れ、かい。
あー、まあそういうこともあるわな。



「副隊長の志波海燕だ!よろしくな!」



お?なんだかんだ、いい男がいるじゃねえの。
さすがに一部隊の副官ともあれば、腕も人柄も折り紙つきってか。
別れあれば出会いあり。
恋も戦もそんなもんだ。



「…そうか。何席だ」

「…そうか。下がれ」



ほう、兄君もちょいと考えるとこあり、か。
隠してるみたいだが、含むとこありというか過保護というか。
マスターはそのこと気付いてなさそうだな。



「ありがとな。お蔭で、心は此処に置いて逝ける…」



…ちっ、上官の介錯か。
仕方ねえよ、これは。仕方ねえ……
やるせない気持ちになるのは、分かるけどな……



「俺は黒崎一護だ。お互い最後の挨拶にならないことを…祈ろうぜ」



…なるほど。似てるな、あの上官に。親戚だったりするのかね。
それに、ふむ。
武装と声にも覚えがあると思ったら、俺かい。
…少しばかり納得いったな。俺がここにいる理由はよ。

…………どうやらマスターが近づいてきてるな。
『休息・眠りの一時 誘うは魅惑の夢心地(ゆめごこち)』はおしまい。
目覚め時、開戦時だ。


187 : MEMORIA ◆A23CJmo9LE :2015/10/08(木) 23:12:59 EfJAoGMA0

◇  ◇  ◇

「ランサー!起きたか。具合は?」
「おう、マスター。さっきぶりだな、ひとまず無事で何よりだ。
 傷の方は、どうかね、っと」

座した姿勢で眠りについていたのを改め、立ち上がろうとするが上手くいかない。
朱槍を支えにしてかろうじて動けることを確かめると霊体化する。

『お世辞にも本調子たあ言えねえな。動けはするが、自在に飛んだり跳ねたりはちと厳しい。
 動くにしても霊体化して少しでも回復に専念させてもらうぜ』
『わかった。今後の事だが…』
『察してるさ。助けに行くって言うんだろ?』

面識は薄い。
それこそ袖すり合う程度のものだ。
だが、人吉も人形遣いのキャスターも放っておくのは少々危ない気がする。

『あの女狐の行動は逃亡でしかない。人質なんかとって、明確にライダーまで敵に回す愚を犯して、後先考えてなかった証拠だな。
 あいつには後がなかった。それほどに追い込まれてたんだ…逃げられちまったが、逃げられただけ。
 立て直す策はない。放っておいても、あいつ一騎だけなら巻き返すのは相当難しいだろう。
 だが、あの爺さんのそれは戦略的撤退だ。
 俺を仕留めたと思ったから引いたんじゃなく、目的を達成したから引いたんだ。
 おそらくは人吉がカギだな。マスターまで出張ってきたんだろ?』
『伝聞だがそうらしい。何やらライダーのマスターと知り合いらしい振る舞いを見せたと聞くが……』

人形を引き連れ、ライダーのマスターの名を呼び、その場のもの全員に攻撃を仕掛けた。
人吉の誘拐と言い、少々意図をつかみかねる。

『ライダーのマスターはどこに行ったかわかるかい?
 あの場にはもういなかったんだろ』
『む、そういえばどうしたか聞いていないな……
 普通に考えると、アーチャーに殿を任せ、怪我人を連れて撤退したのではないか?』
『となると、行先はあいつらの拠点か、あるいは薬師のいるとこか……』

断片的な情報からの推察。
それが間違っているとは思わないが、やはり情報が足りない。

『マスター、正直言って今の俺たちには行く当てがねえ。
 人吉とキャスターを探すってもどこへ行けばいいやらだ』
『この川の向かいである可能性が高い、程度か』
『広すぎるな…俺たちの不運は表舞台の祭りに混ざり損ねたせいで、いまいち情報に実感が足りてないことだ。
 だが、逆にだ。その結果、あのアーチャーのマスターと起こしたっていうごたごたの当事者にならずに済んでる。
 …アーチャー陣営はともかく、ライダーの方とは穏便に接触できるんじゃねえのか?
 キャスターのマスターについて、何かわかるかもしれん』

回り道ではある。
だが己を知り、敵を知れば百戦危うからずという。
敵の目的、行動の真意のヒントは得て困るものではない。

『だがそれも結局目的地は不明瞭ではないか』
『ダメもとで医療施設に向かうか、ってとこか。まあその通りだ。
 あとはまあ、川下に来ちまった以上、同じく川を下ったあの女狐が近いかもしれんが』
『遠回りどころか迷走しているぞ。奴は後回しにしていいとお前も言っていたではないか』
『そう、だな…』

足も話題も進まない。
どことなく話しにくそうにしていた慶次だが、意を決したように切り出す。


188 : MEMORIA ◆A23CJmo9LE :2015/10/08(木) 23:13:49 EfJAoGMA0

『…少し話題を変えるぜ。うすうす察してると思うが令呪の件だ。
 俺はそいつのせいで〈キャスターに従わなくちゃならない〉。
 その命を解くには改めて令呪を使う必要がある。
 そして、今すぐに万全の態勢にまで回復するにも令呪で回復するしかない。
 残り二画しかない現状、正直言って今人形遣いに喧嘩売るのは茨の道だ。
 それでもその道を進むかい?』

恐らく初めて明確に異を唱える。
とれる選択は他にもある。
休むこともまた戦争の内だ。
そう、別の道も提示するが

『無論だ。すでにあの男、夜科にも協力すると言った以上、それを撤回するなどするものか。
 それにお前はどうなんだ?このまま引き下がるのか?
 夜科から伝言がある、「次は不覚なんてとるんじゃねえ」だそうだぞ』

既に選択はした。
苦難は承知の上。
それでも、この男が共にいるのなら闘えると思う。
共に来てほしいとそう思う。

『仕方ねえな、このマスターは。覚悟があるなら結構さ。
 …さしあたってこの川をどう渡るか考えなきゃならねえが』
『すまぬ、苦労を掛けるな。お前の言う通り現状が不利なのは事実だ。
 何か方策も考えねばならんが……』

令呪も必要なら惜しむべきではないだろう。
探す道中、情報収集や戦力の確保もするべきだ。

『ま、一目見て碌でもねえヤツだってわかる爺さんだったからな。
 間違いなくいるさ、俺たち以外にもあいつによからぬ感情を抱いてる奴は……
 俺たちだけで戦うってことにはならねえだろう』
『ああ。それに一応夜科の連絡先は聞いてある
 あの男は仲間を攫った相手の居場所は真っ先に知りたがるだろうし、孤軍奮闘の心配はいらん』

令呪による縛り、『キャスターの命に従え』。
それがあるせいで全力は出し切れず、加えて敵の手数に押されることになった。
なら今度はこちらも数をそろえよう。
必要なら縛りも解くこともしよう。

(だから大丈夫だ、マスター。あんたは一人じゃない。
 命を懸けて、誰かを助けることのできるあんたになら、同じように誰かが力を貸してくれる)

だから、もしこの戦いで俺という花が散っても…大丈夫さ。
いつか、あんたの力が再び花開くまで。
あのキャスターを敵視する誰かは、力になってくれる仲間はきっといる。


189 : MEMORIA ◆A23CJmo9LE :2015/10/08(木) 23:14:07 EfJAoGMA0

【B-5/北東の川辺/一日目・夜】

【朽木ルキア@BLEACH】
[状態]魔力消費(微量)
[令呪]残り二画
[装備]アッシュフォード学園の制服
[道具]学園指定鞄(学習用具や日用品、悟魂手甲や伝令神機などの装備も入れている)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を通じて霊力を取り戻す。場合によっては聖杯なしでも構わない
1.川を渡り、人形使いのキャスターと善吉を捜索する。
2.キャスターのせいでランサーにかけてしまった命令はその時になったら必ず解除する。令呪の使用も惜しんでいられない。
3.捜索の傍ら、協力者や情報の収集も行う。麦わらのライダー陣営との接触も考慮。
[備考]
※犬飼伊介&キャスター(食蜂操祈)と同盟を破棄しました。マスターの名前およびサーヴァントのクラス、能力の一部を把握しています。
※夜科アゲハ、セイバー(纏流子)と一時的に同盟を結びました。
※紅月カレン&セイバー(リンク)と交戦しました。
※人吉善吉を確認しました
※ライダー(ルフィ)を確認しました。
※キャスター(フェイスレス)の情報を断片的に入手しました。
※外部からの精神操作による肉体干渉を受け付けなかったようです。ただしリモコンなし、イタズラ半分の軽いものだったので本気でやれば掌握できる可能性が高いです。
 これが義骸と霊体の連結が甘かったせいか、死神という人間と異なる存在だからか、別の理由かは不明、少なくとも読心は可能でした。
※通達を一部しか聞けていません。具体的にどの程度把握しているかは後続の方にお任せします。
※キャスター(食蜂)から『命令に従うよう操られています』
 現在は正常ですが対峙した場合は再度操られる可能性が高いです。
※アーチャー(モリガン)と交戦しました。宝具の情報を一部得ています


【ランサー(前田慶次)@戦国BASARA】
[状態]魔力消費(小)右脚へのダメージ(中)
[装備]朱槍
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:この祭りを楽しむ
1.ルキアの指示通り人形遣いのキャスターと人吉を探す。
2.マスターが用済みとなって消される前に勝負を決める。
[備考]
※犬飼伊介&キャスター(食蜂操祈)と同盟を破棄しました。マスターの名前およびサーヴァントのクラス、能力の一部を把握しています。
※紅月カレン&セイバー(リンク)と交戦しました。
※人吉善吉を確認しました。
※ライダー(ルフィ)を確認しました。
※キャスター(食蜂)を装備と服装から近現代の英霊と推察しています。
※読心の危険があるため、キャスター(食蜂)対策で重要なことはルキアにも基本的には伏せるつもりです。
※中等部の出欠簿を確認し暁美ほむらの欠席、そのクラスにエレン・イェーガーが転入してくることを知りました。
 エレンについては出欠簿に貼ってあった付箋を取ってきたので更新された名簿などを確認しないかぎり他者が知ることは難しいでしょう。
※令呪の発動『キャスターの命令を聞くこと』
※キャスター(フェイスレス)、カピタン、ディアマンティーナと交戦しました。
※脚のダメージは日常を辛うじて送れる程度には回復しましたが、戦闘には差し支えます。


190 : MEMORIA ◆A23CJmo9LE :2015/10/08(木) 23:14:53 EfJAoGMA0


◇  ◇  ◇


〜夢の中での再会‐Puella in somnio‐〜

逆らえぬ運命と知っても怖くない
心から信じている

難しい道で立ち止まっても空は綺麗な青さでいつも待っててくれる、だから怖くない
もう何があってもくじけない


◇  ◇  ◇


その夜、私は夢を見た。
……悪夢というほかない、地獄のような光景だった。
けど、それは現実だったんだ。




「行こうぜ!閻魔。地獄の扉を開けてくれ!」




悪魔に襲われて、二人の青年がサバトの会場に逃げ込む。
最初はあの気弱そうな人があのバーサーカーなんだってわからないくらいだった。
だった、のに……




「おれは!おれは!悪魔人間(デビルマン)だ!」



そこにいたのは紛れもなくあのバーサーカーだった。
いや、私の知ってる彼より…少し怖い。
戦いを楽しんで、殺戮を喜んでいるように見える。
今の少し落ち着いたバーサーカーを知らなければ、見ていられなかったと思う。




「おれはデーモンの体を、デーモンの超能力を、きさまたちを滅ぼすために手に入れたのだ!」

「けっ、よしやがれ。てめえと地獄でデートはまっぴらだ」

「地獄の公園でアグウェルが待ちかねてるぜー、行ってやりな!」

「八つ裂きにされるのはお前の方らしいな、シレーヌ。フッフッフ」

「だが!きさまも死ぬんだろ!」

「死ねえ〜〜!!魔界の裁判官よ!裁かれるのはきさまのほうだ!」

「デビルマンの怒りを受けよ!」


戦って、戦って、戦って。
多くの悪魔と戦ううちに少しづつ使命感のような、人間らしさが強くなるのを見て安心した。
私の知ってる、英雄の姿になってきた。
けれど……



「美樹!きみがいるかぎりおれは、悪魔人間(デビルマン)だ!」




もうその後は見ていられなかった。
私の知ってる人間よりも、もっと悍ましい世界。
私の経験した失恋よりも、もっと悲痛な別れ。
インキュベーターもあのホストもかわいく見えるね、これじゃあ……
それから20年以上戦い続けて、魔神サタンの隣で眠りについた。

……………

牧村、美樹さん。美樹さんかあ……
バーサーカーの、たぶん恋人。
初めて私と会った時の複雑な表情、納得かも。

魔神サタン、飛鳥了。
私たちとほむらなんか目じゃない、複雑な関係みたい。
最期の会話、ほとんど聞き取れてなかったけど、たしかに悲痛な表情に親友としての名残があった。

彼の思いにも戦いにも敬意を憶える。
裏切りたくないと、そう思う。
そしてその生涯はあたしの親友のものともどことなく重なって見えた。


191 : MEMORIA ◆A23CJmo9LE :2015/10/08(木) 23:15:16 EfJAoGMA0

青い戦士は戦った。
人間(ヒト)のためだけではなく、悪魔人間(デビルマン)のために、悪魔(デーモン)と。
ヒトとして愛した女性と、デビルマンとして愛憎を向けた親友のことを胸に。

……あの子は願った。
人間のためではなく、魔法少女のために、巨大な世界の外側の存在となってまで。
一番の友達とまで呼んだ、悪魔にまでなった魔法少女の言葉に耳を傾けず。

私は戦った。
他人に失望もしたし、自己嫌悪もしたし、やつあたりまでした。
でも今でも思う。
マミさんの思いは尊いものだし、まどかのしたことは偉大なことだ。
……今なら杏子やほむらの気持ちも分かるけど。
だから、やっぱり私はかつて抱いた理想のためにも、まどかの描いた願いのためにも、戦う。
バーサーカーと一緒なら、戦える。

…まどか、どうしてるかな。
あのコがいるなら、今度はあたしが助けてあげたいな。
もし聖杯があるのなら、あたしの、そしてまどかの願いを、叶えたいな。



【C-6/自室/一日目・夜】



【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語】
[状態]健康、睡眠中
[令呪]残り三画
[装備]ソウルジェム
[道具]グリーフシード×5@魔法少女まどか☆マギカ、財布内に通学定期
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる
0.睡眠中。
1.明日の正午までに暁美ほむらへ回答する。
2.与えられた役柄を放棄し学校に行かないことに加え、あえて目立つ行動をとり天戯弥勒や他の参加者の接触を誘う
[備考]
※浅羽直之、アーチャー(穹撤仙)を確認、フェザーと名乗られました。
※暁美ほむらが昔(TV版)の存在である可能性を感じました。
※暁美ほむらが何かしらの理由で時間停止に制限が掛かっていることを知りました。
※まどか、ほむらへの連絡先を知りません。



【不動明(アモン)@デビルマン】
[状態]魔力消費(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる
1.さやかに従い行動
2.何かあったらさやかを起こす
3.あえて目立つ行動をとり天戯弥勒や他の参加者の接触を誘う
4.マスターを守る
[備考]
※穢れの溜まったグリーフシードを『魂喰い』しました。今のところ影響はないですが今後何らかの影響があるかは不明です。
※キャスター(フェイスレス)に不快感を覚えています。
※世界改変の力を持った、この聖杯戦争の原因として魔法少女(まどか、ほむら、さやか)とサタンを想定しています。


[共通備考]
※マップ外に出られないことを確認しました。出るには強力な精神耐性か精神操作能力、もしくは対界宝具や結界系宝具が必要と考えています
※マップ外に禁人種(タヴー)を確認しました。不動明と近似した成り立ちであるため人間に何かがとりついた者であることに気付いています。NPCは皆禁人種(タヴー)の材料として配置されたと考えています
※間桐雁夜(名前は知らない)、バーサーカー(一方通行)を確認しました。
※暁美ほむらとの交渉『鹿目まどかを守るための同盟』の回答期限は2日目正午までです。
※キャスター(フェイスレス)を確認しました。
※学園の事件を知りました。
※聖杯戦争の会場を作ったのも、願望器自体も世界改変の力と予測しています。


192 : MEMORIA ◆A23CJmo9LE :2015/10/08(木) 23:15:43 EfJAoGMA0


◇  ◇  ◇

〜ギア3〜

どんなに離れても忘れることはない
君が私に光を教えてくれたから
溢れ出す涙は君へのありがとう

誰にも見えない夢のカタチを、捕まえて捕まえてく
私はついていくから

◇  ◇  ◇

以前とは逆のパターンだ。
ほむらちゃんとは、実際に会うより先に夢の中で会ったような…不思議な感じだった。
今は実際に会ったライダー…ルフィさんの夢を見てる。




「おれはいつかこの一味にも負けない仲間を集めて!世界一の財宝見つけて!海賊王になってやる!」

「待ってろよ、エース!すぐに追いつくぞ。海賊王におれはなる!」

「レイリー、おれはやるぞ!海賊王に!!!おれはなる!!!」




ほんとにいつでも、いつまでも真っ直ぐだったんだ。
なんにもできない私なんかと違って自信に満ちて…って言ったら怒られちゃうかな。
それだけに衝突も多かったみたいだけど




「いい機会だ。武道と剣術、どっちが上か…!」

「いたくもねえあいつの居場所なんざ、おれが全部ぶっ壊してやる!」

「モンキー・D・ルフィ……!!おれと決闘しろォ!!!」

「まだお前の口から聞いてねェ。「生きたい」と言えェ!!」

「―――共に闘った仲と油断したわい…そういやお前さん…あの男の弟じゃった。止まる気がないんなら…仕方ないのう」

「あのふざけた家―――」
            「人は死ぬぞ」
 「来るな!ルフィ!」

                    「おれの最期のケンカだ!お前が買え!」


サボテンを象った岩の下で、三本の刀を振るう剣士さんと本気で喧嘩をしていた。
オレンジ色の髪をした綺麗な女性が船から降りたのを、魚人たちから奪い返しにいった。
鼻の長い男の人と、船を巡って争った。
黒い髪のやっぱり綺麗な女性が仲間から離れても、それを看過することはしなかった。
他にも、たくさん。

仲間や友達と争っても、その真意を知って仲直りをしていた。


193 : MEMORIA ◆A23CJmo9LE :2015/10/08(木) 23:16:03 EfJAoGMA0

……ほむらちゃん。
彼女はなんで私たちに銃を向けたんだろう。
考えてもその答えは分からない。
だったら、聞いてみよう。
ルフィさんが仲間に向き合ったように、私も。
真っ直ぐに向きあってみよう。

…………



「愛してくれて……ありがとう」




「何が…海賊王だ…!おれは!!!弱い!!!」




そんなルフィさんも、お兄さんを亡くした時は辛そうだった。

赤い鼻のピエロみたいな人、3って髪形に眼鏡の人、顔の大きくて濃い…その、オカマの人。
顔に傷のある鍵爪の人に、大きな体をした…お兄さんの友達の魚人。
そして白いひげのすごい海賊と協力して、それでも助けられなくて、本気で泣き崩れるルフィさん。

私も胸が痛くなったけど…彼はそれでも前を向いた。
いい友達がいっぱいいたから、かな。




「お前にまだ残っているもんは何じゃ!!」

「私から一つ提案がある。のるかそるかは勿論、君が決めろ」

「わらわ…毎日毎日そなたの為に女ヶ島よりお食事を届けに参ります」

「2年後に、シャボンディ諸島で!!!」




…マミさん。さやかちゃん。杏子ちゃん。
みんなとの別れは、辛いよ。
それでも彼女たちの、魔法少女の願いを無にはしたくない。
それが私の願い、夢。
ルフィさんは本当に夢のために命を懸けてきたんだ。
それがよくわかった。

…………私も。
私も、夢のために懸命になろう。
ルフィさんのどこまでも真っ直ぐな在り方を追いかけてみよう。
ほむらちゃんとも、私の夢とも向きあって、聖杯に願いをかけよう。





「おれは、弟だ!!」




……ああ、でも。
もし私がいなくなったらみんなはどう思うんだろう。
仁美ちゃん。
さやかちゃんに続いて私もいなくなったら心配するかな。
先生も、パパも、ママも。
……タツヤは、どう思うかな。分かんないや。

お兄さんを亡くしたときの気持ちなんて、聞けるわけないよね。
……家族を残して、命を懸けるのはどんな覚悟、なんだろう。

あの白いひげの、みんなのお父さんはどんな気持ちで残ったんだろう。


194 : MEMORIA ◆A23CJmo9LE :2015/10/08(木) 23:16:26 EfJAoGMA0

【C-7/病院/一日目・夜】



【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]睡眠中、疲労(小)、若干の不安
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:人を殺したくないし死にたくもない。けれど願いのために聖杯を目指す。
0.睡眠中。
1.キャスター(食蜂)への親近感、タダノへの攻撃、ほむらの襲撃などいろいろあって混乱。まずはほむらと話したい 。
2.起きたらタダノと会話をする。
3.聖杯戦争への恐怖はあるが、『覚悟』を決める。
4.魔女のような危険人物は倒すべき…?
[備考]
※バーサーカー(一方通行)の姿を確認しました。
※ポケットに学生証が入っています。 表に学校名とクラス、裏にこの場での住所が書かれています。
※どこに家があるかは後続の方に任せます。
※アーチャー(モリガン)とタダノは同盟相手ですが、理由なくNPCを喰らうことに少なくない抵抗感を覚えています。
※セイバー(流子)、ランサー(慶次)、キャスター(食蜂)を確認しました。
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』により食蜂に親近感を抱かされていました。
※暁美ほむらと自動人形を確認しました。
※夢を通じてルフィの記憶を一部見ました。それによりニューゲートの容姿を垣間見ました。


【モンキー・D・ルフィ@ONE PIECE】
[状態]睡眠中
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:まどかを守る。
1.寝る!!
2.タダノを攻撃した奴についてはアーチャー(モリガン)に任せる。
3.バーサーカー(一方通行)に次会ったらぶっ飛ばす。
4.バーサーカーに攻撃がどうやったら通るか考える。
5.タダノとの同盟や今後の動きについてはまどかの指示に従う。
6.肉食いたい。
[備考]
※バーサーカー(一方通行)と交戦しました。
 攻撃が跳ね返されているのは理解しましたがそれ以外のことはわかっていません。
※名乗るとまずいのを何となく把握しました。以降ルーシーと名乗るつもりですが、どこまで徹底できるかは定かではありません。


[共通備考]
※タダノ&アーチャー(モリガン)と同盟を組みました。
 自分たちの能力の一部、バーサーカー(一方通行)の容姿や能力などの情報を提供しましたが、具体的な内容については後続の方にお任せします。


195 : MEMORIA ◆A23CJmo9LE :2015/10/08(木) 23:16:53 EfJAoGMA0

◇  ◇  ◇

〜四皇〜

海に行きたいといつしか話した
君と二人で叶わぬ夢を見た

僕はなぜ探してるんだろう、何が欲しいんだろう
答えはきっとその先に

◇  ◇  ◇

暗いな。
何かあっても対応できるよう寝室の明かり、一つは点けておいたはずだが。
…妙だな。スタンドが出せない…!
新手のサーヴァントか?くそ、ライダー!どこだ!
ん、向こうが明るいな。
…罠なら上等、最悪令呪を使う。行くか。



「おかしいぜ、海賊が財宝に興味ねェなんてよ」
「お前一体何が欲しいんだァ?おい、ニューゲートォ!」



船の上?空間転移、あるいはライダーと同じ固有結界ってやつ…いや違うな。
アレは若いころのライダーだ、エドワード・ニューゲート。どことなく似ている。本人だから当たり前か。
そーいやDIOの部下の事で聞いたな。
精神が無防備になる夢の中ではスタンドは使えないと。
つまりおれは今ライダーの過去を夢に見ているというわけか。



「ガキの頃から…欲しかったものがある」
「おお!!あるのか。教えてみろ」
「…………家族」



そんないいもんじゃねえと思うが、歳くったこいつにいまさら言っても意味ねえな。
ま、おれもおやじに縛られてる以上何を言っても戯言でしかねえだろうがよ。




「まだ暴れたきゃ、この海でおれの名を背負って好きなだけ暴れてみろ。おれの息子になれ!」

「誰から生まれようとも…人間みんな海の子だ!」

「おれの船に乗せたからにゃあ、どんなバカでもおれの息子よ。仁義を欠いちゃあ人の世は渡っちゃあいけねェんだと教えてやるのがおれの責任だろうがよ」



自ら一団の船長になって、名を上げ、一味を増やしていく。
屈服させられただけのものもいた。自らの意思によらず、仕方なく身を置いただけのものもいた。
それでも



「あの人が――息子と呼んでくれるからだ。おれ達ァ世の中じゃ嫌われ者だからよ。ただの言葉でも嬉しいんだ」

「おれのダチの国を荒らしてんじゃねェよ!!!」

「わしは白ひげ海賊団でもありゃあせんが義理あって…お前さんの相手をする」



人身売買。略奪。
そんな真似をしている悪党どもに仁義を叩き込み、それが一つの家族としてまとまっている。
…羨ましくはあるかも、な。


196 : MEMORIA ◆A23CJmo9LE :2015/10/08(木) 23:17:20 EfJAoGMA0




「これを放っておいて殺されたサッチの魂はどこへ行くんだ!!」
「エース…いいんだ、今回だけは。妙な胸騒ぎがしてなァ」
「親の傷つけられて黙ってられるか。おれがケジメをつける!!!」



これは…
ライダーに聞いた固有結界…のきっかけ、か?
ってことはこれで、ライダーは……




「津波だァ〜!!」
        「氷河時代!」
「止めた!?世界一の斬撃を!」
「いきなりキングは取れねェだろよい」
                  「火山弾だ!」
「オーズ!」                  「巨人族が…」
     「インペルダウンの脱獄囚だ!」
                   「人間兵器か…」



凄まじいな。サーヴァント級のがゴロゴロいやがる。
これじゃあ、たしかにいくらあいつでも、な……



「好きなだけなんとでも言えェ!!おれは死んでも助けるぞ!」



麦わら帽子。息子の、弟。
あれか、麦わらのルフィってのは。
……弟、か。
出来の悪い弟を持つと、兄貴ってのは苦労する。
フン、妙なこと思い出しちまった。




「バカな息子を―――それでも愛そう」

「おれとともに来る者は命を捨てて付いて来い!!!」

「お前らとおれはここで別れる!全員!!必ず生きて新世界へ帰還しろ!!!」




くそっ、おまけに碌でもないガキがいると親ってのはもっと苦労するんだな。
息子を助けに行って、別の子に刺されて、あげく誰も救えず、か。
…それでもあいつは悔いなく生きたんだろうか。




――感謝している。さらばだ、息子たち――




おやじのために命を懸ける息子。
弟に命を懸けられるほど慕われた兄。
息子に殺されかけて、なお父であり続けるおやじ。
弟を利用して、父親を殺そうとしてる身では眩しくて見てられねえな。


…ちっ、碌でもない目覚めになりそうだ。
あいつらはどうしてっかね。
天戯の奴は、予想通り犬飼のトコに訪ねてくるか?
隣の部屋で寝てる女に、男が訪ねてくるのを望むとは、色気があるんだかないんだかな。


197 : MEMORIA ◆A23CJmo9LE :2015/10/08(木) 23:18:14 EfJAoGMA0
【A-4/麒麟殿温泉近くの宿/一日目・夜】


【虹村刑兆@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]健康、睡眠中
[令呪]残り3画
[装備]いつもの学ラン(ワイヤーで少し切れている)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:おやじを殺す手段を探す。第一候補は聖杯。治す手段なら……?
0.睡眠中。
1.天戯弥勒、またはその関係者との接触を予測。その場合聖杯について問い詰める。
2.接触が無かった場合、基本的に麒麟殿温泉近くに潜む……が通達次第で変更の可能性アリ。
3.バッド・カンパニーの進化の可能性を模索。能力の覚醒に多少の期待。
4.公衆電話の破壊は保留。


[備考]
※バッド・カンパニーがウォルターに見え、ランサーに効かなかったのを確認、疑問視しています。
→アーチャーとの交戦を経てサーヴァントにはほぼ効かないものと考えています。
→キャスター(操祈)がほむらと交戦してダメージを受けたのを確認し、対魔力が重要な要素であると確信。
※サーヴァント保有時に紅いテレホンカードを使用しても繋がらない事を確認しました。
※サキュバスなどのエネルギー吸収能力ならばおやじを殺せるかもしれないと考えています。
※学園の事件を知りました。
※麒麟殿温泉の下見は済ませました。なにかあったか詳細は後続の方にお任せします。
※夢を通じてニューゲートの記憶を一部見ました。それにより17歳の頃のルフィの容姿を把握しました。

【ライダー(エドワード・ニューゲート)@ONE PIECE】
[状態]ダメージ(小)、魔力消費(小)、『手出しを許さぬ海の皇のナワバリ(ウィーアーファミリー)』発動中
[装備]大薙刀
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:刑兆の行く末を見届ける
1.夜は犬飼伊介に接触があるか見張る。
2.接触が無かった場合、基本的に麒麟殿温泉近くに潜む……が通達次第で変更の可能性アリ。
[備考]
※NPCの存在、生活基盤の存在及びテレカのルールは聖杯、もしくは天戯弥勒の目的に必要なものと考えています。
※キャスター(操祈)と垣根が揃っていたのと同様、ルフィと自身が揃っているのにも意味があるかもしれないと考えています。
※宿およびその周辺をナワバリとしました。


[共通備考]
※B-2近辺にこの世界における自宅があります。


198 : MEMORIA ◆A23CJmo9LE :2015/10/08(木) 23:18:32 EfJAoGMA0

※以下の情報・考察をキャスター(操祈)と共有しています。
•アゲハ&セイバー(流子)、ルキア&ランサー(慶次)、善吉、カレン&セイバー(リンク)、タダノ&アーチャー(モリガン)、まどか&ライダー(ルフィ)、ほむら、ウォルター&ランサー(レミリア)の容姿と把握する限りの能力(ルフィについては伏せた点有)。

 サーヴァントならパラメータも把握。
•アゲハ、ルキア、善吉、カレンのこの地での住所、連絡先。

•アゲハはタダノを一撃で倒す程度の能力者である(暴王の月の存在)。
•ルキアは稲妻のような物を放つ能力者である(白雷の存在)。
•善吉の技能と『欲視力』。
•カレンは能力者ではないが、それなりに戦える人物である。
•まどかは強力な魔法少女となり得る才能がある。
•ほむらも魔法少女であり、操祈にダメージを与えることができる。
•タダノはサキュバスのようなものに耐性があるかもしれない。ただし耐久はアゲハに倒されるくらいで、人並みか。
•ウォルターは能力者ではないが、腕の立つ戦闘者。吸血鬼と何らかの因縁がありそう。

•ランサー、真名は前田慶次。巨大な刀が変形(真名解放?)して朱い槍になると予測。

 逸話、もしくは技能系の宝具持ちと予測。
•セイバー(流子)は『鋏』と『糸』がキーワードになる英霊。文明への反抗者と予測。

 二刀流の可能性を警戒。
•セイバー(リンク)は剣技や騎乗スキルに加えて結界、炎などの多芸さから『勇者』がキーワードになると予測。
•アーチャー(モリガン)は『サキュバス』と『分身』あるいは『もう一人の自分』がキーワード。

 リリム、あるいはリリト?それなら海、出血、原罪、天罰などが弱点で、子供は注意が必要。
 何かを撃ち出す宝具を持っているはず。
•ランサー(レミリア)は『吸血鬼』がキーワード。

 ただしその吸血鬼としての在り方はあまりにベタすぎる。無辜の怪物や幻想上のものの様な迷信に近い存在と予測。
 宝具であろう槍を警戒。日光は弱点になると予測。
•ライダー、真名はモンキー・D・ルフィ。ニューゲートの知り合いで能力者。

 キーワードを上げるなら『麦わら帽子』、『ゴムのような体』、『覇気』あたりか。

•刑兆はスタンド使い(バッド・カンパニーと言い、ビジョンも見せた)であり、多くの人物にスタンドを目覚めさせた経験がある。そのリスクなどについてそこそこ詳しい。
•ライダー(ニューゲート)とルフィは知り合い。能力者。
•キャスター(操祈)はアサシン、垣根帝督と同郷の超能力者で、垣根の方が上位。

 宝具(能力)は心を操ることで、対魔力で抵抗可能。

•能力を覚醒させる何か(PSI粒子)が学園、温泉近くにあり、それにより犬飼が学園都市の超能力に近いものを身に付けつつある。
•麒麟殿温泉は能力獲得時に頻発する体調不良を和らげる効能がある。
•魔力供給、対魔力、獲得のリスクに見る超能力、犬飼の能力(PSI)、スタンドの近似性。
•天上、天国に見る魔術、超能力、スタンドの近似性。
•アゲハ、ルキア他多数のスタンドでも超能力でもなさそうな能力者の存在。
•魔法少女という人型の願望器の存在。その才能を持つ鹿目まどかに、魔法少女である暁美ほむら。
•スタンドを目覚めさせてきた刑兆、学園都市の超能力者で『絶対能力進化』のことを知る垣根と操祈、『フラスコ計画』に関与した善吉など能力覚醒に関する参加者が多い。
•幻想御手(レベルアッパー)、虚数学区などの複数の能力者を束ねてなる超常の存在。
•不明金属(シャドウメタル)という、複数の能力者と天上が関わるであろう存在と、謎の磁性体である赤いテレホンカード。

→以上よりこの聖杯戦争はマスターを能力者として進化・覚醒させ絶対能力者(レベル6)『天之杯(ヘブンズフィール)』とし、サーヴァントも含めぶつけ合わせることで不明金属(シャドウメタル)を獲得。
 それによって『元いた世界へ行くテレホンカード』を『平行世界へ行く霊装』、『天上、あるいは根源へ行く霊装』、『英霊以上の超常の存在を連れて来る霊装』などに完成させようとしている、という予測。


199 : MEMORIA ◆A23CJmo9LE :2015/10/08(木) 23:19:13 EfJAoGMA0

◇  ◇  ◇

〜LEVEL5-mental out-〜

君と過ごした証は確かにここにある
溢れ出す気持ちを教えてくれたからこの世界がなくなっても、私はそこにいる

いつかいつか理想通りの明日になれば
私にだって笑ってほしい誰かがいるの

◇  ◇  ◇




あ〜、だるい♡
やっぱ熱っぽいと寝つきが悪いわねえ。
っていうか夢うつつとか白昼夢ってやつ?
もしかして熱にうなされて幻覚とか見ちゃってる?
さっきから黒いツンツン頭の男がやたら見えるんだけど♡



「交差点の食パン激突男」
「食パンは咥えてねえよ。そういや俺のケータイ、警備員に届けてくれたのお前だったのか。おかげで助かったよ」



そっちの小っちゃいの、どこかで見たような…?



「こんな陳腐な胸はお姉さまサポートの対照外だ。顔を洗って出直して来い」
「なぁんですってぇッッッ!!!?」



あれ?もしかしてキャスター?
じゃあこれはキャスターの過去って事?



「やばくなったらそいつを使えよ。ひょっとしたら、助けてやれるチャンスも増えるかもしれない」



「今にも泣きだしそうな女の子を守る側に立てりゃあ、こっちはそれで本望なんだよ」
「なら覚悟はいいな?ピエロ野郎」
「おうよ。テメェらこそ、死ぬ気でかかってきやがれ」



ふぅん、面白い事いうじゃない♡
伊介の好きじゃないタイプかなー♡
キャスターと同年代?若すぎるし。
んー、でもキャスターもしかしてこういうのにコロッと――


200 : MEMORIA ◆A23CJmo9LE :2015/10/08(木) 23:20:16 EfJAoGMA0

【A-4/麒麟殿温泉近くの宿/一日目・夜】


【犬飼伊介@悪魔のリドル】
[状態]疲労(中)魔力消費(微小) 微熱、PSIに覚醒、睡眠中
[令呪]残り三画
[装備]ナイフ
[道具]バッグ(学習用具はほぼなし、日用品や化粧品など)、ベレッタM92F(残弾12発)、コンビニで買った着替え
[思考・状況]
基本行動方針:さっさと聖杯戦争に勝利し、パパとママと幸せに暮らす
0.食蜂操祈に心を許さない。
1.ホテルで引き続きとって休養。
2.学園と家にはあまり近付かない。


[備考]
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』によってキャスターに令呪を使った命令が出来ません。
※一度キャスターに裏切られた(垣根帝督を前にしての逃亡)ことによりサーヴァント替えを視野に入れました。
※PSI粒子の影響と食蜂の処置により魔力量が増大。今後能力に覚醒するかは後続の方にお任せします。
→症状は現在完治とはいかないまでも小康状態にあります。
※祈操の過去を夢に見ましたが、その記憶は消去されました。



[共通備考]
※車で登校してきましたが、彼女らの性格的に拠点が遠くとは限りません。後続の方にお任せします。
※朽木ルキア&ランサー(前田慶次)を確認しました。
※人吉善吉、アサシン(垣根帝督)を確認しました。
※紅月カレン、セイバー(リンク)を確認しました。
※夜科アゲハ、セイバー(纒流子)の存在を知りました。
※洗脳した生徒により生徒名簿を確保、欠席者などについて調べさせていました。紅月カレン、人吉善吉、夜科アゲハの名簿確認済み。
※ライダー(ルフィ)を確認しました。
※ランサー(慶次)への絶対命令権を所有しています(宝具による)


【キャスター(食蜂操祈)@とある科学の超電磁砲】
[状態]ダメージ(大)、魔力消費(大)
[装備]
[道具]ハンドバック(リモコンが一つ)、アッシュフォード学園の制服
[思考・状況]
基本行動方針:勝ち残る。聖杯に託す願いはヒミツ☆
1.犬飼伊介を休ませる。
2.犬飼の体調が安定したら能力を試してみたい。
3.明日は図書館でサーヴァントや聖杯、世界改変について調べてみたい。
4.犬飼伊介には一応警戒する
[備考]
※高等部一年B組の生徒の多くを支配下に置きました。一部他の教室の生徒も支配下に置いてあります。
※ルキアに対して肉体操作が効かなかったことを確認、疑問視及び警戒しています。
※垣根帝督が現界していたことに恐怖を抱きました。彼を消したことにより満足感を得ています。
※人吉善吉に命令を行いました。後始末として『食蜂操祈』および『垣根帝督』のことを認識できなくしました。現在は操っておりません。
※ランサー(慶次)とセイバー(流子)の戦闘を目撃した生徒を洗脳し、その記憶を見ました。
 それにより、慶次の真名とアゲハの能力の一部を把握しました。流子の名は聞いていませんでした。
※まどかの記憶を見ました。少なくともインキュベーターのこと、ほむらの容姿、タダノとの同盟、ルフィの真名と能力を把握しています。他にどのようなことを知ったかは後続の方にお任せします。
※超能力を目覚めさせる因子の存在(PSI粒子)に気づきました。アッシュフォード学園、麒麟殿温泉の近くにあるとほぼ確信しています。
※ほむら、またはそのサーヴァントは情報収集の能力があると推察。重要事項は胸の内に秘めるつもりです。
※赤いテレホンカードの完成形はオティヌスの用いた『主神の槍(グングニル)』に近いものと考えています。
※伊介の能力を心理系(PSIでいうならトランス系)のものと予測しています。


※以下の情報を刑兆、ライダー(ニューゲート)と共有しています。
>>198
に共通


201 : MEMORIA ◆A23CJmo9LE :2015/10/08(木) 23:20:37 EfJAoGMA0

◇  ◇  ◇

〜LEVEL6-Accelerator-〜

降りしきる雪の中さまよい、傷つく君はもう独りじゃない

闇に包まれ、黒い温もり
体を任せて
流されていけ、流されるままに
もう何も見えない

◇  ◇  ◇

間桐雁夜は漆黒の夢の中にいた。
何も見えない。何も聞こえない。
ただ肌に触れる圧倒的な闇の圧倒的な密度を、重さとして感じる。
ここは何処だ――そう問いかけたところで思い出す。
以前にも、同じようなことがあったと。

バーサーカーのサーヴァント、サー・ランスロット。
かの男を従えていた時にもこんなことがあった。
あのサーヴァントの憎悪を駆らせる命を、血肉を削られた。
その憎悪の根源たる、黄金の剣を垣間見た。

今回もまた闇が像を結び始めた。

今契約を結んでいるバーサーカー。
その白い肌と赤い目の男が姿を見せる。




コンテナの並んだ倉庫街で、栗色の髪の少女に銃を向けられている。
それを嗜虐的に眺めるバーサーカー。
少女に追いすがり、殺そうとすると……一人の男が現れた。
黒い髪を逆立たせた少年。なぜか、龍を思わせる。
バーサーカーは圧倒的な力で、少年に勝つかと思ったが……少年の打ち放った右の拳に倒れた。




どこまでも続くかと思うほどの雪原で、また栗色の髪の少女と対峙している。
それは前にも白昼夢に見た少女だった。
その少女には、まったく手を出せないでいた。
電撃を放たれ、釘を打ち込まれ、蹴り飛ばされてもバーサーカーは抵抗しなかった。
だが、ついに一線を越えたかバーサーカーが荒れ狂う。
一瞬にして少女は宙を舞い……あとはあの時見た夢の再現だ。
それに怒り、狂い、嘆き、悲しみ、壊れたように高笑いして

黒い翼を噴出して、通りがかっただけの、かつて打倒された少年にまた向かっていった。
青のバーサーカー相手に見せた闘争に匹敵する激戦の果てに


バーサーカーは再び敗れた。


再び闇に覆われた。
しかしすぐにまた、バーサーカーが暗闇に浮かび上がる。
その背後には黒髪を逆立たせた英雄の姿があった。
その背後には栗色の髪の少女の姿があった。

英雄に背中を預けているのだろうか。英雄の背を追っているのだろうか。
少女を背に庇っているのだろうか。少女を背負って進むつもりなのだろうか。
あるいは……彼らのいる世界に背を向けているのだろうか。

やがてバーサーカーは雁夜にも背を向け、歩き始めた。
ついて来い、ということなのか。俺のようにはなるな、ということなのか。
狂戦士は語らず、ただ己の歩んだ道の一部を示しただけ。
ぽつりと、誰かの声が響く。



――何やってンだ、俺――


202 : MEMORIA ◆A23CJmo9LE :2015/10/08(木) 23:20:58 EfJAoGMA0

【D-4・間桐邸/一日目・夜】



【間桐雁夜@Fate/zero】
[状態]肉体的消耗(中)、精神的消耗(小)、魔力消費(小)、PSIに覚醒、睡眠中
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を取り、間桐臓硯から間桐桜を救う。
1.間桐桜(NPCと想われる)を守り、救う。
2.蟲の使役に注意する。
[備考]
※ライダー(ルフィ)、鹿目まどかの姿を確認しました。
※バーサーカー(一方通行)の能力を確認しました。
※セイバー(纒流子)の存在を目視しました。パラメータやクラスは把握していません。
※バーサーカー(不動明)、美樹さやかを確認しました。
※PSI粒子の影響と一方通行の処置により魔力量が増大しました。
※お茶は戦闘を行ったD-4の公園に放置してきました。
※PSI粒子の影響により身体能力が一般レベルまで回復しています。
※生活に不便はありませんが、魔術と科学の共存により魔術を行使すると魔術回路に多大な被害が発生します。
※学園の事件を知りました。



【バーサーカー(一方通行)@とある魔術の禁書目録】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:■■■■───
1.───(狂化により自我の消失)
2.マスターを休息させる
[備考]
※バーサーカーとして現界したため、聖杯に託す願いは不明です。
※アポリオンを認識し、破壊しました。少なくとも現在一方通行の周囲にはいませんが、美樹さやかの周囲などに残っている可能性はあります。


203 : MEMORIA ◆A23CJmo9LE :2015/10/08(木) 23:21:24 EfJAoGMA0

◇  ◇  ◇

〜狼は七匹目の子羊〜

あの日交わした約束の空は色褪せない

◇  ◇  ◇

仲間はみんな白い毛皮で、僕だけが黒かった。
そんな僕を皆気味悪がって僕を避けた。
ある時光の届かない闇の奥に、一匹の漆黒の狼を僕だけが見つけた。



「やあ、そこにいたのか。今からそちらに行くよ。
 鳴き声をあげて俺を喚んでくれないか。お前の声を頼りに闇の中を走っていくから。
 大丈夫、食べるのは白いのだけだ……白いのだけ……お前は喰わん」



何故だろう。
絶対的な死の恐怖を前に夢の中の僕は――
躊躇なく、鳴き声をあげ
彼を喚び
いつの間にか僕も狼に変わっていたんだ


204 : MEMORIA ◆A23CJmo9LE :2015/10/08(木) 23:22:02 EfJAoGMA0
以上で投下終了となります。
指摘などあればお願いします。


205 : 名無しさん :2015/10/09(金) 05:05:26 EF7/.djI0
投下乙です!
夢を通して綴られる、多種多様な主従間の関係が面白いお話でした
一部、夢の記憶を即時消去された方もいらっしゃいますがw
そして、最後の場面や慶次が胸に秘める覚悟が、ただの繋ぎに終わらない不穏さを醸し出していました
運命の火蓋が切って落とされる時も、遠くは無さそうですね…………


206 : ◆A23CJmo9LE :2015/10/09(金) 19:19:42 JVCh0u7E0
感想ありがとうございます。

落丁があったので修正です。このままでも通じてるっぽいですが、一応。
>>199-200
の間にあたります。





「はぁい、そこまでだゾ☆」

え?
なんで夢の中のあいつがこっちにリモコン向けてんの?

「言ったでしょぉ、乙女の記憶を覗き見るなんて野暮なんだゾ。
 どこから情報力が漏れるか分からないしぃ……というわけで、記憶を消去☆」

ちょ、待ちなさ――




「うん、これで見た夢の内容は憶えてない。
 それこそあの人の右手で触りでもしない限り、ね」



「体調まだ悪いんだから休んでてね☆
 にしても、注意力は払ってたんだけどぉ。まさか覗かれるとは思わなかったわぁ。
 もしかして能力はそっち系に才能があるのかしらぁ?」



「なんで夢の中で自由にできるのかって?
 明晰夢って知ってるかしらぁ?脳の一部が覚醒した状態で見る夢、夢と自覚して見る夢。
 ある意味で脳が起きてて体が起きてない金縛りの逆、みたいな?
 脳のプロであるレベル5が、記憶の流入なんて心の事象を心理のプロが気付かないわけないでしょぉ?
 ……もうぐっすり寝てるからこんな話しても有意義力皆無だけど」



「…まあ、実際この過去に土足で踏み入ってほしくないとか、ちょっと青春っぽくて気恥ずかしいっていうのはあるんだけどぉ。
 どこから真名の情報が漏れるかわからないのよ。
 あなたに魔術的な抵抗力なんてないんだから、魔術師に頭の中覗かれて私のヒントをゲット☆なんてなったら困るの」

まあ、能力抜きで頭覗かれるっていうのはあの年増女思い出して嫌な感じっていうのもあるんだけど。
これだけ伏せてるんだから、簡単に私の真名には至れない。
…もしわかるとしたら、それこそ垣根帝督のような顔見知り。
サーヴァントにまで至りそうなレベルだと

「御坂さん、かしらぁ。イラッとくるけど。
 あるいはそうね、あの人との再会なら基本的には大歓迎。
 …ああ、あと第一位とかなら文句なく一級の英霊でしょうね。絶対会いたくないけど☆」


207 : 名無しさん :2015/10/10(土) 02:32:38 Qixha3NU0
投下来てた!乙です!
おお、夢を通じて各主従の掘り下げと来たか…慶次とルキアに始まり、かの者らしき夢で終わる、大変見応えがありました。
しかしこう並べられて見ると、本当に関係性が連鎖したり重なったりしてる主従ばかりなんだな
ルキア組の今後の方向性と作戦会議も面白かったですが、慶次がぽろっとこぼした「自分が散った時」の言葉が切ない。サーヴァントとは、そういうものでしょうけれども…
明の夢を見たさやかちゃんもいいですね。デビルマンの顛末はまさに地獄だよなあ…
ルフィと白ひげは、これもまた少しずつ交錯しているわけか。今後の接触が楽しみです。


208 : 名無しさん :2015/10/10(土) 23:26:02 CKg9ayQY0
投下乙、とある組のサーヴァントたちの夢が切ないなあ
慶次とルッキャさんの関係性もすごくいい、それだけにいずれ来る別れが辛い
さやかちゃん、デビルマン世界の惨劇を見たのか…


209 : ◆wd6lXpjSKY :2015/10/11(日) 22:54:06 KnAubpms0
投下お疲れ様です!
改めて並んで見るととんでもないメンツが集まってんだなあ……w
夢を見て互いの理解が進んだ主従、夜が訪れ聖杯戦争はもう直二日目に突入と。
ほとんどの参加者が願いのために戦っているためこの中から脱落者が出るのは必然なんですよね。
伸ばした手がつかみとるのは聖杯か、何でもないただの藁なのか……。

短いですが私も投下します。


210 : 僅かな休息 ◆wd6lXpjSKY :2015/10/11(日) 22:56:21 KnAubpms0

誰にも罪は無いが、渋滞に巻き込まれると苛立ちが生まれてしまう。
罰を与えるわけではないが、一人の運転手は八つ当たりのようにクラクションを鳴らす。

「あーあー! さっさと進めや……」

悪態をつきながら一向に進まない前方の乗用車を見つめる纏流子。
邪魔なモンは斬る――そんな方針ではあるが、常識の範囲内では関係ない。
車から降りてぶった斬って道を空ける。そんなことが許されるはずが無い。無論、するつもりも無い。

「もう人吉の姿も見えなくなっちまったな」
「見えなくも何も最初から見えてやしねえだろ。
 なぁアゲハ。こっから人吉を見つけるってのは流石に無理がある」
「解ってるよ……これじゃあ橋の向こうに行ってる可能性もあるしな」

人吉善吉を捜索するために車を走らせていた夜科アゲハとセイバー、纏流子。
人形を使役するキャスターに連れ去られたようだが、完全に追跡するアテが無くなってしまった。

車を飛ばせば少しは姿を発見出来るかと思っていたが、まさかの渋滞に巻き込まれてしまう。
夜という仕事帰りの時間と重なってしまったこと。
もう一つは彼ら――聖杯戦争参加者が起こした戦闘の余波で交通規制が始まっていた。

麦わら帽子のライダーが一般人を気絶させてしまったこと。
他にも響く銃声や轟音は日常に似合わない不協和音であり、住民にとって大きな恐怖となっている。
一種のパニック現象に近い今、マスコミも多く集まっており自由に身動きが出来ない。

「なぁ纏。これ盗んできた車だよな?」
「当然だろ。あたしが車持ってる訳ないだろ」
「足が付いたら面倒だ。そこら辺に乗り捨てて、単車でも何でもいいから新しいのパクって帰るぞ」

助手席に座っているアゲハが提案した内容は正直に言って褒められるものではない。むしろ罪である。
しかし盗難届を出されれば警察が動き、拘束されるかもしれない。此処で車を捨てる判断は懸命である。
しっかりしていないようでしっかりしているような。勉強は出来ないが馬鹿ではないような。

(悪いな人吉……明日、またお前を探すからよ)

聖杯戦争に巻き込まれた夜科アゲハが最初に接触した他の参加者が彼、人吉善吉だ。
助ける、救うなどと自分の生命を肩入れしてまでの仲ではないが、黙って見捨てる訳がない。
一度ぶつかった男だ。もう他人ではない。この手が届くなら救ってやる。

(それでも見つからなかったら――俺は先に行くからな)

もしその手が届かなかったら、それは物語の分岐点である。
生きていることを願い、夜科アゲハはその足を進めるだけ。立ち止まってはいられない。
天戯弥勒を止めるために。仮初であろうがこの世界を救うために。


211 : 僅かな休息 ◆wd6lXpjSKY :2015/10/11(日) 22:58:32 KnAubpms0

脇道に車を滑らせ、ギリギリ車線が存在するかしないか程度の広さしかない小道を進む。
聖杯戦争の舞台は比較的都会であり、ちょっとした移動でも混雑で足を取られてしまう。

座席にだらしなく腰を預け、片手でハンドルを切りながら流子はルームミラーを調整する。
後ろから来ている車は無い。このまま大通りに合流すればすんなり帰れそうだ。

「なぁアゲハ。お前、魔力の貯蔵は充分か?」
「なんだよその言い回し……心配すんな。ちっともへばってないぜ?」
「そっか……ん! ならいいぜ、とっととバイクかっぱらって帰るぞ!」

先の戦闘ではアーチャー相手に苦戦を強いられた。予定よりも大幅に魔力を消費してしまった。
サーヴァントなるシステム上、自分の戦力はマスターに依存し、力を振るえば振るう程マスターを蝕んでしまう。

アゲハに対して流子は申し訳無さを、自分に対する情けなさを感じていた。
しかしそれは既に流れており、両者は通じあっていた。それでも気になる物は気になる。
人吉善吉の件もある。
なるべくアゲハに負担が掛かる事は回避したい……しかし彼は強い。或いは強く振舞っている。

なら必要以上に心配する必要は無い。
話題を勢いで切り上げた流子はアクセルを踏み込み、適当な駐車スペースに車をダイレクトに決める。
決めるとは駐車を行ったことを彼女なりの言葉で表現したものである。

「荒いぞお前!」

シートベルトで抑えられていた身体に重力が襲い掛かり、不満を叫ぶ。
当の本人である流子は特に反応もせずに扉を開けると、停まっていたバイクに手を掛ける。

「これなら走れるぞー」

するとカギも無いのにエンジンが掛かり、誰も触れていなかった無機の械に息吹が吹き込まれる。
ようはちょっとした魔力の応用で、自らのバイクになった。

「ったく……さっさと帰るぞ」

手を振る流子に対しアゲハはぶっきらぼうに扉を開け、彼女の元へ進む。
今日は色々なことがあり過ぎた。シャワーでも浴びて早く眠ろう。
そう思いながらバイクに跨り、若い男女は出発した。










『洗濯してもらいフブキにはアイロンも掛けてもらった。幸せだ』
「それはよかったな鮮血」
(ハンガーに掛かってる姿見てるとやっぱ服だよなコイツ……)

アゲハの家に無事帰宅した彼らは、彼の部屋に入り浸り適当に会話をしていた。
既にシャワーや歯磨きは済ましており、もう寝るだけと言った段階である。


212 : 僅かな休息 ◆wd6lXpjSKY :2015/10/11(日) 22:59:41 KnAubpms0

フブキ――アゲハの姉が昔使っていたパジャマを着せられた流子はアイスを食しながら学園の生徒名簿を見ていた。
単なる暇つぶしであり、特に意味は無い。

『流子、もう歯磨きをしたのに物を食べるのか』
『うるへーほ、ふぇんふぇふ』

まるで親子のような会話をしている流子達を無視してアゲハは窓から空を見上げていた。
仮初の架空世界でも星は美しく輝いている。
手を伸ばして掴み取れたらどれだけ強く輝いてくれるだろうか。星はどの世界でも輝いている。

(月が綺麗だな……今日は満月か)

雲一つ無い美しい月夜。
これで雨宮でも居たら良い雰囲気に……なんて考える余裕や発想出来るほど頭も回っていない。
とりあえず明日は学園に行く。其処にルキアが来れば改めて情報交換でも行うか。
人吉善吉は来るのか、来て何を話すか。紅月カレンとも接触するかもしれない。
そもそも天戯弥勒の手掛かりを掴まなくては……やることが多過ぎる。

(俺は結局何も手掛かりを掴めちゃいねえ……祭先生や影虎さんに笑われちまう。
 雨宮やヒリューにもボロクソ言われるだろうな……情けねえ、俺には帰る場所があるのに――っ)



「はああああああああああああああああああ!?」




「うるせーぞ! 纏!」
「なあアゲハ、お前アッシュフォード学園の生徒会長に会ったことあるか!?」
「あ……たしか鬼龍院皐月だろ? あるぜ」
「これ、あたしの姉さんだ……まさか姉さんも聖杯戦争の参加者に!?」
「いやあの人から魔力を感じなかったけど……姉妹なのに似てねえなお前達」
「うるせえ! んなことより明日はあたしも学園の中まで付き合うからな!
 NPCにわざわざ知り合いを用意する糞野郎の気持ちなんて解りたくも無いけど、一応姉さんの無事を確かめるからな!」

「はいはい……んじゃ電気消すから戻れ」

センチな感傷に浸っていた自分は何だったのか。騒ぐ流子を見てアゲハの弱い考えはぶっ飛んだ。
悩むなんてらしくない。道があるなら黙ってでも走る。それでいい。
纏流子に助けられた。考えてやっているならたいしたもんだが……どうなのやら。

電気を消したアゲハは窓を締め忘れていたことに気付き、鍵をかけた。



彼らは明日、学園で一つの噂を知ることになる。

『満月の夜に現れた巨人伝説』

今日の満月は一段と綺麗で、不気味であった。


213 : 僅かな休息 ◆wd6lXpjSKY :2015/10/11(日) 23:00:51 KnAubpms0



【B-4/アゲハ自宅/一日目・夜】



【夜科アゲハ@PSYREN-サイレン-】
[状態]魔力(PSI)消費(中)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を勝ち抜く中で天戯弥勒の元へ辿り着く。
1.寝て学園に行く。
2.人吉善吉捜索再開。
[備考]
※ランサー(前田慶次)陣営と一時的に同盟を結びました
※セイバー(リンク)、ランサー(前田慶次)、キャスター(食蜂)、アーチャー(モリガン)、ライダー(ルフィ)を確認しました。
※ランサー(レミリア)を確認しました。
※キャスター(フェイスレス)の情報を断片的に入手しました
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』により、食蜂のマスターはタダノだと誤認させられていました。
※アーチャー(モリガン)と交戦しました。宝具の情報を一部得ています



【セイバー(纒流子)@キルラキル】
[状態]魔力消費(中)疲労(中)
[装備]
[道具]
[思考・状況]
基本行動方針:アゲハと一緒に天戯弥勒の元へ辿り着く。
1.寝て起きたら学園に行って皐月に会う。
2.キャスターと、何かされたアゲハが気がかり
3.アーチャー(モリガン)はいつかぶっ倒す
[備考]
※セイバー(リンク)、ランサー(前田慶次)、キャスター(食蜂)、アーチャー(モリガン)、ライダー(ルフィ)を確認しました。
※間桐雁夜と会話をしましたが彼がマスターだと気付いていません。
※キャスター(フェイスレス)の情報を断片的に入手しました
※乗ってきたバイクは学園近くの茂みに隠してありましたが紅月カレン&セイバー(リンク)にとられました。
※アゲハにはキャスター(食蜂)が何かしたと考えています。
※アーチャー(モリガン)と交戦しました。宝具の情報を一部得ています


214 : 僅かな休息 ◆wd6lXpjSKY :2015/10/11(日) 23:01:30 KnAubpms0
投下終了dす


215 : 僅かな休息 ◆wd6lXpjSKY :2015/10/12(月) 00:02:05 q1XNHn0s0
投下お疲れ様です(セルフ)

前にちらっと言っていた放送、投下します


216 : CALL.2:満月 ◆wd6lXpjSKY :2015/10/12(月) 00:06:27 q1XNHn0s0

無音に包まれた主に灰色で構成されたつまらない空間。
転がっている瓦礫と削れているコンクリート。椅子や机は複数存在するが、人影は一つしか無い。

目立った存在と云えば、とある世界にありそうな生命維持装置――巨大なビーカーがある。
その中に液体ごと放り込まれたそれは大切に保管されているようだ。
聖杯戦争風に言及するならば何とも言い難い魔力を秘めている。

強い、凄い、強力、莫大、規格外、神域……どんな言葉で表現すればいいのやら。
神の欠片、聖杯に至る道標、魔力の結晶、絶対領域への進化……とにかく巨大で意味不明な抽象的な表現が似合うだろう。
色素のない世界で一際存在感を放つソレを大切にしているのが、始まりの男である天戯弥勒。

学園から帰還した彼は特に何も行動を起こしていない。
強いて言うならば定時放送を行おうとしているくらいか。外を見ている。

不気味なぐらいに輝いている満月を見つめた後、ビーカーへと振り返る。

「その力を存分に使えなかったのは残念だと思うが、あの状態のお前にはそもそも領域へ辿り着けないだろう」

誰に向かって話しているのか。この空間に存在しているのは彼のみであり、これは独り言。

「乗り遅れた者に明日を見る資格は無い。その場で朽ち果てることになる」

天戯弥勒が見つめるのは何かが保管されているビーカー。

「既に俺の計画は始まっている、乗り遅れた者のために止まることなどあり得ない。
 俺が、世界が領域へ辿り着くためにもお前らには礎となってもらわなくてはな……」

その横にあるもう一つのビーカーを見つめながら。

「今度こそ辿り着いて見せるさ。総ての獄を振り払った先にある、俺達が求める天へと、な」

液体と共に眠っている彼を、四肢を鎖で繋がれておりその生命の鼓動を感じないエレン・イェーガーを見ながら。

「俺の計画は絶対なる領域へ辿り着く……そのためにも計画を加速させてもらう」



  ◆  ◆  ◆


217 : CALL.2:満月 ◆wd6lXpjSKY :2015/10/12(月) 00:07:14 q1XNHn0s0



俺が勝手に決めた時間から丁度一日が経過した。
どうだ、感想は? お前らはその手を何色に染めたんだ?

赤い鮮血か、黒い絶望か、何も掴めない透明か?
お前らがどんな行動を取ろうが俺には関係ない。だが、願いを求めている癖に行動しない奴は帰れ。
一人、たった一人だがテレホンカードを行使して帰還したマスターが居た。
賢明な判断だったよ。致命傷を負えば優勝する確率は大いに減るからな。居ても殺されるだけだ。

そしてアサシンがまた脱落した。これで聖杯戦争に存在するアサシンは消えた。
元々戦闘能力に欠けるサーヴァントではあったが……無闇に前線に出て来たことが仇となったよ。

これで残る主従は十二組だ。
アサシンを除いた役職は六つ、それが各二体存在している。
この情報を聞いてお前らがどう動こうが自由だ。一つ言わせてもらえば夜は危険だろうな。


世界の針はもう止まらない。
お前らが足を止めても時間は待ってくれない。
永遠と続く戦争が無いように、聖杯戦争にもリミットが存在する。

最初に言い忘れていたがな。

それにしても今日は月が綺麗に見えるな。
まるで奇跡に縋っているお前らを嘲笑っているみたいだ。





今にも落ちてきそうなぐらいに――――――――近いうちに月がこの世界を破壊する。





※聖杯戦争の舞台である架空世界の月が【月@ゼルダの伝説ムジュラの仮面】になりました。
※放送以後、月には例の顔が浮かんでいます。
※現状で月に干渉する術はありません。
※NPCが月の変異に気付くのは三日目からです。今はただの月と認識しています。
※聖杯戦争参加者はもう気付いています。

※月は徐々に世界へ迫っています。世界が異変に気付くのは三日目からです。
※満月世界直撃崩壊予定は三日目の昼です(予定であり展開や進行によって前・後ろ倒しの可能性(大)です)

※放送によって強制的に目が覚めることはありません。寝ててもらって大丈夫です。起きたら記憶にある感じでお願いします。


218 : CALL.2:満月 ◆wd6lXpjSKY :2015/10/12(月) 00:08:27 q1XNHn0s0
投下終了です


219 : 名無しさん :2015/10/12(月) 12:36:55 1yr6hmcw0
おお、投下乙です!
アゲハ流子組の話、二人の描写がすごくよかったです
善吉に対するアゲハの思いも、アゲハらしく熱くてドライだ
鮮血とりゅーこちゃんの会話は和むなぁ この二者がやいのやいの言ってるとこは嬉しい
本編後なんだから、皐月様のことも大事な姉さんなんですよねりゅーこちゃん
それと、エレンの奮闘と夜の戦いが学校に新たな風説を生んでるのもよかった

それに加えて放送回!何気に重要な設定がどんどん明るみに出てきてますね!
繋がれたエレン、さらにはこの世界の月がムジュラの世界のものとは…破滅のリミットが示された今、聖杯戦争がさらに加速しそうで目が離せません


220 : 名無しさん :2015/10/15(木) 23:47:20 CMPqP.Uk0
投下来てたのか、お疲れ様です
アゲハたちはこの不良っ子同士なやり取りがいいですね
夜の激闘夢なりし後の学園に行ってどうなるかなあ
そして二回目の放送、弥勒の側の描写がかなりされててサイレン聖杯の深部に迫ってる感じです
ひとつ前の投下話で改めて示された通り、これだけ多くの作品世界のクロスオーバーがなされているからには相当のものなのだとは思っていましたが、まさかあの月が!


221 : 名無しさん :2015/10/16(金) 11:30:19 T/QMkBe60
ナチュラルに犯罪行為するアゲハさんたまんない


222 : ◆A23CJmo9LE :2015/12/08(火) 23:12:17 rHtTqBCA0
タダノヒトナリ&モリガン・アーンスランド
鹿目まどか&モンキー・D・ルフィ
浅羽直行&穹徹仙
それから念のために天戯弥勒も予約しておきます


223 : ◆A23CJmo9LE :2015/12/12(土) 23:49:57 gMtRFGKE0
半端なところですが、もうすぐ企画語りの時間のようなのでAパート投下します


224 : 未知との再会 ◆A23CJmo9LE :2015/12/12(土) 23:50:46 gMtRFGKE0

タダノヒトナリが目を開くとそこはかつて幾度も利用した設備であった。

「これは…医療用のポッド?」

悪魔との闘争で傷ついた体を癒す設備。
それが設置されているということはここは医療施設か。

「しかし、誰もいないな」

医療従事者はおろか、アーチャーも、ルーシー君たちもいない。
それに疑問を覚えるが、だからといって何故か緊迫することはなくふらふらとポッドを、そして部屋を出る。
なんとなく覚えのある廊下を歩き、一つの部屋に入った。

「ここは…開発用のラボか?」

また見覚えのある設備があった。
実験や道具、あるいは武器の開発などができそうな部屋だ。
棚を見ると悪魔の体の一部のような羽や角が保管されている。

「まさか…ここは……!」

やはり誰もいないラボを飛び出し、勝手知ったる足取りで走る。
たどり着いた部屋にはやはり誰もいないが、その内装で確信する。
司令室、だ。
その中央に設置されたコンソールパネルを操作しようとするが、反応はない。
……すると、背後に何者かの気配を感じた。

「やあ、邪魔をさせてもらっているよ、タダノヒトナリ君」
「……アーサーはいないが、君がいたか。なんとなくそんな気はしていた」

ルイ、と振り向きざまに呟こうとして言葉が詰まる。
そこにいた人物の容貌はおおむね予想通りだ。
金色の頭髪。
青い瞳。
惹きこまれるほど美しく、どことなく奔放さを感じさせる立ち姿。
だが予想と違って、少女でなく青年がそこに立っていた。

「君は…なんだ?」
「何か、ときたか。さすがに本質を捉えた問いをする。
 わたしと君は初対面であり、ちょっとした顔御馴染みでもある。
 今思い浮かべた名で恐らく正しい。おれはその名を名乗ることはないが」

そう言いながら周りを見渡し、壁や床を確かめる。

「やはりいい船だ。人の生み出した鋼の方舟。
 洪水を乗り越えた船でもこれには敵いそうにない。私も同じことを言ったと思うが」
「なぜこれがある?それに僕たちもなぜここに?」

この船は…レッドスプライト号はアーサーと共に、シュバルツバースに沈んだはずだ。
そして僕はここではない戦場いたはずだ。

「覚えはないか?かつて死に瀕した際、居るべきでない場所でいるはずのないものと話したことが。
 ……いや心に封がされているのか?だが憶えているはずだ。
 何もない部屋で、三人の男と向き合い、その後に悪魔を捉える力を手にしたことを」

見知らぬ部屋。
そしてヒメネスやゼレーニンも含んだ船員で向き合った、あの三人の紳士。
……悪魔召喚プログラム。

「先ほどまで君は少々命の危機にあった。初めて彼らと向き合った時のようにね。
 私は関わるつもりはなかったようだが、おれは君に少しばかり思い入れがあったのでな。
 こうして邪魔させてもらった」
「あれと同じ…ならここは」
「いわゆる霊の…精神の世界。平たく言えば夢のなかだ。
 それがなぜこの方舟の形をしているのかは何とも。
 私と君が初めて会ったのがここだったからか、あるいは君の心は未だにこの船に囚われているのか」


225 : 未知との再会 ◆A23CJmo9LE :2015/12/12(土) 23:51:07 gMtRFGKE0

囚われている、か。
否定はできない。
この船で、あの世界で失われたものはあまりに多く、大きすぎる。

「気持ちはわかる。おれもまた、君と同じだ」
「…同一性を提示し、親近感を抱かせる。典型的な詐欺師のやり方だな」
「おれを『ペ天使』呼ばわりはよしてほしいな。
 同じ経験をした同士だからだろう。君ならおれのことを理解してくれるのではないかと期待している。
 私のお気に入りである、多くの仲魔を従えた君ならね」
「お前が僕の何を知って――」
「おれはかつてこの手で親友と悪魔を合体させた。そしてその親友と敵対し、最期はこの手で殺めた」
 
!?
それは…!

「私から聞いたところ、君のそれは仕方のなかったことだと思う。
 おれはおれの欲望のために親友を悪魔に…いや悪魔人間に変えた。
 彼と共に世界を歩みたいと思ったから。彼を愛していたから。
 ……君はどうだ?悪魔と一つになった友人とまた共に歩みたいと思わないか?」

…ヒメネス。
決して長い付き合いではなかったが、それでもかけがえのない戦友だった。
ボーティーズやカリーナでは悪魔を引き付ける役を買って出、援護をしてくれた。
デルフアイナス奇病に侵されてなお僕に銃を向けることはしなかった。
そしてグルースで悪魔たちの潜む隠れ場にたどり着けたのは彼のおかげなんだ。
最後は引き金を引いたが、それでも彼も人類救済の立役者の一人であることに変わりはない。
僕があの時、装置とデモニカを繋いでしまったから……

「君も、おれの親友も神々を傲慢さの本質を理解していないんだ。
 生命の進化を妨げ、管理しようとし、思うようにならないなら滅ぼす在り方をおれは許せない。
 ……友を殺め、わたしは一つ反省した。神が人を、悪魔を滅ぼそうとしたの同じ愚行を犯してしまったのだと。
 悪魔を従えた君なら、悪魔と一つになったモノなら、 共に神を敵とし歩みたいと思うんだよ」

目の前の青年が右手を差し出した。

「おれの名はサ…いや、飛鳥了。共に神の軍団と戦ってはくれないか、タダノヒトナリ」

そう言いながら申し入れられた握手。
その手をじっと見つめ……
握手を、拒絶する。

「僕の望む世界は、かつていた皆と歩める世界だ。
 そこには彼女…天使となってしまったゼレーニンも含む。悪魔だけでは不完全だ」

見返した表情には怒りや失望が宿っているかと思いきや、視線には慈しむようなものが見えた。
しかしそれは僕に対してでなく、僕の向こうに誰かを見ているような……

「立ち塞がるのはやはり女か。まあいい。時期尚早だったようだ。
 いずれ答えが変わることに期待するさ」
「僕は人類に未来を託すと誓ったんだ。悪魔にも、天使にもこうべを垂れるつもりはない」

今は亡きゴア隊長に。アーサーに。
仲魔との共存はあっても依存はないと。
だがそれに対する答えはシニカルな笑みを添えて返された。

「面白いことを言う。ここ、君のいる戦場がどこだか分かっているのか?」
「聖杯戦争だ」
「そう。聖杯。では聖杯とは何だ?」
「万能の願望機」
「それだけではない。君は不都合なことから目を背けているぞ。
 聖杯はなぜ聖なる杯なのか?
 そしてこの戦場。とある地方都市や様々な世界の設備を再現した在り方に覚えはないか?」

思わぬ指摘に臍を噛む。
……考えてはいた。
だがそうだと思いたくはなかった。
ゴア隊長の考えたプランが正しければそれはあり得ないものだ。
もしそうならアーサーの犠牲は、ヒメネスを切り捨てた罪は、ゼレーニンを撃ち抜いた後悔はなんなのだ。
ましてやその果てに至った希望と呼ぶべきものが、奴らに由来するものだなんて。


226 : 未知との再会 ◆A23CJmo9LE :2015/12/12(土) 23:51:53 gMtRFGKE0

「おっと、そうまで深刻になるな。今の君は中立中庸。
 選択することで未来を変えるのはヒトの在りようだろう。
 どんな力も使いようだ。悪魔の力を持ちながら、ヒトとして振る舞う英雄がいるように……」

また慈しむような、懐かしむような目つきになって言葉を切る。
そして船の外――夢の中で外があるのかわからないが――に視線を向ける。
するとどこからともなく、聞き覚えのある声が響く。

「天戯弥勒……」
「時間だな。聞き漏らさないよう注意した方がいい」

夢の中であっても聞こえるのは念話やテレパシーの類だからか、アスカリョウがなにかしているのか。
…………内容はおおむね把握した。
戦端は進んでいるようだ。
しかし、リミット?

「ふむ、丁度いい区切りだし潮時だな。
 どうやら君の仲間も来ている。この通達を聞きつけたからか?
 また会おう、ヒトナリ。君はおれ達と共にある者だと思っている。
 魔王を従え、悪魔を宿す青年と神にも魔女にも成り得る少女とも手を結んでいる君ならね。
 ニンゲンらしく相談してみるのもいいだろう。君の協力者の伝手をたどり、おれについて知ってみるのもいいかもしれないな」

出口は当然わかるな?と見送るそぶり。
恐らくは降車デッキだろう。
もう話すこともない、と向かおうとするが

「おいおい、そんな装備で大丈夫か?人の英知の結晶を纏うのを忘れているぞ」

背後からかけられた声に反応すると、目の前にいつの間にやら自前のデモニカスーツがあった。

「そのスーツ……アップデート、いいやレベルアップの際に装着者のダメージをカバーする働きがあるな?
 ここの君はピンピンしてるが、実際の傷はすぐ治るものじゃない。着ておくことを進めるよ。
 仲間を通じて何らかの援護があれば、スーツのレベルアップもできるだろう」

それと手土産だ。
そう言って何かを手に取る。
一瞬猟銃かと思ったが、見覚えのあるサブマシンガンだった。

「一番いいやつ、とはいかないな。魔王の砲口はもっと自由にならねば扱えない。
 それに覚えがある方がいいだろう?『腐り爛れた国』で、こうして渡されたんじゃないか?」
「…マクレインのことか」

渡されたのはアバ・ディンゴM。
魔力を込めて放つことで風属性の弾丸を放てるマシンガンだ。
魔力抜きなら広範囲に銃弾をばらまくのに適している。
かつてデルフアイナス奇病――魔王アスラ――に侵された仲間を治療した際に礼として受け取ったことがある。
こんな形で手に入れるのは正直気が進まないが、背に腹は代えられない。

「私や悪平等はマナーのいい観客らしい。
 だがおれは観劇中もポップコーンを投げたり干渉するタチでね。
 かつて愛する人をヒトデナシにしたように、な」
「どうも君に気に入られるというのは、碌なことにならなそうで怖いな」

必要なので使いはする。
この武装も悪魔召喚プログラムと同じだ。
装備を整え、アスカリョウに背を向け歩む。

「方舟が来るぞ!」
「……」

背中にかかる声を無視する。
もう振り返ることはない。

「もうすぐ方舟が来る。
 神々が身勝手に引き起こした洪水から、傲慢にも選んだ種のみを生き残らせるための方舟が!
 ヒトナリ、君はどうする!?
 天使と共に神に媚び売り、方舟に乗らんとするか?
 悪魔と共に神を蹴散らし、方舟を乗っ取らんとするか?
 人の英知でもって、この船のように方舟を生み出さんとするか?
 あるいは新たな道を開いて見せるか?
 君の出す答えを、おれも、私も期待しているぞ!」

響く声を胸に、思考を巡らせ、降車デッキにたどり着く。
その扉をくぐり、船外に出ると眩い光が目の前に広がり――
――僕は病院のベッドで意識を取り戻した。


227 : 未知との再会 ◆A23CJmo9LE :2015/12/12(土) 23:52:23 gMtRFGKE0

「おお、起きたかヒトナリ!飯食うか?」

美味えぞー、と笑顔の男。
同盟者、ルーシー君がすぐ目の前にいた。

「…なぜ君が僕の病院食を食べているんだ?」
「! い、いや〜、なんのことかな〜?」

ふぃ〜、と下手糞な口笛を吹いている。
美味かったとか言ったのを忘れてはいないし、食べかすついてるし、誤魔化せると思っているのだろうか。

「まあ、あまり食欲はないから構わないと言えば構わないが」
「ホントか!?じゃあ全部食っちまってもいいか!?」
「ああ、好きにしてくれ」

してく、まで言ったあたりで手が伸び、即座に平らげるとは思わなかったが。
さすがに英雄か、大食の伝承はつきものだな。

「ところで状況を説明してくれ。どうしてこうなっているんだ」

まどかちゃんは無事なのか。
アーチャーはどこにいるのか。
病院らしいがここはどこなのか。

「んー?おれはさっきまで寝てたんだけどよ。
 なんかお前の近くにすげーでけー気配がしてさ、気になって来てみたんだ。
 女ヶ島の猛獣でもあんなのはいねーってくらい。
 でも誰もいねーんだ。どうなってんだ?と思ったけど近くにもいないみたいだし、いっか!ってことで飯食ってた。
 腹減っちまってさー。そしたらまたなんか別の声が聞こえてきたんでせっかくだから待ってた!」
「いや、それは……まあそれで重要な情報だが。直近のでなくて僕が倒れてからどうなったかを中心に――」

腹部に違和感が走り、言葉が途切れる。
橋で受けた一撃当然だが完調はしていない。
しかし軽い動作なら支障はなさそうな程度。
そういえば、と思い立ち服装を確認してみると、頭部デバイスはさすがにしていないが、デモニカスーツを着ている。
まさか医者が寝かせる際に着せるとも思えない。
目の前の男の言っていた巨大な気配のこともあり、ただの夢ではなかったと改めて確信する。
軽く部屋を検めるとアバ・ディンゴMも発見できた。

「…ひとまず聞きたいんだが、まどかちゃんはどうなった?」
「まどかならあっちで寝てるぞ」
「無事なんだな?」
「ああ。ケガもないし、大丈夫だ」

ひとまずの危機は乗り切れていたようで安心する。
あとは

「あの橋での顛末はどうなった?アーチャーの事も含めて」
「えーとだな。
 お前がやられてすぐにまどか攫った奴らは逃げちまった。
 で、そのすぐ後にまた誰か攻撃してきたんで、ほとんどぶっ飛ばしてやった。
 後はおれ達でお前ここに運んできたからわかんねーなー。
 あいつがすげー怒ってさ。こいつらは私がやるってんで任せてきた」
「なるほど。彼女が殿になって、負傷兵を連れて撤退か。足手まといになってすまない」

妥当な戦況判断だが、悔しさはある。
数的優位を失った彼女が、そもそもあの騒ぎはどうなったか。
令呪と繋がりはまだ感じる。
彼女が戻っていないのは、苦境なのか、また勝手に出歩いているだけなのか。

『アーチャー…アーチャー、聞こえたら返事をしてくれ』
『あら、タダノじゃない。よかった、起きたのね』

念話を送るとすぐに返事が来る。
声の調子も、魔力の消費的にもさほどまずい状態ではなさそうだ。

『今、どこで何をしている?できれば合流して欲しいんだが』
『今?うーん、そうね。あの学園の近く…なんだけど。
 もう学園って呼んでいいのかしらあれ。ほとんど廃墟よねえ』

学園、というとあそこか。戻っている。
深追いしたのか、放浪したのか。
いずれにせよ、また刹那的に動いたのだろう。

『もう慣れてきてしまったな……
 理由とか廃墟がどうとか気にはなるが、とりあえず君の速度なら労せず合流できると思うが難しいのか?』
『独断で動いたのはごめんなさいね。あの小娘を見つけて、居ても立ってもいられなくって。
 それにあなた、間がいいのか悪いのかよくわからないのだけど』

悩むように、言葉を選ぶように一泊置く。

『丁度今、白い髪のキレイなサーヴァントといい雰囲気になったところよ』

そうして紡がれた言葉はどことなく覚えのあるもので。
単独行動中にまた面倒を引き起こしたと察して余りあるものだった。


228 : ◆A23CJmo9LE :2015/12/12(土) 23:54:57 gMtRFGKE0
短いですがここまででいったん投下を終了します。
明日が休日出勤じゃなければ頑張って語り中に仕上げたのですけど、続きは鋭意執筆中ということで予約期限一杯お待ちいただければ。

このパート中でも指摘などあればお願いします


229 : 名無しさん :2015/12/14(月) 02:56:23 PpIPSzUw0
おお、予約来てたのか…というか語りだったのか…気づかなかった!
乙です!
ヒトナリの掘り下げ回…いや、いるだろうなとは思ったがこいつが来るか…人、悪魔、そして天使と二人の間で往還する言葉が印象的だ
ヒトナリの回想と、彼なりの答えが熱い
この聖杯、弥勒以外にもあれこれの連中が関わってるんだな
目覚めて即のルフィの飯には吹いたwでも、いい感じの関係築いてますね
続きも楽しみにお待ちしてます


230 : 名無しさん :2015/12/15(火) 18:25:02 gG6Af4Iw0

主催が天戯で天使や悪魔、悪平等が暇つぶしに観戦してるっぽいね


231 : ◆A23CJmo9LE :2015/12/15(火) 21:02:08 X6enQfFc0
延長をお願いします


232 : 名無しさん :2015/12/16(水) 23:55:50 4.SrwqgE0
ひとまずの投下、お疲れ様です
今回、ある意味でこの聖杯に関わる舞台裏のあれこれが明かされた気がするぞ…いやまあ、いるとは思っていたけど飛鳥了。
安心院さんたちも彼の言う「観客」の一人なのか。
そして、何より『タダノヒトナリ』の掘り下げ回でしたねー。彼と了とのやり取り、彼がかつての友や戦いを重ねながらそこで出した答えがいちいち胸に来るなあ。
「未知との再会」ってタイトルも印象的


233 : ◆A23CJmo9LE :2015/12/22(火) 23:57:09 U9XQq7Wo0
延長までしたのに申し訳ありません。
間に合いませんでした……
ただ一部だけ投下して破棄というのも無責任ですし、3日ほどロスタイムを頂けないでしょうか。
ご迷惑かけて本当に申し訳ない……
その休みを利用できればなんとしても書き上げますので

ひとまず上がったところまで投下しようと思うます。
ただ、かなり問題作ですので、現時点で通せないと◆wd6lXpjSKY氏が判断するなら、先日投下した「未知との再会」部分も含めて破棄、あるいは改めて時間をとって修正というのも私は受け入れます


234 : 翼をください ◆A23CJmo9LE :2015/12/22(火) 23:58:44 U9XQq7Wo0

時は遡る。
とあるビルの屋上にたたずむ人ならざる美女と、どこにでもいるような少年。
モリガン・アーンスランドと浅羽直行。

「どうかしら?共闘のお願い、受けてもらえない?
 悪い話じゃないと思うのだけれど」

正面に立ち顔を覗き込み、念を押すように囁きかける。
美しい目鼻立ち。
香り立つ色香。
吐息交じりの声。
さりげなく肩に置かれた手。
息を乱し、呑み込んだ自分の唾液さえもが甘露。
五感の全てに甘い香りが絡みつき、思考が鈍化していく。
全てがどうでもよくなっていく。
流されてしまえ、と胸のうちの獣が雄たけびを上げる。
冷静になれ、と頭のどこかで囁いているような気がする。
しかしそんなちっぽけな理性を獣性が押しのけるかのように、肯定の声を上げようとするが

バタン!と大きな音が響く。
扉を蹴り開け、遅れたが穹徹仙が合流した。

「荒っぽいわねえ。霊体化すれば開ける必要もないでしょうに。
 そういうの、嫌いじゃないけれど」
「いきなり男を攫って、あげく誘うような女性にたしなめられてもね」

軽く呼吸を整え、武装を構える。
仮初とはいえ主を攫った相手にいい印象は当然ない。

「待っていてくれ浅羽君。今、助ける」
「あら、怖い。荒っぽいわね、あなたのサーヴァント。
 戦うつもりはないって、あなたからも言ってあげて頂戴」

背後から浅羽の躰に手をまわし抱きしめるモリガン。
耳元で感じる声と全身で感じる柔らかさにただでさえ平静でない浅羽はさらに体温を上げる。
穹は首元に回された手に穏やかならざるものを感じ、より冷たい視線を向ける。

「あ、アーチャーさん…」
「何だい?」

掠れた声で懇願するような主人の様子。
習得したてとは言え念話もできるようになったのに、言葉を発するのはあまり戦略的に賢くない。
にもかかわらず肉声であり――穹の念話での呼びかけにもレスポンスを返さない。
何らかの精神的、あるいは魔術的な異常状態。
そして自身もまた僅かながら尋常ならざる精神状態にあるのを自覚し、女サーヴァントを観察する。

(翼による飛行。頭部にも翼のようなものがある。
 人外の異形……昼に公園で見た美樹さやかのサーヴァントにどことなく近いか?何より――)

美しい――
人ならざる在り方に魅入られる。
視線が胸元や口元に引き寄せられ、呼吸も乱れる。

(見た目通りの、男を惑わす魔の類か。浅羽君も、それに僕も平静ではないな…)

文字通りマスターを握られている状態で、さらに魅了。
クラス補正程度の対魔力では無効化できず、この地で今まで魅了された者たちのように正気に戻してくれる誰かもいない。
その状態で、モリガンからの提案を受けた浅羽が言葉を発する。
……湯だった頭で、彼女の誘惑を受け入れて。


235 : 翼をください ◆A23CJmo9LE :2015/12/22(火) 23:59:05 U9XQq7Wo0

「こちらの女性…えっと」
「アーチャーよ。私も、アーチャー。お揃いね?ふふっ」
「あ、はい。アーチャーさんはキャスターを倒すために協力しようって」

浅羽から発せられた言葉は予想した中ではかなりましなものだった。
もしやる気なら、とうに浅羽は殺されている。
それにマスターを人質に露払い扱いしないだけ有情と言えよう。

「君もアーチャーならキャスター相手に組もうというのは少し分かりかねるが?」
「単独ならこんな話しないわよ。厄介なサーヴァントと一緒にいるの。長物持ちだからランサーかしら?」
「僕らにそれの相手をしろというわけか」

状況的に不利な要求をされると予期するが、モリガンはそれを訂正する。

「いいえ。あなたたちにはキャスターの方を仕留めてほしいのよ。
 強いお爺ちゃんは私がやるわ。彼とは昼に一度闘ってるんだけど、その決着をつけなきゃ」

獲物は譲らない。
キャスターを狙うのは、闘争を愉しめない形に貶められるのを避けるためなのだから。
楽しめる闘いを逃してなるものかと、肉食獣の笑みを浮かべる。

「……察してはいたが、かなりの好きものだな君は」
「サーヴァントですもの。色事も戦いも、英霊なら少なからずそういう面はあるでしょう?
 で、悪い話じゃないでしょう?ちなみにキャスターは大したものじゃない。
 少なくとも体運びは完全に素人。私のマスターの方が、単純な力比べなら強いかも」

