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とあるSSの禁書目録 PART8
1■■■■:2010/04/17(土) 20:52:46 ID:.1IaepFo
ここは「とある魔術の禁書目録」のSSを書いたり読んだり原作の予想外の展開にテンパってみたりするスレッドです。

【全般的な注意事項】
1.このスレはsage進行です。レスする際には必ずメール欄に半角で『sage』と入力しましょう。
2.ネタバレ注意。ネタバレは本スレ同様公式発売日の0時から。
3.基本マターリ進行で。特に作品及び職人への不当な文句と思われる発言は厳禁。
4.レスする際はスレの流れを確認してからにしましょう。

【投稿時の注意】
1.まずは原作を読み込む。最低でも登場人物の口調や性格は把握しておきましょう。
2.オリジナル設定や妄想はほどほどに。ここは『とある魔術の禁書目録』の二次創作を投稿する場です。
3.書いた作品はテキストファイル等で保存。投稿ミスによる文章消去を防ぎましょう。
4.投稿前に深呼吸して保存したテキストを読み返す。誤字脱字はありませんか?分量は十分ですか?
5.投稿時には作品タイトルを、投稿後には終了宣言を。共有の場なので始めと終わりは明確にしましょう。
6.特殊だったりや好みが分かれたりするシチュは投下前に警告しましょう(例 百合,BL,鬼畜,死にネタ等)。
7.18禁(と思われるもの含む)はスレ違い。

【前スレ】(Part7)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1262619009/


※ 参 考 ※
禁書風味SSの書き方
ttp://www12.atwiki.jp/index-index/pages/1682.html

【次スレについて】
次スレは原則として>>980の人にお願いします。
立てる前には宣言を、立てられない場合は代わりの番号指定をお願いします。

【まとめ】
とある魔術の禁書目録 Index SS自作スレまとめ
ttp://www12.atwiki.jp/index-index/pages/284.html

2■■■■:2010/04/17(土) 21:00:07 ID:CIy2dBSM
>>1
乙にする!

3■■■■:2010/04/17(土) 21:04:26 ID:kbsFAY2U
>>1


4■■■■:2010/04/17(土) 21:29:11 ID:aV05HkiU
>>1

乙である

5■■■■:2010/04/17(土) 21:37:15 ID:M49ecp1U
>>1
乙だにゃー

6■■■■:2010/04/17(土) 21:39:40 ID:OIUDVaEQ
>>1
乙なのよな

7■■■■:2010/04/17(土) 22:56:56 ID:SFk7xZcI
>>1
乙なの!乙なんだよ乙なんです三段活用!

ところで、無粋な質問かもしれんが初作品を
投下したりしてもいい空気?
ちなみにネタはあるが文章は作ってないので、
投下するとしたら結構時間がかかる。

8from-ING:2010/04/17(土) 23:44:06 ID:nEyR2nFE
>>1
乙です!!
>>7
大丈夫です!どんどんよろしくお願いします!!

では、題名
『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』
で、先陣を切らせていただきます!

9『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/04/17(土) 23:46:08 ID:nEyR2nFE
<11:15 AM>


ゴッバァァァ!!と進む道にあるもの全てを巻き込みながら、水の壁は突き進む。左右を壁で挟まれ、前方には津波。
後方は行き止まりという八方塞がりの状況で一方通行(アクセラレータ)は回避行動にでた。
上。
御坂妹を抱え、ただ足に力を入れ、飛ぶ。
「きゃ……」
いきなりのことで御坂妹が小さな叫び声をあげたが一方通行は聞いていなかった。
足の裏にかかるベクトルを操作し、驚異的な跳躍で壁を蹴り一気に建物の屋上に駆け上がる。
(ヤツらの狙いはコイツだァ……逃げるか、戦うか……)
逃げる、という選択肢を一方通行に選ばせた理由はひとえに御坂妹の存在だった。
一方通行の最優先順位は敵の殲滅や己の安全ではない。御坂妹を”無傷で”護ること。
一方通行が何も考えずに特攻をかまして敵を潰しはしたが御坂妹が死んでしまいました、では話にならないのだ。
フェンスを無理やり突き破りどんよりと曇る空が広がるビルの屋上へ一方通行は降り立つ。
彼の予想通り、この建物は進入禁止になっているのか使われていないだけかはわわからないが、人の気配や居た形跡のまったくない古びた場所だった。
さびだらけのフェンスに、ぼろぼろの貯水タンク。ところどころにゴミも落ちていることからここ最近使われてないことは明らかだ。
「お前はココで少し待ってろォ……」
ゆっくりと御坂妹を地に降ろし一方通行は天を仰ぐ。彼の白髪が風に揺れた。
どうやら今日は少し風が強いようだ、と一方通行は適当に考える。
「あなたはどうするのですか、とミサカは嫌な予感を胸に抱き、あなたに問いかけます」
御坂妹は撃たれた右腕を抑え、痛みに耐えながら一方通行を見る。
その様子を見ながら一方通行は頭を掻き、ポケットの中のハンカチを御坂妹に放った。
「それで傷口を抑えて止血しとけェ…」
「はぐらかせずにきちんと答えなさい、とミサカはあなたにの言葉に若干の怒りを覚えつつ先ほどの質問と同じ内容の言葉を繰り返します」
「………言わなくてもわかってンだろォ?」
一方通行の護るべきものは御坂妹だ。これだけはなにがあっても変わることはない。
しかし、尻尾を出してくれた〔パンドラ〕をこのままを逃がすなんてことをするつもりは一方通行にはさらさらなかった。
能力に時間制限が付く一方通行はその場で潰せるものは潰しておきたい。
「……………………………………………」
そのことをわかっているのか御坂妹は何も言わなかった。ただ一方通行を真剣な瞳で見続ける。
そんな彼女を見て、一方通行は眉をひそめた。
「なにか言いたそォだな」
「いえ、なんでもありません、とミサカは心の内を隠しながらあなたの言葉に適当な相槌を打ちます」
「……………そォかよ」
一方通行は御坂妹に背を向け、戦場へと足を向ける。
その背を見て、御坂妹は思わず唇を噛みしめていた。
実のところ、御坂妹は一方通行に戦って欲しくなかった。これ以上人を殺してほしくなかった。
誰かを救うために、誰かを殺す。それはどれほどのことなのだろうか。
もともと感情に乏しい御坂妹には想像もできない。そして、想像すらできないことを一方通行に”続けさせている”原因は自分達だ。
その事実が御坂妹を悩ませた。
血を止めるハンカチを巻く力に無意識に力が入る。
自分に力があれば、と思った。
自分の問題を自分で解決できるような。
誰かに護られるのではなく、誰かを護れるような力。
誰かに自分の辛さを押しつけなくてすむ力を彼女は望む。
(あなたなら……)
苦しい、という感情に歯を食いしばりながら耐える御坂妹の表情は悲痛でゆがんでいた。
その胸の痛みは、己の傷に耐える痛みではない。
誰かのことを思っての、胸の痛み。
(あなたなら、こんな時どうするのでしょうか、とミサカは一人の少年の姿を思い浮かべながら、自問自答を繰り返します)
ついこの間まではなかった感情に御坂妹はただ耐えることしかできなかった。

10『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/04/17(土) 23:47:57 ID:nEyR2nFE
不意に一方通行は足をとめる。
(なんだァ?)
なにか違和感を感じた。自分の周りに奇妙な感覚を覚える。まるで、周りの空気が自分を狙う刃になったかのような。
その違和感の正体に一方通行はすぐにたどり着いた。
「離れてろォ!!」
ゴアアァァァァ!!と一方通行の叫びに呼応するように、屋上に烈風が吹き荒れた。
その風に”御坂妹は”体を浮かせ、さびれたフェンスに勢いよく叩きつけられる。
さびたフェンスは変形しながらも御坂妹を受け止めたが、突然のことで受け身もなにも取れなかった御坂妹は衝撃で一瞬息が止まった。
(ガッ、ア………な、なにが)
一方通行の操る風ではない。一方通行の操る風は御坂妹を吹き飛ばすなんてことは絶対にしない。
下から上へ押し上げるような風の動き。人を簡単に吹き飛ばす風の力。
「上に逃げれば大丈夫、とでも思ったのかな?」
その力を丁寧に操れば、人を飛ばすことなど造作もない。
ビルとビルの間から、にこやかに笑う少女と無表情の少年が空を飛んで姿を現す。
「…………そう簡単に、逃がしはしないよ」
少年の小さな呟きが屋上に響く。
一方通行は周りを見渡し、少女を一瞥(いちべつ)し、御坂妹の無事を確認して、少年を見据え目を細める。
「この能力……風力使い(エアロシューター)かァ?」
「…………ご名答。さすが学園都市第一位の頭脳だ」
一発で能力を看破したからか、少しだけ目を見開いて無表情な少年は感情のこもっていない平坦な言葉を続ける。
「…………あなたも風を操ることができるらしいね。最大風速は百二十メートルだっけ?」
僕だって百メートルも出せないのに、と少年は言葉を吐く。
その動作には、感情というものがまったくというほどなくただただ演技くさいものだった。
「…………凄いものだよ。あなたの能力と、それを完全に操作できる演算能力は素晴らしいものだ。けどね」
と、少年は片手を水平にあげた。
シン…と空気が一変する。
周りを漂う空気の流れが変わった。
漂うような風の動きが、不規則な風の動きへと変化する。
自然風ではない、少年の完全な管理下に置かれた風は屋上を中心とするように不規則に渦巻く。
それが意味するものを理解して一方通行は眉を細めた。
「…………ほら、これであなたは、風を使えない」
「………………………………………………………」
少年の言葉に一方通行は無言で答える。
一方通行の能力はあくまで『ベクトル変換』だ。
烈風の槍は風の動きの向きを変えることで操作しているにすぎない。そして、操作をするには演算が必要なのだ。
風という大気の流れの計算は複雑なものであり一方通行はすべての風を操れるわけではない。
そう、一方通行には”自然風以外を操ることはできない”。
「さぁ、君の大きな武器がなくなったね」
とっ、と音を立てて少女が地に降り立つ。
「この状態で、あのクローンを護りながら戦うことなんて君にできるかな?」
少女の手にはガラス玉。それを指の上でくるくると回しながら少女は一方通行を見る。
少年は風に乗り、空中に立つ。その瞳は一方通行にだけ向けられていた。
「…………油断禁物。相手はあの『一方通行(アクセラレータ)』だ」
「そうだね。戦いの中での油断は命を落とす」
言葉とは裏腹に二人にはかなりの余裕が見て取れた。
それも仕方ないだろう。一方通行の唯一の遠距離攻撃とも言える風を止め、狙うのは大して動けない御坂妹。
絶対的有利な状況であることに間違いはなかった。
「ねえ、おとなしくクローンを渡してくれないかな?ボク達にしても今、君と戦うのはあまりに無意味だ」
子供を諭すように、あるいは小バカにしたように少女は言う。
その言葉に対し、一方通行は引き裂いたような笑みを浮かべた。
「お前らさァ………なンか勘違いしてンじゃねェの?」
悲しいものを見るような眼で、
「お前ら二人をオレだけで抑えられない、だァ?」
それでもどこか楽しそうな顔で、
「風が使えない?それがどうしたってンだァ……」
腕を左右に広げてから、


「その程度で揺らぐ、最強の座じゃねェンだよ。なあァ!!!」


ダゴン!!と屋上のコンクリートを踏みつぶし爆砕しながら一方通行は空を駆けるツバメのように少女の元へ疾走した。

11『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/04/17(土) 23:50:21 ID:nEyR2nFE
「こーしょー決裂かな。すこし予定より早いけど、殺してあげるよ」
少女はもてあそんでいたガラス玉を握り、ポンと友達にボールを渡すような気軽さで一方通行(アクセラレータ)に放りながら後ろに後退していく。
ガッシャァァン!とかん高い音が響き一方通行が少女の懐に入る前にガラス玉は破裂し、中からは先ほどと同じく大量の水が一方通行の動きを止めるための壁となった。
しかし、一方通行は止まらない。
「ギャアハハァア!!そンなもンがこのアクセラレータ様に効くと思ってンのかァ?脳みそお花畑の三下がァ!!!」
一瞬の躊躇なく水の奔流に突っ込んでいく。一方通行のすべてを反射する絶対防壁はそんなものを寄せ付けはしない。
そして、何事もなかったかのように一方通行は水の壁を突き破り、
一方通行は奇妙な現象を見た。
(どォなってやがる?)
すべてのベクトルを操作し、少女の作りだした水を少女自身に跳ね返るように能力を使ったのに、水は少女の方ではなく自分の後ろや、左右に散った。
”思い通りに”ベクトルを操作できない。
(計算式をミスったかァ?)
頭を傾げる一方通行は知らない。彼の知らない法則の『魔術』というものがあることを彼はまだ認識していなかった。
けれど、今はそんなことを気にしている余裕はない。
正直なところ今の状況は不利だ。遠距離攻撃の風が使えない以上、やるのは自然と近接攻撃に限られる。
近接攻撃において、『実験』を止めたあの少年や木原数多のようなイレギュラーを除き一方通行に敵はいない。
しかし、今は御坂妹が一緒なのだ。彼女をかばいながら長時間戦うのはいくら一方通行でも難しい。
だからこそ彼は勝負をできるだけ早く終わらせるために全力で潰しにかかる。
「やっぱこんなのじゃだめか……」
たやすく水の奔流を突破した一方通行を見て、少女はバックステップでさらに後退していく。
それと並行しながら再びポケットからガラス玉を取り出した。
「さっきから何回やっても同じことはわかってンだろうがァ!」
一方通行は地を蹴りベクトル操作した脚力でバックステップにより離れたはずの少女との距離を零に縮める。
一瞬で少女の懐に入り、腕を突き出した。
触っただけで死に至らしめる右手が少女に迫る。
しかし、少女は慌てない。よっ、と小さく声を出しながら少女は一方通行の右手を体を反らすことで完全に避けきった。
そして、フリーになった一方通行の顔面に少女はガラス玉を押しつける。
「ドカン♪」
バウン!!とガラス玉が破裂し、水流が一方通行の視界を遮った。
唐突に回転。
水流は渦を巻きながら一方通行の体を包みこむ。
(ンなもン効くかっての!!)
それでも、反射の壁は壊せない。水流の壁を無理やり破り、一方通行はいとも容易く拘束から逃れた。
破壊された水の檻は蒸発したかのように跡形もなく消え去り、なんの形跡も残さない。
周りを見渡すと、標的の二人は一方通行とは離れた場所に移動していたのが見えた。

12『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/04/17(土) 23:51:03 ID:nEyR2nFE
「ダメ……ボクが何度やってもあの『反射』の壁は突き破れないや」
「……………ミーナとは相性が悪すぎるから仕方ない」
言葉に似合わぬ笑顔を表情に浮かべ少女は屋上の隅に移動していた。
空を飛びながら言う少年の言葉に返すように
だけど、と少女が続ける。
「足止めはできるね」
「……………想像以上の効果だった」
少年は無表情の顔の唇を少しだけ、上に釣り上げる。
そんな二人から目を離さず一方通行は御坂妹に近寄った。
横目で御坂妹を見ると強い意志を感じさせる目があの二人に向けられているのがわかる。
「立てるか?」
「少しつらいですがいけます、とミサカは体の状態を確認しながらあなたの問いに答えます」
体にそれほど異常はないようだがこのまま戦闘を続けるとどうなるか一方通行には予想できなかった。
負けることはあり得ないが、勝つこともできるかどうかがわからない。
「………………………………………………………」
ここで一方通行の選択肢に『逃げる』が出てきた。
このまま戦うか、逃げるか。この二つの選択肢が一方通行の中で拮抗する。
御坂妹を見る。御坂妹は右腕から血を流し、辛そうに息をしていた。
考えてみると、妹達(シスターズ)の全員は個体の調整中だ。
十時間も逃走しているためかなり体力を消費しているし、もしかしたら危険な状態かもしれない。
すると、一方通行の中で『逃げる』という選択肢が大きくなった。
敵の二人を見る。少年は風に乗って空を飛び、少女はガラス玉を手でもてあそんでいた。
少年の力は風力操作。少女の力は水流操作といったところだろうか。
この二つの力など、一方通行の力の前には恐るに足りない。
いくら一方通行の風を封じたとしても相手には彼自身を傷つける方法など持ってはいないのだから。
すると、一方通行の中で『戦う』という選択肢が大きくなった。
再び拮抗する選択肢に一方通行は苛立ちを覚える。
(悩むのはオレの性にあわねェ……コイツのことを考えるならァ…)
御坂妹の今の体の状態が危ないか、危なくないかがわからない一方通行は選択肢に迷った。
この相手との距離が十分ある状態で逃げるための条件を彼は考える。
今、このビルの屋上は無表情な少年の能力により完全に密閉されている。
一見、何もないように見えるが肉を簡単に寸断する風の刃が屋上の周りを終始周っているのだ。
出ようとするもの、入ろうとするものすべてを妨害する風の結界がその場に出来上がっていた。
一方通行一人ならば問題はない。こんな風の刃など彼の能力があれば簡単に反射できるのだから。
ここでの問題は御坂妹だ。彼、一方通行の能力は最強だが”自分しか”護ることができない。
ここで、無理やり御坂妹を連れて結界を突破しようとすると一方通行だけが無事で御坂妹が細切れになってしまう。
それでは本末転倒だ。だから、今の状態では逃げることはできない。そう、”今の”状態なら。
(ヤツラを潰すための風のベクトルを操ることはできねェ…)
ならば、
(御坂妹(コイツ)を連れて逃走するさいに風の結界が邪魔だァ……)
それならば、
すべては『風』。風さえどうにかなればすべて解決する。
その風を掌握しているのは無表情の少年だ。つまりは、あの一人の少年さえ潰せば、
(あのクソ生意気な野郎をぶっ潰せばあとはこっちのもンだァ……逃げようが戦おうが関係ねェ)
一方通行は標的を少年にだけ絞る。あの少年を潰すためだけに力を集中させる。隣にいる少女の攻撃など気にする必要もない。

13『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/04/17(土) 23:51:43 ID:nEyR2nFE
目的を明確に手に入れた一方通行は不気味な笑みを浮かべた。
と、一方通行の隣の御坂妹が立ちあがった。ふらふらと揺れながら御坂妹は口を開く。
「私にできることはありませんか?とミサカはあなたに指示を仰ぎます」
体を襲う辛さに耐えながらはっきりと発音する御坂妹。
一方通行はそんな御坂妹をいちべつし前に一歩踏み出して、一言。
「オマエがやるべきと思ったことをやれ」
その一言にきょとん、とした表情を御坂妹は浮かべる。
「やるべきこと、とは?とミサカは疑問をそのままぶつけます。」
首を傾げる御坂妹に一方通行は知るか、と呟く。
「オレの邪魔さえしなけりゃそれでいいンだよォ」
ぶっきらぼうな言葉。
その言葉に御坂妹は首を縦に振ることで答えた。
「わかりました、とミサカは内心なにが言いたいのかわからねえよバカと思いながら適当に頷いておきます」
「……………………………………………」
一方通行は一瞬だけ、なんとも言えない表情となりため息を吐く。
その時だった。
ズバン!!と一方通行と御坂妹の間を風の刃が走る。
丁寧に間を狙われたのか御坂妹に怪我がなかったからいいものも御坂妹を狙われていたら確実に体が二つになっていただろう。
(チッ!何を油断してンだオレは…)
容易に想像できる残酷な未来を見て、一方通行は頭の中に忌々しいげな言葉が響いた。
「……………さあ、再開しよう一方通行」
ポケットに手を突っ込みながら無表情な少年は空を飛ぶ。
「……………今度は僕の番だ」
少年は唇の端を大きく釣り上げながらそう言った。
「舐められたもンだなァ……テメェ一人でオレとやりあえるなわきゃァねェだろ!!」
一方通行はさびれたフェンスを片手で掴んだ。
バキョン!!とフェンスを根元から無理やり抜き出し一方通行は少年に向かって投げつける。
ベクトルを操作されたフェンスは急回転しながら空を切るように進む。
「……………こんなものに意味はないよ」
と、少年の目の前に来た瞬間見えない壁にぶつかったように粉々になった。
フェンスの部品が宙を舞う。そして、その部品の間から身を沈め発射態勢に入っている一方通行を少年は見た。
ゴガン!!という音とともに一方通行の体がフェンスの部品に紛れながら空を飛ぶ。
脚力のベクトルを操作し彼は一瞬で少年との距離を縮めたのだ。
「こンな簡単に死ンじまうんじゃ面白くねェぞ!!」
求めるものに手を伸ばすように一方通行は両腕を突き出す。
少年の周りにあった見えない壁をいとも容易く粉砕しその両手は少年の体に触ろうとして、


一方通行の両手は空を切った。


「ハァ?」
目と鼻の先には無表情な少年の顔がある。しかし、どれだけ触ろうとしても触れない。
まるで何もそこにないかのように触れない。
(光学……迷彩?)
空気密度を変えることで光の屈折率は、変わる。
見えているものがその場にない、光の虚像。一種の蜃気楼である。
見えるところに本体はいない。その現象が一方通行の目の前で起こっているのだ。
心の中で舌打ちし、そのまま地に降り立ち一方通行は上を見上げると、
「……………避けないと死ぬよ?」
そんな呟きが”真後ろ”から聞こえてきた。
そこに疑問を抱いた瞬間、一方通行は口から血を吐き、地に膝をついていた。

14『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/04/17(土) 23:52:28 ID:nEyR2nFE
<11:15 AM>

「…………ッ!?」
『御坂美琴』が引き金を引いた瞬間、上条は目をつむった。バァン!!という乾いた銃声が駐車場に響く。
上条はビクッと体を震わせ撃たれたという思いから体を硬直させた。カン、と近くで地下駐車場の整理された地面に薬きょうが落ちる音が聞こえる。
思い通りに動かない体から力が抜けていくのを感じた。近くで聞いた発砲音で耳がジンジンする。
(……………………あれ?)
しかし、それだけだ。強張った体がいう事をきかないだけで銃弾が体に当たった痛みがない。
「……?」
疑問に思いゆっくりと上条は目を開いた。黒しかなかった視界が色鮮やかな視界に変わっていく。
上条の見る、色鮮やかな視界に映るのは、
銃を持っている腕から血を流しており、その手を押さえている『御坂美琴』の姿だった。
(なにが…いったい………どうなってんだ?)
後ろを見ると停まっている車のガラスが割れていた。どうやら銃弾はそれたらしい。
今、何が起きたのか。
誰が上条を助けたのか。
誰がこの状況を見ているのか。
そんなことを考えていられるほど上条に余裕はなかった。
「痛い……痛いよ、とうま。どうしてこんなに痛い思いをしなくちゃいけないの?私は、ただ…」
押さえた手の間からあふれ出るように赤い血が流れる。地にしたたり落ちるその血はとても紅かくて、生々しい色だった。
「ただ、当麻を殺したいだけなのに!!」
その叫びに呼応するかのように前にいる『御坂美琴』の目が紅に染まった。
人を殺すという殺意に満ちあふれた紅に。
「……………クッ!?」
その目の色に怯えるかのように上条は右手を前に突き出した。
同時、ダァァァン!!という轟音と共に上条の右手へ衝撃が走る。
まるで見えない爆弾が上条の手に触れた瞬間爆発したかのような唐突な衝撃だった。
(爆、発した……?)
右手を避けるように爆炎が上条の左右に散る。
数秒後、何事があったかもわからないように炎は消えていた。
(御坂の能力で……爆発なんて起こせるのか?)
しかし、上条から後ろの綺麗な道と炭化している左右の道との色の違いが今なにが起こったかを明確に示している。
「どうして、死んでくれないの?どうして、殺されてくれないの?当麻は私のお願いを聞いてくれるっていったじゃない」
純粋に殺意という感情を瞳に宿し、『御坂美琴』は上条から三メートル離れたところに立つ。
だだをこねる子供のように『御坂美琴』は叫ぶ。
「ウソ?ウソをついたのね?あれだけ私に偉そうに説教しといて…自分のことを棚に上げてんじゃないわよ!!」
その光景を見てもなお上条は理解が追いついていなかった。
これが本物の『御坂美琴』なのか、そうでないのかも。
『御坂美琴』がこんな人間ではない、と上条は思う。
しかし、自分が知らない『御坂美琴』がいるだけでそれは自分の勘違いではないか?
そう、思ってしまう。
(俺の知っている御坂は……本当の御坂だったのか?)
その知らないものを認めてしまう事が上条は怖かった。
友達とも言える、『御坂美琴』に殺意を向けれられることがとてつもなく怖い。
今まで、どんな敵の殺意にも真っ向から立ち向かった少年はたった一人の少女の殺意に恐怖を覚えていた。

15『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/04/17(土) 23:53:30 ID:nEyR2nFE


と、その恐怖を加速させるように『御坂美琴』が口を開く。
「ウソをついた当麻は自分がどうなるかわかってる?」
先ほどの叩きつけるような言葉とは裏腹に、静かにつきつけるように『御坂美琴』は話す。
喜怒哀楽が激しい『御坂美琴』に上条は違和感を覚えながらも、やはり本物でないという確信がもてない。
多くの違和感を見れるのに上条には確信が持てない。
「ほら、昔こんな歌があったじゃない…」
『御坂美琴』は目で”離さない”と語るようにしっかりと上条を見つめて、
「ゆ〜び、き〜り、げぇ〜んまん…」
舌を滑らかに動かし、歌を紡いだ。
「ウ〜ソついた〜ら針千本の〜ます」
ジャラララ、と金属のぶつかり合う音が上条の鼓膜を震わせる。
音源に目を向けるとさっきからなにもなかったはずの虚空からゆうに五センチの長さがあろう銀色の針が数えきれないほど出現していた。
「こ、これは………ッ!?」
一、二歩後退しながら、上条はこの現象に似たものを思い出していた。
通常ではありえないこの現象は。
超能力では説明のつかないこの現象は。
「魔術ッ!?」
その言葉に『御坂美琴』は答えない。
もう使わないのか銃を後ろに投げ捨て、『御坂美琴』は上条に血のしたたる右手を向ける。
「もう、いいかな?」
『御坂美琴』はクスクスクス、と笑い、


「アンタの命もここで終わりだよ、『幻想殺し(イマジンブレイカ―)』」


『御坂美琴』の姿が一瞬”ぶれた”。
ほんの一瞬。目の錯覚かなにかと勘違いしてもおかしくないほどの一瞬だけ、姿がぶれた。
「お、お前は御坂じゃ……ない?」
「いいえ、私は本物の『御坂美琴』よ」
クスクスクス、と『御坂美琴』は笑う。
「絶対能力者進化計画も知ってるし、妹達(シスターズ)のことだって知ってる。あんたと私しか知らないようなことを知ってる時点で私が『御坂美琴』と証明してるようなもんじゃな

い」
それに、と呟き彼女は言葉を続ける。
「『御坂美琴』が『上条当麻』を殺すことに違和感を感じることが間違ってんのよ。でもね、私はあんたのことが嫌いではなかったわ……」
と、目の前の少女が唐突に表情を変える。
愛らしい恋人を見るように、愛おしい子供を見るように。
『御坂美琴』は見る者の目を奪う女神のような穏やかな笑みを浮かべた。
「私は、当麻のことが大好きだったよ」
ズアアア、とおよそ千本の針が上条に襲いかかる。
その様子をひどくスローモーションに見えて、上条は右手を突き出すことも忘れていた。
上条は、ひどく回転の遅い頭の中で考える。
目の前にいるこの少女は本物の『御坂美琴』ではない。
見れば見るほど、本物と似ているこの少女には本物と明らかに違う部分があり、その部分に、早く気づくことができなかった。
決定的な部分なのに。
とても分かりやすいとこだったのに。
とても簡単なことに気づくことができずにただ疑うことだけしかできなかったことがひたすら悔しい。
「ちくしょう…」
上条が呆然と見つめる千本の針は、すべての方向を上条に向け突き進み、

16『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/04/17(土) 23:54:04 ID:nEyR2nFE


ドッ、と上条は”真横”から衝撃を受け、横に飛んだ。
「ゴッ………ハァ」
脇腹への衝撃に思わず口から息をもらしながら、足が宙に浮く感覚を感じて、それが誰かに担ぎ上げられていると上条は気付く。
少し遠くにさっきまで自分がいた場所が見えた。その場所には千本もの針が地面に刺さっている。
直後、ゴバァァァン!と爆発し、刺さった針を吹き飛ばしながらその場は火の海と化した。
床の爆発に巻き込まれ、上条の立っていた場所にあった自動車が大破する。
大破した自動車のドアやライトの部品が周囲に散り、砕けたフロントガラスは地に落ちる前に高温な炎で蒸発した。
その光景を誰かに担がれながら呆然と見ていた上条は、自分の頬に一筋の浅い傷が走っているのを感じて、意識を現実へと戻した。
「大丈夫か、かみやん?」
そう、話しかけられて上条は自分を担ぐ人物を首を回して見た。
アロハシャツにサングラス、そして金髪でピアス。
「…………………つ、土御門?」
そんな少年、土御門元春は上条の言葉ににゃーと答えた。
「助けにきたぜい、悪友」
サングラスをキラリ、と光らせ上条を横目で見ながら走り続ける土御門。
上条はそれを見て、もう一度元居た場所を見ると、
「またアンタ!?いい加減邪魔しないでくれないかしら!!」
こちらにギョロリと目を向けて叫ぶ、『御坂美琴』の姿が目に入った。
「忌々しいほど最高のタイミングね!ほんと嫌になるわ!」
『御坂美琴』がまだ血が止まっていない右手を土御門と上条に向ける。
と、上条の目に細い一筋の赤い光が映った。
その光は直進し、土御門の背中に突き刺すように当たっている。
まるで、その光は拳銃のサーチライトのようで――――
「………ッ!つちみか…」
…ど、と続けようとした瞬間、一筋の光の色が赤から緑へと変わった。
(サーチライトじゃ……ない?)
では、この光は何なのだろうか?
なんとなく。
なんとなくその光になにか異様なものを感じ、右手で遮った。
その時だった。
ダァァァン!!と先ほど上条を襲ったものと同じ爆発が右手に衝撃を走らせる。
「ッ!!」
「くァ!?」
バキン!と音を立てて、爆炎が消えた。
しかし、爆発の衝撃は大きく、土御門の足を宙に浮かせる。
空中でバランスを崩し、上条は土御門の背から放り出された。
衝撃を消すようにうまく地面をゴロゴロと転がりながら上条は体制を立て直し、再び走り始める。

17『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/04/17(土) 23:54:49 ID:nEyR2nFE


「うおい!!助けてあげた土御門さんを見捨てて一人逃げるんかい!?」
後ろから声が聞こえるが上条は気にしない。そのまま全速力で地下駐車場の出口に走る。
こんな行動も土御門を信用してのことだ。
「無視すんなやああああああああ!くっそかみやん!」
「グハッ!!」
ズドン!と土御門が上条の背中にタックルをかましてきた。上条は土御門の体重を支えきれず地面に転がる。
顔を地面に勢いよくぶつけて、上条は痛みに悶絶する。
少し、涙目になりながらも土御門に文句の一つでも言おうとして、
ダゴォォォォン!!と上条が進んでいた道の先にある壁が爆発したのを見て口をつぐんだ。
チィ、と呟く『御坂美琴』の姿が目に映る。
「あいつの能力はなんなんだ!?攻撃をどう避ければいいかがわからねえ!!」
「おそらく、やつの魔術はあの杖を使って発動してるはずだぜい」
杖?と言葉に疑問を出しながら上条は再び走りだす。隣には並走する土御門だ。
「杖ってどの杖だ?あいつが杖を持ってるようには見えないけど…」
「かみやん?なに言ってるんだ?やつはきちんと杖を……来るぞッ!?」
途中で言葉を遮って土御門が上条に叫ぶ。
その言葉に続くように上条は後ろを振り向き右腕を突き出した。
ゴァァァ!と爆炎が起き、上条はそれを右手で打ち消す。
「出口ってどっちだ!?土御門!」
再び並走を開始し上条は目の前の道が左右に分かれているのを見て、叫ぶように土御門に質問をする。
「右だ!」
そう言った瞬間、右に続く道の天井が爆発した。
爆発の衝撃に耐えきれなかった天井のコンクリートは崩れ、コンクリートの瓦礫と爆発の煙で視界と右の道を完全に塞いでしまう。
「くそっ!!」
「そう簡単には逃がさないよ〜とぉまぁ〜」
甘いように聞こえる声を黙殺し、上条と土御門は左への道に曲がった。
曲がった先には先が見えないほどの奥行きがある地下駐車場の広大な敷地だった。
その地下駐車場には天井を支える柱と停まっている自動車が所狭しと並び、向こう側が見えずらい。
「他に出口はないのかよ!?」
足だけは止めず上条は土御門に問いかけた。
この地下駐車場に初めて来た上条には土御門の知識だけが頼りである。
「わからない!ここ最近出来たばかりの建物の地図はさすがに覚えてないぜい!!」
地図さえ見つければ、と土御門が呻く。
(つーか、ここ最近出来たばっかかよ…どうりで壁が真新しいわけだ…)
色々と爆発してるな、と後ろを振り向きながら、上条は土御門の言葉を聞きポケットにある携帯を取り出した。
「地図なら、携帯の地図アプリで調べられねえかな?」
「ナイスアイディアだぜい、かみやん!!善は急げだ!さっそく頼むにゃー」
親指をグッと立てながらまっすぐと道を走る土御門に上条はりょーかい、と短く返し携帯の地図アプリを起動させた。
前と携帯の画面を交互に見ながら携帯を操作していく。すると、運よくこの地下駐車場の地図をすぐに見つけることができた。
「よっしゃ!見つけたぞ土御門!!」
「出口は!?」
上条は携帯の画面に映る地図を顔を近づけて見るが、どうにも光の影響か画面が見づらい。
仕方なく光の当たらないように携帯を顔の近くまで上げると、
その携帯の液晶画面に一筋の赤い光が当たった。
(マ、ズ……ッ!!)
すぐに赤色の光は緑色に変色するのを見て、上条は飛ぶように身体を下に落とす。
直後、上条の斜め前にあった柱が爆発した。粉々に砕けた柱の一部は飛んだ上条の身体を押しつぶすように迫る。

18『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/04/17(土) 23:55:26 ID:nEyR2nFE


「なにやってんだ!」
空中に身を投げ出すような姿勢になっている上条の腕を土御門が掴んだ。
掴んだ腕に力を入れ、土御門は上条の前に行く力を横に行く力に変換して身体を引っ張る。
グオン!!という音を耳で聞きながら上条の視界が高速でぶれた。
無理やりな方向転換で上条の腕に強烈な痛みが走るが、次の瞬間にその痛みを綺麗さっぱり忘れていた。
上条の手の中にあった携帯がすっぽ抜けて、どこかに飛んでいったからだ。
「あ………」
「あッ!?」
後ろで柱が崩れていく音を聞きながら、地面に降ろしてもらった上条と降ろした土御門は空中を滑空していく携帯を見た。
上条の携帯電話は柱の壁にぶつかり、数回地面をバウンドしてからズザアアア、と数メートルの地面を滑ってから動きを止める。
携帯の扱いとしてあるまじき行為だが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
問題は壊れてはいないかということだけだ。
「……ッ!?マズイ!」
と、何を思ったのか土御門は地面に降ろした上条の腕を再び強く握った。
「こうなったら……最後の手段だ。かみやん…悪いけど力を貸してもらうぜい!」
「は?いったいなにを…」
嫌な予感がする上条はサングラスを光らせる不良少年の気味の悪い笑みを見て、嫌な予感を確信に変える。
しかし、もう遅い。
土御門は自分の身体を軸にして上条をコマのように振り回し、
「うなれ!我が必殺かみやん砲!!」
携帯の落ちている場所へと放り投げた。
「お前だけは信用してたのにぃぃぃぃぃ!!」
空中を飛びながら叫ぶと、上条は測られたように正確な距離で地面に着地し、その勢いを殺さず携帯を手に取り再び走り始める。
土御門の野郎あとで絶対殴ってやる、と上条が思いながら足を動かすと、
ゴッバァァン!!と携帯があった場所が爆発炎上した。
「くぅ…」
後ろからの衝撃に足が浮く。空中で身動きのとれない上条は勢いよくコンクリートの壁に叩きつけられた。
「ゴッ、ハァ……ッ!!」
ノーガードでアゴと胸を打ちつけたため、一瞬だけ息が止まった。
(やっろう……バカスカバカスカ撃ちまくりやがってッ!!)
歯を食いしばりながら痛みに耐え上条は携帯が自分の手の中にあることを確認して立ちあがり、
「かみやん!!こっちだッ!」
土御門の声がする方に走った。

19『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/04/17(土) 23:56:02 ID:nEyR2nFE


「ねぇ…いい加減追いかけっこは止めてくれない?」
どこかで、何かが爆発する音がした。
「私は、もう嫌なのよ。アンタのことで…当麻のことでこれ以上悩みたくないの」
カツコツ、と靴が地面を踏む音がリズムよく聞こえてくる。
「アンタはいつでも私の前に居て、いつでも私を助けてくれた」
パラパラパラ、と天井から埃が落ちてきた。
「いつでもどこでも駆けつけて、まるで風のように私やその周りのものを護りながらアンタは一人傷ついていく」
ヒュ〜、と口笛が地下駐車場に響いた。
「そんなアンタを私は見てられない。アンタの隣に立って、アンタを護りたい」
建物全体が揺れる。
「それが私、『御坂美琴』の気持ち」
バチョン!とどこかで電気がスパークする音が聞こえた。
そうして、一人の少女は足を止め、
「アンタはこの言葉を聞いて何を思う?」
止めどめなく血が流れる右手を前に突き出すと、


「私は、あまりにもバカバカしすぎて笑いが堪えられないと思ったよ!!!」


バッガァァァァァァン!!
と、どこかで、何かが爆発する音がした。
「もう分かってるんでしょう?」
カツコツ、と靴が地面を踏む音がリズムよく聞こえてくる。
「私が『御坂美琴』じゃないって…」
パラパラ、と天井から埃が落ちてきた。
「私はアンタを殺しに来たって…」
ヒュ〜、と口笛が地下駐車場に響いた。
「でも、アンタは一つだけ気付いてないことがあるの」
建物全体が揺れる。
「よく考えてみて…私が『御坂美琴』になるために本人は邪魔だとは思わない?」
バチョン!とどこかで電流がスパークする音が聞こえた。
「アンタのせいで『御坂美琴』は死んだのよ」


「…………嘘だ」
少年はその言葉を聞いて、ただ呆然と呟いた。

20『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/04/17(土) 23:56:38 ID:nEyR2nFE


<?>

ピチャン……と水が落ちる音が響いた。
(は、やく…行かないと…)
とある路地裏。上を見上げると、今にも雨の降り出しそうなどんよりとした厚い雲が見える。
所々に水たまりのあるところから日ごろから日当たりが悪いのだろう。
じめじめしていてあまり人が通らなそうな汚い道だった。
(わた、し…の、せいだ)
そこに一人の少女が壁に身体を押しつけるように体重を預けながら、ゆっくりと前に進んでいた。
(私が……かん、たんに…捕まったり、しなかったら……)
いつもの勝気な瞳を今にも意識を失いそうに細め、足を引きずりながらも少女は少しずつ前に歩く。
(学園、都市も…妹達(シスターズ)も……ッ!?)
と、足がもつれて少女は水たまりの中に倒れこんだ。
――――――『お前のこれ以上傷つくとこなんて……見たくねぇんだよ!』
少女の髪と服が水を吸収し、重くべっとりと肌に張り付く。
(アイツに……これ以上、迷惑をかけるわけ、には……いかないッ!)
顔に張り付く髪を払おうとわせずに少女は立ちあがり、またゆっくりと、確かなテンポで足を動かす。
――――――『どうして、お前が傷つかなくちゃなんねぇんだよ』
(だからこそ……私は…)
ギリッ、と音が響いた。
(私が、できる以上のこ、とを…)
少女が、知らず知らずの内に歯を強く食いしばってでた音だった。
――――――『何でお前が死ななきゃいけないんだよ、どうして誰かが殺されなくっちゃならないんだよ!』
(今度こ、そ…)
ミシィ……ッ!!と鈍い音が響いた。
――――――『やめろ、御坂!』
(私……、は―――――)
それは、少女が知らず知らずの内に拳を握りしめた音だった。





作戦名『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』

本作戦の本格起動を前にクリアすべき条件

一つ、学園都市に残るすべての『妹達(シスターズ)』を確保すること  クリア
一つ、学園都市の第一位『一方通行(アクセラレータ)』を『妹達(シスターズ)』を人質に行動を制限し、拘束すること  実行中
一つ、学園都市の第三位『超電磁砲(レールガン)』御坂美琴を確保すること  クリア
一つ、学園都市の無能力者『幻想殺し(イマジンブレイカー)』上条当麻を『超電磁砲(レールガン)』御坂美琴を人質に行動を制限し、殺害すること  実行中
一つ、学園都市に潜伏する10万3000冊の魔導書を管理する『禁書目録(インデックス)』を確保すること  実行中

なお、上にあるものほど優先順位を上げるものとする

21from-ING:2010/04/18(日) 00:15:23 ID:pNxeNc6Y


『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』
投下終了です

言ってませんでしたけど、これ初めて書くSSなので
かなりいたらないところが多いと思います

だから、何かおかしなところなどがあったら遠慮せずに指摘してほしいです!

後、前のスレで『黒猫は夜の空に消えて』っていう題名でアメブロでやってるって言われちゃったので言っておきますが

ここに投下してるのはあそこで投下してるものを加筆・修正してます

では、感想・批判をぜひよろしくお願いします!!

失礼しました!!

22■■■■:2010/04/18(日) 09:51:14 ID:LLwX26DQ
GJ!

23■■■■:2010/04/18(日) 15:50:50 ID:kctxVAYQ
>>21
実に良かった。GJ!
続かない?のが残念ではあるが…

24from-ING:2010/04/18(日) 20:58:37 ID:pNxeNc6Y
>>22
>>23
わああぁぁぁぁああぁぁ!!
まだ続きます続かせます終わってないので
続きを待っていていただけると嬉しいです!!
俺の書き方がわるくてすいません!
感想ありがとうございました!!!

25■■■■:2010/04/19(月) 12:18:12 ID:QbCfi0gU
>>22
>>23
おもしろいです。GJ!

26■■■■:2010/04/20(火) 01:27:14 ID:t7ibPszI
>>21
GJ!! 新スレ一発目から良作を拝見できてうれしいです
同時進行する物語……果たして二人の主人公はクロスするのでしょうか
続きを楽しみにしてます!

27■■■■:2010/04/20(火) 01:37:55 ID:3SSolCF.
初めて・・・だと?

28■■■■:2010/04/20(火) 23:24:27 ID:DdDjAM96
一方通行と上条さんの短編を投稿します。
妄想過去バナになりますので、ご注意ください。

29悪くなった。本当に悪くなった。:2010/04/20(火) 23:25:31 ID:DdDjAM96
→→→→→→→→→→→→
それはまだ彼が自分の名前で呼ばれていた頃――彼がまだ一方通行と呼ばれる前の話だ。


→→→→→→→→→→→→

「クソ下らねェ。マジで下らねェトコだな、ココは」
彼は実験と実験の合間を縫って研究所から抜け出していた。
特に監視されていた訳ではないし、拘束されていた訳でもない。
そもそも彼の行動を止められる者はいないし、外には彼にとっての危険など無いに等しい。
彼はよくそうして空いた時間に何の目的もなくふらりと外に出ていて、研究員達もまた彼の散歩を黙認している。
「下らねェ。どこもかしこも科学、科学。大人どもは研究、研究。本当に下らねェよ、学園都市なんてのは」
彼は下らねェと呪詛のように呟きながら、とある人の少ない公園に入っていった。
公園には自動販売機が置いてあり、彼は真っ直ぐにそこへ歩いていく。
そして目新しい缶コーヒー――前に外に出た時には無かったものを全て一つずつ買い、6本の缶を抱えてベンチまで行き腰を降ろす。
そして一本ずつ開けてはその中身に顔をしかめ、或いは無表情になる。
そうして4本目に手を出そうとした時に、公園に彼と同じ位――小学生高学年位の少年が飛び込んできた。
そのすぐ後には3人の男達――中学生位の柄の悪いのが入ってくる。
男達は少年を取り囲むと、次々に拳や蹴りを入れていく。
男達は何やら少年に向かって叫んでいるが、聴覚を遮断している為彼に内容は分からない。
それでも男達と少年の大体の関係は状況から読み取れた。
(中学生が3人がかりで小学生をリンチかよ……しょーもねェなァ)
しかし彼には割って入るつもりなど毛頭ない。
ただその様を眺めながら4本目のコーヒーに口をつける。
と、男達のうちの一人がこちらに気付き、何かを叫んできた。
無視を決め込んでいると、その男はこちらに近づいてくる。
そして彼の目の前に立つと拳を振り上げた。
(まァ、中学生のパンチならオートで返しゃいいか……)
そう思い何もしないでいるうちに、男は拳を振り降ろし――そして勝手に自滅して行った。
それに気付いた他の二人も彼に向かって攻撃を仕掛けてきたが、やはり彼は気にかけない。
立ち上がっては自滅を繰り返す男達をただ詰まらなそうに眺めていた。

1分程して、男達は公園を逃げるように去っていった。
そうして公園には、彼と少年だけが残された。

30悪くなった。本当に悪くなった。:2010/04/20(火) 23:26:23 ID:DdDjAM96
→→→→→→→→→→→→
年は立ち上がって服についた土埃を払ってから彼の方へ歩いてきた。
そして頭をかきながら何やら言っているが、彼はそれすらも無視する。
(放っておきゃァ消えンだろ)
そう思ってコーヒーを飲み続けていた彼だったが、4本目のコーヒーを飲み終わる頃になっても少年は彼にまとわりついて来る。
(うぜェ……)
彼はやむなく聴覚の遮断を解き、少年に声をかけた。
「何なンだよテメェは」
「お、通じた。やっぱり日本語しゃべれんじゃん。何だ何だよ何ですか?白髪に赤目だから、てっきり外人さんかと思ったよ」
気さくな風に返してくる少年。
「うぜェなァ。何の用だよ」
「いや、だからさっきのお礼だって。助けてくれたんだろ?」
「あァ、何勘違いしてンだよ。テメェを助けたつもりなんてねェよ」
「ん、まぁでも結果として助かった訳だから。サンキューな」
「ケッ……」
「あー喉渇いた。俺も何か飲もう」
そう言って自動販売機の方の方へ歩いていき、お札を投入した少年だったが
「だー!この自販機、俺の最後の1000円札飲み込みやがったー!不幸だー!」
(騒がしいヤツだ……)
彼はそう思い、しかし

「……オイ、これやるよ」
少し躊躇した後、彼はとぼとぼとベンチに座った少年に残りの2本の缶コーヒーの内の一つを手渡した。
「お、マジ?サンキュー」
少年は缶コーヒーを受けとるとプルタブを開けて飲み始める。
その隣で彼も本日5本目のコーヒーを開けながら、少年に問うた。
「なァ、テメェは何であンなのに追われてたンだ?」
他人に余り興味を示さない彼にとって、この行動はなかなかに珍しいものだった。
「ん?いや、何か女の子があいつらに絡まれててさ。ぶつかった拍子に持ってたクレープが服について汚れた、とかで。そんで知り合いの振りして仲介して……まぁ女の子を逃がすのは何とかなったんだけどさ。あいつら撒くのに失敗しちゃってな」
「バカだな、テメェは。テメェの身も守れねェ癖に他人まで助けようとするなんて」
「んー、まあ。そうかもしんねぇけどさ、俺が殴られて、そんであの子が殴られずに済むんなら、それでいいんじゃねぇの?」
「ハァ?意味わかンねェよ」
「はは、まぁ俺にはお前みたいなスゲェ能力は無いからさ」
「スゲェ能力だァ?」
「あぁ。さっきあいつら追っ払ったやつ。何かの能力なんだろ?俺はレベル0だからさ、何も使えねぇんだよ。超能力」
「…………別に凄かねェよ。全然凄かねェ」
「んなこたねーだろ。中学生ぶっ飛ばしたんだぜ?あれ何の能力なんだ?絶対バリアー?」
「…………それならまだ良かったンだけどな」
「……?」

31悪くなった。本当に悪くなった。:2010/04/20(火) 23:27:39 ID:DdDjAM96
「俺の能力はベクトル変換っつって、あらゆる物体の運動に干渉してその運動ベクトルを操作することができる」
「あぁ、ベクトルな。この前学校で習った。訳分かんなかったけど」
「……そんで、俺はそのベクトル変換……研究員達は反射って呼んでるが……俺はそれをあらかじめ設定した生命維持に必要なもの以外、つまりは俺に危害を加えようとするあらゆるものに自動的に適応させられる」
「………えっと、俺バカだから良くわかんねぇけど、跳ね返しバリアーってことなのか?」
「まァそんな感じだ」
「何だよそれ、スゲェじゃん!」
「凄かねェつッてんだろォが!!」
「……な、何でだよ」
「反射できる限界の運動エネルギーはどれくらいか、睡眠中も反射は働くのか……そんなアホみてェな研究をして、反射した弾に当たって死んだアホが山程いる。そうでなくとも、面白半分に俺に挑んできて勝手におっ死ぬバカがいる。どうやったらこの俺を倒せるか、そんな下らねェことを考えるヤツの数だけ、俺の前には死体が積み上がっていくンだよ」
「死ぬって……」
「ま、テメェには理解できねェか。じゃあこっから先は聞き流してくれていい。……俺はよォ、最強になりてェんだ」
「最強?今のまんまでも充分強ェじゃん」
「……そうだな、冷戦って言葉を知ってッか?」
「えっと、社会で習った。確かアメリカと旧ソが互いに核兵器の技術を高めることで牽制し合ってたっていう……」
「あァ。そして今、同じように学園都市の中と外との間で冷戦が起こってる。外の連中は学園都市の技術が欲しい、だが学園都市に攻め込むにはその未知の技術が怖すぎる……。そうやって学園都市は未だに世界のトップに居続けてる」
「そういう話なら聞いたことあるけど……それがどうしたんだ?」
「だからよォ、俺はそんな学園都市の中での最強になりてェ。外にとっての脅威である学園都市の奴らでさえも、相対しただけで歯向かう気力をなくさせるような、何をやっても勝てねェと思わせるような、そんな存在になりてェんだ。俺1人と残りの60億の人類との冷戦だ。そうすりゃ、もう俺に挑んできて死体になる奴がいなくなるだろォ?」
「最強……」
「そう、最強だ。絶対的な力。それさえあれば皆死なずに済む。大団円、ハッピーエンドに出来るんだ」
「いや………そりゃ違ぇだろ」
「あァ?何でだよ」


「だってよ、
 ――それじゃお前がひとりぼっちじゃん」


「――――はァ?」
彼は少年のその言葉に思わずコーヒー缶を落としてしまった。
奇妙な奴だと思って声をかけたが、それにしたって変すぎる。
「いいンだよ俺のことは。大体俺はこの能力で何人もの人間を殺してきたンだ。今更救われようなんて思ってねェよ」
「でもよ、それはお前が本当に望んだことじゃねぇんだろ。変な能力が身について、そいつに巻き込まれちまっただけじゃねぇかよ。だったらお前にだって幸せになる権利位あるんじゃねぇの?」
「……………」
彼は取り落とした缶を拾い、残り少なかったそれをゴミ箱に投げ捨ててから言った。
「……テメェは変なヤツだな」
「ん、そうか?はは、実はさ、俺、生まれついての不幸体質でよ。何やっても上手くいかなくって、そんな辺りも学園都市に入れさせられた理由なんだけど……まぁそんなだから、せめて他人位には幸せになって欲しいって思うんだよ」
「他人位には……か」
「だから、お前も諦めんなよ」
「………、ありがとよ。だがテメェがそう言ってくれただけで充分だ。悪ィがテメェの言葉に従う気はねェ。やっぱり俺は最強を目指す」
「そうかよ、じゃあしゃあねぇな」
少年は自分の飲み終わった缶をゴミ箱に捨てると彼に言う。
「おい、こっち向けよ」
「あァ?」
そうして振り向いた彼の頭に、

ゴツン

と少年は拳骨を振り降ろした。
威力はたいしたことはない。
だが、少年の拳に対して彼の反射が働かなかった。
それは有り得ないことの筈だ。
「何で……テメェ、一体何を………?」
「あぁ、俺の右手な。なんか超能力を無効化できるんだってよ。先生達はイマ……なんとかって、言ってたけど。ま、つまり俺はお前がどんなけ強かろうが、お前を殴れるってことだ」
「そんな、フザケたもんが……」
「フザケてんのはテメェの方だろ。自分は救われねぇなんて決めつけやがって。いいぜ、テメェが最強目指すってんならそれでいい。だからもしお前が最強になった時にひとりぼっちになってたら、俺がお前のこと殴りに行ってやるよ」
「……………あァ、くそ」

殴られたのは、いつ以来だろうか。
叱られたのは、いつ以来だろうか。
思われたのは――1人の人間として誰かに接してもらったのは、いつ以来だろうか。
ふと口をつきそうになった何かを彼は必死で胸のなかに押し戻すと、全く別の言葉を吐いた。

32悪くなった。本当に悪くなった。:2010/04/20(火) 23:28:14 ID:DdDjAM96

「……バカかテメェは。最強になった俺がテメェみたいなクソ弱いレベル0に負ける訳がねェだろ。返り討ちにしてやるよ」
「ハハ、んじゃあせいぜい楽しみにしてるぜ」
「言ってろ、一撃で終わらせてやる」
気が付くと日は傾き、辺りは夕焼けがに染まっていた。
夜にはまた別の実験がある。
そろそろ研究所に戻る時間だ。
二人はベンチから立ち上がった。


「じゃあな、最弱」
「おうよ、最強」


最後にそれだけ言葉を交わすと、二人は各々の右手を振り上げ

バチン

と小気味のいい音を立てさせて相手の掌を叩き合った。


二人は振り返らずに歩いていく。


少年は公園の西口、光の射してくる方向へ。
彼は公園の東口、闇が溶けていく方向へ。


彼は自分の右手を見た。
少しだけ赤く腫れた掌。
そこから伝わる仄かな痛みの感触に、彼は口元を僅かに弛めた。


「よぉ。何にやついてんだ?気色悪ぃな」
「あァ?誰だテメェは」
彼の目の前には見知らぬ男が立っていた。
「生意気なガキだな。まぁいいさ。俺は木原数多。お前を研究してた奴らが音を上げてな、お前は今日からウチで預かることになったんだよ」
「ハン、そういうことかよ。いいぜ、構わねェ。テメェに俺を最強に進化させられるってンならやってみせろよ。まァ、テメェが死ぬのが先かも知れねェがな、木原クン?」
「……まずはその減らず口から矯正してかなきゃならんようだな。面倒臭いことだ」
「言ってろ、クソが」


そうして彼は、木原と共に闇の中へと歩き去って行った。

→→→→→→→→→→→→

33■■■■:2010/04/20(火) 23:31:19 ID:DdDjAM96
投下終了です。

あ、タイトルは思いつきなんで特に深い意味はありません。
昔書いたやつで、無題だったものですから。

近いうちにpart7で話したクリスマスモノも上げられると思います。
季節感ゼロですが、これと合わせて、暇な時にでも読んでくだされば幸いです。

34■■■■:2010/04/20(火) 23:33:19 ID:DdDjAM96
すいません、30のしょっぱなに「少」が抜けてました…
「少年は」です。

35■■■■:2010/04/21(水) 01:35:25 ID:Y2v452WI
>>33
GJです!
「彼」と「少年」の邂逅―――いいですねーこういう短編も
「少年」が「彼」に最初に言った台詞……あれ狙ってますよねw
そしてまさかの木原くン登場。ちょい役にも拘わらず、あの存在感ww

クリスマスモノ……だと……?
という事は、あなたは前スレの「戦う佐天さん」の作者さんとお見受けしていいのかな?
どうりで良作だと思ったわ
次作のクリスマスモノも期待してます!頑張ってください!!

36かぺら:2010/04/21(水) 04:23:29 ID:iSajyxao
こんばんは。ここでは、はじめまして。
SS書いてるんですが、投下してもいいですか?
カップリング無しなんで。
・中編くらいです。7話くらいの予定。
・オリキャラが出てます。メアリースー化は注意してるつもり

とりあえず、一話投下してみて、様子を見てもいいでしょうか?
「チラ裏!」になるようなら自分のブログでやります。

37かぺら:2010/04/21(水) 04:33:34 ID:iSajyxao
文章がややこしかったので、追記。
とりあえず、「帰れ」or「投下しろ」意見お願いします。

レス次第で明日以降、投下考えます。

38■■■■:2010/04/21(水) 05:51:36 ID:WKxJyTno
かべらさん
いちゃいちゃSS見ました。
描きなさい!是非描くべきだ!

39■■■■:2010/04/21(水) 14:04:58 ID:tLj8RRGc
>>33
GJ!
一方さんと上条さんは良き好敵手であってほしいもんだ。

>>37
メアリースー化しないオリキャラとは期待大。
とりあえずは投げてほしいかな。

40■■■■:2010/04/21(水) 14:08:52 ID:p4E4tc22
>>36
メアリースー化しないよう意識しているならオリキャラもありではないかと。

41かぺら:2010/04/21(水) 19:44:37 ID:iSajyxao
お言葉に甘えて。投下してみる。
【注意事項】
・オリキャラ出てきます。無双しないように気をつけていますが、苦手な方はお避け下さい。
・時系列的には原作13巻、SS1の後からスタートします。
・場面転換が多いので、1レスごとの文字数が一定してないです。

とりあえず1話を投下してみますよ。
19:50より9レスほど。

42邂逅1:2010/04/21(水) 19:52:09 ID:iSajyxao
サンピエトロ大聖堂。バチカンにあるローマ正教の中枢ともいえる建造物。
一般人から見れば、ただの観光名所であるこの建物は、最高レベルの魔術的要塞である。
その要塞のとある一室にて、青系のゴルフウェアのようなものを着た屈強な男が腰かけていた。
後方のアックア。
『神の右席』であり、聖人である彼は、普段通りの難しい顔を浮かべたまま右耳に手をやっていた。
握られているのは電源の入っていない携帯電話。魔術的な通信手段の媒介として使われている。
「それで貴様は何をしようというのだ?」
アックアの低い声が狭い室内に響く。淡々とした環状の読みとれない様な声だ。
『ワタシが何かをするわけではありませんよ。ちょっと調べものに行く、と言うところですかね』
電話越しの声は少しだけ楽しげだった。
「私にも言えない、ということであるか?」
『やだな、情報を仕入れに行くだけですよ。いずれ動くであろう貴方のために、ね』
ふふっ、と電話の向こうの声が笑う。相変わらず目的の見えない答えにアックアは顔をしかめた。
「ヴェントがやられたとはいえ、私が動くのはまだ先の事である」
『「左方のテッラ」、彼が動くから、ですか?』
そうだ。アックアはぶっきらぼうに言う。テッラの計画については聞いていた。
元傭兵であるアックアとしては、推奨したくないテッラの戦術。
物量作戦で学園都市を押しつぶす。20億の信徒を持つローマ正教であるからこそ出来る荒業ではある。
―――果たして……そこまで貧弱なものかね―――
アックアは渋い顔のまま下唇を噛んだ。
テッラの作戦が上手くいくか否かに関わらず、いずれは自分も動くことになるだろう。
『作戦の内容までは存じ上げませんが……何やら貴方は好ましく思われていないようで』
「罪なき人々の血の上に立つのは私の本意ではないのでな」
『さすがは、「涙」を背負う者ですね』
おそれいりますね、と声は続ける。
アックアはふんっと鼻を鳴らす。アックアが背負う魔法名。その意味を知る者はそう多くはない。
「貴様の目的がなんであるかには興味はない。私は私のすべきことをするのみである」
『なるほど。では、その御言葉通り、ワタシも動くとしましょう。教えを伝える者として』
そういうと電話の声は楽しそうに笑う。アックアは殆どめんどくさそうに溜息をついた。
「『広く世に伝わらんことを』か」
『ええ。貴方と同じく、自らの魔法名にかけて』
では、と言って通信が切れる。アックアはふぅと息を吐くと、携帯を閉じる。
「パウラ=オルディーニ………か」
『広く世に伝わらんことを』を掲げる魔術師は何を思うのだろうか。
「お前たちが思っている程度のものではないと思うのだがな」
アックアの独白は誰にも聞かれることなく、無機質な壁に吸い込まれていった。

43邂逅2:2010/04/21(水) 19:52:40 ID:iSajyxao
学園都市は今日も晴れである。
『0930』事件の後、学園都市は嘘のように晴れ渡っている。
10月5日。『前方のヴェント』の襲撃より5日が経過した。
科学の先端都市は、まるでそんな事件などなかったかのように普段通りの朝を迎えている。
上条当麻はそんな街中を歩いている。
「今日も今日とて学校ですよ」
上条は誰に言うでもない独り言を吐く。
普通の学生ならつまらなそうな口調で言うセリフであろうが、上条は違う。
2日前には御坂美鈴救出イベントという死線をクリアしたところだし、『0930』事件には最前線で関わっていた。
「平和な1日っていうのはいいね」
上条は本当に幸せそうな笑顔を浮かべる。アクティブかつデンジャラスな日々が普通なのか、と思ってしまうほど上条の日常は荒れている。
だからこそ、学校に行って下らない連中と過ごす日々が愛おしく思えた。
「ま、放課後に補習なんですけどね」
あはは、と上条は笑う。あまり好ましくない補習であるが『殺し合い』に比べれば十二分に楽しいものだ。
「あー、もしもし?」
そんな上条に横から声がかけられる。
―――ま、まさか!?―――
上条は勢いよく声の主に顔を向ける。こう言う時にかけられる声は大概歓迎すべきないそれである事が多い。
ビリビリこと御坂美琴しかり、顔を偽ったアステカの魔術師しかり、噛み合わない会話になるオルソラ=アクィナスしかり。
しかしそこにいたのは、その誰でもなかった。上条と同じ制服を着た男子高校生が立っていた。
「いやいやぁ、そんなに警戒しなくても、捕って食おうなんて思ってないから」
茶髪の少年は人懐っこい表情でからからと笑う。その少年の様子に、上条は警戒を解く。
「あ、すいません。いったいなんでせうか?」
「見ての通り、俺は君と同じ高校に通うことになってるんだけど、道が分からなくてさ」
少年はまいったまいったと頭を掻く。ボサボサの髪がよりボサボサになっていく。そのへんには無頓着らしい。
「なるほど。もしかして、転校生ですか?」
「そ。なんか頭にでっかい軍用ゴーグルつけた女の子に案内されてたんだけど、途中で猫追っかけて行っちゃって」
―――猫っつうと……御坂妹か?―――
上条は彼の言う少女に見当をつける。
「で、ブラブラしてたら同じ制服を着た君を見つけたわけだ。あ、今更だけど、君、先輩だったり?」
「俺は1年なんで少なくとも先輩じゃないですけど……」
本当に今更だ、と思いながら、上条は答える。そもそも、なんで俺の方が下手に出てるのだろうか、と。
「そりゃ良かった。俺も1年生なんだけどね。勢いで敬語使わなかったから、マズッたかと思ったよ」
あはははは、と少年は笑う。上条ははぁと溜息をつく。
「じゃぁ高校まで連れてけば良いんでせうか?」
「そーいうことー。あ、同学年なんだし、タメ語でいいよ…………君、名前は?」
上条はもう一度溜息をつく。今のは単なる『口癖』みたいなものだったので、気にしないで欲しかった。
「俺は上条当麻。まぁ、呼び方は人それぞれだけど……任せる」
「よろしく、上条。俺は雨宮 照(あまみや てる)、呼び方はお任せで」
「こちらこそよろしくな、雨宮」
そんじゃ行きますか、と上条は雨宮を連れて学校へと向かった。

44邂逅3:2010/04/21(水) 19:52:52 ID:iSajyxao
とある病院の奥の臨床研究エリアにある一室で、上条に『御坂妹』と呼ばれる少女がいた。
同じ部屋に、全く同じ顔と格好をした少女が他に3人。
『妹達』と呼ばれる御坂美琴の量産軍用クローンである彼女らは、その身体の調整も兼ねて、この病院で生活している。
そのクローンである彼女たちも、段々と個性が出てきたせいか、思い思いの行動をしている。
本をよんでいる者、テレビを見ている者、猫と遊んでいる者、それを羨ましげに見ている者。
そんな『妹達』の部屋に1人の男が入ってくる。
「君には彼の道案内を任せたつもりだったんだけどね?」
冥土返しと呼ばれるカエル顔の医師は、猫とじゃれている御坂妹こと、ミサカ10032号に語りかける。
「そのことに関してはミサカに非がありますが、彼も大丈夫と言っていました、とミサカは言い訳してみます」
いぬが逃げてしまいましたので、と付け足し、御坂妹は黒猫を抱えあげるとカエル顔の医師に顔を向ける。
「まぁ、無事に辿り着けたみたいだからいいんだけどね?」
やれやれといった調子で医師は頭を掻く。
「彼は大能力者だとはいえ、地図も読めない子だっていうのに。よく辿り着いたもんだよ」
「誰かに案内をお願いしたのではないでしょうか?」
「だろうね。運良く同じ高校の人間を捕まえたのかもしれないね?」
じゃ、また検査のときに。カエル顔の医師はそう言い残して『妹達』のいる部屋を後にした。

45邂逅4:2010/04/21(水) 19:53:03 ID:lK0mCy3E
「いやー、おはよう、カミやん。今日はなんや幸せそうな顔しとるね?」
「おはよう、青髪。別に何かあったわけじゃねぇよ」
上条は先に来ていた青髪ピアスに手をあげて答えると、ドカリと自分の席に腰掛ける。
「じゃぁ、なんでそんな幸せそうなんや?」
「今朝から、何にも不幸なことが無かった上に、困った人を助ける事まで出来ました。十分幸せです」
はっはっはー、と上条は笑う。本人は心から言ってる事なのだが、青髪は温い目で彼を見ていた。
「なんだよ?」
「いやぁ、そこまで行くとカミやんが可哀想にも思えてくるわ」
大変やね、と青髪は続ける。上条は少しだけ憤慨しながら腕を組んだ。
「にゃー、突っ込みどころはそこじゃないぜよ」
「うおっ、土御門!?いつの間に来た?」
上条は突如会話に参戦してきた土御門にオーバーなくらい驚く。
「おはよーさん。で、突っ込みどころはそこじゃない、いうんが気になるんやけど?」
「さっきのカミやんのセリフ。『困ってる人を助ける』って言ってたにゃー」
「あぁ、言ったけど……」
それがどうかしたか、とキョトンとする上条を無視して、土御門は青髪にアイコンタクトをはかる。
ガタイのいい男同士のアイコンタクトなんて気持ち悪いだけだぞ、と思いながら上条は自らの不幸レーダーに反応するのを感じた。
そのレーダーが警報を鳴らした瞬間、土御門が上条の両肩をガシッと掴んだ。
「で、カミやんは今度は何処の女の子にフラグを立てたんや?」
「常盤台のお嬢様だけで十分じゃないのかにゃー?」
土御門の腕力のせいで、上条に逃げ場はない。
「落ち着け!相手は男だっ!っつうか、フラグってなんだっ!?」
「男子にもフラグを立てたとは……」
「そこの3バカッ!!黙りなさいっ」
我慢の限界を超えたのか、吹寄が青筋を浮かべながらズンズンと歩いてくる。
ご丁寧に腕まくりまでしてくれているあたり、この後に起こる展開は上条でも容易に予想出来た。
「わー、吹寄!落ち着け、上条さんは何も悪い事はしておりませんっ」
「うるさい!問答無用っ」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ」
上条に吹寄の頭突きが突き刺さろうとしたまさにそのとき、担任の小萌先生が『はーい、ホームルームですよー』と入ってきた。
ガヤガヤと騒いでいたクラスメイト達が自分の席へと戻っていく。
それを見た吹寄も、チッと舌打ちをすると忌々しそうに上条たちを見ながら席へと戻って行った。
小萌先生は全員が席に着いた事を確認すると、持っていた冊子を机の上に置く。
「はーいっ、今日はみんなに、ビックニュースがあるのですよー!なんと、このクラスに新しい子が転入してくるのですー!」
「おぉっ!?可愛い女の子やったらええなぁ」
いち早く反応した青髪が期待の声をあげる。それに続くかのようにクラス中があれやこれやと騒ぎ出した。
一方で上条はというと、自らの机に突っ伏していた。
「お、なんだ、カミやん?その期待してません的な反応は」
「残念ながらやってくるのは男子だよ。さっき俺が助けたのがそいつだ」
上条は顔をあげると、土御門の軽口をあしらう。
「いやいや、わからんぜよ?ひょっとしたら転入生は1万人くらいいるとか」
「分かった分かった。分かったから、そんな万が一くらいで起こりそうな事を言うんじゃねぇ」
上条は教室に『妹達』がぞろぞろとやってくる様子を想像する。実際に起こったら、不登校になるかもしれない。
「はいはーい、みんな静かにするですよー。転入生は男の子なのです。残念でしたー野郎どもー!おめでとう、子猫ちゃんたちー!」
小萌先生の相変わらずの芝居がかった説明に、さっきまで騒いでいた男子が一気に静かになる。
「さー、入ってきてくださーい」
小萌先生が扉の向こうに呼び掛ける。返事は………ない。
「あれ?どうしましたー?」
小萌先生がパタパタと教室の外に出て行く。クラスメイト達はなんだなんだと騒ぎ始める。
「もー、どうして反応してくれないんですか―?」
「いやいやぁ、すいません。ぼーっとしちゃってて」
ぷんぷんと膨れる小萌先生の後ろから転入生が入ってくる。クラス中の注目となった茶髪のボサボサは照れくさそうに頭を掻いていた。
「どうも、雨宮照です。よろしくお願いしますね」
「やっぱりアイツか……」
上条は頬杖をつき、雨宮を見る。土御門の言う通りとは言わないが、転校生は2人いましたー、なんて展開を期待した自分を恥じる。
「そうですねー。じゃぁ、雨宮ちゃんは姫神ちゃんの隣にお願いします」
「はい。ここ。私が。姫神愛沙」
姫神がすっと手を上げ、空白になっている隣の席を指差す。はーい、と言って雨宮はその席に向かった。

46邂逅5:2010/04/21(水) 19:53:16 ID:iSajyxao
昼休み。お腹すいたー、とか思い思いの事を口にしつつ散開していく。
お弁当を持ってきている者たちはそのまま食べ始めるし、学食に向かうものは勢い良く駆けだして行った。
「おい、土御門、今日は買いに行かねぇのかよ?」
「悪いにゃー、カミやん。今日は舞夏の手作り弁当があるにゃー。というわけで、カミやんは転入生の案内よろしく頼むぜい」
土御門は鞄から弁当を取り出し、幸せこの上ないという顔で合掌する。
青髪はパンを持ってきているし、と上条は視線を泳がせると、なにやら姫神と話していた雨宮に目をやる。
「雨宮ぁ、昼飯買いに行こうぜ」
「ちょっと待って、財布出してない」
雨宮は鞄をごそごそと漁り、財布を取り出した。
「上条、ちょっと待ちなさい!」
「あん?なんだよ、吹寄か」
上条が後ろを振り返ると、腕を組んだ吹寄が立っていた。相変わらず眉を吊り上げた不機嫌そうな顔だ。
「なんだとは失礼な。やっぱり貴様と打ち解けることはないと思うわ」
「はいはい、すいませんでした。上条さんが悪かったですよ―」
上条はふんっと鼻を鳴らしている吹寄をジトーっとした目で見ていると、財布を捜索し終えた雨宮がやってきた。
「いやいやぁ、待たせてごめんな。っと、委員長サンもご一緒?」
「別にあたしは委員長というわけではないわ。ちょっと、貴様!なんだその目はっ!」
ふーん、と言っている雨宮を放置したまま、吹寄は上条に掴みかかる。
「べ、別に俺はそんな変な目はしてねぇだろ」
「あたしを馬鹿にしたような顔をしていただろうが!」
上条は『実質、クラス委員長みたいなもんですけどねー』という顔をしていたのだが、どうにもお気に召さなかったらしい。
ゴンッ!という鈍い音がし、吹寄の頭突きが上条の頭にクリーンヒットしていた。
「痛い…………不幸だ」
「さっさと行きなさい!」
犬に追い立てられる羊のように、上条は教室から追い出される。吹寄の後ろについてくる雨宮は面白いものを見たという顔をしている。
「悪い事もしていないのに頭突きだなんて………不幸だ」
上条と雨宮は、より不機嫌になってしまった吹寄の少し後ろを歩く。
「楽しそうで羨ましい限りだよ」
「そういえば、お前、さっき姫神と何を話してたんだ?」
飄々と笑っている雨宮に、上条は疑問をぶつけてみる。
「あ、あれか……姫神は十字教徒なの、って話をしてただけだって。そんな気にする話でもないよ」
特に深い意味はない世間話のつもりだったのだが、雨宮は妙に動揺していた。
「あ、そうか。あいつ十字架下げてるもんな」
「そ、そうそう、学園都市内っていうか、日本じゃ珍しいしねっと、ここが購買?」
なんやかんやしていたせいか、購買は既にごった返していた。
「そうなのそうですそうなんですよ!まぁ、大したもんはねぇけどな」
適当に選んでくる、と言い残し雨宮は戦場と化している購買に乗り込んでいく。
「さて、上条さんは何にしますかっっぐぇ!?」
その戦場に飛び込もうかとしたとき、何者かが上条の首元を掴み引っ張っていく。
「痛いっ!だ、誰ですかこんなことするのはぁ?
「黙ってちょっと来なさい」
購買から少し離れたところまで行くと、首元を掴んでいた犯人・吹寄が声をひそめる。
「ちょっと聞きたいんだけど、あの子、透視能力者じゃないでしょうね?」
「はぁ?知らねぇっつうの。つか、どっからでた話だそれは」
ちょっとね、といって吹寄は上条の元から立ち去る。
「なんだったんだ、アイツ………」
上条は吹寄の背中を見送りながら、先程の吹寄の言葉について逡巡する。
「そういえば―――」
吹寄の言葉と、その前の雨宮自身との会話から導かれるおかしな点。
―――そういえば、姫神の十字架って、服の下に入れてなかったか―――

47邂逅6:2010/04/21(水) 19:53:27 ID:iSajyxao
学園都市と外部は、高さ5メートル、厚さ3メートルの壁で囲われている。
交通も完全に遮断されており、通過するには厳重な検問を通過しなくてはならない。
だがそれはあくまで正式な手順での通過の話だ。
意外かもしれないが、学園都市は何度も侵入を許している。
もっとも、それがどういう意味での『許している』かは分からない。
この街は人工衛星を始めとしたあらゆる物で監視されているのだから。
ストンという、軽い物が落ちてきたかのような音が鳴る。
学園都市を囲む高い壁のを1人の人間が高い壁を越えて来たのだった。
「話には聞いていたが、案外簡単に入れるもんですね」
黒いコートを纏った人間は今しがた越えてきた分厚い壁に触れる。
「さて………とりあえずは情報収集というところですが。どこにいきますかね」
コートの人が降り立ったのは第2学区。騒音の酷い場所を選んだあたり、侵入にも気を使ったのであろう。
だが、一方で警備員や風紀委員の訓練場があるなど、意外と人も多く一般人がノコノコ歩ける場所ではない。
「面倒ではありますが、念には念を入れておきましょうか。ウルサイところは苦手ですが……」
コートのポケットをゴソゴソと漁ると、古びたパンパイプを取り出す。
それを口に当て、ふぅと息を吹き込む。音は………出ない。
騒音によって掻き消されているのではなく、本当の意味で音が出ていない。
それは吹き手が下手であるからとか、パイプ自体が壊れているからではない。
まるで、その音だけが切り取られたかのように。空気の振動がなされていないかのように。
「では行きましょう」
声が響く。その場に魔術師の姿はなかった。

48邂逅7:2010/04/21(水) 19:53:37 ID:iSajyxao
日は傾き始めたものの、学園都市は相変わらず晴れである。
上条当麻はそんな街中を歩いている。
「今日も今日とて補習でしたよ」
溜息をつき、上条は朝もおんなじような事言ったなと軽いデジャヴを感じつつブラブラと歩いていた。
足りない単位を補うための補習は連日のように企画されており、どこか嬉しそうにしている小萌先生とのレッスンが続いている。
今日もそのミッションをクリアし、絶賛帰宅中のみである。
帰りにスーパーに寄って、卵を買おうか、なんて考えていたときだった。
「ちょっと」
上条は横から飛んできた声に勢いよく顔を向ける。
こう言う時にかけられる声は大概歓迎すべきないそれである事が多い。
だがしかし、今朝の事を思うと、案外そうでないかもしれない。
そこにいたのは、ボサボサの男子高校生ではなかった。
「アンタ、メール止めんならそう言いなさいよ」
そこにいたのは『超電磁砲』こと、御坂美琴だった。
常盤台のお嬢様は、口を尖らせながら『お陰さまでなかなか寝れなかったんだから』とか『あ、別にアンタのメールが楽しみだったわけじゃなくて』とか仰っている。
「で、御坂さんは何の用でせうか?」
「私が返さずにいたらアンタが寂しがるかなとか思ったからであって…………って、いいいい今、なななんて言った?」
美琴は慌てたように手をバタバタとさせる。
「ワタシガカエサズニイタラ」
「そっちじゃないわぁぁぁぁっっ」
「うわあぁぁぁぁあぁぁっ!?」
ビリビリビリッ!!と美琴の前髪のあたりから雷撃の槍が飛び、上条の右手に飛びこむ。
「ななな、何すんだよっ、御坂っ!」
「アアア、アンタが変な事言うからでしょうがっ!どうせ効かないんだから、良いでしょそれくらい」
上条は右手を構えたままゼェゼェと肩で息をしている。対する美琴は悔しそうに地団太を踏んでいた。
「で、なんの用なんだよ?」
「だから、メールを止めるんなら宣言しなさいって言ってんのよ」
そういわれてもな、と上条は頭を掻く。元々、上条は長々とメールするのが得意ではない。
「つぅかですね、そんなに話してぇなら電話にすればいいじゃねぇか。なんなら呼び出せって、メールってめんどくせぇんだよ」
上条はやれやれと肩をすくめて言う。そもそも直接会ったときに話せばいいじゃないか、と。
「で、電話っ!?そ、そそんな簡単に、い、言わないでよっ」
「はぁ?ボタン押すだけだろ…………交換手に取り次いでもらうわけでもねぇんだから」
上条の『何言ってやがる』という目線に、美琴はぐっと仰け反るくらいに身体を引く。文字通りぐうの音も出ない。
「まぁ、いい。御坂、せっかくだしちょっと付き合え」
上条は美琴の手を取って歩を進める。急に手を握られてアタフタしたしまう
「何よ、まさか常盤台のお嬢様を卵1パックの為に誘うっていううんじゃないでしょうね?」
「な、なぜバレたのでせうかっ!?」
「ア、アンタ、本気でそのつもりだったの!?」
道の真ん中でギャーギャーと騒ぎ出す。
当然のように、周りを歩く人たちは温い目で見ていたりするのだが、当の2人は気付く様子もない。
5分ほど不毛なる争いを続けた後、先に我に返った上条が美琴の頭に手を置く。
「な、なによ」
ビリビリと帯電したいのは山々だが、右手で抑えられてはどうしようもない。
美琴は少し気持ちいな、なんて右手の感触に満足しつつ、借りてきた猫のように大人しくなった。
「なぁ、御坂………場所、変えようぜ」
「ふふん、そういってスーパーまで連れて行くつもりでしょうがそうは行かないわよ!」
「いや、周り見てみろって」
上条は右手に力を込めると、半ば無理やりに美琴の目を周りに向けさせる。
上条の作戦を看破してやったりとニヤついていたのはどこへやら、瞬間湯沸かし器のごとく一瞬で顔を赤くする。煙が出そうだ。
「はーい、行きますよー」
上条はにっと笑うと、美琴の頭に乗せていた右手で彼女の手を取る。
「うわぁぁぁ…………ふ、不幸だ」
彼女はそういいつつも、笑っていた。

49邂逅8:2010/04/21(水) 19:53:51 ID:iSajyxao
上条のいきつけのスーパーには、そこそこの人が入っていた。
「へぇ、アンタ、こんな店行ってんの?」
「お嬢様には縁が無い所でしょうね―」
「はいはい、そんなに不貞腐れないの」
美琴がへこたれる上条の脇腹をつつくと、ビクンッ!と彼の身体が跳ねる。
「アンタ、ここが弱点なのね?」
「や、やめろぉぉぉぉぉっ」
上条は美琴から距離を取って身構える。その目は怯え3割といったところか。
「いやぁ、良い情報仕入れたわ」
「ううう………そういや、なんで脇腹はくすぐったいんかね?」
はっはっはと笑う美琴にゲンナリしながら、上条は少しだけ警戒を解く。
「私はくすぐったくないから分かんないけど、佐天さんが言うには」
「サテンサン?喫茶店のマスターか?」
「馬鹿、私の友達よ。あの子が言うには『笑い虫がいるんですよ!』って言ってたけど……」
美琴は、素っ頓狂な答えを繰り出す上条にパンチを入れると、途切られてしまった言葉を続ける。
「はぁ…………うん、そうか。その子には是非会ってみたい」
「なんで棒読みなのよ……」
いいからいくぞーと言って、上条はスーパーの中を進み、卵コーナーへと行きあたる。
残る卵は2パック。珍しく幸運な自分に驚きつつ、卵に手を伸ばす。
ガシッ!ガシッ!!卵パックを掴む音が2つ。
「あれ?」
上条は一つにしか手を伸ばしていない。だが、目の前に手は2つ伸びている。
「あれ……上条?」
「………お前か」
上条の獲得したかった卵は誰であろう、ボサボサ頭の手にあった。
「えーっと、もしかして、俺、悪いことした?」
残念そうに眉を下げる上条と、その後ろでそれを面白そうに見ている美琴を見やり、雨宮は気まずそうに言う。
「良かったら、どうぞ。俺は別の献立考えるよ」
雨宮は持っていた卵パックを上条に手渡す。途端に上条の顔が晴れやかになる。
「でさ、上条。その後ろの子は?」
「あぁ、わりぃわりぃ。コイツは――」
「コイツはないでしょ!っつうか、自己紹介くらい自分でできるわよ」
美琴は上条の脇を突き、その隣に立つと、お上品に礼をしてみせた。
「私は御坂美琴と言いまして………コイツの」
「彼女?」
「んなぁっ!?」
上条と美琴は全く同時に絶句した。顔に張り付いている表情までそっくりだ。
「おー、いきもぴったり。もしかして、夫婦だった?」
「んにゃぁっ!!?」
再び絶句。違うのは顔の色くらいで、上条は真っ青に、美琴は真っ赤にしている。
「ま、いいか。でさ、御坂…だっけ?君、双子の妹とかいない?」
「えっ!?」
「あー、いるいる。今朝、お前が言ってた『軍用ゴーグルの女の子』ってのがソレだよ」
キョトンとしている美琴をフォローするかのように上条が割って入る。
騙せるかは微妙なくらいの「違う意味での」素敵演技力であったが、雨宮は納得したようにぽんっと手を叩いていた。
「うん、つまりあれだね。家族ぐるみのお付き合いってこと?」
「…………もうそれでいいです」
相変わらずの雨宮の調子に上条はうだー、と項垂れるのだった。

50邂逅9:2010/04/21(水) 19:54:14 ID:iSajyxao
とある施設のコンピュータルーム。
電気のついていないこの施設の中で、数ある端末のうちの1つだけに電源が入っていた。
その前には誰も座っている様には見えず、ハードディスクと冷却ファンが回る音のみが静かな部屋に響いていた。
表示されていた学園都市のデータは圧縮されて端末に刺さるUSBへと集約されていく。
ディスプレイ上をカーソルが動き、多重展開されていたタブが閉じられていく。
そして、また、新たなるデータが開かれていく。
次に表示されているデータは『書庫』内に眠る能力者のデータ。
一方通行、御坂美琴を始めとしたレベル5、そして、上条当麻に雨宮照。
「なかなかの収穫ですかね」
静かな部屋に声が響く。どこか笑っているような、そんな声だ。
カタカタとキーボードを打つ音が鳴り、また違ったデータが検索されていく。
『AIM拡散力場』についての文献を手に入れて行く。
カーソルを動かしては文献を表示していく。偶に、全然違う資料があったり、わけのわからないリンクにも飛ばされた。
不意に、部屋の中で灯るディスプレイによる明りが淡くなる。暗い画面でも表示したのだろうか。
「お、っと……これは、なかなかどころの収穫じゃないかもしれませんね」
ディスプレイに表示された文字列に、声はより楽しげになった。
黒い画面にともる白抜きの文字。
薄い笑い声が部屋に満ちた。

51かぺら:2010/04/21(水) 19:55:26 ID:iSajyxao
以上になります。
これからチラ裏でやるかは検討という事で、批評よろしくお願いします。

ちなみに。
シリーズタイトル:Liberta

52■■■■:2010/04/21(水) 20:13:22 ID:WKxJyTno
良い仕事したね!
この位のオリジナルキャラなら気にする事ないと思います。
ストーリーもハラハラしてきたし、続きを書いてください!

53■■■■:2010/04/21(水) 20:49:58 ID:kwLG8FpU
>>51
これはなかなか引き込まれる展開。
オリキャラがどんな能力持ちかまだ詳細はわかりませんが、期待しています。

54■■■■:2010/04/22(木) 01:08:45 ID:s30kTXLY
>>51
GJ!
続きが気になる…

55■■■■:2010/04/22(木) 19:07:39 ID:RLAjLHRg
>>51 GJです

でもなんだか最近、前みたいにたくさん投稿されませんね
「とある都市の反乱因子」や「ビギンズナイト」とか結構好きだったのに
他にも「とある都市の超能力者」とか「未来分岐点」とかも続きそうなのに投稿されてない
なんだか寂しいです。

56■■■■:2010/04/22(木) 20:56:21 ID:Dj..c66I
>34
>39
感想ありがとうございます。
クリスマスとは別で上条さんと黒子さんのいちゃいちゃssがあるんですが、これもここに投下でいいんでしょうか?
いちゃスレみたいなところの方がいいんでしょうか?
あと新しく絹旗最愛のssとか書きたいな、とかおもってるんですけど需要ありますか?
あと絹旗さんって魔術のことは知らないのでしょか?

57■■■■:2010/04/22(木) 21:50:50 ID:5t7XfgX2
>>56
一応専用のいちゃスレもあるみたいだけど、ここでいいんじゃないですか?
それにしても、短編・中編とはいえかなりの速筆ですね。それでいて良作続きですし。書き溜めるタイプの方でしょうか?

絹旗は魔術を知らないと思います。暗部組織に属していたとはいえ、魔術との接点は原作では描かれてなかったかと
まあSSですし、ある程度のオリジナル設定はいいと思います

58かぺら:2010/04/22(木) 22:01:08 ID:Kja1We3s
>>52-55
感想ありがとうございます。とりあえず、続きも投下させていただく方向で
今週末はリアル多忙のため書けないので、暫しお待ちを
実は3話までは出来てるんですが、もうちょい貯金+推敲させてください。
でわでわ。

59from-ING:2010/04/22(木) 22:14:20 ID:8eC2HDfI
『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』の作者なんですけど

感想ありがとうございました!!

質問なんですけど

やっぱ、いくつか溜めてから投稿した方がいいんですかね?

あと、一回の投稿での理想のレス数はどれくらいですか?

自分は、10スレくらいが理想なんですが

それだと、三週間に一度なんていう事態になるんですよ

一週間に3スレ程度か
三週間に10スレ程度か

どっちがいいですか?

長々とすいませんでした

60■■■■:2010/04/22(木) 22:34:04 ID:IJpdWbzU
>>59
がっつり三週間で10レスかな。

61■■■■:2010/04/23(金) 00:10:07 ID:ke8yXOWE
>>57
ありがとうございます。黒子もここに上げようと思います。
あ、あと「戦う佐天さん」の人であってます。

とりあえずクリスマスのやつ上げます。
注意点としては、

初春佐天が原作よりきゃっきゃうふふしていること、
クリスマス、つまりは原作の時間軸より後の話なので(個人的にあまり好きではないのですが)登場人物たちの状況や環境を勝手に妄想していること、
(一番やりたくなかったことなんですが)オリジナルの術式や技を登場人物たちが使っていることです。

自分はss書くときにいつも妄想が先走って、あろうことか後ろから話を考えて前から話を書いていくという書き方をしています。
つまりは両端から最も遠い「真ん中」が多少無理やりになってしまうのです。

また、指摘されている通り、これらは昔書き溜めたものです。
そのため、(初めから書くのならそれで気をつけようと思えるのですが)元からある文章を変えようと思うと非常に難しく、上げる際は校正程度で内容は大きく変更していません。
なので、読んでいてところどころ「あれっ?」と思われる箇所があるかもしれませんが、このssはあくまで「ギャグ」「馬鹿騒ぎ」程度のものとして考えてくだされば、と思います。
それでは投下します。
タイトルはやっぱり適当です。

62メリー★クリスマステイルイコ!:2010/04/23(金) 00:11:26 ID:ke8yXOWE
★★★★★★★★★★★★

クリスマス。

12月25日。

学園都市、柵川中学校寮の一室。
初春の暮らすその部屋に佐天涙子と初春飾利はいた。
何をするでもなく、敢えて言うなら何もしないをしながら。

「初春ぅ〜」
佐天が炬燵(と言ってもちゃぶ台の下に断熱素材の毛布を敷いただけのものだ。それでも学園都市製だけあって中々快適なのだが)の反対側に座る初春に向かって、ほっぺたをちゃぶ台にくっつけ、そのヒンヤリとした感触と毛布のぬくぬくとのギャップを楽しみながら気だるげに声をかけた。
「何ですか?佐天さん」
対して初春はちゃぶ台の上に置かれた篭から蜜柑をひとつ取り、東京っ子らしく筋を一本一本丁寧に剥きながら答える。
「今日は初春何か予定あるぅ?」
答えに特に期待していない、退屈紛れの質問だ。
それに対して初春は少し顎に人差し指を当てて考えた後に
「夜に彼氏とデートがありますね」
とだけ言うと再び筋剥き作業に戻る。
「そっかぁ。そうだよねぇ。クリスマスと言ったらデートだよねぇ」
「はい」
「…………………」
「…………………」
「…………えぇっ!?」
佐天は、がばちょ、と毛布から身を起こすとちゃぶ台の上にのそのそと上がり、初春の顔に自分の顔を近づけて問う。
「デート!?え、デート!?というか彼氏?彼氏って、え?いつのまに?初春!?」
対して初春は冷静に告げる。
「先月からお付き合いを始めました。とても優しい良い方ですよ。そういう訳で今日は夕飯は外で食べてくるので私の分は要りません」
「ふ、ふーん。あは、あはは。何だ、そうだったんだ。いやぁ全然気づかなかったや。そうだよね。か、彼氏がいたらそりゃクリスマスは彼氏と過ごすよね。うん。そうだね。はは、中々やりおるな初春は。きっちり青春してるじゃん。今度紹介してよ」
軽口を叩きつつ、しかし佐天の視線は下がっていき、ちゃぶ台と顔を合わせた。
綺麗に磨かれたその表面は、眉をハの字にして空笑いする佐天の顔を映していた。


「ふふっ」
「……?」
笑い声に視線を上げると、そこには今度は反対に自分の顔を覗き込んでいる初春の顔があった。
「嘘ですよ佐天さん」
「…………へ?」
「大体四六時中一緒にいるのに、私に彼氏がいたとしたら佐天さんが気付かないわけないじゃないですか」
「あぅ……えっと」
「佐天さん、私が佐天さんから離れてっちゃうと思って寂しくなりました?ヤキモチ妬きました?」
初春の表情はすっかりイタズラっ子のそれになっていた。
「えぅ………う、初春のいじわるぅ」
目尻に少し涙を浮かべて佐天が言う。
「あぁもう佐天さんは可愛いですねぇ」
初春は、ばふん、とちゃぶ台の下に敷かれた毛布を引きずり出すと、それで自分と佐天とを一緒に簀巻きにした。
「私が佐天さんを放って誰かのトコに行く訳無いじゃないですか」
「ばかぁ。う、初春のばかぁ」
一緒にロールされたまま、二人はゴロゴロと転がり、
「ひゃっ」
「にゃっ」
ちゃぶ台の上から落ちた。
二人は互いに顔を見合わせ、にへらり、と笑い合う。
「特に予定なんて無いですよ。クリスマスケーキでも買いに行きますか?今日は25日ですし、気の早い店ならもうクリスマスケーキのセールをしているかも知れませんよ?」
「行くぅ。初春とケーキ買いに行くぅ」
「あ、でも……」
「なに?」
「――もう少しだけ、こうしていましょうか」
「………ん」



「初春ぅ」
「何ですか?」
「ぬくぬくだねぇ」
「はい、ぬくぬくですね」

63メリー★クリスマステイルイコ!:2010/04/23(金) 00:12:15 ID:ke8yXOWE
★★★★★★★★★★★★
12月25日。
イルミネーションに彩られた学園都市の大通り。
全国的にクリスマスであるその日、ステイル・マグヌスはそのど真ん中にいた。
ただしその格好はいつもの暑苦しい神父服ではない。

上から下まで真っ赤っ赤。
ついでに頭に赤い三角帽。
おまけに顔には白い付け髭。

それはクリスマスの主役、サンタクロースの格好だった。
ステイルはその格好で大通りの一角に立ち、顔に爽やかな笑みを浮かべて、

「いらっしゃいませ〜。クリスマスケーキはいかがですか?」

と声を張り上げていた。



――話は1日前に遡る。

★★★★★★★★★★★★

「お金を貸しては頂けませんか?」
ステイルに向かってそう言ったのは、凡そそんな卑しい言葉の似合いそうにない人間。
世界に十数人しかいない聖人にして天草式十字凄教の女皇にしてネセサリウスの同胞。
神裂火織だった。

訳を聞いてみると
「インデックスにクリスマスプレゼントを贈りたいのですが、恥ずかしながら手持ちが足りないのです」
とのことだ。

科学対魔術の戦争は先日の××××により一応の解決を見た。
まさか上条当麻の右手の本当の力が××××を×××に×××××××××することだとは驚きだった。
その上一方通行の××とインデックスの××が×××××で×××だとは予想もしなかった。
だがそのお陰でステイルと神裂の、インデックス及び上条当麻の監視という長期任務は終了した。
だが続いて与えられた任務は科学と魔術とのパイプ役として学園都市で様々な短期任務を繰り返すこと。
つまりはそのまま学園都市に残れという指令だ。
最大教皇の温情か気紛れか、かくしてステイルと神裂は未だに学園都市に残っている。
違うことは、監視の任から解かれたために前よりも自由に動けるようになったことだろうか。

しかし、まだインデックスに自分達の存在は知らせてはいない。
忘れられてしまっていると分かっているだけに、どうしても一歩が踏み出せないのだ。
それでも、今まで心ばかりの品を送ったり彼女に気づかれないような親切を行ってきた。
今回のプレゼントというのもも、その延長なのだろう。
「何を買うつもりなんだい?」
「彼女に特製のブローチをと思って、イギリスの職人に頼んだのです。品物はもう届いているのですが、やはり手持ちが………それで支払いを明後日まで伸ばしてもらっているのです」
そう言って神裂は綺麗に包装された箱の中から十字架の形をした銀製のブローチを取り出した。
「………成る程。そういうことなら、貸すも何も、足りない分は僕が出そう」
「本当ですか!」
「僕と君の、二人からの贈り物ということにしてくれるならね」
「勿論です。助かりましたステイル」
「言うなよ。それで、何百円足りないんだい?」
「…………………え?」
ステイルが取り出した財布には、諭吉さんが一人もいなかった。
因みに足りない金額は、神裂が出せる8万5千を全額10万から引いた1万5千。
「あの、えっと……ステイル?あなた、一体何にそんなにお金を……」
そこで神裂はステイルが口にくわえて暢気に吹かしている煙草に気づき、問うのを止めた。
(ど、どうしましょうか……)
と、そこへアパートの扉を開けて小さな少女の外見をした何かが飛び込んできた。
「ステイルちゃん。お願いがあるんです。実は明日、バイトを紹介した子達が急に行けなくなってしまって。そのことをお店の方に伝えたら、明日はクリスマスで忙しいから代わりが二人は欲しいと言われてしまって………お給料は出ますから、どうか明日1日バイトを頼まれてくれませんか?」

それはまさに渡りに舟だった。

64メリー★クリスマステイルイコ!:2010/04/23(金) 00:14:55 ID:ke8yXOWE
★★★★★★★★★★★★

しかし――
(こんな辱しめを受けるようなバイトだとは聞いていないぞ…!)
店にたどり着いた二人はあれよあれよとサンタクロースのコスを着せられて店頭に立たされ、クリスマスケーキの販売員をやらされていた。
不慣れな接客業に内心では戸惑いつつも、ステイルは笑顔を浮かべて声を張り上げる。
これでもまだましな方だ。
何しろ自分の隣には自分以上の辱しめを受けている人間がいるのだから。
「いら……しゃい、ませ」
たどたどしく言葉を紡ぐのはステイルと同じくサンタコスを身に纏った神裂火織。
だが神裂のそれはステイルのそれとはまるで違う。
まず何より、布面積が極端に少なかった。
女性用のサンタコスということで、ズボンがスカートに変わっていることには頷けよう。
だがそれが異様に短い。
おそらくはもともとミニスカートだったそれを、ステイルと並んでも劣らない程長身の神裂が着ているせいだろう。
それは上着にも言える。
神裂の巨大なバストのせいで布地が引っ張られ、お臍が少し覗いているのだ。
そんな罰ゲームみたいな格好をして人の行き交う大通りで売り子という状況に、神裂の顔は真っ赤を通り越して青ざめていた。
「神裂、大丈夫か……」
「大丈夫ではありません……ですが、我慢もしましょう。言い出しっぺは私なんですから」
しかし彼女達の売り子ぶりは好評だった。
犯罪的な衣装を纏った神裂の方には男達が群がり、そしてステイルの方には

「サンタのおじさん、ケーキください」
「はいはい、まいど〜」

その長身と仮装からなるサンタを体現したかのような外見に惹かれて小さな子供達が寄ってきていた。
(全く………こんな所を土御門のヤツに見られたら何を言われることやら……)

心の中だけで溜め息を吐いたステイルはふと、ずっと露店のカウンターに並んだあるケーキを眺め続けている中学生位の少女の存在に気付いた。
ステイルは営業スマイルを顔には張りつけて少女に話しかける。
「こちらのゲコ太ケーキ、今ならセールで500円引きで大変お得となっていますが」
「へっ?あ、えと……すいません、見てただけです!」
少女はそれだけ言うと足早に通りを掛けていった。
しかしどこに行くでもなく、近くのクリスマスツリー風に装飾された街路樹の下で立ち止まり、木に背中を預けて時計を気にし始めた。
(待ち合わせ、か……)
ステイルはそう解釈すると、ケーキ売りのバイトに戻った。

65メリー★クリスマステイルイコ!:2010/04/23(金) 00:15:28 ID:ke8yXOWE
★★★★★★★★★★★★
「しまった、ゲコ太ケーキなんて書いてあるもんだからついつい引き寄せられてしまった……よく考えたらホールケーキなんて一人で食べられないし。それに……ア、アイツと食べるのに、あんな子供っぽいのじゃ馬鹿にされるかもしれないし」
御坂美琴は一人ごとを呟きながら街路樹に背を預けた。
「少し、早かったかな……」
携帯メールで打ち合わせた上条当麻との約束の時間まではあと十分程あった。
(お、落ち着け……私)
まさか二つ返事でオーケーしてくれるとは思わなかったが、これはチャンスだ。
クリスマスの夜に二人……これ程絶好のシチュエーションもない。
美琴は髪や服の乱れを確認する。
この日のために昨日は美容院で細かい注文をつけながら髪を切ってもらい、店で3時間悩んで買ったおニューの服を揃えたのだ。
(だ、大丈夫大丈夫。デートっていうか、ただ街を二人で歩くだけだって。それがたまたまクリスマスだったってだけよ)
心の中で言い訳していると、

「よう、御坂」

上条当麻が現れた。

「べ、別に今来たところだからぁ!」
聞かれてもいないのに言いながら振り返り、

「あ、短髪」
「………………」

御坂美琴は固まった。
上条当麻が特に着飾るでもなく近くのコンビニに行くみたいな適当な格好をしていて――そしてその傍らに小さなシスターを引き連れていたからだ。
「………アンタ、どういうつもりよ」
ドスをきかせて美琴が問うと、
「あ?用があるって言ってきたのはそっちの方だろ?」
と能天気な答えが返ってきた。
どうやらこの男は本気でたまたまクリスマスに呼びつけられただけだと思っているらしい。
「ふ………」
「ふ?」
「ふざけんなゴルァァァァァァァァァァ!!!」
「ぐはぁっ!?」
美琴は渾身のタックルを当麻に浴びせると、踵を返して走り去ってしまった。


★★★★★★★★★★★★

(やれやれ、何をやっているんだあの男は……)
ステイルは売り子をしながら、先程の少女のところに上条当麻が現れ、そして頭突きを食らって腹を押さえてうずくまるまでの一部始終を見ていた。
(ナンパ、ではないだろうな。大方無用な世話を焼いて怒らせたか、デリカシーのないことをして怒らせたか……)
当麻はダメージが引いたのか少しすると立ち上がり、
「悪いインデックス。ちょっとここで待っててくれ」
とインデックスに告げると、
「おい、待て御坂!」
少女の後を追っていった。
(な、何をしている上条当麻!彼女を一人置いていくなんて、どれ程危険なことか分かっていないのか!?)
とステイルが思っている内に、そこら辺から数人のチャラい学生がインデックスに群がってきた。
「………神裂」
「…分かりました。少しくらいなら一人でも大丈夫です。行ってあげてください」
「すまないね」
言い、ステイルがカウンターから出ようとしたところで
「ステイル、これを」
と神裂が例のブローチの入った小さな箱を差し出してきた。
「人づてに渡そうと思っていましたが、直接渡せるならその方がいい。丁度変装もしていることですし、これを逃すと今日中に渡すのは無理でしょうしね」
「あぁ、分かった」
ステイルは小さな箱を衣装のポケットに入れると、男達に裏路地へ誘導されていくインデックスの後を追った。

66メリー★クリスマステイルイコ!:2010/04/23(金) 00:15:51 ID:ke8yXOWE
★★★★★★★★★★★★
「うぅ、寒いですねぇ」
「雪は降らないのかな?」
「いえ、今日は確か1日晴れだと天気予報で言ってましたよ」
「外れないかなぁ」
「ツリーダイアグラムに則った完全な天気予測ですからね。難しいと思いますよ」
「むぅ」
佐天涙子と初春飾利は学園都市の大通りに出ていた。
ケーキを買ったら部屋に戻ってお祝いする予定なので、二人とも適当に着込んでいるだけで特に着飾ってはいない。
財布だけ突っ込んできた感じだ。
「寒くても雪が降らないんじゃなぁ……あ、手袋あった」
佐天は上着のポケットから手袋を一組取り出す。
「あ、私も……あれ?」
自分の上着のポケットを探っていた初春が声を上げる。
「どったの?」
「手袋忘れてきちゃったみたいです」
「そっか、んじゃ……」
佐天は自分は左手だけ手袋をはめ、右手袋を初春に渡した。
「半分こ半分こ」
「でもこれじゃ佐天さん、片手だけ寒いですよ?」
「んー。じゃ、こうしよう」
佐天は裸の右手で初春の左手を握る。
全ての指を絡めた、所謂恋人繋ぎで。
「どう、あったかい?」
「んー、佐天さんの手も冷たいのでそんなにあったかくはありませんね」
「やっぱりそっか」
「でも……」
「でも?」
「何だかあったかい気がします」
「何だそりゃ」
「さぁ、何でしょうね」

二人は恋人繋ぎをした手を前後に振りながら歩を進める。

「あ、サンタクロース」
佐天が、ケーキ屋の店頭にサンタのコスプレをした二人組を見つけた。
「佐天さんは、いくつまでサンタを信じてました?」
初春が適当に話題を振る。
「んー、小学校の中学年くらいまでかなぁ」
「まぁ、大体その位ですよね」
続いて佐天が問い返す。
「んじゃ初春。トナカイはいつまで信じてた?」
「…………………………………………え?」
「いや、だからトナカイ。いくつの時までトナカイがいるって信じてた?」
「……………………………………………佐天さん、トナカイはいますよ」
「いやいや、何言ってんの初春。あんな空飛ぶ動物が実際にいる訳ないじゃん」
「いや、飛びませんけど、でもいるんですよ」
「ん?違うよ、飛んでるよ。トナカイは」
「そりゃソリを引いてるトナカイは飛んでますけど」
「じゃあ飛ぶんじゃん」
「あー、えっと……………佐天さん」
「にゃに?」
「今度一緒に動物園に行きましょう」
真面目顔で告げる初春。
「………デ、デートのお誘いをされてしまった」
「違います!これは佐天さんの今後の人生の為に必要なことなんです!」
「? 変なの。……………でもさ、初春」
佐天は歩を止めると、繋いだ手を持ち上げて空に差し出しながら言った。
「私、今はサンタクロースも少し信じてるかも」
「そんな!佐天さんが退化を!?」
「………ん、なんか違うな。サンタクロースとか魔法使いとか、そういう空想だとか非科学的だとか言われてることも、私たちが知らないだけで、もしかしたらホントはあんのかもしんないじゃん。――ただ目に見えないだけでさ」
「はぁ……私にはよくわかりません」
「うん、私も」
「何ですかそれは」
「さぁ。取りあえずはさっさとケーキ買ってお祝いしよう、てことじゃない?」
「ふふ、そうですね」


二人は再び歩き出し、

どんっ

と一歩もしない内に佐天は何かと衝突した。
堪らず尻餅をつく佐天。
「あぁ、すまない」
上から声が降ってきた。
見上げると大きな人影が手を差し出している。
全身真っ赤の衣装。
先程のサンタコスの男だ。
(うわ、大きい……髭で顔見えないけど、目の色とか…外人さん?)
などと思いながら佐天は男の手と繋いだままの初春の手とを頼りに立ち上がる。
「急いでいたものだから。怪我は…」
「あ、はい。大丈夫です」
「悪いね。それじゃ」
男はそれだけ言うと裏路地に消えていった。

「大丈夫ですか?佐天さん」
初春が声をかけてくる。
「うん、全然。ホントにどこも怪我してないし」
「そうですか、良かったです。……………あ、佐天さん。そこ、何か落ちてますけど……」
「へ?」
初春が指を差した先には、


綺麗に包装された小さな箱が落ちていた。

67メリー★クリスマステイルイコ!:2010/04/23(金) 00:17:10 ID:ke8yXOWE
★★★★★★★★★★★★
「さっきの人が落としてったんでしょうか?」
初春が箱を広い上げて言う。
「多分そうだと思う。……ラッピングされてるし、クリスマスプレゼントじゃない?」
佐天が箱を眺めながら言葉を返す。
「……貰ったにしろ、贈るつもりにしろ、大切なものだよね」
「届けてあげた方がいいですよね」
「追いかけよう。まだそんな遠くまで行ってないと思うし」
「はい」
そうして二人はステイルの消えていった路地に入った。


★★★★★★★★★★★★

「もう!ホントに何なのよあいつは!」
御坂美琴は肩を怒らせながら路地を走っていた。
「私なんて眼中にないって訳!?私がバカみたいじゃない!こんなにめかし込んで……1人で期待して」
随分距離を空けてようやく美琴は立ち止まり、鞄から紙袋を取り出した。
クリスマスプレゼントとして当麻に渡すつもりだったものだ。
「あーぁ。何やってんだろ私」
と、
「いょーう姉ちゃん」
美琴に声をかけてくる存在があった。
数人の、ガラの悪そうな男達だ。
「何泣いてんだよ。なぁ、彼氏にでもフラれた?だったら今から俺達と遊ばねぇ?」
ニヤニヤ笑いを顔に張り付けていう男達。
(ウザい……何なのよこんな時に)
いつもなら電撃を浴びせて追い払うところだが、こうも気落ちしているとこいつらの為に演算能力を使うことさえも億劫に感じてしまう。
(それに――『こいつらが』ピンチになった時って、大概あいつが来る時だし)
そう思って美琴が何もしないでいると、男達はそれを了解と受け取ったらしく、美琴に手を伸ばそうとし――


ぶっ飛んだ。


「………は?」
美琴が呆けている間に1人、また1人と紙人形のように空を舞っていく不良達。
その乱舞が終わり、全ての不良達が地に倒れ伏した後にようやく美琴は彼らを葬った犯人を見た。

それは――

「ゲコ太…………?」

倒れる不良達の真ん中に1人(?)立っているのは全身緑色のカエルの着ぐるみ。
クリスマス仕様なのか、頭に小さな赤い帽子を被っている。
ゲコ太はずんずんと美琴のところまで来てその顔を確認すると、
「チッ」
と舌打ちしてからどこかへ消えた。
「な、な、何なのよ……」
訳の分からない状況にもそうだが、何より大好きなゲコ太の形をしたものに舌打ちされたのに腹が立つ。

と、
「御坂、お前またやったのかよ」
こちらの心中を全く知らない様子の能天気野郎、上条当麻がひょっこり顔を出した。
「ち、違うわよ!これはゲコ太が……」
「は?お前何言ってんの?」
「…………。何でもないわよ。で、アンタ一体何しに来たの」
ジト目で美琴が告げと
「あぁ、これ」
言って当麻はポケットから何かを取り出して美琴に差し出してきた。
「これって……」
「プレゼント。ほれ、今日ってちょうどクリスマスだろ。どうせ会うんならと思って買っといたのに、いきなり逃げるもんだから渡しそびれじゃねーか」
美琴はプレゼントを当麻の手から受け取り中を開ける。
可愛らしい花柄のヘアピンだ。
「わぁ…」
「お前結構こういう子供っぽいの好きだったろ?」
いつもならそんな当麻の言葉に電撃の一つでも浴びせるところだったが
「うん……ありがと」
不意打ちな当麻の行動につい頷いてしまう。
「?………んで、お前の用事って何なんだよ」
「へ?」
「お前が呼び出したから寒い中わざわざ外に出てきたんじゃねぇか」
「えっと、その………」
美琴は慌てて抱えていた当麻へのクリスマスプレゼントを渡す。
「これ、私からも。クリスマスプレゼント」
「あ?んなもんわざわざいーのに。……開けていいのか?」
顔を真っ赤にし、無言で、こくん、と首を縦に振る美琴。
当麻が袋を開けると、中から少し子供っぽい柄の男性用エプロンが出てきた。
「使えるもののがいいかなって思って……1人暮らしで料理とかするって言ってたし」
「ほぉー。柄はさすが御坂様センスってところだが……」
「な、何よ!」
「でも、ま。いいんじゃね。ありがとよ、使わせてもらうわ」

68メリー★クリスマステイルイコ!:2010/04/23(金) 00:18:54 ID:ke8yXOWE
「………あ、あわ、わ、私も!」
美琴はあたふたと受け取ったヘアピンを開封し、それで前髪を止めた。
そして上目遣いで当麻の顔を伺いながら言う。
「……………どう?に、似合ってる?変じゃない?」
「おぉ」
「じゃあ、その…………………………………………………………可愛い?」
「…おい、どうした御坂さん?」
「こ、答えなさいよ!」
美琴は火が出そうな程に真っ赤っ赤の顔で叫ぶ。
「ん、まぁ……………………可愛い、んじゃねぇの?」
「………あ、ありがと」
当麻の言葉に、美琴は俯いて小さく呟く。
「んで、お前の用事って何なんだ?」
「そ、それは……」
(無理無理!こんなアガっててデートとか絶対無理!)
「その、プレゼントが、用事………」
「あ?そうだったのか。そんくらいわざわざ待ち合わせなんてしなくても……」
「いいじゃない別に!それにクリスマスプレゼントなんだからクリスマスに渡さないと!ほら!あの子待ってるんじゃないの?戻ってあげたら?」
「? お、おぅ。んじゃ、気をつけて帰れよ」
「うん……」
美琴は去って行く当麻の背中を赤い顔のまま見送る。
そして当麻の背中が見えなくなった頃、ヘアピンに触れ、
「ふふ」
と1人こそばゆそうに笑ってから、携帯を取り出して電話をかけた。
「あ、もしもし黒子?……うん。用事はもう終わったから。でさ、今からケーキ買って帰るから、一緒に食べない?」


★★★★★★★★★★★★

「なっ………」
ステイルがインデックスの消えていった路地に入ると、そこには先程インデックスをたぶらかした不良達が倒れていた。
そしてその中心には、白い修道服を着たインデックスと――

カエルの着ぐるみが立っていた。

「は?」
と、見ている内にカエルはインデックスに近づいていく。
「何をする気だ……!」
咄嗟に臨戦態勢に入ったステイルだったが、
「チッ」
カエルはインデックスの顔を見て舌打ちすると、路地の向こうに消えてしまった。
「……一体何なんだ?」
戸惑いつつもインデックスのもとへ急ぐステイル。

「あ、サンタクロースだ!」
ステイルに気付いたインデックスが声を上げる。
変装は見破られていないようだ。
「や、やぁ……」
何と答えればよいか分からずぎこちない返事を返す。
「こすぷれって言うんだよね。とうまが言ってた。こんびにの店員さん?」
「いや違うが……まぁ、似たようなものか」
「ふーん。ところで、私は何だか良く分からない状況に絶賛困惑中なんだけど、あなたはこの人たちの知り合いなのかな?突然皆倒れちゃったけど、するとおいしいものをご馳走してくれるという約束がピンチかも」
(そんな安い口上に乗ったのか……)
ステイルは心中で呆れながら、視線を泳がせどろもどろに言う。
「いや、知り合いではない。僕は、実は……その、ある人達に頼まれて、君にクリスマスプレゼントを届けに来たんだ」
「プレゼント?」
小首を傾げるインデックス。
その仕草に思わずドキリとするステイル・マグヌス14歳は、赤くなった顔を付け髭で隠しながら言葉を続ける。
「そ、そう。献身的な修道女である君に」
もともとクリスマスはドイツ清教の行事だが、細かいことは良しとしよう。
「君のことを、とても…………とても大切に思っている者達から」
ステイルは噛みしめるように言葉を吐き出す。

想いは届かないと知っている。
それでも僕は、君の側に居続けよう。
いつまでも、君の側に――

そしてステイルはポケットに手を入れ


「………………………………………………………………………………………」

「? どうしたの?」
いちいち可愛いらしい仕草をしながら問いかけるインデックスに、しかしステイルは言葉を返せない。
(ブローチが………ない)
身体中から脂汗を流して固まるステイル。
(落とした?いつ?まさか………少女とぶつかった時に?まずい、まずいぞ)
インデックスに渡せないこともまずいが、何よりそのことを神裂に伝えた時に自分の身がどうなっているかを想像して身震いする。

69メリー★クリスマステイルイコ!:2010/04/23(金) 00:21:09 ID:ke8yXOWE
★★★★★★★★★★★★

「お姉さんチョコケーキ1つ」
「姉ちゃんショート1個」
「店員さんスマイル下さい」
「あの………ゲコ太ケーキ1つ」
「はい、はい。少々お待ちを。えーと……」
神裂火織は目が回る程の忙しさの中にいた。
(あぁ、ステイルは一体何をやっているんですか!)
心中で愚痴りつつも手は止めない。
そして忙しく立ち回る神裂は、上条当麻がインデックスと待ち合わせた場所に戻ってきたものの、インデックスの姿が見当たらないことに首を傾げながら向こうに行ってしまったことに気付くことは出来なかった。

★★★★★★★★★★★★

「っかしーな。おい、インデックスさーん?隠れてないで出てきなさーい。そしたら上条さん奮発してケーキの1つも買ってあげるよー。…………食べ物で釣っても出てこないとは、本格的にどこかに行ったか?」
インデックスがその食べ物に釣られて消えてしまったことを知らず、暢気に呟く当麻。
すると、
「よ、お兄ちゃん」
という声が後ろから聞こえた。
「んぁ?舞夏ちゃん?」
振り返った当麻の視界に映ったのは、清掃ロボの上に座り込み移動している土御門元春の妹、土御門舞夏だった。
「どうしたんだ?こんなところに一人で、土御門はどうした?」
「そう、それが問題なのだー」
舞夏はびしりと当麻に人差し指を突き出す。
「?」
「兄貴が消えたのだー」
「消えた?土御門が?」
「クリスマスだから待ち合わせて外をラブラブ……ブラブラする予定だったんだけど、いつまで経っても待ち合わせ場所に現れない。アパートに行ってもいない。そこでこうして街まで兄貴を探しに来たのだー」
「成る程、そっちも人探しか……」
「も?」
「あぁ、実はインデックスがどっかいっちまってな」
「そうなのかー。つまり、私達は同胞ということになるだなー。よーし、ここは協力して探すというのははどうだー?」
「……ん、そうだな。一人より二人の方がいい。よろしくな舞夏ちゃん」
「了解」
そうして奇妙な二人組は捜索を開始した。

70メリー★クリスマステイルイコ!:2010/04/23(金) 00:21:51 ID:ke8yXOWE
★★★★★★★★★★★★
「ブローチが……」
「初春が……」
口をあんぐり開けてゲコ太が見えなくなるまで見届けた後で、ようやく佐天とステイルは正気を取り戻した。
ステイルはまずインデックスに告げる。
「すまないインデックス。トラブルが発生した。ひとまず大通りまで連れていくから、そこで上条当麻と合流するか、暫く神裂のところに……」
「あれ?私名前言ったっけ?」
「いや、その、プレゼントの送り主を通じてだな……」
「あぁ、そういうことだったんだね」
「あ、あぁ。そういうことだったんだよ」
適当にはぐらかすと、ステイルは佐天に向き直り詰問する。
「おい、何故あの少女は攫われた?」
「そ、そんなの私にもわかりませんよ!」
「あのカエルに心当たりは?」
「ゲコ太の着ぐるみだとは思いますけど……中身が誰かなんて見当もつかないです」
「くそっ!何なんだ一体!」
ステイルは苛立ち混じりに懐から煙草の箱を取り出そうとし、
「……ちっ」
丁度切らしていたことに気付いた。
「あぁくそ、最悪だ。最悪のクリスマスだよ………」
小さく呟いてから、ステイルは再びインデックスを視界に入れる。
「はぁ……まぁいい。とりあえず行こうかインデックス」
「うん」
言ってインデックスは、

ステイルの手を握った。

「〜〜〜〜〜〜」
「? どうしたの?」
「いや………何でもない」
(最悪のクリスマスというのは撤回しよう)
思い、ステイルはインデックスの手のひらの感触に緊張しながら大通りに出た。
一通り見回してみたが、どうやら上条当麻はいないようだ。
(仕方ない、神裂に頼もう)
ステイルはその足で神裂のいるケーキ屋へ赴く。
「ステイル、ようやく帰ってきましたか。早く手伝って……何故インデックスが一緒に?」
「緊急事態だ。暫く預かっていてくれ」
「は、はい?」
神裂が理解するより先に、ステイルはインデックスを強引に押しつけ(但し手を離すのには少し間があった)走り去ってしまった。
(な、何だと言うのですステイル!いきなりこの子と二人というのは少し困りますよ!)
神裂は突然の状況にそう考えるも
(………あ、でもこの子がいてくれたら仕事が楽に)
と思い直し
「このケーキが欲しいの?はい。お代?いらないんだよそんなの。他者に施しをするのがシスターの……」
そしてすぐに後悔した。

71メリー★クリスマステイルイコ!:2010/04/23(金) 00:23:36 ID:ke8yXOWE
★★★★★★★★★★★★

ステイルが大通りを突っ切っていると
「あ、あの」
と後ろから少女の声がした。
「何た?」
振り返ったステイルはそこに先程の少女――佐天の姿を認めた。
「あなたは、ゲコ太を……初春を追いかけてるんですよね」
「初春……あぁ、あの花の少女か。そのつもりだが」
「だったら」
佐天が一歩踏み出して言う。
「だったら私も一緒に行きます!」
佐天の提案にステイルは暫し思考する。
(足手まといになるかもしれないが……見たところこの少女は初春という少女と友人らしいし、得られる情報はあるかもしれないな。何のヒントもない今は連れていった方が賢明か)
「分かった。一緒に行こう。僕はステイル・マグヌス。君、名前は?」
「あ、はい。佐天、佐天涙子です」
お互いに簡単に自己紹介を済ませると、奇妙な二人組は追跡を開始した。

★★★★★★★★★★★★
「お、おおお、降ろして下さいっ!」
「………」
ついに大通りに出たゲコ太に初春が抗議するも、ゲコ太は一言も応じず、一向にその足を緩めない。
「お願いですから!こ、このままだと、パ、パンツが……」
顔を真っ赤にする初春の言う通り、荷物の様に肩に担がれている初春のスカートは、ゲコ太のスピードが生み出す風によってひらりひらりとめくれあがっている。
その上パンツ見せ中学生とカエルの着ぐるみという珍妙な組み合わせに、通りを歩く人たちは何事かと視線を向けてくるため、初春の羞恥心はピークに達していた。
「…………」
するとゲコ太は一度立ち止まると、初春の身体を肩から引き下ろし、初春の肩と腰に手を回すようにして抱え直した。

即ちお姫様だっこに。

「いやいや、それは確かにスカートはめくれ上がりませんけど、別の意味でかなり恥ずかしいと言いますか………ひゃんっ」
初春の言葉を聞かず、ゲコ太は再び走り出す。
そして通りを突っ切り、先の行き止まりになっているビルとビルとの小さな隙間に身を滑りこませると、ようやく初春を地面に下ろした。
続いてゲコ太は辺りを見回し、近くに誰もいないことを確認しだした。
「あ、あ、あの……何の御用でしょうか…」
初春がおそるおそる聞くと、周囲に人がいないことを確認したゲコ太がずんずんと初春に歩み寄り、その肩に両の手を置いた。
「ひっ……」
表情の変化のない着ぐるみというものの顔面のアップは結構心臓に悪く、思わず声をあげてしまった初春に

「頼みがある。助けてくれ」

ようやくゲコ太は口を開いた。

72メリー★クリスマステイルイコ!:2010/04/23(金) 00:24:30 ID:ke8yXOWE
★★★★★★★★★★★★
「何?」
「せやから―。身分証がないと煙草は売れないんやって」
「身分証だと?何故煙草を買うのにそんなものが必要なんだい?」
ステイルは青い髪にピアスをし、クリスマスらしくサンタコスを着たコンビニ店員にニコチン不足で苛々しながら詰問する。
サンタコスの男同士がカウンターを挟んで言い合う様子は、端からはコメディにしか見えない。
「そういう規則なんやって。えーやんえーやん、お兄さんはクリスマスを一緒に過ごすロリーな彼女がおるんやもん。それ以上求めるなんて欲張りやっちゅうに。こっちはクリスマスもバイトな独り身高校生なんやで」
「……話にならんっ」
ステイルは青髪ピアスサンタ吐き捨てるように言うと、コンビニを出る。
「くそっ、何だっていうんだ本当に……」
佐天という少女と連れ去られた花の少女――初春は友人関係らしく、まず最初に初春と連絡を取ることを考えたのだが、少し外に出るだけの予定だった為に両者共に携帯電話も置いてきたという話だ。
初春が連れ去られた理由も分からず仕舞いで、追跡は早速難航していた。

「はいっ」
と、後ろから声がした。
振り返ったステイルが見たのは下からステイルに向かって腕を精一杯に伸ばしている佐天。
「何だそれは?」
ステイルが問うたのは、佐天の指の先に摘ままれ、また佐天が口にくわえている棒状のスナック菓子についてだ。
「ポッキーだよ」
佐天はフランクな口調で自分の口に含んだそれをカリカリとかじりながら言う。
先程までステイルに敬語を使っていた筈の佐天だったが、会話の中でステイルが佐天と年の差が一つしかないと知るや唐突に距離が近くなった。
「禁煙するのに別の物くわえとくとか、よく聞くし」
「禁煙……」
「未成年なんでしょ、煙草はイカンよ君。悪いことはダメ。その内自分にしっぺ返しが来るんだから」
「………」
まるで年下の子供をあやすような口調だ。
だが口淋しいのは事実なので、取り敢えず突き出されているポッキーを頂こうとして
「む……」
邪魔な付け髭に気が付き、取り去る。
と、
「へ?」
佐天が手に持っていたポッキーを取り落とした。
「どうした?」
「な、なな、なんでもないよ?」
どもる様に言って新しいポッキーを取り出そうとしている佐天の顔は心なしか赤くなっている。
「は、はいっ。どぞ」
再びポッキーを突き出され、今度こそステイルはそれを食べた。
口を伸ばし、ケースの中の煙草を口で引き出す様な動作で。
「ちょ、手!手使って!」
わたわたしながら叫ぶ佐天。
「さっきからどうしたんだ?」
「いや、だから、その………はぁ。落ち着こう私、うん。…………何ていうか、意外とイケメンだったから、ちょっとビックリしたって言うか……」
顔を背けながら言う佐天に、ステイルは軽い調子で返した。
「イケメン……………………それはどういう意味の言葉なんだ?」



★★★★★★★★★★★★


「……成る程、わかりました」
初春はゲコ太から一通りの事情を聞いた。
発端はゲコ太――ゲコ太の中の人――の携帯に送られてきた一件のメール。
知らないアドレスから来たそれにはゲコ太の彼女(と本人は言っていた)が縄で縛られて転がされている画像が添付されており、

『この女を返して欲しくば今日の20時、3000万を持って以下の場所まで一人で来い。』

という短い文章と第7学区にある廃ビルの住所が書かれていた。

73メリー★クリスマステイルイコ!:2010/04/23(金) 00:27:02 ID:ke8yXOWE
身代金目的の誘拐、ということなのだろう。
初春は風紀委員の身として、警備員に任せることを提案したのだが、
「この場所はスキルアウト共の溜まり場だ。つまり犯人は不良学生………指定の時刻まで何もされずに無事である保証なんて1ミリたりともない」
とゲコ太は言った。
事実ゲコ太はキャンペーンをしていたとある店からゲコ太の着ぐるみを拝借して正体を隠した上で、単身その廃ビルに強襲をかけたらしい。
「だがビルはもぬけの殻。そこで裏通りを巡って不良共を殴りながら情報を集めていたんだが、どいつもこいつも知らないの一点張りだ。かと言って警備員に任せたら連中が何をしでかすか分からない。街のどこにいるかも知れない連中だ。警備員に告げ口したことが奴らの仲間にバレたら……最悪の状況だってありえる。だが手がかりがない。不良共を何人も倒したが、そんなんじゃ何にもならない。そんな時にあんたを見つけた。その花には見覚えがある。俺の記憶が正しければ、あんたは風紀委員だ。それもただの風紀委員じゃない、他人を守るために身を投げ出せるような、そんな風紀委員の鑑みたいな奴だ。だからあんたに手伝って欲しい。――――『守護神(ゴールキーパー)』の力を貸して欲しい」
「あなたは……一体…」
「悪い、今は俺の言うことを聞いてくれ。頼む」
ゲコ太はただ頭を下げる。
初春にはゲコ太の正体も何もかも分からなかった。
だがその真摯な様に、ゲコ太はきっと悪い人ではないのだろう、と思い
「分かりました。お手伝いさせてもらいます」
初春はゲコ太についていくことを決めた。

★★★★★★★★★★★★
「オイ、チビ。それで用事ってのは何なンだ?わざわざこんな騒がしいトコまでよォ」
「んー、強いてあげるなら、こうしてあなたとクリスマスの街を何の目的もなくぶらぶらと散策することかも、とミサカはミサカは心持ちはしゃぎながら言ってみる」
「…………………帰る」
「えぇっ!?とミサカはミサカはあなたにしがみつきながら今の発言の撤回を求めてみたり!」
一方通行と打ち止めはクリスマスの街の中にいた。
一方通行としてはクリスマスなどという企業の戦略でしかないお祭り事に興味の欠片もありはしないのだが、打ち止めに引きずられるようにして外に出てしまったのだ。
「用事がねェンなら帰るぞ。こんな人ゴミを何を好き好んで歩かなきゃならねェンだよ」
「待って!ストップ!カムバック!とミサカはミサカは………」
と、不意に打ち止めの声が途切れた。
「おいどうした?」
「あの店のケーキクレープ……もともとスイーツであるクレープに更にケーキをトッピングするという発想には感服するしかないかも。そしてあわよくばその味をこの舌でもって確かめてみたいな、とミサカはミサカはあなたに上目遣いで頼み込んでみたり」
弾んだ声を上げ、目をきらきらと輝かせて言う打ち止め。
一方通行は大きく溜め息をついてから財布を取り出し、千円札を打ち止めに手渡しながら言う。
「それ食ったら帰るぞ」
「わぁいありがとう、とミサカはミサカはクレープ屋まで全速力で駆けながら……わぷっ!」
走り出した打ち止めが通行人にぶつかった。
「ったく……?」
一方通行はその通行人を知っていた。
「おぅ、一方通行じゃん」
「黄泉川愛穂…」
黄泉川は打ち止めの身体を立たせてやりながら一方通行に言う。
「丁度よかった。実は今ある店からゲコ太の着ぐるみが盗まれたって通報があって。しかもその着ぐるみを着た何者かは街の学生達を襲って回ってるって話じゃん。まぁ襲われてるのは言ってしまえば不良の学生なんだけど……だからって放っとけないじゃん。悪いけど、暇だったらゲコ太探しを手伝って欲しいじゃん」
「あァ?何でンな面倒なこと……大体そういうのは警備員や風紀委員のオシゴトだろうがよォ」
「んじゃ、これでいいじゃん」
言い、黄泉川は懐から風紀委員の腕章を取り出すと一方通行の腕につけた。
「おい、一体何のマネ…」
「じゃ、よろしくじゃん」
一方通行の抗議を聞かず、黄泉川は走り去ってしまう。
「ったく……」
再び大きな溜め息をつく一方通行に、クレープを買って帰ってきた打ち止めが言った。
「その腕章、あり得ない位似合ってないかも、とミサカはミサカは出来るだけあなたを傷つけないように今のあなたの外見について述べてみる」
「…………ほっとけ」

74メリー★クリスマステイルイコ!:2010/04/23(金) 00:27:58 ID:ke8yXOWE
★★★★★★★★★★★★

「もしもし?風紀委員177支部ですけど………あら、初春さん」
固法美偉は177支部の固定電話を取った。
『固法先輩…あの、白井さんはいませんか?携帯に掛けても繋がらなくて。確か今日は詰所にいる筈ですよね?』
「あぁ、白井さん。さっきまでいたんだけど……なんか御坂さんから電話がかかってきたと思ったら物凄いスピードで仕事終わらせて出ていったわよ」
『そうですか……』
「何か用だった?風紀委員のことなら私でも代われると思うけど」
『あ……、いえ。大した用事じゃないんです。ありがとうございました』
「……そう。わかったわ。じゃ、メリークリスマス」
『メ、メリークリスマスです』
固法は通話の切れた受話器を戻すと
「初春さん、何の用事だったんだろう」
としばし思案したものの
「あぁ、これじゃいつまで経っても片付かない」
再びパソコンに向かう。
だが、打鍵を始めるより先に再び電話が鳴った。
今度は自分の携帯電話だ。
「もう、今度は何なのよ。…はい、もしもし…………え?」




★★★★★★★★★★★★

「……すいません、駄目でした。白井さんが協力してくれたらと思ったんですけど、連絡がつかなくて」
初春は携帯を閉じながらゲコ太に言う。
「私だけじゃ力不足かもしれませんけど……彼女さんの為にもゲコ太さんの為にも、私精一杯頑張りますので!」
「あぁ、助かる」
両手でガッツポーズを作る初春に、ゲコ太は苦笑混じりの感謝を述べる。
「では早速」
初春はとある店舗を指差した。
「ネカフェに行きましょう」

75メリー★クリスマステイルイコ!:2010/04/23(金) 00:28:55 ID:ke8yXOWE
★★★★★★★★★★★★

「いねーなぁ。インデックスも、土御門も」
当麻は舞夏を連れて、再びインデックスと別れた大通りに戻ってきていた。
「舞夏ちゃん、土御門の居場所に心当たりとかないのか?」
「んー、兄貴に限って私との約束をすっぽかして何処かに行くとは考えられないんだがー」
「なのに待ち合わせの場所には居なかった……何か事故か事件にでも巻き込まれちまったのか……?あぁ、分からねぇ」
頭を掻きむしり視線を走らせる当麻を
「上条当麻!!」
大音声で呼ぶ声がした。
「この声……神裂か?」
果たして、神裂火織はいた。
ケーキ屋の店頭で寒そうなコスチュームに身を包んだ売り子として。
「………………えーと、神裂さん?一体それは何の罰ゲームなのでしょうか?」
「こ、これは報酬に対する正当な対価です!…………そんなことより、あなた先程インデックスとはぐれたでしょう」
「あぁ、そうそう。待ってるように言ったんだけどなぁ」
「…はぁ。あなたがそんなことだから………まぁ、いいです。ステイルが彼女を保護してくたのです。そこにいますから、どうぞ連れて帰ってください」
「あぁ、そうだったのか。サンキューな………それで、どこにいるんだ?」
「どこって、すぐそこに」
「いや、売り子やってる小萌先生しかいねーぞ?」
「まさか……」
神裂は横を振り返る。
神裂はまず先程ヘルプで駆けつけてきてくれた(様子見と言ってケーキを買いに来たところを引き込んだ)月詠小萌がビール箱を2つ積んだ上に立ち、ケーキを客に手渡しているのを視界に収める。
そこから視線を奥へ遣ったが――その向こうで大人しくケーキ(売り物)を頬張っていた筈のインデックスは、皿とフォークを残してどこかに消えてしまっていた。

★★★★★★★★★★★★

「はいはい〜…はいっと」
軽い調子で2分程初春が鍵打を続け、最後にポンとエンターキーを押すと、ネットカフェのパソコンの画面にこの近辺の監視カメラの映像が次々に現れた。
「詰所のコンピュータに繋いで、そこからハッキングをかけて監視カメラの映像を持ってきました」
「…………凄いな」
初春とゲコ太はネットカフェに入店していた。
受付のバイトには変な顔をされながらも何とかやりすごし、二人は狭い個室の中で大きな液晶に映る街の様子に目を向けている。
「裏通りの方の映像ですと……はいっと。んー、それっぽい様子の人たちはいますけど………」
目的の女性はどこにも見当たらない。
「……くそ、どこにいるんだ」
ゲコ太が身を乗り出して画面に目線を走らせる。
結果ゲコ太の身体は初春に乗り掛かるようになる。
(あわわ……ゲコ太さんって、男の方ですよね。それによく考えたら狭い個室に二人きり……)
初春が一人場違いな妄想を働かせて顔を赤らめていると、耳元で聞こえるゲコ太の荒い息が首筋にかかった。
「あ、ひゃん……」
着ぐるみを着用していることで温度の上がっているそれの生暖かい感触に首を竦めて抵抗する。
「? どうした?」
様子のおかしい初春の顔を覗き込むように更に体重をかけてくるゲコ太。
それによって着ぐるみの布が初春の首をくすぐり始める。
「ふ……や、ん…」
「お、おい――」

その時、ガチャリと個室の扉が開いた。
「ぬっぽぁ!」
初春はゲコ太の顎に頭突きをかまして遠ざけ、椅子を回して扉に向き直ると音の主を確認するより先に上ずった声で話し出す。
「すいません使ってます!いや、使ってるって別にいやらしい意味ではなくて!単にこの部屋を使用中だという……いえ、ですから使用っていうのはそういう意味では………!」
そこでようやく初春は音の主を見た。
「見つけたじゃん。ゲコ太の着ぐるみ」
「あなたは……警備員の……」
黄泉川愛穂は初春の言葉に答えず
「んじゃ、そこのゲコ太。ちょっと一緒に来てもらおうじゃん」
ゲコ太に手を伸ばそうとする。
が、
「なっ――」
ゲコ太はするりと身をかわすと、
「へっ?」
呆けている初春を抱っこし、立ち塞がる黄泉川をすり抜けて個室を出ると、そのまま店を後にする。
「くそっ、警備員か。こんなに早く嗅ぎ付けてくるとは……この格好、目立つのが難点だな……」
呟きつつ、人ひとりを抱えているにも関わらず物凄い速度で駆けるゲコ太を
「逃がさないじゃん!」
黄泉川もまた自慢の脚力でその後を追いかけていく。

76メリー★クリスマステイルイコ!:2010/04/23(金) 00:29:36 ID:ke8yXOWE
★★★★★★★★★★★★
「くッそ……何で俺がこんなことを………」
一方通行は毒づきながら右腕を狭い隙間の中に滑らせる。
自動販売機と地面の間にあるその隙間の奥には一枚の100円硬貨が光っている。
「あァもうウッゼェ!!」
一方通行は痺れをきらしたように叫ぶと首に巻かれたチョーカー型電極のスイッチをオンにし、能力発動モードに切り替える。
そして地面を人差し指でちょんと叩くと、触れてもいない100円硬貨が、文字通り弾かれるように隙間から飛び出してきた。
「わぁ!ありがとう風紀委員さん!」
出てきた硬貨を拾い上げた小さな女の子が、一方通行にちょこんと礼をして去っていく。
「面倒くせェ。こんなモンつけてっから……」
一方通行は風紀委員の腕章を外そうとするが、それより先に
「ねー、風船が飛んでって木の枝に引っ掛かっちゃったの。風紀委員さん。お願い、取ってください」
別の少女が一方通行の袖を引っ張る。
「知らねェよ!テメェでやれ!」
キリがないことに苛立ち叫ぶが
「見て、あの風紀委員。小さな女の子に向かって……」
「あらまぁ。風紀委員の腕章をつけてるのに、何て態度なのかしら……」
というマダム達のひそひそ声を聞き、渋々能力を使って木の枝にジャンプし、風船を取ってやる。
「風紀委員さん、ありがとうございましたっ」
礼を言うと少女は風船を手に母親の許に帰っていく。
「ッたく……」
それを見て溜め息をつく一方通行に打ち止めが声をかける。
「面倒くせェ、とかウゼェ、とか言いつつ、満更でもない顔に見えるよ、ってミサカはミサカは今のあなたの表情を客観的に述べてみたり」
「うるせェよ。つーか食ったんなら帰るぞ」
「風紀委員のお仕事は?ってミサカはミサカはにやにや顔で聞いてみる」
「知るかよ、ンなモン」
と一方通行が言った矢先、
「一方通行ァ!!そこのゲコ太を捕まえるじゃん!」
遠くから声が聞こえた。
そちらを振り返ると、何やら少女を抱えたゲコ太の着ぐるみとその後ろから二人を追う黄泉川がいた。
「だから俺は風紀委員じゃねェッてのによォ」
状況を理解した一方通行は毒づきながらも突撃してくるゲコ太に向き直る。
どうせここで逃げたら風紀委員なのにと陰口を叩かれるのだろうし、何より逃げたと思われるのが癪だ。
「来いよ三下ァ。10秒で終わらせてやるぜェ」


★★★★★★★★★★★★

「一方通行か……どういう風の吹き回しかは知らないが、厄介だな」
「あれ?あの女の子って……」
追われている初春とゲコ太も、前方に立ちはだかる一方通行に気付いた。
「悪い、少しどいててくれ」
ゲコ太はそう言うと初春を降ろし、一人一方通行目掛けて突進する。
「あ、あの!大丈夫なんですか!?」
背中からの初春の声に
「心配するな、10秒で終わらせる」
ゲコ太は軽い調子で答えた。


★★★★★★★★★★★★

単身突っ込んでくるゲコ太。
「初手は譲ってやるぜェ。もっとも、俺に当てられたらだがなァ」
一方通行は構えもせずにだらりとした姿勢を取る。
ゲコ太は右腕を振りかぶり、拳を一方通行の顔面めがけて振り下ろす。

ゴッ

という音と共に

「ガッ……?」


一方通行が吹き飛んだ。

一方通行は直ぐ様立ち上がったが、その顔は驚愕の色に染まっている。
「反射が……働かねェだと?いや、違ェ。こいつはまさか……」

77メリー★クリスマステイルイコ!:2010/04/23(金) 00:30:15 ID:ke8yXOWE
★★★★★★★★★★★★
「ぬぅ……あれは」
「知っているのか半蔵!」
大通りで繰り広げられる戦闘。
当然のように道行く人々はギャラリーと化し、距離をおいてゲコ太と一方通行に視線を集中させている。
そんなギャラリーの中の男二人組が何やら叫んでいる。
「あぁ、あれは木原神拳……一方通行の育ての親である木原数多、通称木ィィィ原くゥゥゥゥゥゥゥゥン!!が使用した秘拳だ。一方通行の反射が通常は自動でベクトルを逆向きにしていることを逆手に取り、放った拳を寸止めの要領で反射の直前に引き戻すことで『遠ざかる拳』を内側に反射させる攻撃……ッ。原理は簡単だが、光すら反射する一方通行の能力を逆手に取るってお前最早人間じゃねぇだろ、というぶっちゃけありえなーい神の如き技だ!」
「そんな技を使いこなすとは、あのカエル……何者なんだ……ッ!?」

★★★★★★★★★★★★
「ッハ……下らねェ小細工仕掛けやがって。いいぜェ。そっちがその気なら、こっちも手加減なしだァ!」
叫び地を蹴る一方通行はベクトルを操作し、その身を弾丸の速度で飛ばす。
だが、
「何ッ!?」
ゲコ太は上半身を反らしただけで一方通行を避け、更にその腹に膝を撃ち込む。
「ぐはァッ……!?」
当然のように寸止めされたそれは一方通行自身の能力を借りてその身体を上空に舞い上がらせた。
「……ッハ、ハン!今のもハンデだ。こ、今度こそ容赦しね………」
吹き飛ばされた状態で平静を装って言う一方通行は、そこで眼下にゲコ太の姿が無いことに気付いた。
「どこいきやがっ……!」

果たしてゲコ太はいた。

一方通行の目の前に。

通りに建つ建物の壁面に次々に足をかけ、吹き飛んだ一方通行の高さまで一気に駆け上がったのだ。
「何モンなンだ……テメェは…………」
「……………通りすがりの、ゲコ太の着ぐるみだ。別に覚える必要はない」
言葉と共にゲコ太の寸止め頭突きが炸裂し、一方通行は地面に叩きつけられた。

78メリー★クリスマステイルイコ!:2010/04/23(金) 00:30:40 ID:ke8yXOWE
★★★★★★★★★★★★

ドォン

という大きな音と共に、一方通行は地面に突っ込んだ。
コンクリートの道路に大穴が空いたが、それは直撃の直前に一方通行が衝突の衝撃を打ち消すためにベクトルを操作したためであり、一方通行自身へのダメージは無い。
だがゲコ太の技によって受けたダメージだけでも十分に重いため、一方通行はなかなか立ち上がることが出来ない。
その内にゲコ太は地面に華麗に着地し、初春を抱え直すと走り去ってしまった。

「風紀委員なのに、あんなカエルに負けるなんて……」
「何か能力者みたいだったけれど、大した能力じゃなかったみたいね……」
「なーんだ。風紀委員のお兄ちゃん、弱っちいなぁ」
街中での乱闘に足を止めて傍観していたギャラリー達は、口々にそんなことを言いながら歩みを再開した。
後に残るのは地面に横たわる一方通行とその側に立つ打ち止め。
「く……ッそ。あのカエル野郎ォ……ぶッ殺す……絶対ェぶッ殺す…」
一方通行は額に青筋を立て、ゲコ太の消えた方を睨む。
「おい、大丈夫か?一方通行」
ようやく一方通行の許にたどり着いた黄泉川が声をかける。
「お前でも止められないとは、これは応援がいるじゃん。傷はいいか?酷いなら病院に……」
「必要ねェ」
「じゃん?」
「応援も手当ても必要ねェ……」
一方通行はゆっくりと立ち上がる。
「いいかァ?あのクソガエルを倒すのはこの俺だ。それを邪魔するッてンなら応援の警備員だろうが蹴散らす。ゲコ太は……俺がヤる」
一方通行はそう言うとふらふらとした足取りでゲコ太を追いかけていった。
「お、おい……一方通行?」
黄泉川は様子のおかしな一方通行に声をかけるが、返事はない。
「どうしたんじゃん?あいつ……」
「ずばり」
と、人差し指を立てて打ち止めが言う。
「プライドの問題だねってミサカはミサカはかっこよく指摘してみたり」
「……よくわからんが、放ってはおけないじゃん!早く追いかけて……」
黄泉川は再び走り出そうとしたが
「黄泉川先生ー」
と、その背中に声がかかった。



★★★★★★★★★★★★

「これでいいのか?」
ステイルは再び付け髭を取りつけた顔を佐天に見せる。
「お、おっけー」
顔の半分を覆い隠す付け髭は、成る程素顔を隠し人相を分からなくしてしまう。
だがそこまで取り乱す程おかしな顔だろうかと思いつつ、ステイルは考えを巡らせる。
今のところこれと言って打つ手はない。
もう一度でもゲコ太と接触出来たなら、何とかならないこともないのだが、その一度の接触すら絶望的だ。
チョコレートで糖分を補給してもこの程度まで、か。
もっともニコチンを摂取していたとしても、それより先に思考が行くとは思えないが。
と、その時
「おーい、インデックスさーん、土御門ー」
ある意味で今のこの状況を作った原因である人物が通りかかった。
「あ?ステイルじゃねえか、何やってんだよこん…………お、おいどうした?」
肩を怒らせて件の人物、土御門舞夏を引き連れた上条当麻に詰め寄るステイル。
「上条当麻、よくも彼女から目を離してくれたな。そのせいで僕が一体どれだけの苦労をしたか………まあいい。インデックスを探しているようだが、彼女なら大通りのケーキ屋にいる神裂に預けてある。さっさと行きたまえ。ただ……出来ればもう少しの間彼女をその場に引き止めておいてくれると、僕としては大変都合が良いのだけれど」
「いや、実はなステイル。残念ながらケーキ屋にインデックスは……」
当麻が言いかけた時、

ドォン

と大通りの方から大きな音が聞こえた。
「……何だ?」
いぶかしげに音のした方を見る一同の視界に入ったのは、
「! 見つけたぞ!」
初春を抱え、こちらに向かって走ってくるゲコ太の姿だった。

79メリー★クリスマステイルイコ!:2010/04/23(金) 00:36:49 ID:ke8yXOWE
「プローチを返してもらうぞ!カエルの着ぐるみ!」
ステイルはそう叫ぶと、他の3人を置いてゲコ太の方へ真正面から突撃していく。
「な!?おいステイル!?くそ、訳がわかんねぇぞ!舞夏ちゃん……と、アンタ。なんか知らんがヤバそうだ、そこら辺に隠れててくれ!」
そして上条当麻も、舞夏と佐天に短く指示を出すとステイルの後を追いかけていった。

★★★★★★★★★★★★
ステイルが走りながら懐からカードを取り出すと、それは瞬時に燃え上がった。
「パイロキネシス……!?」
ゲコ太に抱えられた体勢の初春の言葉通りに、瞬間のトリックは魔術か科学かを判別させない程のもの。
これならば、当麻はともかく佐天や初春に魔術師とバレることはないだろう。
「その少女を放せ!さもなくば……」
よっぽど付け髭を取ってやろうかと思うほどのフガフガと篭もった声で叫び、火気を強めるステイル。
対してゲコ太も
「何なんだ、次から次へと……」
と無表情な着ぐるみの奥からくぐもった低音を響かせる。
姿も声もあてにはならない。
互いに未知の存在である相手に対して両者は極限の集中と警戒を持って対峙する。

無論、端から見るとその光景はサンタとカエルが戦おうという、余りにシュールなものであったが。

両者の距離はぐんぐんと縮まっていく。
だが
「悪いが出来ない相談だっ!」
ゲコ太はどうやら戦闘を避け、初春を放さずそのまま突っ切ることを選択したようだ。
「警告はしたぞ!」
ステイルは腕を振って炎を絶妙に操る。
渦を巻いた炎は初春に当たらないようにゲコ太を襲った。
しかし、ゲコ太は対一方通行戦でも見せた身軽さで炎の渦をすり抜ける。
その間にスピードは全く緩まず、また初春の身に火の粉の一粉すら浴びさせない。
「何て動きだ……本当に人間か!?」
ゲコ太は程なくステイルの目前にまで迫ってきた。
「くっ……」
近接戦闘は不利だ。
距離を稼ごうと後退しつつ、新たなカードを取り出すステイルだったが、
「がッ…!」
それ以上の速度を持ったゲコ太の緑色の右拳が、ステイルの腹にストレートを決める。
ゲコ太はそのままステイルを捨て置いてその横を突き抜けようとする。
(このままでは逃げられる……!)
その時、
背中から地面へ倒れ行くステイルと入れ替わるようにして、

上条当麻が飛び出してきた。

「詳しいことは分かんねぇが、あの女の子がカエルに捕まってるってこと位なら分かる。手ぇ貸すぜ。誰かを助けるためなら、いくらでもな」
「上条、当麻……」
振り上げられる当麻の右手――幻想殺し。
ゲコ太の超人的な動きが如何なる力によるものであっても、それが異能の力である限り上条当麻の前では破られるべき幻想でしかない。
「何が目的かは知らねぇ。もしかしたらそれは、お前にとって何より優先しなきゃならねぇことなのかもしれねぇ」
ゲコ太はステイルを殴りつけた体勢のまま。
ステイルの陰から突如現れた当麻に反応することが出来ない。
「だがそれでも、そいつがどんなに大事なことでも――誰かを身勝手に巻き込んでいい理由にはならねぇ。そんなことも分からねぇってんなら、まずはアンタのそのフザケた幻想をブチ殺す!!」
当麻の拳が、ゲコ太の胸を撃つ!

