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クロスオーバー・モンスター闘技場 part2

1 : ◆5omSWLaE/2 :2013/12/18(水) 08:09:26 nwtoEFvk0
【概要】
様々なゲームのモンスター同士を戦わせる、バトロワリレー小説企画です。


前スレ : ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12648/1367069325/

まとめwiki : ttp://www57.atwiki.jp/monsterbr/pages/1.html


【参加者名簿】

8/8【ドラゴンクエストシリーズ】
〇スライム/〇ホイミスライム/〇はぐれメタル/〇キングスライム/〇プチヒーロー/〇ドラゴン/〇キラーパンサー/〇バトルレックス

7/7【ファイナルファンタジーシリーズ】
〇チョコボ/〇トンベリ/〇サボテンダー/〇モルボル/〇ベヒーモス/〇ギルガメッシュ/〇オルトロス

7/7【ポケットモンスターシリーズ】
〇ピカチュウ/〇メタモン/〇ソーナンス/〇キノガッサ/〇ルカリオ/〇ガブリアス/〇タブンネ

7/7【真・女神転生シリーズ】
〇妖精ジャックフロスト/〇魔獣ケルベロス/〇妖精クーフーリン/〇天使エンジェル/〇堕天使デカラビア/〇外道バックベアード/〇魔人アリス

6/6【モンスターファームシリーズ】
〇スエゾー/〇モッチー/〇ライガー/〇ピクシー/〇ゲル/〇ゴーレム

5/5【デジタルモンスターシリーズ】
〇アグモン/〇ガブモン/〇ブイモン/〇ワームモン/〇レナモン

10/10【書き手枠】
〇/〇/〇/〇/〇/〇/〇/〇/〇/〇

合計50体


2 : ◆5omSWLaE/2 :2013/12/18(水) 08:09:52 nwtoEFvk0
【基本ルール】
全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一体が勝者となる。
参加モンスター間でのやりとりに反則はない。ただし、島から脱出を図った場合、主催者によって殺処分される。
ゲーム開始時、麻酔で眠らされたモンスター達が会場のランダムな位置に運ばれ、配置される。
モンスターが全滅した場合は勝者無しとして扱われる。


【「首輪」について】
首輪が嵌められない体格の参加者が多いため、首輪は無い。その代わり、主催者の意志で息の根が止まる呪いがかけられている。
呪いは、能力や耐性に関係なく即死する。また、主催者側はモンスターの生死を判断出来る。
正確な位置の把握や、盗聴などは出来ないが、代わりに会場に多数設置された隠しカメラ、空中からの遠距離カメラ等によってモンスターの行動が常に撮られている。
隠しカメラは頑丈に作られており、簡単には壊れない。狙って壊した場合は主催者から警告が飛ぶ。それを無視して破壊を続けたモンスターは殺処分される。


【地図について】
ttp://www57.atwiki.jp/monsterbr/pages/15.html
無人となった小さな島が舞台。
自然の産物や、かつての住民が残した道具などの現地調達が可能。
B-3 廃城
C-5 大樹
D-4 祠
D-5 山頂
E-7 洞窟
F-2 廃村
G-1 灯台


【作中での時間表記】
 深夜:0〜2
 黎明:2〜4
 早朝:4〜6
 朝:6〜8
 午前:8〜10
 昼:10〜12
 日中:12〜14
 午後:14〜16
 夕方:16〜18
 夜:18〜20
 夜中:20〜22
 真夜中:22〜24


3 : 名無しさん :2013/12/18(水) 12:47:27 PP3PHnwAO
スレ建乙です


4 : 名無しさん :2013/12/19(木) 19:10:39 KumQgsJE0
スレ乙
次の投下が前の分で収まるかどうかか


5 : ◆5omSWLaE/2 :2014/01/10(金) 19:27:29 Ntu6Kn4Y0
前スレからの続きを投下致します。


6 : ◆5omSWLaE/2 :2014/01/10(金) 19:27:42 Ntu6Kn4Y0



 ◆



「クッ、許さんぞォベヒーモスゥ!!」

モリーは手元のガラクタを何度も押す。
だが、ベヒーモスの魂を狩り取る事は出来ない。
ルールが消え去った。ゆえにモンスターたちはモリーの手の内にはいない。
同じ土俵に立った生物同士に過ぎないのだ。

モリーは感情のままにスイッチを叩き潰す。
そして、感情のままにマイクに怒号を飛ばす。

「何故だ!? 一体何をした!? 何故あの場所にメテオを撃ち込めた!?
 まさかルカリオと接触した時にでも聞き出したのか!?
 おい、説明するのだベヒーモス!!!」

騒がしく喚きたてるキラーマジンガを、ベヒーモスは前足で思い切り押さえつける。
千切れた配線がバチバチとスパークが起きるが、その程度では動じない。

「言っただろう、小賢しき人間よ。ただ、我を攻撃した者へ反撃をかましただけだと」
「あんな遠距離から攻撃を加えた者がいるだと……!?
 いや、それ以前にこの距離からの攻撃にカウンターが可能だとは……」
「フン、舐めるな。人間のカウンターのように拳や蹴りなどではない。
 "メテオ"カウンターだ。宇宙により放たれる一撃だ」

地平線が、水平線が広がる光景、それは我々にとっては途方も無く広い世界に違いない。
だがそんな光景など、非常に小さな惑星の一部分でしか無い。
いつの時代でも、満天の空がそれを物語っている。

「ゆえに、この程度の"至近距離"で、届かぬことなどあるものか!」

会場の5エリア分の距離など、所詮はそんなものだ。
世界など小さなもの。それを支配する人間などは、決して大きな存在ではない。

「精霊王の眷属は宇宙をも支配する。貴様達とはスケールが違うのだ!」

矮小な人間風情が、我々魔物を簡単に抑えられると思うな、と。
モリーの語った"栄光"も、"甘美な生活"も、精霊王の眷属である誇りの前ではゴミのようにちっぽけなものだ。
だから、貴様ら人間に従う道理など無い。

前足に体重をかける。
ベキリと音を立ててキラーマジンガは潰された。




(お待ちください幻獣王様。帰還にはもうすぐでしょう)

メテオによって焼け溶け、見るも無残となった玉座をチラリと見返す。
そして、ベヒーモスはターミナルへと向かった。



 ◆



「ミリー! 応答しろ!」


7 : ◆5omSWLaE/2 :2014/01/10(金) 19:27:58 Ntu6Kn4Y0
応答無し。ミリーのいる飛行船は今宇宙にいる。
流石に大気圏を超えてまで、携帯の電波は届かない。
二重の意味で圏外である。

「ぐ、やはりダメか……」
「モリーちゃん、どうしたの?
 熱くなり過ぎじゃない? 働き過ぎてるのよ」
「マリー、そんなのんきな事言ってる場合かぁーっ!!」

八つ当たりを受けた女性は、緑と黒のワンピースを着たバニーガールのマリーである。
モリーの弟子の一人であり、モリーの若い頃を知ってる程度には付き合いが長い。

「今会場どうなっているのか、事情は勿論知っているだろうな?」
「当たり前でしょ、私はさっきまでテレビに出て実況やってたのよ」
「ならば承知の通り緊急事態だ! ムリーとメリーはどうした!?」
「あの二人は昼勤よ、今は部屋で寝てるわ」
「バカモンがぁーっ!」

モリーは机に拳をたたきつける。

「こら、気が立ってるからってバカとか言わないの! 仕事なのよ!
 それに、モリーちゃんみたいにずっと起きてられるわけじゃないんだから」
「む、むぅ……。とにかく対策を講じねばならんのだ!」

どうにかしてこの事態に収集を付けなくてはならない。

まず、ターミナル周辺が破壊された時に、人員の多くを向かわせてしまっている、
ベルゼブモンの行方を探らせるのと、ターミナルの防衛要員の派遣。
防衛要員と言っても、ジャックフロストを見る限り突破される恐れが大きいが……。
そしてそこへ畳みかけるように、ミリーのいる飛行船がメギドラダイン砲で宇宙へ。
乗客の親族からのクレーム処理と、飛行船の回収にまたしても人員がさかれている。

いくらなんでも人員が足りない。結界に代わるものが無い。
結界も無しにデスゲームを運営出来るわけがない。いささか詰んできた。
短時間で異常事態が起こり過ぎている。

「マリー、何か策は無いか? どうにかゲームを持ち直すために……」
「そうねぇ……。でもモリーちゃん、こうなったらもう修復する必要は無いんじゃないの?」
「何を言う! このままでは観客に対して申し訳が……」

「ううん。観客の皆様は、凄く楽しんでいらっしゃるわよ」

「何ッ!?」
「この流れを見てきて、これまで通り正常に戦いが運営されると思ってる人は流石にいないと思う」
「そ、そうなのか……」

こんなグダグダになっても、観客に見捨てられずにいることにモリーは驚いた。
だいたい、このゲーム自体は賭博である。納得の行く形で終えねば、苦情が殺到し、闘技場の信用を落としてしまう。
だからこそモリーは奮闘していた。最大限まともに戦いが続くように。

「あ、じゃあこうしちゃいましょう。
 《結界が破壊されたために正常なゲームの運営は不可能と判断。
 現時点において生存しているモンスター全員を勝者として扱い、配当を支払う》
 ……これならもう、異論は来ないはずよ」
「払えるのか? 11体分の配当を」
「そうねぇ、賭け札が集中していたのは……」

マリーはメモ帳を取り出して、ペンを走らせる。


8 : ◆5omSWLaE/2 :2014/01/10(金) 19:28:09 Ntu6Kn4Y0
「はぐれメタル、サボテンダー、ベヒーモス、ギルガメッシュ、ガブリアス、ギリメカラ、すえきすえぞー、ピクシー、エアドラモンかしら……。
 それで今生き残ってる11体分の配当に支払ったとすると……。
 ほらやっぱり。上位9体分で売れた金額だけで、ギリギリ足りるわね」

計算によって導き出された総額をモリーに見せる。
破壊された装置の代金を含めれば大きな赤字には変わらない。

「どう、モリーちゃん。ここで清算しちゃって、後は好きにやっちゃうのが得策だと思わない?」

だが、ここで赤字が出ても大きな問題ではない。
今やモンスター闘技場は人々の注目の的、話題の中心となっているのだ。
つまり、スポンサーとかがなんとかしてくれる!

「盛り上げちゃいましょう? ね」

マリーはニッコリとほほ笑んだ。

「あぁ、そうだな……!」

モリーは決断する。
一切の出し惜しみ無く、本気を見せてやろう、と。


「いいだろう、これよりモンスター闘技場・最終決戦を開始する!」


【B-3/廃城/二日目/深夜】

【ベヒーモス@ファイナルファンタジーシリーズ】
[状態]:ダメージ(大)、魔力消費(大)
[装備]:なし
[所持]:サタン@真・女神転生Ⅲ
[思考・状況]
基本:幻獣王の元へ帰還
 1:古城を探索する
 2:倒すと後味が悪いのでエアドラモンには会いたくない
 3:感謝している、結界を担う者よ


※主催者側から応急処置的に、ターミナルを防衛する人員が派遣されています。
※モリーがどういった手段を用いて盛り上げるのかは、次の方にお任せします。


9 : ◆5omSWLaE/2 :2014/01/10(金) 19:29:44 Ntu6Kn4Y0
続けて、ベヒーモス、結界を担う者で投下致します。
タイトルは「蛇足」です。


10 : ◆5omSWLaE/2 :2014/01/10(金) 19:30:21 Ntu6Kn4Y0
きっとこんな話は蛇足でしかないだろう。
物語の本筋には一切関係の無い幻想上の出来事なのだから。
矢のような速度で進んでいく時間を、無理に塞き止める必要も無い。

でも、先の話には修正点が一つだけあり、そのためには理由が無くてはいけない。
だからこそ、地下空間にメテオが着弾し、結界エネルギーが断たれるまでの時間へと、巻き戻る必要がある。


 ◆



光に包まれた世界は白としか認識出来ず、知覚の枠を越えた轟音は無音として扱われる。
それがベヒーモスの意識で行われた処理であった。
とはいえ、そんなのは本来ならば一瞬だけのもの。

ただそこに、メッセージのかたまりがなだれ込むように注がれただけ。

『ベヒーモス、私は心から感謝している。
 私は、やっと生という苦しみから解き放たれた』

白の空間には、結界を担う者が立っていた。
例によって念話によるものだろう。
転移空間を張るだけではなく、メッセージすら届けられるというのは恐るべき事だ。

『フン、礼には及ぶまい。この程度、あくまでも利害の一致に過ぎない』

そして、ベヒーモスは返答した。
脳の電気信号では到底間に合わないような、刹那の中で。
『結界を担う者』の力によるものかもしれない、それとも別の現象かもしれない。
もちろんそんなことは、彼らにはそれほど重要な事ではなかったが。

『伝えたい事は以上か』
『……そうだな……。ならばもう一つ、消える前に伝えておこう』
『ああ』




その昔、どの生物よりも最も自由なポケモンがいた。
望むがままに宙を舞い、望む場所へテレポートが出来る。
賢い知能はどんな技も意のままに使いこなし、それでいて人間に縛られることは無かった。
束縛、服従なんて言葉は、彼には全くの無縁。
よほどのことが無ければ、人間たちと関わることもない。

古い文献にだけ記された情報でしか、人間はそのポケモンを知らない。
まるで蜃気楼のように、幻のように、都市伝説のように、本当に存在するかどうか誰も知らない。
だから人間はそれを"幻のポケモン"として語り継いでいた。
実態の無いものなんて、子供に読み聞かせる童話の一つでしかなかった。

ある時そのポケモンは、一本のまつ毛を落とした。
ただ、不運な事にそれを人間が発見してしまった。
『存在する』証拠を掴まれた時、それは幻ではなくなる。
人間は血眼になってその自由なポケモンを探し求める。
自由なポケモンは、人間から逃げるために、その自由を少しだけ失った。

やがて人間は、そのポケモンの遺伝子を用いてクローンを――レプリカを作り上げた。
人間たちは「科学の力は凄い」と称え、「私にも分けてください」とそのレプリカを求めた。
苦心して生み出された幻のポケモンのレプリカ、人間たちはそれを何に使ったか。
案の定、戦いのための兵器として、またはコレクションとして、見世物として使った。
人間は、希少なポケモンを手に入れた満足感に浸っていた。


11 : ◆5omSWLaE/2 :2014/01/10(金) 19:31:21 Ntu6Kn4Y0
何よりも生み出されたレプリカは、とても強かった。
そしてレプリカは、喜ぶ人間たちに何も言わずにただ従事し続けた。
ただ、作られたポケモンが何を思い、何を考えていたのか。
人間はそんなことに興味を持たない。
希少なポケモンが手の内にある、その事実に酔いしれていたのだから。




『いでんしポケモン、ミュウツー。
 元のポケモンにちなんで、それが私に与えられた名前だった』
『お前はその名をどう思う、誇らしく感じているのか?』
『いいや、そうは思わない。人間に付けられた名など、憎しみすら湧き上がるほどだ。
 ……だが、それほどの嫌悪感を抱いていても、私はこの名を捨てようとは思わなかった。
 命名された瞬間から、私は自身の事を《ミュウツー》として見なしていた。
 そして消える前に、それを貴方に伝えたくなった』

彼には自分の感情が理解出来なかった。
人間に与えられた名に、これほどの思い入れがあることが、納得いかなかった。

『私は何故、伝えたのか。わからない……』

『我にはわかった』
『教えてほしい』

『羨んでいたのだな。まともな生を受けた者の事を。
 そして、お前の遺伝子に刻まれている自由なポケモンの事を』

生まれる意味など無い、いずれは零になる事がわかりきっている。
だが、それでも、苦痛ではなく、憎しみではなく。

生きる快楽を、自由に空を舞う幸福を、世界を知る感動を。
――それらを味わえる者たちの事を、心のどこかで羨ましく感じていた。

『自分自身の存在の証明を、誰かに示したいと思っていたのだ、ミュウツー』

ただエネルギーを作るための道具ではなく、生を受けた一体のポケモンだと。
その証明が、ミュウツーと言う名前によって与えられた。



『……そうか』

ミュウツーは無機質的に白い腕をぶらりと下げたまま俯いていた。
血色の無さそうな紫の尻尾をふわりと揺らす。

『そうだな。ミュウのような自由を知ってみたかったかもしれない。
 例え全てが消えるとわかっていても、人間に縛られずに生きる道も、見てみたかったかもしれない』

所詮は自分とは違う生物の生き方。
それがどんなものか知る由もない。
だから、彼の目に涙が流れることも無い。

『ありがとう』
『……こちらこそ』

ただ、それに気付けたことに感謝したかった。
このことを知る意味なんて、何一つ無い。無駄な事に過ぎない。
それでも、生み出される前から忘れていた感情が、ミュウツーの胸の内にあった。

『ミュウツー……その名を覚えておこう』


12 : ◆5omSWLaE/2 :2014/01/10(金) 19:31:32 Ntu6Kn4Y0
ベヒーモスの言葉に、ミュウツーは小さく頷いた。



 ◆



互いに何も得ていない。
言ってしまえば、語る必要も無い茶番でしかないだろう。
しかし事実として、ベヒーモスの中で一つの名前が刻まれた。

だから、彼の思考欄を一カ所だけ、修正を入れる必要がある。


【B-3/廃城/二日目/深夜】

【ベヒーモス@ファイナルファンタジーシリーズ】
[状態]:ダメージ(大)、魔力消費(大)
[装備]:なし
[所持]:サタン@真・女神転生Ⅲ
[思考・状況]
基本:幻獣王の元へ帰還
 1:古城を探索する
 2:倒すと後味が悪いのでエアドラモンには会いたくない
 3:感謝している、"ミュウツー"よ


13 : ◆5omSWLaE/2 :2014/01/10(金) 19:32:14 Ntu6Kn4Y0
以上で投下終了です。


14 : ◆5omSWLaE/2 :2014/01/10(金) 19:44:19 Ntu6Kn4Y0
すみません、一部分だけ修正前のを投下してしまったようです。
大して変わりませんが、下記の方でお願いします。




















『ありがとう』

ただ、それに気付けたことに感謝したかった。
このことを知る意味なんて、何一つ無い。無駄な事に過ぎない。
それでも、生み出される前から忘れていた感情が、ミュウツーの胸の内にあった。

『フン、こちらも世話になった。
 ミュウツー……その名を覚えておこう』

ベヒーモスの言葉に、ミュウツーは小さく頷いた。



 ◆



互いに何も得ていない。
言ってしまえば、語る必要も無い茶番でしかないだろう。
しかし事実として、ベヒーモスの中で一つの名前が刻まれた。

だから、彼の思考欄を一カ所だけ、修正を入れなくてはいけない。


【B-3/廃城/二日目/深夜】

【ベヒーモス@ファイナルファンタジーシリーズ】
[状態]:ダメージ(大)、魔力消費(大)
[装備]:なし
[所持]:サタン@真・女神転生Ⅲ
[思考・状況]
基本:幻獣王の元へ帰還
 1:古城を探索する
 2:倒すと後味が悪いのでエアドラモンには会いたくない
 3:感謝している、"ミュウツー"よ


※主催者側から応急処置的に、ターミナルを防衛する人員が派遣されています。
※モリーがどういった手段を用いて盛り上げるのかは、次の方にお任せします。


15 : ◆TAEv0TJMEI :2014/01/11(土) 01:03:37 CEjjVe4A0
投下お疲れ様です
今回は敢えてとりつきで感想を

素敵な蛇足にほろりと来ました
これは私には思い描けなかった……
ミュウツーも確かにこの物語の登場モンスターの一人だったんだな、と
ベヒーモス同様確かに刻みました
GJです


16 : 名無しさん :2014/01/11(土) 10:32:27 p/KwTjaEO
投下乙です。

闘技場は終わり。
ここからは、等しく命の話。


17 : 心重なる距離にある ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/14(火) 01:22:12 S9zlIiaw0
すいません、予約は切れていますが完成しましたので、
ハムライガー、ガブモン、プチヒーローを投下させて頂きます。


18 : 心重なる距離にある ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/14(火) 01:22:53 S9zlIiaw0


心臓が高鳴る。世界に存在する音が自分の心音だけであるかのように感じられる。
この島でハムライガーは3匹の敵を仕留めた。だが、そこに自身の意思は無い。
人形であった。傀儡であった。心をなくした怪物であった。
だが今は違う。
ハムライガーが敵を――狼を、そして自らを救った勇者を殺す。

ゴクリと唾を飲み込んだ。
心拍数が加速する。
それでも、目線は敵から動かさぬ。彼の持つ武器の全ては今すぐに振るえる状態にある。
ハムライガーはアマチュアではない、生まれつきの戦士だ。

「――イガー、拙者は――たを信――み――」
敵の声は聞かない。
この島に信じられる者など、何一つとして無いことを若き戦士は学んだ。

信じるべきものはただ己と。
「ブリーダーさん……」
風が吹けば消えてしまうような、小さな小さな呟き。
今日は世界一幸福な日であるはずだった。
だが、そうはならなかった。
月が昇る。星が瞬く。もう誕生日は終わってしまう。

「ケーキ食べたかったな……」
泣かない、そう誓った。
血に濡れた体でもブリーダーさんのもとに帰ると、ハムライガーは誓った。

求めたりはしない。
もうあるべき幸福を、あるはずだった最高の一週間を望んだりはしない。

ただ、信じるだけ。
ブリーダーさんは僕が、血塗れだって抱きしめてくれる。

「…………」
「…………」

一歩、ガルルモンが間合いを詰める。

お互いに目を逸らさない。
いや、正確には見ていたのはガルルモンだけだった。

ハムライガーは、ガルルモンの先にあるものを――帰るべき場所を見ていた。

「そうか……ハムライガー」
二歩目、次にガルルモンが歩を進めた時。戦闘が開始される。

「そなたは、拙者が見れないのだな」
「…………」
ハムライガーは答えない。

わかっていたことだ。世界の全てがハムライガーを傷つけた。
現実は悪夢めいて、ハムライガーから何もかも何もかも奪い取っていった。
だから、見ないのだろう。
最後に待ってくれている者以外を。

「だが、それでは駄目なんだ……」
ハムライガーはこれから、殺し続ける。
帰れると信じて殺し続ける。
そして、最後の一匹になって――彼は帰れるのか?

モリーが、大人しく家に返してくれるのかということもある。
だが、それだけに留まらない。

殺し続けた結果、彼はハムライガーではなくなる。

ハムライガーが帰る場所に、ハムライガーでない者は帰れるのか?


19 : 心重なる距離にある ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/14(火) 01:23:13 S9zlIiaw0

三歩目。
ガルルモンが、ハムライガーが、跳んだ。

ガルルモンの巨体は、それそのものが武器と言っても過言ではない。
のしかかるだけで、ハムライガーは戦闘不能状態に追い込まれる。

ガルルモンの跳躍に対し、
ハムライガーは視線をガルルモンから動かさぬままに後方に幾度も跳ぶ。

「ハッ!」
先程までハムライガーがいた位置を、ガルルモンの前左足による薙ぎ払いが襲った。
爪は立っていない、肉球の拳であった。

リーチの差をハムライガーは考えなければならない。
ハムライガーが何十匹分でガルルモンになるか、といったサイズ差である。
ブリザードは通用しないために、必然的に攻撃は元々持つ肉体に頼らざるをえないが、
ハムライガーがガルルモンの心の臓を直接的に攻撃出来る位置に達するまで、
少なめに見積もっても5回はガルルモンはハムライガーへの攻撃を可能とする。

カタログスペックの上では完全にハムライガーはガルルモンに敗北している。
だが、当然であるがそれはハムライガーの敗北を意味するわけではない。

「ムッ……」
ハムライガーよりガルルモンの顔面に吹きつけられるブリザード、当然ワダツミによって無効化される。
だが、重要な点はそこではない。

ブリザードによってガルルモンの視界は遮られた。
そこにハムライガーが接近する。

さて、ガブモンがどれだけの戦闘経験を積んでいたとしても、ガルルモンにおける戦闘はこれが初めてである。
二足歩行から四足歩行への移行、急上昇した身体能力、未だ慣れてはいない。
対してハムライガーには、己がブリーダーと共に、積み上げたものがある。
それが相手に通用しない攻撃を利用する方法であったり、あるいは――

「そこだ!」
かつて三匹を殺したように、躊躇なく急所を狙うセンスはここでも発揮された。
ワンツー――ハムライガーの磨きあげた最強の二連撃がガルルモンの心臓部を穿かんとする。

だが、足りない。
伝説の金属ミスリルに匹敵するガルルモンの毛皮の硬度を打ち破るには、ワンツーだけでは足りない。

最初の一撃で毛皮の硬度を確かめたハムライガーは、ガルルモンの連撃を回避しつつ後退。

「仕切りなおしだな」
「…………」

ここで逃げるか、ハムライガーは考える。
プチヒーローにブリザードを放つ、ガルルモンが庇いに行く。その間に逃げる。
駄目だ。自分の発想にハムライガーは頭を振った。
その程度の時間稼ぎでは、ガルルモンからは逃れられない。
何より――ハムライガーは信じない。そのようなガルルモンの善性など信じない。

いや、わかっている。
そもそも、逃げる気なんて無い。
ここで仕留められなければ、自分は永遠に帰れない。

今仕留められないガルルモンを誰かが仕留めることなど、誰かに託してしまうなど、有り得ない。


20 : 心重なる距離にある ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/14(火) 01:24:15 S9zlIiaw0
「帰りたいか」
戦闘中とは思えないほどに、穏やかな声だった。

「……」
言葉は返さない。
前足に自分の全体重を掛けて、ぶちかましに行く。

戦い方を変える。
目まではミスリルとはいかないだろう。
足を挫き、顔を下に引き摺り下ろし、両目を砕いてやれ。

ガルルモンはハムライガーの突進を避ける。
ガルルモンの間合い、ハムライガーへの攻撃がない。

「拙者にはそなたがわからん、何を見て、何を聞いて、そうなったのかなど、何もわからん」

顔面へと放ったブリザードをハムライガーは顔の前に上げた両前足を交差させて防いだ。
そのまま体が戻る反動を利用してのハムライガーへのクロスチョップ、ハムライガーは敢えてガルルモンの懐に入ることで回避。

ハムライガーの全体重を掛けた突進がガルルモンの前足に激突する。
巨体が揺らぐ、だが、倒れない。
ガルルモンの後ろ足にロープめいた筋肉が浮かび上がる。
バック転。
言葉にしてみれば一言であるが、信じられない光景である。
懐に潜り込まれた不利な立ち位置を、ガルルモンはバック転にて脱出。

「だが、一つだけわかる。このままではそなたは帰れん」
「何でそんなことが言えるんだよ!!!」


「そなたが拙者に勝てぬからだ」
言葉と共に、ガルルモンの巨体が消えた。

「…………」
目に見えて、動揺を表すことはしない。
ただ、攻撃を警戒して、ハムライガーは周囲360度に目を光らせる。

だが用心の必要は無かった。
真正面から、ガブモンが、ハムライガーに向けて、駆ける。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
何故、進化が解除されているのか、それをハムライガーは考えない。
例え、それが罠であるとしても容易に殺せる状態にあるのならば、罠ごと踏み砕いて、殺しきる。

「歯を!食い!しばれえええええええええええ!!!!」
どれほど多くの言葉を用いれば、ハムライガーに届くのだろうか。
それほど多くの言葉を、己は使えるのだろうか。

使えはしまい。
出来はしまい。

ガルルモンの状態で確信した。

だが、それは諦めることには繋がらない。
プチヒーローがハムライガーを救ったのならば、
自分もまた諦めない。

結局はいつもの様に、戦って戦い切ろう。


21 : 心重なる距離にある ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/14(火) 01:24:32 S9zlIiaw0


ガブモンの拳がハムライガーの頬を打つ、同時にハムライガーの爪が胸部分に突き刺さる。
頭突きでハムライガーを打撃を与え、胸に刺さった爪を無理やり引き抜く。

「ハムライガー!」
「……なんだよォ!」

間合いは再び開いた。
お互いに三歩ずつ、歩み寄れば殺しきる。

「泣いているな」
「!?」
三歩互いに駆け抜けてクロスカウンター、互いに吹っ飛ぶ。
開いた距離から、ハムライガーが試験的にブリザードを放つ。
ガルルモン状態で無くなったのならば、と思うもやはり氷は通用しない。

「泣きながら戦っては、拙者どころかヌメモンも倒せんぞ」
「…………」

別にヌメモンが弱いという話をしているわけではない。

「……そなたの意思で殺すと言った、そなたの意思で帰ると言った、
それ自体は間違いないだろう、そなたの言葉には決意がこもっていたのだから。
だが、心などは全てが一つの方向を向くというわけには行かぬ、
殺意も真なら……殺したくないというそなたの悲鳴もまた真ではないか?」
「……君は!何をォ!」
ハムライガーの爪が宙を切った、ガブモンはハムライガーを見据えながらバックステップ。

「気づかないでか!ハムライガー!!殺してでも帰りたい場所は、殺しては帰れない場所であることを気づいているのだろう!!
だが、その矛盾を押しつぶしてでも帰りたいのだから!!そなたは泣いておる!!帰れぬことにそなたは心で泣いておるのだ!!」

獣泣き――!!

「だから、そなたは……泣いて、いいのだ、ハムライガーよ!!
泣いて泣いて泣いて……連れて行け、そのブリーダーとやらの……名前を、思い出を……未来を!!
拙者が……拙者達がそなたを運んでやる!!」
「僕を……」
「そなたを!」
「ブリーダーさんの……」
「ところへ!」

「そなたが帰るべき場所へ!!」



手を差し伸べたガブモンを見て、ハムライガーはゆっくりと目を閉じた。
今となっては有り得ない誕生日パーティーを思い、
トンベリがケーキを切り分けてくれたことを思い出し、

「誕生日ケーキ、一緒に食べたかったな……」


22 : 心重なる距離にある ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/14(火) 01:24:58 S9zlIiaw0




「フフ……フ……」

爪が、心の臓を、貫いた。

「駄目であったか……」

ハムライガーは泣いた。
涙を流して、それでも、ガブモンを攻撃した。

「わかっていたんだ僕も、君がいったことを」
「……そうか」
「でも、僕はブリーダーさんを信じているから、きっと帰れるって信じてるから」
「……そうだな」
「だから、これはただ単純に……モリーに従って殺しあうか、君たちに協力して殺し合いから脱出するか、どっちが帰れる可能性が高いか、それだけの話なんだ。
そして僕は……前者を選んだ、本当にたったそれだけ」
「…………」

「信じるよ、僕を治してくれたプチヒーローも、君のことも」
「だとすれば……ほんの少しだけ…………」
報われたような気がする、そんな最後の言葉が出てこない。

「でも、何よりも大事なのはブリーダーさんなんだ。それにね……もう意味が無いんだ」
もう息絶えたガブモンを振り返ったりはしない、ただキルカウントを一つ増やしただけだ。
もう、三匹殺している。これ以上、殺さないことに何の意味もない。
帰れない場所であるというのならば、やはりガブモン達がいる場所もまた、帰れない場所だった。


「……ひとりぼっちは寂しいな」



「ハムライガー……」
「プチヒーロー」
傷を癒やし、ガブモンの下に来たプチヒーローだったが、最早何もかもが遅かった。

「ガブモンは……?」
「ごめんね」

叫びたかった。
無茶苦茶に暴れたかった。
また――救えなかった。

それでもプチヒーローは、自暴自棄になったりはしない。
勇者たる自分を捨てない。

「ガブモンが出来なかったことを……」
「君が出来ると思うの?」
「出来るかじゃない、やるんだよ」

「君を……」
「まだだ!」
「「!?」」

声を聞いた。
ありえるはずのない声を。
ガブモンの声だった。

「…………心臓を貫かれて死んだはずじゃ!?」
「心臓を貫かることと……死ぬことは別だ!!」
よろりと半死人の体で立ち上がるガブモンはやはり、どう見ても死人の体であった。

「ガブモン……」
「済まぬ……プチヒーロー……だが、拙者はまだ終わってはいない」
吸引したマガタマが、第二の心臓の役割を果たしているのだろう。
だが、まだハムライガーを救っていない以上、例えマガタマが無かろうともガブモンは立ち上がったに違いない。
彼は勇気をもらっているのだから。


23 : 心重なる距離にある ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/14(火) 01:25:13 S9zlIiaw0


ガブモンはハムライガーを見た。
ハムライガーはガブモンを見た。

プチヒーローは無言で一歩退いた。

「ありがとう、プチヒーロー」

「拙者は生憎だが、心臓を貫かれた程度ではそなたをひとりぼっちにはしてやれんようだ」
「…………そうだね」
「行くぞ、ハムライガー」
「うん、今度こそ決着をつけよう」

「ガブモン進化――」

進化しながら、ガブモンは思う。
プチヒーローに最後、何と言おうか。
ああ、そうだ。自分は死ぬ。
次にハムライガーと闘えば、確実に死ぬ。
奇跡はそう何度も起こりはしない。

任せた、でもなく。
頑張れ、でもなく。
ありがとうも、言ってしまった。
ああ……

「なぁ、プチヒーロー……良い剣だろう」
ハムライガーの下に駆けながら、ガルルモンは言った。

「この島で一番最初の友が持っていた剣なんだ、大切にしてくれ」
詳しい事情はわからない。
キラーパンサーの仇をプチヒーローが討ってくれたのかもしれないし、
冗談みたいなくだらない理由であの剣を手に入れたのかもしれない。

それでも、プチヒーローがあの剣を持っているならば、何とでもどうにでもなりそうだった。

ハムライガーが向かってくる。
ガルルモンはハムライガーを見た。
タイミングを見計らう。
合った。
ガルルモンはハムライガーの背中をひょいと牙で噛むと、そのままどこかへと走り去ってしまった。

「……ガブモン」
あっという間に、プチヒーローの目の前からガルルモンとハムライガーは姿を消した。
どうにもならなかった時に、プチヒーローに危害を及ぼさせないためなのだろう。

プチヒーローは、ヒノカグツチを強く握りしめた。

【E-7/森/一日目/夜中】

【プチヒーロー@ドラゴンクエスト】
[状態]:魔力消費(大)
[装備]:水鏡の盾@ドラゴンクエスト、ヒノカグツチ@真・女神転生Ⅰ
[所持]:ふくろ(中身無し)
[思考・状況]
基本:勇気を与える者になる
1:…………ガブモン

【備考】
オス。泣き虫でこわがり。プチット族に期待されていたプチット族の勇者。一人称は「僕」
死後、心をジュペッタの死体に宿らせることで復活しました。


24 : 心重なる距離にある ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/14(火) 01:25:25 S9zlIiaw0







砂浜が近づく。
山生まれではあるが、海の側で死ぬのは悪くないように思われた。
ハムライガーは身動き一つしていない。
大人しく運ばれてくれている。
冷えた砂の感触が足につたわったので、ハムライガーを砂浜の上に放った。

「いざ尋常に……勝負だ」
「うん」
きっと、ハムライガーはここで自分を殺しきるだろうと思った。
放っておいても死ぬだろうが、それでもハムライガーは自分にトドメを刺す。
そうでなければ、彼は全員を殺せない。
最も、ここで殺されてやらなくても全員を殺しにかかるだろうが。

視界が霞む。
足元がふらつく。
死が迎えに来るのが早過ぎるように思う。
いや、とっくに死んでいるのだから、早く死ねよと催促しているだけなのか。
もう少し待て、せっかちな男は進化出来んぞ。

「おおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
ハムライガーが来る。
目が血走っている。若干目が潤んでいる。
必死だなぁ、とどこか他人ごとのように見ていた。
そうだよな、必死だよな。
当たり前だ。
だから、拙者も必死でやらしてもらおう。

ガルルモンの進化が切れる。
体がガブモンに戻る。
ハムライガーは読んでいたのか、攻撃を変えたりはしない。

ワンツーが迫る。
どうにも死に際というのは、何もかもがゆっくりに見えるらしい。
ワンツーを軽々と避けてみせる。
さて、

「拙者の一世一代のカウンター受けてみよ!」
最期の力で叫ぶ。



そして、


「……なんだよ…………こんなのズルすぎるよ!!!!」



ハムライガーを抱きしめた。

【ガブモン@デジタルモンスターシリーズ 死亡】

【E-8/砂浜/一日目/真夜中】

【ライガー(ハムライガー)@モンスターファームシリーズ】
[状態]:覚醒
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身無し)
[思考・状況]
基本:皆殺して帰る。











「お疲れ&ガブもふー!」
「やめんか!阿呆!!」


25 : ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/14(火) 01:25:42 S9zlIiaw0
投下終了させて頂きます。
本当にすいませんでした。


26 : ◆5omSWLaE/2 :2014/01/14(火) 09:28:46 Q4sh0vlYO
温かい言葉は既に届いている
だけど今更後戻りは出来ない
言葉がダメなら、別の手段で想いを伝える

……ホントにズルいと思います
ハムライガーが救われて欲しいな、と心から願います
投下お疲れ様でした


27 : ◆/wOAw.sZ6U :2014/01/16(木) 08:03:58 G5k6UzIw0
投下お疲れ様です!ガブもふ……抱きしめられたハムライガーの心境如何に。
ハムライガーが選んだ道が既に物理的に破綻しているのがなんとも。

そしてグレイシア、ピクシー、ソーナンスを予約させていただきます。


28 : 名無しさん :2014/01/16(木) 13:57:44 gzQT1wwg0
予約きたー!&投下乙です!
拙者ガブモン、いいやつだった……


29 : 名無しさん :2014/01/16(木) 19:42:32 gzQT1wwg0
しかし考えてみればモフられる=抱きしめられる側だったガブモンが抱きしめる側になったんだな


30 : ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/17(金) 20:39:21 9VlpMADI0
モリー予約します


31 : 闘技場完成 ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/17(金) 22:37:53 9VlpMADI0
投下します


32 : 闘技場完成 ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/17(金) 22:38:14 9VlpMADI0

「皆様、私は当闘技場の主催者モリーでございます」

テレビから流れる映像は既にモンスター達の死闘から正装したモリーの会見に変わっていた。
だからといって、視聴者が興醒めするということはない。
この映像を見る全ての者が闘技場の終わりではなく、何らかの始まりを感じていた。
それが何かはわからない、だが確実にもっと刺激的でもっと熱い何かであるということだけは、誰もが皆、感じていた。
だからこそ今、モリーの一挙一動を固唾を呑んで見守っている。
一瞬も見逃せない、一言も聞き逃せない、祭りは今まさにクライマックスを迎えようとしている。

「――配当は現生存者の――」
義務的な闘技場を動かす歯車の話が聞こえる。重要だ、だがそこではない。
舞台の裏側が知りたいんじゃない、舞台で今まさに起ころうとしている新たなる何かを知りたいんだ。
心臓が動いている。心臓が熱く、疾く、動いている。
待てない、誰もが皆ご馳走を目の前にした犬だった。唾液を垂れ流しにするお預けぐらいの犬だった。

「ところで皆様……」
来た。と誰かが呟いた。
それは酒場で呑む人間の声であり、作業休憩中の労働者の声であり、家族で戦いを見る人間の声であり、
家来とともに戦いを見守る王族の声であり、恩赦としてテレビを与えられた囚人の声であり、
それは隣で共にテレビを見る男の声であり、そしてふと知れずに自分が洩らしていた声だった。

「最強のモンスターマスターである私の戦いが……見たくはあリませんか」
返答――そうといえる言語は存在しなかった。
誰もが皆熱狂のままに叫んだ。歓喜し、跳び、踊り、歌い、そしてこの熱狂を分かちあった。

「これより、エキシビションマッチと称しまして……いや」
テレビ画面に写った燕尾服が、その装着者――モリーの胸筋の膨張によって破れていく。
下から現れるのは、鋼のように鍛えあげられた肉体。
そして、それを覆う緑と赤で彩られた――その男の戦闘服。
「一介のチャレンジャー!!そして最強のモンスターマスターとして!!
このわしが、モリーが!!全力をもって我がモンスターと共にクロスオーバーモンスター闘技場に乱入させて貰う!!」

世界が沈黙した。

言葉を探していた。

わかっていたというのに、誰もこの喜びを表現する方法を知らなかった。

モリー、と誰かが叫んだ。モリー、と隣にいた誰かも続いた。

病のように、モリーコールが、熱狂が、世界中に伝染していく。
いや、病のようにではない、これは病そのものだ。
世界が熱に浮かされてしまった。

「つきましては……最高の闘技場で以て、彼らの相手を――いや、
戦 い を 生 で 見 た く は あ り ま せ ん か ?」


33 : 闘技場完成 ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/17(金) 22:38:31 9VlpMADI0


「わしは……この時を待っていたのかも知れぬ」
「やっぱり?」
モリーの言葉に、さも当然であるように返すのはやはり付き合いの長さが所以なのだろう。
そんなマリーの姿に、モリーは笑った。
「見透かされていたか……」
「そうよ、モリーちゃんにはこんなこと向いてないもの」

こんなこと――闘技場運営に関わるエトセトラである。
もちろん、このバトルロワイアルが観客の熱狂によって成功を証明されているように、その運営の才能はある。
だが、そのような雑事など気にせず、この熱くも残酷な戦いを直接目に焼き付けている方が向いている男である。
運営など他人に任せて、自分を熱くさせたモンスターを応援しているべきだったと、声を大にしては言えないがそんなことも思っている。

だが、一番向いているのはやはり戦いである。
この殺し合いにおける、モンスターのスカウトは全て彼が担当している。
いや、それどころが全ての元凶が彼であると言っても過言ではない。

彼はモンスターマスターだった。
最強――そのような言葉が安いとも言えるほどに、強すぎた。
ある日、旅に出た。
1年経って、戻った。
彼は、たった一言「神を倒した」と言った。

しんりゅう――神の龍、その姿を見たものは誰も居ない。
いや、見たものがいないからこそ神なのだろう。
それを倒したと、後に取材に応じて彼はそう言った。

より強いモンスターと出会いたい。
倒されたしんりゅうはモリーに願いを聞き、彼はそう答えたとも言った。
強すぎるが故に敵を失った男の法螺話であると、その日が訪れるまでは誰もが皆そう考えていた。

ある日、何の前触れもなく見たこともない世界に誘われる旅の扉が開かれた。
開かれた扉の先で見たものを調査団はたった一言、神の国であると報告した。

この世界へともたらされた山程の科学技術の産物に、その言葉を疑うものはいなかった。
次々に旅の扉が開かれていく。世界が熱狂に包まれていく。
技術交流が行われ、異世界からの来訪者が現れ、別の世界へと旅立つ者もまた出現し、そして多重世界の壁は限りなく薄いものとなっていった。0.01ミリ世界最薄。

そして、モリーは幾多ある世界の中で最強のモンスターを決める戦いを、クロスオーバーモンスター闘技場を生み出した。

願いが叶った、モリーのその言葉を聞いた者は誰一人としていなかった。

「本来の予定では、この闘技場を繰り返し、繰り返し、繰り返し、そして、10人程優勝モンスターが集まった後に、ワシがそいつらと戦うつもりだった。だが……」
「わかるわ、待ちきれなくなっちゃったのね」
「運営が軌道に乗るまでは、おとなしくしているつもりだったが……この記念すべき第一回目でこれだけやらかしてくれるなら、ワシはもう……辛抱たまらん」
熱っぽく語るモリーを見て、マリーは笑った。
子どものような男だ、きっと永遠に変わらないんだろう。
きっと私が背を押さなくても、そうしていたに違いない。

「何もいらん、命だってくれてやる。だから、誰にもやらん……あの闘技場で、あのボーイ達と殺しあう権利は既に闘技場にいる彼らを除けば、
世界にただ一人、ワシだけだ。ワシだけの戦いだ。阻むならワシはきっと世界だって敵に回してやるだろう。
だが、今だけは世界の誰も敵に回るまい、世界中の誰もが皆、ワシの戦いを応援してくれる。
幸福だ、ワシは最高に幸福だ。数多ある世界の中で、ワシだけの幸福だ」

彼は遠いところに行ってしまうのだ、とマリーは思った。
そして、それは違うのだろうとも、マリーは思った。
彼が本来いるべき場所こそがそこなのだ。ただ、次なる戦いのために、彼はこの世界に近づいてきただけなんだろう。

「いってらっしゃい、モリーちゃん」
だったら、笑顔で見送ろう。
それだけだ、それだけが私のできる事だ。

「ああ、皆によろしく」


34 : 闘技場完成 ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/17(金) 22:39:00 9VlpMADI0


「ボーイ達……まずは、ご苦労と言っておこう」
緊急移動用飛空艇ラグナロク。今、闘技場上空に到達す。
拡声器で超増幅されたモリーの声は島の端にいようとも聞こえるほどの轟音と化している。安眠は出来ない。

「これよりワシこと、モンスターマスターモリーは、ただ一人仲間モンスターを連れて、この闘技場へと乱入させてもらおう。
ワシを殺せば、この殺し合いが終わると思い込むボーイよ、それは有り得ない。
何故か、諸君らに勝利はないからだ。
今回!!訓練に訓練を重ね、鍛え上げた最強のモンスターを用意させてもらった!!」

笛の音が鳴り響いた。

轟々と音がする。

湖から何かが迫り上がる。

何かが来る。わかることはただ、それだけ。








「このワシが選んだ最強のモンスター……その姿、目に焼き付けよ!!」

     ∧
    ∠_ゝ
    |ロ|
    / ̄ヽ
  _―´   ̄―_
./        ヽ、
/ ( ̄)  ●  ● ヘ
 ∠⌒ゝ (⌒ヽノ⌒、|
-~|■|ロロ 廴(二(●)|
 ̄~| ̄|   ノ二二/ |
  | |   ノ ' `/ |
  |_|  ノ  / ノ
二[・・]二ニ]―-[二二]
(◎二◎)三)|ロ|◎)三)


「「「「「「「「「「スラリンガルじゃねーかっ!」」」」」」」」」」
この時、この瞬間だけ、会場内の心が一つになったと信じたい。
誰もが皆、いやそれは違うだろと思っただろう。

「カッコいいだろう!!!!」
だが、そんな空気などモリーは読みはしない。
そこら辺の空気が読めていれば、最初から殺し合いなんて開きはしない。そういう男なのだ。

「では、ワシも会場へと乱入させてもらおうかっ!!」
そう言うや否や、モリーはパラシュートも無しに飛行船から飛び降りてスラリンガルの頭上にひょいと飛び乗ってみせる。
そして、砲台からスラリンガルの内部へと入り込んだ。

「では、この会場も最終決戦に相応しいバトルフィールドへと模様替えさせてもらおう!!」
気づくと、モリーは片手にスイッチを持っていた。
モリーの行動はスラリンガルでの乱入に留まらない。
まだ、何かがあるのだ。迷惑な男だ、本当に。

「おしてみよう ポチッとな!」
無情にも押されるスイッチ、それは破滅への輪舞曲なのか。はたまた、非情なる鎮魂歌なのか。
スイッチが押されると同時に島に巨大な地響きが鳴り渡るではないか。


35 : 闘技場完成 ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/17(金) 22:39:15 9VlpMADI0
あぁ!なんという末法的な光景であろうか!!どうぞ読者の皆様方、気を確かにしてご覧頂きたい!!
島が浮いた!!島が浮いたのだ!!もう一度書くが島が浮いたのだ!!!コワイ!!
そして、C-3〜6、D-3〜6、E-3〜6、それらのエリアを底にして周囲のエリアがそれ以上に上昇していく。
これはまさにすり鉢か!?はたまた蟻地獄か!?狂気的な様相を呈しているが、しかし事態はそれだけに留まらない。
そう、エリア全ての地面がひっくり返ったのである。
オセロの黒と白が入れ替わるように、参加者と地面に落ちた支給品と死体になんら影響が無いままに、地形だけがオセロのように入れ替わったのである!!
見よ!!底となったエリアが入れ替わった先の地面は、何の変哲もないローマ闘技場めいた砂地ではあるが、
それ以外のエリアから入れ替わった先の地面には、何と椅子がついているのだ!!観客席!!!
そして、あぁ――神よ!一体参加者が前世でどのような罪を背負ったというのだろうか!!
先程すり鉢あるいは、蟻地獄めいて、と言ったこの地形が――実際滑り台のように斜めになりだしたのだ!!
抗うことも意味がなく!!嗚呼参加者達は、C-3〜6、D-3〜6、E-3〜6に蟻地獄めいて引き寄せられてしまった!!しかも超高速で!!
怪我一つ無いのは、何らかの仕組みだろう。
そして、滑り台と化した観客席は元に戻り――そして!!嗚呼!!はっきり言おう!!私は正気でこの文章を書いている、狂ったわけではない。
だが、これから先に広がる光景を見れば、狂っているのだと取られかねない!!!

そう観客席に降り注ぐものがある!!
流星か!?否!!
ヒッチコック的な鳥か!?否!!
そう、それは……あまりにも信じがたいが…………人間それも……観客なのだ!!コワイ!!

そう、彼らは買ったのだ。
間近でモンスター達の最終決戦を見ることが出来るチケットを!!テレビでCMを開始してから2分で完売!!
S席30万G!A席20万G!B席10万G!立ち見席無し!!高度以外に命の保証も無し!!
そして何よりも恐ろしいことに……そのチケットは分割払いに出来ないのだ!!

そう、彼らは……金も命も捨ててでも、戦いを見に来たアホなのだ!正真正銘のアホなのだ!!
だが、例え死んでも後悔は無いだろう!!アホなのだから!!戦いが大好きな大アホなのだから!!

かくして最終決戦は始まった!!
いざ征かん!!決戦のバトルフィールドへ!!!!

