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とあるSSの禁書目録 PART10
1■■■■:2011/01/29(土) 23:07:35 ID:Wm4cBCaQ
ここは「とある魔術の禁書目録」のSSを書いたり読んだり原作の予想外の展開にテンパってみたりするスレッドです。

【全般的な注意事項】
1.このスレはsage進行です。レスする際には必ずメール欄に半角で『sage』と入力しましょう。
2.ネタバレ注意。ネタバレは本スレ同様公式発売日の0時から。
3.基本マターリ進行で。特に作品及び職人への不当な文句と思われる発言は厳禁。
4.レスする際はスレの流れを確認してからにしましょう。

【投稿時の注意】
1.まずは原作を読み込む。最低でも登場人物の口調や性格は把握しておきましょう。
2.オリジナル設定や妄想はほどほどに。ここは『とある魔術の禁書目録』の二次創作を投稿する場です。
3.書いた作品はテキストファイル等で保存。投稿ミスによる文章消去を防ぎましょう。
4.投稿前に深呼吸して保存したテキストを読み返す。誤字脱字はありませんか?分量は十分ですか?
5.投稿時には作品タイトルを、投稿後には終了宣言を。共有の場なので始めと終わりは明確にしましょう。
6.特殊だったりや好みが分かれたりするシチュは投下前に警告しましょう(例 百合,BL,鬼畜,死にネタ等)。
7.18禁(と思われるもの含む)はスレ違い。

【前スレ】(Part9)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1280227550/

※ 参 考 ※
禁書風味SSの書き方
ttp://www12.atwiki.jp/index-index/pages/1682.html

【次スレについて】
次スレは原則として>>980の人にお願いします。
立てる前には宣言を、立てられない場合は代わりの番号指定をお願いします。

【まとめ】
とある魔術の禁書目録 Index SS自作スレまとめ
ttp://www21.atwiki.jp/index-ss/

2■■■■:2011/01/29(土) 23:20:50 ID:mGGvC2fI
>>1乙じゃん。
前スレからちょうど半年くらいだな。早いのか遅いのか…
現スレが豊作になりますように。

3■■■■:2011/01/30(日) 16:09:45 ID:UCRekqr6
>>1乙である。

何か書こうかなと思う今日この頃、しかしながらネタが浮かばない……

4■■■■:2011/01/30(日) 21:10:26 ID:MJWa4AnI
ローラ「>>1乙なりけるよー」
打ち止め「>>1乙なんだよーってミ(ry」
百合子「>>1乙だぜェェェ!!!」

5■■■■:2011/02/01(火) 18:31:15 ID:zGZLk9/6
                      , --..、
                     //Oヽ:::\     >>1乙だねぇ、はーまづらぁー
                    /:人:::::人:::::`ー..、
                  </:::::〉〉_マ/ハ::::乂ノ        ト、,.イ__,.イ
                  (乂:/::〈:::::::::::::〉:V )ノ       ,.イ ノ///∠ 二 Z_,.イ
                   `八:::∧::::::::::r、\       /レ'  /∠___ 二二\_
                    /:::/ /:::::::::::\::::\  _ト、レ'´         ヽ  ―<
                      /:::/ /::::::::::::::::::::\》》   >―             `ヽ_\
                       〈-、〉/::::::::::::::::::::::::::::\∠ イ///             ヽ  ̄
                   《《_/::::::::::::::::::::::::::::::::/ | / ∧/ |  i          ヽ ヽ_>
                     〈:::::::::::::∧:::::::::/  jイ Nハ/ト、!  ト、!_ヽ         ハ
                      ,-、,-、_ハ:::〈  `ーレイハ代心ト、ト、ヘ ̄「ヽ  !     ト、リ
              ヾVYフフ、 _,/、⌒)、_)、_ヽ_〉-、 イハ i{  ´, `  ィ茫ミ!  ヽゝ ヽ  jハ乂    なっ、>>1乙・・・!?
             ≫て   /: : : : / v \ V> .、__j乂ハ  r' '  ゙ー jハ  /  「 ヽノ
             彳   / : : : /_   _ < O< \.>| ト、`      イ /ハト、 ハ! 个ヽ
                {{    {: : : /「ヽ 〉 //] |/\|ヽ >V .! ヾヽ   u  V/ソ!   | 从ヽ
             `ミ州∧: :/  > O <     /,.イ:::人 ` ``  ,. イ,不    ト、 「 `
              〈:.:.:.\Y  L/ r个i   v / ,.イ,斗ハ | >‐< / ∧{ ト、ヽ.从_,
               `<_」 v    レ^   / /jハ,.ィ'Yイ | ト、|ハ /_,.∠  >―〈
  はまづら、>>1乙     j / ̄ _ 二二,.壬=ミ fリ {::| | レ><―――-< ハ
                   {__/ ̄    ./,.ィ示`  ` Ⅵゝ レ'´ ̄>≦二`ヽ : \ ト、
             、__//        /:代ソ   `ソ八ハ: : : ://: /,.ヘ: : \: :\_ハ
       V//    `>::/:{    _,. イ:::::| ゙゙   ,. ∧ハノ: //: //: : : ヽ: : \: : : 〉
       ヽイヽ.  `-イ/,.ィノ77ハ:::::/∧!::从 __'_/∠二 /: : ://: : : : : : :}: : : ハ:/
         `ーz`ーz‐'Z7爪V〃{{ レイ{乂∧_>< ̄: : ≦二二/: : : : : : : : / : : / : }
              r' ̄ 乂{ ̄/  ヽ/―――< >'´: : : : : : : : : : : : : : : /: : : /<
              {       {    { ̄ ̄ ̄ ̄: : : : : : : : : : : : : : : : : : /: : :/^ヽ :ヽ
              ヽ_介ー-、!    '.: : : : : : : : : : : : : : : : : :,. <  ̄}}´: : : : /- 、 ヽ.|

6■■■■:2011/02/01(火) 18:31:42 ID:zGZLk9/6

                | `77 ヽ ヾ  ヽ: : : : : : : : : : _,.イ: : : : : : :〃: : : : /<> ヽ |
                 | //   `ー―‐>― '´ ̄  ・ ・` <__〃_>< ≡ <> ヽ!
                 |         /        ・ ・ ・ ≡<>≡Z o <≡<>/
                 |          {    _,. -― ・ ・ ・ ≡<>≡ _M  /
                 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ヾ  ∠ r―- _・ ・ ≡<>≡  >―'´
                 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・   ノ: : : : : : : : ̄:77―‐ァ―'´
               ,.イi i ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・/ |:へ、: : : : : : 〃: : :∧
                 { ヽi i i i i i i i i i i i i i/  |: ヽ ニニニ{{: : : :/ :}
            _,...∠ ̄ヽ  、_      /=彡ヘ: : : : : : : : :》: : : ,.イ
          /W <二ヽ  `ー―<></「「「∧ヽ: : : : : : : ||: : : : ノ
           / <> W     ヽ i i i i i i i ハ」」」∧∧〉: : : : : : }}_,. イ }
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7■■■■:2011/02/04(金) 23:17:13 ID:ZV0CGq6s
┌────────────────┐
■3月の新刊予定(2011年3月10日発売)■
└────────────────┘

上条当麻不在の世界。彼が命を賭けて守った、様々な人たちの様々な安らかな
日常があった。
◆新約 とある魔術の禁書目録
著/鎌池和馬 イラスト/はいむらきよたか 定価:662円

  ローマ正教の暗部『神の右席』最後の一人、フィアンマがロシアから起こした第三
 次世界大戦は、上条当麻の活躍により終結した。彼の、消失と共に。
  ここは上条当麻が存在しない世界。
  魔術サイドは再編・改善がすすみ、信徒たちには安息の日々が訪れていた。
  科学サイド総本山の学園都市では、最強の超能力者・一方通行(アクセラレータ)が、
 『闇』と手を切り、打ち止め(ラストオーダー)や番外個体(ミサカワースト)と共に
 騒がしくも穏やかな日常を過ごしていた。そこには『グループ』の影も無い。
  元スキルアウトの無能力者・浜面仕上は、ロシアで手に入れた『闇』との交渉材料を
 懐に、絹旗、滝壺、そして帰ってきた麦野と共に新生『アイテム』を結成、活動を再開
 する。
  闇からの『卒業生』たちは、平穏を手に入れたのだ。――凶悪な『新入生』が、彼ら
 の前に現れるまでは。


・・・え?上条さんマジで死んじゃったんですか?もう出て来ないんですか?

8■■■■:2011/02/05(土) 20:13:57 ID:ypAekbmg
可能性としては
①心理掌握か第六位を消化しちまおうと思った
     
②学園都市以外のどこかの勢力が能力開発に成功→学園都市と対立

のどちらかしか思いつかないかな。

まあ、なんにせよ22巻であれだけのチートさ加減を見せつけている上条さんがfade outということはないだろ。
いくら予想外を連発してくるかまちーといえども、それをやったら読者への背信行為だろ。

ちょっとぐらい恣意的な紹介文で絶望してんじゃねえよ!
上条当麻は約束したんだ、必ず戻ってくると!
いいぜ、お前らがその程度のことで上条さんの復活を信じられないって言うなら、

まずはその幻想をぶち殺す!

9■■■■:2011/02/05(土) 20:35:47 ID:r3ikI6ds

 『上条当麻』は、もういない。
 あのロシアでの激闘で、上条当麻は消えてしまった。
「とうま……」
 インデックスは一人の部屋で、彼の帰りをひたすらに待ち続けていた。
 『上条当麻』はもういない。
 知っている。分かっている。
 それでも彼女は、帰りを待っている。
「ただいまー」
「あ、とうま……。おかえり」
「帰ったのである」
「……」
 彼『等』の帰宅をなおざりに迎えるインデックス。
 帰ってきやがった、とでも言いたげに。
「アックア、それはさっさと冷蔵庫に――」
「……」
「……あ、その……うぃ、ウィリアム。その袋のものは冷蔵庫に入れちまってくれ」
「了解したのである」
 ああ、また始まった。
 正直鬱陶しい。ウィリアム=オルウェルと、『オルウェル』当麻は、この通りいつもイチャイチャしやがってマジで鬱陶しい。
 このままの状況が続くならイギリスに帰りたいな、と切に願うインデックスなのだった。


こんな展開になったら俺はかまちーを許さない。
書いてる途中で心が折れかけた。

10■■■■:2011/02/05(土) 21:12:54 ID:gtS/Yurg
代表して言います



知らんがな…

11■■■■:2011/02/06(日) 01:27:50 ID:PiTGVN/Y
上条−姫神ものを6レス分投下します。

12■■■■:2011/02/06(日) 01:28:43 ID:PiTGVN/Y
月曜日 16:00

 月曜日の夕刻、下校時刻を少し過ぎた沿道は家路を急ぐ生徒達の喧騒で溢れている。一日の苦
行(授業)からようやく開放された生徒達が少々浮かれ気味なのは仕方ないことだろう。だがそんな
生徒達の中、ただ一人ドンヨリとした負のオーラを噴き出す人物がいた。重い足取りで歩くツンツン
した黒髪の男子高校生はふと立ち止まるとハアァァァっと大きなため息をつく。

「どうしたの? 君は。まるで予防注射の列に並ぶ小学生みたいな浮かない顔をして」

 そういって上条の背中に声を掛けたのは腰まで届く長い黒髪の女子高校生だ。少しばかり抑揚
の乏しい口調は姫神秋沙が不機嫌だからではない。それどころかあふれ出る笑みを必死にかみこ
ろしていたりする。そのことに気付かれるが恥ずかしいのか、姫神秋沙はスタスタと上条を追い越し
ながら話しかけてくる。

「さあ。帰りましょう」

 話は前日の日曜日に遡る。
 とある事件において上条は頬に傷を負ってしまった。とはいえそれはかすり傷程度なのだが、問
題は『バイ菌が入るといけないから傷を見せなさい』と迫ってきた姫神から逃れようと『かすり傷なん
か唾でも付けてりゃ良いんだよ』と言ってしまったことだ。

 結果、姫神は『治療』という大義名分を振りかざし上条の頬の傷に唇を重ねてきた。狼狽える上条
に『君は自分の頬を舐めることはできない。だから私の出番』と涼しい顔で言い放ち、さらには『傷
の経過観察も必要』と言い張り、月曜日の放課後に上条宅を訪問することを強引に承知させたの
だ。僅かばかりの抵抗を試みた上条であったが、その日の事件の中で今まで秘密にしてきた妹達
のことや天草式のことが姫神にバレたこともあり全面降伏せざるを得ず、今現在に至っている。

 はああぁぁぁぁ!っと上条は本日5度目のため息をつくと、意を決して姫神に声を掛ける。

「あのさ、姫神。やっぱり、わざわざ俺ン家まで来なくても良いんじゃ……」

 上条の一言に姫神秋沙の軽やかだった足取りがピタッと止まる。そして一呼吸置いて静かに振り
向いた姫神秋沙は右手を頬に手を当て考え込むような仕草をする。

「なるほど。言われてみれば。君の言うことにも一理あるかも」
「なっ、そうだろ。姫神。そうすりゃお前の手間も省けるんだし」
「確かに。余計な手間は省ける。
 でも。意外。君って大胆。ふふっ。
 こんな公衆の面前で私に『治療』して欲しいだなんて」
 
 口元に妖艶な笑みを浮かべたかと思うと姫神秋沙は潤んだ瞳で上条を見つめ、白磁のような両
腕を伸ばし細く滑らかな指で上条の両頬を優しく包み込む。とたんに上条の心拍数は一気にレッド
ゾーンまで跳ね上がる。レッドアウト寸前で何とか踏み止まった上条は真っ赤になった顔をブルン
ブルン!っと大きく振ると、思わず姫神の指から逃れ一歩後ずさっていた。

「えっ?ちょ、ちょっとタンマ。待て姫神!お前はなにか誤解してるぞ。
 さっきのは今ここで姫神に『治療』して欲しいと頼んだ訳じゃない。
 治療自体が必要ないんじゃないかと……」

 姫神は一度目をパチクリさせると上条の言葉を理解したのか表情を曇らせて上条に伸ばしていた
腕を力なく降ろしていく。上条はホッと胸を撫で下ろしつつも、姫神の寂しそうな様子にある種の後
ろめたさを感じてしまう。

「(姫神の善意をあんな風に無下に断っちゃ……無神経だったかな?)あのさ……」
「ちっ!」
「「………………………………」」

「ちょっと待て!姫神。今お前『ちっ!』って言わなかったか!?」
「な。なんのことかな?」
「ちょっときつい言い方しちゃったかなって反省しかけたのに……
 上条さんをからかってんなら上条さんは許しませんのことよ!」
「そんなことはない。でも。君の希望がそういうことなら。……仕方ない」
「そうか、姫神。ようやく判ってく……」
「『治療』は君の下宿でしてあげる!」

「こら!だから、なんでふりだしに戻るんだよ! もう治療はいらないんじゃ……」
「ふっ。あまい。あまいね。上条君!
 通常。皮膚常在菌が傷口の皮下組織まで化膿させるには組織1gにつき10万〜100万個の細
 菌が必要。でも。傷口に有機物系の異物があるとたった200個の菌で見事に感染成立。ちなみ
 に異物って木のトゲでもOK!」
「OK!じゃねえ!それにそんなネガティブ豆知識なんて聞きたくねえし!
 わかりました。上条さんの負けです。もう姫神さんに全てお任せしますからッ!」
「ありがとう。理解してくれて」

13■■■■:2011/02/06(日) 01:29:21 ID:PiTGVN/Y
月曜日 16:15

 下宿のドアを前にして上条は今日何度目か判らないため息を漏らす。この状況を同居人(インデ
ックス)にどう説明すべきか? いくら考えた所で良いアイデアが浮かぶハズもなくとうとう半ばやけ
ぎみにドアノブをまわしていた。

「(もう、なるようになりやがれッ)ただいま!」
「おかえり! とうま……って、あれっ? どうしてあいさと一緒なの?」
「えーっと、それはなんて言いましょうか? あのーっ」
「気にしないで。私は。上条君の『治療』にやって来ただけ」
「ちりょう……ってなんのこと? とうま?」
「いや。それは、その──っ、なんと言いましょうか……」
「つまり。こういうこと」
「痛ッ!」

 姫神は狼狽える上条の右頬の絆創膏に手を伸ばし絆創膏を一気に引きはがす。そして痛がる上
条を無視して上条の顎とうなじに手を添えたかと思うと頬の傷口に唇を押し当てた。

 唐突に始まった姫神の『治療』に言葉を失うインデックスだがすぐにその肩がワナワナと震えだす。
同時に上条の生存本能が『インデックス暴発警報』を脳内に鳴り響かせる。早くインデックス大魔神
を鎮める方法を考えねば!っと青ざめる上条に地獄の底から響いて来るようなインデックスの声が
浴びせられる。

「と・う・ま!いったい何してるの!?」
「イヤ。これは上条さんがナニしているわけではなく、ナニされてるだけなんですけど……」 

 何とかインデックスを落ち着かせようとする上条だが姫神の『治療』を受けて赤くなったニヤケ顔が
インデックスをさらに逆上させる。

「ちょっと!あいさ。何してるの!」

 大声をあげるインデックスをよそにたっぷり10秒間上条の頬に押しつけていた唇をチュ!と音を
立てて外すと姫神は怒りに震えるインデックスにあくまで涼しい顔で答える。

「何って。だから。これはただの『治療』」
「そう、そうだぞ。インデックス。これは唾液の殺菌効果を利用した『治療』行為というヤツで、科学的
 にいうとだな……」

 事ここに至り、生き残るにはもはや屁理屈だろうがインデックスを言いくるめるしかないと打算した
上条は姫神の言葉尻に便乗する。それがインデックスの怒りの炎に油を注ぎ込むことになるとも知
らずに。

「なにさ。とうまったら、あいさばっかりえこひいきして!」
「いや、そんなことは無いぞ!インデックス」
「じゃあ、わたしもとうまを『治療』するッ!」
「わっ、よしなさい!インデックス。お前は真似しなくていいからッ!」

 今まさに上条に飛び掛かろうとするインデックスを両手で牽制しつつ上条はなんとか距離を取ろう
と後退するが既に閉じてしまった玄関のドアが後退を許さない。上条は右手を背後に回してドアノ
ブを必死に探すがなかなか掴めない。

「なんだ……そうなんだ。とうまはわたしの『治療」なんて要らないって言うんだね」

 いつの間にか少し悲しげな声になっていたインデックスに気付き、上条はその動きを止める。

「あんのぉぉぉぉ?インデックス……さん?」
「だったら……覚悟はいい?!とぉぉぉうぅぅぅまぁぁぁああああッ!」
「うわぁ!インデックス。待てぇぇぇええええッ!」

 普段見ることのないインデックスのしおらしさに戸惑った分、反応が遅れてしまう。大きく開いた口
から覗くキラリときらめく犬歯に上条は死を覚悟するが後頭部を噛み砕くはずの痛撃はいつまで
経っても訪れない。それどころかなぜだかインデックスはプリンの容器に頬ずりして鼻歌を唄って
いたりする。

「ゴージャスプリン〜♪ゴ〜ジャスプ〜リ〜ン〜♪
 ああ、なんて神々しいのかしら。卵の黄身の濃厚さも、甘めのシロップとさっぱりとしたホイップクリ
 ームが奏でる絶妙なハーモニーも、ふんわりと舌の上でとろける食感も、総重量480gっていう食
 べ応えもなにもかもが大満足のこの一品。定価628円のゴージャスプリン。うふふ。15日と21時
 間18分ぶりだね」

 一体何が起きたのかまるで判らない上条であったが姫神秋沙の後ろに回した右手が上条にVサ
インを送っていることに気付く。どうやら、上条の命を救った一品はインデックスが上条に飛び掛か
る寸前に姫神秋沙がカバンから取り出したもののようだ。

「ありがとう。あいさ。最近とうまは金欠だとかいって食後のデザートを全然買ってくれないんだもの」
「それはよかった。そうだ。今日いくらか食材を持ってきたのだけれど。夕飯作ろうか?」
「ほんと?あいさ。実は昨日の朝から5食連続のモヤシ料理でへきへきしてたんだよ」
「じゃあ。私。部屋にあがってもいいかしら?」
「もちろん。大歓迎だよ。あいさ!」

14■■■■:2011/02/06(日) 01:29:55 ID:PiTGVN/Y
月曜日 17:30

「「「ごちそうさまでした」」」

 上条家の食卓に3人の声がこだまする。
 食事前の不機嫌さもどこへ行ったのか、インデックスも大満足の様子だ。

「あーっ、とってもおいしかったよ。あいさ」
「どういたしまして」
「いやー、ホントに美味かった。
 でも使ってる食材が違うって訳じゃないのにできあがった料理の味がこんなに美味しいってことは
 やっぱり、姫神の料理の腕が凄いってことなんだよなあ。誰かさんと違って」
「それはどういうことかな?とうま」
「いえ、今のは普段喰っちゃ寝だけして家事もしない誰かさんのことを言っている訳ではなく……」
「と──う──ま──っ!」
「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。ふ、不幸だぁぁぁぁぁぁああああああああああ!」

 上条の迂闊な一言に、溜まりに溜まっていたインデックスのストレスがとうとう大噴火してしまう。
インデックスに噛み付かれ絶叫を放ちながらゴロゴロと床を転げ回る上条を横目に姫神秋沙は手
早くテーブルの食器をキッチンに運んでいく。5分経っても終わらないリビングの喧騒に食器を洗う
手を止めると、ため息と一緒に小さな独り言が唇からこぼれ落ちた。

「毎回毎回良く飽きもせず。        (羨ましい……)」


月曜日 17:47

 姫神秋沙が食器の後片付けを終わらせた頃、ようやく上条はインデックスの噛みつき攻撃から解
放されていた。インデックスの不満は全て発散したようだが、その代わり上条の身体には至る所に
インデックスの噛み傷が刻み込まれていた。

「ったく、あちこち噛み付きやがって、合宿の時の蚊かよ。お前は?」

 インデックスに嫌みを言ったつもりなのに当のインデックが嫌な顔をするどころかなぜか嬉しそうに
上条を見つめてくるので上条は自分が何かとんでもない間違いを犯したのではないかと狼狽える。

「な、なんなんですか?インデックスさん。無邪気に明るいその笑顔は?」
「とうま。今のって私達が初めて会った時にとうまが私に言った言葉と同じだね。憶えてる?」

 上条当麻へと向けられたインデックスの言葉は上条を激しく動揺させる。上条の知らない上条当
麻との思い出を懐かしそうに話す目の前の少女に対してどう反応して良いものか?しかし戸惑って
いる時間は無く、一瞬躊躇した後、上条は当たり障りのない受け答えでその場を逃れることにした。

「そっ、そうか?そうだったかな。
 おっと、そうだった。これから姫神を下宿まで送ってかなきゃいけないんだった。
 じゃっ!そういうことでインデックス。話はまた後でってことで!」
「ちょ、ちょっと、とうま!」
「ほら、姫神。そろそろ帰らないと遅くなるぞ!」
「えっ?あ。うん」

15■■■■:2011/02/06(日) 01:30:31 ID:PiTGVN/Y
月曜日 18:12

「はい。どうぞ。暖(あった)まるよ」
「サンキュー!でも今さらだけどいいのか?俺なんかが部屋に上がり込んだりして」

 そもそも上条は姫神を寮の前まで送ったら直ぐ帰るつもりだった。しかし「私が煎れるお茶なんて
不味くて飲めたもんじゃないというんだね。君は!?」と絡んできた姫神に押し切られ、姫神の部屋
でお茶をご馳走になることになってしまった。少し居心地悪そうな上条に対して、ちゃぶ台の向こうの姫神は平然とした顔で

「大丈夫。それに。男子寮で女の子と同棲している強者の君に言われても説得力ないし」
「ぶっフ−ッ!どっ、同棲だなんて。俺とインデックスはそういう関係じゃ……」
「判ってる。今のは冗談」
「な、なんだ。じょ、冗談か!?アハ、ハハハ」 

 上条の乾いた笑い声を最後にそこで二人の会話が途切れてしまった。時計の秒針の刻む音が室内を満たす妙な静寂が2分ほど続いた時、姫神秋沙がポツリと言葉を紡ぎ出す。

「どうして?」
「なっ、なんだいきなり?」

 姫神の問い掛けの意味が分からず狼狽える上条に姫神は意を決して胸の内に秘めていた思い
を吐き出す。

「どうして君は誰でも彼でも救おうと頑張れるの?
 いつもそのせいで君は不幸な目にばかり遭っているのに」
「なんだ、そんなことか。
 別に俺は『他人を救う』だなんてそんな大それた事なんかしてねえよ。
 それに俺が不幸な目に遭うのはただただ上条さんが生まれついての不幸体質なだけで」
「それは嘘。だって三沢塾の時も。それに大覇星祭の時だって……
 いつも困っている誰かのためにボロボロになるまで頑張って」

「嘘っていわれてもなあ。
 でもなんていうかさあ。
 もし俺が『幸運にも』いままでの事件に巻き込まれなかったら、俺は今幸せだったのかな?」
「えっ?」

「例えば俺が三沢塾の事件に『幸運にも』巻き込まれなかったとしたら。
 そうしたら確かに腕を切り落とされることもなかったかもな。
 けど思うんだよ。
 あの時『幸運にも』姫神の苦しみや悲しみに気付かなかった俺は幸せだったのかな?って。
 だから俺は『幸運にも』三沢塾の事件に巻き込まれたんだと思ってる。
 それに、おかげでこうして姫神の笑顔を見ることができるんだからきっと俺は幸せ者なんだよ」
「なっ…………」
「おい、どうした。急に赤くなって。大丈夫か?……って、なんで今度は急に俺を睨むんですか?
 姫神さん」
「…………君って本当に天然。(そうやって見境無く色んな娘にフラグを立てていくんだね)」
「はあっ?」
「…………それに本当に鈍感。(なんで私の気持ちに気付かないの。馬鹿!)」

「えっ、なんか言った?」
「気にしないで。どうせ死んでも治らない」
「なにか良く判りませんが、そこはかとなく姫神さんに馬鹿にされているような気がするのですが」
「自覚してるなら。それで良い」

「あのなあ。
 どうせ上条さんは後先考えずに突っ走る単細胞な馬鹿ですよ。
 でもさ。姫神は大怪我って思うかもしれないけど、実際はそんな大したことないから」
「たった数ヶ月の内に。入院するほどの怪我を何度もする方が尋常じゃない」
「はッ、ははは。
 で、でもさすが学園都市だよな。どんな傷だって跡形も残さず直してくれるんだから!」

 恋愛に関してあまりに鈍感すぎる上条にほとほと呆れる姫神秋沙にふとイタズラ心が芽生えたの
はこの時だった。

「でも。まだここに傷が残ってる」

姫神秋沙が指差したものは上条の左手小指の付け根についた歯形だ。

「イヤ。これはさっきインデックスに噛まれたやつだろ。こんなの傷の内にも入んねえよ。
 唾でも付けてりゃすぐに治る…………」

 その瞬間『しまった!』と後悔した上条だがもはや手遅れであった。まんまと罠にはまった獲物
(上条)へ向けて小悪魔的な笑みを浮かべつつ姫神秋沙は艶のある口調で話しかける。

「じゃあ。私が治療してあ・げ・る」
「いッ、いや。姫神。いいから。大丈夫だって。それに自分の手ぐらい自分で舐められるし」
「じゃあ。君の口が届かないところを治療してあげる」

「ま、待て!姫神。落ち着くんだ!いいから落ち着け!!」
「落ち着くのは。一人で騒いでる君の方。一度深呼吸でもしてみたら」
「そ、そうか!?そ、そうだな。ス──ッ、ハア────ッ」
「どう。少しは落ち着いた?」
「ああ。でも、どうして姫神さんは上条さんの方へにじり寄ってくるのですか?」
「ふふ。何故だと思う?」

16■■■■:2011/02/06(日) 01:31:14 ID:PiTGVN/Y
「は、はやまるんじゃない!姫神。
 上条さんには治療しなきゃいけない所なんて一つもありませんから!」
「あれ。君は気付いていないの?治療しなきゃいけないところが一つまだ残ってる」
「えっ!?そんな訳無いだろ。
 インデックスに噛み付かれたところだって赤くなっちゃいるけど別に血が出てる訳じゃないし」
「やっぱり気付いてない。これで自分の顔を見てみれば」

 姫神秋沙はどこからか手鏡を取り出すと上条の目の前に差し出す。差し出された上条は手鏡を
覗き込み顔のどこかに傷がないかと必死に探すもののどこにも傷らしきものは見当たらない。

「おい!姫神。傷なんてどこにも……うっ」

 その瞬間、上条は言葉を失う。姫神に文句を言おうと覗き込んでいた手鏡を外してした瞬間、姫
神秋沙が上条の唇に唇を重ねてきたのだ。同時に上条の周囲から音が消えて無くなる。それだけ
ではない。目を閉じて頬を真っ赤に染めた姫神秋沙の表情、重ねた唇の柔らかさ、上気した体温、
ほのかに漂うシャンプーの香り、それに上条の心臓とシンクロするように早まった姫神秋沙の鼓動
を脳に伝える以外、上条の五感はその機能を全てを放棄したようで、時間すら止まった気がする。
一体どのくらいそうしていたのか判らない。だが息すらできなくなっていた上条が苦しさに耐えかね
るまで二人はただ静かに唇を重ねていた。

「ぶは──っ、なっ、なっ、なっ……なにをなさるんですか?姫神さん」

 姫神秋沙も上気して真っ赤に染まってしまった自分の顔や潤んだ瞳を上条に見られるのは恥ず
かしかったが、突然の出来事に自分以上に狼狽えている上条の様子が可笑しくて、姫神は平静を
装って答えることができた。

「なにって。治療」
「はぁッ? なんでいきなりそうなるんだ!」
「えっ?もっと雰囲気出してからの方が良かった?ふふっ」
「そんなことは言ってねえ!俺は口に怪我なんかしてなかったぞ! 何のイタズラだこれは!」
「…………イタズラなんかじゃない!」
「えっ?」

 そう言う姫神秋沙の表情はいつの間にか真剣なものに変わっていた。

「君は。困っている誰かを助けるためなら。例え自分が大怪我したっても構わないと思ってる。
 でも。これだけは憶えていて。君が傷つくと悲しむ女子(ひと)がいるってことを。
 君が大怪我してないかって何時も心配している女子(ひと)がいるってことを。
 そして君が無事に帰ってくることを祈っている女子(ひと)がいるってことを!」
「いや、姫神。別にそんな大それたことじゃないだろ!それにさっきのと何の関係が……」
「だから今のは。正確には治療じゃなくて予防注射。
 君が傷つくと悲しむ女子(ひと)が一杯いることを君に忘れないで欲しいから!
 私だってそう。だから何があっても必ず帰ってきて」

17■■■■:2011/02/06(日) 01:32:02 ID:PiTGVN/Y
月曜日 20:45

 夜も更けた公園のブランコに星空を眺めながら物思いにふける男子高校生がいた。姫神秋沙の
寮から帰る途中の上条当麻だ。

「俺が傷つくと悲しむ女子(ひと)が一杯いる…………か、そんなこと考えたこともなかったな。
 俺はみんなの笑顔が見たくて突っ走ってきたけどそれが誰かを悲しませたこともあったなんて。
 必ず帰ってきて…………か。
 あぁ。そうだな!別に俺は死にたい訳じゃない。
 そう。俺は何があっても絶対に諦めない。
 だから必ずここに帰ってくる。俺の居場所はここにあるんだから」

「そう。それは良かったわね!」

 不意に背後から掛けられた聞き覚えのある声とバチバチッ!という耳慣れた空電音に上条は総
毛立つ。

「も、もしや、その声は御坂さん?」
「御坂さん?じゃないでしょ!
 さっきからこの美琴さんが何回もわざわざアンタに声をかけてあげてるって言うのに散々無視して
 くれちゃって!デフォであたしを無視するフィルターをその呆けた頭にセットしてるんなら、一度私
 の電撃でリセットしてあげわよ!」
「いえ!そんな、上条さんは決して御坂さんを無視していたわけではなく……」
「はあ!? じゃあどういうことなのよ!」
「いや、姫神に言われたことを考えてただけで」
「なっ、なに、よその女の名前を出してんのよ!アンタは!!いっぺん死になさい!」
 
 そしていつものように女子中学生との楽しい(?)追いかけっこを骨の髄まで堪能して上条が下宿
に帰った時には日付は既に変わっていた。さすがにインデックスも寝てるだろうと静かにドアを開け
抜き足で部屋に入り音を立てないように慎重にドアを閉める。だがその背中に浴びせられたドスの
効いた声に上条はその全てが無駄であったことを知る。

「と・う・ま!」
「そっ、その声は。イ、インデックスさん。まだ起きていらっしゃったのですか?」
「とうま。今何時だと思ってるの?一体秋沙の下宿で今までなにしてたの!?」
「ま、待て!インデックス。お前なにか勘違いしてるぞ!別にやましいことなんて何も……」
「とぉぉぉぉうまぁぁぁぁぁああああああ!」
「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。ふ、不幸だぁぁぁぁぁぁああああああああああ!」

 その夜、とある学生寮にとある不幸な高校生の絶叫が響き渡ったという。

月曜日 24:25

「痛ててて。インデックスのやつ、思いっきり噛み付きやがって。
 はああぁぁぁぁ。今日は散々の一日だった。さっさと日記書いて寝よ」

『○月○日(月)
 姫神が治療と称してやって来た。
 インデックスはあれが不満らしいが、姫神が治療だって言うんだからあれは治療なんだよ。
 そしてなぜかその後、夕食と翌日の弁当作りを一緒に行うことに。
 やっぱり姫神って料理が上手いよな。
 幸せも束の間ご立腹モードのインデックスに体中噛み付かれる。不幸だ!
 結局、姫神を下宿まで送り届けて帰って来たときには日付が変わっていた。
 でも姫神が下宿で噛み傷を治療してくれたことはインデックスには内緒にしとこう』

おわり

18■■■■:2011/02/06(日) 01:34:43 ID:PiTGVN/Y
これは昔投下していた「ミサカ、巫女と美琴」の番外編の 「上条当麻の不幸な一週間−姫神秋沙
−編」です。多分誰もご存じないと思ったので「ミサカ、巫女と美琴」を読まなくてもわかるよう
な文章にしています。
禁書の二期も盛り上がってきましたし、このスレも賑わうといいですね。

19■■■■:2011/02/06(日) 23:52:32 ID:9OZBIw1s
GJ
いちゃいちゃ系はここでは珍しいかも。然るべき場所でならもっとウケるんじゃないか
このスレが賑わって欲しい同意。職人の皆様、じゃんじゃん投下してください

20■■■■:2011/02/07(月) 16:41:30 ID:NA393im6
>>19 でもここの連中下手な文章打ったらすぐ、ぐちぐち言うじゃん。
   自分では書いたこと無いくせにw

21■■■■:2011/02/07(月) 17:04:07 ID:WAdmab/A
>>20
あなたがSS職人か否かは知りませんが、そういうネガティブな発言は控えて頂きたい。
ただでさえ過疎り気味なこのスレの雰囲気を更に悪くさせ、職人が投下しづらい空気、読み手離れが進む恐れもあるんですよ。
イラっとくる書き込みはスルーするなりして、板の上にまで持ち出さないでください。
新スレのスタートという段階でそんな事を言うくらいなら、既に投下されている一番槍SSに感想を付けてあげるべきではありませんか。

22■■■■:2011/02/08(火) 18:02:31 ID:XIz3XCak
新参者ですが、自作SS投下してもよろしいですか?

23■■■■:2011/02/08(火) 19:45:07 ID:hL3xLNBk
>>1の投稿時の注意を守ってもらえれば問題無いですよ。
さあどうぞ。

24■■■■:2011/02/08(火) 23:35:20 ID:hrbZPsMo
>>22
投下がまだなようなので、すみませんが先に投下させていただきます。
上条−御坂美琴もののバレンタイデーネタを2スレ分投下します。

25■■■■:2011/02/08(火) 23:35:52 ID:hrbZPsMo
2月13日 13:05

(あれっ?こんな状況って前にもあったような……なんだっけ?)

 セブンスミスの前で携帯電話を覗き込んでいた御坂美琴はふと、ある既視感(デジャビュ)に囚わ
れた。今時刻は13時05分、御坂美琴は携帯電話の画面から目を離すといつもより少し騒がしい町
中に目をやる。黄色い声の割合が普段より多く感じる今日は2月13日いわゆるバレンタインデーを
明日に控え世の女子達が愛しい君へのチョコレートの品定めに胸躍らせ、世の男共がありもしない
未来(チョコ)を夢見る幸せな一日でもある。宗教から最も遠い学園都市においてもこの世俗的な慣
習は脈々と受け継がれていた。

(そういえば以前ここでだれかと待ち合わせしてたような……誰……だっけ?)

 だが、御坂美琴の思考は不意に掛けられた声にそこで打ち切られる。

「よっ!ビリビリ。お前もこれからチョコ選びか?」
「ち、違うわよ!!なんで私がアンタのチョコを選ばなきゃ……」

 左横から掛けられた声に反射的に大声をあげた御坂美琴は恐る恐る左に目をやると、そこには
黒いツンツンした髪型をした男子高校生が立っていた。

「相変わらずだな。お前は、……って、どうした?御坂!」
「えっ?なにが?……って、あれ?どうして?なんで?」

 御坂美琴は判らなかった。自分が何故泣いているのか?
 いつも通りの学園都市、いつも通りの放課後の街角、そして見慣れたコイツが目の前にいるだけ
なのに、自分はどうして泣いているのか?なぜ溢れ出る涙を止めることができないのか?

「どうした?御坂。何か悲しいことでもあったのか?」
「うっさい。そんなこと.この美琴さんにある訳無いでしょ!」
「でもお前泣いてるじゃん!」
「これは、黄砂が目に入ってちょっと目がショボショボするだけよ!」
「なあんだ、そういうことか。ビックリさせんなよ!
 そういや、お前が左手に持ってる紙袋ってひょっとして本命チョコでも入ってんのか?」
「なっ……な、なに言ってんのよ!」

 その瞬間御坂美琴は思い出す。さっきデパ地下で買ったチョコのことを。
 今日は初春飾利と佐天涙子からチョコ選びに付き合って欲しいと頼まれて放課後待ち合わせを
して三人でチョコ売り場をまわっていたのだった。

(初春さんと佐天さんがお目当てのチョコを買い終わったから帰ろうとしたのに、初春さんったら『御
 坂さんはチョコ買わないんですか?』って言い出すんだから!送る人なんていないからイイって
 言ったのに佐天さんまで一緒になって『私に似合うチョコ選び』ってのを始めちゃうし。結局、私の
 意見は全くの無視で初春さんと佐天さんがこれを選んじゃったのよね。まあでも可愛いチョコだし
 ラッピングも可愛いから良いけど。でもコイツにこんな少女趣味のチョコ見せたら笑われるかな?)

「そういや、お前も女の子だったんだよなあ。一応ッ!」

 その瞬間上条に向けて10億ボルトの『雷撃の槍』が放たれる。もはや条件反射のように右手をか
ざした上条は『幻想殺し』で『雷撃の槍』を打ち消す。

「なぁにが一応よッ!アンタ、レディに対して失礼でしょ!」
「だからっていきなりの電撃はひでえだろ!普通死ぬぞッ!!」
「フン!どうせ効かないくせに!」
「効くとか、効かないとかの話じゃねえだろ!」
「わっ、判ったわよ。…………じゃあ、お詫びにこれあげるわよ!感謝なさい」

 そう言って御坂美琴は左手に持った紙袋を上条に差し出す。

「え──っと、この中身は何でしょうか?」
「見りゃ判るでしょ!」

 赤くなった顔を見られるのが恥ずかしいのと中身がチョコと判った時の上条の反応を見るのが怖く
て上条から顔をそらしたまま素っ気なく答える御坂美琴であった。

「これって……、チョコじゃねえか!ひょっとして、御坂、俺にくれるの!?」
「そ、そうよ!どうせアンタなんか誰からも貰えないだろうから、私のをあげるわよ!感謝なさい」
「サンキューな。御坂。嬉しいぜ!」
「えっ、う、嬉しいの!?」

26■■■■:2011/02/08(火) 23:36:45 ID:hrbZPsMo
 意外な展開に御坂美琴の鼓動は急激に早くなり、心臓から勢いよく送り出される血潮は御坂美琴
の赤い顔をさらに深紅に染めあげる。

「そ、それって……、ひょっとして」
「ああ、御坂からチョコを貰えて俺は嬉しいぜ」
「と、とう……」
「あっ、そうだ、それに御坂が右手に持ってる携帯のさ……」
「な、何?」

 御坂美琴は上条が指差す自分のカエル型携帯電話に目を落とす。上条が指差していたのは携
帯電話に付いていたラブリーミトンのゲコ太ストラップだった。二つ並んだゲコ太ストラップを指差す
上条は

「そういや、御坂にそのゲコ太ストラップを預けたままになってたよな!
 一つは俺の携帯電話に付けるからさ。それを俺に返してくれないか?」
「そりゃ、いいけど……もともとアンタのだし。         (      違う!     ) 」

 携帯電話からゲコ太ストラップを外しながら御坂美琴は奇妙な違和感を感じていた。

「はい、どうぞ!もう落とさないでよね。             (      違う!     )」

 ゲコ太ストラップを右手に載せて上条に差し出す御坂美琴は何か忘れている気がして仕方ない。
そう何かを大切なことを。

「ありがとな。探してたんだよな。これ」
「(      ダメ!      )」

 上条がゲコ太ストラップを摘み上げようとした瞬間、御坂美琴はゲコ太ストラップを力の限り強く握
りしめていた。

「おい、御坂、そんな意地悪しないでくれよ。それがなきゃ俺はあっちにいけないし」
「ダメ!」
「はっ?何言ってんだ。御坂」
「だから、(      違う!     )いっちゃダメ!!」
「だから、一体何のこと言ってんだよ!?」
「だって……だって、ヒック」

 御坂美琴は泣いていた。瞳から溢れる大粒の涙は止めどなく頬を濡らしている。それでも御坂美
琴はただ真っ直ぐ目の前に立つ上条当麻の顔を見つめていた。そして嗚咽を漏らすようにその思
いを言葉にする。

「だって、あたし、まだ言ってないもの!当麻に私の気持ちを伝えてないもの!!」

 涙でかすむ上条当麻はそう言われてどこか困ったような顔をしているようだ。

「ゴメン!これはまだ渡せない。だって、これはあたしと当麻のたった一つ残った大切な絆だもの。
 だから、帰ってきて。お願い。私には当麻に伝えたいことがいっぱいあるの。
 あたしがどれほど当麻を好きかってことを当麻にはまだ一言も言えてないもの」

「当麻がいなくなってから、当麻のことを思い出すたび胸が苦しいの。
 どうしてあの時当麻の手に届かなかったんだろ!そんなことを考え出すと頭がいつもグルグルし
 ちゃって。もうどうしたらいいかわかんないよ。助けてよ!当麻!!」
「そっか……そうだな。忘れてた。
 そういや俺はお前のピンチの時には必ず駆けつけるって約束したんだよな!」
「あたしの我が侭だって判ってる。でもお願い。帰ってき……」

 上条が何かを言い掛けたとき御坂美琴の前から上条の姿がかき消えた。同時に世界そのものが
崩れ落ちた。

 チュンチュンとスズメの鳴く声が窓の外から聞こえている。二月とはいえ窓から差し込む朝日が室
内に暖かさを運んでくれている。目覚めた御坂美琴はマクラを濡らしているのが自分の涙であるこ
とに気付く。もう何度目だろうアイツの夢を見たのは。きっと今自分は酷い顔をしていることだろう。
 でも御坂美琴は微笑んでみせた。さっき夢のなかで上条当麻が言った最後の言葉を思い出しな
がら。『必ず帰る!』って言ったその言葉を。

「当麻。あたしは信じて待ってる。当麻が帰ってくるのを。
 昨日買ったチョコは当麻が帰ってくるまでずっと机の中に置いておくことにするわ。
 だから,賞味期限が切れるまでに帰ってきなさい。それにもうすぐ新学期なんだからね!」

おしまい

27■■■■:2011/02/08(火) 23:38:24 ID:hrbZPsMo
以上です。4時間ほどで書き上げたので色々おかしな所があるかも知れませんがご容赦を。
23巻で上条さんが復帰するのか?そしてどんな場面でどんな名台詞をひっさげ復帰するのか
楽しみでなりません。

>>19
 自分は「ミサカ、巫女と美琴」書いていたものですが、確かに自分が一生懸命書いた文章を他人
に批判されるのはとても悲しいですね。自分も初めてここに投稿したときは色々不備を指摘されま
した。そんなレスを読んだときは正直落ち込みもしましたが冷静になればどれも的を射ていることに
気付きました。今なら昔の自分の文章がどれ程変なのか判ります。そういう意味では、ぐちぐち言わ
れることも(もちろん度が過ぎた非難や中傷は論外ですが)良いかもしれませんよ。次の作品への
糧になるとおもいます。

>>22
誰でも最初は新参者です。投下をお待ちしています。

28■■■■:2011/02/09(水) 02:21:14 ID:U0h8t40E
>>27
GJ!
もうすぐ新約発売まであと一ヶ月か…

29■■■■:2011/02/09(水) 13:03:52 ID:3PovCmVg
>>23
>>27

分かりました。  

初心者&文才なしですが、皆さんからアドバイス等をいただけたら
それを参考にしたいと思いますので宜しければ見てやってください。


タイトルは「とある少女と暗部組織」です。
一部オリ設定がありますが、オリキャラ無双はありません。
では、投下します。

30「とある少女と暗部組織」:2011/02/09(水) 13:54:31 ID:3PovCmVg

「今日は水曜日か…」

 ビリビリこと御坂美琴は、学校帰りに時間帯の割には人が少ないコンビニにいた。
 何をしているかと言うと、彼女の日課となりつつある週刊誌の「立ち読み」である。
 店員は、常盤台というお嬢様学校の制服着ている御坂に羨望と驚きの眼差しを送っていたが、
店内に新たに客が入ってきたのですぐに仕事の顔に戻る。

「ありがとうございました。またお越しくださいませ」

 御坂は暫くして特に何も買わずに店内から出ると、ふとツンツン頭の少年を思い浮かべる。

(アイツ、今頃なにしてるのかな…暇だから、アイツが通りそうな場所に行ってみようかな…)

 そう考えて歩き出すと、数十メートル先に白を基調とした服装の少年を目撃する。

「ア、アイツはまさか……」

 忘れるはずがない。
 あの見た目こそ細身だが、その華奢な体に莫大な演算能力を持つ、
学園都市最強の白い怪物を。
 見間違えるはずがない。
 奴は、一万人以上もの妹達(シスターズ)を惨殺した張本人なのだから。
 白い少年は、現代的なデザインの杖を突きながらこちらに向かって歩いてくる。
 コンビニに用があるのだろうか。
 学園都市第一位の超能力者(レベル5)が、第三位の少女をぼんやりとした表情で
見つめる。

 
「…超電磁砲(レールガン)、か」
「…っ!一方通行(アクセラレータ)!!私はアンタの存在自体が許せないのよ!!」

31「とある少女と暗部組織」:2011/02/09(水) 14:36:15 ID:3PovCmVg
 御坂美琴は、猛烈な怒気を含んだ様子で学園都市最強の能力者を睨み付ける。
 このとき、一方通行(アクセラレータ)が一瞬だけ悲しげな表情を見せていたが、
今の彼女がそれに気づくことはなかった。
 一方で、白い少年はどうしたものかと思考を張り巡らせていた。

(どォする?まさか、こンな所で超電磁砲と遭遇するなンざ考えてもいなかった
。だが、言い訳をするつもりはさらさらねェし、逃げるつもりもない。だったら
今俺が言うことは、)

「……悪かったよ」

 打ち止め(ラストオーダー)と出会う以前の彼ならば、他人に素直に謝罪する
といった行為は考えられなかっただろう。
 彼を良く知る人物ならば、思わず呆気にとられるかもしれない。

「はぁ?アンタ何言って…」

 現に、一方通行(アクセラレータ)の性格を『実験』で嫌と言うほど誰よりも
理解しているはずの御坂ですら、今の状況が呑み込めていない。

「な、なんなのよアンタ…いまさら謝って済むとでも思っているワケ!?」

 その通りだ、と彼は思った。
 今更謝罪をしたところで、彼女の怒りは収まらないだろう。
 しかし、

「あァ、謝って済む問題じゃねェってのは分かってる。だがもォ俺は『実験』
みてェに妹達(シスターズ)を傷つけて良いなンて思わねェし、あんなくだらねェ
ことを差し向けたクソったれの上層部から妹達を守りたい。そいつらのお膳立てに
乗っちまった俺自身が一番腹立たしいが、オマエの顔を見た瞬間、このことを伝え
なきゃならねェと思ったまでだ」

32「とある少女と暗部組織」:2011/02/09(水) 15:36:06 ID:3PovCmVg
 彼は引き下がれなかった。
 否、どうしてもここで引き下がるわけにはいかなかった。
 気づけば、白い少年は、昔を振り返るように自分から御坂に話をしていた。
 自分の能力で、自身の意思を問わず際限なく人を傷つけてしまったこと、
 その過去を理由に『実験』に参加し『絶対能力者(レベル6)』を目指したこと、
 ツンツン頭の少年に敗れ『打ち止め(ラストオーダー)』という少女に出会ったこと、
 それにより彼の心が次第に変化していったこと、
 打ち止めと妹達(シスターズ)のために能力と言語機能を犠牲にしたこと、
 現在は打ち止め及び全妹達を守るべく、彼女達の助けを借りて行動していること。
 一方通行(アクセラレータ)は、全てをありのままに語った。
 普段は口数の少ない彼が、これだけ喋ったことは今までにあっただろうか。
 御坂はそれを黙って聞いていた。

「じゃあアンタは、自分の命を犠牲にしようとしてまであの子たちを守ろうとした
ってこと?」
「例え俺や上層部の人間共がどれほどのクズでも、どンな理由を並べてもそれで
アイツ等が殺されて良いことになンかならねェからな」

 御坂は最初は彼の話など全く信じられなかったが、彼の首に付けられている
チョーカーや、彼が突いている杖、以前のように整っていない髪が、なんとなく
真実を物語っているように彼女には感じられた。
 そう考えてみると、色々想像できなくもない。
 彼は学園都市最強の能力者だ。
 もしかすると、彼は既に幼い頃から様々な実験につき合わされて、皆と遊んだり
喋ったりと、普通に日常を過ごすことすら出来なかったのかもしれない。
 一万人以上の妹達を殺したからと言えど、今まで憎しみの対象でしかなかった
第一位の怪物が、だんだん可哀想に思えてきた。

「へぇ、そうだったんだ…。私、アンタのこと誤解してた」
「良いのかよ、それで。俺は一万人以上の妹達をぶっ殺した張本人だぜ?」
「別に悪いのはアンタだけじゃないし、アンタがあの子たちを守るってことに
嘘はないんでしょ?」
「それだけで俺を信じるってのかァ?」
「それだけで十分」
「……」
「それともう一つ、アンタは絶対あの子たちを守ること。いい?」

 当たり前だ、と白い少年は心の中で毒づいた。
 そして最後に、一方通行はこう吐き捨てた。

「俺は最強の悪党を目指す。そしてアイツ等を、光の世界を守る」

33■■■■:2011/02/09(水) 15:40:42 ID:3PovCmVg
投下完了しました。時系列は原作13巻の後です。

感想や、間違いの指摘などがありましたら宜しくお願いします。

34■■■■:2011/02/09(水) 21:13:38 ID:owzZVHtE
面白いです!ところで続きありますか?
俺もそろそろ読者から作者に転身したいけど文才無いからなぁ・・・

35■■■■:2011/02/09(水) 21:29:45 ID:g5godvNg
俺は文才ないけど偉そうなリクエストをひとつ
だれか上条さんが神浄さんになって帰ってくるSS書いてくださいませんか

3634の者:2011/02/10(木) 00:49:40 ID:4AP4xh9k
>>35さん
ただ今制作中の作品にそれっぽいヤツがあります。暗部モノなんで趣旨は
違いますが・・・
文才無くて完結させられる自信が無く、うpが怖くて出来ない(・ω・`)

37:2011/02/10(木) 08:42:07 ID:F9MEp8CY
文才文才って言うけれど、
私だって、自分で投降した初期の文を見ていると、読点を頻用して
セリフが姫神みたいになっていたりしたよ。
結局こういうのは、書いて送って後で気づいていけばいいんじゃないかな。
日本人の国民性っていえるのかもしれないけれど、
SSに対するビシっとした批評って少ないけれど、むしろそういうのが
必要じゃないかな(1歩間違えると叩きになる危険があるけれど。)

38■■■■:2011/02/10(木) 13:20:02 ID:6ovxYBtI
>>34

ありがとうございます。

続きは一応用意してありますが…

連続で投下しても良いのですか?

39■■■■:2011/02/10(木) 14:46:49 ID:K1qB2rgI
>>38
投下宣言し、その後速やかに投下出来るのであれば何時でも大丈夫です。

40■■■■:2011/02/10(木) 18:54:46 ID:6ovxYBtI
>>39

分かりました。

では一レスだけですが投下します。

41「とある少女と暗部組織」:2011/02/10(木) 18:55:36 ID:6ovxYBtI
「い、一体何なんだよあいつは!?くそっ、途中までは俺の計画は完璧だったのに…」

 極限まで腐りきった連中の巣窟から、息を切らしながら必死の形相で逃走していく一人の
男がいた。
 その20代前半の男は、全身黒ずくめという明らかに怪しげな格好をしている。
 実はこの男、そのアジトを拠点にしている暗部組織の下部組織に最近加入したばかりの
人間で、新参であるが故に一つのミスを犯した。
 最も、そのミスが命取りになったわけだが。

「ちくしょう、こんなこんな早くに見つかるとは思わなかったぜ…」
 
 この男は組織に関する重要な情報を盗み、別の暗部組織に渡そうとしていた。
 いわゆる『スパイ』である。
 男の工作活動は首尾良く成功した…かに見えたが、あろうことか一部のデータメモリを
どこかに落とし、それが原因で組織の人間に情報漏洩を知られてしまった。
 全く間抜けな新入りである。

(だがそろそろ敵対組織の連中が俺を助けにくるはずだ。落としちまったデータはどうしようも
ねえが、残ったやつだけでも十分取引に使える。あとは、)

 男の思考はそこで遮られた。
 何故なら、唐突に後方から凄まじい衝撃を受けノーバウンドで数十メートル以上飛ばされ、
勢い良く壁に叩きつけられたからである。
 
「…があっ……!?」
「いやー、危ないところだったぜ?まさかテメェみたいな下部組織の連中の中にスパイがいる
なんてな」

 そう言ったガラの悪そうな背丈の高い少年はゆっくりと、倒れている男のもとへと歩み寄ってくる。 
 かろうじて意識が残っている男は、苦痛に顔を歪めながら目の前にいる組織の指導者を見据える。

「ま、待ってくれ…!俺は無理やりやらされたんだ!何でも言うこと聞くから、
こ、殺さないでくれ…!」
「この俺に手間かけさせやがったテメェにはかなりムカついたからな、まずはテメェを愉快な
死体に変えてやるよ」
 
 少年がそう言ったと同時に、ゴア!!と突如謎の爆発が発生した。
 爆風はアスファルトやビルを食い破り、ガラスを撒き散らしながら全てのものを薙ぎ払った。
 無様に転がっている男を一目見た少年は、再び元来た道を引き返し立ち去った。
 爆風が直撃し、黒く変色した体がくの字に折れ曲がっている男の生死などわざわざ近くで
確認するまでもない。

42■■■■:2011/02/10(木) 18:56:47 ID:6ovxYBtI
投下完了しました。

感想や間違いの指摘があればお願いします」。

43??? ?? ?????:2011/02/10(木) 22:02:42 ID:hXPiNXdo
>>42 通過儀礼みたいなもんだが、短すぎ。せめて4レスぐらいにしましょう。
   
    まあ、がんばれ。始めた頃は、俺も言われたから。

44■■■■:2011/02/11(金) 11:52:59 ID:C5GTsKcc
>>43

すみません、新参者なものでして…

次からは4レスまとめてから投下します。

45■■■■:2011/02/11(金) 20:43:57 ID:cLSTgqPw
>>42ノーバウンドとか、禁書っぽい文章がGJ!
43の言うことは間違っちゃいない。間違っちゃいないが、42が前スレを見れたなら突っ込んでいいところだと思う……
てか?とか☆とか、コテはわざと外し忘れてるのかどうなのか。

46■■■■:2011/02/12(土) 16:03:06 ID:CNGq7gws
>>45 コテはずし忘れただけだ気にスンナw

47■■■■:2011/02/13(日) 11:12:17 ID:zwCKJw.g
最近SSのレベルが落ちてきたな
昔は、一流職人を彷彿させるようなコメントで一杯だったのに今は三流以下のクソみたいなSSしかないからなぁ
みんなもう少し頑張ろうな

48■■■■:2011/02/13(日) 18:53:13 ID:jP8tdyYI
>>47
何様だお前。自分で書きもしない奴が好き勝手言ってんじゃねーよ
お前みたいなお客様態度の読み手がスレ全体のレベルを落としてるんじゃねーの?

49■■■■:2011/02/13(日) 23:13:06 ID:IKQLteds
本来は反応しちゃいけないんでしょうけど、今回だけ突っ込ませていただきます。
スレ住人の皆さん。すみません。

>>47
 2年前から住み着いている、書き手&読み手です。
 今回の「スレの雰囲気を壊そうとする工作員」のような書き込みは控えて下さい。
ネットに慣れた住人の方なら単にスルーでお終いなのでしょうが、このようなレスが
残ったままではこれからssを投下しようとする人が二の足を踏み、結果スレが衰退し
てしまいます。今回の書き込みを「工作員のような書き込み」といった理由です。

 今回のレスが荒らしでないとしてマジレスします。
 もし投下されたSSの内容に不満があるならその作品に対してどのように感じたかを
指摘してあげて下さい。それはそのSS作者のためにもなると思います。
 「最近は三流以下のクソみたいなSSしかない」と書いていますが、「灰姫」や「並
行世界」は別格としても、以前のSSと比較しても遜色のない良作がいくつもあります。
もう少し投下された作品をよく読んでみてください。
 SS職人の方々も誰でもはじめは初心者で作品を作りながら上達するものです。SSの
批判をするなとは言いませんが、このスレを「一流職人以外お断り」といった雰囲気
にしないで下さい。

50■■■■:2011/02/14(月) 01:19:39 ID:ap9R8aBE
>>48 >>49

>>47って確か、2chのコピペ道場のコメント欄にあった、荒らし用のコピペの改変だぞ?
  そんなもん、反応するのもあほらしい。

51■■■■:2011/02/14(月) 01:59:08 ID:d4vGo.To
>>50
お恥ずかしい。すみませんでした。ちょっと耐性が足らなかったようです。
以後、荒らしにはスルーに徹します。

52■■■■:2011/02/15(火) 01:03:59 ID:n8.p8jgE
まぁ、新人職人さんが二の足を踏むようなコメントは差し控えるべきだよな。
作品の批評は良いと思うけど単なる批判じゃ誰も投下しなくなるだろうし。

53中二病 番号 20000:2011/02/15(火) 01:10:54 ID:uC3Y/4mc
>>47 はい!精一杯がんばります!

54とある少女の生きる世界の作者:2011/02/15(火) 22:13:37 ID:hb64tSnU
久しぶりに出来たのですがよろしいですか?

55とある少女の生きる世界の作者:2011/02/15(火) 22:14:51 ID:hb64tSnU
付け加えますと、投下してもよろしいですか?と言いたいのです

56■■■■:2011/02/15(火) 23:37:22 ID:hb64tSnU
時間ないので投下させていただきます。

57とある少女の生きる世界:2011/02/15(火) 23:42:04 ID:hb64tSnU
↑とある少女の生きる世界の作者です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
第四章 とある復讐と少女の思い

「今日はありがとう。」
春木はそうきりだした。当麻と春木は、とあるアクセサリーショップの前にいた。
「はいこれ、上条にあげる。」
「ん?何だこれ?ストラップ?どうしたんだこれ。」
当麻が貰ったのは、太陽の形のストラップだった。
「買ったの。さっき。付き合ってくれたお礼。」
すると春木は、ポケットから何かを取り出した。それは当麻が貰った物と同じ、ストラップだった。
「おそろい。ね。」
春木はそう言うと、少し間をあけた。
「上条をイメージしたの。温かくて、明るい。そんな感じがするから。」
「そうなのか?ありがとうな。大事にするよ。」
すると春木は顔を赤くした。やがて意を決したような顔をし
「当麻。聞いて。私、上条のこと―――――。」
プルルッと、不意に春木の携帯が鳴った。
携帯に表示されてるのはルームメイトの番号だ。
『春木さん!!』
出た瞬間、ルームメイトが叫んだ。
『何ですか、あの人たち!!春木さんの知り合いなんですか!!』
「どっどうしたの!?何が―――。」
パパンと、銃声の音がした。

58とある少女の生きる世界:2011/02/15(火) 23:44:23 ID:hb64tSnU
「渚、今どこにいるの!?」
『第三学区のどこかの倉庫。風紀委員の仕事で、きゃあぁぁああ―――――。』
と、電話が切れた。春木はおもわず携帯を落とした。
「風波?どうした?」
当麻が聞いても春木は答えない。
「当麻ごめん。用事できた。」
春木は走り出した、当麻が何かを言っていたが、春木は聞いていない。
完全下校時刻は過ぎた。乗り物は使えない。ならば走るしか手段はないのだ。
「どこ。どこなの渚!返事してー!なーぎーさー!!」
たくさんある内の倉庫の一つに、潰したはずの組織の生き残りがいた。
「あんたら・・・・・?待ちなさい。渚は?無事なんでしょうね?」
春木は辺りを見渡すがそれらしき影は無い。そんな春木を見て、男が笑う。
「まだ分かんねぇのか?ほら、これだよ。」
何かが男の手から落ちた。それは音声変換機だった。それを見た春木は、

59とある少女の生きる世界:2011/02/15(火) 23:44:55 ID:hb64tSnU
「・・・・・バカ?何で教えたの?あんたら、ばらすとこ間違えてない?」
春木をボコボコにしてからばらした方が、ダメージはでかいはずだ。
だが、生き残りはそれをしなかった。思い浮かぶ理由は一つだけだ。
「よほど自信があるようね。Lv5も舐められたもんだわ。」
「いや、お前がここにいる時点で俺らの勝ちなんだよ。」
春木は首を傾げた。その時、
キィィィィンと、かん高い音が流れた。
「ぐあっ!!きゃっキャパシティダウン!?なんであんたらが!?」
「能力者の町だぞ。持ってない方が不思議だろ。」
「ふざけ・・んな・・!!こんな物で私の能力、抑えられるとおもうなぁぁぁ!!」
しかし、威力も命中率も下がった能力では、とてもじゃないが太刀打ち出来ない。
苦しむ春木に、非情な言葉が投げ掛けられた。
「あんなに酷い事されたからな。一撃で殺しては足りない。」
その言葉が示すのは暴力。いくらLv5といえど、春木は普通の女の子だ。
男に殴られて、痛くないはずが無い。しかし、春木は表情を崩さない。痛くも痒くも無いとでも言ってるかのように。
「つまんねえなー。もういいわ。誰か来る前にかたずけとこ。」
取り出したのは銃。一撃で仕留められるように春木を狙っている。
パァンという音と共に、銃弾が放たれた。

60とある少女の生きる世界:2011/02/15(火) 23:47:08 ID:hb64tSnU
春木の服が血で赤く染まる。
ただし、

それは春木の血ではなかった。

「・・・・・上条?・・・」
当麻の体が地面に倒れた。震える口で何かを言っている。
「・・・・心配・・だったから・・・・さ・・・。」
近くにいる春木には聞こえてるはずだが、春木は聞いてなかった。
春木は小刻みに震えている。自分の負の感情が湧き出してくるのを、春木は確かに感じていた。
指し示すは、一つの暴走。
「うう。うっうっうわあああああああああああああああああああ!!!!」
もはや、風というよりも、嵐と竜巻としか言いようが無い物に周りの者が巻きこまれていった。
倉庫の壁が剥がされ、板が飛び、刺さっていた釘が飛びまどう。
その暴走は、騒ぎを聞きつけた警備員が来るまでの30分間、止むことは無かった。

61とある少女の生きる世界の作者:2011/02/15(火) 23:47:41 ID:hb64tSnU
投下終了

62■■■■:2011/02/17(木) 21:40:53 ID:9oxNNj9Q
>>61

GJです!!面白いです、続きが気になります!




遅くなりましたが、投下します。

63「とある少女と暗部組織」:2011/02/17(木) 21:45:04 ID:9oxNNj9Q
 風紀委員(ジャッジメント)に所属しているツインテールの少女は、とある事件の捜査のため
その事件現場を訪れていた。
 ちょうど二日前に全身黒ずくめの男の死体が発見され、その男は全身に強烈な爆風を受け
死亡したということらしい。
 風紀委員とはいえ、白井のような学生が殺人事件の捜査に駆り出されることは稀であるが、
それほど捜査が難航しているようだ。
 
 「何ですのこれは……?」

彼女は思わず息を呑んだ。
 現場はひどく荒廃し周囲のビルの窓ガラスの破片が散乱していて、まるで爆破テロにでも
遭ったかのような光景が広がっていた。
 
「それにしてもいろいろと不可解な事件ですわ」

 自殺か他殺のどちらかと言われれば後者である確率が高いが、では被害者は一体ここで誰と
何をしていたのか。
 爆発物の残骸らしきものは発見されなかったようで、目撃者の話では深夜に突然凄まじい爆発が
起こったとのことだった。
 ならば、どのような人間が犯人かは大体見当がつく。

「能力者の仕業ですわね。それも、かなりの高レベルの」

 あれほどの爆発を起こせる能力者は、いかに学園都市広しと言えど自然と限られてくる。
 書庫(バンク)で能力者リストを検索すれば何か分かるかもしれない。

「ここは一時撤退ですの」

白井は、書庫の使用許可申請を出すべく空間移動(テレポート)でその場から姿を消した。

64「とある少女と暗部組織」:2011/02/17(木) 21:48:21 ID:9oxNNj9Q
 一見すると廃墟にしか見えないビルの中に、暗部組織『スクール』のアジトがある。
 『スクール』は学園都市の中でも最暗部と言っても過言ではないほど闇の中にある組織で、
核となる正規要因または構成員と呼ばれる四人を中心に活動している。
 リーダーを含めた四人を補助する『下部組織』というものも存在するが、
その下部組織にスパイがいることが判明した。
 工作活動をしていた二十代前半の男は、業を煮やした『スクール』のリーダー
垣根帝督により速やかに始末された。
 
「死体を回収しなくて良かったの?警備員(アンチスキル)や風紀委員(ジャッジメント)
に嗅ぎつけられたって知らないから」

 『スクール』の構成員である十四、五才の少女がつまらなそうに言った。

「アレはわざと回収しなかったんだよ。スパイを送るなんてふざけた真似をしやがった
連中に対しての『見せしめ』のためにな」

 垣根もあまり興味がなさそうに答えた。

「ニュースになっているみたいだし、早くここを離れたほうがいいんじゃない?」
「そうだな。下部組織の奴らはもう移動したみたいだから、俺たちもそろそろ退散…」

垣根が言い終わる前に、突如として何者かが闖入してきた。
そして、

65「とある少女と暗部組織」:2011/02/17(木) 21:50:57 ID:9oxNNj9Q
 白井は、書庫(バンク)で超能力者(レベル5)リストを検索していた。
 爆発の規模を考慮すると、大能力者(レベル4)には出来そうもないと判断したためである。
 ところが、超能力者に関する情報は予想以上に微々たるものだった。
 自分の敬愛する『お姉さま』や憎たらしい『心理掌握』は差し置いて、他の超能力者の項目を
閲覧しても名前と能力名と簡潔な説明しか記載されていないものが大半だった。
 ふと、学園都市第二位の項目に目が止まったが「垣根帝督 未元物質」としか書かれておらず、
第七位に関しては念動力系の能力者ということしか分からなかった。
 同様に、四位と六位も爆発を起こすような能力者ではなく完全に手詰まりとなってしまった。

(残ったのは第一位。……?一方通行(アクセラレータ)…?これが名前ですの?)

 奇妙な説明文に白井は眉をひそめるが、どうやらこの人物はベクトルを操る能力者らしい。
 結局手掛かりは得られなかったが、怪しい人物がいたことは確かだ。

(第二位と第四位だけ極端に情報が少なすぎますわ。これは何かあるのかも知れませんわね)

 このとき学園都市の上層部が、意図的に暗部の人間の情報を隠蔽していたことなど光を浴びている
世界の住人である白井に知る由もなかった。
 
(ですが、情報がないのでは完全に手詰まりですわ)

 白井が捜査に行き詰っているとき、彼女の携帯から着信音が鳴り響く。
 白井は億劫そうな様子で電話に出ると、花飾りの同僚の声がした。

「もしもし白井さんですか?事件についてちょっとお知らせしたいことがあるので聞いてください」

66「とある少女と暗部組織」:2011/02/17(木) 21:51:55 ID:9oxNNj9Q
「前置きは結構ですから、速くその知らせとやらを話していただけませんこと?」

 進展しない事件の手掛かりをなかなか見つけることが出来ずにいたので、白井は急かすように言った。
 初春のベストタイミングぶりなど全く気にしていないようだ。

「さっき新しい証言者からの報告があったんですけど、事件当日その人が爆発音を聞いたので音のしたほうに行ってみると長身で金髪の男がいたらしいんです。」

(長身で金髪…?まさか…)

 白井は、先程書庫(バンク)で検索した能力者のなかで、ある一人の超能力者(レベル5)を思い浮かべた。
 目撃者の話が本当ならば、犯人と思われる人物はただ一人のみ。そう、

「やはり学園都市第二位…垣根帝督ですわね…」
「第二位?なぜ白井さんがそれを?」

 白井は初春の言葉を無視し、垣根の現在地を割り出すように指示する。
 垣根の行方を追っている警備員(アンチスキル)からの連絡があるまでは動けないのだが、正義感の強い白井にとって今はそのような些事を気にしている場合ではない。
 独断専行は始末書ものだが、警備員が垣根を発見するよりも速く辿り着かなければならない。
 しかし、肝心の居場所が分からないのでは本末転倒である。
(超能力者である犯人はおそらく単独で動いているはず、そう遠くへは移動していないでしょうし現場付近を手当たり次第探るしかないようですわね)

 白井は通信を切ると、即座にその場から消失した。

67■■■■:2011/02/17(木) 21:56:06 ID:9oxNNj9Q
改めて投稿した自作を見ると、一レスの内容が少なすぎますし、
ミスがかなり目立ちますよね情けない…。

いろいろツッコミどころ満載ですが、今回の投下完了です。

68■■■■:2011/02/17(木) 23:10:30 ID:drgNqUgU
>>67
GJです。とある少女、というのは黒子が主人公の物語なのでしょうか?それとも・・・
途中まで長文は一定の長さで改行していますが、最後の投下だけそのままですね。どちらかに統一するべきでしょう
ルビ(    )は一度振ったものにはその投下内では二度目以降を振らなくて良いかと。また一方通行や風紀委員など、
原作読者ならお馴染みのフレーズにはルビを振らなくても皆分かると思います。魔術師に対しての超能力者(ちょうのうりょくしゃ)と、
レベルの位置付けとしての超能力者(レベル5)で差異がある場面など、例外はあると思いますが。
科学サイドもののようですね。『スクール』のアジトへの闖入者とは一体・・・?続き期待してます。

69■■■■:2011/02/18(金) 08:35:10 ID:QQjePu7E
さてさて、主人公やヒロインが分からなくなってきたな・・・・・。

70■■■■:2011/02/19(土) 15:17:57 ID:hPavJs0A
最近SSのレベルが落ちてきたな
昔は、一流職人を彷彿させるようなコメントで一杯だったのに今は三流以下のクソみたいなSSしかないからなぁ
みんなもう少し頑張ろうな

71■■■■:2011/02/19(土) 17:39:27 ID:PAculDP6
ここは鎌池和馬先生箸の「とある魔術の禁書目録」のSSを専門に扱うスレッドなんだぞー。
 SSを書いてみるもよし、読んでみるもよし、感想を書いたり、SSの書き方を研究したり。
 もしくは新刊のぶっ飛び具合に「なんじゃこりゃぁぁあああぁ」と叫んでみるのもよしだぞー。
 ↓はこのスレのローカルルールだ、キチンと守って楽しく禁書、これが一番かも知れないなー。
注1)ネタバレは本スレ同様公式発売日の0時から。
   早めに入手できたからってフライングするといろいろとまずいのだぞー。
注2)基本はマターリ進行でお願いするぞー。特に作品及び職人への不当な文句と思われる発言は厳禁になってるから注意なー。
注3)上は職人さんの希望によっては指摘及びアドバイスOKの場合もあるから、その時は臨機応変になー。
注3)SS職人さんは随時募集中だぞー。ジャンルは無制限だから、どんと来いだぞー。
   但し作品を投下したら、挫けずに完結目指して欲しいぞー。
   主なジャンルは以下の通り、これ以外も大丈夫だぞー。
   [オリジナルストーリー、嘘予告、IF、オリジナルキャラ、他作品クロスオーバー]などなどだなー。
注4)なかなか投下されなくても男の子はじっと我慢だぞー。
   とりあえず退屈を感じたときは
”一回原作を読み返してみる”
”過去ログを読む”
”辞典を眺める”
”スレで質問してみる”
”禁書板の考察スレを読む”
”感想を書き込んでみる”
”いっそ自分でも書いてみる”
”リクエストをしてみる”
   とかやってみるといいのかも知れないなー。意外に納得できたりできるのだぞー。
   SS作家の連中は割りと不定期更新だから、投下までに間が空いてもあまり責めないでやって欲しいぞー。
 以上、土御門舞夏からのお願いなんだぞー。

72■■■■:2011/02/19(土) 18:18:54 ID:PAculDP6
「とある少女と暗部組織」で質問です。
最初に一方通行が出てきたのは何故?
あとから活躍するのでしょうか?暗部ってことを表すためでしょうか?
気になります。お答えよろしくお願いします。

73■■■■:2011/02/20(日) 11:12:51 ID:8F994vxg
>>72
いやそれは聞くべきじゃないだろう・・・・・・
大人しく続きを待って下さい。

74■■■■:2011/02/20(日) 14:01:25 ID:VR7MGl4U
うぅ・・・。
分かりました。
めっちゃ気になるけど、我慢します・・・。
続きが気になります!!楽しみです!!

75■■■■:2011/02/20(日) 14:39:32 ID:qZSFzPVs
とりあえず名前が緑色になってる人はMail欄にsageって入れようか。

口うるさく見えるかもしれんが、>>1を読めば分かるようにこのスレはsage進行。
あまり上にあると、変な虫やら広告やらが寄ってきて削除依頼とか面倒事になるから。
書き手も>>1を音読してから投稿すれば、怒られる事はまずないと思う。

76■■■■:2011/02/20(日) 22:04:54 ID:OKJtkmYQ
作者さんGJ!
これからもじゃんじゃん投下してください。

77■■■■:2011/02/21(月) 02:30:25 ID:T4pAbxk.
どうも、前に上条さんが強くなって戻ってる奴が見たいと言っていた人が
いたので自分なりに作ってみました。
では載せます

78幻想殺しは蘇る:2011/02/21(月) 02:32:15 ID:T4pAbxk.


一人の少年がここではない、とある場所を歩いていた。

(あれから2年と半年ってとこか…)

なかなか長かったかな…と心の中で呟く彼はここで過ごしてきた2年半を振り返っていた。
ここでの生活は悪くなかった。実際多くのこと学び、身に付けた思い入れのある場所だ。
だが、彼はここに留まる訳にはいかない。こことは違うところに彼の大切な者達を残してきたからだ。
あれから一体世界がどう変わったのか彼は知らない。良くなったのかもしれないし、悪くなったかもしれない。
だが彼は信じていたどんな世界であっても彼の大切な人達は必ず元気で生きていることを
そして彼は新たな決意と共に呟く。

「よし!行くか!!」

目指す場所は彼が救い、彼が消失した世界…

79幻想殺しは蘇る:2011/02/21(月) 02:38:59 ID:T4pAbxk.


ロシア東部に位置する、とある街「マガダン」にて


少し古いイメージを持たせる電話でサーシャ・クロイツェフは上司であるワシリーサと連絡を取っていた。

「でね〜クランス君が、かわいっくて!かわいくって!」
「質問1、あなたはまたそんなくだらないこと言うために軍の専用回線を使ったのですか?」

もう何度めだろうか前回も前々回も同じようなことを聞いたが、そこは出来る「部下サーシャ」すぐに電話を切るといった乱暴な手段は取らず、
とりあえずは要件を聞きだすまで堪えることにした。

「もう!サーシャちゃんたら!ジェラシー?」
「回答1、それは絶対ねぇよバカ」
「わぁお!!今日のサーシャちゃんは毒舌だっZE!!!」
「はぁ…願望1…いいかげん要件を言え、くそ野郎」
「あ〜別に大したことじゃないの!もうすぐ私もそっちにつくからサーシャちゃんにお出迎えしてもらいたくて!!」
「質問2、そんなことの為に私はあなたのクランス=R=ツァールスキー自慢を聞かされていたんですか?」
「もう妬かない妬かない!今日そっちについたら、前みたいにサーシャちゃんとあっつい!夜を…!!」

そこまで聞くと出来る「部下サーシャ」はようやく自分が一番やりたかったコマンド『電話を切る』を実行した。
その後サーシャは上司ワシリーサが来るまでのひと時街をブラブラと見学することに決めた。
第3次世界大戦の時、戦略的には意味のない街ではあったが比較的日本に近いこの街ではそれなりに戦争被害に遭っていた。
だがアレから2年半の月日がなげれた。街の戦争の後は消え、もうほとんど以前の活気を取り戻していた。

(まだ2年と少ししかたっていないのに…人の力とはこんなに偉大なんですね…)

と魔術を使えない一般市民に感激しながらも、サーシャは戦争のことを思い出すと同時に一人の少年のことを思い出した。
彼らと同じ魔術を使えない身でありながら戦争現況フィアンマを打ち破り、さらには世界を滅ぼしかねない大きな力と戦って死んだ一人の英雄を
どうやらイギリス清教の人間であったらしい彼は何百回にも及ぶイギリスの捜索のかいもなく、結局は戦死として片づけられた。

(結局お礼も言えないままでしたね…)

後悔しながら下を向いて歩いていると、どこからか妙な音が耳に入ってきた。
最初はよく分からなかったが、よーく耳をかたむけてみると、その音は人が叫んでいるように聞こえた。
だが辺りを見渡してもその様な人物はおらず、サーシャは首を傾げたが次第にその声が近づいてくるのを感じ反射的に上を見上げた。
すると、何やら人らしきものがサーシャ目がけ落ちてきた。

「あぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
「えっ!?」

もう2,3秒気づくのが早ければ避けられてかもしれないが、結局サーシャは避けられず、
空から落ちてくるヒロイン?的な者とドゴォォォン!!と勢いよく衝突した。

80幻想殺しは蘇る:2011/02/21(月) 02:42:04 ID:T4pAbxk.

「いってて…まさか空に出るとは…ちゃんと計算したつもりだったんだけどな………まっ着いたからいっか…」

顔は見えなかったが声からして男だろうとサーシャは推測した。
男はかなり高いところから落ちてきたはずだが何事もなかったかの様に彼の下敷きになっているサーシャの上でぶつぶつと呟いていた。

「願望…1!そんなところで自問自答してる暇があるのならさっさと退いてください!!」
「おぉ!ごめん!!すぐ退く!!ってサーシャ?」

男は驚いたようにすぐ退いたが、どうやら一番驚いたのは彼の下にいるのがサーシャがいることだったらしい。
サーシャのことを知っている様子だったが男は全身を覆うようなマント羽織り、顔は頭からフード深く被っていた為、顔を見ることができなかった。

「…?質問1あなたは?」
「えっ俺?俺は…ってしまった!!最初は出来る限り身を隠すつもりだったのに!!」

急に大声を出す男にサーシャは唖然としつつ男の出方を待っていると、男は頭を抱え10秒ほど脳内会議をした後、
サーシャと再び向かい合った。

「今日のことは忘れてください!じゃっ!!」
「……質問1…ふざけてんですか?」
「いや〜ふざけてなんていませんよ〜」
「………とりあえず、質問は3つ…あなたは一体何者ですか?どこから来たんですか?なぜ空から落ちてきたんですか?」
「いや〜悪いけど急いでるから!!」

そういうと男は後ろを振り向きその場から立ち去ろうとしたが、男の逃げ場をなくすためサーシャはバッ!と男の前に立ち塞がる。

「とにかくあなたが何者か答えてもらう…もし、言わなければ…」

そう答えるとサーシャは上司を撃退するための愛用武器『鉄のバール』を構える。

「拷問をかけることになる」

それだけ言うと男は黙り、暫く沈黙が続いた。やがて、男がため息をつくと

「はぁ……………止めとけよ…お前と俺じゃ次元が違う…」

先ほどとは違う真剣な口調で言うと男はマントで見えなかった右腕を前に出し構えた。
男の纏う空気が変わったことに気付いたサーシャは下手に近づかず出方を待っていたが

「サーシャさん!!何ですか!?今の音は!?」

先ほどのサーシャと男の衝突音に気付いた彼女の部下たちがサーシャに駆け寄ってきた。
男の様子を警戒していたサーシャにとってあまりに不意のことで、サーシャは思わず視線を部下へと移してしまった。そして

「隙ありっと!!」

男は突然生まれたチャンスを生かし、その場から走って逃げだす。

「なっ!?」
「サーシャさん!どうかしましたか!?」

サーシャは逃げる男の背中に指を指しながら叫ぶ。

「不審人物です!!捕えなさい!!」
「「「!?はいっ!!」」」

数名いた部下たちは慌てて男の後を追う。こうして訳の分からぬまま魔術師達の奇妙な鬼ごっこが始まった。

81幻想殺しは蘇る:2011/02/21(月) 02:45:09 ID:T4pAbxk.

男を追いかけて30分ほどたったが一向に男を捕まえられずにいた。男はたった1人でサーシャと部下達は12人に増えていた。
だが男は人数差をものともせず逃げ続ける。最初はすぐに捕まると思っていた反面こうして捕まらないと溜まるストレスは半端ない。
さすがにこれ以上時間をかけたくないのかサーシャ達は出来る限り使いたくない魔術を使い始めたが、

「あそこだ!撃て!!」

合図とともに放たれた光の塊や氷の槍、普通の人間に当たればただでは済まないが

「あぁぁあ!!もう!!!」

男はそういながら右手をシュッと横に振る。すると、次の瞬間男に迫る光の塊や氷の槍は跡形なく消し飛んだ。

「まただ!」
「あの男何をしたんだ!?」

皆何が起こったのか分からず驚いていたが、男はそんな彼らにいちいち丁寧に説明することなく逃げ続ける。
おかしな力を使うとはいえ土地勘にいたっては現地の彼らの方が圧倒的に優位であるため、彼らもただやみくもに追いかけていた訳ではない
男がしばらく走っているとやがて彼の曲がった角にサーシャを含む8人の魔術師達が待ち構えていた。

「おぉっと!!」

男はすかさず元来た道を戻ろうとしたが、その先にも彼を追っていた魔術師達が道を塞いでいた。

「ここまでです…」
「やれやれ…まいったな…」

ポリポリと頭をかく男の様子を見て観念したかと思いサーシャは近づいたが、

「まだ力の断片も見せたくなかったんだが…」

そういって男は拳を振り上げ、地面に叩きつけた。すると、突如バゴォォン!と地面がとんでもない衝撃でも受けたようにめり込むと
ブワッ!と土煙が追いあがった。

「ぐっ!何を!?」

砂煙は1分もしない間に収まったが、それが収まるころには男はすでにそこにいなかった。

「いや〜悪いな…」

声をする方を見てみると土煙が起こっている間に上ったのか男が数メートルほどある建物の屋上からサーシャ達を見下ろしていた。

「騒ぎをあんまり起こしたくないからな…この辺で…」

そういうと男はその場から離れようとしたが

「あ〜ら、この辺ってどの辺?」

82幻想殺しは蘇る:2011/02/21(月) 02:48:17 ID:T4pAbxk.
「!?」

不意に後ろから聞こえてきた声に男は反射的に離れようと反対側にあるビルへ飛び移ろうとしたが、
声の主は男よりも先に向かいのビルに飛び移り、男を待ち構えていた。

「ワシリーサ!」

急な上司の登場にビルの下にいたサーシャが思わず声を漏らした。

「は〜い!サーシャちゃん!遅いから来ちゃったよ〜ん!」

軽い感じに答えにサーシャは少し呆れたが、同時に安心もしていた。
いつもはふざけている上司であっても戦闘においてはサーシャも認めるほどの腕のある魔術師である。
大丈夫、ワシリーサならあの男を捕まえられる…と期待していると

「ワシリーサ!?あんたが!?」

男が驚いたように尋ねた。

「そうよ…会ったことあったかしら?」
「いーや、ねーよ…ただ話だけなら聞いてる、すごい魔術師だってな」
「ん〜あんまり男の子に褒められてもうれしくないんだけど…美男子だったら別だよ〜顔見せてくんない?」
「…止めとけ、美男子でもないし、いい男でもないぞ」
「そう言わず……見せなさい!!」

そう言ってワシリーサが手を振った瞬間男の顔めがけ何か飛んできた。あまりに一瞬だった為、男は先ほどの魔術を消せる力を使えなかったのか
ワシリーサの魔術は見事に男の被るフード破り、男の顔を露わにした。

「えっ!?きっ君は…」

男の顔を見た途端、今までふざけていたワシリーサの顔が驚きに変わった。

「そんな…まさか!?」

同じく下で見ていたサーシャも驚く、二人はその男の顔を知っていた。昔イギリス清教からの依頼で何度も何度も目を通した書類に載っていた
かつてこの世界を救い、英雄と称えられる男『上条当麻』の顔がそこにあったのだ。

「チッ!あぶねーな…だから言ったろ?いい男じゃねぇって」
「きっ君は上条君なの?」

ワシリーサ再度確認した。信じられなかったという理由もあるが、何より昔資料で読んだよりも背は高いし、顔つきもどこか大人びている様にも感じる。
2年たったからと言われればそんな気もしないこともないが、それでもワシリーサは信じられなかった。

「はぁ…まったくこんなつもりじゃなかったのに」
「えっ!?」
「まだあんまり強い奴とは戦いたくねぇんでな…じゃあな」
「あっ待ちなさい!!」

止めるワシリーサを無視し当麻はビルから飛び降りると、マガダンの街の大通りへと駆けだした。
ワシリーサもサーシャも状況がまだつかめずにいたが、とにかく今は追いかけようと彼の後を追って大通りへ向かった。
大通りは特にこれといった人もいなく走っている当麻はすぐに見つけられたが、

「あっ!!」

急に当麻が大通りの真ん中で立ち止まり、大通りから100メートルないほどにある建物上を見つめた。
ワシリーサやサーシャ、その部下達も思わずその視線の先を見つめた。そして、その先に一人の男がいることに気付いた。
誰も彼の正体が分からなかったが、当麻だけが彼の名を呼んだ。

83幻想殺しは蘇る:2011/02/21(月) 02:49:42 ID:T4pAbxk.

「オティヌス〜!!」

その名前を聞いた途端、サーシャの部下達は唖然としワシリーサ、サーシャも当麻を見たとき以上に驚く。

「オッ!オティヌス!?」
「隻眼のオティヌスか!?」
「あれがっ!?魔人の!?」
「行方不明のはずじゃ!?」

誰もが騒然とする中、オティヌスと呼ばれた男は彼らを気にせず当麻に向かって話しかける。

「さすがだな…半年前より、より力が洗練されてる…」
「あぁ!!2年間どうもありがとう!!」
「そんな柄じゃなだろ…早く行け」

オティヌス呼ばれた男はどこか照れくさそうにそう言うと、当麻は笑いながら一歩前に出た。

「オティヌス!!俺は………やるぞ!!!」

そして、右手をオティヌスに向かって突き出す。

「この世界に蔓延る歪んだ幻想も!!人々を不幸にする腐った幻想も!!助からないのが当たり前だと受け入れるつまんねぇ幻想も!!!
ひとつ残らず!まとめて俺がぶち殺す!!!!」

急に叫ぶ彼に皆が唖然していたが、ただ一人オティヌスだけは彼をしっかりと見つめ目に涙を溜めながら笑っていた。
その姿はまるで、弟子の成長を喜ぶ師匠の様であった。

84■■■■:2011/02/21(月) 02:51:45 ID:T4pAbxk.
以上です。
まあこんな感じで続きも出来たら載せていきます。
それと気づく人もいると思いますが
最後のシーンはぼう人気漫画のワンシーンをそのまま引用してみました
正直に言ったんで許して下さい

85■■■■:2011/02/21(月) 11:41:40 ID:FCevszt6
>>84
面白いですね。最強物はオリキャラが多いので上条さんが強いのは新鮮です。


新刊でも某ラノベみたいに上条さんがラスボス化したりして・・

86■■■■:2011/02/21(月) 17:18:56 ID:ybmtHziM
上条の再登場の仕方をどうするかが気になるな
ありそうなパターン
1、インデックスのピンチで助けにくる
2、敵の一人で記憶喪失3、天使や神として人外で登場
4、各キャラの思い出にしか出てこない

個人的には1であってほしい。4だったら色んな意味ですごいわ

87■■■■:2011/02/21(月) 20:55:14 ID:evZAoLaw
面白い。面白いんだが・・・俺が書いてる(うpはしてません)途中のSSと
設定が酷似しているだとっ!!?
・・・まあそういうこともあるよね、うん。
作者さんこれからも投下楽しみにしてますぜ。

88■■■■:2011/02/21(月) 21:10:08 ID:evZAoLaw
>>87のレスした者だけど、よく読んだら作者さん上の方にちゃんとリクエストに
応えてって書いてあったわ。俺もそのクチだからそりゃ似てて当然か。
お騒がせして申し訳ない。

89■■■■:2011/02/21(月) 21:48:42 ID:/.k0vzoY
age

9022巻の続き:2011/02/22(火) 11:35:03 ID:LopwjGCg
上条の消失地点周辺で天草式の少女の五和は走っていた。
息を切らしているのかそれとも涙を堪えているのか分からない声が五和から漏れていた。
ツンツン頭の少年を捜し続けて3時間近く経つが見つからない。
同じところを何度も往復しているのに五和は気づいてなさそうだ。
神裂「一度、戻りましょう。このままではあなたの体が持ちません」
五和「……」
聖人の神裂は五和に合わせて走っているので、疲れてはいないが五和の事が心配になっている。
しかし、五和からは返事がない。仕方ないので強引に腕を掴み静止してもう一度声をかける。
神裂「気持ちは分かりますが、一度戻って体を休めましょう」
五和はそんな神裂をまるで敵でも見るような目で睨みつける。
目は涙が溜まっているのか真っ赤に充血している。
五和「私は大丈夫ですから手を離してもらえますか?」
バシッ!
神裂は思わず平手打ちをしていた。一度、殴ってでも落ち着かそうと出た判断であった。だが五和が思いもよらぬ行動に出た
バシッ!
神裂に平手打ちを返してたのである。それを見ていた建宮と他天草式一同は震え上がった。


携帯からですが初めて投稿しました。皆さんの感想を見て続きを書くか決めます。
ご感想をお待ちしてます。

91■■■■:2011/02/22(火) 22:05:55 ID:nrVdEyl.
>>90

>>1
>>1
>>1

92中二病 番号 20000:2011/02/23(水) 04:28:01 ID:.4W7uKX.
投下開始



5日目 14時 ビッグスパイダー元根城




 「XHHAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」

 でたらめに、怒りに任せて右手を振り上げながら、神澤が上条たちのほうに迫る。
だが、それはいともたやすく避けられてしまった。何度殴っても、何度蹴っても上条に受け流される。
神澤の怒りはピークに達した。


「クソッタレがぁぁぁアアアア!」

他も人間など眼中に無い、ただ、上条だけを見る。上条だけを殴る。上条だけを蹴る。しかし、攻撃は当たらず、カウンターばかりを食らう
――――――――――――当たり前といえば当たり前だ。怒りに任せて殴ればその分威力はあるが・・・
どの攻撃も一直線になって簡単に予測がついてしまう。神澤はそのことに、気づき少し冷静になった。

そして、神澤の顔面に飛んできた上条の拳をつかんだ。

「おまえ、何かかくしてることがあるんじゃないのか?」

「・・・ッ!ああ、あるさ。ただ、それは本当にお前たちには関係ないことだ。」

「そもそも、なんで世界を征服しようなんて考えるんだ!戦いで征服なんてしたって誰も幸せにならない!」

「うるさいっ!黙れクソッタレが!!」


神澤がナイフに手を伸ばし、御坂に視線を移した。それを白井が見逃しはしなかった。

「お姉様!!危ない!!」
「え?」

白井が御坂の盾になると同時に、神澤の手持ちナイフ、合計15本が彼女たちに迫ってきた。

――――――――― そして、よけることは、出来なかった。


15本のナイフが、白井の全身に突き刺さる。ナイフは彼女の肉を切り、切り口から大量の血が噴出し、床に赤い水溜りを作り上げた。


「―――――黒子ッ!!!」

倒れた白井を御坂が抱き寄せる。


「・・・・・・平気だ・・・そんな気はなかったけど、まだ生きてるみたいだな。けど、これ以上動かしたら太ももに刺さったナイフが血管をぶった切るぞ?」

「あんただけは・・・絶対に許さない!!」

最後のコインが弾かれレールガンが射出された。


「阿保がッ!それが命取りだ!」





 ________『 時 よ 止 ま れ 』_________


神澤が全力で工場の外に出た。つられて上条も外に出る。

「おい待て!逃げるな!」

「・・・・逃げる?これは、逃走じゃない!知略だ!攻撃だ!」

お返しにとばかり上条にアッパーカットを食らわせ、気絶させた。そして、神澤の口から能力解除(しけいせんこく)の言葉が発せられた



_______________________________『 そ し て 時 は 動 き 出 す 』_______________________



レールガンは、またも工場の柱を砕く、そして、工場の天井が落ちてきた。

「もうおそい!脱出不可能だ!フフハハハハハハハハハハハハ!!XHAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!」




「やばい!このままじゃ下敷きになる!かといって黒子はもう・・・・」



―――――――――なんで勝手に人を戦線離脱状態にしてるんですの?お姉様?




「少し待っていてくださいな・・・・お姉様?」

「黒子ッ!動いちゃ――――――え?工場の外?」


「黒子おおおおおおおおおおぉおおおおおおぉぉおぉお!!」





――――――――――――――工場の天井が崩れ落ちた。

93中二病 番号 20000:2011/02/23(水) 04:29:20 ID:.4W7uKX.



























「ハハハハハハハハハ!これでこの神澤の完全勝利・・・・・・何?」





――――――――――――このふざけた自体は何だ?!


全身の傷から血を流し、息は絶え絶え、目の焦点も合っていない、昏倒寸前だった。しかし、しっかりと白井は神澤の前に立ちふさがった。


「・・・・ふん・・・・まさか何の手当てもなしに気力だけで抜け出すとは思っていなかった・・・・だが!そんな状態でこの神澤に勝てると思うなよ?」

「こう見えても、あなたを拘束するくらいの体力は残ってますわよ?」

「ハハハ・・・今年最悪のジョークだ。どうやって捕まえるんだ?」

「もちろん、鉄拳制裁ですわ。」

そういって、白井は最後の力を振り絞り神澤へ拳を突き出した。中学生といえどまともに当たれば命の危険にさらされるほどの威力。要は火事場の馬鹿力といったところだろう。

「そんなものが当たるとでも――――――なっ!しまった!!!!」

彼のスニーカーには、鉄矢をはじめきっちり15本の棒状の物体が突き刺さり自由に身動きが取れないようにしてあった。


「はぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」


神澤の顔面に、白井の鉄拳がのめりこみ、倒れそのままピクリとも動くことは無かった。

「あなたは、人の底力をなめていたこと。そしてなによりも、お姉様に手を出したのが敗因ですわ。」




                                -----------------------神澤 達也

                                             脳震盪により失神・・・戦闘不能






後日談



7日目 17時  地下街 


白井たちによる活躍で神澤は、拘束され、精密検査のため(仮にも彼は人間である)『みんな大好き☆かえる医者』の病院に
搬送された。 そして、検査の結果「命に別状は無い」とのことだ。しかし、彼女たちに伝えられたのはこの情報だけだった。
しかも、神澤は留置所ではなく、どこかの研究機関に飛ばされたということも1週間ほどあとにわかったことだ。
 
 なにはともあれ、この事件は終末を向かえ。御坂美琴たちは、少しの間だけ平和に過ごすことが出来そうだ。
 ・・・・・・・あと2分ぐらい。

「おねぇさま〜〜〜。いつも子供が着ているようなのではいけませんわ、ここはやはりもっと大胆な下着を・・・」
いつものように、白井は御坂に襲い掛かっていた。右手に下着(紐)を、左手にも下着(黒)を持って。地下街のランジェリーコーナーで
他人の迷惑顧みず、襲ってくる白井をよけようとしたとき偶然、バランスを崩し仰向けに倒れたところを抱きつかれた。おまけにキスまでついてくる始末である。
ただ、そこまではまだ許せたかもしれない。
・・・実はこのランジェリーショップ。隣が「地ビールだけで三〇種類も揃えているアルコール最高のすき焼き屋」である。窓からどこまで少なく見積もっても10本
以上のビールを飲みをしている男が御坂たちを見ているが。そんなことはどうでもいい。一番の問題は、『上条当麻とあの食いしん坊』がちょうど店から出てきて
------不幸にも、目が合ってしまったことだ。


その後の展開は、読者の皆様の想像にまかせるが。このとき、もうすでに邪悪な歯車が動き出しているのは、また別の話・・・・・・・









 /└────────┬┐
< To Be Continued...    | |
 \┌────────┴┘

94中二病 番号 20000:2011/02/23(水) 04:45:43 ID:.4W7uKX.
作者コメント

以前、書かないほうが良いと言われた作者コメントですが。
自己主張というよりは、解説や補足としてのものなので(少なくともコンセプトは)
これは、続けていこうかなと思っております。


というわけで、第1部「絶対領域(クイックシルバー)」終了です!
第1部では、(影で)結構な人数が犠牲になっているのですが。第2部では
全体通してギャグ展開となっており、死人も出ません(今のところは)。ですので、人が死ぬのは苦手という方々も
楽しんで読めると思います。ちなみに、第1話のほうでも書きましたが
自分の作品では、結構な人数が死にます。まあ、オリキャラのみですが。


そして、第1部を書いてみた感想ですが。処女作で慣れていないというものもありますが、
ラスボスとはいえ、あそこまで強くしたら扱いづらいですw。神澤君orz
「時間制限付けときゃよかったな〜」といまさら後悔しております。
まだ、見苦しい部分が多数ありますが、どうか生暖かい目で見てください。


そして、このシリーズ全般のタイトルが決まりました。

『とある誰かの野望物語(high hopes)』です!

では、次回第2部『とある誰かの野望物語(high hopes)-----【衝撃移動(インパクトプレジャー)】』
お楽しみに待っててください。
では、次の創作意欲が沸く頃にノシ

95■■■■:2011/02/23(水) 13:57:02 ID:sC6yLs3o
何話続く予定なんですか?
SS2みたいな連作集みたいなもの?

96■■■■:2011/02/23(水) 17:22:34 ID:0vVOG1T2
>>94
GJ
始まった当初は色々と不安だったけどしっかりまとめて完結。お疲れ様です。
それと批判を受けていた作者コメントは、それ自体に文句が付いた訳ではなくコメ内容によるものかと。

『お楽しみに待っててください』

↑このような発言は反感をかう(というか荒らしが調子に乗る)可能性があるので控えたほうが良いかと。
「楽しみにしてねーよ」とか心無い言葉をぶつけられるかもしれませんし。


僕は楽しみにしてます。次投下お待ちしております。

97中二病 番号 20000:2011/02/23(水) 17:25:15 ID:.4W7uKX.
>>95様 この物語は3部構成+後日談という設定です。あと、展開しだいでは
4部6部とかいくかもしれません。

詳しい話数はわかりませんね。まあ、長々と待っていてください。
更新ペースは1話につき大体2週間〜1ヶ月ぐらいだと思います。
部と部の間ではプロットを練ったりするのでさらに間が空くと思います。

連作集というのは、オムニバス形式のことでしょうか?
これは第1部〜第3部+α構成で1つの物語なのでオムニバスとは違います。

98■■■■:2011/02/23(水) 20:36:32 ID:sC6yLs3o
それぞれ独立したオムニバスかと思っておりましたはい。

99■■■■:2011/02/24(木) 18:03:00 ID:8cRg.OQw
どうも。『とある少女の生きる世界』を書いています。
バレンタインネタ考えたので、投下させていただきます。

100■■■■:2011/02/24(木) 18:03:27 ID:LxHhb7ZM
あげ

101とある打ち止めのバレンタイン:2011/02/24(木) 18:04:10 ID:8cRg.OQw
とある打ち止めのバレンタイン

とある街中では、そっくりな少女二人が居た。
「そろそろバレンタインだねって、ミサカはミサカは上目遣いで見つめてみたり。」
一人は小さな少女。空色のキャミソールの上から男物のYシャツに腕をとうしていて、頭にはでっかいアホ毛がある。
「それがどうしたのですか?と、ミサカは上位個体の行動にひきながらも返答します。」
もう一人は中学生ぐらいの少女。名門中の名門。常盤台中学の冬服を着ていて、頭には軍用のゴーグルを付けている。
この二人は妹達(シスターズ)
学園都市の超能力者。御坂美琴の体細胞クローンだ。
「あのね。ミサカ、チョコ作ってみたいのって、ミサカはミサカはお願いしてみる。
本命チョコ。あの人にあげたいんだって、ミサカはミサカは補足説明してみたり。」
「無駄ですと、ミサカはバッサリと切り捨てます。」
居なくなろうとする御坂妹を打ち止めはしばらく見つめ、やがてブンブン両手を振り回しはじめた。

102とある打ち止めのバレンタイン:2011/02/24(木) 18:04:33 ID:8cRg.OQw
「どーうーしーてー見捨てるのーって、ミサカはミサカは貴女の行動に講義してみたりー!!」
御坂妹はふぅと息をはくと、諦めたように言う。
「貴女が作った物は、どうせ失敗します。と、ミサカは予言します。
ほら、そこでバレンタインフェアをやっているのだから、そこでチョコを買えば良いじゃないですかと、ミサカはコンビニを指差します。」
すると、打ち止めはぷぅと、頬を膨らませた。
「手作りが基本でしょーって、ミサカはミサカは呆れながら叫んでみたりー!!
良いもん良いもん。ヨミカワやヨシカワに教えて貰うもんってミサカはミサカはマンションに向かってもうダッシュしてみたり―――!!」
体型には似つかない速さで走っていく打ち止め。
御坂妹は、打ち止めの走っていった道路をしばらく眺めていた。

103とある打ち止めのバレンタイン:2011/02/24(木) 18:05:30 ID:8cRg.OQw
そうして、黄泉川や芳川にチョコの作り方を教えてもらった打ち止めは、今まさに渡そうとしていた。
『よーし、頑張るぞーって、ミサカはミサカはミサカネットワーク内で宣言してみる。』
『というか、一方通行は甘いものが好きなのですか?ミサカ10520号は質問してみます。』
『・・・・・。』
これは、打ち止めのバレンタインのお話。
そして、一方通行は文句を言いながらも、ちゃんと食べてくれたというお話。
そして、ホワイトデーにはお返しをくれたというお話。

――――――糸冬――――――

104■■■■:2011/02/24(木) 18:07:28 ID:8cRg.OQw
投下終了。
どうでしたかー?
最後にちょびっと、ホワイトデーネタも入ってます。

105■■■■:2011/02/24(木) 18:41:29 ID:LxHhb7ZM
面白かったけど、短すぎじゃね?

106■■■■:2011/02/24(木) 20:55:02 ID:8cRg.OQw
小ネタのつもりですが?
はっ!もしや小ネタは別のスレとか!?
それとも・・・小ネタって書いといたほうが、良かったですかね?
面白かったっていうのは、素直に嬉しいです!!

107■■■■:2011/02/24(木) 21:24:40 ID:Siru0QWk
ぐっじょぶ。
長編はある程度書き溜めてからのほうが好ましいですが、小ネタなんかは短くても全然構いませんよ。

108■■■■:2011/02/24(木) 21:56:24 ID:FVQsLgk.
>>106
勘違いしてる人がいるっぽいな。投下していいのは長編SSだけなんてルールはないよ
小ネタSSでも全然おk。打ち止め可愛いですね〜
小言を言うようですが、投下するなり「どうですか?」はやめた方がいいかもしれませんね
書き手の側から感想を要求するのは読み手の不快感を招きかねません。良い文章には自然と感想が付くと思いますよ

109■■■■:2011/02/24(木) 22:17:01 ID:8cRg.OQw
>>108
分かりました!
何だか、良い方に受け取って貰えて良かったです。

110■■■■:2011/02/25(金) 17:05:54 ID:Y8qEUCMc
>>108 俺は別に良いと思うけどな。感想要求した程度で不快に思うんなら
   そいつの器が小さいってだけだし。そこまでこのスレ民度低くないし
   気にすることなくね?
    あと、打ち止めは譲らんぞw

111■■■■:2011/02/25(金) 17:53:04 ID:HZr34RVQ
sage忘れならともかく、意図的にageてる時点で評価外だろう。
sage信仰になった経緯は知らないが、>>1に明記されているんだからちゃんと守ろうぜ。
もしくは、どうしてもsageたくないならルールを変えるよう働きかけるべき。

112■■■■:2011/02/25(金) 20:23:21 ID:iHF5hjn6
>>111

>>100のことを言ってるなら多分作者とは別人だろ。
ID違うっぽいし。

113■■■■:2011/02/25(金) 20:41:25 ID:Y8qEUCMc
そもそも、sageた、ageたってどうやったら解るの?

114■■■■:2011/02/25(金) 21:07:45 ID:M.rILB22
>>112
あっ、はい。>>100は別人ですね。
秒単位で違うから、しかたないかと。

115■■■■:2011/02/26(土) 14:22:16 ID:Ho/T5wn.
お前らの好きなオリキャラって誰?次の職人さんの投下までの暇つぶししみたいな感じでさ。
書いてみようぜ。

116■■■■:2011/02/26(土) 14:44:04 ID:d5QigmMM
>>115
早く更新されることを祈って、「垣根帝督の十番勝負」の垣根姫垣だな。
前回投稿がすげー気になる所で終わってる……。

117■■■■:2011/02/26(土) 16:09:13 ID:EBfZjtXg
>>114
>>89のこといってんじゃね?

118■■■■:2011/02/26(土) 17:22:26 ID:XR1hUnmc
>>116
同意。『十番勝負』以外にも、『オペレーションパンドラ』とか『禁竜召式』とか続きが読みたいのが滞ってるんだよなあ
『禁竜召式』なんて一時は週一で投下するくらいのペースだったのに、一体どうしたんだろう……?

119■■■■:2011/02/26(土) 17:28:20 ID:6vdjHO2A
>>118

俺もSS書いてるから解るけど、やっぱり執筆には勢いってのがあるんだよ。
書きたい構図は決まってるけど、どうやってそこまで持っていくかの『繋ぎ方』が思いつかなかったりな。


>>115
禁竜のソフィア。荒々しい感じが個人的に好きだ。
魔法名も設定されてるし、作者も結構気に入ってるキャラなんだろうな。

120■■■■:2011/02/26(土) 19:42:25 ID:0fdxV0/s
>>115
白船天花。

121牧田さん:2011/02/27(日) 00:32:22 ID:g/ttxRO6
物凄くKYなタイミングかもしれませんが、テスト終わったんで投下します。

誰が覚えているのか『禁竜召式(パラディンノート)』の続きです。
とりあえず6レスくらい貰います。

122牧田さん:2011/02/27(日) 00:33:35 ID:g/ttxRO6
十月一六日午前一時十五分頃。

「オルソラ=アクィナス」
大英図書館地下書庫内部。
シェリー=クロムウェルの放った鋭い声色に、オルソラが静かに振り返った。

「……なんで、ございましょう?」
「とぼけるな」
忌々しそうに首を掻くシェリーは傍の古机に腰を掛け、さらに鋭く痛々しい視線をオルソラへと放つ。
「修道女部隊への報告。あれで“本当に良かったのか?”」
「……」
オルソラは黙秘を通して再び俯いた。
シェリーは何も言わずただ黙って古書を捲るオルソラに嫌気が差したのか、平手で古机を打ち鳴らしてオルソラの意識を半ば強制的に此方へと向かせる。
「......先に言っておくけど、『対十字教黒魔術(アンチゴットブラックアート)』は”十分な情報を与えたとしても勝算が見込めない”レベルの相手よ。特に昨今の動きを見ればそれは明確。奴等はもう、前のように駄々こね損ねたような醜い連中じゃ無くなってきてる」
その言葉に漆黒の修道女は僅かに首を上げ、興味を示したようだった。

『対十字教黒魔術』の勢力拡大速度は異常と言っても良い。つい数年前までは、聖書の穴を突いて裏口から上層部に成り上がろうとしていた小さな連中だった。それも全てが個人規模だった為、総称して『対十字教黒魔術』と呼んでいたでけであった。だが今は違う。”神を信じながらズルする人間”から”神自体を否定する人々”へとその名の意味を変貌させつつあるのだ。

(......勢力拡大には必ず何か裏がある。その一片が『禁竜召式』であるかもしれないし、もっと強力で絶望的な隠しだまを持っている可能性もある)
少なくともシェリー=クロムウェルには、そんな連中が”たかが女の子二〇〇人程度”で敵う相手だとは思えなかったのだ。
「もう一度言う。アニェーゼ部隊に”全ての情報を公開しろ”。アイツ等がどうなろうとアイツ等の勝手。だけど、少しでも可能性を上げてからそれなりの結果を導き出さないと、私が納得出来ないのよ」
シェリーに面と向かって言い放たれた正論に、オルソラは若干動揺してから搾り取るように”反論を返した”。


「......結局、わたくしはまだまだ修行中の身であるということでしょう。全く、笑ってしまう程です。旧友と親友を天秤にかける事すら出来ないのですから」

様々な重圧に押し潰された修道女の嘆きは,傍らのシェリーに対して聞くに堪えない戯言でしかない。
それを理解した上で、オルソラは再び古書に目を通し始めた。

123牧田さん:2011/02/27(日) 00:35:09 ID:g/ttxRO6
十月一六日午前一時四〇分頃。

真夜中の公園、と言えば人っ子一人居ない静寂を思い浮かべるだろうが、現在のハイドパークに置いてその表現は的確ではなかった。
なぜなら目安だけで軽く五〇は超えそうなシスター達がのさばっているからである。
その理由は簡単。アニェーゼ等多数班は、ようやく通信霊装から逆探知した林へと到着したのだ。
「見えました。あの付近がソフィア等『迎撃』第二班が戦闘を行った地点だと思われます」
すでに戦闘は終了していたらしく、真夜中らしい不気味な夜風が林内を静かに駆け抜けている。
「......ルチア。とりあえずソフィア等の捜索。それと敵の残党、もしくは増援の可能性に備えて戦闘配置に」
「分かりました」
アニェーゼの変哲の無い促しに従ったルチアは、周りに居る大多数の修道女達に対し、大声を張り上げて指示を出す。
「一旦、全班を解散し『迎撃』第二班の捜索へ回ってください。敵の残党、及び増援の陰が見えた場合は至急、通信霊装で私に報告してください。間違っても”戦ったりはしないように”」
そんなことは言わなくても解っているが、誰も反論したりはしない。この緊張感の中で上司に逆らうなどと考えるほうが馬鹿だ、とシスター達は年甲斐も無く理解していたのだ。

そんな”多数の修道女たちの心境まで全て把握していた”アニェーゼは小さく溜息を吐いて周りを見渡す。見えるのはコソコソと雑談している少女達や、軽く武器の点検をしている少女、中には携帯音楽プレーヤーで自分だけの世界に浸っている者も居た。禁欲重視のルチアに毎日監視されているというのに、あんな物どうやって仕入れているのだろうか。(というか第二班の捜索をたった今指示された筈なのだが)
(......やっぱり、所々緊張感が欠けていますね)
出て来た敵はキヌハタ無双、という楽な構図が二回続いたせいで全体的に安心感が湧き出ているのだろう。キヌハタは戦力としては使えそうだが集団戦線においての特筆した強さは、逆に体系を崩す要因になりかねない。ある意味での危険因子ですか、とアニェーゼは薄く考えた。


(しかし、ソフィア班が居ないと言うことは、倒されたかあるいは......)
時計の針のように淡々と思考を動かすアニェーゼは、遠目で”一人の修道女を見ながら”考察する。
(......ソフィア自身が裏切ったか。どちらでしょうかね)
考えれば苛ついてくることだが、可能性は無きしもあらずだ。たとえ本質的に裏切り行為をしていなかった場合でも、組織の中で『上』の声を聞かない者は裏切り者に認定されることが多い。特に今回のような”彼方此方に敵が居るような作戦”では尚更だ。

(面倒くさいですね。どうせならアニメや漫画みたいに倒すべき悪役ぐらいハッキリさせて欲しいもんですよ)
そこまで考えた所で、いい加減難しい事を考えるのに疲れたアニェーゼは小さく息を吐き、脳の針を一時的に停止させた。そして先ほどから遠目で見ている修道女へと意識を集中させる。思わず目を奪われてしまう程に美しい金色の髪を持ったその少女は、周りの少女たちに溶け込んで適当な雑談に勤しんでいた。
それを見ながらアニェーゼは目を細める。そして忌々しそうに『独り言』を呟いた。



「イラーリア、前戯はもう飽きちまいましたよ。......さっさと裏返ってくれませんか?」

その言葉は誰の耳にも届かず、一陣の風に煽られて夜空へと溶けていく。



......『禁竜召式(パラディンノート)』発動まで、残り六三分二〇秒。

124牧田さん:2011/02/27(日) 00:36:36 ID:g/ttxRO6
同時刻、英国市内。

閑静な住宅街の一角、真夜中であっても場に溶け込む事の無い格好の男女が出来る限り音を殺しながら、素早く走り抜けていた。
「......ステイル。彼女達から何らかの連絡は?」
「皆無、かな。どうやら修道女部隊の連中は情報源を本気でオルソラ=アクィナス一人に任せるつもりらしい」
男女とは言っても決して恋人同士などでは無い。単なる仕事仲間、の一言で済む程の簡単な関係では無いのだが。

神裂火織、ステイル=マグヌス。

二人は『恐らくアニェーゼ部隊が戦闘の主場としているであろう』ハイドパークへと足を進めている最中だった。
恐らく、と言うのは、今回の作戦及び戦闘に置いて、まともな情報や戦況すらも修道女部隊本隊による意図的な情報封鎖により、イギリス清教内部に全く知れ渡っていなかったからである。実際、イギリス清教のトップである最大主教(アークビショップ)ですら、修道女部隊の『把握報網(MasterNet)』使用許可要請によって初めて戦闘が行われていたことを知ったのだ。


「全く。元々集団作戦が多かったからと言って、『上』に内緒で作戦実行とはね......。非公式作戦とはよく言った物だよ」
ステイル=マグヌスは、吐き捨てるように言う。それを聞いた神裂は二秒ほどの間を空けてから、目を細めてステイルとは対象的に穏やかな口調で呟くように答えた。
「......彼女達をイギリス清教に招き居れたのは、ローマ正教に居た頃のような血生臭い戦いから彼女達を救いたかったからです。”恐らくそれは最大主教も同じ考え”でしょう。それなのに彼女達はまた自ら戦いに身を投げ込むような事を......」
「......」
その言葉にステイルは明言を控え、黙ることにする。

「(最大主教の十八番、『友好の鎖』......か。あの女狐は人の心でも読めるのかも知れないな)」
そして彼は、返答の変わりに苦虫を噛み潰したような表情で忌々しそうに呟いた。

『友好の鎖』とは其の名の通り、”束縛では無く信頼によって部下を丸め込む”行為のことだ。神裂で言う天草式の者達が良い例だろう。イギリス清教の最大主教であるローラ=スチュアートは友好的、または合理的な束縛によって人々を管理し、手中へ押さえ込むのを得意とする女である為、不都合な事が発生しても安易に逆らうことが難しい。
神裂が言う事を聞かなくなれば、『天草式は』イギリス清教の保護を失い、再び身を隠しながら湿りきった生活を強いられることになるだろうし、ステイルが言う事を聞かなくなれば、『禁書目録は』イギリス清教の道具として無制限に使われることになるだろう。

裏切らなければ意地悪はしない、というのが最大主教のやり方だ。

(僕等のようなイギリス清教の人間は、その傾向を十分に理解しているし、その範囲内での行動を常識としているが......)

しかし、中には最大主教の定めた暗黙の領海を知らない者達も少なからず存在する。つまり、
(アニェーゼ部隊......。元々、”上からの簡潔な指示を自分達の方法でやり遂げてきた”彼女達にイギリス清教の見えざるルールは合わないだろうし、そもそもイギリス清教の傘下に入ったばかりの人間にそんなことを理解できるとは思えない......)

最終的に目的を完遂したとしても、その過程で危険因子と判断されてしまう可能性も在る。実際ステイルは最大主教から一部とは言え”部隊内の修道女の監視”を命じられているのだし、それ以前に今回の『対十字教黒魔術討伐』という作戦は、清教の女子寮の者達しか知らない完全な独断専行なのだ。そして最も面倒なのは彼女達が”多すぎる”と言うことだろう。個人の小規模な活動ならまだしも二〇〇人強の大部隊が勝手に動き回れば『上』もある程度の処置を施さざるをえないからだ。
(もし今回の件で身内に被害の出るような事があれば、部隊長であるアニェーゼは何ならの責任を取らされるだろう。最大主教はともかく、イギリス清教の『他の幹部ども』に目をつけられるのは間違いない。そうなれば部外者である彼女たちの立場が危くなることは目に見えている)

アニェーゼ等は一人の少女の為に、神裂はアニェーゼ等の為に、そしてステイルは彼女等を『守る』為に。

(今更戦いを止めるなんて出来そうには無い......なら、”彼女達が戦い易い戦場”を造るまでだ。舞台裏に居るの僕にはそれ位しかやることが無いからね)


似合わないと解っていても、黙って見ているのは彼の性に反する。

125牧田さん:2011/02/27(日) 00:38:04 ID:g/ttxRO6
ハイドパーク内某所。

(......ここは......?)
一人の少女が目を覚ました。
落ち葉の散らばる地面に、仰向けで地面に寝そべっていた彼女は体を起こし適当に周りを見渡す。だが、薄暗い木々が立ち並ぶばかりで人の影は見えない。
「......何、してたんでしたっけ......?」
何なら記憶が混沌としている彼女は、うまく思考が回せないまま、ぼーっと歩きだそうたした。その時、

「あ、アンジェレネ。やっと起きたんだオハヨー」

声が聞こえた。
「!?」
少女、つまりアンジェレネは再び周りを見渡す。声は近い。だが、さっき見た通り誰もいない。
「どこに......」
「あれ? もしかして上からだと気づかない? やったねアガター。この場所かくれんぼで有利みたいだよ」
「そもそも真上を見る、などという選択肢が咄嗟に浮ぶほうが凄いことだと思いますけどね」
「え......?」
アンジェレネは言葉に従うようにゆっくりと上を向く。そこには細い木の枝に腰掛ける二人の少女の姿があった。

「シスター・カテリナ、シスター・アガター......っ」

二人を目撃した瞬間に、アンジェレネの微かな記憶は鮮明な物となった。
背信者、その言葉が彼女の頭にまず浮かぶ。そして睨みつけるように二人の少女を見据えた。
「......説明を、してもらってもいいでしょうか......?」
そのアンジェレネの低い声にカテリナが軽い調子で返す。
「まぁまぁ、そんな恐い顔しないで。大丈夫だよ。別にアンジェレネに怪しい魔術掛けた訳でもないし、てかそもそも貴方に何もしてないから」
「......信用出来ません」
「シスター・アンジェレネがカテリナが発する言葉に信用を持てないのは十分に理解できますが、今現在カテリナが述べたことに虚偽はありません」
カテリナの隣に悠然と佇むアガターが自然な形で話しへと加わった。そのアガターを半ば無視するようにアンジェレネは大声で反論を叫ぶ。

「でも!! あなた達は『主を信じていない』とっ!! ハッキリとそう......」
「あー、そっかそっか。言い方が悪かったかな」
カテリナは軽い調子を崩さずにあくまで淡々とアンジェレネの怒号に答えた。
「私達は別に神様を信じてない訳じゃなくて、神の為だけに人を虐められるほど信仰心は強くありませんよってこと。背信者とか勘違いしないでくれると嬉しいかな。......ま、貴方達からすれば十分に背信行為の基準を満たしてるかもしれないけど」
「は......?」
目を丸くするアンジェレネを見ながら、カテリナは緩い声色で溜息を吐くように言葉を続ける。
「なんかね。アニェーゼとかルチアとか信仰心が強すぎて付いていけないって言うか、そもそも神様絶対条件が過ぎると宗教の意味が無くなっちゃう気がするの」
「え、と......じゃあ、あなた達は別にわたし達を裏切ったとかそういうんじゃ......」


その質問に対し、枝の上の少女は肩を落として疲れたような表情で、黒空を見上げながら言った。
「......アニェーゼだったら一瞬で裏切り者に認定するだろうけどねえ。少なくとも私達自身にはそんな気は無かったてことよ」

126牧田さん:2011/02/27(日) 00:40:33 ID:g/ttxRO6
その後、時間にして五分ほどアンジェレネと木の上の二人は質問と応答を繰り返した。

『わたしは何時から意識を失ってました?』
『えーと、私達が問題発言した直後くらいかな。確か、ソフィアの手刀かなんかで』
『何故、わたしは眠らされたんですか?』
『さあね。ソフィアの独断だし』
『シスター・ソフィアは何処に居るんですか?』
『知らない。アンジェレネ叩いた直後にどっか行っちゃった』
『では何故、あなた達だけわたしの傍に居たんですか?』
『ソフィアが「ついてくるな」って。あと、アンジェレネを戦場の真っ只中に放って置くのも気が引けるしね』
『......シスター・ソフィアは何を企んでいるんです?』
『判らない。少なくとも敵では無いだろうけど』
『そうですか。じゃぁ何故......』


目覚めた当初に比べると、会話の頭頃にはアンジェレネも一定の落ち着きを取り戻していた。徐々にカテリナ等の意見も聞き入れられるようになっては来ているし、そのお陰で、彼女の言葉を頭の中で組み立てることも可能となっていく。
そして、アンジェレネが彼女達から聞いた話(意見)を簡単且つ簡潔に纏めた結果は、

1.彼女達は特別、背信者という訳では無い。
2.彼女達はアニェーゼ等の敵となる意識は皆無。
3.尚且つ集団戦線に戻る気も無い。
4.しかし戦闘に参加しない訳では無く、別行動で『対十字教黒魔術』の追撃を行うとの事。
5.シスター・ソフィアの動向は不明。彼女達も知らされていない。

彼女達の話から得られた情報はこの位だった。無論、『カテリナ、アガターの言葉が本当なら』の話だが。



............信用出来るだろうか?

アンジェレネは脳内で葛藤する。もし彼女達の言った事が真実だった場合、アンジェレネはアニェーゼ部隊本隊へと戻り、カテリナとアガターは言葉通りに別方向から『対十字教黒魔術』討伐の任務を行えば何ら問題は無い。
だが、もし彼女達の発した言葉が虚偽の発言だとすれば、敵と成り得るかも知れない人物を野に放つ事となる。信憑性から言えば、状況を鑑みて虚偽である可能性の方が高いだろう。

「まだ恐い顔してるねアンジェレネ。大丈夫だって。もし私達が敵に回るつもりだったとしたら、とっくに貴方を殺してると思うし」
カテリナの緊張感の無い声が耳を通った。確かに彼女等が敵だった場合、アンジェレネが今現在、生きていること自体が不自然である。
「大体さあ、アンジェレネ。今はこんな所で時間潰してる暇無いんじゃないの? 早く本隊の所に行ってあげないとマズイんじゃないかな。あのドS部隊長、そろそろ『彼女』に背中刺されちゃうかもしれないよ?」
「? 『彼女』......って誰のことですか?」

アンジェレネの疑問文を聞いたカテリナは一瞬驚いたような顔をした後、不敵な笑みを浮かべて悪戯っぽく質問に答えた。
「もしかして気づいてない? アニェーゼと近いアンジェレネなら、とっくに解ってると思ってたのに。 わたし的には『対十字教黒魔術』より『彼女』の方が厄介な”敵”だと思うけどなぁ」
「だ、だから『彼女』とは......」

アンジェレネが言い終わる前に、カテリナは笑いながら『彼女』の名を告げた。


「イラーリアだよ。イラーリア=リビングデッド=ラウレンティス。まあ言うなら、今戦闘に置いての最強最大の敵、みたいな感じかな」
カテリナはくすくすと笑みを溢しながら、とても楽しそうに話していた。

127牧田さん:2011/02/27(日) 00:42:31 ID:g/ttxRO6
≪行間≫


家族を失い一年ほど各地を転々としていたクリスタルに手を差し伸べたのは、イザベラという修道女だった。
彼女が案内したのは英国の裏路地のさらに裏。もはや面影を残さないボロボロの教会。

軋む扉を開いて中に入ると自分より一〇歳くらいは年下であろう綺麗な金髪の少女と、それよりは幾分か年上と思われる同じく金髪のショートカットの少女が現れた。
「......イザベラ。コイツ誰?」
「お姉さま。この方は誰でございましょうか?」

少女達の名は、上からイラーリア、オルソラというらしい。
「こらこら、あまり失礼な態度をとってはいけませんよ。大切な客人で御座いますから」
「お姉さまがそう仰るのなら......では失礼ですがお名前を教えて頂けますか?」
ショートカットの少女に安らかな声で聞かれた。クリスタルは隠しても意味が無いと平淡な声で答えた。
「クリスタル。クリスタル=アークライト」


席を外しなさいと言われたショートカットの少女オルソラが教会から足早に去っていった後、イザベラが勝手に自分の紹介を始めた。
「彼女は魔術の才が非常に優れています。ですから良い人材になるかと思って連れてきました」
イザベラが自身満々に言う。その言葉に隣のイラーリアが全く興味無さそうな表情でイザベラに質問した。
「......優れているって、どの位?」
「えーと、そうですねえ」
イザベラは数秒間ほど丁度良い具体例を探したあと、閃いたのかイラーリアの質問に答える。
「巷を騒がせている『騎士殺し』という事件をご存知ですね?」
「ああ、あの騎士ばっかり死んじゃってる可愛そうな事件でしょ? それがどうしたの?」

『騎士殺し』とは、一週間ほど前から頻繁に起こっている騎士のみを狙った連続殺人事件のこと。
被害者の全員が全身をメッタ刺しにされている為、猟奇殺人の類として捜査されているらしい。
だが実際は猟奇殺人などでは無く、単純に騎士に恨みがある者による魔術的殺人である。この事実には誰も気づいていないようだが。

では何故、クリスタルがそのような事を知っているのか。当たり前だ。その事件を起こしたのは自分なのだから。


「......へぇ。つまりその女は、女王様もお怒りなあの事件の真犯人ってこと?」
「まさしく、その通りで御座います」
「で、そのどこが優秀なのさ。単なる人殺しなら誰だって出来ると思うけど?」
「そもそも殺された相手は『騎士』なので御座いますよ? そう簡単に命を奪える奴等ではありませんし、被害者が犯人と争っているのを見た者も居ないと言います。つまり、”高い戦闘能力を持つ騎士を誰にも見つからずに何人も殺害することが出来る”くらいに優秀なので御座います」

イザベラが大きな胸を張って言った。そして、その事実にイラーリアも興味を示したようだった。
「......それは良さそうだね。うん、実に良さそう。特に『人間を真顔で殺せるイカれっぷりが最高』。......えーと、クリスタルって言ったっけアンタ」
クリスタルは小さく頷く。するとイラーリアが行き成り目の前にやってきて、その身長に比例したクリスタルよりも遥かに低い位置から手を差し出した。

「どう? 私達と、『対十字教黒魔術』と余生を共にしてみる気は無い?」
クリスタルは何の迷いも無く、差し出された手を握り返した。迷う必要など無い。元々そのつもりで此処までやってきたのだから。
「喜んで」
そう言ってクリスタルは滅多に見せない笑顔を見せた。


僅かな光が差し込む、今にも崩れ落ちそうな教会の中で。
『対十字教黒魔術』は、また一つ世界を終焉へと近づける。

128牧田さん:2011/02/27(日) 00:48:17 ID:g/ttxRO6
投下終了です。
空いてた時間と比例しない量です。すいませんでした。
今回の話は場繋ぎ回です。だらだらと申し訳ありませんOTL
サッカーの方は近い内に、ほんと出来れば近い内に投下したいですハイ。

感想、誤字脱字のご指摘お待ちしております。いつもの如く誤字脱字が酷いと思うので。

ではまた。

129■■■■:2011/02/28(月) 16:55:37 ID:IdOHDJDo
GJ一げと

久々の更新だ。割とボリュームあってよかった。
カテリナの独自設定は凄いな。どんどんキーマンっぽくなっていく。
あと今更だけど、
《》の行間がクリスタルで、
〈〉の行間がイラーリアの過去話なんだな。

最初はオリ無双すぎてどうかとも思ったけど、一つくらいこんなSSあっても良いんじゃない? ってレベルだと思う。
一応、元と通じてるし。今の所は原作とも大きな矛盾は無いみたいだし。


数少ない連載作品の一角、応援してます。

130■■■■:2011/02/28(月) 17:30:11 ID:CU1vJYLU
>>128
GJ。感想は概ね上に同じなので、自分は誤字脱字の指摘をさせてもらいます。

アンチゴットブラックアート(アンチゴッ“ド”ブラックアート)私も今更気づいたんですが、当初から原作の組織名とずれてますね。それとも架空の結社という扱いなのでしょうか
......(……)混在させるのはタブー  呼んでいたでけであった。(呼んでいただけであった)
ハイドパークに置いて(ハイドパークに於いて)「おいて」と平仮名表記するのが一般的  無きしもあらず(無きにしもあらず)
主場(造語?)  暗黙の領海(了解)  舞台裏に居るの僕(の)  落ち葉の散らばる地面に、仰向けで地面に寝そべって(地面は一回で良い)
何なら記憶が(何やら、か)  黒空(造語?)  ダブルクオートの使い方(○“  ” ×”  ”)

ざっと目を通せば直せるレベルの誤字がほとんどなので、投下前にご自身で推敲してみてください。せっかくの面白い文章なんですから。

イザベラはオルソラの実の姉という設定ですか。この行間はいつ頃の話なんだろう?
アニェーゼ、ルチア、アンジェレネ、アガター、カテリナがローマ正教に拾われた頃にはオルソラは既に見習いシスターで隠し味が……うーん。
続きが気になりますね。完結目指して頑張ってください。

131■■■■:2011/02/28(月) 18:47:28 ID:PnPwQNI6
話しぶった切ってすまないけど中二病さんの「とある誰かの野望物語」
がSSまとめサイトの連載中のところに乗ってないのは気のせい?
気のせいじゃなかったら入れてあげたほうが良いんじゃ?

132■■■■:2011/02/28(月) 20:28:33 ID:IdOHDJDo
>>131
もう少し分量を充実させてからの方が編集もやり易いのかもね。
実質的な量はそんなに多くないし。

133■■■■:2011/02/28(月) 20:56:57 ID:CU1vJYLU
まとめは編集者さん達のきまぐれだし、その内編集されるのでは?
何なら言いだしっぺの>>131が編集してあげてはどうです。

134■■■■:2011/03/01(火) 19:08:38 ID:D4pn.2xw
ここって、オリキャラで青髪ピアスみたいなやつってSSにだして良いの?

135■■■■:2011/03/01(火) 19:35:49 ID:idVzLL.I
↑似すぎてんなら青ピで結構かと。

136■■■■:2011/03/01(火) 19:52:40 ID:jK1vEfcg
なんかやっと過疎脱出って感じだな。
禁竜復活に新しい職人も何人か出てきたし。

137■■■■:2011/03/01(火) 20:15:10 ID:D4pn.2xw
>>136 新しい職人ってたとえば?

138■■■■:2011/03/01(火) 22:01:54 ID:jK1vEfcg
とある少女〜の人とか?

139■■■■:2011/03/01(火) 22:04:22 ID:jK1vEfcg
連レスすまん

>>130
アンチゴット、アンチゴッドは伏線じゃね?
指摘されて牧田さん涙かもな。いやまあ自論だけど。

140■■■■:2011/03/02(水) 15:54:24 ID:1ExnIYt.
いやぁ、流石にゴットはうっかりだろう。Anti-Godじゃないと意味が通じないし

141■■■■:2011/03/02(水) 18:06:37 ID:/5Lj38ZU
とりあえず、新しいSSのプロット練ってみたら、一つ目はいいんだが
二つ目のエンドが目も当てられないほどのバットエンドになってしまった・・・

ここって、注意書きさえあれば鬱・トラウマ的(パワポケBAD EDみたいな) 展開OKだっけ。

142■■■■:2011/03/02(水) 18:54:10 ID:/VcBdSZ6
6.特殊だったりや好みが分かれたりするシチュは投下前に警告しましょう(例 百合,BL,鬼畜,死にネタ等)。
7.18禁(と思われるもの含む)はスレ違い。

くらいじゃないの。

143■■■■:2011/03/03(木) 17:29:02 ID:E/4WQ1bg
>>141 逆にパワポケ並みのバットエンドは見てみたいw

144■■■■:2011/03/03(木) 20:53:59 ID:u2yPQ2uI
お久しぶりです!・・・・でもないですね。
『とある少女の生きる世界』と『とある打ち止めのバレンタイン』作者です!
新しい物語を投下します。序章なので短いです。そこんとこよろしくなのですよー(小萌先生風に)

145■■■■:2011/03/03(木) 20:54:34 ID:u2yPQ2uI
とある二人の一週間

序章 騒がしい朝(AM7:15)

とあるマンションの一室にその少年は居た。
白い髪に白い肌、中性的な身体の少年は、カーテンから漏れた光で目を覚ました。
(ン・・・?朝か。・・・何だァ?この静けさは)
いつもなら黄泉川あたりが無理やり起こしに来るはずだがと、考えながら一方通行はカレンダーを見る。カレンダーには7月20日と書いてある。
(アァ・・・夏休みだったっけなァ・・・)
二度寝をしようとタオルケットを被りなおすと、ドタドタドターと、愉快な足音が聞こえてきた。何だァと、ドアの方に向く前にバッターンと勢いよくドアが開かれた。
「おっはよーございまーすって、ミサカはミサカはフライングボディアタックしながら定番の挨拶してみたりー!!」
アホ毛少女は大ジャンプして一方通行に飛び掛ってくる。そして、スイッチをONにする間も無く一方通行の腹に落ちてきた。いくら打ち止めが小さいからと言っても、人間の体重は重い。それを上から垂直にくらった一方通行は・・・・。
「うがァァァァアアアアアア!!!!」
予想外のダメージにのた打ち回る一方通行。
キャッキャとはしゃぐ打ち止めに呪いの言葉がかけられた。
「フ・・フフ・・・殺ス。ぶっ殺してやるゥ・・・・」
一方通行の意識はそこで途切れた。

146■■■■:2011/03/03(木) 22:37:10 ID:u2yPQ2uI
ぬおぉぉぉぉ!!
投下宣言するの忘れてたー!!
次の人こないなーって思ってたんですー!!こなくて当たり前だー!!
投下数一回や二回じゃないのにー!!ごめんなさい、もう忘れません、許してくださいー!!!!

147■■■■:2011/03/03(木) 22:56:10 ID:DGCDecas
『とある少女の生きる世界』は完結したんですか?

148■■■■:2011/03/03(木) 23:20:31 ID:u2yPQ2uI
あ・・・は・・・。
ごめんなさい・・・。ネタが・・・ネタが・・・思い浮かばないんです。
出来次第投下しますので・・・。

149■■■■:2011/03/04(金) 18:24:12 ID:faucu76w
ある程度纏めてから、投下しましょう。

150■■■■:2011/03/04(金) 18:38:48 ID:zpc6yhjk
3Dカメラで撮ったおっぱいエロすぎw
すれ違いおっぱい@ともも
ttp://oppai.upper.jp

151■■■■:2011/03/04(金) 19:11:45 ID:EFCnYYcw
>>150 スレ違うぞ?

152とある少女の生きる世界の作者:2011/03/04(金) 20:22:28 ID:BNrnGHUk
こんばんわ。
指摘を受けました。『とある少女の生きる世界』の続きが出来ました。
なんか、それで終わりそうなラストです。また続けるかどうか、今後の状況で決めさせていただきます。
それでは、投下始め!

153とある少女の生きる世界:2011/03/04(金) 20:24:07 ID:BNrnGHUk
第五章 とある少女の選択

当麻が目を覚ました場所は、見慣れた病室だった。
「今度はお腹に銃弾かね?君は本当にこの病室が好きみたいだね?」
当麻の視界には、カエル顔の医者がいた。
病室内に、カエル顔の医者の言葉だけが響く。当麻は、ぼーと天井を見つめていた。
「そうそう。彼女に感謝するんだよ。えーと、春木っていったけね?」
がたっと、当麻は起き上がった。
「風波ですか?あいつ今どこにいるんですか?」
「所々に傷があったからね?まだ病院内に居るんじゃないかな?」
捜しにいこうとして、靴を履こうとした。その時ガラッと、病室のドアが開いた。
そこに居たのは、銀髪に紅茶のカップのような修道服を着たインデックスだった。
「・・・・・・で?今度はどんな女の子を助けたの?」
顔は笑っていた。怒りを隠したある意味怖い顔だ。当麻は一瞬で身の危険を察知した。
「いっインデックスさん?なぜ笑いながらも、歯をカチカチ鳴らしているのでせうか?」
「それはね、とうま」
言葉がいったん途切れ、インデックスは当麻の後頭部に飛びついた。
「とうまがとうまだからだよ!!」
ガブリと何かを噛む音と、男子高校生の悲鳴が病院内に響き渡った。
たいへんご立腹のインデックスは、思い出したように袖口から封筒を取り出した。

154とある少女の生きる世界:2011/03/04(金) 20:24:47 ID:BNrnGHUk
「とうまとうま、これ、外に居た女の子から貰ったんだよ」
「女の子?知ってる子か?つーかどんな子だった?」
当麻はゆっくりとした動作で封筒を受け取る。
「んーとね、茶髪ロングで、青っぽい制服着てた」
「風波!!」
封筒の中にはお金と、手紙が入っていた。
『上条へ
私のせいで怪我を負わせちゃって、ごめんなさい。
負担させちゃった分のお金、入れといたから。今までありがとう。じゃあね。』
短い文章だった。必要な事だけ書いているようだ。
当麻は再び靴を履き始めた。
「とうま!どこ行くのとうまー」
当麻は走り出した。

「これで・・・いいんだよ・・・・」
春木は人のこない病院内で人があまり来ない場所に居た
周りに人が居る訳ではない。自分に言い聞かせてるのだ。
会いに行きたいという気持ちを抑えるために。
「なんでかな・・・・なんでなのかな・・・・もしも私が暗部にいなかったら、上条と一緒にいれたのかな・・・・」
春木は泣いていた。すごく小さな声で。誰も聞こえないくらいに押し殺した声で。

155とある少女の生きる世界:2011/03/04(金) 20:27:16 ID:BNrnGHUk
「こんな世界もぉヤダよぉ。逃げたい。抜け出したい。平和な生活に戻りたい」
もちろん、出来るはずがない。それは春木も理解している。春木が言ってるのは、ただの幻想(ゆめ)だ。春木は闇に浸りすぎている。今さら抜け出せる訳が無い。
その時。春木の耳に自分を呼ぶ声が聞こえた。
「風波!!」
春木は顔を上げた。そこに居たのは――――
「ふぇ?上条?」
当麻は拳を握り締めながら、口を開いた。
「なんでだよ・・・。なんで、一人で抱え込むんだよ。どうして、誰も頼らないんだよ!!
お前がどんな事を抱え込んでいて、どんな世界に浸ってるのか、俺には分からねぇ。
でも抜け出したいんだろ!だったら、相談しろよ!お前がどんな所に立ってようが、俺が救い出してやる!!」
春木は幸せだった。たぶん、上条は助けるだろう。どんな傷を負ってでも、救うのだろう。
でも、たとえそれが、自分のためでも。
「上条には無理だよ」
助けてくれるって、信じていても。
「上条には、絶対に無理だよ」
春木には、跳ね除けることしか出来なかった。

156とある少女の生きる世界:2011/03/04(金) 20:27:56 ID:BNrnGHUk
「上条はこの街の、闇を浅いものしか知らない。絶対能力進化実験だったっけ?あんなもの、まだまだ浅い」
当麻の身体が固まった、やがて当麻はゆっくりと質問した。
「お前は、あの悲劇以上のものを、見たことあるのか?」
春木は軽く笑った。まるで「イエス」と言ってるように。
春木は当麻の両手を満面の笑みで、ギュッと握った。しかし当麻は分かった。それが偽物の笑顔であると。
「上条と出会えてホントに良かった。さよなら。」
当麻の両手を離すと、春木は消えた。当麻はしばらく、誰もいない通路を見ていた。
助けられなかったという、あまりにも残酷な現実を突きつけられ、しばらく動けなかった。

「私にあんなもの、見せないでくれる?気分悪いわ」
春木が消えた理由は簡単だ。空間移動して貰ったのだ。
「ごめんね、淡希。ご苦労様」
「まったく。休日にまで働く事になるなんて」
結標は片目で春木を見た。
「で?良かったの?あんな結果で」
「あれで良いの。だって」
春木は断言する。
「私にはまだ、やるべき事があるから」

157とある少女の生きる世界の作者:2011/03/04(金) 20:29:03 ID:BNrnGHUk
投下終了。
ちょっと長いです。すみません・・・。

158■■■■:2011/03/05(土) 09:35:35 ID:2w/gCwHo
>>151 だれうまw

159牧田さん:2011/03/06(日) 11:43:09 ID:wnUlICmo
>>129
>>130
感想、誤字脱字指摘有難うございます。
誤字酷いですね・・・ほんとスイマセン。次からは極力少なくします。

>>139
>>140
・・・・・・(汗
まぁ覚えておいて損は無いかと。

160中二病 番号 20000:2011/03/06(日) 21:34:01 ID:/uxY8bgM
投下開始、プロローグだからちょっと短いです。





第一部7日目=第二部某日 17時30分  地下街 アルコールのすき焼き屋
 
 『ピーーピーーピーー 火災が発生しました ピーーピーーピーー 火災が発生しました』

火災報知機のサイレンで、俺の酔いはさめた。酒には強いと自負はしていたが、さすがに17本もビールを飲んだら酔いが回ってきた。
このまま寝てしまおうかと思ったが、先ほどのサイレンで完全に醒めて決まった。
ここに来る前に、福引で当てたハワイ招待券が無効になってしまわないかという的外れな心配をしていたら、
一人の女の子がパニック状態の店内に入ってきた。

「皆さん、早く逃げてください!今消防隊がこちらに向かってきていますの。だから落ち着いて、地下街の外へ!」

淡い色の髪の毛をツインテールにして、常盤台の制服を着た女の子だ。
常磐台中学の制服は、大学のオープンキャンパスで何度も見たことがあるから、ど〜でもいいことは覚えない主義(たいしつ)の俺でも覚えていた。
にしても、あの女の子・・・どこかで見たことがあるな・・・
ああ、そうだ。さっきのランジェリーショップで下着を振り回していた子だ。風紀委員なのだろうか。

「君は・・・・」
「何をしていますの!早く逃げてください。」
「いや、それはわかっているんだけどさ。君は風紀委員かい?」
「そんなもの見てわか―――――あ。」
「紋章、付け忘れてるよ。」
「失礼。ここの店を出て右に向かったら消防隊が見えますの。そこに向かってください。」
「OK,でもそれよりも大事なことがある。福引屋のおっさんは救助されたか?」
「あそこの一帯は、焼け崩れて――――――って何してますの?!」
「ん〜?いや、だからおっさんを助けに。ハワイ行きたいし。他にすることでも?」

「避難してください!!!」

俺が、おっさん(福引)を助けに行こうとしたら。今度は頭に花を乗せた女の子が話に割って入ってきた。花に燃え移らないかが心配だ。

「こっちにも、火が回ってきています!早く避難してください!」

「あ〜、はいはい。避難すればいいんでしょ?」
おっさん助けるにもこの二人がうるさいし。ここで適当に巻くか。
ん?外で常磐台の子が、転んで――――

「お姉様ッ!」

さっきの子はテレポーターだったようだ。
人に避難しろって言いながら真っ先に自分が避難しやがった。
「さて、俺たちも外に出るか・・・・・ってあれ?」

時すでに遅し、熱でドアが変形してやがる。なんか後ろで、花束がパニクってるし。煙がいつ入ってきてもおかしくなさそうだ。

「しょうがない。」
手を怪我するかもしれないけど、ドアごとぶち破るか―――――!