80メリー★クリスマステイルイコ!:2010/04/23(金) 00:37:14 ID:ke8yXOWE



「…………」
「………………あれ?」
異能の力が破られた時に鳴る例の音が鳴らない。
そして女でも容赦なくぶっ飛ばす当麻の拳にゲコ太は吹き飛ばない。
当麻の拳は、布越しでも分かるゲコ太の鍛え上げられた胸筋によって阻まれている。
それはつまり――
「えーと……ぶっちゃけ異能の力とかじゃなくて、普通にめっちゃ身体鍛えてるだけ……?」
当麻の問いにゲコ太は無言のままコクリと頷くと、

ガゴォン

と当麻の顎を撃ち抜いた。
「うぎゃあっッ!?」
彼方へ飛ばされていく当麻に、ステイルは
(あの男、ノーマル相手だと僕よりよっぽど弱いんじゃないのか?)
と思ったが、自分も一撃で倒された手前それは胸の内に留めておくことにした。
ゲコ太は戦闘不能になった二人をそのままに路地を駆ける。
だがその先には
「初春っ!」
一人立ちはだかる佐天の姿があった。
「何をしている佐天涙子!ソレは君のかなう相手じゃないぞ!」
倒れた体勢のままステイルが声を荒げるが、佐天は取り合わない。
「初春を、返してっ!」
――足は震え、声は裏返っている。
それでも佐天は、二人の男を一撃で沈めた怪物に挑む。
大切な親友を守るために。
その姿を認めたゲコ太は、しかし走る速度を緩めないまま拳を振り上げ、佐天を殴りつけようとする。
「ひゃッ……?」
思わず頭を抱えた佐天だったが、衝撃は来ずただ前髪を風が撫でただけ。
ゲコ太はその拳を寸止めしたのだ。
「え……?」
脇を抜けていくゲコ太を目で追う佐天。
当然その顔は見えないのだが、どうしてかこの人は悪い人ではないのかも知れない、という思いを抱いた。
「佐天さんっ!」
と、ゲコ太に抱えられた初春が声を上げた。
そうだ――ゲコ太の正体がどうあれ、初春は返してもらわなければ困る。
だが、
「ごめんなさい佐天さん!私、もう少しこの方と一緒にいます!」
初春はそんなことを言って右手を上げた。
その中にはステイルが落とした小箱が握られている。
「これを、返してあげて下さい!」
「わっ!」
投擲された小箱を、佐天は両手でキャッチする。
「初春っ!?」
「私は大丈夫ですから!」
空になった手を振りながらそう言って、初春はゲコ太に連れられ路地の向こうに消えてしまった。

81メリー★クリスマステイルイコ!:2010/04/23(金) 00:37:59 ID:ke8yXOWE
★★★★★★★★★★★★
「いてて……」
当麻は撃ち抜かれた顎をさすりながら起き上がった。
「おー、生きていたかー」
と、どこからか舞夏の声が聞こえてきた。
「あぁ、何とかな。って、どこにいるんだ?舞夏ちゃん?」
周囲を見回した当麻は
「ここ、ここ」
と、通りの隅にある水色の巨大バケツから、蓋を頭に載せたままひょっこりと顔を出した舞夏を見つけた。
「……えっと、何してんすか舞夏さん」
「なにー、隠れろと言ったのはそっちだろー」
「いや、確かに言ったけど……そのチョイスは……」
兎にも角にも舞夏が無事であったことを確認すると、当麻はステイルに問う。
「何だったんだ?今のは」
「こっちが聞きたいくらいだよ」
腹を押さえて立ち上がりながらステイルが答える。
「目的はわからないが、あのカエルにあそこの少女の友人が連れ去られた。ついでに……まぁ、僕の持ち物も持ってかれてね。一緒に追っているんだよ」
「あの、それだったら」
後ろから佐天が会話に割り込んできた。
その手にはブローチの入った小箱が握られている。
「さっき、初春が……」
「おぉ、おぉ、おぉ!ありがとう!よし、これでようやくインデックスに渡せる!」
珍しく気色ばんだ声を上げて、ステイルは佐天の手を握った。
「わ、わわ………っ」
突然の行動に顔を赤らめる佐天。
ステイルはそんな佐天に気づかず年相応の無邪気さで手をブンブンと振り回す。
その会話を聞き、当麻が口を開く。
「ん、あぁそうだ。インデックスなんだがな、どっか行っちまったんだよ」
受け取ったブローチを今度こそしっかりとしまい、ステイルは得意気に当麻に言い返す。
「知っている。彼女なら神裂に保護してもらっているよ」
「いや、だからさ。その神裂のとこからどっか行ったんだと」
「は……………?な、なななな、何だと………!」
ステイルの顔がまたも驚愕に歪んだ。


★★★★★★★★★★★★

その後、彼らは再びステイル佐天組と当麻舞夏組に分かれて捜索を再開した。
お互い人探しには違いない。
手分けした方が効率的なのは確かだ。
「インデックスのことは任せる。僕らはカエルの方を追う」
「? アテでもあるのか?」
「勿論。僕はどこかの無能力者のようにただ倒されただけじゃない。ちゃんとネタを仕込んでおいたのさ」


「あの………ありがとう」
「何がだい?」
当麻達と別れたステイルが早速『捜索』の準備に取りかかっていると、佐天が声をかけてきた。
「だって、贈り物は返ってきたんだから、ステイルくんにゲコ太を追う理由はもうないのに……」
「あぁ……まぁそれは確かにそうだけど、乗りかかった船という言葉もあるだろう。それにブローチを取り返してくれたのは君達だ。だったら、君の友人を救出に協力するのは当然だろう。………何よりあのカエル、何か引っ掛かる感じがするんだよ」
言いながら取り出したのはいつも使っているルーンのカード。
ステイルはそれをまるで折り紙の様に折っていく。
「……何やってるの?」
「あぁ」
魔術のことは話せない。
ステイルは適当に濁そうと出鱈目を口にする。
「僕の能力でね。追尾能力というか……さっきの接触でカエルに発信器みたいなものを仕掛けておいたんだよ。これは、まぁ願掛けみたいなものさ。成功率が上がるんだよ」
実際は先ほどゲコ太と対峙した時、ゲコ太の背中にルーンのカードを一枚張り付けておいたのだ。
自分と、張り付けたカードとを繋いでいる魔術的なパスを伝ってゲコ太を追う――土御門の使った、呪物からその持ち主の居場所を逆探知する『理派四陣』を自分なりにアレンジした術式だ。
陰陽道は専門ではないし実戦で使うのは初めてだが、何度か行ったテストでは成功している。
特に問題はないだろう。

言い訳も即興のものだったが、特におかしな部分はなかったな、ステイルは思っていたのだが
「いや、それ嘘っしょ」
「な、何故バレたっ!」
一発で見抜かれた。
「だって、能力は一人にひとつで例外は無いって授業で習ったし。さっきのパイロキネシスを一つ目って考えたら、他に能力があるのはおかしいじゃん」
「そ、そうなのか!?」
「それに……なんかさっきの炎も超能力って感じじゃなかったし。何だろう、上手く言えないんだけど……」
魔法みたいな、という言葉は飲み込んだ佐天だったが
「……………いや………それは、だな………」
それでもステイルは本日何度目か知れない脂汗をかいていた。

82メリー★クリスマステイルイコ!:2010/04/23(金) 00:38:35 ID:ke8yXOWE
★★★★★★★★★★★★
ステイル・マグヌスは窮地にいた。
まさか自分が魔術師であることを一般人に見破られる時が来るとは思わなかった。
いや、正確にはまだ魔術師だと見抜かれた訳ではない、科学ではない何かだとバレてしまっただけだ。
ならば、科学でも魔術でもない何かとして誤魔化してしまおう。
だが、何があるだろうか。
自分の思い付く限りにあり、かつこの少女の知識の範囲にある幻想とは――

「佐天涙子。君に言わなければならないことがある。君の察した通り、僕は超能力者ではない」
「じゃあ、一体……」

ステイルは告げた。
その幻想の名を。
「僕はサンタクロースだったんだ」


★★★★★★★★★★★★

「何とか逃げ切ったか……。いや、そもそもあいつらに追われる筋合いなんてないんだが」
ゲコ太は細い路地に入りこむと、抱えていた初春を降ろした。
「あぁクソ、熱が籠って暑い……冬だってのに」
「あの、思ったんですけど」
初春が人差し指を立てて冷静に指摘する。
「顔を隠したいだけでしたら、そんな動きにくそうな着ぐるみを着なくても、ヘルメット被ったりお面つけたりすればいいんじゃないですか?」
「……あぁ。俺もそう思った。こいつを着た後だったがな」
「今からでも遅くないんじゃないですか?ここなら人の目もありませんし」
「いや、だから…………………………脱げないんだ、これ」
「へ?」
「ジッパー上げる時変な風に力入れたみたいでな……」
ゲコ太が後ろを向くと、確かに金具が布に食い込んだ上に歪んでしまっているのが見えた。
「借り物だし……というか無断で拝借したものだから、出来るだけ壊したくないというか。着ぐるみって高いらしいし。ぶっちゃけ物凄く動きにくい。一方通行の時かなり無茶したしな。暑い上に身体中痛い……」
「あー………」
初春は思った。
自分はもしかしたら結構なお間抜けさんについてきてしまったのかもしれない、と。


★★★★★★★★★★★★

「サンタクロース……」
呆然としている佐天に、ステイルは自分の失言に気づき訂正しようとする。
「いや、なんてウソ。冗談冗談。ホントは……えーと…………」
「…そっか」
「は?」
思わず聞き返すステイル。
「サンタクロース…………うん、そうだよね。クリスマスだもん。サンタクロースだっているよね」
「いや……えっと…」
「違うの?」
「いや、違わない」
「うん、だったら不思議なコトが出来ても納得。あ、ゴメンね、準備途中で止めちゃって。早く初春を取り返そう」
「あ………あぁ」
釈然としない思いを抱きながらも、ステイルは折り紙のようにして紙飛行機型に折ったカードを囲うように、四方にカードを並べていく。


その様子を見ながら、佐天は思う。
あぁ、この人はきっと違う世界の人なんだ、と。
サンタクロースというのが苦し紛れの嘘だということくらいは分かる。
それでも佐天はステイルの正体を追及しない。
きっとそれは自分みたいな一般人が知ってはいけないこと。
自分が知ってしまったら、きっとステイルに迷惑がかかること。
(そして、もしかしたら私にも――)
ステイルは、佐天のことまで考えた上で誤魔化そうとしたのだろう。
ただの中学生である佐天涙子という存在を、もしかしたら平和から遠く、悲劇の隣にあるのかもしれない――そんなステイル・マグヌスの住まう世界から遠ざけるために。
(優しいなぁ…)
嘘を吐かれたのに、悪い気はしなかった。
むしろ、必死で取り繕うステイルを可愛いとさえ思った。
(変なの……年上で、背も高くて、煙草だって吸って、こんなに大人っぽいのに………)
ふと、一心に準備を行っているステイルのポケットの中にある小箱を思う。
(あぁ、そうか。この人があの小さな箱のために、それを渡したい人のためにこんなにも一生懸命だから……)

誰かを思うということは、
とても素敵で、
愛しいことだ。

彼の思いは、
きっとすごく純粋で、
だけどそれは少し不器用で。

力みすぎて、
空回りしてしまって、
――それでも誰かを思い続けている。

出会って幾らもしていないけれど、どうしてか佐天にはステイルの思いが分かる気がした。
それはやはり、自分にも大切な人がいるから、だろうか。
「プレゼント、早く渡せるといいね」
我慢できずに、作業中のステイルに声をかけてしまった。
「あぁ。君の大切な友人も、早く助けなければな」
背を向けたままのステイルの返事に、
「うんっ」
佐天ははにかみながら頷いた。

83メリー★クリスマステイルイコ!:2010/04/23(金) 00:39:31 ID:ke8yXOWE
★★★★★★★★★★★★
クリスマスの大通り。
店頭販売をしているケーキ屋の前に、二人の男が立っていた。

「………行くのか、半蔵」
神妙に半蔵に語りかけるのは浜面仕上。
「あぁ、男には行かなければならない時というものがあるんだ」
対して半蔵も戦場に赴くかのような覚悟の篭もった声で答える。
「そうか……ならば俺は止めない」
浜面に見送られ、半蔵は行く。
その手に1000円札を三枚――現在の全財産にして年を越すための生活費――を握りしめ、彼のエンジェルのもとへ。
「よ、黄泉川サンッ!俺に………俺に愛のショートケーキを一つ!」
「あー、私今手一杯だから。月詠先生、お願いするじゃん」
「はいはいショートケーキですね。3000円丁度頂きますです」
月詠小萌によって、半蔵の手から3000円がひったくられ、代わりに箱入りショートケーキがポンと置かれた。
「………………」
立ち尽くす半蔵。
その肩に、浜面がそっと手を置いた。
半蔵はゆっくりと後ろを振り返り、つー、と静かに涙を流しながら言う。
「なぁ、浜面……」
「なんだ?半蔵」
「金貸してく」
「断る」
「……お金を貸し」
「断る」
「………か」
「断る」
「…………………」


心も財布も虚しい二人を置いて、クリスマスの夜は更けていく。


「……てか何で私はケーキの売り子なんてやってるじゃん?」
「インデックスちゃんを探しに神裂ちゃんがどこかに行ってしまって、手が足りなくなっていたところに都合良く通りかかってしまったからじゃん?ですよ〜」

84メリー★クリスマステイルイコ!:2010/04/23(金) 00:39:47 ID:ke8yXOWE
★★★★★★★★★★★★

「そういえば、お強いんですね?」
「あ?」
突然の初春の問いに、ゲコ太は疑問符を返した。
「いえ、だって先程の風紀委員の方、それにパイロキネシストの方……どちらも相当の使い手のようでしたけど、それを何の能力も使わずにあんなに圧倒できるなんて……あ、もしかして何か能力を使っていたんですか?」
「いや、能力は使ってない。というか、使えないに等しい」
「じゃあ、もしかして……」
驚く初春にゲコ太は告げる。
「あぁ、俺はレベル0だ」
「それは…………凄いですね」
「そうか?」
「そうですよ。だって、私なんて、レベル1ですけど、やっぱり大した能力なんかじゃないですし、体力だって全然なくて………はは」
空笑いをしながらの初春の言葉を、
「…………そんなことは、ないと思うぞ」
「え?」
ゲコ太はしっかりと否定する。
「そりゃああんたに戦闘力とかを期待すんのは間違ってるだろうが、それでも俺はあんたは強いと思うぞ。俺なんかよりよっぽどな」
「どうして、ですか?」
「本当の強さってのは、腕力や超能力なんかじゃない……ここにあるもん、だろ」
ゲコ太は緑色の右手で着ぐるみの胸を叩く。
「俺はあいつを助けたくて動いてるだけだ。だがあんたは違う。あんたは自分に何の関係もない事件に、しかも拉致まがいのことをされた相手に、協力してくれた。他人の為になにかをしてやれる……そういう優しくて強い心の持ち主はそうそういない」
「そう……でしょうか?でも、人助け位なら風紀委員の方達は皆……」
「だが命まで投げ出そうとは思わないだろ。俺はあいつのためなら命だって惜しくはないが、それ以外の奴のために命を張ろうとは思えない。初めて会った他人のために命を張れるなんて――あの馬鹿くらいだと思ってたんだがな。全く……『学園都市第二位(スペアプラン)』に向かって舌を出して馬鹿にした奴を、俺はあんた以外に知らないぞ」
「え――?」
初春が問い返そうとした時、

ドガンッ

と行き止まりになっている後方のコンクリート壁が爆発した。
「見つけたぜェ……ゲコ太くゥゥゥゥン!!!」
瓦礫の奥から現れたのはマジギレモードの一方通行。
その周りには能力によるものか、色々な物が飛び交い、まるで一方通行を中心とした竜巻のようになっている。
「くそッ……さっきから何なんだよお前はッ」
竜巻が邪魔で一方通行に直接触れるのは難しい。
これでは木原神拳改めゲコ太神拳も効かないだろう。
そう判断すると、ゲコ太は初春を抱えて一目散に逃げ出した。

★★★★★★★★★★★★

「見つけたぞ!」
ステイルの言葉と同時に、紙飛行機がふわりと浮かんで、4枚のカードで仕切られた場の中の一点を差した。
「どうするの?」
佐天の問いに、
「真っ正面から行く気はないさ。しっかりと準備をして、こっちのフィールドに引き摺りこむ」
幾枚ものカードをその手に広げながら、ステイルは不敵に答えた。


★★★★★★★★★★★★

「ねぇ、ママぁ。なんか白い人が倒れてるよ―」
「こら、見ちゃいけませんっ」

「うぅ〜、とうま〜。お腹空いたよ〜。ケーキ一切れじゃ全然足りないんだよ〜」
地面にうつ伏せに倒れている白い人影を、
「………見なかったことにする」
姫神は無視して歩き去った。


――そして、今夜最後の交錯が始まる。

85メリー★クリスマステイルイコ!:2010/04/23(金) 00:40:38 ID:ke8yXOWE
★★★★★★★★★★★★

「くッ……そッ……ハァッ!」
ゲコ太は初春を抱えたまま、目にも止まらない速度で走り続ける。
一方通行は周囲に竜巻を発生させ、それこそ人間台風のような状態のままで二人を追う。
足の速さではゲコ太の方が上(一方通行は頭に血が昇っている為か、はたまたゲコ太を追い立ててなぶる為か――まぁ、前者であろうが――地を蹴る力の細かいベクトル演算は行わずに適当に走っているからだ)、しかしゲコ太が障害物の多い道を隙間を縫うように走るのに対して、一方通行は全てを破壊しながら追いかけているので、両者は付かず離れずの距離を保っていた。
「ラチが明かねぇッ…」
ゲコ太は周囲に視線を走らせると、一際狭い路地に入っていく。
「誘ってンのかァ!?アァ!?」
余裕綽々でその後を追う一方通行の頭上に
「その通りだよ馬鹿野郎」

ガラガラガラッ!

と、一方通行が自らの能力によって支えを破壊してしまった建材が落ちてきた。
直撃は反射で免れたものの、舞い上がった砂埃によって視界が効かなくなる。
「小賢しい真似してンじゃねェぞコラァ!!」
周囲の空気を操った一方通行によって砂埃が吹き飛ばされた頃には、
「ちッ……」
ゲコ太は一方通行の視界の外に消えていた。

★★★★★★★★★★★★

「あー、くそッ……また無駄な体力を……」
ゲコ太はまた別の路地にて初春を降ろし、自身も地面に座り込む。
「大丈夫ですか?」
「ん……あぁ、伊達に鍛えてねェ……!!?」
そこでゲコ太は気付いた。
己にまとわりついている妙な感覚に。
(逃げんのに必死で分からなかったが……こいつは魔術!?それも追尾系の……陰陽の術式だと!?)
更にゲコ太は見た。
路地のあちこちにトランプ大のカードが貼り付けられていることに。
「まさか……この術式は……」

だが、遅すぎた。

「ようこそ、僕の世界へ」
声と共にカードに魔力が込められていき、ゲコ太の眼前に炎の魔神――『魔女狩りの王(イノケンティウス)』が顕現する。
その後ろには術者のステイル、そして佐天の姿がある。
「!?」
「ハァッ!」
ステイルが腕を振ると、炎の壁が出現してゲコ太と初春とを別ち、燃える炎の生み出す風圧は初春を戦場から遠ざけた。
「初春っ!」
佐天が初春のもとへ走っていくのを確認してから、ステイルはサンタコスの口髭を取り去り告げる。
「追いかけっこは御仕舞いだよ。覚悟するんだね」
この場にはイノケンティウスの術式の他に、人払いのルーンも施している。
邪魔が入ることもないだろう。
「待て!やっぱりお前ステイ――ッ!?」
ゲコ太の言葉を待たず、イノケンティウスがゲコ太を襲う。
得意の体術でその攻撃を避けようとするゲコ太だったが、
「無駄だッ!」
ステイルの炎はゲコ太の技術の一切を凌駕していた。
カードによって強固に術式を保たれたこの場所は、既にルーンの魔術師、ステイル・マグヌスの完全なる支配下にある。
その力は、ただの体術で切り抜けられる次元などとうに越えているのだ。
「さぁ、その素顔を拝ませて貰うぞ!」
炎がゲコ太を取り囲み、壊れて脱ぐことの出来なくなっているその着ぐるみを焼き尽くす。
ステイルによって絶妙に操作されたそれは、中の人間を傷つけず正確に着ぐるみだけを焼き、やがて弱まっていく炎の中からブローチを奪い初春を拉致した犯人の姿が現れた。
「……………は?」
ステイルは、思わずそんな間抜けな声を上げてしまった。
そこにいたのは、ステイルの良く知る人間だったのだ。
「土、御門……………?」
「ゲホッ、ゲホッ……だから、待てって言っただろう。ステイル……」
「ど、どういうことだ?」
「それはこっちのセリフだ。何でお前や一方通行が襲ってくるんだ。まさか舞夏のことと関係が……」
「舞夏?お前の妹がどうかしたのか?」
二人が頭に疑問符を浮かべまくっていると、

バチィィン!

とお馴染みの音が鳴った。
「ん?今右手が何か壊したか?まぁいいや」
暢気にそんなことを言いながら人払いの結界を破ってやってきた上条当麻、そして土御門舞夏。
「あ、よー兄貴ー」
「舞夏!?お前何でこんなとこに!捕まってたんじゃないのか!?」

更に
「間違いないんだよ!今何か魔術の気配がしたもん!魔術のあるところに大抵とうまがいるんだもん!」
「……いいから私を離して」
姫神秋沙とインデックスが走ってきた。
「イ、インデックス……?」
その姿を認めて呆然と呟くステイル。


こうして、クリスマスの事件は突然に解決した。

86メリー★クリスマステイルイコ!:2010/04/23(金) 00:40:57 ID:ke8yXOWE
★★★★★★★★★★★★

かに見えた。

87メリー★クリスマステイルイコ!:2010/04/23(金) 00:41:46 ID:ke8yXOWE
★★★★★★★★★★★★
「ドッカーン!!」
ステイルと土御門から見て、当麻達の向こう側にある壁が砕けた。
そこから擬声つきで現れたのは一方通行。
「みなぎってるゥ!!みなぎってるぞ俺はァ!ガスバス爆発ガスバス爆発ガスバス爆発!!ヒャハハハハハ!!!」
壊れた感じの発言を繰り返しながら、人間台風は前進する。
「ゲコ太ァくゥん!!どっこでェすかァ!?ヒャハハハハハ!!」
その進路には当麻と、そして舞夏、インデックス(と姫神)の姿があった。
「舞夏!」
「インデックス!」
土御門が地を蹴り一方通行へと突進し、ステイルがイノケンティウスを一方通行に向ける。
「アァ?誰だか知らねェがムダムダムダァ!今!俺は!超絶にみなぎって……」
「うお!何だこの風!?」
台風に一番近い場所にいた当麻は、風に巻き込まれて飛び上がった。
「うぉわ!?っと!」
当麻は咄嗟の判断ですぐ近くにある、風の影響を受けていない何かに右手で掴まった。

即ち、一方通行の肩に。

バチィィン!!

という音が鳴り、
「ハ?」
能力が切れ、風の鎧を失った一方通行に、
「ウォォオォッ!?」
イノケンティウスの炎と土御門のゲコ太神拳が炸裂した。
一方通行はそのまま吹き飛び、自分で舞わせていた瓦礫の山に埋まり、静かになった。

こうして、クリスマスの事件は今度こそ解決した。



★★★★★★★★★★★★

「どういうことだ舞夏!この写真は!?」
ステイルの炎の中でも壊れなかった学園都市製の携帯電話のディスプレイを舞夏に突きつけながら土御門が叫ぶ。
「あぁ、それ。下、下ー」
「下……?」
「下に繰るのだー」
「?」
よく分からないまま、義妹の言葉の通りに土御門がメール画面で下カーソルを押し続けていると、100行程の空白の後に


『なんて、嘘ぴょーん。冗談冗談ー。舞夏です。携帯変えたぞー。あ、あと今日の待ち合わせはセブンスミストの近くの喫茶店でよろしくー。』


という文があった。
「ねー」
「…………………」
「つまりは、全部君の早とちりということか」
「ぐッ!?」
溜め息をつきながらのステイルの言葉が土御門の胸に突き刺さる。
「……まぁいいけどね、今更何を言ったって変わらないし、ブローチもあの子の友人も戻ってきた。………さて、それじゃあ本来の目的に移るとしよう」
ステイルは口髭を装着し直し、ブローチの入った小箱を手にインデックスのもとへ歩いていく。
「? どうしたよステイル」
「あ、さっきのサンタさんなんだよ!」
「やぁ、遅れて申し訳ない」
ステイルは当麻(一方通行に掴まっていたものの、一方通行自身を狙っていたステイルと土御門の攻撃は直撃しなかった)を完全無視し、インデックスに話しかける。
「約束の物だ。受け取って欲しい」
「うん。…………開けていいのかな?」
「勿論」
「…………わぁ、綺麗」
中身をあらためたインデックスの感嘆の声を聞くと、
「そうか、よかった。……じゃあ、僕はこれで」
「うん、ばいばい!」
二人に背を向けて歩き去ろうとする。
「おい、そんなんでいいのかよ?何だったらもっと……」
「目的は果たした」
ステイルは当麻の言葉を遮り、背を向けたまま手を振って言う。
「メリークリスマス」
「ん、あぁ。メ、メリークリスマス……」

88メリー★クリスマステイルイコ!:2010/04/23(金) 00:44:31 ID:ke8yXOWE
ステイルはそのまま佐天のもとに戻ってきた。

「本当にスマン!この通りだ!」
「いいですよ、事件が起こってないなら、それが一番ですから」

という初春と土御門の会話を横に、佐天に告げる。
「付き合ってもらって悪かったね」
「いや、そんな!むしろこっちの方が助けられたって言うか……」
「それでも迷惑を掛けたのには違いないさ。アレは僕の同僚でもあるしね。まぁ、お礼と言ってはなんだが……」
ステイルは懐から小箱を取り出した。
「あれ?これ、さっきあの子に……」
「それとは別だよ」
「えっと……開けても?」
「どうぞ」
佐天が箱を開けると、中には小さな十字架の形をしたブローチが入っていた。
「わ、綺麗……で、でもいいの?こんな高そうなの……」
「構わないよ、それにそんなに高いものではないからね」
それは、ステイルがもともとインデックスへのクリスマス用に用意していたものだ。
煙草の量を減らし、生活費を削り、浮いた金で購入した1万5千円のブローチ。
だが、これを買った後に神裂が例のブローチの話を持ち出してきた。
ブローチというだけならまだしも、意匠まで同じものを2つ渡すのはよろしくない。
そして渡すのを止めるとしたら、それは当然純銀製でイギリスの職人の手による神裂のブローチではなく、安物の、ステイルが買ったブローチの方だろう。
そんな経緯から、ずっとステイルの懐に隠れていたブローチだったが、
「うん、ありがとうっ。大切にするねっ」
「あぁ」
(まぁ、これで良かったのかもしれないな)
そう思い、ステイルは心の中で苦笑を浮かべた。

★★★★★★★★★★★★
「あーあ。派手にやりやがって、着ぐるみ弁償だぜよ。あれって幾らくらいするもんなのかにゃー」
マジモードから通常モードに口調を切り替えた土御門は、初春と佐天に礼と謝罪を告げた後舞夏を連れてその場から去って行った。
当麻も、インデックスと
「というか私はどうして出てきたの?」
とひとりごちる姫神を連れて消えてしまった。
そしてステイルもそれに続こうと初春と佐天に別れを告げて立ち去ろうとしたのだが、
「あの、さっ」
「ん?」
その背中に佐天が声をかけた。
「えーと、ぶっちゃけたこと聞くけど、さっきの女の子にプレゼント渡したっていうのは、やっぱりあの子のこと……好き、てことなんだよね」
「ん………まぁ、そうなるな」
ステイルはぎこちなく答える。
「じゃ、じゃああの一緒にいた男の子は?兄妹って感じには見えないし……やっぱり……」
言いにくそうにする佐天。
(そうか、端から見たら僕はまるで横恋慕の間男と同じなのだな……いや、まるでも何も、そのまんまじゃないか)

インデックスは上条当麻と幸せに暮らしていて、
ステイルのことなど――少なくとも同胞としての、友人としてのステイルのことなど、まるで知らなくて――。

佐天も興味本位で聞いているのではないのだろう。
おそらくそんな無茶な恋愛を――少なくともそう見えることを――しているステイルを心配してのことだろう。
だが、
「いや、どうかな。恋仲ではないだろう。彼らは……何だろうな、言葉では表しにくい関係だ。あぁ、でも気にしないでくれ。多分君の考えと僕の彼女への思いとは、少し違うから」

そう、これは恋愛感情ではない。
例えそうだとしても、ただそれだけではない。
これは――誓い。
ただ自分が自分の為に立てた誓い。
見返りを求めない、必要としない、一方的な約束事。
故にそこに彼女の意志は関係ないし、彼女への思いも関係ない。
誓いを守り、彼女を護る。
それだけがステイル・マグヌスという人間の全てなのだ――。

「えっと……じゃあ私、今凄く場違いなこと言っちゃった?」
「………いいや、ありがとう。君は優しいね」
「へっ?」
「それじゃあ、さようなら。――涙子」
「え、さ、ささ、さようならっ」
何故か顔を赤らめる佐天に背を向け、ステイルは今度こそその場を後にした。

89メリー★クリスマステイルイコ!:2010/04/23(金) 00:46:05 ID:ke8yXOWE
★★★★★★★★★★★★

「………佐天さん」
ステイルを見送った後、初春が佐天にずい、と顔を近づけて問いかける。
「あの男の方、一緒に行動してたり、プレゼントもらってたり……佐天さん、まさか……まさか……」
「え?いやいや違うよっ!?初春を探すの手伝ってくれただけで……」
慌てて弁解する佐天だったが、
「顔も良いし、背も高いし、申し分のない感じの方ですしね……はぁ」
初春はその言葉を聞かず勝手に落ち込みため息をつく。
「違うって!そんなんじゃ全然なくて……」
「あぁ、私は冗談で言いましたけど、佐天さんの方にはもうお相手がいらっしゃったんですね……」
「だから、私は初春のことが……」
そこで佐天ははた、と気付いた。
初春が含み笑いで佐天を見上げていることに。
「私のことが、何ですか?」
「あぅ、あぅあ……」
またもからかわれたことに、顔を真っ赤にして恥ずかしがる佐天。
「何なんですかぁ?」
「…………ば、ばーかばーか!初春のばーか!」
「ふふふ、佐天さんは可愛いですねぇ」

★★★★★★★★★★★★
「さて。派手にやってしまった分、後片付けも大変だな」
ステイルは初春と佐天が言い合っている路地の近くにある5階建てのビルの屋上にいた。
事件自体は何でもなかったとは言え、派手にイノケンティウスを暴れさせてしまったのだ。
辺りには未だに焦げカスが転がっているし、ルーンのカードもあちこちに張り付けたまま。
更には一方通行によって破壊された瓦礫もある。
この状況を誰かに見られたら、色々と面倒くさいことになるだろう。
ステイルはビルの縁にテープでつけたルーンのカードを剥がして回収すると、続いて懐から煙草を取り出す。
「む……」
だが出てきたのは煙草ではなくポッキーの箱。
あの後佐天から箱ごと残りを貰ったのだ。
「あぁ」
そこにきて、ようやく煙草を切らしていたことに気付いたステイルは
「まぁ、いいか」
とポッキーを一本取り出して口にくわえた。
「ふむ……甘いのも、悪くはないね」
「おや、貴方にしては随分可愛らしい物をくわえているんですね」
ふと後ろから声がかかった。
振り返らなくとも声の主は分かる。
ステイルの同僚、神裂火織だ。
「わざわざ済まないね、人払いなんてさせて」
上条当麻の右手によって、ステイルの張った人払いのルーンの効果は切れてしまっていた。
だがその後、インデックスを探して駆けつけてきた神裂が代わりに人払いの結界を張ってくれたおかげで、この現場はまだ人の目に触れないままでいられるのである。「大したことではありませんよ」
「店は?」
「あの少女の外見の教師に任せてきてしまいました」
「そうか、悪いことをしたな」
ステイルはくわえたポッキーを煙草のように揺らしながら言う。
「……禁煙ですか?」
そう聞く神裂はしかし、おそらく全て知っているのだろう。
当麻が来た辺りから神裂の気配はあった。
それからずっとステイル達の様子を窺っていたならば、ステイルが佐天にブローチを渡したところも見ていただろう。
例え遠くにいたとしても――視力8.0の彼女のことだ――そのブローチがインデックスにあげたものに似ていることも分かっただろう。
そしてそこから推測して、佐天にあげたブローチはステイルがインデックスの為に用意したものだということも理解しているのだろう。
それでもそう聞いてくれるのは、ステイルの面目の為だ。
「あぁ、そんな感じだ」
肯定の返事をした後、するとこれからしばらく神裂の前で煙草を吸えないな、と気付く。
(まぁ……しばらくは代わりにスナック菓子でもいいか)
ポッキーをくわえたまま、ふとステイルは眼下の二人を見た。
そして周囲にある未回収のルーンのカードを確認すると、
「メリークリスマス」
新しいポッキーを取り出し、それをまるで魔法のステッキのように振った。

90メリー★クリスマステイルイコ!:2010/04/23(金) 00:46:36 ID:ke8yXOWE
★★★★★★★★★★★★
「……雪?」
佐天は頭上から静かに舞い降りてくる小さな粒を見つけて言葉を止めた。
「本当ですか?予報では降らないって話でしたけど……」
初春もそれにつられて上を見上げる。
だが彼女達が空の中に見つけたのは冷たい粉雪ではなく、
「あったかい…」
ステイルの魔術によって生み出された火の粉だった。
自ら明らむその舞い姿は空の漆黒の中にあってより一層映え、低温に調節されたそれは触れればその肌に僅かな温かみを残して溶けるように消える。
「綺麗ですね……」
初春が感嘆の声を漏らす。
「うん…」
佐天もその言葉に頷く。
ひとしきりの沈黙。
その後、初春は手袋をはめていない手で、同じく片手袋の佐天の裸の手を握った。
「どうですか、佐天さん。今度はちゃんと温かいですよね?」
「え?……あ、ホントだ」
確かに初春の手からはカイロを握っているかのような温かみが感じられた。
「あ、そっか。初春の能力……」
触れている物の温度を一定に保つ能力。
炎の雪の温かみが残っているということなのだろう。
「はい。……あんまり役に立ちませんけどね」
苦笑しながら言う初春に
「ううん」
佐天は首を横に振って答える。
「役に立ってるよ」
「そうですか?」
「だって……」
佐天は握る手に力を込める。
「だって、こんなに温かい」
「それだけですよ?」
「それだけで十分だよ」
「そう、でしょうか…」
「うん」
「なら良かったです」
「ん…………ねぇ、初春」
「何ですか?」
「私は初春のこと、大好きだよ」
「……はい。私も、佐天さんのこと大好きですよ」
そして二人は炎の雪が降り止むまでその場に止まり、幻想的な光の風景を見上げ続けた。


★★★★★★★★★★★★
「随分と興のあることをするのですね、ステイル。まるで道化のようですよ?」
「今更何を言っているんだい神裂。僕はずっと昔から、インデックスのための道化だよ」

91メリー★クリスマステイルイコ!:2010/04/23(金) 00:47:37 ID:ke8yXOWE
★★★★★★★★★★★★
「おじさん、生一丁!」
「へい」
高架下の屋台で、月詠小萌は一杯ひっかけていた。
その隣には当然の様に黄泉川愛穂と鉄装綴がいた。
「いやー、ステイルちゃん達がどこかへ行ってしまって大変でしたけど、何故かやたらと繁盛してステイルちゃんの目標金額を軽く越えるお金が入ったので、その余剰分を拝借してこうして飲み会が出来るんですから、結果オーライなのですよ〜」
「ゲコ太事件も解決したって連絡があったし、財布も心配しなくていいから、今日はじゃんじゃん飲むじゃん」
「あの………私って、必要ですか?」
そんな三人の隣で
「オイ、オヤジ。缶コーヒーおかわり」
「ヘイ」
一方通行は缶コーヒーで酔い潰れていた。
「何なんだよ、俺は学園都市最強のレベル5だぞ……」
「まぁまぁ、過ぎたことを言ってもしょうがありません、飲んで忘れちゃいうのが一番ですよー」
「そうじゃん一方通行。じゃんじゃん飲んでじゃんじゃん食うじゃん。今日は私らの驕りじゃん。あ、でもアルコールは駄目じゃん」
「私って、一話かけて掘り下げる必要ありましたか?」
そんな四人の隣で
「おじさんチョコレートパフェってミサカはミサカはおよそ屋台になさそうなものを注文してみたり」
「ヘイ」
打ち止めがニコニコ顔でパフェを頼んでいた。
「ほれ打ち止め。お前も何か言ってやるじゃん」
「うーん、あなたが凹んででいる状況って中々ないから、見ていて結構楽しいかもってミサカはミサカは本心を述べてみたり」
「あっはっは!酷い言われ様じゃん」
「今日は賑やかでいいですねぇ」
「私………この仕事向いてないかも」


こうして、クリスマスの夜は更けていく。


「お姉様ぁ!私、お姉様の為にプレゼントを用意しましたの!それは、このわ・た・く………ひでふっ!」
「下着姿で不気味なダンスを踊りながら近寄ってくんな!この変態黒子!」
「変態じゃないんですの!仮に変態だとしても、私は変態という名の淑女ですの!」


伝えられない思いを抱く人にも


「はぁ、大吾先生……」


気持ちの通じ合った二人にも


「どうも、お世話になりました」
「もう帰って来るなよ、黒妻。…あぁ、そういや迎えを呼んでおいたぞ」
「迎え………?」
「お久しぶりです、先輩」
「……美偉」


存在感が臼井さんにも


「来年から。本気出す」


いつも通りの連中にも


「千円!せめて千円貸してくれ浜面!」
「知らん。こっちだって厳しいんだ」
「浜面ー。なんで待ち合わせ場所にいないんですか。超探しましたよ」
「はまづら、つかれた」
「あ、スマン滝壺、絹旗。そこでこの馬鹿と会ってよ……」
「お!超おいしそうなケーキですね。浜面にしては気のきいたことをするじゃないですか」
「は?いや違うぞワンピ少女。これは俺が全財産をはたいて買った……」
「何を言ってるのか超わかりませんが。あなたは浜面の物は私の物、浜面の知り合いの物も須く私の物という絶対のルールを超知らないようですね」
「いやそんなルール俺も初耳だぞ!?ってか範囲広すぎだろっ!」
「え?浜面ってそんなに友達がいるんですか!?超驚きです!」
「うわっ!この女ひでぇ!」


そして、薄幸な主人公にも


「インデックスはね、とうまのことが大好きなんだよ」
「はいはいそうですね。さて、今日の晩飯は……」
「うー!真面目な話なの!軽く流さないでほしいんだよ!」
「ま、クリスマスだし。ちょっと奮発して鶏でも買うか、インデックス」
「わー!やった!一月ぶりのお肉なんだよ!」


全ての人に


――メリー・クリスマス。

92■■■■:2010/04/23(金) 00:53:14 ID:ke8yXOWE
以上です。

今気づきましたが、地の文で上条当麻のことを「当麻」って呼んでました。
原作とかでは苗字で「上条」だったような気がします…
脳内で変換していただけたらありがたいです。
ゲコ太神拳やステイルの発信機など原作無視な設定が多々ありますが、学園都市のとある祝日の馬鹿騒ぎ、として軽いノリで楽しんでいただけたら幸いです。

ps一方通行さんには悪いことをしました。

93■■■■:2010/04/23(金) 04:43:37 ID:6OVzHOzk
>>92
乙!トナカイ笑ろたwラジオのあの回は神回だったw絹旗ss超楽しみにしてます
ところで>>68-70の間話し飛んでません?

94■■■■:2010/04/23(金) 07:27:38 ID:ke8yXOWE
>>93

感想ありがとうございます。
そしてご指摘ありがとうございます……

確かに飛んでいました。
コピペする時に間違えてしまったようです。
しかも割りと重要っぽいところなのに…

>>68の最後に次の一レスがついています。

95メリー★クリスマステイルイコ!(68と69の間):2010/04/23(金) 07:29:49 ID:ke8yXOWE
(ブローチが………ない)
身体中から脂汗を流して固まるステイル。
(落とした?いつ?まさか………少女とぶつかった時に?まずい、まずいぞ)
インデックスに渡せないこともまずいが、何よりそのことを神裂に伝えた時に自分の身がどうなっているかを想像して身震いする。
と、


「あのー!」
大通りの方から二人の少女が駆けてきた。
先程ステイルがぶつかった少女達だ。
そして頭に花を生やした少女の手には――
「これ、落としましたよー!」
綺麗に包装された小さな箱があった。
(おぉ、神よ!)
ステイルは心の中で神に感謝の意を捧げ、少女達に駆け寄ろうとする。
「あぁ、ありがとう君達!本当に……」
その時。

ステイルと少女達の間の路地からカエルが飛び出してきた。
「は?」
そしてカエルはあろうことか
「ふぇ…?」
ブローチを持った花の少女を軽々と抱え上げると
「ふぇぇぇぇぇぇ!?」
一目散に路地を突っ切って消えていった。

「う、初春!?」
残った少女が驚きに声を上げ、
「な、何だと……!?」
ステイルが絶望に声を荒げた。

96■■■■:2010/04/23(金) 07:30:54 ID:ke8yXOWE
今度こそ以上です。

けっこう誤字脱字も多いような気がしてきました…
次以降は気をつけたいと思います。
すいませんでした。

97■■■■:2010/04/23(金) 07:53:48 ID:pYGHf83.
>>92
お疲れさまでした。
なんというか、学園都市オールスターと言いたくなる総動員っぷりですねw
たった一つの誤解のせいでこうまでアホな状況が発生するとは。
とりあえず一方さんカワイソス

98■■■■:2010/04/23(金) 08:02:11 ID:YKTMnka6
GJ!

99■■■■:2010/04/23(金) 23:07:53 ID:uaTu5ddo
はじめまして、投稿しようと思います。
内容は、大体10年後ぐらいの話で、なにかほのぼのとした話を作りたいと思って作りました。
そんなに長くありませんが、とりあえず一部を載せます。
オリキャラは一人だけ出す予定ですが、別に物語の中心人物というわけではありません。
あくまで小ネタ的ポジションです。

100■■■■:2010/04/23(金) 23:10:33 ID:uaTu5ddo
9月のある日、とある学校の廊下を一人のスーツを着た女性が歩いていた。
向かう先は、かつてお世話になった恩師である担任の居る職員室である。
職員室を開けて入ると、今は昼休みなのだろう先生たちは食堂に行っているのか、あまり人はなかった。恩師の姿を探していると
「吹寄ちゃ〜ん、こっちですよ〜」
と幼い声がしてきた。声をかけられた女性は、その昔と変わらないと言っても
初めて会ったときから昔と変わらないねと言われそうな存在であったが、その姿は10年前と変わっていなかった。
吹寄は先生のもとに歩いて近づき、ぺこりと礼儀正しくお辞儀をした。
「お久しぶりです…小萌先生、お忙しいところすいません」
「全然構わないですよ〜可愛い教え子に会えるなら先生は、どんな忙しくても時間を作りまァす!」
昔と変わらぬ教師の鏡と言える台詞を聞いて吹寄は笑顔になった。
「それで話と言うのは…」
「あぁ、言わなくても分かってます…一端覧祭のことですよね?もちろん吹寄ちゃんの所の会社を利用させて貰います」
「そうですか…いつもありがとうございます」
吹寄は、学園都市のイベントの宣伝や準備などをしている会社で働いている。
今回も一端覧祭と言う一番忙しいイベントの為、こうして子萌先生に会いに(営業)来ているのだ。
「いえいえ、吹寄ちゃんの所は仕事が丁寧で助かります」
「そう言って戴けたら、やったかいがあります」
「そういえば…吹寄ちゃんはまだお仕事ですか?」
「いえ…今日はこれで終わりです」
今回は、ただ会社を利用するかどうかの確認だけだったので今日の吹寄の仕事はこれで終わりである。
「それは良かったです〜」
「?何が…」
「暫くしたら、姫神ちゃんと青髪ちゃん、土御門ちゃんも来るとおもいますよー」
「えっ!?」
突然の知らせに驚いたが、吹寄が入ってきた扉ガラガラと音を立てて開いた。すると
「いや〜!!子萌先生!!会いたかったでぇ〜!!!」
「にゃー!相変わらずキュートぜよ!」
「青髪!土御門!」
「…私も居る」
「姫神さん!!」
昔のクラスメイトで仲の良かった(姫神限定)友達が入ってきて吹寄は驚いた。
「わ〜みんな変わってないですねぇー」
「わー子萌先生ぇぇぇぇ!!ギャン!!」
子萌先生に飛びつこうとした青髪の顔面に容赦なく拳を叩きこんだ。
「本当に久しぶりね…姫神さん、元気そうで良かったわ」
「うん…吹寄さんも」
「にゃー、顔面に拳叩きこんで平然としてるなんて…本当に変わってないぜよ」
「あんた達もね」
顔面に拳を叩きこまれた青髪はすぐに立ち上がり
「あぁもう!いきなりひどいやないかぁ!」
「私は当たり前の処置をしただけよ…てゆーか、なんであんた達まで来てるの?」
「そりゃ決まっとるやろ!内の女優を売り込みに来たんや〜」
「あぁ…姫神さんの付添ね…そういえば姫神さんこの前の映画見たわよ、すごくおもしろかった」
「そう、よかった」
姫神は、今は女優として働いている。演技の幅は広く、映画、ドラマの主役からよく分からない不思議系キャラや脇役まで
いろいろなキャラをこなしていく、今注目の若手女優である。
「こいつがマネージャー?」
「ううん…彼は相変わらずマネージャーと雑用をやってる、私が学校に挨拶に行くからって言ったらついてきただけ」
「そういえば、どうして?」
「今回の一端覧祭でこの学校のゲストに呼ばれたんやー」
「そうなの!?」
「うん、だから挨拶に…」
「内の事務所の一押し女優がでるんや!!成功間違いなしや!!」
「そう!なら私もがんばるわ!!」
「にゃー、楽しみぜよ!」
その時一斉に視線が土御門に向いた。

101■■■■:2010/04/23(金) 23:12:42 ID:uaTu5ddo
「そういえば、あんたは何してんの?青髪と同じように同じ事務所で働いてんの?」
「ううん、彼はいない」
「そういや…俺も知らんかったなぁ…」
「私も土御門ちゃんの進路が分からないまま卒業させちゃったから、どうしてるかまったく知らなかったです〜」
「いやー俺はあれぜよ…メイド王国に行こうと…」
「つまり、無職ね」
「にゃー!吹寄!!勝手に決め付けのは、酷いぜよ!!」
「じゃあ、何してんのよ?」
「いやー、取りあえず舞夏と一緒に…」
「前言撤回!ヒモね!!」
「最悪やな〜」
「最低…」
「土御門ちゃん…どういてそんな子に…」
「にゃー!そんな目で俺を見ないでぇぇ!!」
実際には土御門働いている。昔と同じように暗部の仕事であるが、そんなこと妹に言えるわけもなく、
妹にはアルバイトで稼いでいると伝えている。そんなこと知らない彼らは、彼をヒモと決めつけた。その後も談笑していると吹寄が
「姫神さん、この後は暇?」
「うん…特に予定は入ってない」
「じゃあ、みんなで街に行かない?」
「おぉ!ナイスアイディアぜよ!!」
「そうやなー最近姫やんも休みがなかったし」
「うん…私も行きたい」
「じゃあ決定ね」
4人はこの後の予定を決めていると、子萌先生が4人に向かって
「そういえば…暇だったら上条ちゃんに会ったらどうです?」
「「「「えっ!?」」」」
「知らなかったですか?上条ちゃん…イギリスから帰ってきてるんですよー」
「ホンマですか!?先生!てゆーかカミやんイギリスに行っとたんかい」
「あいつが…」
「上条君が…」
「まったく知らなかったぜよ…」
子萌先生は次の授業の準備をしているのか、何やらプリントらしき物をまとめながら話してきた。
「第七区の病院に行けば、会えると思いますよー」
「病院って…なんやカミやんの奴また怪我したんかい?」
クラスメイトである彼らは、たった一年の間に彼が何度も入院していたことを知っているので、このように考えるのは当たり前だろうが
子萌先生は衝撃的なことを彼らに伝えてきた。
「何言ってるんですか〜お医者さんが病院に居るのは当たり前じゃないですか〜」
4人は、最初何を言っているか分からなかったが、しばらくして4人とも同じタイミングで
「「「「はぁぁぁぁ!?」」」」

102■■■■:2010/04/23(金) 23:15:36 ID:uaTu5ddo
ここまでです。
初めてなので読みずらかったらごめんなさい
またできれば近いうちに投稿します。
あと題名は、またその内つけます。

103■■■■:2010/04/24(土) 00:17:09 ID:6wrl534c
>>102
とりあえず、投稿乙
ドクター上条がどんなことになるのか楽しみ

>読みにくさ
ひとまず、投稿の前にテキストファイルを読み返してみるといいんでない?
「子萌」とか助詞が飛んでいるとか、「内の事務所」とか、なかなかにベタなミスが多めだった


個人的な嗜好を言うと、「もうちょっと地の文があってもいいかも」と思ったかな

104■■■■:2010/04/24(土) 00:38:08 ID:hLYSsp2U
>>97
>>98

感想ありがとうございます。

とりあえず絹旗さんの話の骨組みだけしっかりしました。頭の中では。
長さは「戦う佐天さん」とやっぱり同じくらいになりそうです。
が、これは今までのように書き溜めではなく今から書くものなので、すぐに全部一気に、とはいきません。

全部書き終えてからひとつのお話として投下するか、ちまちま上げていくかどちらの方がいいでしょうか?
全部仕上げるのには2、3週間かかると思います。

>>102
十年後の世界とかいいですねぇ。
自分はそういうところが全く想像できなかったのでXXでごまかしてしまいましたがw
とりあえず小萌先生はそろそろ人間じゃないですねw

105■■■■:2010/04/24(土) 00:42:21 ID:wVgWX7tY
>>92
GJ!
一方さんがまさかのかませw そして不貞腐れる一方さんもいいなぁ
あちらこちらにちりばめられた小ネタの数々が笑いを誘いますね
次作も期待してお待ちしておりますれば……頑張ってください!!

>>102
GJ!
と言いたい所ですが、いかんせん短いですね
初めての投稿という事で、さわりとしてはいい感じだとは思いますが、一発モノの短編以外の投稿で2レス分では評価のしようが…
でも続きが気になる引きだと思います。上条さんカエルに弟子入りか!?
文章で気になったのは姫神の台詞ですね。余程動揺しない限り。読点「、」は使いません。句点「。」での統一を心がけませう

106■■■■:2010/04/24(土) 06:53:24 ID:ZWVld7hE
>>99
GJ!続きをまってるにゃー

107■■■■:2010/04/24(土) 15:07:10 ID:/7AMtSws
どうもいろいろ感想ありがとうございました。
続きを載せます。
>>103さん間違いの御指摘ありがとうございました。

108■■■■:2010/04/24(土) 15:09:07 ID:/7AMtSws
第七区の病院目指し歩いている彼らが話している内容は、決まって上条当麻のことである。
「未だに信じられない…あいつが…あのバカが医者!?」
「それはみんな同じやって、俺かて信じられん」
「一体何をどうすれば…彼が医者になれるのか…」
「もはや都市伝説レベルの話ぜよ…まぁ行ってみればはっきりするにゃー」
と土御門は3人と同じように驚いているが、実は上条当麻が医者であることは知っていた。
裏で働けば上条当麻と言う存在の動向はある程度分かるし、この4人の中では一番上条当麻に会っているだろうと思っていたが
自分一人だけ知っているのは不自然なので、先ほどは同じように驚いて見せたのだ。
しかし、実際に当麻が帰ってきたことは知らなかったので驚いたことは事実である。
「さあ…着いたぜよ」
病院の前に着いた4人(正確には3人)は、あらためて
(((医者って…)))
実際に見るまでは、いや見ても信じられないかも知れないが3人は信じられずにいた。
「取りあえず、カミやんを探すぜよ」
「でもどうすりゃいいやろ?」
「聞いてみればいいじゃないか」
「…そんなことよりも簡単に見つけることができる」
「どうやるの?」
「女性がたくさんいる所を探せばいい」
「「「あぁー」」」
決して彼らはふざけている訳じゃない。暫く辺りを見回していると姫神が
「あっ」
「姫やんどうしたぜよ?…あっ」
この病院は広いので探すのに苦労するかと思ったが、彼らが探している人物はすぐに見つかった。
彼らが探していた上条当麻は病院の敷地にある、病人やけが人が気分転換のために訪れる木が並ぶ公園のような所にいた。
白いワンピースの上にピンクのカーディガンを羽織った女性と共に

109■■■■:2010/04/24(土) 15:10:23 ID:/7AMtSws
「診断結果は?」
当麻は、隣に居る女性に尋ねた。
「大丈夫…結果は良好」
「そうか、あいつもそろそろ来る頃だと思うけど…遅いな」
「久しぶりに仲間に会うから、遅くなるかもって言ってた」
「…時間は守れっつーの」
とこれと言って特別の話ではなく、ただの知り合い同士の会話なのだが
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
「えっ!?ギャン!!」
突如、2人の男がダブルドロップキックをしてきて当麻はそのまま2〜3mほど吹き飛ばされた。その後、
「上条ぉぉぉぉぉ!!!」
まるで長年の恨みを吐き出すような声で当麻の名前を叫びながら、吹寄がコブラツイストをきめてきた。
「貴様という男はぁぁぁぁ!!!!」
「だぁぁぁ!!ギブギブッ!!」
その様子を見ながら姫神がコブラツイストをきめられている当麻に近づき
「上条君…まさか患者にまで…」
「何の話ですかぁぁ!!?」
「カミやん…君は…君のフラグ体質というものはぁ!!」
4人が当麻に各々の思いをぶつけていると
「ママー!ジュース買ってきたよー」
と4,5才ほどの少年が先ほど当麻と話していた女性のもとの走ってきた。それを見た4人は、
「「「「子持ちだとぉぉぉ!!!!」」」」
本日2度目の絶叫…
「カミやんっ!いつの間に!!」
「患者に手を出すなんて!!」
「そんな男だったなんて思わへんかった!!」
「上条君…もう私の知っている上条君じゃないのね…」
そして本日一度目の絶望…

110■■■■:2010/04/24(土) 15:11:55 ID:/7AMtSws
4人が上条にいろいろとお仕置きしていると
「ねぇーママーどうして上条おじちゃん、いじめられてるのー?」
「大丈夫だよ、とうま…あれはじゃれてるだけだから」
などと言っているが、当麻からしてみたら堪ったものじゃない
「滝壺!!見てないで助けてぇ!!」
当麻が助けを求めると、とどめと言わんばかりの吹寄がキャメルクラッチをきめた。
「妻に助けを求めるとは!!」
「見損なっわ!!」
「カミやん覚悟するぜよ…」
3人が最後の攻撃をしようとしたところ、姫神が助け船をだした
「ちょっと待って…おじちゃんって?」
先ほど少年が言った言葉を思い出した。
「えっ!?」
「そういや」
「どういう意味ぜよ?」
4人は攻撃を受けてヘロヘロとなっている当麻を無視して、女性と少年を見た。
「え〜?おじちゃんはおじちゃんだよ」
少年は、当たり前のことを当たり前のように言っているようで、嘘をついている様子ではなかった。
姫神は、かがんで少年と同じ目線になって
「ねぇきみ…上条君がお父さんじゃないの?」
「違うよ〜」
ようやく、そこで姫神を除く3人の臨戦態勢が解かれた。
「なんや〜勘違いか〜」
「なんだ勘違いか…」
「すまんぜよ!カミやん」
「てめぇーら…」
やられた方からしてみれば堪ったものじゃないが、文句を言う前に少年の母親が当麻に話してきた。
「かみじょうの友達?」
「えっ!?…あぁ…まぁな、クラスメイトだ」
「そう…どうもはじめまして」
挨拶をされた4人は、とりあえずお辞儀をして挨拶を返した。
「えーっと…こいつは俺の患者って言うか知り合いの…」
「浜面理后です…ほら…とうま挨拶…」
「浜面とうまです!」

111■■■■:2010/04/24(土) 15:21:03 ID:/7AMtSws
とりあえず、ここまでです
ちゃんと読みなおしたけど間違いがあったらどうかご指摘ください。
他にも何人か禁書キャラだしますがオリキャラは子供だけです。
あとは、それぞれの今や昔の話を話したりしていくつもりです。
ついでに言うと浜面と滝壺が好きなので、ここはかなりやりたかったです

112■■■■:2010/04/24(土) 23:09:41 ID:5qIXe02E
メッチャ続きが気になります!
ガンバってください。

113■■■■:2010/04/25(日) 01:04:23 ID:05G7S1Fs
どうもです。書いてるうちに止まらなくなったので出来たところまで投稿します
それと遅くなりましたが>>105さん姫神の台詞の指摘ありがとうございました。
今度から気をつけます
あと訂正を一つ>>110の「見損なっわ」は「見損なったわ」の間違えです

114■■■■:2010/04/25(日) 01:07:57 ID:05G7S1Fs
「とにかく、どっか座ろうぜ…立ち続けるのは妊婦に悪い」
吹寄達4人がそれぞれ自己紹介をすると、当麻から提案してきた。
「「「「妊婦?」」」」
「あぁ…滝壺いやっ、今は理后の方がいいか」
「別にどっちでもいいけど…」
「…妊娠してたんですか」
「えぇ…だからここに来たんです」
当麻の提案に従って、どこか座る場所を探していると3人が座れるほどのベンチを見つけた。
座ったのは、優先順位に従って妊婦の滝壺とその膝の上に座った子供に女性の吹寄と姫神である。
男達は、全員立ちである。3人が座った後、
「たくっ!久しぶりに会ったて言うのに挨拶があれか?」
と当麻はようやく不満をぶつけることが出来た。
「いや〜ホンマにすまんかったな〜」
「てっきりカミやんフラグの犠牲者かと思ってぜよ」
「でもあれは仕方ないかも…」
「そうよ!貴様の日頃の行いが悪い!」
誤解も解け、全然悪くないことが分かっているのにまだ続く酷い言われように思わず
「不幸だ…」
お決まりのセリフを当麻が呟くと、フッと笑いながら
「おもしろい友達だね」
と滝壺が当麻に話しかけた。それを見ていた滝壺の隣にいる吹寄が話しかけた。
「あのー上条とはどういった……」
「イギリスで会ったんだよ」
滝壺が答える前に当麻が答えた。
「イギリスで?」
「あぁ…滝壺と滝壺の旦那は学園都市の出身でな、特に旦那の方とはちょっとした知り合いでな…
向こうで世話したり世話になったりしたんだよ」
「ほとんど私たちの方がお世話になってるんだけど…」
申し訳なさそうな顔をしながら滝壺が答えたが、実はこの話は少し嘘が混じっている。本当は学園都市を追われた浜面たちと
第三次世界大戦時にロシアで出会い、訳を知った当麻がイギリスに住めるようにいろいろ手伝ってくれたのである。
しかし、そんなことを友達に言えるわけもないので当麻は少し嘘を交えながら説明した。ちなみに土御門は大体の事情はしっている。
嘘と事実を混ぜながら話した分、その話に違和感を感じさせないことに成功した。
事実その話を3人は信じて、今度は姫神の方から質問をしてきた。
「イギリスで暮らしてるんですか?」
「えぇ…かみじょうにいろいろ助けてもらいながら…」
「ならどうして学園都市に戻ってきたんや?」
「滝壺は大能力者なんだよ」
答えたのは滝壺ではなく当麻の方であったが4人は驚いて滝壺を見つめた。
「なっ!?」
「レベル4ってホンマかいな!?」
滝壺は照れ臭そうにしながらコクリと頷いた。
「だからだよ、イギリスの病院じゃあ何かあった時に能力者の対応できないから、学園都市じゃないと子供が産めないんだよ
だから、付き添いとして俺も来たんだよ…この病院では昔働いてたし、何よりここは俺も滝壺も世話になったからな」
「上条君ここで働いてたの?」
「あぁ救命救急の方でな、まぁ師匠がいたからって言うのが主な理由だけど…」

115■■■■:2010/04/25(日) 01:11:12 ID:05G7S1Fs
当麻がいろいろと話していると滝壺の膝の上にのっている子供がヘクチュッとくしゃみをした。
それを見た滝壺がカーディガンに付いているポケットからハンカチを取り出して鼻を拭った。
そのテキパキとした対応を見た当麻は
「もうお母さんなんだな…滝壺は」
「たまには会いに来てくれればいいのに…とうまも喜ぶから」
子供を撫でながら当麻にそう提案していると、青髪があることに気付いた
「そういや、とうまってカミやんの…」
「えぇ…かみじょうの名前を貰ったんです」
「なんでよりによってこいつの名前を?」
「おいコラ吹寄!俺の名前をつけたのは両親だ!謝れ!俺はいいから両親に謝れ!」
当麻のツッコミに滝壺はフフッと笑いながら
「この子が生まれる時にも、かみじょうにはいろいろとお世話に…だから…」
「でももっといい名前があると思うけどにゃー」
「お前ら…全国の「とうまさん」に謝る覚悟あんだろうな?」
ふつふつ怒り蓄える当麻であったが、そんな当麻を笑いながらみる子供を見て、一回はぁーっと溜息をついて落ち着かせた
「俺だって他の名前の方がいいだろうと思ったよ…まぁ名前なんて好きなようにすればいいと思ったけど、
こいつが浜面…あぁ滝壺の旦那のことな…がこいつを「こら!とうま!」って言ってしかるとこを見ると異常なまでに腹が立つ」
と滝壺の膝の上にのる子供の頭を撫でながら、うすっらと笑みを浮かべて語っていると
「あっ!いたいた!!上条先生!!」
病院の方から何やら可愛らしいナースが当麻達に近づいてきた。それを見た当麻は
「すまん…ちょっと外すぞ」
みんなから離れてナースの方に近づいて行った。
「どうかした?」
「いやー507号室の患者さんの薬の量、これでいいですかぁ?」
カルテらしき物を渡された当麻はペラペラとめくりながら、
「507号室って俺の担当じゃないよな…たしか北沢先生じゃ…」
「えーっと、その〜先生がどこにもいなくて…」
「そうか…う〜ん、多分いいと思うけど…北沢先生には確認取っといてね」
「は〜い!」
元気のいい声と可愛い笑顔を向けてナースは去って行った。
「まったく…他の先生は何をやってんだか…他の患者まで面倒見切れな…」
愚痴をこぼしながらみんなのもとに戻ると、そこには目に見えるほどの怒りのオーラを溜めた四天王が立ちつくしていた。
「えっ!?なに?」
「貴様と言う奴は…」
「どこに居てもその体質は変わらんようやな〜」
「そして…相も変わらず鈍感で…」
「カミやん…覚悟するぜよ…」
「いやっ!?なに急に!?」
修羅場を迎えた当麻を見ているとうまに滝壺が
「見ちゃだめだよ〜とうま」
と言いながら優しく両手で目隠しをした。
「ここにきて優しいお母さん!?」

116■■■■:2010/04/25(日) 01:13:59 ID:05G7S1Fs
「なんで…こんな目に…」
四天王の猛攻を何とか受けきった当麻はぶつぶつと文句を言っていた。
「大丈夫だよ…かみじょう…私はそんなかみじょうを応援してる」
「応援じゃなくて助けてくれ」
最もな意見をもらす当麻を見ていた吹寄は、先ほどのナースが尋ねてきたことと当麻の着ている白衣を見て、あらためて
「貴様は…本当に医者になったんだな」
「……じゃなかったら、こんな格好しない」
「いや〜でも実際に見てみると…なんやろね〜」
「……変か?」
「いいや、似合ってるぜい…上条…先生」
そう言われて当麻は、何やら恥ずかしそうに頭をかいた。そんな当麻を見ながら姫神は質問をしてきた。
「昔って言ったけど…今はどこで?」
「…いろいろ…いろんな国に行った」
「…いろんな国?」
ぽつりと続けて言った姫神に滝壺が答えた。
「国境なき医師団に参加してるんですよ」
「えっ!?」
「国境なき医師団て…ホンマかいな!?カミやん!?」
国境なき医師団、それは貧困地域や第三世界、紛争地域を中心に活動している団体で災害や紛争に際し、
どこよりも早く現地入りする緊急医療援助を得意とする医師団である。災害時だけでなく紛争地域でも活躍する彼らであるが
戦場の中で治療する彼ら自身も命の危険にさらされている。
「まぁな…ずっと働いてた訳じゃないけど…何年か参加してた」
「今はどうしてるぜよ?」
「たまに参加したりしてるけど…こうして戻ってくる時もある」
当麻は普通の声で話しているが、その表情は少し悲しそうな顔をしていた。
実際に国境なき医師団の働くところを見たことはないが、それがどれだけ大変で悲しいものかは吹寄達も多少は知っているつもりだった。
そして、当麻自身も大変で悲しい思いをしたのだろうと、その表情で理解した。少しの間、静寂に包まれたがそこに滝壺が
「好い加減…結婚したら」
などと提案してきた。4人は思わずナッと言いたげな顔をしたが、当麻の
「俺と結婚したいなんて言う物好きがいなくてね」
と言うセリフに4人は再び怒りのオーラを溜めたが
「それに家族なんてできたら…こんな仕事できない」
続けて言った言葉に4人の怒りのオーラは弱くなっていった。4人は黙っていたが
「逆だよ…家族ができたら死ねないでしょ?」
滝壺の言葉に当麻は一瞬考えさせられるような顔をしたが、フッと笑って
「俺は、浜面みたいにはなれないさ…」
と、ここにいない滝壺の旦那の名前を出して否定したが
「なれるよ…だって」
「…だって?」
「かみじょうは…はまづらのヒーローだもん」
と滝壺は男なら誰でも目を惹かれそうな笑顔で答えた。

117■■■■:2010/04/25(日) 01:21:33 ID:05G7S1Fs
ここまでです。滝壺はもっと無口だと思いましたが
治療が終わって、体調が良くなればこれくらい話せるんじゃないかと思って書きました。
イメージ的には、初めて会った人にはある程度敬語で喋って、優しいお母さんに描いたつもりです。
でも、名前は相変わらずひらがな読みだと思います(笑)
何度か読みなおしましたが、誤字・脱字があればご指摘ください

118■■■■:2010/04/25(日) 13:51:47 ID:bd2xsTr.
GJ!おもしろいZE!!

119■■■■:2010/04/25(日) 17:05:52 ID:ayD0/EQo
続きを。待ってる。

120■■■■:2010/04/25(日) 23:41:07 ID:05G7S1Fs
どうもです。
思いほかみなさんが楽しんでくれているようなので、安心しました。
今日じっくり考えて書きましたので載せます。

121■■■■:2010/04/25(日) 23:43:07 ID:05G7S1Fs
その後もいろいろ談笑していると当麻が腕の時計を見て
「あぁ…もうこんな時間か……お前らこれからどうすんだ?」
「とりあえず街に行くつもりぜよ…」
「カミやんはどうするんや?」
「俺はまだ少し仕事がある…どうだ、お前ら…うちに来るか?」
「えっ?」
「上条君の?」
「あぁ…今日何人か人を呼んでんだ」
当麻の提案に4人は少し考えて
「せやな〜どうせ特に予定も考えてへんし」
「別に私はいいよ」
「私も構わない」
「決まりぜよ」
3人の意見を聞き当麻は
「そうか…もうすぐ浜面の奴が来ると思うんだけど…」
もう一度時計を確認していると
「お〜い!上条!!」
当麻を呼ぶ声がした。声をした方を見ると一人の男が走って近づいてきた。
「あー!パパだぁ!!」
「噂をすればなんとやらだな…」
近づく男に滝壺の膝の上からおりて、とうまは近づいて行った
「おかえり〜」
「よぉーとうま、ちゃんとママを守ってたか?」
「ごめいれいどうりに!!おまもりしましたぁ!!」
「そうか!よくやった軍曹!!」
そう言って、浜面はとうまを抱きかかえて当麻達に近づいてきた
「わりーな上条遅くなって…」
「一時間近く遅れてんぞ」
「わりーわりー…えっと…」
当麻の周りに居る知らない4人を見て、浜面は少し戸惑った。
「あぁこいつらか?昔のクラスメイトだ」
「あぁ上条の…どうも浜面仕上です」
4人もそれぞれどうも、といった感じにお辞儀をした。

122■■■■:2010/04/25(日) 23:48:02 ID:05G7S1Fs
挨拶をした浜面は滝壺に近づいた。
「滝壺、どうだった?」
「大丈夫…」
滝壺が答えると浜面の後ろから当麻が伝えてきた。
「母子共に健康だそうだ」
「そうか」
「浜面来ていきなりで悪いが、こいつらも俺んちに連れて行ってやってくれ」
当麻はクラスメイト4人を見ながら尋ねた。
「別にいいけど…お前の車、使っていいのか?」
「あぁ…わりーけどもう一人…いやっ二人連れてきたい人がいんだ…だから車は俺が使う…タクシーで行ってくれ」
「分かった…じゃあ、とりあえずタクシーを…」
「病院の入口にならタクシー乗り場があるぞ」
「おーっと、その前に俺ちょっとトイレ行きたいぜよ」
当麻が案内しようとしたところに土御門がそう言ったので、当麻は土御門の考えを悟って
「あぁ…病院の使え、案内する」
「すまんぜよ、カミやん…みんなちょっと待っててくれにゃー」
そう言って病院に入る当麻に土御門はついて行った。病院の中に入ってロビーを歩いていると土御門が
「浜面の奴を一人で行かせるなんて…何を考えてるぜよ?」
裏でよく見せる真剣な顔をして尋ねた。
「いちいち心配する必要ねーよ」
「アレイスターの奴は、ある程度あきらめたみたいだが…統括理事会の中には、
浜面の首をアレイスターの手土産にしようとしてる奴らもいんだぞ…せめてお前がついていてやるべきだろ?」
「大丈夫だ…超一流のボディーガードをつけたからな…」
「ボディーガード?誰ぜよ?」
「お前もよく知る奴さ…」
「…?ねーちんの事か?」
「いいや…神裂は手が離せなくてな…」
「なら誰ぜよ?」
「後で分かる」
当麻は意味深なセリフでうやむやにしたが、土御門はまだ納得できていなかった。
「でも、もし奴らが何かしてきたら、どうするつもりぜよ?」
「…統括理事会の中で俺に喧嘩を売るような根性のある奴はいねーよ…まぁもし売ってくるしたら親船さんくらいだろ」
「…確かに、でもあの人の場合はお前が極悪人だったらの話だ…だけど今のじゃ答えになってないぜよ、
もし奴らが何かしかけてきたらどうするつもりぜよ?」
「決まってんだろ………戦争だ…」
当麻の不気味な笑みを浮かべて出したセリフに土御門はゾッとしたが、
「冗談だよ…たまには息抜きしろよ」
土御門の肩を笑顔でポンポンっと叩いて、当麻はロビーにあるエレベーターの方へと歩いて行った。
「まったく…その気になれば世界と戦える戦力を持ってる男が言うと冗談に聞こえないぜい」

123■■■■:2010/04/25(日) 23:53:13 ID:05G7S1Fs
タクシーに乗った一同は、第三学区のとある施設に到着していた。高層マンションのようなビルを見た吹寄達は、少し驚いて口を開けた。
「ここって…」
「個室サロンやないか…」
彼らのような普通の高校生だった者にはあまり馴染みのない場所であるが、その存在ぐらいは彼らは知っていた
「あぁ…上条の奴は此処と年間契約結んで、帰ってきたら大抵ここで寝泊まりしてんだよ」
一通り説明した浜面は個室サロンに入るとカウンターに行き、おそらく当麻から預かったのであろうカードらしき物を見せた。
店員はすぐに部屋を確認して部屋の番号を教えてくれた。
近くにあったエレベーターに乗ると浜面は最上階のボタンを押して、扉を閉めた。しばらくして
最上階の廊下らしき所に出ると、そこには4つのドアがあるだけで奥には非常階段の扉があるだけだった。
「なんや…あんなでかいビルやのに部屋はこれだけかいな」
と青髪が不満を漏らすと、浜面がそれに答えた。
「数は少ないけど、その分部屋はめちゃくちゃ広いぞ」
浜面はエレベーターを降りてすぐにあるドアの前に立つとカードキーを差し込んむと
ビィィーっという電子音と共にドアが開いた。ドアを開けると奥から
「あー誰か来た!きっと上条だって、みさかはみさかは予想してみる」
と可愛らしい声が聞こえてきた。部屋の奥からドタドタと走る音が近づいてきて一人の中学生か小学生くらいの少女がやってきた。
部屋の奥から来た少女はドアを開けた者達を見ると
「あー!!浜面達だ!ってみさかはみさかは予想外の出来事に驚いてみる!」
「よう!ラストオーダー!」
「元気そうだね…」
「わー!みさかのおねえちゃんだぁ!!」
どうやら浜面一家は知り合いらしいが、吹寄達(土御門を除く)はその少女をまったく知らなかった。しかし、それはお互いさまで少女は
「後ろ人たちは誰?ってみさかはみさかは尋ねてみる!」
「あぁ上条の昔のクラスメイトだそうだ」
「そうか〜上条のお友達か〜ってみさかはみさかは納得してみたり!」
少女が納得していると奥から
「ラストオーダー、どうしたんですか?浜面達は超帰ってきたんですか?」
また奥から少女の声と共に今度も中学生か、いって高校生ぐらいの少女が出てきた。
「よぉ絹旗!」
「久しぶり」
「きぬはたおねえちゃん!」
今度もまた知らない少女なので4人は特に反応出来なかった
「超久しぶりですね…浜面に滝壺さん、それにとうまも…ほら、超遠慮せずに入ってください」
絹旗と呼ばれた少女は中へと招いたのでみんな部屋へと入り、奥の広間に歩いて行く途中に浜面が
「つーか…お前んちじゃねーだろ」
「細かいこと気にするなんて、相変わらず超浜面なんですね」
「なんだその浜面の全否定は!?」
「うるさいです…だいたい契約しといてまったく利用しない上条のために私がわざわざ超仕方なく使ってやってるんです」
「はいはい…ご立派ご立派」
浜面のかえしに不機嫌そうな顔をしたが、そこに吹寄が
「あのーあなたも上条の知り合いですか?」
「えっ?う〜ん私の場合は、浜面やラストオーダーみたいに直接的な繋がりが超あるわけじゃないですけど…まぁ知り合いですよ」
「みさかは上条とはお友達だけど、私よりあの人の方が仲がいいかもって、みさかはみさかは推測してみる!」
「はぁー」
よく分からなかったが、知り合いであることは確からしい。知らない人物ばかりであったがそこに
「あ〜!みなさんも来たんですか〜?」

124■■■■:2010/04/25(日) 23:56:55 ID:05G7S1Fs
よく知る子供(大人)の声が聞こえてきた。そこには大きくて見ただけで値段が高いであろうことが分かるソファーに座る先生の姿があった。
「小萌先生!!」
「なんや!先生も来とったんか!」
「はい〜さっき上条ちゃんから電話がありましたから〜まったくぅ入るのに苦労しましたぁ〜」
そりゃそうだろう、と4人はというよりは全員そう思った。そこから先に声をだしたのは姫神だった。
「先生はここを知ってたんですか?」
「えぇここは昔上条ちゃんがお医者さんになる前に一緒に飲み明かしたとこですからぁ!!」
「なんやてぇぇ!!なんて羨ましい!!もぉ!なんでカミやんの周りにはこんなにもレベルの高いロリちゃんがぎょーさんおるんや〜!?」
青髪が妙なテンションになっていて、普通なら無視するが無視しない者が2人いた。
「ロリって…私は超20代なんですけど…」
「みさかだって!もう高校生なんだよってみさかはみさかは訴えてみる!!」
「「「「えっ!?」」」」
今日上条当麻の事実を知った時以上の驚きが、まだ存在した。
「うそ…」
「小萌先生以外にも…こんなにたくさん」
吹寄と姫神は口に手を当てて唖然としている。
「そうか…ワイは分かったでぇー!きっとカミやんにはロリを引き寄せる磁石があるんや〜!!
なんとしてもそれを手に入れてやるぅぅぅ!!!」
青髪が意味不明なことを言い始めたので、こういう時のための吹寄である。
「うせろっ!地の果てまで!!!」
ゴシュッ!っと音を出して青髪に悲鳴を上げる暇もあたえずに見事に青髪の意識を飛ばした。
「あ〜もう吹寄ちゃん!ここは上条ちゃんの家なんだから暴れちゃだめですよ〜」
「すいません、つい我を忘れて…そういえば先生は上条が医者になったのを知ってたんですよね?」
「えぇそうですよー上条ちゃんがある日当然、脳科学の事について尋ねてきたんですよー」
吹寄と姫神は、それぞれ広いリビングに置いてあるソファーに適当に座りながら、もう一度訪ねた。
「脳科学ですか?」
「医学関係じゃなくて?」
「そうなんですよ、私もどうしてかは知らないけど最初は脳科学について聞いてきたんです…でもだんだん私じゃ説明できなくなってきて、
そこで私が上条ちゃんにあるお医者さんを紹介したんです」
小萌先生は思い出を楽しそうに思い出を語っていった。
「それでその人から脳科学だけでなく医学についても学んでいくうちにお医者様へとなっていったので〜す」
「あいつが…信じられん」
「だから言ったでしょ?上条ちゃんはやれば出来る子なんですっ!!」
「じゃあさっき上条君が言ってたお師匠さんて」
「あー多分私が紹介した人ですよ〜」

125■■■■:2010/04/25(日) 23:58:54 ID:05G7S1Fs
以上です。
一様何度も読み直しましたが、何か誤字脱字に気付きましたら教えてください。

126■■■■:2010/04/26(月) 00:58:49 ID:mZN5bUaU
GJ!
脳科学ってことは記憶喪失がらみか・・・?

127■■■■:2010/04/26(月) 01:31:54 ID:xSkFrbMQ
インなんとかさんのことかも

128■■■■:2010/04/26(月) 23:55:54 ID:yFWLeXGU
どうもです
お待たせしました。では投稿します。

129IF〜10年後の世界:2010/04/27(火) 00:00:01 ID:23K97vOE
日も沈みかけた夕暮れ時に一台の車が道路を走っていた。
その車の中では、運転をしている当麻が助手席に座るカエル顔の医者に話しかけた。
「すいません、休暇中に…」
「別に構わないよ…一人で寂しく飲んでいるより楽しいからね」
カエル顔の医者は、どこか嬉しそうな顔をして答えた。その顔を見て安心した当麻はルームミラー越しに、
後ろの席に座る白い髪の男を見ながら
「一方通行も悪かったな、面倒なことを頼んで」
「…別に…金はちゃんと貰ったからな…それに浜面のやつには打ち止めが世話になったしな…」
一方通行は、今科学者として働いている。だが、それは表向きである学園都市最高の頭脳を持つ彼にとって一流大学に入ることも
博士となることも簡単なことであり、今では自分の研究所も持っている。といってもそこで働くのは一方通行と芳川しかいない
それでも、かつて様々な研究機関に身を置いていた彼は、働かなくても十分贅沢をすることはできる。
しかし、彼は今も裏で働いている、学園都市の技術を必要とする打ち止めの為にも、そしていろいろと助けてくれた友の為に
「別に無理して裏で働くこともないだろ?もう少し科学者らしくしたらラストオーダーとの時間も増やせんのに」
「…別に今のままで十分だ…一日一回は会えるし、あいつに危険も及ばないしな」
いつものように怒っても笑ってもいない表情で答える一方通行にカエル顔の医者は、笑いながら語りかけた。
「君は本当に丸くなったね…」
「…………………」
いつもならここで不機嫌そうな顔をするのだろうが、先ほどと変わらない表情でいるところを見ると、
どうやら本当に丸くなったらしい。
しばらく車を進めているとカエル顔の医者が窓の外に広がる夕暮れに染まる街を見ながら
「昔は気付かなかったけど…この街は…こんなに綺麗だったね」
「えぇ…この街に人生を狂わせられた人もいるけど…この街自体は、俺結構好きですよ」
「そうかい……まぁでも…君に一方通行、御坂君に浜面君…あの頃の学園都市を知る者はずいぶんと少なくなった」
指を折りながら数えるカエル顔の医者はしんみりと語りだした。
「十年経ちましたからね…無理もないですよ」
「君や一方通行には、ちょくちょく会ってるし、浜面君にはこれから会うけど…御坂君には、ずいぶん会ってないね…
君と御坂君は仲が良かったけど、彼女は今何をしてるんだい?」
「御坂ですか…懐かしいですね、あいつの高校の卒業式の時に会ったきり会ってませんね」

130IF〜10年後の世界:2010/04/27(火) 00:00:56 ID:23K97vOE
5年前…御坂の高校の卒業式の日

「よっ!御坂」
「あっ!あんた!なんで!?」
「いや…別に……卒業おめでとう」
「あっありがとう………きっ聞いたわよ、あんた医者になったんだって?すごいじゃない」
「いやっ…まだまだ師匠ほどじゃねーさ」
「そっそれで!?なんのよう!?」
「いや、卒業祝いと挨拶に…」
「挨拶?」
「あぁ…俺、イギリスに行くことになってな」
「えっ!?」
「だからお前に挨拶を…な」
「そっそうなんだ…」
「………なぁ御坂…お前も来るか?」
「えっ!なっ!?なっ!?何言ってんのよ!?どうして私が!?…」
「ははっ…だろうな…言ってみただけだ……じゃあな、元気でやれよ」
「あっ!……待っ………………」

131IF〜10年後の世界:2010/04/27(火) 00:02:50 ID:23K97vOE
「風の噂では親父さんの影響で世界を飛び回って人助けしてるみたいですけど…ほんとよくやりますよ」
((お前が言うな…))
二人とも呆れながら心の声を合わせた。
「こう何年も会ってないと、たまには会いたいもんですね…」
「そのセリフを直接彼女に言ってあげれば喜ぶと思うよ」
カエル顔の医者がどこか呆れたように言ったが、当麻には何故か分からなかった、
そんな当麻にさらに呆れながらカエル顔の医者はは語りだす。
「僕にとってこの10年は、あっという間さ…今となっては伝説とまで言われてる君と一方通行との決闘も
僕にとっては、昨日のことのようさ」
「ははっ、そんなこともありましたねぇ…」
「俺は勝った思い出がねェけどな」
今はこうして二人とも笑って話しているが、昔二人が本当に2回ほど殺しあったことを知っている者達からすれば、
信じられない状況だろうが、その二人は、今まるで昔からの友達のように普通に喋っていた。
「そういやァ…また侵入した奴がいたみたいだぞォ…」
「あぁ…俺にようがあったみたいだ…」
「またか…魔術師か?」
「あぁ…適当に相手して、丁重に御帰りいただいた」
「どこのものなんだい?ロシアかい?それともアジアの方かい?」
「いいや…ローマだ」
当麻は特に慌てる様子もなく、運転を続けながら答えた。
「ローマだァ?」
「どういうことだい?ローマ教皇はもう君のことは諦めたんじゃないのかい?」
「もうあの人は引退して別の人になったんですよ…で、そいつがまた威厳っつーもんがなくて他の奴らを抑えられないんですよ」
「じゃあ、また昔の生活に逆戻りかい?」
「…苦労すんな…」
「もう慣れたよ」
若干あきらめ気味の当麻は、遠い目をして答えた。

132IF〜10年後の世界:2010/04/27(火) 00:05:36 ID:23K97vOE

「ただいま〜っと…」
個室サロンの部屋を開けた当麻は、少しふざけ気味言った。
「おかえり〜ってみさかはみさかは癒しの笑顔で迎えてみる!」
初めに当麻達を出迎えたのは打ち止めであった。当麻達が奥の広いリビングに行くとそこには、子供と遊ぶ滝壺と絹旗
そして、おそらくコンビニで買ったであろうお菓子をテーブルに少し置いて雑談する浜面や吹寄達の姿があった。
「なんだよ…適当にルームサービス使ってくれりゃいいのに」
当麻はあまりに寂しい食事を見て思わず言ってしまった。
「ほら!言った通りぜよ」
「いや〜勝手に使ったら悪いかな〜思うて」
「とりあえず貴様が来るまで待とうと決めたのだ」
「別に気にしなくていいのによ…」
みんなの優しさに感動しつつ、当麻はテーブルの上にある薄いカタログを指さし
「そん中から適当に選んでくれ…金は俺が払うよ」
「うひょ〜太っ腹ぜよ〜!」
「ゴチになりま〜す!!」
土御門と青髪はゴチになる気満々だが、少し離れたところで姫神が申し訳なさそうに
「本当にいいの?」
「んっ?あぁ気にしなくていいよ」
「そう…上条君その人達は?」
姫神は、当麻の後ろにいるカエル顔の老人と白い髪の男を見て尋ねた。
「あぁ!白髪の方は一方通行…友達だ」
「…どうも」
一方通行は驚くことに友達と言う言葉否定しなかったうえ、挨拶までしてきた。
「おかえり〜ってみさかはみさかは抱きつきながら定番の挨拶をしてみたり!」
「…あぁ」
適当に返した一方通行は打ち止めに連れてかれ、そのまま大きなソファーに座った。
「でっこっちは、俺の師匠…てか、お前らは会ったことあるだろ?」
「えっ!?……あっもしかして大覇星祭のときの?」
姫神がハッと気付くと
「お久しぶり…元気そうだね…そちらのお嬢さんも」
カエル顔の医者は吹寄の方に顔を向けてニコっと笑った
「あぁ!あの時は…どうもお世話になりました」
「いやいや、あれが僕の仕事だからね」
「まさか…あなたが上条の師匠だったとは…」
吹寄も姫神も驚いていたが、そんな二人を見て当麻が
「ほらっ!積もる話は後で…とりあえず、なんか頼もうぜ…って、ん?」
当麻が話していると携帯のバイブ音が鳴った。
「わりっ!ちょっと外す…なんか適当に頼んどいてくれ」
そう言うと、当麻は携帯を持って広いベランダへと足を運んだ。

133IF〜10年後の世界:2010/04/27(火) 00:10:31 ID:23K97vOE
広いベランダに出た当麻は携帯に出た。
「もしもし?」
『こんばんわ、かな?上条君』
電話からは老人の声が聞こえた。
「あぁ…どうもお久しぶりです…ローマ教皇」
『要件は分かると思うが…』
「えぇ来ましたよ、3人ほど」
『その者たちは?』
「御帰りいただきました…」
『そうか…申しわけない』
「あなたのせいではないですよ…まぁでも、もっとマシな奴を教皇にして欲しかったですよ」
『彼は彼でよくやっているんだが…』
「俺も嫌われたもんですね」
『…私としても、あまり君にローマ正教徒を会わせたくないのだがね…また君に取られてしまう』
「別に俺は取っちゃいませんよ…俺は好き勝手にさせているだけです」
『それが一番厄介なんだが…………探し物は?』
「いえ…見つかりませんでした」
電話越しのローマ教皇は分からないだろうが、この時の当麻はどこか悲しそうな顔をしていた。
『そうか…これからどうするんだい?』
「……もう少し世界を見て回るつもりです」
『そうかい…もしもローマ正教に入る気があったら言ってくれ、私が手を打とう』
「折角ですけど、お断りします」
『やはりな…残念だ』
「まぁでも近いうちにそっちに行くつもりなので…その時は一杯付き合ってくださいよ」
『悪いが…酒は』
「もう教皇じゃないですから…別にいいじゃないですか?」
『いいや…腐っても私はローマ教皇だった男だ』
「そうですか…じゃあヴェントやつと飲みますよ」
『………………………』
なにやら妙な沈黙が続いた。
「なんですか?」
『いや…あんなやつと酒を飲みたがる者なんて、おそらく世界中を探しても君だけだろう』
「はははっ確かに、でも一緒に飲んで騒げるやつは、ローマじゃあいつくらいでしょう?」
『君はいい!だがヴェントのやつが騒ぎだしたら…』
「俺がいるでしょう?」
『君も酔っぱっらてたら止める者がいなくなるだろう!?もし二人一緒に暴れたら国一つ滅ぼしかねん!』
「大げさですよ〜」
『やれやれ………もし来たのなら連絡をしなさい、酒はだめだが、お茶なら付き合おう』
「………じゃあ可愛いウェイトレスがいる所で」
『フッ、分かった探しておこう…では』
「えぇまた、そのうち…」

134IF〜10年後の世界:2010/04/27(火) 00:16:19 ID:23K97vOE
以上です。
それとたった今気付きました。>>131で「医者はは」となっているとこ正確には「医者は」です。
あと、書いてるうちにちょっとやりすぎた感が出てきました。ローマ教皇と携帯って
と思いましたが、きっと我らが当麻君ならやってくれるだろうと期待を込めて書きました。
それと、ローマ教皇の話し方はこれでよかったのか不安です。
また誤字脱字に気付きましたらご指摘ください。

135■■■■:2010/04/27(火) 00:23:37 ID:o/ZDOB3I
GJですの!続きがきになるわぁ〜
美琴もででくるのか?

136かぺら:2010/04/27(火) 16:25:49 ID:fwQQiksA
こんにちは。お久しぶりです。
何事もなければ>>42-50の続きを投下したいと思います。
シリーズタイトル:Liberta

16:30より7レス借ります。

137事件1:2010/04/27(火) 16:30:17 ID:fwQQiksA
終礼のチャイムが校内に流れ、上条は目を覚ました。
―――ん、寝ちまってたか―――
上条は眠い目を擦り、身体を起こす。親船先生の数学の授業で、教室の端から順番に当てられていったのは覚えている。
順番を見て、『今日は俺、当たらないなぁ』なんて思ったのが最後、強力な睡魔と闘い惨敗する羽目になるのだった。
「カミやん、今日はグッスリだったにゃー?」
「昨日あんまし寝付けなくてな………ふぁ」
上条は大きく欠伸をする。酸素が脳に行き渡るかのような感覚を覚える。
「今日は補習もないし、どっか寄ってくかにゃー?」
「そやねー、ゲーセンなんてどうや?」
「ゲーセンか………そういや久しく行ってねぇもんな。雨宮、お前もどうだ?」
上条は適当に荷物を突っ込んだ鞄を持ち席から立ち、ボサボサ茶髪を見る。ぼけーっとしていた。
「ど、どうしたんだにゃー?」
「いやいやぁ、すごい基本的な質問なんだけどさ」
雨宮は若干恥じらいながら、ポリポリと自分の右頬のあたりを掻いている
「お、なんやなんや?なんでも聞いてええで?」
「ゲーセンってなに?」
「………………」
「………………」
「……………はい?」
空気が凍る。上条たち3人は『知り合いがいきなり外国語で話しかけて来て何言ってんのかも分かんねぇ』みたいな表情で停止する。
「ゲーセンを知らんって言うんか?」
「行ったことがない」
「それなら俺たちがしっかりと教えてやるにゃー。覚悟するんだぜい?」
「まぁ、取りあえず行ってみようぜ」
デルタフォース+1はダラダラと教室を後にする。
「貴様ら!寄り道は勝手だが、風紀委員や警備員にお世話になるんじゃないぞ!」
「あー、わかったわかった」
「おい!聞いてるのか!?」
教室の中で吹寄が叫んでいたが、デルタフォースは当然のようにスルーしている。
「いいの?」
「全部聞いてたらキリがないからな」
上条が苦笑いしている雨宮の質問に答え、残る2人は背中を押す様にずいずいと玄関に向かって行った。

138事件2:2010/04/27(火) 16:30:34 ID:fwQQiksA
とあるゲームセンターにて。
「ほほー、これが、ゲーセン、ねぇ」
「どうや、初ゲーセンの気分は?」
4人が自動扉をくぐると、ゲームセンター特有のガヤガヤとした音が耳に飛び込んでくる。
「いっつもこんなにウルサイもんなのか?」
「そうだにゃー。この騒がしい感じも含めてゲーセンの醍醐味なんだにゃー」
「いやいや、この程度じゃウルサイなんて言わへんのやで―?」
上条は他3人の会話を無視すると、手近にあったクレーンゲームに目をやる。
可愛らしいぬいぐるみがわんさかと山積みにされている。
恐らくはスタッフの手作りであろうポップが掲げられており『流行りのラヴリーミトン第3弾!』等と銘打たれている。
―――そういや、御坂が好きなカエルもこのシリーズじゃなかったっけ―――
上条はビリビリ電撃姫の付き合いでもらったカエルのストラップを思い出し、クレーンゲームのショーケースを覗き込む。
まるでこちらを見ているかのような緑色のカエルと目があった。
「これも何かの縁ですかね」
上条はポケットから取り出した100円玉を投入すると、慎重にクレーンを操作する。
ウィィィィンとクレーンが動き、ケロヨンの頭を掴む。
「ま、どうせ取れないんですけど……あれ?」
今までクレーンゲームでとれた事のない上条にとって、ケロヨンとクレーンの軌道は驚くくらいすんなりとしていた。
ヨロヨロと手元まで戻ってきたクレーンは、ぺっと吐き出すように景品のケロヨンを投下する。
ボトッという音がし、取りだし口にカエルが現れた。
「………取れてしまいましたよ」
上条は嬉しさよりも驚きが勝った表情を浮かべ、ケロヨンを取り出す。
「で、どうすんだよ、これ……」
手元までやってきたケロヨンと睨めっこしながら、上条はコイツをどうするか逡巡する。
―――男子高校生の部屋にあるもんじゃねぇよなぁ―――
さっきまで入口付近で騒いでいた土御門と青髪はレーシングゲームで白熱の接戦を繰り広げている。
雨宮はどこいった、と周りを窺ってみると探し人は何やら他の人と話をしている。
話し相手はゲーム機の陰にいて、上条の場所からだと分からない。
「おーい、何やってんだ……げっ!?」
「げっ、って何よ?」
見えてなかった話し相手は御坂美琴であった。
「み、御坂さんは何を話してらっしゃったんですか?」
「別に大した話じゃないわよ。昨日はどうも、って話しただけ」
美琴は少しだけ染めた頬を誤魔化すように、目を背ける。
「レベル5だったんだね、って話をしただけだから。彼女をとってゴメンね、上条」
雨宮は本当にすまなそうな顔で上条の肩に手を置く。
「いや、だから彼女じゃねぇって……」
上条がゲッソリとした表情を浮かべる横で、美琴は『彼女って言われた…』と真っ赤になっている。
「あ、そうだ。御坂、これやるよ」
上条はとりたてホヤホヤのケロヨンを美琴の手元に投げる。
おっとっと、とお手玉しながらも美琴はケロヨンを受け止める。
「こ、これって、ケロヨンの新作じゃない!?」
「みたいだな。さっきソレでとったんだよ」
上条はさっきのゲーム機を指差す。美琴は素早い身のこなしでその台の近づくと舐めるように品定めを始めた。

139事件3:2010/04/27(火) 16:30:45 ID:fwQQiksA
「なぁ、上条。本当に彼女じゃないの?」
「違うって何度も言ってるんですけど………」
「ふーん」
雨宮は『これがフラグ体質ってやつかな』とか言いながら、上条と美琴を交互に見やる。
―――なんだよ、フラグって―――
上条は雨宮がその情報を何処から仕入れたのか疑問に思いつつも、クレーンゲームに張り付く美琴の後ろまで歩いていく。
「ふーむ。ゲコ太とピョン子はないみたいね」
「そんなにカエルがいいか、お前は……」
上条は心底残念そうな美琴を見て、呆れたような声で呟く。
「まぁ、いいわ………ね、ケロヨンのお礼に何か奢ったげるわよ。何がいい?」
「はぁ、別にそんなのは良いけどよ。お前、1人で来たんかよ?」
上条は辺りを見回してみるが、美琴の連れと思しき人はいなかった。
「白井とかは一緒じゃねぇの?」
「黒子と初春さんは風紀委員の仕事。佐天さんが後から来るはずなんだけど……っと、噂すればなんとやらね」
美琴の携帯が鳴動し、サブディスプレイに『佐天涙子』と表示される。
ちょっとごめんね、と言って美琴は通話ボタンを押し電話に出る。
「もしもし、佐天さん?」
『………みっ、御坂さんっ…………た、助けてっ』
「ちょ、ちょっと、どうしたの?」
どうにも様子のおかしい佐天の声に美琴の顔が強張る。そんな美琴をみて、上条たちも眉をひそめた。
『知らない人たちに、追われてて………』
「佐天さん、今どこ?」
『どこか、分かんないんで………GPSコード送りますっ』
電話が切れて数秒の空白があった後、美琴の携帯に位置情報が送られてきた。このゲームセンターからそう遠くない路地裏を示している。
「ごめん。私、ちょっと行ってくるから」
「待て、御坂、俺も行く」
そう言って上条と美琴はゲームセンターから飛び出していく。
「おーおー、置いてけぼりだ」
雨宮は駆け出して行った2人の背を追ってゲームセンターの外に出る。既に2人の背中は見えない。
「この辺の路地裏は良くわかんないけど、高いとこから見れば分かるかな」
近くのビルを見上げ、屋上まで昇るべく駆けだした。

140事件4:2010/04/27(火) 16:30:57 ID:fwQQiksA
上条と美琴が駆け付けた場所には携帯が1つだけ落ちていた。
「これ、佐天さんの」
「急がないとマズいってことか。御坂、俺はこっちを探す」
「OK!私は向こうを見てくる。アンタも一応は無能力者なんだから、気をつけなさいよ」
わかってる、と言い残して上条は路地裏の奥へと駆けだす。
GPSコードを受け取ってからそれほど時間は経っていないが、急ぐに越したことはない。
狭い路地を駆けていると、良く耳にする電撃音が聞こえてきた。恐らくは美琴が能力を使っているのだろう。
―――でも、まだ見つかってねぇみたいだな―――
バリバリッ、という電撃音に紛れて、何かを追っているような野太い男の声が聞こえてくる。
向こうも何手かに分かれて行動しているらしい。上条は地面を蹴る足に力を込めスピードを上げる。
少しずつ近づいて来たのか、声が大きく聞こえるようになった。その声に耳を傾けつつ、クネクネと曲がる道を駆ける。
―――いたっ!―――
そこから3つほど角を曲がったところで、黒髪ロングの女子中学生と、それを追う3人の男が視界に入る。
佐天の特徴については聞いてなかったが、恐らくはあの中学生だろう、と上条はその後を追いかける。
「おいテメェら!何してんだっ!」
上条は大きく息を吸い込んで追いかける男たちに叫ぶ。
「あん?」
3人の男たちはもちろん、逃げていた佐天も上条に振り返る。
「なんだ、テメェはよぉ?」
「3人がかりで女の子1人追いまわして楽しいかよっ!」
上条は男たちを引きつけつつ、佐天に目配せをする。佐天もそれを正しく理解したようで、再び駆けだした。
「ちっ、めんどくせェのが絡んできやがった。おい、お前、追いかけろ。俺ら2人でコイツをぶっ飛ばす」
その言葉に応じて、3人のうちの1人が再び佐天を追いかけて行った。
「ま、待てよっ!」
上条もそれを追おうとするが、残る2にんが道を塞ぐ。
「テメェら、邪魔すんじゃねぇ!」
上条は右手を握りしめて叫ぶ。少しでも怯んでくれれば儲けものだったのだが、そううまくはいかない。
「うるせぇ!邪魔してんのはお前の方だろうが」
残った男2人は上条の進路を塞ぐように立ち、腕をまくっている。
「最近、強くなった俺の能力を喰らわせてやんぜ!!」
男のうちの1人が上条に向けて左手を突きだすと、そこからボウッと火が飛び出す。
―――発火能力者かっ―――
上条は襲いかかってくる火炎に向けて右手を突きだし、『幻想殺し』でそれを消し去る。
「いいぜ、テメェらがどうしても邪魔するってんなら」
火炎を消し去られた男が驚愕しているのを視界に収め、上条は突きだした右手を握りしめる。
「まずはテメェらぶっ飛ばす!!」
上条はその場から駆けだすと一気に距離を詰める。
発火能力の男は先程のショックから抜け出せないのか、気休め程度の火を上条に向けて放つ。
「おおおおおおおおおおぉぉぉッ!!」
上条はその右手で、小さな火もろとも発火能力者の顔面を打ち抜く。
「うるぁぁっ!!」
体重を乗せた上条の拳は男の身体を吹き飛ばし、一撃で気絶させる。
「ちくしょう、お前、何の能力者だっ!?」
残された男は吐き捨てるように言い、火炎を打ち消した上条の右手に視線を向ける。
「……ただの無能力者だよ」
上条はもう一度、右手を握り駆けだした。

141事件5:2010/04/27(火) 16:31:07 ID:fwQQiksA
「待てコラァァァッ!!」
男の太い声が飛んで来る中、佐天は重くなってきた足に鞭打ち必死に駆けていた。
ツンツン頭の高校生のお陰で、追いかけてくる男は1人になったが、途中で分かれた奴らがいつ合流するとも分からない。
―――なんでこんなことになるんだろう―――
そんな崖っぷちに追いこまれながらも、意外にも冷静な頭は事の経緯を振り返っていた。
美琴と遊ぶべくゲームセンターに向かっていた途中、たまたまカツアゲの現場を目撃してしまったのが始まりだ。
流してしまえば巻き込まれることはなかっただろうが、ボコボコにされているのが見に入り、つい足を止めてしまったのだ。
見られた事に気付いた男たちは、佐天を黙らせるつもりか追いかけてきたのだった。
―――せめて、せめて私にも能力があれば―――
佐天は背後の男を見る。あんな不良たちでさえ能力を持っているというのに。
神様は残酷だ。佐天は自分の力のなさと世の中の不条理を恨む。
『幻想御手』の件で懲りたとはいえ、能力への希望も執着も消え去りはしなかった。
友人たる美琴や白井ほどの強さは要らないにしても、レベル1でもいいから能力が欲しいと思うのは今でも変わらない。
佐天は少しずつ近づいてきた男から目を離し、再び前に向き直る。
隠れる場所どころか、武器になりそうなものすらない。
「そろそろ諦めやがれぇっ!」
男はそう叫び勢いよく右手を振る。ビュゥッ、という音と共に強い風が路地の中で吹き荒ぶ。
「うっ!?」
吹き荒れた突風にバランスを崩し、佐天の身体が地面に転がる。
「いったぁ…」
それでも何とか立ち上がろうとするが、今の転倒ですりむいたのか膝からは血が流れていた。
『風力使い』と思しき男が右手を振るのが視界に入る。
よりによって、自分が欲しがった能力でやられるのか。佐天が身を強張らせたとき、どこから飛び出してきたのか、ボサボサ頭の高校生が男との間に割って入った。
「やぁっと見つけた。君が佐天、って子かな?」
男が繰り出した突風を左手で掻き消したボサボサ頭は、よろよろと立ち上がる佐天に目をやった。
「御坂の友達らしいね。助けに来たよ」
雨宮は突風を掻き消した左手を男に向けて突きだす。
ゴウッ!と掻き消したよりも強い風が起こり、男の身動きを縛りつける。
「うっぐっ!?」
「いやいやぁ、悪戯すんにもスカート捲るくらいにしといた方がいいと思うよ?」
雨宮は男に向かって駆け、捻りのきいた拳を腹に叩きこんだ。
「がはぁぁっ」
「うおっ、雨宮、お前なんでココに?」
ずるずると崩れさる男の横から上条が顔を出す。
「さすがに、俺だけ遊んでるわけにはいかんし、手伝いに来たよ。彼女は無事に確保しました」
パンパンと手を払う雨宮の足元で『風力使い』の男はぐったりとのびていた。
「良かった良かった。佐天…だっけ?御坂の友達の」
「…………あ、ありがとう、ございました」
「お礼されるような事じゃねぇよ」
上条は佐天の元まで歩み寄ると、にっと笑って頭をわしゃわしゃと撫でた。
「ほんとに……一時はどうなるかと思いました。ありがとうございます」
佐天は少しだけ気恥かしそうにしながら、ゆっくりと立ちあがり頭を下げた。
「だから、気にしなくていいって」
「えっと……御坂さんのお知り合いですか?」
「ま、そんなとこかな」
上条はポケットから携帯を取り出して美琴を呼びだすと、佐天が無事であることと、場所を知らせる。
『分かった、黒子にも連絡しておくわ』
「よろしく頼んだ」
上条は携帯を切り、ポケットにしまう。直に風紀委員や警備員がやってきて、残りの男たちも捕縛されるだろう。

142事件6:2010/04/27(火) 16:31:27 ID:fwQQiksA
15分ほどすると風紀委員と警備員が駆け付け、件の男たちを補導していった。
上条たちは検証の意味合いを含め、現場にほど近い大通りで待機している。
救助された佐天は駆け付けた初春に怪我の治療を受けており、残る3人は白井に状況を説明している。
「私は佐天さんを探してた不良共を焼いただけだからねぇ」
「お姉様……むやみに能力を行使するのはお控えくださいといつも申しておりますのに」
白井はまたか、という顔で美琴を見る。後輩に呆れられた美琴は違うわよと反論し、少し怒ったように口を尖らせる。
「アイツらが先に仕掛けてきたの。念動力者かしら、レベル3はありそうだったけど…」
「レベル、3ですか?」
白井は驚いた顔で手元の資料を捲る。補導した男たちの『書庫』データだ。
「レベル2はいますけど………これは何かありそうですわね」
ふむ、と白井は顎に手をやり眉をひそめる。
「何か、ってどういうことだ?」
上条は頭を悩ませている白井に尋ねる。美琴と雨宮も興味深そうに見ていた。
「昨夜から『書庫』のデータと被害レベルが一致しない事件が幾つか起きてますの。まるで――」
「『幻想御手』みたいね」
美琴は白井の言葉を受けるように呟く。
『幻想御手』事件のときにも同様の事例が起こっていた。だが、『幻想御手』のデータは全て処分されたはずだ。
「新しい『幻想御手』が出来てるってこと?」
「かもしれません。今のところネット上でダウンロードされている様子はありませんが……」
白井はどこまで言って良いか一瞬迷うものの、うんと頷き言葉を続ける。
「事情聴取によると『何者かに手渡された』ということらしいんですの」
「何者かって……誰か分からないの?」
それが分かれば苦労しませんわ、と白井は雨宮の言葉を切り捨てる。
「他にも不可解な点はいくつかありまして。使用者のAIM拡散力場の状態は『書庫』のデータ通りなんです」
「AIM拡散力場はそのままに、能力のレベルだけが上がっている…………そんな事ってありえんの?」
「普通ならあり得ませんわ」
そうよねと美琴は呟き、白井と同じように顎に手をやる。
横で聞いていた上条であったが、AIMうんぬんの話は正直良く分からない。
普通に理解した上で考え込んでいる美琴らを見て、『やっぱ高位能力者は凄いのか』程度の感想を抱いている。
「良く分かんないけど、大変そうだ」
雨宮がふぅと息を吐く。だな、と相槌を打ってから、ある事に気がついた。
「あれ、お前ってレベル4じゃなかったっけ?AIMナントカとか理解してんじゃねぇの?」
「いや、分かんない。常盤台だから分かんじゃないかな?」
雨宮が肩をすくめる。
―――そんなもんなんかね―――
上条はこの事件になんとなく嫌な予感を感じながら、頭を悩ませている2人のお嬢様を見ていた。

143事件7:2010/04/27(火) 16:31:42 ID:fwQQiksA
佐天の事件が発生した翌日、白井と初春は177支部にて忙しそうに端末のキーを叩いていた。
あれからというもの、同様の事件がまた発生していたのだ。
「んっーと」
初春は先程まで睨めっこしていた端末のディスプレイから目を離すと、縮こまった背中を伸ばす。
「お腹すきましたね―、白井さん」
「そうですわね」
ほうっと身体の力を抜き、別の端末を扱っていた白井に目をやる。
なにやら調べごとに夢中で話を聞いているのかもわからない。
「今夜は冷えるみたいですね」
「そうですわね」
「あったかいお蕎麦とか食べたくなりますよね」
「そうですわね」
「14世紀に成立した中国の王朝と言えば?」
「明ですわね。私を嵌めようったってそうはいきませんの」
「いたっ」
白井が危なげなく『正解』を答えたと同時に、初春の頭の上に一冊の書類が落ちて来た。
「そもそも、初春。明の前には元という王朝もありまして――」
「もうそれはいいですからっ!話、聞いてないかと思いましたよ」
危うく歴史の授業に発展しそうになった。初春は落とされた資料を手に取ると表紙に書かれた文字列に目をやる。
「これって、木山先生の資料ですか?」
「ええ。今回の事件には関わっていないはずですが、何かヒントがあるかもしれないと思いまして」
白井は再び端末に向き直り、カタカタを操作し始める。
「そういえば、初春。新しい『幻想御手』の使用者の証言、まとまりましたの?」
「あ、はい。ちょっと待ってくださいね」
初春は山積みされた資料の中から青いファイルを取り出すと、中に入った文章を読み上げる。
「えっと、今回はネットを介したダウンロードではなく、何者か、以下犯人Aが直接配っているみたいです」
「その犯人Aの特徴は?」
「それがマチマチなんですよ。しっかり顔を見た人がいないのはありますが、女なのか男なのかも一定していないですね」
お手上げ状態です、と初春は資料をファイルに戻した。
「複数犯によるものでしょうか?」
「もしくは、変装系の能力者の仕業か………『書庫』のデータ照合はどうでしたの?」
「やってみましたが、該当者全員がアリバイありです。警備員は複数犯の線で動いている様ですね」
白井はディスプレイから目を離すと、今回の事件の資料に目をやる。
昨日の朝から確認された『幻想御手』の疑惑は判明しているだけで2ケタになった。
恐らくは配布が始まったのも一昨日の深夜あたりだろうか。
昨日は第7学区のみで見られていたが、今日はその近辺の学区にも広がっている。これからもっと拡大するかもしれない。
―――大事件に発展しない事を祈りますが―――
白井は下唇を噛み、進展しない捜査を悔やんだ。

144かぺら:2010/04/27(火) 16:32:50 ID:fwQQiksA
以上。
感想、批評お待ちしております。

でわでわ

145■■■■:2010/04/27(火) 21:51:35 ID:vmxMbAGw
>>144
GJです!
物語が動き始めましたね。オリキャラの雨宮も自然に絡めてますし、伏線もちらほらと
初めの方の書き込みで7話くらいの中編に……という話でしたが、
前回の「邂逅」が第1話、今回の「事件」が第2話ってことで良いのでしょうか?