※モリーwithスラリンガルが乱入してきました。
※C-3〜6、D-3〜6、E-3〜6に放置支給品、モンスター達(モリーwithスラリンガルも含めて)、死体が再配置されました。
※といっても、近くにいたキャラは近くのままだと思います。
※観客席は飛ばないと行けないような高いところにありますが、バリアも何もありません。


36 : 闘技場完成 ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/17(金) 22:39:28 9VlpMADI0
以上です。


37 : 闘技場完成 ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/17(金) 22:57:48 9VlpMADI0
時間帯ですが、深夜でお願いします


38 : 闘技場完成 ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/17(金) 23:16:27 9VlpMADI0
すいません、書き忘れた備考がありますので追加させて頂きます。

※観客席以外の全エリアが平地となりました。


39 : ◆5omSWLaE/2 :2014/01/17(金) 23:34:24 M/ufAY6c0
投下お疲れ様です!
なんじゃこりゃああああぁぁぁぁぁ―――!
巨大な闘技場が現れ、観客に囲まれて、そして決戦が幕を開ける……!
誰もがこんな展開を夢見た、そして誰もがこんな展開とは予想しなかった!

彼が世界を繋げ、彼がモンスターを集結させた。
そして彼が求めた戦いに参加する権利も、彼だけが持っている!
クライマックスは目前、誰が勝者となるのか必見です! 私も楽しみです!



ですがその前に、ピクシーたちや他のモンスターたちの歩みがまだ終わってません。
彼らの物語をしっかりと記してから、この決戦へと繋げましょう。


40 : 名無しさん :2014/01/18(土) 00:23:30 Ns7M5V0M0
投下お疲れ様でした
予約から投下まではええよw
きっとこれプロットはあったんだろけどノリと勢いで書き上げただろw
途中の展開と忍殺文体のマッチぶりに吹いたw
でもこれまで謎とされてきた舞台裏や何よりもモリーの心情に触れれたのも良かった


41 : 名無しさん :2014/01/18(土) 11:30:50 gKkdal.6O
投下乙です。

それ、しんりゅうちゃう!シェンロンや!


42 : ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/18(土) 17:12:26 PvMr9Wxg0
チャッキー予約します。


43 : 名無しさん :2014/01/18(土) 17:55:44 Ns7M5V0M0
チャッキー久しぶりに来たか


44 : 殺戮人形は祭りの時を待ち望む ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/18(土) 20:19:14 PvMr9Wxg0
投下します。


45 : 殺戮人形は祭りの時を待ち望む ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/18(土) 20:19:28 PvMr9Wxg0


苛立つ。
チャッキーの生きる意味とは殺戮である。
殺戮という概念に命を与えたものがチャッキーである、そう言い換えても構わない。
より多くの死を産むために、彼は生きている。
ならば、今の状態は彼にとって非常によろしくない。
彼の人生を否定していると言っても良い。
何時間歩いただろうか、何度手に持つグラディウスで獲物を刺し殺す感覚を思っただろうか、
最後に会った魔物を殺してから八時間――今日という日の三分の一もの時間、彼は獲物に出会えていない。

かたかた――と、音が鳴る。苛立ちが体に現れている。

誰かを殺せば、追手が来るのが当たり前だった。
そして、その追手を殺せば、また追手が来る。
そうやって、日常的に――息を吸うように、息を吐くように、殺人衝動を満たすことが出来た。
だが、今はどうだ。
殺し合い――モリーはそう言った。
足りない。たった、50の命では、とてもこの飢えを――狂おしい程の飢えを満たせない。

しかも、獲物達はわざわざお互いに喰らいあって、自分の取り分を奪い合っている。
その証拠に、歩く途中に幾つかの死体を確認している。
己に殺されるべき命が、誰かに奪われている。
腹立たしい。その上、そのストレスを解消しようにも殺すべき相手が見つからない。
負の連鎖である。

かた、かた、かた、かた。
音が鳴る。憤怒の音色が奏でられる。だが、チャッキー以外にその音色を聞くものがいない。

死体への八つ当たり、それも考えた。
だが、死んだ命は最早殺せない。
うんともすんとも言わぬ物を斬るなど、刺すなど、抉るなど、木を相手にしているようなものだ。つまらない。満たされない。

羨ましい、下山途中に見た死の十字架の記憶が蘇り、チャッキーは心の底からそう思った。
あれを受ければ、何者も死なずにはいられない。
死だ、あれは死そのものだった。

――嗚呼、欲しいな。

最早、今更にあの山に、山だった場所に向かおうとも全ては終わっているだろうと考え、あそこには向かわなかった。
だが、現状の不作を考えるに、例え無駄だとわかっていてもあの場所に、死の残滓を浴びるべきなのでは、という考えが鎌首をもたげる。

だが、結局その考えを実行に移すことはなかった。

チャッキーの目が、そして耳が、肌が、その存在を感じ取った。
意思とは無関係に頬が緩む。

『ボーイ達……まずは、ご苦労と言っておこう』

上空――明らかに、この闘技場主催者の飛空艇。
そして、声は忘れもしない――モリーと名乗る男。

待たされたかいがあった。
これからだ、これから真の自分の証明が始まる。


何匹殺せるだろう。
何人殺せるだろう。

最早、モリーの声など聞こえない。
ただ、人形の身体で刻まれるはずのない心臓の鼓動がどくんどくんと聞こえたような気がした。

かた
かた

かたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかた
かたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかた
かたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかた
かたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかた
かたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかた
かたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかた
かたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかた
かたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかた
かたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかた

【G-5/草原/二日目/深夜】

【チャッキー@モンスターファームシリーズ】
[状態]:頭部左端欠損、歓喜
[装備]:グラディウス@ファイナルファンタジーシリーズ
[所持]:ふくろ(ブイモンの遺体)
[思考・状況]
基本:いつもどおりに殺戮する
 1:獲物を探す


46 : ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/18(土) 20:19:42 PvMr9Wxg0
投下終了します。
モルボルを予約します。


47 : 名無しさん :2014/01/18(土) 20:26:29 JVmmN21s0
投下乙です
殆ど全員赤の他人のこのロワでチャッキーのやり方は通用しなかったか

>>41
SFG・GB版のドラクエにしんりゅうと言う奴がいてな…


48 : 名無しさん :2014/01/18(土) 20:42:16 Ns7M5V0M0
投下おつー
なるほど、死の連鎖によるホイホイもここじゃいみなさないよな
特にこのロワは参戦前からの知り合いとかないタイプだし
決戦闘技場ではうっぷんを晴らしてくれることを期待


49 : ◆5omSWLaE/2 :2014/01/18(土) 21:04:11 7ZA86Pl.0
投下お疲れ様です
殺戮の地で、殺戮が出来ないもどかしさ
その甲斐あってのいよいよ始まる最後の戦い
真性のマーダーである彼がどう動くか、気になりますね


50 : 先見えぬ王道 ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/18(土) 21:46:45 PvMr9Wxg0
投下します


51 : 先見えぬ王道 ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/18(土) 21:47:02 PvMr9Wxg0


「…………」
別れを告げることは出来なかった。
スライムは目の前で消え失せた、ただ何も無くなった空間を見てモルボルは大きく嘆息をもらす。

また、目の前で死が起こった。
今度は、名も知らぬ魔物の時とは違う。
命令を下すことが出来た。その結果、スライムは死んだ。そして己もまた、死んでいた。
しかし、蘇生した。
生命の川とも言うべき、幾千万ものスライムは皆死に、自分だけは生きてしまった。
王とは何なのだろうか、いたずらに命を浪費する存在であるのか。

頭上で輝く王冠が、モルボルには滑稽に思えてしまう。
「何が……王だ」

王冠を投げ捨ててしまいたかった。
何も出来ぬ裸の王など、いない方がマシというもの。
己の王位ごと、命をも捨ててしまいたい。楽になりたい。

うねる触手が王冠をとらえる。

「…………わかっている」
しかし触手が王冠を外すことはなかった。

「これが王の重みだ」

名も聞けぬままに、踊る魔物は死んだ。
自分が王である故ではない、しかし己のために彼女は死んだ。

自称王であるスライムは、己の過ちによって死んだ。
果たして、自分に過失があったかどうかはわからない。
だが、結果論として奴も己も死に、全滅に追い込まれたというのならば、それは王の責任だろう。

そして善良なる一スライムは、己の本体を殺されながらも、それでもなお、理想を己に託し、死んだ。

民がいて、国が興る。
土地があって、国が生じる。
しかし、国という存在のために必ずしも王は必要ではない。

そして、モルボルは裸の王だ。
国土も無く、民もおらず、ただ王とだけ名乗っている。
王を名乗る狂人と変わらない位置にあると言ってもいい。


それでも、モルボルは王になった。


彼は先王に王冠を託されたのだから。


「重いな……だが、構わん」
もう、後悔をしない。
千の死体を積み上げてでも、万の死体を積み上げてでも、それでもモルボルは進むだろう。
託された物の重みは、足を止めることを決して許さない。

進む、伴も持たず唯一匹の王として。


52 : 先見えぬ王道 ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/18(土) 21:47:49 PvMr9Wxg0



「……さて、どうしたものか」
最早、時間が経ちすぎてしまっている。
流石に先程会った三匹にチャッキーの危険性を伝えようにも、合流は難しい。
かといって、チャッキーを追おうにも一匹でかかってはただ死にに向かうようなもの。
感情としては託された思いのままにチャッキーに復讐戦を挑みたいところであるが、それは唯のロマンチシズムなのだろう。
確実に勝てる状態になるまでは、チャッキーを深追いすることもまたよろしくはない。
ひとまず、北に向かおうと思った。
まだ、一度も訪れてはいない。
何が待ち受けているともわからぬが、探索のし甲斐はあるだろう。

橋を渡り、森を抜け、そして。
「なんだこれは…………」
モルボルが発見した物、それは最早死体の体をなしてはいない。
ただ広がるままになった肉の絨毯、そんなものだ。
異常性でいえば、先に会ったチャッキーもそうだろう。
だが、性質が違う。
チャッキーは凶気であったが、この状態の下手人は狂気の存在なのだろう。

死体の饐えた臭いが鼻を刺激する。
だが、己もモルボル――臭い息を武器にする存在である。
臭いに対する嫌悪感も、この光景に対する悍ましさもなく、ただ被害者に対する哀れみのみ。

「許せ、何もかもすべてが終わってからだ」
埋葬をしている時間は無い。
動かなければならない、もう二度と誰も己の不徳のために殺したくはない。

「その上、追い剥ぎのような真似、許されぬだろう……だが、我が未来の民に、少しでも力を集めたい」
そう言って、放置されたせいなるまもりをふくろに収める。
その性質をモルボルは知らない、だがこの場にある以上はなにか力あるアクセサリーなのだろう。


53 : 先見えぬ王道 ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/18(土) 21:48:05 PvMr9Wxg0


せいなるまもりを収め、再び進む。
そこで、モルボルは進む先に戦いを見た。
最早、モルボルの移動速度ではどう足掻いても間に合いようがない。

そして、いざ間に合った時。
モルボルの力では介入することは不可能であることを悟った。

その戦いは、まるで神話の光景のように思えた。
一二枚羽の天使と破壊神の壮絶な死闘。
最早、王という存在が阿呆らしくなるほどの神の領域とも呼べる世界。

だが、それでもモルボルは目を離せなかった。
下を向いて諦めることはしなかった。
敵が神であろうと、自分が王であるならば――決して諦めることは許されぬ。

二人の破壊神が去り、ただ破壊の傷跡のみが残る大地。

最早、生存者はいないだろう。
それでも、残された死の姿を目に焼き付けなければならないだろう。
それが王の義務だ。

辺りを散策する。不自然なほどに、死体は無かった。まるで完全に消滅してしまったかのように。
ただ、支給品だけが雑然と散り乱れ、そして袋から漏れたある支給品にモルボルは気づく。
それは、この世界にあってはならないものであると――王としての自分ではなく、モンスターとしての自分の本能がそう感じた。
それは門だ。ここに無き世界を、この世界と繋ぐ極小さく、そして何者も通れる門だ。

『ボーイ達……まずは、ご苦労と言っておこう』
空から、モリーの声が響く。
何かが始まろうとしている、だがこちらの事態も放ってはおけぬ。

破壊できるだろうか。
いや、その門自体は非常に脆い、目に見えてそうわかる。
だが、召喚される存在が――そして、その機能がそれを許すだろうか。

「サンダガ!!」
天より降り注ぐ雷撃の魔法――サンダガ
完全に門を射抜いたはずだった。

だが、

   SUMMON READY, OK?

   ―― GO

「なッ!!」
「…………」
門に当たるはずの雷撃は、そのタイミングで門より召喚された悪魔が盾となり門を破壊することはなかった。

『では、この会場も最終決戦に相応しいバトルフィールドへと模様替えさせてもらおう!!』
最早、モリーの声は耳に入らない。

会場の性質が変わる。
蟻地獄めいた世界に身体が呑まれていく。
だが、モルボルは抗わなければならない。
あれだけは破壊しなければならない。

「サンダガアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」

「…………」
門なる存在――暴走COMPはただ、召喚を繰り返し己の身を電撃から守り続けている。

『 求ムルハ 死ノ贄 四ノ贄 始ノ贄 止ノ贄 』

COMPより放たれた電子音声、それを最後に耳にし、
やがて、重力に逆らえきれず、モルボルは底へと落ちていった。



【C-5/森林/二日目/深夜】

【モルボル@ファイナルファンタジー】
[状態]:健康、魔力消費(小)
[装備]:スライムのかんむり@ドラゴンクエスト
[所持]:せいなるまもり
[思考・状況]
基本:殺し合いの中でも王になることを目指す。忠臣がほしい。
 1:ゲルキゾクのような忠臣が欲しい
 2:あのCOMPは危険なので、破壊しなければならない
 3:蘇生の術か……
 4:スライム……

※モー・ショボーの支給品、COMP@デビルサバイバー が暴走を開始しました、何かを求めています。


54 : ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/18(土) 21:48:20 PvMr9Wxg0
投下終了します。


55 : ◆5omSWLaE/2 :2014/01/18(土) 22:31:28 7ZA86Pl.0
なんて早さなんだ! 投下お疲れ様です!!
その冠の重みは、王が背負わねばならぬもの
屍の上に立つ者の重み。モルボルにはこのまま突き進んで貰いたい
そして最後のCOMPの暴走……一体巻き起こすのか!?


56 : 名無しさん :2014/01/18(土) 22:39:06 JVmmN21s0
投下乙です

しの贄…一体あれは何を求めて居るのか


57 : ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/18(土) 23:28:42 PvMr9Wxg0
プチヒーロー予約します


58 : 勇者の誓い ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/19(日) 00:24:57 Kw5sirug0
投下します


59 : 勇者の誓い ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/19(日) 00:25:18 Kw5sirug0


「……ガブモン」
ただ、棒と立ち尽くし勇者プチヒーローは握りしめたヒノカグツチを震わせていた。
我が身可愛さにガブモンを行かせたわけではない、最善の行為が何かと問うならばガブモンに託すことがまさしくそれだったのだろう。

「それでも……それでも僕は……追いたかった」
ガブモンの背を追って、自分もまた付いて行きたかった。
ガブモンを死なせたくはなかった、もうどうしようもなかろうとも、それでも何かがしたかった。みすみすと死なせたくはなかった。
それにハムライガーの末を見届けたかった。わからないけれど、本来のハムライガーの笑顔が見たかった。
だが、駄目だった。
託されてしまった、ガブモンの笑顔とともに剣を――願いを、祈りを、託されてしまった。

「ずるいよ……」
もう、それでプチヒーローはガブモンを追いかけることは出来ない。
信じろと、何もかも信じろと言われたも同然だった。
いや、今からでも追いかければ全てに決着がついたハムライガーの姿を見ることが出来るだろう。
それでも、そんな気にもなれなかった。
ガブモンが一人で行った、決着をつけに行った。
ならば、ハムライガーの呪縛は解けているに決まっている。

きっとハムライガーは救われたにきまっている。
ならば、やはり自分の戦うべき場所は別のところにあるように思われた。

だから、自分の戦いもまた始めなければならない。

プチヒーローは、すうと息を吸った。
息とは――呼吸とは命を動かす。
吸うたびに、吐くたびに、己の命が動いている。

「うん……」
皆が皆、そうだ。
ジュペッタも、ギルガメッシュも、ギリメカラも、ゲルキゾクも、皆が皆死んでいった。
何かを願い、何かを祈り、戦い、そして生き切った。

自分はまだ、生きている。
死んでいった者の分まで生きるというのは陳腐な言葉だけれど、
それでも死んでいった者の分まで命を動かす義務があるように思えた。

「決めた」
勇者は駆ける。
魔王も姫もいないけれど、目的【クエスト】がそこにはある。


60 : 勇者の誓い ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/19(日) 00:25:36 Kw5sirug0



「ごめんなさい、放っておいて」
F-5――そこは、かつてプチヒーローが逃げ出した場所だった。
恐怖が一度、勇気を殺した場所だった。
ハムライガーのために、それどころではなかったが、もう一度決着を付けなければならない。

「小さいかもしれませんが、お墓を作ります。ハムライガーのことは……後はガブモンがやってくれます……やってくれたと思います。
だから、心配しないで……眠っていて下さい。後のことは、僕がやります」
そう、ギリメカラもの死体に言って、ライディンで地面に穴を開けた。
ギリメカラの死体は重く、プチヒーローの小さい体がふらついて、それでも途中で落とすこともなく、墓穴の中に寝かせた。
穴を開けるのは一瞬だったが、土を被せることだけは時間がかかった。
剣や盾を使うわけにもいくまい、手作業で穴を掘って少しずつ、少しずつ、ギリメカラの死体に土を被せていく。

「…………」
ギリメカラの死体を埋めながら、ゲルキゾクの死体が視界に入って、何となく彼の墓も作ってやろうとプチヒーローは思った。
彼についてわかることなど、あまりにも少ないけれど、騙し打ちをしてでも、それでも生きたかったのだと思う。
だから、罵ることは簡単だけど、受け入れることも出来ないけれど、それでもお墓を作ってやろうと思う。

「……きっと、帰りたかったんですよね」
ゲルキゾクの死に顔を見た、プチヒーローは己の認識を少しだけ改めた。
本当に、本当に悲しそうな顔だった。
きっと、後悔があるのだろう。何かを為そうとして、それでも出来なかった深い深い後悔が。

「僕はアナタを許します」
ならば、それが罰なのだと思う。
だから、もうプチヒーローから何も言ったりはしない。

「言ってくれれば……僕は勇者だから、きっと解決できたと思うんです」
ただ、哀しい。
もしもゲルキゾクが己を信じてくれれば、帰りたい理由を言ってくれれば、そのために戦えたのだと思う。
もう、今となっては何もかも遅いけれど。
だから、もう何も掌から零したくはない。

『ボーイ達……まずは、ご苦労と言っておこう』
突如、空からモリーの声が響いた。

何かが始まるのだろう。
この殺し合いを終わりへと導く何かが。


プチヒーローはヒノカグツチを握りしめて、強く誓った。

【F-5/湖/二日目/深夜】

【プチヒーロー@ドラゴンクエスト】
[状態]:体力消費(小)、魔力消費(中)
[装備]:水鏡の盾@ドラゴンクエスト、ヒノカグツチ@真・女神転生Ⅰ
[所持]:ふくろ(中身無し)
[思考・状況]
基本:勇気を与える者になる

【備考】
オス。泣き虫でこわがり。プチット族に期待されていたプチット族の勇者。一人称は「僕」
死後、心をジュペッタの死体に宿らせることで復活しました。


61 : 勇者の誓い ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/19(日) 00:25:49 Kw5sirug0
投下終了します。


62 : ◆5omSWLaE/2 :2014/01/19(日) 16:58:48 Au6L.W3.0
投下お疲れ様です
周りの者は皆死んでいってしまった
そして、プチヒーローはまだ生きている
生きなくてはいけない、勇者として、少しでも多くの者を救えるように


63 : ◆5omSWLaE/2 :2014/01/20(月) 00:46:54 XJ0bjqcU0
いよいよ最終局面に突入しますので、第四回闘技場チャットを企画致します。
内容は書き手間における、今後の展開についての意見の共有などです。
場所はwikiトップから入れるチャット、開始は24日の21時からを予定しております。
どうぞ、ご気軽に参加いただければ幸いです。


64 : ◆TAEv0TJMEI :2014/01/21(火) 01:22:52 Whg.N.MY0
投下乙!
うん、COMPはなんとなくデビサバのだろうなーってわかったw
あれほど暴走しまくってマップに配置されるの似合うCOMPはそうないしw
プチヒーローは勇気を与えるだけでなく、信じることも許すこともなす真の勇者
強くなったね……

チャットの件了解です
参加できるかと

では締めにレナモン予約します


65 : ◆5omSWLaE/2 :2014/01/22(水) 00:40:40 m2qCPJxo0
大変申し訳ありません。
家庭の事情によって24日のチャット参加が不可能になってしまいました。
そのため、26日の22時へと変更したいと考えているのですが、ご都合の方は大丈夫でしょうか。


66 : ◆/wOAw.sZ6U :2014/01/23(木) 09:05:37 iciLpDy.0
チャット承知いたしました〜。
そして予約延長させていただきます。


67 : ◆TAEv0TJMEI :2014/01/24(金) 21:42:23 52Z6knuQ0
了解です


68 : レナモンの唄 〜Memories Off〜   ◆TAEv0TJMEI :2014/01/25(土) 05:57:32 lxY0Akeo0
投下します


69 : レナモンの唄 〜Memories Off〜   ◆TAEv0TJMEI :2014/01/25(土) 05:58:48 lxY0Akeo0
森を抜けた先の草原にてレナモンは息を潜めつつも身体を癒していた。
遮蔽物らしい遮蔽物のない草原だが幸い幸いレナモンという種族は隠形には長けている。
タオモンへの進化を経験しより強力な術のコツを掴んだことで隠れ身の術の精度も増していた。
無論、それでもただ隠れるだけなら森の中のほうが向いていたのは事実だ。
しかしレナモンは何よりもあの場から離れることを優先した。
振り返り見てしまった魔人アリスから逃げることを第一とした。

あれは死だ。死を導き、死へと導く死の天使だ。
離れなければならない、一歩でも遠く遠く死の届かぬところまで。

その判断は正しかった。
アリスとシャドームーンの戦いは予想をレナモンの上回る規模で繰り広げられた。
いや、予想を上回ったというよりも予想外だったというべきか。
前提としてあの魔人相手にスティングモンが戦いを成立させられるとは思ってもいなかったのだ。
キメラモンがそうであったように、スティングモンにも一瞬で死がもたらされる……。
あの魔人と対峙するのはそういうことなのだとレナモンは受け取っていた。
だがそうはならなかった。
今にも追いかけてくるのではと警戒していた死は一向にレナモンに迫ってこなかった。
夜天へと羽ばたいた二体の姿を目にしレナモンは驚愕した。
シャドームーンが死は抗い、アリス相手にギリギリといえど戦いを成立させていたのだ。
二体の戦いの規模は膨れ上がり山一つを消し飛ばすまでに至った。

レナモンは思い出す。
魔人が放った死の十字架を。
魔人を打ち抜いた魔王の姿を。
両者の圧倒的なチカラを。

「……大丈夫だ。今の私は大丈夫だ」

口から出た言葉が自分に言い聞かせるためのものではなく、真なる想いであることに安堵する。
あれだけのものを目にしてさえ、今の自分は力に惹かれることもなければ死に魅せられることもない。
もはやこの身もこの心も死にぞこないの亡霊ではなく確かに今を生きている。

「今の私は知っている。死して尚遺るものを知っている」

コイキングが、メタモンが教えてくれた、気づかせてくれた。
あの子たちはいつも応援してくれた。
レナモンのことを応援してくれた。
頑張って、負けないでって、最後の最後まで応援してくれた。
そうだ、今なら思い出せる。
あの日、全てを失ったと思い込んでしまったあの日。
己の姿を失ってまで戦い続けたレナモンをあの子たちは、「おねえちゃん」と呼んでくれた。
キュウビモンがレナモンであると気づいて「頑張って」って言ってくれた。
消えゆく中で残してくれたその言葉は、護ってほしいという子どもたち自身のための願いじゃなくて。
ただただレナモンのこれからに向けた祈りだった。

「そんな大事なことも忘れて、ダメなお姉ちゃんだな、私は」

ふっと口元に笑みが浮かぶ。
苦笑という形ではあるものの、過去を思い出して笑えるなどとついさっきまでの自分にはありえなかった。
その変化が、変われたことが、嬉しくも誇らしい。

「ありがとう。こんな私を応援してくれて」

クラモンに。ココモンに。ジャリモンに。
ズルモンに。ゼリモンに。チコモンに。
ウパモンに。カプリモンに。ギギモンに。
キャロモンに。キュピモンに。キョキョモンに。

ありがとう。

それはずっとずっと子どもたちがレナモンに伝えてくれていた言葉で。
あの子たちを守れず謝ってばかりいたレナモンが告げることのなかった言葉。


70 : レナモンの唄 〜Memories Off〜   ◆TAEv0TJMEI :2014/01/25(土) 05:59:44 lxY0Akeo0
ああ、そうだ、これでいい、これでいいんだ。
過去を悔やむのもいい。悲しむのも当たり前。
けれどそこに嬉しい事があったなら、たとえ悲劇で終わったものだろうとも、過去を辛いだけにしてはダメなんだ。

悲しいことがたくさんあった。辛いこともたくさんあった。
それでも、嬉しい事だって確かにあったんだ。

それが思い出。レナモンが取り戻した、レナモンに遺されたもの。
この思い出を胸にある限りレナモンは戦える。死人のために戦える。

「お前も……お前もきっとそうだった」

ふと思い浮かべたのはこの地にて一番最初に戦った鮫竜。
あの時は気づけなかったがきっとあの鮫竜もまた死んだ誰かのために戦っていた。
だって記憶に残る鮫竜の瞳はメタモンやコイキングと同じだったから。もういない誰かが映っていたから。
妄執に憑かれていただけの自分とは違う誇りがあの鮫竜からも感じられたから。
鮫竜の姿がパートナーを誇りアリスをも打ち破ったシャドームーンと重なっていく。

「まったく、強いはずだな。お前は今どうしているのだろうな……」

今もなお誰かのために戦っているのか、それとも志半ばにてこの地で散ってしまったか。
レナモンには分からない。
ただ生きているのなら会いたいと思う。
レナモンにはもう再戦の理由はなくて、でも向こうは望むかも知れず、そうであるなら鮫竜の矜持のために自分も戦いを受け入れるはすれども。
その前に名前を聞きたい。鮫竜の名前を知りたい。

「ふふ、久しぶりだな、誰かに会いたいだなんて思うのは。力を得るためにではなくただただ他人を求めるのは」

もう二度と失いたくなかったから。あの子たちのことを思い出してしまうから。
誰もあの子たちの代わりになんてならないし、空いてしまったこの穴を埋めてしまうのも罪だとすら感じていたから。
全部が全部、過去の悲劇を言い訳にしたもので。
喜びも悲しみも全ての思い出を過去として受け入れた今のレナモンを縛る理由にはならなかった。

誰かを求めるのは罪などではない。

それはあのキメラモン――エアドラモンにも言えたことで、あの魔人――アリスでさえもそうだった。

(そうなのだろう、メタモン)

アリスを単なる魔人と捉え、死と認識し、恐怖した自分に訴えるかのように、戦場から逃げる最中再生される記憶があった。

『死んだらずっといっしょにいられるのよ?アリスとおんなじにならないとお友だちになれないよ?
 アリスのお友だち、みんな死んでるんだもん』

レナモンのものではない、ロードしたメタモンの思い出だった。
或いはアリスと本当の友だちになってあげたかったというメタモンの未練で、お願いだったのかもしれない。
死は辛くて、死は悲しい。その通りだ。
死とは別れであり死んでも遺るものはあれども、それは死別するまでに育んだ思い出があってこそ。
最初の最初に死んでしまっては思い出ができるはずもない。
死ねば友だちにはなれない。
だからこそあの少女は殺しても殺しても一人ぼっちで、永遠に孤独なまま死に絶えた。
それはレナモンにもありえた最期だった。

「君が友だちになってくれたからだ、メタモン。
 君が友だちになってくれたから私は独りじゃなくなった。
 君が友だちになってくれたのが嬉しくて、私はまた誰かを求められるようになった」

守るべき相手を探せとコイキングに諭された。
そうして出会ったメタモンはレナモンの友だちになってくれた。
その友だちの願いを、エアドラモンを生かし、アリスと友だちになってほしいという願いを叶えて挙げられなかったことは悔しいけれど。
忘れないでという願いはこれからもずっと叶え続けていくと胸を張って誓うことができる。


71 : レナモンの唄 〜Memories Off〜   ◆TAEv0TJMEI :2014/01/25(土) 06:00:14 lxY0Akeo0

『ボーイ達……まずは、ご苦労と言っておこう』

なればこそ、上空よりモリーの声が降り注ぎ、島が変形しはじめた時、レナモンは迷うことなく渦中へと飛び込んだ。
完成せんとする闘技場の中心へと、そこに陣取る巨大モンスターへと向かって、引き寄せられるままに向かっていった。
既にその身体は二足歩行から加速に適した四足歩行へと代わり、レナモンは、キュウビモンは疾走する。

ボーイたちと言うからには自分以外の誰かがまだ残っているということだろう。
それはアリスをも打ち倒したシャドームーンかも知れない。
今もなお強さを証明し続ける鮫竜かも知れない。
メタモンの記憶の中にいたメタモンのことを伝えるべき友だちかも知れない。
西の城に落ちた隕石の関係者かも知れない。
それ以外の誰かかもしれない。
少なくともモリーはそこにいるし、他の誰かもそこにいる。
背中越しに守る誰かが、共に歩く相手が、面と向かって殺しあう敵が、そこにいる。

「行こう。想い出にかわる君に逢いに」

背中<過去>にはあの子たちやコイキング、メタモンがいる。
ここ<現在>には私がいる。
対面<未来>には誰かがいる。

ならば生こう。
コイキングが示し、メタモンが灯し、あの子たちが背中を押してくれた新たな道を。
二本の足で、四本の足で。まだ見ぬ君に逢えるように。
いつかまた懐かしい皆と再会できるその日まで。



【B-5/草原/二日目/深夜】
【キュウビモン(レナモン)@デジタルモンスターシリーズ】
[状態]:ダメージ(中)、疾走
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(空)
[思考・状況]
基本:君を忘れない
1:まだ見ぬ君に逢いに行く
2:メタモンの友だち(グレイシア、ソーナンス、ピクシー)に会えたらメタモンのことを伝える
3:鮫竜(ガブリアス)に再会できたなら名前を聞きたい
4:シャドームーンとアリスの決着後も気になる

[備考]
メス寄り。
多くの勢力が戦いを続ける激戦区の森で、幼年期クラスのデジモン達を守って生活していたが、
大規模な戦闘に巻き込まれた際、彼らを守りきれなかったことをきっかけに力を求めるようになった。
自力での進化が可能であり、キュウビモンに進化可能であることまで判明している。
ロードしたメタモンのデータは消失しましたがその残滓からメタモンのこの島での記憶を見ました。
現在は完全体に進化することは出来ません。

※シャドームーンとアリスの戦いのうち空で行われた部分(獣王拳での決着まで)と、B-03城へのメテオカウンターを目撃しました。


72 : レナモンの唄 〜Memories Off〜   ◆TAEv0TJMEI :2014/01/25(土) 06:00:31 lxY0Akeo0
投下終了です


73 : ◆5omSWLaE/2 :2014/01/25(土) 20:00:08 UpO//K2o0
過去の悲しみに囚われる必要は無い
命が無くなろうとも、この世に遺るものはある
沢山の出会いを果たし、沢山の魂を受け継いだ
心の整理はついた。レナモンは彼らと共に、決戦へと舞台へ赴く……
投下お疲れ様です


74 : ◆/wOAw.sZ6U :2014/01/26(日) 07:22:12 mQizYXTE0
投下お疲れ様です。
レナモンいいなあ、忘れない、伝える、大事なことで満たされている。
今までのモンスターたちのことがぶわあっと浮かんできますねえ……。

それでは、予約分を投下させていただきます。


75 : 交差して超える世界 ◆/wOAw.sZ6U :2014/01/26(日) 07:23:09 mQizYXTE0
世界は交差する。
人も魔物も交わって。
その先に見える道へ、歩き出す。

グレイシアは、この殺し合いでのスタート地点に戻ってきた。
メタモンとの出会い、ドラゴンとの戦い。
それらは僅か半日程度過去のことで。
流れ星が墜ちる、きららと。見上げた彼女はすうと息を吐いた。

「どうしよう、このキカイの地図が本当なら」
画面にピクシーの指が触れると、方眼紙のようなマス目が地面に広がった。
地形を読み込み正確な情報が表示される。

「相当入り組んでいますね……」
「ソーナンス……」
目的の場所は明滅している。
だからといって簡単にたどり着けるわけではない。

「虱潰し……と、いきますか?」
グレイシアの提案に勝る提案は残念ながら上がらなかった。
一歩一歩、確実に、彼女たちは洞窟を探索する。
来たばかりの時は気付かなかったが、この洞窟、なかなかどうして不自然だ。
岩肌や、洞窟の構造自体は自然のそれなのに、通る空気、地面に岩の感触は澱みも湿りもなく。
太陽が消え去った今でも、ほのかに明るい洞窟内。

そうして思い出すと、このただの島が……海の上の孤島だと認識していたものに対する違和感が彼女たちの会話にのぼる。
森も、川も、山も、見てきた範囲のそれらはどこか、生命を感じないのだ。
自然で、不自然。
矛盾した感想だが、余りに整然とした印象を与える島にそれ以外の文句は思いつかない。

「あれ、ここ三叉路なはずなのに……」
ピクシーがスマフォと前方を交互に見て眉根を寄せる。
本来三本に分かれていた洞窟の道は、先客ジャックフロストのトラフーリ(物理)により開拓されて四叉路に変わっていた。
勿論ピクシーたちにそれを知るよしもなく。

「……まあ、本来無い道なのでしょう、気にしないようにしましょう」
そこを調べるのは後でいい、グレイシアは断言する。
徒に道を外れて迷子になれば笑い話にもならない。

傾斜がある、まるで山を登っているかのような道筋。
山に向かう洞窟だ、内部から登れても、そう不思議はない。

歩んだその後は行き止まり、行き止まり、最後の道も行き止まり。
いや、どうやら少し様子が違う。
ピッタリと塗り固められたような岩は、天然自然を模しているが一目で異様と判断できた。

「位置としては……うわあ随分歩いたんだ、ここ山の真ん中だよ」
ピクシーは同じような道に狂っていた感覚を取り戻して驚きの声を上げた。
「当初の目的の場所とはズレた……と言うか、高低差の表示がわかりづらいですねこの機械」

スマフォは悪くない、悪いのはアプリである。
「扉、とこの壁を私は見ますが」
「そうだね、ご丁寧に割れ目がまーすっぐ入ってる」

この先には何かがある。
目的に確実性が高まり、気分が高揚した。
だがしかしどう開いたものか。

壊す、という手も無くはないが、あまり会場のものを不用意に壊すと殺処分される可能性がある。
意外と、彼女たちの知らないところでは滅茶苦茶に壊されているのだが、まあ、知るよしもなく。

「ソーナンス?」
ふと、ソーナンスが不思議なくぼみを発見する。
スマートフォンがちょうど収まりそうなくぼみ。
すとんと、収まってしまったスマフォ、次いで静かに左右に割れた扉。

「うわっ、あ……それ、そういう使い方もできたんだ」
元々関係者に支給されていただろう機械、本当の利用方法など数えきれないほどある。
取扱説明書がついていない辺り、事故や偶然で彼女らの支給品に紛れ込んでしまったのだろう。


76 : 交差して超える世界 ◆/wOAw.sZ6U :2014/01/26(日) 07:23:47 mQizYXTE0
スマートフォンの画面から離れると、そこには、荒れ果てた研究室があった。
見たことのない機械、見覚えのある機械。
何かを研究していた形跡。
古すぎず、しかし人の気配は随分前に失せてしまったような、そんな空間。

試験管と隣り合う装置に、ピクシーは近づく。
神秘的な雰囲気を持つ台座、そこにぴたりとはまる円盤石。
「モンスターの再生装置……?」

液体に満たされたガラスのゆりかご、散らばるモンスターボール。
配合、悪魔合体、再構築、合成。
交差した世界の技術が、機能を忘れて。

「ミュウ……ツー?それに、ムー?」
石版や書類に書かれた文字も、すべて無意味だと言わんばかりで。
「ねえ、これ」

スマートフォンをもっと大きくしたような機械、コンピューター。
今日日こんなに大きなコンピューターはあまり見ない、もっと言うとどこか古臭さすら感じるコンピューターだった。
パソコンを見慣れているグレイシアとソーナンスはそう感じたが、ピクシーはただただ目を丸くしている。

電源は、わずかだが残されていた。
ここが放棄されてそこまで時間が経っていない場所だと伺える。
それなのに何故ここまで警戒が薄いのか、怪訝そうにグレイシアは周囲への警戒を強めた。
しかし、その答えはすぐさま、目前の機械が教えてくれた。
それは先の、不自然な自然に対する解答でもあった。

クロスオーバーモンスター闘技場。
そう銘打たれた企画、祭典。
モリーが半日前に宣った開催の声に至るまでの交差した道のり。

旅の扉を経て、異世界の技術を取り入れ建てられた計画は会場作りから入念に構想されていた。
モンスターが万全を期して戦え、なおかつスケールは大きく、過ぎないイレギュラー要素を盛り込む。
会場たる孤島は最初、モンスターだけが暮らす未開の島であった。
その島からモンスターを追い出し、または捕獲し、あろうことか自然を、島を人のモノに作り変えた。

注視すれば気づく程度のいびつな自然。
その最初の標的にして拠点となったのが島の中心にあるこの山だった。
升目状にきっかり区切られた地図は、単に区分がわかりやすいようになっているだけではない。
実際そのように切り抜かれ、どうとでも動かすことができるのだ。
海洋人工島、ある世界の科学者はそう呼んでいた。
それに倣い、彼らは手中に収めた島に名を付ける。
『海洋人工島エデン』と。
かの科学者の世界の幻獣の名だそうだ。
人が、人たちだけで創りだした世界。

絶句する、そこまでして自分たちが集められたのかと。
こんな、こんなことのために世界は交わったのかと。

本来ここはモンスターの監視の拠点になる予定であったが、飛空艇の技術の発展により舞台が変転。
施設の大半を空へと移したために中途で放棄されていたのだ。
この催しが終われば本格的に廃棄する予定だったのだろう。

島以外にも人間の業は及ぶ。
人工ポケモンミュウツーの再現。
神話の存在であるムーの再生。
霊的侵略兵器の開発。


「ムーを……造ってたんだ」
ようよう出た言葉は、割れて欠けた何枚もの円盤石に墜ちる。
人間が伝説を追いかけて、実証しようとした成れの果て。
「ムー?」

「昔の……神話みたいなのに出てくるすっごい悪いモンスターだよ」
存在すら定かではない悪の龍。
「それが、もしも完成していたら大変なことになるのでは」
ミュウツーも、グレイシアが聞く限りでは驚異的存在だった。
それに並ぶようなモンスターを人間が従えているのか。

だが、ピクシーは首を縦にはふらない。
「多分だけど、失敗してると思う」

「ソーナンス?」


77 : 交差して超える世界 ◆/wOAw.sZ6U :2014/01/26(日) 07:24:21 mQizYXTE0
「こんな言い方すると、変だけどさ、人間に制御できるようなムーはムーじゃないんと思うんだ」
そもそも、と言葉は続く。
「人間が……一方的に、無理やり従えちゃうようなやり方じゃあアタシ達は強くなれない」
コンピューターは答えない。
機械は演算するのみ、心の指数は測れないのだ。

「だって、アタシ達は人間に命令されなくたって、人間より強い」
人間が思うより、モンスターはずっと恐ろしいのだ。
「人間と一緒に……なんていうのかな、心が交差した時、一緒になれた時に、初めてもっと強くなれる」
ムーは人間とは決して交わらず、人間を配下に置いて世界を滅ぼしたモンスター。
絶対に隷属はしないし、したとすればそれは人間に扱える程度に劣化したレプリカだ。
強大な悪を御しきれるほど、一つの種族は完璧じゃない。

共に手をつなぎ、交わり、初めて大きな力を扱えるようになる。
ブリーダーとモンスターの関係がまさしくこれなのだ。
「少し……分かるような気がします」

グレイシアはミュウの石版を見据え、ゆっくりとまばたきする。
自由を捉えて思うがままにした結果。
生まれでたものは、全てを否定し人間の手元から離れた。

「ソーナンス……」
人との繋がりを無くした寂しさ、信じたいと願う力、確かにそれは他者があるから生まれるものだ。
「旅の扉をもっと機械的にした……ターミナルってのでアタシ達はここに連れて来られたんだね」

山の中の明確な図解。
どうやら、この丁度真下にその装置はあるようだ。
「エレベーターのようなものもあるようですし、このまま」

グレイシアの言葉は、鳴り響いたアラーム音に奪われた。
まさか、モリーたちに見つかってしまったのだろうか。
歯噛みするも、体に以上は出ない、では、何が?

起動されたコンピューターが警戒をけたたましく叫ぶ。
画面に映るのは……光だ。夜の月で太陽で死で。
その光がこちらに向かってきている。


「――まもるッ!!」

グレイシアは咄嗟に鉄壁の防御を張る。
本来自分を覆う程度の防壁を、無理矢理に三体分に広げて。
十字の死は、その防壁にめり込み、吹き飛ばそうとする。
まるで意図していない攻撃に、彼女たちは消されかねない。

逃げよう、そう叫んだのはピクシーだったか。
だが、ダメだとグレイシアは脚を踏ん張る。
よしんば直撃を避けたとして、この下にあるものがどうなるのか。

自分たちが帰る希望であるターミナルが、木っ端微塵に消失してしまう。
だからといってピクシーとソーナンスを巻き込んでいいのか、そんなわけはない。
逃げて、刹那とも永遠とも思える遣り取り。
存外、今生の別れとはきらめく流れ星程度のものなのだな、グレイシアは薄く微笑む。
瞼の裏に、同じように自分を助けた主人の笑顔が浮かんだ。


78 : 交差して超える世界 ◆/wOAw.sZ6U :2014/01/26(日) 07:25:09 mQizYXTE0
――流れ星は、燃え尽きること無く、輝いた。
幾重にも幾重にも交差する。
出会い、別れ、共に過ごし、編みこまれる。
それはクロスオーバー。
重ねて超える、世界の限界。

砕けそうなまもりに別のまもりが差し込まれた。
格子状の光は、強く強く、死を退けんと瞬く。

「逃げろと、言ったでしょう!!」

「無茶言わないでよ、逃げられるわけ無いじゃん!!」

正論か、強がりか。

「そう……だよ」
初めて聞く声に、窮地だというのに時間は遅く感じられた。
「ぼくだって……同意したり……尋ねたりするだけじゃなく……ちゃんとぼくの意思で……!!」
「ソーナンス、あんた普通に喋れたの!?」
「今はそんなことを言ってる場合じゃないでしょう!?」

3つの力は融合する。
個々の存在として、互いを助けるために。
十字に対して三体で創りだした、それより多い守りの網。

「もうやぶれかぶれよ……ええっと、パルプンテ!!!」



世界を視認できたのは、そこまでであった。








気づいた時、彼女たちは誰も居ないターミナルの前に倒れていた。
健在である機械に、グレイシアは喜び、すぐに二体を気にかけ周囲を見回す。
すべてが終わった、地獄が旅立った大地。
その場所に立つものがいるとすればそれは生者、これからを歩むもの。

「……まもれた、みたいですね」
焼け野原のような惨状は、いつかグレイシアが逃げ出した結果のようで。
「いたた……生きてる……」
ピクシーも、なぜか嬉しそうに痛みを享受していた。
あちこち傷んで疲れたけれど、生きている。
そうして実感する、前を向いて死にたくないと言える自分を。
生きて、生きてまた彼に会いたいと願う自分を。

「あれ、ソーナンスは?」
声も姿もない三体目。
もしや、と背筋に薄ら寒いものが駆けていく。

「ソーナンス!」
「ソーナンス?」
「そ、ソーナンス!って言ったほうが……いい?」

虚空から声がする。
まさか霊的存在になってしまったのか。
いやそんなわけがあるか。

すう、と魔法が切れたように、実際魔法が切れたのだが、ソーナンスは姿を表した。
パルプンテが起こした奇跡。
それはレムオルの呪文であった。
彼女らは透明の存在となり、まもるでやわらげた光に直撃することもなく、ターミナルを守り通せたのだ。
故にこの場所から旅だったものは透明な生に気づくことはなかった。

「よかったぁ……アタシ達、やったんだね」
これで、帰る道が見えた。
そう安堵した瞬間。
真夜の、天空から、聞きたくない声が響いた。


「ボーイ達……まずは、ご苦労と言っておこう」



此れより天地は逆しまとなる。
それは魔物の攻勢か、人間の攻勢か。
図面が見せた裏側と、消え失せる帰り道。
全てが交わるときは、近い。


79 : 交差して超える世界 ◆/wOAw.sZ6U :2014/01/26(日) 07:25:45 mQizYXTE0
【D-5/ターミナル跡/二日目/深夜】



【グレイシア@ポケットモンスターシリーズ】
[状態]:ダメージ(中)疲労(大)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(空っぽ)
[思考・状況]
基本:誇りに懸けて、必ず主催者を倒す
 1:アリスから離れる
 2:メタモン……


【ピクシー@モンスターファーム】
[状態]:疲労(大)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(空っぽ)
[思考・状況]
基本:生きて帰りたい
 1:皆と一緒に行動する
 2:メタモンが気がかり

【ソーナンス@ポケットモンスター】
[状態]:疲労(大)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(空っぽ) 、スマートフォン@真・女神転生4
[思考・状況]
基本:ソーナンス!
 1:ピクシーのそばにいてあげたい。
 2:ソーナンス……ばっかじゃダメだよね

※この島の仕組、ターミナルの存在を確認しました。


80 : ◆/wOAw.sZ6U :2014/01/26(日) 07:26:18 mQizYXTE0
以上で投下終了いたします。
問題点等ありましたらご指摘ください。


81 : 名無しさん :2014/01/26(日) 16:00:46 aPqoqjcY0
投下乙でしたー!
おお、物語の裏側が明かされている……
ミュウツーやムウ、スマホ、島、ターミナルが無事だったわけなどが陽の目に
海洋人工島はなるほど、ラグナロクも出ていたしなーw
しかしここまでして護ったターミナルも闘技場変形に巻き込まれて収納されちゃったようでまた探し直しか


82 : ◆5omSWLaE/2 :2014/01/26(日) 16:35:55 GhLuH30w0
投下お疲れ様です
ターミナルが無事だった裏事情……
なるほど、シャドームーンにも見つからなかったのもこれならば頷けますねぇ
さらに明かされる島の秘密。技術を駆使して作り上げられた会場
……まぁ、何よりも驚くべき事実は「アンタ喋れたのかよ!!!!」ってところでしょう


83 : ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/27(月) 18:21:39 YNBtBbO60
プチヒーロー、ルカリオ予約します


84 : ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/30(木) 13:41:55 gBvJA1/U0
すいません、一度予約を破棄させて頂きます。


85 : ◆3g7ttdMh3Q :2014/01/30(木) 13:42:19 gBvJA1/U0
すいません、一度予約を破棄させて頂きます。


86 : ◆5omSWLaE/2 :2014/02/09(日) 23:46:26 CwqRzx9Q0
チャッキーで予約致します


87 : ◆/wOAw.sZ6U :2014/02/13(木) 09:07:57 62e4Ecj20
グレイシア、ピクシー、ソーナンス、レナモン予約いたします。


88 : ◆3g7ttdMh3Q :2014/02/13(木) 13:47:10 ff4Tv4bQ0
プチヒーロー、ルカリオを予約します


89 : ◆5omSWLaE/2 :2014/02/14(金) 22:32:25 vLesBdbU0
チャッキー投下致します
タイトルは「It's Time to Play」です


90 : ◆5omSWLaE/2 :2014/02/14(金) 22:33:06 vLesBdbU0
――おしてみよう ポチッとな!