こうした詳細を浅羽が考えてまでこの状況に至ったのかは甚だ疑問だが、信じるなら悪条件ではない。
それだけなら、受諾してもよいかと思える。

そんな思考を裂く声が、響いた。

「あら、また主催者さん。お昼振りね」
「天戯弥勒。精力的なことだ」
「さっきまで――――」

浅羽が口にしようとした言葉を一睨みして黙らせる。
やたら情報は漏らすものでもない。
幸い話の方に聞き入って、こちらに意識はさほど向いていなかったか聞きとがめられることはなかった。
通達を聞きながら穹はかつて学園であった場所へ、モリガンはどことも知れぬ方角へ視線を向けていたが、それが終わると浅羽も含め全員の視線が空へと向かう。

「……私の知っている月は、もっと美しかったんだけれど」
「これじゃあ漱石の訳に誰も同意はしてくれなそうだね」

見上げた月に映る顔。
その顔が迫りゆくリミットを告げる存在であると、全員が察した。

「時間がないわよ?協力してもらえないかしら」
「そうだね。わかったよ。ちなみにキャスターの居所はどのあたりかつかんでいるのか?
 今から殴り込み、というには問題あるところなら一休み入れたいが」
「海の方角。温泉街で確認しているわ」
「もう一度確認するが、キャスターは大したものじゃないと」
「ええ。私は強いサーヴァントと、したいのよ」
「……そうか。君は自分の快楽のために戦うのか。それなら納得だ」

す、と右腕を差し出し、握手を申し込む。

「僕からは名乗っていなかった。アーチャーのサーヴァントだ」
「ええ、よろしく」

浅羽の背後から抱きしめるように回していた腕を放して、握手に応じる。
すると穹はダンスをリードするように、抱きとめるように軽く腕を引き寄せ
――――屋上から地面に向けて、モリガンを全力で投げ飛ばす。


236 : 翼をください ◆A23CJmo9LE :2015/12/22(火) 23:59:34 U9XQq7Wo0

「え!?アーチャーさん!?」

驚く浅羽をよそに追撃。
落下する彼女に対して二矢、投擲。
翼を広げ、それを回避されると、そこに向けて穹自身の肉体を矢として放つ。
重力も加え加速した突進で飛翔を許さず、モリガンを地面にたたきつける。
しかしモリガンはその勢いを翼による抵抗で抑え、ダメージを回避。
地に背をつけ、反動をつけた蹴りで吹き飛ばす。

「ちょっと情熱的が過ぎるハグね?」
「天にも昇る心地だろう?いや、君には衆合地獄あたりが相応しいかな。
 夜も遅いし……俺が送ってあげよう」
「そう。決裂ってわけ。残念ね、友達になれると思ったのに」
「そうだね。もしこれが人類を救うため、なーんて大義ある戦いだったら轡を並べるのも悪くはなかった」

二間ほどの距離をとりにらみ合う。
互いに弓兵、間合いを読み違えれば敗北に繋がる。
モリガンは撤退を考えじりじりと距離を開け、穹は逃がすまいといつでもダーツを放てるよう構える。

『アーチャー…アーチャー、聞こえたら返事をしてくれ』
『あら、タダノじゃない。よかった、起きたのね』

モリガンの脳裏に声が響いた。
眠っていたであろうマスターの復活に、声が僅か喜色に染まる。

『今、どこで何をしている?できれば合流して欲しいんだが』
『今?うーん、そうね。あの学園の近く…なんだけど。
 もう学園って呼んでいいのかしらあれ。ほとんど廃墟よねえ』

先ほど視線を向けなかった方角へ僅かに意識を裂く。
しかしすぐに目の前の敵と、周囲からの横槍を警戒するに戻る。

『もう慣れてきてしまったな……
 理由とか廃墟がどうとか気にはなるが、とりあえず君の速度なら労せず合流できると思うが難しいのか?』
『独断で動いたのはごめんなさいね。あの小娘を見つけて、居ても立ってもいられなくって。
 それにあなた、間がいいのか悪いのかよくわからないのだけど』

告げていいものか、若干の後ろめたさを憶えるが警戒の対象の特徴を告げる。

『丁度今、白い髪のキレイなサーヴァントといい雰囲気になったところよ』

するとタダノが自らと視覚を共有する感覚が走った。

『あれか。近接ステータスはそれなりだな。しかし魔力値は優れているとはいいがたい。
 それに……ゴムかあれは。あとダーツ。神秘の薄い、近現代のサーヴァントだな。クラスは?』
『アーチャーと。武装的にも間違いないでしょうね』

見えない駆け引きを続ける二騎のアーチャーをよそに思考を巡らせるタダノ。
自身とサーヴァントの消耗。敵の戦力。今後の展望。

『敵マスターは?』
『離れてる。仮に来ても戦力外』
『君のコンディションは?セイバーと戦ったと聞いたが』
『撤退戦なら何の問題もないわ』

令呪を使ってまで離れる必要はない、と言外に言い含めるモリガン。
戦術的な物言いよりもプライドの問題だろうが、それもまた材料として考え……タダノは決定を下した。

『ルーシー君、そこの栄養点滴をとってくれ……そっちじゃない、その透明な液が入っているパックだ。
 違う、それは尿瓶だ!そっちのチューブがつながっている方!』
『え?』
『ああ、すまない。こっちの話だ。アーチャー、君は闘ってそのサーヴァントを倒してくれ』

まさかの指示に目を見張る。
先の戦闘では撤退を指示したが、ここにきて強気になったか。

『通達通りなら急ぎ始めた方がいいだろう。事情も変わった』
『あなたの方は大丈夫なの?』
『病院にいる。手当は受けたし、装備で補っている。
 むしろ僕を労るなら、僕の魔力を使い、敵を倒してくれた方が助かるんだ。
 幸いブドウ糖の点滴があるから、多少消耗しても疲労で倒れる心配はない』

完治はしていなのでは。
無理はしなくてもいい。
そんならしくない言葉が口をついて出そうになるが、続くタダノの言葉にぐうの音も出なくなる。

『それに、そいつは天然ものだろう?かの魔王モリガン・アーンスランドが、据え膳を逃すなどあっていいのか?』

ゾクリ、と背筋が震えた。
この堅物のマスターはこんな科白も吐けるのか、と。
畏怖と、歓喜と、恍惚に全身を染めて、開戦。
ちまちました駆け引きをやめ、刹那に距離を詰める。


237 : 翼をください ◆A23CJmo9LE :2015/12/23(水) 00:00:47 qVq/BJTk0

「遊んであげる…!」

腰が引き気味だったモリガンの突撃に僅かひるむ穹。
しかし即座に矢を放ち、迎え撃つ。
その矢を低空をすべるように飛行して、制空権を犯す。
姿勢を起こし様に後ろ回し蹴りを放つが、それを受けつつその衝撃を利用して今度は穹の方が距離をとる。
続けざまに牽制の射。
一矢撃ち、二矢投擲。
モリガンはくるりと舞うようにそれを躱し、翼でもって宙に浮かぶ。

「やる気になったか。その方が外見通り悪魔らしくていい」
「ええ、あなたの望み通りに相手してあげる」
「望み通りはそっちだろう?誰のためでもなく、ただ戦いのために意味なく戦うのなら、僕が無意味に消してやろう」

僅かに距離を置き、視線が交錯。
互いに必殺の間合いに入った。

「ソウルフィストッ!!」
「しっ!!」

光弾。
射撃。
両弓兵の矢が、時に交差し、時に衝突し、風切り音を鳴らす。
弾けた欠片を、それた弾丸を互いに回避し、時に撃ち落とし、一定の距離を保つ。
射の腕は概ね互角。
しかし、地の利……いや天の利がモリガンに味方する。
翼を振るわせ、空を舞う。
上方よりコウモリ状の弾丸をわずかな動作で打ち放つ。
時折電線や建物が軌道をふさぐが、同じ轍は踏まない。
刹那霊体化することでそれを躱し、さらに流れ弾により少しづつだが空より障害物は減る。
対する穹に地の利は味方しない。
時に駆け、時に身を投げ、回避と構えの動作を最低限に。
強靭なゴムを引き、ダーツを放つ。あるいは肉体を弓とし、投擲する。
敵の軌道を邪魔するように放つが、二次元的に動く自分に対し、敵は四方八方自在に翔ける。
敵の光弾を躱せば足場は弾痕に乱れ、倒壊した電柱やコンクリートブロックが少しづつ足元を脅かす。
長期戦は穹に不利になりつつあった。

「まるで天に唾するようね。そうは思わない?」

悪魔(きょうしゃ)は口にする。
無為な抵抗だ、と。

「人が獣に勝利を掴み、霊長の頂点となったのはリーチが長かったからだ。
 そして神が死んだのは、それを落とす文明があったからだよ」

人類(じゃくしゃ)は口にする。
ケダモノを落としてこそ弓兵だ、と。

互いにふ、と小さく笑い闘い続ける。
しかしそこに乱入者。

「はぁっ、はぁっ…あ、アーチャーさん!」

ビルの一階部分、出入り口に浅羽直行。
屋上からやっとの思いで駆け下りてきたために息を切らし、アーチャーに呼びかける。
一瞬二人の意識はそちらに向く。
そして二人はほぼ同時に動いた。
穹は浅羽のもとへと駆けながらモリガンに向けて矢を放つ。
モリガンは右腕の光弾を建物に撃ち、左腕から穹に放ち、足を止めようとする。
そして、急速に滑空。真っ直ぐに浅羽の方へと翔ける。
穹の矢が外れ、ソウルフィストがビルへと着弾。
粉塵が辺りを覆い、光弾の影響もあり、コースを変えざるを得ない穹。
その差に先んじ、モリガンが浅羽の前に立った。

瞬間、浅羽はメスに食われるカマキリの気持ちを理解した。
蠱惑的な笑みを浮かべ、こちらに手を伸ばすモリガンが目の前に。

――――そして地に伏せ、鷹のような眼でモリガンを狙う穹が視界の隅に。

「読んでいたよ。浅羽君が顔を出せば、君はそちらに飛びつくだろうとね」

声がかかり、浅羽の視線を確かめ、反射的にそちらに体を向けるモリガン。
それもまた狙い通り、と矢を握る指に力がこもる。
僅かながら下方から角度をつけて射抜けば、浅羽に当たる心配もない。
こちらを向いてくれれば狙いもつけやすい。
心臓を、もらい受ける。
狙いはとうに定めた。
あとは射つのみ。

放たれた矢は真っ直ぐに、モリガンの左胸へと向かう。


238 : 翼をください ◆A23CJmo9LE :2015/12/23(水) 00:01:13 qVq/BJTk0
――――しかし、まるでその矢がどこに来るか予期していたかのように紙一重で回避するモリガン。
反撃とばかりに唇に指を添えてベーゼを投げる。

「今夜は眠らせないわよ」

ベーゼと共に唇からハート型の光弾が放たれ、真っ直ぐ穹のもとへ。
さほど速くはないが、射のために地に伏せていた穹はそれをまともに受けてしまう。

瞬間、彼はケダモノとなった。
受けた光弾はモリガンの魅了の魔力の結晶のようなもの。
無抵抗にそれを受けてしまえば、抗える男は悟りに至った救世主くらいの者だろう。
理性を失い、しかし同時に過ぎたる美に硬直し動きが止まる。
そこへモリガンが突撃。
身に纏ったコウモリと魔力が形を変える。
桃色のベール状となって周囲を覆い、他の介入を許さない淫靡な空間を作り上げる。
中に残されたのは一人の男と女。

全てのコウモリが離れ、一糸纏わぬ姿となったモリガンを前に全身を固くするしかない穹。
芸術品のような高貴さを感じる美しさではなく、男を堕落させる魔性の美。
近寄りがたく眺めていたいものでなく、むしゃぶりつき汚したくなる衝動が沸き起こる。
英雄ならぬ、反英雄の在り方。女神の美でなく淫魔の美。
その瑞々しい肉体が歩み寄るのを呆けた頭で眺め…………
魔王に抱かれるのを、受け入れた。

指と指が絡む。掌で感じるなど、知らなかった。
脚と脚が絡む。その刺激で、彼の男が小さな死を迎えた。
躰と躰が絡む。意外と鍛えられている、などと見当はずれの感想を抱く。
舌と舌が絡む。体内の水が全て奪われるのでは、というほど激しい口づけ、その刺激でさらに体中から水分を吐き出し
精も、根も貪りつくされた。

「堕ちたかしら?永遠の眠りに。おやすみなさい、素敵な夢を……フフッ」

倒れ、粒子が散りつつある穹に背を向け、桃色のベール状となった魔力を再びコウモリのごとき衣装として身に着ける。
ピロートーク染みた上気した表情と声色で、思い出になってしまった男とのひと時を思い返す。

「私相手に必死になって飛び道具を打つオトコって、ココを狙うことが多いのよね」

心臓の上、左胸を軽く握る。
柔らかく形を変えるそれに視線が刺さる気配。

「心臓を狙って?体の中心は躱しにくいから?それとも、そんなにここが気になる?」

艶美な笑みを浮かべながら問いかけ。
浅羽に向けたものか、倒れた穹に向けたものか、あるいはタダノに向けたものか。
誰も答えはしなかったが。

『勝ったようだな。さすがだ、アーチャー』
『ありがとう、タダノ。ところでどこまで見ていたのかしら?あなたなら、エターナル・スランバーの最中も覗けたと思うけど?』
『人の情事を覗き見る趣味はない。盛り上がっているところ申し訳ないが、まだマスターの少年が残っているな?』
『ええ、そうだけど』

改めてそちらに視線を向ける。
呆然としていた。
己のサーヴァントの敗北を目の当たりにしたためか、あるいはいまだ魅了に囚われたままか。

『その少年も、喰らえ。アーチャー』
『へえ』

それに対しタダノは冷酷な指示を下す。
それを聞き、モリガンは愉しそうに笑う。

『意外ね。そんなこと言うとは思わなかったわ。勿論私は構わないんだけど。
 天使のように冷徹で、悪魔のように大胆で。とっても好み』

――ニンゲンだから、仕方ないんだよな。悪魔より恐ろしいニンゲンなんだからよ――
かつてかけられた、皮肉のような、賞賛のような、侮蔑のような友の言葉。
それを思い返し、目を閉じる。

『僕は、あくまでただの人間さ。勝つために手段を選ぶことのできない、弱い人間だ。
 ……少し訂正する。君がその少年を食らうことで勝算が増すなら、やってくれ』
『それなら安心していいわよ。彼の魂は無駄にしないから』

NPCよりは格段に上物だ。
なにやら奇妙な質だが、たしかな魔力も感じる。
抗魔力はほとんどないようだから、あらゆる意味で未熟なようだが。

(さすがにあの坊やじゃサーヴァントほどタフじゃないでしょうけど。
 デザートには青い果実も悪くないでしょ)

ちろり、と舌なめずり。
ごくり、と喉を鳴らしたのはどちらだったか。
もう一歩で手が届く。


239 : 翼をください ◆A23CJmo9LE :2015/12/23(水) 00:02:00 qVq/BJTk0

「去れ、悪魔よ。彼への手出しは私が許さない」




そこへ介入する者があった。
白く、丈の長い、どことなく神秘的な装い。
特徴的な、目の周りを覆う白いマスク。
黒い一対の、猛禽類のような翼。
頭上に光る光輪。
それが浅羽とモリガンの間に立ち塞がり、はっきりとモリガンに敵意を向けていた。

「天使……!そう、さっきから嫌な匂いがすると思ったらあなたがいたの」

通達が聞こえたあたりから様子を窺っていたのか、妙な気配だけは感じていた。
あのサーヴァントも薄々気付いていたようだが、お互い目の前の敵に集中していたら、このタイミングで。
それに邪魔されたことにいら立ち、さらに相手がよりにもよって秩序を強制するものであると知り、美しい顔を歪ませる。
そしてモリガンを視界を通じて状況を把握しているタダノも驚きを覚えた。

『マンセマット…!』
『知り合いかしら?』
『見知った顔だ。かつて僕の仲間を一人天使に変えて、僕と殺し合わせた奴さ』
『つまり、敵ね。よかったわ。あなたが天使の味方でなくて』

誘うような手つきだったが、それを排他的な拳へと変える。

『悪いけど、さすがにアレは食べないわよ。ゲテモノ食いの趣味はないの』

排除するのみ。
そう考え戦闘態勢に移行する。
消耗はしたが、それ以上に補った。まだやれる。
距離を詰め一息に仕留めようとするが……背後に気配。
天使もまた驚いたように視線を向けているのを見て、背後を振り向く。


240 : 翼をください ◆A23CJmo9LE :2015/12/23(水) 00:02:44 qVq/BJTk0



穹徹仙が、消えかけた体で立っていた。



「水龍なき今でも、まだ……零れ落ちる水を…掬い取るくらいはできるんだ……!」

体液に溶けた魔力を奪われまいと、激流の一滴だけだが内に残した。
そして弓兵の特長、単独行動。
霊核を失っても短時間ならば行動を可能にするそれも加わり、瀕死の穹徹仙を辛うじてこの世に残していた。

「タフね。いいわ、あなた。本当にいい……
 ねえ、改めて協力しない?あの天使を敵にするために」

それを見てモリガンは心底嬉しそうに、愉しそうに笑う。

「今ならまだ、私から魔力を返されれば残れるわよ。
 もし協力してくれるなら、もう一度この口から、あなたに魔力を返してあげるわ」

欲しいでしょう?
現界するための魔力はもちろん、それを返す行為が。
唇に指を当てて言外に問う。
誰もが飛びつくような、あらゆる意味で魅力的な提案だ。
だが穹は睨んで返す。
そんなことに構ってはいられないと。

(この悪魔につけば、浅羽君はいずれ骨抜きにされてしまう。
 気に食わないが、俺も危ない。今も、知らず魅了されていたようだ。こいつとは、組めない。
 あの天使も同じだ。見ていたならなぜ俺がこんなになるまで放っておいた?
 邪魔だからだ。浅羽君をものにするのに、俺は邪魔でしかないからだ。
 あいつにも浅羽君は任せられない)

残された魔力は雀の涙。
もはやしゃべる体力も魔力も惜しい。
……念話も魔術だ。行使する余裕はない。
ならば、最期にこれだけ。

「浅羽君!病院で美樹さやかと合流しろ!
 彼女の悪魔憑きなら信用できるはずだ!」

実際のところは分らない。
だが他に頼る当てもない。
走馬燈に姿を現した彼女たちしか。
三騎士ではない。暗殺者は全滅した。騎兵でもないだろう。魔術師が殴り合うものか。
ならば彼は、悪魔を宿した狂戦士。
しかしあの技巧はヒトのものだ。
あのサーヴァントは悪魔でありながら、人でもあるようだった。
異端児というのはどこでも排他される。
この天使も、この悪魔もアレは敵にする可能性が高い。
それに美樹さやか…彼女は悪い人じゃなさそうだったから。

……思い悩んでも仕方ない。
今僕ができる務めは、この悪魔と天使を殺すことだ……!

悪魔も、天使も、人より長い歴史を積んでいるのだろう。
この人の身に持つ神秘では、英霊としての格では及ばないのだろう。
だがそれがどうした。
穹徹仙の歴史は及ばずとも、一族が研鑽してきた武の血統なら、劣ることはない!

「Fが一人、穹家頭首、穹徹仙!
 その最期の一矢、受けるがいい!」

中らざれば……貫かざれば……久しからずば……全て死。
上体をそらし、肉体を弓とする。
上腕に力を籠め、過剰な筋力により流れ出た血を矢とする。
この存在、魂の全て、残された魔力を力に回し弦とする。
全てを懸けた一撃。
蒼穹をかける、一矢。
――――それは一条の流星のごとく。

「ッッテラァァァァ!!!」

離れ。
全てを込めた血の流星。
これを放てば、もはや消え去るのみ。
未練はない。
たった数度にすぎないが、水龍とは異なる力で、弓‐あるじ‐と矢‐おのれ‐を繋ぐことはできたのだから。

(さよならだ、仮初の主にして真実の友。生きてくれ)

轟音。
弾が空を切る音が響きわたる。
その流星は天使と悪魔がいた場所も軌道の一部として呑み込み、わずかな閃光を名残として即座に見えなくなった。
その後に、穹徹仙の姿はなかった。


【アーチャー(穹徹仙)@天上天下 死亡】


241 : 翼をください ◆A23CJmo9LE :2015/12/23(水) 00:03:04 qVq/BJTk0





……後に残されたのは二つの影。
一人は浅羽直行。
尻もちをついて放心している
そんな彼にもう一人の影が歩み寄り、手を差し伸べる。

「立てますか?アサバナオユキ。よければ手を貸しましょう」

その正体は大天使マンセマット。
射線上にいたにも関わらず傷一つない。

「あなたは…大丈夫なんですか?あんなに凄いのに……彼女は消えてしまったのに」

周りを見渡す。
矢の余波で先ほどまでいたビルの窓ガラスは残らず砕けていた。
射線上の建物のいくつかは貫通した穴があり、そこからいくつかは崩れていた。
穹は全てを使い果たし、この地から消えた。
あの女アーチャーもまた、影も形もない。

「ええ。神のご加護です。私に人の手による銃撃に類する攻撃は一切通用しません。
 原初の力たる炎や雷を纏えばまた別ですが。
 さ、それより手を。お立ちなさい」

差し伸べられた手を今気づいた、とばかりに慌てて掴み立ち上がる。
軽く引いたその手――正確にはその手に宿る令呪――をじっと見るマンマセット。

「足取りはしっかりしていますね。あのサーヴァント、最期に余計な魔力を持っていかなかったのは評価してもいい。
 令呪も残っている。これならまだ戦う権利は残されていますが、あなたにその意思はありますか?」

その言葉で現実に目を向けさせられる。
もう、穹はいないのだと。
――だがすでに現実感など失せていた。
突然の発熱。
公園で見た激闘。
突如芽生えた超能力。
この時点で方針など頭の内から失ったに等しい。
呼びかけられたことも無視して、ただ穹に導かれるままに。
巨人を見た。
主催者と会い、訳の分らぬ問答。
そして……彼女と出会った。
今まで見た何よりも、誰よりも美しいヒト。
夢でも見ているのではないか。
彼女と会ってから、急速に浮足立ってしまい思考は回ってなかった。

「彼女…あのアーチャーは」
「あの悪魔が気になっていますか。仕留められていればこちらとしても喜ばしいのですが……」

周囲を軽く検めるマンマセット。
しかし特に収穫はなかったらしく、軽く嘆息して終わる。

「何の痕跡もない。恐らくまだあの悪魔は生きている。
 戦い続けるなら、再び敵として巡り合うこともあるかもしれません」

まだ、生きている。
また、会うかもしれない。
前を見据えると、マンセマットと目が合う。

「ほおう。どうやら戦意はあるようだ。よろしい。
 ならば、私からあなたに天使を贈りましょう」
「天使?」

何のことか、と疑問を憶えるが、それを口に出す間もなくマンマセットが懐から何かを取り出す。
それは白い羽だった。
今までに見たこともないような白さの、生き物のものか疑わしい、美しい羽。


242 : 翼をください ◆A23CJmo9LE :2015/12/23(水) 00:03:30 qVq/BJTk0

「これは人の科学が天使の域に刹那届いた証。
 天使とならんとした、勇ましきイカルスの如きニンゲン、その羽です。
 彼の死後残ったこのフォルマを触媒とし、その人間をあなたのサーヴァントとして預けましょう」
「フォルマ?」
「悪魔、あるいは天使から奪った力の結晶を一部のニンゲンはそう呼称するのです。
 これはこの地で散った、天使に近き者の力の欠片」

その羽を地に置き、奇妙な魔方陣を描いた。
離れるように手招きされ、それに従って方陣から距離を置く。

「これより召喚の術式を行いますが……その炎を人の子が見ることは許されません。災いをもらいますから。
 私が合図したら、目を閉じて、再び合図するまで開けないでください」
「あ、はい。わかりました」
「では、目を閉じて」

指示に従うしかない。
何も映らない世界の外で、なにやら人のものとも思えない言語が紡がれている。
……何か、一瞬ノイズのような雑音が走った気がしたが。
その直後に光が発され、瞼の裏まで真っ白に染まり、
轟音と、強大な気配が現れた。

「終わりました。もう目を開けても結構ですよ」

目を開いたそこには天使の横に、一人の男が立っていた。
陣の中心に置かれていた白い羽。
それと同じように白い翼を6枚背に生やし、それと同じくらい白い装いをしていた。

「……お前が、俺のマスターか?」
「私ではなく、そちらの少年に力を貸してあげてください」

指し示されて浅羽の方を向く。
歩み寄る男のどことなく恐れ多い雰囲気に呑まれる。

「では、私はこれで、アサバナオユキ。あなたが魂を磨き、神の歌唱に耳を傾けるよき霊であることを願っています」
「あ、待って。待ってください、名前とかいろいろ……」
「これは失敬。私はマンセマット。神の代弁者です。あなたがよき霊であるなら、また見えることもあるでしょう」

そう言い残してマンセマットは去っていった。
後に残されたのは浅羽と、白いサーヴァント。

「で、お前が俺のマスターでいいんだな?」
「あ、はい。たぶんそういうことになります」

余所余所しい距離感。
雰囲気から察するにこのサーヴァントも天使とかの類なのだろうか、と未だに呆けた頭で思考する。

「場所を移すぜ。騒ぎすぎだ、いつ野次馬が来るか。
 ……俺の外観は目立つ目立たねーってもんじゃねえしよ」

真っ白な服装に翼と、メルヘン染みた男はそう語り、先行する。
別段当てがあるわけでもない、ココではないどこかへ。
そうして足を向けた方角は偶然にも、少しだけ話題に上がった方で。

「あ、そっちのほうにはキャスターのサーヴァントがいるって――――」

伝え聞いていただけの、不確かな情報。
なんとなく、そっちは嫌だなと思うが、明確に呼び止めるほどでもない。
そんななんとなく口を突いて出た言葉。
それに、白いサーヴァントは文字通り跳びついた。


243 : 翼をください ◆A23CJmo9LE :2015/12/23(水) 00:03:55 qVq/BJTk0

「なんでそんなこと知ってる?そのキャスターってのはどういうやつだ?」

掴みかかるような勢いで詰め寄る。
端正な面立ちに狂気と憎悪を浮かべ、答えを誤れば殺されるのではないかと恐怖する。

「あの…さっき、聞いただけで。えと、戦ってたアーチャーの敵だから協力して倒そうって言われて。
 それで居所だけ聞いてて、どんなやつとかは、ちょっとよくわからないです」

滅裂な情報の羅列を咀嚼するサーヴァント。
少しすると落ち着きを取り戻し、僅かな憎悪の名残を歩もうとした方角に向ける。

「あのクソアマか?だったら嬉しいねェ。殺してやるよ。再会の記念にぶち殺してやる。
 いい情報に感謝するぜ。で、俺はそいつを殺りにいきてえんだが異存はあるか?」

え……と声が漏れる。
否はない。
だが迷いはある。
事態の推移についていけていない。

「お前も聖杯は必要なんだろ?なら、俺たちは協力できる。
 俺がお前を勝たせてやるから、お前も俺を勝たせろ。手始めに、キャスターを殺す。
 手を貸せ、マスター」

天使というにはあまりに傲岸で、俗な科白だったが、だからこそ……同意できるものがあると思えた。
聖杯。
目的のために……彼女との再会のために。
こくり、と小さく確かに頷いた。

「よし。名は?マスター」
「浅羽、直行です」
「オーケイ。浅羽、よろしくな。俺は…ん?」

名を交わし、主従の契約を果たそうとするが、少し悩む素振り。
浅羽の頭部をじっと眺め、目を閉じて集中するそぶり。

「…少し違う。が、力はある。足りないが……少し足してやるか。丁度いい」

ぶつぶつと呟き、翼を震わせる。
そのうち一枚が浅羽へと大きく近づく。
その異形の接近にのけぞってよけようとするが

「びびんな、痛くはねえよ。力をやる」

そういうと翼が一枚、男の背を離れて浅羽に飛びつく。
ずるずるずる、と何かが――白い翼のようなものが――体内に入り込む不気味な感覚。

「な、なにを――――」
「プロトタイプ・ショゴス。外なる存在の名を冠する、代替機関みてえなもんだ。
 人体に入りこんだのち、脂肪の代わりの機能を果たす。今回は特別性だ、魔術回路の代用も兼ねる。
 ついでに、お前も能力者の端くれみてーだからな。上手くすりゃ、武器にもできる。
 これが俺の宝具の一端……自己紹介がてら、出会いを祝して贈り物だ」

どことなく攻撃的な笑みを浮かべ。
翼を収め、向き合い。
そして我が意を得たりとばかりに改めて名乗る。

「バーサーク・アサシン。垣根帝督だ。ここに契約は完了した」

天使の手による召喚で、その外観を純白に染め上げ。
かつてのように、自らを殺めた超能力者への漆黒の殺意と狂気に心中を満たし。
垣根帝督は再臨した。

通常、サーヴァントにとって聖杯戦争の記憶というのは強い実感を伴わない。
そのため、ひとたび脱落し、再度召喚された際にはそれ以前の聖杯戦争の記憶は残らないのがほとんどだ。
しかし、垣根帝督は復活の逸話を持つ英霊。
四肢を失い、脳を三分割され、生身の臓器を失い、ただ能力を吐き出すだけの機会のような存在となっても。
垣根帝督は生きており、そして自らの肉体を形成して復活した。
幾度も、幾度も。
プラナリアが記憶を保全して復活するように。
ネズミという個体を殺しても、ネズミという種は死なないように。
『垣根帝督』は、再びこの地にいた『垣根帝督』として蘇る。


244 : 翼をください ◆A23CJmo9LE :2015/12/23(水) 00:04:19 qVq/BJTk0

(ああ、はっきり覚えてる。食峰祈操ィ……俺を殺させたクソ女。
 今度は俺が、お前を殺してやる)

もう片方のキャスターかもしれないが、それならそれで仕方ない。
そいつも殺すだけだ。

「あの、えーとバーサ―…?」
「ああは言ったが、まあアサシンでいい」
「それじゃあ、アサシンさん。お願いというか、提案があるんですけど」
「なんだ?」

ぐずついたガキかと思ったが、何かあるのか。
続きを促す。

「もう一騎、サーヴァントがいるらしいんです。それは放っておいてもいいじゃないかって」
「あ?どういう意味だ」
「キャスターよりはずっと強いって。でも、キャスターさえ倒せばそっちはやりたいって言ってるサーヴァントがいたんです」

黙考。
さほど意味のあることとも思わない。
通じているのか。
怪しくはあるが、否定して関係に余計な皹を入れる必要もない。
用心はしてあるし、問題はない。

「邪魔しねえなら、殺すのは後に回してやってもいいさ」

それだけでも納得したらしく沈黙した。
……ボケてるのかと不安になるほどに何を考えてるのかよくわからんやつだが。
布石は打った。
プロトタイプ・ショゴス。
体内に寄生した未元物質は脂肪を排除し、その代替機能となる。
魔術回路としても機能し、魔力量も増す。
宿主を守る武装にもなり、能力者になら多少操れるようにも調節した。
――――それを失くせばどうなる?
魔術回路が、脂肪がなくなれば。
人体は機能を維持できず、死に至る。
前回はマスターを操られ、令呪によって殺された。
もしそうなりかけても、それ以外の事情でマスターが俺を裏切ろうとしても。
未元物質は抜け出し、こいつは死に至る。
同じ轍は二度踏まない。

(こんどこそ、殺す。食峰)

黒く染まった思考で考える。
……しかし同時に、それに僅かながら自己嫌悪も覚える。

(ちっ、狂化の影響か。思考が短絡化してやがる。あの天使、なんでこんな面倒な属性つけやがった?)

天使。
学園都市の理事長、アレイスターも触れんとした域。
あるいは魔神とかいうやつに近いのか。
呼び出したのには感謝してもいいが、狂化付与とは余計な真似を。
それに

(なんだよ、この格好。未元物質使うたびに似合わねえデザインになるのにも嫌気がするってのに。
 全身白に、やたらと襟立てやがって。餃子かよ。何が天使だ、センスの欠片もねえ)

まったく

(デビルダサえぜ、くそったれ)



【バーサーク・アサシン(垣根帝督・オルタ)@とある魔術の禁書目録 霊器再臨】


245 : 翼をください ◆A23CJmo9LE :2015/12/23(水) 00:07:38 qVq/BJTk0
少々半端ですが、ここまでで投下を終了します。
この後に浅羽パート、弥勒パート諸々を挟んで状態票の予定です。

ごらんのとおり、普通なら確実に議論ものですし、この後もこんな調子なので、先述のとおり修正要求破棄要求には真摯に対応するつもりです。


246 : 名無しさん :2015/12/23(水) 06:03:25 URf1WO9U0
うおおお、投下乙っす!
確かにまさかまさかの展開だ…穹は矜持を見せ、意地を張ったなあ
彼の最期の一矢、英霊の名に恥じぬ見事なものだったと思います
モリガンの戦闘センス、心臓狙いへの対応を絡めた立ち回りも凄い。生粋のサッキュバスだな…了との対話を経て思考を切り換えたヒトナリの指令と覚悟も際立つ感じ
浅羽は、魅了を受けた上に天使の手に絡め取られてしまったが大丈夫なのか。穹の遺した思いを無下にはしないでほしいが
そしてていとくんここでまさかの再臨とは。しかしこれ天使側の手駒になってますよね…彼も彼で不穏なものが…最後の口振りに現れていた、善吉とのやり取りで見せたような彼のパーソナリティをもやがて染めていってしまうのか。
投下改めて乙でした


247 : 名無しさん :2015/12/23(水) 16:40:12 PpvjqK3M0
投下乙です
穹は弥勒との接触からモリガンとの交戦まで短時間に濃い展開に
神秘の格で及ばずとも人の練り上げた技で以て報いる、浅羽に遺せるものを遺す彼の戦いがとても格好良かったです
タダノ・モリガン組もかなりスタンスが極まってきたようで 夜魔としての生き様とバトルスタイルとが一体になっているのはやっぱり好きだ
最後は天使が現れたと思ったら浅羽の前には白くなった垣根が…見るからにおかしい…って狂化してるのか
一気に対食峰勢力が動きそう 今後も楽しみです


248 : ◆A23CJmo9LE :2015/12/26(土) 06:21:27 2KK9LVU60
物自体はあがったのですが、暫し家に帰れないので投下遅れます
度々申し訳ない


249 : 翼をください ◆A23CJmo9LE :2015/12/29(火) 17:30:57 bJlVin760
ひとまず帰宅できたので続き投下します


250 : 翼をください ◆A23CJmo9LE :2015/12/29(火) 17:31:53 bJlVin760

苛立った素振りを見せ、北上を始めたアサシンの後を追う。
小鳥が親鳥の後を追うように、反射的に、深い考えなく。
ひたすらに目標に向かって。
彼女と、再び出会うため。
目を閉じればリアルに思い出せる


――わたしも、浅羽のためだけにt――


思い出せる、はずだった。


――私一人じゃ寂しいから貴方達もお願い――


その女の子以上に、色濃い女性の記憶ができてしまった。
彼女の言葉を。腕を。温もりを。
そして、桃色のベールの中で彼女が穹徹仙に何をしていたかも、彼の視界を通じて知ってしまった。
それは穹の最期すら記憶の彼方に放ってしまうような衝撃を与え。
結果、浅羽直之は、モリガン・アーンスランドの魔性に囚われてしまった。
願いは変わっていない。
しかしその道中、彼は願ってしまうだろう。
再び夢魔と出会うことを。夢魔の目的の妨げにならないことを。

もし彼が、愛する人の幻影を200年以上追い続ける錬金術師であったなら。
海賊女帝の魅了に靡かない海賊王であったなら。
揺らぐことはなかったかもしれない。
だが、彼はどこにでもいる少年だった。
大きな力に流されことしかできず、この地でもひたすらに揺蕩ってきた少年は魔王の魅了にも流される。
水の龍でもなくば、この流れを変えるのは難しいだろう。



【C-3/町中/二日目・未明】

【浅羽直之@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]魔力消費(中)、魅了状態
[令呪]残り3画
[装備]プロトタイプ・ショゴス(未元物質)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:彼女のため、聖杯の獲得を目指す。
0.多数の埒外の事象に加え、魅了状態に伴う現実感の喪失
1.垣根と共に温泉にいるというキャスターのもとへ
2.キャスターと共にいるというサーヴァントはアーチャーさんが闘いたいらしいから、できれば相手にしたくない

[備考]
※PSI粒子の影響を受け、PSIの力に目覚めかけています。身体の不調はそのためです。
→念話を問題なく扱えるようになりました。今後トランス系のPSIなどをさらに習得できるかは後続の方にお任せします。
※学園の事件を知りました。
※タダノがマスターであることを知りました。
※まどか、ライダー(ルフィ)を確認しました。
※巨人を目撃しました。
※天戯弥勒と接触しました。
※モリガンを確認しました。
※未元物質が体内に入り込み、脂肪、魔術回路の代用となっています。これにより魔力量が増大しています。
 また武装にもなり、宿主を守るよう機能します。PSIを利用できればある程度はコントロールもできます。
 ただし、脂肪をすべて排泄してしまっているため、これが抜け落ちた場合何らかの対処をしなければ死に至ります。


【バーサーク・アサシン(垣根帝督)@とある魔術の禁書目録】
[状態]健康
[装備]天使の装い
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を勝ち抜く。そして一方通行を殺す。
1.食峰祈操は殺す。
2.北上し、温泉にいるというキャスターのもとへ。
3.もし浅羽が裏切るか、食峰などに操られたら切り捨てるのもいとわない。

[備考]
※鬼龍院皐月がマスターでは無いと分かっています。
※屋上の異変に気付きました。
※夜科アゲハがマスターであると断定しています。
※リンク、犬養、食峰を確認しています。

※アサシンのころの記憶はほぼ全て覚えています。
※審判者ゼレーニン@真・女神転生 STRANGE JOURNEY のような衣装になっています。
 なぜか未元物質が翼の形になってしまうのと同様、デザインを変えることはできないようです。
※ステータスはアサシン垣根帝督のものとほぼ同様です。
 ただし狂化の属性が付与されたことで、知性は保ちつつも、一方通行への復讐に囚われていた時期以上に狂暴化し、思考も短絡化しています。






【全体備考】
※C-3の街中において、穹の放った弾丸でいくつかビルが損傷しています。
 それ以外にも戦闘の余波は伝わっているでしょう。


251 : 翼をください ◆A23CJmo9LE :2015/12/29(火) 17:32:21 bJlVin760

◇  ◇  ◇

水龍の名残、血の一矢。
それを受けたはずの悪魔は、病院にいた。
不機嫌そうな顔でベッドに横たわる男性の腰辺りにのしかかり、詰め寄る。

「コレは、どういうつもりだったのかしら?タダノ」

栄養点滴のためにスーツの一部を取り外し、露出した左腕。
そこに覗く、二画の令呪を撫でて睨みつける。
あの男――穹と最後に名乗ったか――が放たんとした一撃を目の当たりにした瞬間、脳裏に強く声が響いた。

『令呪を以て命じる!直ちに帰還しろアーチャー!』

絶対命令権の行使。
時に魔法すら再現するそれによって、モリガンは戦場から主のもとへと、空間を超えて舞い戻った。
不承不承、どころでなく、極めて不本意ではあるが。

「言葉通りだ。切り上げるにはあそこが目途だと判断した。あれ以上は消耗の方が大きい。
 まだ敵はいるんだ。引き際はわきまえなければ」

アーチャーに搦めとられ、喰われてなお放とうとした決死の一撃。
受ければ確実にただでは済まなかった。

「あれを倒せと言った目的の一つはこのスーツのレベルアップ。
 ひいては僕の戦線復帰だった。一応、その目的は果たせたよ。
 それに、マンセマットまで出張ってきたんだ。いったん状況を整理する意味でも合流したかった」

それはその通りだ。
だが、言いたいことはある。
そう、躍起になって口を開こうとするモリガンだが

「なあ、あーちゃん」

もう一人、蚊帳の外だった男が口をはさんだ。

「おれは何が起きてたのかよくわかんねーけど。
 なんかすげー奴が出てきたっぽいってのは分かった。
 お前がそこから逃げてきたのも」
「別に逃げたわけじゃ――」
「逃げるのは間違いじゃねえよ。仲間を死なせないために、仲間にまた会うために逃げるのは、絶対間違いじゃない。
 おれは、またお前にあえて嬉しいぞ」

無邪気な笑みで、帰還した女傑を改めて歓迎するルフィ。
にしし、と笑うその顔を見ていると、なんだか苛立っているのが馬鹿らしくなってきた。
……一応は借りのあるこの男が言うなら矛を収めるもやぶさかではないか。
そう考えて、タダノの上から降り、衣装もまた戦闘時の一張羅から元に戻す。

「…そうね。次の戦いのためのインターバル。そう思うことにしましょう。
 タダノの言う通り、考えることも増したことですし」

隣のベッドに腰を掛け足を組むモリガン。
近くにあった椅子を引き寄せ、そこに座るルフィ。
モリガンがどいたことで自由度を増し、態勢を起こすタダノ。

「さて、何から話すかな。とりあえずコンディションを確認しようか。
 僕の傷は当然治ってはいないが、このスーツのバックアップがある。
 今しがたの戦闘でレベルアップしたことで、ダメージを補うことができている。
 着ている間は問題なく動けるよ。アーチャー、君は?」
「今の戦いでのダメージはほとんどないわ。橋でセイバーと戦ったから、そのダメージはあるけど。
 それも天然ものを味わえて、ほとんど問題ないくらいよ」
「なるほど、何よりだ。ルーシー君は?何か不調はあるか?」
「腹減った!」
「……あとで食事に出るか」

サーヴァントに食事は不要なのでは、と疑念がついて出るが、このアーチャーも刺激がなければ死んでしまうという存在だ。
食事を抜け、というのも聊か酷ではあるし、機会があれば。

「その戦闘について、あとで詳しく教えてくれ。まどかちゃんは休んでいるが、特に負傷などはない、と」
「ん、大丈夫だ。なんかぶつぶつ言ってたけど」

全員のコンディションはおおむね把握。
内面的にはともかく、肉体的には食事や装備でフォローできるレベルのハンデだ。
最悪、今すぐここを飛び出すこともできなくはない。


252 : 翼をください ◆A23CJmo9LE :2015/12/29(火) 17:33:52 bJlVin760

「まず気になるのは通達か。アサシンが一騎、マスターが二人脱落した」
「妥当な線ね。戦力で劣るアサシンが落ちて、そのマスターと昼に言われたはぐれマスターかしら。
 帰ったのはともかく、落ちたアサシンはたぶん私がさっきまでいた学園のあたりでしょうね」

モリガンの収集した情報……本人はそのような意図はなかったろうが。
あふれる魔力に引き寄せられ、垣間見た闘争と、その成れの果て。
巨人の手で崩落した学園。

「遠目に巨人を見ただけだから細かくは分りかねるけど、相当な規模の戦いだったみたい。
 サーヴァントの気配も一つや二つじゃきかなかったから、そこにアサシンがいたんでしょ」
「なるほど。君が惹かれたのはそういう訳か」
「へー、巨人族までいんのか。面白えーな」

僅かなものだが、敵の動きとして貴重な情報。
さらに学園倒壊となれば警察官の役割を当てられているタダノに仕事が増えるかもしれない。
連絡が来る前に知れたのは大きい。

「そのあとすぐにあのアーチャーとやり取りしていたから、私からは他に語ることはないかしら……
 あとは、そうね。北の温泉街であのキャスターを見つけた報告と。
 あの天使について聞きたいかしら」

いつの間にか通達についての議論から話題がシフトしつつある。
落ち着きのないサーヴァントだ、と思いつつも他に語ることも特になし。
あの月については気になるが、現状議論できる材料もない。
モリガンの話に応じるタダノ。

「あいつ、マンセマットの事か。ルーシー君は把握していないが、先ほど天使がアーチャーの前に現れて、僕らの邪魔をしたんだ」
「天使?コニスみたいな?」
「そのコニスというのが誰の事かは知らないが、一般的に想像する天使の姿を思い描いてくれ。
 白い格好に猛禽類の翼をした、神に仕えるあれだ」
「モウキンルイってなんだ?」
「……鷲とか鷹みたいな大きな肉食の鳥のことだ」

ああー、あれか。そうか、と納得したような調子を見せる。
本当に分かったのかは定かではないが。

「なんで邪魔したんだ?」
「なぜ。なぜか。なぜだろうな……」

あれもまた聖杯戦争の参加者なのか。
ステータスは見えなかったから、だとするとマスターだが。
いや、それは考えにくい。
仮にも天使が、聖杯戦争に参加するか?
聖杯とは神の子の血を受けた聖遺物。
人より天使の領分に近い。
それを人と同じ土俵で奪い合う闘争に身を投じるか?
むしろ、聖杯を掲げて参加者を煽り立てる方がしっくりくる。

「いくつか考えはある。
 一つは、天使であるあいつは悪魔であるアーチャーが気に入らず、その邪魔をした。
 もう一つ。以前彼の計画を邪魔した僕が気に入らず、そのサーヴァントであるアーチャーの邪魔をした。
 最後に。たぶん、これが本命だと思うんだが」

やつの所業を思い返す。
奴の目的とやらを思い返す。

「あいつが庇った少年。彼を天使とし、自らの計画に利用しようとしている」

ゼレーニンと同じ道を彼に歩ませようとしているのではないか。


253 : 翼をください ◆A23CJmo9LE :2015/12/29(火) 17:35:09 bJlVin760

「天使になる?そりゃーいいことなんじゃないのか?」
「そう思うかい、ルーシー君。その天使というのが、自らの力で思うようにならないものを排除したり、洗脳して思うままにしようとしているとしても?」

ジャック部隊の…惨状。
自分を失くした彼らの姿は、正視に堪えなかった。
僕自身、あの歌声に揺らがされそうになり、そして倒れる仲魔を見た。
そんな振る舞いを何の葛藤もなく行うゼレーニンの姿もまた、できるなら見たくはなかった。
マンセマットは、あの少年もそうした天使にしようとしているのでは。

「マンセマット自身の歌は人に効き目が薄くなっているらしい。
 だから代弁者、とは名ばかりの蓄音機を探してるんだろう。利用しやすい、手ごまを」
「…そっか。コニスじゃなくてゴッドみたいなやつなのか」
「洗脳、ね。そういうのは好きになれないって言ってるのに。おまけに天使。救いようがないわね」

うっすらとだが、英霊二人の顔に戦意が宿る。
向けられる対象が自分でないとわかっても、それには聊か畏怖を憶えた。

「あくまで仮説だ。とはいえ、僕とアーチャーは間違いなくあいつと仲良くはできない。敵対することになる」
「生きてるかしら?たぶん、あのアーチャーの攻撃を受けたと思うけど」
「勝算がなければ出てこないよ、あいつは。肝心な局面まで全て僕たちに投げ出し、いざ僕が闘う構えを見せればさっさと引き上げていった。
 生きている、そう考えるべきだよ。
 マンセマットの実力は闘っていないので何とも言えないが、奴の手で天使にされた人はもとは一研究者に過ぎない女性にもかかわらずかなりの強さだった。
 あの少年が天使になった場合、相応の難敵と考えていい」

厄介な敵が増えた。
それは事実だ。

「しかし、マンセマットがいるということは……聖杯がキチンと存在する可能性も極めて高いということだ。
 天使であるアイツなら、多少の知識は持ち合わせているだろう。
 万一を考えて、あいつからはその情報も手に入れたい。奴が持っているなら奪い取ることも考えよう。安易にはアイツの命を奪わないでほしい」

悪魔と天使。
双方から宇宙卵を奪ったように、その時が来ればマンセマットか、あるいは天戯弥勒から、聖杯を奪いとる。

「ひと手間かかりそうね。まあ、少しくらいなら付き合ってあげるわよ」
「おれはよくわかんねーけど。まどかもお前も欲しいものがあるっていうならしょうがないな。うん、しょうがない」

ひとまずの協力を得られて幸い。
ルーシー君とは、聖杯をめぐりいずれ破局するだろうか。
ヒメネスや、ゼレーニンのように敵にしなければならないのか。
……今は、味方だ。それを喜ぼう。
それにマンセマットに聞きたいことはもう一つある。
あいつの歌は人間には効き目が薄いといっていた。
ならば天使にはどうなのだ?相応の効果を発揮するのではないか?
あいつの手によって、天使へと変えられたゼレーニンは、あいつの手で洗脳することもできるのではないか?
……都合のいい妄想だとは思う。
彼女が変わってしまったのは、全て奴のせいだと思いたいだけだと。
しかし機会があれば確かめたいとは思っていた。
聖杯のついでくらいに望んでも、損はしないだろう。

「サーヴァントとマスター以外にも敵がいることは覚えておいてくれ。
 一応距離をとった以上、どうなるかは未知数。直近の方針はまた別になるが」
「それじゃあやっぱりあのキャスターのところにいかない?こうして合流もできたことだし」

敵として…否、獲物として見定めた女。
居場所もつかんだ魔女に余計な真似をされる前に仕留めたいと提言。


254 : 翼をください ◆A23CJmo9LE :2015/12/29(火) 17:37:28 bJlVin760

「それも一つの考えではあるな。だが、もう一つ気になる情報がある。
 あのアーチャーが言っていたこと…〈病院でミキサヤカの悪魔憑きを合流しろ〉だったか?
 ここだと、思うか?」

デコイの可能性もあるが、今際の言葉でマスターまで混乱させるとは思い難い。
あるいは何らかの符号だったらお手上げだが。
その名前を聞いてうなり始めた相手に声をかける。

「どうかしたか、ルーシー君?」
「う〜ん。どっかで聞いたような気がするんだよな〜。さやかって」

唸ってはいるが答えは出ない。
答えは出なそうだと判断して話す相手を変える。

「アーチャー、少し出るのは待ってくれ。
 まず僕の担当医を呼ぶから、それと話すのに協力してくれ。負傷を理由に仕事を休み、かつ自宅療養の退院まで持ち込みたい。
 それがすんだら、入院患者と、一応見舞いリストも含めてミキサヤカとやらを探してみよう。
 そこまで聞き出すには、君の魅力が頼りになる」

お預けを食らった子犬のような顔をするモリガン。

「まあ、お休みの連絡は必要よね。帰る許可も。でも人探しは必要かしら?」
「悪魔憑きというなら、間違いなくマンセマットは受け入れない。
 奴への対策くらいなら、協力できるかもしれない。
 キャスターの一件は…まどかちゃんとも相談する必要があるだろうから、いったん後だ。
 その時は場合によっては別行動してでも、君の意を尊重しよう」

そう言い含めても難しい顔をするが、ようやく妥協したらしくナースコールに手を伸ばした。
さっさと済ませよう、ということなのだろう。

「ルーシー君、君は……」
「おれは難しいことはよくわかんねえからここにいるよ」

身勝手に動かれるよりはましか。
彼に期待するべきは、先のカーチェイスで見せたような働きだな。
……夢のことは気になるが、今はいいか。
アスカリョウと名乗る男はただの夢ではないようだが、やはり確実性に欠く。
そもそもアーチャーも彼も思考を巡らせるタイプではなさそうだ。

マンセマットの存在。
再現された施設、都市。
……この地の在り方が、僕たちの手で消したはずのシュバルツバースを思わせるなど、口にしても仕方ない。
ジャック部隊はシュバルツバース内でも人間の活動領域を作り出すことは示していた。
もし、ここがあの悪魔生まれる地、シュバルツバースなら。
アーサーとゴア隊長の遺志を継ぎ、今度こそ、この地を消し去らなければならない。
あんな月になど、任せずに、確実に。


255 : 翼をください ◆A23CJmo9LE :2015/12/29(火) 17:39:11 bJlVin760

【C-7/病院/二日目・未明】

【タダノ ヒトナリ@真・女神転生 STRANGE JOURNEY】
[状態]魔力消費(小)、ダメージ(処置済み)
[令呪]残り二画
[装備]デモニカスーツ、アバ・ディンゴM
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争に勝利する
1.欠勤及び自宅療養のための手続きをする
2.入院患者と見舞客のリストをモリガンを利用して確認し、ミキサヤカがいるか探してみる
3.マンセマットを警戒。ただし同時に彼から情報を得る手段を模索
4.展開次第だが、キャスター(食峰)討伐も視野に
5.もしもここが地上を侵すシュバルツバースならば、なんとしても確実に消滅させる

[備考]
※警察官の役割が割り振られています。階級は巡査長です。
※セイバー(リンク)、カレン、ライダー(ニューゲート)、刑兆について報告を受けました。(名前は知らない)
 ライダー(ニューゲート)のことはランサーと推察しています。
※ルフィの真名をルーシーだと思っています。
※ノーヘル犯罪者(カレン、リンク)が聖杯戦争参加者と知りました。
※まどか&ライダー(ルフィ)と同盟を結ぶました。
 自分たちの能力の一部、連絡先、学生マスターと交戦したことなどの情報を提供しましたが、具体的な内容については後続の方にお任せします。
※人吉、セイバー(纒流子)、ルキア、ランサー(慶次)、キャスター(食蜂)を確認しました。
※浅羽を確認しました。
※飛鳥了を確認しました。ルイ・サイファーに近しい存在と推察しています。
※マンセマットを確認しました。ゼレーニンの後継を探していると推察しています。
 なお聖杯と『歌』について知識を得るためにむやみに殺害するつもりはありません。
※デモニカスーツが穹との戦闘を通じてレベルアップしました、それによりダメージを気にせず動けます。
 ただし激しい戦闘など行えば傷は開きますし、デモニカを脱げば行動は難しくなります。
※ここがシュバルツバースではないかと考え始めました。
 モリガンやルーシーに話しても特に意見は求められないと思って話題にあげなかっただけで、特に隠すつもりはありません。

【アーチャー(モリガン・アーンスランド)@ヴァンパイアシリーズ】
[状態]魔力消費(小)、右肩に裂傷(だいぶ回復)
[装備]
[道具] なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を堪能しマスターを含む男を虜にする
0.あーちゃんって……アーンスランドだから間違ってはいないけど
1.今はタダノに助力
2.済んだらキャスター(食峰)討伐に動きたい

[備考]
※セイバー(リンク)、カレンを確認しました。(名前を知りません)
※リンクを相当な戦闘能力のあるサーヴァントと認識しています。
※拠点は現段階では不明です。
※NPCを数人喰らっています。
※ライダー(ニューゲート)、刑兆と交戦しました。(名前を知りません)
※まどか&ライダー(ルフィ)と同盟を結ぶました。
 自分たちの能力の一部、連絡先、学生マスターと交戦したことなどの情報を提供しましたが、具体的な内容については後続の方にお任せします。
※人吉、セイバー(纒流子)、ルキア、ランサー(慶次)、キャスター(食蜂)を確認しました。
※アゲハの攻撃はキャスター(食蜂)が何らかの作用をしたものと察しています。
※セイバー(纏流子)と交戦しました。宝具の情報と真名を得ています。
※C-6を中心に使い魔の蝙蝠を放ち、キャスター(食蜂)を捜索しています。
→発見したため現在撤収中です。
※巨人を目撃しました。
※アーチャー(穹)を確認しました。
※浅羽を確認しました。
※マンセマットを確認しました。


256 : 翼をください ◆A23CJmo9LE :2015/12/29(火) 17:40:44 bJlVin760

【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]睡眠中、疲労(小)、不安
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:叶えたい願いはあるが人を殺したくないし死にたくもない。
0.今日は眠る。
1.キャスター(食蜂)への親近感、タダノへの攻撃、ほむらの襲撃などいろいろあって混乱。
2.起きたらタダノと会話をする。
3.聖杯戦争への恐怖はあるが、『覚悟』を決めたい。
4.魔女のような危険人物は倒すべき…?
[備考]
※バーサーカー(一方通行)の姿を確認しました。
※ポケットに学生証が入っています。 表に学校名とクラス、裏にこの場での住所が書かれています。
※どこに家があるかは後続の方に任せます。
※アーチャー(モリガン)とタダノは同盟相手ですが、理由なくNPCを喰らうことに少なくない抵抗感を覚えています。
※セイバー(流子)、ランサー(慶次)、キャスター(食蜂)を確認しました。
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』により食蜂に親近感を抱かされていました。
※暁美ほむらと自動人形を確認しました。

【モンキー・D・ルフィ@ONE PIECE】
[状態]健康、空腹
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:まどかを守る。
1. 腹減ったけど、なんか難しい話してるから待った方がいいような気がする。
2.バーサーカー(一方通行)に次会ったらぶっ飛ばす。
3.バーサーカーに攻撃がどうやったら通るか考える。
4.タダノとの同盟や今後の動きについてはまどかの指示に従う。
5.肉食いたい。
[備考]
※バーサーカー(一方通行)と交戦しました。
 攻撃が跳ね返されているのは理解しましたがそれ以外のことはわかっていません。
※名乗るとまずいのを何となく把握しました。以降ルーシーと名乗るつもりですが、どこまで徹底できるかは定かではありません。
※見聞色の覇気により飛鳥了の気配を感知しました。もう一度接近した場合、それと気づくかもしれません。

[共通備考]
※タダノ&アーチャー(モリガン)と同盟を組みました。
 自分たちの能力の一部、バーサーカー(一方通行)の容姿や能力などの情報を提供しましたが、具体的な内容については後続の方にお任せします。


257 : 翼をください ◆A23CJmo9LE :2015/12/29(火) 17:41:25 bJlVin760

◇  ◇  ◇

「帰ったか、マンセマット。派手に動いたな」
「おや、あなたがそれを仰いますかミロク」

他には誰もいない、妙に幾何学的な空間で向き合う二人。
参加者を神の視点で眺める天使と人間。

「俺が盛んに動くのは仕方ないだろう。
 間桐雁夜は放っておけば魔術を使って自滅しかねなかった。
 浅羽直之たちはお前がやたら気にかけていたからだし、暁美ほむらに至ってはお前の頼まれごとのついでだ。
 アッシュフォード学園から未元物質を回収してくれなどと言うから何かと思えば、あんなことに使うとはな」
「お気に召しませんでしたかな?ですが、彼ならばあなたの望み通りより戦端を加速させてくれるはず」
「だろうな。だからこそ、そこには文句は言わんさ」

それだけ聞くとマンセマットは背を向けて去っていく。
弥勒の耳目の届かないスペースで部下の一人を呼び出す。

「ノルン、私の留守中に変わったことはありましたか?」

呼びかけると現れたのは女神の一柱。
運命をつかさどる女神ノルン。

「マンセマット様の外出中に彼はエレン・イェーガーの死体を回収しています。
 あの地で灰にならないよう、処置しているようですが」
「ほう」

脱落者の死体を使って何かしようというのか。
それともエレン・イェーガーが特別なのか。
巨人族の力を振るう少年、か。

「ノルン、あなたは巨人族の出でしたね」
「はい、そうです」
「現在あなたはミロクの何を手伝っています?」
「私の力は運命と時間を統べるもの。それによって、暁美ほむらの時間操作能力に制限を課しています」
「それだけですか?」
「はい」

エレン・イェーガーの力でノルンを乗っ取ろうというわけではないのか。
ではなぜ?
そのことを伝えてこないのは隠しているのか、わざわざ告げる必要もないと思っているのか。

「まあいいでしょう。ニンゲンの為すことだ。勝手にさせておけば」

こちらもこちらで勝手にやるつもりなのだから。
浅羽直之。
彼に課した、『聖なる試練』。ハニエルもカズフェルもいない以上、私がやるしかない。
悪魔の跋扈するこの地で、天使を連れて生きのびよ。
さすれば魂は磨かれ、天使に相応しき霊となろう。
そうすれば、彼をゼレーニンのように天使にできる。
それに美樹さやか。
一度は神の御使いとなりながらニンゲンに堕とされた霊。
厄介な悪魔さえ従えていなければ、出向くものを。
加えて一方通行、垣根帝督というイカルスのごとき人造天使。
世界を変える力を秘めた聖なる子らよ。
彼らを連れ帰り、世界を新たな高みに導けば。
オレは今度こそ主に認められ、上位の存在になれるはずだ。

「ノルン。ミロクへの警戒は怠らずに。我らが主の聖遺物に手を伸ばす不埒者に気を許してはなりませんよ」
「……はい」
「迷いは分ります、ノルン。かつて『遊びふける国』や『路を管する国』であなたを救ったニンゲン。
 ヒトナリのような期待をしているのですね。
 ですが、ヒトナリもまた愚かなる道を選んでしまった。ニンゲンは我らの手で導かねばならないのです」





【マンセマット@真・女神転生 STRANGE JOURNEY】
[状態]健康
[令呪]???
[装備]???
[道具]???
[思考・状況]
基本行動方針:主に認められ、天使以上の存在となる
1.聖杯戦争を利用して天使候補を手に入れる。
2.天戯弥勒を警戒。

[備考]
※天戯弥勒の協力者、主催側です。
※女神ノルンを仲魔のような形で弥勒に貸しています。
 それによってほむらの能力に制限をかけています。


258 : 翼をください ◆A23CJmo9LE :2015/12/29(火) 17:41:56 bJlVin760

◇  ◇  ◇

マンセマットを見送り、弥勒もまた自らのパーソナルスペースへ。
コンクリートで形作られた空間に巨大な水槽と、その中に少年が一人。

「やあ、邪魔をさせてもらっているよ天戯弥勒君」

誰もいないはずのその部屋に少女が一人。
しかしそれに驚くようなそぶりは見せず軽く対応する。

「お前か、ルイ・サイファー。すぐそばに天使がいるというのに大胆な奴だ」
「今の私は不完全だからね。だからこそ、彼らはわたしたちの事には気づけない」

柔和な、しかしどことななく他人を見下したような笑みを浮かべながら弥勒の来た方角を見据えて告げる。

「彼は一応君の協力者だが、あまり君のために動いているわけではなさそうだね」
「あのぺ天使のことなら承知の上だ。いや、だからこそ口にしているのか」
「そうだね。私は君たちニンゲンを捨てはしないが、可愛がりもしない。アドバイスなどは私ではなく、おれに期待してくれ」

口元から笑みを消し、足音一つ立てずに部屋を横断するルイ。
壁際の水槽にたどり着くと、そこに手を触れて中身をじっと見る。

「エレン・イェーガー。ガイアの子ら、巨人族の末裔。いや、ヨトゥンヘイムの民というべきかな?
 ここにきて堕落してしまった戦士。
 ぬるま湯につかり、夢に夢見て、退屈なありさまだった。
 だが最期の数瞬の彼はとても美しかった。
 どんな時代でもどんな場所でも、荒ぶる魂でもって生きるニンゲンは美しい。
 ……この地での戦争も、とても興味深い。
 神の子の血で濡れた杯を手にするために、多くのヒトや悪魔が血を流す。演出のしがいもあるというものだ」
「演出、か。やはり垣根帝督を狂化させたのはお前だな?」
「おや、何のことかな?」

くっくっ、と今度はからかうようなとぼけた笑みを浮かべる。
それに反応を示すことはなく、淡々と言葉を紡ぐ弥勒。

「強制詠唱(スペル・インターセプト)。他者の術式に割り込む、魔力を要さない技術だ」
「ほう」
「マンセマットの召喚なら、おそらく神の寵愛か信仰の加護あたりがスキルとして付与されるはずだ。
 だが垣根帝督はなぜか狂化して現れた。さっさと立ち去った奴は気づいてないかもしれんが。
 奴の詠唱は古代の神の言語そのもの。
 神代の魔術師といえど割りこむのは無理だ。できるとしたら、奴と同等以上の位階の天使か、その地位にかつていた者。
 違うか、ルイ・サイファー?いや、かつて大天使ルシフェルだったものよ」

推論のような、詰問のような言葉。
それに対して笑みを深め、朗々と答える。

「だってその方が面白い。何より束縛されたものより、自由な魂の方が美しい。
 それに、だ。
 私は演者の近くで野次を飛ばしただけ。そのせいで台詞をとちったのは演者が大根すぎるだけだと思わないか?」
「いいさ。どうでもいい。俺の目的の邪魔をしないなら、勝手にやれ」

ルイに背を向け、彼女の触れるものとは別の水槽へと歩み寄る。

「なあ、君はなんであんな下賤な霊の手を借りてる?」

その背に向けてルイが語り掛けた。
部隊を眺める観客のようなものではなく、台本に疑問を憶えた演者のように。

「ノルンの力で暁美ほむらを縛るのがそんなに大切か?
 時間遡行に悪い思い出でもあるのかい?
 聖杯だって、あんな小物に手を借りずともどうとでもなる。
 人の力だけでもやれたんじゃないか。少なくとも、余計な横槍は少なかったと思うよ」
「さて。なぜだと思うね?」

試すような口ぶりで返す。
魔王の中の魔王は、人の思惑をどう読む。
そう問われるのを望んでいたかのように、舌をまわし始めるルイ。

「あの『月』。世界を滅ぼす月は君の領分ではない。それは夜科アゲハの領分だ。
 ならば、君のつかさどる太陽もあるはずだ。
 では太陽とは何だ?恐らくは、あの月と同じように彼方からの来訪者……」

考えるようなそぶり。
何と呼ぶのか相応しいか吟味する。

「例えば、『ウロボロス』」

永遠に転生し続ける、星を喰らうもの。
星に寄生し、命を喰らう。
古代よりありし超抜種。
その在り方に近似する宙を翔ける〈生命〉がある。

「あるいは『原初生命繊維』」

さらにウロボロスとは永遠を象徴する世界蛇の名だ。
自らの尾を口に咥え、無限の円環を作り出す龍王。
それが世界を喰わんとするならすなわち

「もしくは魔女となりし『円環の理』」

それらは全て異なるもので。
しかしその本質を同じくする、彼方よりの侵略者。
そんな『太陽』を呼び寄せようとしているのではないか。


259 : 翼をください ◆A23CJmo9LE :2015/12/29(火) 17:42:24 bJlVin760

「あいつと関係があるようには聞こえんが?」
「あいつは触媒として用意したんだろう?いや、正確には触媒の触媒としてか。
 『太陽』を呼び寄せる触媒Aが必要で、その触媒Aを呼び寄せる触媒Bとしてアレを選んだ。
 こういうとき君たちニンゲンは何と言うのだったか……腐っても鯛、だったかな?
 まあ大天使も私ほどに堕ちてしまうと使い物にならないが」
「…………」

返答は沈黙。
肯定の否定もなく、呆れた素振りも驚いた素振りも見せず弥勒はじっと見つめ返すだけだった。

「まあいいさ。興味はあるが、ネタバレをされちゃつまらない。
 私は今後も観客を続けるだけだからね。
 とはいえ、私はともかくおれはマナーの悪い観客だ。知っているだろうが、役者の一人はおれが捻じ込んだものだしね。
 それではまた会おう。天戯弥勒君」

そういってルイ・サイファーは姿を消した。
後には今度こそ一人になった天戯弥勒のみが残された。
ふと、月を見上げる。

「当たらずとも遠からず、というのは便利な言葉だ。
 とりあえずそう言っておけば、それらしくなる」

自らの目的と、ルイの言葉をかみしめ。
最後に戦場の事を思い返す。

「夜科アゲハと俺はもとより、多くのものが天に手を伸ばし始めた。
 浅羽直之。間桐雁夜。犬養伊介。
 いずれ俺の目的を為すには十分な準備が整う」

とはいえ、紅月カレンが帰還した以上、残されたほとんどは能力者。
タダノヒトナリもスーツを纏われてはPSI粒子の影響は激減する。
残された、人間らしいものは

「現状の、鹿目まどかくらいか」

急げ。
草の冠に相応しい新たな世界を目指して。




【天戯弥勒@PSYREN-サイレン-】
[状態]魔力(PSI)消費(小)
[令呪]???
[装備]???
[道具]???
[思考・状況]
基本行動方針:???
1.聖杯戦争を通じて目的を達成する。


[備考]
※エレンの死体を巨大なビーカーのようなものに保存しています。


260 : 翼をください ◆A23CJmo9LE :2015/12/29(火) 17:42:43 bJlVin760

◇  ◇  ◇

「やあ、おれよ。相変わらず好き勝手やっているようで羨ましいよ」
「やあ、私よ。そちらもさほど変わるまい」

闇の中で向き合う、金色の髪に青い瞳の美しい男女。

「ヒトナリは元気そうだったかい?」
「心配はいらないさ。そんなに気になるなら私がいけばいいだろうに」
「不動明を呼び寄せておいたくせに、会いに行かないおれに言われたくはないな」

分り切った軽口のような何かをぶつけ合う。
嬉しそうに、愉しそうに。
話題に上がる男のことを思い浮かべるだけで愉快だという風に。
ひとしきり笑い合った後に揃ってまじめな表情を浮かべる。

「『月』が近づいている。それはかの地にある演算機もまた、ということだ」
「『月』が近づいている。それは引力の変化により、洪水をもたらすだろう」
「月の演算機にアクセスする、そのための子機としては」
「生命の全てを滅ぼす洪水を生き延びる、そのためには」



「「方舟が必要だ」」



「マンセマットごときのために来るのか?方舟は」
「そのくらいできなければ、奴がここにいる意味はない」
「まあ、神々との闘争を引き起こすにはあの程度でも十分さ」
「そうだ。おれの目的はあの頃から変わらない。傲慢な神々を、愛する者と共に撃ち落とす」

愛しい我が子ら、デーモンよ。
誰より愛しい、デビルマンよ。

「方舟が来る――神々が訪れる。
 英霊を呼ぶ――『座』に逝ってしまった明と、また会える。
 この聖杯戦争以上におれの目的を果たすのに相応しいものはない。
 ……邪魔はしないよ、天戯弥勒。おれもまた、おれの目的のために」

青年は少女に歩み寄り、その腹部に触れながら語りかける。

「『座』の明を産み落とすことはできないから、召喚に介入して彼を喚んだ。
 タダノヒトナリ。モリガン・アーンスランド。明。
 それに、暁美ほむら。我ら悪魔の側に彼らを導く。
 彼らをはじめ、神々との戦争のために兵力がいる。私には、新たな悪魔を生んでもらう必要もあるか」
「メムアレフが死した今、残された母は私だけか。仕方ないな」

神々との闘争。
ひたすらそれに向けて邁進し、その準備を。




【飛鳥了@デビルマン】
[状態]健康
[令呪]???
[装備]???
[道具]???
[思考・状況]
基本行動方針:神々との闘争に勝利し、デーモンの天下を
1.聖杯戦争を通じて明たち同胞に神を敵としてもらいたい
2.神々との闘争に備えて準備
3.必要に応じて参加者にも主催にも介入する
4.戦力増強のためルイと子を産むことも考える

[備考]
※ルシファーの男性としての面を強く顕現した分身です。
 両性具有の堕天使としての特徴を失うことで神々の一派の目を欺いています。



【ルイ・サイファー@真・女神転生 STRANGE JOURNEY】
[状態]健康
[令呪]???
[装備]???
[道具]???
[思考・状況]
基本行動方針:神々との闘争に勝利し、混沌に満ちた世界を
1.基本的に観客に徹する
2.聖杯戦争を通じて明たち同胞に神を敵としてもらいたい
3.神々との闘争に備えて準備
4.戦力増強のため了と子を産むことも考える

[備考]
※ルシファーの女性としての面を強く顕現した分身です。
 両性具有の堕天使としての特徴を失うことで神々の一派の目を欺いています。


261 : ◆A23CJmo9LE :2015/12/29(火) 17:43:59 bJlVin760
以上で今年最後の投下にしたいと思います。
よいお年を。

指摘等あればお願いします。
引き続き、修正および破棄の要求には真摯に対応する所存です。


262 : 名無しさん :2015/12/29(火) 22:16:38 fINfHP2.0

おお、聖杯戦争が秩序と混沌の戦いにシフトしつつある
各キャラをそれぞれの陣営に当てはめるのは楽しいですね


263 : 名無しさん :2015/12/30(水) 15:16:19 TmdJ.Z5A0
続きの投下乙です!
浅羽、今は力を得ながら押し流されるだけか…フェイスレスや白ひげは特殊例でしょうし。穹の遺志に報いる意地をどこかで見せてほしいが。
ヒトナリ&モリガンは考察と今後の方針決めですね。「彼女」へのつかの間の回想が…事態が事態になってきたせいか、覚悟完了っぷりがいよいよ極まってきた。場合によっては再びその手でけりをつけると。
そして何より、主宰者側に深く食い込む舞台裏の一幕!こいつら一枚岩じゃないんだなやっぱり…天使・悪魔の代理戦争の構図がここで持ち込まれるとは。彼らのそれぞれが、「かつて」を思い返して新たな計画に身を投じようとしてるのが面白いです。ルイ・サイファーもまぁぽんぽんと核心的なことを言ってくれるものだ…

改めて、投下乙でした!書き手の皆様もよいお年を。


264 : 名無しさん :2015/12/30(水) 17:39:58 hqEYHUQYO
投下乙です

神の子の血を餌に、神々を引きずり出す
愛しき者の魂を、サーヴァントにして再会する
聖杯戦争は一石二鳥!


265 : ◆wd6lXpjSKY :2015/12/31(木) 23:31:06 Vts9YT5E0

遅れながら投下お疲れ様です!

佳境に突入した感じが一気に来ましたね……!
最期まで戦い抜いて一発放った弩、復活した未現物質、来やがったな部外者組と役者の顔ぶれも変わってきました。

多くの思惑が交差して聖杯に辿り着くのは誰なのか、またはその先に到達するのは果たして……。
他人事みたいですが、先が気になってきました!この物語がどう着地するか楽しみです!

色々な言葉も出て来ましたしね。結末に向かってる感じが……。

(特に修正や破棄を求めることはありません)


さて、今年ももうすぐ終わります。
ここで予約とかできたらかっこいい感じはしますが、ちょっと厳しいですw

PSYREN聖杯的には複数の参加者が脱落したりと確実に物語が進んだ印象です。
大部各キャラの絡みが増えたり、因縁が出来たり、ルーラー干渉しまくり……様々です。

もう誰が落ちてもおかしくない状況なんじゃないかなあと個人的には思っています。
といっても書いてみなければ何も始まらないんですが……w

改めまして今年一年お疲れ様でした。
書いてくれた方、感想をくれた方、wiki編集してくださった方など皆様のおかげでここまで来れました。
また来年も温かい目で見守っていただけたら幸いです。


それでは来年もよろしくお願いいたします!良いお年を!


266 : 名無しさん :2016/01/01(金) 00:10:04 i8QroZnA0
改めて、投下に乙!1さんもよいお年をー


267 : ◆lb.YEGOV.. :2016/01/07(木) 01:03:04 PUblFolg0
一週間も経ちましたが新年あけましておめでとうございます。

次々と顔を出してくる主催陣、そして3騎目の脱落者とどんどん戦況は加速していきそうですね。

人吉善吉&キャスター(フェイスレス)、暁美ほむら&セイバー(リンク)、美樹さやか&バーサーカー(不動明)、間桐雁夜&バーサーカー(一方通行)で予約いたします。


268 : ◆lb.YEGOV.. :2016/01/13(水) 23:40:07 SbVTAXzw0
すいません、本日中の完成が難しそうなので延長させていただきます


269 : ◆lb.YEGOV.. :2016/01/21(木) 01:54:02 Xh48gwBo0
すいません、まだ完全に完成できていない状態で大変申し訳ないのですが、切りのいいところまで書きあげる事は出来ましたので、ひとまず前編という形で投下させていただき、近日中に後編も投下させていただければと思います。
予約した期間中に仕上げきれなかったことは事実ですので、問題がありましたら当作を破棄していただいても構いません。


270 : 真夜中の狂想曲 ◆lb.YEGOV.. :2016/01/21(木) 01:55:32 Xh48gwBo0

天戯弥勒からの通達は銀のキャスターから余裕の表情を奪うのに十分な内容だった。

月の落下。

1日とはいえ落ちるまでに猶予はある。町中に蟲と自動人形を展開しマスターの排除を優先させれば、何とかなるだろう。
比較的人間の姿に近い自動人形や銃人形達を各所に配置し始めている。

アサシンの脱落。

競合相手が減ったのは喜ばしいことだ。
加えてキャスターの強みである無数の人形達を無視して自身やマスターを狙ってくる可能性があるアサシンが揃って脱落したのは都合がいい。

マスターが一人帰還した。

脱落したマスターの報が流れていないという事はアサシンのマスターなのだろう、大して問題ではない。
だが、帰還以外で脱落したマスターの報が流れなかったという事がフェイスレスにとって一つの可能性を提起させた。

暁美ほむらの生存。

自身の元マスターであり、昼の大混戦で謀殺したとばかり思っていた女。
確かに魔力を根こそぎ奪って殺害した。
契約も切れている以上、一度は確かに死んだ筈なのだ。
だというのに死んだマスターについて触れられなかったということは、彼女が生存している可能性があるという事だった。
弥勒が脱落したマスターの情報をどのような意図かは知らないが流さなかったという線も考える事もできる。
しかし、キャスターの頭脳はそのような都合のいい解釈を信じ込める程、楽観的ではない。
どんなに綿密に作られた機械であっても見逃した小石が歯車に挟まれば忽ちに機能を停止させる。万全を期した計画を練っても些細な事から覆される事は十分にありえるのだ。
フェイスレス、いや白金という名の反英雄の人生は200年以上の時の中でそれを繰り返し繰り返し味わってきた。
だからこそ、この通達で生じた些細な可能性を無視する事など出来る筈がない。

アポリオン、そして監視用の自動人形を使い、ほむららしき姿がないか探す。
学校・繁華街・公園・住宅街とくまなく探すが、それらしい人物は見つからなかった。
屋外ならばまだしも、民家やマンション、宿泊施設の中まで調べ尽くすには時間も労力も足りない事に加え、先刻起こったアシュフォード学園での騒動にて現れた巨人と吸血鬼の戦闘に監視の目を注いだ結果、近隣の監視に穴を開けてしまっていた事は痛恨だった。

もしも暁美ほむらが生きており、この放送を聞いていたとしたら。
キャスターのサーヴァントが脱落していない事からまず自分の生存に気がつき、そして嵌められたのだと気付くだろう。
次にどのようなアクションを取るか。
キャスターの脳裏に浮かぶのはピンク髪の少女と青髪の少女の姿。

「おいおい、大丈夫かよキャスター」

人形に呼びに行かせていた人吉善吉の声が聞こえてくる。

その声色に含まれているのは緊張の色。

「今ちょうど手を打ってるところさ。良ければ君もほむら探しを手伝ってくれないかい?」

「カッ、後手に回ってるみたいじゃねえか。もし、暁美ほむらが生きてるっていうんなら鹿目まどかか美樹さやかって奴と接触してくるんじゃねえか?