146■■■■:2010/04/27(火) 22:17:13 ID:Rz6Dr1gs
>>144
「明ですわね」で不覚にも吹いたw
小説版初春ならあれくらいのひっかけを試みるだろうなぁ、とも。

147KGT:2010/04/28(水) 00:12:10 ID:G.lJ1ags
今から投下します!
余り期待はしないでください…

148KGT:2010/04/28(水) 00:13:01 ID:G.lJ1ags
香焼の学園都市トラベル

仏教で使われる道具に五鈷(ごこ)と独鈷(とっこ)というものがあるのを知っているだろうか?
この道具は人の煩悩を打ち砕く仏の智慧を象徴するものといわれている。

その五鈷と独鈷がひょんなことから、天草式十字凄教の魔術師少年・香焼の元へたどり着く。
香焼と五鈷・独鈷が交わる時、物語は始まる―



第1章 天草の幼き魔術師 kouyagi_travel_to_gakuentoshi



天草式が本拠地を置く、ロンドンの日本人街。
ここは天草式がイギリス清教の傘下に入って以来、住みかとなり又治安維持も努めている。
そんな天草式に所属する少年・香焼はとある事情で、元教皇代理・建宮の部屋へ来ていた。
「で、何の用なのよな?」
部屋のなかにあるちゃぶ台の向かいから建宮が香焼に問いかける。
「教皇代理!」
香焼は勢いよく建宮へ詰める
「もうその呼び方はやめるのよな。」
そんな建宮の言葉を無視して続ける。
「俺を今度の、学園都市への遠征メンバーに入れてください!」
そう言って、香焼は机をバンッ!と叩く
建宮は五和の注いでくれたお茶をひとすすりし、
「ダーメ。」
速攻で、香焼の願いを却下した。
「というか、なんでお前が遠征の話を知ってるのよな?アレはイギリス清教の重役しか知らないはずなのよな。」
実は、今度天草式の数人がこの間起きた戦争の事後処理の為に、学園都市へ向かうことになっていた。
だがこのことは、イギリス清教の重役連中しか知らないはずなのだ。何しろ、戦後まもないこの時期に魔術師が学園都市に
踏み込むと多くの人に知られると、あまりかんばしくない状況になると思われたからだ。

149KGT:2010/04/28(水) 00:13:38 ID:G.lJ1ags
いや、だって最近ずっと五和が舞い上がってて、あれに気づかないほうがおかしいすよ。」
しかし、遠征メンバーに選ばれた五和が愛しの上条当麻に会えるということで、かなり舞い上がっており、
何があるかは天草式に筒抜けも同然だった。
毎日鼻歌を歌いながらカレンダーに×をつけていたり、ロンドンのブティックショップを練り歩いたり、
恋愛小説や恋愛マニュアル本を読み込んだり、どこか上の空で得意の料理に失敗したりと、天草式全員が気づくほどの気の舞い上がりようだったのだ。
(五和…、恋は盲目ってやつなのよな…)
建宮は心の中で溜息をつくと、
「大体、お前は学校があるのよ、学園都市なんて行く暇あるなら学校行ってあのフロリスとか言う奴といちゃいちゃしてるのよな。」
と、とりあえず正論を言ってみる。
香焼はまだ一応、子供なので現地の学校へ通っているのだ。
「学校なんて、サボればいいじゃないすか!つか、なんでフロリス!?」
香焼は息を荒げながら反論する。
「いやいや、あの娘、最近良くここら辺で会うのよな。で、会うたびに「あのぅ、香焼くんはいますか?」とか恥じらいながら聞いてくる
 のよな。香焼、あの娘絶対お前に気があるのよな。」
建宮はニヤニヤしながら答える。
「嘘だぁ!だってアイツ常に俺にツンツンしてるんすよ!?せっかく戦争のとき助けてやったのに。」
実は香焼、あの戦争時に身のより所の無くなったフロリスを庇い騎士達と戦ったりして、立派なフラグを立ててしまったのだ。
その後、フロリスはたっての願いで香焼と同じ学校に通うこととなっている。
「香焼。それはツンデレって奴なのよな。好きな人に辛く当たっちゃうっていう…」
「教皇代理。そんな都市伝説みたいなこと信じてるんすか?だから、いつまでたっても結婚できないんすよ…」
そう言って香焼が溜息をつくと、建宮の方からビキリという不穏な音がした。
「香焼ーッ!それ以上言うとフランベルジェで切り裂いてやるのよなーッ!!!」
建宮は壁に立てかけてあったフランベルジェを手に取り、振り下ろす。
結婚適齢期を越えても未だにまともな恋愛をしたことのない建宮には、結婚の二文字は禁句らしい。
「おわわわ!教皇代理!落ち着いて!落ち着いて!」
その一振りを間一髪でよけた香焼は建宮へ向かって叫ぶ。
だが、建宮の怒りは収まらず二振り目の為に、フランベルジェを振りかぶる。
「なにが結婚なのよ!俺にはディスプレイの中に嫁がいるからいいのよな!」
建宮は最近、日本発のオタク文化に凝っており、それで心を癒しているらしい。
まともな恋愛をしたことが無いのに、ツンデレだの恋愛の知識に詳しいのはそのオタク文化の一つ、ギャルゲーにあるということだ。
「のわッ!」
香焼は慌てて飛びのきフランベルジェを避けようとする。
だがフランベルジェは振り下ろされなかった。
何故なら台所にいた五和が騒ぎを聞きつけ、茶の間の障子をスパーン!と開け、
何故か手に持っていた一升瓶で建宮の頭をぶったたいたのだ。五和の本気の一発を食らった建宮は伸びてしまっている。
どうやら、五和は上条と会う緊張を紛らわす為に昼間から酒を飲んでいたらしく
「しんみりと1人酒を楽しんでたのに、うるさいですよ?建宮さん♪」
そして、完全に酔っ払っている五和は気を失った建宮をズルズルと引っ張っていた。
「た、助かった…」
とりあえず香焼は一難を逃れた。
(どうしよう、遠征の件は女教皇か最大主教に頼むかな…)
建宮はのびてしまってどうしようもないので、とりあえず女教皇・神裂火織のいる女子寮へ向かうために香焼は教皇代理の家を出た。

150KGT:2010/04/28(水) 00:14:03 ID:G.lJ1ags


香焼は日本人街を出て、必要悪の教会の女子寮へ向かうためロンドンの街を歩いていた。
今は丁度昼時で、街は活気にあふれている。
香焼がトボトボと歩いていると、
「あれ?香焼?アンタなにやってんの!?」
後ろから聞きなれた声がした。
声のしたほうを振り向くと、そこには学校の制服姿のフロリスがいた。
最近、イギリスの女子学生の間では日本の女子高生の格好を真似るのが流行っているらしく、
フロリスもその例外ではないのか、黒いニーソにかなり短くなっているスカート、上はブラウスとカーディガンを着用している。
いかにも、日本の女子高生らしい格好だ。
香焼はフロリスのユニフォーム姿に見慣れていた為か、制服効果により普段よりカワイク見えてしまう。
「どうしたの?ボーッとして?」
思わずフロリスに見とれていた香焼はハッと我に返る。
「いや、なんでもないすよ!つか今日休日なのになんで制服なんすか!?」
「いや、ちょっと学校に用事があって…それにユニフォーム姿は目立つし…、何?似合ってないって言いたいの?」
フロリスは自信の勝手な勘違いで、少し機嫌を悪くする。
「いや、似合ってるっすよ…、カ、カワイイと思うすよ。」
「か、カワイイ!?ななな、何恥ずかしいこと言ってんの!バッカじゃないの!?」
顔を真っ赤にしてフロリスが言い返してくる。
「いや、褒めただけなのにバカ呼ばわりって…。つか用が無いんなら俺いくっすよ?」
どうにもフロリスのテンションについていけない香焼は先を急ごうとする
「用ならある!コレ拾ったから、アンタにあげようとおもったの!」
そう言ってフロリスは何かを握った手を突き出す。
「なんだコレ?」
「分かんないけど、さっきバッキンガム宮殿に行ってきてさ、何か大掃除したら色々出てきたからコレもらったの。
よく知らないけど、特殊な霊装らしいよ?」

151KGT:2010/04/28(水) 00:14:24 ID:G.lJ1ags
そして、フロリスはその何かを香焼に押し付けてくる。そのとき、一瞬だけフロリスの手が香焼と触れ合う。
「ッ!!!!!」
その受け取った”何か”から目を離し香焼が顔を上げフロリスを見ると、タコのように真っ赤になっていた。
「どうしたんすか?フロリス?」
「ななな、何でもないッ!じゃあ、ワタシ帰るからッ!!」
そう言うとフロリスは香焼の目の前からあっという間に消え去ってしまった。
「なんなんだ?アイツ。」
フロリスの行動を不思議に思いながらも、受け取った物をもう一度確認してみる。
それは、二つあり、一つはダンベルのような形状で両端の膨らんだ部分が5個に分かれていて色は金。
もう一つは、ナイフのような形状で色は銀。
手で握れるぐらいの大きさではあるが、その大きさの割には重みがあった。
「これは、確か…仏具だったよなぁ…?」
仏具というのは、仏教で使われる道具のことであり、仏壇なども仏具の一つといわれる。
こう見えても、香焼は天草式の魔術師なので仏教などの法具に関しては詳しいのだ。
「確か…五鈷と独鈷だっけ?魔術的意味は、”煩悩を打ち消す”だったっけ?つかなんでこんな物がバッキンガムに?」
とりあえず、五鈷・独鈷よりも今の香焼にとっては学園都市遠征の問題のほうが優先事項なので、ちゃっちゃと女子寮へ向かうことにした。

152KGT:2010/04/28(水) 00:14:48 ID:G.lJ1ags

神裂火織は悩んでいた。
それは例の学園都市遠征のメンバーについてだ。
(やはり、遠征メンバーに五和を入れるのはやめましょうか…)
彼女が何故こんなことを思っているのか。それは彼女自身が自らの気持ちに気づいた為だ。
ついこの間の戦争で、彼女にとっての大切な人である”禁書目録”こインデックスという少女を再びあの少年に助けられた。
あれ以来彼女は、あの少年のことを考えるだけで夜も眠れなくなるほどだった。
そして、彼女は気づいた。これが”恋”なのだと。
かりにもまだ18歳である、神裂にとってこの想いは重い物だった。
自分があの少年に恋をしていると気づいた以上、同じ対象に同じ想いを抱く少女を対象に近づけたくなくなるのはごくごく自然なことである。
自らの魔法名である「救われぬ者に救いの手を」という言葉を捻じ曲げてしまうほど、神裂にとって、この想いは重要な物だった。
(い、いけませんいけません!このような傲慢な感情をもってしまうなど私もまだまだ未熟ですね…)
いろいろと神裂が悩んでいるところに、他人の声が割り込んでくる。
「神裂さん?来客者ですよ!」
それは、神裂の部屋のドアの外からの声だった。声の主はこの女子寮にすむシスター・ルチア。
「聞いてますか?神裂さん!?」
「は。はい!今行きます!」
一旦思考を中断し、神裂は部屋から出る。
するとそこには、ルチアと並んで天草式の少年魔術師・香焼がいた。
「ち、ちわっす。」
女子寮という空間にやや緊張気味の香焼はどこか動きがぎこちない。
「どうしたんですか香焼?」
「いや、ちょっと女教皇様に頼みたいことがあるんすよ…」
香焼はかなり深刻そうな顔をしている。
並ならぬ空気を感じたのかルチアは「私はこれで…」と言いながら立ち去っていく。
「まあ、立ち話もなんですから部屋に入りなさい、香焼。」
「は、はい!」

153KGT:2010/04/28(水) 00:15:16 ID:G.lJ1ags
こうして二人は部屋へと入っていく。
二人とも腰を落ち着けてから、神裂が口を開く。
「で、相談事とはなんのことですか?」
「あ、あのー女教皇様、俺を今度の学園都市への遠征メンバーに入れてくれないすか?」
香焼はどこか申し訳なさそうに、相談事を話す。
「な、何故あなたがソレをしっているんですか!?あれは重役だけの…」
一方、神裂は驚きを隠せない。何しろ先ほどまで彼女の頭を悩ませていたことが香焼の口から出てきたのだから仕方がない気もするが。
「いや、それはっすねー最近の五和の浮かれ具合を見れば分かるんすよ…」
(五和…やはり侮れませんね…)
神裂は五和への対抗心を心に隠し、香焼との会話を続ける。
「でも、香焼。あなたには学校があるじゃないですか。」
「学校なんてどうでもいいじゃないすか!たった一週間だけっすよ!お願いしますよ、女教皇様!」
そういって、香焼は土下座をする。
「うーん、でも…」
「そこをなんとか!」
「いや、しかし!」
「何でもしますから!」
「うーん…」
「女教皇様!」
「わ、分かりました。考えておきましょう。」
結局、香焼の粘りに神裂は屈する形となる。
「本当すか!?ありがとうございます!女教皇様!頼みますよ!」
わずかな希望がさした香焼は目を輝かせている。
(困りましたね…最大主教になんといえば良いのか…)
「救われぬ者に救いの手を」を魔法名とする神裂はこのような熱心な頼みごとに弱いのだ。
しかし、なぜ香焼はここまでして学園都市に行きたいのだろうか…?
神裂はそこを不思議に思いながら、悩みの種が増えたことに困惑していた。

154KGT:2010/04/28(水) 00:16:00 ID:G.lJ1ags
とりあえずここまでです。

お目汚しスイマセン。

155■■■■:2010/04/28(水) 07:33:50 ID:vrQEcR.Y
GJ!香焼がメインとか斬新www

156かぺら:2010/04/28(水) 21:59:56 ID:NYVbeU3M
取り急ぎ、お返事だけ
>>145
伏線に関しては上手くできてるか自信がないですが……
温く見守ってやってください。
話数に関してはそんな感じです。
1話『邂逅』、2話『事件』ですね。7話で終わる……予定です、たぶん

>>146
良かった。スルーされたら泣くとこでしたww
個人的には禁書初春が好きなんですが、難しいですね。
禁書版と超電磁砲版とを足して2で割った位に表現できたらと思います。

>>154
スポットを当てるキャラが斬新ww
天草式は好きなヤツらなので、これからの展開に期待してます!

157IF〜10年後の世界:2010/04/28(水) 23:37:50 ID:1A30Eevs
どうもです投稿します

158IF〜10年後の世界:2010/04/28(水) 23:42:41 ID:1A30Eevs
当麻が電話をしているころ中では、
「じゃあ俺が適当に選んどくぞ〜」
カタログを持った浜面は慣れた手つきで電話をしていると
「にゃー!酒はどこぜよ!?」
「あぁ…キッチンにあると思うぞ」
電話をする手を止めた浜面が答えるとビュンッ!目にも止まらぬ速さで土御門はキッチンへ向かった。
「みさかもお酒飲みた〜い!!ってみさかはみさかはおねだりしてみたり!!」
「てめェは未成年だろうがァ」
「ぶ〜ケチ〜!ってみさかはみさかはぐうたれてみる!」
「こらこら未成年の飲酒は体に毒なんですよ〜」
打ち止めと一方通行の話を聞いていた小萌は先生らしくしたのだが
「あなたに言われても説得力無いんだけど…ってみさかはみさかはすごく的確なことを言ってみたり」
逆効果であった、が周りを和ませることには成功した。
「いや〜こうしてみんなで飲むのは楽しいね…」
「病院の同僚と一緒に飲んだりはしないんですか?」
笑顔で語るカエル顔の医者に吹寄は尋ねた。
「僕はもうあの病院では働いてないんだよ」
「そうなんですか?」
「にゃー!コップがないぜよ!!」
キッチンの方から土御門が両手に酒瓶を持って叫んできた。
「棚に置いてあんだろォ?」
一方通行が面倒くさそうに答えたが、
「どこぜよ〜?」
「…チッ」
コップを見つけられない土御門に舌打ちをしつつ、一方通行はキッチンの方へと向かった。
一方通行が行ったのを確認した吹寄は、隣の小萌先生に、
「先生、気になってたんだけど…一方通行って、あの?」
「そうですよ、学園都市第一位のアクセラレータちゃんですっ!」
「へぇー、あれが…なぜそんな有名人が上条と?」
「彼もまた上条君の患者なんだよ」
答えた子萌先生ではなく、カエル顔の医者だった。
「彼も?」
「あぁ…彼は昔ある事件で脳に深い傷を負ってねぇ…ある処置のおかげで私生活には問題なかったが、能力はまともに使えなくなってね、
その時担当したのは僕だったけど…僕ではどうしようもなかった」
そん場に居た吹寄や姫神、青髪は、ただ黙って昔のことを悲しそうに語るカエル顔の医者の話を聞いていた。
「彼が傷を負ってから数年たった、ある日そこの先生が上条君に脳科学を教えてほしいと言われてね…彼とはもともと面識もあったし、
僕はOKしたんだ…上条君は本当に熱心に脳科学について学んだんだ…ほんの一年ほどで脳科学だけなら医大卒業程度までの知識は身に着けていた
そして、一通り脳科学を学んだ彼に私は医学を教えたんだ…」
「…なぜあいつは脳科学を?」
「……さぁね…だけど…『助けたい人がいる』っと言っていたな…だからある程度脳科学を学んだら医学も学ぶつもりだったらしい」
「助けたい人って…一方通行のことですか?」
「さぁね…まぁ、何にせよ彼が助けたんだけどね」

159IF〜10年後の世界:2010/04/28(水) 23:49:29 ID:1A30Eevs
「彼が僕のもとに来てから3年ほどたった…彼は医学を学ぶ傍ら『脳組織の再生』の研究に取り組んでいてね…
かなり難しいものだったけど…彼は成功したんだよ」
そこまで話すと小萌先生がソファーに立って騒ぎ始めた。
「上条ちゃんはホントにすごいんですよ〜!学会でも注目されたすごい発見だったんですっ!!……でも」
子萌先生はそこまで言うと急におとなしくなってしまった。
「何かあったんですか?」
「上条ちゃんは…」
「彼はその研究成果を学会で発表しなかったんだよ…」
静かになった小萌先生のかわりにカエル顔の医者が説明した。
「…え?どうしてですか!?すごい発見だったんじゃ!?」
「あぁ学会で発表すれば…もしかしたら教授になれたかも知れない…」
「ならっ!?」
「彼は研究データをすべて僕に渡してね…自分の替わりに発表してくれと言って彼はイギリスに行ってしまった」
「…どうしてあいつは?」
「さぁね…イギリスに行く頃には彼はもう立派な医者だったし、僕は特別止めなかった」
吹寄が釈然としないと顔をしたが、そこに小萌先生が寂そうに付け加えた。
「私も一回上条ちゃんを問い詰めたことがあるんです…でも結局、理由を話してくれませんでした」
「なにを考えているんだか…あいつは」
「まぁ、彼は教授なんてものに興味がない子だったからね…それにその発見で得た利益…まぁお金とかはちゃんと受け取ってくれたから、
もし、それもいらないなんて言われたら、さすがに困っただろうね…」
吹寄はただただ呆れ果てていた。昔から当麻に向上心というものがないとは思っていたが、それが今でも続いているのか思うと
もはや呆れるしかない。
「彼がイギリスに行って1,2年ほどたってから、彼女の…あぁ滝壺君がここに戻ってくるのに上条君も付き添いで来てね
そこで久しぶりに会ったぐらいだね…いろいろ聞いたよ…国境なき医師団に入ったこともそこで聞いた
心配する気持ちもあったが、なにより彼が立派になって帰ってくるのが嬉しくてね……まぁ元気そうでよかったよ」
カエル顔の医者は、まるで親が子を心配するような顔で淡々と語った。

160IF〜10年後の世界:2010/04/28(水) 23:50:54 ID:1A30Eevs
5年前、御坂の高校の卒業式が行われる少し前
当麻の研究室にて

「荷物は…こんなもんか…」
「上条ちゃん!!」
「んっ?あぁ先生!ご無沙汰してます」
「ご無沙汰してます、じゃないです〜!!一体何を考えているんですか!?」
「あぁちょっとイギリスに用が」
「そっちじゃないです!!研究のことです!!」
「あぁ…別にいいじゃないですか」
「良くないです!!あれを発表すれば上条ちゃんの学園都市での地位は確実なものになっていたはずなのにっ!!」
「そんな怒んなくても…」
「ウゥゥゥゥゥッ」
「いやっ!泣かないでくださいよ!」
「ウゥゥッ、上条ちゃんは大バカ者です〜折角学園都市のみんなが上条ちゃんを認めてくれるチャンスだったのに…」
「…別に俺は地位が欲しかった訳じゃないですし…でも無駄じゃないですよ、ちゃんと研究分の給料は貰いますから」
「グスッ、上条ちゃんはお金が欲しかったんですか?」
「……いいえ…もっと別のものが欲しかったんですけど…」
「別のもの?」
「もしかしたら、この研究で手に入るかと思ったんですけど…ダメでした」
「………これからどうするんですか?」
「とりあえずイギリスに…会いたい人がいるんです」
「会いたい人?シスターちゃんですか?」
「えぇ…ちょっと確かめたいことがあって」
「上条ちゃんもやっと誰かと結ばれる気になったんですかっ!?」
「……………期待を裏切って悪いですけど、ただ研究に付き合ってもらうだけです」

161IF〜10年後の世界:2010/04/28(水) 23:52:20 ID:1A30Eevs
「にゃー!!みんなで飲むぜよ!!」
酒とコップを持った土御門が上機嫌にやってきた。
「ほらほら〜どんどんいくぜよ!!」
土御門は適当にコップを配ると、テーブルの上に酒を並べていった。
「焼酎、日本酒、ウイスキー、ブランデー、ワイン、ウォッカ…うっひょ〜たまらんぜよ!!」
当麻の趣味かどうかは分からないが酒は様々な種類があった。
「うお〜カミやんのやつ!すごいやん!!」
「上条君ってお酒好きなんだ…」
「あぁ彼は結構いける口だよ」
みな、それぞれが飲みたいものをコップに注いでいき飲み始めると、
「おっ!やってるな〜」
ベランダから電話を終えた当麻が部屋の中に入ってきた。
「俺も何か飲むか…」
当麻は適当に近くの酒瓶をとって、近くにあったコップに注いで飲み始めた。
「にゃー、どんどん飲むぜよ!」
「いや〜姫やん!ここは人目につかないから酔って脱いじゃったりしてもええで〜!」
「黙れ青髪!!」
吹寄による本日3度目の顔面パンチ
「上条君…このままじゃ私脱いじゃうかも」
「いや姫神!なんのカミングアウト!?」
「みなさんお酒はほどほどにですよ〜」
「滝壺君は飲んじゃだめだよ…医者として見逃せないからね…」
「残念…」
「お腹の子に悪いからダメだぞ…」
「まぁまぁ滝壺さん…産んだ後に超飲み明かしましょう」
「ほら!もう始まっちゃてるよってみさかはみさかは急かしてみる!」
「めんどくせェなァ」
それぞれの楽しみ方でそれぞれの夜を迎える。

162IF〜10年後の世界:2010/04/28(水) 23:54:41 ID:1A30Eevs
以上です。何度も読み返したけど間違いがあったらご指摘ください。
あと題名も適当に決めました。
もう書くことも決まっているのでゴールデンウィークには終わらせるつもりです。

163hakimu:2010/04/29(木) 09:09:50 ID:RPStowOo
皆さんはじめまして
上条○○いちゃスレで耳かきネタばかり投稿している者ですが
どうも投稿するとスレが沈黙してしまうので
私の作品に何か問題があるかと思いまして
いちゃスレでは投稿できないネタですが
皆さんの意見と感想を聞いて勉強したいと思いこちらに投稿させてもらいたいのですが?
ちなみに作品は上条×五和ネタを書いているときに偶然発生した美琴ヤンデレネタです
もしスレの以降にそぐわなければ投稿しませんがいかがでしょうか?
もし問題がなければ10時に2レスほどお借りしたいのですが
よろしくお願いします

164hakimu:2010/04/29(木) 09:58:18 ID:RPStowOo
なんか時間が早すぎたのか?
誰も何もないようなので
申し訳ありませんが勉強のため投稿させていただきます
タイトルは五和と美琴の策略です
では10時に2レス使用です

165五和と美琴の策略:2010/04/29(木) 10:00:17 ID:RPStowOo
五和と美琴の策略part1

御坂美琴は携帯を見つめていた
「今日のアイツの行動は…あっメールを送ったようね」

美琴は上条の携帯をハッキングしてメール送受信すべてチェックしていた
「今日はいつもの男友達とお茶か今回も偶然を装って」

とあるファミレス
「カミやんフラグ立てた娘紹介してや」
「そうぜよあれだけ沢山いるから一人位紹介してにゃー」
「だから俺が立てるのは回収不能な駄フラグだけだっつうの」
「またまたーそないなこと言うてもワイらにはカミやんの一人締めにしか見えんやさかい」
「なぁカミやんあの常盤台の制服夏休みにカミやんに抱きついた娘じゃないかにゃー」
「あっ御坂だ」

「あっいたいた…ここは偶然を装って…アンタここで何してんの?」

「おいっす御坂最近よく逢うなぁ」
「よく逢うだと!カミやんそれは聞き捨てならないにゃー」
「そうやワイらと遊ばない日はこのお嬢さんと遊んでいるんや」
「お前らなぁいい加減な事をいうなって言いたいが最近はよく御坂と遊んでいるなぁ」
「そ そうかもね」
「…私は狙っているんだから…」

「カミやんの裏切りもん」
「カミやん明日覚えてろにゃー」
「何なんだアイツら…」
「アンタ連れがいなくなったけどどうする?」
「んー他に予定はないからよし御坂遊びに行くか」
「そうしましょ…ヨッシャー…」

「また上条とあの中学生が一緒にいますね」
「確かにこれは調べる価値があるかもなのよ」
「いつも上条さんと一緒に…ブツブツ…」
「ちょっと五和さん気を確かに」
「でも約束しているとは見えませんね何か上条をつけているような」
「もしかしてストーカーなんですか」
「…だから五和さん落ち着いて」
「確かに調べる必要があるかもなのよ」
「よし明日からあの中学生にも監視をつけるのよ」
「了解」

数日後
「やはり判明しましたあの中学生は上条の携帯をハッキングして上条をストーキングしています」
「学園都市のスパイかもしれないのよ」
「上条に張り付いて我々魔術側の動向を調べているかもしれませんね」
「よし今から作戦を立てるのよ五和」
「はい!」
「今から携帯を一台購入して上条に渡すのよ、しばらくはそれで様子をみて相手の動向をみるのよ」
「はい、わかりました」

上条宅
「あれっ?五和、急にどうしたんだ」
「上条さん我々の調査で学園都市から上条さんを狙う者がいるかもしれません」
「なんですか急に」
「信じられないかもしれませんが我々の調査ではそうなっています」
「確かに俺は魔術側の人間としてとらえられているかもしれないな」
上条は深く考え込み

「インデックスは大丈夫なのか?」
「わかりませんが危険を回避するためイギリスで我々が安全を確保した方が良いかもしれません」
「…そうだなイギリスには神裂やステイルがいるから安全だな」
「それにあわせて上条さんにこれを」
「携帯電話?」
「はい、しばらくの間大事な用事以外は携帯での連絡は控えてもらいたいのです。やむを得ず連絡が必要な時はこの携帯から連絡して下さい」
「そんなに危険なのか?」
「はいこの携帯には天草式の連絡先は全員入っていますから」
「わかったそうする」
そう言って五和は、対馬と香焼に頼み、インデックスをイギリスへ連れて行った

166五和と美琴の策略:2010/04/29(木) 10:00:51 ID:RPStowOo
五和と美琴の策略part2

1週間後
「最近なんなのよアイツは、メールしてないじゃない、これじゃ偶然を装って会えないじゃない、しかも電話しようにも留守電だし」
美琴は上条の情報が入らないことを苛立ちながら
「補修か追試で身動き取れないかもね」と思い
「しょうがない今日も適当にぶらつくか」
そう呟き歩いていると、100M先に上条と五和が歩いている姿がみえた

「何よアイツ私と言う女がいながら」
「…何者よあの女」
「あの女…前に胸にアイツの頭を埋めて撫でていた奴だ」
「…あの糞アマ」
「許せない…ゆるせない…ユルセナイ…」
「殺ってやる…やってやる…ヤッテヤル…」

「おーっす御坂久しぶり」
「アンタ誰?この女」
「何だよ御坂いきなり」
突然の美琴出現に五和は驚いたが

「こんにちわ、あれ?お久しぶりですよね、上条当麻の従兄弟の五和です。いつも当麻がお世話になっています」
五和は咄嗟に上条と自分の安全の為の嘘をついた

「あっそうなんですか?お久しぶりですあの時はお世話になりました」
美琴は五和の言葉を信じてお風呂の時のぼせた時のお礼を言った

「そう言えばアンタ!携帯壊れているの?ちょっと修理してあげるから貸しなさい」
そう言って美琴は上条の携帯を無理矢理奪いそのまま立ち去っていった

「おいっ御坂?」
「まぁまぁ上条さん今はあの携帯使えませんからまたいつか返してもらいましょう」
「そうだなでも五和さん、さすがですねてっきり上条さんはまたあの時みたいに、電撃から逃げる事のみを考えていましたから」
「我々天草式は環境に溶け込む事を得意としていますからあれくらいは」
「上条さんはいつもの不幸がなくて助かりました」

「たくアイツは従兄弟になんかヘラヘラして…そうだ早く携帯を調べて修理しなくちゃ」

「あれっ?どこも壊れていないなんでアイツは電話使わなかったの」
「まてよアイツの携帯に登録している全員にアイツから(彼女が出来ましたって)メールを送ればこれ以上悪い虫がつかなくなるね」

「あっすみません上条さんメールが来たので」
五和は天草式からの連絡かと思い携帯を開くと
「あれ上条さんからのメールだ?」

五和は上条がここにいるのに何でと思い開くと
「彼女が出来ました」
そんなメールが入っていた
五和はあの中学生の真意を知り青ざめた

「どうしたんですか?五和さん青い顔をして何かあったか?」
「上条さんここは危険です早く学園都市から逃げましょう」
「なんですと五和さんなんで急に?」
上条が焦りながら五和に問い詰めると周りから物凄く恐ろしい殺気を感じ取った

「上条当麻」
「カミやーん」
「上条」
そこにはクラスメイトを含む上条を知る人間が殺気を込めて立っていた

「そこにいる女はもしかして…」
ボソリと姫神が呟いたと同時に
「「「「「「「「死ねーっ!」」」」」」」」
全員が上条に襲いかかった

「なんだ?なんなんだ?」
「上条さん逃げましょう」
五和の言葉を信じて上条は五和と逃げ出した

「なんなんですか今のは上条さんは何もしていないのに、何故知り合いから殺される目にあうのでせうか?」
「もしかしたら集団暗示かもしれません」
五和は咄嗟に嘘をついたが状況を知らない上条はそれを信じた

命からがら逃げ出した上条は超音速機もあって数時間後にはイギリスに着いていた
「今回ばかりは天草式には本当に世話になりました。特に五和さんがいなければ確実に上条さんはこの世にいなかったかもしれません」
上条の感謝の言葉に
「私は上条さんの命を守る為にいますからそれに…」
五和は覚悟を決めて上条に語りだした

「私は上条さんが生きてさえいれば、何もいらないくらい上条さんが大事な人ですから、これからは私を一生頼って下さいね」
五和からプロポーズともとれる言葉に上条は心から感動した

「五和さん…こんな不幸の塊の上条さんにそんな優しい言葉をかけてくれるなんて」
「上条さん…?」
「もう上条さんは、イギリスで生活します、そして五和さんと天草式の皆さんにお世話になります」

さらに一週間後
美琴は寮でイライラしながら
「アイツ携帯も取りに来ないし何やっているの?」
「お姉さまあの噂、聞きました?」
「何?黒子噂って」
「あの類人猿に彼女ができたという噂ですの」
「あーそうなのー?…私も少し聞いたかな?」
「そうですか…お姉さま、しかもあの類人猿はその女と海外に駆け落ちしたらしいですの」
「…エッ…?」
「あれ?お姉さま?聞いてますの?」
「…ワタシジャナイヒトトカケオチシタッテイウノ…」
「お姉さま?お姉さま?」
「…ナンデコウナッタノ…」
「お姉さまーっ!?」

167hakimu:2010/04/29(木) 10:02:58 ID:RPStowOo
以上です

なんか構成も簡単ですし予想しやすい展開ですけど
感想、意見なんでもお待ちしています
スレ汚しをしてしまい失礼しました

168hakimu:2010/04/29(木) 10:58:57 ID:RPStowOo
そういえば感想お待ちしておりますって書きながら自分はしていないことに気がつきました
>>144さんオリキャラをうまいこと使いなおかつ笑いを取り入れて
悔しい気持ちいっぱいのGJです
>>154さん斬新なアイデア私も天草式をよく使うので
香焼はほんの少し使いますがまさかメインに使うとは天草式好きとしてGJです
>>162さん正直私も未来設定のSSを考えたのですがどうしても登場人物が多くなってしまい
キャラが立たなくなってしまいボツにしてしまうので嫉妬を含めながらGJです
なんか他の人の作品を見ていると自分の文才の無さが…佐天の気持ちが
俺と比べたら佐天に失礼か…
そんなこんなで頑張りますのでよろしくです

169■■■■:2010/04/29(木) 12:08:18 ID:4lztKnmk
>>167
裏目に出てしまう美琴にはドンマイとしか…
まっ黒子げになってないことを祈りつつ、気になった点をいくつか。

地の分多い方がいいんじゃないかな。
会話文メインになると、どうしても場面転換が難しくなるので。
地の部分を増やすと、心情描写も入れやすくなると思います。
あと、句読点をしっかり入れた方が読みやすいです。

偉そうに失礼しました。

170Iwao:2010/04/30(金) 00:11:15 ID:bnxTYXs2
絶賛執筆中ですが、ここで予定していた作品の序章を投下します。
お手柔らかに。

とある覚悟の魔術結社(マジックキャバル)

171Iwao:2010/04/30(金) 00:32:50 ID:bnxTYXs2
NGワードで書けませんでした。
どこを確認してもどこがダメかわかりません。
NGワードについて書いてあるところを教えてくれませんか?

172■■■■:2010/04/30(金) 00:57:51 ID:fUMdoVhU
外国語の俗語や忌語の規制はかなり厳しい
「虐殺」etc...
日本語は意外に緩い

173■■■■:2010/04/30(金) 01:03:32 ID:qostcxUQ
>>167
乙です。
気づいた点をご報告。
青髪の一人称は「ボク」だったと思います。あと天草式の男衆も原作では
特徴のある話し方をしているので(香焼の「〜す」みたいに)この辺りを
書きわけてみるともっと禁書の雰囲気が良く出てくると思います。
今後の作品に期待しております。頑張ってください。

174■■■■:2010/04/30(金) 10:28:22 ID:6z4hivLE
t_a_nがNGワードのはず

175Iwao:2010/04/30(金) 13:50:57 ID:SY66MS9.
ご協力ありがとうございます。
たぶん、サイレントが「暗殺」の意味を持っていたんだと思います。
もう一度挑戦。

とある覚悟の魔術結社(マジックキャバル)

176とある覚悟の魔術結社(マジックキャバル):2010/04/30(金) 13:54:02 ID:SY66MS9.
とある覚悟の魔術結社(マジックキャバル)

序章 プロローグ 組織はゆっくりと動き出す

8月末 某日 英国
二人の男は言う、真剣で重々しくて覚悟を決めた表情で。
「本当にいいのか?」

「構わない。」
その言葉は、迫力があった。なおかつ、強い言葉だった。
「お前が言うならいいが、責任は取らないぞ。」

「ああ、覚悟の上だ。だが嫌な役をやらせたな。」

「いいさ、目的を果たすためなら。じゃあ、いくぞ!」
一人の男が光りだす。しかし、光っている男は苦しんでいた。光そのものが苦しめているように。
光を与えた男は、吹っ飛ばされる。その光が、まるで暴風のように。





「……ぐはぁ。っか………はぁ……はぁ…。」
男は血を吐いていた。あまり大丈夫とは言えない出血量だった。……だが、満面の笑みがそこにはあった。

「くっ…、言わんこっちゃない…と言いたいところだが……、成功だ。しかし、……すさまじいな。」

「………いや、お前もよくやってくれたな。短い期間で、もう魔術を使いこなしている。科学者だというのに。」

普通ならあり得ないことだろう、互いの魔術 科学サイドはお互いの領分を侵さない決まりなのだから。それを超えた男は言う。

「まあ、科学者独特の知識欲というものかな。…っと、そろそろ帰るよ。」

「もうそんな時間か、ゆっくりできねえな、お前は。」

「個人的な友人に会うだけだからな仕事をずっと休めはしないよ。」

「じゃあな、気をつけて行けよ。」
その言葉は、重い口調だ。あたかも、この時間が密会のように。
「学園都市の飛行機は別格だよ。ちぃとばかし速すぎるけどね。」

そして、男たちはそれぞれの世界に帰る。決して交わることのない二つの世界へ。
そして、物語は始まる。科学と魔術が交わった物語が。

177iwao:2010/04/30(金) 14:01:14 ID:SY66MS9.
プロローグは以上です。執筆&作品調整、がんばります。
近いうちに。第1章も投下しようと思います。

178■■■■:2010/04/30(金) 18:05:29 ID:s1Pk3Vj.
iwaoさんとやら。
メール欄にsageと入れなきゃ駄目なんだよ?

179■■■■:2010/04/30(金) 22:45:32 ID:IbQpciak
前言ってた上条さんと黒子さんがいちゃいちゃする感じのSSを投稿します。
かなり短いです。
ショートストーリーです、SSだけに。

原作での時期などは特に決めていませんが、割りと平和だった頃の話だと思ってください。
それから、通して上条のことを当麻と表記してしまっていますが、脳内で上条に変換していただけるとありがたいです。
それでは投下します。

180死(デス)のロッカーボックス:2010/04/30(金) 22:46:25 ID:IbQpciak
××××××××××××
「不幸ですわ………」

白井黒子は暗闇の中で、長く深い溜め息をついた。

「それはこっちのセリフだ!」

応えるのは男の声。
上条当麻のそれだった。
当麻の顔は黒子のすぐ目の前、黒子の顔から10センチと離れていないところにあった。
「何だって、ビリビリの後輩と一緒にこんなとこに閉じ込められなきゃなんねーんだよ!」

彼らがいるのは
学園都市は名門、常磐台付属中学の学生用シャワールーム、
その、


―――――――ロッカーの中である。


××××××××××××
30分前。


「やってしまいましたわ……」
白井黒子は途方に暮れていた。
彼女の目の前には山程の数のデータチップが散乱している。

風紀委員の仕事の帰り、寮に向かっている途中のことだった。
黒子の鞄に突然亀裂が入り、中身を道路にぶちまけてしまったのだ。
色々と無茶をやっている為、確かに鞄は痛んでいた。
だからその内壊れてしまうだろうとは思っていたが……

「何も今でなくとも良いのではありませんか?」

実は風紀委員の仕事で学園都市のデータの入ったデータチップを大量に鞄に入れていたのだ。
ある案件について風紀委員で調査中なのだが、結論としてしらみ潰しに依るしかないと解り、仕方なく皆で分担してデータに目を通すことになった。
これだけでも大量だが、初春はこの三倍の量のチェックを任されているので愚痴は言えない。
しかし、ぶちまけられた数センチ角のデータチップを一つ一つ拾わければならないこの状況には、流石に愚痴の一つも言いたくなるというものだ。
更に酷いことに、路面は連日の雨で濡れている。
チップは防水加工がされているので問題ないとは言え……


「不幸ですわ……私、何か悪いことでもしたかしら?」

仕方なく路面に膝をついてチップを集める。
こういう時は、レベル4のテレポーターと言えど、何の役にも立たない。


と、

「?」

ふと一緒になって路面に膝をつき、チップを集めている人影があることに気が付いた。

「な、何をしてますの?」
「はぁ?何って、拾うの手伝ってるだけだろ。はい、これ」
そう言って人影は顔を上げ、こちらに集めたチップを差し出してきた。
黒子は取り敢えずそれを受け取り、
「あら、確か貴方は……」
その人影に見覚えがあることに気が付いた。


「ん?あれ、お前確かいつもビリビリにくっついてる後輩だよな?」
「貴方はいつもお姉様が追いかけている殿方ですわね」
同時に言う二人。
「んまっ、お姉様をビリビリなどと!」
「いや、だっていつもビリビリしてるし……つーかそっか。ここって常磐台の近くか」
「って、そうではなくて!貴方は一体何を……」
「だから拾うの手伝ってるだけだって」
「手伝う義理なんてありませんでしょう?」
「手伝わない道理なんてないだろう?」
即答する当麻。
「………なんというか、今時珍しい方ですのね」
「何が?」
「はぁ……いいえ。手伝ってくださって、ありがとうございますですの」
「いいっていいって。ほら、早く集めないと。車にチップ轢かれたりしたら大変だろ?」
言ってチップを集める作業に戻る当麻。
「まぁ、最悪データは風紀委員に戻ればいくらでもバックアップが……」

その時。

しゃがみこんでチップを集めていた当麻の前を車が一台通っていった。
車は路面の水を盛大に跳ねさせ……

「あら、ま……」

その水を当麻に盛大に振りかけていった。


「ふ………不幸だ……」

181死(デス)のロッカーボックス:2010/04/30(金) 22:46:59 ID:IbQpciak
××××××××××××
「いや、ホントにいいから。大丈夫だって」
「いけません。服が濡れたのは拾うのを手伝ってくれたからですし、そのまま帰ったら風邪を引いてしまいます。寮はすぐそこですのでシャワーだけでも浴びていって下さいですの」
上条当麻は白井黒子に連れられて、常磐台への道をずぶ濡れのまま歩いていた。
「でも、常磐台って女子校だろ?」
「こっそり入れば大丈夫です。大体貴方、一度入ったことありますでしょう?」
「けどシャワーって……替えの服とか……」
「この時間はどの部活も使用していないですし、服なら常磐台の洗濯乾燥機は1分で洗濯から乾燥までしてくれますから」
「す、すげぇ……」
「さぁ、着きましたわ。さっさと入って下さい。寮監に見つかっては面倒ですので」
「お、おぅよ……」

×××××××××××
何とか寮監に見つからずにシャワールームにたどり着いた二人。
黒子が見張りをしてくれている間に、当麻は乾燥機に服を放り込むと早速シャワーを浴びる。

「これが女子校のシャワールーム……なんつーか、すげーきれー」
当麻はおどおどしながらシャワーを浴び、烏の行水が如く数分で終えて脱衣場に戻った。
成る程確かに、当麻の服はものの数分で完璧に乾いていた。
当麻がそれらを全て身につけ、黒子に声をかけようとした時、突然見張りをしていた筈の黒子が脱衣場に駆け入って来た。

「ん、どうし…」
「しっ!寮監が来ましたわ!」
「げっ、マジ!?」
「もう用は済みましたようなので、乱暴ですが外までテレポートさせて頂きますわ」
「え、いや、多分それ…」
「チップの件ありがとうございました。それではごきげんよう!」

(座標計算終了。殿方を寮の外にテレポート!)


……………………
………………
……………


「………って、あれ?ですの」
「無理だと、思う……」
申し訳なさそうに告げる当麻。
「テレポート出来ない………そ、そういえば前に地下街でも似たようなことが……って、もう寮監がそこまで来てます!取り敢えず隠れて!」
「隠れるったって何処に……」
「ロッカーの中ですの!」
「つったって、ロッカー全部鍵掛かってるぞ!」
「そうでしたわ……私のロッカーの鍵は部屋ですし……そうですわ!お姉様のロッカー!」
言って黒子は脱衣場に並ぶロッカーの内の一つを開けた。
「やっぱり開けっ放しですわ。殿方、早くこの中に」
「あぁ」
当麻がロッカーの中に身を滑りこませると、続けて黒子も中に入った。
「ちょ、何でお前まで入るんだよ!」
「寮の出入り時には玄関でチェックを受ける決まりですの。チェック無しで寮内にいるのもマズいんですのよ」
「んだよそれ!つーかこんな狭いロッカーに二人も入らな……きっつ…」
「静かに!」

二人が息を潜めると、寮監が脱衣場に入ってきた。

「物音がしたと思ったんだが……気のせいか」

(何とか凌げそうですわね……)
(あぁ)

「ん?」

寮監が美琴のロッカーに目を止めた。

(ば、ばれた!?)

寮監はロッカーに近づいてくると、


「たく御坂の奴、また鍵掛けてないな。こんなとこまで盗みを働く馬鹿なんてそういないだろうが、防犯意識が低いのは問題だぞ」


そう言って、


ガチャン


マスターキーを使って美琴のロッカーの鍵を掛けると、脱衣場を後にした。


「……………い、行ったみたいですわ」
「ど、どうすんだよ。鍵掛けられたぞ。出れねぇぞ」
「ご心配なさらず。確かに何が原因かは解りませんが、貴方をテレポートさせることは出来ませんでしたわ。しかし私はテレポーター。それもレベル4の大能力者。自分自身をテレポートさせるなんて朝飯前ですの。取り敢えず一旦私だけ外に出て、お姉様に事情を説明して鍵をお借りしてきます」
「あ、いやでもそれ多分……」
「それではしばしの間お待ちを」

(座標計算終了。自分自身をロッカーの外にテレポート!)


………………
……………
…………


「……あれれ?ですの」
「……無理だと思う」
やはり申し訳なさそうに告げる当麻。
「どど、どうしてですの!?」
「いや、実はさ。俺の右手、イマジンブレイカーって言って……」

182死(デス)のロッカーボックス:2010/04/30(金) 22:47:24 ID:IbQpciak
××××××××××××
「そ、そんな能力が、レベル0の貴方に……まるで都市伝説の類いではありませんか……でも実際にレベルアッパーは存在しましたし……本当に能力が無効化されていますし……」
「ま、まぁ、そういう訳でこの右手で触れるとどんな異能の力も無効化しちまうんだ……」
「右手……、右手だけですのね。だったら右手をどけて頂ければ…」
「出来ると思う?」
「あ……」
言われて黒子は気付いた。
慌ててロッカーに入りこんだせいで、当麻の右手を壁と自分の背中で挟むような体勢になっていることに。

「何てこと……いえ、お姉様に携帯で連絡を取れれば……って鞄は外に!殿方、貴方の携帯を貸して下さいませんか!」
「ゴメン……この前ふんずけて壊した」
「…………」
「体当たりで鍵を壊すとかは…」
「無理ですわ。常磐台のセキュリティはそんなにヤワではありません。このロッカーも、対戦車ミサイル位ならビクともしませんわ」
「何でそんな頑丈なんだよ……」
「まぁ、どれだけ頑丈でも能力によっては何の意味もありませんわ。私のテレポートみたいに」
「そうだけど……じゃあつまりはここから出る方法は無いってこと、だよな?」
「………えぇ、そうなりますわね」


「……………」
「……………」


二人は、10センチと離れていないお互いの顔を見交わしてから、溜め息をついてほぼ同時に言った。

「不幸だ!」
「不幸ですの!」

183死(デス)のロッカーボックス:2010/04/30(金) 22:50:14 ID:IbQpciak
××××××××××××
そして場面は冒頭の状況に戻るのだった。

「不幸だ……」
「殿方。確かに私達、ついてはいませんでしたが、不幸だと嘆くばかりでは何ともなりませんわ」
常磐台付属中学寮のシャワールーム、御坂美琴のロッカー。
その中で、上条当麻と白井黒子は文字通り額を付き合わせて危機を脱するための話し合いを始めた。
「ったって、どうしようもないじゃねぇかよ」
「ダメ元でも行動を起こすべき、ということです。例えば貴方の右手、多少無理すれば私の背中から引き抜けませんこと?」
「狭すぎて腕もまともに伸ばせないんだぞ?」
「ものは試し、ですわ」
「……わかったよ、じゃあちょっと背中浮かせて」
「こ、こうですの?」
黒子が壁と背中とに隙間を作ろうと、当麻の方へ体を傾ける。
「よっ……ん、もうちょっと広がらないか?」
「こうっ、ですの?」
更に黒子が力を入れ、当麻によりかかる。
(? あれ、この感触は………)
ふと当麻が胸元の柔らかい感覚に視線を下げると、
「ちょっ」
まるで黒子が自分の胸を当麻の胸元に押し付けるような格好になっていた。
「ん……まだ抜けませんの?」
「あ、あぁえっと、まだムリ……」
(い、いかんいかん。手元に集中!)
胸元の感触を振り切り、当麻は右手を引き抜こうと力を入れる。
しかし、腕も伸ばせない空間だ。中々思うように力が入らない。
「腕を伸ばせれば……そうか、こうして……」
当麻はロッカーの中で爪先立ちになった。
更に右手を下に下げる。
横の距離が足りないなら、縦を使えばいいのだ。
「よし……これならもしかしたら………ふんっ」
その体勢で、当麻は右手に力を込めた。


ふにっ


「ふにっ?」
力んだ右手が何か柔らかいものを鷲掴みにした。
「あ……あ、貴方……一体何処を…触っているん……です……の……」
「えっと……」
脂汗が当麻の皮膚を伝った。
「もしかして……おし」
「もしかしなくてもお尻ですの!!」
「ぎゃっ」
叫ぶと同時に、黒子の頭突きが当麻の顎にクリーンヒットした。
「いっってぇぇ!何すんだお前!」
「それはこっちのセリフですの!れ、レディのお尻を、ああ、あろうことか、わ、鷲掴みにするなんて……」
ロッカーの隙間から入ってくる薄明かりに、黒子の顔が真っ赤になっているのがわかる。
「す、すまん。悪かった……」
「…………そ、それで、右手は抜けましたの!?」
「……抜けません」
「全くもう!」
「……すいません」
申し訳なさの余り、頭を垂れる当麻だったが、
「……あ、あの」
その視線の先に更に見てはいけないものを見つけてしまった。
「今度は何ですの?」
「いや、多分今頭突きで飛び上がったせいだと思うけど……その、スカートの裾が、ロッカーのフックに引っ掛かって……その、」
「へ?」
慌てて下を見る黒子。
そこにはパンツ丸見せ状態になっている自分の下半身があった。
「な、ななな……」
「えっと、何か、スゲェの穿いてんのな……」
当麻の言う通り、黒子が身につけている下着はフリルを大量にあしらった、キツい紫色の布地少なめのランジェリー。
対美琴用の勝負下着である。
「ななななな、なんてことしやがりますかですの!!」
「ぎゃあっ!」
再度の頭突きに当麻はまたも顎を射抜かれる。
「ここ、これは、貴方などに見せるために穿いているのではありませんわ!おおお、お姉様に……ベッドの上で、お姉様に披露させて頂く筈でしたのに!」
「わかったから落ち着け!」
「あぁ、お姉様に操を捧げると誓っておりましたのに……私、こんなツンツン頭に純潔を奪われてしまいましたわ!」
「おい、勝手言うな!てか暴れるの止せ!つーかスカート直せ!」
「直そうとしてますわよ!でもフックが取れなくて……」
両手でスカートの裾を掴み四苦八苦する黒子。
「は、外れませんわ………ふんっ」
「わ、おい跳び跳ねるな!」
黒子は跳び上がって何とか高さを稼ごうとするが、中々上手くいかない。
「仕方ありませんわ。殿方、私を持ち上げてくださいな」
「え?それって……だっこしろってこと?」
「みなまで言わないでくださいませ!」
「いや、でも……いいのか?」
「恥ずかしい下着を晒し続けるよりマシですわ!」
「恥ずかしいって思うなら穿くなよ……」
「お姉様になら見られてもいいんです!ほら、早くしてくださいな!」
言って両手を当麻の方へ突き出してくる黒子。

184死(デス)のロッカーボックス:2010/04/30(金) 22:51:00 ID:IbQpciak
(こ、これは……!)

当麻から見ると、その様はだっこのおねだりをするポーズそのままである。

(ちょっといいかも……)
「何をしていますの!早くしてくださいませ!」
「お、おぅ」
黒子の言葉に従い、当麻は左腕を黒子の脇腹に差し込み、そのまま挟まれている右腕を掴んだ。
黒子の方も当麻の腰にしっかりと両腕を巻き付かせる。
いいですわ。持ち上げてくださいな」
「よし、っと」
腕に力を入れると、思いの外楽に黒子の体は持ち上がった。
「軽いな…」
「……誉め言葉と受け取っておきますわ」
言いながら裾を直す黒子。
「さ、もういいですわ。下ろしてくださいまし」
「あぁ、っと」
黒子の体を下ろす当麻。
「ありがとうございましたですの…………しかし」
黒子は相変わらず挟まれたままの当麻の右手を見て告げる。
「何も進展していませんわね」
「…………そーだな」
「はぁ……本当にもう、八方塞がりですわ」
「まぁ、でもその内ビリビリがこのロッカーを使う時になりゃ、とりあえず出られるよな」
「そりゃあそうでしょうわね。お姉様の電撃もおまけで付いてくるでしょうけど」
「だよなぁ……」
「あぁもう、相手がお姉様だったら一体どれだけ良かったことでしょう……」
深い溜め息をついた黒子に、当麻は質問を投げ掛けた。
「そういや、お前いつもお姉様お姉様って、そんなにあいつのこと好きなのか?」
「んまっ!ビリビリの次はあいつ呼ばわりですの!」
「あー、あー………っと、あいつ、名前なんてったっけ?」
「何と無礼なお方ですこと!御坂美琴お姉様ですわ!」
「あーそっか、そんな名前だった。で、何でお前御坂にそんなべったりなんだよ」
「そんなこと、お姉様が好きだからに決まってますわ」
「だから何で、あんなガサツいのが良いんだよ」
「確かにレディとしてはしたないところも見受けられますが……そんなところも含めて、私、お姉様のことを愛していますもの」
「愛……ねぇ…」
「それに、良いところだって上げればキリが無いですわ。元々レベル1だったのを努力して努力してレベル5にまで上げた健気なところ、しかしレベル5であることをおごらず、誰に対しても分け隔てなく接する気さくなところ、何より……私のピンチにはいつでも、どこからでも駆けつけてくれるところ…………はぁ、うっとり」
「いつも自分はレベル5だから強いとか言ってるし、年上の俺に対してタメ口きくし、何より俺のことをピンチにしてるのはあいつ自身なんだけど……」
「はぁ、わかってないですわねぇ殿方。それはお姉様の愛情の裏返しですのよ」
「あ、愛情?……ぷっ……はっはっはっはっ!」
黒子の言葉に突然笑い出す当麻。
「な、何かおかしなことを言いまして?」
「いや、だって……さすがにそれはねぇよ。あいつが俺のこと毛嫌いしてるって、見ればわかる。何しろ出会い頭に喧嘩吹っ掛けてくんだぜ?はっはっは!ないない!ぜってーない!」
当麻は左手で腹を抱えて大笑いしている。
「………お姉様も難儀な方ですわね。一体どうしてこのようなお方を…………そうですわ、殿方」
「ん?何だ?」
「いい機会なので、私からも幾らか質問をさせて頂いてもよろしいですの?」
「あぁ、構わねぇぞ。どうせやることもねぇし」
「では、お聞きしたいのですが………いえ、その前に謝らなければならないかもしれませんわ」
「謝る?」
「実は私、お姉様が貴方のことを追いかけていることを知ってから、失礼ながら貴方の行動を調べさせて頂いていますの。風紀委員の情報網を私用で使うのは誉められたことでは無いのですが……お姉様が悪い男に引っ掛かったのではないかと思うと心配で……申し訳ありませんですわ」
「悪い男ねぇ……ま、あんまプライベートに突っ込んだものじゃないんなら俺は構わねぇけど」
「ありがとうございますですの」
「んで、調査の結果俺はどんな男だった訳?」
「えぇ……異常、でしたわ」
「異常?いやいや、上条さんは高校生活をエンジョイしているだけの普通の男の子ですよ?」
おどけていう当麻に、しかし黒子は声のトーンを一段下げて返した。
「学園都市の教師、月詠小萌のアパートの天井に大穴が空いた事件……その事件の起こった同じ日に貴方は病院に入院しました」

185死(デス)のロッカーボックス:2010/04/30(金) 22:51:32 ID:IbQpciak
「……?」
「更にその後も、学園都市で大きな事件があった日には必ずと言っていい程、貴方は通院か入院を繰り返しています。そして……貴方は毎度、冥土返しと呼ばれるあの名医の手にかかっている……これは、高校生活をエンジョイしているだけの普通の男の子にはあるまじきことですわ」
「それは……」
「酷い時には退院の一週間後には病院に逆戻り……どうして貴方はそんなにも大怪我を繰り返すんですの?」
「いや、それは、だから……」
「これが私の質問ですわ。貴方は――――『一体何と戦っているんですの?』」
「…………」
「…………」
沈黙が、場を支配する。

黒子はその精悍な眼差しを真っ直ぐに当麻に向けて答えを待っている。

この答えを――白井黒子は知らなければならない。
この男の戦っているものが、やがて黒子の最も愛すべき者を傷つけることがあるかも知れない。
或いは、黒子が知らないだけで既に御坂美琴はこの男に起因する何らかの面倒事に巻き込まれてしまっているかもしれない。
御坂美琴は、例え学園都市に7人しかいないレベル5の一人だったとしても――それでも彼女はいたいけな女子中学生なのだ。
この男がもしも御坂美琴を危険に晒しているのだとしたら――

(私は、この男をお姉様から遠ざけなければなりませんの……お姉様を、守る為に)


「貴方は、何と戦っているんですの?」

再びの問いに

「………それは」

当麻はゆっくりと口を開いた。

「それは?」

「…………」
「…………」


「あ、余りにも不幸な上条さんは毎週のように車に轢かれて病院通いをしているのでした…………」
「…………」
「…なんつって」
「…………………っはぁ〜〜〜〜」
「何その反応!何そのあり得ない位長い溜め息!ホントなんだって!上条さんの不幸なめんな!車と激突なんて朝飯前だぞ!三輪車にだって轢かれるからな!」
「私はそんなボケが聞きたかったのではありませんわ。きちんと答えてくれないのであれば、私、実力行使もやぶさかではありまそんのよ」
言って腿のベルトに手を伸ばす黒子。
「ストップ!暴力反対!待て、待つんだ、待ちやがれの三段活用!」
「では本当のことを教えてくださいまし」
「本当のことっつっても……」
「教えてくださいまし!」
「…………わかったよ」
「では、貴方の敵とは一体何なんですの?」

「……………」
「……………」

「………いや、やっぱ言えねぇ」
「はぁ!?ここまで引っ張っておいてまだ言いますの!?」
「だって言ってもぜってー信じねぇし」
「それは私の決めることですわ!」
「それに……」
「それに、何ですの?」
「これは俺の問題だからさ、他人のこと巻き込むのは――やっぱ違ぇだろ」

「――――」
「大体お前も御坂もまだ中学生だろ。俺の問題に関わって危険な目にあうかもしれねぇし……」
「――――」
「だから、俺はお前らには話せねぇし、関わらせもしねぇ。平和に中学生やってんのが、一番幸せじゃねぇか」
言い終えた当麻にしかし、
「――――――かっちーん」
黒子は怒りの眼差しを向けていた。
「え?何でかっちーん?」
「わかりましたわ……どうしてお姉様が貴方のことを目の敵にしているのか」
「は?」
「お姉様は、きっと貴方のそういう態度が気に食わないんですわ」
「態度って……」
「何ですの?私達には関係ないですって?だから引っ込んでろとでも言うんですの?そんなのは一人よがりの自分勝手ですわ!」

『大体白井さんはいつもそうです!無茶して独断専行ばっかり!』

「右手におかしな能力を持っているからって、誰にも負けない気でいますの?何でもかんでも、自分一人でできるとでも思ってますの?」

『あなたの場合、なまじポテンシャルが高い分全てを一人で解決しようとするきらいがあるからね。もう少し周りの人間を頼るようにならないと危なっかしいのよ』

「俺の問題ですって?周りの人間には何の関係もないだなんて、本気で思ってますの?」

『お嬢様はあくまで一般人、治安維持活動は風紀委員に任せて頂きたいんですの』

186死(デス)のロッカーボックス:2010/04/30(金) 22:52:54 ID:IbQpciak
「貴方は…………うっ……あな……た、は……」
「ちょ、待った、ストップ!何で?何でお前――泣いてんだよ」
「だって……貴方、は……いいえ……お姉様だって……私と、おんなじ……意地をはって、何でも一人でやろうとして…………ですけど、私は貴方達のようには強くありませんもの……」
「………?」
「私、知ってますの………絶対能力進化計画のこと……」
「お前……!」
「さすがの私でも学園都市のデータベースに侵入することは出来ませんでしたが……お姉様のベッドの下に潜りこむのでしたら、得意分野ですので……」
「じゃあ……」
「えぇ、全部知っていますわ。お姉様のクローンである2万人のシスターズを使った実験と言う名の虐殺……けれどお姉様は、そんなこと一言も仰ってくれませんでした。全部一人で抱えこんで……そして、貴方です。殿方」
「俺………?」
「絶対能力進化計画の主軸たる学園都市最強のレベル5、一方通行。彼を倒したレベル0とは、貴方のことなのでしょう?」
「それは……」
「貴方はお姉様と、学園都市最強の能力者に立ち向かったのでしょう。ただ殺されていくシスターズを守るために、立ち上がったのでしょう。ですけど……私は貴方達がそんな強敵を相手にしている時に、学園都市のチンピラを懲らしめては正義の味方気取り……本当に、お笑いですわ」
「…………」
「…何より、私はきっとこの能力を持っていなかったら風紀委員なんてやっていなかったと思いますの。だって私が風紀委員に入った切っ掛けは、自分の能力をもっと使いたい、もっと自慢したいという……本当にしょうもない理由なんですもの。もし私に能力がなかったら、私は能力者達を疎んで、お姉様のことを妬ましく思って……そして小さく踞って学生生活を送っていたと……そう思いますの……けれど」
黒子は目の前の男の瞳を真っ直ぐ見て言った。
「貴方は……そしてお姉様は、例えその右手に何の能力もなかったとしても、例えレベル5のレールガンではなかったとしても……きっとアクセラレータの前に立ちはだかったことでしょう。私にはそのことが堪らなく悔しくて――堪らなく羨ましいんですの」
言い終え、ずるずると鼻をすする黒子。

すると当麻は、

「!――何をしますの!?」

黒子の頭に自由に使える左手をポンと置いた。


「全然――全然お笑いなんかじゃねえよ」
さっきまでとは違う、低く固い声音で告げる当麻。
「―――え?」
「俺達が一方通行と戦ってて、お前が学園都市の不良と戦ってて、それでお前が劣ってるってことにゃならねぇよ。


誰と戦うかなんてのはどうでもいいことなんだよ。
重要なのは何を守るために戦うかだろ。


お前はこのでっけー学園都市守るために戦ってんじゃねぇか。それは胸張っていいことなんじゃねぇのかよ」
「あ……」
「大体、もしも能力がなかったらだぁ?もしもの話なんて、したってしょうがないだろ。それに、その能力だって何の努力も無しに手に入れた訳じゃねぇ。初めは確かに能力を見せびらかしたかっただけかもしれねぇ。それでもお前は能力使って悪ぃこともしないで、努力してレベル上げて……そんで今はこの学園都市を守りたいって思って風紀委員やってんだろ」
「は……はい……」
「だったらいいじゃねえか。お前はそいつを誇っていい。もしそんなお前を笑うやつがいるってんなら、俺がぶん殴ってやる。――だから、もう泣くなよ」
「はぃ……」
黒子の返事に、当麻は一度黒子の頭をくしゃりと撫でてから左手をどけた。


「私、わかりましたわ。お姉様が貴方を追いかける理由も」
「?」


黒子は思う。

自分から見れば、御坂美琴は気高く、強く――そして遠い憧れの存在だ。
自分も彼女のようになりたい。
美琴に会ってから、黒子はずっとそう思っている。

そして、そんな黒子と同じように、御坂美琴はこの男を――上条当麻を目指しているのだろう。
この男は、黒子の慕う御坂美琴よりも、もっと強い存在なのだ。


しかし――

(だとすると、私にお姉様から殿方を遠ざける権利はありませんわね……)

御坂美琴が上条当麻を追う理由が、白井黒子が御坂美琴を追う理由と同じなら、美琴の気持ちを否定することは自分の気持ちを否定することになってしまう。

そして、上条当麻に彼の生き方を曲げさせることも、また――

187死(デス)のロッカーボックス:2010/04/30(金) 22:53:12 ID:IbQpciak

「仕方ありませんわね。貴方の敵について追及するのはもう止めますわ。貴方の自分勝手にも目を瞑りましょう」
「え?な、何で突然…」
「但し、一つだけ約束してくださいまし」
「お、おぅ…何だよ」
「お姉様が……例えお姉様がどんなに介入されることを嫌がっていても、どんなに一人で抱え込んでしまおうとしていても、お姉様が苦しんでいる時には、必ずお姉様の手を掴んで――そして守ってあげてくださいませ」

それは御坂美琴の目指す生き方に反することかもしれないけれど、

(それでも黒子はお姉様を危険な目にはあわせたくありませんの)

「よろしいですの?」

黒子の真剣な瞳に

「――当たり前だろ」

当麻は笑いながら答えた。

「…………」
「…………ん?どした?」
当麻は自分の顔をまんじりと見つめつづける黒子に気付いて問う。
黒子は一拍置いてから優しい声音で言った。

188死(デス)のロッカーボックス:2010/04/30(金) 22:53:36 ID:IbQpciak
「……私、貴方に会う前にお姉様に会えて良かったですわ」
「は?」
「だって、もしもお姉様より先に貴方に会っていたら――私、貴方に惚れていたかもしれませんもの」
「なっ――」
一気に顔を真っ赤にする当麻。その顔に、黒子は満足気な笑みを浮かべる。
「なんて――もしもの話なんて、したってしょうがありませんけどね」
「お前、おちょくるのも……おわっ」
当麻は身を乗り出した拍子に落ちていたタオルを踏み、体のバランスを崩してしまった。
「あ……あぶねっ」
慌てて使える左手を前に突きだし転倒を防ごうとするが、

もにゅ


「……もにゅ?」
当麻がおそるおそる左手の行く先に目を向けると、


「あ…な…た…は………」
それはしっかりと黒子の右の乳房を鷲掴みにしていた。

「何度やれば気が済みますの!!」

真っ赤になりながら黒子が繰り出した頭突きは前二発の比ではなく、当麻の頭はボールのように跳ねさせた。
そして当麻の頭は後頭部をロッカーの壁にぶつけ、勢いを殺せずに跳ね返り――

「――!?」
「――!?」

黒子の顔面に衝突した。

より正確に言うなら、当麻の唇と黒子の唇が、ぴったりとくっついた。


ぶっちゃけ、チューだった。


と、そこへ―――


ドタドタという足音と聞き馴染みのある声が外から聞こえた。

『ちょっと!今私のロッカーの中から黒子の声が聞こえたんだけど、まさかあんたまた私のロッカーにテレポートで……』


ガチャン


ロッカーの鍵が開けられ、扉が開いた。

「忍び……こ……ん……で……?」


ロッカーの中には身を寄せ合ってキスをしている上条当麻と白井黒子。

ロッカーの外にはその余りの光景に思考停止状態に陥っている御坂美琴。


「よ、ようビリビリ……奇遇だなぁ」
いち早く復帰した当麻が唇を強引に剥がし、何事もなくロッカーから出ようとしたが、黒子とロッカーに挟まれた右手が突っ掛えた。
「お、おい後輩!」
「は、はいですの!」
当麻に促されてロッカーから出る黒子。
そうして当麻の右手も自由になり、続いて当麻も外に出た。

「デ、デラレター」
「デ、デラレマシタワー」
「ヨ、ヨカッタナー」
「ヨ、ヨカッタデスノー」
「ハハハハハ」
「オホホホホ」

棒読みで喜び合う二人に

「あ…ん…た…ら…は………」
超高圧電流を身体中からほとばしらせた美琴が
「人のロッカーで何してんだゴルァァァァァァァァ!!!」

強烈な電撃をお見舞いした。


――その日、常磐台付属中学寮とその付近一帯は終日停電に見舞われたという。

189■■■■:2010/04/30(金) 22:58:02 ID:IbQpciak
以上です。

投下した後気づきましたが、常盤台付属中学とか言ってますね。
何を血迷ったんだか。
書いた当時にたぶん台が大に思えてなんとか大学の付属の学校だと思ってたんだと思います。

絹旗さんの話は少しだけ進みました。
今回の黒子さんくらいの長さまでですが、全体ではこれの4から5倍長いと思います。
そこでなのですが、書いている分だけあげるか、すべて書き終わってからあげるか、どちらがよいでしょうか?
今回の話の感想含め、ご意見をいただけたらと思います。

それでは。

190■■■■:2010/04/30(金) 22:59:43 ID:O2LH/wYw
>>189
黒子好きの俺歓喜w
まぁ原作ではこういうことにはならないだろうと思うからこそ、
パロディでは読んでみたい展開なので嬉しかったです。

191■■■■:2010/04/30(金) 23:40:01 ID:rvNxNlVg
>>189
ほのぼのと楽しめました、GJ

192IF〜10年後の世界:2010/05/01(土) 00:05:50 ID:cMU6fi7k
どうもです。投稿します

193IF〜10年後の世界:2010/05/01(土) 00:07:55 ID:cMU6fi7k
時計の針が深夜をさす頃には、皆疲れて寝静まっていた。
吹寄や姫神や打ち止め、小萌先生はソファーで酔い潰れて寝ているが、土御門や青髪や浜面は布団も敷かずにそのまま床で寝てしまっていた。
カエル顔の医者は、皆が寝静まる前に帰ってしまった。もちろん、酔っているのでタクシーを使ってである。
唯一ベットが置いてある部屋は、妊婦の滝壺と子供のとうま、それに滝壺について行った絹旗が使っていた。
ベットは大きく、大人がかるく4人は寝られそうなスペースがあり、滝壺と絹旗は真ん中に当麻を寝かせて川の字で寝ていた。
と言っても滝壺と絹旗はまだ起きていた、滝壺は横に寝るとうま胸のあたりをポンッポンッとゆっくり叩きながら眠りを促していた。
その横で絹旗は、滝壺のお母さんらしい行動をただ横になって見ていた。
「もう滝壺さんは超立派なお母さんですね」
「そうかな…」
「そうですよ…それにもうすぐ二人目も生まれるなんて」
「うん…暗部に居た頃なら…想像もできなかったかも…私がお母さんになるなんて」
「私もですよ…しかも、相手はあの浜面なんて」
絹旗は妙な笑みを浮かべながら、滝壺を見つめてきた。そこで滝壺はとうまの上に置いている手を動かすのをやめて、今度は絹旗の方を見た。
「きぬはたも結婚したらいい」
「超遠慮させてもらいます」
「どうして?」
「別に超したくはないし…する相手も超いません」
「…暗部を止めたら、きっと見つかるよ」
「そんな超簡単に暗部は止められませんよ…」
そう言うと絹旗は横向きから仰向けへと変わって、天井を見詰め始めた。
「かみじょうに頼べば、止めさせてくれるかも」
「上条当麻ですか…」
「うん…なんとかしてくれると思うよ…私もはまづらもいっぱい助けられたから…」
「仮に止めたとしても…それからどうすれば…」
「一緒にイギリスに行こうよ…向こうのかみじょうの友達がいろいろ親切にしてくれるよ」
「どんだけの人脈があるんですか?…彼は……てゆーか、上条当麻の方だったら超理解できますが…よりによってどうして浜面なんです?」
「理由を聞かれても…正直なんて答えていいか分からないけど…でも…はまづらは私を必要としてくれたから…
暗部しか居場所のない私に生きる場所をくれたから」
ゆっくりと喋っていた滝壺だったが、その表情はとても穏やかで何一つ嘘は言っていないと絹旗は感じられた。
「は〜でもやっぱり結婚は超遠慮させて貰います…それに子供なんてできたら、さらに超大変になります」
「うん…そうだね、やっぱり大変だよ子育ては…でも、かみじょうの友達がいっぱい手伝ってくれたよ…天草式とかシスターさんとか」
「超意味が分からない人脈ですね……でも子供とか旦那なんていても、なんか超鬱陶しそうです……でも」
「でも?」
「どうしてでしょうね…滝壺さん達を見ているとなんだか…超悪くないかもって思えます。」

194IF〜10年後の世界:2010/05/01(土) 00:12:36 ID:cMU6fi7k
みんなが寝ている中、当麻は一人で広いベランダに座って月を見ながら酒を飲んでいた。すると後ろから、
「一人で飲んでて…寂しくねェのか?」
一方通行がとぼとぼと歩いてきた。
「おっ…まだ起きてたのか」
「まァな」
「別に…ただこうして酒を飲む機会があんまないからな…」
「そうか」
「…いろんな国を回ったが…やっぱり日本で見る月が一番綺麗だ」
月を見上げながら、当麻はコップに注いだ酒を一口飲むと振りかえり一方通行に酒瓶を見せながら
「飲むか?」
「……あぁ」
一方通行は当麻の隣に座って持っていたコップを出した、初めから持っていたとこを見るとどうやら最初から飲む気だったらしい
当麻は一方通行の持ってきたコップに酒を注ぐと自分のものにも注ぎ始めた。一方通行は注がれた酒を鼻元へ近づけて匂いを嗅いだ。
「外の酒だなァ…あんまり上物じゃねェだろォ」
「世界中の酒を飲んだが…肌に合った水から作る酒が一番だ…俺の故郷の酒だ…飲んでくれ」
一方通行はグビグビと酒を飲んでいった。
「あぁ…悪くねェ」
「そうか」
続けて当麻も酒を飲み、二人はしばらく無言だったがコップを空にした当麻が酒を注ぎながら語りだした。
「不思議なもんでな…記憶なんてないはずなのに、これを飲むと懐かしい感じがする」
「……中東の方に行っていたそォだが…目当てのもンは見つかったのか?…」
「いいや…これと言って、記憶を取り戻すのに役に立ちそうな魔術はなかった」
「……そうか」
「今度はアフリカの方に行ってみるつもりだ…あそこはインデックスも知らない魔術の知識が広がっている国があるらしいからな」
「あのあたりは、まだ紛争が絶えない国ばかりだろォ…また国境なき医師団として行くのか?」
「あぁ…その方がもっともらしいだろ」
当麻は確かに国境なき医師団として働いているが、本当の目的は紛争地域で苦しむ人を助けるだけが目的ではない
本当の目的は、様々な国を回って未だに知られていない魔術知識を集めて、記憶を取り戻すのに役立つものを探す
それが本当の目的である。しかし、第3次世界大戦もしくは、それよりも前から上条当麻という人物の名前は知られていた。
学園都市では、知ろうとしても上層部の者しか知ることのできない貴重な能力を持つ者として、
世界では、魔術大国ローマの野望を何度も阻止した者として、
その上、彼を慕い彼の役に立ちたいと思う者も今では数えられないほどいる。そらに、そのほとんどが曲者揃いときている。
今では上条当麻という人物は一国が恐れるほどの人物へとなってしまったのだ。
そんな人物が自分の国に入ろうとするなんて国のお偉いさんが許すはずもない、そのため当麻は国境なき医師団として働く傍ら
様々な魔術の知識を集めていく、それが当麻が今送っている日常であった。
「上の奴らは困惑してんぞ…急にお前が帰ってきてな…しかも昔、学園都市が躍起になって殺そうとした男付きで」
「あいつらはまだ諦めてないのか?」
「さァな…だが見張りはついてたな…」
「やれやれ…別に何もしなねぇっつーのに」
「向こうも隙あらばって来てんだろォよ」
そこまで言うと一方通行はコップの酒を飲みほした。当麻は一方通行のコップに酒を注ぎながら
「なぁ…結標の奴とはまだ付き合いがあるのか?」
「あぁっ?結標?…この前仕事で一緒になったけどなァ……それがなんだ?」
「じゃあこの街にいるんだな…ちょっと…頼みたい事が」

195IF〜10年後の世界:2010/05/01(土) 00:14:45 ID:cMU6fi7k
当麻達がいる個室サロンを一キロほど離れたビルの屋上から見つめる、黒服を着た一つの集団があった。
「で…どうする?」
「言われた以上…やるしか…」
「最初に言っておくが俺はやだぞ」
集団から離れた所にいる男が言った
「そんなこと言って〜どうすんですか先輩?」
個室サロンの様子を双眼鏡で見る小柄な若い男が言った。
「うるせぇよ…そもそも上条当麻だけでも厄介なのに…一方通行に『グループ』の土御門、おまけに元『アイテム』の絹旗まで…
命がいくつあってもたりねぇよ!」
「たしかに…」
「上も面倒なこと言ってくれますよね〜」
「だけど…命令された以上…」
「そもそも何なんだよ「浜面仕上を抹殺せよ…もしも上条当麻が邪魔するようなら同じ処置を取ること」って…もう邪魔してくること前提じゃねぇか」
「は〜報酬がいいから思わずうけてしまったが」
「まぁやってみましょうよ…どうやら酒飲んでるみたいだし…今ならいけるんじゃないんですか?」
彼らが迷っていると、屋上の入口から声がした。
「何をしてるんだ…お前らは」
「あっ!杉谷先輩!!」
「どうも…お久しぶりです」
「挨拶はいい…何をしている」
「いや〜先輩が厄介な仕事を〜」
「俺の所為か?」
彼らの任務の説明を一通り聞いた杉谷は
「悪いことは言わん…すぐに中止しろ」
「いや…しかし…」
「お前らは上条当麻の恐ろしさを分かっていない…」
「いやっそりゃあ強いことぐらい百も承知ですよ!」
「違うお前らは上条当麻を根本的に誤解している」
杉谷は腕を組み呆れた様子で語りだした。

196IF〜10年後の世界:2010/05/01(土) 00:19:31 ID:cMU6fi7k
「あいつの恐ろしさ…それは確かに力もあるだろうが、本当に恐ろしいのは…人を引き付ける力だ」
彼ら正直なんだそれはっと思った。確かに上条当麻が世界各国に様々なパイプを築いているのは知っているが、それが何なのか分からなかった
「昔あった事件を教えてやろう…今から4,5年前に上条当麻はロシアを訪れようとしていた、理由は国境なき医師団としての仕事だったが
ロシア側は上条当麻がロシアの有能な人材を引き抜きに来たと考えた…まぁもともと第三次世界大戦では上条当麻の所為で
ロシアは敗戦国となってしまった様なものだからな…奴らも相当恨んでいたであろう…
そしてロシア側は上条当麻にロシア内での医師としての働きに感謝を述べたいと言い、上条当麻との会談を望んだ…そして上条当麻はそれを承諾した…
仲間の中には止める者もいたらしい、ロシアがどれだけ上条当麻を恨んでいたか知っていたからな、だが上条当麻はそれを無視し会談に行った
そして案の定…ロシア側は一切の交渉もせず上条当麻を撃ち殺そうとした」
そこまで聞いて彼らがザワッとした
「そっ!そんなことが!?」
「でっ!?上条当麻は?」
「彼の人脈が幸いした…ロシアに居た特殊部隊…確か『殲滅白書』と言われている部隊だ、彼らが重傷を負った上条当麻を助け出し、
上条当麻は一命を取り留めた」
「どうして、その『殲滅白書』が?」
「よく分からんが第三次世界大戦時に『殲滅白書』の誰かが世話になったらしい…まぁとにかく、上条当麻は一命を取り留めた
そして…その噂を聞いた上条当麻の仲間達がロシアの国境近くに集まり、今にも戦いが起こりそうな一触即発の事態へとなった」
「そんな事件、俺達は…」
「知らされていないだろう…学園都市の上層部でしか知られていないことだからな、
そして、その戦いを原因となったのも、終わらせたのも上条当麻だった…奴は今にも戦いが起こりそうな雰囲気の中、
傷も癒えていない状態で戦場に表れて、その戦いを止めた…」
黒服の集団はいつの間にか杉谷の話を真剣に聞いていた。すると集団から離れた屋上の端から
「説明御苦労さま…杉谷」
突然女の声がした。黒服の集団は反射的に銃を向けた。
「結標…なぜお前が…」
「結標!?土御門、一方通行と同じグループの…」
「これっ!」
結標は手に持っていた袋を近くにいた男に投げ渡した。男はその中身を見て呟いた。
「これは…ピザ?」
「上条当麻からよ…」
「何!?」
届主の名前を聞いて驚いていると、双眼鏡を持っていた男が
「先輩…なんか上条当麻のやつこっちに向かって手振ってんすけど」
「何だと…」
杉谷は男が持っていた双眼鏡を奪って覗いてみると、確かに当麻が酒を飲みながらこちらに向かって手を振っていた。
「伝言よ…こんな夜遅くまで御苦労さまですって」
「…すべてお見通しって訳か」
「じゃあ私行くわよ…ちゃんとバイト代くれたからやってやっただけなんだから…」
振りむき帰ろうとする結標に杉谷は声をかけた。
「…一つ頼みが…上条当麻に………「かたじけない」と」
「いやよ…」
そう言うと結標はシュンッと一瞬で消えてしまった。

197IF〜10年後の世界:2010/05/01(土) 00:23:12 ID:cMU6fi7k
以上です。最初はみんなで酒を飲んで騒ぐ話も考えましたが、グダグダになりそうなのでやめました。
それと、黒服の集団については特に設定は決まってないので、ただの雇われたやつらと思ってください。
パッとでのキャラなので深く考えないでください。
あと誤字脱字などございましたら、ご指摘ください。

198hakimu:2010/05/01(土) 14:12:00 ID:FdBirx0s
>>169>>173

199hakimu:2010/05/01(土) 14:19:48 ID:FdBirx0s
すみません二度うちしてしまいました
>>169>>173さんレスありがとうございます
どうしても物語が先にできてしまいそこにキャラクターを打ち込むので
どうやってもキャラクター色や特徴が弱くなってしまうんですよね
あとなかなか行間や句読点も今勉強中ですのでもう少し
うまく表現ができるようになったら
また投稿します
失礼しました

200■■■■:2010/05/01(土) 19:44:04 ID:03rH3E1E
ここってクロスオーバーSSはいけないのでしょうか?

201■■■■:2010/05/01(土) 20:08:01 ID:OcbkQ/lo
>>1の投稿時の注意、項目2を参照 だな

202■■■■:2010/05/01(土) 23:10:17 ID:pL/gzs6o
>>200
絶対にダメというわけじゃあないが、あまり推奨できないな
>>201の通り、読者からすれば「あァ?こンなもンがホントに禁書SSですかァ?」ってなりやすいし、
世界二つを繋げる分設定に矛盾が出やすいからそういった意味でも破綻しやすい

203■■■■:2010/05/02(日) 00:27:53 ID:HkXy4KWE
>>189
GJですねー
>>190の言うとおり、原作で展開される可能性の低いSSであるにも拘らず、毎回不思議と違和感なく読めてしまいます
キャラの動かし方、話の運び方に原作に近いものを感じます。偉大な先人である「灰姫の人」みたいな

アンケート(?)の返答としては、書いてある分だけ上げる形でも十分いいと思います
というのも、あなたの場合質の高いSSを「速筆」で生み出せるという書き手としては羨まし過ぎるスキルがあるようですし
絹旗SSを書こうかなと書きこんだのが1週間前で、それで今回の黒子SSと同じくらい進んでるって、そうとう速いと思いますよ
逆にそんなに早いなら最後まで書ききってから一気に投稿した方がいいのかもしれませんね。その方がまとめて推敲できますし展開に矛盾も生じにくい
・・・すいません答えになってませんね。もう自身のさじ加減でやっちゃって下さい
これからも良質なSSを期待していますので、頑張って下さい
長々とすいません

204■■■■:2010/05/02(日) 00:43:01 ID:I4HH3aqI
>>201 >>202 ご意見ありがとうございます。

そうですか・・・やはりあまり好かれないですよね・・・
分かりました、投稿するのはやめておきますね

205■■■■:2010/05/02(日) 01:30:29 ID:aIcl7b..
>>204
ちなみに何とクロスさせるつもりだったん?

206■■■■:2010/05/02(日) 01:50:34 ID:I4HH3aqI
>>205
違うスレで話をしててクロスしたくなったのが11eyesです

207■■■■:2010/05/02(日) 02:12:31 ID:HkXy4KWE
>>206
その発想、分からんでもない。同じ能力・魔術もので、世界観も近い気がするし
でも自重しといて正解だっただろうな。なんせ二作品の登場人物達のキャラ被りが凄まじいことになりそうだ
禁書はとにかくキャラが多いから、クロスオーバーにしてもオリキャラにしても既存のキャラとの差異を意識せざるを得ない

208■■■■:2010/05/02(日) 02:47:44 ID:I4HH3aqI
>>207
まぁ、個人で書いて楽しんでおきます(笑
それが一番だと思うで

209■■■■:2010/05/02(日) 07:21:02 ID:OSXTPpug
まだ、アイデア段階なんだけど
学園都市で聖杯戦争ものって受け入れられると思います?
サーヴァントオリジナルで

210■■■■:2010/05/02(日) 14:25:04 ID:aDYguPxE
>>209
そんな感じのスレが他にあったと思いますよ。

>>190>>191>>203
感想ありがとうございます。そういえばこれが禁書ssの処女作でした。懐かしい。

>>203
ご意見ありがとうございます。
そんなに早くはないと思いますけど…携帯打ちですし。

とりあえず上げればそれに引きずられて続きも書いていけそうなので、今ある分まで投稿しようと思います。

と言うわけで絹旗さんのssを投稿します。
注意点としては

絹旗と佐天さんの仲がいい、
曜日がよくわかっていないので日付が適当(後半はssと15巻の間だとだけ思ってくだされば結構です)、
オリキャラではないですが、砂皿さんの前任の狙撃手が勝手な設定を引っさげて出てくる(そしてぶち殺される)などです。

初めて分けて投稿しますので、更新速度とかで不満があるかもしれませんが(あと何回目で終わるかの目処も立ってません…)よろしくお願いします。
それでは投稿します。

211わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜1:2010/05/02(日) 14:28:22 ID:aDYguPxE
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
9月26日。
大覇星祭終了日の翌日ということで、学校も休みであるその日の朝。
学園都市内のショッピングモールの一角で。
「あっちゃぁ、時間間違えちゃったか…」
佐天涙子は携帯のディスプレイに表示された現在時刻を確認してため息をつく。
今日は初春と買い物をする約束をしているのだが、待ち合わせの時間よりも一時間以上も早い。
寝坊したと思って慌てて支度をして部屋を飛び出したのだが、どうやら勘違いしてしまっていたらしい。
「しまったなぁ。どっか暇潰すところとかあればいいんだけど…」
急いでいたとは言え朝は適当に食べてきたので喫茶店に入る気にもなれない。
どこか一時間程の小暇を潰せるところはないかと思って辺りを見回していた佐天は、
「おっ」
通りの隅に小さな映画館の存在を認めた。
どうやらメジャーな長編映画ではなく、マイナーなショートフィルムを扱っているらしい。
(あ。あのタイトル知ってる。何でだっけ……あぁ、アメリカで別れ際にビバリーさんが言ってたやつだ)

予定より早く終わった広域社会学習。
そこで知り合ったのがビバリー・シースルーという若手の映画監督である。
彼女はもともとハリウッドで賞を取るようなメジャーな作品を撮っていたのだが、学芸都市での騒動に懲りてこれからはヨーロッパで活動するつもりだとこぼしていた。
その内ショートフィルムでも撮るから学園都市に流れたら見てくれ、と言っていたが、目の前にあるタイトルはそれではない。
ビバリーが映画作りで是非参考にしたい、と列挙していたショートフィルムのタイトルの内の一つである。
(30分のフィルムか……料金も安いみたいだし、暇つぶしにはもってこいか)
佐天はそう思うと、小さな映画館の中へ入っていった。

♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「むぅ、これは超失敗でしたね…」
絹旗最愛はエンドロールが流れ始めたスクリーンから目を離すと、溜め息をついた。
ここは学園都市内にある映画館のひとつ。
他の劇場ではやっていないよなマイナー作品を上映している、小さな、そして変わりものの劇場である。
当然と言ってしまっていいのかはわからないが、そんな酔狂な映画館の中にいるのは、現在絹旗最愛ただ一人しかいなかった。
「タイトルからは当たりの匂いが超していたのですが……、まぁ、たまにはこういうこともないとC級映画は楽しめませんからね。次の良作のための未来投資だと思うことにしましょう」
絹旗はそう呟くと映画館のシートから立ち上がり、クーっと両腕を突き上げて大きく伸びをする。
そんなことをしてもほぼセーターにしか見えない極ミニワンピースの下からショーツが顔を出すことがないのは、流石と言うべきだろうか。
「今度は誰か付き合わせてやりましょうかね。あーでもアイテムの方々は誰も彼も無理そうですからね。強権発動で超自由に使える小間使いとか欲しいものです」
そう呟いて絹旗が席を立ちかけると、エンドロールを流し終えたスクリーンに再び鮮やかな色が灯った。
「……あぁ、そういえば抱き合わせでもう一本あるんでしたっけ。んー、あまり期待はできませんが、今日は超暇ですしね。見ていきましょうか」
絹旗はすとん、と椅子に座り直す。

と、
「わっ、始まってる!」
後方の重たい扉が開き、劇場内に光が漏れてきた。
(おや、珍しいこともあるものですね。こんな超マイナー劇場に足を運ぶ人間がいるなんて)
自分のことは完全に棚に上げてそんなことを思った絹旗だったが、そこまで気にするでもなく、早速展開し出したスクリーンに思考を集中させていった。

212わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜1:2010/05/02(日) 14:28:52 ID:aDYguPxE
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
30分後。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
再びエンドロールが流れ始めた劇場内に、二つの雄叫びが上がっていた。
当然その主は二人しかいない観客達である。
「やばい!超やばいです!こんな超すばらしいフィルムが存在していたなんて!」
絹旗が大声を上げると、
「ですよねですよね!ビックリしました!」
先ほど入ってきた子だろう、後ろの席から身を乗り出してきた少女が興奮気味に同意する。
「いやぁあの主人公の少年の機転の効き様!次に使用されるパーツを予測してそれだけに爆薬を仕掛ける……流石の私でもそこまでは考えられませんでした!」
「主人公が不敵に笑う背後で爆発して倒壊する巨大オブジェクト……!すごい画でしたね!」
二人はペチャクチャと今のフィルムの感想を言い合う。
二人の勢いは止まらず、気がついたらエンドロールも終了してスクリーンの幕が閉じており、劇場内に清掃員らしきおじさんが入ってきた。
小劇場で抱き合わせとは言え入れ替え制はあるのだろう、迷惑そうにこちらを見るおじさん。
そこで絹旗は少女に提案する。
「この後時間ありますよね!」
すると少女は
「はい!もちろん!」
一瞬の躊躇なくそう答えた。

♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
『お掛けになった番号は、現在電波が届かないところか……』
「繋がらない……佐天さん電源切っちゃってるんでしょうか」
初春飾利は佐天との待ち合わせ場所で途方に暮れる。
待ち合わせの時間から30分も経っているのに佐天は姿を現さない。
その上なぜか携帯も繋がらない。
「映画館にでも入らない限り携帯の電源を切るような人じゃないと思うんですが……寝坊ですかねぇ」
とりあえず初春はもう少しだけ待ってみることにした。
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「ヒロインの子も超可憐でしたね!そしてエロスを忘れない精神も超見事でした!」
「あのベルトが締まりすぎちゃった辺りだよね!確かにあれはエロス!でも私はむしろ主人公の上司の巨乳っぷりがヤバかったかな!」
「あぁ、あれは超反則でしたね!あれで20超えてないってのは絶対嘘です!」
「あ、でも知り合いにあれよりおっぱい大きい未成年がいるよ」
「なんと!本当ですか佐天さん!」
佐天涙子と絹旗最愛は映画館近くの喫茶店で顔を突き合わせて先ほどの映画の感想を言い合っていた。
互いに自己紹介を済ませ、年が近いことから佐天はタメ口をきくようになったが、絹旗は性格故か敬語を使って会話している。
「てかその人がこの映画紹介してくれたんだけど。ビバリー・シースルーって知らない?映画監督の」
「あー、メジャーの方?ですとあまりチェックしていないのでわかりませんね。しかし超眼識のあるお方だと確信しました。今度確認しておきます」
話の流れでそう言ったものの、白熱していたが故に絹旗はすぐにビバリーのことを忘れてしまった。
絹旗は後日そのことを猛烈に後悔することになる。
「まぁでも本人はあんまりドンパチしてるのは好きじゃないみたいだったけど。話の展開とかがいいって言ってました。私も展開はすげーって思ったな。ただ、オブジェクトの性能やパーツの説明を主人公達がくどくど説明するあたりは少し気になったかなぁ」
「あれは監督の特色なんですよ。さっき思い出しましたが、あのカマーティ監督ってマニアの間じゃ科学的考証好きで有名な方で、他にも何本か似たようなの撮ってるんですよ。まぁ時々超ぶっ飛んだ描写もあるんですけど。ハイジャック事件の映画があるんですが、その中で主人公のトゥーマ・カミージョの放った『熱膨張って知ってるか?』という迷台詞があってですね……あ、そろそろお腹減ってきません?」
「あぁ確かに。何か頼もうか。すいませーん、注文いいですか?」

213わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜1:2010/05/02(日) 14:29:09 ID:aDYguPxE
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『おかけになった番号は……』
「佐天さーん……?」

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「へー、メジャーの方ではそういう映画があるんですか。マイナーどころばかり見てきましたが、たまにはメジャー映画も見てみましょうかね」
「私はマイナーものに興味がわいてきたなぁ。何か面白いのあったら教えてよ」
「じゃあ今度一緒に映画巡りでもしましょうか……あ、すいませんコーヒーおかわりです」

♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
『おかけになった番号は……』
「……………………………………」

♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「いやー今日は楽しかったよ」
「こちらこそ、超よい休日を過ごさせてもらいました」
二人がようやく喫茶店の椅子から腰を上げた時、空はオレンジ色に染まり始めていた。
最終下校時刻ギリギリである。
「それじゃね、絹旗ー」
「はい、佐天さん。予定決まったらメールしますから」
二人は互いに手を振り合って別れた。

「いやー、今日は充実した1日だったなぁ」
佐天は歩きながら一人ごちる。
「あ、そういやバスの時間は……と、携帯電源切りっぱなしだった」
ポケットから携帯を取り出し、電源を入れる佐天。
すると――

「ちょ、なにこれ!?着信履歴67件、留守電24件、メール108通!?一体誰から……って初春!?何か緊急の用事でも…………あ」

佐天は思わず立ち止まる。
わざわざ朝っぱらから街へ出てきた目的をここに来てようやく思い出したのだ。

「うっわー……しまったぁ…」
明日学校で会うことになるであろう親友の顔を思い浮かべて、佐天は苦い顔をして頭を抱えた。

214わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜1:2010/05/02(日) 14:29:38 ID:aDYguPxE
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「ごめんって。ね、初春。機嫌なおしてよ」
「い・や・で・す。今度という今度は絶対に許しません」
翌日。
柵川中学の教室にて佐天は初春に向かって手を合わせて謝っていた。
「えー、じゃあ帰りに何か奢るからさ。クレープとかケーキとか何でも」
すると初春の身体がピクリと震えた。
「そ、そんなんじゃ許してあげませんから」
動揺を隠そうと言葉を続ける初春に佐天は追い討ちをかける。
「そっかー、セブンスミストんとこに出来た新しいクレープ屋さんのクレープ、初春は要らないのか」
「そっ、それは!えっと…」
「んー?」
「………………今回は許してあげますが、今後は気をつけてくださいね」
「はいはい」
佐天はにやにやと笑いながら答える。
500円で初春の機嫌が直るのなら安いものだ。
「それで、どちら様でしたっけ。佐天さんにわざわざ付き合って下さったという物好きな方は」
「物好きって……絹旗だよ。絹旗最愛。すこいんだよ。ワンピース着てるんだけどこれがもう超短くて。でも全然中が見えないんだよねー。いつかあのスカートもめくってやるんだから」
「あの、佐天さん。常々思っていたんですがスカートめくりはセクハラですよ」
「えっっっ!?!?」
「当たり前ですっ!」
初春はもう、と親友の奇癖にため息をつきながら告げる。
「で、どうします?お買い物、昨日行けませんでしたけど、他の日に改めて行きますか?」
「ん、そうだよね。いつがいいかな。休日がいいよね。あー10月入っちゃうけど、6日とかどう?」
「はい、それでいいと思いますよ。あ、でもその日、朝10時くらいまでは予定が入っちゃってるんですよ。その後でもいいでしょうか?」
「別に構わないけど、風紀委員の仕事?」
佐天の疑問に、初春は鞄からプリントを取り出しながら答える。
「はい、親船最中さんって御存知ですか?統括理事会の方なんですけど、その方が講演を行う予定があって。その会場設営が風紀委員に任されているんです」
初春の取り出したプリントには『学園都市に住む子ども達のために』という表題とやさしそうなおばさんの写真が載っていた。
彼女が親船最中なのだろう。
「へー。大変だねー。……あ、この公演場所のビルって最近できたショッピングモールの近くだよね」
「本当ですね。そういえばあのショッピングモールってまだ行ったことありませんでしたね」
「よし、じゃあそこで買い物しようよ。丁度初春の仕事が終わるくらいにショッピングモールの着くようにするから、現地集合でさ」
「そうですね。一度くらい行ってみたかったですし」
「じゃ、6日にね」
話が終わるとほぼ同時に教師が教室に入ってくる。
身体を戻して前を向いた佐天の背中を見ながら
(絹旗……どこかで見た名前なんですけど、どこでしたっけ?)
初春は心の中で疑問符を浮かべた。

215わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜1:2010/05/02(日) 14:30:56 ID:aDYguPxE
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「親船最中。そのお人好しのババアが明日開く講演会で、『スクール』の連中が暗殺を企ててるんだって。目標はモチロン親船最中」
麦野沈利はファミリーレストランの一角を占拠している『アイテム』の一員プラス一名に語りかける。
「暗殺と言うからには多分相手は『スクール』の狙撃手よ。見つけ出してぶっ殺せばそれでいいわ」
麦野が適当な調子で言う。
『アイテム』の構成員達もまた、映画のパンフレットを眺めたり缶詰めを空けたり天井を見上げてぼーっとしたりなどまるで聞いている様子がないが、異議を挟んでこないということは了解であると判断して、麦野は話を進めようとする。
だが
「おい、ちょっと待てよ」
何者かが口を挟んできた。
それは、プラス一名の男。
「なぁに?浜面」
浜面仕上。
ごく最近『アイテム』の小間使いとして派遣されてきた元スキルアウトの少年だ。
浜面は言葉を続ける。
「暗殺計画をあらかじめ嗅ぎつけてんなら、事件が起こる前に本人達に直接通告してやったらいいだろ。そうすれば…」
「殺さなくてもいい、って?」
「……そうだよ」
「言っとくけどね、警告なら散々してきたのよ。こういう計画の存在に気づく度にね。でも連中は警告に従わない。だったらここらでお灸を据える意味で構成員の一人でも血祭りに上げた方がいいとは思わない?」
「でもよ…」
「あのね、学園都市の暗部っていうのはそんなに甘いものじゃないのよ。警備員なんて表の組織とじゃれ合ってるスキルアウトと、同じ次元でモノを考えられても困るの。分かるかしら?浜面」
「……………っ」
麦野の言葉に黙り込んでしまう浜面。
自らが仮とはいえリーダーを努めていたスキルアウトを馬鹿にされたことを怒っているのだろうが、数日前にそれを壊滅に追いやってしまったこと、それなのに自分はその責任も取らずにこうして『アイテム』のパシリになっていること、何よりツンツン頭の少年に言われた言葉が、浜面が口を開くことを阻んでいるようだ。

♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
そんな浜面の様子を絹旗は映画のパンフレット越しに見ていた。
(元スキルアウトというものですから、てっきりチンピラみたいなのが送られてくるかと思ってましたが、やはり薄っぺらなロクデナシというわけではないようですね)
小間使いというのならば、そういう『ただ言われたことをやって駄賃を貰って満足する人物』の方が都合がよいだろう。
だが、絹旗は彼のような存在を望んでいた。
この組織を変革する起爆剤になり得る存在を。

実質上のリーダーである麦野に意見する。

そういう人物は今までの『アイテム』には存在しなかった。
麦野はああ言っていたが、実際はただ『スクール』のリーダーである学園都市第二位、垣根帝督を打ち倒して自らの力を誇示したいだけなのだ。
『スクール』への警告は彼女の言った通り再三してきたが決してそれが無駄であったわけではなく、凶行に及ばせないだけの力は持っていたし、まだもうしばらくは押さえつけていられる筈である。
それをせずに強行をかけるというのは、つまり『スクール』の狙撃手を殺すことで垣根帝督を挑発し、戦いに引っ張り出そうという魂胆なのだろう。

そんな女に付き従っている者達もまたまともではない。

フレンダは力への依存が異常に大きい。
今はこのチーム唯一のレベル5である麦野に絶対的な信頼と忠誠を持って従っている。
だがそれは麦野へではなく学園都市第四位の能力者への従属であって、仮に麦野よりも力の強い者が現れたならフレンダは即座にそちらに鞍替えするのではないかという疑念を絹旗は持っていた。

また、滝壺理后は意志を見せない。
『アイテム』に任される汚れ仕事をただ沈黙したまま遂行する。
もともとそうであった可能性もあるが、原因の一端には能力体結晶の存在があるのだろう。
能力を暴走、強化させるためにそれを使う度、滝壺の意志は薄弱としていく様に感じられる。
特に一月程前に支給された能力体結晶の完成版だという体晶を使用し始めてからは、彼女の崩壊は加速している。
他の二人は望んで―――過去にそうせざるを得ない状況があったとしても、少なくとも現在は――闇に身を置いている。
それらに比べると、抗う意志さえ奪われた滝壺は不憫に思われた。

いや、
(私にそんなことを思う権利は超ありませんね…)

この組織で一番のロクデナシは絹旗最愛である。

216わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜1:2010/05/02(日) 14:31:15 ID:aDYguPxE
少なくとも絹旗自身はそう思っていた。
麦野やフレンダの様に自ら意志を持って戦うのではなく、滝壺の様に意志を奪われて戦うのでもなく。
絹旗は与えられた仕事だからという言い訳のもとに戦っている。
学園都市に来て、置き去りにされて、そんな自分の元に白衣の男達が現れて。
絹旗は段々と自分が闇の領域へ招き寄せられていくのを感じていた。

感じていて、それに抵抗しなかった。

抵抗した時に何をされるのかわからないという恐怖。
そんなものもあったのだろう、兎に角絹旗は今まで決して流れに逆らってこなかった。
その結果。

絹旗最愛は人殺し集団の一員になっていた。

どこかで一度でも抵抗を見せていれば、こんな場所に来ることは無かったのではないか。
そんな後悔を、常に絹旗は持っていた。
あるいは安っぽいC級映画に惹かれるのは、その『流れに逆らって我が道を行く』姿勢に憧れているからかもしれない。

だが。
この少年は。
浜面仕上は、その流れに逆らおうとした。
もともとそういう気質だったのか――いや、そうだったとしたらスキルアウトなんてやっていないだろう。
おそらくそういう資質があって、それが何かをキッカケにして覚醒しかけているのだ。
彼なら、この腐った組織を変えてくれるかもしれない。
事実、滝壺は浜面が来てから多少口数が増えてきた。
浜面と話していると、時折楽しげな雰囲気さえ見せる様になった。
だから、

(超お願いしますよ、浜面)

さっさと勇者にレベルアップして、せめて彼女のことくらいは救ってあげてください。

217わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜1:2010/05/02(日) 14:31:32 ID:aDYguPxE
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
『『スクール』の連中が学園都市の要人の暗殺計画を企てています』
学園都市内のとあるオープンカフェに奇妙な一団があった。
テーブルに腰を下ろしているのは、何処かの学校の赤いセーラー服を着た十代の少女。
その目の前には白衣を着た初老の男が、その隣には機械で出来た動物のような形の四足歩行型のロボット、そして彼女の後ろにはダウンジャケットを着こんだ少年が立っていた。
先ほどの声はロボットから発せられているようだ。
「それで、私達が出るのか?」
ロボットの声に答えるのは白衣の男だ。
「いいえ、博士。『アイテム』が処理を任されているようです」
「そうか、ならば今回も静観ということになるが……君は行くのか?」
博士が問いかけたのは赤いセーラー服の少女に対してだ。
「はい。『グループ』が動かない可能性もないとは言えませんから」
「そうか、ならついでに両陣の情報も後で報告してくれ。もっとも、このオジギソウの前にはレベル5と言えど敵ではないがな」
博士は手元のリモコンのようなものをいじりながら言う。

実際には、情報ならば現地に赴かずとも馬場―――ロボットの操り手が収集してくれる。
それでも少女が現地に赴くのは、『グループ』に身を置いているという少女の組織の裏切り者の始末を任されているかららしい。
先日『グループ』が断崖大学にて大きく動いたという報告があったのだが、その時は事後報告であったため彼女の任務が果たされることはなかった。
断崖大学での事件は事前に耳に入ってきてはいたが、その処理に『グループ』が当たるということは聞いていなかったのだ。
それから少女は裏の事件の匂いをかぎつける度に現場に赴くことにしたようだ。
そうすれば組織の裏切り者を発見できる確率が高まるということだろう。

――どうであれ自身には関係のないことだ、と博士は思う。
魔術という神秘に興味を持ちはしたが、それでも数式の魅力に勝ることは無かった。
博士の目的は数式という最高の美の追求のみ。
故に例え同じ組織の人間が他の組織の人間を殺そうとしていても止めはしないし、また手助けもしない。

自らの中でそのように議論を帰結させた博士の正面で、件の少女――ショチトルは、翌日の暗殺計画の行われる場所を確認していた。
「……親船最中の講演会、か」

♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「じゃ、浜面は明日来なくていいわ」
麦野が切り捨てるように言う。
どうやら考え事をしている内に話が進んでいたようだ。
「レベル0のパシリなんて、いるだけ邪魔だもの。流れ弾で死んでもいいっていうんなら止めないけど」
「………」
沈黙する浜面。
どうやら明日の作戦に浜面が同行しないことが決定したらしい。

(その方がいいですよ。実際仕事の段階になってまで麦野のケチをつければ、気分だけでぶち殺されるかもしれません。浜面みたいなレベル0が、レベル5なんて化け物と戦える訳もないんですから、そうなったら間違いなく超死にますよ)
そう考えたところで、ふと思う。
果たして自分は浜面が麦野に殺されそうになった時どうするだろうか、と。

―――やはり、静観を決め込むのか。

(反吐が出ますね)
心の中で吐き捨てて、目線を下に下げる。
と、絹旗は散らかされたパンフレットの中にあるものを見つけた。

(カマーティ監督の最新作……この前佐天さんと見たやつの続編じゃないですか!今度の舞台は油田……海上を走行する巨大オブジェクト!超そそる内容ですね!早速佐天さんに連絡して今度一緒に…)

携帯を取りだそうとして、絹旗は止まった。
どの道明日は仕事。
映画に行く暇はない。
だったら仕事が終わってから約束をしよう。

佐天涙子。
暗部とは何の関係もない、本当に純粋な意味での友達。
そんな少女に闇の仕事を控えたままで約束を取り付けるのは、なんだが嫌な感じがしたのだ。

携帯をしまい直す絹旗。
彼女は知らない。
自分が次の日に期せずして佐天涙子と出会うことになるのを。
それも、およそ考え得る限り最悪の形を以て――

218■■■■:2010/05/02(日) 14:34:56 ID:aDYguPxE
以上です。

すいません毎度毎度佐天さんで…
大好きなんです佐天さん。
あとショチトルも。
そして中一ロリのわが最愛の絹旗も。

というわけで、次の更新がいつになるかはわかりませんが、長い目で見てくださればと思います。
では。

219■■■■:2010/05/02(日) 16:24:40 ID:HkXy4KWE
>>218
GJ!!つ…続きが気になる……
安易に「書けた所まででいい」と意見してしまったツケか…クッ
でも佐天さんの人ならきっと完結までこぎつけられると安心できるので、続きをお待ちしています

今回も小ネタがいい味出してます。ヘヴィオがC級映画になってたとは
カマーティ監督とかトゥーマ・カミージョとか、何となくイタリアにいそうな感じ

220■■■■:2010/05/04(火) 00:04:00 ID:iVdChMNs
小ネタってほどでもないアホ会話を一つ。

「その短髪ってのやめなさい」
「むー、判ったんだよ短パン」
「た、短パンん!?」
「だってとうまが言ってたもん。
短髪は短パンで、パーフェクトクールビューティは縞パンだって」
「ふーん、そう、アイツあの子の見た事あるわけね」(バチバチ)

個人的にはこの二人仲よくなって欲しい……。

221■■■■:2010/05/04(火) 01:25:57 ID:Smci4mtw
初投稿です。新参者ですがよろしくお願いします。
タイトルは「とある妹達の番外個体」
20巻直後に搬送された一方通行と打ち止めと番外個体の話です。
あと、金髪碧眼の男を勝手にオッレルスにしてしまいました。
それでは投下します。

222『とある妹達の番外個体』:2010/05/04(火) 01:27:21 ID:Smci4mtw
1
不完全な静寂が延々と続く。僅かに聞こえるのは、か細い呼吸音と足音。
日の光が完全に遮断され、黒ずんだ壁に囲まれたこの部屋で一人の少年が
落ち着かない様子で、コツコツと乱れた拍子を現代的なデザインの杖で奏でながら
右往左往していた。頭頂から靴の末端まで白一色に染まっている彼は
この一室では浮いて見える。
少年の名は一方通行。その整った顔からは嫌悪、焦燥の表情が絶え間なく
作り出されていた。動揺が隠せないからだろうか、寒気を感じる。
(……結果はまだ出ねェのか?)
その目線の先には、少し薄汚れたベッドで眠りにつく少女があった。
少女の名は打ち止め。かつての天真爛漫で、元気を振りまく姿は
一切その様子からは想像出来ない。以前の衰弱しきった病態から抜け出せたのが
せめてもの幸いだったが。
(やはり畑違いの人間じゃこの苦痛を取り除く手段はわからねェってワケか)
仮の答えを弾き出した一方通行は自分の考えを整理していく。
あのヒーロー……いや、あの『上条当麻』との再戦に破れた後、
奴が打ち止めに右手で触れた瞬間、打ち止めとエイワスの繋がりは一時
断ち切られた。少なくとも生命の危機からは辛くも逃れられたようだ。
その後二人は上条達が率いる軍用車の群から離れ、金髪碧眼の男と同行することと
なった。その者はオッレルスと名乗り、打ち止めの体を検査してみようと
提案した。一瞬罠かと頭をよぎったが、例えそうだとしても、
打ち止めに害意を加えない限りは利用出来ると踏んで、一方通行はそれを承諾した。
第一、あの上条達に誘導され出会った人物だ。おそらく学園都市の傘下に属す者では無い。
そしてそのままこの建物に辿り着いた。外観からしても相当老朽化した建造物とわかる。
今、オッレルスは席を外している。おそらく別室で文献を漁っているのだろう。
(だとしても、俺のやるべき事はもう決まってる。このガキのためなら……)

223『とある妹達の番外個体』:2010/05/04(火) 01:28:03 ID:Smci4mtw
あの一戦から一方通行の思考はより尖っていった。今までの自分との剥離、
根源とも云うべき心の主柱の変化を自分自身でも確かに感じていた。電流が走ったかの様だった。
これまでの彼は『自分がこうあるべき』、『自分が果たさねばならない事』といった
義務感、使命感、自分勝手で自己満足的な、まるで子供が思念する目標を掲げ
動いているだけだった。あの少女が突きつけた言葉の通りに。
それだけでは結局は何も変わらない。身勝手な理想論を無理矢理描き、その実現に
走り続けるだけではこれより先に控える試練は絶対に乗り超えられない。
(だったらどォする?)
ならば、『自分がなりたいもの』、『自分が本当に成し遂げたい事』と心が叫ぶ
直接な願いや直感に従えばいい。無粋な言葉で語れば、夢、などとも言おうか。
そうすればもはや心身は揺るがない。もう心がどんな残虐な所行に引き裂かれても、
体の四肢を全て捻り切られようとも、どんな痛みにも耐えられる。突き進められる。
偶然にも、この理念はあのツンツン頭の少年の行動指針と重なる一面があった。
それに気づかない一方通行だったが、その転換に確実な手応えを感じていた。
ーーそうしてその後、彼は気怠そうに、明らかに意識してふと何気なく振り向き、こう呟いた。
「で、何でオマエがここにいンだァ?」
その背後には、かつて彼の心を打ち砕いた茶髪の少女が微笑みながらちょこんと座っていた。
少女の名は番外個体。第三次製造計画によって生み出された、新たな『妹達』の一人だ。

224『とある妹達の番外個体』:2010/05/04(火) 01:29:44 ID:Smci4mtw

2
「やっほう。やっとミサカの存在を受け入れてくれたね。第一位。ずっと後ろで
 ひたすらアピールを繰り返してた努力が実って嬉し涙が出そうだよ」
愛想を振りまく天使の様な笑顔を見せつけながら番外個体は少年に抱きつこうと迫って来る。
一方通行は溜息をつかざるを得なかった。何せ自分と打ち止めを殺しに馳せ参じたはずの
人物が、背後から吐息を吹きかけたり、体に触れて微弱な電流を流してきたりするのだ。
逆に関わりたくなくなるのが当然の反応だろう。
「あのなァ、オマエが抱えてた任務とかが頭からスッパリ抜け落ちてンならまだしも、
 どうして俺の側に平然といられンだ?俺がオマエにナニやったか覚えてねェのか?」
当然の疑問をこのアバズレ少女に投げかけてみるが、その回答はまたおかしな物だった。
番外個体が、その意外と膨らみがある胸を張って答える。
「もちろん覚えてるよ。第一位がミサカのこの美顔に何度も豪打したのも、ミサカの使命も。
 でもそれらの事情はこの番外個体における現在の行動には全く干渉しない」
どういうことだ?今一不透明で番外個体の本心が読み取れない。話を続けて聞くと、
「ミサカは超能力者第一位の一方通行と、ミサカネットワークの統制者である打ち止めを抹殺し
 その後ミサカ自身も『セレクター』によって処分されるはずだった。でも第一位の『温情』に
 よって偶然生き延びてしまった。破壊された『セレクター』には学園都市がミサカを監視、
 制御する機関が備わっている。それが無くなった今、もはや誰もミサカを縛る事は出来ない」
『温情』という言葉に引っかかりがあった。一方通行は確かにあの瞬間だけは番外個体を救おうと
した。しかしその感情と行動は、この世界への憎悪で全て吹き飛んでしまったわけだが……
「つまり、ミサカは第一位の手によって自由になった。だからもうミサカはかつての目的を捨て、
 新たに築かれた欲求に従って動く事にした」
ピクン、と一方通行の心臓が反応した。何か嫌な予感がする。
「ミサカは、あなたに興味が湧いた!」
番外個体の顔が彼の唇に触れそうになるまで近づき、そう言い放った。
「打ち止めというちっぽけな存在のために学園都市に逆らい、妹達という恨まれてもおかしくない
 群衆のために奔走し続ける、論理的に考えてもおかしいあなたはもうミサカの目を釘付けにした。
 だからずっと着いていく。ミサカが第一位を寸分まで理解するまで。
 あ、こんな可愛いミサカを傷物にしてくれた責任も取ってもらおうかな。だからミサカの事も
 大事に扱ってよ。そこで寝てるあの打ち止めの様にね!」
そう熱弁した直後にまたもや番外個体は一方通行を抱擁しようとダイブしてくる。

225『とある妹達の番外個体』:2010/05/04(火) 01:30:46 ID:Smci4mtw
これは、好意からくる行動とは、違う、と思う。負の感情が芽生えやすい番外個体が
ここまで自分を好くのには、どうしても違和感を感じる。自分を憎んでいたのではないのか。
……とつい勘ぐってしまう。裏があるんじゃないか、そんな気がしてどうもこいつを
受け入れられない。うざそうにあしらってから、話題を変えた。
「そォいや俺はオマエをさんざん痛めつけたンだったな。なら何で外傷が一つも
 残ってねェんだ?『肉体再生』なンざ使えるワケでもねェし、俺はそこまで
 治療した覚えは無いンだが」
確かに今の番外個体は不思議な事に一方通行が負わせた傷も一切無く、健康そのものだ。
叩き折ったはずの腕の骨すら完治している。そんな状態で傷物とか言われても釈然としない。
ニヤニヤしながら、艶かしく手で全身を伝わせつつ答えてきた。
「『暗闇の五月計画』を覚えてるよね?第一位の演算パターンを元に自らの『自分だけの現実』を
 最適化させる実験があったんだけど、その中には第一位のベクトル変換能力を応用して
 生体電気を制御し、自分の細胞復元速度を早める能力データが残されていた。
 あなたを殺す際に『書庫』にアクセスする機会があったから、それを知って流用したの。
 体内の電子情報を操れるミサカなら、あなたとほぼ同じ精度で体を癒せる。
 理論上なら他の妹達にも実行可能だったろうけど、大能力者であるミサカ以外は
 実戦投入は無理だったかもね。そもそも絶対能力進化実験の障害になるから
 知らされていなかっただけかも」
「ほォ。ちゃんと理由があったンだな。だったらこのガキも類似した事が可能なワケだ。
 そいつを引用してこいつの中の異変を取り除けねェのか?」
そろそろ余興とも言える会話は打ち切るべきだろう。時間は待ってくれない。
ここで一方通行は核心に触れられるよう、また話を移行させた。番外個体も重要だが、
それより優先すべき事は山積みだ。何より打ち止めを救う可能性があるなら何でも試す必要があるからだ。
だが、番外個体は返答せずに頬をぷくーと膨らまし、そっぽを向いた。
自分より打ち止めを重く扱った事に不満があるらしい。面倒な奴だな、と思いつつ
番外個体に正誤を問おうとした瞬間、

一方通行の腹下部に重圧が掛かった。

226『とある妹達の番外個体』:2010/05/04(火) 01:32:02 ID:Smci4mtw


この合図はここに来た、いやこの男にあった瞬間にもあった。明らかに異質な反応。
かつて一方通行が海原と接触した時に感じた物と同じだ。
オッレルス。打ち止めと一方通行(と番外個体)を迎えいれた人物だ。
胡散臭さは感じない。むしろあらゆる人生の困難を全て切り抜けてきた経験がその肌に
刻み付いているかの様だった。その威厳はそこらの一般人ではまず発揮出来ないだろう。
そんな彼が羊皮紙の束を抱えてこの部屋に飛び込んできていた。待ちわびた。
「やっとこの子を治癒する手だてを思いつき、術式を構築出来たよ。君達に説明すべきだろうから
 包み隠さず話そうと思うが、いいかな?」
術式などとあまり耳に入った記憶の無い言葉を聴いた気がしたが、もはやどうでもよい。
このロシアまで渡って来た目的がやっと成就するのだ。一瞬の歓喜と焦りを感じた。
一方通行はその餌に食らいつく。
「ああ、よろしく頼む。さっさとこのガキを楽にしてやりてェからな」
「まぁ待て。その前に俺は君達の名前も抱えてる事情も完璧には把握出来てない。
 順序が逆になったが、そこら辺の背景を大雑把に教えてくれ」
確かに出会ったすぐからオッレルスは検査と思案に入ってしまったせいで説明不足に
なってしまった。この男の、人を救うのを優先する気質が先行したからだろうか。
とにかく解説を早く済ませて打ち止めを直して欲しかったが、

「はい!ミサカとこの人、一方通行は夫婦でこの子を助けたくてここまで来たんです」

(…………は?)
横槍が入った。いつの間にか番外個体が一方通行の片腕を抱きしめつつ懇願していた。
「学園都市の医療技術でも、ミサカとこの人の間に生まれたこの子の命を持たせられないのが
 わかって、どうしていいかわからなくて全国を経由してこの辺境まで行き着いたんです。
 お願いです!ミサカ達はどうなってもいいから、何でもしますからこの子を苦痛から
 解放してやって下さい!」
涙ぐむ仕草まで仕込んである。傍目にみれば本当に番外個体や一方通行と、打ち止めが
親子だと誤解してしまいそうな程の迫真の演技だった。

227『とある妹達の番外個体』:2010/05/04(火) 01:33:27 ID:Smci4mtw
(……こ、こいつ人が黙ってりゃ嘘をペチャクチャ吐きやがって……!?)
ある事無い事吹き込む番外個体のデマカセを正そうと、声を荒げようとする一方通行だったが
そこで異変に気づく。
声が出ないのだ。
妙だ。まるで人為的に喉が働かなくなった感じがする。何かがおかしい。思わず番外個体の
方を向くと、オッレルスに見えないように、小悪魔的な含みを持つ笑顔を一方通行に見せつけていた。
そこで原因がわかった。こいつのせいだ。体内に残留した『シート』で一方通行の首元に
装着されている電極を強制的に誤作動させているのだ。
(な……言語機能を俺から奪いやがったのか!?器用なマネしやがって!)
といっても、常識的に観察すればこんな虚言などすぐにバレる。普通は信じるワケが無い。
常人なら「いや、それはありえない」と即座に突っ込む程度のウソだ。
と、オッレルスの反応に期待する一方通行だったが、

「そうか!それは難儀だったね。大丈夫だ。君たち親子の平穏が再び訪れるよう、俺も全力を尽くすよ!」

本気で信じちゃったよこの人。そういう変人だったのか。
こんな奴に打ち止めを預けた俺が間違ってたのか。いや、馬鹿だからこそ上条はこいつを推薦したのか?
歪曲した首肯があまりにも馴染みすぎている。もう訂正するのも諦め、事態が好転するのを待つ事にした。
自分が滑稽な扱いを受けてそれで済むなら大歓迎だ。今日までもそういった色眼鏡で見られてきた。
そうしている内にオッレルスが口火を切った。
「よし。必要な情報は揃ったし、本題に戻るとしよう。……申し訳ないが、
 奥さんは席を外してくれると有難い。君が娘さんを心配しているのは重々理解してる。
 しかし、先に彼だけに述べておくべき事が少しだけあるんだ。短時間で済む。いいかな?」
想定外の滑り出しだった。同時に危機感が一方通行の脳裏に行き渡った。これは艱難の暗喩だ。
打ち止めの治療に何らかのデメリットがあると、暗に示している。考え過ぎであってほしい。
そうとも知らず、口車に乗せられた番外個体は意外にもすんなりと申し出を受け入れ、
「そうですか!確かに懸念が残りますけど、どうしてもと言うなら指示に従うまでです。
 この子を頼みます……」
と着飾った決まり文句を漏らしながら、ドアを開けて廊下に出た。同時に妨害電波も
次第に減退していき、一方通行は平常に戻った。ここからが本番だ。固唾を飲んで、宣告を急かした。

228『とある妹達の番外個体』:2010/05/04(火) 01:34:34 ID:Smci4mtw
「アイツが漏らした通り、このガキは科学の枠に留まる技術じゃどォにもならねェ。
 この病状自体が学園都市の差し金で惹起したからだがな。それで俺達は奴らと反目した。
 そこで『全く別の法則』とやらが必要になると聞いた。それを求めてここまで来たワケだ」
「先刻までの戯言は彼女に真実を知らせない為の詭弁だよ。混乱を招くからな。
 君の抱える問題も学園都市の策謀もこの子に降り懸ってる異常の根源も承知している。
 あのアレイスターの聖守護天使がこの子を踏み台にして顕現したんだろう。
 正確にはミサカネットワークによってAIM拡散力場を前導させるのを
 強引に打ち止めを『始動キー』として、持続させている」
一方通行は目と耳を疑った。この男は今、打ち止めの病状の原因を明かすどころか、
学園都市が抱える闇そのものの正鵠を射った。門外漢かと思いきや、一方通行以上に現状を理解している。
どこからそれほどにまで正確な情報を知り得たのか、疑問は残るが、
ならば話は早い。先程の発言に引っかかりと底知れぬ不安を感じるが、今は前に進むしかない。
「そこまで把握してンのなら、さっき口走った『治癒』も的確なンだよなァ。
 だったら、ここまで焦らす必要は毛頭無ェはずだ。……何を隠してやがる?」
一番の不安材料にメスを入れた。打ち止めの『治癒』に弊害があるならば、全て排除するまでだ。
だが、その弊害についてはこの男は黙ったままだ。まさか、そこまで事態は深刻なのか?
オッレルスは重い口を開いた。
「『治癒』の方法は二つある。一つは最終信号をミサカネットワークから断絶させる事だ」
何?
「聖守護天使は最終信号を『始動キー』としているが、本来なら顕現した時点でミサカネットワークを
 間借りするだけでAIM拡散力場を永続的に連結し続ける事が可能だ。
 しかし、どうやらアレイスターは念には念を入れて『始動キー』を常に待機状態に設定し、
 万一聖守護天使が崩壊したとしても、すぐまた現世に回帰できる体制を取っているようだ。
 故に最終信号に、極難解で不安定な演算を常に無意識の内に反芻させるような仕組みを植え込んだ」

229『とある妹達の番外個体』:2010/05/04(火) 01:35:19 ID:Smci4mtw
つまり、エイワスとの戦闘時に奴の『核』を弾いたにも拘らず平然と復活したのは、
打ち止めに『始動キー』を埋め込まれた証拠だという事か。
それが理由。最終信号としての役割を果たすため、望んだ訳でもない不条理な重荷を背負わせ続ける。
彼女は何も悪い事をしていないのに。一人の人間なのに?どうして道具としてしか彼女を扱わない?
「……じゃァ、その仕組みを解けばいいんだろォ?どうしてこのガキをミサカネットワークから
 切り離すなんて解決法が取られるんだ?」
打ち止めがミサカネットワークから外される。即ち、ミサカという大脳からの脱却とは
妹達との意識疎通がされなくなり、情報や記憶の共有が途切れる事を指す。
いや、ミサカネットワークの司令塔である彼女がいなくなれば、学園都市は同機能を持つ新たな個体を
刷新するはずだ。それか、それこそが伴う痛み、なのか?
「『始動キー』は、最終信号個人の脳だけではとても抱えきれないほどのヘッダを持つ。
 つまりこの子の頭で処理出来ない部分は他の妹達に分割され、代理演算をさせるように
 最終信号が上位命令文を妹達に送りつけているんだ。即ち、最終信号が上位命令文を出せない状況に
 なれば『始動キー』は不完全な計算式の固まりと化し、最終信号に埋め込まれた『始動キー』そのもの
 も自然と意味をなさなくなる。こうなれば後は学習装置で治療出来るレベルまで落ちる」
ここまで判明しているなら、問題は解決したと同義ではないか。一方通行はここでようやく
心のしがらみが和らぐのを自覚した。

しかし、現実はまだ一方通行と打ち止めを許さない。
「ミサカネットワークと最終信号を切り離すにあたって、俺の術式を施すわけだが、
 ここで一つの欠点があるんだよ。最終信号の超能力を人為的に消し去る必要があるんだ」

……つまり、科学以外の手で能力を消滅させる。
電流を操れなくなれば打ち止めはミサカネットワークと繋がらずに済む。
『全く別の法則』に乗っ取って。
それは、その結果が齎すデメリットは、

「……彼女の言語機能と計算能力を削ぎ落とす。今の君の様に、だ」

230『とある妹達の番外個体』:2010/05/04(火) 01:37:07 ID:Smci4mtw
4
死角からの残酷な事実。覚悟を背負ってここまで来た。打ち止めのためなら、
自分の信念も生き様もプライドも、自己の破壊に当て嵌まる犠牲なら、それらを受け入れる覚悟を。
だが、実際の代償は覚悟だけでは足りなかった。
つまりは、打ち止めを救うなら打ち止めそのものを犠牲にしろと言っているのだ。
一方通行は嘲った。打ち止めを敵に回してでも戦う決意があろうとも、
打ち止めの属する世界をぶち殺してまで、打ち止めを守り抜く手腕が無かった自分を。
言語機能、計算能力への後遺症。その重みは苦渋を洩らすほどわかる。
一方通行本人も、あのカエル顔の医者に与えられたチョーカー型電極によって
ミサカネットワークの補助を受けなければ廃人に限りなく近い存在になってしまう。
打ち止めがそうなったら?もう光は途絶える。彼女をミサカネットワークから切り離す為の処方だ。
一方通行と同じ埋め合わせは不可能。待つのは物事を楽しみに笑う彼女、
自分にだけ向けてくれる、無邪気で、バカらしくて、こっちも笑い飛ばしたくなる太陽の様な笑顔、

それらが抉りとられた灰色の世界だ。

絶望が境界線を逸脱して光の世界にまで浸食してくる。その光の中心にいるはずの打ち止めに向かって。
だが、頭の中は驚愕するほど冷静だった一方通行はどうしても拭えない考えに至っていた。
(イイじゃねェか。簡単だ。この『治癒』が終われば、少なくとも学園都市のクソったれどもは
 もう打ち止めを奪ったり、始末しようとはしねェはずだ。打ち止め本来の役割が白紙になるからな。
 言語機能?計算能力の低下?それだけの犠牲で済むなら大満足のハッピーエンドで終幕だ)
そう、自分が頷いてしまえば。もう終わるのだ。戦いも、打ち止めの災難も。

自分の脳裏に焼き切れるまで刻み付けた、打ち止めのいる光の世界を守るはずの、自分の覚悟さえも。

「どうするんだい?この『治癒』なら10分で準備できる。やるなら今しかないだろう。
 学園都市にこの末路を漏洩させないためなら、ここで打ち止めの『自分だけの現実』を無くすんだ」
オッレルスが何かほざいている。学園都市?そんなものもあったっけ?
放心状態だった。だが理性はこれに従えと煩く後押ししてくる。やれ、やってしまえ。

231『とある妹達の番外個体』:2010/05/04(火) 01:38:00 ID:Smci4mtw

でも、でも、それでいいのか?一方通行は自分の脳、心、魂に真義を問うた。
自分の本心。未来の夢。それは、

「ォ断りだ」
はっきりと言い放った。誰かに命令されたワケでもない。熟孝して導いた論理的に正しい結論でもない。
「……このガキの生涯まではオマエも片耳でしか聴いた事ねェだろォ?こいつはな、
 本来なら本当に小せェ存在のはずだったんだ。普通に大きくなって、ダチ見つけて遊んで、
 黄泉川や芳川に恋愛相談なんかして、騒がしいモンには野次馬気分で覗きにいって、
 それで最後に自分から笑う。そんなどこにでもいるただのクソったれの子供でいられたはずなんだ」
一方通行は信じていた。あらゆる闇や暗躍するクソ共を駆逐しきれば、打ち止めもただの少女として
生きられる。そんな純朴な幻想を。
それが本心だった。そうしたかった。ウソは無い。本当にそうしてやると無意識に願い続けていた。
だから、引き下がれない。善人だろうが悪党だろうが関係ない。

一方通行という個人のみが持つ、譲れない思いだった。

「そいつを乱すようじゃァ、納得出来ねェンだよ。言語機能?計算能力?ンなモン捨てなくても
 門は開いてゆく筈だ。もし無かったとしても、俺が学園都市最強の力で風穴開けてやる。
 ……だからオマエの申し出は受けられねェ。すまなかったな」
一方通行は頭を下げた。オッレルスも打ち止めの心配の末に
この『治癒』を提案したのだ。無下にはできない。本来なら人に会釈する一方通行などありえないはず。
それを実感して、オッレルスは深い笑みを浮かべて頭を上げてくれと言い、
「そう決断すると予想してたよ。そうだ。どうせ未来を切り開くのなら
 より輝かしい方が良いに決まってる」
未来か。
「ンじゃ、俺らはここにはもう用は無ェな。夜が更けたら出てくが、それでイイよなァ?
 こっちもか細いヒントを幾つか持ってるしな。そいつを手がかりに動くさ。世話になった」
「ふむ……君らしくない。少し前の要点を忘れてないか?」
少し前?第一『治癒』の壮絶さに戦慄したせいか、些細な情報を抜け落としたかもしれない。
が、ここで前の記憶を取り戻した。打ち止めを救う手段は『治癒』だけではない。それは、

「第二の手段だ。禁書目録を呪縛から解放し、彼女から完璧な治療法を聞き出すんだ」

232■■■■:2010/05/04(火) 01:42:23 ID:Smci4mtw
以上です。肝心な処で切れてて申し訳ないです。

悪党でなくなった一方さんはどんな信念を持って
動くのかのを自分なりに考えてみて書きました。
番外個体にもこの先活躍させたいので、続きも頑張りたいです。

では、次回更新まで。ありがとうございました。

233■■■■:2010/05/04(火) 02:28:26 ID:ui9954Kc
>>232
GJ
すごくおもしろいです。

234■■■■:2010/05/04(火) 03:19:55 ID:YP75Urls
なんか普通に21巻の内容みたいw
期待しています

235■■■■:2010/05/04(火) 06:11:33 ID:CPQz/HRs
番外固体お母さん、その発想は無かった!
打ち止めがこのことを知ったらどんな顔をするのかが楽しみです!