その異変はまず、地響きから始まった。
足下が急にせり上り、次の瞬間に体は宙に投げ出されていた。
そのまま視界がグルグルと回転、瞬く間に光景が切り替わっていく。

鳴動はすぐに止んだ。
気がつけばチャッキーは砂の上に転がっていた。
かたりかたり、と木の擦れ合う音を立てながら身を起こす。

フィールドの状況は一変していた。
先ほどまで自分がいた森や山は全て取り払われ、高い石壁で囲まれたグラウンドが広がっていた。
空は先ほどと変わらず、星々の煌めく漆黒が広がっているものの、地の方は妙に明るい。
というのも巨大な照明がいくつも取り付けられ、グラウンド全体を満遍なく照らしているからだ。
ジオラマのようなコートのような、そんな人工的な空間があった。

真っ先に目に付いたのは、会場の中心にたたずむ巨大な戦車――モリー曰く最強のモンスター。
スラリンガルと呼ばれたあの中に、モリーがいるのだろう。
ただ、その形状は、先刻チャッキーが切り刻み尽くした青色の魔物を模していた。
チャッキーは苛立つ。
またあの青色の相手をしなくてはいけないのか、とうんざりする。

かたり、かたり……。

と、そのときだ。
彼の体の軋む音に被さるように、わぁっと歓声が響いてきた。

「……!!」
「〜〜ッ!!」

チャッキーが見上げた壁の上から、人間たちの声が聞こえてくる。
よほど騒がしいのだろう。山よりも高いその位置から、うっすらとだが声が届く。



あはっ



チャッキーは目を輝かせて笑った。無邪気に笑った。
ふくろからブイモンの骨を取り出し、壁の上へと思い切り放り投げる。
それは大きな放物線を描き、骨はその高さを飛び越える。

ぐしゃり
それが着弾すると、歓声は一時的に鎮まり、――そして悲鳴へと変わった。

それっ、と軽快なかけ声と共に、次々に投げ込んだ。
ぐしゃ ぐしゃ ぐしゃり 
ここからでは聞こえる悲鳴は微かなものだ……しかし、それは確かなもの。
耳をつんざくような甲高い、恐怖を端的に表した「悲鳴」という音色。
尖った骨はくるくると回転しながら宙を舞う。
当たれば傷を負う……いや、人間の柔らかな肉体なんて軽々と貫けるだけの殺傷力はあるだろう。

あは、あはは、あはははっ

気がつけば、ふくろの中は空になっていた。
……そろそろ上の光景を見てみたい。
チャッキーは、自身の頭を真上へと思い切り投げた。

さぁ、一体どんな光景になってるのかな。
けたけた けたけた けたけた けたけた けた
きっと鮮やかな赤に染められた、愉快な光景に違いない。
けたけた けたけた けたけた けたけた けた
無数の凶器に体を刺され、"死"を突きつけられる獲物たちの姿……ああ、楽しみだ。



かたり。

……だが、期待していた阿鼻叫喚図をその目で確かめることは出来なかった。
チャッキーの頭部は少なくとも、肉片よりも大きく、そして重い。
モンスター特有の腕力、投擲技能を用いても、壁の高さには及ばなかった。


91 : ◆5omSWLaE/2 :2014/02/14(金) 22:33:25 vLesBdbU0
落ちてきた頭を受け止め、元通りに填め直す。
……つまらない。面白くない。せっかくの楽しめると思ったのに。
ブイモンの肉塊さえ残っていれば、それを足場に上に行けたのに。
どうすれば上に行けるんだろうか。
沢山の獲物たちがひしめく遊び場がすぐそこにあるのに。

口をかちかちと鳴らし、しぶしぶと歩き始める。
きっと、先にモリーを殺さなくてはいけないんだろうな。
モリー……俺をこんな楽しいパーティに招待してくれた男。
いいさ、ならそのお礼に死をくれてやるだけだ。

戦車の方へと足を進める。

かたかた、かたり。
かた、かたり。

歩くたびに、打楽器のような、一定のリズムが刻まれる。

かたかた、かたり。
かた……。

リズムが止まる。

……。




「竜の死体か」

足を止めた彼の前にあるのは、幾度と無く目にしてきた参加者の亡骸。
亡骸自体には何も感情は浮かんでこない。
生者を死に至らしめるのが楽しいのであり、既に事切れたものなどどうでもいい。

「随分と手が込んでいるな……」

ただ、彼が興味を引いたのはその亡骸の殺され方があまりに悲惨だったからだ。
その巨大な竜の屍は、バラバラに解体されていた。
一部の部位は肉をすべて剥がれ、骨のみとなっている。
そして、血がほとんど流れていなかった。血をすべて抜かれていた。

ギリギリまで生かしたまま行なったのか、もしくは死んでからこれだけ遊んだのか。
なんにせよ、ここまで好き放題弄くり回したならば、手に掛けた者もさぞや満足だろう。
自分ももっと心が満たされるような殺し方をしたいな、と、そう思った。


――なお、これは数時間前に料理の材料として使われた、バトルレックスの亡骸である。
  あくまでも調理のために切られたのであり、チャッキーが考えるような意図によって解体されたわけではないのだが、彼は知る由もない。


「あ、そうか」

そうだ、ここから補給すればいいんじゃないか。
壁の上へ上がるための肉塊を、人間を殺戮するための武器を。

先刻の戦いにおいて彼は放り投げた肉片を足場にするという芸当を見せた。
そう、道具さえあれば、彼は壁の上へと登り詰める事が可能なのだ。


92 : ◆5omSWLaE/2 :2014/02/14(金) 22:33:39 vLesBdbU0
バトルレックスの屍へ寄り、グラディウスの刃を通す。
鱗の間に刃を滑り込ませ、ぶちりぶちりと剥いでいく。
皮に切れ目を入れ、力任せにベリベリと引っ張る。
露出される薄い脂肪と筋肉、それをナイフで切り取ると白い骨が見えた。

竜の骨は貴重だと呼ばれる所以は、その頑丈さと質の良さにある。
そう、例えばそのまま棍棒として使うだけでも十分な性能を持っているのだ。

聖なる短剣グラディウスを用いれば、そんな頑強な骨も切断出来た。
ガリガリと削り落とし、手頃なサイズへと調節しておく。
続いて顎の筋肉を剥離させ、牙も抜き取っていく。
岩をも砕く強固な牙を握ると、チャッキーはうっとりと眺めた。

「なかなかだな……」

まだ血生臭さの残る、新たな武器を軽くお手玉してみる。
やはりいい素材だ、使い心地が良い。
理想とすれば、自分の獲物から作り上げたかったところだが。
……やむを得ない、今だけは我慢しよう。

ぐるり、と頭だけを回して観客席を見回した。
先ほどは全く見えなかったが、ここなら見える。
実に壮観だ。なんてたくさんの人間達がいるんだろう。
あれらを全て血に染めたら、きっともっと素晴らしい光景になるだろうな……!


けたけたけたけたけたけたけたけた……

もはやモリーとスラリンガルの事など眼中に無い。
俺の殺人衝動が満たされるプレイランドが、あの壁の上にあるのだ。
さぁ、欲求を満たそう。

――遊びの時間だ。

けたけたけたけたけたけたけた……



【E-4/草原/二日目/黎明】

【チャッキー@モンスターファームシリーズ】
[状態]:頭部左端欠損、興奮
[装備]:グラディウス@ファイナルファンタジーシリーズ
[所持]:ふくろ(バトルレックスの遺体)
[思考・状況]
基本:いつもどおりに殺戮する
 1:観客席へ上り、思う存分殺しまわる
 2:モリーや他の魔物は後回し


93 : ◆5omSWLaE/2 :2014/02/14(金) 22:34:47 vLesBdbU0
以上で投下終了です


94 : 名無しさん :2014/02/14(金) 23:57:09 4GhHx52A0
投下乙
獲物を屠れれば人間だろうがモンスターだろうがお構いなしか
ギルガメッシュやアリスと違う
チャッキーの猟奇的殺人犯の一面が見えるな
リングに上がった物好き達がこの状況で如何なるのか楽しみだな


95 : 名無しさん :2014/02/15(土) 09:16:36 txwG53tAO
投下乙です。

観客席の方が、獲物が沢山いるからね。
そりゃそっちに行くわ。


96 : 名無しさん :2014/02/17(月) 12:15:18 dCQdQhDY0
投下乙でした!
誰よりも殺戮を望んでいるゆえに殺しあいであるバトロワする気ないぞ、こいつ!?
結構新しいな、観客狙いってw
観客がいるうちだからこそだw


97 : ◆TAEv0TJMEI :2014/02/20(木) 00:03:56 v.BT7QUY0
ハムライガー、モルボル予約します


98 : ◆/wOAw.sZ6U :2014/02/20(木) 05:22:05 h6m1yNNk0
予約を延長させていただきます。


99 : ◆3g7ttdMh3Q :2014/02/20(木) 11:49:01 v6MFk/yw0
延長させていただきます


100 : ◆TAEv0TJMEI :2014/02/26(水) 03:34:36 dxPplkHE0
延長させていただきます


101 : ◆/wOAw.sZ6U :2014/02/27(木) 00:33:51 i5D.EEDs0
レナモン、グレイシア、ピクシー、ソーナンスを投下いたします


102 : ◆/wOAw.sZ6U :2014/02/27(木) 00:34:26 i5D.EEDs0
その男の鶴の一声で、改造され尽くした人の島は非現実的な展開を始める。
海も森も砂地も、すべてが嘘まやかしであったように。
本来予想外であろう情景だが、渦中のグレイシアは冷静にせり上がり変わりゆく大地を観察していた。
いや、彼女は神経を張り詰めていた。

ふざけたあの魔物に似た、巨大な自称モンスターに乗り込む男を、遠巻きに見ながら。
踏みしめる大地は慣らされた、コロシアムの砂地。
先ほどまでの岩肌ではない、無残だった死の跡地すらもう見えない。
彼女たちが守りぬいた帰り道もまた、行方不明だ。

「もういい加減にしてほしいよね……」
うんざりと、しかし笑って。
「ピクシー?」
ソーナンスは心配そうに、投げやりに笑ったピクシーの傍に寄った。
自棄を起こしているのだろうか、無理もない、あまりにも理不尽で唐突な出来事だったから。
誰が予想できるだろうか、島が、会場がひっくり返るなんて。
というか正直むちゃくちゃだ、海のエリアもあった、明らかに客席の面積が足りてない、もう、あのさあ。

「大丈夫、大丈夫だよ」
一周回って、どこか清々しい気分だった。
死ぬだの殺すだの、苦しい感情に挟まれていた時より、ずうっとマシなきもち。
「少し、心配しましたが貴方も同じでしたか」
グレイシアが気高く、しっかと先を、『帰り道』を見据えて。

「うん、あの変なおっさんに一発食らわせてやんなきゃ」
ぱしん、拳を掌に押し付ける。
賢さ技が目立つ種族のピクシーだが、勿論力技だって揃えている。
見た目は可愛らしいタッチは勿論、完全に格闘技に分類されるヒールレイドはモンスターにとっては僅かなダメージかも知れないが、人間はそうは行かない。

「え、と……どういう」
ソーナンスも理解していた。
でも、ちょっと、その、ほんのちょっと嫌だった。
優しすぎて言葉を閉じ込めていたぐらいには、彼は世界に他人に寛容だったから。

「まず、主催だろうあの男が降りてきた、ということは」
この状況が如何に破綻しているか。
懇切丁寧にグレイシアは説く。
まず、我々には最後の1体になるまで戦いを強いられるルールと、死枷が押し付けられていた。
そのせいであるものは悩み、あるものは戦い、あるものは死んだ。
魔物同士の、殺し合いの宴、非常に悪趣味だ、とグレイシアは断言する。
先に見ていたこの島のデータ、殺し合いの計画の全容。
実に、実に手の込んだ非道だ。


103 : ◆/wOAw.sZ6U :2014/02/27(木) 00:34:54 i5D.EEDs0
「でも、そこまで徹底してるのにあのおっさんが出てくる……ってのは、ちょっとおかしいよね?」
管理人たるモリーの乱入、それは何かの破綻を示す。
たんに好奇心、気まぐれではないか、そう思わなくもない。
ただ周囲に沸き立つ雨の如き不協和音、人間の声。
変わったのだ、おそらく。
会場と同じく、破綻した殺し合いは姿を、ルールを変更した。

無論、死枷が消えたという確証はどこにもない。
でも、だ。

「もう誰とも殺しあいとか、戦いをしなくていい、あいつ以外とは」
ソーナンスは言葉の先を見る。
青く巨大な、間抜け面をした怨敵を。

「主催……彼への落とし前をつけ、私達は堂々と帰るのです」

真っ直ぐな帰り道。
「僕は……」

「大丈夫よ、ソーナンス、あんたは無理しなくても……」
「ううん、僕も、闘う」

嫌だけど、選ぶ。
このまま何もしないで、同調だけして、自分を持たないのは嫌だ。
ソーナンスも帰り道を確認した。
誰かに痛い思いをさせるやつを、放っておいていいわけがない。
自分も痛みを受けて、返してやらなくてはいけない。
言わなければ、声を大にして叫ばなければ、そうじゃないと、この行いが間違っていたと。

それは、多分。
この場所にいて、いなくなってしまった、みんなの痛みでもあるだろう。
返さないと、せめて、伝えないと。
知らない誰かに対する痛みが胸に募る。
選んで選ばなかった気持ちを想像するだけでこうなのだから。

ぐるぐる胸の中で回る気持ちで息が詰まって、息を少しでも高い位置で吸おうと、顔を上げた。
胸と瞳いっぱいに映る、天の頂に上り詰めた月。
月を取り囲む散っていった誰かの星空、これを眺めているものが多いことを切に願う。

眩しかった、三体を照らす金色の光。
陽光を反射して降り注ぐ、明るく昏い、光。
真円にに溶けこむように、しかしはっきりと境界線を築いた九尾の影。
ゆっくりと、知らない影はこちらに降りてくる。


104 : ◆/wOAw.sZ6U :2014/02/27(木) 00:35:25 i5D.EEDs0
「あれ……?」
眩しすぎて目を細めていたソーナンスは幻視する。
その背に、はぐれたメタモンが、少女の姿で跨って手を振っているのを。
声に気づいたピクシーとグレイシアも同じく、放心した状態で誰かを、九尾ではない誰かを見ていた。

苦しいほど、共感と、愛惜が募った。
降臨した九尾を見ても、誰も口を開けない。

「……ピクシー、グレイシア、ソーナンス」
噛み締めた声は中性的で、月光を浴びて光り輝いて見えた。
どうしてだろう、様々な、知っても居ない面影があるのは。

「貴方は……?」
警戒したいのに、グレイシアは素直に、彼女にしては珍しくただ欲求のままに尋ねた。
知りたい、目の前の九尾を、その内包している魂を。

「私は――」
切々、朗々と、声は始まった。
レナモン、そう名乗った語り部の伝える、魔物達の声。
鮫龍、コイキング、はぐれメタル、モー・ショボー、エアドラモン、メタルティラノモン、スティングモン、アリス、そしてメタモン。
戦った、戦った、逃がした、見ていた、追いかけた、見ていた、見送った、恐れた。
およそ一日、たったそれだけの間に対面し過ぎ去った光景。
レナモンは語る、己を、他者の記憶を保持できる生き物であると。
0と1で構成された存在であるがゆえに、どんな生き物より記憶に触れるという特性を。

「メタモンは?」
答えを、どうしてか予想できた。
「私の……友だちになってくれた」

声は重なる、記憶の、「おともだちになりましょう」という声と。
思い出が、短い間の出来事が。
「そう……ですか」

察してしまう。
友が、この場にいないことを。
その理由を、過去形になってしまった事実を。
交響する。
会話は、音に、唄になる。
振動が触れ合い、届く。

「私は伝えたかった、会いたかった……だから、よかった」
レナモンは、スラリンガルに飛び込む前に彼女らを視認した。
スラリンガルと少し離れた中央に居たのが幸いしたのだろうか。
月の、星の、めぐりが彼女らを引きあわせたのだろうか。

「ごめんなさい」
グレイシアは泣いていた。
彼女らしくもなく、声を震わせて。
ピクシーも、ソーナンスもまた。

メタモンとはほんの数刻しか行動を共にはしていなかった。
だが、今三体が、レナモンを含めると四体がここにこうして生きた状態で出会えたのはメタモンのおかげ。
見えざる命の輪唱、繋がれた今。

ピクシーは、もっと話しておけばよかったと後悔する。
グレイシアは、こんな場所に連れて来られなければと嘆く。
ソーナンスは、助けてあげたかったともしもを考える。

レナモンは、彼女たちが泣きじゃくるのをただ見ていた。

優しく、そしてたっぷりと羨望を含んだ眼差し。
亡くしたもののために、素直に涙を流せる。
それは悲しいけれど暖かくて、自分もそんな気持ちを取り戻し、大事にしたいとレナモンは思う。
でも謝るだけじゃあ駄目なんだ、そう口を開こうとした、その時であった。


105 : ◆/wOAw.sZ6U :2014/02/27(木) 00:36:05 i5D.EEDs0
『ありがとう』

不意に、泣き声の和音に空から鼓膜を揺らす優しい声が加わった。

「メタモン……?それとも……」

幻聴だったのだろうか、レナモンが喋ったのか。
確かに彼女たちはその声を聞いた。

人工の世界で、決して人間では作れない、満天の夜空。
そこに輝くのは散っていった命。
一つ一つの瞬きが鼓舞し、背中をを押し、激励する。
中には血気盛んに降り注ぐものもいる。

俯かずに仰ぐ、まだ地に立つ彼女らは、ちゃんと前を向かなくてはいけないのだ。

「――私の中の記憶によると、死者は星となり我々を見守っていてくれるらしい」
思い出は胸の中だけではない。
こうして伝え、共有すれば、その合唱は永遠のものにだってなれる。
いつだって夜空を見上げれば、思い出せる。
星々が笑っているか、泣いているか、それは心持ち次第で。

「だとしたら、泣いてなど、いられませんね」
夜空の応援席まで、届けよう。
勝鬨を、感謝を。
夜明けが来るより早く、連れて来よう。
記憶を、戻る場所を。
涙を拭う。
これは忘れるんじゃあない、しまっていくんだ。

そうして帰って、留めて、伝えて、大事に大事にする感情だ。

「向かうのだろう、あれに」
レナモンは問うた。あえて明確な道筋を言わずに。

「無論です」
グレイシアは胸を張る。瞳は涙ではない輝きに満ちていた。

「あったりまえよ」
ピクシーは拳を握る。その手の中には今日という日の想いが詰まっている。

「行こう」
ソーナンスは声に出す。彼の意思で、選んだやり方を。

強く、より強く。
固まった四体の意志。
「あの子が見ているうちに、終わらせよう」

レナモンの背に、促されるままに乗り走りだす。
触れ合った温もりを離さないように掴んで。
戦いの序曲が鳴り響く。
四重奏の和音と共に。


106 : ◆/wOAw.sZ6U :2014/02/27(木) 00:36:30 i5D.EEDs0
【D-5/平地/二日目/深夜】



【グレイシア@ポケットモンスターシリーズ】
[状態]:ダメージ(中)疲労(大)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(空っぽ)
[思考・状況]
基本:誇りに懸けて、必ず主催者を倒す
  1:戦いに征く
  2:メタモン、ありがとう

【ピクシー@モンスターファーム】
[状態]:疲労(大)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(空っぽ)
[思考・状況]
基本:生きて帰りたい
  1:帰るために戦う
  2:見ててねメタモン
 
【ソーナンス@ポケットモンスター】
[状態]:疲労(大)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(空っぽ) 、スマートフォン@真・女神転生4
[思考・状況]
基本:ソーナンス!
 1:ピクシーのそばにいてあげたい。
 2:自分の意思で戦う
 3:メタモンのことも居なくなったモンスターたちのことも忘れない

※この島の仕組、ターミナルの存在を確認しました。

【キュウビモン(レナモン)@デジタルモンスターシリーズ】
[状態]:ダメージ(中)、疾走
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(空)
[思考・状況]
基本:君を忘れない
1:まだ見ぬ君に逢いに行く
2:鮫竜(ガブリアス)に再会できたなら名前を聞きたい
4:シャドームーンとアリスの決着後も気になる

[備考]
メス寄り。
多くの勢力が戦いを続ける激戦区の森で、幼年期クラスのデジモン達を守って生活していたが、
大規模な戦闘に巻き込まれた際、彼らを守りきれなかったことをきっかけに力を求めるようになった。
自力での進化が可能であり、キュウビモンに進化可能であることまで判明している。
ロードしたメタモンのデータは消失しましたがその残滓からメタモンのこの島での記憶を見ました。
現在は完全体に進化することは出来ません。

※シャドームーンとアリスの戦いのうち空で行われた部分(獣王拳での決着まで)と、B-03城へのメテオカウンターを目撃しました。


107 : ◆/wOAw.sZ6U :2014/02/27(木) 00:37:03 i5D.EEDs0
投下終了致します。タイトルはハルモニアでお願いします。


108 : ◆5omSWLaE/2 :2014/02/27(木) 01:13:52 Th3I5uPQ0
共通の友を持つ彼らの邂逅、そして共に抱く決意。
星々の見守る中、彼らは最後の戦いへと赴く。

メタモンのことを、ついにこの三体へ伝える事が出来た……胸が熱くなります。
ピクシー、ソーナンス、グレイシア、レナモン。この四体の奏でる音が、果たして勝利へと繋がるのか。
投下お疲れ様でした!


109 : 名無しさん :2014/02/27(木) 01:42:54 mc/Vh3LA0
投下乙!
つながった、メタモンが、いや、メタモンだけじゃない、この島での4体の出会いがここにつながった!


110 : ◆3g7ttdMh3Q :2014/02/27(木) 10:44:41 m5W2xv5M0
申し訳ないのですが、現予約を破棄させていただきます。


111 : ◆TAEv0TJMEI :2014/03/05(水) 23:52:32 jWUacMzM0
すみません、少し遅れます


112 : ブルーディスティニー  ◆TAEv0TJMEI :2014/03/06(木) 21:51:56 85lPuLTo0
遅くなってしまい申し訳ありません
投下します


113 : ブルーディスティニー  ◆TAEv0TJMEI :2014/03/06(木) 21:52:35 85lPuLTo0



どうしてこんなことになってしまったのだろう。


月に吠えるでもなく、心ここにあらぬままハムライガーは天を見上げる。


なぜこんなことになってしまったのだろう。


殺すと決めた。他のすべてを殺してでも帰ると決めた。
今度こそ自分の意志でハムライガーは決断し、自分の手で彼を救おうとしてくれたガブモンを殺した。
そのことに何も思わないといえば嘘になる。
抱きしめてくれたガブモンの身体を引き剥がそうとして、上手く引き剥がせなくて。
だんだん冷たくなっていくその身体を涙ぐみながらそれでも、それでもと突き飛ばして。
ようやく、ようやくまた歩き出そうとしたのがついさっきのこと。

そうだ。また歩き出そうとしていたのだ。
帰るために、信じるブリーダーさんの元へと還るために、心通わした相手を殺してまで歩き出そうとしていたのだ。
彼の心を救ってくれたプチヒーローと再会してもハムライガーは迷うことなく牙を向けただろう。
プチヒーローだけじゃない。他の誰が立ち塞がろうとも、たとえその相手がどれだけ優しく手を差し伸べてくれようとも。
ハムライガーはその想いを、心を受け入れた上で、それでも、それでもと跳ね除けたことだろう。
心は、取り戻した。もう二度と、奪わせはしない。信じることも思い出した。でも彼にとっての一番は揺るがない。

たとえ他のすべてを手に入れても、一番欲しい物がなければ意味が無いから。
だからハムライガーは全てを置き去りにしてでも、最短距離で、最も可能性が高い道を駆け抜ける――はずだった。


はずだった、のに。


彼の決意を嘲笑うかのように突如殺し合いが終わりを告げる。
いや、これが真に終わってくれてたのなら良かったのだ。
ガブモンを殺してしまったことは全くの無駄にはなってしまうけれど。
どうしてあの時手を重ねなかったんだと延々後悔することにはなったろうけど。
でも、ガブモンなら、あのガブモンなら、ハムライガーがこれ以上誰も殺すことなく、大事な居場所へと帰れてたのなら。
恨みなどせず良かったでござるなと、そう言ってくれただろうとハムライガーには信じられる。
信じられるからこそそうなってさえいれば、ハムライガーは自分を許せた。
そうならなかったからこそ、ハムライガーにはもうどうすることもできない。

何も映していなかったハムライガーの瞳に影が落ちる。
ハムライガーはその影を追うようにゆっくりとゆっくりと、視線を少しずつ落としていく。
影は、人間だった。
数多の人間だった。
天から降り注ぐ大勢の人間たちだった。
奇っ怪な光景、余りにも奇っ怪な現象を前にして、しかしハムライガーの心中に驚きはなかった。
信じられない過程を経て出来上がった光景が余りにも見慣れたものだったからだ。
遮蔽物の無い砂地を囲むように聳え立つ円形の観客席。
ハムライガーが大好きなブリーダーさんと共に何度も戦ってき場所を思わせる――闘技場。

殺し合いは終わった。終わって、次のステージへと移行した。
最後の一人になれば帰れると信じてきたハムライガーへと叩きつけられた突然のルール変更。
主催者の乱入。威容を誇る巨大なモンスター。
モリーは言った、諸君らに勝利はない、と。
つまり、そういうことなのだ。
モリーは自分たちを殺す気で、ハムライガーたちを元の居場所に帰す気なんてないのだ。

分かってはいた。
ハムライガーとてモリーが大人しく返してくれると盲目に信じていたわけではない。
そもそもモリーは優勝者に栄光を与えると口にしただけで返してくれるとは一言も言っていなかった。
有りもしない一縷の望みを抱いて勝手にすがりついたのはハムライガーだ。


114 : ブルーディスティニー  ◆TAEv0TJMEI :2014/03/06(木) 21:53:11 85lPuLTo0


でもそれにしたってこんなのはあんまりじゃないか


通りすぎてしまったハッピーエンド。
その帰路として提示された2つの道。
殺しあうか脱出するか。
ハムライガーは選んだ。
殺して殺して殺し尽くして帰る道を選んだ。
なのに。なのになのになのになのに。

他ならぬモリーから、ブリーダーさんと引き離した殺し合いの主催者から、最後の一人になる道を否定された。
お前は間違っていたんだと否定された。

「なんだよ、これ。なんだんだよ、これ」

観客席を追っていた視線を遮る要塞のごとく巨大なモンスター。
戦場のど真ん中に位置しながらも挑戦者を待つかのように今はまだ動きを見せない。
あれと戦えとモリーは言う。ここに自分はいるぞとモリーは誇る。
結局は、結局はハムライガーはモリーと戦うことになってしまった。
主催者であるモリーがそういうのだから、ハムライガーにはそうするしかない。


けど、けどさ。どうせこうなってしまうのなら。モリーと戦うしかなくなってしまうのなら。
どうして僕はあの時、ガブモンの手をとれなかったんだろ。
どうして僕は殺してしまったんだろ。
どうして、どうして、どうして、どうして、どうして――




――僕はこんなにも死に囲まれているのだろう。




ハムライガーの周りには死体があった。
幾つもの死体があった。
まるでハムライガーに引き寄せられるように。あるいはハムライガーへと這い寄るように。
島の浮上からの闘技場への変形は彼を中心に彼が関わったありとあらゆる死を引き寄せた。


スライムが死んでいた。


トンベリが死んでいた。


ハムが死んでいた。


ホイミスライムが死んでいた。


マンイーターが死んでいた。


ギリメカラが死んでいた。


ゲルキゾクが死んでいた。


ガブモンが死んでいた。


ハムライガーが殺したから。ハムライガーに関わったから。彼らはみんな、死んだ、殺された。
無意味に。無価値に。無駄に。殺した。殺された。


115 : ブルーディスティニー  ◆TAEv0TJMEI :2014/03/06(木) 21:54:12 85lPuLTo0
「う、うわあああああああああああああああああああああああああああ!」

帰れると信じたからガブモンを殺した。
帰れると信じてきたからガブモンを殺したことにも耐えられた。
帰るためにはこれしかなかったから。
これが一番可能性の高い方法だったから。
殺してでも帰りたい場所があったから。

だから、だから、ならば。
それが全部無駄であった以上、殺しても帰れない以上、殺したのに帰れない以上、ハムライガーは罪悪感に耐えられない。
血にまみれてしまった自分自身を受け入れられない。
殺してしまったモンスターたちを見返すことが、できない。

ハムライガーは逃げた。
死体の群れから逃げた。
自らが呼び込んだ死から逃げた。
逃げて、逃げて、逃げて、逃げて。
逃げる彼を数百、数千、数万の目が追いかける。
喜色が伝わってくる。歓声が聞こえる。
慣れ親しんだはずの光景、かつてはブリーダーさんと共に声に答え、勝鬨をあげ、尻尾さえも振った彼らの視線が、怖い。
全部見てきたぞと嘲笑っている彼らが、全部見てきたのに笑えている彼らが、■■が、怖い。

浮かびかけた言葉を塗りつぶす。辿り着いてはいけない思考を塗りつぶす。
しかしどれだけ苦しもうと、どれだけ辛かろうと、一度壊し尽くされ、そこから掬い上げられた心には現実から逃げることも許されない。
そうだ、逃げ場なんてどこにもないのだ。
追いかけてくるのは■■の目で、死者の目で、そして自分自身の目だ。
誰も自分からは逃げられない。

逃げられないと分かっていて尚、否、分かっているからこそハムライガーはこの世界から逃げたかった。
モリーと戦うという選択肢はもう彼にはなかった。
そうするしかないと分かっていても、そうしたところで帰れる未来が思い浮かべなかった。
モリーを殺したところで自分を追いかけてくる目が一つ増えるだけだ。
そしてきっと、■■たちは、自分たちの親玉が殺されたとしても大盛り上がりでハムライガーのことを称えるのだ。
闘技場とはそういうところだ。
闘技場に降り立った以上、モリーは主催者であると同時に参加者で、チャンピオンであると同時に挑戦者だ。
何度も何度も何度も闘技場で戦ってきたハムライガーだからこそ断言できる。
これが死合だろうとも試合である以上、■■たちは勝者へと歓声を贈る。
■■にだろうが、モンスターにだろうが、人殺しにだろうが、彼らは偉業だと、素晴らしいと熱狂する。


116 : ブルーディスティニー  ◆TAEv0TJMEI :2014/03/06(木) 21:54:31 85lPuLTo0

その未来図がどこまでもおぞましかった。
これまでハムライガーがブリーダーさんと歩んだ過去が冒涜されているようで。
これからハムライガーがブリーダーさんと歩みたい未来までも急に色褪せて見えて。

ああ、なんてことはない、ガブモンが言ったのはこういうことだったのだ。
殺してしまっては帰れない。
どれだけブリーダーさんが受け入れてくれたとしても、他ならぬ自分自身が取り戻したはずの場所を受け入れられなくなる。

道が、閉ざされる。
帰り道が、閉ざされる。
物理的にも、精神的にも閉ざされる。
袋小路、袋のネズミ。
ハムライガーは追い詰められていた。
逃げ場のない世界で追い詰められていた。

だからこそ、それは。
世界から、未来から、■■から、自分自身から、逃げたいが一心で当て所なく走り続けていた彼の目に入ってきた“それ”は。

ハムライガーにとって地獄へと垂らされた蜘蛛の糸だった。

「……あ」

ハムライガーには“それ”が何なのかが一目でわかった。
モンスターとしての自分の本能がその小さな機械が何なのかを彼に理解させた。
先ほどまでの様子が嘘のように走るのをやめ、ふらり、ふらりと、吸い寄せられるようにハムライガーが“それ”へと歩み寄っていく。
その小さな機械からは暗黒の瘴気が溢れだし、形を作ろうとしていたがハムライガーは気にもしなかった。
涙で曇っていた視界が黒く染まろうとも、もとより、今のハムライガーには“それ”しか目に入っていなかった。
“それ”は門だった。ここでとは違う世界へと繋がる小さな門だった。
ハムライガーをこの世界から逃してくれる門だった。

そっと、ハムライガーは前足を伸ばし、門へと触れようとする。
門は小さくて身体丸ごとがくぐり抜けられるような大きさではなかったけれど。
不思議とハムライガーにはこうすれば、自分の望みが叶えられるという確信があった。
その確信に応えるように、門から引力が生じハムライガーを“この世から消し去って”くれようとしたところで。

「何をしておるか、サンダガ!」

雷が降り注ぎ、闇を照らし瘴気を払う。
続いて伸びくる触手が、門との間に割って入った雷に思わず条件反射で手を引いてしまったハムライガーを弾き飛ばす。
ごろごろと大地を転がるハムライガー。
彼が身を起こし、怒りを湛えた瞳で前を睨みつけた時、そこには、門の前に立ち塞がる唯一匹の王がいた。


✡  ✡  ✡


117 : ブルーディスティニー  ◆TAEv0TJMEI :2014/03/06(木) 21:54:55 85lPuLTo0
間一髪のところだった。
そう息をつく間もモルボルには許されなかった。

「何をしておるか、だって……。君の方こそ何してくれてるんだよ!
 僕は僕は帰らないといけないんだ、帰らないと全てが無駄になっちゃうんだ!」

怒気を叩きつけてくる手負いの獣、彼が何を願い、何故かような危険な機械に手を伸ばしたのか、モルボルには分かる気がした。
ゲルキゾクと同じようにこの獣にも帰るべき場所が、頭を垂れたいと願う主がいるのだ。
きっとそれは勘違いではないだろうと、モルボルは自らの直感を信じる。


そもそも彼がぎりぎりで割り込めたのは偶然ではなかった。
見失った暴走COMPを一刻も早く見つけ出そうとモリーさえも後回しにして探しまわっていたモルボルは悲痛な叫びを聞いたのだ。
急いで駆けつけた時には叫び主は去った後だったが見覚えのあるモンスターの死体がモルボルを出迎えた。
言うまでもない、ゲルキゾクの死体だった。
見渡せばそこにあるのは死体は一つだけではなかった。
ゲルキゾクの仕業だろうか、余りにも多くの死体が転がっていた。

ぐっと言葉を飲み込むモルボル。

もしそれが、そのうちの何匹かでもゲルキゾクがなした死だというのなら、それは彼の生を許したモルボルの罪でもあった。

「許せ、とは言わぬ。ただ、お主らの死をワシに背負わせて欲しい」

僅かな間だけ目を閉じ名も知れぬモンスターたちに黙祷を捧げる。

「ゲルキゾクよ……」

目を開き、志半ばで息絶えたとある女の忠臣へと声をかける。
あれだけ拘っていた契約を履行できなかったのだ。さぞかし無念であったろう。
しかしその無念はゲルキゾクのものであって女主人とやらのこともよく知らぬモルボルが語っていいものではない。
だからこそ、モルボルは違う言葉を口にした。

「忠道、大義であった。後は任せよ」

ゲルキゾクだけではない。
ここに眠る全てのモンスターたちに誓いを立てる。
彼らはモルボルの臣ではない。だがモルボルの民ではあった。
そうだ、モルボルは王なのだ。
民を、纏め、導き、背負うものなのだ。
国あっての王、民あっての王。
モルボルがまずすべきことは臣下を得ることではなく、民を省みることだったのだ。
先王に王冠を託されてようやく、モルボルはそのことを思い出した。
知っていたはずなのに。彼が憧れた王とは民に求められ、民のために立ち上がった者だったというのに。
なればこそ、今ここに王となったモルボルは改めて全てのモンスターの意思と遺志を背負う。

ゲルキゾクは最後まで主に尽くそうとしていた。
グレイシアたちは仲間の無事を願っていた。
横暴なスライムたちは勝者となるべく力を求め、善良なスライムはみんなに愛される王を願った。
チャッキーは今も殺戮に酔いしれていることだろう。

それら全ての願いをよしとしよう。
無論、王とは願望機ではない。
何もかもを無差別に叶えるわけでもなく、モルボルとしてもチャッキーの虐殺などは許すつもりもない。
だがチャッキーというモンスターがそのような願望を抱いたことは刻んだ上でそれを裁き、王として一人の民を誅しよう。
なるべきはモンスターマスター(モンスターの支配者)にあらず。
モンスターキング(モンスターのための王)なり。


118 : ブルーディスティニー  ◆TAEv0TJMEI :2014/03/06(木) 21:55:12 85lPuLTo0


その一歩としてモルボルは立ち去った叫び声の主を足跡を頼りに追いかけた。
王として嘆く民を捨て置くわけにはいなかった。
そうして追いついた先にいたのが、主のもとに帰ろうとする獣で、更には探していたCOMPまでも見つけられたというのなら。
これは運命が、いや、ゲルキゾクたちが導いてくれたに違いあるまい。
王は民を導く者だが、王道を示すのは民の願いである。


ならば、王として応えねばなるまい


前門の獣、後門のCOMP。
状況は決して良いものとは言えない。
獣は今にもモルボルに襲いかからんとしているし、COMPに至っては明らかに先刻よりもゲートが大きくなっている。
放っておけば何が起きるか分からない以上、モルボルは獣を止めながらもCOMPの破壊を敢行しなければならない。
それはつまり獣とCOMPから召喚される悪魔を同時に相手にしなければならないということだが……。


ここで退くわけにもいくまいよ


COMPが何をなそうとしているのかは分からない。しかし“贄”を求めているのは確かだ。
ここでモルボルがどけば、獣はCOMP自身に吸収され贄とされるか、COMPが呼び出した悪魔に殺されてしまうことは目に見えている。
王としてそれだけは看過する訳にはいかない。

「ワシの名はモルボル。王をしておるよ」

では続けるとしよう、王道を。
民を護り外敵を討つという王道を。
かつてモルボルが憧れた人間の王のように。
民に請われ、モルボルへと立ち向かい、劣勢にあって尚民の、臣下たちの声に立ち上がったあの王のように。


たとえその結末があの王と同じく――であろうとも。


119 : ブルーディスティニー  ◆TAEv0TJMEI :2014/03/06(木) 21:57:11 85lPuLTo0

【E-5/平地/二日目/黎明】

【ライガー(ハムライガー)@モンスターファームシリーズ】
[状態]:涙に浮かぶ曇った未来
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身無し)
[思考・状況]
基本:帰■た■――逃げたい

【モルボル@ファイナルファンタジー】
[状態]:健康、魔力消費(小)
[装備]:スライムのかんむり@ドラゴンクエスト
[所持]:せいなるまもり
[思考・状況]
基本:民はここにあり、臣とは我に続くものなり
 1:モンスターキングとして民を導き、逆賊を裁き、外敵を討つ
 2:獣(ハムライガー)をCOMP及び召喚される悪魔から護りつつ、COMPを破壊する
 3:託された意思と背負いし遺志は全て我が胸に

[備考]
[備考]
オス。王による討伐を受けて尚、彼はここでこうしていきている。ならば――。
唯一匹のモルボルを王道へと導くことで、民を護り国を守り抜いたとある人間の王のその生き様にこそ憧れた。

※モー・ショボーの支給品、COMP@デビルサバイバーの暴走が進んでいます。
 門が人の手がくぐれるくらいには大きくなったことでより強力な悪魔を召喚できるようになっています。

※F-5などにあった死体などはE-5に再配置されたようです。


120 : ブルーディスティニー  ◆TAEv0TJMEI :2014/03/06(木) 21:57:58 85lPuLTo0
投下終了です


121 : ◆5omSWLaE/2 :2014/03/07(金) 00:31:44 Oc4E6ZvE0
心を押しつぶして進んできた血の道の先に待っていたのは、他の道と同じ終点、死の結末。
……モリーのエゴは許さざるを得ないし、魔物の悲しみすら見物にする■■はやはりおぞましいものだと改めて思った……。
ハムライガーとは打って代わり、死を全て背負い受ける覚悟の出来ているモルボル。
彼の手が救える民が果たしてどれほどになるだろうか。
投下お疲れ様でした。


122 : 名無しさん :2014/03/09(日) 20:29:38 21R6Sy4UO
投下乙です。

ハムライガーは、もう心を壊す事もできない。
そして、モンスターを相手にするだけなら守れた領域まで……


123 : 剣に勇気を、胸に怒りを ◆3g7ttdMh3Q :2014/03/27(木) 15:55:47 CIylRLTw0
プチヒーロー、ルカリオ投下します。


124 : 剣に勇気を、胸に怒りを ◆3g7ttdMh3Q :2014/03/27(木) 15:56:14 CIylRLTw0



何一つとして容赦はなく、神が世界を生み出した7日間を再現するかのように、島だった場所は子どもの玩具めいて闘技場へと変貌した。
緩やかな坂と化した地面の上を剣を抱きかかえたプチヒーローはするすると滑り落ちた。

完成した闘技場はこの島であった何もかもをも隠してしまった、埋葬されることのなかった死体と生者を除いて。
地面の下よりも深くに、最初から何もなかったかのようにされてしまった彼らは何を思うのだろうか。
いや、何も思いはしない。死体は泣きも笑いもしない。
ただ、彼らの帰りを待つ人達は――何の痕跡も無くなってしまった平坦な大地を見て何を思うのだろう。

プチヒーローは――幸福だ。
短い時間ながらも育んだ絆は、この身に、この剣に、己の魂に刻まれている。
たとえ、消えたように見えても確実に残っている。

だから、プチヒーローは悲しいのだ。残せなかった者達が。

「……ッ!」
大人しく悲しみに身を浸らせている時間もない。
闘技場の地面へと立てば、高みより見下す観客の声が騒騒しい。

「静かにしてよ……」
最高潮にまで達した観客の熱気に反比例して、プチヒーローの心は冷めていく。
誰も気づかないのか、気づこうとしないのか。
彼らの浸る狂乱の海は、この闘技場で魔物たちが流した血と犠牲で出来ている。
僕達の嘆きを楽しむな――そうプチヒーローは叫んでやりたかった。

だが、聞こえない。
遥か天上の高みには、地を這う者の声は聞こえない。
聞こえないならば、何の意味もない。
だからこそ、今は未だプチヒーローはこの叫びを呑み込んでいる。

未だ戦いは終わっていない。
いや、この島の形状が変わることで最期の時まで加速をし続けていると言っても良い。
今、叫べば――感情を解き放てば、きっと戦うために余計な体力を消費してしまう。

強く、強く、強く、もっと強く、剣を握りしめる。

あとどれだけの命が、この場所に残っているのだろう。
生き残りが多ければ多いほどいいというものでもない。
ただ、自分以外に生き残っているのだが、百だとしても一だとしても、死なないで欲しい。それを祈る。

「オ   オ      オ            オ   オ  オ  オ  オ   オ  オ  オ オ  オ」
誰が忘れるものか。この場所では大人しく祈る間も与えられはしない。
近づく凶獣の咆哮に、プチヒーローは剣を構えた。
ハムライガーの時は、癒やすことが出来た。
ならば、今度はどうなのだろう。
最初から彼はああだったのだろうか、それともこの場所に来て彼はああなったのだろうか。

視界に収めた二足歩行の獣は全身傷だらけで、何故動けるのか疑問に思うほどだ。
ただ、意思無き意思だけを以て体を動かしているのだろう。
そして元の毛の色が青だと分からないほどに返り血を浴びていた。
返り血を浴びなかった部分が申し訳程度に、本来あるべきが青色だと教えてくれている。
ああ、青――空の色、海の色、どこまでも広がる世界の色。

何もかもを重ねあわせるわけではないけれど、取り戻したいと思う。

獣の右足が大地を踏み込んだ。
勢い良く大地に力を叩き込んで、神速にて獣が跳んだ。

像すら明らかにならぬ獣の拳がプチヒーローに叩きこまれ、プチヒーローは宙を舞った。


125 : 剣に勇気を、胸に怒りを ◆3g7ttdMh3Q :2014/03/27(木) 15:56:32 CIylRLTw0

「 オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ 」
鼓膜を裂かんばかりに獣が吠えた。
宙を待ったプチヒーロー相手に、躊躇する等という道徳心は持たない。
打ち上げてしまえば、後は連撃【コンボ】を叩きこむのみ。

プチヒーローの鳩尾にルカリオの拳が突き刺さる。
「あッ……」
血と胃液の配合物が、拳の分押し出されてプチヒーローの口から排出される。
痛み故か、プチヒーローが己の盾を地面に落とした。

勝利を疑う余地はない。
獣は己の掌と掌を並行にし、その間にある何もない空間に波動を集める。
集中し球形に練り上げた波動を敵へと衝突せしめる。
これこそが波動弾――はどうポケモンたる獣、ルカリオの必殺技である。

瞬。
だが、その波動弾はプチヒーローへの止めではなく、新たなる敵への迎撃に使わざるを得なかった。
プチヒーローへと向けていた体をルカリオは反転させた。
ルカリオに飛来せしは盾。名を水鏡の盾。プチヒーローが身につけていた盾である。

成程。プチヒーローは盾をわざと落とし、友より受け継ぎし念動力でルカリオへと飛来せしめたのである。
相手がルカリオで無ければ、この不意打ちは鮮やかに決まり、敵の意識を暗闇に落としていだろう。
だが、敵も手練。物を動かす念有れば、張り巡らされた波動の網がそれを察知してみせる。
残されたのは盾の残骸というべき粉々の破片だ。

最善ではない。だが、これで良い。
ルカリオの視線が己から離れ、プチヒーローは念動力の加速を以て地面へと着地した。

「      オ               オ  
   オ       オ    オ
         オ           オ    」

「同じだ……」
ハムライガーの時と同じだ。
ただ、一つの違いはこの場所にガブモンがいないこと。
心を治すことは出来る。だが、癒やすことは――

「きっと、できる」
出来ないわけがない。そう誓ったのだ。みんなに。

まず、動きを止めなければならない。
壊れた盾は盾ではない。
だが、壊れた盾は弾にならないわけではない。
念動力が幾多もの破片を絡めとり、ルカリオの周囲を衛星のように周った。

衛星が、流星のように降り注ぐ。
ルカリオは波動で肉体を硬化し、サマーソルトキックにて破片を迎撃するも、
破片は、完全に消滅しない限りはその役割を終えることはない。
地に落ちた破片は屍鬼のように、念動力によってその星の動きを取り戻す。

ならば、良い。
痛みなど気に留めるものか。

迫り来る破片の流星群の中を一心不乱にルカリオは駆け抜けた。


126 : 剣に勇気を、胸に怒りを ◆3g7ttdMh3Q :2014/03/27(木) 15:56:53 CIylRLTw0



「止まって!」
己の痛みも気にせずに、ルカリオはプチヒーローに迫る。
流星の連撃がルカリオの息の根を止めることは決して無いが、己がくわえた攻撃ながら叫ぶほどにルカリオの姿は痛々しい。
目を閉じたいとすら思う。見たくない。だが、決して逃げたりはしない。

「 オ オ オ オ オ 」
星の海を掻き分けて、ルカリオはプチヒーローの前に立った。
ルカリオの攻撃をあしらいながら破片を操れるか。否。
糸の切れた操り人形のように、破片が落ちていく。
それと同時に、ルカリオの拳がプチヒーローの腹を抉り、その勢いのままに顎を突いた。プチヒーローの身体が宙に浮かぶ。
昇竜――ルカリオのアッパーカットはそれを思わせた。

だが、竜はその攻撃を終えてはいない。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
正中線三連撃。
額。顎。鳩尾。の順に突きが打ち込まれた。
プチヒーローの浮かんだ身体が、拳に寄る加速を以て地面へと飛ぶ。

綺麗に入った拳が、叩きつけられた地面が、プチヒーローの世界に夜を迎え入れる。
視界が混濁する。耳がただ騒騒しい煩わしさだけを捉える。

騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。
騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。
騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。
騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。騒。


「                    」
プチヒーローの混乱は一秒。
ルカリオの叫びが彼を正気の状態へと戻した。
プチヒーローは聞いたのだ。狂気の雄叫びの奥にあるルカリオの声を。
助けを求められたなら――寝ている時間など勇者にはない。

右手持ちだった剣を、盾無き左手と共に両手で握り、立つ。

痛い。
頭が割れそうに痛い。
嘔吐感も凄まじい。まるで胃が腫れ上がって体内の中身を全て押し出そうとしているようだ。
血は出ていない。折れているだけだ。痛い。泣きたい。
だが。

「それだけだ!」
熱く切れ啖呵。燃え上がれ勇気。

プチヒーローの言葉はルカリオの心には届かない。
だが、剣を構えたその姿は目に入る。
今までの剣は飾りだった。だが、敵はとうとう武器を手にした。
剣道三倍段――剣を相手にする不利を意識しないわけにもいかない。

波動を両手の内に練り込む。
先は邪魔されたが、波動弾で確実に仕留める。
まだ、ダメージを与えた分こちらが有利だ。

「ベホマ」
紡がれる呪文。癒えていくプチヒーローの身体。やめろや。

ルカリオは察した。
一撃だ。そうでなければ殺せない。

今、ルカリオの手の中に己を殺す武器がある。
先の不意打ちの時もそうだった。
あからさまに変異した空気が、プチヒーローにそれを告げた。
もう不意打ちは通じない。ルカリオは撃たれても攻撃を続ける。

剣を素振りする。
あのギルガメッシュならばきっと出来ただろう。
ならば、自分もやろう。

敵の攻撃を斬り捨てる。


127 : 剣に勇気を、胸に怒りを ◆3g7ttdMh3Q :2014/03/27(木) 15:57:09 CIylRLTw0

「滅――」
「アルテマ……」

観客の騒音すらも彼らの世界からは消えてしまった。
プチヒーローの後ろに見える景色やルカリオの後ろに見える景色、そんなものもない。
この二匹の姿と、彼らが立ち、そしてその間にある地面。それ以外世界には存在しない。

行くぞ。
来い。

視線が交差する。

「波動!!ダァアアアアアアアアアアアアアアアアン!!」
「ソオオオオオオオオオオオドッ!!」

波動とは質量無きエネルギーである。
ならば、それを斬ることが出来るのは同質のエネルギーを帯びた――勇者の剣、アルテマソード。

ギルガメッシュより託されたヒノカグツチが究極の魔力を帯び、ルカリオより放たれた暗黒なる波動と火花を散らす。

プチヒーローの視界の全てが波動弾で埋まった。
己の体躯程の大きさの波動弾をただ剣のみで受け止める。
いや、受け止めるだけではまだ足りぬ。斬らねばならないのだ。
波動弾の熾烈な衝撃が、今にもプチヒーローの握るヒノカグツチを――いや、ヒノカグツチごとプチヒーローの腕をもぎ取らんとする。

――観念しやがれ、ルカリオは希少種だからなぁ……俺らが育てると、リオルもルカリ……

嗚呼。
殺意の波動弾から伝わるのは、ルカリオの始まりだ。

「悲しいよね」
波動弾が軋む。再度、プチヒーローに力が湧いてくる。

勇気を――

「でも、泣けないよね」

この島で泣いている時間など無かった。
いや、泣いたとしても何も変えられない。
だからルカリオは戦ったのだ。

「代わりに……僕が泣くよ」

この剣に――

「泣かなくていい……だから、君に会いたい」
波動に亀裂が走る。


「輝きの世界を」


勇気の剣【ブレイブ・ブレイド】が波動弾を斬り裂いた。

勢いのままに、剣がすっぽ抜けて地面を転がった。

遮る波動弾が消えた。
涙が――風に流れて、ルカリオの顔に当たった。
ルカリオの顔はプチヒーローの目の前にあった。


「      オ               オ  
   オ       オ    オ
         オ           オ    」


128 : 剣に勇気を、胸に怒りを ◆3g7ttdMh3Q :2014/03/27(木) 15:57:35 CIylRLTw0



波動弾で確実に仕留めるつもりだった。
だが、波動弾はプチヒーローに着弾する直前で止まっている。
つまり、波動弾すらも確実な武器とはいえない。

ならば、波動弾すらも囮にしよう。

波動弾は動きを止めていることで、逆にプチヒーローの強力な防護壁となっている。
今、プチヒーローに攻撃をくわえることは出来ない。
ならばプチヒーローの視界を覆う波動弾に隠れ、
波動弾が消えた瞬間。
プチヒーローが勝利した瞬間。
弛緩しきったその瞬間に、プチヒーローの息の根を止める。

斬――

波動弾が斬り裂かれた。
生ぬるい液体がルカリオの頬に付着した。
毒ではない。
プチヒーローと目があった。

関係ない。

プチヒーローが波動弾と戦う間、ルカリオは右手を波動によって強化していた。
硬質化した貫手がプチヒーローの心の臓を突く。

「つかまえた」

プチヒーローの目だけを見ていた。
口元には注意がいっていなかった。
笑っている。勝利の笑みだ。

心臓を貫かんとした貫手が、心臓に届かない肉の中で止まっている。
プチヒーローの両手に、ルカリオの腕が握りしめられている。

「止められないから……来てもらうしか無かったんだ」
「オ……オオ…………」

右手は完全に拘束されている。
ならばと、全身で抗いつつ左腕でプチヒーローを攻撃するが、止まらない。

「ベホマ」
「オ……オオオオオオ!!!!」
ルカリオの傷が癒えていく。二連戦故に彼の運動機能は低下していた。
ならば、傷が癒えれば、熾烈になる攻撃に、プチヒーローはそれでも動じない。
掴んだ右腕を決して離さない。癒しの力を流し込む。

「ベホマ!」
「オオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
まだ足りない。
身体には届いても、未だ心には届いていない。

「ベホマアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!」
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!」

流し込まれた癒しの力が、ルカリオの体内での行き場を無くし――イービルスパイラルへと流れこむ。


129 : 剣に勇気を、胸に怒りを ◆3g7ttdMh3Q :2014/03/27(木) 15:57:53 CIylRLTw0


イービルスパイラルは求めていた。
二連戦が己を傷つけている故に、修復する存在を。

抵抗なく、イービルスパイラルは受け入れる。

――ベホマを。

イービルスパイラルの機能が修復していく。
より強化された悪の波動が、ルカリオに指令を送る。
勝利せよ、と。

――ベホマを。

過剰に送られた治癒魔法を以て、イービルスパイラルはルカリオに指令を送る。
トラウマを抉り出し、復讐対象を人間から魔物に。

――ベホマを。

イービルスパイラルの処理機能が追いつくか。
演算しきれるか。この治癒の嵐を。勇者の祈りを。


――ベホマを。

もういい、やめてくれ。
耐えられない。
やめてくれ!!
ルカリオ!プチヒーローを殺せ!!