お前が悪巧みしそうなところは読まれてるんだろ」

人吉の言う通り、キャスターもその可能性には行き当たっていた。

鹿目まどかに何やら思い入れのあるほむらがこの状況で自分の魔の手から彼女を守らない訳がない。

その為にもほむらが同盟を提案し、こちらに利用される可能性のある美樹さやか主従か鹿目まどか、そのどちらかに接触を試みる確率は高い。

「まどかちゃんに関しては相変わらず病院の中だよ。
さやかちゃんにはアプ・チャーを向かわせて撹乱させる予定だったんだけど、通達を受けてほむらが接触してる可能性があるから戻らせているところ」

キャスターが指差したモニターにはさやかの家から遠ざかるアプ・チャーの姿が映っている。
ほむらの姿をしたアプ・チャーを使い、悪魔のバーサーカー陣営を引き離す腹積もりではあったが、既にさやかがほむらと接触していれば彼女達主従を遠ざけるという当初の思惑は水泡に帰すどころか、完全な敵対関係となってしまう。
模倣する為の観察期間が少なかったアプ・チャーとほむら本人がかち合ってしまえば騙し通せる可能性は低い。
その上でまだ使い道のあるアプ・チャーを悪戯に消費するような真似は避けたかった。

「で、どうするんだよ。相性の悪い相手をむざむざ敵にしたまま放置するっていうんじゃないだろうな?」
「まさか、しっかりと手は打ってあるさ」

キャスターが指したモニターには空を飛ぶ人形に担ぎあげられたピンク髪の少女の姿があった。


271 : 真夜中の狂想曲 ◆lb.YEGOV.. :2016/01/21(木) 01:56:16 Xh48gwBo0

「あれは……!」
「まどかちゃんの人形。急ごしらえだけどよくできてるでしょ?」

先ほど病院にいると告げられた筈の鹿目まどかが自分達の手に落ちていた事に驚愕の声をあげた善吉を見て、キャスターが悪戯に成功した子供のように意地の悪い笑みを見せる。
よく目をこらして見ても遠目には人形と気づかせない程の精巧な出来栄えだった。

「ほむらで騙すことはできなくてもさ、まどかちゃんを使えば騙せるって訳。
きっとあいつ、さやかちゃんと接触してたらまどかちゃんが僕に何かされるかもって相談してると思うんだよねー。
そこにまどかちゃんらしき女の子を抱えた人形がいたら、そりゃあ釣り出されちゃうって僕はふんでるんだけど、どう思う?」
「釣り出すって作戦は悪くないとは思うけどよ、どこに釣り出す気だ?俺達の所にもほむらの所にもまどかの所にもぶつける訳にはいかねーんだろ?」
「うん、だからね、もう一人のキャスターいるでしょ? あそこまで連れて行ってマスターを操ったキャスターを始末してもらおうかなって」

モニターを見ながらキャスターが自身の作戦を伝えた。
善吉からすると金のキャスターを銀のキャスターが脱落する前に殺害されてしまうのは自己の死活問題となる。
だが、それをおくびにも出すつもりはない。
弱みを見せれば自身のサーヴァントが是が否にも金のキャスターを落としにかかるのはわかりきっている事だ。

「確かに俺がまた操られてお前の自害を命じられたらたまったもんじゃないもんな」
「そうそう、わかってるじゃないか。正直あのキャスターを生かしておいても僕らにメリットなんてないからねぇ、偽まどかちゃん誘拐の犯人に仕立て上げてさ、この機に始末しちゃおうって腹積もりだよーん」
「とはいえバーサーカーやさやかが操られたら不味くないか? いたずらに敵のキャスターの戦力を増やすだけだぜ?」
「温泉街の方にも人形を何人か向かわせているから、そうなる前に乱戦でも起こしてどちらかを始末するさ。
最悪、マスターさえ始末しちゃえばいい話だしね。ほかに何かいい手があるっていうなら聞いてあげるけど?」
「……いや、浮かばないな」

キャスターへバーサーカーを向かわせることのリスクを伝えるも、それもキャスターが計画を思い直すまでには至らなかった。
事実、敵対するであろうほむらと関係を持っており、こちらの本拠を把握しているバーサーカーを放置しておく事は論外であり、二番目に厄介な金のキャスター陣営と潰し合わせる手をキャスターが取らない理由はなく、善吉が断る理由もない筈なのだ。
ここで不自然に反対をすればキャスターに怪しまれるだけで一部の利も生まれない。
キャスターを相手に一方的な戦闘を仕掛けられる可能性がある自動人形の大軍を差し向けられるよりは、まだ生還の目はあると思い直し善吉はおとなしく従う以外の手を打つ事ができなかった。

「なら決まりだね、運頼みってのは好きじゃないけど、上手く潰しあってくれるように祈ろうか。
ああ、それと他にも色々動いておこうと思っていてね」

その時、計器の光がカチカチと点滅をする。
キャスターと人吉がそちらに視線を映す。
別のモニターには半壊した民家が映されている。

「おい、あの家って……」
「色々と状況が変わって僕一人だとしんどそうだからね。とれる手はなんでもとっておいた方がいいだろう?
急な方向転換になってしまって悪いけど、君にも働いてもらうよマスター」

モニター越しに映る表札には『間桐』という字が書かれていた。


272 : 真夜中の狂想曲 ◆lb.YEGOV.. :2016/01/21(木) 01:59:18 Xh48gwBo0



「うっわ、なにあの月、気味悪い」

悪魔のバーサーカーとそのマスター、美樹さやかは通達を受けて夜空に浮かぶ月を見上げていた。
空に浮かぶ月には、つい数時間前に見上げた時にはなかった筈の顔が浮かんでいた。
鬼面の如き表情を浮かべる月にさやかは生理的な嫌悪感を覚える。

「あれが落ちてくる事を知れば、早ければ夜の内、遅くとも朝には他の陣営も積極的な動きを見せるだろうな」
「やっぱり、私たちが聖杯がどういうものか調べてたのが原因?
あれって『余計なことはしないで戦争に集中しろ』って事でしょ?」
「さてな、昨日の調査だけではロクな事がわからなかった俺達の為だけに、こんな釘を刺す真似をするのはあまり考えづらい。
1日でサーヴァントが2騎も落ち、学校や橋での騒ぎも考えれば戦争そのものが停滞している為のテコ入れという線も恐らくは薄いだろう。そうなると……」
「あたし達以外にも聖杯の調査をしてる陣営がいて、そいつらに対しても牽制してる可能性?」
「ああ。聖杯の存在に対して懐疑的な陣営が多ければ、それが他の陣営に伝播する事も充分にありえるだろう。
誰だって願いを叶えるためにこの戦争に臨んでいるのだというのに、聖杯自体に裏があり望みを叶えることができなかったのだとしたら、徒労に終わってしまうからな」
「疑いを持たせない為には時間制限を設けて考える時間を与えさせないって訳ね、性格悪い」

眉根を寄せ、さやかは不機嫌な表情を浮かべる。
それと同時に、内心でバーサーカーが傍にいてくれた事に感謝する。
限定的な狂化によって理知的な一面を残したこのサーヴァントと意見を交換し、時には諌められる事でなんとかここまではうまくやってこれたという自覚があった。
バーサーカーに後から聞かされた事ではあったが、インキュベーターの思惑に乗せられ思考のできない本来のバーサーカーを宛がわれていたならば、
自身一人の考えで行動する状況に陥り、最悪の場合は通達で呼ばれていたアサシン達の次に自分達が呼ばれていた可能性もあり得たのだ。
現に今もバーサーカーと話をしていなければ時間制限をかけられた焦りから軽率な行動に出ていたかもしれない。
思い込むと熱くなりやすい彼女にとってブレーキと相談役を兼ねてくれるバーサーカーは理想的なパートナーだと言えた。

「そこで、俺達のとるべき行動だが、まずはマスターの知人である暁美ほむらとの協力についてだ。
状況が変わった以上、あちらが共闘を蹴ってくる可能性がある」
「そこに関してはあいつを信用していいと思う」
「ほう?」

昼に遭遇し、共闘するかどうかの話し合いをした暁美ほむらとキャスター陣営。
信用のおけないサーヴァントに浅からぬ因縁を持つマスター。
聖杯狙いの姿勢は勿論、時間をかけて自陣営を強化し、他のクラスへの対抗手段を増やす事がセオリーのキャスターというクラスにとって、この時間制限は明確に不利益と言える。
一応は協力姿勢を見せたとはいえ、友好を装って騙し討ちされる可能性をバーサーカーは懸念していたが、さやかが迷いもなくほむらを信じると答えた事に興味深そうな表情を浮かべる。

「正確には、あいつのまどかへの思いを信用するって感じかな。多分あの月を見たらあいつは月が落ちる前になんとしてもまどかを帰そうとすると思う。
私も危険な事が起きる前にまどかを帰してあげたいから、ここに関してあたしとあいつの目的は一致してる。
あの胡散臭いキャスターだって一時的にバーサーカーを仲間にできるうえに、1つの陣営が脱落してくれるっていうなら、邪魔をする理由はないと思うんだ」
「だから、そこまでは彼女達が裏切る心配はないと?」
「そういうこと、そこから先は多分あっちもなりふり構ってこないだろうから準備しなきゃいけないだろうけどね」

そう言って苦笑を浮かべた後、さやかは「ごめん」と一言バーサーカーに謝罪をした。


273 : 真夜中の狂想曲 ◆lb.YEGOV.. :2016/01/21(木) 01:59:51 Xh48gwBo0

「正直なところ、まどかを助けたいっていうのは私のわがまま。多分あいつに協力してたら聖杯の調査なんてしてる暇はなくなるだろうし、苦労もいっぱいすると思う。
でもね、その為に友達を見捨てるなんてことだけはしたくないんだ」

さやかの決断は彼女達の推察する弥勒の思惑にむざむざと乗ってしまう行為だった。
鹿目まどかの救出が完了すれば暁美ほむらは牙を向く。
ほむらが一人の少女と自分の願いの為だけに世界を敵に回せる人間だということをさやかは身をもって理解している。
まどかの救出とほむらへの対処に時間を割けば、聖杯の調査に充てられる時間は殆ど残っていないだろう。
このような強行手段に出る以上、この聖杯戦争には何か裏があることは間違いはない。
それでも、さやかの希望を優先するのであれば、その裏からは目を背けて弥勒の掌の上で踊ることを承知しなければならない。
その申し訳なさが、さやかの頭を下げさせた。

「気にするな、マスター」

優しい声と共に暖かな手がさやかの両肩に当てられた。
面をあげたさやかの目に映ったのはバーサーカーの力強い笑みだった。

「友人を助けたいと思う気持ちは俺だってわかるつもりだ。
それに、まだ全てが手遅れと決まった訳じゃない。最後まで望みを捨てるものじゃないさ」

獰猛で不敵で、それでいて暖かみを感じる笑みだった。
人の為に戦い、人に理解されず、人に絶望し、それでもなお足掻き続け、文字通りその身が朽ちるまで戦い抜いた不屈の英雄にとって、この程度の苦境は心を折り望みを絶つまでには至らない。
その姿が弱気を見せていたさやかの心に自然と活力を与えてくれた。

「……ありがと」

感化される様に、気丈な笑みを浮かべてさやかが応える。
その姿を、バーサーカーは暖かさと憧憬のこもった瞳で見つめる。その眼差しは間違いなく悪魔<<デーモン>>ではなく、人間のものだった。

「しかし、こうなるとキャスター陣営との接触を昼にしてしまったのはまずかったかもしれないな。
正式に手を組むのが遅れれば、その分他の陣営に対しても出遅れてしまうことになる」
「そうだね、あいつの事だからこの放送を聞いたら人形の1つや2つ寄越してきそうだけど。
連絡先だけでも交換しておかなかったのは失敗だったなあ」

その時、さやかの家の電話が鳴った。
聞こえた音に一瞬身を強ばらせる。
こんな夜更けだというのに電話の着信音が止む気配はない。

「マスター、君の知り合いのNPCでこの時間に電話をかけてくる人物に心当たりはあるか?」
「ううん、全然。悪戯電話か間違い電話かも」
「プログラムに忠実なNPCがそんなバグめいた行為を進んでやるとはあまり考えられないな」
「NPCがあまり考えられないならさ、他の参加者って事になるよね」

この家の電話番号を知っている人間はそう多くはない。
敵か味方か、それとも別のなにかか。
取るべきか悩むさやかの前にバーサーカーが進み出た。

「アサシンが脱落したとはいえ電話越しにマスターを攻撃するサーヴァントがいないとも限らない、ここは俺が出よう」
「ごめん、お願いできる?」

さやかの問いに無言で頷き、バーサーカーが受話器を取る。


274 : 真夜中の狂想曲 ◆lb.YEGOV.. :2016/01/21(木) 02:00:26 Xh48gwBo0

「もしもし?」
『……その声、美樹さやかのサーヴァントね』

それはごく最近に聞いた覚えのある声だった。

「暁美ほむらか? 返事なら昼に……」
『今はそれどころじゃないの、貴方がいるってことは美樹さやかはいるのよね? 代わってちょうだい』

ぴしゃりとバーサーカーの言を無視して彼のマスターを希望するほむらに対し、視線でさやかの返事を伺う。
バーサーカーの言葉が途切れた事と向けられた視線からおおよそを察したさやかは溜め息混じりに頷き、電話を代わる事を了承する。

「もしもし、代わったけど急にどうしたのよ。そもそもあたし、あんたに家の電話番号なんて……」
『説明してる時間が惜しいから単刀直入に言うわ。
キャスターに裏切られた、このままじゃまどかの身が危ない』

微かに焦りの混じったほむらからの告白に、さやかは一瞬思考が停止する。

「は!? あんたと会ったの数時間前だよ? 仲悪そうだとは思ったけどなにやってんのさ」
『詳しい経緯は合流できたら説明する。とにかく今は力を貸して、お願い』

(どうしたマスター?)
(さやかの奴、理由はわかんないけどキャスターに裏切られたって。まどかが狙われてるみたい)
(……それはまた随分なトラブルだな)

念話でバーサーカーに状況を伝える。
ほむらから告げられたキャスターの背信というバッドニュースによって大幅な行動予定の変更をせざるを得なくなってしまった事に軽い頭痛を感じながら、さやかは会話を続ける。

「力を貸すのはこっちとしてもいいけどさ、ならあんた今はサーヴァントがいない訳で、キャスターだってマスターがいないんじゃないの?」
『キャスター、真名はフェイスレスと言うのだけど、あれのマスターは恐らく最初の通達で天戯弥勒が言っていた元アサシンのマスターよ。
通達で帰還したマスターがいると言っていたでしょ? 私は彼女からセイバーを譲り受けた。
だからあの元アサシンのマスターはまだ帰還していないのよ』

自分のサーヴァントだった存在の真名をほむらが告げる。
それは彼女とキャスターの仲が決裂した事が真実であるのだと何よりもに物語っていた。
さやかがすかさずバーサーカーにキャスターの真名を念話で伝える。
果たしてバーサーカーの記憶の中、正確には聖杯から与えられた知識の中に、間違いなくその名を冠した人形遣いの男は存在した。

『それに、私が裏切られたと思う場所にそのマスターも居合わせていたわ。
強引に私の魔力を吸いとって殺す事で契約を無効にさせて、サーヴァントのいない彼を自分のマスターに据えたんでしょうね』

その言葉の節々に隠しきれない苛立ちをさやかは感じる。
まんまと一杯食わされたのだからその怒りは推して知るべきだろう。


275 : 真夜中の狂想曲 ◆lb.YEGOV.. :2016/01/21(木) 02:00:56 Xh48gwBo0

「真名まで言うって事はマジみたいね。わかった、信用する。それで、まどかがどこにいるか心当たりはないの?」
『彼女の家に電話したけど、こんな時間じゃ怪しまれて当然ね、どこにいるかは教えてもらえなかったわ。
さっき言ったところにまどかもいたのだけれども、彼女を攫ったマスターと私が会った時には離れ離れになっていたから恐らくは無事な筈』
「ちょっと待って、まどかが攫われた!? なんであんたあたしにその時連絡しなかったのよ!」
『緊急事態だったのよ。フェイスレスにまどかの事が知られてしまえばそこにつけ込まれる。あいつの目を盗んであなたに連絡する術がなかったの。
……話を続けるわ。まどかには一応協力しているらしい他のマスターがいた、見た目は警察官。恐らくはその人と行動を共にしていると思うわ』

まどかの身に起こった一大事を隠していた事に腹立たしさを覚えつつも、ほむら自身にも余裕がなかったことを理解し、さやかはほむらへの糾弾を踏みとどまる。

『フェイスレスにはバレないように動いていたつもりだけど、私と貴方の関係を見てまどかに何かあるのかもしれないと考えたかもしれない。
そしてさっきの通達で私が生きている事や私が貴方に連絡してあいつの敵になる可能性くらいあいつも考えていると思う』
「それでまどかを狙うかもって事ね、まったく立て続けに色々と聞かされて頭が混乱しそうだよ。
とりあえずまどかがどこかにいるかわからない以上、一旦合流しよ。場所は……」

(マスター、悪いが電話はそこまでだ)
(え?)
(歯車の軋む音が複数、さっそく始末に動きだしたようだな)

周囲を伺っていたバーサーカーが念話で語りかけてくる。
悪魔の優れた聴覚がさやかの家を取り巻くように動く人形たちとの駆動音を捉える。
その姿をデビルマンへと変え、一足先にベランダから外へと飛び立つ。

「ごめん、さっそくフェイスレスだっけ? そいつが手を打ってきたみたい。
また後で電話する、連絡先は今電話に映ってる番号にかければいいでしょ?」
『そうだけど待って、せめて合流場所を……』
「なら病院でどう? 目印にはなるでしょ」
『わかったわ』

電話が切れ、切り際に一言もなしにそっけなく電話切ったほむらに対してさやかは苦笑を浮かべる。
先ほどまでナンバーディスプレイに映っていた番号をメモを終えると、屋外から爆音が響いた。
何事かと魔法少女へとその姿を変えてさやかがベランダへと駆け出す。
彼女に視界に映っていたのは眼下でバーサーカーに破壊されていく人形、そして上空に浮かぶ二つの人影。
天使のような姿をした人形と、昼に彼女へとほむらへのメッセージを伝えにきた人形。
その人形が何かを抱えている事に気づく。
目を凝らし、抱えている何かを正確に理解し、さやかは目を見開いた。

「まどか……!!」


276 : 真夜中の狂想曲 ◆lb.YEGOV.. :2016/01/21(木) 02:01:53 Xh48gwBo0



バーサーカーが地に降り立つと同時に複数の銃人形が彼への攻撃を開始する。
しかし、人間の姿を模した銃人形程度の銃撃では悪魔の体に傷一つさえつける事は能わない。
烈風の如く駆け抜けるバーサーカーにある物は頭部を拳で打ち抜かれ、またあるものは胴体を剛力で引き裂かれて機能を停止する。
不意に、悪魔の聴覚が上空からこちらへと直進するジェット音を聞きつけた。
傍らにいた銃人形を掴み音の来る方向へと無造作に投げつける。
投げ飛ばされた銃人形が矢の形をしたミサイルに直撃し、爆炎に飲み込まれた。

「いい反応だなサーヴァント」

情報から聞こえる声にバーサーカーが首を上げる。
彼の視界に映ったのは天使だった。
その純白の羽根にかつての敵の影を思い出し、バーサーカーは不愉快そうに顔をしかめる。

「やはり悪魔というものは天使を嫌悪するものなのだな。醜い皺が出ているぞ」
「悪魔には天使とでも言いたいのか? 生憎と姿を模した人形風情で俺をどうにかできると思うなよ」

その時、バーサーカーの視界にもう一体の空を飛ぶ人形の姿が映る。
ぐったりとして動く気配のないピンク色の髪の少女を抱えて離れた距離からこちらを伺っていた。

「あれは!」
「その反応、やはりお前たちも知り合いである可能性は高いようだ。
ケニス、貴様は手筈通り温泉に向かいあちらのキャスターにその女を差し渡して来い」
「あいよぉ!」

バーサーカーの反応に笑みを浮かべ指示を出した天使型人形に従い、まどからしき人物を背負ったケニスが北西の空へと飛翔していく。
そうはさせじと飛翔して追跡を試みたバーサーカーに向けて、天使型人形は手にもったハープを弦代わりに矢を模したミサイルを複数射出する。
舌打ちを一つ、翼で全身を包みミサイルの直撃を防ぐが爆風に煽られ、ケニスの追撃は中断させられる。

「悪魔のバーサーカー、君の相手はこのクピディアーだ。我が矢からそう易々と逃げられると思わない事だな」
「チッ、見た目から何までムカつく奴だ、とっととガラクタに変えさせてもらうぞ」
「そうか、それは恐ろしい、な!」

好戦的な炎を瞳に宿らせるバーサーカーとは対照的に冷笑を浮かべたクピディアーがミサイルを放ち、それを援護する様に残った銃人形が銃撃を開始する。
対してバーサーカーが口から炎を吐き出し、ミサイルを爆破させる事で銃弾を諸共に吹き飛ばす。
だがミサイルと銃撃の雨は止む事がなく、バーサーカーは攻めあぐねてしまう。
その時の青い影が駆け抜け銃人形の一体を串刺し、両断する。
影の主は美樹さやか、隣にいた銃人形が反応するよりも早く返す刀で袈裟懸けに斬りつけ機能を停止させる。

「そこのあんた! まどかに何するつもりよ!」
「ふふ、バーサーカーのマスターか。マスターを一人さらったのだから、有効に利用させてもらうに決まっているだろうう。
そして、今から死ぬ君にそこから先を知る必要はない!」
「しまった、狙いはマスターか!」

さやかが戦場に現れると同時に遠巻きに銃撃をしていた銃人形達が行動を変え、一斉にバーサーカーへと躍りかかる。
バーサーカーにとってそれらをスクラップに還すのに要する時間は数十秒程、だがそれだけの時間があればクピディアーがさやかに狙いを定め、ミサイルを射出するには充分過ぎた。
さやかの退路と進路を塞ぐように放たれた10発のミサイルが牙を向く。
バーサーカーが飛翔する、いくら魔法少女といえ、これだけのミサイルの直撃を受ければただでは済まない。
間に合え。
脳裏に親友だった少女と想い人の姿がフラッシュバックする。
バーサーカーとさやかの影が重なるのと路地を爆炎が包むのはほぼ同時だった。


277 : 真夜中の狂想曲 ◆lb.YEGOV.. :2016/01/21(木) 02:02:37 Xh48gwBo0

「これを受ければ一たまりもあるまい、これで造物主様の憂いも一つ……」
「もう勝ったつもりとは随分と気が早いな」

もうもうと上がる煙を眼下に勝利を確信したクピディアーに地獄の底から聞こえてくるかのような暗い声が聞こえる。
声を聴き、クピディアーがハープを構えるよりも早く、煙の中から弾丸の様な速さで何かが彼目がけて飛び込んでくる。
黒い弾丸を紙一重で交わし、そのまま彼の上空に飛び出してきたものの正体を視界に収める。
そこにあったのは満月を背景に羽根を広げたバーサ―カーの姿。
身体の各所に焦げた跡がみられるものの、それは致命傷とは程遠く、みるみる内に再生していく。
夜の闇の中にギラリと光る双眸が、敵意と殺気を込めてクピディアーを見下ろす。
耳まで割けんばかり開いた口から鋭い牙と紅い舌が覗き、怒気の籠った息が漏れる。
それは正に悪魔と呼ぶに相違ない出で立ちであった。
咆哮を上げ自分目がけ急降下する悪魔に対し、クピディアーはハープに弓を番えることもなく、「ヒッ」と短くひきつった悲鳴を上げる。

「デ、悪魔<<デモン>>……!!」

クピディアーの顔が歪む。
かつての人形使いとの闘いとは異なり、その顔に刻まれた感情は恐怖。
絶対的な破壊者と相対した事によって生じた感情は、彼が忌み嫌っていたシワとなって表出する。

「そうだっ! 貴様らが俺のマスターやその知り合いに手をかけると決めた以上、俺は貴様らにとっての悪魔<<デーモン>>だっ!」

勢いよく振り下ろされた手刀がクピディアーの左肩から斜め下までを両断する。
恐怖に歪みシワが刻まれた表情のまま、機能を停止した天使が地面へと墜落した。
周囲に敵がいなくなった事を確認し、バーサーカーが地面にいるさやかを抱え再度飛翔する。

「怪我はないか、マスター」
「だ、大丈夫。それよりあたしのせいで……」
「気にするな、それに君が来なければもう少し足止めを食っていたんだ。結果的には悪くない」

眼下が次第にざわつき始める。
騒ぎが収まったらしい事を理解した住人達の悲鳴や戸惑いの声。
そう遠くなく通報を受けた警察がやってくるだろう。

「マスター、あのクピディアーとかいう人形は仲間に温泉にいるキャスターの元に向かうよう指示を出していた。罠の可能性もあるがどうする?」
「あれがまどかの可能性があるなら、罠かもしれなくても放ってはおけないよ。フェイスレスを倒したってあっちのキャスターが何するか分かったもんじゃないし」
「了解した、飛ばしていくぞ」

温泉へと進路を変更し、バーサーカーはさやかを抱え夜闇の空を行く。
夜風を受けながらさやかは思い出したように携帯番号を取り出し、先ほどメモしておいた電話番号を打ち込んでいく。
しばらくして、電話が繋がった。

「もしもし、あたし。まどかが攫われて、今温泉にいるらしいもう一人のキャスターのところに運ばれてるみたい。合流は麒麟温泉に変更よ」


278 : 真夜中の狂想曲 ◆lb.YEGOV.. :2016/01/21(木) 02:03:47 Xh48gwBo0



「奴は人を操る力を持ってる危険なサーヴァントよ。特徴は金髪で白い手袋をつけた女子学生。
見つかったらまずいから極力それらしき人間の前には出ないことをお勧めするわ。
マスターの方は紫の長髪、目立つ色だからすぐわかると思う。ええ、そちらも気をつけて」

セイバーのバイクに乗りながら、電話の主、美樹さやかからの報告を受け、ほむらは病院から麒麟温泉へと目的地を変更する。
完全に後手に回ってしまった。
その事が彼女の心の中で自己嫌悪と怒りに変換されていく。
他者を利用してでもまどかを守ると決めた自分が、まんまと切り捨てようとしていたキャスターにいいように利用され、そして今まどかを危険に晒している。
彼女のサーヴァントが何をやっているのか、疑問に思わなくはないが、それはそれとして、なんとしてでもまどかを助けなければならない。
さやかからは罠の可能性も指摘されたが、ほむらが出した答えは彼女と一緒だった。

「電話も終わったし飛ばしていいわ、セイバー」

背中にしがみつくほむらの声に応える様に、バイクの速度がグンと増す。
もしも警察と出くわせば追いかけられても仕方ない速さにまで達するが、幸いにもパトカーや巡回には出くわしていない。
この調子ならば温泉まで残り数分とほむらが予測をつけた時、遠方、バイクの進路上に人影を発見した。
車道の真ん中に老人が一人。
黒い外套と山高帽を被り、杖に両手を添えて佇んでいる。
ヘッドライトがグングンと老人へと近づく。
爆音をあげて疾走するバイクはこのまま行けば老人を轢いてしまうだろう。
危ない、そう叫ぼうとしたほむらは不意に浮遊感に襲われた。
宙を舞う視界の中、無人のバイクが老人に向かってひた走る。
セイバーが自分を抱えて飛んだのだと理解した刹那、突撃するバイクに対し白光が閃いたのを確かに捉えた。
老人にぶつかるよりも速く、バイクが左右に開き、丁度中央にいた老人を避けるように素通りし、金属とアスファルトが擦れる耳障りな音を立てて道路に転がった。
と、浮遊感が薄れる。彼女を抱えて跳躍したセイバーが地面に着地したのだ。
だが、ほむらの視界は老人に釘付けになっていた。
先程まで杖をついて立っていた筈の老人が何かを振り抜いた体制で止まっていた。
視線が振り抜かれた左腕へと移る。
老人が左手に持っていたものは右手だった。
精巧に作られた右手を持ち手に、手首から先は日本刀やサーベルを思わせる細く鋭利な刀身が伸び、月夜を受けて鈍い光を見せる。

「フェイスレスの自動人形……!」
「シルベストリという。造物主様の命により貴様らをここで始末することになった」

シルベストリと名乗った人形の言葉を待っていたかの様に、町の至るところからキリ、キリ、と歯車と繰り糸の軋む音が響き始める。


279 : 真夜中の狂想曲 ◆lb.YEGOV.. :2016/01/21(木) 02:04:30 Xh48gwBo0

「酷いなシルベストリ、まるで造物主様からの刺客が君一人だけみたいではないか」
「そうそう、俺たちだっているんだからな」

上等そうな白いスーツに身を包んだ人形達と共に一人の腹話術師が姿を表した。
いや、その異様な風貌、そして聞こえる人外の駆動音が彼らもまた人形である事を言外に告げている。

「やあ、元マスターのお嬢さんとそのサーヴァント。私の名前はパウルマン、こちらはアンゼルムスという」
「造物主様はあんたを念入りに殺しとておきたいんだとさ、運がなかったな!」

アンゼルムスがけたたましい笑い声をあげると同時に、ほむらとセイバーを包囲するよう形でスーツを着た人形が一斉に飛び出す。
腕、胴体、首、体の各所からせりだした凶悪なギミックでもって二人を血祭りに挙げるべく駆け寄る人形達。
彼らの凶器がほむら、そしてセイバーへと肉薄せんとした刹那、不意に二人の姿がかき消えた。
人形達の攻撃が何もない中空を空振りする。
何が起こったのか。だが状況を確認する暇は与えられなかった。
対象を失った人形達の眼前には漫画にでも出てきそうな形状をした爆弾が複数。
彼らが疑問に思う間もなく爆音と爆炎があがる。
ごろごろと吹き飛ばされ、人形達が転がっていく。
ロケット弾の爆発にすら耐え抜く装甲を誇るパウルマンの"生徒"と呼ばれる人形達だが、当たりどころが悪かったのか何体か頭が吹き飛んだまま、動かないものがいる。
それを尻目に、ほむらとリンクが包囲外に降り立つ。
ほむらの時間停止能力を用いてリンクともども包囲から脱出し、代わりに爆弾を設置していたのだ。

「おいおい見たかよパウルマン」
「ああ見たともさアンゼルムス。あのサーヴァントの能力かな」
「あちらの少女が何かした可能性もある。造物主様からは不思議な力を持っているであろう事を聞いているしな」

3体の人形が興味深く観察している中、生徒達が再度の追撃のためにじりよってくる。
それに合わせるように、ほむらが少しずつ後退する。

(私の手持ちの武器ではあいつらを壊しきる事はできない)

昼、まだフェイスレスがサーヴァントであったときに銃器を使って自動人形の耐久性を調べた事を思い出す。
現在手持ちの武器は拳銃程度、当然の事ながら自動人形達を殺すには足りない。

(セイバー、ここに私がいたら貴方の足手まといになる。しばらくは身を隠すわ)

ほむらの問いに、セイバーは剣と盾を構え人形達から彼女を遮るように立ちはだかる事で応える。
それに頷き、ほむらが時間停止を利用して近隣の路地裏に逃げ込む。
時間停止の魔法を知らない自動人形達の視点では、急に姿を消したほむらを追跡する事は不可能だった。


280 : 真夜中の狂想曲 ◆lb.YEGOV.. :2016/01/21(木) 02:05:05 Xh48gwBo0

「また姿を消したか。どうやらサーヴァントの力ではなさそうだ」
「なに、周囲には銃人形を潜ませている。そうそう簡単に逃げおおせる事などさせんよ」
「それよりも早くあのサーヴァントをやっちまおうぜパウルマン」
「そうだなアンゼルムス。あの女が如何に不思議な力を持っていようとも共に戦うべきサーヴァントがいなければ終わりなのだからね」

やれ、とパウルマンが号令をかけると、再び生徒達が攻撃を開始する。
腕から刃をつきだした人形の攻撃をセイバーは盾で受け止める。
そのまま力強く盾でもって押し返し、体勢を崩した人形の胴を薙ぐ。
人間ならば致命の一撃であっても人形を破壊するには至らない。
斬撃の勢いで吹き飛ばされながらも、むくりと立ち上がった人形を飛び越え2体目、3体目、次々と人形達の猛攻が繰り広げられる。
それでも剣の英雄が膝をつく事はない。
いなし、かわし、弾き、切り払う。
多対一の戦いを繰り広げ続けて来た英雄にとって、この程度はまだ苦境の内にすら入らない。

このままでは有効打を与えられないと見た人形達はセイバーがほむらといた時と同様に、彼を包囲するように陣形を変える。
退路を塞ぎ1枚の盾と一振りの剣では凌ぎきる事さえ許さない全方位攻撃。
かつて周囲を高速回転する刃の輪を用いたしろがねOを打ち破った攻撃でもある。
一糸乱れぬ同時攻撃がセイバーの頭蓋を叩き割らんと迫る。
だがそれよりも速くセイバーが動いた。
両手で掴んだ剣を振りかぶり、遠心力に回せて体ごと360°1回転。
それは先のランサーとの戦いでも見せたセイバーの剣技の一つ。
見事にカウンターを合わせられた人形達は魔力を上乗せされた回転切りによって突き出した拳はもちろんのこと、その体までを粉砕され宙を舞った。
どしゃりと人形だったのものの成れの果てが道路にぶち撒かれる。

「ご自慢の生徒達は全滅したようだなパウルマン」
「そのようだシルベストリ、人間とはいえ、やはりひとかどの英霊。どうやら私が出なければならぬらしい」

そう言うやパウルマンは自身の頭部を外す。頭を失った体からは折り畳み式の大きな刃が姿を現した。
同時にアンゼルムスが地面へと降り立ち、異様としか言えない程に長い両手でパウルマンを担ぎ、回転を加えながら投擲する。
刃を外向きに高速で回転するパウルマンがセイバーへと迫る。
間一髪、盾で受け流すことには成功したが、成人男性一人分程の質量を受け流しきる事は難しく、セイバーは体勢を崩す。
受け流した盾についた真一文字の傷がパウルマンのブレードの切れ味の良さを物語っていた。
だが、そこに注視している暇はない。
体勢が崩れたセイバーを狙いアンゼルムスとシルベストリがセイバー目掛け駆け寄る。
ブーメランの様に旋回するパウルマンがセイバーを切り裂くまでの足止めであることを察した剣からフックショットへと装備を持ち変え街路樹へと射出、そのまま自身を樹の方へと引き寄せる事でパウルマンの一撃を回避する。
フックショットを外し着地する間際を狙いシルベストリの剣閃が走る。
一刀目を盾で弾き、その隙に取り出した剣で二刀目と打ち合う。
剣撃の音が響き、火花が散り続く三刀目、今度は弾かれる事なく鍔競り合う形となる。


281 : 真夜中の狂想曲 ◆lb.YEGOV.. :2016/01/21(木) 02:05:46 Xh48gwBo0

「その得物から剣の英雄と見受けるがなるほど、そう名乗るだけの実力のようだ」

シルベストリが呟くように喋る。
セイバーの瞳と人形の無機質な瞳がぶつかる。

「このような場で無ければ、かつてある少年から答えを得た問いを君にも問うていたのだがな」

不意にシルベストリが力を抜き、後方へと飛び退る。
拮抗していた力の内、片方がなくなった事で勢いあまって体勢が崩れたセイバーの視界には宙を舞いながら巨大な口を開き、今まさに食いつかんとするアンゼルムスの姿。
間一髪、直撃する刹那に盾を使ってアンゼルムスを上へと跳ね上げる。

「ひひ、それで凌いだつもりかよ〜〜〜!!」

跳ね上げられながらもアンゼルムスの長い腕がセイバーの盾を持った腕へとしがみつく。
人形の握力で腕を締め付けられ、セイバーの顔に苦悶の色が映る。
セイバーの腕を軸に重力に従い降下するアンゼルムスが再度セイバーを食い破らんとその咢を開いた。
それに対してセイバーは空いた腕にもった剣でもって迎撃を試みる。

「ふひひひ、無駄だぜ〜? 俺の歯は硬度10、ダイヤと同じくらい硬いのさ。そんなチャチな剣なんて噛み砕いてやるさぁ!」

勝ち誇った笑みを浮かべながら大きく開いた口がセイバーの剣の腹を砕かんと打ち付けられた。
硬い金属が砕ける音が響く。

「へ?」

間の抜けた声をあげたのはアンゼルムス。
気付けば彼はぼろぼろの歯が生えた口から裂けるような形で上下に両断されていた。
アンゼルムスを切り裂いたセイバーの剣には傷らしい傷の一つすらついていない。
確かに硬度10を誇る彼の歯で砕けないものなど、この現代の世には殆どないだろう。
だが、それは人が作り出した物の中での話に過ぎない。
女神ハイリアが残し、伝説の勇者によって鍛え上げられた、かの名剣エクスカリバーにも劣らぬ聖剣が、たかだか硬いだけが自慢の人形の歯如きで折れるなどという事があろう筈もないのだ。
もっともその様な武器であったことを知るはずもないアンゼルムスはただ驚愕の表情を浮かべながら地面に転がりその機能を完全に停止させる。

「アンゼルムス!? 貴様ァ!」

相棒が破壊され激昂するパウルマンが飛びかかる。
が、アンゼルムスとのトリッキーな連携こそが持ち味だったパウルマンが単独で向かった所で結果は明白だった。
駆け寄るセイバーに向けて胴体からスパイクギミックを打ち込もうと試みるがそれは盾によって阻まれる。
出がけを潰されたたらを踏んだパウルマンの視界は大上段に剣を構えたセイバーの姿。
まともな反応すらできなかった彼へ向けて縦一閃に衝撃が走る。
遅れて、切断面から血の代わりの銀色の体液が溢れ出た。

「これが、英霊の力か」

目を見開き左右に割れていくパウルマンが呟く。
まだ喋れるだけの気力があったところで結果は変わらない。既に勝敗は決まっていた。

「つ、強い……」

どしゃりと、音を立ててパウルマンだったものが転がり、セイバーは最後の相手へと視線を向ける。
シルベストリは逃げも隠れもせず、ただ右手に左手をそえ佇んでいた。


282 : 真夜中の狂想曲 ◆lb.YEGOV.. :2016/01/21(木) 02:06:16 Xh48gwBo0
「よもやあの二人をこうも容易く破って見せるとはな」

無感情な声が響き、すっ、と構えを見せる。
東洋に伝わる居合と呼ばれるものだった。
応えるようにセイバーもまた、剣を構える。
勝負は一瞬の内、一撃の元に決まる、そう二人は認識した。
風がヒュウと吹き、セイバーの金髪とシルベストリの外套を揺らす。
どこからか猫の鳴き声が響く、それが合図となった。
互いが互い、ほぼ同時に駆け出す。
交差は一瞬、二条の銀閃が走る。
二者はピタリと止まり動く気配を見せない。

「見事だ、サーヴァント」

沈黙を破ったのはシルベストリ。
からん、と彼の握る右腕の中ごろから折れた刀身が落ちた。
アンゼルムスの歯すら容易く砕いた剣とまともに打ち合った刀はセイバーの盾に触れた段階で限界を迎えてしまっていた。
次第に、シルベストリの体の上半分が斜めにズレていく。

「だが、我々の本来の目的は達成できた」

淡々とシルベストリが告げる。そこに負け惜しみのような感情は感じられない。
不意に、周りの空気がざわつき始めた。
何かが、自動人形とは比べ物にならない存在がこちらに向かってきている。
セイバーの勘が警鐘を鳴らす。

「せめて武運を祈るぞ、緑のセイバー」

その声を最後にシルベストリの機能は停止する。
だが、そのような事は既にセイバーの意識から漏れていた。
一歩一歩。確実にプレッシャーが強まっていくのを肌で感じ取る。

(セイバー!)

異常を感じたのかほむらがセイバーへと念話で声をかけてきたのと、その男が現れたのはほぼ同時だった。
痩身の少年が車一つ走らない車道をかつかつと歩いてくる。
不健康そうな肌の色。
白くぼさぼさの髪。
そして理性を失った瞳が際立たせる凶相。
口角を釣り上げ狂暴な笑みを浮かべた狂戦士の姿。

(あれは、バーサーカー!?)
「■■■■■――!!」

轟、と痩身のバーサーカーを中心に衝撃波が周囲を薙ぎ払う。
どこか笑っているような狂った咆哮が深夜の街に木霊した。


283 : ◆lb.YEGOV.. :2016/01/21(木) 02:09:03 Xh48gwBo0
一度ここまでで切らせていただきます。
一週間以内に投下は可能だと思われます。
企画にご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありませんでした。
ご意見等あればよろしくお願いいたします。


284 : <削除> :<削除>
<削除>


285 : 名無しさん :2016/01/21(木) 23:59:46 29J5HZ8Q0
投下乙です!
ほむらとフェイスレスがついに互いの生存を知ったか! 今や複雑に絡まり合った糸の端と端で別々に動き出していた二者、やはりどこまでも相対する運命なんだな…。
一方で、明という悲しくも強い悪魔と共にひたすら真っ直ぐ突き進むさやかが好もしい。
ほむらはカレンより託されたリンクと共に駆けてますが、司令の思惑と正面衝突することになってどうなってしまうのか……
しかし、今回の注目は何と言っても、舞台上へ入れ替わり立ち替わり現れては一芸を打ってゆく、真夜中のサーカスの演者たちですね……!まさしくタイトル通りの自由韻律の宴であり、顔無し司令の狂想曲。
からくりサーカスのあの人形やこの人形を、こうも展開に合わせて上手く登場させられるのかと舌を巻く思いです。
人形破壊者〈悪魔 デモン/デーモン〉の影を重ねたデビルマンの前に現れるクピディアー、リンクとほむらに襲いかかるパウルマン&アンゼルムス、そしてスズランお爺ちゃん!
宝具でない彼らの登場は短いものでしたが、それでも彼ららしさを存分に発揮しきった見事な演目であったと思います。
オートマータはこういう展開で本当に映えるなあ…
そして現れた一方通行の姿と咆哮で引きとは、本当に先が気になってならない…
改めて、投下乙でした……!!


286 : ◆lb.YEGOV.. :2016/01/27(水) 22:59:41 RwmxChO60
お待たせしました。
後編投下いたします。


287 : 真夜中の狂想曲 ◆lb.YEGOV.. :2016/01/27(水) 23:01:33 RwmxChO60

「まずい……!」

セイバーと共有した視覚に映ったバーサーカー。
昼、さやかと話す前に彼女と悪魔のバーサーカーがあのバーサーカーと一戦交えたのを映像越しにほむらもまた見ていた。
あらゆる攻撃を反射し、あの強力な悪魔のバーサーカーを吹き飛ばす程の力の持ち主。
セイバーが強力なサーヴァントと言えど、物理攻撃が主体の彼では致命的なまでに相性が悪い。
道路に白いペンキで書かれた"一方通行"という文字の上に立つバーサーカーは『ここから先は一方通行だ』と言外に語っているかのようだ。

さやかの頭に逃避の二文字が浮かぶ。
一度身を隠してセイバーに霊体化の指示を出すことで行方を眩まし、多少遠回りをしてでも温泉を目指すルート。
あれだけの力を誇るバーサーカーを、映像で見た半死半生のマスターが長時間使役できるとは思い難い。
どうにか撒く事さえできれば……。

(いえ、それは不味いかもしれないわね)

何故、このタイミングでバーサーカーが襲撃を仕掛けてきたのか。
その意味をほむらは考え、逃避という方針を否定する。
自動人形の戦闘に狙ったように介入してきたバーサーカー。
まるで足止めの為に出てきたかの様な自動人形。
アンゼルムスと呼ばれていた人形の、キャスターは自分を念入りに殺したがっているいう言葉。
もし本当に自分を厄介な存在だとあの悪辣なキャスターが思っているのならば、自動人形ではなく宝具である『最後の四人』を派遣し、確実に始末しようとする筈だ。
それをしないという事は、する余裕がないか、する必要がないか。
例えば 、自分の宝具よりも遥かに強力なサーヴァントが味方につけば、態々自分の魔力を使い、あまつさえ宝具が破壊されるリスクを背負うまでもなく、その味方に何らかのリターンを約束した上で始末に向かわせればいいだけの話だ。

そして今しがた起こったシルベストリと名乗った人形たちとの戦いを思い出す。
待ち構えていたシルベストリ、包囲するように現れたパウルマン達。
不意な遭遇戦ではなく、明らかに計画的な待ち伏せだ。
という事は、アポリオンによって既にほむらは監視されていると見ていい。
ならばどれだけ逃げたところで人形も、そしてバーサーカーのマスターもこちらの追跡をやめないだろう。
このまま、温泉まで行けばどうなるか。
まず間違いなくまどかにもバーサーカーの牙は向けられる。
仮に温泉へと向かわず、別の場所に逃げたとしてももう一人のキャスターの手にまどかが渡ってしまえば状況が好転する筈がない。
美樹さやかに賭けるという手も考えられなくはないが、セイバーと対峙しているバーサーカーが自分ではなくさやかを標的にしてしまえばそれも難しくなる。
さやかのバーサーカーは一対一の戦いでこのバーサーカーを相手に不覚を取っている上にキャスター達の介入が入れば、最悪の場合さやかとバーサーカーが脱落してしまう可能性もありえるのだ。
そうすればまどかの救出は絶望的になる。
それは避けなくてはいけない。これ以上、自分の手落ちでまどかを危機に巻き込む真似をほむらはしたくなかった。

(そう、だから私にこいつを差し向けたのね、フェイスレス)

チッ、と忌々しげに舌を打つ。
ほむらがまどかを危険に晒す選択肢を取るわけがない。
ならば、ここから逃げ出すという手は取れない。
たとえ相性が悪くとも、戦況が不利だろうと、ここでこのバーサーカーを下さなければ、自身に未来はないのだ。
不愉快な笑顔を浮かべるキャスターの姿がありありと想像できた。


288 : 真夜中の狂想曲 ◆lb.YEGOV.. :2016/01/27(水) 23:02:21 RwmxChO60

(セイバー、倒さなくて構わない。だから一分一秒でも多く時間を稼いで)

セイバーに念話で語りかけながら手持ちの武器を確認する。
手榴弾が1つにオートマチックの拳銃。
人形を殺すことはできなくとも、人一人を殺害するには充分過ぎる装備だ。

(恐らく、貴方の攻撃は全て跳ね返される。だからここは私の出番)

時間停止にかけられた制限、そしてバーサーカーのマスターを殺させない為に配備されているであろう自動人形。
それはあまりにも大きな壁。
しかし、乗り越えねばならぬ壁。
さやかが電話を取り出し、発信ボタンを押す。
ディスプレイに表示された名前は美樹さやか。

『もしもし?』
「もしもし、私よ美樹さやか。悪いけど問題が発生したわ。今もう一人のバーサーカーと戦っているところ」

受話器の奥で息を呑む音が聞こえた。
当然だろう、白髪のバーサーカーの強さは戦った彼女が誰よりも理解しているのだから。

『今どのあたり? 私も……』
「駄目よ、貴方はまどかを助けに行って。もし私を助けに来てまどかに何かあったら私が貴方を許さない」
『そんな事言ってる場合!? バーサーカーって白髪の奴でしょ? そいつにはあたしのバーサーカーだって……』
「なにもバーサーカーを倒すだけが道じゃないわ。マスターを仕留めればあれはそう長い間は現界出来ない筈よ。
私の力を使えば、それも不可能じゃない筈」
『……殺すの?』

受話器越しに、堅い声が聞こえる。
微かに沈黙する。
答えは既に決まっている。それでも改めて口に出し、誰かに意思を表明するという事には躊躇いが生じるものなのかと今更ながらに認識する。
小さく、息を吐き出す。

「殺すわ」

冷たく響いた呟きに、躊躇も怯えも後悔もない。

「殺さないですむならそれに越したことはない、でも、恐らくあのマスターはフェイスレスと手を組んでいる。
生かしておけばまどかだって危険に晒されるかもしれない。だから、殺すわ」
『……わかった』

受話器越しから聞こえる声はまだ堅い。
正義の味方になるといって魔法少女になったさやかならば、多少なりとも反論されるかと予想していたほむらには肩透かしな反応だった。

『ここは、そういう場所だってわかってるし、あんたも命を狙われてるんだから、あたしからは何も言えない』

微かに沈んだ声、分かってはいても納得はしていないのだろう。
甘いことだとほむらは思うが口には出さない。
受話器越しに深く息を吐く音が聞こえる。

『先に行ってるからあんたも必ず来なさいよ。
結構まどかって頭堅いところあるからさ、もし助けても私だけじゃ言うこと聞いて大人しく帰ってくれるかわからないし』
「……そうね、まどかは何度言ってもこうだと決めると譲ってくれないから」

巡り返す時の中で聞きなれた明るい声が帰ってくる。
さやかが出したまどかの話題にほむらが同意して返す。
彼女がフッ、と吹き出すのと受話器の向こうでさやかが吹き出したのはほぼ同時だった。

「まどかをお願いね、美樹さやか」
『そっちこそ、しっかりやりなよ。……待ってるからね』
「ええ、必ずそっちに行って貴方と一緒にまどかを元の世界に送り返すわ。約束よ」

再会の約束をしてほむらは電話を切る。

「"貴方と一緒に"だなんて、ガラにもないわね」

自然と口に出た言葉を思い出し、可笑しそうにほむらが笑う。
繰り返されるループの中、衝突する機会も多く、持ち前の性格から災いの種になることが多かった美樹さやかに対して、ほむらはあまりいい感情を持っていない。
それでも、今この時だけは彼女が味方にいてくれた事が、少しだけ、ほんの少しだけではあるが嬉しかった。
複数の足音が聞こえてくる。恐らく、アポリオンによって自分のいる場所が把握されたのだろう。
時を止め駆け出す。
狙うは一人、バーサーカーのマスター。


289 : 真夜中の狂想曲 ◆lb.YEGOV.. :2016/01/27(水) 23:03:04 RwmxChO60



「あれが敵のセイバーか」

あるビルの一室から、眼下で自分のサーヴァントであるバーサーカーと対峙するセイバーを、間桐雁夜が見つめる。
視覚情報から見てとれるパラメーターは、セイバーを名乗るだけあって相応に高い。
だが、それでも自分のバーサーカーには敵わないだろうという確固たる自信はあった。
麦わらのライダーや悪魔のバーサーカーと相対した時にまざまざと見せつけた、文字通り他者を寄せ付けない固有の超能力。
高水準のパラメーターと強力な攻撃宝具を使って相手を打ち倒す、正攻法を得手とするサーヴァントにとってこれ程に相性の悪い相手もいないだろう。
その最優に相応しい能力とここに至る前に微かに確認できた自動人形との戦いを見る限り、雁夜が今ここで倒すべきサーヴァントはバーサーカーにとって非常に相性のいい相手だ。
どれだけその剣が歴史に名を馳せし名剣であろうとも、その剣技が精妙であろうとも関係ない。
バーサーカーは全ての力を相手に向けて跳ね返す、一方通行の暴風だ。

「ではあっしはここの警護にあたりますんで、何かあったら呼んでくだせえ」
「ああ、わかったよ」

彼の後ろで自動人形が声をかけ、雁夜が返答する。
自動人形の名はアノス、この戦場まで彼を運んでくれた、同盟を結んだキャスターが使役する人形だった。

(余計な事をしないための監視も兼ねているだろうに)

バタン、と扉を閉めて退出したアノスを尻目に、雁夜が内心で毒づく。
キャスターのマスターを名乗る人間から同盟を持ちかけられたのは、通達があって少ししてからだった。

あと一昼夜もすれば聖杯戦争は勝者の有無を問わずに終了する。
その知らせに何よりも心を乱されたのは雁夜であっただろう。
残ったサーヴァントは12騎、それを半死半生の体を引きずり、魔力消費の激しいバーサーカーを伴って戦い抜かなければならないと知った彼の心境は如何ばかりか。
このままでは勝つ目は絶望的だった。
どうすればいい。
何ができる。
ぐるぐると答えの見えない思考のループに囚われる。
そんな時に、バサリと羽音を立てながら一羽のカラスが窓辺へと降り立った。
こんな夜更けに本来昼行性である筈のカラスがいる事に雁夜は疑問を覚える。
そのカラスの首から上が左右に開き、少年のような声を発した。

『手を組まないか、バーサーカーのマスター』

自分の正体がバレている。
焦った雁夜はバーサーカーを呼ぼうとして思い止まった。
あのカラスは察するところ使い魔の類、それを攻撃しても相手に打撃はないどころか、自分の居場所まで把握している相手を敵に回すというデメリットしかない。
そして何よりも不用意に騒ぎ立てる事で、桜が騒ぎに気付いてこちらに来てしまうのを避けたかった。
彼女の存在を第三者に知られればそれは即ち彼の弱みとなる。
そして何よりも、願いのために人を殺すことをも厭わない聖杯戦争に参加した者達の悪意に、仮初めの存在とはいえ彼女を晒す訳にはいかなかった。

大人しく話を聞く姿勢を見せた雁夜に対しカラス越しにキャスターのマスターが同盟の詳しい内容を話す。
同盟の終了条件は一先ず半数のサーヴァントが脱落するまで。
提供して欲しいのは、その強力無比なバーサーカーの戦力。
提供するものは町全体に広がったキャスターの監視の目と彼の作り出した自動人形、そして移動手段。
情報網も、バーサーカーを温存する為の戦力も、速い足も雁夜が望んだところでこの聖杯戦争では得られなかったものだ。
断る理由はない、が。ふってわいた様な美味しい話が雁夜に警戒心を抱かせる。
記憶の片隅にしまった筈の出来事が思い浮かぶ。

時臣に会わせると言った神父に協力し、言われて向かった先に待っていたのは、もの言わぬ死体となった憎むべき男。
何故、どうしてと狼狽える自分を見つけてしまったのは最愛の人にしてその男の妻。
自分の無実を訴えるも聞き入れて貰えないどころか、彼女から浴びせられる罵倒。

"誰かを好きになった事もない癖に"

その決定的な言葉を聞いて箍の外れた自分は彼女の首をーー
頭を抑える、理性と本能の両方が強制的にその記憶を排除する。
その出来事を受け入れるには雁夜の心はあまりにも弱すぎた。
逃避し甘い夢に浸ることしか出来ない男は、今は目の前の事に集中しろともっともな理由をつけ、起こしてしまった現実から再び目を背ける。


290 : 真夜中の狂想曲 ◆lb.YEGOV.. :2016/01/27(水) 23:03:40 RwmxChO60
『大丈夫か?』

急に様子のおかしくなった自身に向けて問いかけてきたキャスターのマスターに対し、頷く事で問題ないことを告げる。
息を整え、どうして俺達なのかと雁夜が問うた。
死に損ない故に御しやすいとでも思われたか。
もっとも死に損ないなのは事実ではあるし、雁夜としても同盟を断れば数少ない勝利の目を放棄する事になるのは分かりきっているのだが。

『あんたには後がなさそうだったからな』

しばしの沈黙の後、キャスターのマスターは答えた。
ハッキリと言ってくれるものだと、ひきつった表情筋が微かに上につり上がる。

『そんな状態でもあんたはまだ勝つことを諦めていない、キャスターはどう思ってるか知らないが、だからこそ俺個人としてあんたと協力したいと思うよ』

キャスターのマスターが続けて答える。
それは今までの中で一番熱のこもった言葉だった。
同情かと自嘲を浮かべて雁夜が問う。
同調さ、とキャスターのマスターが答える。

『一目見てわかるくらいに身体はボロボロなのに、それでもあんたには叶えたい願いがあるんだろ?
どれだけ自分がヤバくなったって、ここで全部放り投げて帰る訳にはいかない願いがさ。
俺とあんたは別人だ。かける願いだって、思う事だって、何もかもが違う。
だけど、どれだけ自分の体がヤバくなったとしても、全てを諦めて帰ることより願いを叶える事を優先したいって気持ちは一緒だ。
だから俺はあんたと組もうと思う』

それは青臭い理想なのだろう。
破滅的な思想なのだろう。
願いの根元、あるいは叶えるための道程は、歪みと矛盾に溢れたものなのかもしれない。
それでも、抱いた想いは本物だ。
雁夜にはキャスターのマスターがどのような願いを持っているのか知るよしもない。
今、彼がどのような状況にあるのかもわからない。
ただ、彼も自分と同じ、極限の状況の中で足掻いているのだということだけは理解ができた。

黙考の末に、雁夜は同盟を呑む事を決めた。
断る事など出来ない同盟ではあったが、それでもどこか似た境遇の相手と組むというのであれば、自然と抵抗も薄れた。
えたいの知れないキャスターに信はおけなくとも、恐らく本音で話してくれたであろうこのマスターにはある程度の信をおこう。
そう、思うことにした。

そうして、雁夜はキャスターの使いという人形に運ばれこの場所にやってきた。
緑のセイバー、そして彼のマスターである黒髪の少女。
奇しくもそれは昼、そして朝に襲った少女達と同じくらいの年齢だと見受けられた。
ひょっとしたら友人か知り合いかとも考えたが、そんな馬鹿げた偶然があるものかと、笑い混じりに否定する。
それと同時に、そんな年端もいかない少女達が願いを叶えるための殺し合いに身を投じている現状に悲しさと薄ら寒さを覚えた。
後ろめたさがないと言えば嘘になる。
だが、もはや雁夜に躊躇はない。
躊躇をしていれば助けるべき少女ですら助けることができなくなる。

もたれるように建物の壁に寄りかかる。セイバーとの戦いであれば、態々身を乗り出さずとも、バーサーカーの視界を共有すれば事足りる。
不用意に姿を見せて狙撃されるような間抜けな真似は避けたかった。

(きっと、君にも人を殺してでも叶えたい願いがあるんだろう)

暗がりに座り込み、今から自分が殺さなければならない少女へと想いを馳せる。
サーヴァントを殺害すれば帰ってくれるかもしれないとは考えた。
だが、キャスター達からこの少女はアサシンが脱落した後に別のマスターを強制的に帰還させ、セイバーを強奪した危険人物と聞いている。
そこまでの覚悟を決めているのであれば、ここで確実に始末をつけなければならない。

(ここで、君の戦いを終わらせる。俺にも叶えたい願いがあるから)

雁夜の目に強い光が宿る。
悲痛な光だった。
だが迷いのない光だった。


291 : 真夜中の狂想曲 ◆lb.YEGOV.. :2016/01/27(水) 23:04:34 RwmxChO60


夜の闇の中で聖杯戦争は加速する。
譲れないものがあった。
守らなければいけないものがあった。
銃声が、轟音が、咆哮が響く。
恐ろしい形相を浮かべる月が、その光景を黙って見下ろしていた。

【B-5/上空/二日目・夜】

【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語】
[状態]健康、魔力消費(小)
[令呪]残り三画
[装備]ソウルジェム
[道具]グリーフシード×5@魔法少女まどか☆マギカ、財布内に通学定期
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる
1:温泉街に向かい、まどかを助ける(罠の可能性を考慮)
2:ほむらと合流してまどかを元の世界に返す
3:まどかを帰還させた後はほむらの動向に警戒
[備考]
※浅羽直之、アーチャー(穹撤仙)を確認、フェザーと名乗られました。
※暁美ほむらが昔(TV版)の存在である可能性を感じました。
※暁美ほむらが何かしらの理由で時間停止に制限が掛かっていることを知りました。
※まどかへの連絡先を知りません。
※ほむらと連絡先を交換しました。

【不動明(アモン)@デビルマン】
[状態]魔力消費(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる
1:さやかに従い行動
2:金のキャスター、銀のキャスターへの対処
3:マスターを守る
[備考]
※穢れの溜まったグリーフシードを『魂喰い』しました。今のところ影響はないですが今後何らかの影響があるかは不明です。
※キャスター(フェイスレス)に不快感を覚えています。
※世界改変の力を持った、この聖杯戦争の原因として魔法少女(まどか、ほむら、さやか)とサタンを想定しています。

[共通備考]
※マップ外に出られないことを確認しました。出るには強力な精神耐性か精神操作能力、もしくは対界宝具や結界系宝具が必要と考えています
※マップ外に禁人種(タヴー)を確認しました。不動明と近似した成り立ちであるため人間に何かがとりついた者であることに気付いています。NPCは皆禁人種(タヴー)の材料として配置されたと考えています
※間桐雁夜(名前は知らない)、バーサーカー(一方通行)を確認しました。
※セイバー(リンク)陣営との同盟を結びました
※キャスター(フェイスレス)の真名を獲得しました。
※学園の事件を知りました。
※聖杯戦争の会場を作ったのも、願望器自体も世界改変の力と予測しています。
※キャスター(食蜂操折)の外見と能力、そのマスター(犬飼伊助)の外見の情報を得ました。


292 : 真夜中の狂想曲 ◆lb.YEGOV.. :2016/01/27(水) 23:05:02 RwmxChO60
【B-3/市街地/二日目・夜】

【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]疲労(中)
[令呪]残り3画
[装備]ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]グリーフシード(個数不明)@魔法少女まどか☆マギカ(二つ穢れが溜まりきっている)、オートマチックの拳銃
[思考・状況]
基本:聖杯の力を以てまどかを救う。
1:バーサーカーのマスター(間桐雁夜)を殺害する。
2:温泉に向かいまどかを助け、帰還させる。
3:キャスター(フェイスレス)を倒す。

[備考]
※自分の能力の制限と、自動人形の命令系統について知りました。
※『時間停止』はおよそ10秒。連続で止め続けることは難しいようです。
※アポリオン越しにさやか、まどか、タダノ、モリガン、アゲハ、流子、ルキア、慶次、善吉、操祈の姿を確認しました。
※明、ルフィのステータスと姿を確認しました。
※美樹さやかの存在に疑問が生じています(見たことのない(劇場版)美樹さやかに対して)
※一瞬ソウルジェムに穢れが溜まりきり、魔女化寸前・肉体的に死亡にまでなりました。それによりフェイスレスとの契約が破棄されました。他に何らかの影響をもたらすかは不明です。
※エレン、さやか、まどかの自宅連絡先を知りました。
※さやかと連絡先を交換しました
※ジャファル、レミリア、ウォルターを確認しました。
※天戯弥勒と接触しました。
※巨人を目撃しました。
※キャスター(フェイスレス)のマスターは最初の通告で存在が示唆されたマスター(人吉善吉)と予想しています。

【セイバー(リンク)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
[状態]魔力消費(小)、疲労(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに全てを捧げる
0:カレンの意思を引き継ぎ、聖杯戦争を勝ち抜く。
1:暁美ほむらに従う。
2:バーサーカー(一方通行)に対処する。
3:アーチャー(モリガン)に対する強い敵意。
[備考]
※アーチャー(モリガン)を確認しました。
※セイバー(纒流子)を確認しました。
※夜科アゲハの暴王の流星を目視しました。
※犬飼伊介、キャスター(食蜂操祈)を確認しました。
※人吉善吉、アサシン(垣根帝督)を確認しました。
※垣根帝督から食蜂操祈の能力を聞きました。
※朽木ルキア、ランサー(前田慶次)を確認しました。
※ウォルター、ランサー(レミリア)を確認しました。
※巨人を目撃しました。
※バーサーカー(一方通行)を確認しました

[共通備考]
※バーサーカー(不動明)陣営と同盟を結びました


293 : 真夜中の狂想曲 ◆lb.YEGOV.. :2016/01/27(水) 23:07:52 RwmxChO60
【間桐雁夜@Fate/zero】
[状態]肉体的消耗(小)、魔力消費(小)、PSIに覚醒
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を取り、間桐臓硯から間桐桜を救う。
1:間桐桜(NPCと想われる)を守り、救う。
2:セイバー(リンク)とそのマスター(ほむら)を殺害する。
[備考]
※ライダー(ルフィ)、鹿目まどかの姿を確認しました。
※バーサーカー(一方通行)の能力を確認しました。
※セイバー(纒流子)の存在を目視しました。パラメータやクラスは把握していません。
※バーサーカー(不動明)、美樹さやかを確認しました。
※PSI粒子の影響と一方通行の処置により魔力量が増大しました。
※PSI粒子の影響により身体能力が一般レベルまで回復しています。
※生活に不便はありませんが、魔術と科学の共存により魔術を行使すると魔術回路に多大な被害が発生します。
※学園の事件を知りました。
※セイバー(リンク)の存在を目視し能力を確認しました。暁美ほむらの姿を写真で確認しました。
※キャスターのマスター(人吉善吉)と残り主従が6騎になるまで同盟を結びました。善吉に対しては一定の信用をおいています。


【バーサーカー(一方通行)@とある魔術の禁書目録】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:■■■■───
1:───(狂化により自我の消失)
2:セイバーを倒す
[備考]
※バーサーカーとして現界したため、聖杯に託す願いは不明です。
※アポリオンを認識し、破壊しました。少なくとも現在一方通行の周囲にはいませんが、美樹さやかの周囲などに残っている可能性はあります。


[全体備考]
※C-6で爆発騒ぎが発生しました。NPCの通報で警察が向かっています
※A-4の温泉地帯に向けて、鹿目まどかに似せた人形をかついだケニス@からくりサーカスが飛行しています
※B-3にて多数の自動人形が暁美ほむら殺害の為に行動しています


294 : 真夜中の狂想曲 ◆lb.YEGOV.. :2016/01/27(水) 23:08:27 RwmxChO60



街を奏でる狂想曲の舞台裏、仕掛人たる二人の男は少女達と男が映るモニターを満足げに見つめている。

「とりあえずは無事うまくいったようで何よりだね」
「ああ、怖いくらい上手く嵌まったな」

美樹さやかと暁美ほむらは偽のまどかに釣り上げられた。
間桐雁夜はこちらと手を組み、暁美ほむらとの始末を受け持ってくれた。
金のキャスターは彼らに架空の罪を擦り付けられ、悪魔のバーサーカーの脅威が迫る。
この舞台は彼らの脚本通りに回り続けている。

「けど良かったのかよ、パウルマンとアンゼルムス、シルベストリにクピディアーだったか? 一点物の奴らがかなりやられちまったが」
「元々戦闘型のサーヴァント相手じゃ時間稼ぎが関の山な奴らさ。アサシンやキャスター、アーチャーみたいな直接戦闘がそこまで得意じゃない奴ら相手ならそれなりに期待はできるけど、アサシンはもう全滅してるし、もう一人のキャスターに至っては普通の人形でもなんとか出来そうだしね。気にしない気にしない」

任を全うして破壊された人形達に哀悼も悔恨も賞賛も浮かべない。
銀のキャスターにとって自身が作り出した人形達など代わりの効く消耗品以外の何物でもないのだ。
おどけてみせる自分のサーヴァントに改めて善吉は不快感を覚える。

「そうそう、そういえばマスターも上手くやったじゃないか。"同情じゃなくて同調"だっけ?
同じ考え、似たもの同士って偽って相手を騙したのは僕もやった事あるけどさ。なかなか堂に入った演技だったじゃないか」

キャスターが先の雁夜と善吉の会話を持ち出す。
にたぁ、と普段の彼を知るものであれば目を疑うほどの悪辣な笑みを浮かべて、善吉が答える。

「そりゃそうだ。サハラの時のだろ? 俺だってお前の記憶を転送<<ダウンロード>>してるんだ。これくらい訳ないぜ」

キャスターがその笑みを濃くする。
それは善吉の中にいるキャスターの侵食が進んでいる事を確信してか。

「何としても暁美ほむらには消えてもらわなきゃいけないからね、白髪のバーサーカー君には期待しておこうか」
「そうだな、俺にもお前にも、あいつの存在は邪魔すぎる」

カツ、カツと廊下を部屋に向かって歩いてくる音が聞こえる。
二人が揃って入り口を見ると、そこには暁美ほむらの姿。
正確には暁美ほむらに変装した、アプ・チャーの姿があった。

「よう、帰ってきたか」
「お帰りアプ・チャー、帰ってきたところで悪いけどもう一仕事だ。一緒に来てもらうよ」
「また悪巧みか?」

善吉の問いに、キャスターがよりいっそう人の悪い笑みを浮かべる。

「まあね、釣り出しちゃった彼女達には悪いことしちゃったからさ、今度は本物のまどかちゃんに会わせてあげようかなって。
誰だって偽物よりも本物の方がいいだろう?」

その両手で顔を捏ね回し始めながら、愉しそうにキャスターが答える。
本物に会わせる。
その言葉だけで、善吉は次に自身のサーヴァントが起こすアクションを察する。


295 : 真夜中の狂想曲 ◆lb.YEGOV.. :2016/01/27(水) 23:09:13 RwmxChO60

「誘拐か、できるのか?」
「ほむらちゃんを使えばあの子を誘い出すのは簡単だと思うよ。
……変にのっぺりしてて真似しづらいなぁ、あいつの顔」

次第にキャスターの顔が別の誰かに変わっていく。
顔に刻まれたシワが無くなっていき、精悍な成人男性の顔へと変わっていく。
直接の面識はなかった筈だが、どこかで見た顔だと善吉は気づく。

「まあ駄目だった時は宝具を使うかもしれないから覚悟だけはしておいてよ。そうならないようには立ち回るつもりだけど。
……うんうん、こんな感じかな。ランサーといい特徴的な顔つきの奴が多くて困るよまったく」

キャスターの整形が終了し、そこで漸く善吉もその顔を思い出す。
夕方、金のキャスターの追撃戦でたまたま遭遇した男。
その時は警官の制服を着ていた為、そこまで顔に注意がいかず思い出せなかったが、キャスターが完璧な変装を終えた今ならわかる。

「アーチャーのマスターか」
「ご名答、同盟相手にお友だち、あのライダーも頭は良さそうに見えないからさ
、上手く騙されてくれると思うよ?」

ニッ、とタダノを模した鉄面皮を喜悦に歪ませる。
どこで調達したのか、人形が持ってきた警官の衣装にキャスターが着替えを始める。

「俺はどうすればいい?」
「万が一があっても困るからここにいていいよ。護衛の人形はおいておくし、今回は結構魔力も使うかもしれないからね、栄養ドリンクでも飲みながら観戦しててよ」

人形に命じて買ってこさせていたのだろう。キャスターが指差す先にはビニール袋に包まれた大量の栄養ドリンクが置かれている。
これだけの量があれば、多少無茶な魔力の使い方をしても疲弊こそすれ、命を落とすことはないだろう。

「ああ、あとね、もし僕の留守中に誰かが遊びに来たとき様に」

パチリとキャスターが指をならすと暗がりの奥からもう一人のキャスターが姿を現した。
まったくの瓜二つ、その顔に浮かぶ悪意に満ちた笑みまで寸分違わぬ作りだった。

「これはお前か?」
「そう、良くできてるでしょ。自爆人形って類いの自動人形でね、ちょっとの刺激でボン!と大爆発。一点物の奴らに時間をかけてたせいで1体しか拵えられなかったから使いどころはよーく考えてくれよ?」
「という訳さ、僕を有効活用してくれるよう頼むぜマスター」

ステレオで喋るキャスターに善吉が鼻じらむ。
デコイを兼ねた自身の監視役なのだろう、と当りをつけるが、その思考はおくびにも出さないでおいた。

「それじゃあ留守は任せたよマスター。吉報を期待して待っててね」

警官の制服を着こんだキャスターがアプ・チャーを伴い廊下へと消える。
足音が消えたことを確認し、善吉が自爆人形に下がるよう伝えると、自爆人形はあっさりと引き下がり闇のなかへと消えていく。
もっとも、どこかで人知れず監視を行うのだろうと思考しながらも、善吉は座椅子に崩れるように座り、漸く一息をついた。


296 : 真夜中の狂想曲 ◆lb.YEGOV.. :2016/01/27(水) 23:09:43 RwmxChO60

(状況は依然として最悪、一応通達までは乗りきって6時間は猶予が出来た訳だから、ここでキャスターの奴が退場してくれたら一番なんだけどな)

いっそ今キャスターが向かっている病院にいるマスターに情報を流してやろうかとも思ったがやめる。
自動人形を使って伝達するのは論外であるし、自動人形以外の手段を使うにしても監視の目を潜り抜ける自身はない。
今はただ、金のキャスターが銀のキャスターよりも早くに脱落しない事を願うばかりである。

(流石にバーサーカーに加えてセイバーにまで来られたらもう目はないだろうからな、頼むぜ白髪のバーサーカーのマスターさん)

銀のキャスターの真名も手の内も知り、また金のキャスターの殺害にも意欲を見せているほむらの存在は善吉にとってもっとも邪魔な存在だ。
うまく脱落してくれるよう、モニターに映る間桐雁夜に望みを託す。

(ようやく手を組めた相手な訳だしな。できれば約束した同盟の終了まで、一緒に戦ってくれる事を願ってるぜ)

雁夜を見る善吉の瞳に悪意の光はない。
キャスターは交渉の際に転送で得た知見と演技力を利用して善吉が雁夜を協力的にさせるように仕向けたと考えているが、真実は異なる。
雁夜との交渉で善吉が言ったことは全て善吉の本心だ。
100年を優に越す年月の中、しろがね達を欺き続けた話術と演技力を用いれば雁夜をその気にさせる事など造作もないだろう。
だが、善吉はその技術に頼ることを良しとしなかった。
よりキャスターに近づくのではという恐れもある。
だがそれ以上に誰かと触れ合うのであれば、人吉善吉として接そうという強い意志があった。
流石に暁美ほむらがキャスターの元マスターで、今はキャスターに裏切られてセイバーのマスターやってると言えば、裏切りを犯し、マスターを乗り換えたこちらの信頼が地に落ちるのでやむなく嘘をついたが、それ以外は全てが本音でのやり取りだ。

(にしてもなれない表情なんて作るもんじゃねえな)

キャスターから妙な勘繰りを避けるために、とびっきり底意地の悪い笑顔を作りあげ、自身の本音を雁夜をうまく丸め込む為の方便と思い込ませる。
キャスターが才賀勝という少年にやり込められた記憶を元に演じてみたが、欲視力でキャスターの視点を盗み見た限りでは、善吉の演技に対する疑念らしき感情は見られなかった。
とりあえずは、そうそうバレる事もないだろう。と人心地をつく。
キャスターは己が主の人となりを知らない。正確にはいずれ自分になる以上、知る必要はないと考えている。
もしも、善吉という人間を理解していたのであれば、雁夜とのやり取りが演技などではなく、本心からのやり取りである可能性に気付いていただろう。
だからこそ善吉がつけ入る隙がある。
侵食が進んでいると見せかければ、猶予が無くなってきたキャスターは遠からず善吉よりも他の主従へと注意を向けはじめる筈だ。
その時が来るまでひたすらに堪え忍ぶ。

(そろそろ、あいつらに対してもどうするか決めねえとな)

夜科アゲハ。
朽木ルキア。
昼に行動を共にした彼らも通達を受けてまた動きを見せはじめるだろう。
善吉は聖杯戦争の勝利を望んでいる。
それでも、苦しいときに力を貸してくれた二人の恩人をこのキャスターの毒牙にだけはかけたくないという思いがあった。
座ったまま天井を仰ぎ、息を吐く。
孤独な戦いの行き先はまだ見えそうにない。


297 : 真夜中の狂想曲 ◆lb.YEGOV.. :2016/01/27(水) 23:10:28 RwmxChO60

【B-6/遊園地/二日目・夜】

【キャスター(フェイスレス)@からくりサーカス】
[状態]魔力充填(小)、タダノヒトナリの顔と警官の制服
[装備]特筆事項無し
[道具]特筆事項無し
[思考・状況]
基本:聖杯を手に入れる。
1:アプ・チャーを使って鹿目まどかを拉致し、暁美ほむらと美樹さやかに対する切り札にする。
2:アポリオンを巡らせ、キャスターと鹿目まどかの動きに目を配る。
3:まどか人形で美樹さやかを釣り出し、キャスター(食蜂操折)と潰し合わせる
4:バーサーカー(一方通行)を利用して暁美ほむらを始末してもらう
5:もし陣地を訪れる者がいた場合、自身を模した自爆人形で吹き飛ばす。
6:善吉に強い警戒心。裏切られる前に何か手を打つ。少し侵食が強まってきたかな?
[備考]
※B-6に位置する遊園地を陣地としました。
※冬木市の各地にアポリオンが飛んでいます。
※映像越しにサーヴァントのステータスを確認するのは通常の映像ではできないと考えています。
※ほむらから伝聞で明とルフィのステータスを聞いています。明についてはある程度正確に、ルフィについては嘘のものを認識しています。
※バーサーカー(不動明)を己の目で確認しました。
※暁美ほむらは何か隠し事をしていると疑っています。
※美樹さやかと暁美ほむらの関係を知りたがっています。
※ピンク髪の少女と暁美ほむらには繋がりがあると確信しています。
→アプ・チャーの報告から親しいものと認識。
※ランサー(慶次)と交戦しました。
※セイバー(流子)、アーチャー(モリガン)を確認しました。
※ほむらとの契約を破棄、善吉と契約しました。ほむらは死んだと思っています。
※善吉の精神が乗っ取れなかった事に対して、何らかの要因で生命の水による侵食が阻害されている事が原因であると推察しています。
※流子、慶次の真名を知りました。
※バーサーカー(一方通行)にアポリオンが破壊されたことを確認、強く警戒。
※バーサーカー(明)は真性悪魔に近い存在と推察。悪魔という存在と、なによりデモンであるため警戒。
※流子の来歴から人形遣いの天敵になるのでは、と警戒。

【人吉善吉@めだかボックス】
[状態]軽度のしろがね化
[令呪]残り二画
[装備]箱庭学園生徒会制服
[道具]ゲコ太の描かれた箸、銃人形のリボルバー(6/6)
[思考・状況]
基本行動方針:キャスター(操祈)とキャスター(フェイスレス)を討伐し、最後には優勝する
1.瞬くは様子見。モニター越しに戦況の確認
2.アゲハ達にどう接するべきか……
3.キャスター(操祈)が討伐される前にフェイスレスをどうにかして脱落させたい
[備考]
※アッシュフォード学園生徒会での役職は庶務です。
※相手を殺さなくても聖杯戦争を勝ち抜けると思っています。
※屋上の挑発に気づきました。
※学園内に他のマスターが居ると認識しています。
※紅月カレンを確認しました。
※キャスター(操祈)を確認しました。
→加えて操祈の宝具により『食蜂操祈』および『垣根帝督』を認識、記憶できません。効果としては上条当麻が食蜂操祈のことを認識できないのに近いです。これ以上の措置は施されていません。この効果は未だ続いています。
※セイバー(リンク)を確認しました。
※朽木ルキア、ランサー(前田慶次)を確認しました。
※ライダー(ルフィ)を確認しました。
※フェイスレスと再契約しました。
※フェイスレスの血液を飲んだことでしろがね化が進行、記憶や知識も獲得しています。
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』による操作と『欲視力』により得た他者認識力により、フェイスレスの乗っ取りに抵抗しています。現状精神は乗っ取られていませんが、キャスター(操祈)が脱落し、宝具の効果が消滅した場合は精神が乗っ取られる確率が極めて高くなります。

[共通備考]
※バーサーカー(一方通行)陣営と残り主従が6騎になるまで同盟を結びました。


298 : 真夜中の狂想曲 ◆lb.YEGOV.. :2016/01/27(水) 23:12:52 cUIejKW20
『皆様、お楽しみ頂いておりますでしょうか?』

『夜の帳はすっかりと降りてしまいましたが、舞台では新たな幕があがったようでございます』

『第一幕は超常の能力を扱う少年少女達の追跡劇』

『第二幕は巨人や化け物、闇の住人達による血の狂宴』

『そしてこれより始まりました第三幕は、魔法少女と魔術師達が絡繰り仕掛けの舞台にて奏でる狂想曲にございます』

『思惑と願いが錯綜する舞台の行く末は語り部たる私にもまだ知る由はございません』

『運命という地獄の機械に翻弄されし彼ら彼女らの結末は、どうぞご自身の目でお見届けくださいませ』



『それでは改めて第三幕、"魔法少女達の夜"』



『開演に、ございまぁす』


299 : ◆lb.YEGOV.. :2016/01/27(水) 23:14:18 cUIejKW20
以上で投下を終了いたします。
ご指摘等あればどうぞよろしくお願いいたします。

また、長期間キャラを拘束してしまいました事、重ねてお詫び申し上げます。


300 : 聖杯戦争に強い弁護士 :2016/01/28(木) 00:22:43 5v8FQlG.0
参戦するナリ


301 : 名無しさん :2016/01/28(木) 08:11:36 qAC7Hd3Q0
乙です。
タダノに変装してまどかとルフィを騙すか…
ルフィなら感で見破りそうと思ったけど、あいつ仲間の顔すら忘れてたわそういえば


302 : 名無しさん :2016/01/28(木) 21:23:32 6YoKt.tY0
後編、投下乙です!
まずは一点気づきましたので、>>287の二段落目、「ほむら」が「さやか」になってるように思われます

本編ですが、懐かしいカラスくんの登場にちょっとニヤリとさせられました。フェイスレスの策、本当に嫌らしいな…この状況下、雁夜おじさんとしちゃそりゃあ焦るし同盟受けちゃっても仕方ない。それでもカラス越しの善吉とのやり取り、ほむらたちへの眼差しなんかはぐっと来るものがありました。

互いに思うところはあれど、さやかと一緒に戦うことを決意した中で、ほんの少しだけ嬉しさを覚えたほむらの心情もいいなぁ。マスター狙いの策があるようだけど、リンクとほむらの眼前、己自身を示すように白文字の傍に立つ一通さんが怖い。ルフィを翻弄し、デビルマンを退けてるだけはある。これを突破するのは実際容易な事じゃないですね。

一方で、善吉とフェイスレスもすごく先が気になるところ。
張り巡らした蟲の目からの情報をフル活用して、舞台にいながら舞台を繰ろうとしてるフェイスレスは原作での暗躍に恥じない活躍ぶりですけども、黒い太陽ゆえに他者の思いやその強さを考慮できないんですよね。善吉の独白で触れられている通り、そこに付け入る隙がある。
善吉は立ち位置としてはとんでもなく複雑なところにいるけど、そんな中でどこまでも彼らしい思いと決意が熱い。顔芸に隠された彼自身の意地がある限り、ただでは終わらないと思わせてくれます。

人形たちの操演、参加者たちの競演、今までに繰られてきたサイレン聖杯の参加者たちの関係がどんどん収束してきてる感じがして、前編後編と本当に盛り上がるお話でした。


303 : ◆wd6lXpjSKY :2016/01/30(土) 23:53:22 F56JmpxY0

投下お疲れ様です!

お互いに死んだと思っていたほむほむとフェイスレス、何だかんだで似た者同士だよなぁw
どっちもはやく排除したい辺り、切っても切れない糸で繋がれているような。

まどかのために色々思うことはあるけど組むほむらとさやか。
行先は茨の道だし仲も良くないけど応援したくなります。
彼女達にとって大切な存在を守るために頑張ってもらいたい……まだまだ波乱は来ますが。

雁屋おじさんもやっと仲間が出来て良かった(よくない)
バーサーカーのマスターに加え、魔術と科学によって身体を蝕まれているのも心配です。
早期決戦が一番だろうけど……相手は時に関わりのある参加者なだけに辛い。

そしてやはりと言うべきの自動人形軍団!
「お!やっぱり出たな!」から「お前か!」までの圧巻。
数のアドバンテージは大きいですよね。聖杯戦争ならなおさら。
それに対して正面から戦う各サーヴァントもかっこい……!

フェイスレスの思惑が先行する中、参加者は翻弄されるだけなのか、叛逆するのか……。
改めて、投下お疲れ様でした!


明美ほむら&セイバー(リンク)、間桐雁夜&バーサーカー(一方通行)で予約します。


304 : ◆wd6lXpjSKY :2016/02/06(土) 22:09:14 zoIJaI6A0
お疲れ様です。気付いたら新しい聖杯がたくさん増えてました。

予約分、投下します。


305 : 心波のトランス ◆wd6lXpjSKY :2016/02/06(土) 22:11:52 zoIJaI6A0

 時が動く。
 視界には誰一人として映らず、淡い月の光が路面を照らしている中を暁美ほむらが駆ける。
 握り締めた拳銃に力を入れ、近くに潜んでいる標的を探す。

 人の気配を感じない――けれど、バーサーカーが現れた時点で付近にマスターが潜伏している可能性は高い。
 過去に契約を結んだキャスターのように監視する術を持っていれば、話は別だが、彼は違うだろう。
 一度はその姿を遊園地で見ている。あの時点で彼にそのような素振りは感じなかった。故に。

「身を隠すなら建物の中……安易に考えるならそれが一番」

 暁美ほむらはビルの扉を力強く蹴り飛ばす。
 正面から突入すればガラスだのセキュリティロックだの弊害があるが、裏口の無機質な鉄の扉ならば問題は無い。
 魔力でほんの少し身体能力を弄り――中に侵入する。

 電気の音がが響く、薄暗いロビー。ソファーに観葉植物、自販機が見える。
 人間の気配を感じさせないこのエリアに――目を凝らせば幾つもの瞳。


「……手荒い歓迎ね。そんなに大勢でどうかしたのかしら」


 弱音は吐かない。
 隙を見せれば一瞬で劣勢に立たされ、死へと直面してしまうだろう。
 そして何よりも、こいつらに負けたくない気持ちが暁美ほむらの瞳を前に向かせる。
 自動人形が待ち伏せていようと、彼女は止まる訳にもいかないのだ。


「これはこれは創造主様の元マスター。こんなところで何をしてるのかなぁ〜?」


 群れの中からリーダー格であろう人形が挑発するような高めの声色を響かせる。
 お世辞にも綺麗とは言えない崩れた表情がより一層、人間の心に不快感を与える。

 関わりたくない、と謂わんばかりに無言を決める暁美ほむら。
 彼女の表情から察するに本気で彼らと遭遇したくないらしい。


「無視かよぉ、ムカつくなあ。ここで殺しちゃうか……殺すぜぇ〜〜!!」


 沸点が低いかどうかはいざしらす。
 数秒の沈黙にも耐えられない自動人形達が、一体の声に呼応するように飛び出した。


306 : 心波のトランス ◆wd6lXpjSKY :2016/02/06(土) 22:13:25 zoIJaI6A0

 群れと云ってもその数は合わせて五体。しかし主な武装が整っていない暁美ほむらには強大な壁になるだろう。
 自動人形の強さはサーヴァントに及ぶはずもない。けれど、魔力を帯びておりサーヴァントから生まれる以上、その力は常識を超える。
 しかし、それは一般人の常識であり、力を持ったマスターならば対抗出来ても不思議ではない。

 一流の魔術師や世界に名を馳せる暗殺者ならば幾らでも自動人形を蹴散らすことは出来よう。

 ならば暁美ほむらはどうするだろうか。


「痛ってぇ! お前らどこ見てんだ! 敵はあの女――っていねえ!?」


 一斉に襲いかかった自動人形達が飛び込んだ先に、暁美ほむらはいなかった。
 標的が存在せず、哀れな機械共は互いに互いを攻撃する形となっている。
 肝心の暁美ほむらは――既にビルの扉を後にしており脱出していた。


「あなた達に構っている時間も無いの。名前も持たない人形達、さようなら」

「何がさようならだ! お前が、お前がさようなら!」


 去る暁美ほむらは一度止まると、振り返りざまに弾丸を放つ。
 吸い込まれる先は自動人形ではなく、側にあった自動販売機だ。


「残念ハズレ〜! 怖くてビビって震えて怖気づいだかなぁ?」

「それでいいのよ全く……消し飛びなさい」


 挑発を流しつつ暁美ほむらは勢い良く扉を閉め、ビルから離れる。
 その姿を見ていた自動人形達は後を追いかけようと動くも――異変に気付いた一体が呟く。

「この自販機から変な音がする」

「あー……?」

「何か煙も出てるし……うげぇ〜!!」

 気付いた時にはもう遅く、自動販売機は嫌な煙と聞きたくない音を響かせながら光輝くことになる。
 爆炎がビルを襲い、あちらこちらに飛び火し、中にいれば火の手に追い付かれるのは時間の問題だ。


「あのビルに誰も居ないことを願うわ……敵以外、ね」


 別のビルに身を隠しながら暁美ほむらは燃える、いや燃やした建物を見つめる。
 火が広がれば中に居る人間は避難するだろう。
 NPCには申し訳ないが、生命と願いとまどかが懸っている戦いに手を抜く訳にもいかない。
 バーサーカーのマスターが潜んでいれば出て来るはず、監視した段階ではそこまで身体能力が高くは見えなかった。


「出て来たならそこを狙い撃つ……だから、それまで耐えて――セイバー」









「■■■――!!」

 暁美ほむらが自動人形の相手をしている同じ時間軸の別所にて。
 怒号と共に投げられるコンクリートの破片を斬り捨てたセイバーはそのまま距離を詰める。
 斬りかからずに足元に爆弾を忍ばせ、己はバク転の要領でその場から離れる。

 バーサーカーが再度、能力任せに暴れる前に、ブーメランを投げ付ける。
 標的は狂戦士ではなく置いた爆弾だ。導火線よりも早く本体に衝撃を与え――爆ぜる。


307 : 心波のトランス ◆wd6lXpjSKY :2016/02/06(土) 22:14:07 zoIJaI6A0

 静寂をひっくり返すような爆音が轟き、セイバーの前方には豪炎が渦巻いている。
 中心に立っている狂戦士に傷の一つや二つ、与えれれば上々であるがそれは叶わない。

 炎の中で小さな影が動く。
 狂戦士が振るった腕はたった一つの小さな動作で炎を掻き消したのだ。
 風が吹き荒れ、瞳を閉じたその一瞬で爆発の面影が消え去り残るは塵だけ。
 
 お世辞にも恵まれた体格とは言えない青年が、腕を振るっただけで爆発を消し去っていた。

 敵を視界に捉えたままセイバーは矢を放つ。
 常人には知覚出来ないような速度で狂戦士に迫る一矢だが彼は動かない。

 瞳を赤く光らせ、不気味に口角を上げ、聞き取れない声を零す。
 笑っているのは認識出来るが、それ以上の情報は何一つ得られない。狂化されているサーヴァントの真意など他人には解らない。
 解ることと云えば放った矢がそのまま自分に返って来たことだけである。

 狂戦士に辿り着く前に、まるで空間が歪んだかのように矢はセイバーへ迫る。
 盾を全面に押し出し弾くように大地に叩き付け攻撃を無効化し、再度剣を構え直す。

 予めマスターから攻撃を跳ね返される、と情報を貰っていただけに不意打ちで負けることは無い。

 現にこれまで様々な方法で攻めているが、狂戦士に何一つ辿り着いていない。
 

 剣も。
 矢も。
 爆弾も。

 
 全てが狂戦士の宝具であろう能力によって無効化、或いは跳ね返されてしまっている。


 宝具を開放すれば戦況を傾けられる可能性は大いにある。
 しかしマスターからのオーダーは時間を稼げ。つまりここで無理に倒す必要は無い。
 宝具でも確実に勝てる確信は無いため、無理に魔力を消費しても無駄撃ちに終わることも有り得る。


308 : 心波のトランス ◆wd6lXpjSKY :2016/02/06(土) 22:15:56 zoIJaI6A0

 次の手を思考するセイバーであるが、敵は必ずしも待ってくれるとは限らない。
 狂戦士は軽く大地を蹴ると大きく跳躍、そして物理法則を捻じ曲げるように空中で方向転換、超加速しセイバーに接近する。
 飛行体に注目しつつ、バックステップで距離を取ったセイバーと落下するバーサーカー。

 数秒前まで時の勇者が立っていた地点には大きなクレーターが誕生していた。
 その余波が大地を伝わりセイバーの足に響く。
 一瞬ではあるが怯んでしまった隙を狂戦士は逃さず、咆哮と共に拳を突き出した。


「■■■ーッ!!」


 まるで時が止まったかのようにその拳周辺から音が消えていた。
 耳を疑うが直ぐに風の音が聞こえた時、拳が風を纏いセイバーの盾に触れた。

 
「――ッ」


 盾は粉砕こそされないが、伝わる衝撃はセイバーの顔を歪ませるには十分過ぎる威力であった。
 腕が痺れ、視界が揺れ、立っているだけでも辛い状況だ。
 しかし黙って攻撃を受ける訳にもいかなく、近くのビルに注目すると武具を取り出す。

 バーサーカーの追撃が迫るよりも早く鎖を射出し、ビルに突き刺すと――セイバーは空を跳ぶ。
 ロングショットによって空間を立体機動のように移動した時の勇者は狂戦士の間合いから離脱に成功。
 壁に張り付く形になりながら敵を見据える。
 このまま戦ってもジリ貧だが、マスターのためにも踏ん張り所であるが故に次なる一手を模索する。





 



「ここも違う……バーサーカーのマスターの居場所は」


 一軒家から飛び出た暁美ほむらは依然として標的を発見出来ていない。
 並ぶビルを全て探すには多くの時間を費やすこととなり、小休止程度に民家を捜索するも無駄に終わっていた。
 セイバーがバーサーカーを抑えている間がリミットであり、時間は有限ではない。


309 : 心波のトランス ◆wd6lXpjSKY :2016/02/06(土) 22:17:19 zoIJaI6A0


 狂戦士の力はモニター越しであるが認識している。時の勇者が負ける可能性を切り捨てて考えているが、不安は残る。
 何としてでもマスターを殺し、場を収束させた上でまどかを追いたい暁美ほむらに焦りが貯まっていく。

 全ては彼女のために。
 彼女なき世界に価値など存在しない故に、そう、全ては彼女のために。


「……足音? また気色悪い人形ね」


 自動人形達を撒いたつもりであったが、やはりと言うべきかまだまだ追手がいるらしい。
 あのキャスターのことだ。今も憎たらしい笑みを浮かべモニターを監視しているに違い無い。
 ビルから出て来た自動人形もまた笑っており、何やら奇妙な歌を汚い口から流していた。


「こーんやーのランバージェイコブ様の晩飯は〜♪
 逃げ惑う魔法少女の生き血〜……さぁてどうすっかなぁ〜」


 この人形も悪趣味である、と言葉には出さないが暁美ほむらは思う。
 やや太型で、不潔なヒゲ、似合わない豹柄の腕輪……ランバージェイコブと名乗った自動人形に好感は抱かない。


「残念だけど貴方の相手をしている暇は無いのよ。
 バーサーカーのマスターの居場所を吐いてから消えなさい、人形」

 
 虫けらを見るような瞳でランバージェイコブに敵の居場所を尋ねる暁美ほむらは苛立っている。
 生命を狙われているのだから仕方がない。
 自然と銃を握る力が強まっていき、それに伴い汗も生まれる。


「あぁ〜? 誰だよ」

「とぼけているのかしら……いや、貴方達のような人形にそんな芸当は出来ないわね。
 命令だけに従って何一つ真実を知らない哀れな傀儡共……情報を期待した私が馬鹿だっただけね」

「あぁ!? 調子に乗ってんじゃねぇぞガキィ!!」

「咄嗟に思い付いた陳腐な挑発に乗ってくる所も本当に哀れなにんぎょ――きゃっ!?」


 適当にこの場を流して時間停止。そうして逃走する予定だった魔法少女に射出されたのは網。
 怒りのランバージェイコブは暁美ほむらの拘束に成功すると、担いでいたライフルを構える。


310 : 心波のトランス ◆wd6lXpjSKY :2016/02/06(土) 22:18:26 zoIJaI6A0


「じっくり身体を削ぎ落とそうと考えたが、怒ったからお前は一発でぶっ殺す!」


 魔法少女と云えど銃弾を正面から喰らっては無事に終れるはずも無い。
 身体を網で覆われ、身動きが取れない暁美ほむらにとっては文字どおりの絶体絶命である。


「くっ……私を殺すつもりかしら?」

「当たり前だろぉ〜それが創造主様の命令だからなぁ〜」


 どんな言葉を並べようとその引き金を止めることは出来ないだろう。
 ランバージェイコブは特にそれ以上会話を広げることもせず、銃弾を発射し獲物を仕留める。


「さぁ〜て、こっからは飯の時間だ……あぁン!?」


 人形の驚いた野太い声が月夜に響く。
 それも仕方がないだろう。何せ異常事態が発生したのだから。


「何であのガキが消えているんだぁ!?」









 ランバージェイコブが出て来たビルに侵入した暁美ほむらを待ち構えていたのはまたしても自動人形達だった。
 時間停止であの場を切り抜けた彼女は人形が出て来たビルならば他にも誰かが潜んでいるかもしれない……と睨んでいた。
 今まで建物を捜索した際に、敵が潜んでいたのは最初のビルだけであった。
 何か特別なモノ――例えばお宝を守る番人のように人形達が配備されているかもしれない。


311 : 心波のトランス ◆wd6lXpjSKY :2016/02/06(土) 22:19:00 zoIJaI6A0


 思えば最初のビルにも何か特別なモノがあったかもしれない。
 けれど、名前持ちの人形が出て来たこのビルだ――《客人》を警護する人形がいても不思議ではない。


「うけけけけけけけけけ」

「ころせ」

「ころしちゃえ」

「ころせ! ころせ! ころせ!」


 何体もの自動人形達が標的である暁美ほむらを目の前に嘲笑っている。
 これからどうやって殺すか。どのように調理するか。どのようにいたぶるか。
 悪趣味なことを考えているのだろう、と勝手に決め込んだ暁美ほむらは更に人形に対する感情が悪くなる。