161中二病 番号 20000:2011/03/06(日) 21:34:12 ID:/uxY8bgM
―――――――――――――――――――――――――――――――


俺は、昔から夢見がちだった。そのせいで、何度も失敗したし。自分の黒歴史なんて思い出したら自我が崩壊しそうになる。
でも、この技術(ちから)を習得したことだけは、夢見がちだったことに感謝している。


 ――――――――――――――――――――『呼吸法』――――――――――――――――――――-――

ジョジョの第二部を、読んだことがあれば、『波紋』の習得の仕方は見たことがあるはずだ。
普通、あんなの見たら『出来るわけが無い』と思うだろ?実践しちまったんだよ。あのときの俺は―――
10歳の頃だった。『1秒間に10回呼吸をする』というのを部屋で実践していた。
半日ぐらいたったときだ、疲れ果ててもうやめようってときに、『5回』だ。『1秒間に5回』呼吸が出来た。

嬉しくてたまらなくて―――つい壁を殴ったら、壁に穴を開けていた。そのときは無茶苦茶怒られたけど、今となってはあのときの自分に感謝している。

火事場の馬鹿力って知ってるか?呼吸法は、それを故意に出すことが出来る。そういう技術(ちから)だ。



―――――――――――――――――――――――――――――――


「―――――オラッ!よっとォ!!!!!」


ドアをぶち破り、おれは、おっさんのところに向かう。大丈夫だ、場所はわかっている。

「ちょっと!どこに行くんですか?!!」

「――――――人助けだ。」










 /└────────┬┐
< To Be Continued...    | |
 \┌────────┴┘

162中二病 番号 20000:2011/03/06(日) 21:44:25 ID:/uxY8bgM
投下終了 

作者コメント―――第2部の序話の投下完了しました。
        上のほうにも書いてあるとおり、この話は、第1部後日談の直後の話となっていります。
        主人公は、この話に出てくる『俺』です。早めに言っておきますと、彼は大学生という設定です。
        禁書のほうには、あまり大学生のキャラが無いな〜と思い、出演させました。
       ついでに、今回話しに出てきた呼吸法は、あくまで技術です。彼自身も、能力者なので技術(ちから)ではなく 
       普通に、超能力も持っています。(超能力を持っていることが普通といっていいのだろうか?)
       彼の能力については、次の第一話で明かされます。それまで待っててください。

       また、質問等があったら、気軽にお尋ねください。ネタバレにならない程度に
       お答えさせていただきます。

       では、次の創作意欲が沸く頃にノシ

163中二病 番号 20000:2011/03/06(日) 21:48:11 ID:/uxY8bgM
追記  初春さんのことを花束花束言ってますけど。別に彼女の事が嫌いではありませんよ〜
    むしろ好きな子はいじめたくなるとかそんな感じですw

164通りすがり:2011/03/08(火) 00:44:35 ID:kNsBqiew
早く読みたいっす

165■■■■:2011/03/08(火) 16:31:15 ID:Z9fWfW72
>>164 主語が無いからよくわからんwww

166■■■■:2011/03/08(火) 19:34:33 ID:l8Hk.eKI
>>159
え・・・・・・?

167■■■■:2011/03/09(水) 14:03:52 ID:8g37nf2I
早く続き書かんかい!!

168■■■■:2011/03/09(水) 18:19:41 ID:UfK6QNZw
>>167
だから何が?

169■■■■:2011/03/09(水) 22:32:15 ID:bmK.mNdA
中二病さんの面白いですねー
ドアけり破ったの結局誰だろー
続き気になりますねー
早く読みたいですー

170■■■■:2011/03/09(水) 23:01:32 ID:UfK6QNZw
書き込んでおいて何だが、何この自演満載なスレは。
まぁ自演してるのはたった一人なんだが。

171■■■■:2011/03/09(水) 23:16:20 ID:7RrafnMw
>>170 あんたは一体何が言いたいんだ?

172■■■■:2011/03/10(木) 00:11:27 ID:fpUEzFgs
>>170 失礼だとは思わないか?ゆとりwwwwwwwww

173■■■■:2011/03/10(木) 01:50:14 ID:rjXZpXxg
黙っていようかと思ったが、ここまで分かりやすいとな…
>>20>>43>>45>>53>>110>>137>>143>>151>>158>>165>>171-172
ハイ問題です。これらのレスの共通点はなーんだ?

174■■■■:2011/03/10(木) 03:12:03 ID:LKTtlNDE
>>173 こういう書き方をしている所かな

>>173
こうではなく

175■■■■:2011/03/10(木) 03:22:02 ID:fpUEzFgs
えっと、違いは一体何?

176■■■■:2011/03/10(木) 03:23:32 ID:LKTtlNDE
みたまま

177■■■■:2011/03/10(木) 03:24:30 ID:fpUEzFgs
>>173 自演って言うのか?それ 別に同一人物でも良いような内容じゃ?

178■■■■:2011/03/10(木) 16:18:58 ID:VtrU52fc
美琴アウトドアのデジャヴだ・・・。
もう自演でもそうでなくとも、反対意見に反対するのもやめてほしい。
自演から荒らしの転向する恐れがあるから。

179■■■■:2011/03/10(木) 20:58:13 ID:fpUEzFgs
>>178 >美琴アウトドアのデジャヴだ・・・。 そこんとこkwsk

180■■■■:2011/03/10(木) 21:33:00 ID:VtrU52fc
>>179
>>
解り易いですねぇ

181■■■■:2011/03/10(木) 22:05:33 ID:fpUEzFgs
>>180 いやわかりやすいも何も・・・ で、アウトドアのときに何があったのかを。
一応アウトドアの悲惨なオチは見たけど、なんか原因でもあったの?

182■■■■:2011/03/10(木) 22:41:56 ID:VtrU52fc
作者が批判を『否定』と勘違いして暴走。荒らしに成り下がった。

ちょうど今のこのスレと流れが似ている。
このままだと繰り返してしまいそうで怖い。

183■■■■:2011/03/10(木) 22:43:24 ID:fpUEzFgs
>>182 なるほど、よくわかった。ありがとう

184通りすがり:2011/03/10(木) 23:21:03 ID:VAdb0Ack
中二病さんの早く読みたいっす
期待してます。

185■■■■:2011/03/11(金) 00:05:53 ID:85sUu2Hs
>>184
sage進行って知ってるか?

186■■■■:2011/03/11(金) 01:51:48 ID:ajEBinME
何ヤツ?

187■■■■:2011/03/11(金) 02:06:17 ID:p9Yniza2
投下されるまでじっと我慢することも出来んのか
職人を信頼しろよ

188■■■■:2011/03/12(土) 11:07:13 ID:1C52wIYg
お前ら無事か?

189牧田さん:2011/03/12(土) 11:37:54 ID:Z7ZMvQXM
とりあえず生存報告

結構揺れましたね。

190■■■■:2011/03/12(土) 11:51:49 ID:CTbvhKNk
おお、牧田さん無事だったか!良かった…。

191中二病 番号 20000:2011/03/12(土) 12:32:23 ID:1C52wIYg
コテ付け忘れてたorz

     _,l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l,,_
        ,.r'´,.    -┐   ':..,゙ヽ
       ,r' ,::;:'    ,ノ ヽ、    ゙:::.ヽ
      ,.' _.,:;:'___ _立_  ___;;ミ゙、          ̄ノ ̄| ̄
     .l厄巳厄巳厄 i王i ,.巳厄巳厄巳l           ,勹 .├‐''
     l´ , "´  ̄ ̄ ̄ `'''′  ̄ ̄ ̄`.:`{         ´_フ  ヽ、_,
     | l ;;:.,.   ::、.       ...   '゙|
    ,.-''、.,! ,.::'    ヽ、:.゙、 ;;.:' ''  ヽ | ,.、       __l__
   ./  、/ `ヾー─tッ−ヽ''  kーtr─ツ'´〕. ヽ.        |
  / {´i Y::::..   ` ̄ ̄´.: "i! ::. 、` ̄´ ゙:::.、} r、 l        i,____
  | ヾ_,,入;:::.. `'' " ´.::; .::i! ::..  ```  :. }ツl l
  \  ノ ヾ ;:::.   .:r'' :: ll! :ヽ;:..:.   .: j,ノ ,!         ┬ ┌,┴┐
    ヽ',,;l  ゙i ;::.. _ `ヽ、;;,,,,'.ィ'' _,, .::,;r'1,,,/           l__ ノl士
  ッジ::::::|  ゙ ,r'´:::;;;;;;;::>  弋´;;;;;::::ヽ'" |:::::゙'イィ      ノ凵  l土
 弍:::::::::::l  /:::;r'´ ,,..-ー…ー-、 ヾ;:::'、  |:::::::::::ヒ
  シ:::::::::::l   i':::,!  ´  __  ゙  l::::l:. |::::::::::ス       __ヽ__‐┬┐
  彡;:;:::::l  l:::l     ''''''''⇒;;;:,   l:::l  |::::;;ャ`        ニ メ ,ノ
  ,r', 广'`ヽl:::l ::::. .::     ゙::.   l::l ノ^i`、         l ̄l ハヽヽ
 ,イ(:::j    i::;ヘ  :;:.       .::   l::l'"  l:ヽヽ         ̄   ̄
 |;:ヽヽ   l::l  ヽ ;:.... ..  .. :  /l::l   ノ ,.イ
 |;:;:;:;\\ l::l   ', :;.:;::::::::::..::.  /  l::l,r'' /;:;:;|

192■■■■:2011/03/12(土) 12:43:03 ID:CTbvhKNk
>>191
楽しいか?それ
悪ふざけはホント止めてくれない?

193中二病 番号 20000:2011/03/12(土) 12:45:13 ID:1C52wIYg
ごめん、なんか悪ふざけが過ぎた。本当にすまない。いまさら後悔している

194とある少女の生きる世界の作者:2011/03/12(土) 21:48:39 ID:zhIHzdpU
とりあえず生存報告
なんとなくペンネーム的なもの作った。
『ななの』です。
すっごいKYなタイミングだけどよろしくです。女っぽいのは気にすんな☆
PS、、、あまりの怖さに泣いた。・・・情けない。

195牧田さん:2011/03/13(日) 20:57:56 ID:ZnlBhmSo
相変わらずKYな僕ですが、一つ良いでしょうか。(投下ではありません)
僕の執筆している『禁竜召式』はSS纏めにもある通りオリ設定が非常に多いです。
そのせいで見ていて混乱するとか、訳ワカランと思う人も多数居ると思います。(作家さんの集まるスレで言われましたOTL)

なので内容について質問のある人が居ましたら、お答えしようかと思います。(この設定は何に基づいているとか、どの巻から引用したか等)

自己中心的かもしれませんが他スレにて要望が寄せられましたので企画しました。
「ここイミフ」と言う所があったら宜しくお願いします(ただ、一部ネタバレになってしまう事柄については答えられないかもしれませんが)

196■■■■:2011/03/13(日) 22:42:11 ID:pUvonbmg
ステイル「ローラ…?」ロラン「ここはどこなんですか?」

とか考えたんだがどうよ
元ネタが分かる人がいたら投稿しようと思うんだが。

197ななの:2011/03/13(日) 23:01:40 ID:9zfzdtxc
今更ですが、
『とある少女の生きる世界』に出てくるオリキャラ『春木風波』ですが、
『風波』の部分なんて読むか分かります?
あそこ、『かぜなみ』じゃなくて、『かざなみ』って読むんですよ
読み間違えてた人いるかもって、今更ながらに思いました。

198■■■■:2011/03/13(日) 23:17:15 ID:4Olfveo2
>>195
質問とかではないんですが、>作家さんの集まるスレ というのがどういう所なのか気になります。
自分は職人ではないですが、覗いても大丈夫なスレなんでしょうか?宜しければ該当スレへの誘導をお願いできますか。

199中二病 番号 20000:2011/03/14(月) 02:53:12 ID:0FfrhBzw
そういえば、コテハンって作品投下するとき専用なんですかね?
自分は、普通にここに書き込む際もこれを使っているのですが・・・



>>197 初見で「ふうは」って読んでた自分は一体・・・

200■■■■:2011/03/14(月) 02:56:18 ID:urp7tMJU
キャラの呼称表とかってどっかにない?
キャラ多すぎて、把握し切れん

201■■■■:2011/03/14(月) 03:00:19 ID:cJM3psfI
必ずしも必要な訳では有りません。コテハンなしで投下されている書き手さんもこれまでに大勢います。
むしろ個人的には投下・感想レス返信時以外での使用は控えるべきだと思います。

202■■■■:2011/03/14(月) 03:47:05 ID:5g8R8NMA
>>200
禁書wikiなんかを参考にすればいいんじゃなかろうか。
つってもキャラ多すぎて流石にカバーしきれないとこもあるし、
原作も手元に無いならここなり質問スレなり雑談スレなりで聞けばいいと思うよ。

203■■■■:2011/03/14(月) 09:08:14 ID:rktkQMUY
>>198
職人じゃなきゃ覗いたらダメってルールは無いと思うけど

204牧田さん:2011/03/14(月) 09:54:19 ID:VdYLkYRA
>>198
残念ですがスレ誘導は出来ません。
そもそも禁書板どころか2chでもありませんし、やはり作家さんだけが集まると言う趣旨のスレなので。
僕は別に誰が来ても良いと思うのですが、先住民様がそこらへん非常に気にしてまして……

職人である僕ですら入れたの奇跡と言うくらいですから。

205■■■■:2011/03/14(月) 14:57:49 ID:0FfrhBzw
>>204 敷居高ッッッww

206ななの:2011/03/14(月) 19:22:20 ID:rktkQMUY
>>204
えっ?そんなスレがあるんですか?

207■■■■:2011/03/14(月) 20:50:59 ID:ygknUD3g
そんなVIP専用みたいなスレあったの?www

208■■■■:2011/03/15(火) 03:28:54 ID:1nb3UyIg
流/れ
そんなわけでホワイトデーSSという名のホワイトデー前日SSをホワイトデー翌日になって投下します。
ちょっと急ぎ足で書いたんで推敲とか出来てないですが、まあ時期モノなんで勘弁してください。

次から始めます。

209前日とて彼の日常:2011/03/15(火) 03:32:16 ID:1nb3UyIg

 さてさて、冬も終わりに近づく三月。その十三日である。
 明日はホワイトデー。バレンタインデーにチョコを貰った男共が女性にお返しをする日。
 そんな日に上条当麻は、彼が通う学校の校舎の窓から頭を出して、溜め息を一つ漏らした。
「はぁ……『ホワイトデーのお返しは上条さんでっす☆』とか駄目かなぶべぼっ!!」
 両脇から同時に何の容赦も加減も躊躇いもない飛び膝蹴りを喰らい、上条は仰向けに倒れる。頭蓋骨からめぎょっとかいう感じのヤバめな音が聞こえた。
 そのまま激痛にのたうち回る彼に蹴りで追撃を加えながら、三馬鹿の一人である土御門元春は額を押さえるような仕草をする。
「カミやーん。ちょーっとばかしそれは調子に乗りすぎじゃないかにゃー?」
 サングラスで彼の表情は窺い知れないが、それでも分かるくらい彼は怒っていた。こめかみに青筋が浮かんでいるのがハッキリと見える。
「ホンマやでぇ、カミやん。ボク今ちょっぴり殺意が芽生えましたよ?」
 同じようにガスガスと追い討ちを敢行しているのは青髪ピアス、別名『形を成した変態』。エセ関西弁で喋る米所出身の胡散臭さ100%な、これまた三馬鹿の一人。
 そして三馬鹿の最後の一人である上条は、二人の蹴り地獄から辛くも脱出して両の側頭部を押さえながら叫ぶ。
「なんなんだ一体! ちょっとしたジョークでしょうが!!」
「実際にそれをやられたら大喜びしそうな奴がいることが気に食わないぜよ。五和とか」
「え、土御門クンそれ詳しく! カミやんテメエ羨まじゃないふざけるのも大概にせえよ!!」
「テメエは五和をなんだと思ってるんだよ! あと青ピは黙れ!!」
 ギャースギャースとまたいつもの如く下らなさがとどまる事を知らない喧嘩へと発展し、午後のまったりとした空気の流れていた校舎内はあっという間にアホ共のバトルフィールドへと変わる。
 いいぜてめえらが我が家の家計に余裕があると思っているならまずはその幻想をぶち殺すと右手を構える上条に、舞夏以外なら俺は平気で裏切るんだぜいと肩を回す土御門。そして絶対に負けられない戦いがここにあるとリア充の殲滅を誓った青髪ピアス。
 三者三様の思いを賭けた戦いの火蓋が、今切って落とされた。

210前日とて彼の日常:2011/03/15(火) 03:34:30 ID:1nb3UyIg

「貴様ら! 廊下で暴れるな!!」
 瞬間教室の入り口から飛び出した影に強烈な飛び蹴りを喰らい、青髪ピアスは壁に叩きつけられた。闖入者はそのまま流れるようにお手本のような裏拳を決め、土御門も抵抗する間もなく崩れ落ちる。
 そして瞬時に土下座モードに移行しようとした上条は、しかし股間を膝で蹴り上げられ他二人と同じく一撃で廊下に沈んだ。
「勝者。吹寄制理」
 姫神秋沙の無情な声は、刹那に燃え尽きた三人の戦士たちには聞こえない。


「で? 何の話をしてたのよ?」
「……なんやっけ?」
「結局。忘れてしまう程度の話だったってこと」
「カミやんがホワイトデーのお返しのことで悩んでたのがムカついたんだにゃー」
「前言撤回。それは。とても重要」
 割とサクッと何事も無かったかのように復活した三馬鹿+二は、教室で机を囲んで先程の話題の続きを話し始めた。
「上条さんの上条さんは大丈夫だろうか……」
 但し、約一名は微妙に後遺症を恐れて自らのズボンの中を覗き込んでいたが。
「……ふんっ!」
「あげっ!?」
 吹寄のヘッドバットが頭頂にヒットし、上条は椅子から転げ落ちる。
「女子の前で何をやってるのよ貴様は!」
「吹寄が蹴ったんじゃん! じゃあお前上条さんの上条さんが死んだら責任取れよ!!」
 とか何とかよせばいいのにまた不用意な発言をする上条。予定調和のように他四名から私刑に合う。
 ボコられた上条は、不幸だーと決まり文句を呻くように発する。
 確かに彼は不幸だが、この台詞を吐くときはだいたい自業自得である。彼の辞書には多分、『デリカシー』という単語が載っていない。

211前日とて彼の日常:2011/03/15(火) 03:36:27 ID:1nb3UyIg

「それで。上条君は。お返しは何をくれる予定なの?」
 ちゃっかり私刑にも参加していた姫神が、無残な姿で横たわる上条に問いかける。因みに彼女は義理チョコをクラスの男子『ほぼ』全員に配っていた。
 打たれ強さに定評のある上条はボロボロふらふらながらも立ち上がり、適当な椅子に腰掛けた。
「まあ、手作りクッキーが無難かなーって思ってるんだけど。一人一人に別のものを買う余裕もないし」
「……手作りクッキー」
「因みにボクは一人ひとり別々の」
「青髪君は。どうでもいい」
 姫神の辛辣な一言を受けて青髪ピアスが石化するのを横目に、上条は吹寄に話を振る。
「姫神は大丈夫だと思うけど、吹寄は甘いもの苦手だったりしないよな?」
「私は別に普通に甘いものも好きだけれど。けど貴様の手作りねぇ……」
「む、上条さんはお菓子作りも中々上手ですことよ? なあ土御門」
 本日二度目の死を迎えた青髪ピアスをつま先で小突いていた土御門は、上条の方へ目線を移してから一秒ほど考えて、
「……六十七点ってとこかにゃー」
「微妙!? いやそこそこか!?」
「なんだ、結局中途半端な出来なんじゃない」
 はん、と上条を見下したようにあざ笑う吹寄。
「……いいぜ、吹寄。お前が上条さんの手作りクッキーを微妙だっていうのなら、明日その舐めた幻想をぶっ壊してやる!!」
「いいわ、望むところよ!」
 ボス戦直前のようなテンションで宣戦布告をする上条と、それに真正面から応える吹き寄。
 ここで謎のファイティングスピリッツを発揮出来る辺り、なんだかんだで彼女も彼等と波長が合っているのだろう。

212前日とて彼の日常:2011/03/15(火) 03:38:33 ID:1nb3UyIg



「とはいっても、そう大したもん作れるわけでもないしなぁ……」
 学校で大騒ぎした帰り道、上条は一人呟く。
 彼は他の大多数と同じく幼いころから親元を離れて学園都市で暮らしているため、家事などは一通り出来る。
 自炊もしているので料理もそこそこ上手いのだが、別に極めようともしていないのでいつまでたってもそこそこである。
 それでも同居人は美味しい美味しいと食べてくれるが、彼女は基本的に「美味しい」と「すごく美味しい」でしか食べ物を評価しない人間なのでこれまた微妙なところだ。
 現にイギリス清教のシスターの料理を食べたときには彼の料理の500倍美味いと評価していた。確かにそれくらい美味かったが。
「なんか御坂とか高そうなヤツくれたしなぁ。お返しは普通のでいいんだろうか」
「呼んだ?」
「どわあっ!」
 顎に手を当てて考え込んでいた上条は、不意に背後から投げかけられた声に素っ頓狂な声を上げる。
 振り返ると、呆れたような顔をした御坂美琴が立っていた。何でそんなにビビる必要があんのよと、額の辺りがビリビリしている。
 上条は眉毛を横一直線にして、猫背で恐る恐るといった感じに訊ねる。
「……もし、御坂サン? つかぬ事を窺いますが」
「何よ。いっとくけど、明日は三倍返しよ」
「……その、二月十四日に頂いた義理チョコって、お値段何桁です?」
「べっ、別に、大したもんじゃないわよ。……本命じゃあ、あるまいし」
 回答は尻すぼみに消える。なにやら照れているような美琴を尻目に、上条はますます背中を丸めて同じ質問を重ねる。
「で、何桁?」
「なんでそんなに値段が気になるのよ。普通に五桁だけど、それが?」
 『普通』の感覚がお嬢様補正されている美琴の回答。対して庶民街道まっしぐらなパンピー上条は、最早お辞儀をするかのような姿勢になっている。
「五桁で、普通……。ゼロがよっつ、普通に、諭吉。それを三倍返し。最低でも一人三諭吉……」
 ふふ、ふふふ、と不穏な声が漏れる。手はだらんと垂らしたまま、顔も伏せたままで不気味に腹を震わせる。
 ただならぬ様子に美琴は困惑し、思わず一歩二歩と後ずさった。
「ちょ、ちょっと? どうしたの?」

213前日とて彼の日常:2011/03/15(火) 03:40:12 ID:1nb3UyIg

「ふは、ふははは! お返しだけで諭吉がいっぱい飛んでいく!! はははははは!!」
 両手を広げ、天を仰いで爆ぜるように大声で笑い出した上条。唐突に発狂した意中の異性を前にして、美琴は本気で慌てふためき出す。
 しかしながらこんなイレギュラーな状況の対処法を心得ているはずもなく。
「はははははは! お財布も軽くなって羽ばたけそう! ぶっはっはっはははは!!」
「お、落ち着きなさいよ! 別にアンタのお返しにそんなに期待してないから、値段なんて全然気にしないわよ!!」
「よし分かった確かに聞いたぞ御坂」
「……、え?」
 美琴はまたもや唐突に止んだ笑い声に疑問符を飛ばしたが時既に遅し。節約の鬼、策士上条の策は既に成り、言質は取られてしまっている。
「それじゃあお前のも上条さんの手作りクッキーで問題ないな! よし御坂、明日は楽しみにしてろよ!」
 何事も無かったかのように颯爽と立ち去る少年の背へ、怒声と共に電撃が飛んだ。
 予定調和である。



 いつも通りに美琴と鬼ごっこを楽しんだ(割と命がけだが)後に、上条は近所のスーパーへと向かっていた。
 狙いは夕方の安売りだ。自身の不幸や同居人の食費のお陰で上条家の家計はファイヤーカーなので、こういった節約(先の攻防など含む)は彼の習慣となりつつある。
「おい、上条当麻」
 と、そんな彼を待ち構えていたかのように一人の人影が進路を塞いだ。
 二メートルを越す身長に染めているらしい真っ赤な髪、相変わらずやたらに香水臭い不良神父。
「ん? ステイルか。なんで学園都市にいるんだ?」
 様々な事件で何度となく上条と共闘してきた魔術師ステイル=マグヌスは、なにかやりにくそうに視線を泳がせた後、咳払いを一つして懐から何か包みを取り出した。
「……その、これを」
 何か照れている魔術師を前に、上条は怪訝な顔で、
「……いや、俺BとかLとかな趣味はないんで」

214前日とて彼の日常:2011/03/15(火) 03:42:19 ID:1nb3UyIg

 沈黙。ステイルの表情が、十四歳の少年らしいものから平気で人を焼き殺す魔術師のそれへと移り変わっていく。
 あ、これはまずいか? と思った上条が動くよりも早く、ステイルはいつの間にか手に持っていたカードを上条の額にペタリと貼り付ける。
 一瞬固まった後に、鞄を持っていない左手でそれを取った。
 見る。見覚えのあるカードだ。そう確か、ルーンの
「――Kenaz」
「ってあぶなっ!!」
 ステイルの声に合わせてルーンが発火する。上条は間一髪でルーンを宙に放ったので手が焼失することは無かったが、散った火花の一つが髪に引火した。
「うおっちゃあああああ!! ハゲる! 焦げてハゲるぅぅぅぅぅ!!」
「いちいち茶化すな鬱陶しい。先月彼女から貰ったチョコのお返しだ、神裂からのものも一緒に入っている」
「なに落ち着いてるんだよこれ早く消せよ! 二度目の死は毛根の死でしたとか洒落にならねえぞ!!」

 結局付近の公園の水道の水を頭から被ることで事なきを得たが、その頃にはステイルはどこかへと行ってしまっていた。
 雨でもないのに頭からズブ濡れになった上条は、公園で遊んでいた子供達からの容赦ない視線の中でポツリと一言
「……ってか、ここまで来たんなら直接渡していけよ」
 あの厄介な十四歳は、インデックスに対しては妙にピュアである。



 濡れ鼠のまま街を歩くのも何なので、髪が乾くまでベンチに座ってボケーっとすることにした上条。
 まだまだ風は冷たいけれど寒くは無い。暑かったわけでもないのだが(熱かったが)どこか心地良い。
 夕の空が焼けていくのをぼんやりと見つめながら、気が抜けたのか彼は次第にウトウトし始める。
 寝るならさっさと寮の部屋に戻るべきなのだが、それすら億劫になりつつあった。
 しかし、そんな甘美なまどろみを破る声が一つ。

215前日とて彼の日常:2011/03/15(火) 03:45:09 ID:1nb3UyIg

「……ッ! てめえ」
 重い瞼を上げて見てみれば、どこか下っ端臭のする金髪の男が眼前で顔を歪めていた。
 上条は記憶を探る。……なんか見覚えがある気がするのだが、どうにも思い出せない。或いはこのまどろみから抜け出せば思い出せるかもしれないが、それも面倒だ。
 結論は出た。
「……あと五分」
「もー、そんなこと言って五分後にはあと十分とか言うんでしょー……って違えええ!!」
 おい起きんかいコラと襟首を掴まれてガクガク揺さぶられるも、上条は「うあー」とか「んがー」とか気の抜けた返事を返すばかり。
 痺れを切らした下っ端は拳を握りしめるが、それを横合いから別の手が制した。
「駄目だよ、はまづら」
「だけど滝壺、こいつスキルアウトの解体のときに……」
 なにやら騒がしくなってきたので、流石に上条も目元を擦りながら覚醒した。
 見覚えのあるいつぞやのジャージ男と、見覚えの無い小動物を思わせるジャージ姿の女の子が視界に入った。
「……えーと、なんだっけ、馬鹿面?」
「は・ま・づ・ら! テメエわざと間違えてんだろ!?」
 そうだ、思い出した。浜面仕上。かつてスキルアウトのチームを率いていた人物で、諸事情で上条が説教して真正面から殴り飛ばした人物だ。
 そのときは随分と見上げた根性なしだったのだが、今の彼はどことなく雰囲気が違った。
 それは彼自身の内から滲むものであると共に、
「……?」
 その横の女の子の存在によって生まれるものだ。
「……なあ、その、子、かの、じょ?」
「はぁ!? あ、ああ。一応そうだけど」
 上条は激怒した。そして叫ぶ。リア充爆裂しろ、と。
 彼が変わったのは分かる。今の彼はきっとマイナスなんかではない。彼女が出来たのだって、彼がその手を取った結果なのだろうと思う。
 だがそれはそうとして憎い。リア充が憎い。理論とか理屈とか抜きにしてかわいい彼女を連れている人間を見ると憎いと思ってしまうのはもはや摂理と言ってもいいのではないだろうか仕方ないじゃない非リア充なんだもの。
 そんな、真に満たされない人々に聞かれたら共感半分殺意半分を向けられるであろうことを考え、暗いオーラを発する上条。

216前日とて彼の日常:2011/03/15(火) 03:46:32 ID:1nb3UyIg

「いいぜ…………、なんかもうその幻想をぶち殺す!!」
「理不尽!?」
「大丈夫、私は理不尽にぶち殺されるはまづらを応援してる」
「滝壺さんそれは応援しちゃ駄目!!」
「私も応援するー、ってミサカはミサカは後ろから抱き着いてみたり!」
 流れでワーワーやっていると、またなにやら聞き覚えのある声が聞こえた。
 辺りを見回してみれば、浜面の彼女らしい小動物系の少女の腰に更に小動物的なちんまいのが抱きついていた。
 なんだかデジャヴだ。
「あれ、ラストオーダー? 何やってるんだ、こんなところで」
「見つけましたよ上位個体、とミサカは照準をアホ毛に合わせます」
 ジャコっと物騒な音が聞こえた。これもまた激しくデジャヴである。
「御坂……妹だよな。またゴーグル取られたのか」
「また貴方のところに逃げ込んだのですね、とミサカは上位個体から視線を逸らさずに答えます」
 打ち止めと御坂妹。共にとある実験にて作られた『妹達』と呼ばれる御坂美琴のクローンだ。もっとも打ち止めの方は彼女達より大分ちんまりしているが。
 以前にも打ち止めが御坂妹の軍用ゴーグルを奪って姉妹仲良く(かどうかは微妙なところかもしれないが)追いかけっこをしているところに遭遇したことがある。
(なんかあの時飽きたとか言ってなかったっけー、と上条は思い起こしてみたり)
 脳内で彼女らの物真似をしてみたが誰もツッコミしてくれなかった。当たり前だ。
「さて、逃げるのを止めたということは覚悟はいいのですね? とミサカは引き金に指をかけます」
「きゃー助けてー、ってミサカはミサカは一般人を盾にしてみたり」
「え? 何? 俺?」
 御坂妹の銃口から逃れるように、打ち止めは浜面の後ろに回りこむ。
 対していまいち状況を飲み込めていない浜面は、前後のミサカを交互に見てはオロオロしている。
 御坂妹は一瞬とても面倒くさそうな顔をして(基本無表情なのにこういう表情は出来る)更に一瞬考えてから、
「まあいいや、とミサカはズダダダダー」
「あ」
「あっ」

217前日とて彼の日常:2011/03/15(火) 03:47:52 ID:1nb3UyIg
「ぎゃああああああああ!!」
「は、はまづらぁぁぁぁぁぁぁァァァ!!」
 かくして、浜面仕上の短いリア充人生は終わりを告げた。
 などということも無かったが、超連射されたゴム弾を全身に浴びた浜面は理不尽にも大地に倒れ伏した。
 余りの惨状に上条は一瞬言葉を失ったが、すぐに思い直して再び暗いオーラを発した。
「まあいいか……どうせコイツ彼女から本命チョコ貰ったりお返ししたりそのままいただいちゃったりしてるんだよ畜生。上条さんも出会いが欲しい」
「ズダダダダー、とミサカは掃射を続けます」
「ほぎゃああああああああ!!」
 そして気付かない間に第二の盾にされていた上条も浜面と運命を同じくして公園の土に頬ずりすることとなった。
 因みにこれは不幸というよりは天罰である。
「あー10032号悪いんだー、ってミサカはミサカは責任転嫁!」
「いい加減に観念しなさい、とミサカは何事も無かったかのように上位個体を追います」
 かくして嵐は通り過ぎ、残されたのは二人の被害者と普通に無傷な滝壺理后。
 しばらくミサカ姉妹のほうを目で追っていた彼女は、やがて浜面の傍にしゃがみこむと、つんつんと指先で彼の背中をつつく。
「大丈夫。私はそんないじられ役の二人を応援してる」
 暗に「諦めろ」と言われているようで、かえって辛い応援だった。



 やはり割とすぐに復活した上条は、浜面らを放置してさっさとスーパーへ行き買い物を済ませてきた。
 今日の夕飯と明日の朝食、それとクッキーの材料なんかも購入し、安売りとはいえなかなかの出費になってしまった。
 これは冗談ではなくお財布が空を飛べそうだ。
「はー……。にしても、今日はなんか妙な奴らに会うなぁ」
「……それはこっちの台詞だクソッタレ」
 声は真正面から。
 視線を上げると、そこにはアルビノ系美少女の鈴科百合子が可憐な花の如く立っていた。

218前日とて彼の日常:2011/03/15(火) 03:51:01 ID:1nb3UyIg

「……あ、どうも」
「じゃねェよ誰が鈴科だ。ンないい加減な方法でスルーしようとしてンじゃねェぞ三下が」
 訂正、そこには白髪赤目の一方通行がいかにも不機嫌そうに立っていた。
 正直今日は割と疲れたのでスルーしてさっさと帰宅したかったのだが、運命は基本的に上条には味方しない。
 しかし一方通行と正対したところで、特に話題など無い。彼とは何かと縁があるが、だいたい会うときは切羽詰った状況なのでなごやかに話をしたことも無い。
 呼び止めた一方通行にしてもそれは同じらしく(単にスルーされそうになったのが気に食わなかっただけっぽい)、やや気まずげに視線をさ迷わせた後、上条の買い物袋で止まる。
「……それ、アレか。ホワイトデーの」
「え? ああ、クッキーでも作ろうかと思って」
 軽く買い物袋を持ち上げて応える。一方通行の視線はその動きに合わせて上下した。
「ってか、なんだ。お前もチョコ貰ったのか」
「……いらねェって言ったンだがな。あのガキ、最終的には受けとらねェと代理演算切るとか言い出しやがったから、嫌々」
 あのガキ、というのは打ち止めのことだろう。ロシアで一緒にいたところに遭遇したことがある。
 代理演算というのがよく分からなかったが、まあ一方通行を説得する材料に成り得るなにかしらなのだろう。
「まァ受け取った手前何かやるべきなンだろうってのは分かるンだが、ンなイベントになんざ全く縁が無かったから勝手が分からねェンだよ。やっぱそォいう菓子類が一般的なのか」
「まあ、無難なとこではあるんじゃないか。最近は色んなとこでホワイトデー用のヤツ売ってるし」
 なんだか初めて平和な会話が成立している気がする。学園都市第一位の怪物といえど、こういうことで頭を悩ませたりするんだな、と上条は少しばかり和む。
 もしやこのまま仲良い感じになれるんではなかろうかと淡い期待を寄せるが、

「おー、久しぶりなのよな」
 残念ながら、運命は基本的に彼には味方しない。よってそんな幻想は粉々に打ち砕かれることとなる。

219前日とて彼の日常:2011/03/15(火) 03:52:58 ID:1nb3UyIg

「えーと、そっちのアルビノ系美少女は彼女さん?」
「建宮!? ひさしぶりだけど被せボケはマズイって!! てかなんで学園都市に!?」
 現れたのは建宮斎字。神裂なども所属する『天草式十字凄教』の元教皇代理だ。
 クワガタみたいに真っ黒な髪を上条よりも派手に逆立てて、首から小型扇風機をぶら下げていたり靴紐がやたら長かったりと、周囲の環境に溶け込むことを重視する天草式にしては奇抜な格好をしているのが特徴だ。
「いや、単純に暇だったのよな。因みに五和もこっちに来てるぞ」
「軽っ! 天草式フットワーク軽すぎるだろ!!」
「いやいや、そこかしこで女をたらしこんでるお前さんには負けるのよな。そちらの彼女は何人目なのやら」
 ミシッ、と音が聞こえた。音源は一方通行の持つ杖。
 ああこれはヤバイ、と上条は慌ててフォローに回る。
「いや建宮、コイツ男だから! だいたい上条さんはそんなに女の子と縁がありません!!」
「おお、男なのか。あんまりにもひょろいから間違えたのよな。すまんすまん」
 ミシミシという音が大きくなる。
 地雷原を横転で転がりまわる建宮を前に、上条はフォローの鬼となることをここに決意する。
 運命がなんだ、不幸がなんだ。そんな曖昧なものは強引に踏破するのみ。
「しっかしアレだな、お前さんはBとかLとかもいけちゃう感じなのか?」
「いやだから違えよ! 別に普通に友人だって!!」
「あなたにもお友達が出来たんだね、ってミサカはミサカは再び抱きついてみたり!」
 と、上条が必死に取り繕っているところに打ち止めが登場した。
 もう嫌な予感しかしないのだが、先手を打とうとした時には既に遅かった。
「ああ、なるほど。そちらの白髪少年はBとかLとかじゃなくロリとかコンだったか。これは失礼したのよな!」
 イメージとしては、地雷原に一掃。
 ブチッという音と共に、一方通行がチョーカーに手を伸ばした。
 割と命がけの鬼ごっこ、第二ラウンド開始。



 小一時間ほど走り回ってから、最終的に建宮を差し出しすことで一方通行から開放された上条。
 夜の帳は既に降り、いつもより大分遅い帰宅となってしまった。
(ああ、今日はなんか疲れた。さっさとクッキー作って寝ようそうしよう)
 溜め息と共に自室のドアを開ける。

220前日とて彼の日常:2011/03/15(火) 03:55:32 ID:1nb3UyIg

 瞬間、噛まれた。
「あだだだだだだだだ!! ただいまより前に噛み付くなインデックス!!」
「遅いんだよとうまお腹すいたお腹すいたお腹すいた!!」
 そういえばラスボスがまだ残っていた。
 しかし上条のHPはもう残り少ない。まともに相手をしては待っているのはゲームオーバーのみだ。
(……とは言っても先手を取られた上条さんに成す術は無いのであった。ちゃんちゃん)
 諦めの境地というやつだ。
 もう大概慣れっこなので、頭に噛み付かれたままで上条は室内へと歩みを進めた。
 買い物袋を一旦床に置き、鞄も適当に放り投げる。
 と、そこでテーブルの上にあるものが視界に入った。
 あらかじめ彼女のおやつ用に買っておいたケーキだ。まあそんなにお高いものでは無い普通のショートケーキ。それがイチゴを上に乗せたまま、食いかけで放置されている。
 大変ご立腹なインデックスに頭をかじられながら、上条は少し考えてから頬をかく。
(……いらない心配かけちまったみたいだな)
 くだらないトラブル続きだったので遅くなることを連絡してなかったのだが、待っていた彼女はそれなりに真剣に心配していたようだ。
 彼の帰りが遅くなるときは、大抵何らかのトラブルに首を突っ込んだときだ。そんなとき彼女がどんな気持ちで一人待っているのか、上条は知らない。
「……ほら、インデックス。いい加減離れなさい。晩飯作るから」
「ううーっ」
「んで、そのケーキもさっさと食え。賞味期限今日までだったろ、確か」
「あっ。う、うん。分かったんだよ」
 少しうろたえたようにしながら、インデックスがテーブルに向かう。
 少し微笑んでからそれに背を向けて、上条は買い物袋を再び持ち上げてから冷蔵庫を開けた。
 袋の中身の冷蔵品を冷蔵庫へ移し終えて一旦扉を閉め、少し考えてから再び開く。
 中を探って、食べかけのチョコを取り出した。それを手にとって、一考。
(……ま。お返しのクッキーを一人分だけチョコチップ入りクッキーにしても、特に問題は無いわな)
 少し笑ってから、チョコを冷蔵庫に戻す。
 夕食をさっさと作ってしまおう。クッキー作りに一手間増えることになったわけだし。

221■■■■:2011/03/15(火) 03:57:52 ID:1nb3UyIg
しまいです。
あんまホワイトデー関係無い気もしますがまあいいや。

世間はホワイトデーどころじゃありませんが、まあ鬱々としてても仕方無いですし。
こんなんでも楽しんでもらえれば幸いです。

222ななの:2011/03/15(火) 13:30:40 ID:6B/o0YdQ
すんごい面白かったの
また面白いの作ってなの(春上風に)

223■■■■:2011/03/15(火) 22:41:47 ID:lH8PjeXo
>>221
GJ!!宣言通りのホワイトデーネタ投下、乙です。
随所から滲み出る禁書風味は流石の一言。原作ネタもふんだんに盛り込まれてて、見つける度に笑わせてもらいました。
メインキャラ総出演のドタバタコメディにも関わらずどのキャラも魅力的です。三馬鹿+二の掛け合いはほんと良いなぁ。
コメントはごもっともですね、沈んでいても仕方ありません。現に、自分はこの作品にとても癒されました。
このような時に、だからこそ、投下してくれて本当にありがとうございます。
『空から〜』の続きも期待しています。無理はなさらず、ご自身のペースで頑張ってください。

224■■■■:2011/03/16(水) 15:28:20 ID:niwNYwJ2
そういえば、禁書ってちゃんと西暦何年って明記されてたっけ?

225■■■■:2011/03/16(水) 23:43:04 ID:ylz/i2kA
>>224
明記されていないはず

226ななの:2011/03/17(木) 13:02:58 ID:SwlMaU.M
あれよね
最後のところが和むのよね(今度は吹寄風に)

227■■■■:2011/03/17(木) 14:53:49 ID:l1wB.w8s
>>226
ちゃんとしたコメしてあげれば?

228ななの:2011/03/17(木) 22:54:11 ID:SwlMaU.M
>>227
ごめんなさい・・・・。
>>221
とてもいい作品だと思います。
私はデルタフォースの会話が好きですね。
あと美琴が普通に5桁って、さりげなくお嬢様かもし出してるとこや、
建宮が一方さんの地雷踏みまくってるとこが。
次回作を待っています。
でも、プレッシャーを感じずに自分のペースで頑張ってください。

229■■■■:2011/03/17(木) 23:34:10 ID:Y1pw6RdE
>1.このスレはsage進行です。レスする際には必ずメール欄に半角で『sage』と入力しましょう。
>1.このスレはsage進行です。レスする際には必ずメール欄に半角で『sage』と入力しましょう。
>1.このスレはsage進行です。レスする際には必ずメール欄に半角で『sage』と入力しましょう。
>1.このスレはsage進行です。レスする際には必ずメール欄に半角で『sage』と入力しましょう。
>1.このスレはsage進行です。レスする際には必ずメール欄に半角で『sage』と入力しましょう。

230■■■■:2011/03/18(金) 13:41:44 ID:a1TXxi3M
>>195
今更だけど質問二つほど。
イザベラと言う人物はオルソラの姉、という設定で決まりですか?
行間は何年前の出来事なのでしょうか?

お答えできないのなら、それでも結構です。

231from-ING:2011/03/18(金) 15:05:35 ID:RKWWK4AM
あー


お久しぶりです


『希望ト絶望ノ箱(オペレーションパンドラ)』の作者from-INGです

覚えてますか?

もう半年ほど更新してないので皆さん忘れているだろうと思っていたのですが

いくつかのコメントで『オペレーションパンドラまだー』というのをみた時は
涙が溢れそうになりました

では、久しぶりに投下させていただきます

いつもの通りに注意点をいくつか

―――オリキャラ注意
―――作者には文才が皆無です
―――短い←ぇ

それでもよろしいという方は、どうぞー

232from-ING:2011/03/18(金) 15:07:02 ID:RKWWK4AM
第二章[奔走する主人公と暗躍する主人公 Hero_And_Hero]

<13:11 PM>



「アンタに何がわかる?」
 ポツリと出た、その言葉にはどれほどの意味が込められていただろう。
「アンタに……何がわかるっていうんだ」
 搾り出すような声。まるで世界の不条理を知った子供が、感情を押し殺したような、そんな悲しい声だった。
 その声の主は、かの有名な超電磁砲(レールガン)御坂美琴であり、そうではない。
 肉声という観点から見るのなら声の主は御坂美琴で正解だろう。しかし心の声という観点から見るのならその声は決して美琴のものではないのだった。
 精神操作(メンタルオペレート)。
 精神系能力の一つであるその力を使う人物の言葉は、美琴の肉声へと変換され、廃屋の中へと空しく響く。
「この学園都市が、いったい何をやっているかアンタにわかるのか? 表しか見ずに裏の世界を見ないアンタにわかるのか? 絶対能力者進化計画なんてまだ序の口だ。子供の脳いじくりまわして実験してるのがおかしいことだと何故気づかない……」
 震える美琴の言葉は、一人の少年へと向けられていた。
 突き刺さる鉄筋と巻き上がったホコリの中心に、ゆらりと立ち上がる人影。
 その少年の姿を見て、ある人はこう言うだろう。
 ―――無謀だ、と。
 少年の体はボロボロだった。所々からは血が吹き出ているし、立ち上がるその足もガタガタと震えて、もう立つことさえままならない。
 まわりに突き刺さる鉄筋に置く手に力を入れ、かろうじて立っているような状態だった。
 けど、倒れない。死んでいなければおかしい攻撃を何度も受けたというのに、少年は絶対に倒れない。
 それは何をどう考えてもおかしなことだった。いくら奇怪な右手を持っているにしても、超能力者(レベル5)の全力攻撃をうけて、いまだ立っていられるはずはない。
 例えてみるならば、銃で足を撃ちぬかれた人間が何事もなく立っているようなものだ。
 どうしてそこまでボロボロなのに、少年の声にはここまで強さが込められているのだろう。
 どうしてそこまでボロボロなのに、少年の身体は地面へと倒れこまないのだろう。
 状況を見れば、明らかに分は美琴のほうにある。少女が少年をなぎ倒すのは、大人が子供を捻るのと同じくらい簡単なはずだ。
 しかし。
「お前だって、気づいてるだろ………」
「―――――――ッッ!!!」
 ザリッ…と。
 上条がゆっくりと踏み出した足に呼応するように、美琴の足が一歩後ろに下がる。
「どんな理由があったって……それが誰かを傷つけていい理由になんて、なりはしないってことくらい……」
「そんなの…綺麗事だ…」
「お前がいったい……何を目的として、何をしたくて、何を過去に味わったかなんて、俺にはわからない」
 だけど、一つだけ上条にはわかったことがある。
 精神操作は、決して個人的な恨みで行動してるわけじゃない。
 自分のことを棚に上げて、理不尽な怒りを周りにぶつけているわけじゃない。
 己のために、力を辺りに撒き散らしているわけじゃない。
 それだけわかれば十分だ。
 上条当麻には十分だ。そいつのために立ち上がる理由には十分だ。
「だから俺は……お前と『話』がしたい」
「ふざ、けるな! アンタにいったい、何を……何が出来るってんだよ!!」
 バチィ! と少年の横を青白い電光が駆け抜けた。その余波だけで上条は倒れそうになる。

233from-ING:2011/03/18(金) 15:07:51 ID:RKWWK4AM
第二章[奔走する主人公と暗躍する主人公 Hero_And_Hero]

 けれど、上条当麻は歯をくいしばり地を踏みしめる。前へ前へと、進むため。こちらから、歩み寄るために。
「お前が、おまえ自身が救いたいっていう人たちがいるんだろうけどさ、だからって他の人を不幸にしちまったらダメだろ」
「……うるさい」
「思い出せよ、本当の気持ちを。こんな間違ったやりかたじゃなくたって、絶対に皆が笑える方法があるはずだ」
「……うるさいっ」
「一度は諦めた。一度は絶望した。一度は挫折した。だけど、もう一度希望を持ったっていいはずだ。お前のやってることは正しくないけど、それが幸せを諦める理由にはならない」
「うるさいっ!!」
「いい加減前を向けよ! 中途半端に後ろを見るようなことしてないで、きちんと後ろを振り返ってから前を見ろよ!」
「――――――ッ」
 トン、と、美琴の身体が柱に背をついた。後ろはない。もう下がれない。もう、逃げれない。
 それでも、上条当麻は止まらない。ゆっくりと、しかししっかりとした足取りで美琴のほうへと真正面から歩み寄る。
 横に、などという概念はなかった。そうやって逃げることは自分の何かを壊してしまうような気がして、精神操作はそんなことを良しとしない。
 自分のやっていることを自分で否定してしまうような気がして、精神操作はそんな行為を許せない。
(……っ、無理だッ)
 けれど、前にある存在はあまりにも大きい。幻想殺し(イマジンブレイカー)という一つの力ではなく、上条当麻という人間はあまりにも大きかった。
 自分が所持している超能力者(レベル5)の力などとは比べ物にもならないほど。
 怖い。純粋にそう思った。
(なんで邪魔するんだ……なんで否定するんだ……なんでわからないんだ……僕の考えは間違ってない。間違ってない!)
 精神操作はわからない。
 どうして、自分の行為を邪魔されなければならないのか。
 間違っていないはずなのに。犠牲はつきものだ、と納得するのが普通なはずなのに。
 どうして、上条当麻にはそれがわからず、わかろうとしないのか。
 理解できない。精神操作の思いに反応してか、美琴が唇をかみ締める。
 どうして、理解してくれない?
 どうして、わかってくれない?
 どうして。
 どうして?
 どうして!
「どうして、誰も僕らの話を聞いてくれないんだァアアアアアああああああああああああああああああああッ!!??!!??」
 いつの間にか、声として思いが飛び出たことに精神操作は気づかない。ただ、目の前にある『乗り越えるべき壁』を壊すため、”彼”は美琴(チカラ)を開放する。
 手加減や容赦などというものは存在しなかった。
 ッバチチチチチチチチチッッ――――!! と上条を十億ボルトの電流が包み込む。
 そして―――。


「いつまで言い訳するつもりだ!」


 バキン、と右手に触れた電流がその姿を消し、精神操作の眼球に上条当麻を映し出す。
 精神操作に、現実から目を背けるなとでも言わんばかりに。
「当たり前のことだろうが。お前が誰にも話そうとしないなら、誰が聞いてくれるってんだよ」
 いつの間にか、上条と美琴の距離はお互いに触れられるほどに近づいていた。
 やられる。自然とそんな考えが精神操作の頭の中によぎる。上条当麻の武器はその右手に宿る『幻想殺し(イマジンブレイカー)』だ。

234from-ING:2011/03/18(金) 15:08:46 ID:RKWWK4AM
第二章[奔走する主人公と暗躍する主人公 Hero_And_Hero]

 それは、異能の力ならば触れただけですべて打ち消すといった反則まがいの力を有している。その右手が御坂美琴の頭に触れるだけで精神操作の能力は完全に遮断されるだろう。
 いくつもの下準備のすえにここまで操れるようになった御坂美琴を、もう一度手中に収めることはほぼ不可能だ。
 そして『希望ト絶望ノ箱(オペレーションパンドラ)』の起動に最低限必要なものは超能力者(レベル5)の力がなければ手に入れることが難しいことは、理論上わかりきっている。
 つまり。
 ここで上条当麻に御坂美琴を取り返されるということは、作戦の失敗へと繋がることとなる。
 嫌だ、と首を振りながら、美琴が腰が抜けたように柱を背に座り込んだ。
 目尻に溜まる涙は、美琴のものかそれとも追い詰められた精神操作のものか。どちらかなんて自分にもわからなかった。
「間違えてない……間違えてなんかいない! 偽善者が口を開くな! 僕らは間違えてなんかいないんだ! だって、どれだけ考えたってこれしか答えは出なかったんだから! 事を成すにはソレ相応の犠牲がないといけないんだよ! 血が流れないことには変わるものだって変わりはしないんだ」
「……、」
「アンタだって誰かを止めるために拳を振るっているだろ!? それの延長線上じゃないか! 殴っても止まらないなら殺すしかない! だって、止めないともっと血が流れるんだから! どっちを優先するかなんて考える必要もないだろう! 一人の悪党のために十人の罪もない命を流す理由なんて、この世にあってたまるか! これ以上、『あの子達』と同じようなことが起きてたまるかァァァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!???」
 直後だった。
 ポン、と。
 美琴の頭に軽い、軽すぎる衝撃が走った。一瞬、精神操作はそれがなんなのかわからなかった。目に映る『それ』が予想外すぎて、”彼”には理解できなかったのだ。
「………ぇ?」
 上条当麻は、右手を握っている。硬く堅く固く、握っている。
 けれど、それだけだ。
 精神操作の目を引くのは、少年の右手ではない。
 美琴の頭を、優しく撫でる上条当麻の”左手”だった。
「お前の何もかもを間違ってるなんて言ってないさ。いまだにお前が何を理由に行動を起こしているのかはわからないけど、その理由に間違いはないはずだ。だけどさ、お前はやり方を間違えたんだよ。殴っても止まらないなら、もう一回殴れ。それでも止まらなかったら、どうしても自分の力だけじゃどうしようもなくなったら、お前は誰かに助けを求めるべきだったんだ」
 そして、上条当麻は御坂美琴の向こうにいる精神操作に向かって手を差し出した。
 その手は、決して幻想を殺してしまう手なんかじゃなくて。
 何の変哲もない、普通で飾り付けなんてなくて。
「今がその時だ、なんて言わない。けど、お前にその気があるなら俺にお前の話を聞かせてほしい」
 ただ一人の上条当麻という人間の左手だった。
(……あぁ)
 だから。
 それゆえに。
 精神操作はそんな『救いの手』を、取りたいと思った。
 けれど、そう簡単にその手を取ることはできない。精神操作は、組織の一員だ。仲間を裏切ってまで、上条当麻の手を取る価値があるのか、”彼”にはわからなかった。
 そんな考えを知ってか知らずか、上条は笑ってこう言った。
「安心しろ。お前がどんな選択をしようが俺はお前を責めねえよ。けど、その選択に間違いがあったら俺が止めてやる。だから、自分が納得できることを自分で決めろよ」
 そして、精神操作は決断する。自分で考え、自分で思ったすえにきちんとした答えを自ら出したのだ。
 御坂美琴の手が持ち上がる。
 精神操作の思いに連動して。
 そして、その手は。
 上条の手を―――。

235from-ING:2011/03/18(金) 15:09:44 ID:RKWWK4AM
第二章[奔走する主人公と暗躍する主人公 Hero_And_Hero]

 手を―――
 握ろうとした、直後だった。


 美琴の視界が回転する。
 自分の身に何が起こったかを確認する前に、精神操作(メンタルオペレート)は美琴が地面に叩きつけられていることだけを理解した。


(…………は?)
 いきなりのことに、精神操作の思考が停止する。
 何が起きたか、何をされたか、何をしているのか、それらすべてを理解しようとする前に、
「し、白井っ!?」
 上条のそんな言葉で現状を把握する。
「やっと……やっと見つけましたの。さぁ! お姉さまは返していただきますわよ!!」
 白井黒子。風紀委員(ジャッジメント)の一人にして、御坂美琴の絶対無二のパートナー。
 彼女の能力は空間移動(テレポート)。点と点とで移動するその能力ならば相手の死角に潜り込み奇襲することも簡単だろう。
 そして”彼”の中に『どうしてここに白井黒子がいるのか?』という疑問はない。
 彼女は呼ばれただけだ。
 ”上条当麻に、呼ばれただけだ。”
(はめられた……?)
 考えれば、不自然だった。何かもがおかしかった。
 どうして、上条当麻は危険があるのにも関わらず佐天涙子を一人で逃がしたのか。
(……それは、白井黒子を呼ぶため?)
 どうして、上条当麻はいつものように自分の敵を殴らなかったのか。
(……それは、御坂美琴を傷つけたくなかったから?)
 どうして、誰かを巻き込むことを嫌う上条当麻が白井黒子に助けを求めるのか。
(……それは、事前に話をつけていたから?)
 すべて想像にして妄想だ。けど、そう思ってしまうのも仕方ないのかもしれない。
 裏切りが当たり前の暗部を生き抜いてきた”彼”は必然に裏切りを受け入れている節がある。
 つまり、裏切りがないことなんてありえない、と。
 そして。
「―――ッ!!」
 上条当麻は、思わず手を美琴の方へと伸ばしていた。上条に悪意はなかった。ただ、一人勘違いしている白井をどけようと手を伸ばしただけだったのだろう。
 けれど、そんな事情をすぐに理解しろというのは精神操作には酷な話である。
 それは、咄嗟にといった表現が一番似合うような行動だったが、混乱した精神操作にそんなことがわかるはずもない。
 ”伸ばされた右手(イマジンブレイカー)”を見てそう思えという方が―――無理である。
 結果。
「ッ! 白井!」
「―――ッ!?」
 交渉は決裂した。
「あ……は―――――――はははははははははははははははははははっ!!!」
 上条が反射運動にも近い速度でそこを飛びのいた直後だった。
 バッチィィィィィィ!!! と目が焼けるほどの高圧電流が御坂美琴の周りを駆け巡った。
 彼女の顔からは感動の涙は枯れ、凄然とした怒りの笑みが溢れかえる。
 上条の言葉に咄嗟に空間移動をした白井が視界に現れた瞬間、美琴の電流が空を走った。

236from-ING:2011/03/18(金) 15:10:23 ID:RKWWK4AM
第二章[奔走する主人公と暗躍する主人公 Hero_And_Hero]

 瞬間。
 白井を庇うように伸ばされた上条の右手が、彼女の電撃を打ち消す。
「待ってくれ! 今のは……」
「黙れェェェええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」
 一時的に活動を停止していた鉄筋が再起動を果たす。メキメキ、と何かを軋ませる音を響かせ宙に浮く鉄筋は何の前触れもなく上条の方へと射出された。
 上条の後頭部を吹き飛ばすようなルートで、だ。
「何を、ボーっと!」
「ッつぅ!」
 白井に腕を掴まれ、強引に地面に叩きつけられた上条の頭上を鉄筋が通過する。肌を削るような空気の動きが少年に戦闘の再開を無理やりにも感じさせた。
 眼前で電気を纏う電撃姫を見て、上条は思わず声を荒げた。
「くそっ!」
 どこで間違えたのか。何が間違っていたのか。いや、何も間違ってはいないのかもしれない。
 ただ、『運』が悪かっただけだ。行動、タイミング、言動、それらの要因が偶然の一致を果たしこういう結果を導き出した。
 ただついてなかっただけ。『不幸』ゆえの、この結果。
「ちっくしょうが!!」
 それゆえに、上条当麻は納得できない。
 認められるわけがなかった。受け入れられるわけがなかった。
 そんなくだらない理由で納得するのは嫌だった。
 だから、上条は諦めない。もう一度立ち上がり何度でも何度でも、手を伸ばすことを、繰り返すことを、心に決める。
 けれど。
「あっはははははははっはは!! 何が『話を聞かせて欲しい』だ! 何が『お前が決めろ』だ! ふざけるな! 都合のいいことばかり言って何にもしないつもりだったんだろ! お前だって研究者と同じで、誰かを騙して何かを得ることしか考えちゃいないんだ!」
 もう遅い。
 精神操作は、上条当麻を信じない。
 普通ならこうはならなかった。精神操作の能力で相手の心情を見透し、言っていることが本心かそうでないかの判断は容易にできるはずだった。
 しかし、上条には右手がある。すべての異能の力を無効化する、幻想殺し(イマジンブレイカー)がある。
 その事実が、上条から読み取った心情に疑惑を持たせてしまう。
 信じたかった。けれど、信じられるはずがなかった。
 現に、精神操作は上条当麻に一度騙されたと思ってしまっている。
 だから、信じれない。精神操作は上条当麻を信じれない。
 上条は自分を騙そうとしたわけではないかもしれない、という考えを信じれなかった。
「信じ……たかったのに…、」
 ボソッ、と美琴の唇が微かに震えた。
 立ち上がり、手を握る。
 バチバチ! と散る電気を隠そうともせず、周囲に出来上がった磁気に石ころが反応する。
「動くなよ、白井黒子。キミの身体の一部が動いた瞬間、僕は全方位に電気を流す」
「ッ…」
 ピクリと手が動いた白井の行動に先に釘を打ち、精神操作は上条に視線を向けた。
 美琴の腕が持ち上がり少年へと向けられる。
 直後。
 ゴッ!! と上条の横を青白い槍が通過した。白井がビクリと身体を震わせる。
 けれど、少年は構えなかった。決して戦いのスタンスを取ろうとはしなかった。
 それが、精神操作にさらなる怒りを抱かせる。

237from-ING:2011/03/18(金) 15:11:01 ID:RKWWK4AM
第二章[奔走する主人公と暗躍する主人公 Hero_And_Hero]

「決めたよ。僕がアンタに聞かせる話なんかない。アンタの差し伸べた手なんざ誰が取るかよ」
 そして、と美琴の口が言葉を区切り。
「そんな僕をアンタはどうしてくれるんだっけ?」
「止めてやる」
 言葉に迷いはなく、それは『戦闘再開』の合意でもあった。
 ギリッ、と美琴が奥歯をかみ締めると同時に外で雷が鳴る。
 数秒の沈黙。
 上条当麻が拳を握り、白井黒子が演算を開始し、精神操作が行動を起こそうとした、
 瞬間だった。


『めーでーめーでー。ターゲットの発見をご報告どーぞー』


 緊張感のない、そんなあっけらかんとした声が廃屋に響いた。
「………、」
 美琴が眉をひそめて、数度か上条と白井に視線を移してから、音源である通信機を太ももに隠したホルダーから取り出してスイッチを押す。
 不愉快を隠さずに、美琴は口を開いた。
「なに!?」
『なんだよ、ボクがわざわざ連絡入れてやったってのにそんな態度はいたたけないなぁ』
「ミーナ=シンクジェリ。わざわざ僕の戦闘中に連絡を入れるほどの用件はなんだと聞いてる!」
「―――ッ!」
 ミーナの名前を出した瞬間、上条が目を見開いた。
 前から因縁でもあるのか、クエイリスとの激突した時に名前だけでも聞いていたのか。
 どちらにせよ、精神操作にはどうでもよかった。
『あっはー♪ 怒ってるね。よっぽど幻想殺し(イマジンブレイカー)との戦闘が楽しかったと見える』
 ミシミシ、と通信機から変な音が漏れた。しかし、美琴は表情を崩さず、淡々と言葉を述べる。
「茶化すな」
『茶化してなんかないよ。純粋な興味ゆえの質問。まぁいっか。本題、キミの「ノルマ」を見つけた。塔の下暗し、だっけ? 意外と近くに居たからビックリしちゃった』
「……後でじゃダメ?」
『今だからこそだよ。ちょうど、宝石を守る「番犬」は近くにいないようだし。ボクたちが自主的なボランティアでやってあげることも悪くはないんだけど、こっちにもやることがあるからね。やっとボクらのターゲットを見つけたんだ。予想外も予想外。どこかの隔離施設にでも隠されてると思ったら普通の学生寮の部屋でおねんねしてたよ』
「神田は?」
『今は近くにいない。偵察だって言ってどこかにいっちゃった』
 そこで、精神操作はミーナと神田のターゲットを思案する。
 ターゲット名は、禁書目録。
 確か一〇万三〇〇〇冊の魔導書を収める図書館だという話だ。いくらなんでも嘘だろうと思っていたが、どうやら実在するらしい。
 どうやって一〇万三〇〇〇冊も保管しているかは、はなはだ疑問だが。
「……ターゲットは?」
『第一〇学区の原子力研究所の屋上。健闘を祈ります大佐。おーばー』
 言いたいことだけを言ってミーナは通信を切った。
 チッ、と舌打ちして美琴は通信機を足のホルダーに入れなおす。
「仕事が入ったよ。遊びの時間は終わりだってさ」
「ふっ、ふざけるのも大概にしてくださいまし!! 今すぐにでもお姉さまを開放し、お縄につきなさい!」
 本当に面倒そうに話す美琴に対し、白井が声を荒げる。
 その声は怒りなどより、一種の願いを感じさせるものだった。
 仕方ないだろう。御坂美琴の行方不明から一週間。ずっと探し続けた人物をやっと見つけて、そう簡単に逃げられてはたまったものではない。
 白井黒子の疲労はもうピークに達している。いつ倒れてもおかしくないほどに。
「黙れよ白井黒子。欲しいものがあるなら力ずくで奪えばいいじゃないか。言葉を重ねて、いったい何の解決になるって言うんだ」
 しかし、精神操作はそれを分かっていてなお、つまらなそうに答えた。
 やれるものならやってみろ、という意味を込めて。
「待て!」
「待たない」
 上条の命令に否定で返し、美琴は身体に電気を纏ってから片目をつむって、
「絶望しろ。『パンドラの箱(パンドラピュクシス)』を開けた、人類のように」


 キュガ!! と美琴を中心として全方位に、十億ボルトの電流がほとばしった。


 上条が白井の前に躍り出て、電撃を打ち消した時には美琴の姿は視界から消えていた。
 まだ廃屋の中にいるのか、外に出たのか、それすらもわからない。
 とりあえずわかるのは、もう近くに美琴はいないという事実だけ。
(く、そ……)
 戦闘が終わったというのに、事態は何一つ好転しない。それが、上条をさらに焦らせる。
(ち、く、しょ……)
 そして、上条の視界が暗転する。
 白井の声が聞こえたような気がするが、そんなことを気にする余裕はなかった。
 少年はまるで眠りに入るように緩やかに気を失う。緊張という名の糸が途切れた、人形のように。

238from-ING:2011/03/18(金) 15:11:56 ID:RKWWK4AM
第二章[奔走する主人公と暗躍する主人公 Hero_And_Hero]

<13:19 PM>


 空は当たり前のように曇り、雨が辺りに降り注いでいた。
 まるで誰かの涙を肩代わりしているように、それの勢いは止まらず少女の身体を容赦なく打つ。
「………、」
 沈黙。いや、ただの沈黙ではない。バヂバヂ、と定期的に流れる電流をBGMにして少女は沈黙を保っていた。
 不意に。
 空を見上げていた少女が頭に付けていた暗視ゴーグルを装着して、横を見た。
 そこには、何にも変わり映えのしなかった場面に一つの変化が現れていた。
「ひっさしぶり、妹」
 トン、と革靴をわざとらしく鳴らして一人の少女が足を地に着ける。
 その少女は、暗視ゴーグルをつけた少女と、瓜二つの姿をしていた。
 茶色く肩まで切りそろえた髪に、とある中学のブレザー。あえて違いを見つけるならば、片方がゴーグルをつけているかいないかほどの違いしかわからない。
 唐突に目の前に現れた少女に何の驚きもみせずに、ゴーグルをつけた少女は唇を動かす。
「遅かったのですね、とミサカは尋ね人に対し小さな不平を述べます」
「ちょっとね。こっちもやりたいことがあるっつーのよ」
 二人は双子、と言われれば簡単に納得できる状況。
 しかし、二人の間に仲良しというような雰囲気はない。
 少しの会話の合間にギスギスとした空気がのどに妙な圧迫感を与えた。
「正体を隠すつもりはもうないようですね、とミサカは確認を取ります。同時に、だったらもうお姉さまのような喋り方をする必要はないのでは、と素朴な疑問をぶつけます」
「そりゃアンタたちはネットワークがあるからさ。今までの固体の時の襲撃でこっちの正体もバレバレでしょうが。騙し討ちってのは相手を騙していることを前提として仕掛けるもんなんだから、最初から手札見せたままかけたハッタリに何の意味があるってのよ。ちなみに、御坂美琴のままの喋り方なのは単純な演算方法をトレースして少しでも演算能力を上げるため。『暗闇の五月計画』から発想のヒントをもらって試してみてるんだけど、口調だけ真似てもあまり意味はないわね。やっぱり、何かの技術には犠牲が必要なのかしら」
 でもま、続けるだけ続けてるってわけよ、と少女がつまらなそうに呟いた。
「で? アンタは、私が幻想殺し(イマジンブレイカー)と戦ってる時からずっとこっちに電波飛ばしてるけど、何の用? 狙われてるのをわかってて居場所を教えるのはミステイクを超えてただのバカよ」
「いえ、ただミサカの居場所が分からずにイライラして他のものに八つ当たりしているアナタを見ていられなくなりまして、とミサカは皮肉を混ぜながら心情を伝えます」
 やれやれ、といった風に暗視ゴーグルをつけた少女がわざとらしく肩をすくめる。
 その姿を嘲笑するように、もう一人の少女が笑い声を上げた。
「随分と口がうまくなったわね。私が誰かを傷つけるのが嫌だっただけでしょうが。実際、効率的に考えるなら私をここにおびき寄せる際に一方通行(アクセラレータ)を傍に居させるのがセオリーでしょう。アイツが近くにおらず、アンタ一人だけって状況がすでに思考の入り込んでない突発的な行動っつーことを示してるじゃない」
「……、」
 がちゃり、と物騒な音がした。ゴーグルをつけた少女がサブマシンガンを構えた音だった。
 何の迷いもなく銃口を少女へと向け、引き金に指をかける。

239from-ING:2011/03/18(金) 15:12:27 ID:RKWWK4AM
第二章[奔走する主人公と暗躍する主人公 Hero_And_Hero]

「へぇ。少しは抵抗する気があるんだ」
「ミサカの勝利条件はアナタに勝つことでなく、一方通行(アクセラレータ)が戻ってくるまで時間を稼ぐことにあります、とミサカは自分の行動を口に出して覚悟を決めます。もうこれ以上、ミサカは足手まといになるわけにはいきません」
「ふぅん……まぁいいんだけどさ」
 そして、少女は重心を下に落とし、いつでも駆け出せるような体勢で戦闘の口火を切った。


「アンタの攻撃が”なぜか”私に届いちゃったら、どうなるかなんてわかってるわよね?」


 ゴーグルをつけた少女の表情が強張った。それをチャンスととってか、少女が行動を開始する。
 ボンッ!! と少女の足元が大量の高圧電流によって爆発した。
 その勢いにのり少女の身体が飛翔する。低空を滑空するツバメのように。
 ゴーグルの少女は引き金を引こうとするが、どうしたって引けやしなかった。
 あまりにも低い可能性。だが、その可能性があることがゴーグルの少女の行動を制限してしまう。
 代わりに、ゴーグルの少女は横っ飛びに跳ねる。それは回避後のことをまったく考えていないがむしゃらなものだった。その数瞬後、少女の身体が回避前の場所を通過する。
 ”ゴーグルの少女の足を握りながら”。
 グンッ!! と視界が回転した。
 平衡感覚を失い、どこが上でどこが下かさえわからなくなるくらいの回転の後、ゴーグルの少女は地面に勢いよく叩きつけられた。
「が、はッ……!?」
「攻撃どころか、威嚇射撃までしないなんて……優しいわね。姉思いの妹を持って、御坂美琴も幸せだと思うわよ」
 けどさ、と少女は凶悪な笑みを浮かべて。
「そこまでの優しさは付け入る隙になるってことをアンタ達は学んだほうがいいわよ」
「―――ッ!」
 ただでさえ天秤が傾いていた戦闘がさらに傾き、この戦闘は再開された。
 どちらが勝利するかなど火を見るより明らかだった。

240from-ING:2011/03/18(金) 15:14:48 ID:RKWWK4AM

投下終了です

さて、半年前の宣言どおり、第二章は終了!!

今回、書いてて非常に残念だったのは、オリキャラがちょっとばかし目立ちすぎてたところですかね

オリキャラェ……

今度は、オリキャラのいない原作キャラだけのやつを書いてみようかな笑

では、次回の投下はいつになるかわかりませんが

第三章[そして披露される悪役の舞台 The_Kingdom_of_Heaven]

お楽しみに!!(してくれている人がいたらいいなぁ)

241■■■■:2011/03/18(金) 19:20:55 ID:lYZOjPI6
まさか続きが読めるとは…
GJです!
続きは気長に待ってます

242ななの:2011/03/18(金) 20:40:29 ID:co8K3Do2
『希望ト絶望ノ箱(オペレーションパンドラ)』
読んだこと無かったけど、絶対一章見ようって思った。
次回楽しみ!これからも頑張って!!

243■■■■:2011/03/18(金) 23:13:52 ID:tvhwf1sM
SSかいてて思うこと、何話も先のキャラの魅せ場ばかり想像してしまって
まったくキーボードを弾く指が進まない事がよくある。

244■■■■:2011/03/19(土) 04:07:51 ID:/b0sUVdQ
お久しぶりです。
垣根帝督の十番勝負 第八戦『木原幻生』前編を投下したいと思います。
こちらの都合で非常に長い間を空けてしまったこと、申し訳ありませんでした。
>>116さんなど、更新を待って下さっている方がいると分かるだけで、励みになります。
それにしてはまたも前編という短い分量ですが、とりあえず早くに上げようと思いまして。
過去スレが流れてしまっているので前スレどこどこから7戦ですとかも言えない状況、久しぶりすぎて投稿ミス(といえば前回やってしまいましたが、間違った改行を)やテンプレ違いあるかもしれませんがご容赦を。
7戦まではありがたくもwikiにまとめて下さった方が居るので、前の方追いかけてくださる方はそちらをば。

毎度の注意点として、オリキャラ一名(垣根帝督の妹、姫垣)、『未元物質』や垣根の身の上に独自の解釈や妄想、あと今回は幻生もなんだかアレンジされてます。

それでは、投下します。

245垣根帝督の十番勝負 第八戦『木原幻生』前編:2011/03/19(土) 04:10:38 ID:/b0sUVdQ
 放たれた巨大な円錐状の結晶群は、あっと言う間に垣根が立っていた場所を貫いた。
 姫垣の『原石』としての能力のものだろう粉塵が、ダイヤモンドダストがごとく辺りを覆い隠す。
 しかし――
「生存確認(まだしんでいません)」
「だろうね、そうじゃないと流石に困るよ」
 姫垣、幻生の言葉に続くように粉塵が晴れると、そこには『未元物質』の壁によって全ての結晶を防ぎ切った垣根の姿があった。
 それを認めると、姫垣は追撃を行おうとし――そこで照準を定め直す羽目になる。
 垣根が動いたのだ。
 それも、前方――姫垣の方へではない。
 右斜め前方、実験室の角隅。
 つまりは木原幻生のいる方へ、だ。
「要はテメェがヒメを操ってるってことなんだろ!だったら話は早ぇよなぁ!?」
 姫垣のコントローラーである幻生を直接叩く。
 何かしらの装置――電磁波を利用して動物の動きを制御するという装置を破壊する。
 それが最善の策。
 無論、幻生に近づいていく間にも横合いから姫垣の攻撃は続くが、垣根が側面に張った『未元物質』の障壁を前に、水晶のような物質は次々と砕けて床へと降り注いでいく。
「攻撃無効(あたりません)」
 無感動に報告する姫垣には目もくれず、否、意図的に無視しながら、垣根は幻生へと攻撃の照準を定める。
 対し幻生は、
「聞いていなかったかな? これは『体晶』と『原石』の掛け合わせの運用だと」
 やれやれ困った、とでも言うように首を横に振る。
 自分が狙われていることにも構わず、だ。
「解析開始(しらべはじめます)」
 後方で姫垣が告げるが、垣根の耳には入ってこない。
 ただ前方に意識を集中させ、
「ぶっ潰れろ!!」
 垣根は一辺きっちり1メートルの立方体状の『未元物質』を創造、幻生の言葉も聞かずその頭部へ向けて発射する。
 そして、
 ガァン! と、『未元物質』は実験室の壁にめり込んだ――幻生が立っていた、その背後の壁に。
 幻生はいない。
 ただ、幻生の着ていた白衣だけが空中をゆっくりと漂い、落ちていく。
「だから――」
「!?」
 突然、直下から声が聞こえた。
 慌てて目線を下に送ると、そこには低い姿勢で構えを取るようにしながらこちらを見ている幻生の姿があった。
「だから、私が戦うのは好ましくないんだけどね」
 
 直後、垣根の身体は大きく後方へ飛ばされていた。

246垣根帝督の十番勝負 第八戦『木原幻生』前編:2011/03/19(土) 04:13:25 ID:/b0sUVdQ
「がっ!?」
 腹部に胃の中を掻き回されたかのような鋭い痛みが走る。
 床を転がりながら、垣根は幻生が正拳突きの体勢で静止しているのを見た。
(殴られた……?)
 まるで幻生の行動を目視出来なかった。
 しかし、だとしても、
(確かに自動防御は発動した筈……!?)
 垣根の思考が目前の光景によって停止させられる。
(馬鹿な……)
 そこには、粉々に破壊された『未元物質』の壁の破片が落ちていたのだ。
「自動防御を突破したのがそんなに意外かい?」
「っ!」
 姿勢を整えながら、幻生は垣根の心中を読んだように問いかける。
「こんなこと、『未元物質』の情報を与えた数多にだって出来ただろう。その身体中の傷だってその結果だろうに。まぁ、私のと方法は違うかもしれないけれどね。なにしろ、今考えられるだけで自動防御を突破する方法なんて四十二通りはある」
「なっ……」
「今のはその中でも割とオーソドックスな方法だよ。――自動防御は体表に張った膜に設定以上のエネルギーがかかると、それを防ぐのに最適な大きさ、硬さの『未元物質』を生成する。その生成スピードは0.01秒以内。この数値は中々優秀だ。但し、『一度衝撃を受けて『未元物質』が発現している場所』となると話は変わってくる――」
 タン、と軽い音がして。
「――0.27秒。これは余り誉められたら数値じゃないね」
 幻生が、すぐ鼻の先まで移動してきていた。
「!?」
 構えも間に合わぬうちに、幻生の攻撃が来た。
 直後、強い衝撃が腹部に走る。やはり、防御を貫通されたのだ。
 だが、今回はその仕組みが見えた。
(二連撃……)
 一度わざと弱い攻撃を仕掛けることで強度の弱い『未元物質』を出現させ、その同じ場所に――幻生の言う通り、演算が複雑になってしまうが故に生成スピードが遅くなってしまう――次の『未元物質』が生成される前に、かつ生成されている『未元物質』を破壊する以上の力で攻撃を叩き込めば、確かに理論上は突破されてしまうだろう。
 だが、
(『最適な固さ』っつったって、何も『さっきよりちょっと強く叩きました』で壊れる固さじゃねぇんだぞ。どんなに弱く殴ろうが、少なくともコンクリ以上の強度の壁は生成される筈だ。それを『一打目から0.27秒以内に』だと?)
 にわかには信じがたいことだった。
「驚くほどのことじゃあないよ、一体誰が数多の坊主に戦い方を教えたと思ってるんだい?」
「ちっ……」
「ほら、のろのろしている内に、向こうの準備が整ったみたいだよ」
 幻生が、チラリと姫垣の方へ視線を送ると同時。
「解析終了(しらべおわりました)」
 無機質な声が響き、空中の姫垣がくるり、と垣根の方へと向いた。
 そして水晶体の雨が垣根へと降り注ぐ。
「このっ……」
 即座に『未元物質』の障壁展開する垣根。
 しかし、
「――!?」
 水晶体が、障壁を通過した。

247垣根帝督の十番勝負 第八戦『木原幻生』前編:2011/03/19(土) 04:14:17 ID:/b0sUVdQ

 破壊では、ない。
 先程幻生が見せたような荒っぽいやり方では、決してない。
 あえて表現するなら、まるで水飴の中に割り箸を突っ込んだかのような様子で。
 それは言い換えるなら、貫通の際に『未元物質』の硬度が水晶体と相対的に考えた場合に水飴程度の硬さしか持たないように変質させられたということか。
(いや――)
 垣根は、幻生と距離をとる方向へとその場を飛び退きながら思考する。
(変質じゃねぇ、『中和』だ)
 ガギンッ! という音とともに、『未元物質』も壁を突き抜けて床に――先程まで垣根が立っていた位置に刺さった水晶体。
 その先端部分は、酸の中に投げ込まれた鉄片のように僅かに溶けていた。
(俺の能力を『解析』して、それを『中和』出来るような物質に水晶体を変化させたのか)
 姫垣の発言を整理すると、そういうことになるのだろう。
 それは姫垣の持つ能力が、己の生み出す物質の性質を自由に変化させることが可能であることを意味し――そして、それによって本来この世界に存在しない『未元物質』を『中和』させたということは……
「!?」
 思考が纏まりかけた瞬間、次なる水晶体の攻撃が来た。
 当然、先程と同じように『未元物質』の壁を貫通してくるため、垣根は直接これを回避しなければならない。
 垣根は即座に自身の足元に摩擦の少ない『未元物質』のレールを敷き、高速移動を開始。その後を、ガガガガガッ! と連続的な音を立てて、巨大な生け花が垣根のルートを追うように何本も生けられていく。
(まぁ、いい。『どっちだろうと』……いや、『どれだろうと』構わない)
 道は見えた。
 細い、一筋の――だが確かな道だ。
(けどそのためには、やっぱり幻生の野郎を沈めておかなきゃならねぇ)
 進行方向に壁が迫ってくる。
 部屋の角にいた幻生を攻め、その後反対方向に後退しているため、現在垣根は部屋を四角形と見たとき、幻生のいる『頂点』を一端として持つ『辺』たる壁際を走行している形になる。
 当然正面も壁となれば、開けている右側――後ろ以外に唯一行き止まりではない方向に身体をかわすしかなくなるわけだが……
「はっ!」
 垣根は左側――壁面へ向かって大きくジャンプした。
 そのまま行けば蛙のごとくぺちゃりと潰れるのがオチであったが、垣根は空中で体勢を入れ替えると、壁面に足をつけ一瞬静止する。
 靴底に、高速移動する時とは逆に摩擦の大きな『未元物質』を貼り付けたためだ。
 そのまま、逆方向斜め上へ向かって壁伝いに走る垣根。
 水晶体が追いかけて壁に穴を空けていくのを後目に、速度の落ちた後半は手も使ってロッククライミングがごとき有り様で、部屋の天井近くかつ『辺』の中点あたりまで到達。そのままスタリ、と天井に足を置き、天地ひっくり返ったクラウチングスタートの構えをとる。
 その隙を逃さぬとばかり撃ち込まれる水晶体。
 次の瞬間、ガギンッ! と水晶体が天井を砕き、緊急用スプリンクラーの配管か何かを傷つけたのであろうか、突如室内に人工の雨が降り注ぐ。
 その際生じた雨霧と土埃を抜け、垣根が現れる。
 着弾の直前に天井を蹴り回避したのだ。
 目指す先は斜め下方向――幻生の立つ場所だ。

248垣根帝督の十番勝負 第八戦『木原幻生』前編:2011/03/19(土) 04:14:39 ID:/b0sUVdQ
「やれやれ、諦めの悪い」
 嘆息する幻生へ、
(俺の研究データを元に戦略を立ててんなら、今まで使ったことの無い使い方の『未元物質』を使えば勝機はある!)
 垣根は、巨大な円錐状の『未元物質』――姫垣が用いている水晶体と同じ形状の『未元物質』を六つ生成、発射する。
「研究データにない形の『未元物質』なら突破できるとでも? 浅はかだねぇ」
 言いながら、幻生は次々と襲来する『未元物質』を最小限の動きでリズムよく回避する。
 そして、外れた『未元物質』は、水晶体と同様ガギンッ! と音を立てて床に突き刺さって行く。
「それに空中からというのも浅はかだ。攻撃主である姫垣くんから最遠、かつ私の立つ場所までの最短のルートとして壁を選んだんだろうけど……」
 幻生は水流に視界を妨げられながらも上方を見続け、垣根のいる場所を確認する。足は天井、頭は床を向いており、さながらプールの飛び込み台から飛び降りているような体勢だ。
「自由落下なんていうのはね、止まっているのと同じことだよ」
 垣根の現在位置――高度を確認。0.1秒間での移動距離からその速度を瞬時に計算。
 加速度も考慮に入れ、垣根の正確な落下位置、時刻を算出する。
 そして、絶好のポジションで拳を握りしめ、これを待ち受ける。
 無論、それで安心する訳ではない。
 目は垣根から離すことなく、何かしらの変化――能力使用の兆候が見えれば、即座に対応する腹積もりだ。
「飛んで火に入る、だ」
 垣根が、自分で飛ばした円錐の底面――頂点を下にして撃ち出したため、底面は円錐の最高度部分となる――と同じ高さまで到達、その身体が円錐の側面をかするようにして通過した。
 その、次の瞬間。
「……!」

 幻生の目の前に、垣根帝督がいた。

(どういうことだ? まだ余裕はあったはず。能力? いや、使用している素振りは……)
 予想外の事態に対応が間に合わない。
 そのうちに、垣根は『未元物質』で西洋風の両刃剣を生成、上方へ大きく振りかぶった。
「研究データに無い『形』? お笑いだな」
「……そうか、攻撃用の『未元物質』を足場に……」
 結論から言ってしまえば、垣根は単に摩擦の限りなく少ない『未元物質』を使った高速移動に自由落下の速度を上乗せして、幻生の予想を超えるスピードを出しただけに過ぎない。
 問題なのは、高速移動には足裏と地面との両方に摩擦の少ない『未元物質』を展開する必要があることだ。
 足裏の方は、垣根の体勢から幻生には確認出来ない。『滑り止め』用の『未元物質』を真逆のそれに変えるのは簡単だろう。
 ならば地面、即ちレールとなる方の『未元物質』はどうしたか。
 その答えは円錐の側面。
 垣根が放った円錐は、いつもの攻撃用『未元物質』のようにただ固い、或いは鋭いといった攻撃的性質を持つだけでなく、その表面に高速移動用レールに使用する摩擦の少ない『未元物質』がコーティングされていたのだ。
 『形』はブラフ。真の目的は研究データには無い『未元物質』の『用途』と『性質』との組み合わせでの利用。
 (まぁ、これも『未元物質』を『中和』した上で攻撃も同時にこなすあの水晶体から思いついたもんだが……これで詰めだ)
 幻生は何とか左腕を頭の前に掲げてガードしようとしているが、そんなものではどうにもならない。
 垣根の創り出した両刃剣は、人間の腕など骨ごとぶった切って余りある切れ味を持っている。
「終わりだ幻生!」
 垣根は両刃剣を縦一文字に振り下ろし――

 そして、幻生の掲げた左腕によってその勢いを止められた。

249垣根帝督の十番勝負 第八戦『木原幻生』前編:2011/03/19(土) 04:16:49 ID:/b0sUVdQ
「なっ!?」
「着眼点は良い。素直に今のは一本取られたと自白しよう。だけどね、まぁ・・・・・・何と言うのかな。情報不足、と言うのは酷だろうし。ならば、運が悪かった、と言うべきかな」
 幻生の左腕は剣撃によってわずかに傷つき、その傷口から『鉛色をした金属製の何かを覗かせていた』。
「義手だよ、私の左腕は。生身の腕なら切り落とせたかもしれないけれど、学園都市製の特殊合金の厚い層は破れなかったみたいだね」
 言いながら幻生は自由な右腕を引く。そこからの素早い二連撃。
 幻生の拳はまたも『未元物質』を突き破り、垣根の腹部を強打する。
「ごぉあ……がぁっ!!」
 先ほどの打撃を超える衝撃に、垣根は大きく弧を描いて吹き飛ばされ、ノーバウンドで反対側の壁に叩きつけられた。
 再び、しかし今度は自分の意思ならず自由落下する垣根の身体。
 それは、床から2メートル程のところで停止することとなる。ガガガガガッ! という連続的な音とともに。
 まともに回避行動すら取れなくなった垣根帝督は、姫垣の放った水晶体によって右肩と左脇腹を貫かれ、壁面に縫いとめられてしまったのだ。
 まるで人間大の昆虫標本が飾られているかのような奇妙な光景の中、姫垣が無機質な声を上げる。
「攻撃成功(当たりました)」
 そして垣根は、降り注ぐ人工の雨に濡れ、頬に涙のような雫を落としながら、完全に意識を失った。

250垣根帝督の十番勝負 第八戦『木原幻生』前編:2011/03/19(土) 04:17:20 ID:/b0sUVdQ
 目を開く。
 そこは三沢塾の校長室だった。
〈起きたか。否、覚醒というのは違うな。貴様は未だに気を失っている〉
 ティーテーブルとお揃いの椅子に座り、悠然と、そして当然のように紅茶をすすっている男が垣根に言葉をかけてきた。
「……今取り込み中だってことくらい分かってんだろうが。テメェに用なんかねぇよ、アウレオルス=イザード」
 低い声で呟き、自らの座る椅子から立ち上がりこの場を去ろうとする垣根。
 しかし、そこで引っ張られるような違和感に気づく。
「……!」
 右肩と左脇腹に――つまりは姫垣に攻撃を受けた場所に、アウレオルスが使っていた医療用の針をそのまま刀剣ほどの大きさに巨大化させたようなものが刺さっていた。
「がぁ……ぁ……」
 認識と同時に痛みが来た。抗おうにも、身体がまるで動かない。針によって、身体が椅子に縫いとめられているのだ。
〈当然。ここが意識だけの空間とは言え、否、だからこそ身体の受けたダメージも感じるものだ〉
「く……そ……」
〈先ほど私に用がないと言ったな。だが、私は貴様に用がある、少々付き合え。なに、外の基準で考えればそれほど長い時間にはならない〉
 苦痛にあえぐ垣根を無視して、アウレオルスは一方的に話を進める。
〈まず聞こう。策はあるか?〉
「……?」
〈現状を打破する――木原幻生を倒し、垣根姫垣を救う――その具体的な策はあるか?〉
「……いや」
 かろうじて首を横に振る垣根。
 アウレオルスは、ふむ、と言って紅茶を一口飲むと、素っ気無く言った。
〈私にはある〉
「!? それは……」
〈蹶然。そういきり立つな。策と言うよりは、道筋、手段のようなものだ〉
「……どういう」
〈キャパシティダウンに倒れたときにも言った。知恵とはこの上のない力を持ち得る〉
 カップを置くと、アウレオルスは両肘を机の上に立て、前かがみになって顎を支える体勢を取る。
〈話は変わるが……垣根帝督、貴様は様々な性質を持つ『未元物質』を用いて多彩な技を見せる。例えば摩擦の少ない『未元物質』同士による高速移動。例えば硬質な『未元物質』による防御。例え鋭利な『未元物質』による攻撃。貴様の『未元物質』それ自体は、この世界の物理法則をすら無視出来る超物質だ。だが、果たして本当にそうなのか?〉
「何が……言いたい……」
〈摩擦が少ないから移動が早い。硬質だから防御力が高い。鋭利だから攻撃力が高い。これらは、『この世界の物理法則』ではないのか?〉
「――!?」
〈いや、混乱させるまでも無い、結論から先に言おう。本当にそうなのか、答えはイエスだ。『未元物質』はこの世界の物理法則に縛られない。ただ、貴様はその『異世界の物理法則』を内に対してしか適応できていない。『未元物質』が出現し、外界、この世界に触れた瞬間に、『未元物質』はこの世界の法則に支配されてしまっている。それは何故か。貴様が外界に対して『異世界の物理法則』に則ったアプローチを行っていないからだ。その結果、『未元物質』はこの世界に対しては何の影響力も持っていないように見えてしまう〉

251垣根帝督の十番勝負 第八戦『木原幻生』前編:2011/03/19(土) 04:17:33 ID:/b0sUVdQ
「……………………」
 アウレオルスの言葉を咀嚼する。学園都市第二位の脳をフル回転させ、その意味を考える。
「つまり、その『異世界の物理法則』をこの世界にも顕現させられれば……この世界にたいして『干渉』が行えれば、今まで不可能だった何かが出来る可能性があるってことか」
 それは、二つの目的――木原幻生を倒し、垣根姫垣を救う――のどちらにも繋がる筈だ。
 『干渉』は本当の意味で研究データにない能力使用法であるし、そして『干渉』を通じて姫垣にも……
「……だが、それは道筋ですらねぇよ。せいぜいが『目的地はコチラ』の矢印標識だ。俺には『干渉』の仕方が……」
〈『干渉』の仕方がわからぬのは、単に貴様がこの世界を知らないからだ。貴様は自分の能力たる『未元物質』については十二分に理解している。『異世界の法則』内で何が起こせるかが分かっている。だが、その起こった何かがこの世界にどのような結果をもたらすのかは知らない。対して――私は『黄金練成』を可能とした錬金術師。『黄金練成』は思い描いた『結果』を現実化するものであり、そのために世界の完全なるシミュレーションを頭の中に構築する必要がある。つまり、『私は起こった何かがこの世界にどのような結果をもたらすのかを知っている』〉
「それは……」
それはまるで、数式の左辺と右辺をそれぞれが片方ずつ持っているようなもの。それらを繋げれば、そこには一本の式が出来上がる。
〈そして、私は現在貴様の脳に居場所を借りている。私の全ての記憶と知識と経験が貴様の脳細胞に一時的に記録されている。……はじめは、私がここを去るときに脳細胞ごと死滅させて一切を消去する腹積もりでいた。私の極めた錬金術の秘を貴様なんぞに残したくは無かったし、理解できるとも思えなかった。だが、どうやら私の錬金術と貴様の『未元物質』は相性が良いようだ。哄然。面白い。科学と魔術の交差から何が生まれるのか……垣根帝督。私の全ての記憶と知識と経験を、貴様に授けよう。それが、私の我儘に付き合ってくれた貴様へのプレゼントだ〉
 アウレオルスが立ち上がり、テーブルを半周して垣根の横に立ち、右手を差し出してくる。
 垣根は、無言でその手を取り、力を込める。
 途端に肩と腹部に刺さっていた針が抜け、軽い音を立てて床を転がる。
 ゆっくりと立ち上がった垣根は、握手をした体勢のままアウレオルスを見据える。
「恩に着る……」
〈――思考は繋がっているから、わざわざ確認する必要はないが、一応言っておく。私は、貴様を助ける訳ではないぞ〉
 語るアウレオルスの足が、爪先から順に空中に溶けるように分解して行く。それはいくらかの単位で羽根のような形を作り、次々と垣根の背中へと引き寄せられていく。
「分かってる。テメェが力を――いや、知恵をくれるのは、垣根姫垣を、俺の世界を守るため。そこには俺自身は含まれていない。俺はヒメに救われた。それだけで充分だ。俺はこれ以上を要求しない。ただ、ヒメさえ救われればそれで良い。――テメェがそうであったように」
 アウレオルスの胴体が消えて行く。対して垣根の背中には一対の大きな純白の翼が形成されていく。
〈その通りだ。貴様と私は同じ道を行くもの。改めて、最期に貴様と出会えて良かった。ありがとう〉
「その台詞、そっくりそのまま返すぜ」
 もうアウレオルスの身体は右腕と顔しか残っていない。左半分が徐々に消えて行く顔面に普段は見せないような優しげな表情を浮かべて、アウレオルスは言った。


〈最期に、貴様に私の魔法名を教えよう。Honos628――『我が名誉は世界のために』。貴様の世界に、幸あらんことを〉


 そして、アウレオルス=イザードは――コピーであれ、本物と同じ意思と想いを持った、たった一人の小さな少女のために生きた錬金術師は、垣根帝督のもとから去っていった。

252■■■■:2011/03/19(土) 04:27:31 ID:/b0sUVdQ
以上です。

これにてアウレオルスさんは退場とあいなりました。
そしててーとくんも15巻のてーとくんに近づいていきます。

なんだかお互いに原作と違うキャラなんじゃないかってくらい良い奴臭出てますね。
これは垣根でもアウレオルスでも(あと幻生でも)ない、と思うところもあるかもしれませんが、あと少しの間、付き合ってくださればうれしいです。

感想など、毎回読ませていただいています。こんなに長いものを追いかけて下さって、本当にありがとうございます。

それでは、感想・意見などありましたら、どうぞよろしくお願いいたします。では。

253■■■■:2011/03/19(土) 11:52:17 ID:FD3ujl12
≫243
私もだ

254牧田さん:2011/03/19(土) 21:43:29 ID:2tlwiIYw
どうもです。

>>230
イザベラはオルソラの姉、ということで一つ。無謀なオリ設定ですハイ・・・・・・。
行間の時期はいずれ本編で。


それでは誰が待っていたのか『禁竜召式(パラディンノート)』の続きを投下します。
>>231>>244のような素晴らしいSSと比べると、

無双すぎるオリキャラ
展開しすぎたオリ設定
尋常じゃない妄想

など注意点の塊ですが、それでも見てくださる方が居たら是非。

では7レスほど貰います。

255牧田さん:2011/03/19(土) 21:45:02 ID:2tlwiIYw
十月一六日午前一時四〇分。

カツン、カツンと。安らかな音を立てながら『誰か』が此処へと通じる階段を降りてくる。
オルソラは、その音を黙って聞きながら古書に目を通し続ける事を止めようとはしなかった。
大英図書館の地下書庫。『Sorcery UK』と言う題名の廃れた本を生気を失った目で眺める彼女は、明らかに別次元にすがり現実から目を逸らそうとしている。
そんな彼女の真後ろで、『誰か』の足音が止まった。
オルソラはゆっくりと本を閉じた。それを脇に静かに寄せてから、忌々しさを覗かせる表情で後ろを振り返る。

その『誰か』はオルソラのよく知る人物だった。
その『誰か』はオルソラのただ一人の血縁者だった。
そして、その『誰か』はオルソラの人生を大きく左右した人物でもあった。
そして、その『誰か』はオルソラの全てを知る人物だった。



そして、その『誰か』はオルソラの・・・・・・最も愛すべき人物だった。



「お久しぶりですね。イザベラお姉さま」

『誰か』は優しそうな微笑みを見せた。

256牧田さん:2011/03/19(土) 21:46:18 ID:2tlwiIYw
十月一六日午前一時五二分。

とある林の中。
『シスター・アニェーゼ。『把握報網(MasterNet)』で周辺全域を捜索しましたが、それらしき姿は見当たりませんでした。彼女等は一先ず放置して先に進むことが得策かと』
「・・・・・・解りました。報告ご苦労様です」
アニェーゼは面倒臭そうな表情で通信霊装を切った。『通信』からの連絡によると、やはりソフィア達の影は依然として見えてこないとの事。
『蓮の杖』をクルクルと弄びながら今後を思案し始めたアニェーゼに、隣に居たルチアが鋭い声で“報告”を行った。
「シスター・アニェーゼ。『遠爆』『術発』『迎撃』全ての班が揃いました。・・・・・・ソフィア班を除いて。不本意ですがこのまま戦闘を続行した方が良いかと思われます」
「それをたった今『通信』に言われた所なんですよ。ま、この周囲にソフィア達が居ないのは明らかですし、とっとと敵陣に乗り込んじまった方が無難かもしれませんね」
軽口でそう言ったアニェーゼに、ルチアは少し不思議そうな顔をした。「何ですその腑に落ちない表情は」とアニェーゼに言われて、動揺した様子で言葉を返した。
「いえ、あの・・・・・・。『敵がハイドパーク内』に居るとは聞いていたのですが、『その何処に』とは聞いていなかったもので・・・・・・」
アニェーゼは特に変わった表情はせず、至って普通に質問に答える。
「それもたった今『通信』の連絡で知ったとこなんですよ。どうやら中央広場に“巨大な魔方陣”を描いているようですけど」
ルチアは一瞬だけ絶句して、眉を寄せながら恐る恐るにアニェーゼに言葉を返す。
「・・・・・・それが『禁竜召式(パラディンノート)』なのでしょうか?」
「知りませんよ。どっちにしても後戻りは出来ないと考えてください」

軽く受け流すような態度を取るアニェーゼに軽く溜息を吐いたルチアは、素早く立ち上がると班をまとめるべく修道女達の集団へと混じっていった。そして、それと入れ替わるように今度は絹旗がアニェーゼの方へとトコトコとやって来る。
「超アニェーゼ。少し質問があるのですが」
呼び方については面倒臭いので放置。それ以前に質問されること自体が気だるそうなアニェーゼ=サンクティスである。
「・・・・・・トイレなら我慢してください。どうしてもと言うなら戦場のドど真ん中での羞恥プレイでも構いやしませんけど」
「こんな時に超ふざけた冗談はやめてください。それよりも、もうすぐ敵のとの衝突だと聞いたのですが」
アニェーゼは遠目でルチア等を一瞥してから、絹旗の目を見て答える。
「・・・・・・恐らくそうなっちまうでしょうね。敵の居場所もハッキリしてますし、ここで引き返したりすると『どんな事態になってしまう』か見当もつきませんし。まぁ相当の強敵でしょうけど多勢に無勢ってのを祈るばかりですよ」
脱力感満載の声色で返答された絹旗は少しだけ何かを考えた後、再びアニェーゼへと質問した。
「・・・・・・別に敵が強いから超脱走したいとか、そう言う事では無いですよ。ただ単に“私はどんな戦い方をすれば良いのか”を超聞きたかっただけです。残念ですけど集団戦闘に関しては超個人的に経験が全く無いもので」
割と真剣な顔で聞かれてしまったアニェーゼは内心「(メンドクせえですね)」とか密かに思いながらも、この戦闘において絶大なる影響力を誇る絹旗を戦闘から外す訳にも行かない為、数秒間だけ考えて絹旗の戦闘配置を決定した。
「・・・・・・とりあえずキヌハタは前線で戦ってください。今までの敵を見た限りだとキヌハタが居れば大抵は楽勝だと思いますので。最前線にキヌハタと戦闘型の修道女を置いて、私はその一歩手前から大まかな指示を出します。一応言って置きますが、集団戦闘での統括者の指示は絶対です。決して無理に動いたりはしないでください」
絹旗は「まあ、あんな奴等(黒服男達)なら本当に超楽勝でしょうけど」と自身満々に呟いてから、アニェーゼの提案(実際は指示)を承諾した。

(作戦的には支障無し。ですけど・・・・・・)
アニェーゼは余裕たっぷりな(油断しまくってるようにしか見えない)絹旗を一瞥して溜息を吐いた。

257牧田さん:2011/03/19(土) 21:47:37 ID:2tlwiIYw

「さて、と。超本格戦闘も近いっぽい気配ですし、準備運動でも超やってますかね」
お気楽な声で手足の筋肉を伸ばし始めた絹旗最愛を見たアニェーゼは、再び「解って無い」と言わんばかりに首を横に振った。そして、少し声を低くして独り言のように絹旗へと『忠告』を囁く。
「・・・・・・キヌハタ。貴方がその調子で戦闘に臨むと言うのなら、別に構いません。ですが・・・・・・『絶対に』後悔しますよ」
その挑発的な言葉に絹旗は目に見える程大きく反応した。そして、怒りと言うよりは疑問を表した表情でアニェーゼへと反論した。
「・・・・・・お言葉ですけどね超アニェーゼ。今までの結果から鑑みるに、後に超後悔するような事が起きるとは超考えられないのですが」
対するアニェーゼは若干ながら怒りと言うべき感情を露にした表情で言葉を紡いだ。
「それが油断だと言うんですよ。大体、何処から“絶対に勝てる”と言う自身が湧き出てくるんです?」
「ですから私は「そもそも貴方は」

絹旗の声に完全に重なったアニェーゼの言葉が、二人の場を支配していく。
「そもそも貴方は『敵に一度敗北しています』。・・・・・・まぁ、あの時は私もやられてしまいましたから人の事は言えねえですけど。それでも言います。恐らくこの戦闘は相当苦しい物になる、そう断言しておきますよ。未知の召喚術式に正体不明の防御魔術。そして全体像も見えてこない巨大な組織・・・・・・警戒すべき点は腐る程あります。別に貴方を責めている訳ではねえですけど、絶対に油断しないよう、改めてお願いしたいんですよ」
「・・・・・・」
絹旗は少し黙った後、やりかけの準備運動を中止してアニェーゼへと目線を向ける。そして疲れたような表情で反省の意思を提示した。
「・・・・・解りましたよ。確かに気を超抜きすぎた発言だったかもしれません。あと、とりあえず油断は最初から超してないので安心してください。その場のノリって物があるかと思っただけですから」
その言葉にアニェーゼは笑顔を見せながら「分かってくれれば文句はねえですよ」と囁き、言い合いに終止符を打った。

258牧田さん:2011/03/19(土) 21:49:25 ID:2tlwiIYw

「シスター・アニェーゼ。全班の収集、点呼完了しました。これよりハイドパーク中央広場へと出撃します」
「・・・・・・ご苦労様です、ルチア」
林の中の僅かなスペースに一九六人もの人間が集合すればそれなりの密度となる。すでに整列し、臨戦態勢へと移行している修道女達だが、それでも若干のざわつきが見られた。
アニェーゼはそんな少女達が一見で見渡せる位置へと移動してから鶴の一声の如く『言葉を放つ』。


「聞け」


一瞬にして全ての雑談が止まり、静寂が生まれた。そして修道女達の視線が一点へと集中する。列の最後尾からすれば掠れ声にしか聞こえないはずの『声』は全てのシスターへと響き渡り、その威厳を示すかのように彼女達の意識をアニェーゼへと収束させたのだ。
そのあまりに圧倒的な存在感に対し、絹旗は毒づくように考える。
(・・・・・・どうやら超アニェーゼにはカリスマ性ってのが超あるみたいですね。根っからのリーダー格って事ですか)
絹旗の心の声などには気づきようが無いアニェーゼは、二〇〇人近い少女達に対し、悠然と構えて低い声色で言葉を続ける。
「今から私の言う事は、説明でも指令でもありません」
シスター達は眼を逸らすことなく、尚且つ緊張している様子も無い。
「・・・・・・強いて言えば、“確認”です」
アニェーゼが目を細めて言う。シスターはそれに応じるように武器を構えなおした。
「これから私達は『殺し合い』に向かいます。知っての通り、こっちが殺さなければ逆に殺されるような、そんな世界です。それを踏まえた上で最終確認を行います」
息継ぎを一回してから、アニェーゼは厳しい声で修道女全員へと言い放つ。

「この戦闘では手を抜く必要はありません。全力で殺しに掛ってください。・・・・・・そして、もしそれが出来ないようなら“今すぐに引き返せ”」
ゾワァっと、自身の血の気が引いていくのが絹旗にはハッキリと判った。単純に、その言葉の中に様々な重圧が詰め込まれているだけだと証明する現象である。
アニェーゼは冷淡に悠々と構えて、決意の有無を確かめるように修道女達へと『最終確認』を提示した。
「戦う“理由”なんざ何でも構いません。神の為、仲間の為、この世界の為、はたまた遠くの家族の為に。・・・・・・そして自分の為に。どんな些細な事でも良いんです。この世のバランスを傾ける輩を、思いっきり殴れるだけの理由があれば付いて来てください。無ければ強制はしません」
戦場へ赴く仲間への言葉としては乱暴すぎたかもしれない。だが、彼女がこうで無ければ誰もアニェーゼを慕ったりはしない。
「私の“理由”は物凄く個人的なモノです。仲間の為でも自分の為でも世界の為でもありません。聞けば馬鹿だと思うかもしれませんし、自分でも命を懸けることが馬鹿らしくなる程度のモノです。・・・・・・それでも」
そしてアニェーゼ=サンクティスは『蓮の杖(ロータスワンド)』を大きく掲げ、目の前の少女達へと問い掛ける。




「もし私の馬鹿に付き合う馬鹿が居ると言うのなら、その者は武器を掲げろ!!」




少女達は何も言わない。ただ黙って、手に持つ霊装を掲げた。
戦う理由など簡単だ。それは昨日、アニェーゼと絹旗が『対十字教黒魔術(アンチゴットブラックアート)』に襲われたと言う事。


自分達のリーダーに手を出した。それだけあれば、武器を取る理由には十分だろう。

259牧田さん:2011/03/19(土) 21:51:30 ID:2tlwiIYw

圧巻。
絹旗最愛は目の前の光景をそう表現した。
二〇〇人以上の大部隊を束ねるリーダーは、常に皆の心境を理解し、その場での最も適切な『言動』を行う。
そして、それを受ける立場であるシスター達は、心に虚偽を交えること無く黙って首を縦に振る。

支配では無く、絆による統括。学園都市では決して見ることの出来ない確固たる『巨大な意志』がそこにはあった。

(どうやら、超とんでもない世界に足を突っ込んでしまったみたいですね・・・・・・っ)
宗教とは信じることで成立する。そして“存在の確証が何処にも無い神”を信じることの出来る彼女等にとって、疑うと言うこと自体が性に合わないのだろう。
反対に、絹旗や浜面などの暗部の世界は疑わなければ成立しないと言っても良い。
常に周りを警戒し、何処から裏切り者が飛び出してくるか判らないような世界と、“敵味方の区別をまず最初に付ける世界”。違いなど一目瞭然だ。
(・・・・・・国境と一緒に次元まで超えちゃったんですかね私は)
絹旗は『魔術師』と言う者をよく知らない。知っていると言えば、常識を超えた能力(チカラ)を何の理論も無しに振り回す・・・・・・せいぜいこの位だろうか。
アニェーゼは「自分は魔術師では無くシスターです」と言い張っていたが、絹旗から見ればどちらも同じだ。そう、理解不能な能力や武器を使用すると言う点で。

車輪。
槍。
フライパン。
長剣。
トンファー。
斧。

どれもこれも容量が悪い物や、少女の細腕ではまとも扱えるかどうかも判らない代物ばかりだ。裏路地で自分達を襲ったクリスタルとか言う女に至っては、緑色のトランプみたいな物をばら撒くだけで攻撃が完成していた気がする。
科学と言う物を完全に否定出来てしまう世界に来てしまったんだな、と絹旗は(自分の適応力に関心しつつ)改めて実感した。


(ま、とりあえずそんな事は超置いといて・・・・・・)
割と重要な事を放置した絹旗には、実は心配事と言うか、少し気がかりな事がある。それは彼女だけがこの場で『あるモノ』を持っていないと言う劣等感に似た感情だ。
目の前の修道女達やアニェーゼが持っていて、絹旗だけが持っていない『あるモノ』。


つまりは戦う理由。

シスター達は親玉の敵討ち(比喩)、そして詳しくは明言していなかったが、アニェーゼにもそれなりの理由があるようだ。
だが、絹旗最愛は殺し合いに参加する程の決定的な理由を持ち合わせてはいない。暗部の殺しや戦闘の依頼などは「やらなければ自分の立場が危くなる」と言う、納得は出来なくとも容赦はしない程度の理由があった。しかし、今回の流れ参加とも言えるこの戦争において、彼女が容赦をせずに戦うことの出来るほどの前置きは無い。
(今まで超戦ってきた黒服の男達の殺気の度合いから言って、相手が超本気で殺しに来るのは明らかですし・・・・・・)
手の抜けば殺されるだろうが、さすがに何も思わずに人を叩き潰すのは絹旗の僅かな良心が拒絶した。
(滝壷さんのお土産の為・・・・・・、ってのは超安すぎますね。しかし今更参加しないと言うのは・・・・・・)


導き出せない答えに溜息を吐いて、絹旗最愛は周りを見回す。そこには真っ黒な林が悠然と佇むだけだ。林の向こう側など見えることの無い程・・・・・・、
(ん? そう言えば・・・・・・周りが超見えない? ってことは・・・・・・外の様子が超分からないってこと・・・・・・・ですよね?)
疑問詞を浮かべながら、彼女は林の中に黒い人影を見つける。そして絹旗は今更気が付いた。



どこから敵が現れるか分からない四方八方を暗闇に囲まれた場所に、絹旗達は集まってしまったのだと言うことを。
「ヤバ・・・・・・っ」
絹旗が声を出したのは、すでに真近で轟音の鳴り響いた後だった。

260牧田さん:2011/03/19(土) 21:53:36 ID:2tlwiIYw

十月一六日午前一時五八分。

ステイル=マグヌスは足を止めた。
「・・・・・・どうしたのですかステイル」
神裂火織、ステイル=マグヌスはすでにハイドパーク内へと進入を試み、アニェーゼ等修道女部隊を捜索していた所であった。
その最中、ステイルがいきなり疾走する体を止め、自身の通信霊装をじっと見つめる。
「・・・・・・? ステイル、何をしているのですか。早く向かわなければ・・・・・・」
「やられた」
「は?」
ステイルの一言に神裂が間抜けな声を出す。ステイルは自身の持っていた札型の通信霊装を握りつぶし、歯軋りを響かせながら詰まるように叫んだ。
「・・・・・・彼女等が、襲撃された・・・・・・っ!!」
「な・・・・・・っ!!」
神裂が仰天するような声を上げる。そして動揺しながらもステイルへと確認を取るように聞いた。
「し、しかしステイル。貴方の通信霊装はアニェーゼ達には通じていなかった筈では・・・・・・?」
「一瞬、ほんの一瞬だがあちらの音声がこの霊装に流れこんだ。恐らく襲撃の影響で通信コードが滅茶苦茶になっていたのだろう。あれだと近くにある一般の固定電話にまで音声の一部が流失している可能性がある」
「それは・・・・・・つまり・・・・・・」
「かなりマズい。恐らく不意打ちを受けたな」
いくら戦闘に慣れた修道女部隊だとしても、本質が成人に満たない少女である事には変わりは無い。そしてその少女達が本物の戦闘員、つまりプロの人間に不意打ちを喰らおう物なら、彼女達の勝ち目は皆無と言って良いだろう。
「くそ・・・・・・っ」
ステイルは再び走り出しながら悪態を吐く。



その時、

「ステイル!!」
「っ・・・・・・!!」
行き成り真横から飛び出してきた巨大な火柱がステイルを襲った。直撃したステイルはそのまま放たれた魔術の延長戦上へと吹っ飛ばされる。
そして龍のような火柱はステイルを飲み込んだ後、追撃を加えるようにその場で爆発した。
「(・・・・・・敵襲か!!?)」
神裂は迎撃術式の飛来した方向、つまり左側へと視線を移す。そこには大きな鍵爪を右手に装着した肩幅の広い男が、手を構えて此方を見ていた。そしてその黒服の男は感情の入っていない平淡な声で言う。
「・・・・・・全く。クリスタル様の邪魔をする輩は後を絶たん様だ」
神裂は武器を構える。そして目を細め、その男へと質問した。
「貴方は・・・・・・?」
「『対十字教黒魔術(アンチゴッドブラックアート)』・・・・・・遥か昔にその名で加入した筈なのだがな。今は少し変わってしまった」
神裂は刀を構え直す。・・・・・・『対十字教黒魔術(アンチゴットブラックアート)』。さっそく御出ましのようだ。
その様子を見た男は嘲笑うように余裕の口を開く。
「戦うと言うのか、女。残念だが貴様では勝ち目は無いと先に助言しておくがな」
「それは戦ってから言う台詞ですね。私とて負け戦は好みません」

視界の半分が闇に包まれた林の中で両者は睨み合った。そして先手を取った神裂が男へと切りかかる・・・・・・はずだった。
だが、その前に、


ドゴォっ!! と言う轟音と共に、巨大なゴーレムが男を背後から地面へ殴りつけ、男は思いっきりうつ伏せのまま地面へとめり込んだ。

「え?」
神裂は今度こそ何も理解出来ていない表情で、唐突に現れた黒いゴーレムを見据える。その土と塵で構成された不安定な体には見覚えがあった。
「・・・・・・ゴーレム・・・・・・エリス?」
「ったく。心配して見に来てやればコレかよ。あっけねえな」

261牧田さん:2011/03/19(土) 21:55:20 ID:2tlwiIYw

戦場で突然聞こえた声は神裂火織には聞き覚えのある声色だった。そう、この男性のようにも聞こえる荒々しい声色の正体は、
「・・・・・・シェリー=クロムウェル!!?」
「伏兵にしちゃ物足りないか? 聖人」
シェリーは呆然とする神裂には目も暮れず、火柱によって一〇m程吹き飛ばされたステイルへとやる気の無い声を掛けた。
「生きてるか? 不良神父」
その言葉に、地面に仰向けで倒れていたステイルはむくりと起き上がり、後頭部をガリガリと掻きながらやる気の無い声で返した。
「おかげさまでね。大体、炎系魔術を専門とする僕に炎属性の魔術が通用するとでも思ったか?」
「思わないわね。まあ、アンタも初撃でやられる程の貧弱野郎じゃないし、そんな事は鼻から判ってたけど」
軽い調子で話し続ける二人に、神裂は落ち着いた表情で凛と言い放つ。
「シェリー、貴方がどうして此処に要るのかは解りませんが・・・・・・敵はまだ戦闘不能では有りません。二人共集中を切らさぬように」
唐突に叱られたステイルとシェリーは二人共が同じ表情、つまり心底面倒臭そうに、目線をすで起き上がっていたの黒服の男へと向けた。


「これだけやられてまだ生きてるか。大した生命力だね」ステイルが溜息を吐きながらルーンのカードの束を懐から取り出した。
「そうゆう防御術式なんだよ。少しは知っとけクソガキ」シェリーは多数の魔方陣を描き、ゴーレムをより強固に作り直した。
「下らない言い争いは、後にして貰えると助かりますよ」神裂は七天七刀を大きく構えた。

対する『対十字教黒魔術』男は、土に塗れ尚且つ無傷の体を立て直し、呆れたような声で質問する。
「お仲間の登場か。だが・・・・・・高が二人が三人になった所で、何が変わる? 貴様等の攻撃など私には通じない」
その挑発的な言葉にステイルが冷静を保ちながらも激情に塗りつぶされた言葉を返す。
「・・・・・・僕達は早く行かなきゃならない。『仲間』を助ける為にね」
次いでシェリーが挑発を重ね合わせるように言葉を発した。
「ハッ。魔術絶対防御だか知んないけどさ。“それを打ち破るのが私等『必要悪の教会(ネセサリウス)』の仕事”なんだよ」
そして、連文の最後に神裂が冷徹な声で言う。
「・・・・・・ここは、戦場です。無用な考えは必要有りません」


そして三人は自身の『覚悟』を叫んだ。


「Fortis931(我が名が最強である理由をここに証明する)」

「Intimus115(我が身の全ては亡き友のために)」

「Salvere000(救われぬ者に救いの手を)」


男は「高が三人」と言った。
だが『必要悪の教会』が三人揃ってしまえば、特殊程度の魔術師に勝ち目は無いだろう。
魔を狩る集団。それが彼等『必要悪の教会(ネセサリウス)』の本質なのだから。

262牧田さん:2011/03/19(土) 21:58:54 ID:2tlwiIYw
投下終了です。
やっとバトルっぽいシーンまで持っていけました。よかった。

あと質問の多かった『対十字教黒魔術』ですが、本編で明かすつもりですので何卒ご容赦を。

感想、誤字脱字のご指摘お願いします。誤字脱字はいつもの如く(ry


それでは次の機会に。

263■■■■:2011/03/20(日) 01:02:36 ID:61pc3lEg
>>252
お待ちしていました! >>116を書いた者です。

待った時間が決して無駄ではなかったと感じさせる相変わらずのハイクォリティー、素晴らしいです。

帝督とアウレオルスは最高のコンビだったわけですね、感慨深い……。
てーとくんマジ天使。ヘタ錬マジAIBO。
そして木原さンマジ人外……。


『十番勝負』だけでなく、『禁竜召式』、『希望ト絶望ノ箱』など前スレを盛り上げた名作が更新され、嬉しい限りです。
お三方に惜しみないGJを送らせて下さい。
これからも焦らず自分のペースで完結を目指して頑張っていただきたいと思います。

以上、長文失礼しました。

264■■■■:2011/03/20(日) 08:31:08 ID:TkjVnTwQ
(^з^)-おっChu!!

265■■■■:2011/03/20(日) 11:48:58 ID:OUr.P/7U
>>240
GJ! そしておかえりなさい。
自分もオペレーションパンドラの再開を心待ちしていました。またこの作品を読めて本当に嬉しいです。
内容の方は変わらずシリアスな展開が進んでますね。黒子の出現はタイミングが悪過ぎた……。
以前の予告に則るなら、次でいよいよ折り返し地点ですね。息の長い作品になりそうですが、完結目指して頑張ってください。

>>252
GJ!! 何だか職人の投下ラッシュが続いてありがたい限りです。
章全体の感想は後編投下後にとっておくとして、とりあえず前編のみの感想になりますが。
まず木原一族には常識が通用しねえ……これだけ突き抜けてりゃ十分自慢できる事だと思うw
覚醒ヒメはペンデックスさんに近い印象があります。意図しての描写でしょうか? 非常に興味深いです。
ヘタ錬もといアウレオルス、ついに逝ってしまったか……まぁ、良い奴だったよ。
彼の餞別によって、とうとうていとくんが翼と原作当時に近い能力を得る事になる訳ですね。存在そのものが長い伏線だった訳か。
後編のクオリティも期待してます! この悲劇がどこに行き着くのか、最後まで見届けたいです。

>>262
GJ! ペースが戻ってきたみたいで安心しました。
ではまず恒例の誤字脱字チェックから始めさせていただきます。SSまとめの方の修正版の参考にもどうぞ。
>>256魔方陣(魔法陣) ドど真ん中(どの消し忘れか)
>>258一見で(一目で)「見渡す」と合わせて適切なのはこちらかと
>>259手の抜けば(手を抜けば) 滝壷(滝壺)
>>260延長戦上(延長線上)
>>261炎属性(禁書の四大属性は火・水・風・土、火属性が適当) 鼻から(端から) 要る(居る)
  目線をすで起き上がっていたの(目線をすで“に”起き上がっていた×の) 魔方陣(魔法陣)
あと文中で「解る/分かる/判る」が混在してますが、意図して使い分けているのでしょうか?

過去編にしか登場しないのかと思ってたイザベラさんがまさかの登場、やはりオルソラがキーマンのようですね。
『対十字教黒魔術』のルビが二つ……? 一体何があったのか、続きが気になりますね。
最近ちょっとクリスタルさんが空気な感じなので、彼女の活躍も期待してます。

お三方とも投下乙&GJでした。読み手の勝手な応援ですが、このまま完結まで突っ走っちゃってください!

266■■■■:2011/03/20(日) 12:05:38 ID:3snEE.jc
>>262
>本質が成人に満たない少女である事には変わりは無い。

この表現良いですね(ニヤリ
かなり萌えます本当にありがとうございました。

267■■■■:2011/03/20(日) 12:19:55 ID:3snEE.jc
連レスすまん。
>>265
解る、判る、分かる
↑の三つは使い分けていたのではないかと。

解る(問題など答えが解る
判る(判断
分かる(事情などを知る

268ななの:2011/03/20(日) 19:23:36 ID:fZVPez1I
教皇も一人のお祖父ちゃん

ローマ正教
今はペテロ=ヨグディスが座っている席には、昔は一人の老人が居た。
マタイ=リース
フィアンマを止めるために全力を尽くした者である。
そんな彼は今――――――

「おじいちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
抱きつかれ中なのであった。
「心配したんだから!かってに病院抜け出してー!!」
抱きついているのは、マリア=リース。
マタイ=リースの孫である。
「すまなかったマリア」
旧教皇改めお祖父ちゃんは、孫の頭を撫でていた。対してマリアは顔を上げ
「ううん、いいの。おじいちゃん。ありがとね」
「ん?」
マリアはにっこり笑顔で言った。
「あのね、アックアってゆー人が言ってたの『あの方は世界の為に戦ったのである』って」
(・・・・あやつ、余計な事を)
でも、マリアの笑顔が見れて良かったと、思うマタイ=リースであった。

―――――――――――――
思いつきで書いた
後悔はしていません!

269ななの:2011/03/20(日) 20:25:39 ID:fZVPez1I
これで終わりだよ?

270ななの:2011/03/20(日) 22:41:18 ID:fZVPez1I
よく、文才がないって言う人いるけど、
そもそも無くても大丈夫だよ?ここの人はやさしーからね。
良いとこは良いって言ってくれるし、アドバイスもしてくれる。
私もして貰ったよ?
だから、じゃんじゃん投稿よろしくー。(これが言いたかった)

271■■■■:2011/03/20(日) 22:52:02 ID:AsjTDx6s
成せばなるっていい言葉だよな

272■■■■:2011/03/20(日) 22:55:26 ID:pDy4YIRk
為せば成る

273■■■■:2011/03/21(月) 22:18:13 ID:EcjUXCNM
おお、見なかった内に連載中御三家が連続投下されてますね^^
主な感想は>>265と同じですので、とりあえず『禁竜召式』についての感想を一つ。

ここで言うのも何かと思いますが、牧田さんの小説は全般的に説明描写が多いですね。
キャラの台詞をあまり入れず、状況説明だけで物語の芯を作っている気がします。
オリ設定が多い故に必然的にそうなっているのかもしれませんが、説明台詞無しで話しを運べる才能は誇るべきものだと思いますよ。
まあ、要するにそれが言いたかったんですけどねww

少なめのキャラ台詞も味のあるものばかりですし。行間のイラーリアの会話が個人的には一番好きです^^


個人的な考えを詰め込んだ駄文、失礼しました。完結目指して頑張ってください!!

274■■■■:2011/03/22(火) 19:51:27 ID:XGzZvZoI
なんか『禁竜召式』って地味にコアなファンが居るよな。

あの文はハマる人はとことんハマルのかね。

275■■■■:2011/03/22(火) 23:08:56 ID:oXEa6Q5w
原作はむしろ説明的な台詞を多用してる印象があるな。どっちが好みかは人によるだろうけど。
個人的には「禁竜」はもうちょい推敲してから投下してほしかったり。コメントから自覚があるのは窺えるのだが。
以前に比べたら誤字脱字は大分減ってきてるけど、一度くらい胸を張って「今回は誤字脱字ゼロです!」とか言ってくれないかな。
投下のペースを考えれば贅沢なお願いだってのは分かってるけどさ、やっぱ綺麗な文章で読みたいじゃない。

276■■■■:2011/03/23(水) 13:45:54 ID:wn0To9Hc
はじめまして。
このスレを見て自分もSSを作ってみたいと思ったので作ってみました。
あまり文章は上手じゃないですけど、少しでもいいので楽しんで頂ければ幸いです。

277とある空想の未知世界(ストレンジワールド)  序章(1):2011/03/23(水) 13:49:25 ID:wn0To9Hc
「ここか?ステイル」
 上条はステイル、インデックスと学園都市のとある廃ビルに来ていた。理由は、霊装の破壊をステイルに頼まれたからである。
 ステイルは問いに頷き、口から煙草の煙を吐く。
「まさか、こんな簡単に終わるとはね。最大主教が用心しろというからどんな物かと思っていたのだけれど……拍子抜けだね」
 三人の前にあったのは、鍵のかかった古びた箱だった。
「でも、私でもこれが何なのか解析できない。もしかして、何かすごいものなのかも」
 インデックスの言葉にステイルと上条は少し考える。しばらくして、先に上条が口を開く。
「まあ、でも俺の幻想殺しなら別にどんな物でも問題ないだろ」
「うーん、でもなんかよくないことが起こりそうな気がするかも」
 インデックスが言うので、上条は少し不安になったが、それでも箱を壊そうとするために手を伸ばす。
 一応、ステイルに目線で確認を取る。ステイルが頷いたので、迷わず手を伸ばし箱に触れた。
 
 その瞬間、破砕音とともに箱が壊れ、術式が展開された。

「ッ!」
 迷っている暇などない。
 上条はさらに手を伸ばし術式に触れようとする。
 だが、あと数センチで唐突に視界がブレた。何かを側頭部に当てられたと分かったときには衝撃で地面に頭が叩き付けられていた。
「ごはぁ……ッ!?」
「上条!くそっ!」
 ステイルが炎剣を出そうとする。が、間に合わない。

 術式から、全方位に閃光が放たれ、視界が白で塗り潰された。

278とある空想の未知世界(ストレンジワールド)  序章(2):2011/03/23(水) 13:50:02 ID:wn0To9Hc
「うぅ……ステイル、インデックス、大丈夫か?」
 辺りは何故か煙に包まれていた。
「僕は別に何とも無いぞ」
「私も大丈夫なんだよ」
 最初のステイルは確かに何ともなさそうだったが、なぜか2番目に聞こえてきた声はどう考えてもインデックスの声ではなかった。聞こえてきたインデックスらしき人物の声は高校生ぐらいの綺麗な声だった。
「いや、どう考えても大丈夫じゃねーだろ!てかお前はインデックスじゃ無いだろ!」
「とうま、何考えてるのか知らないけど、さすがにそれはひどいかも」
 どうやら本当にインデックスらしい。ならば、何で高校生くらいになっているんだろう?と上条は思う。
「とりあえず煙が邪魔だな……上条!」
「何だよ?」
「自分を守れ」
 は?と心の中で上条が疑問に思っていると、

 ステイルを中心に、爆裂が巻き起こった。

「おわぁ!?」
 とっさに右手を突き出し、こちらに来た炎を打ち消す。
「いきなり何すんだよ!少しはこっちの事も考えろ不良神父!」
「済まなかったな」
 割とマジで切れた上条だったが、軽く受け流された。
 煙の向こうにいたのは、少しだけ身長が伸びているステイルと、高校生ぐらいになっているインデックスだった。
 ということは…… 
「とうま、どこ見てるの?」
「い、いや、何でもありませんよインデックスさん?」
 慌てて上条は目をそらす。流石にオルソラ程ではないが、『歩く教会』の上からでも分かるほどにインデックスの胸が存在を主張していた。
 インデックスは自分の体を見下ろし、上条がどこを見てたのか気づいたようだった。
「とうま……」
 インデックスの怒りメーターがぐんぐん上昇中なのが上条には見えた。よって上条は言い訳作戦を決行する。
「いや、インデックス!これは不可抗力なんだ!男なら誰しも女の子の胸にロマンを感じるのだぁぁぁぁぁっっ!!」
 言い訳として成立して無いと思われたらしく、言っている途中でインデックスのかみつきが発動し、上条の言葉が途中から悲鳴に変わった。
「上条、遊ぶのはそこまでにしておいて欲しいんだが」
「どこが遊んでるように見えるんだよ!痛い痛い、インデックスさん、すいません!もう許してください!頭蓋骨がっ!」
 上条の必死の謝罪によって、何とか噛み付きシスターは頭から降りてくれた。
「ところで、インデックス、何か変わった所はあるか?」
「うーん、体以外は特に無いみたい」
「じゃあ上条、君はどうだ?」
「いや、何も変わってないぞ」
 二人に問いかけたあと、ステイルは考え込んでいるようだった。上条はインデックスに聞いてみる。
「インデックス、今何が起こっているのか分かりそうか?」
「とうまは何も変わってないってことは魔術なんだろうけど、私にも分かんないかも」
(そういえば、カーテナとかの時もインデックスは分からないって言ってたよな……ってことはまた『天使』絡みなのか?)
 天使のことを思い出して、上条が身震いしていると、ステイルが口を開いた。
「とりあえず、一回解散しないか?」
「解散?何するんだよ?」
「とりあえず僕とインデックスで、魔術的なサインが町に無いか探してくる。君は適当に町を歩き回って情報を探してくれ」
「と、その前にステイル」
「何だ上条?」
「術式を破壊しようとした時何か当てられたんだけど、ステイルは見てたか?」
「何か当てられていたのか?ならそちらも調べてみるよ」
 わかった、と上条は振り返ってビルの外に出ようとする。ビルの出口でインデックスに呼び止められた。
「とうま、無理はしないでね」
「町を歩くだけなんだから、大丈夫だって」
 そのまま歩いて、大通りへと向かう。
 とりあえずは、人が多いところに行くのが良さそうだしな、などと考えながら、しばらく歩いて
いると、大通りに出た。そこには―――

 左も右もどこを見渡しても、高校生ぐらいの人しかいなかった。

「ど、どうなってんだよ……」

279第一章 それぞれの少し違う日常 In_Unknown_World(1):2011/03/23(水) 13:52:32 ID:wn0To9Hc
 とりあえず上条は町を歩いてみたが、やっぱり高校生以外の人影は何処にも居なかった。
(こんなに学園都市に高校生は居ないはずなんだけど……どうなってんだ?)
「ねえ」
 誰かが呼ばれるような声が聞こえたが、別の人を呼んでいるんだと思ったので上条は無視した。
「ねえってば」
 なんだか知り合いの声に似ているような気がしたが、さらに無視を続ける。
 なんか後ろから静電気がバチバチと、そして殺気が放たれているような気がしても。
「……聞いてんのかコラァァァァァァァァァァ!」
 相手が言い終わる前に上条は振り向いて、右手を前にかざす。予想通りに右手に雷撃の槍が飛び込んできた。
 もちろん、煙の向こうにいたのはいつも通り、御坂美琴だった。こちらも体型が高校生になっている。見た感じ、サイズ的に親と同じぐらいだろうか?いや、少し大きいか?
 なんて、気になる一点を見ていると間違いなく命が危なくなりそうなので、全体を見ているフリをする。常盤台の制服ではなく、どこかで見たような高校の制服を着ていた。
「アンタ途中から絶対分かってたでしょ?」
「まあ、そうだけど」
「じゃあ無視すんなやぁぁぁ!」
 もう一発来たので右手で打ち消す。さすがに、三発目は撃ってこないようだった。
「んで御坂」
「何よ?」
「常盤台の制服はどうした?」
 そもそも高校生になっているのに中学の制服を着ているのもおかしいと言えばおかしいのだが、御坂が着ている服があまりにも自分がいる高校のものに似ているので、遠まわしに上条は聞いてみた。
 わずかに沈黙したあと、御坂が手を上条の額に当ててきた。
「……何やってるの?」
「いや、熱でもあるんじゃ……と思って」
 俺は大丈夫だって、と御坂を引き離す。御坂の感じからすると、本当に心配しているらしい。
 上条は今の『御坂美琴』に関する知識は無に等しいので、じゃあどこの高校に通っているのかと聞いてみた。
「何聞いてんの?アンタと同じ高校じゃない」
 その答えは予想していたが、本当に返ってくると上条は思っていなかった。
(御坂が俺と同じ高校なのか……でも霧ヶ丘もあるのになんでこっちなんだ?)
 せっかくだから聞いてみる。
「御坂、霧ヶ丘もあったのになんでこっちにしたんだよ?」
「霧ヶ丘は長点上機と一緒に無くなったじゃない」
「無くなった……?まあそれは置いておくとして、じゃあなんでうちに来たんだよ?」
 別に大したことは聞いてないはずなのだが、なぜか御坂の顔が赤くなる。
「そ、そりゃあ決まってるじゃない。あ、アンタと……」
 一言喋るたびに、どんどん御坂の顔が赤くなって、うつむいていく。
 なんか悪いこと言ったかな?と上条が思っていると、
 ぐるる、と上条のお腹が鳴った。
 御坂が顔を上げると、いつもの表情に戻って言った。まだ顔は赤いままだったが。
「と、とりあえず、そろそろ昼だし、ご飯食べに行かない?」
「いや、でも俺お金が無いんだけど……」
「私が奢るから大丈夫!」
 という事で、御坂に手を引っ張られて近くのレストランに向かうことになった。

280第一章 それぞれの少し違う日常 In_Unknown_World(2):2011/03/23(水) 13:53:23 ID:wn0To9Hc
 一方通行の朝は遅い。
 少し前まで能力を補助無しでは使えなかったころまでは、常に周囲に気を配っていた。
 が、現在は完全とは言えないが、能力を取り戻しているので、またかつてのように自分の気が済むまで寝るようになっていた。が、そんな一方通行を邪魔する人影があった。
「起きろー!!」
(?、どォなってやがる)
 聞こえてきた声は、番外個体に似ているのだが……少し感じが違う。おそらく、番外個体が明るい声を出したとするとこんな感じになるのだろう。もしくは、番外個体が打ち止めのような性格になったらこんな感じだろうか?
(なんでこンな悪ふざけをしてやがる?アイツはこンな事しねェはずだが)
 なので一方通行は目を開けず、睡眠を続行する。
「じゃあ強硬手段だー、くらえミサカの全力!」
 一方通行は能力を取り戻しているが、全身を反射の膜で包むことはできない。
 だが、どちらにしろ番外個体がこんなことをする訳が無い。ただの冗談だろうと思って寝続けていると、
 本当にボディプレスが叩き込まれ、高校生一人分の体重が一方通行に強烈なダメージを与えた。
「ごはぁっ!?」
 ベクトル操作で体の上から番外個体……と思われる人影を押しのけ、同時に跳ね起きる。
「テメェ何しやが……」
 言いかけた言葉が途中で止まる。そこに居たのは、番外個体ではなく打ち止めだった。
 ただし、番外個体と同じ高校生程度まで成長しているが。
「何って、昼まで起きないのは良くないと思ったんだよ」
「起きるのが遅くても別に良いだろォが」
「身長伸びないよ?」
「そンな俺の身長は低くねェだろ」
「そうかな?」
 なぜか意地悪い笑みを浮かべる打ち止め。
「どっちにしろオマエには抜かれてねェ。つーか、俺の身長なんてどォでも良いだろ」
 話しながら着替え、外出する準備を整える。
「どこ行くの?外食?」
「オマエの期待通り、飯食いに行くンだよ」
「やったー!」
 結構大人びた外見に似合わず、幼児のようにはしゃぐ打ち止め。
 そして準備が終わったころ、一方通行の携帯が鳴った。どうやら土御門かららしい。
『やっほー、元気かにゃー?』
「俺が元気じゃねェ時があるのかよ?」
『ま、そうだけどな。とりあえず、今からこっちに来てくれないかにゃー?』
「何でだよ」
『一つ、話があるんだぜい』
「そォかよ」
 話という事は、『グループ』絡みだろうか。無くなった筈なのだが。とりあえず、場所を教えてもらう。
 どうやら、丁度行こうとしていたレストランに居るらしかった。
「行くぞ」
「んじゃ、ミサカは先に行ってるねー」
(……打ち止めは場所分かってンのか?)
 そして打ち止めは家を出て走っていった。レストランと反対方向に。
「アイツ、場所分かってねェのに走るんじゃねェェェェェェェ!」
 ベクトル操作で飛び出し、一方通行は打ち止めを追いかけていった。

281第一章 それぞれの少し違う日常 In_Unknown_World(3):2011/03/23(水) 13:54:13 ID:wn0To9Hc
「ありがとう御坂!今ちょうど金欠だったんだ!」
 レストランに着いた上条と御坂は、とりあえずいろいろと食べ物を注文した。
 全部御坂の奢りらしいので、上条はありがたく食べさせてもらっている。
「まあ、別に気にしなくてもいいわよ」
「いや、でもありがとう!上条さんはここ数週間で一番幸せです!」
 なぜか、また御坂は顔を赤くする。
 そして、しばらくの間黙って食べていると、上条は一つ気になったことがあった。
「なあ御坂」
「何よ?」
「ここ食べ物持ち込んでいいのか?」
「さあ?」
 すぐ近くの席に女子4人組が座っているのだが、一人はレストランの中なのにコンビニ弁当を食べながら、「今日と昨日のシャケ弁は違う気がするなー?あれー?」と言っていたり、一人は大量にサバの缶詰を食べてたり、一人は名前も聞いたことの無いようなマイナーな映画のパンフレットを読み、一人はボーっとしているだけだった。一人が弁当を食いながらしきりに時計を見ているところからすると、誰かを待っているらしい。とりあえず弁当を食っている人に心の中だけで「弁当なんてどこでも変わんないですよ」とツッコんでおく。
 その近くの席では、土御門が座っていた。
 何話してるんだろう?と上条が思っていると、土御門がこちらに気づいた。
「カミやーん、ちょっとこっちに来てくれないかにゃー?」
 断る理由は特に無いので、席を立つ。
「んじゃ少し行ってくる」
 御坂はなぜか残念そうな顔をしたが、了承してくれた。
 とりあえず土御門の隣に座る。すると、土御門の表情が真面目になる。
「カミやん、今、何かおかしいと思っていることは無いか?」
「ああ……ってことは土御門は気付いてるのか?」
「ああ。なんとか結界で守ったんだが……今回もご覧の通りでな」
 土御門の服の下から、包帯が覗く。そして、スピーカー機能がONになっている通話中の携帯を見せる。
「ただ、今回はオレたちだけじゃないんだぜい。海原も今回は自分を守れた
みたいだからな」
『ええ。ですので、今土御門さんと何故こんな事になっているのか話していたんですよ』
 土御門は海原と言ったが、恐らくはかつて上条を襲った偽海原なのだろう。
「で、答えは出そうなのか?」
「お互いの知識を最大限出してみたが、まったく……って所だぜい。恐らくインデックスなら
答えが出せるんだろうけどにゃー……」
「いや、インデックスも無理みたいだ」
『じゃあ、どうします?科学の方も調べてみます?』
「でも、科学じゃこんなの説明できないぞ」
「んじゃ海原、町をもう一回調べにいこうぜい」
『じゃあ先に調べてますね』
 通話を切り、土御門は立ち上がろうとした。しかし、店の入り口のほうを見ると、腰を下ろした。
「どうした?」
 土御門の目線の先を見てみる。そこには、

 銃を持った男が入店しようとしていた。

「ッ!」
 上条は立ち上がろうとするが、土御門が制止する。
「何でだよ!」
 口の動きだけで土御門は言葉を伝えてきた。
(まずは相手の出方を見るぞ)
「……わかった」
 上条は座りなおす。
 男が入店した。と同時に、男は声を張り上げる。
「全員動くんじゃねえ!」
 と同時に、男は懐から音楽プレーヤーを取り出した。そして再生ボタンを押す。数秒変な音が流れ、音は止んだ。と同時に、

 レストランにいた半分以上の人間が、突然頭を押さえ、うめき始めた。

282第一章 それぞれの少し違う日常 In_Unknown_World(4):2011/03/23(水) 13:54:47 ID:wn0To9Hc
 その中には、御坂も含まれていた。
「御坂!?」
「ありゃあ、恐らく能力者の『演算』を妨害する装置だろうな」
「じゃあ何で御坂は……!」
「恐らく、能力と行動の両方を妨害するために、思考も『演算』として
見てる……ってとこだろうな」
「くそっ!」
 再び上条は立ち上がろうとするが、また土御門が制止する。
「冷静に考えろ、カミやん!お前は素手で銃に勝てるのか!」
「っ……」
 ただ見ていることしか出来ないのか?そう上条は思う。
 だが、『不幸』は加速する。
「やっと着いたー!……ってあれ?」
 一人の少女が入店してきた。と同時に入り口で固まった。
(あいつは……打ち止め!?)
 高校生くらいになっているが、御坂とそっくりなので間違いない。
 打ち止めが入ってきたのを、男は見逃さなかった。
 ナイフを懐から取り出し、固まっている打ち止めを羽交い絞めにし、ナイフを突きつける。
「こいつが殺されたくなけりゃ、早く金を出しやがれ!」
 入り口から上条の席は結構離れているので、走っても間に合わない。警備員(アンチスキル)を待てばいいのだろうが、それまで打ち止めの安全は保証されている訳では無い。
(どうすればいいんだ……何か逆転の手は?)
 上条が考えていると、さらにもう一人入店してきた。
 もちろん、男は振り向く。そしてそこに居たのは、
 その『逆転の手』だった。

 服も、肌も、髪の色も、全てが白い学園都市最強の超能力者(レベル5)。

 一方通行。
(あいつは……!?)
「なんだテメエ!死にたくなけりゃ床に伏せろ!」
 なぜか、男は一方通行の事を知らないらしい。
 それに対して、一方通行の答えは簡単だった。
 腕を振り抜き、ボディブローを男の脇腹に叩き込む。
 車が激突したような轟音が響いた。
「ごは……あっ?」
 男は何が起きたのか理解できていない様子だった。そして、そのまま床に倒れた。
 一方通行は足元を見回し、音楽プレーヤーを踏み砕く。そして打ち止めの方を向いた。
「帰るぞ」
「えっ?」
「こンなに暴れて飯が食えると思ってンのか?」
「……そうだね」
 そして踵を返して店を出ようとする。だが、店長らしき人物に呼び止められた。
「なンだよ?」
「いえ、お礼の代わりに食べて行ってはくれませんか?お代は結構ですので」
「いいンだな?」
 店長は頷いた。一方通行は店内を見回す。そして、土御門たちが座っている席を見つけた。一方通行と打ち止めが座る。
 少しの静けさの後、再び、レストランに騒がしさが戻ってきた。
「で、何だよ、用事ってのは?」
「ちょっと待った」
 上条が割り込む。
「その話、打ち止めは聞いても良いのか?」
 一方通行は少し考え、言った。
「良くねェだろォな」
「んじゃ、俺は打ち止めとあっちに行ってるからな」
 上条は立ち上がって、打ち止めを連れて御坂の方に向かった。
 上条には一つ、気になることがあった。
(なんで、ただの強盗があんな物を持っていたんだ……?)
 ただの強盗が、あんなアンチスキルが使うような、いや、アンチスキルでも持っていないような装備を簡単に入手できるのか?

