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二次キャラ聖杯戦争・肆
1 ◆3vWdxvBXv.:2013/02/02(土) 00:30:44 ID:8LDav1.w0
◆.OpF6wOgZ2氏が不在ですので代理でスレ立て

No.1 天野雪輝 未来日記 キャスター タマモ Fate/EXTRA
No.2 ゼフィール ファイアーエムブレム 覇者の剣 ライダー アシュナード ファイアーエムブレム 蒼炎の軌跡
No.3 衛宮士郎 Fate/stay night セイバー アルトリア・ペンドラゴン Fate/stay night
No.4 鳴上悠 ペルソナ4 ランサー クー・フーリン Fate/stay night
No.5 天海陸 ワールドエンブリオ セイバー イスラ・レヴィノス サモンナイト3
No.6 枢木スザク コードギアス 反逆のルルーシュ バーサーカー ランスロット Fate/Zero
No.7 花村陽介 ペルソナ4 ランサー アレックス ARMS
No.8 遠坂凛 Fate/stay night キャスター 蘇 妲己 藤崎竜版 封神演義
No.9 鹿目まどか 魔法少女まどか☆マギカ アーチャー DIO ジョジョの奇妙な冒険
No.10 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア コードギアス 反逆のルルーシュ セイバー ガウェイン Fate/EXTRA
N0.11 名無鉄之介 私の救世主さま キャスター リインフォース 魔法少女リリカルなのはA's
No.12 衛宮切嗣 Fate/Zero ライダー 門矢士 仮面ライダーディケイド
No.13 園崎詩音 ひぐらしのなく頃に バーサーカー 美樹さやか 魔法少女まどか☆マギカ
No.14 金田一一 金田一少年の事件簿 ライダー 太公望 藤崎竜版 封神演義
No.15 近藤剣司 蒼穹のファフナー セイバー セリス FINAL FANTASY�
No.16 泉こなた らき☆すた ライダー 火野映司 仮面ライダーOOO/オーズ
No.17 ジョン・バックス 未来日記 アサシン ファニー・ヴァレンタイン ジョジョの奇妙な冒険
No.18 間桐雁夜 Fate/Zero アサシン トキ 北斗の拳
No.19 匂宮出夢 戯言シリーズ アサシン “壊刃”サブラク 灼眼のシャナ
No.20 アシュヒト=リヒター エンバーミング セイバー テレサ クレイモア
No.21 間桐慎二 Fate/stay night ライダー ラオウ 北斗の拳
No.22 羽瀬川小鳩 僕は友達が少ない キャスター ゾルフ・J・キンブリー 鋼の錬金術師
No.23 イリヤスフィール・フォン・アインツベルン Fate/stay night ランサー 本多忠勝 戦国BASARA
No.24 金城優 ベン・トー セイバー エンジェロイド・タイプΔアストレア そらのおとしもの
No.25 我妻由乃 未来日記 アーチャー ジョン・ドゥ エンバーミング

まとめwiki
ttp://www55.atwiki.jp/2jiseihaisennsou/

2名無しさん:2013/02/02(土) 01:01:23 ID:Qbk2lRNM0
二次聖杯したらば(議論スレなど)
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/15853/

スレ立て乙です。

3名無しさん:2013/02/02(土) 21:50:50 ID:1FijAxlAO
スレたて乙です。

前スレ1000の結果、DIOが魔法少女になって、願いで天国が実現します。

4名無しさん:2013/02/02(土) 21:53:11 ID:JmVsbVHU0
最新作投下乙。
ゼフィールとDIOで帝王つながりのコンビとか妄想した。

…ダメだ。こいつも狂った王という意味ではアシュナードと一緒だ。

5名無しさん:2013/02/02(土) 21:54:19 ID:OyG8SGQ60
スレ立て乙です
◆3vWdxvBXv.氏の予約、自分の好きなキャラをマスターと鯖にした没ネタを投下するスレがあったら楽しそう
なにか考えてみようかな

6名無しさん:2013/02/02(土) 21:59:03 ID:Qbk2lRNM0
>>4
戦力的にはどっちにせよ相当なモンだし、ゼフィールも鯖替え考えてるしね
でも何か知らんが相容れるような気がしない、なんとなく(?)

>>6
なんか面白そうだなw氏も番外編予約してたしなw

7 ◆.aJ8cOqWj.:2013/02/02(土) 22:07:20 ID:H3kppZV60
なんかノリノリで書き上げちゃったんで投下します

8名無しさん:2013/02/02(土) 22:08:07 ID:Qbk2lRNM0
は…はええww

9ヒトクイフラグメント ◆.aJ8cOqWj.:2013/02/02(土) 22:08:34 ID:H3kppZV60
【0】


 成る程、理解した。
 やはりお前は正気ではない。


【1】


 ”勝利”とは、ひとえに何を意味するのだろうか。
 『決まってんだろーが。目の前にいるそいつをぶっ殺しちまうことじゃねーのかよ、かはは』
 『随分つまんねーことを聞くんだな、お前。あたしが戦ったらそれでもう”勝利”に決まってんだろ』
 『《何を意味するのだろうか》――ふん。そんなことは簡単だ、呆れるほどにな。答えは、――《同じこと》だ』
 『……さあね。それこそ、戯言だろ』

 ――頭の中で、記憶の中の存在が好き勝手に答えていく。
 そんな思い思いの回答を聞いた上で、やはり匂宮出夢はそれを《つまらねえ》と皮肉混じりの一笑に伏した。

 たとえばドラマや少年漫画なんかでよく目にする、スポーツの大会なんかでみんなで努力して優勝するシーンで例えてみよう。
 遊ぶ時間も惜しんで勝つために仲間と切磋琢磨し、一歩ずつ日々前進を重ね、その努力が報われて栄冠を勝ち取る。
 ――ああ、確かにそれは勝利だろう。
 友情・努力・勝利の三原則を満たした上で確約された、尊くて美しい、誰にでも誇れる名誉ある勝利といっていいだろう。
 だがしかしだ。
 一度でも疑問に思ったことはないだろうか。
 《ほんとうに、勝利すべきは彼らだったのか》――と。
 そういった漫画の世界では大抵ライバルに強豪校がいて、その中でもエースとされるプロ顔負けの選手がいるのがお約束だ。
 そんな奴らを飛び越えて勝つことにこそ意義がある。
 そういう努力にこそ、読者たちは燃えるのだ。
 そういう努力に憧れて、読者たちはコミックスを買うのだ。
 けれど。けれど、主人公たちは本当に一番頑張っていたのか。
 もしかしたら、一回戦で負けてしまったような弱小高校の方が血の滲むような努力と友情を積み重ねていたかもしれない。
 でも彼らに勝利は約束されなかった。
 勝負は時の運とはいうが、これでは主人公たちは真の勝者に相応しい存在かと問われると、疑問点が残る。 
 もしも、今例に出した弱小校が一回戦で万年一回戦負けのジンクスを打ち破ったなら、それこそもっとも価値ある勝利ではないか。
 こんな風にだ。
 勝者と敗者の区別なんて平仮名の《カ》と漢字の《力》くらいに曖昧で、ゆえに明確な回答なんて導くことは出来ない。
 ――なんて、戯言。

 そもそも匂宮出夢は、この問いに正面から向かい合うことが出来ない。
 何故なら、彼女の人生に敗北は存在しなかったからだ。
 白髪の殺人鬼との戦いでも、狂的な糸使いとの血闘でも、再弱な戯言遣いとの茶番でも、最強な最強との決戦でも。
 そして、最終な橙色との最期でも、明確な答えは得られなかった。
 だから彼女は知りたいと思う、願う。
 敗北の味を知りたいと切に願う。
 甲子園の土を泣きながら持ち帰る敗北者の気分を、恋に破れてハンカチを噛む失恋者の気分を、踏み潰される奴隷の気分を知りたい。
 もちろん、主人公に倒されるライバルの清々しい敗北でも構わない。

 敗北を知らない幼子の為に。
 強い身体の代償に無知を背負った怪物の為に。
 彼女に敗北を与える為に――ムーンセルは微笑んだのかもしれない。

 これはきっと、今輪の際の儚い幻想(ユメ)。
 終わったら静かに消えゆくだけの下らない妄想世界。
 真実は違えど彼女にとっては所詮絵空事。
 願うことなど当に止めた、多分前世くらいで。
 ゆえに彼女は戦士ではない。
 彼女は探求者だ。
 ゆえに彼女は戦死はしない。
 彼女に与えられるのは探求死だ。

10ヒトクイフラグメント ◆.aJ8cOqWj.:2013/02/02(土) 22:09:29 ID:H3kppZV60
 つまりこれは奇跡だったのだと思う。
 神様が生まれながらに咎を背負った少女へと哀れみでもくれたのだろうと、そういう風に思うことにしている。
 出夢は聖杯戦争に興味がない。
 戦争なんてものは飽きるほどに経験したし、血で血を洗う争いの先に誰かの欲望が満たされる憧憬を見たことは、生憎皆無だった。
 ご苦労さんなこったと思った。必死に願いなんて下らないモノに縋ろうとする戦士どもを、言葉にはせずとも憐れんですらいた。
 そんな傍観者の視点を持ち合わせていたのにも関わらず、匂宮出夢は聖杯戦争を破壊しようと動く真似に出ることはなかった。
 戦争での勝利を求めることは探求者の専門分野の外になる。
 だが、戦争での結果を求めることはまさしく探求者の存在理由だ。
 レゾンテートル、もといアイデンティティ。
 欠けてはならないパーソナルリアリティー。

 この児戯に一人の雑魚を登場させよう。
 名前は知らない。生前で結構な縁を持っていたと記憶しているが、その名前を聞いたことは《幸か不幸か》一度だってなかったはずだ。
 彼もまた、願いなんてものを求める醜態は晒さないだろう。
 散々情けなく惑った末に、殆ど成り行きで聖杯戦争の打破に力を貸すことになるに違いない。
 そしてそれを遂げるだろう。
 嘘を吐いて、沢山殺して惑わせて、自分だって満足できない偽善にも満たない何かを布いて、それでも終わりへたどり着くだろう。
 隣に誰かがいるかもしれないし、ひとりぼっちかもしれない。
 でも確かに、彼の勝利への道筋には幾多の屍がある筈だ。
 無意識に、意図せずに、望まずに、知らずに、感じずに、殺さずに、気付かずに、傷つけずに、知らずに、忍ばずに、彼は殺す。
 吐き気がするほど最悪な最弱の戦いには、犠牲がつきものだ。

 だから彼は絶対に勝利に笑わない。
 自分の勝利が、正しくは勝ちにも負けにもなれない宙ぶらりんの腐乱死体にも等しい、無価値で惨めなものだと知っているからだ。
 ――ああ、いや。ひょっとすると、《結末》に辿り着きすらしないままに、誰の目にもつかずにひっそりと死んでいるかもしれない。
 本当のところは誰にもわからない。
 だってあの大嘘つきはここにはいないのだから。
 仮にいたとしても、彼を理解できる者なんて居て一人が限度。
 現に匂宮出夢だって、あの欠陥製品の本質は、遂にわからず仕舞いだったのだから。

 僕はやっぱし、あのおにーさんにはなれねえな。
 出夢は小さく笑った。
 匂宮出夢と《ここにはいない》青年は決して重ならない存在だ。 
 本来のままの人生を生きていたら関わり合いにすらならなかったような存在、まさしく彼との出会いは神の気紛れであった。
「僕はやっぱし、《匂宮》なんだよなー」
『かはは、当たり前だろ。てめえが普通の女の子だとか抜かすようになった日には、俺ぁ怖くておちおち生きていけねえよ』
 頭の中の誰かが皮肉る。かははと笑う。
 二度と会えない宿敵にして、一度は恋した殺人鬼。
 にぃっと口元を歪める出夢だが、その笑みは好戦の笑みではなくどこか寂しげな、振り返るような笑みだった。

 実に下らない傑作だ。
 彼女の物語を知らない読者諸君にしてみれば、読むことが億劫になる程の、甘ったるくて冗長な戯言だ。

 匂宮出夢と従者サブラクの相性は、悪くないはずだ。
 悪くない筈だが、過去に自分の相棒――否、正しく《半身》であった少女にするように気を許すことは出来ない。
 理由はなんてことのない、只の下らない同族嫌悪だ。
 あるいは、同属嫌悪だろうか。戯言だけれど。
 サブラクの在り方は正しく暗殺者だ。
 それに対して出夢の在り方は正しく殺し屋だ。
 同義語のように見えるが、サブラクに問うてもきっと出夢と同じ答えを返すだろう、《匂宮出夢と自分は決して重ならない》と。
 そういうものなのだ。
 実に下らないことだが、そういうものなのだ。
 匂宮出夢は苛烈極まる殺戮中毒(ワーカー・ホリック)の殺し屋で、サブラクは確実に敵を仕留める忍のごとき暗殺者。
 違う。違うからこそ、互いに真の友情は築き得ない。

11ヒトクイフラグメント ◆.aJ8cOqWj.:2013/02/02(土) 22:10:13 ID:H3kppZV60
 だけれど。
 出夢の欲望をサブラクはきちんと把握しているし、サブラクが自分とは違って勝利を望んでいることを出夢はきちんと汲んでいる。
 互いが互いを尊重してこの戦争に臨んでいるあたり、似た者同士で同族嫌悪で同属嫌悪な彼らの主従は、しかし決して弱くないのだ。
 二人とも子供ではない。
 出夢は身体は子供でも、世界を下手な知識人気取りのコメンテーターなんかよりずっと知り尽くしている。
 サブラクは知識で出夢に劣れど彼女の理解の及ばぬ境地を知っている。そして二人とも、現実の厳しさを知っている。
 だから彼らは強くてしぶとい。
 蔓延るだろう。
 油汚れのようにしぶとく見苦しく、でも笑って蔓延るだろう。

 ――それでも出夢は知っている。
 自分は決して最期まで残ることは出来ないと。
 本能的な直感或いは超常的な触感で、わかっている。
 自分にはいずれ終わりがやってくる。
 願いを叶える万能の器にこの手が触れることは有り得ない。
 約束された、敗北がある。
 
 ゆえに彼女の物語は、書籍のようなものだ。
 結末のわからない現実(リアル)なんかじゃなくて、ページ数に上限があるから終わりがあると察してしまう虚実(フィクション)だ。
 匂宮出夢を正面から打ち倒す者が現れるとき、人喰いの宿命を背負わされた殺戮者には漸く安息が訪れる。
 









 ――だから。
 それも、悪くない。








.

12ヒトクイフラグメント ◆.aJ8cOqWj.:2013/02/02(土) 22:10:44 ID:H3kppZV60
【2】


 人を殺すにはどうしたらいいのだろうか。
 ……正直、ここまで陳腐な問いもそうそうない。
 生命活動を停止させたくば胸を刺せばいい。
 ピアノ線を使ったちょっとした仕掛けでなら、血を浴びずに憎いあいつを殺してやることだって楽勝だ。
 自殺に追い込みたいなら悪評を撒けばいい。
 苦しませて殺したいくらいに憎いのならば、四肢をもいで片目を潰し、そのまま放置しておけば酷い苦しみと絶望の果てに死ぬだろう。
 そう、こんなにも人は殺しやすい。
 ちょっとした下らないことで人は死んでしまう。
 砂糖の塊のように脆くて儚くて、消えたら終わりの泥人形だ。
 ワイドショーなんかでは《殺すつもりじゃなかった》なんて言い訳をする犯罪者が報じられるが、プロの観点からいえばあれはむしろ正しい。
 人なんて、殺すつもりが無くたって死ぬ。殺されてしまう。
 殺し屋や暗殺者なんて、だから大したことはしていないのだ。
 悲しいくらいに死に易い人間を、ちょっと後押しして殺すだけが仕事。
 それで高い報酬を貰えるなんて、正直相手に悪いレベルとさえいえる。
 そんな《簡単なお仕事》を究極まで極めたのが――匂宮出夢・サブラクのチームアサシン主従である。
 彼らは殺し尽くす。
 万が一なんてことのないように、徹底して殺す。
 殺して殺して、知り合いだって容赦なく引き裂き殺す。
 そして終わる。ただそれだけの簡単なお仕事。
 ゲーム感覚で人を殺すから暴力ゲームは有害だ? 馬鹿を言え、その理屈が通るなら少年たちはみんな虐殺者になっている。
 世の中の大きなお友達のみんななんて、もうモテモテのハーレム花園人生を謳歌していることだろう。
 何も知らないヤツの言葉はやはりアテにならない。
 現に出夢は、ゲームなんてロクに遊んだことすらないのにも関わらず、ゲーム感覚で殺戮を楽しんでいるのだから。
 ゲームは極めたら強くなれる。
 スポーツみたいに運動神経が関わってくるわけじゃない。
 身体的ハンディキャップだって、その気になれば埋められる。
 そう、ゆえにプロの殺し屋なんて大したものじゃないのだ。
 彼らにすれば、ゲームを遊んでいたら強くなっていただけで――
 ――青春的な努力をした者なんて、ごくごく一握りなのだから。
 出夢は基本的には前者である。
 でも彼女の場合は少し違う。
 生まれながらに怪物として生み出された彼女は強制的にゲームを遊ぶしかなかったし、それが娯楽であるとは思っていても、自分がやりたいからやるのではなく、やらされている内に上達して、それがいつしか仕事から楽しみへと変わっていただけにすぎない。
 
 ――これほどか。
 人の身でこれほどの境地へ辿り着くのか。
 やはり幸運らしい。
 これならば、他のマスターによる謀殺はまず有り得ない。
「どうだい旦那? これが僕なりに時間をかけて編み出した《改良版・一喰い》なんだがよ」
 目の前にあるのは、破壊された住宅。
 空き家のようだったので、思う存分やらせて貰った。
 驚くべきことに、これはただの二発で起こった崩壊である。
 元々、人類最強の赤色に単純な力比べでは勝るポテンシャルを秘めた、天才的才能を保持する彼女が全力で極めた結果の、決壊である。
 一度死んだ経験は、彼女にとって確実に有益だった。
 《人類最終》との決戦では呆気なく隙を突かれて腹を穿たれたが、今回の改良ではその溜めによる隙そのものを、削り取った。
 結果として、威力は僅かに落ちたが隙が無くなった。
 だがそれでは不満足。
 実戦用の技が威力を落としては改良の意味がない。
 そこで彼女が再現しようとしたのは、枢木スザクとの殺し合いで目にしたあの《超動作》――つまり、ギアスによる自動行動。
 あの動きはこれまで見てきたどの敵にもなかったそれだ。
 《人類最強》や《人類最終》ならばモノに出来るだろうが、あの二人だってあのようなスキルは持っていなかった筈だ。
 ゆえに出夢は強引にそれを極めんとした。
 当然、あれが枢木スザクの平常の身体能力でないのは知っている。
 出夢の知る家系に、《時宮》という忌まわしい宿敵があった。
 その《時宮》は目を合わせることで相手を《操想術》という暗示の術中に置く、特殊な技術を有していた。

13ヒトクイフラグメント ◆.aJ8cOqWj.:2013/02/02(土) 22:11:26 ID:H3kppZV60
 それと同じ。
 あの動きは、何らかの暗示による無意識的反応だ。
 それを有意識的行動へと昇華させるのは骨が折れた。
 ざっと二時間はかかってしまった。
 改良版一喰いの修得よりも永く、かかったのだ。

「俺はマスターを見くびっていた」
 サブラクは素直に自分の目が曇っていたことを認める。
 もしも、サーヴァントに神秘の内包されていない攻撃が通らないというルールが存在しなかったら、自分たちは最強だった。
 恐らくマスターで出夢に勝てる者はいない。
 サブラクは何の贔屓も美化も無しにして、戦場を踏んできた者としての本音からそう思った。
「どうしてマスターなのだろうな、お前は。どう考えたって、《こちら側》寄りだぞ、その強さは」
「まぁ、僕はサーヴァントなんて胡散臭え肩書きは似合わねえさ」
 ぎゃははは、と出夢は豪快に笑う。
 その後で少し真剣な表情になると、
「………、でもまあ、あれだな。あんたらみてえな連中と殺し合えねえってのもまた、興醒めな話だぜ、まったく」
 出夢は、戦いを好んでいた。
 もっともそれは、とある出来事があるより以前の話だ。
 彼女には半身がいた。
 匂宮兄妹の妹の方・《名探偵》匂宮理澄。
 理澄は戦闘能力に欠けていたが、情報の収集と考察・つまり調査においてなら他の追随を許さないほどに優れた妹だった。
 そんな妹を喪ってから、出夢は今までの疲れに襲われた。
 肉体的にはまだまだ現役なのだが、急にこれまで求めていた激しい闘争をすることに言いしれぬ疲れを覚えるようになったのだ。
 脱力感。
 喪失感。
 虚脱感。
 虚無感。
 敗北感。
 勝利感。
 どれだったかなんてどうでもいいし、わからない。
 しかし今は少しだけ違っていた。
 どうせこれは、じきに終わる夢だ。
 夢ならば楽しんでやる。
 その為にも、サーヴァントなるけったいな存在とも矛を交えてみたいものだったが――やはり、興の乗らないルールだ。
(ほんとうに――恐るべきものだな。ただの数時間だぞ? ただそれだけの時間で、経験と記憶だけを元にここまで作り上げる。
 そんなものは人間の、あまつさえ小娘の芸当などではない。俺のマスターは、生まれてくる場所を完全に間違えている)
 彼女のような存在は、自分のような超常の世界に生きる者としてこの世に生まれ落ちるべきだったのだ。
 サブラクの知る人間は少なくとも二発の打撃で家を壊さない。
 ましてや、たった数時間で数年分の修行を極めない。
 そんな彼にしてみれば、彼女からうっすらと聞いていた《自分をも超える存在》二人の話はまさしく荒唐無稽なものだった。
 最強と最終、そして人喰い。
 力関係では出夢が恐らく一番下になるとのことだったが、まったくこいつらは空気の代わりに何か別のモノを吸っているんじゃないのか。
 あのキチ○イ教授が見たら喜んで飛びつきそうな人材だな――と、サブラクは半ば呆れ混じりに思った。
「で、アサシンの旦那。どーすんだい、これから? 幸いまだ《時間》は残っているようだけどよ」
「答えるまでもないだろう。時間にしてあと約半時、敵の殲滅を行う」
 淡々とサブラクは告げる。
 既に二組の主従を脱落させ、そして出夢も一人のマスターの片腕を奪い取るなど上々の戦果を獲得している。
 だがまだだ。
 まだ戦えるのなら、戦っておくべき。
「あ、そうそう」
 出夢が思い出したように切り出した。
 まるでガムでも食うかと誘うような口振りだった。
 なんだ、とサブラクが振り返れば、出夢は隣の住居の前に立っている。
 住居が倒壊しているのにも関わらず町が静かと云うことは、やはりこの町が偽りのものだと実感させてくれた。
 この家は無人ではないようだが――と、思ったその時だ。
「もう一個あったわ、僕の新技。それとも切り札かな?」
 待てとサブラクが制す。
 たかが一家を殺戮するくらいならペナルティの心配はないだろうが、それでもどうせなら魂を喰っておきたい。
 そんなサブラクの意見が吐かれるより先に、暴風は吹いた。

14ヒトクイフラグメント ◆.aJ8cOqWj.:2013/02/02(土) 22:12:45 ID:H3kppZV60
 否、正しくは――巨大な魔物のあぎとだったかもしれない。

「改良版(ニュー)――暴飲暴食ッ!!」

 二発で住居を倒壊させる、一喰い。
 その両手打ちは、まさしく龍の顎のようだった。
 衝撃の面積でいえば決して大きくない、しかし匂宮出夢の手加減抜きを全力でぶつければ、どうなるか。
 答えは単純明快。
 住宅など、発泡スチロール同然になる。
「…………どうだい! ザ・ニューいずむん爆誕っ!!」
「少しは他のマスターに見つかる可能性を汲めよ!」
 男サブラク、流石にちょっとキレた。
 轟音が響いたし、中のNPCは全員圧死は免れないだろう。
 そこにある瓦礫の山をちらりと一瞥すると、サブラクはいち早くこの場から離れるために出夢を抱えて走り出した。
 目的地は特にない。
 とりあえず相手に先手を与えたくはなかった。
「ヒューッ! 女の子を抱えてダッシュたぁやるねぇ旦那! 《天下無敵の暗殺者、ただし趣味はおままごと》みたいな!!」
「もうお前は一度黙っていろ!」
 騒がしい主従だった。


【3】


 ――間違えた手段で手に入れた結果に意味はない。
 そんな綺麗事を唱えていたこともスザクにはあった。
 それが綺麗事だと気付いた時には、取り返しはつかなかった。
 沢山の人を自分のせいで死なせた。
 ギアスという絶対遵守の呪いに冒されたことが原因ではあるが、最初から自分の愚かしい理想に気付けていればあんなことにはならなかった筈。
 要するに、枢木スザクは間違い過ぎてしまったのだ。
 間違って間違って、多くを犠牲にして、そしてここへ辿り着いた。
 聖杯戦争――どんな願いも叶う戦いへと。
 上手くやれていると思っていた。
 騎士として褒められたものかどうかは知らないが、それでも確かに都邑までは順調だったと心から思える。
 匂宮出夢という怪物に襲われて片腕を失ったことも、些末だ。
 自らの従者・バーサーカーことサー・ランスロットとも言葉を交わし、上手く強者たちと同盟を結ぶことにも成功した。
 それが、今こうして惨めに倒れている。
 他のマスターやサーヴァントに見つかれば終わりだ。
 まず確実に殺される。
 ギアスによる抵抗も出来ない。
 しようにも四肢がすべて使えないのでは、満足な移動も出来ない。
「クソっ」
 スザクは小さく漏らす。
 自分からバーサーカーを奪った間桐慎二が、自分を連れて行くことをしなかったのは単に彼のミスだろう。
 それが幸か不幸かで言ったなら、間違いなく不幸だった。
 慎二の傀儡同然の扱いであったとしても、生きていれば彼を騙してでも一矢を報いることは出来たかもしれない。
 なのに。これじゃあ――
 これじゃあ――
 これ、じゃあ――
「クソっ、クソっ、クソっ、クソっ、クソぉぉおおおおおお――――ッッ!!」
 ――これじゃあ、どうしようもない。
 スザクは慟哭の叫びをあげる。
 すべて自分のミスだった。
 運が悪すぎたし、自分には親友だった少年のように明晰な、逆境を覆すような奇策謀術を編み出す頭もない。
 そのせいで、取り返せない痛手を負った。
「どうしてだ……どうして、こうなるんだ…………!!」
 本当に、どうしてこんなことになるのだろう。
 自分はただ、欲しかったのだ。
 誰もが笑っている世界が。
 ルルーシュが、ナナリーが、ユフィが、シャーリーが、みんなが。
 そんな世界のために戦っていた。
 正しい手段じゃ手に入れることは出来ないと分かったから、聖杯の奇跡などという間違った手段に縋ることを選んだ。
 その結果がこれだなんて、あんまりではないか。
 所詮自分の、枢木スザクの抱えていた理想(ユメ)なんて――戯言にも満たない、笑えない傑作でしかなかったのだろうか。
「俺は、俺は、ただ…………ッ!」
 スザクは涙を流す。
 全身を襲う激痛による涙ではない。
 それは、敗れた男の慟哭だった。
 否定され、踏みにじられ、失敗し、何も残らなかった男の叫びだ。
「ルルーシュ……せめて、君が勝ち取ってくれ……」

15ヒトクイフラグメント ◆.aJ8cOqWj.:2013/02/02(土) 22:13:19 ID:H3kppZV60
 ルルーシュ・ランペルージ――もとい、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。ブリタニア皇帝シャルルの嬰児にして、親友だった少年。
 彼もまた、願うところは同じである筈。
 世界を敵に回してまで、ゼロという仮面を被って多くを犠牲にしてまで、彼は正しい世界の為に戦っていた。
 彼の背負った痛みは、自分の比ではないだろう。
 今なら分かる。
 正しいのは――彼だったのだ。
「俺はもう、ダメだ」
 涙の痕を顔に残したまま、スザクは微笑む。
 散りゆくものの笑みだった。
 傷口が原因での死は分からないが、とりあえず自分の末路は通り縋った他の主従によっての殺害であると悟っていた。
 だから、迫る足音を聞く心境もどこか悟ったものだった。
 恐怖はない。後悔はあった。
「あっれ? あん時のおにーさんじゃねえか」
 現れたのは、見覚えのある少女とサーヴァントらしき男だった。
 彼女は匂宮出夢。体術のみでスザクを上回り、その片腕を奥義でもって奪っていった、文字通り化け物じみたマスターだ。
 君か、とスザクは呟く。
 出夢はなんの躊躇いもなくスザクへ近付いていくと、彼を見下ろした。
「どったん? なーんかあるべきモンが三本ほど足りねえけど……って、一本は僕がやったんだったな、ぎゃははは!!」
 明らかな大傷を抱えたスザクにも、彼女は憚ることなく笑う。
 出夢にデリカシーを期待する方が間違いなのだ。
「……やられたよ。サーヴァントをニ体も連れているなんて思わなかった。完全に、俺の負けだ」
「サーヴァントをニ体、ねえ。あー、そういうことか。なんつーか、性根の腐った野郎がやりそうなこったな、そりゃ」
 令呪を用いさせての、疑似的な主従契約。
 この戦争では、なかなかの妙手といえる一手だと出夢は思う。
 しかし気に入らなくはあった。
 そういうやり方は、宿敵の《時宮》やいけ好かない《闇口》の連中がやりそうな手口だからだ。
 ちなみに出夢は、幼い頃から《時宮》の人間を見たら容赦なく全力で薙払えと教育を受けている。対極の対極の、そのまた対極。
「で、あんたもサーヴァントを奪われたってか。ぎゃははは、災難だね」
「まったくさ。ところで出夢……だったよな」
「ああ、出夢ちゃんだぜ。くんかな?」
 スザクは
「俺を殺すんだろ? だったらその前に、一つ聞いてくれ」
 ――と、あっさりと言い放った。
 彼は死への恐怖を持っていない。
 ギアスはまだ反応しないが、恐らく《その時》になれば反応を示して、見苦しいほどに逃れようとするだろう。
 つくづく面倒な呪いだった。
 でも、目の前の少女なら逃さずに殺す筈だ。
 ギアスによる加速を用いても片腕をもぎ取っていくような怪物だ、手足の欠けた人間一人くらいは数秒とかからずにあの世送りである。
「ルルーシュという男に出会ったら、枢木スザクが謝っていたと伝えてくれないか? そして、俺は死んだと」
 ルルーシュとは因縁がある。それも、浅からぬものが。
 初恋の少女は彼のギアスにかかり、銃殺された。
 多くの兵士が死んだ。彼のやり方は正しくなんてなかった。
 でももう彼を笑えない。
 自分だって、間違った方法を執ってしまった。
 その結果がこの様だなんて、哀れなこと極まりないが。
 だから、彼に謝りたかった。どうせ最期なのだ――自分の望んだ世界はきっと、ルルーシュによって実現される。
「んー、一つ聞きたいんだけど」
 出夢は頼みを承諾するでもなく断るでもなく、逆に問う。
 彼女にしてみれば、予想外だったようだ。
 スザクが自ら死を選んでくることが。
「おにーさんさ、本当にもういいのかい?」
「…………え?」
 くるくると髪の毛を弄びながら、出夢はしゃがんでスザクの顔を見る。
 スザクには出夢の質問の意味が分からなかった。
 この現状がどれほど絶望的なものであるかなんて、殺し屋の彼女が一番よく分かっているようなものなのに、何故尚も問う?
「いい――とかじゃない。この様では、もう終わりは見えているだろ?」
「はぁん、そういうことかよ」
 出夢はにぃっと口角をつり上げ笑った。
 まるでそれは、間違いを指摘する教師のようにどこか嗜虐的だ。

16ヒトクイフラグメント ◆.aJ8cOqWj.:2013/02/02(土) 22:13:51 ID:H3kppZV60
「僕に言わせりゃ、おにーさんの絶望はまだまだ甘えぜ。諦めるにも速すぎるし、早さが足りすぎてるってモンよ。ぎゃははは!!」
 匂宮出夢の知り合いや敵はとんでもない連中ばかりだった。
 印象深い《殺人鬼》や《最強》《最終》《糸遣い》。
 更には世界の終わりなんてばかげたものを本気で目指した《狐》、大人の癖して異常に泣き虫な《ドクター》。
 《十三階段》、《零崎》、《闇突》、《直木》、《最弱》。
 印象に残らないモブキャラ同然の雑魚どもも沢山ブチ殺してきたが、明らかな瀕死からなおも手こずらせた輩までいた。
 その観点から言うと、スザクはまだまだ戦える。
 令呪を失った?――バカを言え、命令権など本来は無いものだ。
 手足が使えない?――頭が動くなら策は練れるだろう。
 這ってでも移動できる。諦めるには早すぎる。
「まだ……俺は戦えるっていうのか?」
「そういうわけだ」
 しかしスザクの顔色は優れない。
 どういうわけか知らないが、出夢たちは今ここで自分を殺す気はないらしいことはどうにか分かった。
 その意図は知らない。でも、バーサーカーを取り返せない以上は自分に戦う術など欠片すらもないではないか。
 これでどうやって立てばいい。
「まー、あれだ。僕はちぃっと厄介な性格してっからよー。いつ死んじまうかも分からねえってのが現状なんだわ、うん」
 サブラクは既に出夢から聞いている。
 彼は確かに食い下がったが、このマスターは自分が何と言ったところで肝心な部分は曲げないだろうとすぐに悟った。
 故に。故にだ。
「つーわけで、僕と同盟しないかい、おにーさん? ……いや違う。うーんと、えーっと……そうだそうだ、こういうんだったぜ」
 にっと笑んで出夢は言う。
 枢木スザクにとっては願ってもない台詞を。
 彼にとっての希望となるかもしれない台詞を――。
「僕に依頼しろよ、おにーさん。簡単だ、聖杯を穫る為に俺の剣となれー、って感じで命令してくれりゃあそれでいい。
 報酬はこの聖杯戦争で戦うことそのものだ。条件は、僕の死後にアサシンの旦那のマスターになること。それで文句はねえ」
「…………それは」
 それは、願ってもいない話だった。
 ランスロットを奪われた今、どうやったって勝ちの目はない。
 それに、手負いのランスロットよりもどう見ても出夢のアサシンの方が強いだろう。勝つ上では、うってつけといってもいい。
 しかしだ。ここでスザクは、ランスロットとかわした言葉を思い出し、一歩を踏み出せずにいた。
 騎士同士の契りを、無にすること。
 これはそういう契約だ。
 本当にいいのか?
 ランスロットとの契りを、無碍にしてしまっても?
 スザクは自問自答を繰り返す。
「自分のサーヴァントは心配しなくてもイイぜ」
 そんなスザクの心情をまるで見透かしているかのように出夢は言った。
「あんたのサーヴァントはこれから取り返せばいいだけのことだ。そのついでにどっかの操想術士を思い出させる腐れ野郎をプチッとぶち殺して、なんだっけ? もう一人のサーヴァント奪われてる奴も助けちまえばいい――後はそっちで決めろよ。心配しなくても僕は裏切らねえぜ」
 スザクは知らないことだが、間桐慎二は羽瀬川小鳩という少女から拷問の末にサーヴァントを奪ってもいる。
 スザクが見たなら、如何に心を鬼にした彼でも激情を催すような仕打ちを考えるような地獄で、彼女は拷問されている。
 出夢はそれを潰す気だった。
 後がない連中ならすぐに脅威にはならない。
 どうせ敗北が目当てなのだ、誰の手にサブラクが渡ろうとどうでもいい。しかもこれはサブラクとも合意していることだった。
「俺も同じだ。……サーヴァントの観点から言うなら、力ずくでも止めたいがな、生憎我がマスターにそれをやると躊躇無く自害の命令が飛んできそうだ……まあ、俺も異存はない。聖杯の報酬もまだ揃えていないことだしな。後は勝手にやって構わない」
 サブラクが初めて口を開いた。
 スザクは迷う。
 どうするか。
 乗るか乗らないか、しばしの間よくよく考えて――

「……わかった。出夢――僕を、守れ」
「引き受けた」

 ――ここに契約は結ばれた。

17ヒトクイフラグメント ◆.aJ8cOqWj.:2013/02/02(土) 22:14:20 ID:H3kppZV60
【4】


 そして時は動き出す。
 出夢とサブラクは、間桐邸へと向かっていた。
 枢木スザクのサーヴァントを取り返すために。
 スザクは戦えない現状、NPCの住居へと預けてきた。
「殺されたくなきゃこいつを預かってな」
 そんな脅迫に近い《お願い》をすると、住人らしき老夫婦は震えながらも承諾してくれた。
 スザクは当分は安全だろう。
 後々、カードを使って義手や義足を揃えてやれば、彼がもう一度戦線へ復帰できるようになるのも遠くはない筈だ。
「悪いね旦那。突き合わせちまって」
「気にするな。令呪を使われるよりかはずっとマシだ」
 それよりだ、とサブラクは一本の短剣を出夢へ渡す。
 それは彼がメアより預かった、笑って再会を迎えるための剣。
 彼もまた承知しているのだろう。
 この戦は死線であると。
 だからこそサブラクは、自らの唯一無二の宝具”戯睡郷”メアをマスターの少女へと渡すような真似をしたのだ。
 これを用いることで、出夢はサーヴァントと戦えるようになる。
 僅かであれど神秘を宿しているこの短剣でならば、サーヴァントの肉を切り裂くことができるのだから。
「必ず返せ、マスター。壊すようなことがあっては、俺はお前をひょっとすると殺してしまいかねないぞ」
「ああ、それは分かってる。きっと返すさ。ありがとよ、旦那」
 出夢は素直に礼を述べた。
 彼女にとって宝具はまさに最高の品。
 これを介せばサーヴァントどもに傷を付けることが出来るだけでなく、暴飲暴食などと合わせて用いても自壊することがない。
 勝とう。いや、勝たねばならない。
 勝利を必ずやこの手に。出夢は夜の街へと叫ぶ。

「ぎゃははははっ! 行くぜェッ、震えるぞハート、燃え尽きるほどヒートッ! ブチ殺すぜェェェェえええええええッッッッ!!!!」

 それは猛獣の雄叫び。
 戦乱の時は、刻一刻と迫っている。


【深山町・民家/早朝】

【匂宮出夢@戯言シリーズ】
【状態:健康、残令呪使用回数3画、”戯睡郷”メアを所持】
※《一喰い》《暴飲暴食》の隙を解消し威力も向上しました
※ギアス発動下の枢木スザクの動き方を疑似的にではありますが修得しました

【アサシン(”壊刃”サブラク)@灼眼のシャナ】
【状態:健康、魔力消費(小)】

【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【状態:疲労(大)、右腕骨折、左腕欠損(処置済)、両足喪失、残令呪使用回数1画】
※民家の老夫婦に預けられています
※匂宮出夢に《依頼》を行いました

18 ◆.aJ8cOqWj.:2013/02/02(土) 22:15:00 ID:H3kppZV60
投下終了。
勢いで書いたので早く仕上がったんで満足

19名無しさん:2013/02/02(土) 22:32:23 ID:Qbk2lRNM0
投下乙!
完全にオワタ状態だったスザク、ここで出夢組に拾われるとはな
宝具で武装した怪物的殺し屋の出夢に完全不意打ち飛び道具持ちのサブラクの旦那
さて、凶悪なタッグに目を付けられたワカメの命運やいかに?

20名無しさん:2013/02/02(土) 23:03:21 ID:TyX2YdWo0
投下乙です!
ヤバい、出夢とサブラクがカリスマ的対主催に見えてきた…!
しかしどう転んでも寺組にとってはメシウマな展開だなぁw
一時期はスザク、番長、ケリィの同盟で壊滅フラグすら立ってたのが嘘のようだ

21名無しさん:2013/02/02(土) 23:24:40 ID:kLhOezoc0
士郎「即死しないと思ってたら聖杯戦争勝手に終わってた」

22名無しさん:2013/02/02(土) 23:58:41 ID:OyG8SGQ60
投下乙です
スザクの戦いはまだ終わっていなかった…!出夢の死生観は独特だなー。
出夢は擬似ギアスまで習得して、攻撃さえ通じるならキャスターのキンブリーならワンチャンあるかも知れない
マキリ邸がにわかに戦場めいてきたな、備えよう。ワカメの幸運もこれで打ち止めとなるか

この老夫婦の家ってzeroで出たあの老夫婦だったりする可能性も…?

23 ◆FTrPA9Zlak:2013/02/03(日) 00:23:44 ID:N8wQMdZA0
一度は破棄した身で恐縮なのですが、もし再予約が大丈夫なら
間桐雁夜&アサシン、間桐慎二&ライダー、羽瀬川小鳩&キャスター(キンブリー)、バーサーカー(ランスロット)で予約させてください

24名無しさん:2013/02/03(日) 00:33:14 ID:8xSrgaOw0
いいんじゃないかな?
おじさん組も深夜から音沙汰無しだし、そろそろ行動が見たい

しかしおじさん組は果たしてどうなるのだろうか
もし出夢組到着時におじさんもその場にいたら乱闘やでぇ…

25名無しさん:2013/02/03(日) 00:36:28 ID:jDDdLWkI0
×乱闘
○巻添
だと思うのおじさん的に考えて

26名無しさん:2013/02/03(日) 09:06:34 ID:nKnv/QMkO
「運命を覚悟すれば……もう絶望する必要など無いのだよ」
「やったね、さやかちゃん。友達が増えるよ」

27名無しさん:2013/02/03(日) 09:27:20 ID:/2W/ClTE0
なんかの話で、ポルナレフやイギー、アブドゥルは仲間の為なら死んでもいい
DIOを倒す為ならば一切の見返りを求めない、気高い精神を保てたからこそ勝利できたが
さやかはそこで見返りを求めてしまったがために破綻してしまった、ってのを見たな
この僅かな覚悟の差でダービー弟は敗北したというDIO様の評

DIOはこういう人の弱みや精神的脆さを突くのが抜群に上手いからさやかが精神的に屈服しかねない

28名無しさん:2013/02/03(日) 12:30:13 ID:gjpOFUjwO
>>27
一つ問題が…バーサヤカーに話が通じるのか?

29名無しさん:2013/02/03(日) 12:56:43 ID:LuhyMB/w0
さやかちゃんは最初から弱いから肉の芽されても全く問題ないと思うの
問題は番長と違って無理矢理引っこ抜いても問題ないところなの
詩音なら気合で引っこ抜きそうだし…

30名無しさん:2013/02/03(日) 13:00:27 ID:9skQcm/w0
ソウルジェムの利点がこんなところに転がっていたとは…!

31名無しさん:2013/02/03(日) 13:02:32 ID:8xSrgaOw0
バーサヤカー。君と、話がしたい

32名無しさん:2013/02/03(日) 13:13:32 ID:kWuzbKXw0
出夢はなんていうか
マーダーマーダー言いながらもなんやかんやで対主催やっちゃいそうな気がするw
原作でもそんな感じだし

さやかちゃん? あっ(察し)

33名無しさん:2013/02/03(日) 13:50:19 ID:LuhyMB/w0
さやかちゃんだと思った?
残念、オクタヴィアちゃんでしたー!

現状からさやかちゃんが対主催っぽく振舞うにはオクタヴィア化した後
寺以外の参加者を殺害した場合可能です
会場のNPCが全滅してるだろうけどね
でもそれが一番効率がいいのビクンビクン

34名無しさん:2013/02/03(日) 13:53:04 ID:vMBH20mY0
ムーンセル「NPCが喰いまくわれて困るからちょっとお前らオクタヴィアちゃん討伐してこいや」

35名無しさん:2013/02/03(日) 13:56:35 ID:8xSrgaOw0
出夢は色んな意味で他の参加者とは一線を画してるんだよなぁ
実力ならマスター中最強クラスだけど、独特の死生観というかそうゆうので死ぬこと前提で戦ってるし

オクタヴィアちゃんはマーダーにも対主催にもNPCにも大迷惑しそうなボスキャラ臭くなりそうだね!
ムーンセル「オクタヴィアを討伐したものには令呪を一つやろう」
とか言ったらみんなが続々と集まり出してフルボッコにしそうな予感

36名無しさん:2013/02/03(日) 18:10:35 ID:nKnv/QMkO
>>29
詩音「脳みそをシェイクしてやる」

37名無しさん:2013/02/03(日) 22:55:42 ID:LuhyMB/w0
詩音「野郎、ぶっこ抜いてやらぁ!」
あれ、詩音なら素で言いそうだぜこれ

38名無しさん:2013/02/04(月) 01:38:57 ID:JvSAF/XgO
切嗣「皆がバーサーカーに釘付けになっている間に他のマスターを殺そう」
ディケイド「よし、その作戦に乗った」
切嗣「セイバーより使えるわー」

39名無しさん:2013/02/04(月) 02:44:25 ID:eH0CI86I0
ケリィはアルトリアと相性悪かったけど、このロワだと騎士道云々で相性悪いキャラは少ないのよね
アルトリア、ガウェイン、トキ、ラオウくらいじゃないの?ケリィと戦術の相性悪いのは
ラオウに関しては「自分こそが最強だから小細工ナシで潰したい」が理由だから若干他とは違うけど

40名無しさん:2013/02/04(月) 13:19:16 ID:J4pvgDng0
ソラウ人質とかギアススクロール関連とか、悪辣過ぎて太公望でもドン引きだろ

41名無しさん:2013/02/04(月) 13:31:52 ID:EszXiIeIO
そういう時の王天君。
汚れ役は任せとけ!

42名無しさん:2013/02/04(月) 13:44:30 ID:YlFOvjjs0
>>41
太公望「王天君は置いてきた。あやつと融合したままだと厨キャラになるから聖杯戦争に出られない」

43名無しさん:2013/02/04(月) 13:50:11 ID:74r8Vln60
スペック的には太公望だけど、性格的には王天君と融合してたんじゃね?
王天君分離できたら強かったけど制限対称だよなこれ

王天君便利だよなこういうロワだと

44名無しさん:2013/02/04(月) 14:18:00 ID:0MrFIs1c0
王天君いると、霊体に攻撃できたり多少の犠牲は厭わなくなったり爽快だろうこらな。
確かロワでも新漫画の主催側で登場しただけだっけ?もう退場しちゃったけど。

45名無しさん:2013/02/04(月) 14:45:08 ID:YuhL27mUO
伏羲は聖杯戦争メタすぎる性能だもんな
魂にダイレクトアタックする誅仙陣とか完全に鯖殺しだわ
そして誅仙陣すら霞むチートと化すのが太極図

46名無しさん:2013/02/04(月) 15:34:16 ID:0MrFIs1c0
>>45
その誅仙陣を張るにも相当な労力(魔力的な意味と体力的な意味で)が必要だから、マスターも頑張らないとな。
陣地作成がアバン先生のマホカトールみたいになりそうだ。

だが、そんな伏義以上のスペックを持つ女かと地球と同化したダッキちゃんって・・・

47名無しさん:2013/02/04(月) 19:30:09 ID:EszXiIeIO
誅仙陣を敷けば、マスターもサーヴァントに攻撃できるのか。
出夢歓喜だな。
霊体化を防いだりもできるのか?

48名無しさん:2013/02/04(月) 21:39:47 ID:9MI2sKfA0
魂魄に物理ダメージ判定を持たせるのが陣の効果だから
霊体化したら防御力がゼロになるだけだと思うよ…

49名無しさん:2013/02/05(火) 07:11:35 ID:uU0CmWIE0
セイバー
真名『シドルファス・オルランドゥ』
イヴァリース国を二分する大軍団『南天騎士団』の団長にして、『雷神』の二つ名を持つ畏国最強の騎士と称された人物。

筋力B+ 耐久C 敏捷C+ 魔力D 幸運D 宝具A

・スキル
騎乗:B…騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。
カリスマ:C…軍団を指揮する天性の才能。自らが陣頭に立つことにより、後に続く配下を奮い立たせる。
軍略:B…多人数戦闘における戦術的直感能力。自らの対軍宝具行使や、逆に相手の対軍宝具への対処に有利な補正がつく。
剣聖:A+…剣を執る者誰もが志す剣士の到達点。バッドステータスを与える聖剣技、力を吸収する暗黒剣、装備を破壊する剛剣の三種の剣技を使いこなす。
       聖剣技と暗黒剣の特殊効果成功率は魔術判定のため、対魔力により防御が可能。
       剛剣が破壊できる装備は、剛剣を使用する武器以下のランクのものに留まる。

・宝具
『エクスカリバー』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1?2 最大補足:1人
伝説の騎士剣。王の中の王、真の王者の剣。
永続効果:ヘイストにより常に敏捷が1ランクアップ。聖属性の魔術を強化・吸収する。

『聖石リーブラ』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
神話の時代のクリスタル。表面に黄道十二宮のマークが刻まれている事からゾディアックストーンと呼ばれる。
聖石の力は持つ者によって形を変え、清い心を持った者には奇跡を、悪しき心を持った者にはルカヴィとの契約を呼び寄せる。
リーブラは正義・平等・均等・独善・嫉妬を司るとされる。
所有者に対魔力:Bを付与し、致命打を受けても一度だけその効果をキャンセルする。



FFTやってるとやっぱり雷神シドをセイバーとして出したかった
剛剣でバシバシ宝具を破壊し、傷ついたら暗黒剣で回復し、聖剣技で薙ぎ払う
常にヘイスト状態でずっと雷神のターン!

50名無しさん:2013/02/05(火) 12:59:55 ID:RKVkGh5k0
まさかの宝具殺しww
火力はないが、ちと厄介なサーヴァントだな
結構こうゆう妄想してる人多そうだし、処分祭の人が番外編or没ネタのスレ立てたらそっちに投下するのもありかもねw
いやまぁ普通にスレ立てもありかもしれないけど

51名無しさん:2013/02/05(火) 14:27:13 ID:IT9al.oM0
マスターとの組み合わせを考えるのも醍醐味の一つだよな。

52名無しさん:2013/02/05(火) 14:41:57 ID:RKVkGh5k0
某ロワでの外道っぷり故にマスターで折原臨也とか見てみたかったけど
あいつ一般人向けの強さだし情報無いとそんなに強くなさそうな気もした
なかなか狡猾だけどね

53名無しさん:2013/02/05(火) 14:51:02 ID:5agplHcI0
ゾディアックはEXまで行けない希ガス A++が精々じゃない?
EXまでいくと大魔法レベルじゃなきゃいけないからなぁ

54名無しさん:2013/02/05(火) 15:34:33 ID:xMY288/g0
>>52
対一般人に特化した能力持ちは聖杯戦争だと大した力を発揮できないことは雪輝と由乃が身をもって教えてくれたからな

55名無しさん:2013/02/05(火) 15:42:36 ID:RKVkGh5k0
>>54
やっぱりペルソナみたいな能力とか魔術持ってる奴が強いんだよなw
支給品なし(武器持ち込みはアリだけど)、制限も殆ど無い以上マスターは単純に戦闘面で高い実力持ってる奴が有利だしな
ハッキングで有利な条件でスタートした市長、幸運に恵まれたワカメとかはともかく

56名無しさん:2013/02/05(火) 15:54:08 ID:m5rQ.iqE0
実際ライトがデスノート持ち込みでマスターやっても優勝できるか怪しいしな
大物喰いはできるかもしれんが

57名無しさん:2013/02/05(火) 16:21:20 ID:5agplHcI0
真名看破持ち鯖って極稀にいるから、そいつと組めば一日でロワ終わるね
どちらかというとギアスばりの強制力を持つデスノートの命令権のが強い?
ただ、ライトはジャンプ悪役名物の油断で死亡がデフォだから…

58名無しさん:2013/02/05(火) 16:28:40 ID:RKVkGh5k0
たとえデスノで鯖が殺せなくてもマスターの名前と顔知ればもう充分だし
下手すれば数人くらいは殺せそうw

でもなんかうっかり油断してアサシンあたりにサクっと殺されそうでもあるね!

59名無しさん:2013/02/05(火) 17:37:54 ID:ZPSf7FR.0
セリスはキャスターで召喚されてた方が…とはよく言われるけど
FF6からならどうせだったらケフカ出したいなw
魔石化とかライダー殺しになりかねないし性格は旦那以上に破綻してるし面白そう

60名無しさん:2013/02/05(火) 17:52:15 ID:RKVkGh5k0
ケフカでふと思ったけど、こんなに参加者いるんだから
一人くらい旦那みたいなブッ壊れてる狂人的な奴が欲しかったな
いやまぁ金鰤も十分狂人だけど、もっとこう…剥き出しの狂いっぷりと厄介な能力で戦争を掻き乱すようなキャラ
このへんは次回があれば期待だな(?)

61名無しさん:2013/02/05(火) 18:40:10 ID:gyerTIXk0
狂人キャラは相方も狂ってないと仲間割れしちゃうからな…

62名無しさん:2013/02/05(火) 19:14:38 ID:CsA6dGowO
マスター、クリームヒルト。
サーヴァント、ホムリリィ。

63名無しさん:2013/02/05(火) 19:30:04 ID:RKVkGh5k0
>>61
片方がいかれてるとなればコンビとして成り立つ組み合わせが少なくなるしなぁ…
まぁ狂人に振り回されるまともな奴も面白いかもしれないけどw

>>62
みんな死ぬしかないじゃない!

64 ◆ThDqKkEfC6:2013/02/05(火) 20:07:12 ID:nKB/vEnUO
投下します

65 ◆ThDqKkEfC6:2013/02/05(火) 20:30:03 ID:nKB/vEnUO
――嘘をつくのが下手な者は全てを嘘で塗り固めようとする
嘘をつくのが上手い者は嘘の中に真実を織り込む――


天海陸が人としての最後の良心を涙と共に流し去ろうとしていた、まさにその時

「 ば く は つ する ーーー!」

叫び声と共に若い男が厨房から転がり出てきた。
男は陸達には目もくれず、更に「火事だー!逃げろー!」と喚きながらNPCの死体の間を入口へと走っていく。

厨房からは乾いた破裂音が響き、ほんの一瞬呆然としていた4人は弾かれたように我に帰る。
まず動いたのはライダーだった。

「逃げよう!」

レストランから脱出してやや離れた場所から様子を伺う。
男の叫び声が響いてから15分ほど経ち、不審に思うには充分すぎる時間が流れた。

「爆発…しなくない?」

重い空気の中で口を開いたのはこなただったが、その疑問は正しく4人で共有するものだった。

「爆発どころか炎も煙も上がらないな…誤報だったのか?」
「でもさっきの人の慌てようは凄かったよね。音もしていたし」

更に突っ込んだ疑問を呈するライダーと応えるこなたの横でセイバーは考えていた。
この突発事態にどう対処するべきかを。
そして、彼は嘘を織り上げる。

66 ◆ThDqKkEfC6:2013/02/05(火) 20:30:52 ID:nKB/vEnUO
「してやられたかもしれないな」

ぽつりと呟いた、そんな風に聞こえるように口火をきる。

「どういうことだセイバー」
「さっきの破裂音、軽すぎたように思えてきてね」
「まあ確かに、爆発というよりは単に何か破裂したような音だったな」
「厨房から音がしたから咄嗟にガス爆発かと思ったけど、ハッタリだったかもしれない」
「ハッタリだと?」

陸はセイバーの真意にはまだ気付いていないながらも上手く話を繋いでくれている。
(これならイケる)そう確信して事実と憶測を紡いでゆく。

「思い出してみれば火事だと騒いだ男も怪しいもんだよ」
「あの男はごくラフな服装だった、従業員の制服やスーツ姿ではなくね。つまり客の1人…それが何故か厨房にいた」
「確かにそうだ。あの時は爆発の危険を重視したから追わなかったが結局爆発は起こらなかった。つまり君はあの男を怪しんでいるんだね?」
「そう、彼いや彼等の目的…いや役割は僕達をあの場から引き離すことだったのかもしれない」

ライダーの反応に手応えを得てより深く切り込んでいく。

「引き離すってどういうことだ?しかも彼等ってことは他にも誰かいたってことか?」
「破裂音だよ。ガス爆発でないとしたら風船か何か、例えば自転車のチューブ辺りを破裂させた奴がいたかもしれない」
「火事だ爆発だと騒いで音まで立ててオレ達をレストランから追いやったってことか…」
「その辺までは間違いないと思ってる。問題は『なぜ』そこまでしたかなんだ」

陸とのやりとりを経、あくまで憶測だと前置いてセイバーは核心たる部分を口にする。

「彼等、いや、彼等を動かしていた奴の目的は遠坂凜の遺体だったのかもしれない」
「遠坂を!?」
「そう、聖杯戦争を知る彼女ならリク、君とは違って何らかの特別な能力を持って可能性はある」
「確かに凜ちゃんは聖杯戦争がどんなものか知っていたみたいだけどさ…」
「敵に襲われた時の対応からも彼女いわば場馴れしているのは分かった。だからその敵が彼女を調べたんじゃないだろうか?」
「実際に火事や爆発を起こさなかったのも調べる時間が欲しかったからだとすれば辻褄は合う」

マスターとしての力量、特殊能力の有無、或いは聖杯戦争そのものについて知りたかったから

そう言葉を結ぶと場は沈黙に包まれた。

67 ◆ThDqKkEfC6:2013/02/05(火) 20:31:57 ID:nKB/vEnUO
「あの騒いだ男は敵のマスターかサーヴァントに頼まれたか操られていたんだろうね」
「だとすると凜ちゃんを殺した奴等はNPCを操る能力があるかもしれないのか」
「周りに他にも操られたNPCがいる可能性もあるしな。警戒しながら移動しよう」

今後の方針へと話を向けるサーヴァント達に向かって今まで黙り込んでいたこなたが口を開く。

「あのさ…凜ちゃんの家に行ってみたいんだ…ダメかな?」
「どういうことだい?」
「あたしってさ、聖杯にお願いなんてないけど、強いて言うなら家に帰りたいんだ」
「だから凜ちゃんにも帰りたい家があって会いたい家族や友達がいたんじゃないかなって」
「うまく言えないけどさ、聖杯戦争のことも含めて色々知りたいから、凜ちゃんから教えて貰う代わりにって…やっぱ無理かな」
「俺はいいと思うよ。まあ家探しってことにはなっちゃうけど凜ちゃんに聞く代わりだと思えば、ね。陸くん達はどう?」

よくよく考えた末のものであろう提案を語るこなたと賛同するライダーを横目にセイバーは考える。
(遠坂凜のサーヴァントがマスターの自宅に戻っている可能性があるな…顏を知らないはずとはいえ鉢合わせたら面倒かも)
(だけど僕が弱いのはバレているだろうし陸は一般人だと思わせているしここで離脱するのも却って不審かな)

そして答える。

「僕も反対はしないけど判断はマスターに任せるよ。ただ敵が既に遠坂凜宅を把握している可能性、つまり戦闘になることも考えておかないといけないけどね」
「…オレ達も行こう、セイバー。遠坂には悪いが、道具なり日記なり役に立つ物は使わせて貰う」

68 ◆ThDqKkEfC6:2013/02/05(火) 20:32:55 ID:nKB/vEnUO

陸の言葉がこなたに同調したように見せてその実自分達の為の宣言であることを察したセイバーは薄く笑った。

「じゃあ決まりだね。僕とリクも遠坂凜の自宅へ同行するよ」

惜別、悔い、決別、さまざまな感情のこもった一瞥をレストランに向けた4人はやがてゆっくりと歩きだす。
誰かが通報したのか、明けゆく空の下で遠くからパトカーのサイレンが響き始めていた。

◆ ◆ ◆

実のところセイバーことイスラ・レヴィノスの推測はほとんどの部分で真実を言い当てている。
『NPCを操って火事と爆発の危険を騒ぎ立て、4人をレストランから引き離す』
『その目的は遠坂凜の遺体』
事実、凜のサーヴァントであるキャスターはNPCを操ってまんまと凜の令呪を右腕ごと手に入れた。
イスラが保身の為についた『やったのは凜を殺した敵』という嘘すら、見殺しという意味では真実となる。
嘘をつくのが上手い者は――


【深山町・商店街/早朝】

【泉こなた@らき☆すた】
【状態】:左腕に大きな噛みつき傷(治療済)(残令呪使用回数:3)

【ライダー(火野映司)@仮面ライダーOOO/オーズ】
【状態】:疲労(小)


【天海陸@ワールドエンブリオ】
[状態]:疲労(小)(残令呪使用回数:3)

【サーヴァント:セイバー(イスラ・レヴィノス)@サモンナイト3】
[状態]:健康、魔力200%

69 ◆ThDqKkEfC6:2013/02/05(火) 20:36:18 ID:nKB/vEnUO
以上です
タイトルは「さよなら、魔術師」で
誤字脱字矛盾点などありましたらご指摘下さい

70名無しさん:2013/02/05(火) 20:47:27 ID:5agplHcI0
お疲れ様です

遠坂亭って神殿だから、近づくのは危険だよなぁ…
ダッキちゃんの神殿て絶対ロクなもんじゃないし

>>60
じゃあ次があったら征服王と阿部高和でやってみようか
ああ…すごく、魔力供給です…

71名無しさん:2013/02/05(火) 20:50:18 ID:RKVkGh5k0
投下乙!
ふむ、陸組が死体処分出来なかったのはテンプテーションNPCの介入故か
嘘吐きコンビがダッキちゃんの差し金にまんまと騙されてしまったなw
一先ず遠坂邸へ向かうことになったが、近所の間桐邸にはワカメ軍団が…
はてさて、どうなることやら

72名無しさん:2013/02/06(水) 00:11:13 ID:CahkQfJU0
まず遠阪邸を知ってるんだろんか?わざわざ凛が言うとは思わないし

73名無しさん:2013/02/06(水) 07:21:11 ID:qD0B/BhY0
そういえばそうだな
もしや当て所もなく探し回るんだろうか?
鯖に参加者の自宅の位置情報があるのも不公平だしな…

74名無しさん:2013/02/06(水) 08:08:09 ID:dgsrZMLs0
こなたなら聞いてなくても知ってそうだな
思い出しにくいだけで全ての知識持ってるし

75名無しさん:2013/02/06(水) 12:00:24 ID:RNWyexwMO
トオサカのクラススキル『うっかり』でついポロリしてたとか?

76名無しさん:2013/02/06(水) 13:05:09 ID:MdDB2tSQ0
まぁ、確かに「何で知ってるんだ?」ってことはあるけど
もしもの時の為に一応教えたとか、うっかりでポロリしたとか
そう考えれば、とりあえず何とかなる気はする…とりあえずだけど

77名無しさん:2013/02/06(水) 13:25:26 ID:xBfKxk1UO
家の住所を教えたなら、罠の存在くらいは教えるだろう。種類や解除法は別としても。
うっかり、伝え忘れたかもしれないが。

78名無しさん:2013/02/06(水) 13:45:03 ID:MdDB2tSQ0
まぁ、たとえ罠の存在を伝えてようが伝え忘れてようが
凛ちゃんに気付かれないようにダッキちゃんが細工しまくってたんだよね?
そうなれば凛ちゃんも知らないうちに危ない仕様になってる可能性は無くもない…
つってもマスター失って寺組と合流してる今、神殿(?)が維持されてるのかは解らないけど

79名無しさん:2013/02/06(水) 14:21:23 ID:M5HRqOoM0
放棄する事前提でダッキちゃんは神殿作ったけど、周辺にいるだけで有害な神殿だから…
炮烙やタイ盆を作ったダッキちゃんの本領が発揮されている可能性がある
どこでも言われてるけど絶対にキャスターにしちゃいけない奴を引いたな凛ちゃん
対主催の中で大人しくしてたらいいけど、主催者よりよっぽど厄介やで

80名無しさん:2013/02/06(水) 14:49:25 ID:qD0B/BhY0
妲己ちゃんが寺組と合流した話を読み返すと神殿を破棄してるっぽい描写はある
でも時間帯が午前だからギリギリ残ってる可能性もある
しかし住所教えてもらってたとしても土地勘Zeroなのに探し出せるのか?

81名無しさん:2013/02/06(水) 14:59:56 ID:MdDB2tSQ0
>>80
まぁ、実際土地勘zeroでもあるんだよなぁ
住所教えて貰ってたとしても辿り着くまでに結構な時間かかりそう
下手すれば到着する前にルルーシュとセイバーに見つかる可能性も…流石にないか、午前から動き出したし
ダッキちゃんの神殿に関しては後々の書き手さんにお任せになりそうか?
まぁもう使い道も無いだろうし、神殿破棄してそうではあるけど

82名無しさん:2013/02/06(水) 15:27:55 ID:6gvuQlfoO
でも陸とイスラにとっては辿り着けない方が好都合なんだよな(メタ的には逆なんだけどね)
何か理由をつけて到着を先延ばしにするぐらいならあり得るかな?

83 ◆XksB4AwhxU:2013/02/06(水) 18:57:05 ID:CahkQfJU0
鳴上悠&ランサー花村陽介&ランサー 名無鉄之介&キャスター予約します

84名無しさん:2013/02/06(水) 19:06:12 ID:MdDB2tSQ0
番長組とジュネス組一緒に予約来たあああああああああ
さて、どうなることやら?

85名無しさん:2013/02/06(水) 19:39:05 ID:OlNHWXUkO
もしまどかの代わりにほむらがマスターだったらDIOはかなり楽出来ただろうな
ほむらは目的の達成の為だったら他者を省みない部分あるから積極的に戦いそう

86名無しさん:2013/02/06(水) 19:53:02 ID:MdDB2tSQ0
DIO様は確固たる意志のある人間を一目置くだろうしな
そんでまどっちと違って手段も選ばないからコソコソとやる必要性もない
ただ能力がほぼDIO様の上位互換(ry

87名無しさん:2013/02/06(水) 19:55:41 ID:6gvuQlfoO
俺は敢えてワカメを推すぜ!
目的のために平気で他人を犠牲にできるのもそうだけどあいつは何となく他人をサポートするのに向いてる気がする
というかワカメに限らずDIO様と相性良いのは型月世界における典型的な魔術師タイプじゃなかろうか?

88 ◆XksB4AwhxU:2013/02/06(水) 20:01:35 ID:Vhw3aoec0
>>83
ググったら一発で割れるトリップなので日付またぐ前に変えたほうがよろしいですよ

89名無しさん:2013/02/06(水) 20:04:14 ID:898jmKo6O
陸組→できれば遠坂邸には着きたくない(でもまだこなた組から離脱はしない)
メタ視点だとさっさとレストランを離れないと自分達を疑っているルルーシュ達と出くわす怖れ
こなた組→遠坂邸に行きたい(手段は未定?)
こちらはメタ視点だとケリィ組に見付かったらヤバい
そして遠坂邸に近付くことができても近くにワカメ軍団がいる(更に出夢組接近中)
本人達が気付いてない要素も込みで色々抱えててこれから楽しみだな

>>83
番町とジュネスの再会フラグktkr
これは胸熱

90名無しさん:2013/02/06(水) 20:06:59 ID:MdDB2tSQ0
>>87
ワカメは決して無能じゃないどころかその気になれば策士として有能ってことが二次聖杯で解ったしなw
時臣あたりとDIO様は何だかんだで相性良さそう、DIO様にとっても時臣はやりやすそうだし
実力も十分ある分、下手に裏切ったり命令に背いたりもしなそうだから時臣にとってもDIO様は使いやすそう

>>88
あらま、成る程ね
確かにこれはバレやすいどころじゃないし、パス変えた方がいいだろうな

91名無しさん:2013/02/06(水) 20:20:03 ID:hR77qBrU0
参戦してる作品だけで妄想すると、
梨花ちゃま@ひぐらし/エミヤの組み合わせとか美味しそうだなって思った

92名無しさん:2013/02/06(水) 20:36:59 ID:xBfKxk1UO
エミヤのマスターには是非、士郎か切嗣を推したい。

93名無しさん:2013/02/06(水) 20:45:33 ID:898jmKo6O
DIO様のマスターが切嗣だったらとか考えてみた
あるいは切嗣(マスター)とゼフィール(セイバー)とか

94 ◆XksB4AwhxU:2013/02/06(水) 21:23:43 ID:CahkQfJU0
マジですか
どうやって変えるんですか?

95名無しさん:2013/02/06(水) 21:26:10 ID:MdDB2tSQ0
トリップの #pass ←この「pass」の部分は好きなパスワード入れろってことですね
なのでその部分を変えればオッケー

96 ◆2shK8TpqBI:2013/02/06(水) 21:31:44 ID:CahkQfJU0
<95こうですか?

97名無しさん:2013/02/06(水) 21:33:11 ID:MdDB2tSQ0
>>96
Exactly(そのとおりでございます)

98 ◆2shK8TpqBI:2013/02/06(水) 21:37:52 ID:CahkQfJU0
すみませんわざわざありがとうございます。

99名無しさん:2013/02/06(水) 21:42:57 ID:MdDB2tSQ0
どういたしましてッ
wikiの方の予約と収録話の部分のトリップも編集しておきました

100名無しさん:2013/02/06(水) 22:10:49 ID:qD0B/BhY0
>>89
地図上ではまだ結構距離があるけどルルーシュもケリィも車で移動してる
しかもどちらもある程度土地勘のある奴が乗ってるから実際追いつけなくはないんだよな
というかこの四組が集ったらどうなっちゃうの

101名無しさん:2013/02/06(水) 22:19:22 ID:MdDB2tSQ0
車入手してるから大分足回りがよくなってるし、移動してる他のチームとの遭遇率も高めになるなw
通常の聖杯戦争ならば魔術の秘匿の為に夜に戦うのがセオリーだが
ここはムーンセルで一般人も全てNPCだから、昼間でもしれっと戦闘起こりそうだな…
どうでもいいけどアインツベルンの城はもはやスルー状態

102名無しさん:2013/02/07(木) 00:31:45 ID:OSG3OP3o0
真夜中にショッピングモールで対城宝具級の技使った組があったよーな…

103名無しさん:2013/02/07(木) 01:24:19 ID:r8okp4ms0
黒竜はかいこうせん…
NPCの被害をあんま気にしなくてもいいというのは何だかんだで恐ろしい
というかむしろ鯖が被害無視して戦える分ある意味やりやすい…のか?
でもここじゃ警察からの連絡で市長に被害が筒抜けだね!

104名無しさん:2013/02/07(木) 02:47:56 ID:P1xgIAXc0
細かいとこは忘れたが、確かあんまり派手にNPCをぶち殺しまくったらペナルティ発生するとか
ルールがなかったっけ?魔力炉利用限定での制限だけか?

105名無しさん:2013/02/07(木) 03:15:11 ID:r8okp4ms0
「NPCを魔力炉に利用するのは問題ないが度を越した場合はペナルティ」とのこと
NPCの殺傷に関しては特に明記されてないな、多分こっちには特にペナルティないのかも

つかルールのとこに「脱落者は魂が肉体から分離し、本来のあるべき世界に帰される」って書いてあったのが気になったんだが
これってつまりマスターは脱落しても元の世界に帰れるってことなのか
それとも死んだ魂が元の世界に戻るだけなのか

106名無しさん:2013/02/07(木) 05:44:36 ID:7.PQjXEY0
>>104
流石に街破壊はダメだろwww
ムーンセルさんに負担かかりすぎwww
討伐令出してもいいくらいだとは思うけどね

107名無しさん:2013/02/07(木) 08:14:43 ID:GwcTLzk20
おお、いっぱい投下来ていた、乙〜
出夢の死生観というか勝敗観というか考え方は面白いなw
まさかのスザクとの同盟も敗北前提の彼女がサブラクの今後を考えた上なのもあってなるほどと思ったし
あれよあれよと人が集まる間桐邸決戦期待w

嘘つきが嘘つきの騒ぎを利用して更に嘘をついたか
こっちはこっちで遠坂邸に行くっていうのがなんかなんか面白いなw

P4決戦な予約もきたしさてさて今後どうなるやらw

108名無しさん:2013/02/07(木) 11:02:20 ID:aNdcvASw0
>105
ムーンセルの容易した仮初の肉体から分離して、元の世界の肉体に帰るのか、
完全に死亡扱いで、元の世界の輪廻の輪に還るのかで意味合いが違うよな。
俺もエクストラはクリアしてないからなんとも言えんが、後者が正解っぽい気がする。

109名無しさん:2013/02/07(木) 11:09:24 ID:KqNXK1H.0
>>108
原作だと脱落者は電脳死扱いだから、元の世界の肉体はそのままで魂が完全に死亡。
元の世界の輪廻の輪に還るものかと。

110名無しさん:2013/02/07(木) 11:56:16 ID:aNdcvASw0
>>109
肉体はそのままってことは、植物人間状態かメガテンNINEのドール化みたいなもんか。
参加者の何人かは還る前に第三者から魂回収されそうな気もするがw

111名無しさん:2013/02/07(木) 12:01:00 ID:r8okp4ms0
>>106
まぁ実際修復は全部ムーンセルさんの負担になるし
流石にやりすぎたら何かしらペナルティはちょっと言われそうではあるww
(NPC魔力炉にしまくりそうなオクタヴィアちゃんはまず討伐令出されそう)

>>109
なるほど
流石に負けたからって生きて帰れるなんていう生易しい世界ではないか

112名無しさん:2013/02/07(木) 15:28:35 ID:or6W4sn60
魔力炉とNPC大虐殺については議論中なのねん…
◆.OpF6wOgZ2氏が帰ってくるまで答えは出せないけど
氏の制定したルールには大虐殺に関するものはないのよね
バレなきゃいいという問題なんだろうか?

113名無しさん:2013/02/07(木) 15:49:58 ID:l5gSORAUO
無理矢理にでも線引きするなら
はかいこうせん→他の参加者とバトってて巻き込んじゃったのは仕方ないよね
魔力炉→NPC殺しまくるのが目的だよね
みたいな辺りだろうか
目的としてるか否かみたいな

114 ◆wYNGIse9i6:2013/02/07(木) 15:56:22 ID:jb1kKNDw0
ルルーシュ、セイバー(アルトリア)
陸&セイバー(イスラ)
こなた&ライダー

で予約します

時間がないので今は書けませんが、議論中の話題があるなら議論スレにまとめておいてもらえると助かります

115名無しさん:2013/02/07(木) 16:10:18 ID:fec7zdrk0
魔力炉にさえしなければどれだけ派手に虐殺してもお咎め無しって何か…
どっちもNPC死ぬのには変わりないし

116名無しさん:2013/02/07(木) 16:16:50 ID:l5gSORAUO
>>103
市長「ちょ、お前ら、暴れすぎ…」
大統領(カメラ担当)瞬殺といい頭痛い同盟者だなw

>>114
陸組と寺組の遭遇クルー?
これは楽しみ

そういやレストランにパトカー来てるっぽい描写あったけどこの件も市長に報告上がってんのかな

117名無しさん:2013/02/07(木) 16:45:38 ID:r8okp4ms0
「魔力炉にしても問題ないけど、やりすぎたらペナルティ」
殺害に関してはルールに一切明記されてないから、それを鵜呑みにするならお咎め無しだろうな
まぁ氏も言ってるようにこれ以上は議論スレ行きかな?

>>114
陸組と寺組チームの邂逅フラグか
ペルソナ組の再会といい、なかなか気になる組み合わせが予約されてきてるな

警察に知られた時点でもう市長に報告上がるんじゃね?

118名無しさん:2013/02/07(木) 19:40:35 ID:bPUba/B6O
>>114
予約ktkr
でも追加予約が無いとすると今回ガウェインの出陣は無しって感じかな?
とにかく楽しみに待ってます!

119名無しさん:2013/02/07(木) 21:24:56 ID:GeOSRvl20
竜殺し的に考えて、ランスロットならばアシュナードのドラゴンを倒せる可能性がある…?

120名無しさん:2013/02/07(木) 21:27:13 ID:or6W4sn60
>>119
zeroよろしく戦闘機を手に入れられれば接近戦して勝てるかも
でも今の状況じゃ令呪の関係で自立行動できんのよ…
取り戻しても人形にしかならないぞ?いいのかいスザクさん?

121名無しさん:2013/02/07(木) 21:35:03 ID:r8okp4ms0
アロンダイトならラジャイオンに有効かも
ただ飛行してる分、接近するのが難しいんだよな…戦闘機に関してもアロンダイト発動中はナイトオブオーナー使えないし
あと生きていればどうやらテレサにも有効だった様で(竜殺し)

ぶっちゃけ令呪のせいでワカメ組の命令ないと一切動けないんだよね
スザクの令呪は残り一つだし、これは出夢組がワカメ殺害しないと状況打破出来ないでぇ…

122名無しさん:2013/02/07(木) 21:46:01 ID:rk6BkvMIO
四不象のデザイン元は龍だと聞いたことがあるけど、作中では別に龍とは言われてないんだっけ?

123名無しさん:2013/02/07(木) 21:47:22 ID:fec7zdrk0
普通に戦闘機の武装でドラゴン落とせばいいじゃん

124名無しさん:2013/02/07(木) 21:53:48 ID:KqNXK1H.0
>>121
ゼフィールの武装が二つとも竜殺し機能があるから、
手っ取り早くマスターから強奪するという手もある。
ランスロットがあの二刀を略奪したらアルトリアが終了しかねないが、まあいいか。

125名無しさん:2013/02/07(木) 22:10:12 ID:l5gSORAUO
FEはSFCまでしか知らない俺にゼフィールとアシュナードのヤバさを誰かkwsk

126名無しさん:2013/02/07(木) 22:15:32 ID:XJQoayCUO
戦闘機に撃墜されたドラゴンがタワーに突き刺さって脱落するのか

127名無しさん:2013/02/07(木) 22:21:44 ID:r8okp4ms0
>>125
マスター(ゼフィール)はサーヴァント殺せる武装二つ持ってる
ライダー(アシュナード)は竜による高機動力+高スペック+気配遮断見破れる+一度だけ完全回復&ステータスランクアップできる宝具持ち
初戦闘話で3組殺害+1組撃破の実績持ち

>>126
本当に、本当に、ありがとうございました。

128名無しさん:2013/02/07(木) 22:27:45 ID:r8okp4ms0
今となっては既にIFの話だけど
龍騎ランスロットvsアシュナードが勃発したらまさにドラッグオンドラグーンだな

129名無しさん:2013/02/07(木) 22:49:25 ID:or6W4sn60
ドラッグオンドラグーンは女しかラスボスになれないという謎設定あるから
そいつらじゃ噛ませ犬にしかならないよオガーザーン!
実はDODのカイム出そうかと思ってたけど…
バーサーカー(乗り物つき)かライダーか迷って結局出せなかった
カイム何気に宝具多いからアサシン以外全クラス適応されるのよね

130名無しさん:2013/02/07(木) 23:08:47 ID:K58quqJs0
>>127
陸「何なのだこれは?どうすればいいのだ!?(予約面子的な意味でも)」

ところでfateのセイバールートやり直してたら士郎が投影カリバーンで五次バサカの腕をぶった切ってた
となると本来の担い手のセイバーがカリバーン振り回せば常時Aランク攻撃になる可能性が微レ存?

131名無しさん:2013/02/07(木) 23:33:58 ID:or6W4sn60
fate原作はほとんどが御都合主義だから真面目に受け取っちゃダメよ?
4次キャス工房がウェイバーちゃんに発見できてケリィに発見できないとか
弱体化ギルが即死体質に負けるとか考えたらキリがないで

一方このロワは死体が最も多くなる方向にご都合主義だからその点は安心である

132名無しさん:2013/02/07(木) 23:42:43 ID:GgMoalBo0
>>129
突然オクタヴィアちゃんと鬼畜音ゲーを始めるんですね、わかりません!

133名無しさん:2013/02/07(木) 23:52:49 ID:bPUba/B6O
>>130
型月的に威力=ランクじゃないらしいから単純に投影カリバーンの神秘がAランク以上なんじゃない?
そう考えると原作で紅茶がバサカを6回殺せたのも多少は納得できるんだよね
投影品でも素でAランク以上な武具が存在するってことになるから

>>131
ケリィは意外とプロ思考、効率主義で凝り固まってるからね
型にはまらない考え方ができない人なんだよ

134名無しさん:2013/02/08(金) 01:30:58 ID:7TFGPBFo0
そもそも心臓必中のゲイボルグや、11回蘇生+耐性付加+Bランク以下無効のゴッドハンドがB扱いだしな

135名無しさん:2013/02/08(金) 02:20:28 ID:2.Hph2cgO
>>134
ゴッドハンドに関してはランク高過ぎたら文字通り無敵モード入るからメタ的にBなんじゃないかと思った

136名無しさん:2013/02/08(金) 13:13:58 ID:cD38JUmIO
>>132
舞台が新宿エリアに上書きされるんですね

137名無しさん:2013/02/08(金) 14:31:26 ID:FpAXigdk0
やめて!世界最悪のダンジョン新宿駅で迷子死する鯖がいっぱい出ちゃう(´;ω;`)

138名無しさん:2013/02/08(金) 16:54:27 ID:TYMyiR0E0

アシュナード「何なのだ、これは!どうすればいいのだ!?」→仰木と小林がラジャイオンを撃墜

139名無しさん:2013/02/08(金) 17:38:09 ID:yJdGTwh.O
ラジャイオン奪ってはかいこうせんかましたら強くね?

140名無しさん:2013/02/08(金) 17:45:30 ID:FpAXigdk0
そも、生物奪えるの?

141名無しさん:2013/02/08(金) 17:56:16 ID:TYMyiR0E0
謎スロさんはミラーワールドのモンスターのドラグレッダーを奪えたんだし
ナイトオブオーナー使えれば奪える可能性も微レ存……なのか?
いやどっちにせよそもそも奪うのが困難だろうけど

142 ◆2shK8TpqBI:2013/02/08(金) 18:29:52 ID:iEbs26o60
すみませんちょっと作品書いてて疑問に思ったんですけど、リインフォースの夜天の書は肉の芽を無効化出来るんでしょうか?
肉の芽がランクAなのに対し
夜天の書はランクA +
無効化出来るか出来ないかによって話しの展開を変えるつもりなので意見を頂きたいです。

143名無しさん:2013/02/08(金) 18:36:16 ID:TYMyiR0E0
宝具の解除ってことか 少なくともアシュナードの恐怖スキルの解呪は出来てたよね…
まぁとりあえず、夜天の書がAランク宝具を解除出来る魔術を持ってるかってことになるな
もしAランク級の解呪魔術があれば無効化できるんじゃあないか…
というかwikiのリインフォースの宝具の解説が少なくていまいちコメントしづらいのが泣けるw

144名無しさん:2013/02/08(金) 18:52:31 ID:NWUJuDy20
そもそも肉の芽が宝具化してること自体おかしい
そもそもあれ吸血鬼スキルの中の一能力でしょ?

145名無しさん:2013/02/08(金) 18:57:25 ID:2.Hph2cgO
>>142
何気に原作じゃほとんど見られなかった(すぐ消えた)万全状態のリインフォースならそれくらいやれそうだと思う

146名無しさん:2013/02/08(金) 18:57:40 ID:TYMyiR0E0
>>144
今更そこにつっこむべきじゃないw
もうとっくに描写されてる上に書き手さんが決めた以上は『宝具』なんだし

147名無しさん:2013/02/08(金) 18:58:57 ID:TYMyiR0E0
>>145
なるほど 『魔力万全の状態での魔術なら解呪可能』ってことでいいかもね

148名無しさん:2013/02/08(金) 19:00:19 ID:cD38JUmIO
ヘラクレスみたいに、体丸ごと宝具化されちゃった人もいるし。

149名無しさん:2013/02/08(金) 19:15:55 ID:NWUJuDy20
その神代最高峰の英雄ヘラクラスの肉体以上の神秘持ってる肉の芽すげー

150名無しさん:2013/02/08(金) 19:21:39 ID:wKKDPtL60
>>144
気持ちは分かるが上でも言われてる通りもう決まったことだから仕方ない
ただ抵抗や無効化のハードルが高すぎじゃね?っていう気もする
というか対魔力不足で鯖が洗脳された場合令呪でどうにかできるんだろうか?
それとも「令呪による洗脳解除だと?そんなもの、このDIOが許すものか」ってなるのかね

151名無しさん:2013/02/08(金) 19:40:18 ID:TYMyiR0E0
まぁ原作の「解除の困難っぷり」を出したかったんじゃないかな、ランクAといいハードルの高さといい
確かにちっとばかしハードル高い気がするが、もう決まってる以上そこは今はツッコミどころじゃない
「夜天の書で肉の芽が解除できる?」ってことが氏の疑問点だろうし…

肉の芽ってDIOの細胞なんだよね?
令呪で解除しろってやられたら、下手すれば肉の芽自体に抵抗される可能性が微レ存…

152名無しさん:2013/02/08(金) 19:41:28 ID:TYMyiR0E0
つか「◯◯の技は××に効く?」とか「◯◯の宝具の効果の程度は?」とか
こうゆう話は議論スレでやるべきかもしれないけどね

153名無しさん:2013/02/08(金) 20:17:33 ID:TvTXfp6g0
前も言ったけど夜天の書のランクがA+で固定になってるのもおかしい
あれ集めた物次第でいくらでも強さ変わるし

154名無しさん:2013/02/08(金) 20:42:41 ID:220lt/0M0
北斗滅天把ってなんでランクEXなの?
乖離剣エアやアヴァロンぐらいすごいのあれ?
それともザ・ワールドとか魂の宝石みたいに魔法並の奇跡なの?

155名無しさん:2013/02/08(金) 20:49:53 ID:TYMyiR0E0
正直ランクの基準が明らかに人によって違う感は否めないんだよなw
というかそもそも書き手さんの質問を住民の皆覚えているのか……

156名無しさん:2013/02/08(金) 22:07:52 ID:7xR938C.0
>>155
そもそもランク付けの仕方が原作とは違うんだもんよ…
パラメータルールも原作完全無視してるよねぇ
型月wikiの情報がデタラメだとしても、ここの鯖は何にせよピーキーな能力ばかり
テレサ、セリス、サブラクあたりは間違いなく設定間違えてるね

157 ◆2shK8TpqBI:2013/02/08(金) 22:09:35 ID:iEbs26o60
≫確かにそうですね
議論スレにも乗せました

158名無しさん:2013/02/08(金) 22:15:28 ID:TYMyiR0E0
>>156
まぁ「登場話を執筆した書き手がステータスを決める」っていうルールだったから
キャラによってステータスの設定にブレというかバラつきが結構あるんだよね
細かい制限やステータスに関する議論が今までなかったから触れられなかったけど

>>157
了解です、夜天の書の質問に関しては向こうで…

159名無しさん:2013/02/09(土) 00:53:48 ID:Epd5XIkw0
【急募】なのは厨【急募】
おかしい…コミケであれだけいるんだ…このスレに一人くらい
なのは知ってる人いたっていいと思うんだ…いないのかな?

160名無しさん:2013/02/09(土) 01:09:57 ID:3hnqiSjc0
>>159
議論スレの方での書き込みあったけど

>肉の芽解除は絶対に無理、ではないだろうけど
>全力で魔力をつぎ込んでようやく、というあたりではないでしょうか

この書き込みしてる人なのは知ってるっぽかったし、結構妥当な道だし
これが一番無難な気がするw

161 ◆2shK8TpqBI:2013/02/09(土) 12:16:08 ID:euoMtf9Q0
様々な意見ありがとうございます
今日1日様子見て最終的に決まったものでやらせて頂きたいと思います

162名無しさん:2013/02/09(土) 23:48:26 ID:IyIsn3Sc0
一応解決の形は得た…のかな?
まさかなのは厨不在で困る事になるとは思わなかったな
型月信者となのは厨が仲悪いなんて聞いた事なかったもんよ
このスレにおけるまどマギ厨よろしく、掃いて捨てるほど沢山居るのかと思ってた

163名無しさん:2013/02/10(日) 00:13:22 ID:7AstXfX6O
>>162
何だかんだで大分前の作品だし、まさかの主役組不在でいるのは出番たったの数話なリインフォースだけ、しかも原作の設定は割りと適当な上に漫画やらドラマCDやらに情報分散しすぎで把握が面倒

164 ◆FTrPA9Zlak:2013/02/10(日) 00:16:06 ID:itMXuujs0
再予約した身で申し訳ないのですが、延長させてください
おそらく今夜中には投下できるのでお願いします

165名無しさん:2013/02/10(日) 00:21:43 ID:NSc5nHfc0
>>163
なんだかんだでネームバリューって大事だよな(確信)
把握の難しいキャラって結構多いよなこのロワ
知らないキャラは感謝祭?処分祭?されるから特に問題はないんだけどね

>>164
ここ予約破棄してもペナルティないから気にしなくて良いのよ

166名無しさん:2013/02/10(日) 00:26:20 ID:bH7zBZn60
>>162
一応いいかんじの案は出たな というか他に大した意見が出なかったのもあるけどね
リインちゃんがこうなるのは必然だったのかもなぁ、ステータスの解説が少なすぎてたし
今まで宝具全力で使うような戦闘を殆どしてなかったからあんまり触れられてなかったけどね
あとまどマギ好きな住民は結構あからさまだけど、なのは好きそうな人は住民にそんなにいなかったしな…
ただリインちゃん自体は名無とのコンビもあるし、結構いいキャラだと思うけどね

ってかリインちゃんの夜天の書のステータス編集されてる…(A+→E~A++になってる)

>>164
了解、延長しときます

167名無しさん:2013/02/10(日) 00:29:24 ID:bH7zBZn60
>>165
まぁ一応間は開けといた方がいいんじゃないかなってツッコミはあったけど
破棄に関するペナルティはほぼ無いも同然なんだよねw
あんまり厳しいルールで書き手さんがやりづらくなるのもなんだしね

168名無しさん:2013/02/10(日) 00:33:07 ID:GvC8oBDY0
もう設定に手を加えるのは書き手以外禁止した方がいい

169名無しさん:2013/02/10(日) 00:41:33 ID:bH7zBZn60
そろそろそれくらいきっぱりとしたルールは欲しいな
キャラの経歴に関してはまだいいけど、戦闘に影響するステータスの編集は書き手以外禁止がいいな
一時期のDIO様のページの編集っぷりは酷かったし

ただリインちゃんの困った所はアレだ wikiでリインちゃんのページ作られた当初
宝具が解説だけで数ヶ月以上(1年近く?)ランクや種別が一切書かれずに放置されてた辺り
ユニゾンと夜天の書のランクと種別に関してもいつの間にか追加されてた気がするし…

170名無しさん:2013/02/10(日) 00:54:09 ID:bH7zBZn60
とりあえず参加者名簿の頭らへんに一応注意書き置いといた

171名無しさん:2013/02/10(日) 01:07:47 ID:NSc5nHfc0
リインちゃんが夜天の書でA++の魔術を使うには…
・ダッキちゃんの羽衣を奪って能力を全力で行使する(ただしリィンは死ぬ)
・オーズのメダルを奪って全力で行使する(ただしリィンはグリード化する)
エミヤさんもA++を本気で出そうとしたら死ぬらしいし、キャスターとはいえ十中八九こうなる
そもそも洗脳アイテムを解除するなんてアニメじゃ滅多にない展開だし仕方ないね

そろそろジュネスも過労死ェ…

172 ◆FTrPA9Zlak:2013/02/10(日) 01:27:59 ID:itMXuujs0
ちょっと気になるところもあるので意見も聞きたいのですがそれは後として
完成したので投下します

173DECIDE THE FATE ◆FTrPA9Zlak:2013/02/10(日) 01:29:24 ID:itMXuujs0
薄汚れた空気、鼻を突くほどの腐臭。
もしこの空間を色で表現することがあれば、恐らく緑色といえるだろう。自然からくる色ではなく、汚れた毒々しい色として。
そこはマンホールの下、下水管の中。街の汚水が流れ込む、誰もが寄り付かないであろう空間。
その空間を、体を引きずるように歩く者がいた。

間桐雁夜。
この薄汚れた空気も、誰もが入ることを躊躇うであろう不潔さも、彼にとっては慣れたものだった。
聖杯戦争が始まって以来、彼はずっとこの空間で過ごしてきたのだから。
ケイネス・エルメロイ・アーチボルト。アインツベルンの魔術師。そして遠坂時臣。
彼等と比べたとき、自分の魔術などどうということのないものだという自覚はあった。
加えてこのボロボロの体。戦うことなどできるはずもない。
だからこそバーサーカーを戦わせる間、身を隠すことで己の安全を確保し確実に生存できるようにしてきたのだ。
臆病者と言えばそれまでだが、身の程を弁えた上での戦略である以上仕方のないことでもある。
事実、この中にいる間は誰一人として雁夜を見つけられはしていない。気付いていたとしてもこのような不潔な場所に積極的に入ろうとは思わないだろう。
それに、

「ぐ…っ、がはっ…!!」

こうして虫と血の混じったものを吐き出す姿など、他のマスターに見られたら格好の餌食になるだけなのだから。

歩みは非常に遅い。
数歩歩くたびにこうやって血を吐きながら歩いている様だ。
もし彼がトキによって治癒の秘孔を突かれていなければ先ほどの戦いに使った蟲によって魔力を食いつぶされていただろう。
しかし、それほどまでの状態で進みながら、雁夜は今自分がどこへ向かっているのかすら把握していなかった。

「…凛ちゃん」

なぜ彼女がいたのか。
なぜ自分の知る彼女より成長してこんなところにいるのか。
なぜあれほどまでに葵さんに似ていたのか。
そんなことにまで考えが及ばない。
今思うのは、それとは別のこと。

(俺は…、凛ちゃんを殺せるのか…?)

考えたこともなかった。
桜ちゃんを救うため、聖杯戦争に参加した。
他の魔術師を、遠坂時臣を殺し、自分の命すらも捨ててもいいと考えていた。
では、もしも桜ちゃんと凛ちゃんのどちらかを選べ、と言われたら選べるのだろうか。
俺は桜ちゃんと凛ちゃんを幸せにしたかった。
桜ちゃんを凛ちゃんと葵さんのところに帰して幸せに、葵さんを―――
葵さんを―――

「葵さん―――」

そうだ、葵さんはもういないのだ。彼女は俺が殺したのだ。
時臣もいない。葵さんもいない。
あの笑顔はもう見られない。桜ちゃんと凛ちゃんと共に笑う姿をもう見ることができない。

174DECIDE THE FATE ◆FTrPA9Zlak:2013/02/10(日) 01:31:12 ID:itMXuujs0
いっそ、壊れてしまえば楽だっただろう。あるいはあの事実に目を背けていられたら楽だっただろう。
だが、思い出してしまった。それと同時に気付いてしまった。
己の罪に。己の業に。
今の間桐雁夜は正常に頭が回ってはいない。だが、だからこそ遠坂凛が大きくなっていたという事実も難しいことを考えずに受け入れることができた。
だからこそ、ある事実に気付いてしまった。遠坂葵を、遠坂時臣を殺したことで、彼女を一人きりにしてしまったのだということに。

「俺に凛ちゃんを殺すことは――」

できない。

自分には一つを救うために他のものを捨てる覚悟はできなかった。
ある世界における少年のような生き方は。
だからこそここまで歪んでしまったことまでは気付けない。

それでもあの蟲倉の少女を救う。それだけは変えられない。
今、それが無くなっては間桐雁夜という人間を保つことができないのだから。
己の進む先すらも定まらず、道に迷うまま、雁夜の足は進む。ゆっくりと、まるで蟲のように。



アサシン、トキは霊体化した状態でそのまま進む主の姿を地上から見つめていた。
霊体化しているのは主の苦痛を少しでも和らげるため。地上にいるのは万が一の警戒のため。
そして歩みに手を貸さないのは彼自身のため。
これは彼自身の問題、選んだ道。
サーヴァントである自分では彼の歪みは直してはやれない。体の傷は直せても進むべき道までは示せない。
だが、今のまま進んでも彼には破滅しかないことも分かる。

彼の心からは一人の少女への思い、そしてその親であり彼自身とは浅からぬ因縁を持つ者への歪んだ思いがあった。
すでに人を救う身でなく、戦いに身を投じる存在となった今でも、関わりを持ってしまった彼だけでも救えないだろうかと。
かつての生き様から、アサシンというクラスにふさわしくない思考を持ってしまっている。
それはサーヴァントとなった自分の存在を、少しでも生前に近づけたいが故のただの傲慢なのだろうか。
考えても答えなど出ない。

ふと見上げた空。未だ明ける気配の見えぬ夜の闇に彩られた空間。
かつての世界と比べて夜の闇自体は薄い。それでもある程度の星を見ることはできた。
中でも強く輝く、ある形に並んだ七つの星。
北斗七星。
その傍には、蒼く光る星が煌いていた。



175DECIDE THE FATE ◆FTrPA9Zlak:2013/02/10(日) 01:33:02 ID:itMXuujs0


(あれは、死兆星か…)

間桐邸にてふと外の空を見上げたラオウ。
彼にも同じものが見えていた。
かつてその拳で多くの人間の命を奪った。相手が強者であるならなおのこと、それが見えるかを問い、見えると述べたものを天へと還していった。
それをしなくなったのはいつからだろうか。そう、自身も死兆星を見たあの戦いからだ。
真の強者と戦うとき際は天すらも結末を測ることができなくなる。だから問うことをやめた。

無論この場においては多くの強者が集まっている。
何しろ過去、未来を問わず名を馳せた英雄、英霊達が相手だ。自身も世紀末の世界に拳王として名を馳せたからこそその偉大さがわかる。
死兆星などいつ見えてもおかしくはない。

だが、この空気には微かに既視感を感じていた。
血が、心が躍るこの感覚。かつて同じものを感じ取ったことがあるはずだ。
それがいつだったのかまでは思い出せない。記憶が磨耗している。
それでも確実に分かることがあった。

(この家に、何者かが近づいてきているな…)



道のり自体は体が自然に覚えている。
かつてバーサーカーのマスターであったときに通った道なのだから。
どこから出ればあの忌々しい家にたどり着くのかも、全部分かっている。
会わねばならない子がいるから、そこがどんなに憎いモノの棲家であっても行かなければならない。
かつての己の家に。

彼には自業自得の面もあるとはいえ、あまり幸運だとはいえるものではない。
だが、かつて臓硯が言ったように運そのものが悪いとまではいえないのかもしれない。
時臣に敗北したときも、言峰綺礼の気まぐれが無ければ死んでいたであろうから。逆に苦しみが長続きしたという意味では、不幸といえるかもしれないが。
それでも、今この時までは生き残ることができる運があった。蝕まれた体もまだ動くし、他のマスターやサーヴァントと遭遇することもなかった。
その時までは。

間桐邸の門をくぐったとき、それは現れた。
いや、気付いた瞬間には目の前にいたというのが正しいかもしれないが。
突如魔力の奔流と共に周辺の大気が爆発したのだ。

爆音。衝撃。
危うくその熱に巻き込まれそうになった雁夜を、霊体化を解くと同時、自ら操る闘気をもって吹き飛ばした。

176DECIDE THE FATE ◆FTrPA9Zlak:2013/02/10(日) 01:35:39 ID:itMXuujs0

「ぐ…、誰だ!」
「少し止まってもらいましょうか」

問いかける雁夜の目の前に、白いコートを纏った男が現れた。
サーヴァントが顕現したことによる魔術回路の痛みに顔を顰めつつ、男、おそらくはサーヴァントを睨みつける。

そんな様子を気にも留めず、しかし下手に攻め込むこともせずに慎重に距離を取って観察している。
攻め込んでこないのはおそらく今の一瞬でこちらの力量を把握したためか。
雁夜はそのマスターとしての目を持って目の前のサーヴァントを測る。
ステータスは基本的に低いものが多いが魔力値が非常に高い。おそらくはキャスターのクラスか。
接近戦に強いアサシンなら負けることはないはず。だが気になることがある。
キャスターがここにいるということは、この家には何者かが侵入している。つまり、それは――

「…ぁ、はぁ…、お前、桜ちゃんを、どうした…?」
「…サクラ?どなたのことかは存じ上げませんが、この家に入るというのであれば私は止めなければいけないのですよね。お引取り願いたいのですが」

魔術師にとって自宅というものは工房と同義。
雁夜がどうこうしたものではないが、この家にも結界は張ってあったはずだ。容易く入れるものではない。
つまり、強力な魔術師が、あるいはサーヴァントが侵入したのだとしたら。

(桜ちゃんが危ない――)
「アサシン、俺は家に入る、この場は――」
「了解した」

無論、トキとて気がかりではあった。
しかしここは他ならぬ雁夜自身の家。地の利はあるはずだろう。
内部の気配までは結界ゆえか探ることはできないが、マスターしかいないのであれば令呪を使う隙くらいはあるはずだろう。

返事を待たず、体を引きずるように家に向かう雁夜。
当然入らせるわけにはいかない。足止めをしようとキャスターはそちらを向く。
だがそちらに意識を向けた一瞬でトキは目の前に迫った。

手刀を突き出すトキの目の前で、キャスターは瞬時に両手を重ね合わせた後手刀の前に突き出した。
流石のトキも警戒心から手刀を止め、後ろに下がった。
手を重ね合わせた瞬間走った赤い魔力の奔流をトキは見逃していない。
キャスターは知略に長けたサーヴァント。警戒しすぎているということはないはずだ。
そもそもキャスターが前線に出ているという点からして不自然なのだから。

一方でキャスターも少なからず焦りはあった。
目の前の男は接近戦において無類の強さの持ち主だ。
加えてどうしたことかこの邸に張られていたはずの結界が機能していない。
別に通しても私見では何の問題もないのだが、門番という役割の手前、一応全力を尽くしているようには見せなければいけない。
だがこのサーヴァントの前で、油断などできるはずもない。

177DECIDE THE FATE ◆FTrPA9Zlak:2013/02/10(日) 01:37:10 ID:itMXuujs0

「ふん、苦戦しているようだな」

と、にらみ合う2人の元にあるサーヴァントが実体化する。
その顔を見た時、トキは自身の表情が変わるのを抑えられなかった。

「どうしましたかライダー、自分のマスターに命令でもされましたか?」
「その男はお前の手には余る。俺が相手をしよう」
「あなたはそれで大丈夫なのですか?」
「それで死ぬようなら、あの小僧もそこまでよ」
「…分かりました」

静かにキャスターは消え去り、場には男が2人。
この場において、彼等2人の関係を知っているものはいなかった。この当事者を除いて。
場には静かに闘気が渦巻いている。

「……」
「……」

ライダー、ラオウの視線にもアサシン、トキは怯む気配すら見せず、逆に鋭い視線を返す。
元より2人はサーヴァント。生前の己の想いはどうあれ、戦うしかない宿命。
ゆえに今更交わす言葉などない。
ただ一言。

「あなたは…、この聖杯戦争で何を望む?」

その問いかけに対し、ラオウはただ一言、こう返した。

「 天 !」

もはやこれ以上の言葉は不要だった。
ここにトキとラオウ、2人の宿命の対決が再現された。



「くそ、ライダーのやつ俺の指示も待たずに!!」
「しかしあのサーヴァント、私では相手をすることができないほどには強敵のようでした。
 彼のことはライダーに任せては?この家にマスターの方は侵入してしまったようですし」
「何…?!何やってんだよお前!!
 ああクソ、俺たちはそっちに向かうぞ!バーサーカー、来い!!」




全身の痛みももはや気にならない。気にしている暇などない。
今はそんなどころではない。
もしこの家に魔術師が侵入したというのなら、桜ちゃんが危ない。
一刻も早くあの蟲蔵に行って無事を確かめなければいけない。
もし、今彼女まで失ったら、俺は―――

「おい、待てよ」

歩いていたのはあの工房に繋がる道中の廊下。
あの少女のことばかり考えていたせいか、その存在には声をかけられるまで気付かなかった。

「お前、人んちで何してんだよ?」
「…っ、お前が、魔術師か?」

178DECIDE THE FATE ◆FTrPA9Zlak:2013/02/10(日) 01:38:22 ID:itMXuujs0
目の前にいたのは特徴的な髪型の、高校生くらいの少年。
初めて見たはずなのになぜかどこかであったことがあるような気がしてきた。
その後ろには先ほど見た白いコートのサーヴァント、そして、黒い鎧と霧を纏ったサーヴァント。
一人は言うまでもない、かつてサーヴァントとして従えたバーサーカーだ。
バーサーカーがいたという事実にはそこまで驚きはしなかったが、複数のサーヴァントを連れているということには驚かされた。
つまり、外のアサシンが相手をしているであろう相手も加えれば、少なくとも三体のサーヴァントを従えているということなのだから。

「仮にも間桐の家に堂々と入り込むなんて、いい度胸してるよなぁ?」
「はぁ…はぁ…、桜ちゃんはどうした?この家で何をしていた?」
「桜?あいつがここにいるわけねえだろ。あんたこそ誰なんだよ」
「俺は…、間桐雁夜、間桐の魔術師だ」
「雁夜…、おじさん?」
「え、まさか、…慎二君か…?」

面識がないわけではなかった。
雁夜自身その存在は知っていたし、慎二にも記憶におじさんという存在は残っている。
だが、だからこそそこまでの仲というわけではない。昔話に花を咲かせるような関係でもない。
しかし疑問は生まれてくるものである。

「あ、あれ、でも慎二君は…、え…?」
「おい、キャスター、お前何か知ってるだろ。答えろ」
「…ここが電脳空間であることはすでに聞いていると思うのですが。
 どうやら平行世界へのアクセスも可能だったようですね」

その言葉の意味を悟るのは慎二の方が早かった。
いや、雁夜が何も知らなさすぎたというところだろう。

「電脳…世界?何を言ってるんだ?」
「あんた自分のサーヴァントから聞かなかったのかよ。ここはな、現実じゃない。俺達はバーチャル世界のデータなんだってさ」
「は…?どういうことだ…?」
「あんたは過去から、俺はあんたより未来から来たってことだよ」
「み…らい…」
「分かんないかな?たぶん最後におじさんと会ってから10年以上は経ってると思うんだよね」

慎二の話している意味は、意味は分かるが理解することはできない。
しかし、その言葉で一つの可能性に気付いた。
あの時の葵さんに似た、遠坂凛の存在。

179DECIDE THE FATE ◆FTrPA9Zlak:2013/02/10(日) 01:40:08 ID:itMXuujs0

待て、だとしたら―――と、あることに思い当たった。

「んだよ…、間桐にも魔術師いたんじゃないか…」
(何で俺じゃなかったんだよ)
「ちっ、まあいいや。あんたも間桐の人間なら分かるよな?この戦いの重要性をさ。
 俺に手を貸せよ」

頼む様子でもなく上から目線でそう命令する慎二。しかしそれに怯む様子もなく、雁夜はある一つの質問を問う。
今の彼にとっては戦う理由である、全てのものについて。

「…一つだけ聞かせてくれ。桜ちゃんは、どうなったんだ?」

だが、ある意味その質問をした時点で、彼等の決裂は必然だったのだろう。

「……あぁ?」

慎二の顔が露骨に不機嫌そうに歪む。
それまではまだ口調は悪くも愛想笑いくらいはしていた表情。
しかし今の表情は嫌悪感をはっきりと表し、雁夜を見る視線も見下しきったものになっている。

「あんたもか。あんたもかよ。そうかい。
 みんなして桜桜桜桜!あいつのことばっかり!!
 じいさんも衛宮のやつも!俺に魔術の才能がないからってあいつばっかり!」
「し…慎二君…?」
「ああ、桜のことだったか?
 元気だよ。今も元気に――――――じいさんに魔術習っているよ」
「―――!」

頭の中が真っ白になった。
その発言は、慎二にとっては事実だろう。魔術師そのものに対して大きな劣等感を持っている彼にとっては。
だが、雁夜にとっては違う。間桐の魔術は自身がおぞましいと感じ、魔術から背を向けるほどに醜悪なものであると考えていた。
あの慎二が大きくなるような月日が経っても、今だにあの蟲倉の中から出られていない。その意味を、身を持って知っている。

そんな感情に気付く間もなく、苛立ちが残る慎二はさらにこんな言葉を投げかける。
今更あのような存在を思い出さされた苛立ちを、優越を言葉にすることで解消しようとした。

「あーあ、ちょっと魔術が使えるからって自分の方が優れてるとか勘違いして生意気なんだよあいつは。
 俺のこと魔術が使えないって見下しやがって。他のことは何もできないくせにさぁ」

間桐慎二には魔術師、そして妹である桜に対して大きな劣等感を持っていた。
それもあの日、ライダー(メデューサ)のマスターになった日にはある程度解消はされた。
しかし友人、衛宮士郎や憧れであった遠坂凛にも相手にされず、結局ライダーは敗北。自身もバーサーカーの手で命を落とした。
だが今の自分は違う。あいつより強力なサーヴァントを得て支配下におき、さらに2人のサーヴァントをも御し得たのだ。
なのに目の前の男、おじさんも自分のことなど見ていない。気にしているのは桜なのだ。
その嫉妬は、劣等感は冷静さを鈍らせ、己の力の誇示をするためだけに言葉を口走らせる。

その苛立ちの言葉を受け取っているのは、他ならぬ間桐雁夜。
桜に対する罵倒を受けて、彼が冷静でいられるはずもない。
そして――

180DECIDE THE FATE ◆FTrPA9Zlak:2013/02/10(日) 01:41:16 ID:itMXuujs0

「だから俺が教えてやったんだよ!あいつの地位を、を、その体にな!!絶対俺に逆らえないように!」
「――――――――――――」

その言葉の意味が分からないほど、雁夜も愚かではなかった。
パリッ

そして理解した瞬間、雁夜の中で何かが壊れた。
彼の中にあった、笑顔を浮かべる少女の顔が、音を立てて割れた。

「き―――――貴っ様ああああぁぁぁぁ!!!」

激昂と憎しみの爆発。
それは体の痛み、苦しみすらも忘れさせ、一瞬で、一斉に刻印蟲を羽化させた。
普通の家と比べて広いとはいえそこまで開けた場所とはいえない間桐邸の廊下で羽音を鳴らす蟲たち。
それを前にして慎二は、

「はん、もういい。あんたウザいよ」

取り乱すこともなく、しかし不快感は露にキャスターに命じた。

「やれ」



振りぬかれた拳は宙を舞う。
何も捕らえなかったはずのそれはただの風圧で離れた場所にある石造りの塀に亀裂を入れた。
それほどの拳圧にも怯むこともなく避けた、狙われた相手は目にも止まらぬ手刀を一瞬で5発体に打ち込む。
しかしそれも大した効果を示すこともない。むしろ避ける必要などないと言わんばかりに不動の態勢を保ち続ける。
そう、まさにお前の拳は全て知り尽くしているとでも言っているように。

「ぬうッ!!」
「はああああああ!!」

再び振られたラオウの拳。しかしそれがトキを捕らえることは無く、地面にめり込みラオウの動きをとめる。
そしてそのまま背後を――取らずにラオウの胸に拳を打ち付ける。
今度の一撃は先ほど以上の効き目をもたらす。
が、トキは直後に後ろに飛び退いた。