 しかしその強さは残念ながら弱くは無い。
 数が多ければ多い程厄介な存在に膨れ上がる。忌々しい、と更に苛立ちが募る。

 相手をするだけ無駄だ。
 割り切って彼女は時間を止める。
 一刻も早くまどかを救うために、多少の無茶など今更踏み止まる必要も無いのだ。

 
「此処は違う」


 自動人形達から遠ざかり一室を覗いてみるも人影はない。

「此処も違う」

 隣の部屋を見るも、また違う。

「此処も」

 階段を駆け上がり別のフロアも同様に調べ回る。

「此処も」

 息が上がる。
 魔力消費と重なって体力も消費されていく。

「此処は――」


「……驚いた。人形達はどうしたんだい」


 アタリだ。


312 : 心波のトランス ◆wd6lXpjSKY :2016/02/06(土) 22:20:11 zoIJaI6A0

 その姿を知っている。
 白髪に今にも死にそうな顔のフード男。
 暁美ほむらが遊園地で監視していた男と一致する。
 
 探し求めていた男に出会えたのは偶然であった。
 バーサーカーのマスターも暁美ほむらと同じように彼女を探していた。
 響く銃声を頼りに近くのビルに潜伏したところ――互いが互いを引き寄せ合った。


 獲物を前にした参加者は――魔法少女が問答無用で引き金を引いた。


 額に吸い込まれる銃弾は何処から湧いたかいざ知らず、謎の蟲に阻まれる。
 粘り気のある不快な音を響かせながら弾け飛ぶ蟲、撒き散らす体液と腐臭が一室に篭もる。

 急速に気分が悪くなる暁美ほむらだがそんなことも言っていられない。
 手を休めれば殺される。直ぐ様新たに照準を定めるも敵に異変が現れていた。


「う……ぐ、ガァ!」


 その顔は異質だった。
 血管が必要以上に強調され浮き出ており、まるで身体の中をナニカが蠢いているようだった。
 口を掌で抑えてはいるが、血が溢れでており勝手に瀕死状態に追い込まれている……暁美ほむらが抱いた感想である。

 何がどうなってこんな状況になったかは知らないが、活かせる事象は全て利用する。
 銃弾を放っても空を漂う蟲達に阻まれるだろう――時間を止めて確実に殺す。

 盾に手を添えて普段通りに魔法を――彼女にも異変が現れる。


「む……りをし過ぎたかしら」


 時間停止の連発によって体力が浪費しており、目眩が生じる。
 その場でたたらを踏むが、こんな所で弱っても何も手に入れることが出来ない。
 狂戦士を仕留めることは必ずまどかを救うことに繋がる。だから、暁美ほむらは目の前の男を殺す。

(君が何のために聖杯を求めているかは知らない。でも、この世界に踏み込んだからには覚悟してもらう)
「行け……ぐ、蟲共ォ!」

(死に掛けの身体でバーサーカーを使役してまで何を求めているかは私に解らない。でも、私はまどかを救う。だから)
「ほんの一瞬でもいいから……止まりなさい!」


 意地と覚悟の競り合い。
 女神が微笑んだのは――暁美ほむら。


313 : 心波のトランス ◆wd6lXpjSKY :2016/02/06(土) 22:20:57 zoIJaI6A0

「体感で解る、止められる時は本当に一瞬――だから!」


 蟲達の壁を強引に割りバーサーカーのマスターに接近すると盾から手榴弾を取り出す。
 口でピンを外すと彼の足元に転がし、自分はそのまま走り続ける。

 拳銃で窓ガラスに発砲。
 五角形を描くように撃ち抜いた所で時が動き出す。


「いつのまに――待てッ!」


 目の前から暁美ほむらが消えたことに驚きながらも男は振り返りざまに手を伸ばし、彼女の後頭部を鷲掴みする。
 彼女には悪いが、このまま蟲の餌食になってもらう。
 そう思った時、二人の脳内にノイズが走る。


「これは……貴方は聖杯戦争を経験している……?」


「今のは一体……それに君はもう一人のバーサーカーのマスターと」


「何をしたかは知らないけど答える義理は無いわ」


 腕で掴まれている相手の腕を払うと、両腕を交差させ窓ガラスに飛び込む暁美ほむら。
 銃弾で穴を開けていたため、窓ガラスは簡単に破裂し彼女は空中に放り投げられた。


「死ぬ気か……?」


 無理もない。
 翼を持たない人間が飛び降りたのだ。
 戦況を悟って自殺――後味は最悪だが参加者も減り、聖杯戦争にとっては好ましい状況になる。
 だが、暁美ほむらは考えなしに飛んだ訳ではない。


「エンジン音……まさか」


 開けた窓の先から聞こえる振動音。
 まさかヘリや飛行機が飛んでいる筈もない。飛んでいるならばもっと小柄な機体。
 空を跳んで来たのはセイバーが跨るバイクであった。


314 : 心波のトランス ◆wd6lXpjSKY :2016/02/06(土) 22:21:56 zoIJaI6A0

 念話で事前にセイバーを呼んでおいた暁美ほむらの賭けは成功した。
 バーサーカーのマスターを殺せないのは残念だが、あのまま戦えば自動人形達も駆け付けて来るだろう。
 少しでも休憩できれば満足に魔法も使えるだろうが、インターバルが短い。

 彼を殺すことに変わりはない。
 場所を変えて――出来るだけまどかに近付き、彼女に影響が及ばない範囲で殺す。


「完璧なタイミングよセイバー」


 伸ばした腕はセイバーに掴まれ、導かれるように後部に座る。
 流れるようにビルを覗けば驚いているバーサーカーのマスターの顔が見える。

(貴方を殺すのはもう少し先よ)

 諦めない。
 狂戦士は美樹さやかのサーヴァントでも苦戦する相手だ。
 早めに殺しておけば聖杯戦争が有利になるのは間違いない。
 ならば負担や危険が少ないマスターを狙うのは道理であるのは必然だ。


「爆発で死んでくれれば――全て解決するけど」


 暁美ほむらが置いた手榴弾が炸裂し、ビルが一瞬で紅く染まる。









「バーサーカーは追って来ている……なら、生きているわね」


 ギャリギャリとタイヤをコンクリートに擦らせながら着地するバイク。
 その遥か後方からバーサーカーがあり得ない速度で迫っているのが確認出来る。
 マスターが死んでいれば消滅しているだろうが、健在な今、彼も生きているのだろう。


315 : 心波のトランス ◆wd6lXpjSKY :2016/02/06(土) 22:22:57 zoIJaI6A0

 ならばこのまま引き付けてマスターも誘き出す。
 彼だけその場に滞在する可能性も高いが、その場合は狂戦士をまどかから引き離せばいい。
 出来るだけ引き離した後で時間停止を駆使しながら離脱すれば、狂戦士であれど撒ける筈だ。

「セイバー、このまま北上して」

 フェイスレスは暁美ほむらの居場所を特定出来るだろう。それがきっとバーサーカー陣営にも通じる。
 幾ら引き離した所で、見失っても特定出来れば簡単に対面する形になるだろう。
 美樹さやかにバーサーカーを処理すると言った手前、このまま敵を引き連れて参戦するのは避けたいところだ。
 意地や感情を抜きにしても、あの戦場になるであろう場所に狂戦士を放り込むのは回避したい。

 バーサーカー単体が釣れれば温泉から引き離し、足止めした上で美樹さやかに加勢する。
 マスターも一緒に追って来るならば再び彼に狙いを絞って殺す。

 第二ラウンド――夜はまだまだ眠らない。


【B-3/市街地/二日目・夜】


【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]疲労(大)
[令呪]残り3画
[装備]ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]グリーフシード(個数不明)@魔法少女まどか☆マギカ(二つ穢れが溜まりきっている)、オートマチックの拳銃
[思考・状況]
基本:聖杯の力を以てまどかを救う。
1:北上しバーサーカーのマスター(間桐雁夜)を殺害する。
2:温泉に向かいまどかを助け、帰還させる。
3:キャスター(フェイスレス)を倒す。

[備考]
※自分の能力の制限と、自動人形の命令系統について知りました。
※『時間停止』はおよそ10秒。連続で止め続けることは難しいようです。
※アポリオン越しにさやか、まどか、タダノ、モリガン、アゲハ、流子、ルキア、慶次、善吉、操祈の姿を確認しました。
※明、ルフィのステータスと姿を確認しました。
※美樹さやかの存在に疑問が生じています(見たことのない(劇場版)美樹さやかに対して)
※一瞬ソウルジェムに穢れが溜まりきり、魔女化寸前・肉体的に死亡にまでなりました。それによりフェイスレスとの契約が破棄されました。他に何らかの影響をもたらすかは不明です。
※エレン、さやか、まどかの自宅連絡先を知りました。
※さやかと連絡先を交換しました
※ジャファル、レミリア、ウォルターを確認しました。
※天戯弥勒と接触しました。
※巨人を目撃しました。
※キャスター(フェイスレス)のマスターは最初の通告で存在が示唆されたマスター(人吉善吉)と予想しています。
※間桐雁夜が「誰かを守るために聖杯戦争に参加していた」ことを知りました。

【セイバー(リンク)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
[状態]魔力消費(小)、疲労(中)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに全てを捧げる
0:カレンの意思を引き継ぎ、聖杯戦争を勝ち抜く。
1:暁美ほむらに従う。
2:バーサーカー(一方通行)に対処する。
3:アーチャー(モリガン)に対する強い敵意。
[備考]
※アーチャー(モリガン)を確認しました。
※セイバー(纒流子)を確認しました。
※夜科アゲハの暴王の流星を目視しました。
※犬飼伊介、キャスター(食蜂操祈)を確認しました。
※人吉善吉、アサシン(垣根帝督)を確認しました。
※垣根帝督から食蜂操祈の能力を聞きました。
※朽木ルキア、ランサー(前田慶次)を確認しました。
※ウォルター、ランサー(レミリア)を確認しました。
※巨人を目撃しました。
※バーサーカー(一方通行)を確認しました

[共通備考]
※バーサーカー(不動明)陣営と同盟を結びました


316 : 心波のトランス ◆wd6lXpjSKY :2016/02/06(土) 22:23:26 zoIJaI6A0

 間桐雁夜が暁美ほむらの頭を掴んだ時、両者にノイズが走った。
 それは記憶。彼には彼女の、彼女には彼の記憶が少しではあるが断片的に通じ合っていた。


 暁美ほむらが知った間桐雁夜の記憶。
 天戯弥勒が開く以前にも聖杯戦争に参加しており、その時のサーヴァントもバーサーカーだった。
 個体は違えど、彼が聖杯戦争を体験していたことに変わりは無い。
 それは誰かを守るために。まるでまどかを救うために動く誰かと重なるようだった。


 間桐雁夜が知った暁美ほむらの記憶。
 初めて交戦したライダーのマスターと、公園にて交戦したバーサーカーのマスター。
 どちらもまだ幼い少女だった。そしてセイバーのマスターである暁美ほむらも彼女達と同年代だった。
 流れた記憶の先には五人の少女の姿があり、その中には彼女達もいた。
 友が血塗られた戦争に参加している――彼女達の運命は知らないが、奇跡を求めるためにその手を汚すのだろうか。

 他に流れた記憶と云えば魔法。
 肝心な部分は何一つ感じられなかったが、暁美ほむらは盾に触れている。
 間桐雁夜がビルで彼女と対峙した時、気付けば後方に移動していた。
 目を離したつもりは無かった。それでも気付けばまるで瞬間移動のように彼女は消えていた。
 その時にも盾に触れていたことは覚えている。次に対峙する時には警戒の必要がある。


 そして。


 そもそも、何故、彼女達は互いの記憶を知り得たのだろうか。
 

 間桐雁夜の身体はPSI粒子に侵されており、身体に異変が起きていた。
 参加者である夜科アゲハと裏で嗤う天戯弥勒。彼らはその能力をPSIと称し使用している。
 表すならば超能力の一種と考えればいい。
 
 その片鱗が間桐雁夜の身体に現れ、PSIの力として具現化したのが先の記憶になる。
 心波のトランス――テレパシーなどの内面に働きかける力が覚醒したのだ。
 発動したのは偶然であり、能力もまだまだ成長する余地はあるだろう。
 現段階では《頭部に触れた相手の記憶を読み取る》《頭部に触れた相手に自分の記憶を流し込む》だろうか。

 しかし間桐雁夜は魔術師だ。科学とは最も離れている人種である。
 魔術と科学の共存――簡単には両立出来ない。いや、出来るのだろうか。

 現に今の彼では刻印蟲を使役するだけで、本来の能力を使役するだけで魔術回路に多大な負担が掛かる。
 それは急速で整えた未熟な魔術師とは別な話で、超能力に触れ始めた身体が魔術に対し拒絶反応を示しているからである。

 結果的に天戯弥勒が間桐雁夜に告げたとおり単純な魔力の量は膨れ上がっている。
 しかし、蝕まれたその身体。生命の終わりが近付いていることに変わりは無い。





「本当にこのまま追うんですかい?」


「……頼む」



 手榴弾の爆発から自動人形数体を盾にして回避した間桐雁夜の選択は暁美ほむら及びセイバーを追うこと。
 アノスに命令を飛ばしながら、彼は戦うことを選んだ。
 記憶が流れてこようが暁美ほむら、美樹さやか、鹿目まどかが知り合いだろうが関係無い。

 聖杯を求める人間に情けを掛ければ死ぬのは自分である。
 非道にならなければ手に入る物も手に入らない。果たして彼は修羅になれるのだろうか。


 第二ラウンド――この夜はまだ収束しない。


317 : 心波のトランス ◆wd6lXpjSKY :2016/02/06(土) 22:23:58 zoIJaI6A0

【間桐雁夜@Fate/zero】
[状態]肉体的消耗(中)、魔力消費(小)、PSIに覚醒
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を取り、間桐臓硯から間桐桜を救う。
1:間桐桜(NPCと想われる)を守り、救う。
2:セイバー(リンク)とそのマスター(ほむら)を殺害する。
[備考]
※ライダー(ルフィ)、鹿目まどかの姿を確認しました。
※バーサーカー(一方通行)の能力を確認しました。
※セイバー(纒流子)の存在を目視しました。パラメータやクラスは把握していません。
※バーサーカー(不動明)、美樹さやかを確認しました。
※PSI粒子の影響と一方通行の処置により魔力量が増大しました。
※PSI粒子の影響により身体能力が一般レベルまで回復しています。
※生活に不便はありませんが、魔術と科学の共存により魔術を行使すると魔術回路に多大な被害が発生します。
※学園の事件を知りました。
※セイバー(リンク)の存在を目視し能力を確認しました。暁美ほむらの姿を写真で確認しました。
※キャスターのマスター(人吉善吉)と残り主従が6騎になるまで同盟を結びました。善吉に対しては一定の信用をおいています。
※鹿目まどか、美樹さやか、暁美ほむらが知り合いであること・魔法少女であることを知りました。
※暁美ほむらの魔法の鍵が「盾」であると予測しています。
※PSI能力「トランス」が使えるようになりました(固有名称未定)
 頭部に触れた相手の記憶を読み取る、相手に記憶を流すことが可能です。


【バーサーカー(一方通行)@とある魔術の禁書目録】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:■■■■───
1:───(狂化により自我の消失)
2:セイバーを倒す
[備考]
※バーサーカーとして現界したため、聖杯に託す願いは不明です。
※アポリオンを認識し、破壊しました。少なくとも現在一方通行の周囲にはいませんが、美樹さやかの周囲などに残っている可能性はあります。


[全体備考]
※C-6で爆発騒ぎが発生しました。NPCの通報で警察が向かっています
※A-4の温泉地帯に向けて、鹿目まどかに似せた人形をかついだケニス@からくりサーカスが飛行しています
※B-3にて多数の自動人形が暁美ほむら殺害の為に行動しています


318 : 心波のトランス ◆wd6lXpjSKY :2016/02/06(土) 22:37:02 zoIJaI6A0
投下終了です


319 : 名無しさん :2016/02/07(日) 04:20:21 wB3YKD2.0
投下乙です!
おお、ほむら&リンクはおじさんと一方通行を捌いたか
とはいってもギリギリのところでの攻防、しかも倒す算段はなくて凌いだだけというのは
リンク視点での一方通行戦もいいですね、ゼルダらしいアクション感と一方通行の理不尽さがすごく出てる
おじさんとほむらの交錯、どこか似た戦いの記憶を持つ二人か…もう互いに迷ったり躊躇したりするつもりはないみたいだけど。
しかし、序盤は他者との関わりのなかったおじさんも善吉にほむらと心をぶつけ合う相手が出てきてますね、PSYも本格的に発現してるし濃くなってきた
自動人形たちもやらしいよなあ、雑魚人形なら対処は出来るけど数が多いし、今回みたく倒そうとする相手の楯なんかにもなってしまう
フェイスレスの笑みを幻視しながらさやかとの共闘のために走るほむら、本当に夜はまだまだこれからだなあ


320 : 名無しさん :2016/02/07(日) 11:31:26 wXhEH1Ms0
投下お疲れさまです
ほむらとおじさんの戦闘は第2ラウンドに持ち越したかー。リンクの攻撃が宝具以外は一通に通る見込みがないとかなり分が悪い状況ですが、ほむらがどうやっておじさんを落とすのか、またおじさんがどうやって時を止めるほむらを攻略するのか気になりますね
そして有効な攻撃手段がないマスターだとかなり相手にするのが厳しいのが自動人形のいやらしいところですね。鳴海に数コマで破壊されたランバージェイコブが出てきて、今後も原作の個性的な自動人形が色々出てくるかと思うと楽しみです
お互いに記憶を共有したとしても潰し合うことが止められる訳もないブッチーキャラ同士の決着がどうなるのか期待が高鳴りました


321 : ◆A23CJmo9LE :2016/03/12(土) 23:00:33 9IrXlUOA0
鹿目まどか&モンキー・D・ルフィ、タダノヒトナリ&モリガン・アーンスランド、人吉善吉&フェイスレス、朽木ルキア&前田慶次
予約します


322 : ◆lb.YEGOV.. :2016/03/18(金) 00:47:10 hRp0KHqQ0
ウォルター・C・ドルネーズ&ランサー(レミリア・スカーレット)
予約します


323 : ◆A23CJmo9LE :2016/03/18(金) 21:57:30 n81pMMx.0
申し訳ないのですが、PCを修理に出したため一旦予約を破棄します……
返ってきたときにまだ空いていたら改めて予約したいと思います
度々申し訳ありません


324 : ◆lb.YEGOV.. :2016/03/25(金) 00:28:51 YqFd4Pkc0
すいません、期間内に書きあげられそうにないので延長いたします


325 : ◆lb.YEGOV.. :2016/04/01(金) 00:04:42 UP9x8sAY0
お待たせしました。投下致します。


326 : Deep Nlght ◆lb.YEGOV.. :2016/04/01(金) 00:07:33 UP9x8sAY0

男は一つの背信を働いた。
理由は1つ。
戦いたい男がいた。
討ち果たすべき男がいた。
その為ならば仕えるべき主も、守るべき国も、笑いあった仲間も、歩んできた人生も、盲執の火にくべる覚悟を持っていた。
未練がないと言えば嘘になるだろう。
しかし、例えそれが夜の明ける僅かな時間に終わる事だとしても、その願いの為だけに、己の数十年にも及ぶ道程で得た全てを差し出すことを厭う事などしない。
ウォルター・C・ドルネーズとはそういう男だった。

ベッドの上で二つの影が重なっていた。
男と女。
少女と老人。
令嬢と執事。
主<<マスター>>と従僕<<サーヴァント>>。
ベッドに横たわる老人に這いより、覆い被さるような体勢になっていた少女は、しかしそこで動きを止めていた。
眉根を寄せ、幼さの中に気品と優雅さを携えた愛らしい顔を不機嫌そうに歪めてる。
興が削がれた。
その表情を一言で表すのであれば、そう表現できるだろう。

「これで3回目ね」

月明かり以外の光源のない部屋で、紅のランサーが不快げに口を開いた。
老人、ウォルターの胸元を這い回らせていた細い指を右手ごと胸元へと寄せる。
この戦争の監督者である天戲弥勒からの通達が入るまでその身に纏っていた妖艶な気配は既に霧散していた。


327 : Deep Nlght ◆lb.YEGOV.. :2016/04/01(金) 00:08:05 UP9x8sAY0

「1回目は私とアサシンの戦いに横入りをして"私の"獲物を奪ったこと」

『私の』というところを強調しながら、すっ、と人差し指を上へと伸ばす。
学校でのアサシンとの決戦。
人間の暗殺者風情に左目を奪われたという屈辱を、彼女直々に主と共々に死を賜わせる事で晴らす筈だった。
だが、その機会は監督役でありサーヴァント同士の潰しあいには関与しない筈の男によって、獲物を横取りされた形で永遠に失わされた。
プライドの高い彼女にとって、それは不愉快な出来事だった。

「2つめは耳障りな放送で今この時に水を差されたこと」

続いて、中指が上へと伸びる。
吸血鬼にならないか、マスターであり執事でもあるウォルターへの誘惑とも提案ともとれる問いかけ。
それを遮ったのが先程流れた2回目の通達だった。
魅了の魔眼で惚けさせたままでウォルターにそれを聞かせる訳にはいかず、ランサーは渋々と魔眼の効力を解くことになってしまった。
ノリと雰囲気を楽しむ部分のある彼女にとって、悪魔の誘惑というシチュエーションを楽しんでいたところを邪魔されたことは、不機嫌になるのに充分過ぎる理由となった。

「そして3つめは綺麗な月夜を、あんな無粋なもので台無しにしたこと」

最後に薬指が上へと伸びた。
不快な感情を隠そうともしない視線は、不気味な顔へと姿を変えた月へと向けられている。
今更ながらに、学校での横槍の時に言っていた"今にも落ちてきそうなくらいに"という発言の意味を理解した。もっとも、本当に月を落としてくるなどと予想しろというほうが無理な話ではあるが。
夜の住人たる吸血鬼は月夜を好む。
そして緑のセイバーとの衝突の際に口にした通り、今宵の月は最高とは言わずとも彼女の好みに該当する部類のものであった。
時の英雄の伝説の剣と己が神槍を打ち合わせた高揚感と、久々に人間に痛手を追わされた屈辱の混ざる、忘れ難き思い出を留め、想帰するには似合いの月夜だといえた。
それを酷く醜悪なものへと変えられた事はランサーにとって酷く不満であった。

「ウォルター、東洋の"仏の顔も三度"という言葉を知っていて?」

不意に、ウォルターへと問いが投げ掛けられた。


328 : Deep Nlght ◆lb.YEGOV.. :2016/04/01(金) 00:09:17 UP9x8sAY0

「さて、生憎と東洋の文化風習には疎い身のうえ、ブディストでもございませんので」
「そうねぇ、私もパチェから聞いただけでうろ覚えだけれど、どんな温厚な人間も三度無礼を働かれれば怒り狂って相手を八つ裂きにするとか祟り殺すとか、そんな感じのあれよ」
「仏とやらは随分と物騒なものですな」
「宗教なんてどこも物騒なもんでしょ。ま、それはともかくとして、温厚らしい仏様とやらでも三度が限界なんですもの、私はそこまで寛大ではないわ」

ランサーの口角がつり上がり、月光に照らされた鋭い犬歯が微かに光った。
先ほどまでは不快げだったその表情は一転し、不敵さと獰猛さを顕にしながら、ウォルターへと向けられていた。

「正直な話、聖杯にかける願いなんてなかったし、せいぜい貴方の行く末でも眺めていてあげようかと思ったけどやめたわ。
私、あのすました顔を叩きのめして、不様に地面とキスさせてあげたくなっちゃった。もちろん、貴方の願いが叶った後でよ?」

新しい悪戯を思い付いた子供のような調子で主催者への打倒を謳うランサーに対し、ウォルターは反対も賛成もしない。
願いを叶えてもらえるからといって、あの胡散臭い男に義理立てする理由など存在しない。
ましてや願いを叶えてもらった後の天戯弥勒ことなど我関せずだ。
そして裏でこそこそと怪しげな動きを見せているようだが、願いを叶えてくれるのであれば殊更妨害する理由も彼には存在しない。

「私といたしましては"私の願いを叶えてから"というお嬢様の寛大なお心遣いをいただいた以上、特に言うことはありませんな。
加えて、願いがどうあれ、お嬢様自身がこの戦いを勝ち抜く為のモチベーションを上げられたとなれば、それは好ましい事でもございます」

ウォルターの言にランサーが得意気に鼻を鳴らす。

「しかし、そうなると今の私の状態ではお嬢様の足を引っ張る事になってしまいます」

微かな緊張の気配が、月明かり以外の光源が存在しない部屋に漂い始めた。
冷ややかな2つの視線が重なりあう。

「ええ、そうね。タイムリミットまでに貴方が回復しきるとは到底思えないし、例え回復したとしても今の貴方では私の全力を引き出すには地力が足りなすぎる」
「難儀なものですな。我々が勝ち抜くには、私がお嬢様の全力を出す為の地力をつけ、かつ、この夜が明けるまでに我々をほぼ万全の状態へと回復させる。そういった方法<<ロウ>>が必要になります」

言の葉を交わしあい現状を確認する。
絶望的な現状認識であるにも関わらず、互いの口ぶりには悲壮な感情は宿っていなかった。


329 : Deep Nlght ◆lb.YEGOV.. :2016/04/01(金) 00:09:51 UP9x8sAY0

「致し方ありませんな」
「そうね、仕方ないわね」

ウォルターが目を閉じ、肩をすくめながら嘆息する。
ランサーがクスリ、と楽しそうな微笑を浮かべる。
この状況を打破する方法が1つだけあった。
その方法は既にランサーがウォルターへと提示していたものだ。

吸血鬼化、そして肉体を交わせる事による魔力の回復と魔術回路の接続。
リスクもデメリットもある一種の賭けだ。
しかし彼らの手持ちでベットするのであれば、一番勝ちの目のある賭けだった。
それをウォルターは受け入れ、ランサーは実行を決意した。

「でもちょっとだけ意外よ、貴方がそんなにあっさりと人でいることを捨てられるなんて」
「背に腹は変えられませんからな。ギリギリまで切りたくはありませんでしたが、必要経費として支払える範疇ではございます」

好奇の視線を向けるランサーに対し、ウォルターは不敵な笑みを浮かべながら事も無げに答える。
不意に笑い声が響いた。
口を開けてランサーが笑う。
愉しげで、可笑しそうで、然れど下品に聞こえる事はないであろう哄笑。
ウォルターは大笑いをするランサーを嗜めるでも問いつめるでもなく、ただただ黙って笑いが治まるのを待っていた。

「ククッ、そう、そうなの。貴方にとっては積み重ねた足跡はその程度の価値なの。ああ、いえ、違うわね、きっと。
貴方の人生は簡単に捨てられるほど軽くはない。だけれどもあの吸血鬼との対決なら、私の祖たるドラキュラ伯爵との対決の為ならばそれを質にいれてもいい。
それほどまでに焦がれている。数十年に背負ってきた一切合切にも勝る一瞬の刹那こそが今の貴方の求める全て。そうなのでしょう? ウォルター・C・ドルネーズ!」

犬歯を剥き出し喜悦に裂けた口を見せながらランサーが見下ろす。
ウォルターはただ無言。
しかし、口角をつり上げる事で、ランサーの問いかけに是を示す。
ランサーが顔に浮かばせた半月が鋭さを増して三日月へと形を変えた。


330 : Deep Nlght ◆lb.YEGOV.. :2016/04/01(金) 00:10:29 UP9x8sAY0

「ここまでの愚か者とは思ってもみなかったわ。ええ、これっぽっちも。でも、好きよ? そういった愚かさは」
「恐縮でございます」

改めて、ランサーがウォルターへとのし掛かる。
ランサーは魅了の魔眼をもう使わない。使う意味がないから。
ウォルターはのし掛かられても身動ぎ1つすることはない。する理由がないから。

「ただ、1つ懸念点があるとすれば、私の知る限り非童貞ではグールに成り下がってしまうという点ですな」
「それなら安心なさいな。興が今までよりも乗った以上、こっちでなんとでもするわ。成功する確証はないけれどね」

しなだれかかるような姿勢のランサーを見下ろす形でウォルターが思い出したように呟く。
それに応え、ランサーは我に策ありと言わんばかりの自信満面の笑みを浮かべる。
そんな彼女に対してウォルターは何を考えているか確認することも出来たがやめた。
不安がないと言えば嘘になるが、こと血を吸い、眷族を増やし続けてきた正真正銘の吸血鬼が自信を持って答える以上はそれを信用する他はない。餅は餅屋という事だ。
無言で差し出された皺だらけの首に、鈍く光る犬歯がゆっくりと甘く突き刺さった。
微かな痛みの後に強い虚脱感と倦怠感がウォルターの身を襲う。
何かが失われていく感覚と、何かが繋がっていく感覚。
目が眩む。貧血特有の症状だ。
ふらつく頭を手で抑えるのと、ランサーが噛みついていた口を放すのは同時だった。
微細な月明かりを受け、真紅に濡れたランサーの牙が艶めかしく光る。
咄嗟にウォルターは今まで噛みつかれていた傷口を抑える。
この吸血の目的が補食では無いこともあってか、出血が酷くならない場所をランサーは吸血口として選んだらしい。
傷口を抑えた手を血液が僅かに濡らすものの、彼が寝込んでいるベッドを汚すまでには至らない。

「ふふ、たまには年代物<<ヴィンテージ>>も悪くはないはね」

ペロリと唇に付着した血液を、愉しむようにゆっくりと舐めとりながらランサーが呟く。
瞬間、激しい動悸がウォルターを襲った。
自身の体が変質していく。いや、活性化していくと表現するのが正しいだろうか。
脂汗に濡れる顔、食い縛る口元に視線を向かわせれば徐々に犬歯が鋭く伸びていく様が見てとれる。
変化は口だけではない。
体中に刻まれた皺がみるみる内に無くなり、肌に艶が増す。
肉と骨とが軋む音と共に体格すらも変わっていく。
その顔は、その体つきは、老人から壮年期のものへと変貌していた。

「私にはね、元々"運命を操る程度の能力"というものが備わっていたの」

蹲るウォルターから離れ、人の話を聞く余裕があるかもわからない男に向けて、ランサーが語り始める。


331 : Deep Nlght ◆lb.YEGOV.. :2016/04/01(金) 00:11:25 UP9x8sAY0

「ランサーのサーヴァントととして喚ばれた時点で、私のスピア・ザ・グングニルの効果として使う以外には強い影響を与えられない程に制限を受けて、スキルにもなれないくらい弱体化されたのだけれどね。
私と縁のない人間が運命に介在した時点で全く効果が出ないくらいの代物だけど、今回は話は違うわ。だって貴方と私は血という何よりも濃い縁を持ったんですもの」

血液を介した主従関係。
命の通貨に寄って繋がった強固な縁。

「私が血を吸い、私のものとなった貴方に対して、"貴方が無事に吸血鬼となって若返る運命"を引き寄せる。
そこに縁も所縁もない他人の運命は介在しない。私と私の眷族となった貴方の運命だけがそこにある。
私は私のものの運命を弄るだけ。そして貴方自身は吸血鬼になることを受け入れた。その運命を否定するものは、私の中にも貴方の中にも存在しない。
ここまでお膳立てが揃っていれば、どれだけ力が弱くなっていようが充分に効果は表れる、と考えていた訳だけど、目論見が成功したようで何より……」

したり顔で語っていたランサーの言葉が止まった。
既にウォルターの見た目は20代から30代程度にまで若返っている。だが、体の変調はまだ治まる素振りを見せない。
適齢と思われる年齢を迎えて尚、若返りを続けている。

「……あら?」

間の抜けた声があがるのと、一際大きな唸り声が上がるのは同時だった。
先程まで老人が寝込んでいたベッドで荒く息を吐く一人の少年の姿。
ウォルターは壮年期も青年期も飛び越えて若返ってしまった。
ここまで若返るとはランサーも想定をしていなかったのだろう。
愛らしい瞳を大きく見開ききょとんとした表情でウォルターを見やっている。
動悸がおさまってきたのか、ウォルターの呼吸が穏やかなものへと変わっていく。
最後に大きく一呼吸を終え、ウォルターは顔をゆっくりと上げる。
鋭さと狂暴さの増した視線がランサーの視線とぶつかった。

「私の意識が残っている。ということは賭けは成功したという事でしょうか? 今のお嬢様の様子を見る限りでは、万事がうまく行ったようには思えませんが」

老人の頃と変わらぬ口調でウォルターが尋ねる。
若返った事は理解してもどこまで若返ったかまでは把握ができていなかったのだ。
ウォルターの問いに、ハッと我に返ったランサーが決まりの悪そうに視線を反らす。

「え、ええ、そうね。私の眷族になってなければ『鏡を見てみなさい』の一言で事足りたのだけれど。
若返ってるわ間違いなく。それも、その……物凄く」
「……物凄く?」
「ええ、物凄く」

その言葉に感付くものがあったのか、咄嗟にウォルターは自分の手を見る。
成人男性より幾分か小さく思える手が視界に映った事で察したのだろう、口元に苦い笑みが浮かんだ。


332 : Deep Nlght ◆lb.YEGOV.. :2016/04/01(金) 00:12:14 UP9x8sAY0
「なるほど、肉体年齢にして10代後半。確かに"物凄く"若返ってしまったようで」
「こっちもそこまで若返るのは正直想定外だったわ。
推測でしかないけれど、私の手を借りなくても最終的に貴方がその年代にまで若返る運命があったのかもしれないわね。
一番確率が高い運命を引き寄せようと思ってたし」

その言葉に小肥りの男が率いる集団の姿がウォルターの脳裏を過る。
誰に気取られることなく、秘密裏に手を結んだ戦争狂の群れ。
ウォルターはこの聖杯戦争の参加するよりもずっと前に、望みを叶えるため現在進行形で彼らと手を組んでいる。
あの男たちの企てていた人工吸血鬼手術を思い出す。
ともすれば自分はその手術の先にこの姿を手に入れていたのではないか、そんなとりとめのないことを心の片隅で考えていた。

「とはいえ悪いことばかりでもないわ。生命力に関してはその時が一番溢れているでしょうし、魔術回路を開いて私が十全に戦う魔力を捻出するなら、そっちの方が都合がいいもの」

するり、と衣擦れの音が響いた。
音に反応したウォルターが向けた視線の先、そこにいたのは衣服を脱ごうとしているランサーの姿。
脱ぎかけの衣服越しに視線が重なると、ランサーが艶めいた笑みを浮かべた。

「それじゃあ始めましょうか、さ、貴方も脱ぎなさい」
「とはいえ私は幼児性愛者の類でありませんので、お嬢様の裸体を拝見したところで欲情もしないのですが……」
「はあ、面倒ねえ。主として命じるわ。『ウォルター、私に欲情なさい。それもとびっきり』」

ランサーの目が妖しい光を放つ同時にズクン、と音を立ててウォルターの中で何かが跳ね上がった。
顔と耳が急激に熱を持つ。
汗が吹き出し呼吸は荒くなり、その瞳は一糸纏わぬランサーの幼き柔肌に固定され、外れなくなる。
ごくり、と無意識の内に唾を飲み込む。
股間がはちきれんばかりに隆起しているのが痛い程に感じられた。
魅了の魔眼などではなく、本能に直接指示を送られたかのような感覚。
意志や趣向など容易に塗りつぶす、圧倒的上位者からの避けえぬ命令。
血によって繋がれた主により絶対的命令特権だった。

「安心なさいな。こんな事をするのはこれが最初で最後。あなたの自由を奪うなんて退屈な真似は貴方が愚かな真似をしない限りは金輪際行わないつもりよ」

そういって、ウォルターを迎え入れるようにランサーがベッドに寝転がり両手を広げる。
もはや、ウォルターに止まる術はなかった。
獣欲に支配された身体がランサーを抱きすくめる様に覆いかぶさる。

(F××K)

内心でついた悪態すらも即座に情欲が塗りつぶす。
夜の帳が下りる中、嬌声が響く。
散発とした思考の中で、ウォルターは確かに、自分の中になにかが開かれ、接続されていく感覚を覚えた。


333 : Deep Nlght ◆lb.YEGOV.. :2016/04/01(金) 00:12:58 UP9x8sAY0

【B-1/ヘルシング邸/二日目・夜】

【ランサー(レミリア・スカーレット)@東方project】
[状態]左肩貫通、左目失明(両方共回復中)魔力消費(大)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:ウォルターのためにも聖杯戦争を勝ち抜く・天戯弥勒を倒して地面に這いつくばらせたい
1:ウォルターと交わって魔力供給中。その後の行動はこれか考える
2:殺せる敵から殺していく。
3:天戯弥勒に警戒。
[備考]
※アーチャー(モリガン)を確認しました。
※夜科アゲハを確認しました。
※天戯弥勒がサイキッカー(超能力者)と知りました。
※天戯弥勒を確認しました。

【ウォルター・C・ドルネーズ@HELLSING】
[状態]吸血鬼化、貧血、ランサーに欲情(大)、魔力消費(大)、疲労(極大)
[令呪]残り3画
[装備]鋼線(ワイヤー)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:全盛期の力を取り戻すため、聖杯を手にする
1:ランサー(レミリア)と交わって魔力供給中。その後の行動はこれから考える

[備考]
※浅羽、アーチャー(弩)を確認しました。
※少年時代の姿に若返りました。
※魔術回路が開きました、どの程度のものかは後続の方にお任せします。


[共通備考]
※虹村刑兆&ライダー(エドワード・ニューゲート)と交戦、バッド・カンパニーのビジョンとおおよその効果、大薙刀と衝撃波(震動)を確認しました。
※発言とレミリアの判断より海賊のライダーと推察しています。
※巨人を目撃しました。
※エレン、アサシン(ジャファル)を確認しました。
※カレン、セイバー(リンク)を確認しました。
※2回目の通達と落ちてくる月を確認しました。


334 : Deep Nlght ◆lb.YEGOV.. :2016/04/01(金) 00:13:34 UP9x8sAY0
以上で投下を終了します


335 : 名無しさん :2016/04/01(金) 00:21:24 vO0kMj5E0
乙です
ただヒトツ……エロい!!


336 : 名無しさん :2016/04/01(金) 11:19:26 SmrFY9/Y0

あぁ〜^ショタロリ最高なんじゃ〜^


337 : 名無しさん :2016/04/01(金) 21:23:15 kk6tDT.o0
投下乙です
外ではからくり仕掛けの大舞台が動いている一方、吸血鬼主従はアダルトな雰囲気だなぁ
地味に「仏の顔も三度まで」の解釈に笑ったwブディストコワイ
レミリアの台詞回しが実に彼女の彼女たるところを表現してて好きです
年代物(ヴィンテージ)の紅を啜ってどうなるかと思いきや、原作最終盤もしくはDAWNの彼まで戻ってしまいましたか
見た目上は少年少女の睦み合い、しかしその実年数ではとても少年少女とは言えない妖しい褥だ
実際のところ、レミリア&ウォルターは漁夫の利を得うる状態に近づきつつあるのかな、これは…


338 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/01(金) 22:57:11 gLkKaZlY0
投下乙です
ウォルター、化け物に成って果てたか……
レミィの言う最も確率の高い運命がそれなのは宿敵アーカードが耳にしたらどう思うやら
走狗になってでも通したいウォルターの意地が感じられました



私も今一度鹿目まどか&モンキー・D・ルフィ、タダノヒトナリ&モリガン・アーンスランド、人吉善吉&フェイスレス、朽木ルキア&前田慶次
予約します


339 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/08(金) 21:53:03 TxXXeltY0
延長お願いします


340 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/15(金) 23:37:52 5/4vWlsA0
投下します……


341 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/15(金) 23:39:22 5/4vWlsA0

夜の病院をタダノたちは忙しなく動いていた。
カエル顔の主治医を呼び出し、モリガンに籠絡させることで都合のいいように動かす。
これにより自宅療養の許可と職場に出す診断書を早期に手に入れる。
見舞いに来た同僚にもモリガンを引き合わせ、彼らを通じて自宅療養の旨伝達。
それらを済ませ自由の身になってから改めて駆け回った。
そうしたある種の頭脳労働に向かないライダーは眠るまどかの護衛につけ、モリガンと二人で情報収集。
求めた情報はモリガンと戦ったアーチャーの漏らしたミキサヤカという名前だ。
モリガンの魅了も、タダノの警官という立場も活用し入院患者や見舞いの客を中心に聞き込んでいくと候補が一人浮かんだ。
数日前に退院した上条という男子学生の見舞いにまめに訪れていた少女。
それが朝方になぜか病院を訪れたという。
少年が退院したのを知らなかった、何か別用があったなどは否定できないが、意図のつかみにくい行動ではある。

「端的に言って怪しい。そう思わないか、アーチャー?」

暗い病院の廊下で隣を歩くモリガンに話しかける。
すると彼女は少し考えるそぶりを見せて首肯する。

「ええ。もしかするとあの二人と待ち合わせるつもりだったのかも。
 まさか12時間勘違いしたということはないでしょうけど……
 合流前に待ち伏せなどないか警戒した、あるいはそうした罠をしかけるために偵察した、と考えるならあまり良好な仲ではなかったのかしら?」
「今朝となると聖杯戦争が始まってさほど経過していない。もともとの知り合いでもない限り信頼関係を築くのは難しいからな。
 例外を考えるなら君のような魅了か、ルーシー君のようなある種の求心力か、あるいは相手を操るすべなどあれば別か。
 ……探すならまどかちゃんたちと一緒に接触したいところだな」
「あてもなくいつまでも待ち続けるのはイヤよ。退屈なのは嫌いなの」

刺激を求める種としての性質は、退屈や不自由、束縛を嫌う性格を育む。
特に今は獲物(キャスター)の居所を掴んでいるのだから、それにとびかかれないなど窮屈に過ぎる。
餌を前にした肉食獣の手綱を無理やりに握るのは賢くないというのは数多の仲魔との会話で学んできた、と押さえつけるのは諦めてこう答えた。

「わかった。キャスターのもとへ向かおう」
「ええ、そう来なくちゃ」

ペロリ、と舌なめずり。
戦意を高揚させ笑みを深めるモリガン。

「ルーシー君たちがどう思うかだが……
 まどかちゃんを今起こすのは忍びないし、彼らには連絡をとれるようにしたうえでここに残ってもらいたいな。
 美樹さやかとの接触がもしできれば、彼は気持ちのいい人物だ。悪いことにはならないと思うんだが」

方針を定め、その相談をしようとまどかの眠る部屋へと足を向ける。
そこへ響く音。
甲高い破裂音。
銃声。
続けてガラスの破砕音。

「敵襲、かしら?」
「これを無関係と思うほど能天気じゃないだろう、君は。
 僕も出る、無用な心配をかける前に片づけてしまおう」

デモニカスーツの調子を確かめ、新たに手にしたアバ・ディンゴMも装備し、戦闘準備。
そして二人、月影の下へと飛び出していった。


342 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/15(金) 23:40:00 5/4vWlsA0

◇  ◇  ◇


「…ん〜、ミンゴのところのおもちゃの兵隊みてえな、フランキーっぽいような……またアレかなあ?」

外から感じる数多の人ならざる気配。
それを見聞色の覇気で感じ取り、煩悶するルフィ。
いつもの彼なら一にも二にも飛び出し自らの耳目で真実を見据えようとしていただろう。
だが不用意に動いた結果まどかが攫われたのが夕方の追走劇だ。
さすがにその直後、さらに傍らで眠るまどかを守るようタダノに言われたということもあって濫りに動くのは二の足を踏む。
らしくなく悩み、思考し、知恵熱まで出そうになるが

「敵が攻めてきた!」
「あれ?……タダノか?ああ、それは分かってるけど――」

部屋に飛び込んできた仲間の姿に思考が途切れる。

「君も迎撃してくれ、まどかちゃんは僕が引き受ける!」
「――わかった。それなら、行ってくる」

そう答えてすぐに飛び出すルフィ。
その後ろ姿を見送るタダノの口元が緩みかけるが……

「おっと、そうだ。これ、頼む」

忘れ物をしたように引き返してきたルフィを見て表情を引き締める。
当のルフィはそれを気にする様子はなく、かぶった麦わら帽子を外すと眠るまどかの枕元に優しく置き、またすぐに駆け出していった。

「……何がしたかったやら。おーい、もういいよアプ・チャー。いったん外の様子見てるから、まどかちゃんを頼むよ」

タダノヒトナリの顔をしたフェイスレスがその顔に邪悪な笑みを浮かべ、ほむらの姿をした人形を呼んで退出する。

「……まどか。まどか、起きてちょうだい」
「…ん」

眠るまどかを揺り起こすアプ・チャー。
寝ぼけ眼をこすりながら起き上がるが、目の前にいるのが誰になのかを認識した瞬間に一気に覚醒し、驚きの声を上げるまどか。

「ほむらちゃ――」
「話はあとよ。今ここは襲撃を受けているわ。急いで離れるわよ」

混乱を加速するように状況をたたきつけられる。
夢に見ていたルフィの過去に、突如現れたついさっき自分を攻撃した友人に、迫りくる現実に寝ぼけた頭では追い付かない。

「あの、えっと、襲撃って誰に…?」
「ついさっきあなたを攻撃した人形よ……いえ、この言い方は私のやったことを誤魔化しているように聞こえるわね。
 私が組んでいた人形遣いのサーヴァントに脅されてあなたを攻撃するざるを得なかった。それと先ほど決別した。そのせいで人形に攻撃を受けている。
 ……理解できたかしら?あまり余裕はないから急いでくれると助かるのだけど」

外に幾度かちらちら視線を向けて、慌てたようなそぶりを見せると、とにかく切迫していると実感できたのか起き上がり足元を整え始めるまどか。
そうしながら彼女自身も周りに視線を配ると一つの疑問が当然ながら浮かんでくる。

「あれ?そういえばタダノさん、とライダーさん…私のサーヴァントは?」

念話を飛ばせばいいのだが、起き抜けだからか慌てているからかその発想に至らない。
もし実行しようとすれば止めに入るつもりではいたが、そうならず幸いと急かしながらも問いに答える。

「サーヴァントなら外の人形を迎撃に出たわ。ああ、そういえばその帽子、頼むって置いていったわよ」
「え?あ、これ……」

枕元に置かれた麦わら帽子に気づくと、繊細な宝物であるかのようにそれを大切にかき抱く。
そして強い決意を眼に浮かべると同時に帽子を深くかぶり、改めて向き合う。

「ほむらちゃん、ライダーさんのところに案内して」
「…何を言い出すのよ」

サーヴァントの戦いに首を突っ込もうというのには、驚き以上に呆れが先行する。
それもこんなか弱い人間が。
しかしその目の内の光は確かなもので、在り方の定まらぬアプ・チャーには撥ね退け難いものだった。
その様子は外のフェイスレスにも察せられ、同様に当惑する。


343 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/15(金) 23:40:34 5/4vWlsA0

(おいおい、友達の言葉も聞かずに危険に身を置きたがるのか?女の子ってのはやっぱりわかりかねるなァ)

まどかとほむらが親しいという判断は間違ってないようだが、あのライダーとの関係はそれ以上なのか。
柔らかい石を宿し戦場に身を置いた女性のごとく、気丈な振る舞いの意図を掴みかねるが、どうにか連れ出そうと表への警戒を切り上げて部屋に戻る。

「賛同しかねるな。僕らは君も連れて撤退するように言われている。
 サーヴァントの戦いに手や口を出してもどうにかできるものではないだろう」
「あ、タダノさ――」

顔を見せた仲間の言葉に少し意気を削がれたようなものを見せる。
だがすぐにその表情に驚きが浮かぶ。
違う。
この男はタダノではない。
マスターであるまどかの視界に映るステータスがそれを物語って――

瞬間、衝撃。
あごと腹部に僅かな痛みを覚え、意識を喪失するまどか。

「やっぱりばれちゃうか。ん〜、力技には頼りたくなかったんだけどしょうがないね。
 …おーい、頼むよラーオ。陣地に帰ろう」

内臓を傷つけないように軽い拳を打ち込み、意識を奪った少女を小脇に抱えさらに部下を呼ぶ。
現れたのは猛獣使いの衣装にモノクルと調教用の鞭が特徴的な一人の男と、翼を生やした二体の大型獣。

「は。アプ・チャー、貴様は私とスフィンクスだ。
 造物主様はその少女とともにグリフォンの背へどうぞ。行き同様に快適な空の旅は叶いませぬが、なにとぞご容赦を」
「まあ偶にはこういうのもいいさ。ケニスたちはあっちにやっちゃったからね。それじゃあ、ハイヨー、シルバー!」

タダノの顔のままグリフォンに跨り、勢いよく空へ駆け出すフェイスレスと、ほむらの姿でドクトル・ラーオと共にスフィンクスに跨りそれに続くアプ・チャー。
人形の軍勢に銃を放つ警察官と、飛びかかり一体ずつ破壊する女悪魔、そしてそれに合流しようとする黒髪の青年を眼下に収めほくそ笑む。

「あれ?タダノ、いつの間に追い越したんだ?」
「ルーシー君!?なぜここにいる!?まどかちゃんはどうしたんだ!」

驚きながらも対応を誤ることはなく、自動人形相手に牽制の射を続けるタダノと、いくつかの人形を即座に破壊してみせるルフィ。
互いの状況を掴みかねるが……
新たな気配を感じ取り、モリガンとルフィの視線が空を飛ぶフェイスレスたちに刺さる。

「あら?タダノ?あなたも、ああいうのがいるのかしら?」
「な、ん?ドッペルゲンガー…いやサーヴァントの能力か!?」
「ッ!まどか!!」

タダノの姿をしたサーヴァントを見つけて、その腕に抱えられたまどかの姿を見て各々反応を見せる。

「おっとっと、見つかっちゃったか」

おどけたような声を出してさらに上空へ。
それを追って三々五々攻撃。
モリガンは自ら飛翔し、タダノは風属性の魔力をまとった銃弾を放ち、ルフィは腕を伸ばす。
しかしそれに割り込む人形がいた。
モリガンに向けてはライフルが放たれ、その回避のために軌道変更を余儀なくされる。
タダノの撃った銃弾の軌道上には多数の石礫が飛び、着弾前に無力化する。
ルフィの伸びた腕に向かっては、小型の人形が突撃し、その舌に持った刃を振るって行く手を阻む。
それらによって生じた空隙で大きく距離をとるフェイスレスたち。

「よくやってくれたね、みんな。それじゃあ僕はまどかちゃんを温泉にいるキャスターに届けてくるから、片付いたら合流してくれ」

最後にそう言い残してグリフォンとスフィンクスを駆り、去る。
後には二騎のサーヴァントと一人のマスター、そしてそれと対峙する数多の人形が残された。
人形の中で突出しているのが三体。
すでに多くの被害が出ている人形たちだが、その三体がいるかぎり敗北はないと信じているのか士気は高い。
そのうちの一体、リーダーらしきものが一歩前に出る。
服装は西部劇のカウガールといったいで立ちだが、異様なことに腕が四本ある。
そのうちの二本の腕で握ったライフルを再びモリガンに向けながら言葉を紡ぎだす。

「そういうわけだから、くたばってもらうよ。最後に自己紹介しとこうか。
 アタイはジェーン。ワイルド・ウェスト・ジェーン。お察しの通り、この――」

発砲。
外れた銃弾が病院の窓を破り、中からパニック交じりの悲鳴が聞こえる。

「ライフルが得意さ。他にもナイフ投げと、病気を振りまくのはもっと上手いよ。だからかね、この病院襲撃のリーダーってことになってる。
 そっちにいるのは我ら真夜中のサーカスが誇る楽士、トルネ―ドラプソディー。
 隣のおチビが敵も味方もお構いなしのクレイジー人形、チャイナ・ホー。
 ……さて、サーカスの芸人も揃って紹介できたところで、お別れの時間だよ!」


344 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/15(金) 23:41:50 5/4vWlsA0

宣言と同時に再度戦端を開く。
ライフルを持っていない二本の腕、その指先から続々とナイフを展開し、モリガンに向けて流星のように放つ。
それに対し回避しつつ高速で接近するモリガン。
弾数だけなら先に交戦したアーチャー以上のものといえなくはないが、威力も速度も確実に劣るそれに落胆の表情を隠せない。
近づくにつれて回避のためのロスも嫌い、峰を叩いて撃ち落とす方針に変える。
銀色の流星を連打するジェーン。
それを弾き、一瞬で接近するモリガン。

「ずいぶん近づいてくるじゃないの、弓兵のお嬢ちゃん!」
「こちらのほうが好みなのよ」

ふん、と軽く鼻を鳴らすようにして両の腕のライフルを照準する。
拳を打ち込もうとしていたが、とっさにその射線から身を外し、モリガンの攻撃の手が遅れる。
牽制のように銃撃を放ちながら後退し、モリガンの後方に視線をやって口元をゆがめる。

「あっはぁ、ちょっとマスターから離れすぎじゃない?」

そちらにはマシンガンでもって人形を牽制するタダノと、接近した人形を片っ端から迎撃しているルフィの姿。
ジェーンが司令塔らしき所作を見せると、それを合図に後ろに備えていた多数の人形が銃器を構えだす。
そしてそれに並んで楽士、トルネードラプソディーもまた構えに入る。
他の人形は兵器で身を固めた戦闘用といったなりで、トルネードラプソディーの道化師のような衣装に、全身からラッパを生やした風貌というのは少々浮いている。
そのラッパが伸び、地面にくっつき、石の塊を吸引し――

「葬送曲を聴け。『トルネード・ラプソディー』、クラッシュンド!」

すさまじい速度で射出する。
同時に後方の人形も援護射撃を放ち、雨あられとルフィとタダノに弾丸・石礫が注ぐ。

「これでお終いだねぇ!」

引き続きモリガンに銃口を向けながら高らかに勝利宣言。
さあ、相手はどう出る。
仲間を守ろうと引き返すか、かばって攻撃に身をさらすか。
いずれにしても隙ができたところにとどめの弾丸を見舞ってやろう――などと考えるが。

モリガンの表情は冷淡。
つまらないピエロを見るような、壊れて動かなくなってしまったからくりをみるような顔で。

「…バカね」

と小さく漏らし。
むしろ弾丸をよけて大きく上空へ飛翔する。
当然攻撃は余すところなくルフィたちに向かう、が

「ゴムゴムの“お礼砲”!!」

大きく膨らませたルフィの肉体に有効な攻撃はすべて受け止められる。
そしてその全てが放たれた時よりも加速して、弾道を戻るように跳弾。
その跳ね返された弾丸の妨害をしないようにモリガンは大きく飛翔したのだ。
橋の戦いであの銃弾を跳ね返す技を見ていたのは人形たちも同じだろうに、それを学習せずに同じようなことをするとは、と冷徹な視線で見下す。

「な、しまっ――」

そしてこれに最も驚いたのはトルネードラプソディーだ。
彼のかつての敗因は自らの必殺技であるクラッシュンドを強力な粘性のゲル状物質によって跳ね返されたこと。
その逸話の再現のごとく、跳ね返された石礫に呆然とし

「何を情けない面さらしてるアル!」

横から飛び込んだ小型の人形に蹴り飛ばされ、掠めるだけで済む。
蹴りを放ったのはチャイナ・ホー。
その名の通り漢服に弁髪の中国風の人形。
その蹴りを放った勢いのまま、反動で跳び、なんと飛び交う石礫を足場にして高速でルフィたちに突撃する。

「いぃやぁああああぁ!!」

両の手からドリルを抜き放ち、再び舌に剣を握り高速移動。
そこにタダノが銃口を向け、銃弾を浴びせようとする。
瞬間、チャイナ・ホーは加速。
だん、だん、だんと飛び交う石を踏む度に砕き、二人のもとへ差し迫る。
引き金を引くよりも早くタダノとルフィのもとにたどり着き寸刻みにしようとするが

「“銃弾”ォ!!」

ルフィが抜き打ちの銃のようにカウンター。
即座に放たれたブローだが、武器を目にして加速したチャイナ・ホーは身軽にその腕さえも足場にして空を舞い、改めて背後に着地。
振り向きざまに隙だらけの背中にドリルを穿とうとする。
それが現実になる前に放たれた後ろ回し蹴り。
未来化、あるいは気配を読んだような精密な反撃。
躱しようのない一撃かと思われたが、チャイナ・ホーは足からもドリルを生やして地下に潜ることでこれを回避。
地下を高速で移動し、死角からの追撃を狙う。
対するルフィは地面に目を向けると、タダノを抱えて後ろに跳ぶ。
そして人形の姿が見えると同時に、完璧にどこから出るのか分かっていたかの如く攻撃を放つ。


345 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/15(金) 23:42:10 5/4vWlsA0

「ゴムゴムの“スタンプ”!!」
「ぐええ…!」

前蹴り。
それを直撃させる。
だが的が小兵であったことと、タダノを抱えての一撃であったのが幸いしたか、大きく吹き飛ぶが致命打には至らない。
ルフィ、タダノと距離が広がるチャイナ・ホー。
それを加えて改めて陣を立て直すジェーンとトルネードラプソディー。
ジェーンや多数の人形は無傷だが、他の二体はルフィの反撃によりわずかながら損傷している。
モリガンもまたタダノ達に合流し対峙する。
ルフィたちに一切の損傷はない。
ダメージだけで言えば、そして個の武勇ならば圧倒的にタダノ達が有利。

「さっすが、サーヴァントだねえ。やってくれるよ。でもさあ、ご覧よ」

再び部下の人形に指示を下すジェーン。
今度の大群が構えるのは銃器ではなく、クロスボウやニードルガンなど鋭利な兵器。

「こっちは跳ね返せるのかねェ……?」

チャイナ・ホーの武装、ドリルや剣などに対しては回避を主体としているのを見逃さなかった。
これならば、と軍勢に指示を下そうとする。
対するタダノ達は最も強大な飛び道具を持つモリガンが構える。

「お人形遊びはずいぶん昔に卒業したの。だから、もう飽きたわ……覚悟はいい?」

羽を変形。
周囲に蝙蝠も変形させて展開。
『闇夜穿つ魂の奔流(ソウルイレイザー) 』、弓兵の本懐たる切り札を対抗して放ち、呑み込もうとする。
しかしそこに割り込むように立ち、行く手を阻むように腕を伸ばして立つ男。
モンキー・D・ルフィ。
その視線は目前の敵影でなく、彼方のマスターへと向いていた。
麦わら帽子を預けた。必ずそこへ戻ると誓った。なんとしても守ると決めた。
ならばこんなところで足止めされている暇はない。

「ちょっと、ライダー…」

射線を阻まれ、こちらで迎撃するから道を開けてくれと言おうとするが

「おまえら…そこを、どけ」

どん!!!と空気が震えた…気がした。
否、実際に物理的な変質は何もない。
ただ、一人の男が全力で威嚇しただけの事。
覇王色の覇気。万人に一人のみ適性を持つ王たる才。
半端な覚悟や実力では、モンキー・D・ルフィの前で立つこともままならない。
それによって多数の人形が動きを止め、次の瞬間には恐怖を浮かべて擬似体液を沸騰させ機能を停止する。
残ったのはやはり三体。
ルフィの前に立つだけの実力を備えているということか、あるいは重ねた改造で強力な『気』の前に身をさらしても耐えられるようになっていたか。
ワイルド・ウェスト・ジェーン、トルネードラプソディー、チャイナ・ホー。
ただ一つ残された数の利を失い、浮足立つが、それでも造物主より受けた命のため一分一秒でも敵をくぎ付けにしようと構える。

「もはや僅かの余裕もないな」

持てる全てを出し切らんとトルネードラプソディーが変形する。
下半身からもう一対の人型が生え、膝部分でつながったシャム双生児のような姿になり、両腰部から車輪のような刃を展開。
同様にチャイナ・ホーとジェーンもすべての武装を展開し総力戦の構えを見せる。
対抗してモリガンも宝具の構えは解くが、展開した蝙蝠を再び身に纏い、固く拳を握る。
さらに

「“ギア2”!」

ルフィは一分一秒を惜しみ宝具を解放。
腕をポンプに血潮を奔らせ、彼方を見据え駆け出さんとする。

三体の人形と二騎の英雄がにらみ合う戦場。
それらがぶつかり合う。


346 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/15(金) 23:42:55 5/4vWlsA0

その刹那、乱入者。
黄金に見紛う派手な鎧に鮮やかな朱色の槍を持った武者が戦場に舞った。
皆が皆、意識の外からの乱入者に反応することはできず、先制攻撃を許してしまう。
その対象となったのはトルネードラプソディー。
一瞬で槍の一撃を打ち込み、さらに両手で槍を振り回して連撃。
激しい回転に機械の体も耐えきれず、断末魔を残す間もなく歯車へと還る。

「へっ、見かけが派手なやつを倒して見かけ倒しってな」

ブンブンと威嚇するように超槍を振るい仁王立ち。
漲る闘志にはたとえ人形の軍勢が残っていたとしても無双したであろう凄味がある。

「アンタ、バカな、死んだはずじゃ!?」

戦場に現れた前田慶次に注目が集まり、それと気づいたジェーンの悲鳴のような声が響き渡る。
ルフィもまた、夕刻に接触した男の来訪に僅かだが、動きが止まる。
何より『最後の四人』に敗れ死んだはずの存在に動揺する自動人形二体は動揺を隠せなかった。

その隙を、モリガン・アーンスランドは見逃さない。
一瞬でジェーンとの距離を詰め、その顔を右手で掴む。
そしてそのまま荒々しく引き寄せ、砲門状に変形させた羽から弾丸のように射出。
そのまま病院の壁にボールのようにたたきつけられ、反動で僅かに跳ね返るジェーン。

「がぁッ…!」

その衝撃にライフルも取り落とし、無様な悲鳴を上げながら地に伏すかと思われた。
だがそこへさらに追撃。
モリガンの羽が再び変形して槍状になり、ジェーンへ向けて伸ばされる。
風切り音とともに突き出されたそれに額を貫かれ、さらに奔った電流によって内部から破壊され、最期に僅かに痙攣して完全に機能停止した。

「こ、の。どいつもこいつも…!」

恨めし気に苛立った声を上げるのは最後に残された自動人形チャイナ・ホー。
せめてもの抵抗、というと情けなくはあるが、唯一人間であるタダノだけでも仕留めようと動く。
周囲の壁を足場に跳ぶ。跳ぶ。跳ぶ。
銃を持ったタダノに、長物を構えた慶次と観客ならざる敵は多く、目にも止まらぬ速さで駆け回る。
姿はない。響くのはだん、だんと地を蹴る音と轟々と風を切る音。
縦横無尽を駆け巡り、その音だけが痕跡として残る。

最後に一歩、ドンと大きな跳躍音。
それとほぼ同時に慶次とモリガンの視線がタダノの背後の空間に向く。
二人の目にはそこへ襲い掛かるチャイナ・ホーが映っていた。

そしてもう一人、高速の住人、モンキー・D・ルフィもまた。
ギア2によって得たスピードで一瞬にして回り込み、拳を構える。
それにチャイナ・ホーが気付く時間すら与えず、下段突きを振り下ろす。
一撃。
それでチャイナ・ホーは堕ち、側頭部に大きく拳の跡を残して機能停止した。


347 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/15(金) 23:43:29 5/4vWlsA0

「うっし、片付いたな」

全ての自動人形が動きを止めたのを確かめ、超刀を鞘に納める慶次。
軽くクールダウンのような動きはするが、この場での戦意はないとアピールする。

「そっちの…ライダーはさっきぶりだな。帽子外したのか。んで、アーチャーの嬢ちゃんにはマスターが世話になった。
 が、まあその辺のいざこざはいったん置いといてだ。あの人形の群れと敵対してるみたいだしよ、手ぇ貸しちゃくれねえか」

ライダーには殴られ、アーチャーにはルキアが絡まれと軽い因縁はあるが、それにこだわってはいられない。
共通の敵を打ち滅ぼすために手を伸ばす。

「…ああ、アナタさっき橋にいたお嬢ちゃんの。一応敵対してたと思うのだけれど、ねえ」

挑発するような言動のモリガンだが、男の右脚に目をやるとつまらなそうに息をつく。
まだ食べごろではなさそうだ、と。
相手が話を望むのならタダノに任せようかと視線をやる。

「タダノ…タダノ?」

話しかけても反応を見せず、銃を握るをじっと見るだけ。
どうやら先の戦闘で役に立てなかったのを悔やんでいるらしい。
らしくないと思うが、まどかを再度危険に晒してしまったのが響いているのか。

(しょうがないオトコね)

意識を引く意味でも、慰めてあげようかと一歩近づく。
だがモリガンの手が触れるより早く呼び声が届いた。

「タダノ!」
「――む、すまない。ルーシー君」
「先行ってるぞ」
「なに?」

シュウ、と蒸気を大きく上げて駆けだすルフィ。
向かってくるその姿にとっさに構える慶次だが、ルフィはそれを完全に無視してすさまじい速さで脇を駆け抜け、すぐに視界の外に消えていった。
後には半ば呆然とする3人だけが残され、モリガンの淫靡な空気もタダノの沈痛な空気もどこかにいってしまったかのよう。

「おおう……独眼竜もびっくりの猪だな、ありゃ。あー、事情がつかめないんだが切羽詰まってるなら動きながら話さないか?」

後方を指さしながら半歩身を引く。
それを見て溜息をつきながらタダノは応じた。

「はあ。行こうか、アーチャー」

モリガンをランサーとの間に立たせて一応の警戒はしながら歩き出す。
いつまでも立ち止まっているとあのライダーには即座に置いて行かれてしまうな、とぼやき気味に。

「確認したい。君は夕刻にまどかちゃんを誘拐したキャスターと、あの人形をよこしたサーヴァント、双方と敵対しているんだな?」
「おう。人形の方もキャスターだ。そっちとはお前さんらが橋でごたごたやってる時にやりあった敵よ」
「そうか。ではそれを証明するすべはあるか?」

タダノ達は人形と交戦しているが、サーヴァントのほうとは僅かな認識しかない。
人形を代償に懐に潜り込む密偵の可能性も考慮できる。

「そうだな。それには俺のマスターの協力がいる…ああ、そっちの道じゃなくてこっちに来てもらえねえか?」

ルフィの駆けて行った方へなんとなく歩みを進め、そこでタクシーでも拾うかと考えていたら方向修正の要請。
どこかに誘い込む罠ではないかと警戒を強めるが

「おいおい、そう警戒すんなって。マスターと一緒に、えーとアレだ、駕籠じゃなくて……そう!車待たせてあんだよ」


348 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/15(金) 23:43:55 5/4vWlsA0

馴染まない単語を捻り出し、軽い足取りで先へ進む。
そういえばこちらは駐車場か、と思い至り、モリガンに先行させついていく。
先に見えてきたのはなんとなく覚えのあるリムジン。
リムジンなど見慣れないものでどれも同じように見えるのだろう…と思ったが、車体前部についた痕と先ほど見た人形の側頭部に刻まれた拳の痕が概ね一致するであろうことに気が付く。

「これはあのキャスターが逃走に使っていたものか」
「ご明察。落ちてるところを拾ったんだが、人の目を盗んでここまで走らせるのは苦労させられた。
 運よく人形が騒いでるのを聞きつけたはいいが、おかげでここまで来るのに時間食うったらねえ。
 にしても追いついて人形相手に大立ち回りするつもりが、まさかほとんど片付いてるたあ思わなかったぜ」

運転席にはおびえた様子の男がいた。
これがマスター…ではなさそうだとモリガンの様子を見て察する。
落ちているのを拾ったというか、戦場から落ち延びようとしたら拉致されたということか。少しばかり同情する。

「おう、マスター。戻ったぜ」
「ランサー?ライダーと話すのではなかったのか」
「あー…それな。多少の暴れ馬なら乗りこなせるがアレはさすがにな」

助手席から現れた朽木ルキアがモリガンを目にして苦い表情を浮かべる。
少なくとも穏やかな関係ではないが、モリガンのほうはそんなものどこ吹く風だ。

「はあい、また会ったわねお嬢ちゃん。そこの人は運転手さんかしら?」
「…ああ、そうだ。それで、ここに来たということは一先ずキャスターの相手を優先するということでいいのか?」
「さあ、タダノに聞いてちょうだい」

ルキアを一瞥し、すぐに運転手のほうに粉をかけるようなしぐさ。
金のキャスターに操られていた名残はあるが、それでもモリガンのかぐわしい媚態に大きく揺らぐ男。
それをもはや見慣れた光景と黙殺し、ランサーを急かすようなしぐさを見せるタダノ。

「マスター。俺たちがキャスターと敵対することの証拠が見たいんだそうなんで、やってくれ」
「む、そういうことか。わかった」

左の腕に刻まれた令呪をあらわにする。
すでに一画欠けているが、万全であれば美しい氷の結晶状であることが見て取れた。

「第二の令呪で以て命じる。ランサー、キャスターに従うことなく、その討伐に全力を尽くせ」

二画目による絶対命令権の行使、一画目を上書きし、その後の戦闘に全力を尽くすよう命じる。
その命は受け入れらえ、花弁が舞い散るように令呪が欠ける。

「これで納得してもらえたか」
「そうだな。一時になるが、よろしく頼む。時間がない、車を出してくれ」

放心したような運転手を改めて車内に放り込もうとするが

「ねえ、タダノ?あなた車の運転できるわよね?」
「む…リムジンの運転は何か大型車両のような別の資格が必要だった気がするな。できなくはないと思うが」
「そう。できなくはないのね」

何が言いたい、と確認しようとするが。


349 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/15(金) 23:45:06 5/4vWlsA0
その瞬間にはモリガンが運転手の男に口づけていた。
目の前数センチのところで、夢魔が男を貪り出す。
始めは触れるようなだけのキス。
反射的に距離を置こうとした男の肩を抱きよせるようにして、そこからさらに深く、深く。
伸びた舌が獲物を絡める蛇のように、唇をなぞり、口腔を犯す。
ちゅぷり、と水音を立てて刹那離れる。後には透明な滴の橋が架かる。
ほう、と荒く熱い吐息をついて息を整え、再び橋を渡って二人繋がる。
一瞬前と比べ物にならないほど情熱的に、煽情的に。
淫らな水音が長く、永く響く。
最後にモリガンが男の舌を甘噛みすると二人は離れ、男は意識を喪失した。

「な、おま、何をしているのだ貴様!?」
「あら、羨ましい?あなたもする?」
「するか馬鹿者!」

突如目の前で繰り広げられた痴態に怒りと、別の感情で顔を赤く染め怒鳴り散らすルキア。
慶次とタダノも無反応ではないが、ある程度予期していたのか動揺はない。

「…一応意図を聞こうか、アーチャー。まさか発情したなどと言ったらさすがに僕も怒るが」
「このNPC、あのキャスターの手駒だったんでしょう?魂に名残があったわよ。蜂蜜のような、甘さが魔力に混ざっていたわ。
 それなら私たちの動向がばれるリスクは避けるべきだと思わない?ここで降りてもらった方がいいわよ。
 命に別条はないし、近くが病院なんだから大丈夫」

早く行きましょ、と扉を開いて手招き。
仕方なくタダノは運転席へ、ルキアは後部座席へ。
モリガンは助手席、慶次はルキアの近くに陣取り、車を走らせる。

「そういえばどこへ向かっているのだ?」
「北西の温泉街。そこにあの人形遣いは向かっているらしい。そしてそこにはもう一人のキャスターもいる」
「なんだと?ずいぶん面倒ごとになっているようだな」
「発言を信じるなら手を組んでいるようだ」

いつの間に、とルキアたちは驚く。
夕刻までほぼ同行していたが、そのような素振りは全く見せなかった。
別れてから短時間で組んだのか…?

「橋で人形が横やりを入れてきたしね。あの時点で協力関係にあったと見るべきかしら」
「…俺たちは一時的にあいつらと協力関係にはあったんだが、少なくとも俺たちの気づかない外で動いてたとは思い難い。
 組んでるとしたら夕刻以降だと思うぜ。あるいは、ハッタリか」

協力関係にあるというのは一方的な情報だ。
そう見せかけ牽制しているだけとも考えられる。

「それもそうだが、一つ気になっている点があるんだ」
「何だい?」
「あのキャスター、女性の方だが。あいつは一度まどかちゃんを攫っている。
 そして今もまた、彼女は攫われた。暗殺ではなく、誘拐。生かしておく必要があるということだ。
 僕らに何かさせようとしているのか?それにしては干渉があまりに薄いし、あのライダーがそうした交渉に応じるとは思い難い。
 ……そしてあいつらはキャスター、魔術師のサーヴァントだ。
 まどかちゃんには、魔術師だけがわかる何かがあるんじゃないか。そのために金のキャスターは二度も彼女を攫ったのではないか。そう考えているんだ」

沈黙が下りる。
鹿目まどかの誘拐。その行為には確かにあのキャスターの息吹を感じなくはない。


350 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/15(金) 23:48:02 5/4vWlsA0

「まどかって子の年の頃は?」
「中学二年、14歳だな恐らく。学生証に偽りがなければ」
「なるほどな」

14か……

「十で神童、十五で才子、二十過ぎれば只の人ってか」
「なんだって?」
「この聖杯戦争のマスター、どうにも年若いのが多いぜ。キャスターのマスター然り、寺子屋で随分会ったからよ。
 確証は持てないが、暁美ってのとエレンってのもそれらしい。どちらもそのまどかってのと同学年だ、多分な」
「どういうことだ、ランサー?」
「だからさ、二十過ぎて只人になる前の人材が多いってわけだよ。神稚児ってのは知ってるかい?」

すでに二十歳を過ぎたタダノと、見た目に反して百を超えるルキアだが、それはさておき。
慶次に提示された単語に思考をはせる。

「寺に入った少年修行僧のことか?その中でも貴族とかの出が上稚児というんだったか。牛若丸や鬼若丸が有名か」
「お寺のお坊さんが姦淫するなかれ、って言いながら男の子に手を出すお話だったかしら?稚児って」

タダノの披露した歴史知識にモリガンがらしい注釈を加える。
モリガンの手でまずい方向にいささか話がずれる前に慶次が軌道修正。

「神稚児っていうのは日ノ本の一部の伝承でな。その身に神を下し、その力を宿した子のことを言うらしい。
 世の穢れを知らない若いうちでなければ神聖な力は使えない、ってな。切支丹の禊とか、巫女の純潔主義とかに近い。
 ようするに、才能ある幼い子供ってのは神の力を保有し続けている可能性があるのさ……わかるかい?」
「神の力……聖杯のことを言いたいのか?」

まさか、まどかちゃんが聖杯に何らかの関わりが……?

「そうだ。さすがにキャスターか、あの女何かそっちにも考えを巡らせてるらしかったからな。
 もしかするとなんか感づいてるのかもしれねえ。
 俺たちサーヴァントですら聖杯の実物はどんなもんなのか知らない……聖杯の正体があどけない少女である可能性も否定はできんのよ」
「……急ごう。まどかちゃんが何されるかわかったものじゃあない」

アクセルを踏み込むタダノ。
モリガンと慶次はそれとなく牽制しあいながらも周囲を警戒する。
ルキアは一人思い悩んでいた。
現状を夜科アゲハに伝えるか否か。

(よりによってあのアーチャーと穏やかに協力できるとは思えんからな。
 悪い奴らではないのだが、正直頭の悪い奴らではと言われたら否定しがたい。
 だがランサーの脚は未だ治りきっていないのに、あのアーチャーはセイバーからのダメージを気にする様子はない。何らかの形で治したか?
 いずれ対立した時に対峙して勝つのは正直難しい。ライダーもいる。
 こちらも先を見据えて、キャスター討伐の意味でも夜科とセイバーに声をかけるべきか。内輪もめを考慮して呼ばない方がいいか……)


351 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/15(金) 23:49:51 5/4vWlsA0
【C-7/病院付近/二日目・未明】


【タダノ ヒトナリ@真・女神転生 STRANGE JOURNEY】
[状態]魔力消費(小)、ダメージ(処置済み)
[令呪]残り二画
[装備]デモニカスーツ、アバ・ディンゴM
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争に勝利する
0.まどかちゃんが、聖杯……?
1.まどか救出、キャスター(食蜂、フェイスレス)討伐のため温泉街を目指す
2.少なくともそれまではランサーたちと協力する
3.マンセマットを警戒。ただし同時に彼から情報を得る手段を模索
4.もしもここが地上を侵すシュバルツバースならば、なんとしても確実に消滅させる


[備考]
※警察官の役割が割り振られています。階級は巡査長です。
※セイバー(リンク)、カレン、ライダー(ニューゲート)、刑兆について報告を受けました。(名前は知らない)
 ライダー(ニューゲート)のことはランサーと推察しています。
※ルフィの真名をルーシーだと思っています。
※ノーヘル犯罪者(カレン、リンク)が聖杯戦争参加者と知りました。
※まどか&ライダー(ルフィ)と同盟を結ぶました。
 自分たちの能力の一部、連絡先、学生マスターと交戦したことなどの情報を提供しましたが、具体的な内容については後続の方にお任せします。
※人吉、セイバー(纒流子)、ルキア、ランサー(慶次)、キャスター(食蜂)を確認しました。
※浅羽を確認しました。
※飛鳥了を確認しました。ルイ・サイファーに近しい存在と推察しています。
※マンセマットを確認しました。ゼレーニンの後継を探していると推察しています。
 なお聖杯と『歌』について知識を得るためにむやみに殺害するつもりはありません。
※デモニカスーツが穹との戦闘を通じてレベルアップしました、それによりダメージを気にせず動けます。
 ただし激しい戦闘など行えば傷は開きますし、デモニカを脱げば行動は難しくなります。
※ここがシュバルツバースではないかと考え始めました。
 モリガンやルーシーに話しても特に意見は求められないと思って話題にあげなかっただけで、特に隠すつもりはありません。
※美樹さやかが病院を訪れたこと、容姿と名前の情報を得ています。
※キャスター(食蜂)がまどかを攫い、今また攫われたことからまどかが聖杯に深い関わりがあり、それに気づいたのではと推察してます。


【アーチャー(モリガン・アーンスランド)@ヴァンパイアシリーズ】
[状態]魔力消費(小)、右肩に裂傷(だいぶ回復)
[装備]
[道具] なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を堪能しマスターを含む男を虜にする
1.キャスター(食蜂)討伐のため温泉街を目指す。ついでにまどかの救出と、キャスター(フェイスレス)討伐
2.ランサー(慶次)がタダノに危害を加えないよう警戒

[備考]
※セイバー(リンク)、カレンを確認しました。(名前を知りません)
※リンクを相当な戦闘能力のあるサーヴァントと認識しています。
※拠点は現段階では不明です。
※NPCを数人喰らっています。
※ライダー(ニューゲート)、刑兆と交戦しました。(名前を知りません)
※まどか&ライダー(ルフィ)と同盟を結ぶました。
 自分たちの能力の一部、連絡先、学生マスターと交戦したことなどの情報を提供しましたが、具体的な内容については後続の方にお任せします。
※人吉、セイバー(纒流子)、ルキア、ランサー(慶次)、キャスター(食蜂)を確認しました。
※アゲハの攻撃はキャスター(食蜂)が何らかの作用をしたものと察しています。
※セイバー(纏流子)と交戦しました。宝具の情報と真名を得ています。
※巨人を目撃しました。
※アーチャー(穹)を確認しました。
※浅羽を確認しました。
※マンセマットを確認しました。


352 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/15(金) 23:51:23 5/4vWlsA0
【朽木ルキア@BLEACH】
[状態]魔力消費(微量)
[令呪]残り一画
[装備]アッシュフォード学園の制服
[道具]学園指定鞄(学習用具や日用品、悟魂手甲や伝令神機などの装備も入れている)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を通じて霊力を取り戻す。場合によっては聖杯なしでも構わない
1.キャスター(食蜂、フェイスレス)討伐に動く。
[備考]
※犬飼伊介&キャスター(食蜂操祈)と同盟を破棄しました。マスターの名前およびサーヴァントのクラス、能力の一部を把握しています。
※夜科アゲハ、セイバー(纏流子)と一時的に同盟を結びました。
※紅月カレン&セイバー(リンク)と交戦しました。
※人吉善吉を確認しました
※ライダー(ルフィ)を確認しました。
※キャスター(フェイスレス)の情報を断片的に入手しました。
※外部からの精神操作による肉体干渉を受け付けなかったようです。ただしリモコンなし、イタズラ半分の軽いものだったので本気でやれば掌握できる可能性が高いです。
 これが義骸と霊体の連結が甘かったせいか、死神という人間と異なる存在だからか、別の理由かは不明、少なくとも読心は可能でした。
※通達を一部しか聞けていません。具体的にどの程度把握しているかは後続の方にお任せします。
※キャスター(食蜂)から『命令に従うよう操られています』
 現在は正常ですが対峙した場合は再度操られる可能性が高いです。
※アーチャー(モリガン)と交戦しました。宝具の情報を一部得ています



【ランサー(前田慶次)@戦国BASARA】
[状態]魔力消費(小)右脚へのダメージ(中)
[装備]朱槍
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:この祭りを楽しむ
1.キャスター(食蜂、フェイスレス)討伐に動く。
2.アーチャー(モリガン)がルキアに危害を加えないよう警戒。

[備考]
※犬飼伊介&キャスター(食蜂操祈)と同盟を破棄しました。マスターの名前およびサーヴァントのクラス、能力の一部を把握しています。
※紅月カレン&セイバー(リンク)と交戦しました。
※人吉善吉を確認しました。
※ライダー(ルフィ)を確認しました。
※キャスター(食蜂)を装備と服装から近現代の英霊と推察しています。
※読心の危険があるため、キャスター(食蜂)対策で重要なことはルキアにも基本的には伏せるつもりです。
※中等部の出欠簿を確認し暁美ほむらの欠席、そのクラスにエレン・イェーガーが転入してくることを知りました。
 エレンについては出欠簿に貼ってあった付箋を取ってきたので更新された名簿などを確認しないかぎり他者が知ることは難しいでしょう。
※令呪の発動『キャスターの命令を聞くこと』
→令呪による上書き『キャスターに従うことなく、その討伐に全力を尽くせ』
※キャスター(フェイスレス)、カピタン、ディアマンティーナと交戦しました。
※脚のダメージは日常を辛うじて送れる程度には回復しましたが、戦闘には差し支えます。



[全体備考]
※食蜂の操るNPCが所有するリムジンで走っています。まどか誘拐に用いたものであるため、車体前部にはルフィの拳の痕があり、ナンバーはタダノを通じて警察にリークされています。
 移動の際に検問など何らかの障害が生じる可能性があります。


353 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/15(金) 23:51:52 5/4vWlsA0

◇  ◇  ◇

この街を行く人に道を尋ねたとしよう。
今いる場所から行きたいところに行くにはどうすればいいですか、と。
『病院』から『温泉』に行きたいとするならどんな答えが返ってくるだろうか。
街にはバスが走っている。
病院近くのバス停から、温泉近くのバス停への乗り継ぎを教えてくれるかもしれない。
タクシーに乗れば実際に連れて行ってくれるだろう。
アプリなどで地図を表示し、親切に案内してくれる人もいるかもしれない。
しかし多くの人は無意識に共通の認識があるはずだ。
橋を渡ってから北上するはずだ、と。大きな川があり、そこを超えなければ温泉には辿り着けないのだから。
誰だってそう思う…現代に近い感性を持つなら、サーヴァントだってそう思う。
まさか病院から温泉まで一直線に移動しようなんて、考えるのは空を飛べるものくらい。
フェイスレスも、人吉善吉もそう考えてしまった。
アーチャーは飛行を可能とするようだが、マスターから離れるのを良しとせず共に来るなら地を走るはずだ、と。
彼らの不運は三つ。
モリガン・アーンスランドが食蜂操祈の居場所を事前に突き止めていたこと。
その場所を―あっちの方、などという雑な認識であったが―モンキー・D・ルフィがすでに耳にしていたこと。
そして何より、病院と温泉を結んだ直線の近く、見聞色の覇気の及ぶ範囲に彼らの陣地である遊園地が存在していたこと。
故に。

「まどかはどこだァ!!!」

惨劇。
アポリオンにより事前に感知する猶予もなく、見張りにより迎撃などできるわけもなく。
遊園地の自動人形は自在に伸縮する五体により次々と打ち砕かれていた。

『……キャスター、お前今何してる?』
『え?さっきも言ったろう。もうすぐ温泉が見えてくるよ。それよりちゃんとナビゲート頼むぜ?美樹さやかの悪魔に見つかったらヤベーんだからさ』
『いや、たぶんすでにこっちの現状がサタンやべえぞ』

冷や汗をかきながら念話を送る。
アポリオンを介して病院前の闘争が終わったのを確認し即座に立ち上ったこの事態に単独で立ち向かえというのはいくらなんでも無茶が過ぎる。

『どうしたのさ?』
『麦わらの…今はかぶってねえけど。ライダーが攻め込んできて暴れてんだよ!』
『…………なんでそこがばれたのかとか、いくらなんでも早すぎるとか気になることは山ほどあるけど。
 自爆人形なしにしても何とかならないのかい?』
『銃器と鈍器の類が全く効いてないんだよ。そのせいでかなりの数の人形が手も足も出ないんだ。
 そもそも病院での戦いでは一睨みで一点物以外は簡単にやられちまっただろ?』

言外に語る。
サーヴァントに対抗できるのはサーヴァントだけだと。

(この局面で、コレか。敵のマスターという心臓部を捕らえたところで、即座に返す刀で陣地とマスターという喉元に刃を突き付けてきた。
 そんな判断ができる奴か?アレは?あっけなく僕の変装に騙されるようなやつが、僕の一番困る手を打ってくるか?)