283第一章 それぞれの少し違う日常 In_Unknown_World(5):2011/03/23(水) 13:55:25 ID:wn0To9Hc
 イギリス、ロンドンの市街に、傭兵、ウィリアム・オルウェルは一人佇んでいた。
(一体何がどうなっているのであるか)
 ウィリアムの体には、『聖人』としての力が戻り、若返って、高校生ほどになっていた。筋肉の量も、服の上からではわかりにくいほどまで減っている。とはいえ、『聖人』の力には筋力はあまり関係ないので、結果的には第三次世界大戦の後よりは腕力は上がっているのだが。
 そんなウィリアムの後ろに、立つ影があった。
「騎士団長であるか」
「名前を呼んで欲しいものだが……まあいい」
 背後に立つ騎士団長もまた、高校生ほどになっていた。とはいえ、ウィリアムとは違い、それほど見た目が違ってはいない。それだけ騎士団長が若作りだという事なのだろう。
「何の用であるか」
「聞かなくても分かるだろう?今何がどうなっているのか」
 確認するように騎士団長は視線を投げかける。
「ということは、そちらでも起こっているのであるか?」
「ああ、たまたまウィンザー城にいたのだが、それでもこの魔術からは逃れられなかったようだ」
「ウィンザー城クラスの魔術防壁でも防ぎ切れなかった、という事であるか?」
「ああ。とはいっても、今のところ実害は無い様だ。ただ、原因に関しては今も調査中だ」
 ウィリアムは、軽くうなずくと、振り返る。
「では、何故ここに来たのであるか?」
「ああ、それは簡単だ」
 いつの間にか騎士団長の手にはロングソードが握られていた。おそらくフルンティングと呼ばれる霊装だろう。
「普段なら出来ない事をしたいだろう?」
「手合わせはいつでもできるであろう?」
 ウィリアムの言葉に、軽い調子で騎士団長は返答する。
「まあ、確かにそうといえばそうだが、『聖人』の力が戻っているお前と勝負したいからな」
(ブリテン・ザ・ハロウィンの時に剣は交えたはずであるが……殺し合いではなく勝負をしたい、という事なのであろうな)
 ウィリアムは頷いて、
「では、行くとしよう」
 騎士団長と共に郊外へと、家の屋根を飛び移りながら移動していった。

284第一章 それぞれの少し違う日常 In_Unknown_World(6):2011/03/23(水) 13:55:58 ID:wn0To9Hc

 第三次世界大戦を潜り抜けても、やっぱり浜面仕上の人生は変わらなかった。いや、元に戻ったと言うのかもしれない。
「遅い、はまづら」
「超遅いですね。やはり浜面は超浜面ですね」
「結局、そこがダメなんだよね」
「……大丈夫。それでもはまづらははまづらだから」
 待ち合わせの時間には数分遅れただけなのだが、それでこの対応である。一応、滝壺は擁護してくれているようだが、意味がさっぱり分からない。
(『アイテム』再結成なんて、言わなきゃ良かったかもなぁ……)
 などと考えても、現実は変わらない。パシリなのは相変わらずだった。
「で、今日はなんで俺を呼んだんだ?」
「買い物に行くから、荷物持ち」
 麦野に一瞬で返答された。
「麦野一人で持てるだろ」
 一見麦野の手は細く、非力に見えるが、これでも浜面並、もしかすると浜面以上の腕力がある。
 いくら浜面がパシリポジションだと言っても、荷物持ちが必要だとは思えないし、そもそも女性の買い物に男がついていくのもどうかと浜面は思うのだが……
 場が凍った。
「……超本気ですか?」
「……結局、やっぱりダメダメだね、浜面」
「……はまづら……」
 麦野以外の全員に、まるでゴミをあさるホームレスを見るような目を向けられた。
「え?何でだよ……」
 どういうことなのか分からない。
「もしかして、浜面は超鈍感なんですか?」
 絹旗に質問された。
「分かった分かった、ついて行けばいいんだろ」
 刺すような視線に耐えられないので、浜面は反論を諦めた。
「それじゃ、行こうか」
 麦野が立ち上がり、絹旗、フレンダ、滝壺も続いて立ち上がる。
 そしてそのまま立ち去ろうとする。
「っておい!代金は!?」
 麦野は振り返って、
「よろしく」
 そのまま店の外に4人で出て行った。
 机の上には意外と多い量の料理が置かれている。フライドポテトなど、軽い物が多いが、それでもこれだけあると……
(俺の財布が……)
 そんなに浜面は金持ちではない。財布に与える影響を考え、膝をつきたくなる。
 が、浜面には別に気になることがあった。
(なんか今日は違和感を感じるな……なんか一人多いような……っていうか全員同じ年だっけ?まあいいか)
 結局どうでもいいという結論に達し、また怒られる前に代金を支払って麦野を追いかける事にした。

285■■■■:2011/03/23(水) 13:58:24 ID:wn0To9Hc
一度ここで止めておきます。
批評・アドバイスをよろしくお願いします。

286■■■■:2011/03/23(水) 17:55:05 ID:rAjYkNR6
新参で悪いけどここって時間操作系(時止めるとか)の能力者とか魔法使いのキャラって
いる?いなかったら書こうと思ってんだけど。

287■■■■:2011/03/23(水) 18:12:28 ID:tJLjuLjw
>>285
パラレルワールドか?
上条の言動とかフレンダ生きてるとか矛盾点があるんだけど。

288■■■■:2011/03/23(水) 20:28:26 ID:8ZPPcGY2
>>286
時間操作能力は既出だな。
このスレの最初の方を見ればあると思う。
あと魔法使いは言葉の意味がわからん。魔術師とは違うのか?

>>287
フレンダに関しては浜面が違和感を感じてる描写があるが……
上条さんが他の妹達の可能性を考えずに一瞬で『打ち止め』と断言したり所々おかしいのは確か。

289■■■■:2011/03/23(水) 21:08:23 ID:aFANFby2
訂正、×魔法使い
   ○魔術師

290■■■■:2011/03/23(水) 22:14:44 ID:wn0To9Hc
>>288
すいません、打ち止めのアホ毛に関する描写を入れるのを忘れていました。
上条は12巻で打ち止めに会っているので、アホ毛から判断した、という事にしてください。
他にも失敗をしているかもしれないので、続きはもっとしっかり推敲してからにします。

こんな初歩的なミスをして本当にごめんなさい。

291■■■■:2011/03/23(水) 23:01:17 ID:y2ylBhAk
時系列が分からん。とりあえずロシア編後で、上条さん生還してるから新約より先の話になるのか?
それともやっぱり深く考えずパラレルワールドものという認識でいいのかな
一方さんと土御門の関係を上条さんがスルーしたのは何か狙いがあっての事なのか。とにかく続き次第かな

292■■■■:2011/03/24(木) 20:51:42 ID:84k7I8fc
御坂は小さい頃にアホ毛がついてて、
打ち止めはその頃の体だからアホ毛がついてるのであって、
高校生になってもまだついてるのかという矛盾が・・・

293■■■■:2011/03/24(木) 20:57:05 ID:0UwWG3jQ
うん、もうパラレルで良いよ。
矛盾点を指摘したらきりがない。
このままじゃ連載を続けられなくなるし。

294■■■■:2011/03/24(木) 21:03:05 ID:84k7I8fc
私から言えることは一つだ

        頑張れ!

295king:2011/03/25(金) 02:28:17 ID:SBVRik1U
このまま頑張ってくださいね!!

296■■■■:2011/03/25(金) 06:39:50 ID:FrBD9TEA
IF〜10年後の世界の続きが読みたいです。

297■■■■:2011/03/25(金) 14:27:14 ID:.MaCrLjI
どうも、「とある空想の未知世界(ストレンジワールド)」の作者です。
皆さんの温かい言葉、本当に嬉しいです。より良いSSを作れるように頑張ります。
今書いているSSですが、新約より前に書き始めた物なので、「22巻後のパラレルワールド」といった感じになります。
ここからオリジナル要素が少し増えるので、嫌いな人は注意をお願いします。
それでは、続きを投下します。

298第二章 それぞれの物語の始まり Respective_Movements(1):2011/03/25(金) 14:27:58 ID:.MaCrLjI
 昼食を食べ終わり、一方通行は口を開く。
「もう一度聞くけどよ、用事ってのは何なンだよ?」
「お前は今、おかしいと思っている事はあるか?」
「おかしい、ってのは例えば何なンだよ?」
「……周りの人間の年齢、だな」
「ああ、おかしくなってやがるな」
 そうか、と言って土御門は黙り込む。
 なんとなく、一方通行は打ち止めの方に目をやる。
 打ち止めの希望で特大パフェを頼んだらしく、運ばれてきたパフェに打ち止めは目を輝かせていた。
 同じ席には、先程まで土御門と話していたあの『無能力者(レベル0)』と、レベル5の超電磁砲、つまり打ち止めのオリジナルが座っていた。
 『無能力者』と、『超電磁砲』と居る打ち止めは、本当に楽しそうで。
(打ち止めは……本当に、俺の傍に居て良いのか?)
 そう思った。
 そんな事を考えても、仕方が無いのかも知れない。それに、あの時、打ち止めはずっと一緒に居たいと言ってくれた。それでも、考えてしまう。
 あの二人に預けたほうが、打ち止めは幸せなのではないか、と。
 遠くからだって、影からだって、守ることはできる。それならば……
 そう考えていると、土御門は話の続きを始めた。
「お前は、今の世界をどう思う?」
「別に、どォも思わねェよ」
「元に戻したい、とは思わないのか?」
「特に害がある訳でも無ェだろ」
 土御門は、その言葉に少し黙り込む。害が無いのなら沈黙する必要は無い。ということは……
「って事は、何か害があるってことなのかよ?」
「いや、もし害があったとしたら?」
「そりゃァ、元に戻すだろォな。……で、これで用事は終わりだな?」
 ああ、と土御門の返事を聞くと立ち上がり、打ち止めのほうに向かう。
 そのまま通り過ぎてしまえ、そんな心の声が聞こえた気がした。それでも、今はまだ……打ち止めの傍に居たい。
 打ち止め達の机の上には、すでに数個の空になったキングサイズ、とでも形容されそうなパフェの容器が乗せられていて、
「次はこれ!ミサカはミサカの限界に挑むよ!」「これ以上は俺の腹がもたねえよ!それに、御坂もそろそろ財布がやばいんじゃないのか!?」「私はそんな事無いけど」「マジで!?同じ高校生のはずなのに何この経済格差!!」と、コントの様な光景が繰り広げられていた。
「この隙を狙って……追加注文を試みてみたりとか」
 とりあえず、呼び出しボタンを押そうとする打ち止めの手を掴んで阻止する。
「そろそろ帰るぞ」
「何で!?」
「これ以上はどォ考えても財布に迷惑だろォが」
 むー、とむくれる打ち止めは放っておいて、超電磁砲の方を向く。
「……ありがとォな」
 これだけの量、財布に響くだろう。と思って。それ以外にも込めた思いはあったのだが。
 やはり超電磁砲と無能力者は驚いていた。特に気にも留めず、店を出る。
(やっぱり、柄にも無ェことはするモンじゃ無ェな)
 打ち止めと並んで道を歩く。
 一方通行は土御門の言葉を考えていた。様々な可能性を考え、そして、一つの可能性にたどり着いた。
「おい、打ち止め」
「何……ってわぁ!」
 打ち止めを抱え上げ、ビルの上に跳ぶ。いきなりお姫様抱っこされ、打ち止めは顔を赤くする。
 しばらくは打ち止めの傍には居れない。一方通行の家に一人で居させるのは危険だろう。
「黄泉川の家に行くぞ」
 理由が分からないのか、首をかしげる打ち止めを無視して、ベクトルを操作し、風のベクトルも利用しながら、ビルの上を跳ぶ。ほとんど滑空と言った方が近いが。
「ところでさ」
「何だ?」
「ミサカをお姫様抱っこする意味はあるの?」
「………この体勢が一番安定するンだよ」

299第二章 それぞれの物語の始まり Respective_Movements(2):2011/03/25(金) 14:28:38 ID:.MaCrLjI
 高校生ぐらいの年齢になっていた黄泉川に打ち止めを預け、一方通行は学園都市のデータベースを利用して調べ物をしていた。黄泉川は家に居ないだろうと思っていたのだが、たまたま今日は休みだったらしい。
 打ち止めや黄泉川だけで無く、来る時に往来の人々を見た感じだと、少なくとも学園都市は端から端まで高校生ぐらいの年齢の人だけになっているようである。職業は変わってはいないようだが。
(しかし、黄泉川は高校生のころからあンな体形だったのかよ)
 目的のものを見つけた一方通行は余計な思考を中断する。
「……いくらなんでも、こンなのは、有り得ねェだろォが」
 まずおかしいのは、垣根帝督が健在だ、という事だった。そもそも、一方通行が生きているかも怪しいような状態にしたはずだ。なのに、記録を見る限りでは、垣根帝督は重傷を負ったことすらないらしい。つまり、垣根帝督はそもそも一方通行と戦ったことすら無いという事になる。
 さらに、今までは名前だけは確認できた、『グループ』などといった暗部組織の名前すらも確認できない。
 この2つから、一方通行は一つの仮説を考えた。そして、しばらく時間をかけ、プロテクトを破り、さらにデータベースの奥へと潜っていく。
「……」
 何も言えない。有り得ないと思っていた仮説の、裏付けを取る情報がそこにあった。
 暗部が絡んでいた事件、その全てが起きてすらいない。
(つまり、そもそも暗部自体が存在しねェって事になンのか?)
 一方通行はまさか、とは思いつつもさらに調べていく。
 やはり暗部が絡んでいたであろう非人道的な実験も、存在が無かった。巧妙に消されているのか、と思ったがそもそも消したとしても痕跡ぐらいは残りそうなものであるが、その消した痕跡すらも無い。
 そして、非人道的な実験が無い、それはつまり……
 絶対能力進化計画は行われていない、という事になる。それならば、オリジナルがこちらに敵意を向けない説明がつく。だが、それでは妹達は一人も居ない筈だし、打ち止めも一方通行の家に居る訳が無い。あの計画が無ければ、妹達は全て廃棄されているはずだ。
 そして、あの『無能力者』との接点も無い。
 なのに、『無能力者』の反応はどう考えても初対面に対する反応ではないし、打ち止めは家に居る。確かめてはいないが、打ち止めが居るなら妹達も恐らく存在する。
 ならば、別の計画に利用されているのか。
 そう思って少し調べてみると、簡単に答えは見つかった。どうやら、量産型能力者計画の後、ミサカネットワークを利用して協力機関との情報交換を行う、という計画ができたらしい。別に妹達が非人道的な使い方をされる訳では無さそうだ。
 安全な使い道のようだ。それが分かって、一方通行は安堵した。
(けどよ……何で打ち止めは俺の家にいるンだ?それに、やっぱり『無能力者』との接点も無ェはずなンだが)
 恐らく何らかの理由があるのだろう。だが、今それを気にする必要は特に無いだろう。
 一方通行は帰宅することにした。歩き、屋外に出る。それほど時間はかかっていないと思っていたが、すでに日は暮れていた。
(1つだけ確かな事がある)
 一方通行は天を仰ぐ。そして誓う。
(この世界では、もう誰も泣かなくても良い。なら、どんな事があっても、俺は、この世界を守ってやろォじゃねェか)
 たとえ自分が掴んだ物でないとしても、この幸せを。この『幻想(せかい)』を。絶対に守り抜くと。
 そんな事を考えて空を見上げて佇んでいると、ポケットに入れていた携帯電話が振動した。一方通行に電話を掛けるのは打ち止めか土御門ぐらいしかいないし、番号しか表示されていないので、恐らく土御門だろう。とりあえず通話に出る。
「何だよこンな時間に?」
 土御門からの用件は簡潔で、そしてとても信じられないような内容だった。
「そォか、分かった」 
 通話を切ると、一方通行は風のベクトルを掌握し、目的地に向かうために飛翔した。

300第二章 それぞれの物語の始まり Respective_Movements(3):2011/03/25(金) 14:30:23 ID:.MaCrLjI
 一方通行が、レストランから出たのとほぼ同時刻に、上条当麻は、帰路についていた。
「まさか打ち止めがあんな大食いだとは……よくもまああんなに入るもんだなぁ……」
 上条と御坂と打ち止めで巨大パフェに挑戦していたのだが、上条は最初の1個でダウンしていた。その後も少しは食べたが。
 もしかして、女の子って意外に大食いなのか、と上条は大食いシスターの事を考えながら歩く。
(いや、女の子特有のデザートは別腹ってやつかな?そういえば、いつ土御門と一方通行は知り合ったんだ?どっちも説明してくれなかったしなぁ……)
 二人と会話する時間が少なく、聞くタイミングを逃してしまっていた。だが、別に今度聞けばいいだろう。
(ん?何かおかしいような……)
 違和感を感じて、上条は周りを見回す。だが、人気の無い通りが目に入るだけだった。

 今は昼で、しかもここは大通りなのに。

「……ッ!」
 周りを見回す。だが、特に何も――
 そこまで考えた所で、不意に思考が中断された。いや、上条の後頭部に、衝撃が与えられた事で思考が断ち切られた。
 地面に叩きつけられる。そこで、思い出したように激痛が襲ってきた。
「……ッ、ううう……」
 あまりの痛みに声も出ない。
 空気を裂く音がする。直感で、左に転がる。視界の端で、上条の頭を割ろうとした装飾の付いた金属棍棒(メイス)が、空を切り、そのまま地面を砕く。砕かれたコンクリートが体に当たる。が、それほどのダメージにはならない。
 頭を押さえながら起き上がる。上条の目の前には、数人の修道服を着た男女がいた。
「……魔術師か」
 もちろん相手が答えるはずも無い。が、魔術師で間違い無いだろう。無言で他の魔術師達も各々の武器を抜く。
 上条もそれに対応して拳を構える。魔術師相手なので、右手を前に出す。
 どこから、どう来る?そう思っていると、右からジリジリと空気を焼く気配が飛んできた。魔術で形作られた、と思われる火の玉だった。
 上条は右手を振り、破砕音と共に火の玉をかき消し、そのまま奥、魔術師に走り込む。
「ッ!?」
 どうやら上条の右手の事は知らなかったらしい。魔術師は剣を振り上げようとしたが、すでに上条は間合いに入っていた。
「おおおおおッ!」
 咆哮しながら、踏み込みの勢いを加え全力の右拳を振り上げるようにみぞおちに叩き込む。わずかに魔術師は浮き、声を上げる事無く地面に倒れた。
 今までの経験から、魔術師は魔術で身体能力を多少なりとも補助しているということは分かっていた。だから、右手で殴ってみたのだが、意外と効果があるらしい。
 たった一撃で倒された。その事実を認識して、魔術師達の空気が変わった。隊列を変え、同時に魔術の準備に入る。
 わざわざ待つ必要は無い。上条は迷い無く足を踏み出し、駆ける。
 先程よりも巨大な火の玉が飛んできた。原理は分からないが、恐らく数人で同時に放ったのだろう。それでも、上条の『幻想殺し』の前には意味が無い。右手を叩き付け、火の玉をかき消す。火の玉の中に金属片がいくつか入っていたが、尖ってはいないし、勢いも無いためダメージは無い。
 視界は開けた。そのまま上条は走る。直後。

 上条の体が、電撃に貫かれた。

301第二章 それぞれの物語の始まり Respective_Movements(4):2011/03/25(金) 14:31:45 ID:.MaCrLjI
「……がッ!?」
 何が起こったのか。勢いを失い、倒れながら上条は原因を探す。服に、先程の金属片が引っかかっていた。そして地面にいくつかの金属片が落ちていた。
 簡単な事だった。金属片を避雷針代わりにした。そして、魔術師が金属片を投げ、それを中継地点代わりにして右手に当てないように電撃を迂回させた、それだけだった。
(たった一回で見抜いたってのか……やばい、体が……)
 電撃で体が痺れている。起き上がろうとしても、起き上がれない。
 上条が動けないことを確認すると、魔術師達は一歩、一歩と近付いてくる。上条には、その足音が死刑執行人のようにも思えた。
(どうする、どうすれば……!)
 だが、考えても何も起きない。その間に、メイスを持った魔術師が間合いに入っていた。
 メイスが、断頭台の刃のように振り上げられた。そして、振り下ろされる、事は無く。
 爆裂が魔術師達を薙ぎ払った。
「まったく、僕が来なかったらどうするつもりだったんだ?」
 2mを越す人影。煙草をくわえたまま、器用に喋っているステイルだった。
「ステイル!」
「意外に脆い……もう気絶しているみたいだな」
 ステイルは爪先で軽く、倒れている魔術師達をつつく。反応は無かった。
 やっと痺れが取れた。上条は立ち上がる。
「なあ、こいつらどこの所属なんだ?」
「見た感じ、ローマ正教かな」
「何でローマ正教が俺を?」
 今のローマ正教に上条を襲う理由は無いはずだが……
「……その話は後でする」
 なぜかわずかに沈黙があった。
「とりあえず、一旦君の家に行くとしよう。あの子も待っているしね」
 ステイルは歩き始める。上条も、その後を追った。

302行間1(1):2011/03/25(金) 14:34:46 ID:.MaCrLjI
 元『神の右席』の右方で現居候、隻腕となったフィアンマは、イギリスのとある町の屋根の上に立っていた。
「まさか、『アレ』を使うやつがいるとはな……しかも、上条当麻を『核』に据える、か。一体どんな物好きなのか、それとも……」
 フィアンマは呟きながら考え込む。フィアンマもまた、高校生程度まで若返っていた。
(『聖なる右』を使ってこの状態か、やはり恐ろしい代物だな。もっとも、防御できただけでも十分だろうがな)
 フィアンマは『第三の腕』を出現させ、調子を確かめる。
(昔程の出力は出ない。安定もしない。が、どうやら戦闘はできそうだ)
「さて、行くか。俺様もこの舞台に混ぜてもらうとしよう」 
 そして、フィアンマは屋根の上から飛び降り、自分の荷物を持って、空港へと向かった。荷物とは言っても、パスポートと財布だけだが。

 日本、そして学園都市に向かうために。

 それから数時間のフライトの後、フィアンマは空港に到着した。両替を済ませ、外に出て空を見上げる。昼前といった所だろう。
「さて、どう行くか……タクシーだろうな」
 少し考えて財布を取り出す。が、中身の量からして、タクシーに乗ったとしたらヒッチハイクでイギリスまで帰る羽目になるだろう。
 わずかに沈黙した後、財布をポケットに戻した。
 フィアンマは別に体を鍛えていた訳では無いので、空港から歩くのは辛い。
 その上、格好つけたのは良いが、フィアンマはどうやって学園都市に行くのか知らない。
「これが、ヤツの見せたかった世界か……」
 冗談を言っても、気持ちは軽くならない。
 とはいえ、歩かなければ前には進まない。とりあえずは、地図を探す事にした。


 それから地図を探し、地図を頼りに学園都市のゲートまで着いたころには、もうすでに昼を過ぎていた。
「さて、それでは行くとするか」
 とは言っても、確か学園都市に入るには許可証が要るらしい。一応適当な理由をつければ発行してもらえるかも知れないが、さっきは考えていなかったが、フィアンマの顔が学園都市の末端まで伝わっている可能性もある。こちらの世界でも、第三次世界大戦は起きていた。もし伝わっていたら第三次世界大戦の首謀者として捕まるのは確実だろう。少し歩き、誰の目も届かない、いわゆる死角で止まる。
 フィアンマの『聖なる右』はもう自由自在に制御はできない。正直言って少し不安だったが、これ以外の方法は無い。
 『第三の腕』を右手があった部分に出現させる。右手はもう無いので『第三の腕』と呼ぶのはおかしいが。そして軽く力を込める。
「ふっ」
 軽く声を出し、第三の腕から下に力を放ち、反動で上に跳躍する。もちろん、壁を越えたい訳では無い。
 頂点に達した所で、壁の上を見回す。やはり、壁の上を警備ロボットが徘徊している。強行突破できなくは無さそうだが、別に学園都市と争う気は無いし、恐らく今のフィアンマでは負ける事になるだろう。
(さて、どうするか……)
 勢いが完全に死に、今度は重力に従い、落下していく。フィアンマは真上に飛んだつもりだったのだが……
 完全には力を制御できなかったようで、フィアンマは真上ではなく、わずかに前に跳躍していた。つまり、壁を越えることになる。
(……こんな事になるとはな)
 そんな事を考えていた丁度に、壁の上を通り越した。
 もちろん、壁を越して侵入しようとする不審人物を警備ロボットが見逃すはずも無い。
 警報がけたたましく響き、不審人物、つまりフィアンマを捕まえようと網が発射される。
「……こんな所で、止まるわけにはいかんのだよ!」
 右手の力を使い、虚空より片手剣サイズの赤い剣を出現させる。高速で振り回し、網を全て切り裂く。
 しばらく、剣で飛んでくる網を切り裂き続けていると、地面が近付く。剣を振り回してある程度勢いが失われていたいたようで、体を痛める事無く着地できた。
 どうやらロボットが警備員を呼んでいたらしい。向こうから、数人の警備員が走ってくる。確か『アンチスキル』と言う名前だったような気がする。
(少々不本意だが、ここは戦うしか無い様だな)
 剣は放棄する。赤い剣には峰が無いうえ、フィアンマに手加減できるような剣の技術は無い。そもそも手加減できても第三の腕の、目標に対して最適な威力で攻撃する、という性質のせいで倒してしまうだろう。『気絶で済む程度』に設定すれば済む話かもしれないが、設定に失敗する可能性がある。剣は空気に溶けるように消え去った。
 右手に、気絶で済む程度に何とか力を込める。そして射程内に誘い込む。
(これで終わりだ)
 右手を突き出す。だが、攻撃が放たれる前に、

 『第三の腕』が霧散した。

303行間1(2):2011/03/25(金) 14:35:21 ID:.MaCrLjI
(こんな早くに……!?くそっ!)
 警備員はもうすぐそこまで迫っている。捕まれば学園都市の外に追い出されるだろう。
 逃げ道を探す。が、そんな都合良くある訳が無い。
 完全に警備員に包囲された。
「両手を頭の後ろに回し、地面に伏せろ」
 極めて事務的に警備員の一人は宣言する。
 今のフィアンマに抵抗する術は無い。大人しく言うとおりにする。
(さて、どうなるか……)
 とは考えても、追い出されるだけだろう。恐らく末端だろうから、フィアンマが魔術師だと言うことは知らないだろう。
「振り出しに戻る、か」
 だが、すぐには諦められる物では無い。右手に目をやる。おそらく、警備員には見えないが、『天使の力』が『第三の腕』があった部分に集まっていた。
 状況を打開するための手段は思い付いた。しかし、この方法では被害が予測できない。それでも、前に進むためにフィアンマは使うことにする。



(しかし、この服装……学生じゃ無さそうだけどなぁ。それとも、ただ単に珍しい服なのか?)
 警備員(アンチスキル)の笹島は警備ロボットからの通報でここまで駆けつけた。そこには、高校生ぐらいの少年が居た。
 どうやら能力らしき物を使ってこちらを倒そうとしていたので、とりあえずは逮捕した。
 私服を着ている学生というのも学園都市では珍しくは無い。特に今日は休日である。
 だから、とりあえずはどこの学生か、何をしていたのか取調べを行おうと思っていたのだが……
 右腕を見る。腕は無かった。どうやらさっきの奇怪な腕は能力で出したものらしい。
(珍しい能力だなぁ……大能力者〈レベル4〉ぐらいかな?でも、何で右腕が無いんだろうか……)
 なんて事を笹島が考えていると、不意に重圧のようなものを感じた。
 赤髪の少年の右手があった部分に、見えない何かが収束していく。
 そして、

 赤髪の少年を中心に、衝撃波らしき物が巻き起こった。

 それが何だったのか確かめる間も無く、笹島は、近くの壁まで吹き飛ばされ、そのまま意識を失った。



「……やはり、無理はする物では無いな」
 フィアンマは血を口からこぼしながら呟く。『天使の力』の爆発は、フィアンマ自身に最もダメージを与えていた。
 辺りを見回す。どうやら、気絶で済んでくれたようだ。
「『あいつ』は何処か、まずはそこからか」
 フィアンマはその場を立ち去った。

304■■■■:2011/03/25(金) 14:36:48 ID:.MaCrLjI
とりあえずはここまでです。続きは出来次第投稿します。
批評・アドバイス・突っ込みがあればよろしくお願いします。

305■■■■:2011/03/25(金) 21:26:17 ID:Nsr8tPYI
一方通行かわいい
イイナー打ち止め。私もお姫様抱っこして欲しー

306ななの:2011/03/25(金) 21:41:17 ID:Nsr8tPYI
小ネタを投下
思いつきなり

307ななの:2011/03/25(金) 21:42:22 ID:Nsr8tPYI
美琴。ついに告白を

とある日
「私は・・・・・・、

あんたが好きっ!!」

美琴は、上条に告白をした。
ずっとずっと胸に秘めていた思いを、打ち明けられた日だった。
だがっ!

「はいはい。好きなのねーそうなのねー。」

旗男には通じなかった!
「本当よ!本当にあんたのことが好きなんだから!」
「あーはいはい」
「アンタは――――
聞けやゴラァ!!!!」
ビリビリビリーと、心臓に悪そうな音が鳴ると共に、
変わらぬ関係の二人が、追いかけっこを始めた。

次の日。
それを見ていたクラスメイトにばらされ、
ボッコボコにされたのは言うまでも無い。

――――――――糸冬――――――――

308ななの:2011/03/25(金) 21:43:34 ID:Nsr8tPYI
終了なり

309■■■■:2011/03/25(金) 22:14:35 ID:IAh0FXFg
なんかいちゃいちゃスレより現実じみた(ありそうな)展開なのが
悲しい。

310ななの:2011/03/25(金) 22:45:55 ID:Nsr8tPYI
なんか、ごめんなさい・・・

311■■■■:2011/03/26(土) 03:18:19 ID:OEeOzSQA
謝らなくてもいいんだぞ

312■■■■:2011/03/26(土) 06:35:53 ID:SuVklwZ.
最近上条さん性に対する好奇心とか欲求とか消えたよね。

313■■■■:2011/03/27(日) 15:33:09 ID:I8roa//2
>>312
堕天使エロメイドのせいだな、間違いない。

314■■■■:2011/03/28(月) 15:18:03 ID:wZ9DeUMo
この場を借りて、いつもSSまとめを編集してくれている方々に感謝を。
本当に御苦労さまです。

315中二病 番号 20000:2011/03/30(水) 18:18:53 ID:AAYI.Il6
キーボードが進まない今日この頃。あまり長い文章(5〜6レス分)使うものが書けない。
なんかコツとかありますか?

316■■■■:2011/03/30(水) 21:59:35 ID:s2OlJk3I
同意見
ちなみに、私は書けるとこから書いてる

317■■■■:2011/03/31(木) 15:22:14 ID:cqJGBbno
何か(禁書じゃなくても)小説を読めば良い。
物語を読めば自分の中でもある程度のアイデアが浮かぶ。
その小説の話の進め方や、台詞回しを真似して(完コピは当然NG)内容だけをすりかえれば基本の文は出来上がる。
そこから自分なりにアレンジしたり、自分の小説に合った形に直せば良い。


ここの人たちはプロと言う訳では無いので、プロの書き方に多少似せてしまっても問題無いと思う。
もう一度言うけど似すぎてても駄目だけどね。

318■■■■:2011/04/02(土) 20:10:43 ID:BZcfhxHs
個人的には現役職人達の意見も聞きたいな。

319■■■■:2011/04/02(土) 22:55:31 ID:aDim9Oiw
一応某所で現行持ちだが

書けないと思ったらしばらく放置が一番だと思う。または、息抜きに別の短編でも書いてみる、とか。放置はナシ、とか思うかもしれない。が、微妙なもの上げるくらいなら、半年待つから仕上げてきた方がいい

で、>>317の言う通り、何か読むのはいいよ。創作物もいいが、俺はノンフィクションや科学、民俗学や犯罪学なんかの一般書や参考書がお勧め。知識になるのもさることながら、装飾のない、実用的かつ分かりやすい文章が分かるから

常識だが、文章を書く際には、必ずラストから組み立てる。でないと、書きたいところだけ書いてたら矛盾が生じてくるから絶対な。終わりを決めた後に始点を考えろ
どうしても思いつかない場合は、同じストーリーでも主要キャラを変えてみるといい。または、視点を別キャラにしてみることでガラっと変わって筆が進むことも多い


ジャンルごとの注意点
・バトル物……よっぽど文章が上手くないと難しい。書けないと思ったら、丸々飛ばして説明で終わった方が良策。基本は七五調や体言止め、擬態語なんかで堅くするとシリアス感が出る
・日常系……深い中身は必要ない。ほのぼのした空気だけを意識して、文章も難しい言葉や漢字を使わずやわらかくする。擬音も多めだといい
・ギャグ……その場の空気が全て。確実に滑るネタでも、絶対に恥ずかしがって書かないこと。ついでに一文を短くしてスピード感を出すか、または無駄に長くしてgdgd感を出すと吉


執筆上の注意点
・掲示板系の文章は、改行が多い方が好まれる。一箇所にがっつり詰め込まず、余裕をつけて読みやすくした方がいい
・キャラを出し過ぎない。主要キャラは絞り、使えなかった子は別の機会に使え
・二次創作においてオリキャラは基本地雷。名前の出ないモブならともかく、それなりの出番があるならば、多少正確改編してでも原作キャラを使え
・考えたネタや文章は、携帯にメールで送っておく。で、もう一度見て練り直す



俺はこういったことを日常的に意識しながら中編・長編書いたりしてる。
あんまり参考にならんかったらすまん

320from-ING:2011/04/03(日) 17:27:03 ID:sthg/FIA


まぁ、半年ほど放置した俺が言うのもなんですけど

本当に気が向いたときに書くのが一番と思いますよ

俺が書く際には禁書原作を読みふけりながら『こんな文章書いてみたいなぁ』って思って、その心持のままかいてます

自分の書いてるのを頭で創造してみるといいかもです

場面を思い浮かべると自然と筆が進むような気がしますね

たいしたものは書けやしないんですが笑

321牧田さん:2011/04/03(日) 20:44:34 ID:agdI8dvw
↑に同じく三ヶ月ほど放置した経験アリの自分が言いますが、

基本的には>>317と同じ意見ですね。
思い浮かばなければ文学書籍(もちろんラノベもOK)を読みあさると良いかも。何かしらのアイデアが出ますよ。

それでも何も書けない時は、少し時間を置いて書きたくなったらでも良いと思います。
from-INGさんの言っている通り、気が向いたら書く。この方法が結果的に一番効率がいいのでは無いかと。

>>317と同じ意見になりますが、要するにプロじゃないんですから慌てる必要はありませんよ、って事が言いたかったんですハイ。



よーわからん駄文でのレス無駄遣い、失礼しました。

322中二病 番号 20000:2011/04/03(日) 21:21:07 ID:MDY6.4Lw
アドバイスありがとうございました。これからもがんばっていきます!

323中二病 番号 20000:2011/04/04(月) 00:04:18 ID:iQPQHOO6
第2部 序章 後編投下



第一部7日目 第二部某日 17時30分  地下街 





「あちゃー、こりゃ一筋縄じゃいかねーな。」

おっさんの場所がわかってるから、そこまで来たのは良いが、ドア閉まって変形してんじゃん。どーすんのコレ。

「って、まだいたんですの?早く避難を―――」

「そういうわけには行かない。」

さっきのツインテールの子だ。なんか変なもの見るような目つきでこっち向いてるし。

「きみ、テレポーターだろ?何ならこの中に運んでくんない?」
「断りますわ。そもそも、入ったら入ったでどうやって出るんですの?」
「あっそ、じゃあこっちにもあてがある。離れたほうが良いぜ。」
「?ええ。」



スーハー・・・・スーハー・・・・よし。3発で開ける。


見たところ、鍵穴と、蝶番二つとれば何とかなる―――

つっても、別にそこに当てるわけには以下ない。当てにくいし、間違って壁殴りそうだし、何よりも痛いし。
だから、当てるのはドアの中央。そっから、『移動』させる。



「ハァァアアッ・・・せいっ!」


―――――――――


彼は、ドアの中央を力いっぱい殴りつけた。しかし、さっきの居酒屋の扉のように『ドアの中央』はへこまなかった。
その代わりドアノブがひしゃげていた事に白井は驚きを隠せなかった。

「え?何故ですの?確かに中央を・・・」

「能力。超能力だ。」

「―――――名称は?」

「衝撃移動(インパクトプレジャー) 」

「『衝撃移動』・・・どこかで聞いたような・・・」

「ん?まあ、細かいことは気にすんな。」

そういって彼はドアを壊し、周りの瓦礫をかたづけた

「さて、そろそろあいつが来るはずなんだが・・・」

「・・・?『あいつ』って?」

「――――来た。」

「おーい!秀人(ひでと)!こっちこっち!。」

そこには、日本ではまず見ない形の車がエンジンをふかしていた。

「OK!OK!今行く!」

「あの方は・・・」

「知り合い・・・いや、悪友(ばかやろう)だ。あ、車で突っ込めばドア壊す必要なかったな・・・・」

そういって駒田はあの車に駆け寄った。


「よう、渡(わたる)またおまえ車を新調したのか。つーか何だよこの車、見たことねーぞ。」

「こいつか?これはな、いいか?聞いて驚け!この車は『ノーブルM600』だ!ちなみにエアバックは無い。最大速度362キロ、0キロから100キロまでわずか3秒で加速する化けもんだ。ちなみに事故ったら命は無いんでよろしく!」

「そっかー、そんな高くて安全性の低い車ぶつけたらやばいもんなードア壊して正解だったなー・・・ってちょっと待て!さっき何つった?エアバックがない!?0から100まで3秒!?そんなんで地下街走るつもりか!?」

「大丈夫だ。安心しろ。事故んなきゃ大丈夫だから。」

「事故る可能性が高すぎるだろ!いやだ〜!離せ!離せ!HA・NA・SE!つーかまだ俺、酔い止めまだ飲んでな―――」


「大丈夫だ、問題ない。」


「人の話を聞けーーーーーーー!!!」


そうして彼は、断末魔の悲鳴をあげながら地下街の奥へと消えていった。





第一部7日目 第二部某日 17時31分  地下街



「はい!到着!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・おーい、秀人ー?大丈夫かー?駒田秀人(こまだ ひでと)ー。あ、メモだ。なになに?」

『  酔い止めぐらい飲ませやがれクソやろう  』

「いやー悪い悪い。持ってなかったし。」


「…………覚えてろよ……」



おお ひでとよ よってしまうとはなさけない

 /└────────┬┐
< To Be Continued... | |
 \┌────────┴┘

324中二病 番号 20000:2011/04/04(月) 00:06:15 ID:iQPQHOO6
作者コメントはお休み

325■■■■:2011/04/05(火) 01:42:10 ID:WKxbFdFc
上げ

326■■■■:2011/04/05(火) 20:31:24 ID:JFxHxh62
>>325
なんだ、まだいたのか。

327■■■■:2011/04/06(水) 10:55:25 ID:wDHUkz4o
しかし過疎ってるなーww

328■■■■:2011/04/06(水) 22:37:48 ID:oprsLrCo
>>320
>>321
なんだこの豪華すぎる面子はww

329■■■■:2011/04/07(木) 01:35:46 ID:1HNeKJA6
そろそろ誰かが投下してくれる。そんな気がする

330 ◆SvP4IshN9o:2011/04/08(金) 23:11:35 ID:4/jVrGAw
どうも、「とある空想の未知世界(ストレンジワールド)」の作者です。
続きが出来たので投下します。

331第三章 道を塞ぐ白き天使 Dead_End(1):2011/04/08(金) 23:13:55 ID:4/jVrGAw
「お帰り、とうま」
 上条がステイルと共に帰ってくると、インデックスが居た。
 台所に、修道服の上からエプロン(上条の愛用品)を着た状態で。なんでそれ着てるんだという言葉を飲み込み、別の言葉を出す。
「……よし、ステイル、飯食いに行くぞ」
 そのまま回れ右し、外に出ようとする。が、ステイルに肩を掴まれて止められた。
「いや、ちょっと待て上条」
「何でそんな、期待してくれないの?」
 ステイルはインデックスの作った料理が見えているらしい。ちょうどインデックスが遮る形になっているので、上条は何を作っているかは見えない。だが、なんとなく予想はつく。きっとそこには阿鼻叫喚の地獄が広がっているのだろう。だが、悪臭が漂ってこない。という事は良い物を作っている可能性はあるかもしれないが、そんな物に賭けたくは無い。
「いや、インデックスってどう考えても料理スキル0だろ!いや、マイナスだ!上条さんはこんな所で死ぬわけにいかないんですよ!」 
「そんな事無いって、ほらとうま」
 そう言って、脇に下がり、こちらに料理を見せてくる。そこには、
 そこらのレストランに出しても恥ずかしく無いような料理が並んでいた。
「……ステイル、ちょっと俺を殴れ」
 ばきっ、と軽い音で後頭部を殴られる。意外と痛かったので頭を押さえながら目を上げ、もう一回料理を見る。
 やはり、さっきと変わらない料理が並んでいる。
「ステイル、これはどういう魔術なんだ?幻覚が見えるんだけど」
「何でとうまは私の実力っていう結論にたどり着かないの?」
「いや、ありえないだろ!1日でどうしたら、殺人料理から3つ星クラスになるんだよ!どうせ出前とかだろ!」
 上条の言葉に返答しようとしたインデックスを、ステイルが遮る。
「それは後でだ、まずは飯を食べるべきだろう」
「ん、まあそうだよな」
 とりあえずテーブルの周りに座る。あまり大きくは無いので3人だときつくなる。
 インデックスが料理を置き、自分も座った。
 いただきます、と上条は言って、料理を口に運んでみる。
「………」
「どうしたの、とうま?」
 あまりの美味しさに、言葉も出ない。
(何だ、何だよ、何なんだ、何なんだよ、何です、何なんですかこれは!?有り得ない、あのインデックスがぁぁぁぁぁぁっ!!)
 現在上条の脳内風景ではお花畑が展開中である。
「どう、とうま?私にだってこれくらい出来るんだよ」
 あまりの美味さに天に昇りそうになっている上条に気付いたインデックスが胸を張る。
「最高だインデックス!……いや、最高ですインデックスさん!」
 そうやって会話をインデックスと交わしながら、3人はご飯を食べる。
 ふとテレビに目をやると、ニュース番組がやっていた。別に大したニュースではない。第三次世界大戦の傷跡も消えつつある、といった感じの内容だった。
 夕飯を食べ終えると、ステイルが口を開いた。

332第三章 道を塞ぐ白き天使 Dead_End(2):2011/04/08(金) 23:14:15 ID:4/jVrGAw
「それじゃあ、説明に入ろうか」
 インデックスの方にステイルが目をやる。軽くインデックスが頷くと、話を始める。
「調べてみた感じだと、やっぱり学園都市の端から端まで皆高校生ぐらいになってるんだよ。入れ替わりじゃなくて皆年齢が同じになる御使堕し(エンゼルフォール)みたいな物、って思うと分かりやすいかも」
「んで、何か害はありそうなのか?」
「今の所は2つ……害と言えるのかは分からないけど。まず一つは、この状況を誰もおかしいと思っていない事。一部の人はおかしいと思っているみたいだけど。例えばとうまとか、あの時とうまの近くに居た人とかね。もう一つは、あれから少し経ったら、頭の中に今までに無かった知識が増えてきたんだよ」
「例えば何なんだ?」
「私の場合、さっきみたいな料理の知識とか。あと、科学についても少し。ステイルは、魔術に関する知識が増えているみたいなんだよ。たぶん、元々高校生より下の年齢だった人は『その人が進むであろう未来』を想定しているみたい。逆に、大人から若返っている人は、何故か知識が減ったりはしないみたい」
「そう。例えば、今まで『魔女狩りの王(イノケンティウス)』を使うにはカードの配置が必要だった。けれど、今なら1枚あれば発動できる。とは言っても、カード1枚じゃ大して強くないんだけどね」
「ふーん……じゃあ、何も危険じゃ無いんじゃないか?」
 ステイルは軽く煙を吐いて……
「そうとも言い切れない。これから、何かが起こるかもしれない。起こってからじゃ遅いからね。だから、破壊しに行くんだよ」
「破壊……って言っても、どうすればいいのか分かってるのか?」
 すると、インデックスが地図を取り出した。一点を指さす。
「いろいろ調べてみたんだけれど、ここが一番怪しいんだよ」
 そこは、すでに使われていない廃ビルだった。最初の廃ビルの近くにあるらしい。
「で、そこで何をすればいいんだ?」
「おそらく、そこにこの術式の核となる何かがある。それを君の右手で壊せばおしまい……という訳さ」
「んじゃ、行こうぜ」
 上条は立ち上がるが、ステイルもインデックスも立ち上がらない。
「どうした?」
 ステイルは目で語っていた。君一人で行けと。
「……何回目だこのヤロォォォォォォ!」
「そんな怒られても困るね」
「困るね、じゃねぇ!俺が1番困るわ!何回お前は俺を囮にする気なんだよ!」
 ステイルはうつむく。しばらく沈黙があった。そして顔を上げて、まるで己の覚悟を見せる、とでも言いたいような表情をして言った。
「何回でも、だ」
「格好つけんな!格好よく言えばいいって言うと思ってるのかよ!」
「そうか、なら仕方ないな」
 上条があふれる怒りを叩きつけると、軽くステイルは息を吐いて、
「これはインデックスの案なんだけどな」
「……………マジで!?」
 インデックスが何か言おうとしたが、その前にステイルが口を塞ぐ。
「ああ。だから早く行って来い」
 わかったよ、と上条は家を出ようとする。その前に、気になることがあった。上条は振り向く。
「これって誰かに話したのか?」
「土御門と神裂には電話して伝えたよ」
「そうか、んじゃ行って来る。インデックスをよろしくな」
「君に頼まれなくてもいい」
 そして、上条は家を出た。
 わずかの間、沈黙があった。そしてステイルが立ち上がる。
「それじゃあ、僕達も行こうか。……しかし、簡単に引っ掛かったな。まあ、引っ掛かったフリをしてるだけだろうけど」
 そして、ステイルとインデックスも家を出た。

333第三章 道を塞ぐ白き天使 Dead_End(3):2011/04/08(金) 23:15:51 ID:4/jVrGAw
 上条は、地図を頼りに道を歩いていた。ステイルは交通費をくれなかったし、上条の財布はただでさえ火の車である。
 という訳で、現在、ひたすらに歩いている。周りに誰も居ないので、財布を覗きながら愚痴をこぼす。
「ステイルの奴、あれで騙せたと思ってんのかなぁ……まあいいや。どうせ誰かが行くことになったんだしな。うーん、歩くのはちょっとなぁ……でも、金も無いしなぁ」
 今は大通りに居た。ここをまっすぐ行って、さらにその先の入り組んだ路地を抜けると、目的地、廃ビルに到着という訳なのだが、まだまだ先は遠い。
「しっかし、大通りなのに人通りが無いなんて、もうこんな時間だったのか?」
 携帯で時間を見てみる。だいたい7時ぐらいだった。
 確かに周りを見ると、すっかり夜になっているが、そもそもこれくらいの時間がもっとも人通りが多いのではないのか?
「まさか……また?」
 顔を上げる。さっきまで人一人居なかった大通りに、人影がいた。ちょうど物影の部分にいるので、誰か分からない。
(魔術師か……?)
 いや違う。上条に襲い掛かる重圧には、覚えがあった。
 上条は人影に近付く。と同時に、脳裏を、いくつかの光景が駆け巡る。夏の夜の操車場。極寒のロシアの大地。
 3m程にまで人影との距離が縮まった時、人影は影から出てきた。
 人影は、髪、肌、そして身に纏うジャケットまで、全てが白い。ただの白ではない。それはまるで全てを拒絶した結果、残ったような白だった。
 それは、かつて妹達を助けるために立ち向かい、そしてロシアの大地でも拳を交えた、
 学園都市最強の超能力者(レベル5)、一方通行。
(一体、何でこんな所に……?)
 今回はロシアの時の様に話が出来る状態では無いという事も無さそうだ。なぜここに居るのか気になるが、とりあえずは、一方通行の出方を待つ。一方通行が口を開いた。
「オマエは、今から何処に向かってンだ?」
 唐突だ。正直に答えようかと思ったが、魔術の事を言っても信じないだろう。という訳で、少し濁す。
「今から、ちょっと行かなきゃいけない所があるんだよ」
「何をしに行くンだ?」
 何か言いたいことでもあるのだろうか、深く突っ込んできた。
「まあ、別に大した事じゃない」
「例えば……この世界を作った魔術を壊しに行く、とかか?」
 一瞬、一方通行の言っている事が理解できなかった。一方通行は魔術の正反対と言ってもいい位置にいるはずなのに。けれど、良く考えれば、ロシアの時に魔術を知ったのかも知れない。もしくは、数年後には魔術を知ることになっているのかも知れない。それでも、上条には疑問があった。
 何故、この世界が魔術でできた、という所まで知っているのだろう?
 なぜここを上条が通ることを知ったのだろうか?
 答えは簡単だった。
「土御門からだいたいは聞いた。何でオマエは壊しに行こうとしてる?」
 なぜここを通るのが分かったのか、というのは分からないが今突っ込む必要は無いだろう。
「これから何が起こるのか分からない。それに、この世界は何かおかしい気がする。だから、破壊しなくちゃいけないんだ。」
「って事はオマエは知らねェンだな?」
「何をだよ?」
「この世界は、平和なンだよ」
「……元の世界だって平和だろ?」
 一方通行は首を振る。
「そンな物じゃねェ。オマエには通じないかも知れないが、この世界には、学園都市の『闇』は無ェんだよ」
「……『闇』?」
 そんなモノが学園都市にあったとは知らなかった。
「そう、『闇』だ。明るい表の学園都市、その裏にあるクズの掃き溜めみてェな物だ」

334第三章 道を塞ぐ白き天使 Dead_End(4):2011/04/08(金) 23:16:24 ID:4/jVrGAw
 返す言葉が見つからない。
 一方通行の言葉は、噂で聞いた、というような調子では無かった。
「何で、そんなのを知ってるんだ。それに、それは本当の事なのか?」
「ああ、少し前までは俺もその中に居たからな。だが、それは今は関係ねェ。オマエは、そんなクズの掃き溜めが無い、この平和な世界を壊す、そォ言いたいんだな?」
 上条は黙り込む。一方通行は追い討ちをかけるように続ける。
「それとも、オマエは自分の自己満足の為に今、泣かなくて良い奴を泣かせよう、ってのか?」
 一方通行の言葉には明らかに失望した、とでも言いたいような響きがあった。
 だが、上条の沈黙は諦めた事の意思表示では無い。
「やっぱり、この世界はおかしい」
「何が言いたい?」
「学園都市の『闇』が無い、それは分かった。でも、そうやって誰かが泣くような事が無くなってる、って言うんなら一つおかしいことがある。」
 今度は一方通行が沈黙する。
「こっちの世界でも、第三次世界大戦は起きているんだ。いくら犠牲者が居なかった、って言っても、その戦争で泣いた人は必ず居るはずだ。もし本当なら、第三次世界大戦も起きていない、そうだろう?だから、やっぱりこの世界はおかしい。何かが、きっと起こる」
 一方通行は顔を上げない。だが。
「そォか。この調子じゃ、話し合いは意味が無ェみたいだな」
 突然、押し潰されるような重圧が上条を襲った。
 目の前、一方通行からそう錯覚するような威圧感が放たれていた。
 何かが、一方通行に集まっていく。
「俺は、この世界を守りてェ。オマエは、この世界を壊してェ。なら、もう何をすべきかなんて、決まってンだろ」
 そして。
 目の前の一方通行の背が爆発した。
 いや違う。そこにあったのは、純白の翼。それが急速に展開された為、背中が爆発したように見えたのだ。
 翼の展開が止まると同時。一方通行の頭上に、輪が生じた。そして、一方通行は宣言する。

「ここから先は、一方通行だ」

 この先へ、誰も通さないという己の意思を込めて。

335第三章 道を塞ぐ白き天使 Dead_End(5):2011/04/08(金) 23:16:51 ID:4/jVrGAw
(初めて見る姿だな……でも、これじゃまるで――)
 上条は、足がすくみかけていた。目の前の一方通行の天使のような姿に、嫌でもあの大天使、ガブリエルを連想する。
(けど、ここじゃ立ち止まれない!)
 拳を握り、歯を食いしばり、己の覚悟を確かめる。
 一気に飛び出そうとする。が、その必要は無かった。一方通行は既に眼前に居た。
 動く動作は欠片も見えていなかったのに。
 いつ、この距離に居た。
 一瞬、そう考えた。そして咄嗟に地面に叩きつけるかの様に頭を落とす。その直後。
 さっきまで自分の首があった所を一方通行の一対の翼がギロチンのように通過していった。
 まだ、攻撃は終わらない。一方通行が道端の缶を踏む様な調子で、上条の頭に照準を合わせて右足を上げる。
「ッ!!」
 危険を感じ、全力で右に飛ぶ。崩れた体勢で着地できるはずも無く。地面を転がる上条の視界の端で、一方通行が足を振り下ろしていた。
 軽い調子で振り下ろされたはずの足は、杭のように地面に食い込んだ。巻き上げられたコンクリートが上条の体を叩き、転がる勢いを増す。
 食らっていたら、首から上は原型を留めていなかっただろう。
 だが、逆にチャンスが生まれた。脛の半分ほどまで足が埋まり、一方通行は体勢を崩している。
 転がる体を無理矢理に右足で止めて、一気に飛び込む。
 一方通行の体の前で交差するようになっていた翼の内、上条に近い左の翼が元の位置に戻すようにこちらに迫る。
 右手を上に突き上げるようにして軌道を逸らす。頭上を通過していった。
 道は開けた。両の翼は振り抜かれている。体勢も崩れている。もう邪魔するものは無い。右拳を振りかぶり、体を捻り、出来る限りの最大の威力を出す。
 完全に間合いに入った。あとは振り抜くだけ。一方通行がこちらを向く。だが、その顔に驚きは無い。
 獰猛に、笑っていた。
「ここまで埋まってたら動けねェ、そう思ったんだろォ?……ンな訳無ェだろ」
 何の抵抗も無く、一方通行は右足を引き抜いた。
(防御ができねえ!……けどこっちの方が先だ!先に当てられる!)
 だが、振り上げた右足で巻き上げられたコンクリートが上条の体に当たる。少しの間動きが止まる。一瞬と言っても良いほどの時間だった。だが、それが致命的になった。
 上条の鳩尾に、膝が叩き込まれた。
「が……っはあっ」
 上条の体が、足が、地面を離れた。
 そして、痛みを感じる時間も無く、
 上から下に振り下ろされた左の翼が上条に直撃した。
 一瞬、自分の動きのコマが飛んだように錯覚した。それほどまでに速く、地面に叩き付けられていた。
 衝撃で、地面が歪む。
 地面の感触と、強烈な痛みが脳に送られる。本能的に体が叫んでいた。
「っ……があああぁぁぁっ!?」
 それでも、まだ戦える。歯を食いしばって痛みに耐え、上条は立ち上がろうとする。
 だが、顔を上げたその時に。
 一方通行の翼は、振り上げられていた。そして、振り下ろされる。
 降ってくる翼は、ひどく緩慢に思えた。
 まるで、時が減速したように。それとも、勝負が決したとでも示すように。右手を振り上げても、間に合わない。
 負ける。
 その事実が、上条の脳裏をよぎった。
 それでも、最後まで――絶対に、諦めない。

336行間2:2011/04/08(金) 23:17:31 ID:4/jVrGAw
 あいつは、いつもそうだった。
 誰も頼んで無くても、いきなり飛び込んできて、みんな助けて去っていく。そして、
 どんなに辛くても。
 どんなに苦しくても。
 どんなにボロボロになっても。
 あいつは、いつだって誰の助けも求めなかった。
 誰だって助けるくせに。あいつは、何も求めることは無かった。
 でも、そんなのはもう終わりにしたい。
 あいつが頼まなくても、助けに来てくれるなら。
 たまには、あいつが頼んでいなくても助けるやつがいたっていい。
 もう、置いていかれたくない。今度こそ、私の『超電磁砲(チカラ)』で。
 あいつを、あのバカを、助けてみせる。

337 ◆SvP4IshN9o:2011/04/08(金) 23:18:48 ID:4/jVrGAw
出来た分の投下は終了しました。
未完の駄作よりは完結した駄作にしたほうが良いと思うので、完結させるまでは頑張ります。

338 ◆fv3hm7kfs6:2011/04/09(土) 07:55:02 ID:ORxZE/dA
ここはダーク・欝系は大丈夫?

339■■■■:2011/04/09(土) 11:04:59 ID:CICeQYsg
>>338
バッドエンドぐらいならOKかと。
あんまり死にまくったりするとスレチとか叩かれるかもしれないけど。

340■■■■:2011/04/09(土) 12:33:28 ID:ORxZE/dA
なんかこうすっさまじくダークで救いようがないのが書きあがってしまった。

注意事項
・捏造エンドアフター。
・死にまくります。具体的に言うと60億人ほど。
・救いなんか0.1μmも無いです。
・御坂スキーは特に注意。
・時勢的に不謹慎ととられかねない記述があります。
・NGトリップ ◆fv3hm7kfs6

341絶対を欲する者 01 ◆fv3hm7kfs6:2011/04/09(土) 12:36:54 ID:ORxZE/dA
 深夜の学園都市。
 1人の少女が、何かから逃げ惑うように深夜の操車場を逃げ回っている。
 少女の手にはアサルトライフル、F2000R、通称“オモチャの兵隊(トイ・ソルジャー)”。
 操車場を駆けつつ、振り返りながらフルオートで射撃した。
 だが、発射された弾丸は、明らかに不自然な弾道を描いて目標を逸れていった。
 操車場に張り巡らされたレールに、紫電が迸る。
 ぐにゃりと歪んで枕木から外れたレールが、ライフルを握った少女の行く手を阻む。
「もう、おしまい?」
 作り出された袋小路に追い詰められた少女に向かって──
「じゃあ、終わっとこうか」
 重量級の保線車両、正式名称マルチプルタイタンパーが“撃ち出された”。
 比喩ではなく、初速1700m/secで、50トンの“砲弾”が、
 どこからか発された、人の言語とは思えない絶叫と共に、
 追い込まれた目標を、文字通りに完全に潰した。
「あはははははははは! あはははははははははは!!」
 狂った笑いが、夜空に響いた。

342絶対を欲する者 02 ◆fv3hm7kfs6:2011/04/09(土) 12:37:49 ID:ORxZE/dA

 とある白いシスターがとある不幸な少年の部屋のベランダにぶら下がってから。
 とーっても1年ちょっととは思えない時間の間に、日常という単語とはおおよそ無縁の日常があった末。
 白いシスターは、10万3000冊の魔術書のそれを含めた記憶の全てと──
 とある不幸な少年はその特異な右手に封じられた力の存在と──
 或いはそれぞれが何かしらを失って、その代わり正しい意味で平穏な日常に戻ってきた。

 いや、1人上条当麻だけがそれ以前とは変わっていた。
「平和だー! 幸せだー! スキルアウトに絡まれねぇし、スーパーの特売品は予定通り買えたし、自販機が反乱起こすこともなきゃ、変態レベル5どもと出くわすこともねぇー!」
 彼が嘆き続けてきた不幸体質はその原因が取り除かれ、ごくごく平凡な高校生になった。
 彼は記憶している限り初めて訪れた平穏を謳歌していた。
 その代わりこれまである意味異能の1つとさえ言えたフラグ体質も喪失し、彼の周囲にいた女性も本来の立ち居地に戻った為、彼との交流が自然解消的に喪失していった。
 たが、彼にとって平穏とは異性との関係以上に価値のあるものだった。そんなことを言えば同級生など近しい同性に羨望と怨嗟の目を向けられるものだったとしても。


 御坂美琴も、しばらくは戻ってきた日常を謳歌していた。
 常盤台の同級生や、白井黒子や佐天涙子、初春飾利などの風紀委員のメンバーと女子中学生らしい日常を過ごしていた。
 けれど。
「はぁ……」
 “終わって”から1ヶ月ぐらいが過ぎた頃。
 美琴は軽い喪失感を覚えるようになっていた。
 最初のうちは、ここ1年ほどあまりに凝縮して続いた非日常のせいだと思っていた。
 けれど、それはより具体的な存在だった。
「当麻……」
 美琴の中で、ぽっかりと空いた心の隙間。
 その正体が当麻であることぐらい、美琴はすぐに気がついた。
 けれど、どう接して良いかわからない。
 今まで、非日常が当麻と美琴の接点だっただけに、それがなくなった今、どう接して良いかわからなかったのだ。
 インデックスが当麻の記憶を失ってイギリスに帰還した、その隙を突く形になるというのもなんだか気分が悪い。
 けれど。
「なんで、素直になれないかなぁ、私」

343絶対を欲する者 03 ◆fv3hm7kfs6:2011/04/09(土) 12:38:36 ID:ORxZE/dA

 その頃、喪失感を味わっていたのは当麻も同じだった。
 ハーレムなフラグ体質など惜しいわけではない。
 しかし、インデックスに限って言えば離れた喪失感はかなり大きいものだった。
 御坂美琴に追い回される事もなくなり、それにも一抹の寂しさを感じる。
 いくら客観的に非日常であっても、上条当麻にとってそれは日常だったのだ。
「なんだかな、クソッ」
 ベッドにのびのびと横に慣れても、ぜんぜん安らがない。
 インデックスはともかくとしても、美琴には会おうと思えば逢えないわけでもない。
 しかし、それは美琴をインデックスを代用品にする行為ではないのか。
 異能を失っても、不幸体質はなくなっても、無駄に熱い正義感は失っていない。
 だから自分から声をかけるのは憚られた。
 第一、美琴は超能力者で常盤台のエース、それに対して今の当麻は文字通りの無能力者。
「釣り合わないよなぁ、どう考えても……」
 その夜も当麻がベッドの上でやさぐれていると、
 ピンポーン
 と、当麻の部屋のチャイムが鳴らされた。

344絶対を欲する者 04 ◆fv3hm7kfs6:2011/04/09(土) 12:39:29 ID:ORxZE/dA

「お姉様お姉様! 大変ですわ!」
 御坂美琴が自室のベッドでごろごろしていると、ルームメイトの風紀委員が仰向けに寝ている美琴の顔の真上に現れた。
「うげ──」
 思いっきりスカートの中身が見えたが、立場が逆ならともかく美琴はぜんぜん嬉しくない。
「その反応はどういう意味ですの、ってそんな事はどうでもいいですの、これですこれ」
「んー」
 美琴は、黒子が差し出した紙片を受け取り、気だるそうに目を通す。
「“樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)”……再構築……?」
 “樹形図の設計者”はかつて学園都市の意思決定において重要な地位を占めていた。それは一度破壊され、地上に落ちた“残骸(レムナント)”をめぐって争奪戦も起こった。
 美琴や当麻、黒子もそれに参加し、“残骸”を完全に破壊し、その再構築を阻止した。
 だが、良く考えればそれで終わったと思う方がおかしかった。
 一度人の手によって製造された機械に過ぎない。新たに生産しようと思えば出来ないことはないと考えるのが正しかったのだ。
「ああ……そう……」
 美琴は、それを見て一度は目を見張ったが、すぐに気だるそうにして、身体をうつ伏せに入れかえながら、黒子が渡した紙片を床に放り投げた。
「な、なんですのお姉様、そ、その反応は……」
 黒子は驚いて聞き返す。
「別にー……問題ないでしょ。もう今更、あんな計画が実行されることもないだろうし……」
「確かにそれは……性能自体も現状では初代よりは20%も劣ってるそうですし……」
 黒子は、視線を上に上げながら口元に指を当ててそう言うが、すぐに視線を美琴に戻す。
「でも、それにしても最近のお姉様おかしいですわ。気の抜けた風船みたいになってしまわれて。黒子の好きなお姉様はどこへ行ってしまわれたのですか?」
「ん……」
「まさか、恋の悩み!? あの男の事ですの!?」
 ガーン、と擬音を伴って黒子が大げさなリアクションをとる。
「な、ななっ……」
 黒子の言葉に、美琴は一気に顔を真っ赤にさせて、言葉を荒げて否定する。
「そんなわけないでしょ! だいたい、あいつは……!」
 その言葉に、だんだんと勢いがなくなっていく。
「そうよ、あいつは……」
「でも」
 黒子は心配気な表情をして言う。
「悔しいですけれど、やっぱり、今のお姉様はお姉様らしくありませんわ……」
 ──私らしくない、か……
 身体を横に向けて、考える。
 ──そうよ、私らしくない。ちゃんと正面からぶつかるのが流儀でしょ? それで砕けたら、それでいいじゃない。アイツには、アイツの大事なものがあるんだから……
 ぶつかろう、そして振られよう。美琴はそう決めた。
 当麻の心には、インデックスがいるのだから。
 インデックスの心に、当麻がいなかったとしても。

 そう。
 振られるつもりだった。
 許せるつもりだった。
 ──────相手が、インデックスだったら。

「う、そ────」
 ぶつかろうとして、ぶつかる前に砕けてしまった。
 見てしまった。
 上条当麻が、自分でも、インデックスでもない、別の女性と歩いているところを。
 その相手が問題だった。
 美琴が、まったく知らないか、顔は知っている程度の相手だったら、それでも許せたかもしれない。当麻が前に進むことを決めたのだから。
 けれど。

 上条当麻と一緒に歩いていたのは、御坂妹こと、ミサカ10032号だった。

345絶対を欲する者 05 ◆fv3hm7kfs6:2011/04/09(土) 12:40:28 ID:ORxZE/dA

 上条当麻のフラグ体質は解消されたが、それでもなお当麻に思いを寄せる女性は何人かいた。
 彼のこれまでの功績を考えれば、当然のことだった。
 特に“妹達(シスターズ)”、分けてもミサカ10032号はそのアイデンティティの大半を上条当麻という存在がしめていた。
 御坂妹ももちろん、上条当麻が想いを寄せている相手を理解していた。
 本命は言わずもがな、護ろうとして全てを失わせてしまった、しかし結果それによって救った少女。
 だが、彼女の心の中に当麻はいない。
 次点に、自分達のオリジナルである御坂美琴。
 こちらは同じ学園都市の学生同士、くっつくのは時間の問題というのが“妹達”の見解だった。
 だが、その予測に反して、当麻も美琴もお互い接触を持とうとはしなかった。
 だから、御坂妹は思い切って行動に出た。
「告白と言うものをしに来ました、とミサカは照れながらも最大限勇気を振り絞って告白します」
 ある日の夜、突然やってきた御坂妹にそう告げられて、当麻は最初、面食らうことしか出来なかった。
「な、何を言ってるのでせうか? と上条さんは大混乱します」
「貴方のことが好きです、愛しています。とミサカは口調真似しないでほしいな恥ずかしいから、とか思いながら堪えきらない本音を吐露します」
「やめてくれよ……」
 当麻は、急に態度を変えて、ぶっきらぼうに言い、御坂妹に背中を見せた。
「俺の心の中にはまだインデックスがいる」
 静かな低い声で、しかしはっきりと言う。
「承知しています、とミサカは即答します」
「御坂に会わないのもそれが理由だ。インデックスの穴埋めにしちまう」
「なんとなくですが想像はついていました、とミサカは自信のない推測が当たっていたことを認めます」
「お前なんかにそういわれたら、俺は……縋り付いちまう……」
「かまいません、貴方に縋られるのならそれはミサカにとってこの上ない喜びです、とミサカは嘘偽りなく告げます」
「────ッ!」
 当麻は、一度背中を見せていた御坂妹の方を振り返り、険しい表情で声を荒げる。
「わかってんのかよ! 代用品の、そのまた代用品にしちまうんだぞ、俺は、お前を!」
「問題ありません──」
 食ってかかるような当麻の言葉に、しかし御坂妹は即答する。
「私はもとより──代用品ですから。貴方が壊れてしまうくらいなら、いくらでも。と、ミサカは自分自身、それでも望んでいる自分の気持ちも隠せずに伝えます」
「────っ」
 その言葉を聞いて、当麻はがっくりとうなだれるように脱力し、
 そして、声を殺して泣きながら、勧められるままに御坂妹にすがり付いていた。

346絶対を欲する者 06 ◆fv3hm7kfs6:2011/04/09(土) 12:41:13 ID:ORxZE/dA

 楽しそうにしている当麻──
「やめて……」
 相変わらず表情に乏しいが、それでもどこかはにかんでいるように見える御坂妹──
「やめて……」
 完全に、とは言わないまでも、10人中5、6人程度はこの2人をカップルとして認識するだろう。
「やめて!」
 自分と同じ顔。
「やめてよ!」
 けれどそれは自分ではない。
「やめてやめてやめて! やめてよぉっ!」
 美琴の悲痛な叫びは、幸せに包まれる2人には届かなかった────


 なぜ?
 どうして?
 常盤台のエース、超能力者、レベル5の第三位。“超電磁砲(レールガン)”。
 レベル1から上り詰めた稀代の天才。
 それなのに、望むもの1つ手に入れられない。
 逆に、手にしたものさえボロボロとその指の隙間からボロボロと落ちていく。
 そして、美琴は────

「あは」

 答えを、出してしまった。

 狂気の笑みを湛えて、美琴の口からその答えがつむぎ出される。

「“絶対”じゃ、ないからじゃない」

347絶対を欲する者 07 ◆fv3hm7kfs6:2011/04/09(土) 12:42:04 ID:ORxZE/dA

 第二期“絶対能力進化”実験が開始されたのは、それから丁度1週間後だった。
 “超電磁砲”がレベル6に進化する可能性は、同じ“超電磁砲”を256人殺害すること。
 しかしそれは現実不可能な為、“量産能力者計画”によって作り出された“超電磁砲”のクローンのうち、すでに稼動中の9970体と、新たに追加製造される20,030体を殺害することでその代用とすること。
 二代目の“樹形図の設計者”が出した結論は、それだった。
 世界各地に散らばっていたミサカ達が集められ、再び実験に投じられた。
 心の底では、まだそれでも、土壇場で理性が止めてくれると思っていた。
 だが、最初の1人、ミサカ10033号を超電磁砲であっさりと飛び散らせたとき、美琴に感じられたのは嫌悪感でも罪悪感でもなく、高揚感と充足感だった。
 ──そうよ。こいつらはクローン。いわば私の細胞の塊。それを私がどうしようと、構わないんだわ。
 恋敵を、法に捉われず文字通り抹殺できるという事実に加え、倫理観に対する理論武装も終えてしまっていた。
 打ち止めも当然、美琴が殺害する3万体の1人だった。
 すでに計画を嗅ぎ付けたのか、一方通行がしゃしゃり出てきたが、打ち止めに対する電磁干渉でミサカネットワークから遮断し無力化。その後意味不明の声を上げながら泣き叫ぶ一方通行の前で、一方通行がかつてそうした様に、マルチプルタイタンパーで打ち止めを潰してやった。
 新規製造分は、個体の経験値が乏しく退屈な相手だった。あまりに手ごたえがないので、10体を一度に相手にした。電撃で残らず焼き払った。
 そして────

348絶対を欲する者 08 ◆fv3hm7kfs6:2011/04/09(土) 12:42:38 ID:ORxZE/dA

「やめろ、やめてくれ御坂!」
 当麻の泣き叫ぶ声が響く中、第三〇〇〇〇次実験が行われていた。
 相手は、御坂妹ことミサカ10032号。
 わざわざ最後にとっておいた、とっておきのメニュー。
 ミサカ10032号は手にしたF2000Rを撃ちかけてくる。
 だが、フルオートで1弾倉一気に撃ち切った弾丸の悉くが、磁力干渉で美琴を避けていく。
「どうしたの、もう終わり?」
「ミサカは──」
 役立たずになったアサルトライフルを投げ捨て、ミサカ10032号は電撃の槍で牽制しつつ、美琴に向かって組み付いてくる。
 その手を美琴は自分の手で構え、受け止める。
 がっぷりと四つに組む。
「もう、ミサカは殺されるわけには行かないのです! たとえ相手がお姉様だろうと……」
「なにそれ、惚気?」
 美琴には自覚があった。
 今、自分はコイツとは全く違う顔をしていると。
 鏡を見たら、きっと、かつての一方通行や、垣根や、麦野と同じ顔をしていると。
 それでも、否、だからこそ止められなかった。
 ミサカ10032号が、その手から美琴に向かって電撃を放つ。
 だが、組み付いてきた時点で、美琴にはそれは想定の範囲内だった。
 5万ボルトの逆電圧をぶつけて、相殺する。
「なにそれ? 電撃のつもり?」
 2人の手から、しゅうしゅうと白煙と、オゾン臭が漂う。
「最初の実験のときの連中は勘違いしてたし、事実私自身もそうだったんだけど」
 酷薄そうな笑みを浮かべながら、美琴は言う。
「一方通行のベクトル操作なんて、言うほど特別じゃないのよ。他の能力でもやろうと思えば、代用できる。こんな──」
「!?」
 美琴は、そう言って、ミサカ10032号の四肢に電圧をかける。
「風にねッ!」
 血液中のイオンに干渉する。
「御坂ぁぁぁぁぁぁぁっ」
 もはや幻想殺しを持たぬ当麻には、何をすることも出来ない。
 ミサカ10032号の血流は逆転させられ、裂けた身体中の静脈から血液を噴出させ、物言わぬ肉塊と変貌した。

349絶対を欲する者 09 ◆fv3hm7kfs6:2011/04/09(土) 12:43:15 ID:ORxZE/dA

「あは、あはははは、あははははははははははは!」
 バチバチと美琴の周囲を紫電が飛び交う。
 美琴の肉体が、電流で発光していた。
「こっちの二代目(クローン)は、ちゃんと正しく役目を果たしたって事ね」
 美琴を包む紫電は、やがてその周囲に広がっていく。
「あははははははは! あははははははははははは!!」
 美琴の狂笑と共に、紫電の範囲は加速度的に拡大していく。
 レベル6の電撃が、雷を超える、1兆ボルトの稲妻が。
 学園都市を、そして日本中を包み込んでいく。
 ありとあらゆる電子機器を。
 石油コンビナートを。
 ガスタンクを。
 原子力発電所を。
 破壊し尽くしていく。


 この日、人類の手によって“神に非ずして天に至る者(レベル6)”は成され、
 そして、
 その裁きによって、人類は滅亡した。

350絶対を欲する者 ◆fv3hm7kfs6:2011/04/09(土) 12:43:59 ID:ORxZE/dA
>>341-349
以上です。


ごめんなさいごめんなさいごめんなさいもうしません。

351■■■■:2011/04/09(土) 14:36:26 ID:CICeQYsg
>>350
ハンパねぇww
不謹慎て言っちゃえばそれで終わりなんだが、たまにはこう言うのも悪くは無い・・・かも。

352■■■■:2011/04/09(土) 15:25:54 ID:/qFpNZv6
>>350
軽く鬱った・・・。文章が達者なだけに、重いという・・・・・・。
これはこれで良いですけど、次があったら出来たらハッピーエンドでお願いします。GJです。

353■■■■:2011/04/10(日) 06:45:57 ID:UG//2EU2
えっと……初めまして……
まったくの私事でございますが、つたない自分のサイトで『とある魔術の禁書目録』のSSを扱うことにしましたから、初めて書いてみたお話に忌憚無き意見をお聞かせ願えないかと投下してみました。
……初見で投下するのはルール違反でしょうか? ルール違反でないことを願いますが……
【注意事項】
・『とある魔術の禁書目録』22巻236ページで御坂美琴が『ベツレヘムの星』に到達したシーンからの分岐
・一章と二章の大半は、ほぼ原作どおりの展開と継ぎ足した以外はほぼ原作どおりの文章
・別作品のネタあり
・オリジナルキャラクターは出てきません
・能力と魔術について、もしかしたら解釈を間違えている可能性あり
・ルビが使えないので( )が多発して読みにくいかも

以上です。
禁書の雰囲気が出てるかどうかが一番知りたいところです。厳しいご意見にはちょっと凹むかもしれませんのでお手柔らかにお願いいたします。

354IF 分岐物語1−1:2011/04/10(日) 06:57:18 ID:UG//2EU2
『ベツレヘムの星』に残された、たった一つの脱出用コンテナの扉が外側からロックされた。乗っているのは、今しがた、ツンツン頭のただの高校生にしか見えない上条当麻に、無理やり乗せられたフィアンマで。
 直後に、短いレールを滑って、大空へと投げ出される。
 降下し、小さくなっていくコンテナを、上条はしばらく見送っていた。
 やがて、振り切るように上条は視線を上げる。
 最後のコンテナは射出された。
 もう、安全に要塞から脱出する術は存在しない。
 そのときだった。
 突然の爆音と供に現れた一機の戦闘機。しかもそのコクピットに見える、着ているものがいつもの常盤台中学の制服でない以外は、端正な顔立で短めの茶髪の二つの同じ顔の少女に、上条は見覚えがあった。
 んな……!
 降って沸いた脱出手段。
 上条が愕然しているその傍で、既にコクピットを飛び出した茶髪の少女=御坂美琴がVTOL機の主翼に張り付いて上条当麻へと手を差し出していた。
 上条は、一瞬、その差し出された手に、まるで夢遊病者のように『右手』を伸ばした。
 あと数ミリ、指が触れ合うギリギリ。
 しかし、そこで上条は思い出す。まだ、ここでやらなければならないことがあったことを。
 静かに首を横に振る。伸ばした手を引っ込める。
「まだ、やるべきことがある」
 そう言って、驚嘆の表情を浮かべる美琴の救いの手を振り切ろうとして、
「馬鹿言ってんじゃないわよ!」
 ところが一瞬で我を取り戻した美琴は引かない。さらに強引に手を伸ばし、無理矢理、少年の腕を掴もうとする。
 主翼から身を乗り出して。


 その瞬間、ゴゴンと要塞が大きく振動した。


「ひゃっ!」「おわっ!」
 その衝撃にVTOL機の主翼の先端が要塞の表面に触れて、バランスを崩す!
 危険を察知した操縦桿を握るミサカ一〇七七七号が緊急回避!
 もちろん彼女は衝突の危険から自分の身を守るために行動したのではない。
 この至近距離だ。
 衝突に巻き込まれるであろう、少年の身を案じたのだ。
 しかし、その突発的な回避行動はもう一人の少女の現在位置を把握せずにやってしまったものでもあった。
 いや、彼女は少女を信じていたのかもしれない。
 自分たちの素体(オリジナル)にして、学園都市二三〇万人の中でも七人しかいない超能力者(レベル5)である少女を。
 ところが、超能力者(レベル5)の彼女でも、不測の事態に突然の対策も取れるはずもなく、その体は、程なく、少年の体をクッションにして要塞に投げ出されてしまった。
「お姉さま!」
 珍しく、本当に珍しく悲痛な声をあげた妹達(シスターズ)は旋回し、再び要塞へと舵を切る。
「来るな!」
 が、美琴がそれを止めた。
 もちろん、コクピット内にいる妹達(シスターズ)には、その声は届かない。しかし、美琴の声は確かに妹達(シスターズ)に聞こえた。
 彼女の表情が、唇の動きが、全身で表現したから届いたのだ。
 わずかな沈黙。刹那のような永遠の沈黙。
 その沈黙を打ち破ったのは静かに瞳を伏せた妹達(シスターズ)。
 もう一度、旋回し、今度は要塞に背を向けて、
「お姉さま、その人と供に無事脱出されることを信じています、と心の底から祈祷し、ミサカはこの場を離れます。またミサカの命を救っていただいたことに感謝申し上げます、とミサカは……」
 少年と少女には聞こえていないであろう、呟きを残し、彼女は、VTOL機は要塞から遠ざかる。
 後に続く爆音の中。
 涙をこらえ、歯軋りしていたことに、感情に乏しいはずの彼女は気づいていただろうか。




 そして――物語は分岐する――

355IF 分岐物語1−1:2011/04/10(日) 07:03:28 ID:UG//2EU2
「この馬鹿、なんて無茶しやがる!」
「仕方ないじゃない! だいたい、こうなったのはアンタが手を引っ込めたからでしょうが!」
「アホか! 俺は、まだここでやることがあったんだよ! お前だって、俺の言葉に気づいたんだろ!?」
「気づいたわよ! でもね、こんな今にも墜ちそうなモノに乗っかってる人を見かけて、それを見殺しにできると思うの!? アンタが逆の立場だったらどう!?」
「う゛……!」
 問われて上条は呻く。これまで幾度も危機に瀕している誰かを目の当たりにして、自分から、その危険に突っ走って飛び込んでいったのは上条当麻の方だ。
 これでは、『危ないからお前は来るな』と言ったところで、説得力の欠片もありはしないし、上条の知る御坂美琴の性格を考えれば、首を突っ込んでくるのも当然の帰結と言えよう。
「はぁ……分かったよ。じゃあ、お前も手伝ってくれ。その後、二人で何とか脱出しようぜ」
「そうこなくっちゃ!」
 美琴がはちきれんばかりの笑顔になって、
 しかし、上条も正直言って、ここに協力者がいるのはありがたかった。
 一人で解決する、と言えば聞こえはいいが、その孤独感は想像を絶するものであり、それが和らぐのだ。
「よく結婚式のスピーチなんかで、『二人なら幸せは倍増で不幸は半分になる』と言われるけど、その通りだな」
 苦笑を浮かべて、溜息を吐きながら呟く上条。もちろん、彼は深い意味など考慮せずに呟いている。
 彼が強調したいのは『二人なら不幸は半分になる』というところである。
 だからと言って、聞いていた方が、そう受け取るとは限らない。
「けっ……ケッコ……ン式!? なななななななな何言ってんの、アンタ! いいいいい今はそんな場合じゃないでしょっ!!」
 美琴はと言うと、『結婚式』というキーワードの方が重要だったらしい。顔を真っ赤にして、思いっきりどもりながら叫んでいる。
 もちろん、超鈍感な上条は気づかない。なぜ、美琴の顔が赤いのかも、その言葉が妙におかしいのかも。
「そうだな、お前の言うとおり、今はそんな場合じゃない。とにかく――」
「そ、そうよ! 今はやることがあるんでしょっ!」
 上条の爽やかな笑顔に、美琴は真っ赤になったまま言葉を返す。
 話はかみ合っているのだが、相変わらず、内に秘めたる思いが違う二人である。
 そんな二人の会話が終わるのを見計らっていたのだろうか。
『とうま』
 ずっと上条が聞きたかったはずの声が響いたのは、このときだった。

356IF 分岐物語1−3:2011/04/10(日) 07:07:39 ID:UG//2EU2
 遠隔制御霊装はフィアンマの手を離れたが、まだ起動しているのだろう。誰の手にも収まらなくなった少女の意識が、霊装の周囲を漂っているのだ。
『とうま』
 ゆらり、と。
 空気から浮かび上がるように、透き通る少女の体が生じた。銀髪碧眼の、白を基調とした修道服に実を包んだ聖少女の体が。
 重力を無視し、それは逆さまのまま上条の顔を見ている。
 彼女は言う。
『どうして脱出しなかったの?』
「まだ何も終わってないからだ」
 上条は答え、さらに『ベツヘレムの星』の中へと進む。美琴は黙って上条の後を追う。
 いつもなら、我先にこの会話に割り込んできそうな彼女ではあるが、彼女は空気が読める。
 なんとなく、今、この二人の間に入るのはやってはいけないことだと理解しているのだろう。
 透き通る少女の存在が霊装の位置を知らせてくれる。
「お前の霊装のこともそうだけど、この要塞そのものも面倒も見なくちゃならないしな」
 そこまで言うと上条はふと、顔を曇らせた。
 少年がこんな表情をしたことを美琴は見たことがある。
 そう。あれは、深遠の闇が覆う夜空の下で美琴が上条に思いのたけをぶつけた数日後のことだ。再会した少年は今と同じ表情をしていた。
 それは、
「……ごめんな」
 記憶喪失のことである。
 上条が周りに、正確にはインデックスに隠し続けてきたこと。七月二十九日のあの日、病室に現れた彼女を思いやっての行動。
 そのときは正しいと信じていた自分。
 しかし、それは本当にインデックスにとってはどうなのか、ということに気づかされてしまった。
 事実を知ったインデックスがショックを受ける顔を見たくなかったという建前で、本音は、自分の元からインデックスが離れてしまうのが怖かったのかもしれない。
「お前に酷いことをしてきた。ずっと、お前をだまし続けてきたんだ。今から全部話す。ここから無事に帰還できる保証なんてない。だから、話せる内に話しておく」
 ほんのわずかに上条は俯いた。
 それからもう一度、自分の意思で顔を上げた。
「俺は」
 告げる。
 そのために口を開くことが。
 こんなにも勇気がいることだと思ったのは。
 これが初めてだった。
「俺は」
 今までずっと隠してきたこと。
 記憶喪失。
 その事実を。




『良いよ』
 上条が語り続ける事実を遮るように、インデックスの声が聞こえた。
『そんなの、もうどうでもいいよ。いつものとうまが帰ってきてくれたら、何でも良いよ』
「…………、」
 ほんのわずかに彼は黙った。この優しさに甘えるなと、強く思った。
「必ず、戻る」
 だからこそ生きて帰らなければならない。
 そのために上条当麻は誓う。
「こんな霊装越しだけじゃない。戻ったら、ちゃんとお前の前で頭を下げるから」
 少年はそのための行動を開始する。
 周囲を見渡し、要塞の現状を把握して、インデックスを通じてイギリス清教へとアドバイスを求める。
 が、それは不可能だった。
 もちろん、上条にもそれは分かっていた。
 だから、
「―― 一足先に戻ってくれ」
 右手を伸ばし、小さな円筒形の霊装を掴み取る。それだけで、音を立ててインデックスを縛り付けていた霊装は崩れていった。
 同時に、元々透明な少女の体がさらに透明になり、やがて完全に消滅する。
 少女は笑顔を浮かべていた。笑顔の少女の唇が動く。
 もう声は届かない。しかし、上条にも少女が何と言ったか理解できた。
 ――待ってるから――
 その言葉を胸に、少年は力強く一歩を踏み出す。
「行くぞ御坂。俺にもお前にも待っている人がいる。必ず生きて帰ろうぜ」
 肩越しに振り返った少年の表情にはすべてを吹っ切ったとびっきりの笑顔があった。
 本音を言えば、美琴はインデックスに『敵わない』と思ってしまった。
 二人の絆の間に自分が入り込む余地が無いような、そんなことを認めざる得なかった。
 何と言っても上条が記憶喪失のことを隠していたのは周囲に対する気配りなどではなく、たった一人の少女のためだと知ったから。
 それが美琴の胸を押し潰しそうになったのだが、少年の笑顔を見て、そんな悲壮感は吹き飛んだ。
「そうね」
 だからこそ、御坂美琴も前を見る。
 もちろん、諦めるつもりは無い。しおらしい話を聞かされたからといって、それくらいで諦める御坂美琴ではないことを本人が一番自覚しているから。
 でなければ彼女は低能力者(レベル1)から超能力者(レベル5)に昇り詰められるわけが無いし、何度敗れようが勝てるまで上条に挑むわけが無い。
「アンタは、誰一人欠けることなく、みんなで帰ることを望む奴だもんね」
 上条の笑顔に、美琴はとびっきりのウインクを返していた。

357IF 分岐物語2−1:2011/04/10(日) 07:14:24 ID:UG//2EU2
 『ベツレヘムの星』の軟着陸。
 正確に言えば、墜落しても大丈夫な場所、そして、墜落しても上条と美琴が無事でいられる場所を、インデックスから報告を受けたステイルの指示により、探し出していた。
 幸いなことに、その場所は見つかりそうで、
『――君のような人間に借りを作るのは僕の流儀じゃないが、今回ばかりは受け入れよう』
「本気でそう思っているなら、降下予想地点の近くに回収用の部隊でも展開させてくれねえかな。極寒の氷水の中で待機するなんてのは勘弁してほしいもんだ」
 などと、墜落寸前の割には、思いっきり場違いな軽口の会話が交わされている。
 そんな上条の様子に美琴も、まずは一安心、といった溜息交じりに安堵の笑みを浮かべていた。
 実のところ、二人は全力で駆けながら、九番霊装を目指しているわけだが、それでも、どこか余裕があった。
 しかし――
『何だこれは……』
 先ほどまでの軽い口調とは一転、スピーカーから漏れてきた声には焦りが含まれていた。
 当然、走っている二人にもその声は届く。
『おかしい……何か巨大な……天使の力(テレズマ)? 何故こんなものが――?』
 不吉な予感がした。
 何か決定的な絶望感を突きつけられたような不吉な予感が。
『何で今さら、ミーシャ=クロイツェフが浮上しつつあるんだ!?』
 予感が現実となった瞬間であった。


 ミーシャ=クロイツェフは力を欲していた。
 何故、大天使である自分が降臨したのかは覚えていない。
 しかし分かっていることは唯一つ。
 破壊。
 新しい世界を創造するための破壊をもたらすため。
 そのためには、今現在の疲弊した自分では達成できない。
 だが足りない。
 完璧ではない。
 だが足りない。
 完璧ではない。
 だがhwsr足りない。
 完zdfbではzdfbない。
 だgggggggggggggggggggggggggggggggggggggggaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa
 そう。圧倒的に状況を逆転させるには、念には念を入れる必要がある。
 大天使が選んだ補強先。
 特別な記号や象徴を含む莫大な氷。
 言ってしまえば、惑星の極点の位置に存在する特別な氷、とか。
 水を司る大天使は己が野望のため、進路を北極点へと向ける。
 その結末はどうなるのか。
 少なくとも魔術を学んだ人間であれば、答えが分かる。分かってしまう。
 天使に神の器量(キャパシティ)を超えることは不可能だ。
 それゆえ、暴走し、器量(キャパシティ)を上回る莫大な力を天使が得ようとすれば、間違いなく、極点を中心に惑星の起爆が起こるのだ。
 すなわち、それはすべての生命の滅亡。
 起爆時点では北半球のみが吹っ飛ぶ程度で済むかもしれないが、その後は、もう見えている。
 せっかく救われた世界が、まさしく一瞬の輝きの内に消滅するのだ。
「くそ……どうすればいい……」
 ステイルはすぐさま、頭を高速回転させる。
 いやステイルだけではない。
 その場にいるすべての魔術士が打開策を得るために頭をめぐらせて、
「おい、何をしている!?」
 ステイルが声を上げた。
 今の今まで安全とまではいかなくても、問題なく着陸点を目指していた『ベツレヘムの星』が軌道を変えたからだ。

358IF 分岐物語2−2:2011/04/10(日) 07:18:42 ID:UG//2EU2
『おい、何をしている!?』
 スピーカー越しにステイルの声が届く。
 もちろん、上条当麻には聞こえている。しかし、今は答える時間さえ惜しい。
 というか、上条が何をやろうとしているかはステイルにだって一目瞭然のはずだから答える必要はない。
 だから、上条は何も答えない。
 無理矢理、要塞の落下方向を軌道修正し、あとはすべての霊装を、右手でぶち壊し、落下速度を最加速させた要塞を体当たりさせる。
 それが上条当麻の出した答えだった。


 『ベツレヘムの星』と大天使・ミーシャ=クロイツェフが沿岸を抜け、北極海へと到達する直前に激突した。


 ズズン!!と大きな轟音とともに、大天使ごと要塞は海へと落ちた。沈み行く要塞の中を上条はさらに下へ下へと全力で向かう。莫大な水圧に耐え切れず、要塞内部の壁や柱が次々と潰れていき、極寒の海水が流れ込んでくる。
 それでも上条当麻は止まらない。ひたすら下へ。底へ。海抜0メートル以下まで落ちていく。
 もはや照明すらなかった。
 広がる暗闇の中、一つだけ光点があった。
 青く深い、月光をイメージさせる静かな光。
 上条当麻は全力で右拳を握る。向こうもこちらには気づいている。暗闇の中で両者の眼光だけが一足先に激突した。
 莫大な殺意が溢れ出す中、ただの人間の少年は最後まで足を止めずに突き進んだ。
 ここに来るまで色々なことがあった。
 ふと上条当麻は考える。どこか穏やかに、まるで場違いに思い出を語るような笑顔で。
 大天使が攻撃を開始する。
 あの右手に触れれば大天使の自分でさえ消滅してしまう危険性があることを知っているから。
 死に物狂いで攻撃を試みる。
 一点集中ではなく、分散した氷の銛を、氷の槍を少年へと撃ち出していく。
 上条当麻は右手を突き出して、すべての攻撃を無力化する。時折、銛が槍がその体を裂いていくが痛みは感じない。
 痛み以上の感情が彼を突き動かし続ける。
 ……確かにこの世界はいつか滅んでしまうかもしれない。惑星にだって寿命はあるし、その前に膨らんだ恒星に呑みこまれるってことも分かっている。そんな風になる前に地球の表面から生命体がいなくなってしまう可能性の方が高いのかもしれない……
 でも、と上条は思う。
 何もこんな悲劇的な結末じゃなくてもいいはずだ。
 そいつを食い止めるために戦ったっていいはずだ。
 そう思い、上条は振りかぶる。全身全霊を右の拳に込めて、すべての悲劇を止めるために。
 だが、大天使が狙っていたのはこのときだった。
 暴走している大天使に、わずかに残っていた理性。
 それが大天使に必勝の策を授けていた。
 上条が振りかぶる一瞬。
 そのときは上条の頭部が無防備に晒される瞬間。
 大天使は見逃さなかった。
 頭部を吹き飛ばされて、なお生きることができる存在はない。それは神であろうと悪魔であろうと天使であろうと人間であろうと。
 上条は、己の過ちに、この土壇場で気づいてしまった。
 しかし、もう遅い。
 眉間に迫り来る氷の槍を打ち払う手段はない。右の拳を無理矢理進路変更したところで間に合わない。
 ただただ、氷の刃が己の頭部を貫くその瞬間までを見つめるまでしかできない。
 少年は誰も救えないまま、非業の死を、この暗闇の中で遂げる近未来が見えた気がした。


 それでも天は上条当麻を見捨てなかった。
 いや、天は見捨てたかもしれないが、一人の少女が見捨てなかった。


 上条の背後、位置からすれば、文字通り天からと思える一筋の閃光が上条の頬を撫でていった、と気づいたときには、その閃光が、眼前で氷の槍を打ち砕いたのだ。
 超電磁砲(レールガン)。
 学園都市二三〇万人の頂点、七人しかいない超能力者(レベル5)の第三位が放つ渾身の一撃が大天使の氷の槍を粉砕したのだ。
「あのちっこいのに謝るんでしょ! だったら、こんなところで一人で勝手に特攻してんじゃないわよ!」
 と、同時に飛んでくる叱咤の声。
 このとき、上条は思った。
 一緒に残ったのがこいつで良かった、と。
 いつでもどこでもどんなときでも。
 上条当麻の記憶喪失のことを知っていながら、なお、上条当麻の力になると、味方でいると言ってくれた少女が一緒だったことを心から感謝した。
 直後、二つの影が最短距離で激突し、もう一つの影が光をスパークさせて追撃をかける。
 瞬間、落下の衝撃を最大限に伝えた『ベツレヘムの星』の巨体がグシャグシャにひしゃげ、潰れていった。
 そして――

359IF 分岐物語2−3:2011/04/10(日) 07:24:25 ID:UG//2EU2
 十月三十日。
 学園都市とイギリス清教。
 ローマ正教とロシア成教。
 二つの勢力の争いが生み出した第三次世界大戦は終結した。
 終戦間際、北極海に要塞『ベツレヘムの星』の落下を確認。
 沿岸部に死者はなく、着水時の衝撃で要塞は完全に崩壊。その際にミーシャ=クロイツェフの反応も消失。
 同海峡における生存者の反応はなし。
 十字教三大勢力の連合による捜索隊が派遣されたが、水温二度の海水の中から生存者が発見されることはなかった。
 上条当麻と御坂美琴の二人が発見された、という報告もなかった。


 上条当麻。彼は二度目の『死』を迎えることになる。


 ロンドンの聖ジョージ大聖堂で、ミーシャ=クロイツェフの消失と戦争の終結の歓喜に沸く喧騒とは別の一室で、
「あの野郎……」
 ステイル=マグナスは呻くように呟いた。
 いまだ、上条当麻発見の一報は届かない。
 彼と関わりのあった者すべてが重苦しい空気に包まれている。
 不意に、がたん、と物音が聞こえた。
 ステイルが音の聞こえた方へと視線を向ければ、そこには力の抜けたインデックスがふらふらと近づいてきていた。
「とうまはどこ?」
 誰にも答えられない質問だった。
 インデックスの気持ちが痛いほど伝わる。おそらく、ここに来るまでにすれ違った神父やシスター全員にかけた言葉だろう。
 しかし、誰からも芳しい返事がもらえず、ここに辿り着いた、と言ったところか。
 再び周囲を見渡し呟く。
「とうまはどこ?」
 その問いに答えられる者はいない。


 常盤台中学の学生寮の一室に衝撃が走っていた。
 同室の住人が、かれこれ一昼夜戻ってこないことに、当初、白井黒子は怒りに震えていたのだが、何気なしに付けていたテレビのワンシーンに釘付けになった。
 どこの国のカメラマンが撮影したのかは分からない。
 分かるのは、LIVE表示が無いから、録画ってことくらいだ。
 その映像は巨大な、学園都市がスッポリ嵌りそうな岩の塊が海に向かって落下していくものであった。
 その内部に、目を凝らされなければ分からないほどの小さな、それでも、白井黒子にすれば見間違えようの無い見覚えのある光が瞬きながら進んでいくのが見えた。
 目の錯覚であると信じたかった。
 光を乗せた巨大な要塞岩が津波に等しい飛沫を上げながら着水し、崩壊していったからだ。
 即座に、白井黒子は己の携帯電話を取り出す。
 尊敬する愛すべき先輩少女が使う携帯電話はそんじょそこらの電話機とは違うことを知っていた。
 学園都市最強の発電系能力者(エレクトロマスター)が使う携帯電話はちょっとやそっとどころか、レベル5(ハイエレクトロマスター)の電磁波に耐えられることを知っていた。
 世界中のどこにいても、どんな状況だろうと必ず繋がると信じていた。
 登録されたアドレスの一番上のアドレス。
 迷わず、彼女はプッシュする。
 しかし、電話の向こうの相手の答えは無情だった。聞こえるのは事務的な音声のみ。
 『おかけになった番号は現在、電波の届かないところか、電源が入っていないか――』


 妹達(シスターズ)の一人、御坂美琴を『ベツレヘムの星』に送り、己の身を案じた二人の厚意によって立ち去ったミサカ一〇七七七号は沿岸へと辿り着いた。
 VTOL機を燃料切れで失ったため、高速の貨物列車に乗り込んで、この白い流氷の海岸に。
 周囲に人はいなかった。
 吹きすさぶ海からの風が、やけに、この身に突き刺さる。
 あの二人の手がかりになるようなものは一つも見つからなかった。
 途方に暮れたように周りを見回していた彼女だったが、突然、大きな棒を拾い上げた。
 コンクリートで固められた堤防から棒を伸ばし、ソーダ水のように氷で包まれた海面をかき回す。
 程なくして、棒の先端に二つの小さな合成樹脂が引っ掛かっていた。
 ――!!
 彼女は息を呑む。
 見覚えはあった。いや正確に言うならば、ミサカネットワークを通じて知った。
 それは、強い力で紐の部分が引き千切られたゲコ太のストラップだった。
 日本時間で九月三十日の午後。少年に『御坂妹』と呼ばれる一〇〇三二号が、自分たちの素体である少女の鞄に付いていたのを目撃していたものだった。
 強い熱を浴びたのか、溶けかかって、あたかも寄せ合うようにくっついていた。


 一〇七七七号が見た情報はミサカネットワークに即座に配信された。

360IF 分岐物語3−1:2011/04/10(日) 07:34:46 ID:UG//2EU2
「とうま!」
 インデックスは学園都市内の、今ではすっかり自宅と化している居候先、上条当麻の学生寮へと戻ってきた。
 ここに戻ってくるまで、あの日から既に一ヵ月半の月日が経過していた。
 それは仕方がないことだった。何しろインデックスにかかっていた遠隔制御霊装の後遺症の上に、上条当麻行方不明だ。
 肉体的精神的にボロボロと言っても過言ではなかった。
 そんな彼女をイギリス清教および天草式の連中が放って置けるわけもなく、『あの少年の元に帰りたければ、まず、我が身を元に戻しなさい』という忠告を口がすっぱくなるほど言い続けたのだが、それでも、インデックスが何度も何度もダメージが残る重い体を引き摺って自力で抜け出し、途中で倒れてしまって連れ戻す、と言うのを繰り返していたものだから、三週間ほどで回復するはずのものが倍の時間がかかってしまったのである。
 それでも晴れて完全回復し、イギリス清教傘下、天草式の女教皇(プリエステス)、ポニーテールというよりも侍を彷彿とさせる髪型に細目の美少女よりも美女の方が呼び名として相応しい神裂火織同行の元、懐かしの我が家に戻ってきたのだが。
「……どうやら、まだ帰ってきていないようですね」
 神裂が努めて気丈に、そして冷静に呟く。
「うん……」
 そう。
 部屋の中は人の気配もなく、ただただ閑散としていた。
 十月中旬のあの日、二人でイギリスに出かけた日、そのままの状態で。
 それが上条当麻がまだ、この部屋に戻ってきていない証でもあった。
 実のところ、インデックスのみならず上条当麻に関わった全ての者たちは一抹の希望を抱いている。それは今なお、上条当麻が遺体で発見されたではなく行方不明のままだからだ。
 確かに、あの状況、極寒の氷水の中で生き延びた、と考えるのは無理があるのは百も承知だ。海底深く沈んでしまったのかもしれない可能性だって捨てきれない。
 それでもまだ、『見つかっていない』状況に、ほとんど願望に近い希望を持つことができるのだ。
「どうされます?」
 神裂が伏せ目のインデックスに問いかける。
「ここで待つんだよ……」
 今にも嗚咽が漏れそうな声。しかし、涙をこぼすわけにはいかない。
 今はまだ。
 例え結果がどちらであったとしても今はまだ、涙をこぼすべきではない。
「だって、ここはとうまと私の……」
 それでも語尾は言葉にならなかった。


 白井黒子は風紀委員(ジャッジメント)の仕事で夜のパトロールに参加していた。
 あの衝撃の映像以来、御坂美琴の姿を見ていない。
 学園都市でも、超能力者(レベル5)の一人が行方不明になっていることに、嘆き悲しむ者、戦々恐々としている者で二分されている。
 それは無理もない話で超能力者(レベル5)ともなれば学園都市側からすれば亡命でもされた日にゃ、それは脅威以外の何者でもないからだ。
 むろん、白井黒子は前者である。
 それも半端ないくらいの前者で、この一ヶ月半、眠れない日々をどれだけ送ってきただろうか。
 待てど暮らせど、愛しのお姉様は帰ってこない。
 もしかしたら、あの少年と駆け落ちでもしたのだろうか、などと、それこそ妄想に等しい淡い希望を抱いて、同僚の初春飾利に世界中の衛星をハッキングさせて探っても見たが、結局、どこにも見つからなかった。
「お姉様……」
 力ない呟きは一人でトボトボ歩く白井黒子以外に聞く者は誰もいない。
 彼女は率先して、この夜のパトロールに出向するようになった。
 夜、隣に御坂美琴がいないことに耐えられなくなったから。
 一人で寝るのは寂しい、なんてものじゃない。
 暗闇に独りぼっちにされ、しかも御坂美琴は行方知れずだ。頭の中は悪い方へ悪い方へと自然に向かってしまう。
 何度も悪夢だって見た。
 テレポートであの崩れ行く要塞の中に突撃したとき、御坂美琴が寂しげな笑顔で「さよなら」と呟いて深く暗い海の底へと沈んでいく姿を何度も見てしまった。何度、手を伸ばしても届かなかった。
 その度に、悲鳴を上げて起き上がり、枕を濡らしたことだって数知れずだ。
 だから、夜、部屋に居たくない白井黒子は外へと繰り出す。
「あら……?」
 ふと気がつけば、一度、バンクで調べた『あの馬鹿』の学生寮が目に入る。
 その七階の一角。
 部屋の家主は確か、御坂美琴と同じく、かれこれ一ヶ月半ほど行方知れずになっている少年のはずである。
 しかし、今日はその部屋に明かりが灯っている。
「まさか――!」
 迷わず、白井黒子は職務を投げ捨ててテレポートを敢行した。

361IF 分岐物語3−2:2011/04/10(日) 07:40:47 ID:UG//2EU2
「ま、そんなことだろうと思ってましたけど」
 残念ながら白井黒子の望みは叶わなかった。
 意気軒昂、高ぶる気持ちを抑えきれず、上条当麻の部屋に突撃してみれば、期待に反して、家主も御坂美琴もおらず、そこに居たのは、九月一日に、自分のことを『品のない女』と表現した、銀髪碧眼の白い修道服に身を固めたシスターのみ。
「まったく……せめて、あの殿方でも戻ってきてくだされば、お姉様の安否も確認できると言うのに、どうしてここにいるのがあなたなんですの?」
「む……何か、その態度、無性に腹が立つんだよ。と言うか、ここは私ととうまの部屋なんだから私がいることは何の不思議もないんだよ」
「は? あの殿方と一緒に住んでいらっしゃる、と言うことでよろしいですの?」
「そうなんだよ。ここは私ととうまのすいーとるーむ! なんびと足りとも踏み込むことができない聖域なんだから!」
「あっそう」
 ふふん、と胸を張るシスターに白井黒子は曖昧に相槌をうっていた。
 ちょっと、人と恋愛の方向性が違う白井黒子には男女が同じ部屋で過ごすことの意味は分からないでもないが、それに対してはさしたる興味も沸かなかったようだ。
「そう言えば、あなたのお名前は何と仰いますの? 今のままじゃ呼び名が不便ですし、差し支えなければ教えていただけないかと。ちなみに私は白井黒子と申します。学園都市二三〇万人の頂点に立つ超能力者(レベル5)の一人、常盤台中学のエースで在らせられる御坂美琴お姉様の露払いをやっております」
「本当にあの短髪の後輩? 日本風に言えば、妙にかしこまった態度で礼儀正しいし」
「……何も知らないのに、お姉様を悪く言わないでください……そもそも私からすれば、あの殿方の方が充分、礼儀がなってないと思いますけど」
「それは否定できないかも……って、あっそうそう。私の名前はインデックスって言うんだよ」
「インデックス……さん?」
「うん」
 明らかに偽名にしか聞こえない白井なのだが、かと言って深く立ち入るつもりもない。
「ではインデックスさん。単刀直入にお聞きしますが、あの殿方は今どこに?」
 何気なく聞く黒子。
 彼女からすれば、今のインデックスと名乗った少女の態度に、もう既に上条当麻が戻ってきているような感じを受けたからだ。
 何と言っても、声に張りがある。
 の、はずだったのだが、
「……どうされました?」
 なかなかレスポンスがこなかったことをいぶかしげに感じた黒子が問う。
 しかしインデックスは何も答えない。
 しかもその表情が前髪に覆い隠されて見えなくなりつつあり、なんとなく歯を食いしばっているように見える。
 どこかで見たような表情ですわね、と白井黒子は他人事のような感想を抱いた。
 が、即座に我に帰る。
 無理もない。どこかで見た、なんて騒ぎじゃない。
 普段の自分の表情とそっくりなのだ。
「まさか……」
 愕然と声が漏れる。
 そんなシスターの様子に白井黒子は全てを悟ってしまったのだ。
 自分と同じ表情をする少女。
 その理由はたった一つしかない。
「とうまはまだ……」
 インデックスはそう言うのが精一杯だった。

362IF 分岐物語3−3:2011/04/10(日) 07:42:20 ID:UG//2EU2
 そんな言葉を聴いて、この場が硬直しないわけもなく、重い空気に支配されてしまう。
 誰かが結婚式のスピーチで不幸は二人で分かち合えば半分になると言ったが、それはあくまで一つの不幸に対して、という風に差し替えた方がいい。
 大事な誰かが行方知れず、などという『不幸』は、その対象者が二人になったとき、辛さは倍増どころの騒ぎではなく相乗されたのではないかと錯覚してしまう。
 インデックスと白井黒子が深遠の闇のような沈黙に包まれて、いったいどれだけの時間が経過しただろうか。
 しかし、まったくその重苦しさは晴れることがない。
 いや晴れるはずがない。
 晴らす方法も無い。
 正確に言えば無いことは無いが、それは当然、上条当麻と御坂美琴が戻ってくる、以外あり得ない。
 どちらからも声をかけられない沈黙が続く。
 気まずい、間が持たない、などではない。動くことすらできないのだ。
 ベッドの上のデジタル時計の音だけが響き渡る一室。
 電気が点いているはずなのに、暗闇に覆われてしまっている錯覚。
 いったいどれだけそうやって二人は固まっていただろうか。
 不意に、部屋の呼び鈴が聞こえた。
「え?」「あら?」
 インデックスと白井黒子は同時にいぶかしげな声を漏らして部屋の入り口のドアを見やる。
 残念ながらインデックスにお客様を迎えるというスキルはない。
 よって、代わりに白井がドアを開けた。インデックスは白井の後に付いていく。
 そこに居たのは、


「あなたたちにお話があります、と、ミサカはお二人の目をまっすぐ見つめて話しかけます」


 御坂美琴そっくりで、常盤台中学の冬服に身を包み、首にシルバーのハート型ネックレスをぶら下げた少女が静かに佇んでいた。

363IF 分岐物語4−1:2011/04/10(日) 07:47:26 ID:UG//2EU2
 完全下校時間を過ぎた静かな闇の道路を一台の無人タクシーが駆けていた。
 ここは外の世界よりも科学技術が二、三〇年先を行っている学園都市。
 こういった自動操縦のタクシーが存在していて不思議は無いし、案外、需要も多い。
 学園都市の大半は学生なのだが、学生がいる以上は教えるための教師がいる。
 教師という職業のストレスは半端ではない。何しろ、預かっているのは大事な大事な他人の子供であるし、常に言うことを聞いてくれるわけでもない。しかも教師の半分以上は治安維持のための警備員(アンチスキル)にもなっている。
 これではストレスが溜まらない方がおかしくないくらいで、結果、二次会三次会当たり前の夜の飲み会は毎晩行われていると言っても過言ではない。
 結果、代行運転代わりに無人タクシーを利用する者や歩いて次の店に向かうことが億劫な連中が使用することも多々あることになる。
 もっとも、今この場を走っている無人タクシーに乗っているのは、そんな日ごろの不満の捌け口を求めて彷徨い歩く連中やそろそろ帰宅するかなといった連中ではない。
 助手席には妹達(シスターズ)の一人で、上条当麻からは御坂妹と呼ばれる少女。後部座席にはインデックスと白井黒子という配置で、アパートを出てからしばらくの間、沈黙に支配されていた。
 どこに行くのかは教えられていない。
 しかし、この御坂美琴と瓜二つの少女の言葉にはインデックスも白井黒子も従わざる得なかった。
 なぜなら、あの場に居合わせて、(まったく慌てなかった様子から)自分たちが揃っていると知っていて、しかも自分たちが探している人間の一人とそっくりなどという偶然はありえるはずが無いからである。
 二つまでなら偶然だが、三つとなると必然、というのは世の常だ。
「結論から申し上げます、とミサカは前を見たまま、お二人に伝えます」
 タクシーに乗って、十分くらい経過したところで、ようやく、御坂妹は口を開いた。
 それはとても平坦な声で、何も感情が篭っていない事務的な口調に聞こえて。


「あの方とお姉様は、私たちの元で保護されています、と、ミサカは衝撃の真実を暴露します」


 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!?!


 当然、後部座席の二人は、背景ごと協調反転したような、声にならない衝撃を受けた。
 あの方って、とうまのこと?
 お姉様とは御坂美琴お姉様?
 実にたっぷり三分は固まっていた二人は、今度は震える渇いた唇を紡ぎ、そう問いかけたかったに違いない。
 もっとも言葉を発する前に御坂妹が続けてきた。
「ちなみに、あの方とは上条当麻様のことで、お姉様とは御坂美琴お姉様のことです、とミサカはお二人の想像に対して答えます」
 完全に先読みされた答えに、再び、インデックスと白井黒子は衝撃に支配されることとなる。

364IF 分岐物語4−2:2011/04/10(日) 07:49:14 ID:UG//2EU2
 上条当麻と御坂美琴の二人が救出されたのは、一〇七七七号が辿り着いた沿岸の流氷の下からだった。
 ゲコ太ストラップを見つけた彼女がミサカネットワークに現状を配信することで、九九六九人の妹達の脳波とリンクし、夏に学園都市で問題になった『幻想御手(レベルアッパー)』の原理、共感覚性を利用して、普段は強能力(レベル3)でしかない自身のレベルを引き上げ、かつ、普段から装着している微弱な電磁波を読み取る特殊ゴーグルを活用した結果、AIM察知能力だけは、このとき、オリジナルである御坂美琴並みのレベルまで高めることができて、ゲコ太ストラップのさらに向こう、今にも消え入りそうな微弱な電磁波を察知したのである。
 もちろん、それは上条当麻と御坂美琴の二人。
 力を完全に使い果たし、ぐったりしていた少年を、正面から、優しく包み込むように抱え込んでいた少女という構図で海の底に横たわり、しかし、二人とも完全に意識を失っていた。
「――というわけなんだが、君たちから不機嫌オーラが立ち上っているのはどういうことなのか教えてくれないか?」
 御坂妹に連れられて着いた先は、白井黒子も一度お世話になったことがあり、インデックスにいたってはなんとなく第二の自宅と化している気がする、カエル顔のいる第七学区の病院だった。
 実のところ、真っ先に二人がいる病室にそれぞれ向かいたかったのだが、その前に、ということでカエル顔の医者のところに案内されたのだ。
「い〜〜〜え〜〜〜なんでも〜〜〜」
「右に同じなんだよ〜〜〜」
 どうやら、上条と美琴が『抱き合って』発見された、という部分がお気に召さなかったようだ。
 カエル顔の医者は呆れた溜息を一つつき、
「しかし、この話は続きがあってね」
『は?』
「二人は生きて発見されたわけだが、僕も見ていたけど、あの大きい岩の塊が海に落ちてから一〇七七七号さんに発見されるまで、どれだけの時間が経っていたと思う? 常識的に言って、二人が生きていること自体、あり得ないことだったわけなんだけど、それを可能にしたのが、あの態勢だった、と言ってもまだ、君たちはそんな心情でいられるかな?」
 ――!!
「極寒の氷水の中で周りは海水だよ。二人が生き残るためには酸素の供給を得て暖を取るしかない。暖はお互いの体温でも可能かもしれないが、もちろん、あの状況ではそれだけでは不充分だ。周りの水の冷たさは即座に体温を奪うし、それに何より、人は水の中で生きていくことはできない。
 どうやら御坂くんは、自分の能力を最大限に活用したようだね。海水とは言え、水であることは間違いない。そこで彼女は『水』を『窒素』と『酸素』に電気分解し、必要な分だけの酸素を得ることに成功した。また、電撃を周囲に展開させることによって、体温とは別の暖も取ることを可能にしたようだ」
「……さすが短髪……学園都市の第三位だけあって頭良いし……」
 インデックスが、まだどこかふてくされた表情で呟くが、
「ちょっと待ってくださいな。確か海水、というか塩水は電気など即座に流してしまうわけですから、広い海の中、電撃をその場に留めて置く、なんて芸当が可能なのでしょうか?」
 白井黒子は違っていた。小学校で習った知識ではあるが、そう教えられたのだ。
「そうだね。君の言うとおりだ。確かに並みの電撃では不可能だろう。しかし御坂くんは超能力者(レベル5)の電撃使いだよ。もしかしたら常識枠外に拡散されない電気の使い方を知っていたのかもしれない。さすがに僕には分からない分野だがね」
 カエル顔の医者が呆れて屈服する姿を捉えて、白井黒子の胸の内にどことなく優越感の火が灯る。
「……もっとも、それは相当、無理した方法だったようではあるがね」
「え?」
 黒子のいぶかしげな声を聞いて、カエル顔の医者は一度、目を伏せた。
 まるで何か、伝えたくないことを伝えなくちゃいけない、そんな葛藤を見せたのだ。
 本人は気遣いのつもりだったのかもしれないが、本当に面白そうに見える表情を。
 インデックスに嫌な予感が走る。
 彼女は一度、この医者のこういう表情を見たことがあった。
 それは最近になって知ったことではあるのだが、七月二十九日のあの日も、こんな表情をしていた。


「本人の前でショックを受けるのも失礼だから、手っ取り早くレッスン1……君は2だったかな?」


 インデックスが一番聞きたくなかった台詞をカエル顔の医者は言ってしまった。

365IF 分岐物語4−3:2011/04/10(日) 07:53:04 ID:UG//2EU2
 こんこん、と病室のドアを二回ノックした。
 震える腕を何とか収め、何とか中の入院患者に聞こえるように気持ち大きく。
 聞こえないことには何も始まらないから。
 インデックスの心臓は既に破裂しそうである。何と言っても二度目なのだ。しかも二度とも自分を救ってくれた原因が、同じ結果を招いているのだ。
 返事が返ってくるまでの間、今度はインデックスは十字を切ることなく、胸に手を合わせて祈っていた。
 神様という存在をインデックスは信じている。そして自分は敬謙な神の徒であることを誇りに思っている。
 はい? と少年の声が返ってきた。
 あの日と同じく、恐る恐るインデックスはドアを開けた。
 あの日と同じく、少年は白いベッドの上に上半身だけを起こして、ベッドの傍の、開いている窓の、ヒラヒラ揺れるカーテンの向こうへ遠くを見る目をしていた。
 生きていた。
 たったそれだけの事実に、インデックスは涙がこぼれそうになった。
 この一ヶ月半、少年ことを、彼と過ごした思い出と供に考えない日は一度もなかった。
 生きていた。
 この事実にインデックスの胸にこみ上げるものがあった。
 近づかずにはいられなかった。傍に行きたくて仕方がなかった。
 病室のベッドまでの距離はそこまで長くはない。
 それでも、今までのどんなことよりも、その距離まで走るインデックスは長く感じた。
 そこにたどり着くまでが待ち遠しかった。もどかしかった。
 しかし――


「あの……あなた、部屋を間違えていませんか?」


 あの日と同じく、少年の言葉はあまりに丁寧で、不審そうで、様子を探るような声だった。
 あの日と同じく、まるで顔を見たこともない赤の他人に電話で話しかけるような声だった。
 ――どうやら御坂くんの長時間にわたる電磁波に脳細胞が耐えられなかったようだね?
 凍てつく夏の日の診察室で医者が放った言葉がインデックスに突き刺さる。
 ――酸素を作り出し、暖を取ることで命を救うことは可能にしたようではあるが、長時間、それも高い周波数に近い電磁波を浴び続けた結果、脳細胞ごと記憶が破壊されてしまったようだ。あれでは、また昨日までのことを思い出すことはないと思うよ。今回は文字通り、脳に直接スタンガンを打ち込まれたようなものだったからね。
 っ……!
 あの日と同じく、インデックスは小さく息を止める。
 これでは本当にあの日と同じだ。
 誰よりも深く危険に飛び込み、誰よりも強く能力を使い続けて、誰よりも激しく命の危機に瀕した結末が、命と引き換えに、またも記憶という名の心を奪ったのだ。
 しかも、二度目もまた、インデックスを助ける、というただただシンプルな思いの元に、だ。
 自分は神の使徒ではなかったのか。
 自分は救いの手を差し伸べることに従事していたのではなかったのか。
 それがどうだ。
 本当に守りたかった存在を救えなかったばかりか、救われているのは自分だけではないか。
 あのう……?
 自分を心配する少年の声が聞こえる。
 インデックスはそれが許せなかった。救われなければならないはずの少年の、卑しくも救われた自分を心配する声が許せなかった。自分自身が許せなかった。
 だからこそ、彼を正面から見つめる。涙は何とかこぼれることを圧し留めた。笑顔を浮かべることもできたと思う。
 絶対に、この少年の前で涙はこぼしてはいけない。そんな資格なんてない。
「大丈夫? 何か君、もの凄く辛そうだ」
 なのに、少年はインデックスの心を木っ端微塵に打ち砕く。心の底を見透かしてくる。
 どうして、あの日と同じやり取りを、またしなくてはならないのか。
 しかし、これは自分に対する罰なのだ。償うべき罪なのだ。
 インデックスは言い聞かせて、口を開く。
「大丈夫だよ」
 毅然と言った。笑顔を浮かべて言った。
「大丈夫に決まってるよ」
「そう?」
 少年の視線はいまだに疑念が渦巻いている。
 そんな目で見てほしくない、インデックスは切に願うが、その願いが叶うことは許されない。許されるはずがない。
 それなのに、
「あの、俺たちって知り合い?」
 絶対に聞きたくない質問だった。
 もう限界だった。耐え切れなかった。
 そこに居たのは世界の魔道書一〇万三〇〇〇冊を記憶した完全記憶能力者でもなければ、神の敬謙な使徒でもなかった。
 誰よりも何よりも大事な人を失った、ただただ打ちひしがれている一人の少女でしかなかった。
 膝を付き、両手を付き、せめて顔は見られないようにするしかできなかった。


 もう――圧し留める涙を堪えことはできなかった――

366IF 分岐物語4−4:2011/04/10(日) 07:57:16 ID:UG//2EU2
 白井黒子は茫然自失に立ち尽くしていた。
 インデックスが入っていった病室の、隣にある個室の病室。
 部屋の間取りはほぼ同じ。真っ白い壁に、シンプルな白のベッド。
 そこに一人の少女が横たわっていた。
 まるで眠れる森の少女のように穏やかに安らかに。
 しかし、そんな童話に出てくるような安らかな雰囲気はなく、頭部にはいくつか電極を貼り付けさせられ、かけられているシーツの中にも点滴用のチューブが差し込まれ、整った鼻と口元には酸素吸入用のマスクもかぶせられていた。
 集中治療室でないことだけが救いだった。
 ――どうやら御坂くんは能力使用の限界を越えてしまったらしい。
 先に白いシスターがショックを受けたその隣で、白井黒子もまた、あまりの衝撃に固まってしまっていた。
 ――限界を越えた能力使用と彼女自身の強過ぎる力を自分自身にも浴びせ続けた結果、全身の神経に支障を来たしてしまったようだ。五感、いや、脳の一部を除いた六感のすべてを失っている。あれでは、命に別状がないとは言え、もう二度と目を覚ますことはないと思うよ。上条くんの方は御坂くんが被さっていたおかげで、間接的に暖を取ることが大半だったから、脳細胞の破壊だけで済んだようではあったがね。
 残酷な医者の言葉。
 白井黒子が目指した少女は、これから先、自分の模範になることはない、と言われたのだ。
 いったいどうしてこんなことになってしまったのか。
 少女がとある少年に恋心を抱いていることは知っていた。
 しかし、ここまでして尽くすことができるものなのだろうか。
 しかも、少年は既に、この少女のことを思い出すことはないのだ。
 もう二度と報われることがないというのに、どうして、ここまで突っ走ったのか。
 彼女は学園都市の第三位。
 そんな崇高な少女が後先考えずに行動するなんて、白井黒子には想像すらできなかった。
 ――呼吸が自力でできるくらいに回復したら親御さんが迎えに来るから。
 もう、少女と一緒に居ることはできないという最後通告を突きつけられている。
 ひと時は家族と供にいられるだろう。
 しかし、その後は無残な結果が待っている。
 学園都市の闇の部分が必ず御坂美琴を奪い返しに来る。
 旅掛と美鈴を殺してでも奪っていく。
 そして御坂美琴は垣根提督同様、永遠に意識を取り戻すことがないまま、利用され喰い尽くされるのだ。
 もちろん白井黒子はそれを知らない。
 だが、カエル顔の医者は知っている。学園都市がそういう町であることを知っている。
「お姉様……」
 ふらふらと白井黒子は近寄っていき、
「お姉様……どうして……」
 しゃがみこんで、その手を握り、しかし、握り返されることはない。
 茫然自失から立ち直った白井黒子の胸にこみ上げるもの。
 圧し留めることなくこぼれ続ける涙。
 シーツを濡らし続けるが少女からの反応はない。
 幾度となく呼びかけようとも少女の反応はない。
 何度呼びかけただろう。どれだけ時間が経過しただろう。
 白井黒子は限界だった。
 もう淑女とか嗜みとかはどうでも良かった。
「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! お姉様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!」
 偉大なる先輩の胸に突っ伏して、誰憚ることなく声を上げるただの少女がそこにいた。


 それでも無情にも――先輩からは何の反応もない――

367IF 分岐物語5−1:2011/04/10(日) 08:00:58 ID:UG//2EU2
 インデックスは全てを少年に打ち明けた。
 自分との出会いのことも七月二十日からのことも錬金術師のことも八月三十一日のことも風斬氷華のことも大覇星会のこともイタリアでのこともイギリスでのことも。
 二人で過ごしたことであればすべてを。
 もちろん、二度の記憶喪失のことも。
 なのに。
 それなのに。
 透明な少年から返ってくる答えは適当な相槌。
 前のときは、まだ良かったのかもしれない。
 あのときの上条当麻はインデックスの知っている上条当麻を寸分の狂いもなく演じてくれていたから。
 でも今回は違う。
 記憶喪失である、ということは受け入れてくれた違う上条当麻で。
 なのに。
 それなのに。
 記憶の話よりも自分を気遣う言葉ばかりかけてくれて。
 自分よりも目の前の人の心配ばかりする優しさは何も変わってなくて。
 かけられる言葉も口調も自分の知っている上条当麻のままで。
 だから耐えられない。
「もういいぞ。無理しなくていいぞ」
 何度、同じ言葉を聴いただろう。堪えきれない涙がこぼれるたびに声をかけてくれる。
 無理矢理、話を打ち切るための言葉ではない。
 自分に対して嫌悪が込められた言葉ではない。
 本当に純粋に。
 自分を心配しての言葉で。
「俺たちが知り合いってことは分かったからさ。感謝してる。だからさ、そんなに辛いなら無理するな」
 気遣う笑顔さえ浮かべてくれる。
 優しい言葉をかけられる資格なんてないのに。
 笑顔を向けられる資格なんてないのに。
「とうま……」
 少年の顔を見ることができない。見るなんてことが許されるのだろうか、とさえ思ってしまう。
「インデックス、だったな。気にするなよ。別に俺はお前を恨んじゃいねえ。つか、過去の記憶がないんだから、恨みようがねえだろ。だから、そんなに自分を責めるな」
(何でなんだよ……)
 インデックスは思う。
(どうして、そんなにあっけらかんとしていられるんだよ……)
 理不尽な逆恨みは百も承知だ。
 だけど、思ってしまう。
 あれだけ、恨まれても構わないことを言ったのに。
 あれだけ、糾弾されて当然の説明をしたのに。
 それでも、少年は、過去を全て忘れたまま、いつもの優しい上条当麻のままで。
 涙がいけなかったのかもしれない。
 もっと、悪く言えばよかったのかもしれない。
 だけど、そんなことなんてできなかった。
 少年から嫌われるならともかく。
 自分から嫌われるような真似は許されないと思ったから。

368IF 分岐物語5−2:2011/04/10(日) 08:02:01 ID:UG//2EU2
「顔上げろ」
「ふえ!?」
 不意に少年が自分の顔を、顎に指を乗せて上を向かせた。
 図らずも正面にはいつもの少年の笑顔。
 しかし、目の前にいるのは自分のことを覚えていない別の少年。
 不意に瞳から涙が一滴こぼれる。
「ほら、顔がくしゃくしゃじゃねえか。上条さんには女の子を泣かせる趣味はありませんのことよ」
 言って、にかっとした笑いを浮かべて、傍にあったタオルで、インデックスの涙を拭う。
 そんな少年の行動に硬直するインデックス。
 こんな資格なんてないのに。
 優しくされる資格なんてないのに。
「だ、大丈夫だよ! それよりとうまは病人なんだから寝てなくちゃ!」
 わざと自分から離れて、両手で涙を拭う。
 でも止まらない。
 涙は止まる気配を見せない。
(何で!? 泣き止まないといけないんだよ! これ以上、とうまに心配と迷惑をかけちゃいけないんだよ!)
 自分に強く言い聞かせる。
 それでも涙は止まらない。
 それを少年はどういう心境で眺めていただろうか。
 少年の立場で考えて見れば。
 この少女が原因で記憶喪失になったらしい、ということは信じるとしよう。
 しかし、それがどうだと言うのだろうか。
 これだけ、顔をくしゃくしゃにして。
 言いたくないことだったろうに、全てを曝け出して。
 どれだけ、記憶を失う前の自分が大切だったかを打ち明けて。
 少年には記憶がないのである。
 無い記憶のことで糾弾しろ、と言われても「ハイ。分かりました」なんて思えるだろうか。
 少なくとも自分は酷い目に合ったという覚えすらないのに、非難しようとする気なんて沸くだろうか。
 少年は真剣な眼差しで、そっと、自分の胸に、泣きじゃくる少女を抱き寄せた。
「と……うま……?」
「ごめんな」
 ――!!
 不意に漏れる謝罪の言葉。
「こんなにも俺のことを心配してくれている君の事を忘れちまっているなんて酷い男だよな、俺は」
(ち、違う! とうまは何も悪くない!)
「本当に悪い。女の子を泣かせるなんて最低だ」
(逆なんだよ! 最低なのは私なんだよ!)
「俺は、君を泣かせている以前の俺の分も君に謝る。これ以上、辛い思いをする必要なんてない」
(そうじゃない! そうじゃないんだよ!)
「俺には、君に泣き止んでくれ、なんて言葉をかける資格なんてないもんな。だから、気の済むまで泣いてくれていい。だけど、泣き顔は見たくないから胸に押し付けさせてもらう。君にとっての俺は俺じゃないだろうけど、俺だって上条当麻なんだ。これくらいで罪滅ぼしになるかどうか分からんけど」
「とうまの馬鹿……」
「ああ、俺は大馬鹿者だ」
 もう限界だった。
 ぐっと、上条の胸の襟元を掴む。


 二人だけの静かな病室に、悲痛の号泣がこだました。

369IF 分岐物語5−3:2011/04/10(日) 08:04:28 ID:UG//2EU2
「お姉様……」
 白井黒子は呼びかける。
 声を上げて大泣きして、少しはすっきりしたのかもしれない。
 ベッドの手近にあるパイプ椅子に腰掛けて。
 ぎゅっと少女の手を握り締めて。
 反応するはずも無い少女へと声をかける。
「お姉様……」
 顔は笑っていた。
 嗚咽の漏れそうな顔で笑っていた。
 声も震えていた。
 それでも、白井黒子は呼びかける。
「お姉様……お目を覚まされないのであれば……黒子は己が欲望に忠実に動くことにしますですわよ」
 ぎゅっと握る手を自分の胸に押し付けて。
「今のお姉様は抵抗できませんものね……でしたら、あんなことやこんなことを……」
 少女の方へと上体を乗り出して。
 少女の顔に自身の顔も近づけて。
 少女の息遣いが聞こえるまで近づけて。
「……抵抗されないのであれば、本当にお姉様の唇を奪うことから始めさせてもらいますわよ……」
 そっと呼吸機を取り外して。
 あと十数センチ。
 少女を慕うようになってから何度も見た夢。
 あと数センチ。
「本当に……よろしいのですね……」
 白井黒子は呟いて。
 しかし、そこで動きを止める。
 しばし、その態勢で静止して、即座に上体を、椅子に座ったときの位置へと戻す。
 唇に触れてはいない。
 目の前の相手は決して抵抗しないのに。
 白井黒子は結局、少女の純潔を守り通す道を選んでしまう。
「……っ」
 唇をかみ締める。
 前髪で瞳を覆い隠す。
 しばし沈黙。
「お姉様……」
 再び呼びかける。
「今、あの殿方のところには、一人のシスターがおりますのよ」
 これ以上、声を大きくできない。
 少しでも音量を上げようものなら、こみ上げてきそうだから。
「とても可愛らしい女の子。お姉さまに勝るとも劣らぬくらい、あの殿方を慕う女の子」
 白井黒子は再び少女の手を握る。
「既にあの殿方は目を覚まされているのですよ。しかもお姉さまのことが記憶から消えておいでなのですよ」
 だからこそ、目を覚ましてほしい。
 この手を握り返してほしい。
「今のままでは、あの殿方は永遠にお姉さまの方を振り向いてくれなくなるかもしれませんわよ」
 いつのものように、照れ隠しにムキになって。
 だけど、直情的に少年へと向かっていって。
「それでよろしいのですか?」
 白井黒子は問いかける。
 それでも少女は反応しない。
「だから……お姉様……お起きになって……」
 もう涙を堪える術なんて忘れてしまった。
 漏れる嗚咽を抑えることなんてどうでもよくなった。
「お姉様……」
 白井黒子は少女の手を握り締めたまま、再び泣き崩れる。
 今度は静かに、そして偲ぶように。


 それでも少女は反応しない。

370IF 分岐物語5−4:2011/04/10(日) 08:07:21 ID:UG//2EU2
 インデックスは病院の出口へと向かっていた。
 単純に面会時間が来てしまったからだが、どこかホッとしていた。
 あの場にいるのが辛いから。
 だけど、あの少年と一緒に居たかったから。
 面会時間ギリギリまで傍にいた。
 矛盾する二つの気持ち。
 インデックスは出口へと向かう。
「お話があります、と、ミサカはあなたを呼び止めます」
 不意に声をかけられる。
 声のした方へと視線を向ければ、そこに居たのは、自分をここまで連れて来た一人の少女。
 正式名称(?)・検体番号(シリアルナンバー)一〇〇三二にして、とある少年からは御坂妹と呼ばれる、学園都市二三〇万人の頂点・七人しかいない超能力者(レベル5)の一人の体細胞から人工的に創られた生命体。


「あの方の記憶回復とお姉様の意識覚醒のために協力を要請します、と、ミサカはあなたの目をまっすぐ見て毅然と告げます」


 しかし、その言葉に宿る意志には、一個人としての確固たる信念が宿っていた。

371IF 分岐物語前半終了のお知らせ:2011/04/10(日) 08:09:45 ID:UG//2EU2
とても長くなってしまいましたが、これで前半終了です。
6章以降はまた後日にUPさせて頂きます。

372■■■■:2011/04/10(日) 13:05:49 ID:4KKF99AQ
な、なんだこの良作ラッシュは…

超GJです!

373■■■■:2011/04/10(日) 15:22:21 ID:ciWPCd.Q
これは続きが気になる
GJ!

374■■■■:2011/04/10(日) 18:45:11 ID:SUGRnTDw
アレイスターが喋らせにくい

375■■■■:2011/04/11(月) 00:17:40 ID:Z6hxO8xs
>>371
投下・終了宣言もしっかりしてるし、一見さんお断りなんてルールはありませんのでご安心を。むしろ大歓迎です。
忌憚無き意見をとのことなので、ちょっと突っ込んでみたり。
>凍てつく夏の日の診察室で医者が放った言葉がインデックスに突き刺さる。
原作の文章のままだと、こういう齟齬が気になっちゃうんですよね。作中の時系列設定では十二月半ばのはずですよね?
禁書の雰囲気云々は個人の主観になってしまうので断言できませんが、自分の場合は違和感なく読み通せたと思います。
後半も期待してます。GJ!

376IF 分岐物語の作者:2011/04/11(月) 07:11:27 ID:4DUtDSlY
>375様

そうでした。冬の設定でしたよ。うっかりしていました。
うん。でも直せない、ってのは辛いですね。(^^;)
……第6章以降は、もっとちゃんと見直さねば……(−−;)

377■■■■:2011/04/11(月) 10:36:11 ID:7l1zIyGs
> 夏の日の診察室で医者が放った凍てつく言葉がインデックスに突き刺さる。
俺は、元は↑だったのが、編集ミスでそうなったのかと思ったw

378■■■■:2011/04/11(月) 18:36:11 ID:VwtZXQNI
ぶっちゃけ、どれもつまんねー 出直して来い

379■■■■:2011/04/11(月) 20:23:20 ID:LfwulNdA
>>378
新しい職人さんか?
大歓迎だぞ

380IF 分岐物語注意点補足:2011/04/11(月) 21:21:18 ID:4DUtDSlY
後日、と言ったのに、一日しか立ってませんハイ。
と言うわけで、今回は第6章と第7章でございます。
んで、注意事項追加!