あとリクエストをつけるとすれば、上条が一方通行に「義兄さん」と呼びかけるとか。

236神浄の討魔=美琴信者:2010/05/04(火) 17:05:00 ID:Oi0nY8k.
はい、皆さんお忘れのどこぞの馬鹿作者です。最終投稿は7スレだったりします。気になる方は、7スレ目で『反乱因子』で検索。
で、今日は久々の投下なので結構な量だったりします。中途半端なのにね。
では投下ー。

237とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参-Ⅹ-Ⅸ:2010/05/04(火) 17:08:40 ID:Oi0nY8k.
適当に言う一方通行(アクセラレータ)。
「…で?その理由と、方法は?」
美琴が、一方通行(アクセラレータ)をにらみつけながら言った。
「理由は言うまでもねェだろ。超電磁砲(レールガン)の方は、今後戦力になりそうだったからなァ。それに、俺自身の強化にもつながりそうだったから、生かしておいた。上条の方は…」
そこまで言った一方通行(アクセラレータ)が、極悪な笑みを浮かべて、
「…こいつを殺すのは、俺だけの特権だ」
「やめましょうよ一方通行(アクセラレータ)さんっ!いい加減、倒される→怒り→戦闘、の無限ループから脱しませんか!?」
「ンじゃァ、さっさと俺に殺されろ」
「んな要求のめるかぁぁ!!」
当然の反論をする上条。
だが、一方通行(アクセラレータ)は気にも留めていないらしく、
「そういうことだ。こいつらに火の粉が降りかかったら、結果として俺のマイナスにつながる可能性があった。だからわざわざ炎から遠ざけてやったンだよ。なンか文句あっか」
そういい、無関心そうに目をそむける一方通行(アクセラレータ)。
そこに、また美琴が質問する。
「動機は分かった。方法はどうやったのよ」
「…チッ。めんどっちィな…あの時、助けるんじゃなかったか…?」
一方通行(アクセラレータ)は、真剣に考え込む前に、美琴が自分をにらんでいることに気づいたようで、ため息をついてから話し始める。
「空気のベクトルを操作した」
「具体的に言いなさい」
簡潔に説明しようとしたのか、それしか言わなかった一方通行(アクセラレータ)にやはり噛み付く美琴。
「…ベクトル操作した空気を、テメェらのところまで送っただけだ。その空気は俺の干渉を受けてるから、自在に操れた。こいつの右手に触れないようにするまで、繊細にな」
そこまで言うと、もう文句はねェだろ、と小さく言い、腕を組んで目を閉じる一方通行(アクセラレータ)。
美琴の方もそれで納得したのか、何も言わなかった。
「…あのー。じゃあ、『あの声』もお前のものでいいのか?」
と、そこに上条がさらに追撃をかける。
「…」
心底忌々しそうな目を上条に向ける一方通行(アクセラレータ)だったが、
「そうだ」
その一言だけ言い、また同じように目を閉じてしまった。
「では、戦闘報告についてはこれでよろしいでしょうか?」
なんか機械が勝手に、『戦闘報告』なんて物騒な呼び方をしている。実際そうなのだろうが。
無言の会議室の中、機械は次の音声を発する。
「それでは、次は今後戦闘に協力してもらう方々の紹介に移らせてもらいます」

238とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参-Ⅹ-Ⅸ:2010/05/04(火) 17:17:08 ID:Oi0nY8k.
※ すいません、↑はミス投稿です…もう投稿してたorz…

「紹介?」
上条が、疑問を口にする。
「はい。一人一人の名前、写真、性別、サイド…これをもとに、所属している組織や能力名、得意な魔術、個人の戦闘能力などなどを紹介させてもらいます」
「オイオイ。そりゃ、本人たちに了承は得てンのかァ?」
一方通行(アクセラレータ)が、まともな意見を述べる。
「いいえ。なので、この場で了承を得たいのですが…反論がある方は、ご自由にどうぞ」
そんな事を機械が言ってくるが、先程のことも含め、何かいえるはずはない。
「では、皆様の了承を得た、という方向で話を進めますが、よろしいでしょうか?」
なんかもうみんな疲れたような表情を浮かべる中、機械だけが淡々と喋っている。
「了承を得た、とみなしました。よって、個人の紹介に入らせてもらいます」
もう勝手にしてくれ、と全員の表情が語っていた。



「…以上で、主要人物の紹介を終わらせてもらいます」
突然部屋に現れた、巨大モニターで説明していた機械が、唐突にそんな事を言った。
今機械が言ったとおり、紹介したのは主要人物。上条や一方通行(アクセラレータ)、インデックスや美琴、神裂とかだ。
(自分も含まれているのか、上条にはよく分からないが)そんなポピュラーな人間を知らない者はいないらしく、上条にいたってはもう寝かけていた。
「それでは、次からは組織となっているものを紹介させてもらいます」
機械がそう言うと、次にモニターに写ったのは天草式の一同だった。
「天草式十字凄教の皆様です。魔術サイド所属、イギリス清教の必要悪の教会(ネセサリウス)の傘下にあります」
組織になると、主要人物の顔しか写さないらしい。
最初に神裂、次に建宮、最後に五和が写った後は、3人くらいまとめて写った写真がスクロールされていた。
「総員は50名程度。現在では神裂火織がリーダーを務めています。副リーダーとなるのは建宮斎字。そのほかの戦闘能力は、あまり差がないものと見ています。神裂火織がリーダーを務める前、副リーダーであった五和に関しては、通常戦闘要員のトップ、という扱いです」
組織図が今度はモニターに写った。簡単な上下関係を表しているものらしい。
「では次に、元アニェーゼ部隊の皆様です」
巡るましく変わっていくモニター。
それに写ったのは、三つ網のシスターだった。
「魔術サイド所属、以前はローマ清教傘下でしたが、『法の書』事件後はイギリス清教に入りました」
アニェーゼの写真が写し終わると、早くも集団写真が写されていく。
「リーダーとなるのは、アニぇーゼ=サンクティス。そのほかは役職が振られているだけです」
役職が振られている、という言葉を聞いた上条は、じゃあこの写真もそれが関係してるのか…?とか考える。
「総員は250名に上ります。戦闘方法は個人によって違いが見受けられます」
その言葉が終わるとともに、やはり写真も切り替えられる。
次に写ったのは、見慣れた少女。
「次は、組織、とはいえないのですが…」
唐突に、機械が口ごもる。
まぁ、仕方がないだろう。
馬鹿正直に、「クローンの皆様の紹介です」なんて言えないだろうから。
「…団体名のようなものも決まっておりません。通称、『妹達(シスターズ)』と呼ばれています」
無理矢理に話を進めていく機械。
そのモニターに写ったのは、最初は美琴。次に妹達(シスターズ)が集まっている写真が映し出される。
「科学サイドに所属。総員は1万弱。各自の能力は、異能力者(レベル2)、強能力者(レベル3)程度の電撃使い(エレクトロマスター)。『欠陥電気(レディオノイズ)』で通っています」
紹介されているはずの御坂妹の表情は、一つも変わっていない。
「リーダーのようなものも存在していません。変わり、『安全装置』としての役目を持ったものは1名います」
そう機械が言った後に映し出されたのは、笑顔満点な打ち止め(ラストオーダー)だった。通常時なら結構騒ぐだろうが、打ち止め(ラストオーダー)は寝ていた。
美琴が何か突っかかってくるか、と思っていた上条は、特に美琴がアクションを興さないのを見て少し驚く。
「…今更、何言ったって仕方ないでしょ」
上条の視線に気づいた美琴が、小声で言った。

239とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参-Ⅹ-Ⅸ:2010/05/04(火) 17:18:28 ID:Oi0nY8k.
「では次に、残った科学サイドの者を紹介させてもらいます」
無理矢理妹達(シスターズ)の話を終わらせた機械が言った。

「葛城妖夜。男性。長点上機学園2年、超能力者(レベル5)の第6位」
映し出されたのは、長点上機の制服を着て、以外にかしこまっている妖夜だった。
「能力は、学園都市内で3人しか所持していない『肉体変化(メタモルフォーゼ)』。自分の肉体を好きなように変化させる能力です。基盤(データ)があれば、原子から作り変えることも可能、といわれています」
「ハッ。そこまで大層な能力じゃねぇよ」
妖夜が、右手をひらひら振りながらいうが、やはり機械は無視して続ける。
「削板軍覇。男性。長点上機学園3年、超能力者(レベル5)の第7位」
と、次に映し出されたのは、妖夜と同じ制服を着ているが、きついのか第2ボタンまであけている軍覇だった。
「能力は、おそらく念動力関連であると思われる『念動砲弾(アタッククラッシュ)』。その存在はいまだ詳しくは解明できていません。そして、世界最大の『原石』が持つ能力でもあります」
「…原石?」
説明を適当に聞いていて、うつらうつらとしていた軍覇が唐突に言った。
「って?自分のことじゃねぇのかよ」
隣に座っている妖夜が、突っ込みを入れる。さっきの紹介だと妖夜のほうが年下のはずだが、おそらく年齢ではなく能力で上下関係が成立しているのだろう。
「…さっぱりだな」
自分のことを言っているとは思えないほど、あっさりという軍覇。
「原石については、あまり研究が進んでいないのでこの場での発言は控えさせてもらいます」
機械はそう言ってごまかしたが、上条は直感的に違うな、と感じた。
「そして次は…この場には居合わせておりませんが」
と、機械がそこまで言ったところで、
「この私が、自分のことを説明されているのにその場にいない、なんて状況を作るとお思いで?」
という声が聞こえた。
直後、
ドゴッ!と、
美琴が何かを殴り飛ばした音が響いた。
「…さ、さすがお姉様…わたしの『空間移動(テレポート)』を予想していたのですわね」
「…こんな公衆の場でも、あんたはあんたのまんまななのね…」
美琴が、ハァ、とため息をつきながら、立ち上がった反動で倒れた椅子を戻しながら席に座る。
「…白井か」
「御機嫌よう殿方さん。まさかとは思いますが、こんな公衆の場でもお姉様にちょっかいを出す、なんてことはしていませんわよね?」
美琴に殴られたのにもかかわらず、ダメージを感じさせない仕草で立ち上がりつつ言う黒子。
「申し訳ございません。昨日の戦闘にかかわった風紀委員(ジャッジメント)として、事情を話しておりました」
みなに頭を下げる黒子。こういうところはお嬢様って感じがするのにな…、と上条は思う。
「では、本人も来ましたので…」
「あ、ちょ、まつんだにゃー!この際この俺も登場させてもらうぜい!!」
「…まさか」
黒子が椅子に座ったのを見計らった機械が話を続けようとしたところで、妙な口調の男の声が部屋の外から響いた。それに上条は、頭を抱える。
「土御門元春様のご登場だにゃーッ!」
全く場の雰囲気を呼んでいない声が響き、『バーン!』という効果音つきで一人の男が部屋に入ってくる。
「…」
なぜか、全員がその男を冷たい視線で見つめる。
「…何故?何故にそんな視線?俺のことを知らない人はともかく、『グループ』の奴とか五和とか、そしてカミやんとかは少しは突っ込んでくれないと困るんですが?」
ヒーローの登場シーンのようなポーズを決めたまま、カチコチに固まって汗を流し始めた土御門が言うが、もちろん誰も突っ込んでくれない。
「…すみません僕が悪かったです…」
土御門がなぜか謝り、顔を思いっきり俯けたまま…アステカの魔術師の隣に向かう。
「あ、あれ?お前、何でそこなの?」
いい加減かわいそうになってきたので、上条がとりあえず土御門に言葉を投げる。
「…カミやん…やっぱりカミやんだけが俺を救ってくれるんだにゃー…」
涙を流しそうな表情で言う土御門。上条の質問には答えずに席についてしまった。
「そのことについては…多分、こいつが説明してくれる」
突然、それまでの口調と表情を切り替えて機械の方に言う土御門。
「土御門元春の紹介は後にさせてもらいます。まずは、白井黒子の紹介にさせてもらいます」
そう機械が言い、モニターには黒子の写真が写った。

240とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参-Ⅱ-Ⅹ-Ⅰ:2010/05/04(火) 17:20:44 ID:Oi0nY8k.
そして、機械が感情のない声で言う。
「白井黒子。女性。常盤台中学1年、大能力者(レベル4)の空間移動者(テレポーター)」
と、機械がそこまで言うと、次は黒子が風紀委員(ジャッジメント)の腕章をつけている状態の写真が映し出された。
「風紀委員(ジャッジメント)第一七七支部所属。
本人が所持している能力、空間移動(テレポート)はかなりの有用性を誇り、昨日の戦闘においても、同系の超能力者(レベル5)を単独で撃破。戦闘能力地は大能力者(レベル4)でもかなりのものだと思われます」
「実際に役に立つ能力ではありますが…結構繊細ですので、扱いが難しいんですの」
黒子が、誰ともなく言った。
それが拾われることなく、次にモニターに写ったのは、いつもと同じチャラけた格好の土御門だった。
「土御門元春。男性。現在では多角スパイとして、学園と市内の高校1年、イギリス清教の必要悪の教会(ネセサリウス)所属、という立場に立っています」
そこまで言うと、なぜか土御門は携帯を取り出し、誰かと会話し始めた。
機械はそれを無視し、話を続ける。
「学園都市の能力開発の時間割り(カリキュラム)を受けた影響で、魔術を使うと身体に多大なダメージを――――」
と、機械が離していた途中で、土御門は電話を切って発言した。

「あー、それ訂正訂正。今のスーパーイケメン土御門元春様は、魔術を使っても何の問題もないぜよ」

「…?え、それ本当かよ??」
その、結構爆弾な発言に上条は思わず聞き返す。
「本当だぜぃカミやん。今まで嘘をつきまくってた俺だが、今回ばかりはマジだ」
途中から真剣っぽくなった土御門の言葉だが、上条には今までの経験(キャリア)がある。そう簡単には信じられない。
「んじゃ、はいそーですか、じゃあ護衛頼むわー、ってなって、実際戦ってる途中に「あ、悪いカミやん〜、さっきの、やっぱ嘘」みたいなことになるんだろどーせ」
「ですね。あの土御門のことですから、そんなとこがオチでしょう」
上条の否定と、聖人がその上条の肯定をしたことにより、土御門は多大なダメージを受けた。
「…うう…俺はあれか、嘘つきまくって喜んでいた羊飼いの少年か…?でも、最後には本当のことを言うんだにゃー」
机にグダー、っと突っ伏した土御門が、ほとんど顔を上げずに言った。
すると、今度は機械が反応した。
「先ほど、上層部からの連絡がありました。土御門元春は現在、魔術を行使してもなんら影響はありません」
やっときてくれた肯定だったのだが、機械である、というのがネックなのだろう。土御門はさほど反応しない。
「って…本当だったのかよ…」
「あの土御門が…?まさか、誰かに魔術をかけられているのでは。少年、あなたの右手で土御門にかけられている魔術を解けるのでは?」
「…こんなガッチガチな機械が言ってるのに、まだ信じてないのかにゃー…」
ハァ、とため息をつきながら言う土御門。
「いえ、その話は信用しました。ですが、あなたともあろう者があっさりと信実を言い放つことに疑問をもっているのです」
「俺も神裂と同じく」
その二人の言葉をまともに喰らった土御門は、もはやぴくりとも動かなくなった。さしずめ、HPはかなりあるがMP0状態の魔法にしか頼れない魔術師だろう。
「お待たせして申し訳ございません。今、情報の処理が終了いたしました。話を続けさせてもらいます」
これ以上追撃がきたらHPもだんだん減ってくかもな、とか上条が思っていたときに、タイミングよく機械が割り込んできた。
「やはり、土御門元春は、今はただの魔術師です。以前まで持っていた『肉体再生(オートリバース)』
は現在所持していません」
「どォやって、ンなことした」
今まで全く無関心だった一方通行(アクセラレータ)が、唐突に発言する。
「…極秘情報、とあります。簡潔に説明すると、能力使用に必要な脳回路を一時的に遮断しているようです。遮断期間は大体24時間程度かと」

241とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参-Ⅱ-Ⅹ-Ⅱ:2010/05/04(火) 17:21:24 ID:Oi0nY8k.
「…それって、長いのか短いのかわからねぇな…」
上条がポツリと呟く。
それに土御門は、やっと顔を上げた。
そして意味ありげな笑みを見せ、
「カミやん。俺に丸1日魔術を使わせたら、実は結構とんでもないことになっちゃうんだぜい?」
そう言った。
「…やっぱ信じられん」
「もはや疑心暗鬼とかそういうレベルじゃねーぞカミやん」
「日ごろの行いが悪いあなたのせいです、土御門」
「ぐっ…あんな魔法名――――救われぬ者に救いの手を――――がセオリーのねーちんまでもが…?もはや俺は、今後の人生ずっと嘘をつき続けなければならないのか…」
そんな馬鹿な会話のやり取り中、ずっと黙っていた大勢だが、流石に痺れを切らしたらしい。
「…いい加減、話を進めなさいよ」
「さっさとこんなもの終わらせてご飯食べさせてくれないと、とうまの頭がウニに見えてきちゃうんだよ?」
「あ、インデックスさん落ち着いて…とりあえず席に座りましょうよ、ねぇ?…ま、まぁ…インデックスさんほどではないにしろ、話は進めて欲しいです…」
「てか、さっさと話し進めろやコラ。そこの土御門とかいう奴、魔術つかえるとかいってるけどぶっ飛ばしちまうぞ」
「同感だね。それに土御門には日ごろの恨みが募って、一発お見舞いしてやりたかったし」
「そういえば、あなたが妙に進めたせいで、わたしはあんな服を着る羽目になったんですよね土御門。あれはいったいどうしたらよいのでしょう?」
「…土御門。がんばれ」
「ちょ、皆さん待って!?特にそこのキレかけの聖人さんっ!あなたの本気は流石の土御門さんでも相殺しきれるかどうか――――」
「…ほう。相殺しきれるか…ですか。ということは、もとより致命傷を受けるつもりはない、と…あなたの腕がそこまでなら、本当に一発かましてもかまいませんね?」
「だから待って神裂さんッ!?ちょ、ちょっと時間を…時間をくれないと流石にねーちんの攻撃は…」
「救われぬ者に救いの手を(Salvere000)!!」
直後、キュインッ!!という妙な音とともに、莫大な衝撃波が生まれた。
そして、
「背中刺す刃(Fallere825)っ!!」
声が響き、
瞬間。
バシュウゥゥッ!
という音が轟き、全ては平穏に戻る。
上条が妙に冷静に周りを見渡すと、ほとんどの人間は硬直している。
しかし、神裂と土御門は互いににらみ合っている。
神裂は腰を低く落とし、唯閃の柄に手を添えている。
対し土御門は、黒、赤、白、緑など、様々な色の何の装飾もない折り紙を丁寧に持っている。
それを見て上条は、
「ちょっとお二人さんッ!?何勝手にガチになっちゃってんの!?とりあえずここらで打ちきろ、な!?」
二人の真剣極まりない表情から本気であることを察してしまい、慌てて止めに入った。
「にゃー。もとから俺はねーちんと闘り合う気はないぜい。攻撃されたから、それを吸収しただけだ」
「今の…赤ノ式と黒ノ式の混合型防御用術式ですね。赤ノ式で生み出した炎で黒ノ式で生み出した水を蒸発させ、それまでの過程に魔術的意味を添えることで特殊な水蒸気を辺りに散らす…今回は『吸収』という特徴でしたか。しかし、そんな事をせずとも、やはり相殺すればよかったのでは?」
「それはないぜいねーちん。あんたが妙に手加減するから、こっちも攻撃に小細工を加えなきゃならなかったんだぜ、相殺するとしたら。それがとんでもなく面倒くさそうだったから、防御用術式にしといた」
「…流石、陰陽博士の最高位の魔術師。これくらいなら造作もないわけですか」
「まっ、そういうことだにゃー。いやー、久々に思いっきり魔術を使ったぜよ。攻撃用術式じゃなかったけど」
「…待て。何勝手に話を終わらせようとしているんだ君たちは。僕や天草式の連中はともかく、なに科学サイド側に専門用語をそうポンポンと…」
「ってちょっと待って!いったい今のは何事だったの!?ってミサカはミサカは当然の疑問を投げつけてみたり!?」
「…お前はややこしいから黙ってろ」
「…でも、本当にさっきのは一体…?」
「あれが、魔術って奴なのか?」
「…」
ハァ、と上条は大きくため息をついた。

242とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参-Ⅱ-Ⅹ-Ⅲ:2010/05/04(火) 17:21:53 ID:Oi0nY8k.
思いっきり、魔術の話題で盛り上がってしまっている会議場。
それを引き起こしたのは、神裂と土御門。
この二人は、プロの魔術師である。あんなことをすればこういうことになることくらい、考えなくとも分かるだろう。
その二人が、多少イラっときたくらいで、魔術を行使するとは思えない。
つまり、
(…何かあったか?)
おそらく、あの二人はステイルよりも強い。
ステイルも十分強いのだが、世界に20人といない聖人、陰陽博士としての最高位の魔術師が相手だったら流石に見劣る。
そして、インデックス。
彼女は、10万3000冊の魔道書の原典を、その頭に全て叩き込んでいる。そんな彼女が気づけない魔術なら、あの二人といえ気づけないだろう。
となると…
少し考えをまとめた上条は、少し落ち着いてきた頃を見計らい、天井に向かってこういった。
「おい、機械さんよ。まだ話って続くのか?」
「はい。といっても、あとは今後について簡単な予想を話すだけですが…なにか?」
「あ、話があるんなら続けてくれ。それでいいよな?」
上条がそういい、辺りを見回すと特に反応はなかった。科学サイド側は魔術について考えてるだろうし、魔術サイド側は科学サイドに出回った魔術の知識をどう扱うか考えているはずだ。反応がなくて当然だと思う。
そして機械は、その無反応を『肯定』と受け取ったらしい。話を始めた。
「今回反乱因子と闘ってもらう皆様の紹介は終わりました。次に、反乱因子と戦う際の、それぞれのグループに分かれてもらいます」
「待て。さっきの『あれ』はまるっきりスルーかァ?少しは説明しやがれ」
と、一方通行(アクセラレータ)が唐突に野次を入れてくる。
「それに関しては、完璧なイレギュラー事項ですので、当本人から聞いてください」
「もとからテメェに聞く気なンてねェよ。だから、こいつらに言ってんだ」
一方通行(アクセラレータ)の視線が、うっとうしそうに天井を睨んだ後、神裂たちに移る。
「あ、おい、一方通行(アクセラレータ)」
「あン?なンだ、お前に説明できンのかよ」
そういいながら一方通行(アクセラレータ)が振り向くと、顔だけを使い『ちょっといろいろあるらしいから』ということを伝えようとしている上条が目に入った。
…おそらく一方通行(アクセラレータ)は、それを見ても何なのか全く分からなかっただろう。しかし、何か事情があることは察したらしく、それ以上は言及してこなくなった。
一方通行(アクセラレータ)が黙った次に、機械がまた話し始めた。
「では、まずグループAの皆様から順に発表します」
そう機械が言った次の瞬間、モニターにいっせいに写真が写り、そのうちの一つがクローズアップされる。
「グループA、リーダーは上条当麻とさせて貰います。副リーダー、御坂美琴。以下、構成員です。削板軍覇、アニェーゼ=サンクティス、シスタールチア、アンジェレネ」
その写真は、一番上に上条が写っており、次にステイル、そして美琴、黒子…となっていた。
「何か意見がおありの場合は、全てのグループ発表後に受け付けますのでご了承ください」
特に誰も口を開いていなかったが、機械がそんな事を言う。
「グループB、リーダーは一方通行(アクセラレータ)。副リーダー、長谷田鏡子。以下、構成員です。五和、牛深、香焼」
今度写真に写ったのは、思いっきり無愛想な一方通行(アクセラレータ)。そして鏡子、結標淡希、と紹介された露出度の高い女。最後に、五和たちが写った。
「次に、グループC、リーダーは神裂火織、副リーダーは海原光貴。以下、構成員。諫早、野母崎、対馬」
やはりこの写真も変わらず、神裂、海原…と、順に移されていく。
「最後、グループDのリーダー、土御門元春。副リーダー、建宮斎字。以下、構成員。結標淡希、葛城妖夜」
機械の淡々とした説明が終わり、モニターには、全てのグループが映し出されていた。

243とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参-Ⅱ-Ⅹ-Ⅳ:2010/05/04(火) 17:23:24 ID:Oi0nY8k.
「以上で、全グループの紹介を終わります。何かご意見のある方は、挙手してから意見してください」
その写真がモニタから消え去り、間髪いれずに機械が言葉を発する。
そして、無言で機械に言われたとおり手を上げる一方通行(アクセラレータ)。おそらく、機械相手には融通が利かない、というのを理解したのだろう。
「一方通行(アクセラレータ)の意見を聞きます。どうぞ」
機械が、思いっきり機械的に言う。
それに調子を狂わせられながらも、一方通行(アクセラレータ)はさっさと言葉を紡いでゆく。
「そこに3人で固まってる女どもの力量は知らねェが…それにしたって、グループAの戦力は低くねェか?」
そう、上条もそう思っていた。
美琴や軍覇は、それなりに頼りになると思う。しかし、一方通行(アクセラレータ)や心理掌握(メンタルアウト)、神裂や魔術を使えるようになった土御門、葛城妖夜などと比べると、どう見ても見劣りする。
「それなら、グループCもちょっとまずくないか?聖人がいるけど、それ以外は…」
自分で言っておきながら、途中で口ごもる上条。
神裂がいるのは心強いだろうが、正直言ってグループCはそれだけだ。海原なら、上条単体でも撃破出来たし、それ以外の魔術師も超能力者(レベル5)には勝てないだろう。
そんな質問を受けた機械は、冷静に対処してくる。
「まず、グループAについて、ですが…今回の戦いでは、上条当麻が持つ『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が、大いに役立つ、と考えられます。そして、二人の超能力者(レベル5)により打点を補い、3人の魔術師により、魔術側を抑える。突出はしていませんが、バランスは保たれています」
「では、グループCの方はどう説明するのですか?」
そのリーダーを任された、神裂が率直に質問する。
「グループCは、神裂火織の統率による天草式の連携を期待しておりますので、その程度にしておきました。さらに、海原光貴…エツァリも、最近大きな力を手に入れたようですので、実はかなりの戦力を持っているグループ、となっております」
「うわ…ばれてたんですか?」
なんか、本名がエツァリとか言われていた魔術師が、否定せずに嫌そうな顔をする。
「本当なのか、海原」
土御門が、まじめな口調で海原に聞く。
「…まぁ、それなりの力は手に入りましたね」
「その、それなりの力ってンのは、具体的にドレくらいのレベルだ?」
一方通行(アクセラレータ)が、海原を睨みつけながら言う。
「いえ、そちら(科学サイド)にはあまりなじんでいない力でして…」
「じゃあ、俺に言え」
土御門に言われ、逃げることが出来なくなった海原。
いい加減諦めたのか、ハァ、とため息をついてから一息で言った。
「ちょっと…魔道書の原点を2冊ほど」
「…」
ちょっと一息置いたあと、
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!??」
主に、魔術サイドの魔術師が、もはや叫びとなった声を上げる。
「…いや、あのですね…これは、あくまで自分のためではなく…」
とっさに言い訳をしようとしている海原だが、魔術サイド勢はそんな事を気にしていない。
主に土御門が、海原に掴みかかり、一気にまくし立てる。
「何で隠してたんだ海原ッ!?そしてその魔道所の種類とかそこら辺はどうなってる!?」
「ちょ、ちょっと!あなた、原典を2冊所持していても、なんともないの!!??ちょっと考えられないかも!」
インデックスも、土御門に加勢する。といっても、インデックスのほうが軽く5万1500倍は海原よりぶっ飛んでいるのだから、あまり説得力はないのだが。
「え、ええと…原典の種類は、『暦石』というものでして…」
「インデックス。その『暦石』ってのは、具体的にどんなものなんだ」
土御門が、一瞬もためらわずにインデックスに聞く。あれ?こいつらって、なんか面識あったんだっけ?と首を傾げる上条を置いといて、インデックスはすらすらと答え始める。
「暦石っていうのは、アステカ地方のカレンダーみたいなものだね。2つの方式の暦を同時に扱って、太陽の死、蘇生とかを書き込んでいくことで、とんでもなく複雑化したものだよ」
「その暦石にも、種類とかってあるのか?」
「けっこうあるね」
「海原」
「…なんかもう、自分を置いといて勝手に話し進めてますよね…」
そんな軽口を叩く海原だが、土御門たちは取り合わない。

244とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参-Ⅱ-Ⅹ-Ⅴ:2010/05/04(火) 17:25:03 ID:Oi0nY8k.
「…自分は、どちらも名前を知らないのですが、少し知識は持ってます。1冊目は巻物状のもので、生と死に関する時間の内容を突出しており、宗教的な論説にまで発展させたものだとか」
「…『万物主管の書』だね。用途は、『武具を持つものへの反撃』。武器を操り、所持者を自殺に追い込ませる術式だよ。原典の自動迎撃術式の応用、みたいなものかな。原典の視点から、『武器』として認識された『万物』を所持している人間の精神に干渉し、その武器の所持権をのっとり、所持者を殺す、っていう内容。原典は、その知識を欲するものを護衛する性能があるから、武器を認識したら、その所持者をすぐに排除する、っていうのも原典の性能を少しいじれば出来ると思うよ。術式名は、『堕落による万物主管権の移動』だね」
何も見ずにすらすら言うインデックス。こういうところを見ると、やっぱりこの少女が只者ではないことを改めて認識させられる。
「…その原典のリスクは、大体どのくらいなんだ」
土御門が、まだ緊張した状態でインデックスに聞く。
「一般人なら、3日と持たないね。そこらの魔術師でも、良くて2週間程度」
「お前、その原典を所持し始めて、どれくらい経つ?」
海原を睨みつけながら言う土御門。
大使、海原は驚いたように言う。
「良くて2週間、ですか…。ちなみに、自分はちょっと小細工を加えてまして…所持し始めて、もう1ヶ月は軽く経つかと」
そう言った瞬間、海原は土御門に殴り飛ばされそうになった。そこは、聖人の神裂が止めに入ったが。
「…なんだ、その小細工ってのは」
神裂に動きを封じられている状態でも、土御門の眼には力がこもったままだった。
「この原典は、先ほどのインデックスさんの説明にもあったとおり、通常の原典よりも、原典の知識を欲するものに対する扱いが良いんですよ。なので、通常の場合より持つのは当たり前だと思いますが…自分の場合、その『保護』に対して、それに反する無効化術式を常に発動しているんですよ。まぁ、人間が扱う術式で原典の保護を無効化できるはずがないんですが、原典の方はそうは思ってないらしくてですね。その『保護』レベルをより一層高めることで、その術式の効果を薄めようとしてくれているんですよ。つまり、自分が保護に対して無効化術式を発動していて、その無効術式に対するように原典の方が勝手に保護レベルを格段に上げてくれている、ってことですよ。実際には、どれくらいのレベルなのかは分かりませんけどね」
「こいつの話の信憑性は?」
海原が一気に話した内容を聞いていた土御門は、インデックスに聞いてくる。
「十分ありえるよ。というか、もうその方法以外じゃ、多分生きてられないんじゃないかな?ただの人間が扱う術式程度で、原典の侵食を防ぐことなんて出来ないし、そうなればやっぱり、原典自体に手伝ってもらうしかないかも」
インデックスが、一人頷きながら言う。
「…で、それだとこいつはあとどれくらい持つ?」
「…分からない。今のところ、原典に関する術式はあまりにも少ないから、その原典の『保護レベル』を知る方法なんてないんだよ。でも、私の個人的な予想だと…あと10年くらいは持つんじゃないかな?」
「そんなに持っちゃうんですか…?もう少し早いもんだと思ってたんですけどね」
ケロッ、という表情で言う海原を、やはり土御門は睨みつけている。
「…2冊目は」
「そんなに急かさないでくださいよ…ちょっと待ってください」
土御門の単純な言葉に、海原は複雑な表情を浮かべて思案する。
「…形状は、石版、ですか…。内容は、『月のウサギ』に関する記述が強調されているものです。基となっているものは、月の輝きが強すぎるため、神々が地球からウサギを月へと放ち、その輝きを弱めた、という神話です。
その発動コストは、『ウサギの骨』なのですが…神話に出てくるそんなものを用意できるわけもないので、前代のこの原典の所持者は…人間の骨を変わりに使ってました…」
そこで海原は、言葉を切らせてしまった。上条には、なんとなく『それ』が理解できた。
「…その暦石は、『月への報復』。術式名は、『輝きを弱める輝き』。原典の所持者を『地球』、攻撃対象を『月』、そしてコストを『ウサギの骨』と見立てて術式を発動させるんだよ。・・・このコストは、別に何の動物の骨でも良いんだけど…その動物の性能が高ければ高いほど、術式の威力は高まっていく…神話に出てくる、『ウサギの骨』を使った場合は、本当に神話級の威力を発揮すると思う」
そこまでインデックスは言うと、後は静かになってしまった。おそらく、彼の事情を察したのだろう。

245とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参-Ⅱ-Ⅹ-Ⅴ:2010/05/04(火) 17:27:44 ID:Oi0nY8k.
流石に土御門も、もう言及はしなかった。静かにインデックスに聞く。
「…所持者に対する侵食具合は…?」
「普通の原典と同程度。だけど、その…エツァリって人が、もう片方の原典に細工しているから、やっぱり10年くらいは生きれるんじゃないかな」
そのインデックスの言葉を最後に、場は妙な雰囲気に包まれ、誰も発言できなかった。
と、そんな空気を引き裂くのはやはり、
「質問内容は、以上でよろしいでしょうか?」
という、無粋な機械の声だった。
「…チッ」
そこで、なぜか一方通行(アクセラレータ)が舌打ちをする。…こんなキャラだったっけ、こいつ?と首をかしげる上条。
「良いんじゃねぇのか」
土御門が、思いっきり投げやりに言う。しかし、否定する人間もいない。
「では、最後に少しだけ話させてもらいます」
そう機械が言い、最後の話とやらが始まる。


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「まず、反乱因子との戦闘についてですが、基本的にグループ単位で行動してもらいます。そのグループ内のみで作戦などを立ててもらいますが、その作戦には他のグループを干渉させないでください。逆に、そのグループ内のみに関することならば、基本的にどんな作戦を立ててもらっても結構です。つまり、そのグループのみで動き、反乱因子を妥当できる作戦を立ててもらいます」
「オイオイ。そんな、『グループ内の仲間をどう使っても良い』なんてタノシイこと言われたら、妄想が止まらなくなっちまうぞォ?」
一方通行(アクセラレータ)が、ニヤァ、と笑いながらいう。
「こいつの言い方は流石にイキすぎてるけど…でも、確かにそうね。おとりにでも使えっていうの?」
確か…結標とかいわれてた女が、一方通行(アクセラレータ)のほうを一瞥しながら言った。
「かまいません。しかし、死人が出ることは出来る限り避けてください」
「出来る限り、かよ…」
上条がその言葉を受け、立ち上がる。
「ふざけんじゃねぇぞ。どうせお前らは一人の命なんてどうだっていい、って考えてるだろうけどな!こちとら一人たりとも死なせる気はねぇからなッ!!」
「…何いきなりヒートアップしちゃってんのよアンタ」
「…逆に、ここでこういうことを言わなかったら、とうまの存在意義はないのかも」
美琴とインデックスに何か言われたような気がする上条だが、そんな小さいことを気にするような人間ではない。
「ですが、そうですわね。たかだが『反乱因子』どものために、この命を投げるなんてことはいたしませんわ」
白井が、珍しく上条の味方をする。
「たかだが、か…絶対能力者(レベル6)の事を、どう見てるんだか」
「かく言うお前も、この闘いで死ぬ気はないんだろう?」
「誰が死ぬだって?少なくとも、俺は死ぬ気はねぇ」
「…俺もだな」
妖夜と軍覇が、あっさりとそんなことを言い放っていく。この二人には、戦闘経験はあるのだろうか?軍覇は多少なりともありそうだけど…と、上条は一人思う。
「絶対能力者(レベル6)、といっても、私たち《超能力者(レベル5)》みたいに、弱いものと強いものがあるのかしらね?一方通行(アクセラレータ)みたいなのもいれば、念動砲弾(アタッククラッシュ)のようなものもいる。弱いほうならば、何人かでかかれば倒せると思うけど?」
「…それは喧嘩と受け取って良いのか、心理掌握(メンタルアウト)」
「7位に倒されるほど、私はヤワじゃないわよ」
「…アンタらねぇ」
と、3人の超能力者(レベル5)が、案外楽観的な言動を見せている中、現実を深く知っている二人の超能力者(レベル5)は冷静に意見を下す。
「まず、この一方通行(アクセラレータ)が超能力者(レベル5)だ、ってことを理解してる?」
「…」
美琴のその一言だけで、周りの空気が変わる。

246とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参-Ⅱ-Ⅹ-Ⅶ:2010/05/04(火) 17:29:28 ID:Oi0nY8k.
「少なくとも、弱いほうの絶対能力者(レベル6)でも、一方通行(アクセラレータ)よりチカラを持っている。そして、あなたたちは一方通行(アクセラレータ)以上の相手に、数人でかかれば何とかなるだろう、なんて考えてんの?そうだとしたら、さっさと目を覚ましなさい」
「俺以上の能力者だ、おそらく今まで現れてきた能力者とは、根本から違っているはずだ。…想像も出来ないような能力を行使してくる、と考えて戦わなきゃまずいだろォなァ」
二人の超能力者(レベル5)の口から放たれた言葉は、妙に現実味を帯びていた。
「…だぁー。だからってさ、そんな言葉を言う必要ななくねぇか?少なくとも、ちょっとくらい希望を持ったって良いだろ?」
もう、場の雰囲気が凄いことになりそうだったので、とりあえず上条は意見してみる。
だが、それさえも一方通行(アクセラレータ)により粉々にされた。
「お前らに良いことを教えてやる。人間ってのはなァ、常に最悪の事態を想定して行動した方が、結果は良くなるもンなンだぜ」
「…この上なくありがたいお言葉だな」
げんなりする上条。
と、そこで、
「…いやぁ、なんかそちらの話になると…全然ついていけませんね?」
上条の隣に座っている五和が、肩身狭そうに言い、周りを見渡す。
「ほんとですね。さっきから、何の話をしているのやら」
「もう、アンジェレネにいたっては、子供のように寝ていますしね」
「…ふあ?ね、寝てなんか…ない…ですよぉ…」
「声が次第に小さくなっています、シスターアンジェレネ。その状態で、『寝てない』なんて言われても、信じれるはずないでしょう」
アニェーゼとルチアの冷たい視線を受けているアンジェレネだが、幸せそうな顔でまた寝始めてしまった。
「…まぁ、仕方ないでしょう。そっちの話ですから、理解できなくて当然です」
「それとこれとは違う問題のような気もするけどね」
神裂がアンジェレネのフォローに入るが、ステイルが興味なさそうに水をさす。
「まぁ、自分みたいなのは例外ですから、一般の方はあまり理解できないのは当然では?」
「そもそも、俺らみたいなのは『一般人』扱いされてるのかにゃー?」
海原と、とりあえず魔術サイドの土御門が言った。
「とりあえずだ」
なんかもう一気にうるさくなりそうな雰囲気がしてたためか、一方通行(アクセラレータ)が一つため息をついてから少し大きめの声で言う。
「これから戦う奴らは、考えられねェほど強ェ。もう、本当にどうにも出来ないくらいにな。だが、俺たちは学園都市が恨みを買いまくってるせいで負けるわけにはいかねェ。だから、今後のことを各グループごとで話し合う。異論は?」
それは機械の仕事じゃないのか、と突っ込みたかったが、変に機嫌を損ねて血液を逆流させられても笑えない。とりあえず黙っている上条。
と、仕事を奪われた機械が言う。
「一方通行(アクセラレータ)の言うとおり、我々が負けることは許されません。各グループごとに分かれ、今後の作戦を立ててください。以上で、この会議を終わります」
「あれ?終わりますって…強制的に?」
上条がそう天井に向かって聞いたが、返事は返ってこない。
と、そこで。

247とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参-Ⅱ-Ⅹ-Ⅶ:2010/05/04(火) 17:30:04 ID:Oi0nY8k.


突然、目の前に炎が現れた。
「はぁぃっ!?」
とっさに…というか、慣れというか、自分の右手を突き出す。
すると、すの右手にぶち当たった瞬間、変な音を立てながら消える炎。
「チッ。今ので炭になれば良いものを。…変なところで運が良い奴だな」
「いや意味分かりませんよステイルッ!?いきなり炎たぁどういう了見だ!」
「どうもこうも。君が目を覚まさないから、もういっそ一生目覚めないようにしてやろうかと」
「意味わかんねえよ。テメェは人が寝てるところを―――――って、あ?」
と、そこで上条は馬鹿との会話を打ち切り、周りを見回す。
そこは、見慣れた病室。
上条が何かのトラブルに巻き込まれたりして、(最近は上条を中心としてトラブルが起こったりもするのだが、とりあえず)怪我を負ったときになぜか毎回あてがわれる病室。
そこは、さっきまで自分がいた空間とは違うはずだ。
そして、上条にはあの『会議室』とやらからここまで来た覚えはない。
「…何がおきた?」
「さあ。魔術の類ではないね」
不機嫌そうに言うステイル。
とそこで、一方通行(アクセラレータ)が上条に近づいてきた。
「お前も、理解できてねェか」
「…『も』かよ」
はぁ、とため息をつく上条だが、
「無能力者(レベル0)の落ちこぼれと一緒にすンじゃねェぞ。大体は把握できている」
「…その落ちこぼれにぶっ飛ばされたおま…冗談です冗談!だから口元を吊り上げながらこっちに手を差し伸べないで!?」
近づいてくる一方通行(アクセラレータ)の華奢な手を右手で振り払いながら後ずさりする上条。
「…まァ、とにかく。お前が起きたンならとっとと説明でもしますかァ」
「…って、えー…?まさか一番俺が寝てたとか?」
「それだけ疲れがたまってるんでしょ。少しは休んどきなさいよ、体持たないわよ?」
と、少しショックを受けた上条のフォローに回ってくれたのは、なんと『あの』美琴だった。
「…不幸な予感がする」
「凄く偏見と差別に満ちた視線を感じるんだけど。…だけど、本気で言ってるんだからね?少しは自分の事も考えてよ…」
上条は、そんな事を言えば超電磁砲(レールガン)の一つや二つでもぶっ飛ばされるかと思っていたのだが、返ってきた言葉はものすごく意外な言葉だった。
…ということでやっぱり、
「不幸な予感がする」
誰にも聞こえない程度の声で、上条は言った。

248とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参-Ⅱ-Ⅹ-Ⅷ:2010/05/04(火) 17:30:56 ID:Oi0nY8k.
「おいそこ、何やってんだよ」
と、上条がとてつもなく不幸な予感を感じている最中に、浜面がなんか言ってきた。
「何って…こっちが聞きたいところなんですけど」
「意味わかんねえ。勝手にラヴコメして勝手にとぼけやがって」
「いや、こっちのほうが意味わかんねえから。何がラヴコメだ。俺は命を懸けてまでそういうことには興味ないんだよ」
「黙れカミやん。無自覚なのはもう承知のうえだから、とりあえず黙ってくれ。そうじゃなきゃ、今の土御門さんはお前のことを瞬殺しそうだにゃー」
「だから意味が――――分かんないけどはいとりあえず分かりました黙りますッ!!!だから折り紙を取り出すなッ!?」
土御門が勝手に話に混じってきて、そのうえ無表情な顔でポケットから赤色の折り紙を取り出したのを見てしまった上条は、やはり右手をつきだしながら言った。
と、とりあえずは土御門の危機は去ったのだが。
今度は、上条の幻想殺し(イマジンブレイカー)では対応できない事態が起こってしまった。
つまり、
「…と―――――――――う―――――――――ま――――――――っ!!!!」
「もう噛み付きモード突入ですかインデックスさんっ!!さっきまでの空腹と混合しちゃってる怒りをどうか不幸なわたくしめに向けないでぇぇぇ――――――――ッ!!!」
とか何とか言いながら逃げる上条だが、聖人を越すのではないだろうか、という速さで迫ってきたインデックスに頭を結局噛み付かれる上条。

そんな馬鹿馬鹿しい光景を見ずに、一方通行(アクセラレータ)は言った。
「…あの馬鹿どもは、こんな説明聞く必要もねェか。ンじゃ、今回起きた事象について話し合うぞ」

そういった一方通行(アクセラレータ)の目の前には、結構な人数の人間がいた。
まぁ、別に全員体育座りしているようなわけではないが、基本的に一方通行(アクセラレータ)が説明する役回りだろう。
「まず、俺たちがさっきまでいた空間について。あれはおそらく、上層部が保管している、簡単に情報が漏れちゃ困る部屋、だろォな」
「それの理由は思い当たりませんが。どう説明する気ですか?」
早くも神裂に問題を提示される一方通行(アクセラレータ)。
「おそらくは、あのウザったらしい『機械』だ。上が秘密裏に開発したシロモノなンだろ」
「…」
一方通行(アクセラレータ)の話を聞いている者全てが黙り込んだ。
一方通行(アクセラレータ)の発言には証拠がない。しかし、それでも一同は一方通行(アクセラレータ)の言葉を信じた。あの『機械』が、どこかおかしいのは全員が気づいていたからだ。
「そもそも、俺らはあの機械の姿を見ていない。多分、天井にでも設置されてたンだろォが、そンなもンは、この学園都市でもかなり希少な物だ。下手に情報が漏れても困ンだろ」
そう言われると、証拠はないが一方通行(アクセラレータ)の言葉を全て信じそうになる。
「ってなわけで、上層部はあの部屋を公開するわけにはいかなかった。だが、緊急事態が起こる。『反乱因子』どもだ」
周囲を見回しながら言う一方通行(アクセラレータ)。何かを確認しているようだが、おそらくは監視カメラなどの類だろう。聞かれては困るはずだ、一方通行(アクセラレータ)の話が正しいのなら。

249とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参-Ⅱ-Ⅹ-Ⅸ:2010/05/04(火) 17:32:06 ID:Oi0nY8k.
「反乱因子どもが暴れやがったおかげで、上はあの『機械』を使わなければならなくなっちまった。即急に事を解決しなきゃだからな。
だが、やはりあの機械のことを外に漏らすわけにはいかない。しかし、あの機械のことを少しはさらさなければならない。…まぁ、板ばさみって奴か?」
一方通行(アクセラレータ)はそこで、なぜか美琴にも電撃を飛ばされている、頭にインデックスをつけた上条のことを見ながらいった。
「…情報は、証拠がなければ重要度は上がらない。一大事なことならある程度マスコミも取り上げるだろォが、別にこの機械はそこまでって事でもねェ。だが、証拠があってマスコミに取り上げられても厄介。
こォいう状況なら、奴らならこう考えるはずだ。
『あいつらにある程度情報を漏らすことになるが、証拠を隠してしまえば問題ない』ってなァ」
「つまり、私たちは証拠をうやむやにするための細工を受けていた、ということですか?」
上条のほうを見てそわそわしている五和が、一方通行(アクセラレータ)の方も見ずに言った。
「そォいうことだ。だが、どンな手を使われたのかは…」
そんな五和を気にすることなく一方通行(アクセラレータ)は言うが、最後の方で口ごもってしまった。
「…分からないんですか。所詮学園都市最強も科学サイドですね」
アニェーゼが言うが、正直何を言いたいのか、一同には伝わらなかった。
「…『あの』上条にもそいつは有効だった。そこが引っかかる…」
「つーか、あいつ…本当に、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』なんて無茶苦茶な能力持ってんのか?一応説明は受けたがよ、信じらんねぇ」
「かなり真実味はあるわよ。…私の心理掌握(メンタルアウト)も効かなかったことだし」
「学園都市第5位の能力が効かない、か…その能力、まんざら嘘でもなさそうだな」
超能力者(レベル5)が口々に言う。まぁ、誰も取り合ってくれないのだが。
「この能力、嘘じゃないんですっ!!嘘であって欲しいんだけどね、不幸になっちゃうからほら今みたいにッ!」
「とうまの不幸はとうま自身が悪いかもっ!!」
「つーか、まずどこが不幸なのか説明して欲しいわねっ!!」
ぎゃーとりあえずやめてくださいうるさいかもがりがりびりびりどがーん!!
…そんな、コメディに聞こえる効果音だが、実際にその光景を目にしたら瞬間的に顔を背けるであろう状況を、上条は不幸だーっ!!と叫びながら疾走して行く。
「…チッ。もう、どうだって良いか…?」
一方通行(アクセラレータ)がそう呟きながら、その場を立ち去ろうとする。
「あ、ちょっと待ってどこ行くの!ってミサカはミサカはあなたについていこうとしてみる」
「うっとォしィ。ガキはさっさと寝てろ」
「流石に早すぎるかも、そしてミサカはガキじゃないっ!ってミサカはミサカは当然の反論をしてみたりッ!」
「…オイ、そこの妹達(シスターズ)。こいつを引き取れ」
まとわりついてくる打ち止め(ラストオーダー)を睨みながら、一方通行(アクセラレータ)は御坂妹に命令口調で物事を頼む。
「…ミサカには、それを実行しなければならない正当な理由は―――――」
と、そこまで言った御坂妹は、一方通行(アクセラレータ)の目を見て言葉をとめた。
「―――――さあ、あなたは通常のミサカたちよりも上位なのですから、これくらいのことは出来てもらわないと困るんですよ、とミサカは強引に上位固体を引き剥がします」
「ちょ、痛たたたたたた!?ま、待つんだ10032!司令官であるこのミサカを強引に引き剥がすとはどういう了見だっ!ってミサカはミサカは上位固体の特権を行使してみる!」
「…ハァ、とミサカはできそこないの上司を直視したOLのようなため息をついてしまいます」
「ミサカはできそこないじゃないっ!ってミサカはミサカはちょっとイラっとしながら言ってみる!ミサカができそこないだったら、それより下位個体のミサカたちはどうなるのッ!?ってミサカはミサカは心配もしていない部下たちの事を話題に出してみたり!」
「あなたに心配される筋合いはありません、とミサカは――――」
…なんか不毛でミサカばっかりが出てくる会話の途中で、一方通行(アクセラレータ)は少し御坂妹の方を見てから、
少し、本当に少しだけだが、
頭を下げた。

250とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参-Ⅲ-Ⅹ:2010/05/04(火) 17:32:58 ID:Oi0nY8k.
―――――何があったんでしょうか―――――
と、御坂妹がそんなことを考えてる間もなく、一方通行(アクセラレータ)はベクトル変換を実行してその場をありえないほどのスピードで去ってしまった。
「あああああああああっ!!逃げられたっ!ってミサカはミサカはとりあえずあの人を追いかけ――――」
「―――――ようとしている上位個体の肩を、ミサカは力を込めて掴みます」
「だから痛いっ!?あ、あなたそれでも女!?握力が…ギュギャッ!?」


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一方通行(アクセラレータ)は、そんな光景を背後に上条を掴みかかりに行った。
…のだが、
「…あ、頭からの出血多量で上条当麻はあと30分で亡き人になるでしょう…」
「なーにー馬鹿なこと言ってるのかなとうまはッ!?こんなんで死ぬんだったら、当麻はもう100回は死んでるよっ!!」
「だ、だからといって噛み付き度合いを高めるなインデックス!そしてなぜかイライラしているような顔で超電磁砲(レールガン)を連発するな美琴!!普通にお前の超電磁砲(レールガン)のほうが危険だから!?」
「うるっさいわよっ!どうせその右手で無効化されるんだったら、危険も何もないじゃない!?」
「いや、超電磁砲(レールガン)が少しでもそれたら多分俺死にますよ御坂さん!そこら辺ご理解してるんでせうかッ!?」
「狙って右手に当てれば良いだけの話だけよ!」
「それだったら無効化されるんだから打つ必要性ないだろ美琴ッ!?そして何故お前の噛み付きも増しているインデックスッ!?」

こいつはもう、俺が殺した方が良いんじゃないか?
真面目に一方通行(アクセラレータ)はそう思った。


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「ねーちん」
「…分かってます、土御門。ですが、動くタイミングも計らなければ」
「それくらい、聖人と陰陽博士が気にすることじゃないにゃー。さっさといくぜぃ」
と、土御門はそんなことを言いながらポケットから白い折り紙を取り出し、
「人ガ行ク道ヲ指シ示シ(おまえらのミライをおしえてやるから)、ソノ道ノ先ヲ我ハ行ク(すこしのチカラをおれのためにつかえ)!」
そう唱え、折り紙を中へと放った。
すると、キュイン、という音を立て――――
――――何も起こらない。
「…何をしているんですか、土御門?何も起こらないのですが」
「何も起こんなくて正解だぜぃねーちん。あんな声を出したのに、誰も俺の事を見ないなんて普通じゃない」
言われてみれば、結構な声を出した土御門のほうを見ている人間は一人もいない。
「白ノ式は、使用者に対する意識を操る術式ぜよ。少し高度なのを使えば、これくらい難しくないぜぃ。ねーちんの分もやってあるから、ほら行く行く」
そう言いながら、土御門はさっさと行ってしまった。女性とはいえ、聖人の神裂に対して気配りはいらない、と考えているのだろう。
(…やはり、あの者も相当の使い手ですね…)
今この場でその術式を受けているのは、軽く10人を超すだろう。
そして、10人以上の人間の意識を特定の二人に全く向けさせない、なんていう魔術は相当レベルが高い。
それをあっさりと発動させてしまった彼は、
「…侮れませんね、土御門元春」
そう呟きながら、神裂はその場を、一方通行(アクセラレータ)と同じようにありえない速度で去っていった。

251とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参-Ⅲ-Ⅹ-Ⅰ:2010/05/04(火) 17:33:35 ID:Oi0nY8k.
「お、落ち着け一方通行(アクセラレータ)っ!!もうあんな昔のことなんて捨てて、未来のことを考えようッ!?」
「昔のこと、ねェ…フィアンマの時の『あれ』は、もう昔のことなのかァ?」
「ぐっ!?ってか、だからっていきなり殺そうとしてんじゃねぇ!!」
「…いちいち説明すンの面倒だからよォ…抵抗してんじゃねェ」
かなり面倒くさそうな状況に置かれている上条を、いやいやながらも連れ出そうとした一方通行(アクセラレータ)だったのだが…やはり面倒くさかった、まとわりついている奴らも含めて。
「なっ!?何やろうとしてんのよ一方通行(アクセラレータ)っ!!」
「何って…こいつを連れて行こうとしているだけなンだけどよォ」
「連れてって何するつもりかしら!?今のアンタとなら、私が勝つって事ぐらい理解できないの!!??」
「…面倒くせェ…」
やっぱりこいつもこいつで面倒だから、もういっそこいつらにも説明するか?…とか思っていた一方通行(アクセラレータ)なのだが、
「………………………………………………………………………………………………………………………」
とんでもない視線を受けていることに気づいた。
振り返ってみると、ただの暴食シスターだと思っていたけど実は結構重要キャラであることが対フィアンマ戦のときに発覚した、インデックスが凄い視線を送ってきていた。
「…なンのつもりだ」
「とうまの毒牙が、もしかして男の人にも向いたのか、と思って」
「何だよ俺の毒牙って!?蛇扱いですか俺は!!」
「…」
やっぱり、上条だけを無理矢理引っ張っていこう、こいつらに説明してもなンか理由をつけて反論してくるだけだろォし、と一方通行(アクセラレータ)が強引に上条を連れ出そうとしたとき、

「…こいつに関わんのは結構大変だろ、一方通行(アクセラレータ)」
後ろから、野太い男の声が聞こえた。
「…ンだよ、来ンのかよ…だったら、今までのは無駄ってわけかァ…?」
「まっ、カミやんの日常を勉強できた、って事で良いだろう?」
良いわけあるか、そもそもこんな奴の日常なンて知ったこっちゃねェ、と一方通行(アクセラレータ)は思ったのだが、また面倒くさいことになったら能力を使用してしまうかもしれないのでとりあえず黙っておく。
「ってことで、全員そろったんだから、はじめようぜぃ」
瞬間的に土御門の横に現れた(としか表現できない)神裂のことを横目で確認し、土御門は言った。



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「って、はじめるって、何をよ?」
第一声が、これだった。
やっぱりこいつはいらないンじゃねェのか、と一方通行(アクセラレータ)は思っていることだろう。
「…カミやン。面倒だしイライラしてくるからとりあえずインデックスたちをどっかにやって、お前の口から説明してくれ」
珍しく口調が普通になっている土御門の言葉から何かを感じ取ってしまった上条は、土御門の言うとおりにしようとインデックスたちを元の場所に戻そうとしたのだが、
「どうせとうまたちは、これからの相談をするんでしょ?だったら私たちがいても良いと思うんだよ?魔術的なことも少しは含まれるはずだから、役に立つと思う」
「私だって、一応副リーダーとか無理矢理任された身だし。聞く権利くらいはあるわよね?」
「…って言っているんですが。どうすればいいんでせう?」
「何をやろうとしていたのか分かってたくせしやがって俺の邪魔をしやがってたのかテメェら後で覚えてやがれ」
なんか一方通行(アクセラレータ)からのラヴコール(殺すぜ宣言)を受けてしまったインデックスと美琴。
しかし、当の本人たちは全くといって良いほど気にしていない。通常の人間なら聞いただけでショック死しそうな言葉を聞いても、だ。
「だって、本気で殺そうなんて思ってるんなら、今ここで私たちのことを殺しているはずだよ」
「どっちにしろ、今の一方通行(アクセラレータ)に負けるはずないから私には関係ないんだけどね」
「…お前ら、頭のネジ全部ぶっ飛んでるだろ…インデックスの言い分はある程度通るとして、美琴の場合はちょっと無理があるぞ」
え?何で?と美琴が聞いてくるのだが、本格的にほかの人間(主に学園都市最強な人と妹最高な人と世界で20人未満な聖人な人)がイラつき始めているので、後でな、と適当に話を切って一方通行(アクセラレータ)たちのほうを向く上条。

「…で、何始めるんだ?」

瞬間。
ズガァゴシャアキュインザシュシュシュシュチュドーンバガッドガドガドゴドゴグシャッズドォォォォッ!!!!!!
という愉快な破壊音が響き、
不幸だぁぁぁぁぁぁぁ、という叫びを上げる暇もなくブチギレた3人にぶっ飛ばされた上条が意識を失った。

252とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参-Ⅲ-Ⅹ-Ⅱ:2010/05/04(火) 17:34:46 ID:Oi0nY8k.
「…とは言うものの、相手は絶対能力者(レベル6)だろ?どう考えたって勝てないんだからさ、もはやそのときの運任せじゃね?」
「テメェはマゾですかァもう一回あの破壊音を聞いて快楽に浸りたいっつゥンならお手伝いしてやるぜェ」
「…すみませんでした…」
ブチギレた事にはブチギレたが、まだ不快感が残る一方通行(アクセラレータ)がまたキレかけるのを防ぐために、一応謝っておく上条。
あの惨劇(なんて生易しいものではない出来事)を、なぜか意識を失うだけでやり過ごしてしまったトンデモ上条さんは、あの惨劇を生み出してもまだイライラが募る一同にたたき起こされ、今回のことを話されたわけである。
まぁ、今回のこととは、
「でも、何もしないよりはマシでしょう」
「そうだぜぃカミやん。今後の動きの予想、戦闘について、個人の役割、グループの使命…これくらい話し合わなきゃ、本気絶対能力者(レベル6)なんて相手できない」
そういうことだそうだ。
「そんなことを言うってことは、お前は絶対能力者(レベル6)と本気で殴りあうつもりなのね…」
土御門の脳思考回路はもはや妹(バグ)で埋め尽くされているのではないか、と不安がる上条。
その上条を横目に、土御門は言う。
「ってことなんで…やっぱり出来るだけ、インデックスたちには席をはずしてもらいたいのだが」
「だから、何でいちゃいけないの?少しは魔術の話もするでしょ、それだったら私がいたほうがいいに決まってるんだよ?」
「私だって、単体でも戦力になるし、いざとなったら…ミサかネットワークを動かす事だって、出来るかもしれない、のよ?」
インデックスの方は特に考え無しにいったらしいが、美琴のほうは…少し口ごもった。
「……仕方ないにゃー。ねーちん、一方通行(アクセラレータ)、それでいいか?」
「本人たちは譲る気がないそうですからね…やはり、仕方ないでしょう」
「かわりに、ウザいことになったら容赦なく叩きのめす」
神裂は快く…でもないが引き受けてくれたが、一方通行(アクセラレータ)のほうはなにやら物騒なことを言ってる。
「んじゃ、さっさと話し合ってもらうぜぃ」
やっとか、という感じで土御門が言った。


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「まずは、今回グループに所属していない人員についてだ」
この話し合いの進行役みたいなのは、土御門が勤めるらしい。
「あ…そういえば、そんなのがいたな」
思い出したように言う上条。
「そいつらを全員今から言っていく。聞き漏らすなよ」
土御門は、そういってから一つ間を空ける。
「白井黒子、妹達(シスターズ)、打ち止め(ラストオーダー)、浜面仕上、滝壺理后、インデックス、だ」
「オイオイ、結構多いンじゃねェのかァ?上層部(うえ)は何考えてやがる」
一方通行(アクセラレータ)が呆れたように言った。上条も概ね賛成である。
「ですが、全員が全員真正面からぶつかったところで、それは単なる『喧嘩』としか言いようがありません。本当の『戦い』とは、裏で様々な駆け引きや情報操作が行われているんですよ」
「ねーちんの言うとおりぜよ。おそらく学園都市もそういったことはしているはずだ、しかし、今回の戦闘に関する情報は学園都市側は把握できていない。始まってないから当たり前だが」
神裂と土御門は、しかしそれを否定した。
上条と一方通行(アクセラレータ)は黙る。神裂たちのほうが、そういう経験は数倍豊富だ。
「だから、最新の戦闘情報や、欠けた人員補充などは、俺たちで行う。そのための役割配分を、さっき言った奴らでやる。いいか?」
土御門が聞いてくる。誰も反対しなかった。

253とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参-Ⅲ-Ⅹ-Ⅲ:2010/05/04(火) 17:35:13 ID:Oi0nY8k.
「まず白井黒子だが…一番重要なポジションをやってもらう。情報伝達だ。あいつに空間移動(テレポート)を使ってもらい、役割をこなしてもらう」
土御門が言うと、意味もなく美琴が驚いたような表情を造る。
「伝達する情報については、後で説明する。白井には情報伝達以外に、臨時の戦闘要員、応援の移動を平行して行ってもらうつもりだ。かなり能力の使用回数が高いだろうから、後々の能力使用については、ただでさえ人がうようよいるところに空間移動(テレポート)してもらうんだから気をつけるように俺から言っておく。間違って味方の体内に空間移動(テレポート)しちゃいましたー、なんてことになったら笑い事で済まされないからな」
そこまで一気に言う土御門。
「おい、相手だって間抜けじゃねェだろ。白井がそんなことをやっていることに気づけば、相手だってさっさと妨害してくるはずだ。その時はどォする?」
一方通行(アクセラレータ)が、もっともなことを言う。
「そんときは白井の能力で逃げ切ってもらうしかない。白井はその役割上、戦況を常時把握してもらっているから、相手とばったり遭遇するようなへまは早々しないだろうし、その状況に立っても一瞬あれば逃げれるだろう」
「実際には、そんなに使い勝手がいい能力じゃないわよ。ちょっとした精神の揺れで使えなくなることだって普通にあるくらいだし、絶対能力者(レベル6)と遭遇したら能力使えなくなってもおかしくないわ」
美琴が冷静に言うが、
「その時は、どこかの超能力者(レベル5)第3位が駆けつけてくれるんじゃないか?」
「…超能力者(レベル5)に易々と喧嘩売る奴は、始めてみたわね…当麻を除いて」
最後にボソッと言い、美琴は土御門を睨みつけながら続ける。
「あんたら魔術師のことはよく分からない。でも、超能力者(レベル5)をなめてもらっちゃ困るわよ」
「その、なめてもらっちゃ困る超能力者(レベル5)を圧倒する奴らを倒す計画を練ってるんだけどなぁ…」
土御門が苦笑まじりに言い、やはり続けた。
「…こっちだって、なめてもらっちゃ困る。そこらの超能力者(レベル5)に負けをさらす気なんて早々ないぞ?」
「超電磁砲(レールガン)って、あんたらでも分かるかしら?それを何発ぐらい打てば、あんたは死ぬと思う?」
「数千発打ってもらわなきゃ、まず話にならんな」
その言葉が、完全に引き金になった。
美琴がスカートのポケットからメダルゲームのコインを取り出し、構える。
対し土御門はもう魔術名は名乗っているので、折り紙を取り出した。
そして、

バギィィッンッ!!

それだけの音が響いた。
その直後、
「だから!何でお前らはそう簡単に喧嘩始めちゃうわけ!?しかも両者とも本気でやりあえば人地区くらいぶっ飛ばせる力持ってるっつーのに!!」
上条が、美琴と土御門の間に右手を突っ込んでいた。
「まぁ、当たり前か(よね)」
土御門と美琴の声が重なった。
「…意味わかんねぇから。妙なとこで共感しあってんじゃねぇ。そして土御門と神裂!テメェらには聞きたいことがあるんだよッ!!」
「あん?なんなんだカミやん、聞きたいことって?」
「それは土御門、あれのことでしょう?あの不可解な魔術を吹っ飛ばすために使った魔術について」
「あれ?とうま、あれのことに気づいてたのッ!?」
「当たり前だろ!?流石の俺でも気づくわ、あんなことやられちゃッ!」
「で、カミやんはその魔術行使について、説明を求めている、と?そういうことかにゃー??」
「だから、あ・た・り・ま・え・だっ!!!!」
今度は上条がキレる番らしかった。

254とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参-Ⅲ-Ⅹ-Ⅳ:2010/05/04(火) 17:35:44 ID:Oi0nY8k.
上条が程よくキレた後、土御門がダメージを感じさせない口調でこう言った。

「いやー、実は俺たちにもよく分からんぜよww」

「…お前は、これ以上俺に無駄な力を使わせるつもりか…?」
お説教が足りないようだな、と指の関節を鳴らす上条。
「違いますよ少年、土御門が言っているのは、私たちが魔術を駆使しなければならなくなった原因の発生についてです」
「…ちゃんと説明してから、そういう分かってる人にしか伝わんない言葉は使おうぜ」
げんなりしながら、神裂に力なく言葉を返す上条。
「まぁ、説明といっても…」
「じゃあ、俺が簡単に説明するにゃー」
そういうことに慣れていないであろう神裂に変わり、土御門が進み出た。
「①、よく分からないが、とりあえずよくはなさそうな魔術が俺たちを対象に発動されていた。
②、それにいち早く気づいたインデックスが、天草式の連中にそれを伝え、魔術師たちにその事実を伝えるように頼んだ。
③、天草式が何気ない素振りで魔術を発動し、俺たちにそれを伝えてくれた。
④、じゃあ、それをどうにかして無効化しよう、という話になった。
⑤、しかし、堂々と魔術を使うわけにはいかないから、どうにかして気づかれないように工作する必要があった。
⑥、それで、俺とねーちんが喧嘩を装ってでかい魔術を使うことにした。
⑦、ねーちんの攻撃と俺の魔術が衝突した瞬間、ほかの魔術師たちも魔術を発動させて、そのよく分からない魔術を無効化させることに成功した。
…とまぁ、こんなもんだにゃー」
とりあえず、説明が終わるまで突っ込みを我慢していた上条だが、ようやく突っ込めるタイミングが来たらしいのでそれを実行した。
「待て。まず、インデックスはどうやって天草式の連中に『それ』を伝えたんだよ?」
「まずだな、伝えようとしている連中は、『あの』天草式ぜよ、カミやん。日常的に行われる行為に魔術的意味を見出し、誰にも気づかせずに魔術を発動させる連中…そんな連中に『魔術が試用されている』なんて伝えるのは、そう造作もないにゃー?それに、伝えているのは、やっぱり、『あの』インデックスだぜぃ?素人に感づかれずに情報を交換することくらい簡単だにゃー」
結構キツい突込みだと上条は思っていたのだが、あっさり土御門に返されてしまった。
「ぐ…じゃ、じゃあ、どうやってその魔術を無効化させたんだよ?あの瞬間に魔術を発動させるなんて出来んのか?」
「あんな、周りの人間の脳が全然回ってない状況で、素人に気づかれずに魔術を発動させられないはずがないぜよ。あくまで俺たちは『プロ』なんだぜぃ?カミやんはそれを今まで倒してきたが、それはカミやんがイレギュラーすぎるからだ。あんまり俺たち(魔術師)を甘く見るんじゃないぜよ」
やはり、この突っ込みもあっさりと返されてしまった。
「…分かった、じゃあ、最後に聞くけどさ…」
そういった上条には、少しだがまだ消化されていない謎があった。
「その魔術は、いったい何なんだ?」
「…」
今度は、流石にすぐには応えられなかったらしい。
土御門に代わり、インデックスと神裂が応えた。
「とりあえず、普通の魔術じゃないね…少なくとも、私の10万3000冊にも載ってなかったし、似ているような魔術も一つもなかったんだよ」
「らしいです。彼女が言うから間違いはあるはずないでしょうし、それにその魔術は、厳密には『無効』にしたのではなく、『吹き飛ばした』わけですので…無効化する魔術が見つからなかったんです、彼女がいる状況でも」
「…」
上条は、その言葉を聞き、黙る。
…前にも、あの時、そんなことが…
上条はそんなことを考えていたのだが、それを確証付けるようにインデックスが言った。

「あれは…フィアンマの魔術と似ていた、様な気がする…」

255とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参-Ⅲ-Ⅹ-Ⅴ(半):2010/05/04(火) 17:40:09 ID:Oi0nY8k.
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「へー…気づけるんだな、今のインデックスにも、私の魔術が」
「っておいおい、何あっさり言ってくれちゃってんのよ。逆探とかされたらどうする気だ?」
「流石に、今のあの娘にはそこまでされる気はないですよ」
そう言った人間は、隣にいる人間に微笑みかける。
隣にいるのは、日本人にしてはなかなかの身長と、それなりに整った顔立ちをした、明らかに裏通りが似合う身なりの良い30代半ば辺りに見える男性。
御坂旅掛。
御坂美琴嬢の父親で、御坂美鈴嬢の夫に当たる存在。
そして、自分にとっては…本来ならば、敵対関係にあり、正反対の位置に立ち、互いを潰しあっている筈の存在。
だが、二人にとってそんな『世界』の事情など知ったことではないらしい。
互いに共通する目的を持ち、共通する敵を持ち、そして共通する『チカラ』を持つならば、もう一緒に戦っていいと思う、その『目的』のために。
御坂旅掛の目的、それは娘である御坂美琴を、『世界』から守ること。
そのために、この男は娘を、あの学園都市第三位にまで押し上げてしまったのだ。本人が望んでいるのかも聞かずに。
そのせいで美琴は、自分のDNAマップを採取されてクローンを造られたりしたりするのだが、結果的に上条当麻という存在に出会えることが出来たから良いだろう。
…と旅掛が思っていたのもつかの間、その上条当麻を旅掛が調べてみたところ、なんと『幻想殺し(イマジンブレイカー)』を内包していることが分かってしまった。同じく、自分が御坂美琴のことを調べてみると、『現実殺し(リアルブレイカー)』であることが発覚してしまった。
これは大問題である。
『現実殺し(リアルブレイカー)』と『幻想殺し(イマジンブレイカー)』。本来ならば、やはり敵対関係にある二つの存在が、目の前にいるのに無視するどころか、片方はもう片方に好意を抱き、片方はもう片方の命を救ったりするのだ。これで異変が起こらないほうがおかしい。
まぁ、その『異変』は、学園都市統括理事長、『人間』アレイスター=クロウリーには予想の範囲だったらしく、『プラン』にはさほどの影響を与えていないらしいのだが。
その事実を考えると、やはり自分たちの『敵』が化け物じみているのを改めて実感させられる。自分たちも十分化け物であるのにもかかわらず。
と、そこまで考えていた私に、旅掛さんが話しかけてきた。
「…それに、あんたの息子さんも気づいているようだぜ、あんたの魔術に」
「…息子の成長を、素直に喜べない父親というのも…哀しいものですね」
「…」
旅掛さんの言葉を、何気なく返したつもりだったのだが、そちらは思い言葉として受け止めてしまったらしい。何か重々しい雰囲気が私たちを包んだ。
…いや、この成長は…
と、息子のことを考えていた私の脳裏を、とある予感が駆け巡る。
…まさかと思うが、もう神浄の討魔が…?または、幻想殺し(イマジンブレイカー)がなりふりかまわなくなってきたか…
ふぅ、と思わずため息をついてしまう。
何で、自分の息子に限ってここまで不幸なんだ。
以前、その『不幸』を誰かに押し付けて息子を幸せにするために、大規模魔術を発動させたこともあったが…
そのとき、息子はこう言っていた。
『こんなにも幸せな不幸を、俺から奪わないでくれ』
…実のことを言うと、その時のことはよく覚えていないので、そっくりそのまんまこれを息子が発したのかは自信がない。
だが、同じような意味を持つ言葉を、息子が発したのは間違いない。自分は、その言葉に影響されて土御門君に抵抗しなかったのだから。
しかし、やはり今考えてみると、我ながら何を考えていたんだ、と思う。
「…お前は、自分が背負っているものの重さが、まだ分かっていないんだよ」
?と旅掛さんがこちらを見てくるが、私は気にせずに続けた。
「神浄の討魔、幻想殺し(イマジンブレイカー)、竜王滅相(ドラゴンキラー)…」
おそらく、旅掛さんはこのワードで私が何を考えているのかを察したらしい。さすが世界を相手にする企業戦士、といったところか…いや、企業戦士でもない気もするが。

256とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参-Ⅲ-Ⅹ-Ⅴ:2010/05/04(火) 17:41:02 ID:Oi0nY8k.
と、そんな思考を打ち切って、そのまま独り言を続ける。
「…お前は、これらの存在を正確に知っても、これを奪うな、ということが出来るのか?当麻」
あの時の息子の顔を思い浮かべる。やはりよく覚えていないが、必死の形相だったはずだ。しかし、その表情の中にはどこか嬉しさも含まれていた気がする。
少なくとも、負の感情は一切なかった。
「…私には…私には、無理だよ。お前がこんな『世界』のために食い潰されるのを黙って見ているのなんて、な」
その精悍な顔立ちでいて、どこか理知的な顔から、一滴の雫が堕ちた。
「…ハハ。幻想守手(イマジンガードナー)が泣いていますよ、人間でもないのに」
「そう言わない言わない。同じ『神』を宿したもの同士だから、そういうことを言われるとこっちも、なんだか、ねぇ?」
現実守手(リアルガードナー)の旅掛がそういってくる。そう言われては、謝るしかない。
「…すみません。ですが、流石にこれは…」
そういって、また息子のことを考える。
「…耐えられませんよ」


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それに耐えられないから、私たちは動く。
御坂旅掛…現実守手(リアルガードナー)は、御坂美琴…現実殺し(リアルブレイカー)から、そのチカラを奪い、平凡な、ただの少女に戻ってもらうため。
そして、自分。上条刀夜…幻想守手(イマジンガードナー)は、上条当麻…幻想殺し(イマジンブレイカー)から、そのチカラを奪い、不幸でもない、普通の少年に戻ってもらうため。
そして、現実操者(リアルコントローラー)、幻想操者(イマジンコントローラー)となり、アレイスターの立てた『プラン』から、幸せになるべき自分の子供たちを守るために。
二人の父親は、今も動いている。

257とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参-Ⅲ-Ⅹ-Ⅴ(半):2010/05/04(火) 17:42:21 ID:Oi0nY8k.
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「ってことでまぁ、そのフィアンマ並の魔術師相手にゃさすがの俺たちも太刀打ちできない、って話ぜよ」
「どういう話だよ。いったいどこをどうすればあのインデックスの言葉から今のお前の台詞に繋がるんだよおいちゃんと説明しやがれ猫野郎」
いきなりのわけの分からない土御門の台詞に、とりあえずまくし立ててみた上条だが、特に説明など求めていない。こんな変人なら何をやってもおかしくない――――そう土御門を捕らえているからだ。
「…なんかとりあえず俺は突っ込みましたよ的な雰囲気を造ろうとしてないかカミやん。バリバリその雰囲気がするぜぃ…」
「おお、さすが土御門、勘も鋭いな」
「…あっさり言うなよカミやん…」
本日何回目か、もはや数えるのも面倒くさくなってきたほどに失望する土御門。
「それはともかく、さっさと話を続けようぜ」
「…それはともかく、の部分に激しく反意を持つが…まぁ、カミやんの言うとおりだしな…続けよう」
気を取り直すように首を鳴らす土御門。
「…あのさ、今までの会話…全くもって理解できないんだけど?」
どうやら、今までの会話は学園都市第三位の頭脳を持ってしても理解できなかったらしい。
…いや、そもそも自分の知らない世界なんて誰も理解できないだろうが。
「お前は理解しなくて良い、というか理解されたらいろいろとまずいと思うぞ」
土御門や神裂をチラ見しながら、上条は美琴に語りかける。
「だにゃー。第三位といえども、所詮は一般人。こっちの世界を理解されるわけにはいかないぜよ」
「とかいっておきながら、さっきから隠語も何も無しに会話していたように聞こえたけど?」
「そうだが、何か問題でも?」
土御門は、お前にはどうせ素で話しても理解できないだろう、という雰囲気を放っている。
…またか、と上条は二人の仲介に入る。
「はいはいいい加減やめなさい二人とも。だからそう簡単にキレちゃいけないでしょあなた達は」
「そうですよみっともない。まだ年端もいかない女子に簡単にキレるなんて、土御門もまだまだですね」
と、上条が仲介に入った後、神裂も続いた――――のだが、それはどこからどうきいても、美琴に対する挑発にしか思えない。本人にその気は無さそうだが。
案の定、美琴は神裂に対しても睨みを利かせていた。
「…やっぱり、この面子は放すべきだろ?」
上条が、誰ともなく疲れた声で言った。

258とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参-Ⅲ-Ⅹ-Ⅴ:2010/05/04(火) 17:43:15 ID:Oi0nY8k.
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とりあえずその場は上条が美琴を強引に魔術サイド勢から引き離し、お前もそう簡単にキレるなってあいつらには俺から後で言っといてやるからさ、と上条がどうにかして美琴をなだめ、美琴はそれで納得したようだった。
上条はそれに不信感を持ったが(超電磁砲(レールガン)の一発や二発は喰らわされる覚悟だった)、事が穏便に済む分には文句無い。今度あいつらとゴタゴタあったらお前退場な、と美琴に釘をさしてから彼女を連れて話し合いの場に戻ってきた。
「悪い、こいつには言っといたから、これで済ましてくれ。あと土御門、お前もわざわざ挑発するんじゃねぇよ」
戻ってきたか、という顔をする一同に対してこの言葉を発し、さっさと話を終わらせる方向に向けようとする上条。
「…まぁ、そういうことで良いかにゃー。じゃ、今度こそ真面目に始めるぞ」
誰のせいで今まで進まなかったんだ、という思いは心の中に留める。これを口にしたい気持ちは山々だが、口にしたらそれはそれで面倒くさいことになるだろう。
「…で、さっきは白井のことまで話したわけだが、覚えてるか?」
一気にガラリと雰囲気を変えた土御門の言葉に、皆頷いた。
「じゃあ、白井についてはそれで終いだ。次は妹達(シスターズ)と打ち止め(ラストオーダー)について」
やはり今回の話でも、美琴は眉を吊り上げた。キレて暴走しないことを祈るばかりの上条である。
土御門はそんな二人を全く気にすることなく、サクサク話を進めていく。
「彼女たちには、主に情報の入手・管理・応用を行ってもらう」
「具体的に言え」
それまでだんまりを押しぬいていた一方通行(アクセラレータ)が、もっともなことを言った。
「もとから言うつもりだよ。まず、情報の入手についてだが、いたって単純。妹達(シスターズ)を様々な場所に配置し、そこから望遠鏡やら双眼鏡やらで戦場を観察してもらって情報を入手するだけだ」
「いかにも沢山います、みたいな感じで言ってるけど、今の学園都市には妹達(シスターズ)は10人程度しかいないわよ?」
あまり妹達(シスターズ)大切に扱っているように思えない土御門の作戦に対しキレるかと思われた美琴だが、土御門に助言を出した。
「ああ、それについてはもう解決済みだ。ある程度彼女たちも回復してきたらしく、学園都市が外の機関から一時的に彼女たちを回収して検査を行うつもりだったらしい。あと十分足らずで大量の妹達(シスターズ)がこの病院に来るそうだぞ」
「…って、この病院に全員ッ!?そ、そんなの無理に決まってるでしょ!!理解できていない人間たちがパニックを起こして、戦闘云々の話どころじゃなくなるわよ!?」
「だから、それくらいも承知済みだ。10人程度の妹達(シスターズ)を選抜して、彼女たちを通して全ての妹達(シスターズ)に情報を伝達してもらうつもりだが、何か問題があるのならば指摘して欲しい」
完璧に美琴の上をいっている土御門――――いや、学園都市?――――の言葉に、美琴は不承不承…でもなく、普通に納得したらしい。スイッチ切り替えてんのか?と美琴をマジマジと観察してみる上条だが、何か出っ張ってるものなどどこにも見当たらなかった。特に性的な意味は含んでいない…はずだ。
「話を戻すぞ。その妹達(シスターズ)に情報をそうやって入手してもらい、ミサカネットワークで管理してもらう。その時に、莫大な演算能力を誇るミサカネットワークを駆使して、その情報をもとに現状況で一番有効な作戦を立ててもらうつもりだ」
今話している土御門の作戦だと、妹達(シスターズ)は今回の戦いにおいてかなり重要部分を担っているように思える。あいつらも報われたなぁ、と一人感慨深くなってしまう上条だった。

259とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参-Ⅲ-Ⅹ-Ⅴ:2010/05/04(火) 17:44:05 ID:Oi0nY8k.
「…いいように利用するわね…」
美琴が、呆れたようにつぶやく。
しかし、上条はそこであることにハッ、と気づく。
「――――おい、待てよ。…良すぎないか?」
「何のことを言ってるんだカミやん?流石にそれじゃ伝わらないぜよ」
土御門が、理解できない上条の言葉に首を傾げる。
「タイミングだよ。あいつらの検査のタイミングと、今回の事件のタイミング…噛み合いすぎじゃないか?」
上条はそれに即答する。
「…言われてみれば…」
「ッつーか、どう考えてもその線しかなさそうだなァオイ」
美琴と一方通行(アクセラレータ)が、上条の意見に賛同する。
「学園都市についてはさほど知っているわけではないですが…このようなパターンのとき、同じようなことが『偶然』起こる場合は、限りなく少ないと思いますが」
神裂が冷静に言う。
「じゃぁ、カミやんの言葉を肯定すると――――」
そこで、一度土御門が言葉を切る。

「――――学園都市は、今回の事件を想定していた、又は故意的に起こしていた、ということになるぞ」

「…そう考えて、間違いなさそうだな」
上条がそうつぶやく。
しかし、
「だがよォ…そんなことをして、学園都市に利益あンのかァ?負けたら、ヤバいくらいの損害を被るぜェ?」
「…さあな。上層部(うえ)が考えることを全て分かるはずがない」
土御門が、首を横に振る。
「…まったくね。本当に何を考えているのか…」
美琴が言う。おそらく、妹達(シスターズ)のことを回想しているのだろうが、それでも美琴が知らない裏が、妹達(シスターズ)には存在する。
「つーかその前に、故意的に起こしていたとしたら…学園都市は、よっぽどの奇跡が起きない限り『反乱因子』に、負けるつもりはない…ってことだよな?」
「…」
上条の言葉に、全員が黙った。
「…何言ってんのよ、流石に『あの』学園都市でも、そんな戦力を即時に出せるわけ――――」
ないでしょ、と続けようとしたであろう発言を、美琴は飲み込んだ。
――――あるかもしれない、その場にいたほとんどの人間が、そう考えた。一方通行(アクセラレータ)にいたっては、あの『ドラゴン』のことを思い出し、明確に、学園都市は今すぐにでも反乱因子を潰すことが出来る、と確信した。
「…なンなンだか、俺たちの住ンでる『はず』の…『学園都市』ってェところは」
一方通行(アクセラレータ)が、思わずつぶやいた。
「…学園都市が反乱因子を今すぐにでも潰せる、と仮定すれば…何故学園都市は、俺たちに反乱因子を潰させようとするのか、という問題が出てくる。つまり、それが俺たちの『勝利条件』ってことだ。それをクリアさえすれば、ある程度の戦力である俺たちを学園都市が見放すことはない」
土御門が、サラサラっと言っていく。成績は悪いくせして、こういうところでは頭の回転速いな…いや、成績を悪く『見せてる』のか?あいつ一応スパイだし…と、上条は足らない頭で考えていたが、ふと思いついたことがあったので質問してみた。
「待てよ。その『勝利条件』は、学園都市には出来なくて、俺たちには出来ること…だろ?」
「…そうなるな」
そうでなければ、簡単に学園都市が反乱因子を制圧すれば良いだけの話だからだ。それをわざわざ、手間をかけてまで俺たちにやらせている。それほどの価値が、『勝利条件』があるからだ。
「…どんなものだよ、それって」
学園都市に出来なくて俺たちに出来ること…情けない話だが、正直そんなものは思いつかない。
「それが分かっちまえば、今回の戦いはかなり楽にやれるんだがにゃー」
土御門が、ハァ、とため息をつきながらちゃらけた口調で言う。
「分からないものを唸りながら思索しても、無駄な時間を浪費するだけです。そろそろ話題を変えましょう」
科学サイドの話ばっかりで、あまり出番がなかった神裂が、少しイラついた口調で言う。そういえば、どこぞのシスターさんに関してはまるっきり発言無しだ。
「…かにゃー。話題をもとに戻――――」
なぜか土御門の言葉が、途中で止まる。
ん?と土御門の方を見ると、
「――――前の話題って、なんだったかにゃー、カミやん?」

260とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参-Ⅲ-Ⅹ-Ⅶ:2010/05/04(火) 17:45:01 ID:Oi0nY8k.
ということで、今まで出番が0だったどこぞの完全記憶能力の持ち主が『確か、しすたーずとかいう人が情報を管理・応用するって話だったよ』と言ったので、土御門は話を再開した。インデックスの言葉を少しも疑っていない。当たり前だが。
「戦闘の際には、妹達(シスターズ)には20人1グループで行動してもらう。そんだけ数がありゃ、早々のことじゃ倒れないはずだぜぃ」
『ねぇ、しすたーずって何?日本の修道女さん?』としきりに聞いてくるインデックスを適当にあしらっていた上条は、土御門の言葉を素直に肯定できなかった。
あんな、実験という名の大虐殺を生み出してきた学園都市だ、今更妹達(シスターズ)の命なんてなんとも思ってないだろう。そう考えてしまう。
そんな上条をよそに、土御門は話を続けた。
「で、そのグループの中で一人リーダーを決め、そいつがミサカネットワークに干渉するシステムにする。全員がミサカネットワークに干渉している状況で情報をどうしようとしても、混乱するだけだろうからな」
「だが、そンだったら情報の『応用』とやらはできねェンじゃねェのか?」
一方通行(アクセラレータ)が、土御門の言葉を聞いていった。
「大丈夫だ。ミサカネットワークは、妹達(シスターズ)全員で『構成』する。『干渉』するのは、その中から選ばれた奴だけ、って話だ。全員で作るが、使用する奴はそのうちの少数だ、ってことぜよ」
「言い方が酷い。労働なんちゃら法に引っかかりそうな言い方だぞ」
土御門の言葉を否定はしないが、批評はする上条。
「そういうことなら、問題無いんじゃないの?」
美琴がそう言うが、土御門は首を横に振る。
「これだけじゃまだだ。20人のうちの1人はリーダー…いや、『干渉者』と呼ぶか。で、それだが、それ以外にも役割はある。9人が情報の入手をする役割。6人が見張り・即時の戦闘を行う役割。1人がミサカネットワークから情報を入手し、それを干渉者伝える役割。1人が白井などに情報を伝える役割。1人が俺たちからの指示などを仰ぐ役割。1人が非常時に状況を伝える役割。数が足りなかったりした場合には、情報入手のところから人員を派遣する。何か意見があったら是非言ってくれ」
土御門がそこまでを一気に言う。それに意見する者はいない。
「それじゃ、1グループはこのようにして動いてもらう。9969が総員で、グループは498個作れる。あまりは9人いるが、そいつらは別行動だ」
「別行動?」
美琴が首を傾げる。
「それの説明の前に、まだ出てきてない妹達(シスターズ)がいないか?」
土御門はそう言いながら、少しニヤついた顔で一方通行(アクセラレータ)を見た。
「…チッ」
舌打ちをし、顔を逸らす一方通行(アクセラレータ)。
「打ち止め(ラストオーダー)だ」
一方通行(アクセラレータ)に答えてもらえなかったので、自分で答えた土御門。
「彼女には、いつもどおりミサカネットワークを管理してもらう。具体的には、情報の整理、最良の作戦の総指揮、
グループの管理、それぞれの干渉者への情報伝達を行ってもらう。彼女が書けたら不味いことになるから、あまりの9人は彼女の護衛に徹底してもらう。安心しろ、もとから彼女は比較的安全な場所に居座らせる」
後半の言葉は、一方通行(アクセラレータ)に向けて発せられたようだった。対フィアンマ戦のときに、上条も一方通行(アクセラレータ)と打ち止め(ラストオーダー)の関係には気づいているのでそう分かった。
「妹達(シスターズ)については以上のつもりだが、何か意見はあるか?」
やはり、特に意見する者はいない。
しかし、一方通行(アクセラレータ)だけは内心ほっとしていた。
(番外固体(ミサカワースト)は、今回の件に関わりはなし、か。まァ、あの性分じゃァまともな仕事は出来そうにねェからなァ)
学園都市が、一方通行(アクセラレータ)を殺すためだけに造り出された、憎悪に満ちた妹達(シスターズ)を思い浮かべる。
(…だが、あの一件以来アイツらの顔を見ねェな。…また何か企ンでやがンのかァ?)
チッ、と一人で舌打ちする一方通行(アクセラレータ)。
そんな一方通行(アクセラレータ)を横目に、上条は言った。
「で、その他の奴らは?」
滝壺と浜面、そしてインデックスのことだ。
「じゃ、そいつらの説明に移るとするか」
土御門が、首をゴキゴキ回しながら言った。

261神浄の討魔=美琴信者:2010/05/04(火) 17:50:10 ID:Oi0nY8k.
以上で投下終了…になるわけですが。
ものすんげぇミスったZE!!!!
とりま、239 の葛城の紹介の前に、本来ならばこれが入ります↓

「長谷田鏡子。女性。常盤台中学所属の2年生。超能力者(レベル5)の第5位」
その音とともに、モニターに鏡子の写真が写った。本人はあまり興味を示していなかったが。
「能力は精神系の能力、『心理掌握(メンタルアウト)』。精神に関するものならば、ほとんどなんでも出来ます。記憶に関するものも能力範囲です」
それだけの簡潔な説明の後、モニターは違う写真を映し出す。

です。誠に申し訳ございませんっ!!
あと、とある都市の反乱因子(ハイレベルズ)〜のあとの数字がかなり間違ってますが、238を参考に考えてもらえれば幸いです…本当に申し訳ございませんっ!!
で、次の投下日はまったく不明。出来るだけ早くするように心がけます…
ではぁ。

262保守がてらのてけとー嘘予告(初投下):2010/05/04(火) 21:32:16 ID:rbomSoqo
「―――じゃあ、行ってくる」
そう一言だけを言い残して、その不幸な少年は旅立った。
一介の高校生に過ぎないその身に、あまりにも大きな重荷を背負い。
自らに降り掛かる巨大な不幸を、しかし幸福だと言い切って。
いつの間にか生じ、誰が気付くこともなく広がっていった世界の異常(ズレ)は、既に世界そのものを崩壊させかねないほどにまでなっていた。
その異常(ズレ)を正すため、なりふり構わず力を求めたフィアンマを打ち破った時、少年は決意していた―――『世界崩壊(ラグナロク)』などという巫戯けた幻想は、自分が全てぶち壊してやる、と。
かくして、幕は上がる。世界の命運を賭けた、最後の戦いが始まる。
「今度という今度は、私を蚊帳の外に置くなんて許さないんだよ―――!」
10万3000冊の禁書目録の、
「なんっで……いつもかも独りで戦おうとすんのよ、あの馬鹿―――!」
恋する学園都市第三位の、
「あンの善人が……英雄にでもなるつもりかァ―――?」
世界最強の超能力者(レベル5)の、
「あの野郎には、馬鹿デカい借りがあるからな―――」
立ち上がった無能力者(レベル0)の、
そして―――たった一人の少年が救ってきた、その全ての幻想(おもい)が交差する、その時。
上条当麻の、本当の物語が始まる―――!

「俺は―――幸せだ」


とある魔術の禁書目録最終巻 coming soon!

263かぺら:2010/05/06(木) 18:16:37 ID:XSFmBzEg
こんにちは。
『Liberta』の続きを投下していきます。
1話の『邂逅』は>>42-50
2話の『事件』は>>137-143

【注意事項】
・オリキャラ出てきます。無双しないように気をつけていますが、苦手な方はお避け下さい。
・場面転換が多いので、1レスごとの文字数が一定してないです。

では、18:20より11レス借ります。

264疑惑1:2010/05/06(木) 18:22:23 ID:XSFmBzEg
上条当麻がいない。
ボサボサ茶髪の雨宮がその事実に気付いたのは10月9日の朝になってからの事だった。
借りていた参考書を返そうと上条に電話してみたが、出る気配はない。
家も遠くないので直接訪れみても、誰も出てこない。
「あれ、今日は授業もねぇはずなんだけどな……補習か?」
今日は学園都市の独立記念日であり、祝日となっている。
隣室の土御門を訪ねてみても留守であるところを見ると、ひょっとしたらデルタフォースは補習かもしれない。
実際は、上条は入院中。土御門は暗部組織のお仕事の真っ最中だったりするのだ。
「これどうするよ……入れとくかな?」
雨宮は手に持った参考書を睨みつつ、ドアポケットへの投下を試みる。ちょっと入りそうにない。
今日は祝日、といっても普段の休日のように楽しげな騒がしさはない。
学園都市は昨日からのニュースで持ちきりであり、多かれ少なかれその話題が会話の中に混じっている。
『国際法違反兵器製造の宗教団体を鎮圧』という見出しが各種メディアに踊っている。
雨宮は男子寮の廊下から学園都市を見渡す。飛行船の側面にもその文章が出ていた。
「鎮圧、ねぇ……」
オブラートに包んだような表現しかされていないものの、学園都市のそれは『侵攻』にしか見えなかった。
一般にはアビニョン侵攻に関して公開されている情報は殆どない。
ましてや『C文書』やら『左方のテッラ』に関する情報が流れているわけもなく、そこに上条当麻が関わっていることなど噂にもなっていない。
教皇庁宮殿が爆散したらしいことは映像が残されていた。
件の兵器を破壊するために投入された学園都市製の兵器軍の破壊力が証明されただけだった。
「一回は見に行きたかったんだけどね、あの宮殿」
許されるとは思わないけど、と小さく呟く。
雨宮はもう一度上条宅の扉をノックしてみるが、相変わらず反応はない。
出直そうとその場から踵を返し、エレベーターを呼ぶ。先客が乗っていたらしく、ボタンを押す前から稼働していた。
きんこーん、と高い音が鳴りエレベーターが開く。
「……あれ、その服は、とうまのお友達?」
「んなっ!?」
中から三毛猫を抱いた白いシスターが出てきた。
「……………十字教徒、か?」
「私はイギリス清教の修道女って、あぁぁっ!?」
無情にもエレベーターの扉が閉まっていく。
「うおぉっ!?」
雨宮は慌ててそのボタンに手をかけ、扉を開く。
「いきなり閉じるなんて、やっぱり『えれべーた』は苦手かも」
「あ、うん、取りあえずそっから出ろ」
雨宮はエレベーターのパネルを睨んでいる小さなシスターさんに呆れ顔をつくる。
「で、イギリス清教のシスターさんはこんな所で何をしてるんですか?」
「こもえの所から帰ってきたんだよ。とうまが昨日から帰ってこないから、私は空腹で倒れるかと思ったんだよ」
こもえとはあの小さな先生の事だろうか。雨宮は目の前のシスターさんと上条がどんな関係なのかと頭を悩ませる。
「ところで、あなたはどこの人?とうまと同じ『がっこー』の人みたいだけど」
「あぁ、上条にこれを返しに来たんだけどね」
『さんこーしょー』ってやつだね。と言って、インデックスは上条の所有物であるそれを受け取った。
「上条が帰ってきたら、ありがとうって伝えといてくれ。よろしくな、インデックス」
雨宮はインデックスにそう伝えると寮を後にした。

265疑惑2:2010/05/06(木) 18:22:34 ID:XSFmBzEg

御坂美琴は一般人である。
レベル5であるので、カテゴリ的には『一般人』としにくいかもしれない。それに関しては本人も言っている。
そんな美琴は風紀委員の177支部に来ていた。
本来なら関係者以外は立ち入りできないはずのこの詰め所ではあるが、美琴は良く出入りしている。
もう一人、黒髪ロングの女の子も出入りしており、時によっては溜まり場的な雰囲気さえ漂う。
「あーあ、もっとキツく言っとけばよかったかな」
この支部のリーダー的な立場にある固法は溜息をついた。
「まぁ、仕事もしてるようなんだけどね」
固法はあーでもないこーでもないと言い合っている美琴と白井を見る。
「事件の始まりは第7学区なんでしょ?」
「初の補導者が出たのはそうですが、『幻想御手』の出所が第7学区かどうかはわかりませんが…」
白井は端末のエンターキーを叩き、学園都市内の広域マップを表示する。
「この赤い点が事件が発生した場所ですの。第7学区が一番多い事を考えると、その可能性は一番高いですわね」
「えっと、事件が始まったのが4日前でしょ?不審者の目撃情報とかないの?」
今のところは。と言って白井は別の資料を表示させる。
「これは?」
「事件前後で第7学区に越してきた人間のリストですの。もちろん、出入りだけなら誰でも出来ますので参考程度ですが」
美琴は白井の横からディスプレイを覗き込む。
新任の臨時講師に教育実習生、工事の業者さんから転校生まで。多くもないが少なくもない人数の名前がリストアップされている。
「この人たち全部にアリバイ確認したの?」
「証拠も嫌疑もかけられないレベルですので、そこはもう風紀委員の仕事ではありませんの」
警備員にお任せするしかないですわね、と白井は少しだけつまらなそうに言った。
美琴も自分の手でなんとかしたいとは思うが、さすがに白井達に迷惑をかけてまでは出来ない。
せめて自分の知る人間がいないかな、と思い、リストの名前に目を通していく。
「!……ちょっと黒子!これ、この人のデータ見せて」
美琴は身を乗り出してディスプレイの一部分を指差す。
「ちょっと待って下さいませ、お姉様。えっと、この雨宮さん……お知り合いですか?」
「昨日の、佐天さんの救出を手伝ってくれた人よ」
あの茶髪の殿方ですか。白井は思い出したかのような顔をすると、その男の名前をクリックする。
「雨宮、照さん。『風力使い』のレベル4ですわね……10月4日付で第7学区に越してきているみたいですが……」
「その前は何処にいたのか分かる?」
美琴の言葉に、白井は画面をスクロールしていく。
「前所属……大脳生理学の研究機関に被験者としていたそうですわね。そこで能力開発も受けたとなってますわ」
「大脳生理学って………木山春生の関係者じゃないわよね?」
美琴が白井の顔を見る。白井も同じことを考えていたらしく、既にその研究機関を検索していた。
「……お姉様、ビンゴですわ」
「そんな………」
「木山春生の所属先と同じ系列の施設ですわ」
白井も美琴の顔を見る。
ごくり、と唾を飲む音が聞こえ、目には若干の動揺が見られる。
こうなった以上、雨宮を調べざるをえない。上条の友人であるのも、佐天を救ったのも、演技だったのか。
美琴は雨宮のカラカラと笑う顔を思い出す。あれも全て、偽りだったのだろうか。
「………アイツに聞いたら、連絡先くらい分かるかも」
美琴は携帯を取り出し、上条の連絡先を呼びだす。コールボタンを押そうかと思った瞬間に、白井の携帯が鳴った。
「もしもし?えっ、分かりました。ご連絡ありがとうございます」
白井は驚いたような、何かを心配するかのような複雑な顔をして携帯を切った。
「お姉様、捜査は一旦後にさせてください」
いつもなら一刻も早く捜査に行こうとする白井が、真剣な顔で言う。珍しいな、と美琴は眉をひそめた。
「街中で能力者同士の戦闘があったみたいで。巻き込まれた初春が入院したそうです」

266疑惑3:2010/05/06(木) 18:22:44 ID:XSFmBzEg
「やぁ、奇遇だね」
シュビッ、と手を上げて雨宮は挨拶する。
「あ………昨日の」
ぺこり、と頭を下げるのは佐天涙子。奇しくも昨日のゲームセンターの近くだった。
「こんなとこで何してるの?」
「何ってわけじゃないですけど……なんとなく、歩きたい気分だったんです」
佐天は顔を伏せる。その表情は悩んでるいて、それを自分で認めたくない様な顔だった。
「元気が無いね、こんな良い天気だというのに」
「昨日、あんな事があった所ですから」
佐天は下唇を噛む。昨日の事件が怖かったわけではない。
思いだしたくない過去がフラッシュバックする。
「さて、悩める少女……俺と少しお話しよう」
「お話、ですか……そんな気分じゃないですけど」
カラカラと笑う雨宮を睨むように、佐天が眉を吊り上げる。
「そう言わずにちょっと付き合え。取って食おうってわけじゃないよ」
「………ナンパですか?」
「女の子の話を聞くのが男のすることだって、恩師には教わったんだけど、違ったかな?」
雨宮は相変わらずカラカラと人懐っこく笑う。不思議と心が軽くなるような笑顔だった。
「………私、お腹すきました」
「ん?」
俯いていた佐天は顔を上げ、弱々しくも笑ってみせる。
「年下の女の子をナンパしたんですから、ね?」
「ふむ、しっかりしてるというか何というか……そこのファミレスでいい?」
佐天はこくりと頷く。少しくらい、愚痴った方が楽になるかもしれない。
雨宮の後に続いてファミレスの席につき、パラパラとメニューを見て行く。
せっかくだから高いものを頼んでやろうか、と悪戯心が芽生えたところで雨宮がこっちを見ているのに気づく。
「いきなりでアレなんだけどさ」
雨宮は言葉を選びつつ続ける。
「君、何に悩んでるの?」
「……………ほんと、いきなりですね」
佐天はメニューをパタンと閉じる。
言ってしまえば愚痴も含めた色んなものが止まらないだろう。いざとなると、口に出すのが躊躇われた。
「……能力の事、か」
雨宮は溜息をついた。やれやれとでもいうような、めんどくさそうな溜息だった。
「あなたには………私の気持ちなんて、わかりませんよ」
―――高位能力者である人に、無能力者の気持ちなんて―――
佐天は目の前の少年の仕草にムッとする。そう簡単に怒りは収まりそうにない。
「だろうな。俺には君の気持ちは分かんないよ」
不満そうに睨む佐天の目を、雨宮は真っ直ぐに捕らえる。
「だからこそ、こうやって話を聞いてる。手伝える事なら何でもやってやる。それじゃ、ダメかな?」
拒んでも聞きそうにない。佐天は諦めたように溜息をつく。
「じゃぁ………話だけ、聞いてもらえますか」
佐天は水を飲んで口の中を潤すと、ゆっくり、口を開いた。

267疑惑4:2010/05/06(木) 18:23:06 ID:XSFmBzEg
「と、いうわけなんですよ」
全てを話したせいか、佐天はどことなくスッキリとした表情をしている。
「なるほど、『幻想御手』の罪悪感ってことか……」
雨宮は椅子の背もたれに体重を預けると、ふぅと溜息をつく。先程のようなめんどくさそうなそれではない。
「気にしないで、とは言われるんですが……どうにも上手く忘れられなくて」
ははは、と笑って佐天は日替わりランチのサラダに手を伸ばす。妙に酸っぱく感じられた。
「忘れなくてもいいんじゃないかな?」
雨宮は目の前のカレーを食べながら、ぶっきらぼうに言い切った。
「どういう、ことですか?」
佐天は目線を雨宮に移す。忘れろとは言われた事はある。逆は……初めてだ。
「一時的でも能力を使ってたんだからさ。ヒントはそこにあるんじゃないの?コツというか、なんというか」
「あ………」
―――考えた事も、なかった―――
もう半年くらい前の話で正直、正確には覚えていない。でも、確かにそうかもしれない。
「幻想の能力を使ってた自分が嫌なら、それを超えたらいいんでしょ?」
「簡単に、いいますね」
人ごとのように言うボサボサ頭の高校生に皮肉をこめて言ってみる。怒ってるわけじゃない。
「じゃぁ、手伝ったげよう。今日から特訓です」
雨宮は御馳走さまと手を合わせる。表情はいたって真剣だ。
「特訓、ですか?」
「そ!話聞いた限りでは、能力の感じは似てそうだし。感覚だけでも教えれるかも……迷惑だったか?」
呆けている佐天の顔を覗き込み、心配そうな表情になる。
「そうやって女の子をナンパするんですか?」
「まさか。そんなつもりはないよ」
雨宮は笑う。変わらない、カラカラとした顔で。
「そんなつもりも、そんな資格も、俺にはないんだから」
ほんの一瞬だけ、顔を曇らせる。小さな独白は、佐天にも聞こえるか聞こえないかくらいのものだった。
「?………どうかしたんですか?」
「ん?いや、なんにも。さー。そうと決まれば特訓開始だね。今日から始めるかい?」
再びにこりと笑うと、雨宮は佐天の都合を確認する。いつにするか、どこでするか、というか、そもそもやるのか。
「あ、と、とりあえず、アドレスとか交換してもらってもいいですか?」
「ん、いいよー。いやいやぁ、可愛い女の子の連絡先が増えるのは良いもんだね」
雨宮が携帯を取り出す。学園都市の最新モデルだった。
「はい、私から送りますね」
「ちょっと待って、まだ慣れてなくて…」
あーでもない、こーでもないと悪戦苦闘する雨宮に、佐天は頬を緩めると、その手から携帯を奪い取る。
「あ、こらっ!待てって」
「私がやりますよー。それとも、見られちゃマズイものでも入ってるんですか?」
佐天は悪戯っぽく笑うと雨宮の携帯を操作し、自分の連絡先を送る。
「忘れずに保存っと」
表示された完了通知を確認する。『No.007に保存しました』と。
佐天は首を傾げた。操作に慣れてない、という事は買いたてなのは確かだが、それにしても保存件数が少なすぎる。
これではまるで、『この前まで携帯を持っていなかった』みたいだ。
―――友達が、少ないのかな―――
触れちゃいけないのかもしれない。佐天は気にしないようにして、雨宮の連絡先を自分の携帯に送信した。
「はい、これでOKです」
「じゃ、気が向いたら連絡してくださいな」
雨宮は伝票をとって立ちあがると、ファミレスを後にした。

268疑惑5:2010/05/06(木) 18:23:21 ID:XSFmBzEg
佐天が初春の病室を訪れたのはそのすぐ後だった。
病院は走っちゃいけないとは分かっているが、自然と足早になる。
「初春っ!!」
目的の個室を見つけると、横スライドのドアに手をかけて一気に引く。
常盤台の2人組は既に到着していて、その影に隠れて初春の様子は見えない。
「初春、大丈夫だった?」
小走りに初春のベッドまで近づく。目に飛び込んできたのは、色んな機械に繋がれた初春。
ではなく、のん気にたい焼きを頬張る初春だった。
白井は呆れてものも言えない顔をしているし、美琴はその2人を苦笑いで見つめている。
「…………あれ?」
「佐天さん、どうかしたんですか?」
「初春、なんでそんなに元気なの?」
「私が元気じゃダメなんですか?」
初春はキョトンとしながらも、たい焼きを食べるのは止めない。
「…………はぁ、なんだ、良かったぁ」
佐天は身体の力が抜けたように、ストンとその場にへたりこむ。
「ほんっとに心配したんだからね」
「ありがとうございます、佐天さん」
にこっと笑ってみせる初春の様子を見ると、身体の方は大丈夫なのだろう。
「まったく、人騒がせにも程がありますわ………」
「まぁまぁ、黒子も佐天さんも、初春さんが無事だったんだから良かったじゃない」
美琴は白井を宥めると、へたりこんでいる佐天に手を伸ばす。
「佐天さん、そんなトコに座ってるとお尻冷えるわよ?」
「えっ!?あ、すいません」
佐天は美琴の手を借り、よいしょっと立ちあがる。
「襲撃にあったとはいえ、風紀委員の証たる腕章を失くしたとあれば始末書ですわね」
「うううっ……退院したら書きますよぅ」
初春はガクッと項垂れる。始末書だけならともかく、説教が加わりそうなので、初春には退院が喜ばしいのか疑問にさえ思えた。
「やっぱり初春は私がいないとだめだな―」
「そんな事ないですよー。むしろ、私がいないと佐天さんが寂しいんじゃないですか?」
「な!?言ったな、このやろーっ、うりゃうりゃぁ」
軽口をたたき合ったかと思えば、佐天はニヤッと笑って初春の脇腹を突いている。
「や、止めてくださいっ……」
「んー、やだー。やめなーい」
初春と佐天はきゃっきゃうふふとじゃれ合っている。
「じゃぁ、初春。私は177支部に戻りますので。お姉様も今日のところは寮にお戻りになって下さいな」
「うん……黒子も、無理しないでね」
美琴はじゃぁねー、と手を振るとそそくさと病室を後にした。
「どうしたんですか、白井さん?」
佐天は初春への追撃の手を止めると、美琴の去っていった病室の扉を見つめていた。
「おかしいですの」
「おかしいのは白井さんの方だと思いますけど………」
初春の軽口をスルーして、白井は何も言わずに病室から出て行く。
―――お姉様が……素直すぎますの―――
嫌な予感を感じながら、白井は177支部まで戻るのだった。

269疑惑6:2010/05/06(木) 18:23:34 ID:XSFmBzEg
御坂美琴は寮まで帰って来ていた。
素直に白井の言う事に従った形にはなるのだが、彼女なりに調べたい事があったのだ。
「とりあえずは、アイツにきいてみるしかないわよね」
美琴はカエル型の携帯電話を取り出し、上条の連絡先を呼びだす。
コールボタンに手を伸ばしたところで、何と切り出そうか迷う。
「『雨宮さんについて教えて』じゃストレートすぎるかな………」
美琴は上条の同級生であるボサボサ頭を思い出してみる。自分が見た限りでは怪しいところはなかった。
しかし、今日の白井との調査の結果、彼が容疑者候補の1人である事は確かだ。
どこにいるか見当もつかないので闇雲に探し回るわけにもいかない。
「全部喋ったら絶対アイツも首を突っ込んでくるだろうし……」
それは避けたかった。上条の右手に謎の能力が宿っている事は知っているが、それでも上条は無能力者だ。
「ええいっ、ままよ!!」
美琴は親指でコールボタンを押し、電話を耳にあてた。



上条当麻は病院に居る。
例によって冥土返しの病室で1人寝込んでいた。アビニョンから帰ってきて、直行でこの病院に突入である。
一緒に怪我していたはずの土御門は何処にもいない。入院するほどの怪我ではなかったのだろうか。
―――あの野郎、魔術使ってたはずなんだけどな―――
無理しやがって、と悪態をつく。『御使堕し』の時の様に、生存報告だけでもしてもらいたいものである。
ちなみに、その土御門は『グループ』として暗躍中であったりするのだが、上条は知る由もない。
「しかし、平和だ……」
インデックスには物凄く怒られてあちこちを噛まれた。彼女は怒れるまま小萌先生の家に居る。
上条が平和を噛みしめていると、サイドテーブルにおいた携帯電話が震える。
左手を伸ばし、はからずも新しくなった携帯を手に取り、表示された名前を見る。
『御坂美琴』
「げっ……」
上条は眉間にしわを寄せる。
「よりによってビリビリかよ……不幸だ」
どうせ『今どこに居るの、勝負しなさい!』的な話だろう。と上条は無視する事に決め、そっと携帯をテーブルに戻す。
しばらくしてから、美琴からの着信が切れる。
上条はホッとしたような、それでいてどこか後ろめたい気分になりながら布団に戻った。

270疑惑7:2010/05/06(木) 18:23:48 ID:XSFmBzEg
結局、上条がつかまる事はなく、美琴は翌日の朝を迎える事になった。
その事実はこうやって朝から177支部に来ている白井にとっても好ましい事態である。
「さて、問題の『幻想御手』の件ですが……」
白井は支部の電気をつけると、起動させた端末のメーラーを開く。
こんな朝から支部に顔を出しているのは押収した『幻想御手』の解析結果を確認するためだ。
今回のそれも、木山版『幻想御手』と同じく音楽を利用したものだ。その波形を解析すればなにかが掴めるかもしれない。
現に木山版では彼女本人の脳波が使われていた。
「えっと、解析結果…………わから、ない?」
白井は予想外の結果に絶句する。科学の最先端である学園都市の研究機関でさえ分からないとは…。
書かれている調査結果に目を通していく。
『科学的に、論理的には解明できないものの、人間に使用した場合、「幻想御手」同様の効果が発揮される』
『また、木山版のそれとは根本的にシステムが異なり、複数の能力者の脳をリンクさせるものではない』
『あくまでイメージであり、原理はわからないが、使用者の脳内に疑似的な演算補助デバイスを構築しているらしい』
『そのため、以前のような使用者の昏倒などは見られないと考えられている』
『以降、木山版との差異をはかるため、便宜的に「魔術御手(マジックアッパー)」と呼称する』
白井は斜め読みながら解析結果に目を通すと、プリンタを起動する。
「それにしても、良く分からないから『魔術御手』なんて……ネーミングセンスのなさには驚きますわ」
白井は精一杯の皮肉を込めた独り言を吐く。今日は土曜日であり、授業はない。
支部にもまだ白井1人しか来ていない。
「とりあえず、使用者の昏倒などの心配がなさそうなのは安心しましたが……」
―――犯人の動機が分かりませんの―――
白井は頭を悩ませる。
『幻想御手』と『魔術御手』の根本的な違いは、『脳をリンクさせるか』にあたる。
脳をリンクさせることで、自らを疑似的に『多才能力者』に木山の目的は以前の事件で発覚した。
今回はどうだ。『魔術御手』はそのメカニズムが存在しない。
犯人の動機が見えてこない上、原理すら掴めていない。
事件の解決までは、まだ距離がありそうだ。

271疑惑8:2010/05/06(木) 18:23:59 ID:XSFmBzEg

「あぁっ、もう、何処に居んのよアイツ!電話にも出ないしっ」
軽く辺りに放電しつつ、美琴は学園都市を歩いている。
上条がいそうな場所をあちこちと巡っているのだが、ツンツン頭が視界に入ってくる事はなかった。
最後のアテとしてやって来た例の自販機前でも巡り合えはしなかった。
そもそも目的は『雨宮の捜索』であり『上条当麻』はその手段でしかない。
初春や佐天にも見かけたら連絡してとメールしてあるが、今のところレスポンスはない。
「ふざけんじゃないわよっ!」
美琴は渾身の回し蹴りを自販機にぶち込む。ぶち込まれた方はたまったものではない。
ガココンッ!と飲み物が吐き出されてきた。
「げっ………いちごおでん」
美琴は出てきた缶と睨めっこしながらベンチに腰をおろした。
「どうしよう」
蓋を開けずにベンチに置いてみる。現実逃避気味に携帯を取り出すといじいじといじり回す。
特に何かが好転するわけでもなければ、誰かから連絡が来るわけでもない。
「もう一度連絡してみようかな」
美琴は発信履歴を呼びだし、一番上にある人物に電話をかける。
「そろそろ出なさいよね」
美琴はなかなか電話に出ないツンツン頭を脳内でボコボコにしながらコール音を聞く。
1回……2回……3回……
また出ないか、と諦めた瞬間、ガチャリという鍵が開くような音して、電話が繋がる。
「もっ、もしもしっ!?アンタねぇ、ちゃんと電話でないさいよ!!」
「………………」
応答はない。美琴はキッと眉を吊り上げると続ける。
「今どこにいんのよ?」
「先に謝っておくけど、僕は上条当麻くんじゃないんだ」
―――あれ?この声って―――
電話に出たのは上条ではない。冥土返しと呼ばれる、リアルゲコ太だった。
「えっと、あれ?」
「あぁ、上条くんは今、検査中でね。病室にはいないよ?偶々彼の病室に来たら、君からの着信だったんでね。勢いで僕が出てしまったけどね?」
何で出ちゃうんだ、と美琴は医師の倫理観に疑問を抱きつつ、上条が見つからなかった原因を知る事になる。
「えっと、アイツ、今、入院してるんですか?」
「そうなるね。もしかして、何も聞いていなかったのかい?」
ええ、初耳です。と美琴は答える。
―――道理で、見つかんないわけよ―――
美琴は呆れたように溜息をつく。また何かに首を突っ込んで入院していたらしい。
「えっと、面会時間って何時までですか?」
「17時までだけど、上条くんは16時には退院だからね?」
「わかりました。ありがとうございます」
美琴は電話を切る。
「アイツ………なんでまた入院なんかしてんのよ」
美琴は立ちあがると病院へと駆けて行く。
ベンチの上には空いていないいちごおでんだけが残された。

272疑惑9:2010/05/06(木) 18:24:13 ID:XSFmBzEg
「す、すいません、ちょっと休憩いいですか?」
「あ、おっけー。一休みしようか」
佐天は肩の力を抜いて、草の上に座り込む。
河川敷――電撃使いと無能力者が戦った事もある場所――には佐天涙子と雨宮照がいた。
昨日、言っていた能力の特訓をするためだ。
「なかなか難しいですね」
「『あり得ない事を信じる』って事だからね、能力開発って」
矛盾してるよな、と笑う雨宮を視界の端に収めながら、佐天は近くにあった葉っぱを手の上に乗せる。
心なしかピクピク動いているようにも見える。
「私、頑張ったつもりでいたのかもしれません」
佐天は葉っぱを落とすと、鞄からお茶のペットボトルを出すと喉を潤した。
「目の前の壁から逃げてたのかな」
自嘲気味に笑う。なかなか芽が出ない自分を嘲笑うかのように。
「それに関しては、俺がどうこう言える話じゃないけどさ」
雨宮は身体を伸ばすようにストレッチしている。
「目の前の壁が高いほど、越えた時の喜びは増すものだ」
「……なんですか、その学園ドラマみたいなセリフ」
佐天は最近見た再放送のドラマでそんなフレーズがあったなと思いだし、軽く笑う。
「受け売りなんだけどな。俺は随分助けられたんだよ」
そういうと雨宮は少しだけ切なそうに、昔を懐古している様な顔で空を見た。
「逃げてるって言ったら、俺の方がそうかもしれないね。『自由』を言い訳に、逃げてきたんだから」
ふふっ、と笑う雨宮の背中は妙に小さく見えた。
「………さ、練習!続き、しましょうっ」
重くなってしまった空気を変えるように、佐天が無理矢理に話題を変える。
「あー、ごめん。空気、悪くしちゃったな。あははは」
男は話を聞く側なのにね、と雨宮は頭を掻く。心なしか、弱気な顔だった。
「……よし、やりますか?」
「はい!あ、ちょっと待ってくださいね。御坂さんからメール来てました」
佐天はメールの着信を告げて光る携帯を取り出すと、手際良く返事を書いていく。
「いま、一緒に………特訓中です…………河川敷の……」
いつもブツブツ言いながら書くんだろうか、と雨宮はその様子を見ていた。
図らずもそのメールは、停止した時計の針を進める事になるのだった。

273疑惑10:2010/05/06(木) 18:24:27 ID:XSFmBzEg
「よー、カミやん」
「土御門か……お前なぁ、無事ならさっさと報告しろっつうんだよ」
「なんだカミやん、心配してくれたのかにゃー?」
土御門は話をはぐらかす様に笑っていた。
「テメェ、また魔術使ったんだろ?だったら無事じゃ――」
「カミやん、俺はプロだぜい?それにカミやんと違って回復魔術も受け付けるしにゃ―?」
言外に素人は黙ってろ、と言われている様な気がした。
「で、何しに来たんだよ?この状態で今度はイギリスに行けとか言うんじゃねぇだろうな」
「心配すんな。お見舞いに来ただけだぜい」
ほらと土御門はビニール袋からリンゴを投げる。
「丸々かよ。普通はこう言うの剥いて渡さねぇか?」
「俺はステイルみたいに男にそんな事する趣味はないにゃー」
―――ステイルに焼かれちまうぞ―――
上条は相変わらずの土御門に呆れながら、一応、パイプ椅子を勧める。
「そういう事は『超電磁砲』のお嬢様にでもお願いするんだにゃー」
「うるせぇ。アイツには俺が入院してる事も言ってねぇよ」
上条は土御門が自分の手の届くギリギリ外にいる事に歯噛みしながら、吐き捨てるように言う。
「なんというか、さすがはカミやん」
「どういう意味だよ」
「深い意味はないぜい」
チャンスを見て一発入れてやろうと土御門を見てみるが、相変わらず間合いの外だった。
上条は窓の外を見る。傾いてきた日の光が差し込んで来ていた。
「………カミやん」
「なんだよ………」
上条は外していた目線を土御門に戻す。先程の馬鹿な顔は何処へやら、真剣な顔をしていた。
上条は唾を飲み込む。こういう顔の土御門は、大概、厄介事を抱えた時だ。
「………最近起こっている事件については知ってるか?」
「事件、って『幻想御手』とかいうヤツの話か?」
その言葉に土御門が頷く。上条は続きを促す様に口を閉じた。
「あぁ、それだ。『魔術御手』なんて呼ばれてるらしいが、偶々にしては皮肉な話だ」
「ど、どういうことだよ」
上条は冷たい汗を感じながら、魔術というフレーズに身を強張らせる。
「そのままの意味だ。魔術が関与してるって事だ」
「おい、魔術は能力者が関わっちゃマズイんだろ!?」
「あぁ、今回のは『昏倒程度』じゃ済まないかもしれない」
ちくしょう、と上条は歯ぎしりをする。すぐにでも犯人を殴りたい気分だ。
誰かから着信があったのか、携帯の振動音が小さく聞こえたが今は出るような気分じゃない。
「犯人はまだ分かんねぇのかよ?」
「まだだな」
「………その魔術師が、学園都市内にいるってことか?まさか『神の右席』じゃねえだろうな」
「まだ分からん。だが………事の重大性はそれだけじゃない」
土御門は極めて真剣な顔で、上条を見る。
「………………」
「わからねぇか、カミやん」
上条はもう一度唾を飲む。
「魔術師が『幻想御手』を生み出せる………つまりは超能力の一端が解析されたってことだ」
誰かが廊下をかけて行く音だけが響いた。

274疑惑11:2010/05/06(木) 18:24:41 ID:XSFmBzEg
美琴は上条の入院している病院に来ていた。
受付で上条の病院を確認し、そこに向かう。
お見舞いの品にフルーツの山と果物ナイフも持ってきた。
上条を刺すわけじゃない。リンゴを剥くためだ。
出来るなら『はい、あーん』的なお約束イベントをやってみたい、と取りあえず用意はしてきた。
―――な、何考えてんのよっ―――
美琴は熱くなった自分の頬に掌を当てる。ひんやりとした冷たさが心地よい。
「記憶、喪失なのよね」
美琴は下唇を噛む。先日電話で知った、上条に関する事実。
色々と、聞く事もあるが………あり過ぎて怖いくらいだ。
曲がり角を曲がると、上条の病室が見えてきた。扉はあいている。誰かが来ているようだ。
―――また女の子じゃないでしょうね―――
美琴は少しだけムッとし、病室に近付いていく。
中から聞こえてくるのは上条ともう一人の男の声。
クラスメイトかなと思い、廊下で少し待つ。
手に持っていたフルーツの入ったバスケットを少しためらってから床に置く。
中から会話が聞こえてくる。
『事件、って「幻想御手」とかいうヤツの話か?』
『あぁ、それだ。「魔術御手」なんて呼ばれてるらしいが、偶々にしては皮肉な話だ』
―――なんでそんな事知ってるの?―――
中にいるのは風紀委員の男なんだろうか。美琴は会話の内容に驚きつつも聞き耳を立てる。
『ど、どういうことだよ』
『そのままの意味だ。魔術が関与してるって事だ』
―――ど、どういうこと?―――
魔術が関与している。何を意味不明な事を言っているんだろうか。
『なっ!?魔術は能力者が関わっちゃマズイんだろ!?』
『あぁ、今回のは「昏倒程度」じゃ済まないかもしれない』
美琴は驚愕に顔を歪める。フルーツ籠を持っていなくて良かった、と美琴は思う。
持っていたら盛大にひっくり返していただろう。
ポケットに入れていた携帯が震える。ビクッ!と身体を震わせ、携帯を取り出す。
―――メール………佐天さんから―――
携帯を開き、メールの内容を確認した瞬間、美琴は今来た廊下を駆け出した。
『今、雨宮さんと一緒にいますよ。能力開発の特訓で、河川敷公園にいます』
―――よりによって、なんでこうなるのよっ―――
美琴は駆ける。
自分が探していた『魔術御手』の嫌疑がかかった人間と、自分の大切な友人の元へ。


「み、見て下さい!」
佐天が嬉しそうな顔で手に乗せた葉っぱを見せる。頼りなくではあるが、ふわふわと浮いていた。
「おー、おめでとー!!」
はーい、とハイタッチ。まだレベル1にも満たないくらいの能力ではあるが、佐天は本当に嬉しそうだった。
「まだ、これからですけどねっ!………って、あ、御坂さん」
おーい、と佐天は笑顔で手を振った。
美琴はそれに応じることなく、怖い顔で走ってきた。
「佐天さん!そいつから離れなさい!!」
「えっ!?」
「そいつが、『魔術御手』の犯人かもしれない!」
美琴は佐天と雨宮の間に立った。
自体を飲み込めていない佐天が戸惑ったようにオロオロする。
美琴は真っ直ぐに雨宮を見据え、雨宮はなにも読みとれない顔で美琴を見返す。
「何か、言いなさいよ」
「俺の責任…………そうかもしれないな」
「っ!!」
美琴が下唇を噛み、右手に溜めた電撃を放つ。バリバリッ!と音を立てた青白い稲光は真っ直ぐに雨宮の身体に向かう。
「やれやれ、争いが嫌でここまで来たのにな」
雨宮が左手を振るい突風を起こす。それに流されるように電撃の軌道が逸れた。

275かぺら:2010/05/06(木) 18:25:51 ID:XSFmBzEg
以上。
今回はちょっとオリキャラ分が多かったかもしれません。
反省。

感想、批評、お待ちしてます。
でわでわ

276■■■■:2010/05/06(木) 19:39:29 ID:4CbUI8U6
>>275
上条さん、アビニョン帰りなら携帯壊れたままですよね…。

277■■■■:2010/05/06(木) 23:25:37 ID:as3a9tE6
>>261
>>275
待ってました!!
両作ともに続き待ってます!!

278■■■■:2010/05/07(金) 16:44:09 ID:fIvxY54Y
壮大な作品が投下されている所に失礼して、ちょっと悪ふざけに5レス(これ入れて6レス)下さいな。
では、『幼女にご注意を』投下します。

279『幼女にご注意を』1/5:2010/05/07(金) 16:44:35 ID:wsFtfYj2
 狭いらせん階段を上条当麻は駆け上がる。
 この先には敵――連続幼女誘拐を働いた魔術師が、
「いやがったなテメエッ!!」
 その声に部屋の中心に居た、饅頭を重ね合わせてその上から黒い布を張り付けた様なものが振り返った。
「良くここまで来れたな少年。私の罠を掻い潜るとは、どんな幸運が君の味方をしたのかな?」
「うるせえこの百貫デブッ!!」
 その言葉に男の毛虫のような眉が寄る。
「口が悪いな君は。やはり君くらいの年齢になると色々な俗世の毒に犯されてしまうのだろうな。やはり話をするなら小さな……そう、小さな女の子に限るな」
「ッ、ぶぁッかかこの変態野郎ッ!! 良いからテメエは攫った女の子たちをすぐに解放しろッ!!」
 上条が怒りと憤りをない交ぜにした叫びを男に向かってぶつけると、男はキョトンとした表情をした後、
「いや、何で少女たちを解放する必要があるのだ? そも、君に指図される覚えも無いな」
 と呟いてから右手を振るった。
 すると、何も無い空間から突如大きな体をした蛙の様なものが現れる。
「部屋を汚すと後が困るのでな。大人しく飲み込まれてしまえ」
 その一言を合図に、蛙の様なものはその体に見合った大きな口を開くと、一瞬にして上条を飲み込んでしまった。
 その結果に男は何故か不満そうに鼻を鳴らすと、もう興味は無いとばかりに蛙に背中を向けた。
 しかし――、
「おい、何余裕見せてんだテメエは?」
 背後からのその声に、男の皺の様な細い瞳がカッと見開かれる。
 そして、ぐるりと振り返った男が見たのは――目の前に迫る拳だった。
 ガツンと拳が顔面に打ち込まれて、男はたたらを踏む様に2歩、3歩と後ずさる。
「ぬぐぐ……」
 顔に当てた芋虫の様な指の間から血を滴らせて呻く男をねめつける様に立つのは、先ほど蛙に飲み込まれた筈の上条だった。
「ど、どうやって我が使い魔を退けた?」
「それを俺が簡単に教えると思うのか?」
 上条はそう言って右の腕をぐるりと回した。
「道理だな。だがその道理もすぐに覆る」
 そう言うと男は、何も無い空間を掻き毟る様に両手で薙いだ。
 すると先ほどと同じ蛙のようなものが、無数に空間に湧き出て来る。
「同じ芸で申し訳無いが、もう一度やってくれるかな?」
 再び男の言葉が合図になって、無数の蛙が上条に殺到する。
「ちぃッ!?」
 津波の様な蛙の群れに、上条は舌打ちしつつ飛びずさる。
 そこにぼとぼとぼとっと大きな蛙が音を立てて落ちて来る。
「逃げていないで君の力で何とかしたまえ」
「ふざッけんじゃねぇッ!! 誰がテメエの思い通りなんうぉッ!? おおおお――」
 男に向かって怒りをぶつけるのもそこそこに床を転げる様に蛙をかわして行く上条。
「さあ、いい加減諦めて力を見せたまえ」
「うるッせぇんだよこのクソデブッ!!」
 男に喚き散らすものの、上条は内心焦っていた。

280『幼女にご注意を』2/5:2010/05/07(金) 16:44:57 ID:CwSywKyc
(さっきは偶然右手が触れた瞬間にあのバケモノ蛙が消えちまったから何も無かったが、あの数は絶対マズイだろ!?)
 右手で消せる事は判っていても、右手以外に蛙が食らいついたらどうなるか、
(クソッ。他の奴らはどうしてやがんだよ!!)
 そう心の中で愚痴をこぼしながらも、右に左に体をかわして行く。
 しかし、それも長くは続かず、ついには壁際に追い詰め垂れてしまった。
「さあ、もう後は無いな。観念して戦いたまえ」
 男の言葉に、上条もついに諦めたのか拳を握り締める。
「そうだ。その調子で君の力を見せろ」
 その言葉に上条がぎりっと奥歯を噛締める。
(言われなくたって……)
 心の中で覚悟を決めた上条は、低く身構えると、
「俺の力を見せてやらああああああああああああああああああああああああ!!」
 ダンッと床を蹴りつけて、男に向かって突進した。
 そんな上条に向かって雪崩のように殺到する蛙。
 しかし、上条が右手を振るうと、蛙たちは煙のように空気の中に溶けて消えてしまう。
「おおッ!?」
 驚愕と感嘆を混ぜ合わせた様な男の叫び目指して真っ直ぐに突き進む上条。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
 獣の様な雄叫びをあげて、上条の拳が男の顔面を再び捉えた――と、次の瞬間、男の姿が蛙に変わると、その蛙は煙のように空中に掻き消えた。
「なッ!?」
 ギョッとした上条の目の端に迫るのは大口を開けた無数の蛙。
 渾身の力で拳を振るった上条に、蛙をかわす術は無い。
(しまッ――)
 スローモーションのように迫る蛙を前に、身動きすら出来ずにいる上条――しかし、それらは上条に触れる事無く粉微塵に引き裂かれると、先ほどと同じように煙の様になって消えて行く。
「なんとッ!?」
 驚く男の声に、
「これ以上の抵抗はおやめなさい。さもないと、今度は貴方を斬らねばいけません」
 凛とした女性の声が部屋に響いた。
「神裂ッ!!」
「上条当麻。後はこの私に」
 振り返る上条に、神裂は油断無く刀を構えながら近づいて行く。
「その身のこなしからして……。只者ではありませんね」
「そう思うのでしたら諦めて――」
「24、5年早くお会いしたら可愛らしい女の子で会ったでしょうに、真に残念ですな」
「は?」
 男の言葉に神裂が一瞬何を言われたのかといぶかしむ様な表情を浮かべると、
「いや、神裂。さっさとその変態を斬った方がいいぞ」
 この場に居て唯一事情を知る上条が冷静に相槌を打つ。
 すると男は、
「いやはや2対1では分が悪いな。ここは一旦引かせて貰いましょうか」

281『幼女にご注意を』3/5:2010/05/07(金) 16:45:18 ID:wsFtfYj2
 そう言って上条たちに背中を向けた。
「待てこのッ!!」
「逃がしません」
 当然の様にすぐに追いすがる2人の前に、再び無数の蛙が姿を現す。
「このッ!!」
 迫り来る蛙を気合で打ち消して行く上条と、無言で斬り伏せて行く神裂。
 それでも何処から現れて来るのか無数の蛙の前に男を追う事が出来ない。
「ッくしょお、待てこのクソデブッ!!」
「ははは。待てと言われて待つ道理も無いな」
「クソッ!! ふざけんじゃねえええええええええええ!! 子供たちを還しやがれッ!!」
 蛙の山の向こう、この部屋の出入り口に向かう男の背中に向かって上条が叫んだその時、何の前触れもなく男の目の前にあった扉が爆発四散した。
「なッ!?」
 驚愕して立ち止まる男の目の前で、扉と壁の瓦礫を蹴散らして現れたのは、人の倍ほどの背丈の土塊で出来た人型だった。
「ゴーレムか?」
 男がそう呟くと、
「正解だよ、このクソデブ。褒美に貴方をこれでもかと言うくらい丁寧にあの世に送ってあげるわ」
 ゴーレムの後ろから現れた金髪ゴスロリの女性――シェリー=クロムウェルが詰まらなそうな表情を浮かべて現れた。
「しかし、ひさっしぶりに前線出てみりゃいきなり尻ぬぐいかよ――神裂ッ!! あなた少し弛んでるんじゃないの!?」
「申し訳ありません」
 シェリーの言葉に、蛙を薙ぎ払いながら神裂が器用に頭を下げる。
 と、そんなやり取りの合間に男がゴーレムから逃げようとする。
 所が、そんな男の足もとにゴーレムの拳が杭の様に打ち込まれた。
「おかしな真似はしないでよね。思わずぶっ殺したくなるだろうが」
 しかし、
「ぶっ殺すとは中々刺激的な言葉ですな。貴女にも是非可愛らしい子供時代にお会いしたかった」
 その言葉にシェリーは顔をしかめて小さく舌打ちすると、
「気持ち悪いんだよテメエは!! エリス!! アイツを大人しくさせなッ!!」
 その言葉に従いゴーレム=エリスは床にめり込んだ拳を引き抜くと、もう片方の手も合わせて頭上に振り上げた。
 所が、そのエリスの体が腕を振り上げたまま後ろに傾いだかと思うと、そのまま轟音を立ててひっくり返ったのだ。
「エリスッ!?」
 驚いてエリスを振り返るシェリー。そんな彼女は気付かなかったが、エリスの足が有った場所には、先ほどの蛙が無数にうごめいていた。
 そして、男はニヤリと笑うとエリスとシェリーを迂回するように走り出した。
「「シェリー!?」」
「クソッ!! エリス、ぐずぐずしてんじゃねぇ!!」
 上条たちの叫びにシェリーはすぐにエリスに命令を下すが、その間にも男は別の入り口に向かって走る。
 だが、男はこの時自分が如何に天に見放されているかを知る事になる。
 入口まであと一歩とさしかかった所で、床石が炎を吹き上げたのだ。
「ぐおおおおお!?」
 迫り来る熱風を避ける様かの様に男が両手を顔にかざしながら後ずさると、そんな男を逃がすまいとするかのように、そびえ立つ炎が蛇の様になって円を描き、その中心に男を捕えた。
「くッ、くそッ!!」

282『幼女にご注意を』4/5:2010/05/07(金) 16:45:36 ID:fIvxY54Y
 初めて男が見せる焦燥感。
 そして、男を苦しめるものが入口から姿を現す。
「真打ち登場だにゃー」
「「「土御門!!」」」
 さらには、
「何で君が誇らしげに『真打ち登場』なんて言えるのか不思議なんだけど? 大体あの炎は僕の術式じゃないか」
「「「ステイル!!」」」
「にゃー。固い事は言いっこ無しぜよ。何ならステイルも啖呵を切るといいにゃー」
 この場に相応しく無い余裕の表情を浮かべた2人の登場に、やっとメンバーが揃ったかと上条は安堵した。
「おい、お前ら。例の件は上手く言ったんだろうな?」
「誰に物を言ってるのかな君は?」
「にゃー。プロが素人に心配されちゃあお終いだにゃー」
 そのやり取りに、炎の中で右往左往していた男は、「な、何の話だ?」と、嫌な予感と共に言葉を吐き出した。
「そりゃ勿論」
「貴方が攫った少女たちを」
「助けだす為に決まってんだろうが」
「な、に?」
「この俺の力を舐めないで欲しいにゃー」
「どうして君は手柄をひとり占めする様な言い方をするのかな? そもそも隠し扉を見つけたのはこの僕だ」
 ステイルの言葉を聞いた男はガックリと床に膝をついた。
 そんな男に神裂は、
「再度申し上げます。無駄な抵抗は止めて投降して下さい。今後の処遇まではお約束できませんが、可能な限り譲歩しますから」
 その言葉に男は顔を上げると、神裂の顔をじっと見つめた。
 そして、
「優しいのだな」
「甘いと良く言われます」
 ぺこりと頭を下げた神裂。その姿をじっと見つめていた男はやおら立ち上がると、自分の腹をドンと拳で突いた。
「何をするつもりですか?」
 神裂が再び刀の柄に手を掛けると、男はそんな神裂ににぃっと不気味に笑いかけた。
 その口の中、白い歯の間に見える虹色の球を確認した瞬間、男はその球を歯でかみ砕いた。
「しまッ――」
 神裂は咄嗟に抜刀しようとした。
 その隣に居た上条は咄嗟に右手を開いて突き出した。
 シェリー、土御門、ステイルの3人は男の正面に居なかった事が災いして何の反応も出来ない。
 そして、噛砕かれた球は強い光があふれ出て、部屋と彼らを飲み込んだのだった。


 それは、永遠の様な、一瞬の様な出来事だった。
 固く目をつぶっていた上条は、ゆっくりとその目を開けると、強く瞑りすぎてぼやけてしまった目を擦った。
「クソッ、あのデブ野郎。まだ目がチカチカする……」

283『幼女にご注意を』5/5:2010/05/07(金) 16:47:22 ID:wsFtfYj2
 やがて視界が戻って来ると、辺りの情景が改めて目に飛び込んで来た。
 そこには、床の上に崩れる様に倒れた神裂、シェリー、土御門、ステイル。そして、例の男の姿が見えた。
「か、神裂ッ!?」
 取り合えず目の前の神裂を抱き起す上条だったが、
「ん?」
 妙な手の感触に戸惑う。
 それは、
「軽、いぃッ!?」
 上条は抱き起した神裂の顔を見て改めて状況の深刻さを理解した。
 そんな上条の腕の中に居たのは、黒髪も美しい推定年齢4、5歳くらいの女の子だった。



 次回予告――。

「かみじょうとうまぁー」
「いまじんぶれーかーのおにいちゃん」
「かみやーん」
「かみじょうおにいちゃん」
「神裂とシェリーはともかく、何で土御門とステイルまで幼女になってんだよ!? クソッ!! 不幸だああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」








続かないんだよ。

と言う訳で終わりです。
ここからエロ展開にしようと思っていたのですが、時間の都合でくじけました。
でわ。

284■■■■:2010/05/07(金) 16:54:01 ID:E7f3uPhg
>>283
そこで終わるのかよww
つか、土御門やステイルは男の子でいいじゃないか。
舞夏や小萌先生がどういう反応示すか興味深いし。

285■■■■:2010/05/07(金) 23:49:44 ID:ntfBQrMc
>>283
いや、続けるべきかも。

と言う訳でGJです。続かないなんて言わないで!
幻想(もうそう)が膨らむだけで文章にする力がないんですぅぅううううああああ!!