送られた指令に、ルカリオは沿って行動する。
だが、気づいていただろうか。
ルカリオがいつまでもプチヒーローを仕留め切れないのは、それは誰の意思のためなのか。
FFDQ板――彼の頭の中で、ずっとそれが回っていた。
ベホマ――その言葉はボナコンに教わった。
ルカリオは、ただ思い出に寄り添った。

――ベホマを。

イービルスパイラルに亀裂が走る。
とうとう死への螺旋が限界を迎えたのだ。
だが、未だだ。
未だ、イービルスパイラルは壊れない。

己に意思はない。
だが、悪を――!大いなる悪を成すことこs「ベホマ

ベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマ
ベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマ
ベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマ
ベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマ
ベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマベホマァッ!!」

何かを、イービルスパイラルが破壊される間際に思ったとしても。全ては消え去った。
流し込まれた悪は、指令は、より膨大な癒やしが流しこまれることで、その命を終え、
役割を終わらされたイービルスパイラルは粉々に弾け飛ぶ。

殺意の波動が消える。

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
勇者は雄叫びを上げた。
勝利した。
ファンファーレが心の中で鳴り響く。


130 : 剣に勇気を、胸に怒りを ◆3g7ttdMh3Q :2014/03/27(木) 15:58:10 CIylRLTw0
「ああ……」
雄叫びを上げるプチヒーローを横目にルカリオは思い出していた。

そうか、二人が死んだのか。

己が彼らを殺した時、その意思はイービルスパイラルの元にあった。
だから、思い出す記憶はどこか他者の行動を見るような心持ちになる。

――やっぱ奇跡に頼るってのは都合良すぎたか……しゃあねぇ……

――スパ2X豪鬼は、禊使われへんわ、ボケ……

こんなにも彼らの言葉が焼き付いているというのに、何も思えない。
罪悪感に苛まれることもない。
自分はこんなにも、冷血な存在だっただろうか。

今まで起こったことは何もかもを覚えている。
そして、これからのことは決して忘れない。

ルカリオがぐるりと周りを見回すと、山のように巨大な建造物が見えた。
いや、あれは建造物ではない――戦車だ。
俺はその声を聞いた。

――これよりワシこと、モンスターマスターモリーは、ただ一人仲間モンスターを連れて、この闘技場へと乱入させてもらおう。

俺は……

――ワシを殺せば、この殺し合いが終わると思い込むボーイよ、それは有り得ない。

俺は……

――何故か、諸君らに勝利はないからだ。  今回!!訓練に訓練を重ね、鍛え上げた最強のモンスターを用意させてもらった!!

「俺はあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」

己の感情は死んでいた。
イービルスパイラルが操っていたのは、己の憎悪のほんの上澄みだ。
この憎しみは――決して、今までの様なものではない。

「モリイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!!!!」
蘇った。
苛烈なる憎悪とともに、今ルカリオは蘇生した。

噴き上がる、溶岩のように憎悪が。
そして今、ルカリオはその憎悪によって操るべき力を知っている。

――ドクン

プチヒーローの心臓が高鳴った。
ルカリオが手繰ろうとしている力は、殺意の波動のそれであるはずだ――だが、違う。
今までのものとは違う。純度が違う。今までのルカリオには殺意しか無かった。
だが、今のルカリオには溢れかえらんばかりの憎悪がある。
ルカリオの波動は濁りきっている。

「君は……」
「俺は!!!」
プチヒーローが制止する間も無く、ルカリオは駆けた。

「殺す!!!!!!!!」
「待って!」

イービルスパイラルからの呪縛から解き放たれたルカリオは、自らを憎悪の鎖で縛り再び本能に隷属する身となった。
だが、違うのだ。
プチヒーローもルカリオ本人すらも気づいていないところで、変化が起こっている。

ルカリオの胸にそれはある。

「父さん……母さん……ルカリオ……キノガッサ……タコ……みんな……」

殺した者、殺された者。
何もかもをも、胸に刻み込んで――ルカリオは戦いに赴いたのだ。
深い情が反転した殺意をモリーへと向けて。

【E-4/二日目/黎明】

【ルカリオ@ポケットモンスター】
[状態]:殺意の波動
[装備]:
[所持]:ふくろ
[思考・状況]
基本:モリーを殺す

【プチヒーロー@ドラゴンクエスト】
[状態]:体力消費(小)、魔力消費(大)
[装備]:ヒノカグツチ@真・女神転生Ⅰ
[所持]:ふくろ(中身無し)
[思考・状況]
基本:勇気を与える者になる
1:ルカリオを追う

【備考】
オス。泣き虫でこわがり。プチット族に期待されていたプチット族の勇者。一人称は「僕」
死後、心をジュペッタの死体に宿らせることで復活しました。


131 : ◆3g7ttdMh3Q :2014/03/27(木) 15:58:32 CIylRLTw0
投下終了します。
全員予約します。


132 : 名無しさん :2014/03/27(木) 16:13:08 v4bS3Bzk0
投下乙!
そして全員予約きたあああああああ!
今回の見所はなんといってもベホマ!
イービルスパイラルを過回復させ、偽物の悪意を癒やしで上書きし、やめろやで笑わせるベホマ無双!
面白かったです


133 : ◆5omSWLaE/2 :2014/03/27(木) 16:38:44 slyu2mkk0
最強の癒やしの魔法ベホマ。
そのベホマだからこそ、誰かの心を救うのに足るだけの力がある。

小さな勇者と波導の勇者による一騎打ち、実に素晴らしい戦いでした!
ブレイブ・ブレイド――原作でのギルガメッシュのライバルが使った技を、
この闘技場でプチヒーローが踏襲していたのが、個人的に凄くシビれました。
そして洗脳が解かれ、本来の憎悪の矛先を思い出すルカリオ……。
誰もが待ち望んだであろう全員予約にて、いよいよモリーへとぶつける事が出来るのか!?
超期待させて頂きます! 投下お疲れ様でした!


134 : 名無しさん :2014/03/28(金) 19:43:25 .ZkEFkX.O
投下乙です。

邪悪消滅!
そして、遂にモリー戦か!?


135 : 名無しさん :2014/03/28(金) 19:52:34 q/Tz6fA20
投下乙

ベホマ万能説
オルトロスあれが最後の言葉とか悲しいな…


136 : 名無しさん :2014/04/01(火) 03:55:43 NgLRLos20
みんな、WIKIの告知を見るんだ!
そっかー、ドラマCDかー(棒
当然のように貴重な枠を使いやがる謎六本木勢に期待


137 : 名無しさん :2014/04/01(火) 22:43:03 YC3uu0YE0
タブンネの声優だけグレードが低すぎる気がするんですがそれは…


138 : ◆3g7ttdMh3Q :2014/04/03(木) 06:53:10 bI58RQP.0
予約延長します。


139 : 名無しさん :2014/04/05(土) 01:33:27 PxK9.id60
了解です


140 : ◆3g7ttdMh3Q :2014/04/10(木) 15:45:24 wFHXafqk0
完成まで未だ時間がかかりそうです。
様子を見て、予約が入らなければ全パートを投下します。


141 : 名無しさん :2014/04/12(土) 13:50:25 ELPSpWGM0
承知しました


142 : 決勝(1) ◆3g7ttdMh3Q :2014/06/05(木) 23:10:01 LTjdIL0A0
予約破棄から、2ヶ月経過していることもあり、
流石に何の報告も出来ていないというのも問題ですので、
途中までではありますが、切りのいい部分まで投下させていただきます。


143 : 決勝(1) ◆3g7ttdMh3Q :2014/06/05(木) 23:10:28 LTjdIL0A0



――かたり、かた、かた、かたかたかた

生き残った者の特権の一つは感情を露わに出来るということだ。
泣き、笑い、怒り、喜ぶ――死者には出来ない、死者の表情にあるのは最期の感情の残滓のみ。
ならばこそ、チャッキーは嗤う。殺した者の分も含めて、何もかもをも踏みにじって、嗤う。
下顎が上顎が噛合う度に、かたりと音が生じる。
ただの音だ、だが――彼にとっては笑いだ。人形故に己の頬は上がらない。
故に、これが己に張り付いた微笑だ。世界に産声を上げた己の笑いだ。

ああ――この時間が一生続けばいいのに。
不自然なまでに整えられた地面を噛みしめるように、愛おしむように、しっかりと、一歩ずつ足跡を刻んでいく。
一歩一歩足跡を刻む度に、距離が縮んでいく。ああ、いっその事――このまま永遠に歩いて行きたい。

だが、何時までも楽しい時間は続かないのだ。

辿り着いた。
ゆっくりとチャッキーは上を見上げた。
己がいる部分を最下層にして、すり鉢状に観客席がある。
急造――故に新造、そこには本来あるべき血の跡も破壊の跡も、あるいは未だなお生きているかのようにこびりつく怨嗟の念も無い。
あるのは、ただ人の群れ。
そして、それに付随する狂的な熱気だけ。
莫大な金と、矮小な命を賭け、最期の戦いを観戦しに来た人間達。

そう、己が蹂躙すべきメインディッシュだ。

「ふざけるなー!」
「殺し合えー!!」
「死ねー!」
「モリーに挑みかかれー!!」
罵倒と共に降り注ぐのは、観客の投げつけたポップコーンだ。
チャッキーはバトルレックスの骨を抜いた。
アトランダムに投げつけられたポップコーンが、鋭く尖った竜の骨に縦一列に綺麗に貫かれ、整列する。
骨付き肉ならぬ、骨付きポップコーンといったところか。

「返品だ」
射――と、観客席に向けて竜の骨が飛ぶ。

「ぎゃ……」
最初に漏れたのは反射的な音だった。
だが、右目から滴る物が口に触れた時、彼は認識し、叫んだ。
「あああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
骨付きポップコーンの目玉添だ。
投げ槍の様に放られた竜の骨はポップコーンを投げつけた観客の一人の右目を中身ごと射抜いた、

恍惚の時だ。
世界中のどこを探してもこれ以上に楽しい時間はないだろう。
チャッキーはうっとりと悲鳴に耳をすませた。

「や、」
「や?」
右目から脳みそまでを貫かれてなおも、喋る元気があるものなのだろうか。
しかし、残る左目が爛々と殺意に燃えている。
成程、殺意――すなわち精神が肉体の死を超越して、男を動かしているのか。

「殺れッ!奴を!!殺せッ!!死なせろ!!」
なんという男だろう。
殺れ、殺せ、死なせろ、全て同じ意味だ。
たった一度言えば済むだけの事じゃないか。
スマートじゃない。

――かたり、かた、かた、かたかたかた

「おお!始まるのか!!」
「こっちでも人間VS殺人人形の決闘が!」
「ようし!俺はチャッキーに500賭けるぞ!!」
「だったら俺はオッサンに1000だ!!」

戦いに対する熱狂が、観客の恐怖を麻痺させている。
ここは戦いの最前線。安全地帯など――ましてや客席など、どこにも無い。
誰もが、気づいている。そして、気づかないフリをしていた。
獣が己の身を裂くその時まで、彼らは永遠に偽りの観客席にて、熱狂に心体を燃やし続けるのだ。

復讐鬼が、ありったけの球をふくろから取り出した。
中央部にスイッチと黒いラインがある。
そのラインで上部の赤色と下部の白色が分離しているのだ。
名を――モンスターボールと言う。

「行けェ!行けェ!行けェ!行けェ!さぁ!さぁ!さぁ!さぁ!行け行け行け行け行け行け行け行け行け行け行けェ!」
「来い」


144 : 決勝(1) ◆3g7ttdMh3Q :2014/06/05(木) 23:11:23 LTjdIL0A0


――来い、という声を確かにハムライガーは聞いた。

暴走したCOMPは、世界はそれ単一を以て完結するという欺瞞に満ちたベールを剥ぎ取った。
上がった幕の向こうに見えるものは何だ。楽園か。否。
だが、ハムライガーにとって少なくとも、この場所が楽園であることは絶対に有り得ず。
そしてまた、開かれた門の向こう側の世界が――楽園でないことは、誰にも証明できない。
楽園とは何処の事だ。この島で無い場所のことだ。
己の利己主義のために、誰かを裏切らず、誰かを殺さず、誰かに裏切られず、誰かに殺されず、帰還を求めず、帰還を求められず、
見上げず、見上げられず、喜ばず、喜ばれれず、祝わず、祝われず、
そこ以外ならば、もう――何処だって楽園だ。

気づけば、日付は終わっていた。もう誕生日なんかじゃない。
それでも、帰らなければならない。

門の向こう側から、誰かが手を振って己を呼びかけてくれている。
その声は誰よりも優しくて――
その姿は何よりも暖かくて――
ああ、ふうわりと風に載った甘いクリームの匂いが鼻をくすぐる。

帰らなければならない。

例え、その門の向こうが、神曲に語られし地獄であるとしても。
己以外の誰も、その声を聞けなかったとしても、その姿を見れなかったとしても、その匂いを嗅げなかったとしも。

はっきりと自分だけは感じているのだ。■■とは違う。ブリーダーさんを。

「だから邪魔を――」
モルボルには見えないのだ、ハムライガーの帰るべき場所が。
なれば、一片の慈悲もなくハムライガーの帰還を邪魔してみせる。
いや、だからこそか――?ハムライガーの罪を裁く執行人であるが故に、モルボルはハムライガーに安楽な終焉を許さぬのか。
そうであったとしても、お願いします。


145 : 決勝(1) ◆3g7ttdMh3Q :2014/06/05(木) 23:11:41 LTjdIL0A0
僕を――

「するなァァァァァ!!!!!」

              ――見ないで。

叫びと共に放たれたブリザードは、容赦なくモルボルの肉体を襲う。
ガブモンに対しては有効打とならなかったこの冷撃は、
一切の容赦なく、無慈悲なる冷気を以ってモルボルを襲う。

「くッ!」
巨体故に猛吹雪を完全に避けきることは出来なかった、右触手の三割が行動を停止する。
冬の風の冷たさに痛みを感じることは往々にして有り得ることだが、
モルボルにとっては幸運な事に、そしてモルボルの肉体にとっては不幸なことに痛みは存在しなかった。
「……さらば我が触手!」
そこからのモルボルの行動は早かった。
クッキーのように脆くなった冷凍触手を健全な触手により破壊、破棄す。
余計な荷物を抱えている余裕はない、今背負っている王位【もの】はあまりにも重い。
触手はそのうちに再生できるであろう、だが、今躊躇えば戻らないものがある。

「おぬし……ええい!」
ハムライガーに言葉を掛けようとすれば、召喚された悪魔が牙を剥く。
全ての悪魔が真っ先にモルボルへとかかる。
――成程、溺れる犬は打て。か。
傷を負い、敵を増やし、それでも今はハムライガーの元に攻撃がいかないことをモルボルは安堵した。
「ワシは寛大じゃ、どうだ……王たるワシに仕えてみるというのは?」
「GAHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!」
「やれやれ」
少々気落ちしないでもないが、元々会話の成立は期待していなかった。
召喚されし三匹は特異な能力を有さないのか、技も魔も無く存在に元々備わった爪が牙が、あるいは体躯の乱雑な攻撃を試みる。
それらの攻撃に対し、モルボルがやはり触手での肉弾戦に応じたのはサンダガあるいは臭い息で、万が一にでもハムライガーを巻き込まぬため。
一体目、突進してきた妖獣を触手でいなす。
その勢いのままに宙を舞い、妖獣はモルボルを討ち果たすためのスピードでもって、己の体を地面へと打ちつける羽目になった。
それと同時に、二体目モルボルの触手に噛み付き、そして数十回転の末に宙を舞うこととなる。
その時点ではモルボルも未だ己の爆弾には気づいていなかった。

三体目、右からの攻撃に一瞬反応が遅れた。
このことに関して、一切の問題はない。
敵の突進が直撃する、このことに関してもモルボルの致命傷足り得ない。
だが、威力そのものは問題ではない。
三体目の妖獣を振り払い、そこでモルボルはバランスを崩し倒れこんだ。
触手の数の減少、人間で言えば肘から先の消失に等しい。
失って早々に慣れる、そういうものでは決してないのだ。

「 さ よ な ら 」
完璧なタイミングで、二度目のブリザードがモルボルを襲った。
目前にした冷たい死の感触が、モルボルの時間間隔を限りなく濃縮する。
冷気を肌に感じ、その冷たさが痛みより変わるよりも先に無へと変わっていくのを、どこか傍観者染みた視点で感じ、
いくつもの、いくつもの、思い出が、モルボルの心を駆け抜けていき、
何もかもが真っ白になり、そして、この会場で、モルボルが、何をしたを、何が出来なかったか、
全ての記憶が今へと追いつき、そして――


――まだ、貴方は
――まだ、ワシは


――死ぬべきじゃない、
――死ねはしない、


――生きる価値のある、
――生きる価値のある


――大切な命だ
――大切な命を

「導け、王者の雷」


146 : 決勝(1) ◆3g7ttdMh3Q :2014/06/05(木) 23:12:32 LTjdIL0A0



すぐにでもスラリンガルによる戦いを始めたいところであったが、
モンスターにも準備がいるのと同様に、モリーにもまた、ある準備が必要だった。
そのためのちょっとした寄り道を終えたモリーは、巨竜にも匹敵する重量の鎧を纏ってのシャドーによるウォームアップを行っていた。


「むっ……」
今、見たものの衝撃がモリーの動きを止めた。
天より降り注ぐ莫大なるエネルギー、王者が呼びしそれはスラリンガル越しにもモリーの目にしっかりと焼き付いている。
あの光を探して己は戦い続けていた。
勇者はデイン系統という雷を操る呪文を使うと、お伽話で読んだことがある。
そう、お伽話だ――勇者は太古の昔に消えてしまった。
少年の頃の憧れだった勇者は、憧れのままに永遠に終わってしまった。
勇者の証明たる雷はただの自然現象という事実の前に、手の届くことのない光エネルギーと熱エネルギーと音エネルギーの世界に行ってしまった。
だが、少年の頃の憧れは今再び――実体を持って、己に手を差し伸べてくれた。

そうだ、少年の頃。己は誰よりも――近所の子供よりも、年上のガキ大将よりも、学校の先生よりも、モンスターよりも、強かった。そして、それで終わりだった。
だから、お伽話の世界の勇者に憧れた。勇者にはいたのだ。自分よりも圧倒的に強い、魔王という敵が。
勇者はどんな悪にだって立ち向かい、勝利する、最高に格好いい奴だ。
そんな勇者は、誰よりも強い己に勝てるのだろうか――いや、そんな勇者にこそ、勝ちたかった。

だが、現実に勇者はおらず。
少年から青年になり、そして壮年、中年になって久しい今でも、己を満足させる相手とは出会えなかった。
勇者は己の世界にはいなかった。

「幸福が罪というならば、わしが受ける責め苦は地獄で永遠に許されぬか、あるいは魂を消されて余りある程の罪状だろう……望むところだ。
これから訪れる数分の至福のために我が人生はあった……後悔などするものか!!」
未だあの光は目に焼き付いている、だが――もう呆けている時間はない。
己も戦場に立った。そしてこれより敵が来る。
スラリンガルのガラス越しに窺えるのは、怒りの形相でこちらへと向かうルカリオに、勇者――ジュペッタだ。
いや、プチヒーローと言うべきだろうか。いや、どうでもいいことだ。
勇者と戦える――あるいは、勇者に匹敵する最強のモンスターと戦える、あるいは己が蟲毒で創り出した魔王と戦える、重要な事はそれだけだ。
ごほん、と咳払いをしてスラリンガル内蔵のカメラにピースサインを送る。
戦いが始まる。視聴者の前に、何か一つメッセージを送ろう。
己の人生の中で最高の戦いを彩るメッセージを。

「勝って来る」
そう言って、スラリンガル内部の滑り台より流れ落ちてきた隕石(この場合、実際の隕石ではなく、流星の如く敵に降り注ぐ砲弾を指す)を両手に十個ずつ持ち、砲台へと向かった。

幼いころ求めていた憧れは、すぐ側にある。

「モリイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!!!!」
雄叫びと共にルカリオはモリーの元へと駆ける。
遠目から見ても、その巨体故にスラリンガルの位置ははっきりとわかる。
そして、その巨体故の敵の強大さもまた理解しているが――感情が、それを度外視させる。
元々、敵が強大だから逃げる――そういう戦いではなかった、そして実際目の前に物質的な形で強大な敵を出されたとしても、関係ない。
拘束によって抑えこまれていた感情は過剰なまでにルカリオという存在を完全に再生させた。

心理的な障害は消え、物理的な障害もまた、闘技場の完成故にルカリオの進撃を阻めず。
ルカリオは、今!
スラリンガルとの戦闘圏内への第一歩を踏み出した!

――いつか、そん時が来るのかもしれないけど、今回は俺の番だ。俺の見せ場だ。だからしっかり、俺のかっこ良さを伝えてくれ

「俺は!今がその時なんだよ!!ボナコン!!」
友の言葉と共に、ルカリオは両手の中に波導を練り上げていく。
あの時飛行船に放った波導は届かなかった、だが今回は――ボナコンの分まで、波導を込めて、放つ。
絶対に届く。届かないわけがない。


147 : 決勝(1) ◆3g7ttdMh3Q :2014/06/05(木) 23:13:40 LTjdIL0A0


(俺はお前みたいになれるか?)
ルカリオは心のなかで、ボナコンに問うた。
(なれるわけがない)
ボナコンは答えない。死んでしまったのだから。
答えたのは自分の声だ、人間に支配され罪を背負った、ルカリオという名の獣の声だ。

(だから……)

殺意の波導――そう、ルカリオがイービルスパイラルの支配下にある時、波導は波動だった。
何が違うかといえば、その両方は限りなく同値に近いために差異は見いだせない。
ただ、はっきりと違いを述べるならば、これはルカリオ本来の力だ。

赤々と毒々しく燃える波導が球状に練り上げられ顕現する。
あの時と同じ、ルカリオの持てる全ての気を込めた波導弾だ。

ただ、隣にボナコンはいない。
ルカリオの家族も、友も、恋人も、仲間も、いない。
クー・フーリンも、ジャックフロストも、キノガッサも、誰もいない。
すれ違った相手も、もういない。

「人間ンンンンン!!!!死ねえええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!」
手の中に収まりきらないほどの、一生命が持つには大きすぎるほどの、極大の波導弾が今、スラリンガルへと放たれた。
放たれた波導弾は徐々に加速をつけながら、真っ直ぐにスラリンガルへと向かう。
と同時に、スラリンガルの二対の砲台より放たれた流星群が、ルカリオを襲う。
避けなければならない――と、頭では理解している。だが、体はそれを許さない。
幾度もの連戦――そして、この波導弾。ベホマで回復したとはいえ、PPが回復したわけではない。
足りない分のPPごと、体力全てこの波導弾に注ぎ込んだ。

「報いか」
人間に操られていた――そんな言い訳など、殺した者の前で出来ようものか。己はこの手を罪無き者の血で染めたのだ。
仲間を殺した報いとして、最も憎む相手に殺されるのか。
アイロニーが効きすぎている。だが、当然の結果と言える。

仲間か――そうか。
一緒にいた時間が短すぎて、自分が抱いた思いに、違和感すら覚えていた。
だが、その違和感はすぐに消えて――ただ、自分の思いにはっきりと気づいた。

そうか、私達は仲間だったのか。

死の直前にもならなければ、はっきりと言葉にしようだなんて思えなかった。
奪われた仲間達のことばかりを思っていて、今この場所にいた仲間達を仲間と呼ぼうなどとは思わなかった。

「……皆、ごめん」
すぐ目の前にある死を前に、ルカリオはゆっくりと目を閉じた。


148 : 決勝(1) ◆3g7ttdMh3Q :2014/06/05(木) 23:14:13 LTjdIL0A0

「ギガスラッシュ!」
暗闇の中、ルカリオは勇者の声を聞いた。
瞬時に目を開くと、力を失った流星群が真っ二つになって、あらぬ位置に落ちていく。

「お前は……」
「あきらめちゃ、駄目だ」
必死でルカリオを追いかけてきたのか息は荒く、そして今放った技のために疲労は隠しきれぬ様子だった。
それでもなお、プチヒーローはルカリオを庇うように剣を構えてルカリオの前に立っている。

「やめろ……」
口に出してからルカリオは気づく、自分は何に対してやめろと言ったのだろう。
己の死を邪魔したことか、己のためにあの巨大なモンスターに立ち向かうことか。

「私のために……死ぬな」
「死なないよ」
事も無げに、プチヒーローは言葉を返した。
見れば、恐怖だろうか。身体がわずかに震えている。
それでも、ルカリオの前に立っている。

「生きて帰って、色々としたいことがあるんです。
死んだ彼らのことを残された方たちに伝えたり、ちゃんとした墓を元々居た場所に建てたり、
この場所で生き残れた皆を、元の場所に帰る手伝いをしたり……生きて帰ってしたいこと、本当に色々あるんです」
スラリンガルの方を向いているために、プチヒーローの表情は見えない。
だが、その声に涙が混じっていることを、ルカリオは感じた。
失ったのは己だけではない、そんなことはルカリオにとって解りきっていたはずのことだった。
ただ、この場所では、初めての出会いだった。

「名前を教えてもらっていいですか?」
「ルカリオだ」
「ルカリオさん……一緒に帰りましょう」

――森に帰って仲間を助けたとして、その後はどうする?  人間と敵対して生きるのか、それとも人間達のいない場所でひっそり生きるのか?

プチヒーローの言葉に、クー・フーリンの言葉が蘇った。
帰れるのだろうか――その先があるのだろうか。
飛行船に波導弾を放とうとした時、己は帰ることを諦めた。
仲間への思いよりも人間への憎しみが勝っていた。

ジャックフロスト、キノガッサと会った時。
己は答えへと手をのばそうとしていた。
何のために人間を殺したいのか――仲間とともに平穏に暮らすためか、憎悪の感情を発散したかったのか。

「どこに……?」
この言葉が、今のルカリオにとって最も相応しい言葉のように思えた。
どこに帰ればよいのだろう、誰が待つ場所へ帰ればよいのだろう。

仲間は救えるのだろうか。
自分は何をしたいのだろうか。

「わかりません」
当然だ、とルカリオは思った。
自分でもわからないのに、他者がわかるはずがない。

「だけど僕は……ルカリオさんと一緒に、いつか帰るところを探す手伝いが出来ます。
わからないなら、わかるまで、探し続ければいいんです。
ここじゃなければ……きっと、探す時間はいっぱいありますよ」
「そうか……」

きっと言葉にすることで、お互いがお互いに理解している事柄に誤差が生じているのだろう。
それでも、探し続けるなどとは考えたこともなかった。

「私は……私達を苦しめた人間達を殺したい、元の生活を取り戻す以上に……私はそれを望んでいるのかもしれない。だから――」
「ジュペッタは……僕の友だちは、人間のご主人様が大好きだった」
ルカリオの言葉を遮って、プチヒーローが喋り出す。
人間が大好きだった、その言葉に暗い衝動が喉元からこみ上げてくるも、ルカリオは咄嗟に抑えた。

「僕とルカリオさんの姿は違います、僕とジュペッタの姿も、僕とギルガメッシュさんの姿も、この場所で出会った誰一人として僕と同じ種族のモンスターはいませんでした。
ルカリオさんが憎むような人間は……います、今ここにいる人間だって……僕達を嘲笑っているッ!でも、全員が全員……同じような」
最後まで言葉を言い終えぬまま、ルカリオがプチヒーローの胸ぐらを掴みあげた。
「私達を好奇な目で見る……あの観客達が!!今まさに私達を殺そうとするあの男が!!ボナコンの死を嘲笑ったあの人間達が!!
証明じゃないのか!?人間は皆……ドス汚れていると!!」
「僕は……信じています!!人間ではなく、自分のご主人様が大好きだったジュペッタを!!」
「それで俺にどうしろっていうんだ!!」


149 : 決勝(1) ◆3g7ttdMh3Q :2014/06/05(木) 23:14:24 LTjdIL0A0

「わからない」
「は?」
「わからないんです……僕はルカリオさんが怒るのも当然だと思ってます、でもジュペッタの思いも……真実だと思うんです。
ただ、僕はルカリオさんに殺してほしくない。復讐が正しいとか、正しくないとか、わかりません。
でも……ルカリオさんは同じになってしまうと思うんです……ルカリオさんが憎んだ人間と同じに」
「私が……人間と同じに?」
「僕たちはモンスターとして、一緒くたにこの闘技場に集められました。ルカリオさんも、一緒くたに人間を殺すんですか?」
「それとこれとは……」
「違うと思います、でも僕から見れば……同じに見えてしまうんです…………」
「くっ……」
「僕が手伝います、だから……一緒に帰れる場所を探しませんか、お願いです」

何が正しいのだろう。いや、何一つとして正しくないのだろう。
ただプチヒーローは、ルカリオに手を差し伸べている。それだけは真実だった。

「私はここに来て、二匹を見殺しにし、三匹をこの手で殺した、それでも私に帰れる場所はあるのか……」
「だから、探すんです!!」
「消えない罪を背負った私がか!?」
「消える罪なんてあるわけないじゃないですか!!それでも生きるしか無いんです!!」
「何故だ!?」
「君は生きてるじゃないか!!」

何か言葉を返そうとして、プチヒーローの目が潤んでいるのをルカリオは見た。
己に言った言葉なのか、いや――プチヒーロー自身が自分に言っている言葉ではないか。

「あの時死んだなら、良くはなかったけど……それでもしょうがなかった!
でも僕は生きてる!ルカリオさんだって生きてる!
だったら死ぬよりもこの世界で出来る事は多すぎるぐらいにあるんだ!まだ死んでる場合じゃない!!
それに伝えなきゃ……ジュペッタの死を、ギルガメッシュの死を、ギリメカラの死を、ゲルキゾクの死を。
僕達が罪を背負ったというなら、その罪を告白するまで、絶対に死ねないんです。
罪悪感があるなら、死んで楽になるより、生きて苦しみ続けてください」
「私は……」

「グッドな攻撃をありがとうボーイ達!!」
何を言おうとしたのだろうか、だがスラリンガルに内蔵された拡声器から放たれたモリーの声がそれを掻き消す。

「さて……」


150 : 決勝(1) ◆3g7ttdMh3Q :2014/06/05(木) 23:15:41 LTjdIL0A0


「……やられたかッ!」
地を割かんばかりに、ベヒーモスは叫んだ。
この殺し合いの破壊に成功し、後はターミナルから脱出するだけであったはずだ。
しかし、闘技場の完成によって完全に地形は変化し、ターミナルに辿り着くどころか、ターミナルの位置すら確認出来ない。
その上に――ベヒーモスは忌々しげに、スラリンガルを見上げた。
小城の如き巨体を誇る青い玉葱を模した本丸は城壁で覆われ、下にはその巨体を動かすに足る車輪が付いている。
青い玉葱正面部に備え付けられた二対の砲台の砲口の巨大さから、その砲弾の大きさとその威力は容易に察せられる。
ここまで来て負ける気は一切しないが、相手の強大さは認めざるをえない。
とにかく生き残りと早急に合流しなければならない、あの巨体に轢かれるか、あるいは砲撃を喰らえば――メテオカウンターを発することも出来ず、死ぬ。

「……なッ!?」
他の生き残りを探し、駈け出してからしばらく経過した後のことである。
付かず離れず、スラリンガルを監視しながらも移動していた。
そして、ベヒーモスは見たのだ。
スラリンガルに叩き付けられた超質のエネルギー弾を。

「戦っているのか……戦っているのだな!」
その超絶の威力。スラリンガルの城壁を破壊し、一時的な行動不能状態に陥らせているのか。
好奇と言うべきか、今――あの攻撃を放った者と接触するか、あるいはスラリンガル下部の門より侵入し、直接的にモリーを打ち倒すか。
少なくとも、今あの巨体は動きを止めているが永久にそのままということはあり得ないだろう。早急に決断しなければならない。

「リジェネだと……」
しかし、どちらの選択肢を取るにしても――そのための時間は余りにも短すぎた。
スラリンガルの自己修復機能が働き、城壁の破損箇所が肉が盛り上がるように、新たな城壁が湧き上がっていく。
ベヒーモスは、一定時間に応じて自動的に回復する治癒魔法であるリジェネといったが、概ねその認識で間違いはない。
ただ、それ以外にもスラリンガルには恐るべきスラリンガル真実が隠されているが、彼らも――また、我々も未だその真実が届くところにはない。
今はただ、その真実が明かされる時まで備えよう。

あれ程の攻撃でも、一撃でスラリンガルを破壊するところまではいかない。
そして、小規模の攻撃を積み重ねても一回のリジェネによる回復量が上回り、破壊するに至らない。
ならばどうするか、考えるまでもなくベヒーモスには手段がある。

あのエネルギー弾には劣るとも、宇宙より降り注ぐ隕石の一撃一ならば、リジェネの回復量は上回れる。
それを何度も叩きこんでやれば、完全破壊はそう難しいことではない。
そう、メテオならば。


151 : 決勝(1) ◆3g7ttdMh3Q :2014/06/05(木) 23:15:51 LTjdIL0A0

「グッドな攻撃をありがとうボーイ達!!」
拡声器によって倍増されたモリーの声が、ベヒーモスの思考を強制的に中断させる。
魔法でも掛かっているのだろうか、その声はベヒーモスの脳内に過剰なまでにうるさく響く。

「さて……十匹になるまで生き残ったボーイ・アンド・ガール!まずは君達の名前を讃えさせてもらおう!!観客のレディース・アンド・ジェントルメンも盛大な拍手を!!」
「このタイミングで……舐めているのか!?」
ベヒーモスの声はモリーに届かない、いやこの場所にいる誰の声もモリーには届かない。
だからこそ、彼らはこの闘技場に連れて来られたのだから。

「ベヒーモス!レナモン!グレイシア!ソーナンス!ピクシー!プチヒ……ジュペッタ!ルカリオ!チャッキー!ハムライガー!モルボル!
よくここまで勝ち残ってきた……おめでとう!!私は君達を心の底から祝福する!!」
モリーの言葉と共に聞こえ出した観客席からの拍手は津波のように勢いを増し、音の洪水となって闘技場全域に染み渡った。

「よくやった!」
「大儲けさせてもらったぜ!」
「楽しかったぜェ!」
「とっとと死にやがれ!」
「ナイスファイトだった!」
「面白かったぞ!」
「ありがとうモリー!」

原始的な音の熱狂は、言語を伴って闘技場へと降り注ぐ。
そうだ。この闘技場で起こった何もかもが、観客にとっては――ただの娯楽だ。

「何故、このタイミングで言わせてもらったのか……答えは一つ、今しかないからだ!
私の攻撃は迎撃され、挑戦者が王者たる私に完璧な一撃をかまし……観客席の熱は最高潮!
そして何より……ここまで生き残った十匹が十匹とも、まだ生きている!!そう……まだ私に殺されていない、今はまだ、ね」
「成程……」

舐められている。モリーの言葉を聞いて、そうベヒーモスが判断するのは容易いことだ。
腹立たしい、その気持ちを内に沈め今聞いた情報を冷静に処理する。

話だけに聞いていたエアドラモン――確実に人間の味方になる者は死に、その友であったアグモンは死んだ。
何があったかはわからない、だが決着を着けたのだろう。
朗報といえば、ルカリオが生きていることだ。
すれ違っただけとはいえ、性格の概ねなところは知っている、ここまで来た以上、協力は問題なく行えるだろう。

そうか、一匹だけか。

元からモリー打倒のために、狂獣でなければ誰とでも組むつもりであったが、
知っている生き残りが一匹だけとは、この場所で己が会わないままに死んだ者の多さに乾いた笑いすら出る。

自分がこの場所で行ったことに砂粒一粒程の後悔もない、出来うる限り最善を尽くしたと言える。

それでも一匹か、と思う。
悲しむでもなく、怒るでもなく、ただ、困惑に似た奇妙な感情だけがある。

「そうか……」


152 : 決勝(1) ◆3g7ttdMh3Q :2014/06/05(木) 23:16:58 LTjdIL0A0


モリーの言葉を聞き、グレイシアは何かを言おうとして、言葉にしあぐねていた。
グレイシアは鮫竜を知っている素振りを見せていた、それでもあえて聞こうとは思わなかった。
もう一度会って、直接名前を聞きたいと思っていた。

「呼ばれなかったのだな、彼の名前は」
努めて気丈に振るまい、事実のみをキュウビモンは言った。
もとよりこの場所において絶対は無い。覚悟は出来たと思っていた。
そんなもの、ただの思い込みだった。
遥か昔に置いてきたはずの感情は、この小さな島で取り戻してしまっていた。

「レナモン……」
「別に悲しいっていうわけじゃないんだ……でも、胸に穴がぽっかりと開いてしまったような、いやこれが悲しみなんだろう…………私は、この感情をずっと忘れていたんだ」
ほんの少しだけ、キュウビモンは目を伏せた。それで十分だった。己もまた、泣いてなどいられない。

「教えてくれ、グレイシア……彼の名を」
「……ガブリアス、だと思います」
「そうか、ガブリアスか……ありがとう、グレイシア」
ガブリアス、ガブリアス、と名前を何度も呼んだ。返事はあるはずがない。
彼との記憶は、思い出というにはあまりにも殺伐としていた。
それでも、もう一度会いたかった。

「……レナモンさん」
「言うな、何も……泣いてなどいられない、だろ?」
慰めの言葉を掛けようとしたグレイシアを、キュウビモンは制止する。
優しくされれば、きっと今懸命に堪えているものを抑えきれなくなってしまう。
ただ、彼女自身は気づいてはいなかった。
己の目から伝うものを。

「……ええ、泣いてなど、いられません」
風の中に溶けていく涙を、グレイシアはそっと凍らせて、結晶に散らせた。
誰も泣いてなどいない。
誰もキュウビモンの涙など、見てはいない。

「急ぐぞ……もう、名前を呼べなくなるのは嫌だからな」
キュウビモンのスピードが更に上昇する。完成した闘技場にキュウビモンの足を遮るものはない。
一歩進む度に、スラリンガルが近づく、終わりへと近づいていく。


153 : 決勝(1) ◆3g7ttdMh3Q :2014/06/05(木) 23:17:11 LTjdIL0A0

だが、終わらない。拍手の音が鳴り止まない。
何時までも何時までも、パチパチパチとピクシーの脳内で反響を繰り返す。
キュウビモンの背に揺られながら、ピクシーはかつて闘技場で戦っていた日々を思い出していた。

ああ。煌めいているように思えたニンゲン達の視線は、何よりも己を沸き立たせる拍手の音は、
こちらの心まで弾ませるような客席から聞こえる歓喜の声は、あんなにも醜く歪んだものだっただろうか。

「違う……」
否定の言葉が口を衝いて出た。頭の中で留めておくにはこの考えは膨らみすぎていた。
「ピクシー?」
隣に座るソーナンスが不安げにピクシーを見つめる。
「……この闘技場は間違ってる」
「ソーナンス!」
我が意を得たり、と肯定するソーナンスにピクシーは静かに首を振った。
「違うの、間違っているっていうのは違わないけど……その、なんて言うんだろう。
でも、多分ソーナンスが思っていることと、アタシが思っていることは違う」
「ソーナノ?」
「アタシは……好きだったの、ニンゲンが。ううん、今も好き……好きなはずなの。違う、そういうことじゃない……なんだろう、その……えっと…………」
拍手の音が鳴り止まない。過去の音色と今の音色の不協和音が止まらない。

『ピクシー』
拍手の中、ピクシーはその声を確かに聞いた。
幻聴以外には有り得ない、そこにいるはずがない、聞こえるはずのない、届くはずのない声。
己の名を呼ぶ、マスターの声。
だが、その声は真実だ。嘘だろうと、幻だろうと、ピクシーはマスターを信じた。

「アタシは、この場所が好きだった。エデンなんかじゃない、闘技場が好きだった。
私は……ここにいるニンゲンは嫌い。でも目を輝かせてアタシ達の戦いを見るニンゲンは好きだった」
迷い続けていた、今もまだ迷っている。それでも、ピクシーは取り戻した。

「アタシは勝つ」
「ソーナンス!」
「本当のモンスターバトルってものを、ここのニンゲン達に魅せつけてやるわ」
そう言って、ピクシーはだから――と言葉を続ける。
先の自信に溢れた言葉とは違って、少女のように不安に満ちた声色で。

「だから……きっと、マスターもアタシを迎えてくれるよね」
自分に言い聞かせるように、ゆっくりと、しっかりと、言う。
返事を求めたわけではない、ただの独り言だ。
自分の言葉に、何の保証もない。
ただ、許されるのは信じるという行為だけだ。

「もちろん」
そう言ったソーナンスの声音が、似てもいないのにピクシーにはマスターと重なって聞こえた。
ピクシーはソーナンスの手を握った。
ぬるりとして冷ややかで、そして暖かいソーナンスの手が、それを握り返した。

「帰ろう……きっと何もかも大丈夫だから」
揺れるキュウビモンの背で、ピクシーはゆるりとした安らぎに包まれていた。


154 : 決勝(2) ◆3g7ttdMh3Q :2014/06/05(木) 23:18:05 LTjdIL0A0


「……そうか、そうなんだね」
生き残りの名前を聞き、プチヒーローはガブモンが成し遂げたことを理解した。
ガブモンは命を犠牲にしてでもハムライガーを救ったのだ。きっと、そうだと信じている。
プチヒーローはガブモンのことを、そしてハムライガーのことも、信じていたのだから。
それでも、沸々と湧き上がる悲しみの感情は抑えきれない。
当然だ、ハムライガーは彼ら二匹共が揃って戻ってくることを願っていたのだから。

「……死んだのだな」
「うん」
ルカリオの目から見ても、プチヒーローの消沈は明らかであった
己のように、元より奪われて来た者も、あるいは平穏無事に暮らしてきた者でも、
誰もが誰も平等に、この場所では何かを奪われずにはいられない。
「ベホマ」
プチヒーローが唱えた治癒呪文は、ルカリオの失った体力を満たしていく。
体を動かすのにも、あるいは波導を多用しなければ戦闘行為にも問題はない。
「私は、お前に何度この呪文をもらったんだろうな」
「わかりません、でも何度でも唱えます」
数えきれぬほどのこの呪文が、ルカリオを支配から救い出した。
そして再び、ルカリオは救われている。
そうか、と呟いてルカリオは敵を見据えた。
「……私は戦うぞプチヒーロー」
全力で戦おうとも勝ち目は薄い、先程のような渾身の波導を練れぬ身では尚更だろう。
それでも、引く理由にはならない。
「殺したくてしょうがない相手が目の前にいる、きっと勝てない……それでも、私は私を止めることは出来ない。
すまない、プチヒーロー……お前にもらった命、捨てさせてもらう」
敵だけを見据え、ルカリオは振り返らない。
振り返ればきっと、ルカリオは戦えなくなる。

恩人の顔を見て、己の命を捨てることは出来ない。
今、戦わなくていい。休息を挟み、体力が全快したところで、確実にモリーを仕留める。
救われた命に報い、理性的な正しい行動を取ろうとするだろう。
今、戦わない理由を幾らでも用意するだろう。

違う。戦うのは今この時だ。そうでなければならない。
今、戦いを求めているのはルカリオだ。他の誰でもない、ルカリオ自身だ。
もし、今戦いに向かわなければ、ルカリオはルカリオではいられない。

奪われた仲間、ジャックフロスト、キノガッサ、ボナコン、クー・フーリン、己が殺した名も解らぬ魔物のために、
今、己を構成する要素のために今、ここで、戦わなければならない。

プチヒーローから返事の声はない。
納得したのだろうか、あるいは己に掛ける言葉を考えあぐねているのだろうか。
プチヒーローが行った無謀と、己が行うであろう無謀、その行動原理は似通っている。
ならばこそ、プチヒーローは己を止めることは出来ない。
それでも、プチヒーローは止めようとするのだろう。
己が戦うように、突き動かすのは常に論理では無い部分なのだから。

ドン――軽く、そして重い音がルカリオの背後から聞こえた。
振り返ってはいけない、それは決意を鈍らせる。己が己ではいられなくなる。


155 : 決勝(2) ◆3g7ttdMh3Q :2014/06/05(木) 23:18:19 LTjdIL0A0

「……私は行く」

返事は無い。迷わずに敵の元へと歩を進めていく。
後ろから何の音もしない。
プチヒーローが敵に襲われたわけではない、だから大丈夫だ。
何の躊躇もなく、己はモリーの元へと行ける。

「行くんだからな!」
プチヒーローが己の言葉を聞き逃したか、そのようなわけがない。
それでも、ルカリオは叫ばざるを得なかった。
叫べば、プチヒーローに言葉が届くはずと、
そしてプチヒーローは言葉を返してくれると、信じて。
鼓動が加速する。じっとりと焦りが全身を包み込んでいく。
振り向いてはいけない。絶対に、何があろうとも。

自分の足音しか聞こえない。
自分の呼吸音しか聞こえない。
自分の汗が滴り落ちる音しか聞こえない。

何も聞こえない。

「畜生……」
ルカリオは後ろを振り向いた。


プチヒーローが地に臥せっている。
何も言わず、息すら荒らげず、ただ死んだように倒れている。
己と出会う前から戦い続け、極限まで己にベホマを注ぎ、流星を斬り、そしてまた己に力を与え――そこで限界を迎えた。
死んではいない、ただ力を使い果たしただけだ。そうルカリオは判断する。
放っては置けない。
振り返らなければ、結末はどうであれ真っ直ぐにモリーと戦うことが出来た。
だが、ルカリオは振り返った。
そして、プチヒーローの今を見てしまった。
もう、ルカリオはプチヒーローを見捨てることは出来ない。