・なんとなく、駆け足展開になります。
・なんとなく、オチが見えてくる可能性がありますが、オチは予想できても言わないでくださいまし。
・なんとなく、自己流解釈及びご都合主義になりまくっているかもしれないです。その点のツッコミは平にご容赦を。
・なんとなく、前に誰もやっていないネタになることを願います。

と言うわけで、以下、第6章スタートです。

381IF 分岐物語注意点補足:2011/04/11(月) 21:30:29 ID:4DUtDSlY
「それでは、あなたはあの方とお姉さまが亡くなられた、という情報の方が良かったのでしょうか? と、ミサカはいぶかしげに問いかけます」
「う……それはそれで嫌なんだよ……」
「ですから、お二方の命に別状がなくなるまで回復してからお知らせしたのです、と、ミサカは自分の判断に誤りはなかったと胸を張ります」
 御坂妹とインデックス。
 考えて見れば、妙な取り合わせなのだが、それを言っても始まらない。
 夕べ、上条当麻と再会を果たしたインデックスではあったが、またも記憶破壊という現実に直面し、落ち込んでしまって、帰ろうとしたところ、インデックス言うところのパーフェクトクールビューティーである御坂妹に呼び止められた。
 もちろん、インデックスは振り切って帰ろうとした。
 どこに?と問われて、上条当麻の学生寮、と答えようとしたところで、もう自分の居場所がそこにないことを思い出して、言葉に詰まってしまった、という経緯があったのだが、御坂妹の「お姉さまとあのお方を回復させるための手段はあります、とミサカはあなたの協力を求めます」ともう一度、自信満々に言われて、わずかばかりの希望を抱いたインデックスは黙って御坂妹に付いていくことにした。
 さすがに上条の病室では寝泊りすることは忍びないので、仕方なく、インデックスは昨晩、御坂妹が寝泊りしている研究棟の一室で、彼女と供に一晩を過ごした。
 ちなみに今、二人が向かっているのは病院の屋上である。
 何故かと言えば、今から御坂妹がやろうとしていることはカエル顔の医者が反対するに決まっていることだからだ。
 むろん、それは無理もないことで、どんなに上条と美琴のためだろうと、それが医師の領分から外れてしまっていては賛成できるはずもないからである。
 そういうことを御坂妹はやろうとしているのだ。そして彼女はそれを知っていたからこそ、病院関係者の誰にも話を聞かれたくなかったから、インデックスを屋上に連れて来た。
 監視カメラや警報機、屋上へと続くドアの電子ロック程度など、御坂妹の前では、セキュリティの役目を果たすことはない。
 むろん、盗聴器も、だ。
 御坂妹もまた、上条当麻と御坂美琴には戻ってきてほしいと切に願う一人である。
 だからこそ、手段を選ばない。
 どんな手段だろうと、手をこまねいていては何もできないのであれば、可能性のある方にかけるというものである。
 それはかつて上条当麻によって教えられたことだった。
 自分たちの命を救うため、可能性が0ではないとは言え、0.の後に限りなく0が続いて最後が1でしかなかったはずの、レベル0がレベル5を倒す、という方法を選択した上条当麻に教えられたことだった。

382IF 分岐物語6−2:2011/04/11(月) 21:31:53 ID:4DUtDSlY
「ミサカネットワーク、という言葉をご存知ですか? 、と、ミサカはあなたに質問します」
 屋上に出て、朝日を背後に控えさせた美琴妹が問う。
 インデックスには覚えがあった。直に聞いたことはたった一度だけだったと思う。
 九月三十日の雨の夜。黒服ヘルメットの集団から逃げ出したときの車の中で、人探しをしていた白い少年がそういった言葉を呟いていた。
「言葉は知ってるかも。意味は知らないけど」
 というわけで素直にそう答える。
「ミサカネットワークとは、ミサカたち九九六九体プラス上位個体および番外個体を脳波で繋いでいる共有情報網のことです、と、ミサカは、最近、増えた妹のことを思い出して説明します。またミサカネットワーク内では各ミサカが得た情報を共有することができます、と、ミサカは本来は機密事項であるであろうことをあなたに吐露します。ちなみに、ネットワークという言葉の意味は分かりますか、と、ミサカは再度問いかけます」
 インデックスは考える。
 以前、御坂美琴に教えてもらったことを思い出しながら、確か『特殊な力を結んでいるもの』という解釈をしたはずの言葉だ。
 そこで少し疑問を抱く。
 ネットワーク内で得た情報を共有する、ということはどういうことなのだろうか。目の前にいる少女は一人の人間にしか見えないのだ。
 別の人間と情報を共有するなんてことは可能なのだろうか。
 しかし、インデックスは現時点ではそれを無視した。今、最重要懸案事項なのは上条当麻(と御坂美琴)の回復であって、自分の疑問に対する回答ではない。
「それで、その『みさかねっとわーく』ととうまの記憶がどう結びつくんだよ?」
 というわけで即座に続きを促す。
「あの方の前に、お姉様の覚醒を優先させます、と、ミサカは順番を伝えます。なぜなら、お姉様の目が覚めないのは身体を蝕むダメージのためであり、それさえ回復させれば、元に戻ります、と、ミサカはあなたにミサカの言いたいことを理解してもらうよう、伝えます」
「短髪が先?」
「はい。そうしなければ、あの方の記憶は戻らないからです、と、ミサカはあなたを真剣な眼差しで見つめます」
 インデックスには分からない。
 確かに上条当麻と御坂美琴は一緒に見つかったようではあるが、だからといって美琴の回復=上条の記憶回復に繋がるとは思えない。
 なぜなら意識が戻ったのは上条の方であって、いまだ意識が戻らないのが美琴だからだ。
 逆なら分からないでもないが、状態はともかく、既に『覚醒している』上条を、『覚醒した』美琴によって記憶が戻るなんて、どう考えても無理がある。
 御坂美琴が上条当麻の記憶を保存しているならまだしも、そんな訳がないし、そんなこと出来るはずもない。何しろ美琴の能力は記憶の保存とはまったく結びつくものではないし、能力は一人一つだから、二つ以上能力を有していることもありえない。
「意味が分からないんだよ。短髪の覚醒ととうまの記憶がどう結びつくって言うんだよ」
「お姉様もあの方の記憶の一ピースだからです、と、ミサカはきっぱり答えます。そして、あなた同様、お姉様もあの方と過ごした時間が多くあるから、と、ミサカは付け加えます」
 インデックスはますます分からなくなった。

383IF 分岐物語6−3:2011/04/11(月) 21:35:20 ID:4DUtDSlY
 ところで、御坂妹の計画はこうである。
 現代医学ではどうしようもない御坂美琴を回復させる手段は何か。
 科学技術ではどうにもならないということならば、科学以外の技術にその答えはないだろうか、ということである。
 科学と正反対の技術。
 『魔術』。
 御坂妹はその存在を知っている。
 科学技術ではどうしようもなかった最終信号(ラストオーダー)を救ったのは、一方通行(アクセラレータ)がその身の崩壊をものともせず使用した『魔術』だったのだ。
 それを御坂妹はネットワークを通じて知った。
 そう。
 御坂妹は最後の希望として、『魔術』に縋ろうというのである。
 大切な人を救うためなら、プライドなんて必要ない。
 それは自身が科学技術の固まりである存在だろうと。
 そこで、魔術に関しては誰よりも詳しいインデックスに助力を求めている、ということだ。
 仮に美琴が記憶喪失の状態で覚醒したとしても、上条当麻とは違い、御坂美琴であれば脳細胞の回復も可能かもしれない。
 能力者に魔術は使えない。
 逆に魔術師にも能力は使えない。
 しかし能力者に魔術が、魔術師に能力が作用しないかどうかと問われれば答えは別になる。
 それは先に述したとおり、最終信号(ラストオーダー)が魔術で救われたことでも分かっているし、九月一日に白井黒子も証明している。
 能力者である白井黒子のテレポートが、魔術師であるシェリー=クロムウェルに作用したのだ。
 だから御坂妹は考えた。
 魔術であれば御坂美琴を覚醒させることが出来るのではないかと。


「……うーん。分かったけど、まだ、とうまの記憶回復に繋がらないかも?」
 懇切丁寧な御坂妹の説明を聞いて、インデックスは呻ったのだが、さらに御坂妹は続けた。
 それは――
「え……じゃあ……」
 インデックスの声がかすれる。それだけ御坂妹の計画は衝撃を伴うものだった。
 もしそれが本当に現実に可能なら。
 カエル顔の医者さえ匙を投げた上条当麻の記憶破壊なのに。
 異能の力であれば全てを無効化してしまう少年の前では回復魔術も効果がないというのに。
 死滅したものは決して取り戻せないはずなのに。
 それなのに、御坂妹のやり方であるならば、昨日までのことだけではなく、七月二十八日以前の記憶でさえも一部、戻すことが可能だからだ。
 そこには、全てを戻すことは不可能でも、大半は戻せる確証があった。
 上条当麻とインデックスの本当の出会いがあったあの日を取り戻せるのだ。
「どうですか? と、ミサカはあなたの決意を聞かせてもらいます」
 インデックスは迷わなかった。
 七月二十日から七月二十八日までの上条当麻。
 七月二十九日から十月三十日までの上条当麻。
 二人とも戻ってくるのだ。
 答えは決まっていた。
 迷う理由などなかった。

384IF 分岐物語6−4:2011/04/11(月) 21:42:06 ID:4DUtDSlY
 御坂美琴の病室に御坂妹とインデックスはやってきた。
 朝日のやわらかい光が差し込む病室のベッドの上。
 そこには、所狭しと並べられた医療器具に身を委ねている御坂美琴が横たわっていた。
 その傍では、泣き疲れた白井黒子が、美琴に突っ伏して眠っていた。
 もちろん、インデックスには美琴の周りに設置されている医療器具が何を意味しているかは分からない。
 しかし、魔術の儀式が甚大なものであればあるほど複雑で数多くの媒体が必要なように、科学もまた、高度なものが要求されればされるほど、複雑で数多くの機器が必要になるのだろう、ということくらいは理解できた。
 インデックスは再び胸が潰れそうになった。
 上条当麻以上に深刻なダメージを受けて死んだように眠っている御坂美琴を目の当たりにして愕然とした。
 自分自身が招いてしまった悲劇。
 それはフィアンマによってもたらされたものであったとしても、インデックスは自分の不甲斐なさが許せなかった。
 いったい、どれだけの人たちを巻き込んだのだろう。
 いったい、どれだけの人たちを危険な目に合わせたのだろう。
 その結果がこれなのだ。
 自分が守れなかった、誰よりも大切な上条当麻の命を守った少女の痛ましい姿が胸に突き刺さった。
 しかしだからといってインデックスは怯むわけにはいかない。
 逃げ出すわけにはいかない。
 まずはこの少女を覚醒させる。回復させる。
 そして、土下座して床に額をこすりつけて平身低頭謝罪する。
 許しを乞うつもりはない。ただただ謝りたい。それだけだ。
 だからこそ、インデックスは突き進む。
「あら?」
 白井黒子は病室のドアにいる二人に気がついた。頬に伝う涙の跡のことを忘れて。
 インデックスは声をかけた。
「くろこ。短髪を治すんだよ。そのために協力してほしいんだよ」
 勇ましく、白井黒子の瞳を、真剣な眼差しで、決意を込めて、正面から見つめる。
「……治……す……?」
 白井黒子は、いまだ起き切らぬ頭がぼやけたまま、復唱して、
「だから、くろこには、これとこれとこれとこれを準備してほしいんだよ。学園都市でも準備できるはずのものだから」
 インデックスの意志ある言動に白井黒子の意識も瞬時に覚醒した。




 その日は既に夕方を迎えていた。
 朝日と違い、夕日は西に沈む。
 窓の外には紅がまだ残っていたが、部屋の中は、既に暗闇に覆われていて、電灯の灯りが必要になっていた。
「本当に、これでお姉様が復活しますの?」
 今日一日、白井黒子はインデックスの『御坂美琴を復活させる』の言葉の下、学園都市中を巡って必要なものを集め回っていた。
 白井には伝えられてはいなかったのだが、それは魔術儀式に使う媒体だった。
 しかも一部のダメージを回復させるものではなく、全身のダメージを回復させるものだ。
 前に、インデックスを治療したようなものでは到底間に合わない。
 前に、姫神愛沙を応急処置したときのようなものも意味はない。
 それほど深刻なダメージを御坂美琴は受けている。
 東京都の三分の一を占める面積は歩いて回るには遠すぎる。かと言って乗り物を使うのも目的の場所に入れるかどうか判らない場合があるから不便だ。
 結果、白井のテレポートを最大限に利用して、一日で集め回ったのだ。
 実のところ、焦って素早く材料集めをしなければならない理由があった。
 何と言っても、御坂美琴は峠を越し、既に命に別状がないところまで来てしまっている。いつ何時、呼吸を自力で出来るようになるか分かったものじゃない。
 呼吸が自力に出来るようになった時点で、美琴は学園都市を離れる。そうなれば二度と御坂美琴復活の機会は失われることだろう。
 だからこそ急いだのだ。
 少なくとも美琴が覚醒すれば、美琴が学園都市を出ることを、美琴自身はもちろん、学園都市側が許可しないだろう、という根拠に乏しい確信があったことも後押しした。
 また、インデックスにとっては今回の美琴は上条当麻の命を救った恩人なのだ。
 放っておく、などという考えは微塵も考えなかった。

385IF 分岐物語6−5:2011/04/11(月) 21:46:37 ID:4DUtDSlY
「もちろんだよ。でも、私には魔術を使えないから、かおりを呼んだんだよ」
「なるほど、回復の儀式ですか。確かに私にはその知識があります。禁書目録の知識を掛け合わせればこの女性を回復させることは可能でしょう」
 白井黒子は病室のドアの前に立ち、部屋の中の、なんとも禍々しい怪しげなレイアウトに、どうしても疑わずにはいられなかった。
 ここは学園都市。
 宗教儀式(オカルト)とは一番縁遠い場所。そんな場所の一角で、どう見ても魔法陣としか表現できないものを描いて、その中心に美琴を眠らせているのだ。
 それも全ての医療器具を外して。
 こんな場面を見れば、この病院の関係者は即座に、インデックスと神裂火織を叩き出すことだろう。
 もし事情を知らなければ、白井黒子だって二人を強制テレポートさせたくなる。
 インデックスの姿は修道服だからまだ言い訳も立つが、もう一人の長身グラマラスポニーテールの細目な女性はフォローのしようがない。
 なんせ、二メートルほどの長刀を腰に刺している上に、左のジーンズを股の付け根まで切った生足という、露出狂と言われても反論できない格好だからだ。
 だから、誰にも中を見られないように、入ることが出来ないように白井は唯一の出入口であるドアの前にいた。
「現在時刻は八時三十分二十五秒、二十六秒、二十七秒、と、ミサカはデジタル時計を見つめつつ、正確に答えます」
「ありがとうございます。では始めましょう」
 呟き、神裂火織は瞑想に入る。
 瞬間、美琴が横たわっている床に書かれた魔法陣が、ラインに沿ってブン、と音を立てて光を立ち上らせた。
 禁書目録(一〇万三〇〇〇冊の魔道書)の知識をフルに活かしたインデックスの詠唱に、神裂火織の詠唱が重なる。
 謳うように。
 完璧に調和が行き届いた音色を奏でて。
 二人とも胸の前で、祈るように手を合わせて。
「浮かべなさい――金色の天使、体格は子供、二枚の羽を持つ美しい天使――」
「はっ――」
 インデックスの呟きに神裂は即座に答える。
 七月二十一日のときの月詠小萌とは違う。
 すべてを理解している神裂だからこそ、粛々と儀式は進む。
「なっ……!」
 白井黒子は声を上げた。
 なんと、美琴の上に、本当に二枚の羽を持つ天使が現れたように見えたからだ。
 なんとも優しげで、まるで赤ん坊を見つめる母親のような笑顔の金色の天使が。
 その黄金の光に御坂美琴が包まれる。
 あたかも光が御坂美琴に吸い込まれていくような錯覚さえ感じる。
 そして、


「――生命力の補充に伴い、肉体すべての回復を確認。これにより彷徨える子羊の覚醒を促します」


 インデックスが呟くと同時に光は消滅した。
 魔法陣から発せられていた光も静まり、再び、この部屋の光源は天井の電灯のみとなる。
「……っ」
 変化があった。
 魔法陣の中心に横たわっていた御坂美琴のまぶたが確かに震えた。
 今のままで、十月三十日から今の今まで、まるで人形のように全身のどこかしらも反応することがなかった御坂美琴のまぶたが震えたのだ。
「お姉様!」
 白井は即座に駆け寄った。
 魔方陣の四方からインデックスが、御坂妹が、神裂火織が、
 そして白井黒子が覗き込んでいるその中心、
「う……」
 今度は声が漏れた。
 同時に首が左右に振れた。
 閉じているまぶたにも力が入った。


「あれ……?」


 うっすらと、そして、静かに御坂美琴のまぶたが上がる。
「ここは……?」
 視界はまだぼやけたままなのかもしれない。
 しかし、そこには確実に生命の炎が灯っていた。
 約一ヶ月半。
 完全に生ける屍と化していた少女の全身に生命を感じることが出来た。
「お姉様!」
 再び、白井黒子は叫んで、御坂美琴に飛び込んだ。
 少女はこの瞬間をずっと待っていた。
 ほとんど絶望に近い状況の中、本当にちっぽけな希望だったこの瞬間を。
 冥土帰し(ヘヴンキャンセラー)と畏れられる医者が匙を投げた彼女が救われる瞬間を。
 昨晩は慟哭だった少女の叫び。
 しかし、今日は違う。
 その涙は歓喜へと変貌を遂げたのだった。

386IF 分岐物語7−1:2011/04/11(月) 21:50:13 ID:4DUtDSlY
「ふうん。私ったら一ヶ月半も眠ったままだったのか。海の底で意識が無くなったはずなのに、ここが現世で良かったわ」
 御坂美琴は再びベッドに横たわって顔だけを横に、すなわち、この部屋に今いるインデックス、白井黒子、御坂妹、神裂火織を見て、なんとも細い笑顔を浮かべている。
 しかし、即座にハッとして、
「で、あの馬鹿は?」
「大丈夫だよ。とうまも助かったから」
「そう、良かった」
 インデックスの返答を聞いて、安堵の溜息を一つ。再び、笑顔も戻る。
 一度、視線を天井に向けて、
「で、あいつはアンタに謝れたの?」
 美琴は何気なく聞いた。
 美琴が上条当麻を助けよう、と思った理由のひとつは、インデックスに謝罪させるためだったからだ。
 それが叶っているかどうかは知りたいことである。
 知りたいことではあるのだが、インデックスに目を合わせられない、というのは微妙な乙女心と言ったところか。
 白い天井を見上げて美琴はレスポンスを待つ。
 誰も何も言わなければ、この白い空間に響くのはデジタル時計の音だけになる。
「ん?」
 なんだか思っていたよりもレスポンスが遅過ぎる。と言うか返事が来ない。
「どうしたの?」
 思わず、再び視線をインデックスに向けた。
 そこに居るのは当然、インデックスなのだがどうも様子がおかしい。
(変ね? この子が『あいつは助かった』って言ってたのに……って、ちょっと待って、何か表現がおかしくない?)
 美琴は思う。
 確かにインデックスは『とうまも助かった』と言った。
 『も』と言うことは、美琴同様に、という意味であり、それはすなわち、命に別状はない、と見て構わないことだろう。
 しかし、何かが引っかかる。
「ね、ねえ……まさか、あいつはまだ……」
 嫌な予感が過ぎる。美琴本人は一ヶ月半、意識不明だったわけだから、もしかしたら上条も、と考えても不思議はないし、というか、命に別状がないだけで、無事じゃない可能性があるのではないか、とか疑ってしまう。
「ち、違うよ! とうまは元気だから! 目が見えなくなったり口が利けなくなったり手足がなくなったりとかじゃないから!」
 手をばたばた振って、美琴の悪い予想を否定するインデックス。
「五体満足、なのね?」
「う、うん! もちろんだよ! 短髪と違って、とうまはもう自分の足で動き回れるようになってるし、ちゃんとごはんも食べられるようになってるんだよ!」
 ふむ、と美琴は思う。
 とりあえず身体的に問題はなかった、ということだけは分かった。
 ところが、それでもインデックスは『無事に』と口にしていない。
 つまり、命には別状ないし、体もいたって健康なのかもしれないが、どこかに異常があることになる。
 それはどこだろう?
 答えは既に出ている。
「……もう一回聞くけど、あいつはちゃんとアンタに謝罪した?」
 今度は、まっすぐにインデックスを見て問いかける。
「……………………………………………………………………まだ」
 随分と長い間があって、ようやくインデックスが絞り出した声を漏らした。
「……………………………………………………てことは、また?」
「うん……あ、でも今回は大丈夫なんだよ! 記憶はちゃんと戻せるんだよ!」
 深刻な美琴の声に、肯定はしつつも即座に、元気付けるように声を上げるインデックス。
 それは自分にも言い聞かせていることなのだが、それに関しては自覚なし。
「そうなの?」
「はい、と、ミサカはお姉さまの疑念を振り払います」
 美琴の確認に答えたのは、今度は御坂妹の方だった。
 その事務的で平坦な言葉には、一片の迷いもなく、漲る自信が宿っていた。

387IF 分岐物語7−2:2011/04/11(月) 21:58:21 ID:4DUtDSlY
「で、インデックスさん? あなたはここで何をしているのでしょうか?」
 翌日、再び、上条当麻の病室を訪れたインデックスは、お見舞い用に飾ってあった花瓶を上条のベッドの横にある小さな三段引き出しの上に置いて、空っぽになった小さなテーブルでレポート用紙に何やらボールペンを走らせていた。
「あなたの記憶を、彼女があなたと関わった記録を書いてもらってます、と、ミサカは現状報告します」
 答えたのは、インデックスと供に現れた御坂妹だった。
 どうやら夕べもインデックスは御坂妹の病室に泊まったようである。
「俺の記憶?」
「そうなんだよ。とうま! 私ととうまの回顧録をパーフェクトクールビューティーがとうまの頭に書き込むんだよ!」
「は?」
「厳密にはミサカではなく、ミサカが用意する学習装置(テスタメント)が入力します、と、ミサカは補足説明します」
 はじけんばかりの笑顔で答えるインデックスと、淡々と呟く御坂妹は、手持ちのノートパソコンをソファーに座り、太ももの上に置いて、広げて、何やら打ち込んでいる。
「で、あなたも何をやっているので?」
「私にも、あなたと過ごした記録があります。それをまとめています、と、ミサカは一心不乱に打ち込みながら答えます」
 回答している時点で一心不乱とは言えないのだが、それは言うまい。
「ええっと、てことは俺の頭に、君たちが俺と一緒だった過去を入力する、と?」
「その通りです、とミサカは肯定します。ご安心ください、と、ミサカはあなたの不安を取り除きます。学習装置は元々、学園都市の能力開発装置を応用したもので、耳から直接電極を刺して稼動させますが、それは、能力開発時にあなたも経験済みのはずです、ではなく、この学園都市の入学条件を知っているはずですから、記憶はなくても、そういうことがあったことは認めるはずです、と、ミサカは懇切丁寧に説明します」
「まあ……この町にいる時点で、それはそうなんだが……」
「学習装置の安全性については問題ありません、とミサカは保証します。なぜならミサカ自身に使用されたからです、と、ミサカは実体験を遠い思い出のように語ります」
 経験者は語る、というやつだ。
 しかも御坂妹は、クローン体であり、生命の理に基づいて生まれた者たちと比べると、どうしても体調的に弱い部分がある。
 しかし、そんな御坂妹だからこそ、文字通り身をもって学習装置の安全さをアピールできるのだ。
「し、しかしなあ、それだと俺の記憶というか、君らだけとの記憶しか入力できないんじゃないか?」
「うん知ってる。だから、私たちだけじゃないよ。短髪もくろこもこもえもあいさもかおりもサーシャもシェリーもオルソラもアニェーゼもルチアもアンジェレネもオリアナもいつわもエリザードもリメエアもキャーリサもヴィリアンもレッサーも協力してるよ。……って何か女の人ばっかりだし、ちょっとむかつくかも」
 白いシスターの目がとっても怖くなって、上条は身震いする。
 身に覚えはないのに、なぜか、あのシスターのあの表情は直感的に非常によろしくない気がする。
「同感です、と、ミサカは、あまりのあなたのフラグ乱立ぶりに辟易します」
 ……いや、それは今の俺ではなくて、前の俺ですよね? というか前の俺! どんだけ羨ましい目にあってんだーーー!!
 と、ツッコミを入れたが最後、なんとなく命の危険が真近に迫ってきそうな気がしたので、心の中でだけ絶叫する上条当麻。
 もし、記憶を失う前の彼が二人ともいたならこう言って、焼け石に水の反論をしたことだろう。
 ステイルと偽海原光貴と建宮斎字は?
 ちなみに数多くの女性と確かにお知り合いの上条当麻ではあるが、それは全て別に、ギャルゲーのように幼馴染だったり出会いがしらにぶつかったり突然声をかけられたり木の影から見られていたり事ある度に勝負を挑まれたりしたわけではなく、清々しいくらいとっても命と紙一重の危険な目にあって生き残った成果だったりするから、それが羨ましいかどうかは正直、疑問を感じるところではある。
 もちろん、今の上条当麻はそれを知らない。
 って、あれ? 一つだけ実話なのでは?

388IF 分岐物語7−2:2011/04/11(月) 22:01:41 ID:QgVTjYHo
「ああ! なんて素晴らしい空間! お姉様が! お姉様が二人もわたくしを囲うなんて! これもひとえにお姉さまの身を案じて一ヶ月半を一人寂しく過ごしてきたわたくしへのご褒美なのでしょう!!」
 上条が滞在している隣の病室では、同じように御坂美琴と白井黒子が、上条当麻との回顧録レポート作成に勤しんでいた。
 この二人はさすがに用紙にボールペンというアナログではなく、手持ちのノートパソコンでキーボードを叩いている。
 叩いているのだが、実のところ、叩いているのは白井黒子だけであって、御坂美琴はベッドに横たわったまま、傍にいる自分のクローン・妹達の一人、一〇〇三九号に口述筆記させていた。
 なぜなら、美琴はまだ、キーボードを叩くどころか、ペンを持つ以前に、自力で起き上がることさえできないくらい体力が回復していない。
 何と言っても、美琴が覚醒したのは前日の晩で、それまで一ヶ月半、まるで動かなかったのだ。栄養点滴だけでは当然追いつかず、ようやく、今日の朝、オモユを口にできた程度。これで動けという方が無理である。喋ることさえ、結構億劫なのだが、今の美琴ができるのはここまでだ。
「ねえ黒子……あんたのハイテンションは諦めるけど、ちゃんと言われたことやってんの……?」
 美琴が呆れて呟くと、
「もちろんですわ、お姉様! あの腐れ類人猿との回顧話などものの数行で終わりますもの!」
「だあー! それじゃ意味ないじゃない! 妹達の一人が言ってたでしょうが! あいつと一緒に居たときのことを覚えている限り、詳細に書かなきゃいけないって!」
「むぅ。ですが、わたくしとあの殿方だけの接点となれば、八月二十一日の夜と大覇星祭前のビル崩壊から救われた二つしかありませんの。あとはお姉様もご一緒でしたから、別段、わたくしが書く必要は無いのではないかと。お姉様と一緒にいたときであれば、わたくしよりもお姉様の方が、詳しく書けるのではなくて?」
「ななななななな何言ってんの黒子! 私とあいつは別に、その、何と言うか……」
「それでも、あなたにも詳しく書いてもらいます、と、ミサカはあなたの目をまっすぐ見つめて懇願します」
 美琴がどもると同時に、ミサカ一〇〇三九号はじとっとした声で白井黒子に希望する。
「う……お、お姉様と瓜二つのあなたに促されるとわたくしとしても何と仰いますか……逆らえないと言いますか……」
 多少顔を赤くして、妙に鼓動が加速する白井黒子はしどろもどろしている。
 ちなみに、白井黒子に妹達のことを教えたのは御坂妹だ。
 上条の部屋に移る前に、この病院にいるあとの三人の内、今日の調整が済んでいた一〇〇三九号をを呼んだ。満足に動くことができない美琴のフォローのために。
 それゆえ、どうしようもなかったのである。
 自分と一〇〇三九号という二人の御坂美琴そっくりの存在と出くわした白井黒子は、すでにこの件に大きく関わってしまっている。
 昨日までであれば、御坂美琴第一だったため、周りにまで気が回らなかったのだが今日からは違う。
 御坂妹と会っていることは当然記憶に残っている。
 いずれ、追求されるなら、と考え、他言しない、という条件の下、妹達のことを説明した。
 ただし、実験のことや最終信号、そして最近増えた番外個体のことは伏せて、自分たちが美琴のクローンであること、噂にあったレベル5の軍用量産モデルであること、というところまで、で。
 さて、なぜ一〇〇三九号が白井黒子にも再度、記録作成を依頼したのか。
 その理由は、
「これを見てください、と、ミサカはあなたにパソコンモニターを突きつけます」
「はい?」
 なんとなく、やさぐれている雰囲気を醸し出す一〇〇三九号に従って、白井はモニターに映し出された文章を読んでみると、
「…………………………お姉様、これは惚気話でございますか……?」
「ぶっ!」
「そういうことです。お姉さまとあなたたが一緒にいるときに、あの人と接点があったならば、あなたの記録の方が客観的かつ適切に処理できるからです、とミサカは砂を吐きながら嘆息します」
「何でそうなるのよ! わ、私はちゃんと事実関係に基づいて!」
「その割には、私から見てもこれは主観が混ざり過ぎているように思えますわよ。何ですの? この『何でも解決してくれるヒーローのように』とか『何かこっちを意識しているみたいで』とか『本当に嫌われていたらどうしようと思いつつ』とか。もしかして、こちらの方も、逐一訂正しておられるのではないでしょうか?」
「その通りです、と、ミサカは呆れて首肯します」

389IF 分岐物語7−3:2011/04/11(月) 22:04:19 ID:4DUtDSlY
 確か、この病院の防音施設は完璧なはずなのだが、いきなり、うぎゃー!!、という叫び声とかビリビリとかバリバリとか、遠くから聞こえたような気もするが、聞かなかったことにしよう、と、隣の部屋にいる上条は心の底から思う。
 これに関わるのもなんとなく身を滅ぼしそうな予感がしたから。


「はぁーい。みなさぁーん。大変、嬉しいことに上条ちゃんが無事発見されましたー」
 とある高校の教室。その教壇で見た目小学生の月詠小萌はパンパンと手を叩きながら、教室中に甘ったるい、まだ子供らしさが残る声を響かせていた。
 同時に、歓声とどよめきが上がる教室。
 ここは上条当麻が所属するクラスだ。
「しかぁーし! 非常に困ったことに今、上条ちゃんは記憶喪失にあります! ですから、それを治すために、皆さんに『上条ちゃんとの思い出話』を最低原稿用紙五枚で書いてもらうのでよろしくですー!」
 一見、軽いノリの小萌であったが、ここは学園都市だ。
 学園都市に住む全員が、記憶喪失も直せるほど医療技術は発達しているだろう、と考えても不思議はない。
 ええー、と不満の声も多少聞こえるが、それでも、この人物が言えば、クラス中はそれで纏まる。
「まあ、あんな奴でもいちおークラスメイトだし――」
 言いながら、その人物は立ち上がり、教壇に向かいながら、一度顔を洗うように両手で表情を隠し、その両手を一気に上げて頭の後ろへ回して、耳に引っ掛けていた髪を完璧なオールバックの形に整え直した後、さらにいくつかのヘアピンでそれを固定していく。
 彼女は本気だ。
 クラスの誰かが叫んだ。
「――吹寄おでこDXッッッ!?」
「さあ!! この私が、後からあの馬鹿にまとめて渡してくるから気合入れて書くのよ!!」
 振り返った巨乳女子高生・吹寄整理の仕切り屋魂にはゴウゴウと音を立てて燃えていそうな炎が宿っていた。
 そして、教室が妙な迫力に包まれる中、学校指定のセーラー服よりも巫女装束の方が似合いそうな、上条当麻とは浅からぬ因縁を持つ者の一人、姫神秋沙は淡々とペンを走らせている。
 しばらくして「にゃー! カミやんと言えばこれだにゃー!」とか「おうおう、ワテもそう思いまっせ」とか言う叫び声が、「貴様ら! これは上条当麻の記憶じゃなくて、人間性だろうが! 間違っていないけど間違ってるわ!」という叫びと供に妙な衝突音を響かせていた。
 月詠小萌は教壇で自身もペンを走らせながら、なんとなく思った。
(上条ちゃんは幸せですねー、こんなにも上条ちゃんのことを心配してくれている人たちに囲まれているんですよー)
 その瞳には嬉しさのあまり、光るものがあったのだが、それに気づく者はいない。

390IF 分岐物語7−4:2011/04/11(月) 22:07:33 ID:4DUtDSlY
 神裂火織は本気で悩んでいた。
 ここは上条当麻と御坂美琴が入院している病院の待合室。
 むろん、神裂も上条当麻の記憶の1ピースをになっているので協力しなければならない。
 持っているのが、白紙の巻物に毛筆というところが、なんとも説明し辛いところではあるのだが、これが幸いして、彼女に近づくものは誰もいない。
 正確に言えば、近づきたくない、が本音だろう。
 その隣にはテレビ電話付けっ放しの状態で、電源が入っているノートPCがある。
 そこに映し出されている光景は、
『おいオルソラ! てめえ、全然違う方に話が言ってるじゃないか! あのガキとの回顧話が何をどうやったらお鍋の焦がさずに済むか、に変わるんだよ!』
『そうは申されましても、私としてはそれがとっても大切なのですよ、シェリーさん』
『シスター・アンジェレネ。それは今日の朝食の話です。あの男のこととはまったく関係がありません』
『そ、そうは言いますけどシスター・ルチア! あなたの文章もそれは主への感謝の意でしかないと思います!』
『あ、あのオリアナさん……? 本当にそのようなことを彼との間であったのでしょうか……?』
『なあに顔を真っ赤にして。さすがは第三王女・ヴィリアン様、真性のお嬢様なのかしら。うぶな子を見るとお姉さん、どきどきしちゃう』
『お母様、それは何か違うような……? 別に私たちはあの男に救われたわけではありませんわ。私の知性が――』
『ここではエリザード女王と呼ぶのじゃエメリア。というか、おぬしのは美味しいトコ取りだっただけではないか。おい、キャーリサ。おぬしのは文章ですらないぞ』
『はぁ……何で軍師の私がこんなことを……こういうものはそもそも書記の仕事であって……』
『ステイル、それは上条当麻への悪口だと思うんですがね?』
『君も人のことは言えないと思うよシスター・アニェーゼ。それはどうやって上条当麻を打倒しようかという作戦メモに過ぎない』
『第一の質問ですが、それは恋文じゃないですか?、と五和さんに問い質します』
『ち、違いますよ! ちゃんと上条さんとの回顧録です! サーシャさん!』
『そうですか? わたくしの目にもそれはラブレターにしか見えないのですが?』
『れ、レッサーさんまでー!!』
 広い聖堂に集まり、ぎゃあぎゃあ言いながら何をやっているんだろう、と神裂は頭を抱えている。
 自らの筆は自信はあるのだが、画面の向こうがこれでは本当に大丈夫なのだろうか。
『プリエステス!』
 突然、自分を呼ぶ声が聞こえてきた。
 画面を見れば、一匹の人の姿をしたクワガタ、もとい、建宮斎字の顔が画面いっぱいに映し出されていた。
『……なにやら、かなり失礼なモノローグをされてませんでしたか? プリエステス』
「気のせいです。して、何の用で?」
『いえ、是非、ここにいる連中に、参考のためにプリエステスとあの少年の回顧録を拝見させていただきたく、お声をかけさせていただいた次第ですのよ。でないとまともに完成しそうにありませんのことよ』
 建宮の言葉には説得力があった。
 確かに目の前のモニターを見れば、不安に駆られても仕方がないし、彼の気持ちも理解できる。
 そして神裂自身も、一応は誰かに自分の文章を確認してもらいたかった。
 入ってはいないと思うが、主観が入っていては意味がないからだ。
「では――」
 言ってモニターに神裂が書いた回顧録を映し出す。
 それを、じっくり拝見する向こう。
 しばしの沈黙。
 ややあって、周りは皆、納得したように頷いて、静かにペンを走らせるようになった。
 自分の文章が、いい影響を与えたことに、神裂は、少し頬を紅潮させながらも満足げな笑みを浮かべて巻物を仕舞う。
 しかし、
『プリエステス』
「ん?」
 まだクワガタが映っている。神裂は静かに問うた。
「何か?」
 至極真面目な表情で建宮が答える。
『堕天使エロメイドの件がございませぬが、それはマズイのではございませんか? 少年との回顧はありのままを伝えねばならないとお聞きしたのですが――』
 神裂火織は迷わなかった。
 一度深呼吸し、伏せた瞳の努めて冷静な表情で優雅な笑みを浮かべつつ、
 建宮の顔面を記憶ごと粉砕する力を込めて、PCのモニターに強烈な鉄拳をめり込ませた。

391IF 分岐物語7−5:2011/04/11(月) 22:10:04 ID:4DUtDSlY
 一週間が経過した。
 ようやく御坂妹の元に、上条当麻と関わりがあった人たち全てからの記録が届いたのだ。
 神裂の分は手渡しで、クラスの分は吹寄整理が持ってきて、海外の分はEメールで送られてきて、美琴と黒子の分は御坂妹が直接取りにいった。一方通行と打ち止めの分はミサカネットワークが知っているので、御坂妹が代筆した。
 記録としては、上条当麻が高校に入ってからのものであり、それ以前は含まれていない。
 これは、上条当麻が両親にだけは記憶喪失のことを隠しておきたかったからだ。
 ただでさえ、親元を離れて寮生活している上条当麻だ。それだけで両親に多大な心配をかけている。
 だからこれ以上迷惑をかけたくない、という思いがはたらいたのだろう。
「ねえねえ、これでとうまの記憶が戻るんだよね?」
 インデックスは嬉々として話しかけている。
「その通りです、とミサカも自然と笑顔になれます」
 むろん、笑顔になっていない。
「じゃあ、とうま、明日は私のことを覚えてるとうまなんだよね?」
「そうなるかな?」
「……嬉しいかも」
「いきなりしおらしくなるなよ」
「だって仕方がないんだよ……私は…………」
 昼間までのテンションはどこへやら。
 インデックスの胸には再びこみ上げるものがあった。
 涙も自然とこぼれてくる。
「なあ、俺、本当に何も悪いことしてないの? なんだか、君の顔見てると、すっごい悪いことしてる気がしてならないんだけど?」
 上条は苦笑を浮かべるしかできない。
 確かに見た目だけなら『聖少女』っぽい純粋な少女が泣いているのだ。これは効く。
「ん〜〜〜そう言えば、私に酷いことしたかも」
「ええっ!?」
 右手人差し指を頬につけ、小首を傾げるインデックス。
「あは、何をしたかは思い出して話すんだよ!」
 なんて小悪魔っぽい笑顔のインデックスがきびすを返して走って病室から出て行く。
 釈然としない上条。
「お、おいインデックス!」
 呼び止められたインデックスは背を向けたまま、ぴたりと足を止めた。
 しばし沈黙。
「……約束だよ」
「え?」
「明日になったら絶対に私のことを思い出していて……約束だから……」
 上条の返答を待たずにインデックスは飛び出していく。
 今日の行き先は、小萌のアパートだ。
 御坂妹が今日は個室に戻れないから、ということだから。
 二人残される上条当麻と御坂妹。
 上条当麻は何故か、インデックスの約束という言葉が気になった。
 なぜかは分からない。
 漠然と、忘れてはいけない何かを突きつけられたような気がした。

392IF 分岐物語7−6:2011/04/11(月) 22:17:04 ID:4DUtDSlY
 御坂妹は自身の個室へと戻ってきた。
 大量の書類が入った鞄と、キャリーケースに入った学習装置を取りにきた。
 ようやく今晩、上条当麻の記憶が戻る。
 上条当麻には伝えてある。
 記憶は戻るが、今回の、目を覚ましてから今日まで過ごした記憶も消えることはない、と。
 そういう記憶回復であることを伝えていた。
 周りから見れば、とてもそうは見えないのだが、御坂妹は意気揚々と部屋を出る。
 しかし――


「ようやく君と話せる機会を得たよ。ここ最近、ずっとあのシスター少女が君の傍にいたからね。正直、あの子に、これ以上絶望感を与えるのは忍びなかった」


 御坂妹が病院の自室を出たところで、背後から、普段は聞いたことも無いような真剣で重低音の声をかけられた。 
「残念だが、それを大目に見ることはできない」
 即座に、彼女は振り返る。
 そこに居たのは、カエル顔の医者だった。
 しかし、醸し出す雰囲気がいつもの『優しいお医者さん』ではなかった。
 壁側の左半身を影で覆われ、鋭く睨みつける右目の眼光もさることながら、左目は完全に影の中の光と化している。
 そこに居たのは、文字通り、冥土帰し(ヘブンキャンセラー)という二つ名に恥じない佇まいの迫力漲る漢(おとこ)だった。
「御坂くんのときは確証があったから、医者として医療以外の技術に頼れなかったから、見逃してあげたけど、今回はそうはいかない」
 硬直していた御坂妹の体に自由が戻る。
「何故です? と、ミサカは尋ねます」
 声はまだ震えていた。
 本来感情に乏しいはずの彼女の声が、畏怖で震えていた。
 この医者には全てが筒抜けだったことを突きつけられたからではなく、もっと別の何かが彼女に畏怖を与えているのだ。
「僕が、君がやろうとしている方法を思いつかなかった、と本気で思っているのかい?」
「え……?」
「――『学習装置』を利用した記憶回復、それを本気で、この僕が見落とした、と思っているのかい? と、聞いたんだ」
 言いながら、ヘブンキャンセラーは重い足取りをものともせず、ゆっくり近づいていく。
 カツン、カツン、という靴の音が、さらに重さに拍車をかけていくというのに、さらに彼の影を濃くしていくというのに。
「実際に、あなたはこの方法を提示していません、と、ミサカは反論します。もし、この方法を思いついたのであれば、あなたほどの医者であれば、間違いなく採用します、と、ミサカは確信をもって主張します」
 そう。
 確かにヘブンキャンセラーはそういう医者だ。
 患者を助けるためであれば、医療技術に有効であると判断できれば手段は問わない。
 それは、患者の負担が軽ければ軽いほどいい、というだけで既存の手術法ではなく、独自の手術法を編み出し、心臓手術を部分麻酔で成功させたことでも分かるし、脳に致命的な障害を受けた者を、クローン一万体近くのネットワークを電極チョーカーで繋ぎ、多少、体に障害が残ったとしても、それでも平常どおりの生活に戻せるほど、回復させたことでも証明されている。
「その通りだ。だからこそ、そんな僕が見落としたと本気で思っているのだとしたら、君自身が冷静ではないことを暴露しているようなものだ」


 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!?!


 今度こそ、御坂妹は完全に固まった。

393IF 分岐物語7−7:2011/04/11(月) 22:19:39 ID:4DUtDSlY
「君は、いや、正確には、君を含めたミサカネットワークは、周りと違って冷静なつもりでいたのかもしれない。それはこの一ヶ月半を、あの少年と、あの少女の、危険な状態を目の当たりにして、なお、的確な処置が取れていたから、そう自負できたのかもしれない。しかしだね、こと『学習装置による記憶回復』に関しては、残念ながら致命的な見落としをしている。だから止めたまえ。人の命を助ける、というのは容易いものではない。熟慮に熟慮を重ねて、それでいて慎重に行動できなければ、逆に命を奪ってしまうものなのだよ」
 ヘブンキャンセラーは『慎重』と『大胆』は相反するものだとは考えない。
 そもそも、言葉の意味的にも対義語ではない。『慎重』の対義語は『軽率』で『大胆』の対義語は『小胆』だ。
 だからこそ手段を選ばないでいられる。
 それはヘブンキャンセラーである彼の真の能力とも言えるだろう。
「どういう意味ですか? と、ミサカは再度尋ねます」
 学習装置が内蔵されたキャリーケースを脇に抱えて、まるでヘブンキャンセラーと対峙するような雰囲気で問う御坂妹。
 対するヘブンキャンセラーは、そんな彼女の目をまっすぐ、ある意味、睨みつけて、
「君は、その『学習装置』がどんなものかを知っているはずだ」
 静かに呟く。
「……『知識』を直接脳に入力する装置、と、ミサカは以前、ミサカが施されたことを思い出しつつ即答します」
「――やはり、冷静さを欠いている。僕が聞いたのは『取扱い』だ。しかし君の答えは『機能』だったよ」
 御坂妹はヘブンキャンセラーの言葉にハッとした。
「要するに、君は学習装置の『特性』だけに目が行ってしまっていて、学習装置の全体像を完全に失念している。誤解の無いように言っておくが、君が想像しているとおり、学習装置による記憶回復は理論上可能だ。複数の関係者による『記録の照合書類』を読み取って、対象者の脳に書き込めば、間違いなく回復する。たとえ、それは擬似記憶でしかないとしても、本人にはその自覚は無い。『実際に体験した』という記憶にすり替わる。『空気が美味しい』とか『人がスシ詰め』とか言った『抽象的な表現』は分からないかもしれないが、『味覚』や『嗅覚』は体験が無くとも理解できるようになっているのと同じように」
 御坂妹には狙いはまさにこの説明だった。
 このことに関しては、九九八二号という、レベル6シフト計画の実験で命を落とした御坂妹の姉で証明されている。
 美琴と供に行動した九九八二号は『初体験』であるにも関わらず紅茶やアイスクリームの味をちゃんと理解できていた。
 また御坂妹自身も操車場での戦いを終えた翌日に、やったこともないブランコの『立ち漕ぎ』を遊びに来ていた子供たちに披露することができたのだ。
「しかしだね、その学習装置は『電気』で動く」
「あ……!」
「しかも、書き込む際は耳から直接電極を刺して入力する。つまり、書き込んでいる間中、脳には直接、電磁波が浴びせられることになる。それも強い電磁波が、だ」
 御坂妹は理解した。
 自分の計画の致命的な欠陥を理解した。
「学園都市の脳開発や君たちへの知識入力ですら、三十分内で留めているんだよ。今回の少年の記憶入力にかかる時間を算出しているのかい?」
「……二時間、と、ミサカは震えながら返答します」
「君は、そんな長時間を彼の脳が耐えられると思っているのか?」
 彼女は答えられなかった。
 沈黙の肯定が答えだった。
「そういうことだ。まあ、だからと言って気を落とす必要は無い。今回、集めた『記憶』を彼に話してやればいい。母親が子供に読んで聞かせる絵本のように、寝る前にでも毎日ね。それだけでも充分、彼の助けになるはずだ」
 ヘブンキャンセラーの表情はいつもの『カエル顔のお医者さん』に戻っていた。
 患者に不安を与えない。『町のお医者さん』に。
 しかし、御坂妹は何も言えなかった。
 自信を持って、少年を救えると信じていたことが粉砕されて、絶望してしまっていた。
 クローンという人工生命体に心が宿ることは悪いことではない。
 むしろ、それは上条当麻が、御坂美琴が、一方通行が、芳川桔梗が、あの実験に関わった『人の心を持っている』者、みんなが望んだことだった。
 もっとも、だからと言って、このような『絶望』では、あまりに哀れ過ぎる。辛過ぎる。酷過ぎる。
 もし、この場に『上条当麻』がいたならば。
 そんな『幻想』をぶち壊してくれたことだろう。
 しかし今、『彼』はいない。
 御坂妹を命がけで救ってくれた『彼』は、いないのだ。

394IF 分岐物語7−8:2011/04/11(月) 22:24:42 ID:4DUtDSlY
 御坂妹の瞳から一滴、液体がこぼれる。
 床に小さなしずくが月の明かりを反射して弾けた。
 こんな悲しい涙はいらなかった。
 こんな苦しい思いは抱いてほしくなかった。
 もし、この場に『上条当麻』がいたならば、そう言ってくれたに違いない。
 だが、現実は無情だ。
 どんなに望んでも『上条当麻』はもういない。
 どんなに望んでも『上条当麻』はもう二度と帰ってこない。
 御坂妹は脇に抱えた学習装置が落ちたことに気づいていない。
 自身も崩れて床に座り込んだことに気づかない。
 震える体で、いつの間にか両手で顔を覆って。
 初めて知った喪失感。
 こんなに重く辛いものだと知った『心』。
 しかし、彼女が何をしたのだと言うのだろうか。
 大切な存在を失わなければならないほどの大罪を犯しただろうか。
 カエル顔の医者は思う。
 世界は確かに件の少年によって救われたのかもしれない。
 それなのに、いまだ件の少年の周りは救われてはいない。
 『不幸』は少年の元に集まるのかもしれないが、少年以外の周りまで巻き込んではなかったはずだ。
 少年が『不幸』を背負う代わりに、少年の周りは幸福が溢れていたはずなのだ。
 いや違う。
 幸福は待っていても、やってこない。
 救われたければ、救われるのを待っていたところで報われない。
 それが『この世界』だ。
 世界は都合よくできていないのだ。
 しかし、『ミサカ』が嘆き悲しむことを誰よりも気に喰わない男が、世界で、たった一人だけいる。
 その男は、『ミサカ』を助けるためであれば何でもする。それも、できないことでも無理矢理実行したほど、『上条当麻』に勝るとも劣らない、しかし『上条当麻』とは正反対の、学園都市一優等生の大馬鹿者だ。


「つーことはだ、電気を使わずに、体内の生体電気から脳内を読み取ることができりゃァ、問題ねエってことだよなァ?」


 カエル顔の医者がいた向こう側、御坂妹の背後から声がした。
 それは、地獄の底で捕らえられたヒロインを救うために颯爽と登場した主人公とは、あまりにもかけ離れた声だった。
「ったく、クローンどものネットワーク経由であのガキの元にたったひとつだけの情報が流れてきて、しかもソイツがあのガキども全体の総意だっつーから、やって来てやったンだが、なンだァ?」
 恐る恐る御坂妹は振り返る。
 愕然とした顔で肩越しに振り返る。
 その眼前には細身の少年。
 狂ったように白く、歪んだように白く、澱んだように白く。
 どう考えても、場違いな存在。
 どう考えても、この場に居る方があり得ない存在。
 どう考えても、逆にヒロインを地獄の底で捕らえていそうな存在。
「俺にヒーローを助けろってか? 散々、不相応なことをやってきたが、これ以上はあり得ねえンじゃねエのか、オイ?」


 自他共に認める、絶対にラスボスの方が相応しいはずの、最後の希望(アクセラレータ)がそこにいた。

395IF 分岐物語7章まで終了の報告:2011/04/11(月) 22:28:53 ID:4DUtDSlY
以上、6章と7章です。
アクセラレータがラストオーダーの頭の中をいじくれたのは、ラストオーダーがクローンだから、って気もするけど、そこは大目に見てください。(><。)
8章から先は、明日明後日ではなく、今度こそ、『後日』です。

396■■■■:2011/04/12(火) 18:14:34 ID:ijhfPgq2
>>395
GJ!!
分岐、というのは結構珍しい(禁書板では)タイプだと思うのですが、それを決定的な矛盾無しに書けているのは凄いと思いますよ。
しかし、ここでも一方さんが良いとこ取りの予感。一方能力万能すぎる。
あとはやっぱりカエル医者の隠れた迫力はハンパないですね。禁書で一番凄い人かもしれない。

完結目指して頑張ってください!!

397IF 分岐物語の作者:2011/04/12(火) 20:52:39 ID:E1BuEFT.
ID:ijhfPgq2様、ご感想ありがとうございます。
……矛盾無しですか……そう言っていただけて大変嬉しいのですが……

すみません!(><。)

第4章と同じミスをやってしまいました!
第6章の御坂妹の時間の数え方は、夜八時ではなく、夕方五時前でないと辻褄が合っていませんでした!
お詫びします。いや、本当にごめんなさい!

398IF 分岐物語の作者:2011/04/12(火) 21:03:53 ID:E1BuEFT.
注意事項さらに補足!

「二時間ぶっ続けが不可能なら、学習装置を一日三十分内にして、何日か、かけてやればいいんじゃね?」
と、思った方。
正解です!
ですが、それは作中の登場人物たちが誰も気づかなかったことにしてください!(⌒ー⌒;)

あー……どんどん矛盾が大きくなっていく……(−−;)

399■■■■:2011/04/12(火) 22:36:29 ID:NHnmUCzU
>>398
一番最初に『厳しいご意見にはちょっと凹むかも』って断ってあるけど、あえてバッサリ批評してもおk?
言いたい事を書き連ねたらかなり厳しい文面になってる気がするんだが、やめとこうか

400■■■■:2011/04/12(火) 22:59:28 ID:ijhfPgq2
>>397
>>396の者ですが『決定的な矛盾』は無かった、と言うことですよー

>>399
バッサリ言ってあげたほうが職人の為になると思うよ。

401IF 分岐物語の作者:2011/04/12(火) 23:08:38 ID:E1BuEFT.
>399様

いや、マジで勘弁してください。
400様も言わないでください。

……8章で努力します。細かい区分けじゃできないって理屈つけられるよう頑張ります……

402■■■■:2011/04/13(水) 18:27:19 ID:DtImKpmM
批判を拒絶する意味は無いと思うけどな

403■■■■:2011/04/13(水) 20:31:09 ID:HrpXp/tg
>401
充分面白いからそんなに逃げ腰にならなくていいよ。
言葉遣いがなんかところどころ変に思うところはあるけどGJの言葉を贈りますと403はキーボードを打ってみる。

ただ、水を電気分解すると出てくるのは水素と酸素だよと指摘しておく>364 確か熱も発生するような。

404■■■■:2011/04/13(水) 20:40:52 ID:TYxj4P/6
>>403
海水ほどの塩水を大量に電気分解すると塩素ガス(これ自体有毒)と水酸化ナトリウムが大量発生してシアン化化合物(青酸ガス)に変化するぞ。
美琴ならイオン交換で周囲の淡水化ぐらいできるかもしれないが。

405IF 分岐物語の作者:2011/04/13(水) 21:45:14 ID:TFXqHMwo
>403様、>404様

……そうでした……元素記号H2OのHは水素でした……中学生レベルの間違いしてて大丈夫かオイ。
それと、塩素ガスと水酸化ナトリウムが大量発生して青酸ガスになるなんて知識ありませんし、はっきり言って、そこまで深く考えませんでしたよ。
塩分の部分だけを取り除けば大丈夫だろ、としか考えませんでしたし(コラ)、ありがとうございます。
ふむ。この指摘は勉強になるなぁ。


学習装置の複数回分けにできない理屈(屁理屈とも言う)は、私的にはなんとかなりましたので、今度の日曜日にでも8章を投下いたします。

406■■■■:2011/04/13(水) 22:48:46 ID:NoB6Ee2Q
ここが質問スレでないことは百も承知だが、一方通行の学力、トップレベルなのって演算だけだよな?
歴史とか公民とかの文系分野(社会、英語、古典)や生物とかも完璧にできるような超人だったっけ?
数学、物理は、全国(全世界?)トップなのはわかるけど。

407■■■■:2011/04/13(水) 23:29:57 ID:2XHM4pP2
地頭が良ければ一通りできるんじゃね?
ロシアでも言葉で困ってる描写無かったし

408■■■■:2011/04/13(水) 23:32:04 ID:rUbBZawM
>>406
服のブランドなんかにも詳しかったりするし
他にも杖いじったり電極のプラグいじったり
魔術だって解析したし普通にかなりの万能さんでしょ

409■■■■:2011/04/17(日) 06:26:17 ID:w7Xjs/pI
ここって台本形式ってOK?

例) 上条「〜〜〜〜〜〜〜〜」
   御坂「〜〜〜〜〜〜〜〜」
   上条「〜〜〜〜〜〜〜〜」
   御坂「〜〜〜〜〜〜〜〜」  〜の意味は特にない

もしくは


例2) 上条「〜〜〜〜〜〜〜」
    御坂「〜〜〜〜〜〜〜」
    上条「〜〜〜〜〜〜〜」
    
    ナレーション
    
    御坂「〜〜〜〜〜〜〜」
    上条「〜〜〜〜〜〜〜」


ってやつ

410■■■■:2011/04/17(日) 07:41:43 ID:xT7o/fDg
>>409
台本形式は製作/SS速報が主流じゃない?向こうは人も多いし、ここでやるよりも沢山感想が付くと思うけど
けどまぁ、やるってんなら仕方がねえ。今日がお前さんの職人デビューだ。

411IF 分岐物語注意事項補足2:2011/04/17(日) 20:15:08 ID:8o4qTqsk
ども、予告どおり、分岐物語第8章をお届けいたします。

今回の注意事項は……
ミサカ19090号さんが原作と違うキャラ設定かな、と。

ではどうぞ。

412IF 分岐物語8−1:2011/04/17(日) 20:25:56 ID:8o4qTqsk
「一応聞いておきたいンだが」
「なんだい?」
 少年の病室へと向かう廊下で。
 一方通行は隣を歩く、難しい顔をしたままのカエル顔の医者に問いかける。
「学習装置を三十分内で、回数を分けてあの野郎の頭に入力するってのはダメなのか?」
「ダメだね」
 即答だった。
「それができれば一〇〇三二号さんは、入力時間を算出する必要は無くなるよ」
「何故だ?」
「今回、強制入力するのが『知識』ではなく『経験』だからだ」
「あン?」
 一方通行がいぶかしげな声を漏らすが、カエル顔の医者は前を向いたまま続ける。
「人はどうやって形成されていくか、知っているかい?」
「なンだそりゃ? ンなもン、歳を経ていく過程で得る知識と、取り巻く生活環境という経験で培われるものだろうが」
「その通りだ。では、その『経験則』が二つも三つもあったらどうなるかな?」
「はァ? なンだそりゃ?」
「今の上条くんは、前の上条くんではない、それは理解できるよね?」
「まアな。記憶がねえンだから、あア、そうか、そういうことか。記憶を書き込むって表現は間違いじゃねエが、言ってみりゃ、アイツは前のアイツの記憶を、一冊の本にして頭に植え付けるってようなものか」
 カツン、カツン、と廊下に三人の足音だけが響く。
 軽くはない。この一歩一歩が上条当麻の病室へと近づいていくのだ。一方通行はともかく、御坂妹の足取りは次第に重くなっていく。
「そうだ。そこで聞くが、仮に君の経験談を二つの物語に分けて、別の誰かに別々に読ませたとしたら、その人物は君をどう判断すると思う?」
「俺の経験談?」
「難しい話じゃない。八月二十一日以前と八月二十一日以後で構わないだろう」
 ――!!
 一方通行は立ち止まった。カエル顔の後頭部を殺気漲る目で睨みつける。
「……どォいう意味だ?」
「何、その二冊の経験談を読んだ、その別の誰かは君をどう思うか、というだけだ」
 カエル顔の医者も立ち止まる。しかし、一方通行とは違い、その表情にはまだ余裕がある。
 それはこの医者が一方通行という少年を理解しているから、とでも言おうか。
 一方通行にこの話をしても、一方通行は決してカエル顔の医者に牙を向くことはない、と。
「おそらく、その別の誰かは、こう思うんじゃないかな? 『一方通行という人物は二人いる』と」
「くっ……!」
 カエル顔の医者の言うとおり、一方通のはその日を境に、まるで違う二人がいるようなものだ。
 本人であれば、どちらも『自分である』と断言できる。それは『一方通行という一つ経験の流れの中で起こった出来事』だからこそ、『過去があって未来がある』という風に解釈できるからだ。
 しかし、まったく一方通行のことを知らない第三者が、この二つの経験談を別々に見せられたら、『現在』の一方通行が、どっちの一方通行か判断できない。
 ゆえに、二つの物語があるということは、『一方通行は二人いる』という誤った答えに辿り着いてしまう。
「さて、そうなると、『記憶を書き込まれる』上条くんの場合だが、現在の『彼』は、皆が知る『上条当麻』ではない。『上条当麻』はあくまで、『上条当麻』という一つの経験の流れの中で培われるものだ。そして、失われた『上条当麻』の物語を、複数回に分けられて見せられるだけならまだしも、脳に書き込まれたら『彼』はどう判断するだろうか」
「なるほどな……『複数の経験談(物語)』が存在してしまい、本当の自分が分からなくなる、ってことか……」
「解離性同一性障害、多重人格の自覚版を引き起こすだろうね。どれが本当の自分なのか分からないわけだから、その後に待っているのは自我の崩壊だよ。別の誰かが君の物語を二つに分けて読むだけで、君が二人居ると思ってしまうのだから、学習装置使用限度三十分だとしても、仮に今回の場合は入力時間が二時間だから、少なくとも四つの『上条当麻』の記憶が書き込まれることになる」
「それを一つにできねエのか? たとえば誰かに時系列順に説明してもらうとかして」
「誰が説明するんだい? 人によって上条くんという人物の捉え方は違うものだ。そこには正解なんて存在しないし、人間は、基本的に自分以上に他人を信用することはあり得ない。結果的に、上条くんは『書き込まれた記憶』から自分を判断することになるわけだから、四つ経験談(物語)があれば、四つの人格と誤認してしまう。それがどんなに似たような経験談だろうと、それらを一括りにはできない」
「なるほどな。つーことは、一回でやらなきゃ、『一つの経験の流れ』ってことにならねエから、本当の意味での『アイツ』にはならねエ、ってことか」
「そういうことだ」
 二人は再び歩き出す。
 随分、先に行ったのか。
 御坂妹はすでに、二人の目の前にはいなかった。

413IF 分岐物語8−2:2011/04/17(日) 20:42:49 ID:8o4qTqsk
 こんこん、と部屋を二回ノックする御坂妹。
 内に秘めたる思いと供に。
 どうぞ、と声がした。
 その声を聞いて、そっと部屋のドアを開ける。
 視線の先には、こちらを向いている上条当麻が居る。
「どうした? もうすぐ就寝の時間になるから、あまり長くは相手できないけど」
 言って、少年はにかっと笑う。その笑顔は『知らない人に対する愛想笑い』ではない。『知り合いに見せる安堵した笑顔』だ。
 御坂妹は上条当麻に意識が戻って以来、何度も何度も足しげく、この病室に通っていた。
「あなたに少し残念なお知らせがあります、と、ミサカは心苦しい心境を吐露します」
「……残念なお知らせ?」
「はい、ミサカが先ほど言いました記憶回復の方法ですが、ミサカが考えていたやり方は不可能になりました、と、ミサカはあなたの目を見ることができないので伏せ目になります」
「は?」
 実のところ、上条当麻の意識が戻ったのは救出されてすぐだった。
 日数に直せば、三日ぐらい。
 しかし、御坂妹を始めとしたミサカネットワークはその情報を、あえて公開しなかった。
 少年を独占したかったからではない。
 少年が記憶喪失だったからではない。
 御坂美琴の状態が最悪だったがために公開できなかったのだ。
 ミサカネットワークにとっては、上条当麻と同じくらい御坂美琴も大切な存在だ。
 上条当麻の無事を知って喜ぶ者がいるだろう。しかし、反対に御坂美琴の危険を知って嘆き悲しむ者もいる。
 ミサカネットワークとしては、双方供に無事であることを知らせたかったのだ。
 だからこそ、美琴が、峠を越すまで待っていた。
 そのことに、カエル顔の医者も同意してくれた。
 少年には、周囲に告げるのは、状態がもっと安定してからと嘘を吐いて同意してもらった。
 だから、カエル顔の医者はインデックスに一つ『嘘』を吐いた。
 『昨日までのことを思い出すことはない』と言ったのは、前回と同じ印象を与えて、上条当麻が一ヶ月以上前から目が覚めていたことを悟らせないようにするための方便だったのだ。
 と言っても、記憶喪失の少年を放置するわけもなく、孤独で透明な少年の心を癒すために御坂妹は、それこそ毎日、時間の許す限り通っていた。
「ですが、あなたの脳に、あなたの記憶を書き込んでくれる能力者が来てくれましたので、ミサカが用意する予定だった機材を使用することなく、ミサカが先に提示した方法での記憶回復は可能です、と、ミサカは、まずは事実のみをあなたにお伝えします。
「そ、そうか? なら、別に問題はないってことだよな?」
「方法自体は問題ありません、と、ミサカは率直にあなたにお伝えします。ここから先は、あなたの脳に記憶を書き込んでくれる能力者が説明いたします、と、ミサカは、もうすぐここに来る能力者に託します」
「能力者?」
 結果、透明な少年にとって、御坂妹は、初めてできた友達、心を許せる存在。不安を取り除いてくれる姉か母親のような人になっていたのだ。
 今の会話にしても、上条は少し疑問を抱いたが、御坂妹の言うことであれば、たいてい信用しているので、とりあえず、御坂妹が呼んだという能力者を待つことができるくらいに。
 唯一、御坂妹が語らなかったのは御坂美琴のことだけだった。
 これも、上条当麻を独占したいからではない。
 もう一度言うが、御坂美琴が峠を越したのは、つい最近。
 もし、上条当麻が御坂美琴の危険な状態を知ったなら。
 もし、それが、上条当麻を助けたためだと、知ったなら。
 記憶を失くしても上条当麻は上条当麻のままだったのだ。
 鈍感で直情的で、自分のことよりも他人の心配ばかりする大馬鹿者のままだったのだ。
 そんな彼が美琴をことを知ると心を痛めるなんてものじゃない。絶対に絶望する。心に甚大な損傷を及ぼす。未来永劫、その罪を背負ってしまう。
 だから、御坂妹は美琴のことを伝えなかった。
 みんなが笑って、みんなが望む、そんな最高な世界。
 そこには上条当麻だって含まれる。
 知らないなら知らないままの方が幸せだってこともある。
 だから、御坂妹は美琴のことを伝えなかったのだ。

414IF 分岐物語8−3:2011/04/17(日) 20:50:01 ID:8o4qTqsk
「本当に君がやるのかい?」
「さアな、そりゃ、ヒーロー次第だろうよ」
 カエル顔の医者の溜息に、一方通行は、瞳を伏せた不敵な笑みを浮かべて答えていた。
「確かに君ならば、あの少年の脳に記憶を入力できるだろう。脳を読み取る分にはあの少年の右手は影響しない。しかし、学習装置は、能力としては低いとは言えないにしろ、かと言って常盤台中学に入学できるがどうか微妙な高さでしかないが、それでも君に勝るとも劣らない優秀な『頭脳』を持つ少女が開発したものだ。それゆえ、君であっても、学習装置と同じで、入力時間に二時間は必要になる」
「俺の電極型チョーカーのことか? 今のこいつは能力使用モード、三十分だ」
 二人が会話しているのは、少年の部屋の外、ドアの影になっている場所だ。
 小声なだけに上条には聞こえない。
「残り一時間半はどうする? 強制入力は途中で止めることはできない。パソコンにソフトをインストールしている最中に中断するのとは訳が違う。あれはインストール自体を無かったことにできるが、脳への強制入力はやり切らないと、脳に重大な障害を及ぼす。最悪、脳死状態にさえなる」
「だから言ってンだろ? ヒーロー次第だっつーの。それとも何か? テメエが、この俺に協力してくれるってか?」
「……入院患者はあの少年だけではない。少しでも停止できない機器も多数ある」
「だろうが。今のテメエはあいつらに協力することしかできねエよ」
 言って、杖を持っていない方の手、左手をヒラヒラさせて一方通行も中に入っていく。
 電灯の光とは言え、明るい部屋の中へと。
「……僕が心配しているのは君のことだったんだけどね。君もあの少年同様、自分のことはどうでもいいのかい?」
 カエル顔の医者が暗闇で呟いた言葉は誰にも聞こえない。




「一方通行!?」
 上条当麻は思わず声を上げた。
 記憶を書き込む、って話だったから、てっきり精神操作系の能力者でも呼んだのかと踏んでいたので、まさか、こんな大物が来るとは思わなかったのだ。
 まあ、御坂妹は『能力者』としか言わなかったから、精神操作系の能力者が来るとは限らないのも間違いではないのだが。
 そして、そんな上条の声に疑問を持ったのは、一方通行本人と御坂妹の二人。
 上条当麻は記憶喪失だ。
 一方通行と面識があった思い出を失くしているはずの上条がどうして一方通行を知っているのだろうか。
「オイ、テメエ、俺のことを覚えてンのか?」
 珍しく、目を丸くして問う一方通行。
 その横では、御坂妹も驚きで目を見開いている。
「お、覚えているんじゃなくて、あんたは俺みたいな無能力者でも知っている、全てのベクトルを操る学園都市の第一位、最強のレベル5だろうが! 学園都市で生活している奴なら知らない奴の方がいないんじゃないか!?」
 ただ不幸中の幸いと言おうか、上条当麻は記憶喪失なのだが、それは前回と同じで、ダメージを受けたのはエピソード記憶であって、意味記憶や手続き記憶までには及んでいなかった。それは、上条が言葉自体は知っていたり、起きたり歩いたりできることでも証明されている。
「アア、そうか、そういうことか。イイねイイね最っ高だねエ、オマエ! これは是非ともオマエの記憶を戻してやりたくなったぜ!」
 あの一方通行が腹を抱えて笑っている。
(何が面白いのでしょう、とミサカは疑問に思います)
 御坂妹はそれが不思議でならなかった。
「あの……いったい何があなた様のツボに嵌ったのでしょうか……?」
 上条当麻は恐る恐る、引きつった愛想笑いを浮かべて問いかける。
「クックックックック……俺が? 最強、さいきょう、サイキョーってか? そりゃ確かにそォだったな、俺はこの街で一番強い能力者だった、そりゃつまり、世界で最高の能力者って事だったろォけどなァ……」
 ひとしきり笑った後、一方通行は、なんとも本当に面白そうな、それでいて凶悪な笑顔を浮かべて言った。
 上条当麻の目をまっすぐ見て。


「そんな俺にテメエは二勝無敗なンだよ。つーことは、テメエは超能力者(レベル5)以上の絶対能力者(レベル6)ってことになンのかなァ?」

415IF 分岐物語8−4:2011/04/17(日) 20:55:34 ID:8o4qTqsk
(お、俺が学園都市最強(アクセラレータ)に二勝した? 嘘だろ? どうやって?)
 もちろん、上条当麻にはそんな記憶はない。医者に、自分の右手には『幻想殺し(イマジンブレイカー)』という、異能の力であれば神の奇跡(システム)さえ打ち消せる能力が宿っていることは教えられたが、それだけで、どうやって勝てたのか、当然、予想もつかない。何と言っても右手以外に触れられた終わりなのだ。しかも、一方通行(アクセラレータ)にはぶち切れると全ての能力を凌駕し、全てを破壊し尽くす黒翼もあるのに。
 と、そこまで考えて、上条はふと気づく。
「あれ? 俺はどうして、ここまで詳細に一方通行の能力について知っているんだ?」
 頭上には?マークを点滅させていた。
「それは、あなたが失った記憶はエピソード記憶だからです、とミサカは指摘します」
 上条は即座に御坂妹と一方通行を見た。
「つまりだ、テメエの『思い出』には残ってねエが、体は覚えてるってことだ。これで分っかンねエか? 俺がオマエの記憶を戻してやりたくなったって理由がよ」
「ええっと……つまりは、私めの記憶を戻さないと、お礼参りをした気にはならないと……」
「だろうがァ」
「はははははは……何か記憶が戻らなくてもいいかなぁ、とか思っちゃいましたけど、ダメですか?」
 渇いた愛想笑いを浮かべる上条に、しかし、御坂妹が毅然と言った。
「ならば取り止めましょうか? とミサカはあなたの目をまっすぐ見て推奨します」
 その言葉には侮蔑はない。嘲笑もない。
 本当に真摯な言葉だった。
 感情に乏しいはずの御坂妹が明らかに、まるで懇願するような口調で言ったのだ。

416IF 分岐物語8−5:2011/04/17(日) 20:56:13 ID:8o4qTqsk
「ここに、あなたに関する記憶があります、と、ミサカはデータスティックをお見せします。もう一つ、この書類の束をお見せします、とミサカは鞄の中から取り出します」
 データスティックはあまりに小さいもの、大きさにして上条の小指ぐらいのものでしかなかった。
 しかし、そこに詰まっているデータは、目の前の、部屋に設置された土産物や花瓶を置くための小さなテーブル、普段は御坂妹の腰くらいまでしかないものに、御坂妹の身長くらい積まれている書類の高さである。
 そしてこれだけではない。
「これは書面になっていますが、Eメールによって海外や学園都市の外から届いた分もあります。それらも印刷してあなたにお渡しします、と、ミサカは提案します」
 上条は黙ってしまった。
 確かに一方通行からの仕返しが怖くない、と言ったら嘘になる。
 だが、それ以上に。
 自分のために、どれだけの人が『上条当麻の記憶』を教えてくれるのか。
 上条当麻という人間が、どれだけの人に愛されていたのか。
 それを踏みにじることなんてことは、『この上条当麻』ならずとも許されるものだろうか。
 この上条当麻も上条当麻なのだ。
 自分のことよりも他人の心配ばかりする学園都市最強のお人好しで大馬鹿者なのだ。
「ミサカが毎日、毎晩、あなたにあなたの記憶を、全ての書面を読んで聞かせます、とミサカは真剣に告げます」
 そしてもう一つ。
 どうして御坂妹が弱気な自分を糾弾しなかったのかも分かってしまった。
 一ヵ月半の付き合いで得た御坂妹の性格を思い出して分かってしまった。
 おそらく、今から行う記憶回復のやり方は相当な危険を伴うものなのだ。
 それも、自分自身の命に関わるような、それくらい危険を伴うものなのだ。
 だから、御坂妹は止めようとしている。
 一方通行による危険な記憶回復ではなく、御坂妹が読んで聞かせる安全な記録暗記へと、方向をシフトさせようとしているのだ。
 上条当麻は考える。
 数日前から、ここに入り浸っていた銀髪碧眼のシスター少女のことを。
 初めて出会ったあの日、号泣しながら『上条当麻』のことを教えてくれた彼女。
 どれだけ辛かっただろう。どれだけ苦しかっただろう。
 それでも、彼女は包み隠さず話してくれた。
 それでも何も思い出せない自分に罪悪感すら感じていた。
 今日、あのシスターと約束した。
 明日になれば、元の記憶を持った上条当麻と再会させると約束した。
「……約束?」
 上条は小さく呟く。
 『約束』という言葉が引っかかった。
 夕方、シスターが帰り際に言った際にも感じたのだが、なぜか『約束』という言葉が気になった。
 何か、とてつもなく大切な何か。
 そんな『約束』を『誰か』と交わしていたのではないか、という思考が過ぎった。
 もちろん、今の上条にはそれが何のかは分からない。
 今の上条には知る由もないが、『インデックスという少女の涙を見たくない』と思ってしまった七月二十九日の上条当麻のように。
 心のどこかで引っかかっているのだ。
 ならば、と思う。


「俺は、記憶を取り戻す」


 きっぱりと何の迷いもない表情で敢然と口にする。

417IF 分岐物語8−6:2011/04/17(日) 20:59:39 ID:8o4qTqsk
「そりゃ、どういう意味だ? こっちのクローンに昔話を毎晩読ンでもらうみてエにって意味か? それとも今すぐっつーことか?」
「後者に決まってんだろ」
 即答だった。声には何の迷いも感じられなかった。
「あァ? 本気かオイ。ついさっき、俺の仕返しが怖いって、言ってたンじゃねエのか?」
 一方通行がどこか揶揄っぽく罵って、しかし、上条当麻は怯まない。
「ああ、確かに怖いさ。けどな、それ以上に、俺のために、ここまでしてくれる一〇〇三二号や、数日前から俺のところに来ているシスター、それに、こんなにも俺の記憶を必要としている人がいるんだ。それを無碍にできるわけねえだろうが」
 やはり、この男も上条当麻なのだ。
 こういう『誰かのため』になると誰よりも強く太い芯を持つ上条当麻なのだ。
「ほォ……イイ度胸だ」
 一方通行が目を細める。
「言っとくがなァ、これからやンのは一回こっきりしかチャンスがねエことなんだぜ。二回目はねエ。なんせ、失敗するとテメエがオダブツしちまうからなンだが、そこンとこ、楽しく理解してくれるかァ?」
 一方通行の凶悪な笑みが深くなる。
 上条には、どうして、一方通行がここまで危機感を煽るように言ってくるのかが理解できなかった。
 と言うよりも、それはどうでも良かった。
「それでもだ。どっちみち、俺が記憶を取り戻さないことには、もう誰にも会えねえ。会う資格なんざねえ。だったら、記憶が戻らないなら、そのまま誰にも知られずにいなくなっても構わないんじゃないか?」
 上条は一方通行に鋭い眼光をぶつけて言った。
 そこには強い意志しか感じられなかった。
 御坂妹は知っていた。
 一方通行が、相手を必要以上に怖がらせる理由を知っていた。
 それは、一方通行の優しさなのだ。サインなのだ。
 かつて、自分たちにも向けられていたサイン。
 『これ以上、実験に協力するな』という意味が込められたサイン。
 『もう戦いたくない、と言えよ』という意味が込められたサイン。
 自分たちはそれに気づけなかった。
 それが学園都市最強(アクセラレータ)を学園都市の闇の奥深くまで突き堕としてしまった。
 今でも、それだけはミサカネットワークでも深い傷跡、後悔として残っている。
 もっとも、だからと言って妹達を一万人以上も殺した一方通行の罪が許されるわけでもないのだが。
「カッカッカッカッカッ、なら今すぐやってやンぜ! オイ、コイツに鎮静剤を投与しろ!」
 ひとしきり大笑いしてから一方通行が御坂妹に怒鳴るように促す。
 しばし沈黙。
 それは永遠のような数秒間。
「……いいのですか? と、ミサカは確認します」
「ああ」
「本当によろしいのですか? と、ミサカは再度確認します」
「やってくれ」
「もしかしたら、とは考えないのですか? と、ミサカは最終確認を取ります」
 御坂妹の瞳から涙がこぼれてしまう。
 もう二度と、会えなくなるかもしれないのに。
 今生の別れになってしまうかもしれないのに。
 だからこそ断ってほしい。
 思い止まってほしいのだ。
 上条当麻が、上条当麻自身の命を大切にしてほしいのだ。
 しかし、
「それでも、だ」
 上条の答えは変わらない。
「なぁに、明日になればまた会えるさ。しかも別に今の俺もいなくなるわけじゃないんだろ? そんなに深刻になるんじゃねえよ。なんたって学園都市最強のレベル5だぜ。それも俺に仕返ししたいって奴なんだぜ。失敗するわけねえじゃねえか」
 言って、上条はにかっと笑う。
 左袖をまくって、御坂妹の左肘辺りを軽く握る。
「了解しました、と、ミサカも決断します」
 呟き、少女は少年の左腕上腕に注射器の針を注入した。
 これで後戻りはできない。
 正確に言えば、このまま放置する、という手もあるが、そんなことはできない。
 上条当麻の気持ちを踏みにじるなんてことはできない。
 上条当麻は眠りに就く。
 目覚めのときは明日の朝か、それとも、まったく別の日の朝か。

418IF 分岐物語8−7:2011/04/17(日) 21:06:10 ID:8o4qTqsk
 病室に静寂が訪れる。
 嵐の前のひと時の静寂。
 一方通行と御坂妹は待っている。
 何の会話もなくただただ無言で。
 一方通行は、上条当麻の記憶というメモリを小型のパッドに付けてリロードさせて、上条の『記憶』を暗記し、幾度となく確認作業を行いながら。
 御坂妹は、上条当麻の寝顔をずっと眺めながら。
 この場に集合をかけた者たちを待っている。
 三十分の時を経て、病室のドアが開く。
 そこに居たのは三つの影。
「これで役者は揃ったってわけか。テメエら覚悟はイイか?」
 振り返りもせず、真意を問う一方通行。




「はい、と、ミサカ一〇〇三九号は即答します」
「了解、と、ミサカ一三五七七号は首肯します」
「勿論、と、ミサカ一九〇九〇号は宣言します」




 カエル顔の医者は、最大限の協力を了解し、彼女たちの行動を容認した。
 今、このときだけのために。
 この病院にいる妹達に、一方通行の電極型チョーカーに接続できるバッテリー充電用コードを持たせて。
「コイツを寝かしつけたのは、正解だよなア。え? オイ」
「……」
 相手は何も答えない。
「まア、コイツは俺たちがやろうとしてることを知ったら、絶対に止めちまうからなア」
 一方通行はなんとも凶悪な笑みを浮かべている。
 話しかけているのは、隣にいるかつての『敵』。
 それも初めて敗北の辛辣を舐めさせられた相手。
 直接的な原因は全ての異能の力を無効化する少年だったかもしれないが、その決定打を導いたのは、間違いなく目の前の少女だ。
 少女がミサカネットワークを利用して、学園都市中の風を操ることがなかったら、一方通行は負けていなかったことだろう。
 もっとも、今の一方通行にとってはどうでもいいことだ。
 あの操車場の一件が無ければ、今の自分は無かったはずだ。
 あの操車場の一件で自分が敗北していなければ、もっと無残で惨めな自分しかなかったはずだ。
 今、一方通行は自分の生き様を誇りに思うことができる。
 まだまだかもしれないが、あのときよりは数百倍もマシになっている。
「さアて、始めっとすっかァ?」
 振り向く先は、自分を変えた少年。
 学園都市最強の一方通行を二度も破った本物の男。
 そっと、男の額に手を当てる。
 少年が起き上がることは無い。何事も無ければ明日の朝まで決して目が覚めることはない。
 すべては今晩の内に。
 それもチャンスはたった一度だ。

419IF 分岐物語8−8:2011/04/17(日) 21:13:36 ID:8o4qTqsk
「先に言っておくが」
 振り向きもせず、一方通行は後ろの少女たちに声をかける。
 ここにいるのは妹達四人。
 学園都市内にいる『妹達』は十人ほどだが、ここに駆けつけられるのは、この病院にいた四人だけだった。
 この四人以外の妹達は、現在いる施設からの外出が困難なのだろう。
 明日、シスターに記憶が戻った上で会う、と約束した少年のためにも、この場にいる四人でやるしかない。
「確かに俺は一万人以上の妹達をぶっ殺した。だからってな、残り一万を見殺しにしていいはずがねエンだ。ああ綺麗ごとだってのは分かってる、今さらどの口がそンな事言うンだってのは自分でも分かってる」
 少女たちはこの白い少年たちのセリフを知っている。
 ミサカネットワークを通じて知っている。
 自分たちを虫ケラ同然に殺してきた相手が。
 たった一人の幼い少女の命を守るために。
 無様でも、不恰好でも、場違いでも、不相応でも、何を今さらと罵られたとしても。
 それでも、妹達を救った少年のように立ち上がってくれたことを。
 命を投げ捨ててでも妹達を守るために立ち上がってくれたことを。
「コイツにも言われたんだ、『精一杯生きているオマエらを食い物にしてんじゃねえ』ってな。だからって訳じゃねエが、俺は、許してもらえるはずがねエと分かってたが、自己満足だって分かってたが、それでもおオマエらを今後一切、絶対に食い物にしねえ、誰の食い物にもさせねえと誓っていたンだ」
 妹達は黙って聞いている。
 一方通行がそういう思考で動いていたことは知っている。
「だがなア、悪ィが、これから二時間だけ、それを破らせてもらうぜエ」
 呟き肩越しに振り返る一方通行。
「テメエらはたった今から一人の人間じゃねエ! この俺に力を与えるためだけの動力源になりやがれ!」
 吼えて、四人の返事を聞くことなく、一方通行は、首に巻いてあるチョーカーのスイッチを通常モードから能力使用モードに切り変えた。
 制限時間三十分の、学園都市最強のレベル5が降臨する!

420IF 分岐物語8−9:2011/04/17(日) 21:14:10 ID:8o4qTqsk
「望むところです、とミサカ一九〇九〇号はバッテリー充電用コードを強く握ります」
 確かに、一方通行は学習装置の代わりができる。少年の脳に、少年の周りの人たちから集めた、『少年の記憶』を入力することが可能だろう。
 それは、八月三十一日に証明されている。
 打ち止めからウイルスコードを排除したときに証明されている。
 しかし、一方通行は能力使用に制限がある。
 現在は電極チョーカーの改良によって、フルパワーでも三十分間なら能力使用が可能となった。
 ただし三十分だけだ。
 三十分経てば、バッテリーが切れる。能力どころか一方通行自身の全ての機能が停止状態に陥る。
 ところが少年の脳に少年の記憶を書き込むのに必要な時間は二時間と算出されている。
 しかも、ここは病院だ。いくらカエル顔の医者の病院だからと言っても、学園都市最強のレベル5である一方通行を支えるバッテリー電源を供給しようとすれば、それは他の入院患者や医療機器の放棄を意味する。
 そして、学園都市でもっとも安全に作業に集中できる場所がここでもある。ここ以外での長時間作業は好ましくない。
 というより、無用なトラブルを確実に持ってくる一方通行が絡んでいる以上、ここ以外の場所ではできない。
 では、残りの一時間半はどうするのか。
 答えは、これだ。
 妹達がバッテリーとなって一方通行を支える。
 欠陥電気(レデイオノイズ)、オリジナルである超電磁砲の二万分の一のスペックだとしても、発電系能力者(エレクトロマスター)であることには変わりない。
 妹達の発電能力を利用して電極のバッテリー切れを防ぐ、が答えだ。
 経験済みとは言え、それでも、これからやろうとしていることは、戦車の砲身にくくりつけたスプーンを操って赤ちゃんに離乳食を食べさせるくらいの曲芸だ。
 電子顕微鏡クラスの、精密な電子信号の狂いが一切許されない狂気の沙汰だ。
 失敗はそのまま、少年の脳を焼き切り、本当の本物の『死』を与えてしまうものだ。
 暴走トラックのブレーキを踏んだところで止められないのと同じように、途中でやめてしまっても、強大で空回りした力が脳に衝撃を与えてしまい、やはり最悪の結末を招いてしまうのだ。
 学習装置(テスタメント)であれば、全て機械が行う。プログラムさえ間違っていなければ、決して失敗することは無かった。
 だが、その手段は失われた。
 残された手段は、一方通行の、学園都市最強の力(ベクトルコントロール)しかなかった。
 妹達は少年が記憶を取り戻す、と言ってほしくなかった。
 しかし、少年は力強く言った。
 記憶を取り戻すと言い切った。
 その思いは踏みにじれない。踏みにじってはいけない。
 妹達は決意する。
 自分たちの命の価値を教えてもらった少年に。
 その恩に報いるために少年の命を握る。
 それも、唯一無二の、正真正銘の『一度きり』。
 失敗は許されない。絶対に許されない。
 何が何でも、自分たちの命に代えても成功させる。
「――行くぜ。愉快に素敵にビビらせてやンよ!」


 今、妹達の、二時間に渡る死闘が始まる。

421IF 分岐物語8−10:2011/04/17(日) 21:16:48 ID:8o4qTqsk
 開始三十分。
 一方通行は既に超精神集中(トランス)状態にある。
 超精密作業故、他には構っていられない。
 全身全霊をかけて、少年の記憶を入力していく。
 学園都市最優等生の秀でた頭脳が、膨大な文章を全て0と1で数値化して入力する。それは日本語だろうと外国語だろうと関係なく。
 周りを気にかけるなんてことは不可能だ。
 コマンドは『書き込み』。
 ここまでは、電極チョーカーのバッテリーで動ける。
 ここからは、妹達がバッテリーを支える。
 チョーカーから伸びる充電コードを、まずは一九〇九〇号が強く握る。自身の能力の全てをコードに抽出させる。
 しかし、
「あぐっ……!」
 一九〇九〇号が、まるでロウソクの最後の残り火のように、一瞬、体から火花を散らして、意識を失い、ガタっ!と音を立てて倒れ伏した。
 もちろん、即座に次の一三五七七号がバッテリーコードを握る。
 バッテリー供給は切れなかった。
 それは一方通行のトランス状態が一瞬足りとも途切れなかったことで証明されている。
 一九〇九〇号に限界が来た、それだけだ。
 それだけなのだが。
「……っ!!」
 御坂妹=一〇〇三二号はギョッとした。同時にゾッとした。
 なぜなら、一九〇九〇号が力尽きたのは、供給開始わずか五分後だったのである。
 それはとりもなおさず、一方通行の、学園都市最強のレベル5を支えるためには、自分たちのスペックがあまりに不足していることを意味していたのだ。
 さらに五分が経過し、やはり一三五七七号は倒れ伏す。
 この場にいる妹達(シスターズ)は、一〇〇三二号と倒れ伏した二人を含めて四人。
 経過時間はまだ四十分。
 作業完了までは八十分。
 どう考えても足りない。
 妹達では絶対に届かない。
 休めばある程度回復できるかもしれないが、電池切れを起こした携帯電話を充電させても十五分で満タンにならないように、一人十五分で能力を回復できるはずも無い。
 一〇〇三二号の胸の内に『絶望』の二文字が過ぎる。
(どうする、とミサカは焦燥します)
 一〇〇三九号がバッテリーコードを握って既に三分が経過した。
 実験のときとは違い、『学習』する意味は無い。力の配分や相手の動き云々の話ではないからだ。
 今やっていることは、無我夢中で全速力で走り続けることと同じなのだ。
 どれくらいの時間を、無我夢中で全速力で走り続けることができるか、という話でしかないのだ。
(学園都市には十人ほどミサカたちはいますが、あと五分の内に集めることはできません、とミサカは至極当然の分析をします)
 四分経過。
 一〇〇三九号も、表情からは読みにくいが、一〇〇三二号からすればミサカネットワークの中にいる以上、彼女の状態が分かってしまう。
(ミサカにはあの人を救えないのですか。ミサカではあの人になれないのですか)
 もうすぐ一〇〇三九号も力尽きる寸前だ。
(……って、何を言っているのですか、と、ミサカは自分自身を非難します)
 一〇〇三九号の手がバッテリーコードから離れてしまった。
 即座に一〇〇三二号がその手に掴む。
(ならば、残り七十五分、ミサカが維持すればいい、と、ミサカは決断します。あの人は、どれだけ傷つこうとも、何度倒れても、その度に起き上がってくれたではありませんか、ミサカのために立ち上がってくれたではありませんか、とミサカは自分を鼓舞します)
 コードを握る手に、断固たる決意ともに渾身の力を込める。
(ミサカも、あなたのために、決して諦めることなく耐え抜いてみせます、と、ミサカは決意表明します)

422IF 分岐物語の作者:2011/04/17(日) 21:18:39 ID:8o4qTqsk
以上で、8章まで終了です。
後日、9章をUPいたします。

423■■■■:2011/04/18(月) 18:30:28 ID:i6dgahRE
ここの職人さんたちのオリキャラ同士を戦わせたら面白い気がする。

424■■■■:2011/04/18(月) 19:17:12 ID:9lFm8fOM
>>423
例えば?
戦う、と言って自分が思いつくのは禁竜のオリキャラぐらいなのだが。

425■■■■:2011/04/18(月) 19:49:37 ID:i6dgahRE
禁竜とか昔吸血鬼のオリキャラもいた気がする。某野望の神澤はまともに戦ったらまず勝てないからなしとして
昔のスレとか掘り返したらいっぱい出てきそうだな。

426■■■■:2011/04/19(火) 01:18:28 ID:GrYtYJ/Q
>>422
一方さんの口調はほんとに気を使ってくれ
正直誤字脱字よりも気になって一つでも発見するとめっちゃ萎える
あと原作のまんまの台詞を多用するのも程々に。度が過ぎるとしつこいし、どことなく無理矢理感もある

427IF 分岐物語の作者:2011/04/19(火) 07:07:32 ID:nbE6sZ4g
>426様

ん〜〜〜気を使っているつもりなのですが……まだまだ読み込みが足りないのでしょうか。
ええっと……
それと、大変申し訳ございませんが、原作まんまセリフについてですけど、(一方通行はもうないかな?)もう何回か出てきますので、御留意いただけるとありがたいです。
んまあ、今回のまんまセリフは無理矢理入れたところはありますから、それは分かってたんです。

428■■■■:2011/04/19(火) 18:40:29 ID:AQHaI58.
>>425
禁竜に吸血鬼なんて単語出てきたか?
それとも『禁竜とか/昔吸血鬼のオリキャラ』と文を分けているのか?

429■■■■:2011/04/19(火) 18:51:35 ID:AOUi.4cc
>>428
うん

430■■■■:2011/04/20(水) 19:16:05 ID:zGr2yvzc
戦闘要員のオリキャラってかなり少ないよね

禁竜ソフィアとLibertaの雨宮さんとか地味に面白そう

431■■■■:2011/04/20(水) 21:19:09 ID:95CMHvIE
そういや、オリキャラで戦わせたら最強なのって誰?
そいつの戦績関係なしに

432■■■■:2011/04/20(水) 22:22:02 ID:zGr2yvzc
平行のドラゴンがオリに入るかどうか。多分オリジナルには入らないけど、もし入っていればダントツかと。
よーわからんけど、禁竜のゲオルギウスって一応オリ(設定か?)だよね? 多分相当強いんじゃないか。伝承で伝えられてるぐらいだし。

433■■■■:2011/04/21(木) 02:14:34 ID:FuqWxHLc
聖ジョージは原作でも悪竜退治の伝承で知られる聖人でしょ。今後SSでオリ設定付けるならともかく
禁竜の続きまだかなー

434■■■■:2011/04/21(木) 05:39:51 ID:VZQsMzR.
あくまで俺の感だけど、首切られて死なないとかそういう人外以外だったら
中2病さんの神澤君がトップクラスのような気がするな。
時とめて殺せばいいんだし。

435 ◆SvP4IshN9o:2011/04/21(木) 20:44:36 ID:Xsmm98vI
どうも。「とある空想の未知世界(ストレンジワールド)」の作者です。
続きが出来たので投下します。
ここから先はちょっとオリジナル設定が増えてくるので、苦手な方は飛ばしてください。

436第四章 譲れない物があるから Level5_Again(1):2011/04/21(木) 20:45:29 ID:Xsmm98vI
 長い、長い時間が経っているような気がする。
 ひどく緩慢な世界で、間に合わないと分かっていても、上条は右手を伸ばす。
 やはり、間に合わない。
 最後まで、目は閉じない。そう上条は心に決めた。
 ゆっくりと、翼が近付く。その時。
 凍った時間を踏み割るように、駆ける足音。足音が一瞬止まったその時に。
 風を切り裂く音と共に、衝撃波を撒き散らしながら光が駆け抜けた。
 そして無防備な一方通行に直撃した。
 一方通行は吹き飛び、ガラスを割り、すぐ近くのビルに激突した。奥まで飛んでいった上に、中が衝撃で破壊されてボロボロなため、ここからではどうなったのか分からない。
「……?」
 凍った時間が解凍されて、元に戻る。
 今の光条には、見覚えがあった。
 光の出所に目を向ける。そこに居たのは、予想通りの人だった。
 御坂美琴。レールガンを撃った後であることを示すように、右手を一方通行に向けて構えていた。上条が見ていることに気付くと、手を下ろして近付いてくる。
「御坂、何でここに……」
「……たまたま外に出てて、たまたまここを通ったら、あんたが襲われてた。だから助けようと思った。それだけよ。」
 目を逸らしながら御坂は答えた。何かを隠している。そんな感じだった。
 だが、たまたまここを通るなんてことは有り得るのだろうか?
 そんな事を考えても仕方が無い。とにかく、御坂は助けてくれた。それだけで十分だろう。
 おそらく、これで一方通行は倒れた訳では無い。まだ危険だった。早く逃げさせないといけない。
「ありがとう。御坂。……俺は大丈夫だから。だからもう帰っても」
 言い切る前に、御坂が割り込んだ。
「その体のどこが大丈夫なのよ!!」
 御坂は目線を一方通行が突っ込んだビルに向けて、
「あいつはまだ倒れてない。何で戦うことになってるのか知らないけど、そんなボロボロでどうやって勝つって言うのよ!!」
 どうやって一方通行が倒れてないのを知ったのかは分からないが、それは今どうでもいい。
 ビルの一階の瓦礫が少し動いた。おそらく一方通行がまた来る。このままでは御坂は危険にさらされる。何とかして帰らせなければいけない。
「とにかく、ここは危ない。あいつが倒れて無いって言うなら、尚更だ。早く逃げてくれ、御坂」
 御坂はうつむく。
 そして、次の瞬間、上条の頬に電撃が走った。
 違った。御坂に平手打ちされた痛みを電撃だと思っただけだった。
「……危険なことぐらい、分かってるに決まってるでしょ!?」
 御坂が、少し潤んだ目で上条を睨みつける。
「どうして、あんたはいつもそうな訳!!その右手以外に何の力も無いのに、こんな危険な事に飛び込んで!!人が心配することぐらい分かんないの!?」
「それでも、ここは危険」
 言い切る前に、また遮られる。
「だから、危険だって事分かってここに来たって言ってるでしょ!!なんであんたは私をいつも無力な子ども扱いするの!?私はあんたが思ってるほど無力じゃない!!私だって戦える!!」
 返す言葉が無い。あったとしても、御坂はここから立ち去ってはくれないだろう。
「分かった。……じゃあ少しの間、協力してくれ」
(一方通行のあれは『天使』なのかも知れない。なら、一つ――倒せる可能性がある!)

437第四章 譲れない物があるから Level5_Again(2):2011/04/21(木) 20:46:14 ID:Xsmm98vI
 ボロボロの体に気合を入れる。
 と同時、一方通行が突っ込んだビルの一階が爆発した……ように見えた。
 道路までコンクリートの破片や、何かの残骸が飛んでくる。
 翼で瓦礫を吹き飛ばしたのだろう。
「『超電磁砲』か。何で戦いに参加してンのか知らねェが……逃げンなら、今の内だぜ?」
「逃げる訳無いでしょ。今度こそあんたを倒してやるわよ」
 レールガンが直撃したはずの一方通行は、特に痛がる様子も無い。
(効いてない……力押しじゃやっぱり無理だな)
 急ぐ様子は無く、一歩、また一歩と、少しずつ一方通行はこちらに向かってくる。
 隣に立つ御坂が、小声で話しかけてくる。目だけで御坂を見る。
(で、私は何をすればいい?)
(力押しは無理だ。俺に考えがある。でも、実行するためには一方通行に隙を作らなきゃいけない。って訳で、援護を頼む)
 オーケーと、御坂が答えたのを聞いて、一方通行のほうに目を戻す。
 お互いの距離は、10m近くまで縮まっていた。
 この距離なら、上条は数歩、一方通行は一歩でゼロに出来る。
 先手を取る。
 そう思って一気に上条は飛び込む。
 一方通行は動く事無く、上条に突き刺すように両の翼を放つ。
(頼む、御坂!!)
 その思いに答えるように、上条を追い越し、生物的にうねる黒い何かが翼と激突し、せめぎ合う。
 おそらく、磁力で纏め上げた砂鉄だろう。が、明らかに御坂が押されている。
 いくら『超能力者(レベル5)』相当の磁力で纏め上げられた物でも、砂鉄であることに変わりは無い。正体不明の白い翼に対抗するには、力不足なのだろう。
 悠長にそんな事を考えている暇は無い。道は開けた。一気に突っ込む。
 一方通行がこちらに右手を向ける。『何か』がその手に収束されていく。そして収束が止まる。
(そんなことも出来るのか!?……考えてる暇は無い、来る!!)
 そう直感した直後。
 右手の『何か』が爆ぜ、白く輝き、蛇のように無数に分かれ、上条の前方180度ほぼ全てから殺到する。
 その一つ一つに上条を一瞬でただの肉塊に変える程度の威力はあるだろう。
(これだけの量、右手だけで捌ききれる訳が無い!!どうする!?)
 と考えたと同時に、黒くうごめく砂鉄が上条と白い奔流の間に割って入る。
 砂鉄に阻まれた白い奔流は止まる事無く、そのまま突き破ろうとする。がその前に砂鉄が奔流に巻き付くように動きを止める。
 それほど長くは持たない。
 と、考えた少し前に上条は駆け出していた。
 一方通行の翼、右手は封じた。それでも、左手はまだ開いているが、悩む時間は無い。一気に決める。
 間合いに入った。後は狙った場所に叩き込むだけ。
 一方通行が左手を上条に向ける。が、行動するよりも速く、御坂の放った雷撃の槍が突き刺さる。
 一方通行の体の表面を紫電が駆け回る。ダメージは無いだろうが、少しの間動きが止まった。
「おおおおおぉぉっ!!」
 広げた右手を、掴むように叩き付ける。

 一方通行、その頭上、白い輝きを放つ円環に。

 破砕音が響き渡る。
 円環が砕け散る。と同時に、白い翼も砕け散るように消失した。

438第四章 譲れない物があるから Level5_Again(3):2011/04/21(木) 20:48:17 ID:Xsmm98vI
「……!?」
 一方通行は、何が起きたのか理解できていない様子だった。
 そのまま、右手で地面を叩くように二撃目を放つ。が、その前に一方通行が後ろに飛び退いた。
 再び距離が離れた。とりあえず手を下ろす。
「やっぱりな。少なくとも、俺が見てきた『天使』は全部、本人の動きに合わせて輪が動いてた。って事は、それが『天使』の核みたいな物じゃないかと思ってたんだけど……正解だったみたいだな」
 少なくとも、これで危機は脱した。白い翼、あれさえ無ければ、上条一人でも互角の戦いに持ち込める。
「……なるほどな。『天使』にもそんな弱点があったって訳か」
 一方通行は構えることはせず、ただ立っている。だが、そこからでも瞬時に攻撃に移れるだろう。
 気は抜かない。手は下ろしたままだが、すぐにでも右手を動かせるように、一定の力を保つ。
「けど、これでやっと分かった」
 いきなりだ。上条には何の事を言っているのか分からない。顔を伏せているので表情も分からない。そのまま一方通行は続ける。
「俺は、実験の時も、ロシアの時も、何でオマエは何度圧倒的な力で叩き伏せても立ち上がるのか分からなかった。それから考えて、考えて、考え抜いた。……けどよォ、どォやら、俺は考えすぎてたみたいだな。いくら体を痛めつけたって、オマエには意味が無い」
 一方通行が顔を上げる。それは、初めて見る表情だった。
 先程までの、余裕を持った表情ではない。まるで、圧倒的な力を持つ敵に立ち向かう時のような、例えるなら――きっと、一方通行や、キャーリサや、フィアンマ達と戦った時の上条は、こんな表情をしていたのだろう。
「圧倒的な力は要らない。この拳と、言葉があれば、オマエを倒せる。オマエの体を痛めつけるんじゃ無ェ、オマエの心をへし折れば……な。オマエが教えてくれた、守るものがあるやつの強さって物を見せてやる。今度は、テメェには負けねェ」
 目の前に立つ一方通行の背には、白い翼も竜巻も無い。
 だが、今までの一方通行よりも、遥かに恐ろしい気さえする。
「御坂は下がっててくれ」
「でも……今なら二人がかりで行けば……!?」
「こっから先は、俺一人でやる」
 御坂と言葉を交わしながら、上条は歩く。と同時に、一方通行も一歩、また一歩とこちらへ向かってくる。
 言葉を交わし終わった頃、二人の距離は1メートル以下まで縮まっていた。
 二人が向き合う、そして。
「行くぞ、無能力者(さいきょう)」
「行くぞ、超能力者(さいじゃく)」
 互いの拳が交差する。
 一方通行の拳は腹に。上条の拳は顔に。互いにガードせず、完全に突き刺さる。
「ぐ……っ」
「ごあっ……っっ!!」
 ガード無し、右手の一撃にも関わらず、一方通行は踏みとどまる。
 上条は吹き飛ばされること無く、その場に留まった。
(おかしい、一方通行の能力なら一撃で俺を吹っ飛ばすことだって出来る。なのに……何でだ!?)
 こちらの疑問を察したのか、言葉を投げかけてくる一方通行。
 もちろん、お互いの拳が止まることは無い。拳を交わし、途切れ途切れになりながらも一方通行は続ける。
「オマエと同じ土俵に立たなきゃ意味がねェ。もちろん反射もしねェ。そうでもしなけりゃオマエの心は絶対に折れないだろうからな」
 腹に拳を打ち込まれる。こちらも右を胸の辺りに返す。
 わずかに硬直した。が、即座に立て直され、一方通行の膝が雷の如くに上条の腹に刺さる。
 刹那の間、上条が浮かぶ。その隙は逃されること無く、肩が上条の中心に当てられる。槌でも叩き付けられたような威力と轟音で、為す術も無く上条は吹き飛ぶ。右足を下ろして勢いを殺そうとするが、叶わず後ろに倒れる。受身を取って後頭部を打つ事は回避したが、背を打ち付け肺から空気が吐き出される。
(何でだ、効いてる様子が無い)
 前のような牽制ではなく、かなり腰を入れて拳を放っている。一方通行の耐久力からして、数発で倒れてもおかしくは無い筈なのだが……

439第四章 譲れない物があるから Level5_Again(4):2011/04/21(木) 20:49:34 ID:Xsmm98vI
「響かねェ」
 不意に下方、つまり倒れている上条の前方から言葉があった。
「オマエが前みたいな緩い拳じゃなく、本気で倒す気で来てるってのは分かる。けどよォ、今のオマエの拳は前には遠く及ばねェよ」
 喋っている間に上条は立ち上がる。が、足にほとんど力が入らない。
 突然、地面が震え出す。
 いや、上条が、上条の体が震えていただけだった。体がもう限界だと主張していた。
「今のオマエには信念が、守りたい物があるか?……いや、ねェな」
 上条の返答を待たず、一方通行は続ける。
「今のオマエには体を、戦う意思を支える柱がねェ。そう、夏のあの時の俺みてェにな。俺があの時戦う意思があったオマエに勝てなかったように、今のオマエが俺に勝てるわけがねェ」
 ただ、沈黙だけがあった。初めて上条は今まで自分が戦ってきた相手の気持ちが分かったような気がした。一方通行の言う通り、今の上条には、戦う理由が無い。
「……それでも、まだ立ち止まれない」
「そォか、ならオマエの望み通りに、立ち上がれなくしてやる」
 言葉を言い終わらない内に、二人は同時に駆け出す。
 間合いを詰めながら、考えていた。
(……やっぱり、この世界を壊す必要は無いのかもしれない。まるで、これじゃ俺が悪者みたいだな)
 そこまで考えて、意味が無いと思った。それは終わってから考えれば良い。
 目の前の一方通行だけに、全てを集中させる。距離は零に。
 駆ける勢いを乗せ右拳。読まれていた。右に回り込まれ、能力を無効化されないように右の手首を掴まれる。そのまま引っ張られ前に倒れる。一方通行が掴んだ部分を支点に横回転。上条の顔を迎えるように右脚が迫る。頭を地面に叩きつけるように回避。横が縦回転に変化。踵が迫る。よりも前に体を回転。上条が軸になり、一方通行は地面に叩きつけられる。ここから次の行動に移れる程上条は身軽では無い。
 互いに地面に倒れる。が、一方通行を叩き付けた分こちらが有利。跳ね起きる。数瞬遅れて一方通行も続く。起き上がりを狙って左を重ねる。防御を抜けて腹部に突き立つ。ベクトル操作で威力を減衰されているので、さほど効いてはいない。気にせず右膝を突き上げる。が、それより速く一方通行の右が腹部に刺さる。意趣返しなのか、偶然なのか、同じ場所だった。一方通行の左。が拳では無い。肩を掴まれ引き寄せられる。迎える一方通行の頭突き。引き寄せられていたので、威力が上乗せされる。痛みにうめき声が漏れる。
「づうっ……らぁっ!!」
 吼えつつ、こちらも頭突きで返す。効いたのか、一方通行が若干よろめきつつ上条を放す。この隙は逃さない。限界まで振りかぶり、全力の右を放つ。一方通行は腕を交差させ防御。その上から構わず振り抜く。ドアでも蹴破るような音と共に一方通行は吹き飛ぶ。
 視界が曇る。右手を当てると液体の感触。色は赤い。どうやらさっきの頭突きで額が割れたらしい。
 距離を離して、上条と一方通行は視線をぶつける。どちらも動かない。
(相手の隙を狙うのは、どっちも同じか)
 沈黙が充満する。空気が張り詰め、息が詰まりそうな錯覚がする。
 そのまま、しばらくどちらも動かずにいた。
 そして沈黙が破られる。

440第四章 譲れない物があるから Level5_Again(5):2011/04/21(木) 20:50:04 ID:Xsmm98vI
 だがそれは靴が地面を蹴る音では無い。上条の携帯からの、着信を示す電子音だった。
 出るか迷っていると、一方通行が視線で出ろと示した。
 携帯を開く。どうやらステイルかららしい。
 通話ボタンを押し、用件を確かめようと耳に近付ける。が、その必要は無かった。
 スピーカー機能を付けっぱなしにしていた携帯から、ステイルの逼迫した叫び声が響いた。
「逃げろ上条!!そこは危険だ!!」
 いきなりそんな事を言われても、訳が分からない。
 それどころか、携帯の向こう側からは何度も爆発音や叫び声が響いていた。
「何がどうなってるんだよステイル!?そっちは一体どうなってるんだ!?」 
「別に大した事は無いよ。ただイギリス清教と戦っているだけだ」
「大したことあるだろ!!インデックスは!?」
「君に心配されるほど僕が落ちぶれている訳無いだろう!?それより君の方が危険だ!!」
 そもそもなぜイギリス清教にステイルが追われているのか聞きたいが、それは飲み込む。
「何でだよ?」
「ついさっき、オルソラからメールがあった。どうやら僕への伝言として頼まれたみたいなんだが、よほど中身がショックだったようだね。綴りを所々間違えているし、途中で送信してしまったようだね。だから解読には少し苦労したよ」
「で、内容は?」
 なぜかステイルは黙り込む。
「……正直言わせてもらうと、僕もこれは信じられない。それでも一応聞くかい?」
 もちろん聞いたほうが良い。そう答えると、ステイル息を吸って、

「大雑把に言うと、内容はこうだ。『学園都市、ロシア成教、ローマ正教と共同戦線を張り、それぞれの全勢力を持って世界を滅ぼす原因となる上条当麻を速やかに抹殺せよ』そしてもう一つは、『魔道図書館を速やかに回収せよ』だ」

「……嘘だろ?……何でそんな……」
 あまりにも信じられない。だが、ステイルは一切の感情を排したような調子で返答した。それとも、インデックスが狙われているから、怒りを必死に抑えようとしているのだろうか。
「理由は分からない。だがこれは真実だろう。……そうでなければ、僕とインデックスが襲われる理由は無い。しかも、だ。これはどこかの誰かでなく、最大主教が出した命令らしい……嘘と言うには、壮大すぎるね。それに、オルソラがこんな嘘をつく理由も無いだろう」
 あまりにも現実離れした、あまりにも残酷な真実が上条の胸を刺した。

441行間3:2011/04/21(木) 20:50:36 ID:Xsmm98vI
 最初は、特別な『素材』程度にしか思っていなかった。
 俺様が出るまでも無く、適当な敵に撃破され、俺様の元に来るだろう、そう思っていた。
 だが。
 あいつは200人を超すシスターを数人の仲間で撃破した。
 その時は、ただのまぐれ、もしくは仲間だけの力だろうと思っていた。
 そいつは、ただの高校生だったから。
 その次は、数千人いたであろう『女王艦隊』、そして『アドリア海の女王』をたった数十人で沈めた。
 やつらは、『アドリア海の女王』に電撃作戦を仕掛けた、という話だった。それでも、そこには司教が一人居たはずだった。
 あの『右手』程度では勝てないであろうはずだったのに。
 俺様は、『神の右席』を動かした。
 だが、最初に行ったヴェントは敗北した。だが、その時は偶然が重なっていた。さらに、天使のできそこないのせいでヴェントは弱体化していた。
 次で今度こそ終わる、そう思いテッラを行かせ、念には念を入れC文書を持たせた。
 だが、それでも敗北した。しかも、今度はテッラと戦ったのはあいつを含めて二人だった、のにだ。
 もしかすると、魔術に重きを置いていたからこそ二人は敗れた。そう俺様は思った。
 だからこそ、アックアで、今度こそ『右手』を手に入れられる、と思っていた。
 けれど、アックアは敗北した。しかし、あいつ自体は敗北したが、あいつが招き寄せた天草式に敗れた、という事だった。
 俺様はあいつ自身の力ではなく、仲間のおかげで勝利したと思っていた。
 それならば、と計画の前倒しを行い、あいつが仲間を呼べない環境を作った。
 そして、俺様は『右手』を手に入れた。これで世界は救われる。そう確信した。
 はずだった。
 だが、あいつはその『右手』を遥かに超える何かを持っていた。
 初めて、俺様は恐怖した。
 なのに、あいつはその力をわざわざ手放し。もう一度、異能の力を打ち消す程度の能力しか持っていない右手を手に入れた。
 恐怖は過ぎ去った。勝てる。その確信は再びよみがえった。
 だが、俺様は敗北した。負けるはずが無いのに。
 簡単な事だった。
 他人より優れた力があっても自分で動こうとせず、自分を信じず、救済などと格好いい言葉を振りかざして、他人に頼ってばかりで、狭い世界に籠っていた者。
 自分から動き、たとえ自分が偽善だったとしても。独善だったとしても。他人を上回る力など無くとも。最後まで自分を信じ、飾らず、己の感情のままに仲間と共に突き進み、広い世界を見ていた者。
 どちらが勝つかなど、考える必要も無い。
 そして、選択の時が来た。
 俺様か、あいつか。どちらか片方しか脱出できず、残ったほうは命を失う。
 いや、選択する必要も無い。俺様が残り、死ぬことになるのは分かっていた。
 なのに。
 あいつは、俺様を助け、自分は一人残った。
 何故?
 その問いに、あいつは笑って答えた。
 狭い世界しか知らないなら、広い世界を見てこいよ。と。
 そして、あいつは地の果て、零下の海に消えた。 
 実際は生きていたのだが。
 そのすぐ後、あいつの居ない世界、あいつが救った世界は踏みにじられようとしていた。
 こんな俺様を救ってくれるようなあいつが守り抜いた、この世界を踏みにじらせる訳には行かない。
 俺様は敗北した。それでも、世界を少しの間、あいつが帰ってくるまでの間、守る事ができた。
 そして、今あいつは危機に瀕している。それならば。
 まずは、小さな、一人の世界でもいい。この力で、守ってみせる。

442 ◆SvP4IshN9o:2011/04/21(木) 20:51:56 ID:Xsmm98vI
投下終了です。続きが出来次第また投稿します。
感想とかがあればよろしくお願いします。

443■■■■:2011/04/22(金) 21:47:06 ID:KseCJRvw
GJ
フィアンマ頑張るのだ

444IF 分岐物語の作者:2011/04/23(土) 09:15:05 ID:/jjsxsN6
さて、一気に行きますが『IF 分岐物語』9章と10章です。
今回の追加留意事項は、

・『新約』を読んでいない人には、(言うほどのものでもないけど)少しだけネタバレ注意。
・ミサカネットワークにちょこっと私的解釈の設定が混ざっています。
・原作まんまセリフは気にしなさんな。

です。
では、どうぞ。

445IF 分岐物語9−1:2011/04/23(土) 09:17:24 ID:/jjsxsN6
「大丈夫? ってミサカはミサカは一〇〇三二号を気遣ってみたり」
「えっ!?」
 突然聞こえてきた幼い自分の声を聞いて、驚愕と供に覚醒する一〇〇三二号。
 眼前には、心配げに見つめる最終信号の顔が覗き込んでいた。
「いつの間にミサカは意識を失ったのですか? と、ミサカは上位個体に、愕然と問いかけます」
 上体だけを起こし、しかし、うまく力が入らない。すぐに横に倒れてしまう。
「無理しちゃいけないよ、ってミサカはミサカはあなたを介抱してみる」
「平気です、と、ミサカは歯を食いしばって起き上がります……って、あ!」
 即座に、一〇〇三二号はベッドの方へと向き直る。
 自分が倒れてしまったなら、もう一方通行を支える者はいない。最終信号が自分のところにいるということは――
「えっ!?」
 思わず一〇〇三二号は目を見開いた。
 普段の彼女からは決して想像できないほど大きく。それは間違いなく。
「あなたは……、と、ミサカは呆然と問いかけます……」
 そこにはバッテリーコードを握る少女がいた。
 基本的には一〇〇三二号と同じ顔。
 ただ、プロポーションは明らかに(最終信号は除外される)他の個体とは違う妖艶さ。
 風ではなく能力の余波でバサバサ靡く白とピンクのアオザイに身を包んでいるが、その出で立ちが妙に似合っていない気がするのは何故だろう。
 それは、一ヵ月半くらい前に、突然、感知した新しい妹だった。


「にゃっはー。初めましてかな? お・ね・え・さ・ま♪」
 肩越しに笑顔を向けてくるが、なんとも自分たちと違って表情豊かな個体だ、と一〇〇三二号は思わず考えてしまった。


「それにしても、さっすが、一番年長のお姉様☆ ミサカと違って、最終信号を除けば、同じミサカなのに、こっちのミサカたちの三倍も持つなんてすごーい♪」
 褒められているはずのに、なんだか全然褒められている気がしない。
 と言うか、逆に馬鹿にされている気さえする。
「おっと、挨拶が遅れちゃったかな? と言ってもミサカのことはミサカネットワークで知ってると思うけど、改めて、名乗りマース」
 ……本当にこの個体はミサカなのですか? とミサカは憮然とします。
 と心の中で呟いて、無言のまま、相手の返事を待つ一〇〇三二号。
「ミサカの名前は『番外個体(ミサカワースト)』。検体番号だと何号なんだろ? ま、いいけど。ただ、体中を弄くりまくられちゃったから同じミサカなのに、ミサカのレベルは4なのよん♪」
 名乗る少女はあくまで笑みを絶やさなかった。
 しかも、その笑みはなんとも嫌みったらしかった。

446IF 分岐物語9−2:2011/04/23(土) 09:18:25 ID:/jjsxsN6
「どうして……あなたたちが……九十分前の召集には応じなかったはずなのに? と、ミサカは疑問を抱きます」
 体力が完全に尽きた痙攣する体を無理矢理起こし、しかし最終信号に支えられた一〇〇三二号が問う。
 相手は番外個体。
「ここに来るのが遅れたのは、そこのお子ちゃまの保護者を説得するのに時間がかかっちゃったからだよん♪ んまあ、お子ちゃまはおねむの時間だしねー」
「むっ、ってミサカはミサカは頬を膨らませる」
「最終信号の……保護者……?」
 一〇〇三二号は、それは一方通行のことではないのかと思った。
 いつでもどこでも、チョコチョコと一方通行の周りをうろついているのが最終信号だ。
 それを時にあしらい、時に気にかけて一緒にいるのが一方通行だ。
 が、これはあり得ない。
 なぜなら一方通行は召集時、自分たちと一緒にいたし、ネットワークを電極で繋いで演算協力しているとは言え、一方通行にはミサカネットワークに配信される情報は読み取れない。
 では保護者とは?
「正確に言えば、家主さん☆」
「なるほど、と、ミサカは嘆息して納得します」
「でもさぁ、運が良かったよ。遅れてきて大正解☆ もし、こっちの第一位がトランス状態じゃなかったら、ミサカたちのことに気づいてしまっただろうしねー。そうなったらミサカはともかく、このお子ちゃまミサカは協力できないもんねー」
 それは確かに、と一〇〇三二号は思う。
「けけっ。じゃあ、もうそろそろいいかな? 第一位が復活させようとしてんのは第一位の敵でしょ? それも天敵♪ ミサカにとっては第一位の敵が増えるのは喜ばしいことだから嬉々として協力させてもらうのよん☆ だから、そろそろ集中させてよ、お・ね・え・さ・ま♪」
「……なんだか素直に感謝できないのですが、この場は感謝します、と、ミサカはどうも釈然としないまま、頭を下げます」
 ちなみに一〇〇三二号が気を失っていたのは十分間。
 番外個体の交代は、タイミングを見計らったように一〇〇三二号が手を離した瞬間に行われたもの。
 つまり、バッテリーコードを握ってから十分経過。
 それでも番外個体には余裕があった。
 他の四人が限界だった時間の倍の時間だというのに余力があった。
 しかしはたして、そんな番外個体でも、大能力者(レベル4)のミサカでも残り五十分持つだろうか。
 さすがに確証を持つことはできない。
 そもそも、本当に余力があるなら話を打ち切ったりせず、まだまだ減らず口を叩くはず。
 この番外個体はそういう性格のはずだ。
 つまりそれはとりもなおさず、もう喋るのが辛くなっていることに他ならない。
(……やむを得ません、とミサカはネットワークを切って次の行動を開始します)
「一〇〇三二号?」
 無理矢理起き上がった一〇〇三二号がきびすを返したのを見て、最終信号が声をかける。
「ちょっと席を外します、とミサカは告げます」
 しかし、一歩歩くことでもかなり辛そうだ。
「一緒に行こうか? ってミサカはミサカはあなたを心配する。今の一〇〇三二号はミサカネットワークにも接続できなくなるほど力を使い果たしているのに、ってミサカはミサカは補足してみたり」
「大丈夫です、と、ミサカは自分の情けなさに思わず自嘲します」
 最終信号の好意を自ら放棄して、一〇〇三二号は病室の外に出た。
 最終信号は誤解した。
 一〇〇三二号が自らの意志でネットワークを切ったことに気づかなかった。
 一〇〇三二号が用足しに向かったものだと思い込んだ。
 一〇〇三二号が向かうのはトイレではない。
 一〇〇三二号が向かうのは、本来であれば、決して巻き込みたくなかった相手の元。
 バッテリー供給源として、残り時間を確実に期待できる自分たちの素体(オリジナル)。
 学園都市二三〇万人の頂点、七人しかいないレベル5の第三位。
 こと、発電系能力者としては学園都市最強を誇る少女。
「不出来な妹をお許しください、とミサカは誰よりも頼りになるお姉さまに望みを託します」
 呟いて、病院の壁に寄り添ってまで歩みを進める一〇〇三二号。
 何度倒れても、その度に起き上がり、這い蹲り、御坂美琴の元へと向かう。
 あの操車場に現れた少年のように、何度倒れようが、その度に起き上がり。
 大切な誰かを守るために進み続ける。

447IF 分岐物語9−3:2011/04/23(土) 09:19:09 ID:/jjsxsN6
「う……」「ぐ……」「む……」
 一〇〇三九号、一三五七七号、一九〇九〇号の意識がようやく戻る。
 もっともこれは仕方がないことだった。
 模擬訓練はやったことはあったが、『実戦』は生まれて初めてのため、多少、無菌培養的なところがあり、実際に一方通行と戦ったり、九月中旬にダメージの残る体を無理矢理動かしたことがあった一〇〇三二号とは違い、『回復』の点でどうしても一〇〇三三号から二〇〇〇〇号は難がある。
 ただ、一〇〇三二号とは違い、一時間以上、気を失った分、能力はほとんど回復していないが、体力に関して言えば、ある程度元に戻っている。
 ――が、
「あ、大丈夫、ってミサカはミサカは上位個体らしく、一〇〇三九号、一三五七七号、一九〇九〇号を気遣ったり」
 という最終信号の声は耳に入らない。
 目の前の風景に呆然としてしまったからだ。
 そこには、一方通行を補佐する自分たちの新しい妹が、中腰で、言うなれば構えを取ってバッテリー充電コードを握っていた。
 しかし、一目で分かる。
 自分たちとは明らかにスペックが違う。身体能力が違う。経験が違う。
 この妹に比べれば自分たちなど、温室育ちの箱入りお嬢様としか思えなかった。
「……このミサカに、あのミサカくらいの力があれば……と、ミサカ一三五七七号は悔しがります……」
 拳を握り、前髪で瞳を隠す少女。
 あとの二人も同じだった。
 自分たちは五分でダウンした。
 しかし新しい妹は、最終信号から送られたネットワークを介して知ったのだが、これで十分以上経過しているのに、まだ立っているのだ。
 その違いは、少女たちを気落ちさせるには、悔しい思いを抱かせてしまうには充分だ。
 もっとも、嘆いたところで力が身に付くわけではないし、能力が回復するわけでもない。
「――? 一〇〇三二号はどうしました? と、ミサカ一九〇九〇号は上位個体に問いかけます」
「今、一〇〇三二号とはミサカネットワークが切られています、と、ミサカ一〇〇三九号はさらに追求します」
 ふと気づいた現実に、おそらくは知っているであろう最終信号に問う二人。
「一〇〇三二号はトイレだよ、ってミサカミサカは聞こえていないあの人たちの他に男の人がいないことを利用して、直球で事実を告げてみる」
「……トイレ?」
 一三五七七号は呟き、ふと疑問を感じる。
 トイレだからといってミサカネットワークを切るだろうか。
 最終信号は、あまりに焦っていたのか、気づかなかったのかもしれないが、ミサカネットワークは普段接続状態にある。
 用足し程度、ミサカ全体が起こりうる生理現象なのだから、隠す意味はないし、その程度のことでネットワークが切断されたことはない。
 前に、一人だけネットワークを切った者がいたが、それはあくまで、他のミサカたちに自分がしていることがバレないための処置だったはずだ。
 ということは、一〇〇三二号は、他のミサカたちに悟られてはまずいことをやっている、ということになる。
 真っ先に、その答えに辿り着いたのは、一九〇九〇号であった。

448IF 分岐物語9−4:2011/04/23(土) 09:21:11 ID:/jjsxsN6
 はぁ……はぁ……
 暗闇に包まれた病室。
 ようやく一〇〇三二号は到着した。
 距離にして、わずか十数メートル。
 距離にして、すぐ隣の個室。
 それなのに、ここまで来るのに五分は経過した。
 隣の様子は窺い知ることはできない。
 ミサカネットワークに再接続しようものなら、自分の居場所がバレてしまう。
 一〇〇三九号、一三五七七号、一九〇九〇号ならともかく、番外個体はまだしも、最終信号だけには知られるわけにはいかない。
 今はただ、新しい妹・自分たちよりもスペックの高いレベル4(ミサカワースト)を信じるしかない。
 前に視線を向ける。
 開いた扉のすぐ傍の壁に寄りかかる。寄りかかりながら、壁伝いに進む。
 わずか数メートルの距離なのに。
 普段であればものの数秒なのに。
 こんなのんびりしている時間はないというのに。
 歯がゆかった。悔しかった。
 何の役にも立てない自分が。
 結局は誰かに頼ってしまう自分が。
 それでも、一〇〇三二号は歩みを止めない。
 荒い息遣いのまま、歩みを止めない。
 痙攣する体を引き摺って。
 眼前のベッドに横たわるのは昨日の夜、覚醒したばかりの自分たちの素体。
 体力回復もままならず、長期に渡る植物状態の所為で、全身の筋肉が萎縮してしまっていて、起き上がることすらできない、まだ痛々しさが残る彼女。
 しかしもう、一〇〇三二号にはこの手しかない。
「お願いします……起きてください……お姉様……と、ミサカは訴えます……」
 痙攣する両手で少女を揺する。
 自身も立つことができず、膝をつけて揺する。
 ほとんど力も入っていないのに。
 揺すっている本人が振動を感じられないのに。
「無理を言っているのは分かっています……ミサカがどれだけひどいことを言っているかも分かっています……だけど……起きてください……と、ミサカは再度、訴えます……」
 昼間、自力でペンを持つことすらできなかった少女なのに。
 極限まで体力を使い果たし、いまだ起き上がることすらままならなかった少女なのに。
「お姉さまにやってほしいことがあるのです……お姉さまにしかできないことがあるのです……と、ミサカは再三に渡って訴え続けます……」
 だが、もう頼るしかない。
「ミサカにはもう……あの人(上条当麻)を守ることも……あの人(アクセラレータ)に協力することもできません……どれだけもがいても……どれだけあがいても……絶対に守れないのです……と、ミサカは悔しさのあまり、臍を噛みます……」
 絶対に最悪の結末にはさせない。
 上条当麻がインデックスが御坂美琴が一方通行が最終信号が妹達が番外個体が、みんなで笑い合ってみんなで馬鹿やっている、そんな当たり前の世界を。
 そんな幸せな日常に辿り着くために。
「お願いですから……お姉さまの力であの人たちを助けてください!」
 一〇〇三二号は全身全霊で心の底から願う。


「……ったく、アンタに言われたんじゃ断れないわね……」


 一〇〇三二号は、ハッとして顔を上げた。
「ま、確かに今の私は歩くことはもちろん、起き上がるのもなかなか辛いんだけどさ……」
 一〇〇三二号は、即座に視線を声のするほうへと移す。
「けど、『能力』だけは完全回復してるみたいだし、開放するだけならできるでしょうよ……」
 一〇〇三二号の切なる祈りが、尊い願いが届いた瞬間だった。
「前に私が同じ状況で同じことを言ったとき、アンタは叶えてくれた。だから、今度は私の番」
 一〇〇三二号の瞳から涙が溢れ出す。
 絶望の中に見出せた一筋の光、しかし、絶対的な希望。
「ただし、アンタたちにも手伝ってもらうわよ」
 御坂美琴の鋭い眼光が一〇〇三二号を貫いた。

449IF 分岐物語9−5:2011/04/23(土) 09:22:11 ID:/jjsxsN6
 番外個体にも限界は近づいていた。
 それは誰しもが一目で分かる。
 ついさっきまで、両足でちゃんと立っていたのに、いきなり膝を付き、コードを持っていない方の手が床に付いたからだ。
 それでも声は絶対にあげない。
 番外個体のプライドがそれを許さない。
 歯を食いしばる。
 学園都市最強の超能力者を倒す――正確には、潰すために造られた個体。
 ネットワーク内から特に悪意に反応することを義務付けられている個体。
 悪意とは何も憎悪とか嫉妬だけではない。
 たとえば、負けん気、とか。
 言い換えれば、潔くない、とか。
 そういうアサマシイ部分に彼女は特化している。
 それゆえ、ここで負けを認めて、コードを手放すことを拒んでしまっていた。
 経過時間は十八分。
 最終信号、一〇〇三九号、一三五七七号、一九〇九〇号は悟った。
 番外個体が耐えられるのは残り二分だ、と。
 しかし、他のミサカたちは何の打開策もなくただただ、時間が過ぎるのを見ているしかできなかった。
 そして無情にも二十分が経過する。
 番外個体は意識を失くして倒れ伏した。
 同時に最終信号がコードを掴む。
 その幼い手で。
 同時に小さな体が悲鳴を上げる。文字通り電撃に撃たれ続けるように体中からバチバチという音が聞こえてくる。
 能力的には番外個体以外のミサカとはそう変わらないはずなのに。
 それなのに、その体が小さい分、他のミサカたちよりもあまりに痛々しく映ってしまう。
 抑えきれない電撃が漏れてしまっている。
 しかし、それでも他のミサカたちは、一方通行がトランス状態であったことに心から安堵した。
 もし、彼が後ろを振り向いてしまうことができたなら、絶対に強制入力(インストール)を中断してしまう。
 さすがに一方通行が、上条当麻を『打ち止め』よりも優先させることはない。
 たとえ、『打ち止め』が望まないことだとしても。
 どんなに『打ち止め』がダメだと言っても。
 その部分だけは、一方通行は譲れない。
 絶対にそこだけは一方通行が譲らない。
 時間は残り四十分。
 五分から十分であれば、最終信号でもなんとかなる。体つきは幼くとも、今はある程度調整されたので、動作不良を起こすことはない。
 そして、最終信号もまた、過去に命ギリギリの戦いを経験している。
 だから、少なくとも能力的には、一〇〇三九号、一三五七七号、一九〇九〇号の上回っている可能性は低くない。
 一〇〇三二号が十五分耐え抜いた。
 ならば最終信号も最低十分は耐えられるのではないか。
 根拠はないが、確信をもってミサカネットワークはそう考える。
 では、残り三十分は?
 その答えは既に一〇〇三二号が持っていた。

450IF 分岐物語9−6:2011/04/23(土) 09:24:04 ID:/jjsxsN6
(聞こえますか? と、ミサカ一九〇九〇号は、一〇〇三二号に問いかけます)
(――!!)
 繋がるはずがないのに!
 と、一〇〇三二号は驚嘆した。
 ミサカネットワークとは普段接続状態にある。しかし、各ミサカでネットワークとの接続を切ることは可能だ。
 もっとも、個別にネットワークを切った場合、当然、本人にしか識別できないパスワードというものを設定する。
 なぜならネットワークを切る理由は、たった一つ、他のミサカに知られたくないことがあるからであり、他のミサカに簡単に接続させない処置を施すのは当然だからだ。
 しかし今、一九〇九〇号は、『切った側』の一〇〇三二号に接続してきた。
 通常なら絶対にあり得ない。
(何をしているのです? と、ミサカ一九〇九〇号は疑問をそのままぶつけます)
 聞こえる声はあくまで冷静だ。多少は焦燥感を含んではいたが。
(そこはお姉さまの病室ではありませんか、と、ミサカは確認します)
 さらに畳み掛けられる。
 ネットワークに繋げられた、ということは、とりもなおさず自分が見ているものも相手に伝わるからだ。
 もう言い逃れはできない。
 同時に一〇〇三二号は思い出した。
(……なるほど、一九〇九〇号には、他のミサカたちよりも一日の長がありましたね、と、ミサカは苦笑します)
 そう。一九〇九〇号は、(もしかしたら今も秘密行動しているかもしれないが)過去に他のクローンたちからは秘密を持って行動(ダイエット)していた時期があった。
 そのため、ネットワーク排除のためのセキュリティを独自に編み出し、より高度に、より強度にファイアーウォールを作り出せるようになっていたのである。
 その副産物とでも言おうか。
 今、初めて、ネットワークを自分の意思で切った一〇〇三二号程度のセキュリティを破ることなど造作でもなかったのだ。
「……どうしたの?」
 急に肩越しに振り返り、なぜか天井を見上げていた一〇〇三二号に美琴は問う。
 もっとも、彼女の状態は首だけをやっと動かせるまでなのだが。
「……今、別のミサカがコンタクトを取ってきました、と、ミサカはお姉さまに現状を報告します……」
 答える一〇〇三二号は振り向かない。
 ミサカネットワークの総意として、この件に関しては、決して素体(オリジナル)である御坂美琴を巻き込まないと誓っていたから。
 それを率先して破った自分には美琴に合わせる顔がないから。
 しかし、
(ちょうど良かったです、と、ミサカ一九〇九〇号は一〇〇三二号の行動を賞賛します)
(え――!?)
 返ってきた声は、非難よりも、自嘲で満ちていた。
(すでにこちらでも番外個体のミサカは倒れ、あとは最終信号のみとなっています、と、ミサカは芳しくない現状を報告します。しかし、ミサカ一九〇九〇号、一〇〇三九号、一三五七七号には、まだ、ほとんど能力が戻っていません、と、さらに最悪の状況を隠すことなく打ち明けます。よって大変、心苦しいのですが、お姉さまの力をお借りしたく、お姉様を説得してほしい、とミサカは心の底からお願いします)
 やっぱりミサカネットワークはミサカネットワークだ、と一〇〇三二号は、小さくではあったが、確かに苦笑を浮かべた。
 考えることは同じ。
 自分たちではどうしても足りなかった時間。
 だけど悔やんでいたってどうにもならない。
 上条当麻を助ける、ただ、それだけのために行動しているのだからプライドなんて必要ない。
(もう、お姉さまに了解は取っています、と、ミサカも自分の不甲斐なさに自嘲します。ですが、お姉様はまだ、ご自身で動くことはできませんので、大変申し訳ないのですがミサカもお姉様をそちらに連れて行くだけの体力が残っていませんので、一〇〇三九号と一三五七七号をこちらに、多少なりとも休憩時間が多かった一九〇九〇号は万が一に備えて、そちらで待機し、一分でも二分でも構いませんので再度、バッテリーになってください、と、ミサカは提案します)
(了解しました、と、ミサカ一九〇九〇号は力強く首肯します)




 オリジナルもクローンも最終信号も番外個体もない。
 『御坂美琴』という、まったく同一の遺伝子が必死で繋いできた、一つの大きな意思で結ばれた襷(たすき)リレーは今、最終ランナーに託される。

451IF 分岐物語9−7:2011/04/23(土) 09:25:57 ID:/jjsxsN6
「あと……三十分ちょっと……ミサカはミサカは……絶対に……」
 最終信号が歯を食いしばり続ける。
 番外個体は二十分という長時間をくれた。
 ならば最上位個体である自分が負けるわけにはいかない。
 もう代わりはいない。
 傍には一九〇九〇号はいるが能力はまだ回復していない。
 だから、最後の最後まで、その小さな体で。
 誰よりも長い時間を。
 一方通行の行為と上条当麻の思いのためにも。
 絶対に、歯を食いしばり続けなければならない。
 しかし、思考に体は付いてきてくれない。
 力が、握力が徐々に抜けていくのが手に取るように分かる。
 目の前が霞んできた。一方通行の背中がぼやけて、そして暗闇に包まれつつある。
(だ、だめ……、ってミサカはミサカは……)
「よく、頑張ったなー妹。お姉ちゃんは嬉しいぞ」
 え――!
 意識が跳びそうになる寸前、遠いところからのように感じたが確かに聞こえた。
 自分を労わる誰よりも優しい声を。
 全ての感覚が消失する寸前、霞みつつあった瞳が確かに捉えたぬくもり。
 それは、充電コードを握るその手に、添えられる新しい手。
 まるで、極寒の寒さに震える両手に差し伸べられる暖かさのように優しく。
 最終信号は意識をフェースアウトさせながら振り返る。
「あんまり、格好いいとは言えないけどさ。――こっから先はお姉ちゃんに任せなさい!」
「お姉様……!?」
 最終信号は意識を手放す直前に。
 まるで眠りに着くようなまどろみの中で。
 一〇〇三九号と一三五七七号に両肩を支えられていて、コードを握ることさえ一九〇九〇号に補助を受けていて、笑顔を向けているのに表情は弱々しくて。
 その姿は正直言って、とても弱々しいのに。
 それでも、誰よりも頼りになる自分たちのお姉様(オリジナル)を見た。

452IF 分岐物語10−1:2011/04/23(土) 09:47:17 ID:/jjsxsN6
「終わったぜ……くそったれが……」
 一つ、盛大な息を吐き、上条当麻の額から手を離した一方通行が座り込む。同時に、首に巻いてある電極チョーカーを能力モードから通常モードへと変換。
 そう。二時間に渡る激闘が終わりを告げたのだ。
「まア、大丈夫だろうよ……コイツの脳が焼き切れた感触はなかったンだからなァ……」
 振り返ることなく、一人ゴチるように呟いて。
「……オイ……ちゃンと、その超電磁砲を部屋に送り届けてやれ……」
「……気づいていたのですか? と、ミサカ一九〇九〇号は驚愕をあらわにします」
「ったり前だ……つっても気づいたのは終わった今なンだがなァ……今の俺が二時間フルに能力を使い続けて、それでいて通常モードに戻せるなンざ、あり得ねエ……超能力者(レベル5)クラスの充電があったって理由以外はな……」
 しかし一方通行は振り返らない。
 そして御坂美琴も促さない。
 それは仕方がないことだった。
 上条当麻を助ける、という点で二人は協力したが、妹達の一件がある以上、まだまだ二人の間にある大きな溝を、ヘタをすればマラリア海溝よりも深い大きな溝を埋めるまでには至らない。
 一方通行が、その手で一万人を虐殺したという過去。
 御坂美琴が、DNAマップを提供したことで、一万人を死に追いやったという過去。
 双方の過去を二人は許すことができないのだ。
 一人二人救ったところで、それでも命を奪った数の方がはるかに多いのだから許されるはずもない。
 いっとき、協力できたからと言って、それで全てを水に流せるかどうかと問われれば、なかなか難しいのも事実である。
 だから、お互いに顔を見たいとは思わない。
 いつの日か、和解できるかもしれないが、それは残念ながら『今』じゃない。
 美琴もまた、妹達に部屋へ戻すよう促し、一方通行に背を向ける。
「……今回だけは、アンタに礼を言うわ……ありがとう……」
「お互い様だ。俺もオマエが居なけりゃ、確実に失敗しただろうからなァ……」
 たった一言ずつ。
 それもお互い、自分の憎悪を必死で押し殺したような平坦な声で。
 それだけ交わして二人は背を向けたまま、再び、別々の現実へと帰っていく。
 仮に上条当麻が仲介に入っていたとしても、この二人のわだかまりだけは、そう簡単には解けないかもしれない。
 無遠慮にズカズカ人の内側に入ってくる上条当麻であっても、この二人に踏み込むことはできないかもしれない。

453IF 分岐物語10−2:2011/04/23(土) 09:48:07 ID:/jjsxsN6
 暗闇と静寂が支配する病室。
 一方通行はまだ座り込んでいた。
 その背後には全てが終わった緊張感の疲れから眠ってしまった『打ち止め』と、力を使い果たして意識をなくした番外個体が居るのだが、一方通行もまた、疲労がピークに達しているので振り向くことすらできず、ただただ座り込むしかできなかった。
 無理も無い。
 何と言っても二時間も能力フル稼働で精密作業に勤しんでいたのだ。
 いかに一方通行が学園都市最強と言っても生身の人間である。
 肉体的精神的に疲労があっても不思議は無い。
「……テメエら、何の用だ? ……もう『グループ』は解散したはずだ……」
 それでも一方通行の意識は途切れない。
 背後に現れた三つの気配に声をかけた。
「決まってんだろ。お前を労いに来てやったんだ」
 病室入口に佇む、三つの影の内、真ん中の影が一方通行に声をかけて、一方通行の背後から近づいていく。
「こっちの小さいのは私が運ぶわ」
 言って、打ち止めを抱き上げるのは白井黒子とは違った結び方をしているツインテールの少女。
「本物でないのは残念ですが、こちらの『ミサカ』さんは僕が運びますよ」
 言って、番外個体をお姫様抱っこするのは爽やかな笑顔を浮かべている美少年。
 どうやら、この三人は御坂美琴が病室に戻ったところを確認して、この病室に入ってきたようだ。
 力を使い過ぎていたのか、はたまた他のことはまったく目に入らなかったのか、美琴も、妹達も彼らには気づかなかった。
「俺がお前に肩を貸してやる。さあ、帰ろうぜ。おっと勘違いするなよ。暗部に、って意味じゃない。お前たちの居候先って意味だ」
 一方通行の左肩を自分の右肩にかけたのは、ボサボサ金髪サングラスの少年。
「……余計な真似するンじゃねエ……土御門……」
 一方通行は嫌な顔をするが、それでも土御門元春は無理矢理一方通行に肩を貸して立ち上がる。
「――今回の件、誰よりも頑張ったのはお前ぜよ。超電磁砲や妹達、打ち止めに、番外個体は交代でバッテリーを支えたが、お前はたった一人で、二時間という時間を、誰にも交代せずにやり遂げた。それを賞賛する者が居ないってのは違うだろ?」
「別に誉められるために、やったンじゃねエぜ……」
「それでもだ」
「何……?」
 ふと一方通行は土御門を見た。
 よく見れば、そのサングラスの向こうに光るものが見えた。
「テメエ……」
「へっ……お前と同じだ……俺に、こんな役は似合わねえよ……けどな、お前が助けた相手は、俺が二重スパイってことを知っていながら、何か胡散臭いことをやっているって知っていながら、それでも一緒に馬鹿やってくれる、困ったときには助けてくれる最高の『友達』ぜよ……だから、その礼くらいさせろ……」
「けっ……確かにテメエにゃ、そンな役は似合わねエな……」
 珍しく一方通行は笑みを浮かべていた。
 嫌味でも侮蔑でも嘲笑でもない笑みを。
 そして六人は闇へと消えていく。
 その病室には、いまだ、静かに眠る上条当麻一人だけが残された。

454IF 分岐物語10−3:2011/04/23(土) 09:50:29 ID:/jjsxsN6
 白い空間にさらに白さが増す。
 二、三日前までの小春日和が嘘のように。
 凍てつく冬の朝に相応しく、学園都市全体が白に染まっていた。
 夕べからの降り続いた雪が全てを真っ白に変えたのだ。
 月詠小萌に、上条当麻が入院している病院の門まで送ってもらって。
 車から降りると同時にインデックスは走る。
 白い修道服を振り乱しながら。
 今にもフードが落ちそうになりながら。
 エレベーターは使わない。使い方は分かっているけど使わない。
 正確には使いたくない。
 何もせず動かないで居ることなどできなかったから。
 何もせず動かないで居ると別のことに思考が行ってしまいそうだから。
 今は上条当麻のことだけを考えたかったから。
 だから、インデックスは走る。
 走っている間は「上条当麻に会いたい」としか考えることができないから。
 いつもの病室、いつもの個室。
 上条当麻が入院しているときは完全に定着した病院の一室。
 ノックはしない。
 もしかしたらまだ眠っているかもしれなかったから。
 それほど早い時間にインデックスはやって来た。
 インデックスは信じている。
 御坂妹を信じている。
 昨夜、彼女は、明日には上条当麻の記憶は戻っていると力強く宣言した。その理由も納得できるものだった。
 でも、と、インデックスは一抹の不安を抱く。
 御坂妹のことは信じているが、何しろ、上条当麻である。
 何らかのトラブルに、言い換えれば、何らかの『不幸』に巻き込まれても何の不思議も無い。
 記憶が戻っていると信じたかったが、予期せぬアクシデントが起こった可能性を否定できなかった。
 正直言って、病院に泊まればよかった、と後悔したほどだ。
 自分の与り知らないところで何度も、命の危険に晒された少年だからこそ、100%信じられないのだ。
 恐る恐るドアをくぐる。
 前を見ると、少年はベッドの上で上半身を起こして窓を見ていた。
 曇りガラスの向こうの、真っ白な風景を、ただぼんやりと見つめているようだった。
 そこに居る少年の佇まいは、一週間前と、そして七月二十九日に酷似していた。
 いや、同じと言っても過言ではなかった。
 一瞬、インデックスの表情が強張った。
 それでもインデックスは走る。
 意を決して、少年に向かってまっすぐ。
 少年は少女に気づいた。
 ゆっくり、と彼女へ視線を向ける。
 ベッドの手前でインデックスは立ち止まる。
 インデックスは、少年の瞳に映る自分を見ていた。
 少年は、インデックスの瞳に映る自分を見ていた。
 一週間前と同じように、七月二十九日と同じように。
 そして――


「とうま、覚えてない? 私達、学生寮のベランダで出会ったんだよ?」


 インデックスは問いかけた。

455IF 分岐物語10−4:2011/04/23(土) 09:51:29 ID:/jjsxsN6
「――俺、学生寮なんかに住んでたの?」
 少年は答えた。七月二十九日とまったく同じ答えを。
 インデックスにとっては衝撃的な答えだった。頭の中が一瞬でひび割れて、砕け散りそうな答えだった。
 何かが胸にこみ上げてくる。
 それでもインデックスは続ける。
 嗚咽が漏れそうになる声を必死に抑えて問いかけを続けていく。
「……とうま、覚えてない? とうまの右手で私の『歩く教会』が壊れちゃったんだよ?」
「――あるくきょうかい、って、何? 『歩く協会』……散歩クラブ?」
「…………とうま、覚えてない? とうまは私のために魔術師と戦ってくれたんだよ?」
「――とうまって誰の名前?」
 インデックスの口はあと少しで止まってしまいそうだった。
「とうま、覚えてない?」
 それでも、これだけは聞かなければならない。
 左手で右手を包み込むような形の両手を胸において、無理矢理作った今にも涙が溢れそうな必死の笑顔で、


「インデックスは……インデックスは、とうまの事が大好きだったんだよ?」


「ごめん」
 少年は即答だった。そこには何の感情も篭ってなかった。
「インデックス、って何? 人の名前じゃないだろうから、俺、犬か猫でも飼ってんの?」
 うぇ……、とインデックスに泣きの衝動がこみ上げてくる。
 しかし――




「――――で、一字一句合ってるかどうかは自信ねえけど、大体こんな感じの問答だったろ?」




 少年の口調がいきなり変わった。
 その口調は、いつもの『上条当麻』のものだった。
 片目を瞑り、インデックスに笑いかけながら。
 答えを聞いて、インデックスは我慢するのをやめた。演技するのをやめた。
 自分の気持ちに正直に行動することにした。
「とぉぉぉぉぉうまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 泣き叫んで、上条当麻に飛び込んで、力の限り抱きついた。
 両腕に渾身の力を込めて。
 もう二度と少年を離さない、どこにも行かせない、といった意思表示のように。
「とうまとうまとうまとうまとうまとうまとうまとうま、とうまぁ……!」
 溢れる涙を圧し留めるつもりなんて無い。
 敬謙な使徒の振る舞いなんて知ったことではない。
 一〇万三〇〇〇冊の魔道書の記憶なんてどうでもいい。
 今はただ、普通の少女として、少年のことで全身を満たしたい。
 インデックスは上条当麻の肩に顎を乗せて泣き続ける。
「……ったく、そんなになるんだったら最初からやらなきゃいいだろうが」
 上条当麻は瞳を伏せ、そんなインデックスを左腕で優しく包み込み、背中を優しくさすってやる。
 右手では、せっかく新しく支給された『歩く協会』を再び、壊しかねないことを『知っている』から。
「だって……だってだってだってだって……! 本当にとうまの記憶が戻ってるのか確かめたかったんだもん!」
「語尾がいつもと違うぞ。んで、どうする? もう一つの答え合わせも、やらなきゃいけないか?」
 どこか、上条当麻は、からかうようにインデックスに問いかける。
 それは、少年の、しばらくはまだこうしていてやるが? と、いう裏返しのメッセージ。
「それは帰ってからでいいんだよ! だから今はまだこうしていたいんだよ!」
「へいへい。泣き虫駄々っ子の女の子を優しくなだめる上条さんですよー、って、あ……!」
 上条は思い出す。もう一つ大切なことを。
「なあ、インデックス……」
「それも帰ってからでいい!」
「そっか……」
 再び、病室に歓喜の号泣がこだまする。




 折りしも今日は12月25日の朝。
 十字教では12月25日に創始者の生誕を祝い、厳かに過ごす習慣があるそうだが、その日の朝は12月24日夜、寝ている内に、サンタクロースが持ってきてくれたプレゼントに感謝する朝でもある。

456IF 分岐物語の作者:2011/04/23(土) 09:55:41 ID:/jjsxsN6
以上で10章まで終了。
物語は、あと1章で完結です。
勝手な解釈に、原作どおりに行っていない気がする台詞回し。
それでも、ここまで読んでくださっている皆様方に心より感謝いたします。

457コピペ:2011/04/24(日) 01:03:05 ID:z8xu8NyM
ちょっと面白かったのでコピペ。

とある・もしもの世界

《超電磁砲1》

平均すると4秒半。
ぼんやりと通り過ぎる人の顔を17数えたところでカウントをあきらめたが、過去の経験と比較するにやや長めの部類にはいるだろう。

度数分布は正規分布ではなく、おそらく2秒と6秒付近に2つのピークができるはずだ。
ピークを形成する主要因は、厄介なことにかかわりたくないとすぐ目をそらす場合と、興味と心配を混ざってしばらく見ている場合があることだろう。平均値を押し上げているのは、自分と自分を囲む者たちの服装によると推察される。
ともあれ、「自分と目線が合っている時間曲線」は、極狭い範囲で収束する。
他者のためにリスクをとる行為は取りがたいのは当たり前であって、この状況で目線を合わせることは対岸の火事を自分の岸に吹き寄せることになるのだから、残念ながら仕方ない。

そのような冷めたことを考えつつ、その一方で無視し続けているのにいつまでも諦めない男たちにイライラしつつ、彼女は日が落ちた三車線道路脇の歩道を急ぐ通行人を眺めていた。

彼女が比較的広めと自覚しているパーソナルスペースを笑いながら侵害する男たちの制服をみれば、彼らが学園都市では―能力開発という意味では―かなり優秀な高校に通う生徒であることを知らない人は少数派だろう。入学時の条件は、確かレベル2以上。学力もそれなりのものを要求されているはずだから、彼らが馴染みの「お客さん」とは雰囲気が違うのも当然だ。

「だからね、俺たちとしては常盤台の教育プログラムをどうしても知りたいわけよ」

長い髪を揺らしながら放つ誘い文句も確かに新鮮だ。しかし、新鮮だから好印象を与えるかというと、そういうものでもない。言葉や態度には2重程度のオブラートを掛けてあるが、その真意はつまるところナンパであり、レベル3以上は確実である常盤台の学生に、数の力でプレッシャを与えようとする方法も、結局は過去の事例と変わらない。そして、常盤台の制服が、通行人をもって自分で自分を守るくらいの力はあるだろうと思わせるのに有効であることも規定事項だ。

新しいパターンに、最初の1分間とはいえ僅かな好奇心を持ってしまったのは、今日の実験で思った以上に疲れていたせいだと結論する。

「君にとっても、我々の高校のプログラムは能力向上に役立つと思うよ」

TPOが悪いと、どんな言葉も悪質なキャッチセールスの常套句のように聞こえるものだ…そんな惰性的思索を続ける大人の態度も、さすがに肩に手を回されれば即座に瓦解する。

「……離しなさいよ」

「へえ」、「そう」、「興味ないから」に加えて、この言葉を使うときはリーチが掛けられたことを意味する。彼女の客人が圧倒的優位と思っていた状況が一転し、自分が刈り取られる側になることに気づくことに。すなわち、常盤台の超電磁砲、御坂美琴がその能力の一部を解放することに。

「まあ、そういわずにさ。夕飯まだなんでしょ。なんでもおごるよ」

歴然たる力の差に固まった表情に、彼女がささやかで無自覚な暗い喜びを感じることに。

「……離しなさい。痛い目を見るわよ?」

一応、警告はする。聞き入れて解放されたためしはないし、聞き入れられるとも思っていない。だから、これは挨拶、あるいは能力を使用することに対する自分への言い訳と同義だ。止まれ、といわれて止まる者は最初から脱走をせず粛々と刑期を終えるだろう。逃げ続ける覚悟で脱獄するのだから、そんな言葉を掛ける暇があるならば銃で撃てばよいのにと思う。
ややわき道にそれた物騒な思いに、かすかな匂いが入ってくる。ゼロ距離にある長髪から漂う香水は、意外と自分の趣味に合うものだった。香水は体温によって香りが変わっていく。ジュール熱をかければ、さらに好みになるのだろうか。

感情の沸騰は一瞬で、すぐに攻撃的な発想に至るくらい、御坂美琴にとって彼らの未来予想図は明らかだった。

「そんなに怒らないで、さ」

言葉はあくまで穏やかだが、語調からオブラートは解けつつあると感じる。後ろの誰かの舌打ちがかすかに聞こえる。そして、その音に少し強めの視線を向ける。この視線は好ましいものであるはずがない。おそらくこの平衡状態を崩すだろう。

そのとき、その後ろからまっすぐに自分を見ながら一人の男が歩いてくることに気がついた。

458コピペ:2011/04/24(日) 01:04:37 ID:z8xu8NyM
「なんだよ、その目は」

10秒くらいか、と予測する。高校生であろうその男は無表情だ。これから6対1の争いに入り込む覚悟があるようには見えない。それでも目をそらさないのは、状況を把握していないか、状況を把握して安全域でジャッジメントに通報するつもりなのだろう。舌打ちの音源にさらに挑発的と見えるような視線を送りつつ、視野の端で自分の予測結果を確かめる。

「無視するんなよ」

15秒。予測より長い。ひょっとしたらそれなりに高いレベルの能力者なのか。彼らの制服をみて、それでも対処可能であると思える程度の能力者が、可哀想な自分に手を差し伸べてくれるというのか。まあ、このような状況に陥ることは数え切れないぐらいだから、そのような偶然があっても不思議ではない。

―数え切れないほど絡まれる要因のひとつに、隠し切れていない自分の不遜があることを、もちろん彼女は自覚していない。

「おい、…聞いてます?」

25秒。男たちの輪が少し狭くなる。瞬時に使って良い能力の強さを確認する。自分が背中にしている店や傍らの自動販売機に影響がない、本日の「被害者」が死なない、しかしながらそれ相応の痛みを受ける程度の電撃。もちろん、こちらからは使わない。相手に先に手を出してもらわないと正当防衛にはならない。

件の男は歩みを止めない。彼のどのような対応をするのだろう。

「ちっ…。…おい、なんだお前?」

30秒。肩に回された力が増す。長髪は自分をコーティングすることは放棄したらしい。溜まっていた苛立ちをぶつけるように、イレギュラーな乱入者に胡乱な視線をぶつけた。ここで強さを見せておけば、この女もおとなしくなるだろう、ぐらいは考えているのかもしれなかった。

しかし受ける高校生は相変わらず無表情のまま、

「多人数で女の子を口説くのはカッコ悪い。そして、5分以上話しかけて脈がないなら諦めたほうが無難だと思うけど」

静かに喧嘩を売ってきた。

やはり高レベルの能力者か。どれ程のものかお手並み拝見といきたい、と御坂は思った。
高レベルの能力者の喧嘩はほとんど見たことがない。自分を助ようとする善意に対しての罪と自覚しつつも、実力が伯仲すればなお面白い、など期待が沸くのも否めない。

御坂の期待に応えるつもりではないだろうが、元々馬鹿ではないはずの周りの連中にも同様の推察は成り立ったらしい。緊張が走り、能力が使用される独特の感覚―AIM拡散力場か―が高まるのを感じる。そして、御坂の周りの空気が揺らいだ

発火能力者だ。

長髪は肩に片手を回したまま両手を突き出すように前にだす。その前に炎が現れる。強度は多分レベル4。自分に話しかけていたのは基本的に長髪だったから、彼らの中ではリーダーみたいなものかと思っていた、この能力なら納得できる。彼らの学校でもきっと最も強い部類に入るだろう。あそこにはレベル5はいないから。

さて、乱入してきた彼はどう対応するのか。未だ両手をポケットに突っ込んだまま、無表情を決めているが、それほど自分の強さに自信があるのかね。
その態度がただのハッタリでないことを期待しつつ、ハッタリだったときは即座に助けられるように目を配りつつ、なんとなく傍観者になったかのように目の前の展開を見ていた御坂だが、何かが焦げる、その独特な臭い…その正体に気づいた瞬間、

「ふざけんなアアアアアアアアアアアアアア!」

怒声とともに、手加減があまり効いていない電撃を周囲に放ってしまった。
あたりが光と爆発音で包まれる。隣の自動販売機がボンッ、と小さな音を立てて機能停止する。背中のシャッタの塗装がめくれる。強引に電気の通り道にされたアスファルトが僅かに溶けた臭いがする。

「あー……」

しまった、と思ったときには遅かった。理不尽に重い罰を受けた男達は軽く痙攣しながら地面に倒れていた。とっさに心電位、脳波、網膜電位を確認するが全員問題なし。大事にならなくて安堵のため息を一つ落とす。同情できるところは限りなく少ない人種だが、それでも髪の毛を少し焦がされただけで回復不能なダメージを与えることには抵抗が大きい。動揺の波が引き、余裕を取り戻したので聞いてみた。

「……で、アンタはなんで無事なわけ?」

相変わらず両手をポケットに突っ込んだまま、無表情な乱入者に。
見たところ彼はまったくダメージを受けていない。距離的には同程度の位置に倒れる犠牲者は服も焦げているのに。自分が無意識に彼だけを避けるように攻撃したのだろうか…いや、そんな配慮はなかったはずだ。やはり高レベルの能力者か。
しかし、ボールを投げられた男は周囲を一瞥し、僅かに考えるそぶりを見せたあと、

「どうやら、余計なお世話だったみたいだね」

と、ぼそりとつぶやいた。

459コピペ:2011/04/24(日) 01:05:14 ID:z8xu8NyM
「質問に答えて欲しいんだけど」
「ジャッジメントには通報しておくね。大丈夫だとは思うけど、病院に運んだほうが良いと思うし」

聞かれたら、女の子がしつこく絡まれていた、と証言するけどそれでいいよね?と続ける。やはり、納得できる答えが返ってこない。なんだ、この男は。

「一体、何の能力を使ったわけ?」

急速にイラつきが増していくのを抑えて、努めて冷静に聞く。電撃はステップトリーダでさえマッハ100を超える。電撃を見てからの反応では、絶対に防御は間に合わない。
仮に自分が発電系能力者と知っていて―良くも悪くも自分の知名度は理解している―能力を使うことをとっさに察知して能力で防御したにしても、これだけの電気量を受け流すのは容易なことではないはず。それができる能力者はレベル4でも上位のものだろう。

「ああ…、俺はてっきり君が外してくれたんだと思っていたけど」
「それはない」
「言い切るのか…。一応、助けに入ったんだけどね、俺」
「で、何で?」
「だから、君が配慮してくれたんだろう?」
「違うって言ってるでしょ!」

この男はあくまで惚けるつもりらしい。でもそんなことは許さない。自分の能力が通用しないなど、簡単に認められるものではないから―

「答えたくないなら…答えたくなるようにしてもいいのよ?」

うっかり言ってから、醜い言葉だと後悔した。ああ、これは完全に脅迫だ。筋違いもいいところだ。この言葉は、倒れている者たちに言うべきものだ。彼は確実にリスクを負って自分を助けようとしてくれたのに、なぜこんな言葉をぶつけられるのだ、自分は。今日の実験が大変だったせいだ、など自己弁護する自分がふと現れる。同時にそれを非難する自分が登場する。でも、何を御坂が思おうとも、音のエネルギーは拡散しても、言葉は取り返すことができない。

「まあ……もし、君の配慮じゃないとすれば」

それでも、彼は姿勢も表情も変えない。淡々と、同じトーンで、

「きっと、日ごろの行い、ってやつじゃないかな」

または、神のご加護かもね。などと彼自身、絶対に信じていないだろうと思われる台詞を述べる。それはあまりにも馬鹿馬鹿しい回答だったから、御坂は苛立ちも後悔も忘れてしばらく呆然とした。

「あ、ごめんね」

その間に、彼はポケットから携帯を取り出す。どうやら電話の相手と待ち合わせしているらしく、遅刻を詫びているようだ。

「……もう、いいわ。助けてくれたのに、悪かったわ」

今、これ以上の質問をしても、自分の望む回答は得られないことがなんとなくわかった。これ以上質問すると、自分の嫌な面と向き合うことになるかもしれないこともわかった。そして、質問するエネルギーもどこかに消えてしまった。
だから、ひょっとしたら気づかれないかもしれないくらい軽く頭を下げ、御坂美琴はその場を後にしたのだ。

決して人には知られたくないプライバシーがあり、それを尊重しようなど殊勝な思いがあったからではない。それなりに強い能力者なら、データバンクに入り込めばすぐに見つかるはずだ、という見込みがあった。だから、今この場で聞かなくても良い、と保留しただけだ。

その甘い見通しのために、ストーカーまがいのことをする羽目になるとは、このときの御坂美琴には想像できなかった。

460コピペ:2011/04/24(日) 01:06:34 ID:z8xu8NyM
とりあえず一話。続きに期待してます。

ttp://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=etc&all=27370&n=0&count=1

461■■■■:2011/04/24(日) 08:56:21 ID:VQvmmxwg
>460

Thanx。面白かった。
続きが気になる。

462IF 分岐物語の作者:2011/04/24(日) 16:30:11 ID:zISMYYUY
長らく続いてきました『IF 分岐物語』。
以下、最終章でございます。『とある魔術の禁書目録』22巻236ページから分岐したIF物語。
初めて書いた禁書SSですが、雰囲気は出てたのやら。
と言うわけで、最終章留意事項!