286■■■■:2010/05/08(土) 00:02:27 ID:QawwCrCc
無理にエロにしなくても、という気がする。

287■■■■:2010/05/08(土) 02:13:26 ID:yMWxNeNU
>>219
なんか毎度レスつけてもらってるみたいでありがとうございます。
今からわたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜2を投下します。
遅くなってすいません。
その上全然進んでないです。
たぶんこれからもこんなペースになると思いますが、適当に追いかけてくだされば幸いです。
ということで今回の注意点は

オリキャラではないですが、原作で登場する間もなく殺されていた『スクール』の狙撃手がオリジナル設定を付加されて出てきます(が天誅が下っておっ死ぬので安心してください)
狙撃手の使うライフルですが、自分には銃の知識が全くないので、何の銃を使っているという描写もありませんし、300メートルって言うのが狙撃として妥当な距離なのかもわかりません。スルーしてくださると助かります。
女の子バトルのつもりだったのに浜面とか狙撃手とか男がやたら出てきます(ってこれは別に注意じゃない……)
浜面や絹旗の心理描写に自分の妄想が多分に含まれています。

などです。
それでは投下します。

288わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜2:2010/05/08(土) 02:14:36 ID:yMWxNeNU
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
10月6日。
午前9時。
絹旗最愛は親船最中の講演会が行われるビルに最寄りの駅でリニモを降りた。
「まるで陸の孤島みたな場所ですね」
それが絹旗がその街を見た第一印象だった。

どうやらこの辺りは物の流通の中間地点となっている場所らしく、かつてはあまり人の来ないただの『道』でしかない地区だったようだ。
だが、数年前にリニアの駅が置かれて以来急速な発展を遂げたらしい。
元々地価が安かったことも幸いして、映画館や室内テーマパーク、ボーリング場などのアミューズメント施設が次々に建ち上がり、リニア

で手軽に訪れることの出来る小規模な『街』となったのだ。
その性質上病院などといった公共施設は見られないが、ひたすら直線に伸びる道路を車で飛ばせば、隣街の病院まで10分であるため、特

に問題はないようだ。
また、流通の中間地点ということで物も仕入れやすく、最近ではショッピングモールもオープンしたようで一層の賑わいを見せている。

「それがアレ、ですか……」
駅の目の前に建つ巨大なショッピングモール。
それを視界に収めた絹旗は、自分の女の子の部分が疼くのを感じた。

「はー、おっきいショッピングモールですねぇ。あ、白井さん。私今日ここで買い物するんですよー。えへへー」
「無駄口はいいですから、早くしないと集合時間に間に合いませんわよ」

風紀委員の腕章をつけた少女が二人、駅を飛び出して走っていくのを横目に見ながら、絹旗はショッピングモールの方へ歩き出した。
(現地集合って話でしたが、まだ誰も来ていないようですし……少しくらいいいですよね)
あと一時間後にでも狙撃による暗殺が行われるというのに、我ながら緊張感が無い……とは思うものの、どの道昨日決定した作戦通りに動

くには構成員全員が到着していなければならない。
そう言い訳して開いたばかりのショッピングモールに入る絹旗。
(さーて、洋服でも超素早くウィンドウショッピングを……!?)
そこで、絹旗は見た。

「超何やってるんですか?浜面」

ショッピングモールの一階ロビーに配置された長椅子――その一つに、浜面仕上が座っているのを。

289わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜2:2010/05/08(土) 02:15:17 ID:yMWxNeNU
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
午前9時30分。
親船最中の講演会まであと30分という時間。
ビルの3階にある会場で、風紀委員の少年少女達がせっせとパイプ椅子を用意している。
親船の姿はまだ見えない。
だがどこに座るかの予想は出来る。
頭に花飾りを付けた少女が設置している大きな教壇。
おそらくはそこに親船最中が座るのだろう。
『スクール』の狙撃手は、親船が教壇に立ったときの胸の位置を推測し、銃口の先を調整する。
「こんなものか…あとは親船が現れてからで良いな」
狙撃手がいるのは講演会の行われるビルから300メートル程の距離にあるボロアパートの一室である。

この『街』がまだ『道』であった頃。
このあたりは一時的に荷物を保管、管理する中継地点であったらしい。
そして、このアパートはその際運送業者の社員が寝泊まりするために建てられたようだ。
今では流通業はリニモの駅に近い『街』の中心部で行われており、社員達も新しく建てられた駅の近くの宿舎に居を移しているようで、『

街』の辺境にあるこのアパートはとっくに使われなくなっている。

狙撃手がいる部屋はそのアパートの4階に位置し、彼岸とは狙撃に丁度いい高低差になっている。
この場所からなら狙撃は容易だろう。

しかし、
無論親船の側も無策で講演会を開こうとしているわけではない。

『道』から『街』へと発展していったという地区。
だが逆に言えば、駅から離れたところは未だにただの『道』のままであるということだ。
事実、このアパートより後方にはほとんど建物は存在せず、延々と道路が続いている。
狙撃手がこの場所を狙撃ポイントに選んだのは、そういった『講演会の開かれるビルの3階を狙える最適な場所』がここくらいしかなかっ

たという単純な理由からである。
そして、それは向こう側も分かっていることだ。
小さな『街』であるが故に、狙撃ポイントも限られてくる。
つまり少ないポイントを見張るだけで狙撃を阻止することが出来るのだ。
窓から阿呆みたいに黒い銃身が飛び出ていれば、すぐにバレてお縄である。
そして――狙撃手が陣取っている場所も、警備員やSPによって見張られていた。

だが、狙撃手は発見されていない。

理由は簡単、狙撃手は窓から銃身を飛び出させるなんて愚は犯しておらず――カーテンを閉め切ったアパートの中で、部屋を囲う壁の内側

から狙いを定めているからだ。


『透視能力(クレアボイアンス)』。
距離や物質を乗り越えて遠くを見渡すことの出来る能力。
狙撃手は俗に千里眼とも呼ばれるその能力のレベル4なのだ。
故にカーテンを閉め切った部屋の中からでもカーテンの生地や壁を通り越して視界を確保出来、また望遠鏡やライフルのスコープさえ使わ

ずに300メートル先のビルの内部の様子を知ることが出来る。
ここのアパートの壁は薄い為、ライフル弾なら軽く突き抜けることが出来るし、弾道にもさほど影響は出ない。
そして後方には長く直線の続く道路。
狙撃手は壁越しに銃弾を放って親船を仕留めたら、慌てふためく警備員やSPを尻目に即座に翻り、下に止めてある逃走用の車に乗り込ん

でハイウェイを爆走すればいいだけなのだ。
「ちょろい仕事だ」
狙撃ポイントを絞るというのは良い考えだが、彼には通用しない。
むしろこの3日後に行われる予定の講演会に使用されるであろう対狙撃用の妨害気流の方が厄介なのだが、会場がビルの3階という高所に

あるため今回は用意されていないようだ。
「さて、まだ時間があるな……よし」
狙撃手は呟くと、再び能力を発動させる。
当然親船の姿は見えないが、彼の目的は親船ではない。
彼が透視しているのは――
「おぉ。あのツインテール、見かけによらず大胆なモン履いちゃって…お、花の少女は見た目通りの子供パンツか。いいねえいいねえ。中

学生かなぁ、おっぱいは発展途上ってとこだがそれがいい!小さいことはいいことだ!うむ!」

――ちなみに、狙撃手の日課は学園都市内の銭湯に通うことである。
脱衣所で壁に向かって仁王立ちしている彼は、
「いやぁ見られていないと思っている状況を見られるってのがいいんだよな、警戒心0って感じで」
「生着替え!おっほー!」
「学生の人口が8割ってもうサイコー!パラダイス!」
などと毎日一人で叫んでいるらしい。

290わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜2:2010/05/08(土) 02:15:36 ID:yMWxNeNU
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「うう、白井さん。なんだか誰かに見られているような感じしませんか?」
「さぁ、気のせいではありませんの?」
10時45分。
ビルの中でつい先程設営作業を終えた初春飾利は、同じく召集をかけられていた同僚の白井黒子に問いかける。
「そうでしょうか?何だか舐めるような視線が……」
ちらりと外を窺う初春だったが、白井は取り合わない。
「さあさあ、会場設営も終わったことですし、さっさと退散いたしましょう。あぁん、お姉様。楽しみですわ」
この後御坂と予定でもあるのか、嬉しそうな顔でそう叫ぶと、とっととテレポートで退散してしまった。
「あ、私も。仕事が終わったって佐天さんに連絡しましょう」
嫌な感覚を振り払おうと、せめて窓の外からは窺えない壁の裏に回り込んで、初春は携帯をダイアルした。

291わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜2:2010/05/08(土) 02:15:50 ID:yMWxNeNU
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「ほらよ」
「あぁ、どうもです浜面」
先程まで浜面が座っていた長椅子に腰掛けている絹旗は、浜面が買ってきた(というより浜面に買わせた)ソフトクリームを受け取った。
絹旗は早速それにかぶりつくと、
「うーん、超まぁまぁですねぇ」
というよくわからない評価をする。
「おい、絹旗」
右手に自分の分のソフトクリームを持った浜面は、絹旗の隣に座ると、そう言って左手を差し出してきた。
「……それは私にお手をしろということですか?どうやら浜面は超怪しい性癖の持ち主だったようですね。まぁ勿論超とっくに気づいてい

ましたが」
「違ぇよ!金を払えってんだ!」
「うわー、浜面。超空気読めてませんね。ここは黙っておごるのが超男ってものですよ?」
「そうやっておまえらがファミレス入る度にフリードリンク代出してたから金欠なんだよ」
「それは必要経費ですから、上に申請すればいいじゃないですか」
「通ると思ってんのかよ…」
「まぁあの適当な上司なら通してくれそうですけど……で、浜面」
絹旗は金をせびる男の小言を切り捨て(代金を踏み倒したままうやむやにする意図も込めて)告げる。
「確か浜面は今回の作戦には同行しなくて超よかったんじゃなかったですか?」
「……そう、だけどよ」
途端に歯切れが悪くなる浜面。
「だけどなんですか?」
「…………」
「なんですか?」
「……他に、……他に行くとこなんてねぇんだよ」
苦しげにそれだけ言う浜面。
成る程確かに、スキルアウトという居場所を失った今の浜面に、『アイテム』のパシリとして以外の存在理由はないに等しいのだろう。

――だが、この弱気はなんなのか。

「ここしか来るところが無いって言うのは超そうでしょうが、じゃあ浜面はここに何しに来たんですか?」
「それは…」
「麦野を止めにきましたか?そんな訳ありませんか、何しろあなたは何の能力もない超レベル0ですからね。そんなことしたら能力で丸焼

けにされて、骨も残らず消滅させられるだけです。大方麦野に意見するのは怖いけど、家で待機しているのも忍びなくて、とりあえずこの

街まで出てきた、とか超中途半端な理由なんでしょう」
棘のある言葉を使い、挑発するように言う絹旗。
だが、
「…………」
浜面は怒り出すでもなく、より一層背中を丸めて小さくなってしまった。
一口も食べていないソフトクリームが、既に溶け始めている。

「……これだけ言われて、悔しくはないんですか?」
「……仕方ねぇじゃねえかよ。全部本当のことなんだから」
消え入るような言葉で言い返す浜面。

――あぁ、何だ。
とんだ腑抜けじゃないか。
本当にこんな男に滝壺理后を救い出せると言うのだろうか。

無論それは絹旗が心の中で勝手に浜面に押しつけている希望でしかないのだが――しかし勝手な希望であるからこそ、『裏切られた』とい

う思いが一層強くなる。

――この男には何かがあると思っていたのに。
所詮は思い違いだったと言うのだろうか。

と、沈黙を破るように絹旗の携帯が鳴りだした。
着信は滝壺からだ。
ディスプレイの時計の表示を見ると、既に9時45分を回っていた。
おそらく浜面と話し込んでいる間に他の構成員達もこの街に到着し、既に作戦を開始する段階になっているのだろう。
「……行くのかよ」
浜面が、やはり小さな声で言う。
「ええ、仕事ですから」
絹旗は残りのコーンを一気に口の中に放ると、突き放すようにそう言って、その場を後にした。


「……そうかよ」
絹旗の姿が見えなくなってから、目を伏せて吐き捨てるように言う浜面。
完全に溶けきったソフトクリームの頭が、床の上に落ちてぺちゃりと潰れた。

292わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜2:2010/05/08(土) 02:16:07 ID:yMWxNeNU
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
ショッピングモールを出て、歩道を走りながら絹旗は携帯の通話ボタンを押す。
「はい、もしもし。狙撃手の居場所が分かったんですか?」
「特定のAIM拡散力場が講演会の行われるビルへ向けて恣意的に放たれている。おそらく透視能力の使用によって発生しているもの。『スク

ール』所属の構成員のAIM拡散力場だと思われる」
絹旗の質問に、電話の向こうの滝壺は普段とは違った淡々とした口調で答える。
(また体晶を使ったんですね…)
わずかに唇を噛みつつ滝壺の声に耳を傾けていると、どうやらAIM拡散力場はこの街の端に存在するボロアパートから放出されているらしい


おそらく狙撃手はそこにいるのだろう。
透視能力でビルの内部を覗くなど、狙撃手かスパイでなければただの変態だ。
親船がまだ会場にはいない状態で能力を使っているのは引っかかるが、下調べだと思えば筋は通る。
まさかビルで作業している風紀委員の女生徒を覗き見している訳でもあるまい。
実際には狙撃手かつ変態であり下調べかつ覗きなのだが、そんなことは絹旗には関係ない。
目的の位置が判明したなら、排除するのみである。
絹旗は昨日立てた作戦通りに動く旨を告げて携帯を切ると、アパートのある方へ向かって走り出した。

♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「あ、もしもし。初春?」
佐天涙子は駅の改札を出たところでコールに気づいて携帯に出た。
『はい。今仕事が終わりました。今から向かいますね』
「了解。んじゃ駅で待って……る…」
ふと佐天の言葉が止まる。
『どうしたんですか?佐天さん』
「…………絹旗だ」
佐天は見た。
目の前の通りを走って横切る絹旗最愛の姿を。
『え?絹旗さんって、あの?』
「うん。どうしたんだろ、こんなとこで……あ」
佐天が頓狂な声を上げる。
『……さ、佐天さん?』
戸惑いがちに問いかける初春。
それは、佐天の上げた声が『何か面白いことを思いついた』みたいなイントネーションに聞こえてしまったからだ。

果たして、初春の予感は的中した。

「ちょうどいいや!今から絹旗捕まえて、初春に紹介するよ!」
『え、いえ別に私は……』
「楽しい子なんだよ、絹旗。そうだ、今度3人で映画行くってのもよくない!?じゃ、そういうことだから私が戻ってくるまで駅で待って

てね!」
『あの、佐天さ…』
佐天は初春の言い分も聞かずに通話を強制的に終了させると、絹旗の後を追って走り始めた。

293わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜2:2010/05/08(土) 02:16:26 ID:yMWxNeNU
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
午前9時58分。
(そろそろ頃合いか…)
狙撃手は頭を仕事モードに切り替える。
能力を使いビルの内部の様子を探ると、風紀委員達は既に退場しており、一方彼女達が並べていたパイプ椅子にはそれなりの人間が座って

いた。
しかしまだ親船は現れない。
狙撃手はライフルの最終点検をしながら今か今かと教壇のあたりに視線をやる。
と、
「いってぇ!?」
ガァン!という衝撃音と共に突然顔面を痛みが襲った。
狙撃手は即座に能力を解除しあたりを見回す。
すると、
「何だこりゃ…」
目前のカーテンの閉められた窓を破壊して、一缶のドラム缶が部屋に突っ込んでいるのを認めた。
まるでどこかから投げ込まれたかのようなそのドラム缶の存在に気づくことが出来なかったのは、襲来するドラム缶ごと透視してしまった

ためだろう。
予想外の状況に戸惑いつつも、取りあえずドラム缶を投げ込んだ犯人を探そうと再び能力を発動し、アパートの周囲を見透かす。

「白っ!?」

視界いっぱいに白色が広がり、慌てて視界を『引く』狙撃手。
そしてようやく先ほどのパンツの主……ではなくドラム缶を投げ込んだ犯人を認識する。
それはアパートを見上げる形で立っている、セーターと見間違うほど短いワンピースを着た一人の少女だった。
(念動力系の能力者か!?)
ドラム缶を4階まで投げ上げたことからそう判断した狙撃手は、即座に銃口を少女に向ける。
(暗部のどっかの組織か?くそっ、遂に警告も無しで攻撃か!まぁ文句言えた立場じゃねえけどな。だが……)
少女はこちらの様子を伺っているのか、立ち位置を変えようとはしない。
狙撃手はライフルの引き金に手をかける。
「奇襲に文句が言えないのは、お前の方も同じだぜ!」
狙撃手にとって、視界を遮る壁など無いも同然である。
相手が一人であれ他に仲間がいるのであれ、ここで彼女を倒さない手はない。
仕事モードに入った狙撃手は銃口を少女の心臓に合わせると、幼い彼女に向かって躊躇なく引き金を引いた。


♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「あぁもう絹旗足速いなぁ!……わっ!?」
絹旗に追いつこうと疾走していた佐天は、絹旗が曲がった角の向こうから響いてきた大きな音に、思わず足を止める。
「びっくりした……」
建材がばらまかれたかのような、大きな物が何かにぶつかる音だった。
佐天は警戒しつつも、しかし持ち前の好奇心とターゲットの確保という目的のため、再び歩き出す。

そして角を曲がったところで、佐天はボロアパートの前に立ち止まっている絹旗を見つけた。
「よぉし、こっちには気づいてないみたいだしなー。ここは挨拶がてらにあの極ミニワンピをめくって差し上げようかしらねー」
不敵な笑みを浮かべながら佐天が一歩を踏みだそうとしたところで

ガァン!という音が響くとほぼ同時に、絹旗の身体が大きく後ろへ揺れた。

「え……」
――なんだろう、これ。
似たような状況を前に見たことがある。
(あぁ、そうか)
佐天は思った。

この前絹旗と見た映画の中で、主人公に敵兵が撃ち殺された時と同じだ、と。

だが、佐天がそれを――絹旗が撃たれたことを――完全に理解するより先に、事態は次に移る。
狙撃され今にも倒れようとする絹旗が、

一歩引いた右足で踏ん張ると体勢を立て直し、何事もなかったかのように元の位置に戻ったのだ。

「なんで……」
呆然と呟く佐天の目の前で、絹旗は狙撃された場所から動かないままに携帯を取り出すと、電話口に誰かに指示を飛ばした。

「では、後は超任せますよ。麦野さん、フレンダ」

294わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜2:2010/05/08(土) 02:16:42 ID:yMWxNeNU
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「くそっ、なんだってんだ!念動力じゃねえってのかよ!もう中止だ中止!さっさとずらかるぞ!」
狙撃手は誰にともなく悪態をつくと、ライフルを分解しないままに適当に持ち上げて、窓とは反対方向にある玄関に向かう。
(とにかく車に乗っちまえば……っ!!??)
扉を開いた狙撃手は見た。
階下に停めてあった彼の車がドォン!という音とともに、爆弾でも投げ込まれたかのように爆発炎上したのを。
「なん、だと……」
やはり少女は一人ではなかった。
むしろ彼女は陽動であり、他の仲間がその隙に車を爆発させたのだ。
「上出来よフレンダ」
「フレ、ンダ?」
耳なじみのない名前であること以前に、その発言をした人間が近くにいると気づき身を強ばらせる狙撃手だったが、
「!?」
果たしてその人物は――いつの間にか彼の目の前に立っていた。
「お前は……」
「あぁ、いいわ。余計なことはしゃべんないで。一つだけ答えて頂戴。あなたは『スクール』の狙撃手。そうよね?」
「ぁ、あ……」
狙撃手は知っていた。
目の前の人物の正体を。
彼女は、
「『原子崩し(メルトダウナー)』……」
学園都市に7人しかいないレベル5。
その第四位に位置する人物。
「私の二つ名なんてどうでもいいわよ。イエスなの?ノーなの?どっち」
「あ、あ、あ…」
狙撃手の身体を嫌な汗が伝う。
質問になどなんの意味もない。
どう答えたところで、自分は確実に殺される。
何の根拠もなしに――否、目の前の人物それそのものを根拠として、そんな思考が狙撃手を支配していた。
本能が逃げろと言い、理性が逃げられないと告げる。
奥歯は噛み合わず、全身が震える。
目の前に立つ存在に――自分という存在全体が恐怖している。

「うぉ、おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

果たして狙撃手が取った行動は――おそらくその恐怖心を拭うためなのだろう――手に持ったライフルの銃口を目の前の人物に向けること

だった。
「そう……イエスってことね」
学園都市第四位の少女――麦野沈利はそれだけ呟くと、右手を狙撃手に向かって突き出した。

次の瞬間。

ゴパァッ!!と勢いよく放たれた電子が、アパートの一室ごと狙撃手を襲った。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
全身を貫く壮絶な痛みと眩い光。
その圧倒的な力の奔流に、狙撃手は自分の存在が抹消されていくのを感じた。

だが、それでも。
せめて一矢を報いねば――

「お、………、あ……」
最期の力をふり絞って能力を発動した狙撃手は
「黒の……レースか…」
と苦しげに呻くと、この世界から跡形もなく消滅した。

295わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜2:2010/05/08(土) 02:17:12 ID:yMWxNeNU
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
ゴパァッ!という轟音が響いた。
佐天涙子は弾かれるようにそちらの方へ目を遣る。
音源は目の前のボロアパートの4階の一室。
そこから大量の光が窓の外へと放出されていた。
(超電磁砲!?)
佐天がそう思ってしまったのも無理からぬことだろう。
各能力の詳細な仕組みなど素人の佐天に見てわかることではないし、実際に原子崩しには超電磁砲に通じるところもある。
兎に角佐天はそれが何かの能力、それもかなり強力なものであるのだと認識した。
だが、それならば。

あの光に呑まれて消えていく人影の様な物は――それと同時に聞こえる絶叫は、どういうことなのか。

「あ……あ…」
いや、理解できていない訳ではない。
ただ理解したくないだけだ。
能力を他人を傷つけるために使う――それだけなら、まだ我慢できたかもしれない。
学芸都市で彼女もそれなりの死線をくぐり抜けてきている。
取り乱さないとは言えないが、やばそうだと思ってそそくさとそこを逃れるくらいの危機管理能力は発現できただろう。
だが、状況から見るに

その殺人を指示していたのは絹旗最愛だ。

先日出来た佐天の友達。
やたら超を多用するしゃべり方をして、ものすごく短いワンピースを着ていて、C級と呼ばれるようなマイナー映画が大好きな――そんな

『普通』の女の子。

その絹旗が人を殺させ、そして何よりその状況を眉一つ動かさずに無表情に眺めている。
それは。
そこにいたのは。
佐天の知らない絹旗最愛だった。

「絹旗……」
だから佐天は逃げ出さず、声をかけてしまった。
(きっと何か理由があるんだ……)
絹旗最愛という人物の『本当』を確かめたいという思いとともに。
(ショチトルだって、散々キツいこと言ったり暴力振るったりしてたけど……本当は優しい子だった!だから、きっと絹旗だって…)
「絹旗!」
佐天の呼びかけに、絹旗はこちらを振り向いた。

296わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜2:2010/05/08(土) 02:17:39 ID:yMWxNeNU
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「絹旗!」
曲がり角の向こうから自分を呼ぶ声がした。
思わず振り向いた絹旗は
「佐天さん!?」
そこに有り得ない顔を見た。

――まずい。見られた。
ならば、『処理』しなければ――

「っ!?」
自分の頭に浮かんだその言葉にゾッとする。
(佐天さんを『処理』なんて、超何を考えてるんですか私は!)
仕事は仕事だと割り切って行ってきた。
与えられた指令通りに事をこなしてきた。
一般人に見られた際の『処理』もその一つだ。
最低でも記憶の抹消を、そして最悪の場合には存在の抹消を。
命じられるままに行ってきた。
だが、
(それを、佐天さんに――?)
出来るわけがない。
そう思う一方で、絹旗は気づいていた。
おそらくすぐにでも、作戦を終了した麦野たちがこの場に現れるだろう。
そして彼女たちが――麦野が佐天を見たらどうするか。
警告してもキリが無いからと言う理由で狙撃手を殺すような短絡的な女だ。
見られたから殺す。
それは彼女にとっては何の綻びもない理論になり得るだろう。
いや、そもそも麦野に捕まらなかったところで、後処理を任されている下部組織の者達に見つかれば、記憶操作くらいされても不思議では

ない。
そして学園都市の科学力と言えど、『現場を見た記憶だけ消す』ことなどできないだろう。
それなりの金と科学の粋を集めればあるいは出来るかもしれないが、暗部が一般人にそんな手間暇をかけるとは思えない。
記憶操作の末には何らかの障害が残ることは必至、ということだ。

――かつて自問した。
浜面が麦野に殺されそうになっている時、自分はどうするか。

今の状況はそれに似ている。
絹旗が静観をしていれば、周囲の環境は間違いなく佐天涙子という少女を壊す。
ならば、どうするべきか。
絹旗最愛は、どうすればいいのか。
(そんなの、超決まってるじゃないですか!)
「超すいません佐天さん」
「絹は……っ!?」
大きく踏み込み、佐天の腹に窒素で固めた拳を入れる。
佐天は小さく呻いた後、すぐに気を失った。
絹旗は倒れかかる佐天を軽々と肩に担ぎ上げると、全速力で駆け出した。

(佐天さんを守る!『アイテム』の連中からも、暗部も下部組織からも逃がしてみせる!)

――おそらくここなのだ、と絹旗は思った。
ここで変わるのだ、と。
今まで流されるままだった自分。
そんな自分が変わるための――流れに逆らい、力に抗うための契機。

それが――佐天涙子という少女なのだ。


♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「何をやっているんだ……あンの大馬鹿野郎は!」
とあるビルの屋上から双眼鏡を使ってボロアパートの前を監視していたショチトルは、思わず声を荒げた。
ショチトルのいるビルからは、講演会の行われているビルは見えない。
それ故に警備員やSPのマークからは外れているものの、狙撃手の潜んでいたアパートはよく見える。
そうして今日の事件の顛末を傍観していたショチトルだったが、『それ』を見た途端、悪態をつきながら双眼鏡を投げ出すと一気にビルを

駆け下りていった。

それ――つまりは、『暗部の起こした事件を目撃してしまい、暗部組織の人間に殴られて意識を奪われた末、どこかへ連れ去られていく佐
天涙子』を見て。

297■■■■:2010/05/08(土) 02:21:17 ID:yMWxNeNU
以上です…が。
メモ帳の「右端で折り返す」機能を使ったらおかしなことになってました…
読み返すときに便利なのですが、こんな弊害があったとは。
毎度毎度ちゃんと投稿できていない気がします、すいません。

298■■■■:2010/05/08(土) 07:01:44 ID:.i57uiow
インデックスがかわええ

299■■■■:2010/05/08(土) 08:55:30 ID:h9l.L4QU
黒のレースだとッ・・・

300298:2010/05/08(土) 09:42:41 ID:.i57uiow
誤爆した
すみません

301■■■■:2010/05/08(土) 21:31:33 ID:.FQAb2qE
殺伐とした話でちゃんと心理描写ができる人が小ネタを挟んでくるのは卑怯だと思うんだ。
というわけでGJ

302■■■■:2010/05/09(日) 00:36:05 ID:X1bp5f4U
>>297
毎度のことながらGJです!
ペースを気にしてるんでしたら、全然問題ないですよ。むしろ速い方ですって。
殺伐・シリアス展開もイケるんですね・・・まるでホントに禁書を読んでるみたいな、かまちーっぽさを感じます。
ショチトル参戦フラグ建ったか? お気に入りのキャラだという話ですので、十分考えられますね。
果たして科学と魔術が交差するのか―――今後の投稿も期待してます。

303■■■■:2010/05/09(日) 00:59:55 ID:9xr5p/Z6
>>299>>301>>302

感想ありがとうございます。
狙撃手さんはあんなでしたが、実際男で固法先輩みたいな能力持ってたら絶対こういうことやりますよね。
『事件現場を目撃する佐天』のためだけに作り出して、まったくこの先の話には関わってこないキャラですが、書いているうちに無駄に掘り下げてしまいました。
透視能力なんて持たせてしまったばっかりに。おかげで話が伸びた……

あと、ひどい間違いを見つけました。
290で10時45分となっていますが、9時45分の間違いです。流れである程度察してくださると幸いです。
そのほかやっぱり細かい誤字脱字がありますね。上げてから読むと気が付くのですが…
ていうか暗部の事件に絡んだからって皆が皆口封じされてる訳じゃない気がしてきました…学芸都市と違って学園都市ってわりとオープンにやってますね。超電磁砲ss読み返した後だったのでそのノリで話進めてしまいました……


ところで素朴な疑問なのですが、こちらで上げたssは自作スレまとめにまとめられていますよね。
それって作者が自分でやるものなんですか?

304■■■■:2010/05/09(日) 17:05:08 ID:i0Fy/wts
どうも、>>221です。
『とある妹達の番外個体』の続きが出来ましたので投下していきます。
>>233>>234>>235の方は感想ありがとうございました!
リクも取り入れてみました。それではどうぞ。

305『とある妹達の番外個体』:2010/05/09(日) 17:06:01 ID:i0Fy/wts

禁書目録。エイワス、上条と一方通行の力の及ばぬ強者達が示した最大のヒント。ここまでの
パズルのピースの欠片だけでは人名なのか、書物の集積かもわからぬ得体の知れない言葉だった。
しかし、その詳細を今一番心底から望んでいた。何しろ打ち止めの命脈に直接関与する大きな意味を持つ。
それを知っている人物が目の前にいる。あまりの衝撃に目眩が思わず走った。都合の良さに腹を抱えたい。
「学園都市に属す人間では、一部の例外を除けば意味不明としか形容出来ないだろうな。
 だが『こちら側』では現在、最も着目されている存在でもある。……だからこそ手を付け難くもあるが」
「待て。オマエが言ってる禁書目録ってのはコイツと関連性はあンのか?」
と、懐から拳銃を除けて一枚の拉げた紙を引っ張りだす。それに書かれた文字列を読み取らせた。

Index-Librorum-Prohibitorum°

上条が一方通行に残した、禁書目録の意を含む単語の羅列。
これが繋がるのなら目指す道の一つが浮き彫りになる。それに対してオッレルスは賛意を感じたようだ。
「ああ。それこそが鍵だ。これは禁書目録の個人名とも言い換えられるがな。よく手に入れたな」
「個人名?超能力名じゃねェのか?」
事の拍子に乗って馬鹿げた解釈を吐いてしまったが、先刻学園都市とは関係無いと断言されたばかりだ。
それを知っていたエイワスとは何だったのか。第一上条がこんな情報を見聞きしていたのもおかしい。
科学には幾千もの知識の引出しを構えている一方通行だが、
オッレルスの言う『こちら側』への理解は素人同然だった。

だが、遂に禁忌の扉をノックしてしまった。
そして知る。掌握の手から溢れ出かねない、かつて所属していた世界を外藩へと退かせる智識を。

切れ筋の跡が辛うじて見受けられるオッレルスの唇から発せられる『こちら側』の世界の概要。
それは一方通行が心得る既知の常識とは、あまりにも懸け離れた物だった。

306『とある妹達の番外個体』:2010/05/09(日) 17:07:02 ID:i0Fy/wts
天地が反転したのか、と忌まわしい錯覚が一方通行の全身を張り巡る。理屈はわかる。道理は通ってる。
むしろこの説明によって埋没する疑問の方が圧倒的に多い。
打ち止めを侵したウィルスの名称『ANGEL』、海原に感じた重圧、
垣根帝督の最後の呟き、エイワスの現出、
偶然回収した羊皮紙、襲撃者達の氷撃を『反射』した時に生じた七色の光。
あの黒い翼が発現した原因。
科学の枠、いや学園都市がひた隠しにした未知の現象全てに納得がいく。
「は、はは」
笑いが止まらない。白く、白皙し、白禍した一方通行は、自らを白痴と罵った。
学園都市最強の超能力者の頂点に君臨する彼は、天上から見下ろせば無知無学な赤子同然だったのだ。
気付くチャンスなら今日に至るまであった筈なのに。
例えば土御門や海原が稀に自分の能力や認識を語る時にも魔術、の一言が混じっていた。
彼らは俺を裏で笑っていたのか?闇を喰らい闇に生きるとほざいても真の闇を知らない愚か者だと。
『グループ』に在籍していたあの時期に問いつめれば、彼らも禁書目録について話しただろうか。
禁書目録。求めて探して掴み取った情報はとても簡素な物だった。
10万3000冊の魔導書、『原典』の知識を一字一句正確に記憶する少女。
インデックスと自称し、白い修道服(『歩く教会』と言うらしい)を纏うシスターだという。
(インデックス……?聞き覚えがあンのは記憶違いか?)
衝撃を無理矢理押し込めて、大雑把な追想を行うと答えは自ずと出た。

ハンバーガーを食い漁り、恩返しを勘違いし、
『一字一句正確に』バッテリーの正式名称を復唱したあの修道女か。

嘲笑した反動だろうか、今度は愉快な苦笑が芽生えて、あんな近くに鍵があった情実が馬鹿らしくなった。
だったら、そいつの頭根っこを引っ張ってでも打ち止めの治療法を教示してもらおうかと
思った境に、今度は世界情勢の現状にまで話が進んだ。どうやらそう簡単に聞き出せる状況でないらしい。
「今、禁書目録は自己制御を奪われ、イギリスの聖ジョージ大聖堂に隔離されているとの事だ。
 呪縛を解くには彼女の意識を操作する遠隔制御霊装を破壊するしかない」
「つまりはその霊装とやらを保有してやがる外道を微塵に料理しちまえばいいワケか」
「だが、その外道もそれ相応の実力者だ。現時点でそいつを打破しようと動く一派も尽力しているが、
 どうも成功にまでは至らないようだ。右方のフィアンマ、今は名前だけ知っていればいいだろう」

307『とある妹達の番外個体』:2010/05/09(日) 17:07:35 ID:i0Fy/wts
なるほどね、と頭のメモに書き殴っておく。面倒な道程が待ち構えているのには腹が立つが、
一方通行の気はむしろ晴れていた。目的が一筋に限られて、気分が高揚してくる。
「まァ、ヤル事山積みだっつーのもこの世の尋常なンだろォな。そいつが『原典』とかいう
 雑誌の立ち読みにどんな魅力を感じてンのにもカスっぱちな興味があるが、戦争引き起こす代償とは
 釣り合わねェ。ガキ救ったら世界も平和になりましたとか爆笑モンだな」
久々に冗談を走らせる余裕が出来た。それでも本筋は変わらない。

打ち止めのいる光の世界、それを乱す奴なら率先して潰してやる。

あのシスターも、そこにいるべき人に決まってる。
だったら両方に救済の手を差し伸べるのが一方通行の生き様だ。
「そのフィアンマっておめでた野郎のいる場所を探すのがまず第一歩か」
「そうだな。だがもう夜も遅い。明日まで待てるか?」
短時間で済むと番外個体に嘘をついたが、確かに太陽が頭を何時出してもおかしくない時間になっていた。
仕方ない、か。とドアを抜けて廊下まで歩き番外個体の様子を確認したら、
壁に凭れながら寝ていた。緊張感の無い奴だと思いつつも、自室に戻るオッレルスを見届けながら
毛布を掛けてやった。
「……風邪でも引いたら即置き去りにすンぞ」
と苦言を洩らしても、本当は連れて行くつもりでいた。息が浅い。まだ睡眠に入ったばっかりだ。
自分なりに話を聴いて、役に立ちたかったのかもしれない。少しこいつへの抵抗感が払拭された気がした。
一方通行自身もベッドに横たわる打ち止めを視界に入れつつ、徐々に微睡む眠気に従っていった。

308『とある妹達の番外個体』:2010/05/09(日) 17:08:11 ID:i0Fy/wts
5.5
今買ってるコーヒーに飽きた。最後の一滴が舌に潤いと苦さを与えた際にそう確信した。
ソファーに横たわっていた一方通行は今飲んでいた飲料の空き缶をゴミ箱に投げ捨て、
床に倒してあった現代的なデザインの杖を地面と垂直に立てて直立し、玄関へと向かった。
刺激的な匂いが鼻に付く。寂れていた筈のキッチンは今や選抜きされた食材と
使い込んだ調理具が並んでいる。それらを手に取り料理を進める茶色の毛髪の女性を横目に見つつ
外へ出た。近所のコンビ二に新商品のコーヒーが入荷した筈だ。
「堅苦しくてタマンねェな」
ジジ臭い文句を呟きつつ杖をついて前進する。晴天で日光が眩しい。紫外線を反射しようが目に焼き付く。
しばらく歩くと横道から誰かが飛び出してきた。無意味と知りつつも条件反射で電極のスイッチを入れる。
右手で触れられた彼は『反射』が適用しているにも拘らず、比重に耐えられずに横倒しになった。
杖がガシャンと鉄骨が落下したような不快音を放ちつつ地面に転がった。
接触した男がそれを拾い上げ、テカってしょうがない笑顔を浮かべつつ一方通行に手渡す。
「いやー義兄さん、マジですいません。この『御坂』当麻と不幸を共有しちゃうのも嫌ですかねぇ?」
ツンツン頭の男は学園都市最強の怪物だった彼に軽口を叩く。ハァ?と一方通行は口が開いてしまう。
「オマエを義弟と認めた覚えが無い」
「あっー!この人、未だにツンツン態度が途切れてない!俺そんなに嫌われてるの!?」
能力使用モードを解除しながら再びコンビ二を目指す。関わったら負けだ。
「いや、でも口を訊いてくれるだけ有難いかなーとも思うワケですよ。最初は顔合わせたら
 ちゃぶ台やら電灯をぶん投げられちゃって、もうこの人俺との姻戚関係を人生の汚点と考えてるんじゃ
 ないかと思う度に涙が滝の如く噴出して……って無視ですか!?耳ほじってるし!」
足が自然と早くなる。時間の無駄は所詮損だ。男はそれからも「これはもうDVの域だよ……」とか
「家内に相談しようかな……」などと呟いている。絡んでほしくて仕方ないようだ。
心底怒りを込めて真正面に立って怒鳴った。
「あのなァ!何度も繰り返すが、俺と同居してンのはあくまで妹達であって、オマエの家庭とは
 何の接点もねェンだよォ!俺はオマエの義兄じゃねェ!親戚面してンじゃねェぞコラ!」
が、御坂当麻は真っ向から向かい合って、
「そんなに恥ずかしい事じゃないって俺も何度も言ってるじゃないか!妹達も美琴の『妹』に
 かわりないだろ!?だったら家族だと誇って当たり前だ!血?体裁?まだそんなの気にしてるのか!?」
言い合うとすぐこれだ。こっちが口火を切っても、必ずペースを奪われる。
「そりゃ過去にも色々あったさ!でも大切なのは俺達が勝ち取った『今』だろ!手を取り合って
 助け合わなきゃ、また昔みたいな争いになっちゃうだろ!?第一、いがみ合ってるのは俺と
 義兄さんだけじゃないか!」
「だからその義兄さんってのをやめろっつってンだよォ!」
あっという間にヒートアップする二人。その内に民衆が集まってきてザワザワとひしめき合う。
それに一足先に気付いた一方通行は嫌々矛を鞘に戻し、周りを睨んで人を払った。
今度こそコーヒーを買いに行こう。とまた歩行を始めると、

309『とある妹達の番外個体』:2010/05/09(日) 17:08:42 ID:i0Fy/wts

「第一位〜!お財布忘れてるよ〜!」
「またあの人と言い争ってるし!いい加減、過去は水に流して欲しいってミサカはミサカは御坂家の
 安穏をもう一度祈ってみたり!」

声域が全く同一かつ、一方通行の『嫁と娘』が夏に見合った服装を靡かせながら坂道を駆けて来る。
顎が外れそうになるのを空いた左手で押さえつつ、ハァ、と重い、重ーい溜息を深く吐いた。
その様子を確認した当麻が二人の助力を期待しつつ、状況の一変を狙う。
「あ、義兄さんお金持ってないんですね?だったら俺がタダで貸しますよ!
 財布持ってきてくれた二人には悪いけど、ここは義兄弟の親睦を深めるという大義名分に乗っ取ってど」
「なにそれ!気の使い方にも善悪があるって力説してたのあなたじゃん!ってミサカはミサカは
 言動の整合性にツッコミを入れてみたり!」
「うむ、でもミサカはあなたの作戦は意外と的確だと言わざるを得ない。
 金の切れ目が縁の切れ目なら、金の繋がりは縁の安寧だとも言えるよね!」
「……オマエらそこまでして俺を懐柔させたいワケか?逆に癇癪玉が破裂しそォだぞ……?」
正直さを追求して、ついうっかり文句を滑らせたら、かえって三人の説得がエスカレートした。
「また怒って破壊活動か!?俺にあたるのは良いけど周辺への被害、いや、自分の保守のために
 ミサカ達の思いをこれ以上無下にしようっていうなら、まずはそのふざけた幻想をぶち殺す」
「この人は悪くないし、あなたを一番心配しているのはこの人なんだよって客観性を捨てて
 涙を浮かべてみたり……ってミサカはミサカは本気で悲しみを背負ってみる」
「第一位は素直になってほしいな。ミサカは知ってるよ?この人が仕事でヘマした時も
 第一位がフォローに回って、謝りの電話を代わりに深夜にかけ続けたのを。
 本当は家族として認めてるんだよね?」
あのな、と本心を述べようとさすがに思い、ただ俺は義兄さんと呼ばれるのに羞恥心を感じているだけで
普通に一方通行と言い換えて欲しいだけなんだ、といったニュアンスを伝えようとしたら、
「……ほぉおー。どうやらまたこの二人にお灸を据える必要があるようねぇ……?」
『御坂』当麻、打ち止め、番外個体の背後から、重圧を超越した色濃い気配が二つ飛来してきた。
三人の動きがビクゥ!と石像の如く静止する。そしてすぐグダダダダと鐘の様に小刻みに振動していった。
「これ以上おいたが過ぎるようなら、即刻断罪を執行しますとミサカは最後の警告を腹黒く押し通ります」
一方通行だけがその鬼気迫る激情を直視した。あいつの恐妻とその姉妹が
正に世界の終焉を開闢させる瞬間を。歯が小刻みにガタガタ鳴る。
『反射』を展開しても耐えられるかどうかわからない攻撃を察知して、
一方通行はただただ汗と血の匂いに怯えるが故、底知れぬ恐怖に震える指先をスイッチに持って行った。

310『とある妹達の番外個体』:2010/05/09(日) 17:09:26 ID:i0Fy/wts

冷たい風が肌を刺激させ、朝の到来を一方通行に教えつけた。夢を見たのは久しぶりだ。
イチイチ内容まで覚えていないが、不快にも拘らずどこか安らぎを感じる夢想だった気がする。
最近は些細な物音にも反応して覚醒する気質に加え、緊張感の連続で眠る頻度も大分減った。
それが翻ったという事はやはり事態の進展に実感が湧いた、からだろうか。
目を開き、朝の兆候を発し続ける方向を見ると、昨夜は重いカーテンに遮られた窓が全開になっていた。
冷風はそこから入ってきたらしい。このクソ寒いロシアで換気を行うのは常識外れだろと感想を抱き、
打ち止めの体が冷えてしまうなと心配してベッドに視点を切り替えると、

空っぽのベッドがあった。打ち止めの姿が消えていた。

一瞬で眠気が吹き飛び、最悪の事態の到来に頭を働かせる。
(遂に第二派が来やがったのか!?何で気付かなかった!オッレルスは何してたンだ!?)
とにかく彼女を探すしかない。ベッドに手を当て温もりを確かめるが、気温の低下の影響で
打ち止めが連れ去られてから間が空いたかどうかが予測出来ない。手がかりは、無い。
焦りが足の震えを誘発させる。打ち止めを平癒させる手段を掴んだ直後にこれだ。
絶対に彼女を奪還し、そのホシは確実に鏖殺する。そう目当てをつけ電極を能力使用モードに切り替え、
開いた窓に手をかけ、自己移動のベクトルを操作し砲弾の如く外へ飛び出すと、

その顔にドゥバッ!とスナック菓子の袋を勢いよくブチ開けた様な破裂音と共に
雪玉が叩き付けられた。

『反射』は正常に発動したので、雪玉はそのまま投手に向かって正確に飛躍する。
射手は子供だった。古着屋のセールで並んでそうな痛んだ感じの冬服を着用していた。
雪玉が顔に返されてくしゃくしゃになっている。だが楽しそうにはしゃいでいる。
「…………」
一方通行はこの事態に急速には対応不可だったが、遠目で全景を眺めれば
取り越し苦労だったのかと安心した。

そこでは打ち止めが厚着で子供達と雪合戦を堪能していたからだ。

「よーし!今度こそ本気を出して、敵陣営に大雪玉を叩きつけてやるってミサカはミサカは
 物騒な宣戦布告をしてみたり!」
そうやって自分の頭部に匹敵する大玉を隠し球とばかりに投げ飛ばすが、力不足かすぐ近くに落下した。
周りの子はその光景を見て大笑いする。打ち止めは悔しそうに顔を雪に埋めていた。
一方通行は腰が砕け、その場にずるずると座り込んだ。
(人に心配かけさせといて、それかよ。クソガキが)
制御スイッチを操作しながら、呆れつつも、満足そうな笑顔を浮かべている自分が何だか滑稽だった。
その流れで頭上を見上げたら、建物の屋根にオッレルスが上って修理をしているのを発見した。
それに気付いた相手が声を張り上げてくる。
「起きたのかい?朝食なら食堂に一応あるぞ。安物のシチーと黒パンだがな!」
作業を終えたのか、するすると立て掛けた梯子をスムーズに降りてくる。あまりに慣れた動きだ。
気が抜けたからか、取りあえず目に入ったこの建物についての話題を振った。
「現代になってまで木造建築とか古風すぎンだろ。釘が使われてねェから事からすると
 15世紀以降にブッ建てられたもンを再利用してンのかァ?」
この建物は丸太を主に使って作られたとわかる。苔や粘土がその間を埋めるように塗り付けられている。
伝統的なヴェネッツ方式だ。冬の寒さを軽減する為に居間もコンパクトに作られているのだろう。
「エリザリーナ独立国同盟が出来てから旧舎は大概打ち壊されて新築される傾向にあったが、
 こんな地方だとその作業が手付かずになって放置されてるモノもあるわけだ。
 その分土地も安いし、意外と頑丈だ。といっても、ガタがきてる部分もあるがな」
手ぬぐいで汗を拭いつつ、オッレルスが説明した。一方通行は話半分でそれを聞いていた。
「あのガキが自由に出歩いてンが、平気なのか?」
打ち止めの病状が一時的に直ったとしても、あそこまで放っておくのは危険じゃないかと勘ぐるが、
「本人は大丈夫と豪語してたし、俺の診断からすればまだ余裕はあると思う。
 それに外で他の子と遊ぶのが子供に一番良く効く薬さ。打ち止め自身も喜んでるしな」
……適当だ。そんな甘い考えを持つ奴だったのか?オッレルスの人格がよくわからない。そんな彼は、
どこからかクワスの瓶を取り出し飲んでいる。一方通行も勧められるが断った。
厳密にはアルコールではないが一応は酒だ。それにやっぱり飲むならコーヒーに限る。
そうしてその場に座り込んだオッレルスはふと呟いた。

311『とある妹達の番外個体』:2010/05/09(日) 17:10:43 ID:i0Fy/wts
「あの子達は戦争孤児だよ」
一方通行はギョッとした。戦争、戦争と小耳に何度に挟むよりも現実を濃厚に押し付けられたからだ。
「学園都市は基地陣営の拡大に力を注ぎ、人的被害はなるべく出さない作戦方式を取ってるが
 ロシア側はその迎撃に追いやられ、通常の戦闘よりも多量の人員が必要になった。
 そうすると、連邦軍の軍員だけでは賄いきれない。しかも徴兵制度はこんな田舎の貧窮している
 家庭から働き手である父親達を中心に徴収されるわけだ。そうすると残された母親は仕事を求めて
 家を出なくてはならない。だから子供達が残される」
ぐいっと瓶を上げて一気に飲み干し、オッレルスは話を続けた。
「さらにはここらの国の境界線近くの人々はロシアに付くか、独立国に付くかを迫られる場合が多い。
 すると、大国をつい選んでしまう者が過半数だ。それがこの結果さ。親達が戻れない可能性だって
 あるだろう?だからこんな即席の孤児院が必要になってくる。だが国側はそこまで手が回らない。
 そうだから俺の様な浮浪者がやるしかないんだ」
一方通行はあまりに過酷な状況に瞬き一つ動かせなかった。同時にオッレルスの懐の大きさに舌を巻いた。
「といってもここはまだ幸運な方だよ。実はこの建物は俺が来るだいぶ前から孤児院として
 使われていたんだ。そのおかげでベッドも毛布も部屋もさらには家畜まで揃ってる。
 食料も少し力任せに『取引』すれば手に入れるのは難しくない。
 噂じゃ、不死の化物がこういった施設を幾つも整備しながら旅をしていたとか。そいつに敬意を表して
 ここを選んだんだ。あの子達も親を待つのにも飽きて、ああやって遊ぶぐらいの余裕も出来てきた」
そうしてオッレルスは熱い眼差しで雪合戦に励む孤児達を一望した。一方通行もそれにつられたが、
彼とは全く別の物を見ていた。打ち止めの遊ぶ姿だ。
打ち止めは本来あそこにいなければならない存在だ。同世代のガキ共と交流して、闇とは繋がらず
光の元にずっといればいい。光は暖かい。一方通行がいる冷酷な闇とは正反対だ。
それが今、部分的に叶っている。打ち止めは自分にも笑顔を振りまいてくれるが、
あの笑顔はまたそれとは違う。いい加減で、気まぐれで、気負いが無い。純粋無垢な結晶の様だ。
黄色い声が打ち止めの名を呼ぶ。打ち止めもそれを返す。それだけだ。
それだけでいい。自分では手放すことしか出来なかった、甘美な世界にあり続ければいい。
そう感慨に耽ってたら、背後からこっそり接近して来る気配をまた察知した。
ちょっかいを出される前に振り返る。やっぱり番外個体だった。寒そうに毛布に包まったままだ。
「……うー。また打ち止めばっか見てる。ミサカはこのクソ寒い家屋をあなたと食べ物求めて
 一人寂しく放浪してたのに。やっぱり第一位はこの大きいミサカよりも小さいミサカの方が
 好みなの?スモールな輩にしか反応しない不感症なの?だったらあなたは真性の変態じゃ」
「……それ以上続けンのか?ならその体に教えてやろォか」
と言って蓑虫みたいな番外個体から毛布を奪い去ると、何故か赤面して涙ぐむ。
「ど、どうしてそんな冷たいの!?って、てか内面以上に外界が寒い!!ミサカは戦闘とかでは
 我慢するけど、こんなケースでは寒冷には勝てないの!!だから返して返してー!!」

312『とある妹達の番外個体』:2010/05/09(日) 17:11:14 ID:i0Fy/wts
とあまりに可哀想だよ、とオッレルスが訴えるのであァそォかい、と毛布は返却してやった。
また包まる番外個体。初遭遇とのギャップに腹を抱えて笑った。
「ははは!オマエさァ、まるでボロ雑巾にしか見えねェぞ!これしきの冷度に辟易してるとよォ、
 本格的な真冬でのたれ死ンのがオチになンぞ?だから毛布は卒業しろよなァ」
「ま、また取らないでよ!あなたミサカに対してサドすぎる!」
取る、奪う、取り返すを連発してたら、打ち止めと子供達が戻ってくるのを見逃すところだった。
オッレルスが彼らを一回中に引き入れようと指笛で呼びかけているようだ。
それで打ち止めが漫才っぽい馬鹿騒ぎをしてる二人に混じった。
「雪合戦は楽しいね。何発も顔に雪玉食らっちゃったけど。うん?あなたは一体誰と何をしてるの?
 ミサカも面白そうだからこの人から毛布を取ってみるってミサカはミサカはおりゃーっと
 この毛布を投げ飛ばしてみたり!」
と、勢いよく毛布は哀れにも打ち止めによって積雪に叩き付けられ、番外個体はまた薄いウォースーツ
一枚にされた。だが、その関心はもう毛布から離れ、打ち止めとの対面に移った。
打ち止めが敵対心を露にするのでは、と一方通行は一瞬危ぶんだ。打ち止めは番外個体に殺されかけた
記憶しか無い。が、先に反応したのは番外個体だった。
「お、これは可愛いミサカがいる。娘にしちゃいたいな。って頬擦りしちゃうよ」
打ち止めの体をヒョイと持ち上げ慈しんでいる。オイオイと思う矢先に、
「え!?このミサカはどうしてこんなにミサカに友好的なの!?それにさっきまで運動して火照った
 体に冷えきった顔を押し付けるのはやめてほしいってミサカはミサカは全力で振り払ってみる!」
「だーめ、離しません。ってミサカは温かいこのミサカを湯たんぽ代わりにしちゃいます。
 ふふふ、どーだ参ったか。ミサカは見る見るうちにこのミサカを気に入っちゃうよ?」
「やーめーてー!あなたも見てないで助けてよー!ってミサカはミサカは救助を呼びかけてみるっ!!」
一方通行は、下手に介入するよりこの二人に任せた方が関係が良くなりそうだなと楽観的に
打ち止めと番外個体を見ていた。何故か、自然に笑いが込み上げてくる。あまりにも馬鹿らしい。

子供達を収容し終わり、そんな三人を遠くから眺めるオッレルス。
一方通行、打ち止め、番外個体。
本来なら繋がるはずの無かった特殊な彼らの様子を実見して、こんな感銘を受けていた。

まるで、本当の家族みたいじゃないか、と。

313■■■■:2010/05/09(日) 17:18:16 ID:i0Fy/wts
以上です。後、一回の投稿で終わる?予定です。

今回はちょっとコメディ多めですが、戦時中なのに緊迫感切らしちゃって
いいのかなと思ったり。一方さんが魔術を知っちゃいますが、
かまちーならもっと劇的に書かれると思います。

では、また次の更新まで。後一夜明ける展開のはずなんですが、
一日あれば上条さんだったらフィアンマ倒しちゃいそうで心配だ……

314■■■■:2010/05/09(日) 20:46:10 ID:0wo0QLR2
上条の「義兄さん」に萌死にしそうです。
後、一方通行一家の夢が幸せすぎる。
GJ!!

315■■■■:2010/05/09(日) 21:14:10 ID:Xr.QogLU
>>313
ただただGJ!
リアル事情を織り交ぜつつ、展開されていく時間経過と描写
そしてほのぼのとした雰囲気に惚れた。

次の投稿も楽しみにしています。

316■■■■:2010/05/09(日) 22:14:10 ID:0wo0QLR2
>>313
仮面夫婦の偽りなき愛に泣く男。
オッレルス!

317■■■■:2010/05/10(月) 15:15:27 ID:XpfgA3mQ
>>313
GJにする―――!!
原作の新刊を読んでるみたいなクオリティーに只只驚きです。

しかし、これまで最終巻予想とかIF世界とか済んだ時系列の隙間でSSを書くというのはよくあったけど、
新刊でスポットライトが当たるような「近未来」を舞台としたSSというのは珍しいような気が。
まあそこはSSという事で全然問題ありませんし、次も楽しませていただきます〜。
完結まで突っ走って下さい。

318■■■■:2010/05/14(金) 20:11:29 ID:wsXXQJMg
MNWネタのSS書くのを少しでも支援できればと思って
簡易的なツール作ってみた

けどこれってどこに投下すればいいんだ?ここでいいのか?

319■■■■:2010/05/14(金) 20:34:22 ID:5w2i76pE
最近過疎化?

320■■■■:2010/05/14(金) 21:13:30 ID:50RWX.uE
何たってこんなに過疎ってるんですかね。

ところで質問なんですけど、製作速報なるものとこの板のss板ってどう違うものなんですか?
台本形式と地の文あり、とかで住み分けしてるんですかね。
あっちは割りと人がいるみたいですけど・・・・・・

321■■■■:2010/05/14(金) 23:54:16 ID:hZL8ldqE
>>320
製作
○スレを立てた本人がネタを出して書く(完結推奨)
○台本形式、一レス辺りの分量は比較的少なめ
○原作設定無視OK
○乗っ取りも場合によってアリ

禁書SSスレ(詳しくは>>1)
○スレの中に自分の作品を投稿
○原作準拠、禁書の二次創作である事を忘れない
○過度のオリキャラの演出は控えめで
○地の文有り、一般的なノベライズ形式
○一レス辺りそこそこの分量が必要

こんなとこか?

322■■■■:2010/05/15(土) 03:28:07 ID:txXFuo6U
age

323■■■■:2010/05/15(土) 14:07:15 ID:UBQFYK/c
>>322

>>1

324■■■■:2010/05/15(土) 14:07:44 ID:UBQFYK/c
俺もsage忘れたorz

325■■■■:2010/05/15(土) 20:42:27 ID:73aEf5fo
>>321

お答えいただきありがとうございます。
あっちもこっちもアニメだけのネタとかではなく、結構小説版の2次創作があるんで、深度の違いではなさそうだな、とは思っていましたが。
あっちが台本メインで、自分自身スレの立て方とかもわからないので、引き続きこちらに投稿していこうと思います。
過疎ってるのが多少さびしいですが…

ということで、
わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜3
を投稿します。
1は>>211
2は>>288
からです。
注意点としては

とある科学の超電磁砲ssの内容を前提としていること(ショチトルと佐天の関係について)

くらいです。
これについても、佐天さんは昔何やかんやがあってショチトルと親しくなったんです、くらいの認識で大丈夫です。
そのうち鎌池先生に単行本化してない短編集めて本にまとめてほしいものです。

というわけで、投下します。

326わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜3:2010/05/15(土) 20:43:53 ID:73aEf5fo
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
10時。
「それでは、これより親船最中先生の講演会、『学園都市の子どもたちのために』を始めさせていただきたいと思います」
司会の言葉が終わると、隣の部屋から親船がその姿を現し用意された教壇に立った。
聴衆は親船を拍手で迎える。
親船は軽く右手を上げてそれに応えると、早速講演会を開始した。
講演時間は1時間。
講演会としては短い方だろうが、親船は同じような講演会を頻繁に行っていた。
より多くの人々に訴えかけるためには、長い時間をとってくどくどと演説するよりも、短い講演を何度も行った方が効果的だと考えているからだ。
マイクを通して聴衆に語りかける親船は、直前まで自分が命を狙われていたことも、その危機が4人の少女達によって取り除かれたことも知らない。
――そして、その4人の少女達の中の1人が直面することになる、これから1時間に渡る戦いについても。

♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
10時15分。
「また佐天さんは待ち合わせ場所にいませんし」
初春飾利は佐天との待ち合わせ場所であるリニモの駅前にいた。
待ち合わせは10時だったのだが、佐天は姿を現さない。
電話をかけてもやはりと言うべきか、繋がらない。
「まだ絹旗さんのことを追いかけてるんですかね。あー、もしかしたらこの前みたいにそのまま絹旗さんと遊んでるのかも」
自由奔放な親友のことを思い、溜め息をつく初春。
取り敢えずもう少しくらい待ってあげよう、と寛容な態度でその場に留まる初春。
「しかし、絹旗最愛さんですか。やっぱりそんな名前をどっかで見たことあると思うんですけどねぇ」
暇を持て余した初春は佐天が追いかけていったという少女について思考する。
「どこでしたかねぇ。うーん」
顎に手をあてて考え込む初春。
「『聞いた』じゃなくて『見た』覚えがあるってことは、もしかして資料か何かで…………!?」
はっ、と目を見開いて初春は動きを止めた。
そして数秒の後、何かを思い出した初春は待ち合わせ場所からどこかへと駆け出した。

327わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜3:2010/05/15(土) 20:44:35 ID:73aEf5fo
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
同刻。
「っしょ、と」
絹旗は周りからかき集めた布きれや発泡スチロールで即席のベッドを作り上げると、その上に佐天を横たえた。
絹旗がいるのはコンクリートで作られた建物の中。
狙撃手の潜伏していたアパートと同様、今は使われなくなった施設のようだ。
サッカーコートの半分程の面積を持つ二階建ての建物で、一階部分は吹き抜けになっている。
どうやら一階部分は何台もの大型トラックを収容するためのガレージとして使われていたようで、実際トラックのタイヤ痕がコンクリートの床に刻まれていた。
そしてこの二階部分はトラックで運んできた積み荷を保管しておくための場所、ということだろう。
そこら中に梱包用のシートや発泡スチロールが転がっていたり、鉄パイプを組み合わせた棚のようなものも残っているのはその名残か。
さらに、同様の施設が道路に沿って十棟余り間隔をおいて建てられているのことも考慮すると、昔はかなり流通業で栄えていたのだろう。
街の中心に拠点が移ったせいか、今では道路を走る車も少なく、コンクリート一色で塗り固められた風景の中で事故の衝撃緩和のために道路の両脇に並べられている大量の水を入れた合成繊維のバルーンが、その青色を主張しているだけであったが。
また、絹旗が選んだ建物の一階部分には、おそらく移転の際に破棄されたのを纏めてあるのだろう、他の建物と違い大小様々な大きさの中身の入っていない輸送用コンテナが転がっていた。
万が一戦闘になった際、壁や或いは投げつけて武器に出来ると考えたためである。

「さて、取りあえず切り抜けられたようですけど……これから超どうしましょうかね」
この建物群は、『街』をリニモの駅を中心とする円形と見たとき、その円周上に存在したボロアパートから円周を丁度1/4周したあたりに存在している。
これだけ離れれば流石に暗部の下位組織がうろうろしていることもないだろう。

また、走っている途中に麦野から電話がかかってきたが、無視した。
おそらく別の場所でナビゲートしていた滝壺と合流した後、絹旗の不在に気づいて掛けてきたのだろう。
しかし下手な嘘を吐いて感づかれでもしたらことだし、無視を決め込めば何かしらのトラブルに巻き込まれていると勝手に解釈するだろう。
麦野の性格からして、連絡が取れないからとわざわざ探しに来ることも無いはずだ。
そもそもが今回の作戦である。
滝壺に索敵させ、フレンダに退路を断たせ、絹旗を囮にし、自分はトドメを刺す。
他人に苦労を押しつけ、自分が一番良い格好をする(絹旗としては代われと言われてやりたい仕事でもないが)。
無論銃弾は能力を使って防いだので怪我はないのだが、それでも撃たれるために自ら銃口の前に立つというのはいい気分はしない。
そうした自分本位な(或いは学園都市特有の高位能力者イコール偉いという)考え方を持っている麦野のことだ。
他者の為に動くなど、それこそ『自分が殺さなくては気が済まない人間を殺すため』くらいだろう。

兎に角、これで下部組織からも麦野達からも逃れられたと思っていいだろう。
だが、問題はまだ残っている。
「佐天さんが目を覚ましてから事情を説明するというのも、超気まずいですね。だれか人を呼んで保護して頂きましょうか」
そう思い、超失礼します、と小さく告げて佐天のスカートのポケットをまさぐる絹旗。
案の定、そこから携帯電話が出てきた。
ディスプレイを覗くと、
「超着信がありますね。麦野からのコールに混じって聞こえなかったんでしょうか」
初春飾利なる人物からメールや電話着信の履歴が多数あった。
確か、と絹旗は記憶を遡る。
その名前は、以前佐天と雑談していた時に何度か耳にした覚えがある。
アメリカへの広域社会見学でも一緒だったという佐天の友人の名前だ。
もしかしたら今日はその初春と待ち合わせでもしていたのかもしれない。
「兎に角、この初春さんに電話してここまで引き取りに来させればいいですね。ぎりぎりまで陰で超見張っておいて、無事に渡ったのを確認したら『アイテム』に連絡を入れて超合流しましょう」
誰に聞かせるでもなく口に出し、その通りの行動を起こそうとする。
だが、佐天の携帯で着信履歴から初春の番号を選択したところで手が止まった。
(初春さんに連絡して、佐天さんを引き渡してしまったら……もう二度と佐天さんには会えないんですね)
これだけのことに巻き込んでしまったのだ。
今回のことを説明しないままこれからも同じ態度で付き合う、なんて出来ないだろう。
だからと言って、あれは映画の撮影だったんですよ超スタントだったんです、と言って納得してくれる訳もない。

328わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜3:2010/05/15(土) 20:44:46 ID:73aEf5fo
いっそのこと、本当のことを告げてしまおうか。

そもそも流れに逆らうと言ったって、やったことは佐天を抱えて長距離を走っただけ。
この程度で逆らったことに、現状を打破する原動力を得られたことになるのだろうか。
佐天に本当のことを話し、そしてこれからも友達として付き合えたならば――その時こそ真に前進出来るのではないだろうか。

「……超無理ですね」

実は私、学園都市の暗部で人殺しをするのを仕事にしているんですよ。
そんなことを告げたら、間違いなく佐天は離れていってしまうだろう。
どうせもう会えなくなるのなら、最後に彼女の恐怖する顔を見てから別れるというのは嫌だった。
「超仕方ないですね……私なんかに付き合っていれば、それだけ暗部の事件に巻き込まれる危険も超増えますし。実際、今日も私のことを追いかけてきてあの現場に超辿り着いたんでしょうし」
そんな言い訳を口にしながら、絹旗は今度こそ通話ボタンを押そうとし――

「――!?」

カツンッ、と階下に響く足音に気づいた。

(そんな!追っ手!?どうして……)

だが、考えている隙はないようだ。
足音は明確な意志を持って絹旗達のいる二階を目指している。
(せめて階下で……ここで戦うわけには超いきません!)
絹旗は念のため自分と佐天の携帯を手早くマナーモードに設定すると、出来るだけ気配を消しながら階段に向かう。
搬出入を効率よく行うためだろう、この建物には両端に一つずつ、計二つの階段が設置されている。
絹旗は迷わず足音が向かっている階段を選んだ。
反対の階段から降りればコンテナを陰にして近づき、後方から奇襲をかけられるかも知れないが、その隙に二階に上がられたのでは話にならない。
そして、階下に辿り着いた絹旗の目の前に現れたのは――
「ここに髪の長い中学生位の少女がいるはずだ。彼女を渡せ」
赤色のセーラー服を着た、一人の少女だった。

329わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜3:2010/05/15(土) 20:44:59 ID:73aEf5fo
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
佐天を連れ去った暗部の構成員がショチトルの目の前に現れた。
ということは、この上に佐天涙子がいると見て間違いないだろう。

ショチトルと佐天とにはちょっとした交流があった。
アメリカの学芸都市での、世界の警察と『翼ある者の帰還』との衝突。
『翼ある者の帰還』の一員として戦いに身を投じていたショチトルは、巻き込まれ、生命の危機に瀕していた佐天を救い出した。
そもそも佐天を巻き込んでしまったのはショチトルであると言えなくもないが、佐天の何にでも首を突っ込む性格にも原因の一端はあるためお互い様だろう。

そして、その戦いの際、佐天達を救うために犯した命令違反の為に、ショチトルはアメリカの洋上から学園都市まで飛ばされることになった。
その時、或いは再び佐天達に会えるのではと考えもしたが――
(こんな再会を望んだ覚えはないぞ!全く、世話をかけさせるな、大馬鹿野郎が!)
内心で罵倒の言葉を浮かべつつ、しかしショチトルは迷わず佐天を追いかけていた。
佐天涙子という一般人を――世界の闇から守るために。

「ここに髪の長い中学生位の少女がいるはずだ。彼女を渡せ」

♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
間違いない。
暗部組織の追っ手だ。
『事件』を目撃した佐天涙子を抹消しに来たのだ。
絹旗は眼前のセーラー服の少女――ショチトルをそう断定する。
てっきり来るとしても黒服の屈強なエージェントでも現れるのではと思っていたので予想外ではあったが、決して楽観視は出来ない。
そもそも自分だって『ちょっと超能力が使えるだけ』のか弱い少女なのだ。
学園都市においては、武器と戦闘技術を持った大人のエージェントより、超能力を持った学生エージェントの方が厄介な場合もある。
警戒を解かないままに、絹旗は要求を蹴る。
「超知りませんね、ここには私とあなたしかいませんよ。例えいたとしても、あなたに渡す気は超ありません」
「シラをきるつもりか。ならば力づくで通してもらう」
「どうぞどうぞ。――出来るものなら、ですが!」
言葉と同時に絹旗は大きく踏み込み、ショチトルに拳を叩き込む。
が、ショチトルは直前に気づき、ガードを展開した。
絹旗の拳は少女の展開した『ソレ』に見事に阻まれた。
「何ですかソレ。超趣味悪いですよ」
ショチトルは何時の間にかその手に奇妙な形状の大振りの刀剣を持っていて、その刀身を以て絹旗の拳を受け止めたのである。
(さっきまでは超ありませんでしたよね…超隠しておけるサイズでもありませんし、超能力?)
――いや、
(そう判断するのは超早計ですね。学園都市の技術なら飛び出しナイフならぬ飛び出しサーベルくらい超簡単に作れそうですから)
数瞬でそう思考すると、絹旗は何時でも引けるように体勢を調整しながら二撃目を放つ。
ショチトルはそれも刀身で阻むと、その剣で絹旗に斬りかかって来た。
「――っ!」
絹旗は辛うじてそれを避ける。
或いは能力で防ぐことも出来たかもしれないが、自動防御という、切り札とも言える手の内を明かすのはまだだ早いと判断したのだ。
だが、
「わっ、とっ――」
続いて放たれる二斬目。
絹旗はそれを先程の攻撃より更にギリギリのところでかわす。
(超――しまったです!)
絹旗は己の失策に気づいた。
ショチトルの使う刀剣はその身体に不釣り合いな程大きい。
故に攻撃範囲が大きく、避けようと思うとかなり距離を取る必要がある。
しかし。
壁や武器に使えると思っていたコンテナ群。
それが逆に絹旗の動きを制限してしまうのだ。
絹旗の目から見て、ショチトルの剣捌きは決して『使い手』と言っていいほど巧いものではなかった。
絹旗の腕なら、或いは素手でも剣をはたき落とすくらいは出来ただろう。
だが、絹旗は周囲のコンテナに行動を制限され、思うように身動きが取れない。
そのため絹旗はショチトルの繰り出す剣の連撃を後ろへ、左右へとよけ続けるしか出来ない。
防戦一方。
絹旗はショチトルに完全に押されていたのだ。
(多人数で来たんでしたら、うまく隠れつつ投げつけつつ逃げられるかと思ったんですが……超上手く行きませんね。近接戦闘ではこっちが超不利です)
故に、絹旗は
(だったら遠距離攻撃を仕掛けるまでです。コンテナを投げつけて、あの超変な剣ごと吹き飛ばします。もしかしたら能力持ちかもしれませんが、だとしてもこっちの攻撃を防ごうとすればその能力の片鱗くらい見られるでしょう)
散乱しているコンテナの中から、ダンボール箱程の大きさのものを掴んだ。
そう、

『武器を手に取ってしまった』。

330わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜3:2010/05/15(土) 20:45:17 ID:73aEf5fo
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
奇妙な形状の大剣――マクアフティルを振るい、絹旗を追いつめていたショチトルも、しかし内心で焦りを感じていた。
(こいつ、なんて馬鹿力なんだ!?)
先程刀身で絹旗の拳を受け止めた時から、両腕には鈍い痺れが続いている。
とてもその細腕から繰り出される力とは思えないが、学園都市には超能力というものがある。
おそらく筋力を増強するような能力を使っているのだろう、とショチトルはあたりをつけた。
(クソ……今はマクアフティルのリーチの長さで優勢を保っているが、戦闘力では間違いなく私よりこいつの方が上だ。機動性でも負けているから、トドメも刺せない。こっちが消耗してきたら一気に形勢を逆転させられる)
そして、何より厄介なのは相手が徒手空拳であることだ(無論、ショチトルの預かり知らぬところで窒素を纏ってはいるのだが)。
これではショチトルの所持している『原典』の能力を発揮できない。
(どうする……)
勝負に出るか、或いは一度体勢を立て直すか。
ショチトルが次の選択肢を迷っていると、
(――!)
絹旗が散乱しているコンテナの一つを手に取った。
ショチトルはそれを口に薄く笑みを浮かべながら見る。
(よし!これで……)
絹旗は手に持ったコンテナをまるで野球ボールか何かのように片手で軽々と持ち上げると、大きく振りかぶった。
「馬鹿め…」
思わず口をついて出た言葉とともに、ショチトルは術式を発動させた。

♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「ん……」
佐天涙子は目を覚ました。
「あれ?私、何でこんなところにいるんだろ?」
四方をコンクリートに囲まれた倉庫のような場所。
佐天は自分がそこに設けられた簡素なベッドの上に横になっていることに気づいた。
「あ、携帯」
すぐそばに落ちていた携帯を手に取る佐天。
するとディスプレイには初春から多数のメールや電話の着信があったことが表示されていた。
「確か、初春と待ち合わせしてて……」
ディスプレイで時間を確認すると、10時20分。
既に待ち合わせ時間をとっくに過ぎてしまっている。
どうしてこんな時間まで寝ていたのかに思考を移し、
「そしたら絹旗が…………絹旗っ!」
佐天は気絶する直前の状況を思い出した。
「絹旗はどこに……!?」
立ち上がった佐天は下方から響く戟音に気づいた。
何かと何かが激しくぶつかり合う音だ。
「もしかして、絹旗?」
佐天は初春に連絡することも忘れて携帯を適当にポケットに突っ込む。
そしてそばに転がっていた鉄パイプを手に取ると、近い方の階段――絹旗が降りていったのとは逆の階段から階下へ駆けていった。

331わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜3:2010/05/15(土) 20:45:47 ID:73aEf5fo
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「……やっぱりです」
初春は眼前のディスプレイに映し出された情報を見て呟く。
ここは『街』の一角にあるネットカフェ。
アミューズメント施設やショッピングモールしかない街にあっても繁盛しないのでは、と思っていたが、映画の上映時間までの暇やボーリングの待ち時間を潰すために結構な人数が個室を占領していた。
初春の見ている画面に映っているのは、風紀委員177支部の自分のパソコンに保存してあるとある秘密ファイル。
その内容は、書庫に登録されている学生のデータの中で、不明瞭な点のある人物を抜粋したものである。
事件の捜査で何度か書庫を覗いたことのある初春だが、そのデータに不備のある学生が何人もいた。
そんなデータを秘密裏に纏めたのがこのファイルである。
半分は捜査の助けになることを期待して、もう半分は好奇心から集めた資料だったが――
「ありました、絹旗最愛」
風斬氷華という、名簿には登録されていても授業への出席記録がない少女の次の項。
そこに絹旗最愛という名前があった。
置き去りであり、学園都市内の施設に預けられていおり、後別の施設に移されたらしいが、その別の施設が明らかになっていない。
また『空力使い/レベル3』という能力値に上書きされ、『窒素装甲/レベル4』と記述されているのもおかしな話だ。
まるで能力の性質が変わってしまっている。
「やっぱり、絹旗さんには何かある……」
初春飾利も学園都市の闇にはいくつか触れてきた。
幻想御手や乱雑解放――そして9月30日の夜の記憶がないことも何かの事件に関係しているはずだ。
絹旗、そして彼女と一緒にいるであろう佐天。
もしかしたら彼女達も現在進行形で学園都市の闇に巻き込まれているのかもしれない。
それを確認する術はないのか。
そう思い、ネットの海を――一般人がネットサーフィンをするのとはまるで違う次元で『泳ぐ』初春。
初春の操るパソコンのディスプレイには、学園都市の機密情報が次々に浮かび上がっていく。
そのどれもが警備員に補導されても文句は言えないほどの機密である。
しかし、その中に初春の目的とする情報はない。
「こんなちゃっちいパソコンじゃ、学園都市の深部に潜って絹旗さん達の現状を調べることなんてできません。どこか専用の施設を経由しないと……!」
そして、初春は見つけた。

block_

そんな名前の組織が、『どう考えても学園都市の重要施設をハッキングするしか使い道がない』装備一式を抱えていたのだ。
ざっと調べてみたが、その組織には学園都市のハッキングをする権限などなく、どころか逆に学園都市を守る側の組織であるようだ。

謀反。

その言葉を脳内で再生した後、初春は『block』の装備を中継に使うことを決めた。
初春が学園都市の深部に潜りこめば、やがては間違いなく上層部にそのことがバレるだろう。
そして『block』は謂われのない罪で疑われることになる。
だが、実際にどこかをハッキングする準備を進めているのだから、初春の行動は『block』の謀反を上層部に知らしめることに繋がる。
『block』とネカフェのパソコンとの間のアクセスにダミーを仕込み、上層部でも『block』からネカフェのパソコンまでは辿れないように防壁を張ってから、初春は学園都市の深部へと突入した。

332わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜3:2010/05/15(土) 20:46:11 ID:73aEf5fo
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「馬鹿め…」
セーラー服の少女――ショチトルがそう呟いた直後、
「んなっ!?」
絹旗は頭部に右手の側から突然衝撃を受けた。

♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
(何なんだこの女は!怪力の上に頑丈なのか!?)
『原典』の力を借り、粉末状にした自分の皮膚を相手の武器に付着させることで相手の武器を自分の肉体の延長として支配し、相手を自殺させる『自殺術式』。
ショチトルはその一撃で勝負は決すると思っていたのだが、思いコンテナの攻撃を何発頭に受けてもワンピースの少女――絹旗がダメージを受ける様子はない。
(……まぁいい。術式は確かに効いているんだ。身動きが取れないうちに直接マクアフティルを叩き込んでやる!)
ショチトルは『原典』を所持しているが、決して使いこなせている訳ではない。
相手の武器を使って相手を自殺させるというのも、『原典』の自己防衛能力に頼っているだけである。
つまりは術式を発動させた後は全部『原典』に任せっぱなし。
故に武器を支配したからといって、自殺させる以外のこと、例えば多人数の敵が攻めてきた時に同士討ちを促す、といったことは出来ない。
だが、逆に言えば相手を操ることにショチトル自身が意識を集中させる必要はないということであり、ゴーレム使いにありがちな、『ゴーレムを操っている間は身動きが取れない』というようなことにはならない。
ゴーレム使いを例えに出すならば、ゴーレムに自立稼働をさせている状況に似ているかもしれない。
そのような理由から術式発動中も自由に動けるショチトルは、自分の右手に殴られ続ける絹旗の元へ歩いていく。
(これで終わりだ…)
心の中で呟き、ショチトルは僅かに笑みを浮かべる。

(あの女の攻撃!?)
そう思い首を右に向けると、
「!?」
右手が――自分の右手が、その手中にあるコンテナで絹旗の頭部を殴っていた。
(そんな!?右手の自由が効かない……)
右手は執拗に自分の頭部に攻撃を仕掛けてくる。
自動防御機能のおかげで、身体にダメージは殆どない。
そもそも自分の能力で操っているコンテナなのだから、自分の能力で作り上げた防壁で防げない道理はない。
だがそれでも、利き手の自由を奪われるということは攻め手を失うことと同義だった。
(成る程……これがあの女の超能力ってことですか!)
実際は魔術なのだが、そんなことは知らない絹旗はショチトルのそれを能力だと断定する。
ショチトルは絹旗が言葉通り『術中』にはまったことを確認すると近づいてきた。
その歩みが僅かに躊躇っているのは、おそらく致命傷であろう打撃を何度も受けているにも関わらず、絹旗に怪我一つ無いためだろう。
(こんな超奥の手があったなんて……あれ?)
そこで絹旗は気づいた。
(どうしてこの能力を初めから使わなかったんでしょうか?)
奥の手である自動防衛を取っておいたのは絹旗も同じだが、絹旗の奥の手が守りの一手であるに対し、ショチトルの奥の手は攻めの一手。
安全に勝利することを目的とするならば、むしろ初めから使って然るべきだろう。
(ということは能力の発動に何か条件が有るはず……)
能力は絹旗がコンテナを手に取った瞬間に発動した。
だとすれば条件も自ずと見えてくる。
(相手が武器を持っていること!おそらくは『他者が所持している物体』しか操作できないという限定条件を持った念動操作能力!)
何故そのような面倒な条件があるのかまではわからないが、つまりはコンテナから手を離せば能力は切れる。
勿論、右手の自由が効かないのでは自分からコンテナを手放すことはできない。
だが、
(能力を使ってコンテナを『発射』してしまえばいい!私の能力では何メートルも飛ばすことは超不可能ですが、数センチでも手から離してしまえばコンテナは『私の所持している武器』とは超認識されない筈!)
じりじりと絹旗に近づいてくるショチトル。
だがその顔には勝利を目前としてか、余裕の表情が見える。
余裕、即ち油断だ。
(この女が剣を振り上げた瞬間にコンテナを吹き飛ばして自由になった右手で殴る!)
自分の右手の攻撃を受け続けながら、絹旗は反撃の時を待つ。

333わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜3:2010/05/15(土) 20:46:28 ID:73aEf5fo
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
(絹旗っ!)
階下に降りた佐天はそこに絹旗の存在を認め、心の中で小さく叫んだ。
それは、絹旗が赤いセーラー服を着た少女に襲われていたからだ。
乱雑に置かれたコンテナの一つに身を潜め、セーラー服の少女の顔を確認する。
それは、

当然佐天の知らない顔だった。

故に佐天は判断する。
(やっぱり絹旗は悪い奴なんかじゃない!さっきの場所から移動してるってことは、絹旗が私をここまで運んできてくれた――何かから逃がしてくれたってこと!気絶させたのは説明する暇もないくらい切羽詰まってる状況だった……つまりは追っ手に追われていて、それがあいつ!絹旗は私を守るために戦ってくれているんだ!)
今ある情報を統合して、そう結論づける佐天。
(でも、絹旗が苦戦してる…)
絹旗は右手に持ったコンテナで自分の頭を殴っていた。
おそらくは能力による攻撃、そしてその攻撃を行っているのはセーラー服の少女。
そのせいで絹旗は身動きが取れていない。
だったら、
(私が後ろからあいつを攻撃して――ううん、当たらなくてもいい。兎に角あいつの注意を引きつけられれば、能力が弱まるかもしれない)
佐天はコンテナの陰に隠れながら、少しずつ少女の背後に近づいていく。
あと2メートルという距離まできたところで、佐天は鉄パイプを握り直して突撃の決意をする。

(あれ?)

ふと、少女の持っている大剣に違和感を感じた。
奇妙な形をした剣で、当然佐天は今まで一度も見たことはない。
だが、雰囲気を――その剣の雰囲気を、どこかで感じたことがある気がしたのだ。

(――と、何ぼけっとしてんの私!絹旗がピンチなんだよっ!)
佐天は心中で自分を叱咤して違和感を振り払うと、
「たぁぁぁぁぁぁぁ!!」
叫び声を上げながらコンテナの陰から飛び出した。

♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
(新手かっ!?)
後方から聞こえてきた叫び声に、ショチトルは危機感を呼び起こす。
足音と声から判断して、相手はかなり近い所にいる。
今から振り返ってマクアフティルを構えても攻撃を防げるかわからない。
(くそっ!だったら……)
ショチトルは振り向き様、後方に『自殺術式』の媒介である皮膚の粉を放った。
これで相手が武器を所持していたなら勝手に自滅する筈だ。
だが、

「佐天さんっ!」

ワンピースの少女が、そんな言葉を叫んだ。
(え――?)
それに遅れて完全に後ろを振り返ったショチトルの目に映ったのは、
「そん、な――」
自らの握った鉄パイプで自分の側頭部を打ちつけ、前のめりに倒れようとしている佐天涙子の姿だった。

334わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜3:2010/05/15(土) 20:46:39 ID:73aEf5fo
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
あれ?

何でだろ。

何か、ぼーっとして身体動かない……絹旗のこと、助けなきゃいけないのに。

あ、地面……じゃあ私、倒れてんのかな?

何だろ、これ。髪の毛濡れてる。

水?でも、ちょっとヌメっとしてて気持ち悪い。

やっぱりダメだ。全然身体動かない。

でも、誰かが私の身体揺すってる。私の名前呼んでる。なんか、怒ってる?

絹旗……かな?

ん、なんか目も見えなくなってきた。まぶた、重い。

誰だっけ、この声。ううん、声は聞き覚えないんだけど。

前も同じように怒られたことがある気がする。

『この大馬鹿野郎!』って……







――そして、佐天の意識は闇へ落ちて行った。

335わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜3:2010/05/15(土) 20:46:51 ID:73aEf5fo
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「覗き魔がやられたのか?」
360度にプラグが挿してあり無数のケーブルを腰の機械に繋げている、 土星の輪のように頭全体を覆うゴーグルを装備した奇妙な格好の少年――『スクール』の構成員である少年の報告に、『スクール』のリーダーである垣根帝督は驚きの声を上げた。
こくん、と頷いた少年に
「そうか、俺達(オトコ)の夢が……」
と残念がっているのを見ると、どうやら覗き魔とは先程この世から消滅した狙撃手のことのようである。
酷いあだ名ではあるが、その通りなので仕方がない。
「そう、あの覗き魔やられたのね」
隣にいたドレスの少女が、興味のなさそうな様子で言う。
「何だよ、仲間がやられたってのに随分淡白だな。あぁ、そういやお前覗き魔に嫌われてたっけ」
どうやら覗き魔は『スクール』内共通のあだ名であるようだ。
酷いあだ名ではあるが、初春のパンツを覗きやがった犬畜生のあだ名としては物足りない位である。
「逆よ逆。私が『嫌わせてた』の。能力を使ってね。そうでもしないと、あいつすぐに私の下着覗こうとするんだもの」
「そうかよ。んで、覗き魔ヤったのはどこのどいつなんだ?」
少年に問いかける垣根。
少年は、そのゴーグルから情報を受信しているのか、数秒機械を操作してから、事件の起こった状況を述べ始めた。
「成る程。つまりは『アイテム』の連中の仕業か。現場から立ち去ったのも4人……丁度数も合うな。そんで二手に別れて逃げた、と。どこに逃げたか分かるか?」
少年は再度機械をいじると、机の上の『街』の地図(暗殺計画のために用意したものだ)の一点を指差す。
「片方はこの廃棄された施設。もう片方は不明、か。……よし、お前は人材派遣に連絡して新しい狙撃手を仕入れておいてくれ。多少金がかさんでも構わないから、使える奴を用意しろ」
垣根が少年にそう命令すると、少年はこくり、と頷いたあと早速機械を使って何処かしらと遣り取りを始めた。
「で、あなたはどうするの?」
ドレスの少女が垣根に問う。
「あぁ、所在が分かってる『アイテム』の構成員を殺しておく。今回みたいに後々の計画を邪魔されても面倒だしな。第四位がいたら儲けモンだ」
答え、オトコの夢を奪った意趣返しにもなるしな、と小さく付け足す垣根。
「言っておくけど、私は行かないわよ」
即座に言い放ち、オンナの敵を滅ぼしてくれてお礼を言いたいぐらいよ、とやはり小さく付け足すドレスの女。
「期待してねえよ」
短く言い返した後、垣根は一拍置いてから静かに告げた。


「そもそも第二位と戦うんだぜ。ニ対一ってだけでもハンデとしちゃ不十分なのに、助っ人なんて頼める訳ないだろ」

336わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜3:2010/05/15(土) 20:50:33 ID:73aEf5fo
以上ですが、またやっちまいました。
>>332
順番が超おかしいです、
>>332の内容を>>337に上げなおします。
毎度毎度本当にすいません…

337わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜3(332):2010/05/15(土) 20:51:34 ID:73aEf5fo
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「馬鹿め…」
セーラー服の少女――ショチトルがそう呟いた直後、
「んなっ!?」
絹旗は頭部に右手の側から突然衝撃を受けた。
(あの女の攻撃!?)
そう思い首を右に向けると、
「!?」
右手が――自分の右手が、その手中にあるコンテナで絹旗の頭部を殴っていた。
(そんな!?右手の自由が効かない……)
右手は執拗に自分の頭部に攻撃を仕掛けてくる。
自動防御機能のおかげで、身体にダメージは殆どない。
そもそも自分の能力で操っているコンテナなのだから、自分の能力で作り上げた防壁で防げない道理はない。
だがそれでも、利き手の自由を奪われるということは攻め手を失うことと同義だった。
(成る程……これがあの女の超能力ってことですか!)
実際は魔術なのだが、そんなことは知らない絹旗はショチトルのそれを能力だと断定する。
ショチトルは絹旗が言葉通り『術中』にはまったことを確認すると近づいてきた。
その歩みが僅かに躊躇っているのは、おそらく致命傷であろう打撃を何度も受けているにも関わらず、絹旗に怪我一つ無いためだろう。
(こんな超奥の手があったなんて……あれ?)
そこで絹旗は気づいた。
(どうしてこの能力を初めから使わなかったんでしょうか?)
奥の手である自動防衛を取っておいたのは絹旗も同じだが、絹旗の奥の手が守りの一手であるに対し、ショチトルの奥の手は攻めの一手。
安全に勝利することを目的とするならば、むしろ初めから使って然るべきだろう。
(ということは能力の発動に何か条件が有るはず……)
能力は絹旗がコンテナを手に取った瞬間に発動した。
だとすれば条件も自ずと見えてくる。
(相手が武器を持っていること!おそらくは『他者が所持している物体』しか操作できないという限定条件を持った念動操作能力!)
何故そのような面倒な条件があるのかまではわからないが、つまりはコンテナから手を離せば能力は切れる。
勿論、右手の自由が効かないのでは自分からコンテナを手放すことはできない。
だが、
(能力を使ってコンテナを『発射』してしまえばいい!私の能力では何メートルも飛ばすことは超不可能ですが、数センチでも手から離してしまえばコンテナは『私の所持している武器』とは超認識されない筈!)
じりじりと絹旗に近づいてくるショチトル。
だがその顔には勝利を目前としてか、余裕の表情が見える。
余裕、即ち油断だ。
(この女が剣を振り上げた瞬間にコンテナを吹き飛ばして自由になった右手で殴る!)
自分の右手の攻撃を受け続けながら、絹旗は反撃の時を待つ。

♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
(何なんだこの女は!怪力の上に頑丈なのか!?)
『原典』の力を借り、粉末状にした自分の皮膚を相手の武器に付着させることで相手の武器を自分の肉体の延長として支配し、相手を自殺させる『自殺術式』。
ショチトルはその一撃で勝負は決すると思っていたのだが、思いコンテナの攻撃を何発頭に受けてもワンピースの少女――絹旗がダメージを受ける様子はない。
(……まぁいい。術式は確かに効いているんだ。身動きが取れないうちに直接マクアフティルを叩き込んでやる!)
ショチトルは『原典』を所持しているが、決して使いこなせている訳ではない。
相手の武器を使って相手を自殺させるというのも、『原典』の自己防衛能力に頼っているだけである。
つまりは術式を発動させた後は全部『原典』に任せっぱなし。
故に武器を支配したからといって、自殺させる以外のこと、例えば多人数の敵が攻めてきた時に同士討ちを促す、といったことは出来ない。
だが、逆に言えば相手を操ることにショチトル自身が意識を集中させる必要はないということであり、ゴーレム使いにありがちな、『ゴーレムを操っている間は身動きが取れない』というようなことにはならない。
ゴーレム使いを例えに出すならば、ゴーレムに自立稼働をさせている状況に似ているかもしれない。
そのような理由から術式発動中も自由に動けるショチトルは、自分の右手に殴られ続ける絹旗の元へ歩いていく。
(これで終わりだ…)
心の中で呟き、ショチトルは僅かに笑みを浮かべる。

338■■■■:2010/05/15(土) 20:52:20 ID:73aEf5fo
今度こそ、以上です。

それでは、今後ともよろしくお願いします…

339from-ING:2010/05/15(土) 23:50:40 ID:RZcw7gis
>>338
GJです!!

『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』
の続きなんですけど

投下して、いい雰囲気ですか?

340■■■■:2010/05/15(土) 23:57:05 ID:H.JxWsbM
やっちまえ

341■■■■:2010/05/16(日) 03:00:24 ID:0gr.3X9w
どうしたんですか!?
さあ、早く投下するのです。
私はまだ起きていますぞ〜
待っていますぞ〜

342■■■■:2010/05/16(日) 20:33:24 ID:4pHyKGME
>>338
相変わらず既にあるキャラ設定やエピソードを組み合わせるのが巧いですね
絹旗とショチトルの食い違いも絶妙です

あと、短編まとめて欲しいという意見には大いに同意します

343from-ING:2010/05/16(日) 22:46:19 ID:pAaT4lXU
お久しぶりです!!

一か月ぶりなので、覚えておられる方はいるかな…と不安なのですが投下しますね

『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』>>20の続きです

注意事項をいくつか

オリキャラ注意!!
メアリース―はよくわからないのですが、もしかしたら当てはまってるかもしれません

オリキャラ嫌いな方は絶対に読まないことをお勧めします

これは13〜14巻の間を意識して書いてますのでよろしく

では、

第一章 [そして悪役は動き出す Operation Pandora]の最後まで行きます

344『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/05/16(日) 22:49:10 ID:pAaT4lXU
第一章 [そして悪役は動き出す Operation Pandora]


<11:20 AM>

(なァ……にィ?)
口の中に血の味が広がる感触を感じた一方通行(アクセラレータ)はその事態にただ混乱していた。
最強の盾たる反射が”効いていない”。
そこに疑問を抱く彼の耳にビキィ…!と地面がひび割れる音が聞こえた。
(いやァ…効いてないンじゃねェ…これはまさかッ!?)
その原因に気づいた一方通行は脚力のベクトルを操作し、一気にその『場』から抜けだす。
直後、ゴォォォォォ!!と風が吹き荒れた。周りのものを押すような流れではなく、周りのものを引きこむような風の流れ。
その流れを見て、一方通行は自分の推論に確信を持った。
「……………凄い。もう僕の攻撃方法がわかったのかい?」
先ほどと変わらぬ場所で空中に立つ無表情な少年は、パチパチパチと拍手しながら一方通行を見る。
一方通行はその言葉に対し、血が流れる口元を歪めながら答えた。
「大気圧…だろォ?」
「………………その通り」
今までにないくらいの笑顔を顔に浮かべた少年は、何かを押しのけるように腕を横に勢いよく振った。
一方通行はその動きに合わせるように形成されるその『場』から逃げだす。
直後、ミシィ…と空間が軋むような音が響いた。
「……………キミの能力はあくまで『ベクトル変換』だ。その力は万能のように見えて実はそうじゃない」
再び、風が吹き荒れた。強烈な風は一方通行の髪を揺らしながら、ウナギのようにのたうちまわる。
「……………本当にすべてのベクトルを反射していたらキミは死んでしまうだろう?空気や光などがそのいい例だ。空気を反射してしまえば息ができないし、光を反射してしまえば何も
その目に映るものがなくなってしまう。キミは無意識の内にそれらの反射設定を無効にしているんだ」
だったら、と少年は続けた。
「”その無意識に反射を無効にしているものでキミを攻撃すればいい”」
だからこその、大気圧。
そもそも、大気圧は空気があるところには必ず発生する現象である。
空気に重力がかかり発生する大気圧は地球上すべての物質に影響を及ぼしていると言っても過言ではないのだ。
そして、人間の身体は外側から大気圧が押す力を、内側から大気圧が押す力で相殺して身体を保っている。
そこで、外側の押す力をゼロにしただけ。
そうすることで、内側からの力に押され身体が破裂する、という考え。
しかし、
「……………しかしだ。人間の身体はそんなことだけで傷つくことはない。身体にはそれらにある程度の抵抗があるから決してその程度で死ぬことはない。だったらどうすればいいと思
う?」
問いかけるような言葉。その言葉に一方通行は不快そうに眉をひそめる。

345『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/05/16(日) 22:51:19 ID:pAaT4lXU
第一章 [そして悪役は動き出す Operation Pandora]


通常の大気圧では。
身体の中だけの空気で出来ることがないのなら。
「……………キミの身体の中の空気を増やせばいい。十五倍にまで超圧縮した空気をキミの肺の中に入れて真空状態になった瞬間に元に戻してしまえば完全にとまではいかなくても少な
からずダメージはあるだろう?」
ニィ…と気持ちの悪い笑みを少年は浮かべた。
そんな笑顔を見て、ふざけた理論だと一方通行は思う。
おそらく、その超圧縮した空気とやらは先ほど見えない壁のようなものを壊したときにでも肺に入れたのだろう。
(あンときぶっ壊したあの壁が超圧縮した空気だったンだろうなァ………だが、なぜ真空状態の中でしか使用しない?オレの肺の中に入れた瞬間に元に戻せばいいじゃねェか…)
そこが少年の能力の限界だ。
一方通行のように皮膚に触れないと操れない、とか見えないものは操れないとかそんなところだろう。
その肺のなかにある圧縮された空気はそれを固定している周りの大気圧がゼロになることで解放される。
では、その大気圧をどのようにしてゼロにするのか。
その答えは、
「……………擬似的な真空状態だ」
目に一切の感情を映さない少年の空虚な瞳は、小さく細められる。
「……………いくら僕の能力でも、完全な真空状態は作れやしない。でも人間の身体なんてものなら完全な真空状態ではなくても簡単に潰すことができる。少し、空気を抜いただけで人
間は酸素が足りなくなるし、その状態のまま居続ければ肺を潰すことなんて容易だしね」
先ほどの烈風の正体も『擬似的な真空状態』の影響だ。真空状態の空間にただ、水の中に沈めたバケツに水が流れこむように空気が流れこんだだけ。
「……………キミの能力は『最強』であっても『絶対』じゃない」
だからこそ、そこに隙できる。
(ヤッベェなァ…)
一方通行は、少年の言葉を聞きながら状況が最悪になっていることを自覚していた。
この状況を改善するための前提条件である『相手は一方通行を傷つけることはできない』が崩れている。
その事実はこの戦局を大きく左右するものだ。
「ねぇねぇ…ボクは思ったんだけどさ。キミの本名ってなんなの?」
素朴な疑問を投げかけるような軽い口調の言葉が一方通行の耳に届く。
一方通行が、目の前の少年から意識を離さずにそちらを見るとけらけらと笑う少女がガラス玉を手でもてあそびながらこちらを見つめていた。
「『一方通行(アクセラレータ)』ってどう考えても本名じゃないでしょ?キミを調べた時にはどこにも本名らしきものがなかったから気になってたんだよ」
壊れかけのフェンスに寄りかかる少女の目には、明らかな好奇心が見て取れる。
余裕。
それを感じさせる少女のセリフに、一方通行は心の中で舌打ちした。
「相手の名前を聞く時には、自分の名前を先に言うもンだろォ?」
ぶっきらぼうなもの言い。
相手が断ることを前提として言ったのだが、意外にも少女はその言葉に従った。

346『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/05/16(日) 22:52:12 ID:pAaT4lXU
第一章 [そして悪役は動き出す Operation Pandora]


そうだね、と少女は一拍置いて
「確かにこっちから名前を言わないのは失礼だったかな?」
寄りかかっている古びたフェンスから身体を離し、軽く一礼してこう言った。


「ローマ正教『神の右席』候補者、ミーナ=シンクジェリ」


よろしくね、とミーナはまだ幼さを感じさせる顔で一方通行にニコリと笑いかけた。
と、ミーナは突然額に指を当て、思案するかのように首を傾げる。
「そういや、キミはローマ正教の『神の右席』ってのを知らないのか………」
「知らねェなァ…どっかの宗教組織にある一つ一つの部署なンざ覚えちゃいねェよ」
「違うよ。知らないことが”当たり前”なんだ。『神の右席』はあの巨大な魔術結社の中にも限られた人数しかその存在を知らないんだから」
「そりゃゴ偉いこって…ンで?その『神の右席』様がこの学園都市や妹達(シスターズ)になンのようだァ?」
「それは知ってるんでしょ、白髪少年A。ボク達はこの学園都市を”潰し”に来たんだ」
「解せねェな……そこが解せねェンだよ」
一方通行は怪訝そうな表情を浮かべる。彼の頭の中にはいくつかの疑問が渦巻いていた。
「なンで学園都市を潰すために”『超電磁砲(レールガン)』御坂美琴と学園都市に残る全ての妹達(シスターズ)を確保しよう”としたかが理解できねェ」
ピクリ、とミーナの頬が動いた。その動作を一方通行は見逃さなかった。
「学園都市の第一位であるオレを殺したいってェのは分かる。そのための人質として妹達(シスターズ)を確保しようってェのも分かる。じゃあ、『超電磁法(レールガン)』はなンだ
?そして、なンで学園都市に残る『全て』の妹達(シスターズ)を捕まえる必要がある?人質として使うンなら一人でも充分だろォ?」
「保険として妹達(シスターズ)を確保しておきたいってェなら複数の人質を取ることに違和感はねェ。けど、それにしてはテメェらの行動には無駄がありすぎンだよォ」
「オレを殺すための人質に使う妹達(シスターズ)を捕まえるためになンでオレと戦ってンだァ?それじゃあ本末転倒だろォ?」
「テメェらいったい…………何を企ンでやがる?」
「………、」
一方通行の言葉を静かに聞いていたミーナは顔を俯いたまま黙っていた。
相対する少年も、二人の会話を無表情な顔でただ傍観している。
それらを無言で見つめる御坂妹も一方通行の提示した疑問に答えることはできなかった。
数秒の沈黙。
不意に、ミーナの肩が不自然に震え始めた。

347『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/05/16(日) 22:53:07 ID:pAaT4lXU
第一章 [そして悪役は動き出す Operation Pandora]


「……クク…、クフフフ…クク、ハハ…」
自然に口から流れるのではなく、口からでようとするものを押し殺すように。
手を額に当て何かを堪えるようにミーナは肩を震わせる。
「ハハ…、ハハハハ…………」
そして、限界が来たかのように、堪え切れなくなったようにミーナは笑いだした。
「アッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!ハハハ、凄い!!凄いよ学園都市の第一位!!!ボクらと戦ってる中でそんなとこまで考える余裕があるなんてッ!!!」
狂ったように笑うミーナが話す言葉を聞きながら一方通行の目は少しずつ細められていく。
「想像以上だよ!!やはり、計画を先倒ししてまでキミと会ってよかった!!……………ああ、」
大声を張り上げるミーナは、唐突にその動きを止める。
ゆっくりとした動作で雲しかない天を仰ぎ、ミーナは呟くようにこう言った。
「キミは想像以上に危険だ」
ポロリ、とミーナの手の中から滑るようにガラス玉が地面に落ちた。
しかしそのガラス玉は回らない。まるで写真を上から下に動かすように無回転でゆっくりとガラス玉は地に向かっていく。
そして、ガラス玉が地面に触れたか触れなかったかの瞬間。
パキィィィン!!とかん高い音と共にガラス玉が割れ、


キュガッ!!と呆然と立ち尽くす御坂妹の周りに水の槍が数十本展開された。


「なッ!?」
その光景を見た御坂妹と一方通行の目が大きく見開かれる。
「ア、ハハハハ……、」
乾いた笑い声を出して、ミーナは一歩だけ踏み出す。
「もう、いらないよ。お人形さん♪」
今までの活発そうな笑顔を凍ったような微笑みに変えてミーナは手を大きく振り上げた。
その手の動きに合わせるように水の槍は鋭さを増し、
「テメェ!何やって―――――」
「……………ほら、またよそ見した」
少年が勢いよく手を振るう。その手の動きに合わせるように大きな風の鎌が一方通行の元へと突き進み、
「……………ボン」
一方通行の目の前で炸裂。炸裂した風の鎌は一方通行の周りにある空気を強制的に押し出し、擬似的な真空状態を作り出す。

348『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/05/16(日) 22:53:50 ID:pAaT4lXU
第一章 [そして悪役は動き出す Operation Pandora]


「………ゴッ、ホ」
一方通行の身体が軋み、真空状態の中で意識が飛びそうになる。
(クソがァァァァ!!邪魔してンじゃねェよ!!)
足の裏のベクトルを操作し、飛ぶようにその『場』から離れた。
「……………よそ見をするな。こちらを見ろ。キミの相手はこの僕だ」
「チィ…ッ!」
ヒュ、と空を切る音が小さく響いた。
一方通行が落ちていた小石を少年の方に蹴りあげた音だ。
ガゴン!!と小石が少年の目の前で見えない壁に当り衝撃波が辺りにまき散らされる。
「……………そんなもので……ッ!?」
「終わってねェぞ」
一方通行が屋上の地面を踏みつけた。どうベクトルを操作したのか、人の頭程度のコンクリートの塊が地面からくり抜かれたように空中に飛び出す。
それが合計、五つ。
その一つ一つを一方通行は思い切り拳で撃つ。
ゴガン!!とコンクリの塊が少年の見えない壁にぶつかり砲弾が壁を砕くような大きな音が屋上にこだました。
少年の居た辺りにコンクリの粉塵が宙に舞う。
「ハッ」
そして、一度息を吸い込み一方通行は足元に転がる小石を二つ丁寧に蹴りあげた。
ちょうど目の高さに上がる二つの小石。
その二つを一方通行は全力で弾いた。
二つの小石は直進し、粉塵の立ちこめる場所でお互いに撃ち合わせる。
バチン。と、
生じるのは小さな火花。
しかし、少年が居る細かい粉末の漂う空間で火花が生じることは大きな意味がある。


ゴッバァァァァァァァン!!という轟音とともにいくつかの音が掻き消えた。


少年の居た周りの空間がすべて爆弾に変り、大きな衝撃波が屋上を襲う。
ただでも古びて壊れやすくなっているビルは爆発でグラグラと大きく揺れた。
そして、爆発により発生する熱風と衝撃波が襲うのは一方通行だけではなかった。
「もう!面倒だなぁ!!邪魔するなよ!」
御坂妹を襲う数十本の水の槍はその衝撃に押され散り、攻撃命令を下そうとしたミーナは忌々しそうに眉をひそめ衝撃に耐えている。

349『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/05/16(日) 22:54:56 ID:pAaT4lXU
第一章 [そして悪役は動き出す Operation Pandora]


そんな熱風と衝撃波が荒れ狂う屋上の中、御坂妹は不思議となんの被害も受けてはいなかった。
まるで、何かが御坂妹を護るように害なすものはすべて彼女を避けていく。
「……、」
誰が彼女を護っているかなど、わからないはずがなかった。
(また……護られてしまいました、とミサカは一人唇を噛みしめます)
ギリッ、と自然と拳に力が入った。
そんな御坂妹を尻目に状況は進んでいく。
熱風と衝撃波が唐突に止んだ。
なんの脈絡もなく、なんの前兆もなく。
全ての風が動きを止めた。
「……………粉塵爆発とは……考えたものだね」
煙や粉塵が視界を完全に塞ぐ中。
いまだに粉塵と煙の漂う場所から、そんな声が聞こえた。
その声はどこまでも平坦で、どこまでも抑揚のない声で、大きく不安をあおるような無機質な声だった。
まるで、先ほどから”何もなかったかのように”その声に変化はない。
「……………学園都市の暗部組織〔パンドラ〕の構成員、神田和真」
直後。
ビュォォォ!!と風が大きく吹いた。
その風は一方通行や、御坂妹の視界を塞いでいた煙や粉塵を吹き飛ばし、二人の視界に一つの光景を映しだす。
「それが僕の名前だ」
それは、額から一筋の血が流れている少年。
頭から血を流しながらも、しっかりと空中に足を立てている、神田和真の姿だった。
「しぶてぇ野郎だなァ」
「……………あいにく、そう簡単に死ぬわけにはいかなくてね」
片目をつむり、右手を自分の頭に当てながら、
「……………まだやり残したことがたくさんあるんだ」
それにしても、と神田は大きく、わざとらしくため息をついた。
「……………キミがそのクローンをそこまでして護ろうとするのは僕にはどうにも理解しがたい」
ピクリ、と一方通行の頬が動いた。
「……………だってそうだろう?そのクローン、聞けば全世界に一万と居るようじゃないか。その中の一体くらい死んでもいいとは思わないのかい?妹達(シスターズ)。それは一方通
行(アクセラレータ)を絶対能力者(LEVEL.6)に進化させるために作られた体細胞クローン、だっけ?その存在意義は『殺されること』だったはずだ。それをとある少年に敗れたキミの
せいで存在理由をなくしているじゃないか。そんな”もの”ならいっその事殺してしまったほうがいいだろう」
神田が屋上の端で身構えながらも何もしない、御坂妹の方へと視線を向ける。

350『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/05/16(日) 22:55:42 ID:pAaT4lXU
第一章 [そして悪役は動き出す Operation Pandora]


「罪滅ぼしのつもりかい?でも、よく考えてもみなよ。キミが『あれ』らを殺した理由は”彼女たちが望んだこと”だからじゃないか。みずから殺されにきているやつを殺してどうして
キミがそいつらに罪滅ぼしなんてことをしなくちゃいけないんだ。そして、僕が最も理解できないのが、どうして妹達(シスターズ)が被害者ぶってキミに護ってもらっているかという
ことだよ。キミたちの関係は『加害者と被害者』ではなく『共犯者』だ。『あれ』らが自らの責任をすべてキミに押し付けていることになぜ気付かない?」
無表情な顔で、淡々と的確に神田は言葉を紡ぐ。
「……………そもそも、僕にはあんな『人形』を人間として扱っているキミの――――――」
「うっせェンだよ」
一方通行の呟くような一言が神田の言葉を遮った。
その言葉を受け、神田の口の動きが停まる。
「くだらねェことをいつまでもペラペラペラペラ喋りやがってェ…オレの行動理由が理解出来ないだァ?当たり前だろォ」
一方通行は言いながら一歩を踏み出した。カツコツと靴を鳴らしながら一方通行は神田へと、正確には神田の真下へとゆっくりと歩を進める。
先ほどからの戦闘でぐちゃぐちゃになっている地面に目もくれず、神田にだけ目を向けた。


「それがお前とオレの差だ」


その言葉で神田の表情が変わった。
ニタァ…とまるで三日月のように口を大きく裂いたような笑みを浮かべる。
「……………焦躁はなし。一瞬も動じず、周りへの警戒も解かない。”作戦は失敗、か”……よかった」
神田が緩やかに左手を振るう。
と、突然御坂妹の真上に人一人を簡単に押しつぶすほどの大型バスが現れた。
「はァ?ンなもンどこから…………」
正確には違う。最初からそこにあったのだ。
神田の能力による光学迷彩で、その姿が見えなくなっていただけ。
「……………キミの隙をついて殺すなんてつまらない。今、この瞬間。ある意味で僕の目的は達成された」
神田が右腕を上げる。握られた拳はまるで何かを掴んでいるかのように見えた。
「……………さあ、護ってみなよ」
拳を開く。
ガウン!と大型バスの車両が御坂妹に向かって襲いかかった。
神田の能力で空中に支えられていた車両は支えを失い、万有引力の法則に従い地面に垂直に落ちてくる。

351『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/05/16(日) 22:56:13 ID:pAaT4lXU
第一章 [そして悪役は動き出す Operation Pandora]


「クソッタレがァ!!」
一方通行が地を蹴った。コンクリの地面を爆砕させながら一方通行は大型バスの側面へと激突する。
大型バスは一方通行の突撃を受けて、真横に跳ねた。
壊すのではない。あえてその車両を屋上から外に弾きだすことで、御坂妹への被害をゼロにしたのだ。
しかし、その行動は事態を悪化させる。
「ひっかかったぁ!!」
そんな声が一方通行の耳に響いた。
空中から下を見ると、ミーナが手のひらを地面に押し付けているのが見える。
直後。
ゴバン!!と御坂妹の真後ろにある貯水タンクが破裂し、長年放置され変色した中の水が外に解放された。
よく見ると貯水タンクに青い色をした魔方陣が描かれていることがわかっただろう。
「自分の身体じゃなくて、何かのもので車両を吹き飛ばせばよかったのに。空中じゃ身動きが取れないことを忘れちゃダメだよ!」
ミーナの腕の動きに従うように、変色した水が小さな津波を形成し御坂妹に襲いかかる。
「くぅ…ッ!!」
御坂妹は足にありったけの力をいれ横に飛ぶようにして津波を回避した。
地面を滑る御坂妹は次の攻撃に備え、体制を立て直そうと足に力を入れる。
が、
「……………大人しくキミは捕まってればいいんだよ」
いつの間にか前に移動していた神田の回し蹴りが御坂妹の脇腹に直撃した。
身体がくの字に曲がり、ごふぅ…と肺の中の空気が強制的に外に吐き出される。
膝を折る御坂妹。そんな彼女を大量の水が包み込んだ。
「がぼっ」
そして、回転。渦巻く水は何ものも逃がさない牢獄となり、御坂妹をそこに幽閉した。
水の中で息も出来ず、回転する水で頭の思考回路がショートした御坂妹は水中でただもがくことしかできない。
平衡感覚がなくなり、少しずつ意識が遠のいていく。
そして、

352『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/05/16(日) 22:56:53 ID:pAaT4lXU
第一章 [そして悪役は動き出す Operation Pandora]


ゴッパァァン!!と水の檻に突撃してきた一方通行が無理やり御坂妹を檻から引きづり出した。
「しっかりしろ!こンなことまでさせといて死ンだら承知しねェぞ!!」
一方通行の腕の中で御坂妹はぐったりと身体の力が抜け、辛そうに息をしている。
どうやら意識を失ったようだ。
(これ以上は無理だァ…どうにかしてここから逃げださねェと…ッ!?)
しかし、状況は一方通行に思考の時間を与えてくれはしない。
御坂妹を抱える一方通行の前にミーナ=シンクジェリが躍り出た。
「キミがその娘を抱えるその瞬間を待ってたよ!!」
満面の笑みで叫ぶミーナは手にしているガラス玉をあらぬ方向に投げ捨てた。
パッキィィィン!!とかん高い音と共にガラス玉が破裂し、大量の水があふれ出す。
「物に触れている時に触れている部分に『反射』は適応してないんでしょう?じゃないと、何にも触れることが出来ないんだから」
と、溢れ出した大量の水がミーナの指先に集まり始めた。
圧縮するように小さくなっていく水の塊は直径、3センチくらいになるところでその動きを止める。
「つまりは、”その娘もろとも貫いてしまえばキミの『反射』は効果をなさない”!!」
ミーナが水の塊を集めている指先を腕を動かすことで横薙ぎに振るった。
シュン、と空を切る音。
一方通行は『それ』を上に飛ぶことで回避する。
瞬間、ズバァァ!!と屋上の一部が両断された。
水の塊から音速を軽く超えるマッハ4程の速度で射出された水がコンクリートを両断したのだ。
(ウォーターカッターかァ!?)
「さっきも言ったのにもう忘れたの?空中じゃ身動きが取れないんだよ!!」
上を見上げ、ミーナは照準を上へと飛んだ一方通行に向ける。
再び、腕を横薙ぎに振るった。ダイヤモンドすらも切り裂く水の刃が途中にあるものすべてを切断しながら一方通行へと迫る。
「クッソがァァァァ!!!」
一方通行は空中で無理やり身体を回転させ、ミーナに背中を見せた。
その背中にウォーターカッターが激突する。
直後。
ズバァァァン!!と一方通行の能力によりベクトルを変換させられたウォーターカッターは真下にあるビルを一刀両断した。
あまりにも綺麗に切断されたビルは倒壊することもなく、こつぜんとそこに立つ。
ミーナの水のベクトルを操れない一方通行の意図してのことではなかったが、そのことは一方通行にとって好都合だった。
(今、ここでやるべきことは一つだけ。御坂妹(コイツ)を連れてどこか安全な場所に移動することだァ。だったら…)
一方通行は着地する時のエネルギーを使い、全力で屋上の地面を踏み潰す。


ゴガァァァァァン!!という轟音とともに今までの戦闘でボロボロになったビルはダメージに耐えきれずに倒壊した。


「なっ!?」
ミーナが驚きに思わず声を出した。
足場の崩れていく中、一方通行がベクトル変化を使い大きく跳んだのを見た彼女はうっすらと微笑みを顔に浮かばせる。
「さすがは第一位。やってくれるね」
その呟きは、ビル倒壊の音にかき消された。

353『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/05/16(日) 22:57:25 ID:pAaT4lXU
第一章 [そして悪役は動き出す Operation Pandora]



<11:30 AM>


ゴバン!!と辺り一面瓦礫だらけの場所で小さな爆発が起こった。
飛んでいく瓦礫が音を立てて地に落ちる。
「いや〜障壁作ってなかったらホント死んでたよ」
その爆発の中心にミーナ=シンクジェリは笑いながら立っていた。
その身体には傷一つ、埃一つついていない。
「そう簡単に殺させてはくれないみたいだね」
「…………当たり前だよ。彼にだって僕らと同じように『護るべきもの』がある。」
ひとり言のように呟くミーナの言葉に答える声があった。
「カンダ……死んでなかったんだ?」
「…………勝手に殺されたら困るね。だいたい、君に極力被害が及ばないようにしたのは僕だよ」
「わかってるよ。それにしても、彼にはしてやられたね…まさかビルごと破壊するなんて」
「…………最後のあの瞬間、彼は僕から風の制御をいくつか取り返していたしね」
「取り返す?どうやって…」
「…………僕の操る風の動きを逆算して、だろうね。もっとも、彼のことだろうからそれより凄いことをやっていても不思議ではないけれど」
ふ〜ん、と呟きミーナは姿の無い声との会話を続ける。
「やっぱり凄いんだね、彼は。見た限りはただのモヤシだったけど…」
「…………彼の力だけでなく、『護るべきもの』があったことも大きいさ」
その声を聞いたミーナは息を吐き、適当な瓦礫の山を選んで腰かける。
「『護るべきもの』ね……ボクはもうなくしちゃった」
青い瞳に悲しみの色をにじませながら呟くミーナはどこか遠くを見るように天を仰ぐ。
「…………キミがなくしたと思っているだけで『護るべきもの』をキミはいくつも持っていると思うよ?」
「気休めだね。今、ボクが護るものなんて自分の意地ぐらいしかないじゃないか」
フフッ、と笑うミーナは指を自らの肉に食い込ませた。
「ボクの魔法名は『Credo952』」
呟くように話すミーナの表情はお世辞にも明るいとは言えないものだった。
「その意は『我がすべては約束のためだけに』さ。この魔法名については確かカンダには話したよね?」
「…………聞いているよ。聞いていなければ僕は魔術師なんていう意味のわからない者と手を組んではいない」
「そっか。そう言えば、クリスは今、何をしてるんだっけ?」
「…………確か『幻想殺し(イマジンブレイカ―)』を担当してる」
「『幻想殺し(イマジンブレイカ―)』か……ボクたちローマ正教徒としては存在を許してはいけないもの。神を冒涜する罪深き罪人」
「…………神やらなにやら、何度聞いても僕は理解できないよ」
それでいいのさ、とミーナは風に髪をあおられながら目を細めた。
「キミ達『科学』がボクたち『魔術』なんてものを理解する必要はない。無理に理解しようとすればそれだけでなにか問題が起きるだけだから」
その言葉に、姿なき声は押し黙る。
「本来、相容れるものではないボクらがこうして共闘してることがすでに驚きさ。いくら目的は同じでも所詮は水と油。まじわることは出来やしないんだ」
どこか、悲しげな表情をするミーナは何もかもを諦めたような顔でそう言った。
と、ミーナが腰かけていた場所から尻を上げる。
「さぁて、無駄話は終わり。さっさとボクらの本来の仕事に戻ろう」
その表情は先ほどのような曇りはなく、いつものような明るい表情だった。
「……………じゃあ、確認しよう。次に僕らが狙う標的は?」
トッ、とミーナの隣に緑色の髪をした少年が降り立つ。
その無表情な顔はどこか寂しそうな色が浮かんでいるように見えた。
「10万3000冊の魔導書を管理する魔導書図書館。『禁書目録(インデックス)』の回収」
何度も同じことを言ってきたかのように事務的な言葉。
しかし、言葉のように簡単に口にできるほど、この仕事は楽なものではない。
それが分かっていながらも二人の少年少女は止まらない。
その理由は、ただの目的のためか、ただの意地のためか。
はたまた、まったく別のもののためか。
そうして、二人の男女はその場から姿を消した。

354『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/05/16(日) 22:58:03 ID:pAaT4lXU
第一章 [そして悪役は動き出す Operation Pandora]

<11:25 AM>

「御坂が……死んだ?俺の…せいで?」
上条と土御門はいったん、相手の視界から逃れるために適当に選んだ自動車の後ろに隠れていた。
相手は姿が見えないと攻撃できない、という土御門の考えによるものだが同時に相手の姿も見えなくなってしまうものなので、苦肉の策と言えよう。
周りからは絶えず少女の足音と爆発音が聞こえていたが上条には聞こえてはいない。
聞いたことがあまりにも衝撃的だったから。
「んなことがあるか!?テメェみたいなのに御坂がやられるわけが……ッ!?」
「大声をだすなかみやんッ!!場所がばれる」
思わず大声を出す上条の口を土御門が塞ぐ。
相手の場所も分からず、現在居る場所すらもよくわからない状態で敵と戦うのはあまりにも無謀だ。
「冷静になれかみやん……今、ここでお前がキレても状況は何一つとして改善しない」
「……クソッ、」
そう吐き捨てて上条は拳を握りしめる。
冷静になど、なれるはずがなかった。
「私、みたいなのに『御坂美琴』は殺せない?そんなことがどうしてわかんのよ?」
知った声で、知った姿をした少女は上条に追い打ちをかけるように口を動かす。
「御坂美琴。ひたすらな努力で学園都市に七人しかいない超能力者(LEVEL.5)の第三位にまで登りつめた常盤台中学のエリートお嬢様。その功績や人格により多くの人間に慕われ、その
の力になりたいという人間も多くいる。そんな彼女を殺すのは確かに簡単じゃないわね」
だからこそよ、と少女は前置きし笑いながらこう言った。
「アッハハハ…おっかしいな〜その人望そのものが弱点になるってことをどうしてアンタは気付かないのよ」
ドクン、と自分の胸が大きく高鳴るのを上条は感じた。
自分が考えてしまったことに身体が大きく反応する。
自分を殺そうとした少女は最初、どのようにして自分を殺そうとした?
「まさか、お前……」
呆然と呟く上条は混乱する頭で思う。
そこから考えられることなんて”一つしかないじゃないか”。
ジジジ…、とカメラのシャッターをきるような音がした。
「やっと気付きましたの?これだから頭の悪い殿方は嫌いですわ」
その声に上条は心臓が止まるかと思った。

355『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/05/16(日) 22:58:59 ID:pAaT4lXU
第一章 [そして悪役は動き出す Operation Pandora]


さっきまでとは違った鈴のような少女の声。
その声に上条は聞き覚えがある。
ジジジ…、と音がした。
「とうまがそんなんだから、短髪は死んじゃったんだよ?」
この声にだって上条には聞き覚えがある。
「わかってるんですかー上条ちゃん」「かみやんのせいで一人の女の子が死んでしまったんやで〜」「知ってましたか?御坂さんって結構友達思いなんですよ」「そうなんだよね〜印象
と違って子供っぽいし、一緒に話してて楽しいとってもいい先輩なんですよ〜」「そんな罪もない女の子が、君のようなクズのせいで死んでしまったんだよ?」「他の誰でもありません
。上条当麻、あなたのせいです」「どう責任をとるおつもりですか?とミサカは首を傾げながら大事なことを確認します」「そんなことわかりきって……」
ジジジジジジジジ!と音がした。
聞こえてくる様々な声と一緒に自分の荒い息遣いが上条の耳に届く。
極限にまで開かれた上条の瞳は今にも瞳孔が開いてしまいそうだった。
(落ちつけよ、上条当麻。まだあいつが御坂を本当に殺したかなんてわからねえじゃねえか……)
胸を手で押さえ過呼吸になりそうな息遣いを正常に戻しながら、上条は心を落ち着かせていく。
(御坂を信じろ。俺が死ななかったんだから、御坂が死ぬわけがねえ。あいつだったら簡単に偽物だって気付くに決まってる)
ひぅ、と息を吐く。
いまだに止まらない多くの声を聞きながらそれが偽物だということを認識する。
異常な息遣いは徐々に元に戻り、心臓の鼓動も治まっていき、


「おーすっビリビリ!こんなとこでなにやってんだ?」


こんな言葉を聞いてしまった。
心のどこかにヒビが入ったような気がした。
ジジジ…、と音がした。
「長々と話したけどさ、あの御坂美琴に近づくのにはこの言葉だけで充分だったわよ」
また美琴の声に変ったことも、すかした話し声も上条の耳には届いていない。
(コイツ、今………誰の声で言いやがった?)
唇が渇き、気持ちの悪い汗が身体を伝う。
「アンタにも見せてやりたかったな……」
興奮でもしているのか、震えた声を出しながら少女は言葉を紡ぐ。
その声は地下駐車場に反響し、強制的に上条の鼓膜を震わせるものだった。
「『上条当麻』の姿で『御坂美琴』に銃を突きつけた時の、あの絶望の表情をさッ!!!」

356『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/05/16(日) 22:59:31 ID:pAaT4lXU
第一章 [そして悪役は動き出す Operation Pandora]


ブツン、と上条の中で何かが音を立てて”キレた”。
意識をせずに上条は立ち上がり、食いしばった歯からギリギリと音を鳴らして、
「お、…あ、……」
「……ッ!?待て、かみやん!!」
「…てめえェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!!」
土御門の静止の声を無視し、上条は知り合いの姿をした少女のもとへと疾走した。
さっきから大声を出している相手の場所などわざわざ確認するまでもない。
相手との距離は五十メートルもなかった。
「気が短すぎんのよ、あんたは。それだから簡単につけこまれる」
自動車の陰から躍り出た上条を見て、『御坂美琴』の姿をする少女は薄い笑みを浮かべる。
血で赤く染まる腕を上げ、右手を上条に向けた。その動作に合わせ、上条も右手を少女に向けた。
同時、ドッガァァァァァン!!という轟音が鳴り響く。
「なんでだよ!?どうして御坂なんだ!?あいつは……魔術とはなんの関係もねえじゃねえか!!」
目の前で起こる爆風を握りつぶすようにして消し去って、上条は突っ走った。
対し、少女は決して余裕を崩さず、右手を上条の真上にある天井に向けた。
「なんで?どうして?クク、ハハハハ!!そんなの決まってるじゃない。アンタのそばに『御坂美琴』が居たからよ!!」
上条の真上にあった天井が爆発した。衝撃に耐えきることのできないコンクリートは形を崩し、上条が走ってきた場所に落石のように激突する。
ちょうど、上条を追いかけた土御門の道を塞ぐように。
「く…ダメだかみやん!そいつと戦うべきは今じゃない!!」
土御門の声も、冷静を失っている上条には届かない。
拳を握りしめて、歯を食いしばりながら、上条は少女の懐へと跳びこんだ。
「そんなこと聞いちゃいねえんだよ!!俺が聞きたいのは”どうして御坂を殺す必要があったのか”ってことだ!!」
いつもと違う怒りに身を任せた、大きく振りかぶって、全体重を乗せた、全力の重い拳。
しかし、それは同時に直線的で避けやすい攻撃だった。
少女は少しだけ胸を反らすことで完全に拳を受け流し、ニヤリと笑う。
「邪魔だから♪」
ゴン!!と上条の背中に鈍器で殴られたような衝撃が走った。
それは少女に殴られたからと気付いた時には肺から空気を吐き出し、受け流された力も作用して上条は身体を地面に転がされていた。

357『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/05/16(日) 23:00:00 ID:pAaT4lXU
第一章 [そして悪役は動き出す Operation Pandora]


「避けないと…死ぬわよ」
底冷えするような言葉を受け、上条は後ろを見ずに右手だけを向けた。
バキン!!と何かが砕けるような音と共に、発生した爆炎は消失する。
「ふっざけんな!!人の命をなんだと思ってやがる!」
倒れたままの身体で、手を軸に足を振るようにして上条は少女の足を払った。
わっ、と小さな声をあげて少女は地面に尻もちをつく。
「一発で済むと思うなよ」
相手に態勢を立て直す暇など与えずに、上条は素早く立ち上がって拳を振りかぶる。
その拳をそのまま振りおろそうとして、
ジジジ…、と音がした。
「私も殺すの?とうま」
目の前にいる者の姿を見て、上条の拳が止まる。
「イ、ン…デック、ス……?」
時間にして、数秒の動揺だっただろう。
しかし、その数秒を少女は見逃さない。
ジジジ…、と音がした。
「当麻はホントに…優しいねッ!!」
再び、美琴の姿になった少女は足を最大まで折り曲げ、上条の顎目掛けて一気に伸ばす。
ゴン!!と少女のスラッと伸びる綺麗な足がアッパーカットぎみに上条の顎に直撃した。
「ゴ…、オ……」
脳を直接揺さぶられ、ふらふらと後ろに数歩下がる。
そんな上条に少女は容赦なく蹴りを突き刺した。
鳩尾に入る蹴りを受けて、上条は後ろに吹き飛ばされる。
「その優しいところに、私は惚れたんだから」
地面を数メートル転がって止まった上条を、少女の右手がとらえる。
上条の背中にサーチライトのような赤い光線が一筋突き刺さり、すぐにその色は緑へと変色した。
少女の魔術術式が発動する。

358『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/05/16(日) 23:00:33 ID:pAaT4lXU
第一章 [そして悪役は動き出す Operation Pandora]


ゴッガァァァァン!!という轟音が響いた。
しかし、最初は上条を狙ったものであっただろう魔術は上条に傷を負わせることなかった。
真横から。
唐突に跳び出してきた土御門が、少女の右腕を蹴りあげて、狙いを外したからだ。
「チィ…しつこい!!」
「その言葉、そっくりそのまま返させてもらう」
交差する二つの視線。
狙いを外された魔術が天井を破壊し、瓦礫が落下した。
少女は後ろに跳び、土御門と上条はそれとは反対に避ける。
地面へと激突した瓦礫が、音と共に砂煙を巻きあげた。
「離せ土御門!!」
そんな中、上条は土御門によって地面に叩き伏せられていた。
ジタバタと暴れる上条に土御門は静かに、はっきりと言う。
「さっきから何度も言っているぞ、かみやん。”冷静になれ”」
なにを言ってるんだコイツは、と上条は思った。
「御坂が殺されたってのに、冷静でなんかいられるかよッ!!」
「知ったことか…そんなことに気を取られていたら勝てるものにも勝てやしない」
ゾッとするような言葉。
まるで仮面でもつけているかのように表情を変えない土御門に上条は怒りを爆発させた。
「『そんなもの』だと?ナメた口利いてんじゃねえぞ!!お前にだって、大事なもんの一つや二つあるだろうが!!」
「大事なもの?そりゃたくさんあるさ。だけど、それの中の一つが殺されましたって言われて、そこまで我を忘れるのはおかしくないかにゃ〜?」
どこまでも、どこまでも冷徹な言葉。
上条はブルブルと身体を震わせて、歯を食いしばった。
一つだけ、思ってしまったことがある。
―――お前だって…舞夏を失ってしまえばその気持ちが…――
「そんな考えは…おかしいだろうがよぉ……」
そんなことを思ってしまったという罪悪感と、やはり土御門の言う事ことは認められないという思いから、上条は絞り出すように言葉を紡いだ。
そんな上条を見ても、土御門は眉ひとつ動かさずに口を開く。

359『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/05/16(日) 23:01:01 ID:pAaT4lXU
第一章 [そして悪役は動き出す Operation Pandora]


「いいや、おかしくない」
よく考えてみろかみやん、とひとり言のように呟いて、


「かみやんにとっての大事なものってのは、そんなに信用できないものなのか?」


トッ、と上条の頬に何か生温かいものがあたった感触がした。それは、上条の頬を伝って地面に落ちる。
落ちたものを見てみると、それは鉄臭い、粘着性のある赤黒い液体だった。
「……え?」
「相手の言葉を鵜呑(うの)みにするな。そいつがお前の大事なものを壊したって証拠がどこにある?」
ポツポツ、と赤黒い液体が地面に少しずつ落ちていく。
「諦めの悪いかみやんらしくもない。『もう死んでしまった』と諦めてるのはお前だ」
赤黒く、鉄臭く、そして生温かい液体の斑点が地面に増えていく。
「お、前……魔術を使ったのか?」
「あ?……ああ、ちょっと相手の動きを止めるために少しな。でも、今はそんなこと”どうでもいい”」
自分の身体など気にするな、と土御門は言外に語る。
拘束を解き、ゆっくりと立ち上がりながら土御門は真剣な眼差しで上条を見て、
「もう一度聞くぞ?”お前の大事なものってのは、そんなに信用できないものなのか?”」
顔から、腕から、身体から血を流しながら、そう言った。
上条は気付く。
なぜ、土御門が魔術を使ったのかを。
思えば、どうしてこんなスキだらけの自分達を敵は攻撃してこなかったのかと。
上条は気付く。
美琴のことを信用せずに、勝手に相手の言葉に惑わされて、一人で暴走していたのは自分ではないかと。
思えば、先ほどから土御門が上条に言っていたのはひとえに『冷静になれ』という言葉だったではないかと。
気付いて、思う。
「………わりぃ…土御門」
「今度ジュースでもおごってくれたら許してやるにゃー」
ああ、おごらせてもらうぞ、と言いながら上条は腰を上げた。
その目には静かな闘志が浮かんでいる。

360『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/05/16(日) 23:01:40 ID:pAaT4lXU
第一章 [そして悪役は動き出す Operation Pandora]


と、一つの足音が聞こえた。
「私をこんな長時間足止めするなんて凄いわね。さすがは、イギリス清教のスパイさんだ」
カツコツ、と革靴が音を鳴らす。
「でも、いかせんせん術式の発動時間が短いかな。あと少し長ければ、私にダメージの一つくらいは負わせられたかもしれないのに」
ボフッ、と砂煙から抜けだし、『御坂美琴』の姿をした少女が視界に入った。
常盤台中学の制服には傷はなく、少しのほこりがついている程度だった。
それを見て、土御門は薄く笑う。
「ローマ正教の『神の右席』候補者様にお褒めの言葉をいただけるとはうれしいぜい」
軽い口調で言った言葉だが、上条にとってその内容は大きな意味を持っていた。
「………また『神の右席』か…」
その単語は、最近聞いたばかりだ。
九月三十日に前方のヴェントが学園都市を襲撃したときに、自らを『神の右席』と名乗ったのはまだ記憶に新しい。
「身体は大丈夫なのか、土御門?」
「大丈夫だにゃー。術式だって極力魔力を使わないように調節したし、動けないこともないぜい」
上条に目を向けるだけの土御門は全身のいたるところから血を流している。
満身創痍の身体でそんなことを言われても説得力がないのだが、自分で言うのだから大丈夫なのだろう、と上条は納得した。
「これからどうする?」
「俺の指示に従ってもらうぜい。さっき確認した出口の場所は覚えてるな?」
「……覚えてはいるけど………戦わないのか?あいつを倒しちまえばもう問題は解決したようなもんじゃねえかよ」
「それじゃダメなんだよかみやん。敵はやつだけじゃないんだ」
はあ?と上条は少女から目を離し、土御門を見た。
その顔は苦虫を噛み潰したかのように、忌々しげに歪められていた。
「詳しい事情は後で話すが、平たく言って今回の敵は『組織』だ。魔術において絶対の効果を持つ『幻想殺し(イマジンブレイカ―)』がこんなところで傷を負って相手の計画を止めら
れないことが一番マズイ」
「計画……どういうことだ?やつは俺を殺しに来たんじゃねえのかよ?」
「アンタは私たちの目的の一つよ。最終目標はアンタじゃない」
身体に異常がないのかチェックでもしているのか、腕を回しながら少女が二人の会話に割り込んだ。

361『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/05/16(日) 23:02:15 ID:pAaT4lXU
第一章 [そして悪役は動き出す Operation Pandora]


上条は少女を睨みながら、
「最終目標?テメエら一体なにを考えてやがるんだ!?」
「教えると思ってんの?まあ、しいて言うなら”アンタにとって最悪なこと”とだけは言えるわ」
「最悪な……事?」
「よく考えてみなさい。アンタにとって大事なものってのは『御坂美琴』だけ?」
からかうように答えをじらす少女に苛立ちを覚えながら、上条は首を傾げる。
自分にとって、大事なものは多すぎる。
「わからないって顔ね……じゃあ、ヒント。私たち魔術師にとって、大きな意味を持ち、同時に上条当麻が所持しているものとはなんでしょーか?」
左右の手を広げて、ケタケタと楽しそうに笑う少女。
魔術師にとって大きな意味を持ち、同時に上条の近くにいるもの。
その少女の言葉に上条は一つの答えを導き出す。
「インデックスか!?」
「正解!!気付かなかったらどうしようかと思ったわよ」
インデックス。
一〇万三○○○冊の魔導書を頭に記憶するイギリス清教のシスター。
現在、上条の家に居候している一人の女の子だ。
「まあ、それも手段にすぎないんだけど……今頃はもう回収してるかな?確か、担当はミーナだったと思うけど、アイツうまくやってるかしら」
「回収だ!?ふざけたこと言ってんじゃねえよ!!」
「誰もふざけてないっての!!」
叫びを叫びで返し、少女が右手を上条に向けた。
赤い光が上条の胸に突き刺さるように直進し、緑へと変色していく。
「ッ!?」
術式の発動条件が揃う。
上条はその光を右手で遮ろうとして、
「いちいち受けるな!!」
ガクン!と土御門に右手を引っ張られて、地面にたたき伏せられた。
上条から五〇メートルほど後ろにある壁が爆発する。
その爆発音に混じって、上条はピン…、という小さな音を聞いた。
まるで、細い何かを引き抜いたような高い音。
その発生源である土御門、正確には彼の右手に目を向けると、デコボコと凹凸(おうとつ)のある小さなボールのようなものがあった。
「それって…手榴弾じゃ…」
「耳を塞いで目をつむれ」
返事を聞かずに、土御門はそれを”天井”に向かって投げつけた。
上条と少女。二人の表情が驚愕に染まる。

362『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/05/16(日) 23:02:42 ID:pAaT4lXU
第一章 [そして悪役は動き出す Operation Pandora]


直後。
キィィィィィン!!という甲高い音が響いた。
それは天井のコンクリートが爆発した音ではない。
土御門が投げた小さなボールが内側から破裂し、散乱した破片の一つ一つが眩しい光を発しながら出した音だ。
「くぁ……眩しぃ」
思わず目をつむる上条の右手を土御門が引いた。
目を開けることのできない上条は、その引っ張る力に抵抗せずに身体を動かす。
「わけがわからねえ!!あいつの能力ってなんなんだ土御門!?姿を変えたり、爆発したり……」
「さっきから何度も言ってるように、やつの魔術はあの趣味の悪い杖で発動して――――」
そこで、土御門を言葉を切った。
何かを考えるための数秒の沈黙。
大量の光に網膜を刺激された上条には見えないが、土御門は何かに気づいたように目を見開いた。


「かみやん…お前、”見えてないのか?”」


呆然と言う、呟きのような言葉。
その言葉に上条は首を傾げた。
「は?それってどういう―――」
その時だった。
ゴガン!!と後ろにある二人から十メートルほど離れた床が唐突に爆発した。
皮膚を焼く爆炎と爆風は届かないものの、衝撃が二人の少年に襲いかかる。
「ゴ、ホォ…」
呼吸が止まり、受け身を取るとこも出来ずに上条は地面に叩きつけられるように転がった。
横に居た土御門も衝撃を受け、どこかに飛ばされたようだ。
五メートルほど転がって動きを止めた上条は、頭の中であることを考えていた。
(……何かが…、おかしい)
まずは相手の能力だ。土御門は『杖』をもっている、と言っていたが上条の目にそんなものは映っていない。
何度も見た少女の手には杖はおろか、何もなかったはずだ。
そして、相手の変身能力。
『御坂美琴』に化けていたときに何度も右手に触れたはずなのに、『幻想殺し(イマジンブレイカ―)』が反応しない。
これらが示すことはなんだろうか?