避けたとはいえ莫大な拳圧はトキの体に大きな負担をかけていた。
もしここで背後を取っていればこのダメージはなかっただろう。しかしトキは、ラオウが背後を取られた対応の技を持っていることを知っていた。それにより生前不覚をとったこともある。
だからこそ肉を斬らせて骨を絶つ覚悟でその一撃を放った。
しかし、

(まだ、浅いか…)

それでも膝をつくことなく態勢を立て直すラオウ。

181DECIDE THE FATE ◆FTrPA9Zlak:2013/02/10(日) 01:42:08 ID:itMXuujs0

剛の拳と柔の拳。2人のもつ相反する拳。
筋力を上げるスキル、高い筋力も受け止めるスキル。
単体であれば強力な力であったろうこれらは、互いにぶつかり合ったことでその長所を打ち消しあっていた。
故に2人の戦闘は単純な技術、力量での戦いとなっていた。
しかしその戦闘能力はほぼ互角。互いの宝具も知り尽くしている。だからこそラオウは黒王号を呼ぶことはできない。
長期戦になるのは必須。だがそうなってしまうと不利なのはトキのほうである。

(この体、果たしていつまで持つか)

病に蝕まれた体。それはこうしてサーヴァントとなったトキの体にも影響を与えていた。
もしこの場で倒れたのであれば、それは生前の再現でしかない。
あの時と違う攻撃を放っても結果はそう変わりはしない。

ラオウとトキ。
この兄弟が共に間桐の血を持つものに呼ばれ、その間桐邸においてこうしてあいまみえている。それは何の因果であろうか。
あるいはこうなることは、彼等が同じ血の人間に召喚されたときには既に決まっていた運命であるとでもいうのだろうか。

しかしその戦いも生前と全く同じものにはなりはしない。
今の彼等はサーヴァントであるのだから。
つまりマスターとの関係は切っても切れぬもの。

「む…」

そのまま戦闘を再開しようとしたトキの動きが止まった。
そしてその姿がすぐさま掻き消えた。霊体化するかのように瞬時に消える魔力、しかし決して霊体化ではないその現象。
ラオウは目を見張る。

「ぬぅ…!?もしや…!!!」

この場でトキが姿を消す理由。
それに気付いたラオウはすぐさま霊体化して自身もトキの向かったであろう方に急いだ。



「はん、いきがっておきながらそんなものかよ!」
「が…ぁ…」

それはきっと愚策ともいえるものだっただろう。
例え間桐慎二が魔術師としては失格といえるほどに魔術の行使ができない男であっても。
その近くにサーヴァントがいたなら十分な脅威となりえる。

大量の蟲を一斉に放った雁夜であったが、それは慎二を怯ませることもできていなかった。
元より”これ”を、慎二はずっと見てきたのだ。今更恐れるに足るものではない。
そして、キャスターへの指示の元、一瞬でそれらを焼き払った。
廊下の壁の一角を錬成し、瞬時に爆発。刻印蟲どころかその先にいる雁夜の体すらも爆風に巻き込んだのだった。

「ちっ、こんなやつに魔術回路なんかあるんじゃ、そりゃ俺の家も衰退もするだろうな!
 それじゃあさ、死にたくなかったらその令呪、こっちに渡してもらおうか」
「が…、こ、と…わる…!」
「そうかい。キャスター、あれをやれ」

182DECIDE THE FATE ◆FTrPA9Zlak:2013/02/10(日) 01:43:54 ID:itMXuujs0
命令と共にキャスターが雁夜の体に触れる。
次の瞬間、雁夜の右手が爆音と共に吹き飛んだ。
まるでそこに爆弾でも仕掛けられたかのように。

「ぐああああああああ!!!!」
「ふん、聞かないようだったらこいつを死なない程度に痛めつけておけ」
「はいはい」

もはや悲鳴すら出せずに体を痙攣させる雁夜。

確かに、この瞬間までは間桐慎二の絶対的優位は揺るがなかった。
それにその策自体はそう間違ったものではない。
問題は、この策を過信しすぎたこと。
一般人でしかない小鳩、生存の呪縛に囚われたスザク。彼等相手であればこの策は有用なものであった。
雁夜は魔術師でこそなかった。しかし雁夜には雁夜なりに命を掛ける度胸があった。
大切なもののために残りの命を1ヶ月までに縮めるほどには。

慎二自身侮っていたところもあった。この程度の男が魔術師であったということを馬鹿にするほどに。
もしここで殺しておけばそうはならなかったかもしれない。
令呪が光る瞬間、屈したと判断しなければ。

「令呪を、持って…命ずる…!!」

もう一つ不運があった。
もし雁夜のサーヴァントがアサシンでなければ。あるいは俊敏がもう少し低ければ。
確率は低いがそれを避けることは、あるいはできたかもしれない。

「アサシン―――こいつらを殺せええええ!!!」

まだ、慎二にはバーサーカーという駒が残っていた。
そしてここは自分の家、自分の領域。地の利はこちらにあると考えていた。
今回の事態、勝手な行動に走るラオウや侵入者、間桐雁夜への対応というイレギュラーなことに若干振り回されたというのもある程度は事実。
それでもまだ挽回自体は可能であるはずだった。


「北斗―――有情断迅拳」

しかし今回ばかりは運が悪かった。

背後に現れたアサシンに対応することなど、慎二にできるはずもない。
感じたのは、何かが傍を通り過ぎたという感触。

俊敏がA+と、アサシンと同ランクであったバーサーカーはかろうじてそれを避けた。
そもそも彼が現れた場所から離れた位置にいたキャスターには視認の後反応する猶予があった。
それが届く直前には、背後にあった壁が無くなった部屋の一室に飛び込んでいた。

気がつけば雁夜の目の前まで移動していたアサシン――トキ。

北斗有情断迅拳。それはトキがかつてとある大軍団を相手に放った北斗神拳の奥義。
相手が対魔力を備えていなければ、例え何百という軍勢であろうと、一瞬で殺しうるであろう技。
強敵相手には決め手に欠けるが、そうでない相手には少ない隙で膨大な数を倒しうる、宝具として昇華されたトキの拳。

「?!」

183DECIDE THE FATE ◆FTrPA9Zlak:2013/02/10(日) 01:45:45 ID:itMXuujs0

次の瞬間、バーサーカーの腕が弾けた。
狂化していようと痛みは感じるはずにも関わらず、当惑するかのようにおかしな動きをとり続ける。
まるでそれに快感を感じているとでも言わんばかりに。
しかし、バーサーカーはまだマシであった。
受けたそれは直撃は避け、さらに彼自身低ランクとはいえ対魔力も備えている。
問題は慎二であった。

「ぎゃああ!何これ!腕が!腕があ!うわ、しかも何かすごい気持ちいいんだけど!
 うあああ!何だよ!何だよこれぇ!!」

腕だけではない。足も関節とは逆方向に曲がり、頭も少しずつ膨れている。もう数秒もあれば弾けるだろう。
慎二自身、体の異常には気付いており、その身に近づく死の気配も感じ取っていた。にも関わらず、苦痛を感じず、逆に体は快感に包まれ始めている。
あまりに不自然で得体のしれない感覚と近づく死への恐怖から、股間を濡らす慎二。
だが、それでも慎二はまだ運に見放されてはいなかった。

「間に合ったか」

突如その背後に現れた、慎二自身のサーヴァント、ライダーが慎二の体を数箇所、その太い指で突いた。
電流が流れるような感覚と共に、慎二は体に魔力を送り込まれるのを感じた。
それと同時に快感と体の膨れは止まる。

「しばらく安静にしていろ。それで元に戻る。
 マスター狙いに移行するか。アサシンとはいえそこまで堕ちたかトキよ!」

何も言わず、トキは雁夜の体を突き、腕の出血を止める。
そして一秒と待たせず動けぬ慎二の元へ向かおうとする。が、それを許すラオウではない。

「そんなにそのようなマスターに従うか!ならば良かろう!小僧を殺したくば、この俺を倒してからにせい!」

剛拳が唸り、風が巻き起こる。その勢いは、崩れた壁に積まれた瓦礫を宙に吹き上げ、粉塵を巻き起こす。
それを避けたトキは、ラオウへの攻撃に移ろうとし、しかし壁を赤い魔力が走ったのを確認した瞬間全身から闘気を放出、粉塵を吹き飛ばす。
しかしその衝撃に屋敷の廊下は耐え切れず崩壊。ラオウと共に下の階に落ちる。

「キャスター!余計なことをするな!貴様はその小僧を守っていろ!!」

ラオウがキャスターに指示を出せば、令呪の効果で逆らうことができない。
そもそも手出し以前にキャスターのことだ。機会があれば背後から、などということも十分にあり得る。だから釘を刺しておいたのだ。

「やれやれ…」

ライダーとアサシンのいなくなった廊下に、ドアを開けて出るキャスター。
守れと言われた以上守らなければステータス低下は免れない。
何しろ爆発させたはずの蟲がそこにはまた大量に沸いているのだから。
慎二に噛み付こうとするその内の一体を踏みつけ、再び空気に対して錬成を行う。
可燃性ガスとなった周囲の気体は、ほんの小さな火花で爆発を起こすほどのものとなっている。
飛び立った蟲は一斉に爆発、気味の悪い音を発しながら地面に燃え落ちていく。

「む…?」
「な、おい、おじさんはどこ行ったんだよ?!」

そうして煙の収まった先には、誰もいなかった。
本来であればそこで倒れ付しているはずの男がいなくなっているのだ。
殺されかけたという動揺から立ち直った慎二は、怒りを露にキャスターとバーサーカーを怒鳴りつける。

184DECIDE THE FATE ◆FTrPA9Zlak:2013/02/10(日) 01:47:42 ID:itMXuujs0
「お前ら何逃がしてくれてんだよ!!あんな死にかけのマスター一人仕留めることもできないのか!?」
「アサシンの乱入さえなければよかったのですがね」
「くそ!バーサーカー!奴を探して殺せ!!」
「■■…、…■■…!」

腕から血を流しつつも、どうにか起き上がることには成功したバーサーカー。
よろよろと立ち上がり、態勢を立て直すと同時に屋敷を駆け回り始めた。

「くそ…、くそ…!畜生!!
 ふざけるなよ…!!クソォォォォォォ!!」

近くにいるキャスターの存在も忘れて声を上げる慎二。
一度うまくいかなかったからといって、その程度のことであればここまでみっともなく叫んだりはしなかっただろう。
ただ、相手が悪かっただけの話。
相手の魔術師が間桐であったこと。桜の名前をここで聞くはめになったこと。一瞬でも死の淵に追いやられかけたこと。
そして何より、間桐慎二という存在を歯牙にも掛けていないと(少なくとも本人はそう)感じたこと。
どれか一つでも欠けていれば、ここまで激昂はしなかっただろう。
ただ、よく似ていながら全く反対の存在であった、近い血を分けたもの。それが圧倒的に相性が悪かっただけの話。



そして、そういう意味では今のラオウも同じ状態であったといわざるを得ないだろう。
家としては広大であるが、空間としてはあまり広大とはいえない間桐邸。
そこで戦っているのは、北斗神拳を競った兄弟。屋敷内が無事で済む保障など無い。
ラオウの右腕から放たれた闘気は家に置かれた壁を破壊し、トキの体から放出される闘気は床に亀裂を生む。
しかしそんな事実にも、トキは元よりラオウすら気にすることなく戦っている。

限られた空間。それは機動力を生かすトキと巨体から生み出す破壊力を持って攻めるラオウではどこかしら不利になる要素である。
しかし彼等はそれをものともせず戦っている。室内での戦闘などをハンデとするようでは北斗神拳伝承者候補になどなることはできない。

「フ、相も変わらず見事なこなしよ。あの時に勝るとも劣らぬほどに拳は研ぎ澄まされておるわ」
「……」

こうして会話している間も、互いの間には闘気が渦巻き、一瞬の気を抜くことすら許される状況ではない。

「だからこそ解せぬ。貴様のように北斗神拳にも己の生にも野望にも拘ることをしなかった者が、今更何を聖杯に願うというのだ?」
「あなたがそれを問うか。では逆に聞かせてもらう。なぜあなたはあれを使わない?」

恐らくそれが人間であるトキであれば知ることは無かっただろう。
しかし今の彼は、英霊の座より召喚されたサーヴァント。だからこそある事実を知っていた。
ラオウが、戦いの果てに哀しみを背負い無想転生を習得したということを。
北斗神拳2000年の歴史の中でも、これを習得し得た伝承者はほとんどいない。増してや伝承者でも無いものが習得するとなれば。
それは宝具として昇華し得るほどのものであるはずだ。
なのに、ラオウは今まで一度もそれを使っていない。もし使っていれば、トキを一蹴することなど造作もないだろうに。

「そのような事。俺は天を握る男。常に宝具に頼って戦うなど、そのようなマネができるものか。
 お前を無想転生抜きで倒すことができずして、どうして聖杯に辿り着けよう」

トキは知らないことであったが、実はこの無想転生には膨大な魔力消費が掛かる。
いかなる攻撃も回避し、逆に相手には回避不能の一撃を加えるもの。もしこれを回避できるとすれば、それは同じ無想転生を習得したものだけだろう。
だからこそだろうか。これを使用するのはここ一番という相手でなければならない。増してや今のマスターは魔術回路を持たない者なのだから。
そうでなくてもトキの技を受けて負傷している者からさらに魔力を供給させるとあまりに負担が大きい。計らずもトキはラオウの最強宝具の使用を躊躇わせる一因を作ったことになる。
ラオウの言葉の中にはそのような含みは無い。だが、それが本心なのか、あるいはその事実を悟らせないための虚構か、あるいは両方であるかはラオウにすら分かっていない。

「そうか。しかしこちらは手加減などせぬぞ」
「構うな、存分に掛かってこい。トキ!」

その言葉と共に、二人の戦いは激しさを増して再会された。

185DECIDE THE FATE ◆FTrPA9Zlak:2013/02/10(日) 01:49:28 ID:itMXuujs0



トキは北斗神拳の使い手であり、同時に人を救うことにも長けた医者でもある。
世紀末の世界では多くの怪我に、病に苦しむ人間を救い、奇跡の人と呼ばれたこともある。
マスターである雁夜の体の状態も、大まかであるが把握していた。そしてその肉体が恐らくは長くないということも。
だからこそ、トキは先に雁夜の血を止めた際、また別の効果も表す秘孔を突いていた。
彼自身からの魔力供給を最低限にする秘孔。これからの自身の激しい戦いにも耐え切ることができるように。そしてもう一つ、僅かでも体力を回復させ、歩くことができるよう。

(この場から離れるのだ、マスター)
(が…、アサ、シン?)
(おそらく私はあのサーヴァントの相手で精一杯だろう。せめて地の利を生かしてなるべく見つからない場所まで逃げてくれ)
(…そうか。すまないな、全てお前に押し付けて)
(気にするな)

そんな短いやり取りもあった。
元々雁夜の契約していたサーヴァントはバーサーカー。そして周りにいたのも臓硯をはじめ彼を傷付けることを楽しむようなものばかりだった。
だからだろうか。自分のことを気にかけてくれるサーヴァントに新鮮さを覚えたのは。
せめてこの戦いが終わったら、もう少し話してみようかなどと。
そんなガラにもないことを考え始めるくらいには彼の精神は疲弊していたのだろう。


雁夜はゆっくりと体を引きずりながら歩き、蟲倉へと向かう。
暗い階段を、右腕があった場所に残った傷口を押さえながら進む。
なぜここに来たのか、もう自分でも分からない。
ただ、ここに来れば何かが変わるかもしれない。もしかしたら桜ちゃんがいるかもしれない。そう思っただけのこと。

中には、かつていたはずの大量の蟲はもういない。
ただ、一人の虚ろな目をした血まみれの少女が全裸で鎖に繋がれているだけ。

「さく…ら、ちゃ…」

そこにいるのは間桐桜ではない。羽瀬川小鳩だ。
髪の色も、肉体的特徴も、全く異なるもの。年齢に至っては彼の知る彼女とは2倍以上の齢である。
それでも、疲弊しきった精神、もはや正気とはいえない精神状態の中、彼はその全く異なる蹂躙尽くされた少女を間桐桜と認識した。
ある程度の体の違和感も、慎二の存在から受け入れてしまったのかもしれない。

「桜ちゃん…、桜ちゃん…!こんな…、俺は…俺は…!!」

絶望と虚脱感から地面を這うようにしか進めない雁夜。
それでもその少女の下までたどり着いた雁夜は、蔵中に響くような声で叫ぶ。

「俺の…戦いは…!一体何だったんだ…!!」

遠坂時臣には死なれ。遠坂葵を殺し。遠坂凛から逃げ。
臓硯から桜を救うこともできず、甥の慎二によって陵辱され。
こうして無残な姿で逃げ出すこともできず拘束されている。

186DECIDE THE FATE ◆FTrPA9Zlak:2013/02/10(日) 01:50:31 ID:itMXuujs0

「……いや、まだ、まだ間に合う…。桜ちゃんさえ連れて逃げられれば…、アサシンの手で怪我を治してやることも…」

もうロクな筋力も発揮できない脚で立ち上がり、その手に繋がれた鎖に手をかける。
そして気付く。少女の手に刻まれた紋様に。
令呪。サーヴァントに対する絶対命令権。サーヴァントのマスターである証。
しかしそれは、今や一画しか残っていない。
もしかしたら、サーヴァントは慎二の手で奪われたのかもしれない。実際彼は複数のサーヴァントを連れていた。
もし、そうであるなら――――
ある決意の元、雁夜はある行動をしようとし、

グシャッ

とてつもなく嫌な音が響いた。



「くっ…」

手を抜いたつもりは無い。もとより有情拳でもって倒せる相手ではない。だからこそ宝具使用を抑えることができただけ。
それでも魔力を限界まで抑えての戦い。その負担はトキ自身の考えていた以上に大きかった。
今まではラオウのマスターを殺せという令呪を、ラオウを殺さねば倒すことができないという解釈の元で誤魔化していた。
魔力や己のステータスをそうやって辛うじて補えた。だがそれにも限度はあった。

「その程度か」

膝をつくトキを前に、ラオウは失望したように呟き歩み寄る。
場所は間桐邸の屋根の上。激しい戦いの中、気が付けば屋内から野外へと移動。最終的にたどり着いたのはこの屋上だった。

「身内としての情けだ。これ以上無様な姿を晒す前に、一撃で葬ってくれよう」

その一撃は、宝具でこそないものの炸裂すれば確実に肉体を打ち砕くだろう。トキであろうと例外ではない。

(ここまでか…、すまないマスター)

そう心の中で呟き、振り上げられた拳を見上げた瞬間であった。
トキがある事実を感じ取ったのは。―――自身とマスターを繋ぐパスが、消え去ったことに気付いたのは。

187DECIDE THE FATE ◆FTrPA9Zlak:2013/02/10(日) 01:52:00 ID:itMXuujs0




「―――あ」

体に走る衝撃。それまでの蟲の苦しみをも超える激痛。


かろうじて首を後ろに振り向かせた時、何が起こったのかということに気付いた。
雁夜の体を一本の腕が貫いていた。
黒い甲冑に包まれた腕。そして、そこから発される黒い霧。
何を意味するのか、雁夜は知っていた。

「バーサーカー…」

後ろに立つのは、右腕で体を貫いたバーサーカー。かつての自分のサーヴァント。

体を貫かれたと知っても、不思議と死に対する恐怖は薄かった。むしろ、諦めの感情の方が大きい。
どうせもう長くない命。己の目的は大きく欠け落ち、形は残していなかった。
ただ、そこにほんの僅かに残ったもの。もう元に戻すことはできないとしても。最後に残った、戦う理由。

(桜ちゃん――――)

立つことができなくなる。視界が揺らぐ。命が消えかけていくのを感じた。
そんな彼の最後の思考、それは。

(――いつか君にも幸せが訪れますように)

一人の少女の幸福だった。



「ほう…」

ラオウは甚く関心した様子で、立ち上がったトキを見つめる。

今の一撃は、トキの命を奪う気で放ったもの。トキの態勢から見て防御など不可能であった一撃。
それを、トキは正面から受け止めたのだ。
トキの柔の拳は相手の攻撃を清流のごとく受け流すもの。間違っても正面から受け止めるものではない。

立ち上がったトキを見て、何が起こったのかに気付く。

「貴様、刹活孔を使ったな?」

刹活孔。使用者に莫大な活力を与える一方で、その生命力を著しく削る秘孔。
サーヴァントとしての生命力とは魔力。そしてそれを削るということはマスターにも大きな負荷をかける。
これまではそれを使用する様子など微塵もなかった。何がトキの心境を変えたのか。
疑問は思った直後に解ける。
トキの体から魔力が零れ始めているのだ。
おそらくはマスターが死んだのだろう。

「元より選択肢などない。他にサーヴァントがいようと、あなたと戦わねばマスターを逃がせぬ。
 あなたを足止めし、他のサーヴァントからはどうにか逃げ延びてもらうしかなかった」

無論、トキに勝つ気が無いはずはなかった。しかし勝てる可能性はどれほどあっただろうか。生前敗れたこの身で。
しかし、出会ったが最後。それだけの因縁が彼等にはあったのだから。
それでも結局、マスターを逃がすことは叶わなかった。この家に足を踏み入れた時点で、もう勝負は決していたのかもしれない。

188DECIDE THE FATE ◆FTrPA9Zlak:2013/02/10(日) 01:53:20 ID:itMXuujs0

「だが、その拳で俺が倒せるか?」
「この技は元よりあなたを超えるために鍛えてきたもの。”今”であればあるいは」

彼とてマスターを失った身であればもう長く現界はできない。刹活孔を突いていればなおさらだ。
それでも、あと一撃を放つほどの力は残っている。もしそれを使えば、彼とて消滅する。
逆に言えば、それだけはこの場において迎え撃たねばまずい。

「キャスターよ」
「どうかしましたか、ライダー?」
「小僧をこの敷地内の、ここから最も離れた場所へ連れて行け」

言われるが早いか、キャスターはその場から瞬時に消え去る。
これから何が起こるか、察したのだろう。

「トキよ、最後に聞こう。お前は俺に、聖杯にかける願いを問うた。
 ではお前の願いは何だ?」
「願いか…、ほんの気の迷いのようなものだ。
 敢えて答えるのなら、今この瞬間が全てだ」

次の瞬間、トキの周囲に膨大な闘気が巻き起こる。
それを見ると同時、ラオウも宝具使用の態勢に入る。

「ならばもう聞くことなどあるまい。最後は我が全霊の拳をもって答えよう!
 さらばだトキ、我が弟よ!!」
「聖杯の導きに感謝を!今、私は、この拳をもってあなたを超える!!」

かつてこの拳はラオウに届かなかった。サーヴァントとなった今でも、彼に届く保証などどこにもない。
それでも、負ける気は少しもしなかった。
今だけは、かつてと違って全力の一撃が放てるから。
何より、この拳はラオウを目指し、超えるために鍛えてきた拳なのだから。


走り出すトキ。迎え撃つラオウ。
互いに目前まで迫った瞬間、拳を振りかざし、その拳の名を叫ぶ―――

「北斗滅天把!!!!」
「北斗、砕覇拳!!!!!」

互いの持つ最強の奥義が交差し。
次の瞬間、間桐邸の周囲に轟音と衝撃が起こった。

189DECIDE THE FATE ◆FTrPA9Zlak:2013/02/10(日) 01:54:29 ID:itMXuujs0




「くそ…!何なんだよ!………ああっ!!家が!」

キャスターに連れられ庭の隅の茂みに身を潜めた慎二。
轟く爆音と突風、それらと共に飛んできた細かな瓦礫や砂。
静かになって茂みから顔を出した慎二は、さすがに驚かずにはいられなかった。

顔を上げた先にあるはずの家。だが今のその場所からは向こう側の家が見える。
ライダーとアサシンが戦っていたのは家の中央。そこからまるで何かで叩き潰したかのように、家を大きく抉り崩していた。
一階の所々が残っているだけという、まるで爆弾でも投下されたかという有様だ。

「お、おい、ライダー?!生きてるよな、おい!!」

周囲には誰もいる気配はない。
流石に気になった様子で、慎二は声を上げてライダーを呼ぶ。
まさか今回も負けたというのか、と一抹の不安が心中をよぎったその時、

「呼んだか」

慎二のすぐ隣からライダーの声が聞こえた。
振り向くと、そこにはしっかりとその二本の足で地面を踏みしめるライダーの姿があった。
胸の辺りを真っ赤に染め、常人、いや、サーヴァントであっても並大抵のものなら動けないであろう傷を負っていてなお、以前と変わらぬ風貌を備えていた。

「な、何だよ脅かしやがって!全くこいつ、家まで壊して何考えてくれてんだよ!」
「……」

返答はない。
その後も自分を放り出しておいてだの、勝手に宝具を使ってだのと一通りの小言や文句をぶつける慎二。そしてそれを腕を組み目を瞑って聞くラオウ。
そうしている内に気持ちも落ち着いたのだろう。最後に、こう問うた。

「で、勝ったんだよな?」
「ああ、この拳王の拳をもって、一撃の元に消滅させた」

北斗滅天把と北斗砕覇拳。
交し合ったその二つは、互いに急所を狙って放たれた。
直接ぶつけ合って勝てるものではないと分かっていたトキは、己の俊敏性に掛け、ラオウの拳より速くこちらの肉体を砕かんと撃ち付けたのだ。
確かにそれは届いた。ラオウの拳より一瞬速くこの肉体に。あと一秒の時を与えていたらまず死んでいただろう。
しかしその一秒に届かぬ刹那の間、ラオウの放った拳はトキに届き、一瞬でその肉体を消し飛ばした。
そして互いに開放された宝具の余波は、間桐邸を吹き飛ばし、今のような形にまで変化させたということだった。

「そ、そうか。はん、当然だろ。この僕がマスターなんだからな。負けるなんて絶対許さないからな」
「当然だ。この拳王に、敗北の二文字など存在せぬわ」
「ならいいさ。今回だけは拠点を壊したこと、許してやる」

慎二の言葉に対し、当然のことだと構えるラオウ。

「…そういえばバーサーカーは、マスターの方は殺したのか…?
 バーサーカー!おい、出て来い!」
「■■■■■■■■■■…」

呼ぶと同時に霊体化を解き、バーサーカーはその姿を見せる。
相変わらずの隻腕だが、その右腕にはしっかりと真っ赤な血が、あるいは臓物の欠片のような肉片がついていた。

「バーサーカー、ちゃんと仕留めたんだな?」
「■■■■」

慎二の問いかけに、頷くような仕草で答えを肯定する。
どうやらこちらもこちらで始末できたようだ。

「ふん、ならいいさ」

本来ならばマスターを失ったサーヴァントごときに宝具を使用したラオウを責めるところなのだろう。
しかし今の慎二は勝利への、己のサーヴァントの強さを確認できたことへの喜びがあった。
そしてそれ以上に、あの男への苛立ちもあった。
枯れ果てたはずの間桐の血を持っていながら魔術を行使可能な魔術回路を持ち、なのにいちいち桜などのことを気にかける類縁の男。
全く持って気に入らなかった。
死んだのなら清々するほどだ。

190DECIDE THE FATE ◆FTrPA9Zlak:2013/02/10(日) 01:56:20 ID:itMXuujs0
「おい、そういえばキャスターはどこだ?」
「ここにいますよ」

と、その背後から声が聞こえた。
キャスターは慎二の背後で霊体化をしていた様子だった。

「私としても流石に一つ伺いたいのですが、私のマスターは…」
「ああ、安心しろよ。あいつならあの家の崩壊には巻き込まれない場所にいるからな」

キャスターとてマスターが死んでは現界することができない。気にかけるのは当然だろう。
だがあの工房は地下の、それなりにしっかりした作りの場所にあるのだ。
具体的な場所を言うことはしないが、一応(おそらく)無事だということは知らせておかなければならないだろう。

「そうですか。それは安心しました」

キャスターはその言葉を疑うこともなくそう言った。
その言葉の裏で何を考えているのかまでは分からない。そもそも言いなりになっている状況に甘んじておいて安心するというのもおかしな話だ。
警戒はいっそう強めなければいけない。
ラオウにも一応アイコンタクトで警戒するようには促しておいた。

「それにしても派手に崩れたな。ちょっと戻ってここまだ使えるか確かめないとな…。
 最悪ここ放棄することも考えなきゃだし…」

ともあれ最も目先の問題、当面の拠点をどうするかということを考えるため、慎二は間桐邸へと戻っていった。

【間桐雁夜@Fate/Zero 死亡】
【アサシン(トキ)@北斗の拳 死亡】

【深山町・間桐邸/朝】

【間桐慎二@Fate/stay night】
【状態:疲労(大)、体調不良、残令呪使用回数2画】
※キャスタ—(キンブリ—)に警戒しています

【ライダ—(ラオウ)@北斗の拳】
【状態:魔力消費(大)、胸にダメージ(大)、令呪】
※令呪の詳細は以下の通りです
間桐慎二に異を唱えるな
※キャスタ—(キンブリ—)に警戒しています

【バ—サ—カ—(ランスロット)@Fate/Zero】
【状態:ダメ—ジ(特大)、魔力消費(特大)、右太腿に刺し傷(通常の回復手段では治癒不可能)、左腕欠損、令呪】
※令呪の詳細は以下の通りです
間桐慎二及びラオウに命令された事柄を除く一切の行動を永久に禁じる

191DECIDE THE FATE ◆FTrPA9Zlak:2013/02/10(日) 01:58:08 ID:itMXuujs0


「全く、酷いことをなさるものですね」

それはキャスター、キンブリーが慎二を連れて離れた直後の話。
彼は喧騒の中、一瞬の隙を見てマスター、小鳩の元へと霊体化して移動していた。

元々この場所を最初に見つけ、拠点としようとしたのは我々であり、小鳩をこの場に留まらせたのも自分だ。
だから慎二は知らないだろうが、この場所については熟知している。だからこそ、小鳩を探すのに時間は掛からなかった。

が、そこにいたのは見るも無残な、人間と思われない扱いを受けたかのようなボロボロのものだった。まあこの惨状くらいのことでは顔色どころか眉一つ動かさなかったが。
近くに携わっているバーサーカーに若干の警戒を払いつつ、小鳩の近くにやってきたキンブリーは、体内に隠し持っていた赤い固体を取り出す。
それは彼の宝具。賢者の石。
自分の操る錬金術の基本、等価交換の原則を無視して事象を引き起こす物質。彼の虎の子と言っていいだろう。
これを取り出して何をするかと言えば、目の前で瀕死の状態にある少女の治癒だ。
元々爆発専門の錬金術師であった自分には人体の治癒は不得意な方だ。しかしこれがあればある程度の向き不向きを抜きにして術の行使が可能だ。
本来であればこんな娘に使うことなどありえないのだが、今は曲りなりにもマスターなのだ。いずれは切り捨てるつもりとはいえ、その時までは生きていてもらわねば困る。
外面からは分かりにくい程度に、重症と思われる部分だけを治癒し、当面の命だけは確保しておく。
ここにいたのがバーサーカーで助かった。この狂戦士であれば自分がここにいたことを慎二に伝えることなどまずないだろう。

と、ふと少女の手を見てあることに気付いたキンブリーは、予想外の事態に驚きと、それ以上の喜びの笑みを浮かべた。
直後、冷静に、顔の表情を戻したキンブリーは静かに小鳩の手の甲を指でなぞり―――
霊体化して消え去るバーサーカーを見て、咄嗟に自身の体も霊体化させて地上に、慎二の背後に戻った。




正直、この崩壊におけるマスターの無事など、とうに把握していた。
それでも聞いたのは、その方が自然ではないかと考えたためだ。

(これは予想外の拾い物をしましたね…)

キンブリーは、屋敷に戻る慎二の背中を見つめながら、無表情に心の中で呟く。
ライダーにも警戒されている以上、あまり表立って迂闊な行動をするわけにはいかない。
それでも今回の独断行動はばれてはいないと思う。彼等とはパスが繋がっているわけではないのだ。行動全てを把握することなどできないだろう。それでも警戒は必要だが。
しかし、あの拾い物は今後の行動において大きなアドバンテージと成り得る可能性もある。
だからあれだけはばれないようにしなければならない。何事も慎重に。
いずれその背に刃を突き立てる、その時のために。



もし雁夜が、小鳩の体に触れていれば、あるいは彼女の声を聞いていれば。
彼女が桜でないことに気付いたかもしれない。
だが、結局体に直接触れることはなく、瀕死の彼女が声を出すこともなかった。
そして、最後の間桐雁夜の願いは、皮肉にもキンブリーに微かな希望を与えることとなった。

身じろぎ一つしない少女の手の甲。
明るい場所ならいざ知らず、薄暗い空間ではよく見たところでまず気づくことはない。
そんな手の些細な色の変化。キンブリーが周囲の手の色素を少しずつ変化させることで隠匿したそれ。
羽瀬川小鳩の、残り一画のはずの手に宿った二画目の令呪だった。

【深山町・間桐邸/朝】

【羽瀬川小鳩@僕は友達が少ない】
【状態:全裸、鼻腔粉砕骨折、歯全本欠損、呂律が回らない、右手指四本骨折、手足の爪破壊、拘束中、失禁、脱糞、腹部にダメ—ジ(中)、額部上下共に骨折(軽)、肋骨骨折、右腕骨折、左足骨折、頬骨粉砕骨折、顔面の骨が所々骨折、両目視力低下(特大)、右耳の聴覚喪失、精神崩壊、瀕死、残令呪使用回数2画】
※間桐雁夜によって令呪を移譲されました。バーサーカーの襲撃により一画のみの移譲となったようです。

【キャスタ—(ゾルフ・J・キンブリ—)@鋼の錬金術師】
【状態:健康、令呪】
※令呪の詳細は以下の通りです
間桐慎二及びラオウに従え
間桐慎二の命令があり次第速やかに自害せよ

※間桐邸は一部形を残して崩壊しました。崩れる音が周囲に響いた可能性があります

192 ◆FTrPA9Zlak:2013/02/10(日) 02:00:17 ID:itMXuujs0
投下終了です
気になったのは、寺組がもう午前の時間帯になっているところで豪邸が崩れるほどの音を立てたところについてです
もし他にもおかしなところなどあれば指摘お願いします

193名無しさん:2013/02/10(日) 02:07:22 ID:NSc5nHfc0
>>192
ダッキちゃんなら気付いてるだろうけど、他の面子は地下に居て気付かないとかありえるかも
そっちよりアサシンの令呪をキャスターにあげられるかどうかの方が気になるなぁ
出来ても出来なくても特に問題はないけど原作はどうだったっけ?

194名無しさん:2013/02/10(日) 02:08:03 ID:bH7zBZn60
うーむ、結構派手に壊れてるんだよね…
寺の方までギリ聞こえなかったか、もしくは後の話で補完ってのもアリかもね

とりあえず投下乙!
おじさん組脱落か…まぁ実際おじさんの不幸っぷりやら寿命やら判断力やらで長生き出来そうにもなかっただろうが
皮肉にもかつてのサーヴァントに命を奪うわれるとは
ラオウvsトキはアツかった この二人の戦いは見たかっただけに嬉しい
「ならばもう聞くことなどあるまい。最後は我が全霊の拳をもって答えよう!
 さらばだトキ、我が弟よ!!」
「聖杯の導きに感謝を!今、私は、この拳をもってあなたを超える!!」
この下りはカッコよすぎて燃えた
そして小鳩ちゃん、おじさんからまさかの令呪ゲット キャスター共々ここから挽回なるか?

195名無しさん:2013/02/10(日) 02:08:13 ID:NSc5nHfc0
とにもかくにも、投下乙です

196名無しさん:2013/02/10(日) 02:46:53 ID:GvC8oBDY0
投下乙です
北斗の兄弟、決着か…
このロワでは円卓勢に並んで因縁深いキャラだから感慨もひとしお

ただ、トキの宝具である北斗有情断迅拳をラオウが秘孔を突くだけで解除できるのはどうでしょうか
昨日議論されたリインフォースの問題もですが、宝具を宝具ではない手段で簡単に凌駕できるとなれば宝具の優位性が崩壊しますし

197名無しさん:2013/02/10(日) 02:52:06 ID:bH7zBZn60
まぁ、確かに宝具を簡単に解除してしまっているが
スキル:北斗神拳で「秘孔を突かれた場合、秘孔を解く術が無ければ〜」って記述もあったよね
逆を言えば「秘孔を解く術さえあれば北斗神拳の技は解除出来る」ってことじゃあないか?
秘孔を突かれた場合、秘孔を再び突けば無効化できるのは原作でもあったし
そのへんは宝具とはいえ北斗神拳の特性ってことでいいんじゃあないかな…どっちにせよもう死んだキャラのことだしね

198名無しさん:2013/02/10(日) 02:56:19 ID:NSc5nHfc0
そこは聖杯戦争で宝具化した事の弊害かな太公望のアレでも簡単に解除できちゃうだろうしね
ラオウの北斗神拳ランクが高いのも一因だと思うけど決定打はおじさんの魔力不足だと思う…

199名無しさん:2013/02/10(日) 02:59:02 ID:GvC8oBDY0
>>197
それサーヴァントに対する記述だし、対魔力どころか魔術師ですらない慎二が受けたらその瞬間爆発してもおかしくないかなって
>>198
令呪

200名無しさん:2013/02/10(日) 07:57:26 ID:AJN1RK9s0
原作でもモヒカンとか死ぬまで結構気持ち良さそうにアヘアヘしてたぞw

201名無しさん:2013/02/10(日) 11:43:40 ID:bH7zBZn60
>>200
苦痛どころか天国を感じさせながら爆死させる技だしなw
ワカメが暫くアヘアヘしてるのもある意味原作通りというか…
だから秘孔を解く猶予もあるだろうし、宝具とはいえ北斗神拳の括りだしなぁ 対魔力と秘孔突く以外でまともに防ぐ術がないとなれば十分じゃないか?

202名無しさん:2013/02/10(日) 11:55:46 ID:QUXRWO6kO
投下乙!おじさん組お疲れ!
個人的にはアサシンの宝具が解除されたことよりも手足がネジ曲がったことによるダメージがワカメに残ってないかの方が気になる
(元々解除されたらノーダメって性質の技なんだったらごめん)
まあそれも間桐邸崩壊が寺まで聞こえたかどうかも含めて後からフォローできる範囲だと思うけど

203名無しさん:2013/02/10(日) 11:56:04 ID:b.biXN7A0
でも鯖で低ランクとはいえ対魔力持ちのランスロットの腕が受けて即吹っ飛んでるね

204 ◆FTrPA9Zlak:2013/02/10(日) 13:10:21 ID:itMXuujs0
感想ご意見ありがとうございます
令呪の件に関しては、調べたら他者への移譲は本人の意思さえ伴えば簡単だという情報があったので移動させていただきました
ワカメとランスロットの、秘孔突かれた反応の比較については失念していたのでそのパートは少し修正しておきます

205 ◆FTrPA9Zlak:2013/02/10(日) 13:15:12 ID:itMXuujs0
あと忘れてましたが、分割は>>185からでお願いします

206名無しさん:2013/02/10(日) 13:34:29 ID:bH7zBZn60
>>20
了解です 一応wikiに収録の準備しておきました

とりあえず先に死亡者名鑑におじさんとトキ収録完了
序盤なだけに無念の死を遂げるキャラが多かったし、トキもおじさんの不幸体質に飲まれるかと思ったが
超えられなかったとはいえラオウと戦えただけ幸せだったな 兄との決戦がやはり一番いい最期になった
そうゆうわけで評価の部分には最も印象的だった台詞を

207名無しさん:2013/02/10(日) 13:42:36 ID:bH7zBZn60
>>205のミスです

208名無しさん:2013/02/10(日) 13:46:41 ID:cEEe9LGs0
勘違いかもしれないんだがワカメの一人称って一貫して「僕」じゃなかったっけ?

209名無しさん:2013/02/10(日) 13:50:36 ID:bH7zBZn60
多分「僕」だったよう…な?
まぁその辺の単純なミスは収録時にぼちぼち修正する方向で行こうかな

210名無しさん:2013/02/10(日) 14:32:11 ID:VXdINFmI0
12時間越える前にマスター8人死亡で残り三分の二程度になったかな
二日目があるかどうかギリギリだねこれ

211名無しさん:2013/02/10(日) 14:48:58 ID:QMAL5nCY0
やっぱまだ修正来てない内は来てない作品の登場キャラクターの予約取っとくのって不味いっすかね?
やりたいネタがあるので確保だけでもしときたいのですが

212名無しさん:2013/02/10(日) 14:54:29 ID:bH7zBZn60
序盤から結構な死者ラッシュだよなw
もう15人(+平行世界の大統領)死んでるんだよね 7組とマスター1人脱落で、残り18組+鯖1人…
案外好戦的なチームが多いというか何というか 脱落者の内の5組はFE組とサブラクのスコア荒稼ぎだけどねw
セオリー通りの聖杯戦争なら昼間の争いは滅多に無いだろうけど
ここはムーンセルだから昼間にも結構な戦いが起こりそうというかなんというか…ホント2日目に到達出来るのだろうかw

213名無しさん:2013/02/10(日) 14:57:10 ID:gOEIMENU0
あぁ〜〜別にいいんじゃあないッすかねェェ?

214名無しさん:2013/02/10(日) 14:57:35 ID:bH7zBZn60
>>211
ワカメ軍団のキャラだよね
一応もうちょっと待つべきじゃないかな?修正してる氏がオッケーしたら別だけどね

215名無しさん:2013/02/10(日) 14:58:37 ID:bH7zBZn60
まぁでも、大丈夫って意見が多いなら一応の予約確保しといてもいいかも?

216名無しさん:2013/02/10(日) 14:59:07 ID:QMAL5nCY0
>>214
わかりましたー

217名無しさん:2013/02/10(日) 15:07:33 ID:bH7zBZn60
ラオウにそろそろそこはかとなく死亡フラグを感じる
トキとの再会と決着っていう大きなフラグを一気に消費
その戦闘で割と大きなダメージと消耗を負ってる
小鳩がおじさんの令呪をゲットしてもう1画使える状況になってる
んで出夢&サブラクの襲撃が迫ってる
何か嫌な予感を感じるでぇ…

218名無しさん:2013/02/10(日) 16:00:32 ID:VXdINFmI0
>>217
ワカメはバブル崩壊起こすまでがワカメです(キリッ

219名無しさん:2013/02/10(日) 16:00:49 ID:QUXRWO6kO
マスターの方は小鳩をアレしてキャスターを手に入れた頃から「まあワカメだしいずれ死ぬんだろうけど」みたいに言われてた気が

220名無しさん:2013/02/10(日) 16:06:52 ID:bH7zBZn60
ワカメは最初から死亡フラグがプンプン漂ってた
ラオウはそろそろ死亡フラグが漂ってきた
でもまぁ案外気合いと幸運で2日目前後まで生き延びるかもしれないけどね!

221名無しさん:2013/02/10(日) 16:51:53 ID:qfDbjhxs0
今一番ズガンされかねないのはリインちゃん

222名無しさん:2013/02/10(日) 16:57:00 ID:VXdINFmI0
>>221
展開次第では鉄壁(遊戯王的な意味で)になれるかもよ?
その代わり犠牲として誰か一人が魔法少女になるけど

223 ◆FTrPA9Zlak:2013/02/10(日) 17:00:03 ID:itMXuujs0
ワカメの一人称と有情断迅拳の件の修正完了したのでwikiに登録してきました
スロットさんがワカメの盾になったという形で、ワカメはその余波を受けたということにしました
ただ、そのせいでスロットさんのダメージが増えてしまっているので確認お願いします

224 ◆ZQ33Nv6woo:2013/02/10(日) 17:15:18 ID:QMAL5nCY0
それでは修正も来たようなので

間桐慎二&ライダー(ラオウ)
羽瀬川小鳩&キャスター(キンブリー)
バーサーカー(ランスロット)
匂宮出夢&アサシン(サブラク)  予約させてください

225 ◆ZQ33Nv6woo:2013/02/10(日) 17:19:36 ID:QMAL5nCY0
とと、忘れてた。
予約に枢木スザクを追加します

226名無しさん:2013/02/10(日) 17:33:24 ID:bH7zBZn60
>>221
正直リインちゃんと名無のコンビ結構好きになってきたからズガンになってほしくないわ…
生きて欲しいわ…

>>223
修正乙です 謎スロさん、ダメージよく負うなぁ

>>224
きたあああああああ
トキとおじさんの次はあのサブラクと最凶のマスター、ワカメ組忙しいなww

227名無しさん:2013/02/10(日) 17:39:14 ID:VXdINFmI0
今気付いたけどおじさんは◆FTrPA9Zlak氏がほとんど書いたのか
不幸すぎて他の書き手が書けなくなるという異常事態だったかな、おじさんェ…

また新しい書き手さんが来たね、書き手さんの入れ替わりが起こりつつある?
ワカメ、死亡確認!

228名無しさん:2013/02/10(日) 17:42:07 ID:bH7zBZn60
>>227
◆FTrPA9Zlak氏はむしろトキvsラオウに熱意を感じたなw
北斗兄弟の再会フラグと決戦を消化してくれたのは嬉しい
あとここのロワって常駐よりもふらりと現れる人が多いイメージ、いやまぁ常駐さんも何人かいるけど

そしてワカメの明日や如何に!?

229名無しさん:2013/02/10(日) 17:45:05 ID:sZ8BDo8I0
振り返ると、残りの参加者的にギャグやれそうなのは名無組だけになりそうだなぁ……。
他の奴等シリアス過ぎるぞ……。

230名無しさん:2013/02/10(日) 17:50:20 ID:bH7zBZn60
「正月に新しいパンツを履いたような清々しい気分」とか言っちゃうDIO様とか
缶ビールを一気飲みして喜んでいるような大統領といい、ジョジョ勢はある意味ギャグだろ…

231名無しさん:2013/02/10(日) 18:03:25 ID:VXdINFmI0
>>229
シリアスなのにスレに草が生えまくるさやかちゃん組を忘れてませんか

232名無しさん:2013/02/10(日) 18:31:47 ID:9WIDbjxYO
むしろ周りの覚悟完了済みな連中からすると未だにスタンスも定まってないまどかなんかは
何しにきたの?って話になっちゃうんじゃね

今んとこ一般ピーポーすぎて見つかる気配ないけどw

233名無しさん:2013/02/10(日) 18:39:58 ID:uPcVBdeQO
まどかに気付きそうなのって知り合いのさやかと、一度接触した詩音なんだよな。

234名無しさん:2013/02/10(日) 18:42:21 ID:bH7zBZn60
まどっちは未だに対主催でもなくマーダーでもなく中途半端なんだよなw
ホント鯖がDIO様じゃなかったらただ隠れて籠ってるだけのチームになってた可能性も…
こればっかしはホントさっさと腹括らないとDIO様に切られてしまう
原作の終盤でも見せたようなあの決断力をここでは発揮出来るのだろうか…

>>231
さやかちゃん組は…ま、まぁ…うん(震え声)

235名無しさん:2013/02/10(日) 18:45:29 ID:AEPPSW1A0
>>231
…うん、まあ、さやかちゃんだし

236名無しさん:2013/02/10(日) 18:51:23 ID:QUXRWO6kO
さやかちゃんは…まあ…
現状だと絶望させる為に生かされてるようなもんだし

237名無しさん:2013/02/10(日) 19:17:28 ID:bH7zBZn60
なんでまだ死んでもいないのにこんな葬式みたいなムードなんだろうねさやかちゃん…

238名無しさん:2013/02/10(日) 19:22:05 ID:uPcVBdeQO
死ぬまでが葬式だからだよ。

239名無しさん:2013/02/10(日) 19:36:10 ID:yJgYWmVAO
詩音ちゃんマジとばっちり
一応スタンス的にはマーダーなのにそれらしい事を何一つさせてもらえないどころかセリスに「ギブアップせい!」とか言われちゃう
詩音のここまでの行動だけ聞いてマーダーだと思うやつが何人いるだろう

240名無しさん:2013/02/10(日) 19:40:44 ID:VXdINFmI0
>>239
不思議だろ…他のマーダーと違って、特に作戦ミス等があったわけじゃないんだぜ…
最初からここまで全部不幸と踊っちまった結果なんだぜ…

241名無しさん:2013/02/10(日) 19:42:35 ID:VXdINFmI0
連レス失礼
>>237
死んだらお祭りムードに突入するんじゃないかな、オクタヴィア的に考えて

242名無しさん:2013/02/10(日) 19:45:04 ID:bH7zBZn60
ここまで運というか実力というか
何か色々と見離されたチームはいないな…いやまぁ狂王から逃げ切れたことが唯一の幸運…なのか?
でもオクタヴィアちゃん爆誕したら多分スレが大興奮になるだろうな

243名無しさん:2013/02/10(日) 20:05:36 ID:7AstXfX6O
流石原作でガチ葬式開かれた娘は格が違った

つかワカメ組はまぁ連戦になるわな、あんな大爆発の後じゃw

244名無しさん:2013/02/10(日) 21:08:03 ID:duGZwekE0
相変わらずスレの消費が激しいロワだなここw
物凄く進んでるから投下されたのかと思いきや、まさか雑談で50レス以上埋まってるとは。

245名無しさん:2013/02/10(日) 21:22:28 ID:bH7zBZn60
一応投下はされてるけどねw
というか投下直後になると住民が集まるからか雑談が伸びまくるww

246名無しさん:2013/02/10(日) 21:45:19 ID:VXdINFmI0
>>244
雑談だっていいじゃない

トキワ荘に動きがあったのかな?前スレが全部倉庫行きになってるね
拾っておきたい小ネタは用語集や個別ページに纏めておいたほうがいいと思うな
過去スレにリンクしてあるやつなんてコマンドーのアレしかないと思うけど

247名無しさん:2013/02/10(日) 21:53:10 ID:bH7zBZn60
まぁ一頻りめぼしいネタは既に住民がほぼ拾って用語集に収録されてる気がするなw
コマンドーのアレは流石にそのまんまwikiに載せるのもなんだしね(?)

248名無しさん:2013/02/11(月) 02:48:43 ID:HO5WZWbI0
>>232
か、勘違いしないでよね、まどかはDIOに眠らされてただけなんだから///
むしろ半日せずにスタンス決定ヒートエンドしまくる他参加者がおかしい
まどか 時系列だとずっと寝続けてるんじゃないのこの娘?いやそれが正しいんだけど
詩音 覚悟を決める云々の前に運が悪すぎて考える暇すらなかった
小鳩 考えるより先にワカメのせいで考えられなくなったよ!

249名無しさん:2013/02/11(月) 03:07:32 ID:HhHHIGw60
>>248
他の参加者は願い叶えるために勝ち残る覚悟決めてる奴らか
殺し合への反抗の意志をしっかり見せている奴らなんだよなw
まどっちは出だしの時点で迷いまくってたし、敵襲のストレスですぐ眠っちゃったし
もはやスタンス決める時間すら与えられていないような…

小鳩ちゃんも開始直後に戦いに怯えてたし実際同じなんだろうけど
「小鳩は考えることをやめた」状態になってもはや終わってる…
詩音は割と覚悟はあったけど運の無さと鯖の弱さ&薄幸ぶりが祟った感が否めないよ!

250名無しさん:2013/02/11(月) 11:46:42 ID:IU9C/fcE0
というかまどかからしたら「寝て起きたら他の参加者の殆どが覚悟完了してた。何を(ry」っていう話だよな
初期の段階では剣司とか雪輝みたいに迷ってる参加者が結構いたわけだし
まあ方針を決められなかった陣営ほど早く淘汰されていってることを思えばまどかは相当運良い方だよ

251名無しさん:2013/02/11(月) 13:29:16 ID:HhHHIGw60
まどっちが淘汰されなかった最大の要因は殆ど拠点から動いてないことな気がするw
ベッドで寝てるか、ホテルに止まって寝てるかくらいだしw
部屋に一度侵入してきたのが詩音だったおかげで助けられたのも幸運だな

252名無しさん:2013/02/11(月) 13:58:15 ID:HO5WZWbI0
DIOの策としてマスターの秘匿に成功したのが大きいなー本人のステルス性能と相俟って凄まじい影の薄さを期待できる
DIOが特大地雷踏みに行ったのと、まどかの凶悪な因果律が怖いかな…
ロワだから詩音はまどかと接触できたけど、実際の聖杯戦争ではまどかが気付かないうちに戦争終わりそうだよね

聖杯戦争参加したと思って布団で寝てたら戦争終わってた 何を言ってるかわからないと思うけど私もよくわからない

253名無しさん:2013/02/11(月) 14:03:34 ID:HhHHIGw60
正直DIO様はまどっちが寝ている時間、丁度活動時間の夜に行動して
敵を始末したり肉の芽で洗脳するのが無難だけど一番いい気がするw
実際ここまでまどっちの存在に気付いてるの、詩音だけだし(アシュヒト組に気付かれかけたけど早々に脱落したから…)
あの地味っぷりとずっと籠ってるおかげでほぼ他の参加者から気付かれていないし…
ただ長期戦になればなるほど遭遇フラグが増すわけで………マーダーに見つかったら即終わりそう

254名無しさん:2013/02/11(月) 15:18:02 ID:IU9C/fcE0
回転王「やあ」

255名無しさん:2013/02/11(月) 15:31:53 ID:HO5WZWbI0
回転王まどっちに気付けるかなぁ…
NPCに道尋ねたらまどっちでした程度の確立でなら遭遇できるかも
ただしそれがマスターと気付けるかどうかは別問題だよね

256名無しさん:2013/02/11(月) 16:27:15 ID:GxTasXwoO
ところがどっこい今DIO様はホテルに戻ろうとしてる
ゼフィール組は最後に登場したのが早朝の時間帯だから多分2時間もあれば麻婆に話し聞いて戻ってこれる
まどっちは闘志Zeroだからメダリオンに引っ掛からないけどDIO様は危ない
そしてケリィ組が爆薬満載した車で新都に向かってくるかもしれない

あれ?実はまどっちにも死亡フラグ立ってる?

257名無しさん:2013/02/11(月) 16:50:23 ID:nYVbQCc.0
ケリィ「数百mからの自由落下。どんな工房だろうと防ぐ術はない」
DIO「ザ・ワールド!!時を止めろッ!!今すぐだぁぁぁっ!!!」

258名無しさん:2013/02/11(月) 16:53:52 ID:Wp0rzXZ6O
キュゥべえって、衛宮の目指す正義の味方だな。
感情を持たず、大(宇宙)の為に小(命)を切り捨てる。

259名無しさん:2013/02/11(月) 16:56:06 ID:IU9C/fcE0
太陽「でもそれって(吸血鬼的な意味で)根本的な解決にはなりませんよね?」

260名無しさん:2013/02/11(月) 17:12:51 ID:HO5WZWbI0
>>258
さぁ僕と契約して、魔法少女になってよ!

261名無しさん:2013/02/11(月) 17:59:12 ID:oOboLP.sO
>>260
エミヤ「俺は男だよ!」

262名無しさん:2013/02/11(月) 18:04:06 ID:A4sfV44I0
>>261
ジェリドが湧くぞw

263名無しさん:2013/02/11(月) 18:21:30 ID:HhHHIGw60
ライダー 真名:カミーユ・ビダン
宝具『スイカバー』ランクB 対城宝具

まどっちの死亡フラグ
①FE組(同じホテルに滞在中・DIO様の闘気でホテルにマスターの存在を気付かれる可能性あり)
②ケリィ組(安定のビル爆破)

264名無しさん:2013/02/11(月) 21:51:42 ID:IU9C/fcE0
③市長組(市長がホテルに部下を配置してる可能性大、展開次第で大統領を呼び戻す可能性あり)

265名無しさん:2013/02/11(月) 21:54:30 ID:HhHHIGw60
結論:頃合いを伺ってホテルから離れろまどっち

266名無しさん:2013/02/11(月) 21:59:50 ID:r.SKZ38E0
放っといたら朝食にフラフラどこか行きそうだけどね
戻ってきたらホテルなくなってるかもしれないけど

267名無しさん:2013/02/11(月) 22:37:32 ID:HhHHIGw60
まぁ正直あの子って鯖で例えるなら
ほぼ全ステータスEランク相当だけど幸運だけなんかEXランクいってそうなので
ちょっとした行動でたまたま危機を脱したり出来そうw

DIO様は活発だから結構出番多いけど、そろそろまどっち視点の話も来てほしいな

268名無しさん:2013/02/11(月) 22:47:16 ID:r.SKZ38E0
鹿目まどかはホテルの一室にて眠り続けていた。

「Zzzz…Zzzz…ティヒッ…ウェヒヒヒ……バリアー…ヘイキダモーン…Zzzz…」


あー…えっと…起きるまで待とう(迫真)

269名無しさん:2013/02/11(月) 23:38:02 ID:fU.IeF5M0
というか夜通し戦ってるやつらがおかしいんであって
まどっちの生活が普通なんだよなぁ…

270名無しさん:2013/02/12(火) 00:07:20 ID:LYIjEc1EO
>>269
ロワではよくあること。何で大人や人外はおろか普通の学生まで完徹余裕なんだとか考えたらキリがない

271名無しさん:2013/02/12(火) 00:15:12 ID:GuChb7ms0
正直ここまで積極的にバカスカやるメリットないですよね?
数日は大人しく潜ってるのがセオリーなんじゃないのかな…
なんで参加者の三分の一が脱落してるのか正直理解に苦しむのです

半分殺ったのアシュゼフィだけど

272名無しさん:2013/02/12(火) 00:21:59 ID:tLjHKEzg0
>>267
そんな虎がいたような気がする

273名無しさん:2013/02/12(火) 00:27:51 ID:lJbPPHbI0
>>271
そりゃ原作のfateシリーズ知ってる俺らはそう思うけどこの企画に参加してる殆どのマスターは何もわからない手探り状態だもんな
でもってそういうセオリーわからない連中が暴れ始めると自然にfate出典のマスターもそれに巻き込まれる
それ以前に25組も参加してればエンカウント率だって跳ね上がるさ
士郎も前回のセオリーは通用しないって言ってたよ

>>270
ここから完徹のツケが回ってくるとかいう展開があったら面白いよね

274名無しさん:2013/02/12(火) 00:43:52 ID:GuChb7ms0
まあ、キャスターだけはゲーム開始からダッシュで寺を目指さなきゃいけないんだけどねぇ。マジでガン不利だな。
あとは爆弾などの破壊工作する組が若干動かなきゃいけない程度かな。
他のマスターは最初の一日くらいニートしたって問題ないのに…
もしかしてアシュヒトは丸一日使って戦闘よりケイタイデンワ云々の説明書と睨めっこしてれば問題なかったんじゃ?
終盤になってまどか以外疲労困憊していても知らんぞなもし…

275名無しさん:2013/02/12(火) 01:12:24 ID:0qmCAO1M0
逆に言うと初日の深夜に殆どのチームが大暴れしたんだから
昼間は案外休息も兼ねて大人しくなるのでは…
まぁパロロワ的に言うと序盤に一切戦わずにのんびりやってるのも面白くないしねw
少しくらい戦闘やってサーヴァントの実力や能力を見てみたいだろうし

聖杯戦争のセオリーを知らない参加者が大半ってこともあるだろうしな
「電脳世界での殺し合い」っていうくらいの気持ちかもしれないし
少しでも減らしといて優勝に近づきたいんじゃあないか…
多分どの参加者も長期戦にするつもりはあんまりないだろうしね

276名無しさん:2013/02/12(火) 01:21:40 ID:0qmCAO1M0
たまに思うんだけど
二次聖杯したらばに雑談スレ設けるとかしてもいいのでは…
本スレがSS投下よりも雑談でレスがガンガン消費されるのもなんだしw

277名無しさん:2013/02/12(火) 01:36:34 ID:GZI84du6O
確かにそうかも
今見たらこのスレも建ってからまだ10日ぐらいなのにもう四分の一以上埋まってる
流石に雑談に花を咲かせすぎたかもしれんね

278名無しさん:2013/02/12(火) 01:51:58 ID:0qmCAO1M0
もう300レス到達しそうだしねw流石にこれではスレが消費されまくってしまう
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/15853/1360601456/
とりあえず立てておいた

279名無しさん:2013/02/12(火) 13:35:26 ID:e3UYEYMc0
…まぁ、雑談も必要なスパイスだとは思うんだけど
掲示板に負荷をかけるなら専用雑談スレ設置も仕方がないか

280名無しさん:2013/02/12(火) 17:07:25 ID:Ly8tVVR20
>>268
おいちょっと待てそこのウェヒヒ蜂wwww

281 ◆2shK8TpqBI:2013/02/13(水) 00:37:56 ID:4JFVG.E20
すみません予約の延長をお願いします。

282名無しさん:2013/02/13(水) 01:15:48 ID:jO9BKCnM0
>>281
了解、wikiにて延長しておきました

283 ◆wYNGIse9i6:2013/02/14(木) 11:17:00 ID:8if/.kE.0
延長します

284絆物語  ◆2shK8TpqBI:2013/02/16(土) 05:44:57 ID:KuN4LIb20
投下します

285絆物語  ◆2shK8TpqBI:2013/02/16(土) 05:52:33 ID:KuN4LIb20


 「■■■・・・」

 「どうしたランサー?」

 南の方角へ進路をとっていた悠は、実体化したランサーを怪訝な顔で見た、しかしランサーは
そんな声に見向きもせず、ただ前方を睨むと、全力で走り去っていった。
 最初は訝しげに見ていた悠だったが、ああ、と納得し。
 
 「他の参加者がいるのか。」
 
 狂化の影響で索敵のルーンを始めとした幾つかのルーン魔術は使えなくなったが、他のサーウァント
を探知する力は健在であった。走り去ったランサーを見た悠はいつも通りの表情で

 「しょうがないな。」

 まるで手のかかる家族を相手にするような微笑ましい気持ちになりながらも見送って、
パスを辿るように自分も後を追った。


その顔はいつも通りの、笑顔だった。




 
最凶のサーウァント、アシュナードとの戦闘を終えた花村たちは、休める場所を探して市街地に来ていた。
特に名無の負傷は大きく、リインフォースの魔術で傷は治ったが、失った血液までは戻せなかった。
また花村自身も、一人でアシュナードのマスター、ゼフィールを相手に(防戦一方だったとはいえ)一人で相手
していたため疲労が大きく、(アシュナード相手にそれだけですんで御の字なのだが)一度休息を取ろうと
いう意見で、近くのレストランで食事を取った。
一応は怪我人だというのに、まるで意に介さないとばかりに次から次へと注文する名無に花村は呆れながら
見ていた。名無曰く
 「せっかく金使い放題なのに、食べなきゃ損ジャン!」
と、小市民ぶりを発揮した。(アレックスとリインフォースも実体化し食事を取っていた。
僅かだが魔力が補給できるらしい)
腹ごしらえと休息をとった一同はレストランを後にし、装備を調えるため店を回った。
携帯食料、医薬品、予備の服にいざという時の連絡手段で名無の分の携帯電話。その他アレックスやリインフォース
のアドバイスで、こういった時に役に立つ物を何点か購入し、そしてホームセンターで目的のものを購入した。

286絆物語  ◆2shK8TpqBI:2013/02/16(土) 05:54:43 ID:KuN4LIb20
「なんだソレ?スパナ?」

 「ああ、ペルソナだけじゃいざという時不安だからな。」

そういいながらクルクルとペン回しのように器用に扱ってみせた。

(ほんとはクナイとかの方がよかったんだけど、さすがにだいだらみたいな店はないか・・・)


というかあの店は営業して大丈夫なんだろうか?刀剣類はともかく銃まで置いてあるのだが。

 「マスター、準備が出来たぞ。」

 「わかった!今行く!」

 ワゴン車に乗ったアレックスの下へ集まる。かなりの量になった荷物をそのまま運ぶには移動の邪魔に
なるので、アレックスに金を渡し車を買ってきてもらった。
アレックスには騎乗スキルは無いが、生前の経験を活かし、普通に運転する分には何の問題も無かった。
(さすがに乗ったことの無いものや動物は不可能らしいが)

 「おい・・・」

 「なんだ・・?」

 運転するアレックスにリインフォースはおずおずと声をかけた。

287絆物語  ◆2shK8TpqBI:2013/02/16(土) 05:55:22 ID:KuN4LIb20
 
 「その、さっきは悪かったな・・。」
 
 アシュナードの恐怖に呑まれ、あやうく死にかけた自分を身を挺して庇ったおかげで名無の救援が間に合ったのだ。
もしあの時庇ってもらえなければ、自分と名無の聖杯戦争は終わってしまっていただろう。
バツの悪そうなリインフォースを横目でちらりとだけみて、

 「気にするな。あそこでお前がやられたら俺もどうなっていたかわからん。それに名無のおかげであいつとの
 戦闘を終わらせることができた。むしろ俺の方こそ礼をいわねばならん。」

 実際もしあのままリインフォースが死んでしまえば、ただでさえ強力なサーウァントであるアシュナードに加え
宝具らしき物を持っていた敵のマスターもいたのだ。そうなれば逃げることさえ難しくなる。
自分はまったく気にしてないという風なアレックスだったが、それでも自分では納得できないのか、何か言おうと
口を開けたとき

「なあ花村、このメイド服の子可愛くないか?胸もでかいし。」
「いやーそっちの子よりこのナース服の女性だろ。くびれといい、脚線美もいいし。顔だってかわいい」

 マスター二人が後部座席でエロ本を読んで感想を言い合っていた。
アレックスは何も言わずに運転を続け、リインフォースは頬を引きつらせる。
そんな二人の様子に気づかず、さらに会話はヒートアップしていく。

288絆物語  ◆2shK8TpqBI:2013/02/16(土) 05:56:37 ID:KuN4LIb20
 
 「分かってねえよ花村!胸にはロマンが詰まっているんだよ!ただ大きければ良いと言うんじゃない。
形が悪ければ台無しになるけど形だけでもだめなんだ!その二つのバランスは芸術の領域なんだ!小宇宙なんだ!」
 「胸にロマンが詰まっているのは認める、だけど名無、胸だけじゃ駄目なんだ!全体のバランスが
悪ければいくら胸が完璧でも台無しなんだ!もっと他の部分にも目を向けないともったいないぜ!」 
 「他の部分にも目を向けろって言うけど花村さっきからナース物しか見てないぜ!そういうなら
他のジャンルにも目を向けるべきだ!」
 「いや誤解だ!確かにメイドも巫女さんも素晴らしいがあれはエロというより萌えの領域で――」
 「 花村の馬鹿チン!萌えというのは見る側の魂の在りよう!言ってみればあらゆるものは萌え
に繋がりひいてはエロに繋がるんだ!」
 「―――――名無もいろいろ間違ってると――――」
 「――萌え―――エロ―――もえ―――」
 「――――エロ―――もえ―――エロエロ―――」
 「もえ―――えろ?―――燃え―――もえもえ―――」

延延と続くその会話を聞き、運転席の男が会話に割り込んだ。

 「マスター、常に集中しろとまでは言わないがもう少し緊張感を持て。」
 「へいへい、わかったよ。」

 エロ本を名無に返し、背もたれに体重を預ける。外の風景を眺めながら、花村はふと声をかけた。

289絆物語  ◆2shK8TpqBI:2013/02/16(土) 05:58:01 ID:KuN4LIb20
 「そういや学校の場所わかんのか?」

 「学校や教会の場所など重要施設の場所は、ムーンセルにより頭に入っている。」

 なるほど、確かに考えてみれば監査役の場所と情報を得られる重要施設の情報はマスターに共有
されなければフェアでは無いだろう。そう納得し窓の外を眺めているとアレックスが先ほどとは違い
緊張した声で全員に声をかけた。

 「敵のサーウァントだ、こちらにまっすぐ向かってきている。」

 リインフォースも気づいたのかいつでも戦えるよう準備をし、マスター達に指示を仰いだ。

 「どうする?車から降りて戦うか?それとも進路を変えにげるか?」

 アレックスの傷も塞がっているし自分も無傷だ。マスター達の怪我と疲労も、休息を取ったことにより
全快とまではいかなくても戦闘には支障はない。戦おうと思えばいけるだろう。
後部座席を振り返ったリインフォースが見たものは

「いや〜!!またさっきみたいなやばいオッサンみたいのがくるのおおおお!!あ、でも剣持った
金髪美少女だったら愛でられる!それか黒髪ロングのお姉さん系でもよし!でもやっぱこわいいいい!」

 一人怯えたり締まりの無い顔で妄想したりまた怖がったりを繰り返す自分のマスターだった。
さっきの感動を返してほしい。少しでもときめいた自分がバカみたいで・・・

(って違う!さっきのあれはノーカンだ!ちょっとかっこいいと思ったのも気のせいで・・って
違う!そんなこと考えてるときじゃない!)

 ぶんぶんと頭を振り同盟者の少年を見る。少し考える表情をしたがすぐに自身の相棒に向き

290絆物語  ◆2shK8TpqBI:2013/02/16(土) 05:59:58 ID:KuN4LIb20
 「迎え撃つぞアレックス!、だけど倒すことより俺たちが生き残ること優先だ。危なくなったら
すぐに退く、全員の安全を一番に考えて動こう。」
 
 敵を倒すより全員の安全を優先する考えにいたったのは、かつて特捜隊で培った経験からだった。
多くのシャドウが徘徊するダンジョンでは、ペース配分を間違えたり装備の補給を怠った事により
ピンチに陥る。そのためよく考えて行動し、準備を怠ってはならないのだ。(もっともその辺は
リーダーにほぼまかせっきりだったのだが)

 (こういうとき相棒の有難味がよくわかるな・・・あいつみたいに頭よければもっといいアイディア
出すんだろうけど、俺じゃこれが精一杯の最善の行動だ)

 苦笑しつつ先ほど買ったスパナを握りしめる。

 「了解した。どの道もう逃げ切れん。この速度、ランサーかライダーといったところか・・・」

 車から降りた一同が目にしたのは、こちらにまっすぐ突っ込んでくるのは、青いタイツのような服に赤い
槍を構えた騎士だった。その表情は狂気に満ちており、尋常ならざる様子だった。

いつでもブリューナグの槍を放てるよう前方に手をかざすアレックスと臨戦態勢をとるリインフォース
花村、名無も槍王、ジライヤを発動させ身構える。

 「■■■■■■■■!」

 花村の方へ真っ直ぐ突っ込んでくるサーウァントに、アレックスが迎え撃った。他の三人とは違い、まるで
何か花村に訴えかけるかのように見るが、すぐにアレックスの方へ攻撃を繰り出した。
 紅き魔槍で刺突を繰り出す襲撃者に対し、アレックスは徒手空拳で応戦する。
 リインフォースも魔力弾を撃ちだすが、あるものは槍で打ち落とし、またあるものはその敏捷さでかわしていった。

 
 「バーサーカーのサーウァント?でもこの対魔力、三騎士クラス・・・じゃああれはランサー?
無理やり狂化させられてるのか?」

 冷静に相手の能力を分析しつつ心の中で舌打ちをする、自分の援護はあまりこの場面では役に立たないだろう。
 相手の対魔力はおそらくCランク、それなら大規模な魔術を防ぐことは出来ないのでまったく役に立たないわけではないが、
そうすればアレックスをも巻き込んでしまう。
 なら自分はマスター達の護衛に回る。それに自分がサポートできずとも、自分より立場的にも能力的にも
相応しい人間がここにはいるのだ。

 
「いっくぜえ!ジライヤ、“マハスカクジャ”!」

 ジライヤの魔術によりアレックスの敏捷値がB+からA+へと底上げされた。これによりステータスの差は
ほぼ無くなったといっていいだろう。そのスピードに防戦だったアレックスはマスターの援護により戦況
も盛り返す。相手のサーウァントは、目の前の男が急に速くなったことに驚いた表情をしたが、
すぐにまた目の前の男を殺そうと突撃を繰り返した。 


 二人のサーウァントの戦闘の影響を受けないギリギリの位置でリインフォースは防御結界を張る。
 目の前のサーウァントのマスターに狙われないようにする配慮であったしアサシンを警戒しての行動だった。
 話に聞いたアサシンの攻撃がどの程度のランクなのかは分からないが、完全に防ぐことは敵わずとも、即死
することは無い様にし、生き残って全力でマスター二人を連れて逃げるための保険だった。

291絆物語  ◆2shK8TpqBI:2013/02/16(土) 06:03:03 ID:KuN4LIb20
 
 「■■■■■■!!」
 「っふ!」

 赤い槍が心臓を貫かんと繰り出せば、ARM化した腕で軌道を逸らす。反撃とばかりに拳を繰り出すが、顔を
傾ける事で回避した。神代の槍兵が、魔槍を薙ぎ、振るい、突けば、近代の槍兵が鋼鉄の腕で弾き、逸らし、受け流す。
二人のサーウァントは一進一退の攻防を繰り広げていたが、徐々に戦局が傾いてくる。

「■■■■■■■■!?]

 目の前のサーウァントはいくら魔槍で傷つけようが傷が再生し、何事も無かったかのように反撃してくるのだ。
回復阻害の呪いをも超える再生能力を持つアレックスに対し、ダメージが蓄積されるランサーだが、狂化による
影響と、戦闘続行のスキルにより、なんとか持ちこたえていた。しかしこのままでは危険だと本能で判断したのか、
一旦距離を取ろうと後ろに跳躍する。しかし,そうさせまいとアレックスが追撃をかける。
苦し紛れの一突きを最低限の動作でかわし、がら空きになった身体にカウンターを叩きつける。
なおも攻撃しようと大降りな攻撃を仕掛けようとするが、それよりも速くアレックスの拳がランサーの顔面を殴り飛ばし、
地面にバウンドしたランサーの身体を踏みつけて身動きを封じ、

 「一応死なない程度には加減してやる。」

 そう言って両掌に魔力を集中し、荷電粒子を形成する。通称“ブリューナクの槍”と呼ばれる荷電粒子砲が
ランサーの背面に直撃した。

「■■■■■■■■■■!!?」

 声にならない叫びを上げたランサーは、何度か痙攣をすると、やがて力を失い、バタリと両手足を倒した。




 もしも令呪によって狂化されず、純粋に己の技能だけで戦っていたら、ここまで一方的な戦いにはならなかっただろう。
磨き上げられた槍術と神代のルーン魔術を使えば、互角の試合に持ち込めていたであろう。
しかしここにいるのは、誇り高きアイルランドの光の御子ではなく、吐き気を催す邪悪DIOの策略により理性と誇り、
そして何より、マスターを操つられ自分たちの絆を汚された、一人の悲しい騎士だった。



 油断無くランサーを睨むアレックスと、少し離れた距離で様子を窺う花村たち。
一応意識はあるようだが、これだけ痛めつければ自分たちを倒すことは不可能だろうと、念のため何が起ころうと
対処できるように注意し、花村たちに合図を送る。
合図を受けたマスター達は、アレックスの近くに集まると労いの言葉をかける。

 「さんきゅーアレックス、無事でよかったぜ。」
 
 「いやすごいなアンタ、ほとんど同じステータスだったのに圧勝だったな。」

 勝利を喜ぶマスター達だったが、当の本人のアレックスは、いつもと変わらない顔でしずかに言った。

 「いや、おそらくこいつは全力を出せていなかった。ただ力まかせの攻撃であったしおそらくダメージを
負っていたんだろう。所々に傷があった。それでもあの動きが出来るというのは驚きだがな。」

 そう言って改めて襲撃者のサーウァントを見る。
他の全員も注意深く観察していた。

 「それで、こいつをどうするんだ、説得が通じる相手ではないだろう。」

 リインフォースが目線は襲撃者に向けたまま、マスター二人に問いかけた。

 「ハイ!イケメン名無君としては怖いから関わりたくないな!美女でも美少女でもない青タイツの男
なんて全力でNO!このまま放置を提案します!そうしよう!さあ行こう!全力でGO!・・ぐほぅ!!」

 自分のマスターの脇腹に全力のボディーブローを叩き込みながら花村へと視線を向けた。
足元で名無しが蹲っているが気にせず放置だ。心なし喜んで見えるのは気のせいだと思いたい。
そんな二人を、花村は若干引きつった顔で見ながら、パートナーに声をかける。

292絆物語  ◆2shK8TpqBI:2013/02/16(土) 06:04:06 ID:KuN4LIb20
 
 
 「こいつのマスター、近くにいるか?」
 「判らん。バーサーカーとして召喚されたのであれば、コントロールすることを諦めて自分は安全な所に
いるのかもしれんが」
 「なにもわからないか・・・」

 このままこのサーウァントを放置すれば、いずれ回復して他の参加者を襲うだろう。
被害を減らすという意味ではこのまま止めを刺すべきなのだが、万が一こいつのマスターがただ生き残りたい
だけの一般人だったら?あるいは誰かに脅されて仕方なかったのだとすれば?
それらの多くの可能性が、花村の頭を悩ませていた。

「俺としてはマスター、こいつは此処で始末しておくべきだ。放っておけば再び牙を剥くかもしれん。
そして連れて行くには危険が大きすぎる。全員の安全を考えるという命令なら止めを刺しておいたほうがいい。」

「・・・・っ!」


 アレックスは掌を襲撃者に向け魔力を溜める。やろうと思えばいつでも止めを刺すことができるだろう。


 「だめだアレックス!まだ殺すな!」

 アレックスの言う事は正しい。それが最もリスクが少なく確実だからだ。
 だが素直にそれに従うことは出来なかった。
 それは人殺しに対する忌避感から来るものかもしれないし、目の前にある事実だけで犯人と思われている男を
 断罪してしまい、逃れられない罪を負った後悔からくるものかもしれなかった。
 あの出来事以来、特捜隊の絆はバラバラになりかけてしまっているのだから。同じ過ちを繰り返したくないという
思いは常に心にあるのだから。

 けれども他にいいアイディアがすぐには思い浮かばない。
だがどうにかしなければと口を開いたその時―――――





 「――――〈ペルソナ〉――――」





 ……えっ……?
 聞き覚えのある声の方に顔を向けた瞬間………花村たちが知覚したのは、白い光、そして爆発による轟音と
衝撃だった。

293絆物語  ◆2shK8TpqBI:2013/02/16(土) 06:05:47 ID:KuN4LIb20



 大きく吹き飛ばされたアレックスは、混乱しながらもあたりを見回し、仲間と襲撃者の姿を探した。
 少し離れた所にマスターたちがいる。マスターの意識はしっかりしているし、リインフォースも無事だ。
 名無は目を回しているが、大怪我をしていないのを確認すると、冷静に状況把握に努める。

(なにが起こった?あのサーウァントには目を離さなかった…あいつのマスターの仕業か……?
 いやそれよりもあの光、対魔力を無視してダメージをあたえたぞ……!?)

 傷自体はすでに塞がっているが、自分の常識を超える魔術に少なからず驚きをあたえた。


 花村は、アレックスとは違う意味で驚きを隠せなかった。
 それは突然不意を撃たれたことよりも、白い光の正体が、自分の仲間である白鐘直斗が得意とする
スキル、メギドラであった事よりも、ソレを放った人物が、ある意味この会場で一番会いたくなかった
人間であったことだった。

 銀髪に眼鏡をかけ、学生服を身を纏ったその姿は、間違えようも無く、自分の相棒、鳴上悠……!


 「悠……!?なんでお前がここに……!?」

 明らかに動揺している花村に対し、悠は特に表情を変えることなく…


 「“ジオンガ”」


 頭上から降り注ぐ落雷が花村を襲う。

294絆物語  ◆2shK8TpqBI:2013/02/16(土) 06:06:33 ID:KuN4LIb20
 
 「ガアアアア!!?」
 
 動揺でまともに反応できなかった花村は、落雷の直撃を喰らい膝を付く。
 頭は激しく混乱していたが、それでもなんとか視線だけでも悠の方へ向け、詰問する。


 「悠、お前どうして…殺し合いに乗ったのか!?」
 
 混乱、動揺、そして僅かな…自分に向けられる恐怖…
 様々な感情をごちゃ混ぜにした表情を見せる相棒に、悠は微笑を浮かべて口を開いた。

 「陽介、これは必要なことなんだ。あの人の理想とする天国に到達するために。
天国へ到達すれば幸せになれるんだ。また皆と、笑い会える日が来るんだ。」

               .................    
 そう言って花村を見る表情は、柔らかい笑顔だった。
 多くの人が絆されるであろうその笑顔を見た花村に浮かんだ感情は、紛れも無い恐怖だった。
 まるで嵐の中を、傘も差さずに笑いながら歩く人を見たような…理解できない感覚が花村を襲った。
 

 なんだこれは……これは誰だ……?俺は悪い夢でも見ているのか……?

  
 このとき殺し合いに乗った動機が、奈々子を生き返らせるためだとか、あるいは自分と同じ、
あのときの選択を無かったことにしたいというならば、まだ理解することができた。
 しかし相棒は、そのどれでもなく、天国に到達するという、まるで訳が分からないことをいう。
 それでも必死に理性をかき集め、この状況をなんとかしなければと、立ち上がろうとしたが…

 「“ジオンガ”」


 再び放たれた落雷に為す術もなく……意識を刈り取られた。



 



 「マスター!?」

295絆物語  ◆2shK8TpqBI:2013/02/16(土) 06:07:38 ID:KuN4LIb20
 新手のマスター、おそらくこの襲撃者のサーウァントのマスターなのであろう。銀髪に眼鏡をかけたその人物は、
自分のマスターとおそらく同一の魔術(マスターはペルソナと呼んでいた)を使い、自分のマスターに雷撃を喰らわ
せていた。急ぎマスターの急助しようと駆けつけようとした時、目の前に再び青いサーウァントが立ちふさがった。
 全身のダメージなど意に介さない攻撃に、アレックスは舌打ちした。

 「この…っ!死に掛けの分際で……!そこをどけえ!!」

 もはや加減するなど選択肢は頭に無く、一刻も早くマスターの救援に向かおうとするアレックスに、追い討ちを
かけるかのように、不運が襲う。

 (マスターの魔術の効果が……!?今このタイミングではマズイ!)


 時間経過の影響で、アレックスに掛かっていた“マハスカクジャ”の効果が消えてしまい、再び敏捷値が元のB+へと
戻される。それは今この場においては、最悪の事態だった。
 相手のスピードにアレックスが追いつくことが出来ず、防御することで精一杯になったのだ。
 いくらスキルによりダメージ耐性がつこうと、まったく効かないわけではないのだ。
 さらにマスターが気絶した姿を視界に映し、何時ものように冷静に攻撃を対処することができない。
 奇しくもそれは、先ほどまであいてのサーウァントと似た状況に陥っていた。

 (このままではっ……キャスター……!頼む…!)





   
 「くそ、何が起きたんだ……?」
 リインフォースは爆発の影響で、アレックスと花村の、ちょうど中間地点にいた。近くで名無が倒れている。

296絆物語  ◆2shK8TpqBI:2013/02/16(土) 06:08:44 ID:KuN4LIb20
急ぎ様子を窺うが、目を回しているだけで、命に別状は無いようだ。すぐに目を覚ますだろう。
 花村の方へ目を向けると、膝を突きながら相手のマスターと何かを話し、そして雷撃を浴びせられ倒れ伏せていた。
 そのまま心象世界の具現化の魔術(花村が言うにはペルソナというらしい)を実体化させ、その刃を花村めがけて振り下ろ
そうとしていた。

 「っさせない!」

 速度重視で放たれた魔術弾、フォトンランサーが悠目掛けて殺到する。
 しかし相手は慌てる事無くペルソナの太刀を回転させ弾き、花村から距離を取る。
 しかし元々牽制程度放った攻撃だ。落胆することなく本命の攻撃を放つ。

 「ブレイズキャノン!」

 熱量を伴う破壊魔法が襲い掛かるが、ブフーラを放ち相殺する。
 そのまま低空飛行でリインフォースに突っ込む。接近されることを望まないリインフォースはアクセルシューター
を放つ。誘導制御型に分類されるその魔術は、さながらホーミングレーザーのように伊邪那岐禍津大神に殺到する。
 しかしまるで魔術弾の軌道が解っているかのように避けながら近づいてくるソレに、リインフォースは驚きを隠せない。
 それは伊邪那岐禍津大神の持つスキル、“大天使の加護”魔法系スキルの3倍回避という、魔術師にとっては天敵といっても
過言ではない能力だった。
 そのまま至近距離まで近づかれる。咄嗟の判断でシールドを展開、間一髪で振り下ろされる矛から身を守ることができたが、
そのまま身動きができなくなってしまう。       〟〟〟〟〟〟〟〟〟〟〟〟〟〟
 花村のほうへ視線を向けるリインフォース、そこには、鈍色に輝く日本刀を振り上げる襲撃者の姿が映った。

 「バイバイ陽介………」

 振り下ろされる刃―――


 「や……やめろおお!」


 リインフォースの絶叫―――



 そして――――――


 「させるかあ!」


 しかしその凶器は、花村に到達することなく弾き返された。
 意識を取り戻した名無が、間一髪のところで間に割り込み、槍王で日本刀を弾き返す。
 

 「鉄之介さま華麗に参上!ダチのピンチに颯爽と現れ助けるおれ様だぜえ!」

 そういって槍王を振りかざし、悠を大きく吹き飛ばす。
 攻撃を喰らったことでペルソナの制御が緩み動きが鈍くなる。
 その隙を見逃さず、リインフォースはフォトンバレットをペルソナに目掛けて撃ちだす。
 ごく初級な射撃魔法だが、熟練者が放てば必殺の一撃となるそれは、爆発を起こし大きく相手を吹き飛ばした。
 その隙に名無と合流するリインフォース。名無も花村を背後に庇い、目の前の男に槍王を向ける。


 「無事かリインちゃん!?」
 「わたしはなんとも無い!それより花村は!?」
 「心配ねえ、気絶してるだけだ、命に別状はなさそうだぜ。」

 そういって心配を和らげるように笑いかける名無、その言葉をきいてリインフォースもホッと息をはいた。


 「残念……失敗したか……」

 口ではそう言いつつも笑顔を浮かべる相手に、名無とリインフォースは臨戦態勢をとる。
 もともとたいしてダメージをおっていなかったのだろう、どこか余裕を感じさせる雰囲気をただよらせる。

 「おまえさあ、花村のダチなんだろ?なんでコイツのこと殺そうとしてんだよ。」
 「必要なことだからさ。もし陽介が俺のやることに協力してくれるならよかったんだけど、きっと陽介は
止めようとするだろうから……だからまあ、しょうがないかなって。」

 どこか困ったかのように笑う悠。
 しかしすぐにいつもとおなじ鉄火面のような顔に戻ると、静かな声で宣言した。

 「じゃあ第二ラウンドをはじめようか。」



 to be Continued……

297絆物語  ◆2shK8TpqBI:2013/02/16(土) 06:09:44 ID:KuN4LIb20
 「ペルソナ」

 再びあらわれた世界のアルカナ―――伊邪那岐禍津大神―――

 ある種の禍々しさを纏ったソレは、不気味に名無とリインフォースを見つめる。
 
 (なんだ……この感じ………まるで透明の水に墨汁を垂らしたかのようなドス黒い魔力の感じは……!?)

 吐き気を催すような魔力を感じ取ったリインフォースだったが、悠長に考えている時間はないようだ。
 獲物を見定めた鷹のように、低空飛行で一直線に名無に向かって襲い掛かる。
 そうさせまいとリインフォースは貫通力と速度重視の魔力弾の弾幕を展開する。
 さすがに危険を感じたのか、手に持った矛を回転させ防御する伊邪那岐。
 その隙に名無は、悠の方へ踊りかかるが、慌てることなく日本刀で受け止め、返す刃で名無の首
目掛けて刃を走らすが――――――

 
 「うひょおう!?」

 珍妙な掛け声とともに身体を思い切りそらしてギリギリで回避する。
 一瞬呆気に取られた顔をしたが、すぐに追撃をかけるべく刀を振り下ろそうとするが、
 リインフォースの魔力弾が悠めがけて放たれたのを確認すると、バックステップで避ける。
 伊邪那岐のほうに意識を集中し直し、矛でリインフォースを薙ぎ払おうとするが一瞬はやくシールドを展開――
 攻撃を弾き飛ばされ、その隙に飛翔して距離をとられた。


 戦局は互角だった。現在生き残っているマスターの中でも、トップクラスといっていい強さを誇る悠だが、
サーウァント相手ではたとえ最弱のキャスターといえど敗北していただろう。
 初戦でタマモあいてに痛い目に合わされたゆえ、そのことを理解していた悠は、ペルソナで足止めして
その隙に相手のマスターを直接殺害するという作戦を取った。
 相手がイザナギを消滅させた衛宮切継のような相手ならしなかったであろうが、見たところさした修羅場を
潜った事のなさそうな自分と同年代くらいの少年――― 
ペルソナと同時進行で行動するのは骨が折れるが、サーウァント相手に僅かでも足止めできれば相手マスター
を倒すことができるという自信が悠にはあった。
 事実、相手が最初に襲ったマスター、天野雪輝のように何の戦闘力を持たない一般人だったなら、とっくに
ケリがついていただろう。
 しかし相手は修羅場など潜ってないとはいえ、槍王の力を手にした人間――名無鉄之介………
 槍王の恩恵により身体能力を底上げされた彼は、何とか凌いでいた。

298絆物語  ◆2shK8TpqBI:2013/02/16(土) 06:10:47 ID:KuN4LIb20


 「驚いた……すぐに倒せると踏んでいたのに、思ったよりやるな。」
 「うっせえ!このイケメン眼鏡が!モテナイ男子の敵め!」

  そういいながら槍王から衝撃波を放つが、あっさりと軌道を見切り回避して、至近距離に近づき
刀を振るう。名無も槍で鍔迫り合い、そのまま膠着状態に陥った。

 「くそう……初めて戦った相手がヤバイおっさんかと思ったら次はモテ男かよお!
 ムカつくぐらい整ったかおしやがってええ!死ね!全世界のモテナイ男子のために!」
 「そういわれても困るな……だいたいそんなにモテてないぞ。彼女だっていないし。」
 「え……まじで?なんだ俺と同じモテナイ男子だったのかあ。同士よ!」  

 軽口を交わし顔は笑っているものの、名無は攻撃の手は緩めない……
 悠もペルソナを同時進行で動かしながらリインフォースの相手をしていた。

 「そういえば・・・」
 「ん?」
 「彼女はいないが仲の良い女友達はいるな。」
 「死ねよお前。マジしねよ今死ねよお前。つーか自慢かよおおお!」
 「しかも六人。顔もかわいい。」 
 「死ね!英語でいうならS、H、I、N、Eだ!」
 「ローマ字じゃないか。SHINEって輝いてどうするんだ。」
 「輝いて爆死しろバーカ!バーカ!」
 「………俺の周りにいなかったタイプの人間だな………。」

 仲の良い友達同士のような会話をしながら、二人の少年は、闘争を続けた。



 アレックスは苦戦していた。
 長期戦で戦えば、勝利するのはアレックスだろう……
 再生能力とダメージ耐性、これらの防御向きの能力は、時間稼ぎや足止め、長期戦などに絶大な効果を発揮
するが、短期決戦に向く能力ではなく、いまこの状況ではあまり意味の無いことであった。
 ブリューナグの槍の攻撃力は申し分の無い威力を誇るが、発動までに若干のタメが必要であり、敏捷が大きく
上回っている相手では魔力の無駄使いでしかない。
 必然的に素手による攻撃になってしまうのだが、サーウァントの中でもトップクラスのスピードを誇る
クーフーリンの動きに、なんとか追い縋ることで精一杯だった。
 マスターの援護があればまた話は違っただろう。しかしマスターは気絶し、援護は期待できない。
 キャスター達も自分たちの事で精一杯だろう。
 なら、今自分がするべき事は、少しでも長くこの凶戦士を相手にすることだ。
 自分の役割を果たすべく、無手の槍兵は拳を振るう。

299絆物語  ◆2shK8TpqBI:2013/02/16(土) 06:11:50 ID:KuN4LIb20


 リインフォースは手間取っていた。
 本来なら、たとえ最弱のクラスであろうとも、マスター相手の魔術ではここまで苦戦することは無かっただろう。
 しかしながらも相性が悪かった。
 こちらの魔術攻撃を回避するレアスキル、三次元の移動を可能にする動き、直撃すればただではすまない
パワーで振り下ろされる攻撃……
 これら三つの要素が、彼女を膠着状態に陥らせていた。

 (くそ、誘導弾を放っても容易く回避してくる……速度重視の攻撃でも弾かれる、パワー重視ではかわされる。
 接近戦では分が悪過ぎるし広範囲殲滅魔術では味方まで巻き込んでしまう……っ!)

 空へ飛んでも追撃し、こちらを打ち落さんと迫るペルソナに、マスターの援護が出来ず歯噛みをする。
 このままでは埒が明かない……最悪この騒ぎで他の参加者達も集まるだろう。
 それは自分たちの望むことではないと考えたリインフォースは、一つの行動に出た。

 
 「“フラッシュムーブ”」

 魔術による高速移動で相手の死角に移動、相手が気付いていない今のうちに仕掛けを施し、

 「“ディバインシューター”」

 ディバインスフィアと呼ばれる発射台から魔力弾を生成、ペルソナ目掛けて発射する。
 だが直前に気付いた伊邪那岐はギリギリのところで回避、そのままリインフォースの目前まで接近した。
 
 
 このとき、ペルソナの視界を共有していた鳴上悠は、自身の勝利を確信した。
 相手のキャスターは、発射直後の硬直で動けない―――
 このまま矛を振り下ろせば、キャスターをしとめることが出来る……
 DIOの理想に一歩近づいた事を内心喜びながら、矛を振り下ろそうとしたとき―――

 .....................................................................................
 振り上げたまままるで見えない鎖に縛られているかのように、全く身動きが取れない事に気付いた……



 ―――“ディレイドバインド”―――

 特定空間に侵入した対象を捕縛する設置型捕獲魔術、ディバインシューターを放つ前、あらかじめ仕掛けておいた
罠に、相手が上手く掛かってくれたその隙を見逃さず、“チェーンバインド”を発動、相手を身動き取れないように
雁字搦めにする。


 「いくぞ……覚悟はいいな……」

 膨大な魔力を手に集める。放つのは、かつての敵でありはやての友となった少女、高町なのはが得意とする砲撃魔法

 
 「ディバイン――――」

 危険を感じ取った悠は、何とか拘束を抜けようともがくが、もう遅い………



 
 「バスタあああーーーー!!」


 膨大な魔力を相手に向けて直接放出するという、シンプルながらも強力な砲撃は、伊邪那岐に直撃し、フィールドバック
による衝撃で、鳴上悠はそのまま意識を失った。

300絆物語  ◆2shK8TpqBI:2013/02/16(土) 06:13:01 ID:KuN4LIb20



 
 「なんとか終わったな……」
 鳴上悠を撃破した名無・リインフォースは、アレックスの援護に向かい相手サーウァントを二人がかりで戦い勝利、
其のまま止めを刺そうとするアレックスだったが、相手のマスターが花村の知り合いのようだったというリインフォース
の証言により、マスター・サーウァント両方に捕縛魔術をかけ縛り上げた。
 花村を車の中で休ませ、三人は気絶した襲撃者たちの周りを取り囲んだ。



 「ん……?これは……」
  
 リインフォースが悠の額に魔力の固まりを察知し、前髪を上げる。
 そこにあったのは、額に突き刺さった、醜く蠢く肉片だった。

 「うお!何じゃこりゃ!………気持ち悪!」

 名無が気持ち悪そうに後ず去る。リインフォースも表情を歪ませながら、解析の魔術を発動する。

 「洗脳系の宝具?様子がおかしかったのはこれが原因か……」
 「解除できるのか?」
 「全力でやればいけると思うが……どうするマスター?」

 後ろに下がってなるべく肉片を見ないようにしている名無に指示を仰ぐ。

 「イケメンは敵だが花村の友達っぽいし、治してあげてよリインちゃん。」
 「………わかった……」

 いきなり襲い掛かった悠たちにあまり良い感情を持っていなかったが、素直に解呪の魔術を発動する。
 肉片が苦しげに蠢くが、段々と動きが弱まってきた。このままいけば解除できるだろうと、さらに魔力を
流し込んだ。







 ――――――暗い――――――

 
 悠の意識は深い暗闇の中にいた。
 右も左もわからないその世界を歩いていると、どこからか声が聞こえてくる。

 (ふふふ………怯えてるのかい?怖がらなくていい……私と友達になろうじゃないか………)


 薄ら寒い空気を纏いながらも、その声色は、どこか安心できる甘さを香らせていた………



 (大丈夫だ………何も心配しなくていい……この私の言うとおりにすれば、君の不安をすべて消し去って
あげよう……繋がりが欲しいなら……私の支配という繋がりをあげよう………)
 
 
 ―――――――ああ……このままこの声に身を任せてしまいたい……――――――


 目を閉じてすべてを委ねようとしたその時、突然ノイズが走ったかのように声が聞こえにくくなった。
 それと同時に、彼と自分を繋いでいたモノが段々と消え去っていく感覚が悠を襲った……


 ――――消える………繋がりが消える……絆が消える……いやだ……もう、絆が消えるのは………!
 だれとも繋がりのない世界なんて……!絶対に………!――――





         ――――――――嫌だ!!―――――――

301絆物語  ◆2shK8TpqBI:2013/02/16(土) 06:14:10 ID:KuN4LIb20




 
 「ウオオオオ!伊邪那岐ぃいいい!」

 ダメージを受けあちことにノイズのようなものを走らせながらも、魔力をかき集め白い光を解き放つ。
 白き閃光は爆発を起こし解呪魔術を強制的にキャンセルさせる。

 「バカな!しばらく動けなくなるほどのダメージを与えたぞ!?」

 驚愕に染まるリインフォース、咄嗟に名無を庇ったアレックスはすぐには動けない。
 その隙に捕縛魔術を矛で断ち切ると、サーウァントに担がれ一目散に逃走した。

 「逃げられたか……」
 「どうする?追うか?」
 「いや、手負いの獣は一番手ごわい。こちらも消耗しているのでただでは済まないだろう。
最悪他の参加者との混戦になる恐れがあるからな…この場を離れるぞ。すぐ車に乗れ。」

 言うが早く車に乗り込み発進の準備を整えると、その場を後にした…







 「ん………あれ?ここは……?」
 「気づいたかマスター」

 目を覚ました花村は、最初自分が何処にいるか分からなかった。
 右を見れば海が見える。どうやら橋を渡っているらしい。左を向けば名無が心配そうな顔でこちらを見ていた。
 なぜそんな顔をしているのか困惑しながら前を向くと、運転しているアレックスの後姿が見えた。
 リインフォースは霊体化しているらしい。

 「ここ何処?」 
 「冬木大橋だ。マスター、何があったか覚えているか?」
 「え?……えっと…たしか………」

 そういわれ必死に記憶をたどり………

 「!悠は!相手のマスターはどうなった!?」
 「逃げられた、相当修羅場を潜ってきたな…あの状況で逃げ延びられるとは予想外だったな。」
 「………そっか……………」 
 落胆と、僅かばかりの安堵を含んだ返事にアレックスは目を細める。

 「マスター、単刀直入に聞く。あのマスターを殺せるか?」
 「な……何を急にそんな………」

 アレックスの問いに目に見えてうろたえる花村……しかしアレックスは、そんなマスターに容赦はしない。

302絆物語  ◆2shK8TpqBI:2013/02/16(土) 06:15:53 ID:KuN4LIb20

 「あいつらは明らかに殺し合いに乗っていた。聖杯を破壊するなら間違いなく障害になるだろう。
今回は上手く撃退できたが次はどうなるかわからん。次に襲って来たとき、お前はどうするんだ。」
 「……俺は、……」
 「相手は顔見知りでも躊躇い無く刃を向ける奴らだ。手心を加えようとすればお前が危険だぞ。
次は殺すべきじゃないのか?」
 
 目を瞑り顔を俯かせる花村………その表情は窺えない。
 アレックスは同じく沈黙だった。リインフォースは霊体化したまま成り行きを見守っていた。名無は
居心地悪げにオロオロしていた。


 五分、十分と沈黙が場を包む。花村は顔を俯かせたまま何も喋らない。
 さすがに痺れを切らしたリインフォースが実体化した。

 「おい!分かっているのだろう!いいかげん覚悟をきめろ!」
 「り、リインちゃん……」

 リインフォースが声を荒げるも、返ってきたのは沈黙だった。
 いい加減苛立ちが頂点に達し、後部座席に乗り込もうとしたその時、

 「あいつ……悠はさ、俺を助けてくれたんだ。大切な人が死んで、悲しくて悔しくて、しかもそれを
理由に危険なところに向かった俺に、あいつはついて来てくれたんだ。」

 顔を上げた花村は、ぽつぽつと喋りだした。
 思い出すのは、テレビの世界の出来事。小西先輩が死んで、その原因を探しにテレビの中に行ったとき、
そこで自分の本音に気づいた。
 退屈な田舎暮らしに対する不満、そこで見つけた不思議な世界。
 先輩の死を大義名分にして、危険な場所に乗り込んだ自分。あわよくば、ヒーローになれると思っていた。
 そんな汚い自分を認めたくなくて、拒絶してシャドウと成ったもう一人の自分に殺されかけたとき、
あいつは身体を張って助けてくれた。
 
 「おれは相棒に、命を救われた。相棒のおかげで変わることができた。だから、あいつを殺すことはできない。」
 「ならばどうするんだ。このままでは被害が拡大するぞ。」
 「分かってる。だから俺は、相棒を止めたい。暗闇から救い出してくれたあいつを、今度は俺が助けたい。」


 そう言って、全員に視線を向けると思い切り頭を下げた。

 「身勝手だっていうのは分かってる!でもどうしても俺だけの力じゃ駄目なんだ!だからスイマセン!
どうか俺に手を貸してください!」

 土下座をする勢いで頭を下げお願いする花村に、アレックスは静かに問いかけた。

 「説得に応じない場合は?」
 「ぶん殴ってでも止める。」
 「それども止まらなかったら?」
 「何度だってぶん殴る。」

 強い決意を固めた声と瞳に、アレックスはジャバウォックの少年を思い出す。
 どんなに深い絶望の中でも、決して諦めずに進み、そして自分を倒した少年と花村を重ねた。
 しらず口角があがり、歓びを隠せない。

 「いいだろう、お前のその意思を尊重しよう。この力、及ばずながらも貸そう、マスターよ。」
 「俺もいいぜ花村、ダチの頼みだ。手を貸してやるぜ。」

 名無はリインフォースを見て、申し訳なさそうにしながらも自分のやりたいことを言う。
 そんな名無を呆れた顔で見たが、やがて諦めたのかため息を一つ吐いて花村の方へ向き直った。
 
 「わかった。私も力を貸そう」
 「!サンキュー皆!心強え!」
 「ただし!危なくなったらその時は躊躇しないからな。その時は覚悟を決めろ。」
 

 そう言って話を釘を刺すリインフォースに、名無が安心させるように声をかけた。

 「まあ、でもアイツそんなに派手には動けないと思うぜ。」
 「なぜそういい切れる?」
 「ほらこれ。」

 そういって名無は一枚のカードを差し出す。手にとって眺めたリインフォースは、目を剥ぐ。

 「お前これクレジットカード!?スッたのか!?」
 「うひゃひゃ!鍔迫り合いの時にサッとな。女の子のスカート捲るより簡単だったぜ!」

 自慢げに笑う名無に、リインフォースは驚きに声が出ない。
 そんな主従を横目にアレックスは、改めてマスターに声をかけた。

 「それとマスター、先ほどの襲撃者は洗脳宝具で何者かに操られていた。」
 「はあ!?じゃあなんであんなこと言ったんだよ!?」
 「操られていようがいまいが危険な事には変わりないからだ。もし覚悟を決められないようなら
言うつもりはなかった。それに元から乗っている可能性もあるからな。」
 
 しれっと言うアレックスに、花村は脱力した。そんなマスターをバックミラー越しに見てアレックスは
無表情に声をかける。

303絆物語  ◆2shK8TpqBI:2013/02/16(土) 06:16:29 ID:KuN4LIb20
 「安心しろ、キャスターの魔術で解除は可能だ。次に会ったときは何とか成るだろう。
学校で誰がやったのかも調べるぞ。洗脳系の宝具を使うやつはそう数はいないはずだから絞り込めるはずだ。」
 
 「他のやつ操って自分は安全なところで高笑いかよ。胸くそわりい。」

 毒つきながらいうマスターに内心同意しつつこの話を切り上げた。

 「マスター、名無、学校までまだ少しかかる。それまでは仮眠を取っておけ、次はいつ休めるか分からない
からな。」
 「あー、じゃあそうさせてもらうわ。悪いなアレックス」 
 「おれも少し寝るかな。というわけでリインちゃん、お・い・で♪」
 「よしマスター、動くなよ」
 「すみません冗談ですからその光る拳こっちに向けないで」

 ワリと本気で謝る名無、こいつブレないなと感心しながら目を閉じた。


 (待ってろよ相棒、絶対元に戻してやるからな……もしも深い処まで堕ちちまったら、俺もそこまで
行って無理やりにでも引き上げてやる)

 








 鳴上悠は住宅街の空き家に身を潜めていた。
 花村たちから距離を離したときにランサーは霊体化した。無茶がたたり限界が訪れてしまったのだ。
 しばらくの戦闘は不可能だろう。だが今の悠にはそんな余裕はない。
 まるで頭の中を直接シェイクされたような不快感が、悠の頭を支配していた。
 部屋の隅に蹲りガタガタと震えて必死に心を落ち着かせようとするがまるで効果が無い。
 
 (イヤだイヤだイヤだ繋がりが消えるイヤだイヤだイヤだまたカラッポになってしまうイヤだイヤだイヤだ
助けてくださいDIOさんイヤだイヤだイヤだ助けて……!)

 悠にとって絆を失うことは、誰とも繋がりの無い人生に戻るのは、何よりも恐ろしいことだった。
 失うくらいならまやかしでも構わない。
 絆を紡いで強くなる故に、絆を失うと誰よりも弱くなる。歪な強さ………

 (誰とも繋がらない人生なんて、皆のいない世界なんてイヤだ!……あれ?………どうして俺は戦って
たんだっけ?……誰の為に戦いを決めたんだっけ?………あれ?)


大切な仲間と僅かな会合を果たした彼は、はたして邪悪の化身の支配を打ち破り、
真なる絆を取り戻すことができるのか……
 はたまたこのまま何も為さずに終わってしまうのか。


 物語は続く・・・

304絆物語  ◆2shK8TpqBI:2013/02/16(土) 06:17:02 ID:KuN4LIb20

 冬木大橋/朝】

【花村陽介@ペルソナ4】
[状態] :疲労(小)・残令呪使用回数:3
[持ち物]ミネラルウォーター@現実・カロリーメイト@現実・医薬品一式@現実
・大学ノート@現実 筆記用具一式@現実・電池式充電器@現実・電池@現実
・携帯電話 *携帯電話には名無鉄之介の名前が登録されています・予備の服
@現実・食料@現実・スパナ@現実・その他アレックスの指示で購入したもの数点
@現実
[基本行動方針]:聖杯を探し出して破壊する
[思考・行動]
1.学校に着くまで休息をとる
2.学校で情報を集める
3.悠を止める
4.[答え]を見つける
[備考]
聖杯戦争のルールと仕組みを言峰神父から聞きました。
(意図的に隠された情報があるかもしれません。)
名無達と情報交換を行いました。

【ランサー(アレックス)@ARMS】
[状態]魔力消費(中)、ARMSの進化(進行度小)
[基本行動方針]:聖杯を探し出して破壊する
[思考・行動]
1.情報を集める
2.アサシンを警戒
3.陽介を(主に精神的に)鍛える

【名無鉄之介@私の救世主さま】
[状態]健康・睡眠中 残令呪回数:3
[持ち物]エロ本(大量)@現実・携帯電話@現実*携帯電話には花村陽介の名前が
登録されています 予備の服@現実
[基本行動方針]:リインちゃんとイチャコラしたい!
[思考・行動]
1.やりたいように行動する。
2.花村と一緒に学校にいく。
3.エロ本読みたい。
4.おっさんよりも美少女に名前を覚えられたい。
[備考]
聖杯戦争のルールと仕組みを言峰神父に聞きました。
(意図的に隠された情報があるかもしれません。)
花村たちと情報交換を行い、アサシンの能力を聞きました。
アシュナードにほんの少し興味を持たれました。

【キャスター(リインフォース)@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]魔力消費(中)
[基本行動方針]とりあえず名無と行動を共にする。
[思考・行動]
1.鉄之介をどうにかまともな方向へ矯正したい。
2.学校に行き情報を集める。
3.拠点を作りたい。
4.神父を警戒。
5.可能なら鳴上悠を助ける(自分達を最優先)
[備考]
肉の芽の解除が可能です。ただし全力でやって誰にも邪魔されないのが
条件です。

305絆物語  ◆2shK8TpqBI:2013/02/16(土) 06:22:22 ID:KuN4LIb20
【住宅街】

【鳴上悠@ペルソナ4】
[状態]肉の芽、疲労(中)・精神力消耗(中)・恐慌状態
残令呪回数:1
[持ち物]大鹿のルーン石@Fate/stay night、携帯電話
*携帯電話には朽木スザク・DIOの番号が登録されています。
[備考]
肉の芽の支配が弱まりました。普段は支配されますが、何らかの
拍子に正気に戻るかもしれません(自力での解除は不可能です)

【ランサー(クー・フーリン)@Fate/stay night】
[状態]魔力消費(大)、ダメージ(特大)、令呪により狂化:Cを
付与
*令呪の力により狂化しています。時間経過で解除されることは
ありません。





以上です。いろいろツッコミ所があると思うので
意見を頂ければ嬉しいです。
なおアレックスの運転に関しては、完全な自己判断なので、
駄目だった場合は陽介か名無に(無免許で)運転させようと
思います

306 ◆2shK8TpqBI:2013/02/16(土) 10:38:52 ID:ovqv.Gi60
すみません鳴上悠の状態表の所に、クレジットカードの紛失に気付いていませんを追加してください

307 ◆WFV9UGJwQQ:2013/02/16(土) 11:05:21 ID:/.eiVWVs0
トリバレを某所でやらかしたのでトリップを変更しました、出夢やワカメを予約していた者です
延長をお願いします

308名無しさん:2013/02/16(土) 12:17:59 ID:/maDiKVw0
投下乙!
待望の番長組vs教会組だな
流石に最強のペルソナを得た番長は相当強かった…
ここで肉の芽解除にならなかったのはよかったけどね、まだまだ面白そうだし
しかしリインちゃんのディバインバスターが見れるとはな 前回あまり活躍出来てなかっただけに
あと名無と番長の会話に笑ったw クレジットカード盗むとか抜け目ないでぇ…

>>307
了解、延長と酉変更しておきます

309名無しさん:2013/02/16(土) 12:41:20 ID:/maDiKVw0
まぁ、ツッコミ所を上げるとすれば
番長がなんで日本刀を持っていたのかって所かな
銃器とか一般で購入出来ない武器は入手出来ないんじゃないっけ?
原作の日本刀再現だろうけどね

310名無しさん:2013/02/16(土) 14:26:04 ID:Gx8uG4icO
投下乙です。気になったのはリインフォースが蒐集していないはずのクロノの魔法らしき物を使っていたような?