・一番最初の注意事項でありました別作品のネタがここで出てきます。
・このお話自体、ネタです。オチが分かってしまうネタです。

では、どうぞ。

463IF 分岐物語11−1:2011/04/24(日) 16:37:49 ID:zISMYYUY
 上条当麻は一人、ベッドに寝転んで病室の天井をぼんやりと眺めていた。
 特に何も考えずに、ただただぼんやりと。
 今、ここにインデックスは居ない。
 一頻り泣き喚いてから、最高の笑顔になって、「こもえとあいさとかおりも呼んでくる!」という言葉を残して病室を出て行ったのである。
 聞いたところによると、ここへは月詠小萌に送ってもらったとのことで、しかも、逸る心を抑えきれず一人で来たとか。
 まあ、上条にとっては好都合だ。
 姫神秋沙を通じてクラスに教えてもらうのは、吹寄整理や土御門元春、青髪ピアスを通じるよりもちゃんと伝わるだろうし、神裂火織を通じれば、イギリス清教にも、脚色なく伝わることだろう。
 今回、上条当麻が心配をかけたのは、この二つの集団だ。
「あと、迷惑をかけたのは一方通行と御坂妹か……って、御坂!?」
 何気なく呟いたつもりが、一番最後に、今回ばかりは、インデックス以上に忘れてはならない少女のことを思い出して、がばっと上半身だけを起こす。
 真剣な眼差しで、焦燥に駆られたように邂逅する。
 書き込まれた記憶とは言え、それは、正真正銘、上条当麻の記憶である。
 御坂美琴と関わった記憶を高速サーチする。


 出会いは六月の夜のどこかの店のシャッターの前だった。不良に絡まれているように見えた彼女を助けるつもりで近寄ったけど右手の幻想殺し(イマジンブレイカー)が災いして、逆にケンカを売られるようになってしまった。街中や川原や鉄橋で何度も何度もやり合った。負けたことは一度もない全戦全勝。七月の中旬、セブンスミストでグラビトン事件のときに気づかなかったけどあいつを助けた。八月の二十日過ぎに妹達のことで絶望してやつれ切ったアイツを見て助けてやりたいと思い無謀にも学園都市最強のレベル5と戦った。夏休み最後の日に恋人ごっこをして宿題を手伝ってもらって、翌日の始業式の日にインデックスと何故か険悪に睨み合っていた。その数日後にあいつの後輩の白井を助けた。大覇星祭は罰ゲームを賭けて勝負して、借り物競争に借り出されたり、玉入れのときに妙にあいつの様子がおかしかったり、昼食時にあいつの母親とも遭遇したり、いきなり殴られたりした。罰ゲームで変なカエルのマスコット目当てで無理矢理ペア契約をさせられたけど、風斬を助けるためにあいつは俺とインデックスのために囮役をやってくれた。イギリスで地下街に閉じ込められたときに電話越しで協力してもらい、『ベツレヘムの星』の中で一緒にミーシャ=クロイツェフを打ち倒して……


「……で、どうなった?」
 上条当麻はハタと気づく。
 これ以降、御坂美琴に関する記憶がない。
 十月三十日から昨日までの御坂美琴の記憶がない。
 そして、誰からも、御坂美琴に関する記憶の提供を受けてはいない。
『ベツレヘム』の星から帰還できたのは、御坂美琴が居たからだ。
 ミーシャ=クロイツェフを倒せたのは、御坂美琴が協力してくれたからだ。
 極寒の海底で生き残った最大の理由は、御坂美琴が限界を越えて能力を行使してくれたおかげなのだ。
 では、御坂美琴本人はどうなった?
「まさか……」
 最悪の予感が上条当麻の全身を駆け巡る。全身から冷たい汗が噴出してくる。
 唐突に病室の扉が開いた。
 その音にさえ、上条は過敏に反応してしまう。
 まるで、犯罪者がびくびくして隠れているところを見つかってしまったかのように。
 そこに居たのは常盤台中学の冬服に身を包んでいる『御坂美琴』だった。
 ただし、頭にゴーグルを乗せていて、胸にはハート型のネックレスが銀色の輝きを放っている。
「おはようございます、と、ミサカは、あなたに朝の挨拶をします」
 入ってきたのは妹達の一人、ミサカ一〇〇三二号、上条曰くの御坂妹の方だった。

464IF 分岐物語11−2:2011/04/24(日) 16:43:26 ID:zISMYYUY
「あ、ああ……おはよう……」
「? どうしたのですか? と、ミサカはあなたの様子がおかしいことに疑問を抱きます」
「い、いや……何でも……ない……」
 事実を突かれて、即座に御坂妹から視線を外してしまう上条。
「嘘をつかないでください、と、ミサカはあなたの隠し事をしようとする態度に憤慨します。と言うより、あなたが思い詰めたように考えているのは、お姉さまのことではないですか? と、ミサカは核心に迫ります」
 問われた途端、上条は御坂妹へと、即座に視線を戻してしまった。
「分かりやすい反応ですね、と、ミサカは嘆息しながら感想を述べます」
 しかし、上条は何も答えない。正確には声を出すことすらできない。
 今の上条は緊張感に包まれているからだ。
 『御坂美琴はどうなった?』という切羽詰った雰囲気を醸し出してしまっているからだ。
 そんな彼の様子に御坂妹もふざけたりからかったりすることもできずに素直に白状する。
「……お姉様は、まだ目が覚めておりません、と、ミサカは事実のみをお伝えします」
「なんだと……?」
「ですから、お姉様はまだ眠っておいでです、と、ミサカは繰り返します。よほど無理をされたのでしょうね、と、ミサカはお姉様のことを気遣います」
 御坂妹が呟いた瞬間、
 上条当麻は、飛び起きて、御坂妹の両肩を掴んだ。
「どういうことだよ? 美琴は無事に助け出されたんじゃなかったのか? 俺だけが助かったのか?」
「あ、あの……、と、ミサカは怯える少女のように狼狽します……」
 気がつけば、上条は御坂妹を病室の壁に押し付けてしまっていた。
「教えろ御坂妹! 美琴は、美琴はどうなったんだ!? まさかとは思うが……!」
 あまりの上条の剣幕に御坂妹は何も答えることができない。
 為すがままされるがままに、揺すられるだけである。
「答えろよ! なあ!」
「やめて……、と、ミサカはあなたに初めて恐怖を感じながら声を震わせます……」
「――っ!」
 いつもの平坦な声ではない。
 下劣な笑いを浮かべる男どもに全身を押さえつけられて抗うこともできずに暴行される直前の気弱な少女が見せるであろう絶望感いっぱいのような御坂妹の呟きに、ハタと我に返る上条当麻。
 確かに今の上条を第三者が見れば、通報されても文句は言えないことだろう。
「す、すまん………………乱暴するつもりは、なかったんだ………………」
 ふらふらと後ろ歩きで離れる上条。
 その様子をしばし見つめていた御坂妹だったが、少々乱れたブレーザーを直して、
「……お姉さまの目を覚まさせたいのですか? と、ミサカはまだ少し怯えながら問いかけます」
 むろん、とっくに全身の震えは収まっているので、とてもそうは見えないのだが。
「できるのか?」
「……はい、と、ミサカは少々心苦しい表情を見せます」
 もちろん、見せてはいない。いつもの無表情である。
「それはどういう方法だ! 俺が今すぐにでもやってやる!」
 しかし、上条当麻は真剣だ。
 上条を助けてくれた御坂美琴を助けるために、今度は自分が体を張る番だ、と言わんばかりの表情だ。
 しばし間を置いて、御坂妹が口を開く。

465IF 分岐物語11−3:2011/04/24(日) 16:45:05 ID:zISMYYUY
「……………………………エスアイアールエーワイユーケーアイエッチアイエムイー、と、ミサカはパスワードをお伝えします」
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………は?」
「……ですから、エスアイアールエーワイユーケーアイエッチアイエムイー、と、ミサカはパスワードを再度、お伝えします!!」
「えっと……パスワード……?」
「ミサカにはそこまでしか言えないのです! と、ミサカは少し苛立って答えます!! あとはあなたにお任せするしかないのです! と、ミサカは口調を強くします!!」
(な、何でしょうか? この御坂妹の今にも泣きそうな顔は……って、まさか、このパスワードを解かないと御坂を救えないって事なのか!?)
 上条当麻は推理する。
(てことは今、御坂は何らかの原因、というか俺の所為で寝たきりになっていて、それを回復させるために、より高度な医療器具を使おうとしたけど、それにはセキュリティがかかっていたと。しかも、その機械は、あのカエル顔の医者の管轄外だったんで、パスワードは突き止めたが、どこに入力するのかが分からない、と言ったところか?)
 結論に辿り着けば、上条当麻は即座に動く。
 それは妹達を助けるために、御坂美琴を助けるために動いたときのように。
「任せろ御坂妹。必ず美琴は俺が助け出す。だからお前は安心して待っていろ」
 言って、上条当麻は御坂妹の返事を聞かずに病室を飛び出した。
 一人残された御坂妹。
「……いったい、あなたはどこに行くつもりなのですか? と、ミサカは誰もいないこの部屋で静かに呟きます」
 そう。上条当麻はどこに行けばいいのか分かっていない。


 それでも上条当麻は行き先がどこなのか教えてくれる心当たりがある。
 それはカエル顔の医者。
 治療のためなら手段を選ばない冥土帰し(ヘヴンキャンセラー)であれば、御坂美琴を目覚めさせる装置に目を付けないわけがない。
 それなのに、その装置に手を出していないということは何らかの事情があるからだろう、と上条は解釈した。
 力強く廊下を進む。
 病院の廊下だろうが、走って行く。
 時折、すれ違う看護婦や他の患者たちをすり抜けながら走り続ける。
 背後から注意を促す声をかけられても、無視して突き進む。
 今は細かいルールに縛られている場合じゃない、と言わんばかりに。
 そんな上条の、ズボンのポケットから軽やかな音響が鳴り響いた。
 ここは病院だから携帯の使用禁止、なんてルールはない。なぜなら、ここはカエル顔の医者がいる病院だからだ。
 不測の事態に万全の備えをしている病院では、発電系超能力者(エレクトロマスターLv.5)以外の電磁波などではビクともしない器具が揃っている。
「何だ? メール?」
 即座に上条は携帯のパネルを見つめる。
 そこには、


 Last Order>みえてる? ってミサカはミサカは尋ねてみたり。


 と、表示されていた。

466IF 分岐物語11−4:2011/04/24(日) 16:46:35 ID:zISMYYUY
「……打ち止め?」
 上条は足を止めた。九月三十日に出会った小さい御坂妹がそう名乗っていたのを思い出す。
 あの時も、確か、とっても大変な目にあった、と『思い出しながら』。
 なぜ電話ではなかったのか、という疑問も沸いたが、これは通常のメールやチャット、ツイッターとは違う表示のされ方だ。
 発電系能力者特有の連絡方法なのだろうか。
 と、すれば、何か他に知られてはいけない理由があるのかもしれない。
 メールを打ち込むような形で会話できるもののようだ。
『ああ』
 Last Order>今、あなたはお姉様を目覚めさせようとしたはず、ってミサカはミサカは断定してみたり。その方法を伝えるために連絡した、ってミサカはミサカはブラインドタッチで長文を打ってみる。
『どうすりゃいい?』
 上条は余計な話は省きたい。向こうにもこっちのやることがわかっているようだから何も突っ込みを入れずに先を促す。
 Last Order>まず、行くべき場所はカエルのお医者さんのところじゃなくて、あなたの病室の隣の部屋、お姉様が眠ってる病室だよ、ってミサカはミサカは親切に教えてあげる。あと、ミサカからも、もう一つ突き止めたパスワードをお伝えする、ってミサカはミサカは早急に話を進めてみる。
『パスワード?』
 Last Order>エスエルイーイーピーアイエヌジースペースビーイーエーユーティーワイ、と、ミサカはミサカは若者らしく『t』を『テー』と発音しないところをアピールしてみる。
「ん?」
 打ち止めのパスワードログを見た瞬間、携帯のパネルが消失した。
 電池はまだ残っている。ということは圏外に入ったか、それとも向こうで誰かに見つかりそうになったので切ったのか。
 しかし、打ち止めはカエル顔の医者のところではなく、御坂美琴の部屋へ行けと言っていた。
 と言うことは装置はもうすでにそこにあるということなのだろうか。
 上条は多少疑問を感じたが、行き先とパスワードを教えてくれたってことで、装置はもうそこにあるとみてもいいだろう、という結論に至る。
 踵を返して、再び走り出す。
 今度は来た道を戻る形で。

467IF 分岐物語11−5:2011/04/24(日) 16:51:08 ID:zISMYYUY
 上条当麻は御坂美琴の病室へと辿り着いた。
 そしてドアを開けて愕然とした。
 眼前の白いベッドに横たわるのは、まるで眠れる森の少女のように穏やかな少女。
 その表情は少しこけていて顔色も優れず、シーツの上に乗せられている右腕は以前に比べば確実に細くなっている。
「み、さか……」
 上条は絞り出すような声しか上げられなかった。
 記憶を取り戻し、しかも五体満足な自分と違い、あまりに痛々しいその姿が胸に突き刺さった。
 十月三十日から今日まで、御坂美琴は目覚めていない。
 そう言われても納得できる姿だった。
 御坂妹の辛そうな顔が蘇る。
 どうして打ち止めが携帯メール形式でコンタクトを取ってきたかがよく分かる。
 こんな御坂美琴を思い出してしまうからだ。
 その辛さに耐えられなかったからだ。
 上条当麻はそれでも、病室を見渡した。
 数多くの医療器具が御坂美琴を囲っている。
 じくり、と胸が痛んだ。
 上条当麻の命を助け出した代償が、これなのだと、自分自身を殴りつけたくなった。
 しかし、自分を殴ったところで美琴が目を覚ますわけではない。
 ならばまず、御坂妹と打ち止めが教えてくれたパスワードをこの医療機器のどれかに打ち込まなければ。
 そう考えて、上条は自分の『知識』にある機械工学を駆使して探る。
 ここは学園都市だ。外の世界とは二十年も三十年も科学技術が発達していると言われ、そこに暮らす学生たちもまた、どんな無能力者だとしても、こと科学分野に関しての知識に限れば、外の世界の大学レベルは有している。
 そんな学生の内の一人の上条当麻なのだが、どの装置を見ても、それらしき入力場所が存在しないことに気がついた。
「あれ? どういうことだ?」
 上条は考える。
 打ち止めが指定した場所はここなのだ。
 パスワードを知った人間が教えてくれた場所なのだからここ以外でパスワードを使う場所はないはずなのだ。
 しばし分からない答えに呻っていた上条だが、そのズボンのポケットの携帯が再び反応した。
「打ち止めか!?」
 今は何でもいいから、些細なヒントでいいから、手助けがほしいところの上条からすれば願ったり叶ったりというところだろう。


 Last Order>やっと繋がったよ、わーい、ってミサカはミサカは全身で喜びを表現してみる。


 もっとも表示された文章には何の緊張感も感じられなかったのだが。

468IF 分岐物語11−6:2011/04/24(日) 16:53:25 ID:zISMYYUY
『おい、ここにパスワードを打ち込む装置なんてないぞ。どうなってやがる?』
 そんな打ち止めのログが気に入らなかったのか、上条当麻は少々大人気なく、苛立ちをそのまま文章にしてしまっていた。
Last Order>圏外っぽかったから仕方がないんだよ、ってミサカはミサカは弁明してみたり。あと、ちゃんと続きを聞いてほしい、ってミサカはミサカは進言してみる。
(……そう言えば、画面が切れたときは別にまだ話は終わってなかったよな……)
 上条も、ふと思い出す。
Last Order>結論から言えば、お姉様はもう医療機器に頼らなくても大丈夫だよ、ってミサカはミサカは朗報をお伝えしてみたり。でも、なかなか目を覚まさないから外部からの刺激が必要なのかも、ってミサカはミサカは推測してみる。
『外部からの刺激?』
Last Order>とぼけてるの? それとも本当に分かってないの?、ってミサカはミサカは、あなたの鈍感ぶりにちょっと憤慨してみたり。パスワードをちゃんと並べてみた? ってミサカはミサカは確認を取ってみる。
(パスワード? えっと確か……エスアイアールエーワイユーケーアイエッチアイエムイーとエスエルイーイーピーアイエヌジースペースビーイーエーユーティーワイ……)
「あっ!」
 上条当麻は気がついた。


 『白雪姫(sirayukihime)』と『sleeping beauty』。


 つまりは外部からの刺激とはそういうことなのだ。
 それは、とてもベタで。
 それでいてとっても上琴SS的展開で。
Last Order>どうやら分かったみたいだね、ってミサカはミサカは花丸をあげてみたり。あとはあなた次第だよ、ってミサカはミサカはあなたの背中を押してみる。
『ちょ、ちょっと待ってくれ。いくらなんでもそれは』
Last Order>大丈夫だよ、ってミサカはミサカは確信をもって言ってみる。だって、命をかけられる相手ってのは誰よりも大切だからなんだよ、ってミサカはミサカは一般常識を述べてみたり。それに目を覚ます前に離れてしまえばバレないよ、ってミサカはミサカは悪魔のように囁いたり。
『し、しかしだなぁ……』
Last Order>根性なし、ってミサカはミサカはあなたを罵ってみる。それともあなたはお姉様に目を覚ましてほしくないの、ってミサカはミサカはちょっと真剣に問いかけてみたり。
「う……」
 上条は呻くしかなかった。
 そうなのだ。自分のことを命をかけて助けてくれた相手に、ちょっと気恥ずかしいからって行動できないのは何なのかと。
 一人の命を助けられるなら、後から『中学生に手を出した凄い人』とレッテルを貼られるくらい何なのかと。
 ましてや打ち止めは御坂美琴と同じ遺伝子を持つ、いわば、もう一人の御坂美琴本人なのだ。
 その本人が大丈夫、と言っているのだから大丈夫に決まっている。
 クローン一人一人が別個性だと言っても、本質は変わらないのだ。
 上条当麻の決意は固まった。
『分かった』
 と、だけ打ち込み、打ち止めの返事を待たずに上条は携帯を切った。
 決意した上条当麻は誰よりも真っ直ぐ行動する。
 躊躇いも戸惑いも迷いもない。
 意を決して、真剣な表情で、
 いまだ眠り続ける御坂美琴の顔にベッドの横から身を乗り出して近づいていく。
 あと十数センチ。
 上条当麻の真剣な表情は崩れない。
 これで御坂美琴が目を覚ますなら。
 これで御坂美琴が助かるなら。
 あと数センチ。
 上条当麻は瞳を伏せる。

469IF 分岐物語11−7:2011/04/24(日) 17:00:45 ID:zISMYYUY
 しかし、上条当麻は一つ失念していた。
 この部屋に入ったとき、一つ忘れてしまった行動があったのだ。
 それは、御坂美琴の容態だけに目を奪われてしまっていたからかもしれない。
 ただ、その一つの失念は、致命的な失態でもあった。
 なぜならば。


「とうま! 短髪のお見舞いに一人で行くなんて水くさいかも――あっ!」
「お姉様。お見舞いに上がりました――って!」


 ここで初めて上条は気がついた。
 病室のドアを閉めておくべきだったと上条当麻は後悔した。
 病室のドアさえ閉まっていればノックの音が聞こえたことだろう。
 しかし、もう遅いのだ。
 しかも、どう見ても言い逃れできない態勢で上条当麻は首だけを声のした方向に向けるしかできなかった。
「ええっと……これには訳がありまして、ですね……」
 迫り来る恐怖。
 ツインテール少女の姿をした怨霊と、シスターの姿をした悪魔の目が血の色(ブラッド)に光る。
 上条当麻は態勢を立て直した。
 少なくとも二つの恐怖と正対しなければ逃げ出すこともできないから。
 そして正対して初めて気がついた。
 ドアのところにもう二つ、禍々しいオーラを放つ黒い天使と(本来の能力は逆のはずなのだが)吸血鬼がいた。
 窓はベッドの向こうに一つだけ。しかも飛び降りるにはあまりにも高すぎる。
 つまり。
 逃げ場はない。
「ま、待て! 勘違いするなお前ら! これはだな! 御坂を目覚めさせるためであってだな! 決して疚しいことをしようとしたわけでは……!」
「……人の部屋で何騒いでんの?」
 上条当麻の背後から声が聞こえる。
 本来であれば、心の底から、聞きたかったはずの声。
 しかしそれは、こんな形で聞いてはいけなかった声。
 ぎぎぎ、っと上条は声の主へと視線を移す。
「…………御坂さん……あなた様は起きていらっしゃったので………?」
「んー? アンタが馬鹿でかい声出すから目が覚めちゃったんだけど?」
 かみ合っているけどかみ合っていない二人の会話。
 上条の後頭部に嫌な汗がダラダラ流れる。
 御坂美琴は、とっくに覚醒していた事実を突きつけられて。
 しかもそのことは、上条当麻以外には知られていて。
 考えてみれば、御坂妹も打ち止めも「御坂美琴が『十月三十日からずっと』目が覚めていない」とは一言も言っていなかった。
 考えてみれば、打ち止めの言い回しは、まったく切羽詰っていなかった。
 考えてみれば、上条当麻の記憶には、上条と美琴の二人しか知らない記憶も含まれていた。
 考えてみれば、数日前、インデックスが『短髪』という単語を使っていた。
 考えてみれば、十月三十日から昨日まで美琴と会っていないのだから回顧録が無くて当然だ。
「とうま、何か言うことは?」
「辞世の句くらい拝聴いたしますわよ殿方様」
「では介錯はわたくしめに」
「いっぺん本当に死んでみる?」
 四者四様の情け深いお言葉が身に染みる上条当麻。
 チラッと後ろを見てみれば、御坂美琴は背中を向けていた。
 上条は知る由もないことなのだが、これはまるっきり動くことができなかった美琴が寝返りを打てるようになったと喜ぶべきところなのろう。
 もっとも、上条の目には、なんとなく美琴が「何があったか分かんないけど、私は知らない方が幸せなのよ。だからこっち見んな」と訴えているように見えた。
「ふ……」
 涙をだくだく流しつつ、せっかく助かった命すらも大切にできないのかと嘆いた少年は結局、いつもの口癖を絶叫する。


 上条当麻。彼は三度目の『死』を迎えることになる、ところだった。

470IF 分岐物語11−8:2011/04/24(日) 17:02:46 ID:zISMYYUY
 さて、賢明な読者、と言うか、普通の読者でも、知っていれば、気づくと思うのだが、御坂妹と打ち止めのパスワードや一連の会話の流れは最近、ミサカネットワークで流行っている某ライトノベルのパクリであった。 
 これは妹達と打ち止めが仕組んで、昨夜、結局、頼ってしまったお姉様(オリジナル)への、せめてもの恩返しだったのである。
 お姉様(オリジナル)の気持ちを誰よりも分かっているミサカネットワークだからこそのものだった。
 本来であれば、携帯チャットは打ち止めではなく、別の妹達がやる予定だったのだが、最初にパスワードを伝えた御坂妹が、いつもの冷静さを完全に失ってしまったために、打ち止め以外がまともに伝えられないことが分かってしまったので、打ち止めがメールチャットを担当したわけだが、上条当麻は気づけなかった。
 もし途中で気づいていれば、すでに御坂美琴は目を覚ましている、という現実に辿り着けたのだが、残念ながら上条当麻は、ある程度、記憶が戻ったとは言え、戻ったのは、出会った人たちとの邂逅であって、記憶を失う前に読んだ本や見たテレビの記憶はないのである。
 有名なタイトルのお話であれば、どんなストーリー展開なのかは知っているかもしれないが、内容までは知る由もない。
 言い換えれば、登場人物やあらすじは知っていても、本編は知らない、というところにつけこんではみたのだが。


(ねえ、一〇〇三二号、あのシスターにあの人の居場所を教えたでしょ?、ってミサカはミサカはジト目を向けてみる)
(聞かれたから答えたまでです、と、ミサカはミサカの正直者っぷりに胸を張ります)
(あと、絶対にあの人が勘違いしたことを正さなかったのはわざとだよね? ってミサカはミサカは答えが分かっている問いかけをしてみたり)
(ミサカは嘘は吐いていません、と、ミサカは勝手に勘違いしたあの人が悪いと思っています。お姉様が昨夜、無理したことで疲れが残って目が覚めてなかったことは事実です、と、ミサカはありのままをお伝えしています。その後、確認作業を怠ったのはあの人であり、聞かれなかったミサカから教えるのは、小さな親切大きなお世話になる可能性があったので取り止めました、と、ミサカは自らの社会常識の規範たる行動を自画自賛します)


 ……恋する乙女には許容し難いことだったらしい。

471IF 分岐物語の作者:2011/04/24(日) 17:09:42 ID:zISMYYUY
以上、『IF 分岐物語』完結です。
文章表現やキャラと禁書世界設定に至らぬ点は多々あったかと思いますが、温かい目でご拝読頂き、誠にありがとうございました。
厳しいご意見には凹んでしまいますけど、物語に対する感想や、『こういうところをこうした方がいい』というご指摘がございましたら、後学のために、是非、お聞かせ願います。


次回作は、何か浮かんだときに投下するかもしれませんので、そのときはまた、よろしくお願いします。。

472■■■■:2011/04/25(月) 01:02:45 ID:d8oDx82A
超乙
楽しませてモロタ

473■■■■:2011/04/25(月) 19:55:11 ID:gstgsja.
GJ!
一方通行と美琴のやり取りが好きです。
ラストのシスターズの作戦も不器用な彼女たちらしくてよかった!

474牧田さん:2011/04/25(月) 22:13:02 ID:CrxErVao
お久しぶりです。『禁竜召式(パラディンノート)』の続きを投下したいと思います。

今回は少しレス数が少ないですが何卒ご容赦を。


では6レスほど貰います。

475牧田さん:2011/04/25(月) 22:14:22 ID:CrxErVao

英国図書館地下書庫秘蔵『Sorcery UK』第二章。その一節より抜粋。

=============================================================

悪竜に向かい対峙した『彼』は、ただ静かに聖剣を掲げた。
悪竜が何かをする前に『彼』の放った光の矢が降り注ぎ、竜はあっという間に砕け散って居なくなってしまった。

悪竜の脅威は数秒で去った。
そして、その光景を見て、人々は思った。


 本当の災厄は、この男に在るのでは、と。


 人々は自らの身を守る為に力を求めた。
 だが、国が束になっても敵わなかった悪竜を瞬殺する程の『彼』に敵う力など、どこにも在りはしない。
 人々は恐怖に震えた。善悪関係無しに、ただあの男が恐ろしかった。

 そして人々は、こんな事を考えるようになった。
 

『悪竜は、肉体は散って消えても、魂は残っているのでは無いか?』

 竜の力は必ずこの現世に残っている。そう思い、人々は考えうる限りの『魔術』を試した。
 そして人々は力を手に入れた。




 彼等は、竜になったのだ。

476牧田さん:2011/04/25(月) 22:15:47 ID:CrxErVao
十月一六日午前二時。


『大変な事になっているようだな』
聖ジョージ大聖堂壇上。其処に置かれた液晶画面から、とある人物の声が音声として吐き出されている。
「まあ、ステイルや神裂すらも向かわせたる一大事なのだから、それに関して否定は出来ないけれどね」
対するは女性の声色。尋常じゃなく長い髪を床に垂らし、興味無さそうに液晶画面を見てそう言った。


アレイスター=クロウリー。
ローラ=スチュアート。


片方は魔術世界の一片を、片方は科学世界の全てを掌握する人物。
『・・・・・・『禁竜召式(パラディンノート)』か。よもやそんな物が本当に存在するとは驚きだ。・・・・・・いや、“そんな物を人間が扱えるとは”と言う言葉に訂正しておこうか』
液晶画面から流れる平淡な声に対し、ローラは目を細めながら淡々と応答する。
「ふん。あんな物を単なる魔術師が扱えるなどと言う世迷い言を、お前は本当に信じたるものか?」
液晶画面に映る人間は少し黙った後、全く声色を変えずに言葉を繋げる。
『君の言葉は相変わらずユニークだね。・・・・・・安心したまえ。私とて『ただの魔術師』にそんな物が扱えるとは思っていない』
「・・・・・・じゃあ聞きたるけれど、どのような魔術師なら扱うことが出来ると言いけるの?」
ふむ、と画面の人間はほんの少し間を空けて、得意げにも見える表情でこう言った。
『たとえば・・・・・・“アークライトの姪を持つ者”、など的確で良さそうじゃないか?」
「最初から理解したることでしょう、そのくらいは」
ローラは苛ついたような言葉を吐く。そして厄介事を語るかのように息を吐きながら言葉を続けた。
「だけれども・・・・・・どうも私にはクリスタル=アークライト一人だけでは、あの術式を発動させたるまでには至らない気がしたるのよ」
『・・・・・・確かに一五歳で野に放り出されたような人間では、難しいことかもしれないな』
今回の『事件』の首謀者とされているクリスタル=アークライトは、数年前に家族を“何者かに”惨殺され、その後の消息を完全に絶っている。そして、かつて天才と言われた魔術師は、今度は理解不能な思想と霊装を持ち合わせて唐突に出現した。


空白の数年間に何があったのかは誰にも分からない。
そこで『何か』があった事は確かだろうが。

『やはり、そちらから見れば危険視すべきなのかね? クリスタルという女については』
軽口で聞かれたローラは同じく軽口でさらさらと言葉を投げかける。
「今はまだ判断できなしと言う所かしらね。それに危険視すべき対象は、“どちらかと言えば内側”にありけるようだし」
ほう、と画面の人間が感嘆の声を漏らす。そして何時に無く楽しそうに嬉々溢れた表情で口を開いた。
『・・・・・・目星はついているのか?』
「一応、ステイルには監視を任せたつもりだけれども・・・・・・、多分何の意味も無しに終わると思うわ」

正直、ローラはこの時あまり良い気分では無かった。画面に映る意味不明な人間と話していると言う事はもちろん、実はそれ以上に厄介な仕事が自分へと回ってきていたからである。
そんな事は知らないアレイスターは特に何も思わずに適当に言葉を続けた。
『それで・・・・・・君はこれから如何するつもりだね? いつもの通り高みの見物かい?』
「全く、人の気も知らぬ癖してズカズカと・・・・・・。実際、高みの見物だったら楽なのだけれどね。今回は私にもするべき仕事がありけるようなのよ」
アレイスターは少し興味を示したのか、若干ながら顔を緩めてローラへと質問する。
『君が動くなんて珍しいな。槍でも降るんじゃないか?』
「私が動かなければならない時ほど、事態は単純極まりなき物なのよね・・・・・・ハァ。しんどい」
ローラはそう言って美麗な黄金色の髪を紐で結い始めた。一〇分ほどかけて髪型を含めた正装へと服装を変えたローラは、静かに立ち上がり教会の巨大な扉へと音も無く歩きだす。
アレイスターは画面の向こうから其を眺め、口を吊り上げて心底楽しそうに聞いた。



『その様子からして、交渉か。何処のお偉いさんかね?』
「・・・・・・イザベラ=アクィナス。二度と会いたく無い奴ベスト3には入る鬼畜女に頼みを押し付けに参るの」



教会の扉の閉まる音と共に、液晶画面は自動的に電源を落した。

477牧田さん:2011/04/25(月) 22:18:32 ID:CrxErVao
十月一六日午前一時五六分。


視界の封じられた林の一角に突如として黒煙が立ち上る。二〇〇人近い修道女達が唖然として其の光景を眺める中、絹旗最愛は煙の中に人工的な光を見つけた。
「(・・・・・・ゴホッ!! くそ、超やっぱり攻撃ですか。・・・・・・それに光でうっすら見えるあの人影・・・・・・超どこかで見たような・・・・・・?)」
絹旗の見つけた“光”は人影の周りに幾つか提灯のように浮んでいた。恐らくは懐中電灯などの類では無い。浮んでいる事はもちろん、あの人魂のような神秘的な光は科学で再現出来る物では無いだろうからだ。
「(と言うことは・・・・・・)」
やはり『魔術師』の襲撃だろうか。そう思った絹旗は拳を構え、『窒素装甲(オフェンスアーマー)』を発動する。
やがて視界を濁す黒煙はゆっくりと晴れていき、その向こう側から数人の人間が灯りを灯しながらゆっくり此方へと歩いてきた。
絹旗はその人物達の顔、正確には“その人物達の中心を歩いている女性の顔”を見て、やっと確信することが出来た。



襲撃者が『対十字教黒魔術(アンチゴットブラックアート)』だと言うことが。

「・・・・・・超久しぶりですね。クリスタル=アークライト」
「・・・・・・んーと、あれ? あの時の小娘じゃん、久しぶりー」

忘れる訳が無い。黒色のタイトスカートに赤に黒を重ねた上半身の服装。その黒いジャケットの肩部分に刺繍された不気味な紋章まで。
そこに存在するだけで周りを押し潰してしまうような気持ちの悪い重圧は、絹旗の脳に確りと刻まれていた。


絹旗はとりあえず一歩下がって気休め程度の距離を置く。そして苦味を味わうような表情で悪態をついた。
「(・・・・・・タイミングが超悪すぎます。せっかくシスター達が揃い揃ってさあ出発な雰囲気でしたのに・・・・・・空気の超読めない連中ですね)」
恐らく此処に居るシスター達は「中央広場に入ったら戦闘が始まる」と認識し、その上で戦いに向かう覚悟を決めていたのだろう。だが、今現在唐突すぎる敵に登場に戸惑ってしまっている可能性が非常に高い。心の準備が出来ていない、と言ったら失礼かもしれないが、それが正しい表現だろう。
「(多分、彼女達は戦闘のプロではありませんし、目の前の超玄人臭い連中には数任せで張り合っても勝てるかどうか微妙な所ですし・・・・・・。それに加えて超暗闇からの錯乱攻撃と来たものですから、動揺して使い物にならない可能性が超ありますね)」
これは単純に絹旗の暗部での経験を活かした結論だ。『窒素装甲』を持つ自分にとっては、不意打ちなど注意する意味も無い事だが、たまに回されてくる暗部の下っ端等の『普通の人間』に関してはそうはいかない。実際、そのせいでただの痙攣する肉塊に成り下がった人達を絹旗は幾らか知っている。
「(二百人弱の人数ですから、誰か一人でも超パニックになってしまえば其れに釣られて全員が平常心を失ってしまう。そしたら本格的に敵の思うツボですよ・・・・・・)」

連鎖的に自らの死までを案じ始めた絹旗は、とりあえずアニェーゼのもとへと走った。統率者である彼女が一言でも指示を出せば形勢が若干ながら逆転するかもしれないと言う僅かな望みだった。


だが絹旗が駆け寄る直前にアニェーゼが放った言葉を聞いて、その望みが叶う事は無いと絹旗は確信してしまった。
いや正確には、



「Un ordine. Disposizione [RLALL] Pratica!! (命令。位置関係をRLALLに変換)」



彼女達は慌ててなどいなかったのだ。
突然放たれたアニェーゼの継ぎ接ぎなイタリア語を耳にしたシスター達は、全く動じる事無く指示通りに適当な配置へと移動を始め、五秒も経たないうちに敵を左右から囲むような陣を形成する。そしてそれぞれが自身の霊装を構え完璧な戦闘態勢へと移行した。

絹旗は唖然とする前に得体の知れない恐怖を感じた。
たった一人の少女が短い言葉を発しただけで、二百人の修道女達は一寸の狂いも無く機械のように行動する。それがどれだけ『恐ろしい事か』絹旗は気づいていなかったのだ。
「・・・・・・なるほど。普通は恐怖の方向へ働くはずの集団心理が“違う方向へと”働いているのですか。ほんとに超ロボットみたいな奴らですね」
絹旗の呟きが聞こえたのか、アニェーゼはようやく絹旗の存在に気づいた。そして不思議そうな顔で文句と質問を兼ね備えた言葉をかける。
「・・・・・・あれ? 何故ここに居るのですか貴方は。キヌハタは前線だと言ったないですか。私の指示だけは守ってくださいと何度も・・・・・・」
アニェーゼが眉を寄せながら言い続けるが、絹旗はそれを無視してアニェーゼへと質問を投げかける。


「超アニェーゼ、『戦うんですよね』?」

478牧田さん:2011/04/25(月) 22:19:37 ID:CrxErVao
唐突すぎるその質問に、アニェーゼは一瞬目を丸くしたが、すぐに元の凛々しい表情へと戻った。そしてニヤリと獰猛に笑いながら言葉を返す。
「当たり前じゃねえですか。でもまあ、すぐに殺りあう訳でもねえですし、今の内に敵との前置き話でも済ましてきたらどうです?」



安心した。彼女達の戦意は失われていない。
一旦胸を撫で下ろした絹旗最愛は、呼吸を一つ置いて、再び『敵』の方向へと視線を戻す。



「・・・・・・さあて。超戦闘開始ですかね」
視線の先の女の顔が、くしゃりと気持ち悪く歪んだ。

479牧田さん:2011/04/25(月) 22:21:20 ID:CrxErVao
≪行間≫


「ねえねえ。私達の『組織名』ってさ、本当に『対十字教黒魔術(アンチゴッドブラックアート)』で良いの?」
少し大きめの自然災害が来れば、たちまち壊れて無くなってしまいそうな廃れた教会。その教卓の上に寝そべりながら、金髪の少女がそう質問する。
「・・・・・・聖書の穴に漬け込んでズルをする人々に対する、既存の呼び名を乗っ取ってみたのですが・・・・・・。何か不満が御座いましょう?」
少女の問いに対し、隣で洒落た椅子に腰掛けている女性がそのように返答した。
金髪の少女は駄々をこねる子供(実際、見た目は完全にお子様)のように手足をバタつかせ、さらに女性へと言及する。
「えー、だってさぁ。それって十字教の中の裏切り者共の総称でしょ? そんな威厳の無い名前持って来られても、こっちは乗り気になれないの。どうせならもっとカッコイイ名前にしてよ」
「はぁ。そう言われましても」
女性、イザベラ=アクィナスは困ったような表情で首を傾げた。その気の抜けた態度に、少女、イラーリア=L=ラウレンティスはさらに身を乗り出して熱論する。
「だって組織名よ組織名。どうせなら悪の秘密結社まっしぐらなベタ名前でも構わないからさぁ。イザベラがもうちょい見栄えの良いネーミングセンスを取得してくれると私はとても嬉しいんだけど」
はぁ、と相変わらず困り顔のイザベラ。まあ、確かに『対十字教黒魔術(アンチゴッドブラックアート)』は十字教内では下劣な存在として認知されているようだし、そんな貧相な意味を持つ名ではイラーリアは納得しないだろう。
イザベラは少しだけ何かを考えた後、パっと閃いたような表情でイラーリアの方に体を向けた。
「イラーリア、ちょっと」
「? 何?」
ニコニコと心底楽しそうに笑うイザベラに多少イライラしつつ、イラーリアは手招きをするイザベラへと体を寄せる。「耳を貸せ」と言うことらしいので、とりあえず指示通りにしておくことにした。
「何よ突然・・・・・・」
「良い名前が思いついたので御座いますよ」
そう言ってイザベラは、イラーリアに自分の考えた『名前』をそっと囁く。



「――――――、」



自身満々に言い放ったその『名前』。気になるイラーリアの反応は、
「・・・・・・それってさぁ。ちょっと発音変えただけじゃん。しかも英単語を適当に組み合わせただけで、英語的には意味不明だし」
完全否定を頂いた。
「そ、そんなに駄目でしょうか?」
「うん、まあ少なくとも英国人が聞いたら「?」が三つくらいは浮ぶレベルだね。アンタやっぱり教養無いでしょ?」
自信があっただけにズタボロにされたショックは大きい。大きな溜息を吐いたイザベラはしょんぼりして俯いてしまった。
それを見たイラーリアは、
「・・・・・・でも、まあ良いんじゃない?」
行き成り肯定の言葉を述べた。イザベラは一筋の光が差してきた時のような表情でイラーリアを見る。
「本当ですか!?」
「うん。まあ意味は解らないけど響きは好き。それにどうせ私達はどちらもイタリア人だし、英語の詳しい意味なんてどうでも良いでしょ」


イラーリアがそこまで言った所で、背後からキィ、と言う扉の開く音がした。音に反応して後ろを見れば、そこにはとても寝むたそうに目を擦る女の姿が見える。
それに気づいたイザベラは爽やかな笑顔で女へと声をかけた。
「あ、クリスタルさんですか。おはようござ・・・・・・いえこの時間ですから、“こんにちは”と言うのが正しいでしょうか?」
「・・・・・・やべぇ、英国人来ちゃったよ」
イザベラ、イラーリアが順に言葉を発するが、クリスタルは眠気のせいで全く気が付いていない様子である。
そんなこともお構い無しにイラーリアは早足でクリスタルの下(もと)へと駆け寄る。そして起きているのかすら判らない女に対し、凛とした声で言った。


「クリスタル。私達の名前が決まったわよ」
「・・・・・・へぇ」〈zzz
「イザベラが考えたんだけどね。個人的には三〇〇フラン位は出せる傑作だと思うの」
「・・・・・・え? 何が?」〈起
「聞きたい?」
「・・・・・・・・・・・・何を?」
「名前よ」
「・・・・・・ああ、そう。まあ聞いとくよ」

イラーリアは一呼吸溜めてから、自身に満ちた声で『名前』を教える。



「――――――。」



簡単に決まってしまったその名前、それこそが最初の『点』だった。
一つの『点』から広がった小さな波紋は、やがて世界を覆い尽くす程大きな波紋になっていく。

彼女達ですら、それを理解していなかった数年前のとある正午の出来事。

480牧田さん:2011/04/25(月) 22:22:58 ID:CrxErVao

尋常では無い爆音が鳴り響いた。
しかし、それは単なる『音』では無い。その爆音こそが攻撃の前兆。つまり、その『音』の聞こえた直後には、

「全員防御体勢!! 攻撃だ!! 絶対に正面から受けるな!!」


そのアニェーゼの言葉通り、凄まじい迎撃術式が次々と押し寄せることになる。


「・・・・・・っ!! ぐっ・・・・・・!!」
土煙を上げる林の中、絹旗は『鎌鼬のような正体不明の攻撃』を体の動く限りに避け続ける。
「(攻撃の隙なんて・・・・・・超どこにも無いじゃないですか!!)」
一方的すぎる展開に絹旗は悪態を吐いた。


=============================================================


今現在、戦闘が始まって五分程が経過した頃だろうか。

戦闘が始まった時、最初に動いたのは敵の方だった。
クリスタル=アークライトを中心とした敵の数は合計で五人。クリスタルはともかく、他四人、つまり鍵爪を装備した黒服の男達に関しては絹旗には確かな勝算があった。
それは身に付けている武器も服装も全て、今まで出合って来た敵と全く同じだった為だろうか。いや、恐らくは今まで出会って来た敵にあまり苦戦していなかったと言うのが最大の要因だろう。
殴れば終わる勝負。それが『魔術』と言うイレギュラーな世界で絹旗が体験した、唯一の戦闘スタイルだったのだ。

別に油断していた訳では無い。アニェーゼの言っていた通り、戦う相手が強くなっているだろうと言う事ぐらいは頭の中で理解しているつもりだった。
だが内心では少しだけ、本当に少しだけ絹旗はこんな事を考えていた。


どうせ今回も楽に終わる。そしたらゆっくりと学園都市に戻れる、と。


しかし、

「Cinco elemento de los components Viento Poder Viento Uso el poder Un amigo de Dios Doy el castigo」
(五大の元素の第一 風よ 力を解き放ち 神に属する愚か者を狩り尽くせ)

絶望的な声が響き渡り、無数の風の刃が逃げ惑うシスター達に恐ろしい速度で切りかかっていく。
そう、クリスタル=アークライトと言う女は、絹旗最愛の想像を軽く絶する程の人物だったのだ。


『対十字教黒魔術』の仕掛けた最初の攻撃は『煙幕』。古典的な手段ではあるが、集団戦線を主とするアニェーゼ部隊に対しその効果は絶大だった。
ただでさえ暗闇で視覚の自由が効かない真夜中の林に、容赦無く放たれた目潰し。そんな状況下で『敵の数が圧倒的に少ない状態での戦闘』など、攻撃対象を見つけるだけで集中力を使い切ってしまうような物である。
そして、シスター達が程良く混乱を始めた頃、クリスタルは次の攻撃へと移行していく。

「・・・・・・大地の力を悪用した非情の刃だ。食らってさっさと殺されろガキ共」

彼女の発動した魔術は、ルーンと呼ばれるカードを適当にばら撒き、ただひたすらに見えない刃を打ち続けると言う物であった。
そして、それが今現在アニェーゼ等が受けている迎撃術式でもある。

つまり、アニェーゼ達は“数分間同じ攻撃を避け続けていると言う事になる”。

「くっ・・・・・・。武器を構え!! 風の術式が扱える者は煙幕の除去に専念してください!!」
アニェーゼの声が視界を封じられた戦場へと鳴り響く。その声に反応したようにシスター達が様々な方法で煙幕を取り除く作業を開始する。
ある者は暴風を引き起こし、ある者は磁力のような力を発し煙幕を吸収していく。

やがて、霧が晴れた。




そして、そこでアニェーゼの見たものは、仲間の半分程が冷たい地面に身を預けている残酷な光景だった。

481牧田さん:2011/04/25(月) 22:24:32 ID:CrxErVao

相手の迎撃術式が掠った者や、煙幕を至近距離で吸い込みすぎて呼吸困難に陥った者、術式の余波で体の彼方此方を痛めた者など、修道女達が倒れている理由は様々だったが、少なくとも攻撃をまともに受けた者は居ないようで、見渡した限りでは死者は出ていないようだった。
アニェーゼはすぐに五歩ほど後ろへと距離を取り、後方で全体を観察していたルチアへと囁くように確認をとる。
「ルチア。状況は?」
「・・・・・・今の所、死に至った者は居ないようですが、中には過度な出血によるショック症状を引き起こしてしまっている者も居るようです。実質的な戦闘不能人数は“部隊の半分”に上るかと」
ルチアの感情を押し殺したような声が耳へと流れ込む。部隊の半分。それはつまり寮で待機している修道女達も含めた内の半分と言うことになる。
「・・・・・・少なく見積もって百人、と言うことですか」

アニェーゼは苦虫を噛み潰したような表情で、辺りをもう一度見渡す。地獄絵図と言うほどの惨状では無かった物の、明らかに劣勢と言う言葉の似合う状況であった。
そして目線の先に悠然と佇むクリスタルは、意地の汚い虐めっ子のような表情で嘲笑うかの如くアニェーゼへと乱暴な言葉を投げかける。

「あっれー? おっかしいなぁ。部下に聞いた限りじゃ、かなり強い奴等って事だったのに」
左右に二人ずつ、黒服の部下を携えるクリスタルは心の底から楽しそうに笑っていた。これが当然の結果だ、と言わんばかりに。
アニェーゼはその言葉を黙って聞いていた。奥底から湧き上がる激怒を必死で押さえつけ、ただ冷静に状況を分析し、策を模索する。
だが味方の半分程が倒れたこの状態で、逆転の一手など軽々しく見つけられる物では無い。
「(・・・・・・ここまで圧倒的にやられてんです。恐らく残ったシスターの士気も激減してるでしょうし・・・・・・万事休すってとこですか)」
思わず片足を引いてしまう。勝てない。一番考えたくなかった可能性が、一番考えやすい可能性へと変わっていくのが分かった。

だが敵は待ってはくれない。クリスタルの傍らに居た数人の男達がゆっくりと歩き出した。恐らくはとどめの一撃を、戦意を失った修道女達へ与える為に。
「残念だったわね小娘。何の目的で私達の邪魔するのか知らないけど、そのせいでアンタ等は死ぬんだからさ」
そう言ってクリスタルは片手を振り、端的な指示を出した。黒服の部下達は自分達への命令であろうその指令に従って、修道女、それも倒れている者へと凶悪な鍵爪を向ける。


殺される。疲労困憊のせいで声も出せないその少女は、今そう思いながら自分に向けられた鋭い爪を眺めていることだろう。
アニェーゼも、ルチアも、クリスタル達に一番近い数人の少女に一つずつ向けられた人殺しの道具を、ただ遠くから見ていることしか出来なかった。この状況で無理に動けば隙を広げるだけだ、と言うのは単なる言い訳にしかならない。何故ならアニェーゼも他のシスターと同じように、クリスタル=アークライトという人間に恐怖してしまったからだ。

「(ま、ずい・・・・・・このままだと彼女達は・・・・・・)」
アニェーゼは必死に状況を打破する策を脳内で廻らせるが、武器が容赦無く振り下ろされるまでの数秒ほどしかない。その間に自分に出来る事など何も無いとすぐさま悟ってしまう。
「(く、そ・・・・・・私のせいで・・・・・・っ!!)」

黒服の男達は自分の武器に体重を乗せ、もはや立ち上がる体力さえ残されていない修道女へと最期の一撃を浴びせる。
ドスッと言う鈍く非情な音が数回響いて、蓮華のような鮮血と共に彼女達の細い体に大きな風穴が空く。




『はずだった』。




だが現実には、その爪が振り下ろされる刹那に鼓膜が破裂してしまいそうな豪音が鳴り響き、あっという間に黒服の男達が吹き飛ばされると言う、あまりにも理解不能な光景が目に映った。
「・・・・・・え?」
予想の斜め上を行く結果に、アニェーゼは思わず素の声を発する。
アニェーゼがそこで見た物は、目にも止まらぬ速さで視界の端へと吹っ飛ばされる黒服の男達と、その常識外れな現象を引き起こした張本人。
その人物は一時の感情に流される訳でも無く、尚且つ“味方”へと向けられた刃には決して容赦をしない拳を携え、この絶望的な状況を瞬時にひっくり返したのだ。
アニェーゼはそれをただ呆然と見ながら、自分への皮肉のような言葉を呟く。


「・・・・・・馬鹿ですね私は。逆転の一手なんて、最初からすぐに隣に居たじゃねえですか」




そこには絹旗最愛が、勇者の如く敵に立ちはだかっていた。

482牧田さん:2011/04/25(月) 22:29:39 ID:CrxErVao
投下終了・・・ですが、ミスりましたねハイ。
お分かりかと思いますが、3レス目4レス目は元々合わせて1レス分でしたが、
『本文が長すぎます』と言う吃驚な警告文が表示されてしまったがために、やむなく二つに分ける事にしました。

あと5レス目については読まなくとも話に支障が無いような気が・・・・・・。


感想、誤字脱字のご指摘、または誤字脱字や誤字脱字がありましたら教えて頂けると幸いです。
今回は若干漢字に自信が無いので・・・

483■■■■:2011/04/27(水) 14:03:06 ID:aX.tqa3s
>>482
GJです。ではまず誤字脱字の指摘から…。
>>477唐突すぎる敵に登場に(唐突すぎる敵の登場に)
   前線だと言ったないですか。(前線だと言ったでは/じゃ/じゃあないですか。)
>>479漬け込んで(付け込んで) 自身満々(自信満々) 自身に満ちた声で(自信に満ちた声で)
>>480鍵爪(鉤爪)
>>481鍵爪(鉤爪)
誤字がかなり減っています。いずれ私もお役御免になるでしょうね。
ストーリーでは、クリスタルさんの無双が始まりましたね。かなりの強キャラ設定という事でしょうか。
絹旗のヒーローっぷりが今から楽しみです。アンチゴット/ドはまだ保留っぽいか…、気になります。
さて長編SSとしても結構ボリュームが出てきましたが、現時点で全体の何%くらい消化した感じですかね? もう終盤なのかどうか
もちろん私は完結までお供するつもりですが。次も期待してます!

484■■■■:2011/04/30(土) 15:44:27 ID:F0klV.XE
>>482
GJ
投下お疲れ様です
『彼等は竜になったのだ』というはつまり、『禁竜召式』は人間を竜に変える術式、と言うことでしょうか?
あとイラーリア他オリキャラによる行間ですが、「―――――。」に入る言葉が気になります。予想はつきますが。

中々考察の余地がありそうなSSですね。
このような物は初めてな気がするので、次投下非常にお待ちしております。

485■■■■:2011/05/03(火) 12:52:39 ID:BZuWqF2c
や、やばい
過疎ってる

486中二病 番号 20000:2011/05/03(火) 19:36:45 ID:GJgo/hqY
>>485 すまん、まってくれ。後ちょっとだ・・・後ちょっとでエルシャダイが終わるんだ・・・・!

487■■■■:2011/05/04(水) 11:46:30 ID:oZiXL.YY
IF 分岐物語
今読み終わりました。面白かった!次回作にも期待です。

488■■■■:2011/05/05(木) 16:59:47 ID:vjpreO1U
過疎った時は質問で持たせようか
『禁竜召式』へ前から引っかかってたこと質問

十月十五日 午前八時頃アニェーゼ達がクリスタルに襲撃される

十月十五日 正午〜午後四時頃? アニェーゼのお見舞い的な感じで神裂さん登場

↑の時系列はアックア戦闘時と被っているし、神裂さんは日本で重傷状態、または上条にエロメイド見せてるはず
その後に「傷を癒して日本から英国へ向かっている」と言う発言がありましたから、

一、アックア戦闘後、そのまま英国へ帰還。アニェーゼに顔を出した後に日本へ戻ってエロメイド披露(十五日朝にも登場シーンがあるので、この説は薄い)
二、アニェーゼに顔を出した後にアックア戦参加。上条にエロメイド見せてから英国へ(今後の展開によっては上条に見せるのが後かも)
三、オリジナル展開

二か三が有力かと思うが、もし二の場合は神裂さんはアニェーゼに顔を出して日本へ行って戦闘。すぐさま帰還。というハードスケジュールをこなしてたことに。(日本へ行って帰ってくるまでおよそ八〜九時間)
正直言ってどうでも良いかもしれませんが、読んでる途中で何となく気になったので読み込んで質問してみました
時間表記が全体的にハッキリしていますし、そこらへんも考えてるのかな・・・と

バカみたいな質問でレス無駄にしてすみませんでした。

489ななの:2011/05/05(木) 18:31:58 ID:UXP9/gKc
こんにちは!
新しいのが出来たんで投下します
タイトルは『あの日、あの瞬間』

490ななの:2011/05/05(木) 18:32:52 ID:UXP9/gKc
あの日、あの瞬間

一人公園で遊んでいた。
近づいて来る者はいない。
いつもの事なので、砂場で城を作っていた。
すると、集団でドッチボールをしていたツンツン頭の少年が近づいてきた。
「よう、お前一人で何してんの?お前も一緒にやんね?」
「・・・・・・いい」
「なんだよー。いっしょにやろうぜー」
少年は一方通行に触れようとした。その小さな手で。
「だめ!触れちゃ――――――」
「ん?どうした?」
何も起きない。
一方通行の肩をべしべし叩いてる腕は、折れない。
「えっ?」
呆然としている一方通行を、少年は引っ張ってゆく。
「当麻どうしたの?」
「はいはい一名ついかー」
「あっずるーい。女子少ないんだから、こっち入れてよー」
誰も拒なかった。一方通行を受け入れた。
突っ立てる一方通行をよそに始まってゆく。
「ふっふっふ。今日こそ避けきってやるぜ!」
「いい度胸だ。おもいっきしぶつけてやるわ!!」
開始したばっかとは思えない盛り上がりを見せていく。
少しして、一方通行の足元にボールが転がってきた。
「いけーやれー!」
「おもいっきり当ててやれー!」
はっきり言って、一方通行は運動神経がよくない。
かといって、能力を使うと大惨事が起きる。
一方通行は能力をきった。
その細い腕で、ボールを思いっきり投げた。

491ななの:2011/05/05(木) 18:33:30 ID:UXP9/gKc
結論を言うと、一方通行達は負けた。
一方通行は、早くに当たって外野行きになってしまったが、不思議と悔いは無かった。
彼は、初めてかもしれないと思っていた。
こんなに遊んだのは初めてかもしれない、と。
「おーーす!負けちまったな!」
再びツンツン頭の少年が近づいてきた。
「そういえばさ、お前名前なんつうの?俺は当麻。上条当麻」
「俺の名前?」
一方通行は考え込む。彼には一方通行という呼び名があるが、何となくこの少年には名前を偽りたくないと思った。

「俺の名前は――――――――」

彼はドキドキしていた。なんと反応されるかが気になって。
「いい名前だな。」
笑った顔が何だか嬉しくて、一方通行は笑った。
「じゃあな。またなー!」
「またなー!!」
彼は手を振り続けた。
『またな』
この言葉が嬉しくて。


一方通行はずいぶん前のことを夢で見た。
彼にしては珍しく笑って、
「あァ。こんな事があったな」

492ななの:2011/05/05(木) 18:34:05 ID:UXP9/gKc
投下終了!

493■■■■:2011/05/06(金) 03:12:57 ID:rncDhHfI
>>488
おもしろそうな考察なので乗っかってみる。間違ってたらスマソ
神裂がアックア戦後に日本を発ったのが、イギリス時間で十六日の午前一時。
イギリスと日本の時差は9時間だから、神裂が学園都市を発ったのは日本時間では十六日の午前十時頃になる。
『音速の数倍で〜』は超音速旅客機の事だと推測される。学園都市―ロンドン間は約一時間のフライトになるか。
市内でステイルと合流したのが十六日午前一時四〇分頃だから、この辺に矛盾はないな。
ここから逆算していくと、神裂のアックア戦参戦が十六日の(原作では日付不明)深夜三時過ぎ:日本(16巻152p-190p)。
超音速旅客機を使ってイギリスから駆けつけるには、マイナス10時間、十五日の午後五時までにイギリスを発つ必要がある。これも矛盾していない。
全てイギリス時間を基準にまとめると、こんなスケジュールになる。聖人にとってはそれほど忙しくなさそうだ。

十月十五日 午前八時頃 アニェーゼ達がクリスタルに襲撃される

十月十五日 正午〜午後四時頃? アニェーゼのお見舞い的な感じで神裂さん登場

十月十五日 〜午後五時 神裂が超音速旅客機でイギリスを発つ

十月十五日 午後六時過ぎ 神裂が学園都市に到着、アックア戦

〜空白の7時間〜 上条さん病院で覚醒(日本時間で朝方?)、神裂堕天使エロメイド化

十月十六日 午前一時 神裂が超音速旅客機で学園都市を発つ

十月十六日 午前一時四〇分頃 神裂、市内でステイルと合流。作戦に参加

494■■■■:2011/05/06(金) 22:43:40 ID:M6A.bRgo
ほのぼのスキヤワァー

495■■■■:2011/05/07(土) 07:55:38 ID:cAT3bfss
>>493
488だが

やべえ時差入れてなかった
有難う

496■■■■:2011/05/08(日) 04:47:54 ID:.QO/6Ixk
>>263>>265感想ありがとうございます、というまでにものすごい間があいてしまいました、すいません。
「垣根帝督の十番勝負」の人です。
8後半および、9がようやっと終わりましたので投下させていただきます。
気が付いたらこれ始めてからもうすぐ一年になってしまう……一年以内には終わらせたいです、ほんと。
8前半は>>245からです。

今回の注意点は

てーとくん妹のオリキャラ。
雲川と貝積の会話慣れてなくて不自然かも。
幻生のじーちゃん渾身のキャラ崩壊。

などです。

それでは投下します。

497垣根帝督の十番勝負 第八戦『木原幻生』後編:2011/05/08(日) 04:49:16 ID:.QO/6Ixk
 視界が開ける。
 今度こそ本当の覚醒だ。
 状況は先ほどと全く変わっていない。
 両の手を後ろで組んでこちらを無遠慮に眺める木原幻生。
 翼を展開して宙に浮かびこちらを無感動に見つめる垣根姫垣。
 そして実験室の壁面に二本の水晶体によって縫い付けられた自分――垣根帝督。
 何も変わっていない、状況は何一つ変わっていない。
 
 だが、それでも。
 
 垣根帝督はこの数瞬の間に変わっていた。
 その脳内には、アウレオルス=イザードが18年間を費やして手に入れたあらゆる情報が乱流していた。
(所々黒マーカーで塗りつぶしたような『error』がある……これは魔術関係ってことか……今必要な情報をかき集めて整理、と……成る程、『知っている』ってのは確からしいな)
 アウレオルスの知識の中には、ある事象をインプットすることでその『原因』或いはその『結果』を即座に弾き出すことが出来るという計算装置があった。
 さながら世界の方程式だ。おそらくはこれが世界のシュミレーションというものの本質なのだろう。
 アウレオルスの記憶を参照するに、どうやらこれは『黄金錬成』の呪文詠唱に成功したことで得た『この世界そのもの』という膨大な情報をアウレオルス個人の頭で効率的に処理できるように構築されたもののようだ。
 呪文詠唱は『グレゴリオの聖歌隊』を用いて多人数で行われたが、意識をそのままこの世界に顕現させる『黄金錬成』の術式が適応されるのはアウレオルス一人の意識のみであることを考えれば、そういった処理が行われるのも頷ける。
 無論、その方程式には魔術の知識も必要だったのだろう、途中式の所々に黒マーカーが引かれている。
 だが、数値を入れれば勝手に計算してくれるのだから、特に問題にはならないだろう。
 電卓のプログラミングの組み方を知らなくとも、値を打ち込めば誰でも答えを出せるのと同じだ。
(知識はオッケー。次は出力端子だ。外の世界のものに触れ、『干渉』するための『未元物質』。これは軟質で自由に動かせ、広い範囲をカバーでき、かつ戦闘の邪魔にならないような形状が望ましい……)
 思い、垣根はその形を決定し、即座に展開する。

 背中から生える、一対の翼型の『未元物質』を。

498垣根帝督の十番勝負 第八戦『木原幻生』後編:2011/05/08(日) 04:49:37 ID:.QO/6Ixk
 右の翼を上方に、左の翼を下方にはためかせて、背中側から水晶体を切断する。
 水晶体と触れて少し中和された『未元物質』を即座に補強、そのまま空気に翼を叩きつけ、一度大きく羽ばたく。
 すると、垣根の身体は熱気球のように空中で静止した。
「おやおや、攻撃をまねたと思ったら今度は翼かい?」
 フン、と鼻を鳴らすと、幻生はもう興味はないとばかりに実験室に設置された機械をいじり出す。
「AIM拡散力場も若干検出されているねぇ。これは『原石』故かはたまた『体晶』故か……んん、不規則なノイズも混じっているようだ。これを究めれば『原石』について何か……いや、この乱れはどこかで見たことがあるなぁ。ねぇ垣根帝督。君は知らないかい……!?」
 軽い口調でおどけるように言いながら垣根を振り返った幻生の顔が固まった。
「……どういうことだい?」
 幻生は目の前の状況に困惑を示す。
「その翼は何だい? どうして、『どうして空中に静止しているのにその翼は羽ばたいていないんだい?』」
 鳥獣の持つ翼の機能を完全に無視した飛び方。
 垣根の『未元物質』に、そのようなことを可能とする使い方はなかった筈だ。
「はっ、おいおいいーのか『未元物質』研究者!? 俺の能力のことは飽きる程調べて調べて調べ尽くしたんじゃねぇのかよ!」 
 幻生に挑発する垣根は、
(よし、取り合えず『干渉』も成功。準備運動は充分だ)
 心中で試みの成功を確認する。
 垣根の行っている浮遊方法は、一般的な翼を用いた飛行ではない。
 むしろ、先ほど例えに出したように、熱気球の浮き方に近い。
 一度目の羽ばたきで乱した空気を『未元物質』の翼の中に取り込み、上昇気流に仕立て上げたのだ。
 その仕組みはこの世界の物理法則とはまるで異なる。そもそもが空気の温度や気圧に変化すら起こってはいない。
 自身を浮遊させるような上昇気流を起こすという『結果』を式に代入して得た、この世界の上昇気流の仕組みを一切無視し、必要な現象だけを抽出したものとしての『原因』。純粋化、単純化され、一つ一つの値やベクトルへと噛み砕かれたそれをなぞるように、翼内を通過した空気に『干渉』する。
 それだけで、垣根はこの世界では有り得ない一つの奇跡を成し遂げる。
(或いはこの世界のベクトルを知り尽くしてる第一位みてぇな野郎なら、こんな計算装置くらい内蔵してんのかもしれねぇが……俺は今までこの世界の法則にマトモに向き合ったことはねぇし、そもそもそんなことに掛けられる演算処理能力のキャパはねぇ。そこへ来るとこの『世界の方程式』は、成る程、俺の能力にぴったりはまりやがる)
 己の得た新たな力の感触を確かめると、垣根は幻生に向き直る。
「んじゃまぁ、反撃開始だ木原幻生!」
「反撃? おかしなことを言うもんじゃない。私一人すら超えられないというのに、私と垣根姫垣の二人を相手にして勝てると……」
「そっちこそアホ抜かすな。何が『二人』だ」
「!?」
 垣根の言葉に幻生は姫垣を振り返る。
「何だと……」
 姫垣は変わらず空中に浮遊している。
 だが、それだけだった。
 垣根に対して攻撃行動を行わない。
「一体何が……」
 義手の左腕に埋め込んだコントローラーを操作し姫垣を『自動運転』から『手動運転』へと切り替える。
 しかし、それでも姫垣は反応しない。故障でないのなら、考え得る原因は一つ。
「電磁波が……遮断されている……?」
「違ぇよ。遮断じゃねぇ、ジャミングだ。元々の電磁波と同一周波数の異なる電磁波を流して、元々の電磁波を攪乱した」
「馬鹿を言うな、ジャミングだと!? 『超電磁砲』ならいざ知らず、君には電磁波を起こす能力はない!」
 幻生の声から余裕が消え、口調が厳しくなった。
 対して、垣根は落ち着いた口で答える。
「あぁその通りだ、俺は電磁波なんて起こしちゃいない」
「なっ……?」
「ただ、テメェがヒメを操るためにこの部屋に放っている電磁波に『干渉』して、元々の電磁波を防碍する電磁波に変えただけだ。いや、違うか。実際に計測したら電磁波に変化なんて起きちゃいねぇだろうからな。『干渉』した電磁波に、『他の電磁波にぶつかるとそれを電波防碍されたのと同じ状態にさせる』という性質を与えたって言う方が正確か」
 語る垣根の姿は、どこかアウレオルスのそれに似ていた。
「そ、それこそ無理な話だ。君の能力は、この世界に対して一切影響力を持たない!」
「あーぁ」
 垣根は、大きく溜息を吐いた。

「一体いつの話をしてんだ、テメェは」

499垣根帝督の十番勝負 第八戦『木原幻生』後編:2011/05/08(日) 04:50:27 ID:.QO/6Ixk
「…………ま、まさか貴様ッ!!」
 幻生の表情が、戸惑いから何かを確信した顔へと変わる。
「今更気づいたって遅ぇよ」
 言って、垣根は右の翼を前方――幻生の方へ向かって一振りする。
 すると、翼を通過した流水――先程の姫垣の攻撃によって天井から降り注いでいた人工の雨の水滴が、急激に角度を変え、幻生の立つ位置めがけて降り注ぐ。
「くっ……」
 幻生の顔が歪む。
 あの雨には何かがある、電磁波に施されたような、何かしらの細工が。
 そう思うものの、『未元物質』の槍や円錐体ならいざ知らず、隙間なく浴びせられる雨の水滴を全て避けることは出来ない。
 幻生は半身になると、義手である左腕を前方に対し構える。
 自身を襲う範囲の雨粒だけでも、丈夫な左腕でガードしようとしたのだ。
 だが、
「グ、ァァァァァァァァッッッッッッッッッッ!!!???」
 幻生は次の瞬間全身に攻撃の連打を受けていた。
 まず、義手を形作る学園都市製の特殊合金が雨粒を浴びてみるみる溶けていった。
 続いて、義手のガードを容易く突破した雨粒は、幻生の身体へと『突き刺さった』。まるで水の硬度ではありえない。それこそ銃弾のように、乱射されたマシンガンの弾丸のように、だ。
 硬いのならば弾き返そうと残された右腕を懸命に振るが、それも左目と右太股を貫かれた痛みに一時停止する。
 そしてひるんだところに言葉通り雨霰と降り注ぐ水滴によって、幻生の身体には大小様々な風穴が空くこととなった。
「が……はぁ、はぁ……『干渉』……そうか、なるほど……確かにこれは……『干渉』と呼ぶべきシロモノだ……」
 それでも幻生は生きていた。片膝をつきすらしていない。
「へぇ、タフだな。――そう、『干渉』だ。さっきの電磁波は異世界の法則を用いた、『この世界の法則に則った結果』へのショートカットだったが、こっちは逆。この世界の法則を用いた、異世界の法則下での『この世界ならあり得ない筈の結果』。『濾過』ぐらいは知ってるだろ、科学者。そいつを濾紙の代わりに『未元物質』でやっただけだ。普通は水道水なんざ濾過したってどうにもならねぇが、まぁ水道水だって純物質のH2Oって訳じゃねぇんだ。もっとキメの細かい濾材……いや違うか、網の目自体がこの世界のそれとはまるで異なる濾材を使えば、変化は起こる。金属に対してはこれを溶かし、人体に対してはこれを貫く液体になるっつー変化がな。もっとも、普通に計測したらpH自体はまるで変わってねぇだろうが」
 垣根の解説に、幻生は全てを理解したようだった。だらりと両腕を垂らし、ふらふらと身体を左右に揺らし――
「く、は、はははははははははははっははははははっ、がっ、ははははぁっはははははは!!!!!!!!」
 壊れた人形のように笑い声を上げた。
 そして、垣根を『見た』。
 おそらくは、この部屋に入って初めて。
 今までのような興味の失せたものに対する冷めた目ではなく、『原石』たる姫垣を見ていたのと同じ、好奇の目で。

500垣根帝督の十番勝負 第八戦『木原幻生』後編:2011/05/08(日) 04:50:42 ID:.QO/6Ixk
「面白ェ面白ェ面白ェ面白ェ面白ェ面白ェ面白ェ面白ェ面白ェ面白ェ面白ェ面白ェ面白ェ面白ェなぁオイ未元物質!! 現実世界に『干渉』!? 何でもっと早く言わねぇんだクソ野郎! それだけでテメェの活用方法はゴマンと増える! 正直よぉ、この一年でテメェの評価ってのはガタ落ちしてたんだぜぇ。今までは『未元物質』っつー能力が全くのブラックボックスだったからこそ将来の可能性を考えて第二位にいたわけだが、この一年俺様が研究してその化けの皮を剥がしちまった。摩訶不思議! ファンタスティック! だがそいつは全部絵本の中の妄想話で、この世界にゃ何の影響もねぇ、ってなぁ!! ところがどうだ!? 今のテメェの能力は『干渉』はぁぁ! 今までのつっっっっかえねぇクソみたいな能力とはまるで違う! これなら『絶対能力』への道が拓けるかもしれねぇ! もう『原石』と『体晶』の実験なんざどうでもいい! 垣根姫垣は返してやる! 一生遊べる金をくれてやる! だからさっさと俺様に研究させやがれ!」
 人が変わったように、叫び、喚く幻生。
 垣根はそれを中空から見下ろしながら、静かに告げた。
「……ある意味テメェはすげぇよ。なんたって、その演説には一ミリたりとも嘘が見えねぇ。命乞いでも何でもない、テメェは本当にただ『絶対能力』を開花させることしか考えてねぇ。表彰状モンの『マッドサイエンティスト』だ。そうすると逆に不思議だ。どうしてテメェはそこまで『絶対能力』に拘る?」
「愚問だ垣根帝督。『マッドサイエンティスト』だからだろうが」
 垣根の質問に幻生は一瞬の躊躇いもなく即答する。
「……マトモに答える気はねぇか。じゃあ最後の質問だ。回答によっちゃ、その提案を呑んでやってもいい」
「何だ?」
「俺をもう一度研究する――その前に、『原石』能力者の能力を失わせる研究をする気はあるか? ヒメの『原石』としての能力を取り除き……ヒメを『一般人』に戻す気はあるか?」
 例え自身が地獄の果てに墜ちようとも、姫垣が何不自由なく幸せな生活を送れればそれで良い。
 それは、つい先程アウレオルスとした約束だ。
 だが。
「愚問だ愚問だ垣根帝督ぅぅぅぅ! テメェは鼻をかんだ後のティッシュを広げて箱に戻すか? 使い切ったボールペンの芯を大事に取っておくか?」
「…………そうか」
 冷めた声で呟くと、垣根は両翼を大きくはためかせた。
 途端に、ボゴンッ! という音とともに実験室の天井が丸ごとなくなった。
 『上昇気流』に巻き込まれて強引に壁との接続を引きちぎられ、宙を舞ったのだ。
「じゃあ……」
 飛び込んでくるのは満天の星明かり。
 垣根はその光に両翼を翳す。
「ここで仕舞いだ。木原幻生」
 『未元物質』の翼、その羽根の隙間から幾本もの可視性の光線が放たれた。
 星の光に『干渉』し、異世界の『回折』という物理法則を適応させたのだ。
 それらは中空で絡み合い、太い一本の光線へと変化すると、そのまま傷ついて動けないでいる木原幻生へと突き刺さった。
 ドゴォン!! という大きな音が鳴り響く。
 光線の余波だけで、実験室内のあらゆる機材が台風に直撃されたかのように乱雑に飛び、転がる。
「ハァッハハハハハハハハハハッハァッ!!! すげぇ!! すげぇぞ『未元物質』ァァァァァァ!!」
 光の中から絶叫が聞こえる。だがそれも圧倒的なまでの光量と爆音の中で、電池が切れたかのようにプツリ、と途切れてしまった。
 数秒遅れて、部屋の外から鉄筋が地面に降り注ぐような連続的な音が響いてきた。おそらくは天井がどこかに着地したのだろう。天井と一緒にスプリンクラーも吹き飛んだため、それを最後に室内は静かになった。
 そして、かつての実験室はミサイルでも撃ち込まれたかのような瓦礫だらけの惨状を見せていた。
 幻生の姿は、最早確認できない。
 光線に焼かれて死んだか、瓦礫に潰されて死んだか。
 何にせよ、垣根にはもうどうでもよいことであった。
「……まだ、終わってねぇ」
 やるべき事が、もう一つあるのだから。

501垣根帝督の十番勝負 第八戦『木原幻生』後編:2011/05/08(日) 04:51:00 ID:.QO/6Ixk
 垣根は翼を微調整し、空中を滑るように姫垣のもとへと進んでいく。
 そして、目を開いたまま、一切の生物的反応を起こさずに空中に漂っている姫垣の身体を抱く。
「ァ、ァァァァァァaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa」
 途端に、姫垣の身体が痙攣を始めた。
 それに連動するように、背中の三対六枚の羽根が蛇のようにうねり、六方向から一斉に垣根へと襲いかかる。
(『体晶』による暴走状態……接触してきた『外敵』に対する本能的な拒絶行動、か)
 状況を分析し、垣根もまた翼を大きく広げた。
(イケる筈だ……)
 垣根は右手を握りしめる。
 そこには、先ほど串刺し状態を逃れるために破壊した水晶体の一欠片があった。
「しらべおわりました(解析終了)ォォォォォォォォォォォ!!!」
 垣根が、六方向へと円錐形の『未元物質』を放つ。
 瞬時に衝突する羽根と円錐。
 先程と同じならば、垣根の『未元物質』が『中和』され、消えてしまう筈だが……
「ァァァァァァaaaァaaaaaaaeeaeaeae????」
 『中和』されたのは、姫垣の羽根の方だった。
 姫垣の六枚の翼は、それぞれ半分ほどの長さにまで縮んでいたのだ。
「そっちがこっちを『中和』出来るなら、こっちもそっちを『中和』出来るだろ。んでもって……」
 垣根は両翼を一瞬のうちに二倍ほどの幅と長さを持つそれへと変化させ、姫垣の身体を丸ごと包み込んだ。
「互いに『中和』し合うってことは、同じ世界のプラスマイナス、正反、正負、陽陰の性質を持ってるって事だ。そう、ヒメの能力が、『原石』が『科学』だろうが『魔術』だろうが或いは本当に『原石』と称されるべき双方とも更に異なる超常能力だろうが……俺の『未元物質』は、それと同じフィールドに存在する能力だ」
 確かに垣根の能力は能力開発の結果開花した。
 公式には、そういうことになっている。
 だが、例えば科学的見地からは何の意味もなくとも魔術的な能力を、または科学的でも魔術的でもない能力を開花させる何かしらのアクションが、開発中の垣根に対し、日常の何気ない物事に隠れて意図せず行われていたとしたら、それは本当に超能力であるのか。
 或いは逆に、垣根の能力が真に科学の産物だとしても、姫垣の能力が日常に隠れた科学的作用によって開花したものではないという確証はどこにもないのではないか。
 兄妹だからか、それともそんなものは全く関係ないのか――推測はいくらでも出来るが、無意味だ。
 大事なことは一つ、垣根の『未元物質』と姫垣の『原石』は、その根源を同じくする。
 なればこそ、こうして『中和』が出来る。
 そして、この世界に権限した能力生成物を『中和』出来るなら、その本源たる『原石』という能力そのものも『中和』出来るのではないか?
「――出来るか、じゃねぇ。やるんだ」
 羽根の一枚一枚に組み込まれた感覚器から姫垣の情報を受信、解析。
 そこから『未元物質』と同じ法則下にあるデータをピックアップ。
 アウレオルスから譲り受けたこの世界の法則も転用し、『この世界の法則の適応出来ないデータ』もまた並行して弾き出していき、取捨選択の速度と正確性を向上させる。
「iaaeaeaaaaaaaaaaaaaa……」
 その間にも姫垣の抵抗は続く。垣根の翼に覆われた空間の中で新たに果物ナイフ程度の大きさ形の水晶体を数十に渡り発現させ、
「aaaaaaaaaaaaaaa!!」
 その刃先を垣根の方へと向け、一斉に撃ち出す。
「負けっかよぉぉぉぉ!!!!」
 対して垣根も同形同数の『未元物質』を発現させ、真正面から迎え撃つ。
 両陣はその投擲者達の中間で出会い、そして。


 無音。

502垣根帝督の十番勝負 第八戦『木原幻生』後編:2011/05/08(日) 04:51:21 ID:.QO/6Ixk
 衝突音も衝撃音もない。
 垣根が即座に水晶体の成分を分析し、それと過不足なく『中和』するような性質、量の『未元物質』をもって迎撃したためだ。
(『中和』はもう完璧にマスター出来てる。だが、駄目だ。こいつに集中しちまうと、『原石』の情報解析の手が止まっちまう!)
 苦虫を噛む表情の垣根を嘲笑うように、
「aaaaaaaaaaaa!!」
 姫垣の次の攻撃が放たれる。
「ちぃっ!」
 再び『未元物質』をもってこれを『中和』する。
(くそっ! かと言って『中和』を疎かにも出来ねぇ。量が足りないなら兎も角、多すぎて『未元物質』がヒメに当たっちまったりしたら……)
「aaaaaaaaaaaaaaa、a、aaaa、ta……tata……s……」
「――?」
 姫垣の叫びが変化した。ただの雑音だったそれが、テレビのチューニングを合わせるように、少しずつ鮮明になっていく。
「ta、tataaaaaaaa、sss、aa、ke、a、t……たす……k……te…………………aa、a………………………たす、けて……」




「たすけて……てーと、にぃ」

503垣根帝督の十番勝負 第八戦『木原幻生』後編:2011/05/08(日) 04:51:57 ID:.QO/6Ixk
「くっっっっっっっっっっっそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
 垣根は一切の攻撃行動をやめ、姫垣に最接近し、その身体を両の腕でしっかりと抱きしめた。
 途端に姫垣の放った水晶体群がゼロ距離から垣根の身体を貫いたが、無視した。
「助けるから! 絶対助けるから!」
 姫垣の耳元でそう叫び、情報解析を急ぐ。
(手が、足りねぇ! もっと解析装置が必要だ)
 バッ! と垣根の背中からもう二対の翼が出現する。
 それらも合わせ、合計三対六枚となった翼と、そして二本の腕で、姫垣を包み込む。
「今、助けるから! ヒメを苦しめるもの全部、俺が取っ払ってやるから!」
 解析終了。
 そして、その情報を『中和』する『未元物質』の生成を始める。
 更にアウレオルスから受け継いだ情報を参照し、姫垣の体内、脳内の『原石』情報に『干渉』するためのプログラムを組む。
 垣根独力では年単位の時間が掛かっていたであろうそれが瞬く間に組み上がっていくことについても、今は亡き脳内の同居人に感謝しなければならない。
「あっ、と……すこ、しっ、っ!?」
 容赦なく身体中を叩く水晶体に意識を飛ばされそうになる。
「っと、まだまだ……」
 傾きかけた体勢を何とか整え、作業を続行する。
 その間――気を失っている間でさえ、垣根の両腕は決して緩まない。
「よしっ、痛っ、ぁ、『中和』用『未元物質』、生成終了……がっ、はぁっ……」
 度重なる攻撃に臓器が掻き回され、逆流した胃液と血液との混じったグロテスクな何かが口から溢れ出る。
(こんなもんじゃねぇ……ヒメはきっと、もっと苦しい思いをしてる筈だ……)
「っそ、はっ、はっ、ぁ……『未元物質』の脳内『干渉』用プログラム……完成……!!」
 バサッ! と、垣根の翼が大きく広がった。羽根一枚一枚の持つ出力端子へ『未元物質』とプログラムとが流し込まれていく。
 そして――
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!」
 羽根が翼から分離し、根元の方を注射針のようにして姫垣の身体へ次々と打ち込まれていく。ワクチンである『未元物質』とプログラムを流し終えた羽根は傷跡を残さずに姫垣の身体から抜け、ふわりと宙を舞う。それが次々と、何度も――垣根の三対六枚の翼がすべて生え変わるまで行われた。
 
 その結果。

504垣根帝督の十番勝負 第八戦『木原幻生』後編:2011/05/08(日) 04:52:13 ID:.QO/6Ixk
「a……a……a……ぁ……ぁ……」
 姫垣の水晶体の翼が先端から空気に溶けていくようにして消えていく。
 姫垣の瞳に、光が戻っていく。
 そして、かくん、と首が傾ぎ、目が閉ざされ、
「っと……」
 垣根の腕に重さが来た。水晶体による――『原石』による飛行能力が失われたのだ。
「成功……したのか?」
 垣根は姫垣の身体を抱いたまま下降する。床は先ほどの光線によって滅茶苦茶になっているため、床から円錐型の『未元物質』を生やし、台座のようになったそこへ降り立つと、姫垣の身体をその上へ横たえる。
「ヒメ! おい、ヒメ!」
 身体を揺すっていいのかも分からず、ただ耳元で呼びかける。
「起きてくれ! 起きてくれよ、ヒメ! なぁ!」
 満身創痍の自分の身体を顧みず、ただ妹の名を叫ぶ。その瞳から、涙が一滴落ちた。
 姫垣の頬を、滴が叩いた。 

「……ん。てーとにぃ?」
 姫垣の瞳が、再び開かれた。

「――ヒメ!」
 垣根は姫垣の身体を強く抱きとめる。台座にしゃがみ込み、背を丸めて、
「ヒメ! ヒメ! ヒメ!」
 大きく嗚咽する。
「て、てーとにぃ!? どどどどうしたの!? って、てーとにぃの背中からなんか生えてる!?」
「良かった! 本当に良かった!」
 垣根は一層姫垣を強く、互いの肩に相手の顔が触れるほど密に抱きしめる。
「わわ! 苦しいよてーとにぃ! へ、夜? 星? それに……」
 垣根に支えられて天を見上げる恰好になった姫垣は、空を舞う羽根に気がついた。
「わぁ、綺麗……」
 星明りに照らされる純白の台座の上に、抱き合う少年と少女。少年の背からは六枚三対の翼が生え、空舞う純白の羽根は星の光を反射して煌めく。
「なんだか……」
 垣根の耳元で、姫垣が囁く。
「なんだか、てーとにぃ。天使さんみたい」
「……そんなんじゃねぇ。そんな綺麗なもんじゃねぇんだよ、俺は」
 嗚咽交じりの垣根の言葉を、
「ううん」
 姫垣は垣根の肩に乗せた顔を左右に小さく動かして否定する。
「綺麗だよ。すっごく、綺麗だよ」
 くす、と笑って、姫垣は垣根の首に両腕を回し、抱き返す。
「……ごめんな、ヒメ」
 抱き合った姿勢のまま、垣根は姫垣の耳元で言う。
「どうして謝るの?」
 姫垣もまた、垣根の耳元で言葉を紡ぐ。
「俺のせいで、ヒメに辛い思いをさせた」
「そんなことないよ。てーとにぃのせいじゃない。それに、てーとにぃはヒメのこと、助けてくれたんでしょ?」
「どうして……」
「良く覚えてないけど……何だかすごい苦しくて、身体中痛くて。たすけて、てーとにぃって、心の中でずっとてーとにぃのこと呼んでて。……それで目が覚めたら、てーとにぃがヒメのこと抱きしめてくれてた。だから、きっと……てーとにぃ……が……」
「!? おい! どうしたヒメ!」
 姫垣の言葉が弱く、小さくなっていく。
「ううん……なんだか、ねむくなって、きて……」
「無理すんなよヒメ、どっか痛いとか……」
「でね、だから……てーとにぃが、たすけてくれたんだって……おもって……」
「ヒメ! もういい、しゃべるな! ヒメ!」
「だから……いわなくちゃって……おもって……」
 姫垣の唇が、垣根の耳に触れるほどの距離で小さく動く。

「てーと、にぃ……ありがとう……」

505垣根帝督の十番勝負 第八戦『木原幻生』後編:2011/05/08(日) 04:52:27 ID:.QO/6Ixk
 垣根の首に回されていた姫垣の両腕が、だらりと垂れ下がった。
「ヒメ!? おいヒメ! ヒメ!」
 姫垣の身体を抱え直し、その顔を見る。瞳は再び閉じられ、身体は反応しない。
「ヒメ! くそ、どうしてだよ! 『原石』は完全に取り除いたのに! ヒメ! 起きてくれ! 目を覚ましてくれよ、ヒメ! ヒメェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!」
 垣根の絶叫が響く。
 しかしその願いは届くことなく。
 垣根姫垣は眠り続け、垣根帝督は妹を胸に抱いたまま気を失った。

506垣根帝督の十番勝負 第八戦『木原幻生』後編:2011/05/08(日) 04:53:45 ID:.QO/6Ixk
「ふーん。それで、本当に『原石』能力はなくなったわけ?」
 10月1日。
 学園都市内にあるとある邸宅にて、自分が家主だとでも言いたげな堂々とした様子でパソコンを叩く少女、雲川芹亜は、背後に立つ本当の家主、貝積継敏に問いかける。
「あぁ、確認した。垣根姫垣は『原石』でもなければ能力者でもない。ただの一般人になっていたよ」
「じゃあ何で意識不明のままなの、その子は」
「『原石』ではなく、問題は『体晶』の方にあったのだ。『体晶』服用の後遺症と言ったところか。垣根帝督は『原石』自体が体内から取り除かれれば、それに作用する『体晶』も無意味なものになると考えたのだろうが、そうはいかなかった。『体晶』は未だ姫垣の体内に残存し、影響を与え続けている。もっとも、帝督は『体晶』に副作用があることを知らなかったのだから、無理からぬ話だが。副作用さえなければ、姫垣も目を覚ましただろうな」
「そういうことね。『原石』無効化なんて言ったら、貝積は喉から手が出るほど研究したがるんじゃないかと思うけど」
 後ろを振り返らず、ひたすらパソコンに向かう雲川。この会話に、世間話以上の意味はないのだ。
「あれは特例だ。互いの能力が似通っていたためにできた芸当。とても一般化できる方法ではない」
「あら、残念。で、お兄さんの方はそれから?」
「二週間余り昏睡状態が続いたが、『冥土返し』の手によって一命を取り留めた。そして、頓挫した『一方通行』の『絶対能力進化計画』と入れ替わりに彼を被検体とした新たな『絶対能力進化計画』が開始された」
「素直に従うとは思えないけど」
「姫垣を人質に取った。彼女の所在は帝督には知らされず、彼が命令に従えば姫垣を回復させるよう手を打つ、拒否すれば生命維持装置を外す、ということだそうだ」
「胸糞悪い話ね。上層部には姫垣を治す気なんてさらさらないように思えるけど」
「あぁ、だろうな。だがそれも、昨日までの話だ」
「『一方通行』の黒い翼……」
「あれのおかげで、統括理事長は計画の主軸を『一方通行』へ戻したらしい。そして、垣根帝督は暗部の一組織に身を落とすこととなった」
「それでお終い? 救われない話だけど」
「木原幻生の話から、随分脱線してしまったがな。で、その木原幻生のパソコンのメールデータは復元はまだか?」
「そう急かすな貝積……と。これで復元完了だけど」
 そう言い、雲川は貝積にパソコンのディスプレイを示す。そこには、貝積の言葉通り、幻生の行ったメールのやりつりの記録が表示されている。
「出来たか! それで、『原石』の情報は!?」
「急かすなと言った貝積。今検索をかける」
 二人が幻生のデータを漁っているのは、彼が『原石』に関わっていたということが明らかになったからだ。『未元物質』による攻撃によって幻生の研究所はほぼ全壊してしまい、8月10日に起こった事件の詳細がわかるまでに時間が掛かった。その上、研究所の『発掘作業』では幻生の有用な個人研究データを探ることが優先されたため、実用的ではない『原石』の情報は後回しにされてしまったのだ。
 ちなみに、幻生本人も瓦礫の山の中からプレスされ干物のような状態で発見され、同じく発見された完成版の『体晶』は暗部組織や被検体の能力者に使用されている。
「……と、出た。どうやら海外のブローカーか何かと『原石』の譲渡についてやりとりしてるようだけど。そこから『原石』を取り寄せられなかったから自前で用意したってことかしら。てっきり場当たり的に『原石』の実験をしたんだと思っていたけど、そうでもないのか」
「ブローカー? まさかそこは、大量に子供たちを……」
「いや、まだ手中には収めていないみたい。それもあって、あちらは譲渡を拒んだんでだろうけど。相手の名前は……ん?」
 雲川が眉をひそめて、ディスプレイを覗きこむ。
「どうした?」
「いや……」
 貝積の問いに、雲川はディスプレイのある一行を示し、宙に目をやって考え込むようにして答える。


「この、送信相手のジョージ=キングダムって名前。どっかで見たことがあるような気がするんだけど」

507垣根帝督の十番勝負 第八戦『木原幻生』後編:2011/05/08(日) 04:56:56 ID:.QO/6Ixk
 垣根帝督の十番勝負


 第八戦 『木原幻生』


 対戦結果―― 辛勝




 次戦


 対戦相手――『一方通行』

508垣根帝督の十番勝負 第九戦『一方通行』:2011/05/08(日) 04:58:58 ID:.QO/6Ixk













































省略。

509垣根帝督の十番勝負 第九戦『一方通行』:2011/05/08(日) 04:59:29 ID:.QO/6Ixk
 ――どうしてだ。
 俺もテメェも、暗闇のどん底にいる筈だ。泥の中でみじめに足掻く同じろくでなしの人でなしの筈だ。
 それどころか、テメェが今までやってきたことを思えば、俺の方がまだ上の方にいるだろうが。
 なのに。
 俺は大切な人を守れなくて。それを取り返そうと必死なのに。
 どうしてテメェは大切な人を守って。その周りにいるやつらも守って。その上無関係な連中まで守っていやがるんだ。
 どうしてそんなに余裕こいて俺を超えていくんだ。
 何が違う。俺とお前で何が違う。
 序列の差? 一番か二番か、そんなつまんねぇもんでこうも違うってのか? 
 そうじゃねぇだろ。序列が上だろうが何だろうが、こんな甘い野郎に負ける道理がねぇ。
 なのに、どうして俺が地面に這いつくばってて、奴が俺を見下ろしてる?
 どうしてだ、クソ。何でなんだよ。
 
 
 最高にムカつくんだよ――『一方通行』。

510垣根帝督の十番勝負 第九戦『一方通行』:2011/05/08(日) 05:01:03 ID:.QO/6Ixk
 垣根帝督の十番勝負



 第九戦 『一方通行』



 対戦結果――完全敗北





 次戦



 対戦相手――『エイワス』

511■■■■:2011/05/08(日) 05:11:54 ID:.QO/6Ixk
投下終了です。


……いや、言いたいことはわかります。とりあえずすいません。


このお話は、はじめは第八戦の段階で終わる予定でした。本当に、てーとくんが暗部に落ちるまでのことしか書くつもりはなくて、どうして15巻で一方通行の前に立ちはだかるに至ったかを自分勝手に妄想してみただけのものです。
なので、感想で暗部編について期待してくださっていた方、申し訳ありません。
そこは省略させていただきました。
で、悲劇としては8戦(+9で一通にぼこぼこにされて)全くの完結しました。てーとくんはご存じ脳だけになっちゃってヒメは救われませんかわいそうに。と。

しかし、当初の構想は消化したものの、書いているうちにあまりに報われないと思って、ちょっと救済策アンドお遊びとして、十戦のvsエイワスを入れました。
これは本当にいろいろと無視したりねつ造したりしまくると思いますが……ここまでついてきてくださった方はには、もう一勝負とおつきあいいただければと思います。

それから、垣根帝督の番外勝負として、短編をいくつか書くつもりです。完全にこのお話ありきの内容になると思いますが、そちらもよろしければ。

では、とりあえずはあと残すところ一戦ということで。
そして一旦は完結(仮)ということで。

感想、ご意見などいただけたら嬉しいです。
では。

512■■■■:2011/05/08(日) 15:34:12 ID:mKc3j1Xs
ここまで哀れな主人公も珍しいよ。

513■■■■:2011/05/09(月) 00:11:40 ID:Em9cqMxw


垣根が救われるといいな

514■■■■:2011/05/10(火) 22:04:15 ID:eHdYh4is
>>511
GJ!! こんなの絶対おかしいよ……
あぁ、ついに訪れたバッドエンド。分かってはいたものの、救われなさ過ぎるでしょう! ていとくん、ヒメ……うぅ
幻生のジジイは木原の血に恥じない素晴らしい壊れっぷりでした。こいつさえいなければと思うと。
第九戦は虚無感が半端ない。ていとくんの述懐がもう……哀し過ぎて、胸にこみ上げるものがあった。
過去の勝手な予想では一方戦はラストの第十戦かなーと思ってたけど、まさかエイワスとは。時系列はどのあたりになるのか、まさか未来?
アウレオルスの時のような対話形式か、まさかの超次元ホルスバトルか、最終章が楽しみです。救いはあるんでしょうか……
暗部編はカットかー、まぁ二人の悲劇にとては脇道ですもんね。でもまだ番外勝負という短編も残してるみたいだし、
本筋では語られなかった『スクール』の面々(特にドレスの少女!)との出会いとか、まさかのキャラとの対戦とか、期待せざるを得ないなぁ(チラッ
ヒメはこれまで読んだどの禁書SSのオリキャラよりもヒロイン然としていました。一番感情移入できた作品も、多分『十番勝負』です。
本当に今までお疲れ様です。次の第十戦で長かったこのシリーズが終わってしまうと思うと、何とも言えない寂しさがありますが。
最後にどんな結末を提示してくれるのか、いつも以上に期待させて頂きます。

垣根帝督の十番勝負

第八戦 『木原幻生』 / 第九戦 『一方通行』

読了結果―― 次回作ってもう考えてたりします?

515■■■■:2011/05/10(火) 23:31:01 ID:3csEXszI
スレが違うと思うけれどもし原作で11番目の勝負があったとしたら
初春飾利との勝負が出てほしいな。

516■■■■:2011/05/11(水) 01:11:17 ID:8SIkfiQU
>>512-515
感想ありがとうございます。
なんかもうひたすら哀れな感じですいません。
十戦で何とか挽回を……
>>514
ご推察の通り、当初は9が姫垣で、10が一通の予定でした。
でもこのままじゃ「こんなの絶対おかしいよ」どころか「我はこの一刀に賭ける修羅」 になってしまいそうで……あれリメイクするんですってね、また懐かしいものを。
エイワス編は、丁度エイワスが垣根のことを言及していたあたりの話になります。
脳味噌しか残ってないけど、エイワス→AIM拡散力場→超能力→脳というむちゃくちゃな論理でアウレオルスのように垣根脳内にエイワスを出すつもりです。
ぶっ飛んでますがどうか大目に……
短編のドレスの女との出会いについてはドンピシャです。サイコメトリか何かですかw
>>515
垣根VS初春は是非「わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜 」を、と宣伝。

517■■■■:2011/05/11(水) 08:14:05 ID:HGmWJhfk
age

518IF 分岐物語の作者改めChangeの作者:2011/05/15(日) 21:40:30 ID:LgNkFau2
どうも二週間ぶりでございます。
前作『IF 分岐物語』では多くのご感想を頂き、誠にありがとうございました。
てことで二作目です。
今回も長くなりそうですが、今度は前回よりものんびりUPする予定です。
名前の通りで、今回のタイトルは『Change』。
昔、こういうタイトルのドラマがあって、あれは主人公とヒロインが入れ替わった話じゃなかったかなと。
この話でも誰かと誰かが入れ替わりますですよ。て言うか、出だしでいきなり誰かと誰かが分かっちゃうんですけどね。
さて、毎度のことながらの留意事項!

・『IF 分岐物語』の設定を引き摺ってますので、まずは、そちらに目を通していただいた方がよろしいかと。単独では分からない設定が出てきます。
・原作22巻で、アレイスターがフィアンマに憤慨した理由が、(原作は結構、深いと思うけど)無茶苦茶浅はかなものになっています。
・神○一先生の『クロス○ディア』及び寺沢○介先生の『ミスター○っ子』ネタが含まれています。分かってもスルーよろしくです。


実のところ、絶不調の中で書いたものですので、お見苦しい表現が多々あろうかと思いますが、温かい目と広い心で読んでいただけるとありがたいです。
ただ、別作品スレで、なんとも文章について色々言われることがあるものですから、今回はその辺りの指摘をしていただけると嬉しいかなと。
某スレだと、言っては来るんだけど、具体的にどういったところが、という回答がないんですよね。
後学のためにも、叩いているような表現は凹みますが、指摘いただける部分は素直に参考にしようかと思いますので感想共々、是非、よろしくお願い申し上げます。
はてさて、今回のお話はちゃんと禁書の雰囲気が出てるのやら。(^^;)

519Change1−1:2011/05/15(日) 21:42:05 ID:LgNkFau2
 さて、この状況を説明する前に、一つ、とある二人の叫び声を聞いてみようか。


「んな! なんで!? 何で、〝私〟が目の前にいるの!?」
「どうして!? どうして〝私〟が目の前にいるんだよ!?」


 叫んだのは二人。
 一方は、銀髪碧眼で白い修道服に身を包んでいる少女。
 一方は、茶髪のショートカットでベージュ色のブレザーに、紺色チェックのプリーツスカートという学園都市有数の高レベルお嬢様学校・常盤台中学の少女。
 しかし、お互い、目の前の相手を見て叫んだのである。
 そう。今、インデックスと御坂美琴は、目の前にいる『自分たち』に向かって、言い放ったのだ。
「……なあ、こういう場合、俺はどうりアクションとればいいのかな? 白井さん……」
「……是非とも、わたくしにそれをレクチャーしてくださいませんか? 殿方さま……」
 声を上げた後、お互いに指差して、呆然と口をパクパクさせながら固まっているインデックスと美琴を眺めながら、やっぱり、目の前で起こったことが理解できず、愕然と、お互いに問いかける上条当麻と白井黒子。
 人とは、得てして、想像外のことが発生し、先に驚嘆のセリフを取られてしまうと、何をしていいものか分からなくなるものである。
 ちなみに、場所は、第七学区のとある公園。
 かつて、上条当麻の二千円札と御坂美琴の一万円札を飲み込んだことがあり、それ以降、どう考えても、それ以上の飲料を無償で提供してしまっている自販機の前である。
 年が明けたばかりの三学期早々。晴れる日が多い学園都市の冬で、珍しく、雪国のような思いグレーの雷雲が稲光を発しながら街を覆っていて、天気予報ではところにより雪が降る、と言っていたそんなある日。
 結構近くに雷が落ちて、ふと気がついたら、インデックスと美琴が入れ替わっていたのだ。
 普段であれば、こういうことには、上条当麻の方が絡んできそうなものなのだが、今回、彼はまったくの無傷である。
 珍しいこともあるもんだ、と、上条は考えたりもしたのだが、目の前の出来事に、そんな思考はどこかに吹き飛んだ。
(何でこんなことに?)
 などと、上条当麻と白井黒子は、目の前の異変に同じことを思いながら、原因にはまるっきり繋がらないので無駄なことだとは理解していても、今、この状況に至るまでの今日ことを振り返ってみていたりする。

520Change1−2:2011/05/15(日) 21:43:23 ID:LgNkFau2
◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇

「とうまとうま。ここ、どこだか分かる?」
「ん? この銭湯か? 覚えてない。俺はここに辿り着けなかったはずだ」
「正解なんだよ、とうま♪」
 今日は珍しく補習の無かった放課後。
 校門のところで待っていたインデックスに連れられて、上条当麻は学園都市巡りをやっていた。
 これは、冬休みが明けて、学校からの帰り道に、いつもインデックスがやっていたことだった。
 なんせ冬休み中、上条当麻が、自分は退院したというのに、毎日毎日、まだ入院リハビリ生活を送る御坂美琴のお見舞いに行っていたから、一度も二人で『外』に出かけたことがなかったのだ。
 それも、一日の面会時間を目いっぱい使って。
 もちろん、病院へはインデックスも一緒に行っていたし、インデックスも、そんな上条の行動を止めることはしなかった。
 むしろ、インデックス自身が美琴を見舞わなければ、という責務に駆られていた。
 無理も無い。
 何と言っても、御坂美琴は、今回ばかりは上条当麻の命の恩人なのだ。しかも、上条よりも重症で、リハビリを経ないと退院できないほどだったし、その主な原因は(フィアンマが最大だと思うのだが)自分にある、とインデックスは思い込んでいるのだ。
 それでも、美琴とインデックスが顔を合わせると、前ほどでないにしろ、やっぱりギスギスしていて、上条がいつも愛想笑いを浮かべながら二人をなだめる羽目になっていた。もちろん、上条にはなぜ二人が険悪なのかは理解していない。そのことが余計に二人を苛立たせて、ただでさえギスギスしているものだから、腹いせにインデックスは噛み付いてくるわ、美琴は雷撃の槍をとばすわ、と散々な毎日を送っていたわけなのだが、それでも、そんな騒がしい平穏が上条当麻、インデックス、御坂美琴にとっては心地よいものだった。
 そして、明日から新学期、という日に美琴は退院できたのである。
 以来、インデックスは上条当麻を放課後に連れ出すようになった。
 理由は至極単純。
 上条当麻に、本当に自分たちが出会った過去が戻って、それが嬉しくて、ことあるたびに、二人で歩いた場所に寄りたいからだ。
 さすがに学園都市の外、わだつみやアドリア海、イギリスには連れて行くことはできなくても、学園都市内でも二人で歩いた場所はたくさんある。
 三日前はレジャーお風呂。
 一昨日は焼肉屋。
 昨日は地下街アミューズセンター。
 三沢塾にも行ったし、空港にも立ち寄った。冬なのに(夏に入ることができなかった)アイスクリーム屋も。
 てことで、今日は、出会って三日後の夜、神裂火織に襲撃を受けた陸橋の近くにある銭湯に来ていたというわけである。
 もっとも、放課後、と言うこともあって回れる数はせいぜい一日一つか二つ、多くても三つだが。
 そして、今日に関して言えば、
「今日はここだけか?」
「うん。ちょっと学生寮から遠いからね。あとはスーパーに寄ってご飯だよ」
「了解しました」
 言って、二人は歩く方向を変えた。

521Change1−3:2011/05/15(日) 21:45:26 ID:LgNkFau2
「は? 一端覧祭(いちはならんさい)がまだ終わってない?」
 久々の登校。三学期自体は一週間ほど前から始まっていたのだが、とある事情の後遺症があったので、大事を取って、もう一週間休んだ御坂美琴にとっては実に、ほぼ三ヶ月ぶりの登校であり、廊下や教室ですれ違う生徒、先生、全員に気遣われたこともあって、その日の授業は何だか頭に入らなかった気がする放課後、御坂美琴は隣を歩く白井黒子から、そう聞かされた。
「その通りですの。お姉様も知ってのとおり、すぐに終結したとは言え、戦争がありましたし、終わったのが十月三十日だったことで、既に延期を決定していた一端覧祭(いちはならんさい)を再度、開催するにも準備期間が足りず、ましてや学園都市全ての学校は二学期の中間試験を中止して、期末一本にしましたから試験勉強のために十一月に開くこともできず、期末試験が終わりましたら、わずか二週間足らずで冬休み。と言うわけで、一端覧祭(いちはならんさい)は二月第一週になったのですわ」
「なるほどねー」
「ちなみにお姉様は期末試験、どうなさいましたの?」
「んー、何だかよく分かんないけど免除で点数的にもOKだって。良かったのか悪かったのかは判断し辛いところだけどね。だって、みんな十二月に頑張ったんでしょ? 私は意識不明だったからって、免除ってことに悪い気がしてならないのよ」
「レ、レベル5の特権ですの?」
「さあ?」
 美琴と白井は知らないことなのだが、もちろん、レベル5の特権などではない。
 実のところ、この免除は、ある意味、報奨金みたいなもので、『幻想殺し』の右手を持つ少年を、魔術サイドに渡すことなく、学園都市という科学サイドに持ち帰ってきたことに対する、それも統括理事会のさらにその上、学園都市の長に君臨するアレイスター=クロウリー直々のご褒美だったりする。
 フィアンマの一件で、アレイスターが怒りを感じるほど、自身のプランが大幅に遅れるところだったところを、偶然とは言え、救われた形になったのだ。さすがのアレイスターも学園都市無断外出の懲罰を取り消してなおかつ褒美を与えるに足りる、と柄にも無く思ってしまったのだろう。
 それゆえ、御坂美琴は、晴れて、二学期の期末試験を受けることなく、三学期の成績がよほど悪くない限り、進級が確定したのである。
 さすがにこの処置は、学園都市に住む学生全員が羨ましい、と感じても仕方ないことだった。特に毎日が補修の、とある高校に通う無能力少年は地団駄を踏んで涙をだくだく流しながらあまりの境遇の違いに抗議することだろう。
 むろん、そんなことを言えば「じゃあ、レベル5になったら考えてあげる」と返されてしまうこと間違いなしだが。
「はぁ〜〜〜まあ、お姉さまならそれくらいの処置があってもおかしくありませんけど、やはり、羨ましいことこの上ないですわね……」
「だから、それが良いことなのか悪いことなのか判断できないって言ったじゃない」
 白井黒子の溜息に、美琴も苦笑を浮かべて答えている。
「そう言えば、お姉様。お姉様は体中の筋肉が萎縮して、目が覚めた直後一週間ほど動くこともできなかったはずですけど、この二週間、どんなリハビリをされたので? 今はもう、ほとんど普段の生活には支障の無いレベルで動けてますわよね?」
 右手の親指と人差し指で顎を挟み込み、美琴の体を天辺から足の先まで、どこか探るように見回してから、今さらながら問いかける白井黒子。
 もっとも、それは仕方がない話で、美琴が退院して寮に戻ってきたからというもの、本来的には美琴がいないからってことで参加することにした風紀委員(ジャッジメント)の夜間パトロールだったはずなのに、美琴が戻ったから、という理由で止めさせてもらえる筈も無く、パトロールから戻ってみれば、美琴は既に就寝していたので聞くタイミングを逃してしまって今日まで来ていたのだ。
 ちなみに、朝は、女の子特有の諸事情により、あんまり長話になりそうな話題はできなかったし、新学期になってから、二人一緒に帰れたのは今日が初めてだった。

522Change1−4:2011/05/15(日) 21:46:59 ID:LgNkFau2
「ああ、んまあ、過去の回り道が今になって活きた、って感じかな?」
 美琴は少し視線を逸らして、気まずい笑顔を返していた。
 白井は「ん?」という顔をする。
「私の能力をちょっと利用したの。そうしたらさ、案外、早く回復できちゃって」
「はあ?」
 思いっきり端折った説明をする美琴に、いぶかしげな声を漏らす白井。
 しかし、白井も『能力をちょっと利用した』と言われてしまえば、それ以上は突っ込めない。何と言っても美琴のレベルは5なのだ。大能力者(レベル4)の自分よりも能力分野において、それ相当の使い方を知っているだろうし、聞いたところで、理解できるかどうか分からない。それゆえ、深くは聞けなかった。
 言うまでもなく、御坂美琴が利用したのは『筋ジストロフィー』克服のための自身の能力の活かし方だ。
 過去に自分のDNAマップを提供した、美琴の最大の動機は『筋ジストロフィー』患者を救いたい、だったわけだが、その時に、少し、どうやって自分の能力を活かすのかを調べたことがあったのだ。もちろん、今よりも幼い自分が辿り着いた答えは研究者であれば、当然、到達していた答えだったろうから自分の胸にしまっておいた。その知識が今回、活きたわけである。美琴もまた、『筋肉が萎縮して動けなかった』わけだから。
 妹達(シスターズ)の一件があっただけに、美琴が複雑な気持ちになるのは仕方がないことだった。
「とりあえず、今日は非番のアンタに付き合ってあげるわ。ずっと寂しい思いをさせただろうしね」
「よ、よろしいのですか?」
「迷惑料だと思ってちょうだい。変態染みたことだけはゴメンだけど、それ以外ならOKよ」
 言って、美琴はウインクしてみせる。
 一瞬、硬直した白井黒子は、嬉し涙さえ浮かべつつ、愛しのお姉さまの左腕に抱きついた。
(ま、今日くらいは仕方ないか……)
 美琴も、苦笑を浮かべながら、今回だけは受け入れることにした。


「今日のごっはんはなぁにかなぁ♪」
 上機嫌な顔で、どこかスキップするように歩くインデックスの後ろを、なんだか、微笑ましいものを見つめながら付いて行く上条当麻。
 『ベツレヘムの星』でシリアスいっぱいに記憶喪失のことを打ち明けたときの雰囲気とはまるっきり真逆だな、などと思いつつ、しかし、そんなインデックスを見ていれば和んで和んで仕方がない、としか上条は感じなかった。
 今、歩いているのは第七学区の、とある公園。
 スーパーに行くためには、普通の道路を歩くよりも、ここを通った方が早いからなのだが、上条はふと思う。
(……なぁんか、ここが描写されるときって、いつもいつも妙な目に合うんだが……)
 むろんそれは正解だ。
 主に、上条と学園都市第三位の少女が原因で。
 もちろん今日も例外はなく、
「ちぇいさー!」
 と言う、たわけた掛け声と、その後から聞こえてくるガヅン!という衝撃音。
「ほえ? 今の声って……」
 思わず、インデックスがスキップをやめるほどの出来事。
 当然、上条は後ろで頭を抱えている。

523Change1−5:2011/05/15(日) 21:48:11 ID:LgNkFau2
(う、うわぁ……何でこう、タイミング良く……つうか、悪いのかもしれんが、美琴に出くわすかなぁ……ひょっとして、俺とアイツって妙な運命の糸で結ばれてんのか? 赤色じゃない、って気がする関わり方だけどさ……)
 確かに、この場での彼女と上条の関わり方において、甘い展開というものはほぼ皆無に等しい。
 ケンカを売られるわ待ち伏せされるわ窃盗の片棒担がされるわドス黒い学園都市の闇の部分を垣間見せられる羽目になるわフリーキックのボールが後頭部に直撃するわ漏電を抑えさせられるわ。
 この公園で、上条当麻と御坂美琴が交差したとき、青春真っ盛りの思春期男女といった展開の物語が始まる、なんてことは一度もなかったと言っても過言ではないだろう。
 まあ、それ以外の場所であれば案外そうでもなかったりするのだが。
 膝枕したりお互いがお互いを押し倒したり何度も何度も手を繋いだり力いっぱい互いに身を寄せ合ったり一緒にフォークダンスを踊ったり文字通り抱き合ったりという、(それもたくさんの周囲の目があるにも関わらず)そんな状況になることが多々あったというのに。
 周りから見れば、確実に殺意と敵意とげんなり感を余すところなく向けられる砂を吐きそうになるくらいのキャッキャウフフ展開を見せ付けてしまっているというのに。
 なぜか二人には、その自覚はまったくなかったりする。当人たちは悪友同士の馴れ合いのつもりなのかもしれない。美琴の方は上条当麻を意識していないこともないのだが、こと『二人の行動』となると無自覚なのだ。
(いやまあ、別に甘い展開までじゃなくていいから、せめて、もうちょっと普通の展開でだなぁ……)
 などと考える無自覚上条はふと気づく。 
「って、インデックス!?」
 気づけば、既にインデックスが駆け出していたのだ。
(わぁ! 馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿! 自分から厄介ごとに首突っ込んでじゃねえ!)
 焦って、インデックスを追う上条はあるが、もちろん、それは上条自身が御坂美琴と顔を合わせることと同意語である。
「あれ? あんたたち?」
「やっぱり短髪!」
 一足先に、御坂美琴とインデックスは顔を合わせてしまっていた。


 今日は運よく、二本出たからアンタにあげるわ、と言って美琴はインデックスに『ほっとおしるこ』を渡す。
 寒い冬という、この時期であれば、そんなにマズイ飲み物ではない。
 実のところ、当初、美琴は、傍にいた白井黒子に勧めたのだが、白井が断ったのである。
 本来であれば、美琴からのものなのだから、取り乱して喜びながら受け取りそうなものなのだが、そこはまあ白井も年頃の女の子ということだ。甘々なものには抵抗があるのだろう。
「とうま、ぷるたぶ開けてほしいんだよ」
「……まだ、開けられんのか? お前……」
 言いながら、上条はふたを開けて、インデックスに渡す。インデックスは即座に一気に飲み干して、
「ぷはー。あたたかくて甘くて美味しい〜〜〜で、なんで短髪がここにいるの?」
「随分、切り替えが早いわね。ちなみに私が居るのは、帰り道の途中でここに寄ったってだけよ。この自販機に用があったし」
 美琴は、スープカレーを一口啜った後、ちらりと自販機を見つめてそう言った。
「お前なあ……前も言ったけど、蹴りはどうかと思うぞ。いくら短パンだからって、太ももの付け根まで見えてるのは変わんねえだからさ」
「う、うるさいわね! ちゃんと周りに黒子以外が居ないことを確認したから良いの!」
「……その前に、無料で自販機から飲料を摂取するのは如何かと思うのですが……」
 上条さん、ツッコミどころが違いますわよ、と心の中で付け加えて、白井が口を挟んでくる。
 ジャッジメントの白井黒子としては、美琴の行為を見過ごすのはいささか抵抗があるのだが、いかんせん、あの『おばーちゃん式ナナメ四五度からの打撃による故障機会再生法』は常盤台中学内伝である。白井自身もやったことがあるだけに美琴をしょっ引くことはできなかった。
 もっとも、この自販機に一番蹴りを叩き込んでいるのは美琴なのかもしれないが、それは言うまい。

524Change1−6:2011/05/15(日) 21:49:32 ID:LgNkFau2
「………………ねえ、とうまちょっといい?」
「どうしたんだ、インデックス?」
「…………………………………………何で短髪のスカートの中が短パンって知ってるのかな?」
 ぎっくぅぅぅ!と上条の心臓が飛び出さんばかりの音を響かせた。
 そう、美琴のスカートの中身が短パンだ、という事実自体は何の問題もないし、まったくやましさもない。それは間違いない。なぜなら、健全な青春真っ盛りの男子高校生としては、可愛い女の子のミニスカートの中身が短パンでは夢も希望もないからなのだが、だからと言って、スカートの中身が短パンであることを知るにはそれ相応の前段階が必要になってくる。
 すなわち。
 スカートの中を見る機会が何度もなければならない、ということだ。
 しかし今の状況では、上条は衝撃音しか聞こえなかったはずである。衝撃音が聞こえたから、こっちに来たわけなのだが、当然、美琴のスカートの中身など確認できるわけがない。
 そんな上条がなぜ、美琴のスカートの中が短パンであることを知っているのか、というところにインデックスは疑問を感じるのだ。
 上条当麻は瞬時に悟ってしまった。
 決して、インデックスはその原因を好意的に捉えたりはしていないということを。
 いつもの上条の悪い癖、と言うか、体質が出たとしか思っていないということを。
「そ、それはだな、インデックス! 前に、御坂がこの自販機に上段回し蹴りを入れているのを見たことがあったからであってだな! お前が思っているようなシチュエーションじゃなくてだ……」
「…………………………………………スカートの中を見たのはそれ一回だけ? それだと、とうまは『いくら短パンだからって、太ももの付け根まで見えてるのは変わんねえだからさ』とは言わないと思うよ。短髪のスカートの中が常に短パンだって知らないと言えないもん」
「う゛……! そ、そりゃ確かに御坂が自販機に蹴りを入れたのを見たのはそれ一回だが……って、ハッ! しまった!」
 既に、インデックスが凶悪な笑みで八重歯を輝かせ、碧眼を前髪の影に隠して、いつでも噛み付けますスタンバイOKな態勢になっていることに上条は気づくのが遅れてしまった。
「やっぱりとうまはとうまなんだよ! 何でこういつもいつもいつもいつもいつも女の子の裸見たりパンツ見たりしてるのかな!」
「ま、まて! 俺は御坂の裸は見たことないぞ! 裸どころかパンツだって一度も見たことねえ!」
 ぐわぁ!と大口を開けて、飛び上がって突撃してくるインデックスに、咄嗟に防御体制を引く上条。
 もちろん、その防御体制は、ほとんど薄皮一枚と言ってもいいくらい貧弱なものに過ぎない。
 がちん!「あれ?」
 しかし、インデックスの攻撃は上条に届かなかった。
 まったく手ごたえのない口に疑問を持って、きょろきょろ周りを見渡せば、美琴が上条の襟首を掴んで自分の方に寄せていた。
 百発百中のはずの噛み付き攻撃がかわされたのは、これで二度目である。それも二度とも、美琴が、インデックス以上のスピードで上条を引っ張った結果だった。
 上条自身がインデックスの噛み付き攻撃をかわしたことは一度も無い。厳密に言えば、一度だけあるが、その一度でも、正確に言えば、完全に攻撃を避けられたわけではなかった。ちなみに、そのときの話をインデックスにすると、真っ赤な顔になって普段以上の凶暴性と攻撃性を有した噛み付き攻撃が来たりする。
 別に、美琴は上条を助けようなどとは少しも思っていなかった。
 たまたま、インデックスの牙から救った形にはなったのだが、それは是非とも聞いておきたいことがあったからに過ぎない。

525Change1−7:2011/05/15(日) 21:50:46 ID:LgNkFau2
「…………………ねえ、アンタって、ひょっとして普段から、女の子のパンツ見たり裸見たりしてるの……? 前に黒子の着替え中に入ってきたことがあったけど、アレだけじゃないわけ……?」
 バヂッと帯電しつつ、妙に低い声で問いかける美琴。
「い、いやぁ……美琴さん……随分、回復なされたようで、上条さんは嬉しいですよ? まさか、このわたくしめの体を強引に引っ張れるほどとは……」
 思い返してみれば心当たりが多すぎて、苦笑するしかない上条は振り向けない。その背後に居るのが般若か大魔神かと思えば、誰だって振り向きたくないことだろう。
「ええ……おかげさまでね……で、今度は私の質問に答えてくれるかしら……?」
「そ、それはですねーまあ、色々とありまして。上条さんの不幸スキルが呼び込んだ偶然と言いましょうか……そ、そう! 上条さんが不幸体質ですからタイミング悪く、婦女子の着替えの場面に出くわしてしまうことがあるという!」
「それのどこが不幸体質じゃああああああ!! 不幸なのは女の子であってアンタじゃないでしょうがあああああああああ!!」
 上条を投げ捨てるように、襟首から手を離して、即座に、ビリビリィィィ!! バリバリィィィィィィィ!!と、心臓に悪い轟音の雷撃を放つが、至近距離にも関わらず、条件反射的に、右手を翳して電気を無効化する上条当麻。彼はしっかり無傷である。
「だあああ! 相変わらずなんなのよ、アンタは! ここは私の電撃喰らって真っ黒こげになる場面でしょうが!!」
「そのリクエストに答えてたら死んじゃいますけどね、俺!」
「……じゃあ、天誅は私の役目かも」
 ――!!
 至近距離で、お互い詰め寄り、ぎゃあぎゃあ言い合う二人の耳が、第三者の、嵐の静けさ前だと断言できる怒気の孕んだ低い声を捉えた。
 一瞬で、上条の喉は干上がり、全身の血の気が引く。
 即座に踵を返して正対すれば、目の前の聖少女のはずのシスターの瞳が血の色(ブラッド)に輝き、どす黒いオーラを放って両手をわきわきさせている。
 文字通り、前門の虎、後門の狼である。
「うがあああああああ!」
 しばしの沈黙の後、甲高いが可愛らしくない野獣の雄たけびを上げて、犬歯をむき出しにしたインデックスが飛び掛る。今度は美琴は、上条を引き寄せる、という行動は取らない。
 と言うか、美琴にその気はまるっきり無い。
 むしろ、インデックスのやることを察知して、背中を向けた上条の両脇の下から手を突っ込み、首根っこを抑える形で羽交い絞めにするという、珍しくインデックスに協力姿勢を見せたくらいだ。
 つまり、身動きできない上条に避ける術はない。
「不幸だあああああああ!」
 上条当麻が叫んだ直後、まるで、その声に導かれたかのように、
 カッ! ガラガラガッガアアアアアアン!
「うわ!」「ひゃっ!」「ひえっ!」「はぅっ!」
 直撃はしなかったものの、本当にすぐ傍に。
 眩い閃光が走ったと感じた瞬間、風景全体が一瞬震撼したのではないかと錯覚するほどの爆撃音に似た雷が落ちたのである。
 その衝撃に四人は吹き飛ばされて――


◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇


 そして、冒頭に戻る。
 インデックスと御坂美琴が入れ替わってしまった、という冒頭に。

526Change1−8:2011/05/15(日) 21:51:52 ID:LgNkFau2
「うん、やっぱり分からん」
「当たり前ですわ!」
 上条が腕を組みつつ、うんうんと頷きながらポツリと漏らした一言に、白井が上条の後頭部をごきんとはたいてツッコミを入れる。むろんグーで。
 不意を付かれた上条は突っ伏して地面に顔面を強打する。
「や、やっぱ、不幸だ……」
 もっとも、その衝撃音で、ようやく『インデックス』と『美琴』は我に返った。
「とにかく、お二人は別にふざけているわけではありませんのね?」
 目の前の上条なんぞに構わず、白井黒子は毅然と問いかける。
「もちろんだよ!」「当たり前でしょうが!」
 見た目美琴のインデックスと、見た目インデックスの美琴が、即座に肯定。
 しかしだからと言って対策があるわけもなく。
「ふむ。雷の衝撃でお二人の人格が入れ替わったのでしょうか? なにやらお母様が若い頃にそのようなドラマがあったとお話されていたような気もしますが、まさか現実になるとは……まだまだ科学でも証明できないことはあるものですわね」
 白井黒子もまた、感想を述べるだけしかできなかったりする。
「で、どうやれば戻るんだ?」
 案外、早く立ち直った上条が割ってきた。さすがは不幸慣れしているだけあって、復活も早い。もはやギャグマンガキャラの立ち位置である。
「ううん……まったく見当も付きません。人格だけを抽出して別の人に移す装置、と言うものがあればよろしいのですが、そもそも『人格』をデータとして扱うコンピューターというものがあるのでしょうか」
「クローン技術ならありそうだけど、私たちは天然だし」
 ぶつぶつ話し合う白井と美琴を横目に、上条は見た目美琴のインデックスに耳打ちする。
「インデックス。『魔術』で戻せないか?」
「あ、そうか。ちょっと待って……って、あれ?」
「どうした?」
「……変なんだよ? 私の記憶から魔道書のことが無くなってる……」
「は? どういう意味だ?」
「そのままの意味なんだよ。どういうわけか知らないけど、魔道書の記憶が一切無い」
「何だって!?」
「ん? どうしたの?」
 上条の思わず叫んでしまった声を聞いて、美琴が問いかけてくる。
「い、いや! なんでもないなんでもない!」
 上条は慌てて否定するが、
「ああ、そう言えば、そちらの方は『魔術』に関する知識がありましたね。では、『魔術』でお姉様とあなたを元に戻せないでしょうか?」
 あっけらかんと問う白井に、上条当麻はハタと思い出した。
 もうすでに、学園都市でも『魔術』という存在は認められているということを。
 しかも、つい先日、白井はそれを目の当たりにしたのだ。だから否定しないし、『科学』で分からないなら『魔術』で何とかならないものか、と思うのは、当然の帰結と言える。
 科学サイドの人間が魔術サイドの技術に頼るのは、いささか負けを認めているようなものだと言えるかもしれないが、白井黒子はそう考えない。
 科学にできないことでも魔術であればできることもあるだろうし、魔術にできないことでも科学であればできることもあるだろう、としか思わない。

527Change1−9:2011/05/15(日) 21:52:50 ID:LgNkFau2
 だからこそ、双方の世界がバランスオブパワーで均衡状態を保っているとしか考えない。
「あっそうか。ねえ、そんな『魔術』ってないの?」
 美琴も『魔術』の存在を肯定しているから、笑顔でインデックスに問いかける。
 しばし沈黙。
 と言うか、インデックスが何も答えない。気まずげに視線を逸らし続けるだけである。まるで悪いことを見咎められた子供のように。
 それを察した上条が口を挟んできた。
「わ、悪い、二人とも。なんだかインデックスの調子が悪いのか、思い出せないらしいんだ」
「そうなの? まあ、いきなりこんなことになれば誰だってパニックになるだろうしね。その弾みで、ど忘れしたって仕方ないわよ」
 もっとも返ってきた美琴の声には悲壮感は微塵も感じられなかったし、
「なら、仕方ありませんわね。そちらの方の調子が戻るまで、不便ではございますが、このままでしばらく過ごすしかありませんわ」
 白井はどこか諦観の溜息を吐いていた。
「……お前ら、随分と冷静だな? 俺はまだ、結構パニくってるし、インデックスだって、ご覧のとおりなんだぜ?」
 思わず上条はジト目で問いかける。
「そう? パニくって元に戻れるなら、いくらでもパニックになってあげるけど、そんな訳が無いんだから、今後のことを考える方が賢明じゃない?」
「冷静さを欠いてしまっては、普段の力は出せませんでしょ? わたくしたちはそれをよく理解していますのよ。ですから、そちらの方が落ち着くの待つのが、現時点での最良の選択かと思いますの」
 さすがはレベル5とレベル4である。
 『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』が確固たるものでなければ、このような発想は生まれない。
 この辺りがレベル0との違いなのだろう。
 上条は何も言えなくなってしまい、しかし、美琴と白井はそんな上条にはにべもくれず考える。
「とは言え、この姿の私が常盤台の寮に戻るわけにはいかないわね」
「まあ、事情を説明すれば分かってもらえるでしょうけど、この方とお姉様では色々な面でサイズが違いますし、日々の生活に支障が出ることは間違いないですわ」
「なら、とりあえず、あの子の記憶の中に元に戻せる魔道書があるかどうか見極められるまで、私はこの子の住んでるところに、この子は常盤台の学生寮で過ごしてもらうってのはどう? 幸い、黒子と私が同部屋なんだから、あの子も顔見知りのアンタがいれば大丈夫でしょ?」
「それは、あの方次第ではございますが――どうします? わたくしと一緒でよろしいでしょうか?」
 黒子が問いかけたのは、もちろんインデックスに、だ。
「あ、うん! それでいいかも!」
 どこか条件反射的に首肯するインデックス。
 どうやら、しばらくの間、入れ替わり生活になるようだ。
「じゃあ、とりあえず、私のスカートのポケットに入ってる財布ちょうだい」
「えっと、これ?」
「ありがと。ん〜〜〜どれくらいの期間になるか分かんないけど、これだけあれば当面は大丈夫かな? でも、アンタもできるだけ早く落ち着きなさいよ」
「わ、分かったんだよ!」
 言って、インデックスと白井、上条と美琴はお互い踵を返して帰路につく。


 『学舎の園』入口まで歩いてきて、もうとっくに上条と美琴は見えなくなっているのだが、なんとなくインデックスは立ち止まって振り返る。
「どうされました?」
「う〜〜〜ん……なんかとっても大事なことを忘れてる気がするんだよ?」
「それは魔道書とやらのことですの?」
「ううん。何か別のこと」
「そうですの? まあ、忘れてしまっているということは大したことではないのかもしれませんわ。思い出したときにでも聞かせてくださいな」
 白井は気を使った笑顔を向ける。
「ありがとう、くろこ」
「どういたしまして」
 インデックスにとって、今、向かっている場所は自分のまったく知らないところ。
 過去にそういう経験が無かったとは言わないが、それでもやっぱり初めての場所と言うものは不安が付き纏うものだ。
 特に一人ぼっちのときは。
 しかし、今回は隣に白井黒子がいる。
 先ほどの公園での美琴のセリフではないが、見知った人間がいるというのはなんとも心強いものだとインデックスは思う。
 しかも、白井黒子とは先日、お互いにとって、とても大切な存在を取り戻すために協力し合った仲だ。これほど頼もしい相棒はいないだろう。
 再びインデックスは前を見据えて歩き出す。
 その表情には、笑顔が戻っていた。

528Change1−10:2011/05/15(日) 21:54:09 ID:LgNkFau2
「あれとそれとこれと――あ、これとこれもいるわね」
 上条当麻とインデックスの姿をした御坂美琴は第七学区のスーパーで買い物をしていた。
 カゴをカートに乗せて、カートを押しているのは美琴だ。
 美琴はどこか無頓着に見えるくらいポイポイ買い物カゴに商品を入れていく。
「おいおい、随分、高そうなものを数多くチョイスしているが、その支払い、誰がすると思ってるんだ?」
「は? 私に決まってるでしょ。そのために財布を預かったんだから」
「え? そうなの?」
「はい?」
 妙なセリフだ、と、美琴は思う。
 どういうわけか、支払いについての問いかけがあまりにナチュラルだったのと、普段からこういうやり取りをしているような話題を覆されたような返事だったからだ。
「何か変ね。まさかと思うけど、アンタ、あの子のヒモでもやってんの?」
 実のところ、今、上条が一緒にいることに関して言えば、違和感は感じていなかった。
 なんと言っても、このシスターは、なんとなくいつも上条の周りをうろちょろしている気がするからだ。
 それは、つまり、このシスターは、上条の学生寮の近所に住んでいることを意味していて、おそらく今、美琴と一緒に居るのは、このシスターの居住しているところに連れて行こうとしているからだろう、としか考えなかったから。
 だから、このシスターに住んでいるところを聞かなかったことを、あまり気にしなかったのである。
 本当は、住所を聞くのが正しいのだろうが、なんだかんだ言っても、やっぱり美琴も白井も冷静ではなかったのだ。
「いや……そういうつもりはないんだが……そうだよなぁ……そうとも言えなくもないよなぁ……はぁ……」
「? まあいいけど。で、アンタも何か買うんじゃないの? このカゴに入れればいいから」
「あ、ああ……」
 イマイチ分かり辛い上条の対応。とりあえず、そのことは置いといて買い物に戻る美琴と上条。
 で、買い物を終えて、いざレジに着いてみれば、カゴが二つになっていて、両方ともいっぱいになっていて、なんだか、上条の普段のお買い物と比べるなら、支払いの桁が一つか二つ多い。
(うっだぁぁぁ! お嬢様の買い物感覚ってどうなってるんでせうか!)
 後ろにいるので、美琴からは見えないが、後ろ頭に大きな玉の汗を浮かべている店員さんには、頭を抱えて全身を縦横無尽にオーバーアクションでくねらせまくっている上条がばっちり見えている。 
 しかし、何事も無く美琴はあっさりと、何のためらいも無くカードで支払いを終えた。
 とりあえず我を取り戻した上条は、冷や汗をダラダラ流して、後ろで財布の中身を確認していたのだが、美琴の行動に目が点になる。
「ん? 何やってんのアンタ。早く来なさいよ」
 呼びかけられる声も、何の揶揄も嘲りも無い。
 本物の真っ正直の素で言われたのだ。
「お、おい! 自分の分は自分で払うって!」
「もう払った後に言われてもねえ。面倒だし、今回は美琴センセーの奢りってことにしておきなさい」
「い、いや、あのな……」
「だったら荷物持ち! ハイよろしく!」
「おわっ!」
 突然両腕にかかる負荷に思わず腰がやられそうになる上条当麻。
 しかしそれでも踏ん張り、なんだかスキップしている美琴の後を追う。

529Change1−11:2011/05/15(日) 21:54:47 ID:LgNkFau2
「……ねえ、ちょっといい?」
「何だ?」
「…………アンタが案内してくれたのは、このシスターが住んでるところよね?」
「そうだ」
 本来であれば、超敏感な不幸センサーが美琴の様子を察してくれるのだが、今回ばかりは両腕の疲労で、そのセンサーも役に立っていないらしい。
 上条は平坦な美琴の声に気づかなかった。答える声がとっても投げやりである。
「………………私の目には、この部屋の表札がアンタの苗字に見えるんだけど?」
「そりゃそうだ。俺の部屋だからな」
 もし、普段の上条当麻であれば、もうちょっと言葉を選んだことだろう。
 しかし、今回は160kmのド直球で、しかも、『そうですが何か?』という雰囲気である。
「ほぉ………………それはつまり、アンタとあのちっこいのは一緒に住んでる、と………………?」
「はっ!」
 ようやく、上条は気づく。
 上条自身は、いまだに理由を理解できない超鈍感野郎なのだが、美琴もまたインデックス同様、上条当麻が他の女の子と一緒にいるだけで烈火のごとく怒り狂うということだけは知っている。
「ま、待て、御坂! これにはわけがあってだな!」
 手をばたばた振って、わたわたと焦りまくりながら言い訳を始めようとして、
(って、あれ?)
 ふと、上条はその違和感に気づく。
 どうやら美琴も同じことを感じたようで、その怒りが戸惑いに変わっていた。
 そう。
 普段の御坂美琴であれば、バッチンバッチンと留めなく青白い火花を放ってそうなものなのだが、それがまったく聞こえない。
「みさか……さん……?」
 目を丸くして、頬に汗を一滴流しながら、それでも呼びかける上条当麻。
 対する御坂美琴は一度、くまなく全身を見回してから、両手を握った状態で胸の前に持ってきて、ふるふる震えながら顔を上条へと向ける。
「わたし……能力が使えなくなっちゃった……?」
 インデックスは一〇万三〇〇〇冊の魔道書のことを忘れ、御坂美琴は能力の使えなくなった現実。
 上条当麻と御坂美琴は部屋の入口でしばし固まるしかできなかった。

530Change2−1:2011/05/15(日) 21:55:52 ID:LgNkFau2
「すごいかもー! 広いし、ふかふかベッドだしー!」
 御坂美琴の姿をしたインデックスは、両手を胸の前で合わせて、目に星をキラキラさせながら興奮していた。
 無理もない。
 なんと言っても、ここは学園都市有数のお嬢様学校である常盤台中学の学生寮なのだ。
 部屋にあるものは寝室用のベッドと浴室、勉強机に本棚だというのに。
 ベッドと机に関して言えば二人分あるのに。
 しかもそのベッドはシングルベッドなのに。
 それでも普段、居住している上条当麻の学生寮と比べるなら全てが豪華で、全てに気品があって、それでいて全てが広かった。
「くろこくろこ! 本当にここで寝ていいの!」
 言いながら、すでにポフっと、入口から向かって右側のベッドにダイブするインデックス。
 そのままバタ足してたりする。
「あまり、はしゃぎ過ぎないでくださいな。淑女としてはしたないですわよ」
 やれやれ、と白井は苦笑を浮かべて一つ息を吐く。
 彼女の心境からすれば、幼い妹を見る姉か、幼い子供を見る母親といったところだろうか。
「一応、寮監には事情を説明しましたから、しばらく、あなたをこの寮で生活させることに支障はございませんが、振る舞いについては少し、ご指導させていただく必要があるかもしれませんわね」
 言いながら、白井はインデックスが飛び込んだベッドの隣のベッドに腰掛ける。
 実のところ、インデックスが寝そべっているのが白井のベッドで、白井が腰掛けたのが美琴のベッドなのだが、白井はわざわざ訂正するつもりは微塵も無かった。
 済ました落ち着いている表情をしていながら、心の内では、
(うっへっへっへっ……お姉さまのベッドで今日からしばらく寝泊りできますでやんすのー☆ これはラッキーですわ♪)
 などと、淑女とは程遠い山賊の笑みを浮かべていたからだ。
「ねえ、くろこ」
「何でございましょうか?」
「おなか減った」
「……お姉様の姿で、そのようなことを言われますと、いささか抵抗がありますわね……」
「おなかいっぱい、ごはんを食べさせてくれると嬉しいな♪」
「そう言えば、お食事の時間になってましたわね。とは言え、今日はまだ、あなたを食堂に連れて行くことはできませんし……ちょっと、ここで、おとなしく待っててくださいな」
 言って、白井は立ち上がり部屋を出て行った。
 珍しく、言われた通り、インデックスはおとなしく待っている。


 五分後。


「うわうわ! 凄いごちそうかも!」
 再び、インデックスの瞳が☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆状態に。
 ベッドとベッドの間に置かれた簡易テーブルの上には、本日の夕食メニュー。
 白身魚のクリームスープ、チーズの欠片を散らした新鮮野菜サラダに、コショウとレモンの香りを効かせたパリパリのチキンソテー。そして、柔らかさ抜群のブレッドロールに優雅な芳香漂うハーブティーである。
「栄養価のことがありますので、これ以上はお出しできませんが、ささ、どうぞ召し上がってくださいませ」
「うん! いっただきまーす!」
 促されるままに、しかし、いつも通りがっつくインデックス。
 その姿はマナーもくそも無い。フォークの持ち方は無茶苦茶だわ、スープは皿で飲むわ、チキンソテーにナイフを使わないわ、ブレッドロールを鷲掴みするわ。
 もし、事情を知らない第三者が、特に常盤台中学関係者が、見た目御坂美琴のこの姿を見れば卒倒するかもしれない。
「あ、あの……ですから、お姉様の気品を傷つけてほしくないのですが……」
 白井黒子は本気で困った笑顔を浮かべるしかできなかった。
 基本、白井は、通常であれば、初春飾利以外の者と接するときは、(上条や美琴に対しても)誰よりも礼儀を欠かさないものだから、このインデックスにも、無遠慮には注意することができなかったりする。
(はぁ……これは本気で、淑女の嗜みとか礼儀とかを、ご指導させていただくしかありませんわね。期間はなんとも言えませんが、この姿で過ごす以上、この方が『御坂美琴お姉様』なのですから……)
 食事にトランス状態にあるインデックスを見つめながら、白井黒子は本日、何度目かは分からない苦笑の溜息を吐いていた。

531Change2−2:2011/05/15(日) 21:57:43 ID:LgNkFau2
「へ、へえ……ここがアンタの部屋なんだ……」
「そう言えば、お前は、来るの初めてだったな」
 及び腰で上条の左腕にしがみつく、少し顔を紅潮させたインデックスの姿をした御坂美琴の感想に、上条当麻はしれっと返していた。
 ちなみに、なぜ、美琴が上条の腕にくっついているのかというと、突然、能力を失った不安感からである。
 普段から(正確に言えば少し違うが)無能力者である上条には、強大な能力が突然無くなった美琴の心境は理解できないのかもしれない。
 いつも勝気な美琴だから、この怯えて震えている姿には少々戸惑いを感じてしまう。
「……どんな機会があれば、私がアンタの部屋に来れるのよ?」
「それもそうか」
 言い合いながら、二人は部屋の中へと進む。
「あれ?」
 そこで、美琴は目ざとく見つけた。
 ベッドの上でごろごろしている一匹の愛玩動物を。
「かっわいいいいいいいいい☆☆☆☆☆☆☆」
 ついさっきまでの不安感はどこへやら。
 あっという間に目をキラキラ状態にさせた美琴へと、『インデックス』の声を聞いた愛玩動物たる三毛猫、インデックス命名のスフィンクスは、ニャンと泣き声をあげて走ってくる。
 そのまま、胸元へとダイブ。もちろん、美琴は受け止めて、
「あ、あれ? この子に触れてるし!」
 そのまま戸惑いの声を漏らす。
 無理もない。普段の美琴は、発電系能力者特有の長所にして短所たる微弱な磁場を形成しているため、相手を察知することには突出している反面、動物には避けられてしまう体質なのだ。ところが今の美琴は『インデックス』の体を持っている。能力を失ったことから磁場も形成されていない。
 しかも、美琴は無類の可愛い物好きである。
 子猫や子犬といった愛くるしい動物たちに避けられてしまう寂しく辛い体質はどうにもならない悩みだっただけに、いざ、手にできたときの喜びは誰よりも大きいものとなる。
「きゃああああああああ! うそうそ! いいの!? 私がこの子を抱っこしていいの!?」
 とまあ、こんな具合に。
「やれやれ、今の今まで能力を失くしてブルブル震えていたのはどこのどなただったんでしょうねー」
 嘆息しつつ、しかし、普段からは決して想像できないほど、可愛らしい姿の美琴を見た上条当麻の表情はまんざらでもない笑顔が浮かんでいた。

532Change2−3:2011/05/15(日) 21:58:19 ID:LgNkFau2
 しばしの間、時間も忘れてスフィンクスと戯れていた美琴なのだが、ふと、キッチンの方からガソゴソと音が聞こえてきて、そちらに視線を移す。
 そこでは上条が、冷蔵庫から何かを取り出そうとしていた。
「何してんの?」
「ん? そろそろ晩飯の準備しようかな、って」
「ああ、そう言えばそんな時間ね。この子と遊んでて、すっかり忘れてたわ」
「そいつは何より。ま、ちょっと待ってろ。今、上条さん特製の――」
「私が作ってあげるわよ」
 少し自己陶酔っぽい上条の言葉を遮って、美琴が告げる。
「…………………………………………………………………………は?」
 一瞬、上条当麻は言われた意味が分からなかった。
 そのまま、美琴の方に視線を向けて硬直して。
「だから、私が作ってあげるってば。これから、そんなに長い期間じゃないと思うけど、お世話になるわけだし、何にもしないでゴロゴロしてるつもりはないから」
 笑顔で美琴は立ち上がり、そのままキッチンへ。
 スフィンクスからすれば、見た目インデックスなわけだから、そんな彼女の行動に、なんとなく目が点になって呆然と固まっている。
「掃除、洗濯、食事の類なら全部できるわよ。任せてちょうだい」
 美琴の笑顔はまったく崩れない。よほど、スフィンクスに触れたのが嬉しかったのだろう。
 普段の彼女からすれば、あまりに素直すぎる言動と行動だ。
 それが余計に上条を困惑させる。
 気づけば、すぐ傍に美琴が来て、少しでも動こうものなら、必ずどこかが触れしまえそうな位置にしゃがみこんで、
「ふうん。これだけあれば、なんとでもなるわね」
 まるで値踏みするように冷蔵庫の中を確認する。
(う、うわー! これはマズイ! 何がマズイかは具体的に言えないけど絶対に何かマズイ!)
 女の子特有の甘い香り、すぐ傍には柔らかそうな頬、ちょっとでも動けば触れてしまえる華奢な体。
(つか、御坂の奴は、夏休みの宿題のときもそうだったけど、どうして、こういうときは無自覚に近寄って来るかな! これが長時間続けば上条さんの理性が! 鉄壁の理性がぁ!)
 などと、心の中で何かと格闘する上条のことにはまったく気づかず、美琴は冷蔵庫の中を見ながら頭の中でメニューを構築していく。
 それは一分にも満たない永遠の時間。
「じゃ、任せて♪」
 そんな時間は、めちゃめちゃ顔が近いことに気づかない美琴の上機嫌の笑顔の宣言によって終わりを告げる。
 固まっている上条を尻目に、美琴は冷蔵庫のものを取り出して、冷蔵庫のドアのない方からあっさり脱出。
 なんだかちょっぴり残念な上条当麻は、ずうん、と首をもたげるわけだが、それでも次の瞬間。
 美琴がキッチンで軽やかでリズミカルな包丁の音を響かせると、即座に、顔をそちらに向けてしまう。

 !!!!!!!!!!!!!!!!!?!