363『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/05/16(日) 23:03:10 ID:pAaT4lXU
第一章 [そして悪役は動き出す Operation Pandora]


「捕まえた」
爆発の衝撃で離れてしまった土御門を探そうと身体を持ち上げる前に、上条の腹を誰かが踏みつけた。
ギリギリ、と押さえつけるような足の動きに上条は強制的に腹から息を吐き出さされる。
「まったく、いつまで逃げ回ってんだか……諦めて捕まっちゃえば痛い思いもせずに死ねたのにね」
聞き覚えのある少女の言葉に後押しされるように、上条は目を開いた。
試しに右手で足に触れてみるがある程度回復した視力は、変わらず『御坂美琴』の姿を映し出す。
「だいたい、アンタも御坂美琴も不運よね。右手にそんな変な能力もっているってのと、ソイツの近くにいるってだけで殺されるんだから」
上から下を見下ろす少女。
完全に人を見下したその言い方。
どれも、自分の知る笑顔の明るい少女のものではない、別のものだ。
(まさか…、)
凶悪な笑顔。
嗜虐的な表情。
何かが歪んでいる、『御坂美琴』の姿。
(まさか……?)
何度でも変わる姿と声。
土御門のに見えて、上条に見えない杖。
「もういいわ。死になさい」
血のしたたる腕を上条に向ける。
しかし、上条はそんなものを見てはいなかった。
握りしめている自分の右手を開く。
(まさか………ッ!?)
そして、上条は右手を自分の頭に押し付る。


バキィン!!とガラスが割れたような音が響いた。


同時、上条の見る『もの』が変わった。
視界の持つ意味が大きく変わった。
「あ?何、今の音?もしかして、”解けちゃった?”」
まず、最初に目に入ったのは杖。
柄は鉄のようなものが螺旋を画くように絡まりあって出来ており、その先端に赤い紅玉が突き出ていた。
軽く装飾を施された柄が奇妙な光を発している。
「おいおいマジかよ勘弁してくれよ……俺はこれ以上面倒なことは嫌だぞ」
次に目に入ったのは眉をひそめる一人の青年。
ステイルと似たような黒い神父服には魔方陣のような幾何学模様が描かれており、肩まであるウェーブをかけたような赤い髪。
そして、明らかに日本人ではない、青い瞳をしていた。
「ローマ正教『神の右席』候補者、クエイリス=アーフェルンクスだ。クリスとでも呼んでくれ」
面倒くさそうに呟いて、再度鉄の杖を上条に突きつけた。
「短い付き合いだしな。よろしく頼むよ」

364『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/05/16(日) 23:03:44 ID:pAaT4lXU
第一章 [そして悪役は動き出す Operation Pandora]


<11:40 AM>


状況が変わった。
上条の見た偽物(げんそう)は消え、見定めるべき現実が目の前にある。
御坂は生きている。
上条当麻は改めて強くそう思う事が出来た。
今、相手に杖を突きつけられている状態でも、上条の顔には笑みがこぼれていた。
「死ね」
一切の無駄がない簡潔な言葉。
己の行動を表すその言葉に従い、クエイリス=アーフェルンクスは術式を発動した。
杖の先の紅玉から、一筋の赤い光が飛び出し、上条の胸へと突き刺さる。
そして――――


バキン!!という音と共に、上条の右手に軽く触れられた鉄の杖は形状を崩壊させた。


「なッ……!?」
「驚くようなことか?」
バッ!とクリスは上条の元から離れた。
魔術的な補助は上条にくっ付いた際に壊れてしまったのか、その動きはいつもの敵に比べて妙に遅いように見える。
ゆっくりと上条が起き上がると、クリスは忌々しそうに眉を潜める。
「クソッ……、忘れてたぞ『幻想殺し(イマジンブレイカー)』……目にして初めて分かったぜ…その能力は、極めて異常だ」
鉄の杖を失った右手に空虚感を感じ、開閉させる。
その動作を見据えながら、上条は静かに口を開いた。
「テメェに一つだけ聞きたいことがある」
あァ?と訝しげにこちらを見る赤髪の青年。
青年の目に映るのは拳を握りしめる上条の姿だが、少年の視線はクリスではなくその後ろへと注がれていた。
「まだ、コイツをぶん殴ったらいけないのか?」
「ダメだ。何度も言うようにここは逃げろ」
バキョン!!と妙な音が地下駐車場に響くと同時、クリスの身体が地面に叩きつけられた。
唐突に重力が増したような現象にクリスの顔が歪む。
「なんだ、…こりゃぁ…」
腕を動かそうとするがびくともしない。
身体の自由が失われている。

365『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/05/16(日) 23:04:10 ID:pAaT4lXU
第一章 [そして悪役は動き出す Operation Pandora]


「行くぞ、かみやん」
クリスの横を通って、土御門元春が上条の元へと歩を進める。
上条はクリスを一瞥し、土御門を見てから目を細めた。
「……今がチャンスじゃないのか?」
「ダメだ。この術式は相手の動きを完全に止めることは出来るが、こちらからの攻撃も届かないようになってる」
ゴフッ…、と口から血を吐きながら土御門は地下駐車場の出口に向けて、足を向けた。
「それに、この程度の術式で『神の右席』を押さえられるとは思えない」
上条にだけ聞こえるように耳元で呟く。
その言葉に上条も頷き、出口へと足を向けた。



この場から走り去る上条達を見て、クリスは笑った。
「随分と、楽しませてくれる…」
地面へと叩きつけられながら、青年は自分の爪を地面へと押しつけた。
ガリガリと地面を爪で掻きながら、走り去る二人を視界から逃さない。
「―――炎。それは人間への愛の証である神からの贈り物なり」
静かに、はっきりと歌うようにクリスは口を開く。
「―――それは罪人を処罰するための処刑道具なり」
地面のコンクリートが、小さく波打った。
コンクリートが液体になったかのような動作。
時間が経つにつれて波は大きくなっていく。
「―――『神の炎(ウリエル)』に授けられし知恵の光。人間の身にて人間ではないわが手に断罪の炎を」
ゴポン、と地面が盛り上がった。
盛り上がった地面は鉄のような光沢を放ちながらいくつもの太い線となり、螺旋を描くようにお互いを絡みつかせていく。
「―――罪を浄化し、罪を焼く処刑道具。その権限を我が血肉を糧に明け渡せッ―――――!!!!」



ゴッガァァァァァァァン!!!!と轟音が上条の耳に届いた。
後ろを見ると、クエイリス=アーフェルンクスが居た場所が赤く染まり、炎上していた。
「速すぎるッ……」
土御門は後ろを見ずに状況を理解していた。
クリスを拘束する術式が破壊されたのだ。

366『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/05/16(日) 23:04:57 ID:pAaT4lXU
第一章 [そして悪役は動き出す Operation Pandora]


「かみやん、よく聞け。これからかみやんには俺の指示に従って動いてもらう」
いいな?と、焦りと疲れからか少し早口で土御門は言う。
上条はそれに黙って頷いた。
「まず最初に『超電磁砲(レールガン)』を探せ」
「御坂を?」
「ああ。インデックスのことなら大丈夫だ。アイツにはステイルとねーちんがついてる」
「アイツら、ここに来てるのか!?」
聖人である神裂と、ルーン使いのステイルならばインデックスのことを任せることが出来るだろう。
あの二人ならば、よほどの相手ではない限り負けることはない。
「お前は知らないだろうが、定期的にあの二人はインデックスを監視しに来てるからな」
喋りながら、土御門はポケットの中を探り始めた。
ゴソゴソと手を動かし、一つの携帯を取り出す。
「これで二人と連絡を取れる。緊急の時にだけ連絡を取れ」
「ちょっと待て。インデックスについてはわかったが、御坂はどこに居るんだ?普通に常盤台の寮にいるわけじゃないんだろ?」
「御坂美琴は、ちょうど一週間前から行方不明だ」
なっ、と上条は絶句した。
「まさか、本当に御坂はアイツらに…」
「いや、そういうわけでもないようだぜい。それの証拠に今朝になって、目撃証言がでてるにゃー」
「目撃証言?」
「そう、目撃証言。第十学区の路地裏で想像を絶するほどの電流を見たっていうな」
「それが、御坂か…」
『超電磁砲(レールガン)』御坂美琴を判断するのに電流と言うのはいささか失礼な気がするが、その通りなので仕方ない。
上条は土御門から携帯電話を受け取り、前を見ると、外と中をつなぐ大きな口が見えた。
「あれか、かみやん!?」
「あれで間違いない。出口はあれ一つだけだ!」
出口を見つけて上条の足に一層力が入る。
と、一気に走り抜けようとする上条は、後ろで土御門が足を止める音を聞いた。
思わず足を止め、後ろを見ると土御門が地面に手をつけて何かを書いていた。
「先に行け、かみやん。俺はトラップを仕掛けてから追いかけるから」
「トラップ?ふざけんな!お前これ以上魔術使ったら身体が…」
「大丈夫。魔術じゃない。これは科学の最先端地雷だ」
ひらひら、と上条に背を向けながら手を上にあげて、ペンのような細長い筒のようなものを振る。
「少しでも、足止めになればな……おっと、かみやん。もうちょっと後ろに下がっててくれ。これ以上近寄ると誤爆しちまうぜい」
「マジ!?」
まさかの自爆でお陀仏なんて御免こうむりたい上条はあたふたと後ろ二歩に下がる。
と、土御門は口元に笑みを浮かべながら、からかうように上条を見る。
「あと、もうちょっとだ。あと五歩」
「お、おう…、」
地雷こえー、とか思いながらも上条は指示に従い、後ろへと下がっていく。
一歩、二歩、三歩、四歩と急いで下がる。
そして、五歩目を踏み出した時だった。


「ホントにゴメンだにゃーかみやん」


土御門が立ち上がり、壁にあるスイッチを押した。
瞬間。
がらがら!!と音を立てて、上条と土御門の間に防火シャッターが勢いよく降りてきた。

367『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/05/16(日) 23:05:34 ID:pAaT4lXU
第一章 [そして悪役は動き出す Operation Pandora]
「ッ!?土御門!!」
思わず駆けるが間に合わない。ガコン、と防火シャッターは地下駐車場の唯一の出口を閉め、外と中からの繋がりを絶った。
そのシャッターを叩き、上条は向こうにいるであろう金髪の少年に叫ぶ。
「お前なにやってんだよ!!自分が何やってるのかわかって―――」
「当たり前だぜい。この土御門さんが自分の行動を誤ることなんてありえないにゃー」
この状況で叩く軽口に上条の怒りは爆発する。
「ふざけんな!!お前一人が犠牲になっても俺は嬉しくともなんともねえぞ!!」
「犠牲って…かみやんは失礼だにゃ〜まるで俺が死ぬことが確定してるようだぜい」
壁の向こうでクスクスと笑う土御門の声は、彼が死地に赴くことを忘れさせるほどに穏やかなものだった。
「俺を信じろ………とは言えないぜい。なんせオレは天邪鬼(ウソつき)だからな」
でも、と土御門は言葉を続ける。


「”約束は守ってもらう”。かみやん、テメェにはジュース一本おごってもらうことになってるからな。こんなところじゃー死ねんぜよ」


待てよ!!とツンツン頭の少年の悲痛な叫びが轟く。
その声に後押しされるようにウソつきの少年は、戦場へと足を向けた。
「心配すんな。かみやんに大事なものがあるように俺にも大事なものはある。ソイツを護ることだって俺の仕事なんだぜい」
だからこそ、ここで死ぬわけにはいかない。
生きることをここに宣言し、土御門はシャッターに背を向けてからこう言った。
「これだけ土御門さんが身体張ってやってんだから、テメェの大事なものを護りきれなかったら承知しねえぜ」
ガン!!とシャッターを叩く音が響く。
あのツンツン頭の少年が諦めていないのだろう。
「つ、ち……みか、ど…」
ツンツン頭の少年は心の底から自分を心配しているのだろう。
誰かのために誰かが犠牲になることを、強く嫌う少年であるからこそ、その行動は容易に想像することが出来ていた。
そんな少年だからこそ、自分はこんなことをしているのだから。
「土御門ォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
そうして、自分勝手(ウソつき)なバカ野郎は戦いの場へと足を踏み入れる。
何のためにだなんて、言う必要もなかった。

368『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/05/16(日) 23:06:00 ID:pAaT4lXU
第一章 [そして悪役は動き出す Operation Pandora]


<11:45 AM>

暗かったはずの地下駐車場は、炎に照らされ赤く染まっていた。
ぼうぼう、と燃えるものはもはや原形を留めておらず、一つの塊となりその場に転がっている。
そこは既に、一種の異界と化していた。
「なぁ…アンタ一人か?『幻想殺し(イマジンブレイカ―)』はどうした?」
手に鉄の杖を持ち、面倒そうに聞く一人の青年。
「先に行ったよ。あいつにはやることがあるらしい」
対するは、全身から血を流しながら、不敵な笑みを浮かべる一人の少年
二人の間の距離は五十メートルほど。青年の魔術を使えば無視できるほどの距離だが、この金髪の少年に曖昧な攻撃をすることは何かためらわせた。
「じゃあ、アンタは身代りってわけか…」
「そう思ってくれてもかまわない。だが、ただの時間稼ぎで終わるつもりはもうとうないぞ?」
満身創痍の身体のはずなのに、全身から血を流し今にも死んでしまいそうなはずなのに、少年は青年の前に立つ。
ふらふらと揺れる身体。しかし、少年の心の芯は揺らがず、決して曲がらない。
「一人で俺をやろうってか……アンタ凄いな。まるでどっかの主人公(ヒーロー)だ」
「………その言葉は俺には荷が重過ぎる」
違和感を覚える身体の四肢に力を入れながら、少年は決意の光をサングラスの奥の瞳に宿す。
「アンタ…名は?」
ガクガク震える足を無理やり押さえつけ、少年はこう答えた。
「『背中を刺す刃(Fallere825)』だ」
「そうか……」
そう…答えちまうのか、と青年は顔を俯かせる。
「なら俺も答えねえとな……」
青年の瞳にも強い光が宿る。
真剣身を帯びた彼の表情は、どこか悲しそうに見えた。
「俺の名は『愛しい人の涙のために(Affectus915)』だ…………随分とクサイが、これが俺の信念なんでね」
少年は何も言わずに拳を握りしめる。
それが、相手への礼儀とでも言うように彼は強く拳を握りしめた。
対する青年もこれ以上は口を開かない。
青年の手にある鉄の杖をだらん、と垂らしながらも、いつでも振れるように筋肉を集中させる。
数秒の沈黙。
直後。
バァァァァァン!!と地下駐車場のどこかの自動車が爆発した。


それを合図に、青年と少年は激突した。

369from-ING:2010/05/16(日) 23:10:28 ID:pAaT4lXU
『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』
投下終了です。

これにて、第一章は終了です

ううっぅ……文才が欲しい…

次は
第二章[走る主人公と暗躍する主人公 Hero_And_Hero]
で投稿します


初めて書くSSなので、執筆速度がかなり遅いですが待ってていただけると嬉しいです!!

では、感想・批判よろしくお願いします!!!!

370■■■■:2010/05/16(日) 23:40:47 ID:nEeLeOE2
GJ!です
細かいところだけど
○カミやん ×かみやん
なんだにゃー、気を付けるんだぜい

371■■■■:2010/05/17(月) 15:25:46 ID:d7wGCXWw
>>338
GJ!
各キャラの心理描写とその食い違いが、原作のそれと近くて素晴らしい。
原作を相当読み返してないと、こうはいかないでしょう。原作への愛を感じますね。
第二位の彼もとうとう参戦ですか・・・続きを期待する、それしか道はねぇな。

>>369
GJ!
いや〜、執筆お疲れ様です。ガッツリめの文章量でお腹いっぱいですよ。
これで初めての投稿とは恐ろしい程の文章力&展開力ですね。今後も期待!
内容で気になった事はいくつかあったりするんですが、今後の展開の伏線だったら不味いのでやめておきます。

お二人とも、執筆頑張ってください。次の投稿お待ちしてます。

372かぺら:2010/05/17(月) 23:16:17 ID:H4w5GDso
こんばんは。
待ってないかもしれませんが、投下しに来ました。
『Liberta』の第4話です。前回3話は>>264-274です。

23:20より8レス借ります。

373能力1:2010/05/17(月) 23:20:53 ID:H4w5GDso
 とある河川敷にて、美琴は雨宮と対峙している。
 学園都市の第3位であるレベル5である『電撃使い』と、レベル4の『風力使い』。
 同じ土俵でないので一概に比較はできないものの、単純な破壊力ならば美琴のそれの方が圧倒的に上である。
「アンタ、佐天さんと何してたの?」
「……あの、御坂さん?」
 只ならぬ美琴の雰囲気に、おそるおそる佐天が声をかける。
 佐天さんは、ちょっと静かにしてて」
「えっ…………」
 美琴は自分の後ろにいる佐天の顔を見ず、真っ直ぐに雨宮を睨んでいる。
 睨まれた雨宮は薄く笑っているように見えた。
「答えなさい」
「君がどういう答えを望んでるのかは分からないけど……いかがわしい事はしてないよ?」
「ふざけんなぁっ!!」
 口元だけ緩めて笑う雨宮に、美琴はもう一度電撃を飛ばす。
「いやいやぁ、ふざけてはないんだけどね」
 雨宮はもう一度風を起こし、電撃を逸らす。
「俺が『幻想御手』の犯人だって疑ってるみたいだけど……証拠はあるのかい?」
「証拠はないわ。けど、疑える余地はあるわよね」
 美琴は雨宮の動きの全てを捕らえるかのように、精神を研ぎ澄ませている。
「………で、話を聞かせろ、と?」
「そういうことよ。さっき自分で言ってたでしょ。『俺の責任かもしれない』って」
 全部吐いてもらうわ、と美琴は軽く挙げた右手に電撃を溜めながら言い放つ。
 さもなくば射つ、という牽制の様だ。
「言ったよ、確かに言ったさ。でも、俺の問題で君に答える事じゃない。俺は犯人じゃない、とだけ言っておくよ」
「……………まるで真相を知ってるような言い方ね?」
 美琴はハッタリは見逃さないとでも言うように、鼻で笑う。
「どうだろうね」
「……それを言えって言ってんのが分かんないのかしら?」
 苛立つ声を抑えきれず、バリバリと帯電していた電撃が辺りに散る。
「だから『俺の問題だ』って言ってるんだけど」
 参ったな、と雨宮は頭を掻く。どう扱えば良いのか迷っている様な表情をしている。
 ふぅ、と一息をつき、牽制がてら、雨宮は少しだけ殺気を込めた目で睨み返す。、
「なんでも首突っ込んでくんじゃねぇよ」
「っ!!や、やっと真剣になった?」
 突然放たれたプレッシャーに押されつつも、美琴は雨宮を皮肉る。
「世の中には知らなくてもいい事はあるんだけどな」
「アンタ、教える気がないってんなら……」
 美琴は手で佐天を制し、下がらせる。
「無理矢理にでも吐かせてやる」
 美琴が地面を蹴った。

374能力2:2010/05/17(月) 23:21:11 ID:H4w5GDso
 美琴はおもいきり踏み込み、雨宮に向かって駆ける。
「まぁずは、こいつでも喰らえっ!」
 美琴は右手を地面に向けると、黒い砂鉄剣を生み出す。
「でえぇぇぇぇぇええええっ!」
 そのまま雨宮の懐に飛び込み切りかかる。
「くっ!?」
 雨宮はバックステップで後ろに飛び、自らの起こした突風に乗って距離を取る。
「まだまだぁぁっ!こんな使い方もあんのよぉっ!」
 美琴は雨宮との距離を確認し、砂鉄剣を伸ばす。
 鞭のような形状になったそれは、蛇のように『風力使い』の元へと進む。
「うわぁっ!?」
 雨宮は地面を転がり、ギリギリの所で砂鉄剣をかわす。
 当たらなかった砂鉄剣の切っ先が地面に突き刺さる。
「あぶねぇモン使うね。人間相手だよ?」
「腕一本飛んだくらいなら治せる医者もいるわ。死なない程度にはしてあげる」
 美琴は砂鉄剣を縮め、元の長さに戻す。地面には砂鉄剣によって抉られた溝が口を広げている。
「腕一本ねぇ……」
 雨宮は苦笑いしながらあんぐりと口を開けた溝を見る。
「喰らったら消し飛ぶんじゃねぇの?」
「それもアンタの行い次第よっ!」
 美琴は再び雨宮の元まで走って切りつける。雨宮の着地の瞬間を狙った攻撃は回避できるものではなかった。
「うおぉぉぉぉおぉっ!!」
 雨宮は右手の掌を砂鉄剣の持ち手近くに叩きつける。
ゴォッ!!と旋風が起こり、砂鉄剣が爆散した。
「なっ!?」
 美琴は手元に残った砂鉄を見る。『幻想殺し』での消去ではなく、力づくで粉砕された事に驚愕する。
「まだ、やる?」
 雨宮は美琴の後ろ、2mの位置に立っていた。
(いつの、間に?)
 動揺していたとはいえ、さっきまで目の前にいた相手だ。それが今は自分の後ろにいる。
「なんのトリックを使ったの?」
「トリックもなにも、自分の能力だけしか使ってないけどなぁ」
(馬鹿に、してるってぇのっ)
 美琴は下唇を噛む。全力には程遠い力しか出していないとは言え、まだ一撃も入れれていない。
「私にもプライドってものがあるのよ……」
 美琴はポケットに手を入れ、小さく呟く。
「アンタが私を馬鹿にするってんなら」
 ポケットからゲーセンのコインを取り出し、雨宮に振り向く。
「こっちも本気でやってやるわよ!」
 右手の中指で弾かれたコインがオレンジ色の火に変わった。

375能力3:2010/05/17(月) 23:21:27 ID:H4w5GDso
 『超電磁砲』
 美琴の二つ名にもなっているその技は凶悪とも言える破壊力を誇る。
 音速の3倍で繰り出されるそれは、地面に爪痕を残して消え去った。
 焦げた地面から少し離れた位置に、雨宮は転がっていた。
 仰向けに大の字になっており、肩で息をしている。
「当てるつもりだったんだけど?」
 美琴はつまらなさそうにそういうと、もう一枚コインを取り出し、手で弄ぶ。
「間一髪、だったよ」
 雨宮は仰向けのまま溜息をついた。
 美琴の手から『超電磁砲』が放たれるより一歩早く、雨宮の身体はその射線軸から飛び出していた。
 ただの勘でしかない行動が、たまたま成功したに過ぎない。
 次を放たれれば、ましてや連射されれば、雨宮に美琴の攻撃を受ける術はない。
 超電磁砲の弾丸と化したコインは、砂鉄剣のように爆散させるほどのんびりはしてくれない。
「もう一発、射たなきゃ分かんないかしら?」
「何発射たれても俺は喋んないよ」
 雨宮はその場に立ちあがり、美琴の手元を見る。
 避けれないとは分かっているが、ハナから諦めるのはちょっと惜しい。
 美琴の指からコインが離れ、オレンジの閃光が雨宮に向けて飛ぶ。
 美琴と雨宮とのちょうど中間あたりで、不意にコインが止まった。
 ギギィィィイィンッ!!という何かに遮られたような音がし、超電磁砲が消え去った。
「んなっ!?」
「な、なんなのよ!?」
 2人が驚く。美琴が止めたわけでも、雨宮が防いだわけでもない。
「この勝負、俺が預かるにゃー」
 河川敷にそった道の上に、土御門元春が立っていた。
「土御門か………」
 雨宮はふぅと息を吐き、その場にへたりこんだ。
「アンタは………」
(アイツの病室にいた……)
 ついさっき上条の病室にいたクラスメイトと思しき人間。魔術とか良く分からない事を言っていた人間だった。
「えっと、なんつーかな。風紀委員の俺がこの場を納める。とりあえず、そこの中学生2人は帰るんだぜい」
 土御門は腕章を見せる。少しボロボロの腕章であったが、風紀委員のそれだった。
「で、でもっ」
「うるせぇよ」
 食い下がる美琴を土御門は睨みつける。普段のお茶らけた顔ではない、殺気さえ混ざっていそうな顔だった。
「帰れ。分かったな?」
「…………」
「み、御坂さん、今日は、帰りましょう?」
 下唇を噛んで土御門を睨む美琴の腕を掴み、佐天は彼女を引きずるように帰路に就いた。
 土御門はその背中が見えなくなるまでじっとその方向を見ていた。

376能力4:2010/05/17(月) 23:21:39 ID:H4w5GDso

「やぁ、助かったよ」
 雨宮は土御門の背中に語りかけた。
「別に、助けた覚えはない」
「そうかい。で、いつのまに風紀委員に?」
 雨宮は腰を上げると、ぐしゃぐしゃになった折り紙をを拾い上げる。
「これは借りもんだ。一方通行と第二位がやりあった現場近くで拾ったもんだ」
「おいおい。それはマズくねぇか?」
 土御門は腕章を外し、ポケットにしまう。
「そんな世間話をしに来たわけじゃないくらい、もう分かってるだろう、雨宮?」
 土御門はゆっくりと語り始める。その口からは血が流れていた。
「そうだな……俺が、魔術師だってコトかな?」
 雨宮はカラカラと笑う。悪戯がばれた子供の様な顔だった。
「所属や流派……学園都市に来た目的。聞きたい事は山のようにある……っぐはぁ」
 土御門がゴホゴホと咳き込む度に、その口から血が飛んだ。
「とりあえず、回復、しておこうか」
 雨宮はポケットからカードを取り出し、土御門の腹部に投げつけた。
 白いカードは傷跡に張り付くと、その表面に文字の様なものを浮かびあがらせ、消え去った。
「ルーンか……回復にも使えるんだな」
「俺が作った文字だけどね」
 土御門は塞がった傷口をつつく。どうやら完治したようだ。
「で、いつ気付いたの?」
 雨宮は土御門の目を見て尋ねる。互いに腹の内を探り合っている様な眼で睨みあう。
「確信したのはついさっきだな。超電磁砲との戦闘を見てて、所々に魔術の匂いを感じた」
「なるほど」
「それに………お前、禁書目録の事をインデックスと呼んだな?アレはお前に名乗ってはいないはずだ」
「ふぅん。聞いてたんだ?近くに居たようには感じなかったけどな」
 雨宮は試すような目で土御門を見る。
「『必要悪の教会』からの情報だ。アレが誰とどこで話しているかくらいは把握してる」
「ふぅん。盗聴とは…良い趣味とは言えないな」
 雨宮はやれやれと肩をすくめてみせるが、土御門は油断なく身構えている。
「俺は君と争うつもりはないんだけど………」
「目的を聞かせてもらおうか」
 土御門はポケットから赤い折り鶴を取り出す。いつでも、やれるぞ、という意思を示すかのように。
「……面倒だな」
「なんだと?」
「俺に聞くよりもアイツに聞いた方がいいんじゃないか?」
 雨宮は第7学区にあるとあるビルを指差す。『窓のないビル』と言われる、正体不明の建造物。
「あの中で浮いてる胡散臭いのに聞いてくれ。知り合いだろう?」
「っ!?……………アレイスターと、何を企んでいる?」
「さぁ?俺は『自由』求めただけだ」
 ゴウッ!!という音と共に突風が吹き荒れる。
 砂嵐となり土御門の視界を覆った風が止んだとき、河川敷に人影はなかった。

377能力5:2010/05/17(月) 23:21:54 ID:H4w5GDso
「み、御坂さん……?」
「…………」
 河川敷からの帰り道、重苦しい空気を破るかのように、佐天が口を開く。
 美琴からの返答はなく、その顔は普段見る彼女のそれとは違っていた。
(なんか……御坂さんが……怖い)
 爆発寸前のダイナマイトの様な、危機感を募らせた顔だった。
 佐天はどうしていいかも分からず、あたふたとすることしか出来ない。
「ねぇ、佐天さん?」
「えっ、は、はい!?」
 美琴は表情を崩さずに佐天を見る。その目から逃げるように、佐天は目線を彷徨わせた。
「佐天さん?」
「あ、すいません。なんていうか、御坂さんが……怖くて……」
 佐天は美琴から目線を逸らせたまま、
「へ?」
「いや、そんな怖い顔した御坂さん、初めて見ました」
 佐天は恐る恐るではあるが、本音を口にした。
「……な、なんか、ごめん」
「いえいえ、良いんです。状況は理解しきれてませんけど……御坂さんは、私のために、怒ってくれたんですよね」
「まぁ…………そう、ね」
 美琴は歯切れ悪そうに顔を背けた。確かに佐天の為ではあるかもしれない。
「だけど、私はそんなに綺麗な人間じゃないわ。もっと他にやり方があったかもしれないもの」
「そう、ですね………何が起こってるのか、何でこんな事になってるのか」
 佐天は寂しそうに目を伏せる。先程の戦いを見て思い知った。
(今の私じゃ、やっぱり力になれない)
 少しだけ使えるようになった小さな能力じゃ、話にもならない。
 佐天は己の非力さを恨み、不条理な世の中を恨む。
「あの人が………犯人なんですか?」
「わからないけど……」
 美琴は沈みかけた夕日を見る。それはいつもと変わらずに街をオレンジ色に染めていた。
(私は、否定して欲しかったのかもしれない)
 何も変わらない学園都市の町並みの中に紛れた闇は、まだ尾を出しそうにない。

378能力6:2010/05/17(月) 23:22:08 ID:H4w5GDso
 木で作られた古ぼけた机の上にある携帯が鳴動する。
 その部屋の主たる男は面倒そうに溜息をついた。
『あぁ、出てくれないかと思いましたよ』
「なにか、用であるか?」
『久しぶりだというのに、冷たいですねぇ』
 電話の声は批難するどころか楽しげだった。
「『神の右席』相手に気易く電話してくるのはお前くらいであろう。用があるなら手短にしてくれ」
『それは失礼。学園都市で集めた情報を流そうと思っていただけなのですが』
 もっとも、地図くらいしか手に入りませんでしたけどね、と笑う。
「ふん。そんなものが無くとも問題はないのだがな」
『まぁ、そう言わずに。「後方のアックア」ともあろうものが迷子になるわけにはいかないでしょう?』
 電話の声はそう言うと可笑しそうに笑った。
「私の目的は観光などではない」
『えぇ、分かってますよ。ワタシだってそこまで馬鹿じゃないのです』
 とりあえず、データ送りますよ。電話の向こうからそう聞こえたと同時に、机の上にあった羊皮紙の上をインクが走る。
 そこに現れたのは送られて来た学園都市の地図や能力者のデータだった。
「超能力者のデータまで寄越してくるとはな」
『必要、ありませんでしたか?』
 アックアは羊皮紙に現れたレベル5のデータを見る。
「私の標的は上条当麻のみだ。敵とはいえど、それ以外に不要に手を出すつもりはないのである」
『さすがは騎士殿は違いますねぇ』
「私は騎士ではない。ただの傭兵崩れだ」
 アックアは吐き捨てるように言って通信を切ると、手に取った羊皮紙の束を机に投げた。
 バサバサと羊皮紙が散り、そのうちの1枚が床に舞い落ちる。
「上条当麻、か……………」
 床に落ちた資料にはアックアの『標的』である上条のデータが示されている。
 『無能力者』としての上条当麻のデータには、たいした情報は書かれていない。
 一方通行を打ち破った事は勿論、『幻想殺し』についてすら触れられてはいない。
「刻限は明日。どういう解答を示すか、上条当麻」
 アックアは仄暗い部屋を後にした。

379能力7:2010/05/17(月) 23:22:22 ID:H4w5GDso
「どういうことだ、アレイスターッ!」
 コードだらけの部屋の中で、土御門が叫ぶ。言葉としての答えは返ってこない。
 部屋の中心では、アレイスターと呼ばれた人間が逆さに浮かんでいた。
 男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも見えるその人間は不敵な笑みを浮かべて土御門を見ていた。
「どういうことだとは、どういうことだね?」
「とぼけるな。なぜ学園都市の中に魔術師が暮らしている?」
 土御門は右手で巨大ビーカーの強化ガラスを殴る。当然のようにびくともしない。
「魔術師である君にそれを言われるとはな」
「話を逸らすな。ただでさえ『後方のアックア』からの宣戦布告を受けている非常事態なんだぞ」
 土御門はポケットから写真を取り出す。左手に掲げられているそれは雨宮のものだった。
「そっちの方か。それなら問題はない。既に解決済みの事項だ」
「説明しろ。アイツはどこの所属だ?なにが目的で学園都市内に居る?」
 土御門はキッとアレイスターを睨みつける。
「ふむ。彼はローマ正教の人間だった」
「だった、だと?」
「元・ローマ正教徒というべきだったか。まぁ、後は君らで情報を集めるといい」
 アレイスターは相変わらず薄く微笑んだまま答えた。
 まるで他人事のように、興味なさそうな顔でアレイスターは浮かんでいた。
「まさか、何者かも調べずに入れたのか?」
「問題はない。どう転んでも私のプランに悪影響は出ないようにできている」
 アレイスターは小さな文字が羅列されたスクリーンを見た。踊るように文字が流れて行く。
「君たち『必要悪の教会』にかかれば情報を得るくらいわけないだろう?ローマ正教徒をロンドン塔に幽閉しているのではなかったか?」
「………こっちの情報はしっかり掴んでるか」
 土御門は舌打ちをする。ちょうど同じ時間にロンドン塔ではローマ正教の尋問が行われている。
「まぁいい。アイツを入れた目的はなんだ?」
「魔術師との戦いのときに超能力者を動かすのは色々と不便だ。となれば流浪の魔術師1人を飼うのも面白いと思わないか?」
 アレイスターはニヤリと口元を歪めた。
「魔術サイドが黙ってるとでも思っているのか?」
「問題ない。現にあれはローマ正教から追われている身だが、あれ本人は『自由』を求めていてね」
「学園都市内に留まればある程度の自由は許される、ってことか?」
 土御門は下唇を噛む。目の前の人間はいったい何を企んでいて、何を望んでいるのだろうか。
「その代わりに学園都市に侵攻する魔術師の相手をしてもらうことになっている」
「あれが、雨宮が裏切る可能性だってあるだろう?」
 土御門はアレイスターを睨んだ。逆さに浮かんでいるそれは余裕の笑みを絶やさない。
「そのときは、また考えればいい」
「『書庫』にある奴の経歴は全部偽りだってことだな?」
「魔術師だと公言するわけにもいくまい?」
 男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも見える人間はどこまでも楽しそうだった。

380能力8:2010/05/17(月) 23:22:40 ID:H4w5GDso
 翌日。
 『神の右席』である『後方のアックア』による上条当麻襲撃事件が発生する。
 一般公開されることなく、極秘裏に処理された戦闘をじっと監視している者が1名。
 パウラ=オルディーニ。
 ローマ正教徒であり、情報を収集し、『後方のアックア』に流した張本人。
 その目的は、アックアによる『上条当麻征伐』の援護……ではない。
 学園都市に侵入し、超能力者のデータを収集し、『幻想御手』の残留データを解析した、『魔術御手』の犯人。
「ふふふふふ。全てはワタシの計画通りに。あとはあの厄介な東洋の聖人のデータを集めるのみ」
 楽しげに笑う黒いコートの影は聖人同士のぶつかり合いを見ていた。
 この戦闘の果てに、敵となりうる聖人の神裂が死んでくれれば好都合。もし上手く行かなくてもデータを回収できれば勝機はある。
「ここは素直に我らが『神の右席』を応援しますよ」
 ニヤリと口元を歪めるパウラの目的は、アックアの勝利ではない。
 勿論、アックアが勝ち、任務を完璧に遂行しきるに越したことはないが、パウラにとってはどちらでもいいことだ。
 もし天草式が勝利を収めたとしても、それを利用すればいいだけである。
 彼女が昔より請け負ってきたの仕事は1つ。『裏切り者の抹殺』。
 そして今回のターゲットは、学園都市に逃げ込んだ『雨宮照』。
「この御時勢に、よくもぬけぬけと。よりによって学園都市に逃げ込むとはいい度胸ですよ」
 パウラはイヤホンの様な小さな霊装を耳にあてる。何かを受信して音が鳴る。
「ふふん、なかなかいい感じじゃないですか。『魔術御手』は思いの外、上手くいっているようですね」
 再びニヤリと口元を歪める。
「こう物事が上手く行くと少々、心配ではあるんですがね……」
 パウラは楽しくて仕方がないといった表情で、その場に立った。
「まさか、こんな少数勢力にこんな術式があるとは………」
 黒コートのポケットから取り出したパンパイプを吹くとその場から姿を消した。
「『聖人崩し』………面白いものを見れましたね」
 その場に残された声は、本当に楽しそうだった。

381かぺら:2010/05/17(月) 23:23:13 ID:H4w5GDso
以上です。
ご意見ご指摘などありましたらお願いします。

>>276
忘れてました。そう言えばそうですね……
すいません、としか言いようがないです、はい。

382■■■■:2010/05/18(火) 00:07:17 ID:c1L463SY
GJです!!
是非とも続編を!!

383Iwao:2010/05/18(火) 00:51:08 ID:fFFYgHVU
執筆中の作品の第一章を投下したいと思います。
『とある覚悟の魔術結社』

384Iwao:2010/05/18(火) 00:53:36 ID:fFFYgHVU
第1章 始まりの休日 break_holiday

11月某日 日本 学園都市 第七学区 男子寮

本日は土曜日、学園都市は休日でそろそろテストの時期かなと、ちょっと危機感を持っている生徒が多数いるこのとき、
とある高校生は家電製品とにらめっこしていた。
「…………消費が速すぎる、ってか小麦粉かさ増し大作戦がやくにたたないじゃねぇか――――。」
叫んでいる少年の名は、上条当麻。ごくごく普通の学園都市の少年である。
よくトラブルに巻き込まれたり、日常的に不幸な目にあっているので普通と言い難いが…。
そんな上条当麻は家庭の経済事情を回復するため居候の大食いシスターに対抗して、
小麦粉による手作りうどん、ピザ、簡単なパン、などの小麦製の料理による大食い対抗策を用意した。
だが、量の増えた食事に素早く対応し小麦粉料理とその具材までたいらげ、シスターさんは量の多い食事に期待するようになってしまったのだ。
その右手には『幻想殺し』という変わったチカラがあるのだが、この事態には全く役に立たないのである。
「…………ふっ、くよくよしたって始まらねぇ。」
半ばあきらめ………9割あきらめ状態の調子で発する言葉は、かなり弱弱しかった。
一方、その原因の居候。真っ白で豪華な(安全ピンがあるため、そう見えづらいが。)修道服を身にまとった銀髪碧眼の少女、インデックスが申し訳なさそうに言う。
「ごめんね、とうま。やりすぎちゃったかも。……とうまの周りがすごく黒く見えるんだよ。」
インデックスは流石に悪いと思っているのか謝罪を口にしていた。
本人も、当麻が、朝早くにがんばってうどんを作ったりしていたところを見ていたので、少し後ろめたいのだ。
作った本人の苦労が、一瞬(文字どうり)で消し去られてしまったのだから。
最も、散々食べまくってしまったにもかかわらず、今ようやくそう思ったわけだが。
上条は普段聞かないその言葉を聞いて少し気を許したのか少し間をおいてこんなことを言った。
「もういいよ、ってか、せっかくの休日だし買い物ついでに一緒に遊びに行くか?」
「いくいくー。スフィンクスもいっしょにねー。」
パァッと負の表情から、天真爛漫な満開の笑顔になった。当麻はそれを見て、まあ、いいかな とも思った。
「じゃあ、今日は近所のスーパーじゃなくて大きめのデパートにするか。」
「でぱーと♪でぱーと♪」
(インデックスも気分を良くしたことだし、まあ大目に見るか。………食材の調達は慎重にしないとな。まあ、ちょっとは一緒に楽しんでいくか。)
こうして上条当麻とインデックスは、デパートへ食料調達も兼ねてあそびに出かけたのだった。

385Iwao:2010/05/18(火) 00:54:23 ID:fFFYgHVU
窓のないビルその中で巨大なビーカーの中に人間はいた。
男にも女にも大人にも子供にも聖人にも囚人にも見える人間が。
その前に、虚空から人影が二つ現れた。
学園都市のエージェントであり、イギリス清教 必要悪の教会 所属の魔術師でもある男 土御門元春と学園都市の大能力者であり窓のないビルの案内人『座標移動』結標淡希。
結標は、その能力ですぐにその場からいなくなった。
残った土御門は話す。魔術師の顔で。
「何が起こっているか分かっているな。…少しヤバい状態だ、何が起こるか分からない。早急に手を打て、アレイスター。」
少し焦り気味な口調だった。いつ爆発するか分からない爆弾があるかのように。
「まあ、いい気分ではないな。ただそこまで焦ることでもなかろう。だが、やつらも手を出しづらい状況をうまく作ったものだな。」
「あれだけ『滞空回線』(アンダーライン)を、ばら撒いておきながら学園都市内で察知できなかったのか?」
「やつらは学園都市内ではなく、主に外に出て活動していたそうだ。あと今回の件は、『幻想殺し』と『禁書目録』にも協力してもらう必要があるだろう。」
「ふん、俺は今から出るぞ、何かが起こる前に阻止する。ただ、学園都市と同じでイギリス清教も手を出しにくい。今回は戦闘ではなく、あくまで調査だからな。だが、」
そこからは、怒りがこもった感情(もの)が感じられる。
「これにお前の言うプランが、組み込まれているのならいい加減にしろ。これ以上、表の友人に手を出すな。」
「前に別の男にも似たような事を言われたよ。それに、今回の出来事は計画外だ。私の仕組んだことではない。」
それを聞いても、土御門はどこか納得のいかない表情だった。
「ああ、今回はそういうことにしておこう。とりあえず俺は出る。異存ないな?」
「構わんよ。この面倒な状態もさっさと片づけたいからね。」
そして土御門は行った、残ったアレイスターは
「計画外ではあるが、プランは短縮できそうだな。」
アレイスターは笑う、男にも女にも大人にも子供にも聖人にも囚人にも見える表情で。

386とある覚悟の魔術結社(マジックキャバル):2010/05/18(火) 00:55:41 ID:fFFYgHVU

数時間前 英国 聖ジョージ大聖堂

「学園都市へ向かうのですか?」
少女の名は五和、イギリス清教 必要悪の教会 天草式十字凄教所属の魔術師である。
「ええ今回は、私はおろかステイルや建宮も動けません。今回は、調査という形ですから。先ほど土御門にも連絡を入れました。」
答えた女性は、神裂火織。新生天草式十字凄教の女教皇様(プリエステス)であり、世界に二十人といない聖人である。その会話の中にはもう一人いる。
「今回は、五和に任せるしかないのよな。事態が事態だ、あまり周りは騒いでもらっちゃ困るよな。」
その、男の名は建宮斎字。天草式十字凄教の魔術師で、神裂がいないときは教皇代理。
メンバーのまとめ役も担う男だ。
「あと、五和が向かうのは学園都市じゃなくてその近くの普通の空港。そっちの方が都合がいい、おっと忘れるとこだったよな。」
「「?」」
普通の空港へ向かうことは知っていた二人だったが、その次の言葉は聞かされていなかった。
「五和と一緒に向かうのはもう一人いる。本人の希望もあってな、イギリス清教ではないが今回は特例だ。」
「誰ですか?」
五和は聞く。かえって来た言葉は……
「それは、――――なのよな。」
「ええ――――!!」「何ですって!!」
二人の女性は、普段からは想像もできない大声をあげた。
無理もないだろう、その人物は二人も知っている人物だったのだから。
正確には話だけは聞いているが正解だが。
(………がんばります。)
恋する少女は、ひそかに決意するのだった。

387とある覚悟の魔術結社(マジックキャバル):2010/05/18(火) 00:56:27 ID:fFFYgHVU
学園都市 第七学区 常磐台学生寮前

学園都市の五本指、名門常磐台中学校の学生寮の前に二人の少女がいた。
一人は『空間移動』のチカラを持つ大能力者、一人は『超電磁砲』と呼ばれる超能力者。
普通、寮の前で立ち続けることはないだろう。
なぜ立っているかと言うと、単純に待ち合わせをしているからなのである。
「御坂さーん。」
少女に向けて、甘ったるい声が響く。待ち合わせをしていた友人の声だった。
「あっ、佐天さん 初春さんこっちこっち。」
「こちらですのよ。」
合流したので早速目的地へ向かう。目的地へは徒歩。
ちょっと遠いが歩いていけない距離ではないからだ。
その間、女の子特有の何気ない会話をしながら歩いていく。
「そういえば御坂さん、」
「なに?佐天さん。」
「初春から聞きましたよー、ある男子高校生とデートに出かけたとか。さっすが大人ですねー せ ん ぱ い。」
「で、デートって、た、ただの罰ゲームよ。ほ、ほら大覇星祭の。」
「そういえばお姉さま、いったいあの後何をしたんですの。……もしかして、もうあんなことやこんなことも………きぃー、あの類人猿がぁああ。」
「なにもないわよ!何であのバカと、そ、そんな状態にならなきゃいけないのよ。結局あの後はぐらかされたのよ。くっ、思い出したら腹が立ってきた。今度会ったら覚えてらっしゃいよ、あのクソバカぁー。」
「み、御坂さん落ち付いて、そんな強い電撃を人に向けて撃ったら死んじゃいますよー。白井さんも、その怖いオーラを何とかしてください。」
「無理だと思うよ初春。二人とも、もう何も聞こえてないと思うから…。」
この二人がこんなに取り乱すなんて、いったいどうゆう人なんだろうと二人は思ったが口に出すと突っ込みが返ってきそうだったのでやめといた。
あまり刺激しない方がいいだろう。
そして、興奮していた二人も落ち着いてきて会話が再開される。
「で、初春にはそういう恋愛じみた話って聞かないよねー。」
「むぅ、佐天さんだってそうじゃないですか。人のこと言えません。」
「初春のくせにー、このっ。」
ガバッ、と初春にスカートめくりをするものの、初春はとっさにガードすることができた。
結果的に太ももまで見えるものだったが。阻止はできた。
「っ―――、危ない。スカートめくりはもうやめてくださいよー、佐天さーん。」
「まあまあ、挨拶みたいなもんだし。」
「ハッ、では私もお姉さまにするのも挨拶ということに……。」
「なるわけないでしょ。」
ズガンッ。
「アォ!」
自業自得である。
(そろそろ何かに目覚めそうだ…。)という心配を御坂はちょっと本気で最近している。
「あ、あの、い、今から向かうデパートって、学園都市の中でもトップ5に入るほど大きいとこみたいですよ。」
「佐天さんは、どこを見てみたいですか?」
「うーん、服だと御坂さん達は無理だし………御坂さん達はどこがいいですか?」
「私はあそこにある、スポーツセンターがいいかな。お金払ったら遊び放題だし。」
「わたくしは、パジャマや下着などを見て回りたいですね。」
「じゃあ、スポーツセンターの次は昼食、デザートを食べて、デパート内のセブンスミストの支店に向かうということでいいですか。」
「なーんか、初春の私情が混じってたみたいだけどそれでOK。お二人はどうですか?」
「いいわよ。」
「構いませんわ。」
平和な時間を過ごす少女たちは向かう、ショッピングをするためにとある少年も向かうデパートへと。

388とある覚悟の魔術結社(マジックキャバル):2010/05/18(火) 00:56:51 ID:fFFYgHVU
「着いたー。」
第一声を放つインデックスの横で上条は思う。
(…………でけぇ…。)
それもそのはず、学園都市の数あるデパートの中でも大きさならば第4位、総売上 第2位、利用客数第1位という最大級のデパートなのだから。
「じゃあインデックス、昼飯の前にどこ行きたい?」
「うーん、お昼ごはんの前なら…げーむせんたーがいい!」
うーん、と上条は少し考える。ゲームセンターはお金のコントロールがしやすい。
そこでうまくお金を浮かせば、昼食をランチバイキングにして普通に満腹になるまで食べさせるより安く済むようにできるだろう。
考え終わった上条は言う。
「よし、じゃあそうすっか。勝負とするか?インデックス。」
「のぞむところなんだよ!とうま、絶対負けないんだからねー。」
なにをー、とちょっとけんか腰気味ながらでも楽しそうな二人は中に入って行った。
その様子を見ている二人の視線にも気付かずに…。

389Iwao:2010/05/18(火) 01:00:31 ID:fFFYgHVU
第一章は以上です。
初めに、タイトル変更忘れてIwaoのままですいませんでしたー。
ミスが多くてごめんなさい。
SSについては、第二章ではたっぷり投下したいと思います。
書けてはいるのですが細部の調整がまだなので…。
まだまだですがよろしくお願いします。

390■■■■:2010/05/18(火) 13:02:18 ID:iImqexaU
>>381
かぺらさんGJです!
前回のインデックスへの呼びかけはやはり伏線でしたか。気にはなっていたんですが。
オリキャラのパウラって女だったんですね。パウロの女性名…って事ですかね?外人の名前には詳しくないもので…
雨宮の『風力使い』は超能力じゃなくて風の魔術なのでしょうか?
質問ばっかですいません。これからの展開に差し障るようならスルーして下さい。
続編も期待してます!!

391Ψ:2010/05/19(水) 15:24:40 ID:3uxvI6jI
こんにちは。【デルタフォース】クラスの三バカの日常で書いているΨです。
今回から、SSを書いているので投下させてもらいます。
今回はプロローグだけなのでオリキャラは出てきませんが、オリキャラが出てきますので嫌な方は気よ付けて下さい。

それでは15:35頃に投下します。

392とある暗部の幻想殺し:2010/05/19(水) 15:35:41 ID:3uxvI6jI
プロローグ


第三次世界大戦から3ヶ月後、第七学区のとある通りでツンツン頭の男が呟いていた。
「不幸だー」
ツンツン頭の男こと上条当麻は買い物から帰る途中、持っていた袋を落としてしまったのだ。
「折角のタンパク源が割れてしまったなんてー!!」
上条はその袋の中に卵が入っていたので落ち込んでいた。
そんな上条のところに一人の男性が近づいていた。
「君が上条当麻ですね?」
「はい。そうでせうが、あなたは誰ですか?」
「僕は学園都市統括理事会の貝積継敏と言います。話したい事があるのでちょっと良いですか?」
「良いですけど。」
「ではあまり人に聞かれるとまずいのでこっちで話しましょう。」
上条は人に聞かれてはまずい事って何だろうと思いながら、貝積と人があまり来ない路地裏に向かった。
「で、話ってなんですか?」
「単刀直入に言いますと、君に『ゴースト』という組織に入って欲しいんですよ。」
「その組織では何をするのでせうか?」
「簡単に言うと、俺が渡した情報をに従って欲しいことなんです。」
「どういうことだ、それ。」
上条の表情が険しくなった。
「要するに『ゴースト』のメンバーと一緒に行動して情報に従い、目標の人物を倒すか殺して欲しいのです。」
「そういう事なら俺は断らせてもらう。」
上条はそう言うと帰ろうとしたが、
「分かりました。ですが良いのですか?今までの借金を払ってもらいますよ。」
「借金って何のだ?」
「今まで君が病院に入院した料金は学園都市が払っていたって知りませんでしたか?だからその借金を今すぐに払ってもらいますよ。」
「……………………」
上条は今まで病院に入院した回数が多いので借金が着たら数千万超えているだろうと思い、さらにインデックスが居なくても貧乏なので何も言えなかった。
ちなみに、インデックスは第三次世界大戦が終わった後、インデックスがまた狙われないようにそのまま英国にいるのだ。
「それに、君が『ゴースト』に入ればその借金をチャラにしてあげますよ。」
「チッ、分かったよ。それで、どうすれば良いんだ?」
「では明日、君に電話をするで携帯の番号を教えてください。」
上条は仕方なく『ゴースト』に入ることにし、貝積に携帯の番号を教えた。
「それでは、僕はこれで。」
貝積は話が終わると路地裏から広い路地に出て上条からは姿が見えなくなった。
「僕はこの後どうなるんだろうか。」
上条は独り言を言いながら自分の寮に向かった。

上条が暗部に入った時物語が始まる。

393Ψ:2010/05/19(水) 15:38:02 ID:3uxvI6jI
以上です。駄文ですみません。
誤字や意見があったら言ってください。
ちょっと上条さんの諦めが早いかもしれませんが気にしないでください。
上条さんが暗部に入ったらどうなるかなっと思ったので書いてみただけです。
あと、俺はデルタフォースの方でも書くのでペースは遅いかもしれません。
それではまた。

394■■■■:2010/05/19(水) 15:47:24 ID:3QivLnM.
ちょっと強引すぎるプロローグの様な気が………する………

395■■■■:2010/05/19(水) 19:07:53 ID:5vBwkBKg
「そうでせうが、あなたは誰ですか?」
のせうって使い方間違えてね?

396■■■■:2010/05/19(水) 19:22:40 ID:R8smkR.A
上条さんっぽくねーな

397■■■■:2010/05/19(水) 20:04:17 ID:5rnDYVAA
せう=しょうだからな。

あと、上条さんの1人称は「俺」だよ

398Ψ:2010/05/19(水) 20:31:53 ID:bg2kBl4A
すみません。なんかいろいろと訂正や意見があってしまって。次からは何度も確認してから書き込みます。

>>394>>396
すみません。ちょっと急いでいたもので変になってしまいました。次からは大丈夫だと思います。

>>395
確かに使い方が変でしたね。以後気をつけます。

>>397
最後以外のところは『俺』になっていたので、最後の『僕』はただ単に間違えただけです。

一応最後まで書きますので付き合ってくれるとうれしいです。

399■■■■:2010/05/20(木) 07:56:58 ID:SZTy9jgs
>>398
う〜ん………
借金で人殺し請け負うって、かみじょーさんじゃなくても、普通の人の感覚ならまずありえないと思うのが引っ掛かるんだよね………
中国人ならまだしも、日本人なら人に迷惑を掛ける前に自分の命を絶つことを優先しそうな気がする………

400ビドール:2010/05/20(木) 22:11:14 ID:7mfuWbVM
はじめまして。

いきなりですけど、書かせてもらっていいですか?

終わったばっかなんで、タイミングいいかなと思ったんですが....

401ビドール:2010/05/20(木) 22:13:57 ID:7mfuWbVM
反対が無ければ、明日の夕方か夜あたりに投下します

402■■■■:2010/05/20(木) 22:24:50 ID:auKEk3pQ
>中国人ならまだしも
差別発言か?これ

403ビドール:2010/05/21(金) 16:15:07 ID:fJ9yhdxc
昨日予告したビドールです。

今回はアニェーゼの話を書かせてもらいます。

タイトルは、
「剣闘士奴隷(グラディエーター)」です。

404剣闘士奴隷(グラディエーター):2010/05/21(金) 17:36:02 ID:fJ9yhdxc

これはとある不幸な少年と自らを禁書目録と名乗る少女が出会う数年前の話


========================================−−


イタリア最大の都市、ローマ。
その巨大な都市の中心部から少し外れた住宅街にアニェーゼ=サンクティスは居た。

「パパ!早くしないと遅れちまいますよ!」
「分かった分かった、今行くから待ってろって」

家からなかなか出てこない父を急かす少女、アニェーゼは緑のワンピースに履くのが難しいと評判の「チョピン」と呼ばれる細長いサンダルのような
靴を履いていた。それを器用に履きこなしながらさらに父を急かす。

「せっかく、パパが休みとったのに出発時刻に1時間以上遅れるなんて.....、やっぱり今日はやめにしませんか?」
「わ、分かった!分かったから頼むから今日は付き合ってくれ!」
「分かりました。六十秒数えますからそれまでに来なかった場合は家のソファで寝そべりながらのTVタイムに移行します。はい、い〜ち、」
「よ、よし。たった今準備が完了した。じゃぁ、出発しようか」
「(....ちっ、間に合っちまいましたか)」
「おい、実の父親にその言い方は無いんじゃないか!?」
「まぁ、もういいからさっさと行きましょう。こんなことしてても時間の無駄ですから」
「そうだな。じゃぁ出発だ」

今日は休日だった。休日といっても神父である父が「たまには娘と一日過ごそう!」とかいって、半ば無理やり仕事を休んで無理やり作った休
日であるのだが。

「で、結局どこ行くんでしたっけ?かなりいきなり誘われたので出かける理由をまだ聞いてないんですが」
父の運転する日本製の軽自動車の助手席に座りながら、アニェーゼは質問する。
「いやぁ、最近は我が愛娘と過ごす時間が少なくなったな、と思ってな。たまには一緒の外でご飯で食べようかと」
アニェーゼの目が少し細くなる。
「.....ほかには?」
「あとショッピングとか。お前に新しい服でも買ってやろうかと」
「まだあるでしょう?」
この時、アニェーゼの顔は完全に疑心暗鬼を表していたが、父は気づかずに素で答えた。
「ん?まぁ、あとは夜は二人でホテルでも借りて親子の愛を育もうかと思」
「それ以上言うと法に引っかかりそうなんでよしてください。小学4年の娘を狙うなんてどうゆう神経してんですか、このロリコン野郎」
「あ、アニェーゼ、そんな言葉どこで覚えた!?」
「ママに教わりました。あと、パパには気をつけなさいと」
「カテリナめ、娘にそんなこと教えこませるなんてどういう神経してるんだ....」
「あなたは絶対に人のこと言えませんが」

親子が車内コントを繰り広げているうちに父の行きつけ(自称)の高そうなレストランに到着した。
「ほんとは適当に町を見回ってから来ようと思ったんだけどな。予想以上に時間が詰めてきたから先にご飯食べちゃおうか」

そしてアニェーゼの父が店に入ろうとしたとき、

「ママは待たなくていいんですか?」

後ろからアニェーゼの質問が飛んできた。

その言葉に父は少しだけ眉間に皺を寄せた。
「....何度も言わせるな。カテリナは来ない」
「冗談ですよ。絶対にありえないことを望むほど私は子供ではねぇですから。家の玄関で一時間以上待ってたせいで腹はすかすかなんです。早く入り
ましょう」
「....そうだな」
その言葉に父も同意して二人は店に入っていった。


アニェーゼ=サンクティスが母親に会うということは彼女の言う通り『絶対』にありえなかった。
たとえ、彼女が神だったとしても。


(そうですよ。私はまだ未練がましく『待つ』なんて言ってるんですか)


殺された母親に会うのは何をどう考えても不可能だったからだ。

405■■■■:2010/05/21(金) 19:45:58 ID:Co.BLFzM
終わり?

406■■■■:2010/05/21(金) 22:05:14 ID:ZQxVhjPQ
>>398
SSで上条さんが貧乏なのは入院代のせいもあるって書いて無かったっけ?

407ビドール:2010/05/21(金) 22:50:25 ID:fJ9yhdxc
あ〜ごめんなさい、まだ続きます。

408剣闘士奴隷(グラディエーター):2010/05/21(金) 23:51:09 ID:fJ9yhdxc
突然現れた巨大な影に目の前で母親が吹き飛ばされた。
それだけがアニェーゼの記憶に残る殺人風景。
分かったのは巨大な『何か』が自分の母親を容赦なく吹き飛ばしたこと。
そして、その母親が死んだ事。
母を殺した『何か』の正体は分からない。分かりたくもない。
三秒以上宙を舞った母親は、アニェーゼが駆け寄ったときには顔を体もぐちゃぐちゃで、
生きているのが不思議なくらいだった。

そして、そんな寿命が数分ほどの母親が、
絶望の表情で自分を見る娘に放った最期の言葉は…….


「? おい、アニェーゼ。どうしたんだそんなにぼーっとして。食欲無いのか?」
「え、あ、はい。ちょっと考え事を」
アニェーゼの座るテーブルには生ハムとレタスを盛り付けた料理がのっている。が、アニェーゼはそれにまったく手をつけていない。店員さんもちょっと心配そうな目でみている。
「大好きな生ハムサラダを差し置いて、いったいどんな重大な考え事なんだ?」
なんでもありませんよ、と一蹴してアニェーゼは目の前の食料を約十秒で平らげた。

食事が終わればショッピングだ!、という無駄に嬉しそうな父の声を横に日本製の軽自動車が走り出す。三十分ぐらいして、これもまた父の行き着け(自称)のお洒落な感じの洋服屋に到着した。
「さて、アニェーゼ、どんな服がほしい?なんでも良いぞ。高い服でも今日は奮発して何でも買ってやる」
「そうですか。じゃぁ….」
「アニェーゼにはやっぱり今着ているようなワンピースが一番似合うと思うんだが….いや、でもやはりこのフリル付きのスカートも見過ごせない。いや、あえて半袖Gパンのボーイッシュスタイルも…..」
「私の服を買うのに私の意見は聞く気ないんですか?」
「こっちのスカート長めのワンピースでお嬢様風味を出すというのはどうだ?いや、だがあえてこっちの超ミニスカで色気を出すというのは…..小学4年生が色っぽいというのもギャップ的にはありなのでは…..!?」
アニェーゼはかなり引きつった笑顔で商品案内をする女の店員さんを助けるため父の背中を思いっきりぶん殴った。父が床にうずくまって何かを訴えながら蠢いていたが無視して自分に似合いそうな服を勝手に選び出すと、さっきより爽やかな笑顔の女性店員が嬉しそうな顔で赤色のワンピースを進めてきた。
アニェーゼがそれ着てみると自分が思っていたより似合っていたようで店員さんが一番キラキラした顔をしていた。
(まぁ、自分の進めたものが認められるってのは嬉しいもんですよね)
アニェーゼは床に倒れている父をたたき起こして「これにしました」と言って赤いワンピースをさっさとレジに運ばせた。
父はワンピースの値札に付いている「0」の多さに仰天していたようだが、「や、約束だから」といって固い財布の紐をぶった切って涙目でワンピースを購入した。

「すまん、アニェーゼ。ちょっとお手洗いいってくる」
店を出て次の店行こーとか言っていた父は今居た洋服屋にトイレが無い事を知り少し離れた公衆トイレを使用することにしたようだ。
ちなみに父が『トイレ』のことを『お手洗い』と言っているのは教育のためらしい。実際意味は無いのだが。
待ってますからさっさと行ってきてください、というアニェーゼの意見に全面賛成なアニェーゼの父はダッシュで公衆トイレに駆け込んだ。
次はどこいくんだろーなーとか適当なことを考えていると、


突如、父が入っていった公衆トイレから発砲音が聞こえた。


===========================

409■■■■:2010/05/22(土) 01:26:56 ID:rRsNdOxM
>>403
久々のアニェーゼものですね。
これからアンジェレネやルチアも出てくるのでしょうか?
どう禁書6巻に繋がっていくのか楽しみにしています。

あと、投下される前に今回の投下が何レスぐらいなのか、また
今回の投下が終了したときには投下終了宣言をしてもらえると
感想が書きやすいです。

これからもドンドン投下してください。

410■■■■:2010/05/22(土) 02:38:57 ID:h9a4pT.w
>>408
今回の投稿は終わり・・・ですか?
>>409の言うとおり、終了宣言お願いします
6時間あいたのは今回の分を書いてたからでしょうか?1回分が出来あがるたびに投稿するのは避けるべきかと
数スレ分くらい書き上げてから、まとめて投下してくれると有難いです
良作になる事を期待しています。頑張って下さい

411ビドール:2010/05/22(土) 08:08:37 ID:4z0Q.UC6
ごめんなさい、気がきかなくて。

次からはそうします。

あと、まだ続きます

412ビドール:2010/05/22(土) 18:13:53 ID:4z0Q.UC6
「剣闘士奴隷(グラディエーター)の続きです。

4レスほどお借りします。

413剣闘士奴隷(グラディエーター):2010/05/22(土) 18:15:36 ID:4z0Q.UC6
「!?」
ローマ市内に乾いた破裂音が数回鳴り響いた。
アニェーゼは父の向かった方へ振り返る。
音源の公衆トイレの周りは「なんだ?」「発砲音?」「爆竹でも使ったか?」などと
ローマ市民の疑問文でざわつき始める。
と、それから五秒ほど経ってトイレの中から男と見える姿が飛び出してきた。
アニェーゼは自分の父親が出てきたと思い安堵したが、
「….?」
その男は父親では無かった。父より少し歳をとった中年の痩せた男性で、

その体には無数の返り血の痕が残っている。

背筋が震える。猛烈に嫌な予感がする。
顔を確認するまでもなく、男は猛スピードで町の中を走り抜け見えなくなった。
父が入ってからトイレには誰も入ってはいない。
あの男は父の前にトイレを使用した男だろう。
いや、そもそも、

この男は本当に用を足すために中に入ったのだろうか?

考えたくなかった疑問文に支配され、アニェーゼは父の入った建物に走り出す。
トイレのドアを大きく開けて中の様子を確認する。
ここが男子トイレという事は今のアニェーゼには関係ない。

そして、トイレの中はアニェーゼの予想通りの風景が広がっていた。

414剣闘士奴隷(グラディエーター):2010/05/22(土) 18:17:29 ID:4z0Q.UC6

まず目に入ったのは頭と胸に風穴を開けられた父の姿。
そして、本来白いはずのトイレの壁紙が半分以上アカ色に染められていたこと。
一緒に中を覗いたローマ市民たちからの悲鳴が後ろに聞こえる。
慌てて救急車を呼ぶ人もいれば、異変に気づかずに素通りする人もいた。
急いで父の元に駆け寄る。壁に背中を預けるように倒れているアニェーゼの父はどう見たって生きてなどいなかった。
いくら肩を揺すっても答える気配がない。
(なんで……?)
背中からは早くもサイレン音が小さく聞こえてきた。
父の口からはまだ血が流れ出ている。だが、それはアニェーゼが父親を揺すった際に
口に溜まった血が流れでただけであり、
脳に何発もの弾丸を受けた父が生きている理由は無い。
(パパ……なん…で…?)
答えが返ってこない質問が頭に浮かぶ。
声に出そうとしても口が動かない。
思考を巡らそうとしてもすぐにリセットされる。
明らかに目の前の人間は死んでいる。分かっているのに受け止められない。
そして、見かねた野次馬の一人がアニェーゼを殺人現場から引き離す。
警察が見たら怒鳴られそうな行動だがほかの野次馬たちもそれを止めようとはしない。
少なくともこの場所にアニェーゼを置いておくのが一番『駄目な事』だと誰もが理解していたからだ。
アニェーゼは抵抗しようとしない。いや、正確に言うとできない。
全身の力が完全に抜けて、自分で立つ事も難しい。
サイレン音がすぐ後ろに聞こえ、警察と思える数人の男達が怒号を上げながら現場に踏み込んでいくのが見える。
アニェーゼはそれを観ながら放心状態で理解した。
(……あぁ、……)
アニェーゼの目にはすでにまともな光はない。

(また、一人になっちまうんですか……)
視界のすべてが漆黒に染まっていく。

アニェーゼの意識が途絶えた。

415剣闘士奴隷(グラディエーター):2010/05/22(土) 18:19:07 ID:4z0Q.UC6

アニェーゼが目を覚ましたのは企業にあるようなデスクとコンピュータに囲まれたソファの上だった。
(……ここは…?)
周りを見渡す。規則正しく並ぶ机と交通安全を進めるポスターがあちこちに貼ってある所を見ると
恐らく警察所の交通課か何かだろう。だが、人の居る気配は無い。
(なにが……あったんでしたっけ……)
その瞬間に思い出したのはトイレの壁に寄りかかる父の死体と鮮明なサイレン音。
そして、内臓がもげるかと思うほどの壮絶な吐き気が襲ってきた。
アニェーゼは辛うじてそれを抑え、(それだけの精神力を持つ小学生も珍しいが)人を捜すために
オフィスから出ようとすると、
「ああ、起きたかい。現場でいきなり気絶するもんだから心配したよ」
突然の声に驚き、首を横に振る。
そこには初老の男性が座っていた。
使い古したスーツの上からボタンの無いブレザーを羽織り、コーヒー片手にこちらに話し掛けてきていた。
オールバックの髪はポマードで艶々している。
(『現場で、』……、ってことは、『あの時』に来た刑事の一人ですか)
以外に頭の回転が速かったことに自分で驚きながら、刑事と思われる人物に質問してみる。

「私の父はどうなりました?」

416剣闘士奴隷(グラディエーター):2010/05/22(土) 18:20:02 ID:4z0Q.UC6

いきなり核心を突く質問をした。
近所に住むの人間からは、ずいぶん「ませた」少女だと言われ、アニェーゼ自身も自覚してはいたが、開口一番でこんな言葉がでるなんて、と頭の中で皮肉をついた。
すさまじく単刀直入な少女に刑事は目を丸くしたが、やがて質問に答えた。

「死んだよ。頭と胸を撃たれて即死だった」
なんのオブラートにも包まずに事実のみを伝えたのは、現実に怯えず目を向ける少女への彼なりの配慮だったのだろう。
そして、アニェーゼも、
「ああ、やっぱりですか」
平淡な声で何からも目を逸らさずに正直な言葉を口にした。
刑事はこの言葉にかなり驚いたようで口を開けてぽかんとしていた。
「……小さな子供の『親だけ』が殺されるのは沢山見てきたが、君みたいに冷静にしている子は初めてみたよ。野暮なこと聞くが、悲しくないのかい?」
アニェーゼは横目で窓をみて、目を細くて解答する。
「……悲しくはありません。寂しいですね」
これまたロボットのような平淡な台詞だった。
なぜ悲しくないのかは分からない。別に父のことは好きだったし、いなくなって欲しいなんて考えたことも無かった。
「悲」の感情が一周回って機能しなくなったのだろうか。まだ思考があまり回らないアニェーゼには分からなかった。
それでも、分かったことはあった。
(また、一人になっちまったんですね、私は)

久しぶりに絶望という感情を実感した。

417神浄の討魔=美琴信者:2010/05/22(土) 18:20:43 ID:ewuM7NXU
ってことで、約200スレ後の投稿となりまーす。ってか覚えていないでしょうけど気にしない気にしない(殴
今回は三章の終わりまでうp。と言うよりも投下ですけどねー。多分14スレくらいになるかな?
では投下作業開始しまーす。

418ビドール:2010/05/22(土) 18:22:59 ID:4z0Q.UC6
まだ続きますが、今回はここまでです。

......改めてみると我ながら酷い文章でした。

419神浄の討魔=美琴信者:2010/05/22(土) 18:23:47 ID:ewuM7NXU
あ、すんません…重なっちゃいましたね。
ビドールさんお先どうぞ。

420とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参-Ⅱ-Ⅹ-Ⅷ:2010/05/22(土) 18:28:14 ID:ewuM7NXU


--------------------------------------------------------------------------------

土御門は、まず最初にこのような図を書いた。

                           妹達
                ―――――――――――――――――――――
               │                               |
     浜         │                              |        妹
     面         |        妹達     インデックス      |        達
               |        打ち止め   滝壺           |       
               |        妹達                    |
               |                               |
               |                               |
               |                               |
                ―――――――――――――――――――――
                           妹達

※ 線が凸凹なのは仕様です…ご了承下さい。ってかいらねぇかorz


「とりあえず、こんな感じだにゃー」
どこからともなく取り出した紙に、ペンで図を書き終わった土御門が言った。
「この図で、大体は理解できると思うが…その上で説明させてもらう」
特に誰も発言しないので、土御門が話しを始めた。
「まず、線の説明だが。分かっていると思うが、とある建物を表している」
「だから、その建物ってどこにあってどんなものなんだよ」
「それは教えるわけにはいかない。だが、インデックスも匿うことになってるんだ。窓のないビルを3段くらいグレードダウンさせたもの、と考えれば大差ない」
土御門の言う窓のないビルとは、学園都市総括理事長が…『存在』している建物のことだ。
「…」
それだけの言葉で、上条は言いくるめられる。
「そこにインデックスたちを匿う。中にいる妹達(シスターズ)は6人だ」
いつのまにか、『インデックス』を匿うことになっている。
「外にいる妹達(シスターズ)と浜面は、警備に当たってもらう。異変があれば、即時報告させてもらう」
…妹達(シスターズ)はともかく、あの浜面は警備できるのだろうか。何か特殊な感じはするが、やはり所詮ただの無能力者(レベル0)だし…と、上条は少し浜面の心配をするのだが、土御門は浜面のことなど心配していないらしい。そのまま話を続けた。
「中の打ち止め(ラストオーダー)と妹達(シスターズ)については、先ほど説明したとおりだ。インデックスは、妹達(シスターズ)たちから状況を教えてもらい、魔術面からの対策を練ってもらう。…基本仕事はなしになると思うがな」
インデックスを少し見ながらいう土御門。インデックスは特に気にしない。
「滝壺は、妹達(シスターズ)や打ち止め(ラストオーダー)の補助。なぜか能力者の能力が使いやすいそうだから、能力追跡(AIMストーカー)を使ってもらう。反動はなさそうだしな」
やはり対フィアンマ戦のときに滝壺と面識がある面子なので、滝壺の能力使用は少し心配していたのだが、問題なさそうなのでほっとする。
「で、非常事態が起こった場合には、どこかのグループ自体を派遣するか、学園都市側の戦力を送るらしい。
学園都市側の戦力だった場合、警備員(アンチスキル)や風紀委員(ジャッジメント)が送られるはずだ」
はずだ、と言っているが…インデックスはまったく理解できない単語だし、それ以外の当事者達はここにはいない。
「…とまぁ、今回、グループに所属していない俺達の戦力の仕事の説明はこれで終了したいのだが、いいか?」
特に異存はない。そもそも土御門の話が完璧すぎる。
「…それじゃ、そろそろ妹達(シスターズ)も来るころだしな。御坂美琴、インデックスはいい加減にこの場を離れて、彼女達に話を伝えてくれ」
若干厄介払いに聞こえなくもない…というかそれにしか聞こえない言葉なのだが、美琴とインデックスはすんなり頷いた。なぜか土御門の身体から、そうさせる雰囲気があふれている。
(…やっぱり、何か違うよなぁ…こいつもちゃんとした『プロ』だし、それ以上のものも感じさせられる)
上条はそんなことを考えながら、去っていく少女二人の背中をなんとなく見つめていた。

421とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参-Ⅱ-Ⅹ-Ⅸ:2010/05/22(土) 18:33:28 ID:ewuM7NXU
「…で?」
「で?って…何のことだ、カミやん?」
上条が発した突然の言葉に、土御門が不思議そうな顔をする。
「とぼけんなよ。あの二人を追い出したんだから…こみいった話でもするつもりだろ?」
少々口ごもりながら言う上条。
「なんかカミやんもこっちの世界に慣れてきちゃったかにゃー?」
苦笑しながら言う土御門。
「?特にドロドロした話は無いように思えますが」
神裂が言う。だが、あの学園都市のことだ。やはり何を考えているのか、想像つくはずがない。ましてや魔術サイドの神裂には。
「簡単に言えば、今回の反乱因子戦の作戦には、ちょっといろいろと裏があるってことぜよ」
「ハッ、大層なこと言いやがって。どうせ本当の裏は俺らには教えるつもりはねェンだろォが」
一方通行(アクセラレータ)が鼻で笑いながら言う。
「だろうな。まぁ、俺は伝えられたこと、全て話すつもりでいるが」
そう言って、土御門はまた話し始めた。


--------------------------------------------------------------------------------

「さっきまでの話は、聞いての通り『外野』の連中についてだ。今度は『内野』…実際に殴りあう、俺らについての作戦を話す」
流石にまじめ口調で話す土御門。
「まず、しなければならないことだが…当然、反乱因子の打倒。これを最優先に動く」
「今更そんなことは良い。さっさと話を飛ばせ」
一方通行(アクセラレータ)がつまらなさそうに言う。
「そういうわけにもいかなくてな。まぁ、適当に聞き流してもらってかまわない。続けるぞ」
どうせ誰の意見も聞きつけるつもりはないくせに、周りの人間を見渡す土御門。
「それで、反乱因子打倒のために、それぞれのグループに役割を与える」
「またか。っつっても、ただ単に敵を倒せば良い、って事じゃないんだよな?」
上条が呆れ半分で聞く。
「そんなに単純じゃない。まず、反乱因子打倒、という一つの項目を、四つの項目に分けて考える」
土御門が上条を真正面から捕らえる。
「まず、カミやんのグループ、Aにやってもらう項目。反乱因子の分散だ」
戦闘において、敵勢力の分散は定石だろう。
だが、それだからこそ上条は意見する。
「おい、俺らのグループに、そんな役割押し付けられても…出来るか、わからねぇぞ?」
上条は今まで数々の戦場を乗り越えてきたわけだが…今回のような、裏で行われていることに首を突っ込んだ覚えはない。ただ純粋に敵を倒してきただけだ。
そう考えると、こんな役割をまっとう出来るのは…アニェーゼ部隊しかいないように思える。そして、肝心のアニェーゼたちは…言っちゃ悪いが、正直あまり戦力になりそうにない。
そういうことで、自分のグループには不適切なもんだと上条は考えたわけだが、
「大丈夫だ、カミやん。そこら辺は、全て『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が解決してくれる」
「…はぁ?何で俺の右手が?」
土御門が上条の右手に話を振ってきた。
幻想殺し(イマジンブレイカー)。
その右手に宿る、謎のチカラ。
今まで、数々の修羅場を乗り越えさせてくれた、上条の唯一のとりえ、なのだが。
敵勢力の分散、なんてものに使えるなんて思えない。
「いいや、そうじゃない。カミやんのその右手に、あっちが勝手に群がってくるだろ、って話だ」
まるで上条の思考が読めているかのように言う土御門。
「レベルが上がれば上がるほど、カミやんの右手は脅威だ。そして、例え絶対能力者(レベル6)でも、単独でカミやんを突破できるかどうか…ってことで、カミやんのグループには自然と敵が集うはず。役割はまっとうだ」

422とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参−Ⅲ−Ⅹ:2010/05/22(土) 18:36:36 ID:ewuM7NXU
「待て!お前の説明は理解できたが、それだったらもう少し有能な人材が必要じゃねぇか!!?」
理解できたは良いが、そうしたらさらに理解してしまう問題。
「だから、大丈夫だってカミやん。全ては幻想殺し(イマジンブレイカー)が解決してくれる」
「本日二度目だよなぁそれ。そして、それには限度ってものがある」
流石に、上条一人で絶対能力者(レベル6)二人は無理だ。瞬殺だ。
「そこら辺も上に考えがあるから、こんな無茶苦茶な作戦を立ててるんだと思うぞ。カミやんのその右手――――幻想殺し(イマジンブレイカー)を、そう簡単に手放すとも考えられないしな」
そう言われてしまえば、納得するほかない。
「ってことで、Aグループは、敵勢力の分散、および打倒に徹してもらう。まぁ、前者はカミやんが勝手にやってくれちゃうだろうから、ようは相手をフルボッコにしちゃえば良いだけの話だ」
「フルボッコってなあ…こっちがやられる側だと思うぞ」
上条はげんなりしながら言ったが、その言い草だと諦めがついているように感じられる。
「オイ、テメェを殺すのはこの俺、ッてェ決まってンだからな。勝手に死にやがったら百倍増しで殺す」
一方通行(アクセラレータ)から暖かい声援を送られた上条。
…もしかしたら、明日自分は墓も立てられずにどこかの塵になってるのでは?と、少々本気で思ってしまう上条だった。
「…って、どこもこみいった話なんてねぇじゃねぇか」
上条が、ふと突っ込む。いや、一方通行(アクセラレータ)の発言はちょっとアレなのだが。
「だって、あの超能力者(レベル5)が居たらいろいろと反発してくるからー。聞いてるだけでもうカミやんを殺したくなってきちゃうぜぃ。それでもいいってんなら、呼び戻すが良い」
わけの分からないことを言う土御門。日本語としてもおかしい気がしないでもない。
「その点については、私も同意ですね。出来ればあの二人は話に関わらないほうが、やりやすいかと」
神裂も土御門に同調する。妙に上条をちらちら見てるのが気になるが。
「だなァ。メンドイ事は好きじゃねェ」
なんか一方通行(アクセラレータ)も賛同してしまっている。
そして、特にあの二人がいてもらわなきゃ困る事態でもないので、上条はとりあえず回りの意見に合わせることにした。というか、合わせるしかないように思えた。
「…ま、まぁ…お前らがそういうんなら、それでも」
よく事態は理解できないが、何か言ったら上条に火の粉(なんて生易しいものじゃない気がする)が降りかかりそうなので、ここは無難にそういって話を終わらせる上条。
「理解したんなら、それで良い」
なんか上から目線なのが気に入らないが、反発する理由も無いので上条は反応しなかった。
「じゃ、次は一方通行(アクセラレータ)のグループ、Bについてだ」

423とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参−Ⅲ−Ⅹ,Ⅴ:2010/05/22(土) 18:38:28 ID:ewuM7NXU
--------------------------------------------------------------------------------

「なんか、厄介払いみたいだったわよね、さっきの」
隣を歩いているインデックスに、美琴は言った。
「うん。でも、私は仕方ないかも。完全記憶能力者だし、魔術サイドだし」
インデックスが、特に考えなく答えた。
「でも、それじゃあの…露出度満点の奴は?魔術サイド、っていう方なんでしょ?」
おそらく美琴が言っているのは、神裂のことだろう。本人が聞いたら、一瞬で『救われぬ者に救いの手を(Salvere000) 』と言い放つだろう。
「神裂火織、のこと?多分あの人は後で記憶をいじられると思うよ」
インデックスが、本当にあっさり…あっさり言った。
「…記憶、を?」
美琴が、思わず、という表情で聞き返す。
「うん。そっちじゃあんまりやらないことかもしれないけど、それぐらい日常茶飯事かも」
これも、あまり興味なさそうにいうインデックス。
自身の内に煮込みあがる怒りを思わずインデックスにぶつけるところだった美琴だが、思いとどまってインデックスに聞く。
「それだったら、あんたがいたって良いじゃない」
「別にいなくても良いんだよ。それに、私の記憶をいじるのは、かなり面倒だから」
やはり、美琴の質問を即答するインデックス。
その言葉の意味は、完全記憶能力者だから、禁書目録(インデックス)だから…という、二つの意味があるのだろう。改めてこの少女の異様な様を見せ付けられる美琴。
「…」
学園都市も、かなり裏世界に浸っていると思っていたが、インデックスたちの世界も同じくらい浸かっている…そう美琴は思った。
そして、その両者が互いに衝突試合、そのどちらかが勝ったとしても…あまり良い未来は想像できない。そう思ってしまう。
(…って、何考えてんだか…なんか、私らしくないなぁ)
はぁ、と美琴はため息をつく。インデックスが訝しげに見てくるが、美琴はスルーする。
(…このごろ、こんなのが多い気がする…いや、多い。私の内に…何かもう一つの存在があって、そいつの考えが私に反映されているみたいに)
と、そこまで考えて、『それ自体が【そいつ】の考えでは?』とか思ってしまう美琴。簡単に言えば、軽い錯乱状態に陥りそうな状況だ。
「ねぇ、大丈夫?短髪、なんか気分悪そうかも」
その言葉を聞いてさらに気分が悪くなる美琴なのだが、食って掛かる気もない。
本当に、この頃はこんなのが多いのだ。いきなり『学園都市に未来はあるのか』とか『この世界が少しずつ、だが確実にずれ始めている』とか、そんなことを考え始めてしまう。
自分の内に存在する、もう一つの存在によって。
美琴自身、その考えは持っている。しかし、断固否定している。ありえるはずが無い、と決め付けているからだ。

「ありえる、って考えてしまえば、簡単な話なのにねぇ…人間って、不便な生き物ね」

ビクン!と、美琴の身体が痙攣した。
今の声…確実に聞こえた、謎の声。まるで…
自分の内に存在する、もう一つの存在の声。
(…ダメだ。本当にもう、そんな考えしか浮かばなくなってる…ッ!!)
その綺麗な茶色の髪を、華奢な両手でかきむしる美琴。
ふと気づけば、インデックスは隣にいなかった。おそらく、様子がおかしい美琴のことを考えて先に行ったのだろう。本人は厚意のつもりだろうが、美琴にとってはただ心細くなってしまうだけだった。
「…は、早く追いかけなきゃ…」
思わず声に出して言う美琴。そして、その場から駆け足で去っていった。

424とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参−Ⅲ−Ⅹ−Ⅰ:2010/05/22(土) 18:40:00 ID:ewuM7NXU
「でェ?俺たちは上条の後ろについて、隙を見て反乱因子どもを殺せ、ッてかァ?」
一方通行(アクセラレータ)が、土御門を睨みながら言った。
「ああ。戦力的にもグループBは優秀だから、力は足りなくても質があるグループAとくっつければ、それなりの戦果を挙げられるだろう」
「そうじゃねェ。なンで俺が上条の援護役なンてしなきゃならねェッ!?」
どうやら、話の方向はそれらしい。
「まぁまぁ。そういきがるなよ一方通行(アクセラレータ)。たまにはこういう仕事も良いだろ?」
「仕事じゃねェだろォが」
珍しく一方通行(アクセラレータ)が突っ込んだのにも関わらず、土御門はスルーして話を進める。
「そういうことで、グループBの勝利条件は『迅速な反乱因子の制圧』。具体的には、カミやん率いるグループAに気を取られている反乱因子を後ろから叩く、ってことだ」
「いや、待て土御門。そんな作戦立てたら、一方通行(アクセラレータ)が拗ねて俺のことを攻撃しかねないと思うんだけど」
「流石にそれは無いと思うぜカミやん。あの一方通行(アクセラレータ)も、そこまで子供じゃないだろう」
この二人にそんなことを言われては、もはや黙るしかない一方通行(アクセラレータ)。
…かと思われたが、一方通行(アクセラレータ)はすぐさま反撃した。
「知らねェよンなもン。俺はそンな作戦に乗ンねェぞ」
断固拒否する一方通行(アクセラレータ)。
…マジで拗ねた子供みたいだな、とか上条は思ったが、口にする勇気は持ち合わせていない。
「良いのか一方通行(アクセラレータ)?グループAを支持しなければ、あの超能力者(レベル5)は死ぬかもしれないぞ?」
あの超能力者(レベル5)とは、おそらく美琴のことだろう。軍覇がいきなり話に出てくるとは考えにくい。
「アア?別にンな野郎に興味ねェよ。何が言いてェ」
土御門は一方通行(アクセラレータ)にガン見されながらも、普通に話を続ける。
「いや、御坂美琴が死ねば、妹達(シスターズ)や打ち止め(ラストオーダー)はどうなっちまうのかな、って」
一瞬、その言葉に一方通行(アクセラレータ)は驚きの表情を見せた。
だが、すぐさまポーカーフェイスになり、反論する。
「どうにもならねェだろ。別に元となった人間が死ねば、クローンは死ななければならない、なンて法則はどこにもねェ」
「確かに法則は無いが、ミサカネットワークが御坂美琴の力によって支えられているものだとすれば?」
「…何?」
一方通行(アクセラレータ)が聞き返す。
「ミサカネットワークが死ねば、妹達(シスターズ)はただのレベル2程度の能力者だ。しかもその存在が公にさらされれば、学園都市の評判はガタ落ちする。そうなる前に、学園都市ならば妹達(シスターズ)を殺そうとするとは考えられないか?」
土御門が、独断で言った。
一方通行(アクセラレータ)は少し考え、こう言う。
「ミサカネットワークが、御坂美琴の力によって支えられてる、って仮説の根拠は?」
「ない。だが、DNAレベルで同じ人間だ。出来ていなくとも、やろうと思えばできるんじゃないか?」
そういえば、あのガキがそんなことを言ってたな――――ふとそんなことを思い出す一方通行(アクセラレータ)。
「どっちにしろ、この作戦に乗らなければ、お前の学園都市での評判は落ちるぞ?それに、お前が協力したくない理由は、ただの感情論だ。そんなちっぽけなものにお前は左右されるのか?」
そこにさらに追い討ちを仕掛ける土御門。
その言葉で、あの学園都市最強の能力者の表情が揺らぐ。
「…チッ」
そう舌打ちし、一方通行(アクセラレータ)は目を閉じて上を向いた。
「承諾してもらえたか?」
「…仕方ねェだろ」
それだけの返事に、土御門は満足そうな笑みを浮かべた。
(…コイツの交渉術には注意した方がよさそうだな…)
(そういえば、以前私も土御門の口車に乗せられて『あんなこと』をやってしまいましたね…)
そんな時、外野の二人は妙に客観的に土御門を分析していた。

425とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参−Ⅲ−Ⅹ−Ⅱ:2010/05/22(土) 18:41:26 ID:ewuM7NXU
「ってことで、次はねーちんのグループ、Cぜよ」
土御門が、一方通行(アクセラレータ)から目を離して言った。
「ねーちんのグループは、かなり戦力が高い。ねーちんの戦力は言うまでもなし、海原の馬鹿ヤロウは勝手に力をつけやがって、一歩間違えればねーちんさえも倒せるほどの魔術師になった。他に天草式の連中もなかなかの戦力になるだろう。もしかしたら、グループBだけで絶対能力者(レベル6)を一人打倒できるかもな」
「…それで、何を課そうというのですか?」
神裂が、不審気に土御門を見つめる。
「それに、かなり実践的な奴が集まってるから、レベルの高い項目を遂行してもらいたい。ってことで、やってもらいたい項目は『反乱因子の戦力の分析、それに見合ったグループの配置、他のグループへの助太刀、反乱因子の打倒』だ」
「…かなり無理があると思うのですが」
神裂が、無表情に言う。というか、絶対無理があると思う、と上条は考える。
「大丈夫だと思うぞ。ねーちんは世界で20人といない聖人だし、海原は魔道書の原典を二冊も所持している。
そのほかのメンバーも天草式で構成されてるから、ねーちんとの協力作業が出来るだろう。ほら、これくらいのことぐらい出来るように思えないか?」
「あなたの口車に乗せられる気はありません。そもそも、課せられた事項に他のグループが干渉している時点で、他のグループと連絡を取る必要が出てきます。どうやって取れ、とあなたは言うつもりですか?」
土御門のかなり説得力のある台詞をあっさり返し、今度は攻めに入る神裂。
「魔術を使えばいいだけだ。グループAはアニェーゼ部隊、グループBは天草式、グループDは俺と建宮。今言った奴らと連絡を取れる魔術を発動すれば良いだろ?」
しかし、それもやはりあっさりと返す土御門。
神裂は少し考え、こう言った。
「…いいでしょう、通信方法についてはあなたに従います。ですが、実際にそんなことをしながら、反乱因子の分析や戦闘ができるものでしょうか?」
「できるだろう。相手は自分たちの的が魔術を使ってくることを知らない。そこにねーちんたちが魔術で殴りこみに行けば、動揺して隙も出来るはずだ。そこを叩けば、意外に簡単に終わるかもだぞ」
本格的に反論できなくなっていく神裂。いい加減諦めればいいのに、と上条は思う。
「し、しかし、相手が科学サイドにしか分からないような技などを使ってきた場合に、どう対処しろと?」
「とりあえずはその場しのぎをして俺たちに伝える。そしたら俺たちのほうがなんとかする」
もう、神裂にあとがあるようには思えない。
そこに、やはり先ほどと同じく土御門が追い討ちをかける。
「そもそも、何で引き受けたくない?ねーちんが引き受けなかったら、他のグループがこの重要任務を引き受けることになる。それでも良いのか?」
救われぬ者に救いの手を(Salvere000) 。神裂が名乗っている魔法名だ。
基本的に他者を傷つけたくはない神裂の性分からすれば、こう言われては反論できない。
今まで反発していたのは、自分のグループの構成員たちに危険が及ぶ、という思考があったからだろう。
だが、神裂はようやく重い頭を縦に振った。
「…分かりました、引き受けましょう」
「流石はねーちん」
茶化すように言う土御門。
「ですが、危険な状況になれば、問答無用で土御門、あなたの応援を要請します。いいですね?」
「まっ、それくらいならいいぜぃ」
あっさりと引き受ける土御門。
「で、俺のグループ、Dはだな。『反乱因子の分析、打倒。および他のグループの同行の掌握、戦況の掌握。そのときの状況に見合った最善の策の実行』だな」
「…」
土御門以外の全員が無言になった。
「…おい、土御門。それは…」
「大丈夫大丈夫。いっちゃなんだが、正直今の俺はねーちんを倒せるくらいだし、他のメンバーも優秀優秀。これくらいやんないと割に合わないぜよ」
いつの間にかいつもの口調に戻る土御門。本人にとって、もう話し合いは終了したことになっているらしい。
「…まァ、コイツがそう言うンなら好きにさせればいいだろ」
一方通行(アクセラレータ)が、半分投げやりに言う。
「ですね。勝手にやって勝手に自滅する土御門も見ものです」
「ちなみに、そんな風になる気はないから安心していいぜぃ」
土御門がそういい、なんか妙な雰囲気で話し合いは終了…したらしい。なんかいろいろ腑に落ちねぇな…と上条は思った。

426とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参−Ⅲ−Ⅹ−Ⅲ:2010/05/22(土) 18:45:14 ID:ewuM7NXU
「…で、何やってたんだお前ら」
これは浜面が、唐突にいなくなって唐突に現れてきた上条たちに聞いた言葉だ。
まぁ、当然の質問だろう。
それに上条は、
「何って…知りたいのか?」
「は?」
「ただの無能力者(レベル0)のお前が…これを知ったらどうなるのか、分かった上で聞いてるのか??」
「え…?いや、話が理解できないけど?なんか知ってて当たり前、みたいな調子で言われる言葉のひとつも理解できねぇんだけど」
「…なら、聞くな。聞かない方が身のためだ」
「…わ、分かった…」
そんな二人の会話を、馬鹿馬鹿しそうに見つめていた一方通行(アクセラレータ)に、突然少女が飛びついた。
「飛びついた、なンて生易しいモンじゃねェぞこれェ!?クソがッ、離れろッ!?」
「んじゃーミサカに内緒で何をやっていたのか教えてー、ってミサカはミサカはあなたの首を少し絞めつついってみる」
「…喧嘩売ってんのかテメェ…ぶっ殺すぞ」
「ミサカを殺したら、あなたの能力は失われるよ♪ってミサカはミサカは愉快にいってみる」
半分以上本気で言われた、一方通行(アクセラレータ)の『ぶっ殺すぞ』を、あっさり返して見せる打ち止め(ラストオーダー)。
そんな光景を、土御門はうらやましそうに見つめる。
「…やっぱし一方通行(アクセラレータ)もカミやん病にかかってるぜよ…俺も一発…いや、百発くらいカミやんに殴られてこよ…」
「思考回路がかなりおかしいと思うのですが土御門。あなたにはそんな趣味があったのですか?」
「別に俺はMではないが、もちろんのこと高校生男子として健全な趣味は持ち合わせてるぜぃ」
「…理解できないです…いえ、だからって説明しないでください汚れます私にそのような知識を詰め込もうとしないでください私は神聖なる信徒のままでいたいんです土御門あなたのように堕落しようとは思いません」
…帰ってきても、馬鹿な話しかしない一同。良く言えば平和、悪く言えば馬鹿だ。
と、そんな時。

「あれ?とうま、短髪はー?」
突然、インデックスの声が上条の耳に響いた。
浜面だけではなく、滝壺のこともあしらっていた上条はそれを一時中断し、後ろを振り返る。
そこには、不思議そうに首をかしげているインデックスが突っ立っていた。
「…短髪、って美琴のことだよな。てか、お前と一緒だったじゃねぇか。どうしたんだよ?」
ちゃんとインデックスの質問には答えず、上条は逆にインデックスに聞く。
「わかんない。なんか気分悪そうだったから、おトイレかなー、って思って先にしすたーずって人たちのところに行ったんだけど、質問攻めにされてどう答えて良いのか分からなかったからとりあえず戻ってきたんだよ」
インデックスは完全記憶能力の持ち主だが、こと現代科学については疎い、なんてレベルの話ではない。
そんなインデックスが科学ワード満載の質問まみれにされれば、助けを求めてもどこも不思議ではない。
問題は、そこではない。
「気分が悪そうだった?あの美琴が??」
本人がそこにいれば、一億ボルトくらいの電撃は流すであろう言葉を発する上条。
「うん…あ、でも、気分悪そうというか…なんか、考え事してたような気もするかも」
「考え事?あの美琴が??」
やっぱりその場に美琴がいれば大変なことになりそうな言葉を発する上条なのだが、それは本気で言っている言葉だった。
彼女が、気分を悪そうにしているところなんて想像できない。強いて言えば、後輩の黒子に何かやられたときくらいだろう。それくらい、彼女は前向きに生きているように見える。
その彼女が、考え事ときた。
上条は、一度美琴のそういう場面に関わったときがある。
そのときの彼女は、本当に深刻な問題を、本気で考えていた。生と死、どちらをとるか…そんなことさえも考えるほどに。

また、同じくらいの問題が起こっているのではないだろうか。

427とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参−Ⅲ−Ⅹ−Ⅳ:2010/05/22(土) 18:46:24 ID:ewuM7NXU
「…ッ」
だとしたら、絶対に助けなければならない。そう上条は思う。
でも、このタイミングでそんな出来事が起きてもらえば、本当に複雑な話になる。
上条だけが美琴のほうへいっても良いだろうが、そうはいかないだろう。野次馬がくっついてくるはずだ。
そうなってくると、話が大きくなって、反乱因子に対抗することもままならなくなる。
「…どうする」
思わずつぶやいてしまう上条。いや、つぶやかなければ頭が整理できなかったため、か。
「?何が??」
インデックスがそう聞いてくる。彼女は美琴のことを心配していないのだろうか?
「あの短髪なら、とうまほどじゃないだろうけど、ある程度のことなら乗り切れるんじゃないかな」
とうまほどじゃないだろうけど、のところが妙にとげとげしいインデックスの言葉に、思わず上条は顔をそらす。
だが、そんな安いリアクションが出来るほど、インデックスの言葉である程度そう思うことが出来た。
しかし、だからといって放っておくわけにもいかない。
「でも、流石に見付からないままじゃまずいだろ。俺が探しに――――って、あれ?」
インデックスに、俺が探しに行く、というつもりだった上条の目の端が、何かを捉えた。
いや、何者かの動きを捉えた。
それは、
「チッ!あいつ、勝手に行きやがったか!!」
黒子が空間移動(テレポート)した様子だった。
黒子がこう動くことくらい予想できた。だから上条は、黒子に聞こえない程度に声を潜めていたつもりだったのだが…聞こえていたらしい。
周りを見ると、突然空間移動(テレポート)した黒子の行動に、場にいるほとんどの人間が首を傾げていた。
まずい、と上条は思う。
このままじゃ話が大きくなりそうだった。いつ起こるかわからない対反乱因子戦の前に、こんなことを起こす訳にもいかない。だが、だからといって上条の頭が天才的になるわけでもない。
単純に言って、打開策が見付からなかった。
「えーと…白井、だっけか?今空間移動(テレポート)したやつ」
葛城が、とうとう話を切り出した。
「確かそんな名前だったわね」
「どうしたんだ、あいつ?」
鏡子が応え、軍覇がさらに問いを投げかける。
「あ、ああ…あいつならトイレとか言ってたぞ?」
とっさに、適当に思いついたことを口走る上条。
だが、それがすぐに失言だと思い知らされた。
「はぁ?何でそんなことを言わなくちゃならないんですか?しかも異性に」
「そうだね。こんな脳みそもあるのか分からない人間にそんなことを伝えるような女には見えなかったけど」
アニェーゼとステイルに突っかかれた。
えーと…と、ステイルに言わせればあるかも分からない脳を必死で動かす上条。
しかし、やはり打開策も見付からない。
クソッ、どうすればいい。そもそも美琴はなん

「お姉さま(オリジナル)なら、先ほど見かけましたが、とミサカは平坦に言います」

へ?と間抜けな声を出して声のほうに視線を合わせてみると、
10人程度の妹達(シスターズ)を従えた、御坂妹がいた。…いや、御坂妹なのかは分からないのだが、雰囲気的にそうだと上条は判断した。
「あー、やっときたー。しすたーずさん」
インデックスが、妹達(シスターズ)を見回していった。言葉からしてやはり何か勘違いしているように思わなくもない。
「?えっと…」
上条はインデックスの言葉に違和感を覚えて、それを質問しようとしたが、言葉に出来ない。
「ああ、えっとね。私がこの子達にさっきのことを話したんだけど、やっぱり質問攻めにされて、一回戻ろうとした時に『お姉さま(オリジナル)は?』って聞かれて、それで短髪のことを教えてあげたら『じゃあ探そう』ってことになったらしくて。でも、見付からなかったからここに来たんだと思うよ」
なんか勝手に説明してくれるインデックス。だが、上条はそのインデックスの説明に慌てた。
今のインデックスの発言で、完璧に美琴のことがバレたはずだ。上条はそう思った。

428とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参−Ⅲ−Ⅹ−Ⅴ:2010/05/22(土) 18:50:53 ID:ewuM7NXU
上条は、恐る恐る周りを見渡す。
その上条の目に映ったのは、
不思議そうな顔をしたみんなと、

同じく不思議そうな顔をしている美琴だった。

「…は?」
美琴は、今の今までいなかったはずだ。それがいきなりこの場に出現するなんて――――
――――ありえる。
先ほど、黒子が美琴を探しに言った。それで黒子が美琴のことを空間移動(テレポート)させた、と考えればつじつまは合う。
合うのだが、何か釈然としない。
美琴のことを空間移動(テレポート)させたなら、自分のことも空間移動(テレポート)させるはずだ。
しかし、この場に黒子はいない。
…おかしい。
直感的に上条は思った。
しかし、上条はそれを顔には表さずに、美琴のほうに近づく。
「あ、いたのかよ美琴。インデックスと一緒にいなかったからさぁ」
「何よ、そのいちゃ悪い、みたいな言い方」
少し不機嫌そうに上条の言葉に答える美琴。
それに上条はなぜか一安心し、思わず美琴の肩に手を置いた。

幻想殺し(イマジンブレイカー)が宿る、右手を。

次の瞬間。
バギン、と音を立てて、

美琴の身体が散った。

「!?」
上条は思わず身構える。もちろん、ほかの連中も異変に気づいて身構えていた。
美琴の身体が、上条の幻想殺し(イマジンブレイカー)に反応し、そして消えた。
つまり、それは美琴の身体が異能の力によって作り出されていたことを示す。
しかし、そんな悪趣味なことをやるようなやつは、見方にはいない。
見方には。

敵がどうなのかは、上条には分からない。

「各グループごとに分かれろ!リーダーを中心に、場所を変えるぞッ!!」
土御門が叫んだ。こういうときの対応の早さには、流石に驚かされる。
しかし、驚いている暇もない。
かなりテキパキとした動きで、ほかの連中が散り散りになり始めた。
「リーダーは俺の話をほかの構成員に聞かせろ!妹達(シスターズ)とインデックス、滝壺と浜面は俺のところに来い!!」
更に指示を飛ばす土御門。
と、そんな土御門を見ていた上条の下に、いつの間にか軍覇とアニェーゼたちが集っていた。
「で、どうするんですか?」
アニェーゼが聞いてくる。ほかのメンバーもそう思っているだろう。
「とりあえず臨戦態勢はとったほうが良いだろう」
えーと…と口ごもっていた上条の代わりに、軍覇が言った。
「グループAはこの通路の右、Bは左、Cは前へ、俺たちは後ろに移動する!計画通りやれよッ!!」
もう移動を始めながらも、最後の指示を伝えた土御門たちは完璧に移動し始める。その彼の言葉に、デモンストレーションが入っていそうな気がしないでもない。
「…とりあえず、動くぞ」
まずい、と思いながらも、上条は土御門の指示通りにグループを動かす。
美琴がいないこのグループA、言っちゃ悪いがかなり戦力は低い状態だ。ここを叩かれればたまったもんじゃない。
応援を要請したいところだったのだが、他のグループも動き始めたのを見て、上条は走り出した。そのあとに、アニェーゼたちもついてくる。
不思議と、攻撃は来なかった。それが何らかの意味を持っているかのように。
一分後には、ほんのさっきまでにぎわっていた講堂には、誰も残っていなかった。

それは、唐突に戦闘が始まってしまっていたことを示していた。

429とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参−Ⅲ−Ⅹ−Ⅵ:2010/05/22(土) 18:52:14 ID:ewuM7NXU
気がつけば、美琴はふらふらとどこかを歩いていた。
…?と、辺りを見回すが、見覚えはない。後ろを振り返っても同じだった。
(…意識が、無くなっている…?)
記憶をたどろうとするが、一番新しい記憶は、不安に駆られて走り出したときだった。
そして、その場所とここでは、あまりにも景色が違いすぎていた。
周りは、埋め尽くさんばかりにあふれる…
「え…?」
と、一瞬美琴は自分の目を疑う。
自分の目をこすってみる。また目を開く。
しかし、飛び込んできた景色はまったく変わっていなかった。
「…ッ!!??」
美琴の目が映し出した『ソレ』。

大量の、
死体だった。

「…ぐぅ…ぇ…」
その全てが、無残に殺されている。頭の中をぶちまけていたり、胸の辺りが内側から裂けていたり、下半身がブツ切れになり、ソレが顔に乗っかっていたり…
全てが、尋常ではない死に方をしていた。美琴はソレを見て、口元を押さえる。
以前、一方通行(アクセラレータ)の実験を見たときがあった。
それを見て、美琴は頭のネジが全部吹っ飛んだ。そして、無謀にも一方通行(アクセラレータ)に勝負を仕掛けた。
その時は、『怒りの対象』がいたから、まだ頭のネジが吹っ飛ぶだけで済んだ。
しかし、今は。
今、この大量殺人劇を生み出した人物には、心当たりがない。
一気に頭まで上ってきた、美琴にもよく分からない『感情』をぶつけていい相手が、分からない。
よって、その『感情』は、美琴のうちに留めることしか出来ない。
しかも、今の今まで意識を失っていた…らしいのだ。意識を取り戻したときに見た一番最初の景色が、これ。
言ってみれば、授業中に居眠りをして、次に起きたときにはクラスにいた自分以外の存在が、全て惨殺死体になっていたようなものだ。
そのときにこみ上げてくる『感情』を制御できるほど、美琴の人間性は完成していない。
もはや、喉元までこみ上げてくる…それさえも意識が向かないほど、美琴の自我は崩壊していた。
突然すぎる。

430とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参−Ⅲ−Ⅹ−Ⅶ:2010/05/22(土) 18:54:25 ID:ewuM7NXU
妹達(シスターズ)の時だって、そうだ。
あまりにも突然にその正体を明かされ、頭の対処が追いつかなかった。どうすれば良いのか分からなかった。
しかも、それからある程度時間が経ち、美琴にとって『平和』といえる生活が続いたあと、これだ。
この死体たちに見覚えがあるわけではない。というか、あっても…この状態では、誰が誰だかわからない。
しかし、なぜか美琴の内に『感情』がわきあがってきた。
理由なんて分からない。だが、こみ上げてきてしまったものは、もう戻らない。
そして、その『感情』を制御できるはずもない。
「…ぎ…ぁ…ぉ…」
口から、意味もない言葉が漏れる。
身体中から、力という力が抜けるのが分かる。しかし、決して美琴は倒れない。
不思議だった。
まるで、今の『御坂美琴』が倒れても、他の『自分』が存在するんだから問題ない、とでも言うような感覚。
そんな感覚があった。
(・・・な、に・・・これ・・・)
必死に考えられたのは、たったそれだけの疑問。
そして、

「…何って、そりゃぁ『アンタ』よ。超電磁砲(レールガン)さん♪」

ビクン!と、美琴の身体が震えた。
また、この『声』を聞いた。さっき聞いたときも震えた気がするが、そんなことはどうでもいい。
そして、唐突に思う。本当にどうでもいいことのはずなのに、こんなときにそんなことを思う。
(…コイツ…は、こ…の、惨状…見ても、大丈…夫、なの)
「なぁ〜にが『惨状』よ。こんな甘っちょろいモンで、『私たち』がどうこうなるはずないじゃない」
今度は、痙攣さえしなかった。
認めてしまったからだ。
さっきの思考。それから分かる。
(…私は…わ、たし…以外の、『自分』の…存在を)
「そのとおり。認めたのよ、遅かったけどね…でも、『ただの人間』にしちゃ、合格ラインじゃない?」
…ふ、と、なぜか美琴の顔に笑顔が見えた。一瞬のことだが。
(…わ、たし…は)
いなくなるのかな、と、そんなことを考えてしまった。
まだやりたい事だって残ってるのに。まぁ、そんなのは当たり前だが。
気づいてみれば、あの『惨劇』のことは頭からなくなっていた。誰かと会話することが、こんなにも精神の助けになるかと思



「…あら。意外に、もういなくなっちゃった?」
――――――――
「…返答なし、か。本当にいなくなっちゃったぽいわね〜」
――――――――――――
「じゃ、私―――『現実殺し(リアルブレイカー)』が、御坂美琴の身体をのっとっても良い訳ね、『超電磁砲(レールガン)』さん」
――――――――――――――――
「…やっぱり、ただの人間どまりか。結局『私たち』が動かなくちゃいけないのよねぇ」
――――――――――――――――――――
「…仕方ない。それじゃ、やらせてもらうわよ」
―――――――――――――――――――――――――



「ふう」
突然、美琴の身体が動いた。身体の調子を確かめるように、準備体操のようなものを行っている。が、どこかぎこちない。
まるで、初めて準備体操をする幼稚園児のような。
「…そりゃ、肉体になんて縛られてるんだから窮屈なのは分かってはいたけど…」
身体を動かし続けながら、美琴は歩き出した。
「…これはないんじゃないかしら」
平然と、死体を踏みつけながら。
「こんな身体で――――――」
と、死体を踏みつけながら歩くその足を止め、空を見上げる。

「――――アレイスター=クロウリーと、エイワスに…勝てるのかしら」
まぁ、どうせ味方はもっといるとは思うけどね、とつぶやいて、もう一度その足は動き出した。

死体を、惨殺死体を、
今でも吐き出し続けている、謎の建物に向かって。

431とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参 行間:2010/05/22(土) 18:55:59 ID:ewuM7NXU
「…とうとう、自我の崩壊が訪れたか」
学園都市統括理事長―――――アレイスター=クロウリーが呟く。
『ふむ。意外にあっけなかったものだったな』
そのアレイスターの脳に、やはり直接響いてくるような声。
コードネーム、『ドラゴン』、エイワスの声だった。
「そうか?年端の行かない少女にしては立派だったと思うぞ。私は絶対能力進化(レベル6シフト)の時に、もう自我を崩壊させるものだと思っていたが」
『何を馬鹿な。あの時はまだ『私への対抗』もついていなかっただろうに』
アレイスターの言葉に、エイワスが不機嫌そうに言った。
「…ドラゴンの、封印…か」
そんなものが、ちゃちな人間ごときに宿るのか?
そうアレイスターは思うのだが、時として人間は考えられないほどの力を出す場合がある。
だが、
『どう考えても、『人間』を捨てたほうが簡単だろう、と?』
「ああ。実際そのとおりだ」
エイワスが、アレイスターの言葉を先読みした。
「実際問題、『人間を捨てた』私以上に、『人間、又は人間だった』者が力をつけた例は存在しない」
『本当にそうなのか?』
アレイスターの言葉を否定するエイワス。
「…ならば貴様は、誰かいるというのか、私以上の力をつけた『人間』が」
アレイスターはそう問う。
しかし、エイワスの口――――声から聞かされる言葉は、目に見えていた。

『上条当麻』

たった、たったそれだけの言葉。
ただの人間として生まれてきたはずの存在を表す言葉。
それが、この会話に出てくるのはとてつもなく奇妙なことだろう。
何せ、『人間ではない』二つの存在の会話なのだ。
さらに、その二つの存在は、世界の約60%を握っている。
そして、その二つの存在がその気になれば、世界のほとんどを手中に収めることが可能だろう。
…あくまで、『ほとんど』なのだが。
「貴様には、『アレ』が…『人間』に見える、そう言うのか?」
『見えない。だが、確かにアレは人間『だった』』
「…私には、『神によって生み出された存在』にしか見えていなかったのだがな、最初から」
『…それこそ、貴様は上条当麻という存在をはじめから掌握してた、とでも言うつもりか?』
続いていた会話が、エイワスの言葉により途切れる。
上条当麻という存在。
神浄の討魔という存在。
その存在を、初めから掌握する…
そんなこと、『人間だった』彼に出来るはずがない。
できるのは、
「…お前くらいだろう」

432とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 参 行間②:2010/05/22(土) 18:57:29 ID:ewuM7NXU
『私とて、初めから神浄の討魔の存在は掌握しきれていなかった。その必要がなかったからな。だが、上条当麻は違う。初めからするべきことが分かっていてそれをしないほど、私は無能じゃない』
「…何が『無能ではない』だ。お前以上に有能な存在がいるのか」
『…『人間』…ではないのか』
ポツリと呟かれたその言葉に、アレイスターは思わず顔をしかめた。
「…とりあえず、だ」
この話題をしていても、ただ疲れるだけだ。それは前々から分かっている。
「今は、御坂美琴のほうが優先順位は高いだろう?」
『そのようだな』
エイワスも、この話題に疲れていたらしい。素直に応える。
「今、彼女の身体を構成しているのは、現実殺し(リアルブレイカー)と竜王封じ(ドラゴンセプト)のみ…そう考えるのが妥当だろう」
『超電磁砲(レールガン)は消滅した、と?』
「…」
また、エイワスの言葉で少々の間が空く。
『本当にそうなのか?』
「…分からない」
ついに、ドラゴンの問いに、アレイスターはそう応えてしまう。
『私の予想だと、超電磁砲(レールガン)は竜王封じ(ドラゴンセプト)と混濁するぞ』
「それは貴様の問題だろう」
『つまり、同時にお前の問題でもあるな』
何回会話が途切れれば気が済むのだろう、とアレイスターは思う。
「…御坂美琴…いや、現実殺し(リアルブレイカー)が向かったのは、垣根聖督の本拠地だな」
『本拠地も何も、そこにしか居場所はないらしいが?』
アレイスターはエイワスの言葉を無視して続ける。
「今の聖督に…いや、ほとんどの人間に現実殺し(リアルブレイカー)を阻止する力はないと思うが」
『あってもらっても困る。そして、なかったところで問題ではない。超電磁砲(レールガン)と竜王封じ(ドラゴンセプト)が勝手に暴走を止めてくれるだろう。止めなければ自分たちの存在が危ういのだからな』
そうだろう、とアレイスターも思う。超電磁砲(レールガン)がまだ存在している、というところは信じ難いが。
「…だが、それならばなおさら問題だろう。超電磁砲(レールガン)が主導権を握れば、狂乱能力(バーサークスキル)は酷過ぎるぞ?」
『それも問題ないだろう。超電磁砲(レールガン)が現実殺し(リアルブレイカー)が現れた後に主導権を取り返せば、現実殺し(リアルブレイカー)の力を操れるはずだ』
「取り返すことが出来たら、の話だろう?」
『彼女たちの目的…感情は、利害を一致させている。もともと人間ではない『現実殺し(リアルブレイカー)』に人間の『御坂美琴』を操らせるより、人間の存在である『超電磁砲(レールガン)』が御坂美琴として動いた方が効率はいいだろう。それくらい現実殺し(リアルブレイカー)が気づかないはずもない』
…と、また沈黙の時間が流れる。
「…上条当麻たちの方は」
『心配せずとも、勝手にやってくれるだろう。意外に高い能力を持ち合わせているしな。それに、まだイギリス清教の介入が薄い。まだ隠し玉があると考えたほうが妥当だ』
そこまで言うと、エイワスは一度言葉を切ってこう言った。
『これで一段落ついたと思うか?』
「…ああ。とりあえず、反乱因子の件についてのは、な」
『では、私は私のほうに移らせてもらうぞ』
そう言うと、エイワスの言葉は聞こえなくなった。
「…まったく」
わからなすぎるな、と、アレイスターは言った。
世界の半分以上は自分たちが握っているはずなのに。
その気になれば、そのほとんどをこの手のひらに収めることも可能なはずなのに。
それでも収まりきらなかった『可能性』が、予想できない。何もかも。
「…考えても仕方がないか」
この頃の学園都市統括理事長には、考えるべきことが多すぎるらしい。
一度、それら全てを手放す必要もあるか、と、学園都市統括理事長――――アレイスター=クロウリーは考えた。

433神浄の討魔=美琴信者:2010/05/22(土) 19:03:08 ID:ewuM7NXU
とゆうことで、とりあえず降下終わり&三章終了でーす。
の前に、ひとつ謝罪。
アレイスターさんとエイワスさんの口調よく把握していないので勝手に口調作りましたすみませんッ!!!
…会話シーン少ないんだもんあの人たち。ウルトラ超重要人物のはずなのに…
ってことで、次の降下時はまったく持って不明。一応部活動に追われる身なので…ってことで受験生でもありますがそこら辺はスルーでwww
そんなこんなで、次の降下時まで。
ではー。

434■■■■:2010/05/22(土) 21:30:31 ID:6q7U4czM
>>433
徐々に物語が加速してきましたね。
何気に大変な時期であるにもかかわらず投下お疲れ様です。
続きを楽しみに待ちつつ、リアルも頑張ってください。
激しくGJでしたよ。

435ゆりかご:2010/05/23(日) 00:08:29 ID:vYU2V4OM
ミサカミコトを投下します

436ミサカミコト:2010/05/23(日) 00:09:23 ID:vYU2V4OM
「……気付いたかい?」
上条当麻は目を覚ました。
瞼を刺激する光が、徐々に脳を活性化させる。
最初に跳び込んできたのは、カエル顔の医者だった。
「……あ」
「私が誰だか、分かるかな?」
「………はい、ここは?」
「記憶は無事みたいだね。此処は病院だよ。君がいつも運ばれてくる病室じゃないけどね?」
痛い。
右腕を上げようとしただけで、激痛が走った。布団をはねのける事すら少し力が入る。だが、こうしてはいられない。一瞬で眠気は吹き飛び、悲鳴を上げる肉体を無視して上半身を起こした。
「っ!あいつはっ!美琴は…どうしたんです!?」
上条当麻は医者に向かって思い切り叫んだ。
悪夢のような出来事が脳裏に蘇る。
御坂美琴は撃たれて、絶命した。
何度呼びかけても反応せず、銃創からとめどなく赤い血が流れていた。本能が気付いた。彼女は死んだのだと。「天使」を引き連れた雲川芹亜が、何のためらいも無く拳銃で撃ち殺した。
頭が怒りで沸騰しかけた時、

「君のそばにいるじゃないか?」

と、カエル顔の医者が反対側を指差した。
へ?と間の抜けた声を出した後、振り返ると。
ベッドによりかかるように寝ている御坂美琴の姿があった。
上条当麻の体から力が抜ける。
常盤台の制服、茶髪のショートカット。どこからどう見ても彼女だった。
「何か変な夢でも見たのかな?血塗れの君が病院に運ばれたって連絡したら、跳んできたんだよ?生け花の水を替えたり、君の事をずっと見ていたらしいよ?」
「先生が、美琴に…連絡したんですか?」
「彼女の妹達がね」
「…そうですか」
医者は、幾つか質問し一通りの検査を終えると、そのまま帰っていった。
「常盤台寮には連絡しておいたからね…可愛い彼女にあんまり心配をかけるんじゃないよ?」
「はい…ありがとう、ございます」
扉を閉めて、医者の足音だけが廊下に響いていた。
包帯を巻いた手を動かし、寝ている少女の髪を撫でた。
柔らかい。
温かい。
それだけで、上条当麻の心は穏やかになった。
妙にリアルな夢だった。
あれは幻だったのだろう。
御坂美琴はこうして生きている。
死んでいない。
少しだけ視界が歪んだ。
そうして、
少年の幻想を壊したのは、他ならぬ彼女の声だった。

「御坂美琴は死んだよ。上条当麻」

ブゥン…と耳障りな電子音が鳴ると、そこに御坂美琴が現れた。
いや、彼女では無い。
彼女と同じ容姿を持ち、DNAまで酷似している少女。
「ミサカワースト…か?」
「そうだよ。これは熱工学迷彩だ。最近、ようやく実用化にこぎつけて、まだテスト段階だけどね。だが、貴方が私に気付かなかったことを見ると、これは使えるな。
ロシアでの件は感謝しているよ。お礼に…」
病院には似つかわしくない白いアーミースーツを着込んだ彼女は、一直線に上条当麻に迫ると、暴力的に唇を奪った。
「うっ…!?」
生温かい感触が、ヌメリと侵入した。
それが彼女の舌だと気付いたのは、数秒遅れた後だった。
鼻につく女の汗の匂い。
本能を刺激する異性の香り。

437ミサカミコト:2010/05/23(日) 00:10:28 ID:vYU2V4OM
だが、その中に潜む生臭い泥の匂いが、上条当麻を拒絶させた。

力を込めて、彼女を引き離す。
その反応に臆する事も無く、ミサカワーストは少年と距離を取った。
「いっ、いきなり何するんだよ!」
パジャマの袖で口元を拭う。
「女の子のファーストキスに対して、それは無いんじゃない?私でも結構ショックだよ」
うるせぇ…と小声でつぶやいた上条当麻は声を張り上げた。
「美琴が死んだ?何言ってやがる。美琴はここに…」

「御坂妹は起こしてやらないでくれよ。新しい感情アプリケーションがインストールされて、まだそんなに時間が経ってないんだから」

上条当麻は凍りついた。
「御坂…妹?」

「そうだよ。そこにいるミサカ一〇〇三二号が次の「御坂美琴」になるんだ。祝ってくれてもいいじゃないか」

言葉が出ない。
頭をバッドで殴られたように思考が停止した。
「御坂妹は頑張ってるんだよ。能力開発に、勉強、料理、美容の勉学。上条当麻に好かれたい一心で。
可愛いだろ?毎日毎日学んで努力して。それがようやく日の目を見る事になったんだ。それが、フルチューニングの犠牲の上に成り立っていたとしても…だよ」
ミサカワーストは淡々と残酷な言葉を並べる。
「知らないと思うけど、今や御坂妹は私と遜色ない「大能力者(レベル4)」なんだよ。一方通行と「打ち止め」が死んだ現在では管理者は彼女だし、ミサカネットワークを利用して、改良した「幻想御手(レベルアッパー)」を使用すれば、八億ボルトの電気を操れるエレクトマスターになれる。
後は演算能力さえ訓練すれば、立派な「超能力者(レベル5)」だよ」
声高らかにミサカワーストは公言した。
 上条当麻はただ聞くだけ。
 唇がわなわなと震えだした。
御坂美琴より少し成長した彼女を見上げ、上条当麻は張り叫ぶ。
「フルチューニングはっ…!御坂美琴はっ!死んだのか!?」
「…正確には74号。シスターズが量産される前に作られたプロトタイプ。一体18万という安価なシスターズとは違って、ちゃんとした人間の子宮と高価な培養機を使って作られたリッチなクローンだよ。
……彼女は死んだ。雲川芹亜に心臓を撃ち抜かれて即死だった。死体は私も確認したから間違いないよ。
予定では貴方が殺す予定だったんだけど…アレイスターの計画も、ちょっとヤバいかもね」
上条当麻の手にミサカワーストは何かをそっと置いた。
手に置かれたものを見る。
それは、御坂美琴の誕生日に勝った、安物ヘアピンだった。
肌身離さず持っていた彼女のモノが、ミサカワーストが持っている。この事実だけで、彼女の言葉が嘘では無い事は明白だった。
だから、あの悪夢のような出来事は、まぎれも無い現実。
「…怒らないで、聞いてくれる?」
「………」
上条当麻は答えない。
それは無言の了解だと受け取り、ミサカワーストは口を開いた。
「私はね。これで良かったと思ってる」
「……」
「ミサカたちは貴方に恋をしていた。生きる理由をくれた貴方を、愛していた。愛という感情が理解できなくても、この暖かくて、強い気持ちは彼女の生きる糧となっていた。
辛い事があっても、なんとかやってこれた。
でも、御坂美琴に貴方が目を向け始めて、皆は変わっていった。
 私たちの姉妹を殺し続けた一方通行に憎悪という感情を理解し始めた頃、同時にフルチューイングに対する嫉妬という感情も理解した。
 自分が愛する者が、自分に愛を向けてくれない悲しさ。
それを彼女たちは認識した。彼女たちを支えてきた根本が揺らぐことで、彼女たちは知ってしまった」
己の存在理由。
それは誰しも悩まされる問いだ。
自分は何のために生まれきたのだろうか。
殺されるために生み出されたのだと強制的にプログラムされていた彼女たちが、とある少年の出会いによって気付いた一つの疑問。
その波紋は、統制された意思に歪を作り、個々の意思を生み出し、そして感情を生み出した。

438ミサカミコト:2010/05/23(日) 00:10:54 ID:vYU2V4OM
「お姉様と慕っていた彼女が死んだ。私たちは悲しかった。でもね、同時に嬉しかったんだ。顔かたちが同一の存在でありながら、なぜ自分たちは愛されないのだろうと思っていた矢先の出来事だ。
これで、上条当麻は私たちに目を向けてくれる。
弊害は在るものの、シスターズの一人を愛してくれれば、その感情を皆で共有することができる。そう思ってしまったのさ。
でも、このような感情は人間が誰しも想うことさ。
愛が強ければ強いほど、届かなかった時の絶望は深い。
だから、彼女たちを理解してくれ。貴方が彼女に愛してくれた時、私たちはフルチューニングと同じ、いやそれ以上に貴方に愛を注ぐつもりだよ。私のお墨付きだ。安心してくれていい」
カーテンが揺れ動くとともに、冷たい空気が病室に流れこむ。
それを最後にミサカワーストの姿は、夜空に消えた。

上条当麻は、ただ泣くことしかできなかった。

439ゆりかご:2010/05/23(日) 00:14:07 ID:vYU2V4OM
すいません!sage入力忘れてもうしわけありません!
かなり短いですが、一応5章程で終わります
投下時期もまちまちなので、あまり期待しないでください
鬱というより、英雄の対価、というのがテーマです
以上です。

440■■■■:2010/05/23(日) 01:02:45 ID:W3cydeKM
更新ラッシュとはありがたい話だ
>>439
投下お疲れ様です。
ミサカワースト登場とな!?今後の展開が非常に気になりますね。
☆の陰謀といい、ダークテイスト大目の物語も個人的にツボです。
続き期待してます。頑張ってください。

441■■■■:2010/05/23(日) 02:10:59 ID:hlhkIAz.
>>342>>371
感想ありがとうございます。

わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜4を投下します。
1は>>211
2は>>288
3は>>325
からです。
注意点としては、

あー、今回は特にないです。
今週はあんまり話が進まなかったんでバトルしない、と言うことくらいでしょうか。

では、投下します。

442わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜4:2010/05/23(日) 02:11:51 ID:hlhkIAz.
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「どう、して……」
ショチトルがほぼ反射的に『自殺術式』を解除すると、カランカラン、と軽い音を立てて鉄パイプが佐天の手から離れてコンクリートに転がった。
その軌跡を辿って赤黒い何かが地面に掠れた直線を描き出す。
それは――赤黒い何かは、佐天の側頭部から溢れ出て止まることはない。
「くそっ!」
ショチトルはマクアフティルをかなぐり捨てると、足をもつれさせながら佐天のもとへ駆け寄った。
「目を覚ませ!くそ!この、大馬鹿野郎が……」
床に膝をつき佐天の身体を揺するが、反応はない。
目を閉じてぐったりとしたまま全く動かない。

全く、動かない。

――どうして。
ショチトルの思考が混乱する。

どうして自分を攻撃しようとしたのか。
彼女は暗部組織の人間に捕まっていたのではなかったのか。
だというのに、なぜまるで暗部組織の人間を庇うような真似をするのか。
わからない。
何も、わからない。
ただ一つだけ確かなことは、

「私、が……」
彼女を、佐天涙子を傷つけたのは自分自身。
守ろうとして、
守るどころか私は彼女を殺――

「落ち着いてくださいっ!」
「!?」
後方から鋭い声が飛んできた。
振り返ると、先程まで戦っていたワンピースの少女――絹旗がこちらへ駆けてくる。
『自殺術式』を解いたおかげで右手の自由も戻っているらしく、既にコンテナはそこらに捨て置かれている。
「どいてくださいっ」
構えることすら忘れ、呆然としているショチトルを横へどかすと、絹旗は佐天のそばに座り込んで少女の脈拍を確かめ始める。
「きちんと息はしてます!超早く病院に連れて行けば大丈夫です!」
「お、おいっ」
「何ですか?」
絹旗はこちらの言葉に振り返りもせずに応えると、立ち上がり自分のワンピーススカートの裾に手をかけた。
力を入れるような動作をすると、ビリリ、とスカートの裾がいとも簡単に破ける。
そして絹旗はリンゴの皮むきのようにスカートの裾を一巻き分破り取った。
「お前は、一体……」
「あなたが佐天さんに駆け寄ったのを見て確信しました。多分、私はあなたと超同じ目的でここにいます。……私は、佐天さんを暗部組織から逃れさせるためにここまで避難させてきました」
「! そんな……」
「お互い変な風に超勘違いしてしまっていたようですね」
絹旗は破り取った布の両端を掴んで左右に引っ張る。
女子の腕力とは思えない程の剛力をかけられ、布は着古した洋服のようにどんどん伸びていく。
「それじゃあ、私はこいつを……無用な戦いに巻き込んで……」
「後悔している暇があったら手伝ってください。佐天さんを助けるために」
ピシャリと言い放ちながら、絹旗はショチトルに伸びきった布切れを差し出した。
モコモコとした素材であったためか、元々は絹旗のウエストほどの長さしかなかったそれは、包帯半巻き分くらいの長さにまでなっていた。
「包帯くらい超巻けますよね?これで佐天さんの頭を巻いてあげてください」
「……あ、あぁ。分かった」
テキパキと動く絹旗を前に多少落ち着きを取り戻したのか、ショチトルは布切れを受け取ると佐天の頭を床から浮かせて、丁寧に巻いていく。

冷静に観察すると、確かに佐天には息があった。
便宜上『自殺術式』などと呼んでいるが、その実態は『原典』の自己防衛機能に頼ったカウンターでしかない。
相手の武器によって相手を攻撃するということは、つまり相手の武器に自身を殺傷するだけの力がなければ『自殺』は成立しないということだ。
引き金さえ引けば高い殺傷能力を持つ銃弾を吐き出す銃なら兎も角、佐天の所持していたのはただの鉄パイプである。
それを女子の力で思い切りに振って自分の頭を殴ったとしても、即死とはいかないだろう。

だが、ショチトルが布切れを巻く間にも佐天の頭から流れる血は止まることはなく、布切れはすぐに赤黒く染まっていく。
即死ではないとしても、怪我の程度が酷いのは瞭然。
包帯を巻いたから安心、などといく訳がない。
故に、
「こ、こんな程度の処置では……」
助からない、という言葉は飲み込んで問いかけたショチトルに、
「大丈夫です。私が応援を呼んで、超迅速に車を回してもらいますから」
絹旗は携帯を取り出しながら素早く告げた。

443わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜4:2010/05/23(日) 02:12:08 ID:hlhkIAz.
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
声音では冷静にそう言った絹旗だったが、携帯を持つ彼女の手は小刻みに震えていた。
(佐天さんっ……)
結局、取り返しがつかないくらいにまで巻き込んでしまった。
最早自分の正体を明かす明かさないの話ではなくなった。
兎に角佐天涙子という少女の命を守らなければ。
(落ち着け、大丈夫)
先程ショチトルに告げた言葉を心の中で繰り返す。
それは決して根拠のある言葉ではなく、言ってしまえばただの願望――幻想でしかなかった。

ここは『道』から発展して出来た『街』。
娯楽施設が大半で、病院はない。
しかし隣街の病院まで、車で飛ばせば10分程度なので、特に問題はない。

――巫山戯るな。大ありだ。

現在近くにすぐに乗れるような車など放置されていない。
そしてショチトルには助けを呼ぶと言ったが、今の絹旗にアテなどない。
一番に思いつくのは隣街から救急車を寄越してもらうことだが、それでは単純計算で病院に着くまで20分以上かかる。
いや、それ以前に学園都市の『表』の機関に関わる訳にはいかない。
頼めば佐天の治療はしてくれるだろう。
しかし彼女が怪我をしたそばに絹旗最愛という『暗部の人間』がいたことが上層部に知られれば、都合の悪い勘ぐり方をされて佐天に迷惑がかかるのは必至だろう。
ならば次に思いつくのは『アイテム』やその下部組織か。
彼女たちならまだこの『街』の中に留まっているだろうし、車も直ぐに用意できる。
だが、それも土台無理な話だ。
そもそも絹旗は彼女たちから佐天を逃れさせるためにここまで来たのだから。
それではまるっきり本末転倒である。

――超どうすればいいんですか。

携帯を握り締め、アドレス帳を高速で捲りながら歯噛みする絹旗。

――どうすれば、いいんですか!