311名無しさん:2013/02/16(土) 14:46:02 ID:uOw2PTck0
>>310
わかるんならリストアップしてくれよぉ〜

投下乙です

312名無しさん:2013/02/16(土) 14:52:20 ID:DVmFeQ6Q0
確かに番長の初期装備だな。
日本刀は、一応リアルでもネットで購入可能。
ただし、免許やら何やら必要なはず。
刃を丸めた模造刀はその限りでもないと思うが。

313名無しさん:2013/02/16(土) 15:10:55 ID:/maDiKVw0
>>312
なるほど… まぁ、そう考えると一応は買えなくもないのかな?
住居や車両の確保も、手続きをフッ飛ばして購入出来るんだし
まぁどっちにせよ日本刀もう紛失してるっぽいけどね、クレカもすられてるし

314名無しさん:2013/02/16(土) 15:13:26 ID:Gx8uG4icO
>>311
任務、了解…

・ブレイズキャノン(カノンとも言う)
・ディレイドバインド

幸いどっちもなのフェイの魔法で代用可能?
チェーンバインド…は劇場版で蒐集元なアルフより活用しまくってたしリインフォースの魔法って言われても違和感ないや。

315名無しさん:2013/02/16(土) 15:16:09 ID:/maDiKVw0
>>314
ある程度の魔法は代用可能か
まぁもしくは細かく気にしなくてもいい…かも?
セリスも入手してないはずのラグナロクとか持ってたし…

正直リインちゃんはもっと夜天の書の所に使用可能な魔法を書いてほしいんだよなぁ…
解説が少なすぎて…こればっかしはもう書き手じゃなくてもいいので原作知ってる人が書いてほしい…

316名無しさん:2013/02/16(土) 15:50:31 ID:Gx8uG4icO
>>315
カノンは漫画で相殺したフェイトのスマッシャー、バインドは二人の内どっちでも?

考えうる限りシステムの一部な守護騎士や夜天の書に記録された物の中から選んだであろうはやての魔法は使えていいはずだけど、圧倒的に本人の出番が足りない…原作じゃほぼ殴り合い空なイメージしかないんだよなぁ

317名無しさん:2013/02/16(土) 17:18:33 ID:WMaog9nU0
ランサーの狂化って結局永続で確定なのか?

318名無しさん:2013/02/16(土) 17:26:21 ID:/maDiKVw0
>>316
原作が描写不足か…困った仕様だなw
まぁ「原作でも設定的に使えそうな魔法」はバンバン取り入れてもいいと思うけどね

>>317
別に確定でいいんじゃね?
兄貴は運が悪かったのだ…

319名無しさん:2013/02/16(土) 18:01:14 ID:bUxDuXqE0
名無しと番長、出会い方次第じゃ友達に慣れたんじゃないかと今回の作品で思ったw
彼女云々のくだりが自然すぎて吹いたw

320名無しさん:2013/02/16(土) 18:02:13 ID:/maDiKVw0
肉の芽やられても番長は番長で正直笑ったww

321名無しさん:2013/02/16(土) 19:48:08 ID:ToCxn6FU0
肉の芽があったからなんだろうけど、真っ先に陽介を沈めにかかったのもある意味番長らしいやり方だな
敵対した時の厄介さをよく理解してるっぽいし

そう云や、マハスクカジャって名無とリィンにも一括で効くのかな
陽介は二人を仲間として認識してるけど、ルール的には『別のチーム』だし…
同盟相手にバフ掛けるようなキャラが他にいなかっただけに気になるな

322名無しさん:2013/02/16(土) 20:27:42 ID:kAZKUvyo0
>>321
せせせセリスさんケアルガとかエスナとか使ってたし!何?回復はバフじゃない?知らんなぁ
でも実際どうしよう?型月世界だと高難易度の味方バフをホイホイやるから
大所帯でマハタルカジャマハラクカジャマハスクカジャしたら祭り状態になる
3人以上ならヒートライザよりカジャ祭りしたほうが燃費いいぜ!
二人組でしかヒートライザは使えないって事だな!

323名無しさん:2013/02/16(土) 20:37:51 ID:3maKAbnM0
パーティ組んでるような状態だしかけようと思えば普通にかけれるでしょ

324名無しさん:2013/02/16(土) 20:54:12 ID:/maDiKVw0
まぁ、ジュネスが味方と認識すればかけられるんじゃね?たぶん

325 ◆2shK8TpqBI:2013/02/16(土) 21:13:01 ID:ovqv.Gi60
色んな意見と感想ありがとうございます。
<309日本刀に関しては金物屋に売ってるんだから大丈夫かなと判断しました
最悪ペルソナのネタ装備金属バットでも装備させようかなと
<310 リインちゃんの魔法に関しては、解除魔術や状態異常レジストを除き、原作の無印とA´ s の魔法なら全部いけるんじゃないかな?という自己判断です。(原作知らなくネットで調べただけなので)
訂正が必要なら書き直します。

326名無しさん:2013/02/16(土) 21:19:52 ID:Gx8uG4icO
>>325
夜天の書に載るのはあくまで蒐集を行った対象の持つ魔法なので、どの媒体においても蒐集されることのなかったクロノの魔法は使えませんね…他はまあなんとでも?

327名無しさん:2013/02/16(土) 21:50:39 ID:3maKAbnM0
別にあれクロノオリジナルの魔法ってわけじゃないと思うが

328名無しさん:2013/02/17(日) 00:22:06 ID:sfHvuttk0
そう言えば肉の芽で洗脳されたとしても当人の元々の人格は変わらないんだっけなー、というのを思い出したw
まさしく番長、輝くイケメン。輝いて爆死しろと言いたくなるのも無理もないw
やはりというかなんというか、聖杯戦争じゃキャスタークラスは貧弱だってことが分かる戦いだったぜ。
早いところ拠点ゲットして陣地築かないとリィンフォースちゃんの苦境が続きそうやでぇ。

ところで今更だけど、クーフーリンって現在ランサーとバーサーカーのダブルクラス状態みたいだけど、
大丈夫なのかね番町への負荷とか?EXTRAでダブルクラスやってたユリウスの場合、人外の所業扱いで
マジで死ぬ五秒前な激痛喰らってたが。

329名無しさん:2013/02/17(日) 00:36:48 ID:dmPXTbLE0
>>328
前回では「イザナギマガツオオカミの魔力のおかげで供給が保ててる」って描写があった
なので肉の芽解除されたら一気に負荷が押し寄せてくる可能性が………

330名無しさん:2013/02/17(日) 00:57:39 ID:rKm/L3r.O
>>329
もしかして:どうあがいても、絶望

331名無しさん:2013/02/17(日) 01:27:12 ID:hser5HVg0
リィンフォースの使用可能魔法が闇の書準拠でいいって言うなら
PSPのゲームで闇の書の残滓でコピーなのは・フェイト・クロノ・騎士達が出てたから
その範囲の魔法は使えても問題ない気がしますねえ

332名無しさん:2013/02/17(日) 01:52:24 ID:rKm/L3r.O
>>331
闇の欠片ってそういう設定だっけ?「関わった人物の記憶を再生」的なのだから魔導書本体と関係ないような…てかリインフォースがゲーム版の魔法を使うのはありか?

333名無しさん:2013/02/17(日) 10:22:06 ID:DllNb/kU0
気になった事が一つ
番長のペルソナのスキル『大天使の加護』の回避倍率上昇は3倍じゃなく2倍のはず

334名無しさん:2013/02/17(日) 13:23:17 ID:dmPXTbLE0
>>333
ググったらそのようだな
とりまwikiの収録話のやつ、2倍に編集しといた

335名無しさん:2013/02/17(日) 17:10:47 ID:UdyBf3To0
>>332
むしろ無しにする理由が無い

336 ◆2shK8TpqBI:2013/02/17(日) 21:24:19 ID:xw8jupBI0
結局クロノの魔法は使用可能でOK?
それと読み直して思ったけど
番長と兄貴最初と比べたらエライ事になってる(汗)
兄貴ダメージでかすぎたかな?

337名無しさん:2013/02/17(日) 22:14:04 ID:dmPXTbLE0
いいんじゃあないのか?
向こうでも言われてるように、原作のキャスターだってさほど厳密に出来ること決められてるわけじゃあないし
あまりにも逸脱していなければ大丈夫…だと思う
番長と兄貴はメタ的に頑張りすぎたし仕方無いってことで…(?)

338名無しのマスターさん:2013/02/19(火) 14:26:30 ID:0zhx4cB20
兄貴と番長は最初と比べたらエライ事になってるな
恐慌状態
クレジットカード紛失
ダメージ極大 魔力消費大
今なら凶王に見つからないんじゃ…

339名無しさん:2013/02/19(火) 15:04:35 ID:kWTnbvcs0
まぁ番長はスキル「勝利の伊吹」で体力と魔力が自然回復するんだろ?
隠れているだけでも回復出来るからまぁ頑張りすぎた休憩みたいなモンと思えば…
兄貴はダメージ極大だし、間引きを目論んでいたDIOからすれば面白くない展開だろうけどね
つか恐慌ヤバいな、肉の芽解除するかDIOと会うかでもしないと落ち着くの厳しそうだな
クレジットカード盗まれたのがある意味最大の誤算だっただろうけどw

340名無しさん:2013/02/19(火) 17:49:38 ID:QbDvcOW2O
>>339
腹ペコ退場の可能性が微レ存?

341名無しさん:2013/02/19(火) 18:13:11 ID:vYvfep2w0
>>340
いや、少なくともそれは無いだろ
聖杯戦争は大体2,3日程度でケリがつくんだし、多分そうなる前に終わる

342名無しさん:2013/02/19(火) 18:22:52 ID:kWTnbvcs0
腹ペコ退場はまぁ流石に冗談混じりだろw
もしもの時はDIO様を頼るか、他のチームからクレカ奪うか
最悪、窃盗すれば買い物事情は何とかなりそう
窃盗を起こせば警察経由で市長の耳に届くだろうけど………

343名無しさん:2013/02/19(火) 19:45:16 ID:5AxozAIgO
むしろ市長の過労退場を心配しようぜw

344名無しのマスターさん:2013/02/19(火) 19:51:18 ID:0zhx4cB20
教会見張る作戦見事に空回りしたなw
しかも味方にw

345 ◆wYNGIse9i6:2013/02/21(木) 02:45:04 ID:H4pWi6XI0
ギリギリ間に合った、投下します

346 ◆wYNGIse9i6:2013/02/21(木) 02:46:01 ID:H4pWi6XI0


  《A》

「はあ――おいしい」
温かいココアはリラックス作用をもたらしてくれる。
暖房の効いた室内で、泉こなたは一息ついた。

「あ、こなたちゃん起きた?」
部屋の外からこなたのサーヴァントである火野映司の声がした。
扉を開けて個室へ入ってきた映司の手には、湯気の立つ味噌汁とおにぎりを載せたお盆があった。

(そういえば、さっき入ったレストランでも飲み物を頼んだだけで何も食べてなかったっけ)
一度空腹を感じると、とたんに食欲が湧いてくる。
こなたは受け取った朝食をあっという間に平らげ、映司から受け取ったお茶を啜った。

泉こなたと火野映司、天海陸とセイバーは、遠坂凛が亡くなったレストランを離れたあと、24時間営 業しているインターネットカフェに潜り込んでいた。
日付が変わる前から動き続け疲労したこなたと陸の体力を気遣い、映司が休息を提案したためだ。
目の前で仲間である凛を失った精神的な負担、回復したとはいえ重症を負ったイスラのこともあり、誰も反対する者はいなかった。
こなたはゲームや深夜アニメなどで徹夜は慣れているが、さすがに殺し合いともなれば普段通りともいかずこなたは個室に入ったとたん眠りに落ちた。

「夢じゃないんだよね――やっぱりさ」
目が覚めたら自分の部屋で、同居している父と従姉妹におはようと言って、いつものように大学に行く。
そんな日常に戻っていることを期待してこなたは眠りについたのだが、やはり現実はそう甘くはなかった。
手の中 のカップの温かさも、隣にいる火野映司の存在も、遠坂凛の死も、すべてが本当のもの。

「凛ちゃんが死んだのも、本当なんだね――」
「安心して、とはいえないけどさ。こなたちゃんは絶対に俺が守るよ。約束する」
「うん、ありがとう、映司さん」
しかし、凛を失っても、まだこなたは一人ではない。
自分のサーヴァントであるライダー・火野映司と、仲間である天海陸とセイバーがいる。

「そういえば、陸くんたちももう起きたかな?」
いくつか離れたブースでは天海陸と彼のセイバーが休んでいるはずだ。
サーヴァントは霊体化できるからいいとして、恋人関係でもない男女が同じ部屋で眠るのも良くないので部屋は別々に分けた。
聞けばセイバーが昏倒したこなたを介抱し てくれたのだという。
彼がこなたたちと合流してから回復宝具を使ったのは、その宝具が自分だけでなく他人をもカバーできるものだったからである。
強力な反面消費魔力も多く乱用はできない。
そのためセイバーは自分の怪我を押して、傷ついて戻ってくるはずの映司や気絶したこなたらが全員揃うまで待ってくれたのだ。
このネットカフェで休むことにしたのは消費したセイバーの魔力を回復させるためでもあった。

「セイバーさんがその、あまり強くないっていうのは聞いてたけど。代わりに怪我を治せるんだからすごいよね」
「うん、そうだね。正直、あの人はセイバーというよりはキャスターに近いと思うよ」
MMORPGも嗜むこなたからすれば、パーティを組む上で一番不可欠な人材は アタッカーではなくヒーラーだ。
どんなに攻撃力のある戦士がいても、敵の攻撃で受けたダメージを回復できなければいずれは沈む。
一人回復役がいるだけで、集団の生存率は飛躍的に上昇するのだ。

347 ◆wYNGIse9i6:2013/02/21(木) 02:46:59 ID:H4pWi6XI0


「さっきの戦い――俺はこなたちゃんに謝らないといけない。サーヴァントが軽々しくマスターから離れるべきじゃなかった。俺が残ってたら、凛ちゃんだって助けられたかもしれないんだ」
「あのとき襲ってきた人、結局サーヴァントじゃなかったんだよね」
「うん、さっきのNPCの人みたいに誰かに操られてたんだと思う。助けなきゃって思っちゃって、それで――」
「映司さんは間違ってないと思うよ。私だって、できたら助けてあげたいと思うし」
「ありがとう、こなたちゃん。でも、これからはもう俺はこなたちゃんの側を離れないようにするよ。セイバーさんもいるしね」
セイバーが戦闘向きではないとわかった以上、必然的に戦闘は映司の役目になる。
回復能力を持つセ イバーが後方支援としてこなたと陸を守ってくれれば、映司も安心して敵と戦える。

「じゃあ、そろそろ行こうか」
睡眠と食事を取り、体調は万全になった。
個室を出ると、ちょうど陸とセイバーも休憩を終えたようだ。

「おはよう。泉さん、火野さん」
「おはよう、っていうのもなんか変な感じ。でもおはよう。りっくん、セイバーさん」
陸たちもぐっすりと眠れたようで、疲労している様子はなかった。
会計を済ませ、明るくなり始めた街へと歩き出す。

「ええと、凛ちゃんの家に行くんだよね」
「そうだけど――凛ちゃんの家がどこか、誰か知ってる?」
映司の問いに、みんな首を振る。
陸が懐から折り畳んだ紙を取り出した。

「調べてみたら、遠坂ってこの冬木 市では結構な名家だったんだ。地図もコピーしてきたから」
「りっくん、準備いいねー」
「中々眠れなかっただけだよ。じゃあ、行こう」
メガネ男子のイメージに漏れず、陸は几帳面な性格をしている。
出会ったのが凛と陸でよかったとこなたは思う。
最初に襲ってきた白髪の男のように好戦的ではなく、殺し合いをする気がないのになぜか参加してしまった一般人。
天海陸という、自分と全く同じ境遇で同世代の少年がいたことは、こなたに親近感と、理不尽な境遇は自分一人ではないという安堵を覚えさせていた。
戦う覚悟のないこなたがどうにか取り乱さずにいられるのは、側で自分を支えてくれる映司だけでなく、陸の存在も大きい。

「そうだ、泉さん。セイバーと話したんだけど さ」
「ん、なに?」
「火野さん――ライダーさんのこと。名前で呼ぶのは止めた方がいいと思う」
サーヴァントにとって、真名を看破されるということは能力だけでなく弱点をも相手に知られるということである。
どれだけ強力なサーヴァントであっても、生前苦手としていたことや死因を再現されるとあっけなく敗北するもの。
ゆえにマスターたちは血眼になって真名の隠匿に奔走する。
宝具は強力な反面、真名に直結するものも多いのでおいそれと使用することができないのだ。

348 ◆wYNGIse9i6:2013/02/21(木) 02:48:05 ID:H4pWi6XI0


「そっか、そうだね。ごめん映――じゃなかった、ライダーさん。あたし、迂闊だったね」
「いいんだよ、こなたちゃん。俺もちょっとうっかりしてたよ」
「僕も真名を明かさなければフェアじゃないんだが、済まないね。どうしてもそれだけはできないんだ」
セイバーが申し訳なさそうにこなたに謝った。
しかし、もしこなたが敵に捕まって、彼の真名を喋ってしまったら一大事だ。
信用している仲間であっても、真名とは隠し通さなければならないものなのである。
こなたもそれが決して悪意から来るものではないとわかっているので、頭を下げるセイバーに気にしないでいいと言った。
真名を明かさずとも、セイバーには怪我を治療してもらった恩があるため、信用を損な う理由にはならない。

「――! セイバーさん、二人を!」
「ああ、わかっているよライダー」
歩き始めて数十分、突然、映司が突然こなたと陸を背中に庇って前に出る。
その手には既に彼の宝具が出現していた。

「――変身!」
映司は一瞬で姿を変える――ライダーとしての姿、仮面ライダーオーズへと。
セイバーも剣を構え、こなたと陸を守る構えだ。
二人がそれほど警戒するもの――他のマスターとサーヴァントが、こなたたちの前に現れたのだ。
黒髪の青年と、金髪の少女――ただし、剣を手にし鎧をまとった少女だった。


  《B》


「俺に言いたいことがあるなら、はっきり言ったらどうだ」
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアがセイバー――アルトリア・ペ ンドラゴンに投げかけた言葉は刺々しかった。
空はすっかり青みがかり、鳥たちが横切っていき、窓を開けたルルーシュの頬をさわやかな風が撫でる。
騎乗のスキルを持つだけあって、セイバーの運転は実に快適なものだった。

「大方ガウェインのことだろう。あいつが俺の命令に従うのがそんなに不満か?」
「別に――そういうわけではありませんよ」
名高い円卓の騎士の中でもランスロットと並び称されるほどに高名な、太陽の騎士ガウェイン。
生前はセイバーの臣下であり、甥であり、親友でもあった。
ガウェインにとって王とはアーサー王のことであり、アーサー王にとってもまたガウェインは無二の忠臣だった。

「サーヴァントとして召喚されたからには、我らには生前の忠義 など意味を持ちません」
「ほう――ならなぜ、お前はガウェインを避ける?アーサー王の伝説ならば俺も知っている。裏切りの騎士ランスロットと違い、やつは最後までお前に仕えたはずだ。
 結果的に双方討ち死にしたようだが、こうして再び話す機会を得たのだから、語るべきことなど山ほどあるだろう」
金田一一にギアスを使ったあと、ガウェインは暗い顔でルルーシュの元へ戻ってきた。
しかしガウェインは、とても生前の主君に会えて感激しているという感じではなかったのだ。

349 ◆wYNGIse9i6:2013/02/21(木) 02:49:03 ID:H4pWi6XI0


「――あなたに隠す意味もありませんね。さきほどのランサーとの戦い――ランサーのマスターが持っていた剣、あれは私の友ランスロットの剣なのです」
「なに?」
「つまり――この聖杯戦争には、私と、ガウェインと、ランスロット――かつての円卓の騎士が三人、招かれているということです」
セイバーの表情は暗い。
ルルーシュにもその意味はわかる。
ガウェインはともかくランスロットといえば、円卓の騎士が崩壊する元凶とも言える最悪の裏切りを引き起こした騎士だ。
生前の忠義に意味は無いとセイバーは言ったが、生前の恨みまで忘れるということではない。
セイバーとランスロットは出会えば敵対が決定的といってもいいのだ。
ガウェインと再会したといっ ても――彼もまた、ランスロットに運命を狂わされた騎士。

「ガウェインがあなたに従うのが不満かと言いましたね。逆ですルルーシュ――私は、彼があなたのような王に仕えることが嬉しい。
 王としていたらなかった私よりも、聖杯がもたらす奇跡を否定し自らの意思で道を決めるあなたのような強く迷いのない王ならば――私などよりよほど、ガウェインを輝かせられるでしょう」
ガウェインが無念の死を遂げた原因の一端は、ランスロットだけではなくガウェインの忠言を聞き入れなかったアーサー王にもある。
ゆえにセイバーはガウェインに対して負い目があったのだ。

「こうして再び会うことができたガウェインの目に曇りはありませんでした。私以上の良き王に巡り会えたのだと― ―どうしました、ルルーシュ?」
セイバーが横目でルルーシュを見ると、ルルーシュはセイバーの言葉を聞いていないかのように何事か考えていた。

「アーサー王、ランスロット、ガウェイン、衛宮、俺――」
「ルルーシュ?」
「セイバーよ。マスターがサーヴァントと契約する際、その英霊と縁のある聖遺物があればほぼ確実に引き当てられるのだったな?」
「え、ええ。実際私は生前持っていた鞘で切嗣と――シロウの養父と契約しました。その鞘が士郎に受け継がれ、いまもこうして」
「聖遺物がない場合はどうなる?」
「その場合、マスターと精神的に類似しているサーヴァントが割り振られるようですが――あなたとガウェインを見るに、他の条件もあるかもしれませんね」
ルル ーシュとガウェインは、よい主従ではあるがとても似たタイプではない。

「あるいは、マスターがその英霊と何らかの縁を持つ人物である場合はどうだ?たとえば――アーサー王の伝説を強く信じる、ブリタニアの王族であるとか」
「ええ、断言はできませんが、まったく無関係のサーヴァントよりは結び付きが強いのではないかと思います」
「――俺には、ガウェインという名と浅からぬ縁がある。といっても、やつ本人とはまったくの無関係ではあるがな」
ルルーシュはかつて、まさにガウェインと言う名のナイトメアフレームに乗っていた。
英国に端を発するブリタニア帝国が、国家の守護者として精鋭であるナイトオブラウンズに与えたナイトメアフレームの名も、やはり円卓の騎士。
ル ルーシュがサーヴァント・ガウェインを引き当てたのがこれに関係があるのだとしたら――

「ランスロットのマスターは――あるいは、俺の友なのかもしれん」
「なんですって!?」
その名は、枢木スザク。
ルルーシュの親友にして、裏切りの騎士と呼ばれ、ナイトメフレーム・ランスロットを操り、最後はゼロという記号になった男だ。
ルルーシュがガウェインと結びついたのなら、スザクがサーヴァント・ランスロットを呼び出たとしても、何もおかしくはない。

「だが、あいつはゼロとして――いや、そもそも俺がこうして生きてこの場にいるのだからあいつがいても不思議ではないか」
「もしその人物が本当にいたとするなら、ルルーシュ、協力を求めることはできませんか?」
「協力?」
「ええ。ランスロットのクラスはおそらくバーサーカーですが、その武芸の冴えは狂化していてもいささかの衰えもありません。
 私と肩を並べることはできないでしょうが、聖杯を破壊するためのこの上なく頼もしい味方になるでしょう」
かつてセイバーは狂ったランスロットを前に剣を振るうこともできずに激しく打ちのめされたが、あの時とは状況が違う。
士郎との戦いの日々を通じ、かつて征服王に指摘された自分の王道の歪みに気付けたのだ。
今ならば、戦い以外の道を選ぶことも――

350 ◆wYNGIse9i6:2013/02/21(木) 02:49:56 ID:H4pWi6XI0


「彼のマスターがあなたの友だというのなら、可能性はあるはずです。ガウェインもきっと喜ぶ」
「スザクと、か――」
セイバーはランスロットとの和解の可能性を見出し、鼓動が早まるのを感じていた。
かつては憎み合うしかなかったが、この聖杯戦争でなら、いまの自分なら、ランスロットと再び轡を並べることができるかもしれない。
アーサー王と、ランスロットと、そしてガウェインと――円卓の騎士の再結成ができるかもしれない。
バーサーカーといえども令呪の強制には逆らえない。アーサー王を襲うなと命令すれば、戦うことはなくなる。
友に令呪を強いるのは心苦しいが、それでも期待に胸膨らませるセイバーと対照的に、ルルーシュは。

「スザク――」
か つてルルーシュは、スザクに後を託し悪逆皇帝として世界中の憎しみを集めて死んだ。
スザクに最後のギアス――枢木スザクを捨て、ゼロとして生きろというギアスを残して。
未練はなかった。別れは済ませたし、スザクは誰よりもルルーシュを理解してくれていると知っていたからだ。

(もう一度――お前といっしょに戦えるのか?スザク――)

知のルルーシュと、武のスザク。
二人が力を合わせれば不可能などない――とルルーシュは確信している。
士郎や金田一のことは信用しているが、やはりスザクへの信頼とは比べ物にならない。
それに、もしこの聖杯戦争に敗北するとしても――自分の命などどうでもいいが――

(スザク――お前を死なせるわけにはいかないんだ)

枢木スザク――否、ゼロだけはなんとしても生還させねばならない。
ブリタニアが崩壊し、大きく動き始める世界にゼロは必要だ。
最愛の妹ナナリーを守るためにも――
枢木スザクを、この聖杯戦争で失ってはならない。

「――そうだな、やつを探そう。あの体力バカとバーサーカーとの組み合わせではいつ自滅するかわかったものではない」
「ルルーシュ――!」
セイバーが喜びの声を上げた。
この瞬間、ルルーシュの中で最優先目標が天海陸・泉こなたの捜索から、枢木スザクの保護に入れ替わった。
もちろん天海陸たちをないがしろにするわけではないが、やはりどちらが重要かというと親友でありゼロを継がせたスザクなのだ。

「よし、そうと決まればまずは――」
ルルー シュはセイバーに車を停止させ、降りて手近なNPCを掴まえた。

「アッシュフォードの頂きで、ゼロレクイエムを奏でよう――この噂を広げろ」
テストを兼ねて、ギアスを発動させ命じる。
無関係の人間が聞けば意味不明な伝言だが、ルルーシュとスザクの間では通じる暗号だ
アッシュフォードとはルルーシュたちが通っていた学園の名前、頂きとはすなわち学園で最も権力を振るっていた生徒会の拠点、生徒会室。
冬木市における学園は月海原学園しかないため、アッシュフォードが学園を指すとは他のマスターは理解できない。
そしてゼロレクイエムとは、憎しみを集め世界から消すための計画であり、ルルーシュが殺し合いに乗っていないという宣言でもあることが、スザクにだけは通じる。
もしスザクがいるのなら、これを聞けば必ずやってくるだろう。

「ふう……ギアスに異常はない。やはり効かないのはサーヴァントだけか」
「それがあなたの力ですか。まるで令呪だ」
「そうだな、本質的には同じだ。だからこの力を使うのはNPCをか、危険なマスターだけ――」
やはり他人を無理やり従わせるギアスはセイバーには不評のようだ。
それも当然かと、ルルーシュが振り向く――セイバーはその瞬間、一瞬で鎧を身にまといルルーシュの前に立ちはだかった。

351 ◆wYNGIse9i6:2013/02/21(木) 02:52:08 ID:H4pWi6XI0


「セイバー?」
「ルルーシュ――サーヴァントです!それも――二体!」
セイバーの鋭い声にルルーシュは気を引き締める。
まさかいきなり出くわすとは思わなかったが、本来はそのために山を降りてきたのだ。
セイバーが睨む方向を、ルルーシュもじっと見つめる。
現れたのは、ルルーシュと同じくらいの年令の少年と少女に、剣を構えたサーヴァントとゼロのような仮面をかぶったサーヴァントだった。
キャスターから聞いた情報と一致する――天海陸たちに間違いあるまい。

「お前たちは――天海陸とセイバー、そして泉こなたとライダー、だな?」
「!な、なんで俺たちの名前を!?」
ルルーシュが告げると、天海陸はうろたえる。
どうやら間違いないようだ 。

「こうも早く会えるとはな。やはり――遠坂凛はいないか」
「凛ちゃんのことも知ってるの!?」
泉こなたが凛の名前を聞いて色めき立つ。
だがルルーシュが見ていたのは陸ただ一人――そしてルルーシュは見ていた。
凛の名前を出したとき、陸が一瞬、たしかに震え、目を泳がせたのを。

(この反応――そしてあの目。わかるぞ――こいつは俺と同じタイプだ)
ルルーシュは、直感的に陸が嘘をつく人間だと見抜いた。
ゼロとして世界中を欺いてきた経験と、事前に録画した映像で他人と会話を成立させるほどの卓越した洞察力がもたらす天啓の閃きだった。

「ああ。俺の名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。こいつはセイバーだ」
セイバーが油断なく陸のセイバーとこなた のライダーを視線で牽制している。
ステータスを見る限り敵のセイバーとライダーは、こちらのセイバーの敵ではない。
陸とこなたもこちらのセイバーのステータスの高さに驚いている。
もちろん宝具という奥の手があるため絶対有利とはいえないが、少なくとも主導権は握った。

「俺が遠坂凛の名前を知っている理由はな――やつのサーヴァントとあったからだ」
「な、なんだって?」
ルルーシュの言葉に、四人は動揺する。
中でも一番過敏に反応したのはやはり――陸だ。
陸のセイバーは表情を変えないが、マスターである陸はそうはいかない。

「彼女が死んだ時のことも、はっきりわかっている――天海。俺が何を言いたいのかわかるな?」
「え、どういうこと?りっくんが どうかしたの?」
「泉こなた、すまないが少し黙っていてくれ。そっちのライダーもだ。俺は天海に確かめたいことがある――遠坂凛の最後のことでな」
口を挟もうとしていたライダーが止まる。ライダーとしても、遠坂凛の名前を持ちだされては無視することはできない。
陸が凛を殺していないのなら、正直に言えばいい。
ルルーシュとしては、もし陸が凛を殺した犯人だとしても、いきなり敵対する気はない。
こんな状況だから我を忘れて暴走することだって決して不自然ではないし、キャスターは信用しきれないからだ。
だから、罪を認めて遠坂に謝るというのなら――ルルーシュは陸を仲間に迎え入れるつもりだし、騙していたこなたとの仲も取り持つ気だった。
もし認めずにセイバーが 襲いかかってきても、こちらから手を出さなければライダーは敵対しないだろう。
セイバー同士の対決なら、こちらのセイバーが百%勝つ。

352 ◆wYNGIse9i6:2013/02/21(木) 02:55:51 ID:H4pWi6XI0


「さあ、どうだ?言っておくが、俺たちは戦う気はない――お前の返答次第だがな」
「く――」
陸は沈黙している。緊張のあまり、激しく汗をかいている。
こなたも陸とルルーシュの間のただならぬ空気を察したか、ライダーの傍で成り行きを見守っている。
陸のセイバーは微動だにしない。こちらのセイバーが視線で牽制しているからだ
静寂のまま一分が過ぎ、二分、三分――

「――五分、経ったな。天海陸、これがお前の答えか」
「お、俺は――」
チャンスは与えたが、陸は答えなかった。
この分では何時間待っても同じだろう。
凛の死に無関係なら黙る理由はない。
黙るということは、何らかの形で関わっているということ――それをこなたらにバレると困る から、黙るのだ。

「――もういい。時間がない、少し強引だが――喋ってもらうぞ、天海」
「た、戦う気か!?」
「言っただろう、俺たちに戦う気はないと。だが――」
ルルーシュはコンタクトレンズを外す。
ギアスを制御する特別製のコンタクト――

「俺の質問に偽りなく答えろ――天海陸!」

ギアスは解き放たれた。
視線はばっちりと陸の両目と合っている。
狼狽していた陸が一瞬無表情になり――人形のように固まる。

「リク!?」
「りっくん!?」
「戦う気はないって言ったのに――陸くんに何をしたんだ!」
「攻撃ではない。だがいまは天海は俺のいうことを拒否できない状態にある。さあ、天海陸――答えてもらおう!遠坂凜が死んだ時の状況を!」
「俺は、遠坂を――」
今にも飛び出しそうだったライダーを、他でもない陸の声が押しとどめる。
遠坂凛の最後――それはライダーも知らない、天海陸とセイバーだけが知っていることだからだ。
陸のセイバーがようやく表情を変える。
歯を食いしばったような、してやられたという痛恨の顔。

(チェックメイトだ)
ルルーシュは、勝利を確信した。
自分から認めるのであれば更生の余地はあったが、こうなればそうもいかない。
残念だが、陸はここで倒しておかなければならない――こなたとライダーは、凛を殺したのが陸だと知れば邪魔はしないだろう。、
凛を殺したのに嘘をついて、自分たちは味方だとずっと騙していたのだから。
みんなの視線が陸に集中し――

353 ◆wYNGIse9i6:2013/02/21(木) 02:58:00 ID:H4pWi6XI0


「――見殺しにした」
――その一言は、ルルーシュの予想から大きく外れたものだった。

「俺は――死ぬのが怖かったから、敵と戦ってる遠坂を助けないで、ずっと隠れてたんだ――遠坂が、俺を助けてくれたのに。
 でも、セイバーが大怪我してるって聞いて、セイバーが死んだら俺も死ぬって思って、怖くて、俺――」
「ま、待て!どういうことだ――遠坂を殺したのはお前じゃないのか?なら遠坂は、一体誰に襲われたんだ!?」
「わからない。でもあれは多分――キャスターだったと思う。自分のマスターを、操っていたように見えた」
陸は淡々と呟く。どう見てもギアスに支配されている者特有の喋り方だ。
ギアスは正常に機能しているのに、陸は凛を殺していない という。
陸の一言ごとにルルーシュの組み立てた推論や確信が消し飛んでいく。

「なら、お前は何か、特殊な能力を隠していないか!?」
「昔、剣道をやっていた――いまは、もうやめた」
「なっ――」
違う。望んでいた答えではない。
そんなちゃちな特技で、魔術師である凛やサーヴァントと渡り合えるわけがない。

「だったら遠坂凛のサーヴァントを言ってみろ!見ていたのなら知っているだろう!どんなサーヴァントだった!?」
「遠坂のサーヴァントは――アーチャーだ」
迷いなく言い切った陸の言葉に、ルルーシュは今度こそ言葉を失った。
しかし――セイバーは驚愕の声を上げた。
まさか、と思った。
やはり、とも思った。
士郎が自分を引き当てたのなら、遠 坂凛が召喚するサーヴァントもまた「彼」であっても不思議ではない。

「アーチャーだと!?どんなアーチャーだ?」
「白髪の男だ――武器は、刀を使ってた――」
「刀だと? それならセイバーだろう!でたらめを言うな!」
「剣や槍をいくつも召喚して、それを飛ばしてきたんだ」
「ふざけるな、そんなアーチャーがいるわけ――」
「いいえ、ルルーシュ。彼は嘘を言っていないと思います。私とシロウは、前回の聖杯戦争でそんなアーチャーと出会ったことがある。そして彼は――リンのサーヴァントでした」
「な――なにっ!?」
反論しようとするルルーシュだが、セイバーの言葉がそれを許さなかった。
衛宮士郎が再度アルトリア・ペンドラゴンを召喚し、ルルーシュ・ヴィ・ ブリタニアが因縁あるガウェインと契約したのなら――遠坂凛がかつてのサーヴァントを呼び出すことに、何の矛盾があろうか。
白髪で、矢の代わりに剣や槍を飛ばすアーチャーなどどんな伝説を見てもそうはいない。
凛に召喚されるという条件を付け加えれば、もう確定といってもいい。
凛はアーチャー――赤の弓兵エミヤを召喚し、そして敗北したのだ。

「ば、馬鹿な――こんなことが」
ルルーシュのギアス――絶対遵守の力。
金田一に使用した通り、その力は決して失われてはいない。
ギアスの効果は誰よりもルルーシュが知っている。
かつてあれだけ強く日本人との融和を願ったユーフェミアでさえも逆らえなかったのだ。
ならば、ギアスにかかった陸が嘘をつき続けられるはず はない――

354 ◆wYNGIse9i6:2013/02/21(木) 03:01:22 ID:H4pWi6XI0


「――あ、れ? え? 俺、いま?」
「リク!大丈夫か!?」
ルルーシュの質問が途絶えたことにより、陸にかかったギアスもまた解ける。
ギアスが作用している間、受けた人間は記憶に欠落が生まれる。
よろめく陸を彼のセイバーが抱きとめた。
一度術中に落ちれば、決して逆らえないはず――陸の様子から見ても、ギアスは問題なく発動した。

「ルルーシュ。あなたの力が本物ならば、リンを殺したのは彼らではなく――」
「――やつだと言うのか!?」
なのに、遠坂凜を殺したのは陸ではなく、遠坂凛のサーヴァントがキャスターではなくアーチャーだというのなら――
凛とアーチャーに撃退され、マスターを失ったキャスターが、凛殺しを陸に押し付け、凛の令 呪を奪いなおも勝ち残りを目指している、ということになる。

(だが、おかしい――それなら何故、キャスターは俺達の前に現れた? こうして天海たちと話せば一瞬で露呈する嘘を何故ついた?
本当にギアスは通じたのか? キャスターの言っていることは嘘だったのか?
どちらかが嘘を付いているのは間違いない。だが、天海が嘘を付いているのなら、ギアスでそれを暴けたはずだ。
だとするとキャスターか? ライダーもあいつには気をつけろと言っていた。キャスターはそもそも裏切りが多いクラスだし、奴があの悪名高い蘇妲己ならばおかしくはない。
最初からハメるつもりで俺たちに接触したと考えると辻褄は合う。こうして別働隊が天海に接触し、嘘がばれようとも、その間に目的を 果たせたのなら。
柳洞寺は冬木市屈指の霊穴だ。キャスターがそこに陣取ればセイバーと言えども攻め落とすのは難しい。
前の聖杯戦争では柳洞寺を制圧したキャスターがアサシンを召喚したという。俺たちの戦力を分散させ、その隙に――?)

「――これで、はっきりしたな。お前たちは敵だ」
思考に沈むルルーシュを引き戻したのは、怒りに満ちた眼で己を睨みつける陸のセイバーだった。
右手には赤く輝く剣、左手に意識を取り戻した天海陸。
魔術師ではないルルーシュが見てもわかる、とてつもない禍々しさを秘めた剣だ。
騎士王はルルーシュを背にしているが、剣を彼に向けてはいない。
当然だ、この状況を招いたのは100%ルルーシュのギアスに非があるのだから。

「せ、セ イバーさん、落ち着いて! まだ敵って決まったわけじゃ――」
「ライダー、君にだってわかっているだろう! いまリクは、こいつに支配されていた!
 もしこいつが質問に答えろではなく、死ねと言っていたなら! リクは死んでいたかもしれないんだぞ!」
冷静さをかなぐり捨て、陸のセイバーが叫ぶ。
ギアスとはそういう力だ。他者の意思と尊厳を踏み躙り、望みどおりに操る力だ。
うまく使えば人を導くことも、嘘を暴くことも、そして人を自害させることもできる。
マスターの生死を弄ばれたサーヴァントが激怒するのは当然の事だ。
その負い目があるからこそ、騎士王は危険とわかっていながらも先制攻撃を仕掛けられずにいるのだ。

「――りっくん、悪いことしたの?自分 の命が大事ってそんなにいけないことなの?」
泉こなたの呟き。
こなたは戦う覚悟のある人間ではない――同じ一般人である陸の取った行動を否定しないのは当然だ。
たとえ凛を見殺しにしたのが事実でも――自分の命がかかっていたのだから仕方ないじゃないか。
そう――それを責める権利など、誰にもありはしないのだ。

355 ◆wYNGIse9i6:2013/02/21(木) 03:03:08 ID:H4pWi6XI0
10

「そ、それは――」
ルルーシュには確信があった。
天海陸は嘘をついている、と。それは事前の情報だけでなく、本人と会って確信したことでもある。
陸は、昔の自分と同じ目をしていたからだ。
本心を仮面の下に隠し、望まぬ偽りの生活を強いられていた頃の自分と。
ギアスを使えば本性をあぶり出せるはずだった。
だが失敗すればこの通り――陸のセイバーだけでなく、泉こなたが自分を見る目は、完全に非友好的なものに変化していた。
失策だった。
普段のルルーシュならばこうも性急な手段は取らなかっただろう――だが彼は、降って湧いた枢木スザクとの再会の可能性に気を取られていた。
先を急ぎたいのに、陸が喋らないせいで時間が浪費されていく――それ に我慢ならなかったのだ。
まだ話が通じそうなのはライダーくらいだが、それにしてもどう説得すれば通じるというのか。

「非礼は詫びます、紅剣のセイバー。しかし、私たちにも事情があるのです。あなたたちを見定めなければならなかった理由が」
「だから許せというのか? はっ、笑わせないでくれ。もし君が僕と同じ立場だったなら、君はそいつを許せるのか?」
陸のセイバーの反撃に、騎士王は言い返せない。
その沈黙こそが答えだ。
彼女もまた、ルルーシュのギアスが他人にどれだけの屈辱を与えるのか理解している。
陸のセイバーはもう、いつ切りかかってきてもおかしくない。
ステータスを見るに、騎士王ならば容易く返り討ちにできるだろうが――そんなことをできるは ずがない。
もし陸のセイバーを討てば当然、泉こなたのライダーをも敵に回すだろう。
勝つにしろ負けるにしろ、殺し合いを止めるどころか、逆に促進させるだけだ。

(どうする、どうすれば状況を打開できる? 倒すのではなく、対話をするには、どうすれば――!)

泉こなたにギアスを使う――論外だ、火に爆弾を突っ込むようなもの。
逃げる――この場は切り抜けられても対立は決定的になってしまう。最悪、ルルーシュを始めとする殺人者集団が柳洞寺に集まっているなどの噂を流されかねない。
土下座、命乞い――そんなふざけた行為が通じる空気ではない。
打てる手が――ない。
そのとき、風が吹いた――

「――私はブリテンの王、アルトリア・ペンドラゴン。紅剣の セイバーよ、重ねて非礼を詫びる。どうか、剣を収めてはくれまいか」
風は騎士王から放たれている。、
騎士王の手の中で、目も眩むような黄金の剣が、燦然と輝いていた。

「真名を明かした――のか」
愕然と、陸のセイバーが呟く。
ルルーシュもまた驚きに打たれ立ち尽くしていた。
サーヴァント同士の戦いで真名を明かすということは、弱点を晒すと同義だ。
騎士王はその世界的な知名度から宝具を見られれば即座に真名を見破られるとはいえ――自分から明かすなど、自殺行為以外の何物でもない。
彼女には、衛宮士郎のセイバーとしては何一つ利することはない。
禁忌を犯してまで真名を明かしたのは――当然、しょせんは赤の他人であるルルーシュを救うためだ。

356 ◆wYNGIse9i6:2013/02/21(木) 03:04:19 ID:H4pWi6XI0
11

「無論、都合がいい話だとは思う。だが私たちにはもう、あなた方と敵対する理由がない。無駄に血を流さずに済むのなら、私の真名など安いものだ」
堂々と、まさに王の風格を漂わせ――騎士王が言う。
対峙していた陸のセイバーとライダーも、セイバーの威容に呑み込まれたかのように動かない。
好機だ、ここで追撃の一手を――そう理解していても、ルルーシュもまた騎士王の輝きに目を奪われ、言葉を発せなかった。

「――セイバー、もういい。剣を下ろしてくれ」
固まった空気を動かしたのはルルーシュではなく、陸だった。
こなたから一連の流れを聞き、ようやくギアスのショックから立ち直った陸は軽く頭を振ってセイバーの手をそっと抑えた。

「リク―― しかし!」
「いいんだ、セイバー。ルルーシュが俺を疑うのは当然のことだ。実際、俺は遠坂を助けられなかったんだから」
「――わかったよ、リク」
セイバーが渋々剣を下ろした。
その様子を見届け、騎士王もまた剣を収める。

「感謝します、リク」
「勝手に命令されたのは不満だけど、こんな状況じゃ仕方ない、ってのもわかる。それに俺たちが戦ったら、敵の――あのキャスターの思う壺だ」
「天海――お前たちが戦ったのは、本当にキャスターなのか?」
「多分、そうだと思う。さっきのレストランでもNPCのを操ってたようだし、マスターもきっと――」
ライダーが戦ったという大剣を持ったバーサーカーのようなマスター。
キャスターが自らのマスターを操り、スキルを使 用してサーヴァントにすら通じる武器を作成したのだとしたら、マスターがサーヴァントと渡り合えても不思議ではない。
ルルーシュは知る由もないが――とある世界では、キャスターに支援されたマスターが最優のクラスであるセイバーを追い詰めたこともあった。
マスター個人の資質によらずそれだけの強さの手駒を手にできるならば――マスターを失ったとて、別のマスターを見つけられればキャスターにはいささかの問題もない。

「――天海、そして泉。俺からも謝罪させてもらう。すまなかった」
「もう、いいよ。結局、俺への疑いは晴れたのか?」
「ああ――もう、それどころではなくなった。セイバー、すぐに柳洞寺に戻るぞ。衛宮が危険だ」
「シロウが――!? どういうことで す、ルルーシュ」
「もしやつが――あのキャスターが最初から俺たちを謀るつもりだったのなら、現状は戦力を分散させた愚策でしかない。
 やつがマスターを操れるのなら、狙われるのは衛宮か金田一だ。戦闘力のある衛宮の可能性が大きい」
いくらガウェインが控えているとはいえ、ガウェインはあくまでルルーシュのサーヴァントだ。
士郎との間に繋がりはないため、士郎がキャスターの催眠を受けても察知できない。
一度操られてしまえば、顔見知りに手を下すのは難しい。
金田一はもちろん、士郎がアルトリアのマスターであることから、ガウェインもまた。
いかにガウェインと太公望と言えども、身中に潜り込んで人質を得た蘇妲己という猛毒を相手にするのは困難だ。
ガウェイ ンとの念話もこれだけ離れてしまうと不可能。
携帯電話なら通じるが、キャスターに気付かれる可能性が高く危険だ。
すぐに戻る必要があった。

357 ◆wYNGIse9i6:2013/02/21(木) 03:07:22 ID:H4pWi6XI0
12

「天海。できれば、お前たちも来てほしい」
「俺たちも?」
「無論、無理にとは言わない。だが、いま柳洞寺にはお前たちが遠坂凜を殺したと告げたキャスターがいる。もしかしたら――いや間違いなく、お前たちが戦ったやつだろう」
正直なところ、ルルーシュは天海陸への疑いを完全に捨ててはいない。
世の中にはギアスの通じない者も――C.C.やコードを継承した父シャルルのような者もいた。
陸もそうだという確信があるわけではない。
理屈ではない、感情の一番深い所で――ルルーシュは、陸に対しやはり疑心を捨て切れないでいる。
しかし、それでも、キャスターとどちらが怪しいかといえば――現状、キャスターになる。
そう、あのキャスターには不審な点が多 すぎるのだ。
凛が死んだ瞬間を把握しておきながら、なぜ何も手を打たなかったのか。
士郎を守れという令呪があるとはいえ、まるで見殺しにしたかのように何もしなかったのは不自然なのだ。
どちらかが嘘をついているのなら、対面させればどちらかの言い分には穴が生まれるはずだ。
戦闘になったとしても――最悪の場合、太公望の宝具を使えばそこにいるすべてのサーヴァントの宝具を無力化できる。
そうなれば相手がキャスターであれ、陸のセイバーであれ、素のステータスが圧倒的に優れているセイバーを二人擁するこちらの勝ちは動かない。

「――わかった、俺は行くよ。遠坂の敵討ちってわけじゃないけど、あいつは許せない」
「やれやれ――リクが行くって言うなら、僕には 止められないね」
「泉さんはどうする?」
「わ、私も行くよ。一人でほっとかれる方が怖いし――私はりっくんを信じてるからね」
乗用車の運転席にセイバーが乗り込み、助手席にルルーシュ、後部座席に陸、こなた、陸のセイバーが乗り込んだ。
ライダーは席がないため、自前のバイクを召喚し護衛を兼ねて横を並走する。

「さっきはそっちのセイバーとリクに免じて引いたが、僕はまだ君を信用していない。忘れるなよ、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア」
「ああ、わかっている――」
ルルーシュの真後ろで、陸のセイバーが言った。
いつでも心臓を貫ける距離だ。
だが、ルルーシュにとってこれは当然のリスク。陸を疑い、無理矢理ギアスを使った負い目がある。
今の状況で凶行 に走るほど陸のセイバーは愚かではないだろうし、その程度で同行を許可してくれるなら安いものだ。
こうして彼らは一路、柳洞寺へと取って返すことになる。

358 ◆wYNGIse9i6:2013/02/21(木) 03:09:40 ID:H4pWi6XI0
13

  《C》


(アハハハハ――ハハッアハハハハハハッ! 見たかいリク! あいつの顔、傑作だったな! アハハハハハハ!)
(うるさいぞ! 少し静かにしてろよ!)
(む、無理だよリク――ハハハハハハハッ! はぁ、はぁ――ハハハハ! アハハハハハハハハハッ!)
(なんでおまえはそう――!)
必要はないのにわざわざ念話を繋げてまで爆笑するイスラを、脳内でこれでもかと殴る。
天海陸はイスラほど図太くはない。
気持ちはイスラと同じでも、頭の中で笑いつつ表情はぴくりとも動かさないという芸当はできそうにない。

(はぁ――ああ、笑った笑った。一生分は笑ったかもしれないよ)
(言ってろ。とにかく――お前の読み通りだったな)
(備 えあれば憂いなし、ってね。まさかあのセイバーの真名まで聞けるとは、本当に予想以上の成果だよ)
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアのギアスは、当然ながら天海陸には通じていなかった。
いや、正確に言えば陸は確かにギアスにかかったのだ。
だが、それはとても「絶対」遵守といえるほどの威力ではなかった。
陸がどうやってギアスを切り抜けられたのか――話は数時間前に遡る。




「リク、僕の――僕らの、と言ってもいいが、弱点がなにかわかるか?」
「弱点――それは戦力って意味でか?」
「それも含む。答えを言ってしまうとだね、それは魔術だ」
休息のために借りたネットカフェの個室で、陸はイスラからこう切りだされていた。

「まず僕だが、セイバーのクラ スでありながら僕には対魔力スキルというものがない。遠坂凛にしてやられたのもそれが一因だね。
 彼女が一流の魔術師だったこともあるが、人間の魔術師であれならキャスター相手じゃ言わずもがなさ」
「つまりお前は、接近戦が不得手なだけじゃなく魔術も苦手――自分以外のあらゆるサーヴァントが天敵ってことかよ」
「そうだね。だけどリク、さすがに弱点しかないわけじゃないよ。僕には僕の強みがある」
「宝具か?」
「宝具じゃない――いや、結果的には宝具になるのかな? まあとにかく、僕はね、本業は剣士と言うよりは召喚師といったほうが近い」
「召喚師? 魔術師じゃなくて?」
「魔石を通じて異界の住人を呼び出し、使役するのが召喚師だ。まあ正当な召喚師とも言い きれないんだけど、とにかくその力はいまも使えるんだ」
実体化したイスラが陸の顔に手を伸ばす。
彼が手にしたのは陸がかけていた眼鏡だ。

359 ◆wYNGIse9i6:2013/02/21(木) 03:12:37 ID:H4pWi6XI0
14

「もちろん、いまの僕はキャスターのクラスじゃないから召喚術を使えるといっても本職ほど万能じゃない。でもね、いま必要な力を得るには十分なのさ」
「魔術に対抗するための力か」
「そう、それは君にとっても同じ話だ。誰かが君のついた嘘を暴こうとするなら、何が一番手っ取り早くしかも確実だと思う?」
「その場にいて見てた目撃者を探すとか?」
「それじゃ回りくどいね、リク。もっと柔軟な発想を持ちなよ。嘘を暴こうとするなら――簡単さ。嘘をついたやつに自白させればいい」
「自白――!? そんなこと!」
「しない? そりゃそうだ、自分から言うわけがないね。問題は、君が誰かに魔術をかけられて口を割らされそうになったときってこと」
「でき るのか? そんなこと」
「僕には無理だが、キャスターならどんな英霊だろうと可能だと思っていい。そしてさっきのNPC、あれをやったのは遠坂凛のサーヴァントと見て間違いないと思う。
 マスターを失って短時間存在し続け、さらにマスターの令呪を必要とする――おそらくキャスターだろうね。キャスターなら自分だけで令呪の移植も可能だろうから」
「つまり、俺たちが遠坂を殺したのはもうバレている可能性がある――?」
愕然とする陸。
それでは苦労して凛を葬った意味が無いではないか――

「楽観は危険だ。バレてると思ったほうがいい――だがまだ、覆せないわけじゃないよ」
「え?」
「いいかい、まず僕がリンを殺したとき、キャスターは来なかった。つまり僕らは、と いうかコナタとライダーは実際にキャスターを確認していないんだ」
こなたと映司が最初に凛と出会ったとき、映司はたしかにそこにサーヴァントの魔力を感じたが、姿は確認できなかったと陸たちに言った。
彼らは知る由もないが実は、いかに蘇妲己とて霊体化したままでは宝具も魔術も使えないため、霊体化を解いた瞬間に宝具【金霞帽】を使って姿を隠していたのだ。
逃げた間桐雁夜とアサシンを追跡するにも【金霞帽】を使う必要があり、必要以上にサーヴァントの能力を開示するのを嫌った凛も特に姿を見せろとは言わなかった。
もちろん妲己には妲己なりの思惑があって、意図的に姿を見せなかったのだが、負傷したこなたや戦闘を終えたばかりの映司は、結果的に妲己にさほど注意を払って いなかった。
だから陸が凛のサーヴァントについてそれとなく二人に尋ねても、これといって具体的な情報は得られなかった。

「向こうはリンから念話なり視覚共有なりで僕らを認識しているだろう。が、僕らはキャスターを捕捉していない」
「それは――駄目なんじゃないのか?」
「情報戦で遅れを取っているのは事実だ。だがこれを逆手に取ればいいのさ。そう――遠坂凛のサーヴァントは、《キャスターではない》ことにするんだ」
キャスターが陸たちの情報を掴み、それを別のマスターに伝えたとしよう。
その情報を信じ、別のマスターが襲撃してくる――だが証拠はない。
目撃者は既にイスラが根こそぎ消滅させ、レストランの監視カメラも念入りに壊しておいた。
根拠はキャス ターの証言だけだが、そのキャスター自身が疑わしいとなればどうなるか?
少なくとも、こなたと映司は陸たちにつくだろう。
その上で言うのだ。遠坂凛のサーヴァントはキャスターではなく別のクラスだった、と。
ならばそのキャスターは何者か?答えを提示する。凛を殺した敵のサーヴァントだ、と。
陸が刃旗で変化して映司を襲ったことも説得力を増す材料になる。
キャスターに操られたマスターが襲ってきた。マスターはなんとか倒したものの、キャスター本人には逃げられてしまった。
マスターを失ったキャスターが必要とするものは――令呪だ。敵対していた凛の腕を奪った理由になる。

360 ◆wYNGIse9i6:2013/02/21(木) 03:14:40 ID:H4pWi6XI0
15

「かなり苦しい理屈じゃないか?」
「僕もそう思うよ。でもね、信じさせるのが目的じゃない。別のマスターがリンのキャスターに不信感を抱けば御の字なんだ。あとはライダーが勝手に僕らを庇ってくれる」
「じゃあ――キャスターとは別の、遠坂のサーヴァントの設定を俺たちで考えておかなきゃいけないな」
「セイバーはやめておこう。対魔力持ちのクラスがキャスターに討ち取られるのは不自然だ。同じキャスター、制御のきかないバーサーカーも除外。
 必然的に候補はランサー、アーチャー、ライダー、アサシンに絞られるね」
「ランサー、アーチャー、ライダー、アサシンか――」
「真名まで凝る必要はないが、多少のリアリティは必要だ。君がいままでに戦った、 一番手強い相手でも思い浮かべたらどうだい」
陸が戦った、一番の強敵――言われ、思い浮かべたのは【刃旗狩り】タカオの姿だった。
結果的に武部洋平が命を落とすことになった、あの戦い――タカオはいくつもの刃旗を操り、棺守化した上に刃旗使いとなった陸さえも圧倒した。

(勝てたのは偶然、もしくはネーネのお陰だ。あいつをサーヴァントに当てはめるなら)
タカオはただの日本刀でやすやすと刃旗使いの意識圏を斬り裂いた。つまりセイバーか――否。
本気のタカオは刃旗で生み出した刃を射出してきた。
その脅威たるや日本刀など比較にならない。
一発一発が砲弾のような威力の刃旗が雨あられと飛んでくるのだ。
必要なのは柔軟な発想――そう、タカオをサーヴァントと して定義するなら、刃旗を弾丸とするガンマン――アーチャー以外にありえない。

「白髪で筋肉質の男。普段は刀で戦って、本気をだすと複数の刃物を生み出してそれを弾丸みたいに撃ってくる――アーチャーだ」
「おや随分と具体的だね。まさか本当にそいつと戦ったことがあるのかい?」
「ああ、俺が知ってる中で一番強いやつだ」
「いいと思うよ。どうせもう消滅していることにするんだしね。おっと、脱線したね。話を戻そう。
 とにかく、君の刃旗はサーヴァントを傷つけられるほど強力だが、キャスターの魔術に対抗できるかというとおそらく無理だ。こればかりは魔術師じゃないとね」
「俺たちは二人揃って魔術師に弱いのか」
「そこで、これさ」
と、イスラが陸から取り上 げた眼鏡を示す。
イスラが何気なく剣を抜き、眼鏡に剣先を押し当てる。

「おい! 何するんだよ」
「壊しはしないよ。リク、僕らリィンバウムの召喚師はサモナイト石と触媒を媒介とすることで異界の住人と誓約を結ぶ。
 その触媒となる物はなんだっていい――たとえばフォークでも本でも包帯でも、それこそ石ころでもね」
「ず、随分とアバウトなんだな」
「もちろん、媒介にしたからと言って全部が全部成功するわけじゃない。いや、大半はハズレ、何とも契約できない結果になる。
 だけどもし、用いた物が強い力を持っていたり、強い思いを込められていたりするなら――成功率は桁外れに高くなるんだ」
「でも、俺の眼鏡は別に特別なものじゃないぞ」
「そうかい?これは 単に視力矯正用のものじゃないだろう。これは――君にとっての《仮面》だ。嘘をつく自分を守るためのね」
「――それは」
「僕は君の人生なんてこれっぽっちも知らないが、目を見ればわかるよ。なにせ僕にそっくりだからね。嘘をつくのに慣れてしまって、もう呼吸をするも同然に嘘をつける――」
違う、とはいえなかった。

(そうだ、眼鏡をかけるようになったのは、天音姉がいなくなってから――誰も信用できなくなって、でも生きていくために周りに合わせないといけなくなってからだ)
その頃から剣道もやめた。視力も落ちた。何もかもがどうでも良くなって――嘘をつくのが日常になった。

361 ◆wYNGIse9i6:2013/02/21(木) 03:15:44 ID:H4pWi6XI0
16

「君が意識しなくてもこの眼鏡には君の嘘がたっぷりと染み込んでいる。触媒としては、これ以上ない――」
イスラの剣が赤く輝く。
光が外に漏れないように、陸は慌てて毛布をドアにかぶせた。

「嘘を貫き通す力。誰にも侵されない力。君と僕が互いに望むのは、《他者を拒絶する》力――」
光が途切れ、イスラが剣を収めると、陸の眼鏡の横に、手のひらに握り込めるくらいの大きさの水晶が落ちている。

「イスラ、これは?」
「やはり――素晴らしいよ、リク。これこそ、僕らの必要とする力――【反魔の水晶】だ」
イスラには確信があった。
陸が一番恐れることは嘘がバレることだ。
陸の嘘を象徴する眼鏡を、同じく嘘を得意とするイスラが誓約の儀式に用 いるのだ。
導き出される結果は、当然のごとく嘘をより強固に塗り固めるものになる。
すなわち――他人からの干渉を緩和する【反魔の水晶】である。
宝具へと昇華されたこの無属性召喚術は、所有者に対魔力スキルを付与する。
マスターが持てば魔力経路を通じてサーヴァントにもその効果は伝播する。
人間の魔術師は当然、キャスターの魔術もある程度防げる。
対魔力スキルを持たないイスラの欠点をもカバーすることができる、陸とイスラにうってつけの召喚魔法だ。





時間は戻って、車内。
陸がルルーシュのギアスを受けてもルルーシュに従わなかったのは、この【反魔の水晶】の恩恵である。
【反魔の水晶】の効果はあくまで威力の緩和であるため、陸はギアスを掛 けられている、ということは認識できた。
頭の中で声が響く。ルルーシュの問いに偽りなく答えろと。
しかし、響くだけだ。何の強制力もない声だ。
ルルーシュの目論見を見破った陸は、ギアスにかかったふりをして自分に都合のいい《事実》を話しただけ。
捏造したタカオ=アーチャー説を予想以上に強く敵のセイバーが信じたことが誤算といえば誤算だった。ただし、プラスに作用した誤算だが。
ちなみに、ネットカフェにあった物で試したところ何一つ誓約の儀式は成功しなかった。
ムーンセルが用意した物に異界の住人が宿る物はないということだ。
こればかりはあくまでセイバーでありキャスターじゃないイスラではどうにもならない。
イスラが誓約できるのは、陸の眼鏡のように マスターがもともと所持しているものだけのようだ。

(とにかく、これでルルーシュたちの懐に潜り込めそうだな)

陸は手の届くところにいいるルルーシュをあえて見ないようにしている。
どうもルルーシュはまだ完全にこちらを信用したわけではなさそうで、時折り鋭い視線を感じるのだ。
ルルーシュ同様、陸もルルーシュを自分と同じタイプだと――嘘つきだと本能的に察している。

362 ◆wYNGIse9i6:2013/02/21(木) 03:18:57 ID:H4pWi6XI0


17

(ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア――こいつは危険だ。遠坂や泉さんみたいに騙し通せるとは思えない)
車が柳洞寺に付く前に、どうにかルルーシュを排除しておきたいところだが――間桐邸に向かうように言うのはどうだろうか。
セイバーことイスラと映司ことライダーは当然、間桐邸が倒壊した音は聞き取っていた。
だがあえてこなたにはに告げていない。
音の大きさからしてかなりの破壊があったことは間違いない。
当然、強力なサーヴァントがいる可能性は大きく、戦えるサーヴァントが実質的にライダーしかいない彼らが向かうことは自殺行為である。
ライダー一人で偵察に向かうことはできたが、それをやって凛は死んだ。
映司はもう二度とこなたから離れな いと決めていたため、気になるけれども向かわないという決断をしたのだ。
イスラは陸に伝えたが、彼らはもとより危険が予測される場所に向かうつもりはなかった。
もしサーヴァントがいれば戦うのはライダーと向こうのセイバーだ。
つまりルルーシュは無防備になる。
柳洞寺に残る他のメンバーへの説明役には、女のセイバー一人いれば十分だ。
謀殺するチャンスと言えるが――

(こいつは未だに俺たちを疑っている。下手に手を出すと手痛い反撃を受けそうだ)

ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアと天海陸,、そしてイスラ。
一人と二人の嘘つきの戦いは、まだ始まったばかりだ――

363 ◆wYNGIse9i6:2013/02/21(木) 03:22:52 ID:H4pWi6XI0
18

【深山町/午前】


【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュ】
[令呪]:3画
[状態]:健康
[持ち物]:乗用車、携帯電話

【セイバー(アルトリア・ペンドラゴン)@Fate/ stay night】
[状態]:健康
[装備]:勝利すべき黄金の剣(投影)@Fate/ stay night


【泉こなた@らき☆すた】
[令呪]:3画
[状態]:健康

【ライダー(火野映司)@仮面ライダーOOO/オーズ】
[状態]:健康


【天海陸@ワールドエンブリオ】
[令呪]:3画
[状態]:健康
[持ち物]:反魔の水晶@サモンナイト3

【セイバー(イスラ・レヴィノス)@サモンナイト3】
[状態]:健康、魔力200%


《Information》 ―― セイバー(イスラ・レヴィノス)のステータスが更新されました。


(スキル)
誓約の儀式:A+…サモナイト石の剣である「紅の暴君」(キルスレス)と、剣や本などの物質を媒介に機・霊・獣・鬼・無の五属性の召喚獣と誓約を結ぶ儀式。
           本来はキャスターのクラスでこそ真価を発揮 するスキルのため、セイバーのクラスではムーンセルが創りだした物を媒介にすることはできない。

(召喚)
ランク:B 種別;召還宝具 レンジ:― 最大補足:―

「反魔の水晶」
召喚術の効果を緩和する不思議な水晶。確かな力を感じる・・・
 「魔障壁生成」:召喚効果を減少する障害物。物理攻撃で破壊可能
           マスターとサーヴァントに対魔力:Cを付与する

364 ◆wYNGIse9i6:2013/02/21(木) 03:25:36 ID:H4pWi6XI0
投下終了です。

365名無しさん:2013/02/21(木) 03:31:16 ID:raUhoDVA0
投下乙!
ルルーシュもまんまと一杯食わされたなw
陸組、状況的に厳しいステルスマーダーになるかと思われたが
キャスターのダッキちゃんに疑惑を向けることで自分達への疑いを回避するとはな
おまけにダッキちゃん自身が怪しさ満点+凛を見殺しにしているから説得力もあるという…
スキルと宝具の能力が更新されたが、まぁ原作でもあるなら大丈夫っぽそうかな?
DIOのロードローラーやトキの砕覇拳とか何だかんだで能力途中追加はちょいちょいあったし…

366名無しさん:2013/02/21(木) 03:31:44 ID:raUhoDVA0
連発失礼
そういえばタイトルは何か

367名無しさん:2013/02/21(木) 03:39:06 ID:oVW5EHw6O
こうしてアルトリアさんの最優()伝説に新たな1ページが…

368名無しさん:2013/02/21(木) 03:43:35 ID:raUhoDVA0
>>367
悪気はないとはいえ結果的に陸の嘘の説得力を固めてしまったからなw

369名無しさん:2013/02/21(木) 07:02:52 ID:3fMFGxv20
でもあそこでお互い矛を収めるにはああするしかなかったんじゃないかね
むしろあのぐらいの誠実さを見せないとルルーシュだけじゃどうしようもなかっただろ
まあ陸組が一枚上手だった、ということで

370名無しさん:2013/02/21(木) 11:33:19 ID:6KJNz3u20
すごいな原作以上に謀略が交差してる

371名無しさん:2013/02/21(木) 12:11:10 ID:HJBkUSno0
投下乙!
そう言えばギアスは対魔力で防げる設定だったわね、これは上手い。
今回は陸組の先読みが勝てたケースだけど、今後もルルーシュの情報がばれるとそれだけ簡単に対策が取れるようになるってわけだ。
情報戦の洋装が増してきたな。これが聖杯戦争か…!
情報が揃った後半になると、陣地を構えて道具作成スキルを持ったキャスターが活躍しそうだな。

それはそれとして、どれぐらいまでの対魔力ランクならギアスを無効に出来るのだろうか?

372名無しさん:2013/02/21(木) 12:13:44 ID:HUSndNgMO
投下乙です。

反魔の水晶って、隠し持てるくらいの小ささだったっけ?

373名無しさん:2013/02/21(木) 13:22:03 ID:yGi5xhAkO
とりあえずパッと見で不審がられなきゃいいんじゃね?<水晶

しかし陸&イスラvsルルーシュvs妲己の嘘つきバトルが白熱してきたなw

374名無しさん:2013/02/21(木) 13:22:44 ID:raUhoDVA0
>>369
陸がついたアーチャーの嘘のことはともかく
ルルーシュが八方塞がりになりかけた所を真名明かして何とか切り抜けられたしな
状況的には仕方無い、最優(笑)というよりもむしろルルーシュを一応はサポートできたしね
そうならざるを得ない状況を作ったのが陸の嘘だったので結果的にお互い食わされたけど

375名無しさん:2013/02/21(木) 13:23:45 ID:raUhoDVA0
ダッキちゃん参入+ステルスマーダー陸&イスラの潜り込み…
安定していた寺組も段々危うくなってきたなw

376名無しさん:2013/02/21(木) 13:27:53 ID:IYZfRVS.0
セイバーのステの高さに驚くってあるけど3人中一番ステ高いのって変身後のオーズじゃないの?

377名無しさん:2013/02/21(木) 13:36:51 ID:raUhoDVA0
宝具無しの素であのステータスだからってことじゃないのか?

378名無しさん:2013/02/21(木) 15:43:05 ID:dOPIVpd20
陸組が見事にピンポイントでメタ張れたなぁ…
エミヤとタカオの偶然の一致とか状況も手伝いまくってるし、こいつら実は幸運もっと高いんじゃなかろうかw

379 ◆wYNGIse9i6:2013/02/21(木) 15:51:23 ID:H4pWi6XI0
失敬、タイトル忘れたまま寝てしまいました。
「嘘つきたちの狂宴」でお願いします
映司のステータスについては勘違いしていましたので、折を見て修正しておきます

380名無しさん:2013/02/21(木) 16:53:53 ID:raUhoDVA0
>>379
了解、ひとまずwikiに収録しておきます

381名無しさん:2013/02/21(木) 18:23:24 ID:yGi5xhAkO
>>378
状況を利用するのが巧いって感じがする

382名無しさん:2013/02/22(金) 14:59:47 ID:Gw..3qI2O
もしかして陸達ってルルーシュとアルトリアで主従だと思ってる?

383名無しさん:2013/02/22(金) 15:48:27 ID:VQdUIW7M0
まあそう思わせるためにガウェイン置いてきたんだろうしね
全ステEXとか心臓に悪いってレベルじゃねーぞ

384名無しさん:2013/02/22(金) 19:20:21 ID:5IuEtQI20
もう駄目だ…おしまいだぁ…(寺で撮影されたガウェインのステータスを確認した市長)

385 ◆wYNGIse9i6:2013/02/22(金) 19:26:31 ID:Px1CMEkg0
ご意見ご感想ありがとうございます。
ライダーのステータスについてですが、以下のように
「映司は変身しない」「ルルーシュはライダーの外見は知っていても詳細なステータスまでは知らない」に修正します。


その手には既に彼の宝具が出現していた。

「――変身!」
映司は一瞬で姿を変える――ライダーとしての姿、仮面ライダーオーズへと。
セイバーも剣を構え、こなたと陸を守る構えだ。

その手には既に彼の宝具が出現していた。
火野映司の宝具は使用することで自身を変化させるタイプだ。
通常時と戦闘時でステータスが激しく変化するため、真名の隠蔽や撹乱に役立つという利点がある。
そのため映司はまだ変身せず、セイバーも剣を構え、こなたと陸を守る構えだ。
いかにセイバーのステータスが貧弱と言えども、映司が変身する時間を稼ぐことくらいはできる。


セイバーが睨む方向を、ルルーシュもじっと見つめる。
現れたのは、ルルーシュと同じくらいの年令の少年と少女に、剣を構えたサーヴァントとゼロのような仮面をかぶったサーヴァントだった。
キャスターから聞いた情報と一致する――天海陸たちに間違いあるまい。

セイバーが睨む方向を、ルルーシュもじっと見つめる。
現れたのは、ルルーシュと同じくらいの年齢の少年と少女に、宝具を構えた二人の男だった。
日本人らしき男がおそらくライダーだろうが、いまは鎧をまとっていない。
しかし外見はキャスターから聞いた情報と一致する――天海陸たちに間違いあるまい。



ステータスが変化する特性と、「仮面」ライダーという出自からして
オーズとディケイドはランスロットやアポクリファのモードレッドのように、変身時はステータスを隠蔽する効果持っててもいいんじゃないかなと思います
それぞれプトティラとコンプリートの最強フォームになったら隠蔽効果も解除、で

386名無しさん:2013/02/22(金) 20:18:19 ID:5IuEtQI20
了解、修正しておきました
ステータス隠蔽に関してはまぁ良さそうかな?
今のところライダー二人のステータスを確認した描写のあるマスターもいないし

387 ◆QSGotWUk26:2013/02/22(金) 20:42:00 ID:4jf4YiWs0
投下乙です!
逆境を逆手に取る陸とイスラの知略がお見事
絶対遵守のギアスは強力すぎるからこそ、対策を取られた時のダメージが大きいなあ
ワールドエンブリオ読み返したら、たしかにタカオはアーチャーとかぶる要素あってなるほどと思わされました
セイバーさんが誤解するのも仕方ない。というかむしろ人死にが出るのを回避したんだから称賛されるべきだろjk
イスラも着々と力を蓄えて、ある意味このロワ一番のダークホースになりつつある……?



キャスター(蘇 妲己)
衛宮士郎&セイバー(アルトリア)
金田一一&ライダー(太公望)
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア&セイバー(ガウェイン)
天海陸&セイバー(イスラ・レヴィノス)
泉こなた&ライダー(火野映司)
衛宮切嗣&ライダー(門矢士)

修正も完了されたのならこれらのキャラを予約せざるを得ない

388名無しさん:2013/02/22(金) 20:51:38 ID:5IuEtQI20
セイバーさんはまぁ今回は仕方無かったな
真名をカミングアウトして戦闘を回避できたし、ちゃんと仕事はしていた
つか陸&イスラが(狡猾さ的な意味で)予想外の強敵だったなw

なんという予約スピードッ!
つうわけでwiki予約しときますね というケリィ組もか!
こりゃオーズさんがいる所に殴り込みで厄介なことになりそうやでぇ…
しかも士郎とケリィの遭遇フラグ

389名無しのマスターさん:2013/02/22(金) 21:09:41 ID:u1OZEINg0
なにこれ修羅場w

390名無しのマスターさん:2013/02/22(金) 21:14:50 ID:u1OZEINg0
連投失礼
ふと気になったんだが反魔の水晶が破壊された状態でギアス喰らったらどうなるんだろう?
もう効かなくなるのかそれとも有効になるのか…

391名無しさん:2013/02/22(金) 21:18:34 ID:5IuEtQI20
所持している間は対魔力Cを得られるようだし
破壊すれば流石に効果が無くなるんじゃあないか?
まぁどっちにせよ一度ギアスをかけてる陸にはギアス自体もう使えないだろうけど…

392名無しさん:2013/02/22(金) 22:49:07 ID:2iBQUWzMO
ギアスが脳まで通ってはいるから壊してから改めて質問すれば本当のこと言うんじゃね?スザクの「生きろ!」とか数年経っても持続してる訳だし

393名無しさん:2013/02/23(土) 06:48:50 ID:Lv5A3hZY0
予約面子の鯖見たら綺麗に仮面ライダー勢二人、円卓二人、封神演義勢二人に分かれてるな
いや、日本人二人、イギリス人二人、中国人二人に分けてもいいんだけどね

394 ◆WFV9UGJwQQ:2013/02/23(土) 10:50:09 ID:PHUj50e20
すいません、一度予約を破棄します。
完成の目処がたち次第再予約させて頂きます……

395名無しさん:2013/02/26(火) 10:42:02 ID:gvB8Ng/w0
そういやクー・フーリンって狂戦士モードだととんでもない異形と化すんだけど。
令呪による強制だから、元々バーサーカーで現界した場合程外見は酷くはならないのかな?
ならば、神話・故事の再現でクー・フーリンを正気に戻すことは
充分に出来ると考えても良いのか。

よし。裸の女、裸の女っと…。
嫌がれば令呪を使えば良いか。

396名無しさん:2013/02/26(火) 12:09:31 ID:BAkSczPcO
>>395
まどか・詩音・さやかちゃん「!?」

番長「ガタッ」

397名無しさん:2013/02/26(火) 13:28:20 ID:mWOW3wjg0
要は令呪でバーサクかけてる状態だからデスペルかければいい

398名無しさん:2013/02/26(火) 13:40:24 ID:NES7hbXE0
>>395
神話で狂ってる時に裸の女が抱きついたら賢者モードで落ち着いたって逸話あるんだっけ?
全裸の女に抱きつかれて元に戻る兄貴…なんか複雑だなww

神話の再現はともかく、ディスペルは令呪に対してどこまで効くんだ?
よっぽど強力なのしか使えなさそうだが…

399名無しさん:2013/02/26(火) 13:43:59 ID:Wa0xpCHQO
>>396
セイバーすらガキって言う男が中学生抱くわけないだろwww

400名無しさん:2013/02/26(火) 14:13:56 ID:NES7hbXE0
待て待て、「嫌がれば令呪を使えばいいか」って言っているではないか
つまりやるのはサーヴァントでは…危険度考えたらそりゃそうだろうけど
でも現状女性鯖ってセイバーさんとダッキちゃんとリインちゃんだけか
ダッキちゃんはそもそもマスターいない、シロウがセイバーを裸で特攻させるとも思えない…
あっ(察し)

401名無しさん:2013/02/26(火) 14:14:40 ID:NES7hbXE0
あっさやかちゃん忘れてた
でもあの子狂化してるからリアクションなくて面白くなさそうだね!

402名無しさん:2013/02/26(火) 14:25:22 ID:mWOW3wjg0
令呪と言えば令呪の命令って基本永続なのに何で妲己ちゃんのやつだけ時間経過で解除されていく扱いなんだ?

403名無しさん:2013/02/26(火) 14:38:33 ID:Cxsn.rgI0
そこらへんは原作含めてアバウトです

404名無しさん:2013/02/26(火) 14:39:47 ID:NES7hbXE0
ダッキちゃんは「士郎を守れ」っていう割と曖昧な命令だしな
基準が曖昧な命令は時間経過で解除されたりする…

405名無しさん:2013/02/26(火) 14:47:19 ID:2l3gfbnQ0
しかも当のマスターが死んでるしね

406名無しさん:2013/02/26(火) 15:17:16 ID:BAkSczPcO
>>401
魔女化以外の活躍の場が増えるよ!やったねさやかちゃん!

407名無しさん:2013/02/26(火) 15:23:34 ID:mWOW3wjg0
原作アーチャーやランサーの凛に従えとか麻婆を主にしろとか
ラオウや金鰤やランスロのワカメに文句言うなとかワカメに従えとかと比べても
妲己ちゃんの士郎を守れが特別曖昧とは思えんのだが

408名無しさん:2013/02/26(火) 15:40:07 ID:A7BAgGtE0
>>398
裸見て「?!」と怯んだ好きに抱きついて押さえ込み、
あと、水をぶっかける。
まあ笛でも女たらしだしな兄貴は。

409名無しさん:2013/02/26(火) 15:47:06 ID:A7BAgGtE0
しかし、バゼットがいたらこれ以上ないランサー覚醒の適任者だったのになあ。
つくづく非参加が惜しまれる。

410名無しさん:2013/02/26(火) 16:14:39 ID:pih5rKko0
そういえばムーンセルの令呪って冬木の令呪と効果同じなんかね?
なんかエクストラでムーンセルのバックアップがどーのこーの言ってた気がするし、
もしかしたらムーンセルの令呪は冬木の令呪に比べて性能が良いかもしれないぜ。

411名無しさん:2013/02/26(火) 18:55:49 ID:ryRUwjckO
>>407
「従え」ってのはその都度命令が入るけど、「守れ」ってのはサーヴァント側の解釈だからじゃないか?

412名無しさん:2013/02/26(火) 20:52:20 ID:x0jkkAxY0
鯖側の解釈である程度は自由に動けても令呪の効果が消える事は無いんじゃないの?

413名無しさん:2013/02/26(火) 20:55:29 ID:NES7hbXE0
ワカメの令呪はそもそも「効力が時間経過で弱まることは無い」とは一度も言及されてないしな
その辺は書き手さんの展開次第で色々と転がりそう

>>408
実際にやってみる人は恥ずかしすぎて死ねるね!

414名無しさん:2013/02/28(木) 22:34:43 ID:kydFMcPQ0
凛がアーチャーに最初にやったような抽象的過ぎる命令の場合、
拘束力と効果は目減りする。
その法則から考えれば、時間が経過すれば結構まずいことになるかもw

415名無しさん:2013/03/01(金) 02:48:55 ID:5Wml93Ac0
エクストラ本編でも緑アチャが卑怯な真似はするな的なことあの爺さんに呪霊で命じられてたっけ?

416名無しさん:2013/03/01(金) 03:05:49 ID:5Wml93Ac0
そして嘘つき達の投下読んだ
おお、これは面白いな
セイバーとルルが上手いこと付き合いだしてスザクのことも意識しだしたと思ったらそれで気が緩んで失策してしまうとは
ルルのギアスはかなり強力な力なんでこうして元からの素質以外での対抗がなされるのもいい感じだ

417 ◆QSGotWUk26:2013/03/01(金) 07:49:42 ID:GL7a.Tyg0
延長申請します

418 ◆QSGotWUk26:2013/03/08(金) 19:21:38 ID:IpHlAH0E0
すみません、期限までに完成しなかったので一旦予約を破棄します
長期間キャラ拘束をしてしまい、申し訳ありません
完成したとき予約が入っていなかったら改めて予約します

419名無しさん:2013/03/10(日) 14:28:04 ID:3f8IJYcw0
了解です

420名無しさん:2013/03/29(金) 00:33:43 ID:pu6BjFpU0
保守

421名無しさん:2013/04/05(金) 22:40:25 ID:3/hGXDiY0
何か話題でも振ったほうがいいのかな?

422名無しさん:2013/04/05(金) 23:30:40 ID:fhgXY0I60
めっきり予約が来なくなっちゃったな…
二次聖杯したらばにはちょいちょい書き込みが来るけどね

423名無しさん:2013/04/09(火) 20:25:51 ID:YsPf0nHk0
ヒント:みんなCCC中

424名無しさん:2013/04/09(火) 22:39:06 ID:AK.cLHSU0
年度初めはみんな忙しいもんだしこんなもんだろ

425 ◆QSGotWUk26:2013/04/14(日) 15:15:52 ID:buakDlEM0
>>387のキャラで再度予約します

426 ◆2shK8TpqBI:2013/04/15(月) 19:14:52 ID:qeABDnXI0
鹿目まどか
衞宮切嗣&ライダー(門矢士)
予約します

427名無しさん:2013/04/15(月) 20:00:04 ID:6s2zieTs0
おお、久しぶりに予約が

428名無しさん:2013/04/15(月) 20:01:57 ID:4P5jiGUA0
>>426
ケリィのチームはすでに予約が…(>>425

429 ◆2shK8TpqBI:2013/04/15(月) 20:10:51 ID:qeABDnXI0
失礼しました
見落としてましたので
鹿目まどかだけ予約します
ご迷惑おかけしました

430名無しさん:2013/04/15(月) 20:20:56 ID:914Gs1460
>>426
すぐ上でケリィ組予約されてますよ?

431名無しさん:2013/04/15(月) 20:22:55 ID:914Gs1460
既に指摘されてた…orz

432名無しさん:2013/04/15(月) 20:27:53 ID:4P5jiGUA0
>>431
すまぬ…すまぬ…

433名無しさん:2013/04/15(月) 21:38:45 ID:914Gs1460
気に召されるな
書き込む前にリロんなかったこちらの落ち度ですんで

434 ◆xPfVh1eH2M:2013/04/16(火) 18:18:13 ID:btI4IXOE0
匂宮出夢&アサシン(サブラク)、間桐慎二&ライダー(ラオウ)、羽瀬川小鳩&キャスター(キンブリー)、枢木スザク&バーサーカー(ランスロット)を予約します。

435名無しさん:2013/04/16(火) 22:14:24 ID:7IalpNMQ0
ついに人間喰いvs世紀末覇者が・・・!

436名無しさん:2013/04/17(水) 18:10:14 ID:nk.6wk4g0
コトミネ「なんで武器もってないんですか」

437名無しさん:2013/04/17(水) 18:10:29 ID:nk.6wk4g0
誤爆

438名無しさん:2013/04/18(木) 16:04:11 ID:tgjjV1U.0
続々予約が来たね
どれも今後の展開に大きく関わりそうなだけに楽しみだ

439名無しさん:2013/04/18(木) 16:54:57 ID:VsNXPZ6M0
安定気味だった寺組に陸達の介入+トキとおじさんとの戦いを終えたばかりのワカメ軍団に凶悪アサシン組接近
どっちも気になるだけに期待

440 ◆2shK8TpqBI:2013/04/19(金) 00:45:40 ID:WQB5pP660
短いですが鹿目まどか投下します。



 「ぅん・・・・・」

 軽い疲労感を感じながら目を開き身体を起こすと見慣れない部屋にいた。
 うまく働かない頭を動かしながら記憶をたどるとここはホテルの一室ということを思い出した。
 
 「そっか・・・たしかアーチャーさんがホテルまで運んでくれて・・疲れて寝ちゃったんだ・・・」


 かなり深く眠っていたようで外を見てみるともう日が高く登っていた。
 いつもの習慣で顔を洗い身支度を整え椅子に座ると、アーチャーさんがいないことに気がついた。
 探しに行こうかと考えたが、またさっきのように他の参加者に鉢合わせることやアーチャーさんに
迷惑をかけるかもしれないという思いが頭をよぎり、再び椅子にすわりこんでしまう。


 「はあ・・・・・」


 独りきりになるといろんなことを考えてしまう。
 魔法少女のこと、魔女のこと、聖杯戦争のこと、願いのこと、そして生き残りを懸けたコロイアイのこと・・・

 人を守る正義の味方だと思っていた魔法少女の実態はとても残酷なもので、
 人に害を為すと思っていた魔女はとても悲しい存在で、
 願いを叶えることの出来る聖杯戦争は願望をかけた殺し合いで、
 何を信じて行動すればいいか分からなくなってしまった。

 「こんな時マミさんやサヤカちゃんならどうするんだろう・・・・」

 それにあの、なにかと自分を助けてくれた黒髪の転校生なら、こんなときどんな行動を起こすだろうか。
 願いを叶えるために行動を起こすのだろうか?
 それとも争いを止めるために動き回るのだろうか?
 そもそも自分はどうしたいのだろう。どうするべきなんだろう。

 「わかんないよ・・・マミさぁん。さやかちゃん。ほむらちゃん・・・ひっく、ぐすっ」

 やだ、涙がでちゃう。つくづく自分の駄目さが嫌になる。
 自分には他の人を蹴落とす覚悟も無ければ争いを止める勇気も無い。
 傍観者にはなれても当事者にはなれない。私はどこまでも中途半端だ。

441 ◆jY8KKSUzWI:2013/04/19(金) 00:50:19 ID:WQB5pP660


 どのくらいたっただろうか。
 泣いたせいで頭が痛い。気分を落ち着かせるために冷蔵庫に入っていた水を飲む。
 少しだけクリアになった頭でこれからのことを考える。


 「アーチャーさんはゆっくり考えればいいって言ってくれたけど・・・。」
 そもそもこれは自分ひとりが考えたくらいでどうにかなる問題なのだろうか。
 私は何も知らなさ過ぎる。
 知りたい。何も知らないままでは何も出来ない。
 前に進むことも後ろに下がることも出来ない。
 そのためにはまずは・・・


 「詩音さんに会いたい。」

 ポツリとこぼれた言葉。自分を庇って他のマスターに連れて行かれた少女。
 あんなに辛そうだったのに、詩音さんは戦った。
 それは自分を守ろうとしてくれた正義感からなのかもしれないし、願いを叶えるため
におこした行動だったのかもしれないけれど、それでも私を助けてくれた。
 彼女に会って謝りたい。そして、話を聞きたい。
 どんな願いを持ってこの戦いに参加したのかを。


 「戻ろう。もしかしたら逃げ切れたかもしれない。捕まったままなら助けなきゃ。」
 
 きっとアーチャーさんは反対するだろう。でもごめんなさい。
 どうするかなんてまだ決められないけど、なにもしないのはいやだから。

 簡単に身支度を整え出かける準備をする。
 アーチャーさんがここに戻って来たときのために置手紙を書いて部屋をでた。
 「ごめんなさいアーチャーさん。何かあったら令呪を使うから。」
 自分に言い聞かせるように呟き、まどかはホテルを出た。
 地図とパンを買って目的地へと足を進める。
 目指す場所は最初にいたマンション。
 詩音を助けるために。そして自分の方針を決めるために。

 
 彼女の起こしたこの行動がどのような事態を起こすのか、今の時点では誰には分からない。
 けれどこれは、流されるままだった彼女が自分の意思で歩いた、小さな小さな一歩だった。


 
 
 【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
 【状態】:健康
 【装備】冬木市の地図@現実 
 【思考・行動】 
 1詩音に会う。捕まっているようなら助ける。(危なくなったら令呪を使う)
 2他の参加者に接触して話を聞く。(なるべく優しそうな人にする)
 3同行動するのか方針を決めたい(現時点ではかなりあやふや)
【備考】
 ホテルの部屋にはアーチャー宛に置手紙を置いています。

442 ◆2shK8TpqBI:2013/04/19(金) 00:55:23 ID:WQB5pP660
 短いですが以上です。
 まどかの口調が少し変かもしれません。
 批判、感想、アドバイスお待ちしてます。
それと440と441は同一人物です。紛らわしくてすみません
タイトルは【一寸先は闇だけど】でお願いします。

443名無しさん:2013/04/19(金) 01:04:01 ID:JaArCleA0
投下乙です!
まどか「詩音さんに会いたい」
DIO様「あっ」

マンションにはまさにDIO様と詩音とさやかちゃんがいるじゃないですかー!
いやまぁDIO様の方も適当に上手いこと言ってどうにかしそうな予感はあるけどねw
もしかすれば天国組に詩音とさやかちゃんが合流の可能性も…
そしてまどっち、外には気を付けろよ!FEコンビに気をつけてね!

444名無しさん:2013/04/19(金) 01:18:10 ID:JaArCleA0
あ、出来れば場所と時間帯もお願いします

445 ◆2shK8TpqBI:2013/04/19(金) 01:20:23 ID:WQB5pP660
失礼しました
場所はハイアットホテル
時間は朝でお願いします

446名無しさん:2013/04/19(金) 11:17:57 ID:DJ1fl0FU0
あれ?
ネタバレ参加者名簿が変な表示になってる

447名無しさん:2013/04/19(金) 18:47:51 ID:JaArCleA0
>>446
確かに変だったので修正しといた
よくわからないことする奴がいるもんだなぁ…

氏の作品へのツッコミが特になかったらwikiに作品収録するけどいいかな?

448 ◆FTrPA9Zlak:2013/04/20(土) 00:44:11 ID:IBnKL.eQ0
まどか&アーチャー(DIO)、園崎詩音&バーサーカー(美樹さやか)予約します

449名無しさん:2013/04/20(土) 01:23:45 ID:/ziLx3hw0
このトリップ…おじさん組の人か!
早速フラグ回収されたなw

450名無しさん:2013/04/20(土) 08:07:31 ID:Bl0O1pOk0
愉悦!!
期待せずにはいられない!

451 ◆QSGotWUk26:2013/04/20(土) 15:48:14 ID:ydV1lquM0
延長お願いします

452 ◆2shK8TpqBI:2013/04/20(土) 22:36:24 ID:m/CGvm3E0
前回教会組を書いたんですけど
書く人いなかったら連続で投下してもいいですか?

453名無しさん:2013/04/20(土) 23:05:46 ID:w93zomH60
今の所彼らの予約は入ってないし、OKでは。

454名無しさん:2013/04/21(日) 15:56:35 ID:HedHwb/w0
自己リレーか、まぁ誰も予約してる人いないしいいんじゃないかな?
放置されたままよりも話が進む方がいいしね

455 ◆2shK8TpqBI:2013/04/22(月) 15:11:43 ID:3EwUIsSQ0
大丈夫そうなので花村陽介&ランサー(アレックス)名無鉄之介&キャスター
(リインフォース)アサシン(平行世界のファニーウァレンタイン)予約します

456名無しさん:2013/04/22(月) 17:59:37 ID:1DNL2ioM0
>>455
ちょっと待ったーッ
平行世界の大統領はアシュナードの黒竜のランチになってるので、今生きてるのは本体の大統領だと思う…

457名無しさん:2013/04/22(月) 18:57:25 ID:CE0KBQnE0
大統領「分身は『3体』あったッ!」

458名無しさん:2013/04/22(月) 19:31:11 ID:1DNL2ioM0
ぶっちゃけちょっと市長に無理させれば出来そうなのが怖いわ(震え声)

459名無しさん:2013/04/22(月) 20:04:29 ID:wWFf9Dp60
普通に考えて一部回想みたいな感じの御出演とかじゃね?

460 ◆2shK8TpqBI:2013/04/22(月) 20:19:51 ID:3EwUIsSQ0
すみません読み直してみたら平行世界じゃなくて本体のほうでした。
本体のほうでお願いします。

461名無しさん:2013/04/22(月) 20:21:49 ID:1DNL2ioM0
>>460
了解です

462名無しさん:2013/04/24(水) 00:28:03 ID:Wx46D21g0
ワカメ組の予約期限すぎてるけど、何かあった?

463名無しさん:2013/04/25(木) 07:46:48 ID:GnUAkul2O
丸一日以上過ぎたね・・・

464名無しさん:2013/04/25(木) 08:53:39 ID:IxGh2uwk0
折角の予約だし期限過ぎてもつい待ちたくなってしまう

465 ◆FTrPA9Zlak:2013/04/25(木) 23:05:32 ID:7b/zT1Nk0
延長お願いします

466名無しさん:2013/04/26(金) 22:20:27 ID:6x2iGxhQ0
>>464
ついに予約消されたか…
音沙汰無いまま二日以上過ぎたし仕方ないか

467 ◆QSGotWUk26:2013/04/28(日) 14:49:47 ID:wzh0xUFs0
住人の方々に一つ、お願いがございます。
予約期限は本日なのですが、終盤の展開がどうしても自分の中で納得いくものにできず、このまま投下できるものではございません。
厚かましいとは重々承知なのですが、明日の休日まで期限を延ばしていただけませんでしょうか?

468名無しさん:2013/04/28(日) 15:00:20 ID:jbzP4NzI0
うーむ…いいんじゃないかな?
明日に完成出来るのならば待ちたいですしね
というか展開が気になるのでw

469名無しさん:2013/04/28(日) 15:54:11 ID:94h3XEhc0
明日一杯ならいいと思います
ちょうど連休最終日ですし

470 ◆2shK8TpqBI:2013/04/29(月) 01:06:41 ID:P7CXQmMQ0
 投下します

【下準備】


星海原学園に到着した花村たちは近くに車を停めると学園の中に足を踏み入れた。
 八十稲羽の学校とはまったく違う都会的な雰囲気の造りにある種の懐かしさを覚えたが
いつまでもこうしてはいられず足を進める。
 名無もこういった学校が珍しいのかあたりをきょろきょろと落ち着き無く見回していた。

 「おいあんまキョロキョロすんなよ田舎者みたいだぞ。」
 「そうはいっても俺らの所とは全然ちがうからよ。なんか新鮮だわ。」
 「まあ、解るけどさ、けどこれ、ぜんぶ偽モンなんだよな。いまさらだけどすげえわ。」
 「確かにな、・・・お、なんかあそこに張り出してるぞ、行ってみようぜ!」

 そう言うと返事も聞かずに駆け出してしまった名無を追って花村も後を追う。


 

 「嘘だろ・・・もうこんなに脱落者が・・・」
 
 確かにまったく犠牲を出さずにすむとは思ってはいなかったし事実目の前で二組の参加者が
死んだのをこの目でみたのだからある程度の覚悟はしていた。
 だがいくらなんでもこれは・・・

 「多すぎる・・・!?15人も死んだってのか!?」

 隣の名無も声には出さなかったが内心驚きを隠せずにいた。
 花村から話を聞いていたし実際に戦ったライダーとランサーの主従も明らかに乗っている
参加者だったとはいえ直接死者を見たわけでは無いのだ。

 花村たちが顔を青くしている隣でリインフォースは同盟者たるアレックスに声をかける。

 「どう思うアレックス?」
 「初日は静観の構えをとるのがサバイバルの鉄則なのだが、当てが外れたな。ここまで激化
するのは予想外だった。」
 「どうするんだ?」
 「まずはこのまま他サーウァントの情報を集めたあと拠点を作るぞ。夜になったら動き出す。」
 
 「ちょっと待ってくれよ、すぐに動いたほうがよくないか?時間かけたら被害者がふえるぞ!」  


 冷静に最善策を頭の中で組み立てていくアレックスだったが、その案に花村が待ったをかける。
 
 「逆だマスター、初めからこれだけ派手に動いたのなら昼間はどの陣営も休息ないし静観の
構えを取るだろう。昼間に動き回るよりも準備を整え夜に行動したほうがメリットがある。」

 本心ではこれ以上死者を出したくなかったがアレックスの言い分も理解できるし納得もしたので
それ以上は言わず黙る。

 「データベースに急ぐぞ。可能な限り情報を引き出す。」

 そういって先に進むアレックスとそれに続くリインフォース。
 その少し後ろで花村は悩ましげに眉を顰めていたが、アレックス達の後に続いた。

471 ◆2shK8TpqBI:2013/04/29(月) 01:10:36 ID:P7CXQmMQ0



「大丈夫か?」

 いつのまにか隣に立っていた名無がいつになく真面目な顔で聞いてきた。
 考え事をしていた花村は気配に気づくことができず僅かに驚くがすぐに平静な顔になり、
 
 「なにがだ?」
 
 と何のことか分からないという風に聞き返したが名無は真剣な顔のまま

 「鳴上悠だっけな。お前のダチの名前、そいつのことを考えてたんだろ。」

 問い掛けるようにいうが本人は確信しているのだろう。ならば下手に誤魔化しても意味無いだろう。
 
 「本当はさ、不安なんだよ。悠は確かに強い、あいつが負けるところなんて想像つかねえよ。
でもよ、それでも怖い。大切な人が死ぬのは想像するだけでブルっちまう。あんな思いするのは
もうごめんだ。」

 ポツポツと本音を零す。そういえばこんなマジな話をするのは相棒ぐらいだったなと場違いな
感想が頭に浮かぶ。

 「悠が死んだらどうしよう・・・それだけじゃない、逆にあいつが誰かを殺してしまったら?
そのせいで狂う人がでてしまったら?そんなことにはならないって保障はどこにあるんだ?
15人も死んでるんだぞ。俺はそれが・・・怖い。」

 不安が隠せない花村に名無はいつものようなへらへらした顔ではなく安心させるように笑い

 「大丈夫だ。絶対そんなことにはならない。」
 「だからそんな保障どこにも「大丈夫!」っ。」
 
 反論しようとしたところを遮られ目を丸くする花村に名無は花村の肩に手を置き、
 
 「そんなことにはならない。信じろよ、俺たちならやれる。ぜったい上手くいく。
だから一人で気張るな。俺がいるしリインちゃんもいる、アレックスの旦那だっている。
みんなで協力すれば不可能なことなんてなにもない!俺たちは仲間なんだろ?陽介。」

 花村は驚いた表情の後フッと笑い、

 「そうだな、焦ってたってしょうがないな。俺は俺の出来ることやればいいんだよな。」
 少し照れくさそうにしながら名無を真っ直ぐ見て
 「気使わせたな、悪かっああいやそうじゃなくて、・・・ありがとう。」
 「もう大丈夫そうだな。」

 そういって名無は少し前を歩くとクルリとこちらに振り返り

 「よーし!元気になったところでナンパにいくかあ!」
 「なんでだよ!やれること少なくてもやらなきゃいけないことたくさんあるよね!」
 「お前頭悪いんだから悩んでもしょうがないんだよ。馬鹿は本能に任せたほうが上手くいくんだよ。」
 「誰が馬鹿だ!お前よりはいい自信あるわ!ていうかなんナンパ!?」
 「考えてちゃ遅いでしょ!ほら乗っかてこうぜ!」
 「無視!?」

 ぎゃあぎゃあと騒ぐ少年達の少し離れたところで彼らのサーウァントは呆れながら、けれどどこか
安心したように笑っていた。

472 ◆2shK8TpqBI:2013/04/29(月) 01:12:18 ID:P7CXQmMQ0



「おー今度はいっぱいひとがきたねー。わたしは案内役NPCの間目智識、よろしく!」

 『図書館』と書かれたプレートがはられた部屋に入るとそこには黒い学生服を着た少女が明るく
声をかけてくる。花村と名無はすごい名前だと内心引いていたがアレックスはすでにここに他の
マスターが来ていた事に気づきそのマスター達のことを聞いたが、

 「ごめんねー、利用者のことを教えるのはルール違反なの。」

 申し訳なさそうに謝る案内役にそれ以上はいわずデータベースの方に向かう。

 「まずはアサシンとライダーの情報、それとマスターの友人が連れていたランサーと
洗脳宝具の使い手だ。この四人はなんとしても情報を手に入れる。」

 全員がそれぞれデータベースに座り情報を探す。

 検索ワード「アサシン 遠距離広範囲攻撃 剣と炎」
 検索結果1件 「壊刃サブラク」

 「・・・早いな」
 
 「アサシンとしては規格外な攻撃だったからな」

 その分調べやすかったとアレックスは目的の情報を手に入れる。
 ステータスとマスターの情報を手に入れられたのは嬉しい誤算だ。

 「このマスターとんでもないな。マスター同士の戦いならよほどのことがないと勝てんぞ。」
 「殺し屋って、そんなやつも参加してるのかよ。」
 
 絶対に相手にしたくねえとマスターが呟くその隣でリインフォースがライダーの情報を調べ、

 「とんでもないという意味ならあのライダーの主従もとんでもないぞ。サーウァントの方は
高ステータスに再生能力、Bランク以下の攻撃を無効化する鎧にパラメーターと対魔力の1ランク
アップ、さらには一度だけ体力完全回復する宝具、大まかな索敵能力に飛ぶ斬撃。反則だろう
こんなの。」
 「マスターも竜殺しの宝具を二つ持っている上に自身の戦闘能力もかなり高い、この二人、
かなりの強敵だ。」
 「真名がわかって運がよかった、マスターのおかげだな。」

 情報を手に入れれば対策が打てる。ライダーの真名を引き出したマスターの名無の評価を
あげる。
 その隣ではランサーの情報が思うように手に入らない花村がデータベースの前で唸っていた。

 「あまり成果がなさそうだなマスター。」
 「そうはいっても赤い槍だけじゃ絞り込めねえよ。せめてもう少し情報がありゃあなぁ。」

 ぐてーと机に突っ伏すマスターにアレックスは別の視点で調べて見るように言ってみると

 「別の視点?そうは言っても、あ・・・」

 検索ワード「ランサー マスター名 鳴上悠」
 検索結果1件 「クーフーリン」

 「出た・・・。」
 「なるほど、マスター名からでも絞り込めるのか。」

 そしてクーフーリンの情報を調べてみると

 「こいつはこいつでヤバイな。一撃必殺宝具って、俺たちじゃ防げねえじゃん。」
 「撃つ暇を与えなければいい。それに俺ならこの宝具はきかん。こいつの相手は俺がする。」
 
 アレックスの急所は心臓ではなくARMの核でありこれを傷つけられない限り再生することが出来る。
 そしてそれは心臓から離れた位置にあるため心臓を貫かれても死ぬことは無い。
 もっとも花村はそんなことは知る由も無かったが自分のサーウァントが大丈夫というなら理由を
聞かず信じることにした。

473 ◆2shK8TpqBI:2013/04/29(月) 01:13:05 ID:P7CXQmMQ0

あとは洗脳宝具使いだけか・・・」
 「でも意外といたぞ、洗脳宝具使うやつ、やっぱキャスタークラスが多かったけどな。」

 なかにはランサークラスで女性限定だか魅力するスキルをもったやつもいた。
 やはりもう少し情報が欲しい所である。
 なにか無いかと頭を悩ませていると、

 「そういえば花村、あのランサーのマスターとなにか話してなかったか?」

 一部始終を見ていたリインフォースがそう聞いてあのとき話していた内容を思い出す。

 「えーと、確か天国がどうとか言ってたけど、」

 正直あの時は混乱していてあまりよく覚えていないと告げるとリインフォースは
 
 「ふむ、天国か・・・」

 なにか思うところがあったのかデータベースに向き直る

 検索ワード「洗脳宝具 天国へ到達 蠢く肉片 脳を支配」
 検索結果1件 「DIO」

 「これか?」
 「分からんが可能性は高いと思う。」

 そういって掘り下げて調べていく三人

 「経歴を見る限りほぼクロだな。」
 「スタンドか、ペルソナと少し似てるな。」
 「時間停止の固有結界とはこれもやっかいな能力だ。使われる前に仕留めるくらいしか
対策が無いぞ。」
 「それかマスターを狙うかだな、マスターのほうは一般人だから難しくは無いだろう。」
 「ああなるほど、令呪を使わせるのか。」

 サーウァント二人が対策を練っているなか花村が花村が割り込む。

 「なあ、ちょっと気になったんだけどさ、死んだのが15人っておかしくないか?
二人一組なら16人のはずだろ。」
 「消滅する前に再契約を結んだサーウァントがいるということか・・・」
 「なるほど、調べてみる価値はありそうだな。」

 そういってデータベースにアクセスするアレックス。掲示板でサーウァントの名前が乗って
いなかったのは遠坂凛だけだ。調べるのは簡単だった。そうして出てきたサーウァントの
情報を三人が見ると

 「蘇妲己か・・・とんでもない大物が引っかかったな。」
 「厄介を固めたような宝具だなこれ、しかも知名度だけでいうならかなりの上位だぞ。」
 「なあ、この遠坂凛ってマスター殺したのこいつじゃないのか。」
 「無いと言い切れないのが怖いところだな。とにかくこいつも要注意だ。」

 とにかくこれは大きなアドバンテージだ。知らずに出会っていたら危なかった。
 
 「そろそろ出発するか、おいマスターお前も・・・あれ?」
 「そういえば静かだと思ってたけど、名無どこいったんだ?」

474 ◆2shK8TpqBI:2013/04/29(月) 01:14:22 ID:P7CXQmMQ0


名無鉄之介はスケベである。
 それもただのスケベではなく超がつくほどのスケベである。
 覗きなんかは当たり前、スカート捲りや下着泥棒、果ては痴漢行為もやってのけるスケベである。
 (もっともすぐに制裁を受けるのだが)
 そんな彼が学校という絶好の場所で何もしないで大人しくしているだろうかいいやしない。
 そんな彼は一人、皆がデータベースに取り掛かっている隙に、覗きで鍛えた気配遮断を使い
部屋を抜け出し、狩場に来ていた。すなわちそこは、『女子更衣室』

 「うひょひょひょ、やっとチャンスがきたぜ〜!」
 慣れた手つきでロッカーの中を物色していく。躊躇いの欠片もない行動はある意味だれよりも
男らしい行動である。そんな彼を見る影がある。
 女子生徒のNPC?彼の仲間たち?どちらも違う。その正体は・・・

 アメリカ合衆国大統領にしてアサシンのサーウァント、ファニーウァレンタインである。

 (まさかこんなチャンスが訪れるとは、運がいい)

 マスターの指示で柳洞寺に向かったアサシンは山門に佇むサーウァントを見つけた。
 剣を持っていたのでおそらくセイバーだと当りをつけThe watherでセイバーのを撮影しマスター
に送るとマスターからすぐに撤退するように指示をうけた。
 急いでその場を離れるとマスターに理由を聞いた。そうするととんでもない事が判明した。

 (まさか全ステータスがEXランクとは、おそらく何らかのスキルか宝具なのだろうが・・・)

 おまけにあそこは山門以外は進入できず、どうしてもあのセイバーと戦う必要があったので
予定を繰り上げ学園に侵入した。
 程なくして四人組の参加者が来たのを確認すると気配を消し、最大限の注意を払いながら尾行する。
 すでに情報はマスターである市長に送ってありあとは可能ならば暗殺し、不可能ならば
拠点を見つけるため後を追う。あらかじめ決めていた作戦を行うつもりだった。
 もっとも暗殺は四人組の時点で諦めており拠点を探るために尾行する心算だったのだがなぜか
一人がこっそりと人目を憚るように離れていたので予定を変更し、アサシンの本分である
マスター殺しを決行する。

475 ◆2shK8TpqBI:2013/04/29(月) 01:15:05 ID:P7CXQmMQ0

D4Cを使うまでも無い、弾丸一発だけで事足りる。銃口を後頭部に狙いをつけ、

 (さよならだ、名前も知らないマスターよ)

 そして引き金をゆっくり引き・・・
 
 「(ばっっ!)おおこれは絶滅危惧種のブルマああ!?」

 (なにぃぃ!?かわしただと!?)