「すまない」
誰に届くわけでもない謝罪の言葉を、ルカリオは呟いた。
誰も、命を捨ててまでモリーを殺しに行くことは、望まなかっただろう。
それでも、死んだ者のために、己が生きていることが、否――戦わないことが、
死んだものの憤怒を、嘆きを、憎悪を、誰もモリーに伝えられないことが、我慢ならなかった。

死んだ者よりも、生きている者を大切にするべきだと、理屈の上では解りきっている。
それでも、プチヒーローよりも仲間を選びたかった。
そして、選べなかったことが――己の弱さであり、捨てきれなかったものなのだろう。

「プチヒーロー……」
ルカリオはプチヒーローを背負い上げた。
己の四分の一にも満たぬ重さ――その体に、どれほどの重圧を背負ってきたのだろうか。
この闘技場に安全地帯は無い、それでも彼を――休める場所へと運ばなければならない。

「休め……寝ている間に、何もかも終わらせてやる」


156 : 決勝(2) ◆3g7ttdMh3Q :2014/06/05(木) 23:19:01 LTjdIL0A0



――刺。刺。刺。刺。
降り注ぐ雨のように、刺突は止まない。
名もわからぬ観客――否、彼は闘技場の戦士に戦いを挑んだ。故に、彼もまた乱入者と言うべきだろう。
乱入者が、チャッキーに対して繰り出す違法暗黒改造を施したポケモンの群れは、
驚くほどあっさりと、チャッキーに一匹、一匹、と心臓を貫かれ生命活動を停止させている。
理由は簡単だ、本職であるポケモントレーナーですら、ポケモンに対し同時に指示を出せるのは三匹が限界。
感情のままに闇雲にポケモンを繰り出せば、どれ程に単体の力が凄まじかろうと、それらはただの烏合の衆に過ぎない。
それに加え、各々のポケモンも暗黒バイオ技術によって、人工的に作られたクローンであり、
ただ、能力値だけが鍛えられていく彼らに実戦経験を積む機会は与えられなかった。
――振音【ブオン】。バトルレックスの骨に腹を貫かれたポケモンが、旋転の後に他のポケモンを巻き込んで観客席に叩き込まれた。
何のために彼らは生まれたか、その答えを出せるものは誰も居ない。
ただ、彼らのうちの一匹がただの質量兵器として散ったことだけは確かであった。

「な、何故だあああああああああ!!何故、勝てん」
カタ、カタ、カタ、カタ。
乱入者が恥も外聞もなく取り乱す様に、チャッキーが笑いを噛み殺すことなど不可能だった。
いい加減にトドメを刺しても良さそうなものだが、とにかく乱入者は数だけは持っている。
今までに殺せなかった分、乱入者の繰り出すモンスターを殺す。
そして、己を守るモンスターを失った乱入者を、嬲り殺す。
足の指先から、頭の天辺まで、余すところ無く殺し尽くす。
周りの観客達は乱入者とチャッキーの戦いに介入する様子はない。
今、世界一危険とも言っても過言ではないこの会場へと来たのだ。
殺されるのは自己責任であるし――何よりも、目の前で繰り広げられる戦いとも言いがたい虐殺は見ていて楽しい。
力が拮抗する実力者同士のどちらが勝つともわからぬ戦いを観戦するのが闘技場の妙ならば、圧倒的な実力者が弱者を粉砕するのを観戦するのもまた闘技場の妙。
乱入者が殺された後に、己が殺されることなど――実際の苦痛が己に与えられるまでは、どうでも良い。
今はただ、この虐殺を特等席で見ていたい。それだけだ。

「コンブール!ノーチラス!クモルル!ラグナロス!メタロード!ヤマイロチ!グリドラス!バトルオー!ヒドラ!イカテン!行けェ!殺せぇ!!奴を止めろォ!!」
存在するはずのないポケモン――遺伝子操作により生み出された一代限りの新種達、完全なるコレクション用として保持していたそれらすら、乱入者は繰り出さざるを得なかった。
当然、数だけ増やそうが何の意味もない、彼らはただ何も残せずに散っていった。何が原因で滅んでいったのか、乱入者もそして彼ら自身もその理由を知ることはなく。

「役立たず共があああああああああああ!!!!!」
「どうした、もう終わりか?」
死体の山を積み上げて、チャッキーは観客席まで上り詰めた。
殺そうと思えば、今直ぐに殺せる距離。
とうとう、真の意味で、観客席は、無くなった。

「どうした?モンスターを出さないのか?」
乱入者とチャッキーは、同じ高さに立っている。
だというのに、乱入者は最後に残ったモンスターボールを放つ気配はない。
この距離に来てもなお、乱入者はこの一匹を解き放つか考えあぐねていた。
最後に残った一匹、彼は乱入者の命令を聞かない。
チャッキーを狙うかどうかわからない、己の命を狙う――場合によっては、周囲の人間を殺す可能性もある。
当然、乱入者は博愛主義者では無いため、周りの人間のことなどどうでもいいが、
自分が生きて帰った後の、社会的な死の可能性――場合によっては命よりも大事な、己が築き上げた財産の消失。
何よりも、それを恐れ――躊躇してしまった。その意味では、彼の観客的な思考は抜け切れておらず――そのことを死ぬほどに後悔することとなる。


157 : 決勝(2) ◆3g7ttdMh3Q :2014/06/05(木) 23:19:14 LTjdIL0A0

「どうした?モンスターを出さないのか?」
「グワーッ!」
チャッキーが構えたグラディウスの刃が、彼の履く高級な靴ごと彼の指を切り裂いた。
「どうした?モンスターを出さないのか?」
「グワーッ!」
当然、一本では済まされない。
乱入者が覚悟を決める間もなく、二本目が。
「どうした?モンスターを出さないのか?」
「グワーッ!」
三。
「どうした?モンスターを出さないのか?」
「グワーッ!」
四。
「どうした?モンスターを出さないのか?」
「グワーッ!」
五。
「どうした?モンスターを出さないのか?」
「グワーッ!」
六。
「どうした?モンスターを出さないのか?」
「グワーッ!」
七。
「どうした?モンスターを出さないのか?」
「グワーッ!」
八。
「どうした?モンスターを出さないのか?」
「グワーッ!」
九。
「どうした?モンスターを出さないのか?」
「グワーッ!」
最後に残った指まで、あっさりと彼を離れた。
ポケモンを失い、片目を失い、足の指を全て失い、そして今、はっきりと己の認識が甘すぎた事を乱入者は知った。

――金よりも命のほうが大事だ。


158 : 決勝(2) ◆3g7ttdMh3Q :2014/06/05(木) 23:19:27 LTjdIL0A0


「だ、出……」
決意を決め、解き放たんとする乱入者。
だが、封印されし一匹は結論から言えば、彼の意思で解き放たれることはなかった。
手に握られたモンスターボールは、チャッキーの攻撃によって、手首ごと地に落ちた。
その衝撃によって、彼は解き放たれた。
彼の決意は全くの無駄となったのである。

「ドゥドドオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
黒き竜――そう、チャッキーが認識する刹那、既に竜はチャッキーへと体当たりを仕掛けていた。
「がっ……」
竜の全体重は、その人形の体で受け止めることは叶わず。木の葉のように宙を舞う。だか攻撃はそこで終わらない。
――突。
竜の持つ二本の腕、その片腕がドリルの様に回転し――チャッキーの腹を貫いた。
「ドゥドドオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
チャッキーを貫いたままに、黒き竜は飛んだ。
目指す先は戦場。

身長1.7m、体重90.5kg。封印されしポケモン、それは外見だけの話をすれば、カントー原産の炎竜リザードンのものと一致する。
ただ、その配色は通常種のものと違い、いや突然変異によって発生する黒色のリザードンよりもなお、暗黒に染められている。
通常では誕生し得ない、都市伝説的に語られるリザードンによく似たポケモン――裏技を駆使しなければ、遭遇すら叶わぬ世界をも破壊する可能性のある竜。
世界に対する異物。

世界中の如何なる生物であろうとも、その名を呼ぶことは不可能。

「ドゥドドオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
彼自身にも己の名を呼ぶことは出来ない。




159 : 決勝(2) ◆3g7ttdMh3Q :2014/06/05(木) 23:19:46 LTjdIL0A0



「ルカリオか」
「ベヒーモス!」
数時間ぶりの再会は劇的とはとても言えはしない。
ただ、互いが互いの理由のために駆ける中、見知った姿を確認し、そして再会を果たしただけのことである。

「背負っているのは……仲間だな?」
「ああ」
数時間前に遭遇した時もまた、ルカリオは背にモンスターを背負っていた。
一瞬、ボナコンかと思ったが、背を見れば当然ボナコンではない。
もちろん、モリーの言葉でその死を確認している以上、わかりきっていることはあるが、
しかし、あまりにも似通った状況が、ベヒーモスに有り得ない考えを抱かせてしまったのである。

「ボナコンは…………どうなった」
協力してモリーを倒そうというのだ、地雷と成り得る事柄に首を突っ込むのは賢い行いではない。
だが、他愛無い感傷がその最期を知ることを望ませた。

「アイツは…………アイツは、最高に格好良く、死んだ」
「そうか」
どう死んだのか、何を思って死んだのか、何もかも伝えたかった。
だが、言葉が出せなかった。もし出せても、きっと言葉を止めることは出来なかった。
ボナコンの死は、どれ程の時間があろうとも、きっとその語りを終えることは出来ない。
ならば、ただボナコンの遺言に従い、格好良く死んだと、今はただそれだけを伝えればいいように思えた。
そして、ベヒーモスもそれ以上追求することはしなかった。

「これより、モリーを殺しに行くつもりだが、お前はどうだ?」
一切飾り気のない言葉は、オブラートに包まれぬ殺意そのものの顕在だ。
モリーへの純粋な殺意という点では、ベヒーモスとルカリオは共通するものがある、余計なオブラートに包む必要はない。
「悪いが、今すぐに行く訳にはいかない」
果たせるかな、ルカリオはその申し出を拒否した。
背負った仲間のためだろう、そういうことならば仕方あるまい。

「いいだろう、お前の背負った者……名前は何だ?」
「プチヒーローだ」
「プチヒーローの回復の後、それならどうだ」
「問題ない」
「よし」

この時、ベヒーモスには2つの選択肢が与えられていた。
ルカリオ達に同行しプチヒーローの回復後にモリーへと挑む道。
ルカリオ達と別れ、他の生存者を探した後にルカリオ達と合流しモリーへと挑む道。

この三匹でモリーに勝てるかどうか、それを言えば非常に危ういところがある。
だが、プチヒーローを背負ったルカリオだけでは、何かがあった場合に、呆気無く殺される可能性が高い。

「我もついていく、問題はないな?」
残り七匹の生存者と合流できる可能性、今の戦力でモリーに勝てる可能性、別れた後のルカリオとプチヒーローが生存している可能性。
様々なものを天秤にかけ、ベヒーモスはルカリオと共に行くことを決断した。

「良いのか?」
「気にするな、お前達に死なれた方がモリーを討てる可能性が低下する」
「……ありがとう」
ルカリオは深々と頭を下げた。
ベヒーモスと共にいれば、背のプチヒーローをむざむざと殺させる可能性は大分低下する。
ベヒーモスにも思惑はあろう、だがプチヒーローの命を守ろうとしてくれることが何よりも嬉しかった。

「では……む?」
この三匹の合流、それは新たなる戦いの呼び水に過ぎなかった。


160 : 決勝(2) ◆3g7ttdMh3Q :2014/06/05(木) 23:20:41 LTjdIL0A0
ベヒーモスの体に備わりしメテオカウンターは、
攻撃の威力の大小に関係なく、降り注ぐ星が攻撃者に相応の報いを与える。
その超にして絶の威力、先制攻撃に対する誰しもか逃れ得ぬ究極の天罰と言える。
迫らんとする星の音を聞き、黒き竜は敢えて――ベヒーモスへと追撃を仕掛けた。

その追撃を予想していなかったのか、その手刀はあっさりとベヒーモスに突き刺さった。
「ドゥドド……?」
もちろん、絶大な体力を誇るベヒーモスにしてみれば、その手刀の威力は大したものではない。
だが、問題は――メテオが黒き竜を討たなかったことである。

「クッ……」
何故だ、そんな台詞をベヒーモスは吐いたりしない。
理由は解りきっている、今黒き竜とベヒーモスは限りなく接近している。
今、メテオが落ちれば、ベヒーモスも巻き込まれる。
メテオは隕石を落とす魔法ではあるが、隕石を召喚する魔法ではない。
自然現象としての隕石ではなく、魔法としての隕石なのである。
つまり、魔法である以上、隕石でありながら術者に都合の良い数々の調整が行わている。
そして術者を守る術式であるメテオカウンターが、ベヒーモスを殺す真似はしない。

では、このメテオカウンターが融通の効かない術式なのか――?
答えは否。
「ドゥドドオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
急に襲来した小型隕石が黒き竜の背骨を粉砕させた。
威力は大幅に縮小されているが、この一撃もメテオである。
ベヒーモスを巻き込むのならば、巻き込まないようなサイズの隕石を落とせばいい。
簡単な解決策である。

「ヌルいわッ!」
黒き竜の体躯が宙を舞った。ベヒーモスのしゃくり上げである。

「ドゥドドオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
明らかな致命傷を負いながらも不敵な雄叫びを上げてみせるのは、
彼の闘争心が痛みをも上回ったからであると想像するのは難くないことである。
誰も、気づいてはいないが――雄叫びと共に蒔かれた種がある。
だが、今はそれについて記載する暇はない。

「キル」
グラディウスの刃が、ルカリオの眼前を舞う。
黒き竜とチャッキーは敵対しているが、黒き竜が作った隙に任せてチャッキーはルカリオを襲った。
周り全てが敵である、ならばより仕留めやすい獲物から――すなわち、
荷物を抱えたルカリオと意識のないプチヒーローを襲うことは判断として間違ってはいない。
連撃――グラディウスの刃が、ルカリオの心臓を貫かんとする。
「回るぞ!吐くな!」
これをルカリオは背負ったプチヒーローごとバク転で回避。
両腕が使えない状況では、反撃することが出来ない。
だが、回避するだけならば今のルカリオでもそう難しいことではない。
投突。投突。投突。投突。
距離を取った、ルカリオに向けてチャッキーは竜の骨を投擲した。
狙われしは両足、心臓、頭。

「プチヒーローを離せ!」
「ああ!」
ルカリオという支えを失った、プチヒーローが地に落ちる。
と同時に、ルカリオの蹴りが足を狙う骨を打ち砕く。
更に、両手による突きが同タイミングで頭と心臓を狙う骨を打ち砕いた。

「プチヒーローを中心に円になるぞ!」
ベヒーモスが叫ぶと同時に駆ける。
この戦い、ただ敵を打ち倒すだけでは追われない。
プチヒーローを殺させるのもまた、モリーを倒すという最大目標の達成を危うくさせる。
ここで、ベヒーモスとルカリオが繰り出したる陣形が、インペリアルサークルである。

守りたい人物を中心に置いて互いに背中合わせになり、円の移動で防御する。
こちらから打って出ることは出来ないが、守りの陣形としては高く評価されている。

「我は……この場所で、誰かに背を預けられるとは思っていなかった」
「ああ、私も同じだ」
結局、出会った仲間達と共に戦えたことはなかったと――ルカリオは思い返す。
仲間が死地に赴くのをただ見守り、仲間だった者を殺し、仲間になれた者を殺した。
そして今、仲間を守るために、仲間に背を預けることが出来る。

沸々と心の底から沸き上がる罪悪感は否定出来ない。
だが、それと同様に――とうとうここまで来れたという喜びもあった。

「頼む」
「任せろ」


161 : 決勝(2) ◆3g7ttdMh3Q :2014/06/05(木) 23:21:29 LTjdIL0A0
すいません>>160は投下順番のミスです。
>>159の続きに来るのはこのレスです。

「ドゥドドオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
耳をつんざく怒轟は、竜の叫びでありながらどこか植物的な響きを窺わせた。
音の出処は――上だ。
上空を旋回する黒き竜――その姿は二匹の目にもはっきりと映っている。

「リザー……ドン……?」
黒き竜の姿は、己の知識にある火竜とよく似ている。
しかし、本能的にそれがそもそもポケモンであるかどうかも疑わしい異種であることを察した。
カタ、カタ、カタ、カタ。
黒き竜の右手に貫かれたままのチャッキーが笑う。
チャッキーは人形であるが故に、刺突では致命傷に至らしめることは出来ない。
完全なる破壊、それを以て彼は死に至る。
ならば、何故黒き竜に大人しく貫かれるままになっていたのか。

「楽しい空の旅をありがとう……運賃だ」
グラディウスの刃が黒き竜の手首を、己を貫く腕ごと切り裂いた。
身体の一部が欠けた、というのに黒き竜は呻き声一つ上げはしない。
元より痛覚など存在していないのかもしれない。
一方で、高所からの落下によるダメージをチャッキーは受けていなかった。
五点着地――衝撃を五つに分散することで、落下のダメージを限りなく縮小する技術である。

「ドゥドドオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
「かた、かた、かた、かた、かた、かた」
降り立った二匹の怪物に対し、ベヒーモスとルカリオは瞬時に構えた。
様々な異世界よりモンスターが集められたこの闘技場であるが、
この二匹は、今生き残っているモンスターの中では特に――住む世界が違う。
会話は勿論、モリーに対しての共闘も不可能。
後続の憂いを断つ意味でも、ここで仕留めるべきだろう。

初めに仕掛けたのは、黒き竜だった。
「ドゥドドオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
雄叫びと共に、吐き出すは虹を思わせる冷気の光線――オーロラビーム。
己の属性を象徴する、尾に青々と燃える炎。
それを考えれば、その黒き竜が冷気の技を使えるはずはない。
だが、使えるはずのない技を使うからこそ、彼は世界にとっての異物なのだ。
直線上のその光線をチャッキーは易易と避けるも、その先にはルカリオがいる。
プチヒーローを背負っているために、両腕は使えない。

「グオオオオオオオオオオ!!」
「ベヒーモス!?」
咄嗟の判断により、ベヒーモスは己の体躯をルカリオとプチヒーローの盾とした。
直撃した冷気の光線は、生半可なダメージでは済まされない。
だが、それは――敵にも同じことが言えた。

「うおおおおおおおおお!メ・テ・オ……!」
目には目を、歯には歯を、復讐法の原則である。
なれば黒き竜の放つ光線には、何を以て応報するべきか。

氷には火の星を。


162 : 決勝(2) ◆3g7ttdMh3Q :2014/06/05(木) 23:21:40 LTjdIL0A0
ベヒーモスの体に備わりしメテオカウンターは、
攻撃の威力の大小に関係なく、降り注ぐ星が攻撃者に相応の報いを与える。
その超にして絶の威力、先制攻撃に対する誰しもか逃れ得ぬ究極の天罰と言える。
迫らんとする星の音を聞き、黒き竜は敢えて――ベヒーモスへと追撃を仕掛けた。

その追撃を予想していなかったのか、その手刀はあっさりとベヒーモスに突き刺さった。
「ドゥドド……?」
もちろん、絶大な体力を誇るベヒーモスにしてみれば、その手刀の威力は大したものではない。
だが、問題は――メテオが黒き竜を討たなかったことである。

「クッ……」
何故だ、そんな台詞をベヒーモスは吐いたりしない。
理由は解りきっている、今黒き竜とベヒーモスは限りなく接近している。
今、メテオが落ちれば、ベヒーモスも巻き込まれる。
メテオは隕石を落とす魔法ではあるが、隕石を召喚する魔法ではない。
自然現象としての隕石ではなく、魔法としての隕石なのである。
つまり、魔法である以上、隕石でありながら術者に都合の良い数々の調整が行わている。
そして術者を守る術式であるメテオカウンターが、ベヒーモスを殺す真似はしない。

では、このメテオカウンターが融通の効かない術式なのか――?
答えは否。
「ドゥドドオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
急に襲来した小型隕石が黒き竜の背骨を粉砕させた。
威力は大幅に縮小されているが、この一撃もメテオである。
ベヒーモスを巻き込むのならば、巻き込まないようなサイズの隕石を落とせばいい。
簡単な解決策である。

「ヌルいわッ!」
黒き竜の体躯が宙を舞った。ベヒーモスのしゃくり上げである。

「ドゥドドオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
明らかな致命傷を負いながらも不敵な雄叫びを上げてみせるのは、
彼の闘争心が痛みをも上回ったからであると想像するのは難くないことである。
誰も、気づいてはいないが――雄叫びと共に蒔かれた種がある。
だが、今はそれについて記載する暇はない。

「キル」
グラディウスの刃が、ルカリオの眼前を舞う。
黒き竜とチャッキーは敵対しているが、黒き竜が作った隙に任せてチャッキーはルカリオを襲った。
周り全てが敵である、ならばより仕留めやすい獲物から――すなわち、
荷物を抱えたルカリオと意識のないプチヒーローを襲うことは判断として間違ってはいない。
連撃――グラディウスの刃が、ルカリオの心臓を貫かんとする。
「回るぞ!吐くな!」
これをルカリオは背負ったプチヒーローごとバク転で回避。
両腕が使えない状況では、反撃することが出来ない。
だが、回避するだけならば今のルカリオでもそう難しいことではない。
投突。投突。投突。投突。
距離を取った、ルカリオに向けてチャッキーは竜の骨を投擲した。
狙われしは両足、心臓、頭。

「プチヒーローを離せ!」
「ああ!」
ルカリオという支えを失った、プチヒーローが地に落ちる。
と同時に、ルカリオの蹴りが足を狙う骨を打ち砕く。
更に、両手による突きが同タイミングで頭と心臓を狙う骨を打ち砕いた。

「プチヒーローを中心に円になるぞ!」
ベヒーモスが叫ぶと同時に駆ける。
この戦い、ただ敵を打ち倒すだけでは追われない。
プチヒーローを殺させるのもまた、モリーを倒すという最大目標の達成を危うくさせる。
ここで、ベヒーモスとルカリオが繰り出したる陣形が、インペリアルサークルである。

守りたい人物を中心に置いて互いに背中合わせになり、円の移動で防御する。
こちらから打って出ることは出来ないが、守りの陣形としては高く評価されている。

「我は……この場所で、誰かに背を預けられるとは思っていなかった」
「ああ、私も同じだ」
結局、出会った仲間達と共に戦えたことはなかったと――ルカリオは思い返す。
仲間が死地に赴くのをただ見守り、仲間だった者を殺し、仲間になれた者を殺した。
そして今、仲間を守るために、仲間に背を預けることが出来る。

沸々と心の底から沸き上がる罪悪感は否定出来ない。
だが、それと同様に――とうとうここまで来れたという喜びもあった。

「頼む」
「任せろ」


163 : 決勝(2) ◆3g7ttdMh3Q :2014/06/05(木) 23:22:57 LTjdIL0A0
ここまでのSSを以て経過報告の代わりとさせていただきます。


164 : ◆5omSWLaE/2 :2014/06/06(金) 00:28:45 YM1fSLjw0
もはやこの場に居るのは正式な参加者だけじゃない。
イレギュラーが、スラリンガルが、暴走したCOMPが入り乱れる、混沌とも言える闘技場。
その中で各々が抱く想い。勝利への決意、殺戮の本能、人間への感傷。
もはや彼らの勝利を願わずには居られません。
自分は気づけばこの戦いにのめり込まれ、話中の愚かな観客達の一人になっていました。

不条理な世界を生き抜いたモンスター達が壁を破るのか、容赦の無い鉄槌を人間が下すのか……。
経過報告、投下お疲れ様です!
続きをとても楽しみにしております!


165 : 名無しさん :2014/06/06(金) 13:55:52 3P9ISiRIO
投下乙です。


166 : 名無しさん :2014/06/07(土) 04:39:00 KPl2XmMk0
投下乙です!
決勝の名に恥じぬ総決算!
生き残ったモンスターたち全員に見せ場や掘り下げがあって、だけじゃなくモリーどころか観客まで巻き込んで。
更には死んでいった者達までちょいちょい思い返されてるのがにくい!
個人的にはこれまで他者と組むことがなかったベヒーモスが寂しがったりルカリオと背を預け合うシーンが凄く好きです。


167 : 名無しさん :2014/08/05(火) 15:21:39 vTDws4Q.0
続き期待


168 : 名無しさん :2014/09/16(火) 15:47:49 7t4Uy7ww0
そういえば支援絵増えてるね。おつ


169 : ◆3g7ttdMh3Q :2015/06/26(金) 06:14:55 2ev5GtdI0

モリー、ベヒーモス、レナモン、グレイシア、ソーナンス、ピクシー、プチヒーロー、ルカリオ、チャッキー、ハムライガー、モルボル
予約します。


170 : 名無しさん :2015/06/26(金) 10:35:25 mk1rHkqM0
予約きたああ!


171 : ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/03(金) 08:45:37 uYIqTwyE0
延長させて頂きます


172 : 名無しさん :2015/07/04(土) 09:26:59 u3ezMFpY0
了解です


173 : 名無しさん :2015/07/06(月) 21:13:56 LmiV1KcY0
期待


174 : 名無しさん :2015/07/11(土) 13:24:17 MQ1b.dm.0
楽しみ


175 : ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/12(日) 16:44:07 Oc1DGtcY0
リアルの事情と重なり進捗の方はあまり芳しくないですが、
7/25(土)を投下予定日とさせて頂きます


176 : 名無しさん :2015/07/19(日) 01:22:25 ryeFV1ek0
承知しました
一同お待ちしております


177 : ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/27(月) 20:24:33 xu9B8M0k0
お待たせいたしました、完成の目処がようやく立ちましたので、
7/29(水)を最終回投下とさせていただきます


178 : 名無しさん :2015/07/29(水) 08:44:53 R.RXyBkA0
帰って読むのが楽しみだ……お待ちしてます!!


179 : 決勝(3) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:24:55 XbCrrutE0

図らずしも二対二の形になったか、否。
ルカリオとベヒーモスは二であるが、黒き竜とチャッキーは敵同士であるが故に、決して組むことは無い。
二対一対一、これがこの戦場での正確な形だと言えるだろう。
ただし――

「ドゥドドオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
黒き竜の口より紫煙が吐出さされた。
文明の発展により、誰を狙うでもなく生み出された毒――スモッグ。
毒性はあるが、致死性は低い。
排気ガスという性質上、吸い込まないという手段による回避が可能なためである。
呼吸を止めて数秒、吐き続ける相手に一撃をくれてやれば簡単に毒の垂れ流しは終わる。
ただ、黒き竜の目的は当てることではなかった。

「毒だと……」
ルカリオとベヒーモスの二匹が、敵が吐くものの正体に気づかないか。答えは否、気づかないわけがない。
しかし、問題はその先にある。
意識を失ったプチヒーローは、何の抵抗も出来ずにこの垂れ流される排気ガスを吸い込んでしまう。
そして、いざ毒状態になったとして――治療の手段がない。
つまり、スモッグの届かない位置までプチヒーローを運ぶか、あるいは黒き竜を今すぐに止めなければならない。
決断時間、五秒。考える時間は無い。何故ならば、既にチャッキーは彼らの目の前に来ていた。

「かた」
スモッグという煙幕の中、彼は音もなく、影もなく、忍び寄り、ルカリオの脇腹を抉った。
チャッキーの波導を察しての咄嗟の回避である、失敗していれば、内臓をやられていただろう。
人形であるチャッキーの波導は特別に読み辛いものであるが、殺意の波動への覚醒という経験が、ルカリオにチャッキーの殺意を読ませた。
態勢を崩したチャッキーにルカリオが回し蹴りを放った。

噛――チャッキーの頭が猛回転し、ルカリオの蹴りを喰い、止めた。
人形であるが故に出来る防御法と言えるだろう。真似をすれば死ぬ。
「くっ……」
チャッキーに歯は一本もない、ちゃちな作りの顎が口の全てと言っていい――だというのに、いやだからこそと言おうか、何という咬筋力か!
ルカリオの足は噛み付かれたままに動かない。
じりじりと血が滲んでいく、噛みちぎられるのも時間の問題か。
「ハッ!」
直ぐ様、ルカリオは跳んだ。
バック転――遠心力がかかってもチャッキーは離れない。だが、それでいい!
地面へと、チャッキーの頭が叩き付けられた。
そう、噛み付かれたままにバック転をすることで、この動きはチャッキーに対しての変則的なバックドロップと化したのだ。

「ガ……」
流石のチャッキーと言えども、予想外の一撃と言えただろう。
ルカリオの脚を離し、唾の代わりに、喰い千切り損ねたルカリオの皮膚を吐き捨てた。

「ドゥドドオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
連撃である、完全にルカリオの不意をついた形で黒き竜の尾がチャッキーごと巻き込んで、彼らに叩き込まれた。
剛と吹き飛び、二、三、彼らは地を転がった。

――黒き竜とチャッキーは、お互いがお互いの攻撃を利用することで、ベヒーモスとルカリオのコンビに対し、二対二無いし、二対一に持ち込まれる場合がある。

「人形を頼む!」
「ああ!」
幸運と言うならば、今黒き竜のたたきつけるを喰らったことで、ルカリオがチャッキーと共に吹き飛ばされたことだ。
ただ二匹を撃退するだけでなく、プチヒーローを守らなければならない以上、一対一×2の状態が一番望ましい。

「そういうことだ、木偶野郎」
ルカリオの鋭い拳が、チャッキーに突き刺さった。
果たして、ダメージはあるのか無いのか、その人形の体からは反応を窺わせない。


180 : 決勝(3) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:25:18 XbCrrutE0

かたかた、かたり。
かた、かたり。

拳を受けたチャッキーは壊れた玩具めいて、地を転がった。
連撃を受けて、その生命は極限まで擦り減らされたからか?否。
ゆっくりと立ち上がり、彼は中指を突き立てた。

「うおおおおおおおおおお!!!!!」
幾本もの骨を投擲されながら、ルカリオはチャッキーに迫った。

喉――向かってきた骨を右手で掴む、投げ返す。
顔面――向かう骨に頭突きをかます、血が滲む。問題ない。
両膝――跳んで躱した。
同時に水月――突き刺さる!嘔吐する。吐血する。引き抜く。

だがルカリオは止まらない――止まっている時間は無い!
「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
飛び蹴り――揃った足裏が、チャッキーを打ち付けた。
チャッキーにダメージの蓄積などは通用しない、徹底的な破壊、それのみが奴を死に至らしめる。

「ああああああああああ!!!!!!!」
態勢を崩した、チャッキーにルカリオはマウントポジションを奪取した。
鉄槌。鉄槌。鉄槌。鉄槌。鉄槌。鉄槌。鉄槌。鉄槌。鉄槌。
今、チャッキーは文字通り、手も足も出せない状況下にある、距離感で言えばこの段階で決めなければならない。

「……かた」
チャッキーは嗤った。ルカリオは気づいていない、手も足も出せないチャッキーが尚、攻撃手段を失っていないことに。

――突

胴体から射出された、チャッキーの頭部がルカリオの顎に突き刺さった。
決して、ルカリオの戦意が失われたわけではない。
これははっきりと断言できる、だが衝撃がルカリオの意識をたった1秒、刈り取った。
その隙を突いて、チャッキーはルカリオから逃れた。

「かた」
一息もつかず、チャッキーはグラディウスをルカリオの脳天に振り下ろした。
「甘い!」
真剣白刃取り――達人といえど超絶の技巧を要する、この技をルカリオが成功させることが出来たのは偶然に近いと判断して良いだろう。


くれてやる 」
だが、チャッキーはあっさりとグラディウスを握る手を離し――ルカリオの側頭部に回し蹴りを打ち込んだ。

意、識、が、揺れ。て、い、る。。。
状態を立ち直す間も無く、チャッキーの拳が、ルカリオの傷口に侵食した。
ぐちゅりと、肉々しい音がした。
チャッキーが何をしたか、彼の手に付着した粘ついた液と破片を見れば、言うまでもないだろう。

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ゙ッ゙ッ゙ッ゙」
内臓は常に油断している、己は体内にあるのだから誰も己を攻撃できはしまいと、
だからこそ内臓への攻撃は、体のどの部位よりも正直に痛みを伝えるのだ。

ルカリオは悲鳴を上げ、痙攣し、涎を流し、涙を浮かべ、
「だからどうしたあああああああああああああ!!!!!!!!!!」
チャッキーの腕を取り、地面へと叩きつけた。

ピキ――この時、チャッキー、ルカリオ、共にはっきりと人形にヒビが入る音を聞いた。
「もういっぱあああああああああああああああつ!!!!!!!」
ルカリオの足裏が、何度も何度もチャッキーの体を打ちつける。

と同時に、ルカリオに突進を仕掛けてきたチャッキーの頭部に肘打ちを放った。
肘打ちでようやくダメージが入ったのか、チャッキーの頭部も地面を転がる。


181 : 決勝(3) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:25:51 XbCrrutE0


子供が遊び飽きた玩具でもこうはならぬだろう、と言える程にチャッキーの体は傷めつけられた。
それでも未だ、ルカリオには破壊の確信が持てていなかった。
ルカリオには知ることの出来ぬ情報であるが、そもそもチャッキーは死んだモンスターの恨みによって動き出すようになった人形である。
死者に言葉を届けられぬように、どれほどにいたぶろうとも死んだ者は決して殺せない。
ならば、ルカリオがいつまでも確信を抱けぬのは当然のことである。

黒き竜と戦うベヒーモスのために戻りたい、その思いはある。
しかし、チャッキーに確実にトドメを刺してから向かわねばただ闇雲に敵を増やすこととなるだけ。
果たしてどうするか――結論から言えば、ルカリオがその問題について考える必要はなかった。

かたかた、かたり。
かた、かたり。

人形が嗤う。

ルカリオがもしも、チャッキーの目――今周りにある夜よりも、なお深き闇の色を見ていれば、結果は変わっていたのかもしれない。
だが、そうはならなかった。ただそれだけのこと。


全てが光の中に消える。


チャッキーは自爆した。

かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、
かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、
かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、
かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、
かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、
かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた。

笑う声しか、残らない。

一方で、黒き竜とベヒーモスの死闘も泥沼の様相を呈していた。
あらゆる攻撃がメテオカウンターの呼び水となる以上、黒き竜は迂闊に攻撃を仕掛けることが出来ない。
しかし、黒き竜はこの問題をあっさりと解決することに成功した。
さて、先程仕掛けたスモッグでメテオカウンターは発動しただろうか、答えは否。
では、何故発動しなかったのだろうか、それはスモッグが攻撃ではなかったからである。
もちろん、おいおい何を言ってるんだこのトンチキは、どう見てもスモッグは攻撃だろ、という声はあるだろう。

しかし、日照り、突風、吹雪などの自然災害に対してメテオカウンターは発動するだろうか、答えは否だ。
何故ならば、攻撃してもどうしようもないからだ。
メテオカウンターはミュウツーの例を見るように敵意に関係なく、発動する。
しかし、何の制限も無くメテオカウンターが発動してしまえば、
ベヒーモスはタンスの角に蹄をぶつけるだけで住居を全壊させ、
冬に外に出歩けば、周囲にいた関係ない者が天に与えんとした罰の巻き添えを食らうこととなるだろう。

ならば、自然環境に対してはメテオカウンターは発動しないと、そう考えたほうが自然ではないだろうか。
黒き竜のスモッグは別に、ベヒーモスを狙ったわけではない、
ただ、周囲に毒を撒き散らそうと、排気ガスを吐いているだけのことである。
故に、メテオカウンターは発動しない、それだけのことである。

当然、ベヒーモス当人にとってはそれだけのことでは済まないが。


182 : 決勝(2) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:26:18 XbCrrutE0


吐き出される毒に、ベヒーモスの焦燥が募る。
翼を持つ黒き竜にはベヒーモスの攻撃が届かない。
そして、スモッグの毒は着実にプチヒーローを蝕んでいる。

逃げるか――否、ベヒーモスと黒き竜は概ね同じ速さと言って良い。
ルカリオが時間を稼いでくれるならともかく、一匹で走る分にはすぐに追いつかれるだろう。

濃霧の様な排気ガスはベヒーモス達の未来を暗示するものか。否。絶対に否。
幻獣王の臣下たる己の終わりがこんなものでいいはずがない。

「ああああああああああああああ!!!!」
この時、周囲に蔓延する毒を――ベヒーモスは敢えて、吸い込んだ。
視界にある全てが二重になり、蜃気楼のようにぼやけ、急な発熱を起こし、発汗異常が生じ、嘔吐感がこみ上げる。
ベヒーモスは血迷ったか、否。
ベヒーモスは吸い込んだスモッグを黒き竜に向けて吐き出した。

「ドゥドドオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
掟破りのスモッグ返し!
吹きつけられた毒の息吹が、黒き竜を悶絶させた。
さて、ベヒーモスにメテオカウンター以外で対空攻撃はあるのだろうか、
反射的に発動するメテオ以外にベヒーモスは魔法を使えず、その巨体では黒き竜の元まで跳び上がることも出来ない。
では、反撃のスモッグは黒き竜への意趣返し以外の何物でもないのか、否。
隙を作らねば、とても当てることは出来ないが――ベヒーモスには対空攻撃を可能とする必殺技を持っている。

「あまり調子に乗るな!」
闘技場の人工の地面が、ベヒーモスの二本の角によって弾丸のように黒き竜の元へと突き上げられた。
ベヒーモスの持つ最強の盾がメテオカウンターだというのならば、彼の持つ最強の矛は二本の角から放たれるしゃくりあげである。
当然、ゴルフスイングめいたこの使用法は本来の用途とはかけ離れているが、そこは幻獣王の臣下たるベヒーモスである、それは失敗する理由にはならない。
黒き竜の腹部に闘技場を構成する一要素たる古代コンクリートの巨大な破片が激突した。
「ドゥドドオ……」
黒き血を吐き出した彼は、よろめき落ちそうになるのを懸命に堪えた。
地に落ちた竜の辿る道は、古代の神話から死と決められている。

「ドゥドドオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
まとわりつく弱さを振り払うように、黒き竜は雄叫びを上げた。
生きる理由は己には無い、だが生きていられる理由はある――勝利することだけだ。
ただ、勝利するためだけにシオンタウンで己の体は造られ、敗北したからこそ元々の主人を失うこととなった。

「ぬっ!?」
何事か生じたのか、ベヒーモスの表情が一変した。
黒き竜はそれを見て、己の勝利を確信する。
プチヒーローの右肩から手先まで、びっしりと草が芽吹いている。
また、ベヒーモスの胴体にも同じことが言えた。

黒き竜が蒔いた種は無事に芽吹いた。
種の名はヤドリギ、ポケモンのみが扱える寄生植物の一種であり、
寄生した動物から栄養分を強制的に吸い上げ、種の主へとその栄養を届ける性質を持っている。

「ドゥドドオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
吸い上げた栄養分が黒き竜の傷を癒していく、と同時にベヒーモスを――そして、何よりも守らなければならないプチヒーローを苦しめる。
「くっ……」
最早、黒き竜は何もする必要がない。
ただ、ベヒーモス達が枯渇するのを待って悠々と空を舞えば良い、それだけで全ては終わる。
ベヒーモスの先程の攻撃もそうそう当てられるものではない、
地面をしゃくりあげるという予備動作を見た時点で、黒き竜は回避に専念すれば攻撃は決して当たらない。
そして逃げることも出来ない、いや今となっては黒き竜も喜んでベヒーモス達を逃がすだろうが、
逃げれば、後は何も出来ぬままにヤドリギに殺される。


183 : 決勝(3) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:26:49 XbCrrutE0


「卑劣漢がああああああ!!!!!!!!!!!!」
ベヒーモスは叫んだ、何よりも何も出来ぬ己の無力さに怒りを込めて。
ルカリオは今も戦っているだろう、だというのにプチヒーローを託された己は何も出来ぬのか。

――轟

鼓膜を裂かんとする爆音が生じた。
音源は――チャッキーが吹き飛ばされた方向であり、ルカリオが向かった方向である。
振り返ることは出来ない。
黒き竜はベヒーモスに直接的な攻撃は出来ないが、プチヒーロー相手ならば別である。
振り返り、隙を見せれば、プチヒーローが殺られる可能性がある。
そうだ、振り返ってはいけない。

結末は明らかだ。


――突

矢のように一直線に射られた竜の骨が、黒き竜の右目を貫いた。

「ドゥドドオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」

かたかた、かたり。
かた、かたり。

「ルカリオおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」

背後には、見るものへの呪いを思わせる邪悪な表情を浮かべた人形の顔はそのままに、
ただ、首から下だけがバトルレックスの死体となったチャッキーが立っている。

「かたかたかたかた」
人形が嗤う音がする。

自爆したチャッキーが何故生きているのか、その説明をしなければならないだろう。
まず、彼は自爆に巻き込まれなかった。
何を言っているんだ、このウスラトンカチは、と言いたくなるだろうが、まずはその拳を収めていただきたい。
彼は頭部を切り離しても、胴体を遠隔操作することが可能である。
この事実は、先の事例のみならず、キノガッサとの交戦時の様子を見ても明らかである。
もちろん、胴体と頭部に別の意思が宿っているということも考えられるだろうが、
そもそも、このモンスター闘技場が最後の一匹を決める戦場である以上、二匹で一匹のモンスターを参戦させるなどとは考え辛い。
よって、チャッキーはルカリオに己の胴体を破壊させるままにした。
そして、頭部のみで移動し、彼は己のふくろのなかに入り込んだ。
後はただ、不要となった胴体を自爆させるだけで良い。
ふくろそのものの耐久性はともかく、袋の中の空間に関して言えば、魔力により如何なる物も収納できる一種の超空間となっている。
実質的にこの会場で最も信用できるシェルターと言って良いだろう。
そのふくろの中に己の体を入れ、爆発から身を防ぎ、そして新たな体としてバトルレックスの遺体を選んだ。

重要なのは、チャッキーの本体である死者の念とも言うべき存在が新しい胴体を人形として認識できるかどうかである。
チャッキーの亜種は幾つもある、ならば人形という認識さえ行えれば、新たな胴体に乗り換えることが出来るかもしれない。
一種の賭けではあったが、チャッキーは勝利を確信していた。
そして、当然の如く、チャッキーはその賭けに勝利した。

新たな肉体を得たチャッキーは考える。
今、己の体は不安定だ。
肉体の性能が変わることで生じる変化がどれほどのものか想像できない。
慣れるまで、戦うのは危険だ。

だが――戦う。

身に染み付いた殺戮の技術の殺戮の快楽、それだけがチャッキーを構成している。
肉体を捨て、精神まで変えようとするのならば、それはもう、チャッキーでは有り得ない。
自分が自分であることを重要視するわけではない、
だが、殺せる相手がいるのに殺さない自分は――決して許容できない。


184 : 決勝(3) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:27:07 XbCrrutE0

かたかた、かたり。
かた、かたり。

未だに竜の死体――新たなる胴体に残る肉を千切り、複数個、黒き竜へと放り投げた、当てることが目的ではない。
放り投げられた肉片に、チャッキーは飛び乗った。
新たに手に入れた竜の肉体の重量に沈む肉片、だがそれも一瞬のこと、チャッキーは再び跳んだ。
水の上を走るにはどうすれば良いか、足が沈む前にもう片方の足を出せば良い。
それと同じだ、チャッキーは肉片が沈む前に跳び、更に高所にある肉片へと飛び移る。
新たなる胴体を手に入れたことで、チャッキーの重量は飛躍的に上昇したが、沈む前の一瞬ならばどれ程の重量がかかっていようが関係ない。

「 かた かた かた かた 」
共に竜の肉体を持つもの同士が空中で向かい合う。
だが、それも一瞬のこと、次の瞬間、両者は攻撃に移っていた。

「ドゥドドオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
やどりぎのタネを植え付けて逃げるなどという選択肢を選ぶ気はない、今ここで確実に殺す。
わざマシンとは、ポケモンに技を習得させるための道具であり、それ以上でもそれ以下でもない。
しかし世界でただ一匹、ここにいる黒き竜のみわざマシンそのものの名を関した技を持つ。

――わざマシン29

ペゾ  〓レベル157〓〓〓〓〓〓〓〓プチキャプテン
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓ジョンイイイイイイイイイイイイイイイ
゙?????|>はい  7 おめでとう!
いしはら アア いいえアネ゛デパミはピッピにしんかした!
イイイイイイイイイイイタイプ1みずイ;:'なかよしバッヂイイ
タイプ2サトシひよごちか2かいしねしねこうせん
イイけつばんおじぞうバッヂののののののののののののの
バーか!これはすばらしいニックネームだ

「!??!?!?!?!」
ノイズがチャッキーの中へと流れこんでいく。
この技はわざマシンの原理を応用したものと研究者の間では言われている、
すなわち技のイメージをポケモンに刻むことで技を覚えさせるように、ダメージのイメージを敵に直接刻み込んでいるのではないかと。
そもそも、黒き竜の存在自体がイレギュラー中のイレギュラーである、研究など進むようなものでもないが、地元ではこれが定説であるとされている。
さて、チャッキーにとってはこの技は実に相性が悪い。
チャッキーは肉体的なダメージに強い、というよりもどうすれば殺せるかわからない。
例え五体をバラバラにしようとも殺した――ではなく、行動不能にした、と表現した方が良いと思われるほどに凄まじい生命力を持っている。
それ故のわざマシン29である。
チャッキーの本体である死者の念に対して直接ダメージを刻みつけるこの技は、現状では唯一チャッキーを傷つけることの出来る技と言って良い。

「か……ガ……」
苦痛に悶えながら、それでもチャッキーは今やるべきことを見失わなかった。
へし折ったバトルレックスの牙を、失ったグラディウスの代わりに黒き竜の翼を切り裂く。
「ドゥドドオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!!!!!!!!」

両者が両者共痛みに悶え、そして地へと落ちていく。
「ドゥドドオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!!!!!!!!」
翼を傷つけられたせいで、やどりぎのタネが回復させるに十分な栄養を送るまで黒き竜は空を失った。
チャッキーは生まれ落ちて初めて、筋繊維に針をねじ込まれるような激痛を感じている。

――わざマシン29
――旋風脚

それでも、お互いに攻撃を止めたりはしない。
「ドゥドドオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!!!!!!!!」
悲鳴を上げ、苦痛に悶え、それでも互いの思いは共通している。
目の前の相手を殺してやる。


185 : 決勝(3) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:27:22 XbCrrutE0


「死ねええええええええええええええええ!!!!!!!!!!」
殺意――それはこの二匹だけに共通する感情ではない、二匹はこの時、蚊帳に置かれた三匹目を意識の外に置いていた。
バトルレックスの巨体が、黒き竜の巨体が、木の葉の様に軽やかに宙を舞った。
この時、ベヒーモスが放ったしゃくりあげは彼の長きに渡る生の中で、最も完璧な決まりと言って良い。

この時、完全に不意を突かれた形になった黒き竜はそもそも現状を理解できなかった。
それ故に、束の間ではあるが、空を取り戻した後――
「一度で終わると思うな!!!!」
「ドゥドドオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
再度、木の葉の様に宙を舞うこととなる。

「ぐっ……」
二度も喰らえば学習するというもの、落下地点を調整することで追撃を防いだ黒き竜であったが、そもそもその必要はなかった。
毒により消耗した上、やどりぎのタネによる吸収攻撃を受けた状態で連続でしゃくりあげを放てば、流石のベヒーモスも三度目を放つ体力は残されているはずもない。

「それがどうしたああああああああああ!!!!!!」
体力を消耗し、気力を擦り減らし、それでもプライドがベヒーモスが倒れることを許さない。
メテオカウンターという巨大な壁に阻まれて見えなかったベヒーモスという誇りのみで生きる生物の姿を、黒き竜はしっかりと見据えた。

――殺す。

「ドゥドドオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
メテオカウンターを恐れていた、だが真に恐れるべきは――プライドを傷つけられた手負いの獣!
「かたかたかた」
黒き竜がベヒーモスを恐れると同時に、チャッキーは愉悦に表情を歪めた。
そのような輩を無惨に殺してやるからこそ、最高に楽しいのだ。

「我を舐めるな……小童共が!!」
託されたプチヒーローは極限まで苦しみ、盟友となったルカリオは――死んだ。
何一つとして、戦場において特別なことではない。
だが――幻獣王の臣下たるベヒーモスが、むざむざとこのような状況を許すなど、許せぬ。

――わざマシン29

魂すらも削る苦痛の一瞬にベヒーモスの意識が消失と覚醒を繰り返し、それでも、彼は敵だけを見た。

「 天から ふりそそぐ 星よ 全てを 滅ぼせ 」

メテオカウンターは発動した。

「かたかたかたかた」
「ルカリオを殺した貴様を……逃すと思ったかッ!」
逃げようとするチャッキーを、ベヒーモスは全体重を掛けて押し潰した。
フライングボディプレス――いくら、バトルレックスの肉体が巨体と言えども、
それを上回る巨体であるベヒーモスに喰らってしまえばどうしようもない。

「……ハハハハハハハハハハハ!!!」
ベヒーモスの下で、チャッキーは嗤った。
この笑い声の真意は何か、ベヒーモスはわざわざ問い質すことはしない。
「ドゥドドドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
それよりも、目の前に未だ尚、戦意を失わぬ黒き竜がいる。
飛べぬ飛竜がメテオを回避するのは不可能、かと言って逃げる素振りすら見せないのは不可解に思えたが、
今の雄叫びで最期の最期まで、黒き竜は戦い抜くものなのだとベヒーモスは理解した。

「良いだろう、貴様の犯した罪の分、まだまだ痛めつけてやる」
「ドゥドドドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ベヒーモスは心の中で幻獣王に詫びた、
申し訳ございません、我が私怨のために私は貴方の元へ帰ることはないでしょう、と。
本来のベヒーモスならば、この状況でも何よりも生存を優先しただろう。
だが、湧き上がる怒りと――そして、本人は気づいていなかったが、ルカリオの死を思った時、彼は幻獣王の元への帰還を諦めていた。
それ程に彼は、ルカリオを信頼していたのだ。


186 : 決勝(3) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:27:35 XbCrrutE0


ベヒーモスは黒き竜にしゃくりあげを見舞い、受けたダメージを、
ダメージを与えた張本人であるベヒーモス達から吸い取ったエネルギーで回復し、そして反撃する。
ある種パターンめいた戦いは、全ての終わりまで続く。
このパターンが最善だからというわけではない、
ただ互いに、疲労からか技を組み立てていく余裕が無くなっただけだ。
それでも、戦意だけは鈍らない。
お互いがお互いに、殺しても足りぬ殺意を持っている。

「ドゥドドドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
黒き竜は観客席に届くよう、叫んだ。

人造ポケモンにとって、人間こそが親である。
だからこそ、彼は己の周りのポケモンを排除し続けた――勝利が親を喜ばせると知っていた。
愛されたかった、それだけだ。

だから、死ぬ間際まで殺し続けよう。

「ドゥ、父゙オ父オ゙父゙オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

――わざマシン29
――メテオ

激痛の中、ベヒーモスは己が逃れられぬ死への道を歩んでいることを自覚し、
ルカリオとボナコンの事を思い出し、
ティラノモンの結末を思い、
ミュウツー達に祈り、
プチヒーローと最期まで言葉を交わすことが無かったとため息をつき、

そして、全てを頭から消した。

申し訳ないという思いはあるが、それでも己が最期に思う者はただ一つだけだ。

「幻獣王様……申し訳ございません」

ベヒーモスが死ぬと同時に、黒き竜の命もまた、星によって潰えた。


かたかた、かたり。
かた、かたり。

そして残ったのは嗤う人形、死に体の勇者、そして――

――剛

下段回し蹴りを己の脚部に叩きこまれたチャッキーは、何故、と問うことはしなかった。
ただ、未だ生きているならば――死ぬまで殺す、それだけを思った。

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ゙ッ゙ッ゙ッ゙ッ゙!!!!!」

かつて彼が味わった地獄と、今ここにある地獄は役者の違いを除けば彼にとっては同一のものと言えた。
燃え上がる世界、消えていく仲間達、伸ばせども掴めない手、そうだ、また、目の前で仲間が逝ってしまった。
そして、己も自爆によって彼の肉体は消滅した、

――良いのか?
――気にするな、お前達に死なれた方がモリーを討てる可能性が低下する。

彼がその時、ベヒーモスからそれを受け取っていなければ、そうなるはずだった。

マガタマ、名をサタン。
ガブモンに支給されたワダツミと同じく、宿主に莫大な力を与える。
それが放つ邪悪な波導がイービルスパイラルを想起させ、プチヒーローに与えることも、己自信が使うことも忌避していたが、
死の寸前、己の消失を恐れたサタン自身がルカリオへと寄生する。


187 : 決勝(3) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:28:00 XbCrrutE0


そして、ルカリオの意識が消失する。
元々の重症に加え、自爆によって与えられた致命傷、その治癒のために、サタンは強制的にルカリオに睡眠を取らせた。
意識存在が持つ精神エネルギーであるマガツヒ、マグネタイトと同じく悪魔を構成する物質であるそれを吸収すればルカリオの回復は容易い。
だが、どうやって?