(な、なんでせうか!? この光景は! インデックスが……あのインデックスが鼻歌交じりに料理している姿ですと!? いや、中身は御坂だけど!)
 以前、五和がこの部屋で料理を作っていた姿を見て、感動した上条当麻であったが、はっきり言って、今、眼前の光景はそのときの比ではない。
 あの時は恵みの瞬く光ならば、現在の『インデックス』には後光が差しているように見えるほどだ。
 一滴の涙が伝う程度ではない。だくだくと感涙が留めなく伝うほどだ。
 これが見た目聖少女たる所以なのだろう。
 宗教儀式(オカルト)とはもっとも遠いところに位置する学園都市だというのに。
 上条当麻は、あたかも神の慈愛を受けるかのような、恍惚と羨望の表情を浮かべて呆然とするしかできなかった。

533Change2−4:2011/05/15(日) 21:59:07 ID:LgNkFau2
「――と言うことで、嗜みというものは――」
「うう……くろこ……もういいんだよ………」
 どこか得意満面に講釈をたれている白井黒子に、心底疲れ切った表情でベッドに突っ伏しながらげんなりしている見た目御坂美琴のインデックス。
 無理もない。
 夕食後、かれこれ二時間も白井は淑女とは何かというレクチャーを、滔々と語り続けているのだ。
 いかに敬謙なシスターと言えど、どこか似たような部分はあるにせよ、それでもどこか違う『礼儀』という習慣に、どうしてもインデックスは拒否反応を起こしてしまう。
 普段の同居人のことと、一年ほど前の記憶がないインデックスであるから、『お祈りの仕方』とか『十字の切り方』はできても、普段の立ち振る舞い全てに『礼儀』を求められるのはどうかと思ってしまうのは仕方がないところだった。
「ですが、中身はどうあれ、今の貴女が常盤台のエースとして見られてしまうのですから、その点をご考慮いただきませんと、周りに示しがつかないのでございますよ」
「……むぅ……あの短髪が、今、くろこが説明してくれた『しゅくじょ』に当てはまるとは思わないかも……」
 どこか恨みがましい視線を向けるインデックス。
 なんだか失礼な言い回しなだけに、白井が青筋立てて怒ったとしても不思議はない。
「まあ、おそらく、貴女の言うお姉様とは、あの殿方様とご一緒のときに見せておられる姿を言っているのでしょうね」
 ところが、白井が浮かべたのは、困ったような、それでいて少し寂しげな苦笑の表情だった。
 白井にも分かっているのである。
 上条当麻と一緒に居るときの御坂美琴は、常盤台のエースでも、超能力者の『超電磁砲』でもない、ごく普通の、しかし、どうしても素直になれない意地っ張りの、一人の少女でしかないことを。
 そして、そんな美琴の姿は、上条の傍にいるときだけのものだということも。
 決して、自分たちには見せない姿だということも。
 だから、白井は続ける。そんな儚くて強い先輩を尊敬する者として。
「ですが、あの殿方様が傍にいないときのお姉様は、誰よりも礼儀と作法と教養と誇りと、そして周りへの思いやりを欠かさない模範的な方でございますのよ。その点は、貴女にも分かっていただけると嬉しいのですが――」
 もっとも、それは無理だと白井は思う。なぜなら、妙にこのシスターは上条当麻と一緒にいることが多い。
 それゆえ、御坂美琴の気高い姿は決して見ることはできないだろう、と考えてしまう。
 とは言え、美琴の『普通の少女』としての姿を見ることができる上条当麻とインデックスを、白井は羨ましい、と思ってしまう。
 それは、今の自分では辿り着けない境地だからこそ。
「ともあれ、そういうわけですから、貴女には申し訳ないのですが、嗜みというものを、多少身に付けていただきます」
「…………、わかったんだよ……」
 インデックスは渋々了承して。
 そこで、ふと思いつく。
「そう言えば、くろこ」
「何でございましょうか?」
「『れいぎ』とか『たしなみ』は後から教えてもらうけど、『ちょーのーりょく』っていうのを先に教えてほしいかも」
 ベッドに突っ伏していたインデックスが跳ね起きて、ちょこんとベッドに座りなおして、白井と正対する。
 言うまでもないが、白井黒子が座っているのは美琴のベッドであり、インデックスが座っているのは白井のベッドだ。
「『能力』、ですか?」
「うん。ほら、短髪はいつも雷を撒き散らしているし、くろこも『てれぽーと』を使えるし、それを私も使ってみたいかも」
「ううん……まあ、能力発動のための演算の仕方は教えてあげられますけど、わたくしとお姉様は能力の種類が違いますし、わたくしの指南で、はたして貴女が『能力』を使えるかどうか……」
 白井黒子は腕組みをして考える。
 御坂美琴は発電系能力者であり、白井黒子は空間移動能力者だ。
 白井は、三次元から十一次元への特殊変換を計算する能力者であるから演算に関して言えば、これだけは白井の方が美琴よりも深くて詳しい。使うことはできなくても、聞けば大体の能力の演算形態は見えてくるので、以前、美琴から発電能力の発動のプロセスを聞いたことがあったから説明できないこともない。
 ただ、能力とは『自分だけの現実』を確立させて行使するものであるから、いくら、御坂美琴の体を持つとは言え、インデックスが能力を使えるかどうかは、正直、なんとも言えなかった。
 それでも、白井はフッと一息吐いて、
「しかしまあ、やる前から決め付けるのはよくありませんわね。使えるかどうかはともかく、『使い方』は教えて差し上げましょう」
「ありがとう、くろこ」
 白井のセリフに、インデックスは喜びの声を上げた。

534Change2−5:2011/05/15(日) 21:59:47 ID:LgNkFau2
 そして、数十分後。


「むむむむむむむむむむむ………………」
 今度はインデックスが腕組みをして、考え込んでいた。
 能力発動のプロセスを初めて聞いたわけだが、なんとなく『魔術』とは発動の仕方が違うし、そのプロセスだと、『魔術師』とは根本的に脳の回路とか呼吸の仕方とかが違う気がしたのだ。
 もっとも、『御坂美琴の身体』を持つインデックスであるから、身体や脳の構造的に言えば、能力を使用することに関して言えば、何の支障もない。
「とりあえず、やってみるんだよ」
 言って、すくっと立ち上がる。
「はいはい。あんまり無茶なことはしないでくださいな」
 白井の言葉は、どこか軽い。
 無理もない。
 いくら多少、レクチャーを受けたからと言って、それで能力が使えたとしても、そこまで大したことはないだろう、と踏んでいるのだ。
 『自分だけの現実』とリンクしてこそ、能力は最大限発揮されるものだという思いがそうさせていた。
 しかし、である。
 確かに、初めて能力を発動させた者であれば、白井の考えは正しいかもしれないが、目の前にいるのは、中身がインデックスとは言え、『超能力者』の御坂美琴の身体と脳なのである。
 たとえ、多少、実力が落ちようとも、『超能力者』の肉体を甘く見てはいけなかった、と言うことを痛感させられた。
 十数分後。
 大能力者三人くらいであれば瞬殺してのける寮監の前に二人は正座させられていたのである。
 中身がインデックスとは言え、その脳と身体は『御坂美琴』のものであったから。
 基本、純粋で素直なインデックスであったから。
 即席の『自分だけの現実』を確立させられることができたことで、美琴には及ばないものの、白井が判断するに大能力クラスの能力が発動したのである。


 つまり。
 インデックスが一〇万三〇〇〇冊の魔道書のことを忘れてしまったのは。
 御坂美琴が能力を使用できなくなったのは。
 身体や脳といった、真価を発揮するために必要な、物理的な『器』が自分のものではなかったためだったのだ。

535Change2−6:2011/05/15(日) 22:00:37 ID:LgNkFau2
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! 美味い! 美味すぎるぞ、御坂!」
 思わず叫んでしまう上条当麻の気持ちは分からないでもない。
 力の限り、目の前の食材と格闘しているわけだが、文字通り、わき目も振らず、なのだ。
 ちなみに、本日の上条家の夕食の献立はと言うと。
 細がけ大根の白ゴマ風味混ぜごはん、脂っ気のない鶏がら仕立ての茶碗蒸し、馬鹿でか昆布をそのまま鍋にして大根おろしを淡雪のようにてんこ盛りの鶏肉シラタキの、冬にはその真価を遺憾なく発揮する鍋である。ミスター何某に登場した料理かもしれないが、上条はその作品自体を知らないので問題はない。
「そ、そうかな? えへえへえへ」
 インデックスの姿をした御坂美琴は顔を紅潮させながら、それでも、べた褒めする上条に、普段の彼女からは信じられないほど、素直な笑顔で菜箸を可愛く握っていた。
「おう! 何もかも美味い! ダシの取り方とか調味料の絶妙さとか材料の旨味の引き出し方とかがほとんど完璧だ! 常盤台ってのはこういうことも教えられるのか!?」
「んまあ、ある程度、社会に出ても『高レベル』で通用するというのが校風だからね。『社会』に出たときに、何においても恥ずかしくないレベルのことは教えられるけど」
 言って、美琴も自分の茶碗を取る。
「いや〜〜〜ホント、見直したよ。インデックスは料理できないし、前にここで飯を作った五和のも美味かったけど、これはそれ以上だと断言できるぞ」
 上機嫌に笑いながら、本気で世間話をしているように語る上条は気づかない。
 相変わらず地雷を踏んでも気づかない。
 この鈍感さは、もはや、罪の領域に達しているのではなかろうか。
「………………いつわって誰?」
 一瞬で美琴の機嫌が急転直下である。
 ビクゥッ!!と上条は全身の身の毛がよだち、全身に鳥肌が立ったことを感じられたことだろう。
(な、なんで!? 上条さん的には単なる軽い話題のつもりだったのに、なぜ、いきなり御坂の機嫌が悪くなるんでせうかー!?)
 いや、ホント、いい加減気づけと言いたい。
「………………いつわって誰?」
 上条が冷や汗と脂汗のミックスをダラダラ流して沈黙しているので、美琴は再度問いかける。
 もはや、浮気現場を見てしまった彼女か女房のノリと言ってもいい。
「ええっと……ですね……神裂の知り合いと言いますか……部下と言いますか……」
 しどろもどろ答える上条は本当に気づかないのだろうか。それとも地雷原に足を突っ込む趣味でもあるのだろうか。
「………………かんざきって誰?」
「――――――っ!!」
 泥沼である。
(死んだ……今日で上条さんは死んでしまうのでしょう……って、いや待て。今の御坂はビリビリできないはず! ならば、なんとか言い訳を用意して舌先三寸でごまかすことができれば――)
 などと葛藤する上条当麻。
 そんな上条の表情を見ていた美琴は一つ諦めきった溜息を吐いただけだった。
「ま、いいけど。どうせ、アンタはアンタでアンタだもんね」
「え゛?」
「ほらほら。せっかくのご飯なんだから雰囲気悪くするのはここまでにしましょ。と言うか、『いつわ』って誰か知んないけど、その人より私の料理の方が美味しいって言うならそれでいいから」
「怒ってらっしゃらないのでしょうか……?」
「まあ、怒ってないって言ったら嘘になるけど、どうせアンタの病気は治らないだろうし、それを追求したって仕方ないし」
「………………なんだか、御坂もインデックスに似てきたな……」
「はあ? あの子にも同じようなこと言われたことあるの?」
「まあな。つか、俺の病気って何!? どんな病気!? 土御門とかからは『カミやん病』とか『フラグ乱立男』とか言われてるけど、上条さんには堕フラグばっかりで素敵なイベントなんてないんですよ!?」
「………………女の子の手料理を振舞ってもらうってのは充分、素敵なイベントだと思うけど?」
「………………あ゛」
 これだから、上条は無自覚鈍感野郎なんだと美琴は再認識するのであった。
 正直言って、上条当麻は場の空気を真っ白くしたり、意味もなく相手を怒らせたりすることにすることに関して言えば、超能力者級ではないかと思わないでもない。
 だからと言って、それでも上条を慕う女性というものは後を絶たないわけだから、どんなフェロモンが出ているのだろうか、とか考えてみても面白いかもしれない。

536Change2−7:2011/05/15(日) 22:01:25 ID:LgNkFau2
「そう言えばさ」
 しばし沈黙の後、上条当麻は真剣な表情になって、切り出してきた。
「何?」
「いや……そう言えば、面と向かって謝ってなかったなって……」
 聞いた美琴は小首をかしげて、
「何の話?」
「ほら、十月三十日のこと」
「あーあれ。別にいいんじゃない? 謝罪するしないって話じゃないでしょ」
 言って、ご飯を一口含み、本当に『どうでもいい』という済ました顔をしている美琴に、さらに上条は畳み掛けた。
「馬鹿言ってんじゃねえよ! お前がいなけりゃ俺はもしかしたら死んでたかもしれないんだぜ!」
「それ言ったら、私もそうなんだけど? て言うか、アンタ、私が介入することに文句つけてたんだから謝られるのは筋違いだわ。むしろ、私が勝手に首を突っ込んできた、アンタに非はない、って風に捉える方がしっくりくるわよ」
「そうじゃねえ! お前を危ない目にあわせたのは俺だ! 俺が不甲斐ないからインデックスを苦しめて、大勢巻き込んで、そしてお前は……!」
「はいはい、分かったから。じゃあ、私からもいいかしら?」
 心底、真剣で、しかし、どこか焦燥に駆られている上条の表情を見て。
 美琴は、心底、呆れきった表情で瞳を伏せる。


「だったらさ、『謝罪する』じゃないでしょ?」


「え?」
 上条はぽかんとしている。
「私は、私が思うことをしただけ。その結果がどうなったってそれは私の責任。だから謝られるのは困るの。アンタが迷惑をかけた連中に謝るのは正しいかもしれないけど、私は、どちらかと言えば、アンタにとっては迷惑をかけた方なんだし」
「そんなことねえよ! そりゃ、お前が強引に首を突っ込んできたときはお前の身のこともあったし迷惑だと思ったことは確かだが、お前がいたから俺はミーシャ=クロイツェフを撃退できたし、あの極寒の海底でも生き残ることができたんだ!」
「だから、それなら余計『謝罪』ってのはおかしいんじゃない?」
「あ……!」
「ま、これ以上は私から言うと、『催促』になっちゃうから言わないけどね。それよりもさ、せっかくの鍋、冷めちゃうわよ。アンタに美味しい、って言ってもらえて私、結構嬉しかったんだから」
「そっか……そうだよな……すまん、御坂。言葉を間違ってた」
 上条当麻は吹っ切った笑顔を浮かべて、(見た目はインデックスだが)御坂美琴を真っ直ぐ見据える。
 しばし沈黙。


「ありがとう」


 上条当麻が語った、たった五つの言葉。
 上条はこれまで、他人に心配をかけさせるようなことは全部内緒にしてきたから、誰かに声をかけてもらえるなんて絶対にありえないと、何も言わなくても誰かが自分のピンチを察して助けに来てくれるなんて都合のいいことが起こるわけがない、と考えていた。
 事実、上条のこれまではそうだった。自らが誰かの苦境に飛び込んでいったことは多々あったが、自らの苦境に誰かが助けてにきてくれた、なんてことは一度もなかった。
 正確に言えば、ないことはないのだが、そのときは苦境に陥っている誰かの方が、上条に助けられた側面が大きかった感は否めない。
 例外はたった一つ。
 十月三十日。
 御坂美琴が、何も言わなくてもピンチを察して助けに来てくれるなんて都合のいいことが起こりえないと思い込んでいる上条の幻想をぶち壊したのだ。
 本人が頼んだのであれば話は別だ。
 しかし、頼んでもいないのに助けに来てくれた者に、助けられた者が謝罪するのはおかしな話なのだ。
 ならば、述べる言葉は『謝罪』ではない。
 ならば、述べる言葉は『感謝』でなければならない。
「うん、よろしい」
 だから、美琴も満足げな笑みを浮かべる。
「じゃさ、辛気臭い話はここまで。さ、全部食べてしまいましょ」
「おう」
 これ以降、上条と美琴の間には歓談しかなかったことは言うまでもない。

537Change2−8:2011/05/15(日) 22:02:12 ID:LgNkFau2
 さて、食事も終わり、
「そうだ御坂。俺が片付けやっとくから、お前は先に風呂に入れよ」
「ん? 別に片付けくらいやってあげるわよ」
「そう言うなって。こんな美味いものを食わせてもらったんだ。後片付けくらいさせてもらわないと俺の気がすまん。お礼ってやつだ」
「そうなの? んじゃ、任せたから。えっと……なら、この子の着替えは?」
「そっちのタンスな」
「おっけー」
 言って、美琴はバスルームに向かう。
 完全に、美琴がバスルームに入ったことを確認して、上条当麻は携帯電話を取った。
『どうした、カミやん? 俺に連絡を入れてくるなんて珍しいにゃー』
 相手は隣の隣人、土御門元春である。
「ああ、ちょっと困ったことが起こってな。お前の手を借りたいんだが……」
『へぇーカミやんの困ったことねー。まさかとは思うが、『乱立させたフラグを回収したいんだけど、誰が一番いい?』なんて――』
「んな訳ねえだろ! お前の手を借りたいってことは魔術がらみのことだ!」
『はぁ? それこそ意味不明だにゃー。カミやんの傍には、あの禁書目録がいるんだぜ。俺よりもよっぽど頼りになると思うんだが?』
「そのインデックスが、今回ばかりは頼りにならないからお前に頼んでいるんだよ」
 上条の言葉を聴いて、受話器越しでも土御門の雰囲気が変わったことを察する上条当麻。
 なぜならば、明らかに言葉に込められた重さが違ったからだ。
『どういう意味だ? 禁書目録に何かあったってことか?』
「ああ。夕方、この近くで落雷があったのは知ってるか?」
『もちろんだ。凄い音だったぜよ。超電磁砲も真っ青じゃないかにゃー』
(…………………………………………………………………………………)
 ちょっと憮然とする上条当麻。実のところ、あの落雷レベルの電撃を過去に受けたことがあったりするので、たぶん、御坂美琴があの落雷で真っ青になることはないと思う、とか考える。
 しかし、即座に気を取り直して、
「そん時に、どういうわけか、インデックスと御坂の心と体が入れ替わったんだ。しかもその後遺症かどうか知らんが、インデックスは魔道書を全部忘れてしまった。と言うわけで、元に戻せる魔術があるかないか知りたいんで、お前に電話したってわけだ。御坂や白井曰く、科学側にはそういったものはないらしいし、仮にあったとしても、今の俺たちじゃ知る由もないからな」
 もしかしたら、とあるピンクジャージのいつも眠そうな女の子ならば、ある意味、可能かもしれないが、上条当麻はそれを知らないし、知る術も今のところない。
『……カミやん、ドラマの見過ぎ――なわけないか。だいたいカミやんが、んなバレバレで面白くもなんともない嘘を吐いたって意味ないにゃー。分かった。他ならぬカミやんの頼みだ。調べてみるぜよ』
「恩に着るぜ土御門」
『どういたしまして。それよりカミやん』
「何だ?」
『珍しいな。カミやんが他の誰かに頼る、なんて滅多になかったと思うんだが』
「頼るってほどでもないだろ。入れ替わりの魔術があるかどうか知りたいだけだ」
『それでもだ。カミやん。これからも誰かに頼るようにしろよ』
「どういう意味だ?」
『一人で抱え込むなってことだにゃー』
 言って、土御門から電話を切った。
 しばし沈黙。
「あいつ……」
 上条当麻の表情には自嘲とも苦笑とも取れる笑顔が浮かんでいたことは誰も知らない。

538Change2−9:2011/05/15(日) 22:03:48 ID:LgNkFau2
 土御門元春は上条当麻との電話の後、とある知り合いに電話をかけていた。
「にゃー、ねーちん。ワンコールで出るって、それほど、俺のことが恋しかったにゃー?」
『私にも分かってしまうような冗談を飛ばすとはあなたらしくありませんね、土御門。あなたからの電話はそうそうあるものではありません。何か深刻な事態に陥っている、

という証でしょうから、即座に出たまでです』
 土御門の軽口とは裏腹に、電話の向こうの相手、長身でポニーテールの、しかし、十八歳の割には落ち着いている細目の美女・神裂火織は揺るぎのない落ち着きをみせて、

あっさりと返していた。いつも、土御門の口車にはムキになって乗せられてしまうことを少しは反省して学習したようである。
 ちなみに現在、神裂は日本に滞在中である。
 二週間ほど前に、とある事情で日本に来ていたのだが、そのまま、まだ学園都市にいた。
 理由は単純。年末年始を挟んでいたので、旅客機の大半が予約を取れなかったからだ。
 で、ようやく予約が取れたのは、今週末の便。
 元々、学園都市の人間ではない神裂だけに、学園都市から出るにも相当の手続きが必要だったわけで、しかも今回は正式な入場手順を踏んでいるので、裏技を使うわけにも

いかなかったのだが、とりあえず、今回はそれが幸いした形となるだろうか。
「ちっ、つまらん。今のねーちんが相手じゃからかい甲斐がなさそうだにゃー」
『その手には乗りませんよ、土御門。まあ、私を逆上させて冷静さを欠いたところで破廉恥な姿をさせようなどという姦計は金輪際、通用しないことを教えて差し上げてもよ

ろしいですが?』
「いや、なんだか電話の向こうからでもねーちんの鋭い殺気の眼光が感じられるんで、とりあえず、今回はおとなしく、用件だけを伝えることにするぜよ」
『ふむ。拝聴しましょう』
 これでようやく本題に入れる二人である。しかし、なんだかんだ言っても、神裂も土御門との掛け合いを楽しんでいるのかもしれない。本人に言えば、心の底から、まった

く照れることも無く即答速攻大否定されそうだが、二人は何かとコンビを組むことは多いし、馬鹿話をすることも多々あるのだ。
「単刀直入に言って、『御使堕し(エンゼルフォール)』以外に、入れ替わりの魔術があるかどうか、そして、その解除の方法があるかどうか知りたい。学園都市に、そういっ

た書物はないんで、そちらの筋で調べてほしいにゃー。俺はちょっと、魔術側に接触するわけにはいかん立場だからにゃー」
『それは確かに。しかし、何故です? 入れ替わりの魔術?』
「なぁーに。禁書目録と学園都市の学生の一人との心と体が入れ替わっちまったのさ。ただ、『御使堕し(エンゼルフォール)』のときと違って、本人たちには入れ替わった自

覚があるんでね。入れ替わり自体は深刻な問題だが、『御使堕し(エンゼルフォール)』のときのような危機感は無いと踏んでいるから、慌てる必要は無いと思うが、できるだ

け早めに回答がほしいにゃー。やっぱ別人の体ってのは、当人たちにとって、結構不便だろうし」
『なるほど。それは一大事ですね。では、こちらで調べてみましょう。あの子が関わっているとなれば、ステイルにも協力を要請した方がよさそうですね。他の誰よりも張り

切って協力してくれることでしょう。おって連絡いたします』
「頼むぜ、ねーちん。あと、ステイルにもよろしく言っておいてくれ」
『心得ました』
 言い合って、土御門と神裂はほぼ同時に通話を切る。
 いや、本気でこの二人、妙なところで相性が良いのではなかろうか。

539Change2−10:2011/05/15(日) 22:06:11 ID:LgNkFau2
「うぅ……長かったんだよーもう眠いかもー」
「確かに……しかし、これはわたくしの落ち度でした……陳謝いたしますわ……まさか即席であれほどの能力を発動させることができますとは……」
 寮監のありがたい説教をかれこれ、一時間に渡って聞かされたのである。
 白井黒子と見た目・御坂美琴のインデックスは同じように疲れきった表情で部屋に戻ってきたわけだが、時間も時間だ。
 あとは寝るだけと言っても過言ではない。
 と言っても、実のところ、二人はまだ制服姿であった。
「インデックスさん、お姉様のパジャマはそちらにありますので、それに着替えてくださいな」
「え〜〜〜めんどくさいかも〜〜〜今日はこのままでいいんだよ〜〜〜」
 もはや眠気に陥落寸前のインデックスは思いっきり投げやりである。
 とは言え、白井としては、ここは譲れない。
「そうは言われましても、制服のままで就寝されますと疲労が取れませんわよ。ただでさえ、お姉様と入れ替わって、精神的な負担は大きかったはずですわ。明日以降のことも考えますと、やはり就寝時は寝巻きに着替えて、疲労を取ることをお勧めいたします。寝巻きには就寝時、身体を楽にさせる作用がございますのよ」
「あ、なんか『てれび』でやってたかも」
「でしたら、よろしいですわね?」
「うー……仕方ないんだよ……短髪のパジャマって、ここだっけ?」
「そうです。そちらの洋服ダンスに――ん?」
 白井黒子は何かが引っかかった。
 インデックスに背を向けて、腕を組み、首を傾げている。
(何か――重要な何かを見落としているような……)
 もっとも、それが何なのかが分からない。
 そう言えば、『学舎の園』の入口でもインデックスが何かを忘れているというか、見落としているようではあったのだが。
(ま、思い出せないってことは大したことでもないのでしょう)
 心の中で自己完結し、白井もまた、寝巻きに着替える。
 インデックスは、パステル調の黄緑パジャマ。
 白井黒子は、透き通る紫レースのネグリジェ。
「……くろこは寝るとき、いつもその格好なの?」
「……インデックスさんもお姉様のそのパジャマを何の躊躇いも無くお召しになりましたわよね?」
 お互い、相手に対して何が言いたいのかは雰囲気だけで察せるというものである。
 十三歳の白井黒子が着るものじゃないだろう、とインデックスは考える。確か、居候早々に上条のベッドの下から出てきた肌の露出が多い『大人の』女性の写真が大半を占める冊子で見た気がする格好だからだ。
 そう言えば、そのときの上条は、妙にしどろもどろに言い訳しまくっていたような気がする、などとインデックスは邂逅していたりする。
 ちなみに、上条が言い訳していたとき、当然、インデックスは上条当麻を咀嚼していたのだが、その辺りは日常茶飯事なのでインデックスにとってはどうでもいいことだった。付け加えるなら、その冊子はすでに処分されており、現在の上条のベッドの下は、そういった類の冊子は一冊も無い。
 正確に言えば、上条にはすでに、その冊子を買うだけの財力も無いから無い、とも言えないことも無い。
 対する白井黒子もまた、インデックスが何の躊躇いも無く美琴のパジャマを着たことにややげんなりしていた。
 御坂美琴を愛しているはずの白井黒子が唯一受け入れられないのが、この子供趣味のところなのである。
 それなのに、美琴ではないインデックスが自分の姿に疑問を持っていないのだから、このあたりの志向が美琴と同じなんだ、と、落胆したわけだ。
「では、電気を消しますわよ」
「分かったんだよ」
 と言うわけで、二人はお互いに相手にツッコミを入れることを諦めて、それぞれベッドに横になる。
 言うまでもないことではあるが、インデックスが使っているのは白井のベッドであり、白井が使っているのは美琴のベッドだ。
「それでは、おやすみなさいませ」
「うん。おやすみー」
 夜の定番の挨拶を交わし、二人はまぶたを閉じる。
 今日は本当に疲れたことだろう。
 何せ、インデックスと美琴の体と心が入れ替わったのだ。
 いくら、超能力という超常現象が日常の学園都市とは言え、この現象は驚嘆に値するし、今現在、元に戻る手段は模索中なのである。

540Change2−11:2011/05/15(日) 22:09:27 ID:LgNkFau2
(……そう言えば、今日はとうまが傍にいないんだよ……)
 ふかふか枕に顔を埋めているインデックスは白井に背を向けたまま、どこか物悲しい孤独感に包まれいていた。
 無理もない。
 インデックスは、この学園都市のみならず、世界のどこにいようとも、縋れるのは上条当麻唯一人、と言っても過言ではないくらい依存し切ってしまっている。
 あの七月二十日の出会いから、その日より一年以上前の記憶がないインデックスにとっては上条当麻が全てだった。
 ファーストコンタクトは何かに追われている胡散臭い外国人の少女として、だったのに。
 学園都市とは正反対の世界からやってきた学園都市の敵対勢力の内の一人、だったのに。
 そんな自分のために、彼は文字通り命を張ってくれた。
 二度も記憶を失うような目に遭ってもなお、彼は自分の傍にいてくれる。
 何食わぬ顔で。恩を着せるわけでもなく、まったく普通に。一人の人間として扱って。
 完全記憶能力者であることも、魔道書一〇万三〇〇〇冊の保管庫であることも、本気でどうでもいいといった表情で。
 本当は十二月中旬に離れようとも考えた。これ以上、少年の傍にいることが許されるのだろうか、と思ってしまったからだ。
 だけど離れられなかった。少年が傍にいることを許してくれた。
 正確に言えば、少年が言葉にしたわけではないのだが、許されざる大罪を犯したインデックスを遠ざけるようなそぶりをまったく見せなかったから。
 いつものように接してくれたから。
 だから、インデックスは上条当麻の傍にいたいと思ってしまう。
 インデックスは、この気持ちが何なのかに気づいている。一度、上条当麻に打ち明けたこともある。
 とは言え、上条当麻が受け入れてくれるかどうかとなると話は別なのだ。
 上条当麻から受け入れてくれる言葉を発してくれないと意味がないのだ。
 なぜなら、インデックスから催促するわけにはいかない。そんな資格なんてない。
 幾度となく、自らの命と紙一重の修羅場を潜り抜けてきた上条当麻ではあるが、それでも記憶を失うほどのダメージを受けたのは後にも先にもインデックスのときの二件だけなのだ。それが、インデックスに後ろめたさを与えてしまっている。上条当麻はまるっきり気にしていないのだが、インデックスからすれば気にしても仕方がないほどのことだ。
 そして、それは御坂美琴にも言えることだろう。
 インデックスと御坂美琴。
 なんだかんだ言っても、この二人は根本的なところで同じなのだ。
 上条当麻へ、どうしてももう一歩踏み込めない理由が同じなのだ。
 だから、今日のように上条当麻が傍にいない、ということに寂しさを感じてしまうのは至仕方ないことだった。
 美琴と違って、普段、一緒にいるからこそ、その寂しさは重さを増す。
 ぎゅっと枕を抱き、今にも泣きそうな表情で。
(……とうま、今頃、一人で寂しくないかな……って、あっ!)
 そこでインデックスは気がついた。
 夕方、見落としていたことが何なのかに気がついた。
 今日は確かに、自分はここにいる。インデックス自身は上条当麻の傍にはいない。
 しかし、上条当麻が今宵、一人寂しく過ごしているかどうかと問われれば答えは否になる。
 なぜなら、普段、インデックスは上条の部屋で過ごしているのだ。
 それは今日も例外ではなく、『インデックス』が上条の部屋にいることになる。


 そう。『インデックス』の姿をした御坂美琴が。

541Change2−12:2011/05/15(日) 22:11:54 ID:LgNkFau2
「くろこ! 起きるんだよ! 今からとうまの部屋に行くんだよ!」
 ベッドから飛び起き、インデックスは先ほど脱ぎ捨てた常盤台中学の制服に身を包みながら、白井を呼ぶ。
「……もう、何ですの……? ホームシックでございますか……?」
 呼ばれた白井は、どうやら一足早くまどろみが訪れていたらしい。
 眠気に誘われるあの心地よさを邪魔されたのだ。不愉快極まりないことだろう。
「そうじゃないんだよ、くろこ! 忘れたの!? 今、とうまの部屋には短髪がいるんだよ!」

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!?!

 白井黒子の意識が一気に覚醒した。
 そして、白井も自分が何かを見落としていることに、ここで気づいたのだ。
 考えてみれば、インデックスも白井も、『御坂美琴』の姿がここにあったことで、完全に失念していたのだ。
 今宵、上条が一晩、供に過ごす相手が『インデックス』ではないことに思い至らなかったのだ。
「こうしてはいられません! インデックスさん! 早速行きますわよ!」
「うん! でもその前にくろこ……」
「なんですの!?」
 意気軒昂、ガバッ!!とベッドの上に立ち上がった白井黒子の姿を目の当たりにして、インデックスのテンションが駄々下がる。
「えっと……くろこもちゃんと着替えた方がいいかも……」
 両手の人差し指をつんつん合わせながら、少し顔を赤くしたインデックスが上目遣いで、白井に促して。
 少し、怪訝に思った白井ではあるが、一度、目線を落として自分の姿を再確認して。
「ほっ……ほほほ……そうですわね……さすがにこの格好はマズイですわよね……」
 右手甲を左の頬に付けつつ、渇いた笑いを浮かべる白井は、このまま外に出れば、警備員に連行されても文句は言えない格好であることを思い出したのであった。




「どこ行くの?」
 夜も更け、さあ寝ようか、というところで、毛布と枕を抱えて上条当麻がベッドとは正反対の方へ歩き出したのを見て、見た目・インデックスの御坂美琴が訝しげに、上条の背中に声をかける。
 事情を知らない第三者からすれば、確かに上条の行動は疑問だ。
 『寝る』という行為に対して、寝るための場所とは違う場所へと向かい始めたのだ。これを疑問に感じない者はいないだろうし、いるとしたら、その可能性は二つ。
 事情を知っているか、変な趣味を持っているか、と言ったところだろうか。
 むろん、上条は前者である。
「俺はバスルームで寝てるの。普段はインデックスがベッドを使ってるからな。それと俺のけじめだ。今日だって、お前に手を出さないという保証がない」
 上条は背を向けたまま、少し素っ気無く答えていた。
 理由は、眠気が全身を覆いつつあることと、今日が色々あって、疲れがピークに達していたからだ。
「……けじめ?」
「おう。同じ部屋にいれば、さすがに俺も、自分の理性に自信がないからな」
「ふーん。いちおーあの子にしろ、私にしろ、女の子扱いしてくれてるんだ」
 まるっきり照れが入らない美琴。どこか他人事のようである。
 レベル6クラスの鈍感野郎・上条当麻ではあるが、この美琴の態度に、いや、この部屋に着いてからこれまでの美琴の態度に、少なからず疑問を抱いていた。
 なぜなら、上条当麻の知る御坂美琴であれば、こういう『上条と何気なく一緒に居る』場面を再認識すると、顔を真っ赤にして妙にテンパってしまうことが多いからだ。
 思考の大部分が空回りし、時には放電というか漏電すらしてしまうはずなのに、いくら能力を失くしているとは言え、どういうわけか、ここまでの美琴は、はっきり言って落ち着き払い過ぎている。もちろん、上条は、なぜ、美琴がテンパるのかは想像できないが、普段の彼女からすれば、この態度は明らかにおかしいことくらいは理解できていた。

542Change2−13:2011/05/15(日) 22:14:24 ID:LgNkFau2
「なあ御坂。今日のお前、何かおかしくないか?」
「ん? そりゃおかしいわよ。だって、あのちっこいのと入れ変わっちゃったんだから」
「いや、そういう意味じゃなくてだな……」
 なんだか上条は首をかくんとさせてしまう。
 無理もない。美琴の答えは完璧な正解なわけだが、上条の聞きたいことは全然違うのである。
 相変わらず、かみ合わない会話がデフォな二人だ。
「それよりさ、いくら毛布があるからって、バスルームじゃ冷えるわよ。私が床で毛布に包まってるから、アンタがベッド使えば?」
「……女の子にそんな真似させられるかよ……」
 上条が聞きたいのは、今の美琴が普段の美琴と違う顔を見せていることなのである。
 とは言え、上条の頭では、どう問いかければいいのか、正直分からなかった。
 まさか、「今日のお前、何かいつもと違うぞ」と言ってしまえば、「どういう風に?」と返されて、正直に答えてしまい、相当疲れてしまう目に遭ってしまうことが想像できるからだ。上条の辞書に『言葉を選ぶ』という単語はないのである。
「じゃあさ、一緒に寝る?」
「んなことできるか!」
 さすがに、この問いへは即答だった。
「それができれば、俺はバスルームに行かないっての! さっきも言ったけど、健全な男子高校生としては、女の子と一緒に寝て、いや寝てなくても、傍に居るだけでも緊張してしまうものなんです!」
 美琴に、必死の形相で詰め寄りながら力説する上条。
 ところが、八月三十一日の夜にすれ違ったときとはまったく違う、顔色一つ変えない美琴がそこにいて。
「いや! その前に何でお前はそんなにあっけらかんとしてるんだ!? お前にだって男と女が一緒のベッドに寝る意味が分からない訳じゃないんだろ!? ていうか、何でお前はそんなに落ち着いているんだよ!?」
「いやまあ、それはたぶん、この体が私のじゃないからじゃないかな? だから現実味がないって言うか。それにアンタも、今みたいに力説できるってことは一度もあの子に何かしたことはないってことよね? だったら一緒に寝ても大丈夫なんじゃない?」
「あーなるほど……」
 ようやく上条は理解した。なぜ、美琴が落ち着き払っているのかという、その理由を。
 そう、美琴にとっては文字通り『他人事』だからだ。今、自分の心が入っている器は『他人のもの』であり、『自分のもの』ではない。
 例えるなら、ゲームの中の主人公キャラを操作しているようなもの、とでも言えばいいのか。
 よっぽどの馬鹿でない限り、ゲームの中のキャラを自分自身に置き換える者はいないだろう。ゲームオーバーを恐れることはあるだろうが、いかに主人公キャラとは言え、敵キャラにやられてしまったときに、悔しがりはしても、それを生死を分かつほど自分自身を投影、感情移入して、重く考えるプレイヤーは、はっきり言って少ないのではなかろうか。
 今の美琴の気持ちが、まさにそれなのだ。
 自分の体ではないから現実感が無いのだ。
 だからこそ、上条が傍にいても、接近されたりしても、そこまで意識しないのである。
「ほらほら、明日も休みじゃないんだし、さっさと寝る寝る」
「お、おわ!?」
 なにやら葛藤する上条に、どうやら美琴も耐え切れなくなって、無理矢理ベッドに押し倒し、当然のように二人で布団を被る。
「電気消すわよ」
「いや待て。俺はまだ」
「おやすみー」
 上条の抗議を完全無視して、美琴はリモコンスイッチを押した。
 この部屋を静寂と暗闇が支配した。


「あとどれくらいかかるんだよ?」
「ものの数分ですわ!」
 インデックスの手を掴みながら白井黒子は、闇と静寂が支配する学園都市の中で、連続テレポートを敢行していた。
 二人の表情は憤怒と言うよりも焦燥と言った方がいいかもしれない。
 もし、一直線に飛ぶことができれば、白井の空間移動は時速二八八キロメートルであるから、(上条と美琴の遭遇率を考えるとそこまで離れているとは思えない)常盤台学生寮と同じ第七学区内にある上条当麻の学生寮までは、(なんと言っても一分で二八.八キロ進むから)数分どころか数十秒かもしれないが、白井のテレポートは(何であれ)移動先のモノを押しのけて進むことになるため、ビルに学校に電柱に陸橋に塀垣に店舗にガードレールといった、一直線上にあるものを破壊しながら進むわけにも行かない、という理性くらいは白井にも残っているので、必然的に道路を中心に進むことになっていた。
「お姉様……」
「とうま……」
 二人は静かに呟き、
(間違いを犯していませんように!)
 胸の内では同じことを考えていた。

543Change2−14:2011/05/15(日) 22:16:19 ID:LgNkFau2
 さて、部屋が暗闇に支配されて、どれくらいの時間が経っただろうか。
 少なくとも一時間は経過した、と、上条当麻は考える。
 瞳を伏せて、羊だか素数だかを数えていたはずなのだが、当然、いつまでも眠気はやってこなかった。
 原因と理由は分かりきっている。
 健全な男子高校生たる上条が寝ているすぐ隣に一人の、美少女と言っても過言ではない女の子が横になっているのだ。しかも少しでも動けば、絶対触れられる位置に。
 青春真っ盛りの上条にとっては刺激が強過ぎるのである。
(〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜眠れん眠れません眠れるわけがございません!)
 と言うわけで、上条は羊と素数を数えるのを止めた。
 ちらりと肩越しに視線を向ける。
 そこには、インデックスの姿をした御坂美琴が背中を向けていて。
(こいつ……)
 何か違和感を感じる。なんとなく美琴も眠りに落ちていない気がヒシヒシする。
「……おい……」
「……何……?」
「お前も眠れないようだが……?」
「仕方ないでしょ……」
「………………じゃあ、何で一緒に寝る、なんて言い出したんだよ……」
「………………」
 三点リーダ沈黙する美琴。
「……今からでも俺はバスルームに行ってもいいが?」
 しばし沈黙。
「……アンタは私と一緒に寝るのが嫌なの?」
「……嫌とは言わんが、倫理的に宜しくない」
「じゃあ、別にこのままでいいじゃない……」
「倫理的に良くない、と言っているんだが?」
「どうして?」
「さっきも言ったけど、男と女が一緒のベッドに寝るって意味が分からないわけじゃないんだろ?」
「何もしないなら関係ないじゃない」
「何もしないとは言い切れない」
「現に何もしていない。私にも、んで、あの子にも」
「……ナニかしていいのか?」
「何でナニがカタカナなのよ?」
「………………それが分かるお前はスゲエよ」
「……」
 再び沈黙。
「……マジで、バスルームに行くぞ?」
「風邪引くわよ……」
「お前に過ちを犯すよりマシだ」
「……『私』? この体は『私』のものじゃないけど」
「同じことだ。俺は『御坂』だろうと『インデックス』だろうと、傷つけるつもりはない」
「さて、どうかしらね?」
 ここで、ようやく美琴が寝返りをうって振り返った。
 その瞳には、何とも言えない好戦的な雰囲気を醸し出し、どこか不敵な笑顔を浮かべている。
「あの子、アンタになら何されてもいい、って考えてるんじゃないかな?」
 ――!!
 言われて、上条には思い当たる節があった。
 あれは八月三十一日のことだ。
 少し用事があって、バスルームから寝室に行った上条は、そのときのインデックスの寝姿を見ていたわけだが、インデックスは、暑さで、(下着は付けていたが)Yシャツ一枚で、夜だけに煽情的に太ももを露にした格好で眠っていて、その隣は一人分だけ空きがあった。
 今にして思えば、確かにあのインデックスの行動は上条当麻を待っていたとしか思えなかったし、先ほど、上条が言った通りで、男女が一つのベッドを供にする意味をインデックスも知らないわけがない。
 が、上条は思いっきり頭をぶんぶか振った。
 当時の『上条当麻』は、インデックスにとっての『上条当麻』ではなかったことを思い出したからだ。

544Change2−15:2011/05/15(日) 22:17:13 ID:LgNkFau2
「それでもだ。俺はお前らを傷つけるくらいなら、風邪で寝込む方を選んでも構わんさ」
「……私かあの子がOKって言ったら?」
 ふと、雲の隙間から柔らかい月の光がカーテン越しに部屋へと差し込む。
 真っ暗闇が、薄暗さに変わる。ベッドに横たわる『インデックス』の姿をはっきりと浮かび上がらせる。
 その表情は、どこか挑発的に映った。
 普段が聖少女だけに、こういうシチュエーションでは正反対に見えるのかもしれない。
 しかしそれでも上条の理性は崩れない。
 正確には、無理矢理押し込んだのだが。
「そ、それでも俺は……!」
 今度は上条がぐるんと美琴に背を向ける。
(や、やば……心底やばかったぞ、今のは……)
 上条は顔どころか全身に血を上らせて、心臓の鼓動音は耳障りなくらいに早く、大きくなっている。
 ともすれば、美琴に聞こえるんじゃないかと言うくらい大きく。
 体中の火照りの熱が美琴に届くんじゃないかというくらい熱く。
 三度、沈黙。
 無機質な時計のデジタル音だけが、部屋の中に響く。
 そして。
「意気地なし」
 美琴が天井を見上げてポツリと呟く。
「……何?」
 上条は再び肩越しに『インデックス』を見つめる。なぜか、無性に腹が立った。
「……本当にいいのかよ?」
「どうせ、そんな根性ないくせに」
 瞳だけで上条を見つめた美琴の声には揶揄が確実に入っていた。浮かんでいる笑みも嘲笑としか思えなかった。


 刹那、上条当麻はキレた。


 次に上条が我を取り戻したとき、上条は、己が『インデックス』の両肩を押さえつけ、胴を両足で挟み込み、四つんばいになって見下ろしていたことに気がついた。
 キレた瞬間から、我に返るまで、その時間はわずかに数秒。
 美琴は上条に押さえつけられたまま、少しびっくりしたようではあったが、顔を上気させていた。
 上条は美琴を押さえつけたまま、自らの行動を忘れて、少女の赤らんだ表情に胸が高鳴っていた。
 二人は硬直している。
 気まずさはない。
 あるのは緊張感だけだ。
 もし、ここで美琴が何か承諾する言葉を告げれば、上条は止まらないことだろう。
 もし、ここで上条が何かを要求すれば、美琴は間違いなく受け入れることだろう。
 そういった緊張感が二人を包み込んでいるのだ。
 二人の心臓の動機が激しく大きくなっていく。
 少しずつ、ゆっくりではあるが、上条は美琴の顔に自身の体を近づけていく。
 それが何を意味するかは二人は分かっている。
 しかし、である。
 今、この場にある美琴の体が自分のものであり、ここに自分自身で居たのであれば、ある意味問題はなかったのかもしれないが。
 残念ながら、その体は御坂美琴のものではない。
 本来の持ち主はインデックスであり、御坂美琴のものではない。
 したがって。


 次の瞬間。上条当麻はまったく違うドキドキ感に包まれることになる。

545Change2−16:2011/05/15(日) 22:18:56 ID:LgNkFau2
「とうま……」
 突然、聞こえてきた『御坂美琴』の声。
 しかし、彼女であれば、上条のことをファーストネームで呼ぶことはない。
 先ほどの熱さを感じた緊張の汗が、いきなり冷や汗と脂汗に変わる。
 振り返れば、いつの間に来ていたのか。
 そこには薄暗い部屋の中だけに、余計、映える青白い光をバッチンバッチンさせている『御坂美琴』が居て。
 その隣には、どこか呆れた表情をしている白井黒子が居て。
「と・う・ま、な・に・し・よ・う・と、し・て・た・の・か・な?」
「ま、まて! インデックス! 俺は別にナニしようとしてたわけじゃ……!」
 思いっきり顔を引きつらせて手をばたばたさせる上条当麻。むろん、全身の血の気が一瞬で引くのが手に取るように分かる。
「何でナニがカタカナなのかな! ていうか、その状況を見て、誤解のしようなんてないんだよ!」
 ウガー!!と犬歯をぎらつかせて、インデックスは上条の頭にかじりつく。
 しかも『漏電』しながら。
「まったく、とうまは何で私と居るときはナニもしなかったくせに、どうして短髪が相手だと一緒に寝てたり、ナニしようとしてたりするんだよ!」
「ち、違う! 誤解だ誤解! 俺はただ雰囲気に流されただけで、って、お前もナニがカタカナじゃねえか! や、やめろ! マジでやめてくれ!」
「うっさい! うっさい! うっさい!! とうまのバカバカバカバカバカバカ!! バカァァァァァァァ!!」
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 さすがに後ろに回られていては、帯電するインデックスの電撃を右手で防ぐことはできず、されるがままになってしまう。
 と言っても、インデックスの漏電は『電圧』の割には『電流』が無茶苦茶低いので、ビリビリして熱いことは熱いが深刻なダメージを受けるほどでもないようである。
 どうも、インデックスは噛み付き攻撃の方が重要で、電撃の『威力』の方には気が回っていないようだ。
 つっても、充分脅威は脅威なのだが。
 だからと言って、壮絶な痴話喧嘩には変わりなく、それに巻き込まれまいと美琴はそそくさとベッドの上から、白井黒子の横に避難していたりする。
「ん? 黒子?」
 ところが、どうも白井がこっちに気づく様子はない。
 腕を組み、右手人差し指を顎に当ててぶつぶつ言っているようではあるが、言葉までは聞こえない美琴。
(な、何か複雑ですわね……今、あの殿方に噛み付いておられるのはお姉様ではないのですが、姿かたちがお姉様だけに……ええっと、いったい、わたくしはどのように振舞えばよろしいのか……)
 などと、白井は考えていたりする。
 しばらくの間、静まり返った夜の街の一角が騒々しかったわけだが、咎めに来る者は誰も居なかった。


 さて、四人は合流したわけだが、一連の騒動が収まったとは言え、インデックスが、あんな現場を見てしまった以上、常盤台の学生寮に帰ることを思いっきり渋ったので、戻ることもできず、白井は仕方なく寮監に外泊の電話を入れる。
 結果、ちょっとした罰則と引き換えに外泊は了承された。
 ちなみに今回の罰則は、プール掃除ではなく、常盤台中学校舎全ての窓拭きだったりするのだが、はたして、これを終えるのは何日かかることやら。
 むろん、白井は考えないようにしたし、美琴には有耶無耶にして伝えただけである。
 ちなみに。
 今晩の寝る場所であるが、インデックスと美琴がベッドで、白井が同じ寝室のお客様用布団。
 結局、上条はバスルームで就寝することになってしまったのである。
「不幸だ……」
 バスルームで一人寂しく呟く上条の声は誰にも聞こえない。
 そして、夜は更けていく。

546Changeの作者:2011/05/15(日) 22:22:41 ID:LgNkFau2
以上で1章と2章終了。
……1章と2章だけでえらく長くなってすみませんでした……m(_ _)m
感想と文章に対する指摘をお待ち申し上げます。
あまり強烈じゃない指摘でお願いします。
次回は……5月中にはUPできないかも……(^^;)

547■■■■:2011/05/18(水) 16:20:04 ID:9vKrXpG6
私は、時間操作系の能力者でSSを作りたいんですが、何かコツはありますか。
そして、ここに時間操作系能力者でSSを作っているかたはいらっしゃいますか。

548■■■■:2011/05/18(水) 16:20:16 ID:9vKrXpG6
私は、時間操作系の能力者でSSを作りたいんですが、何かコツはありますか。
そして、ここに時間操作系能力者でSSを作っているかたはいらっしゃいますか。

549■■■■:2011/05/18(水) 22:06:59 ID:0mxs5ino
>>547
今連載している書き手にひとりいる
コツは良く分からないが、あまり派手にオリキャラ無双しないとかじゃないかと
正直時間操作は初投下にオススメしないジャンルだけど、頑張って

550■■■■:2011/05/19(木) 21:09:42 ID:hGUp/eww
>>546
上琴ですか?ならいちゃスレの方が……。余計なお世話ですね。
前回のお話面白かったです。今回も楽しみにしています。
完結したらまとめて読ませてもらいます。頑張って下さい。

551Changeの作者:2011/05/19(木) 23:09:25 ID:LsY/heCQ
>550様

ん〜〜〜こっちに投下する以上、上琴じゃないですよ。それだったら、仰るとおり『いちゃスレ』に投下してますし、ほとんど美琴が意識しない展開にしませんし。
まあ、上条さんが美琴をスルーする原作お約束展開になっていないことは認めますが。
感覚的には『とある魔術の禁書目録』サイド×『とある科学の超電磁砲』サイドでEVEシリーズのようなマルチサイドっぽくならないかなと。(だから原作13巻以降出番のない白井黒子の出演が多いのです)
あと、今回のお話は続き物ですけど、一旦区切るところまででも、ちょっと一段落っぽく仕立ていくつもりですので、『分岐』のときとは違って、まとめ読みしなくても大丈夫な予定ですよ。たぶん。

552中二病 番号 20000:2011/05/20(金) 00:06:52 ID:muL0vuBw
>>547 時間操作系について 経験からのコツと言うよりは注意点ですが、

1、干渉できる時間を決めておく(例DIO様 9秒)
2、これは上にもありますが、無双はしない、何かストッパー的な役割が必要
  (僕の作品ですと、第1部上条当麻(時止めが効かない 理由は言わずもがな。)
3、正直いって、かなり頭を使うキャラ。脅しではないが最終局面などで新キャラとして登場させるべきではない
  (デウスエクスマキナの防止)
4、実は、影が薄い。(個人的な感想)
5、DIO様ー俺だー吸血してくれー(←何をいっとるんだ俺は)
6、下手すれば、物語全体のパワーバランスが崩れる。
以上のことにきをつければ問題ないと思います。(5を除く)
欠点ばっかり挙げていきましたが、面白いキャラクター性でもあります。
がんばってください。

553■■■■:2011/05/20(金) 02:14:08 ID:97yNPRC6
多分だけど、原作におけるエロイベントドキドキイベントは基本的にギャグなのに対して、上条と御坂(禁書)の夜の会話がシリアスめいてる(特に上条の方)のが550の言う上琴なんではなかろうか。
仮に原作にこのシーンがあったとして、朝まで一睡も出来ない上条さんでした、とか、バスルーム覗いて殴られる、とかだけで軽く流しちゃうのでは。
この話は、二人が入れ替わったら?というシチュエーションを掘り下げるためのssなのか、それとも入れ替わりの謎に迫る、原因を追究し黒幕を倒すようなアクション物なのかで読み方が変わる。
前者ならそういうものとして見れるけど、後者ならぶっちゃけくどい。一意見としてだけど。
続き楽しみにしてます。

554Changeの作者:2011/05/20(金) 07:19:05 ID:G.ozEJfQ
>553様

今後どんな展開を迎えるのかはネタバレになるので言えませんけど、そうですか。同衾会話がシリアスでしたか。
インデックス(外見美琴)の噛み付きオチのために引っ張ったんですけど、なかなか難しいですね。
あ、これだけは言っときますけど、原作を準えたいので、後々、アクションシーンはあるかもしれませんけど、くどくても温かい目で見ていただけると。(ヲイ)

>547様

時間操作系の能力者と言うのであれば、個人的意見ですけど、アクセラのベクトル操作がレベル6になったときにできるようにしてしまうのも一つの手かと。
ただ、『時間操作』って宇宙の範囲を考えちゃうと少々無理があるので、GS美神やキン肉マンⅡ世の時間超人のときのような『超加速』の方が無理ないかもです。
それでしたら552様の言う条件は守られると思います。

555中二病 番号 20000:2011/05/23(月) 00:15:19 ID:Pf/p5dw2
久しぶりの投下



第一部7日目 第二部某日 17時40分  風紀委員第十七七支部(黒子たちが所属している所) 『この作品では、アニメ版と同じ、ビルの一室ということにする。』


と、いうわけで、無事おっさんを救い出した俺たち(駒田 秀人、柿沼 渡)は風紀委員のとこに連れて行かれ・・・・


・・・・正座しております。

「つまり!一般人は人命救助に向かわず、早急に、直接もしくは近くの風紀委員や警備委員を通して消防のほうに連絡すること!」

「「はーーい」」


頭に花のカチューシャ(?)をつけた女の子が説教している。
確かに調子に乗りすぎたところもあったがいくらなんでもそこまで怒る必要ないじゃないか・・・いや、どちらかというと・・・


「馬鹿にしないでください!・・・・良いですか!だから――――!」


「あー、はいはい。わかったわかった。今度からそうするからさー、そろそろ返してくんない?最終下校時刻も近いしさー
 さすがにこっから歩きで帰れってのは酷だぜー。」

「〜〜〜〜〜〜!ほんとに反省してるんですか!?」

どっからどう見ても、渡が挑発してんのが原因だな・・・さて、どうすっかな。口には出さないが確かに歩いて帰るのはいやだな・・・


コンコン

「私が出ますわ。はい、どなたですのー?」

そして、俺たちにとって聞きなれた(まがまがしい)声が耳に入ってきた。


『すみません、そっちに駒田と柿崎って人いませんか?』

「ゲッ、梧桐(ごとう)かよ・・・秀人!逃げるぞ!」

「咲希(さき)には捕まりたくないな・・・OK!」

そうして、俺らは出入り口へ駆け出した。咲希が扉を開くタイミングを見計らって・・・・今だっ!

「あまい!」

全力で走って事もあって、咲希姉のラリーアットをもろにくらって、そのまま尻餅をついた。

「あんたねぇ、秀人!また、迷惑かけて!チョットはこっちの身にもなってよ。福引屋のおじさん、泡吹いてたじゃない!一体何したの!?」

「いや、咲希。あれは渡が悪いんであって・・・ってどこ行きやがったあの野郎!」

下から、M600の轟音が聞こえてくる。バスなくても車あったじゃねえか!

「そら、とにかく帰るわよ。ほんとにごめんね、うちのグータラ(ひでと)が迷惑かけちゃって。」

「い、いたい!咲希!人間腕はそっちに曲がらないって!ごめん!ほんとにごめん!」

どんどん、力を入れる咲希に俺は許しを請う。だが・・・


「あっそ、私の専攻『脳神経医学』だからそっちのほうわかんない。」


うそつけ!常識的にわからないはずがないだろ!なんか、だんだん骨がミシミシいってきた・・・

「まって、たんま!ほんとにやばいから!」

こうしてうまい感じに関節技が決まるのは、彼女の胸がちいさイタイ痛い痛い痛い!!!


「ねぇ、秀人?ねぇ、駒田 秀人君?あなたはさっきなんていったのかしら?」

「まて、思っただけだ。別に口に出してはいないぞ。べつに咲希の胸が薄いなんで事は一言も、決してい゛っ て゛な゛い゛そ゛!」

「私の能力を忘れたわけじゃないわよねー?」

そうだ、彼女は他人の思考を読み取れる。もっとも読み取れるだけだが・・・

「勝手に頭の中探ったのが悪いんだろ!第一事実じゃねぇか!この前計ったときだってAだって自分で・・・・」

「何であんたが知ってるのよ!」

「自分で言ってたじゃん!昨日酒飲みにいったときに、『私の胸が大きくならないー、牛乳飲んでもだめだったー』ってさ!」

「〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!忘れなさい!今すぐこの場で忘れなさい!」

ボキ(←間接がはずれる音)
ガッ(←後頭部に鉄拳)

「ぐあっ!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

そこで俺の意識は途絶えた・・・


―――――――――――――


『俺は夢を見た。雨の降っている最中、小さい女の子が泣いてる。どうしよう・・・
 俺は傘を持っていた。コレを差し出すべきだろうか・・・
  
 迷ってる俺に、声が聞こえてきた。
     
        「お前が雨にぬれてしまうぞ。」

 雨にぬれるのはいやだった。
 俺は通り過ぎようとした。
 
 声が聞こえてきた。
    
        「彼女が雨にぬれてしまうぞ。」

 俺は何もすることが出来なかった。』

――――――――――――――

556中二病 番号 20000:2011/05/23(月) 00:15:57 ID:Pf/p5dw2
第二部2日目 6時30分 第五学区 東京大学理Ⅲ学園都市キャンパス 循環器内科学休憩室


ジリリリリリリリリリリリリリィイイイイイイイン!!!!
ジリリリリリリリリリリリリリィイイイイイイイン!!!! ピッ

けたたましい目覚まし時計の音で俺は目を覚ました。硬いベットと枕程度しかない殺風景な部屋を出て、シャワーを浴びる。そして、自身の身に何が起きたのかを整理する。


・・・咲希に殴られた。以上。

咲希に殴られた後がまだズキズキと痛む、『もう少しマシな寝床(じぶんのまんしょん)』を目指し俺は休憩室を出――――

ぐぅぅぅ〜〜〜〜〜

腹の虫がご立腹だ。

「まったく・・・今日は大学休むつもりだったのに。」

ひとまず、朝食をとるため、俺は購買に向かった。食堂もないことはないのだが・・・いかんせん不味い。

眠気覚ましに中庭を散歩する。夜露による適度な湿り気は、心地いいものだ。胸いっぱいに吸い込んだ空気にかすかにタバコのにおいが混じる。
においのするほうに目を向けると一人の学生が立っていた。
髪は淡い茶色で青い七分袖シャツとカーキーのカーゴパンツを着こなしている。


「ん?ああ、おはよう。荒関(あらせき)。」

「駒田か、おはよう。」

そう言うと、荒関はタバコを携帯灰皿に入れた。目を動かし次のタバコを探している。

「珍しいな、お前がこんなに朝早くいるなんて。」

「たしかにオレもそんなに早く来るほうじゃないが、毎日重役出勤のあんたにだけは言われたくないな。」

「俺はいいんだよ俺は、現に重役(しゅせき)だし。」

「あんたが主席でいることがいまだに疑問だぜ。で、何であんたがこんなに早くいるんだ?」

「いやー、実は昨日咲希に怒られちゃってさー。」

「また夫婦喧嘩かよ。」

「そうそう・・・・・・・は?夫婦?」

「違ったのか?柿沼が言いふらしていたが。」

「そのうわさが咲希の耳に入った瞬間死ぬな・・・俺が。」

「とりあえず死ねよ。リア充。・・・っと、そろそろ時間か。」

「時間って・・・今日ってなんかイベントあったっけ?」

「いや、オレはバイトで家庭教師と個別指導の教師をやってるからな。」

「なるほど・・・ってちょっと待て。いくらなんでも早すぎないか?今、7時前だぞ?」

「準備とか計画とかそんなんで軽く1〜2時間かかるからな。こんぐらいがちょうどいいんだ。」

「そうか、じゃあなー。」

「ああ。じゃあな。」

さて、購買に行きますか。


「いらっしゃいませー」

とりあえず目に付いたものを買っていきレジに向かおうとしたとき、『新発売』と書かれた缶ジュースに興味を持った。

   『初恋ジュース』

「・・・・・初恋ジュースってなんだよ・・・」

持ってみるとなんだか生ぬるい、それだけでも危険なにおいがぷんぷんするが・・・怖いもの見たさに買ってみることにした。
 

「ありがとうございましたー」

結局 『クラブハウスサンド2つ。バナナ1本。半日分の野菜2本。冷やし鶏がらスープ。初恋ジュース。』を買って俺は購買を後にした。 


「さてと、新発売『初恋ジュース』のお味の方はと・・・」


ゴクゴクゴク・・・・

「おお!どろどろののど越しに、生ごみを噛みしめたかのようなほろ苦さ、何かを腐らせ過ぎて甘味料になったかのような甘酸っぱさのハーモニーが
 この世のものとは思えないほどつらい胸焼けを・・・ ま さ に 初 恋 って、んな訳あるか!誰だコレ作った野郎は!」

 『アイデア原案 製作監督  柿沼 渡 第五学区 東京大学理Ⅲ学園都市キャンパス所属』

「今度あいつの水筒にでも仕込むか・・・因果応報だ。」

渡への復讐計画を練っているうちに俺は大学を出た。
ここから先はバスに乗っていけば一直線だ。さぁ!冷え切ったベットが俺を待っている!

557中二病 番号 20000:2011/05/23(月) 00:17:23 ID:Pf/p5dw2

2日目 11時30分 高塚家 視点 荒関 俊吾

「じゃあ、説明するぞ。間接代名詞は正直言ってかなり難しい。中学生にとって最大の難関だ。


『 関係代名詞

 
例  姉は大学に通う : A sister goes to college.
 (大学に通う)姉 : a sister (who goes to college).
             ↑    ↑
            先行詞 間接代名詞     ↑
                         関係詞節

→ I have a sister (who goes to college).

私には、(大学へ通う)姉がいる。

『主格の間接代名詞』・・・『先行詞が関係詞節内で主語の働きをする。』
                      (S)

・兄はアメリカに住んでいる。 :A brother lives in America. (元の文)

・(アメリカに住んでいる)兄 :a brother (who lives in America).
                 S´ S´
                          ※先行詞が元の文でSになっている。


→I have a brother (who lives in America).
S V S´   S´

私には(アメリカに住んでいる)兄がいる。 』

とまあこういう奴だ。まあ、べつにいま覚えなくてもいいからな。後で復習してくれれば良いし、はっきし言って授業中に覚えてもらおうとは思ってもないし、する必要もない。
要は、ものにすればいいんだ。あきらめてほったらかしにさえしなければ何とかなる。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい。」

「じゃあ授業はコレでしまいだ。しっかり復習するように。」

2時間の家庭教師のバイトが終わり、オレは帰り支度を始めようとしたら。

「あの・・・・先生・・・・・おれ・・・・・大丈夫でしょうか・・・・・・テストが悪いと・・・・また母さんに・・・・・・しかられます・・・・・・・」

覇気も自信も感じさせない声で、話しかけられた。

「安心しろ。お前の弱点はその自信の無さだ。元から頭はいいんだ。自信を持て、オレが保障してやる。」

「はい・・・・・・・・でも・・・・・・」

「まずその、『でも』ってのをやめろ。人間口調からだ。いいか、要はこの世の中気合なんだよ。
 気合と元気とあと頭さえよければ何とでもなる。おっと、ここで言う頭の良さはテストの点数じゃないからな。
 いいか、お前の名前を言ってみろ。」

「・・・・・・高塚(たかつか)・・・・佳吾(けいご)・・・です。」

「んー。若干覇気が足りないが、いいだろう。不安になったら自分の名前を呼ぶんだ。それだけでがんばれる時だってある。」

「はい!」

「よし!良い返事だ!」

 /└────────┬┐
< To Be Continued... | |
 \┌────────┴┘

558■■■■:2011/05/23(月) 00:30:43 ID:HZqlYnAs
GJ!

まさかあなたがGEだとは思わなかったわ・・

559中二病 番号 20000:2011/05/23(月) 00:40:31 ID:Pf/p5dw2
作者コメント・・・
「そんな投稿ペースで大丈夫か?」
「大丈夫じゃない問題だ。」
「わけがわからないよ。」

エルシャダイと友人に勧められたまどか☆マギカで製作に遅れが出た中二病です。
今回は、ちょっとばかしこの作品の説明を(注意 二次設定多めです。)

今回話しに出てきた東大ですが・・・これは赤門がある本家と、研究中心の学園都市の
二つのキャンパスがあります。ですので、間取りなどが違います。
また、3レス目の授業のところですが、これは自分の書いた。英語のノートや
参考書を引っ張り出してきて作っています。あくまで素人がやったものなので、
間違っているかもしれません。
ちなみに勘の良い方なら気づいているかもしれませんが、この作品の能力は
すべて【オリジナル】超能力スレ1.2からいただいております。
自分で考えた能力も、一旦そちらに書き込んでから、作品の中に入れていきますので
ご了承ください。

最後に、この作品では
 「「ヒャッハー汚物は消毒だー」」
などというように二つかぎ括弧を重ねたら、それはハモっていることを意味します。

基本的に第二部はギャグが多いです。駒田や初春さんたちのドタバタが8割を占めます。
それと、僕の作品はオリキャラが結構多いので、嫌いなひとは、その不快感が気持ちよくなるまで
我慢してくださいw

では次の創作意欲が沸く頃にノシ

560中二病 番号 20000:2011/05/23(月) 00:45:14 ID:Pf/p5dw2
ずれているので修正

『 関係代名詞

 
例  姉は大学に通う : A sister goes to college.
 (大学に通う)姉 : a sister (who goes to college).
             ↑    ↑
            先行詞 間接代名詞     ↑
                         関係詞節

→ I have a sister (who goes to college).

私には、(大学へ通う)姉がいる。

『主格の間接代名詞』・・・『先行詞が関係詞節内で主語の働きをする。』
                      (S)

・兄はアメリカに住んでいる。 :A brother lives in America. (元の文)

・(アメリカに住んでいる)兄 :a brother (who lives in America).
                 S´   S´
                          ※先行詞が元の文でSになっている。


→I have a brother (who lives in America).
 S V    S´   S´

私には(アメリカに住んでいる)兄がいる。 』

561■■■■:2011/05/25(水) 18:03:25 ID:XYadEQdU
   >>134
  ( ゚∀゚)彡 おっぱい!おっぱい!
 
しかし、流石堕天使エロメイド。エロい。というかこの絵師って誰?

詳細きぼんぬ

562■■■■:2011/05/25(水) 18:03:41 ID:XYadEQdU
誤爆

563■■■■:2011/05/26(木) 17:30:07 ID:5NKY2phA
>>561 今すぐそのスレに案内してくれ

564■■■■:2011/06/01(水) 22:05:48 ID:yOBkyL1w
新約二巻、SS集の発売日決まったみたいだね
8月までの禁書分補充的な意味でも、SS職人の方々には執筆頑張ってもらいたい
駄レスすまん

565■■■■:2011/06/05(日) 13:33:04 ID:MRHZ5z8c
小説家になろうの方で中二病さんがISのSS作っててワロタw

566■■■■:2011/06/05(日) 13:35:15 ID:MRHZ5z8c
訂正

にじファンのほうだったwwwww

567■■■■:2011/06/05(日) 22:53:07 ID:aKXZvYHc
>>565
出来はどうだった?
相変わらずのクオリティかな?

568■■■■:2011/06/05(日) 23:16:18 ID:MRHZ5z8c
>>567
うーん、相変わらずの「・・・」とか改行が多かった。「うぉぉおおぉぉぉおぉぉお!!!」みたいな中二節(?)も健在
ギャグはいつもどおり面白いしまだ短いけど読んでみな。
少なくとも、原作崩壊はない(ただし、やっぱりオリキャラはいたし、ISは使わないけど男も一人いる。)
それと、特徴的な
「第一部7日目 第二部某日 17時40分  風紀委員第十七七支部(黒子たちが所属している所」
みたいなところは、省略されてた(原作では、◆とか◇が使われていたからそれのリスペクトかもしれない。)
中二病さんのファンだったら必見だし、まだ2話しか出てないから今後に期待。
一応ここに詳細
『全ての道はローマに通ず』 IS インフィニット・ストラトス 中二病 番号 20000
google検索で出ると思う。
小説家になろうの方じゃなくて、にじファンの方に掲載されていることに注意。

569■■■■:2011/06/06(月) 19:48:15 ID:IjK33Itk
自演乙

570■■■■:2011/06/07(火) 00:01:34 ID:9zwo0Xg2
>>565>>568
ここまですがすがしいスレチもめずらしい。
SS速報行って来い。というか、にじファンに行け。

571■■■■:2011/06/08(水) 17:35:48 ID:EV1gDXSw
中二病のSSを褒めるとなぜか自演といわれる件について
>>568 スレ値だアホ

572■■■■:2011/06/08(水) 18:55:08 ID:x2zUzKW.
言いたかないけど、禁書以外の二次創作をここで紹介されても、
作者本人による注目集めの為の自演と取られても仕方ないと思われ。ここは「禁書」のSSを投下する場所であって、
例えここで連載してるSS職人でも、他の作品を題材にしたSSそれも他サイトに載せたSSを紹介されても鬱陶しいだけ。
自演の真偽がどうあれ、以後はスレチもそれにのっかるのも自重して貰いたい。

573■■■■:2011/06/08(水) 20:19:53 ID:zarYyka2
>>567の者だ
便乗自重するスマン

574■■■■:2011/06/08(水) 23:33:35 ID:lBNqM5K2
余計なことを書くから自演と書かれてしまう悪循環。自重を望む。

575■■■■:2011/06/09(木) 01:08:55 ID:7pqqD3x2
>>574
結局こういう馬鹿なファンによる宣伝とかで、一番被害被るのは作者本人って言う。

576■■■■:2011/06/09(木) 01:14:05 ID:IAHq6lL2
いいからもう止めとけ

577■■■■:2011/06/09(木) 20:07:40 ID:7pqqD3x2
いまさらだが>>を間違えた。>>568だった
すまん

578568:2011/06/10(金) 04:17:34 ID:HduRcafM
>>568の者です。
今回、自分のスレチな発言により、皆さんを不快な気分にさせて、ごめんなさい。
ちょっと考えればここじゃないこと位は分かったのですが。
皆さんにも知らせてあげようと、つい書き込んでしまいました。
スレ住民の皆様、>>567様、中二病 番号 20000様
ご迷惑をおかけして、まことに申しわけありません。

579■■■■:2011/06/10(金) 23:25:42 ID:JPBVOo3E
上条−妹達(シスターズ)もの短編SS(を投下します。
本当は完成させてから投下したかったのですが、ちょっと、スレの流れが変な方向に向かっている
ようなので前半だけですが敢えて投下することにしました。中途半端でゴメンナサイ。
それと、今回の変な流れについてですが、心当たりのある方にお願いします。今後このような変な
雰囲気にならないよう善処してくださることを期待します。

580■■■■:2011/06/10(金) 23:26:35 ID:JPBVOo3E
水曜日 16:30

 「ピンポーン」

 水曜日の夕刻、とある学生寮の一室にインターフォンの呼出し音が鳴り響き、部屋の住人である
男子高校生はビクンッ!と身を震わせる。しかし、件の男子高校生はなぜかインターフォンには目
を向けようとはせず、

(今、チャイムが鳴ったような気がするけど…………
 いやッ!たぶん空耳だ。そうだ。そうだよ。そうに違いないんだ。三段活用!)

 まるで自分に言い聞かせるように独り言を呟く上条当麻はそのまま無視を決め込むことにした。

(今夜インデックスはお出かけだから久々にノンビリできるんだし、さあて晩飯は何にしようかな?)

「ピンポーン!」

 そんな上条の思考を遮るように再び呼出し音が鳴り響く。まるでギギギッと音をたてそうな程不自
然に首を巡らしインターフォンの呼出しランプが点滅しているのを目の当たりにしても、上条は再び
呼出し音(現実)から逃避する。

「あー、このインターフォン。押されてもいないのに勝手に鳴りやがって!とうとう壊れちまったかな。
 こ・こんど管理人さんに修理を頼まなきゃな。はは、あはははははっ」

 上条の現実逃避っぷりをあざ笑うかのように今度はチャイムではなく少女の声が室内に鳴り響く。
抑揚の乏しい少女の声は通話モードにもなっていないインターフォンから吐き出されていた。

「そこにいるのはわかっています。さっさと鍵を開けなさい、とミサカはドスの効いた声であなたに速
 やかなる解錠をうながします」

声の主は学園都市第三位の超能力者『超電磁砲(レールガン)』こと御坂美琴の体細胞クローン
であり上条から御坂妹と呼ばれているミサカ10032号だ。『欠陥電気(レディオノイズ)』である彼女
にとって一般学生寮のインターフォンを外部から操作するのはたやすいことだ。

「5秒以内に返答がない場合は強硬手段に訴えます、とミサカはドアノブに向けたサブマシンガン
 のセーフティを解除しつつ最後通告を発します。5……、4……、3……、2……、   」

 ミサカ10032号がカウントダウンを終わらせる直前、ガチャリ!という音とともに扉が開け放たれ、
そこから引きつった愛想笑いを浮かべる上条が顔を出す。

「や、やあ。だっ、誰かと思えば御坂妹じゃねえか」
「居留守をつかうとはなにごとですか?とミサカは舌鋒鋭く当麻さんの冷たい態度を責め立てます」
「いやあ、チャイムが鳴ってるのに全然気がつかなくてさ。ははっ、はははは……」
「そうですか。わかりました、とミサカは溜息混じりに呟きます。わかりましたから……」
「「「「「「「「「「 さっさと中に通しなさい!! 」」」」」」」」」」

 唐突にサラウンド音声が鳴り響くと、引きつった愛想笑いを浮かべる上条の横をすり抜けるように
全く同じ容姿をした10人の美少女達が次々と上条の部屋に入ってくる。玄関先で固まったままの
上条は「いい加減に扉を閉めなさい!」と命令され、ようやく我に返ったのかハアァァァァァァ!と大
きな溜息をつくと部屋に戻っていった。

 狭い部屋に10人もの美少女を侍(はべ)らすことはある意味男の本懐といえよう。だが、部屋の主
であるはずの上条はなぜか正座で、しかも額には大量の脂汗を浮かべていたりする。テーブルを
挟み向き合って座っている御坂妹ならびに上条を取り囲むように立つ9人の妹達(シスターズ)の視
線に上条は居心地悪そうに身体をモゾモゾさせている。一万名もの妹達の中で学園都市に滞在し
ているのは現在10名であり、その全員がこの部屋に集結しているのだ。妹達の視線に耐えかねた
上条が恐る恐る、

「あのおぉぉ、今日は一体……」

 バンッ!と上条の言葉を遮るようにテーブルを叩いたのは御坂妹である。そして上条は反
射的に背筋をピンッ!と伸ばす。

「まず確認を取りますが、よもや私達との約束を忘れているとは言いませんね。当麻さん、とミサカは
 有無を言わせぬ迫力で当麻さんに事実確認の回答を求めます」

581■■■■:2011/06/10(金) 23:27:34 ID:JPBVOo3E
 話は日曜日に遡る。
 とある事件において上条と行動を共にした御坂妹が、事件解決後に自分は本当に役に立ったの
かと上条に不安げに尋ねてきたことにはじまる。当然『当たり前だ!お前は良くやった』と答えた
結果『では、ミサカは当麻さんにご褒美を要求します』という展開になり結局水曜日(本日)
の放課後を御坂妹のために空けるという約束となった。
 (どうせ買い物か何かだろう)と高を括って安請け合いした上条だが、その直後に鳴り響
いた『『『『『『『『『 約束しましたよ 』』』』』』』』』というサラウンド音声に狼狽えたのは言う
までもない。

 (まあでも下宿(ここ)にはインデックスもいるんだし、きっと大丈夫さ!)っと、自分に言い聞かせて
いた上条だが、今朝舞い込んだインデックス宛ての一通のハガキが上条の心に不安の影を落とし
たのだ。 『ご当選おめでとうございます』と書かれたハガキの正体は招待券だった。明日開店する
高級中華飯店の前夜祭が16:00から開催され、この招待券を持参すれば時間無制限のディナー
バイキングに参加できるということで、インデックスが狂喜乱舞したのは言うまでもない。

「バイキング、バイキング、中華ディナーのバイキング!」

 今までこんな懸賞に一度たりとも当選したことのない上条はハガキを両手で差し上げながら部屋
中をスキップしているインデックスに

「良かったな!インデックス。けど、お前、いつの間にこんな懸賞に応募してたんだ?」
「してないよ!」
「えっ!?」
「私が応募したのはこことは違う中華飯店だよ」
「だったらなんで?」
「さあ、なんでだろう?」

「ちょっと待て。じゃあ、あからさまに不自然じゃねぇか!このハガキ」
「中華飯店つながりで私の所に来たのかも。そうだよ。きっとそうだよ。ねっ、とうま!」
「そんな訳ねえだろう!まったく。こんな怪しげなハガキはさっさと捨てちまおう!」
「いけません!」

 ハガキを取り上げようとした上条の動きは凛とした声に阻まれた。そして迷える子羊を導く聖母の
ように微笑むインデックスは上条を諭すように言葉を紡いでいく。

「良いですか。とうまさん。
 もし、わたくしがこの招待券を捨てたとしましょう。
 その結果、わたくしが食すはずの料理が万が一にも捨てられたりすればどうなりますか?
 主はそのような浪費を決して許されません」 

 修道女のように手を合わせ祈り始めるインデックスを目の当たりにして上条は

「いや、今はそんな事言ってるんじゃなくてさ」
「天にまします我らが主よ。赤貧にあえぐ子羊に今宵の糧を施されますことに感謝致します。
 ………………
 っという訳で夕飯は要らないから!じゃあ行ってくるね!!とうま!」

 そう言うなり、あっという間に下宿を飛び出したインデックスと入れ替わるようにやって来たのが今
ここにいる妹達だ。

「やっぱり、あの当選ハガキはお前達の仕業なんだな」
「さて何の話でしょう?とミサカは完璧にシラを切ってみせます。カエル顔の医者(せんせい)から頂
いた招待券の効果は絶大でしたとほくそ笑みつつ、そのことを当麻さんに気取られることなく話を
本題に戻します」
「…………」
「さて、本日ミサカ達は当麻さんに招待されてここに来たわけですが…………」
(何言ってんだよ。こういうのは招待じゃなくて押しかけって言う…………)

 口の中でブツブツと文句を言う上条だが、バンッ!とテーブルを叩く音に再び背骨が千切れ
んばかりに背筋を伸ばしたのは言うまでもない。

「なにかミサカの言葉使いに間違いがありましたか?当麻さん、とミサカは当麻さんの目を真っ直ぐ
 見つめながら有無を言わせぬ迫力で問いかけます」
「ノー!マム!間違いなど一切ありません!」

 最敬礼で応えた上条にむけて御坂妹は満足げに

「よろしい。では本日当麻さんはミサカ達をどうおもてなしして下さるのですか?っとミサカは少し頬
 を赤く染めながら上目遣いに当麻さんに尋ねます」
「へっ!?…………ちょっと待て!今日って御坂妹が俺に用事があったんじゃねえの?」

582■■■■:2011/06/10(金) 23:28:28 ID:JPBVOo3E
「…………、っとミサカは不思議そうに小首を傾げます。おかしいですね。こういうときは男性
 が女性をエスコートするものだと書籍には記載されていたのですが…………」
「ん?一体何の話だ?」
「朴念仁の当麻さんにこんな回りくどいことをいってもやはり無駄なのですよ、とミサカ10039号は
 諦め口調でミサカ10032号に助言します」
「誰が朴念仁だ!?
 とにかく、あれだな。みんなで遊ぼうって訳だよな!」

「はあ?一体何を言っているのですか?当麻さん、っとミサカは心底呆れたように言い放ちます」
「えっ!何って、これからみんなで遊びに出かけるんじゃ……」
「やはり当麻さんは朴念仁ですね。デートに他の女を連れて行くだなんて当麻さんにはデリカシー
 の欠片もないのですか?とミサカは舌鋒鋭くあなたの非常識な提案に異議を唱えます」
「へっ、……デート!?今日のってデートなの?」

「今さら何を言っているのですか?『異性と日時と場所を定めて会うこと』をデートと呼ぶことは国語
 事典にも載っていることなのに、そんなことも知らないのですか? とミサカは少し憐れんだ目で
 おバカさんを諭すように語りかけます」
「(そうか。デートって言ってもきっと深い意味はないんだろうな。コイツらはこういう経験を一つ一つ
 積み重ねて成長していくんだし、それならおれも協力しなきゃな!)よし、解った。そういうことなら
 この上条さんに任せなさい」
「では、今日は当麻さんがエスコートして下さるというのですね、とミサカはもう一度確認をとります」
「ああ、任せとけ!じゃあ、最初は誰だ」
「はい、とミサカ10039号がおもむろに一番手に名乗りを上げます」

「じゃあ、行こうか」
「一つ言い忘れていましたが、一人につき制限時間は2時間です、とミサカ10039号はミサカ達が
 決めたルールを当麻さんに補足説明します」
「ちょ、ちょっと待て!なんで一人2時間なんだ?」
「それ以上短くては『ご休憩コース』すら無理だとの情報を入手しましたので、とミサカ10……」
「こらッ!何が『ご休憩コース』だ。お前ら、そんな偏った情報をどこから手に入れてやがる?」
「主に病院の待合室にある女性週刊誌からです、とミサカ10039号は当麻さんに病院におけるこの
 手の雑誌の充実ぶりを懇切丁寧に説明します」
「お父さんは許しませんよ。そんな不純異性交遊!!
 (カエル顔の医者(せんせい)にも一度文句を言わねえとな。コイツらは週刊誌の怪しげな記事だ
 って鵜呑みにしちゃいそうだし、コイツらの将来のためにもここは正しい男女交際ってやつをキッ
 チリ教えてやらないとな)」

「当麻さんはなぜ怒っているのでしょう?とミサカ10039号はキョトンとした顔で自己分析を始めま
 す。それにいつから当麻さんがミサカ達のお父さんになったのでしょうと記憶を遡って思考を巡ら
 せます」
「言うまでもありませんが全ミサカはお姉様の体細胞クローンです、とミサカ13577号は判りきった
 事実を簡潔に述べます」
「生物学的にはお姉様のお父様である『御坂旅掛』氏がミサカ達のお父様と言えるでしょう、とミサ
カ19090号はそこから流れるように結論を導きます」

「しかし本来生まれるハズの無いミサカ達を造ったのは『量産能力者(レディオノイズ)計画』ですから
 研究所の人達こそミサカ達の両親だとも言えるのでは、とミサカ19961号は敢えて別の見解を
 述べることにします」
「ということは芳川桔梗女史がミサカ達のお母さんという訳ですね、とミサカ10100号は新たな見解
 に同調する姿勢をみせます」
「ミサカ達の受精卵から現在の身体まで育てたのが母親というなら、研究所の培養槽こそミサカ達
 の母親と言えるのではないですか、とミサカ15678号は新たな見解に疑問を投げかけます」
「それを言うならDNAマップを提供したお姉様こと私達の母親だといえるかも知れません、とミサカ
 10032号は更なる可能性を提示します。………………ハッ!」

 御坂妹達の的外れな議論を聞きながら、上条はさっきの『お父さん』っていうが只のボケだと言う
ことをどう妹達に説明しようかと考え込んでいたが、ふと突き刺すような視線を感じて顔を上げると
御坂妹がテーブルに両手を置き上条の方に身を乗り出していた。相変わらず感情表現は乏しいが
何となく不機嫌だということは上条にも判った。

「当麻さん!とミサカは怒ったような口調で当麻さんに迫ります」
「なっ、何かな?御坂妹」
「当麻さんはいつの間にお姉様と結婚したのですか!?とミサカは単刀直入に問い正します」

583■■■■:2011/06/10(金) 23:29:33 ID:JPBVOo3E
「ぅへっ??」

 あまりにぶっ飛んだ話の展開に上条は思わず間抜けな返事をしてしまう。

「ミサカは許しませんよ。そんなお父様(当麻さん)とお母様(お姉様)の不純異性交遊!!」
「なんでそうなる!?俺と御坂が結婚している訳ねえだろ!御坂はまだ中学生だろ!」
「では芳川女史と結婚されたのですか?とミサカはたたみ掛けるように質問します」
「違う!」
「まさか御坂美鈴さんとの略奪婚?とミサカは当麻さんの守備範囲の広さに驚愕しつつ……」
「だ・か・ら!俺は誰とも結婚なんかしてねえ!!さっきの『お父さん』っていうのは只のボケだよ。
 悪かったよ。分かり難くてッ!」

上条の言うことをようやく理解したのか御坂妹は乗り出していた身を元に戻すと

「ということは当麻さんはどなたとも結婚していないということですか?っと、ミサカは真実を探るよう
 に問い掛けます」
「当たり前だ、俺が結婚してる訳ねえだろ!」
「わかりましたっと、ミサカはホッと胸を撫で下ろします。これでミサカは安心してデートができます」
「では参りましょう、っとミサカ10039号はおもむろに当麻さんの腕を引っ張ります」

「ちょっと待ってくれ。さっき一人2時間って言ってたけど、長すぎるから一人30分にしてくれ!」
「え?一人たった30分ですかと、ミサカは『この甲斐性無し!』という不満は口にせず残念そうな
 表情をつくって儚げに呟きます」
「だってお前達は10人いるんだろ。それ以上はこっちの身が保たねえよ」

 その言葉に妹達の動きが一瞬止まる。そして妹達を代表して御坂妹が上条に

「申し訳ありませんでした。当麻さんのお身体のことを考えるのを忘れていました。とミサカは得心顔
 で呟きます」
「そうか。判ってくれたか!」
「わかりました。つまり……当麻さんは『早い』ということですね!と、ミサカは驚愕の新事実に……」
「ゴラッ!俺はそんなことは言ってねえ!!」
「では、当麻さんは早○ではないと……」
「だぁぁあああああッ!!だから、そっち方面の話はもう止め!!
 ほら、ミサカ10039号。出かけるぞ!」
「はい!と、ミサカ10039号は零れんばかりの笑顔で応えます」

こうして上条当麻の不幸(?)な一週間(水曜日)の幕が切って落とされた。


後半に続く。

584■■■■:2011/06/10(金) 23:31:36 ID:JPBVOo3E
以上です。
これは昔投下していた「ミサカ、巫女と美琴」の番外編にあたる「上条当麻の不幸(?)な一週間−水曜日妹達(シスターズ)−編」
です。後編はまだ2割ほどしか掛けていないので少し時間を空けてから投下することになります。

585■■■■:2011/06/10(金) 23:47:32 ID:wI5iBZ4Y
ようやくSSが投下されましたよ。

586■■■■:2011/06/10(金) 23:51:45 ID:mYSwg8Us
乙なんだよ

587■■■■:2011/06/11(土) 00:18:30 ID:QewdezKs
GJ〜〜。久々の投下だぜい
ジャンルはラブコメか?後編も待ってる

588■■■■:2011/06/12(日) 09:59:22 ID:mpfgj8Xs
GJ
後編待ってます

589■■■■:2011/06/15(水) 16:42:52 ID:M42JE.GU
勃起不全のおっさんvsヤリマン娘w※画像有り
ttp://yariman.zxq.net

590■■■■:2011/06/18(土) 10:03:42 ID:y4AGb73k
過疎ってるな

591とある学校(クラス)の転校生:2011/06/20(月) 03:59:24 ID:RNo/57vw
あらすじ
 すべてが解決した学園都市。
 今日も平和な日が・・・続くわけもなかった!!
 とある学校のとある学級(クラス)に転校したきた転校生とは!?
「みなさん、転校生を紹介するのですよー」
開かれたドアの先の人物を見て少年は思わずいつもの台詞(セリフ)を口ずさむ。
「ふ、不幸だー!!」
 とある学校のとあるを学級のとある少年の日常はどうなってしまうのか!!
 
という作品を構想しているんですがどうでしょう?
ちなみにコンセプトは「学園コメディ」です。

592■■■■:2011/06/20(月) 13:28:56 ID:6l8V6Wyk
>>591
「汝の欲する所を為せ。それが汝の法とならん」
「なるほど。ならば示してみたまえ、汝の法を」

意訳
構わん。続けたまえ
さあ早く本文を書く作業に戻るんだ!

593「転校生なのですよー」:2011/06/21(火) 06:52:19 ID:m2yPAq8.
 科学サイドと魔術サイド。二つの勢力間の争いは一人の少年の活躍により終焉を迎えた。
 そして、その少年はと言うと・・・
「不幸だー!!」
 相変わらずいつものセリフを口ずさんでいた。
 
 始まりは青髪ピアスだった
「もうそろそろ新1年生入って来るけど、どんな子がおるやろか?」
「にゃー、やっぱり高校生なのにどう見ても小学生な感じのロリコン新一年とかがいいにゃー」
「あ、アンタ達は小萌先生まで毒牙にかけようとしているの?上条当麻!!あんたも同じ考えなんでしょう!!」
 というふうに、今回も上条はなんだかよくわからないうちに巻き込まれていた。
 ちなみに、
「えー、別に新1年の中にかわいい子がいるとは限らねーだろ」
 と正論をいったら、
「くっ、どうせ上やんは持前のカミジョー属性を新一年にも発揮するくせに!!だから僕らの気持ちがわからんのや!!」
「カミジョー属性もいいかげんにして欲しいところだにゃー」
「見た目で人を判断するなんて最低ね、上条当麻」
 と三者三様なのか同じなのかわからない返答をされ、本日二度目の不幸だーをつぶやくこととなる。
 
「あ、そうそう上やん知っとる?うちのクラスに転校生が来るらしいで」
 その言葉にガタッと反応したのは姫神だ。
「わ、私の唯一の特徴が・・・」
 そんな姫神をかわいそうな動物を見るように見つつ
「け、今朝職員室の前で偶然聞いたんやー」
 スルーした。
 ちなみに姫神は、
「わ、私なんて・・・」
 と、どす暗いオーラに包まれて机に突っ伏している。
 ・・・とりあえず姫神は後でフォローするとして・・・ 
「で、どんな奴なんだ?」
「いやー、さすがにそこまではわからんかったわ。」
「ふーん」
 姫神みたいに何もないおとなしめの子がいいなーとか思っていると、小萌先生が入ってきた。

「みなさーん。今日は重要なお知らせがあるのですー。なんと、このクラスに転校生が来ちゃうのですー。」
 おー、という歓声と共に、オーラがさらに黒くなっている姫神・・・はもう全力で後でフォローするとして、上条は全力で祈る。
 神様、どうか、どうか普通の転校生でありますように、なにとぞ、なにとぞお願いします!! 
「それでは入ちゃってくださいなのですー」
 そして入って来たのは―
 白髪
 赤い瞳
 痩せた体  
「ふっ、不幸だー!!」
 上条当麻の叫び声と共に入室してきたのは、学園都市第一位、一方通行だった。

594「転校生なのですよー」あとがき:2011/06/21(火) 07:09:19 ID:m2yPAq8.
 期待して裏切られた人、すいません。
 姫神のファンの人、色々すいません。
 誤字、脱字、ある場合は指摘、お願いします。
 まだ続きます。

595■■■■:2011/06/22(水) 00:11:40 ID:OPtD8PzA
初投稿乙!
この作品はコメディなのでしょうか?
物語の導入としては良い出来だと思います。
ただ、分量的にはこの3倍ぐらいは書き溜めてから投下した方が
感想がつきやすいと思います。
どういうオチがつくのか、続きの投下を期待して待っています。

596「転校生なのですよー」:2011/06/23(木) 07:32:27 ID:nR6IbL3A
 話は数日前にさかのぼる。
「一方通行、学校行くじゃんよー」
 と黄泉川が言い出したのが事の始まりである。
「はァ?なンで今更学校なンかいかなくちゃいけねェんだ」
 一方通行は学園都市第一位の頭脳の持ち主だ。普通の高校レベルの学力なんて、とうの昔に飛び越えてしまっている。
「だからって、いつまでも家でゴロゴロしてる訳にもいかないじゃんよー」
「・・・・・・」
 科学サイドと魔術サイドのいざこざが終わった今、妹達はそれぞれの国で学校に通うべく準備中だ。
 今まで妹達を守るために戦ってきた一方通行の役割は終わったと言える。しかし・・・・
「俺はもう長点上機に戻る気はねェぞ」
 以前、一方通行が所属していた長点上機学園は、学園とは名ばかりで一方通行を人とは見ていなかった。ただのモルモット扱い。一方通行はもう二度とあの場所へ戻る気にはなれない。
「そうじゃなくて、うちの学校に来るじゃんよ!!」
「あァ?お前えンとこの学校だァ?」
 一方通行の知る限り、この爆乳ジャージ体育教師の務めている学校はいたって平凡な普通の学校だ。
「いや、私の学校には月詠小萌っていう、生徒一人一人に合わせて教材を作る名物教師がいるじゃんよ」
「確かあの背の小せェガキみてェな教師か」
「んでその先生に聞いてみたら『なんとかなるかもしれないのですー』っていう返事があってね。一方通行も一般教養ぐらい身につけたほうがいいじゃんよ」
「一般教養ねェ」
 確かに、これまで一方通行が受けた教育は能力開発に特化したものだった。一方通行から得られる成果のための教育なので、黄泉川の言うとおり一般教養という点において一方通行は同年代の人間より劣っているのかもしれない。
「これからも人生長いじゃんよ。その先輩である私が行った方がいいって言うんだから、行くべきじゃんよ」
「面倒臭せェ・・・」
「あー、そう言うと思ったじゃんよ。でも、もう転校届は出しておいたから引きずってでも通学させるじゃんよー」
 一方通行はレベル5だ。核兵器を打たれようが平気で立っているような人間だ。しかし・・・
 一方通行は黄泉川をまじまじと見る。
 急に黙ってしまった一方通行を不思議そうに覗き込む、その表情。そこにあるのは・・・
 心配
 思いやり
 優しさ・・・
「・・・はァ、仕方ねェな、ただし辞めたい時はいつだろォがやめるぞ」
「おっ、自ら行ってくれる気になったとは!!引きずっていく手間が省けたじゃんよー」
 ニコニコと笑う黄泉川を見て一方通行は理解した。
 もう学園都市最強ではない、と。
 なぜなら、自分より戦闘力ではるかに弱い人物にあれこれ指図されているのだから。
 しかし・・・
「(まァ、悪かァねェか)」
 そう、一方通行は思う。
 たとえ学園都市最強でなくなったのだとしても、あの時には得られなかったものが得られたのだから。

597「転校生なのですよー」あとがき:2011/06/23(木) 07:52:03 ID:nR6IbL3A
 コメント、ありがとうございます。
 コメントを見たとき、作者、舞い上がりました。
 書いていいよと言ってくれた方、助言を下さった方、special thanks!!
 ちなみに、この作品はコメディを予定しています。 
 あと、三倍ですかー。
 気力持つかなー、と考えながら遠い目をしてみます。
 今回はキリがいいので投稿させていただきました。
 次回からは、とある高校で出会った二人は?
 という所からの再開です。

 書いてるときは気が付かなかったけど読みにくいですね。以後気をつけます。

598■■■■:2011/06/25(土) 23:41:03 ID:MMKU7i52
>>597
乙です。
次からいよいよ本編に突入のようですね。
無用のアドバイスだとは思いますが、執筆途中で予定外の
伏線を張りすぎたり登場人物を増やしすぎると物語をまと
めにくくなるので、初投下作品であるなら短編〜中編程度
にまとめる方が良いかもしれません。
物語の完結を期待しています。
GJ目指して頑張ってください。

599「転校生なのですよー」:2011/06/26(日) 22:48:00 ID:cGwJqltU
「一方通行!!何でこんな所に!!」
「あァ?!何でお前がこンな所に居やがンだ?」
「何でも何も俺はここの生徒だ!!」
「生徒!?くそっ、そいうことか!!」
「?」
 東京都の中心部三分の一を占めている学園都市。総人口230万人。
 これだけを聞くと、人一人と偶然会う確率なんてそうそう無さそうだが、実はそうではない。
 逆に言ってしまえば東京都の三分の一ぐらいしかないといことである。
 そして、学園都市内は23学区に区切られており、幼稚園や小学校が集まっている学区や商業施設が集まっている学区などそれぞれに特色がある。
 その中で一方通行は普通の高校が集まるこの学区の黄泉川のマンションに住んでいたのだ。
 あいつが普通の高校生であるならば、街中でそれと知らずすれ違うぐらいの可能性は十分にあり得る事なのだ。
「だからって、何も転校先にいることはねェだろうが・・・」
 そうつぶやく一方通行であったが、だからといってここで帰って、『何しに学校へいったじゃんよ?』とかいわれるのも癪なので、ひとまず
「へー、二人とも知り合いだったのですかー。というわけで学園都市第1位一方通行ちゃんなのですー。仲良くやってくれると先生嬉しいのですー。じゃあ、早速そこの席に座って下さい」
 というミニマム教師の声に従って席に着く。
 ホームルームが終わり、一時限目が始まる。

「というわけでよろしくね。一方通行」
そう言ってドアを開けて入ってきた人物を見て一方通行は絶句する。
 彼女は、彼のよく知る人物。
 今日も居候先のマンションでのんびりしているはずの・・・
「何でお前がこンな所にいやがンだ!?」
「あら、何でもも何も、元はと言えばアナタが原因よ?」
 芳川桔梗。女性研究者であり、一方通行に対して『人間らしい扱い』ができる数少ない人物の一人。
「学園都市の第一位。そんな子が入学する高校がフォローも考えない訳ないでしょう。ここは、長点上機学園のようにそういう事になれた学校ではないのだから」
「俺の、フォロー?・・・黄泉川やろォか」
「そういうことよ。大学で教員資格をとった時は、ついでのつもりだったんだけどね。まさか役に立つ日が来るとは思わなかったわ。ありがとう、一方通行」
 芳川はそう言って微笑んだ。
「みなさん、こんにちは、芳川桔梗です。受け持つ科目は生物とここの副担任。よろしくね、みんさん」

 はぁ、さんざんな日だな、と芳川の授業を受けながら一方通行は思う。黄泉川に半ば強制で学校へ行かされ、芳川まで来るとは・・・。ちなみに、一方通行は他の生徒とは違い。大学院レベルのプリントと教科書を渡され、教室のなかで一人自習という形をとっている。
これなら、家で自習してても大差ないんじゃないか、とか思いながら問題を解いていくと、いつのまにか一時限目が終わっていた。
 ざわざわとどこかへ動きだす人の群れ。
「?」
 一方通行が不思議に思っていると芳川が近づいてきた。
「一方通行、次は愛穂の体育よ。これを着なさい」
 そう言って芳川が渡してきたのは体操服だ。
「あァ?、体育だァ?レベル5とそれ以下で競技なンざさせたら話になンねェだろ。それとも能力は使用禁止か?」
「いえ、能力使用体育よ。あなたに能力を使わせなかったら結果は目に見えているものね」
 そういってクスクスと笑う。
「おまえ、一回第一位の能力を特等席で味あわせてやろォか?」
「あら、自覚があるんなら話は早いわ。ああ、ちなみに能力は打ち止めに頼んでレベル2〜3程度までしか出せないようにしてるから」
 そういって芳川は持っていた体操服を一方通行へ押し当てた。
 やれやれと思いながら更衣室へ向かう一方通行。
「死ぬほど俺には似合ねェ絵が浮かぶぜ」
「まあまそう言わずに」
「で、いったい何俺はなにをするンだ?」
「あら、愛穂から聞いてないの?サッカーよ」

600「転校生なのですよー」:2011/06/26(日) 23:03:53 ID:cGwJqltU
 どうも、作者です
 >>598 ありがとうごさいます!!
 初投稿なので大変参考になります
 ちなみに物語は半分を越したかなーという所です。
 コメディ予定だったのに、普通に一方通行がとある高校に転校する話になってしまいました。
 コメディを期待していた方、すいません。
 物語はなんとか完結出来そうです。

601■■■■:2011/06/27(月) 17:58:52 ID:XHYSDeSs
>>600
乙です!
超楽しみにしてますので、話の完結に向けて超がんばってください!

ところで、今初春さん主人公のサバイバルガンアクション的な話を書いているんですけど、需要ありますかね?
それに、途中で結構なグロ描写も入れるつもりなんですけど、その辺りも大丈夫でしょうか?

602■■■■:2011/06/27(月) 18:49:31 ID:f3J5I9G2
>>601
なにそれすごく読みたい
初春とガンアクションとか最もかけ離れたジャンルな筈なのに
とんでもない化学反応を起こしそうな予感がビンビンだ。投下待ってます!

603■■■■:2011/06/28(火) 18:09:46 ID:2DJWC3T6
私は好きだ
>>600
>>601

604 ◆SvP4IshN9o:2011/06/28(火) 18:34:05 ID:AxtfIj4g
お久しぶりです。「とある空想の未知世界(ストレンジワールド)」の作者です。
もし楽しみにしてくれていた人がいるなら、時間が大きく開いてすみませんでした。
それでは、投下させてもらいます。

605第五章 大いなる業 Missing_Hope(1):2011/06/28(火) 18:35:15 ID:AxtfIj4g
 上条は立ち尽くす。ここから動こうにも、どう動くか。それが決められない。
 通話が終わった後動かない上条を見て、おかしいと思ったのか、一方通行は怪訝な顔をする。
「どォした? 諦めたのか?……」
 その後に続いた言葉は、上条に届くことは無かった。
 爆音。一方通行の言葉はかき消される。
 音源は上。上条は顔を上げる。そこにはヘリコプターがあった。
 だが、機体の左右にロケットエンジンを搭載し、巨大な翼を持つ、そんな代物を果たしてヘリコプターと呼んで良いのだろうか。
「何だよ……あれ……」
 呆然とする上条に、横合いから言葉が投げつけられる。
「HsAFH−11。通称は『六枚羽』」
 いつの間にか一方通行は隣に居た。思いもよらぬ乱入者に、一方通行の戦意は多少削がれているらしく、上条に敵意を向けていなかった。
「『六枚羽』? けど、翼は2枚しか……」
 『六枚羽』はそんな上条の疑問に答えるように、金属音を響かせる。
 まず、左右の翼が3対に分離。そして一つ一つが展開され、翼、と言うよりは腕に近い形状となる。
(『六枚羽』ってよりも『六本腕』だな)
 などと上条が考えていると、六本の腕に取り付けられた兵器がこちらを向いた。そして。
 一瞬の間すら無く、『六枚羽』の機銃が掃射を開始する。
 『六枚羽』は周囲の被害を考慮する気は無いらしく、上条の周囲に弾丸が着弾し、地面が破砕される。破砕された跡は赤熱していた。コンクリートが破砕される音、連続する機銃の発射音、周囲のビルに着弾する音が上条の耳を蹂躙する。弾丸の嵐によって上条は包囲され、退路を塞がれる。隣に居た一方通行も弾丸の檻に囚われる。そして、少しずつ包囲が狭められていく。
「摩擦弾頭(フレイムクラッシュ)か。対人に2500度の弾丸……そこまでコイツを殺したい訳か」
 隣の一方通行が呟く。2500度の弾丸という言葉に、上条は恐怖を覚えた。と同時に、なぜそこまでして右手以外はただの高校生の上条を殺したいのか、という疑問が湧いた。徐々に、赤熱する鉄の猛獣の群れが、一片の慈悲も無く上条に近付く。2500度の弾丸など、一発でも食らえば致命傷になる。だが、逃げる手段も無い。弾丸の檻の向こうで、御坂が叫ぶ。だが何を叫んでいるのかは分からない。
 隣で、一方通行が舌打ちした。そして烈風。
 吹き飛ばされそうになるが、踏ん張って耐える。風が止まり、下りていた視線を上げる。
 一方通行は、『六枚羽』の翼の上にいて、背には4つの竜巻の翼があった。吹き付ける風など無視して、一方通行が翼の下部に右手を伸ばす。その手は翼に搭載されていたミサイルを掴む。固定されているはずのミサイルを、何の障害も無く一方通行は一塊丸ごと引きちぎった。
 『六枚羽』はそれほど高空を飛んではいない。ここからでも一方通行の表情は見える。獲物を捕らえた肉食獣の様に一方通行は獰猛に笑い、ミサイルを直接『六枚羽』に叩き付けた。
 上空に巨大な火球が発生する。上条の立つ場所にまで爆発によって発生した轟音と熱風が届く。
 一方通行が火球の中から飛び出す。体には煤の一つも無い。
 とりあえず、一方通行の着地地点に上条は走る。
 一方通行が着地する。数十メートル上からの着地にも関わらず、羽毛を落としたように音一つ無かった。
「おい、中に人が居たんじゃ無いのか!?」
「オマエは敵でも心配すンのか? ……どっちにしろ無人機だ、問題はねェ」
 上条の心配はあっさりと切って捨てられた。上条は少し安心して息を吐く。……なんて事をするほど余裕は無い。

606第五章 大いなる業 Missing_Hope(2):2011/06/28(火) 18:36:02 ID:AxtfIj4g
 御坂が上条に駆け寄る。
「怪我してない? それと……」
 上条の体を確かめる振りをして、耳元で言葉の続きを言う。
「囲まれてる。大雑把にしか分からないけど、たぶん銃を持ってる。どうする?」
 何で分かったのかと聞きたかったが、それは保留する。まずは目の前の危機を切り抜けなければならない。
 周囲を見回す。すると、居場所がばれている事に気付いて、人影は姿を現した。
 身に付けたズボン、ジャケット、ヘルメット、アーマー。その全てが黒く染め上げられていた。手にはサブマシンガンらしき銃器を肩からベルトで提げて持ち、腰のホルスターには拳銃が収められている。少なくとも、銃を向けている時点で上条を保護する気は無いだろう。
 そんな数十人近くの人影が、上条たちを囲んでいた。動きがやけに統一されている事から、おそらく特殊部隊なのだろう。……もしかすると、これが一方通行の言っていた『闇』なのかも知れない。
「手を上げろ」
 手の銃を向け、特殊部隊の一人が言う。
「ンで、それからどォする? 愉快な肉のオブジェでも作ろうってかァ?」
「お前には言っていない」
 冷たく特殊部隊は切り返す。
「そこの無能力者を引き渡せ」
 そう言うと、その男は上条を指差した。今の状況からすると、少年と呼ぶべきなのかもしれないが、少なくとも身に纏う雰囲気は少年ではない。
「何のために」
「殺すためだ」
 御坂の質問に対して、男は1+1の答えを言うような調子で即座に返答した。
「何でこいつが殺されなきゃいけない訳!? そもそもあんた達……」
 最後まで御坂が言い切る前に、一方通行が遮った。
「それで、はい分かりました、って渡すと思ってンのか? それよりもオマエらを倒した方が早いだろォが。それに、だ」
 一方通行の周囲で、烈風が渦を巻く。
「F2000R(トイソルジャー)に演算銃器(スマートウェポン)だなンて悪趣味な装備、ブッ壊さなきゃ気が済まねェ」
 一方通行は墓を荒らす人間を見るような軽蔑と憎悪が入り混じった表情をしていた。それがどれを指しているのか上条には分からないが、過去に何かがあったらしい。
「……やはり、従ってはくれんか」
 男が左手を上げる。と同時に、生理的に嫌悪感を感じる不快な音が鳴り響いた。
 上条は何とも無い。が、一方通行と御坂は頭を押さえ、うずくまっていた。一方通行が纏っていた風は消え去っている。
「……音波式の演算妨害装置。……レストランの時も使ってた奴か。どォやら、低レベルには問題無いって代物みたいだな」
 一方通行が声を搾り出すようにして言った。
 レストランの時も、というのが上条の頭に引っ掛かった。そして、上条は理解した。よく考えてみると、確かにあの強盗も上下全て黒ではなかったか。――という事は、あれは学園都市が差し向けた者だったのだろう。
 だが、今更そんな事に気が付いても意味はない。男が手に持ったサブマシンガンを離し、腰の拳銃を抜く。
「私の合図と共にA班が無能力者に斉射。その後、B班は超能力者を拘束せよ」
 男が特殊部隊に命令を飛ばす。特殊部隊の半数が男にならい、腰から拳銃を抜く。
 上条の右手は科学には何の効力も無い。全方位から射撃されれば避ける事など不可能だし、急所を外してくれるほど甘そうな相手では無さそうだ。
 今度こそ、死ぬことになるかも知れない。上条はそう思った。

607第五章 大いなる業 Missing_Hope(3):2011/06/28(火) 18:38:28 ID:AxtfIj4g
 そして、一片の慈悲も無く男はカウントを始めようとした。だが。
「第三次世界大戦で正義を自称した割には、中々下劣だな。それでは俺様と変わらんぞ?」
 声は上から。
 自然に、上条や特殊部隊は上を見上げる。だが、人影を見ることは出来なかった。
 しかし、それはおかしい事ではない。太陽を越す程の、圧倒的な輝きを放つ光の柱が上から降り注いでいれば、人影が見えないのは当然だろう。
「ッ!!」
 上条の喉から声にならない叫びが漏れる。それが何なのか、忘れるわけが無かった。いや、頭が忘れていたとしても、体は絶対に忘れないだろう。
 右手を掲げる。と同時に光の柱が上条に激突した。
 周囲の音を全て飲み込む轟音。視界を塞ぐ圧倒的な光。威力など、考えなくても分かる。
 それでも、上条の幻想殺しを破ることは出来ず。幻想殺しを中州のようにして、周囲に拡散した光の柱は地面に激突し、破壊の限りを尽くす。
 少しして、光の柱が消滅する。
 周囲は破壊され、荒廃していた。周囲に居た特殊部隊は、光の柱の余波だけで吹き飛ばされて、意識を絶たれていた。
「流石だ」
 全くそうは思っていないような調子で言葉が投げられる。
 人影は、上でなく上条の後ろに。
 首の辺りまで伸びている炎のような赤色の髪、炎の色に染められた服。細身の体に不釣合いな、異形の右腕を持つ男。上条はそれが誰だか分かっていた。――忘れる訳が無い。
「右方の……フィアンマ……ッ!」
「そんなに怒られると、俺様も困る。それに今は『神の右席』ではないが……まあいい、俺様の名などどうでもいいだろうから、今はただのフィアンマだ」
 突然、烈風が吹いた。
 風が去った時にはフィアンマは一方通行に首を掴まれ、持ち上げられていた。
「俺様を殺して得があるか?」
 その気になれば秒よりも速く命が絶たれるというのに、フィアンマはいたって冷静だった。
「得はねェが、損もねェ」
「……つまり、戦闘能力を奪ってから、ゆっくり話を聞きたいと言う訳だな。さあ、質問を聞くぞ」
 あくまで尊大な態度は崩されない。一方通行がこちらを見る。お前が聞けという事らしい。
「まず、なんでお前がここにいる?」
「無論、お前を助けるためだ」
 即答。だが、これまでにやってきた事を考えると安易に信じる訳にも行かない。
「じゃあ何で、俺を巻き込むようにして攻撃を放った」
「お前の右手を、忘れるわけが無いだろう? 俺様の『右腕』が通用しないのも既に分かり切っている」
「そもそも、何で助けに来たんだ?」
 フィアンマはくくっ、と軽く笑って、
「こんな台詞は俺様には合わんが……誰かを助けることに、理由が要るのか? ……いや、要らないな」
 フィアンマからは、想像も出来ない言葉が飛び出した。
 ――いや、良く考えてみれば、第三次世界大戦の時も、フィアンマは、世界を助けようとしていた。……ただ、その方法が間違っていたのだが。けれど、間違っているというのは上条の主観の話だ。もしかすると、フィアンマの方法を純粋に信じていた人も居るのかも知れない。
「分かった。これで最後だ。……元々の右腕は、どうしたんだ?」
 少なくとも、かつてのフィアンマは『第三の腕』を右手から出すようなことは無かった。
「第三次世界大戦の最後に、とある人物に切り落とされたよ」
 フィアンマの右腕を切り落とせるような人物。……どれほどの強さなのか。

608第五章 大いなる業 Missing_Hope(4):2011/06/28(火) 18:39:20 ID:AxtfIj4g
「まあ、それは置いておくとしてだ。お前達は、これから先どうする? 学園都市と戦うか?」
「そんな事はしたくない」
 正直言って、たとえ超能力者が二人居るとしても、学園都市を相手取ることは不可能だろう。それぐらいは上条にも分かる。
「じゃあどうするの? どこかに隠れる?」
「お前も付いてくる気なのか、御坂?」
「当たり前でしょ!? どう考えてもアンタに殺される理由は無いのに、無視できる訳無い!」
「けど、良いのか? ……俺を助けるって事は、お前の知り合いと戦うことになるかも知れないんだぞ」
 御坂は悩んでいるようだった。
「……その時は、説得してみせる」
 つまり、御坂は付いて来てくれる、という事だろう。正直言うと少し罪悪感があるが、これ以上言っても仕方が無いだろう。
「隠れるとしたら……」
「何処か建物の中が良いだろォな」
 上条の言葉を一方通行が引き継ぐ。
「少なくとも衛星だけは誤魔化せるが……確か、体内に発信機が埋められてるんだったか? 長くは持ちそォにねェな」
「では、何処に隠れる?」
 沈黙が場に充満する。しばらくして、上条が口を開いた。
「じゃあ、廃ビルはどうだ?」
 そもそもの始まりの、箱があった場所だ。上条は場所を説明する。
「一時しのぎとしては十分だろうな」
 フィアンマが肯定する。
「さっさと移動した方が良いな。次がいつ来るか分かんねェ」
 四人は移動を開始した。
 歩きながら、上条は携帯を取り出す。
 電話を掛けると、すぐにステイルは出た。爆発音がしないという事は、戦闘は終わったのだろう。
「ステイル、これから合流しよう」
 廃ビルに集合だということを説明する。
「分かった、こちらも丁度一段落した所だ。追っ手も撒いたようだしね。すぐ行くよ」
 それからしばらく移動し、廃ビルでステイルと合流した。最初ステイルはフィアンマを殺しかねないぐらいだったが、必死に説得して何とか一時の共闘は認めてくれた。
「で、これからどうするンだ?」
「ここで学園都市を迎撃……しても埒が開かなさそうだしなあ」
「でも、それ以外に方法はある?」
「学園都市を脱出した方が良いかも知れないな……フィアンマ、お前なら正面突破できるだろう?」
 フィアンマが首を振る。
「無理だ。正直言うと俺様が戦闘できているだけで奇跡のような物だ。いつ暴走するかも分からん」
「じゃあ、ここに隠れる……っていうのは?」
「それもたぶん無理だな、インデックス。俺達の居場所ぐらいもうばれてる筈だ」
「けどよォ、それならもう攻撃開始してもおかしく無いだろォが」
 一方通行が御坂に意味ありげな視線を送る。
「電磁波で調べてみたけど、周辺には人っ子一人居なさそうね。妨害されてたら、それはそれで気付くし」
 つまり、何か攻撃して来ない理由があるのだろうか。
「あいつらなら、ここにミサイルを撃ち込ンだりはしそォだがな」
「残念ながら――いや、君たちにとっては幸福か。それは無いな」

609第五章 大いなる業 Missing_Hope(5):2011/06/28(火) 18:40:21 ID:AxtfIj4g
 突然現れた男は、この状況下でも、少年ではなく、壮年とでも言うべき雰囲気を身に纏っていた。いや、顔立ちのせいで老けて見えるだけかも知れない。
 髪の毛は、一切手を入れていないのか好き勝手に跳ねている。不健康な生活を送っているらしく、頬はこけ、目の下には隈があった。首より下は法衣に包まれている。が、右手が赤、左手が緑、右脚が黄色、左脚が青、胸部は白地に黒の線と、色に全くもって統一感が無い。体型は服の上からでは分かりにくいが、骨と皮だけにも見える手の感じや不健康そうな顔から予想すると、痩せすぎて骸骨のようになっているだろう。声だけが、見た目とは裏腹に若かった。だが、その口調と合っておらず、外見と相まって不気味だった。手には何も握っていないし、法衣にポケットも無い。装飾品の類も一切無く、確かに丸腰だった。だが、影から金属棍棒を取り出したアックアという前例がある。油断は出来ない。少なくとも、雰囲気からして通行人……というのは有り得ない。
「何だ、貴様は」
 フィアンマが問いかける。この男をフィアンマは知らないらしい。
「私か?――私に決まっているだろう?何を分かり切った事を」
「何だよテメェは?まず名前を言うもんだろォが」
 男は大袈裟な身振りで否定する。その見た目、そして大袈裟に抑揚を付ける喋り方から、まるで彼だけが与えられた台詞を覚え、演劇をしているかのようだった。
「ふむふむ、人に名前を聞くときは、まず自分から言うのが道理だろう。なあ、一方通行君?」
「何で俺の名前を知ってる?」
「そんな物はどうでもいいだろう?必要なのは過程でなく結果だよ。――もちろん、知っているのは名前だけではないよ。だが、それは今必要でない。……そうそう。併せて言っておくと、君達の名前は全て把握しているよ」
「それで、ここに何をしに来たんだ?」
 上条が聞く。
「そうそう。それを忘れていた」
 言葉と同時に、男が声だけを残して、突然消え失せた。一秒たりとも上条は目を男から離さなかったのに、だ。
(瞬間移動!?)
 その次の瞬間には、再び男は同じ場所に現れていた。そして、『何か』を抱えていた。だが、それを『何か』と形容するのはおかしい――それは、インデックスだった。
「禁書を収めし魔道図書館。これが必要でな。これが3つ目の『鍵』になる」
 突然、熱気を肌に感じる。
「そうか。それが君の遺言かい?」
 ステイルは炎剣を手に握っている。必死に平静を装っているようだが、言葉の裏の怒りはは上条にも分かる。
「やはり、そう来るかね?……だが、今は結構だ。それよりも大切なことがあっ」
 男の言葉の続きを聞くことはできなかった。男の背後、一方通行がそこに移動していた。体を宙に浮かせ、回し蹴りを放つ。
 べぎん、と。骨が折れる嫌な音がして、男の首が90度折れ曲がった。
「っ!」
 御坂が息を呑む。
「誰だか知らねェが、隙だらけだな」
「一方通行……!」
「どっちにしろ戦うンなら、早めに倒しておいた方がいいだろォが……まあ、敵の心配をするなんてオマエらしいな」
 結局、男は一体何だったのか分からなかったが、とりあえずは気絶しているインデックスを上条は助けようと近付いて――
「ふむ、全くもって迷いが無いな。そして正確だ。中々痛かった」
 ……とても現実の光景とは思えない。もしかすると幻覚でも見ているのだろうか、上条にはそうとしか思えない。
 男は、首を直角に折り曲げられて、なお生きていた。そして、男は首に両手を添えると、一気に首を元に戻した。折れたものを無理矢理元に戻す、生理的に不快な音が響く。

610第五章 大いなる業 Missing_Hope(6):2011/06/28(火) 18:41:30 ID:AxtfIj4g
「何を驚いているのかね?……だが君達の驚きは今重要でない。そろそろ私も自己紹介したいのでね」
 男は恭しく上条に一礼する。
「私は名をとうに捨てた。だが君達としては呼ぶ名が欲しいだろうからな。とりあえずはハイペリオンとしておこう」
「ハイペリオン……?」
 ステイルには心当たりがあるようだ。
「まさか、ただの一般人などとは言わんだろう?貴様は何者だ」
 フィアンマの問いかけに再びハイペリオンは一礼して答える。
「私は『東方聖堂騎士団(OTO)』の現イギリス・グランドロッジのグランドマスターだよ。イギリス清教にとっては、『最大神秘(M∴M∴M∴)』と言った方が馴染みが深いかね?」
「東方聖堂騎士団だと!?」
 上条の左右から、フィアンマとステイルの声が同時にした。
「それって何なんだよ、ステイル」
「アレイスター・クロウリーが、元々あった別の魔術結社を改編して作ったものだよ。初期は多少反感があったようだが、今ではアレイスターの信奉者ばかりさ」
「そう。我々はアレイスターを失い、初めてその素晴らしさに気付いた。今では、何故もっと早く気付かなかったのかと後悔しているよ」
「で、何でそんなのがインデックスを攫おうしてるんだ」
「彼女が我々の計画に必要だからだよ。もうそろそろオシリスの時代は終わらせるべきだろう。そのためにこの世界を生んだ。そして――もう神など世界には……不要なのだ」
 それだけ聞けば、上条には十分。
 雰囲気で分かる。――こいつが、元凶だ。
 拳を握り、体を前傾させる。体の隅まで、張りつめた一本の糸のように神経を張り巡らせる。
「おおっと。止めておいた方が良い。今の『幻想殺し』では私は倒せんよ。――『大いなる業(マグナム・オプス)』の前には、幻想を殺せる程度では無駄なのだ」
「『大いなる業』……!?馬鹿な、アレイスターでもたどり着けなかったと言う代物だぞ!?」
「違うな、違う、全くもって違う。それは有り得ない。アレイスターはただ単にそれを必要としていなかっただけの話だよ。その気になれば、彼はすぐに辿り着けただろうよ」
 大袈裟な仕草の割りに本人の感情は分かりにくいのだが、恐らくは怒っているだろう、と上条は思った。だが、アレイスターの事を話す際には、怒りでなく恍惚とした響きがあった。
「とにかくだ、もうこれだけ情報を与えれば十分だろう。それでは、君たちが精々足掻くのを楽しみにしているよ。――学園都市の外でね。……ああ、新しい世界がすぐそばにある」
 今にも蕩けそうな表情でハイペリオンが言う。そして背後の一方通行に振り返る。
「そうそう、打ち止めは預からせてもらっているよ。『鍵』の一つだからね」
 言葉が終わると同時に、まるでコマが飛んだかのようにハイペリオンは消失していた。
「テメェッ!!」
 それから数瞬遅れて一方通行の脚が宙を薙ぐ。
「くそったれがァ!」
 向かう相手を失くした怒りを、壁にぶつける。爆発音のような大音声と共に、殴られた周辺の壁が吹き飛んだ。

611第五章 大いなる業 Missing_Hope(7):2011/06/28(火) 18:44:52 ID:AxtfIj4g
「くそっ!『大いなる業』を実現している人間がいるなんて……」
 煙草を吐き捨ててステイルが言う。
「ステイル、その『大いなる業』ってのは何なんだ?」
「かつて君が戦った『黄金練成』と大本は似ている。あくまで大本だけで、完全にそれ自体は別物だけどね」
 ステイルが煙草を取り出し、火を付ける。
「ざっくりと説明すると、『神ならぬ身にて天上の意思に辿り着く』そのための術式……といったところだな」
「『神ならぬ身にて天上の意思に辿り着く』!?」
 上条は驚いたが、それは上条だけではない。さっきまで黙って話を聞いていた御坂と一方通行も、上条と同時に声を発していた。
「何か驚くことでもあるのか?確かに、魔術の極限たる『大いなる業』が、その程度の陳腐な物だと分かれば無理も無いが」
 フィアンマが言うが、上条達が驚いたのはそこではない。
「『神ならぬ身にて天上の意思に辿り着く』ってのは、学園都市でも能力開発の一つの到達点、って言われてるのよ。学園都市じゃ、それを『SYSTEM』って呼称しているけどね。何の略かは知らないけど」
「どういうことだ?魔術と科学の頂点が、同じ物だなんて……」
 確かに、ステイルの言う通りだ。180度別の方向を向いているはずの物の、頂点が同じ。そんな事があるのだろうか? と上条は思った。
「それ程難しい事では無いだろうよ。魔術も科学も、元を正せば、人間に出来ないことを行う、もしくは理解できない事を理解するための物だ。それならば、終着点も必然的に同じだろう」
「そんな物なのか? ……でも、人間に出来ないことをやるのと、神に近付くってのは関係ないんじゃないか?」
「まあ、今ではそうだろう。……だが、昔は違う。例えば、日本の神道の、万物に神が宿るなどと言った物がまさにそれだ。大昔の人々は、人知を、もしくは己の理解を超えたモノはすべからく神、もしくは神の御業や御使いとして扱った。――そして、魔術と言うのは、人間に出来ないコトを出来るように、理解できない事を理解するために生まれた。そして、それが近代に近付くにつれて名を変え、科学となった。そして、表向きは魔術は廃れた。――もちろん、そこから派生した、俺様やそこの魔術師が使うような『魔術』は別だがな」
 フィアンマが説明してくれたが、上条にはさっぱり分からない。
「つまり、どう言う事だよ? もっと詳しく説明してくれないか?」
「別に俺様は構わん。言っておくが、隅々まで説明すると半日はかかる。魔道図書館がどうなっても知らんぞ。……まあいい。つまりは、だ。人間に理解できなければ、それは神となる。それならば、世界を隅々まで知り尽くせば、それは神に近付く、という事だろう? 人間に理解できない事を理解するのだからな」
 なんだかんだ言っても、簡略化して言ってくれるあたり、フィアンマはそんなに悪くない奴なのかもしれない。それでも上条には分からないのだが。
「うーん……分かんないな」

612第五章 大いなる業 Missing_Hope(8):2011/06/28(火) 18:45:46 ID:AxtfIj4g
「まあいい。良く考えてみれば、今は余計な話だろう。簡単に言えば、『大いなる業』とは、天界の力を人間界の為に変換する事無くそのまま引き出し、一度己が身を通し、人間界の事象に変換する、というものだ」
「それって、『黄金練成』と何が違うんだ?」
「それは僕が説明しよう。『黄金練成』と『大いなる業』の最大の違いは、やはり、暴走の危険性が無い、といった所だな。勝手に思考を汲み上げず、あくまでも己の意思だけで『大いなる業』は扱える。そして、天界から力を受け取っている以上、モノを作るための材料は無尽蔵に等しい。さらに、思考を汲み上げない以上、不安があっても術に影響はしない。――つまり、その気になれば、奴は四大天使を同時に召喚することもできるし、光以上の速さで動くこともできる、という事だ。まったく、無茶苦茶にも程がある……救いがあるとすれば、それらは全て『幻想』だということぐらいかな」
「……けどさ、『黄金練成』だって、発動させるのに一人では一生かかってもできなかっただろ? なら、もっときつい条件が『大いなる業』にはあるんじゃないか? だから、もっと何か別の方法で誤魔化しているとか……」
 ステイルは、首を振った。
「さあね。僕は知らないよ」
「じゃあフィアンマは」
「俺様も知らん。第三次世界大戦の時に調べたが、魔道図書館にも無い」
「何でだよ? 『大いなる業』ってのはそんなに有名なんだろう?」
「確かに有名だ。けれどね……『大いなる業』というものは、そもそも存在するはずが無いんだ」
 それなら、ハイペリオンが使っていたのは何なのだろうか?
「じゃあ、あいつはハッタリを言ったのか?」
「そうじゃない。一瞬でインデックスを気絶させ、瞬間移動し、首を折られても生きている。間違い無く、『大いなる業』だ」
「じゃあ、何で」
「そもそも『大いなる業』というのは、『こういうのがあったらいいな』程度の、ただの妄想のはずだ。だから、術式そのものがある訳ない。ただ――可能性があるとしたら」
「何だよ」
 上条の質問に、フィアンマが割り込んで答える。
「アレイスター・クロウリー、だろう?」
 ステイルは頷いて、
「ああ、そうだ。彼は、『大いなる業』を本気で追い求めていたらしいからね。一説では、『法の書』に書かれている守護天使エイワスから伝えられた『天使の術式』とは、『大いなる業』の事だ、とも言われているしね。もしそれが本当ならば、魔術師アレイスター・クロウリーの後継者と言っても良いハイペリオンが、『大いなる業』を扱えるのも説明がつく」

613第五章 大いなる業 Missing_Hope(9):2011/06/28(火) 18:46:31 ID:AxtfIj4g
「あいつが、アレイスターの後継者?」
「そう。ハイペリオンの前任者、『東方聖堂騎士団』イギリス・グランドロッジの創設者にして、初代グランドマスター。それがアレイスターの経歴の一つさ」
 場に静寂が充満する。全員が考え事をしながら思い思いの姿勢を取る。しばらくして、窓の外を見て何かに気付いた上条は口を開く。
「分かった、ステイル。それじゃあ、インデックスを早く助けに行かないとな」
 ステイルの答えの前にフィアンマが答える。
「……無理だな。奴も言ったが、『幻想殺し』では、『大いなる業』には勝てん」
「何でだよ。『大いなる業』で作られるモノは全て『幻想』なんだろ。それなら、俺の右手で何とかできるだろ」
 フィアンマは目を伏せる。
「……なら、例え話をしよう。お前は、例え異能の力で作られた物だとしても、光と同等の速さで、全方位から同時に迫る剣を防ぐことが出来るか?」
 確かにそうだ。いくら異能の力を打ち消す、もしくは減衰させる右腕があったとしても、上条はただの人間に過ぎない。
「……それでも、インデックスを助けなきゃいけない」
 そして上条は周りを見渡して言う。
「それに、今回は一人じゃない」
 誰からも、答えはない。それぞれがその言葉について考えているのだろう。そして、フィアンマが口を開く。
「だが、奴がどこにいるか分かるのか」
「場所なら分かる。わざわざあっちから教えてくれてるしな」
 上条は窓の外を指差す。学園都市の外、そこに巨大な城があった。堅固な城壁と、その高層ビルにも匹敵する巨大さが、数キロ離れたここにまで威圧感を与える。騎士団にはこれ以上なく似合っている建物だろう。
「なるほどな。大方、あそこに『東方聖堂騎士団』の支部でも作るのだろう。学園都市の目と鼻の先だなんて、中々奴は悪趣味のようだな。俺様が言えたことではないが」
「よし、それならばさっさと行こう。これ以上、奴の手にあの子があるのは気に入らない」
「同感だな」
 ステイルと、それに同意する一方通行の言葉には、明確な怒りと殺意が込められていた。上条、御坂、一方通行もつられるように立ち上がる。が、フィアンマが制止した。
「まあ待て。こちらは人数が少なすぎる。作戦を練るべきだろう」
 一陣の風が吹き抜けた。
「そォか、まずはオマエを倒せば良いンだな?」
「作戦など必要ないね」
 一方通行の腕はフィアンマの首に。ステイルの腕から伸びる炎剣はフィアンマの心臓に。それぞれ突きつけられていた。
「まあ待て。作戦というほどの物を考える時間はそもそも無いだろう?」
 激情を迸らせるステイルと一方通行とは対照に、いたって冷静に返答するフィアンマ。
「という訳で、だ」
 フィアンマは作戦の解説を始める。途中で入る質問にも答えつつ、淀み無く話していく。数分ほど話し、フィアンマの解説は終わった。

614第五章 大いなる業 Missing_Hope(10):2011/06/28(火) 18:47:04 ID:AxtfIj4g
「……これでどうだ?」
 ステイルは苦い顔をする。
「……なあ、役割を変えないか?」
「これが恐らく最善になるが?ハイペリオンが魔術サイドも味方につけているのなら、囮としては俺様が最適だ」
 わずかの間の沈黙、そしてステイルは煙を吐いて、周りを見回す。
「分かった。その分担で良い。他に異論があるのは?」
 「ねェ」「異論なし」「分かった」と、それぞれからの返答が返ってくる。それを確認すると、フィアンマに向き直る。
「……だそうだ」
「俺様に言うな。あくまで最終決定はそいつに任せる」
 そう言うとフィアンマは上条に目線を送る。
「……そういえば、俺様はお前の名前を知らんな。教えてもらえるか」
「上条当麻。上に、条件の条、配当の当に、服の繊維のほうの麻」
「なるほど。では、改めてよろしく頼む、上条」
 会釈をするフィアンマ。
「別にそんな改まって言わなくてもいいけどな」
「……オマエの名前は、上条当麻って言うンだな」
 話を聞いている間、上条の後ろの壁に寄りかかっていた一方通行が口を開く。
「あれ、言ってなかったっけ?」
「ああ、で、俺はオマエを何て呼べばいいンだ」
 上条は頭を掻き、少し考えてから答える。
「別に、上条とか当麻とかそんな感じで良いけど」
 分かった、と短く返答すると一方通行は視線を窓に、その遥か向こうのハイペリオンがいるであろう城に向ける。一方通行は何も言わない。が、その目線が上条に、絶対に勝つぞ、と言っているように上条は思えた。
「……よし」
 上条に、視線が集まる。
「絶対にハイペリオンを倒して、世界を元に戻すぞ!」
 応!と、全員で上げた声は、まるで戦争の始まりを告げる号令のようだった。

615 ◆SvP4IshN9o:2011/06/28(火) 18:50:38 ID:AxtfIj4g
sage忘れてました、すみません。

とりあえず今回の投下はここまでです。……自分の文章を見返してみると、酷いですね、これ。今も十分酷いですが。
プロットもなしで勢いだけで書き始めた自分が恨めしいです。
これを書き終わらせたら、次はしっかりプロットを組んでから投下したいと思います。

616■■■■:2011/06/29(水) 02:29:55 ID:Vz8yJp66
すいません。全くの素人なのですが、保管庫はどこにあるのでしょうか? 調べてもそれらしきものが見あたりません。        どうか教えて下さい。

617■■■■:2011/06/29(水) 03:10:33 ID:Zv8Bi2fU
>>616
ここがそうだよ
ttp://www21.atwiki.jp/index-ss/pages/16.html

618■■■■:2011/06/29(水) 06:03:39 ID:Vz8yJp66
有り難うございます!