 思わぬお宝に飛びつく名無の背中を弾丸が掠める。思わず奇妙なポーズで固まる名無だが
それ以上にかわされたことに驚愕するアサシン。
 すぐさま次の弾を発射するが、

 「イルバーン!」

 槍王を呼び出し弾丸を弾く、そのままバックステップで距離を取り様子を窺う。

 「あっぶねええ!?背中かすったああ!?なにすんだオッサン!」
 
 (出来たら今ので片付けたかったが仕方ない。マスター一人ここで仕留める。)

 名無に再び弾丸を放つがイルバーンで弾き飛ばす。

 「へっ!大したことねえなおっさん!俺一人で倒しちゃうよ!」
 
 挑発気味に笑う名無に反応せず間合いを確認するようにゆっくり動くアサシン
 名無は罠かと勘ぐるが元々考えるのが苦手な名無は何かやられる前に無力化するべく
前に飛び出す。たとえサーウァントといえども人は傷つけたくないため殺さないように、
けれども動けなくなくなるくらいにはなってもらうつもりで槍を振りかぶる。
 銃を使われても十分対応できると確信していたため飛び出したのだが不意にアレックスが
言っていたことを思い出した。


 「いいかお前ら、サーウァントのなかにはステータスが低くても相手を倒すことが出来る
ような奴もいる。アサシンやキャスターといったやつらだ。こいつらは状況しだいなら三騎士
クラスでも倒せる奴らだからな。例え倒せそうと思っても手をだすな。特にアサシンは一撃必殺
の宝具の使い手が多い。無理に倒そうとせず自分の身を守ることに専念しろ。
時間さえ稼げば必ず俺かキャスターが駆けつける。」

 アレックスの忠告は正しい。例えステータスが低くともサーウァント、アサシンといえども
切り札は持っている。

476 ◆2shK8TpqBI:2013/04/29(月) 01:16:12 ID:P7CXQmMQ0

「いとも容易く行われるえげつない行為(D4C)」

 アサシンの背後から現れる人型の像が不意を突く形で名無の頭部に拳を繰り出す。
 完璧のタイミングの攻撃だったが、

 「うおおおおう!!?」

 頭を後ろに反らすことでギリギリ回避するが無理な姿勢をとった反動でバランスを崩す。
 その隙を突くようにもう片方の腕で今度は腹部に拳を繰り出すもとっさに間に挟んだ槍王で
ガードする。
 殴られた反動で吹き飛ばされ壁に激突した名無に追い討ちをかけるように弾丸を発射するが
即座に転がって何とか回避する。
 体勢を整えさせまいと接近しD4Cで攻撃を繰り出すが槍王を使いギリギリではあるが持ちこたえていた。
 
 無論名無がいかに槍王の恩恵を受けていてもサーウァント相手に防戦一方とはいえ戦えているのには理由がある。
 ひとつはアサシンの能力、正確にはスタンドが仲間である花村陽介のペルソナに酷似していたこと。
 まったく未知の能力相手ではどうしようも無かったがスタンドとペルソナには非常によく似た特徴
がある。花村からペルソナについて聞いていたためアサシンからスタンドを出し攻撃されても驚きが
少なかくてすんだ。(もっとも名無はこのアサシンはペルソナ使いのサーウァントと勘違いしている)
 もうひとつがつい先程、鳴上悠というマスターの中でも上位の者と戦闘を行ったこと。
 鳴上悠自身は二対一という状況のため全力を出し切れていなかったが、あの攻防は確かに名無に
とって大きな経験になった。
 そして最後のひとつ、ある意味では一番大きな理由かもしれない。
 名無はあの凶王アシュナード相手に啖呵を切った男。
 あのすさまじいプレッシャーにさらされながらも、大事なパートナーを守り抜いた名無にとっては
この程度の状況は、

 「お前なんか怖くねえよ。」
 
 槍王でD4Cの腕を上に弾くと、

 「イルバーン!」
 
 槍王を床に突き刺し自分の周りを吹き飛ばす。
 その衝撃波に吹き飛ばされるアサシン。
 そして槍を持ち直し回転させ、
 
 「いっけえ!」

 前方に衝撃波を放つ。これで決まったと確信するが・・・

477 ◆2shK8TpqBI:2013/04/29(月) 01:17:13 ID:P7CXQmMQ0

「D4C」

 スタンドを前面にだしガードすると、そのまま名無に突っ込む。
 名無は技を放った直後の僅かな硬直を突かれ殴り飛ばされ再び壁に激突し槍王を離してしまう。
 すぐに取ろうと槍王に向かって伸ばした手を上からD4Cが踏み潰す。
 痛みに顔を顰める名無の眉間に銃口が押し付けられる。

 「まさかここまで手こずらされるとわな、これからはマスター相手でも油断しないようにしよう。」

 「すみませんごめんなさい許してください。」
  
 「命乞いか?する必要はないぞ、聞く気もないからな。」 
 
 そう言って引き金を引こうとするが名無の表情に違和感を覚える。
 恐怖に怯えるわけでもなく絶望するわけでもなく、いたずらが成功したような顔に引き金を引く
動きが止まる。訝しげに見るアサシンに名無は、

 「いや、命乞いじゃなくてさ、本当に悪いなあと思ってよ。一応謝ってこうかと思って。」

 「何を言っている貴様?イカレてるのか?この状況で。」

 「いやいやだからさ。」

 とチラリとアサシンの背後を盗み見て、
 
 「俺一人で勝つって言っておきながら、一番怖い人隠しててごめんなさい。」

 ハッと背後を振り返ると自分に向かって殺到する魔力弾の群れ。

 「!?D4C防御しろ!いますぐだあ!」

 すぐさまスタンドで防御体勢をとるが、その上から容赦なく叩き込まれる魔力弾の群れに吹き飛ばされる
アサシン。その隙に名無の元へ移動したキャスターは回復魔法を名無にかけると庇う様に前へ出た。

478 ◆2shK8TpqBI:2013/04/29(月) 01:18:32 ID:P7CXQmMQ0

「無事のようだなマスター」
 
 「ギリだったぜリイ・・・キャスター」

 うっかり真名をばらしそうになったが散々リインフォースに注意されたため言い直す。
 アサシンはボロボロに成りながらも油断なく対峙する。

 「くそ貴様、いや貴様らまさか!?」
 
 「ワリイなオッサン、初めから時間稼ぎが目的なんだわ。」
 
 ニシシと笑う敵のマスターに苛立ちながらも、状況を整理する。

 (くそ、なぜだ!?なぜ気配を察知できなかった!?何らかのスキルか!?)

 リインフォースは名無が居なくなったことに気づくとすぐさまエリアサーチを展開し学園中を探した。
 そうして見ると敵のサーウァントと交戦している名無を発見するとすぐさま転移魔法で近くまで
移動すると、ミラージュハイドを発動する。姿を消すだけでなく探知能力にも引っかからないある種の
結界魔法を使い接近すると、気づかれないように慎重に魔術を展開していき名無の合図で発射した。
 この魔法は完全迷彩状態では攻撃や魔法発動を行うのが困難になるという弱点があるので、攻撃魔術
発動の時間稼ぎと発射のタイミングを名無に任せるということを念話でおくっていた。
 そんな事は知る由もないアサシンは戦闘続行は困難であると結論づけ脱出のプランを組み立てる。

 「投降するなら命はとらないぞ。抵抗するなら動けなくなるぐらい痛めつけ・・・っ!?」

 説得の途中で攻撃を加えられ防御体勢をとるリインフォース。
 スタンドを前面に出しリインフォースに襲い掛かり、その隙に窓へと飛び込もうとするが

 「言っただろ、一番怖い人隠しててゴメンって。」

 その言葉に反応するよりも速く、あらかじめ姿を隠し窓際まで移動していたアレックスの拳が
アサシンの顔面にぶち当たり、とっさにつかんでいたカーテンごと倒れこむ。

 「キャスター!」
 
 「解ってる!」

 アレックスの合図と同時にバインドをアサシンに向けて放つが・・・

 「なに!?」

 そこにすでにアサシンの姿はなく忽然と消えてしまった。
 周囲を見渡しても分からず探知魔法にも引っかからない。エリアサーチをあたりに放ち
死角をなくして備えるリインフォース。アレックスもまたマスター達に何かあってもすぐに
対応できる距離で警戒する。

479 ◆2shK8TpqBI:2013/04/29(月) 01:19:46 ID:P7CXQmMQ0

警戒を解かず周りを見渡すアレックス
 エリアサーチの端末の範囲を広げるリインフォース
 カーテンが風に飛ばされ名無の方へ落ちる
 名無が顔を強張らせながら槍王を構える
 ゆっくりとカーテンの方へ近づくアレックス
 カーテンの端を握りゆっくりと捲り上げ・・・


 
 『背後のロッカーの扉の隙間からアサシンが飛び出してくる』

 反応し切れなかった名無に銃弾を撃ち込むが、

 「プロテクション!」

 リインフォースが瞬間的に展開できる防御バリアで名無を囲い込み

 「むん!」

 同時に放たれたブリューナグの槍がアサシンの胴を貫きそのままアサシンはゆっくりと消滅していった。


 【アサシン(ファニーウァレンタイン)@ジョジョの奇妙な冒険 消滅】


 
 
 「悪いなマスター、生け捕りにはできなかった」

 「いや、名無を守ろうとしてくれたんだろ?だったら文句なんか言うはずねえよ。」

 リインフォースによって同じ部屋で透明化して潜んでいた花村にアレックスは謝罪をするが、
花村は少し複雑そうな顔をしながらも気にするなと返しこの話は終わりになった。
 
 「おい、そろそろ出ないか?もうここには用はないだろう。」
 「出るっていっても、なんか当てがあるのか?」
 
 花村の疑問に聖杯の智識とデータベースで調べた情報を元に案をだす。

 「まずこの町の一番の霊地はここから西に少し行った所にある柳洞寺。しかしここはもう既に
抑えられてる可能性が高い。それに町から離れてるから補給するのに都合が悪いからな。よって
次に霊脈が豊富な遠坂邸、ここに拠点を作ろうと思う。」

 そう言って周りを見渡すリインフォース。花村と名無は元々こういったことは判らない為パートナー
に一任する姿勢をとっていた。アレックスも特に反対する理由がなかったため決定となった。
 また陣地作成の際自分も手を加えたいと申し出た。

 「別に手を加えるのは構わないが、何をするんだ?」
 「魔術だけが全てじゃないだけだ。違う方向からの対策もしておくべきだろう。」

 科学が進歩した時代の英霊であるアレックスは魔術に対して絶対の信頼をしているわけではなかった。
 無論リインフォースの腕は疑っては無かったがやはりトラップやカメラといったものを置いておきたい
というのが本音である。
 そのためホームセンターで必要な道具をわざわざ買ったのである。
 そのことを皆に伝えると名無からは、

 「つまりホーム●ローンみたいな感じにするんだな。」
 
 とよく分からないことを言っていたので放置して出発する準備をする。

 「では行くぞ、目的地は遠坂邸。昼までには着きたい。」
 「うっし、じゃあ出発!」

 こうして四人は学園を後にした。


 「そういえばマスター、なんで更衣室にいたんだ?」
 「え?」
 「え?」

480 ◆2shK8TpqBI:2013/04/29(月) 01:20:50 ID:P7CXQmMQ0


【月海原学園/午前】

 【花村陽介@ペルソナ4】
 [状態]健康 残令呪使用回数3
 [持ち物] ミネラルウォーター@現実、カロリーメイト@現実・医薬品一式@現実
 大学ノート@現実・筆記用具一式@現実・電池式充電器@現実・電池@現実
 携帯電話*携帯電話には名無鉄之介の名前が登録されています
 予備の服@現実・食料@現実・スパナ@現実
 その他アレックスの指示で購入したもの数点(トラップ作成に役立つものが入っています)
 [基本行動方針]:聖杯を探し出して破壊する
 [思考・行動]
 1.遠坂邸に向かい拠点を作る
 2.悠を止める
 3.[答え]を見つける
 [備考]
 聖杯戦争のルールと仕組みを言峰神父から聞きました。
(意図的に隠された情報があるかもしれません)
 名無達と情報交換をしました。
 匂宮主従・ゼフィール主従・鹿目まどか主従・鳴上悠主従・遠坂凛主従の情報を手に入れました
(情報は大学ノートに記入されています)

 【ランサー(アレックス)@ARMS】
 [状態]健康 ARMSの進化(進行度小)
 [基本行動方針]:聖杯を探し出して破壊する
 [思考・行動]
 1.拠点を作る
 2.アサシンを警戒
 3.陽介を(主に精神的に)鍛える

 【名無鉄之介@私の救世主さま】
 [状態]健康 残令呪回数:3
 [持ち物] エロ本(大量)@現実・携帯電話@現実(携帯電話には花村陽介の名前が登録されています)
 予備の服@現実・鳴上悠のクレジットカード
 [基本行動方針]:リインちゃんとイチャコラしたい!
 [思考・行動]
 1やりたいように行動する。
 2エロ本読みたい。
 [備考]
 聖杯戦争のルールと仕組みを言峰神父から聞きました。
(意図的に隠された情報があるかもしれません)
 花村達と情報交換をしました。
 匂宮主従・ゼフィール主従・鹿目まどか主従・鳴上悠主従・遠坂凛主従の情報を手に入れました
 アシュナードにほんのちょっぴり興味をもたれました。
 鳴上悠のクレジットカードをこっそり盗みました。

 【キャスター(リインフォース)@魔法少女リリカルなのはA's】
 [状態]健康
 [基本行動方針]とりあえず名無と行動を共にする。
 [思考・行動]
 1.鉄之介をどうにかまともな方向へ矯正したい。
 2.拠点を作りたい。
 3.神父を警戒。
 4.可能なら鳴上悠を助ける(自分達を最優先)
 [備考]
 肉の芽の解除が可能です。ただし全力でやって誰にも邪魔されないのが条件です。
 


 
 「何とか助かったか」
 誰も居なくなった部屋でどこからともなく声がする。
 床に落ちたカーテンの隙間からゆっくりと男が這い出てくる。
 その正体は死んだはずのアサシンのサーウァント、ファニーウァレンタイン。
 種を明かすとアサシンはカーテンの隙間に[挟まった]あと平行世界から自分を連れてきてD4Cを
無傷の自分に移すと、無傷のほうの自分をそのまま違う部屋に移動させ、ボロボロとなった自分は
ロッカーの隙間から飛び出しわざと殺され死んだふりをしたのだ。
 目の前で消滅した自分をみてキャスターも探知魔術を解除したので発見されずにすんだ。
 後はほとぼりが冷めるまで隠れてしまえばいいだけだ。

 「しかしくそ、魔力を使いすぎた。これ以上は市長が持たんな・・・。
 やむ得まい、成果があっただけよしとしよう。」
 
 少なくともランサーとキャスターの能力の一端を見ることができ拠点の場所も判明した。
 戦いには負けたが十分こちらの勝ちといえる。

 「一度戻るか、またドリンクでも買うかな。」

 そしてドアの隙間の挟まると

 「どっっしゃーん」

 そのまま消えてしまい後には誰も残らなかった。

 【アサシン(ファニーウァレンタイン)@ジョジョの奇妙な冒険】
 [状態]健康(4人目)気配遮断
 [装備]:拳銃
 [道具]:携帯電話
 [思考・状況]
 基本行動方針:ムーンセルは誰にも渡さない。わたしが手に入れる。
 1.一度市長の所に戻る
 [備考]
 ランサー・キャスターのステータスを市長に送りました。
 拠点の場所は遠坂邸と思っています。

481 ◆2shK8TpqBI:2013/04/29(月) 01:22:44 ID:P7CXQmMQ0
以上です。
誤字脱字や矛盾などがあれば教えてもらえればうれしいです。

482名無しさん:2013/04/29(月) 02:03:04 ID:ghcOQAI.0
投下乙です
争いの予感がする寺組と違って教会組はやっぱり順調だなw
好調なだけに後々が危険になりそうで怖くもあるけどな!
ちょっと情報手に入れすぎ感はあるけど、まぁ…2チーム揃えばこんなもんなのかな?
番長も変な検索からキャス狐の情報知ることが出来たし(死体さんは無理だったけど)
あと大統領はホントに不死身だなw

483名無しさん:2013/04/29(月) 02:15:27 ID:ghcOQAI.0
以前の話では「その後の書き手にお任せします」ってぼかされてたけど
どうやらペルソナ使いや槍王とか異能の力持ちならスタンド視認可能って扱いかな

484名無しさん:2013/04/29(月) 13:23:47 ID:Wvf7B/ag0
投下乙ですが、いくつか修正要求があります。

まず、マスターとクラス名だけで真名がわかる点。これはさすがにお手軽すぎです
サブラクやアシュナードは実際に戦って能力を目にしたから問題ないと思いますが、さほど手がかりのないサーヴァントをここまで知ってしまえるのはとても公平ではありません
DIOにしても、DIO最大の特徴はスタンドと吸血鬼の肉体であり、能力の一端や思想だけで切り札である時間停止まで知られてしまうのはどうかと
凛のサーヴァントについても、他の話で陸たちが仕掛けた嘘の真実を出会ってもいない花村たちが知る、知ってしまえるというのは他の話への影響が大きすぎます

2つ目は、情報が詳細すぎる点。
図書室で分かる情報はあくまで「大まか に」であって、出自やステータスはともかく宝具の詳細までわかるべきではないと思います
原作のEXTRAだって宝具そのものは戦うまでどんなものかわからないし、仮面ライダーやイスラなどは宝具の詳細がそれこそ生命線です
「推測」ではなく「答え」を容易に入手できてしまうのは聖杯戦争というシステム上どうしてもバランスを崩すものになります

最後に、公開されるのはサーヴァントの情報のみというルールです
サーヴァントを特定すればマスター名もわかる、というのはすでにリレーされているため触れられませんが、ゼフィールや出夢のようなマスターの詳細まで公開されるのは1氏が設定したルールと食い違います


長々と書きましたが、図書室で情報を得るという行為自体には何の 問題もございません
大統領が襲撃してきたり、ガウェインの情報をしっかり市長に送っているあたりは水面下で確実に活動しているなと納得させられました

485名無しさん:2013/04/29(月) 13:26:47 ID:1myQtb160
投下乙です
証拠隠滅は完璧なのに番長への口止めをしっかりしてなかったせいで真名がバレるDIO様エ…
あとせっかく事前準備を整えてたのに味方に振り回されて死にそうな市長エ…

486名無しさん:2013/04/29(月) 13:35:17 ID:iuj/.IyEO
>>484
あー、確かに
ダッキちゃんの能力までわかっちゃうと陸組の嘘に無理があることが第三者視点でバレかねん
ただDIOに関しては時間停止までわかるのはちょっとやりすぎ感があるけど真名までなら別に良い気もする
肉の芽とか番長の天国発言とか絞り込みに必要な情報は結構出てるしね

487名無しさん:2013/04/29(月) 13:35:56 ID:ghcOQAI.0
>>484
まぁ、だいたいこんな感じだよね
図書館で情報を得ること自体には問題ないけど、その情報が簡単に手に入れすぎ+詳細に書かれすぎなのは気になったかな…
ただ、それ以外の話の展開に関しては特に問題はないかな?
教会組が順調に見えるけど、ガウェインとアレックスとリインちゃんの情報得られて死んだと思われた上で離脱出来た大統領もかなりオイシイ

488名無しさん:2013/04/29(月) 13:39:17 ID:ghcOQAI.0
まぁ攻撃を間近で確認+実際に交戦したアシュナードに関してはまぁここまでバレても仕方無いだろうけどw
DIO様は…まぁ、どうなんだろう?
宝具を確認した上に天国っていうワードを得られた以上はそれなりにバレても仕方無いのかな
ただ、ダッキちゃんとマスター側は確実にここまで詳細に情報得られなそう

489名無しさん:2013/04/29(月) 13:55:35 ID:pocufMIs0
EXTRAみたく、開示される情報は入力した用語に応じたものにするっていうのはどうだろう
実際戦ったとか情報を持っていて能力の詳細まで分かっているならある程度スキルなどを詳細に、特徴だけならヒントだけであとは自力で図書館を調べる、といったみたいな

490 ◆FTrPA9Zlak:2013/04/29(月) 19:32:02 ID:tTy7ihBw0
投下します

491消えない想いーLuminis ◆FTrPA9Zlak:2013/04/29(月) 19:35:44 ID:W6.d0xdo0
どうしてこんなことになってしまったのだろうか。

最初は願いのために殺し合いに乗っていくつもりだった。
悟史くんを生き返らせるため。いや、これまでの己の罪で死んでいった皆を生き返らせるために。
なのに、出会った相手は自分のサーヴァントとは比べ物にならない強さを持った人ばっかり。

巨大なドラゴン、変な人形を操る男。
このバーサーカーでは勝てそうもない相手ばかり。
それでもこのバーサーカーを悪く思うことをしなかったのは、きっとこの少女が私に似ていたからなのだろうか。
あるいはこんなサーヴァントでも、私のようなヘボマスターでなければもっと頑張れたのだろうか。

もしそうなら、これは私への罰なのかもしれない。
あれだけの罪を犯し、今もまた殺し合いなどという名目で人を殺し、今までの罪すらも消して身勝手にこれまで通りの生活を続けようとした自分への。

バーサーカーは目の前で体を壁に貼り付けられてピクリとも動かない。
もし死んでいれば消滅しているはず。あれだけのナイフを突き立てていられようと生きていることは確認できる。だがそれだけだ。
もはや目の前の男、アーチャーが少しでも手を加えればそれで私達の命は終わるだろう。

「なるほど、君はこれまでに犯した罪を清算して元の生活に戻りたいと願うのだね」

このサーヴァントの前で、何を話したのか分からない。
色々なことを口走った気がするが、よく思い出せない。

「私はね、『天国』というところに行きたいと考えているんだよ」

突如話し始めるアーチャー。
天国?それこそ私には縁のないものだ。どうせ私は地獄に落ちるのだから。


「違う違う、意味じゃない。もっと精神的なものだ。
 金でも名誉でも満たされない真の幸福がそこにある。
 そこへ辿り着くことで、皆が幸せになれるというものだ。
 そして私はね、君も含めて全人類を幸せにしてあげたいと思っているんだよ」 

言っている意味が分からない。もしその天国とやらに行くことができれば、悟史君や沙都子、他にも殺してしまったみんなを生き返らせることができるのか。

「それは無理だろうね。でも、君も含めてその皆を救うことはできるかもしれない。
 自分の罪にもそれまでの行動にも苦しむこともなくなる。そんな世界を作りたいと思っているんだ」


皆が救える――――?本当に―――?

492消えない想いーLuminis ◆FTrPA9Zlak:2013/04/29(月) 19:36:53 ID:tTy7ihBw0

詩音はその会話を受け入れる。
じっとこちらを覗き込む赤い瞳。その中になぜか引きつけられるものを感じる。
この男になら従ってもいいと。きっと自分を救ってくれるのではないか、と。
そんな根拠のないはずのことを、理由もなく信じてみたくなってきた。なってきてしまった。

倒れ伏せたバーサーカーの目が開いて詩音を見つめる。
狂化された思考にはアーチャーのカリスマは届かない。故にその危険性を本能で感じ取ることができた。
それはダメだ、となけなしの思考で呻こうとするさやか。しかし声は届かない。

DIOの差し出す手を取ろうとする詩音。
おそらくここでそれを取ってしまえば彼女は彼の支配から抜け出すことはできないだろう。

そんな時だった。


「アーチャーさん…?」

アーチャーのマスター、鹿目まどかがその場に現れたのは。



街には若干の騒がしさがあった。恐らくここでも何かしらの戦闘があったのだろう。
しかしその喧騒にも脇目を振らずに走り続けた。
ここで止まってしまえば他の参加者に襲われる可能性が高くなってしまう。
目指す場所はあの、詩音と出会ったマンション。
脇目も振らずに急いだことが功を奏したのか、参加者らしき人物に出会うことはなかった。

そして、そのマンションに辿り着き、扉を開いた。



「アーチャーさん…?」

そこにいたのは、己のサーヴァントであるDIO。
そして、その目の前にいるのは、他でもない詩音だった。

「…マドカ、君か」
「詩音さん…?アーチャーさん、これはどういう…?」

詩音の有様に気付いたまどかはDIOを問い詰めるような口調で質問を投げかけた。
彼女は数時間前にあったとき以上に髪や衣服は乱れ、汚れていた。
血や土で汚れた服、体中に見える多くの擦り傷、火傷のような跡。そしてその目は虚ろで焦点すらはっきりしていない。
何かあったようにしか見えない光景。もしそれが己がサーヴァントの仕業なら―――

「誤解しないでほしい。私は彼女に手を差し伸べていたんだ。
 恐ろしい目にあったようで、自分の進むべき道に迷っていたようだからね。」

DIOはそれに対して特に動揺することもなく、あくまで冷静に答える。
彼女は怯えていた。恐怖していた。だから救おうと手を貸したのだと。
嘘は言っていない。しかしそれが真実というわけでもない。
確かに怯えていた。自分の道に迷っていた。しかしボロボロで歩いていた詩音に戦闘を仕掛け、追い詰め、逃げ道を封じたのは他でもないDIO自身なのだから。

493消えない想いーLuminis ◆FTrPA9Zlak:2013/04/29(月) 19:40:52 ID:tTy7ihBw0
しかし詩音にはそれを否定することはできなかった。
精神が大きく疲労した上に、DIOのカリスマに心を奪われつつあった彼女にはそれを告げるほどの気力はなかった。
ただ一つ、

(ああ、やっぱりまどかさんもマスターだったんですね…)

そんな、分かりきっていたはずの事実を改めて現実として突きつけられた。そんな感覚を味わった。

しかし、この場にいるのはこの三人だけではなかった。
もう一人、忘れてはならない存在がいた。

それは、他でもない――――園崎詩音のサーヴァント。

「…――■■■」

ふと起き上がりながら、うめき声を上げるバーサーカー。
その存在をまどかは認め。

彼女の中の時が止まった。



「え……?さや、か…ちゃん…?」

青い短髪、青い瞳、真っ赤に染まってこそいるがその服は紛れもない、見滝原中学校の制服。

最後の会話はお互いが傷付くようなやり取りしかできなかった、そしてその魂は同じ魔法少女である子と共に消え去っていった、大切な親友。

まどかの中にあったのは、喜び以上に困惑だった。
なぜ彼女がこんなところにいるのか。
なぜそんなに血まみれの格好で立っているのか。
その体に刺さったナイフは何なのか。
そして―――なぜそんなにも獣のような眼光を発しているのか。

494消えない想いーLuminis ◆FTrPA9Zlak:2013/04/29(月) 19:42:59 ID:tTy7ihBw0
「マドカ、彼女はシオンのサーヴァントだ」
「…嘘……」
「嘘じゃない。私も彼女に襲われかけた。身を守るために反撃してしまったが。
 彼女は今理性を奪われている。君の友達は、狂戦士――バーサーカーのクラスで呼び出されている」

理性を奪われて。
その言葉に衝撃を覚えるまどか。
心当たりはある。あの影の魔女と戦っていたときの、痛みを消しての特攻自体はまさしく狂戦士だったとも言える。
しかし、それで今の美樹さやかの姿として納得できるかといわれればできない。

「この聖杯戦争に呼ばれたってことは、私のように彼女にも願いがあったのだろうね。
 他の人間を殺してでもやり遂げたいことが」
「そ、そんな!そんなのおかしいです!だって、だってさやかちゃんは――」

その後の言葉は、まどかの口からは続かなかった。
なぜなら、全身のナイフをふるい落としたバーサーカー―――さやかがその姿を瞬時に魔法少女のものに変え。
また瞬時にその手に作り出した剣でアーチャーに斬りかかったのだから。

「チィ…」
「さやかちゃん?!」
「■■■■■■■■■!!!」

アーチャーはかわしつつ、ナイフを投擲する。
別に殺しても構わなかったのだが、マスターの手前、あえて手や足などを狙った。狙いは手加減をして、しかし威力は全力で。
投げつけられたナイフは肩を貫き、血と肉をぶちまけながら腕ごと吹き飛ばした。
まどかが顔を背けたくなるような姿を晒してもしかし、さやかは止まらない。
吹き飛ばされた部位はまたしてもグロテスクな音を立てながら再生、元の姿を作り出す。
斬りつけられた剣をナイフでかろうじて受け流したアーチャーは、その目から高圧の液体を射出する。

空裂眼刺驚(スペース・リバー・スティンギー・アイズ)。
人体をも易々と貫く威力を誇る、DIOの能力の一つ。
仮にもCランクの宝具に分類されているそれを受けては、再生能力を持ったさやかとはいえ一たまりもないだろう。

事実、それは彼女の剣ごと眼球を貫き、さらにその脳まで到達した後後頭部から飛び出していった。
飛び散る脳髄、血液。
しかし、それでもさやかは倒れなかった。
後ろに仰け反りそうになった体を、足で踏ん張って支え、回復するまでの一瞬の中でさらに剣を作り出して斬りかかる。

495消えない想いーLuminis ◆FTrPA9Zlak:2013/04/29(月) 19:44:52 ID:tTy7ihBw0

高速の滅多斬りはアーチャーの体に傷をつけるが、行動不能にするまでには至らない。せいぜいかすり傷程度だ。
さらにその攻撃速度に目が順応し、剣筋を一つ一つ確実に見切っていく。
そして左腕で手首を、右腕でさやかの首を掴み上げる。
すると、触れている部分が恐ろしい速度で凍りつきはじめた。

気化冷凍法。己の天敵である攻撃に対抗するために編み出した技。
波紋使いなど時代遅れであり、この場に波紋使いがいるとは思えない以上使い道はないと思っていたが、さやかの動きを止めるのには役立ったようだ。
全身が凍り付いて身動きが取れなくなったさやか。その、まるで氷像のような姿と化したさやかを見て、まどかは声を上げる。


「止めて、アーチャーさん!こんなのってないよ!」
「現実を受け入れろ!!彼女はもはやサーヴァントでしかない。ただの世界のシステムでしかないのだ!」
「…!」
「マドカ、今までは時間が必要だと思って黙っていたが、そろそろ言わせて貰おう。
 戦うのか、戦わないのか、それを今ここで決意するのだ」

話している間にもさやかの体の氷は解け、その身の自由を取り戻しつつある。
凍らせた体に魔力を通したことでダメージや状態異常から治していたのだ。
アーチャーがまどかを攻撃範囲から退けたときには、足や腕の関節の氷は溶け、既に動き始めていた。

剣をナイフで弾くたび、金属のぶつかり合う音と衝撃が周囲に鳴り響く。
空いた手で突き出した拳はさやかの体を吹き飛ばし、壁を砕いてビルの外まで押し出した。
しかしアーチャーは構えを解かない。

「マドカ、もし君に戦う意志があるというのなら、私は彼女との戦いに本気を出そう。
 しかし戦えないというのなら、これまでみたいに手加減して戦う。
 彼女の再生力は把握している。恐らく本気で戦わなければ殺しきることはできないだろうな。つまり、ずっと彼女は傷付き続けることになる。
 決めるんだ。生き抜き、戦い抜くのか、それともここで戦いを放棄するのか」

アーチャーの言葉。それはおそらく本当だろう。
彼の本気がどれほどのものなのか、まどかは知らないとはいえ、さやかの再生能力は他の誰よりも知っている。
つまり、ここで戦うことを選ばないのであれば、彼女が傷付き続ける姿をずっと見せられることになる。
そして、それが何を意味するのか。
サーヴァントの仕組みは知らないとはいえ、再生能力もただ無尽蔵に再生できるわけではない。回復には魔力を消費するのだ。
では、魔力が切れたときはどうなるのか。サーヴァントが魔力の塊である以上、消滅するだけ―――
とはいかないことをまどかは知っている。おそらく、またしても穢れきったさやかの魂は”アレ”を生み出す。

魔法少女の成れの果てを。呪いから生み出た存在、魔女を。

496消えない想いーLuminis ◆FTrPA9Zlak:2013/04/29(月) 19:46:49 ID:tTy7ihBw0
しかし、それでもまだ、まどかには戦う決意はできなかった。
戦う決意をするということは、人を殺すかもしれない決意をするということ。
まどかにはまだ、それを決めるには、あまりに状況が突然すぎた。

しかし迷っている間にも、さやかは立ち上がり地面を蹴ってアーチャーに突きを放ってきた。
その速さはまどかには捉えきれるものではない。しかし、狙いだけははっきりしていた。
そしてそれを迎え撃つ姿勢を、アーチャーは固めていることも分かる。
アーチャーの拳はおそらくそのまま飛びかかるさやかの頭を叩き潰すだろう。
それでもさやかは死なない。しかしダメージは確実に魔力を穢し続ける。

だからこそ、まどかは。

アーチャーの前に飛び出した。

「なっ、バカ―――」

そして、轟音と共に近付くさやかの刃は、

まどかの目の前で静止した。


まどかは信じていた。もし彼女の中にまだ心が残っているのであれば、と。
そしてそれはたった今、確信に変わった。

「もう止めて、さやかちゃん。こんなことさやかちゃんが望んでたものじゃない。そうでしょ?」
「――■」

まどかの呼びかけに対し、声になっていないうめき声を上げるさやか。
その手の、まどかに突きつけられた剣は震えているが、未だ戦意は衰えていない。

「さやかちゃん…?」
「―――■■■■■■■!!!」

まどかは、さやかが元に戻るのではないか、と一瞬の期待を持った瞬間。
さやかはまどかを避け、横からアーチャーに突撃した。

「さやかちゃん!!」
「ではこうしよう。マドカ、今の俺でも動きくらいなら止められる。
 もし戦う意志があるのなら、―――――バーサーカーを殺せ」

そう言って、アーチャーはまどかの足元に1本のナイフを投げた。

「君なら彼女の弱点も分かっているんだろう?覚悟があるというならできるはずだ」

次の瞬間には、さやかの半身は凍結させられ、腕をナイフで串刺しにされて壁に縫い付けられていた。
しかし、それが氷を溶かし腕のナイフを外し取るまでには10秒もかからないだろう。

迷っている時間はない。
これ以上、彼女に苦しみが続くのならば―――






(さやかちゃん…、ごめん…)

497消えない想いーLuminis ◆FTrPA9Zlak:2013/04/29(月) 19:49:44 ID:tTy7ihBw0




詩音はそんな彼らの戦いを、見つめることしかできなかった。
もう彼女には戦う意志も、戦える力もなかった。
さらには戦うさやかの消費する魔力は詩音の体力も奪っていく。

こんな私が生き残ろうとしたのは、勝ち抜こうなどと思ったのは間違いだったのだろうか。

そんな時だった。
バーサーカーの前に飛び出すまどかの姿を視界に収めたのは。
そしてその剣をまどかの目の前で止める光景を見たのは。

最初はどうして彼女が剣を止められたのか分からなかった。
しかし、それまでの詩音の戦い方、そしてあの、まどかの名前を出したときのバーサーカーの反応を思い出してもしかしてと思い当たる。

(あの子、まどかさんを守ろうとしている?あのサーヴァントから―――)

もし本気で殺すつもりで戦うのであれば、サーヴァントよりもマスターを狙うのは定石だろう。
相手があの強力なアーチャーであるならなおさら無力なまどかを狙うことが勝ちに繋がる。
しかしバーサーカーはアーチャーのみを執拗に狙い続けた。
そして決定的なのは、まどかを前にして自身の剣を止めた。
バーサーカーはまどかの存在を認めていた。だからそれが予想外ということはない。

理性を奪われた彼女には、サーヴァントの死がそのまままどかの死に繋がることが分からない。
それでも彼女なりにまどかを助けようとしているのではないか。
バーサーカーにはそれほどまでに思える友達がいる。

――羨ましいと思った。
私にはそれほどまでに思ってくれるような、正気を失ってあんな風になってまで助けようとする友達はいただろうか。
変わり果ててなお、友達と認識してくれるような友達は、仲間はいただろうか。


そう思って、そんなことを考える資格が自分にはないことを悟った。

私は最も大切にしていた人のお願いすらも無碍にし、多くの人を傷つけてきた、殺してきた。
そして今また、多くの人を殺して全てを元通りにしようなどと願った。
聖杯などというものに絆され、今際の際の言葉すらも忘れかけてしまった。
きっと自分の心の奥底にあった、隠された願いだったのかもしれない。
でもそれは、私にはやっぱり不釣合いなものだったんだ。
自分のしたことを受け入れられない人間に、そんな願いを叶える資格なんて、あるはずもなかった。
きっと、これまでの戦いはそんな私への、神様の罰だったのかもしれない。

今、目の前ではまどかはバーサーカーを殺そうとしていた。

もう、自分の命はどうなってもいいと思った。仮にも一度死んだ身。最後に見る夢としては上等なものだったと思う。
だけど、今を生きているあの少女は、こんな最低な罪を背負ってはいけない。それをしてしまえば、後戻りの道を失ったまま迷い続けることになる。
では、それを止めるにはどうしたらいいか。
ふと、詩音の視界に、地面に落ちているそれが入った。

498消えない想いーLuminis ◆FTrPA9Zlak:2013/04/29(月) 19:53:10 ID:W6.d0xdo0

あの時、ギブアップしろと言われたとき、果たして本当にギブアップしようと思ったのだろうか。
ギブアップの方法を知っていたのではないだろうか。
もしかしたら、未練があったのかもしれない。
もしかしたら、ギブアップの後にあるものが怖かったのかもしれない。

それでも、あの時のライダーや今目の前のアーチャーとの戦いの中、彼女の心は、意志は折れてしまった。
いや、まどかを殺せなくて良かったなどと考えた時点で、きっと私に戦い続けることなんてできなかったのだろう。
だけど、後悔はない。むしろそれでよかったのだと思えた。

だからこそ、詩音は、地面に落ちているもの―――アーチャーのナイフを手に取り。
己の首に、突き刺した。



「えっ?」

まどかがさやかのソウルジェムにナイフを構え、突き立てようとした、まさにその時だった。
さやかの体が、黒く綻び始めたのは。

「…う…、ゴホッ…」
「詩音、さん…?詩音さん何をやってるんですか?!」
「ダメ、で…すよ。そんなか…おで、友達を…、殺す…な…て」

座り込み、体を壁に預けた詩音は、その首にアーチャーのナイフを突き立てていた。
傷口からは血が流れ、彼女自身が声を発するたびに血は彼女の気管に流れ込んでいる。
何より、彼女の体が綻ぶのはさやかよりも早かった。
それが意味するもの、園崎詩音という存在の死を示している。

「詩音さん待って!まだ私、あなたと全然お話できてない!助けてくれたお礼だって――」
「いいん、ですよ、ゴホッ…、だって私なん、か、あなたにお礼言われるような、話し相手になれるような人間じゃ、…ないか、ら」

声を出すのも苦しそうに話し続ける詩音。
まどかがその傍に近寄ろうとすると、その進行を手で差し止めた。

「…友達は、大事にしなきゃ。私は、…こんな死人の願いしかなかったけど、まどかさんなら、きっと―――」
「詩音さん…!」

ああ、私の本性を知らないとはいっても、こんな私のためにこんな場所で涙を流してくれるんだ。
優しい子だなぁ。
やっぱり、この子を殺してなくて、本当に良かった。

499消えない想いーLuminis ◆FTrPA9Zlak:2013/04/29(月) 19:53:11 ID:tTy7ihBw0

あの時、ギブアップしろと言われたとき、果たして本当にギブアップしようと思ったのだろうか。
ギブアップの方法を知っていたのではないだろうか。
もしかしたら、未練があったのかもしれない。
もしかしたら、ギブアップの後にあるものが怖かったのかもしれない。

それでも、あの時のライダーや今目の前のアーチャーとの戦いの中、彼女の心は、意志は折れてしまった。
いや、まどかを殺せなくて良かったなどと考えた時点で、きっと私に戦い続けることなんてできなかったのだろう。
だけど、後悔はない。むしろそれでよかったのだと思えた。

だからこそ、詩音は、地面に落ちているもの―――アーチャーのナイフを手に取り。
己の首に、突き刺した。



「えっ?」

まどかがさやかのソウルジェムにナイフを構え、突き立てようとした、まさにその時だった。
さやかの体が、黒く綻び始めたのは。

「…う…、ゴホッ…」
「詩音、さん…?詩音さん何をやってるんですか?!」
「ダメ、で…すよ。そんなか…おで、友達を…、殺す…な…て」

座り込み、体を壁に預けた詩音は、その首にアーチャーのナイフを突き立てていた。
傷口からは血が流れ、彼女自身が声を発するたびに血は彼女の気管に流れ込んでいる。
何より、彼女の体が綻ぶのはさやかよりも早かった。
それが意味するもの、園崎詩音という存在の死を示している。

「詩音さん待って!まだ私、あなたと全然お話できてない!助けてくれたお礼だって――」
「いいん、ですよ、ゴホッ…、だって私なん、か、あなたにお礼言われるような、話し相手になれるような人間じゃ、…ないか、ら」

声を出すのも苦しそうに話し続ける詩音。
まどかがその傍に近寄ろうとすると、その進行を手で差し止めた。

「…友達は、大事にしなきゃ。私は、…こんな死人の願いしかなかったけど、まどかさんなら、きっと―――」
「詩音さん…!」

ああ、私の本性を知らないとはいっても、こんな私のためにこんな場所で涙を流してくれるんだ。
優しい子だなぁ。
やっぱり、この子を殺してなくて、本当に良かった。

500消えない想いーLuminis ◆FTrPA9Zlak:2013/04/29(月) 19:55:31 ID:W6.d0xdo0
そして、詩音は最後に、首に刺さったままのナイフを握り、引き抜く。
大量の血が噴出、周囲を染めつくしたところで、詩音は声を絞り出す。

「■■■」
「バーサーカー――いえ、さやかさん…、令呪を持って命じます…」

呼ぶ名は、クラス名ではなく彼女自身の真の名前。
そして手を前方に掲げ、自身のサーヴァントに最後の命令を下した。

「まどかさんと、お話をしてあげなさい」

その言葉を最後に。
園崎詩音の肉体は霧散し、消滅した。












まどかがいた。
アーチャーがいた。
アーチャーとまどかはまるで保護者と子供のように話していたような気がする。

それで、なんとなくまどかがこのアーチャーのマスターなんだってことは分かった。
だけど、こいつがまどかの傍にいてはいけないと思った。
本能で察した。こいつの心はドス黒い色をした、私にとっても倒さなければいけないような存在ということに。魔女に並ぶくらい危険な存在だって。
だから攻撃した。倒そうと思った。

でも、まどかはそんな中でも私のことばっかり気遣っていた。
今一番気にしなければいけないのは、何より自分のことだというのに。

ああ、そうなんだ。
あんな風に変わり果てていく私のことを見ても。
あんな言葉を投げかけた後でも。
まだまどかは私の友達でいてくれたんだ。
それなのに、私は結局謝ることもできなかった。

「ま、どか―――」
「さやかちゃん…」

501消えない想いーLuminis ◆FTrPA9Zlak:2013/04/29(月) 19:56:05 ID:tTy7ihBw0
「まどか、私、間違っていたのかな…?
 人間止めて、皆のために戦いたかったっていいながら、結局自分のために戦ってて。
 皆に呪いを振りまく存在なんかになって。
 全部自業自得なのに未練たらたらで、こうやってまたたくさんの人を傷つけようとして。
 私なんて、いなかったほうが良かったんじゃないかな…?」

結局こんなところにきても自己否定するような言葉しか出てこなかった。
こんな自分が許せなかったから。

「ううん、さやかちゃんは間違ってなんかない。
 上条くんの腕を治したのも、マミさんの跡をついで戦おうとしたことも、間違ってなんかないんだよ」
「そう、なのかな?」
「うん。さやかちゃんが祈ったことも、そのためにがんばってきたことも、とっても大切で、絶対、無意味じゃない。
 だから、もっと胸を張っていいんだよ」

そんな自分を、まどかはこんなにも肯定してくれる。
気休めや気遣いなどではない、本心から。
ああ、こんなになってしまった私にも、まだこんなにも想ってくれる親友がいたのだと。
そう思ったらほんの少し、心が軽くなったような気がした。

詩音。
ごめんね。こんなダメサーヴァントで。
そして、ありがとう。最後にまどかと話させてくれて。

私の体が、魔力が消えていくのが分かってきた。
もうそろそろ時間だろう。

だから。
生前の悔いの一つを果たそう。

「ごめんね、まどか。あんな酷いこと言って。私の気持ちなんて分からないなんて…。あんたも苦しんでたのに」

傷つけたまま終わってしまった、親友との繋がり。
せめて一言だけ、謝っておきたかった。

「いいの。もう、いいんだよ。さやかちゃん…」
「それとね」

体にノイズが走る。
もう私の色すらも、まどかは認識することができなくなっているだろう。
視界が滲んで、まどかの顔も見えなくなりつつある。
だからせめて、最後くらいは笑顔で別れよう。

「こんな私と、友達でいてくれて、ありがとう――――」

そういったさやかの、満面の笑みと瞳から零れ落ちた涙を最後に。


美樹さやかは、運命に翻弄された一人の少女はこの地から消滅した。

502消えない想いーLuminis ◆FTrPA9Zlak:2013/04/29(月) 19:58:43 ID:tTy7ihBw0


「彼女は、己が過去に犯してしまった罪を無くしたいと言っていた。
 友達や家族を殺してしまったことを。
 死の淵でその罪の苦しみから解放されたはずであったのに、それでも諦めきれない想いが、彼女を聖杯戦争に呼び寄せたんだろうね」

消え去った親友を前に、まどかはしばらく泣いていた。
傍にいる己のサーヴァントを気に留めることもなく、泣き続けた。


そして涙を拭い、発した第一声。

「アーチャーさん。私、戦います」

それは、まどかの覚悟の言葉だった。

(ほぅ…)

「ようやく戦う覚悟を決めてくれたか。しかし、その戦うという覚悟にはそれに見合うだけの目的というものも必要になってくる。
 特に戦いというものにおいては、意志の強さだけではなく意志の質というものも必要になってくる。
 だからこそ聞いておきたい。マドカは聖杯に何を願うんだ?」

大体の予想はついている。
あの友達を人間に戻したい、あるいは救いたい、などといったことを、この心優しき少女は願うのだろう。
そのくらいの願いならば、自身もやりやすいと考えていた。

「いいえ、私は何も願いません。聖杯なんて、いらない」
「何…?」

だからこそ、まどかの答えにDIOは眉を寄せた。

「どういうことかい?願いもないのに戦うというのか?」
「ここにいる人たちは、みんなお願いがあって戦っているんだとは思います。
 でも、詩音さんも、さやかちゃんも優しい子でした。
 こんなところで願いを叶えるために殺し合いをするような子じゃないって。
 もしも彼女やそれ以外にも頑張って頑張って苦しんで戦い抜いて、その果てに死んで。
 そんな人たちが、またこんな戦いに呼び出され、なおも戦いを強いられて苦しみ続けるというのなら。
 そんなものから生まれる願いなんて、私はいりません。そんなもの、あっちゃいけないんです」

そして、まどかははっきりと、こう言い切った。

「私は、聖杯を壊したい」
「…!?」

聖杯を壊す。
その言葉の意味、まどかは分かっているのか、と。
そう思いはしたが、口には出せなかった。それほどに、衝撃の方が大きかった。
まさかこんな少女の口からそんなことが言われるなど、想像もしていなかったのだから。

「分かっているのかマドカ!それはこのゲームのシステム、そして私を含めて全ての願いを持つサーヴァントたちを敵に回すということだぞ?!」
「はい。覚悟はあります」

503消えない想いーLuminis ◆FTrPA9Zlak:2013/04/29(月) 20:00:48 ID:W6.d0xdo0

まどかの言葉には、迷いはなかった。
親友の姿をあのような形で見せられることになったまどかは、その選択を選ぶことを迷わなかった。
そして――

「アーチャーさんにも願いがあるのは分かっています。私の願いと相容れないんだろうなってことも。
 それでも、こんな理由だけど、それでも私は戦いたいんです。さやかちゃんや、他のこんなところに呼ばれてまた苦しみを続けるシステムを無くすために」

そういうと同時、まどかの手の甲が輝き始めた。
令呪。サーヴァントに対する3つの絶対命令権にして、このムーンセルにおいての生命線。


「だから、お願いします。力を貸してください。アーチャーさん…いえ、ディオ・ブランドーさん!」

そうして、まどかは自身のサーヴァント、悪の帝王に己が願いを託した。



予想外ではあった。

どうやらこの少女、自分の想像していたよりも遥かに強い意志を持っていたようだ。
このDIOが、こんなチンケな人間に若干の敬意を払いたくなるほどには。
それが果たして本心からか、あるいはこの令呪による効果なのかどうかは分からないが。
令呪によるサーヴァントへの命令。
曖昧であり、拘束力は薄いはずの命令にも関わらずDIOはその指示に従わなければならないという考えが生まれているのを感じていた。
つまりは、それほどにマスターとしての素質は強い、気高い精神を持っているということなのだろう。

「分かった。君の戦いのための力となろう」

いいだろう。覚悟を決めたというのであれば上々。
今のこの少女であれば、聖杯戦争を生き抜く力ともなり得る。
この懇願という名の命令も、今は甘んじて受け入れよう。



しかし、彼女自身の願い――聖杯の破壊。これを聞き入れるかどうかは話が別だ。
このDIOには望みがある。それを叶えるためには、聖杯による奇跡が必要なのだ。
聖杯を破壊されては困る。
今はまだいいだろう。令呪もあるし、しばらくは願いを聞き入れることもやぶさかではない。
だが、もし参加者が減ってきて聖杯の存在が目前となってくる時までには、このマスターにはなにかしらの手を打っておかねばならないだろう。
他のマスターを探し出すか、まどか自身の考えを改めさせるか。無理であれば難易度は跳ね上がるが聖杯が破壊される前に己の願いをかけるしかなくなる。

あるいは鳴上悠とランサーの活用法についてまた別のものを考えるべきだろうか。
いずれ捨てる駒、別にどのように使ってその結果失うことになったとしても特に惜しいとは思わないが、それでも可能な限り有効に使いたい。

それでも、今はモラトリアムに浸ろう。時間もちょうど朝になるところだ。
だから。その時がくるまでは失望させてくれるなよ、マスター。

504消えない想いーLuminis ◆FTrPA9Zlak:2013/04/29(月) 20:01:23 ID:W6.d0xdo0



街には朝が来たことを告げる日差しが差し込んでいる。

多くの人間が散り、消えていった夜が明けた。

壁の穴から空いた光を確認すると同時、DIOは霊体化してまどかの視界から消えていった。

そして、まどかはその日差しを眺めながら、己の令呪を握り締めた。

強い意志と想いをその胸に抱いて。




【園崎詩音@ひぐらしのなく頃に 死亡】
【バーサーカー(美樹さやか)@魔法少女まどか☆マギカ 消滅】


【新都・蝉名マンション/朝】

【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:疲労(小)、令呪残り2画
 ※行動方針:聖杯を破壊するために戦う(具体的な行動方針は不明です)

【アーチャー(DIO)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:魔力消費(中) 、令呪(まどかの戦いに力を貸す)
 ※宝具“ロードローラー”は破壊されました。再召喚は不可能です。
 ※鳴上悠より、彼が交戦した全てのマスター・サーヴァントの情報を得ました。
 ※携帯電話を入手しました。鳴上悠の携帯電話のナンバーを記憶しています。

※鋼鉄の腕(アイゼン・デア・アルム)@エンバーミング 、鋼鉄の腕の予備弾@鋼鉄の腕(アイゼン・デア・アルム)が放置されています。
 拾うかどうかは以降の書き手にお任せします

505 ◆FTrPA9Zlak:2013/04/29(月) 20:01:55 ID:tTy7ihBw0
投下終了です
矛盾点、問題点などあれば、指摘お願いします

506名無しさん:2013/04/29(月) 20:20:03 ID:ghcOQAI.0
投下乙です!
詩音組、踏んだり蹴ったりだったがここで脱落か…
だが彼女達の死はまどかに大きな影響を与えられたな
ついに前へ進むことを決意したまどかだが、このままDIOを従えて目的を遂げられるのか
はたまた、DIOがまどかを出し抜くのか…今後が気になる

507名無しさん:2013/04/29(月) 21:03:30 ID:FGWEs3io0
投下乙!
おお、最後に詩音が詩音で、さやかちゃんがさやかちゃんだった
戻ってこれたんだね……
悲しいけど、救いのあるお話でした
そしてディオ様は大物だなあ
原作でも最後にはジョナサンにそうであったように気高さには敬意払うんだけど、でも変わらず邪悪
この先がよりいっそう楽しみなペアになった

508 ◆2shK8TpqBI:2013/04/29(月) 21:14:20 ID:7cMn7o0M0
投下乙です
前作のまどかの話からこのような素晴らしい作品に繋いでいただいて
嬉しく思います。
覚悟を決めたまどかが今後どうなるのか非常に楽しみです。

以下は私の作品の修正要請の返信について
>484確かに情報が詳細すぎました申し訳ございません。
情報についてはサーウァントはステータス、マスターは名前のみ
スキルや宝具については>489のような感じでいかがでしょう?
結果詳細な情報はサブラクとアシュナードのみ、兄貴とダッキちゃんは
不明、ディオ様はまあ少なくとも肉の芽くらいはばれるんじゃないでしょうか?
こんな感じでいかがでしょう?意見お待ちしております。
最後にもう一度、投下乙です!

509名無しさん:2013/04/29(月) 21:26:09 ID:ghcOQAI.0
>>508
それくらいでいいんじゃないかな?
DIO様は肉の芽っつう『宝具』を見られた以上ある程度情報がバレるのは仕方がないだろうしね

510 ◆ARbuQtVLig:2013/04/29(月) 21:45:07 ID:qxqn3RPY0
かなりお久しぶりになりますが、期限も切れているようですので
間桐慎二&ライダー(ラオウ)、羽瀬川小鳩&キャスター(キンブリー)、枢木スザク&バーサーカー(ランスロット)、匂宮出夢&アサシン(サブラク)
で予約したいと思います

511 ◆QSGotWUk26:2013/04/29(月) 23:38:18 ID:HocmH9JE0
◆2shK8TpqBI氏、◆FTrPA9Zlak氏、お二方とも投下乙です

>>508
修正乙です
それくらいの情報のほうが書く側としてもやりやすいのではないかな、と思います
別れて速攻で狂王に食われた大統領が意地を見せた、情報も手に入れて活躍が始まったという気がします

>>505
前回の話を書いた時、こうなるとは予想もつきませんでした
さやかは最後に救われて、まどかが自分から行動を起こすようになり、先が楽しみです


では、時間ギリギリになって申し訳ありませんが投下します
住人の皆様、この度は期限の延長を認めて下さり、ありがとうございました。

512 ◆QSGotWUk26:2013/04/29(月) 23:39:17 ID:HocmH9JE0

 深山町の一角にある交番で、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアはギアスを使う。
 強面の警官が奥に消えて、戻ったときには二挺の拳銃を手にしていた。
 その拳銃は当然のようにルルーシュに差し出される。

(やはり、ギアスの力は依然として俺の中にある。誤作動、あるいは不発という可能性は消えたか)

 拳銃を受け取り、ルルーシュは悠然と交番を出た。警官は止めもしない。
 遠からず彼らは拳銃の紛失に気付くだろうが、「いつ」「誰が」拳銃を持ち去ったかを知ることはない。
 ギアスが脳に干渉した作用により、効果発動の前後数十秒の記憶は失われる。
 拳銃と予備の弾丸を携えて戻ってきたルルーシュを、天海陸、泉こなたら同行者たちはそれぞれ複雑な面持ちで迎えた。

「便利なものだね、君の力は。その力があれば思いどおりにならないことなんてないだろう」

 そして最悪なのが、天海陸のセイバーだ。
 先刻のファーストコンタクトより以降、セイバーはずっとこの調子だった。

(当然だな。目の前でマスターを操られたのだから、奴は俺に気を許しはしないだろうな)

 天海陸にギアスを使用したのは痛恨だったと言わざるを得ない。
 自分では冷静なつもりだったが、スザクがいるかもしれないという可能性に浮き足立ったようだ。
 こちら側の、衛宮士郎のセイバーのおかげで戦闘こそ避けられたものの、彼らに与えた心象は最悪と言っていいだろう。
 正直なところ、ルルーシュとしては未だに彼らへの疑念を払拭できてはいない。
 が、陸から伝えられた遠坂凜のサーヴァント情報が、セイバーの知っているそれと同一だったというのが痛い。
 ギアスの強制力は絶対であるがゆえに、天海陸の無実をこれ以上なく強い形で証明してしまった。

(現状、俺に彼らを糾弾する手はない。これ以上の専行はセイバーからの不興も招く)

 当面は陸とそのセイバーを信用した体で行動し、同行する中で彼らの真偽を見極めるしかない。
 そして、信頼の意思表明として、武器の確保を選択した。
 天海陸と泉こなたは(彼らの言葉を信じるのならば)双方ただの民間人であり、さしたる武力を持たない。
 肉体労働には向かないルルーシュはギアスでそこを補い、衛宮士郎などは文字通りの武力を保持している。
 弱者が強くなる最も容易で確実な方法は武装することだ。
 ルルーシュ自身にも銃の心得はあり、ギアス以外にも打つ手を得るためにも銃は必要だった。

「天海、一つはお前が持っていろ。使い方は分かるか?」

 セイバーには構わず、銃を陸へと手渡した。
 今度のギアスはかける相手がNPCであること、また陸とこなたに持たせるために使うと事前に説明していたので、表立っての反論はない。
 信頼を得られるかは微妙だが、少なくとも一つ貸しができることになる。
 素人に銃を持たせるのが危険という危惧はあるが、そもそもにしてルルーシュは陸が何らかの能力を隠していると疑っている。
 それが戦いに適した能力である場合、ルルーシュに抗する術はない。銃があってもなくても脅威度はさほど変わらない。
 こなたに渡さなかったのは、さすがに小学生にしか見えない少女に銃を持たせるのは倫理的に躊躇われたからだ。
 FPSは得意と本人は言ったが、それで人が撃てるのかと問えば、やはり沈黙が帰ってくるだろう。

513 ◆QSGotWUk26:2013/04/29(月) 23:40:03 ID:HocmH9JE0

「そんなこと言われても、銃なんて触るのも初めてだよ」
「実際に撃つ必要はない。構えるだけで威嚇になるからな」

 ルルーシュの目から見ても、陸の表情に『作っている』感はない。
 本当に嘘などついていないのか、あるいはルルーシュと同じくらいの『嘘つき』なのか――

「……ルルーシュ!」

 警官たちが騒ぎ出す前にそそくさとその場を離れ、駐車していた車に乗り込もうとした時、セイバーが鋭く囁く。
 色濃い警戒を孕んだ声。彼女の視線の先、佇むのは一人の男。
 ルルーシュは彼を見て、

(弾丸を装填した、銃のような男だ)

 見た目には何の変哲もないが、静謐さの内にとてつもない暴虐を抑え込んでいる、そんな印象を抱いた。
 生気の感じられない氷のような瞳が、セイバーを通り越してルルーシュへと向けられる。
 見た、というよりは捉えた、と表現すべき眼差し。

「切、嗣……」

 信じられない、といったセイバーの声。
 切嗣と呼ばれた男は、セイバーに一瞥すら返さない。

「知り合いか?」
「衛宮切嗣……私の、前のマスターです。第四次聖杯戦争の時の」

 小声でセイバーが返してくる。後ろで何事かと傍観する陸たちに聞かれないように、士郎の養父です、とも。
 だが衛宮切嗣が纏う空気は、衛宮士郎とは似ても似つかない。

「気をつけて、ルルーシュ。切嗣は勝利のために手段を選ばない。いや、『選べない』人間だ」
「手強いのか?」
「彼が自ら姿を晒したということは、私たちをまとめて葬る算段がついているということです。彼は勝てない勝負に身を投じる男ではない」

 セイバー二騎、そしてライダーを敵に回してなお、勝てる自信がある。
 世迷言としか思えないが、切嗣の目を見ればブラフやハッタリなどではないと確信できる。

(あの目……あれは俺たちを人として見ていない。『排除すべき障害』と見做している……そんな目だ)

 切嗣が、近づいてくる。その瞳は殺意を隠そうともしていない。
 傍らのセイバーもまた、旧知と出会えて嬉しいという顔ではない。むしろ最大レベルの警戒に鎧われている。
 高まる激突の気運を察したか、こなたのライダーが彼らを背中に庇い自身の宝具を手にするのが横目に見えた。
 ルルーシュたちから10メートルほどの地点で、切嗣は立ち止まる。
 そして、おもむろに片手を掲げ――振り下ろした。同時に煌めく無数の光。

「くっ……問答無用か!」
「下がりなさい、ルルーシュ!」
「変身ッ!」

 ライダーが瞬時に姿を変えて、セイバーと共に遙か空より飛来する光弾を次々に払い落とす。
 突然沸き起こる爆発に、周囲を歩くNPCにが何人も巻き込まれた。

514 ◆QSGotWUk26:2013/04/29(月) 23:40:46 ID:HocmH9JE0

「正気か!? こんな街中で……!」
「心配するな、時間をかけるつもりはねえよ」

 ぞっとするほど近くで、ルルーシュの知らない声がした。反射的に振り向く。

「……ぐああっ!」

 天海陸のセイバーが、腹に深々と剣を突き刺されていた。
 数秒前までは確かに何も存在していなかった空間に、マゼンタ色の鎧を纏ったサーヴァントが立っている。
 こちら側のライダーとよく似ている――

「おいおい、まさか当たっちまうとは。本当に弱いサーヴァントだったんだな、お前」
「セイバーさんッ!」

 刺された方より、剣を突き立てているそのサーヴァントの方が逆に驚いている。
 陸のセイバーを救うべくこなたのライダーが斬りかかる。

「おっと! ははっ、やる気だな! それでこそだぜ、仮面ライダー!」
「ディケイド……あんたなのか!」
「へえ、俺を知っているかよ。でも悪いな、俺はお前を知らないんだ。知ってても……やることは同じだけどな!」

 剣を引き抜き、ディケイドと呼ばれた敵サーヴァントが飛び退く。
 ライダーは深追いせず、伏したセイバーに肩を貸して傷を診た。

「ライダー、あのサーヴァントを知っているのか?」
「ディケイド……仮面ライダーディケイド。俺と同じ、『仮面ライダー』だよ」
「敵もライダー、か」

 切嗣と並ぶそのライダー、ディケイド。
 ステータスはこちらのライダーと同じく隠蔽されているのか、読み取れない。
 だが、

「こちらにはセイバーとライダーがいる。押し切るぞ!」

 奇襲により陸のセイバーが負傷したとはいえ、それでもまだ二対一だ。
 このアドバンテージを活かし、警察や他のマスターが殺到する前に勝負を決める――それが、ルルーシュの目論見。
 セイバーが奔る。ルルーシュの目ではとても捉えられない速さ。
 手にするは黄金の、しかし不可視の風を纏う秘蔵の剣。
 剣戟戦で間合いを計らせないことは凄まじいメリットになる。

「ライダー、風だ。ぶつけて散らせ」
「了解」

 しかし、切嗣とディケイドには通じない。
 ディケイドがカードをベルトに叩きこむ。閃光の後、ディケイドは全く違う姿へと変身を遂げていた。
 マゼンタから深いブルーの体色へと変化したその名は、仮面ライダーアギト・ストームフォーム。
 風を操る力を得た、アギトの進化形態の一つ。

515 ◆QSGotWUk26:2013/04/29(月) 23:42:31 ID:HocmH9JE0

「風王結界が!?」

 セイバーの剣を包み、光の屈折率を変化させることで不可視とする宝具、『風王結界』。
 かつてセイバーのマスターだった切嗣は、当然その正体を知っている。ならば対策を立てることも容易だ。
 ディケイドアギトが風を操作し、セイバーの剣を包む風を吹き散らす。黄金の輝きが、白日の下に晒された。

「セイバーさん!?」
「余所見するなよ、仮面ライダー!」

 セイバーに一瞬気を取られたライダーを、再び姿を変えたディケイドが打ち据える。
 今度はメタリックレッド。高速戦を得意とする、仮面ライダーカブトである。
 ディケイドはクロックアップを発動させ、四方からセイバーとライダーに銃撃を浴びせていく

「この程度で……私は止められないぞ、ライダー!」

 銃撃の嵐の中、セイバーが刀身を露わにした黄金の剣を後ろ手に構えた。その剣先に風が渦巻く。
 剣を隠すだけではない、風王結界のもう一つの使い方――圧縮した風を打ち出し、武器や移動手段として用いること。
 クロックアップで高速移動するディケイドに、さらにそれ以上の速度でセイバーが突き進む。
 間合いを外そうとしたディケイドの鼻先をライダーが斬り裂いて押し留め、セイバーから逃がさない。
 接近戦の間合いとなれば、セイバーがライダーに遅れを取る理由など、何一つない。

「チィッ……!」
「退け、ライダー!」
「こちらもだ、セイバー!」

 肩口からばっさりと斬り裂かれたディケイドは、装甲から弾ける血潮と火花を抑えて切嗣の元へと後退する。
 深手だ。だが、撤退を意識させるにはまだ浅い。
 ルルーシュがセイバーを退かせたのは、交渉の糸口を得たと見たからだ。

「衛宮切嗣。この状況ではお前に勝ちはない。それでもまだ続けるのか?」

 あるいはこれが、見知らぬマスターとサーヴァントであったなら、ルルーシュは躊躇うことなくセイバーに討ち取らせただろう。
 だが、衛宮士郎の養父であり、数時間前にルルーシュらの眼前で絶命した少女、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンの実父となれば、話は別だ。
 もし彼が、娘の死で絶望に狂い、殺戮を決意したなら。ただ障害として排除するのは、本当に正しいのだろうかと、考えてしまう。
 そんなルルーシュの逡巡など一顧だにせず、切嗣はライダーの傷へ簡易な治療魔術を施し、応急処置をした。剣を引く気など毛頭ない、その意思表明である。

「フン、やるじゃないか。さすがはセイバーと……おい、お前はなんて『仮面ライダー』なんだ? それくらい教えろよ」
「オーズだ」
「オーズ、ね。何にしろ、認めてやるさ。お前らは強い。だが……こう来なければ、俺たちも仕掛けた意味が無いんでな」
「退く気はない、と?」
「ハッ、当然だろ。なあ、マスター」
「ライダー。宝具の使用を許可する。全力で叩き潰せ」

 軽口を叩くディケイドに付き合わず、切嗣は淡々と命令を下す。
 それは優勢にあるルルーシュらにも無視のできない発言。

「了解だ、マスター。存分にやらせてもらう……!」

 ディケイドが、新たな宝具――携帯電話らしき何かを、ベルトへと装着した。

516 ◆QSGotWUk26:2013/04/29(月) 23:43:46 ID:HocmH9JE0

「わかるよな、オーズ? 俺が何をしようとしているか」
「くっ……だったら、俺も!」

 オーズもまた、新たなツール――三枚の紫のメダルを取り出した。
 それをオーズがベルトに装填する寸前、

「そうだ、それしかない。お前が『仮面ライダー』であるならば。だが……いいのか?」
「何がだ!」
「俺のマスターは魔術師だ。だからこそこうして遠慮なく宝具に魔力を注ぎ込める。
 が、お前はどうだ? お前のマスターは、俺のマスターと同じくらいの魔力を持っているのか?」
「そ、それは……!」
「実際、お前の強さは大したもんだ。ステータスは多分、俺を大きく上回ってるだろう。
 が……だとするなら、宝具を使った時の魔力消費もまた、俺と同等かそれ以上のはずだ。お前のマスターはそれに耐えられるのか?」

 オーズが、メダルを入れ替えようとした手を止める。正真正銘ただの一般人である泉こなたの身を気遣ったために。
 実際のところ、一度くらいのコンボならこなたの魔力でも使えないことはなかっただろう。
 しかしそれに伴う苦痛、魔力が枯渇する苦しみにこなたを晒すことを、オーズは、火野映司は決断しきれなかった。
 自分一人ならいくらでも耐えられる痛みを、他人に強要する。火野映司が最も嫌う行為。
 その様子を見たディケイドは、失望とも取れる嘲笑をし――止まることなく、切り札の宝具を発動させた。

「じゃあ行くぜ……遠慮なくな!」

 連続する九つの電子音。
 ファイナルカメンライド――ディケイド。
 三度、変化するディケイドの姿。
 次に現れたのは、九つの『仮面ライダー』の肖像を胸に据えた、異形の仮面ライダー。
 仮面ライダーディケイド・コンプリートフォーム。

「出し惜しみはしない……最初から、クライマックスで行くぜ!」

 ルルーシュにもわかる。ディケイドが発する威圧感は変身前の倍以上だ。
 セイバーの剣がディケイドへと叩き付けられる。先程は押し切れたその剣は、力強いディケイドの剣にしかと受け止められていた。

「ステータスが見える……筋力B、耐久B、敏捷A+だと!?」

 隠蔽効果が消え、顕わになったライダーのステータスは、セイバーと拮抗している。
 変幻自在に姿を変える戦術はそのままに、単純な力勝負でもセイバーと並ぶ。
 また別の形態に変身したディケイドの姿が掻き消え、セイバーとオーズの身体が叩き伏せられた。

「速い……!」
「ハイパークロックアップと言うんだ、覚えておけ!」

 嵐の只中に入り込んでしまったかのように、セイバーとオーズは防戦一方となった。
 持てる能力の全てを開放して襲い掛かってくるディケイドの力は圧倒的だ。

(どうする、ガウェインを呼ぶべきか)

 聖者の数字を発動させたガウェインなら、あのディケイドとて敵ではない。
 令呪を一画消費すれば、最強の手札を切れる。

517 ◆QSGotWUk26:2013/04/29(月) 23:47:12 ID:HocmH9JE0

(だが、柳洞寺が無防備になる……ライダーだけでキャスターを抑えられるか?)

 キャスターだけでなく、まだ見知らぬサーヴァントが襲撃をかける可能性だってあるのだ。
 今ガウェインを柳洞寺から動かすことは、リスクの大きい賭けだ。

「ルルーシュ……ギアスだ。ギアスを使うんだ……」

 思考するルルーシュを引き止めたのは、息も絶え絶えな陸のセイバーだった。
 陸とこなたは後方に下がらせている。彼らが介入できる戦いではないからだ。

「見ろ、敵のマスターは無防備だ。今なら、君のギアスを妨げるものは……何もない」
「セイバー……」

 陸を操ったギアスをこのセイバーが好ましく思っているはずがない。
 それでもギアスを使えというのは――それ以外にこの状況を脱する方法がないからだろう。
 令呪を使い、衛宮士郎や金田一一を危機に晒すことを厭うのならば、この場で、ここにある力だけで切り抜けるしかない。
 陸のセイバーが負傷し、こなたのライダーがマスターを気遣って全力を出せない以上、行動するべきはキング――つまりルルーシュだけだ。

「……そうだな、ここは俺が動く場面だ」
「る、ルルーシュくん!」
「天海、泉を頼んだぞ。いざというときはお前が銃爪を引け」

 懐の銃を抜き、残弾を数える。
 サーヴァントたちの戦場を迂回し、ルルーシュはゆっくりと切嗣へと接近していく。
 切嗣の瞳がルルーシュへと向けられた。
 路傍の石を見るような無感情な瞳。
 コートの中からゆっくりと抜き出された手には、ルルーシュと同じく拳銃が握られていた。
 僅か5メートルほどの距離で、お互いに銃を構えて向き合う。

「衛宮、切嗣……」

 ふと、心の何処かで疑問が生まれる。

(銃を持っていたのなら、何故接近を許す? サーヴァントに戦闘を任せ、自身は傍観していたのは何故だ?
 待て、おかしい、何か……この違和感は……)

 『誘い込まれた』。
 『ギアスの届く距離』に。

 天啓が閃いたその瞬間、切嗣がルルーシュに向かって突進してきた。
 思考を置き去りに、銃を撃つ。だが当たらない――歴戦の傭兵でもある衛宮切嗣には、ルルーシュ程度の腕では掠らせることもできない。
 銃を叩き落され、足を払われ、ルルーシュは無様に地面に転がされる。
 切嗣はルルーシュに馬乗りになり、眉間へと銃口を突き付け、

 視線が合った。

(――――――!)

 考えている暇などなかった。
 最接近した死の気配を振り払うため、ルルーシュの生存本能が一つの選択をする。
 ギアスにて、障害を排除せよ、と。

518 ◆QSGotWUk26:2013/04/29(月) 23:48:14 ID:HocmH9JE0

「死――」

 死ね、と最も原始的で簡素な命令を下す刹那、白熱する意識をかろうじて繋ぎ止めた。
 それでは駄目だ。
 それでは、ギアスに振り回されていた時と何も変わらない。
 殺すのではなく、戦う意志を奪うために――ルルーシュは。

「――俺に、従え!」

 我に従え、と。絶対遵守の力により衛宮切嗣の自由意志を奪うことを選んだ。
 死ね、と命じなかったのは、衛宮切嗣という男が強大な戦力となるからであり、また、衛宮士郎の養父でもあるからだった。
 かつて自身も父親と骨肉の争いを繰り広げたルルーシュは、仮初とはいえ仲間の養父を手に掛けることを心の何処かで躊躇ってしまった。
 切嗣を殺せば、士郎とも断絶するだろう。理屈の問題ではないのだ。
 たとえギアスという偽りの解法であっても、正しく使えば正答へと辿り着ける。
 天海陸のときのような轍は二度と踏まないと、どこか気負っていたのかもしれない。

「――――――――」

 ギアスを受け、棒立ちとなる衛宮切嗣。
 誰もがギアスの成功を確信し、戦闘の終結を予想し、切嗣のライダーでさえ攻勢の手を止め己のマスターを注視した。
 動き出したのは――

519 ◆QSGotWUk26:2013/04/29(月) 23:49:08 ID:HocmH9JE0




「……ふう。肝が冷えたな」

 衛宮、切嗣。
 至近距離でギアスを叩きこまれたはずの男は、何の変化もなく立ち上がり、ルルーシュの肩へと手を置いた。

「ルルーシュ!?」
「ギアスが……効かなかったのか!?」

 自身、身を持ってギアスの効果を体験した陸だからこそ、わかる。
 切嗣は全くギアスの効果を受けていない。陸のように魔術的に耐えたのではなく、効果そのものをキャンセルさせられている。
 切嗣が軽く袖を振る。
 そこから滑り落ちてきたのは、カットされた長方形の板――磨き上げられた鏡だ。

「強力な魔眼らしいがね。タネが割れていれば対策は立てられるよ」

 つまらなそうに、切嗣。
 彼は先だっての柳洞寺における戦闘をライダーに監視させていた。
 つまりルルーシュがランサーに放ったギアスも、超視力・超感覚を有するライダーに認識されていたのだ。
 効果範囲外であったためその威力こそわからなかったものの、『光情報を投射する』というギアスの骨子だけは看破できた。
 同時に放たれたルルーシュの『やめろ』という言葉と、それに対するランサーの反応。
 確度こそ低かったが、これによりルルーシュが有する魔眼は『眼球内に光情報を投射し受けた者の精神を操る』類のものだというところまで絞り込めた。
 それが魔力的なものではなく、単純な光情報であるなら話は簡単だ。
 ただ、鏡を用意すればいい。光は鏡によって反射する。
 ルルーシュが放ったギアスは、ルルーシュ自身に跳ね返ってきたのである。

「……、……ぁ」
「ルルーシュ!? しっかりして下さい、ルルーシュ!」

 ルルーシュが自己を認識する『俺』と、『俺に従え』の『俺』とは本来同一のものである。
 故に思考を支配されることはないが、脳内シナプスに直に干渉するギアスは受けた者の記憶を数秒保てなくさせる効果もある。
 その僅かな隙間が、ルルーシュの思考をストップさせていた。

520 ◆QSGotWUk26:2013/04/29(月) 23:50:43 ID:HocmH9JE0

「さあ、利用させてもらうよ――ルルーシュ」

 そして、その隙間に漬け込むのが衛宮切嗣。『魔術師殺し』の手管である。
 切嗣が隙を見せれば、ルルーシュがギアスを使うのは容易に誘導できる。
 いける、やれると判断すれば、あとは全速で綱を渡り切るだけだ。
 ルルーシュと視線を合わせ、切嗣が囁く。

「『俺』は衛宮切嗣だ。衛宮切嗣は『俺』だ」

 衛宮切嗣は、魔術師としては三流だ。
 それでも簡単な暗示くらいならこなせる。
 かつてケイネス・エルメロイ・アーチボルトが篭る冬木ハイアットホテルを爆破した際、ホテル職員に『自身はケイネスである』と錯覚させたように。
 強制力などたかが知れている、一般人ならともかく魔術師にはとても通じない、児戯のようなもの。
 数分もしない内に破られる、そんなものでも――ギアスのショックにより前後不覚となったルルーシュには、十分すぎるほどの威力だった。

「『俺』……は、『衛宮……切嗣』」
「そうだ。そして、『衛宮切嗣』はこうする」

 切嗣はルルーシュの手を取る。そこにある令呪をなぞり、


「『令呪を以って命じる。最も近くにいるライダーを殺せ。令呪を重ねて命じる。セイバーよ、ライダーを殺せ』」


 ここだけは大きい、切嗣の言葉。
 聴いていた陸たちには理解できない。令呪を以ってライダーを殺せというその真意を。
 彼らはオーズを、こちら側のライダーをセイバーに襲わせるのかと金髪の少女へと身構えたが、当のセイバーは違った。
 ルルーシュの『セイバー』は彼女ではなく、彼の本当の『セイバー』は今――

「……っ、きっ、切嗣、貴方は――――ッ!」

 ただ一人、切嗣の目論見を看破したセイバーがなりふり構わず阻止に奔る。
 当然、その前に立ちはだかるのは切嗣のライダー、ディケイド。
 激情に任せた一刀は仮面の騎手に防がれ、セイバーの剣は届かない。


「令呪を以って命じる。最も近くにいるライダーを殺せ。令呪を重ねて命じる。セイバーよ、ライダーを殺せ」


 そして――ルルーシュは、自分を『衛宮切嗣』だと錯覚したルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは、令呪を発動させた。
 暗示とは洗脳、記憶の強制ではない。意思を望む方向に誘導するだけだ。
 つまり、令呪はルルーシュ自身の意志によって開封され、滞り無くその役目を果たす。
 ルルーシュの手から、二画の令呪が解け消える。
 それが示すものは、つまり――

521 ◆QSGotWUk26:2013/04/29(月) 23:51:58 ID:HocmH9JE0

              ◆


「……見つけた」

 軽トラックのシートに身を預けていた衛宮切嗣が呟いた。
 運転をライダーに任せ、切嗣は鳩との視界共有で索敵を行なっていた。
 そして今、敵を発見したのだ。

「数は?」
「三組。知った顔もいるな。ライダー、君も確認してくれ」

 切嗣はライダーに魔力のラインを繋ぎ、視界を共有させる。
 黒髪の少年、金髪の少女、眼鏡の少年、痩せた青年、小柄な少女、青年。
 この内、切嗣にとっての知った顔というのは金髪の少女――すなわち、彼が前に契約していたセイバー、アルトリア・ペンドラゴンである。
 すでにその存在は柳洞寺の戦闘にて確認していたので驚きはない。
 どうやって打倒するか。切嗣の脳裏にはかつての従者に対する親愛の情など一欠片もない。

「……ほう。なるほど、確かに俺の知った顔がいるな」

 ライダーの声は、抑えているが隠し切れない闘志が滲み出ていた。
 そのニュアンスにわずか疑問を感じ、問う。

「君が柳洞寺で確認したセイバーだろう?」
「いや、そいつじゃない。一番年嵩の男がいるだろう。こいつは『仮面ライダー』だ」

 仮面ライダー。
 このライダーと同質の、そして彼にとっての倒すべき仇敵。

「会ったことがあるのか?」
「ない。いや、未来ではあるのかもしれないな。少なくとも今の俺はこいつを知らん。
 だがわかる。こいつは仮面ライダーだと。理屈じゃない、そう感じるんだ。俺の……ディケイドとしての本能が、こいつを破壊せよと喚き立てるのさ」

 青年は間違いなくサーヴァントであるのだが、ステータスは隠蔽されているらしく読み取れない。
 隣のライダーもそうしたスキルを備えている。同じ性質を持ち合わせるからこそ、直感的に理解できるのだろう。

「仕掛けるぞ、マスター。悪いが今回ばかりは俺の意思を通させてもらう」
「待て、ライダー。この痩せた男もサーヴァントだ。都合三騎のサーヴァントと戦うことになるぞ」
「構わない。この仮面ライダーを破壊すれば俺の力はさらに増す。全力でコイツを破壊し、取り込めば残り二騎もどうにかするさ」

 勝てる、とは言わない。そこまでライダーは楽観主義者ではない。
 逃げるだけならどうとでもなる。いかにセイバーが強力でも、機動戦においてライダーが劣る要素は皆無だ。

「気が進まないなら俺だけで行く。最初に言っておいたはずだな? 『他のライダーは俺が全て破壊する』と。
 余計なライダーは妥協したが、仮面ライダーだけは別だ。止めたいなら令呪を使うことだな」

 無論、令呪を使うようなら関係はここまでだと、ライダーは言外に匂わせる。
 切嗣はやや沈思し、

「……仕掛けるのは構わない。だがライダー、ここは一つ僕の策を聞いてからにしてくれないか?」
「策?」
「ああ。『ライダー』は倒す。君の要望とは少し異なるが、それだけは結果として確約する。まずは……」

 そうして、切嗣は思いついた作戦を開陳する。
 黙して聴いていたライダーは、憮然とした鼻息を一つ漏らし、

「フン。なるほど、確かに『ライダー』は倒せるな。忌々しいが、俺の言葉に反してはいない」
「折れてくれ、とは言わない。こっちの目的が達成できたのなら君は君で好きにしてくれればいい。どうだろう、悪い取引ではないと思うが」

 長い、長い沈黙。
 そして。

「……いいだろう。従うさマスター。お前は確かにこの俺の、『ディケイド』のマスターに相応しい、クソッタレなド外道だよ」

 あらん限りの皮肉と、少しばかりの感嘆を込めて。
 ライダーは切嗣の『作戦』に同意した。
 数刻前の、出来事である――

522 ◆QSGotWUk26:2013/04/29(月) 23:53:10 ID:HocmH9JE0

              ◆


「――――」

 音もなく。
 白銀のセイバーが抜き放った太陽の剣が、金田一一のライダーを刺し貫いていた。
 反応できる者は誰もいない。
 士郎も、金田一も、太公望も――そして当のガウェインすらも。

「が……ふっ! せ、セイバー……!?」
「ご主人!?」
「ライダー!?」
「が、ガウェイン! あんた、何してるんだよ!」
「あらぁ……?」

 誰もが驚き、瞠目する。
 太公望がガウェインと眼を合わせた。そこにあるべき意思の輝きがない――瞬間、理解する。

「このっ……!」

 衛宮士郎が双剣を投影し、ガウェインへと斬りかかる。
 士郎は決して、ガウェインに勝てるとは思っていなかった。戦うという気すらない。
 とりあえずガウェインを太公望から引き離す。考えたのはただそれだけだ。
 双剣が伸ばされた瞬間――あまりにも軽い手応え。一瞬にして砕かれた。いや、砕かれたという実感すらない。消しゴムをかけられたような、消失。
 眩い光が視界を灼く。その輝きが全身を覆う刹那、荘厳な布が士郎を覆い隠した。
 なんだこれ、と思う間もなく士郎の身体はふわっと宙に浮き、後方へと引っ張られる。

「無茶するわねぇ、士郎ちゃん。わらわに跪いて感謝してもいいわよぉん」

 顔を上げると、キャスター。
 どうやらガウェインに斬りかかったつもりが、返す刀で殺されかけたらしい。
 投影した干将莫耶は一合打ち合うことすら出来ず、

「でも、まさか一発で『傾世元禳』を壊しちゃうなんて……これはちょっと洒落にならないわねぇん」

 言葉こそ軽いが、キャスターの頬に一筋汗が流れているのを見る。
 ガウェインの足元には、今まさに消えゆこうとしている両断された布があった。
 キャスター、蘇妲己が有するランクA++の宝具、『傾世元禳』は、Aランク以下の攻撃をすべて遮断する。
 生半可な攻撃では傷一つつかないその宝具が、ただの一撃で破壊された――

「そりゃちゃんとしたマスターがいないからいつも通りの性能ってわけじゃなかったけどぉ、にしてもこれは反則よねぇん……!」
「……士郎よ! ガウェインは令呪で支配されておる! こやつに近づくでない!」

 もう一度ガウェインの前に立ち塞がろうとした士郎を、太公望が押し留めた。
 自由意志を奪われているのならば、今のガウェインに正常な判断力は望めない。
 太公望らは知る由もないが、ルルーシュの放った令呪はガウェインの意識を起点として発動された。
 だからこそ、ルルーシュの眼の前にいる二人のライダーではなく、ガウェインの至近にいるこのライダー、つまり太公望が目標として認識されたのだ。
 今のガウェインに無闇に近づけば、命令を妨げるものとして排除されかねない。
 今は令呪に縛られた妲己が何とか割り込んだものの、あのスーパー宝貝すら一撃で破壊したガウェインの破壊力は尋常ではない。
 士郎の目が捉えているガウェインのステータスは、破格のオールEXランク。
 たとえA++ランクの宝具であろうと、全力を出せない妲己の出力ではガウェインに及ばない。
 サーヴァントですらない士郎が挑むのは無謀を通り越して自殺そのものだ。

523 ◆QSGotWUk26:2013/04/29(月) 23:55:32 ID:HocmH9JE0

「スープー! ……すまん、頼む!」
「ご、ご主人……! わかったッス!」

 再び向かってこようとするガウェインを、形態変化した四不象が捕らえ飛翔、柳洞寺の天井を突き破って遠く空へと連れ去って行った。
 太公望が、ぞっとするくらい大量の血を、吐き出した。

「ライダー! さっきの……ええと、太極図! あれを使えば!」
「いや……そうもいかん、のう。あのガウェインめの……一撃は、わしには重すぎた。もう……間に合わん」
「もう、駄目なのか? ライダー……」
「すまんのう……一。これはもう……どうしようも、あるまいよ」
「そうか……そう、か」

 ライダーが掲げた腕はすでに半ばまで黒い影に包まれていた。
 士郎の記憶とは違う、ムーンセルにおける聖杯戦争で敗者に与えられる罰――構成データの消去だ。
 ガウェインの一撃は、正確に、精密に、太公望の心臓を貫いていた。
 太極図を使う魔力ももはや足りない、致命傷だった。 

「どうやら、狙われたようだのう……ご丁寧に令呪まで……使いおって」
「令呪って……ルルーシュがやったっていうのか!?」
「いや、そばにお前のセイバーがいるのにライダーを襲わせるのはリスクが高すぎる」
「うむ……あの小癪な……知恵の回る坊主の本意では……あるまいよ」

 士郎に答えたのは太公望――だけでなく、そのマスターである金田一一もだ。
 ライダーの消滅が必至となったため、そのマスターである金田一もまた遠からず同じ運命を辿るだろう。

「き、金田一?」
「衛宮さん、時間がない。よく聞いてくれ。多分、ルルーシュさんたちは敵に遭遇したんだと思う。
 その敵が、あいつのギアスかそれに近い力を持っていて、ルルーシュさんに令呪を使うことを強制したのかもしれない」
「ルルーシュじゃ、ない?」
「もしルルーシュさんが俺たちを裏切るつもりだったとしても、このタイミングは絶対にありえない。
 あいつの傍にはあんたのセイバーがいる。サーヴァントにギアスが通用しない以上、セイバーの反撃を防ぐ手段がないからだ」

 今まさに死が自分を侵していくのを理解していないはずはないのに、金田一は構わず士郎へと推論を語る。
 キャスターは、太公望と最も縁深き妖狐は――しかし、この場面では口を開かない。
 黙して、ただじっと見詰めている。
 死にゆく太公望と、彼の哀れなマスターを。

「仮に誰かと結託して彼女を排除していたとしても、今度はその誰かの前にあいつはサーヴァントなしで一人取り残されることになる。
 ガウェインを令呪で呼び戻すにしても、消費する令呪は二画。いくらなんでもリスクに結果が釣り合わなさすぎる」

 金田一の顔色は蒼白、全身は震え、汗に濡れている。
 太公望は少しでも長くガウェインを抑えるために、残った僅かな魔力を四不象へと注ぎ込んでいる。
 喋るのも辛い太公望に代わり、士郎に伝えるのは自分の役目だと。
 強く決意した金田一は、必死に恐怖と戦いながら、それでも何かを残そうとしていた。

524 ◆QSGotWUk26:2013/04/29(月) 23:56:41 ID:HocmH9JE0

「衛宮さん、すぐに山を降りてセイバーと合流するんだ」
「じゃ、じゃあ令呪でセイバーを呼び戻して!」
「それは駄目だ。もしルルーシュさんが操られているなら、セイバーを呼び戻すとあいつが一人で取り残される。自分が危険なとき以外は令呪は使わないほうがいい」
「……ッ、金田一! お前、なんでそんなに……! わかってるのか!? 今、お前は!」
「わかってるよ! 俺、このままじゃ死んじまうんだろ!? わかってる、わかってるよ……!
 怖い、死にたくない、嫌だ、死にたくない、死にたくない……でも今、あんたに伝えなきゃいけないことがある!
 それを伝えずに死ねない! 死ねないんだ! 俺は……俺は!」

 じっちゃんの名にかけて、とは言えなかった。
 それでも、金田一は涙を流し、血走った目で士郎へと掴みかかる。その形相、その迫力に士郎は息を呑む。
 次の瞬間、頭上で太陽が輝いた。
 思わず天を仰いだ士郎の視界に、両断され消えていく四不象の僅かな残照が見えた。
 太公望からの魔力が供給が途絶え、形態変化が解除されたのだ。
 ガウェインの宝具――転輪する勝利の剣から漏れ出た擬似太陽の炎が、余波でありながら柳洞寺を灼き払っていく。

「スープー……ご苦労じゃったのう。先に、休んでおれ」
「いいか、誰も死なせちゃ駄目だ! 俺は死ぬかもしれないけど、絶対に復讐とかしちゃ駄目なんだ!
 ルルーシュさんだって、なにか事情があるんだ。だからあの人を憎まないでやってくれ!
 人を殺したやつだって、罪を償うことはできる! でも死んじまったら、何もできないんだ! だから……だからさ! 衛宮さん! 頼むよ……」

 解放されたガウェインが、落下してくる。
 太公望はもはやこれまでと、最後にマスターの姿を目に焼き付ける。

「この聖杯戦争を、終わらせてくれ! 誰も悲しむことがないように! 誰も死なないで済むように!
 みんな……ちゃんと帰るべきところに帰って、これから先を生きていけるように!」
「……うむ。それでこそわしのマスター。金田一一よ……おぬしと契約できて、よかった」

 金田一一は、死を前にしても変わらず金田一一で在り続けた。
 その事実に満足し、太公望は目を閉じる。
 同時、着地したガウェインが振りかぶった剣を太公望へと振り下ろし――

「……ッ、ライダーッ!」
「……ばいばい、太公望ちゃん。今度は短いお付き合いだったわねぇん」

 剣先が届く寸前、太公望は消滅した。
 キャスターが、初めて聞くくらいの沈んだ声で、太公望へと別れを告げた。
 対象が消えたことで令呪の強制もまた解除され、ガウェインが自由意志を取り戻す。
 騎士は呆然と、血に濡れた己が手を震わせる。

「何故です……何故なのです、ルルーシュ……ッ!」
「が、ガウェインさん?」
「金田一殿、私は貴方になんと言って詫びればよいか……!」
「良かった……正気に戻ったんだな。ガウェインさん、すぐにルルーシュさんのところに行くんだ。
 今、何か良くないことが起きてる。手遅れにならない内に、早く……!」
「……金田一、殿」

 ライダーを、ひいては自分を殺した相手であるガウェインに、金田一はなんら咎めはしなかった。
 彼が自分の意志でそうしたのではないことはわかっている。
 ならば、金田一一がやるべきは罪の糾弾ではなく、ガウェインを必要としている者のところへ彼を行かせることだ。

「ガウェインさん、もし、あんたが申し訳ないって思ってるなら。一つだけ、俺のお願いを聞いてくれよ」
「……なんなりと、金田一殿。私にできることであれば、謹んで承りましょう」

 慰めにもなりはしないが、せめてその罪悪感が、少しでも軽くなるように。
 金田一はガウェインに、命を対価にした『お願い』をする。

525 ◆QSGotWUk26:2013/04/29(月) 23:58:56 ID:HocmH9JE0

「衛宮さんを、セイバーのところに連れて行ってやってくれ。ここに残ってるよりそっちの方がいい」
「待てよ、金田一! お前を残して行けない!」
「行ってくれ、ガウェインさんッ! 頼むよ、もう……!」
「……ッ!」

 ガウェインは抵抗する士郎を抱え上げると、高く高く跳躍した。
 見る間にその姿は豆粒ほどになり――消えた。
 彼らがいなくなると、金田一は腰が抜けたように地面へと座り込み、

「ぁ……うう、うあああっ! 嫌だ、死にたくない、死にたくない……!」
「あららぁ。士郎ちゃんの前では我慢してたのかしらぁん」
「美幸、剣持のオッサン、明智、玲香、佐木、二三! 母さん、父さん、じっちゃん……!
 うう、ううううう……うああああああ、あああああああああっ!」

 泣き叫ぶ。
 虚勢を張っていられたのは、仲間が――士郎が目の間にいた間だけだった。
 一人になれば、どうしようもない死の恐怖が金田一一の全身を飲み込んでしまう。
 太公望を覆っていた黒い影は、金田一の足から腰へと這い上がり、彼を消滅させようと侵攻し続ける。

「でもぉ、すごいわぁん。怖いのをぐっと堪えて士郎ちゃんを先に進ませる……わらわ、かなりグッと来ちゃったのねぇん」

 太公望が消えた時には何も言わなかったキャスター、蘇妲己。
 しかし今、新しいおもちゃを見つけた子供のように目を輝かせて、金田一へと迫る。

「ねえ、一ちゃん」

 震える金田一の頬を両手でそっと包んで、ひどく優しげな声音で、妲己は言う。











「……わらわが助けてあげてもいいわよぉ?」

526 ◆QSGotWUk26:2013/04/29(月) 23:59:47 ID:HocmH9JE0

              ◆


 ルルーシュはかつて、もう一人のギアス能力者であるマオとの戦いの際、自らにギアスをかけた。
 心を読むマオに、スザクとの共同戦線を知られないために、己の記憶を封じたのだ。

 ルルーシュのギアスは、同じ人間には二度使えない。
 これは一度ギアスを受けたものには脳内に何らかの抗体ができるのではないか、とルルーシュは推測したが、詳しいことは判明していない。

 かつて、ルルーシュの部下にジェレミア・ゴットバルトという男がいた。
 最初は敵として出会ったものの、紆余曲折を経てルルーシュに身命を捧げる忠義の騎士となった男だ。
 彼はある特異な能力を有していた。あらゆるギアスを打ち消す力を持つ、ギアスキャンセラーという能力を。
 その力を駆使し、彼はルルーシュの世界統一に多大なる貢献をした。


 この三つの要素から、ある一つの推測が導き出される。
 それは――

 『ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアはギアスキャンセラーを受けている』

 と、いうこと。

 ジェレミアのギアスキャンセラーは、彼の義眼を起点に球状に展開する。
 その球の範囲内で起こったすべてのギアスを区別なく解除する、それがギアスキャンセラー。
 ルルーシュのように視線を合わせる必要はないため、多数の対象を巻き込めるし、自身を狙って使用されたギアスも発生点が自身である故に自動でキャンセルされる。
 しかし、ここで一つ疑問が生まれる。

 『ルルーシュにかけられたギアスはギアスキャンセラーによって解除されていたのか?』

 ルルーシュが自身にかけたギアスは、スザクにかけたそれと違い効果はただ一度きり、対マオに特化したものだ。
 当然マオとの戦いが終われば用を成さなくなる。
 自身にギアスを掛ける場面などそうそうない。故に、わざわざギアスキャンセラーを受ける必要性は薄いと言える。

 だが、だからといって、ギアスキャンセラーを避ける理由は、ルルーシュには『ない』。
 これがスザクであったなら話は別だ。
 『生きろ』というギアスの強制力を逆手に取り、自身の潜在能力を極限まで引き出すスザクの闘法は、ギアスキャンセラーを受けては瓦解する。
 当然、ルルーシュはスザクとジェレミアを同時に運用するにあたって、決してスザクをキャンセラーの効果範囲内に近づけさせはしなかっただろう。
 しかしルルーシュにはそんな制約はない。
 プラスかマイナスで言うなら、『自身にギアスを掛けられる機会』をもう一度得られるため明らかなプラスだ。実際にそんな場面が来るかは別として。

 つまり――ルルーシュが敢えてギアスキャンセラーを『避けた』かというと、その可能性は限りなく低いと言える。
 肉体に害を及ぼす物でもなし、手札を増やせるなら好機を逃すほど間抜けではない。

 結論。
 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアはギアスキャンセラーを受け、ギアスを解除されていた。
 だからこそ、もう一度ギアスを受ければその効果は問題なく機能する。

 機能、してしまった。
 ルルーシュが我に返った時――すべてはもう、終わっていたのだ。

527 ◆QSGotWUk26:2013/04/30(火) 00:01:03 ID:55kiwxtQ0

「……っ、俺は……!?」

 カメラのシャッターを切り替えたかのように唐突に、ルルーシュの意識は意識が復旧した。
 いつの間にかへたり込んでいたルルーシュの前には、初めて見るほどに険しい形相で聖剣を構えるセイバーがいる。
 その視線の先に、依然変わりなく、衛宮切嗣と彼のライダー。
 状況は変わっていない。

(いや……待て。俺はたしか……衛宮切嗣にギアスを使ったはずだ。なら何故……俺の記憶が途切れている!?)