これは報いか。
抗わなかった自分が、今更流れに逆らおうとしたからか。

――誰か、誰か……!

果たして、絹旗はその名を見つけた。

先程、酷く傷つけてしまった。
自分勝手な幻想を押し付けて、自分勝手に失望して、突き放してしまった。
それでも、今この状況を救える立場にいるのは『彼』しかいない。

暗部組織とは関係なくこの『街』の中にいて、車を用意できるかもしれないただ一人の絹旗の知人。

「浜面っ…………」

絹旗は震える指で通話ボタンを押した。

444わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜4:2010/05/23(日) 02:12:24 ID:hlhkIAz.
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「浜面っ!」
3コールで出た浜面が何か言葉を発するより先に、絹旗は叫ぶ。
「まだショッピングモールにいますよね!?超今すぐショッピングモールの駐車場から車をくすねて、『街』の外れにある廃棄施設まで超特急で来てください!」
ともすれば滅茶苦茶に喚き出してしまいそうな心を自制して、伝えるべき情報だけを言葉に変換していく。
「補償はこちらで受け持ちます!出来れば後部座席に人が寝かせられるようなワゴン車を!GPS情報は今からメールで送りますから!」
一方的に用件を告げると、案の定暗い声音の言葉が電話口に響いた。
『……んだよ。来なくていいって言っといて、今更仕事しろってのかよ』
「い、いえ……そうではなくて」
状況を説明しようとする絹旗に、浜面が声をかぶせる。
『人が寝かせられるようなワゴン車?始末した死体でも乗せるってのか?』
「っ……」
その言葉は、浜面の側からしたらただの当てつけだったのだろう。
能力がないことを詰られ、中途半端と蔑まれ。
ならば仕返しに皮肉の一つでも返したくなるのは当然だろう。
だが、絹旗にとってその言葉は。

『始末した死体でも乗せるってのか?』

自分のせいで傷つけてしまった佐天涙子という一人の少女が――助けが間に合わずに衰弱し、死にゆくというビジョンを生み出すのに充分なものだった。

「うっ……」
自制していた筈の心が大きく揺らぐ。
――泣いたら駄目だ、と思った。
散々浜面を貶したくせに、いざ自分に不都合が起こったら泣き落としで言うことをきかせるような真似は――そんな卑怯なことはしたくなかった。

さっきのことを誠心誠意謝って。
許してもらって、その後で改めて『お願い』する。
そうしなければ――泣き落としで言うことをきかせて浜面を『利用』するのではなく、一人の友人である浜面仕上と対等な場所に立って『お願い』をしなければ――佐天涙子という少女との友情が、嘘になってしまうと思ったのだ。

けれど、

「はま……づらっ……」
コンクリートの床を、水滴が叩いた。
「助けて…ひっ、ください……」
涙が溢れ出す。
「佐天さんが……うっ、私の…友達、なのにっ………私、の……せい、っで……」
言葉が零れ落ちる。
「し、死んじゃうかも……しれなくて……でもっ、私、何も出来なくて……」
謝ろうと思ったのに、対等でありたかったのに。
涙に押し出されるように、助けを請う言葉は止まらない。
なぜなら、絹旗は。
絹旗最愛は。

『アイテム』だとか、
『強能力者』だとか、
『窒素装甲』だとか、

そんな『下らない何か』であるより先に、

「たすけて、はまづら……」


――1人の『か弱い女の子』なのだから。




『――分かった。すぐ行く』
簡潔な返事が、電話の向こうから聞こえてきた。
「え……?」
『絶対助けるから。助けに行くから。だから、もう泣くな。あと、嫌味言って悪かった』
続けざまにそれだけ言うと、通話が切られた。
数秒ほど放心した後、我に返った絹旗は慌ててGPS情報を浜面に送るため携帯を操作する。
情報を入力し、メールを浜面に送信する。
『送信完了しました』というメッセージの表示されているディスプレイを見ながら、絹旗は思った。

――あれは、本当に浜面だったのか。

『――分かった。すぐ行く』
そう言った浜面の声音には、初めのいじけた暗い様子は微塵も感じられなかった。
それどころか、
『全て俺に任せろ』とでも言うかのようなしっかりと落ち着いた声音は、


まるでヒーローのようですらあった。

445わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜4:2010/05/23(日) 02:12:43 ID:hlhkIAz.
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「ほら、拭け」
「あ……ありがと、ございます…」
ショチトルは余った布切れを黒曜石のナイフでハンカチ程度の大きさに切ると、ボロボロと泣いている絹旗に寄越した。
「全く……人には落ち着けと言っておいて自分は突然泣き出すとはな。まぁ、そのおかげでかえって落ち着いてしまったがな」
「超すいません……」
ちーん、と鼻を噛みながら応える絹旗。
「とりあえず血は止まったようだ。無論予断を許す状況ではないがな。車は手配できたのか?」
「は、はい。超直ぐに来ると思います」
「だったらこいつを車に上げるために担架でも作っておくか」
「あっ、でしたら上に佐天さんを寝かせておいた超適当なベッドが残ってる筈ですから。それを使いましょう」
「分かった、……あー、自己紹介は必要か?いや、お互いそんな立場にはいないか」
「いえ……絹旗。絹旗最愛です。佐天さんの知り合いというのなら、暗部も何も超関係ないですよ」
「そうか、私は……」
ふと、『今の名前』を告げようとしたショチトルだったが、
「……ショチトル。そう呼んでくれ」
「おや、日本の方ではないのですか?それとも超偽名ですか?」
「いや、本名だ。日本人でもない。……そこは深く突っ込まないでくれるとありがたいな」
「はぁ、それにしては超日本語上手ですね」
「……そういうお前は日本人のくせに下手くそだな。『超』というのは度を超えて特異なものにつける接頭語だろう。そんなにホイホイと使うものじゃない。お前の方こそ偽名なんじゃないか?」
「な、失礼な!人のキャラクターに超ケチつけないでください!」
「……まさか作って」
「た、担架持ってきますので佐天さんのこと超見ててください!」
「……………」
半眼で呆れるショチトルの視線を背中に浴びながら、絹旗は階上に上がっていった。

♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
spark_signal_

学園都市のネットワークの深部に潜っていた初春はやがて、学園都市の情報漏洩を阻止することを目的として結成されたその組織に辿り着いた。
「これは……何というか、学園都市というのは結構ダメダメなんじゃないでしょうか」
思わずそう呟いてしまったのは、『block』のみならず『spark signal』までが裏でこそこそと何かを企んでいることが分かったからだ。
どうやら『spark signal』は学園都市中に秘密裏に張り巡らされているという、特殊なネットワークのことを嗅ぎ回っているらしい。
そのネットワークは完全に他から独立しており、また不用意に情報を取りだそうとすると内容が変質してしまうという、非常に機密性に優れたもののようだ。
そして『spark signal』は、そのネットワークから『内容を変質させないための正しい情報の摘出方法』を独自に研究、解明してしまっていた。
随分とご苦労なことだが、そうまでして情報を得ようとしているのは学園都市の敵対勢力ではなく身内、それも情報漏洩を阻止する側の組織である。
学園都市はこの事態に気づいていないのだろうか、と半ば呆れ、半ば心配になるが、学園都市の深部まで不法侵入している初春にとやかく言えたことではない。

それよりも、である。
学園都市中に張り巡らされたネットワーク。
恐らくは監視カメラの延長にあるものなのだろう。
その情報が得られれば、現在の絹旗最愛や佐天涙子の動向も分かるに違いない。

「……………」
初春飾利はディスプレイを睨む。

underline_

ディスプレイに表示されたその文字列は、初春に問いかけていた。
『ここからが本当の闇だ。お前に足を踏み入れる勇気はあるのか?』と。

「――望むところです」
不敵に笑いながら呟くと、初春はエンターキーを叩いた。

446わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜4:2010/05/23(日) 02:13:43 ID:hlhkIAz.
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
通話を切ってから3分半。
浜面が運転する一台の黒いワゴン車が廃棄施設に乗り込んできた。
「来たぞ!何をすればいい!」
ドリフトを決め、ワゴン車を横向きに停車させると、その運転席側の扉を勢いよく開いた浜面が絹旗に呼びかける。
「グッジョブです浜面!後部座席を!」
絹旗は既に応急処置を終え、簡素な担架の上に寝かせていた佐天をショチトルと協力して持ち上げる。
「おう!」
浜面は阿吽の呼吸でワゴン車の後ろの扉を開き、後部座席を倒してスペースを作る。
そこに佐天の身体を担架ごと丁寧に横たえると、絹旗は助手席に回り込む。
それを見越して助手席側の扉を開けた浜面だったが、
「は!?」
浜面の目の前に予想外の光景が飛び込んできた。
それは、
「え!?おま、ちょ!それ、パンツ!絹旗パンツがパンツでパンツしててパンツなんだけどお前どうしたパンツ!?」
パンツ丸出し状態の絹旗最愛の姿だった。

447わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜4:2010/05/23(日) 02:14:00 ID:hlhkIAz.
さて、ここまで誰も突っ込む者がいなかったので描写はしなかったのだが――紳士・浜面がこの緊迫した場面であるにも関わらず空気を読まずにそのことに突っ込んでしまったので、やむを得ず解説することにしよう。
先程絹旗は自分のワンピーススカートの裾の部分を切り取って佐天の頭に巻く包帯を即席でこしらえた。
ワンピースの裾――そう、あの極悪に短いワンピースの裾である。
当然ながらワンピースは切り取られた分だけ短くなる訳で。
そして絹旗のワンピーススカートにとっては例え一巻き分切り取られただけであっても致命的な訳で。
まぁ、つまり絹旗最愛のワンピーススカートは、そのスカートとしての役目の一切を放棄していたのである。
しかも切り取られたのが一巻き分であったことが災いして、絹旗のワンピースの裾は丁度その真っ白なショーツの上あたり――それでいてお臍まではさらけ出さないという絶妙な位置まで後退していた。
故に絹旗のお臍の下にはショーツとワンピースの裾との境界によって、さながら旧時代のスクール水着に見られるような素敵ラインが作り出されている。
しかし、そう見えるからと言って絹旗の下半身を締め付けている小さな布地は決して水着などではなく、紛うことなき下着なのである。
それは水着とは違い衆目の下に晒されることの許されない神聖な衣類であり、その一方で上半身は普段目にする通りのワンピース(とはもう言えまい、セーターと言っても遜色ないだろう)のままであるというコントラストは、『上下共に下着姿』という半裸状態よりも尚一層の破壊力を持っていた。

最早それはエロではない。
完全にエロを超越している。
超エロ、である。

「……は・ま・づ・ら」
さて。
そんな超エロフィーバー状態の絹旗最愛の姿を視界に収めた浜面は、まぁ当然のことながら生命の危機に瀕していた。
額に分かりやすく怒りマークを浮かべ、先程ショチトルと戦った時とは比べ物にならない程大きなコンテナを右手一本で持ち上げている絹旗によって。
「ちょ!いや、不可抗力だろコレは!」
「そんなことは超関係ありません!見たという事実が問題なんです!過失致死も裁かれるんです!」
「つーか裾切らずにワンピースの腕の部分とか破りゃよかっただろがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「そんなんじゃ長さが超足りなかったんです!裾のモコモコしてるとこが超必要だったんですよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
ぎゃあぎゃあと言い合う絹旗と浜面。
「おい、お前ら……」
それを見かねたショチトルが止めに入ろうとしたその時。

ドォン!という轟音が響いた。

「何の――!?」
音だ、とショチトルが疑問を音声に変換するより先に、二度目の轟音と共に答えが『襲いかかってきた』。
絹旗達のいる、一階部分にコの字型の吹き抜けを持つ建物。
その『コ』の縦棒に当たる面を、外側から光線のようなものがぶち抜いたのだ。
それは絹旗達の頭の上を通り過ぎただけで、彼女達に直接的な被害は無かったが、しかし状況がマズい方向に動いていることを悟るには充分なものだった。

敵襲。

それ以外にはありえまい。


だが――甘かった。
敵襲という認識だけでは、明らかに甘かった。
「そん、な……」
呆然と呟く絹旗。

壊された壁面。
そこから臨む風景の中に、つまりは壁の向こう側に、絹旗は人影を認めた。
恐らくはその人物が今の光線のようなものを放ったのだろう。
そしてその前に聞こえた轟音は十数棟並ぶ同様の建物のどれかに攻撃した音。
その人物は居並ぶ十数棟の建物にランダムに光線を撃ち放っているのだ。
絹旗達がどの建物に潜んでいるのか分からないから――という理由からだろうが、だったら最初から反対側に回り込めばいい話だ。
要するに、波状攻撃を仕掛けて絹旗達をあぶり出そうという魂胆なのだろう。
巫山戯ているのだ、その人物は。

――巫山戯るな。

何故、とは思わない。
『アイテム』に処分された『スクール』の狙撃手の報復。
筋なら通っている。
理解はできる。
だが、
どうして今。
よりにもよって今なのか。
(麦野のヤツ!超余計なことしてくれましたね!あなたが狙撃手を殺したせいで、あなたの目論見通りアレが出てきちゃったじゃないですか!おかげでこっちは超大迷惑ですよ!!!)
心中で毒づく絹旗の見つめる先に――

学生服に似た服を身につけ、
ズボンのポケットに両手を突っ込んで。

学園都市に七人しかいないレベル5、
その第2位に位置する男、

『未元物質』――垣根帝督が立っていた。

448■■■■:2010/05/23(日) 02:16:01 ID:hlhkIAz.
以上です。
やっぱり短いですね。
ていとくんと戦うまで書きたかったのですが。

こんな感じで、毎週週末に一回更新していくつもりなので、よろしくお願いします。

449■■■■:2010/05/23(日) 19:31:35 ID:cVhcqk7U
GJです
ていとくんはショチトルの自殺術式で足止め出来そうなんだよな・・・

450■■■■:2010/05/24(月) 13:18:01 ID:36nRLajk
GJ!
浜面に覚醒の兆しが……絹旗との絡みは滝壺のそれと違ってまた良いものですね。
ひとつ苦言を呈するなら、underlineはやり過ぎなんじゃないか、ということです。
初春は守護神と囁かれる凄腕ハッカーですが、流石に15巻での暗部組織の血みどろの潰し合いの末にグループが勝ち得た戦利品を、
あくまで表の世界の住人である初春が閲覧できてしまうのはどうかと思います。
とはいえ、あれを解析するにはピンセットが必要ですし、多分初春でもアクセスできないと思いますけど。

「んなこた分かってるよド素人が!!」的ないらぬ心配だとは思いますが、ほぼ原作設定準拠を貫いてきたこの作品にはそのまま突き進んでほしいと考えています。
駄文を長々とすいません。次の投下楽しみにしています。

451ビドール:2010/05/24(月) 20:12:28 ID:QzkpswRw
久しぶりに投下します。

覚えてないかもしれませんが、「剣闘士奴隷(グラディエーター)」です。
これまでの話は404から416辺りにあると思います。

相変わらず進展遅いですが、観てやってください。

452剣闘士奴隷(グラディエーター):2010/05/24(月) 20:14:29 ID:QzkpswRw

アニェーゼはローマ市内を抜け殻のように進んでいた。

今のアニェーゼなら目の前で人が殺されたとしても、眉一つ動かさないだろう。
その片手は父の最後の贈り物の入った紙袋を力無くぶら下げている。

彼女の目に光は無い。泥みたいな色をした死神のような眼が二つだけ付いていた。
(……どこに……行きましょうか……?)
あれから刑事と別れ、アニェーゼは十二時間以上も飲まず食わずでローマの町を歩き続けている。

刑事には最寄の孤児院を紹介された。手続きはもう済ましてあるという。
アニェーゼは「分かりました。今日中に行きます」と無表情で嘘を吐いて警察から抜け出してきた。
(生きてても仕方ありませんし……いっそ死んでみましょうか?)
一瞬本気でそんな事も考えた。が、逆にいえば死んだ所で何の意味もないと気づいた。

すべてを諦めて命を投げ出すような奴が天国なんかに行けると思えなかったからだ。
(なら、逆に一生懸命生きてみるっつーのはどうでしょうか)
家に幾らかお金はあるだろうが、ローマの中心部から家までのは歩いて着けるような距離ではない。
「さってと……どうしましょうか?」

すべての感情を押し殺して澄ました顔をするアニェーゼ。
別に誰かに見られている訳ではないが。
なんとなくずっと悲しい顔をしている自分を想像すると頭にくる。
ただ、それだけのはずだった。

453剣闘士奴隷(グラディエーター):2010/05/24(月) 20:17:04 ID:QzkpswRw
声をかけられたのはそれから数分後。

ふらふらと裏路地に入った時、
自分と同じくらいの年齢の東洋人が話し掛けてきた。。

「なぁ、お前俺達の『仲間』にならないか?」

その少年は自分のことを「リョウスケ」と名乗った。
(『リョウスケ』……ってことは日本人ですか)
その日本人はイタリア語をネイティブ顔負けなほど完璧に話していた。
薄汚いジャンパーと作業服のようなズボン。彼は路上生活をしながら各地を転々し、自分でも出来そうな仕事で
僅かな金を貯め生計を立てる……そんな生活を半年以上も続けているらしい。

アニェーゼはそのような子供達がどんな呼び名で呼ばれているかを知っている。
そんな生活をする子供をこの町では英語を使って『邪魔な人種(ニードレス)』という。ホームレスのようなものだ。

路地裏などで生活をする子供達を見たこと無いわけではなかったが、改めて聞くと酷い名前だ。
そして、そんな今までは「可愛そう」だと思っていた『彼ら』に「仲間にならないか?」と唐突に勧誘された。

(まぁ、今の私も外から見れば『同じような物』ですしね)
リョウスケはアニェーゼとは違い、とても真っ直ぐな目をした少年だった。
(一生懸命生きていれば、私もこうなれるんですかね…?)
「どうだ?俺達の仲間になれば食い物も仕事も困らないぐらいなら見つかる。お前は俺らと『同じ感じ』がするから、息も合うと思う。なぁ、どうだ?」

『同じ感じ』。ということは彼もアニェーゼと同じような境遇なのだろう。
アニェーゼは久しぶりに笑った。
そして、

「よく分かりませんが、孤児院なんかでつまんねぇ人生送るくらいならそっちの方がいいかもしれませんね。」

アニェーゼはリョウスケの『目』を見て人生が大きく変わるかもしれない一言を口にした。

「居場所があるなら、お邪魔しちまっても構いませんかね」
獰猛に笑いながら言い放った。

454剣闘士奴隷(グラディエーター):2010/05/24(月) 20:21:46 ID:QzkpswRw

『邪魔な人種(ニードレス)』

彼らの本拠地はと言うと、
「ミラノ……ですか?」

いきなり遠出だった。
「そこにいけば、仲間も沢山いるし『仕事』もやり易い。大体、俺ら『邪魔な人種(ニードレス)』は
ミラノで生まれた集団だ。あっちのほうが過ごしやすい」
ローマの薄汚い裏路地を進みながら、アニェーゼ=サンクティスが質問する。
「別にどこに行ったって『変わりゃしない』と思いますがね。それで、どうやってミラノなんかに行くんです?
お金なんて持ってませんよ」
わざわざ裏路地を通る理由は「汚いガキが二人して大通り歩いたら警察かなんかに怪しまれんだろ。
そうなったら、二人とも孤児院行きだ」とのこと。

どうやら、『邪魔な人種』は「孤児院には絶対行かない」が、大前提らしい。
リョウスケは、つまらない質問をするな、という目でこちらを一瞬見てから、

「お金がないなら、手に入れればいい。そんなの簡単だろ」

怪しげな答えを返す。
まさか、泥棒でもするのではないかと少々不安になったが、『邪魔な人種』に入った時点で
そのくらいの覚悟はしているつもりだった。
「じゃ、ちょっと待ってろ。ちゃちゃっと盗ってきてやっから」
予想通りすぎる。が、今のアニェーゼには反論する理由も無い。
アニェーゼは建物の陰裏にあるゴミ箱の後ろで待機(観察)。リョウスケは人のごった返す大通りに
勢いよく飛び出すと、高そうなバックを持った貴婦人から思いっきりブランドバックをひったくる。
女性が「きゃあ!?」という高い声を出した時にはリョウスケは他の建物の陰に消え、見えなくなった。この間、約六秒。
リョウスケは別の裏路地通りから回ってきたのか三十秒後にはアニェーゼのすぐ後ろで得意そうな顔をしていた。

「簡単だろ?」
それだけ言って盗んだブランドバックをあさり始める。

中からは札束の詰まった財布と最近発売されたばかりの「けえたい」とか呼ばれるよく分からない電子機器が入っていた。
「これだけあればミラノぐらい楽勝で行けるだろうな。あとは服装だけ直せば怪しまれることは無いと思う」
リョウスケは使い道の無い「けえたい」をそこらへんに投げ捨て財布をボロボロのズボンのポケットに押し込む。
そして、アニェーゼの持つ紙袋を見ながら、
「お前その紙袋の中、服入ってんだろ?買ったばっかの奴。それ着て俺の服買ってきてくれないか?
俺のこの服装(薄汚いジャンパーに汚いズボン)じゃ、怪しまれそうだから」
『邪魔な人種』最初の仕事はショッピング。しっくり来ないのは気のせいだろうか。

455剣闘士奴隷(グラディエーター):2010/05/24(月) 20:26:03 ID:QzkpswRw

割と大きめなファッションセンターの中を散索しながら、
アニェーゼ=サンクティスは考える。

父は一昨日の昼頃公衆トイレで殺された。
今、思い返すと父の死体は十字架を握っていた気がする。
祈りながら死んだのだろう。神父である父ならあり得なくない行動だが。

最期に一体何を祈ったのだろうか。

死にたくない、娘を一人にしてしまう、まだやり遂げていないことがある。
人間が最期に思う事なんて知らないが、たぶんこの三つのどれかですかね、と
アニェーゼは適当に考えた。

その父を粛清し、トイレから飛びだして逃げ去った犯人の男の顔はよく覚えていない。
だが、大体の顔つきと体格は覚えている。
もしも、自分の記憶と一致する人物が目の前に現れたならアニェーゼはどうするだろうか。
恐ろしくて逃げ出すだろうか。怒りで殴りかっていくだろうか。

正直、父親殺しの犯人に『会う』という事自体アニェーゼは御免なので、
答えが解る日は来て欲しくないのだが。

「まぁ、今はどうでもいいですよね。そんなこと」

父があっさり死んでも冷静を保っていられるのは、彼女が異常なほど強い『心』を持っていたからだろう。
今の自分の仕事はショッピング。リョウスケとか言う『邪魔な奴ら(ニードレス)』の先輩に当たる人物のために
綺麗な服を買ってやらないといけない。それ以外の事を考える必要は無い。と、適当に結論づけた。

その辺から適当に茶色のGパン風のズボン(リョウスケが履くと十一分丈ぐらいになりそうなLサイズ)と
長袖のポロシャツ(これまた彼に着させると、ぶかぶかになりそうだった)を手に取りレジへ向かう。
この店は子供も比較的多く来店する店らしく、アニェーゼ(小学4年生)が普通に買い物をしても、怪しむ目は感じなかった。

店の自動ドアが機械的な音を出して開いた。アニェーゼが外に出ると、辺りは沈みかけた太陽によって、
一直線に続くローマ最大級の通りは紅く染まり始めている。


自分がこれから何処へ行くのかは解らない。

でも、そこが自分にとって過ごし易い場所なら、
あの父に対しては恩返しになるのかもしれないな。と、

紅色に染まりつつあるローマ市内を進みながら、そう思った。

456ビドール:2010/05/24(月) 20:31:36 ID:QzkpswRw

今回は終わりです。まだ続きますが。

......456の三行目、ごめんなさい。
これからは、ミスが無いように気をつけます。

本っ当、進展ないなぁ......

457■■■■:2010/05/25(火) 05:19:58 ID:T5tY9ObU
>>449>>450
感想、ご意見ありがとうございます。

underlineに関しては、確かに初春には荷が重いところがあるかもしれません・・・
しかし、初春を物語に組み込もうとすると、保温(笑)では雪山で遭難したときに「ほら、こうすれば寒くないですよ?」とか言って俺の体を抱きしめて温め続けてくれる、以外に使い道がなく、
するとハッキングスキルしか残っていなかったんで、出来る限り原作設定を使いオリジナルの人間、能力、アイテムを出さないという勝手な主義とご都合主義からこういうことになりました。

あと、初春は決して自分でunderlineを解析しようとしているわけではありません。
迎電部隊が『ドラゴン』に至った経緯って原作では語られてませんでしたよね。
そこで、迎電部隊は情報を取り扱う組織ですし、『ピンセットを使わずに自分たちで勝手に停滞回線の情報を解析するプログラムを開発し、そこからドラゴンの情報を得た』ということにし、
初春はその解析プログラムを勝手に使ってunderlineの情報を閲覧しようとしている、ということにしました。
例えるなら、zipファイルがあって、それをこじ開けるためのオリジナル7-zipを迎電部隊が開発し、初春はその擬似7-zipをダウンロードしてzipファイルを開けようとしている、みたいな・・・(あってるのかな?)
絶対能力進化計画の情報をハッキングできた御坂とタメはれるくらいの実力と『ブロック』の装備があれば迎電部隊くらいにはアクセスできるかな、と思ったのです。
(ただし、初春はunderlineが空気中に散布された極小の機械とまではわかっておらず、単に上層部の人たちが使っている秘密の監視装置くらいにしか考えていません)

それでも確かに15巻という物語の『重み』からしたら軽はずみだったかもしれません。
でもいろいろ軽くすませてしまうのは鎌池先生もだと思うんですよ、ていとくんのかませ犬っぷりとか。
関連して(ていとくん書いてたらこの後一方にぶちのめされて出番終了することを思い出すと不憫に思えて)最近ていとくんの過去バナとかも思いついたんですけど、需要ありますかね(その前にこれ終わらせろって話ですが)

長文失礼しました。
これからもご意見ご感想よろしくお願いします。

458450:2010/05/25(火) 11:30:56 ID:JmCGJSF6
>>457
返信感謝です。先日あなたのSSに恐れ多くもケチを付けた>>450です。
書き込んだ後でよく考えてみると、自分の意見を一方的に押し付けていた事に気が付きました。
全てのSS作者さん達に自分の描きたい禁書世界があるのに、独りよがりな事を言ってすいませんでした。

underlineについても返信の内容で納得できました。綿密な展開構成に舌を巻くばかりですが、この内容をいずれSS内の地の文で説明しようとしてて、誤解を解くためにネタバレせざるを得なかったんだとしたら、本当に申し訳ないです。
自分の無遠慮な感想がこれから先の展開を圧迫・歪曲させてしまうのではないかと、そればかりが気掛かりです。
今更言えた義理ではないと思いますが、自分の妄言に惑わされずに完結を目指して下さい。
宜しければ、これからもあなたの作品を追っかけたいと思ってます。

またまた駄文を長々とすいません。
ていとくんの過去バナ……期待するしか道はねえな。頑張って下さい。

459■■■■:2010/05/26(水) 00:59:42 ID:L0KKcB9c
お久しぶりです。>>221>>304です。
『とある妹達の番外個体』を書いてた者です。
>>314>>315>>316>>317さんには本当に感謝です。
皆さんの応援あって、とうとう最後まで完成いたしました!
その分、すんごく長くなってしまいましたが、最後まで付き合って下さると
ありがたいです。本当に涙出ます。
後半に一方さんの敵としてオリキャラ出してますのでご注意。
なるべく個性が没する設定にしてますが、逆に鼻に付くかもしれません。
では投下します。

460『とある妹達の番外個体』:2010/05/26(水) 01:00:45 ID:L0KKcB9c

出発は結局一日延期されることになった。昼時を過ぎたらさっさとフィアンマの居場所を捜しに
この孤児院から三人で出て行く予定だったが、打ち止めが「もっと皆と一緒にいたい!」と子供臭い
駄々をこね、梃子でも動かない程の強情を見せた上、オッレルスが「ほんの少量だけ打ち止めの
演算能力を削り、『始動キー』の浸食速度を停滞させてみる」と至極重要な作業に入った為、
旅の再開は明日の朝までおあずけになってしまった。そんなわけで今現在は仄暗い夜である。
学園都市における暗夜の静けさとは体感がまるで異なり、声を出す事すら忍ばれる暮夜だ。
実際、深夜に入るとロシア側の索敵から逃れるために騒音は立てないようにと(魔術による
防壁は展開してあるらしいが)オッレルスに釘を刺された。
一番砲声の発信源になりそうな孤児達はもう寝静まり、打ち止めも休養を取るべきだと察したのか
昨夜と同じ部屋でベッドに収まっている。従って、今この孤児院で活動しているのは三人だけだ。

一人はオッレルス。打ち止めの調整も終わり、一人で部屋に閉じこもっている。
一人は一方通行。現在彼は踞り、割り振られた部屋の隅で最も無防備な状態でいる。
チョーカー型電極の充電中だった。一方通行の言語機能と計算能力を補助するこのツールは
平常時では四十八時間、能力使用モードでは三十分しか稼働しない。そのため制限時間が
切れるまでに専用のアダプタと変電機を接続し、バッテリーを溜め直さなければならない。
その上ロシアと日本では差込プラグの仕様と電圧に違いがあるため、さらに変換プラグと
対応した変圧器まで機構に導入する必要がある。ただそれらの機器はこれまでの路次で何とか調達出来た。
そのように周囲を電気器具で囲まれた一方通行は警戒を怠らなかった。この間は全く動けないからだ。
『反射』の膜を張りながら充電可能ならばまだ安全だろうが、そうすると充電量とバッテリー消費量が
合致してしまい、結局プラスマイナスゼロになってしまう。だから通常モードを維持するしかなかった。
この状態で敵に襲撃されればアウトだ。そのため学園都市にいた頃は充電するポイントを
複数用意し、『グループ』の所属員はもちろん、『電話の声』を含む上層部にも知られないよう
二重三重の防衛策を取っていた。しかし今は充電する時間と場所を確保するだけでも一苦労なのだが。
そんな経緯もあって本人と電極の開発者であるカエル顔の医師以外は誰も一方通行の充電過程を知らない。

「ほうほう!まるで抵抗を知らない子羊みたいだね。触ってもいい?」
……はず、だった。

もう一人、この番外個体がこの部屋に突然乱入してくる瞬間までは。
「……オマエ、人の感情を逆撫でする天才か?」
「いやいや、悪気は無いからあくまで偶然だよ」
ここまで白々しいと絶対故意にやってるだろ、と直接突っ込む気も失せる。
「偶然を引き寄せるのも、才能の一つなンだって事を承知してねェならやっぱりただの迂愚か」
皮肉を込めても曲解しそうな奴なので、やっぱり直接馬鹿にする事にした。だが番外個体は動じず、
こちらが眉間に皺と青白い血管を寄せているのに気付かない素振りをしつつニヤニヤしている。
「いい?どれだけ偉そうに凄んでも、今のあなたは砂の入ってないサンドバックにすぎないんだよ?
 つ・ま・り」

461『とある妹達の番外個体』:2010/05/26(水) 01:01:19 ID:L0KKcB9c
いきなり番外個体の眼光が獣のそれに近似していく。呼吸が荒くなり欲望が口から溢れてくるかのようだ。
これは、マズい。番外個体がこの先取るであろう行動が、未来視せずともわかってしまう。
「ミサカが第一位を好きに弄べるということなのだー!!」
「結局そォいう結論かよ!うざってェから飛びかかってくンな変態野郎がァ!!」
番外個体の四肢が一方通行の体に纏わりつき、耳を優しく咬んでくる。
心底苛ついたので電極のスイッチに何とか触り、一瞬だけ能力を発動させ、
ベクトル操作で番外個体を弾き飛ばした。そこまで力を込めた自覚は無かったが、
番外個体はそれなりの勢いで飛ばされ壁に激突し、その衝撃で生じたホコリに埋まった。
「おがっ!……ううう、そんなに痛くはないけど全身ホコリ塗れで気持ち悪いよ……」
番外個体がゴホゴホ咳き込み、体の汚れを取ろうと手でホコリを振り払っているが、
これでは一回水で流さないと取りきれないだろう。やりすぎたか、と
一方通行はほんの少しだけ反省、いや、妹達の一人を傷つけてしまったのか?と胸中ではかなり動揺しつつ
「さっさと隣の流し場で洗ってこい。どォせ産まれてから風呂なンざ一度も入浴した覚えもねェンだろォ?
 イイのかなァー?仮にもオマエは女なのにソイツはどォなんだァ?」
と、憎まれ口をあえて叩いて提案してみる。本音はここから離れて欲しいだけなのだが、
「はっ!確かにミサカは可憐な乙女にも関わらず、水浴び体験はゼロ!このままじゃムサい、臭い、汚い
 でとても人前に出られないよ!ううー、第一位でもっと遊びたいけどしょうがなく風呂場に直行する!」
とまんまと思惑通りにドアを抜けていった。また一方通行は重い溜息をついた。馬鹿の相手は疲れる。
ドタドタと古い床に亀裂を生じさせそうな重々しい足音が響き、番外個体が隣の部屋に辿り着いた気配を
感じた。「おお!これが巷で話題のロシア風呂!って期待してたのにぶっちゃけ普通の風呂だよ!」とか
何やら聞こえるが、全て無視した。したかったのだが、

彼女が口ずさむ鼻唄や衣服が擦れる様な音が壁沿いにうっすら耳に入り込んできて、心中穏やかでない。

……黄泉川や芳川の着替えに遭遇した時は何ら下賎な感情は浮かばなかったのに、
何故今更、自分はこんなくだらない事に反応しているのだろうか、
と一方通行は自己嫌悪に陥る。今度こそ冷静さを取り戻し、
煌めく水音や番外個体の甘みがかった吐息とかを全て意識下から遮断するのに成功した。
(水道も電気も滞り無く通ってるこの孤児院は一体どォなってンだ?『置き去り』の収容所なンざとは
 比べ物にならねェ程、快適になってンぞ?)
そうして全く別の思案に身を任せ、充電が完了するのを健気に待った。

……暫く時間が経過した後、ようやく一方通行は充電という呪縛から解放された。バッテリーは最大まで
蓄電され、これで最大限能力を行使出来る。手が楽になった彼は、懐から多少『改造』した銃を押退けて
もう一つの鍵とも言える物を取り出し、ベッドに一枚一枚規則正しく並べ始めた。
ロシア兵から強奪した羊皮紙の束だ。初遭遇時には朧げにしか重要性を解釈出来なかったブツだが
オッレルスから魔術の教導を受けた今ならば、これが何たるかは自ずと理解が進んでいく。
本来ならオッレルスに直接提出して鑑定してもらえば、羊皮紙の正体はスムーズに判明するだろうが、
一方通行はあえてその手を使わなかった。理由は魔術の法則を独力で暴く手段を修得したかったからだ。
ヴォジャノーイ達が放った水の槍に『反射』を発動しても不完全な結果に終わった過去を振り返って、
一つの仮説が頭に浮かんだ。一方通行の超能力はあくまで物理法則に則ったベクトルを感知し、
制御下におくだけだ。つまり、物理法則を伴わない魔術攻撃には単純に『反射』が効かないのではないか?
魔術にも火や水、といった自然界に存在する物を介する術式なら、まだ科学的視点への置き換えが
可能だろうが、全く未知の法則を有する技であったらその法則を見極めなければ『反射』どころか
防御も出来ない。要は魔術と争闘するのなら毎回戦闘時に相手の術式を見破らなければならないのだろう。
その足慣らしとして、この羊皮紙が内蔵する魔術法則を一人で解読しようとしているわけだ。

462『とある妹達の番外個体』:2010/05/26(水) 01:01:50 ID:L0KKcB9c
しかし、それは今までオカルトとは無縁の道を歩んでいた一方通行にとっては難儀な作業だった。
呪文と魔法陣の羅列からは胸への圧迫感しか感じない。それらを綴るのに使われたインクや
紙の繊維などから羊皮紙が作成された年代は予測出来たが、肝心の内容まで知識が届かない。
(……どォしても考えがまとまらねェ。暗号に近似したモンと解釈するまでが限界か。
 これが一冊の本だと無理矢理改竄すれば全体のイメージは漠然とわかるが、
 どォ『出力』するかが不明。こいつを魔術として蠢動出来ねェと完全に理解したとは言えねェな)
ヒントを求め、無意識に周囲に目を泳がせると部屋の隅に佇んでいる本棚に意識が向いた。
杖を突き直し、何冊か手に取ってみる。もしかしたら魔術に関連した書物が混在しているかもしれない。
案の定、普段ならば無下に扱っていたであろう、有益な情報が綴られている本を収穫出来た。
表紙は悪趣味な黒で、綴じられているページの紙が相当痛んでいる。それでも読めなくはない。
……オッレルスが予め置いておいたのだとしたら、一方通行の悪足掻きが丸わかりだったとも言える。
それでも一方通行は羊皮紙に掩蔽された意味をどうにか自己視点で汲取れる一歩手前まで来た。
だが、それを魔術としてどう発動させるか、その『手段』だけはまだ煙に巻かれたままだ。
呪文でも唱えてみるか?そんな下らない解決手段が意外と正解だったかもしれないが、

「ふぅ。風呂で温もると気分が一新されるね。よぉし第一位!ゲーム再開だよ!」
ドアが無駄に躍動して開かれた場所に立っていたのは、風呂上がりの番外個体。
集中力と堪忍袋の緒が切れた一方通行は文句を張ろうと口を開けたが、その口の用途は絶句に変わった。

髪。湿りが茶色の毛に流動的な光彩を与え、大人びた潤いが蠱惑さを讃えていた。
肌。清潔な汗が熱気を帯びた肢体を流れ、少女独特の清楚さと淑女が秘める妖艶さが同居している。
瞳。曇りの無い純粋な水晶玉の様に月の光を反射し、背負う陰が取払われた輝きが目を引く。
胸。スーツによって締め付けられていたのか、普段よりも、柔らかい乳房の膨らみが強調されている。
顔。適度に赤みがかり男の劣情を誘いかねない危うい清純さを兼ね備えており、緋色の麗花のようだった。
「どうしたの?何時のあなたなら猪みたいに突っかかってきそうなのに」
自分でわかってるのか、今の自分の姿を。一方通行の現実への直視に対する抵抗が究極に接近していった。
番外個体が、産まれたままの姿で、そこにいた。

463『とある妹達の番外個体』:2010/05/26(水) 01:02:15 ID:L0KKcB9c

たじろぐ理由は無い。だが後ずさる動きの原因が止まらない。恐怖というよりも、醜い自分が彼女に
触れる事で、今まで保ってきた緊張の糸が途切れてしまうのではないか、そんな憂慮が頭を過った。
一方通行は自分を、もっと硬派な人間だと信憑していた。けれどもその前提はここで覆された。
「あれあれ?あなたの頬がどんどん赤くなってるよ。変だなぁ第一位は」
番外個体が胴を折って前屈みになり、上目遣いでこちらをあどけなく拝顔してくる。
羞恥心も警戒心も一切見受けられないその無防備さが、整った端麗な顔と
細身だが女性らしいラインを持つ裸身の嫋やかな魅力を際立たせていた。
「……あ、あのなァ、イイから今すぐ速攻で服を着ろ。体が冷えるだろォが」
愚挙な発言なのは重々承知の上だが、なるべく冷静さを維持していたい。
何故狼狽してるかは何となく悟れている。上条との一戦後に決めた覚悟のせいだ。
あれで自分の心に正直になると思い詰めたから、感情のコントロールが甘くなっているんだ。
そう自分に言い聞かせる。決して、こいつの姿に反応しているからではない。
その思いと裏腹に手に汗が浮かび、杖の柄が濡れていく。その結果、
手が滑り、ずぽっと杖から手が抜け、体のバランスを崩してその場に倒れかかった。

形の上では、一方通行が番外個体を押し倒した、ようにも取れる。

一方通行と番外個体の顔が接近する。吐息の遣り取りが可能なまでに。
光悦とした番外個体の表情が戸惑いに変わっていく。
そして、目を静かに閉じる。何かを待っている、何かを期待してるかのように。
一方通行もその仕草に目を囚われた。彼女の紅唇が蜜よりも甘く、叙情的に見える。
時間の一端が永遠にも思えた。心臓の鼓動が瞬時に加速していく錯覚が確かにあった。
一方通行も自然と瞼を閉じていた。だが、その瞬間、彼の頭に悍しい既視感が走り抜ける。
昔、こうやって、少女を、『屈服』させた、事が、なかった、か?
もっと、単純な行為で。例えば、

実験と表して、一万体もの少女の屍を日常的に積み上げてこなかったか?

そう連想した一方通行の暗闇がかった視界に、過去の情景が截然と浮かび上がった。
赤黒い液体が流れ、朱肉に亀裂が入り、瞳から生気が失われていく妹達の亡骸達が。
薬物中毒患者のフラッシュバックの様に浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返し、
自分が仕出かした惨憺たる所業のワンシーンが連続して映し出されていった。

「……くだらねェ」

その一言で切り捨てた。番外個体に獣性を発揮しようとした愚かな自分を。
一方通行は自力で起き上がり、現代的なデザインの杖を掴んでベッドに戻った。
番外個体もそれに気付いた。自分が期待していた結果とは真逆の展開にしばし呆然としていたが、
目を開き、胸に手を当て、自分が懸想した感情を再確認した。
一方通行へと抱いた思いの名を番外個体は知らなかった。
幼く、無垢で、現実とは『自分だけの現実』だとしか理解していない番外個体には
あまりにもその慕情は未経験で、未知数で、不可解な物だった。
一方通行の顔を思い描くだけでコクン、と心が妙な音を立てる。
一方通行の声を聞くだけで動悸が狂う。
一方通行の体に触れるだけで思考の制御が不可能になる。
(ミサカは……ミサカは……)
どんどん熱気が冷めていく体に反して、その心情は心地よい暖かさに満ちていった。

464『とある妹達の番外個体』:2010/05/26(水) 01:02:51 ID:L0KKcB9c

一方通行はベッドの上で羊皮紙の解読作業を進め、番外個体は服を着直し、横で毛布に包まっていた。
…………沈黙。どこか居心地の悪い静謐さがこの狭い部屋の空間を支配していた。
この二人が揃えばどんな時でも騒がしく、戯けた空気が拡散していくはずだったが、
二人の関係が変動したがためか、どこまでも粛然としていた。
一方通行はその方が都合が良いと思い、羊皮紙と参考書に没頭し続けたが新たな収穫は無かった。
どうすると魔術を発動するのかがわからない。その一点につきる。無理もなかった。科学との関連性が
ごっそり削がれた分野では一方通行はその学園都市の頂点にある頭脳を正常に活用出来ない。
脳に靄が掛かったかのようだった。どうしようもなく、目を羊皮紙から一旦逸らすと、
番外個体がこっちを見つめているのに気付いた。
「……なンだよ」
しかし改めて彼女の視線を追うと、番外個体も羊皮紙を眺めているのだとわかった。
「……これってなんなの?」
一方通行ですら全貌が把握しきれないのに番外個体が答えを聞いてくる。仕方なく答えることにした。
「いいか、まずこいつを記述するのに使われた言語はエノク語だ。伝承じゃ天使が喋ったモンだと
 されている。現実じゃ16世紀後半にジョン・ディーとか言う奴が日誌に書き殴ったデマだがな。
 とにかくそいつで原初の人間が万物に名を冠した。だからこの言語は森羅万象を表現出来る
 統一語とも言える。で、そのディーは霊媒者のエドワード・ケリーに出会い、『神の如き者』から
 ご信託を受けたンだとさ。でこの羊皮紙に書かれてる魔法陣が『偉大なる四方点の円』に
 酷似していて……って聞いてンのかオマエ!」
暖かい毛布に蹂躙されている番外個体はうつらうつらして今にも眠りにつきそうだった。
目を擦って番外個体が返答すると、
「……う〜ん、子守唄が聞こえるよぉ……」
「もはやお休みモードってかァ……?」
駄目だこりゃ。完全に寝ぼけている。自分でも半信半疑で、それでも意味を何とか抽出して
解読してるのにそれが無下にされて、熱弁していた自分が恥ずかしくなったが、
そこで引っかかりを感じた。突破口となる糸口に感づいた。
唄、歌だ。
エノク語に没頭したとある魔術師が『天使』の召喚にその言語による歌を用いたと本の端にあった。
それを録音したテープが残っているだとか。
要は、羊皮紙の解釈を歌に『出力』すれば、魔術として認識され、発動するのでは?
……全てが仮説。確証も無いし、軽薄な推論でしかない。
だが、歌とは一方通行にとっては意味ある言葉だった。生涯で唯一、科学とは違う魔術に触れた
儚い記憶にある歌。温かい光の中にあるような詠唱。打ち止めを救った物だ。

いつの間にか静かな部屋に音が流れていた。
掠れた喉で、錆びた機械音の様な声で、不器用な歌が紡がれていた。
内容は番外個体には理解出来ない。だがどこかぎこちなくとも、親しみが持てる歌だった。
一方通行は思う。滑稽だと。こんな辺境まで追いやられた自分が暢気に歌など口ずさんでいていいのかと。
すると確かな変化が起きた。羊皮紙に記された文字や魔法陣に、赤みがかった光が煌々と輝き始めたのだ。
番外個体が予想外の現象に驚き、毛布を跳ね飛ばした。
だが一方通行はそれらに気付かない。追憶に浸っていたからだ。学園都市に『天使』が降臨し、
ウィルスに蝕まれた打ち止めを救う為に歌を詠唱していたのは誰だった?まさかそいつはーー

465『とある妹達の番外個体』:2010/05/26(水) 01:03:18 ID:L0KKcB9c
が、ここで思考は強制的に途切れる。一方通行の体に過負荷が突如かかったからだ。
胸への重圧がより一層烈しい物へと変貌し、一方通行に牙を剥く。
二人により詳しい魔術と超能力への理解があれば理由は自ずと分かっただろう。
超能力者が魔術を手なずけると、身体に悪影響を及ぼし、最悪の場合には死に至らしめると。
「が……ァ、ぐォォォァァァあああああああああああアアアアアアアアアッ!!!」
一方通行の絶叫が響き渡る。あまりにも激烈な苦痛。血管が切断されるのとは違う、
血液そのものがマグマと化し、体内から全身を獄炎で焼き払っているかのようだった。
その場を転げ落ち、耐え難い激痛に全神経が救済を求めてさらに痛みを助長させ、
一方通行は床を掻きむしった。いつ血流が体を突き破ってもおかしくない。
番外個体はその光景に当惑するしかなかった。一方通行の歌とこの阿鼻叫喚の因果関係がわからない。
その間にも悲鳴は途切れる事無く続く。さらに浸食が広まり、一方通行の爪先から鉄臭い液が分泌される。
危険な状態なのは一目瞭然だが、非力な少女には何一つ手出し出来ない。狂った頭で最善手を考えたら
オッレルスに助けを求めるしか無いとわかった。彼ならこの窮地に最も有効な打開策を示してくれる。と
番外個体は震える両足でドアに駆けたが、ドアノブに手を掛けた時、ここで一つ、何かを思いついた。
一方通行の悲惨な姿から目を離す事で、冷静さが一瞬で再覚醒し、必要な思考が整頓されていく。
一方通行を蝕んでいるのは明らかに魔術の発動による副作用ではないか?
魔術が超能力と同じく脳によって制御されると仮定すれば、その演算を中断させる事でこの痛みを
取り除けるのではないか?あまりにも確実性に欠けた緊急避難法だが、事態は一刻を争う。
この一手に賭ける。その儚く弱々しい決意を持って一方通行に向き合い直す。そして、

体内に残留した『シート』によって、一方通行の電極に備われた演算補助ツールに干渉する。
番外個体の働き掛けによって電極がか細い電子音を鳴らし、電源が切られた。
その瞬間、激痛に食い破られていた一方通行の動きが止まった。
荒れ狂う喀血が正常に戻り、苦痛が取り除かれ、魔術による浸食は完全に落ち着いたようだ。
そのまま一方通行は意識を失ったが、番外個体は逆に意識が高ぶっている。
こんな自分でも役に立てた。本来ならば彼の命を刈り取る立場にあったのに。
あの時の恩返しが果たせた。そんな実感が番外個体という、一人の少女に嘗て無い安堵感を与えた。
ゆっくりと少女は少年に近づく。血を拭い、その手を自分の顔に当てる。
先刻の懸想がまた番外個体の全身を駆け巡る。体温が上がり、胸が締め付けられ、
呼吸のリズムが早くなり、心が、耐え難くも穏やかで、心地よい切なさに満ち満ちてゆく。
何故、こんな感情が沸き起こったのか、その答えも知れぬまま、

唇と唇が触れ合った。


9.5
瑞々しい音が、幽暗に人知れず奏でられる。美しいものではない。感動を呼ぶものでもない。
もっと不純で、生々しくて、醜悪な不快音だった。

現代的なデザインの杖を突いた白い少年が、目の前に繰り広げられる慄然な光景に戦慄していた。
血と錆の世界。廃墟に近似した街角で黒い少年が只管、死体を生産している。
一人につき3.5リットルの血液が爛れ、鮮血の池が水たまりの様に歪みに澱み、周囲に幾つも発生している。
不純物が一切混在していない深紅の湖。それを、千切れた人間の手足や肉体の欠損部位が取り囲んでいる。

その中心に佇む黒い少年は、それを覗く白い少年と背反しているが、同時に同一の存在でもあった。
昔と今。時間の経過が与えた差異しか、二人の間には存在しない。
悲壮感を全く背負っていない乾いた笑い声が轟く。項垂れ、もう止めてくれと悲痛な涙声が響く。
どちらの声もお互いには届かない。

白い少年が自分の首元に触れる。しかし、そこにあるはずの物は掻き消えていた。
自分が庇護したかった人々との繋がりが断たれていた。
思考が切断され、少年は全身の力が抜け、その場に無様に倒れ伏せる。
「……あ、な、た、の、せ、い、だ」
すぐ横に蝋人形の様に硬直し、ただ一つの表現のみを追求した表情が張り付いた顔があった。
悪意。
一万三十一もの、憎悪という死刃が自分に刺傷するのが分かった。
残りの九九七一の、冷笑が耳に突き刺さるのも分かった。

結局、過去にも、現在にも、未来にも、この悪夢の中ですらも、
悪魔の様な自分の、身勝手な贖罪に、許しを召してくれる少女は、一人も、いない。

466『とある妹達の番外個体』:2010/05/26(水) 01:03:41 ID:L0KKcB9c
10
朝日が自然に差し込んでいた。乾きと温暖が一方通行の顔に現実の再来を叩き付けていた。
目を抉じ開けると、自分が壁に倒れ伏せているのに気付いた。毛布が被せてあるのも認知した。
あのまま、寝てしまったのか。乾燥した血液が指先に絵の具の様に付着しているのが視界に入った後、
昨夜の魔術の解読に思いを馳せた。あの苦痛は何だったのか。ぼんやりとした頭で考えを纏めようとしたが
途中で中断した。もうここに来て三日目。もうそろそろ学園都市も一方通行達の同行を把握する頃だ。
打ち止めの治療法を知った。自分の目的も判明した。

もう、ここにはいられない。
魔術的障壁が一方通行達を守り抜いても、強固な殻に閉じこもっている間に、
打ち止めはいずれ崩壊してしまう。それを防ぐには一刻も早く右方のフィアンマを屠殺し、
禁書目録を解放するしかない。その為にはこの孤児院から足を洗い、またロシアを放浪する必要がある。
一方通行は自分の頬を叩き、杖を引っ提げて、荷物をまとめ、準備を整えてから部屋を早足で出て行った。
「はぁはぁ、もっと、もっと……」
同室で一人怪しげな寝言を洩らしつつ、甘美な眠りに夢中になっている番外個体を引きづりながら。

二三、廊下の角を曲がって廊下を歩いていくと、打ち止めが寝かされている寝室に辿り着いた。
不要な物音を立てずにドアを開け、ずかずかと打ち止めのベッドに接近した。
今回はまだ寝たままで、鼾をかいていた。頭のアホ毛も萎びている。
薄い胸の上下運動が毛布にも影響を与え、呼吸が視覚でも感知出来る。
さすがに夜は寒かったからか、毛布が乱れておらず、打ち止めは蓑虫の様に丸まっている。
天使というより、ただのガキの生意気な寝顔だった。それには向っ腹が立つが、
久々に打ち止めの安らかな寝顔を見た気がする。今まではエイワスの影響によって、
安眠など有り得なかったからだ。このまま叩き起こすのも悪いが、目前の利益に囚われていては駄目だ。
それでも優しく頬を撫でると、打ち止めは静かに起きた。
「う……ん、もう朝なの?気候が違うと、起床時間にも狂いがでるもんだね、
 ってミサカはミサカは日本とロシアの時差について適当な見解を出してみる」
「早く顔洗って、朝飯を腹に入れてこい。三十分経ったら出発すンぞ」
「え!?もうここから出てくの!?友達と今日も遊ぶ約束してたんだよ!
 ってミサカはミサカは日本伝統のかまくらをロシアの子供達と堪能する予定を述べてみたり!」
こいつ、自分が死にかけてるのに随分気楽だな、と一方通行は冗談半分で絶句し、
オッレルスの治療が別の意味で良好なのかとも思ったが、打ち止めの尻を叩いて(あくまで比喩表現)
さっさと洗面台に行くよう急かした。
「ふ〜ふふふふ。やっぱり第一位も男の子なんだね……ってミサカはあなたのあそ」
番外個体の尻も蹴って(今度は文字通り)覚醒を促した。

「で、本当にもう出向くのかい?」
玄関を出て、外壁の出入り口でオッレルスは一方通行一行を送ろうと外に出ていた。
周りには孤児達も並んでおり、打ち止めとの別れを惜しんでいた。
「フィアンマって奴の場所はオマエでも究明できねェンだろォ?だったら俺が直にこの足で
 突き止めるしかねェ。戦争の現場まで出向けば、首謀者の動向も掴める可能性がある。
 ……さすがにこの二人をここに預けておくのは危険すぎるからな。世話になった」
オッレルスはこの孤児院から離れられない。したがって、外界の情報を集めるのにも
限界があるのだろう。こんな辺境では秒単位で移り変わる戦況を完全に知り得るのは無理が有る。
よって一方通行は自分でフィアンマを探す事にした。そいつの目的もこの戦争を引き起こした理由も、
推測しか出来ないが、おそらく世界大戦自体は隠れ蓑であり、過激な陽動とも言える。
また違った計画が裏にあると、あまりにも闇に触れすぎた一方通行はフィアンマの真意を読み取っていた。
「……そうだな。君には君にしか成し得ない事もある。もしかしたら、君もあの少年の様に
 この大戦を終結させる切り札になるかもしれないな。何の力にもなれなくて済まない」
あの少年、といったらやっぱりアイツなンだろォな、と一方通行は見当をつけて呆れつつ言及する。
「ハッ、打ち止めの病状を和らげて、俺に魔術と禁書目録の概略を授けてくれやがった奴が
 吐くセリフじゃあねェな。まぁフィアンマとかいう雑魚ぐらいなら俺と上条が挑めば、なンとでも……」

467『とある妹達の番外個体』:2010/05/26(水) 01:04:30 ID:L0KKcB9c
その瞬間、一方通行とオッレルスは一点に振り向き、ベクトル操作で外壁を強引に引き詰めて
盾を拵え、そして『説明のできない力』で衝撃を最低限まで軽減した。
轟!と大砲が暴発したかの爆発音が孤児院に衝突する。しかし、孤児院どころか、子供達、
妹達には傷一つすら付かない。あまりにも広範囲で殺傷力に長けた攻撃だったが、
科学の頂点に立つ怪物と、魔術の限界に最も近づいた化物の前には、ガキの振り上げる拳にも満たない。
奇襲だ。
「遂に」
「来たってワケか」
一方通行はゴキ、と運動不足の首を斜めに曲げて鈍い骨の音を鳴らし、今の攻撃の発射点を観測する。
ベクトルの解析によって導かれた答えは一つ。これは学園都市による進撃ではない。
攻撃で生じた衝撃によって巻き起こった風を『反射』しきれなかった。
つまりは魔術。その証拠に、五十メートル先には深い青の布を纏った異様な集団が
血を滴らせた白っぽい槍を携え、こちらに目を向けている。
「……ロシア成教の回し者だな。魔術の形式からしてエノク魔術の使い手か」
オッレルスもまた魔術的な視点で敵を分析する。
「エノク語には通常の英語では発音出来ない音声的特徴が有る。
 その性質を抽出して、『音』による物理的干渉を変異させてこの威力を構成しているようだ」
一方通行には半分程しか魔術的仕組みが分からないが、とにかく『音』、即ち空気の振動を激盪させ、
物質にも振動を伝達することによってこの破壊力を実現しているらしい。超音波の強化版といった所か。
相手は二十人位。懐に潜り込めば一撃で殲滅できる人数だが、
こちらは妹達や孤児達と戦力外の者達を抱えている。明らかに不利だ。
「二手に分かれよう」
オッレルスが最も合理的な案を出す。
「奴らを迎撃する一人を残して、もう一人はこの子達を連れて離れる。敵の目的が誰かはわからないが、
 どっちみち自分達を攻撃してくる者を振り切ってまで弱者を確保し人質を取ろうだなんて考えはしない。
 少ない手数で広範囲に反撃を続ければ問題ない。ここは俺がーー」
「待て、それは俺がやる」
一方通行が口を挟む。
「俺のチカラじゃガキ共を守りきれねェ。向こうも二手に分かれるか、
 もしくは別働隊を控えてさせてンだろォな。そうじゃねェならこんな奇襲は使ってこない筈だ。
 この一隊が全ての戦力ですよ全力で真正面から戦いますよ、って印象づけるための罠だ。
 足止めは重要だが、その役割はオマエじゃ勤まらねェよ」
一方通行は自分一人なら無傷でこの襲撃を撃退出来る。魔術が『反射』しきれないとしても
竜巻で一気に薙ぎ払うか、五指で血管を破裂させ続ければ殺られる前に封殺出来る。
逆に自分以外は守り難い。可能なのはせいぜい、打ち止め一人を抱えて逃げるぐらいだろう。
だったら自分が残る。そう方針を決めかねている間にも、魔術師達は距離を詰めてくる。
「オマエの戦力は知らねェ。だが子供のためなら十二分の力を発揮するのがオマエじゃねェのか?
 だから任せる。こいつらを、頼む」

468『とある妹達の番外個体』:2010/05/26(水) 01:04:52 ID:L0KKcB9c
単に戦場から邪魔者を排斥したいだけだった。結局一方通行は自分のみにしか矛も盾も使えない。
だから、打ち止めや、番外個体も邪魔だ。
この二人をこれ以上、害悪に曝したくなかった。
その意思を汲み取ったのか、オッレルスが頷く。わかったとだけいい、子供達と打ち止めを連れて行く為に
魔術で視界を遮って、孤児院前から逃避していった。
打ち止めの瞳が自分に向けられているのは、背中で分かった。だが、しかし、だとしても、
「……必ず、戻ってくるよね?ってミサカはミサカは尋ねてみる」
「ああ、必ずだ」
それだけで、闘う理由は十分だった。

戦場に残る一方通行。久々の感覚だ。神経が余計な雑音まで察知し、
ただ殺し合いに特質した力と意思だけが浮き彫りになる。気の弛み、体の痒みといった
日常では当たり前の細事までもが勝敗に関与する。電極のスイッチは既に入っており、
学園都市最強の超能力者が、獲物の動きを舌舐めずりして伺う。
「で、何でオマエがここにいンだァ?」
と、横を振り返るともう一人、この戦いに入り込んでいた。
番外個体。『欠陥電気』の大能力者。
「やっほう、ミサカも力添えしたいと思って残ったワケだよ。第一位。
 お姉様程の出力は無理だけど、大能力者程度でも暗部で働いてる人もいるし、
 ミサカももしかしたらこの迎撃戦のキーパーソンになっちゃうかもよ?」
一方通行はもう溜息とかそういう文句は吐かない事にした。
こいつには驚かされたり、呆れさせたり、自我を崩壊させられたりしたが、今回だけは許した。
「……言っとくが、あいつらがどんな手を控えてンのかは不明だからな。
 もしかしたら、俺より強い奴だっているかもしれねェぞ?」
『グループ』の所属員にも感じなかった連帯感があった。
「ははは、あなたより強い人なんて異星人でも無い限りいないと思うよ。
 ミサカは宇宙人なんて信じてないけどね」
守りたい者と、共に戦いたい者との境にある殻が割れた気がした。
「来るぞ」
一方通行が身構える。それに応じ、番外個体は背中から顔全体を覆うゴーグルのスペアを取り出し、
再び装着する。決闘に来訪する覚悟を表したかのようだった。
「足手纏いにはなるなよ」
「もしそうなっても、あなたがミサカを守ってくれるんでしょ?」
もう間もなく、二団はぶつかり合う。魔術と科学の交差が全てである戦闘の火蓋が、切って落とされる。

469『とある妹達の番外個体』:2010/05/26(水) 01:05:13 ID:L0KKcB9c
11
相手の布陣を確認する。横一列に並び、ややこちらを弧に囲むかのように扇形の陣形で魔術師達は
足を止め、槍を構え直す。一人だけ後列で安全な場所に引いていた。リーダーはあいつか、と
一方通行は目を付け、会話を投げ捨ててみる。
「学園都市からの使者にしては、服装が古風だよなァ。ンだったらやっぱこの羊皮紙が狙いか?」
ぴらぴらと、無防備に一束分だけあえて見せてみた。この挑発に乗ったかの様に、統制者が返答する。
「それもありますけれども、真の狙いはやはり貴方達なのだと、言い返し。
 ついでに学園都市からの使者で半分正解なのだと、ご忠言」
声質からして、若干少女さを残した女性のようだ。フードを被っているため、外見からは分かりづらいが。
どォいう事だ、と聞き返すと、軽快にその女性は答えた。
「今、学園都市は自軍に束ねるべき戦力の確保に一生懸命なのだと、ご発表。
 超能力者第一位の貴方とミサカネットワークの根幹たるクローン、そして学園都市の意に逆らった
 役立たずの個体の身柄を差し出す事で、我々は学園都市と対等の交渉を行い、
 我らとの関係を強引に取り持つ事で、我らはこの戦争の勝者になるであろう陣営の一員となるのだと、
 計画漏らし。もはやロシア側は敗北するのみ。よって先にロシアを裏切るのだと、勝利宣言」
つまりは、魔術に関わる者でも学園都市側が勝つであろうと考える一派が存在し、ロシアに所属していたが
科学側へ転がり込むために一方通行達を狙っているらしい。体のいい、交渉材料とされているようだ。
「ソイツは結構なこった。だが、俺達がそォうまく、お行儀よく『道具』になると思ってンのかァ?
 第一、オマエ等じゃ俺等を手懐けきれるワケねェだろォが。力不足なンだよ、オバサン」
話を持ちかけたが、これではフィアンマに関する情報は引き出せないようだ。ならば手は一つ。
「ほぉ?我らを下位に思っているのか?と、苦笑。
 このアドネッタ率いる一団を小馬鹿にした罪は原罪並に重いぞと、重層な脅し」
「ハッ。ンじゃそのガタイのイイ体に直接訴えかけてやろォか!!」
怒号と共に一方通行が能力を展開させる。空気中のベクトルを完全に掌握し、風という風を
全て制御下に従える。徐々に風は突風に、突風は竜巻に、竜巻は台風へと進化し、
M7クラスの荒風が魔術師達の陣形を跡形も無く吹き飛ばす。その勢いに乗り、
一方通行と番外個体は二人の距離を離さぬまま、戦地に飛び込んでいく。
今の風は布石に過ぎない。ロシア特有の冷風が戦局に直接絡む事は無い。
空気の振動を操る魔術師に対して、暴風による攻撃は半減されてしまう。
実際、能力者や銃器を持った部隊に猛威を振るったこの技はアドネッタ達にはそよ風としか思われない。
だからこそ、一方通行達は前に出る。片方は指先が擦れば絶対死を与える悪魔の能力、
片方は雷速で飛び、感電すれば確実に行動の自由を奪える電撃。これらの直撃を狙う。
「オイオイ、偉そうに作戦垂れてた奴らとは思えねェなァ!!
 もっと策練ってから出直して来いよ、雑魚共が!!」
と一方通行は、巻き上がられた雪の結晶によって視界が奪われた中、一人の魔術師に
一気に接近する。だが、その獲物はそれに気付かない。
何故なら、声がした方と、逆側から怪物が飛んできたからだ。
いとも簡単に背後を取った一方通行はその背骨を靴の裏で蹴り上げ、叩き折る。
一方通行は声、『音』の響く方向すらねじ曲げられる。ベクトル操作能力に懸かれば、
自分の位置を誤認させるのは朝飯前だ。例え、魔術に『反射』が効かなくとも、
相手に目標を察知させる術さえ奪えば何とでもない。
その内に、魔術師達は当たり前の事に納得してしまう。学園都市の頂点にある一方通行とは、
魔術すら鼻にもかけない、真性の化物だと。
そこまで考えが及べば、自然と狙いが変更される。縦横無尽に駆け巡る超能力者ではなく、
無害と言っても良い、哀れなクローンに矛先を向ける。
番外個体も電の槍と砂鉄の剣で応戦し、それなりの戦果を上げていたが、
一気に攻撃が集中されれば、対応策を無くす。確かな手応えを感じた魔術師達は『音』による
衝撃波を番外個体の死角から放ち、体の自由を奪おうとする。
正に音速。確実に番外個体を仕留める会心の一撃が幾つも彼女の知らずの内に放たれるが、

470『とある妹達の番外個体』:2010/05/26(水) 01:05:42 ID:L0KKcB9c
それを、避ける。
いとも簡単に、その女性的な体を靡かせ、能力によって身体の電気信号における情報量を
増やし、格段に身体能力を伸ばした番外個体は空高く飛び上がり、『音』の槍を回避した。
まるで、イルカが海面から飛び上がる様な優雅さがあった。
当然、攻撃を放った魔術師は動揺する。完全に今の一撃にクローンが対応することは不可能のはずだった。
しかし、現に効いていない。その隙に番外個体の放つ雷はあっけに取られる敵その者達から意識を奪う。
(ふふふ、わかんないよねぇ?何でミサカが攻撃を避けられるかが)
反り返って自由落下しつつ、電撃で落下の隙をフォローして地面に着地する番外個体。
トリックがあった。番外個体の『欠陥電気』による電磁波では『音』の攻撃を感知する事は出来ない。
そう、ただの『発電能力』では今の一撃には一切防御策を持てない。
だが、番外個体にはもう一つの特別な能力がある。

体内に仕込まれた『シート』だ。これには、一方通行の電極と繋がるミサカネットワークの動きを
観測して、一方通行の思考パターンを読み取る機能が備わっている。
つまり、番外個体は一方通行の心を読む事が可能だ。
これを悪用すれば、一方通行の『視点』から入った戦況を横取り出来る。
『一方通行』は学園都市随一の感知能力でもある。これを把握する事は、その場の自然現象全てを
感じ取る事と同意である。よって、番外個体にはこの戦いは何もかもお見通しなのだ。
といっても、その事は一方通行本人にもわかっていた。もしこの技が番外個体に無かったら、彼は
絶対に番外個体をこの戦闘に巻き込もうとはしなかっただろう。
だが、実際には番外個体は一方通行と肩を並べる程の結果を出し続けている。

ワケも解らないまま、魔術師達は一方通行にも魔術による攻撃を放つが、もう、遅かった。
「残念だが、もう『解析済み』だ。残念だったなァ?遅い、もォおっそォいンだよ。
 運動不足のハイエナちゃァん?目先の結果に翻弄されてンと折角の勝機が無駄になっちまうンだぜェ?」
『音』が翻って、戻ってくる。なまじ威力に長けているがため、魔術師は自滅の一途を辿った。
実は一方通行は最初から本気は出していなかった。最初の一撃も風では無く、地面に能力で衝撃を与え、
地割れを起こせば魔術師達を生き埋めにも出来たが、あえて一方通行は正攻法で戦い、その片手間に
チカラの比重を『反射』から『感知』に割り当て、『音』の魔術の構成を解き明かしていたのだ。
これが魔術との戦い方。一方通行は科学の頂点だけでは飽き足らず、正反対の魔術にもその能力を
向け始め、正真正銘の怪物へと伸し上がろうとしていた。

471『とある妹達の番外個体』:2010/05/26(水) 01:06:25 ID:L0KKcB9c
もう片手の指の数程にまで減った魔術師達は『音』で障壁を作り上げ、
一方通行達の猛攻に静止を掛けようとする。しかし、それに対して一方通行は毅然と対応していく。
今更拳銃を取り出し、折り畳んだ杖の真っ先に『結合』させる。
「……ンな壁、風穴でも開けて欲しいのかァ?才能による超能力と、努力による魔術、か。
 どっちも等価値だが、オマエらは使い方を間違えた。敗因はそれだけだ」
薬莢が飛び、弾丸が放たれる。しかし、火薬の爆発による銃声が鳴らない。代わりに耳に飛び込んでくる
のは、キィィンと金属を摺り合わせた様な不自然な高周波音。
その瞬間弾丸は超電磁砲を超えた速度で飛び、『音』の壁を悠々と貫通し、
何と、九十度に折れ曲がり、並んだ魔術師達を一気にぶち抜く様な不自然な軌道を描き、彼らに
九ミリの銃痕を残していく。同一の急所に風穴が開いた彼らは、一人を残して倒れ伏せた。
もう一つの仕込み。能力発動時には収納されている杖だが、これにはカエル顔の医師から受け取った
電極の設計図から構築した、妨害電波のジャミング機能が備わっている。しかし、一方通行はさらに
この杖と銃に手を加えていた。電極の極一部の機構をジャンクで再現し、杖と銃にそれを組み込ませる
事で、弾丸そのものにベクトル変換能力を宿らせ、軌道、速度、威力を完全に、敵に着弾するまで
自由に操る事が出来る。これによって、派手に能力を連発して敵を撃滅する手間を減らし、
シンプルに一手で敵を殺すのを可能にした。
そこらの石を蹴り飛ばすのと違い、攻撃の方向を直線以外にも修正できるのが強みだ。
電極の機能を不完全に写したため、能力使用モードで無くともベクトル変換弾を銃単体で打てるが、
上条戦ではそれが仇になり、弾丸自体の軌道をあの右手で止められる場合を考慮したため、使えなかった。

いつしか風も静まり、戦場における死体と戦闘不能者の山が積まれ、場には一方通行と番外個体、
そしてアドネッタの三人が立っていた。と、一方通行は一つの懸念を抱いた。
唯一アドネッタだけは一方通行達に対して、積極的な攻撃を行わず、一人戦局から離れていた。
明らかに不自然だった。まるで、今倒れている全ての仲間を盾にして、何かを待っていたかのようだった。
慎重さが伝わったのか、それとも倒される運命を受け入れたのか、アドネッタが口を開く。

472『とある妹達の番外個体』:2010/05/26(水) 01:06:47 ID:L0KKcB9c
「いやいや、恐れ入ると、ただ驚愕。
 しかし、ここまで計画通りだと返って清々しいと、ご安心。
 時間稼ぎとは、待つ者に取っては退屈かつ、とても浮き立つ時間だ、と大感激」
一方通行は銃口を下げない。この一発でもう決着する。
「減らず口もそこまでだ。計画通りだろォがなンだろォが俺達には関係ねェ。
 俺だけならまだしも、無害で、何の悪さもしてねェただのガキ共を利用するなんざ、
 ンな時点でもうその計画とやらは破綻してやがンだよ」
「その『悪さもしてないただのガキ共』が学園都市を巡り、
 今や世界の均衡さえ崩す一因になっているのだと、ご説明」
もう、語る必要も無い。一方通行は地面に強烈なベクトルを衝突させ、地面を抉り、
視界を奪う。そのまま銃のトリガーを引いた。この一撃は不回避。確実に決まる。

が、その直後、一方通行に何かが飛来してきた。あえて『反射』せず、この『何か』を掴み取る。
弾丸だった。一方通行が放った物と全く同じ銃弾。血の跡も無く、銘名まで読める。

…………全く同じ弾丸が、『全く同じ軌道を描いて返ってくる』?

不可解に思う一方通行に思わず駆け寄る番外個体、だが、その視線が、一瞬で折れ曲がる。
土煙が晴れ、掠れた、金属音のような声で、『それ』は言った。
「知ってるか。旧約儀典の一つ、『エノク書』にはこんな記述がある。
 筆頭のアザゼル、つまり『第十番目の支配者』は軍刀と鎧と、あらゆる戦具の作り方を教え、
 大地の鉱石と金をいかにして製作するか、また女達のためにこれらを『飾り物』に作る仕方や、
 銀子の作り方を教えた。さらに選ばれた鉱石や染料できらびやかにし、美粧することも彼らに伝えた、
 とな、とご解説。その『飾り物』は最も優れた材料によって
 『最も優れた姿』を女性に『模倣』させた。この記述を解釈すれば、こんな事も出来る、とご体現」

頭頂は白髪、衣服は黒、整った顔立ちに、赤い瞳。それは、

「これこそが処女の一生を犠牲にして初めて効果を放つ究極の霊装。
 『最も優れた能力』を完全に、『全盛期のまま』に写し取る『最姿装飾』。
 ……て、理解できンのかなァ?魔術初心者の三下くゥン?」

あの時のままの、学園都市最強の超能力者、が一方通行の前に君臨していた。

473『とある妹達の番外個体』:2010/05/26(水) 01:07:12 ID:L0KKcB9c
12
今度こそ理解が指先を素通りしていった。魔術とはここまで万能だったのか。
いや、それよりも、魔術の効果の崇高さにではなく、過去の一方通行の再来に、
現在の一方通行は目が釘付けになった。目が離せないのに、直視するのが嫌で嫌で仕方なかった。
忌まわしい過去。妹達を屠り、穿ち、畜殺した『あの頃』の姿。
その姿の一方通行は打ち止めを救ったものでもあるが、一方通行の嫌悪はそれでも止まらなかった。
もしアドネッタの言う事が事実なら、こいつは一方通行の姿だけでなく、触れたベクトルを全て変換する、
科学の頂にある超能力をも模倣した事になる。
(このままじゃ負ける)
確実に冷や汗が皮膚を流れた。一方通行は誰よりも今の状況に危機感を抱いていた。
(本当に俺の『全盛期』を写し取ったのならば、向こうには能力の発動に制限時間が存在しねェ。
 こっちが全開で動けるのは残り二十三分。力が拮抗したら持久戦に持ち込まれンのは明白だ。
 そォなれば絶対にこちらが自滅する。奴はそれを指銜えて待っているだけでイイ)
番外個体にもその後ろ向きな思考が伝わるが、この現実は絶対だった。
(加えてこっちには妹達までいる。俺だけを集中して攻撃してくる筈が無い。
 このままじゃ番外個体を守ってるだけで手一杯でこっちから攻められねェ……)
「ハッ、学園都市最強ってのはこんな感触なンだなァ。空気の流れ、物体の持つ位置、運動エネルギー、
 数値化されたベクトルってのが頭に勝手に入って処理してやがる。あァ、言っとくが、
 こっちはイチイチ計算式を組み立てなくても、全部この霊装が代理でやってくれるから、
 科学的な知識が要らないワケだ。霊装発動までには相手の情報を認識させる時間がいるがな。
 オイオイ、これって凄ェ事じゃねェのか?科学の超能力を魔術で再現できるなンざ、
 アレイスターが知ったら腰砕けて死ぬかもしれねェぞ?」
アドネッタの余裕さが一方通行達にも向けられる。だがそれに反応している余裕は無い。
この不利な状況を打破する策を練り続けている間に、アドネッタが一歩一歩接近してくる。
そのまま、口元が横一線に切り裂かれた様に鋭い笑みを浮かべて、
「ンじゃァ、存分に力を奮ってやる。手頃な位置に『あの時』みてェな贄がいるしよォ。
 ……妹達総撃破数+1ってところですかァ!?」
そのまま一直線に番外個体に飛び込むアドネッタ。ベクトル変換能力は問題無く発動し、
推進力を得たロケットの如く、不可視の速度で突進する。
「……させるか、猿真似野郎が!!」
一方通行も当然反応して壁になる様にアドネッタの動きを体を張って止める。
そのまま相手のベクトルに干渉してアドネッタの血流を操作しようとするが、
(……やはり、効かねェか)

474『とある妹達の番外個体』:2010/05/26(水) 01:07:35 ID:L0KKcB9c
そう、互いがベクトルを操作出来る場合、その効果は相殺され、能力の衝突は無効と化す。
一方通行とアドネッタの運動はどちらも意味を無くし、その場に静止する。
こんな馬鹿げた事が平然と起こりうる。笑えるが、愉快さとは程遠かった。
前屈みになったまま激突したアドネッタはそれでも笑顔を歪ませず、そのまま首を振る。
アドネッタの白い髪が靡く。今の一方通行より短めで、整っている。散髪など無縁の髪のままだった。
「おォ、科学実験ってのは割と爽快じゃねェか。これじゃァこいつをを一万回繰り返すのも
 仕方ねェよなァ?学園都市もさぞ愉快な街だろォな。人殺しが日常茶飯事なンだからよォ!!」
自分と同じ、全く同じ声が、一方通行の精神を徐々に蝕んでいく。番外個体が一気に心の柱を折りに来た
のと違って、こちらは柱が自然に腐っていくのを助長していく様な、そんな陰険な手法だった。
くっ、とアドネッタが距離を取る。一方通行が自分の前方に爆風を起こしたからだ。
『反射』の壁がある限り、無傷のままであるはずだが。
(こいつ、俺の記憶もトレースしてるのか?言動からすればそォとしか取れねェ。
 ……くそ、何のヒントにもならねェぞ)
無意味な考えは切り捨て、勝利条件を整理していく。
(霊装の破壊……は無理だ。装飾にも『反射』の膜が施してあるはずだ。
 なら、こいつの演算を遮る。それしかねェ)
霊装の直接粉砕は不可なら、霊装の代理演算を妨害すればいい。その結論を読み取った番外個体が
能力を研ぎすませ、その場に雷鳴を轟かせる。閃光が拡散し、それに遅れて、
ゴォオオオン!!と空気を引き裂く爆裂音が鳴り響く。『反射』は音に対しては初期状態だと
殺傷能力がある物を除けば、一応素通りするよう設定されている。その大きな音で動揺を誘い、
演算を狂わせ、その隙に一撃を叩き込む寸法だったが……
「あァ?耳でも壊す気だったのか?無駄だよ無駄。大方霊装をビビらせようとでもしたんだろォが、
 そいつはさすがに無理があるンじゃねェか?もうネタ切れかよオイ。学園都市最強の名が泣いてンぞ?」
効かない。完璧に撹乱と妨害のタイミングに合わせ、背後に回り込んだが、
後頭部に刺したはずの拳には何の効果も発生しない。さすがに猫騙しでは勝機は見えない。

475『とある妹達の番外個体』:2010/05/26(水) 01:08:09 ID:L0KKcB9c
ならば、
「なら頭の出来を競ってみるかァ!?所詮コンピュータに演算任せてるようなオマエじゃ俺の侵入には
 さすがに耐えられねェだろ!!」
垣根帝督による一方通行の攻略法と同じく、『反射』のフィルタをかいくぐり、有効なベクトル攻撃を
加える。一方通行自身の弱点をアドネッタも引き継いでいるはずだ。再び竜巻を四刃従え、
アドネッタに激突させる。四万のベクトルを直撃させ、完全に『反射』の盲点を突いた。
だが無傷。アドネッタは無形のまま平然と笑っている。
「『全盛期』ってのは便利な概念でな。今のオマエじゃ出来ない事も実現できちまう。
 完全に穴の無い『反射』。オマエの能力でも理論上は可能だ。そいつを現実に引き起こしちまうのが
 『最姿装飾』の大きな利点。模倣を超えるついでにオリジナルまで凌駕しちまうンだよ」
思考パターンですら上を行かれる。これでは自滅を待たずとも決着が付くだろう。

一方通行の完全な敗北が。
敗北は、番外個体の、打ち止めへの悲劇に直結する。
それを知った一方通行は、今までで一番使いたくなかった、下賎で、卑怯で、唾棄すべき攻略法を
選んだ。完全なる『反射』。それすら貫通する起死回生の手を打つ。
低く構えたまま俊足でアドネッタの手中に迫る。このまま拳を握り、左手で殴りかかる。

その直後、インパクトの直前に、拳のベクトルを『正反対』に変換する。

その結果は予想を超越した。完全だと思われたアドネッタの『反射』の枠を素通りし、
左手の衝撃がアドネッタの土手っ腹に一直線に入ったのだ。
「ごォ!?」
無視出来ない威力にアドネッタは仰け反り、二メートル程後ずさる。
(イケる!)
原理は単純。ベクトルが正反対に返ってくるならば、その攻撃を当てる瞬間に『引けば』良い。
木原数多が一方通行に取った戦法と同じだ。
一方通行を散々苦しめた戦法が、皮肉にも今回は一方通行に勝機のチャンスを掴ませた。
殴られるのに慣れていない体質すら真似たのか、アドネッタはすぐには体勢を立て直せないようだ。
(ハハッ!感謝するぜ木ィィ原くゥゥゥン!墓前に花でも添えてやるよォ!)
勝機を掴んだ一方通行は追撃に全力を出す。今度は血流爆破のベクトルを反対に入れ込むことで
アドネッタを確実に即死させる。そのまま前に出るが、
「……イイのかなァ。そのクローンから離れてよォ?」
「ッ!?」
アドネッタの様子がおかしい。絶対有利が崩れた今、防御一向に走るだろうと推測していたが、
逆に勝利を確信された様な、そんな意味合いを含む発言だった。
その違和感は当たっていた。冷静さを欠いた一方通行は、その感情と思案がまっさらになる。

476『とある妹達の番外個体』:2010/05/26(水) 01:08:37 ID:L0KKcB9c
全身を司る機能が全て奪われた。
電極が受信する筈のミサカネットワークとの繋がりが完全に断たれた。

ベクトルによる推進補助を受けていた一方通行の体が冷たい雪原に頭から飲み込まれる。
アドネッタの策は一方通行の自滅を目的に入れていなかった。今までの道化振りは
ミサカネットワークの電波のベクトルを見定めるまでの時間稼ぎ。
受信状況にジャミングを掻けるのとは全く違う。電波そのものを拡散させ、完全に電極の機能を
停止させた。策士特有の笑みを浮かべたアドネッタが一方通行の頭を蹴って、番外個体の足下まで転がす。
この絶望的展開に、一方通行の名を叫びながら番外個体は彼の体に訴える。涙ぐみ、
心配によって敵が目前に君臨している現実にまで気が届かない。
アドネッタはフン、と鼻で笑い、饒舌になる。
「これで目標達成。今の一方通行は廃棄され、私が新しい『一方通行』になるのだと、ご確定。
 本当は一方通行の姿と能力を借りて、学園都市に入り込むのが私の本来の目的。
 番外個体と最終信号は一方通行が捕獲し、そのまま統括理事長直々の手で処分される。そして
 超能力者第一位と全妹達を新規させる。もはや過去の最強もクローン達も不要なのだと、ご発覚」
アドネッタはこれからは一方通行として生き、学園都市に逆らい続けた旧一方通行とは違い、
完全に学園都市の駒となる。それによって自分の一生は犠牲となるが、その代償から得る物は大きい。
「クローンである貴方にもわかるだろうと、求同意。本人と入れ替わる願望を分身は絶対に夢想する。
 貴方には達成出来ないが、私になら楽勝なのだと、ご断言」
確かに、番外個体も、打ち止めも、妹達も、御坂美琴の影でしかない。本人は超能力者でも
自分達はそれに劣る出来損ないだ。
お姉様は、どうあっても、妹達よりは幸福で平和な暮らしを営んでいただろう。自分たちとは違って。
「居場所が欲しいのだろうと、決めつけ。私ならあの下賎な一方通行とは違う。
 生ゴミのような貴方にも、好意を向けられる。アレイスターに頭を下げて貴方を生かしてやってもいい。
 一緒に学園都市に戻らないかと、提案。……そォ思わないか?俺は違う。オマエを大事にする。
 オマエが嫉妬している最終信号よりもだ。だから、俺と来い。二人で、恒久の平和に浸らないか?」
甘い誘い。今全身の力を失い、意識があるのかすら不明の一方通行では無く、この二人目の一方通行を
受け入れる。その方が楽に、簡単に、番外個体の夢も安易に叶うかもしれない。
一方通行を許し、少しでも彼の背負う痛みを和らげさせてあげたい、という純粋な夢。
一方通行を愛して、一つになりたいという無垢な夢。
それが一挙に、何の苦労も無く実現する手段が番外個体の目の前に提示される。

477『とある妹達の番外個体』:2010/05/26(水) 01:09:00 ID:L0KKcB9c
「……お断りだ」
それでも、番外個体は言い放つ。
「例えアンタがミサカの思うがままの一方通行でいられるとしても、ミサカはそれを幸福とは思わない。
 ミサカはアンタのような張りぼてには興味は無い。ミサカが好きになったのは、ミサカが
 一緒に寄り添いたいと願った一方通行は一人しかいない。冷たくて、乱暴者で、いつも文句ばっかり
 言うけど、ミサカ達全員を救うために奔走するこの人だけ!アンタは所詮偽物だ。それが全てだ。
 自分の保身と名誉しか頭に無いアンタにこの人の気持ちを完全にトレースする事なんか出来っこない!」
立ち上がり、真の一方通行を守る様に立ち塞がる。例え敵わなくても、このまま触れられただけで
死ぬのがわかっていても。屈せず、動じず、揺るがない。
番外個体は一方通行のステータスに惚れ込んだのではない。
この一人の少女は少年の中に偏在する、複雑で、揺れ動きやすい、それでも一途な『あるもの』を好いた。
「アンタに一方通行の名も、この人が背負う痛みも、打ち止めの命も絶対に渡すもんか!
 ミサカ達にはアンタが道化師だって事がすぐに分かる。だからアンタの計画なんか成功しないのよ!」
その瞳には意思が有った。かつての闇一色の仄暗い目とは全く異なった熱い光が差し込んでいた。
「アンタにはこの人を殺させない。ミサカが、この人から貰った命に懸けて!!」
一方通行に貰ったあの想い。それは、この偽者には絶対に感じられないものだ。
だから、アドネッタはどれだけ一方通行を再現していても、番外個体には下賎な幻想にしか見えなかった。
だから、守りたい。とても単純な理屈と行動だった。だが、番外個体はそれに大きな価値を見いだした。
番外個体の強固な思いは、アドネッタの思惑にすらヒビを入れさせる。
完全に精神面では番外個体が優位だった。
自分を捨てたアドネッタと、自分と大切な人を決して捨てない番外個体。
その差は、有り合わせの学園都市最強の能力を持ってしても埋め合わせる物ではなかった。

だが、
「……そォかい。せっかくお友達になれると思ったのになァ。
 じゃあ、一万三十二体目の遺体も、ド派手に素敵にオブジェにしてやンよォ!!」
アドネッタの一撃が番外個体を吹き飛ばす。即死には至らないが決して少なくない血が傷口から噴射した。
もう一度腕の骨に強大な苦痛が走る。それでも死ねない。死ぬものか。
圧倒的な戦力差があっても抗い続ける番外個体。それを眺めるアドネッタは、
「では、お二人さン、あの世に優雅にご招待だ。……こっちは私に任せて、向こうで幸せにね、とご祝福」
アドネッタは優雅に手を振りかざす。
あまりにも激化の頂点に達した、一万もの人間をまとめて臨終させる程の爆風が二人を襲った。

衝撃で、血塗られた、ゴーグルが、跡形も無く、吹き飛び、消し去られた。

478『とある妹達の番外個体』:2010/05/26(水) 01:09:20 ID:L0KKcB9c
13
「は、はは……ぎゃはははははは、アハハハハハハッ!!」
死体が二体どころか、欠片すら残るまい。アドネッタは自ら会得したベクトル変換能力に完全に驕り、
その高揚を口から高笑いという形で解き放っていた。
(これで、一方通行の能力は私だけの物、と、ご独占。番外個体は殺してしまったが、
 元々死ぬ予定だった個体が息絶えただけ。計画に支障は無い。後は速やかに最終信号を回収し、
 学園都市へと帰還する。ん?『帰還』には語弊があるな、と迂闊。一応二人の生死の確認だけ行うか)
爆風で擬似的なホワイトアウトが発生していた、完全に視界は白一色。だが晴れるのを待つ必要は無い。
再び風のベクトルを弄り、霧のような雪化粧を取っ払う。

すると、次に目を疑う羽目になったのは、他でもないアドネッタだった。
人影があるような気がする。呼吸音が聞こえる気がする。鉄の匂いが充満していく『気がする』。
そこには、誰もいない筈のその場所には、

番外個体を守るかの様に、彼女の前で立ち尽くす一方通行と、まだ生存している妹達がいた。

アドネッタは光景を嘘だ、としか捉えられない。今の一撃を防いだのか。ありえない。
一方通行へのミサカネットワークの補助は掻き消え、今も代理演算を再開した様子では無い筈だ。
だが、生きている。全身が紅く染まり、深い傷が幾万と刻まれていても、番外個体を守り切ったのは事実。
一方通行の最後の切り札。実は彼は電波を遮断される直前に番外個体に一つの『指示』を出していた。
もし、ミサカネットワークが途切れる事があったら、お前がその代役を果たしてくれと。
つまり一方通行は番外個体とリンクする事で、土壇場で不完全な『反射』と演算能力を取り戻したのだ。
二人は、電極と直接『シート』によって繋がっている。この紐帯はアドネッタにも見抜けなかった。
よって、発揮された能力の切れ味は本来の九九七〇分の一。それでも、一方通行は諦めない。
命を一方通行に預けても良い、そう言ってくれた番外個体の思いに報いる為に。
打ち止めを再びあの日常に還すために。

479『とある妹達の番外個体』:2010/05/26(水) 01:09:52 ID:L0KKcB9c
アドネッタは気押しされてもすぐに立ち直った。一方通行にダメージが通っているなら、
『反射』も穴だらけのはず。さらに番外個体も動けない。ならばとどめを指すのは簡単だ。
その企てを遮るかの様に、銃声が鳴り響く。震える様な高音は、一方通行の拳銃から放たれた物だ。
弾丸がアドネッタの眉間を正確に捉える。しかし、アドネッタはタカを括る。あんな銃に頼るしか無い程
向こうは追いつめられている。そう確信したアドネッタは二人に直線的に接近する。
銃弾は無視した。『反射』が適応されている限り無力。そう慢心する。
そう、一方通行の狙いはその慢心だった。こちらの戦力を撹乱させるための布石。
元から当てようなどとは考えていない。こちらが無力だと誤認させるための罠。
ベクトル操作される銃弾をあえて逸らして着弾させず、アドネッタの体を掠めずに横切っていった。
アドネッタはそこでさらに余裕を見せ、二人を絶望に誘う一言を言い放つために口を開く。
「今度こそ、冥土の玄関を叩いてこいよ。お二人さン!!」

そう、口を、『開いてしまった』。
番外個体が電気操作で酸素を分解し、オゾンをアドネッタの周辺に発生させているのにも気付かずに。

ただ、これだけではアドネッタを打破出来ない。だから、一方通行はもう一押しする。
残されたベクトル変換能力で、大気を凝縮し、オゾンの濃度を極端にまで上昇させる。
「…………ッ!?」
特大の耳鳴りと共に、肺が萎み、脳に血が行き届かなくなった。
アドネッタは急激な酸欠状態に陥る。対策など最初から頭から飛んでおりこの連携攻撃を許してしまった。
意識が混濁し、思わず膝を付く。動きを一瞬止めたが、完全にアドネッタの息を止めたわけではない。

そう、この停止。この隙が、一方通行が、最も待ち望んだ時間だった。
「ミサカワーストォ!!」
「うん!」
もう息も絶え絶えな二人が、息を合わせ、究極の壱手で王手を賭ける。
その直後、番外個体が生み出せる、最大威力の電撃が、一方通行に直撃した。
(な……何、あ……がい……て……!?)
アドネッタの理解がさらに遠ざかる。そう、理解など届く筈が無い。

一方通行は上条との再戦、いやもっと以前、木原を死滅させた時から、一つの疑問を抱いていた。
あの黒い翼。あれは一体何だったのか。
この間までは、発現と同時に一方通行の自我は吹き飛び、思考も人間離れのそれへと変貌してたがため、
その力への理解は漠然としたイメージでしかなかった。
しかし、上条との再戦は、理性的に黒い翼への分析を行える、数少ない機会でもあった。
意識を保ったまま、あの力を振るえたのは、あの一戦だけ。
それで分かった点が二つあった。

480『とある妹達の番外個体』:2010/05/26(水) 01:10:18 ID:L0KKcB9c
まず、一つは力の源。一方通行のベクトル変換能力は学園都市における最大の感知能力。
例えば、蟻一つしか動かせないような微弱なエネルギーすら感知し『加速』させる事で、人を殺し、
全てを薙ぎ払う無限のエネルギーにまで変換出来る。
しかし、それまで。あくまでこの能力は、『0に限りなく近い数値』の力をも掬い取るが、
逆に『0そのものの数値』の力は手懐けられない。自然界の物質は皆、何らかのエネルギーを持ち、
一方通行はそれをベクトルに置き換え、把握出来るが、そこで行き詰まる。
だが、全く力、エネルギーを持たない物質が存在しているとしたら?
その物質、力場が0とされるなら、無限に観測出来るとも言っていいベクトルすら操れるならば?
一方通行の振るえる力は普段とは比較も儘ならない程、膨大になる。

もう一つは、変換した後のベクトル。この能力は物理法則に乗っ取り、全ベクトルを凶悪な威力に換える。
しかし、そこまで。机上の空論である『物理法則』における限界までだ。
そのため、ベクトル変換にも際限がある。例えば音速を超えすぎれば、
衝撃波は一方通行にすら制御しきれない規模まで膨れ上がってしまう。
極端を言えば、どうしても光速、相対性理論という足枷がある限り、一方通行の能力は頭打ちになる。
だが、もし『全く別の法則』にそれを置き換えれば、どうなるか?
光速を超えた速度で運動される物質は空間ごとねじ曲がり、観測者からは光より遅く見えてしまう。
そんな枠を超えられるのならば、一体どうなる?
一方通行が変換したベクトルは、観測者の視点さえ取っ払い、全法則が示す臨界を突破する。

この二つが黒い翼の正体。しかし、あれはまだ『不完全』だ。もっと整合性、正確さ、威力の制御、
効率的なエネルギーの運用、それらを突き詰めれば、さらなる領域まで手が届く潜在能力がある筈。
だが、今の一方通行の演算能力はあまりにも不十分だった。そのため、
力の変動をもっとも親和性のある『電流』のみに絞り、この範囲下のみ能力の効果を浸透させる。
これが番外個体が一方通行に電撃を叩き付けた理由。その電撃は加速器に乗ったかの様に
正確な円弧を描き、紫電から、黒い電流へと移り変わっていく。
(……011101111既8927則11110007445去980010101
 使457力340111546測430111011完245550000000……)
演算能力が一万分の一まで奪われても関係無い。一方通行の頭脳の最大の良点はずば抜けた処理速度。
言うならば、メモリが一メガしかないCPUでスーパーコンピュータ並の性能を発揮している。
常人では競争すら成り立たない圧倒的な情報処理能力は、正に学園都市最強の力を証明していた。

そして、一方通行の背中から黒い放射が意図的に発生される。その噴射は周囲三十メートル以上に広がる。
爆発的な加減無き最強の力。それが二翼に割かれるのは今まで通り。
しかし、今回は違った。無視出来ない変化が有った。
片翼のみが突如変形し、本来の姿へガチャガチャガチャガチャ!!と高速で折り畳まれ、
小さな小さな円状のボールの様に押し止められたのだ。
その円球の表面を放物線の如き輪が渦巻いており、鉛筆の様な棒状の物がゆっくりと抜き差しされている。
最適化は完了した。
そして、今や黒い翼の一部と化した漆黒の電流をこの円体に定着させる。
太陽から発生するプロミネンスの様に番外個体の電流が黒球を囲み、駆け巡る。
黒い雷電を帯びたその球体は万感のエネルギーが充満していた。
ブラックホール、とは安易に言い表せない。あえて言うならば宇宙に開いた空白たる『穴』だった。
一方通行の紅い瞳の瞳孔がキュッと縮む。その動きに反応したのか、黒いボールがさらに形状変化し、
中点から弾き飛び、一方通行の前面で極めて正確なリングに構造が差し替えられる。
そのサークルも回転し始める。その速度は、学園都市製の計測器ですらお手上げになる程の勢いだった。
その輪に、一方通行のありったけの力が叩き込まれる。
『空虚な力』と『虚ろなベクトル』を、極限にまで解き放つ。
それは、音速、雷速、いや、光速さえをも置き去りにし、研ぎすまされた力の凝縮物は、
未知の速度、未知の威力、未知の残影を現出させ、アドネッタへと容赦なく放たれる。

481『とある妹達の番外個体』:2010/05/26(水) 01:10:43 ID:L0KKcB9c
あえて形容するならば、黒い光量子砲。
黒々しい、極大の光を宿す雷撃が無限さえ超える質量をもって、リングから爆出した。
誰にも捉えられない一撃。観測者の見解さえ殺し切る、黒き超光子砲。
発生音の存在すら許さない。余計なエネルギーなどは全て威力に注がれている。
一方通行のみが放てるその重厚な一撃は、全空間の光さえ飲み込み、暗黒の一線として走り続ける。
雪原、空気、空間、大地、そんな些細な自然物は抵抗する権利さえ破壊され、
黒い光に凄まじい勢いで飲み込まれ、次元が捻曲がるような流れで薙ぎ払われる。
軌道には草一本残らない、巻き込まれた物質は差別無く物理構造を根源から崩され、
原子崩壊に酷似した現象を幾万と誘発させた。その爆発と衝撃すら成す術無く黒い砲撃に吸収される。
最強を辛うじて超える力。それは、あまりに無慈悲で広範囲すぎる殺傷過多の絶対的な威力を垣間見せた。

これに衝突して、生還できる『物』など理論上ありえない。だがアドネッタはその理論に喧嘩を売った。
(こ、こんな力、放っておけるか!これも我が『最姿装飾』で写し取って……!)
その暗闇に飲まれる一歩手前でアドネッタは霊装に追加のオーダーを出した。
あの黒い翼までもを『模倣』する。そうすれば互角だ。敗北から逃れられる。
だが、『全盛期』の力をトレースする霊装ですら、拒否の意を示した。黒い翼すら発現出来なかった。
(ま……まさか、これは!『一方通行の能力じゃない』!?いや、違う、これが本来の一方通……!!)
思考まで食い破った一撃によって、アドネッタは素粒子を構成するクォークよりも細かく分断され、
遺伝子情報さえもが完全に現界から抹消された。
生死の確認など、赤子ですら可能なレベル、でしかないだろう。

482『とある妹達の番外個体』:2010/05/26(水) 01:11:07 ID:L0KKcB9c
14
戦いの終止符は、かつて無い程までのオーバーキルで打たれた。
一方通行の前方から地平線まで、一直線に綺麗で均一な道が掘られていた。
アドネッタが消滅した直後に拡散したミサカネットワークの電波が戻り、
一方通行の思考は完全に修復される。
その心は、歓喜に満ちていた。今の一撃。それが一方通行の絶対的な『反射』の壁すら超えられるもの
ならば、あのエイワスと同等の力を得たのと同義だ。この力さえあれば、フィアンマどころか、
エイワスをも倒しきれるかもしれない。この確かな成長に一方通行の心は震えが止まらなかった。
が、そんな夢に本格的に浸ろうとする前に、一方通行は番外個体の様子を確認した。
外傷があるならば一刻も早く止血をするか、能力で血流を維持しなければ。
しかし、少女はその場に倒れていた。その瞳は瞼によって遮断され、完全に気を失っている。
能力の過剰な使用によって危険な状態になっている可能性がある。一方通行は急いで駆け寄った。
「おい!番外個体!しっかりしろ!」
声によって意識の覚醒を促すが、まるで反応がない。
やむを得ず、能力で番外個体の体に触れて分析を始めたが、
「………………」
そうしてから、番外個体の頬の両方を思いっきり引っ張った。
「あ、あでででででで!!ひ、ヒドいよ第一位!あんなに献身的に働いたミサカにこんな仕打ちは
 あまりにも残酷すぎるよ!」
番外個体は気絶した振りをしていただけだった。一流の狸寝入りだったが、一方通行にはお見通しだった。
本気で心配した自分が馬鹿みたいだった。
だが、安心していた。
妹達が、また死ぬ事は、無かった。
今の二人を客観的に見れば、一方通行が番外個体を抱きかかえているようだった。
そうして、番外個体だけがその感覚を慈しみ、小さな口を開く。
「でも、初めてミサカの名前を呼んでくれたね。素直にそれは嬉しいな」
一方通行は思いがけない言葉を聴いた。確かに、電撃をもらう前に番外個体の名を呼んだ覚えがある。
何故か、焦った。そのせいで、口が勝手に動く。声が素直にこちらの命令を聞かなかった。
「……こっちもイイ台詞を聞いた気がするなァ。何だったか、
 『例えアンタがミサカの思うがままの一方通行でいられるとしても、ミサカはそれを幸福とは思わない。
 ミサカはアンタのような張りぼてには興味は無い。ミサカが好きになったのは、ミサカが
 一緒に寄り添いたいと願った一方通行は一人しかいない。冷たくて、乱暴者で、いつも文句ばっかり
 言うけど、ミサカ達全員を救うために奔走するこの人だけ!』だった、か?」
一方通行の電極が効果を失っても、番外個体のサポートによって、あの時点で実は演算能力は回復しつつ
あったのだ。こっ恥ずかしい台詞を復唱されて、番外個体の顔がボッと真っ赤に燃え盛る。
「そ、その……ミサカは、あなたの事を…………ぼそぼそ」
番外個体の体温が徐々に上がるのがわかった。それをもっと推進してやるかと、一方通行はまた喋る。
「わかってンだよ、番外個体。オマエのおかげで勝てた。全部オマエの功績だよ。
 これなら置き去りにするどころか、最後まで連れていくことになるなァ。
 ……だから俺達についてこい。オマエの抱いた、『夢』って奴がどォなるかにも興味があるしな」
そうして、一方通行は優しく、柔らかい笑顔を、番外個体だけに見せた。
今度は本音だった。番外個体にだけに言える、正直な気持ちだった。
それだけで番外個体はまた頬から全身まで赤赤々になって、そのまま素っ頓狂な声で、

……お願いします、とだけ、返した。

483『とある妹達の番外個体』:2010/05/26(水) 01:11:32 ID:L0KKcB9c
15
戦闘から生還した二人は孤児院の周囲を見定めて、約十五分経過した後にオッレルス達と合流した。
近辺に使われていない廃墟があり、その中で孤児達や打ち止めらと篭城していたようだ。
声をかけてから入り込むと一番最初に知ったのは、
こちらにもアドネッタの手下が攻め込んで来た事だった。
しかし、何故かその別働隊は皆正座で冷たい地面に鎮座していた。
大の男達が十数人、説明できない恐怖に怯えているのか、無害な小動物のように震えているのが滑稽だ。
オッレルスが二人を出迎える。
「……どうやら本隊は撃破したようだね。魔術を敵に回すのは中々厄介だっただろう。
 だが、無事で良かった。おかげでこっちへの来襲は手薄で、少し脅せば簡単に無力化出来たよ。
 もちろん孤児達も打ち止めにも全く被害は出ていない」
一方通行はオッレルスの手腕に舌を巻きつつ、確かな安堵に浸れた。
打ち止めの無事を確認したからだ。彼女は孤児達と内緒話をしていた。
そうするとまたオッレルスが言う。
「彼ら、どうやら学園都市に寝返る為にこの戦争の情報を幾つか漏らす準備をしていたらしい。
 そこで、耳寄りな朗報を快く話してくれたよ」
まさか、そのまさかだった。
「……フィアンマの次の標的。どうやら『幻想殺し』、上条当麻を誘い出すために、
 自ら捕獲したサーシャ、天使の依り代である彼女への『神の力』を降魔させる儀式を
 あえて大っぴらに始めるらしい。場所はノヴァヤゼムリャ。ヨーロッパの最北東端にある孤島だ」
次の指針は確かに一方通行に伝わり、彼の目標地点が決定する。
その瞬間、打ち止めが一方通行にぶつかって来た。ドゴォ!と乱暴的だが、平和な衝撃音が鳴る。
一方通行はそのまま倒れ込み、打ち止めに羽交い締めにされ、ぽこぽこ叩かれる。
「もう!またあなたは喧嘩ばっかりしてる!ミサカの心配はどこ吹く風って思ってるの!?
 ってミサカはミサカはボロボロのあなたの体にさらに鞭打ってみる!!」
「が、ぬがァああああああ!!!じょ、冗談抜きでやめろクソガキ!!ってか、オマエ等も
 楽しそうに見物してンじゃねェエエエエエエエエ!!!」
何だか、コイツ等本当に仲良いなぁ、と孤児達もオッレルスも二人の喧嘩を眺める眺める。
それに番外個体も加わる。
「おおおお!ミサカも第一位にじゃれてみる!!ほれほれココを攻められると弱いんだろ、と
 ミサカの特殊攻撃があなたのアソコに突き刺さる!」
「いいいいい加減にしろォ!!!ああ、もうオッレルス!!もう俺等はここから出ていくからな!!
 これ以上、俺の惨状とこの妹達の馬鹿らしさは誰にも見せねェ!!だから、クソガキ共、
 クスクス笑うのをやめろォォォォ!!」
勝利の余韻に添えられるのは、楽しく、愉快な、三人のいつもの光景だった。

484『とある妹達の番外個体』:2010/05/26(水) 01:11:57 ID:L0KKcB9c
そんな内に全員大人な落ち着きを取り戻し、戦いの前のお迎えムードに戻っていた。
何故かまた孤児院の門に集合して、一方通行達は本当にここから出て行く態勢になっていた。
一方通行はポリポリと頭を掻き、オッレルスに確認する。
「とにかくノヴァヤゼムリャに向かう。虚偽の情報かも知れねェが、上条を誘き出すためなら
 真実じゃなけりゃ意味がねェ。十中八九、奴を捕獲するための罠が仕掛けられてるだろォが、
 捕まえた上条を回収しにフィアンマの直属の手下が来る筈だ。運が良けりゃ、本人が直々に
 登場するかもな」
さすがにそこまで迂闊じゃないだろうが、上条は魔術的な罠では捕まらないかもしれない。
あのバカなら落とし穴とか単純なトラップに引っ掛かる可能性もある。
どちらにしても、一方通行が上条を助ける羽目に陥る……ような気がしてならない。
そうだな、と一回間を置いてオッレルスが答える。
「もしくは、幻想殺しが辿り着く前に『神の力』の召喚に成功……するかもな。
 その場合なら、儀式にフィアンマが立ち会うのが確定するだろう。
 でだ、君達はなるべく迅速にノヴァヤゼムリャに向かわねばならない。
 ここから余裕で千キロメートルはある。歩いて行けば、到着する頃には全部後の祭りになる。
 という訳で、ここで俺達から君達にプレゼントがある」
プレゼント?と打ち止めと番外個体が頭を捻る。
すると、門の外側に何かが到着した。ブルルルル!と威勢がいいエンジン音が鳴り止む。
一方通行達をここに運んだ車だった。上条達を乗せた車列の中の一台。
どうやらそれを、中学生ぐらいの孤児が一人運転して徐行させて、停車させたようだ。
「……まぁ、歩行よりはマシかなってぐらいなトコだが、それよりは随分早いだろう?
 俺達が持ってても仕方無いからな。好きに使ってくれ」
一方通行は了承した。ここまで無償で手を尽くしてくれるオッレルスに感謝をしつつ、
「打ち止め、別れの挨拶はいいか」
離別していく。
打ち止めはうん、と頷く。ここの孤児達と信頼し合い、少しの間だけ、さよならだね、と
言った後、車の後部座席(トラックなので狭いスペースだが)に乗り込んだ。
「番外個体、オマエも乗れ」
番外個体も助手席に収まる。
一方通行も、運転席に座った。窓から肩ごと顔を出し、オッレルスに、
「じゃあな、恩に着る」
一言だけ残し、体を引っ込めて窓を閉めた。
差されたままの鍵を捻ってエンジンを起動させる。サイドブレーキを解除する。
再び動き始めたエンジンによって、車体が振動する。
「第一位、運転できるの?免許は?」
番外個体が一応聞く。今までの一方通行は車の運転を必ず他の人間に任せていたが……
「肝心なのは許可状じゃねェ。心得だ」
杖を突く身にも拘らず、一方通行は力強くアクセルを踏み、学園都市製の車よりも
一世代グレードダウンした車体を流暢に発進させた。
ブロロロロ……と消費される燃料に則した爆音を漏らしつつ、
一方通行達が乗り込んだ大型車が、孤児院から離れていった。
オッレルス達は黙って見送った。
車体が見えなくなっても、ずっと。

485『とある妹達の番外個体』:2010/05/26(水) 01:12:38 ID:L0KKcB9c

「あなたって運転うまいんだね、ってミサカはミサカは一方通行の隠れた特技に真剣に感心してみたり」
外は何時しか豪雨になっていた。戦争によって火薬が過剰に使用される事で気温が狂い、
これほど寒いのに雪にならずに、水が降る。ワイパーで視界を確保しつつ暫く走って、
戦争の局地を避けている内に、打ち止めが口を開いた。
「こンなモン、一目見りゃどォ動かすかぐらい何となく分かるだろォが」
かなり人間離れした発言を一方通行は平然と返す。
大型車は乗りこなすのには慣れがどうしても必要になるが、彼にとっては楽勝だった。
「ミサカにもできるかな?」
「オマエには無理だ」
だが、番外個体の意欲は速攻で否定する。こいつなら運転代われ、とか言い出しそうで怖い。
「何でなんで!ってミサカは憤るよ!もう、ミサカばっかり除け者にして!さすがにミサカも怒るよ!」
あァ?と一方通行は考える。番外個体を除け者にした覚えが無い。まぁ本人が言うならそうなんだろう。
「そうだ。大きいミサカに言いたい事があったんだ、
 ってミサカはミサカはミサカ二〇〇〇二号に一つ提案をしてみたり」
打ち止めが話題をずらした。提案とは何だろうか。番外個体もきょとん、としている。
「大きいミサカも、ミサカネットワークに入らない?ってミサカはミサカは強引に誘ってみる」
番外個体がはっとする。そんな事、考えもしなかった。自分は元々『セレクター』によって
ミサカネットワークから分断され、打ち止めの上位命令文も遮断していたため、
他の妹達とリンクする余地など無かった。だが、それが破壊された今なら可能だ。
だが、負い目が番外個体にはあった。自分は妹達の輪に入る資格などあるだろうか。
一方通行を殺しに、そして心を砕いた罪深い自分が。
迷った番外個体は、一方通行に目を向ける。彼はどう思うだろうか。
だが、一方通行は簡単に言った。
「イイじゃねェか。オマエだってその権利があるだろ。第一、オマエが妹達から外されたのは
 クソったれの学園都市の上層部の勝手な理由からだろォが。オマエのせいじゃねェ」
簡単に許した。
「オマエの人生だ。好きにしろ。妹達に仲間入りするのも、今のままでいるのもオマエの意思次第だ」
一方通行が言うなら、そうするべきなんだろう。番外個体の負い目は随分と軽くなった。
それを、受け入れた。こくん、と頷いた。
それに応じて打ち止めもにっこり笑い、歌うようにコードを入力する。

486『とある妹達の番外個体』:2010/05/26(水) 01:13:03 ID:L0KKcB9c
「検体番号ミサカ二〇〇〇二号の潜在電波を同調確認。誤差、変数、導入後のミサカネットワークにおける
 加算効果、全て許容可能。これより個体名『番外個体』を新規妹達としてオリジン追加する。
 ホスト構築まであと二十五秒。
 …………三、二…………受信完了。ミサカネットワーク総量数、九九七一に変更。
 バックアップ、全記憶の共有、潜在意識と『自分だけの現実』における意思経路確保承認。
 …………うん、大丈夫だよ。大きいミサカに皆、反応してる、ってミサカはミサカは
 リンクの確認を尋ねてみる」
その時、番外個体の脳内に対外意識の混入が成された。今の番外個体の頭の中には妹達の、
『何故か新しいミサカが入門したようです、とミサカ一〇八五三号は情報更新に事務的に反応します』
『どうやら感情構造に差異が存在するので、とりあえずその人格データをチェックします、と
 ミサカ一四九〇二号は常識的に対応します』
『まだまだ人生経験が足りないようなので、これからゆっくりご教授します、と
 ミサカ一九〇〇七号は優しく進言します』
『とにかく二〇〇〇二号もあの少年の功績を真っ先に知るべき、と
 ミサカ一〇〇三二号は私情抜きで伝えます』
『そ、その図抜けた発育速度に興味が有るので構成過程を知らせなさい、と
 ミサカ一九〇九〇号は内密に依頼します』
様々な言葉が届き続けていた。自分を否定する者は誰も居なかった。一人も。
自分の居場所。それを見出した番外個体は、かつては悪意に染まった人形だった妹達の一人は、

涙を流していた。
心の傷から滴り落ちるものではない。満ちた心から溢れ出すものだった。

それを眺める打ち止めは嬉しそうに、していたが、
「……ふふふ、これで大きいミサカもこの打ち止め様の命令には逆らえなくなったのだー!って
 ミサカはミサカは裏にあった思惑で場の空気をぶち殺してみたり!」
爆弾が落ちた。一方通行の肩ががくっと落ちる。番外個体は、んなッ!っと目を見開く。
「そ、そんな策略があったのか!このミサカを奴隷に堕とすための甘いワナだった!
 く……あまりにも迂闊だった、『ってミサカは自分の軽薄さにうんざりするよ』!」
ミサカネットワークとのやり取りで、もう妹達共通の口癖が付きつつあるらしい。
「よーし、じゃあ早速、『シート』の効果を横取りしてこの人の心を読み、このミサカも
 より一方通行と親密になる計画、名付けて『アクセラオーダー』の実行に移る!って
 ミサカはミサカは高らかに独裁宣言をしてみたり!」
「ははっ!残念でした。ミサカの『シート』はこの番外個体オンリーの能力機関だから
 上位個体である小さいミサカには使えないのでしたー!ってミサカは革命宣言するよ!」
「く、くぅぅぅぅぅう!ってミサカはミサカはガチで悔しさに布を噛んでみたり!」
なんか愉快な事ではしゃぐ妹達。完全に精神的な壁は取っ払われていた。

487『とある妹達の番外個体』:2010/05/26(水) 01:13:38 ID:L0KKcB9c
だが、一方通行だけは目線が異なっていた。この平和も確実に崩壊に近づいている。

打ち止めの病状は上条とオッレルスの処置によって幾許か回復した。だが、改めて能力によって
診断すると、『始動キー』は少しずつ、まるで紙を水に少し浸すとすぐに
紙全体に湿りが広がる様に、打ち止めの脳を再び浸食しつつあるのが分かったのだ。
このままでは確実に打ち止めは死ぬ。それが現実だった。

番外個体も、本来ならば一方通行の精神を砕いた後は、消滅する筈の個体だった。
学園都市はイレギュラーの存在を許さない。出る杭は必ず全力で打ってくる。
いずれ、確実に番外個体の命を狙う敵が来る。それが現実だった。

そして、一方通行にも、同様の危機が訪れるだろう。自身の精神への攻撃は途切れまい。
学園都市はどうしても一方通行を『穏便に』投降させたいらしい。
希望の業火が灯る地獄と、絶望の聖火が点る天国、どっちがいい?
その決断を迫る来訪者が現れるだろう。打ち止めや芳川、黄泉川の化けの皮を被った『何か』が。
それが現実だった。

それでも、一方通行は希望を選ぶ。夢を諦めない。
そう思うと、ハンドルを握る指に力が入る。
(もう俺は妥協しねェ。あいつの影を追う事もしねェ。こいつらを、妹達を、
 あのシスターも、善も悪をも超えた手で全部、救うんだ)
打ち止めと孤児達の交流。あの平和の光景は嘘ではなかった。
一方通行のやり方次第で、現実に起こしうるんだ。
『傲慢だろうが何だろうが、お前自身が胸を張れるものを自分で選んでみろよ!!』
あの言葉がほんの少しだけ心を掠めた。
(残念だが、胸を張れるほど立派なものじゃねェ)
だが、もうあの少年への脅威も畏怖も消え去っていた。
(青臭ェ、ただの人間が願う当然の夢だからだ)

488『とある妹達の番外個体』:2010/05/26(水) 01:14:02 ID:L0KKcB9c
夢を完結してみせる。
一方通行は、打ち止めと番外個体、妹達に恒久の平和を与える夢を。
番外個体は、一方通行の過去を許し、その重荷から彼を自由にする夢を。
打ち止めは一方通行が光の世界に帰って来れるように、彼を闇から取り戻す夢を。
ただ、それを叶えるために、一方通行達は走り続ける。
何時しか雨は晴れ、大きな虹が彼らを新境地に誘う。

虹のように光彩ある非現実な夢。暗雲から降る絶望は希望に潤いを与えて、その思いに苦難を強いる。
既存のルールを維持するために大人が象る高尚な現実に、ルールを打ち破る子供の抱く幻想が牙を剥く。
ひたむきに心の真義に従い続ける純粋な力を信じ続ける者だけが、
誰もが肯定しない甘く優しい奇跡を呼ぶ。



『とある妹達の番外個体』 完

489■■■■:2010/05/26(水) 01:27:40 ID:L0KKcB9c
以上です。皆さんの満足にいたる出来だといいんですが……
テーマは『夢』。オカルトキーワードは『エノク』です。
番外個体が主人公、の話にしたかったけれども一方さんが完全に主役ですね。
一方さんの黒い翼を勝手に進化させちゃいました。
個人的妄言だと、一方さんのベクトル変換能力はミサカネットワークという
大脳に移り、空白になった一方さんの『自分だけの現実』に黒い翼が
宿った、とか考えてます。
ミーシャや一方さん、エイワスの話すあの言葉は天使語?って
推察が結構あったので、エノク語を出しました。
実は史実のアレイスターも一口噛んでるんですよコレ。
オッレルスの孤児院の話とか、〇の物質とか、
色々小ネタがあるので、調べるといいことがあるかもしれません。

というわけで、またしばしのお別れです。
次がもしあったら、麦のんと美琴が再会する話とか書こうと思ってます。
ではでは、本当にありがとうございました。

490■■■■:2010/05/26(水) 14:37:50 ID:OCT/.qW2
久しぶりの良作を見た気がします。
>>489
乙&Gj!!&次にも期待大です。

491ビドール:2010/05/26(水) 15:34:46 ID:KcLZoesA
「剣闘士奴隷」、都合により打ち切ります。

いきなりですが、申し訳ありません

492■■■■:2010/05/27(木) 22:33:53 ID:bp4JBPuk
>>489
GJ!!次回作期待してもいいんですか?

493■■■■:2010/05/28(金) 21:28:50 ID:YzDQoASc
>>489
GJ! ワーストがとても可愛くて愛らしくて愛おしくなりました

494■■■■:2010/05/28(金) 22:28:16 ID:3krOZlX2
>ビドール様
 きっと熟考の末の決断でしょう。
 気持ちが落ち着いたらまた描いてください。

>>489
 まさかの石破ラブラブ天驚拳!
 GJ!!