619■■■■:2011/06/29(水) 19:33:11 ID:x4g4Z7ZU
中二病さんマダー?

620■■■■:2011/07/02(土) 15:32:49 ID:DIQoxELA
>>619 あの人なら、小説家になろうのほうに転向したよ。

621U:2011/07/03(日) 00:03:29 ID:HTeRf636
研究者A「すばらしい…」

とある実験所でとある実験が行われていた。

研究者B「超能力開発はここまできたか」

ガラスで区切られたその向こう、1フロア下がった何もないだだっ広い空間に一人の少年が立っていた。

研究者達が見ているモニターにはドーナツ状の円が描かれ内側から1G、100G、1Gと表示されていた 。

研究者C「今、この少年の半径50mに100倍の重力がかかっているというのか?
一人で軍隊を相手にできるレベルだぞ…」

研究者D「重力を操る能力か、初のlevel5の誕生だな」

木原「これはそんなつまらん能力ではないよ
おい、やれ」

ガラスの向こうの少年に銃弾が5発、少年を囲むように撃たれた。

しかし、弾は段々速度を落とし、肉眼でも捉えられる程になったと思った瞬間、少年に当たる前に跳ね返る。


木原「引力と斥力を操る力だ
だが、これは失敗作だ
こんな斥力を常に発していたんじゃ辺りは滅茶苦茶だ
これは絶対の壁じゃないんだ
それに」

木原が指を指すモニター、
そのドーナツ状の円の表示が1G、1G、1Gになっていた。

木原「一度に複数の力は使えない
だが、私は今もっとおもしろいものを作っている
これより利便性がある
世界最強の人間兵器をだ」

ガラスの向こうの少年は透き通ったように色がない表情をしていた
人を寄せ付ける魅力と人を寄せ付けない空気を同時にもつ少年は只々、透明だった。

622■■■■:2011/07/03(日) 09:01:37 ID:O6vVCL0U
投下おわりですか?
つづくなら次からは>>1の「投稿時の注意」を守ってくださいね

623U:2011/07/04(月) 00:19:17 ID:XWizbsrE
1

4月18日 pm.9:30
学園都市第7学区を450ccの黒いスクーターが走っていた
下唇の左側にラブレット、左の眉端にバーベルタイプを2つ、左耳に軟骨にメガバーベルとバーベル、トラガスに1つ、耳たぶに2つピアスを開けたV系の人を引き付ける魅力と人を寄せ付けない空気を同時に持つ少年が乗っていた。
学園都市製のものではなく外のものを愛用しているようだ。
ノーヘルに加えタバコ、ジャジメントやアンチスキルに見られようものなら即補導されるだろうが少年は気にもしていないようだ。
黒い中型のスクーターは38階建てのマンションに止まった。
ここの32階にある一室は彼、正確には彼等のアジトの一つである。
「絶対領域(サンクチュアリ)、ちょっと遅いんじゃない?」
部屋に入った瞬間、金髪のツインテールの少女が駆け寄ってきた。
彼女は藤崎美咲、大能力者のテレポーターで学園都市統括理事長のいると言われる窓の無いビルの案内人の一人だ。
「なんの為にあんたにだけ、集合時間の一時間前の時間を教えてると思ってんの?」
彼は遅刻グセが酷く、時間にルーズな為、仲間達は待ち合わせより一時間早い時間を常に彼には教えていた。
「今度から二時間前の時間にしてくれ
てか、そんなことしてたのか?」
「その内、日付変更した時間を教えなきゃいけなくなるんじゃない!?てか、あんたに時間を教える今その瞬間よりも、時間遡らないといけなくなるんじゃない!?時間を伝えるあたしがバカみたいじゃない!?」
「その時は、俺の周りの時計を全部巻き戻してくれ
てか、疑問系で話すのやめろ」
「で、何をしていたのですか?」
彼女と話(口論)ながらリビングにつくとオールバックでメガネのインテリ系の男が口を挟んできた。
彼は須藤政宗、大能力のエアロハンドらしいが、絶対領域が一度だけ見た彼の能力は明らかに大能力の領域を越えていた。
「風呂入ってた」
「暗闇の5月計画…」
絶対領域のピアスを刺してある左眉が動く。
「来月ですよね。気になっているのでは?そのことを調べていたのかと思っていたのですが。」
「…風呂入ってた」
「暗闇の5月計画ってあれよね?
学園都市第1位の演算パターを植え付けて、能力の向上をめざすってやつ?」
「そう…被験者には私も選ばれていたけれど、突然キャンセルになった。」
リビングの隅でパソコンをいじっていた、黒髪の短髪で同世代の女の子達より背の低い少女が口を開く。
彼女は有坂トオル、空気中の約80%を占める窒素を操る大能力者だ。
「えっ?そうなの?てか、キャンセルってどうして?」
「誰かが圧力でもかけたのではないですか?」
須藤は絶対領域を見る。
「さぁね…それより今回の仕事はなんだ?」
「アフターという暗部組織を消せというものです。
詳細は不明ですが、大方上の不都合になる情報を掴んだか、行動をとっているといったところでしょうか。」
「何でもいい、消せと言われれば消す」
「リーダーは西向日彰。level4の重力使いだそうです。あなたの能力によく似てますね。お知り合いではないですか?」
絶対領域は、確かにその名前に聞き覚えがあった。渡された資料の写真にも面影はある。8年前のとある実験で共に被験者だった少年の。
「いや…知らねぇ」

624Changeの作者:2011/07/05(火) 20:21:32 ID:BFTAIU2c
どうもお久しぶりでございます。
はたして、『Change』というお話を覚えておられる方がどれだけいるか分かりませんが、2ヶ月近くお待たせして申し訳ございませんでした。
ようやく続きで、第3章でございます。
毎度おなじみ、注意条項。


・今回は、とにかく執筆絶不調の中で書いているものなので、文章表現も文の繋がりも分かりにくさ満載な気がしますので、壮大なくらいの温かい心でお読みいただけると幸いです。
・相変わらず他作品ネタが混じってます。


それにしても、最近のSSの展開の重さを鑑みると、こんな緩いのいいのかな?(笑)

625Change3−1:2011/07/05(火) 20:23:38 ID:BFTAIU2c
 朝は戦場だ。
 と言っていたのは誰だっただろうか。
 ここは学園都市であり、人口の八割を学生で占めていて、その大半は親元を離れ、一人ないし相部屋での寮生活を余儀なくされている。
 そのため、ほとんどの学生の平日の朝の準備は慌しい。
 着替えにその日の時間割の確認に朝食、そして、(一部中学も含む)高校以上となれば、購買派や学食派も少なくはないが、お弁当作りも加わる。
 これを、六時に起きるなら約二時間内、一時間早く起きしたとしても約三時間でこなさなければならない。
 だからこその『戦場』なのだ。
「黒子、その野菜サラダはこっち。あと、卵焼きの具はこっちよ」
「承知いたしましたわ、お姉様。そちらの照り焼きの具合は如何ですか?」
「問題ないわ。私の方はお味噌汁にかかるから、あれとこれとそれを頼むわね」
「了解です。インデックスさん、サンドイッチの準備はできていますの?」
「うん。こんな感じでどうかな?」
「問題無しですわ。では次に、このミキサーに剥き身ののリンゴをかけて」
「OKなんだよ」
 女三人寄れば姦しい、とはよく言ったものだ。
 と、思わなくもないが、この騒がしさは姦しいのではないので、騒々しさの意味合いが違う。
 なんと言っても、今、この三人は三人分のお弁当、そして朝食の準備を同時にしているのである。騒がしくても当然と言えよう。
 上条家のキッチンがえらいことになっている。
 えらいことになっていると言っても、何かが散乱しているのではなく、ガス、電気問わず、全料理器具がフル稼働しているという意味だ。
 そんな三人の様子に、いや、正確にはありえないはずの状況を目の当たりにして、上条当麻はバスルームから出てきたなり、固まってしまったのであった。
(ええっと……インデックスの中身は御坂だったよな? だから『インデックス』が厨房に立っているのは当然として、んで、白井はそのままのはずだから、御坂の中身がインデックスってことは……って、ええ!? あのインデックスが、喰うしかできないインデックスが、食事作りの手伝いをしてるだってええええええええええええ!?)
 とまあ、こういう理由で。
「あ、とうま、おはよう」
「おはようございます殿方様」
「おはよ。よく眠れた?」
 三人が上条に気づく。忙しいので短いながらもきちんと挨拶する。
「あ、ああ……おはよう……?」
 まだ上条が愕然から戻らない。
 そんな上条の様子を怪訝に思ったインデックスが問いかける。
「どうしたの? とうま」
「い、いや……お前が朝食のつまみ食いをしないで、御坂と白井の手伝いをしているのが信じられなくて……」
「うぐ……」
 呆然としたまま返す上条に、図星を付かれて呻くインデックス。
「ふふっ。わたくしがインデックスさんに教えて差し上げましたのよ。『料理ができる女性は日本人男性のポイントが高い』と。そうしましたらインデックスさん、張り切ってわたくしたちの手伝いをすると言って下さいましたの」
「……黒子、余計な真似を……」
「何か言いまして、お姉様?」
「なんでもないわよ」
 すっとぼけて聞こえない振りをしてまで聞いてきた白井に、それが分かっている美琴は憮然と返すしかできなかった。
 少なくとも『料理』に関して言えば、確実にインデックスをリードしていた美琴は面白くない。
 ちなみに(寝るときは上条のYシャツを失敬した)インデックスと白井はすでに制服に着替えていて、エプロン装備である。いったいどこにエプロンがあったのかというと、それは単に上条のエプロンを借用しただけであり、二着しかなかったので、制服を汚すわけにもいかないインデックスと白井がエプロンをしているということだ。美琴はパジャマのままなので、上条たちが学校へ行っている間に洗ってしまえばいいだけの話である。
 ただ、セレブな常盤台の制服に、安物で白のエプロンと三角頭巾という出で立ちが妙に似合っているように見えるのは何故だろう?
 美琴(中身インデックス)と白井の素材がいいからなのか、それとも『制服にエプロン』が上条的にツボなのか。
 とりあえず、立ち直った上条は、学ランと下に着る黄色地に赤のラインが入った長袖Tシャツを持って再びバスルームへ。

626Change3−2:2011/07/05(火) 20:24:28 ID:BFTAIU2c
 出てくる頃にはちょうど、朝食の準備も終わり、決して大きくない正方形の座卓から溢れんばかりの料理が並べられていた。上条の分が白いご飯にお味噌汁、ダシ巻き卵と大根おろしをちょこんと盛った焼き魚にお茶で、インデックス、美琴、白井は二枚のマーマレードを引いたトーストとハムエッグ、サラミ入り野菜サラダに紅茶という一人当たりのメニューとしてはお皿の数が多いわけでもないのだが、それでも多く見えるのは四人分あるからである。
「何で、俺だけメニューが違うんだ……?」
「あら? 殿方様というものは婦人お手製の場合の嗜好のメニューは、そちらが定番とお聞きしてましたので、喜んでもらえると思っていたのですが、上条さんは違うのですか? 異論はあるかもしれませんが、わたくしたちはハムエッグとご飯というメニューにどうしても馴染めませんでして、ダシまき卵という形を取らせていただきました次第ですの」
 上品にトーストを咥えていた、正座の白井がキョトンとした素で聞き返す。
 ところで、配置だが、上条の正面に白井、両隣が右にインデックス、左に美琴である。
「いやまあ……定番っちゃ定番なんだが、一人だけ違うメニューってのは何と言うか侘しいと言うか寂しさを感じると言うか……」
「複雑ねぇ……」
「わふぁひは、ふぉっっふぃふぇもふぃふぃふぁな」
 美琴が嘆息しつつサラダを口に運べば、インデックスはハムエッグを口いっぱいに頬張って自分の主張。ちなみにインデックスは「わたしは、どっちでもいいかな」と言っている。
 少し不満を感じた上条ではあったが、それでも、料理に箸をつけた途端、そんなわだかまりは吹き飛んだ。
 昨日の夕食もそうだったのだが、美琴はもちろん、白井の腕もまた並ではないということを、こういう単純なメニューでも証明されたからである。


「んじゃあ、これがアンタのお弁当で、こっちの二つが黒子たちの分ね。後片付けは私がやっとくから」
 美琴が笑顔で、それぞれ渡す。
「わりい。頼むぜ御坂」
「では、お姉様、よろしくお願いいたします」
「行ってきますなんだよ」
 三人はそれぞれ、美琴に見送られながら玄関を後にした。
 上条は玄関から飛び出し、そして、
(はたして、今日はどうなるのやら、一抹の不安を感じますわ。逐一、様子を見に行く必要がありますわね)
 白井はインデックスの手を掴み、妙な噂が流れるのを憂慮して、テレポートで上条の学生寮から離れることにしたである。

627Change3−3:2011/07/05(火) 20:25:21 ID:BFTAIU2c
 食器洗い、洗濯、部屋の掃除を終えて、一人、美琴は静かにベッドに腰掛ける。
「ふぅ……」
 溜息一つ。
 専業主婦さながらの、獅子奮迅だったけに疲労が来たのである。ましてや、その身体は普段の自分のものではなく、別の人間のものなのだ。使い慣れていない『器』だけに、もしかしたら疲労は倍増されているのかもしれない。
(昨日はよく観察できなかったけど、ここがアイツの部屋、か……)
 特に何もやることがなくなった美琴は何気なく部屋を見渡す。
 普段、自分が居住している学生寮と比べるなら、はるかに質素であることくらいは理解できるが、それでも、ここには自分たちの部屋と同じくらいの暖かさを感じた。
 楽しい毎日を送る人が住んでいる、ということを実感する。
 すでに美琴は、上条に対する自分の気持ちを自覚している。十月のあの夜、普通ではなかった上条を見て、自分の思いを爆発させたときの感情。だからこそ、ロシアまで上条を追いかけた。間違いなく厄介ごとに巻き込まれたであろう上条の力になりたかったから。借りを返す、なんて言葉を用意した辺り、まだ素直になりきれていない点は否めなかったが。
 しかし、あの戦争で、誰もがフィアンマを撃退するために奮闘していた中で、誰よりも上条の力になったのは美琴だったことだけは確かだ。
 誰も到達できなかった上条当麻の元に唯一到達したのは御坂美琴だけだった。最後の最後まで一緒に居たのは美琴だけだったのだ。
 だけど、と、美琴は思ってしまう。
 それでもインデックスには敵わない、と。
 それは一緒に住んでいるから、とか、この部屋の雰囲気が暖かいから、とか言った理由ではない。
 上条が記憶喪失を隠していた理由という名の偽り。それを知ってなお、包み込むように許容したインデックス。
 こんな深い絆で結ばれている二人は、そうはいない。自分と上条の間にある『信頼』程度では到底届かない。
「ま、考えても仕方ないんだけどね」
 瞳を伏せて、自嘲の笑みを浮かべた美琴は一人呟きつつ、思考を中断する。
 『ベツレヘムの星』で自分自身に言い聞かせたことを今一度、反芻しながら。
 テレビの上のデジタル時計を確認して見れば現在、時刻は午前十一時過ぎ。
(そろそろ、自分の分の昼食を準備しようかしらね)
 などと考えつつ、ベッドから腰を浮かせた美琴は、キッチンへと歩みを進めて、
 ぴんぽーん♪
「え?」
 突然、響いた呼び鈴。
 学園都市では、八割が学生のため、この時間帯の学生寮に人がいる、と考える人間はほとんど居ない。
 ゆえに何かの勧誘だとしても、この時間帯は来るはずもない。
 やって来るとすれば、今、この部屋に誰かが居ると知っているということに他ならない。
 今の自分は『能力』を失っている。ましてやインデックスと入れ替わっている。敵対勢力が来るのは絶対にやばい。
 そのことを知っている人間なのか、もしくは、インデックスの知人か――
 美琴は警戒心を漂わせて、覗き窓を確認する。 
 そこに居たのは知らない顔ではなかった。
 ある意味、敵対勢力であり、インデックスの知人でもあるのだが。
 即座にドアを開ける。
「あなたは――」
「こんにちは。御坂美琴さん」
 涼やかで、しかし、自愛に溢れた笑顔を向けていたのは、先月、美琴の回復に一役買ってくれた長身ポニーテールの、美琴がうらやむ胸部の持ち主たる、ただ、臍だしTシャツはともかくとして、左足の太もも付け根までジーンズを切っているファッションだけがどうしても理解できない細目の美女だった。
 イギリス清教傘下、天草式の女教皇(プリエステス)、そして世界でも二十人ほどしかいない、魔術側の最高峰である『聖人』の。
 神裂火織がそこにいた。

628Change3−4:2011/07/05(火) 20:26:02 ID:BFTAIU2c
「むむ。なんだか今日は珍しい」
「お前も弁当か?」
「ただでやるおかずはない。やるならトレード」
「……何か、以前にもこんな会話があったような……」
 どことなく自然な佇まいで涼やかな表情をしているのだが、内心はバクバクの、学生服よりも巫女装束が似合いそうな姫神秋沙がお弁当を包んだピンクのハンカチの結び目を持ちつつ、本日のお弁当を取り出して机の上に置いた上条当麻の前の机の椅子を反対にして、上条の向かいに座る。
「ちなみに今日はフロントホックだから」
「………………何の話だ?」
 意味不明の姫神の発言に、上条は怪訝になりながら、自身の弁当の包みをほどいた。
 ――!!
 姫神の表情が、一瞬で、背景ごと協調反転したような感じで、強張った。
 そんな眼前の姫神を見ることなく、いや、上条もまた、弁当の中身を見て驚嘆に硬直したのだ。
 無理もない。
 素っ気無い弁当箱に似つかわしくないばかりか、幕の内弁当と比べても遜色のないラインナップできちんと陳列されたおかずとご飯がそこにあったからだ。
 ジューシーそうなのに見た目で判断できるほど完全に油が切られて、さっぱり味に仕上がっているであろうトンカツ。
 焼け具合もタレの仕込み具合も完璧な色彩を誇っている鮭の照り焼き。
 トマトをくりぬいた器に、鼻腔くすぐるドレッシングを施された野菜サラダ。
 切ってあるので見える柔らかなはんぺんを挟み込んだ、ふんわり感抜群の卵焼き。
 他のおかずに水気が飛んでいないのに、艶々で瑞々しくふっくら炊かれた白ご飯。
 なんだか、これもミスター何某に出てきた気がする弁当の折衷っぽいのだが、全て輝いて見えるのは気のせいだろうか。
「すご……!」
 感嘆のセリフは上条のすぐ傍から聞こえてきて、その声に上条はようやく我に返る。
 声をした方に目を移せば、巨乳でおでこで可愛いのに色っぽさをまったく感じない吹寄整理の呆然とした顔があり、
「これ……カミやんが作ったん……?」
 さらに震える声が聞こえてきた方へと視線を向ければ、そこには、いつもは笑い目なのに、今日に限っては目を見開いている長身の青髪ピアスがいて、
「ば、ばか! こんなの俺に作れるかよ! これは御坂と白井が――って、はっ!」
 あまりの凄さを誇るお弁当に、興奮してしまった上条は、思わず言ってはならないことを口にした。
 もちろん、姫神、吹寄、青髪ピアスは聞き逃さない。
「みさか……って、まさか、常盤台の超電磁砲……? 学園都市に『みさか』という名前は彼女以外居ないはずだけど……」
「しらい……って、超電磁砲の名前が出てきたってことは、ひょっとして、風紀委員の空間移動能力者で、超電磁砲の露払いをしている……?」
 クリスマスの朝に、上条を見舞いに行った際の、上条が居た病室の表札の名前を思い出した姫神と、学園都市行事の運営委員を結構やっているので風紀委員とは妙なところで顔を合わせることが多い吹寄が、思いっきり不信感たっぷりの声色で、上条を問い詰めるように呟いて、
「……常盤台ってお嬢様学校で有名な『女子校』でっせ……カミやん、また……?」
 青髪ピアスも恨みがましく言い募る。
 ちなみに、どうでもいいことかもしれないが、学園都市には、『みさか』という名の少女が、ある意味、美琴以外に、少なくとも十人ほど居るのだが、これを知っているのは極一部の人間だけである。
「ああ……それはその……」
 上条の顔が愛想笑いに引きつった。
 ちなみに土御門元春は事情を知っているので、上条に詰め寄る三人の後ろからニヤニヤしながら眺めているだけである。
 一応、上条の目には土御門が映っていて、ちゃんと、ヘルプコールもアイコンタクトで送ったのだが、むろん、それは華麗にスルーされた。
 はたして、上条はちゃんと昼食にありつけるのだろうか。
 いや、上条はちゃんと、この昼食にありつけなければならない。
 そうでなければ、後ほど、今以上の不幸が確実に待っているからだ。

629Change3−5:2011/07/05(火) 20:26:45 ID:BFTAIU2c
「つ、疲れましたわ……」
 白井黒子が、心の底から脱力して中庭の丸テーブルに突っ伏している。
「どうしたんだよ?」
 それをきょとんと見つめる、外見と声色が御坂美琴のインデックスは、白井の正面に座っていた。
 すでに二人分の弁当は広げられ、しかし、食べているのはインデックスだけである。
 メニューは、いくつかのキャンディーのように包み込んだロールサンドイッチに、籠のように練りこんだパンを揚げたものが四つ、その中はそれぞれ、フグの白子、野菜サラダ、マッシュポテト、チーズをまぶしたホワイトソースのマカロニグラタンが入っており、リンゴジュースにリンゴのムースがデザートして彩りを華やかにしている。
 しばしの間、インデックスの咀嚼する音響だけが響き、
「くろこ?」
 へんじがない。ただのしかばねのようだ。
「………………何ですの? 今の天の声のようなものは……」
「ん? 意味不明なんだよ?」
「いえ……何でもありませんわ……」
 ようやくインデックスに返事をして、ふらりと、重そうに顔を上げる白井。
 自分の弁当に手をつける。
 ところでインデックスなのだが、普段のインデックスであれば、その食欲は、ほとんど際限がないもののはずなのに、今日は、白井のお弁当を強奪することなく、自分の分だけで、すでに満腹感に支配されていた。
 理由は単純。
 体が御坂美琴のものであるからだ。
「それにしても『お姉様』。お願いですから、少しは行動を抑えていただかないとわたくしの身が持ちません」
「む……」
 溜息交じりで自嘲気味の白井の言葉に、少し不機嫌にはなるが、その通りなので、どちらかといえばバツが悪いインデックスは呻くしかできない。
 無理もない。
 一時間目の外国語の『文法』の講義では、教師と「会話したりヒアリングの方が大事なんだよ」と口論してるわ。
 二時間目の経済戦略論では、宗教思想を持ち出して、(学園都市の学生からすれば)意味不明の説教を始めるわ。
 三時間目の家庭科では、ペルシャ絨毯のほつれの直し作業中にイライラして、逆にほつれを破れにしてしまうわ。
 四時間目の美術では、目の前のモチーフを無視して多彩な色を飛び散らせながら勝手気ままに落書きに勤しむわ。
 と、一時間目の段階で常盤台全体に御坂美琴の中身が別人になったんじゃないかって思われるくらい異様な状態である、と、分かってもらえたとは言え、トラブルを起こすたびに、白井は呼び出されて、監督責任ということで、講師全員からありがたい説教を受けたのである。
 はっきり言ってしまえば、白井黒子には何の罪もないわけで、それなのに、インデックスのとばっちりで朝から憂鬱な目に合っているというのに、それでもブチ切れずに、インデックスに懇願している辺り、白井黒子の人としての大きさが表れていると言ってもいいのかもしれない。それともこれば常盤台の指導の賜物なのだろうか。
「もう、わたくしが呼び出されることがありませんよう、振舞ってくださいな」
「……ど、努力はするから……」
 苦笑ではあるが、本当に怒りを感じない母親のような愛情溢れる笑顔の白井に、さすがに少しは罪悪感を感じ始めて、俯き気味に、少し顔を紅潮させて受け入れるインデックス。
 しかし、二人は知らない。
 午後からのインデックスの受ける講義が、礼儀指導とコンピュータ講習であることを。

630Change3−6:2011/07/05(火) 20:27:21 ID:BFTAIU2c
 お昼休み終了十分前。
 しかし、いまだに上条は食事にありつけていなかった。
 理由は至極単純。
 土御門以外のクラスメイト全員から尋問攻めにあっていたからである。
 もっとも、上条は黙秘権を貫き通していた。
 口を滑らせてしまったとは言え、御坂美琴と白井黒子が、どうして上条当麻の昼食を作ったのかという背後関係だけは、このクラスメイトにだけは知られるわけにはいかなかったからだ。
 単純な偶然が引き起こした入れ替わりなら、ある意味、問題はないだろう。
 だが、今現在、インデックスと美琴が入れ替わった理由が分からない。
 何か、危険な陰謀渦巻く謀略ではない、と、言い切れない以上、ただでさえ、十二月に心底世話になったクラスメイトたちを巻き込むのは申し訳が立たない、と上条当麻は考える。
 事情を知っていて、かつ協力を依頼した土御門だけは例外だとしても。
「上条当麻! いつまで、そうやって黙っているつもり! なんなら強硬手段に及んでもいいのよ!」
 吹寄整理が、両手を組んで指をボキボキ鳴らしつつ、危険な笑顔で迫ってくる。
 ちなみに彼女の場合の『強硬手段』とは硬質オデコを利用した頭突きであるから指を鳴らす必然性はあるのだろうか。
 もっとも、彼女の頭突き攻撃は、ひょっとしたら、とある窒素を利用した装甲を作り出すレベル4の少女と互角かもしれない、とか思う。
 が、いつもなら救いの女神が上条に微笑みかけることは皆無だというのに、今回に限っては、何故か、救いの神が居たのである。
 これはひょっとしたら、上条の『クラスメイトは巻き込みたくない』という殊勝な心が、本来なら蟻の触角ほどの先もなさそうな『幸運』を呼び寄せたのかもしれない。
 その救いの主の名は『携帯電話』という端末機械である。
 プルルルルルル。
「あ……!」
「む、上条! 貴様、携帯の電源を切っていなかったのか! くっ、仕方ない。とにかく、さっさと用事を済ませて来なさい!」
 さすがに吹寄も、携帯に出るな、とは言えなかった。
 学校に居ることが分かっていながら、かかってきたのだ。相手が友人の馬鹿話である可能性も否定できないが、もしかしたら、家族からの緊急の用事の可能性もあるからだ。
「お、おう!」
 頷いて、上条は走って教室の外へと向かう。
「んな!?」
 廊下の向こうへと視線を向けた途端、そこには土御門元春がいた。
 ついでに言うなら、上条の弁当包みをひけらかしていた。
「カミやん。昼食にありつくなら今だにゃー」
「恩に切るぜ、土御門!」
 にたにた笑顔の土御門に、会心の笑顔を浮かべる上条は、土御門と供に廊下を走る。行き先は屋上。
 電話の相手が『インデックス』になっている以上、そこでしか、この電話に出るわけにはいかないからだ。

631Change3−7:2011/07/05(火) 20:30:04 ID:BFTAIU2c
 インデックスの姿をしている御坂美琴は上条当麻に電話をかけていた。
 しかし、なかなか出ない。とにかく出ない。拠所なく出ない。
「うがぁぁぁ! あいつはいったい何やってんのよぉぉぉ! そんなに私からの電話は出たくないんかああああああああああああ!」
 いつもの美琴なら、この辺りで携帯電話を完全にショートさせてしまいそうなものだが、今の美琴は、幸か不幸か電撃を出せないので、インデックスの電話が惨劇に見舞われることはなかった。見舞われることはなかったのだが、どことなく、握り潰してしまいそうな雰囲気ではある。
「まあまあ落ち着いてください。彼にも何か事情があるのでしょう。もうしばらくしてから、かけ直してみては?」
 そんな美琴の様子を、どこか母親が、駄々をこねる小さい子供を愛でるような瞳で見つめる神裂が優しく嗜める。
「うぅ……そうするしかないか……」
 その神裂の言葉に、ちょっと心残りを持ったまま、美琴はそれでも素直に従おうとして、
『わりぃ! 御坂、出るのが遅くなっちまった!』
「遅すぎるわよっ! この、ど馬鹿!」
 ところが、切ろうとした瞬間に、相手が電話を取ったものだから、思わず怒鳴りつけてしまったのである。
 神裂の自嘲と苦笑を足した笑顔は濃くなり、美琴からは見えないが、後頭部にはでっかい玉の汗を浮かべていた。
 相変わらず上条と美琴は気が合うんだか合わないんだか、よく分からないやり取りになる二人である。
 それはともかく、とりあえず美琴はどうしても聞いておかなければならないことがあったので、
「ねえ、アンタの知り合いに土御門って男の人がいるの?」
 もしかしたら土御門舞夏の関係者かも、と一瞬、考えた美琴ではあるが、それは現状では関係がない話なのでおいておくとして、上条の返事を待つ。
 しかし、電話の向こうの相手は、何故か、不満げな声をあげた。

632Change3−8:2011/07/05(火) 20:30:38 ID:BFTAIU2c
『……あのなあ、いきなりのお前の大声で、上条さんの耳が大変なことになっているわけなんですが、その辺りはスルーして、普通に会話を始めるのか?』
「どうでもいいじゃない。こっちだって聞きたいことがあったんだから。それに耳が痛くなりたくなかったら、ちゃんと即座に電話を取ればいいだけよ」
『そりゃそうだけど……ちょっとは、こっちで何かあったとか思ってほしいところなんだが……』
「で、どうなの? アンタの知り合いに土御門って人いる?」
『ああ、いるが……それがどうした? と言うか、今、隣にいるぞ』
「そうなの? じゃあさ、アンタはその人に私とあのちっこいのの話をしたの?」
『まあな。この場だから話せるが、あいつは魔術師でもあるんでね。今回の件で、お前や白井も『魔術』を利用しようとしたのと同じで、俺も『魔術』見地から調べてみることにしようとしたって訳だ」
「そういうこと、か……ああビックリした」
『どうした?』
「いやね、いきなりアンタの部屋に来訪があったし、その人が、見た目が違うのに『私』の名前を呼んだから、ちょっと驚いちゃったのよ。んで、話を聞いてみると、アンタの知り合いの土御門って人に頼まれた、って言ったからさ。一応、確認させてもらったの」
『あん? そいつって俺と土御門両方の知り合いってことか?』
「うん。神裂火織って名乗ってるし、今も隣にいるわよ」
『なるほどな。なら、心配するな。そいつは間違いなく俺の知り合いで、土御門もインデックスも知ってる奴だ』
「分かったわ。じゃあ、後でみんなで落ち合いましょ。神裂さんも含めて、今後のことはみんなで話し合った方が良さそうだし。そっちも土御門さんを連れてきて」
『おう。あの公園でいいか? 俺の学校からもお前、と言うか、インデックスと白井が行っている常盤台からもちょうどいい距離だしな』
「それでいいわ。黒子たちには私から連絡しとくから。じゃ、また後で」
『ああ、またな』
「って、ちょっと待った!」
 にこやかな笑顔を浮かべて、電話を切ろうとした美琴はふと思い出す。電話の向こうの相手も、にこやかな笑顔で切ろうとしていた雰囲気は醸し出していたのだが。
『おま……だから、デカイ声出すなって……』
「あ、ごめんごめん。でも、ちょっと気になったことがあって」
『なんだよ?』
「ちゃんと、お弁当の感想も聞かせてもらうからね?」
『――――――――!!』
「何よ、その間を空けたダブルエクスラメーションマークは?」
『いや、それが分かるお前はスゲエよ。あと、心配するな。なんとか、今からありつけそうだからな』
「は?」
『い、いや、何でもない! てことは用件はこれでお終いだよな!? じゃ、じゃあ、また後でな!』
 なにやら電話の向こうの相手は捲くし立てるように言って、こっちの返事も聞かずに電話を切ってしまったのだ。
 しばし受話器を見つめる美琴。
「なんなの……?」
 訝しげな表情で、ポツリと漏らす彼女の問いに答えられる者は誰もいない。

633Change3−9:2011/07/05(火) 20:31:48 ID:BFTAIU2c
 その日の放課後。
 御坂美琴の姿をしたインデックスは一人、白井から伝えられた集合場所へと歩みを進めていた。
 そう、一人である。
 むろん、その理由は言うまでもないと思うが、午後からの講義で、また、インデックスがやらかしたからである。
 インデックスと御坂美琴が入れ替わっている。
 それを知っているのは、当人たちを除けば、上条当麻、白井黒子といった二人の共通の知人たちであり、上条が相談を持ちかけた神裂火織と土御門元春、そして、日本には来ていないがステイル=マグナスの三人と、白井が事情説明した常盤台中学学生寮の寮監殿の、計六人だけなのだ。
 つまり、本当の事情を知らない常盤台の教師たちは、美琴の精神状態が異様なだけとしか思っておらず、かと言って、まさかインデックス本人に説教してもどうにもならないことくらいは理解できているので、結果、矛先がいつも一緒にいる白井黒子に向いてしまうのは仕方がないところなのだが、白井にとっては本当に迷惑なことだろう。
 ちなみに、インデックスは、自分の行動によって白井が怒られていることは理解できていても、実のところ、自分のどこに非があったのかは全然理解できていなかったりする。
 それ故、最初は白井を守るべく、教師たちを敵視して突っ掛かって行こうとしたというエピソードはあったのだが、それは全て白井によって窘められたという経緯があったのだ。
 だから今、インデックスは白井への贖罪と、いったい自分の何がいけなかったのだろうという疑問を抱えたまま、ここに至る。
 言うまでもなく、白井黒子は居残りでインデックスの代わりにお説教を聞く羽目になってしまっているので、先にインデックスが行動していたのだ。
 もちろん、当初、インデックスは白井を待っていると提案したのだが、白井自身がテレポートで追いつけることを告げて、先に行くよう促したのである。もっとも本当の理由は、この説教がいつ終わるかも知れず、それでまた一悶着あっては敵わないからだ。むろん、それはインデックスには言っていないのだが。
 と言うわけでインデックスは一人、集合場所へと向かう。白井から聞いた上条との集合場所は、昨日、自分と美琴が入れ替わってしまった自販機の前だった。考え事をしていても、前さえ向いていれば、インデックス自身も何度も行っている場所だけに、たとえ体という器が違おうとも、間違うことはない。
「むぅ。それにしても短髪もくろこも随分寒い格好してるかも。これだと体調崩すかもしれないくらいスカートの丈が短いし」
 普段、年がら年中、全身をすっぽり覆う白い修道服を身に纏うインデックスからすれば、常盤台中学の制服はちょっとした異文化なのかもしれないが、ただ、確かに常盤台中学のスカートの丈は短い。他の学校の大半は膝上か膝下、短くてもせいぜい太ももの真ん中辺りなのに、常盤台に限って言えば、ほとんど足の付け根寸前なのだ。いったい誰の趣味なのだろうか。それとも女子校だったり淑女育成校だったりするから、嗜みには自信があるのだろうか。
 それはさておき、もうすぐ例の公園の手前まで来たところで。
「や、やめて下さい!」
 という、懇願否定形の言葉が、すぐ傍の路地裏から聞こえてきた。
「んー?」
 当然、インデックスは視線を声のした方へと移す。
 敬謙なシスターたる彼女は、困っている人を見過ごすことはない。
 例外なく、その人物に手を伸ばし、場合によっては、その人物の障害を取り除くために行動することも多々ある。
 見れば、そこには妙な格好をしたモヒカン頭やスキンヘッドやパンチパーマやリーゼントやバンダナを巻いた長髪といった男たち=通称・スキルアウトの連中が背を向けて、誰かを囲っているようだった。
 と言っても、男たちの影になっているので、その纏わりつかれている『誰か』の表情を窺い知ることはできない。窺い知ることはできないのだが、さっきの声を聞く限りは少女である、と言うことくらいは分かった。
 インデックスは考える、までもなく、声を上げた。

634Change3−10:2011/07/05(火) 20:32:30 ID:BFTAIU2c
「何やってるんだよ?」
 腰に手を当てて、鋭い怒気を孕んだ視線を向けて。
「あん?」「なんだぁ?」
 当然、男たちはインデックスに反応する。
「お? なんだ、こっちの彼女も可愛いじゃん。しかも常盤台」
「こらこら、お兄さんたちは今、大事な話の最中なんだから邪魔しちゃいけないよ」
「ま、もっとも、嬢ちゃんも参加したいってなら話は別だけど」
 『御坂美琴』の姿を見て取った男たちは、振り向いたときの険悪な視線はどこへやら。
 いきなり、下劣な笑みを浮かべて、三人ほどが近づいてくる。
 当然、インデックスはその男たちがまともな話し合いをしていたとは思わない。
 絶対に、誰かを困らせていたとしか考えない。
「嘘つくんじゃないよ。その子の声は、あなたたちを嫌がってたし。それに、あなたたちからは下劣な雰囲気しか伝わらないんだよ」
 力いっぱい核心を突く。
 もっとも男たちは、そんな勇ましいインデックスのセリフを鼻で笑い飛ばす。
 ただ如何せん、このスキルアウトと呼ばれる連中は頭が悪いのか、ちゃんと学校に通っている学生であれば、常盤台の制服を着ている時点で、その学生が最低でもレベル3の能力者であることは理解できるはずなのだが、見た目だけで自分たちの方が有利だと考える悪癖があるらしく、それを意に反すことはない。それ故、『大馬鹿者』の称号を得ているといっても過言ではないだろう。
「なんだ? 仲間に入れてほしいのか? だったら――」
 その内の一人が手を伸ばしてくる。
 しかし。
「触らないで」
 怒りのままに呟いたインデックスの、正確には、御坂美琴の頭髪の一櫛から放たれる稲光。
「あぐっ!」
 それを浴びた男は当然、そのまま衝撃を受けて倒れ伏す。
 言うまでもないが、本来の器の持ち主である御坂美琴ではないから威力が彼女よりは落ちるとは言え、それでも、インデックスはレベル4クラスの電撃を放つことはできるのだ。
 つまり。
 スキルアウトと言うレベル0が何百人でかかっていこうが、インデックスは歯牙にもかけない。かける必要も無い。
 殺生しないレベルの電撃でも充分、対処できるということである。
 結果、一人の女子学生を取り囲んでいた、スキルアウトは、文字通り、瞬殺で真っ黒焦げと化し、路上に転がる羽目となる。
 もっとも、インデックスは、路上に転がる物体よりも、今、自分が振るった力の方に興味が行っていた。
 白井曰くの、御坂美琴には劣るとは言え、それでも、路地裏の不良五人をあっさりと瞬殺した力に身を震わせていた。
(この力があれば、とうまを守れるかも……)
 などと少し考えたインデックスではあったが、即座に気を取り直し、スキルアウトの残骸には目もくれず、
「大丈夫?」
 と、男たちに囲まれていたと思われる女子学生に声をかけた。
「御坂さん!?」
 ところが返ってきた驚嘆が含まれた答えは意外や意外。今のインデックスの姿の知り合いだったりしたのだ。
 どこにでもありそうな紫色のセーラー服と赤いスカーフ。しかし、ちょっと丈が長めのスカートに、花の形を模したヘアピンをワンポイントにしたストレートのロングヘアの美少女。バストは美琴よりも大きいようなのだが、実のところ、美琴よりも一つ年下の彼女。
 インデックスは彼女のことを知らなくても、彼女の方は『御坂美琴』を知っている。
「ありがとう、助かりました!」
 心の底から安堵した笑顔を見せる柵川中学一年の佐天涙子がそこにいた。

635Change3−11:2011/07/05(火) 20:33:28 ID:BFTAIU2c
 弁当裁判をなんとか明日に延期させることに成功した上条当麻は土御門元春と供に待ち合わせ場所の公園へと向かっていた。
 もっとも、それは土御門の舌先三寸説得のおかげでもあったし、告訴取り下げではなく、延長であるから、おそらく明日は『昨日、裁判を受けておけばよかった』と心から後悔する羽目になることは間違いない。
 とは言っても、予知能力を持たない今の上条は、ただただ今日の災難を逃れたことに対して土御門にはどれだけお礼を言っても言い足りない、という心境だったりする。
「それにしても、禁書目録と入れ替わっていたのが、あの常盤台の超電磁砲とは思わなかったにゃー。カミやん、やっぱあの子と妙な運命があるかもよ」
「まあ、なぁ……」
 どこかからかい気味に聞いてくる土御門の言葉を上条は、うんざりした表情を浮かべていはいるが、否定はしなかった。それは仕方がない話で、上条自身も自覚しているのだが、昨年六月の出会いから、ことあるごとに顔を合わせることが多いのである。おそらく、月曜から金曜まで必ず顔を合わせているはずのクラスメイトよりも、日数的には多いんじゃないか、ってくらいに。
 もっとも、それはさすがに比喩でしかなく、現実的にはクラスメイトと顔を合わせることの方がはるかに多い。
 インパクト的に言えば、美琴の方があるってだけの話だ。
 とりあえず、それがいったいどんな運命なのかを考えることは放棄して、
「それはそうとすまねえな。何かお前を巻き込んじまったみたいで」
「なーに気にすることはないぜよ。俺もカミやんを俺たちの側の事情に巻き込んだことが多々あるにゃー。ギブアンドテイクってやつだ」
 苦笑の上条に、まるで気にしていない笑顔の土御門。
「それに、カミやんに付いていけば、俺も常盤台のお嬢様たちと知り合いになれるわけだから、実のところ、嬉しかったりするぜよ」
「はっはっはー。よーし土御門、先に忠告しておいてやるぞ。女子校に夢見るな」
「なんだそりゃ?」
「ふっふっふっふっふ。お前が思い描いている優雅で高貴で世間知らずなお嬢様方は存在しないという意味だ。少なくともこれから会う相手は、はっきり言って、そういう想像からは対極の位置にいる」
「オイオイ、随分シビアな現実だにゃー。健全な男子高校生の切なる思いを踏みにじらんでくれよ」
「過度の期待は、後の落胆を大きくするだけだ。よって、友達思いの上条さんとしては、落ち込むお前の姿を見たくないから、先に注意してやったのさ」
「そうかい。まあ他ならぬカミやんの忠告だ。受け入れておくことにするぜよ」
 そんな会話を交わしながら歩き続けて、公園に入った二人の視線の先には、自販機の前に先に着いていた白い修道服姿の『インデックス』と長身ポニーテールの女侍が飛び込んできた。それでいて、なんとも『インデックス』の表情が苛立っている。両手を腰につけて、薄い胸を張りつつ、どこかふんぞり返っているようにも見える。
「よう、早いな」
 上条は、それでも気軽に声をかけた。今日は、絶対に電撃が飛んでこないことを知っているからだ。
 しかし、
「遅い! 罰金!」
「いや、それはお前の決め台詞じゃないから」
 美琴の、どこかで聞いたような怒声に、上条は大きく脱力してしまうのであった。
 確かに上条と一緒にいるときに美琴は、姿かたちはともかく、振る舞い的には、どこぞの山吹色のカチューシャ付きリボンを着けた神様モドキ女子高生に似てないこともないのだが。

636Change3−12:2011/07/05(火) 20:34:33 ID:BFTAIU2c
 上条と土御門は近くのベンチに座りつつ、自販機の前でなにやら話し込んでいる美琴を神裂を眺めていた。
 もっとも、笑顔で自販機を指差しながら話しかける美琴に、神裂が困った表情で両手をばたばた振っている様を見れば、何を言っているかはだいたい想像できるというものだ。
「おーい御坂、神裂は真面目な奴なんだから無茶言うな」
 苦笑交じりで上条が口を挟めば、
「別に無茶なことなんて言ってないわよ。ちょろーっとこの自販機に回し蹴りを入れて、って頼んでるだけなんだから」
 美琴はキョトンと素で返してくる。
 まあ、確かに自販機に回し蹴りを入れること自体は無理な話ではない。神裂の体術を持ってすれば、足の当たり処が悪くなることなんてないだろうし、太ももの付け根までジーンズを切ってある左足ではなく、ちゃんと足首まで覆われている右足で上段回し蹴りを敢行する分にはパンチラの期待を抱くこともあり得ない。
 ただ、物理的に可能なのと倫理的に可能なのとでは、話はまったく違う。
「そりゃ、蹴りを入れることは難しくないかもしれんが、タダで飲料を搾取しようというのはマズイだろ? 俺が言ってるのはそういうことだ」
「と言うか、その前にねーちんが蹴りを入れてしまうと、その自販機は誤作動どころか完全に破壊されてしまう可能性があるにゃー」
「あーその可能性は考慮してなかったなー。そういや神裂の馬鹿力は折り紙つきだったっけ。サンキュー土御門」
「にゃはははははは」
「は?」
 もちろん、美琴には上条と土御門が何を言っているのかは理解できない。確かに見た目はプロポーションの割には鍛えこんでいることは分からないでもないのだが、それにしても自販機を破壊してしまうほどの力持ちには見えないのだ。
 これは、美琴は知らないことなのだが、言うまでもなく、神裂火織の聖人としての力を指す。しかも、これがまた、常識では計り知れないくらいの馬鹿力なのだ。
 力加減を間違えてしまうと土御門が言ったとおりになりかねないし、神裂自身もどれだけの力で蹴ればいいのかも分からない。
 ただ、神裂火織という人物は、自分が戦士であるというスタンスを持っていながら、女性としてのプライドも高いのである。
 すなわち。
「ほほぉ……上条当麻に土御門……それでは、あなた方相手に入れるべき蹴力の加減を御坂美琴さんからご教授いただくことにしましょうか……」
 ベンチでのんきしていた上条と土御門の眼前に立ちはだかった神裂は笑顔を浮かべてはいたが、その目はちっとも笑っていなかった。
 女性に対して『馬鹿力』発言は慎むべきだったかもしれなかったが、すでに後の祭りである。
 もっとも、起こったかもしれない惨劇は上条と土御門の誠心誠意な土下座と、とりあえずは宥めた方が良いと判断した美琴の口添えによって回避されたことだけは記しておかなければならない。
 さて、さらに少々時間は経過して。
「あら? もう皆様、集まっていますわね」
「本当なんだよ」
 さらに遅れて、白井黒子と『御坂美琴』の姿をしたインデックスと、
「え? ええ!? あの子が御坂さんなんですかー!?」
 『インデックス』の姿を見とめて、素っ頓狂な声を上げる佐天涙子が現れた。

637Change3−13:2011/07/05(火) 20:35:27 ID:BFTAIU2c
「うわうわ。本当に御坂さんなんですね!? さっき、白井さんから聞いたときはまだ半信半疑だったんですけど、これは信じざる得ませんよ!」
 なんとも佐天はハイテンションである。
 無理もない。先にも言ったが、『超能力』という六感を超える力が日常の学園都市とは言え、『偶然』と『事故』で人格が入れ替わる、なんて出来事は常軌を逸し過ぎている。
「しかも、かっわいぃぃぃぃぃ! 普段の御坂さんは凛々しくて素敵ですけど、この姿の御坂さんも良いですよ! なんだか庇護欲をそそられる萌えキャラって感じで!」
 言って、上機嫌な笑顔で佐天は美琴に抱きついた。
 確かに、初めて『インデックス』の姿を見て、まともな人間であれば、そういう印象を抱いても仕方がないというものだ。ただし、その実態が噛み付きビッグイーターであることを知ってしまうと、はたして、それでもそう思えるかどうかは甚だ疑問なところではあるのだが。
「ちょ、ちょっと佐天さん!?」
 抱きつかれた美琴はちょっと複雑で困った自嘲の笑顔を浮かべていたが、それでも悪い気はしなかった。
 普段と見た目が違う自分なのに、佐天は、いつも通りに接してくれたのだ。実に友達とはありがたいものだと感じてしまうのも無理はない。
 これがもし、友達ではない顔見知り程度が相手だとしたら、おそらくその相手は汚物を見るような距離を置いた視線を向けてくることだろう。
 だから、いつもと同じで、でも興味津々を体現した佐天の態度が嬉しかった。
「で、何で佐天さんが私のこと知ってるわけ?」
 少しほっとした笑顔を見せつつも、それでも、この件に関して言えば無関係のはずの佐天を巻き込んでいる理由は知っておきたい、と言うところだろうか。
 ちなみに佐天はいまだに『にゃはー』という笑顔で美琴を抱きしめている。
「どこぞの不良に囲まれているところをインデックスさんが助けたからでございます。ただ、間が悪かったことに、わたくしが居ないときのことでしたので、インデックスさんが対応に苦慮し、もう、誤魔化すことができなくなってしまっていましたから、説明せざる得なくなったためですわ」
「うん。向こうは短髪を知っていたけど、私はるいこのことを知らなかったからね。だから思わず『誰?』って聞いてしまったんだよ」
「あーそういうこと……」
 これでは諦めるしかない。
「ったく、これ以上、誰かを巻き込みたくはなかったんだが……まあ、御坂と白井の知り合いならまだマシか……」
 上条も頭をぼりぼり掻いていたのだが、ふと疑問を感じることがあった。
「ところで、何で白井はインデックスの傍にいなかったんだ? 今のインデックスの姿を思うと、白井が常に傍にいないとマズイと思うのだが」
「ああ、それはですね――」
 上条の問いに、白井は諦観の笑みを浮かべて視線を美琴へと向ける。
 もちろん、美琴にはその意味は分からない。普段であれば、ある程度、悟れるかもしれないが、今日は、完全に別行動だったのだ。何か気まずいことがあったことくらいは理解できるとは言え、それが何なのかまでは想像できない。
 そんな、小首をかしげてクエッションマークが頭の上に浮かんでそうな美琴に、白井は一度、溜息を吐いた後、意を決して、今日の出来事を、あえて滔々と語るのであった。


 その話を聞いて。

638Change3−14:2011/07/05(火) 20:37:49 ID:BFTAIU2c
「うわあ……それは何と言うか……」
「ええっと、御坂さん、ご愁傷様です……」
「まあ、そうなるだろうぜよ」
「しかし、インデックスは何も知らないのですから、多少は大目に見てあげてもよろしいものではないでしょうか」
 上条は、心底、苦虫を潰した顔。
 佐天は、もう同情するしかなく。
 土御門は、思いっきり他人事で。
 神裂は、何やら少し怒っていた。
 で、当の御坂美琴はというと、
「ああああああああああああああ………」
 真っ赤になっている顔を隠すように、全員に背中を向けてしゃがみ込んで頭を抱えている。
 そんな五人の様子を眺めている白井の心境は、これは完全に佐天に同意だった。自身が、もう飽きるほど説教を受けたことよりも、美琴が羞恥に震えていることの方が深刻だったからだ。
 と言うか、白井には美琴の気持ちが分かるのだろう。自分の与り知らないところで、『自分』の行動が周りに影響を与えたのだ。しかも良い方向だったならともかく、確実に悪い方向に影響を与えているのである。さすがにこれは誰もが嫌だ。
 もっとも、インデックスは何がなんだか分からない。
「ちょっと、とうま。その顔はどういう意味なんだよ?」
「いや……さすがに御坂が可哀相だな、って思ってな……」
 むしろ、むくれて上条に詰め寄ってい来るくらいだったりする。
 しかも近い。普段のインデックスよりも御坂美琴の体は身長があるし、上条とも七センチメートルしか違わないのである。背伸びすれば、あっさりインデックスが上条と目を合わせられるのだ。
 てことで、何かの拍子に、上条が後ろに倒れないことを願うのみなのだが、対する上条は瞳を伏せて、頭を掻いていた。
「むぅ。とうま、それはどういう意味なんだよ?」
 しかし、さらにインデックスは詰め寄った。
 マジで近い、とにかく近い、これは何かのフラグなくらい近い。
 これがいちゃスレなら間違いなく事故が起こる。
 事故という名のラッキーイベントと言い換えてもいいかもしれない。
 誰にとってのラッキーなのかはこの際、考えないようにしておこう。
 もっとも、今、この場では、そのようなイベントは起こるはずもなく、上条は何も意識せずに、目を伏せたまま、インデックスの肩に手を置いて、そっと引き離す。
「そのままの意味だ。とにかく、ちょっとは御坂のことも考えてやれ。今のお前は『御坂』なんだから、お前の行動一つ一つが御坂の評判に影響しちまうんだよ」
 少し、厳しい言い方かもしれないが、それでも上条はインデックスを諭すことにした。
 真剣に。
 誰よりも真摯に。
 まるで、父親か兄が、子供か妹を、愛情を持って叱るように。
 無理もない。なんと言っても御坂美琴は学園都市に七人しかいないレベル5の第三位だ。それも世界に名立たるお嬢様学校に通う学生なのだ。
 当然、その立ち振る舞いには品格が求められて然るべき存在なのである。
 そんな堅苦しい振る舞いが美琴にとって良いか悪いかはこの際、置いておくとしても、インデックスによって、美琴の評判が下がるのはいたたまれないことだけは確かだ。
 そういう世間体くらいは上条にも分かっている。
 まあ、上条が接する普段の美琴を思えば、別段、そこまで気を使う必要は無いのかもしれないが、以前、八月二十一日の、常盤台の学生寮に行ったときに聞いた白井黒子の言葉を思い出せば、罪悪感がはたらくというものである。
「……分かったんだよ」
 そんな上条の真剣な瞳を見れば、インデックスも言い返すわけにもいかず、しぶしぶではあったが従うしかなかった。

639Change3−15:2011/07/05(火) 20:39:34 ID:BFTAIU2c
 さて、一段落したところで、神裂が土御門から依頼を受けたことを全員に告げた。
 もっとも、調べているのは、今、この場にいない同僚であることを話し、とりあえず、何か分かるまでは、自分は、現時点では何の力もなくなった美琴を護衛するつもりだということを伝えた。
「さてと、そこのお嬢ちゃん?」
 神裂の話が終わったところで、土御門が話しかけたのは佐天涙子に対してだ。
「な、何でしょうか?」
 少し警戒心を漂わせて、佐天は白井の後ろに隠れてしまう。
 無理もない。知人である上条や神裂ならともかく、見た目ツンツン金髪でサングラスをかけている土御門元春は、初めて会った人間からすれば、怪しいことこの上なしなのだ。しかも、美琴や白井でさえも今日が初顔合わせであり、しかも『魔術』側の人ときた。人見知りしても仕方がない。付け加えるなら、上条とも初めて会った佐天である。彼女からすれば、頼れるのは美琴と白井だけなのだ。てことで、怯えるな、という方が無理な話なのだが、
「そんなに怯えなくても大丈夫ぜよ。俺たちは別に嬢ちゃんを取って喰おうなんて思っちゃいない。ただ――」
「『ただ』?」
「禁書目録と超電磁砲が入れ替わっていることを知ってしまった以上、今後も、元に戻るまで付き合ってもらうぜ。それと、このことは他言無用で頼む」
「土御門――!」
 久しぶりに見た土御門の真剣な眼差しに上条は息を呑む。
「当然の処置ですね。もっとも、誰かに話したとしても信じてもらえるとは思えませんが」
 神裂は鼻で一つ息を吐いた。
「佐天さん……?」
 美琴が肩越しに心配げな声をかけ、しかし、佐天は前髪で瞳を隠して沈黙している。
 しばし、間を空けて。
「――分かりました」
 発した声には、はっきりとした意志が宿っていた。
「偶然ですけど、首を突っ込んでしまったからには、私も責任を果たします」
 続けた佐天の表情には不敵な笑みが浮かんでいた。
 その後、一同は毎日会合の場を設けることで了承し、その場所は、この自販機の前にするということも決まったのである。
 また、今日から神裂が上条の学生寮に寝泊りすることになった。
 理由は至極単純。
 昨夜の上条と美琴の秘め事未遂事件があったからであり、インデックスと白井の強い要望を受けたからだ。
 本当は、白井は今日も外泊許可を取ろうとしていたのだが、さすがに二日連続では出してもらえなかった。
 と言うわけで、上条の暴走と美琴の誘惑を阻止するためには、お目付け役を置くしかない、という結論に至り、なんだかとっても只ならぬ雰囲気を醸し出す神裂にお願いした次第である。
 実のところ、神裂も上条に気がないわけではないのだが、それを土御門以外は知らない。もちろん、面白そうだから土御門は何も語るはずもない。神裂の方も、それを語ることはないだろう。
 もっとも、今日の夜、土御門は間違いなく上条の部屋側の壁に聞き耳を立てているだろうが。
 そんなわけで、解散した一行はそれぞれの居住地へと帰っていく。
 インデックスと白井黒子は『学舎の園』へ、佐天涙子は自分の学生寮へ、上条当麻と御坂美琴、神裂火織、土御門元春の向かう先は同じだ。
 ところで、今日の上条宅の寝所は、美琴と神裂がベッドで上条がバスルームである。
 昨夜のことがあったので、美琴も上条のバスルーム行きを止めることはできなかった。
 そして。
 インデックスと御坂美琴が入れ替わった非日常の二日目は更けていく。
 特別、何の進展もないまま。

640Changeの作者:2011/07/05(火) 20:43:58 ID:BFTAIU2c
以上で、3章終了です。
なんだか、もっとギャグ回にできなかったかな?と言う気が自分でもするんですけど、どうにもそれが分かりませんでした。何も盛り上がりがなくて本当に申し訳ございません。
4章はできるだけ早めに投下できるよう、努力いたします。


PS.二ヶ月近く経ってしまってますので今一度、注意事項として、このSSは『IF 分岐物語』の設定を含んでいますことをお伝えします。

641「転校生なのですよー」:2011/07/06(水) 22:37:40 ID:6z8GeO9Q
というわけで、一方通行は体操服を着てグラウンドに突っ立っていた。 
「似合うじゃんよー、一方通行」
「うるせェ!!愉快なオブジェにしてやろうかァ?」
 ニヤニヤしている黄泉川とそんなやり取りしている間にくじ引きで敵味方2チームに分かれる。結果、上条と一方通行は別チームという事になった。
 そして、ポジションは

 上条 ゴールキーパー

 一方通行  フォワード

 という無難な物なった。

「こっちには一方通行がいる。楽勝だな」
「一方通行が相手か、こりゃ勝てないな」
 ぼつぼつ言うクラスメイト達の声が一方通行にも聞こえてきた。
 レベル0や1の団体にこんな化物がいるのだ。そう思うのも当たり前だろう
 思えば、レベル5という力を持ってしまったがために自分は―
「おーい、おまえらよく聞くけー。この勝負の勝利チームには、体育の評価で20点プラスしてやるじゃん。ちなみに一方通行はレベル2から3ぐらいまで制限してるからあてにすんなよー」
「「「何ー!!!!!!」」」
 プラス20点をいうセリフが出た瞬間、一気に生徒全員の目つきが変わった。
「ちょと来い、一方通行」
「うォ!!」
 物思いにふけっていた一方通行は強引に円陣の中に組み込まれた。
「一方通行!!レベル2か3ぐらいしか出せないってのは本当か?」
「あァ、そうだ」
「くっ、作戦変更だな。一方通行にまかせるつもりだったが、全員でサポートを行う」
 現金なやつらだなァと一方通行は思う
 そんなことを知ってか知らずかテキパキと割り振りをしているのは、金髪でサングラスの土御門だ。

「よし、作戦は頭の中にたたきこんだな。それじゃいくぜ!!やろうども!!」
 応、という返事と共にグラウンドへ散り散りになってく生徒たち。

 一方、その頃、上条のチームでは
「なぁ、上条って不幸だけどゴールキーパーまかして大丈夫か?」
「大丈夫。あいつには不幸を利用し、体を張ってゴールを守るという重要な使命がある。顔面ブロックとか・・・」
「コォラァァあああああああ!!」
 というごたごたがあったものの、上条の幻想殺しを頼りに、守備を固めるという方向で一致した。

642「転校生なのですよー」:2011/07/06(水) 22:45:42 ID:6z8GeO9Q
 ピーという笛の音と共に試合が開始される。
 適当にやって時間を潰そうと考えた一方通行はベクトル操作で遠距離からゴール目がけてシュート。
 しかし、能力が制限されているため思った以上にスピードが出ない。
 それでもゴール端のきわどい所へボールを投げ込んでいた。
「うぉぉおおおおお!!」
 しかし、上条も全力で奮闘する。
 一方通行の放ったシュートはあと一歩の所で幻想殺しにふれ、パキンという音と共にぴたりと上条の手の中に納まった。
「うぉぉおおお!!、さすが上やん、やる時にはやる男やな!!」
「よっしゃ、第一位も目じゃねーぜ!!」
 と盛り上がる上条のチームメイト。

「ちっ、まあいい次だ」
 さっさとコールドゲームにして休もうと思っていた一方通行。が、なかなか得点を稼ぐことができない。レベルが落とされていることもあるし、一方通行自身、サッカーを誰かと一緒に、なんてことがほとんどなかったせいもある。
 最初の方は手を抜いていた。しかし、二度、三度シュートが防がれると一方通行も徐々にサッカーに熱中していった。
 そして、いつの間にか、一方通行は他の生徒と同じく肉体と能力を限界まで酷使し、ボールを追いかけていた。
 そして、五度目の攻防前、いよいよ本気になった一方通行は大声で叫ぶ。
「この、学園都市第一位のシュートを受け止めるなンて、なかなかおもしれェ事してくれるじゃねェか!!」
「守護神、上条さんの力、存分に発揮しちゃいますよー」
「ほォ。じゃァ、見せてやるぜ第一位の実力と、敗北の屈辱をォおおおお!!」
 その咆哮と共に、一方通行がシュートを放ち、味方の発火能力者の力を借り、火炎ベクトルシュートに。
 対する上条達は、水流操作系の能力者たちが近くの用水路から引っ張ってきた水のカーテンで防御。
 そこには、どこぞのサッカーアニメも真っ青な激闘をガチンコで繰り広げる大人げない、しかしどこか楽しそうな高校生達の姿があった。
 そして、攻守の中心にいる二人は同時につぶやく。
「ちっ、これがレベル0の底力か」
「くっ、これがレベルファイブのサッカーか」
 勢いよく蹴られるサッカーボール。
 風を切る音。
 上条は一方通行の勝負に応じるために動き始める。
 全身を駆け巡る力と緊張。
 タイミングを計り、小さく息を吐き、両足に力を込め向かってくるサッカーボールに手を伸ばし、
 そして、

643「転校生なのですよー」あとがき:2011/07/06(水) 23:06:03 ID:6z8GeO9Q
 どうも、あと1〜2スレで終了予定です。
 最初あらすじ考えた時は上条さん主役だったのに・・・そんな感じで書いてます。
 遅くなりましたが
<<601
<<603
 超ありがとうございます。
 残り少ないですが楽しんで見てくれたら幸いです。
 「Change」 にたにたしながら読んでます!!。
 「大いなる業」おお!!この後どうなるんだー!!

 いやー書いてくれる人がきたり、待ってた作品が来ると嬉しいですねー。

644「転校生なのですよー」あとがき:2011/07/09(土) 23:50:56 ID:vxvC00Y6
 そして、結局決着はつかなかった。
 一方通行のチームにはベクトル操作が、上条達のチームには幻想殺しがそれぞれあるので当たり前といえば当たり前の結果だった。
 そして、生徒達はというと・・・・・

「駄目だ、もー動けねぇ」
「にゃー、こんだけやっても決着がつかなかったんだぜい」
「あかん、頑張りすぎて1ミリも動けへん」
「ぜェ、はァ、ちきしょう引き分けか」
 全員ズタボロになってグラウンドに横たわっていた。

645「転校生なのですよー」あとがき:2011/07/09(土) 23:53:07 ID:vxvC00Y6
 息も切れ切れの一方通行は仰向けになって空を見上げる。
 何年ぶりだろう、と思う。こんなに一生懸命になったのは。
 レベル5になって、暗い研究所に放り込まれてからというもの、一度も遊ぶなんて事はなかった。何かに一生懸命になることもなかった。ただ、生きる希望を失って、生きた屍のような生活を送っていた。
 どこまでも遠く澄んだ青空を見上げている彼は気づいているだろうか。
 そんな自分が、少し笑っている事に。
 そして、こうも思う。こんなに平穏でいいのだろうか?こんな化け物が?

 一方通行は上条に声をかけた。
「今日は疲れた。帰る」
「え!?まだ二時限目だぞ」
「どうせ、この体力じゃ、いてもいなくても授業どころじゃねェよ」
「そうか?いつも授業ってこんな感じだからなぁ。」
 いつもこんなバカ騒ぎやってるのか?、と思いつつ、一方通行はその場を去る。
 他の面々より一足早くシャワーを浴び、学生服に着替えた一方通行を待っていたのは、土御門だった。

646「転校生なのですよー」あとがき:2011/07/10(日) 00:11:45 ID:KynQIFeU
「よう、一方通行。久しぶりだな」
「もう二度と会わないと思ってたぜ」
「そうか?広そうで狭いのが世界ってやつだ」
「なンの用だ」
「なんでもない。そうだな、お前と少し話をしてみたくてな」
「お断りだ」
 そう言って一方通行は土御門の横を通り抜けた
「悪い奴らじゃないだろう?」
 土御門は振り返らずにそう言った。一方通行も振り返らずに答える。
「ああ、バカばっかりだがな」
「・・・その昔、まだ中学を卒業した頃、訳あって俺は学園都市に来た。この高校に来たのも偶然だ。その頃は妹をどうやって守るかばかり考えていた。で、あのバカ騒ぎだ。困ったもんだぜ、守るもんが一つ増えちまった」
「・・・・・」
 一方通行は、ゆっくり動き始めた。自身の帰るべき家へ向かって。
「明日も来るよな?」
 その土御門の問に何も言わず、ただ、右手をフラフラと振った。
 わかっている。知ったことか。どちらだろう、と土御門は考えた。


 翌日、早朝、上条達三バカはいつもと同じく途中で合流して通学していた。そして、上条は昨日の事を思い出していた。
「いやー昨日は大変だったなー」
「あの後、ほとんどの男子が爆睡してもうたからなー、授業にならんって親船先生、怒とったわ」
「グラウンドも大変な事になっちまったなー。そのわりには黄泉川先生、機嫌良かったけど」
「にゃー、わが子が活躍してんのを見て機嫌悪くなる親はいないぜい」
「あれ?黄泉川先生、独身やなかったけ?」
「こっちの話ですたい」
 そんな事を言っているうちに上条が通う高校の校舎が見えてきた。
 そういえばグラウンドがめちゃくちゃになって、あの後、他のクラスの体育が体育館に変更になったのを上条は思い出す。
「グラウンドどうするって?」
「うちらの高校は修繕できる能力者がおらんからなー。でも、他の高校に頼むのもアレやし、重機でも使うんちゃうん?」
 そんなトークをしつつ、高校に来てみると、
 一面まっ平らに整地されたグラウンドが静かに朝日を浴びていた。
 まるで作り立てのようだ。
「・・・どないなっとんや?」
 青髪ピアスの問いに土御門はある一人の人物を思い出した。
 こんなことができる能力者といえば、この学校には一人しかいない。
 ふと、上条と目があった。
 何を思っているのかわかったらしく、上条が口を開く。
「来てると思うか?」
「さあ?でも来てるの方に昼飯のジュース代を賭けるぜい」
「俺も来てる方に賭けてるんだけどなぁ」
「へ?なんの話してんの?」
「とりあえずついてこい青髪ピアス!!」
「行けばわかるにゃー」
 そう言って走りだす二人。慌てて走りだす青髪ピアス。
 教室のドアを開けた、そこには―

 完

647「転校生なのですよー」あとがき:2011/07/10(日) 00:22:05 ID:KynQIFeU
 どうも。作者です。
 なんとか終わらせる事ができました。
 まずは、読んで下さった方、ありがとうございます。
 そして、名前の所、あとがきを消し忘れました。ごめんなさい。
 新約2巻、首を長くして待っている今日この頃です。

648とある氷華の身分証明(データイースト):2011/07/10(日) 23:50:13 ID:1fhMxRwE
皆様初めまして。
昼時に飛んできた謎の毒電波が氷華愛とミラクルにシンクロしてフュージョンした結果、深夜テンションのような謎の文章になりました。
時系列、人間関係、各種設定、キャラクター性がことごとく崩壊している可能性がコーラを飲んだらゲップが出るくらいあるのでご注意下さい。
4レスほどお借りします。

649とある氷華の身分証明(データイースト):2011/07/10(日) 23:54:53 ID:1fhMxRwE
とある昼下がり、純白の修道服を纏った少女「インデックス」と超常の集合体にして虚数学区そのもの、「風斬氷華」が学園都市の第七学区、その路上を歩いていた。

「ひょうか、ひょうか、これなぁに?」

インデックスが懐から手帳のようなモノを取り出し、風斬に見せる。

「ええっと・・・それは学生証、学校に所属している証だよ・・・ってそれ上条君のじゃない。どこで見つけたの?」

「てれびでね、『オーサカノオバチャン』って生き物はポケットにたくさん飴玉を持ってるっていってたから、とーまのズボンのポケットにも飴玉あるかな〜って探してたら見つけたんだよ!」

「勝手に取ってきたの?だめじゃない、これがないと困るときもあるんだから・・・」

ちなみに学生証の持ち主、当の上条当麻はいつものように不幸にも学生証を必要とする場面に出くわし、いつものように「不幸だ〜!」と叫んでいるのだが、それはまた別の話。

「そっかぁ・・・あとでとーまに謝るんだよ。そう言えばひょうかも『がくせいしょー』、持ってるの?」

「うん・・・最初自分の名前も分からなかったとき、これだけが私の『個人情報(パーソナルデータ)』だったから・・・大切にしてるんだ」

風斬はそう言って鞄の中からその学生証を取り出し、インデックスに見せる。

「あれ?ひょうかの名前って、『かざきりひょうか』でいいんだよね?」

「・・・ふぇえ?」

インデックスの突飛な質問に慌てて学生証のおもて面を確かめる。そこにあったのは、冷たい北風や鎌鼬現象を思わせる彼女の本名とは一線を画した名前と、見覚えのないそのほかの項目だった。

650とある氷華の身分証明(データイースト):2011/07/10(日) 23:59:12 ID:1fhMxRwE

氏名「氷華・D・クロウリー」

所属「霧ヶ丘女学院 二年十三組」

強度「正体不明」

有効期限「死ぬまで有効」

タイプ「エスパー・ゴースト」

攻撃力/守備力「1200/3000」

スタンドタイプ「広範囲妨害型」

身長「ちっちゃくない」

体重「中は空洞」

バスト「カウンターがストップするほど測定不能」

嫌いな物「宇宙人」

651とある氷華の身分証明(データイースト):2011/07/11(月) 00:04:16 ID:YAbMc3Kk
「・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・?」

長い、永い沈黙、それが一分ほど続き、先に動いたのは唖然と学生証を眺めていた風斬だった。

その手に持っていた混沌の塊と化した学生証を鞄にしまい、街の「ある方向」を向く。

「ごめんなさい・・・今日は用事が出来たから、究極ドクペゲルバナナブレンドナンバーワン、食べられなくなっちゃった。また今度連れてってね」


「・・・ひょうか?」

幻想により形作られた少女は今、その身に光り輝く翼を纏い、跳び立つ、第七学区の一角に立つ、通称「窓の無いビル」へと向けて。

轟!
轟!!
怒号!!

まず垂直に80メートル上昇、一気に開けた視界の目の前に見えた漆黒の直方体に向け、飛来する隕石のように時速160キロで突撃、ビルの壁面に向けて右拳をたたき込む。

しかしそれだけの攻撃を受けたにもかかわらず、それまでの威力にも屈せず、そのビルはそこにあった。

すると突然、ビルの眼前に降り立った風斬の目の前、その中空に、一人の「人間」の映像が浮かび上がる。

囚人にも聖人にも大人にも子供にも男にも女にも見えるその「人間」、名はアレイスター・クロウリー。この街の統括理事の陰のトップにして、科学サイドの長。

その人間に、風斬は話しかける。

652とある氷華の身分証明(データイースト):2011/07/11(月) 00:08:12 ID:YAbMc3Kk

「・・・何なんですかあれは?」

「学生証だが?」

アレイスターの気の抜けた返事に、風斬は無言でもう一度ビルの壁に拳を叩き込む。

「ああ、あの名前か?お前の身体を作り出したのはこの街の能力者達だ。ならばそれを調整した私は、君の父親と呼ばれても差し支えないとは思わんかね?」

「・・・お父さん・・・かぁ・・・」

つっこみどころ満載のアレイスターの理論に何故かシリアス気味になる風斬、彼女の発言にアレイスターは、言った。

「お父さんだと・・・?・・・パパと呼べ!」

もはや意味不明である。

「あの・・・あともう一つ・・・『死ぬまで有効』って・・・何ですか?」

「・・・え?」

ジェネレーションギャップ、その恐ろしさは説明しなければいけないギャグを創り出すことにあるのだ。




「落ちないんだよ!」

653とある氷華の身分証明(データイースト) 後書き、または言い訳:2011/07/11(月) 00:13:12 ID:YAbMc3Kk
これにて投下終了です。
改めてみるとこれはひどい。
ちなみに作中のネタが全て分かった人は一緒にドクペでも飲みましょう。
処女作の駄文でのスレ汚し、失礼いたしました。

654■■■■:2011/07/11(月) 01:12:31 ID:5pLhZ1pI
短いのを一本。
山も谷も無いですが。
では、お借りします。

655■■■■:2011/07/11(月) 01:14:11 ID:5pLhZ1pI
「ふっふっふ……しっかり確保したぜ」

私、上条当麻はスーパーに来ております。
肉は確保できた。特売の豚だけどな。
300g級を2パック……今日はついてる。
100g78円のお得な豚バラだ。
あとはキャベツを買うとしよう。
夏本番で暑いから今日は、キャベツと豚肉をさっぱりポン酢で頂くとするか。
と、その前に。
賞味期限ぎりぎりの半額商品を見て回ろう。
これ重要。
買い物を済ませ、はらぺこ同居人の待つ我が家へと急ぐ。
あんまり遅いと噛み付かれるからな。

「ただいまー」
「あー、とうま。おかえりー。今日のご飯は何かな?」
「ちょっと待ってろインデックス。すぐ準備するからなー」
「わかったんだよ!」

冷蔵庫に買って来た商品を詰めていく。
今日使う食材を出してっと。
確か色々余っていたはず。

「ではでは、さくっと準備するとしましょう」
「とうまー、やっぱり私もお手伝いするんだよ」
「そっか、なら一緒にやるか」
「うん!」

さて、しっかり手洗いをして、始めますか!

656■■■■:2011/07/11(月) 01:15:06 ID:5pLhZ1pI
「インデックス。キャベツを剥いてくれるか?」
「切らないの?」
「ああ、剥がしてくれ」
「うん、分かったんだよ!」

鼻歌でカナミンのOPを歌うインデックスが剥がしてくれたキャベツの下処理を行う。
一枚ずつ洗うことで虫の有無を確認できるのも大きい。
この時期は大丈夫な事が多いけど、春キャベツてめえは駄目だ。
まずはキャベツが広がるように、芯を落とす。
ここで注意だ。芯は捨てるなよ?
キャベツで捨てて良いのは、芯の一番下。汚れている部分だけだ。
それ以外は全部食えるからな。
勿体無い事するなよ?

「とうまー、終わったんだよ」
「サンキュー。フライパン出してくれるか?」
「了解なんだよ」
「フライパンにキャベツ敷いてくれー」
「うん、簡単なんだよ!」
「最初だけフライパンが見えなくなるようにもう一枚敷いてくれ。その次は豚肉だ。しっかり広げて乗せるんだぞ?豚肉を乗せたら塩コショウで味付け」
「しっかり目?」
「軽くでいいぞ」
「うん、分かったんだよ!」
「味付けしたら次はまたキャベツなんだけど、キャベツの芯があった部分が重ならないように注意してくれ」
「完全記憶能力の私に掛かれば、お茶の子歳々屁の河童なんだよ!」

どこでその台詞を覚えたんだ、インデックス……。

「とうま。このままキャベツ、豚肉、キャベツって重ねていけば良いんだね?」
「それでオッケーだインデックス。しかーし、上条さんにはまだ秘策あるんですよ」
「おおー、とうま。どんな秘策なのかな?教えて欲しいんだよ!」

657■■■■:2011/07/11(月) 01:17:02 ID:5pLhZ1pI
まあ、たいしたもんじゃないけどさ。

「他の野菜も入れるんだ。キャベツと豚肉だけだと栄養がちょっと足りない。でだ、ここに人参の皮。ニラの先端。しいたけの石突…等など。要するにクズ野菜と言われてる物だな。これを入れる。集めれば量は結構なもんだろ?」
「ふむふむ、こうやって捨てるような部分でもちゃんと調理すればオッケーなんだね。材料を無駄にしないとうまは偉いんだよ!」
「あんまり水の出ない野菜を使うのがポイントだな。キャベツからたっぷり水が出るから味がぼやけてしまうんだ、もやしなんかはNGだな」
「じゃあとうま。このまま重ねていけばいいんだね?」
「おう、さくっとやっちまおうぜ?」

この料理のオススメにはきのこ系だな。
食感の違いも出てかなりあり。
きのこ系ってのはいろんな料理に使える万能選手だから便利なんだよな。

「とうまー、完成したんだよ!火にかければいいのかな?」
「その前にだ。このめんつゆを伸ばした出汁を入れる。少ししか入れないのがポイントだな」
「キャベツから水気が一杯出るんじゃないの?」
「最初から水気が出るわけじゃないからな。このまま火にかけたら焦げちまう」
「なるほどなんだよ」

冷蔵庫に一本はめんつゆを入れておくことを推奨するぜ。
こいつはマジ便利アイテムだからな。

「では、蓋をして火にかける」
「うわ!蓋が閉まらないんだよ!とうまどうしよう!」
「まあまあ慌てるなインデックス。5分もすればシュンとして蓋が閉まるさ。でも、最初はこうやって押さえ込む!」
「力技だね」
「長いことやる訳じゃないから簡単さ」

火にかけること数分。
すぐに野菜に火が通り、蓋が閉じるくらいに量が減った。

「インデックス。冷蔵庫の中から今日買って来たシューマイを出してくれ。1箱100円の所、賞味期限は今日までだから半額だったのだ」
「シューマイ♪シューマイ♪」
「軽く水をかけてからラップしろよ?」
「オッケーなんだよ!」

さて、今日のメインディッシュは……そろそろだな。

「インデックス、大皿出してくれー」
「完成なんだね!楽しみなんだよ!」
「ふっふっふ、甘い、甘いぞインデックス。ここからスープとソース作りだ」
「なんか本格的なんだよ!」

簡単だけどね。

658■■■■:2011/07/11(月) 01:18:08 ID:5pLhZ1pI
「ちっとここからはスキルが要るから俺がやるな?まずは、フライパンを蓋したまま・・・ひっくり返す!」
「おおおおおお!とうま凄いんだよ!」

ここは思い切りよくやるのがコツだ。
勢い良くやらないと悲惨な目にあうからな。
上半身だけじゃなく下半身。特に膝だな。膝を使うとうまくいくぜ。
あと、蓋が平たいの使っている場合は絶対やるなよ?
水気の出ないお好み焼きとかなら全然オッケーだ。
フライ返しでも良いんだけど、物がでかいとひっくり返せないからな。
そういう時はフライパンのまま一気にやるほうがいい。

「この蓋にたまっている水分をフライパンに戻す。そっとやるのがポイントだ。傾ける角度が急だとメインディッシュが崩れちまうからな。水分を戻したら皿を重ねてひっくり返す!ここも勢い良くやるのがポイントだ。さっきと一緒だな」
「とうまは器用なんだよ、私だと崩しちゃいそう……」
「慣れだよ慣れ」

さて、まずはスープだ。

「このフライパンに残った出汁に水を足して、この固形のコンソメを砕きながら入れる」
「うんうん、次は?」
「以上だ」
「え?」
「まあ味の調整は塩コショウで整えるんだけど、これがまた美味いんだよ。びっくりするからな」
「んー、これは流石に疑わしいかも……」

スープを器に移して、あとはソースだな。
まあこれもウルトラ簡単だ。

「次はソースだな。まずフライパンにポン酢を入れる。ここに梅干を細かく切って入れる。さらに盛り付けたメインディッシュの皿を傾けて、出てきた出汁を加える」

この料理は皿に盛ってからも、がんがん出汁が出てくるのがやっかいなんだよな。

「うんうん」
「以上だ」
「とうま?これくらいならそのままポン酢をかければいいんじゃないの?梅干も乗せればいいんじゃないかな?」
「ばかもーん!この出汁には豚肉、キャベツの旨み成分が詰まっているんだ!栄養価も高い!この出汁を有効利用しないと」

何も分かってない!これだから料理しない奴はだめなんだ!

「それに梅干を入れて煮る事で全体に梅の風味が広がるんだ」
「へー……とうま、ポン酢があったまってきたかも」
「じゃあこれを掛けてっと」
「おおおおお!とっても美味しそうなんだよ!」
「豚肉とキャベツのミルフィーユ。梅ポン酢ソース掛けの」
「「完成でーす」」

659■■■■:2011/07/11(月) 01:18:57 ID:5pLhZ1pI
テーブルに差し向かいに座って。

「「いただきまーす」」

では、一口。
うん、美味い。
梅干入りのポン酢がいいな。

「とうまとうま!スープがとっても美味しいんだよ!コンソメ入れただけなのに!」
「だろ?キャベツと豚のエキスがしっかり入ってるからな。たまねぎを炒めてオニオンスープにしても美味しいけど、炒めるのが面倒だったし今回は無し」
「今度はそのスープを作って欲しいんだよ!」
「任せとけ」

こんな簡単な料理でもインデックスはとても喜んでくれる。
男の俺が作れるものなんてたかが知れてるし、外で食べればもっと美味しいものもあるしな。
それでもインデックスは喜んでくれる。
それが嬉しいんだ。
だから貧乏でも頑張れるんだと思う。
もうちょっと食べる量を減らしてくれると嬉しいんだけどな。
今日なんてキャベツ1玉全部使ったぞ。

「あれ?シューマイは?インデックス、レンジから出さなかったのか?」
「とうま、何言ってるの?ここは戦場だよ?えっと……そう!焼肉定食なんだよ!」

弱肉強食だな、多分。
と、言うことは……

「もう食べたのか!」
「うん、美味しかったかも!」
「ふ、不幸だーーー」

まあこんなことはしょっちゅうだけど、こいつが美味そうにご飯食べてるのを見ればチャラってもんでしょ。
さて、明日はどんな料理作ろうかな?
ま、特売次第だけね。

660■■■■:2011/07/11(月) 01:21:35 ID:5pLhZ1pI
以上で投下終了でござる。
こうした生活臭のする場面をかまちーに書いてもらいたいぜ。
プロが書いたら凄そうだしね。
少しでもお腹が空いていただければ幸いですw

661■■■■:2011/07/11(月) 14:17:42 ID:pF64vuSI
GJ
なんか「つくってワクワク」的なノリだな
原作のインデックスさんは家事の手伝いなんてしないから…残念ながら
美味しそうなSSだった、乙

最近職人が投下してるだけで碌に感想がつかないのが寂しい…
強要してる訳じゃないぞ?ただ、もうここには人がいないんじゃないかと不安になってくる

662■■■■:2011/07/12(火) 00:52:44 ID:GYNv6Oek
GJでした
インデックスさんがお手伝いしてくれればこんな感じに料理してるかもな
他の子でもやって欲しいぜ
ねーちんとかねーちんとかねーちんとか!

確かに人は減っているように感じるね・・・
みんな他のところに移住しちゃってるのかな?
上琴くらいだ元気あるのは・・・

663■■■■:2011/07/14(木) 16:19:51 ID:2AwM15m.
まあ一応作家自体は残っていると思いますけどねー
学生さんとかだと一学期にあたる時期ですから忙しいのではないかと

664中二病 番号 20000:2011/07/17(日) 10:48:31 ID:13G5EAaE
一応、生きてますよ。他の書くのに忙しいだけで・・・
まあ、先週までテスト期間中でしたからね・・・

665牧田さん:2011/07/18(月) 14:32:01 ID:dWzFEz9w
生存報告しておきます
投下は、次の禁書発売までにはしたいですねハイ

666中二病 番号 20000:2011/07/18(月) 23:59:00 ID:P8DaE3zQ
結構短いけど投稿 合計一日二回更新って気分がいいね!


第二部2日目 8時30分 駒田のマンション

「・・・・で、なんで姉さんが俺のベットに入ってたんですか?」

「別にいいじゃない。秀人の匂いが恋しくなったのよ。」

「ロックピックしてまですることですか?!」

俺が声を荒げると、姉さんは「や〜ん、秀人こわ〜い。」なんて完全に俺をからかってきた。

事の成り行きはこうだ。

例の初恋ドリンクを飲み干した俺は、そのままバスで部屋に直行したんだ。
んでもって、ドアを開けようとしたら鍵が開けてあった。
俺は泥棒かなんかと勘違いして、戸棚を確認してみたんだが諭吉どころか平等院すら盗まれてなかった、
泥棒にしちゃやることがおかしいし、もしかしたらまだ部屋の中にいるのかもしれない。
警察を呼ぶべきかと思って寝室に入ったら、ベットが不自然に盛り上がっていた。
そして、かけ布団を勢いよく剥いだところ・・・全裸の姉さんが寝てた・・・というわけだ。
今すぐにでも警察と精神科医を呼びたいね。

「とりあえず、早く服着てください。風邪ひきますよ。」

「あら?心配してくれるの?」

「い い え 。 ま っ た く 。 こ れ っ ぽ っ ち も 。」

「なによ〜照れちゃって〜。」

照れてなどいない。25歳にもなって弟離れできない姉に失望してるだけだ。
彼女は、駒田 円香(こまだ まどか)正真正銘俺の姉で、見てわかるとおりブラコンだ。
弟が言うのもなんだが、かなりの美人+グラマーな体系で町を歩けば誰でも振り返るような人だが・・・
なぜか弟離れが出来ない、ちょっとどころか思いっきり困った人である。

「・・・と、とにかく!俺はごみ出しに行って来ますから、間違ってもそのまま外に出ないように!」

返事も聞かず後ろを振り向いた俺は姉の「は〜い」なんていう間が抜けた返事と共に部屋を出た。

667中二病 番号 20000:2011/07/19(火) 00:00:30 ID:cuQ7A9DU
途中で投稿しちまったorz



季節はずれのサンタクロースのようにゴミ袋を担いで階段を下りた俺は、最近見知った一人の少年に出会う。

「あ、おはようございます。駒田さん。」

「おう、おはよう上条君。」

彼は上条当麻、最近ゴミだしのときによく出会う高校生だ。
彼については・・・さっき説明しなくてもわかってるという天の声が聞こえてきたので簡潔に言う。
不幸少年(リアじゅうやろう)だ。畜生、もげろ。

短い世間話を済ませ、彼が後ろを向いて歩き出した瞬間、
盛大に、それもお笑い芸人も感心するほど見事に、すっ転んでくれた。
どうやらポイ捨てされてた空き缶を踏んづけたらしい。
一体何の缶なのかとそれを拾い上げると・・・ゲッ、初恋ジュース・・・・誰が買うんだこんなもん
まあ、たしかに今朝買ったけどね、俺。

運よく白衣のポケットに持っていた絆創膏を手渡すと、彼は頭を下げてきた道を帰って・・・あ、また転んだ。

やれやれ・・・と肩をすくめた俺は、やれやれでは済まない25歳児が待つ自室へ歩みを進めた。

668中二病 番号 20000:2011/07/19(火) 00:00:48 ID:cuQ7A9DU

                ◆
「それで、姉さん?どうしてここに来たのか。本当の理由を教えてください。」

俺が部屋に戻り姉さんに問い詰めた瞬間、ニコニコ笑っていた姉さんの顔が真剣な顔つきになる。

「達也君の事は知ってるわよね?」

「当たり前です。・・・だっていとこですよ?忘れたとしたらそれは健忘症の疑いがありますね。」

俺にとっては精一杯の冗談のつもりだったんだが、無反応の姉さんを見る限りどうやら通じなかったようだ。
神妙な表情のまま姉さんは話を続ける。

「それが、昨日美也ちゃんから連絡があったんだけどね。帰ってこないのよ、達也が。」

「帰ってこない」という単語に、俺は首をかしげる。

「まあ、あいつが帰ってこないのはよくありましたけどね・・・今頃、不良のボスでもぶん殴ってるんじゃないですか?」

「だといいのだけれど・・・どうも、風紀委員あたりが関係してくるらしいのよね・・・」

「風紀委員ですか?だったら昨日お世話になりましたけど・・・」

その発言を聞いた瞬間、姉が食って掛かった。

「お世話になったって・・・一体何をしたの!?・・・ハッ!もしや溜まりに溜まってついに○○とか○○○とかしたって言うの!?
 そんな・・・それなら早めに言ってくれれば、お姉ちゃんがいくらでm――――」

こ、この馬鹿姉は・・・!

秀人必殺 アイアンクロー!(注 ただのアイアンクローです。必殺技でも何でもありません。でも、けっこう痛いです。)

「い、いひゃいいひゃい!ごめんなさい!もう変なこと口走りませんからぁ〜〜!」

変なことってわかってるなら初めから言わないでくれ・・・

「・・・とにかく、俺のコネを使ってそれを調べろと・・・?」

「そういうことよ・・・」

「・・・ハァ・・・」

俺は不良いとこと変態姉に頭を悩ました。

669中二病 番号 20000:2011/07/19(火) 00:06:30 ID:cuQ7A9DU
投稿完了。

毎日書けば一日一話更新できるのに、インターバルが長い中二病 番号 20000です。(略称募集中)
ボクの場合あれなんでよね書き溜めるとかそんなんじゃなくて、気分が乗った際に一話分書いちゃう、みたいな感じなんですよね。
まあ、1ヵ月半のブランクがあきましたが・・・自分の文章に進化はあったのかな・・・と割と真剣に考えてる自分です。

ああ、それと上記のブランクのせいで場面転換の際の合図が逆転裁判風(本人はそのつもり)から◆や◇に変わりました。
ご了承ください。

では、次の創作意欲が沸く頃にノシ

670■■■■:2011/07/21(木) 14:08:26 ID:EKVtdo7g
>>669
GJなんだが書き溜めてから纏めて投下したほうが良いのでは?
最低4レスは欲しいところですね。

とりあえず感想としては姉さんGJで

671牧田さん:2011/07/22(金) 11:19:38 ID:XJC6pV0o
とてもとてもお久しぶりです。『禁竜召式(パラディンノート)』の作者です。

久々に投下したいと思います。
相変わらずオリ設定が染み付いていますので、苦手な方はお控えください。
では9レスほど貰います

672牧田さん:2011/07/22(金) 11:20:36 ID:XJC6pV0o
英国図書館地下書庫秘蔵『Sorcery UK』第三章。その一節より抜粋。
及びその一節を元にオルソラ=アクィナスが再編した文章より。

=============================================================

竜の魂を利用して『悪竜になった』人々は、その強大すぎる力に意識を呑まれ、結局は『彼』に退治される形となった。
半竜半人という不安定は肉体を持った人々は、当然ながらその力を扱うことなど出来はしない。

それから三日三晩、『彼』による竜人の虐殺が始まった。
そして、もはや蠢き彷徨う愚人でしかない人々は、何の抵抗もせずにあっさりと全滅する。


そして『彼』は“英国を脅かす化け物達を退治した”という名目で王家より勲章を授かった。
国中の人々が『彼』を尊敬し、崇拝する者までもが出現した。誰もが『彼』を真の英雄と称えていた。


ただ一人、『彼』自信を除いて。


幾ら半竜に堕ちた人間だからと言って、元は単なる一般人であり、それを任務に従って殺し尽くした『彼』は、自らを戒める日々を過ごしていたのだ。

せめて、二度と繰り返さないように。
思い立った『彼』は人々を竜に変えた術式を解析し、あえてそれを≪完成≫させた。
『彼』は、≪完成≫し、より安定した状態となったその術式を何重もの封印術を用いて完全に封印し、自身の土地の奥深くへと隠した。

二度と人の目に触れぬように、二度と使われることの無いように『彼』はその術式に戒めの名を授ける。



『PaladinNote(禁竜召式)』と。

673牧田さん:2011/07/22(金) 11:21:57 ID:XJC6pV0o
十月十六日午前二時二〇分。大英図書館地下書庫内。


「お待ちしておりました。最大主教(アークビショップ)」
イザベラとの『交渉』を行う為に指定された場所へと誘導されたローラ=スチュアートは、地下書庫に足を踏み入れた瞬間、思わず眉を顰めた。
「・・・・・・オルソラ=アクィナス・・・・・・? 何故あなたがこの場に居たるのかしら?」
ローラの目に映るのは木机に巨大な書物を広げて、姿勢良く座っていたオルソラ。対する彼女は朗らかな表情で一度会釈をし、そのまま立ち上がると、
「最奥庫にて、お姉さまがお待ちです。少し複雑な事情がありまして、わたくしはこの場に居ることが難しくなりそうですので、後はお任せいたしますね」
まるでローラの到着を待つだけの門番のように、彼女はさっさと階段を上がって消えてしまった。

(・・・・・・何故オルソラが・・・・・・? まあ、構いはしなくて結構かしらね。姉妹が同じ場所に居合わせることに理由は要らぬと思いけるし)
恐らくは何かしらの用件があったのだろうが、今のローラには関係が無い。現在彼女が集中すべきは『対十字教黒魔術(アンチゴッドブラックアート)』と深い関わりがあるとされるイザベラ=アクィナスに情報提供を仰ぐことである。
もちろん敵側の人間である為に快く話しをしてくれるとは思っていない。わざわざ相手から交渉場所を指定してきたのだから、こちらの話を一方的に弾き返すつもりは無いのだろうが、それでも何らかの条件が付与されるか、最悪その場で即戦闘という場面も考えられる。正直、イギリス清教のトップであるローラが不用意に戦闘に参加したりしてしまえば、部下に対して合わせる顔が無い。なので、そのような状況はなるべく避けたいところだが。

(ま、その辺は大丈夫かしら。イザベラはそんなに尻の軽い女では無いと思いけるしね)

書庫を少し進むと、まるで王家の一室のような巨大な木製の扉が目の前に現れた。ランタンのみで薄暗い空間の中で、ローラはゆっくりとその扉を押していく。
鈍く不快な音が鳴り響き、次いでガシャン、と言う音と共に扉が完全に開放された。

薄暗く乾燥した、学校の教室程の広さの最奥庫。その中央に置かれた木机にローラ=スチュアートの『目的』が佇んでいた。
ローラは一度だけ歩を進め、懐かしむような表情で『目的』に対し、言葉を投げかける。


「・・・・・・久方ぶりに会いけるわねイザベラ。相変わらずの“陰の薄さ”に安心したるわ」
「・・・・・・こちらこそ、お会いできて光栄で御座います最大主教。貴方も相変わらずの図々しさで安心いたしましたよ」

そこに居たのはイザベラ=アクィナスと言う名で呼ばれ、限りなく零に近しい肉体を持った『亡霊』だった。

674牧田さん:2011/07/22(金) 11:23:13 ID:XJC6pV0o

十月一六日午前二時三分。ハイドパーク内某所。



クリスタル=アークライト。絹旗最愛。両者の視線は拮抗していた。

「・・・・・・なるほどねぇ。どうも違和感あるとは思ったけれど・・・。小娘、あなた学園都市の人間ね」
クリスタルは視界の隅へと吹っ飛ばされ、地面の染みのようになってしまった部下を一瞥し、嫌悪と言うよりは驚愕の表情を露にして立ちふさがる絹旗を睨みつけた。
対する絹旗は表情を崩さず、生暖かい感情を全て踏み潰した光の無い眼でクリスタルを見つめ返す。
「よく判りましたね。隠すつもりなんて超ありませんけど」
絹旗はいまだ『窒素装甲(オフェンスアーマー)』を発動状態であるし、クリスタルはルーンを両手や懐に大量に隠し持ち、すぐさま戦闘に移行出来る状態であった。
つまり、片方が指の一本でも動かせば、そこで戦闘が再開されてしまうと言うことを意味している。
殺しのプロが睨みあう非情な戦場に於いて、無駄な躊躇いは握り潰さなければならないのだ。


そんな極限の緊張状態の中、アニェーゼは二人から少し離れた仮の安全地帯に身をおき、辛うじて持ち堪えた戦場を眺めながら状況を整理していた。
(・・・・・・助かり、ましたね。キヌハタへの礼は後で死ぬ程してやるとして・・・・・・現時点でこの場に居た敵の部下が全滅したと言うことはかなりプラスですね。恐らくクリスタル自身は部下の奴等とは比べ物にならない位の実力者でしょうが、敵戦力の減少と言う点ではキヌハタはかなり良い仕事をしてくれましたか)
クリスタルの部下達だけが居なくなった、と言うだけでは戦力の差は大して縮まらないだろうが、それでも“狙う的が少なくなった”と言うのは集団で戦闘を行うアニェーゼ部隊にとっては喜ばしい展開ではあった。絹旗が乱入した事でクリスタルの猛攻は一時的に止まっている状態であるし、そのお陰で負傷したシスター達も自らに治癒魔術を施してギリギリ戦闘に参加できる状態にまで回復している。アニェーゼ自身も予想していなかった事だが、全く嬉しい誤算である。
(さて、後はキヌハタがどう動いてくれるかですけど・・・・・・)
アニェーゼは戦闘体勢から微動だにしない絹旗を慎重に見つめる。詳しくは分からないが、見る限り彼女は学園都市にて何らかの『裏稼業』に関わっていたと見て間違い無いだろう。実戦闘に関しても浅くない経験が有るようなので、この状況下での不用意な行動は慎んでくれるとは思うのだが・・・・・・それでも不安は残る。
(キヌハタの実力がどれほどの物かも解りゃしませんし、それもクリスタルには届かないでしょうから、このまま二人でドンパチ始められると困りますね・・・・・・。ここは先手を打たせて頂くとしますか)

そう決断したアニェーゼは倒れていたシスター達がすでに立ち上がって臨戦態勢であることを確認してから、自身の『蓮の杖(ロータスワンド)』を力強く掲げ、大声で『指示』を出す。

675牧田さん:2011/07/22(金) 11:24:57 ID:XJC6pV0o

「I D A T I M. A I P D U. A U P.(総員に告ぐ!! 自らの霊装を極限まで使い果たし敵を殲滅せよ!!)」

アニェーゼが叫んだ『指示』は言霊にようにハイドパークの暗い林へと響いていく。
その言葉を聞いた二〇〇人近いシスター達と言語の理解できるクリスタルは驚きで目を丸くした。
自身の霊装を最大限活用して“一人しか居ない敵を殲滅”しろと言うアニェーゼの命令。


この状況下でのその『指示』は、つまり一斉射撃という言葉に変換される。


「(・・・・・・やってくれるわね小娘・・・・・・!!)」
指令の意図に逸早く気が付いたクリスタルは一瞬でルーンを周囲に撒き散らし、防御術式を展開する。
だが、シスター達の行動もそれに劣らず速かった。
大小様々な霊装をそれぞれの方法や儀式で瞬時に起動させ、遠距離迎撃術式を中心に魔力を練り上げていく。
その間、僅か三秒ほど。そしてほぼ全員が術式の準備を完了させた所で、アニェーゼは二つ目の『指示』、つまり“実行”の合図をシスター達へと授ける。

「L'assassini!!(迎撃開始!!)」

その言葉が二〇〇人の修道女達に耳に届いた瞬間、凄まじい爆音が空間を支配した。

ボウガンから杖、槍、長剣まで多種多様な霊装から放たれる無数の砲撃がクリスタルを覆い尽くし、その破滅的な光の残光で、もはや彼女の影さえ捉える事は出来ない。
擬音として表すことが不可能な程に凄まじい光と音、そして衝撃にクリスタルは初めて苦渋の表情を浮かべた。
(くっ・・・・・・さすがの私でも、これは少しキツイわね・・・・・・っ!!)
クリスタルの発動させた術式は魔術的な防御力だけなら『歩く教会』にも匹敵するレベルの物だったが、魔術に対する絶対的防御だけでは足りない。なぜならクリスタルというたった一つの的に対し、二百の砲撃が繰り返し撃ち込まれているのだから、その衝撃や大気の摩擦は物理的な面で見ても通常攻撃の比では無い。仮に全ての魔術攻撃に対して完璧な防御を果たせたとしても、その余波で発生する物理現象にまで対応する為にはそれこそ本物の『歩く教会』が必要となるだろう。

(まずい・・・・・・このままだと潰されるのも時間の問題・・・・・・不本意だけど高威力の爆破術式で弾き返すしか道は無い、か)
防御術式を安定させる一方でクリスタルは新たなルーンを周囲に撒き散らし、術式の詠唱を始めた。すでに二〇秒以上も砲撃を受け続けている為に体力も限界に近い。本来ならばカバラでの高速詠唱を行う場面だが、ここは負担の少ない通常詠唱を選択するほか無かった。
(詠唱完了まで持ち堪えれば、恐らく形勢は逆転する・・・・・・術式を二つ同時に使用するのは気が引けるけど、ここはやるしか無いわね)
そしてクリスタルが五秒ほどかけて詠唱を完了させ、術式を発動しようとした、その瞬間、


唐突に、全ての攻撃が止んだ。


(・・・・・・・・・・・・え?)
何の前触れも無しに静寂を取り戻した薄暗い林の中で、状況を理解できていないクリスタルは慌てて周囲を見渡す。
自分を360°包囲する修道女達を端から確認していた時、視界の隅から見覚えのある人物が飛び出してきた。
唐突にクリスタルの目に飛び込んできたのは、此方へと尋常では無い速度で突撃してくる少女の姿。
(・・・・・・小娘)


絹旗最愛。魔術と対なる力を持った学園都市の人間。

(くそ、見誤った・・・・・っ!! “二百の砲撃はこの為の囮か”・・・・・・っ)
クリスタルは不意を突かれたことにより術式の使用を中断してしまい、尚且つそれを補うほどの体力も残されていない。次の術式の発動までには少なくとも五秒以上はかかるだろう。
つまり、今の彼女では絹旗の放つであろう一撃を避ける手段が残されていないのだ。

絹旗は拳を構え突進しながら、手の残されていないクリスタルに対して簡潔に用件を伝える。


「・・・・・・昨日のお返しです。超有り難く受け取ってください」


顔面を殴りつける轟音と共に、クリスタルの身体は木の葉のように後方へと飛ばされていった。

676牧田さん:2011/07/22(金) 11:26:06 ID:XJC6pV0o
≪行間≫



無限の魔力は災厄を生み、限りない魔術は終焉を呼ぶ。
それが果てしない魔力を手にした少女が、最初に悟ったことであった。

この力を使えば、自分の望む“世界の破滅”など苦労無しに達成できてしまうだろう。
なのに自分はまだ迷うことがあったのだろうか。

よく判らないが、それでも自分のするべきことは決まっている。未練などあるだけ邪魔だ。


『Vampire』、と。
その言葉を呟いた瞬間、イラーリア=L=ラウレンティスは大粒の涙を落とし、真の意味で人間を捨てた。

677牧田さん:2011/07/22(金) 11:27:20 ID:XJC6pV0o

十月一五日午後四時頃。イギリス郊外のとある骨董屋にて。


「本当に良かったのか? キミが作ったあのヌイグルミ、日本人の観光客などに売り渡してしまって」
窓から差し込むオレンジ色の夕日を眺めながら、骨董屋の初老の店主は傍らでワインを味わう女性へと質問した。
「別に。あんな物作ろうと思えば幾らでも作れるわ。それにあんな物騒なデザインのヌイグルミを欲しがる人間がこの世に居たって事に感謝しなきゃ。少しは売上の足しになったでしょう?」
女性の年齢は見た目から推定して二〇後半ほど。髪はこの国には珍しい漆黒の長髪。穿き古したデニムと季節に合わない朱色のTシャツは女性らしさの欠片もありはしないが、元々グラマーな体型をしている為、そんな貧相な服装でも只ならぬ色気を発していた。
そんな男心を惑わす妖艶な女性に、店主は眉一つ動かさずに質問を続ける。
「・・・・・・あれはキミの魔力が練りこまれた、言わば『災厄の品』だ。そんな危険な物を作ってしまった上に一般人に受け渡すとは・・・・・・エーミル、キミは一体何を考えてる?」
エーミルと呼ばれた女性はグラスのワインを一気に飲み干すと、余裕を持った表情に微笑みを交えて店主へ言う。
「アレは作られるべくして作られた。そこに善意も悪意も無い。『流れ』って奴よ。それにあのショートカットの女の子は一般人じゃないわ。見た所、何らかの異能の力に関わっている存在よ」
満面の笑みで返された店主は諦めたように溜息を吐き、窓からオレンジ色に染まっていく街並みを眺めた。時間帯を考えれば、仕事帰りに帰宅する者も居れば、それを待つ家族も居るだろう。店主は懐かしそうな表情で外を見つめ、ワインを注ぎ足す女性へと愁い混じりに聞いた。


「キミには帰りを待つ人は居ないのか? エーミル・・・・・・いや、隻眼のオティヌスよ」


エーミルは一瞬の間を空けて、その質問へどこか寂しそうな表情で答えた。
「今は居ない、かな。隠居中だし大した出会いも無いわよ。・・・・・・今後一切、オッレルスとは会うことも無いだろうし」

店主は何も言わず、ただ黙ってそれを聞いていた。そしてその言葉を頭から払い落とし、再び窓を見つめる。
(どちらにしても、あのヌイグルミが他者に渡ったと言うのは事実。あの少女には妻が作った品だと適当な嘘を吐いて売り渡してしまったが・・・・・・果たして無事でいるのだろうか)
あのヌイグルミには強大な魔力が詰め込まれている。そしてそれを狙う『対十字教黒魔術』という組織がある。全てを理解した上で店主はエーミルの指示に応じ、日本人の少女にヌイグルミを受け渡したのだ。

(・・・・・・魔神が望んだ事だ。間違いでは無いだろう)



十月十五日。これから起こるであろう争いを思い、店主はカーテンを閉めた。

678牧田さん:2011/07/22(金) 11:28:19 ID:XJC6pV0o
十月一六日午前二時一五分。ハイドパーク内林中。


「逃げられちまいましたか。あのまま仕留められれば楽だったんですけど」
劇的な逆転を果たしたアニェーゼは、ルーンの一枚も残さずに姿を消したクリスタルに悪態を吐いた。
絹旗の一撃によって勝負はついていたかと思われたが、クリスタルは吹っ飛ばされて地面に落下する直前に何らかの移動術式を使用していたようで、アニェーゼが確認の為に向かった時には彼女はすでにその場に居なかった。
そんな中、戦闘の余波で荒れ放題の林を眺めていたアニェーゼのもとに、絹旗が疲れたような表情で歩いてきた。
「お疲れ様です超アニェーゼ。一応は切り抜けられましたね・・・・・・しかし、土壇場にあんな作戦を思いつくなんて超思ってませんでしたよ。感嘆です」
「ええ、私もまさかあそこまで綺麗に決まるとは思ってなかったんですけど」
二〇〇人近くにシスター達に一斉に攻撃を放たせる、と言うのはそれ自体が無茶苦茶な作戦であるが、さらにそのジョーカー並の大規模迎撃を『囮』に使って真の切り札である絹旗にとどめを任せる。それは一見破天荒に見えて一番効率的な方法であり、そんな作戦を極限状態の中で導き出せると言うのが、彼女が天才と言われる所以だったりもするのだ。
我ながら良い感じの作戦だったなぁ、と柄にも無く自画自賛していたアニェーゼだったが、傍らの絹旗が何故か申し訳なさそうに体を縮めているのに気づいた。
「どうしましたキヌハタ。どこか痛めたんですか?」
「いえ、あのそういう事では無くて・・・・・・私があの一撃で超確実に倒せていたら・・・・・・逃がすことも超無かったと思うので申し訳ないと言うか」
悪戯がばれた子供のように畏まる絹旗に、アニェーゼは一瞬目を丸くしたが、すぐに優しい保母さんのような表情でなだめるように言う。
「敵四人の撃破と主戦力の撤退。貴方は十分すぎる働きをしたと思ってますから安心してください。と言うかむしろこっちが感謝すべきなんですけどね。貴方が乱入してくれたお陰で殺されそうだったシスターは助かりましたし、敵に隙が出来たことで逆転への糸口を掴むことも出来ましたから」
露骨に褒められることに慣れていない絹旗は少し頬を赤らめ、滅多に見せることのない恥ずかしそうな表情を露にした。「こ、こっちも作戦に超参加している身ですし、やるべき事は超やりましたから・・・・・・」と何かゴニョゴニョと言っている姿が余計に可愛い。なんか女として負けた気分だ。

まさかの乙女チック絹旗に少し対抗心を燃やしながらも、とりあえずは区切りのついた戦闘に安堵したアニェーゼは周りを見渡す。
(さてとやっと休憩できますね。とりあえず『迎撃』班の確認を・・・・・・と。・・・・・・ん?)

そこでアニェーゼはあることに気づき、もう一度回りを眺めた。そして遠くの方で戦況報告書を熱心に書き留めているルチアを発見し、『蓮の杖』で適当に叩いて呼び寄せる。
「痛つっ!? し、シスター・アニェーゼ!! いちいち遠隔攻撃で注意を向けさせるは止めてください!! 普通に言葉で言えば良いでしょう!?」
「いやなんか言うの面倒だったもんで。まあ上司の我が儘を受け入れるのも部下の勤めですよ。とりあえず用件があるので来てください」
部下一人を呼ぶにも『蓮の杖』で打撃を与えて丁寧に反応させる。この辺りが紳士たるアニェーゼの律儀さなのである(と自分で言っている)。

679牧田さん:2011/07/22(金) 11:29:21 ID:XJC6pV0o

くそこんな時だけ上司面しやがって、とブツブツ言いながらもルチアがアニェーゼの前まで辿り着くと、大きく溜息を吐きながら質問した。

「それで、何の用ですか? シスター・アニェーゼ。また我が儘な要求でもしてきたら、その時はそれなりの対応を・・・・・・」
「イラーリアの姿が見当たりません」
ルチアの動きがピタリと止まった。そして眉を寄せてアニェーゼへと恐る恐る返答する。
「それは、つまり・・・・・・?」
アニェーゼは表情を変えずに平淡な声色でルチアへ呟くように言った。
「・・・・・・まさかと思いますが“すでにこちら側には居ないのではないでしょうか”・・・・・・?」
「―――――っ!!」

アニェーゼの言葉を聞いた途端、ルチアの表情は瞬時に凍りついた。そして何か得体の知れない物を認識してしまったかのような震える口調で、ルチアはもう一度アニェーゼへと慎重に聞き返す。
「イラーリアが、“この『対十字教黒魔術討伐作戦』の実行中”に・・・・・・ですか? 何かしらの裏切り行為は覚悟していたつもりでしたが、このタイミングとなると・・・・・・」
ルチアの言葉にアニェーゼは目を細め、忌々しそうに言葉を吐いた。
「・・・・・・彼女が、『この作戦での敵』という事になりますね」


イラーリア=L=ラウレンティスの動向については、前々から不可解な点が幾つかあった。
報告無しの無断外出、所持霊装の意図的な隠蔽、そして所在不明の魔術師との接触疑惑など。
それだけ聞くと完全に厳重処罰対象だが、その度に彼女は言い訳とも正論とも取れる説明を繰り返して罰を逃れていた。

無断外出については、報告を忘れていた。聖書を教会に届ける為に外出した、との説明で軽い罰則のみ。
霊装隠蔽については、霊装の改良中で、不用意に他人に触らせると術式の安定が崩れてしまう、と言う説明で見送り。
魔術師との接触疑惑については、彼等は魔術師では無く教会の関係者であり、道端で偶然出会った為につい立ち話してしまった、と言う説明で夕食減少の罰則のみ。

その全てが全てアニェーゼ部隊内での厳しい規則に後少しの所で触れていないレベルの灰色な事柄ばかりであった為、直接問い詰めると言う強行手段に踏み切れずにいた。そのせいで彼女の動向や発言については常に何らかの監視を施さなければならないと言う状態がここ数週間続いていたのだが・・・・・・、

「・・・・・・ここに来てイラーリアが居なくなりました。それはつまり彼女が『対十字教黒魔術』と何らかの関係があると考えざるを得ません」
「考えたくは、ありませんでしたが・・・・・・」

仲間の中に敵が居る。アニェーゼは集団という名の組織の中で最も有ってはならない可能性が、確実な物へと変わったことを悟った。

680牧田さん:2011/07/22(金) 11:30:37 ID:XJC6pV0o
〔十月十六日午前二時一七分現在。戦況報告。〕記入者=ルチア

題 『対十字教黒魔術(アンチゴットブラックアート)』討伐任務。

目的 英国支部の首謀者と思われる女性の粛清

名 クリスタル=アークライト(真偽不明)

重要度 SS

========================================

「戦況報告」

『迎撃』、第一班。林内にてターゲットと戦闘。敵の戦闘不能及び死亡は未確認(生存の可能性大)。イラーリア=L=ラウレンティスが現在行方不明。
『迎撃』、第二班。現在行方不明。
『遠爆』、第一班。林内にてターゲットと戦闘。敵の戦闘不能及び死亡は未確認(生存の可能性大)。
『遠爆』、第二班。林内にてターゲットと戦闘。敵の戦闘不能及び死亡は未確認(生存の可能性大)。
『遠爆』、第三班。林内にてターゲットと戦闘。敵の戦闘不能及び死亡は未確認(生存の可能性大)。
『術発』、第一班。林内にてターゲットと戦闘。敵の戦闘不能及び死亡は未確認(生存の可能性大)。
『術発』、第二班。林内にてターゲットと戦闘。敵の戦闘不能及び死亡は未確認(生存の可能性大)。
『術発』、第三班。林内にてターゲットと戦闘。敵の戦闘不能及び死亡は未確認(生存の可能性大)。
『通信』、第一班。『把握報網(MasterNet)』の管理及び監視継続中。
『通信』、第二班。『把握報網(MasterNet)』の管理及び監視継続中。
『雑補』、全班。現在待機中。

現在オルソラ=アクィナスは部隊内の通信霊装の不具合で情報提供を行うことの出来ない為、作戦の全ての指揮はアニェーゼ=サンクティス部隊長が執るものとする。

========================================

681牧田さん:2011/07/22(金) 11:35:25 ID:XJC6pV0o
投下終了です。
そして投下し終わってから誤字脱字にきづいて凹んでいる自分が居ます。7レス目orz

他にも誤字脱字はあると思うので、見つけた方は言ってくれる嬉しいです。自分でも推敲はしたつもりですが、どうにも自信が・・・
あと6レス目ですが、正直投下しようか迷いましたが、ヌイグルミの説明がつかない恐れがあるので投下しました。
一応は最初から出てくる予定だったのですが、今後エーミルさんは出番は無いかもしれません。

では感想や誤字脱字のご指摘、誤字脱字のご指摘などお待ちしております。

682■■■■:2011/07/23(土) 11:46:46 ID:0Y/vpyH.
>>681
GJ
正直誤字脱字については指摘できるほどの自信が無いのでいつもの人に任せます
戦闘描写のレベルが跳ね上がりましたね。そして絹旗可愛いですね
オティヌス、ですか。ということはヌイグルミは思った以上にキーアイテムなようですね。
行間も中々気になるワードで出てきました。今後の展開に期待したいと思います。

上手く纏めるのが難しそうな感じもしますが、完結めざして頑張ってください。

683■■■■:2011/07/23(土) 11:47:29 ID:0Y/vpyH.
ついでにあげ

684■■■■:2011/07/24(日) 01:35:47 ID:RRUKhwy2
誰か感想つけてあげなよ−

685■■■■:2011/07/24(日) 10:50:34 ID:RqqRyQQc
>>681
乙です。
独創的な設定で読み応えがあります。
誤字脱字は最初の「自信」だけで、そのほかは気づきませんでした。
あえて指摘するとすれば、難しい漢字と熟語の多用で文章が一本調子に
なりはしないかということぐらいです。
希少なハードスタイルのSSなので、是非完走されることを期待しています。

686中二病 番号 20000:2011/07/25(月) 17:07:38 ID:qi6QJxoc
引越しにより1ヶ月ほど更新不可となりました。
(引越し先のネット環境がないため)
ご迷惑おかけします。

687■■■■:2011/07/26(火) 22:54:29 ID:fQn0bs46
>>681
GJです。遅くなりましたが、誤字脱字の指摘と感想を。
>>672不安定は肉体(不安定な肉体)
>>673アンチゴッドブラックアート(アンチゴッ“ト”ブラックアート?) 陰の薄さ(影の薄さ)
>>675修道女達に耳に(修道女達の耳に)
>>678紳士たるアニェーゼ(淑女の方が適切では)
>>679強行手段(強硬手段が一般的)
>>680「戦況報告」について、『通信』と『雑補』、イラーリア、ソフィア班が戦闘に参加していないなら
    総員は165名となり文中の「二〇〇人近いシスター達」に微妙な齟齬が生じる
    以前の報告では「全班の収集、点呼完了」とあったので『通信』と『雑補』も戦闘に参加していると思っていたのですが……
アニェーゼと絹旗の会話が微笑ましいですね。普段の生意気な態度も良いが、デレる絹旗もまた良いものだ。
まさか『隻眼のオティヌス』まで出てくるとは思いませんでした。あのヌイグルミ、そんなヤバい代物だったのか。
そして行間の『Vampire』、吸血鬼ですか。ドラキュラと竜の関連性、イングランドとルーマニアの伝承、風呂敷と共に膨らむ期待。
イラーリアの真意、イザベラの交渉、ソフィア達の動向……、まだまだ謎は深まるばかり。今後の連載も頑張ってください。

688牧田さん:2011/07/27(水) 18:44:33 ID:xMbK.odU
>>682
>>685
>>687
感想、誤字脱字のご指摘ありがとうございました。
班の人数のについては「二百人近い」という言葉と『戦況報告』の記入の仕方に問題がありました。
通信は『把握報網』で監視中、と書きましたが実際は応援で幾らかの人員は戦闘へ向かっています(雑補除く)。
アニェーゼが通信霊装の不具合を理由に『通信』の人間を何人か寄越したと言う説明文を抜かしていました。
ルチアの言った『全班』というのは戦闘に参加している全ての班(人)、という意味になる・・・と思ってください。

どちらにしても自分の文章のミスです(一九六人という数字はありえないので)。説明を怠って話を進めてしまい、申し訳ありませんでした。
人数云々は内容には深く関係しないので、wikiのほうは完結したころに自分で修正することにします。

689■■■■:2011/07/31(日) 22:47:41 ID:ZEw8NnLA
今さらだけど平行とか禁竜とかって物凄い勢いでオリ設定だよね
でも違和感と言うか不快感を感じないのは文章でカバーしてるからなのかな
二次創作でのオリ設定はNGってよく言うけど、スレに一つくらい異彩があっても良い・・・のか?

という訳でこのスレを見てくださっている方がいると信じて聞きます。

ぶっちゃけ話の軸をオリ設定にするのってアリですか? ナシですか?

690■■■■:2011/08/01(月) 01:19:56 ID:I2bc35sw
>>689
線引きは人によるだろうけど、個人的には面白ければ特に拘る理由はないかな
文章力が高ければ多少のオリキャラ・オリ設定には目を瞑れる
オリ主人公だけはちょっと抵抗あるけど。所謂メアリー・スー、俺TUEEEEは読む気が起きん
二次創作である以上原作の設定だけじゃどこかで息切れするのは当然だし、オリ設定を生み出さざるを得ない職人の苦心は察してあげたい

691■■■■:2011/08/01(月) 10:52:58 ID:Jhbes28U
>>690
よく言われてることだけど「オリキャラのための物語」じゃなく「物語のためのオリキャラ」ってことだよな

『灰姫』の言祝とか『十番勝負』の姫垣はまさにそんな感じ

692■■■■:2011/08/01(月) 11:50:00 ID:gMVrp.uI
>>691
話を戻すようだけと、『平行世界』や『禁竜召式』、あと『三日間』とかのオリキャラが目立って存在してるSSはどうなのだろうか
平行や三日間はオリ設定が組み合わさって最終的には上手く纏まったから「物語のためのオリキャラ(設定)」って意味でも良作だったと思うけど
禁竜も「物語りのためのオリキャラ(設定)」ってのをクリアしてると思うんだがどうだろうか(完結してないから偉そうなこと言えないけど
読んでて思ったんだが、敵と戦わせるためにキャラを動かしてるんじゃなくて、敵と戦っているときのキャラの心情を軸にしている気がする
他のSSと比べてキャラの心情描写も多いし、殆どが戦闘中の話なのに戦闘描写が圧倒的に少ない

いや、まあ、初めて見るタイプのSSだから少し語ってみただけなんだが

693■■■■:2011/08/01(月) 19:08:30 ID:Jhbes28U
>>692
まあはっきり言って原作者のかまちー自身が
新キャラ投入→物語展開
って書き方だからなあ…
そういう意味ではオリキャラ投入も原作に準拠した書き方と言えなくはないかもしれん

実際何にも新しい要素が無いんじゃ長編は書けないだろうしな
『三日間』とか『禁竜』もオリ設定を通して原作キャラたちが活躍する感じだし展開方法としてのオリ設定はいいんじゃないか?
っていうのが一読者なりの『物語のためのオリキャラ』の解釈でした

694■■■■:2011/08/01(月) 19:38:38 ID:B4/A206g
>>640
GJです!少し気になったところがあったのでレスします。
>>698
「みさか……って、まさか、常盤台の超電磁砲……? 学園都市に『みさか』という名前は彼女以外居ないはずだけど……」
姫神の台詞なのに「、」が「。」になっていない。

青髪たちが現状を知ったらまた一騒動起きそうですね。
何せ青髪が常盤台の寮の前で御坂が上条さんに抱きついてデートに行くのを目撃しているもんなあ……
もう上条さんは一度もげたほうがいいと思うんだよ。
……ところで堕天使エロメイドについては、土御門が書き込んでそうな気がするw
これからも頑張ってください。

695■■■■:2011/08/01(月) 21:58:12 ID:/tceqPvE
>>689 とある誰かの野望物語を読んでみろ。
   メアリー・スーっつーか当時の作者のオナ○ーが見れる。

696■■■■:2011/08/01(月) 23:23:44 ID:gMVrp.uI
>>692
禁竜は深いこと考えずに素直に楽しんで良いと思うよ
と思ってたけど伏線や考察の余地が満載なので深く考えざるを得ないという。割り切って楽しもう

>>695
あの作者は書き方がvip風味だからなぁ。元々このスレにも合ってないのかも。

697696:2011/08/02(火) 01:01:43 ID:BwHcHAWs
>>693間違いです
すいません

698■■■■:2011/08/02(火) 10:21:26 ID:W0q/3WdA
>>695 >>696
たしかに初めはVIPくさかったが、最近は地の文も多くなって成長してるぞ。

699■■■■:2011/08/03(水) 00:38:39 ID:HHrWCoGY
あくまで私見だけど、禁書ssオリでは
・俺の考えた能力を持った俺の考えたキャラが禁書キャラと戦う、但し禁書キャラ視点
までは許容できる
・俺の考えた能力を持った俺の考えたキャラが禁書キャラと戦う、但し俺が考えたキャラ視点
でちょっと、んー?ってなる 
・俺の考えた能力を持った俺の考えたキャラが俺の考えた能力を持った俺の考えたキャラと戦う
で静かに立ち去る

逆に戦わないオリキャラは物語のスパイスっぽくていい
>>691の言祝とかすごいわかる
作者が単にそのオリキャラが好きだから出す、ではなくて、自分の作りたい話に必要なパーツとして必然的に組み込まれる感じ
あくまで私見だけどね

700■■■■:2011/08/04(木) 15:17:02 ID:i4SCvYrY
>>689 から>>691
 
こんなSSになにまじになっちゃってどうすんの

701■■■■:2011/08/04(木) 16:33:11 ID:MBLagUE2
>>700こんなSS?
この板の中なら、中二病以外のSSは全然普通に読めるけど

702■■■■:2011/08/04(木) 17:02:46 ID:I3KKmV1w
>>701
駄目だよ可愛そうな人はスルーしなきゃ

703■■■■:2011/08/05(金) 01:19:06 ID:XQm6NKbg
>>701
おっと、中二病の悪口はそこまでだ
逆に聞くがどの辺がだめなん?

704■■■■:2011/08/05(金) 07:59:25 ID:ny5DjIB.
>>703
ハッキリ言って色んな意味でSSが下手。オリキャラも無双な上にそれをカバーする文章力が無い。
個人的にはオリキャラが無双してても楽しめれば良いのだが、野望物語は普通に詰まらなかったと思う。

705Changeの作者:2011/08/06(土) 18:47:58 ID:CcVAHH4M
>……ところで堕天使エロメイドについては、土御門が書き込んでそうな気がするw

勘違いでしたら申し訳ございませんが、ひょっとしてこれって『IF 分岐物語』のことですか?
前の姫神くだりが『Change』だったのでそう思ったのですが……
もしそうだとすればさすがは土御門。暗躍するのがお得意ですね。
うむ。やっぱ姫神さんって印象薄いのね。台詞の句読点まで気が回ってませんでした。(酷っ!)