 ふと視線を落とす。
 そこにあるべきものがない。
 サーヴァントに、セイバーに、ガウェインに繋がる絶対命令権――令呪が二画、消失していた。
 ぞくり、と悪寒が背筋を駆け登る。
 何があったかなど分からない。
 だが推測してしまった。
 欠けた記憶、失われた令呪、怒りに震えるセイバー、虚無の塊のような切嗣。
 ピースは揃っている。
 導き出されるパズルの完成図は。

「まさ、か……」
「礼を言うよ、ルルーシュ。おかげで最も厄介なサーヴァントを、労せずして撃破できた」

 想像と寸分違わぬ最悪の結末が、切嗣の口から突き付けられる。
 反射的に遥か彼方の柳洞寺を振り返る。

 火の手が上がっている。
 すべての思考が、途絶えた。

「切嗣……あなたは、あなたという人はッ! どこまで非道なのだッ……!」
「僕はそこのサーヴァントと言葉を交わす気はない。だから君に言うよ、ルルーシュ。
 ……舐められたものだ。自身のサーヴァントでもないモノを連れ回して、本当に勝てると思っていたか?」
「な……あ、」
「君のサーヴァントはよほど優秀なんだろうな。なにせ、マスターと離れていても柳洞寺を守護できるくらいなのだから。
 だが聖杯戦争において、過信ほど崩し易いものはない」
「過信……?」
「もし君が自分のサーヴァントを連れていたら、こうはならなかっただろうね。
 君の魔眼と、君のセイバー。本来なら僕が全力を賭けても勝てるかどうかは分からない相手だ
 わざわざ別れて出てきてくれたのだから、これはもう礼を言う気にもなろうというものさ。
 獲物が無手で戦場に躍り出てきてくれたのだからね。これほど楽な狩りはない」

 『ルルーシュとそのセイバー』ならまだしも、『ルルーシュと騎士王』ならば脅威になどなりはしない――切嗣は、こう言っているのだ。
 本来、対魔力Bを誇るガウェインならば令呪の強制にも耐えたことだろう。
 それを見越しての、二画使用。二重制約による強制で確実にガウェインの自由意志を奪う。
 もしガウェインがこの場にいれば、あるいは二画を使用されたとはいえマスターとの魔力パスが存在するため多少の抵抗は出来たはず。
 いや、そもそもルルーシュを危険に晒すことすら許さなかったはずだ。
 ライダーの偵察により、ルルーシュのサーヴァントが決して騎士王などではないことを知っていた切嗣の狙いは、ここにあった。

 最初から、切嗣とディケイドは『この戦いに勝つ気はなかった』。
 ただ膠着状態を生み出し、ルルーシュにギアスを使わせること、それだけが目的だった。
 ルルーシュに逆にギアスを仕掛け、操り人形とし――令呪を使わせ、彼のサーヴァントに、柳洞寺にいるライダーを葬らせる。
 この戦闘の目的はただそれだけ。
 ディケイドが宝具を惜しげも無く晒し、消費を気にせず暴れ回ったのも、全てが布石。

 切嗣がタバコを取り出し、火を点ける。
 深々と煙を吸い込み――言う。

528 ◆QSGotWUk26:2013/04/30(火) 00:03:45 ID:55kiwxtQ0




「ありがとう、ルルーシュ。
 君の浅はかさが、ライダーとそのマスターを殺したんだ」




 ルルーシュを完膚なきまでに叩き伏せるその一言を。
 切嗣にセイバーが何事か反駁している。
 だが聴こえない。
 今のルルーシュは、色も音も匂いも自分も、あらゆるすべての感覚が凍結していた。
 落下していく。
 底なしの穴に落ちていく。
 かつて、妹――ユーフェミア・リ・ブリタニアにギアスを掛けてしまったときのような。
 天海陸のときなどとは比べ物にならない、取り返しの付かない失敗を犯してしまったという事実が、ルルーシュの全てを木っ端微塵に打ち砕いていく。

「俺が……殺し、た?」
「そうだ。君が殺した」
「黙れ、切嗣ゥゥゥッ!」

 殺した。
 金田一一と、彼のライダーを。
 決して、決して死ぬべきではない、『善良』なる者が、
 本来ルルーシュが護るべき――優しい世界に住むべき、何の咎もない少年の命が、
 二度と奪わせないと誓った、決して奪わせてはならない、何よりも尊いものが、


 ルルーシュの失策によって、失われた。
 ルルーシュの傲慢が、失わせた。
 ルルーシュが――殺した。


「う……あ、あ……ああああああ、あああああああああ……ぐっ、う、うあ……あああああああ、あああああああああああァァァァ――――ッッ!」


 喉を嗄らし、絶叫した。
 このとき、ルルーシュはたしかに聴いた。
 心の折れる、乾いた音を――

「退くぞ、マスター。とんでもないのが近づいてきてる。さすがにアレには勝てん」
「ああ、もう用は済んだ。これで失礼させてもらうよ」
「逃がすと思うのか、切嗣ッ!!」
「……そういえば、一つだけ。そこのサーヴァントに言っておくことがあったよ」

 切嗣とセイバーが言い争っている。
 だが、それをルルーシュの脳は言葉として認識しない。
 ただ耳から耳へ通り抜けていく。

「イリヤを護れなかったな」
「……なッ!?」
「報いは受けさせる。お前も、お前のマスターも、この街にいる全て、必ず殺す。僕が、この手でな。
 お前たちの、英霊の誇りなど知ったことか。すべて踏み躙って、蹴散らして、薙ぎ払ってやる。塵も残しはしない」
「きっ……切嗣! あなたは……!」
「行ってくれ、ライダー」

 聞こえない。
 聴こえない。
 ナニモ   キコエ    ナイ  ……

529 ◆QSGotWUk26:2013/04/30(火) 00:05:22 ID:55kiwxtQ0


 それから、どれくらい時間が経ったのか。
 気がつけばルルーシュの傍らにはガウェインがいた。
 いや――ガウェインは、対峙していた。
 ルルーシュとガウェイン。そして、セイバーと天海陸たち。
 二つを分かつ明確なラインを引いて。
 聖剣という、ラインを置いて。

「ガウェイン……ッ!」
「許しは請いません、叔父上。私はもう……あなたの騎士たる資格を喪いました故に」

 違う。
 ガウェインは護っているのだ。
 仲間を、かつての主を敵に回してでも、たった一人、今の主を護る。
 それが騎士の、かつて道を誤った騎士の、今度こそは見失ってはならない騎士道であるが故。
 それは、光を見失ったルルーシュの目に映る――たった一つ灯った確かな輝き。

「……ガウェイン! ここから離れろ……今、すぐにッ!」

 絞り出した叫びは、命令であり懇願でもあった。
 勅命を受けた騎士は異議を唱えることなく主の傍らへ。

「ガウェイン!」
「叔父上……」

 『かつて』の主君が、引き止める
 しかし、騎士が護るのは『今』の主君だ。

「いずれ、また」

 ガウェインが跳んだ。
 その跳躍は、ランサーもかくやというほど――陽の昇るこの時間、誰もガウェインに追い縋ることはできない。
 瞬きの間にその影は遥か彼方へと消えていく。
 騎士王が伸ばした手は顧みられることはなく。
 
 魔術師殺しと仮面の騎手、太陽の騎士と魔眼の王は舞台を去った。
 残されたのは敗北に打ちひしがれる騎士王と、遅まきながら状況を理解した同行者たち。
 そして――

「セイバーッ!」
「……シロウ」

 最後の役者が、合流する。

530 ◆QSGotWUk26:2013/04/30(火) 00:06:43 ID:55kiwxtQ0

              ◆



「さて……色々考えることはあるだろうけど、これからの話をしていいかな」

 切り出したのは陸のセイバー、イスラ。
 ルルーシュが去り、騎士王が消沈している今が、この集団の主導権を握る絶好の機会だ。
 ライダーに貫かれた傷は忌々しいが、死ぬほどではない。この程度では死ねない。
 負傷を理由に戦闘に参加しなかったのは正解だったようだ。
 まさかこんな――面白い展開になるとは。

「悪いけど、こうなった以上俺たちは柳洞寺には行けない」
「あの場に残っているのがキャスターだけ、だからか」
「そうさ。今まではさっきのセイバーとライダーがいたからまだ尻尾を出してなかったかもしれないが、これからは違う。
 柳洞寺という魔術的な要所に、キャスターが一人。大人しくしているとはとても考えられない」

 イスラの意を察した陸も続く。
 目下最大の障害だったルルーシュが勝手に離脱してくれた
のは僥倖だ。
 衛宮切嗣という男は、どうやらルルーシュのギアスを利用して彼らの戦力を切り崩したらしい。
 おかげでイスラたちが付け込む隙は広がり、後はキャスターさえ排除すれば自分たちの潔白は磐石となる。

「君たちはどうするんだい? 一緒に来てくれるなら歓迎だけど」
「俺は……爺さんを追いたい」

 イスラに答えたのは、後から駆けつけてきた士郎だ。
 聞くと、どうやらガウェインが途中まで士郎を運んできたらしい。
 途中、視界にルルーシュらを捉えた所で、状況を見て取ったガウェインが士郎を降ろし、単身飛び込んできたのだ。
 あるいは――騎士王と刃を交えることになるかもしれない。
 その光景を騎士王の若きマスターに見せたくなかったために。
 そして士郎は、ルルーシュが令呪によってガウェインにライダー殺害を命じたこと、それをさせたのが切嗣、養父であることを知った。

「……本当に、爺さんなのか?」
「間違いありません、シロウ。あれは……間違いなく、衛宮切嗣。
 ただし、あなたの養父の衛宮切嗣ではなく、『魔術師殺し』の衛宮切嗣です」

 直面した現実は、ルルーシュだけではなく士郎をも深く傷つけていた。
 二度と会えないはずの、死別した養父がいる。
 だが養父は士郎を知らず、イリヤを失った悲しみから冷徹な魔術師殺しとして全てのマスターを殺し尽くす気でいる。
 養父の手によりルルーシュは操られ、金田一は殺害された。
 どんな顔で――衛宮士郎はどんな顔で、言葉で、衛宮切嗣に相対すればよいのか。

「俺は……爺さんを、追いたい……」
「他人ごとだから言わせてもらうけどね。それはやめた方がいい」

 士郎の小声を、イスラが切って捨てる。

「アレは怪物だね。あのマスターは、およそサーヴァント以上に危険な相手だ。
 アレと戦うなら相応の覚悟が必要だろう。見たところ、今の君は……言うまでもないな。殺されに行くようなものだよ」

531 ◆QSGotWUk26:2013/04/30(火) 00:08:15 ID:55kiwxtQ0

 ここだけは、嘘を交えない本心だった。
 陸とイスラは、今回はほぼ傍観者の立場を貫けたものの、もし自分たちに衛宮切嗣の銃口が向けられれば苦戦は必至である。
 今まで状況を切り抜けてきた嘘は切嗣には通用しない。真っ向からの力と力の激突になる。
 あのライダーが強力なサーヴァントというのもある。だがそれ以上に、衛宮切嗣はどんな手を打ってくるか全く想像できない。
 仮に陸が刃旗を開放し立ち向かったとして、地力では圧倒的に優っているはずだが、それでも勝利するイメージが描けないのだ。
 ルルーシュにギアスを使うように焚き付けたのは、正直なところ賭けだった。
 人間レベルとしてはこの上なく強力な催眠術であるギアスならば、あの衛宮切嗣とて無力化できるのではないか、と。
 成功すればよし、失敗すればいくつかある召喚石を暴走召喚させてでも切嗣から撤退するつもりだった。
 まあ、結果はイスラが予想だにしないものとなったのだが。

「私も彼に同意します、シロウ。今の貴方……いいえ、訂正しましょう。 
 今の『私たち』では切嗣には勝てない。私たちにはイリヤスフィールを救えなかった『傷』がある。切嗣は確実にそこを突いてくる」

 なまじイリヤを知っているが故に、実父である切嗣の怨嗟を士郎とセイバーはより純粋な形で受け取ってしまう。
 加えて言うならセイバーの能力は全て切嗣に知悉されている。かつてのマスターなのだから当然だ。
 ダメ押しに、士郎は魔術師だ。『魔術師殺し』衛宮切嗣と相対すれば、確実に士郎は敗北する。
 士郎が扱う投影魔術は、特異であれど魔術の範疇を出ない。切嗣が扱う起源弾の、格好の餌食である。

「無念ですが、今の私たちは切嗣に届かない。今は……他に、できることをするべきです」
「他、って言っても、ルルーシュを追うのか?」
「あ、それは止めた方がいいと思う……」

 と、やんわり言葉を挟んだのは泉こなた。

「大体事情はわかったけどさ……多分、今は一人にしてあげたほうがいいよ。下手に一緒にいられると余計辛いからさ」
「うん、少なくともルルーシュくんは敵じゃないんだ。あのセイバーさんが一緒なら、しばらくは一人でも大丈夫だと思うよ」

 ライダーがこなたに続く。
 実際、今のルルーシュは突けばどんな反応をするかわかったものではない。ある程度心の整理がつくまでは干渉しない方がいい。
 そして、共にいるのは士郎やこなたらではなく彼のサーヴァントであるガウェインであるべきだろう。
 ルルーシュと同じ罪を背負ってしまった、あの騎士にしかできないことだ。

「じゃあ……どうすればいい。あんたたちと行けばいいのか」
「いや、君と君のセイバーにしかできないことをしてほしい」

 士郎はよほど動揺しているのだろう。判断力が目に見えて落ちている。他人に自らの舵を預けるほどに。
 いい塩梅だ、とイスラは笑う。

「柳洞寺に潜むキャスターを撃破してくれ」

 これならば、誘導は容易い。
 誰にとってもいい結果へ、その中でも特に陸とイスラが望ましい展開へ。
 残された最後の不安要素――キャスターを排除させるのだ。

「さっき話した通り、遠坂凛のサーヴァントはアーチャーだ。君も知っているそうだけど?」
「あ、ああ。アーチャーか、まさかアイツが……いや、でも遠坂ならそうかもしれない……」
「つまり、柳洞寺にいるキャスターは遠坂凜を倒したサーヴァントってことさ。マスターを失ったようだが、令呪を掠め盗って生き延びたらしいね。
 僕の想像だが、おそらく……キャスターはリンのサーヴァントを撃破したと同時、自分のマスターを倒されたんだろう。
 お互いパートナーを失った者同士、新しく組み直せばそれで解決だが……まあ、寸前まで殺し合ってたんだ。そううまくはいかないだろうね」

532 ◆QSGotWUk26:2013/04/30(火) 00:09:28 ID:55kiwxtQ0

 キャスターは遠坂凛の仇。 
 『正義の味方』が打倒するべき、『悪』だ――題目はそんなところ。
 そんなわかりやすい敵を示してやる。

「合意の上か無理矢理かはわからないが、キャスターは魔術に秀でたクラスだから、リンのサーヴァントになるまではうまくいっただろう。
 でもそこからが問題だった。凛は当然、キャスターを信用しない。かと言って令呪で自害させると自分も死ぬ」
「あ……だから令呪で行動を縛ろうとした?」
「だと思うよ、コナタ。ルルーシュのように自分に従え、じゃなくてまず君を、衛宮士郎を護れと言ったんだろうけどね。
 自分の命より君を優先させたのが、僕としてはとても理解できないが……」

 これで、キャスターが衛宮士郎を護る理由も説明できた。
 かなり穴のある話だが、幸いにもそれを指摘するべき頭脳を持った者はもう誰もいない。

「これ以上そんな命令を下されては堪らないと考えたキャスターは、改めてリンを殺害。ただし、ここで残った令呪を一画奪う。
 そしてリンのサーヴァントを装い君たちに接触した……こんなところかな。筋は通っていると思うけど、どうだろう?」
「……反論は、できませんね。私たちはあのキャスターについて知らなさすぎる。
 リク、あなたが疑わしいと言ったのはあのキャスターです。その情報を信じて私達はやって来た。
 しかしルルーシュのギアスによって、あなたの潔白は逆に証明された……」

 なら、何のためにキャスターはルルーシュとセイバーを市街地に向かわせたのか。
 戦力を分断するためか、何か目的があるのか。

「あ……」

 と、陸が小さく声を上げた。
 皆の視線が集まる。陸はやや赤面し、なんでもない、と首を振る。

「陸くん、なにか思いついたの?」
「今はどんなことでもいいから、言ってみてよ」

 こなたとライダーに促され、陸はようよう……と喋り出す。

「あの、さ。思ったんだけど……さっきの切嗣って人、ルルーシュの能力を知ってた感じだったよな。
 あれって、どこから手に入れた情報なのかなって……」

 早口で紡がれた言葉に、セイバーが目を剥いた。
 ナイスだよ、リク――イスラは心中で喝采した。
 最高のタイミングで、最高のピースを放り込んでくれた。そうなれば、後は勝手にパズルは組み上がっていく。

「まさか……キャスター!? 切嗣は、あのキャスターと繋がっていたと……!?」
「……ルルーシュはキャスターが合流した後、ギアスの性能把握のためにNPCにギアスを掛けて回っていた。
 キャスターがそれを把握できないはずは……していないはずは、ない……?」

533 ◆QSGotWUk26:2013/04/30(火) 00:10:48 ID:55kiwxtQ0

 呆然と、愕然とする、士郎とセイバー。
 ルルーシュのギアスを把握し、対策していた切嗣。
 ギアスの情報を知っていたキャスター。
 士郎とセイバー、他ならぬ柳洞寺にいたこの二人こそが、切嗣とキャスターの関係を強調する何よりの証人となる。

「これは、決まりだね。計画的な犯行ってことだ」
「切嗣さんにルルーシュくんを操らせて令呪を使わせ、ガウェインさんに仲間を襲わせる……!?」
「そして首尾よく一人になったキャスターは、柳洞寺にある潤沢な魔力で何かしらの悪巧みをする、と。
 参ったね……こうまで思惑通りに動かされるとは。さすがキャスター、というべきか」

 これは本当に面白くなってきたぞ、とイスラは笑い出しそうになる顔の筋肉を必死で抑制する。
 切嗣とキャスターは本当に繋がっているのかもしれない。話をでっち上げたイスラでさえそう信じてしまいそうだ。

「セイバー、君の対魔力は破格のAクラスだ。キャスターの相手をするにはうってつけだろう? 正直、少し僕にも分けて欲しいくらいだ」
「ええ……わかっています。キャスターを討つのは、我が剣を置いて他にない。そうでもしなければ、ハジメとライダーに申し訳が立たない……!」
「じゃあ、俺たちも一緒に行こう!」
「いや、ライダー。僕らはやめた方がいい。君はともかく僕は完全に足手まといだし、そもそもキャスターには大勢で対するより天敵一人が挑むほうが効率がいい。
 なにせ、利用できる手駒もないんだからね。彼女が一人で戦うのが、一番勝率は高いよ」
「セイバーさん、でも……!」
「いいのです、ライダー。あなたにはリクたちを護ってあげて欲しい。あなたまで来れば彼らを守護する者がいなくなる」

 二人のセイバーに説得され、しぶしぶライダーは納得した。
 イスラとしても彼は未だに生命線だ。名も知れぬ在野のサーヴァントに襲われては、イスラ単騎では抗える訳もない。

 衛宮士郎とアルトリア・ペンドラゴンは柳洞寺へキャスターの討伐へ。

 天海陸とイスラ・レヴィノス、泉こなたと火野映司は月海原学園で情報の収集を。

 失意の内に去ったルルーシュは何処かに姿を消し。

 『魔術師殺し』に立ち返った衛宮切嗣は遠からず仕掛けてくるだろう。

 今はただ、無事の再会を願い――こうして、彼らは別れていった。

534 ◆QSGotWUk26:2013/04/30(火) 00:12:31 ID:55kiwxtQ0

              ◆


(陸、君が蒔いた嘘の種はこんなにも大きな芽を芽吹かせたよ。これこそが天運というやつかもしれないね) 

 この芽を育て、花開かせる。
 キャスターを撃破し、冬木市最大の霊地である柳洞寺の中枢、霊脈に『紅の暴君』を突き立てる。
 そうすれば――遠坂凛から奪った魔力とは比べ物にならない、膨大なマナが手に入る。
 イスラの、『伐剣者』としてのスペックをほぼ生前通りに引き出すことができるだろう。
 そうなればもう、セイバーだろうがライダーだろうが敵ではない。
 策になど頼らず、力で全てを制することができる――聖杯に、手が届く。

 正直なところ。
 イスラ・レヴィノスには、聖杯に掛ける願いなどなかった
 陸の召喚に応じたのも、ただの気まぐれ――姉の幻影を求めて嘘を重ねるその姿が、かつての自分を見ているようで興味をそそられたからだ。
 別に負けても構わない。最初はそう思っていた。
 どうせ何も変わらない。無限の地獄から解放される術などないと、諦めていた。

 しかし。
 それでも。
 この戦いに勝ち残れたのなら。
 ただの『嘘つき』が、その『嘘』を本気で貫き通せたのなら。

 その『嘘』は――『真実』に勝るのではないか。

 贋作は本物に勝てない? そんな道理などない。
 嘘は真実より劣るもの? 誰が決めたのだ、そんな真理。

 世界の全てが嘘を、天海陸を否定するというのなら。
 あらゆる世界でただ一人、このイスラ・レヴィノスこそが。

 天海陸という『嘘』を、全力で肯定しよう。

 彼の『嘘』をあらゆる力、知恵を以って磨き上げよう。
 この『嘘』を、何よりも鋭い、至高の剣へと鍛え上げる。
 熾天の玉座へ到達し、更にその先へ進むために。


(天海陸。この僕、イスラ・レヴィノスが誓約するよ。君を、必ず……)


 必ず。
 全て滅びた後にたった一つ残る、確かなモノ。
 真実よりもなお眩く輝く、最強最後の『嘘』にする。

535 ◆QSGotWUk26:2013/04/30(火) 00:19:08 ID:55kiwxtQ0

              ◆


「ふんふんふ〜ん」

 キャスター、蘇妲己は上機嫌で指を繰る。
 嫋やかな指が踊るたび、宙に一筋の光が奔る。
 点は線、線は面となり、複雑な文様を描いていく。

「はいはい、下準備は完了ねぇん。ん〜妲己ちゃんってばセンスあるぅ!」

 妲己がいるのは柳洞寺の山門の前。
 地下にある大空洞を仮の依代とした妲己は、この柳洞寺から離れられない。
 士郎を伴い飛び出していったガウェインを追跡する内、士郎と彼のセイバーだけがこちらに向かってくるのを感知していた。

「あれってぇ、やっぱりぃ。わらわをハントしに来るのよねぇん」

 彼らの間でどんな会話が交わされたのかはわからない。
 だがセイバーの決然たる表情を見るに、妲己と一戦交えようとしていることは明白だ。
 だが今の妲己ではあのセイバーは手に余る。
 とどのつまりはこの聖杯戦争とて永劫の時の僅かな暇潰しではある。
 とはいえ、ただ負けるのはつまらない。
 どうせ負けるなら、最後は派手に咲いてから散るのが粋というもの。
 言い換えるなら、ただの愉快犯だ。

「え〜っと、何だったかしらぁん? あぁ、そうそう。
  『閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。繰り返すつどに五度。 ただ、満たされる刻を破却する』」

 それは召喚の呪文。
 妲己の手にある、真新しい二つの令呪――金田一一が有していた、三画の内の二画。

「え〜っとぉ、以下略! なんでもいいから出てきちゃってねぇん」

 その二画と、柳洞寺の山門を媒介に、あるサーヴァントを召喚する。
 それは――

「わぁお! わらわ好みの超イケメンじゃないかしらぁん!」
「……やれやれ。またこの役回りとは……我ながら、生前よほどの業を背負ったと見える。ただ剣を振っていただけであるのにな」

 かつて第五次聖杯戦争で冬木の地に現れたアサシン。
 佐々木小次郎という記号を与えられた、無名の侍だ。
 ここ、ムーンセルは地上の冬木市の全てを『過不足なく再現する』。
 それはつまり――『柳洞寺の山門に染み付いたアサシンとの縁』もまた、当時の姿形存在そのままで呼び出しているということでもある。
 ムーンセルの構造物に手を加えることは、天海陸のセイバーでは不可能だった。
 しかし、キャスター。蘇妲己ならば、話は別だ。

「まあまあ、そう邪険にしないでほしいわぁん。これからすっごく楽しいことが起こるんだからぁん」
「私の楽しみなど決まっている。こうして、この場所で私を呼んだということは」

 アサシンは、眼下に続く地上への階段とその先に広がる冬木市を見やる。
 思い出す。かつてこの場所で、血沸き肉踊る果たし合いを幾度も重ねたものだ。
 Aランクの心眼(偽)スキル――天性の第六感が、彼に告げている。
 この場所に、かつて果てたこの地に。
 かつてこの身を斬り裂いた剣が、再び近づきつつあると。

536 ◆QSGotWUk26:2013/04/30(火) 00:20:51 ID:55kiwxtQ0

「……ふふ。いいだろう、雌狐よ。そなたの思惑など私にはどうでもよきこと。私はただ……」

 ふぉん、と風を切るのは、長大な一振りの刀。
 佐々木小次郎の得物、物干し竿である。

「この刀と、強き敵だけあればいい」

 それきり、アサシンは妲己に興味を失くしたらしく、視線はただ階段を登ってくる者を待ち続ける。
 堅物すぎてやや不満はあるが、とにかくこれで、一応の体裁は整えられた。
 地下の大空洞とリンクしたことにより、この山門とかつてのアサシンの存在を認識できたことは僥倖である。
 妲己の術とここ柳洞寺の潤沢なマナを以ってすれば、『サーヴァントによるサーヴァントの召喚』は不可能ではない。

「まあ、言ったって二番煎じなのねぇん。自慢できることじゃないわぁん」

 言葉通り、妲己はかつてあるサーヴァントが行った術をほぼそのまま真似ただけである。
 それだけで一つ、祭りに彩りを加える役者を迎えられたのだから万々歳であろう。
 アサシンに山門の守りを任せ、妲己はほとんど焼け落ちた柳洞寺へと戻る。
 もはや影も痕跡ない、金田一の果てた場所に立ち、

「ごめんねぇ、一ちゃん。助けてあげるって言ったけど、あれ嘘だったのぉ。
 でもでも、一ちゃんの一部はこうしてわらわが有効に使ってあげたんだからぁ、許して欲しいのねぇん」

 舌を出し、両手を合わせる。
 金田一は妲己を信用したのか、それはわからない。
 データ消去が首にまで及んだ金田一に選択の余地などなかった。
 人間は、極限まで追い詰められれば、悪魔とだって契約する。
 だが、往々にして悪魔は裏切る。
 善良な悪魔など、いはしないのだ。

「まあ、どっちにしても助からなかったんだからぁ……わらわの役に立っただけ、一ちゃんの命には意味があったのよねぇん」

 妲己と契約し、サーヴァントを得ても、一度消えたデータは復旧しない。
 金田一はそれを知らず、妲己は知っていた。
 そして、令呪を奪われた直後に、金田一の命もまた潰えた。
 残ったのは妲己と、そして、金田一の令呪を用いて召喚されたアサシンのみ。
 妲己はここにセイバーが向かっているのを知っている。
 セイバーが妲己を討ち取るにはまず、アサシンを打倒せねばならない。
 来たるべき騒乱を予見し、キャスター、蘇妲己は大いに笑い、大いに楽しむ。



「さあさあ、このお祭りの終着点は一体全体どこになるのか……わらわ、楽しすぎて狂っちまいそうよぉん!」

537 ◆QSGotWUk26:2013/04/30(火) 00:21:38 ID:55kiwxtQ0

【柳洞寺/昼】

【キャスター(蘇妲己)@封神演義】
 [状態]:健康
 [令呪]:1画
  ※『傾世元禳』は破壊されました。
【アサシン(佐々木小次郎)@Fate/stay night】
 [状態]:健康
  ※令呪 柳洞寺の山門を憑代とせよ キャスター(蘇妲己)に従え



【深山町・柳洞寺周辺/昼】

【衛宮士郎@Fate/stay night】
 [令呪]:3画
 [状態]:健康
【セイバー(アルトリア・ペンドラゴン)@Fate/stay night】
 [状態]:健康
 [装備]:勝利すべき黄金の剣(投影)@Fate/stay night



【深山町・月海原学園周辺/昼】

【泉こなた@らき☆すた】
 [令呪]:3画
 [状態]:健康
【ライダー(火野映司)@仮面ライダーOOO/オーズ】
 [状態]:魔力消費(小)

【天海陸@ワールドエンブリオ】
 [令呪]:3画
 [状態]:健康
 [装備]:ニューナンブ、乗用車、反魔の水晶@サモンナイト3
【セイバー(イスラ・レヴィノス)@サモンナイト3】
 [状態]:ダメージ(中)、魔力200%



【深山町/昼】

【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュ】
 [令呪]:1画
 [状態]:???
 [装備]:携帯電話、ニューナンブ
【セイバー(ガウェイン)@Fate/extra】
 [状態]:健康


【深山町/昼】

【衛宮切嗣@Fate/zero】
 [令呪]:2画
 [状態]:魔力消費(大)
 [装備]:ワルサー、トンプソン、コンテンダー
       軽トラック、閃光弾、鉈、大きな鏡、その他多数(ホームセンターで購入できるもの)
  ※携帯電話には枢木スザクの番号が登録されています。
  ※深山町内にCCDピンホールカメラ付きの使い魔を放ちました。映像は無線機があれば誰でも受信出来ますが、暗号化されています。
【ライダー(門矢司)@仮面ライダーディケイド】
 [状態]:ダメージ(中)、魔力消費(大)
  ※ライダーカード≪龍騎≫の力を喪失(コンプリートフォームに変身するだけなら影響なし)。
  ※ライダーカード≪電王・モモタロス≫破壊(コンプリートフォームに変身するだけなら影響なし)。



【金田一一@金田一少年の事件簿  死亡】
【ライダー(太公望)@封神演義  死亡】

※太公望の宝具は全て消滅しました。

538 ◆QSGotWUk26:2013/04/30(火) 00:24:00 ID:55kiwxtQ0
以上、投下終了です。
重ねて期限の大幅な超過、謝罪いたします。申し訳ございませんでした。

タイトルは「 割れる円卓 」、です。

539名無しさん:2013/04/30(火) 00:54:47 ID:Lb6THo5s0
投下乙!
ケリィとディケイド、かなり厄介なコンビだな…
ルルーシュを出し抜いて一番厄介な太公望を討ち取ることに成功するとは
しかもルルーシュとガウェイン離脱で寺組ほぼ瓦解状態か
さしたる損をしなかった陸組も今後どうなることか…寺を抑えられたらあかんでぇ…
そして士郎&セイバーvsダッキちゃんになるかと思ったら…アサ次郎が来てるじゃないですか!やだー!
凄まじく今後が気になるな

540名無しさん:2013/04/30(火) 01:35:54 ID:r5jDJQZU0
投下乙です…が、ちょっと気になる点がいくつか。
まずアルトリアってカリバーンどこにやったの?
いくらカリバーの方が性能高いからっていっても前のマスターの切嗣がいるのに風王結界をアテにするとか流石にセイバーをアルトリアを頭悪く書きすぎでしょう
それにカリバーンって士郎の投影宝具だからカリバーみたいに便利に出し入れできると思えないしね
種の割れてるカリバーと切嗣が全く知らないカリバーンなら後者を使った方が明らかにマシじゃないだろうか?

それと間違いなくヤバいとわかってる切嗣が目の前に出てきてるのにルルーシュから離れてディケイドに夢中になるのも流石にない
他の鯖なら引っ掛かっても仕方ないけどアルトリアは第四次で切嗣が鯖を囮に使って自分が敵を殺す戦略を取ってたのを知ってるんだからちょっと不自然かと
ついでに言えば逆もまた然り、切嗣がアルトリアに作戦を見破られる可能性を毛ほども考えてないように見えて仕方ない

ディケイドがイスラに奇襲をあっさり成功させてるのも問題なしとは言えないかと
いくら弱いといっても一応イスラは心眼(偽)のスキルがあるんだから一切対応できないのはイスラを舐めすぎでは?
そもそもアサシンでもないライダークラスの鯖がアルトリアの直感スキルすら素通りして奇襲成功という時点でやりすぎ

他にもイスラが切嗣を排除するのに何故かギアスの使用を要請するとか(イスラの立場なら駄目元でも令呪の使用を促して相手の切り札を減らした方が得)、危機的状況でオーズだけがあまりにも都合良くコンボを躊躇ったりとか、
何というか全体的にご都合すぎる気がする

それと投下された時期を考えると野暮な突っ込みだとは思うんですが、大統領が偵察に行った時にガウェインは山門にいたのにいきなり太公望に致命傷を与えられるのは無理があると思います
まさか全員で山門にいたわけでもあるまいし、距離があるなら魔力の気配とかで前兆が掴めるはずでしょう
総じて、切嗣の電撃的作戦を成功させることありきでご都合的に話が運んでいるように感じました

541名無しさん:2013/04/30(火) 01:49:32 ID:gJDxKGmwO
>>540
同意。アサシン涙目な性能のライダーとかいくらなんでもやりすぎ
前々から思ってたけど仮面ライダーに色々盛りすぎだろ、何のためのクラス制限なんだかもうわからないよ
何かケリィや陸組を含めて登場人物たちがやたら頭悪く見える
作者には申し訳ないけどこれは何かしら修正してほしいところ

542名無しさん:2013/04/30(火) 07:48:10 ID:lv3XZgQUO
そういえばダッキにかかってた令呪はどうなったんだろう?

543名無しさん:2013/04/30(火) 13:25:45 ID:k/2wEWRw0
ついでと言えばなんだけどルルーシュのメンタルも豆腐過ぎるように見える
ユフィにギアス誤爆して殺した時でさえ特別取り乱したりはしなかったのに
会ったばかりの金田一達に対してこうなるとはさすがに思えない

544名無しさん:2013/04/30(火) 13:36:39 ID:Ih6r2dgo0
ここに限らず、仮面ライダーって書き手補正入って書かれること多いよな。対主催だろうとマーダーだろうと、
頭一つ抜けて強キャラ扱いされるのが常な感じ。
別に立ち回りがうまければ問題ないけど、他のキャラを冷遇してるならちょっとなぁ・・・てなるわな。

545名無しさん:2013/04/30(火) 13:51:05 ID:0WhTqVkAO
というかここ自体かなりご都合展開からの「それっておかしくないかな?」が多い印象…

546名無しさん:2013/04/30(火) 14:08:00 ID:Lb6THo5s0
>>545
それを言ったらFateの原作自体が…
割と無茶苦茶な能力同士での戦いだし

547名無しさん:2013/04/30(火) 14:58:22 ID:uHRA//DM0
とりあえず上で指摘されていることをまとめると

・セイバーの武器選択がおかしい

・切嗣から目を離してディケイドにかかりっきりなのが不自然

・切嗣がセイバーに対して無警戒すぎる

・直感系スキル持ちのセイバーやイスラをあっさり出し抜けるのはディケイドを強く描きすぎ

・イスラがルルーシュに自分達には通じなかったギアスの使用を促す

・山門にいたガウェインが距離を無視して一撃で太公望を仕留められるのはおかしい

・ルルーシュのメンタルが不自然なまでに弱い

大体こんな感じでしょうか
それとここからは私が疑問に感じた事なのですが、切嗣の描写全体が残念すぎるように思えます
作中で切嗣は「都合三騎のサーヴァントと戦うことになる」と発言していますが、正確には五騎でしょう?
柳洞寺にいる太公望やガウェインが後詰めに来る可能性を疑いすらしないのはいくらなんでも迂闊すぎです
もちろん実際にはダッキがいるので動けないのですが、タイミング的に切嗣組はその事を知る機会があったとは考えられません
この切嗣はメタ事情を全て網羅してるんじゃないのか、というのが率直な感想です
それとメタ事情でもうひとつ、いくらまどかが対主催に転向したといってもこの段階で寺組を決定的に崩すのは時期尚早すぎないでしょうか?
現状で主催者への考察を進めているほぼ唯一のチームをここで瓦解させるのは今後のリレー展開への影響が大きすぎるように思えます
絶対に太公望を殺してはいけないとまでは思いませんが、考察要員の代えが効かない現状でそれをやるならよほど上手く今後への伏線を張っておかないとこのロワ自体がただの消化試合になりかねません
最終的な判断を下すのは書き手の皆様方だということは理解していますが、この作品は小手先の修正でどうにかなるのか甚だ疑問に感じます
失礼ながら以前の番長無双に通じるものを感じずにはいられません

548名無しさん:2013/04/30(火) 15:37:58 ID:1BmSNoCs0


最終的な判断を下すのは書き手、ということなので書き手として発言させて頂きます。

今回の◆QSGotWUk26氏の投下、確かにやや修正が必要ではあると感じますが、
言ってしまえば「修正すれば済む」話であると思います。
主催者への考察、とおっしゃいますがそもそもこの企画はあくまで「聖杯戦争」であり、
参加者は基本的に自ら参加を決定したものであり、普通のロワ企画にある「首輪の解除」「主催者からの介入」といったものは存在しません。
考察しているチームを瓦解させてはいけない、というのはあくまで他ロワでの定説に則ったものであり、この企画にまで当てはめる必要性は薄いと思います。
大統領やまどかといったメタ事情については、投下の時期が重なったとい うだけであり、さすがにそこを不備として挙げるのもどうかと。

総じて、他の企画に比較してこの企画を行く末をあれこれ心配されるのは杞憂ではないかな、というところです。
そもそもが◆.OpF6wOgZ2氏の俺ロワなのですから



で、ここから感想です。
投下乙です!
細かい粗はあるにせよ、最後まで一気に読ませられる怒涛の展開でした。
ついに対峙した二人の仮面ライダー、かつての主従とその義理の子といった新たな因縁も生まれ、
ギアスを逆手に取った遠隔攻撃でサーヴァント中最強と言っても過言ではないガウェインを利用する、という発想はまったく想像出来ませんでした。
チート鯖と言われた太公望を打倒するのが同じくチート鯖であり仲間でもあるガウェイン…
ここ までするならそりゃ「悪辣」といわれるわなと、切嗣マジド外道。

最後のアサシン召喚については、個人的には大いに歓迎、というところです。
実際の原作でも柳洞寺の門を媒介に召喚されたものなので、他の地域・物質を元に新たなサーヴァントを召喚というのは不可能でしょう。
この立地、キャスターという人材、金田一の令呪があって初めて成し得たというものですので。
ただこれについてはあくまで個人的な意見ですので、他の書き手の方の意見も聞きたいところですが。

549 ◆wYNGIse9i6:2013/04/30(火) 15:38:39 ID:1BmSNoCs0
おっと、酉忘れてました

550名無しさん:2013/04/30(火) 15:42:32 ID:jxQVkmEY0
番長無双の次は切嗣無双か・・・

551 ◆n4C8df9rq6:2013/04/30(火) 16:01:03 ID:Lb6THo5s0
>>539で感想投下した者です
ガウェイン、まどかに関しては時期の問題によるメタ事情ですもんね…ここは指摘する点ではない
主催への考察を進めてるチームの瓦解に関しても別に「やってはいけない」ことではないし、
むしろ順調だった寺組が瓦解する展開は面白かったと思いますねw
アサシン召還という展開も完全に予想外でなかなか面白いと思いましたし
自分としても◆wYNGIse9i6氏と同意見で修正を行えば済む展開だと思っております…

552<削除>:<削除>
<削除>

553名無しさん:2013/04/30(火) 16:13:57 ID:gJDxKGmwO
>>551
待て待て、◆n4C8df9rq6氏はこのロワに一作たりとも投下してないじゃないか
適当に酉つけてレスすれば他の書き手さんと同等の発言力になるってのはさすがに筋が通らないだろ

554名無しさん:2013/04/30(火) 18:11:35 ID:bDi9gAzM0
そもそも切嗣ならガウェイン呼ぶ事を選択されるだけで逆に自分達が詰む事になる博打みたいな戦法は取らないんじゃ

555名無しさん:2013/04/30(火) 19:31:27 ID:ahG0cRAQ0
展開の可不可はともかく、アサシン召喚だけはもにょる……
登場話ちゃんと書いてサーヴァント出した人たちに申し訳ない
こういう展開にすれば追加で出してもいいのかとも思われかねないし
これがせめて登場話書かれたけど、登場我多すぎるからと辞退してくれた人たちのサヴァ、たとえばアサシンだと緋村剣心とかならまだ納得だったんだけど

556名無しさん:2013/04/30(火) 23:16:45 ID:Kiek7A.w0
いや、キャスターのサーヴァント召喚は上等手段でしょ
原作でもやってるし、儀式自体の乗っ取りすらできてしまう可能性あるのがキャスタークラス
その代わり三騎士に基本メタられてるんだけど

557 ◆2shK8TpqBI:2013/04/30(火) 23:23:20 ID:K8v44b.M0
話の途中すいません
修正ができたので一度こちらに仮投下してもいいですか?

558名無しさん:2013/04/30(火) 23:25:45 ID:z0HqiUKQ0
待ってました!
投下お願いします

559 ◆2shK8TpqBI:2013/04/30(火) 23:27:17 ID:K8v44b.M0
投下します。



「おー今度はいっぱいひとがきたねー。わたしは案内役NPCの間目智識、よろしく!」

 『図書館』と書かれたプレートがはられた部屋に入るとそこには黒い学生服を着た少女が明るく
声をかけてくる。花村と名無はすごい名前だと内心引いていたがアレックスはすでにここに他の
マスターが来ていた事に気づきそのマスター達のことを聞いたが、

 「ごめんねー、利用者のことを教えるのはルール違反なの。」

 申し訳なさそうに謝る案内役にそれ以上はいわずデータベースの方に向かう。

 「まずはアサシンとライダーの情報、それとマスターの友人が連れていたランサーと
洗脳宝具の使い手だ。この四人はなんとしても情報を手に入れる。」

 全員がそれぞれデータベースに座り情報を探す。

 検索ワード「アサシン 遠距離広範囲攻撃 剣と炎」
 検索結果1件 「壊刃サブラク」

 「・・・早いな」
 
 「アサシンとしては規格外な攻撃だったからな」

 その分調べやすかったとアレックスは目的の情報を手に入れる。
 ステータスとマスターの情報を手に入れられたのは嬉しい誤算だ。

「ふむ、おい間目智識、スキルや宝具はでないのか?」

 「いきなり全部の情報は教えられないのー。情報は入力された単語に応じるから、
情報を持ってくれたら詳細まで分かるけどー、特徴だけとか曖昧なものはヒントだけ
出すからあとは自力で調べてね。」

 「そう都合よくいかんか。」

 仕方がないので開示された情報を元に図書館の書物を調べていく。
 もともとこのサブラクはアサシンとしてはイレギュラーな存在だったようで予想していたよりも
具体的な情報を手に入れることが出来た。
(もっともマスターはやはり名前しか分からず経歴や能力の有無は分からなかった)

 「なるほど、恐るべき耐久力とまったく感知できなかった気配遮断の正体は
この浸透というスキルによるものか・・・それにこの自在法、やはりこいつは危険だ。」

 出来ることなら相手にしたくないものだ・・・
 やはり攻撃を近くで見れたのは運がよかった。
 本を元に戻し近くにいたリインフォースに近づく。
 ライダーを調べていた彼女の表情はまるで絶望を通り越して笑うしかないよでもいうような
顔だった。

 「どうした?」
 
 「あのライダー、真名じたいはマスターのおかげで分かってたから能力の詳細を調べてたんだが
とんでもなくてな。飛ぶ斬撃にBランク以下無効化の鎧、さらにこの経歴に書かれたエルランの
メダリオンというのも気になって調べて見た。全パラメータと対魔力のアップと体力回復の恩恵、
大まかな探知能力と出鱈目の目白押しだ。反則だろこんなの。」

 「その分マスターの負荷も凄まじいはずだ、一撃で即死させるか魔力切れを待つか、いずれに
せよ一縄すじではいかん相手だろうな。」

560 ◆2shK8TpqBI:2013/04/30(火) 23:28:51 ID:K8v44b.M0


そっちはどうだマスターと声をかければ、あまり成果がないのか背もたれに身体を預け脱力している
マスターは気の無い返事を返す。

 「やっぱ悠のサーウァントは情報が少なすぎて調べんの無理だわ。一個一個調べてたらキリねえしな。」

 もうちょっと情報ありゃあな。と愚痴るがそうしたところで結果が変わるわけでもなく仕方がないので
ランサーについては諦め洗脳宝具の使い手を一緒になって調べる。

 「やっぱキャスタークラスが多いな。」
 「まあこんな搦め手を使うのはキャスターかアサシンに多いだろうな。」
 「あ、でもランサークラスでいるぜ。えーと、ディルムットだってよ。女限定で魅了の呪い、
羨ましいなチクショウ。」
 「これは関係なさそうだな。やはりもう少し絞り込むナニカがほしいが・・・」

 もう一押しなにか情報がほしい。なにか見落としている物はないかと思考するが思いつかない。
 そもそもあのとき俺はランサーの相手で忙しかったのだ。
 マスターの方など碌に注意できなかった。
 拠点の候補を絞り込んでいたリインフォースがこちらに近づいてきた。
 「おい、お前は何か気づいたことは無いか?些細なことでもいい。」
 「え?そうだな・・・。お前あの時ランサーのマスターと何か話してなかったか?」
 「あの時?ああ何か天国がどうとか言ってたけど、あんまよく覚えてねえんだよ。」

 パニクってたからな。とその時のことを思い出したのか複雑な顔をするマスターを横目に
何か思うところがあるのかリインフォースがデータベースにワードを入力していく。

 検索ワード「洗脳宝具 天国への到達 蠢く肉片 脳を支配」 
 検索結果 「DIO」

 「これか?」
 「調べてみるぞ。」

 三人で手分けして探す。するとマスターが見つけた吸血鬼に関する本に煮た様な記述があった。
 それによるとある特別な道具で人間から変質した吸血鬼は自分の細胞を額に植え付けその吸血鬼
に対し憧れに近い感情を抱くようになるらしい。また肉の芽が植えつけられた状態で親元である
吸血鬼が死亡してしまった場合暴走を引き起こし不死身の怪物に成果てるとある。

 「おそらくこいつで間違いないな。」
 「吸血鬼か・・・まあそういう俺のような存在がいるならありえなくないのだろうな。」
 「んなこと言ってる場合かよ!やっぱり探しに行ったほうが・・・」
 「当ても無くか?徒労に終わる可能性の方が高いぞ。」
 「でもよ!」
 「落ち着けマスター。こいつに操られているなら日中は動かない、いや動けないはずだ。
太陽の光は天敵のようだからな。だから手駒が欲しかったのだろう。」

 少なくとも今すぐどうこうはならない。
 その言葉に安心したのかマスターはドカッと椅子に座り込む。
 
 「なあ間目智識、出てくるのは入力したワードに比例して情報が詳細化するんだったな。」
 「そうよー。」
 「ならこれがまだ隠された能力がある可能性もあるのか?」
 「かもね。」

 そういうと再び読みかけの本に視線を戻す案内人
 
 「ならまだ何か隠しだまを持ってると仮定して動いたほうがいいな。」
 「そうだな、石橋を叩いて渡るくらいでも足りない。橋を作るくらいでいったほうが丁度いい
かもしれない。」

 少なくとも楽観視はできない。
 すると復活したマスターがなあと話しに入ってきた。

 「掲示板でちょっと気になったことがあるんだけどさ、死者の数が奇数なんだよ。
今思うとおかしいよな。偶数にならなきゃへんだろ?」
 「再契約を交わしたサーウァントがいるのかもしれんな。」
 「だが今度はマスターの数が合わんだろう。サーウァント2体と契約してるとでもいうつもりか?」
 「今の時点では分からん。が、注意を払っておこう。そろそろキリがいいな。でるか。」
 「そうだな、おいマスター!そろそろ出るってあれ?」

 「そういや静かとは思ってたけど、名無のやつどこいったんだ?」

561 ◆2shK8TpqBI:2013/04/30(火) 23:32:09 ID:K8v44b.M0
状態表の備考の項目を

 サブラク・アシュナードの詳細な情報を手に入れました。DIOの真名と肉の芽の詳細、吸血鬼の特徴
をしりました。(スタンドについては知りません)
(情報は大学ノートに記入されています)

に変更したいと思います。
こんな感じでいかがでしょう。
意見・感想お待ちしてます。

562名無しさん:2013/04/30(火) 23:42:26 ID:Lb6THo5s0
修正乙です
まぁこんなもんでいいんじゃないかな?
吸血鬼の特徴についても肉の芽っていう当人の『細胞』を目撃してるるんだしね

>吸血鬼が死亡してしまった場合暴走を引き起こし不死身の怪物に成果てるとある。
何気に「DIOが死ぬ前に番長の肉の芽を摘出しなきゃならない」ってことを認識してるけど、
まぁこの辺はDIOが日中隠れてる(=探知されない限り戦闘に陥りにくい)ってことを考えれば、教会組も焦ることはない…のかな?

563名無しさん:2013/05/01(水) 06:17:32 ID:R8T1z/fk0
修正乙です
ちょっと情報引き出しすぎだったのが削られた分、バランス良くなりましたね
しかしDIO様…肉の芽だけなら真名までバレなかったかもしれないのに…やはりうっかりなのか

564名無しさん:2013/05/01(水) 11:33:09 ID:V3WoAqL20
修正お疲れ様でした。
クー・フーリンだってわかれば、女の裸と冷水で正気に戻る逸話も
判明したかもしれなかったのに惜しかったねw

565名無しさん:2013/05/01(水) 11:44:19 ID:L2D4h5N60
あと、大統領って状態:健康だけど十さんとこ魔力かなり使っちゃってるんだよね
wiki収録中だけど、魔力消費(大)表記すべきかな?

566 ◆n4C8df9rq6:2013/05/02(木) 20:13:13 ID:Cls41KTk0
鳴上悠&ランサー(クー・フーリン)
アサシン(ファニー・ヴァレンタイン)
予約致します。

567 ◆2shK8TpqBI:2013/05/02(木) 20:49:26 ID:7KO/mmDs0
今さらながらスミマセン
自分の作品を見直してて気づいたことなんですが、大統領ってリインちゃんのクラスがキャスターって知っててもアレックスのことをランサーって知らないですよね?
今さらですが修正した方がいいでしょうか?

568 ◆n4C8df9rq6:2013/05/02(木) 20:54:41 ID:Cls41KTk0
あー、言われてみれば確かに…アレックスは宝具見てもランサーと判断するのは難しいでしょうしね
(リインちゃんは名無から普通に「キャスター」って呼ばれてたし)
その辺りは一応修正するべきかもですね…

569 ◆n4C8df9rq6:2013/05/03(金) 00:42:21 ID:1k/fwwiw0
投下します。

570 ◆n4C8df9rq6:2013/05/03(金) 00:44:39 ID:1k/fwwiw0

多くの仲間達がいた。
自分には確かな絆があった。
思えば、あの事件が全てのきっかけだった。
仲間と共に事件を追って、苦難を乗り越え続け。
そして、気付かされた。

自分は空っぽなんかじゃない。
自分には仲間がいる。
自分と仲間達には、真実の絆がある。

そう信じていた。ずっとそう思っていた。
だが、違った。俺は、あの時――『選択を誤った』。
手に取るべき未来を間違えてしまった。
あの事件が全てのきっかけだった。同時に―――あの事件で、罪を背負った。
殺してしまった。殺してしまった。
――――殺してしまった!奈々子を奪われた怒りで、殺してしまった。
『テレビの中に入れてしまった』。
殺人犯に制裁を加えた?いいや、俺は殺人犯を、生田目を『殺した』んだ。
あいつを憎んでしまったんだ。本気で殺してやりたいと思ってしまったんだ。
奈々子を死に追いやった、あいつを。

だけど、それは間違いだったんだ。
俺は、人殺しという過ちを犯していたんだ。
この闘いでも同じだ。48人もの参加者を死に追いやった末に、叶える願い。
人間1人を殺したことをなかったことにする為に、48人を生け贄に願いを叶える。
自分でも愚かだって解っている。解っている。
でも―――俺は『絆』を失ったまま終わりたくはなかった。
みんなとの毎日を、輝かしい日々を取り戻したかった。

あの一件以来、俺たちの絆は崩れ去っていたんだ。
事件を追ったみんなとも、ぎこちない関係になって。
話すことも無くなって。会う度に、『あの日』のことを。『生田目』のこと思い出して。
事件は終わったはずなのに、どうしようもない不安感が募っていて。忘れ去ろうとしても、意味がなくて。
そのまま、次第にみんなと疎遠になり始めて。
俺は。 絆を全て失って―――――空っぽになって。
何も持っていない、かつての自分へ戻る。

571 ◆n4C8df9rq6:2013/05/03(金) 00:45:51 ID:1k/fwwiw0


俺は、それだけがどうしようもなく恐ろしかった。
仲間と結んだ絆が、砕け散ったまま終わっることが。
空っぽで何もない自分に戻ることが。
今までのことが『何もなかった』かのように、皆との縁が消えることが。
どうしようもなく―――恐ろしかった。

だから俺は、覚悟を決めたんだ。
闘う覚悟を。全てを、取り戻す覚悟を。
贖罪の闘いではない。これは、俺の為の闘いだ。
この闘いで積み上げられる48の屍を乗り越えて、俺は願いを叶えたかったんだ。
俺は殺人者だ。こんな苦しみを背負うのは、罪を背負うのは…俺だけでいい。
願いを叶えて、みんなが『あのこと』を忘れ去ったとしても。
十字架を背負うのは、俺一人だ。それでいい。


ランサー。俺のかけがえのない『相棒』と共に戦い。



そして  俺は   願いを―――――――――




『「天国へ行く方法」がある――――――』




俺の、願い。




『君も、君の仲間達も。この闘いで散って逝く魂も』



俺の―――願い?




『「天国」へ到達すれば――――――』



俺、は――――



『 皆、救われるんだよ。悠 』





それは、幻聴なのか。あるいは、何かが俺に直接語りかけているのか。

俺には解らない。でも――――

その言葉は 何よりも甘美で、温かく、そして…優しかった。



◆◆◆◆◆◆

572 ◆n4C8df9rq6:2013/05/03(金) 00:47:55 ID:1k/fwwiw0
◆◆◆◆◆◆





DIOさん。空っぽの俺との絆を結んでくれた人。


そうだ。救われるんだ。救われる。救われる。救われる。

人殺しの罪を背負った俺も。この闘いで死んでいく人達も。

そう、『陽介』も。『ランサー』も。失った絆も。何もかも。

あの人が救ってくれる。あの人が、救ってくれる。絶対に。

俺に手を差し伸べてくれたDIOさんなんだ。あの人が、嘘をつくわけがない。

これは真実なんだ。

真実だ。本当なんだ。裏切るはずがないんだ。

みんなを救ってくれるんだ。

裏切るはずがないんだ。

あの人と俺の間には真実の絆があるんだ。

そうだ、当然じゃないか。

この絆を信じればいい。あの人のセカイを信じればいい。

そう。DIOさんなら――――――――――――――――



◆◆◆◆◆◆

573 ◆n4C8df9rq6:2013/05/03(金) 00:48:59 ID:1k/fwwiw0


「ランサー」

悠の呼びかけに応じ、姿を現したランサー。
何度も死線を乗り越えてきたかけがえのない相棒。DIO以外に、唯一信じられるモノ。
その姿を見て、悠は何処か安心感を覚える。
そして…ランサーの漆黒の狂気を帯びた眼は、マスターの姿を捉える。
今の彼が何を思い、何を感じているのか。それは、今の悠には解らない。
ともかく、ランサーは長い間この民家の中で動かずにいた為かある程度負傷は治癒していた。
膨大だった魔力の消耗も伊邪那岐のおかげで十分に補えている。
…だけど、今の悠は…戦えるような状態ではなかった。
長い時間をかけて、恐慌状態からは立ち直った。しかし―――
今の彼の精神は、『DIOとの絆』『天国へ行く方法』によって均衡が保たれている状態。
内面の不安や恐怖を、無理矢理抑え込んでいる状態だった。


「行こう。…DIOさんの、所へ」


ランサーを伴い、ふらふらとした足取りで民家を出る悠。
あてもなく、見当も付かない。だが、彼はDIOと会う為に歩を進める。
傍にいたランサーは、道を出てすぐに霊体化し彼に追従する。


――とにかく、今はDIOさんと会いたい。
あの人と会いたくて仕方がない。
この『肉の芽』を、絆の証を失って。
あの人に。あの人に見離されること。
それだけは…それだけは嫌だ。何よりも、それが恐怖だ。
それだけがどうしようもなく恐ろしい。
俺は、とにかく『安心』を得たかったんだ。


広大な町の中を、少年はただ只管に進み続けた。


◆◆◆◆◆◆

574 ◆n4C8df9rq6:2013/05/03(金) 00:49:50 ID:1k/fwwiw0
◆◆◆◆◆◆



(…あの少年…)


何かに導かれるように、悠は住宅街の道を進み続けている。
建物の陰に隠れ、それを監視するように眺めているのは一人の男。
アサシンのサーヴァント―――『ファニー・ヴァレンタイン』。
気配遮断スキルによってランサーの探知能力を交い潜り、悠の様子を伺っている。
(その片手にはしっかりと買い物袋がぶら下げられているのは少々シュールではあるが)

私は魔力の消耗と成果の報告の為、少々急ぎ足で帰路についている最中だった。
しかしその途中の住宅街にて、私は魔力の反応を察知した。
並の連中とは違う。探知系のスキルがない私でも嗅ぎ付けられるような『滲み出る強い魔力』を感じ取れたのだ。
それを探った末に、私が発見したのが…あの虚ろな目をした銀髪の少年だった。
あの少年が比較的近辺に潜んでいたことが幸いし、発見することが出来た。私の探知能力で探ることが出来たのもその為だろう。
銀髪の少年が民家から出る瞬間、一瞬だけサーヴァントの姿を捕捉することは出来た。
あの肌がピリピリするような膨大な魔力量、そして狂人そのものの表情からバーサーカーのクラスだと推測出来る。
しかし…その姿を撮影するよりも前に、ヤツは霊体化によって姿を消してしまった。
もう一人収穫を得られるかと思っただけに、残念ではある。


(さて…あの少年、今までの連中とは違う。強力な魔術師と同等か、それ以上の魔力量を感じ取れる。
 それに、伴っているのはバーサーカーと思われるサーヴァント。狂化しているだけに、厄介な猛犬だろう…
 出来れば追跡しておきたい所だが…今の私は宝具の使用で魔力を使い過ぎている。流石に危険だな)


内心で思考を重ねながら、遠ざかっていく悠の姿を黙って見送っていく。
奴らは気になるが、現時点での追跡は大きく危険が伴うだろう。
気配遮断スキルがある以上、交い潜ることは可能かもしれないが…一度捕捉されればその時点で終わり。
あのバーサーカーに叩きのめされて『再起不能“リタイア”』がオチだ。
宝具を使えば対処は出来るが、魔力消費が大きすぎる。下手すれば市長の魔力が枯渇してしまうからな…
私自身、あくまでアサシンのクラス。ステータスの低さは十分に理解している。
それ故に、ハイリスクの博打は出来るだけ避けた方がいいだろう。
ともかく…今は一先ず、市長の元に戻って魔力を回復せねばな。
今頃市長も魔力の消費で苦しんでいることだろう。さっさと栄養ドリンクを渡してやらねばな。

そのまま彼は、自身の存在を悟られないように…その場から素早く姿を消した。

575 ◆n4C8df9rq6:2013/05/03(金) 00:52:37 ID:1k/fwwiw0
【新都・住宅街/昼】

【鳴上悠@ペルソナ4】
[状態]肉の芽、精神不安定、精神力消耗(中)、クレジットカード紛失
残令呪回数:1
[持ち物]大鹿のルーン石@Fate/stay night、携帯電話
携帯電話には朽木スザク・DIOの番号が登録されています。
[思考・行動]
基本行動方針:???
1:DIOに会いたい。
2:あの人を信じれば大丈夫だ。
3:天国が皆を救ってくれるんだ。
[備考]
肉の芽の支配が弱まりました。普段は支配されますが、何らかの拍子に正気に戻るかもしれません(自力での解除は不可能です)
クレジットカードの紛失に気付いていません。

【ランサー(クー・フーリン)@Fate/stay night】
[状態]魔力消費(小)、ダメージ(中)、令呪により狂化:Cを付与
[思考・行動]
基本行動方針:狂化中の為なし。
1:悠に追従。
令呪の力により狂化しています。
時間経過で解除されることはありません。


【アサシン(ファニー・ヴァレンタイン)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態](4人目)、魔力消費(大)、気配遮断
[装備]:拳銃
[道具]:携帯電話、栄養ドリンク数本(買い物袋に入れている)
[思考・状況]
基本行動方針:ムーンセルは誰にも渡さない。わたしが手に入れる。
1:あの二人組(鳴上悠とランサー)が気になるが、今は帰還を優先。
[備考]
鳴上悠とランサー(クー・フーリン)の姿を確認しましたが、撮影には失敗しました。
クー・フーリンをバーサーカーのサーヴァントと誤認しています。
セイバー(ガウェイン)、アレックス(クラス未把握)、キャスター(リインフォース)のステータスは市長に送信済みです。
教会組の拠点の場所は遠坂邸と思っています。

576 ◆n4C8df9rq6:2013/05/03(金) 00:53:26 ID:1k/fwwiw0
投下終了です。
タイトルは「忘我郷-さまよえる心」で。

577名無しさん:2013/05/03(金) 03:59:15 ID:LDvXvgjY0
投下乙です
揺れる番長、頼るのはサーヴァントじゃなくDIOか……
そのDIOがまどかといっしょにいるから番長がどう扱われるかわからないなあ
大統領も一部勘違いあるとはいえ首尾よく情報集められていまのところ順調そのもの
市長が人知れず死にそうになってないか心配だなw

578名無しさん:2013/05/03(金) 06:52:23 ID:517I9Tio0
番長既にDIOに骨抜きにされてしまっているな。
あってよかったカリスマスキル

579 ◆2shK8TpqBI:2013/05/03(金) 20:00:55 ID:Zh7AT7os0
投下乙です
大統領の状態表の変更ありがとうございます。
ジョン・バックス
アサシン(ファニー・ヴァレンタイン)予約します。

580名無しさん:2013/05/04(土) 17:17:14 ID:8gh2KDTo0
番長の心情描写がアニメの声で再生されるくらいお見事だった
最初の方はすごく番長らしいのに、そこにDIOが入ってきて、読んでて、え?ってなる
洗脳されるってまさにこういうことなんだろな……
しかしやってることは真面目な情報収集なのに、買い物袋とか栄養ドリンクな大統領が空気台なしにしてやがるっ

581580:2013/05/04(土) 17:17:47 ID:8gh2KDTo0
空気台なしにしてやがるwww

582名無しさん:2013/05/04(土) 23:43:20 ID:hzVTXENY0
そういや言峰の麻婆豆腐ってマスターのMP回復効率は
栄養ドリンクより良かったんだっけ?
CCCでも結構回復していたな。

そういやMPかなり消耗した状態のマスターが、
今まさに教会に向かっていたような…。

583名無しさん:2013/05/04(土) 23:50:26 ID:HkD5YcqE0
麻婆豆腐買って帰る大統領を想像してちょっとワロタ

584名無しさん:2013/05/05(日) 09:24:43 ID:y49UEbS.0
泰山を店舗ごと買収する市長とか?
で、唇を腫らして入り浸る訳か。

状態表に味覚障害(軽度)を追加しなきゃいけないな。

585名無しさん:2013/05/05(日) 12:24:30 ID:Odr0nN9gO
唇を腫らす程度で済めばいいね

586名無しさん:2013/05/06(月) 22:04:25 ID:x7d2DzTs0
ワカメ組の投下来ないな、延長もないし…
また書き手の連絡無しで破棄になるのか

587名無しさん:2013/05/06(月) 22:32:52 ID:vv9h1bIQ0
もう少し…もう少し待つのだ…

588名無しさん:2013/05/07(火) 01:23:10 ID:z4b0lm0c0
やっぱり今回もダメそうだよ…
幸運の終わりを恐れたワカメの呪いかw

589名無しさん:2013/05/07(火) 01:33:01 ID:bApq6TpI0
今日中…今日中に何かしら氏が顔を出してくれると信じている…
正直いずむん組vsワカメ軍団、今までにも2回くらい予約破棄になってる気がするからそろそろ可哀想になってくるw
ワカメの呪いなのかもしれないけどな…!

590 ◆ARbuQtVLig:2013/05/07(火) 15:59:44 ID:ZE83auSs0
うわー、ごめんなさい!
期限勘違いしてました。良ければ延長申請させていただきたいんですが、駄目でしたら諦めます。

591名無しさん:2013/05/07(火) 18:59:32 ID:bApq6TpI0
おぉ、氏が来てくれただけ何より…!
一先ず予約延長しておきます

592名無しさん:2013/05/08(水) 00:25:56 ID:HUEqeoss0
延長きた!
待っててよかったー!

593 ◆QSGotWUk26:2013/05/08(水) 03:56:59 ID:fH/HpBEs0
wikiにて修正完了しました。
遅くなって申し訳ございません

594名無しさん:2013/05/08(水) 06:11:54 ID:VkdDaK4s0
修正乙です!
でもカリバーンで風王結界って出来たっけ?
いや、ここらへん原作でも言及されてなかったような気もするからわからんのだけど…
とにかくそれ以外は良修正でした!
ディケイドの無双っぷりや切嗣の言動とか指摘されてた部分が軒並み和らいでますね

595名無しさん:2013/05/08(水) 08:47:27 ID:kn4pez1wO
ぶっちゃけ余所のロワだと他の剣で風王結界とか平気でやってるところ結構あるけどな

596名無しさん:2013/05/08(水) 09:13:14 ID:o8IvbBt60
さすがにその辺は言い出したらきりもなさそうだしな…
他の剣だとできないって設定があるわけでもないし、いいと思う

ともかく、修正お疲れ様でした!

597 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/08(水) 12:33:59 ID:EcQ7duj6O
修正乙です!
痒いところに手が届く、とはこの事かというほどの良い塩梅になったと思います
それからこの修正案が本採用ということであれば天海陸&セイバー、泉こなた&ライダー、衛宮士郎&セイバー、キャスター(蘇妲己)&アサシン(佐々木小次郎)で予約をしてもよろしいでしょうか?

598名無しさん:2013/05/08(水) 15:13:36 ID:7781BOQQ0
>>593
修正乙です
>>597
さっそくアサシン小次郎が予約…!これは期待

599名無しさん:2013/05/08(水) 15:54:07 ID:8Usa5NLU0
見事な予約の早さ…w いいんじゃないかな?
ひとまずwikiに予約書いときます!

600名無しさん:2013/05/08(水) 16:12:19 ID:8Usa5NLU0
一応「割れる円卓」の最後に小次郎のステータスのリンク貼り付けといた
(参加者一覧に直接載せるのはネタバレ感があるので…)

601名無しさん:2013/05/10(金) 16:23:59 ID:tOOEz4Yw0
議論スレで追加のルールについて議論中です
意見のある方は月曜日までにどうぞ

602 ◆2shK8TpqBI:2013/05/10(金) 20:15:42 ID:zt.lcW5U0
投下します




市長の仕事は忙しい。
 それはたとえ電子世界の冬木市市長の肩書きを持つ氷室道雪でも例外
ではなく、朝早くから条例の制定・改廃の提案、税金の課税と徴収、
などといった行政、予算の決済などといった多岐にわたる。

 またそれだけではなく聖杯戦争のマスター、ジョン・バックスとして情報
収集も行わなくてはならない。
 警察や消防など様々な組織から報告される情報を整理し、有効な作戦を考える。

 それによる膨大な仕事量による結果。
 
それはすなわち・・・



 体力の限界・・・



 「市長、報告します。ショッピングモールで死者及び重傷者が多数と警察と病院から連絡が
ありました。」

 「さらにその現場で竜を見たと市民から通報が・・・」

 「田園地帯の方角でも竜を見たと通報がありました。おそらく同種のものかと・・・。」

 「早朝にハイアットホテル付近で自動車の爆発事故が多発しました。目撃情報は
ありません。」

 「深山町の名家の間桐邸で轟音と衝撃があったと通報がありました。調査中ですが詳しい
ことは分かってません。」

 「市長―――――――」

 「市長―――――――」

 次々流れ込んでくる報告にゆっくり休むこともできず各部署に次々指示を出さねばならず
ろくに体力の回復もできない。
 昼前になるころには息も絶え絶えな状態になっていた。

603 ◆2shK8TpqBI:2013/05/10(金) 20:16:46 ID:zt.lcW5U0


「くっ、ライダーめ・・・いくら情報操作ができるといっても限度があるのだぞ。」

 おそらくショッピングモールで暴れまわった参加者は同盟者のライダー達だろう。
出発の時間帯を計算にいれそう結論ずける。
 また特徴的すぎる格好が災いし、遠目に見ていたNPC達の目撃情報とも一致した。
 これらの情報を他の参加者に知れ渡らないよううまく情報を操作したが、
何しろあまりにも目立ち過ぎたためどこまで効果があるのかわからない。
 攻撃のタイミングは任せると予めお互い了承を得ていたが、まさかこんなにも早く
行動に移るとは予想外ではあった。
 おかげで魔力供給の疲労とは別に精神的な疲労が蓄積する。

 「味方に此処まで振り回されるとは、これで何の成果もなかったら恨むぞ。」

 もっとも口に出すことなぞできんがな。
 それに見ようによってはこの近くにいた参加者に殺害は不可能としてもダメージは
与えられたはずだ。
 そう考えて割り切ることにしよう。

 
 「市長、戻ったぞ。」
 
 部下が報告を終え退出したと同時にアサシンが現れる。
 突然現れたことに驚きつつもそれを表情に出さず向き直る。

 「早かったな。もう仕事が終わったのか?」

 「いや、直接本拠地を確認したわけではない。拠点にする予定の場所を
聞いただけだ。追跡するには魔力を消耗しすぎて危険だったからな。
予定を切り上げ戻ってきた。」

「そうか、3人分のステータスが送られてきたが詳しいことが聞きたいのだが。」

 アサシンは向かい側の椅子に座ると買い物袋をテーブルに置いた。
 その中身に嫌な予感がしつつも報告を聞く。

 「セイバーについては送ったステータス以上のことはわからん。 
 学園にきた参加者で確認できたのは二組だけだ。
 学生服を着た少年二人と軍服姿の男と銀髪の女。
 このうち銀髪の女がキャスターで姿を消せる上に探知能力にも引っかからなかった。
 軍服の男もサーウァントだが、クラスは分からん。能力も手から電撃を撃った
くらいの事しか分からなかった。おそらく三騎士クラスかライダーだとは思うんだが・・・」

 確かなことは分からん・・・と首を振るアサシン。
 

 「それと市長、黒髪の方のマスターは単独でも戦闘が可能だ。
 さすがにサーウァント相手に勝つことは不可能だろうが時間稼ぎくらいは出来るだろう。
 現に宝具なしなら私に勝つことも決して不可能ではないだろう。(もっとも次は負けんがね。)」

 「ふむ、マスターが戦えるというのはかなりのアドバンテージだな。
 特に君のようなアサシンとは相性が悪いのではないのかね?」

 「なに、手はあるさ。」

 そう言って不敵に笑うアサシン。
 その言葉に頼もしさを覚えると情報の続きを促す。

 「最後の情報はあまり有益なものではない。
 ここに来る途中にマスターとサーウァントを発見したのだがな、消耗しすぎていたため
追跡を諦めた。銀髪に眼鏡の少年におそらくはバーサーカーのサーウァント。
ひょっとしたらこの近くに拠点が在るのかもしれないな。」

 「確かにどの参加者もいい加減拠点の一つや二つ作っているだろうな。」

 探しておくべきかと頭の中に入れつつこちらで掴んだ情報をアサシンに伝える。

604 ◆2shK8TpqBI:2013/05/10(金) 20:18:35 ID:zt.lcW5U0

「間桐邸の件は間違いなくサーウァント同士の激突によるものだろう。
そっちではなにか気づいたことはなかったのか?」

 「音は聞こえていたがわざわざ戦闘中のところになんぞ近づきたくなかったからな。
それに行ってみてもおそらく終わっていたからな。無駄足の可能性が高かった。」

 「なるほど、まあそういうことならかまいませんよ大統領。」

 「同盟者はどうなったのだ市長?。」

 「頼まれていた物はすでにホテルに運び込まれている。
おそらくいい加減戻ってきてもいいはずだからな、戻り次第判明してる参加者の
拠点を報告するつもりだ。」

 うまくいけば出向いてくれるやもしれんしな
 お互いの情報交換も終わった事だし今後どうするかを決めねばならん。
 疲れが残る頭で考えを纏めていると


 ―――ジリリリリリリリリ!
 ―――ジリリリリリリリリ!

 「私だ。なに?―――ふむ。―――分かった、報告ご苦労。」

 「どうした?」

 「桐柳寺の上空で巨大な閃光が発生したと通報があったそうだ。
もしかしたら何かあったのかもしれないな。」

 もしかしたらあのセイバーに何かあったのかもしれない。
 調べる価値は十分あるがいかんせんアサシンの魔力が心もとない。
 やはりライダー達が戻るのを待つべきか。

 「なるほど、では私が行って調べて来るとしよう。」

 そう言って立ち上がるアサシンだったが、戦える状態ではなかったはずだ。
偵察だけでも危険すぎると慌てて止めようと立ち上がり、

605 ◆2shK8TpqBI:2013/05/10(金) 20:20:04 ID:zt.lcW5U0




 そのまま床に崩れ落ちた

 また体中から力が抜き取られる感覚に襲われまともに立ち上がれなくなっていく。
 視界が霞み耳鳴りが収まらない。

 「だ、大統領?いったい何を・・・」

 「いや魔力を使いすぎたからな。補充させて貰っているぞ。
 心配するな市長。適当な所で切り上げるしドリンクも買っている。」

 そういって買い物袋を手渡され無我夢中で栄養ドリンクを飲み干す。
 僅かに楽になったがそれでも体調は最悪だ。

 「ふむ、あまり回復しないな。まあいざとなれば魂食いでもすればもんだいなかろう。」

 「初めからそうしてもらえれば助かったのだが・・・」

 「君からでもまだ十分取れるだろう?」

 悪びれなく言い放つパートナーに苛立ちを覚えるがそれ以上に身体が休息を求めていた。
 電話で秘書に少し休むから部屋に入らぬ事、客人が来たらすぐに知らせることを伝え
椅子に倒れこむ。

 「味方に殺されかけるなんて、ありえない・・・」

 そのまま机に突っ伏し

 「ほんとに、ありえない・・・」

 「ん?とりすぎたかな?」
 
 アサシンのそんな軽い言葉を最後に意識を失った。



 【新都・冬木センタービル内、冬木市庁舎市長室(最上階)/昼】
【ジョン・バックス@未来日記】
 [状態]:疲労(大)・気絶・冬木市市長・残令呪使用回数3回
 [装備]:「The watcher」
 [道具]:栄養ドリンク
 基本行動方針:最後の一人になり、ムーンセルを必ず手に入れる。
 1.ありえない・・・
 2.魔力の供給中、安静にして体力を回復する。
 3.アサシンから送信された映像を「The watcher」で確認。サーヴァントのステータスを読み取る。
 4.警察、消防署に配置したNPCからの情報を逐次チェックする。
 ※ムーンセルへのハッキング工作により、冬木市市長の役職を得ています。
 また、聖杯戦争に関するある程度詳細な情報を得ています。
 ※冬木市市長の名義は「氷室道雪」です。
 ※警察署、消防署に部下のNPCを配置。情報を入手できます。
 ※聖杯戦争の推測:このムーンセルは並行世界の情報処理システムとリンクしたグリッド・コンピューティングでは?
 そのシステムを構築するためにデウスと接触を図ったのでは?
 並行世界を移動できる何者かが黒幕にいる?
 ※ライダーに頼まれていた車、衣服などはハイアットホテルに運び込まれています。
 (いつ届いたかは後の書き手さんにお任せします。)

 【アサシン(ファニー・ヴァレンタイン)@ジョジョの奇妙な冒険】
 [状態](4人目)、魔力消費(小)
 [装備]:拳銃
 [道具]:携帯電話
 [思考・状況]
 基本行動方針:ムーンセルは誰にも渡さない。わたしが手に入れる。
 1.桐柳寺に行き様子を探る(戦闘は絶対にしない、可能ならマスター暗殺)
 2.できるなら銀髪のマスターの拠点を見つけたい(期待はしてない)

606 ◆2shK8TpqBI:2013/05/10(金) 20:22:58 ID:zt.lcW5U0
短いですが以上になります。
タイトルは「ジョン・バックスの憂鬱」でお願いします。
誤字脱字、修正案などあればお知らせください。

607名無しさん:2013/05/10(金) 20:47:34 ID:bSAys5lkO
投下乙です

市長www怪しまれないようちゃんと仕事しながらじゃこうなるわなw

608名無しさん:2013/05/10(金) 21:05:57 ID:tOOEz4Yw0
投下乙です
この市長、全然動いてないのに一番死にそうである

それと誤字というか、サーヴァントのヴがウになってますよ

609名無しさん:2013/05/10(金) 21:20:22 ID:57f6DCfM0
投下乙

>ん?とりすぎたかな?
どこの自称天才だwww

610名無しさん:2013/05/10(金) 21:57:24 ID:AGbYnf7E0
最後クソワロタwww

611名無しさん:2013/05/10(金) 22:03:19 ID:P.bu0olo0
色々とまあ、お疲れ様でした。
市長。

612名無しさん:2013/05/10(金) 22:24:45 ID:OqmwduA.0
投下乙です
荒事に巻き込まれてもいないのに死にかけている市長www

613名無しさん:2013/05/10(金) 22:58:13 ID:D94npXTUO
投下乙です。

市長って、大変なお仕事なんですね

614名無しさん:2013/05/11(土) 01:52:13 ID:VnTedUys0
立場的アドバンテージが取れたと思ったらそのアドバンテージに殺されかけとるwww

乙です

615名無しさん:2013/05/11(土) 22:51:56 ID:/XuIahXY0
遅レスだがディケイドとオーズのベルト音声が省かれてるのがきになったんだが。

616名無しさん:2013/05/12(日) 03:04:23 ID:j3E.mXFcO
まぁ、フォームチェンジ多様したら手間掛かるし省くスタイルな人もいるでしょう。一応地の分で何したかは分かる訳だし

617名無しさん:2013/05/12(日) 03:08:55 ID:sESblvt20
実際のテレビでやってたライダーだって多重変身を多用するときは結構動作とか演出省かれてるしな

618名無しさん:2013/05/12(日) 18:28:40 ID:1ODJ0ym6O
演出を完全再現しちゃうと、キャストオフ無双になっちゃうから。

619名無しさん:2013/05/13(月) 01:01:17 ID:grX1m9xo0
ある意味で自業自得だから仕方ないが市長www
まじめに仕事もしてるからwww

620 ◆ARbuQtVLig:2013/05/13(月) 08:20:58 ID:ANjMS09Y0
すみません、間に合わないので破棄します。完全のメドがたったらその時改めて再予約させてください

621名無しさん:2013/05/13(月) 10:59:29 ID:AZ0WGpcc0
どうやっても書き手に物語を書かせない、ワカメの呪い恐るべし

622名無しさん:2013/05/13(月) 13:12:55 ID:2R2YdlvE0
>>620
了解です
今後の完成をお待ちしております…

623名無しさん:2013/05/13(月) 15:43:46 ID:HXogL0xA0
>>621
それでも出夢とサブラクさんなら呪いを打ち破ってくれるって信じてる

624名無しさん:2013/05/13(月) 19:53:25 ID:IOL0hW3Q0
見方によってはワカメが呪いに守られてるようにも見えるなw

625名無しさん:2013/05/14(火) 22:12:39 ID:bQyR1JwM0
完成されないワカメとずっと放置されてる凶王&回転王どっちが可哀想だろうね?

626名無しさん:2013/05/14(火) 22:49:24 ID:I7hDQUI20
終わりに辿り着かないのが終わり・・・

627名無しさん:2013/05/14(火) 23:05:57 ID:EkEQm.Wo0
>>625
凶王でなくて狂王。まあ意味変わらないからいいか。
幸運E‐の大凶男だし。
ペナルティも含めた軽いつなぎのプロットは一応あるから、
余裕が出来たら予約するわ。

628 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/14(火) 23:06:16 ID:0N.wg3/kO
延長します

629名無しさん:2013/05/14(火) 23:28:21 ID:eZpv65.20
FE組は余裕で強マーダー扱いされてるし、実際に大暴れでスコア稼いでるし
別にそんなにかわいそうなイメージはないw ただバリバリのマーダーだし戦闘以外でちょっと使いづらいか?

つかまぁあんだけ暴れればペナルティは流石に来るかw

630名無しさん:2013/05/15(水) 14:11:40 ID:mnBfaAK.0
月報集計データです
二次聖杯 70話(+6) 32/51(-2) 62.7(-7.3)

631名無しさん:2013/05/16(木) 16:45:24 ID:ooX2ByZE0
>>629
魂食いしなけりゃペナルティ発生しないキャスター虐めな設定だから
ペナルティあっても大した事なさそうかな。

ちなみに本人の具合から見て、正午までに更にリポビタンDを4本分飲んだら死ぬと見た。
歳とってるし疲労困憊だしで、多分栄養ドリンク10本分を短時間に飲めば死ぬ。
外人は日本人よりカフェイン中毒にかかりやすいから多分そんくらい。

632名無しさん:2013/05/16(木) 20:24:51 ID:3BcQ/LdU0
>>631
泰山の激辛麻婆豆腐

633 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:22:24 ID:4R8tmcHc0
投下します

634 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:24:32 ID:4R8tmcHc0
柳洞寺。
冬木における聖杯降霊の候補地の一つとされ、第五次聖杯戦争の終結の場となる地。
並行世界の記録をも可能としたムーンセルはこの地における戦いの結末をも記録している。



正義の味方を目指す少年と「答え」を見出した騎士王がこの世全ての悪の生誕を望む神父と人類最古の英雄王を打ち倒し、永遠の別れを迎える世界。


自らの未来を見せつけられ、そして乗り越えた少年が英雄王を打ち破り、かつての理想を失っていた錬鉄の英雄が「答え」を得る世界。


かつて養父から受け継いだ理想を捨て去り、ただ一人の少女の味方になることを決めた少年と、少年の味方になることを決めた少女が真に聖杯戦争を終わらせる世界。



そして今、月のSE.RA.PHに再現されたこの柳洞寺にて、どの歴史とも異なる戦いが始まろうとしていた。







・侍

今しがた降りてきた階段を一歩一歩と登っていく。
心なしか周囲には甘ったるい、蠱惑的な空気が満ちているように感じられた。
衛宮士郎とセイバー、ある世界において地上の聖杯戦争の勝者となった主従は遠坂凛殺害の元凶たるキャスターのサーヴァント、蘇妲己を討つべく歩みを進めていた。

この聖杯戦争が始まってからいくつもの苦難に晒されたためか強ばった表情で横を歩く士郎を気にかけながら、セイバーは己の内にある違和感を拭いきれずにいた。
キャスターは衛宮切嗣と内応し、ルルーシュにギアスを使わせ金田一とライダーの死因を作った。
天海陸や彼のサーヴァントらの話から考えれば、これが間違えようのない結論である。

だが、それでも騎士王の類い稀な直感は自身でも正体のわからない警鐘を鳴らしていた。

(この違和感が一体何を意味するのかはわからない、だが、それならば前へ進む事で確かめるまで)

635 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:25:55 ID:4R8tmcHc0
これから待ち受けているのは最弱のクラスなれど容易ならざる敵手だ。
セイバーは脳裏に渦巻く疑念を振り払い、視界に入った山門を向き―――



「止まってください、シロウ!」

山門に立ちはだかる、その男を捉えた。
群青色の陣羽織を身に纏い、およそ非常識なまでに長大な日本刀を手にしたその姿は、まさしく日本の侍そのものであった。
だが問題はそんな事ではない、真に異常なのは男の纏うその気配。
他の英霊たちと比して非常に微弱であるものの、確かにサーヴァントとしての存在感を放っていた。

だがこれはどういう事だ。
衛宮切嗣のサーヴァントはライダー、如何にキャスターと繋がっていたといえど切嗣とこのサーヴァントに関係性があるとは考えにくい。
いや、そもそもつい先ほどまで山門の警備に就いていたガウェインが他のサーヴァントの存在を見落とすなど有り得るのか。



「如何に精巧に似せようとも、やはりここは偽りの箱庭でしか有り得ぬ。
私が愛した花鳥風月はここには無い、何とも侘しいことよ。
貴様もそうは思わぬか、セイバー」
「…貴公が何者かはあえて問うまい。だが何故私がセイバーだと断定できる。
私がこの手に握るのは何も剣とは限るまい、それともキャスターの入れ知恵か」

いつでも斬りかかれる態勢のまま、慎重に探りを入れる。
だが、侍は一瞬不思議そうな顔をした後、何かに納得したのか鷹揚に頷いた。

「…そうか、私は貴様を知っているが、貴様は私を知らぬのだな。
いや、これも並行世界とやらの妙というやつか、ままならぬものだ。
しからば改めて名乗ろう。私はアサシンのサーヴァント、佐々木小次郎。
貴様らが討たんとする女狐めがこの地に招きし亡霊よ」
「―――!?」

真名とはサーヴァントにとって絶対に秘すべきもの。
この異常な聖杯戦争であってもその本質が変わることはない。
だというのにこの男は堂々と己が真名を謳い上げた。
セイバーの驚愕は無理からぬ事であろう。
その表情を読み取ったアサシンは微笑を浮かべた。

「言ったはずだぞ、私は貴様を知っていると。
であればこちらから名乗るは当然の礼儀であろう?
それに―――私が名乗ったところで、貴様にとっての私は倒すべき障害でしかない。
そら、お互い為すべき事は何も変わりはすまい?」
「―――成る程、確かにその通りだ。
だが生憎と我々は先を急いでいる、まかり通るぞアサシン!」

セイバーの全身から魔力が猛り、風が唸りを上げる。
セイバーの世界ではついに実現しなかった異色の暗殺者との戦いの火蓋が切って落とされようとしたところで―――


「待て、セイバー!」

これまで沈黙を保ってきた彼女のマスターの制止が入った。

「シロウ?」
「俺達が倒すべきなのはキャスターだ。
お前をこんなところで消耗させるわけにはいかない」

636 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:26:49 ID:4R8tmcHc0
あのアサシンが何者であれ、キャスターが召喚したサーヴァントである以上考えられる目的は時間稼ぎとセイバーの力を削る事と見て間違いない。
それにキャスターは奥からこちらの様子を窺っていることだろう。
衛宮士郎とセイバー、どちらの手の内を隠しておくべきかなど思考するまでもなく明白だ。

「勝算はあるのですか?」
「俺一人で何とか出来るとは言わない、でも隙ぐらいは作ってみせる。
だからセイバー、俺を信じてチャンスを待っていてくれ」

セイバーは無言で頷き、再び剣を構え直した。
だがその構えは攻めのそれではない、アサシンを近づけない守りの姿勢だ。

「ふむ、私は一向に構わぬぞ少年。
男子三日会わざればというやつか、随分と見違えた。
そなたの磨いた牙、見事私に突き立ててみよ」

アサシンはといえば、何故か構えを取らぬまま自然体の様相だ。
だが不思議と侮られているとは思わなかった。
きっとこの男にとってはこれが戦いの姿勢なのだろう。

「言ってろ。投影、開始(トレースオン)」

自己の内に埋没し、この状況に最も適した剣を探し出す。
見たところあのアサシンが持つ刀は普通の刀剣と比べれば業物の部類には入るが、英霊たちの持つ宝具と比較すればなまくらも同然。

「I am the born of my sword(体は剣で出来ている)」

ならばこの宝具こそが奴にとっての弱点となるだろう。
この剣の前では魔術師とサーヴァントの実力差など何の意味も持ちはしない。
もっともセイバーが壁になってくれているからこそ安全に撃てるのであまり偉そうな事は言えないが。
同時に投影した黒塗りの弓にそれをつがえ、魔力を込める。

アサシンは動かない、否、動けない。
彼はセイバーの実力をその身を以って知っている。
防戦でこそ最も力を示すアサシンが無理に斬りかかったところでセイバーを突破することなど到底不可能。
故に侍は動かず留まる。その美貌に不敵な笑みを浮かべたまま。



「食らいつけ―――“赤原猟犬”(フルンディング)!!」

二十秒か、あるいは三十秒か。
刹那とも永遠ともいえる膠着の後、衛宮士郎のつがえた弓から鮮烈な赤光が放たれた。
北欧の英雄ベオウルフが用いたとされるこの剣は必ず敵を斬るという概念を持つ。
魔弾として射出された魔剣は音速をも凌駕しアサシンへと殺到する。

「ほう、生前合戦に出た事などついぞ無かったが、燕ではなく矢を斬るもまた一興」

だが、それでも尚この侍は悠然とした物腰を崩さない。
この程度の獲物を斬れぬなら、この身は決して燕を斬る事など出来はしなかった。
如何に速かろうと、ただこちらへ飛ぶだけの矢弾などアサシンには何ほどの脅威でもない。

「ふっ―――!」

一閃。
アサシンが長刀を持った腕を振るう。
だがその動作の何と速く、流麗な事か。
態勢すら崩さぬただのひと振りは宝具である魔弾をいともたやすく弾いた。

637 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:27:55 ID:4R8tmcHc0

「なっ―――!」

その光景に、驚きを隠せない。
赤原猟犬を弾かれた、という事実にではない。敵はサーヴァント、そんな事は予想の範疇だ。
真の異常はその後、未だ刃こぼれ一つないその得物である
群青色の侍が手にするは宝具ですらないただの長刀。
そんななまくらで真名解放を行なった宝具を迎撃しようものなら一撃で刀身を折られるが道理。



されど、その道理を覆すのが魔剣士、佐々木小次郎だ。
アサシンは力によって赤原猟犬を弾いたのではない。もとよりそんな膂力は無い。
彼はただ、魔弾の力に逆らわず刀身で威力を殺し受け流すことによって見事得物を失うことなく弾いてみせたのだ。
言葉にすればそれだけだが、音速を超える矢の弾速、重量、威力、そして刀を振るうタイミング。
それらを一つも過つ事なく見切ったその絶技がただの一刀に込められていた。



―――だが、北欧の魔剣の真価はここより発揮される。



「むっ―――!?」

逸早く異変を察知したのは暗殺者のサーヴァント。
その有り得ざる異常に目を奪われる。
本来、どれほどの腕を誇る射手であろうと一度放たれた矢の軌道を変える事など不可能。
それはこと弓術という一点ならば英霊にも比肩する腕を持つ衛宮士郎であろうと同じ事。

しかし必ず敵を斬る概念を帯びたこの剣はその定理を覆す。
矢として撃ち出されたこの宝具は射手が健在である限り何度でも標的へ食らいつく。
対抗手段はただ一つ、魔弾に射抜かれるよりも早く射手を倒すこと。
だが最高の俊敏さを誇るアサシンを以ってしてもそれを実行に移すことは出来ない。
射手である士郎の前にはセイバーというあまりにも強大な護衛がいるからだ。
この状況、既にしてアサシンは王手をかけられている。

「はっ―――!」

再び一閃。
侍の超絶技巧は二度も猟犬の顎をいなしてみせた。
だが、それも程なくして限界が訪れる。

(なるほど、これが合戦場を飛び交う矢というものか。
しかし……これ以上は流石に刀が保たぬか)

その事実は誰よりもアサシンが認識していた。
彼自身の剣の力量は全サーヴァントでも頂点に立つ程だ。

―――だが悲しいかな、アサシンの愛刀物干し竿の強度は主人の技量に対して絶望的なまでに脆い。
むしろ二度も赤原猟犬を退けたことが埒外の奇跡なのだ。
だがそれもここで終わり。三度目を防いだ時がこの刀の折れる時。
そして四度目でアサシンは凶弾の前に為す術も無くその身を撃ち抜かれる。



(ならば―――)



だが、それはアサシンの終焉を意味しない。

638 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:29:47 ID:4R8tmcHc0
なるほど確かにただの一閃では空を駆ける猟犬を地に落とすにはまるで不足だ。
だが知るがいい錬鉄の魔術師よ、この侍が生涯を懸けて到達せし秘奥の剣を。

「秘剣――――――」

ここに来てアサシンが初めて構えを取る。
それは無形を常とするこの侍が会得したただ一つの必殺剣。
この男にのみ許された究極の魔技。

「――――――燕返し」

それは果たしてただの一閃であったのか。否、断じて否だ。
セイバーは確かに見た。
軌道を変え三度迫り来る赤原猟犬、その切っ先ではなく剣の腹に向けて振るわれた三つの斬撃を。
縦、横、斜めの三方向から全く同時に繰り出された円の結界の如き剣閃は迫る魔剣の刀身を見事断ち切ってみせた。

これこそが佐々木小次郎、その名を冠した無銘の剣士が空を飛ぶ燕を打ち落とすためだけに生涯に渡って剣を振るい続けた果てに到達した魔法の剣技。
多重次元屈折現象(キシュア・ゼルレッチ)。
生涯を剣に捧げた男の才と努力、その結実は宝具である魔弾をすら凌駕した。
そして。




「――――――こ、ふっ……!」




男の命運もまた、そこで燃え尽きた。
因果逆転の魔槍とは異なる意味での必殺魔剣。
それを振り抜いた瞬間にのみ生ずる刹那の隙を剣の英霊は見逃さなかった。
神速の踏み込みでアサシンを切り裂いたセイバーは惜しみない暗殺者に惜しみない賛辞を贈る。

「私には、いや、我が円卓の騎士の誰であっても到達し得ないであろう見事な剣技でした。
貴方にとってこの結末は不本意なものでしょうが―――」
「良い、気にするな。お互い巡り合わせが悪かったのだろうよ。
それに―――私とそなたの勝負付けは既に終わっていた。
もとより、招かれざる亡霊には過ぎた夢だったのだ」

口から、切り裂かれたその身から夥しいまでの血液が溢れる。
だがそれでも尚、アサシンからは些かも優雅さは失われていなかった。

「征け。女狐めは奥でお前達を待っている。
かつて地上で私を呼んだ魔女も大概の魔性だったが、あれはそれ以上よ。
どうせ碌な性根ではあるまい、速やかに止めを刺すが人のためというもの」

士郎もセイバーも、無言で頷き山門の先へと進む。
最後に一度だけ、誇り高き剣士の姿をその目に焼き付けて。











・オオカミ少年は牙を隠す

「嘘……」
「………」

情報を集めるために月海原学園へと足を踏み入れた陸、こなたら一行。
真っ先に確認した脱落者を表示した掲示板に記された名前の数は彼らの想像を遥かに越えていた。

「19人だって……!?まだ始まってから半日と少ししか経ってないんだぞ!?」

639 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:31:45 ID:4R8tmcHc0
陸が嘘を交えない、心底からの驚愕を口にする。
それはこの四人の心中を代弁するものであった。
遠坂凛と金田一一に関しては覚悟はしていたが、それでもこの人数は異常に過ぎる。

「…何で?どうしてみんなそんなに殺し合いなんてしたがるの?
わからない、わかりたくない、だっておかしいでしょこんなの!」
「こなたちゃん、落ち着いて!」

取り乱すこなたを映司が宥めすかす。
無理もない、と陸は思う。
あくまで勝ち残る事を選んだ自分と違ってこなたは完全に巻き込まれた一般人なのだ。
むしろここまで曲りなりにも平静さを保っていた事をこそ賞賛すべきだろう。
そしてこれから先、自分はそんな彼女をも殺すのだ。

「みんな、動揺するのはわかるけどとにかく一旦冷静になろう。
脱落した参加者はこれで全体の約四割、確かに多いが悲観していても始まらない。
この脱落者に関して僕なりに考察した事を聞いてほしい」

そんなメンバーの間に広がった悪い空気すらも利用しようというのだろう、イスラがさも沈痛そうな面持ちで場をまとめにかかる。
その悪辣さに思うところが無いわけでもないが、だからといって止める理由もない。
こなたや映司と同じように黙って続きを促すことにした。

「まずどうして半日でこれだけの犠牲が出たのか、それは参加者間のやる気、モチベーションの差だと思う。
この聖杯戦争にはさっきの衛宮切嗣のような勝ち残るために容赦なく敵を殺しに回る人間もいれば、リクやリン、コナタのように殺し合いに反対する人間もいる。
幸い僕らは早期に手を結ぶことが出来たが他のマスターはそうじゃなかった。
勝ち残る覚悟を決めた者とそうでない者、遭遇して戦闘になった時、どちらが勝つかなんて事は語るまでもないだろう」

確かにそういう考え方もあるか、と納得した。
考えてみればこなたや凛はもとより柳洞寺にいた衛宮士郎らも殺し合いに乗っていなかった。
だとすればそんな思考のマスターがもっといた、という結論は不思議でもなんでもない。

「セイバー、君は俺達も殺し合いに乗った方が良いと思うのか?」
「そうは言わないよ、第一こう言っては何だけどリクやコナタが無理をしてやる気を出したところで戦い慣れした連中相手に勝ち残れるとは思えない。
僕らはこれまで通り、殺し合いに反抗するスタンスを通そう。
それにしばらくは大規模な戦いは起こらないだろうからね」
「「どうしてそんな事が言い切れるんだよ?」」

上手く間を持たせるために適度に質問する振りをしながらイスラに先を促す。
それにイスラは鷹揚に頷きながら答えた。

「これだけの犠牲者が出るほど各地で戦いが起こったんだ、どの陣営も大きく疲弊しているだろう。
となれば少なくとも夜まで、場合によっては丸一日は休息や偵察に費やされるはずさ。
だから、今すぐ僕らが他の参加者に襲われる可能性はかなり低い。
そこでだ、ここらで当初の目的を達成しておこうじゃないか。
コナタとライダーには図書室で情報を集めた後、リンの家に向かってほしい」

640 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:32:41 ID:4R8tmcHc0
「えっ、ちょっと待ってよ。りっくんとセイバーさんは?」
「「さっきセイバーと話し合って決めたことなんだけど…オレ達は柳洞寺へ行こうと思う」」

陸の言葉にこなたと映司が愕然とする。
当然だ、危険な鉄火場とわかっている戦場に限りなく最弱に近い二人が踏み込もうというのだから。

「…駄目だ、それは。士郎君たちの援護に行くなら俺の方が向いている。
第一セイバー、キャスターには天敵一人で当たった方が良いと言ったのは君だろう」
「確かにシロウ達の援護という意味もあるけど、それ以上に僕自身の戦力補強の意味合いが大きいね。
まだ詳しくは話せないが、僕はマナ、要するに大気中の魔力が集まる霊地にある儀式を行うことによってその場の魔力を自身に集める事ができるんだ。
そうすれば僕の戦力は格段に上がる。もう君達のお荷物にはならないさ」

やや自嘲を込めて虚実を交えた説明をするイスラ。
知らない人間が見れば、こいつは本気で今まで足を引っ張ってきたことを悔やんでいると思うのだろう。
やはりどれだけ付き合ってもイスラを好きにはなれそうもないが、ここはこのサーヴァントに同調しなければならない。

「「火野さ…ライダーは今までずっとオレ達を体を張って守ってくれた。
だから今度はオレ達がみんなのために命を賭ける番だ。
それに…多分より危険なのは泉達の方だ、考えてもみてくれ、柳洞寺には間違いなくオレ達に味方してくれる衛宮がいるけど遠坂邸は今どうなってるかわからない。
オレ達が合流するまで絶対に無理はしないでくれ。…もう仲間を失うのはたくさんだ」」
「りっくん…」

自分でも反吐が出るような酷い嘘で同情を誘う。
ああ、きっと今オレは演技でもないのに酷い顔をしてるんだろう。
その証拠に二人は心から心配そうに自分を見ている。

「今までお荷物だった僕が言っても説得力が無いかもしれないが、例えキャスターがまだ生き残っていたとしてもやられてやるつもりはないさ。
さっきまでは不意打ちだったから不甲斐ないところを見せてしまったが、相手がキャスターだとわかっていればやりようはある。
僕の貯蔵魔力を度外視すれば切り札を使うことも出来ないわけじゃない。
それに、これからの事を考えれば今のうちに戦力を増強しておく必要があるんだ。
これだけの人数が脱落したんだ、今生き残っているのはそれなりに修羅場を潜った者ばかりだろう。
そんな連中を相手に生き残るには僕達も力をつけなければいけない」

駄目押しとばかりに別行動の必要性を説くイスラにこなたと映司もようやく納得した。
出発の前に映司の口から衛宮切嗣のライダー、仮面ライダーディケイドの情報を教えてもらい、学園を離れる。

「りっくん!約束だよ、絶対にまた会おうね!」

嘘にまみれた剣の主従の真意など知る由もなく、こなたと映司は自分達に出来ることをと図書室に足を運んでいった。

【深山町・月海原学園/昼】

【泉こなた@らき☆すた】
[令呪]:3画
[状態]:健康
[装備]:携帯電話、乗用車
【ライダー(火野映司)@仮面ライダーOOO/オーズ】
[状態]:魔力消費(微)











「くっくく、アーッハハハハハハハハ!!
いやあ見事な演技だったよリク!見たかいコナタとライダーのあの顔!
君も一段と演技が堂に入ってきたじゃないか!ぷっくくくく…」
「だから爆笑するなって言ってるだろこの馬鹿!」

641 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:33:41 ID:4R8tmcHc0

柳洞寺に続く階段を登りながら、先ほどから人目がないのを良いことに爆笑するイスラに辟易しつつ先を目指す。
目指す先は柳洞寺の敷地、その中枢だ。
だが、先にこなた達に語った別行動の目的は半分が真実、半分が嘘だ。

柳洞寺にイスラの宝具、紅の暴君(キルスレス)を突き立てて大量の魔力を得る、というのは紛れもない真実だ。
ついでに言えばこれからに備えて、とりわけ衛宮切嗣に対抗するため戦力を増強する必要があるというのも偽らざる本音である。
しかし、戦力を得る理由はこなたらを守るためなどでは断じてない。

「シロウ達なら首尾良くキャスターを打倒できるだろう。
でもキャスターもそれは承知している、あらゆる手を尽くして彼らに消耗を強いてくる。
僕らはそうしてキャスター討伐で疲弊したシロウとセイバーを後ろから撃てば良い」
「そりゃあそうだろうけどな、キャスターの方が生き残る可能性もあるんじゃないのか?
オレ達はキャスターの事を何も知らない、思いもよらない切り札を持ち出してくるかもしれないだろ」
「その場合でも問題は無いよ、リク。
そもそもキャスターがセイバー、それも名高いアーサー王を相手にして戦力を出し惜しみするなんて土台不可能だ。
つまり万に一つキャスターがシロウとセイバーを下せてもまず間違いなく余力なんて残らない。
君の言う切り札とやらが僕らに向けられる可能性は無視しても良いほど小さいものだ」

そう、陸とイスラにはこなた達と共に行動できない理由があった。
まず第一に紅の暴君で魔力を汲み上げる様子を見られることによって真名が露見するリスク。
サーヴァント達は聖杯から時空を越えた知識を授けられている。
裏切りの反英雄であるイスラの真名を知られれば、いくらお人好しなこなたや映司といえどもこちらへの信用を大きく落とすことになるだろう。

そして―――こちらが最も大きな理由だが、陸とイスラはこの機を生かして衛宮士郎と、可能ならルルーシュをも葬り去る算段であった。
二人とも今は自分達の嘘に騙されていてくれているが、この先何かの拍子に真実に辿り着く可能性も決して零ではないのだ。
キャスターに加え、キャスターから話を聞いたであろう士郎とルルーシュを始末すればもう凛を殺害した件を咎めることが出来る者はいなくなる。

それに今を逃せばもっともらしい理由をつけてこなた達と別行動できる機会はもう巡ってこないかもしれないし、時間が経てば第三者に柳洞寺を占拠される可能性も否めない。
リスクがあるのは承知の上、だからこそこれまで温存していた力が活きてくる。

642 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:34:39 ID:4R8tmcHc0

「キャスター戦で疲弊したシロウ達はもとより、この山の霊脈を乗っ取ってしまえば令呪を2画失ったルルーシュも敵じゃない。
まあ流石にガウェイン卿を相手にして僕自身が正面から倒せる自信は無いけどリク、君は別だろう?
随分我慢させてしまったね、これでようやく僕達の聖杯戦争を始められる」

そうなのだ、刃旗という圧倒的な力を有しながら陸がこれまで策謀に徹さざるを得なかった理由は偏にイスラの弱さにある。
紅の暴君を用いた伐剣覚醒、その比類なき力を魔力不足で引き出すことが出来なかったが故にイスラ・レヴィノスは最弱だった。

しかしこれからは違う、この冬木市最大の魔力集積地を利用すればイスラは最優のクラスの名に恥じない力を取り戻す。
そして全マスターでも最強に近い陸の戦力で以って正面から全ての敵を打倒することも夢ではない。

「…ああ、そうだな。こうなったらもう泉や火野さんも用済みだ。
それに遠坂から奪った魔力はまだ温存してるんだろ?」
「もちろん。少し性能は落ちるしそう長時間は無理だが伐剣覚醒そのものは使えるよ。
これを使う相手がシロウ達になるかキャスターになるかはここからじゃまだ分からないけどね。
それとリク、コナタとライダーはせっかく僕達を味方と思ってくれてるんだ、用済みなんてひどいこと言わずに最後の最後まで利用し尽くしてあげようじゃないか」
「お前にだけはひどいと言われたくないよ」

そんな応酬をしながらついに山門近くまで辿り着いた。
ここからは無駄口は無しだ、お互いにそう気を引き締め―――



「良からぬ気配が近づいてきているとは感じておったが、よもや人の皮を被った蛇蝎の類であったとは。
あの少年とセイバーを葬るとはまた穏やかではないな、そうであれば私も門番の役目を果たさねばなるまいよ」



―――既にここにいるはずのない男の声を聞いた。












・再びの魔剣士

「サーヴァント……!?」
「いかにもこの身はアサシンのサーヴァント、佐々木小次郎に相違ない」
「はあ!?真名を!?」

山門に立ち塞がるように現れた別のサーヴァント。
日本の剣豪・佐々木小次郎を名乗ったその男はどこから出てきたサーヴァントだというのか。
少なくとも先ほどまで柳洞寺にいた面子のサーヴァントでは有り得ない。
もしそうなら彼らの口からこの男の存在が出なかったことに説明がつかない。

かといって陸やイスラと同じく漁夫の利を狙ったマスターの差し金とも考えにくい。
そう考えるにはあまりに動きが早すぎるし何よりサーヴァントのこのような酔狂な名乗りを許しはしまい。
だとすれば、俄には信じ難いが残る可能性はただ一つ。

「キャスターの用意した手駒、そんなところかい?」
「然り。如何な外法を用いたか、あの女狐めが亡霊に過ぎぬこの身を山門を憑き代に呼び出したというわけだ」
「おい、ちょっと待てよセイバー!
サーヴァントがサーヴァントを召喚したっていうのか!?
そんなルール違反が出来るのかよ!?」
「出来なくはないだろうね、何しろ向こうは本職のキャスターだ。
媒介はそうだな…さっき死んだという、ライダーのマスターの令呪じゃないかな?」

643 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:35:28 ID:4R8tmcHc0

イスラの推測にアサシンは沈黙を以って応じた。
その沈黙をイスラは肯定と受け取った。
あるいは、もう言葉を話す事すら苦痛なのかもしれない。

「しかしまあ、そんなことはどうでもいいか。
少なくとも、今君がこうして存在している理由に比べれば些細な事さ。
まったく君のそれは一体どうなっているんだい?僕の呪いが形無しじゃないか」




―――信じ難い事に、アサシンは明らかな致命傷を負いながら未だ気力だけで存在を保っていた。




「何、おぬしらの良からぬ気配を感じたものでな。
これはまだ死んではおれぬと思い立ったまでのこと。
いや、醜く生き足掻いてこそ得られるものもまたあったようだ。
―――何しろ、セイバーの戦を邪魔立てする不埒者どもをこの手で斬れるのだからな」

その口と胴体からは生きているのが不思議なほどの血液が流れていた。
元々は優美であったのだろう陣羽織は血に染まり、今や見る影もない。
手にした長刀物干し竿は先ほど赤原猟犬を迎撃し、打ち落とした代償に刀身が歪んでいる。
だが、そんな死に体であってもイスラにはアサシンの戦力は些かも衰えていないように感じられた。

「やれやれ、たかが敵サーヴァントにどうしてそこまで入れ込むのか僕には理解できないよ」
「この月の聖杯戦争にしか招かれなかった貴様らには知り得ぬ事よ。
―――ああ、そうだな。確かにあの時私は次こそはと月に願ったものだ。
いやいや我ながら実に未練がましい、またもこうして化けて出てしまったのだからな」

陸とイスラの知らない何かへの執着を振り払うように一度だけ頭を振り、刀を掲げる。
その静謐な闘志は陸にとって全く未知のものだった。
だがイスラはそんな相手の心情などお構いなしに紅剣を手に取り、召喚術の構えを取る。

「生憎と僕は純正なセイバーじゃなくてね、代わりといっては何だけどキャスターの真似事が出来る。
だから君がそこから動けない存在だということも手に取るようにわかる。
さて、そこまで分かっていて僕が君の得意そうな距離に入るとでも?」








決まりきった結末を記す必要はない。
佐々木小次郎の名で召喚された無銘の魔剣士は異界の召喚術士の前に一太刀浴びせることも適わず月の聖杯戦争から完全に退場した。
招かれざる亡霊は露と消え、後には荒れ果てた瓦礫だけが残された。



“……ここまでか、先に逝っているぞセイバー。
いや、良い夢を見させてもらった―――“

【アサシン(佐々木小次郎)@Fate/stay night 消滅】












アサシンを無傷で撃破した後、山門を潜り境内へ入る。

644 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:37:29 ID:4R8tmcHc0
警戒しながら中に入ると、そこにはキャスターの気配は微塵も感じられず、代わりにどこから調達したのか黒塗りの洋弓を手にし、ムーンセルによる修復が始まった本堂を見つめる見知った少年がいた。

「「衛宮、無事だったんだな。
キャスターは…どうしたんだ?それにあんたのセイバーは?」」
「…キャスターは俺達が倒した。
セイバーは…少し席を外してる、まあすぐ戻るよ」

こちらに向き直った士郎だが、どうも様子がおかしい。
その表情はどこか凍っているようにも感じられ、遠坂凛の仇敵を討ち果たしたという達成感はどこにも見られない。

「それよりお前らこそどうしたんだ。
泉とライダーは一緒じゃないのか?
それにさっきの物音は?」
「いや、実は死にかけのサーヴァントの妨害に遭ってね。
それと二人には学園に残ってもらっているよ。
調べ物をしてもらってからリンの家で落ち合う予定でいる。
君らも一緒に来ないか?
キャスターを倒したなら、これからの事を考える必要がありそうだしね。
さっきのアサシンの事を含めて本格的な情報交換をするべきだろう」

イスラが友好的な笑顔を貼り付けたまま士郎の隙を伺う。
凛の一件から令呪を警戒しているのか、すぐに襲いかかる気はなさそうだ。

「そうか。本当にあいつらはいないんだな、良かった」
「………?」

イスラも気付いたようだがやはり何かがおかしい。
まるで自分達が何か致命的な見落としをしていて、まだそれに気付けていないかのような―――
いや、そもそも“何故士郎は陸とイスラがここに来た事に全く驚きを見せないのか?”

「なあセイバー、いや、天海でもいい。
アンリマユ、宝石剣ゼルレッチ、大聖杯に小聖杯。
この単語のうちどれか一つでも聞き覚えはないか?」
「「……いや、オレは知らない。セイバーは?」」
「残念ながら僕も知らない、リンや君が参加したという聖杯戦争に関わることなのかい?」

イスラが警戒の度合いを若干引き上げながら答える。
士郎はといえば一度だけ目を閉じて天を仰ぎ、無表情のままこちらを見つめる。

「そうか、やっぱり知らないのか。
…キャスターは知ってたぞ」

その言葉が引鉄だった。
身体能力を強化しているのか素早い動作でどこからか矢を取り出し、陸に二射続けて撃ち放った。

「ハッ!」

だがそれらは当然のように陸の前に出たイスラの魔剣に阻まれる。
しかし事はそれだけで終わらなかった。

「…!リク、横だっ!!」

爆音と共に林からミサイルの如きスピードで飛び出してきたセイバー、アルトリア・ペンドラゴン。
その手に握る不可視の剣の切っ先は真っ直ぐ陸に向けられていた。
士郎の射撃とほぼ同時の変則的十字砲火(クロスファイア)。
陸の前に飛び出し、矢を迎撃したイスラは間に合わない。

「う、うわああああああっ!!!」

恐怖と生存本能から無意識のうちに顕醒し、意識圏を張った。
だが無情にもセイバーの剛剣は意識圏を容易く切り裂き、刃の直撃こそ免れたが風王結界の衝撃だけで十数メートルも吹き飛ばされ、反対側の林の木に全身を打ちつけられた。

645 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:38:57 ID:4R8tmcHc0
すぐさまイスラが駆け寄り、陸を庇う形で前に立つ。

「なるほど。姿を変え、大剣を持ち既存の魔術とは異なる障壁か。
それにこの反応速度、確かにこれならばサーヴァントであっても短時間ならば引きつけられる。
やはり我々を欺き、凛を殺したのは貴方達だったか」
「…これは一体どういうつもりだい?
しかもいきなり濡れ衣を着せにくるとは大した挨拶じゃないか。
大体僕らがリンを殺しただなんて、まさかキャスターにでも操られているのか?」
「この期に及んでまだそのような戯言を口にするか。
確かにキャスターは潔白ではなかった、だから我々が倒した。
だが同時に、凛を直接殺したのは彼女ではないとはっきり分かったのだ」
「何…だと…?」

確信を込めて敵意をぶつけるセイバーにさしものイスラも一瞬頭が真っ白になった。
何故だ、どこで露見した。
いや、状況から考えて情報の出どころがキャスターであることは間違いない。
だが何故あれほど憎んでいたキャスターの言を今になって信じる気になっている。
一体何がどうなればさっきの今でここまで態度が変わるのか。
イスラが事態を好転させようと必死に思考を巡らせている時、士郎が地面に落ちた反魔の水晶を拾い眼前に突き出した。

「言ってなかったけどな、俺はある魔術に特化した魔術使いなんだ。
その魔術からの派生で、物の構造を把握する解析の魔術が使えるんだよ。
その物の創造理念から基本骨子、構成材質、製作技術、成長経験に蓄積年月に至るまで全て解析できる。
リィンバウムだとかわからない単語もあるけど、とにかくコイツが対魔力の代わりになるような魔術道具の一種だってことは今解析したことで服の上からでもすぐにわかった。
要するに天海、お前はルルーシュのギアスにかかってもいなければただの一般人でもないって事だ」
「「ま、待ってくれ、違うんだ。確かにこの力を隠してたことは謝るよ。
で、でもだからってオレ達は間違っても遠坂を殺したりなんかしてない!
その水晶だって、ルルーシュにギアスをかけられた後でセイバーに頼んで作って」」
「天海」

弁解の言葉は士郎の大声に阻まれた。
その双眸からは今や怒りの色がはっきりと見て取れる。

「…お前、俺の話を聞いてたか?
俺は物の構造を全て解析できると言ったんだぞ。
この水晶がどこかから“呼び出された”のは今日の午前7時49分22秒から37秒までの間。
ルルーシュが柳洞寺を出たのが午前9時、どう考えても時間が合わないんだよ。
仮にこれを用意した理由がキャスターへの対策だったとしたって、お前がギアスにかかっていない事だけは絶対に間違いのない真実だ」
「な…馬鹿な…そんな……」

聞いていない、そんな自分達の嘘をピンポイントで暴ける魔術が存在するなんて聞いてない。
皮肉にも、嘘がバレないようにと用意した反魔の水晶と刃旗使いとしての今の陸の姿が彼らの嘘を裏付ける動かぬ証拠となってしまったのだ。
金魚のように口をパクパクと動かしながら愕然とする陸に追い討ちをかけるように更なる衝撃を突きつけられる。

「それからお前のセイバーが持ってる宝具、そいつには確かに魔力を吸奪する機能があるな。
…いや、その剣は本来世界から魔力を汲み出して使うものなんだ。
銘は“紅の暴君(キルスレス)”。セイバー、これでアイツの真名わかるか?」
「はい、生まれた時より絶息の呪詛を与えられ、その苦しみから逃れるために多くの組織を渡り歩き裏切り続けた反英雄イスラ・レヴィノス。
どうやら異界のサーヴァントに関する知識は私にも付与されていたようです」
「……!!」

イスラの表情が衝撃と絶望に歪む。
魔術師という存在を侮っていたつもりは毛頭なかった。
しかしそれでもこの衛宮士郎という魔術師はあまりにも異常だ。
この宝具にどれだけの神秘が込められていると思っている、それを何故そうも簡単に分析できる。
この男に疑われ解析の魔術を使われた、たったそれだけの事でこれまで陸とイスラが苦心して積み上げてきた戦略は呆気なく崩壊した。

陸の刃旗と反魔の水晶を見られたことにより発覚した二人の嘘、更にはこれまでひた隠しにしてきた悪名高いイスラの真名。
それらが全て露見してしまった今、如何に舌先三寸を得意とするイスラもこの状況を覆して士郎とセイバーを騙せる策を弄することは出来なかった。

「一つ聞かせてくれ、どうして君達は僕らが疑わしいと思ったんだい?」

どうして自分達の嘘がわかったのか、とは聞かない。

646 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:39:34 ID:4R8tmcHc0
それはイスラにとってささやかな最後の抵抗だった。

「ああ、俺達も最初はお前らを全く疑ってなかった。
そこに疑問を抱いたのは――――――」


















妲己ちゃんのスーパーネタばらしタイム

―――時をしばらく遡る。
アサシンを撃破して山門を通り、奥まで進むと焼け落ちた本堂の前で佇む一人の女、キャスターを見つけた。
しかしどうもおかしい、キャスターのサーヴァントならばセイバークラスのサーヴァントを迎撃するにあたって必須ともいえる魔術工房、あるいは神殿らしき空間はどう見てもここには存在しない。

「あらぁ〜ん、いらっしゃぁ〜い。
あの小次郎ちゃんをほとんど消耗ZEROで倒しちゃうなんてわらわビックリだわぁん」
「そのような世辞は結構。確認するがキャスター、先のアサシンは貴様がハジメの令呪を使って召喚した者だな?
如何に魔術師の英霊といえど相応の媒介が無ければサーヴァントレベルの存在を召喚するなど不可能、可能に出来るものがあったとすれば彼しか考えられない」
「さっすが普通に魔術が世間に在る時代に生きたセイバーちゃんは見る目が違うわねぇん。
でもぉん、それがどうしたのぉん?
わらわの立場なら利用できるものは全て利用するのは当たり前でしょぉん?」
「確かに、許し難くはあるが貴様の立場からすれば最善の方法だったのだろう。
だが―――私からすれば貴様を討つ事への躊躇いがまた一つ消えただけの事だ……!」

不可視の刀身をキャスターに向け構えを取る。
最弱の英霊といえどここまで自分達を苦しめた相手だ、油断はしない。
士郎もまた、魔術回路を励起させ不意打ちに備える。



だが、予想に反してキャスターはこちらにフッと微笑んだ後両手に持つ扇型の宝具、五火七禽扇(ごかしちきんおう)を地面に投げ捨てた。

「やーめたぁん♥」
「なっ……!?」
「…どういうつもりだ、よもや事ここに至って命乞いが通るとでも思っているのか?」
「だぁってぇ〜ん、ここでわらわが頑張って戦ってもお互いデッドエンドからの道場行き確定なのよぉん?
それなら貴方たちを助けてあげた方がまだ実りがあるでしょぉん?」

デッドエンドだの道場だの訳の分からない単語は聞き流すとしてキャスターの発言と行動の意図がわからない。
いやそもそも何故追い込まれているからといって戦いを放棄するのか。
このキャスターならば最悪この土地との契約を切って捲土重来を期すことも不可能ではないはずだ。

「世迷言も甚だしい。ここで倒れるのは貴様だけだ、キャスター」
「いつでもどこでもわらわって信用が無いのねぇん、悲しいわぁ〜ん。
ああ見える、見えるわぁん!味方と信じた人間に後ろから刺されて道場送りにされる士郎ちゃんとセイバーちゃんの姿が!」

あまりにも白々しい大粒の涙を流しながら相変わらず要領を得ない発言を繰り返す。
警戒を解いたわけではないが、これでは埒があかないと士郎が話しかける。

「ちょっと待て、味方に刺されるってどういう意味だよ。
言っとくけどな、ルルーシュや他に俺達に味方してくれてる奴らはしばらくここには入ってこないぞ。
お前みたいな奴には天敵になるサーヴァント一人で戦った方が良いからな」
「ふぅ〜ん、それって天海陸ちゃんのサーヴァントの入れ知恵かしらぁん?」
「何でそれを…!いや、そうか。お前のその帽子は…!」

解析魔術を使ったことによって性能が判明したキャスターの宝具、金霞帽(きんかぼう)。
使い魔の類ではなくその宝具の索敵能力で自分達の動きを察知していたという事か。

「じゃあわらわも聞きたいのだけどぉん、どうしてその陸ちゃんが自分のサーヴァントだけを連れてこっちに向かってきているのかしらぁん?」
「何だと…!?いや、その手には乗らない。
これ以上虚言を弄するならすぐにでも斬って捨てるぞキャスター!」

647 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:40:31 ID:4R8tmcHc0

猛るセイバーを歯牙にもかけずにクスクスと不気味な笑いを浮かべるキャスター。
そんなセイバーに取り合わずに士郎にある提案を持ちかける。

「士郎ちゃん、もし気になるならこの場でわらわの金霞帽を投影しても構わないわよぉん?
貴方解析とかコピーとか得意でしょぉん?
これが貴方にとって投影したら危険なものかどうかなんてもうわかってるはずよぉん」
「…………わかった、今だけ乗ってやる。投影開始(トレースオン)」

セイバーを手で制しつつ金霞帽を投影する。
神秘と化学の両側面が入り交じった仙人界の宝貝は士郎の投影魔術とは相性が悪く、ワンランクどころの性能低下では済まなかった。
しかしそれでも今この場では必要十分な性能を発揮した。

衛宮士郎と投影した金霞帽の組み合わせで可能なことは精々が数百メートルをごく短時間索敵する程度のことだ。
しかも燃費も異常に悪く姿を隠す機能は再現できない、本物と比べれば贋作どころか粗悪品と呼ぶしかない。
だがそれで十分だった。

肥大化した視野は学園から離れて柳洞寺に向けて移動している天海陸と実体化した陸のセイバーをしっかりと捉えていた。
こちらへの援軍か?だがそれにしてはあまりにも歩みが遅すぎる。
何より目を疑ったのは―――何がおかしいのかゲラゲラと嗤う陸のセイバーだ。
先ほどの温和ながら誠実そのものだった印象とは似ても似つかない。

(何だ、これ―――?)

士郎の背筋を冷たいものが走った。
自分達は何か、とんでもない間違いを犯したままここに来てしまったのではないか。
未だ確かな正体のわからない不安が際限なく膨れ上がっていく。

「シロウ……これは……」

パスが繋がっているからか、セイバーにも同じ光景が知覚できたようだ。
表情から察するに彼女もまた士郎と同じことを考えていたようだ。
キャスターの方を見れば、いっそう不気味な笑いを浮かべている。

「ねえ士郎ちゃん、セイバーちゃん。
貴方たちは“何を理由にして何のために”わらわを討ちに来たのぉん?」
「…それは。いや、貴様が凛のサーヴァントでないことは既に分かっている!
貴様はアーチャーを殺し彼女の新たなサーヴァントに収まり、令呪を使われた腹いせに凛を殺したのだ!
それだけではない!先ほども切嗣と結託してルルーシュのギアスの情報を切嗣に流し、ガウェインを操らせて貴様を最も警戒していたライダーとハジメを殺させた!
百歩譲ってリクたちが殺し合いに乗っていて、漁夫の利を得るためにここに向かっているのだとしてもこの事実は最早動かない!」
「アンリマユ、宝石剣ゼルレッチ、大聖杯にアインツベルンの用意した小聖杯」
「っ!?」

キャスターの口にした四つの単語は二人を動揺させるには十分な重みがあった。
ムーンセルの事情に詳しい太公望やガウェインも士郎達に聞くか学園で調べるまで第五次聖杯戦争の詳細は知りもしなかった。
であれば、それはキャスターが真実遠坂凛のサーヴァント、それも殺し合いの末の妥協混じりの契約ではなく初期から彼女に配され、一定の信用を得ていたのでなければ知り得ぬ情報ではないのか―――

648 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:41:10 ID:4R8tmcHc0

「それともう一つ、わらわがその切嗣ちゃんとかいう子と結託して太公望ちゃんを排除する。
確かによく出来た筋書きではあるけれど、何か肝心な事を忘れてないかしらぁん?
実際にわらわ側にはそれなりに利益があったけれど、その切嗣ちゃんとやらはマスターの制御のないキャスターのサーヴァントの言う事をあっさり真に受けて数時間足らずで作戦決行しちゃうようなお間抜けさんなのぉん?」
「!!!」

セイバーの瞳が限界まで見開かれる。
わかった、先ほどから感じていた僅かな違和感の正体がわかってしまったのだ。
セイバーはかつて衛宮切嗣のサーヴァントであったが故に。

切嗣は良くも悪くも非常に慎重かつ周到な男である。
そして切嗣が動く時は殆どの場合一定以上の勝機あってのことだ。
その切嗣が裏切りのクラスたるキャスターの齎した情報を元にして動く?
有り得ない、そんなことは決して有り得ない。
それが衛宮士郎の養父ではなく魔術師殺し・衛宮切嗣であればなおさらだ。

「先ほどのランサーとの戦闘はお互い宝具を使った以上相当に目立っていたはず。
切嗣かあのライダーがそれを監視していたとすれば、キャスターからの情報提供などなくてもルルーシュのギアスは把握できる…!
いや、それだけの確信がなければ切嗣がああも大胆な策に出るはずがない!」
「…セイバー、それだけじゃない。
こいつの宝具と能力でアーチャーを、あの野郎を倒すのは…恐らく無理だ。
こいつは防性に特化したサーヴァントだ、攻撃にはまるで向いていない」

地面に落ちた五火七禽扇とキャスター自身を見比べた士郎が分析の結果を伝える。
確かにこのキャスター、蘇妲己は魔術師の英霊としては一級品だ。
が、それは戦闘者として一流であることを意味しない。
それに無限の武具を扱えるアーチャーを五火七禽扇だけで圧倒するのは無理がある。

先ほど失った宝具、傾世元禳にしても同じ事だ。
アーチャー、英霊エミヤが持つ固有結界“無限の剣製”には使い方次第でAランク以上の威力を叩き出す剣も防御突破の概念を持つ剣もいくらでも存在する。
加えて奴自身防御用の宝具も少数ながら投影できる。
こと直接戦闘で英霊エミヤシロウが蘇妲己に痛手も与えられず完敗する事など士郎には考えられない。
遠坂凛という強力なマスターがついているのであれば尚更だ。

「それに、貴方たちが信じていた“妲己ちゃん☆黒幕説”を吹き込んだ人間。
それって果たして誰だったのかしらねぇん?」
「…!確かにこれは全てリクや彼のサーヴァントが言っていた事だ。
だがリクはルルーシュのギアスにかかっていた!
我々に嘘などつける、はずが……いや、待て」

嘘がつけない?ギアスにかかっていた?
その理屈では直前にキャスターの襲撃を受けているのに陸のセイバーが何の対策もしなかったということになる。
ルルーシュのギアスはサーヴァントからすれば直前の魔力の高まりや微細な予備動作が丸見えだ。
キャスターに敗北したという前例があるのにそれを未然に防げなかった、というのは流石に手落ちが過ぎないだろうか?