そもそもなぜ陣地の場所がわかる。
偶然だとしたらよほどの幸運か、直感だ。
疑心。何者か背後にいるのではと。
自分にとって最も嫌なことを知っているのはやはり、僕なのではないかと。

『…何考えてるのか何となくわかるけどよ。さすがに自分が不利になるような手を打つような間抜けじゃあねえぞ僕(おれ)はよ』

悩み、進むも退くもできずグリフォンは滞空していた。
その間にも刻一刻と事態は悪化する。

「やべえぞ、フラッシュ・ジミー様までやられちまった!」
「Oを呼べ!」「いねえよ!」
「ドットーレ様ぁ!」「いねえっつってんだろ!」

『マジでやべえぞ、ジミーがやられた!ホントに余裕ねえぞこれ!
 数の利が活かせねえんだよ、あいつの訳わかんねえ気迫みたいなのにやられて!このままじゃ二百体壊しどころか三千くらいいきそうなペースだぜ!』
『わかった、わかったよ。すぐに戻る。数分もかからないさ』

グリフォンに戻るようラーオを通じて指示する。
自動人形に疲れはない。
それこそ疾風のごとく、即座に戻るだろう。
だが、英雄の戦いとは刹那における命のやり取り。
雑兵相手に数分あれば、被害は加速度的に広がる。


354 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/15(金) 23:52:19 5/4vWlsA0

「もうあいつしかいねえ」「オルセン!」
「俺たちのヒーロー!」「オルセン!!」
「あいつをお前の腹の中にぶち込んでくれ!」「オルセン!!!」
「ん?何だ騒がしいな??」

多くの人形が砕かれ、歯車が足場を埋め尽くすほどに散らばった惨状で、ついに重い腰を上げた人形が一体。
いや、メリーゴーラウンドが一基。
メリーゴーラウンド・オルセン。
頭の上に巨大な回転木馬を乗せた人形。
サイズならば最大級の自動人形がゆっくりと侵入者のもとへと迫る。

「すげ〜な。メリーゴーラウンドか。おもしろそーだなー」

ひと際目立つ人形に目を輝かせる。
だがそれも一瞬のことですぐに戦意のたぎったものに切り替える。

「でも下の人形はいらんな。何タウロスだお前は」

……というよりお眼鏡に今一つ叶わなかったというべきか。
子供が気に入らなかったおもちゃを放り捨てるように、今までの人形のように倒そうと突撃。

「無〜理だよ。こうしちゃうもんね」

それに対し拳の射程まで目と鼻の先というところで人形本体がメリーゴーラウンドの下に身を隠す。
しかしそれに何ら臆することなく、突撃の勢いそのままにオルセンの頭部、メリーゴーラウンド内に侵入するルフィ。

「一人の男が死んだのさ」

床の下からオルセンの歌声が響く。

「頭はごろんとベッドの上。手足はバラバラ部屋中に」

リズムに合わせて木馬が動く。
その首元から生えた鋭い刃で、侵入者をバラバラに刻もうと回り出す。
だが、それに怯むような男が英霊の座にまで至るものだろうか。

「ゴムゴムの“火山”!!!」

刃を突き出した木馬が到達するより速く、ルフィの足が天高く突き上げられる。
まさしく火山のごとく、ドカンと大きな音を立ててメリーゴーラウンドの天井部分を突き破る。

「と、“戦斧”ォ!!」

そして振り上げた足を踵落としの要領で叩きつける。
大地を砕くようなその一撃でわずかに残った天井部分も微塵に砕け、さらに本体まで踏み潰され衝撃で粉々に砕け散る。
木馬も刃も一瞬ですべて四散し、オルセンもまたルフィに一切の傷をつけることなく歯車へと還った。

「みぃんな、バラバラ…散らかりっぱなし、出しっぱなし……」

最後の一節を末期の言葉に、オルセンも機能停止する。
オルセンを倒し、もう大したのはいないかと思った瞬間。


355 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/15(金) 23:53:09 5/4vWlsA0

閃光。
遅れて稲妻、轟音。
雲一つなかった夜空から、突如雷が落ちた。

……夜空に雲はないが、二つの影があった。
巨大な空を舞う獣の影。
スフィンクスにまたがるドクトル・ラーオとアプ・チャー。
そしてグリフォンにまたがる、フェイスレスとその腕の中の鹿目まどか、さらにもう一人。
全身タイツにヤギのような二本の角が特徴的な道化人形。

「まさかオルセンまでやられてるとはねぇ。でもあれで終わりかな?」
「ええ、侍のちょんまげにかけて!当てましたとも間違いなく。マサルに食らわした時と違って手加減なんてしてないきっついのをね」

二体の獣、三体の自動人形、一人の人間、そして一騎のサーヴァントが降り立つ。
周囲を見渡し、散らばる残骸という惨状にそろって軽く頭を抱えるが、原因の外敵は打倒したと一先ず安堵の息をつく。

「さて。それじゃあマスターに報告して、改めて温泉に――」



「お前がまどかを連れてった奴か」




雷が落ち、粉塵と煙が立っていた中から一人の男が姿を見せる。
衣服に多少の焦げ付きは見えるが、ダメージらしいダメージはなく、敵をにらみつける戦士の姿がそこにあった。

「おんやぁ?失敬、造物主様。どうやらうまいこと避けたらしい…そらっ!」

もう一撃、改めて落雷。
今度こそ消し炭になったはずだと、全員が目を凝らす。
だがそこにはいまだ仁王立ちする男の姿。
心中に湧き上がる不安をかき消すように、二発、三発と続けて落とす。
人工的な雷では自然界のものには及ぶべくはないが、それでも300万ボルト、1千アンペアは下らない莫大なエネルギーだ。
その直撃をうけて立っている存在など――

「ゴムゴムのォー!!」

いた。
そよ風に吹かれた程度にも気にせず、両の腕を後ろに構えて攻撃用意。

仰天、としか言いようのない表情を道化は浮かべる。
ありえない。笑えない。何だあれは。
パニックで擬似体液とろ過装置にも異常が生じたか、冷や汗のような何かまで浮かべる。
そんな隙だらけの人形に容赦なく攻撃を加えようとするが

「おっと、そこで止まりなライダーのサーヴァント。でなきゃマスターの命は保証できないぜ?」

抱えたまどかの首元に工具を突き付ける。
その気になれば即座に首の骨を分解できる構えだ。
それを見て慌てて手を止めるルフィ。

「落ち着けよブリゲッラ。竜の血を浴び、菩提樹の葉が張り付いていた背中以外は無敵となったジークフリート。
 冥界の川にその身を浸し、母親の手に覆われていた踵を除いて不死となったアキレウス。
 英雄ってのにはそんなぶっ飛んだ連中がいるんだ、雷が効かないくらいで慌てるな」
「申し訳ありません、フェ…じゃなかった造物主様」

フェイスレスに声をかけられ、ハーレクインが再起する。
怯えた芸人から、おどけた道化に戻り、まっすぐとフェイスレスの横に立つ。

「タダノの顔してたのもお前か?」
「え?ああ、そういえばそんなこともあったか。これが僕の本来の顔さ、ハンサムだろ?
 ま、そんなのはどうでもいい。君にはここで手を引いてもらうよ」

追い払うのは確実にしなければならないが、その先どうしたものか頭を悩ませる。
温泉のキャスターのところに向かわせたいところだが、振りまいた誤情報を無為にしたくはない。
暁海ほむらか、美樹さやかにぶつけるのが無難なところかと口を開こうとする。


356 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/15(金) 23:53:36 5/4vWlsA0

「ん…あれ?」

間がいいのか悪いのか。
そこで鹿目まどかが意識を取り戻す。

「んー、起きちゃったか。だがまあ丁度いい。令呪の一画でも使ってもらおうかな。
 状況はわかるかい、まどかちゃん?君の命も、ついでに君の友達のほむらちゃんの命も僕の掌の上だ。
 解放の代償は令呪一つと敵の首一つだ。
 君のその令呪で、『温泉に向かい、緑のセイバーを倒せ』と命じれば、二人は解放しよう…どうする?」

察しの悪い小娘でもわかるように強く迫る。
英霊の力の前に怯え、屈するだろうと思われた。
しかし、鹿目まどかは世の大多数の少女よりも強かった。
巴マミ、美樹さやか、佐倉杏子。各々の正義の果ての死を肌で感じてきた。
そして何より、パートナーである男の、堂々たる生涯を夢に見た。
誇らしき英雄譚。
信じるに足る、勇敢な海の戦士。
だから

「ライダーさん」
「ん」

令呪なんていらない。
そんなもの使わなくてもこの人はきっと

「――――ぶっ飛ばしちゃってください」
「おう!」

私たちを助けてくれる。

「行くぞォ!野郎ども!!!」

一瞬。
フェイスレスがまどかに決定的な攻撃を加えることすらでいないほどの刹那で。

「は?」

世界が塗り替えられる。
フェイスレスの目の前に広がる景色が大きく変わる。
青い海。白い波しぶき。整った港。羊の船首の帆船。
そして、迫りくる何者かの拳。

「ぐぅ!?」

突如目の前に転移したとしか思えないルフィに殴り飛ばされ、まどかから手を放してしまう。
即座に手を伸ばし、まどかを抱えて救出するルフィ。

「しししっ、トラ男の真似だ」

固有結界、『旅の欠片こそが財宝(麦わら海賊団)』 。
その展開時にはある程度だが取り込む人物の位置関係をコントロールが可能だ。
ルフィの拳の届く目前にフェイスレスを置き、そのほかの人形全てを射程範囲外―逆に言えば敵からも攻撃できない位置―に置き、奇襲する。
かつて同盟相手のトラファルガー・ローが射程内に敵をワープさせ、自らが攻撃を加えるという戦術を単身で再現したのだ。
――いや、正確には単身ではない。

「相変わらず無茶苦茶やりやがるなー、ルフィ」
「まったくだ。万一避けられたらまどかちゃんが大変なことになってたかもしれねえんだぞ。その辺分かってんのかおめェは」
「まあでもルフィだし仕方ないわ……よかった、大したケガはなさそう。チョッパーを呼ぶ必要はないわね」
「ごたごた言ってんなアホコック。敵の目の前だぞ」
「ああ!?やんのかてめえ?」
「上等だ、ガラクタ人形より先にスクラップにしてやる」
「ちょ、やめろってお前ら。魔力節約のために五人だけで来たのに余計な労力使うな、ったく。
 おいサンジ、まどかちゃんに余計な負荷かけたくはないだろ」

緑色の髪に腹巻、三本の刀を提げた筋骨隆々の男。
オレンジの髪に棍を持ったスタイル抜群の美女。
鼻の高い、大きなパチンコを持った男。
金色の髪に咥えタバコ、ギャルソンスタイルに特徴的な眉の男。
麦わら帽子を被ったジョリーロジャーが帆に描かれた、羊の船首のキャラベル船。
顕現した一味と、その海賊旗、まどかのかぶった帽子を見てフェイスレスが乾いた笑いを浮かべる。


357 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/15(金) 23:54:37 5/4vWlsA0

「そうか……そうかぁ。あっはは、仲間そっくりの顔で接近する。僕は知らず知らず君の騙された逸話を再現していたわけか!容易くいくと思ったよ。
 道理で雷も効かない。殺される寸前で処刑台に雷が落ち、奇跡の生還を遂げた男だもんな君は!
 麦わら帽子の海賊旗、ゴムのような肉体。そして何よりこの世の誰よりも自由なその振る舞い!
 お目にかかれて光栄だよ、海賊王!モンキー・D・ルフィ!」

海賊という反社会的存在でありながら、数多の国を救った救国の英雄。
知られざる歴史や世界の果ての開拓にも寄与した文化面の功もある、一廉の英雄。
それと、真っ向対峙している。

(まずい。最悪だ。よりによって固有結界とは。これじゃあまず逃げられやしない)

本来固有結界というものは術者のただ一つの内面を形にするだけであり、それを術者の意志によって手を加えて自由にはできない。
しかしこの宝具は生前海賊であった彼とその仲間たちの航海や冒険、生き様を心情風景とし『一味で』展開させる
彼らが共に見た景色、それが現れるものであるが故、召喚する面々によって風景が変わるのだ。
故に、今は東の海よりともにある彼らが抱く景色の再現として始まりと終わりの町、ローグタウンの港が再現されている。
かつて進水式を行ったあの海に最も近い、思い出の港だ。
現れたのは懐かしきゴーイング・メリー号と共に五人の海賊。彼らは一人の少女を守るために集う。
取り込まれたのは遊園地内にいたすべての自動人形。一機たりとも逃がすつもりはない、ということだろうか。
……当然そこには人吉善吉と、一応その護衛についていたブリゲッラたちもいる。
ブリゲッラが前面に構え、少しづつ善吉を引かせている。

『やばいぜ、アレは。こっちも全力でいかないと話にならない。
 あっちが戦力を小出しにしてるうちに仕留めないと、本当に負ける……!』
『そんなにやべえのか、あいつ』

固有結界からの脱出を試みるよりは敵を倒す方がまだ望みがあると、対峙のために念話で説得に動く。

『麦わらのルフィ。とある世界の海を征した海賊王…いや、あの年ごろは……最悪の世代と謳われた時代かな?
 彼だけじゃあない。
 海賊にして海賊狩りの名を冠する、世界最強の剣士に師事した三刀流の剣豪。
 千両道化やタイヨウの海賊団の一派といった大物海賊すら手玉にとった泥棒猫。
 小人や巨人、手長族に足長族など様々な戦士を船長に引き合わせた、海賊王にすら匹敵しかねない求心力を持つ狙撃の王。
 一国家を牛耳る犯罪組織相手にも破壊工作を成功させる、人殺し一族ヴィンスモークの嫡流。
 ……海賊王の一味の最古参たち、どいつもこいつも英霊級だ。下手するとそんなのがもっと出てくる』
『若いころ?サーヴァントってのは全盛期で出てくるもんじゃないのか?』
『全盛期、と一括りに言っても様々だからね。今の僕は人形の王としての全盛期だが、これが錬金術師や人形破壊者としての全盛期だとまた違った姿で召喚されるだろう。
 あの麦わらのルフィはおそらく戦闘能力じゃない。未来の可能性、じゃないかなァ。
 フランシス・ドレイクのような政府公認の海賊にもなれた。誰かの下につき、王ならぬ王佐を目指すこともできた。
 そんな可能性の全盛期……それがまどかちゃんの召喚による影響だとしたら、彼女はさぞ可能性に満ちた未来を持っているんだろう。世界を救う聖女か、あるいは滅ぼす魔女か……
 …まったく、話がずれたな。とにかく厄介な敵の上、この固有結界から逃れるのは簡単じゃあない。
 退くのがかなわない以上、勝ちに行く。令呪を切れ、マスター。こちらも『最後の四人』をすべて出す』

魔力潤沢とは言い難い善吉が宝具を全開にするのはほぼ不可能だ。
栄養ドリンクを百本飲み干したとて大海の一滴程度の影響しかない。
令呪による宝具解放。それがなければ暁海ほむらの二の舞となる。


358 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/15(金) 23:55:04 5/4vWlsA0

「令呪によって命じる。俺たちの勝利のため、『最後の四人』を発動しろ!」

右手に宿った令呪が輝き、一画を失う。
これで残りは僅か一画。だが、ここで敗退してはもはや持ち直しは効かない。
全力で勝ちに行く。

フェイスレスの隣に立つハーレクインが笑みを深める。
善吉の見張りについていたブリゲッラが大きく跳躍し、それに並ぶ。
そして新たにフェイスレスの背後にカピタンとディアマンティーナが姿を現す。

「さぁて、始めようか。今は軍勢があるが……おそらく五対五だ」

身構えた瞬間。

激しい威圧感に全員が身を震わせる。
全力で、無差別に放たれた覇王色の覇気。
まどかの居場所がわからないうちは巻き込むのを避けるために加減していたが、その必要はなくなった。
仲間たちとともにマスターである少女を背に、全力での戦闘。

さすがというべきか、最後の四人とフェイスレスはその覇気を前にしても揺らぐことはない。
しかし多くの自動人形は圧倒的な気に体液を沸騰させられ、全身を炸裂させて倒れる。

(ぁ……?)

そして当然ながら人吉善吉も。
人並み外れたサバットの達人とはいえ、しろがねへと変わりつつあるとはいえ、サーヴァントを前には敵ではない。
意識が遠のき、膝をつきかけるが

「ぁ痛ッ!」

スパン!と炸裂音。
何者かにすさまじい力で尻を叩かれ、覚醒する。

「巻き込まれるのも、あなたを抱えて移動するのもお断りなの。避難するわよ」
「あ、アプ・チャー……」
「勘違いしないで。あなたが死んだら造物主様まで消えるからよ」

固有結界内に逃げ場などない。
だがそれでも戦場からは離れられる。
唯一残ったアプ・チャーを護衛につけ避難する。

「あ、ほむらちゃん!」
「ちょ、ストップだまどかちゃん。ひとまずおれたちが片をつけるまで飛び出さないで――」


359 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/15(金) 23:55:31 5/4vWlsA0

縮地。
ロングコートの人形が真っ先に踏み込み、抜き手をまどかに向けて放つ。
衝突音。
それを阻む黒い足。

「レディーに対する礼儀がなってねえな、ポンコツ」
「戦場で男も女もあるものか」
「そういうのがなってねえ、ってんだよ!」

カウンターの上段蹴りを抜き手を放った腕で受け流すように回避。
続けざまに放った蹴りも同じように躱していく。
二発、三発、四発。
五発目の蹴りを受けると、その勢いを乗せて反転。
蹴り足の外側に回り込みこめかみに向けて裏拳を打つ。
バックステップとスウェーで回避するが、僅かに体勢を崩してしまう。
好機。
その隙を見逃さずブリゲッラが全力で大きく踏み込み、崩拳を打ち込もうとする。
一歩、音越え。二歩目…停滞。
唐突に足場が砂に変わったことで足を取られ、軌道が乱れる。
その幸運をものとして、身をひねり拳によるダメージを免れる。
にらみ合う一人と一機。
一人は加えていた煙草を吐き捨て、一機は砂浜に恨めし気なセリフを吐き捨てる。

「足場に救われたな。海賊風情が固有結界とは大それたものを」
「知らなかったか?うちの船長は悪魔の実を食って悪魔を宿したバケモノさ。悪魔が使うのは妙な事でもないんだろ?」

「何を呑気にやってるのよ、ブリゲッラ!」

大量のクマ型人形が放たれる。その全てが意思なき爆弾。
ブリゲッラとサンジの頭上を越え、まっしぐらにまどかを狙う。

「三刀流…!!」

その爆弾の海のただなかに飛びこむ男が一人。
右手に一本、左手に一本、そして口に一本の刀を咥えた異様な剣技を披露せんとす。

「“鴉魔狩り”!!!!」

振るわれる剣閃。
鋼に勝る硬度もあろう、人形を細切れにし目標と異なる地点で爆裂させる。
味方に被害がないのを横目で確かめ、そのまま人形を駆使したディアマンティーナに斬りかかろうとするが

「東洋の侍と見受けた!ならば我が剣の錆とし、この身の汚点を拭う糧としてくれる!」

空を舞い、斬りかかる剣士。
突撃の勢いに全体重を乗せた強力な刺突を両腕の剣を交差させ、その刃を黒く染め上げることで受けきる。

「侍じゃねぇよ。何だお前は」
「我が名はカピタン・グラツィアーノ!造物主様第一のしもべなり!誇りある我が剣は数百年の長きにわたり――」
「ぐちゃぐちゃうっせーぞ、カピ何とか」

受けた剣を弾き、口の剣で追撃。
それをカピタンは受け止めるが、首と顎の力で振るったとは思えない予想以上の豪剣に苦い顔をする。

「な、貴様口上の最中に斬りかかるとは武人の誇りがないのか!」
「海賊だぞ、おれは。ンなもん期待すんじゃねえよ。大体、お前も剣士なら剣で語れ」

続けざまに左右の剣で連撃。
三刀の連撃に防戦気味になるが、それでも時折鋭い刺突を入れ拮抗を保つ。


360 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/15(金) 23:55:48 5/4vWlsA0

サンジとブリゲッラ。
ゾロとカピタン。
出来上がった二つの戦場の間隙を突き、他の二機が遠距離からの攻撃を狙う。
ディアマンティーナが再び爆弾人形を。
ハーレクインは稲妻による一撃を。
打ち放ち、今度こそマスターを攻撃しようとするが

「“必殺緑星”!!」
「“魔法の天候棒(ソーサリー・クリマ・タクト)”」

まどかのそばで二つの声が上がる。

「“デビル”!!!
「“電気泡(サンダーボール)”!!!」

パチンコによって発射された種子から巨大なはさみわな式の食虫植物が現れ、放たれた爆弾をすべて飲み干し消化する。
振るわれたロッドから打ち出された電気の塊が雷撃の通り道を作り、稲妻を逸らす。

守り抜く。
援護は任せろ、と嘯くならばその援護は完璧にこなすものだ。
そうして後衛を勤めきれば、我らが船長は必ず成功をもたらしてくれる。

爆撃。雷撃。剣士。拳士。
それを任せられると本能で理解できたなら、男は単騎、本丸に乗り込む。
蒸気を上げ、加速したその足で四体の人形の横を即座にすり抜け、奥に控えた老人へと殴り掛かる。

衝突音。
覇気により黒く硬化した拳と、科学により強度を増した腕が交差する。
海賊王と人形の王の戦いが幕を開けた。

「お前はおれがぶっとばす」
「やってみなよ、ゴム人間。海に落とせば僕の勝ちだぜ?」


361 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/15(金) 23:59:08 5/4vWlsA0
以上で投下終了となります。
タイトルは
Dはまた必ず嵐を呼ぶ/嵐の中嬉しそうに帆を張った愚かなドリーマー
で。

ただ、状態表がないのをみてお察しいただけるかもしれませんが未完成です……
ひとまず区切りのいいところまで投下しましたが、もしお許しいただけるなら月曜日まで時間をいただけないでしょうか。
新生真夜中のサーカスと元祖麦わらの一味の戦い、書き切りたいのです……

たびたびご迷惑をおかけしていますし、ダメだということなら状態表を投下して終了になります。
ご検討いただければ幸いです。


362 : ◆wd6lXpjSKY :2016/04/16(土) 00:02:18 evh19oW.0
続きがめちゃくちゃ読みたいので何も問題はありません!!


363 : 名無しさん :2016/04/16(土) 00:53:01 JX7MyajI0
乙です
固有結界発動からの麦わら一味登場、そして顔なしの解説で鳥肌立ちました!
やっぱルフィさんカッケーすよ


364 : ◆lb.YEGOV.. :2016/04/16(土) 00:57:55 G.aSz6uo0
投下お疲れ様です!麦わら海賊団VS最後の四人……めっちゃテンション上がりますねこれは。
続きもお待ちしています!


365 : 名無しさん :2016/04/16(土) 01:07:25 ylS2JJc20
投下乙です!!
すごいな、この盛り上がりと少年誌全開なぶつかり合い…

タダノモリガンとルフィまどかは一気に戦禍に巻き込まれましたね。フェイスレスに因縁のある慶次とルキア主従も加え、歯車がまた一つ回りだしたか。
そして今回の自動人形、ワイルド・ウェスト・ジェーンにトルネードラプソディ、チャイナ・ホー、リーゼさんのライバルことドクトル・ラーオ、さらには我らがアイドル留守録失敗のオルセンまで!このところの自動人形フィーバー、からサーの人形たちが総出演しかねない勢いだw(さらっと描写キンクリでルフィに壊されてるフラッシュジミーさんにも笑ってしまった)
一品物の彼らの戦いは、やられながらもきちんと一演目ずつを魅せてくれるのが楽しいなあ。トルネード・ラプソディにゴムゴムとバブル・ザ・スカーレットを重ねさせたり、小ネタが上手い…。個人的には、オルセンの登場から末期までの流れがすごく好きです。

乱戦への鮮やかな乱入で意趣返しを決めて見せた慶次もかっこいい。相変わらず、考察でも閃き見せてる辺りが面白いよなあ。そんでモリガンは台詞のいちいちが彼女らし過ぎて吹くw神稚児考察から即あっちに繋げるとこもだけど、ルッキャさんを真っ赤にさせちゃうし

サイレン聖杯は白ひげたちの会合を始め、逸話や真名の設定を毎回凄く生かしてるなと感じるのですが、今回のルフィ周りもいちいち唸りました。「偽一味」の逸話が奇しくも司令の策謀を成功させてしまったことや、それを交えながら英霊モンキー・D・ルフィの来歴を看破し、此度の姿を考察するフェイスレス。ハーレクインの雷撃は…この男にはそりゃ通じないよなあ。
ある意味、司令がすごく苦手とするタイプですねルフィ。

何より、遊園地で勃発する真夜中のサーカスVS麦わら海賊団の構図に燃えるしかない。
船長の呼びかけに応えて現れるおなじみのクルーたちの頼もしさよ。

対抗して舞台に上がる最後の四人、ひそかにフラグを重ねつつある?ように見える善吉とアプ・チャーさんも含め、火蓋を切って落とされたルフィVSフェイスレスの続きがすごく気になります。

前半部分に対して長文の感想になってしまいましたが、改めて投下乙でした!!


366 : 名無しさん :2016/04/16(土) 20:42:12 tITW5AmgO
投下乙です

ルフィは騙されやすいけど、人形の数の暴力や銃弾の雨、ついでに電撃も効かないときたもんだ
フェイスレスは相性いいのか悪いのか


367 : 名無しさん :2016/04/16(土) 23:44:46 L5oRGQuk0
投下、お疲れさまでした。
麦わら海賊団の最古参四人に最後の四人ってルフィとフェイスレスのそれぞれが
持ってる絵札の中で特に強いのを投入したって感じだけど、追加出来る可能性のある
カードの質を考えると少しルフィ側のほうが優勢だったりする?


368 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/18(月) 23:52:13 uWhJ53nw0
たくさんの感想、なによりわがままをお許しいただきありがとうございます。
こんなギリギリになって申し訳ないのですが、投下します。
CM明けのようにちょっと前回と繰り返しになる部分も込みで


369 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/18(月) 23:52:59 uWhJ53nw0

「お前はおれがぶっとばす」
「やってみなよ、ゴム人間。海に落とせば僕の勝ちだぜ?」

力比べの拮抗は一瞬。
次いで放たれた左の拳の勢いを殺すため後ろに跳ぶが、ゴムの腕は勢いそのままに伸びることで回避を許さない。
結局勢いを殺しきれずに吹き飛ばされるフェイスレス。
その吹き飛ばされる速度以上に早くルフィは追いすがる。

「ゴムゴムの――」
「させないよ」

飛ばされながらも不敵な笑み。
ルフィが拳を打ち出すより早く右掌を向ける。

「食らいな」

『溶解』のフェイスレス。
彼の異名を象徴する強酸の放出で迎え撃つ。
しかしルフィにとって『水』は何より避けなければならないもの、そんなことは身に染みて理解している。
弱点であるからこそ、手慣れた反応。
液体による攻撃を大きく回避し、僅かに距離をとる。
そして、離れていようとルフィの拳の射程であることに変わらない。

「“JET銃”!!」

高速のストレート。
だが距離をとったのが幸いか、機械人間であるフェイスレスのずば抜けた反応速度でもって身をひねり回避する。
そして

「分解」

工具を振るい、もう一つの異名の由来を披露。
指、手首、肘などの関節部に的確に負荷をかけバラそうとするが

(くっ…!ゴムか!)

ぐにゃりと異様な形に伸び、変形して効果がない。
打撃、銃撃が効かないと聞き予期はしていたが、関節まで効き目がないのにまた一歩絶望の淵へ歩みを進める。
手札がどんどん少なくなっていく。
それでも諦めはしない。
工具で締め付け、腕を抑える。
そのまま溶解させようとするが、伸びた腕の縮む勢いでそうはさせじと突っ込んでくる。

(ねらい目だ!)

突撃に合わせて空いた手を顔に目がけて伸ばす。
眼窩に指を突っ込み、顔と眼球を『分解』してやろうとする。
しかしルフィはそれを見聞色により先読み。
腕が届く寸前で首を後ろに大きく伸ばし回避する。
空振り、隙の生じたフェイスレスにその伸びた首を利用した反撃。

「ゴムゴムの“JET鐘”!!」
「がぁッ!」

伸びた首の縮む勢いで強烈な頭突き。
硬質ゴムのハンマーをとてつもない勢いで叩きつけられたような衝撃が胸部を襲う。
生身の人間であれば肋骨が砕け、そのまま絶命するような一撃。
改造人間で、なおかつサーヴァントでなければ危なかった。
が、転んでもただでは起きないのがフェイスレスという男。
その衝撃も利用して距離を取り、足元に手を伸ばす。
転がっていたのは覇気により崩壊した自動人形の残骸。
その中から複射式のクロスボウを引っ張り出し、左手に装備したニードルガンと合わせてルフィの後方へ向けて放つ。
まどかのいる地点に向かって放たれた矢だが、当然のようにそれは届くことなくルフィの手で握りつぶされた。
舌打ちを一つ漏らす。


370 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/18(月) 23:53:28 uWhJ53nw0

「一ついいかな。なんで君ほどの男があんな女の子に入れ込んでるんだい?まさかそういう趣味とか?
 人魚姫より美しいという、海賊女帝とのラブロマンスがなかったのはそういうことだったのかな?」
「まどかには弁当奢ってもらった恩があるんだ!」

怒りを見せるでもなく、そして虚言を放った様子もなく。
ちっぽけな、しかし当の本人にとっては重大な理由を口にする。

「……それじゃあもう一つ聞きたいんだけどさァ。君、ドレスローザって国じゃあ王女様にご飯御馳走になったからその恩返しに戦ったっていうのは本当かい?」
「ああ、レベッカにも弁当奢ってもらった」

その程度でこの男は一国の王に戦争を仕掛け、滅ぼすことができる。
ああ、やはり手に負えないと改めて確信する。
挑発に全く動じないのもそうだし、マスターを手中に収めたところでこんなじゃじゃ馬は制御できるわけがない。
マスターを生け捕りにするうま味など一切ない。
あらゆる逸話がこの男の破天荒すぎる在り方を示す。生かしておいては間違いなく舞台の歯車が狂う。

(と言っても、僕じゃこいつに勝つのは難しいぞ)

徒手の技能は比べるべくもなく劣っている。
分解も全く意味をなさない。
人形は一瞥で機能を停止し、そもそも武器を持たないこいつに全力は出せない。

(おまけに『悪魔』の実を食って、固有結界まで使う悪魔‐デモン‐だって?最悪という外ない)

最後の四人がマスターを仕留めるのを待つしかないか、とそちらの戦場からルフィの影響を削ごうと少しづつ距離を置き始める。
それに対する部下の反応は様々。
焦がれる人の側を離れまいとするも、敵対する一味に背を見せられず歯噛みする者。
後を任せられたのだと解釈し、奮起する者たち。
そして――

「白いの、お前今ホッとしたろ」
「あァ?何言っちゃってんすかね。オレっちがホッとした?何に?」

カピタンと鍔迫り合いながら、ハーレクインを挑発する。
当のハーレクインは稲妻による攻撃、霧や風雨による目くらましと狙撃の妨害などを悉く封殺され苛立っていたところに投げられた言葉に過敏な反応。

「雷の効かねえルフィが離れて安心したみてえだが。
 余計な心配だ。ウチの船長はロボとか好きだが、ガラクタ人形には興味ねェよ。おれで我慢しとけ三下」
「余所見をしている余裕はないぞ!」

その言葉に最も苛立ったのは無視された形になるカピタンだった。
ゾロの刀を弾き飛ばして一気に袈裟切りにしようとするが口の刀で受けられる。

「“煉獄鬼斬り”!!!」

そこから即座に反撃。
目前のカピタンはもとより、剣圧でもってハーレクインやディアマンティーナにまで攻撃を及ばせる。

「な!?我が破壊の剣(スペッツァ・フェッロ)を折るだと!?」
「ちっ、欲張りすぎて雑になったか?」

必殺のつもりで放った剣技だが、広域にしすぎたためか二機はかろうじて回避し、カピタンには剣を折る程度にとどまる。

「く、ならばこのスパヴェンタを振るうのみよ!かつての聖杯戦争でアーサー王を斬って捨てたこの――」

折れた剣を放って捨て、どこからともなく新たな剣を抜き放つ。
ついでにその剣の誇らしい功績を高らかに述べようと声を上げるが

金属音。
あらわにした刀身にゾロの刀がぶつけられる。

「上等な歯車を使ってるらしいな。べらべらよく動く舌だ。バラして持ち帰ればウソップとフランキーが喜ぶ。で、そっちのタイツピエロはどうした?喋んなくなったな」

再び口上を邪魔され怒りに肩を震わせるカピタン。
見透かしたような物言いをされ歯噛みするハーレクイン。


371 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/18(月) 23:54:12 uWhJ53nw0

「生意気な口には、竜の逆鱗にかけて仕置きの甲斐があるってなもんだ!」

鞄から取り出したクラッカーの紐を引くと紙吹雪やテープが鋭利な刃物のように飛び出し、襲い来る。
続けてディアマンティーナも爆弾人形を放つ。
……まどかに、向けて。

「何弱ェの狙ってんだてめえら!」

咄嗟に退き、その全てを斬り落とすが、必然前の敵への対処はおろそかになる。

「よくやったぞ、お前たち!御首頂戴!」

その隙を逃さずカピタンが斬りかかるが

「させるかよ!“必殺緑星”!“プラタナス手裏剣”!!」

ウソップが鋭く硬い葉を手裏剣として放つ。
それを斬り払うために足を止められる、的確な援護。

「大体お前なぁ!さっきからペラペラペラペラ大法螺吹きやがって!お前なんかにアーサー王が倒せるなら、おれなんかギルガメッシュに勝てるわ!
 そこになおれ!お天道様が許しても、麦わら大船団が誇る狙撃手ウソップ様が許さん!」

巨大パチンコ、黒カブトから続々と弾丸を放つ。
武器と言い切りがたいパチンコから放たれる攻撃に少しづつ引き離されていくカピタン。

「アンタに嘘がどうこう言われちゃお終いね……ゾロ!そんなわけだからその白いのお願い!天気なら私がどうにでもするから!」

まどかをかばい、少しづつさがりながら熱気泡と冷気泡を多数放ち、周囲の大気を掌握する。
これで完全にハーレクインの能力は封じたと誇らしげだ。

「局地気象コントロールが効かなくってもオレっちが勝つのは決まってるぜえ。そりゃもう世界樹の種にかけて!」

鞄から今度はパラソルを取り出し、槍のように突きかかる。
それをゾロが受け止め、即座に弾き飛ばし追撃するが、パラソルを広げて盾にしていなす。
そうして生じた間を利用し、広げたパラソルを貫いてシャンパンの蓋を弾丸として飛ばす。
カピタンと違った手数と奇抜さに富んだ攻撃になかなかなれないゾロ。
そこに響く声があった。

「ウソ〜〜〜ップ“呪文(スペル)”!“本棚の角に足の小指をぶつけて、さらにそこに百科事典が落ちてきた”!」

また何か言っている、と微妙な空気が一味の間に流れる。
しかし最後の四人の反応は違った。
何か興味を惹かれるようなものを聞きつけたように一斉にそちらを向き、続きはないのかと沈黙する。

「それがお前の最期に見るもんでいいんだな?」

当然、止まった攻撃の手のスキを突かない訳がない。
海賊相手に卑怯なんて甘い言葉は通じない。

「しまっ…!」

咄嗟に突風を煽りつけ、引き離そうとする。
だが、すでにこの地の天候はナミの手の中。
風はあらぬ方向に吹き、目的を果たすことなどできはしない。

「まったくよ……」

挑発の言葉に自分を見失い。

「“鬼気、九刀流”…!」

局地気象コントロール装置は無力化され。

「新聞の三面記事にかけて……」

目前には迫りくる阿修羅(デューマン)。

「“魔九閃”!!!」

そして、敗北がハーレクインに訪れた。


372 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/18(月) 23:55:24 uWhJ53nw0

同じようにカピタン・グラツィアーノも敗れていた。
実力的には前田慶次にもロロノア・ゾロにも及ばないウソップに。
生前の敗北と同じく、なぜ敗れたのかカピタンは理解していないだろう。
そしてウソップ自身もなぜこうまで強い怒りをカピタンに覚えたのか分からないだろう。

麦わら大船団でも随一の嘘つきの始まりの嘘は、笑顔のためだった。
病に伏せる母親のために、海賊が来たぞ、父ヤソップが帰ってきたぞと嘘をついた。母を、笑顔にするために。
体の弱い令嬢のために、巨大な金魚の糞に大陸と間違えて上陸してしまったなどという頓狂な偽りの冒険譚を聞かせていた。彼女を、笑顔にするために。
村に海賊が来たぞ、といつも言い続けていたら本当に海賊が攻めてきたが、仲間とともにそれを撃退して嘘にした。村のみんなの、笑顔を守るために。
モンブラン・ノーランドと同じような英雄だと誤解され、それでもその嘘を現実にするために闘った。自分を信じた者たちに、笑顔でいてほしかったから。
だからこそ、笑顔を奪うことしかできない人形が、嘘で自分を塗り固めているのが許せなかったのだろう。
つまりウソップの放つ虚言は人々に笑顔をもたらすものであり。
その虚言を、自動人形は『誰かを笑わせるための技能』として注目してしまうのだ。あたかも、サーカス芸を貪欲に学ぼうとする芸人のように。

ウソップが一つ嘘を言うたびにカピタンは動きを止めた。
そのたびに一つ一つ勝利の布石は積まれていく。
植物の根が絡み、足裏のブースターは機能を停止した。
海より伸びた海藻が剣を振るう腕の自由を奪った。
そして唱えた呪文(スペル)に聞き入り、動きが止まったそこへ。

「“必殺緑星”!“ドクロ爆発草”!!」

着弾と同時に爆発、煙霧。
それが海賊らしくドクロをかたどり、カピタンへのとどめの一撃となった。

爆音とほぼ同時に砲撃音が響き渡る。
その直後に千々になったロングコートと、それを纏っていた人形のかけらが飛び散った。


◇  ◇  ◇


時は僅かに遡る。
ゾロがカピタンと刃を交え、ナミとウソップがハーレクインとディアマンティーナの足止めをしていたころ。
ブリゲッラとサンジは互角の攻防を繰り広げていた。

子分筋の八極拳士に劣らぬ拳闘術を華麗な足技で捌く。
抜き手をいなし、猿臂を弾き、踵撃を躱し、反撃の上段蹴り。

「“首肉(コリエ)シュート”!!」
「ヌルい」

腕をコロの原理で回転させ、その回転で蹴り足を受け流す。
太極拳の化勁という技術だ。そこからカウンター。

「撃統頂肘」

潜り込むように腹部へと身を躍らせ、全身を駆動させての肘打ち。

「掌打」

さらに上方へアッパー気味に掌での一撃。
打ち出した右手の肘を左手で押すことで威力を増す。

「烏龍盤打」

そこから体を半回転させて遠心力を乗せた手刀を叩きこむ。
三つの技をまともに受け、吹き飛ばされるサンジ。

「全身を武器とする拳法をわたしに対して、お前は足しか使わないな、人間。それでは勝てんぞ」
「戦闘じゃあ、コックの神聖な手は使わないのがおれの信条だ……!」
「そうか。つまらん」

失望したような答えを漏らし、地を滑るように進む。
足しか使わないならそれを封じてやる、と。
梱歩からの後掃腿撃地捶、それでとどめを刺してやろうとする。
サンジはそれを空へ高く跳び、回避。
地に足をつけては避けきれないとの判断だった。
それを見てブリゲッラは悩んだ。
手足の届かないところに敵が逃げてしまった……この身に宿したアレを使おうか、と。
一瞬逡巡するが、その考えを斬り捨て、みずっからも敵を追って空を往く。

「空中崩拳」

左腕に右の拳を押し当て、デコピンのようにして崩拳を打ち出す、足の踏ん張りがきかないところでも十分な威力を発揮する技。
これなら空中でも致命打になりえる、身を躱せない空ならなおのこと、と決着を予感するが

「“空中歩行(スカイウォーク)”!!」

サンジは空を蹴り、宙を飛んだ。
それによりブリゲッラの攻撃をかわし、ある場所へと飛び込んだ。


373 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/18(月) 23:56:04 uWhJ53nw0

「悪ィな。お前の大将は五対五だと思ってたみたいだが、違うんだ。六対五だったんだよ……なあ、メリー」

ゴーイング・メリー号。
海賊王のクルーを偉大なる航路に送り届け、空を飛び、高潮を乗り越えた奇跡の船。
麦わらの一味の最古参の一人だ。
その砲門が一基、ブリゲッラのほうを向いていた。
空を飛ぶ術のないブリゲッラに、それを躱すすべはない。

「おれはウソップほど狙撃が上手くはねぇが、この程度の的ならわけねえな」

懐から煙草を取り出し、右手に持ったマッチで火をつける。
そしてそのままマッチの火を大砲の導火線へ。

「キッッサマァァァァァ!!!」

右腕を正面に構える。
対抗してカタパルトを開き、先にこちらがミサイルを打ち込んでやろうと――

「ウソ〜〜〜ップ“呪文(スペル)”!“本棚の角に足の小指をぶつけて、さらにそこに百科事典が落ちてきた”!」

動きを止め、反射的にそちらに目をやるブリゲッラ。
呆れたように苦笑いを浮かべるサンジ。
停滞した空気の中で、我関せずど導火線の火は進む。
そして響き渡る砲撃音。

「――――しまっ」

咄嗟にミサイルを発射するブリゲッラ。
しかしその直後に砲弾は着弾。
発射したミサイルも誘爆し、むしろダメージを増してしまう。
腹部の大半を吹き飛ばされ、コートもちぎれて宙に舞う。

飛び上がったサンジに始めからミサイルを打っていれば。
大砲に対してミサイルを打ち返そうなどとしなければ。
こうはならなかった。
やはり、この武装には碌なことがないと後悔を浮かべながら機能を停止する。

「ありがとよ、メリー。俺みたいな下手くそのために照準合わせるの手伝ってくれてよ」

独り言を呟いた……つもりだった。

――――むしろ僕こそありがとう。また君たちと戦わせてくれて――――

そんな声が聞こえた気がした。
幻聴か、現実かはともかく、一人だけメリーと話したなんて知れたらウソップやルフィがうるさそうだと、このことは胸に秘めておくと決めて。
目じりの涙をぬぐって戦場を見やる。

「なんか拘りがあるんなら最期まで貫くんだな……さて、あっちの方はケリついたかね?」

船上から見下ろした光景に飛び込む――否、吹き飛ばされてきた影があった。
フェイスレスがルフィに殴り飛ばされ、戦場に合流する。
そしてその惨状を目の当たりにする……最後の四人の燦々たる有様を。


374 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/18(月) 23:57:31 uWhJ53nw0

「も、申し訳ありません造物主様。今すぐにこ奴らを片づけて……」

半壊してなお立ち上がる、カピタン、ブリゲッラ。
そこに即座にルフィが追いすがる。

「ゴムゴムのォーーー!」

両の腕を後ろに引き、大技の構え。
直撃すればもはやフェイスレスもこれまでだろう。

「行け、お前たち」
「はっ!」

最後の四人に命じる。
二人がまどかに突撃し、二人がルフィに特攻する。
まどかの前にはゾロが構え、即座にサンジも合流。
ルフィなら壊れかけの人形など相手にならないだろう、と誰もが思った。



「壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)」



そしてその一手には誰もが驚いた。
麦わらの一味はもちろんのこと、最後の四人も一人残らず。

食蜂操祈のリモコンの時にも述べたが、通常宝具というのは英霊にとっては生前共に在り続けた半身であり、それを壊すというのはその身を裂くほどの精神的苦痛を味わう。
ましてや『最後の四人』はフェイスレスの一面を反映した分身ともいえる宝具だ。
それを、炸裂させた。
ある意味ではさもありなん、フェイスレスは自らの記憶を転送させてしまえば残ったマスターテープを処分することを迷わずやってのける男だ。
ディーン・メーストールとなるために白金を捨てたように。
勝を乗っ取り、ロケットに乗ろうとした際にフェイスレスの体を捨てたように。
『最後の四人』も、必要ならば切り捨てる。
今の彼らは満身創痍。もはやまともにやって勝機はない。
ならばBランク宝具の爆裂という最後の手段に利用するしかない。

とてつもない爆発が広がる。
閃光と粉塵により視界が覆われる。
宝具に秘められた魔力の炸裂によるダメージが肉体を襲う。
まどかやナミたちはゾロとサンジが守り抜いた。
しかしルフィはカピタンとブリゲッラに込められた魔力の直撃を受け、少なくないダメージを負う。

それでも、ルフィは立っていた。
衝撃から身を守るために攻撃の構えは解くざるを得なかったが、それまで以上の戦意を目に宿し、一帯をにらむ。
…………視界が晴れる。
フェイスレスの姿が目に入った。



「お前は仲間をなんだと思ってるんだァ!!!」



瞬間、突撃。
荒ぶる感情を拳に乗せて、何の変哲もない一撃を浴びせようと駆ける。
拳が触れようとしたそのとき


375 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/18(月) 23:58:13 uWhJ53nw0

「――!待てルフィ!」

見聞色の覇気に長けたサンジの声が響く。
遅れてゾロとウソップも違和感を覚えた。
だが、すでに遅く。
ルフィの拳がフェイスレスの頬に届き



大爆発。


それは地雷だった。
自爆人形(ディストリュクシオン)、フェイスレスが一つだけ作っておいた身代わり。
それもルフィの覇王色の覇気により機能を停止していた。
しかしフェイスレスの本分は人形繰りだ。
残骸から目当ての人形を発見し、ひっそりと糸をつなぎ、爆炎に紛れて入れ替わるくらいはわけない。
かつて恋敵である才賀正二が自分そっくりのマリオネットと入れ替わったように。
怒りに目が眩み、見聞色により気づくことができなかったことで、壊れた幻想と合わせて想定外のダメージを追加される。

「ルフィ!無事か!?」
「なんでもねえ!このくらい!」

駆けよるウソップを撥ね退け強がるが、ふらつく。
致命的ではないが、二重三重の大爆発はさすがに堪えるようだ。

「じっとしてろ!追いかけるにしても治療してからだ!」

そこへ新たな影が現れる。
二本の角を生やしたたぬきのような珍獣。
麦わらの一味の船医、人間トナカイのトニートニー・チョッパー。
飛び出そうとするルフィをウソップと抑えて傷の手当てを始める。

「大丈夫ですか!?ライダーさん!」
「あ、ちょっと、まだ敵がどこかにいるかもしれないんだから、もう!」

ルフィに駆け寄るまどかと、それを止めるように並走するナミ。
さすがに幼い少女に心配されてそれを力づくで撥ね退けることはせず、おとなしくチョッパーの治療を受けだす。
応急手当を進める面々を横目にゾロとサンジは彼方に視線をはせていた。

「…おい、コック。アレ、どこいったかわかるか?」
「…おれの気のせいじゃないみてぇだな。気配が弱って消えた」

二人は見聞色の覇気でフェイスレスの気配を追っていた。
固有結界内にいる以上、よほどのことがなければ逃げられるはずはないのだから。
だが、その気配が聞こえなくなった。

「おいウソップ、ルフィ!お前らまだアレの声聞こえるか?」

遠くの気配を見るのなら狙撃手であるウソップのほうが適している。
そして海王類や象主の声すら聞くルフィならより多彩な声を聞ける。
その二人も見聞色を発動するが、フェイスレスの気配は捉えられなくなっていた。

「…いねえな」
「どうも弱った動物がそのまま死んでいくような声の消え方だったんだが、そんなに弱ってたのか?」
「んー、鐘が一発と、銃が何回かと、バズーカくらいか?」

……魔術師のサーヴァントなら倒れてもおかしくはないダメージだろうか。


376 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/18(月) 23:58:32 uWhJ53nw0

「とにかく、敵が消えたんなら集合してる意味もねえだろ。チョッパーの治療が終わり次第、おれ達は帰るぞ。
 長居してもまどかちゃんの負担になるだけだし、ルフィの回復に魔力は回した方がいい」
「コイツを解除するのが狙いだったらどうすんだよ」
「死んだっぽい、って結論に今至ったろ。もし生きててもルフィにこんだけ荒らされた上に宝具なくしてんだ。
 もうおれ達が出張るまでもねぇだろ。そんなこともわからねえのか、マリモってのは」
「あァ!?」
「ンだ、やんのか?」
「やめなさい!まどかちゃんの前でみっともない!」

ガン、ガンとナミが拳骨を落とす。
それを受けて臨戦態勢だった二人も互いに手を引く。

「あ、あのみなさん!」
「ん?お、まどかちゃ〜ん♡どうした?どこか怪我でもしたならあのタヌキみてえなやつにいうといい。あれでウチの自慢の船医だ。
 あ、もしかして魔力消費で疲れてきちゃった?それじゃあそこのマリモには退場してもらうよ?」
「いや、おめぇが帰れ!」
「はいはい、大人げない態度はそこまで。まどかちゃん、そういうことなら遠慮なく言って。私もゾロもあなたに負担をかけるのは本意じゃないから」

必要以上に丁寧な態度のサンジには恐縮し、フォローするように入ってきたナミにも気後れするが

「えっと、魔力、ですか。ケガとか疲れたりは大丈夫です。それより、助けてくださってありがとうございました!」

麦わら帽子を乗せた頭を下げてお礼を言う。
それをみて驚いたように顔を合わせる三人。

「……ま、ウチの船長が君のサーヴァントをやってる以上助けるのは当然なんだが。コックとして礼を言わせてもらうと、あいつに飯を奢ってくれてありがとよ。よく食うだろ?あいつ。
 ああ、そうだ。おいゾロ、ちょっとメリー号に付き合え。食糧庫になんか残ってるっぽかった。ルフィに何かやっとかねえとまどかちゃんが破産しちまう」
「ああ?ったくしょうがねえな」

二人は照れ隠しのように船の中に飛び込んでいった。
海賊だからか、ヒーロー扱いは不慣れのようだ。

「ね、まどかちゃん?あなた、ルフィの…私たちの冒険を夢に見たんじゃない?」
「えっ?」
「私も…多分、ルフィもあなたの過去を少し見たわ。魔女の、こととかね……」

互いの過去に踏み込んだからか、それが沈痛なものだったからか空気が少し重くなる。
それでもまどかより人生経験豊富なナミは笑顔を保って話し続ける。

「あなたの願いについては聞かないわ。何を願ってもおかしくないし、何を願っても責められない。
 少なくとも私たちやルフィは、あなたに力を貸すために来たんだから。
 もし必要になったら、また呼んで。自分の意思で聖杯戦争に臨んだあなたをルフィは結構気に入ってるみたいだし」
「そう、なんですか…」
「あ、でもあいつデリカシーの欠片もないから悩みとかそういうの共有してくれないのよねー。
 守ってはくれるんだけどそういうとこは気が利かないし、あんまりうじうじしてるとキッツイ言葉ぶつけてくることあるけど。
 まどかちゃんが自分のしたいことにまっすぐ向き合ってるなら、あいつは絶対あなたを裏切らない」

麦わら帽子の上から頭を撫でられる。
なんとも面はゆくて、とりあえずお礼を言っておこうかと口を開きかけるが

「ありが――――」
「よっし、終わったーーー!」
「ちょ、あんまり暴れるなよルフィ!?応急手当しかしてないんだからな!」
「大丈夫だ。あとは肉食っとけば治る!」
「だからそれは医学じゃねえってば!」

騒ぎ始めた男たちにかき消され、力なく笑うしかない女性陣。
船から二人の男たちも降りてきて、何か巨大な骨付き肉を船長に渡して頬張らせる。

「んぉ?まろか、へがはひてねーか?」
「はいはい、大丈夫だから。私たちはもう帰りましょ」
「そうだな。ぐずぐずしてても魔力の無駄だ」
「それじゃあな、まどかちゃん。また何かあったら駆けつけるからよ。
 しかし凄いな、これだけ固有結界を開いてて涼しい顔とは。ロビンちゃんにフランキー、ブルックはもちろん、これならあいつらも勢ぞろいさせられるんじゃねえか?」

そうして三々五々言葉を贈って固有結界から消えていく。
残されたのは二人。
大量の肉をすでに食べ終わったルフィと、渡された肉をまだ食べ終わらないまどかが遊園地にポツンと立っていた。


377 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/18(月) 23:59:15 uWhJ53nw0

「ライダーさん、これお返しします」
「お、ありがとう…ん?」

かぶっていた麦わら帽子をルフィに差し出す。
そこから落ちてきた何か白いものを拾い、掌に置くルフィ。

「あの、ライダーさん。温泉ってどこだかわかりますか?」
「あ?えーと、たぶん向こうのほうだ」

モリガンに教えられた場所を記憶を頼りに指さす。

「そこに向かっていいですか?もしかしたらほむらちゃんも向かってるかも」

銀色の髪のサーヴァントは、そこにいるという緑のセイバーとやらを倒させたかったらしい。
手掛かりはほとんどないが、姿を消したほむらのあてはほぼない。
僅かな可能性でも縋るしかなかった。

「ん、わかった。行くか」

掌に載せた白い紙が、ルフィの指さした方に少しだけ動き、仲間たちが固有結界とともに消えたようにふ、と消える。
それを眺めてルフィは頷いた。



【B-6/遊園地/二日目・夜】

【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]魔力消費(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:人を殺したくないし死にたくもない。けれど願いのために聖杯を目指す。
1.ほむらを探す。
2.銀髪のサーヴァント(フェイスレス)の警戒相手がいるという温泉に行ってみたい。でもどうやっていこう……?
3.タダノとも話がしたい。
4.聖杯戦争への恐怖はあるが、『覚悟』を決める。
5.魔女のような危険人物は倒すべき…?
[備考]
※バーサーカー(一方通行)の姿を確認しました。
※ポケットに学生証が入っています。 表に学校名とクラス、裏にこの場での住所が書かれています。
※どこに家があるかは後続の方に任せます。
※アーチャー(モリガン)とタダノは同盟相手ですが、理由なくNPCを喰らうことに少なくない抵抗感を覚えています。
※セイバー(流子)、ランサー(慶次)、キャスター(食蜂)を確認しました。
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』により食蜂に親近感を抱かされていました。
※暁美ほむらと自動人形を確認しました。
※夢を通じてルフィの記憶を一部見ました。それによりニューゲートの容姿を垣間見ました。



【モンキー・D・ルフィ@ONE PIECE】
[状態]ダメージ(中、応急処置済み)、満腹
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:まどかを守る。
0.………………………………エース?
1.まどかの言うように温泉に行ってみる。
2.バーサーカー(一方通行)に次会ったらぶっ飛ばす。
3.バーサーカーに攻撃がどうやったら通るか考える。
4.タダノとの同盟や今後の動きについてはまどかの指示に従う。
5.肉食いたい。
[備考]
※バーサーカー(一方通行)と交戦しました。
 攻撃が跳ね返されているのは理解しましたがそれ以外のことはわかっていません。
※名乗るとまずいのを何となく把握しました。以降ルーシーと名乗るつもりですが、どこまで徹底できるかは定かではありません。
※見聞色の覇気により飛鳥了の気配を感知しました。もう一度接近した場合、それと気づくかもしれません。
※フェイスレスを倒したと考えています。


[共通備考]
※タダノ&アーチャー(モリガン)と同盟を組みました。
 自分たちの能力の一部、バーサーカー(一方通行)の容姿や能力などの情報を提供しましたが、具体的な内容については後続の方にお任せします。


378 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/19(火) 00:00:03 6EBc62wU0

「はあ、はあ、はあ……危な、かった」

固有結界内、ルフィたちから大きく離れたところを必死に逃げるフェイスレス。
暫く逃げたところで善吉とアプ・チャーに合流し、固有結界脱出を目指す。

「おい、破れないんじゃないのか、これは」
「神秘はより強い神秘によって覆される…とびっきりの魔法である固有結界を超えるのは至難の業だが、今のあいつは弱っている。
 抜けられるさ。そのために外に放っていた人形も近くに集めているんだから」

実際のところは強がりだ。
最後の四人のダメージを見て勝機はないと見て取り、撤退を選んだ。
そのために払った犠牲は大きいが命には代えられない。
命からがらの逃亡に成功のあてなどないが、それでもやるだけやるしかない。

「ここだ。ここが固有結界の果て……」

外部からの人形の干渉。
内部から自身の干渉。
最悪はそこにいるアプ・チャーも吹っ飛ばして――

「あっは、追いつきましたよぉ、キャスター様ぁ」

甘ったるい声が背後から響いた。
振り返るとそこにはロリータファッションの少女型人形、ディアマンティーナがボロボロの姿で立っていた。

「もう、いきなり壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)だなんて。驚いちゃいましたよ。
 ま、さ、か、私にも何も言わずあんなことするなんて」
「ああ、すまなかったねディアマンティーナ。僕も苦渋の決断だったん――」

言葉の先を塞がれた。
首を絞められ言葉が出ない。

「そう。そう。そうなの。分かってた。ずっとずっと、ず〜〜〜〜と分かってたんだけど。今回も違った」

ギリギリとディアマンティーナの腕がフェイスレスの首を絞めつける。
なぜだ。
なぜ僕を攻撃する。
そう自問する。
そもそも壊れた幻想で最後の四人は吹き飛んだはずなのに、なぜこいつは命令を聞いていない。
まるで最古のガラクタどものように、別の主人などいるはずもないのに。

「何を、する。僕はお前の造物主だぞ」

『理解』しろ。
そう言葉を捻り出すが



「お前はフェイスレス様じゃない!」
――お前はフランシーヌじゃない――



フェイスレスの脳裏にかつての記憶が蘇った。
愛した女性を模した人形を作り、愛した女性の面影を重ねて、その人形を愛さなかった記憶が。


「フェイスレス様は私を一番に愛してくれる!エレオノールよりも、フランシーヌよりも!
 私を分解したりしない!壊れた幻想の弾になんか絶対にしない!お前も、あいつも、あの男も!フェイスレス様であるわけがない!!!

首を絞める腕に力がこもる。
かつて、フランシーヌ人形の首に手を回したのと同じように。
正確に言えばサーヴァントというのは英霊の座からのコピーであり、本人ではない。
生命の水による転生を繰り返した白金に正確な自分というのはもはやないともいえる。
であっても。
理不尽な怒り。身勝手な要求。
己の求める姿以外、焦がれる人物に求めない醜悪な光景。
ただ似ているだけの人物に己の理想を重ねる不合理な姿。

フェイスレスは抵抗できなかった。
ルフィとの戦闘でのダメージ以上に、自らの分身を通じて自らの所業を突き付けられて。

(ああ、さすが僕の造った自動人形だ。お前は僕にそっくりだよ)

ギリと首を絞める力が強まる。
圧迫と痛み。
気道を塞ぐようなものではなく、首を折りに来るほどの力だ。
細く、しかし強靭な指が肉に食い込む感覚。

(フランシーヌ。フランシーヌ人形。アンジェリーナ。エレオノール)

ギリギリと首の形が変わるほどに指が食い込む。
さらに内部の気管や血管などの組織を圧迫し、首の中でめりめりと音を上げる。
もはや悲鳴を上げることすらできないだろう。

(…………僕が、悪かったよ)

ぼきり!!
半ばから首がへし折れる。
しろがね‐Oで、サーヴァントならば致命傷たり得ないかもしれない。
しかし、生をあきらめたしろがねは機能を止める。
首を折られ、己の醜さに生きる意志も折られた不死人はあっけなくこの世を去った。
もはや何度目の絶命であるか当人にもわからなかった。





【キャスター(フェイスレス)@からくりサーカス 死亡】


379 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/19(火) 00:00:49 6EBc62wU0

「…おい、何の冗談だよ」

人吉善吉は呆然とするしかなかった。

「裏切りのクラスであるキャスターは宝具も裏切るのが十八番ってか?ふざけんな!」

異様な雰囲気を纏って現れたディアマンティーナに気おされ、何もできなかった。
視界を除けば、自動人形どころか過負荷も霞んで見えるおどろおどろしい風景が見え、恐怖と吐き気がこみ上げる。
気を取り直す間もなくフェイスレスは絶命していた。

金のキャスターより先に消えてくれたのは大助かりだ。
だが、よりによってこのタイミングでというのはよろしくない。
せめて敵の一騎くらいは倒してくれなければ困る。
間桐雁夜との同盟もあるのに、ここで消えられては人形も動きを止め、協力できなくなる。
むしろ足手纏いに成り下がる。

すでにディアマンティーナは機能を停止していた。
フェイスレスに逆らったからか、フェイスレスが死んだからかそれは分からないが。
このままではもう間もなく全ての人形は停止するだろう。
どうすればいい?

「落ち着きなさい」

未だ動くアプ・チャーが声をかける。
その動きはぎこちなく、今にも止まりそうだ。

「思い出しなさい…いえ、解らないの?『あなたは、だれ?』」

俺?
俺が誰かってそんなのは決まっている。
人吉善吉。箱庭学園1年1組、生徒会の庶務を勤めるめだかちゃんの幼馴染だ。
200年前に白家に生まれて――違う!これはあいつの

「ああ、そうか」

わかったよ。お前が何を言いたいのか。俺が何をすべきなのか。

「俺(ぼく)は、お前たちの造物主だよ〜ん」
「ええ、そうでしょう。あのディアマンティーナ様があの男を造物主様でないというなら、造物主様はあなたをおいて外にない」

動きが滑らかになるアプ・チャー。
調子を確かめるように手足を動かす。

「一点物がほとんど消えたのは幸いだったかもしれないわね。チャイナ・ホーのような間抜けはともかく、シルベストリやジミーはそんな『誤解』はしてくれないでしょう」
「……礼を言うよ、アプ・チャー。これでまだ闘える」

頭痛が走った。
脳裏を犯されるような痛み。
自分が誰なのか分からなくなりそうになる。
頭に手をやると、髪が数本抜けた。
全て、銀色に染まっていた。

背筋に寒気が走る……
その瞬間に世界が変わった。戦闘開始時のように唐突に、スクラップだらけの遊園地に放り出された。

「フェイスレスが消えて、解放したみたいね。それで、これからどうするのかしら?」
「ああ、そうだな……」

殆どの駒をなくしてしまった。
残されたのは外に派遣していた人形と、間桐雁夜のところにいる連中と、アポリオンくらい。
ふと、目の前に壊れかけのアポリオンのモニターがありそこに目をやると。
全身白の、餃子みたいなダサい格好した男が見えた。
一瞬だけ映って、すぐにモニターは壊れてしまったが。
それでも、知らない筈の男を識っているはずだという奇妙な確信があった。

(あそこは…温泉の近くか?くっそ、どうする?下手に動くことはできない。戦力が足りなすぎる。
 どうにかサーヴァントを手に入れないと。暁美のやつはあのまどかってのを帰したがってるみたいだからそれに協力するか?
 いや、それじゃあ間桐雁夜を裏切る羽目になるだろ)

それを許さない良心がいまだに残っている。
未知の知人にちょっかいを出そうとしない慎重さも残っている。
しかし。
心のどこかの。
間桐雁夜を切り捨てるのが最善だと。
あの男に会ってみるべきだと。
そういう囁き声が大きくなっているのを感じた。


380 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/19(火) 00:01:15 6EBc62wU0

【B-6/遊園地(ルフィたちからは離れている)/二日目・夜】


【人吉善吉@めだかボックス】
[状態]中度のしろがね化
[令呪]残り一画
[装備]箱庭学園生徒会制服
[道具]銃人形のリボルバー(6/6)
[思考・状況]
基本行動方針:キャスター(操祈)を討伐し、最後には優勝する
1.どうする……?
2.モニター越しに見えたどこかで見たような気がする、しかし知らない男(垣根)が気になる。
3.間桐雁夜を裏切りたくはない……のだが
[備考]
※アッシュフォード学園生徒会での役職は庶務です。
※相手を殺さなくても聖杯戦争を勝ち抜けると思っています。
※屋上の挑発に気づきました。
※学園内に他のマスターが居ると認識しています。
※紅月カレンを確認しました。
※キャスター(操祈)を確認しました。
→加えて操祈の宝具により『食蜂操祈』および『垣根帝督』を認識、記憶できません。効果としては上条当麻が食蜂操祈のことを認識できないのに近いです。これ以上の措置は施されていません。この効果は未だ続いています。
※セイバー(リンク)を確認しました。
※朽木ルキア、ランサー(前田慶次)を確認しました。
※ライダー(ルフィ)を確認しました。
※フェイスレスと再契約しました。
※フェイスレスの血液を飲んだことでしろがね化が進行、記憶や知識も獲得しています。
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』による操作と『欲視力』により得た他者認識力により、フェイスレスの乗っ取りに抵抗しています。現状精神は乗っ取られていませんが、キャスター(操祈)が脱落し、宝具の効果が消滅した場合は精神が乗っ取られる確率が極めて高くなります。
※バーサーカー(一方通行)陣営と残り主従が6騎になるまで同盟を結びました。
※現在フェイスレスの記憶を利用し、自動人形に自らが造物主だと誤解させ魔力供給することで維持しています。
 ただしそのせいで記憶の浸食はフェイスレス消失以前と同等以上の脅威となっています。


※サーヴァント消失を確認(二日目夜)これより六時間以内に帰還しない場合灰となります。


381 : ◆A23CJmo9LE :2016/04/19(火) 00:03:03 6EBc62wU0
以上で投下終了となります。
タイトルは前回同様
Dはまた必ず嵐を呼ぶ/嵐の中嬉しそうに帆を張った愚かなドリーマー
になります。

指摘などあればお願いします。


382 : ◆lb.YEGOV.. :2016/04/19(火) 00:45:24 0bm6F9iQ0
投下お疲れ様です!
麦わらの一味対最後の4人、まさかキーマンがウソップになるとは……
同じ召喚系宝具でも仲間を大事にするルフィと、あくまでも道具としか見なさないフェイスレスと対照的な戦いでしたね。
東の海加入組+メリーの戦いは格好良かったです。
そしてブロークン・ファンタズムの末に皮肉な最後を遂げたフェイスレスとフェイスレスが死亡したにも関わらず相変わらず極限状態の人吉。
アプ・チャーと生き残りの人形、同盟相手のおじさんと一緒に光明は掴めるのか、変わり果てた帝都くんと再会できた時彼はどうなるのか、今後も目を離せない人物の一人ですね。
まどか組、善吉も目指す事で参加者の大半が集まりそうな温泉は今後どうなっていくのか
三人の魔法少女も一同に会しそうで期待が高まります。


383 : 名無しさん :2016/04/19(火) 00:46:41 xcQIvI5E0
投下乙でした…!!
サイレン聖杯戦争の陰で、舞台の裏と舞台上で、数多の自動人形と操り糸を繰り、狂気の脚本を描こうとした顔無し司令、とうとう最期の時か…
思えば、麦わらの一味を相手取った時点でこの運命は決まっていたのかもしれないですね…
最後の四人の散り様がまた、それぞれ凄まじい皮肉だなぁ…
特にカピタンVSウソップというカードに思わず膝を打ってしまった。「嘘」かぁ…ウソップの言葉が自動人形たちにとって芸になってしまったというのも、上手いクロスでした。
ブリゲッラさんもこれまたミサイルに振り回されましたね…今度はミサイルを使わなかったために散るなんて。
そして、「壊れた幻想」で映し身たる四人を捨て駒にした事が、狂気の司令官の最期を決定づけることになってしまったというのが…
敵に倒されるのではなく、ディアマンティーナの手にかかって退場というのがフェイスレスだよなあ。この人にとって一番の鬼門はやっぱり自分の顔なんですよね。
まどかを守り、いつも通りの姿で還っていく麦わらのクルーたちの頼もしさ。その「絆」を前に敗れたのもまた、フェイスレスらしいと思いました。
そして残された善吉、しかし彼の傍にはまだアプ・チャーさんが…!
操り糸の繰り手はいなくなっても、まだ人形たちの物語は終わっていない。
しかし今はひとまず、名役者としてサイレン聖杯を盛り上げたフェイスレス司令に黙祷を捧げたい気持ちです。
見事な激突と退場劇でした!


384 : 名無しさん :2016/04/19(火) 03:05:46 8EgZvo.60

司令死んだと思ったらまだ善吉の中で生きてるじゃねぇかよwww
まどっちにデレデレなサンジにもワロタ


385 : 名無しさん :2016/04/19(火) 19:43:07 tZa8A6DYO
投下乙です

誤解のフェイスレス善吉の誕生だ!
しろがね化が止まらないんじゃ、操祈を倒せねー
このままフェイスレスの演技を続けたら、本人に成り変わっちゃいそう


386 : 名無しさん :2016/04/20(水) 18:53:28 9TlxXD.E0
投下おつでした
前後編まとめて読了。
麦わら海賊団つえええ! しかも色々サーカス勢に刺さってたのが面白い。
ルフィと仲間たち、フェイスレスと人形たちは何から何まで対極だったんだな……。
軍団含めた双方の掛け合いもウィットに飛んでて脳内再生余裕でした。すげえ。
そしてフェイスレスの最後はやっぱあれかー。
宝具に持ってきてる時点でこれ大丈夫かと思ってたけどやはりこうなってしまったか……。
再びサーヴァントを失ってしまった善吉だけどこっちはまさかこうなるとは
彼の行く末も楽しみです


387 : 名無しさん :2016/04/20(水) 18:58:13 xnXe1NJA0
ウソップの、「お前にアーサー王が倒せるなら俺はギルガメッシュ倒せるわ!!」発言超好き


388 : 名無しさん :2016/04/22(金) 02:42:04 wn8k.hsg0
投下お疲れさまでした。

他人の笑顔の為に嘘を吐き続けたウソップと自分を飾り立てる為に嘘を吐き続けたカピタン、ウソップが怒るのも当然だよなあ……
嘘をウソップ海賊団の子分たちが引き継いでくれたウソップと嘘を勝にあっさり斬り捨てられたカピタンって所まで対照的だし。


389 : ◆wd6lXpjSKY :2016/05/06(金) 22:29:27 ORKlBK4I0
お二方投下乙です!お久しぶりです!生きてます!
(wiki収録してくれた方もありがとうございます)

>Deep Nlght ◆lb.YEGOV..
この二人が一番夜と月が似合うペアだと思います。
妖艶な空気が漂う中、確実に強者への道を進んでいるのが強いですね。
この聖杯戦争にアーカードはいませんが……ウォルターはどうなるのやら。
地力も強い彼女達ですが、今は夜。自分達の時間にどれだけ名を馳せることが出来るのか。
(他の方の感想にもありましたがおねショタなんですね、これ)

>Dはまた必ず嵐を呼ぶ/嵐の中嬉しそうに帆を張った愚かなドリーマー◆A23CJmo9LE
やられたなあと思いつつ、メリーのくだりで更にやられたなあと。まどかがルフィにぶっ飛ばせと言うのもいい。
どこで魅せるか解らないルフィとフェイスレスの召喚はやはり燃えますね。
特にグランドライン突入面子なのが熱い、そしてメリー。カピタンの相手がウソップなのもやられました。
嘘繋がりで来るとは……軍配は麦わら海賊団にあがり、敗者はフェイスレス。
ディアマンティーナに壊される所が、原作らしいというか納得したというか……。
けれど人吉が生きていて、人形たちもいて、脳内には……と、まだまだ波乱がありそうです。

さて……

美樹さやか&不動明、間桐雁夜&一方通行、暁美ほむら&リンク、虹村形兆&白ひげ、犬飼伊介&食蜂操祈、浅羽直之&垣根帝督で予約します。


390 : 名無しさん :2016/05/12(木) 03:40:13 Zwvilvi.0
>>389
延長します


391 : ◆bfYCBT6bFU :2016/05/14(土) 20:52:19 jFCb.PiE0
てす


392 : ◆wd6lXpjSKY :2016/05/14(土) 20:53:25 jFCb.PiE0
お疲れ様です。
延長してそうそう申し訳ありませんが一度予約を破棄させていただきます。


393 : ◆A23CJmo9LE :2016/06/27(月) 19:38:30 QgICi9JM0
美樹さやか&不動明、間桐雁夜&一方通行、暁美ほむら&リンク、虹村形兆&白ひげ、犬飼伊介&食蜂操祈、浅羽直之&垣根帝督
マンセマット、ルイ・サイファーを予約します


394 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/06(水) 01:37:20 CIcDaMN60
延長お願いします


395 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/11(月) 19:51:12 G3311Gqs0
申しわけない、前回に引き続きまた不完全ですが期限ですので投下します。


396 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/11(月) 19:52:52 G3311Gqs0

爆音と閃光を背に駆けるバイク。
跨るのは緑色の服の青年と、紫色の服の少女。
市街地のただなかをまっしぐらに走る。

「どうやらマスターの方も追ってきてるわね」

魔法によって強化した視力で彼方を見るほむら。
接触した敵マスターの姿は見えないが、人形が蠢いているのは確認できる。
人形の戦力はバーサーカーと比すれば誤差程度。狂化したサーヴァントに巻き込まれる危険も考えればわざわざ同行するうま味は極めて薄い。
だというのにこちらとの距離を取ろうとしないということは、あのマスターの意思だ。

「そうね。敵は私たちだけではないもの」

むこうはこちらが美樹さやかの援護を拒絶したことを知らないはずだ。
もしもバーサーカーと離れたところを美樹さやかが襲撃する手はずだったとしたら、自らのサーヴァントと距離をとることは即ち死を意味する。
銃火器であっけなく破損する人形など、美樹さやかの連れた悪魔染みたバーサーカーの手にかかれば紙のように引きちぎられてしまうだろう。

「なら、まだチャンスはある」

奴らがこちらを逃がさない限り、こちらも奴らを逃がさない。
なんとしてもここで決着を。

「セイバー。足止めと言っていたけど、少し方針変更。あなたもあのマスターを仕留めることに全力を注いで」

バイクに手を置くと紫色の魔力が車体を包む。
運転手の手を離れ、加速する。

「操作と援護は私が。操縦と攻撃をお願い」

左手をバイクに触れさせながら後ろの敵へ見定める。
右手に盾から取り出した拳銃を構える。
対戦車ライフルや携行砲でもあれば些細な壁や人形など無視できるのだが、致し方ない。
牽制気味にいくつか発砲。

「■■■――!!」

当然狂戦士は立ちふさがる。
銃を構えた瞬間には足先を変え、引き金に指をかけた瞬間にはその軌道に向かって跳び、銃声が響いた瞬間には銃弾に触れていた。
そして『反射』する。
放たれた銃弾が180°向きを変えて真っすぐに射手のもとへと機械的に舞い戻る。
込めた殺意も諸共に、さらに狂戦士のそれを上乗せして。
そのままなら銃口に撃ち込まれ、銃を破壊してさらにほむらに当たったであろう銃弾。
最悪さらに貫通してガソリンタンクを撃ち抜けば爆発もあり得た。
その未来を、剣士は断ち切る。
宙空を奔り来る弾丸に刃を滑らせ、左右に真っ二つにして躱す。
すでに時速100kmは超えている不安定なバイクの上に立ち、それでも絶妙の剣技を魅せるリンクに内心感嘆するほむら。
ほむらが一息つく間にもリンクは動く。
即座に弓を構え、敵マスターに向けて一矢、二矢と放つ。
ほぼ同時に残心もなく後ろ手にハンドルを操作して僅かにバイクの軌道を変える。

放った矢はこれもまた牽制。
乗機の速度は人の追いつけるものをとうに超えているが、あのサーヴァントならばすぐに距離を詰めることができる。
マスターへの防衛に徹させていなければ、逆にこちらのマスターが危機に陥る。
そうして放たれた矢は牽制といえど、マスターを死に至らしめるには十二分なもの。
当然バーサーカーはその弾道に立ちふさがり、矢を跳ね返してくる。
それを最低限バイクを操作して躱し、再び弓を構える。

このまま千日手が続く膠着戦になるかと思われた。
そうなればほむらと雁夜の魔力量、リンクと一方通行の消耗の差からほむらたちが有利であったろう。
そうなることを予期したか。
一方通行が大きく動く。


397 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/11(月) 19:53:15 G3311Gqs0

「■■!!」

後方にいる雁夜を守るために跳躍していた高度。
その位置エネルギーが重力、引力によって落下する運動エネルギーへと変わる。
着地の瞬間に最大となったそのエネルギーの向きを変え、落下する速度のままに真横へと高速移動する。
バイクに追いつくため?
否、その勢いのまま腕を道に立つ家屋へと突き立てた。
そして

「■■■――!!」

大地を震動させ、家屋を投擲。
建物としてはさほど大きい部類ではない一戸建てだ。
しかし、人力はおろか投石器をもってしてもその千分の一のサイズを飛ばすことすらできはしない。
ベクトル操作で家屋にかかる重力、引力、自転に伴う遠心力など様々な力を集約され、放たれた魔弾。
一方通行の手にかかれば万物が凶器となる。
未現物質のように物性を歪める必要などない。
超電磁砲のように磁性体にこだわる必要もない。
道端の小石を蹴るだけで、コーヒーの空き缶をポイ捨てするだけで容易く人を殺せる。
だがそんな小物、サーヴァントならば容易くはじく。
だが、建物規模の巨大な弾丸ならば。
盾で受けようと、受けきれなかった箇所が崩れ被弾するだろう。
剣で刻もうと同様だ。
そして巨大な弾丸は視界を覆い、射線を塞ぎ、敵の狙撃を妨害する。
そんな城砦を矛とし、盾とする暴挙にはほむらもリンクも瞠目した。

(冗談が過ぎるわ……!)

ハンドルを切って回避する?大きすぎる。躱しきれない。
加速して逃げる?飛来物の規模の割に速すぎる。

一瞬でほむらの思考を諦めが埋め尽くす。
それを横目にリンクは跳んだ。
驚きはした。気圧されもした。だがそれはあくまで一瞬に満たない刹那。
避けるのも受け止めるのもできないならば、迎撃するのみ。
両の腕に黄金色のグローブを光らせ、迫りくる巨大な弾丸に飛びかかる。
飛来する家屋と、小さな緑の影が空中でぶつかる。

「ぅっ……!」

霊体であるサーヴァントに現世の物体で干渉はできない。
いかに高速、超重量の物体であろうとそれが神秘を持たないならダメージは与えられない。
だがそこに秘められた莫大なエネルギーがゼロになるわけではない。
衝突時のすさまじい反動に体ごと持っていかれそうになり、小さく悲鳴を上げる。
だが屈することはできない。
この一撃を許せばほむらへのダメージは甚大、耐えたとしてもバーサーカーの追撃から生き延びるのは絶望的になる。
――――なんとしても、防いでみせる。

「は、ああああああああっ!!」

グローブをはめた腕に満身の力を籠め。らしくもなく高らかに雄叫びを上げ。迫りくる死の脅威を投げ返す。
――――今度は、そちらが震える番だ。

真っすぐに軌道を変え、投げ返された建造物。
それが今度は雁夜の脅威となる……その前に。
中央から真っ二つに割り砕かれ、地に落ちる。

「■■■――!!」

その割れ目から顔を見せたのは白い髪の悪鬼。
この男にとって、飛礫は矢ではなかった。盾でもなかった。
ただ自分が近づくための目くらましとして、砂をかけるような感覚で家屋を放り投げたのだ。


398 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/11(月) 19:53:47 G3311Gqs0

空中で身を躱すすべのないリンクに一方通行の魔の手が迫る。
触れれば最後、命の流れを乱され死に至る毒手。
それを目前にリンクは取り出したバクダンを小さくトス。
爆発までの数秒を待つまでもなくそれに蹴りを入れて炸裂させる。
響き渡る爆音、閃光。
一方通行にそれによるダメージは与えられない、そんなことはもう分かっている。
目的は攻撃でなく回避。
爆風を利用してあえて吹き飛ばされ、射程から逃れる。
粉塵と爆炎による目晦ましもあり、ダメージと引き換えに僅かに体勢を整える機会を得る。

吹き飛ばされながらも弓を構え、即座に放つ。
僅かに残った爆炎をくぐらせ、炎の矢となった一撃が三度雁夜に向けて放たれた。
だが一方通行が腕を一振りすると塵旋風が巻き起こり、矢の軌道を大きく変える。
――――攻防一体で隙がない。
妖精ディンの聖なる炎や、魔王も射貫く光の矢ならあるいは効くのだろうか。
ダイゴロン刀ならば切り伏せるのか。まことの眼鏡で見れば何かわかるのか。
無いものねだりをしてしまう自分に歯噛みしながらも次の方策を練る。

爆炎を切り裂いた白のバーサーカーと視線が交錯した。

『マスター、時を!』

瞬間、ロングフックを先を行くバイクに向けて飛ばす。
ハンドルに絡んだ鎖をほむらが掴む感触と同時に、世界のすべてが静止する。
――――マスターソードを初めて引き抜いたあの時と、よく似た感覚。世界の流れから切り離される孤独感。

『セイバー、どうするつも――』

バイクごとマスターをロングフックで引き寄せる。
下手に距離を取るよりすぐそばで守った方が安全なのはこちらも同じだ。
そしてバイクから引き下ろして座席部分にバクダンを積み込むと察したらしく、再び機馬に魔力を走らせ始める。
ボウリングの要領で加速させ投げ出すと、静止した時の中で加速と炸裂の時を待つ簡易ボムチュウの出来上がりだ。
人形に切り裂かれて、新たに調達したばかりの足を失うのは少し惜しいがそうも言ってられない。
さらに砕けたビルの欠片で手ごろなものを見出し、金のグローブの力で投擲する。
バイクと同じように空中で止まるが、これで二手打った。
だがそれで限界だ。
最後にせめてもの抵抗とバーサーカーの視界から外れたところで。
時は動き始めた。

「■■■――!!」

咆哮。駆動音。風切り音。
響き渡る戦場の喧騒を尻目に静かな、どことなく悲し気な旋律が『時を操りし王家の秘宝(ときのオカリナ)』から響く。
それとともに噴き出すは無限の虚無、どこまでも深い闇。
――――返り血と血縁、二つの血にまみれた漆黒の忠義は、ある意味では間違いなく時の勇者と時の賢者の関係より強固な繋がりだった。
血塗られた闇の歴史すら呑み込む壮大な器は、同時に罪人を捕らえる牢獄ともなる。
彼女の一族の覚悟と罪を、自分もまた背負おう。
闇を導き、暗黒面を暴く罪深き旋律……『闇のノクターン』が奏でられた。

「■■!?」

闇がバーサーカーに纏わりつき縛りあげる。
能力の上からでも関係ない圧迫感。かつて天使や同僚から感じたプレッシャーに近似するそれ。
『反射』をすり抜け、霊体を縛る力を本能的に『魔術』であろうと狂化した頭脳で認識する。
しかし認識できたところで、それだけだ。
一方通行にこの闇は破れない。
効果が切れるまでの数秒、その場を動くことはできず、その数秒で投げられた爆弾付きバイクと瓦礫は雁夜のもとに到達する。
それだけならまだ防ぎようがある。
だが緑のセイバーが雁夜に向けてフックを飛ばしているのが目に映る。
王手だ。
もしサーヴァントの接近を許せば雁夜の残り少ない命の灯火はその瞬間に掻き消える。
予測ですらない確実な未来の訪れを阻まねば、二人の聖杯戦争はここで終わってしまう。
追い込まれた状況で、闇にとらわれ手も足も出せない一方通行は

『歌った』


399 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/11(月) 19:54:06 G3311Gqs0

「■■……■…ァ、嗚呼アアアアア!!!」

始めは意味のない叫びだった。
だがすぐにそれは悲し気な旋律を紡ぎ始める。
狂化によって失った言語機能を、常人には決して行えない特殊な呼吸を、持ち前の能力によって補い。
喉だけでなく全身で振動を大きく震わせ、口から特殊な音声を発する。
それはかつて第三次世界大戦で習得し、レイヴィニア・バードウェイに学ぶことにより習得した技術……魔術の行使。
能力者でありながら肉体のすべてをコントロールし、ギリギリのバランスで反動を抑える神業。
それによって紡がれた音楽は、つい先ほど戦場に流れたメロディ……『闇のノクターン』。

「ッ!」

その曲が流れた驚きに一瞬動きが鈍るリンク。
次の瞬間には一方通行に纏わりついているものとほぼ同質の闇が、ほむらとリンクを捕らえた。

失態に歯噛みする。
自分もシーク、いやゼルダ姫から一度聞いただけだが、それでも戦場のただ中で即座にそれを真似て見せるなど。
ましてや楽器もなく演奏……いや詠唱するなんて。

動揺し、捕らわれはしたがリンクの対魔力ならば即座に拘束を抜けられた。
しかしほむらに纏わりついた闇は容易くはいかず、剣によって切り裂くのを余儀なくされ、一時縛られたことでロングフックによる移動にも失敗した。

炸裂音が響く…走らせたバイクが敵マスターに届く前に迎撃される音。
破砕音が響く…投げた石が人形を盾に防がれる音。
雄叫びが響く…捕らわれた白い獣が自由になった証明。

解放されたのはリンクも一方通行もほぼ同時。
そして互いに間を阻むものも、利用できる決定的な何かもなかった。
どちらが先に敵の霊核か、あるいはマスターを仕留めるか。
自身の技量のみが頼みのクイックドロウ。

一方通行がリンク達に向かって。
リンク達は間桐雁夜に向かって踏み出そうとした瞬間。

どん!!!
と、地面が揺れる音。
突然の地震とそれに伴う衝撃で、家屋がいくつか倒壊する。
ただでさえ二組の主従と自動人形の戦いで蹂躙された街並みはもはや原型なく、崩落した家の向こうにはうっすらと海が見える。
……北上した地、麒麟殿温泉への道がそこには開けていた。

間桐雁夜は、建物の影から巨大な刃が視界に入るのを確認した。
暁海ほむらは、夕刻に川下で感じたサーヴァントの魔力を再び感知した。
リンクは白いひげを蓄えた、堂々と構える親友以上の巨漢を見据えた。
そして一方通行は――――


400 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/11(月) 19:54:49 G3311Gqs0

◇  ◇  ◇

不気味な形相を浮かべた月が世界を見下ろす。
波の音を聞きながら一組の男女がそんな夜空を遣る瀬無さげに見上げていた。
ハニーブロンドの美しい少女と、白いひげを蓄えた大男。
住む世界も纏う空気もまるで違う二人が、小さなホテルのベランダに並んでいる少々歪な情景。

互いのマスターは隣同士に二部屋取って眠りについている。
何かあった場合にすぐ動けるよう部屋は一階をとり、服装や荷物などはあまりリラックスしたものではないが、それでも休みを取らないよりは随分ましだろう。
二人が眠りについてしばらくして天戯弥勒の通達を耳にした。
発せられた情報はアサシンの脱落と突然のタイムリミット。

論じた。
通達は定期的に行われるのか、あるいはサーヴァントが脱落するたびに行うのか。
監視の手間や行われたタイミングを見るに定時、おそらく12時間刻みだろうと推測。

突然の異様な月の意味。
まずあれは天戯の狙ったものなのか、意図せず生じた障害なのか、織り込み済みのバグなのか。
狙ったのならその目的は。
参加者を急かすためか。単に焦れただけなのか、三日以上留まられては困る理由があるのか、急がせなければならない問題が発生したのか。
焦れたのなら、まあいい。
この聖杯戦争の会場に問題があり、三日持たない。
参加者に不穏な動きがあった。あるいは参加者以外……
想定できる可能性は様々で答えは出ない。
会議は踊るが実のあるものではなく、結論は出せなかった。

では通達が来たから刑兆たちの考えていたように移動を開始するかというとそうもいかない。
マスター二人が眠りについてから、ナワバリを設定してから、派閥を広げ始めてから数時間も経たないうちに拠点を変えるのは賢明とは言い難い。
ニューゲートと刑兆はまだいい。
ナワバリから少なからず得た力あり、健康体である刑兆も仮眠と思えば十分な休養だ。
しかし伊介は回復しつつあるといっても半病人であり、操祈にもダメージがあるうえ、NPCの配置、大移動は改めて行うには手間がかかる。
結局眠るマスターを横目に、操祈がNPCを走らせながら朝を待つことになった。
ニューゲートは外界を見下ろし、操祈は携帯端末からニュースサイトやSNSで情報収集をしている。

(アッシュフォード学園の女生徒誘拐。これは私たちがやったことよね。犯人は未だ逃亡中、追跡に参加した警官一名が負傷。何らかの凶器を持っている可能性が高く注意、ねえ☆
 犬飼さんの顔とかが出回ってないのは助かるわあ。被害者もそろって未成年だし、そういう自制が働いてるのか。あるいは誰かがもみ消しているのか)

人の流れを操作するのは専門だが、電子の海でのそれとなると些か苦手になる。
御坂美琴や雲川鞠亜の方が向いているだろうし、そうした方向に気を配る必要がないのはありがたい。

(……でも多分これ他の事件にかき消されて情報の錯綜力が増してるだけよね。
 市街地での爆発事件、車にバイクに自転車の盗難、病院付近で多数の銃声、あげくにアッシュフォード学園倒壊って……
 学園都市でもここまで治安力悪くないわよぉ)

いくつかは自分の関わった事件であるが、知らないところでも聖杯戦争は激化しているらしい。
調べるほどに参加者を急かすような事態に陥ったとは思えず首をかしげるが、それはそれと噂を洗う。
まばたきをしない宇宙人が市井に紛れている、街の西側郊外の森に入り込んだ人は魔物になる、平原で死んだカリスマダンサーの霊が夜な夜な踊りをおどる、etcetc

「おう、なんか面白いのあったかい?」

興味を持ったのか画面をのぞき込んでくるニューゲート。
そのタイミングで調べていたのは

「学園崩壊。その犯人はなんと巨人、ねえ」
「眉唾力全開、って感じ?」

写真も添付されていたが、かなりの距離から撮られたものらしく時間帯が夜なこともあってはっきりしない。
建物の内部から飛び出した巨大な人影、に見えなくはないが


401 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/11(月) 19:55:08 G3311Gqs0

「15〜6mってトコか。巨人族としちゃ小さめだな」
「え?」
「あ?」

情報リテラシーについて言いたいことはあるがさておき。
巨人を実際に見たような発言で、しかも常人の10倍近い体躯を小さめとは。

「…もっと大きいの?」
「20mくらいはザラにいる。まあ小さ目ってのは言い過ぎか。なにせ4、50mクラスのを知ってるとこれくらいは小さく見えちまう」
「現代に生まれてよかったわあ。興味はあるけど会いたくはないもの☆」

ダビデ王が首を撥ねたゴリアテですらたしか3m程度。15mで小さいとは。
伝承に語られる巨人の多くはゴリアテ含め先端巨大症の兵士に勝ったのを威権のために大げさに語ったとか、大軍を相手にしたことの比喩だとか思っていたが、実際に巨人だったのだろうか。

(まあ目の前のこのライダーも十分に巨人だけど)

操祈の身長とほぼ釣り合うような膝下のサイズにも慣れてはきたが、やはり圧巻される。
その巨躯を見上げると視線は交わらず、画像を向いているのがわかった。

「背景の月にまだあの悪趣味な面が浮かんでねえ。通達のあった日付が変わる前だな」
「学園の立地から月の位置する方角も何となくわかるけど、そうね。南中はしてないわあ」
「学園倒壊ってのは何時ごろだか分かるか?」
「やっぱり日付が変わる前みたいねえ。そのくらいに話題力に上がってる」

画像の時間帯と事件の時間帯が一致してしまう。
……本当に巨人がいるのか。

「巨人を喚ぶ宝具?あるいは巨人になる宝具?」
「安直なのはそこだな。捻くれた案としては平時は小さくなっていて、戦闘時に本来のサイズになるとかか」
「ああ、そっちもあるわね。単に大きいだけで巨人に限らないなら人に化ける力を持ってるだけでもよさそう。
 ユミルの子にそんな巨人がいたと思うし、日本にも見上げることで大きくなる天邪鬼やダイダラボッチに近い鬼がいるわあ。
 巨人を喚ぶなら、そうねえ。ゼウスから青銅造りの巨大な自動人形を与えられていた愛人エウロペとか?」

いくつかつらつらと名前を上げるが、さすがに伝聞情報のみでは実のあるものにはならない。
ニューゲートが巨人殺しの逸話と巨人召喚の宝具を持ち、どうとでもなるとさほど力を入れていないのもあってなおのこと。
会話が少しづつ減っていき、再び思考が個々のものに戻る。
誰も立ち入ることのない静寂が訪れてしばらく。

突如の砲音。

「オラァ!」

咄嗟にそれを迎撃するニューゲート。
視認と同時に抜き放った薙刀から震動を放ち、弾丸を撃ち落とす。

「キャスター!探れ!」
「もうやってる!いえ、常に警戒力は巡らせてたわよぉ!」

犬飼の体調はともかく、魔力の方は好調なのだ。
学園内の派閥ほどではないが、相当数のNPCを操り、警戒はさせていた。
サーヴァントとして、周囲にサーヴァントの気配がないかは当然気を張ってもいた。

「サーヴァントの気配力は、ない……ならマスター?それとも――」

もしや天戯弥勒か、とも考えるが
 
「いや、一瞬だがあったぜ。サーヴァントの気配。でなきゃおれも攻撃の瞬間に気づけなかった」
「何よそれ。気配遮断?」

アサシンはすべて脱落したと言っていた。
いや、クラススキルでなく自前の保有スキルで気配遮断を行うとすればおかしくはないのか。
とそこまで思考したところで

「そこか!」

ニューゲートが目の前の空間を殴る。
すると大気にヒビが入り、激しい震動が前方へ射出される。
それを躱すように現れた影。


402 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/11(月) 19:55:57 G3311Gqs0

それは10mはあろうかという、巨大な白いカブトムシだった。
不気味な緑色に輝く瞳、砲塔のように穴の開いた角、無機質な光沢ある純白の異形。
その背、装甲とでもいう部分が開い羽が展開し、高速で振動する。

「覚えているな?」

さながら鈴虫の音色のように、羽音を奏でる。
それによって生じる音がある人物の声を再現した。

「……忘れていたかったわあ」
「俺は忘れてねえ。お前に殺されたのは、たとえ死んでも忘れられねえ屈辱だ」
「あら、あなた世を儚んで自害したんじゃなかったかしら☆」

ドォン!!
と、その挑発を合図に再度砲撃音が響く。
カブトムシの角の先端からこの世ならざる弾丸が発射された音だ。
だがその軌道には震動を纏った拳が割り込み、弾丸を砕く。

「おれのナワバリで暴れようってのか、若造」
「てめえに用はねえよ。すっこんでな老いぼれ」

白を基調とした巨漢と異形がにらみ合う。
そこへ再び砲音。
今度は単発でなく数十発の弾丸がカブトムシに襲い掛かり、表面をわずかに損傷させる。

「ちっ、固えな」
「刑兆。起きたのか」
「これだけのバカ騒ぎで寝てられる方がおかしいっての」

起き抜けに即座に攻撃を仕掛け、身支度も万端。
さらに隣室にバッド・カンパニーのうち何体かを向かわせ、疲労困憊のせいで未だに眠る伊介を叩き起こそうとする。

「雑魚が。魔術師なんぞがサーヴァントに何しようが毛ほども感じねえんだよ」
「虫けらに雑魚扱いされたってのは貶されたのか褒められたのかよくわからねえな」

刑兆も加わりすわ開戦かというところで

『刑兆』
『ンだよ、こんな時に』

念話が飛び、歴戦の戦士から若者へと指示が下る。

『建物の中じゃお前は強い。その軍隊は密閉空間で真価を発揮するからな。だがおれの地震は室内じゃ強すぎる……分かるな?』
『ちっ、引っ込んでろってか。分かったよ。逃がすんじゃねえぞ』

スタンドを通じて伊介が寝ぼけ眼をこすり始めたことを確認し、キャスターが周囲を探っているのを直接視認し

「バッド・カンパニー!」

カブトムシに向けて銃撃。
視界を覆うように発火炎を積極的に炊き、それを目くらましに撤退を始める。
カンパニーの数体が伊介を急かし、キャスターを自ら引きずり駆けだすが

「逃げられると思ったのか?その程度でよォ!」

猛進するカブトムシ。
見た目は生物だが、未現物質によって構成されたそれはまともな生態など有していない。
最低限の攻撃機能を有したある種の兵器に生物としての反応は極めて薄く、ひたすらに操祈を殺そうと動く。

「追いすがれると思ったか?おれを放って」

即座にそれを抑えんとするライダー。
一瞬自分のかたきである女の姿に囚われ生じてしまった隙。
それでも垣根帝督の速度なら反応できると思った。未現物質の鎧なら弾き返せると思った。

破砕音。
ガラスのコップが割れるような音を立てて、それこそガラスのコップを砕くような気軽さで。
ニューゲートは純白のカブトムシを踏み砕く。

「おれのナワバリで暴れてんじゃねえよ、ハナッタレが」

『手出しを許さぬ海の皇のナワバリ(ウィーアーファミリー)』。
すでに旗を掲げ、一帯をナワバリとしていた。
NPCも、多数の事件からくる不安ゆえか、操祈の洗脳したNPCの根回しゆえか、それを無意識のうちにするりと受け入れていた。
だからこそ、この地の防衛線においてエドワード・ニューゲートは圧倒的な力を発揮する。
科学の都市が誇る超能力者の産み出した重戦車すら容易く屠るほどに。


403 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/11(月) 19:57:05 G3311Gqs0

「なーんだ♡、終わり?避難するまでもないじゃない」
「「いや、まだだ」ゾ☆」

安心したような声を漏らす伊介に二人のサーヴァントが答える。

「垣根帝督は、この程度じゃ死なない。だから私はマスターを殺さずに念入りに自害を命じたんだゾ」
「そこにいるな。出て来いよ、おれが相手してやる」

地震の余波を受けて崩れかけた建物の影を指す。
数瞬おいて霊体化していた男が像を結ぶ。
天使のように幻想的な白い翼に白い衣装。
垣根提督本体が堂々と姿をさらし……それに続いて数十体のカブトムシも現れる。

「……ファンタジーやメルヘンの景色だな、まるで。似合ってねえぞ」
「自覚はある。俺の趣味じゃあねえよ」

僅かに言葉を交わす。
今度こそ、即座に開戦。
翼を指揮棒のように振るうと、カブトムシの砲門から一斉に弾丸が放たれる。
それをニューゲートが薙刀から広範囲に放った震動で、刑兆が二つ三つ程度だがカンパニーの砲火で迎撃。

『港で待て!』
『さっさと片せよ!』

念話を交わす。
遅れて、迎撃時の爆音が響く。
白い巨体と白い群体がぶつかり合う戦場を3人の学生は必死に離れた。

「ねえライダーから離れて大丈夫なの!?このキャスター、すんごい弱いわよ!」
「いいから走れ!建物から離れろ!」
「伊介病み上がりなんだけど!」
「おれはてめーらなんざどうなろうと構わねえが、親切で避難誘導してんだよッ!
 ライダーの攻撃か、そのせいで崩れた建物に巻き込まれたきゃベッドでグッスリしてんだな!」

怒声が響きあうが、それが雑音に成り下がるほどの戦闘音が彼方まで響いていた。
カブトムシの砲撃音に加えて、足元を何度も揺らす悪魔の力。
長く続けば一帯は更地になりかねない。

「ああ、もう!キャスター、あんたまた車とか拾えないの?」

駆けながら話を振る。
しかし返事はない。
刑兆に引き摺られながら能力を行使しているようだ。

「何してんの!?」
「NPCの……避難をぉ、ぜー、ぜー……させてたわぁ」

殆ど自らの足を使っていないがすでに疲労困憊。虚弱が過ぎるのに呆れが走るが

「そんなことよりあたしたちの方を優先しなさいよ!」
「いや、悪ィがそれは重要だ。それがないとライダーのやつがあのメルヘン野郎を取り逃がしかねねぇ」

はぁ!?と伊介がかみつき気味にいろいろとまくし立てるが刑兆は無視して

「港に向かうぞ。そこで待てとよ」

キャスターを担ぎ上げ、バッド・カンパニーを斥候に出しつつ走り続ける。
伊介も仕方なくそれに続く。


404 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/11(月) 19:57:24 G3311Gqs0

(なんで垣根帝督がここに来たのかしらあ?)