その問題はさほど間をおかずに解決される。

ベヒーモスと黒き竜の死亡。
肉体の死によって解き放たれたマガツヒをサタンは吸収する。
ルカリオの傷は癒やされてしまった。


――我は……この場所で、誰かに背を預けられるとは思っていなかった。

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ゙ッ゙ッ゙ッ゙ッ゙!!!!!」
決して理性など失ってはいない、だが己の中でリフレインするベヒーモスの言葉にルカリオは思考を停止してしまいたかった。
己がベヒーモスを殺したわけではない、しかし――ベヒーモスの死のみを掬い上げて糧とする己は、それよりも尚悪い。

それでも、とルカリオは願った。
「まだ、俺を戦わせてくれ」

正拳突きが、チャッキーの顔面を捉える。チャッキーは動じない、知っている。
返すチャッキーの後ろ回し蹴りの蹴り足を掴み、地面に叩きつける。
「かたかたかたかた」
チャッキーの掌に生じていた球状の炎の二連撃が、ルカリオを打つ。
炎はルカリオの弱点である、関係ない、ルカリオはチャッキーに踵落としを見舞う。

「俺は……」
起き上がると同時のサマーソルトキックが、ルカリオの顎を打つ。
宙に浮き上がったルカリオを意趣返しとばかりに、チャッキーがルカリオの足を掴んで地面に叩きつける。
何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も。
「俺はなぁ……!!」
打ち付けられる度に、膨れ上がる波導の渦をルカリオは左手に留めた。
瞬時、異変を察したチャッキーがルカリオを遠投するが、遅い。

「このままじゃ終われないんだよ!!!!」
重力から解き放たれた態勢で、ルカリオは波導を放つ。
放たれた攻撃に咄嗟にチャッキーは構えるが、それは無駄に終わる。
咄嗟に防御の構えを取った両腕ごと、未だ立つ下半身を嘲笑うように、チャッキーの上半身だけが地に落ちた。
波導剣――薄く、刃のように練り上げた波導弾を相手に当てることで敵を斬撃せしめるルカリオの新必殺技である。

チャッキーは瞬時に、己の死を悟った。
目の前の敵は、己を破壊ではなく消滅させることができる。
何故、殺したはずの相手が以前よりも力を持って蘇ったのか、そんなことはどうでもいい。
殺されてでも、殺したい。

「いつも通り、殺す……そうだろ、マスター?」
それがチャッキーの全てだ、過去の何一つにだって後悔してやるものか。


188 : 決勝(3) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:28:16 XbCrrutE0
かたかた、かたり。
かた、かたり。

永遠の伴侶と裂かれた下半身が、ルカリオに向かって駆ける。
目的は自爆であることなど、ルカリオにも解りきっているだろう。
だから、チャッキーは自爆などしない。
全身を波導で覆い防御態勢を取ったルカリオに、チャッキーの下半身は蟹挟みを食らわせた。
直ぐ様、足を振り払わんとした所で、チャッキーの顔面がルカリオへと射出される。

――斬

波導剣が、チャッキーの顔面を断つと同時に、下半身が自爆した。
防御に回していた波導を波導剣へと回した隙を突いた、チャッキーの捨て身の一撃。
結果など見る必要はない、ただチャッキーは笑って、逝った。

最期までチャッキーは己の勝利を信じ抜き、自爆を耐え抜いてみせたルカリオの姿を見ることはなかった。

「この勝負、私たちの……勝ちだ」
この戦いの勝利は所詮通過点に過ぎない、それでもルカリオは死したベヒーモスのために勝ち名乗りを上げた。
自爆のダメージは決して軽いものではない、しかしルカリオは確かな足取りでプチヒーローの元へと向かった。

「ありがとう……ベヒーモス」
どれ程の激闘があったか、ルカリオにはわからない。
それでも、プチヒーローは生きている。偉大なる幻獣王の配下、ベヒーモスは約束を違えず、プチヒーローを守り切ってみせた。
ならば、ここからは己の仕事だ。

――いやしのはどう

ルカリオの放つ波導が、プチヒーローの体に力を満たしていく。
サタンがもたらした力により、ルカリオは波導の力を高めている。
今まで戦いのみに使っていた波導を癒しの力に応用できたのも、波導の強化による恩恵である。

「プチヒーロー……俺は、また生かされてしまったみたいだ。
しょうがないよな、俺は……まだ、何もしちゃいない。何も出来ないままに、死なせちゃくれないよな」
未だプチヒーローは眠りについたまま、それでもルカリオは思いを吐き出さずにはいられなかった。
何の応答もないからこそ、淀みなくルカリオは言葉を吐き出していく、己が生きる理由を証明しなければ、生きていられない。

「俺は、モリーを倒す……何があろうとも。そこだけは絶対に動かさない。
例え首がふっとばされても胴体だけで倒す、
体全部無くなったら、怨念で呪い殺す……怨念で呪い殺せるなら、モリーなんてとっくに死んでるなんて言うなよ、決意の話をしてるんだ、俺は」
ルカリオは息を深く吸い込んだ、肺を満たす空気にルカリオは己が生きていることを改めて確認する。
「モリーを倒したら、俺は仲間を助ける。その後はお前に付いて行きたい、
ここまで生きてしまったのなら、モリーではなく、俺が殺した者の仲間に殺されたい」

「だからな、プチヒーロー……改めて、頼む。
私と共に、モリーを打ち倒すため、戦って欲しい」


                  ┏━━━━━━━━━━━┓
                  ┃→  はい             ┃
                  ┃   いいえ         ┃
                  ┗━━━━━━━━━━━┛



「はい!」


189 : 決勝(4) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:29:07 XbCrrutE0



雷が詠唱者たるモルボルの体を焼きつくした時にハムライガーが思ったことは、まだ生きている――それだけだった。
モルボルを冷気の中で永遠の眠りにつかせんとした氷の棺桶は、王の雷によって葬られた。
成程、名案といえるだろう――彼に残った莫大なダメージを度外視すれば、だが。
そうだ、無感情な感想と共にハムライガーが一瞥だけをくれてやったのも、
まだ、ぎりぎり、なんとか、モルボルが生きている――が、手を下さなくても死ぬからだ。
例え誰かに助けられ命を永らえようと、少なくとも今自分がどこかへと行くのを、その傷で邪魔しようとするのは不可能であるからだ。
だから、
「……待て」
許されていいはずがない、火傷を通り越し、焼き焦げたその身体がこちらに向かってくることなど。
ハムライガーの身体が震えているのは、己が放ったブリザードが故では無い。
傷つけば傷つく程に、研磨される宝石の如く、モルボルから発せられる威圧感が増していく。

「AHHHHHHHHHHHHHHHHHhhhhhhh!!!!!!!」
「Yeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeecck!!!!」

新たに召喚された二体の悪魔が、モルボルの命を奪わんと迫る。
だが、無意味。
「退け」
一瞥すらくれずに、モルボルの触手が、彼らを打ち据えた。
風よりも疾い神速の鞭、悪魔二匹葬るに上等な威力である。

「……なんで?」
何故、己の邪魔をするのか。何故、そこまで傷ついても止まらないのか。何故、ああも容易く悪魔を討てるのか。
答えを知りたいわけではない、それでも答えを聞かなければ、今目の前にある理不尽を理解できない。
具体的な形を持たない問いであったが、モルボルはその質問の意図を理解したのだろう。

「ワシが王だからだ」
答えとしては理不尽そのものである、それでも、それはハムライガーの問いに対するモルボルの完全なる答えであった。

「ふざけるなあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
そして、答えがモルボルから発せられた瞬間、ハムライガーの全ては殺意の色に塗り潰された。
何もかもを消し飛ばすほどに、そのふざけた解答をハムライガーは許容出来なかった。

「僕はあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
叫びと共に、ハムライガーがモルボルに体を打ち噛ます。
怒りに戦闘技術を失ったか、否。
ブリーダーさんとの特訓によってハムライガーの体に刻み込まれた技術は、ハムライガーである限りは決して一時の感情で失われるものではない。
補足せんと伸ばされた触手を掻い潜り、ハムライガーの体はモルボルの目の前にあった。
「甘い!」
果たして、モルボルの巨体で許されるものであろうか。
いや、そもそも彼の体の原理的に有り得ることであろうか。
だが、失われた触手の分、彼の体も変貌したということか。
あるいは、彼が決めた覚悟が道理を覆したというべきか。

ハムライガーの身体が宙を舞う。
モルボルが放ったのは、触手によって行われた変則サマーソルトキックであった。

「ガッ……」
何故、何が、芽生えようとする疑問を、ハムライガーは次にするべきことで塗り潰した。
今、ハムライガーはモルボルの頭上にいるのだ、するべきことは決まっている。
何度でも、何度でも、何度でも、繰り返す、目の前の敵が己の邪魔をしないように、ハムライガーはブリザードを放った。

――また、さっきのように雷で氷を溶かすだろうか、それでいい。ちょっとでいい、隙を生んだなら……今度こそ逃げ切ってみせる!

しかし、モルボルが凍りつくその瞬間ハムライガーは見たのだ、その異形の風体にも関わらず、彼の表情を。
泣いているのか、笑っているのか、怒っているのか、複雑に感情が入り混じったその顔色を。


190 : 決勝(4) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:29:21 XbCrrutE0
「サンダガ」
そうだ、モルボルは既に覚悟を決めていた。
己が再び氷の中に閉じ込められるであろうことも、そして――その瞬間、完全にハムライガーの意識はCOMPから離れるであろうことも。
だからこそ、自分という巨大な餌にハムライガーが食いついた瞬間、何をするかは決めていた。

モルボルの目線の先にあるものが、COMPであることを察し、そしてハムライガーはモルボルが何をするかを理解した。
COMPを守ろうと、全力で駆ける。
だが、間に合わない。
ハムライガーは雷よりも速くは走れない。

「あ、あ、あ、あっ……ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」


だから、もう逃げられない。

「嫌だよ。助けて、ブリーダーさん。僕――」
そのはずだった。


「僕……」
「僕……?」
「僕……か」

「何だ、簡単な事だったんだ」

ハムライガーは気づいてしまった、最も簡単に、この現状から解き放たれる方法を。
ただ、誕生日ケーキのろうそくを吹き消す。それだけで良い。

己を呼ぶモルボルの声が、もう"ハムライガー"には聞こえない。



「誕生日おめでとう」

"ハムライガー"の持つ前脚も。
"ハムライガー"の持つ後脚も。
"ハムライガー"の持つ爪も。
"ハムライガー"の持つ牙も。
"ハムライガー"の持つ毛皮も。

何も変わらない。
唯一つだけ変わったものは。








             「僕」


   【魔獣 名もない獣 が 一体 でた!】


191 : 決勝(4) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:29:37 XbCrrutE0


巨大(おおき)いことはわかっていたことであるが、
それでも、勇車に近づくごとに精神的威圧感を伴って、その巨大さが染みこむように理解させられる。
強さの根本とは、精神よりも技術よりも何よりも肉体である。
なれば、その巨体は――存在するだけで千の言葉よりも雄弁にその強さを物語っている。
その間合いは――通常の生物の数十倍、数百倍。
近づけば訪れるのは確実な死――しかも、こちらが離れるよりも相手が近づくほうが速い。
巨大であるということは、それだけで疾いということにもなる。
だが、もとより逃げる気などは無い。
キュウビモン、グレイシア、ピクシー、ソーナンス、皆同じ心持ちである。
スラリンガルの攻撃範囲――死の間合いをくぐり抜け、生ける城塞であるスラリンガルの正門より侵入し、モリーを討つ。
このパーティーではスラリンガルを破壊するのに、圧倒的に力が不足している。
いや、ある手段を用いれば命と引き換えにスラリンガルを討つことが出来るやもしれぬが、
人間の分類するモンスターであっても畜生になったわけではない、
この殺し合いを開いた人間と同様に下郎に堕ちる気はないし、何よりも討つべき第一の敵はモリーである、それを見誤る気は無い。

50m――今まさに至らんとする、死の間合いまでの距離。

人間の足ならば、おおよそ八秒。
キュウビモンの足ならば、それよりも更に比べ物にならないぐらい疾く。

そして――スラリンガルは更に疾い。

「ようこそ!諸君!!私の方から出向かせてもらったよ!!」

キュウビモン達の接近に気づいたモリーが選んだのは、砲撃ではなく、スラリンガルの巨体を活かした突進であった。
勇車スラリンガルが最も恐ろしい点は、その巨体が動くという部分にある。
城の様に巨大(おおき)い勇車と正面衝突をかませば、そこにあるのは交通事故ではない――最早、交通災害である。間違いなく保険の対象外だろう。
スラリンガルはキュウビモンを正確に正面に捉えていた。
このまま衝突すれば、右に避けようとも、左に避けようとも、上に避けようとも、下に避けようとも、どこに逃げてもスラリンガルからは逃げ切れない。

故にキュウビモンは――逆にスラリンガルに向けて加速する!

「予定が早まっただけだ!スラリンガル内部に向けて……突入するッ!」
「望むところです!」
「任せて!」
「ソーナンス!」

正門をぶちぬいてスラリンガル内部に侵入する、それ以外にこの死の突進を避ける方法無し!
突入位置を間違えれば城壁に衝突し、ミンチ肉同然!
正門の破壊に失敗しても、やはりミンチ肉同然!
臆せば死ぬ、昂ぶれば死ぬ、真なるタイミングを見極め、あまりにも物理的に巨大な死の可能性を前にして冷静に――正しい判断を!
キュウビモン!グレイシア!ピクシー!ソーナンス!死のダイブに挑む!

「そうだ!それしか君たちの生き残る道は無い……がッ!」
スラリンガルの砲門が――キュウビモン達を狙う。
あまりにも単純で有効的な手段――絶対的不利の中に勝機を見出したところで、やはりスラリンガルの優位は変わらない。
砲撃が命中すれば当然死亡、避けた後状態を立て直すことが出来なければ城壁にたたきつけられてミンチ!
「お客様に茶菓子も出さない男じゃあないんだよ私はッ!」

りゅうせいぐん――砲口より放たれた隕石群は、ソーナンスとグレイシアにその技を連想させた。
だが、恐怖はない。今、目の前にある絶望に対して、彼女たちには決まりきった覚悟しか無い。

「私はスピードを緩めないッ!迎撃頼むぞ!!」
キュウビモンは上から降り注ぐ死を見ない、背に乗せた仲間たちが迎撃すると信じている。
故に、見るのはただ正面――モリーへと至る正門のみ!

「了解!ふぶき!」
天に向けてグレイシアが放つは、己が持ちうる最強のこおり――かつてカントー地方で少年にトラウマを残すほどに猛威を振るった荒れ狂う氷雪!
だが、隕石は止まらない。
天に向けて唾を吐くものをあざ笑うかのように、隕石はただスピードを落としただけで何も変わらない。

逆に、それが良い!


192 : 決勝(4) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:29:51 XbCrrutE0


「打ち頃ね……ソーナンス!」
「ソーーーーーーーナンスッ!」

速さとは破壊力!速さとは回避力!速さとは命中力!
ならば、速さを減じた隕石群はただの石ころ――ソーナンスのカウンターで以て、打ち返す!

バットの様にピクシーはソーナンスを抱きかかえた。
ソーナンスはピクシーの指示に合わせてミラーコートを発動すれば良い。
そのままの隕石を受ければ、ソーナンスの耐久力でもその後の戦闘に間違いなく影響を及ぼす。
そこでふぶきで隕石の勢いを減じ、
今までに数多くの戦いを勝ち抜いてきたピクシーが隕石の与えるダメージが最小限になるタイミングを見計らってソーナンスに、ミラーコートの指示を出す。
ソーナンスをバットのように振るうことも重要である、隕石の当たる面積を最小限に、なおかつ――運動力学的に隕石のダメージを増大させる。

「ミラーコートッ!」

見計らうは、これ以上無い今!最高のタイミングで!
隕石が正門に打ち込まれる、炎上!炎上!大炎上!!何がスラリンガルやねん。
正門破壊と同時に、キュウビモンがスラリンガル内部へと更に疾く駆ける!
ソーナンスが、ピクシーが、グレイシアが、ぎうとキュウビモンを抱く。
3匹のぬくもりを背負い、今――

「突入するッ!」

スラリンガル内部に侵入成功。

「そして、退場だ」

モリーは こしを ふかく おとし まっすぐに あいてを ついた!


193 : 決勝(4) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:30:01 XbCrrutE0


みちづれ 【ゴースト】
わざを だしたあとに こうげきを うけて ひんしに なったとき こうげき あいても ひんしに する。


194 : 決勝(4) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:30:25 XbCrrutE0



守らなければならないと思う前に、ソーナンスの身体は動いていた。
ふくろを咄嗟に周りの仲間に押し付け、そして、モリーのせいけんづきの前に立ちはだかり――死んだ。
向こう側が見えるほどに大きい穴を開けて、あっさりと死んだ。
具体的に何かを思う間も無かった、それほどにモリーのせいけんづきは疾すぎた。
だが、ソーナンスの思いは死んでなおも変わらなかった。
生涯でたった一度の最初で最後の――最凶のカウンター。
仲間をきずつけさせないという誓いのもとに放たれた――瀕死では済ませない、最悪の呪詛。

だが、通じない。
その呪いを受けて、死ぬはずのモリーは平然とした顔で立っている。
懐から取り出したのは装飾品――せいなるまもり。
この会場に置いて最強の呪詛使いの彼女の呪殺すらも防いだせいなるまもりを前にして、ソーナンスのみちづれは消え去った。
「念の為に……寄り道をしておいてよかったよ、チャンピオンが一撃死だなんて、つまらないだろう?」
モリー以外、誰も言葉を発することが出来なかった。
石になったかのように、動けない。

そんな彼女たちを守るかのように、ソーナンスは死体のまま両腕を広げて――立っている。
死体となってなおも彼女たちを攻撃からかばわんとするかのように、未だ生きているかのように。
はあ、と嘆息し。
モリーは、ソーナンスの死体の右腕を掴み全力で壁に放り投げた。
スラリンガル内部の城壁を突き破り、ソーナンスの死体が原型を留めぬほどに損傷して、スラリンガルの外に放り出される。

「ひょっとして勘違いしたのかな?私がスラリンガルよりも弱いと、誰一人犠牲を出すこと無く私に勝つことが出来ると、だとすれば、ショックだな……」
再度、モリーが構えた。
同時に、キュウビモンが、グレイシアが、ピクシーが構えた。

泣くことも叫ぶことも許されない。
目の前の敵はその隙を許さない。
それでも割り切れない、割り切れるわけがない。
さっきまで、ソーナンスは生きていた。
それを、こうもあっさりと殺されて、ゴミのように捨てられて――ピクシーの中で湧き上がる悲痛と憎悪。

その隙を見逃すモリーではなかった。
グレイシアがとっさにまもるを発動し、ピクシーの前に立つ。
せいけんづきが、グレイシアのまもるを打つ。
そのまもるが破られることは、アリスの放ったジハードのように――あらゆる耐性が通用しない万能の一撃でなければありえない。
そして、事実としてモリーのせいけんづきが、グレイシアのまもるを破ることは無かった。

同時にモリーへと向けて放たれたのはキュウビモンの鬼火玉とピクシーのギガフレイム。
火が炎を飲み込み、熱き濁流となってモリーを飲み込んだ。
だが、誰もそれで勝ったなどとは思わない。
距離を空けなければならない――モリーの近接戦闘能力は幾千もの戦いを乗り越えた三匹から見ても常軌を逸している。
だが、幸運なことがあるとするならば三匹が三匹とも飛び道具を持っており――勝機を見出すとするならば、モリーに近づくことなく攻撃し続けることである。

「……心頭滅却すれば火もまた涼し!」
ああ、理解していたことだ。
燃え盛る業火の中、いや、燃えているのはモリーの肉体そのものだ。
その全身が――肉の松明と化しているはずであるというのに、平然と――モリーは立っている。


195 : 決勝(4) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:30:39 XbCrrutE0


「どうした、かかって来ないのかね。今の私はファイアーモリー、火もまた涼しと言ったところで、ダメージ自体は負っているのだよ?」
モリーの挑発に、しかし追撃を加える事は出来ない。
先程は隙を突くことが出来た、だがモリーの速さならば――こちらの攻撃と同時に、グレイシア以外のどちらか片方の息の根を止めに来るだろう。
人間の知能、人間の繁殖力、人間の残虐性、人間の悪意、モンスターを苦しめ、支配してきた人間の武器の何よりも、純粋な強さという最悪の武器は攻略しがたい。

「では、恥ずかしいことではあるが……火を消す時間を頂こうか、暑くはないが痒いのでね」
言葉と同時に、モリーは懐から取り出したモンスターボールを天井へ向けて開放した。
内より出たのはリングマ――その名の通り、熊の姿をしたポケモンである。
と同時に、モリーは己の下僕であるリングマへと技を仕掛けた。
タワーブリッジ――所謂、アルゼンチンバックブリーカーである。
理解が出来ない。何故味方へと技を仕掛けたのか。

だが、弓なりにそられたリングマの体が真っ二つに裂け――その血と臓物がモリーの全身に降り注いだ時、非常に単純で邪悪なモリーの意図が理解できた。
つまりは、消火のためだけに命を一つ使い潰したと。
ただ、それだけのこと。
成程、わざわざこのような闘技場を開催した主催者なのだ――そのぐらいの悪趣味な行いは平然とやってのけるだろう。
知っていた、知っていたのだ。そんなことは。
そして、知らなかった。

「しまったなぁ、ソーナンス君の死体を捨てなければリングマの命を使うことも無かったんだがなぁ……いや、失敗失敗」

仲間に対する侮辱が、ここまで腸を煮えくり返らせるものであったとは。

「モリイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!!」
理性よりも先行して、身体が動いていた。
モリーに対して近づいてはいけない、そんな基本的なルールさえ忘れてしまっていた。
頭が熱を帯びている。
殴ってやりたい――ピクシーにあるのはそれだけだった。

ピクシーの拳がモリーの水月を打ち抜こうとして、そのか細い拳はモリーによって下段へと払われた。
そのまま、モリーはバックステップ。せいけんづきを完全な形で打つための距離の溜めである。
手打ちでも威力は十分である、しかし――モリーは挑戦者に対して、手を抜いてやるつもりはない。
持つものを出し惜しみしてやるつもりはない、鍛え上げた肉体も、磨き上げた技術も、そして相手の剥き出しの心に粗塩を塗りこむような精神攻撃も。

まるで世界が凍りついたかのようだ。
モリーを前にして、今更ながらにピクシーはそう感じている。
逃れようのない死を目前にして、あまりにもあまりにも世界はゆっくりと動いている。
肉体を置き去りにして、感覚だけが鋭敏に研ぎ澄まされている。
モリーのせいけんづきは、どうしようもなく――その魂に死を実感させた。

これでは何も変わっていない。
迫る拳を前にして、ピクシーは考える。
あの最後のステージと同じように、1人だけで突っ走って負けてしまった。

だから捨てられた――違う。
この闘いで捨てたのは、アタシだ。
アタシが、仲間を見捨てて走ってしまった。

だから死ぬ。
嫌だ。
死ぬのは嫌だ。
仲間を置いて、死ぬのは嫌だ。
モリーを倒せないのは嫌だ。
もっとやりたいことがあった。
もっと話したいことがあった。
謝りたかった。
皆に。マスターに。ソーナンスに。

死にたくない。

死ねない。

絶対にここでは死ねない。

鈍化した時間間隔の中、ピクシーは考える。
鈍化した時間間隔の中、ピクシーは拳を見ながら考える。
鈍化した時間間隔の中、ピクシーはソーナンスを思い出す。

鈍化した時間間隔の中、ピクシーは決めていた。

「カウンターッ!!!」
この一撃、ブチ決める。


196 : 決勝(4) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:30:49 XbCrrutE0


相手によって受けたダメージを二倍にして返す、それがソーナンスのカウンターである。
物理技であるかどうかを見極めること、耐え切れる技であるかを見極めること、相手の攻撃タイミングを見極めること、相手よりも早く構え、そして遅く返すこと。
ソーナンスのカウンターは、技術というよりも現象――魔法の領域に近いが、
技術としてのカウンターも、彼のカウンターも、その極意は最終的に、相手の攻撃を見ること――ただ、それだけに集約される。

ピクシーは今までの戦いで、数えきれぬほどのモンスターの攻撃を見ていた。
蓄積された経験は、自身が放つカウンターの最良の構えを取らせる。

ピクシーは鈍化した時間間隔の中、ひたすらに迫るモリーの拳を見ていた。
モリーの拳に対して、余りにも鈍すぎる自分の身体を、それでも懸命に動かした。

ピクシーはソーナンスを見ていた。
ずっと見ていた。だから大丈夫だ。

打つべきタイミングが分かる。


ピクシーはモリーの腕を取る。
モリーは止まらない、止まるわけがない。

ピクシーの胴体が貫かれる。
ピクシーは止まれない、止まれるわけがない。

流水の如く、威力が流れるままに――ピクシーは完璧に決めてみせる。

「これが私達の……怒りだッ!」
「んぬぅぁッ!?」
変則パイルドライバーの形を取って、モリーの身体が床に沈む。
「あッ!」
だが、モリーの攻撃の威力は床を破壊するだけには留まらず、攻撃の主たる彼を――更に沈める。
「あッ!」
生半可な金属よりも硬いであろう床は粉微塵に粉砕され、彼を地中へと誘う。
「あああああああああああああッ!!!!」
悪戯で掘った落とし穴に沈むかのように、モリーの攻撃の威力がコロシアムの地面を掘り進み、
沈む。沈む。沈む。

(ごめんね……)

誰に謝っているのか、ピクシー自身にもわからない。
それは、マスターへの謝罪なのか、ソーナンスへの謝罪なのか、仲間への謝罪なのか、自分自身への謝罪なのか。

「いいよ」

深い闇の中で、ピクシーはその声を聞いた。
その声はソーナンスの声のようにも聞こえたし、マスターの声にも、あるいは彼女自身の声にも聞こえた。
ただ、ピクシーは良かった、と思い。

ほんの少しだけ笑って、戦闘終了後の盛大な拍手に備えて、一礼をした。
その後は、きっとマスターが迎えに来てくれるのだろう。


197 : 決勝(4) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:31:08 XbCrrutE0


「……終わった、わけがないか」
カウンターの威力によって地底人の住処まで辿り着かん勢いで掘り進められた穴を前にして、キュウビモンが呟く。
ピクシーの最初で最後のカウンターによってモリーは自身の破滅的攻撃の威力を自分でたっぷりと味わうこととなったが、
それでも、モリー自身を殺すには至っていないだろうという確信がキュウビモンにはあった。

「ふぶきを……放ちます」
穴に落ちたモリーは籠の鳥も同然、放たれるふぶきを避ける術は無いだろう。
そして、それはピクシーの死体をも破壊することになるだろう、だが――ソーナンスとピクシーが命を懸けて討ち倒さんとしたモリーだ。
今、ここで確実に殺したい。

頭上から避けられない攻撃を一方的に撃つことに対し、モリーに対して罪悪感は一切感じない。

「終わったら……どうしようかな」
安堵からか、魂ごと肉体から離してしまいそうな心持ちだった。
それでも、モリーへの攻撃に集中するグレイシアの周囲へと警戒を怠らない。
失ったものが余りにも多すぎた、取り戻したものも零れ落ちてしまった。
それでも、死んだものの念を継いで、生きていかなければならないのだろう。
やり直すことは出来ないが、過ちを繰り返さないことは出来る。
キュウビモン――レナモンは、もう一度本当にやりたかったことをやるのだろう。

「まぁ、どうにでもなるよな」
「……きっと、そうなるといいですね」
ふぶきを放し尽くし、グレイシアが人心地ついた。
グレイシアと交代にキュウビモンが近くに散った瓦礫を勢いをこめてモリーのいる穴へと放り投げる。
どこまでやれば殺せるのかがわからない、出来ることを徹底的にやるのだ。

「グレイシア……この後、君はどうするんだ?」
キュウビモンが鋭く尖った闘技場の破片を穴に放りながら尋ねた。
「さて、どうしましょうか。帰る場所はありますが、帰りたい場所はありません。どこか遠くに行きましょうか、戦わなくていいような、遠い遠い静かなところへ」
グレイシアがれいとうビームを穴に放った後、答える。

「遠い静かなところか」
「賑やかなのも好きになってたんですけどね、でも、今は……静かなところへ行きたいです」
「私は賑やかなところへ行きたいな、子どもたちがいっぱいいるような、そんなうるさいぐらいのところへ」
一通り、穴を埋め尽くし、スラリンガルが自身の治癒力によって床を再生した後、キュウビモンとグレイシアはスラリンガル内部の散策を開始した。
機械のようで生命体、デジモンにはそんな例が山ほどある。
今は動きを止めているが、スラリンガルのコアを見つけ出し、破壊しておく必要があるだろう。

奥へ、奥へ、と進んでいく。
心臓部へと続く門は侵入者の存在を拒むように、何重にも存在している。
それを一つ、一つ、破壊して、コアへと向かう。

コアの元へ向かいながら、取り留めのない話をぽつりぽつりと話した。
それは後になって思い出せないような些細な話で、たまに二度と忘れられない仲間たちの話をして、
そして、彼女たちはコアへとたどり着いた。
文字通り、ハートの形をしているコアだった。

これを破壊し、そして、生き残りと合流し――それで全て終わり、とグレイシアが考えていたその時、
ぞっ――と、心の髄まで凍りつくような正体不明の悪寒が走った。
憎悪、絶望、悲嘆、憤怒、狂気、恐怖、あらゆる負の感情をごちゃ混ぜにして、叩き付けられたような悍ましさ。

咄嗟に二匹は飛び退く。
そして、その判断は正解だった。
轟々と立ち昇る黒煙――回避行動を取っていなければ、二匹は理解する間も無く死んでいただろう。

先ほどまで誰もいなかったはずだ――そう訝しむ二匹だが、神ならぬ彼女たちにはわからぬこともある。
スラリンガルのコアは心臓機能と脳機能を兼ねている。
といっても、脳機能と言っても操縦は他人が行うため、基本的には砲撃の命中補正や、自走の際の重心制御の役割程度しか持たない、
しかし、モリーは100%利用されていない脳機能に目を付けて、悪魔召喚プログラムを組み込んだ。
脳も極端なことを言えば超高性能のコンピュータ、それもスラリンガルという半機械ならば尚更である。
モリーは、己が戦うことになるであろうモンスターを一人で平らげてしまうつもりであった。
しかし、自分が退けられ――スラリンガルを破壊されそうになった時、
敵の強さに敬意を表して――電子化されていたモリーの最強のモンスターが悪魔召喚プログラムによって召喚される、そのような絡繰である。


198 : 決勝(4) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:31:19 XbCrrutE0

「モリーは討ち倒されました、私達が戦う必要はありません」
姿を表したモンスターに対し、グレイシアは声を掛ける。
モリーに操られているモンスターであるというのならば、可能性は低いがモリーの敗北によって交渉の余地はあると判断していた。

「痛い」
「何でオデがごんな目に」
「お前も苦しめ」
「喰ッテヤル」
「マスターどこ?」
「パパ」
だが、モンスターは言葉に応じない。
ただ、会話をする気が無いように自分自身の言葉だけを発している。

「……モリーは倒した、無理に戦わず逃げるという選択肢もあるが……」
キュウビモンが前傾した姿勢を取る、その声音は怒りに震えていた。

「……ええ、逃げる気なんてありませんよ……」
その横でグレイシアが構える、その声音には哀切が混ざっていた。

「解放してやろう」

最強のモンスターに関して、かつてモリーはこう言っている。

『マダンテのみを覚え、あらゆる敵の耐性を無効化して滅ぼせるモンスターか。
あるいは、全属性の呪文を覚え、どのような耐性にも対応できるモンスターか。
私はこの拳を鍛え上げた、この一発一発がマダンテも同様、今更小技を覚える必要性は感じない。
だが、私のモンスターは逆に、あらゆる強さを習得させようと思う。
……結局最強のモンスターというのは、相性バトルというものを否定した先にあるのだろう」

そして、モリーが望むモンスターが誕生する時が訪れた。
悪魔合体――その技術がもたらされた時、モリーはひたすらにそれを繰り返した。
元の姿が何だったのかなど、誰にもわからない。
なるべき姿が何だったのかなど、誰にもわからない。
あらゆる種族の長所を持つが故に、その姿は不定。
あらゆる種族の技を持つが故に、その姿は不定。

シュレディンガーの猫は、未確定であるが故に生きている猫と死んでいる猫の両方が存在しうる。
それ故に、そのモンスターもまた――未確定であるが故に、あらゆる種類の可能性を包括している。

その体はドロドロに溶けている。
その体は何か特定の形を取ろうとしては失敗し、元のゲル状のそれに戻る。
その体は成りたかった姿になることはない。

何もかもを合体し、そして誕生する究極はそれである。




   【外道 スライム が 一体 でた!】


199 : 決勝(4) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:31:29 XbCrrutE0




結局のところ、己の行いはハムライガーの最後の線を踏み越えさせてしまったに過ぎないのか。
あるいは、救われることのないハムライガーに発狂という形で救いを与えたのか。

モルボルは考えない。

王は常に正しくなければならない。
正しい行いをするから王なのではなく、王だからその行いは正しいものにならなければならない。
故に、モルボルは振り返らない。

自身の行いが欺瞞に満ちていることはわかりきっている。
それでも何一つ、後悔することはない。
王の歩みは止められない。

自分はハムライガーの終わりを防いだ、だからハムライガーは生きている。
そして次はハムライガーの狂気を止める。
何をすべきかがわかりきっているのだ、これほど容易いことはない。

死に体の身体でもモルボルは、そう考えていた。

ハムライガーが牙を突き立てる。
モルボルは避けられない。

ハムライガーが爪で切り裂く。
モルボルは避けられない。

ハムライガーの放つブリザード。
モルボルは避けられない。

感情は行動に移させることで強制的に発散させてやることは出来る。
だが、今攻撃を受け続けているのは、受け止めてやろうという思いからではない、ただ単純に――肉体的な限界が来ていたからである。

ハムライガーが咆哮を上げる。

その叫びには何の意味も込められてはいない。
ただの叫びだ、ただ音を発しただけだ。
ハムライガーはもう何も考えない。

喜びもない。怒りもない。
悲しみもない。絶望もない。

ハムライガーは獣になった。
「ワシは……」

度重なる攻撃で、如何様にしても落ちることのなかった冠が――頭部から零れ落ちた。

落ちた冠をハムライガーがその足で蹴りあげる。
何の意図があったわけでもない、ただ自分の進路の邪魔になっていたから、ただそれだけのことだ。

冠も無く、配下も無く、そして今目の前の獣を導くことにも失敗した。
もう、モルボルに王としての資格はない。




空を切り裂いて、雷が落ちる。




「……そなたを待っていた」


200 : 決勝(4) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:31:56 XbCrrutE0


放たれたギガデイン――突如として現れたプチヒーローとルカリオを一瞥し、ハムライガーはスラリンガルの方へ向けて駆け出した。
それは二対一は分が悪いと判断したゆえの逃走にも、あるいは決戦の地に先に向かっているようにも、
あるいは別の理由があるようにも思えたが、今のハムライガーの心を知る術を持つ者は誰一人として存在しない。

「大丈夫ですか!?」
「まぁ、大丈夫ではないわな…………」

消えいく意識の中、かろうじて精神力だけで肉体を魂に食い止めているモルボルであったが、
言葉通り――死は、もう目の前にあった。
声を掛けるプチヒーローの姿も存分に認識できていないのだろう、どこにあるかわからない目の焦点は虚ろであった。

「ベホ……」
「構わん、ワシはもう死ぬ……無駄な魔力を使うな」

モルボルは最上級治癒呪文の詠唱を行おうとするプチヒーローを押し留めた。
当然、それに納得できるプチヒーローではない、再度呪文を唱えようとして、
「ダメだ……もう波導が感じられない…………」
ダメ押しするかのように、それをルカリオが押し留めた。

「悔しそうな顔をするな、なに……これもワシの業よ……あまりにも……あまりにも……壮大な夢を持ってしまった故の罰かも知れん。
一介のモルボルには不釣り合い程に巨大で素晴らしい夢を持ったが故のな…………」
「でも……!」
「聞け」

モルボルにはプチヒーローのこともルカリオのことも、何一つとしてわかりはしない。
それでも、モルボルは王だった。
王冠を失い、配下も持たず、もう失せてしまった獣を導くことも出来なくても、それでも王であることを望んだ。
だから、決めていたのだ。

「勇者よ……そなたが来るのを待っ……ておっ……た。
いずこと……もなく現れ……た悪魔……の化身、モリーは……とうとう我らの舞台へと降りてきた……
勇者よ、モリーを倒し、その手から我らの未来を取り戻してくれ……
わしからの贈り物じゃ……そこに……あ……る王……冠を……と……るが……よ…………き……そ……役に…………つ……」

魔物が勇者に希望を託すなど、なんと滑稽な行いだろうと、誰かが笑うだろう。
それでも、王であるがゆえに――モルボルは勇者に希望を託した。
結局王として大したことは出来はしなかった。
それでも、宝を渡し、勇者を送り出すぐらいのことを行っても罰は当たらないだろう。

「ワシ……出来な……お前……が……お……が……」
最後の最後ぐらい、王らしくありたい。
魂と肉体をつなぐ綱を、今にも切れんとする細く脆い綱を、モルボルは――モルボルキングは最後に強く握りしめた。

「お前が、皆を……そして、あの子供を……救って、くれ」

「……はい、王様」
最後に王と認められたモルボルは、無念な顔で――そして、ほんの少しだけ笑って死んだ。
プチヒーローもモルボルのことなど、何一つとしてわかりはしない。
それでも、モルボルの死は――王と呼びたくなるような、威風を感じさせた。


201 : 決勝(4) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:32:06 XbCrrutE0


サラリーマンが宇宙飛行士になると言えば難しそうな話であるが、子供が宇宙飛行士になると言えば、難しさは変わらないが可能性はあるだろうと感じられる。

氷精【ジャックフロスト】は火炎魔法【アギダイン】を放てない。
電気鼠【ピカチュウ】は蛸大砲【オクタンほう】を覚えない。
風龍【エアドラモン】は電気鼠【ピカチュウ】にはなれない。

可能性というレベルの話をするならば、それはもう既に何かになった者よりも、まだ何にもなっていない者の方が良い。
例えるならば、数多の進化形態を持ち、そしてこれからも新しく発見されていくであろうイーブイのそれだ。

「ア……ア……アトミックブフーラ!」
スライムのゲル状の身体が、氷精の手を形作り――ジャックフロストのみが扱えると噂される氷結魔法を放つ。
「ラァァァァァリィィィィィホォォォォォ!」
更にゲル状の身体から抜け出たいかのように、内側から勢い良く悪猿の手が形作られ、睡眠呪文が放たれる。
「ぐ ら び で」
スライムの頭頂部なのであろう部分がキマイラの顔を形作り、重力魔法を放つ。

「れいとうビーム!」
「鬼火玉ッ!」

敵の攻撃をギリギリで回避しながら、反撃を加えるグレイシア達――だが、思ったようにダメージは通っていない。

彼女たちが一度攻撃する間に三度、俗な言い方をするのならば1ターンに三回の行動。
それがスライムの行動速度と言っても良い。
モリー等は単純に一回の攻撃が凄まじく速い。
だが、このスライムは違う。
スライムの中に意識もそのままに融け合っているモンスター達が、一度に顕在化出来るのが三体。
そして、ヤマタノオロチの八つ首のように、それぞれが同時に、そしてバラバラに敵対者を襲うのだ。

その上、矛盾する様々な耐性をスライムはその身に宿している。
例えば火一つ取ってみれば、スライムは火に弱く、それと同時に火に強く、火を無効化し、そして火を吸収し、火を反射する。
全てを貫く矛と全てを防ぐ盾は同時には存在し得ない、しかしあらゆる攻撃に破壊される盾とあらゆる攻撃から守る盾は同時に存在することが出来る。
最弱の盾の分も最強の盾で攻撃を庇ってやれば、最強の盾は破壊されることが無いのである。

つまり、グレイシアとキュウビモンは詰んでいる。

モリーが最強のモンスターと呼んだのは伊達ではない。
闘いとは、つまりは如何に相手の土俵に乗らないかにある。
つまりは、自分が傷つかず相手を一方的に殺せるのが戦闘の理想である。

数多のモンスターの血と嘆きと死の上に、この理想は顕在している。

「DIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIEEEEEEEEEE」
単眼の牛頭が放ちし咆哮。

「DIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIEEEEEEEEEE」
獅子頭の放ちし咆哮。

「DIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIEEEEEEEEEE」
人によく似た顔の怪物が放ちし咆哮。

咆哮を三度重ねて、爆音。
その音を聞いたものを麻痺させる、悪魔の技。
その名をバインドボイス。
数多の悪魔を、数多の人間を葬りさった、死の声が彼女達に牙を剥いた。

「くッ……」
「あああッ!」
戦闘中に眠りながら生き延びる勇者というのもが、この世界とは近くて遠い異世界に存在するが、
そんな勇者でも戦闘中に麻痺を受ければ死んだも同然である。
そして、事実としてバインドボイスによって身体が痺れて動けない彼女達は死に体である。
スライムの攻撃を受けて死ぬ以外に無い。

「死ねば」
「よい」
「ト」
「おーもーう」
「っていうか」
「死ネ」
「俺たちのように」
「アタシたちみたいに」

スライムの中に内在する数多ものモンスターの声が、彼女達に降り注ぎ、
そして、新たな三つ首を形作った。

「ガルダイン」
最大級疾風魔法【ガルダイン】――つまりは空気。


「呪いの言葉」
最大級呪詛詠唱【呪いの言葉】――空気は呪詛によって蝕まれ死ぬ、つまりは空気の死――星の終わり。


「グラダイン」
最大級重力魔法【グラダイン】――星の終わりの後に訪れる重力の暴走――すなわち、




合体魔法――宇宙に穿たれた穴【ブラックホール】


誰も確認出来ないが故の永遠の未知、永久の虚無。
恐るべき闇が世界に召喚され――そして、グレイシアとキュウビモンは消えた。


202 : 決勝(5) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:32:36 XbCrrutE0



全身が凍り付いていた。
昔、聞いたことがある。
モンスターが吹雪を受けた際の完全凍結率――つまりは指の先すら動かせなくなる確率は三割。
その吹雪をありったけ――回避行動も取れぬままに五度受けた。
そして、己の復活を拒むように全身をコロシアムの瓦礫が押し潰している。
成程、氷で全身が脆くなっている。死ぬのだろう。
今まで、自分の死ということを終ぞ思ったことはなかった。
死ぬ寸前まで闘い、戦い終わった後にやっと自分が死んだことを気づくものだと思っていた。
成程、この全身から力が抜けていくような感覚。
全身を泥沼に投げ出したかのような沈みゆく感覚。
これが死か。
成程。
わかった、つまらん。
まだ、自分は闘いを求めているらしい。
全身が凍結し、瓦礫によって押し潰された肉体はあらぬ方向に折れ曲がり、砕けかけているというのに。
それでも、自分は闘いをやめられないらしい。

右腕に力を込める。筋肉が肥大化し、右腕を覆う氷が砕け散る。
左腕、左脚、右脚で同じことを繰り返す。
これで四肢は自由だ。

胸に力を込める。
大胸筋をパンプアップして、纏わりつく氷を追いやる。

心臓を強く意識する。
全身に熱が通うように、強く強く意識する。

自身の熱を感じる。
これ以上にないほどに氷を溶かす熱を感じる。

心臓が普段の何十倍もの速さで動き出す。
生物の鼓動数は決められていると聞いたことがある、つまり自分の行いは急激に寿命を縮めているのだろう。
だが、構わん。
おとなしく待っていれば、その内救助が来るのだろう。
戦う必要は無いのだろう。
構わん。

戦おうというのだ。
あらゆるものを闘いのためにくれてやった、ついでだ寿命の百年や、二百年もくれてやろう。

ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。

ふふ……

ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。

ふふふ……

ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。

さて、穴は深い。
上るのが大変だな。


203 : 決勝(5) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:32:46 XbCrrutE0


「やあ、久しぶり」
気が付くと、グレイシアはどこまでも大地が続く雪原に立っていた。
空はどこまでも雲に覆われていて、自身の閉塞感を表しているようだったが、
それでも、少し前まで自分が暮らしていた場所に似ていて、懐かしい風景に思えた。なにより、隣に死んだはずのトレーナーがいた。

「……お元気でしたか?」
「死んでることを除けば、元気でやってるよ」
死んでいるのに元気なはずがない、愚かな質問だ。
いや、そもそもポケモンが人間に質問するということ自体が愚かなことだ、人間からポケモンの言葉が通じてもポケモンから人間の言葉は通じない。
それでも、トレーナーはいつも私の言葉を真剣に聞いてくれていた。
だから、自分の言葉が通じることも特に不思議には思わなかった。
そういうこともあるのだろう、ただそれだけを思った。

「私も死んだのでしょうか」
「……キミはさ、死んでいるのと生きているの、どっちが良い?」
「アナタがいるなら……」

別に死んでも構わない、その言葉をグレイシアは飲み込んだ。
トレーナーが死んでから、世界はこの曇り空のように色褪せてしまっている。
それでも、トレーナーに助けられた命だ。
自殺することもせず、死んだ後に初めて、今まで生きていたことに気づくような――そんな日々を過ごすのだと思っていた。
それでも、血に濡れているけれど、絶望の黒で塗りたくられているけれど、悲しみの涙の色をしているけれど、それでも世界に色が付いてしまった。

死んだトレーナーの代わりも、死んだドラゴンの代わりも、死んだメタモンの代わりも、
死んだソーナンスの代わりも、死んだピクシーの代わりも、そしてレナモンの代わりも、見つけることは出来ない。
それでも、世界にはまだ新しい出会いがあることに気づいてしまった。

「アナタがここにいるなら……私はもう少し、のんびり生きていようと思います。
やりたいことは無いけど、そのうち見つけて……見つからなくっても、きっと、生きていきます。私、結構楽しく生きられそうです」
「そっか」