それに金田一も陸のセイバーの不自然な能力の低さに疑問を持っていた。
加えて短い間だが行動を共にしたことで彼のセイバーが何らかの形でキャスターの適性を持っている可能性は十分有り得るとセイバーは踏んでいる。
にも関わらず主人を守るために何の対策も用意せずルルーシュのギアスを止める素振りすらなかったというのか?

649 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:42:53 ID:4R8tmcHc0

「なあセイバー、もし天海のセイバーが魔術やそれに近い能力を持ってるとしたら、前提が全てひっくり返ることになる。
実際俺から見てもあいつは純粋な剣使いって感じじゃなかった。
お前と一緒に戦ってるんだからそのぐらいは見分けられる」
「…今となってはその可能性も疑わざるを得ないようですね。
私はキャスターならばどのような小細工を弄していても不思議ではない、そう思っていた。
勿論今もこのキャスター、蘇妲己は信用に値しないサーヴァントです。
しかし、リクのセイバーに魔術の心得があるとすれば、小細工を使うという可能性はそのまま彼らにも該当する…!」

例えば、天海陸とそのサーヴァントには最初からギアスあるいは魔術への対抗策があったとすれば。
士郎とセイバーが信じてきた“ギアスをかけられた人間は嘘がつけない”という論拠は根本から崩れることになる。
そしてギアスをかけられた際に天海陸が嘘の証言を行なったとすれば、そうする理由はもはや一つしかないのでは―――?

「…しかし、だからといってキャスター、貴様が信用できるという事にはなり得ない。
確かにリクにも注意を向けるべきなのかもしれない。
だが、我々の思考を誘導する貴様の罠という可能性とて捨てきれない」
「確かにわらわの言葉ではこれが限界ねぇん。
魔術師のサーヴァントは信用できない、実に正しい一般論よぉん。
じゃあ、わらわ以外の貴方達が信用する人間の言葉ならどうかしらぁん?」

そう言うやキャスターは懐から黒い長方形の物体を取り出し、士郎の足元に転がした。
見たところそれはICレコーダーのようだった。
罠に乗るようで癪ではあったが自分達の考えが正しければ既に事態は切迫しつつある。
魔術的な仕掛けが施されていない事を確認し、慎重に再生ボタンを押した。



『あ〜テステス、本日は晴天なり。
って聖杯戦争中のSE.RA.PHで雨なんぞ降るわけもないか。
わしはライダーのサーヴァント、真名は太公望。
今これを誰かが聞いておるという事はわしらは道半ばで脱落したという事だろう。
もしこれを聞いている者が殺し合いに乗らず、この聖杯戦争からの脱出を考えておるのであれば今からわしが話すことを聞いてほしい』

聞こえてきたのはつい先ほど消滅した仲間、太公望の声だった。
しかし何故こんなものが、そもそもこんな代物を残しているなら何故教えてくれなかったのか。
そんな士郎の疑念に答えるはずもなく、ICレコーダーはただ機械的に仲間の声を再生していく。

『まず話しておきたいのは脱出を志す人間にとってある意味最大の障害となるであろう者たちと現在わしらが関わっておる参加者の死の真相についてだ。
事の発端は午前8時20分頃、マスターを失ったキャスターのサーヴァント、わしの同郷でもある蘇妲己が柳洞寺に駆け込んできたことだった――――――』

ここからは士郎達も知っている事だった。
といってもあの時点でキャスターが話した情報が主だったものであるが。
一応この段階で判明していた陸とこなた及び彼らのサーヴァントの情報も入っていた。

『―――以上がわしと仲間たちで協議した現時点での行動方針だ。
そしてここからはわし自身のこの事件に関する見解を述べたい』
「っ!!」

これは士郎達も聞いていないことだ。
いや、恐らく太公望自身落ち着いたら話す気でいたのかもしれない。
何しろルルーシュは別行動中で士郎に至ってはお世辞にも平静とはいえない精神状態だったのだから。

『まず恐らく最も怪しいであろう妲己だが…わしはこやつが遠坂凛殺しの直接の犯人ではないと思う。
だがこやつが潔白ということもない。
こやつは索敵と自身の隠匿に特化した宝具“金霞帽”と絶大な防御力と強力な誘惑(テンプテーション)能力を備える羽衣型の宝具“傾世元禳”を持っておる。
まず口実を作ってマスターと別行動を取り、それら宝具を上手く使い他者が遠坂凛を殺しやすい状況を作り出す。
そして首尾良く遠坂凛を殺させた後、魔力探知にかかりにくいNPCを操ってマスターの令呪のみを手にし、この円蔵山という土地と契約した。
まあぶっちゃけわしがあやつに直接聞いて確かめたというのもあるがな。
ともかくあやつは自分は極力手を汚さず他人に手を下させるタイプだ、直接マスターを殺すなんてチープな真似はするまいよ』

650 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:43:36 ID:4R8tmcHc0

そんな話は初耳だ、しかし太公望を責めるのも酷だろう。
知り合い同士でしか通じない論拠をあの状態の士郎が素直に受け入れられたかどうかは怪しい。

『もちろんそれだけというわけではない。
最大の理由はあやつがこの土地との契約が出来たという点だ。
人間相手の契約と違って土地との契約というのはあまり融通がきかん。
加えてムーンセルは管理の怪物、自らのマスター以外の令呪で土地との再契約が出来るなどという事態を容認することはまず有り得ん。
そもそも本来マスターが主体となる聖杯戦争で、サーヴァントだけが他人と再契約することも消滅の危機もなく存命しているという事自体が反則ギリギリの行為だからな。
それは妲己であろうと変わらん。他人から見れば万能に見えるあやつもサーヴァント化している以上少なからず制約は受ける。
これらの事から、少なくとも妲己のマスターが遠坂凛であったというのはほぼ疑いない事実だ』
「…………」

太公望の解説を聞きながらキャスターを見れば、妙に得意げな顔で笑っている。
やはりこれは―――

「わらわの用意したもの、ではないわよぉん」

こちらの考えを見透かしたように否定の言葉が入った。

「わらわならNPCを操ってこういう現代機器を手に入れることは出来るわぁん。
でもそれを読まれる可能性がある時点でこれを使って自分の潔白を証明なんて策は取らないわぁん。
多分太公望ちゃんが金田一ちゃんのクレジットカードを使って勝手に買ったものでしょうねぇん。
もしかしたらスープーちゃんに買いに行かせた可能性もあるけれどぉん」

ちっちっちと指を振りながら語るキャスターに釈然としないものを感じながらも続きを聞く。

『では妲己でなければ誰が遠坂凛を殺したのか。
…うむ、もったいぶってすまんが、これに関してはハッキリとした名前を出す事は控えたい。
現時点でわしらが知っておる情報は大半が伝聞かつ断片的なのだ。
わしが少ない情報から誤った推理をし、全くの見当違いな人物を犯人として脳裏に浮かべている可能性があるからだ。
だが伝えられることが何もないというわけでもない。
これは聖杯戦争だ、敵マスターを殺すという行為に至ったからには必ず相応の理由がある。
もしこれが内部犯であれば、犯人には単に敵マスターを倒す以上に、遠坂凛個人を殺すことによって得られる明確なメリットがあったはずだ。
故にもしこの件について調べるのであれば当時遠坂凛の周辺にいた人物。
とりわけ遠坂凛の死亡後に利益や恩恵を得た人間がいたかどうかをまずは疑うのだ。
最も利益を得た人間こそが最も疑わしい、まあ推理の基本と言われれば反論は出来んのだが。
それとわしが脱落した後もまだ妲己が生きているようであれば、早急に止めを刺すのだ。
あやつは文字通りの意味で人を人とも思わぬ愉快犯、わしらの監視が無くなれば何をしたとしても不思議ではない。
良いか、止めを刺すのだぞ。絶対にキッチリと止めを刺すのだぞ』

一度再生を切る。続きはあるようだが今は状況が差し迫っている。
目の前にはキャスターが、そして今や限りなく怪しい人物となった天海陸とセイバーが何を狙ってかこの柳洞寺に近づいている。
早急に結論を出さなければならない。

「…最も利益を得た人間。少なくともコナタとライダーではないでしょう。
特にライダーは先ほども私と共に最前線で戦っていた。
その他の状況から鑑みても凛の死で大きな恩恵を得たとは考えにくい」
「だとしたら……天海、なのか?」
「マスターとサーヴァント、どちらが主導しているのかまではわかりませんが恐らく。
現に彼ら、特にセイバーの方は能力の低さ故に先ほどは危険度の低いルルーシュ達の護衛に回っていました。
切嗣のライダーに狙撃こそされましたがあれは誰にとっても計算に入れられる要素ではなかった。
そして何より、私達はリクのセイバーの助言に従ってキャスター討伐に赴いた。
いいえ、はっきりと言えばあのセイバーこそがリク達の集団の中で最も大きな発言力を持っている」
「ああ、確かにあいつがリーダーシップを取っていた。
あとは遠坂を殺した理由か目的だけど、あいつの能力の低さから考えたら答えは一つしかない。
弱いサーヴァントが手っ取り早く自分を強化するなら魂喰いしかないんだ。
そしてターゲットが遠坂なら、その効率だって段違いだ」

651 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:44:22 ID:4R8tmcHc0

これまでバラバラだった点と点が繋がり、一本の線になっていく。
未だ確定ではないが、もう彼らを無条件で味方とは考えるべきではないだろう。
とすれば残る問題は―――

「お話は終わったかしらぁ〜ん?
さっ、わらわの気が変わらないうちにザクっとスパっとやっちゃってぇ〜ん♥
一流の悪役ヒロインは引き際を弁えてるものなのよぉん」

相変わらず抵抗の様子すら見せないキャスターである。
この女は聖杯戦争の趨勢自体眼中にないのではないだろうか?

「その前に問うておこう、貴様が凛を見殺しにしたというのは事実か?」
「そうよぉん、ご主人様は魔術師のわりに良い人だったのだけれど、ちょっと正義感が強すぎたわぁん。
わらわって束縛されるのあんまり好きじゃないのよねぇん」
「……そうか、ならば最早何も言うことはない」

今度こそ迷わず剣を構え念のため周囲の魔力に気を配り、そして一息に無防備なキャスターに迫り、その心臓に刃を突き立てた。
微かな吐血を漏らしながらもその微笑が崩れることはない。

「…キャスター、あんた一体何を考えてるんだ?
あんたは間接的でも遠坂を裏切ったんだろ?
だったら、どうして俺達に手を貸すような真似をしたんだ?
アサシンまで召喚したのは勝つためじゃなかったのか?」

その微笑みの意味が、彼女の思考がわからなくて。
思わず士郎の口から出たのは最も気になっていたことだった。
全身が崩れゆく中、キャスターは最期の時まで超越者じみた余裕を崩すことなく答えた。

「わらわは基本楽しければオールオッケーなのよん。
小次郎ちゃんを召喚したのもその方が面白そうだから。
この聖杯戦争も最上とはいかなかったけど中々楽しかったわぁん。
陸ちゃんへのささやかな意趣返しも出来たし、士郎ちゃんたちの苦悶に歪む顔も中々見ごたえがあったわねぇん。
でもそうねぇん、敢えて一つだけ理由を挙げるなら―――」

一度だけ意味深に目を閉じ、悪戯っぽい笑みを浮かべた。



「―――わらわが遠坂凛のサーヴァントだから、かしらぁん」



そんな言葉を残して、稀代の悪女・蘇妲己は完全に消滅した。
主を策略で見殺しにしながら、最後の最後で主命を果たした魔術師の英霊。
その真意はどこにあったのか、それを知る者はもういない。

【キャスター(蘇妲己)@藤崎竜版封神演義 消滅】


















・虚飾を払うは―――

652 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:45:20 ID:4R8tmcHc0

それからはほとんど陸とイスラも知っている通りだ。
二人に強い不信感を抱いた士郎とセイバーは一計を案じた。
まず士郎が二人に第五次聖杯戦争に関する事柄を聞く。
このムーンセルの聖杯戦争にしか参加していない英霊でもその事について知っている可能性、つまりは蘇妲己が凛のサーヴァントではないという可能性もまだ僅かには存在していたからだ。

そしてイスラの返答によって蘇妲己が凛のサーヴァントであることが概ね証明されたと同時、士郎の射撃と数百メートル以上離れた地点から全開の魔力放出で一瞬にして距離を詰めたセイバーの同時攻撃で陸とイスラの正体を暴いた。
といってもこの攻撃で二人を殺すつもりはなかった。
一瞬でもイスラを足止めし、セイバーの直接攻撃―――本当に何の能力も持っていないようなら寸止めが出来るよう剣に込めた力は三割程度に抑えていたが―――で陸の正体を見極めるという策だった。

いや、実際には策とも呼べない強引な賭けだった。
これでもし陸とイスラがシロであれば今度こそ殺人者の謗りを免れないところだったのだ。
この場にルルーシュでもいればもっと穏当かつ確実な策を閃いたのかもしれないが。

しかし結果としてこれで陸とイスラの正体はほぼ完全に露見した。
どころか陸がギアスにかかっていなかったという物証まで入手できたのは期待以上の成果といっていい。

「これで全ての疑問は解決した。
凛を殺す際、どうやってあのオーズを引き離したかが引っ掛かっていた。
しかしそれほどの力ならばごく短時間彼の注意を引くぐらいは可能だったはずだ。
…まだ何か言うことはありますか?」

セイバーの最後通牒に等しい言葉に陸もこれ以上言い逃れは出来ないことを悟った。

「ハハッ…何だよこれ。キャスターが抵抗もしないとかどうなってんだよ。
しかもこいつらに塩まで送っちゃってさあ、何なんだよマジで。
話が全然違うじゃないか…どうなってんだよイスラアアッ!!!!」
「……済まないリク。僕の見積もりが甘かったらしい」
「…謝るなよ、謝ってんじゃねえよ!
何か、何かないのかよ!?お前がチャンスだって言うからここまで来たんだぞ!?
なのに、なのにこんな……!お前のせいだぞこのハズレサーヴァント!!!」
「…………」

こんなはずではなかった。
イスラはこれまでに聞いていたキャスターの動向と、先ほどのアサシンの存在からキャスターは勝ち抜きを狙っていると確信していた。
というよりその確信があったからこそ今までのイスラの嘘は聞いた者に強い説得力を与えていたのだ。
そもそもキャスターがさしたる願いも目的も持たずに聖杯戦争に参加し、なおかつ自分の娯楽のためだけに場を引っ掻きまわして、思わせぶりな行動を取ってきたなどどうやって想定しろというのか。

653 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:46:07 ID:4R8tmcHc0

否、それを言い出せば彼らの嘘が露見した理由の多くはこれまで知らなかった、知る機会のなかった要素によるものばかりだ。
通常の域を大きく逸脱した解析魔術を扱える衛宮士郎。
キャスターと同郷の出身だった柳洞寺のライダー、太公望の存在。
関係者にのみ通じる第五次聖杯戦争の詳細。
セイバーであるイスラには考えもつかない、土地そのものと契約するという手段によって客観的に自らが遠坂凛のサーヴァントであることを証明したキャスター。

かつてイスラ自身が口にした情報戦における遅れ。
それがこんな、あと一歩という局面で状況を完全にひっくり返す決定打になるとは思いもしなかった。
だがイスラがそう考えるのも無理もないことだ。

何しろ陸とイスラのここまでの道中はあまりにも上手く行き過ぎていた。
有り体に言えばとにかく運が良かった。
綱渡りに等しい遠坂凛の暗殺を見事こなたと映司に気付かれることなく成功させた。
この時キャスターの策で凛の令呪を奪われたが、それは単にキャスターの用意が陸とイスラを上回っていただけだ、二人の失策ではない。
さらに事前に用意した反魔の水晶がギアスに対してこれ以上無いほどに効果を示したこと。
つい先刻の切嗣陣営の襲撃の際最も少ない被害で切り抜けられたこと。
切嗣の策によって結果的に柳洞寺にキャスターが孤立し、さらに能力面で厄介な士郎のセイバーにキャスター討伐を押し付けることに成功したこと。

これだけの幸運に恵まれたことが、陸とイスラの行動を大胆にさせた事は否めない。
最早情報戦の遅れは完全に覆した、後は柳洞寺の魔力の流れを乗っ取れば策を弄する必要もない。
キャスターや士郎らもお互い潰し合わせさえすれば、ここまで温存してきたイスラの魔力でどうとでも処理できる、イスラをしてそう信じて疑わないほどの好機だった。

その先が奈落の底に続く落とし穴であることなど考えもせずに。

だがそれを誰が責められようか。
聖杯戦争において敵が戦力を分断させた時を狙って仕掛けるのも、大量の魔力を得られる好機を逃さないのも正しい戦略だ。
そもそもキャスターがイスラの予想した通りの勝利を狙う、常道のサーヴァントであれば彼らの行動が問題になる事など本来有り得ない筈だった。
繰り返すが彼らの取った戦略は普通なら正解であり、成功への最短ルートだった筈なのだ。

(しかしそれでも…もっと慎重に事を進めるべきだったのかもしれない)

後悔は決して先に立つことなど無いが、それでも悔やんでも悔やみきれない。
振り返って考えれば、イスラが陸に性急な行動を提案した背景にはあの男、衛宮切嗣の影があったのだろう。
自分達の嘘が一切通じる余地のない危険な敵手、それに少しでも対抗するにはこちらも力をつける必要がある、そう思った。

衛宮切嗣のサーヴァント、仮面ライダーディケイドとやらがこなたのライダー、オーズを倒すことに執着しているらしいというのもあった。

654 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:47:23 ID:4R8tmcHc0
何せこの先こなたらと行動を共にする限り常にあの陣営の脅威に晒されることになるのだ。
先ほどはルルーシュが標的になり、士郎のセイバーが盾代わりになってくれたおかげで事なきを得たが、これからはそうではないのだ。
そういった理由から敢えて別行動を取るという考えに至ったのだ。
上手くすればイスラが柳洞寺の魔力を得るまでの間、こなたらが切嗣とディケイドをおびき寄せる囮になってくれるのではないかという考えもあった。

結局のところ、そうした目論見は全てにおいて裏目に出たのだが。
ここまでの幸運の連続こそが逆に陸とイスラから慎重さを奪う不幸の原因だったのだ。

「シロウ、決断を。この者たちを放置すればコナタを始めとした多くの参加者にとっての災厄となるでしょう」

思考している間にも士郎のセイバーが主人に陸とイスラの処断を促す。
キャスターが戦わなかったせいでセイバーの魔力はほぼ全く消耗されていない。
まともに戦えば分が悪いどころではない。
とはいえこちらがそれに付き合う道理はない。

(リク、ここは一度退いて態勢を立て直そう。
不意をついて令呪を逃走用に使ってくれれば十分に―――)
「……ろせ」
(リク……?)
「あいつらを殺せ!!イスラアアアアアアアッ!!!」

陸の腕から令呪の輝きが放たれる。
その強大な魔力は逃走ではなく殺戮の強制としてイスラにのしかかる。

「なっ…リク!?一体何を―――」
「お前こそ何言ってんだよ!状況わかってんのか!?
バレたんだよ全部!!なのに逃げてどうするってんだよ、ええ!?
こいつらが泉やルルーシュにオレ達の事を話せば全部終わりだろうが!
だったら…だったらもう殺すしかないじゃないかっ!!」

陸の表情は今までイスラが見たこともないほど強ばり、眼は血走り微かに涙が滲んでいる。
剣を握る手は震え呼吸は荒く、平静を失い半狂乱になっていることは火を見るより明らかだった。
無理もないことだ、全てが上手くいっていた状況から瞬く間にどん底まで叩き落とされたのだ。
天海陸はイスラ・レヴィノスほど完成されたメンタリティは有していないのだから。

「………“紅の暴君(キルスレス)”」

イスラもまた事ここに至って陸を諌めることは不可能だと悟った、悟らざるを得なかった。
今まで陸がイスラに一方的に同族嫌悪の感情を抱きながらも主従関係が成立していたのは、イスラの知略が多大な成果をもたらし、陸もそれを割り切って受け入れてきたからだ。

だが今回のあまりにも大きな失態によってイスラは陸の信用を大きく損なってしまった。
実際には失態と呼ぶには酷なものであるとしても今の陸にそこまで冷静に判断する力は無い。
ここでこれ以上陸に意見すれば例えこの苦境を切り抜けたとしても、この先の関係修復が不可能になってしまう。
それならば無理に令呪に逆らわず、全力で目の前の敵を屠る事に専心するべきだ。



魔剣の真名を解放し容姿が大きく変化したイスラだが、当然それだけの事で終わる筈が無い。
その身から発される魔力は今までが嘘のように荒く猛々しい。

「シロウ!この者の相手は私が引き受けます!」

その禍々しい力がマスターに及ぶ事を警戒したのだろうセイバーがイスラに突進し、引き離しにかかる。

655 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:48:07 ID:4R8tmcHc0
イスラもまた陸の力量を信じてセイバーの誘いに乗る形となった。
そして陸も刃旗を手にし、常人には視認すら困難な速さで士郎に斬りかかった。
咄嗟に投影した干将・莫耶で受け止めるが、膂力が違いすぎるためにジリジリと押される格好となる。

「ぐっ―――!天海、お前は………!」
「そうさ、お前らさえ、お前らさえ消せばまだやり直せるんだ!
遠坂だって殺ってやったんだ、もう躊躇うもんかよ!!」

先ほど戦ったランサーのマスターが操っていたイザナギですら可愛く思えるほどのパワーとスピードの前にまたも防戦を余儀なくされる。
技量はまだまだ発展途上ながら、サーヴァントにすら迫る理不尽なまでの身体能力はただそれだけでほとんどのマスターを圧倒する。



―――だがここに一つの例外が存在する。



「隙だらけなんだよっ!!」

陸の横薙ぎの斬撃ががら空きになった士郎の右脇腹を襲う。
必中を確信して振った大剣はしかし、白と黒の双剣に受け流された。
僅かに態勢を崩した陸を士郎の反撃が襲うが意識圏によって止められる。
だが完全ではない、短剣が障壁をガリガリと削り、ついには意識圏を叩き切った。

「くそっ、意識圏が!?」

予想だにしなかった事態に慌てて距離を取る。
サーヴァントならばいざ知らず、魔術師の物理攻撃で意識圏を断ち切られるなど想定外だ。
いや、よくよく見れば士郎が手にしている双剣からはイスラが持っている紅の暴君と同じ気配を感じる。

(宝具ってことかよ…!チートしてるんじゃないだろうなコイツ!?)

物理攻撃に対して絶大な防御力を発揮し、棺守や同じ刃旗使い、あるいは超常の存在たるサーヴァントでなければ傷つける事すら不可能に近い意識圏。
だがそれは決して全てのマスターに対して無敵を誇る事を意味しない。

陸と同じく英霊に迫る戦闘能力に加え、高ランクの宝具の担い手でもあるベルンの覇王・ゼフィール。
そして特異な起源と魔術特性から宝具級の神秘すら投影で再現してのける錬鉄の魔術師・衛宮士郎。
彼らの操る宝具の強力な神秘は刃旗使いの意識圏を突破することすら可能とする。
そう、この二人だけはこの聖杯戦争において例外的に正面から天海陸と対等に戦える存在なのだ。

「でもな、スペックじゃこっちが圧倒的なんだよ!!」

気を取り直して再度高速で斬りかかる。
伊達に棺守との戦いを生き抜いてはいない、相手に意識圏を突破する手段があるとわかっていれば相応の戦い方をすれば良いだけだ。

「づ、は―――!」

しかし士郎も粘る。怒涛の勢いで連撃を浴びせかけるも、常にあと一歩というところで受け流されてしまう。
時折大きな隙を見つけて、そこに正確に打ち込んでいるにも関わらず必ず防がれるのだ。

(何なんだコイツ!?強くはないのにやりにくい!)

決して力強くもなければ速さもない凡庸な剣捌きを攻めあぐねているという現実に焦りが募る。
最初から刃旗使いとしては強大な力を持っていた陸には思いつくことさえ出来ないだろう。
衛宮士郎が天海陸に白兵戦において格段に劣っている、その事実こそを武器にして渡り合っているなどとは。

656 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:48:52 ID:4R8tmcHc0

士郎はただ守るだけでは陸の猛攻を凌げないと判断するや、時折わざと隙を作ることで陸の攻撃箇所を誘導しているのだ。
かつて自身の未来の姿、英霊エミヤの腕を移植されていた時期に頭に流れてきたあの男の経験値がこの無謀ともいえる策を可能としていた。
とはいえ今の士郎自身の力量は英霊エミヤに到底及ばない。
この戦法とて一級のサーヴァント相手に通じるほどの域には達していないが、今の冷静さを失い視野狭窄に陥った天海陸になら十分に通用する。

だがそれも長くは続かない。
膂力や俊敏性に限らず、持久力や反応速度などあらゆる身体的要素において衛宮士郎は天海陸に大きく遅れを取っている。
意識圏を破る手段を持っていようが戦闘者としての基本性能の差は小手先の戦術だけでカバーしきれるものではない。
あと十分と持たずに衛宮士郎は天海陸に押し切られてその身を両断されて敗北する。

「―――投影開始(トレースオン)」

ならば勝てるものを用意すればいい。
陸の剣戟を防ぎながらも自己の内に埋没し、投影する剣を選んでいく。

「――――憑依経験、共感終了」

呪文を紡ぎ、衛宮士郎だけの弾丸を順に装填していく。

「―――工程完了。全投影、待機(ロールアウト、バレットクリア)。
―――停止解凍(フリーズアウト)」

ここに来てようやく陸の目にもその異常が見てとれた。
陸の攻撃を防いでいる士郎の真上に十六もの刀剣が突如として出現した。
魔術師ではない陸でもわかる、宙に浮かぶその剣群はどれもが一級品、すなわち宝具であるのだと。

「おい、冗談だろ……?こんなの反則どころじゃないだろ……!」

まるで悪夢だ。
あれらが一発でも直撃すれば刃旗使い、いやサーヴァントであっても致命傷になり得る。
意識圏で防げるか?馬鹿か、そんな生温い手を打つ相手なものか。
何より相手の懐に飛び込みすぎた、命脈を保つべく意識圏を全開で展開しつつ全速力で飛び退くが間に合うか。



「―――全投影連続層写(ソードバレルフルオープン)!!」



宙空から剣群が陸の命を刈り取るべく一斉に襲いかかる。
だが活路はある、一発でも命中すればそれで十分と考えているのか剣群は陸の周囲を円状に覆うように飛来している。

(―――いける、真ん中が手薄だ!)

敢えて中央へ動き、万全の態勢を整える。
下手に大きく動いて直撃するよりは中央で腰を据えて迎撃するのが上策。

「な、めるなああああ!!」

十六の剣のうち陸に命中するのは三本。
大剣で二本を弾き飛ばし一本を意識圏で逸らした。
残りは全て陸の周囲を囲うように地面に突き刺さった。
凌いだ、その確信を得たまさにその瞬間だった。

「壊れた幻想(ブロークンファンタズム)」

657 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:49:32 ID:4R8tmcHc0

呪文と同時、弾き、回避した三本と周囲の十三本の剣が一斉に轟音を立てて爆発した。
意識圏でもカバーしきれない、全方位からの爆発と衝撃によって陸の身体は嵐に巻き込まれた木ノ葉のように軽々と吹き飛ばされた。

「ぎ、ああああああああっっ!!!!!」

魔術師ではない陸には何が起こったかもわからない。
棺守や刃旗狩りの男・タカオとの戦いを経た陸だが剣が爆発するなどという知識はない。
もし事前知識があれば真ん中に飛び込んで迎撃するという選択肢は排除して考えていただろう。

壊れた幻想(ブロークンファンタズム)。
宝具に内包された神秘を魔力による爆発に変える宝具の変則的使用法。
その威力は爆発させた宝具本来のランクより一段上の破壊力を持つ。
だが本来聖杯戦争においてこの技が用いられることは無い。
宝具とは担い手の半身、自らの相棒たる宝具を一度きりの爆弾にする英霊などまずいない。

だが何事にも例外は存在する。
特殊な投影魔術によって魔力が続く限り衛宮士郎はいくらでも宝具を用意できる。
この特性を活かせばこのように宝具を使い捨ての砲弾のように扱う事すら可能だ。
もっともこれですら対魔力を持つサーヴァントには多少厄介ではあっても必殺にはなり得ないのだが。

「が…ぐ……、くそっ……!」

朦朧とする意識を気合いで保ちながらよろよろと立ち上がる陸だがその足取りは覚束ない。
反魔の水晶を奪われたことによって対魔力の加護を得られなかったために甚大なダメージを被ったのだ。

服と全身は焼け焦げ、爆発の際に飛んできた様々な破片で体の至るところに切り傷が出来ている。
さらに全方位からの爆音を至近距離で聞いたために聴力にも軽度ながら異常が起きている。
意識圏による防御すら宝具の爆撃に対しては気休め程度にしかなりはしなかった。

「その障壁は全方位には張れないらしいな。
…天海、もうやめろ。言っておくが俺はその気になれば一度に二十七本まで剣を投影して発射できる。
そんな有り様じゃもう避けることも、さっきみたいに戦うことも出来ないはずだ」

これはハッタリだ。
今の士郎には二十七どころか先ほどの半数を投影できるか否かという程度の魔力しか残っていない。
先ほどのアサシンに対して行なった赤原猟犬の真名解放、そして金霞帽の投影と行使。
セイバーの魔力を温存するために支払った代償としては安いが、今この場の戦いには大きな影響を及ぼしている。

「…………」

しかし魔術師でない陸にはそれがハッタリかどうかを判別できない。
士郎も一般人でありながら聖杯戦争に参加した金田一という実例や、ここまでの陸の魔術師らしからぬ言動から陸に魔術の心得はないと当たりをつけていた。
陸は未だ気付いていない。自分が魔術師でなく、魔術の知識も不十分であるという事実がどれほど足を引っ張っているのかを。

(これでもし天海がさっきと同じ調子で攻めてきたら……)
(もしアイツの言ってる事が本当で、まだあれ以上の剣を用意できるのなら……)

お互いに限界が近い、それ故に僅かな時間戦況は膠着する。
―――だとすれば、勝負を決するのは彼らの従者に他ならない。







「はぁああっ!!」
「っ、ぐ―――!」

金属と金属の打ち合う音が響きわたる。
衛宮士郎と天海陸、彼らの主人の戦場より幾分距離を離した池の周辺で二人のサーヴァントは余人には視認すら適わぬ剣戟を繰り広げていた。

攻めているのは衛宮士郎のサーヴァント、アルトリア・ペンドラゴン。
防御に回っているのは天海陸のサーヴァント、イスラ・レヴィノス。
百を越え、千に届くのではないかという程の打ち合いを経ても未だに天秤は傾かない。

658 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:50:20 ID:4R8tmcHc0

「さっきの見えない剣は、く、やらないの、かい―――!?」
「知れた事を、先ほど我が剣を見せた貴様に風王結界が通じると思うほど私は愚かではない」

セイバーは今、手にした黄金の剣カリバーンに不可視の風を纏わせずに戦っている。
何しろ初対面の時に一度真名と共に見せているのだ、サーヴァントならばそれだけで刃渡りや間合いも正確に計れただろう。
ならば通用する望みのない風王結界ではなく、全身の魔力放出に上乗せする。
それに敢えて刀身を晒す事で切れ味は大きく増す。
この敵を相手取るにはこれこそが最上の策だとセイバーは看破していた。

(参ったね、こうまで地力に差があるとは思わなかった。
リク、令呪を使った君の判断は正しかった)

一方のイスラは想像以上の敵の力量に舌を巻いていた。
伐剣覚醒による大幅な能力向上に加え、マスターからの魔力供給不足によって低下していたスキルのランクも令呪のブーストにより一時的に生前同様まで戻った。
はっきり言えば、今この時に限ればイスラは生前を僅かながら上回るほどの性能を得ている。
だからこそセイバーの全力の剣捌きにも一歩も引くことなく渡り合い、時折反撃に転じるまでに拮抗する事が出来ている。

だがそれだけだ。
圧倒的な能力ブーストを得ていてもイスラの剣が騎士王に届くことは無い。
そもそも剣の才能が違う。剣に生きた年月が違う。努力の密度が違う。
悲しいかな、セイバーにとってイスラの太刀筋はどこまでも凡庸な、読みやすいものでしかない。

サーヴァントとしてのステータス以前の、英霊イスラ・レヴィノスの限界ともいうべき壁。
如何に令呪が様々な奇跡を起こせるとはいえ、サーヴァントの技量を限界以上に高めることは流石に出来ない。
どれだけカタログスペックを底上げしようが、剣の力量が英雄レベルに達しないイスラが一級のセイバークラスの英霊と曲りなりにも互角の体を為しているという事実が既にして奇跡なのだ。

ならばイスラが最も得意とする召喚魔法ならばどうか。
確かに竜の因子を持つ騎士王が誇る破格の対魔力の前では暴走召喚とて通じる望みは薄い。
だが何一つとして通用しないわけではない。
例えばダークブリンガーのような物理的な攻撃手段ならば対魔力でも防ぐことは出来ない。
それが暴走召喚、更には令呪の加護も付加されるとあれば必殺の域にまで昇華される。

だが、それは撃てればという仮定の話だ。

「させんっ!」
「ぐっ……!!」

バックステップで距離を取ったイスラだったがセイバーはその上を行く。
魔力放出による急加速で瞬く間に距離を詰め、竜の咆哮の如き一撃を見舞う。
極限まで能力を強化されたイスラでも数歩分の後退を余儀なくされる剛剣からの呵責の無い追撃に晒され、再び剣戟に持ち込まれる。

先ほどから召喚魔法を使おうとする度にこの調子だ。
セイバーの未来予知じみた直感はイスラの召喚魔法の余兆を決して見逃さない。
最高ランクの対魔力を誇るこの身に対して尚魔法を用いようとするその動き。
それこそがイスラがセイバーを倒し得る手段を有しているという何よりの証左。
であればそもそも撃たせないという事が唯一最大の対策になり得る。

これが聖杯戦争。

659 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:51:09 ID:4R8tmcHc0
真名を暴いたことでセイバーはイスラがどのような手札を持つかをある程度把握している。
無論マスターに与えられた透視能力のように詳細にスキルを見れるわけではない。
だが真名がわかれば相手の逸話や偉業といったおおよその得意、または苦手分野もわかる。
それ故に消極的であっても対策を打つ事が可能になるのだ。

「ハアッ!!」

セイバーの黄金の剣が防ぎきれなくなったイスラの身を削る。
覚醒の恩恵ですぐさま傷は塞がるもののその度に魔力を余計に消耗する。
だがイスラにとってはそれ以上に不都合な事がある。

(あの剣、確かアーサー王の選定の剣カリバーンだったか。
間違いなくAランク以上の聖剣だ、これでは呪いを活かすのも難しい…か)

イスラ・レヴィノスはその身に不死の呪いをかけられている。
Aランクに満たない攻撃では決して死に至ることは無い強力なその呪詛は聖杯戦争において極めて有用なスキルだ。
この呪詛を上手く活かせば敢えて敵の攻撃を受けてそこから反撃に転じるという戦法も使えるのだ。

だが通常攻撃がAランクに該当するセイバーの剣にはこの戦法が使えない。
ただでさえ剣士としての地力に開きがあるのだ。
下手に呪いを当てにした戦い方をしようものならそれこそ一瞬で致命傷を受けてしまう。
手詰まり、その単語が脳裏を過ぎる。



「……リクっ!?」

ちょうどその瞬間、イスラの脳をひりつくような感覚が襲った。
それはすなわち、マスターである陸が危機的状況に陥った事を示す。
ほんの一瞬気を取られた、それが不味かった。

「余所見をしている余裕があるのか!」

イスラが陸に気を取られたのを好機と見たセイバーが強烈な大上段を見舞う。
咄嗟に受け止めたが態勢を大きく崩され、次の薙ぎ払いを受け止めた衝撃で大きく吹き飛ばされた。

(不味い、令呪の効果が……!)

これまでセイバーとの戦いを互角たらしめていたブーストの効果が途切れた。
それ故に先ほどまで耐えられた一撃を持ちこたえられなかった。

「リク……!」

いつの間にかマスター達の近くまで移動していたらしい。
陸の方を見やれば明らかに深手を負っている。
何やら士郎と会話しているようだが距離があって聞き取れない。

ともかくこのままではジリ貧になる一方だ。
伐剣覚醒は維持するだけでも大量の魔力を消費するのだから。
先ほどアサシン相手に召喚魔法を数発使わされた事も響いている。
この先に大きく影響するが背に腹は代えられない、改めてこの場からの逃走に令呪を使うよう念話を送ろうとして―――



「イスラ、次の一撃でセイバーを殺せええっ!!!」



主の令呪に再びその身を縛られた。










「その障壁は全方位には張れないらしいな。
…天海、もうやめろ。言っておくが俺はその気になれば一度に二十七本まで剣を投影して発射できる。
そんな有り様じゃもう避けることも、さっきみたいに戦うことも出来ないはずだ」

660 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:51:51 ID:4R8tmcHc0

士郎が降伏を促してくる。
ふざけるな、そんな真似をするぐらいなら最初から聖杯戦争になど参加していない。
だが怒り猛る精神に反して体はついてきてくれない。
全身は絶え間なく苦痛を訴え、足腰がまるで自分のものではないかのように言うことを聞かない。

(もしアイツの言ってる事が本当で、まだあれ以上の剣を用意できるのなら……)

今度こそ天海陸は終わりだ。
ハッタリという可能性もあるが、それがただの楽観でない保証がない。
剣を飛ばす前に斬り伏せるか。無理だ、奴は戦いながらでも剣を生み出せる。
イスラを信じて時間を稼ぐか。論外だ、性質がキャスターに近いイスラは騎士王とは恐ろしく相性が悪い。

(うっ…くそっ、あの野郎容赦なく持っていきやがって……!)

しかも陸の魔力、というより生命力は時間とともに戦闘中のイスラに流れていく。
これでは何のために凛から魔力を奪ったのかわからない。

「…くそっ、くそくそくそ、あんな奴がサーヴァントじゃなければ!
あいつのせいでこんな事になってるってのに、魔力だけは一人前に欲しがる気かよ…!
こんなはずじゃないんだ、こんな……!」

実際のところ、イスラが陸からも魔力供給を受けなければ戦えない原因の一端は陸自身が使った令呪にもある。
令呪の加護で限界を超えた力を発揮しているイスラだが、そこまでして能力を底上げするということは維持に必要な魔力も普段より増すということである。
通常のサーヴァントならば令呪の膨大な魔力で賄われるので問題にはならない。
だが伐剣覚醒を行なったイスラは著しく燃費が悪くなるため、令呪だけでは不足してしまうのだ。

「…天海、どうして遠坂を殺したんだ?
正直遠坂を殺したお前が憎くないと言えば嘘になる。
けど、お前が人殺しに慣れてるわけでも、やりたくてやってるわけでもないのは俺から見てもわかる。
そこまでして叶えたい願いがあるって事なのか?」
「…………」

その言葉にひどく苛立つ。
何を言っているんだこいつは、そんなものは当たり前だ。
願いを叶えるための殺し合いが聖杯戦争だろうに。
そんな事を思ったからだろうか。
気付けば口は今まで鬱積していた感情を吐き出していた。

「…ああ、そうだよ!悪いかよ!
だってそれが聖杯戦争なんだろ!?
遠坂は敵だったんだ!ルールなんだから殺したって仕方ないだろ!?
願いは無いとか聖杯を壊すだとか、お前らの方がおかしいんだ!!
人の気も知らないで勝手なことばっかり言いやがって!!
オレが好き好んで人殺しなんかやってると思ってるのかよ!?」

一気に捲し立てて荒い息をつく。
平時の陸なら決して口にしないような事だが、大きく精神が乱れた今の陸にそんな分別は無い。

「…確かに俺はお前が何を願って参加したのかなんて知らない。
でもな天海、これだけは言えるぞ。
お前の気持ちや願いが誰にもわからないのは―――お前が嘘をついたからだ」
「――――――!!」

無表情で告げた士郎の言葉は、これ以上無いほどの正論だった。
嘘をついたのなら本当の気持ちが誰にも伝わらないのは至極当然だ。

「はっきり言うぞ、お前に殺し合いなんて向いてない。
お前が持つべきだったのは嘘をついて人を殺す意思なんかじゃない。
遠坂や泉みたいな、人を思いやれるやつに本当の気持ちを打ち明ける勇気だったんだ。
お前の願いが何かはわからないけど、それでも何かは違ったはずだ。
……それだけで、良かったんじゃないのか?」
「……まれ。黙れ、黙れよっ!!」

言うな、それ以上言わないでくれ。
だって自分はもう既に人を殺してしまった、伸ばされた手をはねのけた。
認めてしまえば自分のしたことは全て無駄になってしまう。

661 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:52:56 ID:4R8tmcHc0
この聖杯戦争だけではない、もう一度天音に会うために嘘をついたことも、戦ってきたことも何もかもを無駄にしてしまう。

その時金属音が聞こえ、遠目にイスラが吹き飛ばされているのが見えた。

(―――ふざけるなよ)

倒せないのはまだしも、令呪を使ったにも関わらずこうまで押されるとはどういう了見なのか。
あまりの逆境の連続に、陸の頭の中でプツリ、と何かが切れる音がした。

殺せ、殺せ、殺せ。
あのセイバーも、うるさい衛宮士郎も殺してしまえばこの苦境もチャラに出来る。
目の前の現実に嘘をつき、逃避するために陸はついに二画目の令呪に手をかけた。



「イスラ、次の一撃でセイバーを殺せええっ!!!」



左手の甲から強烈な輝きが放たれる。
次の一撃で打倒する、これ以上なくシンプルかつ強固な命令による最強の一撃は如何に騎士王といえど耐えられまい。

「天海―――!くっ、セイ……っ!?」

間を置かず士郎に斬りかかる。
令呪は使わせない。元々サーヴァントに力量差があるのに令呪を使われればその時点で敗北が確定してしまう。
度重なるストレスの連続でもはや理性が崩壊しつつある陸にもまだその程度の判断力は残されていた。

「だぁぁあああああああああああーーーーー!!!!」
「ぐっ、クソっ……!」

完全に我を忘れたかのような激情に身を任せた突撃もこの時ばかりは極めて効果的だった。
思考も戦術もない単純極まる剣捌きは、対峙する両者の身体能力に開きがあるならばそれだけで脅威となる。
少しでも令呪の使用に集中しようとすれば一瞬で両断される猛攻の前に士郎にはただ防ぐ以外の選択肢がない。






一方でイスラもまた令呪の強制力によってセイバーを滅するべくかつてない最短動作で本来の暴走召喚の限界すら超えた召喚魔法を放とうとしていた。
陸がこうなる事を止められなかった後悔はある、だがそれも目の前の敵を葬ってからだと自身に言い聞かせる。
如何にセイバーといえどこれは止められないし、防ぐことも出来まい。
避けるという選択肢はあるがそれもさせる気はない。
この二度とはない最強の一撃は常套の手段では躱せまい。



―――だが、敵もまた常套ではない手段を用いてくるとまではイスラにも想定できなかった。



「やらせんっ!!」

662 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:53:42 ID:4R8tmcHc0

何を思ったかセイバーは自らの半身であるはずの黄金の剣を、手首のスナップを利かせた最短動作のスローイングで投げつけたのだ。
頭部を狙った投擲に止む無くイスラが迎撃しようとしたまさにその瞬間、セイバーは壊れた幻想でカリバーンを爆破した。

「ガッ!?」

上級宝具の壊れた幻想による爆発には不死の呪いと令呪の援護を受けたイスラもたまらず顔を抑えてよろめく。

(ここだ―――!)

立て直しにかかるごく僅かな瞬間、常勝の王はそれを決して見逃さない。
ここを逃せば討たれるのはセイバー自身であると理解しているが故に。
瞬時に顕現させたセイバーの真なる宝具、その剣に纏わせた風を解放する。

「風よ―――吼え上がれ!!」

セイバーの持つ宝具の一つ、“風王鉄槌(ストライク・エア)”
その変則使用、荒れ狂う暴風の塊は魔剣の担い手の肉体を押し潰し、空高く打ち上げる。
そして至高の聖剣が輝きを発し、隠された真価を発揮しようとしていた。



その剣が示すは全ての人々の祈り。
想念によって鍛えられた最強の聖剣。
その身を風の鉄槌で潰され空高く打ち上げられながらも、イスラは確かにそれを見た。
最初に自分が殺した赤の少女がいた。
白い長髪に赤い瞳の雪のような少女がいた。
雪の少女の傍らに立つ巨大な鎧武者がいた。
ボサボサの髪を後ろに結った少年がいた。
少年の後ろに立つ道士服の男がいた。
つい先ほど踏み越えた群青色の侍がいた。

セイバーの真なる剣は輝きを増し、今ここに騎士王は手にする奇跡の真名を謳う。
魔剣の伐剣者(セイバー)よこの輝きの前に退け、虚飾を払うは星の聖剣。
其は―――



「―――“約束された(エクス)」



「勝利の剣(カリバー)”――――――ッ!!!」




その極光はさながら星の輝きの体現であった。
ただ一人のヒトガタに向けて放つにはあまりに巨大な光の斬撃は身動きの取れないイスラ・レヴィノスを容易く飲み込む。
その身にかけられた不死の呪いなどこの最強の聖剣の前では如何ほどの意味も持たない。

まるで英雄譚に出てくる三流悪役のようだ。
エクスカリバーの極光に身を焼かれながら、最期にイスラはそんな事を思った。
魔剣の適格者たる自分が聖剣の担い手に討たれるとは何たる皮肉か。
しかしそれは些細な事だ、どうせ自分はまたあの無間地獄に戻るだけだ。

だがこの敗北を悔しいと感じるのは間もなく自分の後を追うことになるマスターのせいだろうか。
口ではからかいながらも、イスラは内心陸を認め、少なくとも先ほどからは本気で力になろうと思っていた。
だがそれを伝える機会はなかった、嘘つきでしかない自分に真心を口にすることは許されないということか。
陸を勝者にすることが出来なかった、姉を求めた自分と重なる少年の望みを叶えることが出来なかった、ただそれだけが心残りだ。
結局自分達はキャスターの掌の上で踊らされていただけだったというのか。

(これでは、あまりにも――――――無念だ)

663 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:54:39 ID:4R8tmcHc0

その刹那の思考を最後に、嘘と謀略で勝利を掴もうとした反英雄は跡形もなく消え去った。
その存在そのものが、最初から実体のない嘘であったかのように。










セイバーがエクスカリバーを放つ直前、二人のマスターの戦いも佳境を迎えていた。
重傷を負っているにも関わらずこれまで以上のパフォーマンスを見せる陸に士郎の防御も限界が近づいていた。
あまりにも出鱈目に大剣を振り回されるせいで攻撃の誘導どころではない。
そもそもそんな思考が相手に残っているかも怪しい。

ならば―――――

「―――投影開始(トレースオン)」

生き残るために、天海陸を殺す他ない。
限界に近い魔力でも実行可能な投影で決着を着ける。
先ほどの金田一の遺した言葉が脳裏を過ぎり、すぐに振り切った。

(悪い金田一、俺は―――お前みたいな“正義の味方”にはなれない)

かつて綺麗と思い、憧れた理想があった。
いつかその理想を実現できる、誰もを救える正義の味方になりたかった。
だが今は―――

「―――鶴翼、欠落ヲ不ラズ(しんぎ、むけつにしてばんじゃく)」

バックステップと同時、両手の干将・莫耶を左右に弧を描くように投擲する。

「今さらこんなもんにっ!!!」

それらは当然のように陸の大剣に弾かれる。
だがそれで良い、そうでなければこの技は完成しない。

「―――心技、泰山ニ至リ(ちから、やまをぬき)」

再度干将・莫耶を投影、後退しつつ再び投擲する。
予定調和のようにまたも弾かれる、相手の頭に血が上っているせいかあまりにも上手くいっているようにも感じられる。

「―――心技、黄河ヲ渡ル(つるぎ、みずをわかつ)」

またも双剣を手に投影しつつ出方を窺う。
これで倒れてくれるかどうか。

「なっ!?」

ここで漸く陸が異常に気付いた。
有り得ざる奇襲、二度弾き飛ばした四本の双剣が孤影を描いて再度陸へと殺到する。
これが夫婦剣、干将・莫耶の真の特性。
互いに引き合う性質を持った白と黒の陰陽剣は円の結界のように天海陸を包囲した。

「っぁぁああああああああっ!!!!!」

だが陸はそれでも倒れない。
生存本能の為せる業か、瞬時に全方位に大剣を振り再度四本の夫婦剣を弾き飛ばした。

664 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:55:26 ID:4R8tmcHc0
その一撃たるや、下級の英霊をすら打倒し得るほどの苛烈さだ。

だが、だからこそ天海陸の命脈はこれ以上は続かない。

「―――唯名、別天ニ納メ(せいめい、りきゅうにとどき)。
―――終わりだ、天海」

双剣を手に士郎が駆ける。
無理に渾身の一撃を振るったことで陸の全身は硬直を余儀なくされる。
そして意識圏では士郎の全身全霊で振るわれる双剣を防げない。
さらに投擲された四本の夫婦剣も弾いただけだ、駆け出した士郎に自ら呼吸を合わせるように再び陸を包囲し襲いかかる。

これこそ双剣干将・莫耶の性質を生かした斬撃と投擲から成る連携技“鶴翼三連”。
先のアサシンの燕返しとは異なる、相手に回避をさせない状況を作り出した上での必殺剣。
初見では白兵に優れた一級の英霊でも深手を免れない悪辣な一手を凌ぐ手段を天海陸は有さない。

「い、嫌だ!何でこんな事に……!
オレは、オレはただ―――!」
「―――両雄、共ニ命ヲ別ツ(われら、ともにてんをいだかず)」

その先は言葉にならなかった。
意識圏を突き破った士郎の斬り抜けで胴体を、空を駆ける四本の双剣に頭部と両腕をバラバラに寸断されたからだ。

「壊れた幻想(ブロークンファンタズム)」

最後に握った双剣を背後に放り、爆発させた。
嘘をつき続けた少年に真実を口にする機会は訪れない、六本の双剣の爆発によって天海陸の総身は骨すら残らず消え去った。
奇しくもセイバーのエクスカリバーが放たれたのとほぼ同時の事だった。










「シロウ」

疲労と魔力の消耗が重なり肩で息をつく士郎の下にイスラを下したセイバーが駆けつけた。
自身も大量の魔力を消費したが士郎に比べればまだ戦える範疇だ。

665 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:56:29 ID:4R8tmcHc0

「…その、辛いでしょうがこれも戦争です。
裏切りや策謀は常に戦いの裏側に存在している。
リクにしてもそれは同じ、彼も志願して聖杯戦争に臨んだのです。
戦いの中で果てる覚悟はあったでしょう」
「……本当にそう思うか?」

セイバーの気遣いはありがたいが、士郎には陸が死を諦観した魔術師、あるいは死を覚悟した戦士だとはどうしても思えなかった。
例えるならばそう、今は亡き友人である間桐慎二のような、一般人に近い感覚の持ち主だったように見えた。(金田一を基準にするのは間違っているように思えた)

「金田一が言ってたよ。この聖杯戦争に参加するのはどうにもならないくらい追い詰められたやつだって。
天海もきっとそうだったんだ。もちろん遠坂を殺した事を許せるかって言われればとてもそんな気はしない。
でもあいつはあいつで誰かに、何かに助けを求めてたような気がするんだ」

そして、そんな人間を殺したのは他ならぬ士郎自身だ。
きっと、この戦いに明確な悪などどこにもいなかった。
いたのは救いを求めていた天海陸と、その命を己のエゴで切り捨てた衛宮士郎だけだ。

「…あるいは、そうなのかもしれません。
しかしどちらにせよ彼らは殺し合いに乗っていた。
そうである以上我々と相容れることは無かったでしょう、それだけは間違いのない事です。
それよりもシロウ、今のうちにライダーの遺したレコーダーの続きを聞くべきでは?」

露骨に話題を変えてきたセイバーに敢えて同意し、ICレコーダーのスイッチを入れた。

『ではここからはこの聖杯戦争の背景、わしのマスター命名“影の主催者”についてわしから考察を伝えたい。
そもそも何故わしらが殺し合いに乗らなかったのか、何故聖杯戦争の背景事情を疑ってかかっているのかと言えば―――』

ここは昨晩大空洞で情報交換をした時に話していたことだ。
それでわかった。恐らくこのレコーダーは本来自分達ではない、誰かに向けて用意したものなのだと。
最悪自分達が全滅ないし瓦解した後、それでも殺し合いに乗らずに脱出を目指す他の誰か、それこそ泉こなたのような力なき人間の助けになるように。
常に自分や、あるいはルルーシュ以上に巨視的な視野で物事を見ていたあの男なら十分に有り得る。
消滅する間際、ライダーがこのレコーダーの事を話さなかったのは元々彼にその気がなかったからなのだろう。

『―――わしらの考察は大体こんなところだ。
だがどちらにせよこの冬木市という会場からの脱出方法を確保することは至上命題であろう。
残念ながらわしの力ではこの会場の全てを解き明かすことは叶わなかった。
故にまずは量子空間の解析能力に優れた者、霊子ハッカーやそれに近い能力を持ったサーヴァントを味方につけるのだ。
無茶な注文をつけているのはわかっておるが、そうでもせねば脱出の可能性はまず見い出せまい。

666 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:57:23 ID:4R8tmcHc0
そして最後に―――この聖杯戦争はムーンセルの変質、つまり並行世界との接触を経たことで開かれたことは疑いない。
だがそれは外部の働きかけだけでムーンセルを動かしたわけではあるまい。
ただの記録装置はひとりでには狂わんし、外部からの働きかけがあったとしても自ら変質するという選択肢は本来なら存在しないはずなのだ。
言い換えればこの聖杯戦争が行われる前、いや、もっとずっと以前からムーンセルのどこかに潜み、月の改変を望む者の存在が必ずあったはずだ。
その者の存在を暴き、そして見極めるのだ。そうして初めてこの聖杯戦争が開かれた目的が見えてくるはずだ』

記録音声はそこで終わった。
これからやるべき事はいくらでもある、まずはこなたとライダーに事情を話さなければならない。
一応反魔の水晶という証拠品もあるにはあるが、それでも純粋な一般人であろうこなたが納得するかと言えばわからない。
最悪こなたと対立する可能性すらあるのだ。

そして太公望の言う空間の解析が出来る仲間を探す必要もある。
正直士郎には太公望や金田一のように上手に他人を説得出来る自信はない。
それでも彼らの遺志を無駄にするわけにはいかない。
そして切嗣とどう向かい合うのか、そこからも目を背けるわけにはいかない。

だが今は―――

「…少し休もう、セイバー。
悪いけどしばらく動ける気がしない」
「はい、それが良いでしょう。
この地で体を休めた方が魔力も早く回復するはずです」

少しぐらい休息を取ってもバチは当たらないだろう。
セイバーと二人、戦闘の余波でまたも破壊された本堂を横目に大木の下に腰掛ける。

(俺と天海は同じだ、俺だってもし桜が死んでいたらどうなるかなんてわからない。
もしかしたら、地上とは違うここの聖杯に縋って殺し合いに乗ってしまうかもしれない。
セイバー、お前は俺がそんなやつでも一緒に戦ってくれるのか?)

口には決して出せない弱音を飲み込みながら、天海陸の事を思い出す。
言峰綺礼や間桐臓硯とは違う、本来は悪ではないにも関わらず殺し合いに乗ってしまった者。
せめて、そういう人間がいた事は覚えておこうと心に誓った。


【天海陸@ワールドエンブリオ 死亡】
【セイバー(イスラ・レヴィノス)@サモンナイト3 消滅】

【深山町・柳洞寺/昼】

【衛宮士郎@Fate/stay night】
[令呪]:3画
[状態]:疲労(大)、魔力消費(特大)
[装備]:携帯電話、ICレコーダー、反魔の水晶@サモンナイト3
【セイバー(アルトリア・ペンドラゴン)@Fate/stay night】
[状態]:魔力消費(大)

※陸の持っていたニューナンブは戦闘で破壊されました。
※ICレコーダー@現実…太公望が自分達が全滅した時の備えとして、仲間達の目を盗ん で金田一のクレジットカードをスって勝手に購入したもの。
午前9時時点での太公望の考察が記録されている。
尚、これは本来士郎やルルーシュなど身近な仲間ではなく他に脱出を目指す誰かに向けて残されたものだった。
しかし妲己は自分の無実を証明するために杏黄旗と同じ場所に埋められていたこれを掘り出し、結果的には衛宮士郎の手に渡っ

667 ◆XL.nOGsA4g:2013/05/21(火) 15:59:03 ID:4R8tmcHc0
以上で投下を終了します
まず陸組のさらなる活躍を期待していた方々ごめんなさい!
そして碌に活躍させてあげられなかった小次郎にもごめんなさい!
私がこのSSを書くにあたってまず最初に考えたのが「書きにくいキャラである妲己ちゃんを如何に良い形で退場させるか」ということでした。
戦闘させなかったのはそのせいです。
原作で本気で戦った描写が無いというのもありますが、個人的に下手に戦闘させるとそれだけでキャラとしての魅力を削いでしまうと思いましたので。
そして士郎組を助ける展開に持っていったのは前話での描写から不自然に感じられる方もいるかもしれません。
これは前話での「負ける」という言葉は士郎組ではなく陸組に対して向けられたものだった、という解釈によるものです。
頭脳派の彼女が自分を陥れた陸組を放って士郎組との戦いに拘るのは近視眼的に過ぎるのでは、と感じた次第です。
これらの思考の結果妲己ちゃんによるネタばらしという展開になりました。
また、議論スレの方で太公望があまりにもあっさり退場した、という声がありましたので後付けですがICレコーダーという形で出させていただきました。
単独行動スキルもあるので金田一にも察知されなかった、とお考えください。
この他感想、指摘等ありましたらお願いします。
それとタイトルは「真実と憎悪の果てに」でお願いします

668名無しさん:2013/05/21(火) 16:57:48 ID:xNi4jzYQO
投下乙です!
何だろう、負けたのにアサ次郎がやたら格好よく見えるわw
軍師のレコーダーもまあ大丈夫な範疇じゃない?
これより規模のでかい後付けなんて今までいくつもあったしね
そして陸組はここで脱落か、だから死亡フラグを立てるなとあれほど・・・
とにかく盛りだくさんな内容でした、改めて乙です!

669 ◆ARbuQtVLig:2013/05/21(火) 17:14:55 ID:H9ndxe/.0
大作投下お疲れ様です!
妲己ちゃんはここで退場か、アサ次郎もやはりカッコいい。
自分も後付けについては問題はないと思います。それこそ、これよりも大きな後付けだってありましたしね。

そして完成の目処が見えて参りましたので
匂宮出夢&アサシン(サブラク)、間桐慎二&ライダー(ラオウ)、羽瀬川小鳩&キャスター(キンブリー)、枢木スザク&バーサーカー(ランスロット)
再予約させてください

670名無しさん:2013/05/21(火) 17:22:06 ID:eV/YawGg0
ワカメの呪いがかからぬことを切に願う!

671名無しさん:2013/05/21(火) 17:28:23 ID:6KGGL4YM0
投下乙!
たくさん悪事を働いていたイスラ組のはずなのに、
途中からセイバーたちに負けるな!と陸たちを応援してしまっていたよw
きのこ節な文章もGOODだ!!

672名無しさん:2013/05/21(火) 17:57:39 ID:eV/YawGg0
25組中11組が半日で脱落しましたー☆ 正式な参加者は50人中22人脱落。
二日目来る前に本当に終わるんじゃないのこれ。

今フラグが立ってるのは
・ケリィ組vs番長組
・ケリィ組vs市長組
・ケリィ組vsこなた組
・ケリィ組vsルルーシュ組
・ルルーシュ組vsゼフィール組
・ゼフィール組vsジュネス&スケベ組
・番長組vsジュネス&スケベ組
・番長組vsまどか組?
・暗殺組vsワカメ組
こんくらーい。月がドンパチ賑やかになったらいい加減ラスボス登場してもらわんと。

673名無しさん:2013/05/21(火) 18:57:54 ID:mraydZCc0
ケリィw

674名無しさん:2013/05/21(火) 19:39:55 ID:yYya9g1E0
投下乙
しかしひどいデスコンを見た
どんなブーストをかけようが超火力宝具をぶっぱする状況を作られたら
全部無意味だということをイスラは身をもって教えてくれたな

>>671
何か陸組を応援したくなるのは全部暴かれてガタガタになっていく描写が
これでもかってぐらい挟まってるからだろうね
そりゃあの絶好調状態からいきなりあそこまで転落したら陸じゃなくても発狂するわw

675名無しさん:2013/05/21(火) 20:01:17 ID:RL9lQOoY0
投下乙です!
やはりアサ次郎はカッコよかった…狡猾だったダッキちゃんも此処で脱落か
そしてダッキちゃんがきっかけで全ての嘘がバレた陸組、流石に士郎と騎士王には敵わなかったな
陸は終盤かなり冷静さを失ってたけど、相当粘ったな
彼らはいいステルスマーダーだったよ…

676名無しさん:2013/05/21(火) 20:32:29 ID:beJ719/.0
投下乙です!
これは名作、おもしろかったああああ!
暗躍し続けたイスラ陸組みも今回ばかりは運と相手が悪かった
あいつらの敗北も納得な手詰まり
まあそりゃ本編主人公ズと太公望・妲妃をまるごと相手にしちゃえばこうなるよなあw
イスラ陸打倒はすかっともした反面、士郎じゃないけど、死に際の本音を知っちゃってやりきれない思いもあるわ
本当に、GJなお話でした!

677名無しさん:2013/05/21(火) 21:07:29 ID:3FLoH8Xg0
投下乙。
陸組が一話で脱落したのは意外といえば意外だった。
まあ、最後まで残るとは思っていなかったので引き際としてはよかったかも。
中の人的にもセイバーとアティ先生は同じだし、太公望もあれくらいは残しててもおかしくないと思うしね。

678名無しさん:2013/05/21(火) 21:21:11 ID:xdhqUduw0
投下乙!
士郎は凛の仇を討てたけれど心中は複雑、か

陸組が個人的に一番好きだったので、寂しいけど
彼ららしい散り様で嬉しかった。良い退場話をありがとうございます

679名無しさん:2013/05/21(火) 21:26:43 ID:xdhqUduw0
そして今気づいた

>仲間達の目を盗んで金田一のクレジットカードをスって勝手に購入したもの
スリの得意なはじめちゃんが逆にスられてるw

680名無しさん:2013/05/21(火) 22:20:06 ID:ptEMjOAQ0
投下乙です
イスラはやはり策謀を主とする英雄、騎士王には勝てなかったかー
これで後は慎二たちが投下されれば一日目の大イベントはだいたい終わりかな

681名無しさん:2013/05/21(火) 23:26:39 ID:eV/YawGg0
>>680
まだ大半の組が午前中なんですけどwww半日すら経ってないです。

682名無しさん:2013/05/21(火) 23:30:27 ID:xNi4jzYQO
何か士郎と陸の対決シーンってどこかで見たような気がすると思ったらアレだ
Zeroのケリィ対ケイネス先生に近い構図なんだ
反則的攻撃で負傷させてからの精神攻撃、とどめにマスターにはまず無理ゲーなハメ技
あれ?行動だけ抜き出したら士郎がケリィクラスの外道に見えるんだが

683 ◆W5y6oK650.:2013/05/22(水) 00:19:40 ID:Gmq6l8bI0
花村組、名無組を予約します。

684名無しさん:2013/05/22(水) 00:39:21 ID:mwXxYroYO
投下乙です。

ダッキはマスター見殺し、その腕奪い、サーヴァント召喚とやりたい放題やって退場したな。
陸組の敗因は、やっぱりダッキに濡れ衣着せたことだな。触らぬ神に祟り無し。


>>682
さすが親子。ケリィの魂はシロウに受け継がれていた。

685名無しさん:2013/05/22(水) 01:03:37 ID:eih4NJWY0
>>682
HFでイリヤや凜倒して優勝できるわと言峰に明言されるくらいだから>士郎

686名無しさん:2013/05/22(水) 05:00:33 ID:0K2tnnPMO
>>682
じいさんの理想を追い続けた果てな紅茶の技使ってるからね、仕方ないね

687名無しさん:2013/05/22(水) 10:32:44 ID:UBtR7.Lo0
>>684 >>685 >>686
一連の流れにワロタww

あと特に反対意見もないようなのでwikiに収録しておきますね

688名無しさん:2013/05/22(水) 11:47:40 ID:UBtR7.Lo0
収録完了
しかしこれって分割した方が良さそうな長さだよな…

689名無しさん:2013/05/22(水) 22:13:14 ID:LM6N6KGI0
この士郎って桜ルートの最後以降でいいんだよね
鶴翼三連とかソードバレルとかやってるけど、アーチャーの腕からの侵食ってなくなったんだっけ

690名無しさん:2013/05/22(水) 22:19:41 ID:N6fCDYJA0
イリヤが色々うまくやったからそういうのは完治してるはず

691名無しさん:2013/05/22(水) 22:31:54 ID:LM6N6KGI0
完治というか、まだアーチャーの腕を繋げた状態なのかってこと
普通の人間に戻ったのか、アーチャーの腕を副作用なしで制御できるようになったのか

692名無しさん:2013/05/23(木) 00:34:51 ID:1FJQn3ZQ0
EDで肉体そのものを挿げ替えたからアーチャーの腕はもう無いはず

693名無しさん:2013/05/23(木) 01:22:05 ID:bc00rnegO
そう考えると全ルートで総合的に一番強い状態かもな
一番過酷なルートでアーチャーの経験値だけ残ってて桜ともライン繋げてたはずだし
多分だけどライダーが残留してる以上稽古ぐらいつけてもらっててもおかしくないし
凛ルートの方が固有結界使えるけどどっちみちセイバーに魔力供給しながら使えるわけないからそこは関係ないしな

694名無しさん:2013/05/23(木) 08:44:28 ID:WhM7Zl020
>>691
流石にアーチャーのオリジナルよりは弱くなっているかと。
経験値の差があるし。ただし、一度使っていればその辺りは慣れもあるから。

695 ◆cZZLL4oHWc:2013/05/25(土) 11:22:32 ID:XAhwMmYk0
鹿目まどか&アーチャー、ゼフィール&ライダー、鳴上悠&ランサーで予約します

696名無しさん:2013/05/25(土) 14:44:42 ID:hiBt5IVY0
うわああw
しかしゼフィール&ライダーはおいしい位置についたな
俺今予約見て素で、ぐえ、ってなったもの
絶望的な強さのマーダーは美味しい

697名無しさん:2013/05/25(土) 14:55:19 ID:YUVK9UiI0
また死人が出るんです?(震え声)
マジで1日で終わるんじゃないかこの聖杯戦争w

698名無しさん:2013/05/25(土) 22:51:18 ID:3QJyUVio0
恐るべき予約陣営だなww
まどっちが対主催化で番長組もどうなるか解らんし、おまけに狂王すらいるし
これはどう転がるのか………

699 ◆cZZLL4oHWc:2013/05/25(土) 22:55:16 ID:ycHnJY1M0
すみません、市長と大統領を予約し忘れてました
>>695にジョン・バックスとファニー・ヴァレンタインも追加です

700名無しさん:2013/05/25(土) 23:39:45 ID:.lccUPeQ0
>>699
大統領、死んじゃららめぇぇぇ!!!(市長がヤバい的な意味で)
もしものはなしだが、狂王vs兄貴(狂化なし)のガチバトル見たかったな

701名無しさん:2013/05/26(日) 00:21:51 ID:IIvPelfQ0
まどか「この面子で日常編をお送りするよ!」

702名無しさん:2013/05/26(日) 09:50:39 ID:92z746hY0
そういえばこのロワで言ってる魔力って、普通のファンタジーで言われてるようなMP的な意味の魔力であってるのかね?
エクストラプレイした時には、てっきり勝手に魔力=電脳空間での計算リソースみたいなものって捉えて考えてたんだがw

703名無しさん:2013/05/26(日) 10:13:56 ID:kuMpYEnw0
作中の描写的にもMPでいいんじゃないかな?
まぁ電脳世界ってことを考えれば計算リソースも有り得るけど、普通にMPの方が解りやすそうw

704名無しさん:2013/05/26(日) 13:22:29 ID:qvtInUmY0
>>701
無茶を言うなwwwww

705名無しさん:2013/05/26(日) 18:36:21 ID:7VWqX8aMO
>>701
番長がまどかと世界コミュですねわかります

706名無しさん:2013/05/26(日) 18:44:25 ID:b7jnloHc0
DIO「”世界”コミュ?」ガタッ

707名無しさん:2013/05/26(日) 19:27:37 ID:JTfa5QRs0
お前らヤメロッテ!作者さんが本当にこの面子で日常パートしようとしてたらどうするんだ!

でも実際大統領戦ったら死ぬな。市長が。

708名無しさん:2013/05/26(日) 20:18:29 ID:OfSGqWWk0
>>700
素面の兄貴だと技能的問題で狂王は確実に死にますからの。
ただ技術使えない代わり、狂化Cで恐怖が効かなくなるのか。

709名無しさん:2013/05/26(日) 20:38:35 ID:JTfa5QRs0
>>708
そもそも距離の関係で飛んでる相手に刺しボルグはほぼ当たらないんですが。
当然兄貴は突きボルグで勝負する事になる。
回避はできるし防御も出来るけど単純にはかいこうせんとの撃ちあいになるんじゃないかな。
狂化中の今なら、はかいこうせんと突きボルグのダメージは同等かな。

710名無しさん:2013/05/26(日) 20:44:33 ID:CePecMA.0
日中の街中でドラゴンなんて使ったら隠蔽も何もないんですが
それこそ海魔みたいに討伐対象になっても不思議じゃない

711名無しさん:2013/05/26(日) 20:58:42 ID:PYh2oAlk0
そもそも狂化してるからボルグ使えない

712名無しさん:2013/05/26(日) 21:01:02 ID:jhLYOeRc0
ルールを勘違いしてる奴が多いな。
・仮想電脳世界で行われるルール無用(ただしペナルティは存在する)の殺し合い。
・一部非戦闘地域(冬木教会)があり、そこでの殺傷行為はペナルティ(能力低下、討伐令発令等)。
・NPCを魔力炉に利用するのは問題ないが度を越した場合はペナルティ。
参加者の殺人に関するルールはこれだけ。
街中で対城宝具ぶっぱしようがドラゴン出そうが大海魔出そうがお咎めはない。当然隠蔽の義務はない。

713名無しさん:2013/05/26(日) 21:04:38 ID:CePecMA.0
狂化したら宝具使えない、なんて設定は初めて聞いたな
ヘラクレスやランスロットは常時発動、アポクリファの赤バーサーカーの宝具は一撃で聖杯大戦を決着させるとまで言われてるのに
さらにここではランスロットがアロンダイト使おうとしてスザクの魔力が足りなかった、って話が通ってる以上はね

714名無しさん:2013/05/26(日) 21:22:33 ID:jhLYOeRc0
使えなくなる宝具があったりするって話じゃないの?
射殺す百頭みたいに、ある程度の知能や技術や集中力が必要だとか。

715名無しさん:2013/05/26(日) 21:25:40 ID:kuMpYEnw0
ムーンセル冬木市である以上隠蔽する必要はないけど
下手に暴れれば敵チームに情報が流れかねないので、情報操作に追われる市長がストレスと疲労で過労死するな

716名無しさん:2013/05/26(日) 21:26:59 ID:OfSGqWWk0
>>713
知っているかもしれないけど。
常時自動発動しているような、技量など一切関係がない肉体的なものだけだよ。
技量は失われている、とヘラクレスの項目で明記されている。
ランスロットは、「無窮の武練」で技量を一切失わないからセーフ。

本来持っている「射殺す百頭」のようなものが使えなくなる。

717名無しさん:2013/05/26(日) 21:27:50 ID:kuMpYEnw0
連発失礼

まぁ正直宝具回りに関しては書き手の裁量で適当に決めてもいいと思うけどなぁ
狂化している以上、書き手さんもある程度は空気読んで制限かけるだろうし

718名無しさん:2013/05/26(日) 21:30:14 ID:PYh2oAlk0
というか狂化したら喋れないから真名解放出来んし

719名無しさん:2013/05/26(日) 21:36:01 ID:kuMpYEnw0
まぁ、突きは兎も角
投げならギリギリできるかもね

720名無しさん:2013/05/26(日) 21:51:32 ID:jhLYOeRc0
結局兄貴は真名解放できないから槍を直接投げるか
テレサよろしくバッタみたいに跳ね回るしかないのね。

721名無しさん:2013/05/26(日) 21:57:34 ID:kuMpYEnw0
投げボルクならワンチャンありそう、突きは厳しいかもだけど
つかやっぱり狂化ってステータス上げることと鯖黙らせること以外に関してはデメリットしかないな……(震え声)

722名無しさん:2013/05/26(日) 23:16:25 ID:jhLYOeRc0
Q:バーサーカーがまともに戦うには?
A:最初から頭の悪いサーバントを使う。マスター賢けりゃ勝つでしょ。
  バーサーカー化しても理性を失わないサーバントを使う。いたっけ。

723名無しさん:2013/05/27(月) 01:03:55 ID:sgQ/6m020
デフォルトで曖昧な虎眼先生なら

724名無しさん:2013/05/27(月) 19:58:58 ID:R2E5A4Ng0
>>721
呂布のように裏切りが業と化しているサーヴァントや、狂王や虎眼先生みたいに人格面において多大な問題のある連中は、むしろバーサーカーの方が扱いやすい。

問題は魔力供給源をどうするかだが。

725 ◆cZZLL4oHWc:2013/05/28(火) 02:18:41 ID:X6.7ms620
延長申請しておきます

726名無しさん:2013/05/28(火) 12:04:55 ID:9XFPiBP.0
ああびっくりした、呪われたかと思った

727 ◆ARbuQtVLig:2013/05/28(火) 15:56:50 ID:TsjX1G620
予約の延長を申請します

728 ◆W5y6oK650.:2013/05/28(火) 20:34:37 ID:5SxFL9GE0
延長申請します。

729名無しさん:2013/05/31(金) 15:15:42 ID:VnOiEC8s0
支援

730名無しさん:2013/06/03(月) 20:42:33 ID:UsMJkxbg0
えんちょうりょうかーい

731 ◆FTrPA9Zlak:2013/06/03(月) 23:30:50 ID:46xzbpXg0
泉こなた&ライダー組予約します

732名無しさん:2013/06/04(火) 00:21:14 ID:09VU5bxY0
ライダー助けて!

733名無しさん:2013/06/04(火) 17:12:25 ID:FXEhGBII0
そろそろワカメ組の投下来るか

734名無しさん:2013/06/04(火) 17:25:57 ID:P7MhGb.o0
※このロワはワカメに呪われています

735名無しさん:2013/06/04(火) 18:26:09 ID:OgzXCn1g0
ワカメじゃ!ワカメの仕業じゃ*

736名無しさん:2013/06/04(火) 20:04:49 ID:mynIOSJ.0
そして気づけば名鑑も更新されていた!
一気読みしてニヤニヤしたぜw

737名無しさん:2013/06/04(火) 20:22:39 ID:P7MhGb.o0
>>736
ニヤニヤしたついでに道場も更新していいのよ!

今夜から明日にかけて教会組の投下もあるから
そんなに気にしなくていいかもね。

738名無しさん:2013/06/04(火) 23:35:10 ID:FXEhGBII0
ワカメ組の人投下できないにしても、破棄の宣言はしに来て欲しいな…

739名無しさん:2013/06/05(水) 00:00:38 ID:pz.qdviY0
まあまあ。20分後には次のが投下されてるさ。
割と最初のほうからいる書き手さんだったから一言あると思ってたが。

740名無しさん:2013/06/05(水) 15:37:32 ID:yRC.uH4o0
呪いが広まっている可能性が…!

741名無しさん:2013/06/05(水) 16:02:27 ID:5DDo1oXY0
その呪いでまどっちを撃破できたら呪いとして認定しよう。

742 ◆2shK8TpqBI:2013/06/06(木) 01:18:06 ID:/95ZvYpE0
ワカメ組と教会組は結局破棄で
いいですか?
もし正式に破棄ならワカメ組の
話を書きたいのですが、予約していた書き手さんがまだ投下する気なら止めておきます。
連絡を貰えると有難いです。

743名無しさん:2013/06/06(木) 01:32:44 ID:jKrUC2hs0
>>742
暗殺者組は予約に入りますか(遠足のおやつのバナナの可否を訊く小学生並)

744 ◆2shK8TpqBI:2013/06/06(木) 21:32:04 ID:/95ZvYpE0
今日1日様子を見て連絡が無かったら
間桐慎二&ライダー
羽瀬川小鳩&キャスター
朽木スザク&バーサーカー
匂宮出夢&アサシン予約します

745名無しさん:2013/06/06(木) 21:58:23 ID:odVSQ2Go0
流石に音沙汰なしのまま有耶無耶になるよりは、他の書き手さんが進める方が良いだろうしね
ワカメ組の所はとにかく予約破棄が連続して続いてるんだし
もし予約することになれば期待

746名無しさん:2013/06/06(木) 22:21:02 ID:K25yJWBs0
現実の都合もあるだろうし、期限過ぎても一日くらいなら待ってもいいかもしれないね
その間に反応なければ残念だけど破棄で

747 ◆cp3jCCSc7M:2013/06/07(金) 12:47:50 ID:WUcEICqU0
衛宮切嗣&ライダー、衛宮士郎&セイバーを予約します

748 ◆cZZLL4oHWc:2013/06/08(土) 06:50:51 ID:iFptPKCk0
すみません、期限内に完成しなかったのでいったん予約を破棄します
完成しだいまた予約させていただきます

749名無しさん:2013/06/09(日) 19:28:11 ID:o1OrujcQ0
保守

750 ◆FTrPA9Zlak:2013/06/10(月) 01:26:22 ID:UIYsGQIw0
予約延長お願いします

751フェスティバル ◆2shK8TpqBI:2013/06/11(火) 00:58:35 ID:Bsk9YENE0
自分でもちょっと疑問に思う部分があるんですがひとまず投下します。



【1】 

 「くそ、予想以上にひどいな。」

 叔父である間桐雁夜とトキとの戦闘を終えた慎二は、屋敷の損傷具合を調べるため拠点である間桐邸を周っていた。
 一階を除いて破壊されていたためある程度は覚悟をしていたが、予想以上に被害がひどい。
 これではここをメインの拠点にすることは不可能だろう。
 しかし今移動すれば他の参加者に鉢合わせするかもしれない。
 先ほどの戦いは宝具同士のぶつかり合いでとても目立っていた。
 またライダーとバーサーカーは酷いダメージと魔力消耗をしており自分も疲労がひどい。
 キャスターは無傷だが真正面からの戦いには向かず、また信用も出来ない。
 しかしこのままここに篭っていても大した効果が有るとも思えない。
 リスクを承知で安全地帯まで逃げるか、此処に残り少しでも回復に専念するか・・・

 「移動するぞライダー、ここはもう破棄する。」
 「俺はかまわんが良いのか?」
 「どのみち此処は使い物にならないんだ。もっと安全なところで休息をとるぞ。」
 
 ああまで派手に音が響いたなら他の参加者が此処に来てもおかしくない。
 移動するリスクと留まるリスクが変わらないならリターンが大きい方をとるのは当然だった。
 最悪キャスターとバーサーカーを捨て駒にすれば自分たちだけは生き残れるという計算もあった。

 「ふん、いいだろう。当てはあるのか小僧?」
 「ああ、今の此処よりもはるかにマシな場所で、拠点にも申し分無い所を知ってるよ。」

 そういって歩き出す慎二。ライダーとキャスターも後に続き、バーサーカーも覚束ない足取りでついてくる。
 補充にも便利な土地に在り、霊脈にも掠めるように立っているため他の場所よりも効率的に回復できる場所。

 「持つべきものはトモダチだよなぁ衛宮ぁ・・・!」

 目指す場所は衛宮邸。

752フェスティバル ◆2shK8TpqBI:2013/06/11(火) 00:59:51 ID:Bsk9YENE0



【2】


 「おりょ?いねえじゃねえか。」
 
 すでに誰もいなくなった間桐邸に現れた人影。
 長い黒髪に小柄な体躯。
 両腕は身体と比べると異様に長い。
 猛禽類を思わせる八重歯が特徴的な美少女。
 《人食い(マンイーター)》の出夢だった。
 スザクのサーウァ゛ントを取り戻すべく移動していた彼女は、バーサーカーを奪った少年が向かって行ったという方角に向け進んでいた。
 その折轟音が聞こえ向かったが、着いたときにはすでに間桐慎二たちは移動していた後だった。 

 「ぎゃははっ!見事にぶっ壊れてるぜ!爆弾でもこうはならねえだろ!」
 「どうするのだマスター、当てがなくなったぞ。」
 「さーて、どうしようかねぇ。・・・ん?」

 辺りを見渡していた出夢は瓦礫の隙間に地下へ下りる階段らしきものを見つけた。
 瓦礫を引っぺがし階段をトントンと下りていく。
 薄暗い部屋の中、異臭が鼻につく。部屋の奥に気配を感じ近づくとそこには鎖に繋がれた少女、羽瀬川小鳩がいた。
 虚ろの瞳、体中に拷問の跡があり正気を失った表情でこちらをぼんやりみていた。
 裏の世界では珍しくない光景に動揺せずに、周りの異物を気にせず近づく。

 「ふーん、見事に死なない程度に痛めつけられてるな。墓森の拷問係になれるんじゃねえか?」

 そのまま近づき顔を覗き込む。

 「よ!こんにちは。ご機嫌いかがってか。」

 まるで今目の前の少女の現状が分かっていないかのように挨拶をする。
 しかし小鳩は何も返事を返さない。しかし出夢はそれに気にすることはなくぎゃはっ!、と笑い

 「介錯して欲しいつうんならしてやるけどどうする?」








 
 地上から大きな音が聞こえて地下の土倉を揺らした。
 その音にわずかに顔を上げその動きで体中に痛みが走る。
 けれどその痛みはもう慣れきってしまった。
 人は順応する生き物である。与え続けられた苦痛はもはや彼女の一部になってしまった。
 全身を痛みが埋め尽くそうと、心が折れてしまっても、精神が摩耗してしまっても、それでも彼女は生きていた。
 否、生かされていた。もはや現実を認識できてもいないだろう。空想の中で幸せな夢を見ることも出来ない。
 今の彼女にあるのは絶望、虚無、そして激しい憎しみだった。
 やがて一人の男が土倉に下りて来た。自分の目の前で後悔と慟哭をする男は、背後から黒い騎士に貫かれ死んだ。
 そして自分のサーウァ゛ントだった男が下りて来て、赤い石を使いナニカをすると、僅かだか痛みが引いた。
 そしてそのまま消えてしまったかつての従者を見ても、少女は何も反応しない。
 そしてどれくらいたったのだろう。時間の感覚が分からなくなってきた。
 やがて一人の見知らぬ人が降りてきた。
 小鳩よりも年上な、けれども女性というには若い年齢だ。
 少女の現状に顔色ひとつ変えず、ぎゃはっ!、と特徴的な笑い方で顔を覗き込み尋ねる。

  
 「介錯して欲しいつうんならしてやるけどどうする?」

753フェスティバル ◆2shK8TpqBI:2013/06/11(火) 01:01:12 ID:Bsk9YENE0




ああ、もう自分は終わるんだ。
 結局自分は何一つ出来ずに終わってしまう。
 けれど、しょうがないのかもしれない。不順な動機で碌な覚悟も無いまま参加したツケが回ったんだ。
 もう、このまま楽に・・・


 “小鳩――――”


 楽に・・・・・?




 “どうした?また泣いてるのか―――?”



 このまま―――死ぬ?



 “泣くなよ!兄ちゃんが守ってやるから―――”


 嫌だ・・・兄に会いたい・・・死にたくない!









 






 「たふけて・・・。」

 目の前の少女が言葉を発したのに気づいた出夢は、そのまま顔を近づける。
 死に掛けた少女の命乞いの言葉を聴こうと耳を傾けるが、それは出夢に向けて放った言葉では無かった。


 「たふけて・・・おにいちゃん・・・」

 
 バキィ!

 
 引き千切られた鎖が地面に散らばり小鳩の身体が前に倒れこむが、出夢はそっと抱きとめると慎重に小鳩を抱きしめた。

 「ハッ!人識のやつならこういう時傑作とかいうのかねぇ。」

 顔は皮肉気に笑い、けれどその瞳は複雑な感情を宿し小鳩を通して誰かを見ていた。

 「妹かよ・・・。」

 傷が響かぬよう慎重に背中に背負い直し、階段をゆっくりと上り始めた。

754フェスティバル ◆2shK8TpqBI:2013/06/11(火) 01:02:39 ID:Bsk9YENE0




【3】


 「それでわざわざ戻ってきたのかい?」

 スザクは片腕を使いなんとか体勢を整えると自分が依頼した殺し屋、匂宮出夢に問いかける。
 当の出夢は気にした様子も無く窓の縁に腰掛けスザクを見返していた。

 「どの道こいつのサーウァ゛ントも取り返すつもりだったんだからよ、細かいことは気にスンナよ。」

 悪びれなく言われハアっとため息をつくと改めて連れてこられた少女を見る。
 傷だらけだった体は処置がされ今はベッドで横になり深い眠りについている。
 最初ボロボロになっている少女を抱えた出夢が玄関から入ったときはこの家の家主の老夫婦は卒倒したがかまわず部屋に上がり的確に処置をしていった。
 彼女が言うには闇医者の知り合いがいてよく治療を受けたときに自然に覚えたらしい。
 けれど、あくまでも応急処置なのでキチンと病院に連れて行ったほうが本当はいいのだろう。
 しかしサーウァ゛ントを連れずに入院し万が一他のマスターに知られたらおしまいなので動かせずにいる。
 (ここも見つかれば終わりなのだが病院よりはまだマシだと判断した)

 「心配しなくてもアサシンの旦那に頼んで探してもらってるからよ。それにそろそろ・・・」


 ―――――ピンポーン―――――

 「お、来たな。」
 
 そういってそのまま窓から飛び降りた出夢に唖然としながらも、今更心配するだけ無駄だと感じ気にしないことにした。

 「とりあえずはこれで我慢しろよお兄さん。動くくらいはこれで大丈夫だろ。」

 そういって渡されたのは義手と義足だった。あらかじめカードを使って用意してくれていたらしい。
 リハビリは必要だろうがこれで遠くないうちに戦線に復帰できる。

 「すまない、感謝するよ出夢。」
 「気にすんなよお兄さん。どのみち渡すつもりだったんだからよ。」
 「だが・・・」
 「そんなに気にするつーならよお兄さん。交換条件といこうぜ。」
 「条件?」

 その言葉に僅かに身構える。しかし出夢は大したことじゃないんだけどさと頭を掻き。

 「そいつをついでに守って欲しいんだけどよ。もちろん僕が仕事を終わらせる間だけでいいぜ。」
 「それは・・・。いや、わかった。必ず君が戻るまでこの子を守ると約束するよ。」

 弱きを助け悪を挫く。
 もう自分は騎士失格の男であっても、この騎士道はまだ捨てたくはないと思った。

 「決まりだな。」

 ニイっと笑い窓際に立つ出夢。

 「んじゃまあそいつのこと頼むぜおにいさん。」

 そのまま縁に立ち身を屈め、

 「ぎゃははははっ!!いくぜおらああああ!!」

 そして一気に跳躍し、町の中へと消えていった。

755フェスティバル ◆2shK8TpqBI:2013/06/11(火) 01:03:17 ID:Bsk9YENE0



 【4】

 「だれもいないみたいだな。」

 衛宮邸に到着した慎二たちは中を探索し、だれもいないことを確かめると居間に腰を落ち着けた。
 キャスターは門番をさせてありライダーは霊体化してそばにいる。

 「おい、バーサーカー」

 慎二の呼びかけで姿を現すバーサーカー。
 その姿は出発したときと変わらずにボロボロである。

 「今からテキトーなやつを魂喰いをしてこい。戦えるようになったら戻ってこいよ。」

 バーサーカーは頷くと霊体化し消えていった。おそらく人の多い商店街の方にでも行ったのだろう。

 「さて、暫くは休息だな。お前が回復する間はキャスターとバーサーカーに戦ってもらうとするか。」
 「この拳王がこれしきの傷で遅れをとるとでも?」
 「だ、だれもそんなこと言ってないだろ!」

 僅かに殺気立つラオウの迫力に押され口篭りながら反論する。
 興味を無くしたのか霊体化するラオウ。反抗的な態度に高くない沸点を超えそうになるが深呼吸をし我慢する。
 ライダーの強さは疑っていない。間違いなくトップクラスの実力を持つだろう。
 魔力消費も戦うときは本人の気を使うため実体化の時以外は使わないため燃費はすこぶる良い。
 魔術回路を持たない自分には正直ありがたい性能である。
 だがもっと順応のサーウァントが良かった。令呪でこちらの言うことは逆らえないとはいえ相性が良いとは決して言えないだろう。
 
 (くそっ!まあいいさ、全部うまくいってるんだ。傷が治れば衛宮のあのセイバーでも倒せる!いや、あれも令呪を使って僕のものにしてしまえば僕の勝ちは揺るがなくなる!)

 クククと下種な笑いをもらす慎二、ライダーはその様子に不快な感情を隠せなかったがマスターに異を唱えることができない。
 しばらくは静観の構えでいいだろう。せいぜい他の参加者同士で潰し合っていればいい。
 柳洞寺で籠城しているマスターたちのことも気になるが今は下手に動くべきではない。
 
 (他のマスター達に情報を流してつぶし合わせるの悪くないかもしれないなぁ)
 頭の中で様々な策を立てていく。積極的に戦う必要は無い、潰し合わせて弱ったところを横から思い切り殴りつけるのが自分の戦い方だ。

 「そうさ、僕にはできる!できるんだ!!衛宮にも遠坂だって負けるかよ。勝つのは僕だ!!」
   
 高揚した気分のまま慎二は宣言する。自身の勝利を、貪欲なまでに勝ち抜く意思を。

 「聖杯を手にするのはぼk「小僧っっ!!!」・・・へ?」

 その言葉は最後まで紡ぐことはできなかった。
 彼が見たのは実体化したラオウが自分を押し倒し背後に庇う後姿。
 そして、天井を突き破って迫る炎と剣の大群だった。







 衛宮邸から離れた屋根の上、壊刃サブラクは佇んでいた。
 三体分のサーウァ゛ントの気配がする場所に気づかれぬ位置で監視し、他の二体が離れたタイミングで狙撃を行った。
 無論居間に残ったのが朽木スザクのサーウァ゛ントの可能性もあったが、他人のサーウァ゛ントを奪うような輩が、自分のサーウァ゛ントを遠ざけ他人のサーウァ゛ントを側に置くとは思えなかったので行動を起こした。
 しかし結果はそこまで芳しいものではなかった。


 「ふむ、しくじったか、まさか気づかれるとは、いや屋根に着弾した音に反応したのか
そして自分たちに到達するまでの僅かな時間でとっさにマスターを庇いダメージを最小限に抑えたか
屋外であればしとめることができただろうに、いやむしろ反応できた事に驚嘆するべきか
並みの相手では確実に今ので終わっていたのだが、なるほどなかなか一縄筋ではいかぬようだ
けれどもこのまま引くつもりもなし、殺し屋二人依頼を執行しようとしよう。」

 そして霊体化し衛宮邸に向かった。標的をしとめる為、暗殺者は動き出す。

756フェスティバル ◆2shK8TpqBI:2013/06/11(火) 01:03:48 ID:Bsk9YENE0



5】


 門番の役割をしていたキャスター、キンブリーは驚きを隠せなかった。
 何の気配も前触れもなく何かが屋根を突き破り屋敷を破壊したのだから。
 あれでは中にいたライダーたちもただではすまないだろう。
 
 「行くしかありませんね。」
 
 もしこのまま彼らが死んだのならそれは非常に好都合だ。
 だが万が一生きている可能性があるため確認しなければならない。
 止めをさせるならそれに越したことはないが五体満足で無事だった場合あの少年は駆けつけなかった自分に決して信用しないだろう。
 今の現状でも信用はされていないのだがわざわざ評価を下げることは無い。
 それに何らかの貸しを作ることもできるかもしれないのだ。
 様々な考えを頭に浮かべながら屋敷に入ろうとしたその時・・・

 「っっ!!」

 キャスターはとっさに横に転がりこむ。
 しかしかわしきれなかったのか腕を深く切り裂かれてしまった。
 だが治療している暇はなさそうだ。そんなことをした時目の前の人物はその隙を決して見逃さないだろう。
 見た目は少女だった。美少女といっても過言ではないだろう。
 しかし纏う雰囲気は決して普通とは言い難い。軍に在籍し様々な人間を見てきたキャスターは解る。
 あれは怪物だと。目を逸らした瞬間喉元を喰らい付く化け物だと。
 サーウァ゛ントであろうと関係ない。あれはそういうものだと理解した。
 
 (宝具ですか、少し厄介ですね)

 自分を傷つけたであろうナイフを片手で器用に回しながら、恐らくマスターである少女は笑っていた。
 その笑顔は決して人を安心させるものではなく、むしろ対極に位置する攻撃的な笑みだった。

 「マスターでしょうが、一体何者です?とても人間の身のこなしに思えませんでしたが。」

 その質問に、何がおかしかったのかギャハハハっと笑う少女。
 ひとしきり笑った彼女はまるで舞台役者のように大仰な身振りで返事をする。

 「何者?それは僕にいってんのかよお兄さん。ひゅー、しょうがねえなあ、聞かれたからには自己紹介しねえとなぁ!!ぎゃは!人気者はつらいぜ!!イエーっ!」
 
 そして哄笑。
 割れんばかりの哄笑。
 
 「ぎゃはははははははっ!」

 一歩前に近づく。
 焦らすように、脅すように。楽しむように、喜ぶように。
 彼女は高らかに自分の二つ名を宣言する。
 彼女は高らかに自分の忌み名を宣言する。

 「私は殺し屋依頼人は秩序!十四の十字を身に纏い、これより使命を実行する!」

 天に向かって吠えるように《彼》は言った。

 「僕は匂宮出夢・・・・《人喰い》(マンイーター)の出夢さ」



  to be Continued……

757フェスティバル ◆2shK8TpqBI:2013/06/11(火) 01:04:41 ID:Bsk9YENE0



 【6】



 「くそ!いったいなにが起きたんだよ!!おいライダー!返事をしろっ!」

 間桐慎二は混乱していた。
 いきなりライダーが実体化したかと思うと突然剣が炎と共に天井を突き破って来たのだ。
 周りの様子を窺おうと身体を動かそうとして

 「痛っ!なんだよいったい・・・」

 目に映ったのは倒壊した屋根に押し潰された自分の足だった
 ソレを自覚したとき、痛みは一気に襲い掛かった。

 「ヒイイイイっ!痛いイタイいたい!!な、なんでぇ!?」

 なぜ自分がこんな目にあっているのか理解できず半狂乱で喚き散らす。

 「なんで!?なんで僕がこんな目にあってんだよっ!?おいライダー!!どこいったんだよ!早く僕を助け――」

 その続きを発することは出来なかった。
 彼にはとても珍しいことだが自分に起こった出来事よりも他者の状況に目を奪われた。
 

 圧倒的存在感を放っていた巨漢は、見るも無残な姿になっていた。
 
 筋骨隆々たる体躯は全身に大やけどを負っていた。
 鋭い角付き兜の角は根元から折られ、巨大なマントはボロボロに焼き焦げていた。
 鋼鉄よりも頑強な胸板には2本の剣が突き刺さっており、よく見ると右足にも刀剣が刺さっていた。
 そのの周りにも様々な刀剣類が突き刺さっており、足元にはおびただしい量の血液が散っていた。

 「ライダー!?お、お前・・・大丈夫かよ!?」

 慎二の呼びかけにゆっくりと振り返り―――

 「無事か?小僧・・・」

 そして慎二に近づくと屋根の残骸を取り除き秘孔を付き痛みを取り除いた。
 そしてライダーの手を借り立ち上がった慎二は、青ざめた顔でライダーをみる。

 「ライダーっ!?お前僕を庇って、ていうか傷を塞がないと!いやその前に此処から離れて―――」
 「小僧。」
 「なんだよ!?今必死に整理して―――」
 「来るぞ!」
 その言葉に慎二は理解した。この残状を行なった敵が来ることを。
 そして、それは現れた。
 
 幾重にも巻かれたマフラーのような布で顔を隠し、硬い長髪と黒マントの背の高い男。
 ステータスはそこまで高くなく全体的にCランクといったところ。
 魔力だけは以上に高いことからキャスタークラスかと当りを付けた。

 「キャスターが随分なマネしてくれたじゃないか。怪我しているとはいえ接近戦で僕のライダーに勝てると思ってんのかよ?」

 挑発気味に笑う慎二だったが、サブラクは取り合わず辺りに散乱した剣を一つ取ると無言のままライダーに突撃した。

 「小僧!離れておれ!」
 
 そして迎え撃つラオウ。
 拳王の拳が敵を砕かんと振るわれる。対するサブラクも剣を片手に応戦する。
 速度は互角、しかし筋力値ではラオウとサブラクでは隔絶した隔たりがあり、当然のように吹き飛ばされるサブラク。
 その姿にラオウは怒りを露にする。
 
 「この程度の傷でこの拳王を討ち取れると思うたか!!」

 そのままサブラクが吹き飛ばされた場所に気を放つ。
 あっけない終わりに落胆と、それ以上にそんな輩に傷を負わされたことに怒りを覚えるラオウ。
 下らぬ幕切れであったと背を向けようとし―――

 ヒュン!

 「ぬうっ!?」

 背後から刀剣と炎が迫り来る!

 「ふんっ!」

 気を拳に纏わせ迫り来る刀剣を炎ごと吹き飛ばすラオウ。
 そして放たれた場所に目を向けるとそこには無傷のサブラクが佇んでいた。

 「ほう、面白い。もっとこの拳王を楽しませてみよ!」

 そしてそのままサブラクに突撃し、サブラクもまた剣を構え迎え撃つ。
 伝説の拳法と超一流の剣技、二人の戦いは始まったばかり・・・

758フェスティバル ◆2shK8TpqBI:2013/06/11(火) 01:05:14 ID:Bsk9YENE0


 【7】




 「ぎゃははははっ!!」

 「ぬぅ!これほどとは!?」

 《人喰い》匂宮出夢と《紅蓮の錬金術師》ゾルフ・J・キンブリーの戦い。
 押しているのは出夢だった。キンブリーは研究職の国家錬金術師では珍しく、ある程度の戦闘技術を持ち合わせている。
 生前軍に所属していたキンブリーは格闘技の心得もあり、また自らの二つ名である紅蓮に恥じない強力な爆破のスペシャリストである。
 イシュワールの戦いでは多くの戦果を残しており修羅場もくぐっている。
 それでもなお、身体能力、戦闘技術、経験値、どれをとっても匂宮出夢には届かない。
 本来彼が得意とするのは中〜遠距離での爆破。接近戦で相手の体の一部や周囲のものを爆弾に変えることも可能であるが、そんなものは出夢がさせる暇を与えない。
 キンブリーは知る由も無いが、彼の能力は朽木スザクにより出夢に伝わっている。
 触れたものを爆破する能力ということしかスザクには解らなかったが、それだけで十分だった。
 出夢が取った対策は至極単純。触られないようにするという事だった。

 触れたものを爆弾に変える?そんなモン触れられなきゃすむ話だろ?

 錬金術による爆弾や地雷も、使う暇も無く、マスター相手に防戦一方という有様だった。
 ただのマスターなら問題なかっただろう。しかし相手は化け物じみた運動能力をもつ。
 さらに言えば手にしている短刀は宝具であり自分の身を削り肉を裂く。
 白いスーツは所々真っ赤に染まっていた。

 「おいおいおい!!その程度かよサーウァ゛ントつーのはよぉおお!ボクちゃん全然物足りませんてかあああ!」

 異常に長い腕から短刀が煌めく。キンブリーの胴を裂かんとした刃を紙一重でかわし後ろに下がる。
 そのまま周囲の瓦礫などを爆弾に変えようと試みるが―――

 「させるかボケェェ!!見え見えなんだよ!アホが!!」

 そのまま地面を跳躍しキンブリーの至近距離に入る。しかし間に合わず爆弾に変えられた瓦礫が爆発する瞬間―――

 「【一喰い(イーティング・ワン)】!!」

 出夢の左手がその瓦礫ごと《喰らった》
 これにはさすがのキンブリーも驚きを隠せず一瞬動きが止まる。
 その一瞬は《人喰い》相手には致命的な隙だった―――


 ザシュッ!

 出夢の右手に握られた【“戯睡郷”メア】がキンブリーの胴を切り裂き、キンブリーは地に倒れた。

 「グッ!此処までですか・・・」

 まさかこれほどのマスターがいるとは思わなかった。
 サーウァ゛ントに匹敵するマスターがいるとはだれが想像できる。
 もし自分のマスターがあんな小娘ではなく目の前の少女だったら、きっとこんな無残な結末は迎えなかっただろう。
 目の前には人の足、自分を倒した出夢の足だろう。腕を高く上げ短剣を振り上げる。
 訪れる痛みに覚悟を決め・・・止めを刺されないことに疑問に思い顔を上げる。

 「・・・・・っと、危ない危ない。」

 振り上げた短剣を下ろし懐にしまう出夢。

 「思わず止めを刺すところだった・・・殺しちゃあ、だめなんだよな。」

 そのまま膝を曲げしゃがみ込む。なぜ止めを刺さないのか疑問に思っていると・・・

 「あんた羽瀬川小鳩のサーウァ゛ントで間違いないよな?間違ってないよな?うん、僕はさる人物に依頼を受けてここのマスターをぶっ殺しにきたのさ。」

 そいつここにいるよな?

 最終確認するようにこちらに問いかける出夢に無意識に頷くと、その答えに満足したのか家に入っていく。

 「待ってください、あなたに依頼した人物とはいったい・・・。」  
 「おいおいおいおいおいおい。勘弁しろよ、お兄さん。クライアントの名前をホイホイ明かすわけないだろ。」
 「その通りですね。すみません忘れてください・・・」
 「ま、僕に言える範囲でいうなら朽木スザクから僕が依頼を受けたんだけどよ。ほら、あんたが両足吹っ飛ばしたあいつだよ。」
 「・・・・・・・・」
 
 殺し屋にあるまじき口の軽さだった。
 もし殺し屋が必要でも彼女だけには絶対頼まないだろう。
 殺人教唆で即刻逮捕される。

 「じゃあぼくはもう行くぜ。アサシンの旦那が心配なんでな。」
 「どうぞ、お気をつけて。最低限の役割は果たしましたから、ああバーサーカーが戻ってくる前に終わらせた方がいいですよ。」
 「ん、ドーモ。」

 そういって、匂宮出夢は屋敷の中に入っていった。
 その後ろ姿を、キンブリーは黙って見送った。

759フェスティバル ◆2shK8TpqBI:2013/06/11(火) 01:06:43 ID:Bsk9YENE0



 【8】


 間桐慎二は目の前で起こっていることが信じられなかった。
 自分のサーウァ゛ントであるライダーの強さは、不本意ながらも認めていた。
 高ランクのステータスにEXランクの宝具。さらに世紀末の覇者と謳われたその戦闘能力。
 はっきりいえば、心の奥底で感じていたことを口に出せば、自分には不相応なサーウァ゛ントだろう。
 最初に彼を見たとき、優勝を狙えると、聖杯を手に入れることも不可能では無いと思った。
 それほどまでにラオウは圧倒的で、絶対的で、破壊的だった。  
 しかし今のラオウは、体中を真紅に染めあげ見るも無残な姿をしていた。
 

 最初はラオウの圧勝だった。全身のダメージなど無いかのようにサブラクに拳を打ち込む。
 サブラクも負けじと剣を振るい、ラオウを倒さんと切りかかる。
 しかしながらステータスが違う。敏捷値こそ同じだが、筋力、耐久をラオウが大きく上回りサブラクの剣をその鍛え上げられた肉体で受け止める。
 悲しいかな、サブラクのもつ刀剣類は宝具ですらない。気を纏わせたラオウの拳にぶつかった端から砕かれていく。
 普通ならこの戦い、どうやってもラオウの勝ちだっただろう。
 
 そう、本来ならだ。

 何事にも例外がある。
 ラオウはトキとの戦いで大きく負傷していた。
 それゆえサブラクの奇襲にもギリギリ反応できたにもかかわらず、迎撃が不十分だったため全身に大きなダメージを負った。
 さらにはサブラクが放った攻撃にはあるスキルが使われている。
 ある意味宝具よりもサブラクを表すにふさわしい能力、自在法“スティグマーダ”
 刀剣により傷をつけた傷全てにかかる自在法。
 与えた傷の治癒を封じ、時と共に広げていく。
 秘孔をついても止まらない出血。加速度的に蓄積される疲労。時と共に広がる傷口。
 時間が立つほどラオウの勝率は下がっていく。
 それを理解していたラオウは気力を振り絞りサブラクを倒さんと挑む。
 しかし何度拳を叩き込もうと、倒れない。
 何度気を放とうと、【壊刃】は砕けない。
 やがて当然のように訪れる結果。もはや立っているのもやっとなラオウと、無傷に佇むサブラクだった。

 「それほど傷を負おうとも膝をつかんとは、全く恐れ入る
もとは人間だっただろうに人の身でそこまで昇華するとは、人の可能性に驚きを禁じえんな
我がマスター然り、お前然り、人というのは馬鹿に出来ぬものだ
だがこれも戦争、これも闘争、依頼に基づき使命を全うする。」
 
 そして一歩一歩ラオウに近づくサブラク。
 ラオウは鋭い眼光を向けるがサブラクの歩みは止まらない。

 「なにやってんだよライダー!こんな!こんなところで僕は死んでたまるかよ!逃げるぞ!早くあの黒王号ってやつ出せよ!命令だ!」

 令呪の効力がラオウを縛る。Dランク程度の対魔力しか持たないラオウは、本来ならこの命令に抗えない。


 そう、本来ならだ――――


 令呪は間違いなく機能している。
 しかしラオウは黒王号を出さない。気力だけで令呪に反抗しているのだ。

 「なにしてんだよライダー!早くしろよ!?」

 しかしそれでもラオウが従わない。たとえ勝ち目が無くなろうとも。
 目の前に死が迫ろうとも。

 たとえ死ぬことになろうとも、譲れぬ誇りがあるのだ。
 それを捨ててしまえば、もう自分は自分で無くなる。男には、否、漢には!
 命よりも大事なものがあるのだ。

760フェスティバル ◆2shK8TpqBI:2013/06/11(火) 01:07:26 ID:Bsk9YENE0



「このラオウ!!引かぬ!媚びぬ!省みぬ!!!」
 
 当然ながら今の間桐慎二には、そんな考えは理解できない。
 彼には譲れぬ誇りも死んでも貫く信念も無い。
 そんな物があれば彼はこんな所に立っていないだろう。
 けれどこのままでは自分たちが脱落することは誰の目を見ても明らかだった。
 だが二画目の令呪を逃走用に使っても、逃げた先で無事に済む保証はない。
 間違いなく目の前のサーウァ゛ントは追ってくるだろう。
 最悪他の参加者に討ち取られる可能性も高い。
 ならばこそ―――

 「令呪をもって命じる―――」

 間桐慎二の手から二画目の令呪が発動される。
 
 「勝て!!ライダァァ!!!」

 瞬間、ラオウの身体に力が漲る。
 そして限界を超えた速度でサブラクに束縛し、遠くへ投げ飛ばす。
 そのまま慎二から大きく離れると、最短動作で最大威力の攻撃を打ち出す。
 何度攻撃を食らわせても倒れない?
 何度気を打ち込んでも倒れない?
 良かろう、ならば肉片一つ残さず消し飛ばすまで―――!!

 「北斗滅天把!!」

 ラオウの放つ全身全霊の一撃が、サブラクを欠片も残さず消し去った。




 「やった!あれなら間違いなく死んだ!ははっ、ざまあ見ろ!僕のライダーは最強なんだ!!」

 衛宮邸から離れた場所で起こった爆音。
 恐らく自分の家を吹き飛ばしたあの技を使ったんだろう。間違いなく終わりである。
 自身のライダーの強さに気分は高揚し、最高にハイの状態になる。
 
 そして、彼の運命はそこで終わった。

 ゴキッ!!