運動をやめたことで思考に集中する。
野蛮力の専門は刑兆たちに任せるのならば、自分は頭脳を駆使する。
そのくらいは果たさなければプライドが許さないし……何より自分は役に立つと示せなければ切り捨てられてもおかしくないのだから。

(自害は命じた。それが効いたのは人吉善吉に直接会ったんだからまず間違いないわぁ。
 ギリシャの大英雄ヘラクレスだって、マハーバーラタのカルナだって、令呪の命令には逆らえない。
 垣根帝督は、あの時間違いなく自害している。未現物質でスペアを作ろうと、一つ残らず死んでいなければおかしいゾ)

操ったNPCを中心に避難誘導に能力を行使しながらも高速思考。
NPCの庇護という点でライダーを援護し、戦況を有利になるよう推論と偵察を進めていく。

(もう一人、垣根帝督が召喚されていた?ならば気配遮断を持っていたところから二重召喚、あるいは歪曲召喚。
 ライダーはもういないから、キャスターかバーサーカーの霊器にアサシンの二重召喚スキルを得たか、何らかの処置でクラスを歪められた)

二重召喚のスキルは三騎士のクラスでは活用できない。
まあ垣根帝督にその適正はないだろうが。
可能性はごくわずかながら同一人物が別クラスで召喚され、何らかの理由でアサシンの特性を得た。
だとすればこの垣根帝督のマスターは相当の魔術師だ。
二重召喚もクラスの歪曲も容易くやれるものではないのだから。

(……いえ、違う。生前私が垣根帝督に手を出したことはない、わよね?うん、ないない。
 この聖杯戦争で自害させたのが初めてのはず。さすがに別の聖杯戦争の恨みとか言われたら記憶力にございませんとしか言えないけど☆
 殺されたのは死んでも忘れない、と言っていた。あの垣根提督は私が殺した垣根帝督だ)

サーヴァントは英霊の座に帰ればほとんどの記憶は残らないし、召喚時に別の聖杯戦争の記憶を持つことはごく稀だ。
何者かがこの聖杯戦争で脱落した記憶を保持した垣根帝督を召喚した……?

(どうあれ今度のマスターはかなりの腕前力とみて間違いないでしょうねえ。
 究極の創造である未現物質を打開するにはマスターをどうにかするしかほぼないしょうし……)

避難させているNPCの何人かを敵マスターの捜索に動かす。
探すのはさほど難しくない。
大多数がライダーの自信を感じて、洗脳したNPCにあおられて避難を始めている。
にも拘らず留まろうとするもの、逆に向かってくるものがいればそれは間違いなくマスターだ。
直接見る者、映像を探る者、それらの情報を束ねていき……

「うそ…なんでここに」
「あ?なんだ?」

絶句するキャスターの様子を不審がり、刑兆が声をかけるが


405 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/11(月) 19:57:53 G3311Gqs0

「俺が退路を予期していないと本気で思ったのか?」

白いサーヴァントが目の前に立ち塞がっていた。

「俺は俺の臓器を復元・複製できる。脳も含めてな。
 てめえや第三位のクローンみてえに主体を必要とせず、ネットワークを構築せずとも個体ごとの活動ができる。
 こいつには相応のリスクもあるんだが、問題が生じるまえに殺せば関係ねえ」

血走った眼で操祈のみを見据え、翼を広げる。
刑兆がバッド・カンパニーを展開させるが

「失せな。雉も鳴かなきゃ撃たれねえよ。ギャーギャーうるさくしねえならこの場は見逃してやってもいい」
「敵サーヴァントのそれを信じろってのか?」
「第五位は俺が殺す。それは決定事項だ。だから邪魔するなら容赦はしねえ。
 だがお前を俺の手でわざわざ殺してやる必要はねえ。やっても別に構わねえが」

眼中にない。
養豚場の豚を見る方がまだ相手を意識している。
部屋の中に小蠅がいるのを見つけたような眼。
羽音があまりにうるさければ殺すが、そうでないならわざわざ殺すのもめんどくさいというような眼。
ただその目が操祈に向くと漆黒の殺意に染まる。
その眼光を受け止めながらも怯むことなく、真っすぐ睨み返す操祈。

「向こうのあなた、みぃんなライダーに負けたみたいよぉ☆
 学園都市の第二位もさすがに史上の英雄と肩を並べるのは難しかったかしら?」
「それがどうした」
「彼ならすぐに合流できる。もし私たちを処理できてもあなたに勝ち目はないでしょ」
「それがどうした」

虹村刑兆は眼中になく、食蜂操祈の言葉には聞く耳を持たない。

「どうでもいいのさ、そんなことは。しいて言うならあれには手出しするなとマスターが言ったってのはあるか。
 だがすべては些事だ。さっきも言ったろ?てめえを殺せればそれでいい」
「…あなた、いくらなんでもそこまでこだわるタイプだったかしらぁ?」

翼を構える。
避ける手段など何もない。

「じゃあな。死ね」
「もう、いくら何でも」







「視界が狭すぎ。私みたいに色んな視点でものを見ないと☆」

ニューゲートに蹂躙された未現物質の兵隊の亡骸。
その戦場の跡地に訪れた一人のNPCがいた。

「そこから北へ一撃、建物を撃ち抜く勢いで撃って。南にも同じように、ね☆」

心理掌握によってマスター探索に動いたNPCの一人を通じてライダーに指示を下す。
その攻撃の方向は刑兆たちの向かった先。
敵のいる場所を示す観測主。

ライダーは状況を聞き、両の腕を眼前で交差させ。
左右の空間を殴りつける。

どん!!!
と、地面が揺れる音。
ニューゲートが両腕で放った震動が貫通し、建物を崩す。
垣根との戦闘の余波もあり、南北に開けた一直線の空間が出来上がる。


406 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/11(月) 19:58:19 G3311Gqs0

「お前の言う通り道はできたが間に合うもんじゃねェぞ!」
「大丈夫よお☆走る必要なんてない。そういう野蛮力にまみれたことはうら若き乙女やお爺ちゃんには似合わないし。
 あ、もう少し右に避けてちょうだい。あなた大きいから、そこにいると道の向こうが見えないかも。それとちょっとお芝居に付き合ってもらうわよ」

まるで道を譲らせるようにニューゲートの位置を動かす。
同時にNPCの手に持たせていた銃、暁海ほむらの残したベレッタを向ける。
サーヴァントに何の効き目もない銃を向けられたところで警戒するまでもなくニューゲートは困惑を深める。
何となく南の方を向いてみると、緑色の服をまとったサーヴァントらしき存在が視界に入った。

垣根提督は突如できたその道に反射的に目をやった。
突如発生した攻撃の出本を確かめる、そんな意図があったかもしれないし、なかったかもしれない。
そんな思考はあったとしてもすぐに消え去った。

「は…はは」

失笑。
意識せず口の端から笑いが漏れた。
目の前にいるのは食蜂操祈だ。もうそんなものはどうでもいい。
崩れた建物の向こうにはやりあっていたライダーがいる。邪魔だ、放っておけ。
その先。
その向こう側にいる。
ああ、何度死のうと殺されようとも忘れるものか……!
気配を感じられない距離だが、かなたに見える風貌だけで十分。

「一方通行ァァァァァァ!!!!!」

轟!!
と翼を翻し、他のすべてを無視して翔る。

対して男は、応えた……かに見えた。
しかしその実一方通行の視界に入っていたのは垣根帝督でもエドワード・ニューゲートでも食蜂操祈でもなかった。

操祈に操られ、ニューゲートに指示を出したNPC。一方通行と垣根提督の間に立つ少女。
それはベレッタという小さな拳銃を構えていた。
操祈が纏うべき、常盤台中学の制服を着せられていた。
髪型は茶色のショートボブだった。
奇妙なゴーグルのようなものをつけていた。
総じて、かつて10000人以上殺した、守ると誓った少女たちの姿に極めて近似していた。

当然それらしいただのNPCを、操祈がそれらしく整えただけ。
だが理性を喪失した一方通行を揺さぶるにはそれだけでいい。
妹達のようなものを視界に収め、次の瞬間に垣根帝督が襲い来るのを見れば。

「■■…タ、ァァァァァァァ!!!!」

その二つ名にふさわしく加速する。
ただひたすらに少女を守るため、自らの歩む道に背を向けないため。

バーサーク・アサシン。バーサーカー。
狂気に堕ちた二人の超能力者がぶつかる。


407 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/11(月) 19:58:40 G3311Gqs0

「同窓会は二人でやっててちょうだい☆」

敵マスターは見つからなかった。
が、代わりに大きな騒ぎを起こしている大物を捉えた。
なんでここにいるのか、と一瞬驚いたがむしろ利用するべきと反転。
垣根提督は一方通行を、一方通行は妹達を見逃せない。
そして彼らに倶に戴く天はあらず。ぶつかり合うしかない。

危機を脱したことを察し、一息。

「第一位と第二位をぶつけたわ。さ、後は若い二人に任せるとして私たちはライダーさんと合流して、港に行きましょ☆」

刑兆から降りて歩き始める。
脅威から離れ、味方との合流を考えるなら慌てて走る必要はない。
ライダーが来るまで余計な消耗をしないように離れ、合流したら彼の巨体と脚力で離れればいい。
そんなマイペースな落ち着きを取り戻す。

「…アンタ、前あのアサシンと会った時は慌てて逃げだしたけど今度は違ったわね♡
 そんなにあのおジイちゃんとの協力が大事ってこと?」

見捨てなかったのを疑問に思うような、態度の差に憤るような。

「ああ、そうねえ。垣根帝督を怖いと思ったこともあったんだけどぉ」

人差し指を顎に当てて少し考えるようなそぶり。
リモコンを握った手でこつんと額に手を当て

「忘れちゃったわぁ、そんなの☆」

かち、と道中何度も聞こえたリモコンを操作する音を響かせながら呑気に答えた。


408 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/11(月) 19:59:03 G3311Gqs0

南下する垣根帝督を見送る操祈、ニューゲートたちは穏やかなものだった。
だが、北上する一方通行を前にした暁美ほむらはそうはいかなかった。

温泉街にまどかがいると聞いている。
そこに美樹さやかが向かい、探すことになっている。
いかせてはならない。
あのバーサーカーが暴れては、まどかの安全に支障をきたす。
逃がすわけにはいかない。
でも、どうやって…………?


逃がさない……闇……牢獄……閉じ込める……結界


……!


盾を捻り、時を止める。
盾の中から、あるものを取り出して左手で強く握ると


閃光があたりを包んだ。


時が刻み始めた瞬間、世界は塗り替えられていた。
月下の街並みであったはずが、まるで人気のない廃ビルのような景色。
不気味な月の見降ろす闇夜と比して劣らぬ、おどろおどろしく仄暗い空間。
顔のない絵画が飾られ、纏わりつくように茨のツタと侵入者を拒むような鉄条網が伸びる。
確認できる生命体は少ない。
暁美ほむらとリンク、間桐雁夜と一方通行、垣根帝督、エドワード・ニューゲートと近くにいたNPC。
そして随所に咲き誇る薔薇園。
しかしその薔薇に生気はなく、薔薇に惹かれる蝶もまた息吹を感じ取れない。

(穢れの溜まったグリーフシードを孵化させた。ほんの少し捕らえておければいい。その間に、まどかを……!)

いつかの世界で美国織莉子が行ったように、魔女を利用して敵を閉じ込める。
手段は、択ばない。

「何だ、コイツは……」

急激な変化に警戒し、突撃した垣根帝督も、迎え撃たんとした一方通行も動きを止める。

「立ち入り禁止……?」

随所に書かれた〈Kein Durchgang!!〉の文字をNPCを通じてなんともなしに読み上げる操祈。

「こいつァ、まさか固有結界か」

呟くように言葉を漏らすニューゲート。

「え、それじゃあ」
「術者が解くか、あるいは倒されるかしねえと脱出はまず不可能。立ち入り禁止の薔薇園、となると術者は女か?」

悪趣味な心象風景だと見渡すと。
動体が増えた。


409 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/11(月) 19:59:37 G3311Gqs0

立派なカイゼル髭を生やした綿のような頭部から細長い体を生やした異形が歌いながら無数に現れる。

‐Das sind mir unbekannte Blumen.‐

例えるなら足先は蝶の羽のよう、体はタンポポの綿毛のよう。

‐Ja, sie sind mir auch unbekannt‐

まるで蟻から生えるアリタケのように、蝉から生える冬虫夏草のように、蝶から伸びた綿毛の怪物。

‐Schneiden wir sie ab? ‐

両の手に薔薇を剪定する鋏を持ってくるくると宙を舞う。

‐Ja, schneiden wir sie ab.‐

芋虫にそのまま蝶の羽を生やしたような生き物も舞い現れる。

‐Die Rosen schenken wir unserer K&ouml;nigin.‐

複数の目を持ち、こちらもカイゼル髭を蓄えて。

‐Und die schlechten Blumen steigen auf die Guillotine. ‐

赤と白の混ざった大きなもの、青一色の小さなもの。

‐Ja, schneide sie ab! ‐

警戒音のようにベルを鳴らして、歌を彩る。

‐Ja, schneide sie heraus!‐



鎖が飛んだ。
侵入者を捕らえる魔の手が伸びる。
一方通行は反射した。
垣根帝督は翼で弾く。
リンクはほむらを抱えて回避。
ニューゲートはNPCを庇い縛られるも、全身の震動が容易くそれを引きちぎる。

些末な攻撃は通用せず。
それを感知したのか新たな怪物が姿を見せた。

ニューゲートに匹敵するサイズ。
不気味に赤い芋虫のような体に、薔薇の花弁のような蝶の羽。
茨のような足を無数に生やし、無数の眼で侵入者を見つめる。
蝶になろうとして、花になろうとして、失敗したような醜い姿の怪物が奇声をあげる。





時の勇者が奏でる。天使のバーサーカーが歌う。
金のキャスターが舞台を彩る。白のアサシンとライダーが踊り狂う。
魔女が歌い、演出する。まだ見ぬキャストも御覧じろ。

音楽の時間を、始めよう。


410 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/11(月) 20:02:39 G3311Gqs0
ここまででひとまず投下終了になります。
タイトルは英雄たちの交響曲、で。
ここで終わりにということでしたら明日には状態表を書き上げます。
続きをお許しいただけるならどんなに遅くても19日には仕上げます。

他にも指摘などあればお願いします。


411 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/19(火) 23:08:03 h/xH752k0
遅くなって申し訳ありません。
投下します。


412 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/19(火) 23:08:51 h/xH752k0

混迷する状況下で真っ先に動き始めたのは暁美ほむら。
魔女結界を用意した立役者であること、この場で唯一その知識を持ち得る者であったことが強みとなり先んずる。
狙いは変わらず間桐雁夜。
ひたすらに鹿目まどかに害なす物を狩る。

ほむらに次いで動きだしたのは一方通行。
狂化によって複雑な思考を放棄した彼は状況を深く考察しようとしない。
混乱することすらできず、ただマスターの苦境に本能的な反応を示す。

それとほぼ同時に垣根帝督も追いすがる。
一方通行ほどではないにしろ狂化した思考は複雑な思考を放棄し、ただ殺意を迸らせるのみ。
守勢に退こうとした一方通行、それに敵対するほむらとリンクに同時に攻撃を放つ。

「お前は俺が殺すんだよ、一方通行ァ!」

轟!と翼を唸らせ、未元物質による猛攻。
ほむらたちに対しては何の変哲もない打撃を、一方通行には結界内の歪な空気や音を未元物質で加工して放つ。
リンクはほむらを抱えて咄嗟に跳躍、それを難なく回避。
一方通行は一瞥すらせず、降りかかる災厄をすべて反射した。
狙いを曲げられたこの世ならざる現象は周囲に解放され、使い魔を巻き込みながら一方通行を除くすべてのサーヴァントに襲い掛かる。
ハイラルの盾、未元物質の翼、大薙刀とそれがぶつかる音が響く。

「■■■!!!」

宣戦布告の雄叫びを上げる。
マスターの指示したターゲットも。
旧怨ある宿敵も。
守るべき者を騙る三下も。
邪魔立てする羽虫も。
全て、殺すと。

「バレちゃったみたい☆まあクオリティ力低いコスプレじゃちゃんと観察したらそうなるわよねえ」

仲間の影に隠れながら軽口を叩く操祈。
ニューゲートの方はそれを庇いながらだが、呆れ半分慌て半分といった様子。

「そう呑気にもしてられねェだろ。あの二人をぶつけるっつうのは上手くいったみたいだが、おれ達まで巻き込まれちゃ世話ねェぞ」
「それはまあそうだけど。術者を真っ先に狙って脱出しましょ、あの不気味な蝶みたいな怪物を」

これは恐らく鹿目まどかの記憶にあった魔女結界。
魔法少女が他にも参戦していたのか、天戯弥勒が何かしたのか、そこにいる暁美ほむらが仕組んだのかはわからないが。
魔女を倒せば結界も解けるはず。

「アレか」

無造作に拳を打ち出し、震動で魔女を仕留めようとする。

『セイバー、止めて!』

指示を受け、その振動も斬り払うリンク。
魔女を庇うその仕草に眉をしかめる操祈たち。

(結界から逃がすわけにはいかない。ここにサーヴァントを引き留めて、その隙に美樹さやかがまどかを確保してくれることに期待するしか……!)

さすがに魔女を守りながら戦うのは初めてだ。
しかしそうでもしなければ、間違いなくサーヴァントならば容易く魔女を仕留めるだろう。
そして同時に、勝機がないと悟った魔女が逃げ出すのも防がなければならない。

(魔女は仕留めさせない。かつ逃がさない。サーヴァントも逃がさず、時間を稼ぐ。
 かといって魔女が味方をしてくれるかと言えばそんなわけはない。今までで一番の苦境ね)

でも、やるしかない。
自らも両の腕に銃を構え、使い魔を撃ち払いながらリンクと二人、魔女からつかず離れずの距離をとる。
あのバーサーカーたちはどう動くか、と視線をやると。


413 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/19(火) 23:09:41 h/xH752k0

衝突。
白い翼を打ち鳴らし、目にも止まらぬ速度で襲い掛かる。
対する一方通行は背中に竜巻を背負い、翼のように唸らせて空を翔る。
音を置き去りにした二人の戦闘は何物を立ち入ることを許さず、近くにいただけの使い魔もソニックブームで切り裂かれていく。
その亡骸が突如高速で炸裂弾のように放たれる。
ベクトル操作で加速した弾丸だ。
真っすぐ垣根に向かって跳ぶが、空気抵抗に削られて消滅する。
その余波、空気の振動が見えない脅威となって飛来する。

「はっ、見飽きた手を!」

それを垣根は容易く防ぐ。
六枚の翼を展開して衝撃を受け止め、返す刀で未元物質を打ち出す。
一方通行は羽虫にたかられたとでもいうようにそれを手で払う……が、突如炸裂。

「突沸ってやつだ!沸点を超えた過熱状態のものが刺激を受けると、安定を失い急激に蒸発する!体積の膨張による爆裂がおこるってな!
 偶然の作だが沸点の低い未元物質!突沸する固体なんてお目にかかったことあるかァ!?どうだよ一位」

ま、こんなので死ぬ玉じゃないのは分かってる。
だが今のは反射しきれてなかった。やはり既存の物理法則の外から攻めるべきか、と一瞬思考。
群がる使い魔に蹴りを入れ、その勢いで加速し突撃する

「■■■!!!」

叫び、震え、反撃。
右の拳を空間に叩きつけるように振るい、その勢いで振動した空気を打ち出す。
それは能力で加速し、『震動』の域にまで至る。
空間にヒビが入るようなびきり、という音を立てて襲い来る震動波。
翼を振るい、迎え撃つ衝撃を利用して方向転換、回避。
追撃のように左手を振るう一方通行。
掌で空気を高速で渦巻かせ、プラズマ化した大気を炎のように打ち放つ。
広域に放たれたそれに対し、咄嗟に未元物質の盾を生み出し防ぐ。
そこへ響き渡る沈痛なメロディー。
『闇のノクターン』、一方通行の歌う魔術。
盾も翼もまとめて縛ろうとする闇に驚愕を露わにするが、必死にそれを回避しにらみつける垣根。

「ああ……さすがだ、第一位。さすがという他ねえ。
 狂化し(イカれ)てるのは俺もお前も同じだ。サーヴァントになっているのも同じ条件だ。
 くそ下らねえ霊器に押し込めたうえに自慢の脳味噌鈍らせてマスターなんて枷まで背負って。
 それでもお前は、俺より強い」

嫉妬がある。憎悪がある。そして僅かに、しかし確かに羨望がある。

「認めてやるよ。お前は俺よりほぼ全てにおいて上まわる。だがな、一つだけ俺に優位な点がある」

呼吸を整えるようにできた僅かの間で睨み付ける。

「俺はお前を殺すため『だけ』にここにいる」

聖杯に託す願いは、一方通行と再戦し、殺すことだ。
そのためにここにいる。
そのためだけに、ここに来た。


414 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/19(火) 23:10:02 h/xH752k0

突如、一方通行の頬に小さな傷ができる。
同時に垣根帝督の纏う未元物質にも勝手に損傷が発生する。

「俺たち超能力者(レベル5)の序列は単純な強い弱いじゃねえ。『学園都市の技術にどれだけ応用が利くか』だ。
 だからこそ単純な破壊力なら超電磁砲の上をいく原子崩しは第四位にとどまり、凄まじい汎用性と攻撃力を持ちながら『木原』の脳味噌でもどう利用していいか分からねえ根性バカは七位に収まった。
 そして俺も、お前の後塵を拝するを得なかった。まあ戦闘でも四位は三位に負け、俺はお前に負けと往々にして順位がひっくり返ることはほぼねえが」

予想外のダメージ戸惑いを見せる一方通行に語り続ける。

「逆転するにはどうするか。死ぬ気で考えた。死んでも考えた。
 ……シンプルな答えに至ったよ。考えてみりゃお前の言う通りだ。学園都市の序列では評価されない項目でならお前に勝てるはずだ、と」

事実、単純な身体能力なら一方通行は超能力者たちのなかでも間違いなく下位だ。
勝機があるとしたら前線に出るタイプでなく、かつ女性の第五位くらい。
それどころか大多数の無能力者にも劣るだろう。
それすらも容易く覆す『一方通行』という能力がすさまじいのだが。

「誰が言ったか、超能力というのは炎に似ている。蛮人は松明に炎を灯すが、文明人は炎を利用して鉄を打つ。
 お前はベクトル操作で重力や大気も操る。俺は未元物質で大気や光の質を変える。そうした応用ができたな。
 ならおそらくだが、お前も俺が今やったのと同じようなことができるはずだ」

再び一方通行の体と未元物質に損傷が起こる。

「ヒントは腐るほどあったぜ?
 お前の能力は、この世の物理法則に従わないものは反射できねえんだよな?
 俺はかつて本来なら無害なはずの陽光や風に干渉して、この世ならざるベクトルでお前を攻撃した。
 魔術、なんて科学の外のオカルトな代物にも手こずったらしいじゃねーか。ならよー」

垣根の背の六枚の羽根が震えて調律された音を奏でる。

「未元物質でアブラカダブラ、呪文を唱えたこの世ならざる天使サマの魔術をお前は理解できるのか?」

轟!!!
と凄まじい風の刃が一方通行を襲う。
狂気に染まったその顔に変化はないが、もし理性を残していれば多少の感情の発露は見られただろう。
即座に反応し回避行動に移る……本来の一方通行なら必要ないはずの行動だ。
それに気をよくしたか、小さく笑みを浮かべる垣根。
その唇の端から一筋の血が流れる。

「ちっ、ミスったか。能力者が魔術を使うと起こる拒絶反応、てめえはもう少し上手く躱してやがったか。
 超能力者としても魔術師としても俺より勝るか。やっぱ最高にムカつくなクソッタレ。だがまあ」

背中の翼から舞った羽が傷口に触れると即座に癒える……正確には傷口を未元物質で補填しているのだが。

「問題はねえ。心臓が裂けようが、脳味噌がつぶれようがそれは俺にとって致命になりえない。
 未元物質はずいぶん昔に脳味噌含む臓器の複製を可能とした。些細な傷ならすぐ補える」

それに、と付け加えながら再び未元物質の翼が震わせると今度は広範囲に雷が降り注ぐ。
その代償には小さく羽が一枚落ちただけだった。

「こいつも俺の臓器ってことは拒絶反応も押し付けられる。時折調節にミスるが、慣れればそんなもんは減っていく。
 身一つしかねえお前と、無限に増える俺の勝負。結局そこに至るわけだが……今の俺にはお前に届く牙がある。
 これまでのようにはいかねえぞ!!!」

翼が鳴る。
響き渡る詠唱が一方通行を蝕む兵器を生み出していく。

「アギダイン」

強大な炎が突如として燃え上がる。

「ガルゲイト」

風の刃が音もなく襲い掛かる。

「マハジオダイン」

雲もない空間から極めて広域に稲妻が走る。
事象はともかく、その在り方は一方通行にも理解できるものではなく、回避を余儀なくされる。
理解の外にある『魔術』という理論が、『未元物質』による詠唱で生み出されることでこの世の理からも外れた現象となってさらに襲い掛かる。

「はっ、どうだよ一方通行!さんざんメルヘンメルヘン言われた俺だがよ、こんなダサい格好になったら天使サマの魔術なんて代物使うマジのメルヘン野郎になっちまった!
 笑ってくれていいぜ!笑えよ、一方通行!狂ったせいで笑い方も忘れたかァ?俺は逃げ惑うお前の面拝むだけで笑えてくるぜ!」

科学の街での超能力比べは新たな段階へ。
神秘溢れる儀式で科学と魔術が交わり、激しさを増す。


415 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/19(火) 23:10:50 h/xH752k0

空を舞う超能力者の勝負と同時に、地上でも英傑がぶつかり合っていた。

ガァン!と激しい金属音を打ち鳴らし、白と緑の影が切り結ぶ。
力比べは白い戦士に軍配が上がる。
巨大な薙刀は剣と盾を交差させても受けとめきれず、後ろに跳んで受け流す。
そこから前転、足元を潜り抜けて背後へ。
体格差をも利用して‭隙を狙う。
反転、即座に逆袈裟。
対してニューゲートは薙刀を振るった勢いをそのままに強く地面に踏み込み、周囲一帯に地震を起こし弾き飛ばす。
躱しきれず吹き飛ばされるリンク。
それでも空中で苦し紛れにバクダンを放ち、追撃を防ぐ。

僅かに開いた距離で二人が体勢を立て直そうとする瞬間。
群がる使い魔。些細であるが無視はできない脅威。
二人は得物を振るいそれを打ち払う。
退魔の剣が真価を見せた。
触れるだけでするりと、空を切るのと変わらぬ速度で使い魔を切って捨てる。
ニューゲートも薙刀を振るい、容易く迎撃する。
だがそこで武器の違いが二人に差を生み出した。
片手で扱う剣と両手で扱う薙刀。
取り回しの速度の違いは僅かながら勝敗の一因となる。

ニューゲートの武器がまだ外に流れている瞬間に、リンクは再び武器を構える域にまで立て直す。
そして

「はぁっ!」

刺突。
心の臓を穿たんと繰り出した神速の一撃。
武器を構えなおし受け止める猶予はなく、決まるかと思われた。
対するニューゲートは、瞬時に武器を手放していた。
その空いた手で何もない空間を掴み、武器を振るった勢いの慣性そのままに『投げた』。
すると

「な…!?」

突然の事象に驚きの声をあげるほむら。
ニューゲートの腕の動きに合わせたかのように大地が傾いたのだ。
グラグラの実の力。世界最強と言われた超人種。
その力は島一つ程度なら容易く傾ける。
世界から切り離された固有結界の中ならば、その世界そのものを揺るがすことすら可能とする。
揺らいだ足場に、ニューゲート以外の地に足をつける者はバランスを崩し、刺突の軌道も乱れる。
それと同時に揺らいだ勢いそのままに薙刀が綺麗にニューゲートの腕に収まる。
そして躱しざまに一閃。
かろうじて盾で受けるが、力の差は如何ともしがたく数メートル吹き飛ばされる。


416 : 名無しさん :2016/07/19(火) 23:11:11 h/xH752k0

射程の差。それもまた勝敗の一因となる。
リンクの三倍はあろうかという体躯のニューゲート、それにふさわしいリーチと長大な武装。
数メートルの距離はリンクにとって一方的に攻撃を受ける間合いだ。
圧倒的な力による蹂躙をかろうじて捌き続ける。
唐竹を避け、切り上げを剣で受け流し、刺突を盾で受け、その勢いを利用して距離をとる。
薙刀の射程から離れれば優位は逆転する。
即座に弓を構えて放つリンク。
それを躱し、震動で対抗するニューゲートだが、小兵のリンクとでは的の大小において言うまでもない不利が生じる。
鳥の目すら射貫くのではという正確なリンクの射を躱し、迎撃し、震動で反撃する。
余波で時折使い魔も打倒しながら、駆け引きが続く。
いかなる距離をとるか、いかなる戦略をとるか。

ニューゲートが薙刀先端に能力を収束。
広範囲に震動と斬撃を放つ。
リンクは大きく横に跳んでそれを回避。
即座に反撃の一矢を射ようとする……が。
再び群がる大量の使い魔、さらに魔女までもが攻撃に参加する。
それも全てリンクに向かって。

「薔薇園は立ち入り禁止らしいぜ?」

拳を構え、突撃しながらからかうような声かけ。
リンクは足元で踏みつぶされた薔薇に気づいた。
ニューゲートが操祈を通じて把握していた結界内の文字、〈KeinDurchgang!!〉の意味。
情報の差も、また勝敗を決する一因。
薔薇園におびき寄せ、敵を利用して隙を作る。

リンクは即座に剣に魔力を巡らせ、回転切り。
使い魔の一掃には成功する。
だが、もう一つの縛りが彼を邪魔した。
魔女を仕留めれば結界が解け、敵が解放されてしまう。
それは避けなければ、と魔女に対しては峰打ちで吹き飛ばすにとどめる。
その不合理な動作が隙を生み、ニューゲートの一撃を躱す時間を時の勇者から奪い去った。

繰り出される正拳突き。
それを受ける左手の盾。
まるで鈍器を打ち据えたような衝撃音、アイアンナックすら霞む豪の一撃。

「うぁッ!?」

拳の衝撃はかろうじて盾で受けっきった。
しかし震動は伝播する。
放たれた拳にまとった能力はハイラルの盾を超え、その腕を侵す。
再起不能、というほどではない。
しかし暫くはまともに使いものにはならず、盾や弓の使用には支障をきたすだろう。
その苦境でも諦めず、リンクは反撃の剣を振るった。
それに少しだけ驚いたような反応を見せるが、当然のように薙刀で受け止め、軽々と跳ね返す。

僅かに開いた距離。
そこでリンクはバックステップ。引き際に矢を左手で抜き出す。
それをブーメランかあるいはスローイングナイフの要領で投擲。
弓を用いたものには威力も速度も精密さも劣るが、侮るべからざるは武芸百般の英傑か。
十二分な殺傷手段であるそれをニューゲートはかろうじて回避し、追撃に踏み込もうとする。
だが

「あァ!?」

回避したはずの矢が後ろから右腕に突き刺さる。

(跳弾…?いやあり得ねェ。いくらなんでも真っすぐ戻ってきて威力を一切損なわないなんざ無理だ。何をした……?)

突き刺さった矢を引き抜きながら敵を見る。
だらりと力なく下がった左腕だが、右腕にはしっかりと剣を握り構え続けるリンク。
視線にはいまだ力漲り、戦場を見据えている。
その目に映るのは矢を引き抜く敵の姿。そしてその後方でいまだ闘い続ける二人のサーヴァント。
ニューゲートが魔女の特性を利用したように、リンクも一方通行の能力を利用したのだ。
一方通行の反射により、彼に放った攻撃は威力そのままに跳ね返ることを剣を交えリンクは知っていた。
ならば動きを先読みし、的確に矢を打ち込めば跳ね返った攻撃を敵に改めて当てることも可能となる。

互いに片腕にダメージを負った英傑二人。
再びにらみ合い、開戦。
盾を打ち捨て、剣のみで突貫するリンク。
薙刀を送還し、拳と能力で迎撃するニューゲート。
盾での守勢も、弓での遠距離戦もできないなら。
不自由な片腕で薙刀を振るえないなら。
剣/拳の届く距離でひたすらに鎬を削るしかないと。


417 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/19(火) 23:12:18 h/xH752k0

それを離れたところから見ることしかできないほむら、そしてNPCを介した操祈。
使い魔相手に自衛し、魔女相手にも目を配るほむらにサーヴァントの戦局に介入するはなかった。
NPCに戦闘手段はないが、彼女に使い魔は殆ど害をなさない。
薔薇園を地震や攻撃の余波で荒らす他のサーヴァントへの敵意が強く、木っ端に過ぎない彼女は完全に無視される形になっている。
それを幸いとひっそり戦場を離れていく。

相も変わらずライダーの攻撃範囲は凄まじい。巻き込まれてはたまったものじゃない。
第一位と二位の流れ弾が飛んでこないとも限らない。
庇護者から離れるのも危険だが、同行していても危険。
結論、まだ見ぬ敵を恐れるより目の前の事象から逃げるべきである。
その判断を司令塔である食蜂操祈本体へ、そこから刑兆を通じて念話でニューゲートに伝える。
その応答を待つなどせずそそくさと引き下がる。
NPCがやられたところで信条的にはつらいが、戦力的には特に響かない、と打算も込みで。

「…正直趣味が悪いのとは思うけど、技術力的にはすごいわね、キュウべえって」

学園都市出身の自分が言うのもなんだが。
才能ある少女を選んでいるとはいえ、その魂を物質化し、最期には固有結界の解放にまで至らせるとは。
知己と言えるものはいないが、魔術師が知ったら驚くなんてものじゃなさそうだ。

「これが心象風景だとすると、この結界の持ち主はどんな精神構造なのかしらあ?」

観光のような心持で敵の能力を考察。
一応現れえる敵を予測するのだから無意味ではないだろう。

(薔薇園に立ち入り禁止の文字。薔薇が好きだったんでしょうね。
 襲ってくるのは蝶のような怪物で、武器は剪定鋏。カイゼル髭は庭師がモチーフかしらぁ?こんなところにまで顔を出す、薔薇園と術者の数少ない味方。
 術者らしい怪物にも薔薇と蝶のモチーフが散見。溶け落ちたような顔に、無数の目。
 どこから見ても、蝶や薔薇の様に美しくありたかったという願望の表れに見える。
 崩れたメイクのような顔、歪な芋虫のような体と茨のような足はそうなれなかった現実とそれによる絶望力の発露、といった感じ?
 女としては共感する者があるわねぇ……ってあらぁ?)

思考しながら歩いていると前方に人影。
咄嗟に散在する瓦礫の一つに身を隠し観察。
これと言って特徴の見出せない、どこにでもありそうな茶髪に中肉中背の少年の姿が目に映る。
際立って脅威というものを感じないそれをNPCかとも思うが

(いいえ、辺り一帯のNPCは避難をさせている。地震があった海岸線であれだけ派手に騒ぎ立てて逃げ出さないNPCがいないとは思い難い。
 間違いなく聖杯戦争の関係者。一位か二位のマスター、でしょうね)

本体との接触であれば手の打ちようもあるが、無力なNPCを通じてではせいぜいが情報確保しかできない。
それも正面から対峙するのは避け、物陰からひっそりと。
熱に浮かされたようで足取りで結界の奥深く、戦場へと歩みを進める少年を見送る。

(正気じゃなさそうねえ。何らかの精神干渉を受けている。一位ならそういうのを放っておくとも思えないし、二位のマスターかしらぁ?)

追いすがって何かできるわけでもなく。
その存在を周知できたらこのNPCも解放して避難させようとあるかもわからない結界の出口を目指し、フェードアウト。
偽りの妹達は舞台を降りた。


418 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/19(火) 23:12:46 h/xH752k0

代わって舞台に姿を見せたのは浅羽直之。
バーサーク・アサシン、垣根帝督に従い北上した彼だったが開戦前に別行動をとっていた。
理由は単純、邪魔になるから。
もし敵が来たとしてもショゴスさえあれば多少は問題ない、と素気無く去るサーヴァントに何も言わず見送った。

実際闘えと言われても困る。そういうのはただの男子中学生には無理だ、水前寺ならともかく。
公園で見た、悪魔染みたバーサーカーの激突。
崩壊した学園を背景に繰り広げられた麗しきアーチャーの衝突。
徹頭徹尾介入できるようなものではない。

それでいいの?と声がした。
最初は幻聴だと思った。伊■■のために何もできなかった良心の呵責。
殺してやる、と声がした。
今度はアサシンが念話で何か言っているのだと思った。
逃げ惑う人々の声が聞こえた。
幻聴でも念話でもないと気付いた。
殺意と狂気に染まった数多の声が聞こえた。
憎悪に堕ちた女性の声が聞こえた。
響き渡る狂騒。脳裏に焼き付いて離れない美しい女性。
事実としてのぼせて浮足立った精神状態に追い打ちをかけるように突如聞こえてきた声。
体内にショゴスとやらを入れてからか。
ある種の体調不良、反動のようなものだと考察するが、むしろ体に訳のわからない代物を注がれて何の異常もない方が不気味なので、この変調には恐ろしさと同時にどこか安心も覚えた。
しかし異常な現象はむべなるかな、心を削る。
半ば放心し、必死に声から耳を逸らそうとしていると。
ひときわ大きな声が聞こえる。
その声を聴いてなぜか思った。天使がいる、と。

声の聞こえる方へ足は向かう。
震える大地を歩み、崩壊した街を超え、奇妙な空間に潜り込んでも進み続けた。
たどり着いたのは戦場だった。
蝶のような多数の怪物を抑えるように銃器を振り回す少女。
白いひげの巨大な男が大地を揺るがし、緑衣の剣士がそれに必死に食らいつく。
自らと契約したアサシンもまた闘っている。昼に見た、狂戦士相手に超常現象を引き起こして。

あ……と小さく声を漏らした。
頭の中で響く声を塗りつぶすような戦闘音に現実に引き戻され、恐怖が湯水のように湧き出る。
血の気が引き、ふらつき、バランスをとるために一歩足が前に出る。

――薔薇を一輪、踏みつぶした。
ぎょろり、と数十匹の怪物、数百はあろうかという眼がこちらを射抜く。

それに気付くものもはいなかった。
浅羽直之のサーヴァントである狂える暗殺者も。ナワバリを庇護する大海賊も。世界を救う時の勇者も。魔女を滅ぼす魔法少女も。
仮に気付いたとして、目の前の敵を放り出すほど気に留めるかは別だろうが。

けたたましい声を上げて使い魔が浅羽に襲い掛かる。
群がる使い魔が減ったことでようやくほむらがそれに気付く。
時を止め、銃を構えることも少しだけ考えるが、すぐに断念。
敵に囲まれたこの状況で誰とも知れないものを庇っているヒマなどないと。

おびただしい怪物に覆われ、最期を迎えるかと思われた。
次の瞬間、そこには悍ましい色と形の肉塊があった。
ずるり、とその肉塊が蠢く。
てかりのある真っ黒な色合いを基調に、猛毒のカエルやキノコのような極彩色の粘液がそこら中にへばりついている。
深海を揺蕩うタコのようにも、たるみ切ったゴムが火で炙られたかのようにも見える奇妙な質感。
この世ならざる生き物を想起させる、不気味な異物。
その表面が泡立つ。
次の瞬間、泡立った肉が液体のように流動して形を変える。
使い魔から宿主を守っていた外なる存在が、牙をむいた。

肉塊は触手を形成し、それを振り回す。
鞭のようにしなるそれが群がる使い魔を振り払い、さらに変形。
触手の先端が強度と鋭さを増し、数も増し、ズドン!!と弾丸のような速度で撃ちだされる。
使い魔の体に風穴を開け、次々に仕留めていく。
その脅威を認識したか、潮の様に引いていく使い魔。
それを確かめ、肉塊もまた一時矛を収める。
めりめり、と狭い空間を蛇が這いまわるような音が浅羽の体中から響く。
体の中央で不気味な鼓動を打ち鳴らす名残をのこして、どこにでもいるただの男子中学生が再び姿を見せる。
数多の魔女を見たほむらも見るだけで正気を削るような不気味な肉塊には顔をしかめた。
使い魔の動きを感じ、ほむら以外も続々と浅羽に気づき始める。
その誰もが――垣根までもが――大して気にも留めない。
そのうちの一人、一方通行と浅羽が一瞬目を合わせた。


419 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/19(火) 23:13:20 h/xH752k0

最も強大な声。最も高みにある声。天使のものだと思った。
その戦いを目にする。
翼を打ち鳴らし、様々な事象を引き起こし、ぶつけるアサシン。
その事象を躱し、時折雄叫びを上げながら反撃する天使。
なぜかその羽音や叫びを聞いていると頭が晴れてくる気がした。
羽音は呪文だと、叫びは呪詛だとその意味をリスニングできるようになっていく。
天使に啓示を受けたのかなどと頓狂なことを思っていると

再び使い魔が攻撃を開始する。
その発する声もより深く聞き取れるようになっていた。

「右手の鋏で切りつける」

動作を先読みして、まるでその道の達人の様に余裕をもって躱す。

「飛行の勢いを利用して頭突き」

左右から襲ってきた使い魔を、再び湧き出した肉の槍で迎撃する。

「取り囲んで、鎖で縛る」

肉塊が醜悪な翼のようなものを形成して飛び、廃ビルのような内装の壁面にへばりついて攻撃の範囲外へ。

使い魔の攻撃を容易く回避する浅羽の振る舞いはもはやどこにでもいるただの男子中学生で収まるものではなくなっていた。
とある世界では前兆の感知と呼ばれるもの。
別のある世界では見聞色の覇気を呼ばれるもの。
それに匹敵するレベルで、浅羽は使い魔の声を聞き取っていた。
その力の正体は、目覚めたPSI。
念話も聞き取るレベルに強化された聴覚……『強化』のライズ、その中でも感覚を強化するセンスと呼ばれる分野。
能力を獲得した肉体に、未元物質という超能力の極みを注がれ、脳がそれになじんだことで新たな領域に達したのだ。

強化された聴覚が捉えた様々な言語。
大天使マンセマットの詠唱、魔王ルシファーの強制詠唱、それらの記憶。
垣根帝督の奏でる魔術、一方通行の歌う魔術、魔女の声。
響く声を聞き分け、糧として得た聴覚はその身を守る鎧か具足。
そして、彼は昼の時分で念話を発することもできるようになっていた。
積み上げた経験値が自らの声も強化する。

強化された聴覚が魔女の接近を感知する。
巨大なそれは回避しきれるものではない。
来るな、と声を上げる。
『強化』された声帯で、世界そのものに語り掛ける。

「   」

発した声はすでに人の領域を超えていた。
神代の魔術師が扱う高速言語か。バベルの塔崩落以前の統一言語か。
あるいは天使の詠唱エノキアンか。
言葉一つで外界に干渉し、魔女を退けた。

「え…あれ?」

自分でも何をしたのか分かっていないのか、戸惑った様な声を漏らす。
次の瞬間にごほごほと咳き込み、血の混じった痰を吐く。
やっぱり何らかの副作用かな、と着地しながら反射的に思考。
でもなぜかその代償のような何かもどことなく愛しく思える自分がいて。
それもよし、と息を吸う。
今度は意図して喋ってみよう。
あの天使のように。アサシンの羽音のように。

覚えたばかりの難しい言葉を使いたがる子供の様に、浅羽は天使の言葉を歌った。
それは『咎歌』と呼ばれる天使の詠唱。
一帯の使い魔を、魔女をも吹き飛ばし戦場に存在感を示す。
それと同時に体に宿した未元物質が形を変える。
体内で蠢く異形の生命体から体外を彩る異様な鎧へ。
全ての色を溶かしたような不気味な黒は、あらゆる不純を受け入れないような生粋の白へ。
未元物質本来のそれに近い、ある種の悍ましさすら覚える白へ。
無機質かつ神秘的な白……まるで神話の神々や天使の手になじむ兵器の様に。


420 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/19(火) 23:13:46 h/xH752k0

二人の狂戦士はそれを黙殺した。
だが他の面々は新たな敵としてその少年を認識する。

――カラァン、と鐘の音が響いた。
時代の終わりと始まりを告げる鐘の音が。
空気が変質していく……潮風だ。
エドワード・ニューゲートを中心に世界が塗り替えられていく気配。

それに過敏な反応を見せたのは二人。
魔女Gertrudは、天使の出現に加え己の結界が‌より強大な神秘に侵されていくことを実感し完全に尻尾を巻いて逃げ出した。
そしてニューゲートと対峙していたリンクもその出現を、それを防ぐことができないと悟る。
敵の固有結界に囚われれば勝機も薄く、そして離脱もほぼ不可能になると。
……捕らわれる前に、退く。でなければマスターの仲間の援護に行くことも叶わず敗退することになる。

鐘の音が響く。
ふと、時のオカリナを取り出した。
鐘の音が響く。
ピエールを呼び出す音楽を紡いだ時の様に自然と指が動く。
鐘の音が響く。
バーサーカーの真似た『闇のノクターン』をベースに、白いサーヴァントやマスターらしき少年の歌、魔女の歌も交えたアレンジ。
時代を告げる鐘の音とのセッション。
天使の唱える歌唱に、悪魔の響かせる鐘の音にインスピレーションを受けた詩曲。
名づけるなら聖誕曲、『混沌のオラトリオ』といったところだろうか。

時代の始まりと終わりを告げる16の鐘の音が響き終わる前に、リンクは即興の楽曲を奏で終え、ほむらとともに姿を消した。
垣根帝督と一方通行は目の前の敵にかかりきりでそれを気にも止めなかった。
そして世界が塗り替えられる。
侵入者を拒む薔薇園は崩落した正義の砦に。
蝶のような使い魔は荒くれ物の集団に。
不死鳥が、生きる炎が、金剛石が、魚人が、巨人が、巨大な猫や犬のような戦士が闊歩する世界。
伝説の戦場が再現された……

「うッ、ぐぁ……!」

のも一瞬のこと。
左胸を抑えうずくまるニューゲート。

(こんなときにコイツ……!)

高齢ゆえに持ち得る経験値と引き換えに保持するざるを得ないバッドステータス、心臓病。
それが固有結界の成立を阻む。
強制的に固有結界が解除されたことでナワバリから集めた魔力も霧散し、敵影もバラバラの地点に放り出されたらしく、自身で崩れた建物の近くにうずくまる自分一人しか姿は見えない。

(敵の固有結界は破れたが、その果てにこれじゃあ世話ねェな……)

周囲を見渡す。
やはり人影が全くない。

(あのガキの『歌』……ありゃ『悪魔』を征する詠唱だ。放っておくと厄介なことになる)

排除すべき脅威と認定した。
あいつのサーヴァントも、目の前の剣士もどけて片づけるには切り札を見せるしかないと。
だがそこでまさかのファンブル。
一気に決着とはいかなくなったが……

(おれの固有結界が解けて全員バラバラに散ったのなら、まだ真っ先にあいつを見つければ勝負には持ちこめる)

しかしそこまでするべきか。
もとより襲撃され、巻き込まれたのが今回の戦闘のきっかけ。
いくら悪魔を宿す自分の天敵ができたとはいえ、退いた敵に追撃するよりも味方と合流するべきではないか?
内心の天秤をどちらに傾けるか悩んでいると

マスターから念話。
霊体化し、即座に移動。
合流へと即座に天秤は傾いた。



【B-3/北部/二日目・未明】

【ライダー(エドワード・ニューゲート)@ONEPIECE】
[状態]ダメージ(小、右腕は戦闘に支障)、魔力消費(小)、『手出しを許さぬ海の皇のナワバリ(ウィーアーファミリー)』発動中
[装備]大薙刀
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:刑兆の行く末を見届ける
1.急ぎ刑兆のもとへ合流。

[備考]
※NPCの存在、生活基盤の存在及びテレカのルールは聖杯、もしくは天戯弥勒の目的に必要なものと考えています。
※キャスター(操祈)と垣根が揃っていたのと同様、ルフィと自身が揃っているのにも意味があるかもしれないと考えています。
※宿およびその周辺をナワバリとしました。
※浅羽、バーサーク・アサシン(垣根)、ほむら、セイバー(リンク)を確認しました。


421 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/19(火) 23:14:34 h/xH752k0
それより僅かに南。
檻から放たれた獣のように声を上げる超能力者(レベル5)。

それをひたすらに目指すもう一人の超能力者(レベル5)。

戦況の外で沈黙を守る超能力者(サイキッカー)。

目覚めた新たな力に酔う超能力者(サイキッカー)。

さらなる科学と、魔術が交わる。



【B-3/北東部/二日目・未明】


【間桐雁夜@Fate/zero】
[状態]肉体的消耗(中)、魔力消費(中)、PSIに覚醒
[装備]多数の自動人形
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を取り、間桐臓硯から間桐桜を救う。
1:間桐桜(NPCと想われる)を守り、救う。
2:セイバー(リンク)とそのマスター(ほむら)を殺害する。

[備考]
※ライダー(ルフィ)、鹿目まどかの姿を確認しました。
※バーサーカー(一方通行)の能力を確認しました。
※セイバー(纒流子)の存在を目視しました。パラメータやクラスは把握していません。
※バーサーカー(不動明)、美樹さやかを確認しました。
※PSI粒子の影響と一方通行の処置により魔力量が増大しました。
※PSI粒子の影響により身体能力が一般レベルまで回復しています。
※生活に不便はありませんが、魔術と科学の共存により魔術を行使すると魔術回路に多大な被害が発生します。
※学園の事件を知りました。
※セイバー(リンク)の存在を目視し能力を確認しました。暁美ほむらの姿を写真で確認しました。
※キャスターのマスター(人吉善吉)と残り主従が6騎になるまで同盟を結びました。善吉に対しては一定の信用をおいています。
※鹿目まどか、美樹さやか、暁美ほむらが知り合いであること・魔法少女であることを知りました。
※暁美ほむらの魔法の鍵が「盾」であると予測しています。
※PSI能力「トランス」が使えるようになりました(固有名称未定)
 頭部に触れた相手の記憶を読み取る、相手に記憶を流すことが可能です。



【バーサーカー(一方通行)@とある魔術の禁書目録】
[状態]ダメージ(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:■■■■───
1:───(狂化により自我の消失)
2:垣根帝督を倒す
3:セイバー(リンク)を倒す
[備考]
※バーサーカーとして現界したため、聖杯に託す願いは不明です。
※アポリオンを認識し、破壊することが可能です。
※闇のノクターンを聞き、また習得しました。


422 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/19(火) 23:15:15 h/xH752k0

【浅羽直之@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]魔力消費(中)、魅了状態
[令呪]残り3画
[装備]サンプル・ショゴス(未元物質)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:彼女のため、聖杯の獲得を目指す。
0.多数の埒外の事象に加え、魅了状態に伴う現実感の喪失
1.力を得たこと、伊■■を思わせる副作用に興奮
2.キャスターと共にいるというサーヴァントはアーチャーさんが闘いたいらしいから、できれば相手にしたくない

[備考]
※PSI粒子の影響を受け、PSIの力に目覚めかけています。身体の不調はそのためです。
→念話を問題なく扱えるようになりました。今後トランス系のPSIなどをさらに習得できるかは後続の方にお任せします。
→PSI能力「ライズ」が使えるようになりました(名称未定)。
 聴覚を強化することで念話を聞き取り、また見聞色の覇気@ONEPIECEに近い効果を発揮します。
 また声帯を強化することで念話を発し、天使の歌唱@真・女神転生STRANGEJOURNEYに近い効果を発揮します。ただし魔術に近い技能なので科学と魔術の共存による反発もあるようです。
※学園の事件を知りました。
※タダノがマスターであることを知りました。
※まどか、ライダー(ルフィ)を確認しました。
※巨人を目撃しました。
※天戯弥勒と接触しました。
※モリガンを確認しました。
※未元物質が体内に入り込み、脂肪、魔術回路の代用となっています。これにより魔力量が増大しています。
 また武装にもなり、宿主を守るよう機能します。PSIを利用できればある程度はコントロールもできます。
 ただし、脂肪をすべて排泄してしまっているため、これが抜け落ちた場合何らかの対処をしなければ死に至ります。
→天使の歌唱を習得した影響で、聖柱ゼレーニン@真・女神転生STRANGEJOURNEYや、15巻において黒翼をみて変形した未元物質に近いです。
※ほむら、セイバー(リンク)、ライダー(白ひげ)、バーサーカー(一方通行)を確認しました。



【バーサーク・アサシン(垣根帝督)@とある魔術の禁書目録】
[状態]魔力消費(小)
[装備]天使の装い
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:一方通行を殺す。
1.一方通行を殺す。それ以外もはやどうでもいい。
2.もし浅羽が裏切るか、食峰などに操られたら切り捨てるのもいとわない。

[備考]
※鬼龍院皐月がマスターでは無いと分かっています。
※屋上の異変に気付きました。
※夜科アゲハがマスターであると断定しています。
※リンク、犬養、食峰を確認しています。

※アサシンのころの記憶はほぼ全て覚えています。
※審判者ゼレーニン@真・女神転生STRANGEJOURNEY のような衣装になっています。
 なぜか未元物質が翼の形になってしまうのと同様、デザインを変えることはできないようです。
※ステータスはアサシン垣根帝督のものとほぼ同様です。
 ただし狂化の属性が付与されたことで、知性は保ちつつも、一方通行への復讐に囚われていた時期以上に狂暴化し、思考も短絡化しています。
※未元物質で唱える魔術(真・女神転生STRANGEJOURNEYのもの)を扱えるようになっています。


423 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/19(火) 23:16:05 h/xH752k0

「お前たちに問うことがある」

戦場から一時逃げたその先が安全とは限らない。
この地はいずれも聖杯戦争の会場なのだから。

「鹿目まどかは、どこだ」

魔女結界の開いた北の地で、少年少女のもとに悪魔が舞い降りた。


【A-4/南部/二日目・未明】


【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語】
[状態]健康、魔力消費(小)
[令呪]残り三画
[装備]ソウルジェム
[道具]グリーフシード×5@魔法少女まどか☆マギカ、財布内に通学定期
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる
1:まどかを助ける(罠の可能性を考慮)
2:ほむらと合流してまどかを元の世界に返す
3:まどかを帰還させた後はほむらの動向に警戒
[備考]
※浅羽直之、アーチャー(穹撤仙)を確認、フェザーと名乗られました。
※暁美ほむらが昔(TV版)の存在である可能性を感じました。
※暁美ほむらが何かしらの理由で時間停止に制限が掛かっていることを知りました。
※まどかへの連絡先を知りません。
※ほむらと連絡先を交換しました。


【不動明(アモン)@デビルマン】
[状態]魔力消費(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる
1:さやかに従い行動
2:金のキャスター、銀のキャスターへの対処
3:マスターを守る
[備考]
※穢れの溜まったグリーフシードを『魂喰い』しました。今のところ影響はないですが今後何らかの影響があるかは不明です。
※キャスター(フェイスレス)に不快感を覚えています。
※世界改変の力を持った、この聖杯戦争の原因として魔法少女(まどか、ほむら、さやか)とサタンを想定しています。


[共通備考]
※マップ外に出られないことを確認しました。出るには強力な精神耐性か精神操作能力、もしくは対界宝具や結界系宝具が必要と考えています
※マップ外に禁人種(タヴー)を確認しました。不動明と近似した成り立ちであるため人間に何かがとりついた者であることに気付いています。NPCは皆禁人種(タヴー)の材料として配置されたと考えています
※間桐雁夜(名前は知らない)、バーサーカー(一方通行)を確認しました。
※セイバー(リンク)陣営との同盟を結びました
※キャスター(フェイスレス)の真名を獲得しました。
※学園の事件を知りました。
※聖杯戦争の会場を作ったのも、願望器自体も世界改変の力と予測しています。
※キャスター(食蜂操折)の外見と能力、そのマスター(犬飼伊介)の外見の情報を得ました。


424 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/19(火) 23:16:42 h/xH752k0

【虹村刑兆@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]健康
[令呪]残り3画
[装備]いつもの学ラン(ワイヤーで少し切れている)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:おやじを殺す手段を探す。第一候補は聖杯。治す手段なら……?
1:目の前の悪魔染みたサーヴァントに対応。
2:天戯弥勒、またはその関係者との接触を予測。その場合聖杯について問い詰める。
3:バッド・カンパニーの進化の可能性を模索。能力の覚醒に多少の期待。
4:公衆電話の破壊は保留。

[備考]
※バッド・カンパニーがウォルターに見え、ランサーに効かなかったのを確認、疑問視しています。
→アーチャーとの交戦を経てサーヴァントにはほぼ効かないものと考えています。
→キャスター(操祈)がほむらと交戦してダメージを受けたのを確認し、対魔力が重要な要素であると確信。
※サーヴァント保有時に紅いテレホンカードを使用しても繋がらない事を確認しました。
※サキュバスなどのエネルギー吸収能力ならばおやじを殺せるかもしれないと考えています。
※学園の事件を知りました。
※麒麟殿温泉の下見は済ませました。なにかあったか詳細は後続の方にお任せします。
※夢を通じてニューゲートの記憶を一部見ました。それにより17歳の頃のルフィの容姿を把握しました。

【犬飼伊介@悪魔のリドル】
[状態]疲労(中)魔力消費(微小)微熱、PSIに覚醒
[令呪]残り三画
[装備]ナイフ
[道具]バッグ(学習用具はほぼなし、日用品や化粧品など)、ベレッタM92F(残弾12発)、コンビニで買った着替え
[思考・状況]
基本行動方針:さっさと聖杯戦争に勝利し、パパとママと幸せに暮らす
0:食蜂操祈に心を許さない。
1:目の前の悪魔染みたサーヴァントに対応。
2:学園と家にはあまり近付かない。



[備考]
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』によってキャスターに令呪を使った命令が出来ません。
※一度キャスターに裏切られた(垣根帝督を前にしての逃亡)ことによりサーヴァント替えを視野に入れました。
※PSI粒子の影響と食蜂の処置により魔力量が増大。今後能力に覚醒するかは後続の方にお任せします。
→症状は現在完治とはいかないまでも小康状態にあります。
※操祈の過去を夢に見ましたが、その記憶は消去されました。




[共通備考]
※車で登校してきましたが、彼女らの性格的に拠点が遠くとは限りません。後続の方にお任せします。
※朽木ルキア&ランサー(前田慶次)を確認しました。
※人吉善吉、アサシン(垣根帝督)を確認しました。
※紅月カレン、セイバー(リンク)を確認しました。
※夜科アゲハ、セイバー(纒流子)の存在を知りました。
※洗脳した生徒により生徒名簿を確保、欠席者などについて調べさせていました。紅月カレン、人吉善吉、夜科アゲハの名簿確認済み。
※ライダー(ルフィ)を確認しました。
※ランサー(慶次)への絶対命令権を所有しています(宝具による)


425 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/19(火) 23:18:56 h/xH752k0
※以下の情報を刑兆、ライダー(ニューゲート)、操祈は共有しています。
•アゲハ&セイバー(流子)、ルキア&ランサー(慶次)、善吉、カレン&セイバー(リンク)、タダノ&アーチャー(モリガン)、まどか&ライダー(ルフィ)、ほむら、ウォルター&ランサー(レミリア)の容姿と把握する限りの能力(ルフィについては伏せた点有)。サーヴァントならパラメータも把握。
•アゲハ、ルキア、善吉、カレンのこの地での住所、連絡先。

•アゲハはタダノを一撃で倒す程度の能力者である(暴王の月の存在)。
•ルキアは稲妻のような物を放つ能力者である(白雷の存在)。
•善吉の技能と『欲視力』。
•カレンは能力者ではないが、それなりに戦える人物である。
•まどかは強力な魔法少女となり得る才能がある。
•ほむらも魔法少女であり、操祈にダメージを与えることができる。
•タダノはサキュバスのようなものに耐性があるかもしれない。ただし耐久はアゲハに倒されるくらいで、人並みか。
•ウォルターは能力者ではないが、腕の立つ戦闘者。吸血鬼と何らかの因縁がありそう。

•ランサー、真名は前田慶次。巨大な刀が変形(真名解放?)して朱い槍になると予測。逸話、もしくは技能系の宝具持ちと予測。
•セイバー(流子)は『鋏』と『糸』がキーワードになる英霊。文明への反抗者と予測。二刀流の可能性を警戒。
•セイバー(リンク)は剣技や騎乗スキルに加えて結界、炎などの多芸さから『勇者』がキーワードになると予測。
•アーチャー(モリガン)は『サキュバス』と『分身』あるいは『もう一人の自分』がキーワード。
リリム、あるいはリリト?それなら海、出血、原罪、天罰などが弱点で、子供は注意が必要。
 何かを撃ち出す宝具を持っているはず。
•ランサー(レミリア)は『吸血鬼』がキーワード。ただしその吸血鬼としての在り方はあまりにベタすぎる。無辜の怪物や幻想上のものの様な迷信に近い存在と予測。宝具であろう槍を警戒。日光は弱点になると予測。
•ライダー、真名はモンキー・D・ルフィ。ニューゲートの知り合いで能力者。キーワードを上げるなら『麦わら帽子』、『ゴムのような体』、『覇気』あたりか。

•刑兆はスタンド使い(バッド・カンパニーと言い、ビジョンも見せた)であり、多くの人物にスタンドを目覚めさせた経験がある。そのリスクなどについてそこそこ詳しい。
•ライダー(ニューゲート)とルフィは知り合い。能力者。
•キャスター(操祈)はアサシン、垣根帝督と同郷の超能力者で、垣根の方が上位。宝具(能力)は心を操ることで、対魔力で抵抗可能。

•能力を覚醒させる何か(PSI粒子)が学園、温泉近くにあり、それにより犬飼が学園都市の超能力に近いものを身に付けつつある。
•麒麟殿温泉は能力獲得時に頻発する体調不良を和らげる効能がある。
•魔力供給、対魔力、獲得のリスクに見る超能力、犬飼の能力(PSI)、スタンドの近似性。
•天上、天国に見る魔術、超能力、スタンドの近似性。
•アゲハ、ルキア他多数のスタンドでも超能力でもなさそうな能力者の存在。
•魔法少女という人型の願望器の存在。その才能を持つ鹿目まどかに、魔法少女である暁美ほむら。
•スタンドを目覚めさせてきた刑兆、学園都市の超能力者で『絶対能力進化』のことを知る垣根と操祈、『フラスコ計画』に関与した善吉など能力覚醒に関する参加者が多い。
•幻想御手(レベルアッパー)、虚数学区などの複数の能力者を束ねてなる超常の存在。
•不明金属(シャドウメタル)という、複数の能力者と天上が関わるであろう存在と、謎の磁性体である赤いテレホンカード。

→以上よりこの聖杯戦争はマスターを能力者として進化・覚醒させ絶対能力者(レベル6)『天之杯(ヘブンズフィール)』とし、サーヴァントも含めぶつけ合わせることで不明金属(シャドウメタル)を獲得。
 それによって『元いた世界へ行くテレホンカード』を『平行世界へ行く霊装』、『天上、あるいは根源へ行く霊装』、『英霊以上の超常の存在を連れて来る霊装』などに完成させようとしている、という予測。


426 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/19(火) 23:19:30 h/xH752k0
「ここは……どこ?」

暁美ほむらとリンクは見覚えのない、幾何学的な空間に迷い込んでいた。
時のオカリナで奏でた音楽が力を発揮し、神殿へと飛ぶように新たな時空へ招かれたのだ。
リンク一人でなくほむらも同行したのはマスターとサーヴァントの契約が、生前ナビィを連れられたように機能したからだろう。

「おや、まさか私以外にも侵入者とは。少し驚きだが、君たち二人なら納得だ」
「誰!?」

背後からの声に振り替える。
そこにいたのは青い瞳に金色の髪の美しい少女。

「私はルイ・サイファー。舞台を眺めるただの観客さ。おおっとそう警戒しないでくれ」

即座に剣を構え立ち塞がるリンクに対して両手を上げて害意はないとアピール。

「時の旅人たちよ。どうやら偶然ここを訪れたようだが……
 時期尚早だ。まだここに君たちの目当てのものはない。再び戦場に戻ることを勧める」

そういって右手を真っすぐ二人へ向ける。
そして

「新たな天地を望むか?……なんてね」

眩い閃光。
視界を失い、浮遊感と聴覚の身が残る。

「ぺ天使の留守中に私が勝手に上がり込んでいて運がよかったな。見つかっていたらどうなっていたやら。
 ……私は君のファンなんだ。君の狂おしいほどに自由でカオスな愛を、そこでも見せてくれ」

何を言っているのよ、と叫ぼうとする。
だが光が晴れたとき、そこにはもう誰もいなかった。
見えるのは夜の闇と、見慣れてしまった不気味な月。
それと

「電話ボックス……」

結界の中でも謎の空間でもない、元の戦場。

「…………まどか!!!」

しかしここはどこなのか。
あの場にいたサーヴァントたちは、何よりまどかはどうなったのか。
急いで、向かわなければ。


427 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/19(火) 23:19:49 h/xH752k0

【?-?/電話ボックス近く/二日目・未明】

【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]疲労(大)、焦り
[令呪]残り3画
[装備]ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]グリーフシード(個数不明)@魔法少女まどか☆マギカ(一つ穢れが溜まりきっている)、オートマチックの拳銃
[思考・状況]
基本:聖杯の力を以てまどかを救う。
0:現在地を把握し、すぐにまどかのもとへ。
1:温泉に向かいまどかを助け、帰還させる。
2:キャスター(フェイスレス)を倒す。


[備考]
※自分の能力の制限と、自動人形の命令系統について知りました。
※『時間停止』はおよそ10秒。連続で止め続けることは難しいようです。
※アポリオン越しにさやか、まどか、タダノ、モリガン、アゲハ、流子、ルキア、慶次、善吉、操祈の姿を確認しました。
※明、ルフィのステータスと姿を確認しました。
※美樹さやかの存在に疑問が生じています(見たことのない(劇場版)美樹さやかに対して)
※一瞬ソウルジェムに穢れが溜まりきり、魔女化寸前・肉体的に死亡にまでなりました。それによりフェイスレスとの契約が破棄されました。他に何らかの影響をもたらすかは不明です。
※エレン、さやか、まどかの自宅連絡先を知りました。
※さやかと連絡先を交換しました
※ジャファル、レミリア、ウォルターを確認しました。
※天戯弥勒と接触しました。
※巨人を目撃しました。
※キャスター(フェイスレス)のマスターは最初の通告で存在が示唆されたマスター(人吉善吉)と予想しています。
※間桐雁夜が「誰かを守るために聖杯戦争に参加していた」ことを知りました。


【セイバー(リンク)@ゼルダの伝説時のオカリナ】
[状態]魔力消費(小)、疲労(中)、ダメージ(中、右腕は戦闘に支障あり)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに全てを捧げる
0:カレンの意思を引き継ぎ、聖杯戦争を勝ち抜く。
1:暁美ほむらに従う。
2:アーチャー(モリガン)に対する強い敵意。

[備考]
※アーチャー(モリガン)を確認しました。
※セイバー(纒流子)を確認しました。
※夜科アゲハの暴王の流星を目視しました。
※犬飼伊介、キャスター(食蜂操祈)を確認しました。
※人吉善吉、アサシン(垣根帝督)を確認しました。
※垣根帝督から食蜂操祈の能力を聞きました。
※朽木ルキア、ランサー(前田慶次)を確認しました。
※ウォルター、ランサー(レミリア)を確認しました。
※巨人を目撃しました。
※バーサーカー(一方通行)を確認しました。
※様々な音楽、魔術をヒアリングしたことで新たな音楽を習得しました。
 時のオカリナで演奏することで主催陣営の空間(?)に転移することができるようでしたが、今後も同じように成功するかは不明です。


[共通備考]
※バーサーカー(不動明)陣営と同盟を結びました。
※浅羽直之、バーサーク・アサシン(垣根帝督)を確認しました。
※ライダー(白ひげ)を確認しました。
※ルイ・サイファーを確認しました。


※電話ボックスの近くであること以外の詳細な現在地は後続の方にお任せします。





【?-?/二日目・未明】

【ルイ・サイファー@真・女神転生STRANGEJOURNEY】
[状態]健康
[令呪]???
[装備]???
[道具]???
[思考・状況]
基本行動方針:神々との闘争に勝利し、混沌に満ちた世界を
0.偶然の出会いに若干高揚。
1.基本的に観客に徹する
2.聖杯戦争を通じて明たち同胞に神を敵としてもらいたい
3.神々との闘争に備えて準備
4.戦力増強のため了と子を産むことも考える


[備考]
※ルシファーの女性としての面を強く顕現した分身です。
 両性具有の堕天使としての特徴を失うことで神々の一派の目を欺いています。



[全体備考]
※麒麟殿温泉近くの宿が白ひげの地震で倒壊しました。
※B-3商店街近くの家屋が一方通行の手で倒壊しました。
※一連の騒ぎは操祈の手で大地震としてNPCに広められ、住民の避難が進んでいます。近隣の住民には伝わるでしょう。
※魔女Gertrud、およびその使い魔がB-3近辺にいます。


428 : ◆A23CJmo9LE :2016/07/19(火) 23:22:18 h/xH752k0
以上で投下を終了します。
期限を守れず、また予約していたマンセマットを話に組み込めなかったことをお詫び申し上げます。
指摘などあればお願いします。


429 : 名無しさん :2016/07/21(木) 21:31:07 t1Yh3fKw0

上条さんは覇気使いだったのか(驚愕)

後々悪魔になって神に反逆するし、ほむらもルシファーに気に入られてるねw


430 : 名無しさん :2016/07/21(木) 23:40:42 rBpCSj4M0


前後編、投下乙です!

様々なグループの交錯するサイレン聖杯らしく、今回もそれぞれの知略と思惑が縦横に巡る読みごたえのある話でした!
いずれ来るかもと思っていたとある勢の大同窓会、ついに勃発。白ひげとの巨人トーク初め、お馴染みとなりつつある食蜂ならではの思考や考察もですが、やはり一番の盛り上がりは垣根VS一方通行。ただそれだけのためにこの舞台に二度上がることを選んだ垣根による一方通行攻略の一手一手、未元物質応用の理論や詠唱連打のシーンには唸らされました。

個人的には、掘り下げられてきたリンクの戦い方、立ち位置がすごく面白い。様々なアイテムを駆使し、こちらも相手を「攻略」していく立ち回り。白ひげとのバトルは互いのスタイルと機転を存分に魅せ合うまさに英雄同士の戦いにふさわしいものでした。
そして、オカリナからまさか一方通行へと「闇のノクターン」が繋がっていくとは…
この「歌」の共鳴と、垣根による一方通行攻略の手である未知の攻撃=彼らの呪文、それがさらに未元のモノを身に宿した闖入者=浅羽の咎歌、PSYへと連鎖するクロスオーバーにはわくわくしました。魔女の作る空間や使い魔たちの利用、時の勇者と大海賊の手に汗握る差し合い打ち合い、固有結界のせめぎ合い、それらの元で生まれた「混沌のオラトリオ」。この場にいる全ての参加者がこの連鎖を作り上げていて、『新訳魔科学共存理論』や主催者たちの内幕など、各出典世界の設定や世界観を色濃く交差させてきた積み重ねがここでも活きてきているなと感じます。

そしてまた、それぞれの場面へと展開していく中、とうとうほむらが邂逅してしまった彼。「私は君のファンなんだ」とはなんともはや…

一つ一つのパートが濃すぎて、だらだらと感想を連ねてもまだ足りないくらいです。力作の投下、改めて乙でした!