706Changeの作者:2011/08/06(土) 18:48:45 ID:CcVAHH4M
ごめん。sage入れ忘れた……

707■■■■:2011/08/06(土) 18:55:01 ID:eGy/bHcU
>>705
次回更新を楽しみにしています。

708■■■■:2011/08/08(月) 00:07:04 ID:sNrgem1c
過疎ェ・・・

709■■■■:2011/08/08(月) 00:30:31 ID:6XYTMoF6
日付変わった途端に何だよ

710■■■■:2011/08/08(月) 01:15:09 ID:gyt1La5Q
いきなりすみません
自分他のスレで出来たオリキャラでSS作ってみたいのですが、
いかんせん初心者でSSのイロハも分かりません。
出来ればSSを作るにおいて重要な点や、コツ等を教えて
いただけるとありがたいのですが・・・

711■■■■:2011/08/08(月) 01:42:09 ID:opsgo1oU
禁書したらばで聞くのでなく、ss 書き方とかでGoogleで調べてみたら?とりあえず>>1は読みましたか?
個人的にですが、オリキャラで気をつける事はGoogleでメアリー・スーを調べて

712■■■■:2011/08/08(月) 02:03:03 ID:gyt1La5Q
>>1は一応読みましたが、そこまでしっかりよんでませんでした。
ご指摘いただきありがとうございます。
Googleで調べてきます。

713Changeの作者:2011/08/11(木) 20:10:35 ID:f1FuMrz2
どうもお久しぶりでございます。前回が7月の頭でしたから、なんとか前回よりも早くUPさせることができました。
ところで今さらなんですけど、私の作るお話は、本編とアニメオンリーのつもりです。
公式海賊版とか、DVD特典SSの内容は含まれていないつもりですのでご了承を。


と言うわけで、『Change』第4章です。
今回の留意事項は、例えどんなにそう見えたとしても、上琴ではない、ということです。


相変わらず取り留めなく書いてますから長くなりますけどお付き合いくださるとありがたいです。
それにしても、どんどんオレ流の文章になっていくなぁ。キャラの口調も怪しくなってきました。

714Change4−1:2011/08/11(木) 20:12:01 ID:f1FuMrz2
 朝は戦場だ。
 と言っていたのは誰だっただろうか。
 ここは学園都市であり、人口の八割を学生で占めていて、その大半は親元を離れ、一人ないし相部屋での寮生活を余儀なくされている。
 そのため、ほとんどの学生の平日の朝の準備は慌しい。
 着替えにその日の時間割の確認に朝食、そして、(一部中学も含む)高校以上となれば、購買派や学食派も少なくはないが、お弁当作りも加わる。
 これを、六時に起きるなら約二時間内、一時間早く起きしたとしても約三時間でこなさなければならない。
 だからこその『戦場』なのだ。
 と言っても、今朝の上条家はそうでもない。
「ん……」
 鼻腔を擽る芳しくも香ばしい匂い。
 明らかにこれは、ふっくら温かな白ご飯とお味噌汁が発するものだ。
 上条当麻はバスルームから出て、昨日とは違う静かな、しかし、昨日にも勝るとも劣らぬ芳醇な香りに身を委ねていた。
 騒がしさも何もない。
「御坂さん、どうぞ、味見してみてください」
「うん」
 神裂火織が笑顔でインデックスの姿をした御坂美琴に味見用の小皿を差し出して、美琴もそれを受け取り、柔らかな唇を触れさせて、そっとすする。
「わ、凄く美味しい!」
「でしょ?」
「ええ、なんだかまろやかなのにコクがあって、お味噌汁の少し尖った辛味が完全に中和されてます!」
「ふふ。これはですね、隠し味に――と、おや? おはようございます。上条当麻」
「あら? おはよう――って、どうしたの?」
 上条の登場に気づいた神裂が笑顔で挨拶して、美琴もまた視線を移して声をかけた。
 が、今日も昨日と同じで上条が声を失くして呆然としていたのである。
 そしてまた、ここでも上条の無神経スキルが炸裂する。
 どうやら呆然としていたことで思考停止のまま、思ったことを口に出してしまったようだ。


「いや……お前らから普通の女の子っぽい可愛らしい家庭的な仕草を見せられるなんて想像すらできなかったから……」


 直後、美琴と神裂の怒りを回避するために、上条が土下座に走ったことは言うまでもない。
 まあ確かに、昨日の美琴(とインデックスと白井黒子)は家庭的というよりも、調理士という感じがしないでもなかったわけだが。

715Change4−2:2011/08/11(木) 20:14:54 ID:f1FuMrz2
 朝の登校時。
 クラスメイトと肩を並べて歩く佐天涙子は心底、困った苦笑を浮かべていた。
 隣に居るのは、とても同い年とは思えないほど童顔で体の起伏が乏しい、頭の中ではなく外がお花畑な親友の初春飾利である。
 ただ、中学一年生という年齢を鑑みるのであれば、佐天の体の方が異様なくらい抜群のプロポーションと言えるのかもしれないがそれはさておき。
「あははは。ごめん初春。昨日、先に行っちゃったことは何度でも謝るけど、いくら初春でも話せることと話せないことがあるの」
「それは答えになっていません! 何があったんですか!?」
 ごまかし笑いを浮かべる佐天に、むくれる初春。二人は何度も何度もこのやり取りをループさせていた。
 ただ、残念ながら初春は、(先にも言ったが)童顔なので、少し顔を紅潮させていたり、佐天より身長が低いので上目遣いになっていることも相俟って、怖さよりも可愛さが先に立ってしまう。ロリ萌えのハートを鷲掴みなくらい。ただ、むしろ、こういう表情を見せられたら隠し事をすることの方が悪い気がしてしまうのは、逆に反則ではなかろうか。
「ほんっとーにゴメン! 今はまだ話せないのよ」
 佐天は拝んでもう一度、謝罪する。
 が、これまでのループとは違う単語を使用してしまったことには気づかなかった。これはもしかしたら初春の可愛い怒り方が幸いしたのかもしれない。
 もちろん、風紀委員である初春は聞き逃さない。
 普段はどこかぽーっとしているようにしか見えない初春なのに、注意力だけは、おそらく、柵川中学で一、二を争うことだろう。なんと言っても彼女は周りの風紀委員に恵まれ過ぎている。人とは、自分よりも(能力値に限らず)レベルの高い人間に囲まれ、供に行動することによって、自ずから己のレベルも上げることができる生き物なのである。
「……『まだ』?」
 当然、問い質す。指摘されて佐天は一瞬、ハッとした表情を浮かべたのだが、もちろん後の祭り。
 もう誤魔化せない状況になってしまった場合、それが何を示すかは自分自身が昨日、経験して知っている。
 もっとも、それでもまだ。
 一度、溜息を吐く諦観の笑みを浮かべた佐天。
「ごめん、そういうことなの。今はまだ話せない、ってこと」
「どうしてですか?」
 なんとなく自嘲気味に切り出してきた佐天に、さすがに、そんな表情を見せられては、初春は無碍にムキに問い質すことはできなくなってしまう。
 ちょっと、拗ねた、それでも心配げに先を促すだけである。
「話すのは、全部終わったときか、もしくは、原因がはっきりしたとき」
 ――!!
 初春の表情が驚嘆に強張った。

716Change4−3:2011/08/11(木) 20:15:36 ID:f1FuMrz2
 理由は分かるが、それでも佐天は毅然と続ける。
「今、私は、偶然だけど、ちょっとした……じゃないわね。もしかしたら大事になるかもしれないことに巻き込まれてるの。しかも理由も理屈も分からないし、それにどんな意味があるのかも分からない出来事に。それに初春も巻き込みたくない。あくまで『今はまだ』だけど」
 たとえ、実際に御坂美琴と白井黒子が関わっているとしても。
 それでも、佐天は初春にその事実を隠す。
「私たちは友達じゃ……ううん、親友じゃなかったんですか?」
 初春は佐天のその態度が少し気に入らない。
 もしかしたら危ないことかもしれないから自分を巻き込みたくない、と言っているように聞こえたから。
 友達と親友の違いは何か。
 いや、そもそも友達と知人との違いは何か。
 それは、危険かもしれないことに巻き込めるか巻き込めないか、だろう。
 さらに言えば、初春も結構場数を踏んでいる。命と隣り合わせの危険という場数を。
 それは幻想御手の件であったり、テレスティーナの件であったりと。
 しかし、である。
 それでも、巻き込める危険と、巻き込んではいけない危険があるのもまた確かである。
 少なくとも初春と佐天が足を突っ込んだ危険は科学サイドのものだったので対処できたと言っても過言ではない。
 幻想御手のときは、初春が効果を無効化するディスクを手に入れて、それを拡散させる術を知っていた。
 テレスティーナのときは、佐天がレベル0であったために、キャパシティダウンの周波が佐天に対してだけは効果を発することができず、彼女が、装置を操るコンピュータを破壊することができて形勢を逆転させた。
 ところが、今現在、佐天が足を突っ込んでしまった事柄はまったくの原因不明なのだ。
 だから佐天は初春を巻き込めない。
「もちろんよ。私も初春のことは親友だと思ってる。でもね、」
 佐天は素直に初春の言葉を認め、
「だからこそ、原因がはっきりしたときじゃないと話せないの」
 毅然と言った。
 真剣な瞳で。
 真剣な表情で。
 付け込む隙など与えないほどの真摯な気持ちで。
「佐天さん……」
「はっきり言ってしまえば、私の巻き込まれたことは、今の私じゃ、今回の件に関わった別の人たちの足手まといでしかない。だからって訳じゃないけど、今の私の状況とそ

んなに変わらない初春じゃ、やっぱり現段階だと足手まといにしかならないの」
 相手が親友だからこそ。
 佐天は安心して事実を告げることができる。
 それを否定されることはない、と分かっているから。
「足手まといってのはね、絶対に少なければ少ないほどいいのは初春にも分かるでしょ。だからさ、今はまだ初春を巻き込めない」
 初春は沈黙して聞いている。
 それでも目は逸らさずに。
 そんな初春に応えるように佐天は続けた。
「でもさ。原因がはっきり分かって、まだ解決してなくて、私でも力になれるって判断できたそのときは、」
 ようやく佐天に笑顔が戻った。
 勇ましくも明るい笑顔が。
「遠慮なく、初春も巻き込んじゃうからね」
「はい!」
 初春の返事は明朗かつ即答だった。

717Change4−4:2011/08/11(木) 20:16:58 ID:f1FuMrz2
 インデックスの姿をした御坂美琴は昨日と同じく、午前の家事をほぼ終えて、上条当麻のベッドに腰を下ろしていた。
 足を伸ばし、体を、両手をベッドにつけて支え、天井を見上げながら。
 身体という器が自分のものでないことと、これで二日間、このベッドで寝泊りしたこともあって、『上条のベッド』という意識は皆無に等しく、緊張することも、思春期少年少女特有の行動かもしれないベッドやシーツ、枕の匂いを嗅ぐという行為もする気はまったく持っていなかった。
 しかし、昨日と違って美琴は部屋の周囲に視線を配らせていない。
 時間は午前十時少し前。
 昨日は一人で食器洗い、洗濯、掃除といった作業をこなしていたのだが、今日は神裂火織が居た。
 彼女は、妙に昔ながらの大和撫子というスタイルにこだわりを持っているらしく、家事のほとんどを美琴以上にこなせる人物だったのだ。
 それゆえ、昨日よりも一時間以上早く、やることが終わってしまったのである。
 そこで美琴は神裂に「一人にしてほしい」と告げた。
 むろん、別段、神裂と一緒にいることが辛かったわけでも間が持たなかったわけでもない。
 ただ単に、一人で考えたいことがあったに過ぎない。
 誰しも、そういう時はあるだろう。
 ましてや、美琴はインデックスと入れ替わっている。もっとも、三日目ともなれば多少の慣れは出てくるし、結構冷静になれるものなのだ。
 それは、問題が解決していなくとも、その原因が定かでないとしても。
 だから、少し一人で考えたいことができたである。
 神裂はそれを受け入れた。
 護衛としてはあるまじき行為かもしれないが、すぐに美琴に災難が降りかかる雰囲気がなかったとでも考えたのか、とりあえず、美琴の意思を尊重した。
 美琴は神裂を見送ったとき、その背中に何を思っただろう。
 と言うわけで、今は一人、上条の部屋に残っている。
 思いにふけっているが思考はたった一つ。

 ――この姿のままならアイツと一緒にいられる――

 それを認めざる得なかった。

718Change4−5:2011/08/11(木) 20:17:45 ID:f1FuMrz2
 今日で三日目になるが、この部屋に初めて入ったときからの上条の態度を見れば、それは明白だった。
 『インデックス』がこの部屋にいることに何の違和感も持っていない上条当麻の態度。
 昨日感じた楽しい日々を送っていることを実感させる暖かい空気に包まれている部屋。
 男の子と女の子が一緒に住んでいるというのに何の緊張感も感じさせない二人の様子。
 それはあたかも上条とインデックスが長年連れ添っている順風満帆な夫婦関係を築き上げているように感じても仕方がないことだった。
 と言っても、それはあくまで美琴ビジョン。
 当人たちは、インデックスは上条への異性としての気持ちを自覚していながら、今の二人は兄妹みたいなものだとしか思っていない可能性は高い。
 それでも美琴は思う。

 ――この姿のままならアイツと一緒に暮らせる――

 本人は自覚していることを周りにも自分にも誤魔化しを入れてはいるが、自身が恋焦がれる少年との生活に思いを馳せないわけがない。
 朝、朝食作りしてお弁当を手渡して見送る。
 夕、帰って来た少年に「お帰り」と言って出迎える。
 夜、食事を供にして、寝るまでの時間を二人で過ごす。
 それはどれほど幸福な時間だろう。 
 二人で笑って、遊びに行って、馬鹿やって、時にはケンカもして。
 誰でもできる普通の生活。しかし至福の時間。
 自分の力を誇りには思っているが、レベル5の御坂美琴からすれば、それは逆に手の届かない世界。

 ――この姿のままならアイツの傍にいて素直になれる――

 そこまで考えて、美琴はハッとした。
「何考えてんのよ私は……」
 溜息混じりに苦笑を浮かべて一人呟いて。
 しかし、それは自分自身を偽った強がりの思考ではない。
「今の私は『私』じゃない。それじゃ意味無いじゃない」
 自然と口を付いた言葉。
 誰もいないから、と言うわけではないにも関わらず。
 当たり前のように。美琴自身の気持ちが素直に。
 そして心の中だけで続ける。

 ――元の私に戻って、本当の私じゃないと――

 本人は自覚していないが、天井を見上げるその表情には吹っ切った笑顔が浮かんでいた。
 今の自分はインデックスに敵わないとしても。
 それでもレベル1からレベル5にランクアップさせた自分の努力を誇りに思う美琴は決して諦めない。
 それは並大抵の努力ではないことを自他共に理解しているから。
 だから決して諦めない。
 決定的な確証を突きつけられるまでは。

719Change4−6:2011/08/11(木) 20:19:00 ID:f1FuMrz2
 神裂火織は一人、『学舎の園』へ向かっていた。
 その前に上条当麻と土御門元春の通う高校へ、昼食という届け物をしてきたのだが、対応に出た土御門の背後では何故か、上条が教壇前で正座させられていて、クラスメイト全員に囲まれていて、教壇には裁判長よろしくオデコで結構巨乳の女子高生に睨まれていたのが印象的だった。
 いったい、何があったのかを土御門に聞いてみたが芳しい答えは得られず、どこか曖昧にはぐらかされた気さえした。
 ただ、よく分からないのは土御門が『日常茶飯事』と言ったことだろうか。
 ほぼ毎日こんなことをやっている理由って?
 むろん、神裂には分からない。
 分からないことではあるが、別段、危険なことでもないらしいとのことなので速やかに立ち去ることにした。
 ちなみに、神裂が立ち去った後、土御門が神裂に対応していた姿を目ざとく見ていた青髪ピアスによって、土御門も裁判を受ける羽目になったのだが、もちろん、神裂はそれを知らない。
 そんな経緯を経て、神裂は『学舎の園』の入口に着いていた。もっとも、部外者である神裂火織はこの中に入ることはできない。正規ではない方法であれば入ることができるかもしれないが、真正面から入ることはできない。ちなみに『正規ではない方法』とは言い換えると『侵入』である。それではいらぬトラブルを引き起こすだけである。
 神裂がここに来た理由はひとつ。ただ、どうすればいいかを思案していたのだが、意外な人物が門の柱に背中を預けて空を見上げていたのだ。
 外見は御坂美琴。
 彼女はどこか遠い目をして、黄昏ていた。
「インデックス……?」
 神裂火織は我知らず、そこに居た少女にやや戸惑いの声をかけていた。

720Change4−7:2011/08/11(木) 20:20:24 ID:f1FuMrz2
「よ、よろしいのですか? 私がここに入っても……」
「大丈夫だよ。今の私の外見が短髪だから、私が一緒なら融通が効くみたいだし」
 『学舎の園』の石畳道路を肩を並べて歩くインデックスと神裂火織。
 威風堂々とまでは言わないが、普通に歩くインデックスに対して、神裂はどうしても落ち着かない。
 なんと言っても『学舎の園』は学園都市でも機密事項が多いところであり、しかも世界に名だたるお嬢さま学校が軒並みなのである。
 魔術サイドの人間であり、『大和撫子』という日本風『お嬢様』にかなりのこだわりがある神裂火織は、このコンボにどうしても萎縮してしまう。
 魔術サイドの人間であることの引け目は科学サイドの重要地に足を踏み入れることだ。
 お嬢さま学校という名にそわそわしてしまうのは神裂もその響きに憧れがあるからだ。
 ゆえに気後れしてしまうのはある意味、至極当然のことと言える。
 実力的には科学サイドのレベル5に匹敵すると言われる聖人で、見た目もプロポーションも(キレない限り)普段の作法も周りのお嬢様方が羨むほどだと言うのに。
「ところでインデックス。この時間はまだ学校ではなかったのですか?」
 神裂はようやくそこに気がついて問いかける。
 この時間、御坂美琴の姿が『学舎の園』の中にいるとは言え、学校の外に居るのはおかしな話なのである。
「んーなんか、今日はしすてむすきゃんの日って言ってた。でも今の私は短髪じゃないし受けなくていいってくろこに言われたんだよ」
 インデックスが何の気なしに語った事情は正しい答えであり、ちょっと語弊もある。
 身体検査の日であることは確かなのだが、受けなくていい理由は何も白井黒子の独断ではなく、常盤台中学教職員の総意だったりする。
 無理もない。
 昨日の惨劇を見せられて、今の状況で身体検査をすれば、最悪レベルダウンの結果が待っているかもしれないのだ。
 学園都市に七人しかいないレベル5を二人も抱えている常盤台からすれば、美琴のレベルダウンはそのまま学校の威信に関わる問題であり、それは是が非でも避けたい。
 となれば、延期するしかないという結論に至り、今日は授業もないことから、インデックスは一人、暇を持て余す羽目になったのだ。
 ちなみに白井は、今回ばかりは常盤台教職員の味方となったのである。というか、ならざる得なかったのである。白井もまた、今の状態ではインデックスに身体検査を受けてほしくなかったから。ただ、それはレベルダウンを憂慮したのというよりは、妙な一悶着を間違いなく起こすだろうと予測したからなのだが。
 だからこそ、インデックスにその旨を伝えた。むろん、白井の懸念したことは伏せて、あくまで穏便に。
 もっとも、レベルダウンと言っても、インデックスと御坂美琴が元にさえ戻れば、美琴は次回の身体検査ではどうせレベル5に戻るだろうし、逆にその方が常盤台としても箔が付くのではないかと思うのだが、如何せん、お偉いさんは目先のことしか見えないことが多く、それは名門常盤台と言えど例外ではないらしい。
 もちろん、白井本人は身体検査を受けている。はたして今回はどんな結果だったのか。
 とりあえず本編とは関係がないので割愛させていただく。
 さて、インデックスと神裂に話を戻そう。
 しばらく閑話休題のまま、二人は当てもなく歩いていたのだが気がつけば、神裂はインデックスのちょっと後ろを歩いてしまっていた。
 これは単純に、神裂が警戒のためではなく、例えは悪いが田舎者が都会に出てきたときに見せる行動と同じで、そわそわした高揚感で周りに目配りをしてたためである。
 少し離れてしまったことに気づいた神裂は視線をインデックスへと戻す。
 ところが、ふと見たインデックス(外見美琴)の後姿に、どこか近寄りがたい雰囲気を感じてしまった。
「ねえ、かおり――」
 もちろん、神裂にはインデックスがどんな表情を浮かべているのかを窺い知ることはできない。
 正確に言えば、単に回り込めば見ることはできるのだが、今は、何故か見る気になることすら憚られた。
 そんな神裂の葛藤には気づかずにインデックスは続ける。
「私は、かおりのこと、忘れてしまっているんだね――」

721Change4−8:2011/08/11(木) 20:22:30 ID:f1FuMrz2
 前を見据えたまま、しかし、足を止めて。
 インデックスはどこか寂しげに呟く。
 不意に吹き付けてきた風が、ザァ、とインデックスの髪と制服を靡かせる。物憂げな雰囲気を助長させる。
「ええ、まあ……」
 神裂は曖昧に相槌を打つしかできなかった。
 十月中ごろ。
 イギリスに招待されたときに、インデックスはそれを知った。
 親しげに声をかける者もたくさんいたのにインデックスは誰一人、その場にいた人間を知らなかった。
 声をかけた人間はどれだけ辛かったことだろう。
 自分の知っている『インデックス』なのに。
 記憶を失くしていても、あどけない可愛らしさは健在の少女のままだったのに。
 それでも、相手は自分のことを覚えていない上に、もう二度と思い出すことはないのだ。
 それを知っているだけに、辛さは倍増されていたのではないだろうか。
 もちろん、神裂もその内の一人である。
 いや、神裂はインデックスと深く関わっていた分、その苦しさは周囲の人間の比ではないかもしれない。
 なんと言っても――
「ごめんね、かおり」
 肩越しにこちらに視線を向けたインデックスの表情に、姿かたちは御坂美琴なのに、神裂には本物のインデックスの寂しげな笑顔が被って見えた。
 だからこそ、
「お気になさらずともよろしいですよ」
 神裂は逆に吹っ切った笑顔を見せる。
「私が道を間違えたのです。手を引っ込めてしまった私が悪いのですよ」
 もし、あの日あの時あの場所で、神裂が、すべて忘れてしまったインデックスの怯えた目に臆することなく手を差し伸べていたならば。
 もし、あの日あの時あの場所で、インデックスが見せた不安に慄いた表情の本当の意味を分かってやれたならば。
 きっと、今とは違う関係が構築されていたことだろう。
 しかし、あの日、神裂は自分のことを忘れてしまったインデックスに近づくことを自ら放棄してしまった。インデックスに忘れ去られてしまったことが、その事実を突きつけられたことがショックだったからだとしても近づいてはいけない理由にしてはいけなかったのだ。
 本来であれば、何も分からない少女なのだから誰かの手助けが必要だと言うのに、それを放棄してしまった。
 だから、インデックスは神裂の元を去った。正確には、誤解して逃げ出してしまったとでも言おうか。
「自業自得です。ですが、そのおかげ、という訳でもありませんが、あなたは上条当麻という最良のパートナーと出会うことができたのです。それでいいではありませんか」
 記憶をなくしたインデックスも、神裂にとってはインデックスには変わりない。
 生まれつき過酷な運命を背負うインデックスの幸福を願ってやまない神裂だからこそ、開き直って口にできる。
 今のインデックスは紛れもなく、幸せで楽しい毎日を謳歌していることが一目瞭然だから。
「ううん。今の私なら分かるんだよ。相手が自分のことを覚えていないことがどれだけ辛いか、を」
 それでもインデックスは神裂に謝罪する。
「とうまは記憶喪失だったことを私に隠してた。私も全然気づけないくらい完璧に私のとうまを演じてた。なのに私は、それができなかった」
「インデックス……」
「私も、いくら初めて会ったと思ってしまった人でも、怖がっちゃいけなかったんだよ。とうまみたいに前の私を演じることはできなくても、差し伸べてくれたかおりの手を取るべきだったと今は後悔してる」
 そして、インデックスは神裂火織と正対する。とびっきりの笑顔を浮かべて。
 その姿が御坂美琴だとしても、神裂にはインデックスの笑顔にしか見えない。
「私はね、もう一年ごとに記憶を消さなくても大丈夫になったから」
 そんな少女の笑顔に神裂の心中が和まないわけがない。


「また、友達になってくれるかな?」

722Change4−9:2011/08/11(木) 20:23:54 ID:f1FuMrz2


 神裂にとって、それは待ち望んでいた申し出だった。
 一度、己の手で敵として見られてしまった自分からそれは言い出せなかったから。そんな資格なんてなかったから。
 しかもインデックスは今後、神裂火織のことを忘れることは、呪術以外の記憶喪失にでもならない限り、あり得ない。
 完全記憶能力者だからというわけではない。元来、友達とはそういうものなのだ。決して忘れることのない存在なのだ。
 神裂の瞳から一滴、透き通ったものが零れ落ちる。
 決して、もう二度と手に入るとは思っていなかった宝物。
 前の自分のことは忘れていても、これからの自分のことは決して忘れない少女。
 前の記憶を失くしていても、記憶を失くす前とはとはなんら変わらない少女。
 世界の魔道書一〇万三〇〇〇冊の保管庫の完全記憶能力者と、イギリス清教傘下天草式の女教皇であり聖人という利害関係の一致した間柄ではない。
 インデックスと神裂火織という単なる一個人としての友人関係をインデックスは望んでいるのである。
 神裂火織にとって、これほど嬉しいことはない。
 しかし、それでも神裂は言う。自分自身の戒めとして。
「嬉しい申し出です――ですが、元々は、あの日に私が言うべき言葉でしたね。前の記憶を失くして孤独感に支配されたあなたが私を不安げな瞳で見つめたあのときに――」
「かおり?」
 インデックスのキョトンとした問いを聞いて、神裂は労わるような笑顔を向ける。
「上条当麻にも言われていたんですよ。『相手が自分ことを忘れてしまったなら何度でも友達になれば良い』と。ですが、私はそれができなかった」
 神裂は一度かぶりを振って。
「私たちの一番の過ちは、あなたに何とか私たちのことを思い出してもらおうとしてしまったことでした。写真やアルバム、思い出話などまでして。過去を振り返ろうとして未来を無視してしまった。それは間違いだったと気づかされました。なぜならそれは、『私のことを知っているインデックス』という幻想を押し付けていたに過ぎず、あなたの気持ちを度外視した行動ですからね」
 インデックスにはどことなく神裂の気持ちが分かった気がした。
 それもそのはず。
 極寒の夏の日、七月二十八日。
 インデックスは『記憶喪失の上条当麻』に、無意識に『自分の知っている上条当麻』を求めてしまった。
 神裂がインデックスにやったことと同じで、真っ白で透明な少年に、インデックスの知っている『上条当麻』を押し付けたのだ。
 ただ、インデックスと上条当麻の違いは、上条当麻は、その意を汲んでくれたことだった。
 しかし、それは今となってはインデックスに大きく深い傷を与えてしまった行為でもあった。もっとも、それはインデックスの胸の内にだけに留めていて、上条に対しては、そんな素振りは一切見せてはいない。
 しばし沈黙。
 同じような過去を持つお互いがお互いのことを分かり合えた二人は、ある意味、心地よい空気に包まれて、それを咀嚼し、よく味わったような暖かいいっときを過ごして。
「ねえ、かおり」
 インデックスが切り出した。
 相手が『友達』だからこそ、包み隠さずに。


「私ね……この体のままで居られたら、って考えているかも……」

723Change4−10:2011/08/11(木) 20:26:18 ID:f1FuMrz2


 先ほどまでの和やかな空気もどこへやら。
 神裂火織に一筋の閃光という名の戦慄が走る。
「なぜ……ですか……?」
 それでも声は即座に出た。震えてはいたが。
「だって、今の私は短髪の体なんだよ。この姿なら、ううん、この体ならこんな力があるし」
 言って、インデックスはガカァッ!!雷鳴を轟かせながら、全身に螺旋状の電撃を発動させる。
 ドゴゴゴッ! ドガガガ!という効果音を響かせて、青白い稲光に包まれたインデックスは、さながら雷神のような威圧感さえ漂わせていた。
「元の私は魔道書の記憶はあっても、自分の意思で『魔術』は使えない。それだと、とうまに知識や対処方法は教えられても、助けになるとは言えない」
 インデックスの強い意志を込めた言動が、いつものインデックスの口調を奪う。
 神裂は、眩しい光に右腕を翳して、眉間に皺を寄せながら目を細めて聞くしかできない。
「でも、この力があれば、私だって戦える」
 インデックスは、少し悲壮感を漂わせた笑顔を浮かべて、十月上旬、アックアの攻撃で瀕死の重傷を負った上条当麻を偶然見かけた御坂美琴のように語る。
「私だってとうまの力になれる」
 もちろん、インデックスは何の力が無かろうとも、それでも上条当麻のためであれば、同じことを言うだろう。
 しかし、それではダメなのだ。力なき正義は無力であり、いつも戦いで傷つく上条当麻の手助けにはならないばかりか、どこか安全な場所から歯噛みして、上条当麻の無事を願うしかできない足手まといでしかないのだ。
 神裂にはインデックスの意思がはっきり伝わってくる。記憶を失う前に見せた笑顔の覚悟とはまったく別の、勇ましい覚悟を強く感じている。
「私は悔しかったんだよ。とうまはいつもいつもいつもいつもいつも一人で突っ走っちゃうけど、でも、もし私にとうまと一緒に戦えるだけの力があれば、置いてけぼりにされないんじゃないかって思ったことも何度も何度も何度も何度もあったから」
 インデックスは放電を消し去って。
「それにね」
 これから語る方が本音なのかもしれないセリフを紡ぎ出す。

724Change4−11:2011/08/11(木) 20:27:00 ID:f1FuMrz2


「この姿なら、もう、とうまを魔術サイドのいざこざに巻き込まずに済むと思ってるんだよ」


 確かにその通りかもしれない。
 なんと言っても、インデックスは世界の魔道書一〇万三〇〇〇冊の保管庫という魔術サイドの最高機密と言っても過言ではない。
 それゆえ、魔道書を巡るトラブルに巻き込まれることは避けて通れず、それが引いては一緒にいる上条当麻を間違いなく危険に晒してしまうことは言うまでもない。
 事実、上条当麻は幾度となく死線を彷徨いかねない戦いに巻き込まれている。
 一方通行の一件を除けば、他のほとんどは魔術サイドからのトラブルだった。
 インデックスが上条当麻の元を去れば、と思えないこともないが、インデックスにそれを出来るわけがない。彼女はもうとっくに上条当麻が離れがたい存在になってしまっている。
 ならば、インデックスが上条当麻の傍に居て、なおかつ、魔術サイドとの因果関係を断ち切るためにはどうすればいいか。
 答えはインデックスが『禁書目録』でなくなればいいのである。
 そして、今の状況は、正にうってつけだ。
 実のところ、インデックスは気づいている。
 インデックスが(威力は劣るとは言え)御坂美琴の体と脳を持っていることによって電撃を使えたということは、今現在、インデックスの体と脳を持つ御坂美琴が魔道書一〇万三〇〇〇冊の保管庫であり完全記憶能力者であるということに。
 つまり、今は、インデックスが科学サイドであり、美琴が魔術サイドなのである。
 ここは学園都市だ。『能力者』のインデックスが上条当麻の傍に居ることは何の不思議も無く、また魔術サイドのトラブルにも無関係と言うことを意味する。
 そして、同時にインデックスは魔道書の保管庫という過酷な運命からも開放されることでもあるのだ。
 しかし、それは同時に考えてはならないこともである。
「本当に……それで、よろしいのですか……?」
 神裂火織は問う。神妙、かつ心苦しく。
 目の前の少女は器が別人だろうとインデックスであることに変わりはない。神裂の知っているインデックスなのである。
 おそらく、このままの姿のインデックスでも神裂は友達としていられることだろう。この件に関して言えば『禁書目録』である必要性は、はっきり言って無いに等しい。
 しかし、それでも。
 友達だからこそ。
「かおりの言いたいことは分かるよ」
「でしたら……」
「そうだね……やっぱり、こんなこと考えちゃいけないかも……」
「……」
 インデックスの自嘲の笑顔に、神裂はどこか肩の荷が下りたような安堵の笑みを浮かべた。
 実のところ、インデックスが御坂美琴のままでいたいことを望むのは、もう一つ理由があるのだが、インデックスはそれだけは口には出さなかった。いや、その理由を否定したかったから。

725Change4−12:2011/08/11(木) 20:28:51 ID:f1FuMrz2
 その日の夕暮れ。もうすでに周りは朱色から藍色に変わりつつあった。
 すでに、全員、集まっていて、しかし、今日は例の自販機の前ではなく、上条当麻が初めて『御坂妹』と呼んだ今は亡きミサカ一〇〇三一号と出会ったベンチに居た。
 理由はいたって単純。
 上条当麻と土御門元春がクラスメイトからの尋問に心底疲労して座って話をしたかったからだ。
 と言っても。
「特別何もなし。以上」
「ちょっと、とうま。それで話が終わるのはどうかと思うんだよ?」
 上条の宣言に、詰め寄って食って掛かったのは御坂美琴の姿をしたインデックスだ。
 しかも相変わらず近い。ここがいちゃスレじゃないから事故という名のラッキーイベントが起こらないだけで、少なくとも年頃の少年少女が目と鼻の先まで顔を寄せるのはどうかと思う。
「誤解するな。俺からは、正確には土御門からは、って意味だ。神裂はまだ分からん」
「あ、そうか」
 片目を瞑りつつ、神裂を見上げる上条に、インデックスもまた視線を彼女へと向ける。
 注目を集めた神裂は、
「とりあえず、『原因』だけは分かりました。どうやら魔術儀式が執り行われたようです」
 あっさりと、ただし、少し神妙な面持ちで答えた。
「魔術儀式?」
「そうなのですか? おかしいですわね。昨日、お姉様とインデックスさんが入れ替わったあの場所に、特別おかしな象形文字やサークルがあった覚えはないのですが……」
 美琴の鸚鵡返しに、白井は腕を組みつつ、首を傾げながら、難しい顔で、昨日、入れ替わり現象が起こった方向へと、昨日の出来事を思い浮かべながら視線を向ける。
 そう。美琴と白井は詳しくないにしろ、魔術儀式の際に、『何が』必要なのかをちょっと知っている。
 それは十二月二十日の少し前、『ベツレヘムの星』墜落崩壊に巻き込まれた美琴が意識不明で、冥土帰しが匙を投げるほどのダメージを受けていたときの話だ。
 インデックスと神裂が、そんな美琴を覚醒させるため、回復の儀式を敢行したそのとき、美琴は『魔方陣』としか表現ができないような三角を二つ重ねて丸で囲った文様の中心に寝かされたのだが、二人はそれを覚えていた。
 ところが、昨日、インデックスと美琴が交差した瞬間、足元にそんなものは無かったはずである。
 そもそも、上条とインデックスと美琴と白井が、あの場で居合わせたのは偶然なのだ。
 魔術を発動させた誰かが、この四人の内の誰かを常時、観察という名のストーキング行為をしていて、さらにあの時間に物陰に隠れて様子を伺っていない限り、あり得ないタイミングだったのである。
「いえ、魔術儀式のための文様は何も足元に無ければいけない、という訳ではありません。どこか別の場所に媒体を用意しておいて、そこから発射しても構わないのですよ」
 苦笑を浮かべた神裂が白井の想像を否定した。
「なるほど」
「それに、昨日、落雷が会った中心点にはインデックスとそこのお嬢さんの他に上条当麻もいたんだよ。もし、自然の落雷という偶発的な出来事であれば、上条当麻も含めた三人で入れ替わった可能性があるんじゃないかい?」
「へ?」
 白井が納得した神裂の言葉を、この場にいる全員とはまた違う声が引き継いだことに、佐天が素っ頓狂な声を上げる。
 声がした方へと振り向けば、そこにはほとんど黒を基調としたローブに身を包んだ赤い髪の長髪長身な一人の男が加えタバコで、こちらに歩み寄ってきていたのである。
「よう、英国紳士のステイル=マグヌス。インデックスが絡んだ話になると相変わらず仕事熱心だにゃー」
 土御門はからかうような笑顔で声をかけた。

726Change4−13:2011/08/11(木) 20:30:24 ID:f1FuMrz2
「なぜ、君が僕のことをフルネームで呼んだのかはとりあえず置いておこう。さて、神裂に上条当麻」
「何だ?」
 促したのは上条で、神裂は顔だけをステイルへと向ける。
 しかし。
「何あれ? アレで格好いいつもりなの?」
「いえいえ、もしかしたら魔術サイドではアレが最先端のファッションなのかもしれませんわよ。現にインデックスさんはシスターっぽい服装だからまだしも、あの神裂さんという方も奇抜な格好をされておられます」
「えー!? あの変な格好の男の人も魔術サイドの人なんですかー!?」
「かおりのはいちおー魔術的な意味がある格好なんだけどね。でも、ステイルの格好は私もちょっとおかしいと思うんだよ」
「いい歳した大人なんだからもうちょと考えればいいのに」
「そう言えばタバコを咥えてますね」
「おまけに髪は赤いですし、目の下に変な彫物と言うか貼り物というかしてますし、ひょっとしてそのスジの方なのでしょうか?」
「そのスジって?」
「やくざって意味です」
「あーなんとなくそれっぽい。あっちの金髪の人が知り合いみたいだから、あっちが幹部で、あの金髪の人がパシリとか」
「魔術サイドって別に極道社会って訳じゃないんだけど、ステイルやとうまのお友達だけ見たら否定できないかも」
 美琴、白井、佐天、そしてインデックスまでもが、ベンチから少し離れたところで四人でしゃがみ込み、かなり失礼なことをひそひそと、しかし、思いっきり至極真面目な表情で言い合っていた。
 この辺りは、さすが(インデックスは見た目と精神年齢的に)中学生。怖いもの知らずのスキル爆発である。
 むろん、全部聞こえている。
「ちょっと、そこのお嬢さんたち?」
 ステイルが浮かべた友好的な笑顔は力いっぱい引きつっていた。
 もし、このヒソヒソ話にインデックスが混ざっていなければ。
 もし、ステイルの後ろで上条と土御門と神裂が必死に笑いを堪えていなければ。
 無視を決め込んだかもしれないが、どれだけ場数を踏んでいようとも、さすがに十四歳の少年にこの状況でキレるな、というのは難しいのかもしれない。
 難しいのかもしれないが、そこは英国紳士。いきなり炎の剣やイノケンティウスでツッコミを入れることだけは自重したようだ。
 ちなみに、上条と土御門と神裂はさすがに年の功とでも言おうか、高校生以上ともなれば中学生のちょっと失礼な言動にも寛容になれるようである。もっとも神裂はインデックスがフォローしてくれたおかげで、自分に飛び火しないことを察することができたからかもしれないが。
「少なくともインデックスとそこのお嬢さんは僕の話を聞いた方がいいと思うよ?」
 一応、両手を広げて優しげな声をかけるステイル。
 インデックス、美琴、白井、佐天は今一度顔を見合わせて、しばし考える。
 やがて、
「どんな格好だろうと、有意義な情報を持ってきてくれたステイルの話は聞いた方がいいかも」
「そうね。人を見た目で判断しちゃいけないわ。もしかしたらちゃんとした人かもしれないし」
「腐っても英国紳士というのであれば、礼儀作法についても学ぶところがあるかもしれません」
「考えて見れば、テレスティーナの方が変な格好でしたし、そっちの人はまだマシですもんね」
 嫌味でも何でもなく、素だというのに絶対にフォローになっていない四者四様の発言に、からかわれていない以上、怒るわけにもいかないので必死に怒りをかみ殺しながら肩を震わせるステイルと、その背後で堪え切れなくなって爆笑している上条、土御門、神裂。
 しばしの間、話はまったく進まなかった。

727Change4−14:2011/08/11(木) 20:32:10 ID:f1FuMrz2


 さて、ステイルの話によると、入れ替わりの魔術儀式というものは存在するようで、またインデックスと美琴が交差した瞬間を狙ったのであれば、もう一度何らかのアプローチがあるだろうから、この近くに犯人がいるのではないかと推測したものだった。
 確かにその通りではある。
 魔術儀式ということは魔術サイドからの干渉であることを意味し、インデックスが絡んでいるということは、必然的に『禁書目録』に何らかの狙いを定めていることになる。美琴狙い、という線は状況的に根拠に乏しい。少し失礼な言い回しだが、魔術サイドからすれば、たとえ聖人に匹敵すると言われるレベル5だと言っても、科学サイドの戦力弱体化を図るというのであれば、第三位の御坂美琴よりも第一位の一方通行に狙い定めてくる可能性の方が高いのではなかろうか。
 つまり、入れ替わりの魔術を発動させた人物が、インデックスを魔術に関しては無力化することを主目的に置いた、と見るべき事案だろう。
 ただ、魔道書の記憶抹消が目的では無い可能性は高い。なぜなら今現在、インデックスが気づいている通りで、魔道書の保管庫は御坂美琴であり、それでは何も変わらないからだ。
「じゃあ、明日は学校が休みだし、このメンバーで犯人探しでもするか」
 提案したのは上条だった。
「そうね。八人いるし、手分けして探せば見つかるかもしれないし」
 美琴が同調して、
「でも、どうやって探すんですか? 私たち、犯人の顔知らないんですよ?」
 疑問の声を上げたのは佐天だ。
「まあ、その辺りは問題ありませんわ。風紀委員の詰め所に行けば、衛星から街中を探索できますし、学園都市にいる人間であれば、部外者でも入場許可証を貰っているはずなので、それを持っていない不審者を一人一人虱潰しに探せば何とかなりますわよ」
「なあ、一応聞いておくが、神裂とステイルは正規の手続きを踏んでいるよな?」
 白井の自信満々の発言を聞いて、上条は少し不安になった。
 なんと言っても神裂とステイルは魔術側の人間だし、以前、まだインデックスと出会ったばかりの頃は、不法侵入してきたからだ。
 もっともそれは杞憂であり、
「大丈夫です。私はかれこれ二週間以上、学園都市で寝泊りしていますから、今回はちゃんとした手続きを踏んでいます」
「僕もだよ。本来であれば昨日、こちらに来られるはずだったんだが、入場手続きに一日かかってしまったのさ」
「え? イギリスから日本まで一昨日の夜に話を聞いて、昨日、もうこっちにいたってことですか?」
「そういうことだよ、お嬢さん。さて、上条当麻の案だが、今回ばかりは採用しよう。それが一番、手っ取り早い」
「では、明日の朝、わたくしとインデックスさんは佐天さんを連れて、上条さんの寮にお迎えにあがります。神裂さんと土御門さんは上条さんと同じ学生寮でしたわね?」
「……今日も外泊許可は出なかったんだよ……」
 あえて毅然と宣言した白井黒子の後ろで、インデックスがぼそっと呟いている。白井は聞こえていたのに聞こえない振りをした。
 ちなみに外泊許可が出なかった最大の理由は美琴と白井の普段の寮生活の賜物であり、インデックスはそれのとばっちりを受けたと言った方が正しいかもしれない。
「なるほど。では、不本意だが僕も上条当麻の部屋で寝泊りすることにしよう。その方が手間を省ける」
「ま、仕方ないか……って、また、俺の部屋に四人で泊まるのかよ!? 土御門が部屋を提供すりゃいいじゃねえか!?」
「なるほどにゃー。確かにねーちんと超電磁砲がオレの部屋で寝泊りするってのはいいアイディアぜよ」
 土御門はあっさり同意するが、
「私の方が御免被ります。何をされるか分かったものではありません。身の危険を感じます」
「私も知らない人の部屋に泊まりたいと思わない。そっちの赤い髪の人が知り合いなら、この人だけでいいんじゃないですか?」
「え? 即答速攻大否定?」
 至極冷静に神裂と美琴に返されて、どこかのお子ちゃまのようなセリフを紡いで少し凹む土御門。
「まあ、僕は上条当麻がインデックスの体に良からぬことをさせない義務があるので、上条当麻の部屋に泊めてもらうつもりだよ」
「ああそうかい」
 結局、今晩の上条家は一昨日と同じで四人が寝泊りすることとなったのであった。

728Change4−15:2011/08/11(木) 20:35:08 ID:f1FuMrz2
 さて、夕食も終わり、しばし惰性に時間を過ごした後、夜も更けてきたということで就寝と相成ったわけなのだが。
「ぶえええっくしょん!」
 盛大なくしゃみは上条当麻が発したものだ。
「くっそぉ……何で家主の俺がこんな目に……」
 セーターからジャンパーからコートから何から何まで防寒着を着込んでいても、そこはまだまだ大寒直前の一月中旬。
 雪国に比べれば多少は暖かいかもしれないが、寒いものは寒い。
 そう。上条当麻は今、ベランダにもたれて右手で左肩を左手で右肩を掴んでガタガタ震えていたのである。
 理由はいたって単純。
 美琴と神裂がベッドを使い、一昨日の夜、危うく間違いを犯しそうになった上条であるから、ステイル共々バスルームで寝泊りするよう提案したところ、ステイルが渋ったので、バスルームの他に鍵をかけられなおかつ、横になれる場所となるとベランダしか残っていなかったからだ。と言っても横になれば、ベランダの床の冷たさに凍えそうになるので座ることにしたのだが。
 上条は基本、お人好しなのである。
 どんなに嫌味な相手でも、お客様をベランダに放り出すことは憚られたらしい。
「うぅ……確かに上条さんは馬鹿ですから風邪を引かないかもしれませんが、これはさすがにあんまりだよなぁ……」
 今さら愚痴っても、自分から言い出しただけにもう引っ込みは付かないので、窓のカーテンを見ながら一人寂しい気分を満喫中の上条は、せめて夜景に目を向けようと、視線を学生寮の向こう側へと移した。
「はは……いくら学生でももう寝る時間だもんなぁ……街灯以外、明かりが見えねえよー……」
 なんだか寂しさが助長されてしまったようである。
「くすん……悲しくて涙が出ちゃう……」
「……何馬鹿なこと言ってんの?」
「え?」
 上条の独り言に答えたのは、
「まったく、そんなに寒いのが嫌なら、ベッドを使えばいいのに」
 いつの間に来ていたのか、インデックスの姿をした御坂美琴が左隣にちょこんと座っていたのである。

729Change4−16:2011/08/11(木) 20:36:41 ID:f1FuMrz2
 さらに、そのまま、ふわりと毛布を二人で羽織る形で被せて、同時に、前にも毛布をかける。
「ば、ばか! お前、何やってんだよ! こんなところにいたら風邪引くぞ!」
「それはアンタも一緒でしょうが。全然説得力無いわよ」
「う゛……」
 呆れた視線を上条に向ける美琴。
 あまりに真っ当な返し技に押し黙るしかできない上条。
 しばし沈黙の後、
「なんかさぁ、あの神裂って人、私と一緒にいるのが少し辛いみたいなの」
 美琴が夜空を見上げて切り出した。
 ここは関東圏の学園都市だ。雪国と違い、普段は昼夜問わず晴れることが多く、街の明かりが無ければ瞬く星は厳かで神秘的な幻想感を醸し出す。
「どういうことだ?」
「さあね。理由は全然分かんない。結構親密に接してくれる割には、不意に、妙にこっちを避けるというか距離を置くというか後ろめたいというか、そんな表情を見せるのよ」
 もちろん、美琴はその理由を知らない。
「でさ、ちょっと私も居辛くなっっちゃったんでこっちに来ちゃった」
「そっか……」
 上条には少し分かった気がした。おそらく神裂火織は『インデックス』に気後れしてしまっているんだろうと思った。
 ただ、正確なことは分からないので、曖昧に頷くしかできない。分からない振りをして。
「って、だからって何で俺なんだ!?」
 ようやく我に返る上条当麻。
「何で、って……まさかトイレで寝たいとは思わないし、キッチンじゃ寝室とあんまり変わらないじゃない。バスルームは、ちょっと変な人がいるから嫌だし、今さら常盤台の寮に行けるわけじゃないから。なら、もうここしかないじゃない」
「そりゃまあそうだが……」
 上条は困った顔を浮かべていた。
「それに、極寒の中で二人で体を寄せ合って寒さを凌いだってのは初めてじゃないんだし、問題ないでしょ」
「テメエ……」
 美琴のいたずらっぽい笑顔に、上条は引きつった笑顔を浮かべていた。
 そうなのだ。上条当麻と御坂美琴は極寒の海底で、身を寄せ合って暖を取り、互いの身を守った経験があるのである。
 まあもっとも、そのときは美琴は無我夢中で能力を発動させていて、上条は意識を失くしていたのだから、はっきりした意識の中で、となると初めてだと思うのだが、あの海底のことを思えば、確かにこの程度の寒さで、二人でいるなら根をあげなくてもいいだろう、と上条当麻は改めて考える。
 それも、室内のベッドでないこともあり、あまり真っ当では無いこの状況であれば、上条も劣情を抱くこともないだろうし、元々、自分の体ではない美琴も然りだ。
「お休み――」
「ああ―――」
 笑顔で言い合って。
 美琴は上条の左肩に、上条は美琴の頭頂部に、お互い頭を相手に預けて眠りに付く。
 お互いがお互いのぬくもりを感じながら。
 不思議なほど睡魔はあっさりと訪れて、二人を夢の世界へと旅立たせるのであった。

730Changeの作者:2011/08/11(木) 20:41:53 ID:f1FuMrz2
以上で4章まで終了です。前回とは逆に、いちおーしっとり感を醸し出せるよう頑張ったつもりです。
てことでちょっと重いと思ったものでして、ステイルをギャグ役にしました。ステイルファンの方ごめんなさい。
もう一回言いますけど、上琴じゃありませんよ? いちおー外見インデックスですし、第5章はインデックスのターンの予定ですから。
あと、前回も言いましたけど、このお話は『IF 分岐物語』の設定を引き継いでおりますので、その点をご了承くださいますよう、ヨロシクお願い申し上げます。

さて、そろそろお話を進めないといけませんね。(^^;)

731■■■■:2011/08/11(木) 22:27:38 ID:eQx7Bur.
お疲れさまです。
入れ替わった二人が、上条との関係において意外に居心地が良くて
「このままでもいいかも」と思ってしまうのが印象的でした。
まだまだ波乱がありそうで、続きを楽しみにしています。

732■■■■:2011/08/12(金) 02:08:08 ID:euiROcvQ
「垣根帝督の十番勝負」第十戦前編投下させていただきます。
かなり短くて導入のみですが、生存報告を兼ねて。
本当に、書き始めから一年経ってしまいました。いろいろとバタバタしていてなかなか書けなかったのですが、8月中には完結させます……きっと。
じゃないといい加減本編でていとくんが出てきてしまうかもしれないし。
いや、それはそれでうれしいんだけども脳内設定と齟齬がごにょごにょ……

今回の注意点は

てーとくん妹のオリキャラ(出てこないけど、設定として)。
エイワス周りの設定勝手に妄想。
冷蔵庫周りの設定勝手に妄想。
エイワス台詞回しに違和感あるかも。

などです。

それでは投下します。

733垣根帝督の十番勝負 最終戦『エイワス』前編:2011/08/12(金) 02:10:46 ID:euiROcvQ
 何もない空間だった。
 病室のような白い壁。
 照明器具もないのに、自ら僅かに発光して周囲を照らす高い天井。
 それから、同じく病院にありがちな丸椅子が一脚、部屋のこちら側にポツンと置かれている。
 そして――それだけだった。
「………………」
 垣根帝督はそうしてこの奇妙な空間を一通り見回してから、取りあえずの疑問を抱く。
 ここはどこか、と。
 それと同時に、ならば今まで自分はどこにいたのか、という疑問にもぶち当たる。
 あの学園都市第一位、『一方通行』。
 アレと戦い、そして敗北した。
 それが垣根の最後の記憶だ。
 黒翼の攻撃によって全身を切り刻まれ、十数発目の攻撃で記憶まで寸断され……それからはずっと視界も利かない真っ黒い海のようなところを漂っていたような気がする。その時間は、永遠に思えるほど長いようでも、一瞬に思えるほど短いようでもあった。
 そしてただつらつらと考え事をしていると、唐突に黒い海が消え、代わりに白い病室が現れた。
 ――記憶を遡ったものの、まるでヒントは見当たらない。
(この空間のことは保留するなら、次におかしなのは身体か。俺は確かに一方通行によって全身滅多切りにされた筈。『ピンセット』が右手ごと持ってかれたのは覚えてる、まず右手はないと考えて間違いねぇ)
 しかし実際に右の拳を開閉すると、そこには確かに感覚がある。
(学園都市の技術による再生? いや、そんなもんじゃねぇな、これは。というか、この感じはどこかで……あぁ、何だそうか)
 一つ得心がいったとばかりに溜め息を吐く垣根。
(空気中に『停滞回線』が存在しねぇ。そんな状況が有り得たのは、三沢塾ビルと…………自分の脳内だけだ)
 自分が夢を見ているのに気づいた瞬間に感じるのにも似た、はっとするような感覚を得て、垣根のすべき事は決まった。
(ここが俺の部屋(脳内)なら、俺を訪ねてきたゲストを招いてやらねぇとな)
 思い、垣根は用意された丸椅子に腰掛けた。

「初めましてだね、垣根帝督」

 目前に何かが居た。

734垣根帝督の十番勝負 最終戦『エイワス』前編:2011/08/12(金) 02:11:45 ID:euiROcvQ
 光り輝くような金髪。
 すらりと伸びた長身。
 ゆったりとした白い装束。
 正確な性別は分からないが、少なくとも外観の見た目だけなら女性的に見える。
 ひどく表情が曖昧で、まるで喜怒哀楽の全てを内包しているよう。
 それでいて人の持つ感情とは明らかに異質なものを根幹に秘めた、極めてフラットな顔つきをしている。

 ついさっきまでは影も形もなかった筈のそれは、垣根が座っているのと同様の、やはり存在しなかった筈の白い丸椅子に腰掛けていた。
 丁度部屋のこちら側と向こう側で、顔を突き合わせる格好になる。
「ようこそ本日のゲストさんってか。んで、テメェは一体誰…………いや、『何』だ?」
「ほう、鋭いな。因みに君の意見を聞かせてくれないか?」
「礼儀のなってねぇ訪問者だな。だが……」
 一瞬考え込むような仕草をして、
「そうか……へぇ」
 垣根はすぐに頭を上げた。
「早いな、答えが出たか」
「あぁ、名前通りのトンデモファンタジー生物じゃなくて拍子抜けだ――『ドラゴン』」
 狭い空間内に声が反響し、やがて小さく消えていく。
 それほどの間を置いてから、パチパチパチ、と気のない拍手が起こった。
「御名答。まさかノーヒントで正解とはな。『ドラゴン』が示す物に何か当たりでも付けていたのか? あぁ、それと『ドラゴン』はあくまでコード。間違いではないがな。私のことは、良ければ『エイワス』と呼んでくれたまえ」
「エイワス……」
「しかし、成る程。こういう登場の仕方もあったわけか。状況が状況だけに出来なかったが、一方通行だったらどうだったかな。一発で私の正体を看破できただろうか」
「……どうしてそこであの野郎の名前が出る」
 途端に低い声で問い詰める垣根に、エイワスは調子を変えずに答える。
「さっき会ってきたのだよ、彼と。どうにも私と会いたがっていたようだったからね。探していただけとも言えるが」
「サービス精神旺盛なヤツだ」
「その精神でここにも来たつもりだが?」
「…………」
 言葉を返さない垣根に対して、エイワスは床を蹴って丸椅子を時計回りにゆっくり回しながら悠々と語る。
「ちなみに言うと、私は一方通行とちょっと手合わせをしてきたのだよ。半分成り行き、半分故意に。なかなか面白い展開になったのだが、残念ながら、と言うべきか、彼は私を倒せなかった。そして、彼は彼の目的のために学園都市を離れた。つまり、今現時点で、学園都市最強の名を冠する者は垣根帝督、君に他ならないのだよ。おめでとう。どうだ、学園都市第一位となった感想は?」
 一周して戻ってきたエイワスが、垣根の顔を見据えて言う。
「……それがどうした。一位の野郎がどこへトンズラここうが興味ねぇよ。それ以前に、その一位に勝った野郎に『あなたは最強です』と言われて『どうも恐縮です』と返すと思ったかクソ野郎」
「そう息巻くなよ。それがどうした、興味がない――か。その通りではあろうが、しかしこれは君の持っていなかった情報だ。君が一方通行に負けてからの、君が外界から隔絶されてからの情報。そしてまた、君が万全であれ、君個人では決して獲得出来なかったであろう情報でもある」
「何が言いたい」
「答え合わせだよ。或いは君から見れば辻褄合わせでしかないかもしれないが。君の世界にこれまで何が起こってきたのか……順を追って話していこうということだ」
「何だそりゃ、まるで物語のエピローグみてぇな口振りだなぁオイ」
 鼻で笑う垣根に、
「その通りだよ垣根帝督。君のストーリーはとっくのとうに終了している。だからこそ、私がやってきた。お疲れ様、お開きの時間だ」
 エイワスはさも当然とばかりに返答する。

735垣根帝督の十番勝負 最終戦『エイワス』前編:2011/08/12(金) 02:11:55 ID:euiROcvQ
「………………」
「? どうぞ、自由に質問したまえよ」
 黙り込む垣根に、小首を傾げて問うエイワス。
(……こいつの意図が分からねぇ。こいつの言葉が真実だったとして、こいつに何のメリットが………………だが、他人の脳味噌に介入してくるようなやつだ、あながち大言壮語でもねぇだろ)
 そう結論付けると、垣根はエイワスの視線を真っ向から見返す。
「……まずは、テメェが何なのかを教えろ」
「ふむ、不確かな情報源からの情報は信用できないと。しかし、私とて発話して解説する以外に私という存在をexa解ppp……説明することは出来んぞ? それにそれでさえ一方通行との会話ではなかなか上手い具合には……」
「御託はいい。俺にとって有用な情報を話せ」
エイワスの言葉を遮る垣根。その顔には、傍若無人なかつての面影が戻っていた。
「調子を取り戻した、か。いいだろう。まずは存在についてだな。君の気づいたとおり、私は人間ではない。私は学園都市に住む能力者達の生み出すAIM拡散力場とミサカネットワークを媒体として存在している。アレイスターの超能力開発の目的の一つは私を…………あー、『現出』させることでもあった。そして、実体を持たないが故、AIM拡散力場を媒体としているが故、こうして君の脳内に現れることもできる」
「幻想御手、0930……いくつか似たような話があったな」
 垣根は突飛な話にも慌てる素振りなくついていく。
「よく調べている、勤勉だな。次は……私の立ち位置か。簡潔に述べると、そうだな。第一に、私はアレイスター側の、学園都市最深部の存在――正確には違うが、まぁいいだろう――つまりは君の敵にあたる存在だ。第二に、私という存在はアレイスター・クロウリーにとって非常に重要な存在だ。アレイスターの『プラン』にとっての核と言っていい。アレイスターと直接交渉をしたい君にとっては、私を生iv捕縛ch……ちっ、面倒だな。まぁつまりは君が起こした反逆行動のゴールにいたであろう存在ということだよ。一方で、第三に、私が一方通行や君の前に現れ、こうしてつらつらと物事を語るのは、単に私の興味でしかない。私がここにいることに、アレイスターの意志は関係ない」
 右手の指を順番に立てながら、エイワスは説明していった。
「協力関係って感じか」
「私は別段、アレイスターの目的に積極的に協力したい訳ではないがね。アレイスターの本当の目的を教えて欲しいかい?」
「必要ねぇな。どこにそんな発言を挟む文脈があった?」
「だろうな」
「次の問いだ」
 完全に自分のペースを取り戻したのか、会話の主導権を握った垣根は間髪入れずに次の話題に移る。
「垣根姫垣は今どうなってる?」
「そう来ると思っていたよ。むしろ真っ先に聞かなかった方が不思議なくらいだ」
「俺の話を聞いていたか? 質問への回答以外で口を開くな」
「彼女の状態は変わらない、君が又聞いていたまま。今も眠り続けているよ、君の知らぬどこかでね」
「…………、」
 再度、俯いて黙ってしまう垣根。
「質問は終わりか? まだまだあるはずだろう」
 そこへ、垣根の忠告にひるまないエイワスが逆に問うてきた。
「例えばそう……どうして君が、君の妹がこれほどの悪夢を体験することとなったのか」
「…………おい、それはどういうことだ」
 垣根が籠もった声を出した。
 エイワスのその言葉だけで、およそエイワスの言おうとしていることを推測出来てしまったのだ。
「まさか、今までのことは全部テメェらのやらかした茶番だとでも言うつもりか!?」
 憤慨する垣根に、エイワスはなおも口調を変えずに、しかしどこかそのフラットな表情に「楽」の色を強めつつ、ゆっくりと答えた。
「言っただろう。答え合わせ、そして辻褄合わせだと」

736垣根帝督の十番勝負 最終戦『エイワス』前編:2011/08/12(金) 02:12:40 ID:euiROcvQ
「とは言え、何も能力からして仕組まれていたわけではないよ。君たち兄妹はそれぞれ素質を持っていた。『超能力者』と『原石』としてのな。『超能力』と『原石』というのは単なる分類であって、実質にそれほどの違いはないがな……むしろ、君の能力は『原石』に――正確には垣根姫垣の能力により近い。それもあって、君は垣根姫垣の能力を除去出来たのだろう。無論、それでも一能力者の手際とは思えないほどの所業なのだがな、『原石』能力の除去というのは」
 相変わらず話の本筋に関わりのなさそうなことを述べるエイワス。
 しかし、垣根はそれを止めない。いや、止めるだけの余裕がないのだ。
「君たちは紆余曲折を経てこの学園都市に来た。ふむ、ここが第一の答え合わせか。君たちは『置き去り』としてこの学園に来た。『そういうことになっている』」
「……、」
 ピクリ、と垣根の眉が震えた。
「実際はこちらから招いたのだよ。と、言っても君たちの両親に『置き去り』という裏技がある、と教えただけに過ぎない。最終的な意志決定は君たちの両親による」
「……あぁそうかよ。良かったぜ、『実は両親は子供たちを愛していたのでした』みたいな安い設定のホームドラマを聞かなくて済みそうだ」
「それもそれで面白かったとは思うがな。しかし、重要なのはそこではない」
「『どうしてテメェらは俺たち兄妹をピンポイントで学園都市に引き込んだのか』」
「その通りだ。そして答えは簡単。君たちに『超能力者(レベル5)』と『原石』の素養があることが分かったのだよ。なんとも、学園都市側からすれば、研究材料のバーゲンセールだ」
 あっさりと、エイワスはこれまでの垣根の考えを覆すようなことを言った。
「おい待て! 俺が『超能力者(レベル5)』だと分かった!? 学園都市に入る前に!? それに『原石』の能力も……」
「『素養格付』。君のたどり着けなかった学園都市攻略のピースの一つだ。一つ秘密を暴露してしまえば、超能力の素質というのは、能力開発をする前に既に分かっているものなのだよ。もっとも、その検査は本来は学園都市に入ってきた後に行われるのだがな。君の場合これが事前に行われた。君の妹が『原石』であったためにね」
「答えになってねぇぞ!」
「簡単なことだ。超能力は学園都市で脳をいじればすぐに開発できるのに対し、『原石』は『採掘』する必要がある。それでいて、なかなか興味深い能力を持っていることが多い。当時はまだまだ上位の能力者が少なかったのもあって、『採掘』が盛んだった。それに君の妹は引っかかったのだよ。そして、まぁ人間というのは血の繋がりにジンクスを感じているからな、『原石』の兄である君もついでに一連の検査を受け……『超能力者(レベル5)』だと判明したのだよ」
「姫垣の方がメインだったってのか……! いや、そりゃおかしいぞオイ。だったらどうして木原幻生が手を出したあの時まで姫垣は放っておかれた?」
「やはり鋭いな。話が早い。まぁ、一つには単に君の存在が大きすぎたというのがある。言っただろう、『原石採掘』は上位レベルの個体を確保できない間のお遊び。本命が見つかったのだから、遊びに費やす時間は無駄なだけだ。実際、『超能力者(レベル5)』が足りてきてからは、学園都市は積極的な採掘を止めてしまった。だが、」
「だが、その理由はそれ程重要ではない、かよ」
 苛立った表情で、垣根がエイワスの言葉を先回りする。
「ふふん、その通りだ。成る程、話の先読みに関しては君は一方通行よりも優秀だな」
「流されるがままの受け身系人間と一緒にすんじゃねぇよ」
「受け身系、ね……。さて、それでは二つ目の理由を話そうか。それはアレイスター自身、垣根姫垣が『原石』であることを学園都市の研究者たちに隠していたからだ。隠し、来るべき時のために未開発のままで保存しておいた――いや、おこうとした。結局、あの木原幻生に気付かれてしまったことでその計画は瓦解、その上君によって『原石』能力自体が失われてしまった。アレイスターにとっては踏んだり蹴ったりだったろうな。君はアレイスターの『プラン』を一つ挫いたのだよ、なかなか痛快ではないか?」
「…………………」

737垣根帝督の十番勝負 最終戦『エイワス』前編:2011/08/12(金) 02:12:51 ID:euiROcvQ
 垣根が沈黙した。だがその沈黙は驚愕からではない。何かを黙考しているがために沈黙だ。
「どうした? さっきのように、先を催促しないのか」
「……相槌が欲しいなら素直にそう言えよ、寂しん坊かテメェは。『問題はその計画だ』、だろ」
「そうだ。では本題を告げよう。君に、君たちにとって不幸だったのは、まさにその計画。それは、一方通行を天ang神av上reeereに上ga格evvvelllleさせること…………締まらんな、まぁいいだろう。必要のない情報は話さない約束であったしな。要するに、君の一方通行との戦いは予定されていた。アレイスターとの直接交渉権、ピンセット……どれもこちらで用意した餌だ。君の敗北は予定されていた。木原幻生との一戦で君の力は予想を超えて伸びたが、それを含めてさえ、君に一方通行を越えることは出来ないと算出されていた。その後、君についてのあらゆる研究ノウハウを駆使して、『未元物質』に非常に近い次元の能力を持った『原石』垣根姫垣を素体として、第二の『未元物質』を作ることが――『第二未元物質(ダブルセカンド)計画』が予定されていた。『暗闇の五月計画』は知っているのだろう?その『一方通行』を『未元物質』に置き換えて、更に発展、特化したものだと思えばいい。そして――『第二未元物質(ダブルセカンド)』も、垣根姫垣もまた一方通行と戦い、敗れ、一方通行の成長のための贄となることが予定されていた」
 正確にはそれさえもアレイスターの計画の一部であり、更に上位には『上条当麻』という無能力者の存在があるのだが、ここでそれを言っても大した意味を持たないだろう。
 上条当麻については話さないままに、一拍置いて、エイワスは全てを総括する文言を口にする。
「君たち兄妹の生はただひたすら一方通行のために、そしてアレイスター・クロウリーのためにのみあったのだよ」
 真っ白い小さな部屋の中に、エイワスの言葉が響く。それは先程自身の放った受け身系という言葉と合わさって垣根に突き刺さる。
 垣根帝督の行動は、全てアレイスターが操る糸によって『動かされていた』だけに過ぎなかった。
 受け身なのは、自分も変わらない。
「………………だが」
 長い沈黙の後に、垣根が口を開いた。
「だがそれでも、ヒメはもうその計画からは除外されている。アレイスターの手の下からは離れている。そうだな?」
 話の根幹はそこではなかった。垣根にとってもっとも衝撃的な事実はそれではなかった。そうである筈なのに、垣根は過去を一切無視して現在のことを問うた。
 その真意にエイワスは気づきつつも、平然と答えを返す。
「あぁ、垣根姫垣も『原石』能力を失った今となっては単なる無能力者と変わりはない。わざわざ学園都市に刃向かったり、『超能力者(レベル5)』と1対1の勝負を申し込んで正面突破でもしない限りは、危険人物として学園都市から認識されることはないだろうね」
「なら十分だ」
 垣根は、きっぱりとそう言い切った。
「姫垣が学園都市の都合で弄ばれる要因はもう存在しない。だったら問題はねぇ。テメェが俺の脳内に来てるってことは、俺はまだ生きてるってことだ。ちょいとおはようの挨拶がてら、アレイスターの顔面ぶん殴って姫垣の居場所と治療方法を聞き出せばいい。やることは何も変わらねぇよ」
「そう言ってくれると、思っていたよ」
 一層表情に「楽」の色を濃くして、エイワスは丸椅子から降りた。そして部屋の壁際へ寄ると、そこをコンコン、と軽くノックした。途端に、その場所に40インチのテレビ程の大きさのスクリーンが現れる。
 そこに映し出されているのは――
「これが今の君の姿だ、垣根帝督」

738垣根帝督の十番勝負 最終戦『エイワス』前編:2011/08/12(金) 02:13:10 ID:euiROcvQ
 ぱっと見た印象で言えば、そこは物置だった。しかしより細かいところへ目を向けると、それは間違った認識であるとわかるだろう。
 まず目を引くのは部屋の中央にある三つの容器。それぞれにネバネバした液体と、そして『人間の脳味噌の断片』が入っていた。丁度、三つが合わさって一人の人間の脳ほどの大きさになるだろう。
 続いて、その三つの容器とチューブで繋がれているのは、いくつかの巨大な直方体の機材。まるで冷蔵庫のようなそれらの装置は、常時家電にありがちなブォーンよいう低い音を響かせている。
 そして、それらの容器や機材は最終的にある一つのものに接続されている。液体で満たされた円筒形の容器内に浮かぶそれこそが、垣根帝督の……否、かつて垣根帝督の肉体だったものの残骸。四肢はなく、頭も『ある』とは言いがたい。むしろ、ただの肉塊であった方がよっぽどましであっただろうグロテスクな何か。
 今の垣根帝督の姿は、と問えばこう答えるしかないだろう。
 ――この部屋全体が垣根帝督だ、と。

「どうする? 君は切り分けられた脳と申し訳程度の肉片になり、交渉材料も全て失った。垣根帝督、それでも君は垣根姫垣を救うためにもう一度同じことが出来るのか?」
 表情にははっきりと出ないものの、まるで垣根の反応を楽しむようにその顔を下からのぞき込む動作をするエイワス。
 ここが、限界。
 今まで何とか踏みとどまっていたようだが、垣根の感情はここで暴走する。垣根が一方通行にしたように、そして一方通行もまたエイワスにしたように、がむしゃらに攻撃をしてくる。エイワスはそう踏んでいた。
 だが。
「当たり前だろうが」
 垣根帝督は、なおも毅然とした態度で答えた。
「ほう?」
 予想外、といった調子の声を出すエイワス。おそらくここでの会話において初めての反応だ。
「具体的な方法を聞かせてもらいたいな」
「簡単な話だろうが。自由に動く身体も、交渉材料も……『今まさに俺の目の前にあるぞ?』」
「…………」
 エイワスは言葉を返せない。それは、人間らしく表現するなら――絶句した、というのが正しいのだろう。
「テメェの身体を乗っ取る……いや、意識をか? まぁ細かいことは乗っ取ってから調整すればいいだろう。兎に角テメェのコントロールを奪い、それ自体を交渉材料にしてアレイスターとの直接交渉に臨めば、豪華なディナー付きでゆっくり語り合えるんじゃねぇか?」
「……面白い。実に面白いことを考えるな、君は。確かに、君は一方通行とは違うのかもしれない」
「気づくのが遅いな。まぁ俺もテメェがその程度のドッキリしか用意してなかったとは気づかなかったがな。どうした話したがり。もうネタ切れか?」
「……私を乗っ取るというのは不可能ではないだろうな。君はAIM拡散力場への干渉にも長けているようだし、何よりその能力があれば『そういう物質』も作れるかもしれない。私の本質はどうあれ、私の構成要素自体は『この世界のモノ』に過ぎないからな」
「決まりだな。その身体、その立場、使わせてもらう。『利用できるものは、利用し尽くす』、それが俺と『あの野郎』のスタンスだ」
 言い、垣根もまた丸椅子から立ち上がると、一歩前へ出る。
「やれやれ、エピローグだと言ったのにな。ふふん、だがこれは良い方向に予想外だ。どの道君とは手合わせするつもりではあったが――君に戦う意志があるのならばその方が楽しめる」
 エイワスもまた、一歩前に出る。
 そして、裸足の足で床をなぞる。
 途端に、グォン! という不快な音が鳴り響き、まず白い部屋の四方の壁と天井が消失した。
 だだっ広い空き地のようになったその空間に、今度は『床からビルが生えた』。
 それは植物の成長の記録映像を早回しで流すVTRのように、ぐんぐんと上方へ向かって伸びていく。
 やがて垣根の脳内(そこ)に形作られたのは、学園都市の一区画。

739垣根帝督の十番勝負 最終戦『エイワス』前編:2011/08/12(金) 02:13:35 ID:euiROcvQ
「懐かしいだろう。君が一方通行と戦い、そして敗れた場所だ」
「ご丁寧にどうも」
 言うと同時に、垣根はその背に三対六枚の羽根を出現させる。
「だが、今回負けるのはテメェの方だ」
 その言葉を合図に、学園都市第二位『未元物質』垣根帝督と、学園都市最重要機密『ドラゴン』エイワスとの戦いが始まった。

740■■■■:2011/08/12(金) 02:24:23 ID:euiROcvQ
投下終了です。
椅子に座ってしゃべってるだけで何の動きもなくてすみません……
次でぱーっとやるので。どうか。

あと、一応補足しておくと、これは10月17日、エイワスが一方通行をボコッて、アレイスターと携帯使ってお話して、その直後の話になります。
脳内空間で日付が出るのもおかしいので地の文では触れませんでしたが。

大分無茶な感じなので、置いてけぼり感あるかもしれませんが、どうか感想、意見などをば。お待ちしております。
それでは。

741■■■■:2011/08/12(金) 18:49:20 ID:lBFH75Ks
お疲れさまです。
動けない垣根がエイワスと脳内空間で対決するというアイディアが独創的です。
文章も対決に向かう緊張感が十分描かれていると思いました。

742■■■■:2011/08/13(土) 00:00:05 ID:nDuG9zmI
>>740
GJ!! いよいよ最後の戦い……!
以前の返信でアウレオルスの時の様な対話形式になると予告されてましたが、今回はガチ戦闘を期待していいですかね。
エイワスの言葉攻めにも毅然とした態度で臨むていとくんカッコイイ。これまでに描かれた下地が生きているからでしょう。
何をおいても最優先事項は姫垣……その芯がブレない限り、ていとくんは滅びぬ。何度でも蘇るさ。
とはいえ相手はあのエイワスなんですよね……脳内での戦い、AIM操作に長けたていとくんと、エイワスにとっても
19巻一方さん戦とは色々と勝手が違っている中、どんな理不尽な強さを見せつけてくれるのかwktkしてます。
長かったこのシリーズも、次の投下で一度幕を下ろす事になるんですよね。ここまで追いかけてきて本当に良かったと思っています。
そして願わくば最高のフィナーレを期待しています。番外勝負も頑張ってください

743■■■■:2011/08/13(土) 00:58:01 ID:hXlN0N8Y
この物語自体はこれで一区切りといきそうですけど、
さあ、果たしてエイワスが言うとおり垣根帝督の物語は本当にここで終わったのか…?
楽しみにしています!

744■■■■:2011/08/14(日) 07:50:03 ID:n7XQvlgo
皆さんに聞きたいのですがオリキャラスレで出来たキャラ達のSSをここで書いても良いでしょうか?
妄想じゃなくて細かく設定も考えてますし、世界観を壊さないように既存キャラも出てもらって学園物を作りたいです。
批判もくると思うので主人公達はLEVEL5な最強キャラにはしていませんし、その点にかんしては既存キャラに譲ります

745■■■■:2011/08/14(日) 09:03:06 ID:5Ga6EnCc
>>744
ここにオリキャラメインのSSを投下するなら設定だけじゃなく文章力もかなりのものが求められると思う
それでも投下するならある程度のバッシングは覚悟しといてくれ
正直オリキャラスレからどんどんこっちに流れて来るような展開は勘弁して欲しいし、あのスレがこのまま発展するようなら別のSSスレ建てた方がいいんじゃね?

746■■■■:2011/08/14(日) 09:57:49 ID:n7XQvlgo
新しくSSスレを作ったら荒れそうなのと人が少なかったら見てもらえないのが・・・こっちだと色んな人が書いてますし話しも広がるかと考えたのですが。
せっかく細かく設定や台詞を考えたので、考察好きな人には喜ばれると思います。どこの世界でも偏見や受付ない人もいますから、そんなのはスルーします。
手前みそですが、一度でもオリキャラスレを見ていただけたら、あちらの書き手さん達が細かく設定したり愛情込めて生み出してるかがわかると思いますので、来て欲しくないって言われると・・・

747■■■■:2011/08/14(日) 13:01:02 ID:5Ga6EnCc
>>746
来て欲しくないというのは語弊があるな
俺自身時々あのスレは覗いてるからみんな細かく考えられてるのはわかるんだが……
一人が投下して他のあそこの住人も投下するようになるとその内オリキャラ無双が始まりそうだからそれは避けたいってこと

まあ俺はここの代表でも何でもないから他のスレ住人たちも見てたら意見頼む

748■■■■:2011/08/14(日) 16:40:33 ID:n7XQvlgo
あちらでも書き手さんが出そうなので、こちらでは止めときます。キャラしか見てない人が多そうなので、出来ればキャラよりも禁書目録の世界を好きな人に見てもらいたいので・・・
無双の意味は分からないですが、例えば上条が主役のSSなら上条がメインで活躍と言うか話しを引っ張ると思います。
同じ様にオリキャラが主役なら同じと思うのですが・・・それに既存のキャラでは解決出来ない事や学園都市での目を向けられてない人にスポットライトを当てたいのです。

749■■■■:2011/08/14(日) 18:36:29 ID:drQWLMv2
>>748
結論から言えば、多少オリキャラ無双してもらっても構わない
必要なのは読み手を惹きつける文章力。オリ設定、オリキャラの拭いきれない違和感は文章力で塗りつぶせる

まあここで書かないというなら深くは言わないけど、このスレの程度や雰囲気を理解できたら戻ってきてくれな

750■■■■:2011/08/14(日) 20:04:54 ID:n7XQvlgo
そういって上から目線だから、あまり人が来なくなったんじゃないですか?
読み手の人が書きもしないのに上から目線は如何かと思います。
原作も大事ですが、より書き込まれた説得と世界の作品やキャラを知るのも大事だと思います。
別に無双したくてキャラを作ってる訳じゃないですから!!

751■■■■:2011/08/14(日) 20:06:34 ID:n7XQvlgo
間違いました
より書き込まれたキャラ設定と世界観です。
申し訳ございません

752■■■■:2011/08/14(日) 20:37:07 ID:Dzdsqefk
上から目線って・・・そんな意図は見受けられないが?
大体ヒートアップしてる所悪いけど、素人がどんなに愛情込めてオリキャラ・オリ設定捻りだして「世界」だの力説した所で
どこまでいってもそれはただの「妄想」だから。そんなの一々説明しなくても書き手・読み手問わず誰でも理解納得してるものだと思うけど。
原作禁書の世界が好きで、もっとこんな世界なら面白いのに、こんなキャラがいたらもっと面白くなるのに。
結構じゃないの、実に自己満足的で。ネット上の二次創作なんて公開オ○ニーと同義、って聞いた事はあるよな?
書きもしないと言うからにはあんたは書き手なんだろうな。だったらごちゃごちゃ言う前に渾身のSSで応えるべきじゃないの

753■■■■:2011/08/14(日) 20:46:04 ID:f080e6.o
ってか意見を伺ってきたのがそっちなのに答えたらキレるってどういうことなんですか
傍から見ててもびっくりしたよ

あくまでこのスレの基本方針は>>1に書いてある通りだろ
>2.オリジナル設定や妄想はほどほどに。ここは『とある魔術の禁書目録』の二次創作を投稿する場です。
これが守れてると思うんなら堂々と投下すりゃいいんじゃねえの。オリキャラ有りでも受け入れられてるのは沢山ある
逆に守れてないならスレ違いだ

754■■■■:2011/08/14(日) 20:55:12 ID:n7XQvlgo
さも知ってるかのような書き方や内輪みたいな感じだから書き手さんも来なくなったんじゃないですか?
そこを指摘されて答えられてないですよね。
あっちの方が伸びてますし人も来てますよ?
こちらの書き手さんも今のような雰囲気が嫌だから来なくなったんじゃないですかね
馬鹿にしてる訳ではなくて客観的に意見を述べました。妄想ではないです。真剣に考察して皆さん考えて生み出してます。
原作のキャラがフワフワしてて曖昧で説得力ない現状だからって嫉妬しないで下さい

755■■■■:2011/08/14(日) 20:55:16 ID:7MoBWm1Y
自信があるなら書けばよし。受け入れられるかもしれん。
ただし、オリキャラメインというなら、そもそもスレの注意事項から外れる可能性が高いし、
そもそも二次創作板でオリキャラメインが支持された例は極めて少ないんじゃないか?

良くて反響なし、悪くて袋だたきになる可能性が高いので、荒れないようにやんわりと
注意しているだけ。

756■■■■:2011/08/14(日) 21:05:56 ID:n7XQvlgo
ご忠告ありがとうございます。
あちらでさえも嫌がらせの書き込みされましたし、こちらでは尚更一方的に言われるの見えてますので。
分かって欲しいのはキャラ厨な方と違い、禁書目録の世界観から好きで既存のキャラでは補えないのと世界を埋めるに足りないのでオリキャラを出したり考えてるのです
自分達にとっては子供みたいなものですから、一方的に罵倒されたり理解出来ない人達の多い所では可哀相なので書きません。

757■■■■:2011/08/14(日) 21:21:06 ID:f080e6.o
言っても無駄だろうが、最後に一つだけ言っておく
原作を下に見てる時点で、良い二次創作(ってか三次創作だそうだが)なんて書けるはずもねえから

758■■■■:2011/08/14(日) 21:28:31 ID:n7XQvlgo
決して原作を馬鹿にしてませんが?原作厨やキャラ厨に固執してる方々にとっては都合悪いとそう見えるんでしょうね
一度で良いから見に来てみたら如何ですか?
原作でも馬鹿に出来ない魅力あるキャラが沢山いるから盛り上がってますよ

759■■■■:2011/08/14(日) 21:34:40 ID:7MoBWm1Y
>>758
いいかげんにしなさい。744以降貴方だけが他人に対する敬意を忘れています。
原作厨やキャラ厨などと薄汚い言葉を使う時点で、貴方はオリキャラ厨といわれても仕方ありません。

760■■■■:2011/08/14(日) 21:44:27 ID:f080e6.o
>原作のキャラがフワフワしてて曖昧で説得力ない現状だからって嫉妬しないで下さい
これで馬鹿にしてないと思ってしまうのならもう全部無理だ

向こうもチラっと見に行ったが、設定の羅列だったからあんま読む気はしなかったな
物語の中の設定なら結構好んで見る方だが、設定オンリーだとあんま興味沸かないんだ
魅力も設定だけではイマイチ分からん。何かしら形になったら目を通してみるが

ってかアンタ勝手に特攻してきてるみたいだがいいのか。向こうじゃこっちに投下しようなんて流れはほぼ無い感じだったが
どっちにも迷惑かけないようにしなさいよ

761■■■■:2011/08/15(月) 11:05:25 ID:gaAbfyoc
とりあえずここの住人(書き手)の者ですけど、一つ言いますね
書き手側としては、中傷とかスレの雰囲気とかはあまり気にしていませんよ(批判については真剣に受け止めますが
読み手が上から目線とかそういうのは関係ないと思います。書きたい人はそれでも書くんですから

762■■■■:2011/08/15(月) 15:37:18 ID:Wkj9yphk
すいません
オリキャラスレがこんなのばかりだと思わないで下さい
迷惑かけてすいませんでした

763■■■■:2011/08/15(月) 15:41:06 ID:k2bWWGzc
厨二は来るな。そもそもオリスレの顔みたいな奴がここや他のss馬鹿にしてんじゃん。
大人しく好き勝手にあっちで遊んでなさい

764■■■■:2011/08/15(月) 15:43:24 ID:0bMj4Niw
オリキャラスレから来ました

同スレ住人が注意書を無視して自分勝手な発言を繰り返していました
本当にすいません
オリキャラスレに嫌なイメージ持たれてもしょうがないレベルです
でもオリキャラスレが全員こうじゃないのでそこだけわかってください、お願いします

765■■■■:2011/08/15(月) 15:50:50 ID:k2bWWGzc
多少なりともスレで書き手してたり、vipで書いてたりしたから不満は拭えない。>>761さんの顔を潰すような事は嫌なので文句は飲み込む。
そっちはそっちで勝手にしてれば良いと思うけど、運営気取りかスレ顔気取りか知らないが顔真っ赤にして意見聞かない、ほとんどの作品を馬鹿にしてる奴はそっちで対応しなさい

766■■■■:2011/08/15(月) 16:01:34 ID:c01N7v76
>>762>>764
まあ、どんまい
向こうの総意じゃないってことは把握してるからそう気にしなさんな

767■■■■:2011/08/15(月) 16:16:47 ID:QmJSMXI6
>>766ありがとうございます。
これからそちらのご迷惑のかからないようオリキャラスレでオリキャラSSの件を対処します。
ご迷惑をかけてしまい申し訳ありませんでした。

768■■■■:2011/08/15(月) 16:39:09 ID:3vrHlCwM
とりあえず、ちゃんとsageを入れてから投稿しようか。

769■■■■:2011/08/15(月) 17:19:15 ID:gaAbfyoc
とりあえず解決しましたね
近々投下する予定あるのでマイナスな流れが絶たれて良かったです

770牧田さん:2011/08/16(火) 00:31:35 ID:xfaDw2nY
どうも牧田です。空気も読まず『禁竜召式(パラディンノート)』投下させてもらいます。
今回は7レスほど貰います。

今回は漢字の誤字脱字に関して、使いまわしなどに自信がないので積極的に指摘してくださると嬉しいです。

では投下始めます。

771牧田さん:2011/08/16(火) 00:32:24 ID:xfaDw2nY
十月一六日午前二時一〇分。ハイドパーク内サーペンタイン池。



「また向こうの方で派手な音したねぇ。そろそろ死人が出る頃じゃないかな?」
月明りのみが木々を照らす真夜中の園内。その静寂の中に修道服を着た三人の少女が歩いていた。
「し、シスター・カテリナ!! 物騒なこと言わないでくださいよ!! そんなことサラリと言われたら不安になるじゃないですか!!」
「あはは、冗談だって。アンジェレネは本当に心配性だよね。少しは仲間を信頼したらどうなの? ねぇ、アガター」
「・・・・・・どちらにしても双方に何らかの被害は出ているでしょうし、後は運に任せるしか無いのではないかと」
アンジェレネ、カテリナ、アガター。三人とも『迎撃』第二班の班員であり、現在は戦線から離脱している状態であった。
「しっかし本当に人が居ないなぁ。夜間警備員の一人も居ないなんて不気味すぎるよ」
カテリナは相変わらず緊張感の欠片も無い声で呟くようにそう言う。それに対してアガターはコンピュータのような平淡な声で同じく呟くように言った。。
「恐らくは相手の仕掛けた『人払い』が発動しているのでしょう・・・・・・が、それでもこの静けさは異常ですね。もしかすると市民の混乱を防ぐ為に『上』が意図的にハイドパークを封鎖しているのかもしれません」
ふうん、という興味の無さそうな声がカテリナから漏れる。彼女は先程から何か違うことを考えているようで、アガターの言葉は届いていない様子である。
やる気の無い社長とその秘書のような微妙に噛み合っていない二人を眺めながら、アンジェレネは溜息を吐いた。
(どうしましょうか・・・・・・。「ソフィアを見つけてからでも本隊の戻るのは遅くは無いでしょ?」なんてうまい話の乗せられてシスター・ソフィアの捜索を優先してみれば、案の定二人とも池のほとりをノンビリ歩いてるだけだし・・・・・・。二人は本当に捜す気あるんでしょうね?)
何故こんな煮え切らない状態にあるのか。話は二〇分程前に遡る。

772牧田さん:2011/08/16(火) 00:33:04 ID:xfaDw2nY

先程まではカテリナ達と対立していたアンジェレネだが、強大な敵が存在している中での仲間同士の争いなどは無意味だ、と判断し『迎撃』の班員としてカテリナ、アガターと行動を共にすることにした。だが、ソフィアを見つけるまでは作戦に参加できないと意地を張る二人に折れて、アンジェレネは仕方なくカテリナとアガターの意見を優先することにし、現在に至る。
しかし、さっきから池の周りを徒歩でグルグルと周回しているだけで、ソフィアを捜索していると言うにはどうにも無理があった。実際カテリナは適当にその辺を眺めながら歩行しているだけだし、アガターに至っては前方も見ずに自分の霊装を歩きながら手入れしている。
そんな気の抜けた光景に心底悩んでいるアンジェレネの心の声など聞こえる訳も無く、カテリナは夜空の月を眺めながら呟いた。
「それにしても滑稽な話だよねぇ。アニェーゼ達が死に物狂いで戦ってる相手とは別に、もっと強いラスボスが潜んでるなんてさ」
「それはさっき聞きましたからシスター・ソフィアを早く捜して本隊に合流しましょうよ!! 信用できませんけど、そのラスボスとやらの正体は一応分かりましたし、それなら尚更早くしないと駄目じゃないですか!?」
「えー、これでも全力で捜してるのに。それに私とアガターは作戦に加わっても本隊とは別行動での『実質的作戦参加』だし、あんまり関係無いでしょ。全くアンジェレネはせっかちだなぁ」
「い、いやどこが全力ですか!? さっきから適当に歩いてるだけじゃないですか!!」
「いえ、アンジェレネ。カテリナの言っていることは間違ってはいません」
アガターが横から割り込むように言った。アンジェレネが驚いたようにアガターを凝視するが、アガターは気に留めずに淡々を言葉を繋いでいく。
「シスター・ソフィアは、戦闘に関してだけ言えば修道女の中でも随一です。敵と戦う上での戦闘力は勿論ですが、アンジェレネも知っての通りソフィアはどんな戦闘や作戦に於いても、敵の気配を誰よりも早く察知し、迅速に対応することが出来きます。そしてそれは、裏を返せば『やられる前にやれ』という事であり、万が一、私達がソフィアと唐突に遭遇してしまえば敵と間違われて攻撃される恐れがあるんですよ」

ソフィアに攻撃される可能性がある。これがカテリナやアガターが緩やかに行動している最大の理由であった。
その戦闘力ゆえに、人間の気配や足音などに人一倍素早く反応する事の出来るソフィアにとって、今現在のハイドパーク、つまり『どこに敵が潜んでいるか分からない空間』はその能力を最大限発揮しなければならない場所の一つでもある。そしてその通常よりも特別神経質な状態のソフィアに不用意に近づいたりすれば、彼女は敵味方の判断を行う前に“とりあえず”攻撃してしまうだろう。
だからこそカテリナとアガターは、池の周辺という目立つ場所を歩き、緊張感を捨てて気楽にゆっくりと行動する。ソフィアを見つけるのでは無く、自分から見つかることで仲間割れという惨事を未然に防いでいたのだ。
「名づけて『押して駄目なら引いてみろ作戦』!! まぁ、多分この方法ならソフィアは気づいてくれるよ。ソフィアは私達がいきなり近くに接近してきたら思わず攻撃しちゃうだろうけど、自分で私達の足音を見つければ逆に近づいてくると思うし」
「・・・・・・シスター・カテリナはシスター・ソフィアを野生動物か何かと勘違いしていませんか?」
「まぁ、似たような物でしょー」

カテリナの緩い笑い声が真夜中のほとりに響いていった。余りに適当なので、もはや何かを問い詰める気にはなれないアンジェレネである。
はぁ、と一回溜息を吐き、アンジェレネは尚も離れた部隊長と『ラスボス』を心配していた。
(・・・・・・シスター・アニェーゼは大丈夫でしょうか・・・。しかも“シスター・イラーリアが裏切り者”だなんて今だに信じられませんし・・・)


アンジェレネのまだ見ぬ黒幕に対しても信頼の意思を崩そうとはしない姿勢は、ルチアの言う『甘さ』の一環なのかもしれない。

773牧田さん:2011/08/16(火) 00:34:04 ID:xfaDw2nY

十月一六日午前二時二二分。英国図書館地下書庫内にて。



その僅かな光が灯る最奥庫に、二人の妙齢の女性が佇んでいた。
一人は全身金色の衣装に身を包んだイギリス清教のトップ、『最大主教』ことローラ=スチュアート。
一人は真っ黒の修道服に身を包んだシスター、イザベラ=アクィナス。
その二人は今この場にて、対談と言う名の密会を行っている最中であった。
「それで今日はどのような御用件で?」
乾いた部屋の中央に置かれた木机。唐突に放たれたイザベラの言葉に、向かい合うローラは訳の解らない不快感を覚える。
「・・・・・・分かりきった事を抜かすべからずよ、この偽善者が」
「あらあら、呼び出しておいてこの扱いとは。イギリス清教も堕ちたものですね」
「・・・・・・用件は伝わっていると思いけるわ。さっさと本題に突入しても問題は無いわよね?」
「はい・・・・・・、もちろんです」
イザベラが満面の笑みを返した。それを見てローラが受ける印象はただ一つ。


(胡散臭い)


ローラとイザベラは古い友人という名目でこうして面会している。それは事実であるが、真実であるかどうかという判断はローラにつけることは出来ない。
拭いきれない嫌悪感と威圧感に圧されながら、ローラは早速本題を切り出す。
「私がこんな辛気臭い所に足を運びた理由は三つ。一つは「アンチゴッドブラックアート」・・・・・・もとい「アンチゴッ『ト』ブラックアート」の有益な情報を貴方から搾り取ること。二つは『禁竜召式』についての詳細情報、及び『対処法』を提示してもらうこと。そしてもう一つが・・・・・・」
ローラは屍のような冷たい眼でイザベラを睨みつけながら言った。
「イザベラ=アクィナス。『お前自身について』よ」
その言葉にイザベラは再び口元を大きく歪めて笑顔を見せた。その死神のような嫌悪の塊は、一度俯いてから重い言葉をゆっくりと吐き出す。
「・・・・・・とりあえず一つ目は却下で御座います。私も『今のところ』仲間を売りたくは無いですし、そちらに有益な情報など全く無いと思いますから」
「・・・・・・なら、後の二つは協力を仰いでも構わないと言うことかしら?」
「その辺り、悩みどころではあるのですけど」
イザベラはそう言いながら目を細める。それはつまり、“協力はしてやるが全ては教えられない”ということだろう。当然と言えば当然なのだが。
飄々と事を流していくイザベラに対し、ローラは流れを持っていかれないよう、慎重に質問を始めた。
「そう言うなら御言葉に甘えさせてもらうわ。話は早ければ早いほど良いと言うしね。・・・・・・それで、単刀直入だけれど『禁竜召式』について、教えられる事を出来る限り吐いてくれないかしら?」
物を頼む態度としては随分と乱暴に思えたが、イザベラは表情を変えずに一回頷き、
「分かりました」
と凹凸の無い声で静かな返事を返し、ゆっくりと口を動かし始めた。

774牧田さん:2011/08/16(火) 00:37:25 ID:xfaDw2nY
「・・・・・・つまり、『禁竜召式』は人体そのものに竜の性質を組み込む術式だと? そう言いたるのイザベラ」
「そのような結論に至るでしょうね」

イザベラ=アクィナスより情報提供を受け初めてから、時間にして約一〇分ほど。『禁竜召式』についての詳細を語るイザベラに対し、ローラは思わず眉を顰めた。
「まさか、本当に『聖ジョージの術式そのまま』だと言うのかしら? だけれど、その規模の術式にしては随分と大掛かりな魔法陣を描いているように思えたわね」
「『聖ジョージ』・・・・・・もといゲオルギウス=アークライトという人物と、現代の人間を比べてはなりません。彼は人という枠を大きく外れた『超人』だと伝えられますから。彼が個人で使用していたとされる術式などは、現代では『グレゴリオの聖歌隊』でも起用しなかぎり発動は不可能でしょうし」
「・・・・・・聖人というのは、時代を遡るほどに強力になっていくような気がしたるわ。『聖ジョージ』も例外では無いということね」

過去の文献にも『禁竜召式』とおぼしき術式については掲載されていた。その文献によれば『禁竜召式』とは“聖ジョージを倒す為に民衆が創りあげた術式”であり、その民達を返り討ちにし、不安定だった術式を≪完成≫させたのが聖ジョージだという。
だが同時に、彼がその術式を使用したとはどこにも記されていない。
それはつまり、今夜クリスタルが『完成した状態の禁竜召式』を発動した場合、歴史の上では初となる完全な『竜人』が誕生することとなるだろう。
「・・・・・・竜の力を手に入れる。それは現代の高位術式である『竜王の殺息(ドラゴン・ブレス)』や『竜王の滅爪(ドラゴン・クロー)』を呼吸するように放ってしまう悪竜の力を、完全で無くとも掌握すると言うことです。もしもクリスタルが『禁竜召式』の発動に成功してしまった場合、貴方たちイギリス清教には勝ち目はありません。最低でも『神の右席』クラスの戦力を投入しない限りは、時間稼ぎにもならないでしょう」
「・・・・・・、」
イザベラの断言とも取れる発言に、ローラは言葉を詰まらせた。確かに伝説上の竜が現代に現れてしまうようなことがあれば、それは災厄と呼ぶに相応しい悪夢を実現するだろう。
だがローラが言葉を止めた理由は事実に悲観したからでは無い。彼女が思考を停止させた訳は、“むしろその逆だ”。
「・・・・・・イザベラ=アクィナス」
「? はい、何で御座いましょうか」

そしてローラはこの場に現れてから、初めて笑顔を見せた。

775牧田さん:2011/08/16(火) 00:38:07 ID:xfaDw2nY
「貴方はイギリス清教の手駒であるアニェーゼ部隊を、全く理解できていないわね。なぜ彼女達が大人数で行動しているのか。なぜ彼女達の班割は“近接攻撃班が異常に少ないのか”。・・・・・・貴方は何も解りていない」
「・・・・・・? どうゆうことで、御座いましょう?」
イザベラも、クリスタル率いる『対十字教黒魔術』と戦闘中のアニェーゼ部隊については詳しく知っているつもりだった。部隊長であるアニェーゼ=サンクティスについても、当然その部隊の班割についても。イザベラがこの程度の下調べを済ませていることなどローラが知らぬはずがない。だが、それでもローラはイザベラに「解っていない」とそう言った。

その意味は、つまり、

「・・・・・・まさか」
それを思考する内に、イザベラの頭に一つの考えが現れた。
イザベラの脳内で「可能性」を搾り出す情報達。近接班の圧倒的不足。それに対する遠距離部隊の人数。彼女達シスター部隊の最も得意とする陣形を利用した戦術。そして根本的に“彼女達の人数が多い理由”。それらのピースは一つに纏まり、彼女の中に「新たな可能性」という考えを生む。
「思いたりて? イザベラ」
人数が多ければならない訳。それは単純に数で圧倒するためと、もう一つ。


つまり、大規模魔術の発動に伴うリスクの少なさ。

「まさか・・・・・・。“通常では使用できない術式を無理矢理発動することができる”から・・・・・・?」
「ふふっ、当たりよイザベラ」
個人では魔術の発動に限界がある。魔力の量、魔法陣の大きさ、詠唱の長さ。たった一人で国家を揺るがす程の大魔術を発動しようとすれば、例え『聖人』のような特殊な才能に富んだ人物であっても、肉体への負荷が大きすぎる為に発動が極めて難しい。だが、それらの障害は全てアニェーゼ部隊の『数』というアドバンテージである程度打ち消すことができる。

そう。少人数では絶対に発動できず、理論上不可能とされた術式であっても、限定的だが“彼女達なら発動できる術式”は少なからず存在するのだ。
ローラは得意げにイザベラを見つめ、そして断言するように言う。

「貴方は知りえないことでしょうねイザベラ=アクィナス。アニェーゼ部隊の特殊術式のレパートリーには『対竜迎撃術式』が含まれているということなど」

776牧田さん:2011/08/16(火) 00:39:11 ID:xfaDw2nY
十月一六日午前二時一四分。



カテリナ、アガター、アンジェレネ。三人のシスターは硬直していた。
彼女達は握っている霊装はおろか、指の先までが蝋人形のように全く動かすことが出来ない。

三人はただ、目の前の違和感を前に立ち尽くすしかなかった。


二分前に遡る。

三人は池の周りを周回していた。ソフィアを捜索するためにカテリナの考えだした『押して駄目なら引いてみろ作戦』という素っ頓狂な作戦を実行していたからである。音や気配をだだ漏れにして自ら発見されるなどと言う馬鹿みたいな作戦であった為、普通に捜索することを望むアンジェレネにとっては時間の無駄かと思われていた。
だがしかしアンジェレネの思惑は外れ、その作戦は見事に成功する。
カテリナ達の足音や声を頼りにこちらの居場所を掴んだのか、『彼女』はカテリナ達の一〇mほど前方に位置する草むらから、音も無く現れた。
同じ修道女部隊に所属する『彼女』はカテリナ達と目を合わせ、そして優しく微笑んだ。

作戦は成功した。『彼女』はカテリナ達と再会を果たし、「自分から音を出しておびき寄せる」という目的“は”達成されたのだ。

だが、その時カテリナ達も予想だにしなかった事が二つほどある。


一つはその『彼女』が“そもそもソフィアでは無かったということ”。
一つはその『彼女』が黒い西瓜大の物体、つまり人間の頭部を持っていたこと。

『彼女』が片手で軽々と持っている人間の頭部は、その大きさから推測して男性。顎にゴムで繋がれた青色の帽子を付けたままである為、恐らくは公園を巡回していた民間の警備員だと思われる。
何が、どのように、どんな経緯を辿ってそんな状況が生まれたのか、それはカテリナ達には分からない。
だがそれでも被害者と加害者が両方存在している『事件』は、確かにその場で発生していた。

もはや唐突すぎて自分が息をしているかも確認できない三人のシスターに対し、『彼女』は先程と何ら変わらない表情で冷たい声を放つ。


「カテリナにアガター、あとアンジェレネか。三人共、こんな所で何をしているの?」

黒い修道服に鮮血を染み込ませた『彼女』、イラーリア=L=ラウレンティスは笑いながらそう言った。

777牧田さん:2011/08/16(火) 00:40:05 ID:OFUM4Fj.
十月一六日午前二時一二分。ハイドパーク某所。




神裂は目の前に倒れる黒服の男達を見つめながら、何も言わずに『七天七刃』を鞘に収めた。
傍らには同僚であるステイル=マグヌスとシェリー=クロムウェルが同じく男達を見つめ、吐き捨てるように言葉を放つ。
「前情報にあった『対魔術絶対防御』というのは本当だったみたいだね。確かに魔術攻撃は一切通じなかったが・・・・・・。まさか術式の余波で大きめの石を飛ばしただけであっさり倒れるとはね。物理攻撃に対する対策は何一つ講じてなかったって言うのか」
「その可能性が高いわね。この様子じゃ、学園都市の能力者を連れてる小娘部隊が負けることは無いだろうし、案外慎重に進んでも問題なさそうじゃないの。・・・・・・まあ、あのクリスタルとか言う女に関しては、そう簡単にいかないらしいけど」
神裂を含めた『必要悪の教会(ネセサリウス)』所属の魔術師達の体には傷一つ見られない。それはこの戦いが神裂達の一方的な戦闘だったと言うことを証明している。

(・・・・・・しかし、本当にそうだったのでしょうか?)
それだけ圧倒的な戦闘を目の当たりにしても、神裂達三人にはどうにも附に落ちない点が幾つかあった。
それは敵の一人が神裂の通常斬撃によって、誰が見ても解るほど盛大に吹き飛ばされた時のこと。
神裂はその男の命までは取らなかったものの、明らかに戦闘不能になるレベルの斬撃を与えたと思っていた。だがしかし、その男は瀕死の体を無理矢理起き上がらせ、再び神裂に攻撃を仕掛けてきたのだ。神裂は驚愕しながらも何とか二撃目を放ち、男はそのまま動かなくなったのだが・・・・・・。
(明らかに違和感があった。あの男の後に出てきた援軍と思われる数人の男達にも言えることですが・・・・・・、『必ず二発以上の斬撃を与えなければ倒せなかった』。あの男達の通常攻撃に対する防御力から考えても、私の一撃で確実に戦闘不能以上には陥るはずだったのですが・・・・・・)
違和感はそれだけでは無い。いやむしろ、それ以上に不可解は点が一つあった。
それは一度倒されて起き上がった男達に共通して、その全員の『目が死んでいた』と言うこと。
最初に神裂達を襲撃してきた男は、しっかりと自分の意思を持ち、自らの行動理念に基づいて動いているような人間味が感じられた。
だがその男が神裂に敗北し、もう一度起き上がった時には『その目に光が無かった』のだ。
(一度負けて起き上がる。この一連の動作を行った男達には意思が全く感じられ無かった。その上に放つ言葉も曖昧で、これではまるで・・・・・・)

ゾンビのようだ、神裂は呟いた。

(・・・・・・人体の強制回復術式、別名『蘇生術』。禁忌に触れる、文字通り『黒魔術』の術式)
神裂は響き渡るほど歯軋りして、そして思い直した。
今まで彼女は『対十字教黒魔術』を魔術結社の一種だと思っていた。『黄金』系などの有力なもので無いにせよ、何らかの要因で魔術師達が集い、力を固めて創られた組織なのだと。
だが違った。神裂が今戦っている敵は魔術結社などでは無い。
そして『対十字教黒魔術』でも無い。幾ら彼等でも『自身に危害の及ぶ禁忌に手を出したりはしない』からだ。

つまり、神裂の戦っている敵は、十字教に反する者の名を借りた単なる狂気的集団ではないのだろうかか。

(発音の齟齬かと思っていましたが・・・・・・、やはり「アンチゴットブラックアート」というのは私の知る『対十字教黒魔術』と少々違うようですね。恐らくはその言葉の意味さえも私が知らない別物に変わってしまっているでしょう)
だがその正体不明の集団が、現に禁忌という名の強力な魔術を使用していることも事実だ。あの男達が、自身に『蘇生術』などという訳の解らない上に極限的に難しい術式を施すとは思いづらい。ならば彼等の後ろにもっと強力な、神裂など片手であしらえてしまう程の有能な術者がいるということになる。
(何が・・・・・・あると言うのですか。この作戦の裏には・・・・・・)

恐らくはステイルやシェリーも神裂と同じことを考えているだろう。
だがそれらの事柄をゆっくり考えているような時間は無い。

そして三人は黒い霧のような感情を背負ったまま、ハイドパークの奥へと歩を進めた。


(・・・・・・どちらにしても、全てを知るのは敵を倒し、救ってからでも遅くは無いでしょう)
事実に納得は出来なくとも、神裂は自身の魔法名にかけて敵側の人間だろうとも見捨てる訳にはいかない。

778牧田さん:2011/08/16(火) 00:42:16 ID:xfaDw2nY
≪行間≫



三年前。リトアニア某所のとある研究施設にて。

「骨組の伝承は『聖ジョージ』。属性は風、土。力源は土と風の短剣を代用。重ねて聖剣の役を複合。『神のみぞ存在する世界(エーテル)』を素材に指定。媒体はルーン。・・・・・・大体は把握した。後は引き金が分かると良いんだけど・・・・・・」
クリスタル=アークライトは、とある『団体』の術式構成室長として術式研究に没頭していた。
彼女がこの『団体』に入ってから数年。彼女は確かな地位を約束され、あとは自分の好きなように魔術を創り出す、もしくは解析することしかすることが無かった為、殺風景で閑散とした狭い研究室でひたすら術式の解析を進めていた。
(しっかし、この術式はどうやって発動すれば良いんだ? 術式の構成から考えても尋常じゃない位の魔力が必要だし、そもそも術のトリガーが分からない。我が家の家宝とは言え、さすがに頭を抱えるわねこの魔術)
彼女が現在研究している術式は『禁竜召式(パラディンノート)』。それは彼女が数ヶ月前にイギリスへ帰郷した際、実家の『跡地』の下から発見された物だ。ルーンが大量に刻まれた羊皮紙を百枚ほど重ねたメモ帳のような品だったが、試しにそこに刻まれたルーンを解析してみると、アークライト家に伝わる家宝『禁竜召式』であるという事実が分かったのである。
厳密には“それ自体”が『禁竜召式』なのでは無く、そこにルーン文字で書かれた事柄を実行すると『禁竜召式』が発動するという魔道書のような物だ。だがそれを直視しても何の影響も無いことを見ると、魔道書というよりは本当に只のメモのような羊皮紙である。
(・・・・・・『我、汝ガ欲スコトヲ望マヌ。汝ノ欲シタ時、黒キ××××ハ現世ニ還ラン』・・・・・・か。どうも『黒キ』の後が解析できないんだよねぇ。文字列的には何かの単語を表しているようだけど)
この術式に必要なのは強大な魔力、そして彼女が解読に苦難している『××××』に含まれる単語。魔術を使用するにはその術式の意図を根本から理解することが大前提であり、この部分を解読できないからには術式の準備も行えない。一応『この術式を使用すれば術者がどんな力を得るのか』ということに関してはルーンの羅列から読み取ることが出来たのだが。
(んー、『PaladinNote』、か。「paladin」はそのまま英語だし、この場合は『騎士と竜』を表すのか? ・・・・・・で、「note」の方は・・・・・・。術の意味的に考えたらイタリア語のスペルを抜き取って無理矢理英語に直した感じかな。率直に考えたら「citaziONe(召喚)」と「poTEre(力)」の「ON,TE」を並び替えたってとこか)

クリスタルが小難しい作業を進めている時、彼女の真横にある金属製の扉から一人の少女が音も無く入ってきた。
「どう? 作業は順調かしらクリスタル」
「・・・・・・これはこれは、誰かと思えば総括部長じゃない。こんな北欧の辺境の地に何の御用?」
「前にみたいにイラーリアって呼んでくれない? それに二百人居るか居ないかの『団体』に、偉いも何も無いでしょ」
自身をイラーリアを名乗った少女は自嘲気味にそう言いながら、クリスタルの研究資料の一部を手にとった。コピー紙に印刷された術式の詳しい構成や基となる伝承など様々な情報に目を通し、彼女は心底楽しそうな声でこう言った。
「・・・・・・『禁竜召式』かぁ。かなり良さそうな魔術じゃない。これが本当に実現しちゃえば『アンタの目的も私の目的も達成出来てしまう』かもしれないんだから、頑張って完成させてね」
その言葉に対し、クリスタルは嫌悪を表すような乾いた表情で言葉を放つ。
「・・・・・・まさかとは思うけどさイラーリア。本当に“この術式だけで目的を達成できると思っているの”? 幾らなんでも『禁竜召式』だけじゃ貴方の目的はスケールが大きすぎると思うんだけど」
そのクリスタルの呆れたような言葉に、イラーリアは口を吊り上げて笑みを見せながら適当に反論する。
「大丈夫よ。別にアンタの術式に期待している訳じゃなくて、『アンタの術式の発動と共に私のプランが実行される』ってだけの話なんだし。だから『禁竜召式』の発動に対する協力は、決して怠らないから。魔力の貯蔵庫でも媒体でも必要な物は何でも言ってくれて構わないわ」
イラーリアの余裕の発言にクリスタルは疑問詞を浮かべたが、上司が「力になってやる」と言っているのだから断る訳にはいかない。
「そうね・・・・・・」
イラーリアは「何でも言ってくれ」と言った。なら言うべきことは自然に決定される。

779牧田さん:2011/08/16(火) 00:44:03 ID:xfaDw2nY

クリスタルは息を一つおいてから、明らかな説明口調で言葉を並べ始めた。

「・・・・・・今の段階で『禁竜召式』の発動に必要不可欠なのは、恐らく三つ。一つは強大な魔力を保有する物品か霊装。これに関して『偶像の理論』を応用すれば用意するのは難しいことじゃない。もう一つは発動時に術式に干渉し、微調整によって術を安定させるバランスメーカー。これは術者である私が行うわ。で、最後の一つは、“術の準備段階で術式を覚醒させる為に莫大な魔力を注ぎ込める術者”。『禁竜召式』は幾重もの封印術によってその性質をガッチガチに固めてあるから、強大な魔力を注ぎ込んで封印術を吹き飛ばす必要があるのよ」
ふぅん、とイラーリアは生返事を返し、何やら不満そうな表情でクリスタルへと質問した。
「・・・・・・で、私にはその『莫大な魔力を注ぎ込む』役をやって欲しいと?」
「そういうこと」
「・・・・・・つまんない」

イラーリアはそう言うと唐突に体の向きを変え、怒ったように扉に手をかけて研究室からさっさと出て行ってしまった。
一人残されたクリスタルは自分の娘を見るような純粋な目で閉まる扉を眺めながら、誰にも聞こえない声で呟く。


「(何でも言ってくれなんて柄に合わないとは思ったけど・・・・・・。本当、どこまでも捻くれた吸血鬼だこと)」

その言葉が誰かの耳に届いていれば、魔術業界は滅茶苦茶に崩壊してしまう程のパニックに陥ってしまったかもしれない。

780牧田さん:2011/08/16(火) 00:49:20 ID:xfaDw2nY
投下終了です、そして9レスにのびましたすいません。
4,5と8,9レス目は、本当は一つに繋がっているはずだったのですが、『本文が長すぎます!!』とか言われてあえなく分割。
それと上のほうに書いてあるオリキャラ云々を語ってくださった方々には、すいませんとしか言いようがありません。
前々からオリキャラで爆走してきたものなので・・・・・・


感想や誤字脱字の誤字脱字のご指摘などお待ちしております。

781■■■■:2011/08/17(水) 00:30:05 ID:RbtBuEq.
>>780
gjです。
誤字脱字はいつもの人に任せるので、とりあえず感想を
序盤の方でミスとして指摘されていた「召式」のところを伏線にかえてきましたね
それとイラーリアが生首片手に登場ですか。完全に悪役ルートまっしぐらですねこれは
アンチゴットの部分のカラクリはローラは最初から分かっていたんでしょうかね? 神裂さんの発言から考えても本編の『対十字教黒魔術』とは大きな違いがあるようですし

あと余計なお世話かもしれませんが、一月頃に投下されていたサッカーSSの続きは投下予定無いのでしょうか?
個人的にはオチが結構気になるんですけどw

782■■■■:2011/08/17(水) 00:37:02 ID:uKEGnvBk
>>780
GJ! よくぞ空気を読まずに投下してくれた。
はいはいそこで誤字指摘
>>772迅速に対応することが出来×「き」ます。
>>777『七天七刃』(『七天七刀』) 不可解は点(不可解な点)
以上。ど、どうしたんだ牧田さん……!何時になく誤字が減ってるじゃないか
以下感想
個人的にアンジェレネ班の状況が忘却の彼方すぎて焦った。こういう時にまとめwikiって便利だよね
なんかカテリナもアガターも行動がぎくしゃくしてるような。裏切ったつもりはないと言いつつ戦線に復帰する意思はない、
ソフィアの「ステイ」に従ったかと思えば時間を潰すようにぶらぶらと捜索。イラーリアと通じてるなら硬直するのも変、さてどうなってるのか
「胡散臭い」とかお前が言うな、とはつっこんでも良いのだろうか?イザベラは結構簡単に情報を吐いてくれてるけど、
これが『交渉』である以上は何かを見返りに要求してくるのか……というか両組織の実動部隊がドンパチしてる時にトップの二人が何やってんだw
黒服のゾンビ化はイラーリアの仕業なのかな?二回目で死ぬならそこまでチートって訳でもないけど、
「死者の蘇生は不可能」を信条とする神裂にとっては衝撃的だったかも
今回の『PaladinNote』の自己考察でもイタリア語を使ってるけど、牧田さんはイタリア語が堪能だったりするのか?
アニェーゼやクリスタルが戦闘や命令で頻繁に使ってるし、よほど伊語力に自信がないとあそこまで堂々と書けないと思ったので……違ったならすいません
また感想が長くなったけど、長いといえばこのSSも相当なボリュームだと思う。現状の消化具合はどれくらい?
風呂敷が広がり過ぎると全ての伏線を回収するのが大変かも知れないけど、完結目指して頑張ってください

783■■■■:2011/08/17(水) 05:39:49 ID:kCwLWX.k
オリキャラ厨死ね 中二病だとか牧田だとか

784■■■■:2011/08/17(水) 09:35:20 ID:RbtBuEq.
>>783
反応するのも悪いかもだが、スレ違いだぜ

785牧田さん:2011/08/18(木) 17:32:00 ID:QtlOqfSQ
>>781
感想ありがとうございます
サッカーSS・・・・・・。やばい忘れてた
完結させずに終わるのもアレなんで、次の投下はそれで行きましょうかね

>>782
同じく感想ありがとうございます
・・・・・・あれ? 誤字脱字そんなに少なかったですか? 自信無かったんで驚きました
カテリナ達の行動については、不自然だとしてもそこまで違和感のあるものだったでしょうか?
自分で書いてると分からない事があるので・・・・・・以後、気をつけます

786■■■■:2011/08/19(金) 23:04:39 ID:vNxI8PRg
中二病がここ最近全然来てないけど。
あいつSS書くのやめたの?

787■■■■:2011/08/20(土) 00:21:27 ID:H5tWp9vE
>>786
>>565-578

788■■■■:2011/08/20(土) 19:25:59 ID:Af2UciwE
中二病は禁書から手を引いたっぽいよ。
小説家になろうの方が消されてたから。

789■■■■:2011/08/22(月) 09:34:41 ID:CVkICEyM
オリキャラや内容が全部駄目でなく、オリキャラを話しの案内役や世界観の日常の一駒にしたりすれば反感も少なかったかもね。自分だけが楽しいじゃなくて、共感を得られる楽しいじゃないとな。
書くの好きなら辞めろとも思わんし、支部とか理想境で楽しく書いていてほしいわ。

790■■■■:2011/08/22(月) 16:21:03 ID:.xsxyZk.
>>789
あれ、絶対に第二部いらなかったよなwwwww

791■■■■:2011/08/23(火) 00:34:36 ID:1zw0fBME
住人と禁書ファンが増えますように

792■■■■:2011/08/23(火) 03:14:50 ID:.I5UbxL2
そして世界が愛に満ち溢れますように

たけし

793レンタル携帯:2011/08/23(火) 13:12:23 ID:ZD3IQFRI
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794■■■■:2011/08/25(木) 00:10:14 ID:Un6.lrXw
やっぱ文章力かぁ・・・

795■■■■:2011/08/25(木) 01:07:32 ID:6yfMU8fw
>>794 設定とかプロットとか作って誰か文章のうまい人に委託出来たらいいんだけどね。
   
   中二病は文章力のなさが致命的だったから。設定は面白いのに。

796■■■■:2011/08/25(木) 02:01:47 ID:YbLt6Dhw
そうなると、やはり土台が必要不可欠だな。発想が出てSS書いたりするけど、土台ないと打ち切りや逃げとかになるしな。

797■■■■:2011/08/25(木) 03:26:39 ID:H0UDkqIA
中二病は反乱因子の人と同じにおいを感じる

798■■■■:2011/08/25(木) 12:30:07 ID:Un6.lrXw
>>796
そう考えると牧田さん凄えな

>>797
アウトドアの人か? でも明らかな反論とか荒らしは見られないし、このまま静かに消えそうな気がする

799■■■■:2011/08/25(木) 14:57:05 ID:DHkn7i/U
投下が無い間は話すことが無いからって、書き手や作品を名指しで貶すような書き込みは控えような

800■■■■:2011/08/25(木) 16:42:23 ID:Un6.lrXw
>>799
すまん控える

だが本当に話すことないぜよ
過疎化を防ぐためにまたアンケート的なやつするか?

801■■■■:2011/08/26(金) 13:19:00 ID:mrvQZS1E
>>800
好きなオリキャラは? とかそういうヤツか

802■■■■:2011/08/26(金) 16:49:47 ID:mYDEsv7E
>>801
神澤達也

803■■■■:2011/08/26(金) 17:00:34 ID:mrvQZS1E
>>802
中々コアなキャラどすな

804■■■■:2011/08/26(金) 17:28:13 ID:eHV9u.7g
なんだこの>>802までの完璧な流れ……

言祝栞。ベタかもしれんが、やっぱりお手本のようなオリキャラ。内面描写もちゃんとしてたし

805■■■■:2011/08/27(土) 20:35:23 ID:M5NJ5x5Y
中二病やめたのか、あいつのオリキャラは大好きだったんだがな・・・

おれも神澤・・・といいたいところだが駒田秀人に一票
あの余裕綽々っぷりは他の禁書キャラにない魅力だった

806■■■■:2011/08/28(日) 23:02:46 ID:zHn.as5w
>>805
俺もオリキャラ自体は嫌いじゃなかったぜー。文章のせいで大分萎えたけど

俺はクリスタルだな。強キャラ設定誇張しすぎかと思ってたけど、設定が割と作りこまれてたし

807■■■■:2011/08/28(日) 23:29:34 ID:y2lyp9bE
面白い文章って何なんだろうな。

808■■■■:2011/08/29(月) 00:15:38 ID:0iy4gl.2
>>807
俺が言ったのは「中二病の文章は俺には合わない」と言うこと
良い文章かどうかの判断は読み手の数だけあるだろうし

俺はビリビリメルトダウナーとか禁竜みたいに地の文多めのが好きだ
原作とは違う雰囲気と表現が案外新鮮だったり

809■■■■:2011/08/29(月) 00:16:20 ID:0iy4gl.2
言い忘れたが>>806の者だ

810■■■■:2011/08/31(水) 20:43:42 ID:G1nvom2E
禁竜のwikiに「好き嫌いが真っ二つに分かれる」と書いてあった理由がやっと解った

811■■■■:2011/09/01(木) 14:22:03 ID:RG/M0rbw
その職人の物語が好きなのか、原作が一番好きなのか

812yuri:2011/09/02(金) 19:25:43 ID:y8KonBHc
不景気だと騒がれていますが・・・(・_・)! ttp://tinyurl.k2i.me/GoeA

813Changeの作者:2011/09/03(土) 21:45:04 ID:sATMuUOE
なんとも月一連載のように――
と言うわけで、(待ってくれている人が信じて^^;)お待たせしました、『Change』第5章!
今回の注意事項は前回と同じ。


この物語は、DVD特典SSや公式海賊版の設定は含まれておりません、ということで!


ただ……前回の締めで言った『インデックスのターン』になっているのかどうかは甚だ疑問な内容ですが、雄大なくらいの広い心でお読みいただけると幸いです。
それにしても執筆状態、絶不調ですぅ……(−−;)

814Change5−1:2011/09/03(土) 21:46:39 ID:sATMuUOE
 朝は戦場だ。
 と言っていたのは誰だっただろうか。
 ここは学園都市であり、人口の八割を学生で占めていて、その大半は親元を離れ、一人ないし相部屋での寮生活を余儀なくされている。
 そのため、ほとんどの学生の平日の朝の準備は慌しい。
 着替えにその日の時間割の確認に朝食、そして、(一部中学も含む)高校以上となれば、購買派や学食派も少なくはないが、お弁当作りも加わる。
 これを、六時に起きるなら約二時間内、一時間早く起きしたとしても約三時間でこなさなければならない。
 だからこその『戦場』なのだ。

 ただし、それはあくまで平日、月曜日から金曜日までの話。週休二日制が常識となった昨今では、土曜日と日曜日は当てはまらない。
 この二日間に関して言えば、クラブ活動や毎朝の習慣っぽいものがなければ、学園都市に住む、風紀委員と警備員を除く、学生や教師たちのほとんどは昼まで惰眠を貪るこ

とが多い。
 現在、時間は朝の六時。一月であるから、外はまだ真っ暗闇だ。
 外だけではなく、室内でも明かりを点けなければ闇に支配されている時間帯である。ぶっちゃけ、それを利用して明るくなるまで目を覚ます気がないのが学生であり、休日ともなれば、明るくなろうが、起きるつもりもないことだろう。
 もっとも、なんにでも例外はあって、本日の上条家がそれに当たる。
 ぴんぽーん♪
 呼び鈴が鳴ると同時に、なんだか借金取りが来たみたいにドンドンガンガンとドアが音を立てている。
 ここは学園都市であっても、レベル0で普通の高校に通う上条の住む学生寮はセキュリティも防音設備も甘々だ。
 せいぜいドアの鍵が多少頑丈かもしれないくらいで、それでも学園都市に住んでいる者であれば、一人のシスターを除けば、あっさりと解除されてしまうレベルでもある。
 つまり、ドアをノックしたということは、そこにいるのは、このドアの開け方を知らない者ということになる。
「……………」
 神裂火織は闇の中、警戒しながらドアへと近づいていく。
 現在、御坂美琴は別人の体で能力を失っているので戦力にならない。基本素人の上条当麻はともかく、魔術師であり場数を踏んでいるステイル=マグヌスがバスルームから出てこないところを見ると、案外バスルームの防音設備はしっかりしているのかもしれない。
 神裂は、そっと、覗き窓を見た。
 ドアの向こうにいたのは三人。
 ドアの傍の外灯に照らされて表情はよく見える。
 ドアをノックしていた者の眼光は神裂を射抜くほど、七天七刀の切れ味に勝るとも劣らぬくらい鋭い。
 その後ろには、腕組みをして、訝しげな表情をしている者と、こちらには目もくれず、静かに何かを思案している表情の者がいる。
 神裂は意を決してドアを静かに開けた。
 刹那、ドアをノックしていた者が速やかに、そしてしなやかに動いた。
 神裂が目を見張るほど、それは少しの無駄もなく計算された動きだった。
 影は神裂の横をすり抜け、即座に神裂の後ろを見回す。闇に包まれた部屋の中、そこには誰もいない。
 神裂は動けなかった。
 影の尋常ならざる殺気に身が竦んでしまったからだ。
 神裂火織ほどの聖人に恐怖を与えられる存在となると、その種類は限られてくる。
 それは騎士長であったり、神の右席であったり、大天使であったりと、聖人のみならず誰しもが恐怖を抱いてしまうくらい強大な力でなければならないのだ。
 しかし、その影にはそこまでの力はない。単純な力比べなら神裂は負けはしないし、持っている特殊能力も神裂には及ばない。
 にも関わらず神裂は恐怖を感じている。聖人に恐怖を与えるなど、普通では考えられない。
 そう『普通』なら。
「二人はどこ?」
 振り向きもせず、影は問うた。
 相手は言うまでもなく、神裂火織である。
 神裂の頬と背中に冷たい汗が伝う。
 神裂は、上条と美琴がどこにいるかを知っているが、はたして、それを影に伝えていいものかどうかは憚られた。
 しかし、神裂に隠し立てなど出来るわけもなかった。

815Change5−2:2011/09/03(土) 21:49:35 ID:sATMuUOE
「イ、インデックス……、か……上条当麻と御坂美琴さんの二人は、その……ベランダ……に……」


 恐怖に身と声を震わせながら、神裂は答えるしかできなかった。
「やっぱりなんだよ! 何でかおりは止めなかったのかな!?」
 叫んで、外見御坂美琴のインデックスは駆け出す。
 向かう先はもちろんベランダ。
 勢いよく、窓を開けた。
「とうま――――――っ!」
 ところが、インデックスは、眼前に開けた光景に完全に固まってしまったのである。
 しばしその場が硬直。
「んー?」「どうされました?」
 そんな固まっているインデックスに訝しげな表情を浮かべながら近づき、ヒョイと、インデックスの脇の下から顔を覗かせる玄関先でも訝しげな表情をしていた白井黒子と、早朝五時に叩き起こされたのでまだまだ眠たさが残り静かだった佐天涙子。
 しかし、インデックスの向こう、ベランダの光景を目の当たりにして、
「うあ!?」
「……!?」
 二人もまた、固まってしまい、
「――!!」
 神裂もインデックスの頭の上からベランダを見て硬直する。
 言うまでもなく、そこには上条当麻とインデックスの姿をした御坂美琴がいるのだが、前と後ろに一つずつの毛布に包まって、お互い身を寄せ合ってすやすや眠っているわけで、その光景がなんとも心温まると同時に、年頃の少年少女なだけに見ていて顔が火照るものもある。
 ちなみに神裂は、こうなっているとは知らなかった。
 美琴がベランダの外に出て行ったことには気づいたが、何をしているかまでは確かめていなかったのだ。
(うわうわ! こんなのドラマとか小説とかマンガとかの世界だと思ってたけど、生で見ると凄くクる!!)
(え、ええっと……とうまの隣にいるのは短髪なんだけど、外見は私だし、これは凄いかもーーーーー!!)
(な、なんという………いやらしさも破廉恥さもないのに目のやり場に困ってしまいます………………!!)
 という感想は上から、佐天、インデックス、神裂である。
 ただ一人。
 あっさりと硬直から抜け出し、平静に戻ったのは、
(ううん……外見がお姉様ではありませんので、見た瞬間は驚きましたけど、さして思うところもないと言いますか、こみ上げてくるものがないと言いますか……)
 と、溜息交じりに心の中で呟いた白井黒子だった。
 そのまま、固まっているインデックスの脇の下から頭を抜き、一昨日、立った厨房へと向かう。
(いくらなんでも外出するにはまだまだ早過ぎる時間ですから、とりあえず朝食の準備でも)
 などと考えながら、一度、ちらりと肩越しに三人を見やる。
 ここまで進めば、上条と美琴は見えないが、後の三人の背中は見える。
 その様子に、白井はもう一度、今度は呆れた溜息を一つ吐いていた。

816Change5−3:2011/09/03(土) 21:50:32 ID:sATMuUOE
「んー……何の騒ぎだい……?」
 外からのノックはほとんど聞こえなかったようだが、室内のドタバタとなると少し話が違うらしい。
 騒々しさに叩き起こされた感があるステイルが、普段とは違う寝所ということもあって、よく寝ることができなかったのか、多少、寝ぼけ眼でバスルームからのそのそと出てきて、そのまま、神裂の隣に佇む。
 ちなみに普段は野宿でも、しっかり休養が取れるよう心がけてはいる。それがプロの嗜みだからだ。
 さて、インデックス、神裂、白井、佐天と同じようにベランダの光景を目の当たりにしてステイルは瞬時に完全に目が覚めた。
 と、同時に。
「上条当麻ぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 貴様という奴はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 ただ、寝起きなだけに頭はまだ回っていなかったらしい。およそ、英国紳士らしからぬ怒声を上げて、自身の懐に手を突っ込み、数枚のカードを取り出す。
 突然の叫び声に振り返るインデックス、神裂、佐天。
 そこには憤怒の顔をした全身黒ずくめの赤鬼がいた。
 と言っても、佐天には赤鬼が取り出したカードに、何か幾何学模様が書かれていることは分かるのだが、どんな意味があるのかがさっぱり分からない。
 もっとも、分からないのは佐天だけで、後の二人は話は別。
「止めなさいステイル!! お二人が起きてしまうではありませんか!!」
「それよりも、とうまと『私』に攻撃しようなんて許さないんだよ!!」
「ええい!! 止めてくれるな二人とも!! この不埒な輩は成敗されるべきなのだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「朝早く、しかもまだ陽も昇っていない時間帯から随分賑やかですこと」
 ギャアギャア言い合って、ある意味揉み合っている三人(正確には神裂が背後からステイルを羽交い絞めにして、インデックスはステイルの正面に立ち、全身をバチバチ言わせて威嚇している)を横目に、異様なくらい冷めている白井はフライパンの卵を左手で返していた。
「し、白井さん……とっても冷静ですね……?」
「そうですか?」
 あの修羅場に巻き込まれたくない佐天は即座に離脱して、白井の傍まで避難していたのである。

817Change5−4:2011/09/03(土) 21:52:45 ID:sATMuUOE
「にゃー。カミやんが、正方形の座卓を二台持ってこっちに来てくれって言われたときは何事かと思ったが、こういうことなら大歓迎だにゃー」
 サングラス越しでもはっきり分かるくらい、朝の六時半に叩き起こされて、強引に上条当麻の部屋に連れてこさせられた割には土御門は上機嫌な笑顔で周りを見回した。
 それもそのはず、総勢八人の朝食。正方形の座卓を直線で並ばせて食卓を囲んでいる。
 しかも、インデックス(見た目美琴)、御坂美琴(見た目インデックス)、神裂火織、白井黒子、佐天涙子という不思議ちゃん、ツンデレ、お姉さん、百合、普通の娘と、バラエティ豊かな美少女が目白押しなのである。自他共に認めるシスコン軍曹の土御門ではあるが、それはあくまでトップが妹キャラなだけで、普通の男子高校生の感性は持っているだけに、これが嬉しくないわけがない。これを不服とするのは、同性愛者を除けば、学園都市第一位だけではなかろうか。なんと言っても彼は幼女か悪女か年増(?)でなければ萌えない。(キッパリ)
「お姉さんキャラですか? それならば許容範囲です。一応、私がここでは一番年上ですが十八歳ですし」
「私って、不思議ちゃんかなぁ?」
「わたくしは別に否定しませんわ。愛にはいろいろな形があるものです」
「誰がツンデレよ! 誰が!」
「うぅ……私って特徴ないのか……」
 天の声に律儀に答えてくれた五人を横目に、
「すまねえな土御門。こんな朝っぱらから」」
「いいっていいって。これだけの綺麗どころに囲まれて不機嫌になる男はホモ(と一方通行)だけぜよ。それに、こんな美味い飯を食わしてくれるんだから感謝はしても文句なんて一つもないにゃー」
 上条の苦笑に、土御門のテンションはさらに上がる。
「舞夏がちょっと一週間ほど合宿講義に出るんで、一人寂しく食卓を囲うってのも味気なかったからにゃー。こっちこそ、カミやんに頭を下げなきゃぜよ」
「まいか?」
 土御門の義妹の話に反応したのは美琴だ。
「まいかって、土御門さんが知ってるってことで聞きますけど、ひょっとして土御門舞夏ですか? いつも自動掃除機に乗っているメイド学校に通う女の子の」
 となると彼女は、疑問に思ったことは放置せず解決したがる方なので、即座に問い質す。
「お? そういや超電磁砲は舞夏のことを知ってたにゃー。その通り。あいつは俺の義妹ぜよ」
「そうなのですか? 意外なところで案外、世の中って狭いことを実感いたしますわ」
「白井さんも知っている人なんですか?」
「ええ。彼女は、結構お姉様の周りをウロチョロしていることが多いものですから」
「な、何か殺気っぽいものを感じますけど?」
「ふっふっふっふっふっ。お姉様の傍に居ていいのはわたくしだけですの。その位置は誰にもお譲りしませんわ」
「こらこら、そこのお嬢さん方、話がズレてますのことよ」(建宮口調だが上条当麻)
「て言うか、くろこのその感覚だけは私もついていけないかも」
「確かにそれは言えますが、私は白井さんの言葉遣いや普段の態度には感心していますよ。さすがは常盤台中学の学生様で」
「そう言っていただけると嬉しいですわね。ただ、わたくしも神裂さんの言葉遣いと物静かで落ち着いた姿勢に敬服していますのよ。大和撫子にはわたくしたち常盤台の学生も憧れを持っていますものでして。ねえお姉様?」
「そうね。私も少し憧れるかな?」
「や、大和撫子? そう見えるのですか? 私が?」
「そうか? 神裂は大和撫子と言うよりも野武士の方がイメージ的にしっくり来ると思うぞ」
「そうそう。特にキレたときなんざ目も当てられないにゃー」
「「「あ。」」」
 直後、デリカシーという言葉に無縁の高校生男子二名は、(手加減はされていたが)世界に二十人ほどしかいない魔術サイドの最高峰・聖人の回し蹴りによって、部屋の壁にめり込む羽目になるのであった。
 ちなみにステイルは、
「やれやれ……なんてゆるい話なんだか……」
 会話に入れなかったなら素直に言った方がいいと思うのだが。
「黙れ!……って、あ!」
 突然、立ち上がって、明後日の方向にツッコミを入れたステイルに、五人の美少女は何か奇異な目を向けていたのである。

818Change5−5:2011/09/03(土) 21:55:24 ID:sATMuUOE
「私ととうま。これだけは絶対なんだよ」
 朝食後、さすがに親元を離れて暮らす女性陣が五人も集まれば、かなりのスピードで後片付けも終わる。ちなみに洗い物はインデックスと神裂と白井、美琴は洗濯、佐天は部屋の掃除という分担である。もっともインデックスは神裂と白井の洗った食器を拭いて食器棚に戻すくらいまでしか今はまだできないのだが。
 そんなわけで、三人の男子がベランダに追い出されていたのはわずか一時間ほどだけで、九時にはすでに外出準備万端、本日は犯人探しのための学園都市内探索である。決して、西宮辺りのこの場に居る連中に勝るとも劣らぬ奇妙な五人のように何か不思議なものを探索するわけではない。
 そして、八人バラバラで行動するのも、フォローする相手がいないのはあまり効率がいいとは言えないということで、二人一組で回ろうと上条が提案したところ、即答でインデックスが言い放ったのだ。しかも、なんだかバチバチと放電している。この提案に間髪入れず異を唱えようとした美琴が押し黙ってしまうほどのだったりするから、今のインデックスがどういうものかは押して知るべし。
「い、インデックスさん……? いちおー聞いておきたいのですが、なぜわたくしめと……?」
 そんなインデックスに声をかけられるのはこの場では一人しか居ない。
 と言うか、美琴、神裂、白井、ステイル、佐天、土御門の六人は、インデックスの宣言に萎縮して声を失くしてしまい、何とかしてほしい、と上条に目配せしていたのが一番の理由なのだが。
「昨夜と三日前、とうまは何してた?」
 もっとも、上条に視線を向けるインデックスの目は、どう見ても浮気現場を目撃した女房のノリである。
「な、ナニもしてませんよ!? インデックスが信じる主とかに誓ってもいいですから!!」
「………何でナニがカタカナなのかな? 別に私はそんなこと聞いてなかったんだよ?」
「何か知らんが三日前からお前と御坂の洞察力が凄すぎるぞ!?」
「短髪」
「は、はい!?」
「私ととうま」
「え、ええっと……それはその……」
「昨夜と三日前、私の体で何やったか忘れた、なんて言わせないんだよ」
「はい……その組み合わせでいいです……」
 あまりのインデックスの迫力に、今回ばかりは美琴は小さくなって俯いて、折れるしかなかったのである。
「それでは、わたくしはお姉様と一緒に風紀委員の詰め所に行って来ますわ。幸い、そちらには頼りになるわたくしの相棒がおりますし」
「えっ!? 初春を巻き込んじゃうんですか!? 魔術絡みなんですよ!?」
 白井の提案に待ったをかけたのは佐天である。なんと言っても彼女は初春に、今はまだ巻き込めないと昨日、言ったばかりだったし、しかも原因が魔術であることが分かったのだ。これでは初春を関わらせる訳にはいかないと思ってしまって当然である。
「ですが、衛星を利用して学園都市の不審者を調べ上げるには初春が必要不可欠ですわよ。なんと言っても初春はコンピューター関係に関しては、おそらく、風紀委員、いいえ、学園都市の中でもベスト5に入ってくるほどの凄腕ですもの」
「そ、それはそうですけど……」
 正論を言われては佐天は口篭るしかない。
 白井黒子と佐天涙子では、初春飾利に対する見方が違う。
 佐天は初春を親友だと思っている。だから、二人とも足手まといになることが確実であるにも関わらず、偶然、自分が足を突っ込んでしまった今回の一件に初春を巻き込みたくないと考えた。
 ところが、白井は初春を仕事上のパートナーだと思っているから、学園都市の治安を守る風紀委員としての初春の手を借りると言っているのである。
 ここに正否は存在しない。どちらの言い分も正しいのだ。

819Change5−6:2011/09/03(土) 21:56:22 ID:sATMuUOE
「ねえ黒子? 何で私となの?」
「初春に説明するためには当事者が居ませんと」
「本当にそれだけ?」
「も、もちろんですわ……!」
 完全に見透かしてきた美琴のジト目に、白井は思わず頬に汗を浮かべて視線を逸らす。
「なら、俺はこっちのお嬢さんと一緒に回ってくるにゃー。ステイルとねーちんでいいだろ? 昔からのコンビだしな」
 土御門が佐天の肩に手を回してきた。
「まあ、いいでしょう」
「僕もそれでいい」
「え、ええ!?」
 神裂とステイルは異論なく土御門の提案を受け入れるも、さすがに佐天はそうはいかない。
 できるなら、美琴と白井と一緒に風紀委員の詰め所に行きたかった。いくら美琴や白井の知り合いの知り合いだからと言って、佐天自身が知らない人と一緒に居るなんてことは避けたかったからだ。
 しかし、
「お嬢さん、気持ちは分かるが、こちらにも事情があるんでね。何も言わずに頷いてくれ」
 耳元で、しかも周りに聞こえないくらいの小声で頼み込んでくる土御門の声は真剣そのものなのだ。
 何かある。
 佐天涙子は直感的にそう感じた。そして同時に、軽薄な態度を取ったのは、今の一言を周りに悟らせない行為だったことを理解した。
「わ、分かりましたー! じゃあ、初春のことは白井さんと御坂さんにお任せしますねー!」
 でも、ちょっと棒読みで作り笑顔はマズかったかもしれない。
「大丈夫?」
「ええ、もちろん! ねえ土御門さん?」
「おう。超電磁砲と風紀委員の友人だ。ここは丁重にエスコートさせてもらうにゃー」
 美琴の不安げな声に、土御門に肩を抱かれたまま、佐天は妙にハイテンションな笑顔を浮かべて両手を握って胸のところに持ってくるのだった。
 そんな佐天の態度に周りは少し気になったが、それでも、組み合わせがすんなり決まるならそれでもいいかということで受け入れることにした。
 かくして。
 犯人探しの一日が始まる。同時にそれは、インデックスと美琴を元に戻す方法を探すことでもある。

820Change5−7:2011/09/03(土) 21:57:33 ID:sATMuUOE
 とりあえず、八人は集合時間と集合場所を決める。
 まずは昼前の十一時半くらい。場所はいつもの公園。自販機の前にして。
 上条とインデックスは北へ。
 美琴と白井は東へ。
 土御門と佐天は西へ。
 神裂とステイルは南へと。
 動き始めてすぐ、美琴は肩越しに振り返る。
 その視線の先には上条当麻とインデックス。
 なんだか、インデックスが上条と腕を組んでいる。というより、子供がお気に入りのオモチャを誰にも渡さないという風に見えるくらい左腕をがっちりホールドしている。
 もっとも、美琴は昨夜と三日前のことがあるので何も言えない。視線を再び前に移して、少し先に進んでいた白井を足早に追う。
 ところで、当のインデックスなのだが。
(何か複雑なんだよ……確かにとうまと一緒にいるけど、今の私の体は短髪だし……)
 難しい顔をして正面を見据えていた。
「どうした?」
「何でもないんだよ」
 気遣って聞いてきた上条に、インデックスはちょっと不機嫌に返していた。理由はなんだか意味も分からずモヤモヤするからだが、ちなみにこれは、美琴も同じ複雑さを感じている。
 そんなインデックスの返事を聞いた上条が、歩きながら視線を明後日に向け、頬を掻きながら愛想笑いを浮かべつつ、
「そ、そうか? なら、さ」
「ん?」
「その……何だ、がっちり掴んでいる俺の腕を放してくれないかな〜〜〜って」
「何で?」
「ええっと……その……ほら、今のお前って御坂の体だろ」
「だから?」
「……当たってるからさ」
「何が?」
 ちょっとジト目で問われて沈黙する上条。確かにこれは言い辛い。いくらレベル6クラスの鈍感野郎・上条当麻でもそれくらいのデリカシーは持っている。
 少し訳あって、『インデックス』の裸を見たことがある上条だけに、今、腕に感じている柔らかい物体が、まだ慎ましやかとは言え、それでも普段のインデックスと比べるなら大きいことだけは、はっきりと分かるのだ。
「要するに、お前が御坂の体を使って俺と接触するってのは、後から御坂に俺が怒られると思うのだが……」
「昨日、短髪は私の体を使って、とうまと接触してたからいいんだよ」
 どうやらインデックスはしばらく上条当麻を離すつもりがないらしい。
 正論というか相対的に見れば間違いではないので上条は溜息を吐くしかない。
 もっとも、インデックスは見た目が自分ではないので、どうしても複雑にならざるを得ず、それで少し不機嫌だったりするのだった。


 さて、時間は十五分ほど経過する。

821Change5−8:2011/09/03(土) 21:59:07 ID:sATMuUOE
 ここはすでに上条が住む学生寮の近くではない。
 言うまでもなく街中で、時間はまだ早いが、人が外出していない時間でもなく、周りはちらほら、と言うより結構の数が人たちが休日の街に繰り出しているようだ。
 そんな中、上条当麻とインデックスは歩道を練り歩いていた。
 実のところ、今現在は何もすることがない。
 それは、美琴と白井が風紀委員の詰め所に着いて、学園都市内をサーチしないと近くに不審者がいるかどうかも分からないからである。
 したがって、美琴か白井から連絡があるまでは、二人は当てもなくぶらつくしかなく、傍目には、周りの人たちと同じで遊びに出ている男女、という風にしか見えないことだろう。それも腕を組んでいるわけだから、友達ではなく恋人同士に見られても不思議はない。ただ、出掛け当初と比べるなら、インデックスの腕に入っていた力は格段に緩んでいる。
 ちなみに、インデックスは私服ではなく常盤台中学の制服と学校指定のコートを羽織って行動している。この件に関しては美琴と白井から指摘されていたので、世間的には『御坂美琴』であるインデックスは受け入れるしかなかった。むろん、美琴も『インデックス』なので修道服で動いている。
 問題があるとすれば、常盤台中学の制服はコートも含めて、否が応にも学園都市内であれば目立つ存在である、ということだろうか。
 周りの一人で歩く少年や少女たちから、様々な不穏な視線を感じて仕方がない上条ではあるが、それ以上に不穏な視線を向けている輩が居るので、なんとも言えない居心地の悪さを感じていた。こういうのを四面楚歌と言うのだろう。
「本当に何もしてない?」
「してない」
「絶対?」
「絶対」
「天に召します我らが主に誓って?」
「八百万(やおよろず)の神に誓ったっていい」
「それ日本の神様」
「それくらい何もしてないって断言できるってことだ」
「じゃあ、なんで三日前は同じベッドで一緒に寝てて、昨夜はベランダで一緒に寝てたのかな?」
「御坂が挑発したり乱入したりしてきただけだ。俺の意思じゃねえ」
「なんで短髪が相手だと、あっさり受け入れるんだよ?」
「断じて違う。単なる売り言葉に買い言葉みたいなもんだ。アイツは普段から何かとちょっかいかけてくるから、俺もつい、いつもの調子でやっちまったってだけだ」
「今、ヤったって言ったかも」
「何で『やる』が『ヤる』になるんだ? つか、俺も御坂も何もしてねえ」
「本当に何もしてない?」
「してない」
 とまあ、こんな調子で延々ループである。
 ちなみに。
 先にも述べたが、周りには結構な数の人たちで溢れ、中には男同士女同士といった友人たちで繰り出している者も居れば、単独で出向いてきた者も居る。
 誰がどう聞いても二股のもつれから来る問答にしか聞こえない会話なのに、どう見てもこの二人はじゃれ合っているようにしか見えないのである。
 周りの恨み辛み妬みのオーラは歩みを進めるたびに膨らみ続けているといっても過言ではない。
 しかも、片方の相手は『常盤台中学』の生徒だ。目立つことこの上なく、事実、目立ちまくっている。
「じゃあ、私と短髪が元に戻ったら、今後は私とも一緒に寝てくれるのかな?」
「まて! 今の発言は周りにいらん誤解を招くぞ! てか、俺と御坂が一緒に寝てたのは昨夜だけじゃねえか!?」
「むぐー!」
 というインデックスの不信感たっぷりのセリフを聞いて即座に、上条は掴まれていた腕を引っこ抜いて、インデックスの口を押さえたのだが時既に遅し。
 周りの不穏な気配がいきなり変わった。
 それは上条が固まってしまうほど、はっきりと分かった。
 そう。
 不穏な空気が一気に、どす黒い殺気へと変貌し、周囲から立ち上ったのである。
 まあ、確かに今の上条とインデックスの会話を聞いて、それも独り身の少年少女であるならば、上条を殺してしまいたくなることだろう。
「は、ははは……み、皆さん……? 誤解ですよ誤解……」
 冷たくもオドロオドロシイ視線に囲まれて、言い訳する上条ではあるが、もちろん、それで収まるはずもなく、というか、火に油を注いだ感さえあった。
 もっとも。

822Change5−9:2011/09/03(土) 22:00:56 ID:sATMuUOE
 ドがバンっ!


 いきなり、上条の近くで、と言うより、すぐ隣で巨大な風船が破裂したかのような爆発音が鳴り響いて、その空気は一気に霧散した。
 もちろん、爆発を起こしたのは、
「あ、危ねえ……、何しやがるインデックス!」
「それはこっちのセリフなんだよ! いきなり口を塞がれたから苦しかったかも!」
「何言ってやがる! お前が誤解を招くようなセリフを口走るからだろうか!」
「うるさい! うるさい! うるさい! とうまが短髪と一緒に寝るから悪いんだよ!」
 先ほどのループ問答は小声だったから、まだ落ち着いていられたのかもしれないが、叫び合ってはそうはいかない。
 インデックスのテンションが一気に上がる。感情を抑えられなくなる。
 叫ぶと同時に、今度はインデックス(正確には御坂美琴の体)の頭髪の一ふさが鋼のようにぴんと立ち、再び、電撃が走る!
 しかし、それは何かを吸引するような甲高い効果音と供に打ち消された。
 やったのはもちろん。
「こ、こら! 周りの迷惑を顧みなさい! 今のお前の能力は危ないから!」
 右手を開いた状態でインデックスと正対している上条当麻の『幻想殺し』が発動。
「危なくなんかないんだよ! とうまが私への詫びで一撃喰らえば良いだけなんだから!」
「それ貰ったら死んじゃいますけどね、俺!」
「大丈夫なんだよ! 黒焦げにはなるかもだけど死なない程度に威力は抑えてあるから!」
「それを『大丈夫』とは言わねぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
 咆哮一閃、今度はインデックスは雷をボールのように形作り、野球のピッチャーのように投げつける!
 絶叫しながら、それでも上条は右手で、外野ゴロを完成させようと、レフトからレーザービームで投げてきた剛球をファーストが受け取るように打ち消して、
「むがぁぁぁぁぁ! 知ってたけど、改めて何なんだよ、その右手はっ!!」
 しっかり無傷の上条に、さすがに業を煮やしたインデックスが電撃を乱射。
 先にも述べたとおり、今のインデックスは、御坂美琴には及ばないとは言え、レベル4クラスの電撃使いである。レベル4でも相当の高位能力者であり、事実、『大能力者』と表記されることからも、その威力、押して知るべし。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお!! そ、その辺りの皆さん! こんな壮絶なとばっちりで怪我をしたくなかったら、というか怪我程度じゃ済みませんので、病院や棺桶のお世話になりたくなかったら、早く逃げてくださぁぁぁぁぁぁぁい!!」
 それでも、飛び交ってくる数多の雷撃を、右手を振り回しながらかき消しまくる上条当麻は親切にも避難勧告を叫んで、もちろん、殺気の視線を向けていた周りは即座に四散する。
 誰も居なくなったのと、インデックスの電撃が途切れた瞬間を見計らい、上条当麻もまた、インデックスに背を向けて逃げ出す。
「あぁ! 待つんだよ! とうま!」
 言うまでもなく、インデックスもまた上条を追いかけるべく走り出した。
 追いかけながら当たり前のように何球も何球も電撃ボールを上条に投げつけて、
「こらぁぁぁぁ!! 逃げちゃいけないんだよぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「普通逃げるわっ!! つか、これじゃ御坂と何も変わらんじゃないか!! 不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 普段と中身が違う『御坂美琴』なのに。
 なぜかやっていることは同じな二人は全速力で、今や学園都市でも名物となりつつあるかもしれない、世界で一番危険なのではなかろうかという鬼ごっこを展開するのであった。

823Change5−10:2011/09/03(土) 22:03:32 ID:sATMuUOE
 白井黒子は複雑な気持ちに支配されていた。
 二人一組の提案に、即座に美琴との組み合わせを望んだはずの白井だと言うのに、今は、居心地の悪さとまでは言わないが、物足りなさは感じていた。
 理由はいたって単純。
 愛しのお姉様と、束の間とは言え、二人で居られるというのに、傍に居るのが、どちらかと言えば、自分の方が姉に見えるのではないかという女の子だからである。 
 中身は確かに、御坂美琴なのだが、普段の美琴とは違い、凛々しさも威圧感もカリスマも感じない。可愛らしくて庇護欲はそそられても、白井が望む『お姉様』像とは程遠い。
(むむむむむむ。普段のお姉様であれば衝動的に抱きつきたくなるのですが……)
 ちらり、と横目で『インデックス』を見やる白井。
 むろん、今の白井に美琴に抱きつこうという意思はないのだが、仮に、それをやれば、おそらく周りからは相当痛い目で見られることは容易に予想できるというものである。普段の美琴であれば、常盤台中学全体が美琴に、少なからず白井と同じ思いを抱いているので、変な目で見られることはないことだろう。それはそれで問題かもしれないが、如何せん、女子校ともなれば、恋に恋しようとも、異性はいないし、異性に怖さを感じる者も少なくないので、結果、本来は『憧れ』でしかないはずなのだが、それを『恋心』と誤解する者が数多く居る。もちろん、美琴のように異性に怖さを感じることなく恋心を抱く者も居るが、はっきり言って、それは少数派でしかない。
「ねえ黒子。何でテレポートで行かないの?」
 視線を感じた美琴が問う。いつもとは違う見上げてくる動作に白井は違和感を拭えない。
「初春の到着まで、しばしの時間が必要だからですわ。今、風紀委員の詰め所に着いても何もすることがございませんの」
「まあ……そうね……」
 それだけ呟いて美琴は再び視線を前へと向ける。
 そのまましばらく二人は沈黙したまま歩く。
「お姉様」
「何?」
「そう言えば、今の体で何か不都合はございませんか? インデックスさんは自分の体でないだけに、時折、歩幅や体の大きさの感覚を間違えて何かにぶつかるときがありますのよ」
「そんなことがあったんだ」
「ええまあ。もっとも『お姉様の体』に深刻な傷などは付けておりませんからご安心ください」
「ううん……私は別にそういうのはないかな? この子の体って基本的に私より小さいから、逆に思った以上に、手が届かなかったり、歩く距離が長く感じたりするくらいかも」
「それはそれで不都合そうですね」
「不都合、と言えばそうかもしれないけど、私はここ三日間、アイツの部屋に居て、ほとんど外出してなかったから、『慣れない体の感覚』ってのが、ある意味、イマイチ分かってないのかもしれないわ」
「……」
 やっぱりおかしいですわ、と白井は心中で呟く。
 今の美琴のセリフには『上条の部屋に居た』という行(くだり)があったというのに、白井自身、何も沸き立つものを感じたなかったのだ。
 普段の白井からはありえない。
 上条の傍に美琴が居るだけで、自分の中から壮絶な怒りが沸き起こるというのに、同じ部屋で、しかも三日も一緒に過ごしていると言うのに、インデックスとは違い、白井はほとんど何も思わないのである。初日の夜こそ、インデックスに促されて、上条の部屋に特攻したそのときは、まだ、そういう沸き立つ気持ちがあったのだが、それでも、『今の美琴の姿』を見た瞬間に、その気持ちはほとんど萎えたのである。だからこそ、美琴が上条と一緒に暮らしているというのに何も感じない。
 その理由に白井黒子はなんとなく気づいている。
 外見が『御坂美琴』でない以上に、今の美琴自体も『普段のお姉様』の立ち振る舞い、心意気、見せる態度が違うからだ。
 白井黒子が慕い想い焦がれる『お姉様』ではないからだ。
 再び会話は途切れる。
 基本、おしゃべり好きの二人のはずなのに、途切れた会話を寄り戻そうと思わない。
「ちょっと、今、初春がどの辺りにいるか確認してみますわ」
 かと言って、押し黙っているのもなんだか居心地が悪いので、白井は携帯を取り出しアドレスをプッシュする。
 しばらくの間、呼び出し音が鳴り響き、
『もしもし。どうしました、白井さん?』
 かちゃ、という音響と供に、白井の耳には聴き慣れた同僚の甘ったるい声が届いた。

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「初春、今どこに居ますの?」
『詰め所まで、あと五分ってとこでしょうか。白井さんの方はどうですか?」
「ということは、初春の方が早く着きそうですわね。でしたら、詰め所に着いて、コンピューターを立ち上げたところで、もう一度、連絡下さいます?」
『分かりましたー。ところで白井さん。今回はどうしたんですか? 私たち二人とも非番の日に、それも結構早い時間に、突然、呼ばれてビックリしたんですけど」
「説明は、そちらに着いてからしてあげますわ。それまでに準備をよろしくですの」
『はーい。あ、でも一つだけいいですか?』
「何ですの?」
『今、白井さんの傍に佐天さんは居ます?』
「いいえ、おりませんわ。どうして、そんなことが気になりますの?」
『あ、いえいえ、居ないならいいです』
「んー? まあいいですけど。では、後ほど、よろしくお願いしますわ」
『あい。お茶菓子用意して待ってますからねー』
 言って、通話は切れた。
 携帯を閉じ、白井黒子は瞳を伏せて一つ溜息を吐く。
 風紀委員の仕事とは、危険と隣り合わせであり、町中を検索するという仕事を伝えてあった割には、初春の声からは緊張感をまったく感じられなかったからだ。
 もしかしたら初春なりの、緊張緩和のための気遣いなのかもしれないが、それでも、この緊張感の無さはどうかと思う、と白井は考える。
 そんな物思いに耽っていた白井黒子は突然、現実に引き戻された。
 なぜなら、左腕がいきなり何かに引っ張られたように感じたからだ。
 即座に視線を移す。
 そこに居たのはインデックスの姿をした御坂美琴。しかも白井の左腕を抱え込むように掴んでいる。
 それは、白井の知る美琴とは、(外見という意味ではなく)まったく違う表情をしていた。
 まるで肉食獣に追われる小動物のように。
 まるで母親とはぐれてしまった幼い子供のように。
 真っ青になって、泣くことすらできず、世界の全てに怯えているような表情で震えているのだ。
「……お姉様?」
「黒子……今から私が言うことは、黒子の思い描く私とはまったく違うかもしれないけどいい……?」
「どういう意味ですの?」
「こんなことは黒子、アンタにしか話せないって意味よ……」
 ――!!
 白井黒子に背景も含めて協調反転したような衝撃が走る。
 白井黒子には分かる。
 今、御坂美琴が口にしようとしていることは、以前は、完全に蚊帳の外に置かれたときに、他の誰かに見せたものと同じものだということを。
 それは、夏休みから九月上旬にかけて、白井の前では気丈に振る舞っていたにも関わらず、上条当麻だけには見せた弱さと縋りたい気持ちであるということを。
 そして、それが何を意味しているかを。
「分かりました……拝聴いたしますわお姉様……」
 白井の声が緊張と、そして感動で震える。
 これまでは、決して後輩である自分を巻き込ませまいと『強さ』ばかりを見せてきた『先輩』が初めて見せようとしている『弱音』。
 白井はいつも思っていた。
 レベル5である御坂美琴は誰にも頼れない。誰からも頼られる存在でなければならない。
 それは間違いではないのだが、それでも白井は御坂美琴の力になりたいと思っていた。
 いくらレベル5でも一人ではどうにもならないときがある。そんなときに相談される相手、縋れる相手にずっとなりたいと考えていた。
 しかし、それは白井黒子が御坂美琴に、レベルではなく精神的に対等の相手として、その存在を認められる必要があり、先輩後輩の関係がある今では、なかなか成し得ないことでもあった。
 美琴は自身のプライドを捨てた。いや、プライドを捨てても構わない相手だと、白井黒子を認めたのだ。
 相棒として、パートナーとして、それに何より、心を許せる『親友』として、白井黒子を認めたのだ。

825Change5−12:2011/09/03(土) 22:06:46 ID:sATMuUOE
 なぜ、そう思うようになったのか。
 答えは単純。
 他の誰かと入れ替わって、能力を失くして、それでも白井黒子は自分を慕ってくれている。自分の力になろうとしてくれている。
 それをこの三日間で強く感じたからだ。
 うわべや打算などではない心意気が見えたからだ。
 だからこそ、包み隠さず御坂美琴は白井黒子に打ち明ける。
「私ね……怖いのよ……」
 恐怖に慄くか細い声で。白井が知っている悠然ととしている御坂美琴とはまったく違う弱々しい声で。
「能力を失くしたことが、ですか? それとも元に戻れないかもしれない未来予想図が、ですか?」
「ううん……」
 一度、かぶりを振って美琴は押し黙る。白井は美琴の次の言葉を待っている。


「……頭の中にあるたくさんの妙な書物……」


 外見インデックスの、しかし、それは間違いなく御坂美琴の、恐怖で慄く透明の雫が左目からこぼれる。
「なんなの……これ……妙な書物の内容も全部、意味が分かるのよ……これ……『魔術』に関する記述なの……しかも、その中には、恐ろしく危険な内容のものも多くて……こんなのがずっと頭の中に渦巻いているのよ……」
「お、お姉様……!」
「しかも、三日前から、見聞きしたこと全部覚えてる……どうでもいい些細なことまで全部……」
「しっかりしてくださいまし、お姉様!」
「怖い……怖いのよ……黒子……私……どうなっちゃうの……? こんな怖い『魔術』が頭の中に渦巻いて……何も忘れることができないなんて……もし……もし、元に戻れなかったら……」
 美琴は頭を抑えてうずくまる。
 白井黒子は衝撃に支配された。
 これまでとまったく違う御坂美琴を目の当たりにしたからではない。
 インデックスが、『決して、見聞きしたことを忘れない』能力の持ち主であったからだ。
 彼女が魔術についてよく知っていることは理解していたが、それは単に勉強熱心だからとしか思っていなかった。
 しかし、現実は違った。
 それはどれほど恐ろしい能力だろう。人は誰しも忘れたい過去や事柄は絶対にある。特に『恐怖』の記憶となれば忘れたいものの筆頭だろう。しかし、それは時間の経過と供にぼやけて和らいでいくのもまた確かである。
 ところが、絶対に忘れない、となるとどうなるか。これほど恐ろしい能力は無いと思う。
 そんな能力を持ちつつ、それでも、アレだけ平然としていられるインデックスとはいったい何者なのか。
 そう思っても仕方がない。
 しかし、白井黒子は、絶望に等しい恐怖に怯える御坂美琴の姿に、その疑念はどうでも良くなった。当初、抱いていた複雑な気持ちも吹き飛んだ。
 怯え震える美琴の両肩を力強く掴む。
「大丈夫です、お姉様。お姉さまには黒子が付いています」
 落ち着いた声で、力強く、それは頼もしく。
「今のお姉様は何も忘れない、と仰いましたわね? でしたら、万が一、元に戻られなくて