  
 ―――――え?――――――

 180度に曲がる首、最後に間桐慎二が映したものは、自分を見下ろす黒髪の少女だった――――





 「小僧!」

 パスが途切れたのを感じ急いで戻った先でラオウが見たものは、ありえないほうに首を曲げた自分のマスター間桐慎二と、それを冷めた目で見下ろす黒髪の少女だった。
 
 「きさまぁ!」
 「お!あんたがこいつのサーウァ゛ント?ちょーーーと遅かったかな。あんたのマスター殺されたぜ。ていうか僕が殺したんだけどな!ぎゃはははっ!!」

 面白そうに笑う女にラオウの怒りが頂点に達する。
 もはや自分は脱落だ。体が端から崩れていく。限界を超え戦った反動が来たのだ。
 だがせめて、この女だけは!!

 「北斗剛掌波!」

 最後の力を振り絞り女に向け放つが・・・
 突然現れた黒い男が女を担ぎ攻撃の範囲から逃れる。
 
 「ばかな・・・お前は・・・」

 確かに自分が倒したサーウァ゛ント―――

 その思考を最後に、世紀末覇者、《拳王》ラオウは聖杯戦争から脱落した――――

761フェスティバル ◆2shK8TpqBI:2013/06/11(火) 01:07:47 ID:Bsk9YENE0


 【9】



 「おつかれサブラクの旦那。無事で何よりだぜ。」
 「まさか門番のサーウァ゛ントを倒すとはな、足止めだけで充分だったのだが、
いや、このマスターが規格外なのは今に始まったことではないな、ともあれマスターも無事で何よりだ。」
 「んー、褒められてると解釈しとくぜ。」

 お互いの無事を確かめた二人は会話もそこそこに出発した。
 ラオウを倒した出夢たちはスザクが待つ家まで戻るためだ。
 全力疾走すれば一時間どころか十分もあれば着くのだが、さして急ぐ必要も無いので歩いて戻っていた。
 
 「こちらとしても助かりましたよ。おかげでマスターの元へ帰ることが出来ます。」
 「僕が頼まれたのは取り戻すところまでだから、後のことはそっちで決めてくれよ。」
 「解ってますよ。ふふふ・・・」

 間桐慎二の死と共に令呪の縛りから開放されたキンブリーは、自分のマスターの所に戻るため出夢たちの同行を申し出た。
 それに出夢も了承し、軽い情報交換を行いながら歩いていた。
 といっても出夢の受けた依頼内容と羽瀬川小鳩の安否くらいしか有益な情報が無かったのだが。
 
 「さてと、バーサーカーの野郎はどこいったかわかんねぇからな。お前知ってる?」
 「いえ、魂喰いをしに出て行ったのは知っていますが、場所までは・・・」
 「しょうがねえ、一旦おいとくか。もう一時間立っちまったから今日の殺戮は終了だしな。」
 
 そのまま歩き出す出夢を見ながら、キンブリーは思考する。

 (思いがけない展開になってくれましたね。あの忌々しいマスターをこの手で殺せなかったのはいささか残念ですが、それ以上に素晴らしい出会いを果たせました。)
 
 正直なところ、羽瀬川小鳩についてはほとんど興味を失っていた。
 ただ自分が限界するのに必要なだけで、そうじゃなかったらとっくに始末していた。
 
 (イズムですか。正直彼女のような人間がマスターであればよかったのですが。考えに入れておきますか)

 鎖から解き放たれた魔術師のサーウァ゛ント
 彼が今後どのような行動に移るのか、今はまだ誰にもわからない・・・



【深山町/午前】




【匂宮出夢@戯言シリーズ】
【状態:健康、残令呪使用回数3画、”戯睡郷”メアを所持】
※《一喰い》《暴飲暴食》の隙を解消し威力も向上しました
※ギアス発動下の枢木スザクの動き方を疑似的にではありますが修得しました


【アサシン(”壊刃”サブラク)@灼眼のシャナ】
【状態:健康、魔力消費(中)】


【キャスタ—(ゾルフ・J・キンブリ—)@鋼の錬金術師】
【状態:疲労(中)、魔力消費(中)、全身ダメージ(中)】





【深山町・民家/午前】




【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【状態:疲労(小)、右腕骨折(処置済み)、義手・義足、残令呪使用回数1画】
※民家の老夫婦に預けられています
※匂宮出夢に《依頼》を行いました
※義手・義足を装着しました。慣れるにはある程度の時間が必要です
※羽瀬川小鳩を匂宮出夢が戻るまで守ります



【羽瀬川小鳩@僕は友達が少ない】
【状態:全身にダメージ(大)、気絶、残令呪使用回数2画】
※民家の老夫婦に預けられています
※拷問の傷を匂宮出夢によって治療されました(あくまで応急処置です)



【バ—サ—カ—(ランスロット)@Fate/Zero】
【状態:ダメ—ジ(小)、魔力消費(中)、右太腿に刺し傷(通常の回復手段では治癒不可能)、左腕欠損、】
※魂喰いを行いに何処かへと向かっています
※バーサーカーがどこへ向かったかは次の書き手さんにお任せします。


【間桐慎二@Fate/stay night 死亡】
【ライダ—(ラオウ)@北斗の拳 死亡】

762 ◆2shK8TpqBI:2013/06/11(火) 01:13:07 ID:Bsk9YENE0
以上となります。
ラオウ、慎二ファンの皆様ごめんなさい。
ちょっとあっけなさ過ぎたかもしれません。
自分にはこれが限界です

以下は自分が疑問点
爆弾化したものは素手で砕くことが出来るかです
一応キンブリーのは魔術ではなく錬金術ですのである程度の融通が利くかと思ったのですが。
もし修正が必要なら書き直しますので感想、指摘お待ちしてます。

763名無しさん:2013/06/11(火) 02:19:33 ID:Srvm.VMA0
投下乙です

764名無しさん:2013/06/11(火) 07:53:23 ID:xpug2vM60
投下乙です
「サーヴァント」が「サーウァ゛ント」になってるのですが…
それと「イシュワール」ではなく「イシュヴァール」です

765名無しさん:2013/06/11(火) 08:19:41 ID:6HDgCiVg0
小鳩の状態表だけど、応急処置で治る分を過ぎてないかな? 少なくとも骨折や抜かれてる歯なんかし状態表に記しておいた方がいいと思う

766 ◆XL.nOGsA4g:2013/06/11(火) 08:27:05 ID:JOU7qVocO
投下乙です
ワカメはここで脱落ですか、まあ相手が悪すぎましたね
それと上でも言われていますが小鳩は時間経過や普通の処置では治らない傷があったと思います
バーサーカーも回復の度合いが早すぎるかと
私見ですがダメージと魔力消費の度合いを一段階引き上げた方が良いかと

767名無しさん:2013/06/11(火) 11:02:32 ID:4Q.DleTw0
投下乙です
ワカメ組、年貢の納め時…あの凶悪なワカメ軍団も崩壊だな
まぁ流石にトキとの連戦でラオウも消耗してたし、何より相手があの出夢とサブラクさんじゃ仕方ない
なんだかんだでこのコンビは好調だなw

主に気になるところはまぁ書き手さんや読み手さんの言ってる辺りかな?

768名無しさん:2013/06/11(火) 12:27:44 ID:bKo5AGeYO
投下乙です
大体気になってるところは前の人たちが指摘してますがもう一つ
この時点での衛宮邸は切嗣の拠点となっていたと思うのですが、切嗣が他の人間の侵入を易々と許すようにしているかという点が気になりました
的はずれだったり細かい指摘だったらすみません

769名無しさん:2013/06/11(火) 14:47:09 ID:0hPKaNqc0
投下乙です!
難関と化していたわかめ周囲執筆お疲れ様でした
わかめ、相手と相性が悪かった
疲弊済みで超耐久とスティグマ持ちのサブラクに持久戦されたらなあ
あいつ対人メインのサヴァにはめっぽう強いし
なんだかんだでラオウ認めてる描写が多くていい感じだったんだけど、南無
イズムとこばとも上手いこと兄弟繋がりで絡めてくれたし、きんぶりーもこの先まだまだやってくれるかも

修正はいくつか要りますが細かい範囲なので十分可能かと
頑張ってください!

770 ◆cp3jCCSc7M:2013/06/11(火) 15:57:07 ID:MfsMmIME0
投下乙です!
ワカメはマスターとして間違った事はほとんどしてなかったんですがね
出夢組はもう自然災害のようなものと考えた方が良いんでしょうね
スザクを放置したからってこんな結果になるとは予想できるはずないわけで
後は上で言われている通り細かい修正さえ加えれば何も問題はないと思います
ついでに自分も士郎組と切嗣組を投下します

771正義の味方、サクラノミカタ ◆cp3jCCSc7M:2013/06/11(火) 15:58:46 ID:MfsMmIME0
柳洞寺で一つの戦いが終わった。
キャスターのサーヴァント・蘇妲己によって嘘と策略で聖杯を掴もうとした主従の目論見は暴かれた。
そして最後には騎士王の聖剣によってある主従の謀略と戦いに幕が下りた。
だが聖杯戦争そのものはまだ終わっていない。
その戦いの一部始終を目撃した者がいるのならば、尚更だろう。





「あれがあのセイバーの宝具か、見ると聞くじゃ全然違うな」
「………」

先ほど三組を相手にした大立ち回りを演じた切嗣と士は近場の安ホテルに身を潜めていた。
作戦上軽トラックを使い潰す以上、事前に荷物を別の場所に移す必要に迫られたからだ。
そうして使い魔に搭載された小型カメラから送られた柳洞寺での戦闘の一部始終を分析していた。
無論それだけでは不十分なので、短時間ながら士のペガサスフォームも併用したが。

「しかしあの赤毛のマスターの魔術は何なんだ?
どれもこれも宝具ばかりだったぞ、あのセイバーの剣も贋作だったようだしな。
知らずに戦っていたらさすがに危なかったな」
「…恐らく投影魔術(グラデーション・エア)の一種だと思うがね。
あれほどの精度、それも宝具を再現する魔術など聞いた事がない。
見る限り真名解放すら出来るらしい、すこぶる厄介な獲物だな」

二人の会話は自然とセイバーのマスター、赤毛の魔術師の戦力分析になる。
騎士王の能力の詳細は切嗣が正確に掴んでいる以上何も問題はない。
紅剣のセイバー主従も異色と言えば異色だが彼らは既に敗れ死んだ人間。
であれば注目すべきは今生きている者で能力の全容を掴みきれない赤毛の男だ。

「恐らくは投影魔術に特化しきった魔術師なんだろう。
そしてマスターの適性そのものは低いと見える。
セイバーの能力をあそこまで落としていては宝の持ち腐れだな」
「ああ、そして今の戦いで連中は相当魔力を消耗した。
ライダーじゃないのが癪だが、現状一番潰しやすいのはこいつらだな」

衛宮切嗣はかつてセイバー、アルトリア・ペンドラゴンを使役していた。
それ故に彼女のサーヴァントとしての本来のスペックも把握している。
言い換えれば、現在のアルトリアのステータスを見ればマスターの力量もおおよそは掴めるということだ。

見る限り赤毛の男の魔力量は平均的な魔術師を大きく下回る、つまり三流と予想される。
その分特殊な投影魔術らしきものを駆使する戦闘能力に優れたマスターなのだろう。

772正義の味方、サクラノミカタ ◆cp3jCCSc7M:2013/06/11(火) 15:59:36 ID:MfsMmIME0

だがそれは過去の話に成り下がった。
謎のアサシンともう一組のセイバー主従相手にあれほどの激戦を演じ、アルトリアに至ってはエクスカリバーまで使ったのだ。
つまり今の二人はほとんど魔力を使い切っていると判断して良い。

「そうと決まれば話は早い。
ライダー、君は柳洞寺の階段正面で待機していてくれ。
柳洞寺の結界はサーヴァントにとっては有害だがマスターにはその限りじゃない。
その点を存分に突かせてもらうとしよう」
「おいちょっと待ってくれマスター。
さっきの今じゃさすがに魔力が足りないぞ」

士の『世界の破壊者(ディケイド)』は魔力生成機能を備えている。
これによりディケイドはサーヴァントの中でも低燃費を誇るのだが、さすがに限度というものがある。
そんな士の当然の指摘に切嗣は手の甲に浮かぶ令呪を見せる。

「わかっている、こういう時のための令呪さ。
これを使えば魂喰いをせずとも君の魔力を完全に回復できるだろう」
「随分と大盤振る舞いだな、俺としては歓迎だがあんたはそれで良いのか?
事実上あと一回しか使えない切り札だろうに」
「確かにね、だがこの聖杯戦争は色々と特異な点がある。
魔術師としての力を持たないマスターがいるらしい、というのが最たる例だろう。
そういうマスターに“協力”してもらえば失った令呪を補填する事もできるだろうね」
「…ああ、そういう魂胆なわけか」

やはり切嗣は切嗣でしかなかった。
主人の非道さには辟易するばかりだが、そのやり方が的外れでない限り止める気もない。
相手が魔術師ならば切嗣の独壇場と言って良い、マスターの心配はしていない。
とにかく作戦は決まった、あとは実行に移すのみだ。






賢明な読者諸兄はもうお気付きかもしれない。
今の切嗣と士は先ほど衛宮邸の土蔵で練った隠密行動という方針を完全に無視している事に。
何故プロフェッショナルたる彼らがこれほど拙速な行動に出るのか。
それを語るにはしばらく時を遡らなければならない。







切嗣と士が柳洞寺へ向かうルルーシュやこなたら一行を補足した時の事だ。
作戦を定めた切嗣の何気ない疑問が切っ掛けだった。

「…わからないのは、連中が何故こんな真似をするのかだな。
他の陣営に対抗するための同盟だとしても数を増やしすぎだ。
三組でもギリギリの大同盟だというのに五組とはどういう事だ?」

773正義の味方、サクラノミカタ ◆cp3jCCSc7M:2013/06/11(火) 16:00:27 ID:MfsMmIME0
切嗣は柳洞寺に篭る一派の思惑を計りかねていた。
優勝を狙うためにマスター同士で同盟を組み、他の勢力の自滅を待つ。
ここまでは分かるが問題はその人数だ。

聖杯戦争に参加するマスターは須らく聖杯に掛ける願いを持っている。
そして願いを叶える権利を得られるのは勝ち残った最後の一組のみ。
つまりどんなマスターも最後に自分達が勝ち残るという意思を持っているという事。
そういった人間がただ人数を増やして同盟を組んでも裏切りや内部崩壊が起こる可能性の方が高い。
五組ものマスターとサーヴァントがいて誰もその事に思い至らないとはさすがに考えられない。
沈思黙考する切嗣の横から士がふんと鼻を鳴らしながら自身の見解を告げた。

「マスター、あんたは確かに戦いのプロだが少しばかり頭が固いな。
優勝狙いと考えると辻褄が合わないなら、それは前提が違うってことだ。
例えば、連中の目的が聖杯の破壊だとか、殺し合いを阻止する事だとしたらどうだ?」
「……何を馬鹿な。誰が何の得があってそんな真似をするというんだ」
「ああ、確かに聖杯戦争で殺し合いを止めるなんて言い出す奴はよほどの馬鹿だろうな。
だが世界にはそういう事を本気でやる大馬鹿野郎が意外なほどいるもんだ。
そう考えればこれだけ同盟者、いや、仲間を集めようとするのもわかる。
何より奴らの中には仮面ライダーがいる、まず間違いない」

どこか感慨深げに、かつ自信満々に言い放つ士に対して切嗣は未だに半信半疑だ。
通常の魔術師なら殺し合いを止めるなどというヒューマニズムを持っている可能性など皆無だ。
だが、ここにはその通常の魔術師に該当しない、あるいはそう思われる人間も参加している。

例えば先ほど矛を交えた娘の仇、鳴上悠。
力こそそこらの魔術師に比べて抜きん出ていたがその精神性は果たして魔術師と呼べるものだっただろうか。
例えばこちらを出し抜き同盟を結ばせ、ほどなく散った枢木スザク。
奴からはそもそも魔力すら感じられなかったし、動きは魔術師よりむしろ軍人のようでさえあった。

「……確かに、最悪の可能性は視野に入れておくべきだな」

誰にでもなくそう呟く。
現状、柳洞寺の一派が士の言う殺し合いの打破を目的とした集団かどうかは判然としない。
だがこの先連中が常に団結し、内部崩壊が起こらないとなればそれは脅威どころではない。
三組ですら手出しが困難だというのにさらに増え、内部で牽制どころか連携する事すら考えられるのだ。
そうなれば切嗣と士ではどうあっても太刀打ちできなくなる。

774正義の味方、サクラノミカタ ◆cp3jCCSc7M:2013/06/11(火) 16:01:10 ID:MfsMmIME0

となれば、やはりここで多少の無理をしてでも柳洞寺のライダーを撃破するのは極めて大きな意味を持つ。
綱渡りな策ではあるが勝算はある、ここまで準備してきた武装とライダーの能力ならば成功するはずだ。
そして魔術師殺しは銃を取り、大一番ともいうべき策を実行に移す。








そして時間は現在まで巻き戻る。
果たして切嗣たちの策は成功し、目下最大の敵だった柳洞寺のライダーは消滅した。
そして残る四組のマスターとサーヴァントはそれぞれバラバラに動き出した。
中でも一番動きが大きかったのが赤毛の男が向かった柳洞寺だ。

小型カメラを搭載した使い魔を放ったところ、驚くべき事実が次々と判明した。
まず事前情報にはなかった侍姿のサーヴァントとレオタード姿のキャスターと思しきサーヴァント。
映像を見る限り赤毛のマスターとは敵対していたらしく、どちらもほどなくして消滅した。
知らぬうちに生じたイレギュラーが勝手に消えてくれたのは幸いである。

そしてステータスの低いセイバーを従えた少年主従の動向。
映像を分析する限りどうやら彼らは柳洞寺の一派を裏切ろうとしていたようだ。
しかし結果的には返り討ちにされ、赤毛の男とアルトリアの消耗に一役買っただけに終わった。

まさに今が好機、切嗣と士はそう判断した。
山奥の柳洞寺ならば白昼堂々戦闘を行なっても注目を浴びにくい。
コンプリートフォームを使った事で一時的に隠蔽能力を失っている士の戦力を他陣営に知られずに済むというものだ。
それにこの先ルルーシュやオーズのマスターと合流されては元の木阿弥だ。
そうなる前に、令呪を使ってでも確実に葬り去る。

士としては仮面ライダーであるオーズを倒しに行きたかったのだが、今はそれが難しいことも理解はしていた。
自分達の存在を隠匿していた先ほどまでとは状況が変わった。
切嗣のやり口を警戒しているだろう敵の仮面ライダーが素直にサーヴァント戦に付き合うとは考えにくい。
向こうもこちらと同等の機動力を持っている以上、マスターを連れて逃走される可能性の方が高い。
そうなれば魔力消費が大きく、令呪の数も少ない自分達はいたずらに消耗を重ねるだけだ。
街中でカーチェイスなどしては目立つし、そこを他陣営に襲撃されては目も当てられない。
ルルーシュも襲撃の候補ではあったが、上手く身を隠しているのか使い魔でも未だ居場所を特定できていない。



そして今、切嗣は山の側面から柳洞寺に侵入し、既に敵マスターを狙撃できる位置に陣取っている。
サーヴァントの能力を落とす柳洞寺の結界も生身の人間には用を為さない。
結界があるから敵は正面からしか侵入してこない、その先入観を魔術師殺しは存分に利用する。

ワルサーのスコープを覗くと大木の下で休息を取っている赤毛の男とアルトリアが見えた。
こちらに気付いてはいないらしい、当然だ。
アルトリアの索敵性能の低さはマスターだった切嗣が誰より知っている。
発砲しない限りそうそう発見されるようなことは無い。
だが、このまま引鉄を引いたところであの赤毛の男を弾丸が貫く事はない。

775正義の味方、サクラノミカタ ◆cp3jCCSc7M:2013/06/11(火) 16:02:06 ID:MfsMmIME0

騎士王アルトリア・ペンドラゴンが有する直感のスキルはランクA。
マスターの奇襲など到底通用する望みはない。
どころか一度撃てば最後たちまちのうちに狙撃地点を見切られ、即座に切嗣は切り捨てられるだろう。



だというのに、衛宮切嗣の指は迷いなくワルサーの引鉄を引き、一発の銃弾を発射していた。

「っ!シロウ!!」

シロウと呼ばれた赤毛の男目掛けて放たれた弾丸は当然アルトリアによって阻まれた。
だがそれで良い。そのように動いてくれなくては困る。
響く風切り音。それが作戦の第一段階の成功を意味していた。

「ぐっ、かはっ……!」
「セイバー!?」

銃弾を剣で弾いたはずのアルトリアの横腹を弾丸らしきものが貫通していた。
それは切嗣とは別方向からの狙撃があったということ。
一瞬の後、超高速で駆け抜けた人影がさらにアルトリアを強襲する。

「がふっ…!貴様は……!?」
「悪いな、お前には俺と遊んでてもらう」

その影こそは先ほどと同じファイズに変身したライダーのサーヴァント、門矢士である。
切嗣の指示で柳洞寺へ続く階段に待機していた士は念話による合図と同時、銃弾を迎撃したアルトリアをライジングペガサスの力で狙撃していた。
そして即座にファイズ・アクセルフォームを発動。
離れたアルトリアとの距離を一瞬にしてゼロにしたのだ。

これが切嗣の抱く自信の根拠。
あらゆる状況への対応力と他の追随を許さぬ機動力。
一時令呪を失ったとしてもこれだけの性能を持つサーヴァントなら戦略次第で問題なく勝ち抜ける。

「切、嗣……!」

そして作戦の第二段階。シロウの目の前に切嗣自身が姿を現した。
何やら自分を個人的に知っているようなニュアンスを感じるが知ったことではない。
目の前にいるのはただの敵だ、それも早急に始末しなければならない類の。

先ほど、セイバー二騎の戦闘を士のペガサスフォームで偵察させる間、切嗣は使い魔でマスター同士の戦いを観察していた。
そして態度にこそ出さないものの、赤毛の男、シロウの戦い方に自分自身を重ねていた。

近接戦を得意とするアサシンへの狙撃。
英雄の半身たる宝具を雨あられと投射し、爆破する戦術。
凡庸ながら切嗣から見ても機能美に満ちた双剣を用いた剣術。
英霊の誇りを足蹴にし、ただ勝利を、効率を優先するあの男の在り方はあまりにも切嗣に近い。
そうでありながら騎士道を信奉し、我の強いアルトリアに奇襲という作戦を取らせる人心掌握術も持ち合わせている。

776正義の味方、サクラノミカタ ◆cp3jCCSc7M:2013/06/11(火) 16:02:47 ID:MfsMmIME0

長く放置するのは危険、消耗している今こそ確実に葬らなければならない。
一般人と思しきオーズのマスターを敢えて放置し、この主従に狙いをつけたのも要はそうした直感からだった。



士がアルトリアを引き離したことを確認し、キャレコの引鉄を引く。
五十発分の弾倉を数秒で空にする9mmパラベラム弾の弾幕を、シロウは卓越した体捌きで回避する。
先ほどの変身能力を持ったマスターとの戦いでの疲労が残っているだろうに、よくやるものだ。

「爺さん……!くそっ……!!」

弾倉を交換する一瞬の隙を突き、シロウが何かを言いながら寺の本堂へと入っていく。
だが、これも全て予定通りだ。
逃げ場の多い外ではなく屋内に退避するというその行動。
それはすなわち、シロウにはまだ切嗣を打倒する何らかの切り札が存在するという事だ。
あれほどの数の宝具を扱う以上、それが何かを明確に絞りきることまでは出来ない。

だがそれも投影魔術によって生み出される何かである、というところまでわかっていれば十分だ。
魔術回路をフル稼働させたその瞬間を狙って起源弾を撃つ、それで全て終わる。
こちらは相手の魔術のメカニズムを看破しているが、シロウはそれを知らない。
故に若干攻め手を緩めて敢えて切り札を投影させる、今後を考えればキャレコの弾薬はなるべく節約するべきだ。

屋内を駆けるシロウを切嗣が追う。
時折キャレコの銃撃を見舞い、それを寸でのところでシロウが躱すといった展開が続く。
一方的な戦いだがそれも当然の話だ。
疲弊しているシロウに切嗣を牽制するだけの余力は残っていまい。
ある和室の障子を突き破って廊下から庭に躍り出たシロウがここでついに反撃に転じた。

「ハッ!」

映像で見た双剣を投影、それを左右に弧を描くように投擲した。
その技はすでに見ている、要は双剣を弾こうとせず大きく動けば良いのだ。

「Time alter――double accel!」

相手がこれから何をしようとしているか、その意図を読んだ切嗣は固有時制御で急速に後退する。
構わずシロウが続けて双剣を投影、別のある場所へ投擲した。

「壊れた幻想(ブロークンファンタズム)」

呪文と共に爆破された双剣は建物の支柱を複数箇所破壊していた。
これだけで寺全体が崩壊する事は無いが、切嗣のいた一角は倒壊し、生き埋めにされる形となる。
切嗣が倒壊に巻き込まれた事を確認したシロウが今が好機とばかりにある剣を投影した。



「―――紅の暴君(キルスレス)!!」



地面に突き刺したその両刃剣こそは先ほど消滅したイスラ・レヴィノスが所持していた魔剣、その贋作であった。
だがこの魔剣は元より異界の宝具、衛宮士郎にその性能を全て再現するほどの力はない。
本来この魔剣に封じられていたある者の意思は贋作には宿らない。
だが、辛うじて再現できたある機構、それさえあれば十分だった。

「令呪を以って命ずる!セイバー、負けるな!!」

令呪に宿った莫大な魔力を負傷した己の従者に供給する。
それだけではない、投影した紅の暴君でも可能な他人や土地からの魔力の吸奪。
柳洞寺という最上の霊地から得た魔力もアルトリアへ供給する。
さらに士郎自身の枯渇した魔力も瞬きのうちに充填された。



そして、その瞬間を待っていた男がいた。



「なっ!?」

777正義の味方、サクラノミカタ ◆cp3jCCSc7M:2013/06/11(火) 16:03:31 ID:MfsMmIME0

寺の一角の倒壊に巻き込まれたはずの衛宮切嗣が何事もなかったかのように瓦礫の山、正確にはその背後から姿を現した。
手には起源弾が込められたトンプソン・コンテンダー。一瞬の躊躇もなく発砲した。

切嗣は最初から家屋の倒壊に巻き込まれてなどいなかった。
瓦礫が崩れる音と巻き上がる埃をカモフラージュにして物陰に身を潜めていただけだ。
すぐさま反撃しなかったのはシロウに魔術回路を最大限励起させるだけの切り札を投影させるためだ。

とはいえ投影した剣は切嗣の予想を裏切るものではあったが。
何しろシロウが地面に突き刺している紅剣はつい先ほど消滅したサーヴァントが持っていたものだからだ。
映像と士に聞いた話から魔力を消費して所持者に特殊な力を付与する宝具だと考えていたが、それは正確ではなかったらしい。
あるいは土地から魔力を吸収するこの性質こそあの宝具の真骨頂なのか。
どちらにせよ上手い手だ、一撃に賭けるより枯渇した魔力を補う事で活路を見出すとは先を見ている。
この主従の場合、魔力さえ確保できれば大抵の敵は圧倒できるだろう。

だがそれも相手が魔術師殺し・衛宮切嗣が相手でなければ、の話だ。
宝具使用と令呪の発動に神経を割いた一瞬の隙を突いて放った一発。
回避は間に合わない、直撃を避けるなら紅剣で防ぐしかないがそれも間に合うかはギリギリ。
そうなるタイミングを狙ったのだ、切嗣としてはむしろ防いでくれた方が有難い。

だが、事はある意味で切嗣の想定外の方向へ進んだ。

「―――I am the born of my sword(体は剣で出来ている)。
―――熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!!」

右手に紅剣を握ったまま、突き出したシロウの左手から四枚の花弁を模した障壁が出現した。
切嗣でも一目見ただけでわかる、あれもまたあの男の投影した宝具なのだと。

(まさか防具まで使えるとはな、しかし―――)

結果は変わらない、あれも魔術回路を通して生み出された物である以上術者へのフィードバックは避けられない。
絶対的な自信を持って投影した盾なのだろうが、起源弾には逆効果でしかない。

そして衛宮切嗣の起源が内包されたスプリングフィールド弾は赤い障壁に命中した。
だが赤毛の男、シロウには何の異常も、異常を起こす兆候も見られない。
本当に何事もなかったかのように障壁を消しただけだった。

「な、に……?」

ほんの一瞬、忘我状態に陥った切嗣の呟きが漏れる。
起源弾が通用しなかったのか?一体何故?分析が間違っていたというのか?
衛宮切嗣の生涯において、起源弾が何の効果も示さないという事態は今まで一度も起こらなかった。
先の鳴上悠にすら、本人へのダメージは無かったとはいえ一定の効果があったのだ。
それが何故シロウには通用しなかったのか、瞬時にいくつもの可能性を検索するが答えを絞りきれない。



本来、今の起源弾によって衛宮士郎は無力化されている筈だった。
例え宝具の神秘といえど術者の魔術回路と直結する盾で防いだ以上回路へのフィードバックは避けられないはずなのだ。
その当然の結果を歪めたのは士郎が懐に入れていた反魔の水晶だった。

778正義の味方、サクラノミカタ ◆cp3jCCSc7M:2013/06/11(火) 16:04:11 ID:MfsMmIME0

反魔の水晶は持ち主に中ランクの対魔力を付与する効果がある。
そして切嗣の起源弾は特殊なカラクリで成り立っているとはいえ本質的には一工程相当の魔術でしかない。
それ故に起源弾に仕込まれた魔術的効果そのものがキャンセルされたのだ。
そうなれば起源弾もただの強力な銃弾に成り下がる。
贋作とはいえアイアスの盾には歯が立たずあっさりと弾かれる結果に終わった。

では切嗣はこの反魔の水晶の存在を見落としたままこの作戦に臨んだのか。
答えは半分イエス、半分ノーだ。
使い魔が記録した映像には士郎が天海陸らの正体を暴き、糾弾する場面も含まれている。
その際に士郎が陸の前に突き出した嘘の証拠品たる反魔の水晶も当然目にしている。

だが使い魔が記録したのはあくまで映像のみであり、音声は無い。
そして切嗣は反魔の水晶がいかなる経緯で用意されたものなのか、その事情と顛末を一切知らない。
故にそれがどういう代物で何の意味を持つのかまでは詳しく把握できなかったのだ。
いくら聖杯からマスターに与えられたサーヴァントの能力を確認する透視能力といえど万能ではない。
単に反魔の水晶を視認しただけでは具体的な効能までを読み取ることは流石に出来ない。

つまり切嗣は映像で見た水晶がサーヴァントが用意したものだという事すら知らなかったということ。
しかしこの一事を以って切嗣を迂闊とは断じられない。
そもそも陸の嘘を暴く際偶然手に入れた物品がピンポイントで起源弾に効果を発揮する事を予見しろという方が酷なのだから。



「衛宮、切嗣―――!」

切嗣がその場に硬直した一瞬の隙を見逃さずシロウが距離を詰める。
その手にはいつの間にか奇怪な短剣が握られていた。
まともに人間を殺せるかどうかも怪しい歪な形状、あれも宝具なのか。
だが切嗣の本能は短剣に対して最大限の警鐘を鳴らしていた。

あれを受けるわけにはいかない、何かはわからないがあれは自分に対して最悪を齎すものだ―――!

先ほどまでとは攻守が逆転した戦場。
シロウが迷いなく短剣を握った左手を切嗣へ向けて振りかぶった。











Interlude

士郎と切嗣が戦う柳洞寺から数百メートル離れた山林の中。
奇襲でアルトリアを吹き飛ばした士はデフォルトの形態である仮面ライダーディケイドの姿で騎士王と対峙していた。

「…この手際の良い奇襲、我々の動きを監視していたか」
「お前らが不用心すぎただけだ。
それともこのやり方はご自慢の騎士道とやらにでも障ったか?」
「…いや、これは切嗣の手口を知っていて注意を怠った私の失態だ。
ならばこそ、その失態は私自身の手で取り返す―――!」

負傷しながらも全身から魔力を猛らせるアルトリアだが、ディケイドはその勇姿を一笑に付す。

「根拠のない強がりはそこまでにしておけ。
お前がさっき俺と対等に戦えたのはオーズがいたからだ。
セイバーが最優のサーヴァントなんてのはただのまやかしだ、そいつを今から証明してやる」

ライドブッカーを開き、カードを読み込ませる。
アルトリアが息を呑む、今度はいかなる攻撃が飛び出すのか―――



〈〈ATTACK RIDE・ILLUSION〉〉



「これは……!?」

電子音とともに信じ難い現象が起こった。

779正義の味方、サクラノミカタ ◆cp3jCCSc7M:2013/06/11(火) 16:05:01 ID:MfsMmIME0
目の前のディケイドが六人も増え、合計で七人になったのだ。
幻惑の類か、その思いは一斉に発射されたライドブッカーの掃射の前に打ち消された。
己の直感が告げている、あれは幻ではない、全て紛れもない実体―――!

「まさか、これも多重次元屈折現象(キシュア・ゼルレッチ)の一種か!?」
「魔術の世界じゃそういう呼び方をするらしいな。
だがお前らが戦った侍のつまらん技とは次元が違う」

弾丸を迎撃するアルトリアの隙を突き、七人のディケイドは散開し包囲陣形を取る。
そのうち分身体の三人がソードモードで前に出て、本体を含めた四人がガンモードで敵を追い詰める陣形だ。

度重なる包囲射撃を潜り抜け、斬撃を凌ぐアルトリアだが数の差に徐々に追い込まれる。
驚愕すべきことにディケイドが生み出した分身体はその全てが本体と同等の性能を持っている。
雑兵ならばともかく質の高い、統率の取れた集団に連携を取られては最優のサーヴァントといえど突破は困難だ。
そしてアルトリアが苦戦する理由はそれだけではない。

「切嗣からお前の能力は全て聞いてる。
お前は普通の人間レベルの身体能力を魔力放出のスキルで補ってるらしいな。
だがそいつは裏を返せば魔力が足りなければ戦闘力がガタ落ちするってことだ」
「っ……!」

そう、エクスカリバーを撃って間もない今のアルトリアは魔力が不足している。
先ほどディケイドと戦った時と比べてすら些か力を落としている。
現に分身体の放つ斬撃すら完全に押し返せてはいない、剣技の差で辛うじて凌いでいるだけだ。
さらに本来持つ高い再生能力も魔力不足故に十全に発揮しきれておらず、傷を負ったままの戦いを強いられている。

これがアルトリア・ペンドラゴンのサーヴァントとしての長所であり欠陥。
魔力の供給量と残量で戦闘能力が大きく増減するムラの大きいサーヴァントなのだ。
しかも今はマスターである衛宮士郎自身の魔力が尽きかけているために満足な供給も期待できない。
逆にディケイドは事前に使用された切嗣の令呪によって魔力は全快まで補われている。
先の戦闘で受けたダメージもある程度回復している、コンディションは万全に近い。

有力な敵が弱ったところを狙い打つ、それが聖杯戦争。
皮肉にも先ほどイスラに対して行なった対策を今度はアルトリアがされる側になった。

「お前と違ってこっちはペース配分を考えなきゃならないからな。
悪いがここで終わらせてもらうぞ、アーサー王」

言葉と同時、六人の分身が全方位から一斉にガンモードの集中砲火を浴びせる。
並のサーヴァントならばこれだけで倒されるほどの猛烈な火力だ。

「まだだ、まだ―――!」

だが騎士王は倒れない、圧倒的な弾幕から致命傷になり得るものを瞬時に見抜き躱し、時に切り払う。
背後の弾丸にすら対処する超人的な反応だが、全て防ぐことは叶わず全身の至るところを削られる。



〈〈FINAL ATTACKRIDE DE・DE・DE・DECADE〉〉


そしてその隙にディケイドは悠々とカードを読み込ませ、空高く跳躍する。
出現した十枚のエネルギープレートを通過して放つ必殺の飛脚・ディメンションキック。

780正義の味方、サクラノミカタ ◆cp3jCCSc7M:2013/06/11(火) 16:05:51 ID:MfsMmIME0
弾丸の迎撃で力を使い果たしたアルトリアに避ける術はない。



“令呪を以って命ずる!セイバー、負けるな!!”

だが、そこで運命を覆す奇跡が起こった。



突如アルトリアの身体に力が、魔力が漲る。
令呪の力だけでは有り得ない圧倒的な魔力供給に誰よりアルトリア自身が驚いた。
だが思索に耽るよりも早く、反射的に身体は動いていた。

迫り来るディケイドのディメンションキック。
必殺の勢いを得たはずの飛脚を聖剣エクスカリバーで受け止める。
そして瞬間的に可視化できるほどの魔力放出で以って逆にディケイドを弾き飛ばした。

「何だと!?」

必殺を期して放った技を力で防がれ驚愕するディケイドだが、どうにか後ろに跳躍して態勢を立て直した。
だが敵は待ってはくれない、アルトリアは即座にディケイドに斬りかかる。

令呪によるブーストとかつてない出力の魔力放出に加え、風王結界の応用である風のジェット噴射。
それによって生み出される速力は亜音速にも達し、今までとは懸絶の差がある。

「調子に乗るなよ…!」

だがディケイドを庇うようにライドブッカーを構えた分身体が立ちはだかる。
愚直な突進を迎撃するために放った分身体の斬撃を騎士王は篭手で受け流し、横一文字に分身体を切り捨てた。

「馬鹿な、一瞬だと!?」

これこそ超一級の剣の英霊にのみ許された直感と魔力放出によって成される超絶神技。
同じ事が出来るのはこの聖杯戦争では既に散った微笑のテレサのみであろう。
そのままアルトリアは身体を反転させて一歩を踏み、更なる加速でディケイドの懐に飛び込む。

「いざ、覚悟!!」
「う、おおおおお!!」

だがディケイドもまた英雄、類い稀な直感で先んじてアルトリアの間合いから離脱を図る。
しかしここは騎士王が上回った。全身の力を乗せた刺突がディケイドの生命線、腰のバックルに突き刺さった。

「しまった、ディケイドライバーが……!」

咄嗟の反応で身体ごと刺し貫かれる事は避けたものの、ただの負傷以上の損害を被った。
ライダーカードを読み込ませる部分が破損し、火花を散らせている。
これではディケイドの特殊能力が使えない。

「その腰巻きが仮面ライダーの力の源泉である事はオーズから聞いている。
その有り様で先ほどと同じ威勢を張れるか、仮面ライダーディケイド!」
「ぐっ……!」

再び対峙したアルトリアから放たれる魔力とプレッシャーは先ほどの比ではない。
ディケイドによって負わされた傷もいつの間にか塞がっている。
イリュージョンはまだ健在とはいえ今のアルトリア相手では分が悪すぎる

781正義の味方、サクラノミカタ ◆cp3jCCSc7M:2013/06/11(火) 16:06:58 ID:MfsMmIME0
ライダーカード抜きでどうこう出来る相手ではないことを悟らざるを得なかった。







唐突だが、ここで一つある疑問を呈したい。
第五次聖杯戦争において、アルトリア・ペンドラゴンは不完全な形で召喚された。
さらに彼女を召喚したマスターである衛宮士郎が当時未熟な魔術師だった事もあり、多くの能力が低下していた。

では月で行われているこの聖杯戦争ではどうか。
今回のアルトリアはムーンセルの定めた正規の手順で召喚されている。
マスターである衛宮士郎も今や自分の魔術回路を十全に開き、活用出来ている。
つまり、今回アルトリアに能力的な不備は本来有り得ない筈なのだ。
加えてこの聖杯戦争には一般人がマスターを務めているにも関わらず高い能力を備えたサーヴァントが少なくない。

では、何故彼女は今回も第五次聖杯戦争と同じ低い能力で戦う事を強いられたのか?

その解答は、地上の聖杯戦争の結末に起因する。
第四次、及び第五次聖杯戦争はいずれもアルトリアの持つ聖剣か、その贋作によって聖杯が破壊されるという結末を迎えている。
それ故にムーンセルは彼女を危険因子と判断し、能力と情報量に意図的な制限を設けた。
しかし完全なロックを施しては公平性を著しく損なってしまうため、能力制限に僅かな綻びを残していた。

そしてたった今、その封印が解かれた。
令呪と投影した紅の暴君を用いた本来有り得ない圧倒的な魔力供給によってアルトリアに填められた見えない枷は外された。
今ここに、常勝の騎士王は本来の力を取り戻したのだ。








「っ……!調子に乗るなと言ったはずだ!」

五体の分身体が一斉にアルトリアを襲う。
再び全方位から浴びせられるガンモードの銃撃。

「ハアアアアアッ!!!」

だが本来の実力を取り戻したアルトリアには豆鉄砲も同然。
魔力放出を用いた全方位への一閃、それだけで全ての弾丸が跳ね返された。
さらにその勢いを駆って突進、ソードモードで迎え撃った分身体の腕を逆に斬り飛ばし、返す刀で首を撥ねる。
その隙に二体の分身体が背後からライドブッカーを構え突撃した。

「仮面ライダーディケイド、貴方は確かに強い。
私にはそれだけの多彩な能力を扱いきる事は出来ないだろう。
だがそれだけだ。貴方はただ強力な力を持ち、ただそれを使いこなしているだけだ」

二体の分身体の同時攻撃。
それをアルトリアは片手の聖剣で止め、もう片方を篭手で刃を滑らせ受け流す。

「貴方の力には磨き抜かれた技が無い、積み上げられた想いが無い。
英雄豪傑が一生涯を懸けて築き上げた魂の結晶が決定的に欠けている―――!」

篭手で受け流され態勢を崩した分身体の背後へくるりと身体を回し胴体を斬り落とす。
もう一体の分身がすかさず斬りかかるが自由な左手で手首に肘鉄を当ててライドブッカーを落とさせる。
そして武器を失い無防備になったところを黄金の剣で袈裟斬りに切り捨てる。

782正義の味方、サクラノミカタ ◆cp3jCCSc7M:2013/06/11(火) 16:07:55 ID:MfsMmIME0

アタックライド・イリュージョンによって生み出された分身体は間違っても弱い存在ではない。
それぞれが本体と同等のスペックを持つという、ある意味でコンプリートフォーム以上の反則極まる性能だ。
だが如何に高いカタログスペックを誇ろうとその分身には真の意味で魂が宿っていない。
意思なき人形では完全復活を遂げた騎士王を退ける事は出来ない。

「貴方にアサシンを侮辱する資格はない。
英雄の末席に連なる者として、貴方に膝を屈するわけにはいかない!」

残る分身はあと二体、ディケイド本体を守るようにアルトリアの前に立ち塞がる。
少しでも足を止めようと前方から激しい銃撃を浴びせるが最早虚しい足掻きだ。
五体でも止められなかったのに二体では話にならない。

超速で踏み込み、放たれる弾幕を剣で、鎧で、篭手で弾きながら一切スピードを緩めず猛進する。

「これで、終わりだ!!」

懐に入り渾身の力を込めた一閃。反応すら許さず二体の分身をただの一撃で同時に撃破した。
士郎の令呪が発動してから三分足らず、それだけで全ての分身が倒された。
だが―――

〈〈ATTACK RIDE・INVISIBLE〉〉

響くはずのない電子音が響き渡り、唐突にディケイドの姿が掻き消える。
アルトリアが分身と戦っている間ディケイドも何もしていなかったわけではない。
魔力をつぎ込んでディケイドライバーの応急修理を行い、ギリギリのところで間に合わせていた。
姿を消し、逃げに徹したディケイドを捉えることは流石に出来ない。

「このような手札まで隠していたとは…敵ながら鮮やかな引き際です」

次に会った時には必ず決着を着ける。
その思いを胸に、アルトリアもまたマスターの元へ駆けた。

Interlude out











最初に思ったことは信じられない、という陳腐な感想だった。
銃を向けられ、発砲された時にどうして、と思った。
悪い夢を見ているようだった。

いや、わかってはいるのだ。
これは悪夢より尚性質の悪い、眩暈がしそうな現実なんだと。
六年ぶりぐらいに会った切嗣は俺が知っている切嗣とはまるで別人だった。
聖杯戦争の時に言峰から聞いた親父の人物像そのものだった。

俺は昔の切嗣がどういう人間だったのかをよく知らない。
せいぜいセイバーや言峰が話す冷酷な魔術師殺しとしての切嗣ぐらいだ。
例えば子供の頃はどんな性格だったのかだとか、どうして正義の味方になりたいと思ったのか、とか。
例えば奥さんはどんな人で、実際のところイリヤをどう思っていたのかとか、そういう事を俺はちっとも知らないのだ。

ただわかるのは、今の切嗣はイリヤを失って後戻りが出来なくなっているのだろう、ということだけだ。

俺はまたイリヤを守れなかった。
ランサーにイリヤを殺され、ランサーのマスターには歯が立たずに返り討ちにされた。

783正義の味方、サクラノミカタ ◆cp3jCCSc7M:2013/06/11(火) 16:08:39 ID:MfsMmIME0
だからこれはある種当然の報いなのだろう、二度もイリヤを死なせた衛宮士郎に生きる価値などない。

けれど、価値がなくても生きたいという意思がある。
俺自身に価値なんかなくても、そんな俺を好いてくれた人がいる。
どんなに無様で滑稽でも、俺にはまだ帰る場所がある―――――!

「衛宮、切嗣―――!」

切嗣に殺されない、切嗣を殺さない。
その矛盾する二つを両立できる唯一の可能性がこの契約破りの短剣。
桜とこの世全ての悪の契約すら断ち切ったこの短剣ならば、ライダーとの契約を絶つことなど容易い。
この瞬間を逃せばきっと次はない、全身の疲労を無視して切嗣の懐に飛び込む。

「Time alter――double accel!」

短剣が空を切る、親父の方が一瞬早かった。
千載一遇の機会を逃してしまった。
ならば、その銃だけでも持っていく―――!

「壊れた幻想(ブロークンファンタズム)!」
「っ……!」

短剣ルールブレイカーを投げ、切嗣の手元で爆破する。
低ランクの宝具故に威力は期待できないが、そんなものは最初から期待していない。
だが切嗣の切り札であろう拳銃、トンプソン・コンテンダーを破壊するには十分過ぎる。

その銃から放たれた魔弾を防いだ直後には、それらがどういう構造で如何に悪辣な仕掛けが施されているかは解析できていた。
もし天海が落とした反魔の水晶が無ければ俺もその魔銃の犠牲者の一人になっていただろう。

「くっ…!作戦は失敗か……!」

しかし予想以上に切嗣の立て直しは早かった。
咄嗟にコンテンダーを手放し負傷を避け、懐から丸い物体を取り出した。

「くあっ!?」

強烈な閃光が走る。しばらくして目を開けた時、既に切嗣の姿は消えていた。
バイクらしき駆動音がする、事前に用意していたのだろう。

「シロウ、無事ですか!?」

少し遅れてセイバーが戻ってきた。
どうしてかえらくステータスが上がっている、令呪の効力はもう切れていると思うのだが。
だがそれよりも切嗣を追わなければ。
今の切嗣は誰にも止められない、これ以上犠牲が出る前に追いつかないと―――

「―――あ?」

どうしたことか、駆け出そうとしたのに地面が近い。
視界が暗くなっていく。手足に力が入らない。
セイバーの声が遠くなっていく中、俺の意識は途絶えた。







「まったく、貴方という人はいつも無茶を…!」

倒れ込んだ士郎を抱き起こしながら憤りの言葉が口をついて出た。
地面に突き刺さった紅の暴君が見える、恐らくあれを使って自分に魔力を供給したのだろう。
しかしそんな真似をして無事で済むはずはないのだ。
切嗣と戦いながら限界以上にパスを広げてアルトリアに魔力を供給した以上、魔術回路に相当な過負荷を強いたはずだ。
加えてここまでに蓄積した肉体・精神面での疲労。これで倒れないはずがないではないか。
現に士郎は今疲労がピークに達したのか気絶している。

「ともかく、安静にさせなければ……」

またしても破壊された柳洞寺の中から使えそうな部屋を探すしかないだろう。
万全を期すなら日が暮れるまでは休ませるべきか。
一応紅の暴君も持っていくことにする。

「………?」

784正義の味方、サクラノミカタ ◆cp3jCCSc7M:2013/06/11(火) 16:09:21 ID:MfsMmIME0

ふと違和感を感じ、士郎の懐を探る。反魔の水晶が消えていた。
アルトリアは知らないことだが、イスラが召喚した物質は元々長時間現界させることは出来ないのだ。
反魔の水晶に限っては多くの魔力を注ぎ込むことで長時間存在を保たせていたがその限界がたった今訪れた。

「…コナタへの説明がますます困難になってしまいますね」

ため息をつくが無くなったものは仕方ない、誠意を込めて事情を話すしかないだろう。
そしてもう一つ脳裏を過ぎるのはあのサーヴァント、仮面ライダーディケイドのことだ。
先ほどの実体のある分身、あれは上手く使えばマスター殺しにも利用できたはずだ。
いや、そもそもあの狙撃の時点で士郎を殺せたはずなのにそうしなかった。

「ディケイド、貴方は切嗣に配されるべくして配されたサーヴァントなのかもしれませんね」

きっとそこには彼なりの、譲れない誇りがあったのだろう。
切嗣もまた、正義を為すために敢えて悪になりきる男だ。
そういった点をムーンセルは汲んだのかもしれない。

だが彼らのやり方は決して認められない、それとこれとは話が別だ。
オーズの手を汚させるわけにはいかない、あの二人は自分が止めなければならないのだ。

【深山町・柳洞寺/午後】

【衛宮士郎@Fate/stay night】
[令呪]:2画
[状態]:疲労(特大)、魔術回路への負荷(中)、気絶中
[装備]:携帯電話、ICレコーダー
※反魔の水晶は消滅しました
※紅の暴君の投影に成功しました。
柳洞寺から魔力を汲み出すことが出来ますが、伐剣覚醒を始めとした魔剣の力による恩恵は一切受けられません
また、破壊されたり破却した場合は再度投影し、土地に剣を突き立てる必要があります

【セイバー(アルトリア・ペンドラゴン)@Fate/stay night】
[状態]:ダメージ(微)、魔力充実
[道具]:紅の暴君(投影)@サモンナイト3
※ムーンセルに課せられていた能力制限が解除されました
これ以降の基本ステータスは以下の数値に変化します
また、ムーンセルに関する知識を得られたかどうかは後の書き手さんにお任せします
【筋力】B 【耐久】A 【敏捷】A 【魔力】A 【幸運】B 【宝具】A++
クラス別スキル「騎乗」:B→A












予め決めていたポイントで合流しホテルに戻った切嗣と士には重い沈黙が流れていた。
必勝を期し、令呪まで消費した電撃作戦。その結果は惨憺たるものに終わった。
切嗣自身は固有時制御の反動を除いて負傷の類は全くないが切り札たるコンテンダーを失った。
流石に銃器の予備パーツまでの持ち込みは許されなかったため修復も不可能だ。
だがそれ以上に頭の痛い損害が切嗣の知らぬところで発生していた。

「…ライダー、もう一度言ってくれ」
「だからイリュージョンはもう使えないと言っている。
ムーンセルにそう決められていてな、令呪が残っていたとしても無理だ」

士の持つアタックライド・イリュージョン。
切嗣もたった今その存在を聞かされた反則的な切り札には二つだけ、ある制限が設けられていた。

一つ、生み出せる分身体の上限は六体。
二つ、破壊された分身体は令呪を含めたいかなる手段を使っても補充はできない。

恐らく分身体の乱用を防ぐための処置なのだろうが、そんなことはどうでもいい。
問題はこの事を今の今まで黙っていた士だ、他人を怒鳴りたいと思ったのは何年ぶりだろうか。

785正義の味方、サクラノミカタ ◆cp3jCCSc7M:2013/06/11(火) 16:10:56 ID:MfsMmIME0

「君は自分が何をしでかしたかわかっているのか?
使い方次第で労せず勝ち抜ける切り札をむざむざドブに捨てたんだぞ?
それともオーズの所へ向かわせなかった僕への意趣返しか?」
「俺も使い捨てる気はなかったさ、誰かさんが敵マスターに令呪を使わせるようなことにならなければな。
むしろ勝てるチャンスをドブに捨てられたのはこっちの方だ」

にも関わらずこの居直り方である。
魔力補給に令呪を使ってしまったことが悔やまれるが過ぎた事は仕方ないと割り切る他ない。
どのみち行動を縛る目的で令呪を使えばこの男は切嗣を見限っていただろうから。

「…確かに僕にも落ち度はあったな、自分のやり方に固執しすぎた事は認めよう。
だがライダー、君は手を抜くとはいわないまでも全力は尽くしていなかったな?
消費を厭わなければ、弱体化したセイバーを確実に倒す手札は他にもあったはずだ」
「………」

切嗣の指摘に士は沈黙するしかなかった。
実際、他のライダーカードで弱ったアルトリアを倒すことは出来た。
そうしていれば敵マスターは令呪を使う間もなく脱落していた。
そうしなかったのはつまるところ、オーズを気にしていたからだ。

士としてはアルトリアを倒した後、すぐにでもオーズを破壊しに行く心算だった。
だからこそイリュージョンやディメンションキックより消費の多い他の技や形態を使う事を意図的に避けていた。
多少出し惜しみをしても問題なく倒せる相手だ、そう考えて慢心した結果がこれだ。

「…黙秘か、まあいい。君の宝具の修復はどのぐらいで終わる?」
「普通にしてればあと六時間以上はかかるな。
魔力を大量に注げば三時間で直せるし俺もそうしたいが、一時的に戦闘が難しくなる」

アルトリアに傷つけられたディケイドライバーの修復はまだ終わってはいなかった。
外装こそ戦闘中の応急修理で繕えたが、他の機能にも支障が出ているのだ。
その機能というのが魔力の生成機能だった。現在は一時的に機能が停止している。
士の見立てでは完全に宝具を修復しない限り魔力生成機能も復旧しないとの事だ。

786正義の味方、サクラノミカタ ◆cp3jCCSc7M:2013/06/11(火) 16:11:37 ID:MfsMmIME0

実際のところ、アルトリアが復調したといってもまだ互角に戦える目は十分残っていた。
ただしそれにはコンプリートフォームの使用が前提となる。
消耗の大きさから考えて宝具に不備を抱えたままでは勝てないと判断して撤退した。

「…わかった。これから僕達は身を隠しながら新都へ向かう。
どうも氷室道雪市長が過労で倒れたらしい、奴を探るなら今が好機だ。
奴を利用するなり令呪を奪うなりすれば状況は大きく改善される」
「俺がまたオーズを気にして独断で手を抜かないように奴から距離を置かせるわけか?」
「言葉を選ばなければそうなるだろうね、だが今の君がオーズに勝てるのか?
君のことだ、僕がオーズのマスターを殺しての決着など望んでいないだろう?
態勢を整えつつ後顧の憂いを絶つための戦略だ、悪いがわかってもらう」
「…ああ、わかってる。そのぐらいわかっているさ」

そっぽを向いて霊体化した士に構わず荷物をまとめる。
下には暗示を使ってNPCから手に入れた軽トラックもある。
痛手は負ったが決定的な損失ではない、魔術師殺しの戦いはこれからだ。

【深山町・安ホテル/昼】

【衛宮切嗣@Fate/zero】
 [令呪]:1画
 [状態]:固有時制御の反動ダメージ(中)、魔力消費(大)
 [装備]:ワルサー、キャレコ 、携帯電話、鉈、大きな鏡、その他多数(ホームセンターで購入できるもの)
  ※携帯電話には枢木スザクの番号が登録されています。
  ※深山町内にCCDピンホールカメラ付きの使い魔を放ちました。映像は無線機があれば誰でも受信出来ますが、暗号化されています。
  ※トンプソン・コンテンダーが破壊されました。少なくとも自力での修復・復元は不可能です
【ライダー(門矢司)@仮面ライダーディケイド】
 [状態]:ダメージ(小)、魔力消費(中)、隠蔽能力再発動まであと約四時間、ディケイドライバー損傷
  ※ライダーカード≪龍騎≫の力を喪失(コンプリートフォームに変身するだけなら影響なし)。
  ※ライダーカード≪電王・モモタロス≫破壊(コンプリートフォームに変身するだけなら影響なし)。
  ※ライダーカード≪キバ≫の力を喪失(コンプリートフォームに変身するだけなら影響なし)。
  ※ステータス隠蔽能力には以下の制約があります。
・コンプリートフォームを発動したか否かに関係なく真名を知ったマスターには一切効果を発揮しない
・最後にコンプリートフォームを発動してから六時間経過するまで隠蔽能力は消失する
  ※アタックライド・イリュージョン再使用不可
  ※ディケイドライバーが損傷しています。それに伴い魔力生成機能が一時的に停止しています。修復が完了すると同時に再び稼働します

787 ◆cp3jCCSc7M:2013/06/11(火) 16:12:39 ID:MfsMmIME0
以上で投下を終了します。
紅の暴君を柳洞寺に突き立てるというフラグを自分なりに回収してみました。
武器として使える杏黄旗、ぐらいの位置付けのつもりです。
それから前々からアルトリアのステータスが低すぎるという声があったので、ムーンセルに制限されていた、という解釈でこのような描写にしました。
ZEROセイバーをベースに幸運だけを士郎セイバー時に合わせた感じです。
士郎も平均よりは魔術回路は多いという設定なので切嗣と同じぐらいは能力を引き出せるんじゃないかと思います。
イリュージョンがあっさり破られたのは、令呪のブーストがあったとお考え下さい。

感想、ご意見をお待ちしています。

788名無しさん:2013/06/11(火) 16:21:33 ID:iPLmmQI60
投下乙です 面白かった!
ここで士郎組vs切嗣組というある種の因縁の対決
策謀に長ける切嗣組を撃退してみせた士郎&セイバーは見事だった…!
アルトリアもようやく本調子となり、これからどうなるか
あと市長あかん!寝てる場合じゃねえ、起きろ!

789名無しさん:2013/06/11(火) 17:10:40 ID:PxoEEi9oO
投下乙です!親子対決に外道なりに自分のやり方に拘った結果の…って市長が過労で倒れたらしいwなんでただ仕事してるだけなのにネタになるんだあの人はwww

790 ◆XL.nOGsA4g:2013/06/11(火) 17:15:53 ID:JOU7qVocO
投下乙です!
順調だった切嗣組でしたがここで初めて明確な敗走を強いられましたね
そして士郎はまた気絶してしまいましたかw

セイバーのステータス変更やディケイドの制限なども特に問題ないかと
ディケイドは弱体化したといってもイリュージョンを除けば後付けで追加された部分だけで一時的なものですからね
士郎組も士郎が気絶してしばらく動けないことも考えれば全体のバランスはしっかり取れていますしね
問題があるとすればガウェインが王に見せ場や活躍の場を奪われまくっていることですかねw
ともかく改めて投下乙でした!

791名無しさん:2013/06/11(火) 18:32:52 ID:yRUZaifI0
ケリィ&ディケイド「円卓いい加減にしろ」

792名無しさん:2013/06/11(火) 19:25:29 ID:VQprb1FE0
投下乙。
色んな方面へのフォローなんかも出来てて全体的によくまとまっていたと思うんだけど、紅の暴君って内部の意思がなければそもそも機能発揮しないんじゃないだろうか。
まあ、気になったのはそこだけだし、士郎の投影なら問題ないのかな。

というか、なんだかんだ毎回気絶してるとはいえ、やっぱり士郎組は恵まれてるなと思った。

793 ◆2shK8TpqBI:2013/06/11(火) 20:54:43 ID:Bsk9YENE0
投下乙です!
衛宮親子因縁対決お見事です。
セイバーも本調子でこれから楽しみです!

以下は自分の作品の修正点について
小鳩の状態表を
【羽瀬川小鳩@僕は友達が少ない】
【状態:、鼻腔粉砕骨折、歯全本欠損、呂律が回らない、右手指四本骨折、手足の爪破壊、、腹部にダメ—ジ(小)、額部上下共に骨折(軽)、肋骨骨折、右腕骨折、左足骨折、頬骨粉砕骨折、顔面の骨が所々骨折、両目視力低下(特大)、右耳の聴覚喪失、精神崩壊、気絶、残令呪使用回数2画】

※民家の老夫婦に預けられています
※拷問の傷を匂宮出夢によって治療されました(あくまで応急処置です)
※骨折などの怪我は治療されました(時間経過や通常の治療では治らないものはそのままです)

バーサーカーーの状態表を
【バ—サ—カ—(ランスロット)@Fate/Zero】
【状態:ダメ—ジ(中)、魔力消費(大)、右太腿に刺し傷(通常の回復手段では治癒不可能)、左腕欠損、】
※魂喰いを行いに何処かへと向かっています
※バーサーカーがどこへ向かったかは次の書き手さんにお任せします。

に変更したいと思います
切継の拠点に関しては、休息目的で本格的な拠点ではないんじゃないかと判断しました
他修正があればお知らせください

最後にもう一度、投下乙です!

794名無しさん:2013/06/11(火) 23:13:18 ID:Oek/YdQ.0
搾取封印系の能力は、キルスレスの元になった封印の剣パワーなので、
エルゴや適格者の意志なしでも大丈夫かと~

795名無しさん:2013/06/12(水) 09:45:08 ID:eWNsnD2s0
抜剣覚醒は正直中身がないと無理だけどね。
でも、中身がない分封印の剣としての機能はかえって扱いやすいかと。

796名無しさん:2013/06/12(水) 12:34:34 ID:RyiXAMiA0
元々召喚の触媒用に創られた魔剣を、核識の意思を封印することに了解したものだったかな?
サモナイト鉱石からできた剣だから、封印機能もおまけだし、まだ何かしらに使えそうな気もするけどね。
中身がないなら、疑似的に果てしなき蒼にすることも可能かもしれんし。
ところで、原作で士郎って自分が投影したものに手を加えた描写とかあったっけ?

797 ◆ca8VPtO1YY:2013/06/12(水) 13:14:23 ID:qFkXo0xc0
鹿目まどか&アーチャー(DIO)、鳴上悠&ランサー(クー・フーリン)
予約します

798名無しさん:2013/06/12(水) 19:18:46 ID:Ti0EcEmw0
>>796           フォイアルディア
ベースがキルスレスなら不滅の炎の方になるな

799名無しさん:2013/06/12(水) 20:24:33 ID:PqVEVazQ0
>>796
偽螺旋剣なカラドボルグは士郎ってかアーチャーが改良した結果じゃなかったっけ?
ちなみにサモン1のサモナイトソードが実質核識のない封印の剣じゃなかったけ?
てか封印の剣もさもないとソードの一種だね
なので、搾取封印能力にプラスしてサモナイトソード本来の所有者の魔力や精神力を刃に伝道させ、その切れ味や刀身の強度を増強させる能力もあるはず。
まあ、士郎は精神力はともかく魔力は微妙だから強さにはむらがありそうだけどw

800名無しさん:2013/06/12(水) 20:24:54 ID:PqVEVazQ0
というか、なんかサモナイ好きな人がたくさんいるようで嬉しいw

801名無しさん:2013/06/12(水) 23:45:37 ID:euPVLFcM0
つい最近5出たしなぁw

802名無しさん:2013/06/13(木) 12:21:50 ID:d5bhqNpE0
今まで何回かアティ先生やレックス先生を士郎と比べたりしたこともあって、クロスオーバーとか妄想したけど、
今回先生達が中の人的な意味でもセイバーになったし、敵に聖杯の泥みたいなのも出てきたから、何かと考えちゃうんだよなぁ。

803名無しさん:2013/06/13(木) 18:41:47 ID:bGcGBFeYO
サモナイは2しか知らんけど好きだよ。

804 ◆FTrPA9Zlak:2013/06/15(土) 21:33:14 ID:Aacb7VGs0
完成したので投下します

805願いと絆とここにある想い ◆FTrPA9Zlak:2013/06/15(土) 21:35:30 ID:Aacb7VGs0
最初に見えたのは、どこかの戦場のような場所だった。
爆音と人々の叫び声。
鼻につく、硝煙と血の臭い。
その中心で、一人の少女が泣いていた。

この意識の主は、届かぬその手を必死に伸ばし。
次の瞬間、少女を爆風が包んだ。

意識の主の絶叫が、絶望が伝わってきた。


次に見えた記憶は、一つの出会いだった。
謎の赤い手との出会い、そしてメダルを使って変身する能力。
それが、仮面ライダーオーズの力。

世界には、欲望から生み出された一つの存在があった。
メダルの怪人、グリード。己の望みのために人間の欲望を利用する怪人。
仮面ライダーの力は彼を戦いの運命に引きずり込んでいった。
そして、赤い腕の男もその一人だった。

赤い腕とは利害関係のはずだった。
己を完全なものとするという欲望を叶えることを求め、青年はその力を集めるための道具。
青年にとってもその存在は、己の欲を叶えるものでしかなかった。
だが、人間の肉体を得た右腕は、やがて己の生き方について考え、悩むようになった。

ずっと彼と過ごすうちに、いつしか彼との関係は利害関係から特別なものへと変わっていっていた。


そして、世界を終わらせようとする男との戦い。
赤きグリードはその命を賭して彼を勝利へと導き。
消滅していった。

―――お前がつかむ腕はもう俺じゃないってことだ

消滅していった。

そして、自分の欲していたものを思い出した青年は、その想いを胸に再び旅に出た。
その時は一時的にメダルは全て失ってしまったが。

806願いと絆とここにある想い ◆FTrPA9Zlak:2013/06/15(土) 21:36:41 ID:Aacb7VGs0

しかし彼の戦いの記憶はそこで終わっていなかった。
未来よりやってきたというライダー。宇宙を支配しようとする男。青年と同じ、しかし別の宿命を背負った多くの戦士達。そして、”死んだ”はずのあのグリード。
彼らとの共闘、戦いの中で再び戦う力を、青年は取り戻した。

世界に訪れた平和。
しかし、それでも人々の争いはなくなりはしなかった。
それでも、青年は自分なりにできることをして、多くの命を救い続けた。

内戦地帯において、ライダーの力をもって多くの兵器を破壊した。決して人の命を奪うことをせずに。
戦車を、ヘリコプターをも破壊するその力は小さな範囲であっても大きな抑止力となり、結果的にだが内戦に巻き込まれるはずだった多くの人々の命を救った。
やがて、その存在は戦えないものにとって英雄、あるいは神のような存在になっていた。

嬉しかった。
彼自身が崇め奉られたことがではない。
そうやって多くの人を救うことができること、多くの人に手を伸ばすことができるのは、己の欲望、やりたかったことなのだから。

だが、そんな彼にも一つ、それとは違う大切な欲望があった。
少なくとも、この夢の中では、それが達成されたのかどうかを確認することは、泉こなたにはできなかった。




「―――ちゃん、こなたちゃん」
「ハッ!ポチョムキン!?」

謎の言葉を発しながら目を覚ます泉こなた。
彼女は今、図書室の中で調べ物をしている真っ最中だった。

陸と別れ、何か自分にもできることはないかと考えての行動。
しかし、通して一晩、一睡もしていないことになっているこなたは、調べ物の最中にうたた寝をしてしまっていた。

「こなたちゃん、大丈夫?」
「あ、え、えっと、えい…じゃなくてライダー?」
「あ、今は大丈夫。付近にはサーヴァントの気配はないみたいだし、真名で呼んでも大丈夫だよ。
 一晩中連れまわしたわけだし、休めるときに休むべきだとは思うけど、ちょっと司書の人に注意されちゃって。
 保健室とかならゆっくりできるらしいし、そっちに移動する?」
「あ、大丈夫大丈夫!
 このくらいの寝不足など、夏休みにネトゲで夜を明かした私にとっては屁でもねえぜ!」
「…ダメだよ、ちゃんと寝ないと」

807願いと絆とここにある想い ◆FTrPA9Zlak:2013/06/15(土) 21:37:36 ID:Aacb7VGs0
ともあれ、この図書室は寝るところではないということで、調べ物を再開。

ここへきてまず調べたのは、あの時戦った白いアサシンのことであった。
データベースで、「アサシン、武道家」で検索をかけたものの、出てきた情報は莫大なものとなっていた。
とりあえず一つ一つ調べてみることにしてみたものの、その結果があの寝落ちである。

「映司さん、何か他に情報とかないの?戦って何か感じた〜とか」
「そうだなぁ。……あ、そういえば。
 戦ってるときに腕を突かれたんだけど、その時に何か腕の調子がおかしくなったんだ。
 こう、キーーーンって感じにさ」
「突かれて、キーーーン?何だろそれ?」

体を突いて動きを鈍らせる。
拳法、突き。

ムムムムム?

「体を突くっていうと、ツボみたいなものかな?」
「ツボ、かぁ。あ、そういえば中国にはツボを突いての医術みたいなものがあるって聞いたことあるな」

ここで詮索方向を変える。
データベースで「ツボ、拳法」での検索をかけた。

結果、情報量は増えたものの、方向性は掴むことができた。
この中からそれっぽいものを探し出すのだ。時間はかかるがアサシン全てを調べるよりはマシである。

少林寺拳法。
中国拳法。

様々な名前が並ぶが、どれも似たような、一つの流派の派生系のようなものばかり。
あそこまでの力を、そのようにありふれた拳法で得ることは難しいだろう。

「ん?」

と、こなたは一つの単語に目を止めた。

「どうしたの?」
「うん、これなんだけどさ。どうしてか妙に気になるんだけど」

808願いと絆とここにある想い ◆FTrPA9Zlak:2013/06/15(土) 21:38:14 ID:Aacb7VGs0
北斗神拳。

多くの拳法の並ぶ中、名前だけなら一際異彩を放つ名をしている。

少しその資料を手にとって調べてみた。


―――北斗神拳
一子相伝の暗殺拳であり、2000年間他門に敗れたことはないとされる最強の拳法。
その攻撃の最たる特徴は、敵の経絡秘孔を指や拳や足により直接的に気を送り込み突く、または、間接的に遠距離から経絡秘孔を気を放ち突くこと。


経絡秘孔。
あの時の攻撃された瞬間を思い出す。
もしあの時オーズに変身していなければどうなっただろうか。
あるいは腕を吹き飛ばされていた可能性もあったかもしれない。

「たぶんこれだよ。ちょっともう一回調べてみようよ」

再度、データベース検索をかける。

「アサシン、北斗神拳、白」

ジョインジョイン

検索結果「トキ」

若干の時間と謎の擬音を立てながら、検索結果は表示された。
その情報を元に、彼の資料を検索した。

トキ。
歴代北斗神拳伝承者候補の中で、最も華麗な技を持つといわれた男。

核戦争により荒廃した、弱肉強食の世界。
法は無くなり、多くの荒くれ者が略奪を、殺戮を繰り返す世界。
そんな中で、人を殺すはずの拳法の力で多くの病人を救い、助けてきたという。

「うーん…、近いような気はするけど、どうも情報が足りないなぁ」

しかし、一度戦っただけの相手でしかないサーヴァントの情報としては今一つ情報不足だった。

809願いと絆とここにある想い ◆FTrPA9Zlak:2013/06/15(土) 21:39:51 ID:Aacb7VGs0

映司にとっては。


「映司さん…、この人だよ」
「えっ?」
「この人、北斗兄弟の次男のトキ、あの時会ったアサシンはこの人で間違いないよ!」

こなたは力強く、そう叫ぶ。

キッ

入り口の方から強い視線が飛んでくるのが見えた。
敵かと思ってみると、司書の生徒がこちらを睨んでいた。
一言すみませんと謝った後、声を下げて映司はこなたに話しかける。

「どうして、それが分かったの?」
「分からない。ただ、なんとなくだけど、確信できたんだ。この人で間違いないって」

根拠のない自信。しかし何故か映司はこなたの言葉を信じてみようと思えた。

先のデータベース検索。
そこに「アサシン トキ」と入力する。

「あ、そういえば。間目さん、ここで出てくる情報って、聖杯戦争参加者の情報は見られるんですか?」
「情報があるなら見られますねー。さすがに数撃ちゃ当たるとはいきませんけど」

出てきた。
アサシン、トキ。
マスターの名前は、間桐雁夜。


「間桐って言うと、冬木の聖杯戦争の御三家の一人か」
「え、でも、この人の名前って…」

そう、この名は確か、あの時見た掲示板に載っていた名前のはず。
で、あればあの時の二人はもう。

「…助けられなかったんだな」

あの時の間桐雁夜は苦しんでいるように見えた。
それでも、何かの、おそらく彼自身の願いのために戦っていたのだろう。

彼にも、手を伸ばしたかった。

「映司さん…」
「大丈夫だよ。過ぎたことを悔やんでばっかりいちゃ、今を生きられないからさ」

気楽にそう答える映司。そこには先ほどの悲壮感は全く感じられない。
やはり、彼も自分とは違ってサーヴァントなのだ。このような命のやり取りは慣れているのだろう。

810願いと絆とここにある想い ◆FTrPA9Zlak:2013/06/15(土) 21:40:54 ID:Aacb7VGs0

「どうしてだろう?分かんないけど、何でか”知って”るんだ。
 北斗4兄弟の次男で、兄はラオウ、弟はジャギにケンシロウ、北斗有情拳、紅の豚さんありがとう……。
 さっきトキの名前を確認したとき、頭の中にぶわって浮かんできたんだ」
「もしかして、それがこなたちゃんの能力…?」
「分からない。でももしかしたらもっと調べたら何か分かることがあるかもしれない」

そう言って、こなたは再度本棚の前に立つ。
もう一つ調べるのは、敵対したサーヴァントとしてこの場でもう一人出会った者、仮面ライダーディケイド。

こっちは固有名詞がはっきりと分かっていたため、情報検索は難しくはなかった。

「確か、そのディケイドっていうのも、映司さんと同じ仮面ライダーなんだよね?」
「うん、一緒に戦ったこともあったと思うんだけど、その時はあんな雰囲気じゃなかった。
 でも世界の破壊者や悪魔って呼ばれてたこともあるし、今の彼はその一面性が強く出ちゃってるんだと思う」

映司の知識としてはディケイドというライダーの大まかな経歴や能力は把握できた。
異世界のライダーの能力を操るという特異な存在だという。
しかし、その操る各ライダーの能力、そして彼自身の戦う理由や弱点といった内面的なところまでは分からない。

「あ、あったあった。これだね。
 それにしても、仮面ライダーって映司さん以外にもいるんだね」
「どうも俺の生きた場所とは別世界にいた人たちばっかりらしいけどね」

仮面ライダーディケイド―――門矢士。
滅びの定めにあった世界を救うため、再生のための破壊をその手に担った仮面ライダー。
多くの平行世界を渡り歩き、世界を巡る中で出会ったライダー達の力をカードに宿して戦う存在。

そこには彼の操る9つのライダーの情報も載っていたが、その戦法はまた別に調べる必要があった。
しかし、こなたには関係がなかったようだ。

「え、あれ、仮面ライダーでしょ?知ってるよ私」

聞いてみると、やはり想像は正しかったようで、こなたはディケイドの人となり、能力、そして彼の操る9人のライダーの能力も把握していた。

811願いと絆とここにある想い ◆FTrPA9Zlak:2013/06/15(土) 21:43:00 ID:Aacb7VGs0
「えっと、あの時映司さんがサゴーゾだっけ?で推しきったのがファイズアクセルでしょ?
 で、コンプリートフォームの時に呼び出されたのがキバ・エンペラーフォーム」
「こなたちゃん、すごいね…」
「あ、そういやサゴーゾって重力操ってるんだよね?だったら多分クロックアップには気をつけないと。
 あれ物理法則も緩めるから余裕で逃げ切ると思うよ」

とりあえず情報は集まったが、弱点といえそうなものは知っていなさそうだった。
海鼠が嫌いらしいがこの場では特に関係ないだろう。
一つ一つの特性に注意して戦うことと、彼自身の能力である分身と透明化には注意ということだった。

「そういえば、やっぱり映司さんもあのベルト取られたりするとまずいのかな?」
「そうだね。変身すると真名解放になるし、そうすれば変身中はベルト自体が防壁を張ってくれるけど、逆に言うとそれをやる前っていうのが弱点だね」
「………」
「ん?どうかした?」
「え、あ、なんでもないなんでもない!
 映司さん、ちょっとお願いがあるんだけど、ちょっとこのワードで検索かけて本持ってきてくれない?
 私はちょっとこっちで気になることがあったからさ―――」
「いいよ。えっと、『聖杯戦争』『円卓の騎士』あと、こっちは…えっと…」



仮面ライダー。
その名を継いだものは、皆何かしらの運命を背負っていた。(ような気がする)
現にディケイドも、世界を再生するために破壊者の宿命を背負った、反英霊の役割を担っていた。

では、私のサーヴァントは、火野映司は何を背負って、何を願って戦っているのだろうか。
あの夢に出てきた少女は、赤い右手は、一体何なのか。

正直本人に聞くのは気が引けた。
そして、調べているのを知られるのも何となく恥ずかしかった。
だから、こなたは映司を離して彼自身のことを調べてみようと思ったのだ。
同じ仮面ライダーの本。それはディケイドのすぐ傍にあった。

『欲望とメダル』

812願いと絆とここにある想い ◆FTrPA9Zlak:2013/06/15(土) 21:44:28 ID:Aacb7VGs0


……………………

「こなたちゃん、これでよかった?」
「ファッ?!」

突如背後から話しかけられたこなたは謎の悲鳴をあげてしまう。

「こなたちゃん?」
「え、あ…わわ…。
 え、映司さん!今私が本読んでるときチラチラ見てたでしょ!!」
「え、そりゃ見てたけど。何かまずかった?」
「あ、しまった…!
 ぎゃああああ!!汚いネタ出してしまった上にマジで返されたぁ!!」

図書室内を頭を抱えて転げまわる謎の少女A、もとい泉こなた。
完全に奇行少女であり、司書の生徒にも睨まれているが、それを気にする様子もなく転がり続ける。

と、こなたが読んでいたであろう本。
慌てて戻したのか、その本は入れ方が雑になってしまっていたため、それがこなたが手をつけた本だというのは一目で分かってしまった。

「こなたちゃん、これって、俺の……」
「わわわ…。
 ごめんなさい!どうしても気になって、でもちょっと映司さんには聞きにくくて…。
 で、ちょっと映司さんのことを…」
「そっか…、気にしなくていいのに。俺は全然気にしてないから」
「でも、戦場の女の子のこととか、赤い手…、アンクのこととか聞くのは…」
「女の子…?それに赤い手って、こなたちゃん、どうして―――あっ。
 もしかして、夢で俺の記憶、見ちゃった?」
「うん…」

沈痛な表情で顔を見せるこなた。
映司は決心したかのように、そんな少女に問いかけた。

「じゃあ、やっぱり俺のことも?」
「うん、映司さんが戦う理由も、求めてるものも、何となくだけど分かっちゃったんだ」

そのまましばらく口を噤む。まるで何かを考えるかのように。
そして、意を決したかのように、映司に問いかけた。

「映司さん。
 あなたには、聖杯に叶えたい願いはないんですか?」
「ないよ」

813願いと絆とここにある想い ◆FTrPA9Zlak:2013/06/15(土) 21:45:16 ID:Aacb7VGs0

答えに迷いはなかった。

「確かに望みも願いもある。そして、それが聖杯なら叶えられるものだってことも。
 だけど、そんな俺個人の思いで叶えていいことじゃないって分かってるから」
「無限の絆…だよね?」
「うん。だけど、それを無理やり人に押し付けたりはしたくない。
 あくまで俺の手で、掴みとっていきたいんだ」

自分の手を見つめながら、そう呟く映司。
きっとこの手で多くの人の手を、あの夢のように掴んできたのだろう。
しかし、未だ満たされてはいないはずだ。彼の欲望は無限なのだから。
だが、そうだとすれば――

「聖杯戦争ってさ、願いをもったサーヴァントが呼ばれるんだよね?
 なら、どうして映司さんは呼ばれたんだろう?」

そう、聖杯にかける願いが何も無い者が、この場に参加者として呼ばれたのはなぜなのか。
自分と火野映司。共に殺し合い、生き残った末に叶えたい望みなどないのだ。

「いや、もしかしたらそこなのかもしれない」
「え、どういうこと?」
「こなたちゃんは聖杯にかける望みがない。だけどここに呼ばれた。
 理由は分からない。何かイレギュラーなことがあったのかもしれない。
 そして、俺にも聖杯にかける願いはない。だからかもしれない。
 そうやって戦いに巻き込まれていく人にも手を差し伸べたい、助けてあげたい。そう思った俺の考えが、こなたちゃんの元に呼び寄せたのかもしれない」

戦い自体を否定するつもりはない。
だが、巻き込まれたものがいれば、戦いを否定するものもいる。
そういった人達とも手を取り合っていきたい。
そして可能であるなら、願いを持って戦いを推し進める人とも、あるいは。

「まあ、こんな話気にしなくてもいいから。
 こんなことに気をとられてこなたちゃんを危険に晒しちゃまずいし」
「………」

こなたはそう告げる映司の顔を見つめ。

「…映司さん、もっと仲間を増やそうよ!みんな手を取ってくれるよ!」

そう、力強く言った。

「陸くんやセイバー、士郎君や凛ちゃん達みたいにみたいに分かってくれる人はいっぱいいるって!
 だから、小さくても叶えようよ、映司さんの願い」
「こなたちゃん…。ありがとう。
 でも、俺だってサーヴァントだ。こなたちゃんは絶対に守りきるから、こなたちゃんも、無理だけはしないでね」
「分かってるよ。私だって死にたくはないし」

814願いと絆とここにある想い ◆FTrPA9Zlak:2013/06/15(土) 21:47:00 ID:Aacb7VGs0

答えに迷いはなかった。

「確かに望みも願いもある。そして、それが聖杯なら叶えられるものだってことも。
 だけど、そんな俺個人の思いで叶えていいことじゃないって分かってるから」
「無限の絆…だよね?」
「うん。だけど、それを無理やり人に押し付けたりはしたくない。
 あくまで俺の手で、掴みとっていきたいんだ」

自分の手を見つめながら、そう呟く映司。
きっとこの手で多くの人の手を、あの夢のように掴んできたのだろう。
しかし、未だ満たされてはいないはずだ。彼の欲望は無限なのだから。
だが、そうだとすれば――

「聖杯戦争ってさ、願いをもったサーヴァントが呼ばれるんだよね?
 なら、どうして映司さんは呼ばれたんだろう?」

そう、聖杯にかける願いが何も無い者が、この場に参加者として呼ばれたのはなぜなのか。
自分と火野映司。共に殺し合い、生き残った末に叶えたい望みなどないのだ。

「いや、もしかしたらそこなのかもしれない」
「え、どういうこと?」
「こなたちゃんは聖杯にかける望みがない。だけどここに呼ばれた。
 理由は分からない。何かイレギュラーなことがあったのかもしれない。
 そして、俺にも聖杯にかける願いはない。だからかもしれない。
 そうやって戦いに巻き込まれていく人にも手を差し伸べたい、助けてあげたい。そう思った俺の考えが、こなたちゃんの元に呼び寄せたのかもしれない」

戦い自体を否定するつもりはない。
だが、巻き込まれたものがいれば、戦いを否定するものもいる。
そういった人達とも手を取り合っていきたい。
そして可能であるなら、願いを持って戦いを推し進める人とも、あるいは。

「まあ、こんな話気にしなくてもいいから。
 こんなことに気をとられてこなたちゃんを危険に晒しちゃまずいし」
「………」

こなたはそう告げる映司の顔を見つめ。

「…映司さん、もっと仲間を増やそうよ!みんな手を取ってくれるよ!」

そう、力強く言った。

「陸くんやセイバー、士郎君や凛ちゃん達みたいにみたいに分かってくれる人はいっぱいいるって!
 だから、小さくても叶えようよ、映司さんの願い」
「こなたちゃん…。ありがとう。
 でも、俺だってサーヴァントだ。こなたちゃんは絶対に守りきるから、こなたちゃんも、無理だけはしないでね」
「分かってるよ。私だって死にたくはないし」

815願いと絆とここにある想い ◆FTrPA9Zlak:2013/06/15(土) 21:47:50 ID:Aacb7VGs0
映司を励ますこなたと、そんな彼女を気遣う映司。

と、映司は思い出したかのように一つのメダルを取り出した。

「映司さん、それは?」
「こなたちゃんには悪いことしちゃったみたいだし、こっちも秘密明かすことでおあいこってことにしてほしいんだ」
「いや、別に気にしてはないんだけど………これって、もしかして」

映司の取り出したメダルは赤い、ひび割れたメダル。
そこに描かれているのは、おそらくタカの模様だろう。

「俺の宝物だよ。この聖杯戦争をやる中で、一回だけ使えることになってる宝具だ」
「映司さん、これってやっぱりアンクの?」
「そう、昔あいつの命が入っていたコアメダルだ」

真木清人との最終決戦で、あの恐竜グリードを打ち倒したタジャドルコンボ。その際に使用した、相棒の命。
このメダルを使うことで、本来のそれよりもランクが高いコンボ形態を取ることができるだろう。そしてこれはメダル自体が魔力供給を行ってくれるため燃費も悪くない。
その姿で放つ、恐竜メダル7枚を使い捨てての攻撃、ロストブレイズはブラックホールを生み出すことのできる最大技だ。
だが、それを使うともう二度とプトティラコンボに変身できなくなる。暴走の危険性を持ったコンボとはいえ、戦力ダウンは否めない。使うのはここぞというときだ。

「やっぱり、アンクもずっと一緒にいたんだね」
「ああ、そしてあいつのくれた力で、きっとこの戦いを終わらせて見せるから」






「あ、あのさ。映司さん」
「何?」
「映司さんはアンクを――――
 …いや、いいや。やっぱり聞かないことにしとく」

ふとこなたが気になったのは、彼が結局アンクを生き返らせることができたのかということ。
彼が生きているうちに、それを成しえることができたのか。
しかし、何となくそれは聞かないほうがいい気がしたのだ。


「とにかく、他のみんなから連絡あるまでは私達でできることをしよう!特に何も連絡ないんだよね?」
「そうだね、一応カンドロイドを偵察に出してるけど、戻ってくるまでは何ともいえない」

映司の足元で飛び跳ねるバッタのカンドロイド。士郎や陸達が気がかりになった映司がこっそり柳洞寺に偵察を送り込んでいたらしい。
おそらくこの学校内にも散らばっているのだろう。
何者かが侵入してきた際には真っ先に連絡がくるはずだ。


「陸君や士郎達、大丈夫だよね?」
「信じようよ。きっと無事だって。俺達は今ここでできることを進めよう」
「そうか、そうだよね。
 それじゃ、さっき頼んでた資料だけど――――」

情報を得られた以外には特に大きな進展があったわけではないこの時間。
だけど、何となく、こなたには己のサーヴァントとの距離がほんの少し縮まったような気がした。

【深山町・月海原学園/昼】

【泉こなた@らき☆すた】
[令呪]:3画
[状態]:健康
[装備]:携帯電話
【ライダー(火野映司)@仮面ライダーOOO/オーズ】
[状態]:魔力消費(微)


※こなたの知識制限について
情報を一定以上集めることができた際、その作品の記憶を取り戻すことができます。(必要な情報はFate/EXTRAにおける情報ランクMatrix(E)に相当すると思われる)
ただし、それがアニメ、漫画などで知ったものだということまでは思い出せないでしょう。
また、同一作品に現聖杯戦争に参加中のサーヴァントが二人以上存在する際は、そのサーヴァントについての情報が一部制限されて開示されます。
現在、北斗の拳(ラオウの情報に一部制限)、仮面ライダーディケイド(及び彼の変身するライダー全て)についての情報を得ています。

816 ◆FTrPA9Zlak:2013/06/15(土) 21:48:45 ID:Aacb7VGs0
投下終了です
こなたの知識についてやロストブレイズ追加など、気になるところはあるのでもし問題などあれば指摘お願いします

817 ◆FTrPA9Zlak:2013/06/15(土) 21:49:17 ID:Aacb7VGs0
あ、あと一つ
>>814はミスなので無視しておいてください

818名無しさん:2013/06/15(土) 23:27:10 ID:koyu1b0A0
投下乙です!
今まで激戦続きだっただけに、情報収集ながらもこうゆう穏やかなムードも時にはいいな
さりげなくここじゃ初めて夢を介しての記憶のリンクも起こったし
鯖の情報で対策が出来る聖杯戦争だと(一部だけど)記憶が戻ればやっぱりこなたは地味に強いw

819 ◆FTrPA9Zlak:2013/06/16(日) 02:14:11 ID:OZJsxw6s0
すみません、こなたの情報の中に、オーズの情報も得たことを記述しておくのを忘れていました
あと一箇所文が抜けてしまい、会話の流れが不自然になっている箇所も発見しました
流れに大きな影響はないですがwiki収録の際修正しておきます

820名無しさん:2013/06/16(日) 20:53:06 ID:r4TPGEHk0
おお、Fateならではだよなーw>夢介しての記憶リンク
そしてなるほど
願いを持たないからこその共通点、願いを持たないがゆえに願いを持たず巻き込まれる人々を助ける英雄か
手をつなぐってのはオーズでも重要な要素だしいい掘り下げでした

821 ◆wYNGIse9i6:2013/06/17(月) 14:40:02 ID:JsUS0D6A0
投下乙です
こなたと映司は安定感ありますね

衛宮切嗣&ライダー
羽瀬川小鳩&キャスター
匂宮出夢&アサシン
枢木スザク&バーサーカー

以上予約します

822 ◆QSGotWUk26:2013/06/17(月) 15:37:30 ID:bLi0tRNU0
ゼフィール&ライダーで予約します。

823名無しさん:2013/06/17(月) 18:17:32 ID:qcaNFm/A0
あら、被っちまった>ゼフィール&ライダー
もう完成したけど仕方ないね。

824名無しさん:2013/06/17(月) 22:00:02 ID:cp4BCzGw0
>>823
おや、完成してから予約するorゲリラ投下系の人だったのかな?
ルール的にこればかりは仕方ないかと

825名無しさん:2013/06/17(月) 23:26:56 ID:fdm0fVGI0
>>823
前に一度破棄したひと?

826名無しさん:2013/06/17(月) 23:57:18 ID:qcaNFm/A0
>>825
自分から破棄したことはないです。
前に破棄した人とは別人ですね。

827名無しさん:2013/06/19(水) 13:33:48 ID:n1cFjjsUO
投下来ないね・・・

828 ◆ca8VPtO1YY:2013/06/19(水) 16:57:25 ID:UgJz9AY.0
すいません、PCに触れず遅れてしまいました。
よろしければ延長をお願いします

829名無しさん:2013/06/20(木) 02:54:51 ID:Ayx9Nq/Y0
延長了解です

830名無しさん:2013/06/20(木) 16:19:33 ID:Ayx9Nq/Y0
CCCで公式にセイバーのクラスには脳筋しかいない扱いされる中、ここのイスラは頑張ったよ……

831名無しさん:2013/06/20(木) 18:01:38 ID:.pxclwRA0
>>830
???「セイバーのクラスはただ聖剣をぶっぱすればよいだけの簡単な仕事ではないのですよ!訂正していただこう!」

832名無しさん:2013/06/20(木) 21:18:24 ID:R3qa4w1.0
うるせぇ芋野郎w

833名無しさん:2013/06/20(木) 21:49:03 ID:Dh.UAVp.0
>>830
???「何だっていい!聖杯戦争で活躍するチャンスだ!!」

834 ◆QSGotWUk26:2013/06/21(金) 11:06:01 ID:Km1N11WQ0
延長申請しておきます

835 ◆wYNGIse9i6:2013/06/23(日) 21:26:45 ID:ZcuhJBTU0
延長します

836 ◆2shK8TpqBI:2013/06/25(火) 15:54:40 ID:PWvuUKTI0
いまさら聞くのも申し訳ないんですが、以前書いたカーニバルのwikiに収録されてるのが 、修正前のやつなのですが修正した方がいいですか?
また修正する場合どうやってやったらいいですか?

837 ◆2shK8TpqBI:2013/06/25(火) 15:56:17 ID:PWvuUKTI0
カーニバルじゃなくてフェスティバルでした…

838名無しさん:2013/06/25(火) 19:30:06 ID:5Cuv6Q8g0
ん、修正前のが収録されてるなら修正してもいいのでは?
フェスティバルの収録されてるページを編集すれば修正出来るはずです

839名無しさん:2013/06/26(水) 07:37:47 ID:WEQo47uU0
>>836
編集の仕方わからないなら最悪俺がやっとくけど、WIKI編集の方法は書きてなら覚えといたほうが便利だよー

840 ◆2shK8TpqBI:2013/06/26(水) 14:07:16 ID:OrZFKbLk0
一応自分でやってみました
多分大丈夫だと思いますが、変なところがあれば教えてください

841 ◆QSGotWUk26:2013/06/26(水) 15:44:08 ID:4ShVGgc.0
投下します

842go to the next victim ◆QSGotWUk26:2013/06/26(水) 15:44:58 ID:4ShVGgc.0

ベルンの覇王、ゼフィール。
デインの狂王、アシュナード。
王にして屈強の戦士でもある二人の主従は。
何度かの交戦を経て目的地であった教会へと辿り着いていた。

「ようこそ、歴史に名高き王たちよ。歓迎しよう」

彼らを出迎えた神父――言峰綺礼は、正しく中立であった。
令呪やサーヴァントの交換について問えば微細に答える。
しかし他のマスターやサーヴァントの情報は頑として話さない。
あくまで監督役。
それ以上の肩入れはしない。
言峰綺礼としても、開くべき傷、弱さを持ち合わせない二人の王相手に、
さして興味を覚えることなく、ただ監督役としての分を果たすのみであった。

神父から得た情報は、実りある物だった。
ゼフィールが当初、アシュナードから得たサーヴァント変更についての情報は。

・対象サーヴァントとそのマスターとの契約を破棄させ、マスターから令呪を奪う
・令呪を移植するには神父の協力が必要
・現サーヴァントとの契約を破棄する
・新たなサーヴァントに契約を同意させる

この四つだ。
しかし新たに神父から、

・令呪の移譲は本人の意思が伴えば容易に行える
・新たなサーヴァントと契約する際、
 以前のサーヴァントのクラスと違っていても令呪は継続して使用出来る
・サーヴァントの同意があれば再契約の手順に神父の協力は必要ない

三つの情報を得た。
これは何もライダーが偽りを吐いた訳ではない。
単に、監督役である言峰のみが知る知識であったというだけの事。
要するに。

843go to the next victim ◆QSGotWUk26:2013/06/26(水) 15:45:18 ID:4ShVGgc.0

・現サーヴァントとの契約を破棄する
・新たなサーヴァントが契約に同意する
・令呪が残っている

この三つの条件を満たせば、教会にわざわざ足を運ばずともその場で再契約は可能だ。
敵のマスターを始末し、アシュナードを自害させ、新たなサーヴァントと契約する。
このときアシュナードを自害させるのに一画の令呪が必要である。
しかし新たなサーヴァントに対しても、何らかの服従を強いる必要があるかもしれない。
現在の令呪は二画であり、一画の令呪を所持している事が、
この聖杯戦争の参加条件であることから、少なくとももう一画の令呪が必要となる。
ゼフィールは先ほど戦ったマスターたち――中でもバーサーカーのマスターらしき少女を思い浮かべた。
戦う意志を持った男たちでも眼前に降り立ったゼフィールの威容に呑まれ、動けなかったのだ。
あの少女のような弱き意思の持ち主ならば。
片腕を切り落とすなどして恐怖で縛り、命と引き換えに令呪を差し出させる事も可能であろう。

「ククク…ゼフィールよ、我を葬る算段はついたか?
 ならば次は我に匹敵するほどのサーヴァントを探さねばならんな?
 さて、そんな傑物が早々いるとも思えぬが……。
 いたとして、自らの主を捨てて貴様を選ぶかはまた別。
 中々に無謀な賭けとなろうな」

尚も喜悦を隠さないアシュナードに構わず、ゼフィールは神父に通信手段の是非を確認した。
外はもはや日が昇り始めており、アシュナードの騎竜は人目につきすぎる。
市長へと要請した移動手段もそろそろ確保できているだろう。
ここからは市井に紛れての行動となる。

「ふむ、構わんよ。教会の設備はあくまで備品だ。
 聖杯戦争のバランスを崩す物ではないので使用を制限する理由は無い。
 …しかし電話を使うという事は、ある程度世知に長けた協力者を得たか」
「他言は無用だ、神父よ」
「無論だ。私は監督役である前に聖職者なのでな。
 人の秘密を詳らかにする事に意義など感じぬよ」

どうにも信の置けない神父だが、少なくとも監督役である以上。
同盟関係の暴露などというルール違反にも等しい行為はしないはずである。
先刻ゼフィールが他のマスターについての情報を求めた時も、
そこだけはこの監督役も譲らなかった。
電話なる器物の使い勝手などわからぬため、神父に市庁舎へと繋がせ、
同盟相手である市長を呼び出したが、
彼はどうにも多忙らしく、出たのは市長の部下と名乗るNPCだった

「便利なものよな、このデンワとは。遅滞なく情報を伝達できる…、
 これがあればどのような大戦であろうと軍の統率を乱す事は無かろうよ」

ぽつりと呟くアシュナードの言葉に、
市長の部下と話しながらのため口にこそせぬ物のゼフィールも同意した。
この戦いの舞台には未だゼフィールの理解し得ない物が多くある。
制したとはいえ、先の銃とてその一つだ。
武こそ他の追随を許さぬとはいえ、やはり知と機に置いてはゼフィールらは他者より劣る。
市長との同盟も、今しばらくは必要であろう。

844go to the next victim ◆QSGotWUk26:2013/06/26(水) 15:46:09 ID:4ShVGgc.0

「…以上だ。過不足なく市長に伝えよ」

通話を終えると、
アシュナードが待っていたとばかりに口を開く。

「さて、これからどうするのだゼフィール。
 当初の予定ではまず情報を集め、
 二日目から攻勢に出るという物だったが」
「変更は無い。
 まずはこの…新都を回り、地の利を把握しておく。
 市長の部下から新たな情報も得た。
 先ほどの道化共は西に行ったようだ。
 日が沈めば蹴散らすのも良かろう」
「クク、さて日が沈むまで我と貴様の契約は続いているかな?」
「知らぬな。…アシュナードよ、貴様に問う。
 サーヴァントは召喚された時点で現代の生活に馴染めるだけの知識が付与されるという。
 では、先ほどの電話…のように、情報を瞬時に遠方に送る手段はいくつある?」

令呪の縛りにより、アシュナードはゼフィールに虚言を返す事は禁じられている。
尤も、それが勝利に向かう方策である限り…アシュナードとしても偽る意味は無い。

「手軽な所では、携帯電話、というものであろうな。
 先刻のように声だけを送るだけでなく、
 文書や瞬間を切り取った映像を伝達することもできる」
「映像も…つまり、我らが軽々に姿を晒せば、
 情報戦に長けた他のマスターには容易く捕捉されるという事か」
「我のラジャイオンならば、是非も無いな。
 少数なら市長が手を回してもみ消す事もできようが…
 あいにくこの世界にはインターネット、なる情報網がある。
 仮にNPCどもが霊体化を解いた我を視認し、携帯電話で写し撮ったとしよう。
 その映像をインターネットに転写すれば、この冬木市のどこにいようと
 我らの姿は容易に確認できるものとなる」
「民草が我らに仇成すと言うか」
「可能性の話だがな。無論、我はそんな失態は犯さぬが…
 あいにく、貴様は世事に疎い。いつ仕損じるかわかったものではなかろうよ」

皮肉を混ぜてくるアシュナードに一顧だにせず、ゼフィールは思考する。
なんとなれば人目など気にする必要はないが、
未だ情報が足りぬこの段階で他のマスターの標的になるのは避けておきたい。
どれだけ多くの敵対者を屠った所で、最終的に勝ち残らねば全て無意味だ。
アシュナードがどれほど強力なサーヴァントであろうと、
そう何度も連戦を制することができると楽観出来はしない。
強者が弱者を一方的に蹂躙する事が世の定めならば、
ゼフィール率いる強大なるベルン軍がエトルリア軍に戦況を覆されるはずは無かった。
どれだけ圧倒的な力を誇ろうとも…無敵の存在など有り得ない。
戦とは、たった一度の仕損じが敗北、そして死へと繋がるもの。

845go to the next victim ◆QSGotWUk26:2013/06/26(水) 15:48:51 ID:4ShVGgc.0

「神父よ。数時間の滞在は可能か?」

目を開いたゼフィールは、傍らで己を見つめる神父へと問いかけた。
アシュナードの騎竜ラジャイオンは言うまでもなく、
ゼフィールその人もまた、甲冑を纏い剣を佩いているため相当に人目を引く。
アシュナードは霊体化させておけばいいが、生身であるゼフィールはそうはいかない。
また、エッケザックスと封印の剣も大っぴらに持ち歩けば目立つ事この上ない。
そのため市長の部下が持ってくる車に当代の衣装と、
剣を隠せるような入れ物も積み込ませるよう指示をした。
慎重を期するなら、市長の使いが到着するまでここで休息するが得策である。
騎竜を操っている瞬間を目撃されれば確実にクラスは特定される。
その程度で崩れるような脆弱な手駒ではないだろうが、
瑕疵を潰しておくに越した事はない。

「本来なら安全地帯としての教会の利用は許可しないが…
 ベルンの王よ、お前だけは格好が格好だからな。
 徒にNPCを刺激しないための滞在であれば、特例として許可しよう。
 ただしこの教会に誰か他のマスターが近づいてきた場合は出て行ってもらう」
「構わぬ。元より安寧など求めておらぬ」
「では寛ぐといい。ふむ、何なら食事を用意するが?
 ちょうど私も昼食の出前を取ろうと思っていたところだ。
 紅洲宴歳館・泰山の激辛麻婆豆腐は一食の価値があるぞ」
「いらぬ」
「そうか…」

心なしか肩を落としたように見える神父を無視する。
教会の壁に背を預け、ゼフィールは目を閉じた。
眠りはしないが、躯は休まる。
先の集団との一戦、ゼフィールは花村陽介なる少年と戦った。
エトルリア軍を率いる若き獅子や、竜族の末裔たる少年とは比ぶべくもない弱者…
だが、あの少年は懸命にもゼフィールと真っ向から戦う事を徹底的に避けた。
ゼフィールが少年の操る未知の魔法を警戒し、百の力の半分を防御に割いていたとすれば、
少年は百の力のすべてを回避に費やしていた。
風を放ち、自身も疾風の如く駆ける少年を討つのは、
決して不可能ではなかったにせよ多大なる消耗を強いられる。
よってあの場では全力を出さず、狂王が敵のサーヴァントを討つに任せたのだが、
あのような結果になるのは些か予想外だった。
微小な怒りを滲ませ沈黙を続けるゼフィールの佇まいには、
狂王も興が乗らないらしく、無言。
静寂の内、どれほど時間が経ったか、

「ゼフィールよ。どうやら来たようだぞ」

アシュナードに言われずとも、教会の外から聞こえてくる駆動音が休息の終わりを告げていた。
体調は万全、消費した魔力もほぼ快復している。
教会を出て、市長の部下から衣装と、大型のゴルフバッグを受け取る。
黒のスーツに着替え、剣と鎧をバッグに隠し、リンカーン・コンチネンタルに積み込んだ。

846go to the next victim ◆QSGotWUk26:2013/06/26(水) 15:49:23 ID:4ShVGgc.0

「本当に動かせるのだろうな?」
「無論だ。ライダーのクラスは伊達ではない」

ゼフィールと同じく黒いスーツに身を包んだアシュナードが、高級車のハンドルを握る。
双方大柄であるため狭い車内に乗るのは難儀したものの、
いざ走り出せばなるほどアシュナードの言葉に嘘はなく、
まるで手足のように初めて乗る車を軽快に操っている。
馬より速い…さすがに竜には劣るが、自動車という運搬手段を
アシュナードのみならずゼフィールも存分に堪能できた。

(これを量産出来れば我が軍の運用も大きく変わる…)

と、思わず軍部の統制者らしい算段をしてしまう。
気が早い。まずはこの戦を制さねばならないというのに。

「ゼフィールよ。特に目的が無いのなら、一度本拠へ帰還するぞ」
「何故だ」
「この自動車という乗り物。移動するだけならいいが、戦闘向きではない。
 速度は中々のものだが、馬ほど小回りが利かん。
 市長はバイクなる物も用意しているのであろう?それを取りに行く」
「バイク…そのバイクとやらは、貴様の戦闘に耐えうるものか?」
「ラジャイオンには及ばんが、この車よりはな。
 あれならばライダーのクラスに恥じぬ戦ができようぞ」

まるで玩具を与えられた子供のように狂王が嗤う。
真実、狂王にとっては遊びなのだろう。

「ああ、貴様はどこぞでこの車の騎手…いや運転手か。
 それを調達するがいい。そのクレジットカードとやらがあれば容易いであろう。
 女子供の如く背にしがみつかれては勝てる戦も勝てんからな」
「…言われるまでもない。御免被るわ」

しかしゼフィールにとってはそうではない…これは勝利すべき戦である。
どこまで行ってもこの狂王とは相容れないと、ベルンの覇王は何度目かの確信を得るのだった。

847go to the next victim ◆QSGotWUk26:2013/06/26(水) 15:49:46 ID:4ShVGgc.0

【新都/昼】

【ゼフィール@ファイアーエムブレム 覇者の剣】
【状態】:健康、魔力消費(小)(残令呪使用回数:2)
【装備】:エッケザックス@ファイアーエムブレム 覇者の剣、封印の剣@ファイアーエムブレム 覇者の剣
     ゴルフバッグ、冬木市の地図
【備考】:自身もサーヴァントのスキル、『恐怖』をマスター相手に使用できると知りました
     ※参戦時期は、ファイアーエムブレム?覇者の剣 十巻のロイ率いるエトルリア軍がベルン城に攻め入る直前からです。
     ※冬木市ハイアットホテルの最上階を拠点としました。アシュナードはキャスターではないので、魔術工房の類は一切存在しません。
     ※ジョン・バックスには拠点の個室にこの世界で違和感のない衣装と自動車を贈るよう、
      あらかじめ要請してあります。それらがいつ頃到着するかは次の書き手にお任せます。
     ※優勝すれば、願いが相反するアシュナードを粛清するつもりでいます。
     ※もし可能性があれば、機会あらばサーヴァントの交代を考えています。
     ※令呪の詳細は以下の通りです。
【方針】:冬木市を周り、地の利を把握する

【ライダー(アシュナード)@ファイアーエムブレム 蒼炎の軌跡】
【状態】:魔力消費(小)、リンカーン・コンチネンタルに騎乗
【令呪】:ゼフィールがアシュナードに対する全ての質問に対して、拒絶、沈黙、遅延の一切なく。
     己が持つものと聖杯に与えられた全ての知識を用いて、詳細かつ速やかに答えよ。
【備考】:名無鉄之介の口車をほんの少し、戯れで信じてみる。
     彼のような道化者をそばに置くのもやぶさかではない。

848名無しさん:2013/06/26(水) 15:49:59 ID:4ShVGgc.0
投下終了です

849名無しさん:2013/06/26(水) 17:13:39 ID:OrZFKbLk0
投下乙です
動き出した最強マーダーが今後どうなるか目が離せませんね
ひょっとしたら天国組と接触したりしてww

850 ◆ca8VPtO1YY:2013/06/26(水) 19:18:34 ID:KiJ2wxHo0
申し訳ありません、いけるかと思ったのですが間に合いませんでした。完成して、まだキャラ空いてたら再予約します

851名無しさん:2013/06/26(水) 19:39:13 ID:MjM3MGj.O
投下乙です
1つだけ気になったことを

ゼフィールの状態表にある
>※ジョン・バックスには拠点の個室にこの世界で違和感のない衣装と自動車を贈るよう、
      あらかじめ要請してあります。それらがいつ頃到着するかは次の書き手にお任せます。
の部分は今回持って来させたものとは別でしょうか?
同一のものなら上記の部分は必要ないかと

852catch222:2013/06/27(木) 07:15:37 ID:UwiPeLTE0
投下乙です
取り残されていたFE組も追いついてきましたね
修正点も特に致命的なものではないようですので

ジョン・バックス&アサシン
鹿目まどか&アーチャー
鳴上悠&ランサー
ゼフィール&ライダー で予約します

853 ◆l3N27G/bJU:2013/06/27(木) 07:16:39 ID:UwiPeLTE0
失礼、トリップはこちらで

854名無しさん:2013/06/27(木) 13:30:04 ID:Ga8zXJ2g0
投下乙〜!
遊びと本気の違いか
しかしこいつら、現代慣れしていないのを自覚した上で、現代機械をふんだんに活かそうとしているのはやっぱすごいよな
どっちもただの戦士じゃなくて、政治や軍略も考える王なんだよなー
ある意味で現代に来た英雄たちの醍醐味なような話で読んでいて楽しかったです

855名無しさん:2013/06/27(木) 17:50:31 ID:p.vXory20
投下乙!
現代の物資に興味持った上で軍事利用考えたりする辺り中世の英雄っぽくていいなw
戦闘以外でもこうゆうささやかな話も面白くて好きだな
これから帰還となるようだけど、果たしてまどかやDIOとバッタリ遭遇する可能性もあるのだろうか

856名無しさん:2013/06/28(金) 19:42:57 ID:S0Vwa/jY0
しかし、清々しくなるほどの主従の仲の悪さだ。
それでいて関係が破綻しない辺り、ある意味相性良いのか?

857名無しさん:2013/06/28(金) 22:28:07 ID:ln9qcwlk0
それこそ、どちらも為政者だから、かも
相手の危険性や好き嫌い性格の不一致は別として政治的判断で組んでいるのり?w

858名無しさん:2013/06/29(土) 07:27:32 ID:Q.4LwttI0
遅れ馳せながら乙
覇王様が全力じゃなかったのは兎も角として、特殊能力持ちとは言え素手の相手に弱者もへったくれもない様に思うのは俺だけか?
まぁゼフィールの方が強いのは明確なんだろうけど…
全力と手加減の違いこそ有れ、まだ互いの手札を全て見せ切ったってわけじゃないんだよなぁ

859名無しさん:2013/07/01(月) 16:18:23 ID:onUcAnM.0
◆wYNGIse9i6さんの予約が今日までだけど、今日一日は待ってていいよね?