431 : 名無しさん :2016/07/23(土) 00:12:48 T3w4ismM0
投下乙!
ていとくんVS一通さんのバトルは滾るな 紆余曲折経て餃子になりこんなとこまでやってきたていとくんだけどそれだけに叩きつける一言一言が重い
遠因作ったみさきちが全然割って入れてないのも面白い
白ひげは名勝負メーカーですね、序盤のレミリア戦の辺りからそんなイメージ
無体な能力に慢心しない歴戦の老兵ぶりがカッコイイ


432 : ◆A23CJmo9LE :2016/10/25(火) 00:00:38 ijtDiMjo0
ウォルター・C・ドルネーズ&レミリア・スカーレット予約します


433 : ◆A23CJmo9LE :2016/11/01(火) 21:34:25 S1CseEdI0
延長をお願いします


434 : ◆A23CJmo9LE :2016/11/07(月) 23:51:36 020l7cDk0
投下します


435 : ◆A23CJmo9LE :2016/11/07(月) 23:52:39 020l7cDk0

獣のような吐息が自分の口から洩れているのを、数刻ぶりに実感する。
白い肌と白いシーツが、赤と白と透明な体液で汚れているのがようやく理解できる。
満月の夜は人が狂う。
その伝説の再現の様に、永遠に紅い幼き月に魅入られ、狂わされた少年は今ようやく正気を取り戻した。

「F××K」

らしくもない……こともないスラングが反射的にウォルターの口から洩れる。

「あら、まだ足りない?なら相手してあげないこともないけど」
「いえ、もう結構。これ以上はせっかく繋がったアバラがまた折れかねません」

吸血鬼と化し、傷は癒えた。
しかし癒えたばかりではいつまた開かないともわからない。
全身を包む倦怠感は行為の後特有のものだけでなく、傷を癒した消耗や戦闘の後遺症も多分にあるだろう。
ただでさえ貧血だというのに血を吸われ、汗を流し、精を吐き出し、脱水症状一歩手前でもある。
これ以上は腎虚でもなく行為中に命を落としかねない。
サキュバスの相手をしたならともかく、幼児体形の吸血鬼相手に励んでくたばったなど、知られたら嗤ってすらもらえないだろう。

「それじゃあ今晩はこれでお終いね。休みも兼ねて体を洗ってくるといいわ」
「お嬢様が、お先に……」
「気遣いはありがたいけれど、私は大丈夫よ」

息も絶え絶えに返事をするが、レミリアはそれを不要と切って捨てる。
そして即座に大量のコウモリへと体を転じて見せる。
次の瞬間にコウモリが一つの塊になり、再びレミリア・スカーレットの形になると、一糸まとわぬ姿ではなく、紅魔館の主に恥じない一張羅へと戻っていた。

「いってらっしゃい。ああ、でもシャワーはだめよ。
 吸血鬼に流水は禁物……塵に帰りたくなければバスタブにお湯を貯めて使うことね」

そんな主人の忠告を背に受けて、ウォルターはバスルームへと歩みを進めた。
バスタブに湯を貯めて待つ間に水を飲む。
このまま浴槽で汗を流せば本当に脱水で倒れかねないと何杯も飲み続ける。

暫く待って十分な湯量になったことを確かめると、掛け湯もなしに身を沈める。
水を浴びるのは洗礼に繋がり、流水以上に身を焼きかねないと考えたのもあるが、あまりの疲労に億劫になっていたのも大きい。
浴槽につかり、水面を見つめながら声を漏らす。
今までならそこには皴の刻まれた男の顔が映るのが常だった。
しかし、現在そこには若い少年の顔が映る……ということはなく、ただ湯の中が透かして見えるのみ。

「……本当に変わってしまったのだな」

吸血鬼は鏡に映らない。
ただ反射していないだけかと掌に湯を掬い上げて覗き込んでも、やはり何も映ることはなく。
自らの肉体が吸血鬼(バケモノ)へと変じてしまったのだと感じ入る。
得たものはある。
老いさらばえた肉体は脆く、乾いて弾力を失った皮膚は容易く裂け、密度を失った骨はすぐに折れる。
心肺機能は低下し、筋肉も強靭さと柔軟さを失っていた。
それらの欠点を悉く克服した肉体、若さという不可逆の価値を取り戻し、吸血鬼の膂力を上乗せしているのだ。
さらに体の奥に新たに生じた熱さは、おそらく魔力と呼ばれるものだろう。
人外の力を手にした今のウォルターは、『強い』。
もちろん吸血鬼特有の弱みはある。
レミリアに警告されたように流水はその身を灰へ還し、陽光は肌どころか魂まで焼き焦がし、聖別された武具などには触れることすら叶うまい。
だがそんなものはウォルターには『どうでもいい』。
白木の杭が心臓をえぐれば、祝福された銃剣に全身を貫かれれば、人でも化物でもくたばるのに違いはない。
ただ、少しだけ後悔があるならそれは些末な矜持の問題だ。
意地も張れぬ繁栄を受け入れ、刻まれた年月を拒絶した今の姿を、ウォルターは少しだけ『醜い』と思ってしまった。


436 : ◆A23CJmo9LE :2016/11/07(月) 23:53:12 020l7cDk0

「ふ、戯言を」

ざばり、と音を立てて湯船から立ち上がる。
習慣的にシャワーノズルに伸びそうになった手を慌ててとどめ、仕方なく浴室を出る。
用意しておいたタオルで体をふき、身だしなみを最低限整えて主に合流しようとするが

「おや。思ったより不便だな、これは」

脱衣所に置かれた鏡をのぞき込んでも誰も映らない。
身に着けている衣服もないただの空間が鏡の中に広がっているだけ。
仕方なく手探りと届く限りの目視で服を確かめ、タイを絞める。
乱れがないか少し不安だが、これ以上待たせるのも無礼と判断して居室へと向かう。

「お嬢様、ただいま戻りました」

扉をノックし、返事を待つが反応を返さない。
室内から気配も感じられず、返事を待たず踏み入るか、探しに歩くか考え始めると

『外で月の光を浴びてるわ。あなたも来るといいわよ。吸血鬼と月は深い仲ですもの』

そう頭の中に声が響く。
今まで以上にはっきりと聞こえる念話に、より強い繋がりができたのだと感じ入りながらウォルターは外へと足を向けた。
扉をくぐり、外界で視線を巡らせると真っ先に目につくのは異様な顔を浮かべた醜い月……そしてその下にたたずむ美しき女吸血鬼(ドラキュリーナ)。
どことなく蠱惑的なその風貌に、先ほどまでの寝所での交わりを想起させられウォルターの頬が僅かに血色を増す。

「体調はいかがですか」

それを誤魔化すようにして言葉をかけるウォルター。
耳にしたレミリアはゆっくりとウォルターの方へ振り向き、小さく笑みを浮かべて応える。

「さっきよりはマシになっているわ。パスの強度も、流れる魔力量も増した。
 早晩全快するわ。今の時点でも、そうね……」

口元に指をあてて思考するような仕草を見せ、浮かべた笑みを挑発的なものに変えて女吸血鬼は言葉を繋いだ。

「老いさらばえた死神程度なら片手で縊り殺せるわよ?あなたの方はどう、ウォルター・C・ドルネーズ?」
「さて、そうですな」

挑発的な言動のレミリアに、僅かに間をおいてウォルターも答える。

「矮躯のドラキュリーナくらいなら瞬く間に細切れにして見せましょう」
「そう」

二人して笑みを浮かべる。
剣呑な空気がどちらともなく放出され始める。

「確認すれけれども、あなたが聖杯に託す願いは若さだったわね?」
「いかにも」
「若く強靭な肉体が手に入れば、もう聖杯戦争(ここ)に用はない」
「然様でございますな」


437 : ◆A23CJmo9LE :2016/11/07(月) 23:53:30 020l7cDk0

二人の笑みが深まる。
それが遊びの始まりの合図になった。

「なら、これは必然と言えるわね?」

攻撃的な笑みはそのままに、手刀を掲げてウォルターへとレミリアが飛び掛かる。
それをウォルターも予期していたか、両の手で鋼線を繰り行く手を阻む。

「あら、これはこれで面白い『弾幕』じゃない」

網の目のようになった鋼線、触れればベーコンの様にスライスされるだろうそれも、レミリアにはお遊びの道具でしかない。
矮躯を生かして僅かな隙間をすり抜け、隙が無ければ吸血鬼の剛力でもって鋼線を逸らして切り抜け。
返しに弾幕……は放たず、ひたすらに若い死神との距離を詰める。

対するウォルターもそれを座して見守るなどということはない。
回避され、向かってくると分かった瞬間には腕を引き、レミリアを背後から鋼線で切り裂かんとする。
しかし、レミリア・スカーレットのクラスは最速のクラス、ランサー。
サーヴァントにおいても上位を誇るその速度は、吸血鬼となったウォルターの一動作と比してなお上回る。

鋼線がレミリアに触れるよりも、彼女の魔の手が届く方が早い……そう判断したウォルターは前方へと跳ぶ。
弾丸のように迫りくるレミリアを跳び越え、背後に回った。
直後に激しい打撃音が響く。
つい先ほどまでウォルターの立っていた地面がレミリアの腕の一振りによって抉られ、飛礫の飛び散る音だ。

(線や点では躱される。ならば面で潰さねばならんか)

その砕けた大地に鋼線をいくつも突き立て、錘のように振るい、叩きつける。
だが広範囲を覆うその一撃も、レミリアは紅い霧へと転じて容易く躱す。
そして再び霧が像を結ぶ。
ウォルターの目の前、ほんの少し手を伸ばせば心臓が届くような至近距離にレミリアが立つ。
二人、それを確信する。

レミリアの右手が伸びた。
ウォルターはそれを潜り抜けるように躱し、右へと体を滑らせる。
潰れた左目、現在のレミリアの最大の死角を通り、背後へと回り込む。

「王手(チェック)――」

鋼線は振るわず、手刀を固めて直接突き出す。
狙いは体の中心、吸血鬼の唯一の急所である心の臓府。
背後から肩甲骨の間を突き抜く一撃を打ち込もうとするが

「紅符『不夜城レッド』」

レミリアが左右に手を広げ、その全身から紅い魔力を十字架状に放つ。
その魔力の圧に弾かれ、ウォルターは攻撃態勢を崩されてしまう。
レミリアは即座に魔力の放出を止め、即座に反転してウォルターの隙を突く。

「王手詰み(チェックメイト)ね、ウォルター」

そして伸びるレミリアの右手。
真っすぐにウォルターの首元へとたどり着き……


438 : ◆A23CJmo9LE :2016/11/07(月) 23:53:51 020l7cDk0

「ネクタイが曲がっていたわよ。鏡に映らないから、吸血鬼(わたしたち)は身だしなみのために従者を必要とするの。
 あなたや、咲夜のような、忠実なしもべをね。理解できたかしら?」
「ええ、お手数をお掛けしました」

身だしなみを整える。
それに伴い闘争の空気も霧散していく。

「大したものね、ウォルター。魔力は抑えたけれどボムまで使ったし、今のあなたならキャスター程度は相手にならないでしょう」

惜しみのない称賛の言葉と確かな評価をレミリアが贈る。
それを噛みしめながらも、ウォルターは浮かない顔を浮かべていた。

「それはそれとして。私のご先祖様には勝てると思う?」
「率直に言いまして難しいと言わざるを得ません」

クールダウンも兼ねて全身の調子を検めながら、先の『戯れ』を通じて確信した事実を告げる。

「今の私が万全でないことを差し引いて、アーカードがお嬢様ほど機敏でないことも考えても、私では殺しきれない」

鋼線を軽く振るい、体の調子を確かめるウォルター。
老いた体よりしなやかに動くそれは、確かに強い。

「今の私は『若すぎる』。少しとはいえ、全盛期よりもリーチに劣る。その差は刹那のやり取りで大きな違いとなるでしょう。
 そして膂力はたしかに人としての全盛期以上でしょうが……」

鋼線を突き立てた瓦礫を振り回した感覚を想起する。

「『やわすぎる』。老いさらばえた脆さは克服しましたが、未熟ゆえのやわさまで戻ってしまっている。
 強靭な筋骨を持たない青二才の体では、崩れ折れることはなくとも荷重に耐えきれず折れ曲がる危険がある。
 それは、『永遠に幼い紅き月』であるお嬢様もよくお分かりでしょう」
「逆よ。『永遠に紅い幼き月』よ」
「これは失礼を」

とはいえ、ウォルターの言いたいことはレミリアにも察しがついた。
若さ、それを通り越した幼さ。
それに伴う小兵、肉体的な未成熟というのは戦場において不利を招くことの方が多い。
おそらく全盛のウォルターであれば鋼線をもっと巧みに、鋭く、素早く、力強く操れるのだろう。
もう数年分、齢を重ねれば。
しかしそれは叶わない。
レミリアが『永遠に幼い』ように、吸血鬼は不老なのだ。
全盛期の肉体で召喚されるサーヴァントが、レミリア・スカーレットが幼い姿をとって現われた理由は、生涯その姿であったから。
ウォルターの肉体は幾百の月日を重ねようと全盛期へと至ることはない。
……外法を用いなければ。

「つまり、私には引き続き聖杯を求める理由がある。今度は逆に、歳をとるという意味で『全盛期の肉体を取り戻す』必要がある。
 立ち塞がるサーヴァントを鏖殺し、必要ならば天戯の命も刈り取り、アーカードと向かい合う力を手にする必要が!
 私はまだ、聖杯戦争(ここ)で、為さねばならぬことがある」

意地も矜持も誇りも全てチップに変えた。
運命がカードを混ぜた。
勝負(オールイン)だ。
もはやウォルター・C・ドルネーズは止まれない。


439 : ◆A23CJmo9LE :2016/11/07(月) 23:54:22 020l7cDk0

「なら、急ぐ必要があるわね。月が落ちるまでそう長い猶予はないでしょう。
 そして夜の一族(ミディアン)の仲間入りを果たしたあなたは、もはや日の光を拝むことは叶わない。
 勝負はこの夜と、遅くとも明晩には概ね決着をつけておく必要がある」

ただでさえ限られる活動時間に、制限時間まで設けられた。
魔術師のクラスなども慌てるだろうが、影響が最も大きいのは自分たちだろうとレミリアは考えていた。

「日の光ともう一つ。この街の中央に流れる川が面倒ですな」

時間の条件だけではない。
流水を渡れない吸血鬼に主従揃ってなってしまった以上、昼に行ったようにウォルター単身で川向いへの移動も容易ではなくなってしまった。
領土である棺桶に籠もって移動するか、自らを歩く領土へと変えるでもしなければ吸血鬼の川越えはできない。

「ちょっと疲れるからやりたくはなかったのだけど、一応腹案はあるわ」
「ほう。お聞かせ願えますか」

流水を渡れない吸血鬼には少々似つかわしくないが、藁にもすがる思いでウォルターは言葉の続きを促す。

「外の世界にはモーゼっていう英霊がいたそうじゃない。その真似をしましょう」
「モーゼ……?モーゼというと十戒を定めたあのモーゼですか?」

聖杯に与えられたものか、レミリアが一人の英霊の名を上げる。
その名をウォルターも己の知識と照らし合わせ、いかな方策か推察しようとするが、吸血鬼があげる名とも思えない。

「そのモーゼがどのモーゼかはよく分からないけど、海の水面を割って渡ったあのモーゼよ」
「川の水面を、割ると?」
「そうよ。拳圧で川の水面を割って、その間に向こう岸に渡るの」

モーゼはそんな力業で紅海を渡ってはいないと思う。
この調子だと先ほど聞いた仏に関する認識もかなり間違っているのだろうな。
そんな感想がウォルターの脳内を駆け巡るが、それ自体はおくびにも出さず。
川を渡る手段としては一応有効、だろうと……思考を進める。

「川幅は狭いが、流れが急な上流か。あるいは流れが遅くとも川幅の広い下流か。
 どちらの方が適しているか悩みどころですな」
「どちらが近いか。かつ人が多いか、だと?」
「距離の近さのも人の多さでも下流が優るでしょうな」
「なら、そちらに行くわよ」

ウォルターの意見を耳にすると一刻を惜しむようにレミリアは歩き始める。
慌ててウォルターもそれに続いた。

「新参の吸血鬼に教えてあげるわ、ウォルター」
「なんでしょうか」
「永く生きるほどにね、一秒を惜しむの。日常を愛するの。
 些細な時間の些細な出来事をこそ尊ぶべきなのよ。例えば、そう」

レミリアは語りも歩み求めることなく、ゆっくりと夜空へと手を伸ばす。

「月が綺麗であること、とかね」

醜い顔の浮かんだ月を握りつぶすように伸ばした手の拳を固める。

「思い出すわね、いろいろと。パチェのロケットで月に殴りこんだのを思い出す」

無茶な頼みも叶えてくれる親友のことを思い出し、そして月に何者かがいる……天戯弥勒の居所の候補にも思い至る。

「もし天戯弥勒があそこにいるなら、私はあの男に会うためにまた月に行くことも厭わないわよ」
「そう容易く行けるものでしょうか……?」

有人で月面にたどり着いたのはウォルターの知る限りただ一度だけ。
後はナチの連中が月に逃れたなんて馬鹿げたオカルトを聞いたことがあるくらい。
しかし人ならざる吸血鬼やサーヴァントならば条件が変わることも考えるとやってやれないことはないのか。

「パチェは多分『紅魔館』の中にいると思うし……いるわよね?来てくれるわよね……
 まあいなくてもロケットを作れるくらいに魔術か科学に精通したキャスターを引っ張ってくれば問題ないでしょ。
 海を越え、船を駆るライダーになら見覚えがあるし、必要ならば行けるでしょう」

三本柱の神とやらは用意できないだろうが、サーヴァントならば三体どころか十体以上残っている。
昨晩交戦した海賊も含め、天戯弥勒のもとへとたどり着く手札を心中数える。
そんな風に彼方を見据えるレミリアに対して、ウォルターはひたすらに目前をにらんでいた。

「しかし、皮算用は後に回しましょう。今やるべきことは一つでしょう、お嬢様(マスター)」
「そうね。今後の課題は山積みだけど、為すべきことはシンプルだったわ、従僕(マスター)」

一刻も早く敵を探すこと。
一刻も早く敵を殺すこと。
すなわちは見敵必殺(サーチアンドデストロイ)。
互いに主であり、下僕でもある主従は初心に帰り、歩みを再開した。


440 : ◆A23CJmo9LE :2016/11/07(月) 23:54:42 020l7cDk0

【B-1/ヘルシング邸/二日目・未明】

【ランサー(レミリア・スカーレット)@東方project】
[状態]左肩貫通、左目失明(両方共回復中)魔力消費(中)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:ウォルターのためにも聖杯戦争を勝ち抜く・天戯弥勒を倒して地面に這いつくばらせたい
1.川を渡れるか確かめるのと、敵を探すのを兼ねて下流へ向かう。
2.殺せる敵から殺していく。
3.天戯弥勒に警戒。
4.天戯弥勒が月にいるなら、必ずそこまで行く。
[備考]
※アーチャー(モリガン)を確認しました。
※夜科アゲハを確認しました。
※天戯弥勒がサイキッカー(超能力者)と知りました。
※天戯弥勒を確認しました。
※弥勒が月にいる可能性を想定しています。

【ウォルター・C・ドルネーズ@HELLSING】
[状態]吸血鬼化、貧血、魔力消費(大)、疲労(大)
[令呪]残り3画
[装備]鋼線(ワイヤー)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:全盛期の力を取り戻すため、聖杯を手にする
1.川を渡れるか確かめるのと、敵を探すのを兼ねて下流へ向かう。
2.殺せる敵から殺していく。

[備考]
※浅羽、アーチャー(穹)を確認しました。
※少年時代の姿に若返りました。
※魔術回路が開きました、どの程度のものかは後続の方にお任せします。
※吸血鬼化に伴い回復力が大幅に増し、肉体的損傷はかなり癒えています。


[共通備考]
※虹村刑兆&ライダー(エドワード・ニューゲート)と交戦、バッド・カンパニーのビジョンとおおよその効果、大薙刀と衝撃波(震動)を確認しました。
 発言とレミリアの判断より海賊のライダーと推察しています。
※巨人を目撃しました。
※エレン、アサシン(ジャファル)を確認しました。
※カレン、セイバー(リンク)を確認しました。
※2回目の通達と落ちてくる月を確認しました。


441 : ◆A23CJmo9LE :2016/11/07(月) 23:55:39 020l7cDk0
以上で投下終了です。
タイトルは 呪詛「ブラド・ツェペシュの呪い」 で。
指摘等あればお願いします。


442 : 名無しさん :2016/12/07(水) 00:19:47 /YRrZ9tM0
投下乙
一言一言が洒落た主従だ
吸血鬼が従者を必要とする理由、なんてのも唸った
ウォルターのあらたな飢えと夢を眺めるお嬢様のカリスマよ
この二人にはこの上なく似合う素敵な文体でした


443 : ◆A23CJmo9LE :2017/01/13(金) 23:27:51 UxwXZmLk0
一月も半ばですが、あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします
夜科アゲハ&纏流子、それから魔女Gertrudを予約します


444 : ◆A23CJmo9LE :2017/01/20(金) 21:36:46 C/7mjRwk0
延長お願いします


445 : ◆A23CJmo9LE :2017/01/27(金) 22:57:31 jGvO/QwY0
投下します


446 : きっとどこかに繋がる世界 ◆A23CJmo9LE :2017/01/27(金) 22:58:27 jGvO/QwY0

「さっさと起きなアゲハ!」

自室でまどろむアゲハの耳に響いたのは姉、吹雪の声だった。
切羽詰まった様子のそれに寝過ごしたかと瞼をこするが、部屋の時計を見ると眠りに落ちて数時間、まだ夜明け前の時間帯だった。

「ンだよ、姉キ、こんな時間に」
「地震があったの!津波の危険があるから高台に避難!」
「はあ!?マジかよ!?」

聖杯戦争の最中だってのにそんな面倒くさいことまで起こるのか、と突然の事態に寝ぼけた頭を覚醒させる。
思考を整理するだけの意識が戻ると、アゲハは真っ先に窓から外を確認した。
その視界に映ったのは恐らく避難しているであろう人影がいくつか、そして空に輝く不気味な貌を浮かべた月。

「おい、これ……夢じゃねえよな?」

起きてみると通達の情報がなぜか認識できていた。
それだけでもなかなかファンタジーだが、アサシンの脱落はともかくとして、迫りくる月の脅威は文字通り天を仰ぐものだった。

(トランスの応用か?そんなこともできたのかあいつ)

今まで見せていなかった能力の可能性に疑問を覚えるが、それはそれとして避難している人たちが見えたことで事態に現実味を覚える。
欠伸をしながら適当に上着を見繕い、外に出られるように心身ともに整えていく。

「チンタラしない!急ぐ!」
「うるっせえよ、着替えくらいさせろ!」

バタバタと寝間着を脱ぎ捨て、最低限の防寒具と貴重品を持って避難の準備を進める。
即座に支度を済ませて玄関へ向かっていくと、その道中にはテレビのチャンネルを回している流子がいた。

「何やってんだよ、纏。急いで避難――」

そこまで口にして疑問が湧く。
サーヴァントに地震だの津波だのは有効なのだろうか、と。
もし効かないならこれだけ呑気しているのも納得するが、人間である自分たちはそうはいかないのだからそのあたりは気にしてほしいとアゲハは少しだが口を尖らせた。

「おい、纏。こっちは津波とか避難案件なんだ。頼むよ」

寝起きなのもあって少しばかりキツイ言い方になってしまう。
流子は少しだけそちらに視線をやるが、すぐにテレビに視線を戻し、少しおいてまたリモコンを弄り始める。

「さっきからニュース漁ってるけどよー、津波の危険なんてテロップ出てこねえぞ。
 それどころか地震に関してもほとんど取り上げてねえし」

現代人ならば半ば習慣にまでなっている行動、地震が来たらニュースを確認する。
近現代の英霊である流子も当然のようにそうした。
しかしどこを見ても津波という単語は出てこないのだ。
流子、アゲハは揃って首をひねる。

「姉キ、津波が来るから避難しろってどこから聞いたんだ?」
「え?さっきお隣さんが荷物纏めてそう言ってきたのよ」


447 : きっとどこかに繋がる世界 ◆A23CJmo9LE :2017/01/27(金) 22:58:52 jGvO/QwY0

吹雪の返事を聞き終えると即座にアゲハは外に飛び出した。
そして外を歩く人を捕まえて同じように掴みかかるようにして質問する。

「おい、アンタも避難してるんだろ?誰から津波が――」

来るなんて聞いた、と口にしようとしたところで言葉に詰まる。
そして咄嗟にライズまで発動して一足で大きく距離をとる。

「津波…そうですよ。津波が来るから早く避難しないと」

そう答える男性はアゲハの態度を気にも留めないように、穏やかな調子で答えた。
その目の中に、星のようなものを浮かべて。
夜科アゲハはそれを何度か見た覚えがあった。
購買に並んでいた、大量の食品を買い占めていった生徒にも。
危うく舌を噛み切りそうになった人吉善吉の瞳にも浮かんでいたもの。
――――あのキャスターの、痕跡。

(なんだ!?あいつ、地震と津波なんてデマ流して何しようとしてんだ?)

人を避難させて……人払いで、いなくなった隙に何かするつもりなのか。
あるいはどこか避難場所に人を集めて何かするつもりなのか。
とりあえず目の前の男にどういうつもりなのかダメもとで聞いてみるかと、拳を握ったところで。

「はああああああ!?学園が壊れたあ!?」

家の中からやかましい声が響く。
纏の声だ、そう思ってそちらに視線をやる。


448 : きっとどこかに繋がる世界 ◆A23CJmo9LE :2017/01/27(金) 22:59:14 jGvO/QwY0
その振り向きは偶然だった。
故に、それに気付いて反応できたのも偶然だった。
視界に飛び込んできた異形の化け物。

不気味に赤い、芋虫のような体。
その背には薔薇の花弁のような蝶の羽。
随所から飛び出た茨のような無数の足。
全身で主張している無数の眼。
禁人種(タヴ―)ともどことなく違う化け物が高速で、何かから逃げるように飛来してきた。

アゲハは再びライズを発動し、その軌道上から避難する。
飛来する化け物のコースが操られているらしき男へと向かっているのに気付き、交差する瞬間反射的に化け物に蹴りを入れた。
それによって化け物の軌道は僅かに変わり、地面へと向かう羽目になるが。
それでも、男を巻き込むコースであることは変わりなく、接触と同時に車に人が撥ねられるような音を立てて男を吹き飛ばす。
化け物はアゲハの蹴りで地面へ叩きつけられ大きな音を立てて損傷し、男は化け物に轢かれて悲鳴を上げる。

「痛ッ…!あ、ひ、うわあああああああああああ!」

ぶつかった衝撃で折れたか外れたか、右肩から先を力なくぶら下げて逃げ去っていく男。
怪物もその声に反応するように唸り声をあげて起き上がる。

「おい、何の騒ぎだ!?」

その風景を家から顔を出した流子が目にする。
逃げている男の背中、謎の怪物、それと向き合うアゲハ。
危機と察し、即座に片太刀バサミを取り出して怪物へと斬りかかる。

「おらッ!」

起き上がったばかりの怪物、魔女Gertrudには躱せない一閃だった。
だがそこに別の存在が割り込み、怪物を救う。
カイゼル髭を蓄えた、タンポポの綿毛のような怪物、使い魔Anthonyという新たな怪物がその手に持ったハサミで流子の一太刀を受け止めた。
一体では力負けするが、十数体の使い魔が力を合わせて造園用のハサミを束ね、片太刀バサミに拮抗し弾き飛ばす。
それによって僅かに空白ができ、その瞬間を利用してアゲハと流子は並び立ち、Gertrudは態勢を整える。

「何だ、あれ?」
「分かんねえ。いきなりどっかから飛んできやがった」

間違っても吹雪のもとにはいかせない、と二人して意気込むが。
Gertrudはそれを無視するように反転し、かなたへと飛び去ろうとする。

「あ、逃げんのかテメエ!」
「いい、纏!俺がやる!」

叫びとともにアゲハの右掌に小さな黒い星が顕現する。
それを見た流子はとっさに霊体化し、魔力をできる限り抑える。

「暴王(メルゼズ)」

小さなつぶやきと共に流星を開放すると、それは真っすぐにGertrudへと向かって放たれる。
そして着弾、内部の一切を蹂躙し呻き声をあげる暇もなく魔女は絶命した。
主を失った使い魔たちも後を追うように姿を消していく。

「やった、か」
「ああ」

再び実体化した流子が確かめるように小さく語り掛けた。
歯を食いしばるように、アゲハも小さな声でそれに答える。


449 : きっとどこかに繋がる世界 ◆A23CJmo9LE :2017/01/27(金) 22:59:55 jGvO/QwY0

カラン、とそんな言葉に重なるような小さな音がした。
コンクリートの地面に何かが落ちて転がる音だ。
二人して足元に目をやると、小さな球体を中心とした奇妙な物体が転がっていた。
茨模様の黒い玉、下に針状の金属が伸び、上部には蝶のようなエンブレムが刻まれている、見たこともない材質のオブジェ。
特に危険物ではないだろうとアゲハは手に取って観察し始める。

「敵を倒したら落としたアイテムって……ゲームかよ」

しかし一体何なのか一見してわからない。
武器の類ではない。
インテリアなら必要ない。
一通り手の内で弄び、覗き込んできた流子に投げ渡す。
受け取った流子も首をかしげるばかりだが

『これは恐らくこの星のものではないな。おそらく生命戦維(われわれ)に近い、地球外のものが基になった存在だ』
「鮮血?」

何かに気付いたのは流子の身に着けたセーラー服、鮮血だった。
その言葉を受けて流子もアゲハも思い至る。
先ほどの怪物は禁人種(タヴ―)/カバーズに近い存在で、この球体はイルミナ/極制服のようなものかと。

「うまく使えば何か役に立つかもな……鮮血、これも吸収できたりするか?」
『何だかよく分からないものを無闇に口にするのは、あまり……そもそも繊維でないからな』

用途には悩むが何かに使えるかもしれないとひとまずアゲハが持つことにする。
一段落ついたところでアゲハの放り出した荷物などを纏めて吹雪が家から出てきた。

「アゲハ、あんたニュース見てなかったけど。何だかアッシュフォード学園が壊れちゃったらしいのよ……」
「はぁ?なんだそ、れ」

ぶっ飛んだニュースに怪訝な顔をするアゲハだったが、今が聖杯戦争のただ中ということを考えればなくはないかと思い返す。
腕利きのサイキッカーなら成し得る事象だ、サーヴァントなら容易くやってのけるだろうと空恐ろしく思いながらも納得する。

「深夜だったから幸い被害者はいないみたいだし、流子ちゃんのお姉さんも大丈夫だとは思うけど。
 災害時の避難場所ってあの学園じゃない?だからどうしようかと思ってたんだけど、どこか思い当たる場所ある?」

行く当てを失って三人は悩むことになる、ように傍からは見える。
吹雪は避難先に思考を巡らせ、他二人は聖杯戦争について考えているが。

「てか壊れるって……何があったんだ?」
「さあ。巨人とか意味わかんない目撃情報もあるみたいだけど、たぶんこの地震のせいじゃない?」

考える吹雪をよそに、アゲハもまた思考する。
避難するべきなのか否か。しないとしてもどうやってこの姉を説得するのか。
ひとまず状況を共有すべきかと流子に念話を繋ぐ。

『あ〜、纏。伝え損ねてたんだけどさ、さっきの男はあのキャスターに操られて地震とか津波から避難しろって言ってたみたいなんだよ』
『はあ?どういうことだよそれ』
『いや俺にもよくわかんねえけど、あいつが何かやってるってことは下手に避難とかしてあいつの思い通りに動くのはまずいんじゃねえか?』

策謀の気配を感じる。
学園で暗躍し、多数の主従に囲まれた窮地においても逃げ延びたあのキャスターの思う通りに動くのはあまりに危険に思えた。

『避難場所が学園でそこが壊れたってことは、そこに人を集めて一網打尽にしようとしてたとかさ』
『お前は寝てたから分からないかもしれねえけど、地震があったのはついさっきだ。さすがにこの短時間で学園まで人集めるのは無理だ』

頭をひねるが、お世辞にも頭脳派とは言い難いと自覚する二人、相手の思考を読むというのは難しいとすぐに労力を別方向に向ける。
自分たちはいかに動くべきかに。
先に定めたのはアゲハだった。


450 : きっとどこかに繋がる世界 ◆A23CJmo9LE :2017/01/27(金) 23:00:33 jGvO/QwY0

「で、考えてるみたいだけど二人はどこか避難のあて浮かんだ?」

その様子を察した吹雪がそれを促す。
一応は姉、ということか弟の変化に敏い。

「悪い、姉キは先にどっか避難しててくれ」
「ちょっと何言ってんのアゲハ!?」

しかし答えた内容は予想できるものではなかったか、怒声に近い声が吹雪の口から洩れる。
流子も疑問を表情に浮かべ、問いただそうとするがアゲハが念話でそれに先んじる。

『あの化け物、明らかにやる気がなかった。っつうか何かから逃げてた。
 いるんだ。海の方に、あの化け物が逃げ出すようなおっかねえ奴……多分地震を起こした奴と、もしかするとあのキャスターが。
 あのキャスターたちが川に飛び込んだならたどり着くのは多分海の方だろ。
 地震だとか広めてるってことは誰か来たらあいつらにとって都合が悪いってことかもしれないし。
 何よりあいつらがそこにいるなら、もしかしたら人吉の奴も向かってるかもしれねー』

とうに人吉の消失までのリミットは過ぎている。
通達の情報によると誰か一人帰還したらしいが、あの男が負けたまんまでいられるとは、リベンジもせず帰るような男には思えなかった。
拳を交えたアゲハだからこそ、そう思えた。
ならば新たなサーヴァントを得た彼が何をするか……あの金のキャスターに挑むのでは、この先に彼がいるのではとそう思えてならなかった。

「友達が取り残されてるかもしれないんだ。だからそれだけ確かめたいんだよ」

二人に向けてアゲハはそう告げる。
当初の目標としていた学園にいくのは最早叶いそうにない、と流子は押し黙る。
対照的に吹雪は感情を抑えるようにだが、アゲハに対してはっきり反対の言葉を告げた。

「アンタね……気持ちは分かるけど、そういうのはまず自分の安全を確保してからでしょ。アンタが無茶してどうすんの」

弟を心配する色を目に浮かべて、力づくでも連れて行くとアゲハに手を伸ばす吹雪。
そこへアゲハを庇うように、自信に満ちた笑みを浮かべて流子が割り込んだ。

「大丈夫だよ、あたしもついてく。いざとなったら、あたしが首根っこ掴まえてでも避難させるからさ」

その雰囲気にどこか頼れるものを感じ、吹雪の心境が和らいでいく。
そして小さくため息をつくと、ついにはアゲハへと伸ばした手を引いた。

「本当に、いい娘を彼女にしたね。あんたにはもったいない」
「「だから彼女じゃないって!」」

何度目かになるやりとりを繰り返し、そのむず痒い空気を払拭するようにアゲハは話題を戻した。

「で、姉キはどこに避難するか思いついた?」

津波の情報はデマだとしても、避難を止めるほどの説得力のある材料はない。
いや、地震があったのは流子も確かだと証言しているし、実際に起こる可能性はある。
ここで吹雪の避難を止めるのはあまりにも不自然で、まず納得しないだろうと、ひとまずの合流地点をさだめようとする。
投げっぱなしな発言に吹雪の顔に呆れた笑みが浮かぶが、少し考えて思いついた案を述べた。

「ホテルや病院の方に行きたいけど、川に近づくのも津波だと危ないし……あそこ。この道真っすぐ行ったところに結構大きな公園があるでしょ。
 間桐さんっていう大きなお屋敷が近くにあるやつ。そこにひとまず避難しているから、アンタも友達見つけて急いで合流しなさい」

この地で過ごした時間のあまりに短いアゲハにそれが具体的にどこかは浮かばなかったが、それだけの情報があればなんとかなるだろうと高を括り、頷く。

「いってらっしゃいは言わないわよ。どうせすぐにまた会うんだし……でしょ?」
「…ああ、当たり前だろ」

それだけ言葉を交わして、歩き出した姉の背中を見送る。
余計な騒ぎは避けられた、と安堵し。
そしてこれから新たな面倒ごとに首を突っ込むことを考えて少し気が重くなる二人。


451 : きっとどこかに繋がる世界 ◆A23CJmo9LE :2017/01/27(金) 23:01:46 jGvO/QwY0

「……悪いな、俺の勝手で」
「何かしこまってんだよ今さら。気にすんなって」

仮初とは言え姉を心配する、その気持ちはアゲハにもよく分かる。
未だ視界に映る姉……のことも複雑な思いはあれど気にかけているのだから。
それを事態が急転したとはいえ、後回しにする判断をしたのに罪悪感が湧き上がるが。

「さっきのバケモノが逃げてくるようなやべー奴、たぶん地震を起こすやつがいるんだろ。
 もしかしたら学園をぶっ壊したのにも関係あるかもしれねえし。
 少なくともあのキャスターが関わってるんなら、人吉のためにも放っとけないだろ」

軽くアゲハの背中を叩いて、口の端に笑みを浮かべてそう言葉を紡ぐ。
言葉以上に、その思いに俯きそうだったアゲハの視線を目指す地、前方へと向く。
流子もまた視線をアゲハと同じ方角へ向け、肩を並べて歩き始める。
――――最後に、思い出したように一言述べた。

「ああ、でもこれだけは言っとく。姉さんのこと、大事にしろよ」

それをきっかけに現代で交わした姉との最後のやり取りがアゲハの脳裏に蘇る。
エルモア・ウッドを出て未来へと向かった日、吹雪のもとへと帰る約束をした。
その約束は、本当の意味では未だに果たせていない。

「どうした?」
「いや、絶対姉キのところに帰らなきゃなって、考えてた」
「当たり前だろ……じゃ、行くか」
「おう」

待っていてくれ、と心中で姉に向けて呟き。
待っていやがれ、と天戯弥勒への決意を新たにした。



【B-4/アゲハ自宅/二日目・未明】



【夜科アゲハ@PSYREN-サイレン-】
[状態]魔力(PSI)消費(小)
[装備]なし
[道具]グリーフシード×1
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を勝ち抜く中で天戯弥勒の元へ辿り着く。
1.北上し、地震の原因と金のキャスター、人吉を探す。
2.地震が人為的なものでなく、危険を感じたら避難する。
[備考]
※ランサー(前田慶次)陣営と一時的に同盟を結びました
※セイバー(リンク)、ランサー(前田慶次)、キャスター(食蜂)、アーチャー(モリガン)、ライダー(ルフィ)を確認しました。
※ランサー(レミリア)を確認しました。
※キャスター(フェイスレス)の情報を断片的に入手しました
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』により、食蜂のマスターはタダノだと誤認させられていました。
※アーチャー(モリガン)と交戦しました。宝具の情報を一部得ています
※グリーフシードを地球外由来のもの、イルミナに近い存在と推察しています。


【セイバー(纒流子)@キルラキル】
[状態]魔力消費(中)疲労(小)
[装備]
[道具]
[思考・状況]
基本行動方針:アゲハと一緒に天戯弥勒の元へ辿り着く。
1.北上し、地震の原因と金のキャスター、人吉を探す。
2.地震が人為的なものでなく、危険を感じたら避難する。
3.キャスターと、何かされたアゲハが気がかり
4.アーチャー(モリガン)はいつかぶっ倒す
[備考]
※セイバー(リンク)、ランサー(前田慶次)、キャスター(食蜂)、アーチャー(モリガン)、ライダー(ルフィ)を確認しました。
※間桐雁夜と会話をしましたが彼がマスターだと気付いていません。
※キャスター(フェイスレス)の情報を断片的に入手しました
※アゲハにはキャスター(食蜂)が何かしたと考えています。
※アーチャー(モリガン)と交戦しました。宝具の情報を一部得ています


452 : ◆A23CJmo9LE :2017/01/27(金) 23:03:13 jGvO/QwY0
投下終了です。指摘等あればお願いします。
続けて
雁夜&一方通行、浅羽&垣根、ルキア&慶次、ヒトナリ&モリガン、人吉
まどか&ルフィ、刑兆&白ひげ、伊介&操祈、さやか&明
マンセマット、ルイ・サイファー、飛鳥了、天戯弥勒
以上のキャラを予約します


453 : 名無しさん :2017/01/29(日) 22:59:37 ggPNzlUo0
投下乙です!
眠っていたアゲハ達もついに月のことを知って役者が揃ってきましたね
流子とアゲハは幼少期から家庭の暖かさを知らないコンビだから姉とのやりとりが深い
帰る場所があると強くなる二人でもあるから応援してる
今のおじさん宅には桜ちゃんがいるけど面倒な爺がいないことを願う

そして予約が楽しみです!大一番の話、待ってます!


454 : ◆A23CJmo9LE :2017/02/03(金) 20:39:13 hb3oAYnY0
延長お願いします


455 : ◆A23CJmo9LE :2017/02/06(月) 23:25:41 ZpRApzig0
延長して早々ですが、予約を破棄します
申し訳ありません


456 : 名無しさん :2017/02/21(火) 02:14:32 dsVAwggo0
アゲハと流子のコンビはやっぱりいいな
この聖杯の中でも正統派少年漫画的コンビって感じが一番強い
流子のハッパのかけ方がアゲハに噛み合ってるんだろうな
とりあえずいよいよこの二人も盤面に再合流しそうだし、善吉とどう再会するかも気になる
破棄は残念ですが次なる展開も楽しみにしてます


457 : ◆A23CJmo9LE :2017/04/26(水) 23:18:12 x4BMSCnI0
今一度
雁夜&一方通行、浅羽&垣根、ルキア&慶次、ヒトナリ&モリガン、人吉
まどか&ルフィ、刑兆&白ひげ、伊介&操祈、さやか&明
マンセマット、ルイ・サイファー、飛鳥了、天戯弥勒
予約します


458 : ◆A23CJmo9LE :2017/05/06(土) 03:35:27 xmANsQ8A0
失礼、報告が遅くなりましたが延長お願いします


459 : 名無しさん :2017/05/06(土) 12:26:27 H7.pDqTk0
期待してます、がんばってください


460 : 名無しさん :2017/05/07(日) 22:52:29 qyIJ2LEw0
GWで一気読みしました
雑談スレでは少年漫画のような熱い展開ながら裏方の背景や各考察が濃いと聞いていましたがそのとおりでした
アゲハ組を始めとする学生組の青臭いながらも彼らなりに聖杯戦争へ赴くのが正に王道展開
戦闘は分かりやすくて派手なものが多いので読んでいてとても楽しめました。
たとえばエレンは短い出番ながら初めて主催に立ち向かった存在であり、ジャファルとも最終的に理解しあったのが印象的です
流子とモリガンの女同士ながら男顔負けの戦いや正統派の勇者として戦うリンクとか
でも一番印象に残ったのは麦わら海賊団VS最後の四人ですね。熱い、雑誌は違いますが絵が浮かぶ燃える展開でした
サンジとメリー号、ウソップとカピタンがよかったなあ

考察だと白ひげと食蜂操祈の二人が飛び抜けていて、どれも面白い
ヘブンズフィールの単語が飛び出したり、別の話ですが自動人形に対する纏流子とかもなるほどなあと思うばかりです
直近では悪魔勢がここぞとばかりに絡んできましたね。デビルマンと女神転生の相性が良いしモリガンもいる
私は女神転生を知らないのですが調べたらリメイクが出るらしいのでこれを機に購入したいと思います

長くなりましたが楽しみにまっています
個人的には最弱の存在でありながら策を張り巡らせる食蜂操祈が好きです


461 : ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:24:32 Mm4iMwzc0
遅くなって申し訳ない。
投下します


462 : 聖なる柱聳え立つとき ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:26:12 Mm4iMwzc0

白い六枚の翼をはためかせ、空を翔る男の姿があった。
翼だけでなく、服装も、さらにはその体までも無機質な白さに彩られた彼のことを見た人がいれば、まるで天使のようだと評するだろう。

「どこいきやがった一方通行ァーーーー!!!」

だがその獣のような雄叫びと表情を見た者がいれば、まさしく悪魔のようだと評するだろう。
バーサーク・アサシン、垣根帝督は自身の持つ暗殺者としての隠密性を完全に放り捨て、狂戦士としての獣性を露わにしていた。
彼は確信していた。
こうしていれば、間違いなく一方通行は自分のことを放っておかない筈だと。
食蜂操祈を放り捨て、浅羽直之も投げ出し、ただ翔るのみ。
視界に入る邪魔者は消し、ただ一方通行に勝利するためだけに、今の垣根帝督は在る。

そんな彼の視界に何かの影が映った。
魔力は籠められているが、気配でサーヴァントではないと分かる。
ギリ、ギリと古めかしい機械特有の音を立てて何かを守るように動く人形の群れ。
歯車のきしむ音が耳に届いたことで、学園都市の技術体系とは異なる機械兵器の類かと思考して。
小蠅を払うように、気まぐれにそれの破壊を決めた。

子供が積み上げたブロックを崩すように些細な所作と機微で次々と人形が破壊されていった。
金属の砕け散る音が響く。
そこへ新たにブン、と蟲の羽音が重なった。
翅刃虫と呼ばれる、牛骨すら嚙み砕く強靭な顎を持った化け物蟲が人形に混じって数匹垣根に襲い掛かる。

「人形遊びに蟲遊び。ガキみてえな真似しやがる。どこいってもそんなんばっかりか」

垣根もまたゴウ!と翼から轟音を発し、叩きつけて蟲も人形も諸共に一掃する。
追撃が止まったところで今度は周囲に目を走らせ、蟲と人形の出どころらしき男を視界に収めた。
翼をゆっくり動かし、その男の前に降り立つ。

「おま、え……サーヴァン、ト」

その人形と蟲に守られた男は、途切れ途切れに言葉を吐きだす。
男はフードを目深にかぶり、夜の闇もあってよく見えないが、体が不自由なことは見て取れる。
左半身が不自由らしく、戦闘による負傷かと思ったが骨折などの様子はなく、出血と言えば口から洩れる僅かなものだけ。
にも拘らず肌の色は不健康な土気色で、様子だけ見れば今にも死にそうな風貌だった。
その瀕死な有り様と、内側から直接臓腑を壊されたような吐血、感じられる魔力の性質から一つの結論を垣根は導き出した。

「お前、にわか仕立ての能力者だな。それが無理に魔術なんざ使ってこのザマってわけか」

垣根は魔術に聡いわけではないが、人形も蟲もどちらもオカルトの分野として世界中に散見するもので、その行使が魔術にあたるものだと推察するのは容易かった。
刻印虫を植え付け、半死半生となった間桐雁夜の有り様は、体晶による暴走によって能力を発動する命削りの能力者に似ていた。
そしてサーヴァントとなって感じ取るようになった魔力の性質、目の前の男の持つそれは、PSI粒子の影響を受けたうえで垣根の処置を受けた浅羽のものに似ていた。
つまりは垣根のように、能力開発に通じた者のニオイを感じる。
こいつは

「一方通行のマスターってことか、テメエ」

ただの三下であるなら放っておくつもりだった。今は何よりも一方通行を殺すために動くべきなのだから。
だがこの男を殺せばそれが一方通行の消滅に繋がるのならば。
妹達を殺すように、目の前の男も殺す。


463 : 聖なる柱聳え立つとき ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:26:40 Mm4iMwzc0

殺意をたぎらせ、ゆっくりと嚙みしめるように翼を振り上げる。
あばよ、と最期にそれだけ言ってとどめを刺すつもりだった。
だがその未来は現実とはならない。
目の前に突如として立ちはだかる白い影、それに遅れて飛来音が後方から聞こえてくる。

一方通行。垣根帝督。
二つの白が再び向き合い、ぶつかる。
すでに攻撃態勢に入っていた垣根が先んじ、翼で魔術を奏でて雷を放つ。
雁夜ごとまとめて撃ち抜こうとした魔術の雷を、ベクトル操作で足元から集めた石の壁で一方通行が防ぐ。
雷の熱で空気が膨張し、その進行で壁が砕け、大爆発。
その爆風の勢いを利用して、雁夜を一方通行が吹き飛ばす。
垣根と一方通行はその場に踏みとどまり、にらみ合う。

そして今度は一方通行が風の刃を至近から放ち攻撃する。
垣根は同じように風の刃を放ち、それを迎撃する。
二方向から吹いた風は大半はぶつかり合うも、影響から逃れた一部が互いに損傷を与える。
垣根は左の腿が切り裂かれるが、すぐに未元物質でそれを治す。
一方通行は左腕にダメージを負い、そしてそれを癒すことはできない。

「な、バーサーカー!?そんな……」

その光景に間桐雁夜は言い難い衝撃を覚えた。
麦わら帽子のサーヴァントの様々な格闘技も、青い悪魔染みたサーヴァントの多彩な超常現象も、その大半を無力化していた己がサーヴァントの負傷は、彼にとって認めたくない現実だった。
そしてその光景と様子に垣根はほくそ笑む。
本来なら肉体的に強靭とは言い難い一方通行にダメージを与えるのに大魔術は不要と確認できたのが一つ。
そして僅かなダメージ…並の魔術師ならば治療できるであろうそれを放置する、技量の拙いマスターが一方通行の生命線であることがもう一つ。

「マスターを庇いながらの消耗戦。詰んだな、一方通行」

未元物質で形成した翼が唸る。
雷が雁夜へと跳び、そしてそれを一方通行が必死にいなす。
人形の多くは砕かれ、魔術使用の反作用で魔術回路を負傷した雁夜は戦場から離れるのも難しい。
近くに雁夜のいる状態では広範囲を一掃してしまう翼も行使は難しい。

冷徹に一手一手を進める棋士のように、垣根帝督の魔術が戦場を蹂躙していく。
宙に稲妻が駆け、地を焔が走り。
いずれ訪れるであろう垣根帝督の勝利を彩るように、高らかに知らしめるように夜空に戦火が反射していた。



◇  ◇  ◇


464 : 聖なる柱聳え立つとき ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:27:07 Mm4iMwzc0

「……静かだな。いや、静かすぎるといってもいいほど人の気配が全くない」

未だに少し慣れないリムジンの運転に汗を流しながらヒトナリがぽつりと漏らす。

「ん?もう夜もいい時間だぜ。戦支度してる侍ならともかく、領下じゃあもう寝てもおかしくはないだろう」
「月明かりが頼りの時代はともかく、今や雷霆は人の手に落ちた時代だ。24時間人の動く時代でこれは違和感がある…いや、NPCはそう動くようにされているのか?」

夕刻からひたすら街には聖杯戦争の気配が満ちている。
人形蠢き、悪魔が飛び交い、巨人の暴れた戦場で呑気に眠ることなどできるのか。
悪魔を身近に置いた環境でセラピストにかかる仲間の姿を見ていたヒトナリにそれは理解しかねた。

「人払いをかけてるのかもしれないわね」
「やはりそう思うか、アーチャー。そろそろキャスターの勢力圏でもおかしくはない」
「まだ、鬼道や結界の影響下にはないと思うぞ。一応な」

ルキアの発言を受け、モリガンは状況を確実につかむために使い魔を先行させることも考えるが今一歩踏み出せない。
使い魔を放てば多少なりそちらに意識を裂くざるを得なくなる。
やはり先ほどまで争っていた相手に警戒を解き切ることはできず、僅かの意識を裂くのも惜しんでしまう。
タダノも恐らく同様の考えなのだろう、と提案はせずタダノの隣でただ意識を払うにとどめる。

……ひたすらに沈黙が車内を包む。
戦地特有の重い静寂。
そこへ彼方から雷鳴が鳴り響いた。

「運転席ではよく見えないが、雲はなかったと思ったが」
「ああ。薄気味悪いお月様がよーく見えてるぜ」
「かなり近いようだ。ここからの距離はもちろん、地表との距離も」
「あの軌道は自然のものじゃないわね。ふふっ、誰かお楽しみの最中かしら?」

車内の四人の注目が雷鳴の方角へと向けられる。
ルキアとヒトナリの眼にははっきりとは見えないが、慶次とモリガンの視界には雷以外にも不自然な塵旋風や焔も映っていた。

「これは短時間しかライダーと一緒にいなかった僕の拙い推察なので否定してくれても一向にかまわないのだが」

車の速度を気持ち落としながらそうヒトナリが前置きする。

「彼はあまり策を弄するタイプには見えなかった。単純な挟撃や、後ろや横に回り込むという発想をするかすら怪しい。
 もしキャスターの陣地に攻め込むとしても真っ向勝負を仕掛けると思えるほどに。その動きはスニーキングなど生易しい響きではなく、総力戦になると僕は考える」

あまりといえばあまりな評価だが、モリガンと慶次の二人は同意するように深くうなずく。

「人の話を噛み砕いて聞くタイプでもない。こちら側に走っていったのは事実だろうが、アーチャーの言うように海岸近くの温泉宿にたどり着けたかは微妙なところだ。
 あの雷走る戦場にライダーがいる、あるいは目指してくる可能性があると思うのだがどうだろう?」

目的地を改めないか、とヒトナリが提言する。
一分の理があるその発言に三人は少しだけ考えはじめ

「俺は賛成だな」

そして即座に慶次は返答した。

「兵は拙速を尊ぶ。あのライダーほどになるとさすがに一考しちまうが、まあそれはさておき。
 ぐだぐだ悩んでるとあの戦場に変化が起きちまうかもしれねえし、温泉宿の方が近いってことになったらそっちに行くざるを得なくなっちまう。
 あのキャスターの小娘がやってるとは思わねえが、人形を寄こしてきたとなると単騎じゃないみたいだしな。確実に何かが起きているところに向かった方がいい」

捲し立てるように言葉を慶次は連ねた。
少し思考したルキアだったが、彼女もそれに追従するという。
温泉宿にこだわるつもりも、さほど慶次に反対する理由もなく、相方に合わせたのが大きい。
慶次自身はというと、述べた理由ももちろんあるがアーチャーからの伝聞情報だけしかない場所を目的地にできるほどに気を許せはしないというのもある。
モリガンも相手を信用しない身、その内心を察しはする。
だが彼女もまた新たな戦場へと向かうことを承諾した。
キャスターの居所をそこと確かめ、最も温泉宿にこだわると思われたアーチャーが同意したことでリムジンはハンドルを切り雷鳴の方へと走り出す。

接近するほどに当然雷鳴は大きく耳に届き、だんだんと見えていなかった戦火の詳細がマスターの二人にも理解が進んでいく。
白い二つの飛行体の衝突だ。
サーヴァントでしか発せないその激しい戦闘に各々僅かに震えが起こる。
ヒトナリとルキアは必然沸き起こる畏敬の念から。
慶次とモリガンは武者震いを。
特にモリガンは期待通りの強者の気配に舌なめずりまでして高揚を露わにする。


465 : 聖なる柱聳え立つとき ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:27:39 Mm4iMwzc0

そしてたどり着いたその戦場は、天使と悪魔のバーサーカーの衝突と同じく神域の決闘であった。
純白の狂戦士二騎、規格外の超能力の頂上決戦は一廉の戦士である四人にも慮外のもの。
武の達人である慶次にも、霊の天才であるルキアにも、悪魔の頂点を知るヒトナリとモリガンにも決して再現できないもの。

垣根が白い翼を振るわせるたびに雷、火、風、氷がすさまじい殺気と共に放たれる。
一方通行が腕を振るい、風の刃や石礫でそれを迎撃し、時に魔の手を振るって踊りかかる。
多彩な天使の魔術はもちろんのこと、未元物質に満ち、光も音も空気も何もかもベクトルを捻じ曲げられた空間はある種の異界と化している。
介入しがたいその戦場でサーヴァントたちは互いの気配を察する。
二人の狂戦士は新たに表れたニ騎のサーヴァントに僅かに殺気を向けるが、それだけで互いの殺し合いに邁進する。
邪魔さえなければ手出しはしないと。
対して乱入するような形になったニ騎は狂戦士以外のサーヴァントの気配がないことに少しだけ落胆する。
さてどうしたものか、と車内で揃って思考しようとすると

「……ああ、また会えましたね。本当に生きていたんだ、アーチャーさん」

響く声。新たな人物の登場。
強大な魔力。しかしサーヴァントではない。
四人の眼が一斉にそちらを向く。
もう一人の純白がそこに歩いて来ていた。

「君は、さっきのアーチャーのマスター……そうか、もうマンセマットに」

その正体に真っ先に気付いたのがヒトナリだった。
モリガンと争ったアーチャーのマスターであることにはすぐには思い至れずとも、その外観はかつての戦友と似通っていた。
マンセマットを狂信し、人を辞めてしまったゼレーニンに。
ならば目の前の少年もまた、突如として聖杯戦争に現れたいけ好かない天使の手によって変容させられてしまったのだろうと悍ましい結論に思い至るのも当然と言えよう。

天使となった少年の眼は深淵そのもので、傍から見ると狂気すらも感じ取れない。
しかしその視線の向く先と意味をモリガンだけは察していた。

「とても情熱的ね」

一度はその胸に抱きしめたオトコだ。
それが自らに魅せられて求めてくるというのは普通なら悪い気はしない。
ああ、相手が天使になどその身を堕としていなければ。

「けど、誰だったかしらねえ」

もはや眼中にない。
記憶の領域を占めるのも惜しい。
万に一つ、この聖杯戦争の記憶の一つとして座にまで届いてしまったら無用なストレスだ。
そんなある意味で前向きで、挑発的な言葉がモリガンの口から吐かれた。

それを耳にした浅羽は表情を歪める。
戦場で擦り切れてしまった心にも、未元物質で人を辞めてしまった肉体にも、焦がれる人に認識されないというトラウマは響いた。
そして浅羽の喉はそれに応じた音を奏でた。
怨讐の雄叫びか、悲哀の嘆きか、逃避の悲鳴か、かつて唱えたような愛執の言霊か。
いずれであるかは本人にしか……いや本人にも分からないかもしれないそれは『歌』となって世界に鳴り渡る。
モリガンの乗るリムジンを破壊する『詠唱』としてその歌は具現した。

人外の声。
獣の雄叫びとも違う、理解の外にあるそれをヒトナリは幾度か聞いたおぼえがあった。
セクター・グルースでジャック部隊を洗脳した時に。セクター・ボーティーズでゼレーニンと宇宙卵を奪いあった時に。

「天使の、『歌唱』か……!」
「ボサっとしないの」

モリガンがヒトナリの首元をひっつかみ、車外へ脱出する。
ルキアに対しては慶次が同じように。
そして四人が脱出した直後に車はひしゃげ、スクラップへと姿を変える。


466 : 聖なる柱聳え立つとき ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:28:13 Mm4iMwzc0

「あーあー、また足がなくなっちまった。戦場のど真ん中でこいつは面倒だな」

実体化して槍を構えながら慶次がそうぼやく。
空中のバーサーカーたちを警戒を少しだけ向けてから、改めて襲撃者である浅羽へと注意を向ける。
その瞬間にモリガンから浅羽へと攻撃が放たれた。
コウモリをかたどった魔力弾が拳から放たれ、浅羽へ襲い掛かる。
それに浅羽は事前に感知していたような鋭い反応を見せた。
身体能力は人間の域を出ずとも、強化された感覚は攻撃の前兆を見聞し対処する。
純白の装いから這い出るように真っ白な翼を生やし、コウモリを打ち払うようにして迎撃した。

「へえ、躱すんだ。私の拳を」

その振る舞いにモリガンは意識を改める。
羽虫を潰す程度の感覚から明確な害虫駆除へと。
少しだけ、背後のランサーと宙で戦い続けるニ騎を見る。
複雑な戦況で無駄に敵を増やすことはしないだろう、と楽観的な意見で自分を納得させて

「上の戦況にだけ注意してなさい」

と、ヒトナリとランサーたちに言い含めて自分は天使になってしまった少年へと襲い掛かる。

「な、待てアーチャー!」

天使がどれだけ厄介な相手かはよく知っている。
近くでサーヴァントが争っている状況で混乱を加速させるようなことをするな。
ライダーとまどかちゃんの捜索を優先しろ。
様々な理由を叫びヒトナリはモリガンを止めようとする。

「いやあ、無駄だろ。やる気満々だぜあいつ」

慶次はその振る舞いを茶化すように無意味と評する。

「下手するとさっき俺らとやりあった時より本気だな。ただ、なんだ。宿敵に向ける殺気というよりは台所で油虫を見つけた女中を彷彿とさせるのはどうかと思うが」

天使と悪魔の相いれないさまを慶次はそう評し、止まることはないだろうと進言するが、それでもヒトナリは念話まで送り撤退を指示し続ける。

『本当にそれでいいと思っているの?』

帰ってきたのは初めて聞く冷たい声色だった。
何度か戦闘中に介入することもあったが、今までとまるで印象が違う。
まさに魔王と呼ぶに相応しい畏れを纏った声は、念話越しであり、なおかつ数多の悪魔としのぎを削ったヒトナリにさえ背筋が冷えるのを覚えさせた。
それでもこの戦場に留まる意味はない、と続けるがモリガンは取り付く島もない。
シュバルツバースで幾度も見てきた素っ気ない悪魔の態度、交渉失敗の予感にヒトナリは歯噛みする。

『……本当に気付いてないのね。そこの白い獣のようなバーサーカーに思うところはない?』

ふと温度を取り戻した念話がモリガンから送られてくる。
忠言のようなその言葉に従い、白いバーサーカーを観察してみる。
神域の戦闘、高速の駆け引きを見切るのは至難だったが、防戦に回った男の方はかろうじて目に捉えるに叶う。

『ライダーが探していた白いサーヴァントってあれのことでしょ。私たちが引き寄せられたみたいに彼がここに来る可能性もあるんじゃない?
 ひとまずの安全を確保して待ってみるのも手でしょう?ならこの天使は、邪魔』

ヒトナリも一理はある、と納得しかけた。
だが結局は戦うための言い訳でしかないのでは、とも考える。
こと闘争に関することならこの悪魔はとてつもなく鼻が利くのだから。
それでももう一度、それを知ったうえで命じれば撤退に応じると思えた。
もちろんバーサーカーの戦火に―標的であったならなおのこと―ライダーが向かってくる可能性は否定できない。
迷い、決断を出し切れずにいると


467 : 聖なる柱聳え立つとき ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:28:36 Mm4iMwzc0

『ああ、もうそちらに答えを出す必要はなさそうね』

モリガンから再び念話が届く。

『この勝負は私の勝ちだし、むこうも決着のようだもの』

念話の片手間にだがモリガンは戦い続けていた。
それに浅羽はよく対抗した方だろう。
モリガンの翼が幾本もの槍になっても、足に移動して刃となって斬りかかっても、それを感知し対処したのは人の身には過ぎた技だった。
もしも未元物質の操作や、ライズによる声帯と聴覚の強化にもっと馴染んでいれば勝機もあったかもしれない。
だが戦闘経験どころか喧嘩の経験すら少ない浅羽では、センスによりモリガンの攻撃の前兆を感知したところで彼女のトリッキーな技に対処しきることはできなかった。
そもそも浅羽に戦意は薄い。
モリガンに魅了され、未だその呪縛から抜けきらない彼はただ愛を求めただけ。
マンセマットの手が加わった垣根帝督の未元物質を取り込み、天使の粋へと近づいてしまった彼にそれは叶わないものだったが。

翼で全身をくるみ、刃を突き出させて突撃するモリガンを、追い込まれた浅羽は紙一重で躱す。
その瞬間に翼を広げて減速し、即座に浅羽に掴みかかる。
その動作も浅羽は読んでいたが、体から生えた翼の存在に慣れていなかったためにそこを掴まれ、あえなく地面に叩きつけられる。

「ぅあっ!」
「黙りなさい。あなたが人のままだったなら舌でも入れて黙らせたのだけれども、落ちぶれたあなたにそれをしたくはないの」

悲鳴すらも耳障りと首元を締め上げ黙らせる。
とどめを刺すかどうか、一応確認した方がいいかと手を止めると、もう一つの戦いの決着が近いのも目に付く。

垣根の翼の周りに、素人でもわかるほどの甚大な魔力が収束していく。
宝具、とは言わないまでも大技の構えだ。

「マスター諸共、コイツで消えな一方通行ァ!『メギドラオン』!」

籠められた膨大な魔力が解き放たれた。
今や本当に天使の領域へとたどり着いた六枚の翼を振るわせて呪文を詠唱し、いい加減に慣れてきた魔術を最大限の力で放つ。
五代元素を超え、「 」へと近づく万能属性の大爆発が一体を覆いつくし、一方通行も間桐雁夜も跡形もなく消し飛ぶ。

そう、なるはずだった。


「…なんだ、何をした?『メギドラオン』!」

詠唱を行ったはずだが、何も起きない。
もう一度鈴虫のように翼から音を発する。
さすがに能力行使と並行しての魔術の制御はミスもあるかと再び放つが、今度も何も発生しない。
能力者が魔術を使った副作用のみが垣根を蝕む。
そのダメージも能力を制御し、体外の未元物質に抑えているはずだったが、突如としてコントロールを失い、体内の臓器へとダメージを与えた。

「ガ、あぁッ!?」

胃の腑から血がこみ上げる。
それを呑み込み、すぐに体内の損傷を未元物質で埋める。
だがその一瞬で一方通行は肉薄し、垣根の半身を粉微塵に吹き飛ばす。

「無駄だってのが、分からねえかァ?」

その吹き飛んだ体も未元物質で補填して、さらにすぐに呪文詠唱……だが、今度も魔術は実を結ばない。
補填したばかりの肉体が反動で崩れ落ちるだけ。

「ッ…!この、テメェの仕業か!」

咄嗟に一方通行との距離をとり、未元物質そのものを弾丸のように打ち出して牽制する。
その未元物質が本体を離れるとほぼ同時に軌道を乱したことで何が起きているのか、垣根は理解した。


468 : 聖なる柱聳え立つとき ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:29:08 Mm4iMwzc0

一方通行は、未元物質そのものに干渉し、詠唱を乱している。
言うなれば科学技術による『強制詠唱(スペル・インターセプト)』。
未元物質の翼で発する音による魔術詠唱、それのベクトルを一方通行でかき乱し本来の効果を発揮しないようにしているのだ。
それと気づけば垣根も対処のしようはある。
詠唱に雑音を混ぜ、別パターンの詠唱を複数並行して行い、乱されるのを前提にして僅かに正しくない詠唱を行うなど。
だがそれも一方通行には通じない。
腐っても鯛、狂化してなお学園都市第一位は伊達ではない。
学園都市第二位の試行錯誤を三下の小細工と切って捨てるように、ノイズを切り抜けて垣根の魔術に一方通行は干渉して見せた。
魔術戦では、確かに垣根帝督は一方通行の上をいった。
しかし、第二位と第一位……超能力戦では死してなお、結局第一位には及ばないということだ。

ほんの少し前までは翼から音が発せられるたび炎が、雷が、氷が飛び交っていた。
しかし今はもう、音を立てるたびに垣根の体が崩壊していくばかり。
翼が落ち、眼球が沸騰し、爪が剥がれ。
それでもなお、彼は翼を振るい続けた。

滑稽にも哀れにも見える動作……それに狂化した一方通行は何も感じることなく、ただ黙々と戦闘行為を続ける。
空を舞う垣根帝督に、自らも竜巻を背負い追いすがり、手刀を突き出す。
指先が未元物質に掠めると、それだけで垣根の全身にヒビが走って崩壊していく。
垣根自身が反動を厭わず魔術を行使したための末期か、と思われた。

「――勝ったと、思ったか?」

未元物質に触れた一歩通行を、その羽で繭にくるむ様に閉じ込める。

「学園都市で評価されない項目で勝負すると言っただろう?
 この俺が、バカの一つ覚えのように魔術にこだわった理由が分かるか?いやぁ、狂っちまったお前には無理難題だったか?」


崩れ落ちたはずの未元物質が一ヶ所に集まり、巨大なカブトムシを形どっていた。

カブトムシもまた垣根帝督(バーサーク・アサシン)、Dランクの気配遮断スキルを持つ。
それが一方通行の感知外から、まっしぐらにその最大の弱点……マスター、間桐雁夜へと襲い掛かる。

「終わりだよ、一方通行!守るべきものを守れず死ね!」

容赦などしない。手段を選ぶこともしない。
妹達という弱みを突いたように、マスターという弱点を突く。
アサシンのサーヴァントとしての真骨頂を見せ、英霊としての対決に勝利する。

カブトムシは真っすぐに雁夜に向けて突き進み。
そして、そこに何もなかったかのようにすり抜けた。
そこにいるはずの雁夜が、まるで幻であるかのように攻撃が当たらなかったのだ。

「ば、かな――」

疑問が垣根の口をついて出そうになるが、それは意味を持つ言葉にはならない。
一方通行が自らを捉える未元物質もろともに垣根を引き裂き、その欠片でカブトムシも攻撃したからだ。
崩れ落ち、落下することで自然と一方通行と垣根は離れていく、あたかも決着に見える光景だ。
事実胸から上と顔の右半分を残してズタズタの満身創痍になった垣根だが、それでも未元物質を生み出して欠損した部分を補っていく。
欠けた頭脳と視界が回復するにつれ、なぜカブトムシの襲撃が外れたのかの答えに垣根は辿り着いた。

(あのマスター周りの一帯、僅かにだが距離感が妙だ。蜃気楼か、あの野郎!)

気付いた。
ベクトル操作により大気の密度を操ったか、はたまた直接光に干渉したか。
いずれにせよ、一方通行は垣根帝督と戦いながらも、自らのマスターを守るべく動いていた。
全身全霊を垣根帝督に注ぐことはせず、片手間でその魔術を攻略し、暗殺の魔の手からも防いだのだ。

落下している最中の垣根の視界に、未だはるか上空を飛ぶ一方通行が映る。



――これが、悪党だ――



そんな風に、自らの力と立ち位置を示しているように見えた。
狂化しているのだから、そうした美意識があるのかは分からないし、それを誇示するなんて行為をするとも限らない。


だがコイツは昔っからこういう、むかつく野郎だった。

「第二位(オレ)を…見下してんじゃねえッ!!第一位(アクセラレータ)ァあああああああ!!」

思い出す。初めての敗北の屈辱を。
そして最後に見た黒キ翼と、それに呼応して生まれた新たな未元物質……神の振るう兵器のような、器械的で無機質で何より純粋な白い翼を。
今一度あの力を呼び覚まし、今度こそ勝利をこの手に。


469 : 聖なる柱聳え立つとき ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:29:37 Mm4iMwzc0

再生した肉体で、その力を行使しようとする。
だが、それは叶わなかった。
なぜか、と垣根は疑問を覚える。
はじめは霊基が足りないかと考えた。しかし大天使の力で再臨したこの状態ならば十分なはずだとそれは否定する。
答えはもっと単純なものだった。
器が十分であろうとも、それを満たす中身がなければ十分な力は発揮できない。

(浅羽、あのガキ、勝手にやりすぎだ……!)

たしかに未元物質の生成には少なくない魔力は食うだろう。
それでもPSI粒子による覚醒と、さらに擬似魔術回路として未元物質を埋め込み、供給量は大幅に増えるよう処置されていた。
一連の戦闘での消耗を踏まえてなお、継戦は可能だろうと垣根は計算していた。
しかし浅羽が魔女や人形、モリガン相手に行使した不慣れな『歌』による消耗がその計算を狂わせたのだ。
一方通行の戦いが目的であるとはいえ、外をおろそかにしすぎた。
ほんの少しでも意識を他に向ければその隙をつくのが一方通行という強者であると警戒したが故の、劣勢。
一方通行と同じ窮地に立ち、そして一方通行と違ってそれに対処できなかった劣等感が垣根の心中に沸き起こる。

もはや新たな切り札の開帳はおろか、未元物質の供給すら満足には叶わない。
すなわち垣根帝督はこれ以上の復活はできない。
次に致命の一撃を受ければそれで終わる。

あらゆる不利な事象の乱立に垣根の奥歯が鳴り、苛立った表情で令呪を用いて魔力を供給するように浅羽に念話を送ろうとするが



「お困りのようですね」

不気味なほどに透き通る声が浅羽と垣根に向けて放たれる。
四人目の純白、大天使マンセマットが降臨した。

「汚れなき風よ」

天使の声が世界に直接語り掛ける。
浅羽のような拙い詠唱でも、垣根のような不純物交じりの詠唱でもない真なる歌唱(エノキアン)。
その空想が具現化し、大いなる風となって一帯に駆け抜ける。
一方通行の反射もモリガンの翼も諸共に吹き飛ばす四なる魔術で、浅羽と垣根の窮地を救ってみせた。

「ほう、もう少し抵抗するかと思いましたが。帝督との戦闘で消耗していたようですね」
「何しにきやがったテメエ」
「おやおや、いけませんよ。あなたをこの地に呼び戻した、いわば恩人である私にそのような言葉は。
 ……さて、立てますか?ナオユキ。やはりあの悪魔はあなたにあまりいい影響を与えないようだ、まったく」

今にも掴みかかりそうな垣根を軽く制して、マンセマットは浅羽に近づき手を伸ばす。
吹き飛ばされたモリガンの後に取り残された浅羽は先ほどで喉元を締め上げられていたからか咳き込みながらその手を取り立ち上がる。
モリガンも、一方通行も、慶次も、それを見ながらマスターたちの前に出て、風により乱された戦闘態勢を整えていく。

「お前が出てきたということは、この聖杯戦争も直接動かなければならない状態になったということか」
「おや、久しぶりですねヒトナリ。遊びふける国で私の同胞、ゼレーニンの最期を共に見届けて以来だ」

挑発的な言葉と笑みを向けてくるマンセマットに、ヒトナリの銃を握る手に力がこもる。
それを制するように、そっとモリガンが手を添えて銃を降ろさせる。

「落ち着いて。見え透いた挑発じゃない、らしくないわよ」
「……君に落ち着けと言われては黙るざるを得ないな」

怒りを収めたわけではないが、さすがにあのモリガンに諫められては自身の短慮さに頭も覚めるというもの。
軽く息をつき、銃を握る力を弱める。
その様子を浅羽は憎々しく黙って見つめている。


470 : 聖なる柱聳え立つとき ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:30:02 Mm4iMwzc0

「相変わらず悪魔と睦まじいようだ。それも稀代の魔王が相手とは。その様では我らの同胞に、という話はもはや投げかけられそうもない」
「天使とも仲良くできるさ。シュバルツバースでは秩序を重んじるもののためにミッションをこなしたこともある。
 ただマンセマット、お前とは仲良くできないな。天使としてのゼレーニンを殺したのは…僕、だが、人としての彼女を殺めたのはお前だマンセマット。
 それで、お前は何をしに来たんだ?僕に戦友のかたき討ちをさせてくれるのか?」

ヒトナリも挑発的な言葉でマンセマットに食って掛かる。
怒りは抑えようとも、抑えきれない静かな闘志が視線ににじむ。
それを受けてマンセマットも少しだけ表情を歪める。

「ああ、その眼付き。傲慢な言動。実際にそれだけのことをやってきたのだから手に負えない。時代によってはあなたをサーヴァントとすることもできるかもしれませんね。
 分霊とはいえ第二の獣を退けたときには驚きましたよニンゲン。マーヤ―のもとにたどり着くためとはいえ悪魔を虐殺した時も、あなたはその眼をしていましたのを覚えています。
 だがオレ、いや私の首をくれてやるために訪れるわけがないでしょう。私はね、同胞を救うために来たのですよ」

そういいながら垣根と浅羽の二人に手を差し伸べる姿はまさしく天使のものだった。
秩序を重んじ、世界を救う神の遣い……世のため神のために人を掬い上げる神々しい言動。
本物というのはどうあれ人の心を揺り動かす。
ヒトナリやモリガンは吐き気を催すほどの嫌悪を覚え、垣根や浅羽、そして雁夜も尊いものを感じていた。

「テイトク。あなた一人ではあの上位の人造天使には勝てないでしょう。
 ナオユキ。彼女は今のあなたを記憶にとどめるに相応しいとは思ってくれないでしょう。
 …………力を、欲しますか?」

その問いかけに二人は一も二もなく頷いた。
満面の笑みでそれを受け止め、では瞳を閉じて、と返す。
マンセマットが詠唱をはじめ、術式が整うのを見てヒトナリがすぐに反応した。

「アーチャー、奴を止めろ!宝具を使っても構わない!」

言いながら自分もダメもとでマシンガンを掃射するが、無意味に終わる。
マンセマットには銃撃も風属性も通用せず、反射されてしまうのだ。
モリガンが跳ね返された攻撃を弾き、同時にビットを展開して宝具を撃とうとする。
だがマンセマットは当然それを予期して先手を取った。
彼に必要なのはサーヴァントを仕留める宝具級の火力ではなく、マスターを殺せば十分なのもその早撃ちに勝った理由であろう。
一方通行が戦闘のダメージを引きずっていたのも、人の身でしかない慶次が空を舞うマンセマットへ有効な手段を持ち得なかったのも幸いした。

「テイトクの見せようとしてた魔術、私が変わって披露しましょう。『メギドラオン』」

一帯に万能属性の大爆発が巻き起こる。
たまらずサーヴァントたちは己のマスターを抱えて退避するしかない。
一方通行は雁夜を連れて超高速で退避し、モリガンと慶次は己の対魔力を最大限に活用して盾になりながら爆風の外へと離脱した。

そしてその間にもマンセマットは別の詠唱を連ね、術式を構築していく。
……宙に魔法陣が浮かぶ。ヒトナリはそれを何度も見た覚えがあった。一つ、彼の人生の決定的な失態(トラウマ)においてもあの魔方陣は浮かんでいた。

「…悪魔合体!?悪魔召喚プログラムもなしに!?何をする気だ、マンセマット!」
「ヒトナリ、私はね、ニンゲンの物作りの科学技術は高く評価しています。使い魔の使役や行使という魔術をプログラムという万人にも扱えるものにまで落とし込んだその技術は素晴らしい。おかげで令呪という着想を得ることもできました。
 ですがね、魔術においてことニンゲンのすることは児戯にしか見えない。この程度の魔術、多少クォンタムピースは必要ですが場さえ整えれば我ら天使ならば容易く行使できるのです」

魔法陣が広がり、重なり、その中に二つの白い影が消えていく。
そしてその影がだんだんと近づいて、一つになっていく。
そして、新たな一つの影が現れた。

「月の満ち欠けによるマナの影響などあなたの纏うスーツに入っていた不完全な術式ならば憂うところナでしょうが、私が行った儀式である以上成功以外はあり得ない。
 さあ、ごらんなさい。新たなメシアの誕生です。彼の手により人類は新たな領域へとたどり着くでしょう」


471 : 聖なる柱聳え立つとき ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:30:28 Mm4iMwzc0

現れた影はひたすらに白だった。
服装も白く、肌も病的を通り越して無機質に白い。
未元物質で形成された肉体をさらに研磨したよう。
容姿は垣根帝督の面影を残しているが、少し背丈が縮んでいた。
唯一髪だけが浅羽か垣根を思わせる茶色い面影を残し、かろうじて人間味を感じさせる。

「煉獄において魂を錬磨させたニンゲンとサーヴァントを合体させ天使の領域へと導く。言うなれば疑似サーヴァント、生ける術式『聖柱テイトク』でしょうか」

その出来栄えに満足げな笑みを浮かべ、現れた聖柱テイトクが反抗的な態度をとらないことに一層笑みを深める。

「ゼレーニンは失敗でした。私の指示から外れて勝手にヒトナリ、あなたと戦い敗れてしまった。
 聖柱には、制御するための首輪が必要だ。この聖杯戦争の場でなら令呪という首輪を用意し、以後も活用できる」

そういって右手をマンセマットが掲げると、そこには浅羽直之の右手に刻まれていたはずの令呪が燦然と輝いていた。
人を人と思わぬ所業と発言にヒトナリの顔に怒りが蘇る。
そんな奴隷のような扱いを宣言されたにも関わらず、生まれた白い悪魔…聖柱テイトクは沈黙し、ただひとところを睨むのみ。

「一方通行ァ……」
「ほう、ソースでAランクオーバーの信仰の加護を付与してなお執着しますか。あなた暗殺者より復讐者のクラスの方が適当だったのでは?
 ……ですが、今回はそれもよしとしましょう。この場には私の目的といえる聖杯の器もある。ついでにサーヴァントも片づける必要があるのだから、ええ。
 復讐するは我らにあり、です。第一の命を下します、聖柱テイトク。この場にいるサーヴァントを皆殺しにしなさい」

令呪を用いてではないが、主から下された命に聖柱が反応する。

「Aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」

人ならざる声を高らかに上げる。
雄叫びのようなそれは人の耳と脳では理解しえない詠唱だ。
大気からマナを集約して力にし、浅羽を構成材料にしたことで擬似的に受肉した状態の聖柱はオドすらも行使する。

真っ先に一方通行がそれに立ち向かった。
狂った彼でも、その脅威は理解できた。
量では比べ物にならないが、質においてはかつてロシアで衝突した大天使の『一掃』に等しいものがくる、と。

「■■■■■■■■■■■■■■!!!」

彼の上げるそれはまぎれもなく雄叫びだ。
意味のない声を上げながら、それでも彼の意思を行使する。
……『黒キ翼』が現出した。
それは天へ手を伸ばすための足掻きだ。
それは誰かを守るための強靭な城壁だ。
何より敵を滅ぼすための最強の矛だ。

聖柱テイトクがそれを見下ろし、対抗するべく盾を生み出す。
翼から未元物質を繰り出し、重ね、黒キ翼を待ち構える。

その衝突を、自然と誰もが固唾を飲んで見守る。

一方通行が黒キ翼で翔るとともに矛として振るう。
対するテイトクは未元物質を次々と生み出して盾とし受け止める。
衝突の瞬間、あたりにこの世のものとは思えぬ重く、高い音が鳴り渡った。
拮抗する。鍔競り合う。
黒キ翼は一枚ではない。何度も何枚も叩きつけて盾を崩そうとする。
未元物質は一度出して終わりではない。削られるたび新たに生み出され、矛を勢いを削いでいく。

究極の一たる矛か、無限の残骸が連なる盾か。
翼を振るうたびに未元物質が次々と崩れ、一方通行がテイトクへと迫る。
まるでアキレスと亀。矛盾(パラドックス)なれど、いずれ結末は訪れる。
サーヴァントとなった以上、どちらにもマスターの魔力という枷が存在ある。矛盾の否定、結末はどちらの魔力が尽きるかで決まるだろう。
高いマスター適性を持ち、PSIにも目覚めたとはいえ、間桐雁夜のマスターとしての能力は大天使マンセマットには当然及ぶべくもない。
その点で一方通行は圧倒的不利であり、マンセマットも押し切れるだろうと楽観していた。

だが一方通行は進み続けた。
一枚一枚城砦を貫く兵器のようにまっしぐらに、燃料切れなどないように進み続けている。


472 : 聖なる柱聳え立つとき ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:30:46 Mm4iMwzc0

(妙だ。いい加減魔力が尽きてもおかしくないというのに。あのニンゲンの魔力がそこまでとも思えん。どこか、別のところから魔力を得ている?奴が振れているのは大気か、大地のマナ?
 ……いや、違う。アレか、あいつ、未元物質を、聖柱テイトクを喰っている!)


未元物質により垣根帝督は無尽蔵に自分を生み出せるように、彼と合体してその能力を引き継いだテイトクも自分を生み出せる。
もはやテイトクが能力を生み出しているのか、能力がテイトクを生み出しているのかは神にも分かりはしない。
主と従が入り混じり、テイトクと未元物質は等しい存在となった。
ならば、未元物質を喰らえばそれは魂を喰らうに等しいこととなる。

一方通行は、未元物質(かきねていとく)を砕くたびに魂喰いしているのだ。
戦場で戦いながら敵の血肉を貪るがごとき所業、狂戦士(けもの)の戦術を彼は獲得していた。
サーヴァントとなり弱体化したが、代わって得た特質を武器とし、より優れたマスターを持つ敵に食らいつく。
マンセマットの魔力を費やし、アサバが未元物質を生み、それを一方通行が糧とする。

パラドックスの結末は、一方通行の勝利に終わる……はずだった。
一対一(このまま)で、あれば。

「メル・ファイズ」

マンセマットの詠唱が響く。
マンセマットの持つ最大火力の魔術が放たれ、反射の守りを貫いて焼き尽くす。

「銃撃も物理も、火や雷も反射するあなたでも、万能属性の魔術では全く反射できないでしょう?
 所詮は紛い物の人造天使、ましてやそのサーヴァント風情が我々神の使徒に敵うはずもない」

見下すようなその言葉に続いて、未元物質までもが一方通行の身に降り注ぐ。
一部は反射できた。
それでも大半は天使の肉体という未知の構成物質であるがゆえに理解が及ばず、確かな追い打ちとなって一方通行に致命打を与えた。
消滅寸前の光の粒子が立ち上る一方通行の体が、翼をなくしたイカロスのように地に落ちる。

その体に雁夜を除く四人は駆け寄っていた。
意味があるわけでもない。感傷ですらない。名前も何も知らない男の最期。
マンセマットという邪悪に敵対したというそれだけの仲間意識でも、四人が四人ともそれを悼んでいた。
ぴくり、一方通行の指先が動く。

「オイ、お前……」

一方通行が最期の力を振り絞るように消えかけた手で、タダノのデモニカの足部分に手をかける。
それは猛威を振るったバーサーカーのサーヴァントとは思えない弱々しさで、タダノも振り払うことを忘れてしまう。

「雁夜を…俺のマスターを守れ。お前の、ならできるはずだ……」

バーサーカーのサーヴァントが狂化を失い、言葉を発する。
それが何を意味するのかは、一方通行自身が理解できていた。
それでも最期に残すものがあると現世にしがみつき、言葉を投げかける。

「なぜそれを僕に言う?お前と面識もない、サーヴァントじゃなく人間の僕に」

純粋な疑問だった。
すぐ近くにアーチャー、モリガンがいる。
彼女が頼れないにしても、いかにも英雄肌なランサーがいる。
あえてタダノヒトナリを選ぶ理由が理解できなかった。
そのために、つい口を突いて出た疑問に、白いバーサーカーは凶暴な笑みを浮かべて答える。

「うるせえ。悪党(ヴィラン)の最期の頼みくらい黙って引き受けろよ、英雄(ヒーロー)」

聞き取れた言葉はそれで最後だった。
口の中で何か意味のあるかどうかわからない言葉を並べていたようだが、それが何なのかは誰にも伝わらない。
最強の超能力者は格下の超能力者に勝りきることなく、自らを悪と評し続けて聖杯戦争に敗れた。その胸の願いを誰に知らせることもなく。

その死に様を嗤う男がいる。

「ッは。ハハハハハハハハ!!!みっともねえな一方通行!お前に殺された借り、確かに返したぞ!嗚呼、殺しタ、コロシタゾ!最高の気分だ!ハハハハハハハァ!!」

それが最期の垣根帝督の意思。
その言葉を皮切りに聖柱はさらに変質を遂げていく。
垣根帝督の未練であり、聖杯に託すほどの執着であった一方通行との再戦と殺害が叶ったことで、もはや彼らの残留思念は植え付けられた天使の使命感に塗りつぶされていく。
この世全ての悪の泥が、最高神の血を引く英霊すら汚染するように、天使の魔力がテイトクを染め上げる。
唯一人間味を残していた茶色い頭髪まで白く染まっていく。
僅かな抵抗なのか、その色は未元物質のような無機質な白ではなく、浅羽直之の想い人のような病的な白銀だった。
それでも、そこにいるのはもはや垣根帝督でも浅羽直之でもない、聖柱テイトクという人理に害なす一個の兵器へと身を堕とした。


【バーサーカー(一方通行)@とある魔術の禁書目録 死亡】

【バーサーク・アサシン(垣根帝督)@とある魔術の禁書目録 悪魔合体】
【浅羽直之@イリヤの空、UFOの夏 悪魔合体】

【聖柱テイトク 誕生】


473 : 聖なる柱聳え立つとき ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:31:54 Mm4iMwzc0

「さて、未練は断った。これであなたは我がしもべ。あとは私とともに人類救済に役立ってもらいますよ聖柱テイトク」

地上へと聖柱を引き連れてマンセマットが降り立つ。
そしてヒトナリは初めてこの男が戦闘態勢をとるのを見た。

「驚きだな。本当に前線に立つとは」
「これだけは私の手で直接なさねばならないのでね」
「僕はそんなに難敵かい?」

対峙し、同じように戦闘態勢に入ったヒトナリの言葉をマンセマットは鼻で笑う。

「ふん、勘違いしないよう。あなたなどオマケに過ぎません。私がこの場に降りてまでなさねばならない目的とはあなたですよ、朽木ルキア」

マンセマットの眼は二つ揃ってルキアを射抜く。
間に慶次が立ち塞がるがその悍ましい視線には嫌悪感を抱く。

「私?お前との面識はなかったはずだが」
「ええ、初対面ですよ間違いなく。正確にはあなたの中身に意味がある。あなたは知らないでしょうが」
「中身だと?」

義骸ではない、死神としての魂魄のことを指しているのかと考える。
しかしルキア自身が知らないという以上そうではないのだろうと内心結論付ける。

「先ほども口にしましたが、私はニンゲンの物作りの技術に関しては少しばかり敬意を払っているのですよ。
 オーディンにグングニルを、トールにミョルニルを与えたドヴェルグのように、現代の人間の思想はともかく道具は悪くない。
 買い漁る国ではシボレテをもとにオーカスを撃退する兵器を生み出しましたね。
 そして悪魔の生み出した宇宙卵をもとに爆弾を用いてシュバルツバースを消滅させた。
 人間の技術は悪魔を滅ぼし、世界すら書き換える域に達している。我らの聖柱の歌を響かせるには宇宙卵に匹敵するエネルギーが必要。それを私は人の技術に求めているのですよ。
 朽木ルキア、あなたという聖杯の器に秘められた聖杯……あなたの魂魄に埋め込まれた願望器『崩玉』をね!」

ルキア目がけて殺気の籠もった風の刃が飛ぶ。
しかしそれを立ち塞がる慶次がかき消してルキアを守る。

「邪魔をする。英霊の中でも低格のニンゲン風情が」
「主人の窮地を見逃す従者はいねえよ……で、おい。そっちの弓兵もなに不穏な面してんだよ。敵はあっちだろ?」

槍はマンセマットに向けて構えながらも、ルキアに視線を向けるモリガンにも慶次はくぎを刺す。
目前でバーサーカーのサーヴァントが倒されたのだから余計な対立をしている場合ではない。

「その天使の言い分を妄信するつもりはないのだけれども。
 勝者に与えられるべき聖杯をこの娘は最初から持っていたということかしら?」
「愚鈍な悪魔にも理解できたようで何より。正確には彼女の魂魄に埋め込まれているのですが……それを取り出すには精密な技術か、あるいは魂魄を蒸発させる処置が必要でしてね。
 我々には少々難しかったのですが、弥勒の処置によりこの世界で死した人間は肉体から魂魄の一切が灰に帰るようになっています。
 灰の山から聖杯を探し出すくらいなら幼児でもできる。我々以外の誰かに殺され、その者が手にしたとしてもそれを改め手奪えばいいのですが、聖柱というもう一つの目的が達成した時点で手中に収めておくに越したことはない」

ルキアを殺し、そのあとに残るであろうものが聖杯である。
そう聞かされてその場の全員の眼が意味深に細まる。

「とはいえ実はまだ崩玉は未完成でしてね。力のある魂を糧にすることで崩玉は力を取り戻す。
 消えゆくサーヴァントの魂を喰わせることで崩玉は完成に近づいていく。テイトクを除くサーヴァントを食わせれば私の目的を果たすには十分でしょう。
 あなたたち二騎にはここで消えてもらう。そして朽木ルキア、あなたの死体が灰になった後に残る崩玉を手に、私は聖柱テイトクの力で地上に神の望む世界を作り出すのです!」

マンセマットが膨大な魔力を纏い、聖柱テイトクも呼応するように力を増す。
ヒトナリ、モリガン、ルキアも構える。
同時に慶次は槍を伸ばして穂先に雁夜をひっかけ、雁夜を彼方へ放り投げた。
そのまま槍を振るい、自然体に向き合う。


474 : 聖なる柱聳え立つとき ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:32:19 Mm4iMwzc0

「……お前は本当に荒っぽいな、ランサー」

屋上から善吉を放り投げていたのを思い出し、ルキアの顔に苦笑が浮かぶ。

「そう言うな。ここよりはましだろう。あとはあいつ次第だ」
「別段かまいませんよ。サーヴァントを失ったマスターに用などない。生かしておく必要はありませんが、といってわざわざ殺す手間も惜しい。
 ……ああ、あなたは別ですがねヒトナリ。一方通行が評したように、あなたがザ・ヒーローに届くとは思いませんが殺すに足る敵なのは確かだ。
 それでは始めましょうか。大天使の従える聖柱に絶望するがいい!」

雁夜という不純物も消え、戦場には戦士のみが残された。
戦端が落ちる。

大天使の手の上であるはずの、大天使の勝利が確実であるはずの戦場だが、彼には誤算があった。
一つは未だに死んでいない存在。

聖柱と仕組みの近い生きる術式、魔神柱へと抗うすべが恋であるように。肉の快楽は魔神柱の未知であるように。
聖柱もまた、肉欲を消しきることはできなかった。
極上の夢魔、モリガンに魅了された浅羽直之のオモイはくすぶり続けている。
聖柱は未だ不完全、少しだけ浅羽直之である。今は、まだ。

そしてもう一つ。
マンセマットは一方通行を侮った。
羊皮紙に書かれただけの魔術を事前知識もなしに読み取り再現する彼の前で。
一度聞いただけの音楽を歌う彼の前で。
あろうことか自らの魔術の仕組みを披露し、その劣化品がどこにあるかまでべらべらとまくし立てたのだ。
理性をなくした狂戦士と化そうと、彼の絶対能力は知性を奪うことはない。
そして最期に狂化から解き放たれた一方通行はヒトナリのデモニカスーツに触れた。
プログラムの消去とは、プログラムのない状態にシステムを上書きすることであって、文字通りの消去ではない。
学園都市第一位ならば、かつてスーツにあった、読み取ることが極めて難しい状態ののプログラムにふれることなど容易い。
そして末期の言葉で呪文を詠唱した彼は誰にも知られず魔術式を遺した。

朽木ルキアの伝令神機がひっそりと起動し画面に文字が浮かぶ。
タダノヒトナリのデモニカスーツもバックグラウンドで同じ処理を進めている。

『CODE CAST』

『Digital Devil Program』

installing now......