その後、二人はしばらく黙って同じ方向を見ていた。
何か言い出そうとして、何も言葉にならないまま、ただ口をもごもごと動かした。

「言いたいことは色々あったと思ってたんですけどね」
「言いたいことはもうとっくに言ってたんだ」
「……じゃあ、そろそろ」
「そっか」
「またいつか」
「あぁ……またいつか、体に気を付けてね」
「ええ」

別れを告げた後は、振り返りもせずに駆け出した。
振り返れば、二度と戻れないような気がした。

結局、これはただの夢なのだろうか。
それとも、実際にトレーナーが会いに来てくれたのだろうか。

どっちでも良い気がした。

また会えばわかることだ。

だから、振り返らない。





「勝利の鍵は、もう君たちの手に握られている」

「そして、ポケモンである君の方が気づく可能性は高い」

【悪魔召喚プログラムを起動します……】


204 : 決勝(5) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:33:05 XbCrrutE0


自身の身体のデータ化――それはデジタルデビルだけの特権ではなかったということだ。
ポケットモンスターが肉体をデータ化して、コンピュータのボックス内に預けられるように、
デジタルモンスターのそもそもの起こりがコンピュータウイルスであったように、
今、ここにある悪魔召喚プログラムとポケットモンスター、デジタルモンスターの相性は最高だったということだ。

そして、悪魔召喚プログラムにおける契約は――悪魔の側に主導権がある。
強引に判を押し、相手のサーバー内部で仮想化された例は多い。
契約に縛られた以上は、生殺与奪権はサモナーの側にあるが、今ここにサモナーは存在しない。

ただ、ブラックホールを回避するという目的のためだけに、契約は為され、そしてグレイシアとキュウビモンは待機状態へと入った。

スマートフォンを彼女達は知っていた。
そして、当時の彼女達の役には立たなかったが、スマートフォン内にあった悪魔召喚プログラムという概念は彼女達は理解していた。
閃きは――あった。

そして、僅かな可能性に賭けて――彼女達は生き残った。

「グレイシア?」
「……いい夢を見ていました」
「そうか、羨ましいな」
「勝利の鍵は、もう握られているそうです」
「そうか」

サーバー内部、先客は無い。
電脳マトリクス的風景が果てという概念を失ったかのように、どこまでもどこまでも続いている。
レナモンに退化したキュウビモンは、手の開いては閉じを繰り返した。
握られている勝利の鍵など、見えない。

「……攻撃は通用しなかった」
「はかいこうせんでも覚えていればよかったですね」
「通用すればもっと良いだろうな」

笑えない冗談だが、ほんの少しだけ緊張感が和らいだ。
レナモンは思いっきり伸びをすると、対象のない蹴りを三発放った。
それによって、筋肉の緊張をこりほぐす。
束の間と言えど、休息の時間だ、今のうちにやっておくべきだろう。

「……ポケモンである、私ならば、あのモンスターに勝つ方法に気づけるそうです」
「気付き、か。答えを教えてくれれば良いのに、と言うのは贅沢なのかな」
「…………多分、私はもうその答えを知っているから言わないんだと思います」
「知っているのか」

「……トレーナーになれ、ということです」
「そうか、よくわからないが、今すぐにでもなってほしいな」
「なりますよ」
グレイシアは確信を以て、ある方向へと足を進めると、レナモンに付いてくるように促した。

「夢の中で、私はトレーナー……私の昔のご主人様に会いました」
「ご主人様か、支配されていたのか?」
「いえ、親のような、兄のような、そんな素敵な人でした」
明るい口調とは裏腹に、ほんの少しだけその瞳にさした陰りに気づき、レナモンは「そうか」とだけ言って、口を噤んだ。

「私達はモンスターボールという……なんて言えばいいんでしょう、家に捉えられて、その家の主を自分の主人とします。
今、私達が置かれている契約に近いですね。
一度、捉えられれば逃されるか、交換されるまで、他の主に捕まることはなくなります」
「……逃す……交換、成程、そういうことか」
「ええ」

グレイシアは確信を込めて、言った。

「この悪魔召喚プログラムの契約を書き換えて、
ソーナンスが私達に託したスマートフォンの悪魔召喚プログラムで私達が主となるようにと契約します」

【グレイシア もちもの:スマートフォン】

ポケットモンスターに持たせた持ち物は、ポケットモンスターが持ったままでデータ化出来る。


「出来るのか?」
「失敗すれば死ぬだけです」
「成程、やらなきゃな」


205 : 決勝(5) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:33:16 XbCrrutE0


ハムライガーを追ったプチヒーローとルカリオもまた、スラリンガルへと辿り着いた。
スラリンガルは動きを止めている、今となってはただのハチ公程度の待ち合わせ場所に過ぎない。
ハムライガーがスラリンガル内部へと走って行くのを追い、彼らもまたスラリンガルへと侵入する。
今更、罠を疑っても遅すぎる。
罠があるというのならば、この闘技場に参加させられた時点で掛けられているのだ。
故に、迷いは無い。

スラリンガル内部――先程床に開いた穴は、何事もなかったかのように治癒されている。

ハムライガーは何をするでもなく、ひたすらに待っていた。
この戦いの先に望むものがある。

スラリンガル中に響き渡るように咆哮する。

叫びが、敵を呼ぶ。
プチヒーローを、ルカリオを、スライムを。

「敵だ」
「お前もか」
「lprpそてうあり」
「痛い」
「苦しい」
「どmr」

ゲル状の身体に沸き立つ泡と共に言葉が広がっていく。
戦うこと、新たな血を取り入れ強く鳴り続けること、そして苦しむこと。
それだけが、スライムの存在意義。

「……王様に頼まれたのだろう?そっちのガーディのような奴は任せる」
ルカリオは、プチヒーローの背中を軽く叩くと、スライムを見た。
苦しみ続ける者を見た。
その中に、自分の仲間を見たような気がして――首を軽く振った。

確かめようの無いことであるし、結局――その中にいるにしてもいないにしても、やることは変わらない。
ただ、目の前の怪物が作られる上で捧げられたであろう数多の供物の中に仲間がいないことを祈るだけだ。

「私は、この誰ともわからない奴と戦おう」
「……わかった」

ルカリオがスライムの前に立ち、プチヒーローがハムライガーの前に立つ、と同時に。
「刹那五月雨撃ち」
「刹那五月雨撃ち」
「刹那五月雨撃ち」

スライムの肉体が変形し、矢の形状となって射出される。
射出された矢は肉体を離れると同時に、硬質化――スライム以外の全てのモンスターに降り注ぐ。
プチヒーローとルカリオの決めたルールなど、スライムは解さない。
周りは全て敵、故に一掃できる手段を取っただけだ。

「死亡――」
ルカリオはその身に宿す禍魂――サタンの波導を掴む。
遺伝情報のように、サタンの中には、その力の使い方が刻み込まれている。
そして、その知識の門は――本来ならば、己の中にマガツヒを注ぎ込むことでゆっくりと開かれていく。
だが、今は時間がない。
マガタマの中にある波導を――その知識を、その腕の中に掴み取る。
元々、ルカリオの中に切っ掛けはあった――波導によって構成した剣という答えはあった。
だが、その使い方を知らなかった。
野球によって勝利を収めるのならば、バットで相手を殴るのではなく、ボールを打たなければならない、そんな正しいルールがルカリオの中には無かった。
サタンの知識が――混沌の王の禍魂が、それをルカリオに伝える。

「――遊戯ッ!」
波導によって構成された剣――波導剣が、放たれた矢を全て切り落とす。
死亡遊戯――かの、混沌王が使ったと言われる技である。
己の魔力によって構成された剣を振るうことで、当てずとも相手を斬り裂く――つまりは、無数の飛ぶ斬撃を放つ魔技。
今、ルカリオはそれを習得した。

「痛い」
「痛くない」
「苦しい」
「死ね」

だが、あらゆる耐性を持つスライムに対し、ルカリオの波導は通じるか。
答えは――

「ガルダイ――」
「呪いの言――」
「グラダイ――」

否【ノウ】!


206 : 決勝(5) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:33:26 XbCrrutE0


そして――

「滅ッ!殺ッ!豪ォ……波導弾!」

肯【イエス】!

スライムよりも疾く、絶対必中の波導弾は放たれた。
ルカリオは技を知ることで、自分の波導の新たな可能性を知った。

何故、今まで理解していなかったのか――恥じるような心持ちでもあった。
波導とは生命の力――それは今まで理解していたことだった。
生命そのものであるがゆえに、生物ならば誰もが持つ――それも今まで理解していた。

だが、理解していなかった。
今まで、己は自分の波導によって、相手を攻撃してきた。
だが、自分も相手も波導を持っているのならば、何故――相手の波導を攻撃に利用しないのか。

ギガドレインは相手の生命を吸収し、カウンターは相手の力を倍にして返す。

何故、波導という存在を理解する自分が――自分の波導だけに留まり、相手の波導によって攻撃を行わないのか。

新たなる波導弾は、相手の波導をそのまま、相手へのダメージへと変換する。

ルカリオの放つ波導は、スライムの耐性が阻む。
故に、今までの波導では――スライムにその攻撃を届かせることは出来なかった。

だが、スライム自身の波導は、己が生命であるが故に、スライムは防げない。

相手が何物も通さない盾で守っているのならば、何物も貫く槍を探すのではなく、盾を無視して相手自身を殴る。
期せずして、ルカリオはスライムの最強の盾を破っていた。

「ディアラハン」
今、与えたばかりの傷がスライムの詠唱によって完全に癒えていく。
「リジェネ」
その魔法は、スライムの自然治癒力を異常なほどに高め、ルカリオが今後与えるダメージを自動的に癒していくだろう。
「ラスタキャンディ」
かの魔人も用いた魔法は、スライムの全ての能力を上昇させる。

ただし、戦いにおいて盾を破るということは前提条件に過ぎないのだ。

「……上等だ」
傷を癒やしたということは、己の攻撃が通用しているであるということをルカリオは理解した。
治癒力を強化したことも、能力を強化したということも、それほどまでに自分を恐れていることであると理解した。
上等も、大上等である。
つまりは、自分の掴んだ答えは――大正解であったということだ。

「滅ッ!殺ッ!豪ォ……波導弾!」
前よりも力を振り絞る。
波導弾は相手の波導を感知して、自動的に敵へと向かい、確実に命中する。
当てることを考えなくても良い、ただひたすらに――敵を討つことを考えれば良い。

「ラスタキャンディ」
「ラスタキャンディ」
三重の強化がスライムに乗った、構わない。
だが、スライムがバリヤードの腕を形作った時、その腕が波導を帯びた時、そしてバリヤードの得意技がものまねであることを思い出した時。

「滅殺豪波動弾」
己の放ったものよりも、数倍の大きさの波導弾を見た時。

静かに――
ただ、静かに――





「成程、やってくれたな」

ルカリオはモリーに激怒した。


207 : 決勝(5) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:33:37 XbCrrutE0


ハムライガーとプチヒーローは互いに動かない。
互いが互いの一挙手一投足に注視して、先に動かない。

今、スライムの動きはルカリオが引き付けている。
だが、スライムがその気になれば、容赦なくハムライガーとプチヒーローをスライムの戦いに巻き込んでくるだろう。

一撃を狙わなければならない。

「ハムライガー……」
ガブモンがハムライガーを連れ去った後、何があったのかはプチヒーローにはわからない。
ただ、再び心が壊れてしまうような何かが起こったことはわかる。
壊れることで、ようやく心の安寧を取り戻せるような何かが。

「僕も君を救えないのかもしれない……それでも!」
剣に――プチヒーローの魔力が籠められる。

ハムライガーが駆け出した、目指すはプチヒーローの心臓。
体格は互角、プチヒーローの剣を跳び越え――背後から、その頭部を噛み千切れば良い。

「僕は君と……話がしたいんだ!」
魔法剣――剣に魔法を込めて放つ斬撃である。
彼の世界では、火炎斬りとマヒャド斬り、稲妻斬りと真空斬りの四種類しか存在しないが、
他の世界――例えば、モルボルの棲まう世界の魔法剣は十三種、約三倍のそれが存在する。

だが、あらゆる世界を巡っても、それだけはない。

癒しの力を籠めた魔法剣だけは存在しない――ケアル剣も、ケアルラ剣も、ケアルガ剣も、そしてベホマ剣も存在しない。

だが、今ここに――今、ここだけに!

勇者の手に、ベホマ剣は存在する!

プチヒーローがベホマ剣を横薙ぎに振るう、それをハムライガーは跳躍し回避、そしてプチヒーローの背に回りこむ。
背後を許したプチヒーローだが、瞬時に振り返る。
そして、ガルルモンがやったように――バック転で、ハムライガーの噛み付きを回避。
絶好のチャンスを失ったハムライガーは吠えた。
屈辱が故だろうか、否!

ライガー種はその咆哮こそが、超奥義。
耳を防げば避けられるというものではない、放たれた音波は衝撃波と化す。
文字通りの音速の一撃、プチヒーローはその声を全身で聞くこととなった。
衝撃がプチヒーローを吹き飛ばし、壁に叩きつける。
衝撃波とプチヒーローをもろに受け止めた壁は、瓦礫の山と化した。
それでも薄皮一枚残っているのが、恐るべきスラリンガルの強度であろう。
しばらく経てば、何もなかったかのように再生するのだ。

ハムライガーは駆けた。
プチヒーローは、この一撃を受けても死んでいないと確信していた。

ハムライガーはこの奥義を出し惜しんでいた、自分が持つどのような技よりも、この技は負担が大きい。
日に何度も撃てるものではないし、連発も出来ない。その上、相手と距離を取ることになる。
相手が遠距離攻撃を持っていた場合、自分のほうが圧倒的に不利に陥ることになるだろう。

いや、それ以上に――

「僕は今、君の声を聞いた……」
瓦礫の山の中から、プチヒーローはゆっくりと立ち上がった。
鼓膜は破壊されたが、それでも自分の骨が折れた音はしっかりと聞こえている。
身体がよろめいてはいるが、地に伏したりはしない。
再び、剣を構える。

「泣き声って……言葉にならないよね…………」
ハムライガーは駆けた、今ここで――プチヒーローを完全に仕留める。

「君はずっと、ずっと泣いていたんだ」

自分の傷を癒やすことも忘れて、プチヒーローは剣に祈りを籠めた。

自分ではハムライガーを救うことが出来ないのかもしれない。

それでも!

世界はハムライガーにとって絶望そのものなのかもしれない。

それでも!


――勇気を……君にッ!


「届け――祈りの一撃ッ!」


208 : 決勝(5) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:33:47 XbCrrutE0


滅殺豪波動弾――受けてみれば成程、ルカリオの身体は一撃で死にかけている。
目に見えるダメージは一切無いが、生命力そのものを奪われたという実感がルカリオにはあった。
癒しの波導で以て、体力を回復させる。
回復力は著しく低下している、今のルカリオの体力は瀕死に毛の生えた程度だろう。

「やってくれたな」

だが、何よりも――新しく生み出した必殺技が、瞬時に真似されたのが癪に障った。
この怒りは犠牲者であるスライムには向けられない、この怪物を生み出したモリーに向けられる。

「ラスタキャンディ」
「ラスタキャンディ」
「滅殺豪波動弾」

「…………やってくれたな」

ただでさえ、後一撃食らったら死ぬ状況下で五重に強化された滅殺豪波動弾を受ければルカリオはどうなるだろうか、もちろん死ぬ。
そして、そのただでさえ一撃で死ぬ攻撃は絶対に命中する。
つまり、どうなるのだろうか、確実に死ぬ。
滅殺豪波動弾着弾までの死の刹那、走馬灯染みた速さでルカリオは生き残り、勝つための方法を思考する。

滅殺豪波動弾が消滅するまで、全力で逃げ続ける。
――不可能、今の自分ではそもそも逃げること自体が難しいし、そもそもプチヒーロー一匹にする選択肢はない。

滅殺豪波動弾で相殺する。
――否、強化された滅殺豪波動弾に対して、己の滅殺豪波動弾で対抗できるとは思えない。

己の波導を消し、滅殺豪波動弾を回避する。
――否、滅殺豪波動弾から別の技に切り替えられるだけだ。

己の波導を信じる。
――結局は、それしか無い。

ルカリオは滅殺豪波動弾を右掌で受けた。
滅殺豪波動弾は己の波導を燃やし尽くさんとする業火だ、だが波導であることには変わりない。
滅殺豪波動弾を自分の力に変えろ。
相手の波導を相手への攻撃と使ったのならば、同じように自分への治癒と出来ぬことがあろうか、いや無い。
掌の焼ける感覚がルカリオを襲う。
ルカリオは痛みを無視する。
全てが波導であるのならば、やはり――吸収できる。

波導がルカリオの全身に染み渡っていく。
まるで業火のようだった、敵の――負の感情が、波導を通じて己を焼きつくさんとしている。
関係ない、波導は波導だ。
全てを吸収し、傷を癒やす。

「ラスタキャンディ」
「ラスタキャンディ」
「滅殺豪波動弾」
何時までも斃れぬルカリオに業を煮やしたのか、スライムが追撃を放った。

二発目を吸収するのは、一発目よりも簡単だった。

目の前で癒えていくルカリオ、何故、己の攻撃でルカリオが傷を癒していくのか、スライムにはわからない。
だが、もう物真似が通じぬことはわかる。

「ガルダイン」
ルカリオはスライムの元へと駆ける。

「呪いの言葉」
先程、中断させた詠唱は明らかに致死級の大技だった。
受ければ、確実に――それも、スライム以外の全てを巻き込んで死ぬ。

「グラダイ――詠唱に割りこむように、ルカリオがスライムの口に拳を突っ込んだ。
ゲルの感触は、冷ややかとして、ぬるりと気持ち悪い。
纏わりつく粘液のような感覚も忌まわしい、主に全身が気持ち悪い。

「零距離だ――お前の波導で、お前自身を攻撃するように仕向け続ける」
ルカリオはスライムの肉体を捉えて離さない、振り払わんと藻掻くが、スライムを握る力がより強くなっただけだ。

ルカリオはスライムを見た。
スライムもまた、ルカリオを見た。
その中に懐かしい顔はあったのかもしれない、無いのかもしれない。
それでも、行うことは変わらない。

そして、ゆっくりと息を吸い込み。
不意にプチヒーローの顔が頭を過ぎった。



「いやしのはどう」
ルカリオは、これからが良くあるように祈った。


209 : 決勝(5) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:33:57 XbCrrutE0


ハムライガーはゆっくりと目を見開いた。
目の前に、プチヒーローがいる。眠っているようだった。
ハムライガーはその両足で何度も、何度もプチヒーローを揺すった。
今にも起きだして伸びの一つでもしそうだったが、何度揺すっても起き上がらなかった。
涙が出そうになったが、今まで散々泣いたからか、不思議と涙は出ない。

スライムとルカリオの元へ足を進める。

絶対に振り返らないと決めていた。
一歩、二歩、三歩、四歩、やけに歩みが遅い。
胸の中に温かいものがじんわりと広がる、癒やしという名の赦しだった。
身体も心も治っている、それでもどうしても歩みが遅い。
耐えられず、ハムライガーは後ろを振り返った。

プチヒーローは今にも起きだしそうな顔で、死んでいた。

散々泣いても、やはり涙は出てきた。


210 : 決勝(5) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:34:16 XbCrrutE0


「……温かい」
「そうか」

余計な言葉はいらなかった、それだけで――勇者と同じように癒せたことを理解した。
緊張感から一気に解放されたのか、力が抜けて、ルカリオは床に大の字になった。

「何故……」
「殺サズニ……」
「癒してくれたのですか……?」

スライムに理由を問われ、ルカリオはほんの少しだけ考えこんで、やめた。
自分の中に確固たる理由があったわけではない、ただ、この最悪の状況下でも――勇者が己にしたように、敵を信じようと思っただけだ。

「わからない」
「そうですか」
スライムもそれを受け入れた、ただ自分達が救われたという結果だけがある。それでいいと思った。
特に話すことも無くなって、ルカリオはプチヒーローの方を向いた。
プチヒーローは眠っているように見えた、そしてハムライガーは泣いていた。
勇者が勝ったのだろう、別段驚きはない。

ルカリオは立ち上がり、プチヒーローの元へ向かった。
ハムライガーとすれ違う、お互いに何も言わなかった。
スラリンガル内から、自分達以外の波導は感じられない、モリーは逃げ出したのか、あるいは既に討たれたのだろう。
ほんの少しだが、休むことが出来た。モリーの追跡を再開することにしよう。

「……プチヒーロー、俺は先に行く」
プチヒーローは何も返さない、知っている。
自分達以外の波導は感じられなかった――生きている者ならば、誰もが持つエネルギーが感じられなかった。
だから、そういうことなのだろう。

「お前のやりたかったことは、頼りないかもしれないが、代わりに私がやっておく」
ルカリオは、プチヒーローの剣を取り、袋の中に入れ、モルボルに託された王冠を――少し悩んでから、自分の袋に入れた。
プチヒーローの勇気を、ルカリオは受け継いだ。

「例えば――それはッ!」
地響きが起こる。スラリンガルの床を砕いて、あの男がやって来る。
ルカリオが殺したくて殺したくてしょうがなかったあの男が。

「私を殺すことかね!?」
金属の硬度を持つであろう闘技場の瓦礫を、そしてスラリンガルの床を、水をかき分けるようにして移動したなどと、今更そんなこと、驚きはしない。
そういう男だ、わざわざ異世界からモンスターを集めて殺し合いをさせるような狂人だ。

「それはッ!俺のやりたいことだよおおおおおおおおお!!!!!モリイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!」
スラリンガル中央部より飛び出してきたモリーの元へ、ルカリオは駆ける。
「スライムッ!三連破壊光線ッ!!!!」
と、同時に――モリーはスライムに命じた。
スライムの心がどうなろうとも、スライムのマスターはモリーだ。契約に逆らうことは出来ない。
だが、スライムは破壊光線を放たない。

「なッ!」
ルカリオが鳩尾に向けて放った拳を咄嗟に受け流すモリーだが、スライムが命令に従わなかった衝撃で、拳に継いで放たれたローキックをもろに喰らってしまった。
態勢を崩したモリーの顔面に、ルカリオの拳がもろに入った。
拳の衝撃を受けて吹き飛ぶモリー、だが――スライムが従わないというイレギュラー、敵に先制攻撃を喰らったという事実を受けても、モリーは笑っていた。

「だから、戦いは面白いッ!」
「黙って死んでろッ!」
モリーの姿に冷静さを失い、思いっきり殴ったルカリオだったが、一撃を加えることでいくらか落ち着きを取り戻した。
どうしても、拳で一撃をくれてやりたかったという思いはある、しかし――モリーを殺すならば、拳よりも優れた武器を己は持っている。

「ランダマイザ」
「ランダマイザ」
「ランダマイザ」

何故、自分が契約より解き放たれているのか――スライムには理解できない。
だが、今すべきことはわかる。
何よりも優先すべきはモリーの弱体化、全能力弱体化魔法を何重にも掛けて弱らせなければ、そもそも戦いの土俵に上がれない。
見れば、モリーには戦いの後がある。
誰がモリーと戦ったのかはわからないが、普通のモンスターが何十回も死んでいるような傷を負っている。
それでも、平然とした顔で戦い続けるのがモリーという男だ。
それをスライムが一番理解している。


211 : 決勝(5) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:35:10 XbCrrutE0


「……まずは、裏切り者の始末が先だな?」
「貴様の始末が先だッ!」

ルカリオの後方、モリーの歩幅にして30歩程のところににスライムはいる、
モリーは何よりも優先してスライムを倒したいが、ルカリオは何が何でも食い止めようとするだろう。
ハムライガーは、今のところ何をするでもなく呆けているが――やはり、油断ならぬ獣、背後から首筋を食いちぎられるかもしれない。

「滅ッ!殺ッ!豪ォ……波導弾!!!!」
ルカリオにはモリーに考える暇を与えてやる気など無い、すぐさま、滅殺豪波導弾をぶちかます。
と、同時に――ルカリオはモリーの元に駆けた。
相手の防御力を無視し、なおかつ絶対に命中する滅殺豪波導弾をモリーとの距離を取りつつ連発するのが一番良い。
だが、スライムを守りながらそれが出来るか――否だ。
モリーを相手に近接戦を仕掛けるのは上策ではないが――速攻で決める、波導剣で素っ首切り落とす。

「ぐ、おおおお!!!」
滅殺豪波導弾が命中し、モリーが膝をついた。
想像以上に弱り切っていたらしい、問題ない――ルカリオはそう判断し、

「何もかもッ!何もかもッ!死んで詫びろおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」
「ワシに謝ることなんぞなああああああああああああああああい!!!!!!!!!」
モリーの首めがけて、波導剣を横薙ぎに振るうもモリーは斬撃を膝をついた姿勢のまま、くるくると跳躍し回避。
自分の背よりも高く跳んだモリーに対し、ルカリオは死亡遊戯を放つ。
無数の斬撃の衝撃を前に――モリーはそれらを一切意に介さず、ルカリオを飛び越した。
全身の刀傷を筋肉の圧縮により無理やり抑えこみ、モリーに追いすがらんとしたルカリオに向けて叫んだ。

「■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!!!!!」
瞬間、ルカリオの全身の骨が軋んだ。
その場に立っていられない超衝撃の前に、ルカリオの身体は吹き飛び、壁に叩き付けられる。
ライガー種の超奥義にも匹敵する大声は、モンスターバトルの実況作業によって養われたものである。

「まっ……」
「待たん!」
モリーは勢いを付けて、スライムにドロップキックを見舞った。
スライムの無数の耐性は――当然物理攻撃に対しても有効である。
自身の渾身の蹴りが、何事もなかったかのように弾かれ――モリーはにやりと笑った。

「良い……さすがはわしの作り出した最強のモンスターッ!そうでなければな!」

「ランダマイザ」
「ランダマイザ」
「ランダマイザ」
「滅ッ!殺ッ!豪ォ……波導弾!!!!」

モリーの言葉に構うこと無く、スライムは己の使命を果たし続ける。
モリーに対しては、この世界に存在するあらゆる言葉で今まで呪い続けてきた、そして今――殺せる時が来た。
これがモリーの放つ言葉に対しての全ての答えだ、そう言わんばかりにランダマイザが唸る。
そして、それに応えてルカリオは滅殺豪波導弾を放った。
迫る滅殺豪波導弾を前に、モリーは大きく息を吸い込んだ。
最期の時を前にして、覚悟を決めたか――否、モリーは見せてやることにしたのだ。
あらゆるものを貫く矛、あらゆるものを防ぐ盾――存在しうるはずのない両方を。


212 : 決勝(5) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:35:21 XbCrrutE0
つまりは――

「邪ッ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
掛け声と共に、モリーは両の肘で同時に肘鉄砲を放った。
モリーの右肘鉄砲は――ルカリオの放った最強の攻撃、滅殺豪波導弾を打ち、消滅せしめた。
そして、左肘鉄砲は――スライムの持つ最強の盾、その耐性を貫いた。

攻撃を受けたスライムのそのゲルの体は、煮立ったかのように――全身が泡立ち、
その泡一つ一つが弾けるに応じて、その全身をあらゆるところにぶち撒けて、死んだ。

きあいをためる――気合を込めた一撃で相手の防御を無視する秘技である。
モリーはひたぶるに鍛え続け、それをあらゆるものを破壊する神域の攻撃へと磨きあげた。

「貴様ァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!」
己の滅殺豪波導弾が破れた――スライムの死の前に、ルカリオはその事実すらどうでも良くなっていた。
殺戮遊戯――無数の斬撃が、モリーを斬りつけんと迫る。

「見えている」
気合いが目に見えぬように、殺戮遊戯の斬撃は目に見えるものではない。
だが、見えているかのようにモリーはそれら全てを避けきってみせた。

「ボーイ……小技に頼るな」
一歩一歩、ゆっくりと、モリーはルカリオへの距離を縮める。
ルカリオは当たらなくなった殺戮遊戯を無意味と悟り、いやしのはどうで己の体力回復を図った。

「拳で来い」
結局、最終的には――こうなるのか。
いやしのはどうで、今ルカリオの体力は満ち満ちている。
モリーは、そもそも生きているのが不思議な程の傷を負った上に、その能力は何重にも弱体化されている。

だが、それでも五分の戦いにはならない。

ルカリオは、モリーを前にして、己の勝機が一割を切っていると悟り――

「モリー、墓に刻んでおいてやろう……拳の頂点に立ったと愚かにも思い違いをした男が拳の戦いに敗れ、惨めに死んだ、と」

それでもなお、戦うことを決めた。

「そのご自慢の拳を打ち砕き……お前の誇りを粉砕してやる」


213 : 決勝(6) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:36:13 XbCrrutE0



「……何が起こった?」
先ほどまで、レナモンが持つスマートフォンには自分達の契約下においたスライムのステータスが表示されていた。
今はもう消えている、何らかの強力な攻撃を受けたのか、急激にHPが減少し、死亡したらしい。
現在、スラリンガルのサーバー内にいるレナモン達にはその詳細はわからない。

「誰かが、彼を解放した……というだけならば良いのですが、実際は」
「あぁ……モリーだろう」

出来ることならば、何事も無く平穏無事にモリーには倒れていたままでいて欲しかった。
だが、あのスライムを倒した者がいるというのならば、未だ知らぬ強力な参加者よりも、モリーが生きていたと考える方が腑に落ちる。

サーバーを抜けだして、再びスラリンガルの心臓部へと戻る。
スライムの死体はそこにはない、戦いは他の場所で起こったのだろうか。

「……む?」
ふらふらと誰かが、こちらへと向けて歩いてい来る。
見たことのない小狼のモンスターだ、参加者なのだろうか。
今更になって、モリー側が送り込んだ刺客とは考えたくはない。

「誰だ」
「……ハムライガー」
「参加者か?」
「うん」

その様は見るからに焦燥しきっていて、哀れなように思えた。
この殺し合いでどれほどの目に合ったのだろう。

「……待っていて下さい、今モリーを倒して、アナタを帰しますから」
モリーの強さはあまりにも絶望的である、しかしハムライガーの姿を見て闘志がむくむくと湧き上がるのを彼女達は感じた。
ほとんどのものが死んでしまった、しかし――まだ生きている誰かはいた。
知らない誰かでも、生きていてくれるなら――今までの戦いは無駄になどならない。

「帰っていいのかな、みんな……みんな……僕が殺したのに……」
帰るという言葉に、ハムライガーは怯えたような反応を浮かべた。
あれほど帰ることだけを望み、そしてその末に――皆が死んだ。己が手を下した。
今、モリーを倒せば帰れる――あぁ、そうだろう。
だが、今更になって掌を返せというのか――自分の行いの全てが、ただの無意味な邪悪な行為だと知って、
それで、ブリーダーさんに会いにいけるというのか。

「ハムライガー、私にはお前が何をしたのかは知らない」
目の前の獣の反応を見るに、ハムライガーはレナモンと同じ罪を犯したのかもしれない。
あるいは、この殺し合いの中、守られて守られて――そして、ハムライガーを守った者は皆、死んでいったのかもしれない。
それを聞く必要はない、掛ける言葉は一つだ。

「だが、私はお前を赦す」
「えっ……」
「死者が生者を赦すことは出来ない、だから代わりに私がお前を赦す」
「ゆるすって……」
何を言われようとも、罪は消えない。
ハムライガー自身が、己を赦そうとした者を殺してきた。

「……傷一つないな、お前の身体は」
レナモンは、ハムライガーのふさふさの毛を撫ぜて、言った。
「誰かが、お前を癒【ゆる】したんだ……お前が背負った罪を全員分引っ括めて、だから……もういいだろう」
「……よくなんか、無いよッ!」

「お前の身体が二度と血で染まらないように、お前を癒やした誰かは祈ったんだ。
自分を罰したいというなら……お前が赦されること、それがお前の罰だ」
「……そんな、こと」

思えば、ハムライガーはこの殺し合いで泣いてばかりいた。
一生分の涙を、海ができるほどに、流して、流して、枯れ果てるほどに、流した。
それでも、未だ――涙は枯れない。

結局、ハムライガーはどうしようもないほどに子どもだった。

「ねぇ……えっと」
「私はレナモン、こっちが」
「グレイシアです」
「レナモンとグレイシア……お願いがあるんだ」

泣いてばかりもいられない。
こみ上げてくる涙を振り払って、ハムライガーは言った。


214 : 決勝(6) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:36:23 XbCrrutE0
「その機械をもらえないかな」

ハムライガーは知っている、その機械――スマートフォンが、COMPと同質のものであると。
そして、そこに自分が求めるもの――もう、求める必要のないもの。

スマートフォンがほんの少し熱を帯びる。
あのCOMPのように、贄を求めて暴走するだろう。
スマートフォンを破壊すれば、きっと他の何かが。

そして、自分が戦わなければならないものがあることを知っている。

怪訝な表情を浮かべる二匹を横目に、ハムライガーはスマートフォンを起動する。
欲しかったものは、ゲートを開く悪魔召喚プログラムではない。
自分という存在を、ハムライガーという存在を、罪を犯したハムライガーという存在を、消し去るもの。
そして会いたかった人に――ブリーダーさんに、人間に、会うための。

『邪教の館.exeを起動します』
無機質な合成音声のアナウンス――自分がすべきことはわかっている。

「グレイシアさん、レナモンさん、僕は僕の戦いをします……しなくちゃいけません、だから、モリーの方をお願いします」
「本当は……猫の手も借りたいところだが……まぁ、いいさ」
「アナタをここまで届けた誰かのために、絶対に……モリーを倒してきます」

『特殊合体――』

「また会いましょう」
瞬間、ハムライガーの姿が消えた。
だが、狼狽えない。
彼は彼の戦いをすると言ったのだ、ならば――それで良い。
レナモンとグレイシアは自分達の戦場へと向かった。

『悪霊 ポルターガイスト → チャッキーの魂による代替を行います』
『妖精 ナジャ → 魔晶――無垢な魂による代替を行います』
『魔獣 ヘアリージャック → ハムライガーによる代替を行います』
『妖精 ハイピクシー → ピクシーの魂による代替を行います』

『合体結果 ハムライガーが なりたかった者 ならなくてよい者 会いたい人 会いたかった人』

『ハムライガーの祈り』

『子ども』

『魔王』

『よろしいですか?』

『Y/N』

『Y』


215 : 決勝(6) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:36:33 XbCrrutE0








――アリスを貫いた拳を握りしめる。
――少女からロードしたデータは確かにシャドームーンの地獄へと誘われた。
――けれどもその情報量は一人の人間の魂としては余りにも少なかった。
――もしかしたら彼女は元になった人間の少女の魂が幾つにも分かれた一欠片に過ぎなかったのかもしれない。

或いは――




.


216 : 決勝(6) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:36:44 XbCrrutE0


拳闘の運びとなり、すぐさまルカリオはフットワークを活かし、モリーを翻弄するかのように左右に動いた。
モリーの拳は拳の形をした破壊光線と言っても良い、綺麗に喰らえば死ぬ、ガードしていても、そのガードごと撃ちぬいてくる可能性がある。
結局、一番良いのは――当たらないことだ。
バタフリーのように舞い、スピアーのように刺す――ルカリオはそれを強く意識する。

今はルカリオが先に動き、その後からモリーがその動きについていくという形になっている。
距離はお互いに付かず離れず、ルカリオが一歩下がれば、モリーが一歩詰める、逆をすれば、また逆だ。
ここで、ルカリオは思いっきり距離を詰めた。
リーチという点で、身長120cm――手の長さもそれに応じたルカリオは非常な不利を被っている。
牽制のジャブなどは放てない、何時だって――近づいて、ぶん殴る。

「オラァ!」
モリーの腹をブチ貫かん勢いで、ルカリオが拳を放つ。
その強靭な腹筋に阻まれて、内臓を花火のように散らせることは出来なかったが――やはり、ランダマイザの効果は通っている。
「うげッ!」
殴られて血を吐くことがあるなどと、人生の中で一度だって無かった――血反吐を吐きながら、モリーは今までの戦いを思い出していた。
ひたすらに蓄積されたダメージ、重ねられた弱体化魔法によって、ルカリオはモリーと同じリングに立っている。
距離をとったルカリオに対し、モリーは己の血を拭いながら、微笑みかけた。

「死ねッ!」
言葉だけは獰猛であるが、今ここでモリーを確実に殺すという決意を固めている。
うかつに突っ込むことはしない、思考は冷静である。

「まぁ、そう……邪険にしてくれるなッ!」
あと一秒下がるのが遅れていれば、その拳によってスラリンガルの天井を打ち破り、宇宙の彼方まで吹き飛んでいただろう。
今、モリーが放ったものはそれほどまでに鋭いアッパーであった。
いや待て――今の拳圧だけで、ルカリオの腹部に痛みが走っている。
今更、痛みなどは気にしていられないが、だが、今ここで、ルカリオの注意がその己の腹部へと動いた一瞬。

「せいッ!」
避けるのは間に合わなかったが、刹那の反応で、
ルカリオの顔面へと放たれたモリーのストレートをその重ねた両掌で受けとめることは出来た。
だが、やはり流石の超威力というべきだろう。
その代償は余りにも大きすぎた。
両手首から先は共に根こそぎ吹き飛び、受け止めきれなかった威力で頭蓋がひび割れている。
瞬時にいやしのはどうで傷を癒やすも、失った両手は回復しない。

「とどめだァァァッァゥェ!!!???」
更に連撃を重ねんとしたモリーの腹部を、ルカリオは剥き出しの骨で殴りぬいた。
思わず奇声を上げたモリーだが、しかし一瞬で冷静さを取り戻す。
三歩、退き――ルカリオの様を見て、笑う。

「ふふ、いい根性をしていて……実に嬉しいぞ」
「そっちは骨で殴られただけで退くようないい根性をしているようだな」
「そういじめてくれるなッ!」
モリーの懐に潜り込まんとしたルカリオを、モリーはその軽やかな脚さばきで左に動いていなす。
がら空きになったルカリオの側部――その頭部へと拳を放つモリー。
だが、ルカリオはその拳に向けて思い切り蹴りあげた。
モリーの拳に放った右蹴り――その代償として、ルカリオの右足は、ロードローラーに轢かれたかのように捻れ、弾け、千切れ、飛ぶ。
だが、蹴りによってあらんところに拳が放たれたせいで、モリーの態勢が崩れる。

「オラァ!」
ルカリオが狙うは、モリーの右目――見事に命中した。
その骨拳で、モリーの右目を潰すと、次いで連撃を放たんともう片方の腕で殴らんとするが、咄嗟に態勢を立て直したモリーの拳がその腕を突いた。
根本から腕が根こそぎ持っていかれる、だがそれだけにとどまらない。
その拳の勢いのままに、ルカリオは壁に叩き付けられた。

「……まさか、蹴ってくるとはなl」
「知っているだろ?もう、貴様のルールに従うのは嫌になってるんだよ」
ルカリオは片足で壁に寄り掛かるようにして立っている。
やはり、両腕と片足をくれて、右目だ。
この戦いは殴り合いなどではない、とっくに削り合いへと移行していた。
モリーは心の底から楽しそうに笑うと、ルカリオの方へと迫る。
今のルカリオは機動力で圧倒的にモリーに劣っている。
相手の攻撃を避けられはしない、出来るとするならば――相討ち覚悟の特攻だ。
ルカリオは再度立ち上がるようにして、壁から離れた。


217 : 決勝(6) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:37:05 XbCrrutE0


「来いよ、モリー」
「言わずもがなだッ!」

疾い――ということは知っているはずだった。
だが、先程よりも段違いに疾い。
弱体化の効果が切れているのだろうか、だとすれば面倒だ。

ルカリオが前傾姿勢を取る、しかしモリーがどうあろうとも、やることは変わらない。

「ウオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」

だが、来るはずだったモリーの攻撃はない。
気づくと。モリーはその場に倒れこんでいる。

「れいとうビーム!」
「鬼火玉!」

完全にモリーの不意を打った攻撃だった。
モリーの全神経がルカリオに集中しており、新たに乱入したキュウビモンとグレイシアが片側の視界を失ったモリーのデッドゾーンにいたがゆえの幸運だった。

「やれ、やれ、やれ、やれ、こうまでやってくれると本当に嬉し……」
モリーが、グレイシアとキュウビモンを先に始末せんと彼女達の元に駆けた瞬間、ルカリオはその完全に失った左腕にヒノカグツチの柄を差し込んだ。
そして、王冠を口で咥え、片足でモリーのもとへと駆ける。

「貴様の相手は……」
この中で誰よりも疾いのは、モリーだ。

だが、モリーよりも疾いものがある。

それは、空を切り裂くもの。

神の鳴らす音。

勇者の光。

そして、王たらんとした者の最期の力。

「俺達だッ!!!!!!!!」


218 : 決勝(6) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:37:15 XbCrrutE0


キングスライムはスライム集合体であるのだから、当然スライムのかんむりもスライムである。
それが、スライムへと戻らず――冠の状態のまま、戻れなくなったものをスライムのかんむりと呼ぶ。
冠でありながらスライムであるがゆえに、彼は生きている。
スライムでありながら冠であるがゆえに、彼は動けない。

ただ、モルボルの頭部からこの殺し合いを見続けてきた。

だが、最後に――モルボルはスライムの冠に己の魔力を込めた。
祈りを籠めて――雷の力を注ぎ込んだ。

あまり知られてはいないことだが、キングスライムはギガスラッシュ――雷の斬撃を修得することがある。

ルカリオは王の冠を得ることで、マガタマの時と同じく――その知識を引き出す。

王の雷を――勇者の斬撃を、この殺し合いの主催者に浴びせてやるために。
死亡遊戯は当てずとも、斬る魔技――そして、雷は――モリーがグレイシアとキュウビモンを殺すよりも、圧倒的に疾い。

「来たれ――勇気の雷」
「来たれ――勇気の雷」
「来たれ――勇気の雷」









「ギガスラッシュ」

光が、モリーを包み込む。


219 : 決勝(6) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:37:25 XbCrrutE0




(成程……ワシの敗けか)

(しかし、敗北とは……初めて味わうが)

(これほどにも)

(これほどにも……ッ!)



(悔しいとは……)

(ふふ……)

(ははは……)

(クソおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお)
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお)


220 : 決勝(6) ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:37:35 XbCrrutE0


【クロスオーバーモンスター闘技場 決勝戦終了】

【優勝 ルカリオ グレイシア レナモン ハムライガー】

【モリー@クロスオーバーモンスター闘技場 死亡】
【ベヒーモス@ファイナルファンタジーシリーズ 死亡】
【ソーナンス@ポケットモンスターシリーズ 死亡】
【ピクシー@モンスターファームシリーズ 死亡】
【プチヒーロー@ドラゴンクエストシリーズ 死亡】
【チャッキー@モンスターファームシリーズ 死亡】
【モルボル@ファイナルファンタジーシリーズ 死亡】



















……【HERE COMES A NEW CHALLENGER!】


221 : 延長戦 ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:38:23 XbCrrutE0

「君は……誰?」
「私はアリス」
「そっか、僕はハムライガー」

邪教の館.exe――つまりは、悪魔合体プログラムを起動し、ハムライガーは自分の肉体を失った。
自分の肉体と二つの魂、そして一つの魔晶によって――新しい者が誕生するのだろう。
そして、それは――ハムライガーの望みであり、少女の望みだった。
きっと、誰かが止めなければ――何時の日か、何処かの世界で、それこそブリーダーさんが住まう世界に、少女は現れるかもしれない。
だから、ハムライガーは彼女を呼ぶことにした。

「ねぇ、何で僕を呼んだの?」
暴走COMPは呼んでいた、その中にある邪教の館アプリを利用するものを――すなわち、アリスを召喚する者を。
シャドームーンによって、アリスは討ち倒された。
だが、肉体を失い、魂の欠片を失い――それでも、眠っているだけだった。

だから、逃げ場所を探していたハムライガーはCOMPに引きつけられていた。
悪魔合体を行えば、ハムライガーはハムライガーをやめることが出来る――アリスになることが出来る。

「アナタが……みんなが私を望んでいるから」
「みんなって?」
「人間を望む者……人間を愛し、人間を憎み、人間に救済を求めるモンスター達」

「君は……何?」

「私は悪魔【アリス】 私は悪魔【えいえんのしょうじょ】 私は悪魔【にんげん】 私は悪魔【デモノイド】 
私は悪魔【しき】 私は悪魔【まじん】 私は悪魔【まおう】 私は悪魔【てんし】 私は悪魔【きゅうさいしゃ】
私は悪魔【スケープゴート】 私は……あなたの悪魔【おともだち】」

少女はやわらかな微笑みを浮かべていた、モンスターである彼にも理解できる美しさだった。
見ているだけで、凍りついてしまいそうな美しさだった。

「……言っている意味がわからないよ」
「そう……じゃあ、すこしお話しましょ」

何時、現れたのだろうか。
彼女は背もたれのないチェアに腰掛け、ティーテーブルの上の紅茶を飲んでいる。
向かいのチェアにハムライガーも飛び乗った。
ティーテーブルの上のシフォンケーキをアリスはカットすると、ハムライガーに差し出した。
ケーキを見て、哀切の表情を浮かべるも、ハムライガーは勧められたケーキを一口に食べる。
マッド・ティーパーティーの始まりだ。

「知ってる?私はモリーに呼ばれた参加者じゃないのよ?」
「えっ、と……そうだったんだ」
そもそも、ハムライガーはアリスが闘技場の参加者であることを知らなかった。
だが、不思議なことに、アリスが闘技場に参加していることを知っていた。
記憶が混じっている――ピクシーの記憶、チャッキーの記憶、アリスの記憶、悪魔合体の影響下にある故か、ハムライガーはそれを知っている。


222 : 延長戦 ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:38:33 XbCrrutE0
「モリーは祈ったわ、自分と戦えるぐらいに強いモンスターが出てきますように。
そして、モンスターは……例えば、あなたのお友達のトンベリは人間を憎んでいた。人間に見られているのに、殺せない。
人間を殺したくてしょうがない……エアドラモンはパートナーが欲しかった……悪魔たちは人間無くしてはいられない……
金の子牛と同じように……目に見えぬ神ではなく、形をもった神が……つまりは、この闘技場のモンスターは人間を求めていた。
私は悪魔……だから、その願いに応え、召喚された」
「僕達が君を呼んだの?」
「それが悪魔の本質……呼ばれれば来る、呼ばれなくても来る。全ては、召喚者の願いを叶えるために。だから、私は……あなたになるために来たのよ、わかるでしょ?」
「じゃあ、悪いんだけど……それには応えられない」
「どうして?」
「僕はもう救われたから」

「そう……」

音もなく、アリスは紅茶を飲み干すと、チェアから降りて、思いっきり伸びをした。

「なんで、悪魔が誰かを救いたがっているのか知ってる?」
「……知らない」

そして、その背の羽根を――堕ちたる天使の六翼を広げた。

「結局、悪魔自身が一番救われたいの」

ハムライガーがチェアから降り、アリスを見た。

「私はアリス――起源【オリジン】が無い故に無限の可能性を内包する者、それ故に、モンスターを救う者として召喚された悪魔。
そうあれかしと誰かが祈るから、アリスとして振る舞う悪魔。アリスのミーム。求めるものは信仰【おともだち】、私はあなたを殺し、アリスになる」
ハムライガーはアリスの元へゆっくりと歩き、その横に座った。
アリスはハムライガーをその羽根で吹き飛ばした。
しかし、何度も何度も、ハムライガーはアリスの横に座った。

「誰かが、言ってあげればよかったんだ」

「生きていても、一緒に歩いていけるって」


「大丈夫、僕は君を受け入れる」

「ピクシーも」
「チャッキーも」

「一緒に帰ろう」



「僕はやり直す勇気をもらったから」

「きっと、一緒に進んでいける」

「君のとなりで」


223 : 延長戦 ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:39:23 XbCrrutE0



モリーの持っていたスイッチを押すと、闘技場は元の島の姿を取り戻し、観客席の観客は全員、闘技場の変形に巻き込まれて死にました。世の中にはそういうこともあるのです。
そして、戻ってきたハムライガーを加え、片足と両腕を失ったルカリオをキュウビモンの背に乗せて、ゆっくりとスマートフォンが指す方向へと歩いて行きました。

移動している間、お互いに見たものや聞いたことについて話し合いました。
先程会ったばかりですが、たくさん話しました。
自分が会ったモンスターたちのことを忘れないように、覚えていてもらえるように、たくさん話しました。

そして、目的地に着きました。
そこにあったものはターミナル――転送装置です。
きっと、この装置を起動させれば、元の世界に戻ることが出来るでしょう。

ターミナルが起動する少し前、ハムライガーは言いました。
ピクシーのような言い方で、ほんの少し困ったような笑い方をして、

「また、会えたね」

少しだけ泣いて、
ハムライガーの中にピクシーが少し残っていることを話し、
それから、取り留めのないような話をして、彼らは元の世界に戻って行きました。



それからしばらく経って、どこかの世界のどこかの森に手紙が届きました。
手紙にはたった一文だけ、拙い文字でこう書いてありました。




『勇者プチヒーローに救われました』

プチファイターはそれを読んで、悔しそうに、そして嬉しそうに、言いました。

「やっぱり、勇者だったんじゃねぇかよ」


224 : ◆3g7ttdMh3Q :2015/07/29(水) 16:39:50 XbCrrutE0
終わります。


225 : 名無しさん :2015/07/29(水) 20:58:13 R.RXyBkA0
完結、おめでとうございます!
中断前の熱く激しく悲しい戦いの色合いをそのままに駆け抜けた決勝戦、
小粋な締めでちょっとほろりとさせる延長戦、どちらも堪能させていただきました!