860名無しさん:2013/07/01(月) 18:20:52 ID:XEjZzS/A0
仕事が長引くなどリアルの都合があるので、日付変わるまでは待っていいかと
それを超えたら残念だけどさすがに破棄ってことになるかな……

861名無しさん:2013/07/01(月) 18:24:33 ID:onUcAnM.0
言った傍から予約表を消されてる。
早いっちゅーに。勝手に消すべきではない。

もし本人が消したんなら「破棄します」の一言が欲しいです。

862 ◆wYNGIse9i6:2013/07/01(月) 19:05:45 ID:CEqFEZFs0
すみません、帰宅が遅れました

今から投下開始します

863 ◆wYNGIse9i6:2013/07/01(月) 19:07:19 ID:CEqFEZFs0

《A》

東の新都と西の深山町、東西を繋ぐラインである冬木大橋が見えてきた。
軽トラックのハンドルを握るのは衛宮切嗣。
ライダー――門矢士は霊体化させたまま損傷したディケイドライバーの修復に専念させている。
彼らはホテルを出てから一言も言葉を交わしていない。
切嗣はこのライダーを、能力的には扱いやすいと考えていた。
しかし、かつて従えていたセイバーと違い、彼には聖杯戦争中に遂行を望む明確な目的がある。
他のライダーの撃破――とりわけ仮面ライダーという存在への執着を、切嗣は押し量れていなかった。
その結果が先ほどの敗戦である。得たものは少なく、失ったものは多い。
切嗣自身の切り札であるコンテンダーと、令呪一画。
ライダーの 武装の一つ、アタックライド・イリュージョン。
どれも貴重な手札ばかりだ。
ライダーと意思の疎通がうまく行えていればこれらの損失は防げたはずだが――

(だが、だからといって――)
切嗣はこのライダーと信頼関係を結べる気がしなかった。
数々の戦闘を経ていくらか傾向は掴めてきたにせよ、ライダーは未だその心中を全て明かした訳ではない。
切嗣が察するところ――このライダーの性は孤高だ。
ライダーは他人に依存するのを嫌う。それはマスターである切嗣に対しても変わらない。

本来、仮面ライダーディケイドは他の仮面ライダーの信頼を得て力を発揮する存在だ。
しかしこの門矢士は破壊者としての使命に目覚め、仮面ライダーを破壊することだけを至上の命題と している。
力を借りるのではなく――奪い、自らのものとして利用し、使い捨てる――それが今の門矢士の在り方。

無論、切嗣はそんなライダーの過去を知らない。否、知ろうとも思わない。
お互いを信頼していない彼らでは、泉こなたと火野映司のように夢という形で意識が繋がることもない。
ただ現実としてライダーはそこにいて、切嗣のサーヴァントとして存在している。

(どの道、このままでは僕らは危うい)

現在、多くのマスター達に切嗣とライダーは敵対者として認識されている。
柳洞寺で戦った士郎とセイバーは言わずもがな。
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとセイバー、ガウェイン。
こなたという少女とライダー、仮面ライダーオーズ。
イリヤを下した鳴上悠、 ランサー、クー・フーリン。
枢木スザクとバーサーカーはおそらく脱落したのだろうが、それは逆にライダーの力を得たバーサーカーすら倒しうる強敵の存在を示している。
敵は数多いるが、味方は事実上ライダーのみだ。
どれほど厭わしいとわかっていても、このライダーとこれ以上関係を悪化させるのは得策ではない。
ならば――

「――ライダー。そのままでいい、聞いてくれ」
視線は軽トラックの進路から外さず、切嗣は言う。
外から見れば車内には切嗣しかいないので、独り言のように見えるだろう。
だがライダーが切嗣を注視する気配は感じた。

864 ◆wYNGIse9i6:2013/07/01(月) 19:08:48 ID:CEqFEZFs0

「僕は君を信用しない。できない、と言ってもいい」
返答はない。しかし切嗣は、それはお互い様だ――とライダーは思っているのだろう、と予想できた。
ライダーはこれでショックを受けるような腑抜けた輩ではない。

「多分、それは君も同じだろう。たしかに僕は――失策が続いている。
 最初に戦ったランサーでまず貴重な令呪を一画消費した。
 その後の鳴上悠との戦いでは枢木スザクにしてやられた。
 柳洞寺のライダーの始末は首尾よく行ったが、あれで慢心したのかもしれない。
 セイバーとの戦いはもう言う必要もないだろう」
思い返せば情けない限りだ。
最初に遭遇したのがイリヤでさえなかったら、もう少しマシだったはず――と思うことさえ屈辱である 。

「だが、別に僕は君に謝罪したい訳じゃない。
 はっきり言っておこう。僕は君が気に入らない。
 前のセイバーもそうだったが、君もストレスを感じさせるという意味では相当なものだ」
「――ほう、言ってくれるじゃないか。それはつまり、この俺の力をもう必要としないということか?」
さすがに黙っていられず、ライダーが返答した。

「いいや――逆だ。悔しいが、僕は君なしでは望むものを手に入れられない。
 どれほど疎ましく思おうと、君の力が必要なのが腹立たしいのさ」
「なら、何故それを口に出した?俺があんたをどう思うか予想しなかったってことはないだろう」
「今から僕を信頼してくれとか、僕が君を信頼するとか言ったところで白々しいだけだろう。 なら無理に信頼する必要はない。僕は今から君をただの武器だと考える」
「武器だと?」
「そうだ。引き金を引けば銃弾を発射する。指示すればその通りに動く。正確な機械のように」
ライダーは即答しなかった。自由意志を捨てろ、と言っているのだから当然だ。

「――おいマスター、それは」
「君も僕をそう思ってくれ」
ライダーを遮り、切嗣は続ける。

「僕を魔力を供給し、敵のマスターを処理するただの装置だと認識してくれ。
 君が必要だと判断したことは、伝えてくれれば実行しよう。
 同様に、僕が必要と判断し指示したことを実行してくれ」
「割り切れ、ということか」
切嗣の言いたいことを察して、ライダーが要約した。

「ああ、そうだ。現状、僕 らはあまりにも不利な状況にある。
 僕らは消耗し、敵は多く、味方はいない。
 僕が頼れるのは君だけだし、君も僕がいなければ存在できない。
 まずこれは事実だろう?」
「ああ、そうだな」

865 ◆wYNGIse9i6:2013/07/01(月) 19:10:12 ID:CEqFEZFs0

「そして僕らの目的は聖杯の獲得――これも一致している。
 君が聖杯に何を願おうと僕は興味がないし、僕の願いを君に話す気もない」
「俺もあんたの願いなんて興味ないな」
「聖杯を獲れれば、その過程は問わない。
 そのためには僕らはもうさっきみたいに仕損じることはできない。だから――」
「割り切る。俺は俺のためにあんたを利用し、あんたも自分のために俺を利用する」
冷えきった関係だが、無理に信頼や感情を持ち込んで破綻するよりはマシだ。
セイバーよりは舞弥のスタンスに近い。

「いいだろう――俺もその方がやりやすい。
 だが一つ、オーズの破壊。悪いがこれは譲れない」
「君のそれを制限するのは僕にとっても不都合というのはよくわかっ た。
 優勝するためにはどの道倒さなければいけない相手だ。だからこれからは僕も全力で協力する。
 でも、実行するのは僕も「やれる」と判断した時だけだ。それは了承して貰いたい」
「わかってる。さすがにミスった後で我は通せないさ。
 オーズに遭遇したとしても、先走って襲いかかったりはしない」
ディケイドが一人でオーズに挑むより、マスターのサポートがあった方が勝率が高いのは確か。
戦ってみてオーズが手強いのはもうわかっている。
ならば無駄に意地を張るより、素直に切嗣の援護を受けるべきだ。

「まず、遅くなったが一度詳しく君の能力を聞いておきたい。
 君の願いに興味はないが、戦力は別だからな。
 イリュージョンの時のようなことはもうなし にしよう」
「それを言われると弱いな。ああ、了解だ。
 武器を使いこなすにはまず全容を知っておかなきゃ無理なことだしな」
「新都に入ったらどこかで身を休めよう。
 ガウェインのこともある。日が昇っている時にうろつくのはうまくない」
ライダーを信頼することはできないが、ライダーという武器を効率よく使用するための算段は整った。
もちろん、ライダーにとっての切嗣も同様だ。敵は多いのに、サーヴァントと疑いあっていては話にならない。

「ああ、そうだ――コンテンダーの代わりも調達しないとならない。
 弾丸はまだあるとはいえ銃身がこれじゃあ使いものにならないしな。
 警察署にならライフルはあるか――」
今から深夜まで休めばライダーも十分に回 復するだろう。
暗示とライダーの力を駆使すれば警察署の武器庫への侵入も不可能ではない。

そう思っていた時、コートの内側から携帯電話が鳴った。
すっかり忘れていたが、枢木スザクから受け取ったものだ。
表示されているナンバーは枢木スザクの番号ではない。

「――誰だ」
「枢木です。今、話せますか」
ライダーに周囲を警戒させつつ、通話を繋げる。
そこから聞こえてきた声は、紛れもなくあの枢木スザクのものだった。

866 ◆wYNGIse9i6:2013/07/01(月) 19:11:31 ID:CEqFEZFs0

《B》

この少女は羽瀬川小鳩と言うらしい。
匂宮出夢が置いていった少女の服を探り、出てきた生徒手帳からスザクは少女の名前を知った。

「中等部二年生、ということは年齢はナナリーと同じくらいか」
とても小学生にしか見えないが、こんな少女まで戦いに参加していることに驚いた。
彼女は未だ目覚める気配がない。出夢が応急処置したとはいえ、傷が治癒したわけではない。
本格的な治療を施さねばいつ絶命してもおかしくないように見える。

「病院に運ばないと――でも、救急車を呼ぶ訳にも行かないな」
そこまで言って、何を考えているんだ俺は、とスザクは後悔した。
この少女とてマスターであるのなら、倒すべき敵に変わりはない。治療も何も、ここで殺 しておくのが最善であるはずなのだ。
無論、彼女を守るのが現在スザクの生命線である出夢の依頼なのだから、手を出す訳にはいかないのだが。

「まだ、俺の中には甘さが残っているのか――」
同じ日本人の、しかも幼い少女を手に掛けることに躊躇っている。
小鳩の首筋にそっと残った右腕で触れる。
触れれば折れてしまいそうな細い首でも、この骨折した腕ではとてもへし折れない。
つけたばかりの義手も同様だ。まだ慣れていないというのを差し引いてもやはり義肢ではスザクの身体能力は完全には戻らない。
が、それは肉体的な問題だけではない。
精神的にも、今のスザクはこの傷ついた少女を害する覚悟が持てていない。

「ルルーシュ、君ならやれるのか――?」
悪逆非 道の化身、ゼロ。その正体、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
親友にして仇敵であるルルーシュならどうするだろうか。
おそらく――やるだろう。それしか方法がないのなら。
会えば殺し合うしかないとわかっていても、スザクは今、ルルーシュに会いたいと思う。
自分で満足に動くことすらできないこの無様を晒すことになっても。
あるいは、殺されるのなら他の誰でもなくルルーシュがいい――心の何処かでそう思っているのかもしれない。
嘆息し、小鳩の首から手を離して時計を見る。出夢が再度出発してから一時間ほど過ぎている。
結果がどうなったにせよ、もう戦いは終わっているだろう。
自分がいまだ生存しているところを見ると、バーサーカー――ランスロットもまた存在して いるとみて間違いない。
魔力を搾り出されることもなくなっているため、バーサーカーは戦闘から離脱しているのだろうか。

「ランスロット卿――俺はここにいる。
 まだ俺と共に戦う意志があるなら――どうか、俺のもとに帰って来てくれ」
スザクは魔術師ではない。念話の心得などないし、使えたとしても理性なきバーサーカーには通じる保証もない。
それでも、スザクはバーサーカーのマスターである。
魔力供給という繋がりがあるのだから、バーサーカーが間桐慎二から解放されたのならここに、スザクのもとに戻ってくるはずだ。
それを信じて、バーサーカーが帰還することをただ願う。

867 ◆wYNGIse9i6:2013/07/01(月) 19:12:37 ID:CEqFEZFs0

「――おーい、おにーさん。寝ちまったのか?」
どれほどそうしていたのか、気がつけば目の前に出夢が立っていた。
傍らにはキャスターがいる。忘れもしない、スザクの両足を吹き飛ばしたやつだ。

「お前は――!」
「おっと、落ち着いてください。私はもうあなたに敵意はありませんよ。
 いえ、間桐慎二に命令されてやったのですから、元々ありはしませんでしたけどね」
「――そうか、この子のサーヴァントがお前か。なら、間桐慎二を倒したのか、出夢」
「そういうことっ。依頼達成だな。
 つってもおにーさんの依頼じゃなくてそっちの小学生の依頼だけどな。ぎゃはっ」
驚いたことに、出夢はまったく傷を負っていない。
彼が健在であるということは、姿は 見えないがアサシンも無事なのだろう。
むしろ隣にいるキャスターのほうが全身ダメージを受けている。
歴戦の勇士であるスザクをしても、まさか出夢がキャスター相手に肉弾戦を演じ競り勝ったとは想像できなかった。

「バーサーカーはどうした?」
「さあ?僕がついた時にはいなかったぜ」
「あのバーサーカーなら間桐慎二に命じられて魂喰いに出かけましたよ」
「へえ、じゃああいつもうブチ殺しちまったし戻ってくるんじゃねーの?」 
「いや――バーサーカーには間桐慎二以外の一切の命令を禁じるという令呪がかけられています。
 間桐慎二本人が死んだとしても、この令呪がある限りバーサーカーが戻ってくることはないでしょうね。
 令呪のキャンセルは一流の魔術師で も不可能です。同じ令呪を使って上書きするしかありませんね」
スザクは愕然と己の右手を見る。残った令呪は一画だ。
これを使えばスザクは消滅する。バーサーカーを取り戻す意味がなくなってしまう。

「そんな――駄目なのか――?」
「令呪ねェ――なあおにーさん、なんだったら僕の令呪を分けてやろうか?」
打ちひしがれるスザクをよそに、出夢はあっさりと言った。
スザクもキャスターも虚を突かれたように彼――彼女を見る。

「ほら、僕まだ三画持ってるし。持ってても多分使わねーと思うんだよね」
「出夢――いいのか?」
「構わねーよ。ここでおにーさんに消えられちゃ契約不履行になるし――旦那?
 悪いけどそういうことでいいかい?」
「――サーヴァント としては到底受け入れられんが、どうせ俺が何を言ってもやるのだろう。
 残念なことに使える令呪は二画ある――断ればもう一つで何をされるか予想もつく。
 どうせ俺は今日一日はもう戦えんのだ。戦える力は必要になる。一画だけなら好きにするといい」
姿を見せないまま、アサシンが返答した。半分諦観の混じったそれは、しかし了承でもある。

「つーことで、ほら。手ぇ出しなよおにーさん。
 やり方知らねーけど多分なんとかなんだろ」
折れた右腕を強引に出夢に握られ、スザクは痛みに顔をしかめる。
出夢がじっと精神を集中させると――やがてその右腕にあった令呪の一画がスザクの右腕に移植された。

868 ◆wYNGIse9i6:2013/07/01(月) 19:15:52 ID:CEqFEZFs0

「ぎゃはっ、ほら何とかなったろ?」
「本当に、君には何から何まで世話になってばかりだな」
「お世辞はいいっつの。さっさとおにーさんの相棒を呼び戻してやんなよ」
「ああ。
 枢木スザクが令呪を以って命じる――バーサーカー、君を縛る全ての戒めを破戒する!」

出夢から渡されたばかりの令呪を使って、間桐慎二に強制された令呪をキャンセルする――
令呪は滞りなく発動し、スザクの令呪は再び一画となった。

「後はほっときゃ戻ってくるんじゃね?」
「助かったよ、出夢。君はこれからどうするんだ?」
「んー、依頼はおにーさんを勝たせることだからなー。
 そのためには他の奴らを潰して回るのが一番いいんだろうけど、あいにく僕と旦那は殺戮は一 日一時間って決めてんだ。
 さっき一時間使っちまったから、次殺すのはまた日が変わってからだなー。
 ま、夜になるまでおにーさんの護衛がてらここで寝ることにするよ」
「ありがたいよ。で――そのキャスターはどうするんだ?」
出夢とアサシンはスザクにとって味方だが、傍らでじっと成り行きを見守っていたキャスターはそうではない。
足を吹き飛ばされたのは慎二のせいと言えるが、このキャスター自身信用できるかどうかは未知数だ。

「あー、それな。もう依頼は果たしたから僕はどうでもいいっちゃいいんだが」
「おっと、言ったはずです。もう私はあなたの敵ではありませんよ。
 ここに来たのは私のマスターの安否を確認するためと――あなたに謝罪をしようと思いま してね」
「謝罪?」
「ええ。私もあなたの足を台無しにしたことについて、申し訳なく思っていましたのでね。
 そのお詫びと言ってはなんですが――あなたを治療して差し上げようと思いましてね」
「治療だと?自分のマスターを差し置いてか」
治療するならマスターを優先すべきだ。
なのにスザクを先に癒すというのはなにか裏があると感じる。

「もちろん、マスターも治しますよ。ただ、現状私たちの立場は非常に危ういといっていいでしょう。
 マスターでありながら私に打ち勝ったイズムに、アサシン。そこにあなたのバーサーカー。
 誰を相手にしてもしょせんキャスターである私には為す術はありません。
 それ以前に瀕死のマスターがここにいるのですから、我々の 生殺与奪権はあなた方にある。
 いえ、イズムがあなたに従うというなら、あなたがこの中で意思決定権を持っている、というべきでしょう」」
「だから俺を治療して、立場を良くしておきたい――と?」
「そうです。あなたの手足を完全に再生する――ということはできませんが、幸いここには元になる義手義足がある。
 私の錬金術を使えば簡易的な機械鎧(オートメイル)に錬成することができるでしょう」

869 ◆wYNGIse9i6:2013/07/01(月) 19:17:53 ID:CEqFEZFs0


「オートメイル?」
「機械仕掛けの義肢のことです。生前の私の世界では盛んだった技術でしてね。
 神経を繋ぐので生身の肉体と遜色なく動き、武器を内蔵することもできます。
 一から作るのは骨ですが、その義肢を錬成し、あなたの体と直接融合させれば馴染むのも早いでしょう。
 今の貴方にはうってつけだと思いますよ」
スザクはじっと自分の体を見下ろした。
出夢が用意してくれた義肢は高級品なのだろうが、さすがに生身と同じように扱えるわけではない。
もしキャスターの言う通り、義肢を強化できるのならそれはスザクにとっても願ってもないが――

「私としても、今あなた方と敵対するのは避けたい。マスターが動けない以上すぐにここを離れることもで きない。
 つまりですね――私はあなた方から安全を買いたいのですよ。
 私があなたを治療するのと引き換えに、あなた方には私のマスターが目覚めるまで私たちを守っていただきたい」
「――その子が起きた後はどうする?そのとき改めて戦う、ということでいいのか」
「それも難しい問題でしてね――私はマスターと接触してすぐ間桐慎二に襲撃されたので、あまり話せていないんですよ。
 できれば返答はその時にさせていただきたいのですが」
「今はまだ、確かなことが言えない、か」
「いいんじゃねーの?おにーさん。実際今のままじゃ戦えねーんだしよ。
 とりあえず治すだけ治させて、後のことはそのとき決めりゃイイ」
出夢もまた、キャスターの言葉を後押しする。

「――わかった。提案を呑もう、キャスター。
 だが妙な真似はするな。義肢に爆弾を仕込むようなことをすれば、即座に敵とみなす」
「わかっていますよ。今、下手な小細工をするのは私にとっても不利益ですから」
キャスターがスザクの治療に取り掛かる。
隣に出夢とアサシンがいるのだから、そうそう小細工はしないだろう。
折れた右腕が修復されていくのを横目にしながら、スザクはふと数時間前のことを思い出していた。
今こうして新たな協力者を得たものの、最初に組んだ相手はどうしているのだろう、と。

870 ◆wYNGIse9i6:2013/07/01(月) 19:19:21 ID:CEqFEZFs0

《C》

「生きていたとは思わなかったよ、枢木」
「何とか切り抜けられましてね。大体半日ぶりですが、そちらの調子はどうです」
「そういうことを聞くということは、同盟はまだ続いていると思っていいのか」
「俺は――いえ、僕はそのつもりで連絡しました。色々提供できる情報もありますしね」
「そうか――だが、済まないが運転中だから長く話せない。落ち着いたらこちらからかけ直す。君の番号は変わったようだが?」
「前の携帯は壊してしまいましてね。衛宮さんの番号は覚えていましたから。
 ああ――すみませんが一つだけ、今聞いておきたいことがあります」
「なんだ?」
「この聖杯戦争から降りる方法。ご存知ですか?」
「――それは、勝ち残る以外で 、ということか」
「ええ。死なずにこの戦いから身を引く方法を、知っていたら教えてもらいたい」
スザクから放たれた予想外の質問は、切嗣を戸惑わせた。
まさか今更になって怖気づいたのか――

「そんな方法はない。通常の聖杯戦争なら教会に駆け込めば助かるかもしれないがな。
 始まれば勝ち残るか、死体になるか。今ここにいる僕らの末路は二つに一つだ。」
「やはり、そうですか。つまらないことを聞きましたね。では、また」
スザクからの通話は唐突に切れる。
その淡白さから、どうも自分の保身を目的にしたわけではないように思えた。

「どう思う、ライダー。枢木が命を惜しんだか――」
「あいつはそんなタマじゃないだろう。
 そうだな――オーズのマスタ ーのような弱者を保護したんじゃないか?
 殺す気にならないから何とかして聖杯戦争から脱出させてやる、とかな」
「有り得ない話ではないか。ここにはどんなマスターが居ても不思議じゃないしな」
ポケットから片手でタバコを取り出し、火を点ける。
橋を渡り終え、新都に入った。
まずは拠点を探し、腰を据える。やるべきことは多い。
ライダーの能力の再確認。
コンテンダーの代わりの調達。
市長の動静を探る。
そして――ここに来て復活した枢木スザクへの対応。
スザクの復帰は切嗣にとっても決して悪い要素ではない。

「枢木が健在なら――そしてあいつが協力者を得たのなら、セイバー達にぶつけるのもいいかもしれないな。
 あいつのバーサーカーは何故だか騎 士王に異常に執着している。
 うまく誘導すれば勝手に噛み付いてくれるだろう」
「オーズをやるならそのときか――おっと、睨むなよマスター。
 わかってる、もう勝手に突っ走りはしないさ」
「頼むよ。僕らはもう失敗できないんだからな――」

もうすぐ日が沈む。
魔術師殺しの夜が始まる。

871 ◆wYNGIse9i6:2013/07/01(月) 19:23:30 ID:CEqFEZFs0

《D》

スザクは通話を切った。
この携帯電話は間桐慎二に奪われたものではなく、出夢に頼んで調達してもらったものだ。
軍人という職業柄、切嗣と鳴上悠の携帯のナンバーは当然記憶していた。
聖杯戦争からの離脱の方策を、切嗣なら知っているかと思ったが、そう甘くはない。
出夢と組んだ今、さほど切嗣との同盟に意味は無いが、それでも手札の一つにはなる。

「――!ランスロット卿――」
ふと窓の外を見れば、バーサーカーが佇んでいた。
慎二から施された令呪をキャンセルしたため、魔力パスに沿ってここまで辿り着いたのだろう。
その姿は見るも無残なほどに傷ついている。数刻前のスザクのように、左腕がない。
少しでも魂喰いをしたのか魔力はやや 回復したようだが、体は万全には程遠い。
別室で小鳩の治療を行なっているキャスターと、監視のためについていった出夢とアサシンに襲いかからぬよう、バーサーカーを霊体化させる。
少なくとも動けるくらいに回復するまでは暴れることはないだろう。

「俺が不甲斐ないばかりに、あなたに無理をさせてしまった――今は休んでくれ。また、ともに戦う時まで」

剣は再びスザクの手に戻った。キャスターが治療した手足も滑らかに動く。
着々と戦える準備は整いつつある。

「後は――あの子をどうするか、だな」
スザクが切嗣に聞いたのは、小鳩を殺さず聖杯戦争から脱出させられないか知りたかったからだ。
だが結果は予想していた通り、不可能。
ならばやはり、殺すか―― あるいは一縷の望みを掛けて教会まで行くか。

「あの娘が目覚めるまでに、答えを決めておかないとな――」
もうすぐ夜が来る。
夜になればまた――戦いが始まる。
しかし、戦う力を手にしても、それを扱うスザク自身が迷っていては意味が無い。
相手が自らの意志で戦う戦士ならば迷わない。
だがそうでない相手――無力で幼い、本来なら守るべき少女の命を奪えるのか。
ここで決めなければならない。
ルルーシュと同じかそれ以下の外道に身を落とす道を進むか否かを。
スザクは強く、機械と化した左腕を握り締めた。

872 ◆wYNGIse9i6:2013/07/01(月) 19:24:29 ID:CEqFEZFs0

《E》

当然、キャスターことキンブリーは親切心からスザクを治療した訳ではない。
もしああしなければスザクは出夢にキンブリーの排除を命じただろうし、そうなればスザクの命令を聞く立場であるらしい出夢も今度こそキンブリーを殺すだろう。
先程は出夢を理想のマスターと思ったが、まさか枢木スザクに従う立場だとは想像できなかった。
だが何にせよ――キンブリーは一時の時間を稼げた。ここからどう転ぶかはまだ定まっていない。
治療の術を持つサーヴァントは希少だ。スザクが勝ち残りを狙うなら、これを売りにして今しばらくの猶予を得ることも不可能ではないだろう。
オートメイルは正直なところ門外漢ではあるが、宝具である賢者の石と持ち前の道具作成スキル を用いることでほぼイメージ通りのものはできた。

匂宮出夢に匹敵する、とまではいかないにせよ、枢木スザクもまた相当に強力なマスターである。
仮にマスターを乗り換えるような事態になった時、出夢が第一候補なのは変わらないが、次点として枢木スザクは申し分ない。
今はスザクと出夢に見せるポーズのために小鳩を治療しているが、このマスターではキンブリーの望む快楽は得られないだろう。

そもそも――キンブリーは聖杯にかける願いを持っていない。
生前、ホムンクルスに組みして人間と敵対したときもそうだ。
キンブリーが見たかったのは人間とホムンクルスの存在を賭けた戦いの過程と結果。
過程という流れを無視して結果だけを手にする聖杯には何ら価値を見い出さ ない。
強いて言うならば――この聖杯戦争を誰が勝ち残るのか見届けたい、というのが願いになるのだろうか。
小鳩のような軟弱なマスターでは早々に脱落してしまう。それでは全く楽しめない。
出夢もスザクも、ベクトルは異なるが確固たる己の意思を持って戦っている。
キンブリーにとって好ましい人間たちだ。その行く末を見てみたい。
仮に小鳩が彼らに匹敵するだけの意思を獲得できたのなら、そのときは彼女に従うのも悪くはないが――

(私は傷は癒せても、心までは癒せない。さて、我がマスターは目覚めたときどこに向かうのでしょうか)

意思を示せないのなら淘汰されるだけだ。
壊れていく様を眺めるのも一興ではあるが――その場合、キンブリーとしても身の振り方を 考えねばならない。
事態は小鳩の目覚めによって大きく動くだろう。
その中でキンブリーが取るべき行動で、何が最善か――治療の手は止めず、思考に没頭する。

873 ◆wYNGIse9i6:2013/07/01(月) 19:26:06 ID:CEqFEZFs0

【深山町・民家/夕方】

【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】
 [令呪]:1画
 [状態]:疲労(小)、義手・義足を機械鎧化
 [装備]:携帯電話
  ※民家の老夫婦に預けられています
  ※匂宮出夢に《依頼》を行いました
【バーサーカー(ランスロット)@Fate/Zero】
 [状態]:ダメージ(中)、魔力消費(大)、右太腿に刺し傷(通常の回復手段では治癒不可能)、左腕欠損

【羽瀬川小鳩@僕は友達が少ない】
 [令呪]:2画
 [状態]:重症は大体回復、精神崩壊、気絶
【キャスター(ゾルフ・J・キンブリー)@鋼の錬金術師】
 [状態]:疲労(中)、魔力消費(大)、全身ダメージ(中)

【匂宮出夢@戯言シリーズ】
 [令呪 ]:2画
 [状態]:健康
 [装備]:”戯睡郷”メアを所持
  ※《一喰い》《暴飲暴食》の隙を解消し威力も向上しました
  ※ギアス発動下の枢木スザクの動き方を疑似的にではありますが修得しました
【アサシン(”壊刃”サブラク)@灼眼のシャナ】
 [状態]:健康、魔力消費(中)


【新都/夕方】

【衛宮切嗣@Fate/zero】
 [令呪]:1画
 [状態]:固有時制御の反動ダメージ(中)、魔力消費(大)
 [装備]:ワルサー、キャレコ 、携帯電話、鉈、大きな鏡、その他多数(ホームセンターで購入できるもの)
  ※携帯電話には枢木スザクの番号が登録されています。
  ※深山町内にCCDピンホールカメラ付きの使い魔を放ちました。映像は無線機があれば誰でも受信出来ますが、暗号化されています。
  ※トンプソン・コンテンダーが破壊されました。少なくとも自力での修復・復元は不可能です
【ライダー(門矢司)@仮面ライダーディケイド】
 [状態]:ダメージ(小)、魔力消費(中)、隠蔽能力再発動まであと約三時間、ディケイドライバー損傷
  ※ライダーカード≪龍騎≫の力を喪失(コンプリートフォームに変身するだけなら影響なし)。
  ※ライダーカード≪電王・モモタロス≫破壊(コンプリート フォームに変身するだけなら影響なし)。
  ※ライダーカード≪キバ≫の力を喪失(コンプリートフォームに変身するだけなら影響なし)。
  ※ステータス隠蔽能力には以下の制約があります。
  ・コンプリートフォームを発動したか否かに関係なく真名を知ったマスターには一切効果を発揮しない
  ・最後にコンプリートフォームを発動してから六時間経過するまで隠蔽能力は消失する
  ※アタックライド・イリュージョン再使用不可
  ※ディケイドライバーが損傷しています。それに伴い魔力生成機能が一時的に停止しています。修復が完了すると同時に再び稼働します

874 ◆wYNGIse9i6:2013/07/01(月) 19:32:47 ID:CEqFEZFs0
投下終了です
タイトルはDecisionHeight

今回は期限から遅れましたことをお詫びします

875名無しさん:2013/07/01(月) 19:41:59 ID:onUcAnM.0
お疲れ様です。賢者の石あれば人体練成できるんじゃね?
扉開いちゃうかもしれないけど。

876名無しさん:2013/07/01(月) 20:51:22 ID:XEjZzS/A0
投下乙です
どん底にいたスザクが一転集団の中心に
キンブリーもうまく潜り込めましたね

877名無しさん:2013/07/01(月) 22:26:19 ID:TvJwEmjY0
投下乙です
義手からオートメイルを錬成するとは錬金術師の面目躍如です
これからスザク組がどう動くか楽しみです

878名無しさん:2013/07/01(月) 22:34:29 ID:ZlJHuLLE0
投下乙〜!
義手と来た時に西尾らしいなと思ってたんだが、そこからこうしてオートメイルに繋がるとは
これだからリレーとクロスオーバーは面白い!
スザクも奪われたもの取り戻して、切嗣ライダーも割りきって、キンブリーも本領発揮しだして
はてさてこれから先が楽しみです
しかし、出夢アサシンをはじめ、結果的にこのチーム一大戦力になったなーw

879名無しさん:2013/07/01(月) 23:00:46 ID:JkPi32J60
投下乙!
ワカメ軍団崩壊から新興チーム誕生だなw
再帰不能めいてたスザクもオートメイルで復活したし
願いではなく、享楽の為に英霊として召還されたキンブリーの今後が気になるなw
ここまでワカメの傀儡だったし、本人が狡猾なだけに尚更

880名無しさん:2013/07/02(火) 00:08:16 ID:318h3XQwO
投下乙です。

スザク軍団の今後は小鳩次第か。

881名無しさん:2013/07/02(火) 00:09:13 ID:i.XWncfM0
キンブリーさんあれで独自の美学があるから結構かっこいいしな
まあだからこそ、強い意志のない小鳩ちゃんがどうなっちゃうのかが心配&楽しみなのだがw

882名無しさん:2013/07/02(火) 18:39:58 ID:0c3WrO/Y0
投下乙でしたー!
今持ってるアニメ見返してたんだけど、番長のジオは横にデパート一つ分前後、DIOの目からビームは雲の上まで届くのな
奇襲に使えるならwikiに追記したほうが良いのかな?

883名無しさん:2013/07/02(火) 19:57:35 ID:YVimwYd.0
>書き手以外の不特定多数によるサーヴァントのステータス・スキル・宝具の編集はご遠慮下さい。

884名無しさん:2013/07/02(火) 20:06:53 ID:0c3WrO/Y0
申し訳無かった、忘れてくれ

885 ◆l3N27G/bJU:2013/07/03(水) 20:20:32 ID:OOM09/Fs0
予約の延長を申請します。

886名無しさん:2013/07/04(木) 02:10:54 ID:jULXWDa.0
>>882
英霊化してるから原作通りの能力が常に発揮できるってわけじゃない。
魔力不足による出力低下とかあるし。

887名無しさん:2013/07/04(木) 10:18:16 ID:7SR.jCdQ0
でもDIOって英霊化したことでむしろパワーアップしてる方なんだよな
宝具の燃費が悪くなってるってトコ以外は

888名無しさん:2013/07/04(木) 10:29:35 ID:InmKCEeEO
一方英霊化しても残念さやかちゃんは残念だった。というか魔力回復不能な上に狙われたら即死な足枷宝具とかどないせえと…やっぱソウルジェムって欠陥品だわw

889名無しさん:2013/07/04(木) 11:16:44 ID:iNXc.JAQ0
まあ二次創作故に原作の赤ランサーさんみたいに史実という原作からの英霊化による補正と言う名の魔改造ができないからな……w>英霊化
いや中には二次創作でもキャラ魔改造しちゃう場所もあるかもだけれどw

890名無しさん:2013/07/04(木) 12:58:20 ID:P/h2QYpg0
ゴールデン(笑)

ソウルジェムはあれだから…魔女を生むための装置やから(震え声)

891名無しさん:2013/07/04(木) 14:58:00 ID:FDAL7Fm60
>>887
DIO様の場合は死ぬ間際に世界と契約して守護者になったっぽいからその補正だと思ってる
というかそう考えないと肉の芽の強さがちょっと納得できないんだよね

892名無しさん:2013/07/04(木) 15:26:16 ID:mk0k68dkO
さ、さやかちゃんは突きボルグや5次ハサンには強いから(震え声)

893名無しさん:2013/07/04(木) 15:37:29 ID:du5z9N4A0
つか作中の描写見る限りDIO様さりげに守護者になってるんだよね…
二次聖杯じゃさりげに英霊になってから鯖として召還されるまでの間が描かれてる鯖が少ないだけに新鮮だった

894名無しさん:2013/07/04(木) 18:03:56 ID:J6nD634Q0
もう救済エンドで良いよ(投げやり)

895名無しさん:2013/07/04(木) 18:49:23 ID:cr8mEMys0
投げボルグ?(難聴)

896名無しさん:2013/07/04(木) 19:44:23 ID:iNXc.JAQ0
ほ、ほら、CCCならランサーさんは突きボルグだし!
でもゲームシステム的に下手な回復・蘇生系は突きボルグに相性悪いよね……
ナカツ槍とかで殺される→魔女化→ゲイボルグ、で1ターン中に死にかねない
ソースは三度洛陽で蘇るも殺された俺

897 ◆cp3jCCSc7M:2013/07/06(土) 17:17:10 ID:vniE3xD.0
泉こなた&ライダー、名無鉄之助&キャスター、花村陽介&ランサーで予約します

898 ◆2shK8TpqBI:2013/07/06(土) 21:52:38 ID:le//4aCM0
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア&セイバーで予約します

899 ◆2shK8TpqBI:2013/07/06(土) 23:30:04 ID:le//4aCM0
すみません追加で衛宮士郎&セイバー(アルトリア)をお願いします

900名無しさん:2013/07/06(土) 23:49:13 ID:7uoSitBY0
>>898>>899
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア&セイバー,衛宮士郎&セイバー(アルトリア)ですね
期限は最初の2013/07/13(土) 21:52:38までで
了解です

901sunlightheart ◆2shK8TpqBI:2013/07/09(火) 05:39:10 ID:PGsnKcU20
投下します




衛宮たちから別れたルルーシュとガウェインは、深山町の空き家に進入し居間の椅子に座っていた。
明かりを射してない部屋でうな垂れるその姿は、普段の自尊心が高く、クールな性格からは考えられないほど、ルルーシュの顔には影が差していた。
先刻の衛宮切継の言葉、そして金田一一を自分のミスで死なせてしまった事実が、ルルーシュの心を苛んでいた。
黒の騎士団のゼロとして振舞っていた頃は、偽悪者、復讐者、反逆者として結果のみを追い求める非情な態度を貫いていた。
しかしそれはルルーシュの一面でしかない。
彼の元来の性格は、正義感が強く実直で、ギアスを獲得する以前から困っている人を見ると放っておけず、渦中に飛び込み救いの手を差し伸べるなど人間的に優しく情に厚い。
それゆえルルーシュは、金田一の死を悼んでいたし、後悔していた。
そうして、どれほど時間がたったのだろう。
ふいにポツリと、ルルーシュが口を開いた。


「ガウェイン。」

「ハイ。」

「・・・すまなかった、もう大丈夫だ。」


背後に佇む己の騎士には、取り返しのつかない過ちを自分のせいで犯させてしまった。
衛宮切継の言うとおり、心の中に慢心があったのだろう。
絶対遵守の力に。
自分の頭脳とそれによって立てられた戦略に。
大国を相手に渡り合ってきた経験に。
驕ることはしなかったが、過信はしていた。
過信したがゆえに、金田一とライダーは死に、ガウェインに仲間殺しの罪を犯させてしまった。
それでもこの騎士は、決して責めることをせずルルーシュを守った。
そのことがルルーシュには今は有難かった。

「金田一には謝りきれんな・・・せっかくの忠告を無駄にしてしまった。」

「あまり自分を責めないでくださいルルーシュ。あなたは最善を尽くされた。それにハジメ殿も、あなたを決して責めませんでした。」

ガウェインの慰めの言葉は嬉しく、そして苦しくもあった。

「我ながら弱くなったものだな・・・。たった数時間一緒にいた奴が死んだだけで、こうも動揺するとは・・・。」

「ルルーシュ・・・」

「心配するなガウェイン。言っただろう、もう大丈夫だと。」

だが・・・っと立ち上がり外を睨み付ける。
まるでそこに仇敵がいるかのように、紫の瞳に強い意思を宿らせる。

「衛宮切継・・・。借りは返させてもらうぞ。」

振り返り己の従者の前に立ち、真っ直ぐに目を見る。

「頼むガウェイン。まだ俺を主と呼ぶのならば、俺に力を貸してほしい。」

「ルルーシュ、主君たる者が気安く頼むなどと口にしてはなりません。」

そしてガウェインは、膝を突き頭を垂れる。


「この身は貴方の剣。どうかご命令を、ルルーシュ!貴方の剣たる私に、聖杯戦争を破壊せよと!」

ルルーシュは驚いた表情をしたが直ぐに毅然とした顔に戻り、太陽の騎士に命を下す。

「サー・ガウェインよ。我が剣となり、聖杯戦争を終わらせよ!」

「騎士の名の下に!」


その宣言と共に、脱いであった上着を羽織り外に出る。
その後ろからガウェインも供に進みだす。
先ほど金色の閃光が空に向かって放たれたのを見た。
間違いなく衛宮のセイバーの宝具の力だろう。


「行くぞガウェイン!」

「ハイ!ルルーシュよ!」


目指す先は柳桐寺―――
王と騎士は歩き出す・・・・・

902sunlightheart ◆2shK8TpqBI:2013/07/09(火) 05:40:47 ID:PGsnKcU20









「こんなところでしょうか。」

気絶した士郎を空き部屋に運び、布団を敷いて横たわらせる。
外傷こそは無いが魔力の急激な消耗による魔力回路の負荷は、回復には暫らくかかるだろう。


「コナタたちともなるべく早く合流したいのですが・・・
やはり暫らくは動けませんね。」

こちらの方に敵が来ても、今の自分なら最悪でも士郎を連れて逃げることは可能だ。
それよりも心配なのは、コナタやるルルーシュたちの方へ敵が襲撃される事だった。
無論ガウェインもオーズの強さは知っている。
並大抵の相手には遅れをとらないだろう。
しかしマスターの方はそうはいかない。
切継のような参加者に当たった場合、コナタやルルーシュでは勝てないだろう。
だが今士郎を動かす訳にもいかず、結局のところ無事を祈るしかないのだ。
その時、士郎のポケットに入っている携帯電話から着信が入った。
一応警戒しながら通話ボタンを押す。

「もしもし、一体誰で『その声はセイバーか?』っ!ルルーシュ!?」

数時間前に別れた仲間からの連絡に驚くも、すぐに気持ちを切り替える

「ルルーシュ、大丈夫ですか!?ガウェインは!?」
『すまない、心配をかけたようだな。
もう俺は大丈夫だ。ガウェインも無事だ。』

覇気の戻った声に安堵する。
きっとガウェインのおかげで持ち直すことができたのだと、内心嬉しく思いつつ通話を続ける。

「いまどこにいるのです?私と士郎は柳桐寺です。」
『俺たちは学園前だ、泉たちは一緒じゃないのか?』
「・・・そのことで話があります。」








星海原学園の校門前で、ルルーシュは携帯を片手にあて話していた。
近くでガウェインが霊体化してあたりを警戒しており、ルルーシュ自身も注意深く周りを見ていた。
アルトリアの宝具が使われてから時間が経過していたため行き違いになることを防ぐため、わかり易い場所の学園前まで来ると予め衛宮に渡していた携帯を使う。
そして衛宮の代わりに電話に出たアルトリアから、今までに起こった出来事についてすべてを聞いた。

903sunlightheart ◆2shK8TpqBI:2013/07/09(火) 05:42:53 ID:PGsnKcU20



「なるほど、天海陸の本性に衛宮切継の襲撃か・・・」
『はい、あいにくこちらは直ぐに動くことができません。切継の方も今は行動を起こさないとは思いますが・・・』
「泉たちか?確かあのディケイドとやらは泉のライダーに執着しているようだったが。」
『おそらくディケイドは再び現れるでしょう。今度は確実に、オーズを破壊するために。』

僅かに思案するルルーシュ。衛宮のセイバーが本調子に戻ったとはいえ、今現在衛宮自身は身動き取れない状況にいる。
こちらも柳桐寺に向かい衛宮たちと合流するのもいいがその場合泉たちが危険に晒される。
メリットとデメリット、様々なパターンを頭に思い浮かべる。


「セイバー、お前たちは回復に専念しろ。俺とガウェインは泉たちと合流する。」
『いいのですかルルーシュ?私としては助かりますが・・・」
「問題ない、泉たちは遠坂凛の家に向かったんだな?
俺とガウェインが今から向かってそのまま遠坂邸で篭城する。お前と衛宮は回復しだい連絡してこちらに向かってくれ。
もし遠坂邸が拠点にできなかったら改めて連絡する。」
『わかりました。コナタたちをお願いしますルルーシュ。』
「ああ、では切るぞ。」
『あ、待ってくださいルルーシュ。』

通話を終えようとする前に、アルトリアから最後にこれだけは、と待ったをかけられる。

『気をつけてくださいルルーシュ、どうか無事で。』
「―――ああ、そっちも気をつけておけ。他の参加者が来る可能性もゼロではないからな。」

そういって今度こそ通話を終えた。
そしてセイバーから聞いていた遠坂邸へ向けて歩き出す。
そして歩きながらギアスについて考えていた。

(絶対遵守のギアスもこの場ではあまり信用できないな。
過度の期待はせず通じたら運がいいと思うぐらいが丁度いいか・・・)

すでに敵に対して三度も遅れをとっている。
相手がどんな手段を持っているか解らない以上、これからはギアスが通用しないと仮定した上で行動したほうがよさそうだ。

「さて、念のためだ。」

近くを歩いていたNPCにギアスをかける。

『柳桐寺に近づくものがいたら連絡しろ。』

この命令を数人にかけて柳桐寺付近に配置させる。
直接柳桐寺を見張るのは違反になるが、その方向に近づくものを報告させるのは違反にはならない。
もっとも柳桐寺の近くにいるNPCまで報告されるという欠点もあるが、これで奇襲に対して僅かながら有利になるだろう。

(もっとも、これもあまり当てにするべきではないな。引っかかればラッキー程度に思っておくとしよう。)


「さて、まずは泉たちと合流、できたら遠坂邸で資料も探す。他にもやることも多いな。」

金田一とライダーの死はやはり大きな痛手だ。
彼らは聖杯戦争の破壊に必要な人材だった。
だが、嘆いたり後悔は十分した。あいつらの分も俺が頭を働かせなければならない。

「さて、行くかガウェイン。」
「はい、ルルーシュ。」


黒の皇帝と太陽の騎士
名探偵と軍師に心の中で別れを告げ、彼らの想いを受け継ぎ歩き出す。
彼らの頭上には、正しき道を照らす太陽が輝いていた。

904sunlightheart ◆2shK8TpqBI:2013/07/09(火) 05:44:21 ID:PGsnKcU20
【深山町・月海原学園校門前/午後】


【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュ】
 [令呪]:1画
 [状態]:健康
 [装備]:携帯電話、ニューナンブ
 [思考・状況]
 基本行動方針:聖杯戦争の破壊もしくは封印し、自らの人生を完結させる
 1.遠坂邸に行き泉こなたと合流する
 2.衛宮切継に借りを返す
 3.ギアスの力を過信しない
 ※柳桐寺付近にNPCにギアスをかけました【柳桐寺に近づく奴がいたら連絡する】
 ※アルトリアから別れてから今までに起こったことの詳細を聞きました

【セイバー(ガウェイン)@Fate/extra】
 [状態]:健康
 [基本行動方針]ルルーシュに従い聖杯を破壊もしくは封印する




【深山町・柳洞寺/午後】


【衛宮士郎@Fate/stay night】
[令呪]:2画
[状態]:疲労(大)、魔術回路への負荷(中)、気絶中
[装備]:携帯電話、ICレコーダー
※反魔の水晶は消滅しました
※紅の暴君の投影に成功しました。
柳洞寺から魔力を汲み出すことが出来ますが、伐剣覚醒を始めとした魔剣の力による恩恵は一切受けられません
また、破壊されたり破却した場合は再度投影し、土地に剣を突き立てる必要があります


【セイバー(アルトリア・ペンドラゴン)@Fate/stay night】
[状態]:健康、魔力充実
[道具]:紅の暴君(投影)@サモンナイト3
※ムーンセルに課せられていた能力制限が解除されました
※ムーンセルから得られる知識制限が解除されました





短いですが以上になります。
意見、感想、修正案などお待ちしてます。

905名無しさん:2013/07/09(火) 08:40:43 ID:cT0GeX0E0
投下乙です
深山町に着々と対主催が集まってますね
ただ、マーダーに襲撃されたら最悪全滅の可能性も…?

906名無しさん:2013/07/09(火) 10:42:56 ID:vzyqhjJI0
投下乙〜
シリアスモードなガウェインさんは本当に理想の従者で騎士だよなー
ルルーシュは誓いを新たにした上に認識も改めたようだしこれからにまだまだ期待できる

907名無しさん:2013/07/09(火) 11:14:00 ID:jRSUHnQsO
投下乙です
なんだかんだでルルーシュ組はある意味、王道かつ理想的なマスターとサーヴァントの関係かもしれないね
特にここだと状況が悪化するとやたら険悪になったり端から裏切りすら狙ってたりするコンビが目立つしw
失ったものも大きいが対主催はこの先どうなるか…

908 ◆cp3jCCSc7M:2013/07/09(火) 13:22:33 ID:ZF41Iwuk0
投下乙です
ルルーシュも立ち直ったことで全体的に対主催が盛り返してきましたね
何があっても主人についてきてくれるガウェインは本当に良いサーヴァントです
それと誤字だと思いますが切嗣が切継になっていますよ

そしてこの話が通しであればルルーシュ&セイバーを追加予約したいと思います

909名無しさん:2013/07/09(火) 14:49:31 ID:8RO01XGs0
今の所否定的な意見もないですし、宜しいと思われます

910名無しさん:2013/07/10(水) 01:12:48 ID:I./XJ90E0
問題ないかとー
今のところ内容的な修正もなしで済みそうですし

911 ◆l3N27G/bJU:2013/07/11(木) 07:11:33 ID:TKWjOdO60
投下します

912Hard luck dance ◆l3N27G/bJU:2013/07/11(木) 07:19:09 ID:TKWjOdO60

さあ、マドカ…選択の時だ。




君はただ一言、私に、やれ、と命じればいい。
それだけで、あの戦いは終わる。


それはすなわち、あそこで戦っている者を殺すということだ。


君は戦うという覚悟を示した。
サーヴァントたる私はその意思に沿わねばならない。
だが、しかし…同時に私は、君を守るものとして確認せねばならない。
君に、戦う覚悟だけではない…その手を血に染める「覚悟」があるのかを。


君と同じ目的を持つ者とならば、手を取り合うのもいい。
探せば中にはそんな酔狂な願いを持つ者もいるかもしれない。
だがこの聖杯戦争のマスターは大半が聖杯に賭ける願いを持つ者たちだ。
願いを成就するためなら殺人をも厭わない者たち…
そういったものと相対したとき、君は一体どうするのだ?。


いいかい、マドカ。道を切り開くものは…覚悟だ。
この広い世界に流されない確固とした「個」…己を己たらしめるもの。
自らの進むべき道を、自らの意志で選びとること。


そう…覚悟とは、犠牲の心ではない。
覚悟とは、暗闇の荒野に進むべき道を切り開くことだ。


幾千幾万の屍を積み上げようと、己が意思を貫き通す覚悟が、君にあるか?
さあ、マドカ…選んでくれ。君の答えが私の魂を震わせるものならば、私はそれに従おう。

913Hard luck dance ◆l3N27G/bJU:2013/07/11(木) 07:19:29 ID:TKWjOdO60

 ◇ ◆ ◇

「む…!」

新都をぐるりと回る高架道路に入ってすぐ、唐突にアシュナードがバイクを車に寄せた。
運転手が慌ててハンドルを切る。
ゼフィールの体は遠心力でドアへと押し付けられるが、文句をいう暇など無かった。
一瞬前までリンカーン・コンチネンタルが走っていた路線に、
膨大な魔力を秘めた赤い槍が突き立っていたからだ。
天空より青い影が降り立ち、槍を引き抜く。
爛々と燃える闘志を湛えた瞳がゼフィールを突き刺した。
アシュナードが楽しげに頬を歪める。
霊体ならともかく、アシュナードは車を運転するために実体化していた。
その強力さに比例するだけの存在感、気配を常にまき散らしている。
ライダーのクラスはアサシンのような気配遮断スキルは持ち合わせておらず、
こうして他のサーヴァントが接近すれば察知されるのは自明の理だ。

「槍…ランサーか」
「衆目などお構い無しか。よほど豪胆なマスターか、あるいは血に狂ったサーヴァントか…
 …否、あのランサーめは文字通り狂っておるな」
「どういう事だ、狂王」
「おそらく令呪に拠る物であろうよ。
 ランサーという本来の器に、狂化を付与しておるのだ」

理性を保ったまま狂っている狂王だからこそわかるのだろう。
ランサーから放たれる狂気は尋常な槍兵のそれでは無い。
アシュナードがアクセルを全開で開ける。
弾かれたコマのようにバイクが急発進し、
アシュナードが左手に握ったグルグラントが唸りを上げる。

「理性なき狂人といえど、この鬼気…クク、よほど名のある英霊と見える。
 ゼフィールよ、遊ばせてもらうぞ」
「市長に命じて人払いをさせる、それまで時間を稼げ」

少し後ろを追走するゼフィールは車に積まれていた携帯電話を取り、
説明書きに従い市庁舎へと電話をかける。
出たのは市長の部下と名乗る男で、市長は何故だか気を失っているらしい。
すぐに起こせ、と命じてしばらく待つと今にも途絶えそうな弱々しい市長の声が聞こえる。

「陛下、すぐに人払いをさせます。
 それまでどうか全力での戦闘は…」
「わかっている。急げ」

ゼフィールが市長と話している間も、ランサーの攻撃は雨のように降り注いでいる。
交通法など無視し、アシュナードは曲芸じみた速度でバイクを右に左にターンさせる。
その度に槍が道路を抉り、爆撃を受けたかのような様相を呈していく。
ときたまアシュナードも衝撃波を放つが、ランサーは俊敏に回避する。

914Hard luck dance ◆l3N27G/bJU:2013/07/11(木) 07:20:21 ID:TKWjOdO60

「現在、新都高架道路にて車両横転に拠る火災事故が発生しています。
 市民の皆さんは速やかに退避してください。
 繰り返します、現在新都高架自動車道路にて…」

やがて車外から放送――市長による市民への通達が響いた。
すでに高架道路の前後では交通規制が始まっていて、侵入してくる車は途絶えていた。
NPCらが運転する車もほとんどが異変を察して端に寄り、停車している。
真っ直ぐ伸びた道路に動く物は、もはやゼフィールらの車と襲撃者であるランサーのみ。

「やつの方が素早いな。振り切れるものではないか」
「ほほう?ならやはり迎え撃つしかないな」

戦闘は不可避となり、アシュナードが楽しげに笑う。
人払いが済んだとはいえラジャイオンを呼べば地上からは丸見えだ。
市長に頼まれずとも、昼間の屋外でラジャイオンに乗って戦えば、
一体どれだけのマスターに目指されるかわかったものではない。
そうでなくとも、さきほどアシュナードから聞いたインターネットへ
NPCに情報を晒されては目も当てられない。

「バーサーカーを単騎で放つなど下の下の策よ。
 何処ぞにマスターが潜んでいるであろう。
 ゼフィールよ、ここは一つ競争と参ろうではないか。
 我が此奴を討ち取るが疾いか、貴様がマスターの首を獲るが先か」
「わしに遊ぶ気は無い。
 狂王よ、そのランサーを抑えておけ」

言うが早いか、アシュナードはランサーに向けて突っ込んでいく。
なるほどライダーの名は伊達ではなく、手足のように鋼鉄の騎馬を操っている。
ランサーの槍が掠めてもバイクが損壊しないのは、アシュナードが自らの魔力で鎧を構成するように、
バイクにも魔力をまとわせて強化しているのかもしれない。
アシュナードは前輪をウィリーさせて、あるいはグルグラントを振るって障害物を排除し、
巨大な質量そのものを武器としてランサーに迫る。
目にも止まらないランサーの連撃に、大剣から放つ衝撃波を盾に突っ込んでいく。
勢いを殺されたランサーの攻撃では、逆に勢いを味方にするアシュナードを止められない。
魔力を撒き散らす破城槌と化した前輪と、左腕で振るわれるグルグラント。
ランサーは唯一死角となる左手側――アシュナードにとって右側、
アクセルを握る方へランサーは突っ込んでいく。
狂化していても死中に活路を見出す嗅覚は健在である。
高速ですれ違い、ランサーがすかさず槍を突き込もうとするが、
アシュナードは巧みにブレーキを操作し、ジャックナイフ機動で後輪を浮かせ、
そのままグルグラントから風を放ち後輪に横向きのベクトルを指向させる。
瞬間的に振り回された後輪がランサーを襲う。
槍を縦にしてなんとか受け止めたランサーが大きく吹き飛んでいった。

「フハハ。いいぞ、実にいい。
 ここのバイクという乗り物、貴様という獲物…
 どちらも我が食らうに足る逸品よ」

915Hard luck dance ◆l3N27G/bJU:2013/07/11(木) 07:20:36 ID:TKWjOdO60

アシュナードが楽しそうに笑っている。
どうやらラジャイオンがなくともある程度は持ち堪えられそうだ。
アシュナードもしばらくはああしてじゃれあっていることだろう。
ゼフィールはその間に敵のマスターを討つべく、車外に降りてゴルフバッグから二振りの剣を抜く。

その瞬間、背後に気配を感じて振り向きざまにエッケザックスを構える。
たった今降りたリンカーンが雷に打たれ爆発した。
爆炎の影からゆらりと現れたのは銀髪の男、鳴上悠…そして巨大な人影だった。
ゼフィールはその人影を知っている。

「またペルソナとやらか」
「やれ…伊邪那岐!」

数時間前に戦った風使いの少年が使役していた傀儡と同じものだ。
だが感じる力はこちらのほうが圧倒的である。
漆黒の虚影が叩きつけてきた長刀を、エッケザックスと封印の剣を頭上で交差させて受け止める。

「問おう。小僧よ、貴様があのランサーのマスターか」
「…アギラオ!」

ゼフィールの問いに答えることなく、イザナギが長刀の先から炎を放つ。
ゼフィールは封印の剣に意識を集中した。
封印の剣から巻き起こった炎がペルソナが生んだ炎を呑み込み、
逆にペルソナそのものを燃え上がらせる。

「ぐああああ!」
「その程度の炎などこのわしには通じぬ。この身を焼きたくば火竜の息吹をもってこい」
「くっ…ジオンガ!」

次は、車を破壊した雷。
さきほどは様子見だったのか、今度は網の目のように広範囲に電撃が撒き散らされる。

「ふん。小僧、今度はわしの番だ」

エッケザックスと封印の剣を構え、ゼフィールが回転する。
ゼフィールを中心とし、二つの剣が竜巻のように鋭く走る。

「王者の劫渦(バシリオス・ディーネ―)!」

これがゼフィールの切り札。
回転の勢いをすべて剣撃に乗せるこの技は未だ不敗。
竜巻は電撃を一瞬にして掻き消し、伊邪那岐の構えた長刀を弾き飛ばして切り裂いた。

「イザナギ、戻れ!」

しかし致命傷には至らなかった。
ゼフィールを睨む鳴上がイザナギを呼び戻したため、芯まで断てなかったのだ。
切り裂いた伊邪那岐がゆっくりと再生していく。

「治癒の力を持つか。だがその程度の力でわしを討ち取れると思うな」
「負けない…俺は負けない。俺は空っぽじゃない…」

916Hard luck dance ◆l3N27G/bJU:2013/07/11(木) 07:20:54 ID:TKWjOdO60

ぶつぶつと鳴上が呟く。
血走った目からは狂気が溢れ出ている。
ゼフィールがまとう恐怖も、狂信者と化した鳴上には通じない。
恐怖よりも痛みよりも、DIOに見捨てられる絶望のほうが恐ろしいからだ。

「サーヴァントが狂っているなら、マスターも同じか。
 だが容赦はせん。消えるがいい」

王者の劫渦(バシリオス・ディーネ―)。
ゼフィール最強の攻撃はペルソナであっても防げないのは証明した。
ならば後は粉砕するのみ。

「ガルーラ!」

イザナギが次なる魔法、疾風を放つ。
暴風がゼフィールを襲う。

「ぬぅぅん!」

しかしゼフィールは止まらない。
あっけなく暴風を切り裂き、吹き散らす。

「炎に雷、そして風までも操るか。
 しかしその風、花村とかいう小僧には及ばんな。
 しょせんは子供だましよ」
「花…村?陽介…陽介のことか…」
「やつも遠からず切って捨てるが、まずは貴様だ。
 我がバシリオス・ディーネーで冥府へ落ちよ!」

花村の名を聴いて呆然としていた鳴上が頭を抑えうずくまる。
主を守るべく伊邪那岐が立ちはだかるが、
ゼフィールの剛剣は長刀を粉砕し片腕をもぎ取った。

「がああああ!」
「ふん、この程度…やつの方がまだ骨があったわ。
 それに比べて貴様は期待外れだ」
「俺は…死…花村…違う…」

ショックで錯乱したか、鳴上は支離滅裂な言葉をこぼす。
ゼフィールはその首を落とすべく、四度目の王者の劫渦の体勢に入った。

917Hard luck dance ◆l3N27G/bJU:2013/07/11(木) 07:21:04 ID:TKWjOdO60

「俺は…菜々子…花、村…………」
「バシリオス・ディーネー!」
「…………DIO…」

ゼフィールの必殺技が鳴上を両断する寸前、剣は鳴上の頭上を通り過ぎた。

「む!?」
「ガルーラ!」

鳴上は自分に風をぶつけ、大きく距離を開ける。
ゼフィールは足元を睨んだ。

「氷…か。わしの踏み込みを狂わせたか」

いかにバシリオス・ディーネーが強力であろうとも、あくまで人間の技である。
大地を踏み込んで力を生む、その過程は無視できない。
鳴上はゼフィールを狙うのではなく、とっさにその足元を凍結させることによって
ゼフィールのバランスを崩したのだ。

「よく凌いだ。だが二度はないぞ」

封印の剣がゼフィールの闘志に呼応して炎をまとう。
持ち主の意識に反応し力をもたらす封印の剣の真価である。
炎はゼフィールを傷つけることはないが、氷など瞬時に溶かせるだろう。

「これで最後だ…バシリオス・ディーネー!」
「死なない…俺は…帰る…いや…行くんだ!
 DIOさんの教えてくれた…天国へ!」

イザナギが長刀を投げつけてきた。
バシリオス・ディーネーの渦に巻き込まれ、粉砕する。

「コンセントレイト…」

ゼフィールは勢いを止めず鳴上に襲いかかる。
しかしその瞬間、伊邪那岐から膨大な魔力が解き放たれた。

「メギドラぁぁぁぁぁあああ!」

炎でも氷でも風でも雷でもない、ゼフィールでさえ初めて見る魔法。
それはあらゆる魔法の枠の外にある万能魔法――メギドラ。
どんな防御も意味を成さない、必殺の魔法である。

918Hard luck dance ◆l3N27G/bJU:2013/07/11(木) 07:21:28 ID:TKWjOdO60

「ぬうう…消えぬ…!」

神将器エッケザックスと封印の剣をもってすれば魔法など吹き散らせるはずだ。
しかし鳴上が起死回生を狙ってはなったこの魔法は…強力だった。
また、ゼフィールは知らないが、コンセントレイト…次の魔法の威力を二倍以上に
引き上げる魔法もメギドラの寸前にかけてあった。
メギド系では中級のメギドラだが、この一撃に限っては最強のメギドラオンに匹敵するだろう。

「ぬあああああっ」
「伊邪那岐いい!」

押し勝ったのは鳴上だった。
ゼフィールは鳴上の前から大きく弾き飛ばされる。
その手にはエッケザックスのみ。
封印の剣は、鳴上の手の中にあった。

「はあ、はあ、はあ…」
「…見事だ。ここまでやるとはな。
 エッケザックスと封印の剣がなければ、わしは消し飛んでいただろう」

封印の剣をゼフィールの手から弾き飛ばすほどに強力な一撃だった。
だがその代償は大きい。

「はあ、はあ、はあ…!」
「あれだけの魔法を放てば、消耗もしよう。
 ならば…わしの勝ちだな」

ゼフィールはゆっくりと立ち上がる。
炎をまとった封印の剣をメギドラに叩きつけ、破壊エネルギーをまとわせる。
そこであえて封印の剣を手放すことで威力を拡散させたのだ。
ゼフィールもかなりのダメージを負ったが命に別状あるほどではない。
鳴上が手にした封印の剣を伊邪那岐に持たせ、投げる。
しかし避けるまでもなく、封印の剣はゼフィールの傍らを通り過ぎていった。
伊邪那岐の姿が朧に消えた。

「…くっ」
「もはや傀儡を維持する力もないか」

ゼフィールは鳴上にもう打つ手はないと判断し、離れた所で戦っているアシュナードを見た。
アシュナードもランサーも互いに傷を追っているが、まだまだ決着は付きそうにない。

「存外手間取ったが、これまでだ」
「まだだ!」

919Hard luck dance ◆l3N27G/bJU:2013/07/11(木) 07:22:54 ID:TKWjOdO60

鳴上が額へと手を伸ばすと、そこから魔力が溢れ出てくる。
鳴上に植え付けられた肉の芽を通じて本体から魔力が送られてきていることなどゼフィールにはわからない。
確かな事は…再び伊邪那岐が現れ、またあの魔法を放とうとしていることだけだ。

「コンセントレイト」
「ぬう…バシリオス…!」
「遅い!メギドラぁぁ!」

傷のため、ゼフィールの動きは鈍かった。
敵に近づく必要のない魔法が勝つのは当然。
ゼフィールがメギドラの輝きに飲み込まれる寸前、パァン…と乾いた銃声が鳴った。

「…何者だ」

鳴上の背後、燃えかすとなったリンカーンの車体の底から手だけが生えている。
その手は拳銃を握っていて、鳴上を撃ったのだ。

「お前に消えられては困る…まだ早い」
「貴様は誰だ」
「知る必要はない」

す、と手が戻っていく。
同時に、撃たれた鳴上が倒れたまま叫んだ。

「ガルーラぁ!」
「む…まだ生きて…!?」

鳴上の懐で、ランサーが作った大鹿のルーン石が砕け散った。
度重なるダメージを軽減してきたがついに限界を迎えたのだ。
突風が車の残骸を吹き飛ばす。
そこから現れたのは一人の男。
肩まで伸ばした髪の先をカールさせた白人だ。
名はファニー・ヴァレンタイン。役職は大統領、そしてアサシン。
ゼフィールの同盟相手であるジョン・バックス市長のサーヴァントである。

「アサシンか」

マスターであるゼフィールはその男がアサシンであることはひと目でわかった。
しかし…ゼフィールは、このアサシンが市長のサーヴァントであるとは知らされていない。
だからこそ数時間前もラジャイオンに食わせてしまったのだ。
そして、ゼフィールからすればこのアサシンは、、
一度殺したにもかかわらずまったく同じ姿で現れたということになる。

「ほう、あのときのやつばらか。生きていたとはな」

傍らにアシュナードがやってきた。
鳴上がはなったメギドラの気配を感じランサーとの戦いを切り上げてきたのだ。
ランサーも鳴上のそばに戻る。
ゼフィールとアシュナード、鳴上とランサー、そしてアサシン。
三すくみの状況で、しばし睨み合う。

920Hard luck dance ◆l3N27G/bJU:2013/07/11(木) 07:23:07 ID:TKWjOdO60

 ◇ ◆ ◇


園崎詩音、そしてバーサーカーと化した親友との別れが、
鹿目まどかという少女に何をもたらしたのだろうか。
彼女は今、たしかな意思を携えDIOの前にいる。
詩音と美樹さやかの最期を見取った後、DIOとまどかはホテルへと戻っていた。
まどかが意思を固めたとはいえ、親友との別れはやはり無視できないストレスになる。
まず食事を取るべきだとDIOが提案し、ルームサービスで持ってこさせた遅い朝食を食べているところだ。

聖杯を壊すというまどかの願い。
改めて考えると、やはり馬鹿げている。
英霊にも願いがあってマスターの呼びかけに応じているのだ。
なのに、それを捨てるどころか手伝えと言う。
到底、聞き入れられるわけはない…のだが。
このDIOを、一瞬でも認めさせたその気高き意思は…切り捨てるには惜しい。
しばらくはまどかに従うのもやぶさかではないと思っている。
かといって、DIOはまどかが具体的にどう行動するか、まだ聞いていない。
聖杯を壊すというが、まずどうやって聖杯のもとにたどり着くというのだろうか。
手っ取り早く確実なのはやはり生き残ることだ。
最期の一人になれば聖杯は向こうからやってくる。
それを否定するのならば…あるいは同じ目的を持つものを仲間に引き入れ、
戦い自体をしないことで聖杯の方からこちらに干渉させるか。
これは正直いって現実的ではない。
むしろまとめて消去される可能性のほうがはるかに大きい。

どうする…とDIOが自問していると、窓の外に面白いものを見つけた。
サーヴァントだ。それも、まったく気配を隠していない。

「ふむ…車に乗っているのか?とすると…ライダーか。
 まさかサーヴァントに運転させているのか?
 呆れたな、見つけてくれと言ってるようなものだ」

実際、そうなのかもしれない。
俺は強い、かかってこい、と宣言しているようなものだ。
独り言だったためまどかには聞こえていない。
今のまどかは心ここにあらずといった状態だ。
とても戦闘には耐えられそうにない。

921Hard luck dance ◆l3N27G/bJU:2013/07/11(木) 07:23:18 ID:TKWjOdO60

「しかし、これから先もそうでは困る。
 よし…マドカよ、いい機会だ。
 ここで君に覚悟を決めてもらおう」

DIOはトイレだといって部屋から出ると、携帯電話で鳴上悠を呼び出した。

「DIOさん…?」
「悠。私だ」
「DIOさん…俺、俺は…ああ、今どこです!?
 不安で、怖くて、たまらないんだ…!」
「悠、落ち着け。何があったんだ?」

尋常ではない悠の様子から何かあったのだと気づいた。
花村陽介という旧友と出会い、戦ったという。

「なるほど…よくわかった。辛い思いをしたな、悠。
 親友と戦わなくてはならない痛みは私もよく知っているよ」
「DIOさん…お願いだ。会いたいんだ…」
「ああ、私もだ。おそらく君はそのキャスターの攻撃を受けたのだ。
 私と君の絆を断とうとしたのだろう」

悠に埋め込んだ肉の芽の支配が弱くなったのはそれが理由だったらしい。
完全に解除されてはいないが、まさかそんな都合のいい魔法を持っているサーヴァントがいたとは思わなかった。
だが――これで、鳴上悠の価値はガタ落ちだ。
いつ鎖が切れるかわからない番犬など邪魔なだけだ。

「そんな!嫌だ…DIOさん、俺を見捨てないでくれ…」
「もちろんだ。君は私にとって誰よりも大切な友人だ。
 ああ、今すぐにでも迎えに行って君を抱きしめてやりたい!
 だが…悠、残念だがそれはできないんだ」

しかし、それならそれで使いようはある…DIOは笑った。
ちょうど今、別の犬を見つけた所だ。

「悠、よく聞いてくれ。私は追われている。
 敵は強力なサーヴァントだ。私一人ではとても太刀打ち出来ない。
 だから悠、私を助けてくれ」
「助ける…俺がDIOさんを?」
「そうだ。私が死んでは、君を天国へ連れて行くことができない。
 君を救ってやることができなくなる」
「そ…それは駄目だ!今すぐ行く!どこにいるんです!?」

922Hard luck dance ◆l3N27G/bJU:2013/07/11(木) 07:23:29 ID:TKWjOdO60

ニヤリとDIOは笑う。
どのみち昼間は日光の下に実体化しては出られないのだ。
鳴上とランサーをぶつければ、その間に悠々と撤退できるだろう。
先ほどの車に乗ったサーヴァントの位置と進路を教えてやった。

「悠…待っている。君と再会できる時を」
「すぐに行きます、DIOさん!」

鼻息あらく、鳴上が電話を切った。
鳴上悠の抱えていた焦燥と不安を、うまく敵への怒りと使命感に転化できた。
これで鳴上の方は心配ない。残すはまどかだ。
DIOは部屋に戻り、食事を終えたまどかのそばに立った。
しばらく後、市長の放送が新都に広く響き渡った。

「DIOさん、これってやっぱり…?」
「そのようだ、マドカ。日中だというのに派手にやっている…」

自分が指示したとはおくびにも出さず、DIOは物憂げな顔をした。

「どうする、マドカ。今なら逃げるのは簡単だ」
「逃げる…」
「戦うか? いや、戦えるか?」
「…DIOさん、あなたなら勝てるんですか?」
「厳しいな。マドカも知っての通り、私は吸血鬼だ。
 陽の光を浴びれば…英霊たらば一瞬で消滅する事は無いにしろ、
 一時的に大幅なステータスダウンは免れまい。
 そうなるとさすがにマドカを守り切るのは難しい…」
「つまり、私は同行しない方が良いって事ですね」
「君の安全を考えるならば。
 さらに言えば、何を目的とするかで難易度は激変する。
 マドカ、君は聖杯を壊したいと言ったな。
 さてそれは、どういった過程を経て辿り着く結果だ?」

まどかの願いがどうあれ、聖杯は命を捧げた果てにしか現れない。
仮に今生き残っている全てのマスターがまどかに同調したとしても、
それではムーンセルは勝者を判定しない。
勝者に下賜されるべき聖杯もまた、出現しない事になる。

923Hard luck dance ◆l3N27G/bJU:2013/07/11(木) 07:23:41 ID:TKWjOdO60

「他のマスターらを懐柔して仲間とし、最後に切り捨てるのか、
 あるいは他のマスターらを殺し尽くし、ただ一人の勝者となるのか…」

ならばこれは確認しておかねばならない事だ。
聖杯を壊すのなら、どうあれまずは聖杯を出現させねばならない。
そのためにはマスターとサーヴァントの駆逐が必要。
戦う覚悟を決めたのは良い。
ならば次に必要なのは“殺す覚悟”である。
お膳立てはした。
この流れに乗らないのであれば、鹿目まどかにマスターとしての価値はない。

「私としては…、殺戮を推奨するのは紳士的ではないが、後者を薦める。
 マスターは自ら望んで死地へと踏み入って来た者達ばかりだ。
 どうした事か君のような例外もいるが…基本的には皆、
 他者を殺す気であると見て間違いない。
 そんな輩を説得するのは骨が折れる…いや、はっきりと自殺行為だな。
 何せ命を賭けてまで叶えたい願いを捨てろ、と言うのだから」

まどかの瞳が揺れる…が、DIOの視線を真っ向から受け止め、逸らさない。
数時間前とは別人かと思えるほど、強い意志を感じる…
DIOが問うまでもなく、既にまどかの中で答えは出ていたのだ。

「ディオさん、私は戦うって決めました。
 それはディオさんに全部任せるって事じゃない…
 あなたを動かすのは、私の意思であるべきなんですね」
「そうだ。私はあくまで君の剣に過ぎない。
 剣は物を考えない。斬るべき相手を選ばない。
 屠るべき敵を定めるのはマドカ、君なのだ」
「だったら、ディオさん。
 私の答えは決まっています…」

スウ…とまどかが息を吸う。
総身に溢れるのは、紛れも無い戦意。
状況に押し流されるのではなく、自ら状況を塗り替えていく…強い覚悟。
儚くも気高い意思の輝きを感じる。

924Hard luck dance ◆l3N27G/bJU:2013/07/11(木) 07:23:58 ID:TKWjOdO60

「ディオさん。私は…私達は。
 最後の勝利者になって、聖杯の元へ辿り着きます」

それは宣誓だった。
命を奪ってでも願いを叶えるという…傲慢な、しかしDIOには心地良いエゴそのものだ。

「いいんだな?マドカ」
「聖杯を壊すっていう、私の目的。
 これが他の皆と相容れない願いだって言うのはわかってます。
 嘘をついて誰かを仲間にできても…最後には裏切るしか無い。
 でも、それは命を賭けてこの戦いに臨んでいる人達を、
 これ以上もなく貶める事なんだって思います。
 聖杯を壊して誰かの願いを断つんだから、
 せめて…殺した人の怨みや絶望は、
 私が受け止めないといけない罪だって、そう思うんです。
 だから…私は、戦って、殺して…聖杯のもとにたどり着きます」
「マドカ。
 私は反英霊。決して正義や善の存在ではない。
 勝つためには卑怯で、下賤で、汚い手も平気で使う。
 そんな私でも…いいのか?」
「求めたのは私です。ディオさんはそれに答えてくれた。
 だから、信じます。私は、あなたと…この聖杯戦争を勝ち抜きます。
 私がディオさんに求めるのは…勝利だけです」

DIOは迷わず、恭しくまどかの眼前に跪いた。
この答えを求めていたのだ。
たとえ最期は決裂が決まっているのだとしても、
今この瞬間だけはこの気高い意志を持ったマスターに従うのがDIOにとっても正道となった。

「ならば私もまた、持てる力のすべてを君に預けよう。
 この私の…吸血鬼にしてスタンド使い、ディオ・ブランドーにしてDIO。
 マドカ、君の戦いを私も共に」

芝居が行き過ぎていると思うが、半分は演技ではない。
この気高さは必ずDIOと対立する時が来る。
それがわかっていても、なお、このマスターには見届ける価値がある。

「では…マドカ。さっそくだが、問うぞ。
 今この近くで起こっている戦い、君はどうする?
 逃げるか、介入するか」
「戦うって言ってもディオさんは日光の下に出られないんですよね?」
「私はな。
 だが…私の宝具は別だ」

鳴上悠とランサー。
肉の芽で支配された彼らはいわばDIOのもう一つの宝具。

925Hard luck dance ◆l3N27G/bJU:2013/07/11(木) 07:24:10 ID:TKWjOdO60

 ◇ ◆ ◇


「……アシュナードよ、退くぞ」
「臆したかゼフィール。目の前に二匹も獲物がいるのだぞ」
「ランサーだけなら良いが、アサシンも相手にするとなってはわしを守りきれまい。
 わしにアサシンの相手をさせるか?」
「ふん、できぬとわかっていて聞くな。だが…」

言葉を切って、アシュナードがグルグラントを頭上へ向けて振り抜いた。
ランサーの赤い槍はアシュナードの剣によって受け止められた。

「フハハ、向こうはやる気のようだ。これでは引くに引けぬな、我が主よ!」
「ちい…愚かな小僧め」

迂闊に動けばアサシンに狙われるというのに、なおも鳴上は向かってくる。

「アシュナードよ、わしにアサシンを近づけるな」
「二面がけか。よかろう」

ランサーを引き連れたままアシュナードはバイクをアサシンへと疾走させる。
槍と大剣の激突は衝撃波となって辺りを破壊し、アサシンを巻き込んでいく。

「D4C」

瓦礫にはさまれたアサシンが気配ごと消える。
暗殺者のクラスに恥じない見事な隠形だったが、相手が悪かった。

「知らなかったのか?我からは逃げられんぞ」

アシュナードが持つエルランのメダリオンは、索敵の機能を持つ。
姿を消して鳴上を始末しようとしていたアサシンは姿を表した瞬間にアシュナードに追い立てられる。
敵の位置はおおまかにしかわからないが、おおまかにわかればそれで十分だ。
ランサーとアシュナードがもたらす破壊は道路をなますのように切り刻んでいくからだ。

「く…」
「ラジャイオンの餌では足りぬか。ならば我が手ずから八つ裂きにしてくれる」

サーヴァントたちの激突をよそに、ゼフィールと鳴上は静かに向かい合っていた。
鳴上は今度こそ力尽き果て、膝をついたままゼフィールを見上げている。

926Hard luck dance ◆l3N27G/bJU:2013/07/11(木) 07:24:35 ID:TKWjOdO60

「小僧よ、これで終わりだ。貴様はここで潰える」
「…俺は…終わる。でも…終わらない」

鳴上の頬が歪んでいく。
彼は今、はっきりと…笑っていた。

「勝つのはお前でも…俺でもない。勝つのは… …だ」

最後は掠れ、よく聞こえなかったが鳴上が右腕を伸ばす。
そこにあるのは一画だけとなった令呪。

「小僧、何を」
「令呪を持って…命じる」

機械的に静かな声で鳴上が令呪発動の文言を紡ぐ。
ゼフィールは目を疑った。
残り一画しかないということは、使ってしまえば鳴上は消滅する。
なのに鳴上の目にはなんの疑問もない。

「貴様…まさか!」
「ランサー、宝具――刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)を使い、ライダーのマスターを殺せ」

令呪を使いきってしまうとマスターは消滅する。
それは、裏を返せば…消滅を受け入れるのなら、三角目の令呪は効果を発揮するということだ。
遠くで戦っていたランサーがぎょろりとゼフィールを向く。
アシュナードを放り出し、凄まじい速さで駆けてくる。
アシュナードがいかに優れたライダーであっても、バイクでは間に合わない。

「ライダー、騎竜を従え馳せ参じよ!」

令呪に対抗できるものは令呪をおいて他にない。
ゼフィールもまた令呪を開放――瞬時に転移してきたアシュナードが
ラジャイオンを召喚し、ゼフィールを掴んで空へと舞い上がる。
もはや市長との同盟がどうの正体を隠匿がどうと言っていられない。
これを凌がなければ、ゼフィールは死ぬ――!

「自らを顧みず令呪を使うか。主従共に狂っていたようだな」
「アシュナードよ、凌げるか?」
「さてな。我を狙ったものであればこの鎧でどうとでもなるが…
 しかし走って貴様を狙いに行ったということは、放出系の宝具ではあるまい」

927Hard luck dance ◆l3N27G/bJU:2013/07/11(木) 07:24:45 ID:TKWjOdO60

アシュナードが剣で指し示した先に、ランサーがビルを駆け上がっていく姿がある。

「やつの宝具は察するに威力ではなく特殊な効果を宿した槍撃であろう。
 近づかせなければよいだけのこと」

ランサーがどれだけ俊敏でも、空を舞う翼はない。
ビルの高さを通り越してしまえば、ランサーに為す術はなく、
ムーンセルがマスターを排除するのを待てばいいだけだ。

「ラジャイオンを使った以上、敗戦は許さぬ。
 アシュナードよ、ランサーが消えればアサシンを仕留めるぞ」
「ふん、とんだ幕切れだ。興醒めもいいところ…ぬっ!?」

がくん、とラジャイオンが揺れる。
何があったとアシュナードに問おうとしたゼフィールだったが、
ラジャイオンの翼を見て絶句した。
凍り付いている。
その原因は…翼を射抜いた封印の剣だ。
あらゆる竜を封印する封印の剣がラジャイオンすらも侵食し始め…動きが止まった。

「馬鹿な…一体誰が!?」
「ゼフィール、来るぞ!」

アシュナードの本気の叫びが耳を打つ。
翼からアシュナードの背に視線をめぐらし、ゼフィールが見たものは、
アシュナードの胴体を突き破ってきた鋭く赤い、槍の穂先だった。

「わしが…敗れる…か!」

ビルから一瞬にして飛び移ってきたランサーの魔槍が、アシュナードもろともゼフィールの心臓を貫いた。
空に赤い血の花が咲く。

928Hard luck dance ◆l3N27G/bJU:2013/07/11(木) 07:24:59 ID:TKWjOdO60

 ◇ ◆ ◇


「あのアサシン…まさかやつまで現れるとはな」

DIOは最大出力で肉の芽に魔力を注ぎ込み、一度は倒れた鳴上悠を立ち上がらせた。
鳴上を撃ったのはDIOとも闘ったスタンド使いと思われるあのアサシンだ。
ライダーだけではなくアサシンまで釣れるとは、鳴上悠という撒き餌はこれ以上なく役にたってくれた。
DIOとしてはあのライダーと相打ち、もしくは能力の一端を知れればそれでよかった。
しかし予想外にアサシンまで現れ、DIOはあのスタンドの能力を存分に観察できた。
ホテルに居ながらにして、DIOは戦況を支配していたのだ。

「DIOさん、取って来ました」
「ありがとう、マドカ」

まどかがゼフィールの宝具である封印の剣を携えて戻ってきた。

「ほう…これは宝具か。
 主の手を離れてもなお実体化しているということは、英霊ではなくマスターが使うものか。
 なるほど、そんなマスターもいるのか」

鳴上に指令を送って封印の剣をホテルに向かって投げさせておいたのだ。
直撃した部屋は爆弾でも放り込んだような有様だった。
日光が差し込んでいたのでまどかに取りに行かせたのだが、まさか宝具だとは。
DIOとしてはナイフでは飛距離が足りないのでもっと頑丈かつ長い武器を欲していたのだが、
とんだ拾い物だ。

「よし…では仕上げに入るぞ、マドカ」

肉の芽に干渉し、鳴上の最後の令呪を使用させる。
狂化したランサーは宝具を使用できないが、令呪を使えば話は別だ。
鳴上が自身の消滅と引き換えに生んだ勝機だ。
逃す訳にはいかない。

「ザ・ワールド! ウリィィィィィ、地に落ちよライダー!」

ホテルから投擲した封印の剣は、ランサーのみを警戒していたライダーの竜の翼に突き刺さった。
動きを止めたライダーを、追いついたランサーの槍が襲う。
鮮血が吹きすさび、ライダーが散る。

929Hard luck dance ◆l3N27G/bJU:2013/07/11(木) 07:25:23 ID:TKWjOdO60

「どんなサーヴァントであれ、マスターを失っては存在を保てまい。
 マドカよ、私達の勝ちだ」
「ディオさん、ランサーのマスターは…?」
「令呪を使い切ったからな。ランサーは宝具使用と同時消えた。
 マスターも程なく消滅するだろう」
「そう…ですか」
「マドカ、辛いだろうが…」
「いえ…DIOさん。とどめを、刺してください」

まどかの言葉にDIOはおや、と驚いた。

「放っておいても消えるのだぞ?」
「それじゃ駄目なんです。
 消えるのを見ているんじゃなくて、殺すのは私でないと…私が手を汚すんじゃないと、
 聖杯を壊す資格なんて持てないと思うから」
「…いいだろう、君が望むならば」

DIOは肉の芽に念じる。
今まで鳴上悠を蝕み、ときに助けてきた力…今度は違う。

「さらばだ、悠。
 君はいい手駒だった…が、それ以上に私のマスターの糧になってくれた。
 このDIO、心底から君に感謝するよ」

DIOはあえて瞳を閉じた。
今頃悠の肉の芽は暴走し、宿主を変質させ、やがて死に至らしめるだろう。
だがせめてもの報いとして、悠が痛みを感じることがないように。
DIOは優しく…幕を下ろした。

930Hard luck dance ◆l3N27G/bJU:2013/07/11(木) 07:25:46 ID:TKWjOdO60

 ◇ ◆ ◇


「生き残ったか。しかし…」

瓦礫の下からアサシン、ファニー・ヴァレンタインが這い出てくる。
ランサーがライダーのみを狙っていたため、うまく隠れることができた。
だが、ライダーはどうやら討ち取られてしまったようだ。
ランサーも相打ちで消えたようだが。

「彼になんと説明したものか」

市長は今頃この自体の対処にてんてこ舞いだろうが、
さてさらに同盟相手であるゼフィールたちが敗れたと追い討ちしては、
ただでさえ心労が重なっているため、本当に心臓が止まるかもしれない。

「そして…あの感触。あのスタンド使いも絡んでいたと見て間違いないな」

最初にセイバーを交え戦った英国人風の男が操っていたスタンドの感触を、ここでも得ていた。
もしあのスタンド使いがこの戦いを演出したのならば、してやられたということだ。
大統領はため息を付いた。
今更悔いてもどうにもならない。今は現実に目を向けなければ。

「残ったのはこの剣だけか」

ベルンの覇王が振るっていた大剣エッケザックスだけが、その場に残されていた。

931Hard luck dance ◆l3N27G/bJU:2013/07/11(木) 07:26:09 ID:TKWjOdO60

 ◇ ◆ ◇


この場に集いし四柱のサーヴァント。
ライダー、アシュナード。
ランサー、クー・フーリン。
アーチャー、DIO。
アサシン、ファニー・ヴァレンタイン。

いずれ劣らぬ一騎当千の古強者だったが、その明暗を分けたものは何か。
鍛え磨いた技の冴え。持ち寄った宝具の質。マスターとサーヴァントの信頼の深さ。
しかしあえて、一つの事実を見出すならば、
それは運――幸運の持ち主であったかどうか。
幸運の星は勝つべくして勝つ。
運が無い者から死んでいく。
敗者は…不運に魅入られたのだろう。




【鳴上悠@ペルソナ4】死亡

【ランサー(クー・フーリン)@Fate/stay night】死亡

【ゼフィール@ファイアーエムブレム 覇者の剣】死亡

【ライダー(アシュナード)@ファイアーエムブレム 蒼炎の軌跡】死亡

932Hard luck dance ◆l3N27G/bJU:2013/07/11(木) 07:26:20 ID:TKWjOdO60

【新都・冬木センタービル内、冬木市庁舎市長室(最上階)/日中】

【ジョン・バックス@未来日記】
 [状態]:疲労(極大)・冬木市市長・残令呪使用回数3回
 [装備]:「The watcher」
 [道具]:栄養ドリンク
 基本行動方針:最後の一人になり、ムーンセルを必ず手に入れる。
 1.なにがなんだかわからない・・・
 2.魔力の供給中、安静にして体力を回復する。
 3.アサシンから送信された映像を「The watcher」で確認。サーヴァントのステータスを読み取る。
 4.警察、消防署に配置したNPCからの情報を逐次チェックする。


 【アサシン(ファニー・ヴァレンタイン)@ジョジョの奇妙な冒険】
 [状態](4人目)、魔力消費(小)
 [装備]:拳銃、エッケザックス@ファイアーエムブレム 覇者の剣、
 [道具]:携帯電話
 [思考・状況]
 基本行動方針:ムーンセルは誰にも渡さない。わたしが手に入れる。
 1 市長に報告する
 2.桐柳寺に行き様子を探る(戦闘は絶対にしない、可能ならマスター暗殺)



【新都・住宅街/日中】

【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:疲労(小)、令呪残り2画
[装備]:鋼鉄の腕(アイゼン・デア・アルム)@エンバーミング 、鋼鉄の腕の予備弾@鋼鉄の腕(アイゼン・デア・アルム)
 ※行動方針:聖杯を破壊するために戦う(具体的な行動方針は不明です)


【アーチャー(DIO)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:魔力消費(大) 、令呪(まどかの戦いに力を貸す)
[装備]:封印の剣@ファイアーエムブレム 覇者の剣、携帯電話

933名無しさん:2013/07/11(木) 07:27:14 ID:TKWjOdO60
投下終わりです。

934名無しさん:2013/07/11(木) 08:50:56 ID:eZDbpMxw0
さすが幸運E以下は格が違ったwwww
そりゃま、そうなるわなあ。

935名無しさん:2013/07/11(木) 08:56:44 ID:2/VL6Fgg0
投下乙です!
最強最悪のマーダーであるFE主従、一時期は猛威を振るっていた番長組、ここで陥落か…
最後の最後に特をしたのは覚悟を決めたまどかに番長を酷使したDIO様だったな
最強の剣を失った市長組だが果たして今後どう響くのか

936名無しさん:2013/07/11(木) 09:47:29 ID:JpPQWWVg0
投下乙。
そして番長もお疲れ様。
遂にこの日が来たというか……番長の敗因は完全に強過ぎた事だな。
もし、完全なワイルド状態で参戦してたら、万能属性以外は無効どころか反射や吸収出来る上に、それでさえ食いしばりや不屈の闘志で耐えられちゃうからな。
しかもメシアライザーで完全回復出来るというチートスペック。
今回苦しめられた肉の芽だって、不動心や瞬間回復でどうにかなるかもしれない。
そうなればガチで番長無双が始まってた。
他のサーヴァントも色々と制限受けてたりするけど、マスターでこれだけのスキルを制限されるのは番長ぐらいなもんだろ。

だが今回はここまで。

まあ正直、まどか優先しすぎで、FE組含めてフラグがもったいないというか、せめて陽介との決別はちゃんとして欲しかった感もあるけども……。
それはやっぱり自分勝手な未練なのかな。
なんというか、好きなキャラなので感想が長くなってしまい申し訳ない……本当に乙でした!

937名無しさん:2013/07/11(木) 10:37:16 ID:1NFITAsIO
投下乙です

ランサーが死んだ!FE組共々無双のツケは高くついたな…

まどかも覚悟決めたとはいえ原作と違って戦闘力/ZEROのままだし流行りのマスター対決になったら即死しそうなのは些細なことだよね、その代わりロワ的な見せ場は貰えそうなんだから(QB並感)

938名無しさん:2013/07/11(木) 11:25:26 ID:oYEzaQMk0
コクリューが本当に冷凍ビームで死んだ。やはりドラゴン飛行はダメージ4倍だったんや!

939名無しさん:2013/07/11(木) 13:15:12 ID:VKRqzN6M0
冷凍ビームというより…アイスソード?
今回はDIOの能力もフル活用したいい手だった、特にこおり+封印の剣はえげつない
それもこれもムーンセルが『ドラゴン飛行に氷4倍』をデフォ設定にし、
かつDIO他英霊全員に知識として与えていたせいだ!

940名無しさん:2013/07/11(木) 13:34:31 ID:4Ehh3gvE0
おお、ここで一気に強者落ちで暗躍していた者達が表に出たか
とはいえ覚悟を決めたまどかを漁夫の利というには侮辱でしかないか
DIO様は流石の策謀で僅かな介入での勝利への持って行き方はお見事
封印の剣とかのフル使用には燃えた!
投下乙でした!

941 ◆NI3AerqnLA:2013/07/11(木) 14:02:50 ID:nYd.6hbQ0
衛宮士郎&セイバー、匂宮出夢&アサシン、枢木スザク&バーサーカー、羽瀬川小鳩&キャスター

以上八名、四主従を予約します

942名無しさん:2013/07/11(木) 14:37:15 ID:9qTguGxM0
投下乙です!
落ちるとこまで落ちたと言われていた番長組ですが、最後に大暴れして一花咲かせたというところか
DIOのサポート付きとはいえタイマンでゼフィールを追い詰めて最強と言われたFE組と刺し違えたあたり本当に強かった
そして間接的に狂王にdisられたスザクエ…

>>941
今まで生き残った即死体質もついに年貢の納め時か…?

943名無しさん:2013/07/11(木) 14:46:15 ID:oYEzaQMk0
即死さんどうして死んでしまったの(´;ω;`)
そして半数が死亡したな。本当に7組が残るとして
ライダーとセイバー、キャスターとアサシンはどっちが残るかなー?

944名無しさん:2013/07/11(木) 15:00:39 ID:JpPQWWVg0
二回目の感想で失礼。
落ち着いてからもう一度読んでみたんだが、話の大筋はともかく、まどかの覚悟ってこれで良いのか?
これだとマーダー宣言というか、ただの一人勝ち宣言になってるんだけど。
そもそも全員を殺した上で聖杯も壊すってのが意味不明な気がする。
それなら、さやかみたいな存在を救いたいって、魔法少女になって世界を背負うぐらいの覚悟で聖杯を求めた方がまだ筋が通ってる。
今回の話だとDIOに認めさせる為に無理矢理言わせた感がちょっと強いんじゃないだろうか。
それにメタ的なことを言えば、あくまで一般人のまどかが今更マーダーになっても他は大体同盟組んでるから勝ち目ないだろ。
これで三騎ぐらいを相手に無双でもしだしたらまたおかしい事になるだろうしさ。
そんな訳で、ある程度は協力する方向で覚悟を決めるように修正した方が良いんじゃないか……という感想でした。

945名無しさん:2013/07/11(木) 15:39:40 ID:/BxE5VNg0
ひとつずつ突っ込んでみるけど

>そもそも全員を殺した上で聖杯も壊すってのが意味不明な気がする。
最後の一人にならないと聖杯現れないんだから当然じゃね?
事前に聖杯降臨させるとかキャスタークラスなら可能かもしれんが。

>魔法少女になって世界を背負う
愛染「私が天に立つ……」
じゃないけどまどっち的には二度と聖杯戦争起こさないのが大事なんじゃね?
その過程で出る犠牲は背負うという話で

>これで三騎ぐらいを相手に無双でもしだしたらまたおかしい事になる
原作でも承り、ジョセフ、ポルポル、花京院相手に半分遊びながら無双してたし多少はね?
時間停止の秘密見破らない限り三人でもキツイべ
初手の時止め腹パンで一人は確実に仕留められるし

946名無しさん:2013/07/11(木) 15:50:26 ID:9qTguGxM0
>>945
原作での面子はスタンド使いとはいえ肉体的には普通の人間だぞ
鯖と同じような基準で考えるのは無理あるだろ
まあ複数相手にしても翻弄は出来るとは思うが処分祭のような大量虐殺は勘弁

マーダー宣言はまどかの置かれた状況的に仕方ないと思う
ケリィみたいに対主催の存在を見破ったわけでもないからなあ

947名無しさん:2013/07/11(木) 16:45:55 ID:JpPQWWVg0
>>945
いや、救う事が根幹なのに、全部殺して一人だけ生き残って終了って結末を求める精神状態で進んじゃって良いのかって話。
DIOの内面事情に感化されすぎじゃないかって。
……うーん、一人で背負い込むタイプだから良いのかな?

948名無しさん:2013/07/11(木) 18:54:22 ID:pgDPLveoO
投下乙です。

ラジャイオンが封印の剣でアウト。
やっぱり、主従の相性最悪だったんや!

覚悟を決めた幸運EXに、幸運Eが勝てるわけ無いだろバカチンが!

まどかは魔法少女でも魔女でも一人で抱えて後は知らんってタイプだから、こんなもんじゃね?
「皆さんの願いは尊重されるべきです。なので、私が皆さんを殺して聖杯をぶっ殺します」

949名無しさん:2013/07/11(木) 20:05:45 ID:1NFITAsIO
ただリアルファイターとしての実力が底辺じゃ気持ちだけではどうにもならないんだけどな、マスター対決は未経験に等しいし現実の壁を思い知るのかもまた楽しみなんだがw

950名無しさん:2013/07/11(木) 20:11:07 ID:LxP285SE0
一人で背負いこむのはともかく目的達成のために取る手段が皆殺しってまどかの性格考えるとやっぱり違和感ある

951名無しさん:2013/07/11(木) 21:16:30 ID:4Ehh3gvE0
CCCやると割りとしょぼい風に思えるムーンセル
いや、原作時点で聖杯の力じゃ神霊はサーヴァントにできないよ、そいつらいるなら聖杯いらんよとは設定立ったけど
女神合体BBさんに乗っ取られるは全力キャス狐さんには好き放題されるわ
こりゃあまど神様が聖杯ぶっ壊しても原作に沿っちゃいるなw

952名無しさん:2013/07/11(木) 22:00:51 ID:Mgfhq3wA0
投下乙です
ランサーは不幸(真理)
自分の消滅を度外視した特攻ゲイボルグなんて防げるわけないな……
市長は人知れず死んでてもおかしくないw
マスターでは小鳩と並んで最弱レベルのまどか、鯖では最強レベルのDIOと、このコンビも面白いなぁ

953名無しさん:2013/07/11(木) 23:11:09 ID:cqOQXR3.0
CCC考えるとまどかはやっぱりあの尼みたいに
暗黒まど神に進化してしまうのだろうか・・・

954名無しさん:2013/07/11(木) 23:45:05 ID:yxbVdxM.0
>>953
史上最低の宝具が来るぞーw

955名無しさん:2013/07/12(金) 00:08:02 ID:B5I2/UQ.0
>>953
あれはキャスターの宝具のおかげでもあるけどその分をまどかは原作で補いうるからなあ……w
漆黒の殺意も合わさって暗黒女神はあり得るかも
今回倒したFEやペルソナの要素も取り入れれるしw

956名無しさん:2013/07/12(金) 00:31:14 ID:8mviQLlE0
まどかはリョナ被害者になるのだろうか

957名無しさん:2013/07/12(金) 00:43:01 ID:zueC8eGQ0
誰も◆NI3AerqnLA氏が予約しているキャラがリョナ被害者になるとは思ってないんだね。
バカスカ死亡するプロットはあるんだけど、これ以上殺したらゲーム終わっちゃう。

958名無しさん:2013/07/12(金) 01:00:32 ID:B5I2/UQ.0
>>957
とりあえず殺すなと牽制してるようにも取れる言い方になっちゃってるのでご注意をーw

959名無しさん:2013/07/12(金) 01:29:29 ID:3UTEZeHs0
まどか前日「願いを叶える為に誰かを犠牲にするなんて……こんなの絶対おかしいよ!」

  ↓

まどか今日「聖杯を壊す為なら、誰を犠牲にしても仕方ないよね。ティヒヒw」

どうしてこうなった\(^o^)/

まあ、それはともかく、終盤になれば主催者サイドみたいなのも必要になってくるよな。
それについてもそろそろ決めた方がいいんじゃない?

960名無しさん:2013/07/12(金) 01:32:51 ID:B5I2/UQ.0
1の人がもういない以上普通に書きたい人が書くでいいんじゃないかな?
存在は匂わされてる欠片男さんは確定としてそれ以外付けるかどうかはおまかせで
とりあえず「主催者サイド」として予約&投下してもらって他の方々で判断すれば
前の破滅さんみたいなのだったら破棄してもらえばいいだけだし

961名無しさん:2013/07/12(金) 01:37:39 ID:B5I2/UQ.0
そして気づけばアシュナードとゼフィールに情報が追加されてる!
なんだか死んだあとに情報追加って原作のサーヴァント戦後のマトリクス開示みたいでいいなw

962名無しさん:2013/07/12(金) 02:48:33 ID:JXstoT0.0
ムーンセル…。知の記録…。
うぅ…頭が…

963名無しさん:2013/07/12(金) 09:43:34 ID:/kfpyNIo0
>>961
追加情報は最初の話しを書いた時点で既に決まっていた。
話しの丈の都合で省いていたが。

964名無しさん:2013/07/12(金) 11:07:51 ID:T7xsknw.O
「狂王倒そうと思ったら回転王から封印の剣奪ってラジャイオン落とすのが有効じゃね?」
とは以前から言われちゃいたが現実になったな
(言われた当時に想定されていたのは謎スロさんだろうけど)

てか、まどっち軽くクリームヒルト化してね?
全員殺すことで救済を実現しようとするあたり

965名無しさん:2013/07/12(金) 11:35:23 ID:GMmOAjGM0
いやあ、マスターの宝具の竜属性ダメージが仇になるとはね…(白目)
ラジャイオン撃墜すればもう余裕で槍の射程圏内に入るからアウトだわな

あとまどかはアレ、詩音とさやかの死で覚悟完了しちゃったしなぁ DIOの反英霊としての属性も理解したのもあるだろうし
作中で「皆それぞれ叶えたい願いがある」ってのも受け止めた上で正面から戦うことを決意してて、
そもそもDIOから聖杯戦争の構造を聞いた時点で「戦う」以外の選択肢は無くなると思う
勝ち残らなけりゃ聖杯は現れないしなぁ…そうやって勝ち残った先の罪や絶望も自分一人で背負うつもりでいるんだろうし

966名無しさん:2013/07/12(金) 11:57:15 ID:5E8t.rlM0
アシュヒトの鋼鉄の腕もだけど、封印の剣やエッケザックスはマスターの能力じゃなくて持ち物だからムーンセルに消去されないんだね
ランスロットさんに渡ればとんでもないことに

967 ◆2shK8TpqBI:2013/07/12(金) 12:59:55 ID:KSBPJ9bw0
投下乙です
まさかこんな展開になるとは予想外でした。
FEコンビ死亡といいまどかの覚悟完了といい面白かったです
個人的には番長とジュネスのフラグを回収したかったですけどそれ言い出したらイリヤとケリィのフラグも消えましたししょうがないかな
最後にもうひとつ、主催者サイドでネタが思い浮かんだので投下したら判断お願いしたいです
いつ出来るかは未定ですけど

968名無しさん:2013/07/12(金) 13:56:48 ID:2wLEXYoc0
>>967
一応番長やFE組の陽介へのフラグはそれ倒したまどDIOに因縁というカタチで継承できますし
それに陽介ばかりにフラグあるってのも考えようによってはロックになりかねなかったしねw
主催者話楽しみにしています
ただ流石に待ちぼうけにはさせないようにw>未定

969名無しさん:2013/07/12(金) 14:58:54 ID:waHe0m1o0
>>966
スロット「しねい」E:封印の剣
騎士王「ぎゃぁぁぁ!」こうかはばつぐんだ!

スザク団と士郎が予約制されたけど、イズムは一日一時間の殺戮タイムを終えたし、
こばとちゃんは動けないから、もし戦うならスザクだけだろうなー

970名無しさん:2013/07/12(金) 16:57:08 ID:BV2chKe.O
>>964
元々ネガティブ方向にズバッと突き抜けてた子だからね、極端な思考も仕方ないね

971名無しさん:2013/07/12(金) 17:11:56 ID:WBLM83eE0
こばとちゃんは起きてからが怖いなあ
あの子確か精神状態やばいことになってなかったっけ…

972名無しさん:2013/07/12(金) 17:21:07 ID:lTl.53xk0
投下乙でした!
単機鯖だと今んとこDIO様最強だけど、ぶっちぎりのメタ性能のガウェインも居るしどうなることやら……
しっかしFEコンビは強かったなー、番長は良く頑張った

973名無しさん:2013/07/12(金) 21:44:58 ID:a3WG/URo0
>>972
しかもガウェインは昼からが本番。

974 ◆l3N27G/bJU:2013/07/13(土) 02:05:43 ID:iVIBmLKM0
感想・wikiへの収録ありがとうございます。
残り30を切ったので投下の前に新スレを立てたほうがよさそうですね

ところで主催者の話が出ていますが、この二次聖杯もそろそろ終盤といっていいと思います
一度書き手間で今後どうする課など話し合ってみるのはどうでしょうか

975名無しさん:2013/07/13(土) 09:40:16 ID:25gmRLP.0
もう参加者は半分以上脱落してますしね
というか初日でここまでの勢いで進んでる二次聖杯は実際凄いw

976 ◆2shK8TpqBI:2013/07/13(土) 12:32:16 ID:pmK0H2vI0
その方がいいと思います
一応主催者サイドの話を今書いているのですが、先にどうするか決めた方が良いですかね?

977 ◆3vWdxvBXv.:2013/07/13(土) 12:43:09 ID:LlZaa/760
アッハイ。前回予約したら断られたけど流石にもういいですよね。
方針は完全に激流に身を任せるのかと思ってました。

978 ◆3vWdxvBXv.:2013/07/13(土) 12:47:30 ID:LlZaa/760
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12648/1373687146/
あと新スレです。これか次で終わるかなぁ…?

979 ◆cp3jCCSc7M:2013/07/13(土) 13:23:56 ID:TtDvj.OM0
自分も了解です、先に大まかな方針を立てておいた方が荒れないと思うので
それと予約延長を申請します

980名無しさん:2013/07/13(土) 14:10:16 ID:.tw4nih.0
しかしセイヴァーは誰なんだろう……
平行世界に干渉でき、救世主たることを成し遂げた二次キャラ……
人修羅さんとかZ-ONEさんとか?

981 ◆3vWdxvBXv.:2013/07/13(土) 14:33:53 ID:LlZaa/760
原作セイヴァーでいいかなって思うんですけど。

982名無しさん:2013/07/13(土) 14:43:28 ID:.tw4nih.0
確かにそうだwwwすみません!

983 ◆QSGotWUk26:2013/07/13(土) 15:51:36 ID:AFP9fkAM0
>>978
スレ立て乙です

話し合いの件、自分も異論ありません
現在予約しているお二方の投下が終われば一度予約ストップして、各々の都合に合わせて……という感じでしょうか

984名無しさん:2013/07/13(土) 18:05:16 ID:srSbm05E0
>>978
のワの「スレ立て乙です」
長いようで短かった二次聖杯も終わりの時が来たか…

985名無しさん:2013/07/13(土) 22:27:39 ID:25gmRLP.0
思えばもう佳境なんだなぁ…残りのチームも大分減ってきたしね
何だかんだでこの企画は大好きだから最後まで見届けたい

986 ◆wYNGIse9i6:2013/07/13(土) 22:37:20 ID:2rIiydTo0
話し合いの件賛成です
二年前の11月22日が企画発足日ですが、それまでに終わる…のはさすがに難しいかな

987名無しさん:2013/07/13(土) 23:59:12 ID:.GEofTMY0
小鳩ちゃんが気絶している間に終盤か……

988名無しさん:2013/07/14(日) 00:25:12 ID:mBoCmPhYO
士郎が気絶している間に終盤か・・・

989名無しさん:2013/07/14(日) 15:04:47 ID:oiid1afo0
そして頭上に輝き出す死兆星…

990名無しさん:2013/07/14(日) 15:06:33 ID:5VypPeao0
ラオウはもう死んでいる……

991名無しさん:2013/07/14(日) 15:46:34 ID:5bQbRIqA0
職務に勤しんだ市長の頭上に死兆星が……

992名無しさん:2013/07/14(日) 18:28:18 ID:oQEoRsAM0
皆の頭上に死兆星が落ちれば解決(名案)

993名無しさん:2013/07/14(日) 19:17:00 ID:kPJzyNgY0
埋めついでに>>630の前回月報から現時点でどれだけ進行したか

話数(前期比)/生存者(前期比)/生存率(前期比)

70話(+6) 32/51(-2) 62.7(-7.3)

  ↓

79話(+9) 22/51(-10) 43.1(-19.6)

994名無しさん:2013/07/14(日) 19:17:22 ID:kPJzyNgY0
死亡者

天海陸&セイバー(イスラ)
キャスター(妲己)
アサシン(小次郎)
間桐慎二&ライダー(ラオウ)
ゼフィール&ライダー(アシュナード)
鳴上悠&ランサー(クー・フーリン)

995名無しさん:2013/07/14(日) 19:18:44 ID:kPJzyNgY0
生存者 11組・22名

衛宮士郎&セイバー(アルトリア)
ルルーシュ&セイバー(ガウェイン)
泉こなた&ライダー(オーズ)
名無鉄之助&キャスター(リインフォース)
花村陽介&ランサー(キース・シルバー)

枢木スザク&バーサーカー(ランスロット)
匂宮出夢&アサシン(サブラク)
羽瀬川小鳩&キャスター(キンブリー)

鹿目まどか&アーチャー(DIO)

衛宮切嗣&ライダー(ディケイド)

ジョン・バックス&アサシン(ヴァレンタイン大統領)

996名無しさん:2013/07/14(日) 19:19:14 ID:kPJzyNgY0

クラス別

・セイバー
アルトリア、ガウェイン

・ライダー
ディケイド、オーズ

・キャスター
キンブリー、リインフォース

・アサシン
サブラク、ヴァレンタイン大統領

・ランサー
キース・シルバー

・アーチャー
DIO

・バーサーカー
ランスロット

997名無しさん:2013/07/14(日) 23:28:48 ID:oQEoRsAM0


          ヾi   {i {i
          ゞ 〃
           イ/ ヤ
                ll_
             "l|'_       |  す 完.こ.そ
              "|l´ /     (  る.遂のろ
             /|     {  かさ.戦そ
          ノ(        (  !せい.ろ
           .ノ( |i  て      乂   る も
          .)  |.| l| (   ,x=- 、 ヽ   と
          .||r| |ミ|.|  /::::::: : :.ヽ  ゝ
         |.| | | | | O:::〇::::: :.}   )ノ ̄ ̄
         |_|;|_|;|_;|,从rxィニ三}
        |ミ|::::|:::::::|::|ミ〃:::::::::::::::::
        |ミ|::::|:::::::|::|::::::::::::::::::
        |ミ|::::|:::::::|::|::::::::::::::::
        |ミ|::::|:::::::|::|´¨ヽ:::::::::
        |ミ|::::|:::::::|::|   )"_
        `、⌒¨¨¨¨__,ィ':::::::::::
           ー‐ー<ゞO乂::::
           ≧  ¨´   ̄

998名無しさん:2013/07/15(月) 12:35:33 ID:LVWDRVEE0


999名無しさん:2013/07/15(月) 12:38:13 ID:0si2TiXI0
>>1000になったら市長が過労死

1000名無しさん:2013/07/15(月) 13:20:05 ID:yPQ9X9Ck0
>>1000ならホロウ化

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