【B-3/北東部/二日目・未明】

【マンセマット@真・女神転生STRANGE JOURNEY】
[状態]健康
[令呪]三画
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:主に認められ、天使以上の存在となる
1.ルキアを殺し、灰となった死体から崩玉を奪う
2.サーヴァントの魂を崩玉に食わせて聖杯として完成させる
3.聖杯と聖柱テイトクの力で地上を秩序に満ちた世界とする
4.天戯弥勒を警戒。

[備考]
※天戯弥勒の協力者、主催側です。
※女神ノルンを仲魔のような形で弥勒に貸しています。
 それによってほむらの能力に制限をかけています。



【聖柱テイトク(浅羽直之)@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]聖柱テイトク、魔力消費(小)
[令呪]なし
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マンセマットに従う
1.マンセマットに従い、目前の敵を倒す
2.(僅かに残った浅羽の残留思念はモリガンに魅了されている)

[備考]
※垣根と悪魔合体し、マンセマットをマスターとする疑似サーヴァント『聖柱テイトク』になりました。浅羽の能力はもちろん垣根の能力と記憶の大半を受け継いでいます。
外観は聖柱ゼレーニンに近いです。
※マンセマットの手で悪魔合体時にスキル信仰の加護:A+が付与されました。それにより人格に異常をきたし、マンセマットを狂信しています。

※PSI粒子の影響を受け、PSIの力に目覚めかけています。身体の不調はそのためです。
→念話を問題なく扱えるようになりました。今後トランス系のPSIなどをさらに習得できるかは後続の方にお任せします。
→PSI能力「ライズ」が使えるようになりました(名称未定)。
 聴覚を強化することで念話を聞き取り、また見聞色の覇気@ONEPIECEに近い効果を発揮します。
 また声帯を強化することで念話を発し、天使の歌唱@真・女神転生STRANGEJOURNEYに近い効果を発揮します。ただし魔術に近い技能なので科学と魔術の共存による反発もあるようです。
※未元物質で唱える魔術(真・女神転生STRANGEJOURNEYのもの)を扱えるようになっています。

※学園の事件を知りました。
※巨人を目撃しました。
※天戯弥勒と接触しました。
※※まどか、ライダー(ルフィ)、ほむら、セイバー(リンク)、ライダー(白ひげ)、バーサーカー(一方通行)、ヒトナリ、アーチャー(モリガン)、ルキア、ランサー(慶次)を確認しました。


475 : 聖なる柱聳え立つとき ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:33:00 Mm4iMwzc0

【タダノヒトナリ@真・女神転生 STRANGE JOURNEY】
[状態]魔力消費(小)、ダメージ(処置済み)
[令呪]残り二画
[装備]デモニカスーツ(コードキャスト:悪魔召喚プログラムインストール中)、アバ・ディンゴM
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争に勝利する
1.マンセマット及び聖柱の撃退。できるなら情報を得たい。
2.まどか救出、キャスター(食蜂、フェイスレス)討伐のため温泉街を目指す
3.少なくともそれまではランサーたちと協力する
4.もしもここが地上を侵すシュバルツバースならば、なんとしても確実に消滅させる


[備考]
※警察官の役割が割り振られています。階級は巡査長です。
※セイバー(リンク)、カレン、ライダー(ニューゲート)、刑兆について報告を受けました。(名前は知らない)
 ライダー(ニューゲート)のことはランサーと推察しています。
※ルフィの真名をルーシーだと思っています。
※ノーヘル犯罪者(カレン、リンク)が聖杯戦争参加者と知りました。
※まどか&ライダー(ルフィ)と同盟を結ぶました。
 自分たちの能力の一部、連絡先、学生マスターと交戦したことなどの情報を提供しましたが、具体的な内容については後続の方にお任せします。
※人吉、セイバー(纒流子)、ルキア、ランサー(慶次)、キャスター(食蜂)を確認しました。
※浅羽を確認しました。
※飛鳥了を確認しました。ルイ・サイファーに近しい存在と推察しています。
※マンセマットを確認しました。ゼレーニンの後継を探していると推察しています。
 なお聖杯と『歌』について知識を得るためにむやみに殺害するつもりはありません。
※デモニカスーツが穹との戦闘を通じてレベルアップしました、それによりダメージを気にせず動けます。
 ただし激しい戦闘など行えば傷は開きますし、デモニカを脱げば行動は難しくなります。
※ここがシュバルツバースではないかと考え始めました。
 モリガンやルーシーに話しても特に意見は求められないと思って話題にあげなかっただけで、特に隠すつもりはありません。
※美樹さやかが病院を訪れたこと、容姿と名前の情報を得ています。
※キャスター(食蜂)がまどかを攫い、今また攫われたことからまどかが聖杯に深い関わりがあり、それに気づいたのではと推察してます。
※ルキアが聖杯の器であることをマンセマットに聞かされました。

【アーチャー(モリガン・アーンスランド)@ヴァンパイアシリーズ】
[状態]魔力消費(小)、右肩に裂傷(だいぶ回復)
[装備]
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を堪能しマスターを含む男を虜にする
1.マンセマット及び聖柱の撃退
2.キャスター(食蜂)討伐のため温泉街を目指す。ついでにまどかの救出と、キャスター(フェイスレス)討伐。
3.ランサー(慶次)がタダノに危害を加えないよう警戒

[備考]
※セイバー(リンク)、カレンを確認しました。(名前を知りません)
※リンクを相当な戦闘能力のあるサーヴァントと認識しています。
※拠点は現段階では不明です。
※NPCを数人喰らっています。
※ライダー(ニューゲート)、刑兆と交戦しました。(名前を知りません)
※まどか&ライダー(ルフィ)と同盟を結ぶました。
 自分たちの能力の一部、連絡先、学生マスターと交戦したことなどの情報を提供しましたが、具体的な内容については後続の方にお任せします。
※人吉、セイバー(纒流子)、ルキア、ランサー(慶次)、キャスター(食蜂)を確認しました。
※アゲハの攻撃はキャスター(食蜂)が何らかの作用をしたものと察しています。
※セイバー(纏流子)と交戦しました。宝具の情報と真名を得ています。
※巨人を目撃しました。
※アーチャー(穹)を確認しました。
※浅羽を確認しました。
※マンセマットを確認しました。
※ルキアが聖杯の器であることをマンセマットに聞かされました。


476 : 聖なる柱聳え立つとき ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:33:19 Mm4iMwzc0

【朽木ルキア@BLEACH】
[状態]魔力消費(微量)
[令呪]残り一画
[装備]アッシュフォード学園の制服、体内に崩玉
[道具]学園指定鞄(学習用具や日用品)悟魂手甲、伝令神機(コードキャスト:悪魔召喚プログラムインストール中)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を通じて霊力を取り戻す。場合によっては聖杯なしでも構わない
1.マンセマット及び聖柱の撃退
2.キャスター(食蜂、フェイスレス)討伐に動く。
3.アゲハに連絡するかどうか考え中。
[備考]
※犬飼伊介&キャスター(食蜂操祈)と同盟を破棄しました。マスターの名前およびサーヴァントのクラス、能力の一部を把握しています。
※夜科アゲハ、セイバー(纏流子)と一時的に同盟を結びました。
※紅月カレン&セイバー(リンク)と交戦しました。
※人吉善吉を確認しました
※ライダー(ルフィ)を確認しました。
※キャスター(フェイスレス)の情報を断片的に入手しました。
※外部からの精神操作による肉体干渉を受け付けなかったようです。ただしリモコンなし、イタズラ半分の軽いものだったので本気でやれば掌握できる可能性が高いです。
 これが義骸と霊体の連結が甘かったせいか、死神という人間と異なる存在だからか、別の理由かは不明、少なくとも読心は可能でした。
※通達を一部しか聞けていません。具体的にどの程度把握しているかは後続の方にお任せします。
※キャスター(食蜂)から『命令に従うよう操られています』
 現在は正常ですが対峙した場合は再度操られる可能性が高いです。
※アーチャー(モリガン)と交戦しました。宝具の情報を一部得ています
※自身が聖杯の器であることをマンセマットに聞かされました。


【ランサー(前田慶次)@戦国BASARA】
[状態]魔力消費(小)右脚へのダメージ(中)
[装備]朱槍
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:この祭りを楽しむ
1.マンセマット及び聖柱の撃退
2.キャスター(食蜂、フェイスレス)討伐に動く。
3.アーチャー(モリガン)がルキアに危害を加えないよう警戒。

[備考]
※犬飼伊介&キャスター(食蜂操祈)と同盟を破棄しました。マスターの名前およびサーヴァントのクラス、能力の一部を把握しています。
※紅月カレン&セイバー(リンク)と交戦しました。
※人吉善吉を確認しました。
※ライダー(ルフィ)を確認しました。
※キャスター(食蜂)を装備と服装から近現代の英霊と推察しています。
※読心の危険があるため、キャスター(食蜂)対策で重要なことはルキアにも基本的には伏せるつもりです。
※中等部の出欠簿を確認し暁美ほむらの欠席、そのクラスにエレン・イェーガーが転入してくることを知りました。
 エレンについては出欠簿に貼ってあった付箋を取ってきたので更新された名簿などを確認しないかぎり他者が知ることは難しいでしょう。
※令呪の発動『キャスターの命令を聞くこと』
→令呪による上書き『キャスターに従うことなく、その討伐に全力を尽くせ』
※キャスター(フェイスレス)、カピタン、ディアマンティーナと交戦しました。
※脚のダメージは日常を辛うじて送れる程度には回復しましたが、戦闘には差し支えます。


477 : 魔なる柱雷のごとく出で ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:34:29 Mm4iMwzc0

「もう一度聞くぞ。鹿目まどかは、どこにいる」

悪魔の襲撃に、即座に反応をとれたものはいなかった。
操祈がこれまで出会ったサーヴァントは殆どが人間であった。
前田慶次や纏流子はもとより、モンキー・D・ルフィも言わずもがな。
モリガン・アーンスランド、一方通行、垣根帝督は人間離れしていたが、それでも人の形は保っていた。
目前の青い肌のサーヴァントは、紛れもない化生の類だ。

刑兆があったサーヴァントはみな怪物ではあった。
吸血鬼レミリア・スカーレット、夢魔モリガン・アーンスランドも翼を生やし、ニューゲートを翻弄する怪物だった。
しかし、そのどちらも気品と美しさに満ちていた。
貴族然としたレミリアも王気を発するモリガンも美しく、敵ながら魅せられるものがあった。
今現れたこの悪魔からは、ひたすら戦いにだけ生きた獣の匂いしかしない。

コウモリのような黒い翼で空に浮く不動明。その小脇に抱えられた美樹さやか。
さやかの存在が少しだけ雰囲気を和らげはする絵だが、美女と野獣というには青い野獣の獰猛さに比して少女では役者が些か落ちる。

圧倒的な戦力差がそこにはあった。
ニューゲートがいない現在、刑兆たちにデビルマンに立ち向かうすべはない。
恐れ、気圧され、それでもさすがにサーヴァントか、操祈が一歩前に出る。

「なぜ私たちに鹿目まどかさんのことを聞くのかしらあ?」
「金髪に白い手袋した女サーヴァントに攫われたと聞いた。お前のことだろう?」

肉食獣の眼光が操祈を貫く。
冷や汗が操祈の背中を滝のように流れるが、ここで引いては全滅だ。
唾をのみ必死に話し続ける。

「その情報古いわよ☆もう彼女は麦わら帽子の仲間の手で助けられたから私は知らない――」
「空とぼけるな。そのあと人形が彼女を攫って行った。お前のところに届けると言っていたぞ」

ここで操祈の知らない情報が出てきて驚きが内心を満たす。
全く心当たりがない。人形とおいう単語にも覚えがない。

「それ、誰に聞いて」
「誰でもいい。俺たちの協力者だが、それ以上教える必要性は感じないな」

取り付く島のない明の様子に操祈はこれ以上の追及をあきらめる。
有利な立場の者がみだりに情報を明かさない判断をするのは当然だろう。
誠意がない、と弾劾できなくもないが、生殺与奪を握られている状況で生きているだけ御の字と言われればそれまでだ。

「私たちは人形を使っての誘拐なんて覚えがない。人形を使う技能なんてない、と言っても聞いてもらえないわよねえ」
「そうだな。二つの情報に矛盾があるときどちらを疑うかといえば、味方の発言より敵のそれを重んじるわけがない」

それもまた当然の判断だ。
操祈たちの潔白の証明には鹿目まどかがここにいないと示すか。あるいは邪道だが情報提供者の信用を損なうかしかない。
徹底的にまどかを探すか、矛盾を追求するための議論をするか。

(あの娘、マスターよね。鹿目さんの記憶で見た美樹さやかさん……?魔女になったんじゃないの?
 そこはよく分からないけど、鹿目さんを助けようというのは納得。となると情報源は暁美ほむらさん、かしらあ?)

思考は刹那に纏める。
会話は少しでも冗長に時間を稼ぐ。


478 : 魔なる柱雷のごとく出で ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:34:48 Mm4iMwzc0

「あなた美樹さやかさんよね?話を察するに情報提供者っていうのは暁美ほむらさんだと思うんだけれども、あなた彼女のことをそこまで信用できるの?」
「え?なんで私とあいつのこと――」

ここまで会話に入っていなかったマスター、美樹さやかに話を振る。
うまく会話を誘導できれば優位に立て直せると操祈はたくらむが

「マスター。奴の問いに答える必要はない。質問するのは俺たちだ。奴に主導権を譲ってやる義理はない」

当然それは明が許さない。
圧倒的な武力で議論のテーブルをいつでもひっくり返せる彼の発言は当然この場で最も力を持っていた。
その言葉で少し慌てたさやかも自身を取り戻して言葉を口にできる。

「ああ、うん、そうだね。でもさ、これだけは言わせて。キャスター、あんたなんかよりほむらの方がずっと信じられるよ」

強制的に議論の段階は進む。
あとはもう見苦しくやったやっていないの不毛な議論を繰り返すくらいしかできない。

明は実のところ内心悩んでいる。
彼は未だに暁美ほむらを心底信用したわけではない。
さやかには悪いと思うが、鹿目まどかを利用する手を打とうともしないキャスターを見ていると、ここにはいないのではないかと思えてしまうのだ。

(人を操る力があるといっていた。それが正しいならそれこそ鹿目まどかを操り、俺たちを追い返すこともできるだろう。
 鹿目まどかに何らかの耐性や操りたくない事情があるにしても、誰か別の人間を使って逃げるための囮に位はできる。
 俺の沙汰を待つような行儀のいいやつには思えんというか、そんなやつが誘拐など企てるわけもなし)

恐らく犯人ではないだろう。
人形に攫われた鹿目まどかは恐らく別のところにいる。時間を浪費しないで、急いで捜索に戻るべきだ。
となると人を操れるというこのキャスターの手を借りて効率的に探すという選択も出てくる。
ただ探すだけならそちらの方が効率的だ。しかし当然問題もある。

(そもそもコイツをそれだけ信用できるのか。真面目に探すとも限らんし、寝首をかかれないとも限らない。
 いや、無理だな。余計な心労を抱え込むだけだ)

ならば選択肢は二つ。
彼女たちを見逃して捜索に集中するのか、倒してから心置きなく探すのか。
敵対するキャスター、そのマスターらしき少女、もう一人の男を明は観察する。

(キャスターと比してもあの男の方がまだやれそうだが、纏めて10秒もいらんな)

そもそもが聖杯戦争の敵。
見逃す理由があるとしたら時間と体力の消耗を惜しむかどうか。
どちらの浪費もないというならわざわざ見逃してやる道理もない。

明の全身の筋肉に力ある緊張が走る。
目の前の敵を片付けて、暁美ほむらと合流するか単独で探すか改めて相談しようと――


479 : 魔なる柱雷のごとく出で ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:35:10 Mm4iMwzc0

「バーサーカー!前、前!なんか飛んできてる!」

さやかの声に前方へと注意を向ける。
どん!と音を立てて巨大な斬撃が飛んできていた。

手刀で弾けるか、とも思うが震動するその刃にはかなわないだろうと判断し、身を大きく躱す。
それによって操祈たちからは少し離れてしまった。

「何者だ…!?」

デビルマンの認識能力でもって刃の出どころを探る。
するとサーヴァントの感知能力の外に巨大な影があるのが見えた。
それが大きな薙刀のようなものを振るうと再び斬撃が飛来する。

「ちぃッ!」

さやかを抱えているため人外の速度で動くことはできない。
仕方なく余裕をもって大きく躱すざるを得ない。
その間に攻撃を仕掛けている大きな影との距離は詰まり、襲撃対象である三人との距離は広がる。

『おい、刑兆おれは狙撃手じゃねえぞ!』
『それ言うならおれだって観測主じゃねーよ!てか逸れてる右に五度修正!』

攻撃を放ったのは当然、刑兆のサーヴァントであるエドワード・ニューゲートだ。
霊体化して向かってはいたが、刑兆からの念話で間に合わないと判断して遠方からの攻撃に移った。
残念ながら弓兵でないニューゲートに遠見の技能はなく、刑兆と視覚を共有し、マスターに誘導される形で斬撃を飛ばす。
大雑把な狙いではあるが、バッド・カンパニーの操作で多少は馴染みがあるのか刑兆の指示は悪くない。
飛来する斬撃に翻弄され、明は今一歩攻撃に移れない。
明単身ならばそうでもないのだろうが、いまさやかを放り出せばキャスターの脅威にさらすことになる。
それでも少しづつ射程圏内に刑兆たちを捉えていくのだが

「間に合った、な!」

大きな足音を立て、ニューゲートが合流する。
刑兆たちの前に仁王立ちし、その背には一歩も通さんと構える。
こうなれば一方的な虐殺ではない、対等の闘争へと場は切り替わる。
再び明は選択を迫られる。撤退か、戦闘か、協力要請か。

「ダメもとで聞いてみるが。俺たちに協力し鹿目まどかを捜索するか、それができなくとも俺たちが退くのを黙って見逃すつもりはあるか?」
「無理だな。喧嘩吹っ掛けといて協力なんざ論外だ。見逃せってのもな、周りにバーサーカーだのセイバーだのよくわからんカブトムシだの敵が多い。ここらで少しばかり減らしておきたい」

ニューゲートは薙刀を送還し、空手で構える。
その様子を空から明は観察している。

(右手に…あれは矢傷か。薙刀は十全には扱えんと。それにバーサーカーに、セイバー。どうやらずいぶん混迷としているようだ)

ゆっくりと明も戦意をニューゲートへとたぎらせていく。

「た、戦うの?バーサーカー?」
「逃がしてはくれないそうだからな。仕方あるまい」
「それはいいんだけど、私はいつまで抱っこされ、わぷっ!」

声をかけたさやかを明が翼で覆う。
そこに操祈がリモコンを向けていたのだ。
心理掌握がさやかを庇った明に機能することになる。

「…なるほど。体液を弄るのか?それで脳の機能に影響をもたらすわけか。些か気分が悪くなったが、大して効かんな」

超能力(レベル5)の力をまともに浴びて少し気分が悪い、で明は済ませた。
コウモリや山羊などを吸収したデーモンの勇者アモン、彼と合体した明の体は生物的にも人間ではない。
対人間に特化しすぎた操祈の宝具では僅かの影響を与えることしかできなかった。
だがそれもさやかに対しては厄介な能力だろう。まさかこのままさやかを抱えたまま白ひげのサーヴァントと戦うわけにはいかないが、さやかと別れるのも避けたい。


480 : 魔なる柱雷のごとく出で ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:35:35 Mm4iMwzc0

「……仕方ない。マスター、少し悪いが協力してもらうぞ」
「え?バーサーカー、何を、ああぁぁぁぁぁっ!!!」

バーサーカーの肉体が白く輝き、その光が剣のようになってさやかの体を貫いた。
その切っ先に触れたところからすさまじい痛みと快感が同時に流れ込み、さやかに艶やかな悲鳴を奏でさせる。
仲間割れか、と周囲は観察していたが。
光が晴れるとそこには一つの影があった……否、一つしか影がなかった。

ファンタジー世界の軽装な剣士のような服装。左右非対称なスカートにビスチェ風のトップ、フォルテッシモを模った髪飾りといつもの魔法少女の装い。
それに背中から生えた翼で空を飛ぶ、青い鎧のようなものを纏った美樹さやかの姿があった。翼を扱うためかマントは取り払われていた。
体を駆け巡っていた感覚の余韻に上気しながらも己の変化を確かめる。

「これって……」
『デーモンアーマー、いやデビルマンアーマーといったところか』

さやかの脳裏に念話が明から送られてくる。送り主は鎧だった。

『バ、バーサーカー!?あたしの体になにしたの!?」
『端的に言うと君の体と俺の霊体が合体している。能力は説明したし、昼に見せたな?ソウルジェムとは合体していないから君が主導権を握ることもできる』

デーモン族の合体能力により二人の体は一つになった。
鎧は完全に肉体と同一化し、美樹さやかの体も人外たらしめていた。これでもう操祈の精神操作も効かない。

『キャスター対策だ。それにあのサーヴァントによると、どうやら暁美ほむらとそれを襲ったバーサーカー以外にも敵はいるらしい。
 奇襲を避けるためには俺が君の身を守る騎士になるよりも、こうして鎧となった方がいい』
『あ、うん。それは、まあいいんだけどね』

戦術的な意味は納得できたが、それに伴う作用を思い出してさやかの頬が再び熱を持ち出す。
体の感覚は消せるといっても程度はあるし、また何度もやられるとクセになってしまわ……

『ない!それは超えちゃダメなやつだから!』
『…気にするな。俺はアモンを拒絶したから分からないが、大きな意思と一体化するのは心地のいいものだそうだ。
 とにかく今は戦う時だ。さやか、今更だが君の体と力を俺に貸してほしい』
『……前半は聞かなかったことにするよ。で、あとはオッケー、任せるよ。やっちゃって、バーサーカー!』

その声と共にさやかの表情に意図しない獰猛な笑みが浮かぶ。
そして鎧がどんどんと体の表面を覆っていき、そして巨大化していく。
そして青い鎧が改めて、魔神と謳われたデビルマンの形へと変じると、ニューゲートの前に並び立つ。
巨大化はしたが、それでもまだニューゲートより一回りは小さい……いや、建物を見下ろすサイズのニューゲートと一回りしか違わない巨体となっていた。


481 : 魔なる柱雷のごとく出で ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:35:59 Mm4iMwzc0

言葉もなく二人は組み合う。
がっぷり四つでの力比べ、はじめのうちは拮抗していたそれだったが

「ここにきて、サイズで拮抗するのも力負けするのは初めてだな……!」

ニューゲートが押され始める。
この聖杯戦争では吸血鬼やサキュバスといった人外、生前は巨人すら力で捻り潰した男が悪魔を相手に力で劣る。
右手の負傷もあるが、2万年以上の神秘を積み重ねたアモンの魔性がそれだけ優れていると言えよう。
咄嗟に頭突きを喰らわせいったん体制を整えようとする。
だがそれを見越したように明が口腔から火炎を放射した。

「ぐぁっ!」

顔面が焼かれる。
咄嗟に武装色の覇気を鎧とし、突き飛ばして距離をとろうともするが、掴んだ腕を明は放さない。
ならばとニューゲートが膝蹴りを繰り出す。
明は容易にそれを受け止めるが、膝からグラグラの実の力が放たれ、あえなく吹き飛ばされる。

「妙な能力を持っているようだな!」
「口から火ィ吹く化け物がほざきやがる!」

距離が空いた拳を振るい、続けて震動をニューゲートが打ち出す。
先刻までのように避けるだろうと予測したが、明はそうは動かない。
何かを握った右手を振るうと、震動が切り裂かれる。
そしてそうして開けた突破口を真っすぐ駆け抜け、ニューゲートに斬りかかった。

明が手にしたのは合体したさやかの魔術で生み出した刀剣だった。
さやかが握れば長剣といったサイズになるが並外れた巨漢となったデビルマンの手にあってはせいぜいがジャックナイフのように見える。
今のニューゲートは薙刀を振るえず、力では明が勝る以上まともに受けるわけにはいかない。
武装職で硬化しても止められるかは未知数のそれを回避しようとはするが、翼も用いた機動で明の方が速度でも優れる。
刃がニューゲートに届くその刹那

「バッド・カンパニー!」

小型の戦闘ヘリからありったけのミサイルが飛んだ。
それがジャックナイフに着弾すると、震動を受けてダメージの蓄積していたためにあっけなく折れる。

「よし、いけるぞライダー!」
「おう、よくやった刑兆!」

ナイフで斬りかかっていたのが空振った隙をついてカウンター気味に震動を纏った拳を打ち込む。
顔をもろに捉えたそれは明の首を大きく揺るがせ、乾いた木が砕けたような音を立てて吹き飛ばす。
人がしてはいけない領域にまで顔をのけぞらせ、柳のように揺れる。
首をへし折られた魔人が地に伏せた。

「やったか」

刑兆が息を漏らす。
戦闘に介入できたのは奇跡的だ。同じことをもう一度やれと言われても無理だろう。
あの吸血鬼やサキュバスよりも強いかは分からないが、恐ろしさでは勝るなと内心ぼやく。

「とっとと行こうぜ。ただでさえ連戦だ。追い打ちなんざ御免こうむる」

そういって歩き出そうとする刑兆をニューゲートが制した。
何だよ、と言いそうになるがそこで気づいた。
サーヴァントの死体が消える気配がない。


482 : 魔なる柱雷のごとく出で ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:36:21 Mm4iMwzc0

……倒れていた明が幽鬼のように立ち上がった。
グキリグキリと音を立てて首の骨が繋がり、真っすぐにこちらを煌々と光る目で見つめていた。

「やってくれたな。顔を狙ったのはさっきの炎の意趣返しか?」
「はっ。あんな程度、ウチの息子の方がよっぽどいい火加減だったぞ」

強気な言葉を吐くがさすがにニューゲートも不気味な感覚を覚えていた。
人間兵器パシフィスタも、他にも生前あったあらゆる怪物どもも、さっきまでやりあっていた垣根なる怪人も首を折ればさすがに絶命していた。
そこからの復活も生理的に嫌悪感を示すような音を立ててのものでは、いかな武人と言え完全に平静を保つのは難しかろう。

『ちょ、大丈夫なのバーサーカー!?』
『問題ない。首が折れても生き延びるデビルマンの生命力と君の回復力の賜物だ。感謝する。
 確認するが痛みはないな?ソウルジェムにまで伝わらないよう気は配っているのだが』
『いや私は大丈夫だけど!バーサーカーは!?首が折れるとか痛くないの!?』

痛いに決まっている、という言葉をぐっと飲みこむ。
そんなものは些末事だと。そんなものより痛いことがあると。
内心でさやかには慈愛に満ちた笑みを向け。
外面で敵に対して獰猛な笑みを浮かべる。

それに敵が気圧されたのを見て改めて手中に剣を生み出そうとする。

そこへ飛来物。そして言葉。

「キャスターさまぁ〜!いざ首実検をぉ!ひゃっはははあははははは!!!」

歯車の軋む音。不愉快な笑い声。
キャスターに向けて何かを掲げて突撃する人形だ。
長い棒のようなものの先に何かが刺さっている。
それは




 !                   鹿目まどか         表情が

          美樹ちゃん                        小柄な   

                                           死臭    怒り

憎悪         キャスター                            人形が

      血                             

                    が       
         首から                       出て     

 死       うそ                                 ここで

          ぬ                              の?

                                        ―――――まどかぁっ!!!



巻き起こった混乱を最後に二人の人間的な思考が失われていく。
美樹さやかの心中を絶望が満たす。ソウルジェムが穢れていく。
不動明がかつてのトラウマを刺激される。人の善性に、自らの弱さに失望していく。

魔神が、生まれる。
それはある魔術師の策謀の結果。


483 : 魔なる柱雷のごとく出で ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:36:41 Mm4iMwzc0

□ ■ □



「さて、お久しぶりでございます。目の離せない活劇に再度、この道化の登板をお許しくださいませ」




「なぜ人形が少女の首を高らかに掲げ、現れたのか。賢明な皆様ならお気づきの方もおられるかと思います」




「歴史の影に女あり。では人形の影には誰がいるのでしょうね?」




「答えは、これより語られます演目に。どうかお見逃しのありませんよう」



□ ■ □

「おい、間桐雁夜。だいぶ離れたし、いい加減起きてくれ」
「ぇ、ああ……?」

消耗し、侍に投げられ意識をなくしていた雁夜に声がかかる。
どこかで聞き覚えのある声に疲労で霧のかかった頭を必死に巡らせて答えを出す。

「人吉善吉か?」
「おっ、そうだよ。分かってくれたか。助かるぜ」
「それじゃあもう降ろしても構わないかしら?」

どうやら自分は女性に背負われているらしい、と気づく。
さすがに普通なら人吉善吉と役割が逆だろうから、彼女がサーヴァントなのだろうかとそちらに意識を向けると、見覚えのある姿に度肝を抜かれた。

「お前、セイバーのマスター!?」
「ああ、違うんだ。話せば長いんだが彼女も人形なんだよ」
「な、人形?これでか」

背負われ、密着している相手には体温や鼓動も感じる。
首筋からは女性特有のいい香りも

「ぐぇっ!」
「おい、アプ・チャー、何してるんだ!重症人だぞ!」
「ごめんなさいね。暁美ほむらの体を再現しているから身体データは完全に彼女のものだけども、それでもセクハラというものを私が主張してもいいものかしら?」

え、と男二人の声が揃う。
雁夜は消え入るように小さくなる。
善吉はあの時の感触は、などと思い出して悶々とするが

「っだ、大丈夫か雁夜!?立てるか?」
「いや、まあ厳しいが何とかする。ありがとう」

善吉が誤魔化すように地面に転げ落ちた雁夜に手を伸ばす。
その手を雁夜が弱弱しくとる。

「うゎっ!」
「な!?」

二人の間に電流のようなものが駆ける。
そして走馬灯が雪崩れ込むように脳内を犯す。
禅譲葵への想い。黒神めだかへの想い。
遠坂時臣への憧憬と嫉妬と失望。めだかと渡り合うあらゆる人への些細な嫉妬。
蟲に体を蝕まれる苦痛と快楽。しろがねへと体が変えられていく恐怖。

互いの経験が、間桐雁夜のPSIを通じて交換された。


484 : 魔なる柱雷のごとく出で ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:37:10 Mm4iMwzc0

「うわぁ、今のは……?」
「大丈夫かい、人吉君?」
「な、何とかな」

突然の事象に混乱する。
雁夜自身もこの現象についてはまだよく分かっていないのだから当然と言える。

「以前もこんなことがあったが、まあお互いをより深く知ることができたということでここはひとつ、ね?」
「制御できねえのかよ……まあ俺もあまり人様のこと言えたもんじゃねえが」

未だに脳裏に巣食うフェイスレスの残照に怯える身としては笑えない。
アプ・チャーたちを維持するだけでも怪物のことを『理解』し続けなければならないのは人吉にとっても厄介な状態だった。

「どうやらお互いほぼ身一つになってしまったようだね」
「ああ、そうだな……」
「一応私を忘れないでもらいたいのだけども」

アプ・チャーが僅かに口を挟むが、それでも苦しい現状は変わらない。
その欠けを補いたいと間桐雁夜との合流を、そして何か惹かれるところのあった白いサーヴァントのことも求めてきたのだがより追い込まれた事態になっている。

「人吉君、人形を作ったりはできないのかい?」
「人形造りか」

そう。
たしかにそうすれば手ごまは増やせる。
仮に人吉が作れずとも、自動人形の中に自動人形を作れる固体は少なくない。

「一応私が低級のなら作れるけれども。体液も血液があれば私から増やせるし」

しかし、まず材料の問題に突き当たる。
人形の体液を機能させるには人間の血が必要であり、NPCの被害が出る。
あまり積極的に取りたい方策ではない。
それにあまり多くの人形を維持するのは人吉の精神が持つかどうかも自信がなかった。
あまりにも自らをフェイスレスと『誤解』させていては、自分自身がいつかフェイスレスこそが自分だと誤解してしまいそうで恐ろしかった。

「できて一体、位が限界だと思う。それ以上は俺がもつかどうか……」
「そうか。それじゃあもしその時は極上の一体を作らないとね」

雁夜が力づけるように笑みを浮かべる。
善吉もつられるように笑った。


485 : 魔なる柱雷のごとく出で ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:37:30 Mm4iMwzc0

「じゃあしばらくは僕が蟲を飛ばして周囲を探ろう。そしてどこかで休みながら方策を練ろうじゃないか。お互い疲れているようだし」

そう言って手を振ると数匹の蟲が飛ぶ。
同時に何度も咳き込むが、それを何でもないことのようにゆっくりと歩き始めた。

「ちょ、大丈夫なんすか!?」
「気弱なことは言ってられないよ。あまり時間もない」

サーヴァントを失くしたものは6時間後に灰になる。
二人はそのリミットにも怯えなければならないのだ。あまり呑気にはしていられない。

「最低限の休養をとったら動こう。少なくとも一騎はサーヴァントを確保しなければ」
「一騎?」
「ああ、そうだ」

雁夜の顔が自信のある表情へと変わる。

「まず君が3時間そのサーヴァントと契約する、それから僕が契約しなおす。そのリレーでどうにか命を繋げるんじゃないかな」

盲点だった。
誰かとサーヴァントを共有するようなその同盟には極めて密な協力関係が必要となる。
サーヴァントの同意も必要となると、容易く行くとは思えないが、二体を確保するよりはまだ現実味があるように聞こえた。

「ろくに眠れなくなるという欠陥はあるがね。だからこそ少し休養が必要だ。
 時間がたてば、さっき僕のバーサーカーを倒した戦場も動く。あそこを蟲で見ておくからその間休むと言い」

最初に話した時とは打って変わって頼れる調子の雁夜に善吉は感心する。
さすがに年の功だろうか。

「ああ。頼りにさせてもらうぜ」

深く頷き、少し気が楽になったように感じながら。
改めて前を向き善吉は歩き始める。



【人吉善吉@めだかボックス】
[状態]中度のしろがね化
[令呪]残り一画
[装備]箱庭学園生徒会制服
[道具]銃人形のリボルバー(6/6)
[思考・状況]
基本行動方針:キャスター(操祈)を討伐し、最後には優勝する
1.間桐雁夜と協力し、打開策を練る
2.モニター越しに見えたどこかで見たような気がする、しかし知らない男(垣根)が気になる。
[備考]
※アッシュフォード学園生徒会での役職は庶務です。
※相手を殺さなくても聖杯戦争を勝ち抜けると思っています。
※屋上の挑発に気づきました。
※学園内に他のマスターが居ると認識しています。
※紅月カレンを確認しました。
※キャスター(操祈)を確認しました。
→加えて操祈の宝具により『食蜂操祈』および『垣根帝督』を認識、記憶できません。効果としては上条当麻が食蜂操祈のことを認識できないのに近いです。これ以上の措置は施されていません。この効果は未だ続いています。
※セイバー(リンク)を確認しました。
※朽木ルキア、ランサー(前田慶次)を確認しました。
※ライダー(ルフィ)を確認しました。
※フェイスレスと再契約しました。
※フェイスレスの血液を飲んだことでしろがね化が進行、記憶や知識も獲得しています。
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』による操作と『欲視力』により得た他者認識力により、フェイスレスの乗っ取りに抵抗しています。現状精神は乗っ取られていませんが、キャスター(操祈)が脱落し、宝具の効果が消滅した場合は精神が乗っ取られる確率が極めて高くなります。
※バーサーカー(一方通行)陣営と残り主従が6騎になるまで同盟を結びました。
※現在フェイスレスの記憶を利用し、自動人形に自らが造物主だと誤解させ魔力供給することで維持しています。
 ただしそのせいで記憶の浸食はフェイスレス消失以前と同等以上の脅威となっています。


※サーヴァント消失を確認(二日目夜)これより四時間以内に帰還しない場合灰となります。


486 : 魔なる柱雷のごとく出で ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:38:17 Mm4iMwzc0

(ああ、もっと僕の力に頼ってくれてもいいんだぜ。元マスター)

雁夜の顔にどす黒い太陽のような笑みが浮かんでいた。

目覚めたPSIにより、雁夜は善吉の記憶の一部が流れ込んだ。
そう、生命の水に溶けていたフェイスレスのものさえも。
一部とはいえ膨大な年月の重なったそれは雁夜の生涯の記憶よりも重く、大きい。
人吉善吉は欲視力という規格外の千里眼に近しい異能により獲得した強靭な自我と、食蜂操祈の能力の影響によってかろうじて凌いだ。

だが間桐雁夜にそんなものはない。
蟲により人より軟になった体と心があるばかりだ。
幸いだったのは生命の水と、PSIという二つのフィルターを介していたことくらい。
疲弊しきった雁夜の表層に浮き出る第二の人格程度に今はとどまっている。

(まあ雁夜くんの人生は僕と同じ失恋の悲劇だし、そこまで話が合わないということはないだろう。夢の中で、ゆっくりお話でもしようじゃないか)

道化師は再び目覚め、今は時を待つ。
だが起き抜けの運動が一つ。

雁夜(フェイスレス)は確かに蟲を使ったのだ。
アポリオンという蟲の使い方を彼は誰より『理解』している。

フェイスレスが消失し、人吉がその後を継ぎはしたが、ディアマンティーナのように誤解をせずに止まった人形も多数いた。
ケニスと鹿目まどか人形もそうだった。
彼らは一時機能を停止することで、偶然にも完全に明たちから姿も気配もくらましていたのだ。
そして今フェイスレスの意識の目覚めと共に再び動き始めた。
蟲を通じてフェイスレスの指令を受け、鹿目まどかを模した人形の首を高らかに掲げて金のキャスターのもとへと駆ける。
あたかもそれが金のキャスターの指示であるように。
道化師は夢半ばの存在であっても戦場をかき乱すのだ。


だが、もう一人の死にぞこないが知らず脅威となる。
今はまだ誰も気づいていない、一方通行の負の遺産。

(一方通行ァ…!!どこ行った。あのマスターの行ったほうか……!?)

垣根帝督が最期に放った未元物質のカブトムシの欠片が、舞い落ちた未元物質を喰らい再生しつつある。
未元物質のネットワークは独立している。
聖柱テイトクとは別の存在を確立している未元物質の中に、未だに垣根帝督は生きている。
一方通行が消えたときには意識が確立していなかったが、再生する過程で意識を生み出した。
彼は未だにアサシンである。
再起した時、聖柱テイトクとは別の思惑を持って動き始めるだろう。


487 : 魔なる柱雷のごとく出で ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:38:36 Mm4iMwzc0

【間桐雁夜@Fate/zero】
[状態]肉体的消耗(中)、魔力消費(中)、PSIに覚醒、第二人格フェイスレス
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を取り、間桐臓硯から間桐桜を救う。
0.夢の中でいい協力関係を築けるといいなぁ
1:間桐桜(NPCと想われる)を守り、救う。
2:バーサーカーに代わるサーヴァントを手に入れる

[備考]
※ライダー(ルフィ)、鹿目まどかの姿を確認しました。
※バーサーカー(一方通行)の能力を確認しました。
※セイバー(纒流子)の存在を目視しました。パラメータやクラスは把握していません。
※バーサーカー(不動明)、美樹さやかを確認しました。
※PSI粒子の影響と一方通行の処置により魔力量が増大しました。
※PSI粒子の影響により身体能力が一般レベルまで回復しています。
※生活に不便はありませんが、魔術と科学の共存により魔術を行使すると魔術回路に多大な被害が発生します。
※学園の事件を知りました。
※セイバー(リンク)の存在を目視し能力を確認しました。暁美ほむらの姿を写真で確認しました。
※キャスターのマスター(人吉善吉)と残り主従が6騎になるまで同盟を結びました。善吉に対しては一定の信用をおいています。
※鹿目まどか、美樹さやか、暁美ほむらが知り合いであること・魔法少女であることを知りました。
※暁美ほむらの魔法の鍵が「盾」であると予測しています。
※PSI能力「トランス」が使えるようになりました(固有名称未定)
 頭部に触れた相手の記憶を読み取る、相手に記憶を流すことが可能です。


※サーヴァント消失を確認(二日目夜)これより六時間以内に帰還しない場合灰となります。




【バーサーク・アサシン(垣根帝督)@とある魔術の禁書目録】
[状態]魔力消費(大)、ダメージ(大、再生中)
[装備]天使の装い
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:一方通行を殺す。
0.間桐雁夜を追う。
1.一方通行を殺す。それ以外もはやどうでもいい。
2.もし浅羽が裏切るか、食峰などに操られたら切り捨てるのもいとわない。

[備考]
※鬼龍院皐月がマスターでは無いと分かっています。
※屋上の異変に気付きました。
※夜科アゲハがマスターであると断定しています。
※リンク、犬養、食峰を確認しています。

※アサシンのころの記憶はほぼ全て覚えています。
※審判者ゼレーニン@真・女神転生STRANGEJOURNEY のような衣装になっています。
 なぜか未元物質が翼の形になってしまうのと同様、デザインを変えることはできないようです。
※ステータスはアサシン垣根帝督のものとほぼ同様です。
 ただし狂化の属性が付与されたことで、知性は保ちつつも、一方通行への復讐に囚われていた時期以上に狂暴化し、思考も短絡化しています。
※未元物質で唱える魔術(真・女神転生STRANGEJOURNEYのもの)を扱えるようになっています。
※雁夜の暗殺失敗から雁夜が投げられる間の出来事は一切把握しておらず、狂化に伴う視野狭窄で間桐雁夜と一方通行のことしか意識していません。


488 : 魔なる柱雷のごとく出で ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:38:56 Mm4iMwzc0

(待って待って待って待って待って待って、何よあの人形!?あんなの私の知識力に一切ないんですけどお!)

人形の技術自体は学園都市でいくらでも見られそうなものだが、やってることがあまりにいただけない。
鹿目まどかの首を掲げて駆け寄るなど、どう見ても自分が黒幕のようではないか。

(これ最悪ライダーたちにも愛想つかされかねないじゃない!いくら何でもマズいゾ)

「ちょっと、あんなの私知らない――」
「■■■■ーーーーーー!!!」

獣の声が響き渡った。
恐ろしい風貌に似つかわぬ知的な振る舞いをしていた青い悪魔が雄叫びをあげ、一瞬で人形を歯車に還す。
ニューゲートにも目をくれず、人形の掲げていた首を検めるように手に取った。

フェイスレス渾身の人形は巧であった。
月明かりしかない夜とはいえ、半ば理性を喪失していたとはいえ、不動明と美樹さやかの二人を欺きとおしたのだから。

鎧の内側で輝いていたソウルジェムが穢れに満ちた。
美樹さやかの性質が反転する。
彼女と一体となっている明の体内で、先刻呑み込んだ穢れが鈍く反応する。

ソウルジェムに満ちた穢れとは、インキュベーターが地球の生命に見出した負の感情である。
それをエネルギーとするのが彼らの技術。
では、そもそも穢れとは何なのか。
地球の生命のみが持つもの。地球の生命全てを生み出した母なる存在がもたらしたもの。
原初の母ティアマトがあらゆる生命の基とした土壌にして母なる海の名残。
魔術王は、その土と水の混ざった泥をケイオスタイドと名付けた。

美樹さやかの魂に、不動明の霊器にケイオスタイドが満ちていく。
塩基契約(アミノギアス)を起こしたように、二人の体が反転し溶けて混ざり合う。
より巨大に。より強力に。より醜悪に。
現れたのは肉の柱だ。
バベルの塔のように聳え立つ、雄々しく禍々しい怪物の柱。
千を超える眼が全身至る所から敵を睨む。

これにより彼らは名と姿を変えることとなる。
魔女Oktavia von Seckendorffも、大悪魔アモンもいまや偽りの名。
その名を魔神柱アモン。
七つの人類悪が一つ、憐憫の理を持つ獣の一端である。



【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語 合体】
【不動明(アモン)@デビルマン 合体】

【魔神柱アモン 出現】


489 : 魔なる柱雷のごとく出で ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:39:18 Mm4iMwzc0

伊介も。刑兆も。操祈も。ニューゲートですら。
目前の異様に対処しきれずにいる。
青い悪魔が先ほどまでのように姿を変えただけ……ではないのだ。

(感じる魔力がサーヴァントのそれじゃあねえぞ……!くそ、せめて見聞色がマシに使えれば)

ひとまず攻撃をしかけようと構えたニューゲートを、肉の柱が『見下ろす』。
それだかで、ニューゲートの体に衝撃が走る。
瞬きもなく、何かを放ったわけでもないのに、発生した攻撃にさしものニューゲートも対処しきれず負傷する。

「くっ…!」

それでも倒れることはなく、必死に堪えて忠告を飛ばす。

「お前ら逃げろ!奴の視界に入るな!」
「視界に入るなって…こんな多くて目も多い奴相手にどうやって!?」

そう言っている間にもアモンが視線を走らせる。
その眼に映るものが片っ端から焼き払われる悪夢のような光景。
ニューゲートが仲間の前に立ち塞がって決死にそれを防ぐ。

「なんなのよもうこれぇ!」
「あれは魔神柱と呼ばれるものだそうだ」

疑問のような伊介の悲鳴に律儀に答える声があった。
美しい金髪の少女がうっすらと笑みを浮かべて、新たに現れていた。

「あんた、だれ?いつの間に……?」
「失礼。私はルイ・サイファー。そこの魔神柱になってしまった彼とはいささか複雑な関係の者さ。
 で、あれが何かという話だが……魔術王の持つ術式が変異したものらしいよ。私も詳しいことはよく分からない。何やら獣の匂いもするしね」

魔術王と獣という単語に操祈の顔色が目に見えて青くなる。
それを愉快そうに眺めながらルイは言葉を続けた。

「まああれ単体なら冠位級のものじゃあない。トップサーヴァントであれば単騎で相手取れるし、並のサーヴァントでも数騎がかりなら渡り合えるだろう。数騎がかりなら、ね。
 視線そのものが攻撃となっているあれは恐らく『邪視』だな。視線に呪いが宿るというやつだ。
 極めた指差しの呪いが物理威力を伴うように、究極の邪視は見ただけでそのものを焼き尽くす。ガンドの究極がフィンの一撃と呼ばれるなら、あれはさしずめバロールの一瞥といったところかな」

巧みに視線を躱しながら、ルイは朗々と語った。
そして操祈はその言葉の意味が分かるだけに戦力差に絶望を深める。

「……おい、ライダー」

必死に逃げながらも刑兆はまだ諦めない。
真っすぐ己がサーヴァントに期待を向ける。

「聞いたか?たかがサーヴァント数騎でいいんだってよ。だったらお前なら大丈夫だろ」

負傷した体で悩むようなニューゲートに檄を飛ばす。

「迷ってんじゃねえ。さっき失敗したんなら今度こそやり遂げろ。黙って死ぬ気かよ」
「そうよ!!伊介まだこんなとこで死にたくないんだからーーー!!!ないかあるならやりなさいよダメ親父ーー!!!」
「……グララララ。言うじゃねえか、クソガキどもが」

叫ぶ二人の若者に背を押されるように、呪いの中へ一歩踏み出す。

「感謝するぜ、キャスター。お前がここらから人を払ってくれたから全力でやれる。そしてお前たちにもだ、刑兆に伊介。ガキどもに急かされてちゃせわねーよなァ!」

潮風が吹き抜けた。
海が近いとはいえ、それでもあまりにも濃い潮の香り。
世界が歪む。
かつて世界の頂に手をかけた男の力で、今再び世界が傾く。


490 : 魔なる柱雷のごとく出で ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:39:40 Mm4iMwzc0

「おれは、白ひげだ!おれこそが、この時代の名こそが、白ひげだァ!!!」

アモンも、ルイも、その場の全員が新たな世界へと導かれる。
歴史上で数えるほどしかない、その中でも唯一初代海賊王の息子が参戦した白ひげ海賊団の総力を結集した戦の地。
そこは崩落した正義の砦、マリンフォード。
正義の代わりに自由の旗印を掲げる荒くれ者どもが集う。

「来たぜ、おやっさーん!」
「また会えて嬉しいぜお前らぁ!!」
「いくぜ野郎どもォ!!!」

空気を震わす鬨の声が響き渡る。
異形の化け物を前にしてなお気圧されぬ、何より誇らしい大海賊白ひげの息子たち。
不死鳥が飛んでいる。
‌魚人が泳いでいる。
炎がいきり立っている。
金剛石が闊歩している。
魔神柱に勝るとも劣らぬ巨大な戦士がいる。

「すげえ……これが全員サーヴァントか」
「おれの息子たちよ」

宝具、『海征し陸駆ける白鯨(モビーディック号)』を展開して刑兆、操祈、伊介とともにそこで悠然と構える。
懐かしい仲間の姿に目頭を熱くしながら、船にある小電伝虫で指示を下す。

海賊団が一斉に、魔神柱へと攻撃を開始する。
砲撃が飛び、カトラスで斬りかかり、魔神柱といえど耐えきれないと思われた。

だが突如、魔神柱は姿を消した。
消滅したかと思うがあまりに早すぎる。
そして再び魔神柱が出現する。
『海征し陸駆ける白鯨(モビーディック号)』の浮かぶ海面のすぐ近くに。

それはアモンが新たに得た力。
合体した魔女Oktavia von Seckendorffの持つ、水から水へと転移する能力。
白ひげの固有結界は海の上を主に再現するものであったため、ニューゲートにとってのホームはアモンにとっても特異な戦場へとなってしまったのだ。
一斉攻撃の隙をついて背後に回られ、もはや出せる札はニューゲートたちにはない。
固有結界の内部では助けも望めない。結界を破り侵入するなど、できるものではない。

だがここに例外が存在する。
マリンフォード頂上戦争という未曽有の嵐に飛び込むことのできる規格外の男が歴史上に恐らくはただの一人だけ。

はるか上空から勇ましい雄叫びが響く。
その男は間違っても頭脳明晰とは言えない。善人でもない。
だから目の前で誰かが危機に陥っているのなら、きっと。

「ゴムゴムのぉーーーー!!!」

雄叫びを上げて、男が上空から落ちてくる。
男の右腕が黒く染まり、同時に巨人のように大きく肥大する。
その声を聞いて、先ほどまで前線にいたはずの男が飛んで戻る。炎へと姿を転じ、父と慕う男のもとへ。杯を交わした弟のもとへ。

「“火拳銃(レッドホーク)”!!」
「“火拳”!!」

二つの拳が魔神柱を吹き飛ばす。

「なんとなく殴っといた!」
「変わらねえなあ、ルフィ!」

戦場はより自由に、混沌になっていく。


491 : 魔なる柱雷のごとく出で ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:40:27 Mm4iMwzc0

【A-4/南部/二日目・未明】




【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語】
[状態]健康、魔力消費(小)
[令呪]残り三画
[装備]ソウルジェム
[道具]グリーフシード×5@魔法少女まどか☆マギカ、財布内に通学定期
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる
1:まどかを助ける(罠の可能性を考慮)
2:ほむらと合流してまどかを元の世界に返す
3:まどかを帰還させた後はほむらの動向に警戒
[備考]
※浅羽直之、アーチャー(穹撤仙)を確認、フェザーと名乗られました。
※暁美ほむらが昔(TV版)の存在である可能性を感じました。
※暁美ほむらが何かしらの理由で時間停止に制限が掛かっていることを知りました。
※まどかへの連絡先を知りません。
※ほむらと連絡先を交換しました。


【不動明(アモン)@デビルマン】
[状態]魔力消費(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる
1:さやかに従い行動
2:金のキャスター、銀のキャスターへの対処
3:マスターを守る
[備考]
※穢れの溜まったグリーフシードを『魂喰い』しました。今のところ影響はないですが今後何らかの影響があるかは不明です。
→ケイオスタイドとして内側から明を侵食し、霊器を魔神柱に変えるきっかけとなりました。
※キャスター(フェイスレス)に不快感を覚えています。
※世界改変の力を持った、この聖杯戦争の原因として魔法少女(まどか、ほむら、さやか)とサタンを想定しています。


[共通備考]
※マップ外に出られないことを確認しました。出るには強力な精神耐性か精神操作能力、もしくは対界宝具や結界系宝具が必要と考えています
※マップ外に禁人種(タヴー)を確認しました。不動明と近似した成り立ちであるため人間に何かがとりついた者であることに気付いています。NPCは皆禁人種(タヴー)の材料として配置されたと考えています
※間桐雁夜(名前は知らない)、バーサーカー(一方通行)を確認しました。
※セイバー(リンク)陣営との同盟を結びました
※キャスター(フェイスレス)の真名を獲得しました。
※学園の事件を知りました。
※聖杯戦争の会場を作ったのも、願望器自体も世界改変の力と予測しています。
※キャスター(食蜂操折)の外見と能力、そのマスター(犬飼伊介)の外見の情報を得ました。

※現在合体して魔神柱アモンになっています。


492 : 太陽は闇に葬られん ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:41:16 Mm4iMwzc0

月の見えない天井。
無機質な空間。
戦場から離れた静寂で男は佇む。

「不動明……あの姿は一体……?」

そう呟くと男、天戯弥勒は右眼を覆うように手をやった。
その掌の下で目線を何かを探すように様々に走らせる。
そしてあるところに視点を定め、目当てのものを見つけて納得の声を上げる。

「なるほど、そういうことか。逆光運河・創世光年を成さず、人類を進化させようとするとそういう真似をするのか、あの獣は」
「あの正体を知っているのか」

新たに一人、男が姿を見せる。
先刻あった不意の来客と同じ、金色の髪に容姿端麗な存在がどこからともなく現れたのに驚きもせず、言い咎めることもなく弥勒は問いに答える。

「ああ、今答えを見たところだ」
「聞かせてほしい」

右眼から手を放し、疼くように少しだけ表情を歪めると、その眼で見たものの解説を始めた。
それを暗闇から現れた男、飛鳥了は静かに傾聴する。

「あれは魔神柱というものらしい。ゲーティアに記された72柱の悪魔の名を冠する使い魔だ。アモンはその中でも高名な悪魔だろう?」
「私の知るアモンの姿はあのような醜悪な肉の柱ではなかったが……」

グリーフシードに満ちたケイオスタイドによる影響とはいえ、明の善性があれば魂まで汚濁することはないと思っていた。
ルシファーと並ぶ強壮なる悪魔アモンの肉体が変質するとも了には思えなかった。

「私たちが今いる世界とは基準を異にする編纂事象では魔術王が人類すべてが進化させようとしていた。
 その結果人類の大半は悪魔族(デーモン)へと転じた……不動明は獣魔族(ベスティア)アモンと呼ばれる悪魔となった。
 人が名付ける前から悪魔であった真性悪魔、デーモン族。人が人であるがゆえに切り捨てることの叶わない人類悪。この二つは極めて近しい概念だ。
 そしてサーヴァントとは意思を持つ存在を使い魔という術式に落とし込むもの。
 魔神柱というのは魔術王の保有する術式が意思をもったものらしい。
 二つの近似する概念に加え、並行世界の魔術王とアモンの繋がりゆえに魔神柱へと姿を変えてしまった、というところだろう。些かと言わず外法な地だからな、ここは」

弥勒のつらつらと語る魔神柱というものの正体に理解はしかねるも納得はする了。
肉体はともかく魂のラベルが無事ならばひとまずは目的を達することができると焦燥を抑える。

「情報に感謝する。私(ルイ)にも伝えておくとしよう……しかし今更だが超能力者(サイキッカー)にしては魔術に精通しているな。
 根源にでもつながったか?私以上の知識とは」
「詳しいわけじゃない。答えを見た、と言ったろう」

そう言いながら弥勒はまた右眼を抑えるように右手を伸ばす。
了はその手の下を探るように見つめ、ゆっくりと答えを出す。

「魔眼か?いや、まさか千里眼?生まれつきではないな。どうやって手に入れたんだそんな代物」

了の顔に珍しく驚きが浮かぶ。
その珍しい表情を可笑しそうに見返し、弥勒はその眼の出どころを喋り始めた。

「生命樹信仰というのは様々な神話に様々な名で存在する。
 ある神話では、キスカヌ。別の神話では、娑羅双樹。また別の神話では、ゴフェル。あるいは、セフィロトにユグドラシル。
 これらは同一の元型を持つものであり、俺のPSI、そして魂の『起源』にも通ずるらしい。
 生命の樹は世界を支え、あるいは繋ぐ……流れてきたのさ、世界から俺に向けて情報が。
 世界樹ユグドラシルの根元に繋がる命の泉がデンマークにあることを、俺はセフィロトを通じて知ることができた」

世界樹ユグドラシル。命の泉。
それは北欧神話に語られる大神が智慧を得た舞台として有名だ。
ルーン魔術の開祖と言われる大神は無窮の叡智の代償を払い、世界を見通す神となった。
払った代償は、自らの命と、そして泉に捧げた右眼。そう、つまり……


493 : 太陽は闇に葬られん ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:42:44 Mm4iMwzc0

「ミミルの泉からオティヌスの右眼を回収したのか。
 数多の並行世界を生み出すが故に、その並行世界を俯瞰する規格外の千里眼を持つ『魔神』……グランドキャスター、オティヌス。
 捨てられたその眼に未だ機能が残っていたとは驚かせてくれる。
 ある意味では『宝石』の魔眼より扱いの難しい代物をよくその身に宿せたものだ」

身体に依存する千里眼は宿主が死しても、宿主のもとを離れても機能を続ける。
オティヌスの眼が千里眼となった時点で、泉に捨てた眼もまたグランドキャスターの資格である千里眼へと性質を変えていたのだ。

「イルミナの移植に比べればなんてことはない……といっても俺はその実態がどんなものかは知らないが。ウラヌスには感謝しかないよ」

創造主(クリエイター)と呼ばれる天才サイキッカーの少女が人を人ならざるものに処置できる技能があった。
その力を借り右眼を霊的に移植すれば、あとは起源の類似する生命の樹の保持者である弥勒になら規格外の千里眼もある程度は使いこなすことができた。
あらゆる並行世界を見渡し、テレホンカードを手にする者を見極め、今も時折会場での戦端に目を配っている。

「並行世界を見渡す千里眼を、たかだか聖杯戦争の監視に使うなど贅沢な」
「俺も、お前ももとより聖杯など欲していまい。心底それを望んでいるのが神に最も近いマンセマットなのは何とも皮肉なものだ。
 俺たちの目的は聖杯戦争のその先なのだから、そのためならば魔神の眼も相応しいと言える」
「とはいえ人の身でその眼は扱いきれるものではないだろう。器が足りない。私の知る限りその眼を持つものはどれも純潔の人間ではなかったはずだ」

英雄王ギルガメッシュ。魔術王ソロモン。キングメイカーことマーリン。
神の血や知識、あるいは夢魔の血が混ざった人外でもなくば脳髄や神経が焼き切れてもおかしくない。

「扱えてないさ。見えるものすべてをまともに受け止めていたら今頃俺は廃人だ。
 ……さっきまで垣根帝督がやっていたあれと似たようなものだ。リスク処理というやつだな。
 脳が焼ける前に俺の手で視神経をレイラインごと切ることでまばたきの代わりにしている。視点の切り替えも同様だ」

そう言っている間にも右眼の視神経を焼き切り、そして生命の樹(セフィロト)によって回復する。
まばたき程度の気軽さで訪れるその激痛に苛まれても、弥勒は少し疼いたくらいの反応で右手を目にやり不敵に笑みを浮かべるだけ。

「もちろん使いこなすための腹案はある。それが俺の目的のために必要なことなのだからな」

そう言いながら保管したエレン・イェーガーのもとへと歩み寄る。


494 : 太陽は闇に葬られん ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:43:06 Mm4iMwzc0

「肉体のスペックを向上させる必要がある。死徒化などではまるで足りない……この身に神を、オティヌス自信を混ぜ、疑似サーヴァントになることだ。
 もちろんそのままでは神の意識に俺の人格は呑まれ、僅かな思念を遺す程度になってしまうだろう。
 必要なのはエレン・イェーガーに宿る『始祖の巨人』の力だ。巨人を掌握する力を秘めたそれを奪い取ることで、ユミルの継嗣である半神半巨人のオティヌスの意思をねじ伏せる。
 そうすることで、俺はオティヌスの疑似サーヴァントとなっても人格を侵されることなく俺の意思を保つことができるだろう」
「君は完全にオティヌスを降ろすつもりなのか……?確かに神霊であるあの女の力を使いこなすにはそれしかないだろうが、そうまでするか」

冠位の魔術師の、神霊の力を手にしなければならないことなどそうはない。
その欲深さと、何より血走った眼でエレンを睨む弥勒の凄味には了も多少なり感心する。

「この眼を通じて知ったことがある。
 俺たちの生きる宇宙は異なる展開を見せる並行世界を許容する。しかし際限なく並行世界を発生させ続けると宇宙の寿命が尽きてしまう。
 故に世界は選択し、記録し、収束する。『もっとも強く、安定したルート』から外れた世界を伐採し、エネルギーの消費を抑えるのだ。
 消えゆく世界を『剪定事象』と呼び、基幹となる世界を『編纂事象』と呼ぶ」

弥勒の眼付が変わった。
千里眼を得て、神の視点に立ったことで人間味が薄れている。

「ふむ。魔術師の言うところの『人理』のことか」
「そうだ。人理に記録された事象はいかなる過程を経ようと覆ることはない。
 神代のそれでもなお足りない、規格外の魔術師でなくば人理を焼却し、それを否定することはできない」

そう。
歴史を変える偉業を成すのは容易いことではないのだと、神の眼を得て思い知らされた。
世界を騙した、姉と宿敵がどれほどのことをしていたのかを改めて弥勒は知ったのだ。
そして、自らがそれに挑むことがどれほどの苦行であるかを。

「なるほど、そうか。『主神の槍(グングニル)』により世界を作り変える魔神(グランドキャスター)オティヌスならば人理焼却も成ると考えたか。
 しかし疑似サーヴァント程度でそこまでできるかどうか」
「かまわんさ。何も人類史すべてを否定しようというわけじゃあない。そんなものは獣の所業だ。
 俺はほんの少し現代を守り、未来を変えることができればそれでいい」

弥勒の眼に少しづつ人間性が戻る。
千里眼を通じて見るのではなく、過去を振り返るとき彼は紛れもなく個人になっていた。
その様子に少しだけ了は疑問を覚えた。

「オティヌスの千里眼は未来視にまで至るのか?」
「さあな。本来のものならどうか知らんが、少なくとも俺は並行世界(となり)を覗き見るのが精いっぱいだよ」
「ならどうして君は固定された未来を知った?」

質問を受けると弥勒は複雑な表情で懐から赤いテレホンカードを取り出した。
懐かしむようで、誇らしげで、しかし悲しげでもある。

「姉さんと…夜科アゲハが教えてくれたのさ。10年後の未来と、それに至るまでの戦いの歴史を」

想起する。
姉と宿敵が届けてくれたメッセージを。
自ら紡いだその結末を。


495 : 太陽は闇に葬られん ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:43:29 Mm4iMwzc0

「10年後、この地球が地球外の存在によって滅ぶ未来を見た」

思い返すのは自らの愚かさとその罪。

「俺の呼び寄せてしまったクァト・ネヴァスの手によって地球上の生命体の大半は絶滅の危機に陥る。
 その未来は第一波である約束の涙を手にしたミスラを俺と夜科アゲハの手によって殺し、消し去ったはずだが。
 それはおそらく人理に記録されている。数多の世界で似たような事象を観測したからな」

自ら引き起こしてしまった事件は幕を下ろした、はずだ。
そして同じような事件は、全く異なる地でも起きていたのを知っている。
弥勒は再び右眼を抑えるようにし、そしてかつて見た世界の記憶を手繰り寄せる。

「纏流子の刃で原初生命繊維は断ち切られた。
 鹿目まどかの願いが絶望の魔女を救済した。
 伊里野加奈の尽力によって異星人の侵略は防がれた。
 現時点で地球は宙よりの侵略者に敗北することはないと人理に刻まれたはずだ。だが、10年後はどうかは……不安材料も多い」

あらゆる世界の歴史に刻まれている。
地球は外宇宙の存在になど負けはしないと。
しかし、弥勒は知っている。10年後の未来に外宇宙からの侵略者の本隊が訪れる可能性があることを。
ミスラによりウロボロスが呼ばれるように、何かが地球に訪れる危険がある。

「人吉善吉の過ごす世界で鶴喰梟という男が生命活動を停止した場合、その男の遺言により月が地球に落ちることになっている。
 インキュベーターという地球外知性体の魔の手に未だ脅かされる世界もある。
 直近の事象としてはそれだが……ほぼすべての世界に共通して見られる『捕食遊星』の伝説が気になる。
 ヴェルバーと呼ばれるそれは月の干渉がなければ地球を訪れ、滅ぼす……あたかも『ウロボロス』のようにな」

地球が救われるのが人理に刻まれたとしても、10年後の滅びまでも記録されているかもしれない。
その因子は様々な世界に転がっていた。
そしてもう未来を見ることの叶わない弥勒ではその可能性を人並みに予測することしかできない。

「もし君の見た未来が人理に記録されていたならば地球が彼方からの来訪者によって滅ぼされる、と。
 それを防ぐために魔神の力を手にしようとは意外と人のいいところがある」
「わざわざ否定はしないが。あくまでそれは二の次だ」

弥勒の眼に映っているのは、世界を滅ぼしてでも救いたいものだった。弥勒を人間足らしめている存在だった。
世界の危機よりもその危機の方がよほど重要だ。

「現代において5本の指に入るだろうサイキッカー、八雲祭という女がいた。
 そいつは明らかに格下である俺の部下の一人の毒を受け、ある歴史ではその毒による弱体化が原因で死に至っている。
 あの女の服毒はあらゆる世界で観測される、人理に記録された不変の歴史だ」

語るのは人理に刻まれた不変の現象。
赤いテレホンカードを通じて知った事象においても、歴史を変えることはできないと一人の女の危機を通じて世界は知らしめてきた。

「それがいかなる歴史を固定しているのか。俺の生存か、それに付随するクァト・ネヴァスの襲来か。
 その答えは分からないが、歴史においては個人に発生する事象もまた記録され……何より観測された死は絶対となりえる」

いかなる歴史をたどろうと滅びを迎えると決まったものは滅びるらしい。
ブリテンという一国であろうと。ムーンセルという規格外の演算器であっても。
ならばもちろん数人の人間の死など容易く世界はもたらしてしまうだろう。

「なるほど。特異点と呼ばれる歴史のシミであっても死を記録されたなら、特異点修正後もその死の運命は覆されない。
 多少時期にずれは生じるだろうが、人理焼却という異常事態を引き起こさない限り必ず死に至るだろう。
 ……『赤いテレホンカード』の力で未来を変えたとしても、その未来で死んだものはやはり死ぬ可能性が高い」
「ドルキ。ウラヌス。ヴィーゴ。シャイナ。ジュナス。そして俺にグラナ。クァト・ネヴァスの訪れた未来においてW.I.S.Eは殆ど全滅だ。
 その未来にも多少のショックは受けたが……この眼を通じて霊子記録固定帯(クォンタム・タイムロック)のことを知ったときはその比じゃなかった」

10年以内に自分も含めてほとんどの仲間が命を落とす。
これが歴史に記録されているとすれば、それは地獄などというものではない。


496 : 太陽は闇に葬られん ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:43:57 Mm4iMwzc0

「かつての俺の計画が原因で世界が滅ぶ。それが必要ならばまあいい。
 だが仲間と共に過ごす世界を求めておいて、その結果が仲間の死など受け入れられるわけがない。
 ……あいつらが10年前後で必ず死にゆく世界など認めるものか」

そう、弥勒は一人漏らす。
一人たりとも仲間の手は借りず、悪魔や天使に手を伸ばしてまで彼は仲間を巻き込むのを避けた。
聖杯戦争などという大事に巻き込んでは、その過程で命を落としてもおかしくはないのだから。
10年以内に死ぬという歴史をここで確定させてしまうわけにはいかないのだから。
世界が滅んでも別に構いはしない。その過程で仲間が消えゆくのは我慢ならない。

弥勒のその意識は、魔王の思う混沌とした世界を生きるに相応しい強く、倫理に囚われない自由なものだった。
その凄烈な、新たな魔王かあるいは獣と言える在り方に了は笑みを深めた。

「英霊を喚ぶ聖杯戦争という形をとり、マンセマットと私のような人外も交えて、人理焼却というとびっきりの人類悪を成そうとする。
 明が並行世界の因果を引き寄せてしまったのを見るに随分術式を歪めたものだ。
 もしやティアマトを倒したヒトナリや、原初への『回帰』を願う私、それに『愛欲』の果てを知ったほむらは呼び水で、グランドクラスを召喚するために原点の決戦術式・英霊召喚に近づけたな?
 悪魔染みた発想だ。全く感服するよ、弥勒」
「お前の目的とかち合うことはないと確信できたか?」
「ああ。明は狙い通りソウルジェムに満ちたケイオスタイドを啜り、絶望の果てに受肉した。あれなら英霊の座でなくヴラヴァやシレーヌの待つ地獄へと送ることができる。
 巨人族やデビルマンの堕ちた地獄で神々の悪辣さをその眼で確かめてくれるだろう」

多少なり気に食わないことはあるが、それが最善の道であると了は砂をかんだような表情で堪える。

「同胞を地獄送りとは大層な友情だな」
「なに、問題はないさ。ケルベロスはおろか闇の帝王ハデスだろうと明には敵わないだろうからね。
 ……さて、俺はそろそろお暇しよう。私(ルイ)とともに明のひとまずの最期を見届けなくては。それと、ついでにマンセマットの末路も冷やかしておこうか」

そう言うと口元に嗤いを浮かべて、闇へと了は去っていく。
そうして空間には一人弥勒だけが残され、数秒の間耳に痛いほどの沈黙が下りた。

そこへ銃声に近い炸裂音が響き、静寂を切り裂く。
炸裂音と共にどこからか放たれた強大な弾丸が弥勒を貫き、その肉体は衝撃で宙を舞う。
胸元に空いた風穴、甚大な出血、誰が見ても天戯弥勒は間違いなく死んだと思うだろう。
銃声の主もそう考えて、暗闇から姿を見せる。
その正体は女神ノルン。
大天使マンセマットの同胞であり、此度の聖杯戦争においてはその能力で時間操作に制限を課す役割を果たしていた女神である。

「まさか、アレは…ルシファーが噛んでいたとは」

弥勒の死体を確かめるノルンの口から言葉が漏れる。

「聖柱は顕現し、もはや我らの計画が大詰めだというのに――」


497 : 太陽は闇に葬られん ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:44:20 Mm4iMwzc0

「あいつや俺に邪魔されるわけにはいかない、か?」

ノルンの言葉を継ぐように弥勒の亡骸…だったはずのものから声が放たれた。

「今のはグランドタックだな。神樹ユグドラシルの放つ、至高の魔弾に手を伸ばさんとした強力な銃撃。
 ここまで死にかけたのはグラナの天墜をまともに浴びて以来かな。大したものだよ」

エレン・イェーガーの死体から光る枝が伸びて、その枝に触れたところから弥勒の傷が癒えていく。
エレンの肉体も死んでいるとは思えないような瑞々しさを保っていたが、その生命力を奪うように、弥勒の傷が癒えるほどに逆にエレンの体は朽ちていく。
最後に自重でエレンの体が枯れ枝のように折れると、弥勒の体は完全に癒え、再び堂々と立ち上がった。
つい先ほどまで間違いなく死んでいた男の復活に、何よりその見覚えのある枝にノルンも瞠目する。

「生命の樹“王国”(セフィロト、マルクト)……どうしたノルン?お前の中の一人はワルキューレだろう?死者が立ち上がり戦うなど幾度も見てきたはずだ。
 それともこの生命の樹(セフィロト)に見覚えがあるか?かつてウルズの泉の水でお前が育てていた生命の樹(ユグドラシル)に似ているのが驚きか?」

ニンゲンの戯言と切って捨てるように再び銃撃を構える。
次の瞬間に銃声

「ひれ伏せ」

ではなく弥勒の発したその命令が響き、その通りにノルンは突如重力が増したかのように倒れ、『ひれ伏す』。
令呪で命令されたサーヴァントのように意思に反した行動を強制され、ノルンの脳裏に次々と屈辱が、疑問が駆け巡る。
人間風情が。おのれ、何をした。動けるようになったなら即座に縊り殺してくれる。
女神の美しいかんばせにその悪意を存分に浮かべ弥勒を睨むが、睨まれた方は涼しい顔でそれを受け流す。

「なぜ?と聞きたそうだから答えてやろう。エレン・イェーガーのおかげだよ。彼に宿った『座標』の力をものにしたのさ。
 あらゆる巨人の繋がる空間を超越した道の交差点が今の俺の中にはある」

生命の樹(セフィロト)によって生命を奪われ、枯れ落ちたエレンの亡骸を背後に弥勒が歩み、ノルンに近づく。

「巨人の力を宿したユミルの民が命を落とした時、宿った巨人はどこかのユミルの民に転生する。
 ……エレン・イェーガーが死ねばその身に宿った二つの巨人の力は別の誰かのもとへと移ってしまう。奪うには生かしたまま喰らわねばならない」

崩れたエレンの亡骸が灰へと転じた。

「この世界で死んだ者は灰へと帰る。転じて言うならば、灰になっていないものは世界の認識において死んでいないということだ。
 セフィロトを通じて俺とパスを繋ぎ、命を共融している間は奴に巨人の力は宿り続けた……そして先ほど、そのパスを通じてエレン・イェーガーの命を喰らった。
 今の私…俺は『進撃の巨人』と『始祖の巨人』の継承者だ。わかるか、ノルン?巨人族の三姉妹よりなる女神よ」
「座標の力が、私を縛っていると…!?」

ノルンを形成するのは幾柱かの女神の要素である。
特にその頂点の三姉妹、現在過去未来を司る巨人族の女神のことを指す。
彼女の道もまた、どこかで『座標』に通じているらしい。

「俺の右眼はオティヌス…ユミルの一族である魔神オーディンのものだ。巨人の王ユミルの系譜の力に触れていれば片鱗とはいえ『始祖の巨人』の力を振るうことができる。どうやら実験は成功したな」
「私で、力を試したというのか……!」
「その通りだ」

ノルンの目と鼻の先に立ち、弥勒は見下すようにして掌からセフィロトを展開する。

「最期になるがノルン。お前には感謝している。
 ユグドラシルに一度奪われたその力を再び身に宿したため、お前はただでさえ深い世界樹(ユグドラシル)との繋がりをより濃くすることとなった。
 それがあったからこそ、ユグドラシルは輝きを取り戻し、俺のセフィロトへ居場所を知らせてくれたのだろう。オティヌスの眼を見つけることができたのはお前のおかげだ。
 そしてセフィロトとユグドラシルの繋がりがあったからこそ、俺はそこへ千里眼を向けることでお前とマンセマットを発見できた。その繋がりにテレパスを送ることもな。
 この聖杯戦争の開催にお前という存在は欠かせなかった。そして、俺の目的の終結のためにもお前の存在は欠かせない」

掌から出されたセフィロトが束ねられ、強靭な槍のようになる。


498 : 太陽は闇に葬られん ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:44:44 Mm4iMwzc0

「俺に跪き、糧となって死ね。ノルン」

そしてその槍が、何もできず跪くノルンを貫く。
うめき声ひとつあげる間もなくノルンもまた灰へと帰る。
……その灰の山に一つ、残るものがあった。弥勒はそれを手に取り、大切そうに懐にしまう。

「ユグドラシルの枝。お前が宿した力の結晶、タダノ風に言うならフォルマか。思ったより小さいな。こんな僅かな傷から世界樹が枯れるとは神秘の衰退とは恐ろしいものだ。
 しかし小さい木片しか得られなかったな。これでは槍にするには少し足りないか?」

やはりスペアに手を出すか、とつぶやき、改め得て千里眼で会場に目をやる。
視界にまず飛び込むのは二つの戦場。
聖なる柱と向き合う、人間と悪魔。
魔なる柱を向きあう、人間と悪魔を宿すものたち。
それを取り巻く、戦場の空気。

「綺麗だ」

その大気はすでにPSI粒子以外にも様々なものに侵されている。
未元物質であり、テレズマであり、スタンドエネルギーであり、マッカであり、ケイオスタイドであり、心象風景そのものでもある。

「あらゆる世界のあらゆる法則が入り乱れ戦うことで、空気に魔力(マナ)が満ちていく。
 かつて神が闊歩した時代の空気は、こんなふうに輝いて見えたんだろうな……これならオティヌスも馴染むだろう」

場が整いつつあることを確かめ、今度は自らの胸に手を当てる。

「必要なものは『座標』である。巨人を従える始祖の巨人の力でもってオティヌスの意思をねじ伏せる」

ゆっくりと深呼吸をして、そこに力があると認識を深める。
ノルンが屈したその力は本物だと改めて確信する。

「オティヌスの右眼を宿していれば巨人を操る力を行使できることは確信できた。
 ノルンを失い、暁美ほむらの枷は外れてしまったが、もはや佳境だ。夜明けごろには時間素行までできるようになってしまうかもしれないが、それも些末事」

再び戦場に意識を向ける。
今度は大気でなく、現れた規格外の怪物二柱に絞って。

「魔神柱に聖柱とはずいぶん規格外ではあるが、英霊と人間の合体という実例もこの眼で観測できた。
 召喚はまだしも合体には多少の不安があったが、あの分なら俺にもさほど難しくはなさそうだ」

マンセマットの術式は観察できた。デビルマンの合体も見た。
サーヴァントを現世にエーテルで器を与えるのではなく、天戯弥勒という器に流し込み、それによって器自体も変質させればよいのだ。
すでに千里眼を宿し、変質しつつある体にオティヌスは馴染むはずだと自分に言い聞かせる。

「巨人を抑えるのに最も適したカタチの魔術回路も奪った。この手だけは守り切れば、抑えることができる」

今度は千里眼の先でなく、右手の甲に目をやる。
そこにあるのは自由の翼。エレン・イェーガーに刻まれていた令呪を巨人の力ごと奪ったのだ。
巨人を制するのに彼のもの以上に優れたマスターはいないだろうと、その魔術回路ごと奪い取った。
……オティヌスを抑えるための準備は重ねている。


499 : 太陽は闇に葬られん ◆A23CJmo9LE :2017/05/13(土) 03:45:01 Mm4iMwzc0

「必要なものは礼装である。魔神の振るった『槍』、世界樹ユグドラシルの枝……ゴフェルと呼ばれる木片を。そして、竜を従える『弩』を」

あとは呼び寄せるだけ。
そのための触媒をノルンを殺め、手にした。
不足ならば他にも候補は用意している。

左眼に体の随所から発生させた、世界樹(セフィロト)と名付けたPSIが映る。
そして右眼に映る戦場の景色を移動させていく。
まず映ったのはアーチャーのサーヴァント、穹が戦地に遺した矢が突き刺さる公園だった。
そしてすぐに千里眼に見える景色を切り替える。
グングニルの名を冠する槍を持つランサーのサーヴァント、レミリア・スカーレットを彼方より見やる。
そしてとある世界において『主神の槍(グングニル)』の材料となった、生きるゴフェルともいえる存在……今や聖柱と呼ばれる存在になったテイトクを睨みつける。

材料はある。
あとは召喚に適した環境と、肉体のピークのタイミング。

「必要なものは引力である。月と地球の引力が条件を満たすその時に、俺はオティヌスをこの身に宿す疑似サーヴァントとなる」

そしてまた、千里眼に映る世界を切り替える。
右眼の視界に捉えたのはこの地で誰より因縁深いサイキッカーだった。
太陽(みろく)の対となる、月(アゲハ)の姿。

「生きてこの世界を見届けろといったな、夜科アゲハ。
 結局俺の作る世界は破壊の果てにあるようだ。世界が俺や仲間を殺すなら、俺はその世界を焼き尽くす。
 俺の選んだ道はお前の目にどう映る?」

数多の剪定事象で殺し殺され、一度だけ共通の敵を見据えた男。
ドルキ以外にはおそらく唯一自分と同じ高みに至り、同じ世界を異なる見方で捉えていた男。

「世界をまわり、仲間を集め、草の冠から始めるつもりだったんだよ。
 それが、集めた仲間が世界に殺されるのを防ぎたければ冠位(グランドキャスター)の力が必要なんてな。
 世界樹の力を結集した、最高級の草の冠を用意する羽目になってしまった。
 姉さんの言いたかったのはそういうものじゃないんだろうが……10年経とうと、その成れの果てを知ろうと俺にはやはりこれしかできないらしい」




「月は近づく。天国の時は近い……さて。オティヌスの触媒でもある、弩と木片の回収に行かねばな」





【天戯弥勒@PSYREN-サイレン-】
[状態]魔力(PSI)消費(小)、『始祖の巨人』及び『進撃の巨人』吸収
[令呪]三画
[装備]オティヌスの右眼(EXランクの千里眼)
[道具]フォルマ:世界樹の木片
[思考・状況]
基本行動方針:オティヌスの疑似サーヴァントとなり、人理に刻まれた自身と仲間の死を歴史から焼却する
1.『槍』と『弩』を回収する
2.オティヌスを召喚する

[備考]
※エレンの死体をセフィロトを通じて喰らいました。『始祖の巨人』、『進撃の巨人』の力を一部得ています。



【飛鳥了@デビルマン】
[状態]健康
[令呪]???
[装備]???
[道具]???
[思考・状況]
基本行動方針:神々との闘争に勝利し、デーモンの天下を
1.聖杯戦争を通じて明たち同胞に神を敵としてもらいたい
2.神々との闘争に備えて準備。その方策として受肉した明を地獄に送る
3.必要に応じて参加者にも主催にも介入する
4.戦力増強のためルイと子を産むことも考える

[備考]
※ルシファーの男性としての面を強く顕現した分身です。
 両性具有の堕天使としての特徴を失うことで神々の一派の目を欺いています。


500 : 名無しさん :2017/05/13(土) 03:48:32 Mm4iMwzc0
投下終了です。
主催に大きく踏み込んだ話となりました。それ以外にもいろいろやっています。
>>1氏の意見次第では修正および破棄もあると思います。

眠い頭で書いたので誤字脱字等あると思います。そちらも指摘いただければ幸いです。

それなりに長い企画ですが新しく読んでくれる人も、未だに待ってくれる人もいるとしれて励みになりました。ありがとうございます


501 : 名無しさん :2017/05/13(土) 10:34:21 buCkil/U0
投下乙です

すごい。最初から最後まで吸い込まれるような作品でした
序盤は禁書ファン待望の一位対二位。優位に立つていとくんも、やはり一位には僅かに劣る…
マンセットの介入による展開はどこか新約禁書を思い出しました。ただの人間として悪党としての最後である一位は死んでもなお活躍する
しかしかりやおじさんはまさかのフェイスレスの魔の手がw失恋は同じかも知れないけど過程が全然違うよ!

一方ではデビルマンの原作を連想する展開が。
デビルマンアーマーに度肝を抜かしたかと思えば、まさか魔神柱になるなんて……サイレン聖杯でケイオスタイドの文字を見ることになるとは思いませんでした
さやかにとっても明にとってもトラウマを刺激されて、それがまどかたちかなら仕方がない気もする……
それに相手をするのが白ひげ、そしてついにお披露目の白ひげ海賊団は熱い!
それにルフィも参加してのオールスターバトル、海賊対悪魔の真っ向勝負が始まろうとしている
どっちも悪であって、悪者じゃない。信念のぶつかり合いは読んでいて先が気になります。
……さやかたちは無事に魔神柱から戻れるのだろうか

そしてそして舞台の裏側も急展開。
各作品の設定を絡ませそれを分かりやすく繋げる手腕は流石の一言です。
しかも読みやすいので頭にイメージがしやすく、妄想の幅が広がります
退場して死体が保管されていたエレンに出番があったことに驚きです。こうきたかー!
たしかサイレンでエレンが死んだ時は始祖の設定がなかったはずなので書き手さん達は先の展開を見据えていたのだろうか
サイレン特有のタイムトリップと千里眼を掛け合わせ、そこに禁書やメガテンの設定を合わせるのはここまできたら卑怯です。それも上手く調和していてとてもすごい(語彙不足)


502 : 名無しさん :2017/05/13(土) 16:23:16 kdM9pfdEO
投下乙です

弥勒が破壊に向かってしまうのも人理というやつなのだろうか


503 : 名無しさん :2017/05/14(日) 02:50:28 QvyXE4R.0
投下乙です
いやーすげえ、これはすげえ…
この企画は今までも考察回や各種バトル回で丁寧に、細かく各作品世界の設定を組み合わせてきてたけど、その総結集というか…
各パートで全登場人物の作品の要素が絡まり合っててクロスオーバーがめちゃくちゃ濃い上にリレーの中で風呂敷広げまくってた(ぶっちゃけこれ畳めるの?とか思ってました)舞台裏の連中の目論見や計画や因縁までどんどん回収してて息を呑む
開幕一方通行VS垣根の因縁深すぎる決戦から、天使の予想すら覆す一通さんの最期まで魅せ切った退場に熱くなるわ
それとフェイスレス司令の夢の残滓が生んだ魔法少女デビルマン合体爆誕からの白ひげマリンフォード頂上決戦再現でルフィ乱入の流れの見事さよ…自由と混沌の体現にして本当にここしかないってタイミングで飛び込んでくるルフィさんマジ主人公
陣営で言うとヒトナリ・モリガン組がいいなあと…個人的に一番「人間として」この場に立ち向かってる感がするんだよなヒトナリさん…ぶっちゃけ当初はここまでのポジションになるとは思ってなくて予想外ながら嬉しい
設定面だとBLEACHの崩玉まで組み込まれてきたのは唸ったし、善吉やアプ・チャーさんたちがしっかり役者としてまだ活きてるのもいい
しかし何より、企画名に冠された『PSYREN』がここへ来て抜群の説得力でド真ん中に回収されたのが最も素晴らしいと思う
「謎めいた主催陣の一人」でしかなかった天戯弥勒が、内面や背景の吐露と共にクロスオーバーの収束点の一つになって中心も中心にきっちり座を占めたなと
エレンと「進撃の巨人」、「樹」や「眼」を巡る話も、弥勒が何を見てなぜここにいるかの開示も、引っ張ったにふさわしい重みがあって、その上でPSYREN主人公であるアゲハの姿が対置されてるのがいいんだ
いまいち整理した文章にならないけど、ここまで広げてきた風呂敷を見事に畳んでいく手腕には本当に脱帽です
この密度だとこれからも大変だろうけどぜひ最後まで読みたいです


504 : 名無しさん :2017/05/15(月) 18:29:16 fVmjQtN.0
投下乙です
心から敬意を表したい
伏線を一気に回収しつつ全ての作品に触れ最後はタイトルのサイレンに導くのはすごいとしか言いようがない
サイレン聖杯のとある勢は科学サイド