この作品を最後まで読ませていただいて、ありがとうございました!


226 : 名無しさん :2015/07/29(水) 22:12:24 0m5LP3kE0
完結おめでとうございます!
はっちゃかめっちゃかやりきって、最後綺麗にまとまるというのがまさにCMロワ!
チャッキーのエゲツナサや、ベヒーモスのかっこよさ、父呼ぶ黒竜の思わぬ切なさをも吹き飛ばすモリーのインパクト!
モンスター闘技場という先入観のせいで確かにモリー自身が強いのは予想外だったw
パーティーメンバー入りは伊達じゃねええ! ソーナンス、馬鹿な、あっけなさすぎる……。
しかも強いだけじゃなくてまさにこのロワの人間の象徴の如き身勝手さ。
リングマ……スライム……。ハムライガーまで名を捨てちゃってるし……。
でもだからこそ勇者はやってくる。ていうかよくモルボルキングこうもってくるか。
よくネタにされる勇者を送り出す王様のシーンでまさかこんなに感動するとは……。
スライム攻略法は眼から鱗というか、このロワならではだった。モンスターがトレーナーになるとは。
グレイシアとレナモンの失って残されてそれでも生きてみようと思った二人の会話すごく好き。
ピクシーのソーナンス譲りのカウンターも熱い。そういやモンファーにもあったな、カウンターシステム!
ベホマソードもだけど、あのルカリオが癒やしをなしたのにも泣いた。
プチヒーロー、お前の祈りはみんなに届いたんだよ……。
そして完全燃焼、遂に決着! かとおもいきや、まさかのネタばらし。
憎むべき敵として、愛すべき絆として、モンスターがそれぞれの形で求めたからこそ呼び出されたのがアリスだったとは……。
アリスも、ハムライガーも、一人ぼっちじゃなくなったんだな。
そして何ともこのロワらしい観客一掃サービスの末に、物語の終わりの相応しい綺麗な締め
贅沢盛りだくさん満足いっぱいのこのロワらしい最終回でした!


227 : 名無しさん :2015/07/29(水) 22:13:05 0m5LP3kE0
最終回上げ


228 : ◆TAEv0TJMEI :2015/07/29(水) 22:25:04 0m5LP3kE0
最終回の感動止まないとこですが、レナモンのエピローグを予約します


229 : ◆/wOAw.sZ6U :2015/07/29(水) 22:39:56 2bXbW1JI0
最終回投下お疲れ様でした!
これまでのモンスター達が紡いできた物語があちらこちらでつながる度に思い返される今までの出来事。
観客の雑な扱いも含めてああCMロワだったなあと思える物語でした……。
王様も勇者も悪魔も、ポケモンも、デジモンも、魔物も皆お疲れ様……という言葉ばかりが出てきます。

とりとめのない感想になってしまいましたが、次いでルカリオのエピローグを予約させていただきます。


230 : ◆kDCJzVFlsM :2015/07/29(水) 22:46:04 xJ6YZj7k0
最終回投下お疲れ様でした!
月並みな感想になってしまいますが、まさしくこれまでの集大成といった作品でとても感動させていただきました。

グレイシアのエピローグを予約します。


231 : 名無しさん :2015/07/29(水) 23:18:04 0m5LP3kE0
>>230
一応確認。新規さん? トリミス?


232 : ◆5omSWLaE/2 :2015/07/30(木) 00:12:44 ZWbq1FjY0
敵を倒す剣技と、敵を救う魔法。
果たしてどちらが、魔王を打ち破るに至る力となっただろうか。

凄まじい戦いでした。
ここまで闘技場を生き抜いたモンスターだけでは無かったですね。
新たに登場した『人造モンスター』が居て、既に敗北したモンスターの魂も参戦して。
想像していた以上にスケールが膨れ上がっておりました。

最終決戦と言っても、一戦だけじゃ無い。幾つもの戦いがあって。
そしてそのどれもが、あらゆる世界のロジックを利用した驚異的な戦術が組み込まれている。
メテオカウンターを発動させないスモッグ攻撃。マガツヒを吸収する事によるルカリオの回復。
ポケモンのデジタル化を利用してブラックホールをかわす。相手の波導を利用した攻撃で、最強の防御を破る。etc。
多彩なアイデア一つ一つに感服し、それが短時間で怒涛の如く撃ち出され、非常に贅沢な気分を感じました。

最凶の人間モリーを打ち破った戦術は、ランダマイザ連打からの集中攻撃。
言ってしまえば単純、だけどそこに至るまでには二体のモンスターが救われなくてはなりませんでした。
イービルスパイラルに囚われたルカリオと、召喚下に置かれたスライム。
戦いを制したのは攻撃でも補助でも無く、癒しの魔法だったと思います。
それこそが勇者プチヒーローの最大の武器なのだと思います。

◆3g7ttdMh3Qさんには多数のSSを投下頂き、最終話まで非常に楽しませて頂きました。
投下お疲れ様でした! そして本当にありがとうございました! 最高に面白かったです!!



クロスオーバー・モンスター闘技場に関わってくださった書き手の皆様方、本当にありがとうございました!!
ロワ完結……企画者として非常に心を打たれるものがあります……!
企画者として引っ張っていけるパワーこそまだまだだったと思いますが、CMロワはどの話も凄く面白く、そして書くのも楽しい場所でした!
本当に、本当にありがとうございました! 今度またチャットしましょう!!


233 : ◆5omSWLaE/2 :2015/07/30(木) 00:23:21 ZWbq1FjY0
ハムライガーのエピローグを予約します。


234 : ◆kDCJzVFlsM :2015/07/30(木) 00:33:08 EFCWCPRc0
>>231
ほんっっっっっとの最初期にちまっとだけ書いた者なんですが、如何せん相当前の話なのでトリップを失念していまして……とはいえ証明できるものがあるわけでもないので、まずかったら取り下げます!


235 : 名無しさん :2015/07/30(木) 01:25:43 JelQ/20.0
>>234
いえいえ、不味いなんていうことはないですよーw
単にエピだけ新規の人がと言うのはあんまないだろし、うっかりトリミスしたのかなと気になっただけですので
そういうことなら気にせず書いていただければ私どもとしても幸いですw


236 : クロス・ソングス  ◆TAEv0TJMEI :2015/08/06(木) 04:47:56 7VITg6iI0
レナモンのエピローグ、投下します


237 : クロス・ソングス  ◆TAEv0TJMEI :2015/08/06(木) 04:48:12 7VITg6iI0
クラモンがいる。ココモンがいる。ジャリモンがいる。
ズルモンがいる。ゼリモンがいる。チコモンがいる。
ウパモンがいる。カプリモンがいる。ギギモンがいる。
キャロモンがいる。キュピモンがいる。キョキョモンがいる。


238 : クロス・ソングス  ◆TAEv0TJMEI :2015/08/06(木) 04:48:57 7VITg6iI0
>>237
と、すみません、コピペミスです。
以下から投下です。


239 : クロス・ソングス  ◆TAEv0TJMEI :2015/08/06(木) 04:49:19 7VITg6iI0


                     「ねぇねぇレナモン、どこいったの―?」
                     「またおかのうえなんじゃないかな―?」
                     「おかー?」
                     「おかー」
                     「そっか、おかかー」
                     「うんー」
                     「おかって、なにもないよね。レナモン、なにしてるんだろね」
                     「むずかしいかおしてたから、きっと、むずかしいことだよ」
                     「むずかしいこと? おとなだね」
                     「おとなだよ」
                     「ぼくたちもおとなになったら、むずかしいこと、できるかな」
                     「できるできる」
                     「だったらはやく、おとなになりたいね」
                     「ねー」「ねー」
                     「おとなになって、レナモンと、いっしょ。むずかしいこと、いっしょにがんばる!」
                     「いっしょに、かんがえる!」
                     「「るー!」」


▽ 


そよぐ風に乗って届く子どもたちの声に、仰向けに寝転んだまま頬を緩める。
ピンと立った大きな耳が伊達ではないことに感謝する。
街を見下ろせるこの丘にいようとも、子どもたちの声を受け取れることが堪らなく嬉しい。

ここははじまりの街。デジモンたちが生まれ育つ場所――。

あれから、ルカリオとグレイシアとハムライガーと別れを済ませてターミナルを起動させた私は奇しくもこの場所へと送還された。
子どもたちが沢山いる賑やかな場所を求めた私の意志が反映されたからか。
或いは連絡点となるターミナルがこの近くにも設置されていたからか。
はたまたここが全てのデジモンにとって始まりの場所でいつか還る場所だからか。
理由は分からない。
けれどもこの地へと辿り着けたことに私は運命を感じた。
いや、運命などという仰々しいものではなく、祝福とでも言うべきか。
君のやりたかったことをやりなよと、お節介な誰かたちが背中を押してくれたような気がしたから。
笑顔で迎えてくれた子どもたちに手を引かれて、私はこの街の住人となった。
デジタマを見守り、生まれてきてくれた赤ん坊を祝い、子どもたちと遊んで、大きく育った者たちと共に街を守る。
それが今の私で、充実した日々を送れている。
きっと私は笑えているのだろう。
一時は忘れていた笑顔。瞑っていた瞳。塞いでいた耳。
今は違う。ありたい自分として私はここにいる。
あるがままにこの世界を、時に残酷で、けれど私が愛し、私を愛してくれている子たちがいる世界を受け止めて。
私はここで生きている。


240 : クロス・ソングス  ◆TAEv0TJMEI :2015/08/06(木) 04:50:16 7VITg6iI0
「クラモン」


「ココモン」


「ジャリモン」


「ズルモン」


「ゼリモン」


「チコモン」


「ウパモン」


「カプリモン」


「ギギモン」


「キャロモン」


「キュピモン」


「キョキョモン」


もう心配ないよと空に笑いかけて、続けて思い出すのはあの闘技場での戦いで出会ったモンスターたち。


「ガブリアス」


「コイキング」


「はぐれメタル」


「モー・ショボー」


「メタモン」


「エアドラモン」


「メタルティラノモン」


「シャドームーン」


「アリス」


「ピクシー」


「グレイシア」


「ソーナンス」


「ハムライガー」


「ルカリオ」


彼らだけではない。
私が忘れたくないと思うのは彼らだけではない。
だからその名前も口にする。


241 : クロス・ソングス  ◆TAEv0TJMEI :2015/08/06(木) 04:53:13 7VITg6iI0

「スラリンガル」


「スライム」


「モリー」


「――人間」


モリーをはじめとした人間たち。
モリーや人間に従わされていたモンスターたち。
彼らのことも、想う。
ずっとずっと考えてきた。
ずっとずっと想ってきた。
あの戦いの最中では真っ当に想う時間もなかった彼らのことも。
想おうとも思っていなかったかもしれない彼らのことも。

取り出した“それ”に手を這わす。
“それ”は電源の切れたスマートフォン。
別れの前にハムライガーから返してもらい、グレイシアに譲ってもらったソーナンスたちの形見であり、スライムの墓標だった。

今でも忘れられない、画面からスライムのステータスが消えたあの瞬間を。

あっけなかった。
あまりにもあっけなく命が消えたことが表示されていた。
こんなものなのか。命が消えたというのに、たったこれだけ?

その簡素さに何が起きたのか瞬間には理解できなかった程だ。

命が消える、誰かがいなくなるなんてことは今まで何度も経験してきた。
子どもたちを守れなかった時、その命がこの掌から零れ落ちた時の嘆きはこの胸のうちに残っている。
世の中は劇的な死だけではないということくらい嫌なほど知っている。
ムゲンキャノンの一撃で、さっきまでそこにいた子どもたちが次の瞬間には跡形もなかったことだってあったのだ。

だが、あの死は違った。異質、だった。
スライムが死んだと次第に分かって来た時に感じたものは、これまでに経験してきたものとはどこか違っていた。
それは喪失感。
怒りや悲しみよりも先行したただただいなくなった、抜け落ちた、そんな感覚。
スライムのことを殆ど知らなかったからでもあるのだろう。
スライムの内面に殆ど踏み込むことなく、ろくに話すこともできなかったのもあると思う。
その点スライムと肩を並べて戦ったというルカリオは私がよく知る怒りや悲しみを抱いていた。
スライムのことを想い、私に感謝してくれた程だった。

『憎むべき存在に操られていた俺だからこそ分かる。
 共にモリーを相手に戦った俺だからこそ言い切れる。
 あいつは、スライムは自分の意思で戦えた最後に悔いはなかった。
 自分の生を送れたことをお前たちにも感謝しているはずだ。ありがとう、と』

では私のこのもやもやは何なのか。
引っかかりは何なのか。
それをずっと私は考えてきた。
考えて、考えて、考えて。そして、思ったのだ。
それはきっと私とスライムとの関係性にこそ答えがあるのではないかと。
あの時の私はスライムのトレーナーだった。
ではトレーナーとは何なのか。
トレーニングをするもの、という意味ではない。
あの時の私が、所謂ポケモントレーナーとは何なのか。
自らのトレーナーのことを親や兄のようだったと口にしていたグレイシアには悪いが、敢えて言おう。
客観的に見ればあの時の私とグレイシアはスライムのご主人様だった。持ち主、だった。
小さな機械一つでスライムとの契約を一方的に操作できる存在。
命令することもできる存在。
スライムがモリーにしていたのと同じように、スライムを支配できる存在だった。
子どもたちは違った。
私の子どもたちという意識がなかったかと言えば嘘になるが、彼らは私のものではなかった。
保護者と庇護者という関係ではあれども、同じデジモンとデジモン、対称的な関係だったから。
失った、奪われた、失くしたという想いはあれど、あの子たちの命はあの子たちのものだということは力を追い求めていた時の私でさえも理解していた。
真に命を奪われたのはあの子たち自身で、あの子たちが生きた結果で、私がとやかく言えるものでもなくて。
だからこそ自分を責めるだけではどうしようもないやり場のない怒りと哀しみに私は逃げたのだ。

けれどスライムは違った。
スライムは紛れも無く私のものだった。
スマートフォン越しにでも私が逃げろと指示していれば逃がすことのできた命だった。
……分かっている。
そんなことをしていたのならモリーには勝てなかったということは。
スライムを含めあの日、あの時、誰か一人でも欠けていたなら今自分はこうして子どもたちと笑い合うことはできなかったろう。
ともすれば自分の意志で戦い散ったスライムへの侮辱にもなりかねない。

それでも、重くのしかかるのだ。
あまりにもあっけない生の喪失。
この手から消え去ったスライムの命。
全部が全部、私のものであったが故に――。


242 : クロス・ソングス  ◆TAEv0TJMEI :2015/08/06(木) 04:53:57 7VITg6iI0

「重いな――」

守るでもなく奪うでもなく、命を、所持する。
それはその存在の全ての責任を自らに負うということ。
何から何まで本当の意味で自分の物とするということ。
人間は分かっているのだろうか。その重みが。
自分はもう真平ゴメンだ。トレーナーなんかに二度となりたいとは思わない。

「なんなのだろうな、本当に。人間とは何なのだろうな」

多くのモンスターたちがそれぞれの理由で人間を求めたあの場所で。
人間たちだってモンスターを求めた闘技場で。
私は人間を求めることがなかった。
モリーだってあくまでも私にとっては私が本当にしたいことをするための、みんなを忘れないための通過点に過ぎなかった。
あの場所に連れて行かれる前の私にとってもそうだ。
力を得るための一つの手段としては認識してはいたけれど、あの子たちを守れなかった後悔に押しつぶされていた私には。
人間の子どもを求めるなんて出来うるはずもなかったのだ。
だから今更ながらに考えることにした。

「モンスターと人間とは一体何なのだろうな」

デジモンとテイマー。
モンスターとブリーダー。
ポケモンとトレーナー。
悪魔とサモナー。
魔物とモンスターマスター。

「どこまでいっても人間とモンスターは別の存在で」

パートナーや仲魔とか言い換えたところで、人間とモンスターは異なる存在で、その関係性だってイコールではない。
家族のように対等であっても絶対に非対称な関係。
それが人間とモンスターで、その違いは絶対だ。
なのにどうして2つの存在は交ざってしまったのだろう。
人間同士、モンスター同士で向け合うような感情を抱いてしまったのだろう。

「いや、或いはそれこそが答えなのかもしれないな」

モンスターと人間は違う。
でもモンスターと人間は違うからこそ、モンスターとモンスター、人と人ではありえない関係が生まれるのかもしれない。
違うからこそ強く憎めてしまう。
違うからこそ心許すこともある。
違うからこそ愛を尊く感じられる。
違うからこそ命を軽くみなしてしまう。

モンスターと人間は違うからこそ同族に向けるのとは別の関係を築き上げてきた。

それは良くも悪くもきっとこう言えるものなのだ。

特に分かたれた別なる存在――特別な存在、と。

「はは、そうか、特別か。どこまでも別モノだからこそか!」

天啓を得たりとばかりに納得がいき思わず笑い声を上げてしまう。
あの知恵を求めたコイキングならこの答えをどう評すだろうか。
頷いてくれるだろうか。首を横にふるだろうか。
どっちにしろきっと彼なら話に乗ってくれて、この答えで留まらずずっとその先も答えを探し続けたはずだ。
私も、そうしよう。
忘れないということは足を止めるということではないのだから。


243 : クロス・ソングス  ◆TAEv0TJMEI :2015/08/06(木) 04:54:18 7VITg6iI0




                     「たいへんたいへん!」

                     「こども、こどもー?」

                     「レナモン、キテ、キテ!」

                     「きみだれー? なにー?」




思考の海から帰ってくると、街の様子が騒がしい。
子どもたちの声からして事故が起きたとかそういう危険な話ではなさそうだが心配には心配だ。
とにかく急いで戻らなければと全力で駆け出すためにスマートフォンをしまおうとして気づく。
さっきまで握っていたはずの、すっかり見慣れたスマートフォン。
それはこんな形だったろうか?
切っていたはずの電源もいつの間にか点いている。
もしかしたら考え事に没頭するあまり変なボタンを押してしまったのかもしれない。
異界の機械の全容を把握はしていない以上それも十分有り得る。
……いや、考えるのは後にしよう。
今は子どもたちのほうが心配だ。
今度こそしまって走りだす。




  丘を駆け下り




    街の門をくぐり抜けて




      子どもたちのはしゃぐ広場へと到着して





        そして私は



  
           私たちは出会った。




               
              「ようこそ、始まりの街へ。私はレナモン。デジタルモンスターだ」






                    【レナモン@デジタルモンスターシリーズ&???――――――――to be ∞ Dreamers!!!!!!】


244 : クロス・ソングス  ◆TAEv0TJMEI :2015/08/06(木) 04:54:56 7VITg6iI0
投下終了。CMロワでの最後の投下に感謝を添えて。今までありがとうございました。
皆様お疲れ様でした!


245 : ◆5omSWLaE/2 :2015/08/15(土) 23:03:17 6Oye21Kk0
人とモンスター。本来であれば決して相いる事の無い、闘争の対象でしかない関係。
だけども気が付けば、彼らが協力し合う文化が生まれていた。
それはきっと「特に分かたれた別なる存在」だからこそ、関わる事がお互いにとって
全く新しい世界への扉であり、だからこそ惹かれ合うんだと思います。

例え一時的にでもスライムのトレーナーとなった事で、そこに絆が生まれ、
人間側からの視点というものを感じる事となったレナモン。
力だけを求めていた彼女が、そうした様々な事を知って、
今では新たな出会いを求めているというのは素敵だなと感じました。

◆TAEv0TJMEIさんの作品はどれもテーマが込められていて、新たな価値観に気付かされる事が多かったです。
投下お疲れさまでした!! そして、数々の面白い作品をありがとうございました!!


246 : ◆5omSWLaE/2 :2015/11/30(月) 00:30:03 qMsI/0S.0
今更になってしまいスミマセン!
ハムライガーのエピローグを投下致します。
タイトルは「だけど、生きていく」です。


247 : ◆5omSWLaE/2 :2015/11/30(月) 00:30:59 qMsI/0S.0
目が覚めるとそこは深い森の中だった。
風と共に吹き抜ける湿った草の香りで、ここが故郷の世界だとすぐにわかった。


あぁ、帰ってこれたんだな。


安心してしまって、4本の足が同時にくたっと力が抜けてしまった。
そうしてそのまま、ゴロゴロと寝そべった。
こここそが僕の居るべき世界なんだ、と実感した。

「おいィ? 俺の縄張りに勝手に入るとはいい度胸だなァ」

ぼーっと余韻に浸る僕に、荒々しい声が掛けられた。
ノラモンだ。ロードランナーの一種だった。
そうだ、ゆっくりしてはいられないな、と思った僕はワンパンでノラモンを蹴散らし、あてもなく歩き始めた。

拐われる前とくらべて、気温はほとんど変わってなかった。
時間はそんなに経ってないのかもしれない。
だけどこれ以上ブリーダーさんに心配をかけさせちゃいけない、一秒でも早く帰らなくちゃ。



日が沈むまで走ってるうちに、見覚えのある場所にたどりついた。
ジャングルでのトレーニングで通った事がある道だ。
ファームまではまだまだ遠いけれど、なんだかもう泣きそうになってしまった。

少しだけ休もう。

僕はうずくまって身体を休めた。







「アタシは赦してあげないもんね」

白いボディコン服を来た悪魔が耳元で囁いた。
真っ暗な視界の中に、ニタニタと笑う彼女だけが鮮明に浮かび上がっている。
これが夢だと言う事にすぐに気が付いた。

「いや〜見事生き残れてオメデトウ。すごいねェ〜ハムライガー君。
 どう? どんな気分? 何人もぶち殺して生を勝ち取った気分は??」

甲高く、不快な声で悪魔は煽り立てる。

「ホーント、生者たちってば勝手だよね。勝手だと思わない?
 自分たちの解釈で罪を正当化して、その意識から楽になろうとしてさ〜。
 死人に口無しって言うじゃん? 残念だったね、今ここでアタシが死人代表で言ってあげる。


 ぜっっっったいに、赦してあげなァ〜〜〜〜いwwwwwwwwwwwww


 アタシらを踏み台にして幸せを勝ち取ったキミを恨みますゥ〜!
 ホイミスライムとハムも超痛かったって言ってたしィ、死んだみんなはホントもう苦しくて苦しくて……」
「ハムライガー、これは死者の言葉でも何でもない!」

言葉を遮ったのは、レナモンの声だった。

「この悪魔はお前自身の中にあるネガティブな感情だ。幻影にすぎない」
「あァん? キツネ風情は黙ってろし!」
「こんな悪意に耳を貸す必要など無い
 現実の私達がお前を赦した、それこそが確かな事実なのだ」

当然ながらレナモンは、ハムライガーの意識の中に潜り込む事など出来ない。
このレナモンもまた、夢の中の存在だ。

「いーや、コイツはアタシの言葉を無視する事なんて出来ないハズよ。
 確かな事実ならこっちにだってあるんだからね」

夢の中の悪魔は、レナモンの後ろに回りこみ、口をグイっと押さえつけた。


248 : ◆5omSWLaE/2 :2015/11/30(月) 00:31:48 qMsI/0S.0
「ガブモンも、プチヒーローも、きっとキミの事を赦すだろうね。それは確信してもいいわよ。
 ……でもね、彼らはもう二度と新鮮な空気を吸う事が出来ないのよ。
 青空を見る事も出来ないし、彼ら自身の友達にも会えない。
 キミは、キミを救おうとした者から、その権利を奪ったの。
 わかる? キミがこれから享受しようとしている幸せって、そういった犠牲の上に成り立つのよ。
 赦す赦さないとか関係のない、動かしようの無い事実なの。どーう??」

悪魔は両手をパッと離す。
夢の中のレナモンは、何も言えなかった。

「あれあれ〜、キツネちゃんでも擁護出来ないのかな〜。
 ヒヒヒ。さて、じゃあハムライガー君は今どう思ってるのかな?」
「く、ハムライガー……そいつの言葉に耳を貸すんじゃない」



心配しなくていいよ。

ほくそ笑む悪魔の目を、しっかりと見つめ返した。
これは戯言なんかじゃない。
単なる悪夢なんかじゃない。
僕を蝕もうとする呪い、背負わねばならない十字架だ。

僕はもう、それに立ち向かうだけの勇気を持っている。
心に動揺など全く無い。僕は静かに言う。

「僕はちゃんとわかってるよ」
「キミの身体は今、たくさんの返り血で汚れているって事実は?」
「わかっているよ」
「当然、命を奪った罪から逃げたりはしないよね?」
「みんなの死は受け入れるつもりだよ」
「よしよし、それじゃあキミはこれからどうするのかな?」
「ブリーダーさんのところへ戻るよ」

ハッキリと、淀みなく答えた。
悪魔は目を細めて、苦笑いを浮かべた。

「ふーん、心は傷まないの?」
「正直、謝りたい気持ちでいっぱいだよ」
「そんなキミが、ブリーダーさんと幸せな日々を送ってもいいと思ってるの?
 何人もの命を踏み越えてきたキミが」
「逆だよお姉ちゃん。たくさんの命の上に立っているからこそ、僕は幸せにならないといけないんだ」
「ふーん……なんで?」

「僕が、僕自身の都合で奪い取ったもの。
 僕を救うために……こんな僕なんかのために、捧げてくれたもの。
 僕が今立っているのは、それらが積み重なった山の上なんだ。
 ブリーダーさんともう一度会うために、僕はかけがえのないものをたくさん貰ったんだ。
 それを無駄にするなんて、それこそ罪と向き合わない事だと思う」
「へぇ……でもアタシが、幸せに生きるアンタを妬ましいって言ったら、どうする?」

悪魔は右足をゆすりながら、ワンレングスの長い髪をかきあげた。

「ごめんなさい。……だけど、僕は生きていくよ。
 お姉ちゃんの想いだって、逃げずに、向き合って、受け入れる」
「あ、そう」

悪魔は退屈そうに答えた。
どこからともなくタバコを取り出し、煙を吐いた。

「……アンタのブリーダーさん、喜んで迎えてくれると思う?」
「わからない。けど、確信しているから」
「ふーん……」

レナモンはハムライガーの元に歩み寄り、優しく頭を撫でた。
そして、つよくなったな、と微笑んだ。

「つまんないの。アタシ帰る」

真っ白な朝の日差しに包まれると共に、悪魔は跡形もなく消えた。







今までずっと生活してきて見慣れたハズのファームが凄く懐かしくて、また目がじわりと熱くなった。
ログハウスの窓から中を覗きたい気持ちを抑えて、ドアを叩いた。


249 : ◆5omSWLaE/2 :2015/11/30(月) 00:32:18 qMsI/0S.0
心臓が急激に高鳴る。やっぱり不安になった。
ブリーダーさんはどんな顔で迎えてくれるだろうか。
居なくなっていた僕の事を、どう思っていたのだろうか。
いや、もしかすると僕が拐われる時にブリーダーさんがモリーに……。


中からコツコツと足音がした。
僕はそれがブリーダーさんである事を、祈った。












開いたドアの先には、驚いた顔のブリーダーさんが居た。
僕は一声「キャウン」と小さく鳴いた。





痛いくらいの抱擁と、僕の毛並みに零れた涙が、とてもとても温かかった。



【ハムライガー@モンスターファームシリーズ   償いは、幸福な日々によって】


fin


250 : 名無しさん :2015/11/30(月) 00:38:35 saiMGl.60
投下乙です
幸せな日々から悪夢に投げ込まれ、永遠の白昼夢の果て心を壊し、癒され戻ってきたハムライガーが遂に家に辿り着いたか


251 : 描き出す未来図  ◆TAEv0TJMEI :2016/04/11(月) 20:35:49 6GOUGttc0
お久しぶりです。エピローグ、一つ投下します


252 : 描き出す未来図  ◆TAEv0TJMEI :2016/04/11(月) 20:36:44 6GOUGttc0
いつからだろうか、その伝説が人に、ポケモンたちに、囁かれだしたのは。
曰く、それは黄金に輝く鎧を纏い、漆黒のマントを靡かせて、炎の剣を掲げし者。
人であるとも、ポケモンであるとも、人でもポケモンでもないとさえ囁かれし者。
彼の者は悪しきを挫き、弱きを助けし者。
人、その者を――勇者と呼ぶ。





「……っ、戻れえええっ、ガー太郎!」

青年が付き出したモンスターボールから放たれた光が傷だらけのガーディーを包み込む。
ガーディーはまだいける、やらせて欲しいとばかりに抵抗するも、そのままボールに吸い込まれていく。

(わりいな、ガー太郎。お前がよくても、俺っちが駄目なんだ。もうこれ以上、お前たちが傷つくのを見たくないんだ)

分かってる。これがその場しのぎにしかならないどころか、状況を悪化させるだけの選択なのは誰よりも青年自身が分かっている。
分かっていて尚、彼には立つことも叶わなくなった自分のポケモンを前に、こうするしかなかったのだ。
ここでポケモンたちに無理をさせられるような人間なら、こんな所に一人で乗り込んだりはしなかっただろう。
こんな、こんな――悪の秘密基地になど。

「おや、どうしました? 新しいポケモンを出さないのですか?
 我々が瀕死にしたあなたのポケモンは5匹。ポケモントレーナーなら後一匹持ってきているものですよねえ?」

白衣のスナッチャーの言う通りだ。
ポケモントレーナーが連れ歩けるポケモンは最大6匹まで。
本来、6匹以上捕まえているトレーナーなら、万一に備えてとりあえず6匹満員で連れ歩くだろう。
捕まえたばかりのポケモンでも主力のポケモンを回復するまでの壁にはなるし、何なら一撃で倒されること前提で盾にすることだってある。
そんなのは賢いポケモントレーナーにとっては常識だ。
別に非道でもなんでもない。勝つためにはあたりまえのことなのだ。

だが。
青年が手持ちに用意してきたポケモンは5匹。
5匹で戦うことの不利を承知で、敢えてその定石に背いていた。

「ああ、それとも。わたくし共にポケモンを盗られたせいで6匹目を用意できなかったとか?
 それはそれはご愁傷様! 果てさて君のポケモンはどの子かな〜?
 こちらのチコリータですか? それともあちらのブラッキー?」
「ちげえよ、俺っちのポケモンは、ぺー介っつうんだよ!」

これもそれもそう、他所様のポケモンを商品として見せびらかすこのクソッタレなポケモンスナッチャーにポケモンを盗まれたから?
否。
盗まれたことは事実だがそれにしたって即席でも6匹目を用意してくればよかったのだ。
暇さえ惜しんでタマゴ孵化を繰り返していた青年なら、非理想個体のポケモンが山程余っていたはずだ。
第一、盗まれたのはコンテスト用のポケモンだ。
バトル用のポケモンは手付かずだった。
なのにフルメンバーで来なかったのは即ち、奪われたポケモンを取り返した時に、その場で抱きしめてやりたかった青年の我儘に過ぎない。
手にしたポケモンの7匹目は自動的にパソコンへと送られてしまう。
それを回避しようと、すぐに手持ちへと加えなおしてやりたいばかりに、青年は愚行を成したのだ。

ああ、そうだ。
愚かとしか言いようが無い。
たった一人で悪の組織に挑んで壊滅させられる。
そんなことができるのは未来のチャンピオンくらいだ。
そもそも青年はそのパンクでロックな風貌が指し示すよう、ここ最近はバトルを離れコンテストにのめり込んでいた。
空いた時間で片手間に卵の厳選こそしていたがポケモンバトルのブランクは相当だった。
せめてバトルに強い知り合いに協力してもらうとか、ジュンサーさんや国際警察に通報するなどすれば勝負にもなったろうが……。
孵化作業も放り出し、いなくなったポケモンを探してる中でコンテストを見に来る好事家たちから掴んだ闇取引の情報。
コンテスト上位に入る愛らしいポケモンたちを売り渡す日がまさに今日この時だと知ってしまった以上はすぐに動くしかなかったのだ。


253 : 描き出す未来図  ◆TAEv0TJMEI :2016/04/11(月) 20:37:05 6GOUGttc0

その結果がこのザマだ。
大事なポケモンを取り戻せないどころか、このままでは他の手持ちまでスナッチャーやブローカーたちに捕まってしまう。

(すまねえ、ガー太郎、ナット君、ニョロ之、王ドラ、スッピンピン……。
 俺っちの無茶に付きあわせちまって。せめてお前たちだけでも!)

ならば青年にできるのは命をかけてでも仲間たちを逃がすくらいだ。
そのためなら敵に背を向けるというトレーナーとして恥じる行為も厭わない。
ここまで使っていた自転車は度重なる敵の迎撃で既に原型を留めていないが打つ手はある。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおりゃああああああああああああああああ!」
「むう!?」

ボタン一押しで靴底のスケートが展開する。
ポケモンコンテストでポケモンたちだけでなく、自分たちも跳んだり踊ったりできないかと取り寄せたおニューのローラースケートだ。
こんなことに使う羽目になろうとは思ってもいなかったが出し惜しみするわけにはいかない。
まだあまり出回っていないアイテムだからだろう。
ランニングシューズだと思い高をくくっていたのだろう白衣からはぐんぐん遠ざかり、青年は入ってきた出口へと近づいていく。
これならば或いは……。
僅かながらに逃げ延びる可能性が見えたその刹那、

「ええい、他の者たちは何をしているのです! 基地を壊したくはなかったのですが、仕方ありません。
 サザンドラ! りゅうせいぐんです!」

影が、落ちる。
どこから?
後ろからではない。
上からだ。
屋内だろうが容赦なく降り注ぐ流星群に打ち据えられ、青年が地面を転がる。
600族のタイプ一致技を生身で受けたのだ。
マサラタウンに生まれたわけでもなく、武闘家ならざるポケモンコーディネーターの身で耐えられるはずがなかった。

「あ、ぐっ、ガっ、は、ひ」」

スケートは砕け散り、全身の骨が何本も持って行かれた。
それでも尚這いずり出口を目指そうとするも、遅々として進まず、撒いたはずの白衣が姿を現す。

「頑張りましたがここまでです。また何かされても堪ったものではないですからねぇ―。
 とどめをさしてあげなさい、サザンドラ! もう一度りゅうせいぐんです!」

特攻が下がっていようが、再びの流星群は青年にとって処刑宣告だった。
今一度落ちる影に、青年は目の前が真っ暗になっていく。

(ち、っき、しょおお……。死ぬのならぺー介と舞台の上で死にたかった……)

これが走馬灯という奴か。
ボールに入れず、一緒に布団で寝たりもしていた相棒のことばかり最後の最後に思い出してしまう。
青年は涙した。
楽しかったあの日々に。
救えなかった相棒に。
巻き込んでしまった仲間たちに。
無力な自分自身に。

そして


254 : 描き出す未来図  ◆TAEv0TJMEI :2016/04/11(月) 20:37:31 6GOUGttc0

「流星群か。こんなもの、アイツのメテオに比べればただの石ころだ」

最後の時はいつまで経ってもやってこなかった。

「……え?」

誰とも知れぬ声に恐る恐る目を開ければ、破片さえ残さず粉砕された流星群の姿。
それを成したであろう存在は、青年に背を向け庇うかのように立っていた。

(学ラン……? スクールボーイか……? なんでこんな所に。
 俺っちと一緒で盗られたポケモンを取り返しに来たのか?)

這いつくばったままの青年には、背を向ける乱入者の顔は見えない。
ただ、小柄な身長と身を包む服装から学生と判断したまでだ。
けれど事実は違ったらしい。

「ル、ルカリオだと!? けったいな服装をしているがいやそうか、コンテスト用のポケモンか!
 さっき人の言葉を話したのも芸ということですね!
 なるほど、それが君の6体目ということですか!」

ルカリオ。
言われてみれば学ランから垣間見える頭部は青い。
何故か頭頂部には金の王冠が輝いているが今はどうでもいい。
重要なのはこの乱入者は、青年のポケモンではないということだ。
やはり他のトレーナーが助けに寄越してくれたのだろうか?

「あ、あんたは一体……」
「人間か。お前がポケモンの敵でないというのならそこでじっとしていろ。すぐに終わらせる」

こちらの問いかけに僅かながらに振り返り、むべもなく答えた顔は確かにルカリオのそれだ。
人間の言葉を扱うのには驚きだが、声というのもつまりは音の波。
波導使いのルカリオがテレパシーのように人語を伝達できても不思議ではない。
噂では古の波導使いの弟子だったルカリオも人語を話せたというし。
それよりも今、気になるのはルカリオの言葉の内容だ。

(すぐに終わらせるって、まさか一匹でか……? む、無茶だ!
 あのスナッチャーは違法取引で儲けた金に任せて強力なポケモンを揃えてやがる!
 俺っちのポケモンたちだって歯が立たなかったんだ、一匹で勝てるはずがない!)

スナッチャーも同じことを考えたのだろう。
馬鹿にするように鼻を鳴らしてポケモンを入れ替える。

「言うじゃないですか。弱体化していたサザンドラの攻撃を止めたくらいで調子に乗るんじゃありませんよ。
 ルカリオごとき、このポケモンの敵じゃないんですよ、ねえ!」

三つ首の竜の代わりに現れたのはファイアロー!
言わずと知れた環境上位のポケモンであり、タイプはほのお・ひこう!
最悪だ。
かくとう・はがねのルカリオに勝ち目はない。

「さあ、やってしまいなさい、ファイアロー! フレアドライブ!」
「クアアアアオッ!」

主の命を受けたファイアローが炎を纏いルカリオへと強襲する。
青年とのバトルでのブレイブバードの威力から察するに持ち物は命の珠。
上乗せされた火力と相性補正でルカリオはよほど耐久構築でもない限り確定一発だ。
万事休すか!?
鳴り響く激突音に肝を冷やす青年。
その心配は思いもよらぬ手段で覆されることとなる。


255 : 描き出す未来図  ◆TAEv0TJMEI :2016/04/11(月) 20:37:56 6GOUGttc0

「ヌルい! あの銀月の魔の踏み込みはもっと鋭かったぞ!」
「な、何ですかそれは、炎の、剣!?」

ルカリオはブレイブバードを両手に掲げた、いや、違う、天高く掲げた足――本来、足がある場所に接続した剣で受け止めていた。
袖を通していたのではなく、羽織っていただけの学ランはマントのようにはためき、その内を露わにする。
表出したルカリオの身体には、両腕がなかった。右足もなかった。左足だけがあった。
欠けた足を補うように炎の剣が接続され、義足となっていた。

(ああ、なるほど、そういうことか。
 炎の剣ならタイプは炎・鋼でフレアドライブも等倍……いや、まさかあれ、貰い火か? 剣が炎を吸収している?)

思いもよらない光景に、却って冷静になってしまった青年の前で、異形のルカリオは反撃に打って出る。

「ギガスラッシュ!」

ファイアローの突撃との鍔迫り合いを押し切り、炎を失った敵に対して、今度は足の剣に雷を帯びせ踵落としの容量で切り裂いたのだ。
かみなりパンチならぬ、かみなりキックに近い、かみなりソード。
無論効果は抜群であり、哀れファイアローは地に落ちる。

「いくら鋼タイプだからとはいえルカリオが剣を使うだと!? ギルガルドでもあるまいに!」
「どうした、次のポケモンは出さないのか?」
「……っ、調子にのるなと言いましたよねええええええええ!」

ルカリオの挑発にスナッチャーは戻したばかりのサザンドラを再び繰り出す。
サザンドラだけではない。
ギルガルドが、ウォッシュロトムが、エーフィーが姿を現す。
炎の剣という謎の持ち物を装備した正体不明のルカリオ相手には常のタイプ相性は通用しないと判断したからだろう。

「両腕のない身でこれだけの数が捌けますか!? お前たち、あのポケモンを殺しなさい!」

まずはエーフィーから超常の力が放出され動きを奪おうとするも、ルカリオから発せられた邪悪なる波導がこれを打ち消す。

「死亡遊戯!」

悪鬼を身に宿したルカリオはそのまま攻撃に転じ、その場で左足を軸に、剣の足で回転斬りを放つ。
剣より生じた無数の飛ぶ斬撃は、そのままスナッチャーのポケモンを全滅させんとするも王の盾に防がれる。

「今だ、やれええ!」

そうしてギルガルドの後ろに隠れていたウォッシュロトムが、マンムーが、サザンドラが飛び出す。
ルカリオの足は大技を放ったばかりだ。
すぐには体勢を立て直せまい。手も足も出せないルカリオは、されど、経験から残る攻撃手段を知っている!

頭だ。まだルカリオには頭が残っている!
空中で身体を一回転させてからのサザンドラの突撃をカウンターの頭突きで撃墜。
味方ごと貫けと命じられ発射されたウォッシュロトムのハイドロポンプも、ルカリオの身体から放たれた波導弾に相殺される。

(すげえ、捌ききった!)

青年が安堵しかけるも、まだだ、まだ敵の攻撃は終わっていなかった。
サザンドラが使った技の名はとんぼ返り。つまりそれは、入れ替わりに第二陣がやってくることを意味する!

「これで終わりです!」

モンスターボールより射出された巨体の持ち主はマンムー。
倍ほどの身長差もあるルカリオを、マンムーはその巨体と馬鹿力で押し潰さんとする。
手もなく、足も頭も波導も出しきったルカリオに、これを凌ぐ手がないのは目に見えて明らかだった。
なのにどうしてだろう。
このルカリオなら、さっきまで同様なんとかしてくれるのではないか。
青年はいつしかそう信じてた。
故に、目を伏せることのなかった青年は次の瞬間、瞳に焼き付けることになる。


256 : 描き出す未来図  ◆TAEv0TJMEI :2016/04/11(月) 20:38:32 6GOUGttc0

――奇跡を。

輝く両の義手でのしかかってくる重さ291キロのマンムーを軽々と持ち上げたルカリオを!
黄金の鎧を身に纏い、炎の剣を携え、学ランをマントのごとくなびかせる波導の勇者の姿を!

「そ、その姿は一体……! まさか、メガシンカ!?」
「違うな、アーマー進化だァァァッ!!」

言うやいなやルカリオはマンムーをブレードフォルムに切り替えて打って出ようとしていたギルガルドに投げつける。
そして空いた両腕で撃ち込むは必殺の波導弾!

「全画面攻撃で一気に決めさせてもらう! 活ッ!殺ッ!豪ォ……波導弾!!!!」

これまで受けた攻撃の全てを波導として取り込んだ極大の波導弾はスナッチャーのポケモンたちを一撃で打ちのめし気絶させた。

「貴様で最後だ」
「ば、馬鹿な……。たった一体のポケモンにわたくしのポケモンが……全滅?
 いや待て、全滅だと? わたくしで最後、だと? ま、まさかこれだけの騒ぎで尚部下たちがやってこないのは……」
「貴様がそこの人間に手こずっている間に私が全て倒し、ポケモンたちも解放したまでだ」
「この施設の人間とポケモンをたった一人で、だと!?
 そんなこと伝説のポケモンでもなければなせるはずがない!
 いや、そもそも君はポケモンなのか!? 悪魔だ、そうだ、その力、その威容、悪魔に違いない! 
 う、うわあああああああああああああああああああ!」
「……黙れ、愚かな人間め」

どすり、と。
取り乱すスナッチャーの腹部にルカリオの拳が突き刺さり、声を失う。

「こ、殺したのか……?」
「……この人間たちに復讐する権利は私のものではない。お前たちの好きにしろ」

疑問に答え、もうやることは終わった、興味はないとばかりにルカリオは鎧を消し立ち去ろうとする。

「待ってくれ!」

青年はその背を引き止めた。

「……何だ?」

胡乱げに見つめてくるルカリオ。
どこか敵意さえ感じるその視線に竦み上がりかけるも青年は立ち上がり、背筋を伸ばし、頭を下げた。
自分よりずっと小さく、細い体に、ありったけの感謝を込めて。

「ありがとう、あんたのおかげで助かった!」
「別に……お前のためにしたわけではない。私はただ私の仲間たちが売り買いされると聞き助けに来ただけだ」

照れてる、というわけではない。どうやら本当にそうらしい。
ポケモンコーディネーターとして、コンテストの観客たちの喜怒哀楽を読むに長けた青年はすぐにそう理解した。
理解した上で、頭を下げ、感謝の言葉を続け、一番聞きたかったことを口にする。

「そうか……。なら厚かましいかもだが聞かせてくれ! その仲間に、ポケモンたちに……俺のペー介は、ジュペッタはいたか!?」

果たしてここに、いなくなった自分のジュペッタは囚われていたのかと。
ペー介――彼がコンテスト用に育て抜いた自慢のアイドル。
布団で寝ていたはずなのに朝になったらいなくなっていたポケモン。
ペー介が逃げたとは青年には考えられなかった。自分とぺー介の間には確かに絆があった。
そう確信できるだけの時間を共に過ごしてきた。
だから探した。探して、探して、一縷の望みを賭けて、こんな無謀とも言える潜入すらやってのけたのだ。

「ジュペッタ……。いや、捕まって商品にされていたポケモンの中にジュペッタはいなかった。
 だが……聞かせて欲しい。そのジュペッタがいなくなったのはいつの話だ?」

現実は非情だった。
ぺー介はここにいなかった。
そのことに青年は項垂れ膝を尽きそうになるも、命の恩人の問いかけに応じないでいるほど恥知らずではない。
それに、気のせいだろうか。
ルカリオから感じていた敵意が和らぎ、真摯にこちらと向い合ってくれているように思えるのは。
青年は答えた。
ジュペッタがいなくなったと日にちと、消えたと思われる時間帯を。

「そうか……。その日時ならやはり……」

得心がいったとルカリオが頷き、口を開く。

「……残念だが、ペー介は、お前のジュペッタはもうこの世にいない」


257 : 描き出す未来図  ◆TAEv0TJMEI :2016/04/11(月) 20:38:48 6GOUGttc0

告げられたのは最悪の真実だった。
今度こそ崩れ落ち、泣きじゃくる青年にルカリオは続ける。

「私も詳しくは知らない。
 だが、俺を救ってくれた勇者が言っていた。
 『ジュペッタは……僕の友だちは、人間のご主人様が大好きだった』、と」

そんな、青年にとっては当たり前のことを。

「知ってる、よ。俺っちは、あいつのご主人様で、あいつは俺っちのアイドルなんだぞ!?」
「……なら、誇れ。お前のパートナーは勇者に勇気を与えるほどのアイドルだった。
 勇者がお前を愛するお前のジュペッタを信じたからこそ、俺も勇者を信じ、お前を……人間だからと殺さない」
「なんだよ、勇者、勇者って……。あんたは勇者じゃないのかよ」

この目に焼き付いた勇姿を、勇者と言わずに何というのか。
嗚咽しながら訴えかける青年に、ルカリオは静かに首を横に振る。

「俺はよくて見習いだ。勇者の代理をしているに過ぎない。そして今、お前のおかげで俺は一つ勇者に借りを返せた」
「……それなら、それならよう。あんたは、どうすんだ。
 勇者の代理を果たし終えて、その後あんたはどうなんだ……」

止めどなくあふれる涙は、相棒を失ったことへか、それともこの細くてちっぽけで今にも消えそうな勇者の未来を嘆いてか。
延々と泣き続ける青年に、そうだな、と呟いて。
どこか昔を懐かしむように目を閉じ、少しだけ考えて。
ルカリオは。小さな勇者は答えを口にした。
青年に。自分自身に。いつかの、誰かに。

「生きるさ。生きて生きて生きて。帰れる場所を探して。そして。そう、だな。

 伝説にでも、なるとするさ。

 この世界で生きるグレイシアにだけじゃない。
 天国や地獄にいるボナコンたちや、異界で生きるハムライガーやレナモンにも伝わるような。
 アイツらの死を、俺たちの生を伝え続けるそんな伝説に」

そう言ってルカリオは一度だけ小さく笑って。
止めていた歩みを再開し、基地の入口へと辿り着き、扉を開け、陽の光の中へと消えていった。





これはある勇者の活躍の一ページ。
勇者に助けられたポケモンコーディネーターがポケモンコンテストライブで観せた劇の一幕。
今はまだ知る者は少ないだろう。
だけど勇者が今を生き、死して尚伝説として生き続けるというのなら。
いつしか誰しもが知ることになる。

彼が背負った罪を。彼が奪った命を。彼を救った者たちを。彼と共に戦った仲間たちを。彼が送った生を。彼が帰り着いた場所を。



【ルカリオ@ポケットモンスターシリーズ   そして伝説へ…】


258 : 描き出す未来図  ◆TAEv0TJMEI :2016/04/11(月) 20:39:08 6GOUGttc0
投下終了


259 : 名無しさん :2016/04/11(月) 23:30:35 VvV/d3to0
投下お疲れ様です!
この投下で今日が語だと知りました。何回か書いたことがあったロワなので懐かしさが……(キノガッサの最期を書かせていただきました)
波導の勇者ルカリオ!
全抜きはもう本当にかっこいい。それと流星群とメテオを比べる辺り、色々な経験をしてきたなあ。
学ランはあの学ランですよね。ギガスラやアーマー進化もクロスオーバーならではで……。

ジュペッタやグレイシアの名前がでてきて、何か感動しました。
特に前者はもうこの世にいませんが、それでもトレーナーは生きている。
ルカリオも生きているけれど、ジュペッタは生きていない。でも忘れることはない。
遠くに離れていても絆があるというかなんというか……。

なんかたいしてまとまった感想じゃなくて申し訳ありません。
改めて投下お疲れ様でした!


260 : 管理人★ :2016/07/03(日) 22:31:36 ???0
企画の完結に伴い、本スレッドを過去ログ倉庫に移動させていただきます。
完結、おめでとうございます。


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