495■■■■:2010/05/29(土) 02:13:55 ID:ngdDm/5U
>>458

返信遅くなりました。すいません。
展開やネタバレを気にしていらっしゃるのでしたら、大丈夫ですよ。
underlineの解説は、前の投稿の内容で説明した気になってしまっていて、言葉足らずでわかり難かったようなので補足しただけですので。
むしろいろいろ意見質問とか言っていただいた方が、誤解やこっちのミスなどが判明していいと思いますし。

とまれ、これからわたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜5を投下します。
注意点としては

今回から絹旗&ショチトルVS垣根帝督が始まりますが、垣根、ショチトルともに原作での登場が少なく、能力の詳細がわかっていないところもあるので、自分の勝手な解釈で能力を設定してしまっています。
ショチトルについては本文中で説明しているのでそちらを。
垣根の未元物質についてなのですが、きちんとした描写があるのが対一方通行での白い翼くらいしかないので、
勝手な推測で「(漠然と)未元物質を自分の周囲に自由に展開できる能力」としました。
具体的な内容については、(知っている方は)今アニメも放送中の成田良悟先生著の「デュラララ」で黒バイク、セルティの操る「影」の白い版、みたいに思ってくださるとありがたいです。
さらに追加効果として太陽光をビームに変化させたりできる、といった感じです。
原作にない魔術対科学なので、それは無効にできないんじゃないか、とかもあると思いますが、どうかよろしくお願いします。

それでは、投下します。

496■■■■:2010/05/29(土) 02:15:33 ID:ngdDm/5U
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「どうした!超能力者か!?」
「何なんだあいつは……」
ワゴン車の運転席で、建物の中で、それぞれ言葉を吐く浜面とショチトル。
運転席に座る浜面は垣根帝督が視界に入っておらず、突然の攻撃に混乱している。
一方ショチトルは垣根の存在は認めたようだが、それが学園都市第二位の男だとは気づいていないらしい。
つまりは唯一絹旗最愛だけが現状の危機を正しく理解していることになる。

だが――
理解しているからといって、現状を好転させられるかと問われれば答えは否であった。

(超無理ですよ……勝てる訳がない。学園都市第二位と、レベル5と戦って勝てる見込みなんて超有りません。…………無論、だからと言って逃げられる訳もないですが。車に乗って建物から出れば、その瞬間光線で車ごと消し飛ばされるのが落ちですから)

打つ手なし。
最初から負けが見えている。
ならばそんな勝負はするだけ野暮だ。
さっさと諦めて、降伏するなり隠れてやりすごすなりして機を待とう。
生き残れればそれでいい。
逆に言えば、自分の生命より優先するものなど何もないのだ。

今までの絹旗最愛だったら、そう考えていただろう。
しかし――

(佐天さん…………)

打つ手がなくとも、投了出来ない理由が今の絹旗にはあった。


バタンッ、と絹旗はワゴン車の助手席の扉を『外側から』閉めた。
「お、おい!どういうことだよ絹旗!」
慌てて助手席の窓を開けて叫んでくる浜面に、絹旗は淡々と返す。
「すいません、先程仕留めた狙撃手の仲間の能力者が報復しに追って来たようです。なので浜面は佐天さんを連れて超先に病院へ行って下さい。道なりに10分程超飛ばせば隣街に着きますので。そこからGPS機能でも使えば超すぐに見つかると思います」
「お前はっ!?」
「ちょっとばかしあの能力者を足止めしておきます。別に大した能力者ではありません。私の能力でも超充分対処可能ですから」
誰がどう聞いても強がりにしか聞こえなかった。
遠距離から砲撃を行うような能力に、自分の周囲数センチの窒素を操ることくらいしか出来ない絹旗が敵う訳がなかった。
それでも、絹旗は戦うことを決意した。
「だから浜面は何としても佐天さんを病院に送り届けて下さい。絶対に佐天さんを死なせないで下さい」

今までの自分とは違う。
流されるままではない。
敵わないからと引き下がったりはしない。
怖いからと言われるがままにはならない。
自らの意志で以て戦場に赴く。
一人の少女を――守るために。

絹旗最愛という少女は、この日この瞬間、確かに『変わった』のだ。


「――分かった。約束する。お前の友達は絶対に死なせない」
浜面が、力強く言った。
それは先程電話口で最後に言った言葉と同じ強さを持っていて、
――そして浜面は今まで絹旗が一度も見たことがない顔をしていた。

それを見て、思う。
あぁ、これが本当の浜面なのだと。

今まで、どうして浜面が何も為してくれないものかと苛立っていたが、それはとんだ御門違いだったようだ。
彼は決して、正義の為に悪と戦う、と言ったありふれた正義の味方ではないのだ。
彼の戦う理由はただ――誰かを守る為。
守るべき誰かがいる時、浜面仕上は誰よりも何よりも強くなる。
それが浜面仕上という男の素質であり、本質。

ならば話は簡単だ。
「浜面、滝壺さんのことどう思います?」
「は?何だよ、こんな時に」
「超可愛いですよね」
「いや突然何言い出すんだよ!」
「否定はしないんですね」
「な……そりゃ、まぁ……」
心なしか頬を赤く染めて答える浜面に、
「ま、今はそれくらいでいいです」
絹旗は満足気に呟いた。

(――いずれ、浜面にも体晶のことを話しましょう。きっと浜面なら、滝壺さんのことも救ってくれる。今回佐天さんの為に駆けつけてくれたのと同じ様に。そしてその時も、私は私自身の意志で戦いましょう)
今まで何も変わらなかったのは、誰かに期待して自分が何もしようとしなかったから。
自分から変えようと思えば、浜面と滝壺を引き合わせ、自分が彼らを精一杯サポートすれば――そこに道は開けるはずだ。

確かな確信を胸に抱き、絹旗はそれをこの場を乗り切る原動力とする。
「それでは、私が合図したら道路に飛び出して下さい。それと同時に追っ手に攻撃を仕掛けて足止めをしますので、その隙に超全速力で安全圏まで逃げて下さい」
しっかりと紡がれるその言葉は、もう強がりではなかった。
言葉と同様に確かな足取りで絹旗は車を離れようとする。

497■■■■:2010/05/29(土) 02:15:56 ID:ngdDm/5U
「絹旗」
その背に、浜面が声をかける。
「――死ぬなよ」
短い言葉に、
「超当然です」
同じく短く返して、絹旗は気づく。
もしかしたら、浜面がここに来てくれたのは、泣いている自分のことを助けるためでもあったのかもしれない、と。
そして今も、銃弾を真っ向から受けても死なない自分のことを心配してくれている。
(――なんだか、やたら嬉しくなりますね)
思い、胸がきゅん、となる絹旗。

……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………え?きゅん?

(ちょっといや超待つのです絹旗最愛胸きゅんって相手あの浜面ですよ浜面鼻にピアスとかつけちゃうような超馬鹿っぽい奴で実際馬鹿だしルックスも別にイケてる感じでは超ないですしなにより浜面には滝壺さんの方がお似合いですってあぁぁぁぁぁこの言い方じゃまるで私も浜面に超好意を抱いていて慎んで身を引くシュチュみたいになってますぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!)
「ど、どうした!?」
突然頭を抱えてクネクネし始めた絹旗に、声をかけた浜面だったが、
「な、なな、なんでもないですからぁぁぁ!!」
と叫びつつ放たれた絹旗の右ストレートをまともに顔面に受け、
「ぶぉふぉぁあ!!!」
と悲鳴を上げながら運転席におさまる。
その惨状に目を向けずに、絹旗は今度こそワゴン車から離れ、建物の中に入った。

498わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜5:2010/05/29(土) 02:16:40 ID:ngdDm/5U
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「話は終わったのか?」
建物内に戻ってきた絹旗に、赤いセーラー服を着た少女――ショチトルは問う。
「……ていうかどうした。顔が真っ赤だぞ?」
「いやほんとなんでもないですから!とりあえず保留!超保留にしときます!」
あたふたと叫ぶ絹旗。
「――まぁ、足手まといにだけはなるなよ」
そう言うショチトルは、大剣――マクアフティルを地面に突き立て、当然のように真っ直ぐ垣根のいる方向を睨んでいた。
「……一応言っておきますけど、浜面と一緒に車で逃げて下さったっていいんですよ?」
「それはこっちの台詞だ、大馬鹿野郎」
にべなく切り捨てるショチトル。
それを聞いて、やれやれですね、と絹旗は僅かに苦笑する。
「それで、あの男は何者なんだ?お前は何か知っているようだったが」
「ええ、私の組織のリーダーの不始末でやってきてしまった疫病神です。学園都市第二位、『未元物質』の垣根帝督。実力じゃ二人がかりでもまるで敵いやしませんよ」
「……どうするつもりだ」
あっけからんとした絹旗の敗北宣言に、ショチトルは怪訝な声を上げるが、絹旗は臆しない。
「力で負けるなら策を練るまでです。簡単なことですよ、何も超巨大兵器を相手にするわけじゃありません。クェンサー達に比べれば、超楽なミッションです」
「……クェンサー?」
「一度見ればハマること間違いなしの、おすすめC級映画の主人公ですよ。という訳で、作戦会議といきましょう。お互いの能力のネタばらしをして、そこから活路を見出していきましょうか」
彼方の垣根を見据え、絹旗は不敵に笑った。

499わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜5:2010/05/29(土) 02:17:39 ID:ngdDm/5U
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「なかなか出てこねぇな。本当にいるのかよ、情報間違ってたんじゃねぇか?」
垣根帝督は廃棄施設へのランダム攻撃――日光を未元物質に通し、この世のものとは別の法則による回折現象で光線の様に変化させるものだ――を続けながら一人ごちる。
『スクール』の構成員である少年の話では、このあたりに狙撃手を始末した『アイテム』の構成員のうち二人が潜んでいるらしい。
本来の予定では、親船最中の狙撃が成功するにしろ失敗するにしろ、それによって警備が薄くなった素粒子工学研究所から『ピンセット』を強奪することになっていたのだが――狙撃手は親船最中の講演会が始まる前に見つかって殺されてしまい、その結果親船の講演会は何事もなかったように(実際表向きには何もなかったのだが)現在も続いているようで、素粒子工学研究所の警備が薄くなる様子もない。
その上狙撃手という遠距離支援の戦力も失った今、『ピンセット』強奪作戦は延期せざるを得なかった。
そうして暇になってしまった1日を『有効活用』しようとここまでやってきたのだが……
「これで実は中にいませんでしたなんて展開だったら、俺って結構恥ずかしい奴なんじゃ……」
垣根が割と本気で心配し始めたところで変化が起こった。
けたたましいエンジン音とともに、建物の一つからワゴン車が飛び出したのだ。
「やっとか」
呟き、垣根がそちらに光線の照準を合わせようとしたまさにその時。
光線によって建物に空いた穴の一つから、垣根の立っている方向へ向けて何かが飛び込んできた。
「!」
ワゴン車への攻撃を中断し、そちらに意識を向ける垣根。
それは、道路の両脇にいくつも並べられている、事故の衝撃緩衝用の大量の水が詰まった特殊繊維で作られたバルーンだった。
バルーンは垣根に当たることはなく、その少し手前で地面にぶつかった。
(何だ?俺に当てるつもりで失敗したのか?だがそもそも衝撃緩衝用のバルーンなんて当てたって大した威力にはならないだろうに)
そう思う垣根は、しかしすぐにその真意に気づく。

バルーンに、赤いセーラー服を着た少女がしがみついているのを見て。

(能力か何かでこいつを建物から俺のところまで飛ばし、着地の際のクッション代わりにバルーンを使ったってことか……いや、確か情報ではここにいるのは2人。とするとワゴン車の運転手と目の前のこいつで残りは0。射出はこいつ自身の能力か?)
考えている内に、セーラー服の少女――ショチトルはバルーンから飛び降り、危なげなく地面に着地する。
一方でワゴン車は既に車道に出ており、急加速をかけてこの場から離脱しようとしていた。
「……はん、成る程。そういうことか。いいぜ、そのゲーム、乗ってやるよ」
状況から一つの仮説を導き出した垣根は、目の前の少女に対して挑戦的に告げた。

500わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜5:2010/05/29(土) 02:17:49 ID:ngdDm/5U
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
(絹旗の言ったとおり、こっちの意図に気づいたようだな……)
ゲームに乗ると言った垣根の言葉を聞き、ショチトルは建物内で絹旗と交わした会話を思い出す。

♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「建物からワゴン車が飛び出し、それを追いかけるのを阻むようにショチトルさんが立ちはだかる……それを見た垣根はどう思うでしょうか?」
「……車の中に何か重要な物質、何としても破壊されてはならないものを積んでいて、戦線から離脱させよとしている、か」
かつて雲海の蛇に乗り、切り札である太陽の蛇を御坂美琴の猛攻から守ろうとした経験を思い出しながらショチトルは言った。
「そうですね、そしてそれはあながち間違っている訳ではありません。確かに佐天さんを死なせる訳にはいきませんから。しかし垣根は、その物資は自分達を不利、ないし私達を有利にする何か、だと推測する筈です。まさか暗部と何の関わりもない女子中学生を逃がそうとしているとは考えないでしょう。……かと言って、無害な少女だから逃がしてくれ、と言っても超信用してはくれないでしょうが」
「……つまりお前はこう言いたいわけか。敢えて私達がワゴン車を守るように立ち振る舞うことで、垣根帝督の本来の目的であろう『アイテム』の構成員――これには私も含まれるんだろうな――その抹殺より、ワゴン車の追跡の優先順位を高くさせる、と」
「ええ、その結果垣根の攻撃は『私達を殺すため』のものから『私達をより短時間で振り払うため』のものに超変わるはず。これだけでも私達の生存率は超上がります」
「だがそれはワゴン車を――つまりは佐天涙子とお前の連れの命をベットする行為だ。垣根帝督が私達を振り払い、ワゴン車に追いついてしまったら、まず間違いなく消される」
「その通りです。しかし、追いつかれなければほぼ間違いなく消されません。ワゴン車が病院、少なくとも隣街まで入ってしまえば、垣根も下手に手は出せなくなるでしょう。学園都市の『表』が気がつくところで能力を使えば、超希少な能力ですしね、ほぼ確実に上層部にマークされ行動に超制限がかかります。『スクール』は今何かを超企てているようです。内容はわかりませんが、それを考えると行動を制限されるのは『スクール』の望むところではないでしょう」
「だが、後日改めてあいつらが『事故』に遭う可能性は?」
「それもないでしょう。日が空けばワゴン車で輸送していた物資の内容を調べる暇も出来ます。そこで、運ばれていたのが物資ではなく中学生の怪我人で暗部と何の関わりもないとわかれば、超放っておくはずです。垣根が『ムカついたから殺す』なんて超破天荒な性格をしていなければですがね……少なくともウチのリーダーより人格者であれば大丈夫でしょうが」
「……私達がまずすべきことはワゴン車が安全圏に脱するまで垣根帝督を引きつけておくこと」
「えぇ、それだけは失敗してはならない超重要案件です。そしてそれが完了したら、フェイズ2に移行します」
「私達自身が垣根帝督から逃れる、と」
「そうです。ワゴン車に追いつけないと分かれば、垣根は『私達を殺すため』の攻撃に切り替え、本来の目的を達成させようとするでしょうからね。五体満足で逃げられれば御の字です。

まとめると、フェイズ1。垣根からワゴン車を逃がせば私達の勝ち。追いつかれれば垣根の勝ち。
フェイズ2。垣根に殺されずに私達がここから逃げられれば私達の勝ち。私達を殺せれば垣根の勝ち。

――これはそういうウォーゲームです」

501わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜5:2010/05/29(土) 02:18:02 ID:ngdDm/5U
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
ゲームに乗ってきた垣根に向かって、ショチトルはバルーンから飛び降りた勢いを殺さないままに走り出す。
当然このバルーンは、絹旗が建物の中から力任せにぶん投げた物だ。
常人なら地面にバルーンが着地した時の反動で投げ出されるだろうが、かつて米国の戦闘機と渡り合うほどの速力を持った雲海の蛇を操っていたショチトルにとっては造作もない。
ショチトルは眼前の敵を見据え、虚空から大剣――マクアフティルを出現させる。
「機能的な学園都市にしちゃ随分ごてごてした得物だな。本当に斬れんのか?」
「心配するな。今すぐに試させてやる」
余裕の表情で軽口を叩く垣根に、ショチトルはマクアフティルを袈裟に斬りつける。
だが、
ガギィ!と音を立てて、マクアフティルは垣根に届く前に何かに阻まれる。
白い色をした硬質の板のようなものが、忽然と垣根の前に現れたのだ。
「斬れてねぇぞ?」
「……成る程な、これが『未元物質』か」
「はん、知ってたか。俺も有名になったもんだ」
垣根は目の前の板をノックするようにコン、と叩いて得意気に言う。
「こいつは硬度を強化した『未元物質』。対戦車ミサイルぶっ込んだって、壊せやねぇよ。『ここの世界の物理法則』に縛られたものじゃな」
「……そうか、そいつは好都合だ」
「あ?」
「お前の『武器』が強いほど、私にとっては都合がいいのさ」
言って、ショチトルは『自殺術式』を発動した。

502わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜5:2010/05/29(土) 02:18:17 ID:ngdDm/5U
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「っ!」
垣根は、目の前に展開された『未元物質』に違和感を感じた。
(何だ?コントロールが……!)
次の瞬間、『未元物質』が垣根の意志を無視し、垣根に向かって突っ込んできた。
「ちっ!」
垣根は中空に球状の『未元物質』を出現させ、それを板状の『未元物質』に高速でぶつけることで軌道をずらそうとする。
だが、
(こっちもか!?)
唐突に球状の『未元物質』のコントロールまでが利かなくなり、垣根に襲いかかってくる。
「んだよそりゃ!」
悪態を吐きながら、垣根は地面に身を転がして二つの『未元物質』から逃れる。
(くそっ!他人の能力に干渉する能力なのか!?)
離れたところで立ち上がると、今度はショチトルに狙いを定める。
(この女が何かやってんのは間違いねぇ。こいつに一発ぶち込めば沈黙する筈だ)
そして、今度は槍状にした『未元物質』を出現させるとショチトルに向かって投擲した。
だが、槍状の『未元物質』はショチトルの数メートル前方で突然停止すると、穂先を180度回転させて垣根の方へ戻ってきた。
(これも駄目か!)
更に板状と球状の『未元物質』のコントロールも操られたままであるらしく、3つの『未元物質』が垣根を襲う。
「くそったれ!」
やむを得ず、垣根は能力の使用を切った。
途端に3つの『未元物質』は跡形もなく消失する。
(自分で消すのは出来るのか……だが)
前方には再びマクアフティルを振り上げるショチトルの姿。
垣根は今度は『未元物質』を出さず、身体を捻ってそれを避ける。
(攻撃も防御も封じられたってか。キツいな、おい!)

503わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜5:2010/05/29(土) 02:18:29 ID:ngdDm/5U
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
(『自殺術式』が利いている……こういう風にも使えるとは、思いもしなかったな)
ショチトルはマクアフティルを振るいながら思う。

作戦会議において、互いの能力の詳細をバラしあった絹旗とショチトル。
無論ショチトルのそれは魔術なのだが、細かいところはごまかして、『空気中に散布した媒介を通して、相手の所持している武器のコントロールを奪う能力』だと説明した。
すると、絹旗がそれに異論を唱えた。
絹旗との戦いにおいてショチトルは絹旗の手にしたコンテナのコントロールを奪ったが、その時絹旗は正確には武器を所持していなかった。
能力を用いて、自分の身体から数ミリのところに浮かせていただけ。
つまりは、『実際に手に持っていた訳ではない』と言うのだ。
そこから絹旗はショチトルの『自殺術式』に一つの仮説を生み出した。
即ち、『自殺術式』は『相手の所持している武器』のコントロールを奪うのではなく、『ショチトルが、相手が所持していると認識している武器』のコントロールを奪う。
絹旗は『自分だけの現実』が何とか、とよく分からないことを言っていたが、成る程『自分の認識に準じる』というのは分からない話ではない。
『自殺術式』の核である『原典』は自分の肉体と融合している。
ならば自分の認識が『原典』の生み出す現象に影響を与えるというのは有り得ない話ではない。

――そして、そこから生み出された戦術がこれだ。

『未元物質』を垣根帝督の所持する武器だと認識することで、『未元物質』を『自殺術式』の影響下に置く。
単純だが、それ故に強力。
流石に絹旗の操る窒素のように目に見えないものでは認識のしようがないが、目に見える物体で、尚且つ垣根が操っているという前情報があれば、その白い物体を『垣根帝督の所持する武器』と認識することは難しくなかった。
それそのものが超能力の産物ということがあってか、垣根が自分の意志で消失させることまでは阻めないようだが、それでも相手の攻め手を奪えたことは大きい。
実際、垣根は先程から『未元物質』を出すのを止め、マクアフティルを避けることに専念している。
(これならば、いけるかもしれないな……)
マクアフティルを振るい、逃げ場を制限することで、ショチトルは垣根を誘導していく。
そして、
(よし、行け!絹旗!)
垣根が、事前に絹旗と決めていた『所定の位置』に飛び込んだ。

504わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜5:2010/05/29(土) 02:18:42 ID:ngdDm/5U
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
(訳わかんねぇぞ、おい!)
心中で毒づき、垣根帝督はショチトルのマクアフティルを避け続ける。
もともと運動神経は良い方であるし、かつての一方通行のように能力に頼り切った戦い方をしないように身体は鍛えている。
加えてショチトルの方がマクアフティルの扱いに不慣れであることから、何とかショチトルの攻撃を避けられている。
だが、避けるだけではどうしようもない。
反撃をしなければ、と思い『未元物質』が乗っ取られているメカニズムを解明しようとしているのだが――
(ぜってぇおかしい。AIM拡散力場に何の干渉も起きてないってのはどういうことだ?能力のコントロールを奪われてるのに、力場に乱れがないってのはありえねぇ……)
一言で言えば、分からない、に尽きる。
『超能力とはまるで別次元の力』を使っているとしか思えない。
(くそ、能力に頼り切りにならないっつったって、全く使えない状況ってのは……いや)
そこで垣根は気づいた。
(こっちのコントロールは奪われていないのか……)
こっちとは、垣根が自分の周囲に漂わせている、視認できないほど微細なサイズの『未元物質』の群れのことだ。
垣根はそれを常時展開し、自身に危機が迫ることがあれば即座に対応出来るようにしている。
第三位の超電磁砲が、電磁波の反射を利用して自分へ向けられた攻撃を探知出来るのと似たようなものだ。
垣根の場合は、更に幾つかの数式を組み込み、自分に向かってくる攻撃に自動で反応して『未元物質』の防壁を作ることが出来るようにしてある。
防壁がかえって邪魔になったり、防壁用の演算能力が負担になるような高速戦闘中以外は、その機能は大抵オンになっている。
とまれ、その極小の『未元物質』のコントロールは奪われていないようだ。
(視認出来るものしか操れねぇのか?…………ん?なんだこりゃ)
極小の『未元物質』にはある程度の分析機能も備わっている。
垣根はそれによって空気中に漂う停滞回線の存在を発見したりもしたのだが――
(空気中に異物が混ざってやがる。それも停滞回線とは違う。これは………!?)
考えている内に目の前に迫ってきていたショチトルに気づき、慌てて回避行動を取る垣根。
だが、
(しまっ――!)
ショチトルの眼前から飛び退いた瞬間、今まさに意識を集中させていた極小の『未元物質』が、攻撃を探知した。
向かって左側。
ショチトルが飛び出してきた建物がある方だ。
辛うじて視線だけ向けると、すぐ目の前に電話ボックスほどの大きさのコンテナが迫っていた。
(まだ中にもう一人いやがったのか!くそ、『間に合わねぇ』!)
それは、コンテナを防げないという意味ではない。
むしろその逆だ。
眼前が白く染まる。
オフにしていなかった自動防御の数式が、『勝手に防壁を作り出してしまった』のだ。
垣根の鼻先に出現した、四畳半の畳を縦にしたのと同じくらいの面積と厚さを持つ『未元物質』の板が、コンテナを阻み、ガァァン!!と大きな音を立てる。
そして、
「クッソぉぉォォォがぁぁァァァァ!!!」
瞬時にコントロールを奪われた『未元物質』が、ゼロ距離から垣根を強襲し、学園都市第二位の能力者である垣根帝督は、避けることも叶わずに、自らの能力の産物である『未元物質』の板によって20メートル程弾き飛ばされた。

♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
はるか後方へ吹き飛ばされる垣根帝督。
それを、絹旗最愛はコンテナを投擲した体勢のまま眺めていた。

初めは『絹旗とショチトルが二人とも出て接近戦を仕掛ける』という作戦を提案したのだが、ショチトルが『今日知り合ったばかりの相手とコンビネーションが上手く行くわけがない、連携の隙を逆に垣根に利用されて自滅するのがオチだ』と反対したため、ショチトルが接近戦、絹旗が後方支援を担当することになった。
そして、この時のショチトルの『自滅』という発言から、絹旗が思いついたのがこれだ。

初めは絹旗は動きを見せず、垣根が周囲に気を払う余裕を無くしたところで奇襲的に攻撃を仕掛け、自動防御機能を引き出した上でそれを乗っ取り自滅させる。
結果垣根は自らの強大な力で自分の首を閉めることになる。
自動防御機能が作動しなかったならそのままコンテナで押しつぶしてしまえるから問題はなかったのだが――この様子ならコンテナで攻撃するより余程大きなダメージが見込めることだろう。

「こんなもんですか」
無様に地面に倒れ伏す垣根帝督を見ながら、絹旗は呟いた。
「楽勝ですよ、超能力者」





――無論、どれだけカッコイイ台詞を吐いたところで、常時パンツ丸見せ状態というビジュアルによって、何もかも台無しになってしまっていたのだが。

505■■■■:2010/05/29(土) 02:26:08 ID:ngdDm/5U
以上です、が。
またタイトルみすりました…
本編は>>496から>>504です。

あとついでに今までのは
1は>>211
2は>>288
3は>>326
4は>>442
からです。

ご意見、ご感想などいただければ幸いです。
それでは。

506■■■■:2010/05/29(土) 12:54:36 ID:Uz6.FVnY
>>505
GJなのです!
タイトルという最大の伏線が回収されて盛り上がりを感じます。
ていとくんの攻略法って思考実験すると、
やっぱ魔術を解禁しないと作戦構築が無理っぽいんですよね。
一方さんですら苦戦しましたから科学側からだとアプローチしづらいですし。
あと、絹旗が超純情少女ですね。でも超エロいです。
次回も大期待です。毎週更新は大変だと思いますが、応援してます!

507■■■■:2010/05/29(土) 14:02:48 ID:bWlDJN0w
>>505
とても面白かったてす!
ただ帝督があっさり負けてしまったのは少し違和感が残りました。
次回も楽しみにしてます。

508■■■■:2010/05/29(土) 22:35:51 ID:9t4hynDc
>>505
GJ
しっかりと浜面と垣根が出会わないようにしているところは流石です。

509とある電光の調和学術:2010/05/29(土) 22:51:38 ID:H3sKL9YE
初めて書き込みます。
SS初心者なのでお手柔らかにお願いいたします。
オリジナルのキャラや設定を少し入れてますのでご了承の上見て下さい。
できれば感想お願いします。

510とある電光の調和学術:2010/05/29(土) 22:52:34 ID:H3sKL9YE
序章  追うものと追われるもの 狙うものと狙われるもの

九月下旬、上条当麻は大覇星祭やイタリアでの、とっても愉快な旅行で身体全身が悲鳴をあげそうなくらい疲れていた。そんな不幸な彼に、強気な少女の声がかけられた。
御坂美琴である。
「ちょっと!アンタ!見つけたわよ!大覇星祭の罰ゲーム忘れてないでしょうね?」
当麻はそんな元気はないという脱力した顔で、
「あぁ・・・お前か、疲れてるんだ。今度にしてくれ。」
「何よ約束すっぽ抜かす気?!」
言葉とともに電撃が飛んでくる。
必死で走って、かわしながら逃げている上条を、
必死で走って、電撃を飛ばしながら御坂は追いかけている。
「ううっ!きついんだよ今は!不幸だぁーーー!!」
今日も不幸な男とビリビリな女は騒いでいた。

ここはどこかくらい廃墟であった。
所々蜘蛛の巣が張ってあり、ネズミも数匹いた。
その中に立ちながらとある人物が腕につけられた端末のモニタを見た
「くふふっあれが学園都市ですか・・・警備が硬そうですね。
まあいいでしょう、強行突破で行けばいいんですから。」
紺色のマントに身を隠した金髪で長髪の魔術師はつぶやいた。
そこにその端末に連絡が入る。
「んっなんだ?」
「準備は済んだか?強行突破で頼むぞ。」
電話の声の主は楽しみながら告げた
「あぁ、あえて強行突破で行かせてもらう。」
紺色の魔術師は笑いながら答えた。
それは何か深い意味があるような雰囲気をかもしだしていた。
「じゃあ頼む。」
電話が切れた。魔術師は一息つき、一言叫んだ。
「proportio385―我の行いはすべてを調和し均等と化す!!!
さぁ均等を乱す者たちを狩ろうではないか!!」

511■■■■:2010/05/29(土) 23:25:10 ID:gd.zGgoQ
>>495
返信感謝! そう言って戴けると、本当に肩の荷が下ります。

>>505
GJ!!
ていとくんの戦闘描写は原作でも少なくてSS作者さん達が試行錯誤するしかないですが、自分としてはこれが今までで一番しっくりくる解釈だと思います。
『自殺術式』が攻略のカギになるだろうと考えてましたが、掌握対象を「所持している武器」から「所持していると認識している武器」へと昇華させたのは大胆な発想ですね。
流石のていとくんも初見での魔術師戦に困惑し、決まり手が自身の強大な能力では仕方ないですね。強過ぎる力は身を滅ぼすって誰かが言ってました。
さて、問題はこの後。今の一撃で状況は終了したのか、否か。
ブチキレていとくんも見たい気はしますが、後に控える原作の15巻との兼ね合いもありますし、そろそろ纏めにとりかかるのでしょうか?
次回の投下も期待するしか道はねえな。頑張って下さい。

512511:2010/05/29(土) 23:28:23 ID:gd.zGgoQ
>>510
投下ぶった斬ってたらすいません。
では続けて下さい。

513とある電光の調和学術:2010/05/29(土) 23:31:46 ID:tjy2K556
>>505
最後のオチがいい味出してますぜ旦那!w
ていと君が少しあれな気もしますけど本気でやらせちゃうと一方さんぐらいしか勝てないし難しいですよね
すんなりと読めて面白かったです

>>509
投稿するのはいいけど少しずつの連載なら今回はここまで、とか
今から何レスぐらいってのを入れてくれないと続きが来るのか来ないのかが分からなくて、
待てばいいのかもう次のレスを打ち込んでいいのかで他の人が困るんだな
もう30分経つから続きはすぐに来ないと踏んでレスしたけれどもさ

そしてこんな短い序章だけじゃ感想の書きようが無いんだぜェ……

514513:2010/05/29(土) 23:34:02 ID:tjy2K556
そして↑な風に簡単に名前欄は弄れるから作品部分にだけタイトルを入れるとか、
コテハン使ってみるとかってのも一つの手
投下するなら「今から投下するよ〜」と「今回はここまで〜」ってのはしっかりやって欲しいかも

515とある電光の調和学術:2010/05/30(日) 00:19:42 ID:BqiZOKYs
様子を見にきてみたら
指摘がありました
次からはもっと長く区切って
投稿するときは予告してから
終わった場合また知らせることにします
指摘ありがとうございます
以後気をつけます

ですがまだ未投稿の分があるので
投稿させてもらいます
オリジナルの設定やキャラなどがあるのでご了承下さい

516とある電光の調和学術:2010/05/30(日) 00:21:50 ID:BqiZOKYs
第一章  殲滅予告

「なんとかまいたか・・・」
上条当麻は疲れている。下校時刻が過ぎているせいか通りに人はいない。
「にしても、だいぶ時間たっちまったな。買い物して帰るか。」
今日は特売だったっけなぁとか思いながら、スーパーへ行く。
はずだったのが、目の前に一人の紺色のマントを着た外国人が現れた。
「ふふっ帰らせませんよ。」
その男は、マントを翻した、何かベルトにカプセルが5個ほどついていた。
それを男は、取り出しふたを開けて中身をばら撒いた。
砂鉄だった。
男が手を添えると砂鉄はグネグネと動き、手に剣の形でおさまった。
「何だよお前!御坂かよ!砂鉄の剣なんか作りやがって!」
当麻は叫んだ。相手が戦闘態勢に入っているのは確かだ。
またこんなコスプレみたいな格好をしていてかつ様になっているのは、オカルト。
魔術サイドの人間だ。
「ふふっふふふっ!御坂美琴・・・そうですねあの女の能力を基にこの術式は作りましたね。ですが・・・」
そういいながら、魔術師は砂鉄の剣を振るう。
「砂鉄の剣だなんてベタな名前つけないで頂きたい。
これは、砂鉄磁剣(マグネソード)と呼んで欲しい。」
「なにがマグネソードだ!パクリ野郎!そんなことより、目的は何だ?!」
「上条勢力・・・その起点と周辺にいる人物の殲滅ですね。くふふっ」
魔術師は不気味に答えた。あまりに不気味で当麻は背筋がゾッとした。
「聞いたことがあるぞ、アステカの魔術師が言っていた。魔術サイドと科学サイドの間にいる俺、上条当麻はどちらにも人望がある、それは両サイドのバランスを壊しかねないひとつの勢力となっていると・・・」
「そうだよ、まああの馬鹿なアステカ野郎はこそこそと人に化け、観察していたみたいだが、私は違う!危険なものは抹殺!隠密行動なんて考えない!と言いたいところだが、下手に動くと統括理事会とかが黙ってないんで、派手すぎず地味すぎずで行かせてもらうよ?」
そういうと魔術師は右足をぐるっと回し4の反転したようなものを円の中に書いた。
二人の距離は4メートル程あるが、
その瞬間、高速で魔術師が剣を振るいながら襲ってきた。
「うぁっ!何だ!」
当麻はとっさに横に避けた。
「なんでそんなに高速移動できんだよ!」
魔術師は振り返りざまに笑いながら答えた。
「くふふっ!これは音速電跳(リニアステップ)と言ってですね、足で魔法陣を足元に書き込み、見えないリニアモーターのレールを作り高速で移動する技ですよ。リニアモーターカーぐらい知ってますよね?」
当麻は次の瞬間疑念がわいた。
なぜ魔術師が科学技術を知っている?
しかもそれを取り込んだ魔術を使っている。
「なんだよ、お前能力者か?」
魔術師はにやりと笑い、
「くふふっよくぞ聞いてくれました、私は魔術師ですよ、ですがどの宗派にも学派にも属していません、あなたと仲がいいイギリス清教でもローマ正教でもロシア成教でもありません、私は独立しており魔術の概念を記録した機械の計算を用い、オリジナルの術式を考案、そしてそれを使用しているだけですよ、まぁそれを手伝ってもらっている科学者はいるんですがね、その人に言わせて見れば君は『調和師(ハーモニア)』だと言うんですよ、私にぴったりな肩書きです。くふふっ!」
「なんでだよ!魔術サイドの人間が科学サイドに触れてどうしてどうもないんだよ!」
当麻は自分の持つ疑念を叫ぶ、。
「くふふふっ!!考えて御覧なさい!あなたの友人、ステイル=マグヌスは携帯電話などを使っても血を流しましたか?」
確かにステイルは科学技術である電話を使ったりしているが血を出していない
「それにまず能力者が魔術を使おうとした場合の話でしょう!
まあ魔術師が時間割(カリキュラム)を受けた場合は魔力が練れなくなりますが。」
そうだ、三沢塾の一戦のときの、少女も魔術を使わされ血だらけになった。
土御門元春だって能力開発を受けた為、魔術を使う時傷が増える。
だが、
「ここまで科学側に触れながら魔術を使うことができるのか?」
「私はとある科学者と研究した結果、それに隙間があることがわかったのだよ!それを説明すると長いから言わないが。」
「なんだよそれっ!なんでもありじゃねーか!」
「ふふっなんだか話ばかりで疲れました、襲撃は一旦引きましょう。明日昼、また襲わせていただきます。その時は、両サイドの人と一緒にね。」
魔術師は、砂鉄をまたばら撒き渦を作りその中に消えた。
「なんだんだ、あいつは・・・両サイド・・・もしかしてステイルや神裂、御坂とかの事か?!」
上条当麻はどきっとして立ち尽くしていた。

517とある電光の調和学術:2010/05/30(日) 00:26:44 ID:BqiZOKYs
投稿は終わりです
次は水曜あたりにがんばれば投稿できると思います

最大主教のローラ・スチュアートを出したいんですが
セリフが難しい・・・

518■■■■:2010/05/30(日) 01:00:13 ID:VmA5kiTQ
>>517
GJ!!
オリキャラ無双させすぎると嫌われることもありけるから注意したる事につきよ

519505:2010/05/30(日) 01:03:49 ID:Awum8u4U
>>506,507,508,511,513
感想などありがとうございます。
なんだかていとくん弱いみたいな流れになってしまってますが、
一応バトルは続きますので。
まだ2から3回くらいは投稿続くと思います。(つまり完結一月くらい先です…遅くてすいません)
最後に
ていとくん「これからが本当の戦いだ!」(シャキーン
みたいに入れておけば良かったですかね。
毎度毎度変なところでぶった切ってしまってごめんなさい。

あと501さん、浜面と垣根のあたりの調整を拾ってくれてありがとうございます。ちょっとうれしい。
絹旗の方も垣根とは直接対面しないようにしているので、15巻で垣根の側からは初対面というのも守れていると思うのですが…
絹旗→垣根も素粒子工学研究所が初対面っぽい記述があるのを発見してしまって、ちょいとやっちまった感があったり。


>>517
エツァリさんがひどい言われ様w
音速電跳…
地下鉄のホームに立ってると、御坂美琴は線路の間に電流流して、次の駅まで一っ跳びとかできるのかな、とかよく思います。
IH調理器も兼ねててあの人結構便利。
ただ
「レベルなんてどうでもいいことじゃない(ね、無能力者の佐天さん?)」
だけは許せない。

520505:2010/05/30(日) 01:05:58 ID:Awum8u4U
謝礼なのに番号ミスるとは…
501さんでなく508さんです、すいません。

連レス失礼。

521助手席が気になる運転手 ◆Bqlg7BwZKs:2010/05/30(日) 01:27:49 ID:43JarVZQ
お、投下しようと思ったら他にも新作の投下が来てるな。さすが週末
番外個体があの後どうなったのよってのが気になってたのと、
口調とか性格とかまだ少ししか登場してないから捏造するなら今の内!
ってことで小ネタを書いてきました

場面設定は20巻後で、番外通行止めで小ネタ、数レス予定。
タイトルは「とある一位の三分料理(クッキング)」

522「とある一位の三分料理」 ◆Bqlg7BwZKs:2010/05/30(日) 01:29:09 ID:43JarVZQ

 クゥ〜というやや間の抜けた、それでいてやたらと自己主張の強い音が部屋に響き渡った。
「…………」
 静寂。というよりも次に発すべき言葉に困っているというのが正解か。
 部屋といってもここはトレーラーの荷台にマットレスと布団を運び込んだだけの簡易の休憩所とでも言うべき場所だ。いや、より正確には簡易の病棟か。
 とうとう沈黙に耐え切れず看病される側の少女が喋りだした。
「看病してる張本人がそれはどうなのってミサカはミサカは素朴な疑問をぶつけてみる。
 っていうかあなたでもそんな風なリアクションをすることがあるんだねって」
「黙れ」
 そう、それは仕方の無いことだったのだ。
 ロシアへと入ってから移動詰めで、途中数度の戦闘もこなし、更には一人の少年に八つ当たりした結果それはもう見事な返り討ちに遭い、気がついたらエリザリーナ独立国同盟へと向かう車列の中に紛れていた。
 その後、とりあえずの集結地点に着いたということで車列は現在簡単なキャンプへと変化していた。ところが、その即席のキャンプで一息つけている人間はまだ居ない。ロシア側からの襲撃があったとかで通信・連絡のための設備に損害が出ているらしく、その復旧と方々への伝達で軽く混乱状態に陥っているためだ。これが収束するにはもうしばらくの時間が必要だろう。
 そう、まともに食事するタイミングなど無かったのである。超能力者(レベル5)だって腹は減る。
「でもそんな凄い恥ずかしそうなあなたの顔はなんだかとってもレアな気がするので、
 これはこれでいい思い出になりそうってミサカはミサカは評価してみたり」
 そして相手が打ち止め一人ならばまだ気も楽だっただろう。病人とは構って貰いたくなるものだし、いつものやり取りと言えばいつものやり取りであるわけだし。
「仮にも学園都市の第一位がそんなコントなリアクションでいいわけ?
 っていうかミサカはこんな腑抜けにボコボコにされたのかと己の不甲斐なさを反省しつつ、
 早速このレア画像をミサカネットワーク上に拡散するという嫌がらせを実行することで
 憂さ晴らしをするよと宣言することで更に精神的な追いつめを狙ってみる」
 そう、今一方通行達が居る病棟にはもう一人収容されていたのである。
 番外個体(ミサカワースト)。
 学園都市が送り込んできた一方通行への刺客。 それなりに重症だったはずなのだが、何時の間に治療を受けたのか気がついた時には傷は全て処置されていて、それどころかセレクターが起爆した時の細かい破片すら綺麗に取り除かれていた。とてもそれだけの医療設備が整っている環境ではない今の状況でこれだけの治療が行なえる、いや既に行なわれたという事実は大いに見過ごせないことなのであるが……。
「そもそも化物(だいいちい)が何そんな普通の人間じみたやり取りしちゃってるわけ?」
 意識が戻ってからずっとこの調子。チクチクと一方通行の心を悪意――と呼ぶにはいささかチープではあるが――の針で突き続けているのである。真綿で首を絞めるかのような、本当に地味で、そして効果的な嫌がらせだった。
「黙ってろっつってんだろうがァ!」
 前方の病人(ラストオーダー)に後方の病人(ミサカワースト)。
 あまりの居た堪れなさに食料の調達という名目でそそくさと車両を後にした一方通行に『学園都第一位(最強の超能力者)』の威厳は全く無かったのは言うまでも無い。

523「とある一位の三分料理」 ◆Bqlg7BwZKs:2010/05/30(日) 01:35:26 ID:43JarVZQ

 (食料調達っつってもなァ……)
 はっきり言って自分にはまともな対人コミュニケーション力は無いという自覚くらいは一方通行にもある。
 しかも今居る場所は半ば難民キャンプの様相を呈している仮宿で、その上自分は気がついたらそこに居たという完全な部外者だ。
 知り合いはゼロ。車列が到着した時に簡単に案内をしてくれた金髪の男も今は自分の仕事に戻ったのか見当たらない。
 (仕方ねェ、少し周りを見てくるか……)
 とりあえずはキャンプの様子を把握するところから始めることにした。

 目に付いたのはいかにも『難民』ですという人間達だ。
 自分が乗ってきた車列がそもそも何の車列だったのかさえ知らなかったのだから当然と言えば当然なのだが、
 着の身着のまま逃げてきましたという風情で焚き火で暖を取っていた集団を見てようやく、そうした人間達を受け入れるためのとりあえずのキャンプであるらしいと分かったほどだ。
 幸いだったのはキャンプの中をうろつく間に件の金髪の男も見つかったことだ。
「おや、君か。どうかしたかい? まさか連れの女の子達の容態が悪化したとか?」
 まあ、普通はそう思う。まさか小腹が空いてなどという理由をこの状況で真っ先には浮かべまい。
「……あァー、病人用の食事ってのは用意ができンのかと思ってよ」
 さすがの一方通行も自分の腹が減ったからとは言い出せなかった。
「食事? ああそうか、そこまで気が回っていなかったよ。
 確かに君のお連れさん達の様子じゃオートミールとか何か消化の良いものを用意しないと……」
 と、そこまで喋って不意に男の声が途切れた。
「何か問題でもあンのか?」
「ああ、いや問題というほど問題ではないんだが……
 今運び込んである食料は全部調理前というか、ジャガイモだとかベーコンだとか
 そういう『食材』の状態なんだ。というか、炊き出しの準備もこれからという有様でね。
 難民の中にも小さい子や老人が居るからどの道食べやすい食事は用意するんだが、少し時間がかかりそうだ」
 男の視線の先に眼をやれば、今まさに大量のダンボール――側面にロシア語でポテトと書かれたものや、
 何か缶詰のメーカーのロゴが入ったものなど――が荷降ろしされているところだった。
 要するに『オアズケ』ということだ。

 ぐぅ、と今度はそれなりの音量でその主張はされた。
「ははっ、君も空腹な人間の一人というわけか。小型のコンロとかもあるはずだから、待てないようなら必要な分を持ち出してしまって構わないよ」
「はァ?」
 そう、男はこう言いたいわけである。炊き出しが待てないなら自分で作ってもいいぞと。
 普段の一方通行ならそのまま大人しく支度がされるのを待っただろう。何より面倒くさいという理由で。
 しかしこの時だけは違った。何せ車内に居る間延々とチクチク嫌味に晒されてきたのだ。いい加減ストレスも溜まっていた。更にそこに、男のふとした一言がダメ押しになった。
「最も、君が料理ができるのならだけども」
 男の方からすれば本当に何のことはない一言だったのだろう。だが、当の一方通行にはそうは聞こえなかった。
(ったくどいつもこいつも、俺が戦うしか能が無いみてェに言いやがってよォォ……!)
 彼は元々短気な方なのだ。
 そして……結構負けず嫌いである。

524「とある一位の三分料理」 ◆Bqlg7BwZKs:2010/05/30(日) 01:40:40 ID:43JarVZQ

 料理は学問と芸術を合わせたよりも難しい。
 そう言ったのは果たして誰だったか。
 もしその人物がこの光景を見れば自らの発言を取り消すか、あるいは、料理している人間を絶賛し、喝采し、そして恐怖しなければならないだろう。
 一方通行の『ベクトル操作』は確かに強力で、戦闘に使えば絶大な威力を発揮する。しかしそれ以外の使い道が無いわけではない。
 事実、彼は芳川や番外個体といった人間の命を繋ぎとめることに力を使ったことがある。
 何もしていなければ確実に死んでいたであろう状態の者達だ。
 他にも打ち止めの脳内のウイルスコードを生体電流を操作することで消去したり、妊婦の状態を診察したりと応用の幅は広い。
 いや、広いなどという表現では恐らく生温い。彼の能力はそれこそありとあらゆるベクトルに干渉し、それを操ってみせるのだから。
 この世界において、何かしらの法則を持って成り立つ現象であればどんなことにだって干渉し得る力、それが、それこそが第一位だ。
 そしてその絶大にして万能なる力が――
 何故か、炊き出しの準備にと発揮された。

 突然漂ってきた食欲をそそる香りにキャンプに居た人間達は首を傾げる。
 もう炊き出しの用意が出来たのかと驚きながらも香りの出所へと移動して来た者達はそこで不可思議な光景を目撃する。
 大鍋の周囲に人だかりが出来ていて、けれども誰も手をつけようとしない。
 いや、何かに驚きすぎて次のリアクションが起せていない、といった風だ。
 それは、確かに異常な光景だった。

 表面を撫でるだけで野菜の皮剥きが完了する。皮だけを切り取る能力でも使ったかのような見事な出来栄えで。
 身の一かけらだって皮の方には残っていない。
(余計な力は要らねェ、ほんわずか表面を剥ぎ取りゃあいい)
 軽く揺らすだけで均等にかつ不自然に野菜がバラバラに崩れる。もはや包丁などという器具に存在価値は無い。
(細胞同士の繋ぎ目を切断するように力をかける。煮崩れる心配は無ェ、最初から食べ易いよう細かくだ)
 作っているのはスープ。けれど煮込む時間は必要ない。全ての材料を入れ軽くかき混ぜる間に味は均等に染み込んでいる。
(浸透圧を弄ってやりゃァいい、どうせ長時間は力を使えねェ)
 色と味の決め手はビーツという根菜。
(見慣れねェ食材だろうが知ったことか、レシピ通りにすりゃいい)
 果たしてこの作り方がレシピ通りと言えるかはさておき、調理の異様さと相まって毒々しさすら覚える真っ赤なスープ。
 200人分というスケールにも拘らず、僅か数分でそれは完成した。
「いやはや、これは驚いたな……学園都市ってのは一体何を研究しているんだい?」
 金髪の男の疑問はもっともだ。
 たったの数分で炊き出しの料理を完成させる、などというあまりにアレな力の使い方が、
 ロシアの上空を飛び回っている怪物航空機と同じ街の研究結果だなどと言われて誰が信じるというのか。

 一方通行が戻ってくるのと同時に、車内に広がった食欲をそそる香り。
 そして彼の手にあるトレイと3人分の食事を見て、打ち止めと番外個体は顔を見合わせた。
「いきなり能力を使い出すから何があったかと思えば……」
「っていうか野菜のアク抜きが一瞬で終わるなんてちょっと便利かもって
 ミサカはミサカは率直な感想を述べてみる」
 分かっていた。
 ミサカネットワークに頼って能力を使っている以上、能力を使用すればある程度は何をしているか把握されてしまうことぐらい、
 忘れていたわけがない……のだが、その後こうして弄られるネタを提供することになることまで何故気がつかなかったのか。
「妹達を1万人以上殺した第一位が手ずから料理とか、正気を疑うねとミサカはバッサリ切り捨ててあげる」
 まあ、食べてる間くらいはこの陰湿なイジメも収まるだろうと、何よりせっかく作ったのに食べられる前に冷めてしまったのではあんまりだと、
 番外個体からの嫌味を聞き流しつつ器とスプーンを2人に渡していく。
「とっとと食って寝やがれ、病人共」
 できれば本当にそうなって欲しいと、ささやかな祈りを込めつつ食事を促す。
「それじゃいっただきまーすって、ミサカはミサカは久々にあなたの前で言えて少し嬉しいなとか思いつつ、
 あなたが料理下手だったらどうしようってドキドキしながら一口目を食べてみる」
「まあ、食べてみないことにはどれだけ不味いかを言いふらせないしね」
 大小2人のミサカは食べる前に好き勝手に一言のたまってから、それを口に運ぶ。
 そして……

525「とある一位の三分料理」 ◆Bqlg7BwZKs:2010/05/30(日) 01:42:20 ID:43JarVZQ

「嘘だ!! 料理が上手いなんて第一位のキャラじゃない!」
「メチャクチャ美味しいー! ってミサカはミサカは評価してみる!」
 一口食べただけでこのリアクションである。
 レシピ通りなんだから不味いわきゃねェだろうが、と一人黙々と食べ進める一方通行と、
 2口目からは黙々と、というよりもむしろガツガツ、という食べ方になったミサカ達が皿を空っぽにするのにさほど時間はかからなかった。


「いやぁー、あなたにこんな特技があったなんて驚きどすなぁってミサカはミサカは感心してみる」
「べ、別に美味しかったから食べたんじゃなくてお腹空いてただけなんだからね!」
「あァ? 何言ってンだテメェ?」
 どうということはないのかもしれない。
 他愛も無いやり取りに過ぎないのかもしれない。
 けれどそのどうということは無いはずの時間が一方通行にはたまらなく眩しい。
 他愛の無いやり取りの一つ一つを、忘れぬようにといつかそれが当たり前になるようにと、
 己が進むべき方向を間違わぬよう記憶に刻んでいく。
 再び眠りに付いた打ち止めと番外個体に毛布を掛けてやりながら、「ま、またそのうちにな」なんて
 柄にも無いことを呟いてみるのだった。

 もちろん、狸寝入りだった番外個体に散々からかわれた挙句、
 ミサカネットワークを通じて打ち止め他妹達全員にリークされることになるのだが……それはまた別のお話。

526助手席が気になる運転手 ◆Bqlg7BwZKs:2010/05/30(日) 01:46:53 ID:43JarVZQ
お粗末さまでした。
原稿用紙前程の書式で書いてたんで最初のレスが酷いことに……
読みづらくてすみませんorz

タイトルは「とあるいちいのくっきんぐ」と読んで下さいなと
ベクトル操作ってよく考えてみると凄い万能だよなぁと前々から思ってたので、
じゃあものすごく普通なことに使わせてみようってことでこのネタを
番外個体がまだ原作で全然詳細な描写が無いから困りましたが、
むしろ今なら捏造し放題と開き直ってみました(何

527バイラス:2010/05/30(日) 08:03:18 ID:8neI4Fww
↑いかにもSSってかんじが出てて、良かったです。

次、期待してまーす

528■■■■:2010/05/30(日) 09:33:05 ID:VmA5kiTQ
>>526
GJなんだよ!
一方さん一家に一台ほしいですね

529■■■■:2010/05/30(日) 10:56:35 ID:WdF/hwPw
>>526
GJ〜。投下ラッシュとは嬉しいですねえ
エプロン姿の家庭的一方さん見てみたいww
ところで若しかしたらなんだけど、鎌池和馬スレ435-321

321 :イラストに騙された名無しさん:2010/05/30(日) 01:01:14 ID:hYGYuR8z
馬鹿な、一方さんの料理ネタだと!?
今まさにそんなSS書いてた俺ちょっとショックw
何故このタイミングでそんなネタが来るかw

これ助手席が気になる運転手氏だったりする?

530521:2010/05/30(日) 13:55:58 ID:6br8/kyo
>>527
むしろ長いのを書けない人なのでありがたいです

>>528
いざという時の応急手当に、お料理に、お掃除に……ドラ○もんよりきっと便利ですw

>>529
な、なななな、なんのことでせう?(爆
げふんげふん、いえーすざっつらいとであります
投下前に誤字チェックしてたら何故か本スレが料理ネタに、素で吹きましたw

531salvere000:2010/05/30(日) 19:27:59 ID:8neI4Fww
いきなりですが投下させて頂きます。

初めて書きますが観てやってください。


タイトルは『とある禁種な能力者(とあるタブーなのうりょくしゃ)』です。

532salvere000:2010/05/30(日) 19:29:33 ID:8neI4Fww

十一月二九日、午後四時


「今日は久々に肉料理でも作ってやっかな」
ゴミ一つ無い第七学区の歩道を、とある不幸な少年が学生鞄を持って歩を進めていた。
少年が持つ鞄には携帯から付け替えたカエルのストラップがぶら下がっている。
「昨日は野菜炒め、一昨日はもやし炒め……野菜ばっかだ。よし、今日肉決定」
インデックスには第三次世界大戦で大変な思いをさせてしまったので、たまには奮発しなければ、
と早歩きでスーパーに踵を向ける。
(牛肉……は高い。豚肉で我慢してもらうか)
居候の少女は、食料を出せば何も言わずに口を動かすタイプなので、多少安い肉でも問題はないだろう。

「残金千五百円……ギリギリ二人分(+猫一匹分)ぐらい買えるな」
氷河期に突入しそうな財布を確認しながら、前方不注意で歩いていると、
ぼんッという音と共に、背を低くして歩いていた上条当麻の顔に何かに激突した。

なんだ?、と顔を上げると、
目の前に白くて柔らかいものがあった。一瞬の間を空けてそれがTシャツの白だと理解し、
ついでに女性の胸だという事も分かってしまった。

「なっ!!?」
慌てて顔を上げて、被害者女性に対して速攻土下座モードに切り替えようとする。
なんか、最近土下座してばっかだな、と思春期男子が若干泣き目で凹んでいると、

「……久しぶりに会った相手に、まず最初にする行為が土下座ですか?
その性格は相変わらずのようですね」

聞き覚えのある清楚で落ち着いた口調に顔を上げると、そこに居たのは、

「……神裂?」

「お久しぶりです、上条当麻。学園都市というのは無駄に広いので今日中には会えないかと
思っていましたが、幸運です。唐突ですが、ちょっとお話したいことがあるのですがよろしいですか?」


第3次世界大戦後、上条当麻の不幸な日々が再び幕を揚げる。

533salvere000:2010/05/30(日) 19:33:05 ID:8neI4Fww
同時刻、第一〇学区廃ビル内


「あァ?仕事?今、終わらせたとこだよ」
『いえ、それではなく新しい『仕事』です』
元オフィスビルの三階の一室。学園都市七人のレベル5の一人、一方通行(アクセラレータ)は、
いかにも面倒くさそうに携帯を握っている。
そして、その周りには二〇人強の屈強な男達が散らばっている。

「学園都市にクーデターを起そうとした少数派のクズ共の殲滅……『仕事』は終わらせた。
まだ、何かあンのか?」

『ええ。土御門も別途で行動します。まあ、『仕事場』までは、少々、遠出ですが』
電話の相手は一方通行の所属する『グループ』のメンバーの一人、海原光貴。一方通行と共に
裏の世界に生きる人物の一人である。

「めンどくせェ。また、あの『電話の男』か」
『いえ、伝えてきたのは『その男』ですが、なんでも今回の仕事は学園都市統括理事長からの
直々の指令だとか』

(統括理事長から直々に……どォゆう事だ?)
一方通行は統括理事長と聞くと、あまり記憶を掘り返したくないことが有るのだが、
それから言われた『仕事』というのは少し興味がある。

「……で、その『仕事』ってのは一体どォゆう物なンだ?遠出ってのも気になるしな」


『はい。今回の『仕事』は『原石』への接触、及び調査です。』

(『原石』……という事は、「外」での仕事か。)
「『原石』への接触か……別に構わねェが、どォして『回収』じゃなく『接触』なンて
回りくどい事オーダーしやがるンだ?上層部のクソ共は」

学園都市なら『接触』などと面倒な手は使わずに、迷わず『回収』に走るはずだ。
それを態々『接触及び調査』など控えめな注文を出すのだろうか。
『それに関しては僕も『電話の男』に尋ねたのですが、「お答えできません」と一蹴されて
電話を切られてしまいました。黙って仕事しろ、という事なのでしょう。』
「ち、めンどくせぇ。で、その『仕事場』ってのはどこにある?」
『先ほども言ったように少々遠出ですが』

『イギリスです』


上条とは違う場所で白き最強が動き出す。

534salvere000:2010/05/30(日) 19:40:41 ID:8neI4Fww
以上がプロローグです。

この話は『第3次世界大戦は終わっていて、上条たちの立場はほとんど変わっていない』と
いう大前提ですので、ご理解よろしくおねがいします。
一応オリキャラも暴れる予定なので、苦手な方は観ないほうが良いかと。

あと、誤字脱字や意見などがあったら、がんがん言ってください。

それでは、次が書き終わりましたら、投下します。

535■■■■:2010/05/31(月) 00:00:10 ID:75G7.n1I
この週末は投下ラッシュですね。自分もこの流れに便乗させていただきます。

「ミサカ、巫女と美琴(みさかみことみこと)」第4話「ホワイトバニーの幻影」を5レス分投下します。
これはpart5から連載している学園戦隊ものの続編でpart7の>>806の続きです。興味のある
方は「とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ」ttp://www21.atwiki.jp/index-ss/pages/136.htmlを見
て頂ければ第3話までをまとめていますのでどんな話なのかが判ると思います。ただ最初から読む
とやたら長いですのでご注意下さい。簡単に言うと秘密戦隊にスカウトされた上条当麻・御坂美琴・
姫神秋沙・ミサカ10032号・打ち止め・一方通行が学園都市の平和を守るために活躍(?)する話
だと思って下さい。
また、この話に出てくる姫神秋沙は本編と少し設定が違います。本編より饒舌で積極的な性格に
なっていて口調などに違和感があると思いますがご容赦下さい。

536■■■■:2010/05/31(月) 00:01:02 ID:75G7.n1I
「ミサカ、巫女と美琴」(第4話 その5)

行間

(ちくしょォ!クソったれッ!ざけンじゃねェぞ!)

そう心の中で罵詈雑言を撒き散らす一方通行は追い詰められていた。
うっすらと汗が浮き出た顔は普段以上に白くなっているが相手にこちらの弱みを悟らせる訳には
いかない。
かつて学園都市最強の超能力者(レベル5)と言われた彼も、とある事件で大脳に大きな損傷を
受けてからは打ち止めを始めとする妹達(シスターズ)の代理演算がなければ能力使用に必要
な演算どころか簡単な計算すらできなくなっていた。

(チッ!初撃で頭ン中を揺すられちまった。
 情けねェ!この俺がこンな子供だましの遊園地に浮かれて油断しちまうとは。
 雑魚だと思って侮りすぎたか!?
 何が学園都市最強だ!間抜けにも程があるぜッ!)

そして首筋の電極に手を伸ばすが寸前の所で思いとどまる。
通常モードなら48時間持つバッテリーも能力使用モードでは僅か15分しか保たないからだ。

(クソッ!時間制限付きの最強なンて笑い話にもなりゃしねェッッ!)

ここは学園都市にある巨大遊園地クラウンパレス。
打ち止めの繰り出す駄々っ子攻撃にとうとう根を上げてしまった一方通行は今日一日打ち止めと
遊園地をまわる約束をさせられてしまった。
そして今、一方通行の目の前には巨大遊園地に大はしゃぎしている打ち止めが座っている。
彼女は一方通行が命に代えても守り抜くと誓った少女だ。
幸い打ち止めは今園内に点在するアトラクションを確認するのに夢中で一方通行に生じた異常に
は気付いていないようだ。
ギリッ!!と噛み締めた奥歯が鳴る。

(コイツにだけは勘付かれる訳にはいかねェ。これは俺一人の問題なンだ!)

苦虫を噛み潰したような顔の一方通行は打ち止めの背後、特に高い構造物を視界に捉えつつ
浅く早くなってしまった呼吸を整えようと意識を集中させる。
(よし!いける)一方通行がそう思った瞬間、打ち止めが心配そうに一方通行の顔を覗き込んで
いることにようやく気付いた。

「なッ!?」
「どうしたの?ってミサカはミサカは心配そうに尋ねてみる。何かあったの?」
「なッ、なンでもねェ!」

問いかけてきた打ち止めことは無視し一方通行は背後の風景を見つめたまま素っ気なく答える。

(コイツはこンな時だけ妙に勘が鋭いからな。勘付かれたか!?)

「ひょっとして。あなた…………………………………………乗り物酔い?」

「ばッ!(馬鹿野郎!)」

そう怒鳴りつけようとして一方通行は総毛立つ。
(来る!)次の瞬間、

(ぐゥゥゥゥゥゥッッ!………………………………ハァハァ)

一方通行は右手で口を押さえつけていた。
13秒間の激闘の末、一方通行は腹の底から襲い来る吐き気をなんとか押し戻すことに成功した。
打ち止めの指摘通り、ただ今一方通行は絶賛乗り物酔いの真っ最中だったのだ。

537■■■■:2010/05/31(月) 00:01:46 ID:75G7.n1I
「ミサカ、巫女と美琴」(第4話 その6)

一方通行が打ち止めと向かい合って座っていたものは複雑な遊星運動をする乗り物すなわち
遊園地の定番コーヒーカップであった。
一方通行はコーヒーカップを舐めていた。
打ち止めに付き合うことを渋々承諾したものの、こんなお子様の乗り物に乗ることが心底嫌だった。

(こンな姿、土御門や海原や結標には絶対ッ見せられねェ!
 結標の奴は腹ァ抱えて笑い転がりやがるだろうし、土御門の野郎はことある度にネチネチとネタに
 しやがるにちげェねェ!
 ……………………イヤ、丁度イイ!そうなったらそうなったで奴らを殺(や)れば済む話だ!)

コーヒーカップに座ってからもブツブツと文句を言い続ける一方通行は始動ベルに気付かず不意を
突かれる形で三半規管を揺さぶられてしまった。
不覚にも初撃で目を回した一方通行はコーヒーカップが停止するまでの間、断続的に襲ってくる
吐き気と人知れず闘っていたのだった。

コーヒーカップの横にあるベンチにうなだれて座っている一方通行からは学園都市最強の超能力
者(レベル5)のオーラは全く感じられない。
色素が抜けたような白い肌と白い髪の印象も重なりどこから見ても病弱少年Aであった。
そんな一方通行の横にちょこんと座った打ち止めが一方通行に楽しそうに話しかける。

「実はあなたにお願いがあるの
 ってミサカはミサカはあなたが弱っているのを良いことに唐突におねだりをしてみたり」
「やらねェよ!」
「まだ何も言ってないのに、ってミサカはミサカは口を尖らせて不満を態度で示してみたり。
 そんな聞く耳持たない態度をしてるともう話しかけてあげないよって説教口調で語ってみる」
「じゃァ、もう話しかけンな!」

「とはいわれても、しゃべるなと言われてしゃべらないのもちょっと悔しいから
 ってミサカはミサカは折衷案としてさりげなく独り言をあなたの耳元でささやいてみる。
 あなたが私達の秘密戦隊に力を貸してくれたら嬉しいなあ────ッ」
「断る!なンで俺がテメーの願い事を聞かなきゃなンねェンだ!?」

「今さら凄んだって効かないよ、ってミサカはミサカはさっきのあなたのちょっと情けない姿を脳内
 再生させながら思い出し笑いを浮かべてみる」
「テメーッ!!その視覚データをミサカネットワークにでも流しやがったら只じゃすまさねェぞ!」
「それじゃあミサカのお願い聞いてくれる?
 ってミサカはミサカは小悪魔的な微笑みを浮かべつつあなたにギブアンドテイクをもちかけてみる」
「ふン!そんなことしなくても今ここで将来の禍根を断つって方法だってあるンだぜ!
 ミサカネットワークに流出する前にテメーのアkkけェェェhyへdぇてぢてっがあぁぁぁlッだぜ!」

途中訳の判らない音を発してしまった自分の口に驚き一方通行は思わずその口に手を当てる。

「テメー!今俺の代理演算をインターセプトしやがったな!」
「途中何を言っているのか分からなかったけど、きっとミサカの提案に賛成ってことなんだよね
 ってミサカはミサカはちょっと強引に話をまとめてみる。
 ミサカのお願いを聞いてくれてミサカはとっても嬉しいな!」

代理演算を強制的に打ち切るという荒技をやりながら天使のような笑顔で交渉を進める打ち止めに
一方通行は目を丸くしてしまう。

「テメー、いつの間にそんな汚ねェ交渉術(ネゴシエーション)を憶えやがった!?」
「純情可憐だけがイイ女の条件じゃないじゃんよ
 ってミサカはミサカはちょっと危ない香りのする女を演じてみせてみる」
「ちッ!(黄泉川の野郎、コイツに余計な入れ知恵しやがって!)……………………良いだろう。
 今回だけはテメーの言うことを聞いてやる!だがな!俺は他の奴らと馴れ合う気はねェからな」

538■■■■:2010/05/31(月) 00:02:21 ID:75G7.n1I
「ミサカ、巫女と美琴」(第4話その7)

土曜日、学園都市内の某ビルの一室

「うわっはっは────ッ!」
薄暗い室内に響き渡る大声に上条は軽い頭痛をおぼえこめかみを強く押さえつける。
ひときわ明るいスクリーンには例によってクワガタみたいに黒光りするツンツンした黒髪を持つ男が
高笑いしている。

「貴様達!
 ブラックキャットを退けた位で勝った気でいるんじゃなかろうな!
 いい気でいられるのも今の内だけなのよな!
 貴様らは我らの首領を怒らせたのだ!!
 こうなった以上貴様らの命運もここまでだ!
 あの世への餞別に貴様達には我らの首領のお姿を拝ませてやるのよな。
 そのお姿を目に焼き付けて冥途に逝くが良いッッッッ!!」

男が右手で指差す方向にカメラが首を振るとスクリーンに大階段が映し出される。
そしてカメラが階段を舐めるように上昇するとそこには奥行き40m程の広い空間があり、
カメラのズームインによって奥にある拝殿のような建物がドドーンと大映しになった。
その扉は開け放たれてはいるが白い布地が入り口を覆っており中を伺い知ることはできない。
だが、そこにキシサクマアの首領が居ることは確かだった。

入り口の上のポップな字体で書かれた『首領』という看板がかなり痛々しいのだが…………
あえてそのことにはツッコまない上条であった。

(毎回毎回テメーらのボケに律儀にツッコむほど上条さんはお人好しではありません!
 この白けた空気が骨身に染みたら少しは反省しやがれ!)

その横で御坂美琴も姫神秋沙に小声で話しかけていた。

「この人達って悪の組織を真面目にやる気あるのかしら?
 それともウケるって本気で思っているのかしら?」
「ウケ狙いなら寒すぎる。大真面目ならただの馬鹿!」

いくら待てども上条達からツッコまれず、とうとう耐えきれなくなった男は小さな咳払いをしてしまう。

「コホン…………まあ所詮、貴様らでは我らの高尚な美的センスを理解できんのよな!
 まあ良い!!さあ、我らが首領の前にひれ伏すが良いッッ!!」

すると突然、拝殿の奥が明るくなり白い布地に首領のシルエットが浮かび上がる。

「うっ!」その瞬間上条は思わず小さなうめき声を上げていた。
実は何となく嫌な予感はしていたのだが、まさか的中するとは思っていなかった。
浮かび上がった首領のシルエットは斜めに構えた立ち姿である。
日本人女性とすればかなり長身ではあるが、出るべき所は出て締まるべき所は締まっているナイス
バディな肢体とポニーテールにまとめた長い髪のシルエットがこの人物が女性だと告げている。
ついでに言えば背丈以上ありそうな棒状の何かを左手に携えているようにも見える。
そのシルエットは上条にとあるサムライウエスタンガールを連想させた。

(神裂!お前なのか!?)

しかし今となってはキシサクマアの首領が誰かということはもはや大した問題ではなかった。
今直面する問題はその人物の頭頂部にあった。
そこに本来人間にはあるはずのない二本の影が伸びていたからだ。

ピョンと跳ね上がった2本のシルエットはどう見ても、いくら目をこらそうが何度瞬きしようがウサギ
の耳以外の何者でもなかった。
ついでにお尻に付いた丸い物体や蝶ネクタイ付き付け襟や両手首のカフスのシルエットまでが
くっきり映っていたりするから、もはや答えは一つしかない。

(神裂ィィィッッ!!お前もかぁぁぁぁあああああ!?)

「ねえ、アレって…………バニーガール…………よね!?」
「多分。ということは。今回の相手も…………変態さん?」

御坂美琴と姫神秋沙がヒソヒソ話をしている横で上条は思い出したくもない悪夢に苛まれていた。
その悪夢の元凶はミーシャ=クロイツェフ、ヒューズ=カザキリに続く第3の天使の存在だった。
そう、あの時病室に突入してきた堕天使エロメイドこと神裂火織の血走った目を思い出した瞬間、
上条はヘビに睨まれたカエルのように硬直し、冷たい汗が止めどなく背中を流れ落ちるのだった。

「どうだ、恐れおののいたか!?
 このお方こそ我らが気高き首領ホワイトバニー様だッッッッ!!
 ホワイトバニー様に掛かれば貴様達などケチョンケチョンなのよな。
 うわっはっは────ッ!
 今夜20時に第21学区の天文台で開かれる小学生を招いた天体観測会を我々は襲撃する。
 せいぜい首を洗って待っておるが良い!!」

そして犯行予告ビデオのエンドロールが流れ始めた。

539■■■■:2010/05/31(月) 00:02:54 ID:75G7.n1I
「ミサカ、巫女と美琴」(第4話その8)

「「「「はああぁぁぁぁぁぁぁぁ────────────ッ!」」」」

毎度のことながら盛大なため息を漏らす御坂美琴、姫神秋沙、ミサカ10032号。
その中で御坂美琴はまるで自分に言い聞かせるかのように皆に話しかける。

「まあ、あんな馬鹿みたいな格好したブラックキャットだって意外と手こずったんだから
 このホワイトバニーって女もひょっとしたら強敵かもしれないし、気は引き締めないとね」
「でしょ?ミサカもそう思ってオリジナル達のスーツを開発部に超特急で改良して貰ったの!
 ってミサカはミサカは褒めて褒めてって感じでこの1週間の苦労をオリジナルに報告してみる」

「え” ッ!!ま、まさか私達が今着てるスーツって…………その改良品?」
「えっへん!そうなの、ってミサカはミサカは得意満面で即答してみる」
「じゃ、じゃあ、今回のミッションはこのスーツは無しってことで良いかしら?」
「えーっ!?せっかく無理言って改良して貰ったのに、ってミサカはミサカはシベリア寒気団より
 冷たいオリジナルの薄情さに不満タラタラ顔でブウたれてみる」
「だからよ!どうせロクでもない機能を付けたんでしょ!?」

「そんなこと無いのにって、ミサカはミサカは反論してみる。
 論より証拠を示すからみんな一緒に『チェンジ!ハイパーモード』って叫んでみて!」

仕方なく、言われたセリフをやる気の無さ100%で棒読みする3人。

「「「チェンジ。ハイパ〜モード」」」

まだ堕天使エロメイドの呪縛に捕らわれていた上条だが、スーツが発した目映い閃光のおかげで
ようやく現実に帰還することができた。
しかし現実に帰還した途端目にした光景は上条にさらなる衝撃を与えた。

「ブフッッッッ!!バ、バ、バ、バッ、バニーが一杯!」

上条の目の前には赤バニー、青バニーそしてピンクバニーがいた。
色違いのバニースーツを着た3人の美少女はそれぞれ違った反応をしていた。

身をねじりつつ両手で胸元と太ももを必死で隠そうとする御坂美琴。
無表情にバニースーツに変形したスーツのあちこちをポンポンと叩き感触を確かめる御坂妹。
バニースーツのデザインを確かめつつさりげなくポーズをとる姫神秋沙。

「ちょっ、一体なんなのよ。これ!?」
「これは俗に言うバニースーツというものでしょうか?
 とミサカはスーツをこんなものに変形させる意図はなんでしょうと少し首を傾けつつ率直な疑問
 を呟きます」
「このデザイン。意外といけるかも。あっ。ピンクと思ったら。細かい紅白のストライプ」

三者三様の反応を示す3人を見回しラストオーダーは「ふ──うっ」とため息をつく。

「目には目を!ウサギにはウサギを!って考えて開発して貰ったけどちょっと失敗だったかな
 ってミサカはミサカは今更ながらちょっと後悔してみたり。
 バストサイズで完敗のオリジナル達だから数で勝負してみようって思ったけど
 並が1に貧が2じゃあ三人寄ったって勝負にならなかったみたい。
 あぁ──あッ、資源と人材と時間を無駄遣いしちゃったかな?
 ってミサカはミサカは腕組みしたまま独り言を呟くように反省してみる」

その時、パリッッ!!という小さな空電音が生じたことに打ち止めは気付かない。
そして室内に地獄の底から響いてくるようなドスのきいた声が静かに響き渡る。

「ふっふっふっ!どうやらアンタは『今』こ・こ・で・死にたいみたいね!」

前髪から青白い火花を撒き散らす御坂美琴の目は完全に据わっている。
そして打ち止めを確実に仕留める必殺の間合いへとその右足を踏み出した。
しかし御坂美琴の前進は姫神秋沙の右手に制される。

「ちょっと待って。御坂さん」
「なによ!秋沙、あなたあの子の肩を持つつもり?」
「大人なら。もう少し心に余裕を持った方が良い」

頭に血がのぼっていた御坂美琴であったが姫神秋沙にたしなめられるように指摘されると
ちょっと気恥ずかしそうに頬を指先でさする。

「うっ…………ハハッ、そうね、ちょっと大人気なかった…………かな?」
「そう。せめて。あの子が遺言を残すぐらいの時間は待ってあげないと」
「………………………………」

とんでもないことを淡々とのたまう姫神秋沙に一瞬その意図を理解できなかった御坂美琴も
姫神秋沙の目を見た瞬間に理解する。既に姫神秋沙も殺す(やる)気満々だったのだ。

(殺す(やる)ときは一緒よ。御坂さん)
(OK!秋沙)

司令室にジャキン!!という金属音が響き渡たると特殊警棒の放電音が御坂美琴の放電音と
耳障りなハーモニーを奏で始める。

540■■■■:2010/05/31(月) 00:03:38 ID:75G7.n1I
「ミサカ、巫女と美琴」(第4話その9)

「あれ?どうしたの?
 ってミサカはミサカはいつの間にか険しい表情になってるオリジナル達に問いかけてみたり」
「20秒。19。18。…………」
「なに、何?何してるの?
 ってミサカはミサカはこれは何の遊びかなって目をキラキラさせて質問してみたり」
「…………死亡遊技。…………14」
「それってどうやって遊ぶの?
 ってミサカはミサカは聞いたことのない遊びにワクワクしながら質問を続けてみる」
「10。9。……………」
「お待ち下さい!!」

姫神秋沙のカウントダウンは残り9秒で中断された。

「お待ち下さい!っとミサカは暴発寸前のお二方に重ねてお願いしてみます」
「「あなた(あんた)、邪魔するつもり!?」」
「はい、とミサカは力強く断言します。
 上位個体に引導を渡すのはミサカ10032号の役目です。
 お二方といえどもお譲りする訳にはいきません」

そして弾倉をサブマシンガンに叩き込むと流れるような動作で銃口を打ち止めに向ける。

「さようなら。上位個体のことは決して忘れません
 とミサカは安全装置を解除しつつ心にもないセリフをしれっと吐き出します」

直後ドガガガガッ!!という銃撃音が鳴り響き、放たれた何十発ものゴム弾が司令席の椅子の
背もたれと後方の白スクリーンをズタボロに引き裂いていく。

しかし銃撃後ズタボロに引き裂かれた椅子には打ち止めの姿はなかった。
直前に机の下に身を沈めて銃弾を避けていたのだ。
机の前面パネルは着弾の衝撃でボコボコに凹んではいたがゴム弾の貫通は許さなかった。

「ハッハーッ、そんな攻撃でこのミサカを倒せるとでも思っているの────ッ
 ってミサカはミサカは只のミサカの攻撃なんて全てお見通しだよ────ッて感じの上から
 目線で余裕のセリフを吐いてみる」
「くッ!やはりゴム弾などではなく実弾に換装しておくべきでした
 とミサカは痛恨の失態に地団駄を踏んで悔しがります」
「やーい!悔しかったら当ててごらんッ!
 ってミサカはミサカは机から転がり出て司令室からの脱出を図ってみる」

転がり出た打ち止めは上条の背後に回って上条を盾とすると出口に向かってジリジリと移動する。
対してミサカ10032号も打ち止めへと追撃の銃口を向ける。

「おい、ちょっと、待て!御坂妹。落ち着け!!」
「もとよりミサカは冷静です、とミサカは冷静である証拠に先ほどの失敗を繰り返さぬようゴム弾から
 実弾に換装済みであることを胸を張って当麻さんに報告します」
「実弾って!?こらーっ!俺を巻き込むな!!」

「当麻さんもきっと判ってくれるはず
 とミサカは世界平和のためには仕方のないことなのですと当麻さんに代わり力強く宣言します!」
「こら!勝手に他人を納得したことにしてんじゃねェ!」
「さようなら、上位個体。今度こそ息の根を止めてさしあげます
 とミサカは今まで受けた数々のイタズラを回顧しつつようやく幕引きができるこの因縁に感慨深く
 トリガーを引き絞ります」

再びドガガガガガガッ!!という銃撃音が室内に鳴り響く。

「強制割り込みコード発令。チェンジ!ハイパーモード!」

銃撃と同時に打ち止めが発した割り込み指令により上条は眩い閃光に包まれる。

「それを目くらましにしようとしても無駄です
 とミサカは予備のマガジンを装填し出口までの予想逃走経路に弾幕を張ってみせます」

予備のマガジンを全て撃ち尽くすとようやく司令室に静寂が訪れた。
立ちこめた硝煙が晴れるとそこにはマント姿の上条が立っており、雨霰と叩き付けられた実弾を
上条の身体を盾にして回避した打ち止めがその影から顔を出す。

「残念でしたッ!そんな攻撃程度じゃ新しいスーツに傷一つ付けられないんだから
 ってミサカはミサカは声高らかに勝利宣言してみる」

その隣で変形した自分のスーツを見た上条がワナワナと震え出す。

「これってまさか…………」
「そう!うさぎに対抗するならタキ○ード仮面が一番なの!
 ってミサカはミサカは発想の素晴らしさを自画自賛してみる」
「なんでおまえがセー○ー○ーンなんかを知ってやがる!?」
「セー○ー○ーンなら第一シリーズからセー○スターズまで全200話コンプリートなの
 ってミサカはミサカはミサカネットワークの映像ライブラリの充実ぶりをさりげなく自慢してみる」
「ふっ、上位個体の嗜好のために全ミサカに2時間のアニメ鑑賞が課せられたのは10日前です
 とミサカは補足説明にかこつけて上位個体に対する不満をここぞとばかりに吐露してみせます」

541■■■■:2010/05/31(月) 00:08:00 ID:75G7.n1I
以上です。
最近ちょっとリアル多忙なせいで筆の進みが極端に遅くなってしまっています。
なるべく早く続きを投下したいとは思っていますが、どうなることやら…………
兎に角、頑張ります。

542from-ING:2010/06/03(木) 23:02:34 ID:6e2YH8dI
>>369の『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』です

注意事項は少しだけ
今回は短くて、主人公が出てきません
そして、オリキャラダメな人は見ないことをお勧めします

では、投下します

543from-ING:2010/06/03(木) 23:06:09 ID:6e2YH8dI
[行間1]

<12:36 PM>



風紀委員活動大一七七支部。
学校と言うよりどこかのオフィスに近い一室。
そこには市役所にあるようなビジネスやコンピュータが何台も置いてある。
朝だというのに、生憎の曇り天気により室内は暗く、起動するいくつかのコンピュータの光だけが薄く光っており、学園都市の治安を守る風紀委員(ジャッジメント)が拠点とするその
場所には、風紀委員(ジャッジメント)の証たる腕章をつけた二人の少女がそれぞれのコンピュータの画面をかじりつくように見ていた。
「だめですわ……どこを探しても見つかりませんの…、」
目の前のコンピュータの画面から目を離し、椅子の背もたれに全体重を乗せながら背伸びして、今にも消えてしまいそうな言葉を漏らすのは特徴的なツインテールに、常盤台中学の制服
を着た『空間移動(LEVEL.4)』の少女。
御坂美琴のルームメイトにして、彼女の後輩である白井黒子だ。
「まだです…ッ!まだ諦めるのは早すぎます!!路地裏であろうと公園の端であろうとすみずみまで探してください!!」
白井の言葉に対し荒げた声を出すのは、短めの黒い髪の上に花を模した飾りをつけた一人の少女。
カタカタとキーボードを叩きながらコンピュータの画面を目まぐるしく変化させ、白井とは違う青いセーラー服を着ているのは、御坂美琴の友達にして、白井黒子の親友である初春飾利
である。
日曜日という休みの日に、二人の中学生女子がこの風紀委員(ジャッジメント)の支部に早朝から来て、キーボードを叩くのには理由があった。


一週間前から『御坂美琴』が行方不明なのだ。


原因は不明。何の前兆もなく、唐突に消えた。その発覚は五日前のことである。
最初の一日、二日はルームメイトの白井が『いつものこと』としていたが、三日目に寮監から『御坂がこの二日間、授業を無断欠席している』と聞き詳しく調べてみたところ御坂美琴が
その二日間『学び舎の園』から……ついには学園都市から消えていることがわかった。
その状況に対し『学園都市の頂点である超能力者(LEVEL.5)の第三位、御坂美琴が行方不明』という情報が流れるのを嫌った学園都市上層部は一部の風紀委員(ジャッジメント)と警備
員(アンチスキル)に緊急で捜索を命令した。
その命令にいち早く反応したのが、この二人の少女である。
「それにしても、学園都市の監視カメラに一週間も映らないなんてありえるのでしょうか?」
白井はスチール製のビジネスデスクの端に置いてあるコーヒーを手に取り、一口含む。
眠気を飛ばす苦味が口の中にジワリと広がった。
「お姉さまの能力ならば監視カメラの一つや二つ誤作動を起こさせることはできると思いますが、そうする理由がわかりませんわね」
そう言う白井だったが、実のところ一つだけ思い当たるふしがあった。
また、何かの問題に首を突っ込んでいるのだ。
自分の問題に誰かが巻き込まれることを非常に嫌う美琴が、誰にも言わずに一人で問題を解決しようとすることは今までに何度もあった。
あのコンテナ置き場であった、夏休みのなにか。
『残骸(レムナント)』を巡っての結標との一件。
どちらも命に関わる大きな事件だと容易に想像できる。
そんな事件なのにも関わらず、白井がそれに気付いたのはすべてが終わった後。よくて、すべてが終わる少し前だ。
そして、気付いてもなお白井はその事件の全容を掴めてはいなかった。
「お姉様…、」
いったいどこに……、と声に出さずに口だけを動かして白井は呟いた。
「白井さん!ボーっとすることなら誰にだって出来るんですから、手を動かしてください!」
パソコンの陰から顔を出し、初春が白井を睨む。
目の下に隈を作る初春はこれでもかと言わんばかりに声を荒げた。
「御坂さんがいなくなって、もう一週間なんですよ!?もし、飲まず食わずで監禁でもされていたら……」
そこから先の言葉を白井は聞いていなかった。聞こえなかったではなく、聞かなかった。
初春の言葉にちくわ耳を傾けながら、白井は嘆息する。
二日前から、ずっと初春はこんな調子だった。
捜査を始めた五日前はこんなにも混乱していなかったはずなのに、二日前から突然こうだ。

544from-ING:2010/06/03(木) 23:06:54 ID:6e2YH8dI
[行間1]

「初春……、」
何かあったのか、と聞いても初春は答えてくれない。
『私の心配をするのなら、まずは御坂さんの心配をしてください』
こちらを見ずにそう言った初春の言葉に白井は従ったが。
……これ以上は無理のようだ。
「初春……、この二日間ロクに飲み食いせずに寝ていないはあなたの方でしょう?少しは睡眠を取ってくださいまし」
「私の心配はいりません!そんな時間があるなら、御坂さんを探すことに集中してください!!」
「ならば、潔く私の意見に従いなさい。あなたに倒れられるとわたくしも非常に迷惑しましてよ」
「私は、御坂さんを見つけるまでは絶対に倒れませんッ!!」
何を根拠に、と白井は椅子から立ち上がり初春の座るビジネスデスクへ近づく。
よっぽど集中していたのか、白井が隣に来るまで初春は気付かなかったが、その存在を知ると横目でちらりと白井を見て、再びパソコンの画面へと目を向けた。
「何度も言うように白井さんは私の心配をせずに御坂さんの心配をしてください」
「”何度も言うように”あなたは自分のことを考えて、少し休憩なさい」
「……、」
白井の言葉を無視し、初春はカタカタとキーボードを叩く。
どこまでいっても無機質なキーボードを叩く音は、沈黙という状況下においてとても大きく響いた。
不意に白井は初春の手を取る。
「……離してください」
ギロリ、という効果音がつきそうなぐらいに、初春が白井を睨みつける。
白井はそんな一睨みを受け流すのではなく、真正面から迎え撃った。
「離しません。あなたはやり過ぎですわ」
その言葉に初春は目を見開き、思わずといった風に立ち上がりながら白井の手を振りほどき、己の感情を爆発させた。
「やり過ぎでなにが悪いんです!?友達を助けたい一心でやって、やり過ぎないほうがおかしいんですよ!!」
「初春……、」
「だいだい、白井さんは御坂さんを助ける気があるんですか!?私にずっと休め休め、って!」
「初春……ッ」
「私が休んで、その休んでいる時間に御坂さんが死んでしまったらどうするんです!?そんなのやり切れないじゃないですか!!」
「初春……ッ!」
「私が倒れるだけで、御坂さんが救えるっていうならそれは素晴らしいことじゃ


「いい加減になさいッ!!!」


バシン!!と甲高い音がすると同時、初春の視界が急にぶれた。
頬に鈍い痛みを感じ、身体を大きくのけぞらせることでようやく白井に平手打ちをもらったことに気づく。
初春は思う。なぜ自分が殴られなければならないのか、と。
自分がやっているのは誰かのためだというのに。自分の身を削ってまで誰かを助けられることはとても素晴らしいことのはずなのに。
風紀委員(ジャッジメント)という仕事をしているからこそ、そんな思いは人一倍強い初春だからこそだろう。
白井の行動がひどく理不尽だとしか思えなかった。
いや、白井だからこそ。
同じ風紀委員(ジャッジメント)で、一緒に仕事をしている白井が。
尊敬している親友が、自分のそんな考えを否定することが、とても理不尽に思えた。

545『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/06/03(木) 23:09:30 ID:6e2YH8dI
[行間1]

「な、にを……」
目尻に、涙を溜めながら、
「何を…………するんですかッ!!」
「そんなことをして、お姉様が喜ぶと思ってますの?」
溢れ出しそうな涙をこらえながら、
「知りませんよ!!そんな細かいことを気にしていたら、救えるものも救えません!!」
「まったく細かくなんてありませんの」
何かを言おうとする初春を白井がガバリと抱きしめた。
初春の頭を持って、胸に押しあてる。今だ発展途中の胸のためか押しあてられた頭が軽く痛かった。
久しぶりに感じる人の温かさと、突然の意味がわからない白井の行動に初春は混乱する。
「何を………するんですか…、」
先ほどと同じ言葉なのに、その質問の意味は大きく違っていた。
そのことを白井は察しながら、初春の頭を撫でてやる。
「初春、あなた一つだけ忘れていることがありますわよ」
女の命である髪はボサボサで、心なしか震えているような初春を腕の中で感じ、白井は幼稚園の先生のような口調で言う。
「あなたの『親友』であるお姉様が心配なのはわたくしだって同じです。いえ、あなたより心配していると言っても過言ではありませんわ」
白井の腕の中で抵抗せず、静かに話を聞く初春に優しく、言い聞かせるように語りかけた。


「でも、あなただってわたくしの『親友』なのでしてよ」


だから、あなたが倒れてもいいなんて言わないで、と。白井は言葉にそんな祈りを込めた。
「ううっ……うっ…」
初春の肩がビクリと揺れたと思うと、嗚咽を漏らしながら白井の胸へと顔を押しつけた。
ジワリと彼女の制服が涙で濡れるが、気にしない。
ギュっと抱きしめてくる初春の腕が妙に心地良かった。
「初春、あなたに聞きたいことがありますの」
嗚咽を止めずに、何も言わない初春の動きをYESと受け取り、白井はもう一度初春の頭を撫でてやった。
「あなた、さっきお姉様を『助ける』とか、『死んだら』とか、言ってましたわね。いったい二日前に何を知りましたの?」
「ううっ…………うっうっ…………夢を……、夢を見たんです」
と、初春が嗚咽を漏らしながらもはっきりとした発音で、
「うっ…ぐすっ……御坂さんが……死んじゃって……皆が、皆……泣いてて………だから、私……」
怖かった、とまでは言葉が続かなかった。
当然だろう。いくら風紀委員(ジャッジメント)と言っても、所詮はただの中学生。
まだ完全に心が成熟していない少女には、本人が行方不明になっている中でのそれ(夢)は耐えきれなかったのだろう。
だからこそ、初春はそんなことにならないようにこの二日間、身体を酷使してまで頑張ったのだ。
「大丈夫。そんなことには絶対になりませんわ。私を、お姉様を信じてあなたは一度休みなさい」
耳元でささやくように、白井は初春にそう言った。

546『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/06/03(木) 23:10:12 ID:6e2YH8dI
[行間1]


「まったく、苦労をかける相棒ですこと」
どうにか初春をソファーの上に寝かし、布団をかけてやって白井は小さな微笑を浮かべながらそう呟いた。
一度、頭を撫でて腰を上げる。
「この制服……クリーニングに出しませんと」
スースーという寝息に混じって、白井の足音が支部内に響く。
濡れたブレザーをハンカチで適当に拭き、これシミになったりしませんわよね、と一人呟いた。
なんとなく不安になりながらも、白井は自分の机へと戻る。
「あ、そういえば」
と、白井は何を思い出したのか初春の机へと足の向きを変えた。
初春の椅子に座り、キーボードを叩く。
「さっき初春を寝かしつけている時に、何かメールが来ていたのを忘れていましたわ」
マウスを適当に動かしパソコンの画面にメールフォルダを開く。
来ていたのは、一通のメール。
それは警備員(アンチスキル)からの暗号メールだった。
(……来たッ!)
白井は思わず声に出しそうになった。
今日この日に暗号ということはそれは”秘密裏に”進める『御坂美琴捜索』の情報に違いないからだ。
この五日間ずっと待っていたものがやっと届いた喜びに思わず、笑みがこぼれる。
そんな喜びを噛みしめながら、白井は暗号の解読プログラムを起動した。
パソコンの画面に『少しお待ちください』とテロップが表示されるのを確認して白井は背もたれに身体を傾ける。
「……、」
完全解読までの時間。白井は隣で寝息を立てながら寝ている初春の方へと目を向けた。
先ほどの初春の言葉を思い出し、白井は喜びとは違う苦味を噛みしめた。
……不安なのは自分も同じだったから。
美琴が自分に何も言わずに行方不明だなんてただ事ではないのだ。
この一週間、何度心が折れそうになったかなんてわからない。
携帯にメールや着信があればすぐさま手に取るし、寮や支部のドアが開けばすぐさまそちらを見る。
二四時間という一日の時間の全てで御坂美琴を探していた。
「……、」
初春の机の上に置いてある一口も飲まれていないコーヒーを手に取り、口に含む。
「………まずい」
コーヒーは冷たくも温かくもなく半端な温度で、非常に後味の悪いものだった。
紙コップを机の隅に置き、白井はパソコンの画面を見る。
いまだに『少しお待ちください』のテロップが消えない画面の端には一つの映像が映し出されていた。
おそらく、初春が調べていた場所の監視カメラの映像を消し忘れていたのだろう。
暇つぶしにでも、とその映像を興味半分で拡大して、白井は目を見開いた。
その映像の題名が『第一〇学区 通行路監視カメラ』となっているのを確認して、白井はもう一度映像を見る。


ツンツン頭の少年が必死の表情でそこを走っていた。


―――――『そう約束だ。御坂美琴と彼女の周りを守るってな。名前も知らない、キザでいじけ虫な野郎との約束なんだよ』
なぜだか、そんな言葉が白井の頭に響いた。
あの少年は美琴が行方不明なことなど、知らないはずだ。
学園都市が隠す事実をただの高校生であるあの少年が知っているなんて、あるはずがない。
風紀委員(ジャッジメント)や警備員(アンチスキル)の一部しか知らないような事実を、あの少年が知っているなんて、あるはずがない。
だというのに。
それが当たり前のはずなのに。
そんな”細かいこと”を踏まえてもなお、白井はあの少年が美琴を助けるために動いているような気がした。
人込みを避けながら彼は必死に前へと進んでいく。
何かを必死に求めるようなそんな表情。

547『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/06/03(木) 23:10:52 ID:6e2YH8dI
[行間1]


「第一〇学区……」
そう呟いて、白井は椅子から立ち上がった。
シワが出来たスカートを伸ばし、んーと背伸びしてから顔を洗う。
手元に必要なものを持ち、制服のリボンを正してから軽く風紀委員(ジャッジメント)の腕章に触れて、それを外した。
これから彼女は外に出る。
風紀委員(ジャッジメント)としてではなく、ただ一人の女の子として。
どこに行くかなど、悩む必要はない。
最後に外に出る前にパソコンの電源を落とそうと初春の机へと戻ると、パソコンの画面には『解読が完了しました』、とテロップが表示されていた。
パソコンの光と共に、薄い笑みを顔に浮かばせながら、マウスをいじり、未開封のメール一件を開いた。
そのメールの内容を見て、白井は笑みを深くする。
初春に書置きをし、白井は空間移動(テレポート)で外へと出た。
目指す場所は一つ。
憎たらしいツンツン頭の少年と愛おしい少女の二人がいるであろう場所へと。



思わず電源を落とし忘れたパソコンは淡い光を放ちながら部屋を薄く照らしていた。
そこに表示されているのはいくつかのウィンドウ。
時計や株、天気予報などのウィンドウを覆い隠し、画面の大半を取るのは二つの映像である。
ただの街並みを映す第一〇学区の監視カメラの映像に、先ほど解読が終了した警備員(アンチスキル)からの暗号メールだ。
監視カメラには必死に走る少年の姿も、辛そうに歩く少女の姿も映っていない、普通の映像。
そして、それの一部分を覆い隠して、己の存在を訴える解読された暗号メール。
解読されたメールにはこう記してあった。
『第一〇学区ノ路地裏デ≪御坂美琴≫ノ目撃証言アリ』

548『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/06/03(木) 23:12:00 ID:6e2YH8dI
第二章[奔走する主人公と暗躍する主人公 Hero_And_Hero]

<7:35 AM>


世界最大の聖堂である、聖ピエトロ大聖堂。
バチカンに存在するローマ正教の総本山であるその場に明かりはなく、ステンドグラスから射し込む朝日だけが辺りを見渡す材料となっている。
その場はいつも静かであるのと打って変って、荒々しい雰囲気が漂っていた。
「バカな!!ミーナ=シンクジェリと、クエイリス=アーフェルンクスが……『神の右席』の候補者であるあの二人が学園都市に行ったと言うのか!?」
重々しい声を出すのは、腰が曲がっている一人の老人。二〇億の教徒の上に立つ、ローマ教皇。
彼はそんな連絡をしてきた一人の男を睨みながら、少しずつ語尾を荒げていく。
「何を考えているのだあの二人は!!失敗したヴェントに変わろうとでも思っているのか!?」
「ヴェントに変わろうとなど、考えるだけ無駄である。いくら候補者とは言え、候補者は候補者。『前方』『後方』『左方』『右方』の四つの内どれかが欠席になった時の言わば代替機
のようなものが、いくら戦果を挙げようともそう簡単に入れ替われる『神の右席』ではないと、私は記憶していたが?」
押すように話すローマ教皇とは裏腹に、連絡をした男、後方のアックアは飄々と言葉を返す。
「だいたい、あの二人はそのような肩書きに興味はなかったはずである。戦果をあげたからでなく、ただ多くの人を救い、ただ大きな力を持っているからという理由で『神の右席の候補
者』などという疑問に残るようなものを設立して近くに置いたのは貴方であったであろう?」
「だからこそだ!!」
苛立ちに居ても立ってもいられないローマ教皇がカツコツ、と聖堂に荒々しい足音が響かせる。
聖ピエトロ大聖堂の中の柱の前に立つアックアはローマ教皇の視線を真正面から受けながら、やれやれといった風に小さくため息をついた。
「あの二人はローマ正教徒となってから、多くの人間に主の教えを広げ、救ってきた。そのような人間が、上に立つべき人間なのだ!それが単独で暴走したとあっては……若さでは済ま
されんぞ!!」
「……、」
(ローマ正教徒、か……いったいあの二人をローマ正教徒と呼んでもいいものか…)
目の前で盛大な愚痴を漏らすローマ教皇を見ながら、アックアはそんなことを考えた。
思えば、あの二人は自分達でローマ正教徒と言ってはいたが、本質的なところではなにか違ったように見える。
例えば、体裁。
彼らは自分達がいかなる立場にあろうとも、誰とでも平等であろうとした。
十字教の教えを考えると特に間違っているようには思わないだろう。隣人を愛せ、と信徒を見守る父は確かにそう言った。
しかし、それは主の前での話である。
主の敵となるものは人間ではない、という考えがある。
信じる者は救われる。それはすなわち、信じない者は救われないということを表す。
主の存在を認めてもなお、敵となるのならそれは神を信じていないこと。
『神は絶対』を掲げる十字教の教えに背くのは、すなわち人間ではないということだ。

549『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/06/03(木) 23:13:12 ID:6e2YH8dI
第二章[奔走する主人公と暗躍する主人公 Hero_And_Hero]

あるいは、主を知らぬものには教えを説く、という考え。
主を知らないのは罪だが、主を知ればこの者は救われるとし、多くの人を救うためそれを広める。
しかし、彼らはそれらをまったくしなかった。
主を信じようが、信じまいが対等に、平等にあろうとした。
例えば、術式。
偶像崇拝を基本とする術式だというのは普通なのだが、あの二人はその偶像崇拝を複数織り交ぜることで独自の術式を研究していた。
一つ一つは小さな効果。それをいくつも、いくつも織り交ぜ特殊な術式を構築する。
そのような術式は禁書目録にも載っていないだろう、と自慢げに話す二人の顔をいまだにアックアは覚えていた。
(まあ、考えてみると私も人のことは言えないのである)
自分が心の底からのローマ正教徒でないことなどとっくの昔に自覚している。
「アックア……やつらが何を考えているのか、面倒を見ていたお前にはわかるのか?」
返答のない問いに疲れたのか、ローマ教皇はアックアに質問を投げかけた。
その問いにアックアは平坦に返す。
「わからない。それに面倒を見たと言っても、見ていたのは五年も前の話である。そんな昔から学園都市を攻撃することなどを計画していたとは考えにくい………ん?そう言えば」
と、そこまで言ってアックアは何かに気づいたように後ろに手を回した。
腰の辺りをガサゴソと漁り、一つの丸められた羊皮紙を取りだす。
「なんだそれは?」
「やつらの研究室を覗いてみたところ、こんなものを発見した」
アックアはローマ教皇の方に歩み寄りながら、羊皮紙を広げる。
「いくつもの魔術的トラップを仕掛けて守ってあったからな……それなりに重要なものなのであろう」
差し出された羊皮紙は、そのトラップによるものか、元々こうなっていたのか分からないが、一部が焼けていて読むことが出来なくなっていた。
それを受け取り、一枚目に目を通した瞬間にローマ教皇は目を見開く。
「………本当に、やつらは学園都市で何をするつもりなのだ」
二枚目に目を通し、ローマ教皇は誰に言うわけでもなく、一人でそう言った。
「『パンドラ術式』など……自らがローマ正教徒だということをわかっているのか…」
ほう、とアックアが声を挙げる。
それに続けて、彼は口を開いた。
「羊皮紙を見る限り、それに使われているのは『神の子』の偶像崇拝のみ。特にローマ正教徒の術式として間違ってはいないであろう?」
「問題は内容ではない、その表題だ。自ら誤解を招くような行動で身を滅ぼすことは歴史的に見て多くあるのだから」
三枚目まで目を通したところで、彼は顔を上げた。
扉の前で待機する秘書を呼び寄せ、羊皮紙を渡し、術式の解析を命じる。
秘書が短く返事を返し、部屋を立ち去ったところでアックアが口を開いた。
「調べなくてもわかる。あれは『大規模破壊術式』である」
「わかっている。それでも念には念をだ。ただの『大規模破壊術式』にしては『パンドラ術式』という名前は妙に感じる」
「パンドーラーへの神々からの贈り物、『パンドラの箱(パンドラピュクシス)』であるか……絶対に開くなと言われたパンドーラーが好奇心に負け、開くと絶望と名のつく様々な災い
が飛び出し、最後に残ったものは……」
慎重に思い出すようなアックアの言葉に、ローマ教皇が続ける。
「『希望』……か…、」

550『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』:2010/06/03(木) 23:35:39 ID:6e2YH8dI
第二章[奔走する主人公と暗躍する主人公 Hero_And_Hero]

「『希望』、と言ってもロクなものではない。『偽りの希望説』などがいい例である」
「そう、か……」
険しい表情をするローマ教皇を見て、アックアは薄く笑った。
「すまないが、少しばかり休養をいただきたい」
「休養……?術式に何か不具合でも?」
「少し、外に出る。二日程度で戻るのである」
そう言って、彼はローマ教皇に背を向ける。
大きな背中を見ながら、ローマ教皇は彼の言葉の意味を理解した。
「どうするつもりだ?」
「なに、少し前まで面倒を見てきたやつが気になってな。様子を見てくるである」
「……………すまない」
「ローマ正教徒の上に立つ貴方が、そう簡単に人に謝るものではない」
そう言って、アックアは部屋から姿を消した。
何かの術式を使ったのか、ただ見えない速度で外に出たかはわからないが、ローマ教皇には消えたように見えた。
まだ、聞きたいことがあったのだが…、とローマ教皇は思わず呟きながら、自分の執務室へと足を向ける。
まだ、やることが残っている。
それらを片づけてから、改めてこの問題を考えるとしよう。
「少ないながらも、『右方』、そして『後方』の資質をもつあの二人はこれからのローマ正教に必要な存在だ。頼むぞ…」
今は、自分にできることなど何一つないのだから。
今は、あの聖人を信じることしかできないのだから。
そうして、ローマ教皇は執務室に向かって、一歩を踏み出した。


<12:00 PM>現在
『希望ト絶望ノ箱(オホペレーション パンドラ)』本格起動まで、残り三時間
本作戦において、必要な事項

・『パンドラ術式』の生贄のために、約十人の人間の血を必要とする
この案件においては学園都市の人間を使うわけにいかないため、人間ではない体細胞クローンを使うことが理想
検証の結果、体細胞クローンでも充分一人の人間の分を補う事ができるとわかった
このクローンを採集途中に学園都市の第一位、一方通行(アクセラレータ)が邪魔に入った場合は即時に撤退すること

・『パンドラ術式』の完成のため、禁書目録(インデックス)と呼ばれる魔導書図書館を回収、拘束する
詳しい事情については魔術側の秘匿ということでわからない
学園都市の暗部組織〔パンドラ〕では『禁書目録(インデックス)』がどのようなものかは知らされてはいない

・作戦において一番の邪魔とされる、上条当麻の殺害
『パンドラ術式』をも破壊する『幻想殺し(イマジンブレイカ―)』を持つ少年は極めて邪魔だと判断した
殺害方法は、後述記載

・『超電磁砲(レールガン)』御坂美琴の捕獲、利用
作戦において、ゴミ掃除をやっていただくこととなった『御坂美琴』が『逃亡』
速やかに確保し、利用する
『御坂美琴』の利用法は、後述記載

551from-ING:2010/06/03(木) 23:38:38 ID:6e2YH8dI
『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』

投下終了です

少し短いですね、すいません

結構な遅筆さなので続きはいつのなるかわかりません

この前、感想・批判をくれた人はありがとうございました

では、感想・批判をよろしくおねがいします

552■■■■:2010/06/04(金) 02:48:00 ID:cOUOOsEQ
GJ!
続き楽しみにしてます!
てか、クオリティー高過ぎだろ…

553■■■■:2010/06/04(金) 11:41:28 ID:BkAyRKVY
8月の新刊予定(2010年8月10日発売)

◆とある魔術の禁書目録(21)
著/鎌池和馬 イラスト/灰村キヨタカ
“大切な少女”を救いたいと望む少年たちの、絶対に退くことの出来ない戦いは
続く……!! 果たして彼らの願いの行方は……緊迫のロシア編、クライマックス突入!

554とある電光の調和学術:2010/06/04(金) 17:42:07 ID:OWL3SIc6
どうも
予定より遅れてしまいましたが投下します。
オリキャラは今日の投下分は出ませんが
その後暴走しまくるのでいやな人は見ないほうがいいと思います。

555とある電光の調和学術:2010/06/04(金) 17:43:02 ID:OWL3SIc6

上条当麻と謎の魔術師の交戦の2日前
イギリス、聖ジョージ大聖堂に二人の魔術師がいた
「どうでしたか」
聖人、神裂火織は大聖堂の入り口で待っていた。
長い黒髪をポニーテールのように結び、半分裂けたジーンズをはいている。
そのベルトには長い日本刀が収まっていた。
「あぁ、最大主教(アークビショップ)には許可を取ってきたよ。統括理事会長さんとも話したそうだ。」
答えたのは、目の下にバーコード、どくろの指輪にくわえタバコ、明らかに神父とは思えない神父、
ステイル=マグヌスだ。
「にしても、物騒なものを送りますね、テロリストは。」
神裂火織が持っていたのはインクジェット紙だった。
紙にはワープロで文字が書かれている。
その内容は、
『やあ、イギリス清教の魔術師達。僕は上条勢力を狙う、どの宗教にも属さない魔術師だ。
1日後に学園都市に入っておかないと、幻想殺し(イマジンブレイカー)が、もとい禁書目録が僕の手によって殺されるよ。
もし向こうについたら、まず上条当麻に会うんだ。そして科学サイドの人間を2人着いた次の日に会うように仕向けろ。
もちろん君たちも一緒にいてもらわなきゃ困るよ。
重ねて書くが、禁書目録の命がおしければすべて手紙の内容を実行するんだな。』
「クソッ上条当麻はいいが、彼女が狙われているならば・・・」
神裂は何ということをという顔で訂正する。
「そんなことはありません。禁書目録が無事でも上条当麻が死んでしまったら彼女は悲しみます。
また、私は彼には貸しがいくつもあるため、助けるのは当然ですし、
この案件は両サイドのバランスを崩すと思われる上条勢力を殲滅させる目的でしょうが、
魔術師が科学サイドの人を殺してしまうと大変なことにもなります。
どちらにしても、行くしか道はありません。」
「さぁ話していたら時間がない。出発するぞ。」
ステイルは足早に去った。
神裂も続くように去った。

同時間、日本、学園都市
『人間』アレイスターは窓もないビルにいる。
「はぁ、上条勢力ね・・・まぁいいでしょう。今回はアレを使うにはもったいないし早すぎる。見守らしてもらうよ・・・。」

556とある電光の調和学術:2010/06/04(金) 17:44:48 ID:OWL3SIc6

上条当麻は、スーパーのレジ袋を持ち歩きながら、考えていた。
(上条勢力・・・両サイドか。あいつの言い分だと、御坂とかがはいるのか?あいつまで戦いに巻き込むことはできねーな・・・)
考え事をしていたらあっという間に寮に戻ってきた。
考え事をしていると時間も早いものだ。
多分、こんな俺の気持ちも知らないインデックスが待っていると思う。腹の減りと共に。
そして三毛猫のスフィンクスと共に。
襲われるのを覚悟してドアを開ける。
「おー帰ったぞー。」
「あぁっ!とうま遅いんだよ?!いつもと帰宅時間が1時間もオーバーしてる!」
インデックスは三毛猫を抱いて走ってきた。
よく考えたら、御坂・謎の魔術師と交戦してからスーパーに行ったため、かなり時間が遅れている。
「あぁわりぃ、色々あってな。喜べ今日はすき焼きだ。多めに買ってきたから明日もすき焼きだ。
ここんとこもやしだらけだったしな。」
「わーいもやしライフからの脱出だね!!って食べ物でごまかされないんだよっ!
もしかしてまたあの短髪といたの?」
グキッ!
もろばれである。なぜばれたのかは追求せずに無視して台所へ向かう。
「あーっ!!!無視だ、とうま!!もしかして短髪とよからぬことを!!」
「あっ?!してねーしそんなこと!!誰がするかそんなこと!!」
「そのあせりは何?」
インデックスはぐいぐい迫ってくる。
「いやですね、上条さんは、もとい健全なる男子はそのような反応をするものですよ。インデックスサン?」
「分かったよ。なんだか顔が疲れてるし。」
なんでだろうか顔に出ている?
ものすごい思い悩んでいたからか。
気を取り直してすき焼きの準備をする。
「じゃあ作るからテレビでも見て待ってろ。」
「うん。分かった。」
素直にインデックスはリビングへ向かう。
そこに玄関のチャイムが鳴る。
「んっ?誰だ?俺が出るよ。」
とびらを開けると柄の悪そうと言うか悪い神父とエロい格好の聖人が立っていた。
ステイル=マグヌスと神裂火織だ。
「おいっ!何でこんなとこにいるんだ?もしかして、また何か世界の危機を救えとでも?」
ステイル=マグヌスは、タバコの煙を吐きながら、
「ああ。そうさ、救ってもらおう。インデックスを。」
「はぁ?」
神裂が割って話した。
「詳しくは中で説明したいのですが・・・あがっていいでしょうか?」
「あぁ。いいよ。ちょうどすき焼きを作っていたところだ。なんなら食べるか?量も多めにあるし。」
「ふん。流暢に食事などしている場合でないのだよ。」
そのとき、ステイルの腹から音が鳴る。
神裂は呆れ顔で、
「・・・ステイル、腹が減っては戦はできぬ、ですよ。」
「むぐっ・・・」
ステイルはたじろぐ。
そして当麻は、ドキッとした。
「戦っ?!」
「はい。そうです。」

557とある電光の調和学術:2010/06/04(金) 17:46:00 ID:OWL3SIc6

「んで、戦ってのは?」
当麻はため息混じりに聞いた。
この事件はインデックスも関係があるらしい。
いっしょにすき焼きをバクバク食べている。
「えっと、先日謎の魔術師から手紙が届いたんです。」
そういうと神裂はポケットからインクジェット紙を取り出した。
すべてを読む間、ステイルたちはすき焼きを食べていた。
割と美味しいな、とかほのぼのしたことを言っている。
が、手紙はそんな内容でなかった。
「なんだよっ!これ!普通に脅迫状じゃねーか。」
「あぁそうだよ?じゃなきゃ来ないさ、こんな時期に。」
「でもよく動いたな。これがいたずらだったりしたら、どうすんだよ。」
当麻は紙をテーブルに投げつつ言う。
インデックスが見ようと、持ったがステイルが没収した。
内容が内容だからか、と思う。
「ううっ見せてくれてもいいじゃん!卑怯者!
あっそうそう、その紙はものすっごい魔力が染み付いてる。多分送り主が相当脅したかったんだね。
これだけの力だと、かなりの魔術師と思うよ。」
「彼女に先を越されましたね。そうです。魔力が尋常でないので行動しているんです。」
神裂はすき焼きを食べながら言う。
食べてる風景の割りに、なんとも重苦しい話題だ。
「と言うわけで、明日は科学サイドの人を、2名ほど君の目の届くところにおいて行動してほしいんだ。」
「何が目的なんだ?魔術師は・・・?まて、今日昼変な魔術師と会ったぞ?そいつは上条勢力をつぶす為に着ただの言ってたな、
明日は両サイドの人間が一緒に動くことだろうとか言ってたが・・・」
ステイルと神裂の箸が止まる。
「何ですって?そいつですっ!きっと。どのような魔術師でしたか?」
「なんだか、科学サイドの技術を使いながら、魔術師の格好をしていたな。よくいるRPGの敵キャラ的な?」
「?最後の一言は分かりかねますが、科学技術を駆使していたと・・・」
「ああ、あいつの言い分だとな。機械の演算で生み出した魔法陣だの言ってたりもしてたぞ。」
「科学と魔術を駆使する魔術師か・・・おそらく、もう一人協力者がいるはずだ。」
ステイルは考え込んだ顔で言う。

558とある電光の調和学術:2010/06/04(金) 17:46:28 ID:OWL3SIc6

そこに黙々と食べていたインデックスが話し出す。
「多分、科学者だと思うよ。その魔術師は科学を知っていても、結局は誰かそれに携わる人と関わったはず。
というか、とうま。なんでそんな大事なこと黙ってたの?もう分かったでしょ?わたしは、10万3千冊の魔道書を記憶しているからこそ
強制詠唱(スペルインターセプト)や魔滅の声()があるんだし、戦闘もできるんだよ?」
ご飯粒を口につけて言いながら迫ってくる。説得力ゼロだ。
「だけど魔滅の声()とかは、今回の敵は無宗教なんだし効果ねーんじゃねーか?」
「うぅ・・・」
インデックスは黙り込んだ。
「さて、そこで明日正午過ぎにどこかで待ち合わせでもして、科学サイドの友人を2名連れてきてくれないか?」
「あぁ、そうだ科学サイドの人間だけど、土御門はどうなるんだ?」
むっという顔をして神裂は答えた
「彼には、別行動をしてもらうつもりです。残念ながら無理です。」
(ならば、御坂とかか・・・ほかにいたっけな?青髪ピアス・・・だめだ)
このとき自分の人脈の乏しさに改めて気づく上条であった。
「うーん。いるっちゃいるんだが、いいのか?こんな暗部を見せても。」
ステイルはニヤッと笑う
「あぁ、記憶を修正さしてもらう。この案件がすんだ後。」
「はぁ?記憶喪失とかなったらどうすんだよ?」
「大丈夫だ、見ろ。」
そういってステイルは、護符を取り出す。
「これは最大主教様じきじきに作っていただいた、なんなく設定した期間の記憶を修正して通常の記憶にする護符だ。」
「はぁ?そんな危なっかしーじゃねーか!信用できねーよ」
「ではこのまま、科学サイドの友人を見殺しにしても言いと・・・」
「うっ分かった。」
そのとき神裂はお辞儀をしながら
「ありがとうございます。できれば呼ぶのは、能力者がいいかと・・・
戦闘になる可能性も高いため、ある程度の人物が好ましいかと。」
「大丈夫だ、今決めた、どちらもレベル5とレベル4だ。心配すんな。」
(そうだ、御坂はいざとなれば超電磁砲(レールガン)をもっている。
その友達、白井黒子でも呼べば風紀委員(ジャッジメント)だし空間移動能力者(テレポーター)だ。申し分ない。)
「では、私達は失礼します。泊まる場所は確保してあるので。」
そういいながら、神裂は立ち上がる。
「あぁそうか。」
「そうだ。心配するな。インデックス、君も参加してもらうぞ。もちろん僕もとい彼が守ってくれることだろう。」
そういってステイルが立ちながら当麻を指差した。
「うん。分かった、とうまが守ってくれるって信じてるよ?」
「うん?あぁ・・・」
当麻は少し照れくさくなった。
「では明日正午にまた伺いますので。」
神裂はそう言うと、ステイルと足早に部屋から出て行った。
「ふう。めんどくさいことになったな・・・御坂と白井を呼ばなきゃな・・・
そういや、電話番号知ってたっけ?」
上条当麻。今まで御坂美琴とかなりの頻度で会っていたものの、
ビリビリされていた為、電話番号なんか聞く暇がない。
「仕方ねえな。明日10時にでも神裂たちが来る前に、寮に直接向おう。」
「うん?明日朝からあの短髪に会うつもりなの?とうまのそういう女好きなところ好きじゃないかも。」
「いいや!インデックス違うから、女好きじゃねーし!」
「嘘だぁーーー!!!」
そんなこんなで騒ぎながら晩飯を終え、したくをして床に就いた。

559とある電光の調和学術:2010/06/04(金) 17:47:43 ID:OWL3SIc6
投下終了です。
また来週金曜にでも投下できるといいです。

560とある電光の調和学術:2010/06/04(金) 18:06:41 ID:OWL3SIc6
ごめんなさい。
訂正とお詫びです。
後から読んで気づいたのですが、
「魔滅の声」の()の中身が打たれていませんでした。
投下する前のチェックを怠った為そうなってしまいました。
以後気をつけますので、ご理解お願いします。

561■■■■:2010/06/05(土) 20:34:05 ID:mss0YEUY
 個人的にものすごく疑問なんだが、なんで2ちゃんとかウェブ上で公開されているようなSSやFFって、
地の文の頭に空白入れなかったり、疑問符や感嘆符の後ろに文章が続く場合に空白を入れなかったり、
沈黙を三点リーダでなく中黒で表記したりするんだろう……?
 非常に読みにくくて仕方がない。

562■■■■:2010/06/05(土) 20:52:45 ID:ItQZWxek
SSも趣味の範疇なんだから細かいところを気にしたら負けだと思ってる
メールで前略から始まって草草不一で結ぶ文章を送ってくる奴なんていないだろ?

563■■■■:2010/06/06(日) 01:01:04 ID:jrRp5WJY
これから
わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜6
を投下します。

1は>>211
2は>>288
3は>>326
4は>>442
5は>>496
からです。

注意点としては、
垣根の能力にかなりオリジナル要素が入ってきてしまったこと、
絹旗の能力にも多少設定を加えてしまったこと、
です。

バトルになってくると色々と無茶なことを始めてしまい、所々それはどうなのか、と意見の出るところもあると思います。
SSだから、というのは言い訳になりませんが、不明な点など意見をいただければ答えたり(答えられず至らぬところを謝らせていただいたり)したいと思います。

次で終わる予定ですので、もうしばしお付き合いいただけたら幸いです。
それでは投下します。

564わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜6:2010/06/06(日) 01:01:47 ID:jrRp5WJY
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「がッ………はッ!」
自らの能力である『未元物質』に吹き飛ばされ、地面にダイビングした垣根帝督は、しかしまだ意識を失ってはいなかった。
(っぶねぇ……接地ギリギリで防壁の自動展開をオフにしてなかったら、地面に接触しようとする度に跳ね回る人間スーパーボールになるところだったぞ)
無論そのせいで『未元物質』との衝突によるダメージに、地面に身体を打ちつけたダメージも加わってしまったのだが、
(まぁ、大したことはねぇ。防壁の『未元物質』も追撃を食らう前に消した。これで俺がまた自分から『未元物質』を出現させねぇ限りこのふざけた能力攻撃を食らうことはねぇ)
垣根は『未元物質』衝突の瞬間、そして接地の瞬間の両方で上手く受け身を取っていた。
運動神経は良い方――である。
故に攻撃の派手さほどの損傷は負っていない。
しかし、
「しぶといな」
「――ッ!」
垣根は目の前を横薙ぎに振るわれるマクアフティルを立ち上がりざまに避ける。
「――んなろッ!」
そして起こした頭に目掛けて絹旗が投擲したコンテナを、再び身体を伏せることでかわす。
(一遍奇襲が成功したんだ。あとはバンバン攻撃してくんのは当たり前だな。ったく、やっぱもう一人いやがったか。こりゃぁこのままじゃ俺の負けだぞ)
垣根帝督はこのゲームのルールを理解している。
自分が彼女達を振り切りワゴン車に到達出来れば自分の勝ち、出来なければ負け。
即ち彼女達は垣根帝督というレベル5に無理に挑んで勝利する必要などなく、あくまでワゴン車が目的地に到達するまでの時間稼ぎに徹すればいい。
つかず離れず。
勝たず勝たせず。
負けず負かさず。
ギリギリの位置で垣根をコントロールしておけばいい。
それは垣根を倒すことより余程簡単なことであり、実際その作戦は現時点で成功していると言えるだろう。

そう――――『現時点』では。

(さぁて)
コンテナとマクアフティルの攻撃を避け続けながら思う。
(それじゃあいい加減)
――反撃といくか。

♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
(あれを超食らってまだ立ち上がれるんですか……それにあの身のこなし。成る程、『能力馬鹿』ではないということですか)
コンテナの投擲を続けながら、絹旗最愛は建物の陰から垣根を観察する。
(とはいえ先程までに比べると超動きが鈍っています。『自滅』のダメージは確実に入っているようですね)
このゲームのルールに則って言うならば、今現在絹旗・ショチトル組は垣根に対して圧倒的優位にある。
時計を見る暇はないので概算だが、おそらく浜面が出発してからもう4分程経っただろう。
(完全勝利まであと6分ですか。油断は出来ませんが、いい運びです)
そう思い、ふらふらと攻撃を避け続ける垣根を変わらず狙う絹旗だったが――

その時点で、

有利を確信し、
勝利を急がなかった時点で、

――それは『油断』と言わざるを得なかった。

565わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜6:2010/06/06(日) 01:02:35 ID:jrRp5WJY
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
(何をしているんだ?こいつは)
ショチトルは――絹旗と違い、垣根帝督と対面しているショチトルは、垣根の異常に気づいていた。
(さっきから、何を呟いている?)
ショチトルと絹旗の攻撃を避けながら、垣根は小さく何かを呟き続けていた。
(術式ではない、魔術的な意味はなさそうだが……)
気になるのは、垣根の様子が『攻撃を避ける合間を縫って呟いている』のではなく『呟きを邪魔してくるので仕方なく攻撃を避けている』ように見えることだ。
しかし、ショチトルは垣根の行動の意味に気づくことは出来なかった。
もしもショチトルと絹旗の立ち位置が逆だったなら――或いはショチトルに超能力の知識が少しでもあれば分かっただろう。

垣根の呟きに魔術的意味は無くとも、科学的意味があったことに。
それは術式ではなく、数式だということに。

だが、それでも。
「悪いな。――逆算、終わるぞ」
数式が理解できずとも、垣根が最後に呟いたその言葉の持つおぞましさだけは理解できた。
故に、
「!?」
反射的にマクアフティルの刀身を身体の前に広げ、防御行動を起こすショチトル。

そしてその直後、マクアフティルは宙を舞った。
ショチトルの心臓を狙って撃ち出された槍状の『未元物質』の攻撃を、ショチトルの代わりに受けて。

「なッ!?」
ショチトルには分からなかった。
何故攻撃されたのか。
――否。
何故今も展開中の『自殺術式』の影響を、『未元物質』が受けていないのか。
「媒介が人間の皮膚とはな。しかも黒人と来やがった。買った奴隷の皮膚でもすり潰したのか、オイ。剣に限らず趣味が悪いな」
「――!」
――バレている。
『自殺術式』のメカニズムが解体されている。
「いや、完全に分かった訳じゃねぇよ」
ショチトルの顔色から言いたいことを察したのか、勝手にネタバラしを始める垣根。
「空気中に散布された粉末状の皮膚が『未元物質』に取り付いてんのは分かったが、そいつがどういう仕組みで『未元物質』をコントロールしてんのかは解明出来てない。しかし、ま。そんなのは些細な問題だろ。大事なのは粉末状の皮膚が『未元物質』を操ってるってこと。要は微粒子が付着出来ないような性質を持つ『未元物質』を作っちまえば、テメェの能力は効果を発揮できない。簡単な話だ」
「そんな……ことが……」
「なに、『未元物質』の周りに微弱な反発力を生み出すようにしただけだ。結果、その反発力に耐えられない一定以下の重量、或いは運動量しか持たないモノは衝突寸前で弾かれる。勿論一定以下ってのはミクロの単位の話だからな、テメェの巫山戯た剣やテメェ自身は対象外だぜ」
得意気に語る垣根。
成る程確かに、そんな物質があれば『自殺術式』が通用しないのも頷ける。
だが、そんな都合の良い物質を、しかもこの短時間で作り出すことが本当に可能なのか。
そう思ってしまったがために、ショチトルは呟いていた。
「……ありえない」
そして、垣根は
「ありえない……か。一つ教えといてやる」
その言葉にやはり得意気に返す。

「俺の『未元物質』に、常識は通用しねぇ」

566わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜6:2010/06/06(日) 01:02:47 ID:jrRp5WJY
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「ま、感謝しとくぜ。ミクロの攻撃ってのは今まで受けたことがなくて対策が不十分だったからな。もしも『細胞レベルで人間を解体する極小機械』とかで攻撃されでもしたらヤバかったかもしんねぇが、この『未元物質』を周囲に展開すりゃそいつも防げるだろ」
言いながら、垣根はもう一本『未元物質』の槍を作る。

もし本当にそのような趣味の悪い機械に取り囲まれても、適当に能力で爆発を起こせば爆風で吹き飛ばすことは出来るだろう。
だが、攻め手も守り手も多いに越したことはない。
何度も言うようだが、垣根帝督はそれなりに運動神経が良いし、きちんと身体を鍛えている。
故に、学園都市のゴロツキ5、6人を相手取ってもステゴロで勝てる程度には強い。
無論、素人に毛が生えた程度の女学生の刀剣使い一人など、言わずもがなである。
確かに『未元物質』を封じられたことは『キツかった』し、『ヤバかった』。
だがそれは決してそれ以上のことではなく――勝とうと思えば素手でも勝てたのである。
それをしなかった理由は、単純。
攻め手守り手を増やすため、ただそれだけだったのだ。

垣根は宙に浮かせた槍状の『未元物質』の穂先をショチトルに向ける。
ショチトルの『自殺術式』を攻略した今、最早垣根にはこの戦いにおいて得る物はない。
「あばよ」
一言告げて、垣根はショチトルに『未元物質』を投擲する。
だが、
「……あ?」
『未元物質』はショチトルに当たらなかった。
ドンッ!と、横合いから飛んできた大きな何かが、ショチトルを巻き込んで反対側までぶっ飛んでいったのだ。
そちらを見やると、ショチトルは交通事故の衝撃を緩和するための合成繊維に大量の水を詰めたバルーンをソリのように乗りこなして地面を滑っている。
(あぁ、建物の中のヤツがまたバルーンを投げてきたのか。さっきはこの女を戦線に投入するためだったが、今度は戦線から離脱させるためってか。しかし、横合いから自分を吹き飛ばしたバルーンにしがみついて姿勢制御の後無事着地って……猫みたいな女だな)
心中で感心しつつ、しかし垣根の関心はすぐにショチトルから離れ、
(さて……)
垣根は『次の行動』に移る。

567わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜6:2010/06/06(日) 01:03:14 ID:jrRp5WJY
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「ここまでですか……」
バルーンを投擲し、ショチトルを垣根の魔の手から逃がしつつ、絹旗は呟く。
詳細は分からないが、どうやらショチトルの『自殺術式』は垣根に破られてしまったようだ。
(けれど、浜面が出発してもう5分になります。超単純に考えてワゴン車の2倍以上の速度で追いかけなければ追いつけません。直線道路ですし、ワゴン車を時速100キロとするなら時速200キロの速力は超必要な筈です。垣根にアシはないようですし、フェイズ1は私達の超勝利と言っていいでしょう)
つまり状況はフェイズ2に移っている。
垣根に殺されずにここから逃れれば絹旗達の勝ち、殺されれば負け。
ショチトルへの強引な戦線離脱法はそれ自体をフェイズ2への移行の合図としてあるので、ショチトルも退却するよう動き始めるだろう。
(あとは垣根を攻撃して牽制しながらこの場を離脱すれば……?)
そこで、絹旗は違和感を抱いた。
(どうして……)
遠方に佇む垣根帝督。
彼は姿の見えているショチトルを襲うでもなく、居場所の割れている絹旗を狙うでもなく、

ワゴン車の走り去っていった方向を見つめて、佇んでいた。

「まさかっ……」
フェイズ1は、まだ終了していないとでも言うのか――
思う間に、垣根が行動を開始した。

その背中から、純白な3対6枚の翼を生やしたのだ。

「――!!」
――ヤバい。
アレはヤバい、と本能が告げていた。
絹旗は即座に服からある物を取り出す。
ショチトルが戦っている間は、それの発生させる爆風が『自殺術式』の媒介を吹き飛ばしてしまう恐れがあったために使えなかったが、垣根は既に『自殺術式』を攻略してしまっているようなのでもう気にする必要は無い。
絹旗はそれ――携行型対戦車ミサイルを一瞬の躊躇もなく垣根に向かって全弾射出した。
だが――
その全てが垣根に到達する前に、白い壁に――再びオンにした自動防御の『未元物質』の壁に阻まれる。
「そんな……」
悲嘆の声を上げる絹旗。
『対戦車ミサイルでも壊せない』と自ら豪語していた垣根が聞けばそれは冗談にしか聞こえないだろうが、生憎互いに互いの言葉を聞き取れるほど近くにはいない。
垣根は翼で一度空気を叩き、その身を空に踊らせる。

「あ、ぁ……」
――行かせてはならない。
この男を、行かせてはならない。
「あぁ、あぁぁぁぁ!」
コンテナなど、一つ二つぶつけたところで意味は無い。
故に、絹旗は。
「あああぁぁぁァァァ!!!!」
建物の階段を――二階までとはいえ、度重なる垣根の攻撃によって脆くなっているとはいえ、巨大な建造物の一部である階段を――『毟り取った』。
「ぐ、ァ……」
――重い。
いや、重さは感じない。
その重量の全てを窒素が肩代わりしてくれる絹旗の『窒素装甲』に、重量オーバーは無いといっていい。
だが、窒素の生み出す圧力。
余りに多量の窒素を操ると、絹旗には高圧の窒素が生み出す巨大な圧力を制御しきれなくなり、尋常ではないGが身体にかかる。
丁度麦野沈利の『原子崩し』が、一定以上の破壊力を生み出そうとすると自らの身にもダメージを与えるように。
絹旗の小さな身体は、見えない窒素の圧力によって押し潰されそうになっている。
「クッ、おォ……」
のしかかる重圧に、肺はとっくに空気を吐き出し尽くし、筋肉や骨がギシギシと軋んでいくのがわかる。
処理能力を超えた能力使用に、視界は明暗転を繰り返し、ギリギリと頭にネジを差し込まれているかのような頭痛が襲う。
しかし、それら全てを無視して、空中の垣根帝督に狙いを定め、
「オ、ォォォォオァァぁぁ!!!!!」
絹旗は巨大なコンクリート塊を投擲した。
投擲と同時に、身体が前のめりに崩れる。
酷い立ち眩みをしているかのように頭が働かず、全身が筋肉痛になったかのように疲れきり、指一本動かすことすら億劫になる。
それでも首だけを回して投擲した階段の方に目を向け、

ゴバァァッ!と、垣根の背中の翼から放たれた、建物を撃っていた時の10倍ほどの太さのある巨大な光線にコンクリート塊が跡形もなく消失されるのを見た。

568わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜6:2010/06/06(日) 01:03:32 ID:jrRp5WJY
「…………ぁ」
最早絶望すらも発声出来ず、ただだらしなく口を開けてそれを眺めるしかない絹旗。

何てことはない。
あれだけの威力の攻撃が出来るのなら、ここら一帯の建物群を残らず消し去ることだって出来たはずだ。
巫山戯ているなど、とんでもない。
そんな域にも達していない。
――『超』というのは、度を超えて特異なものにつける接頭語。
成る程その通りだ。
これが『超』能力者。
まるで程度が違いすぎている。

と、垣根がこちらを見た。
こちらの顔までは認識出来ていないだろう。
こちらからも分からない距離なのだから。
だが、その遠距離から垣根はまだ見ぬ敵である絹旗に向かって口を開いた。
音声は聞こえなかったし、読唇術が出来る訳でもないのだが、絹旗には垣根はこう言ったように聞こえた。

――ゲームオーバーだ。

次の瞬間、ボォッ!と絹旗の身体を激音と衝撃が襲った。
よく分からないままにその衝撃に吹き飛ばされ、続いて上から連続的に降ってきた何かに身体を押しつぶされる。
『窒素装甲』のおかげか、階段を投げ飛ばしたことによる疲労感を除いて、身体にダメージはない。
やはり身体は動かず、絹旗は首をひねって周囲の状況を確認した。
辺りにはいくつものコンクリート片と、建物の2階部分にあったはずの鉄パイプの棚や発泡スチロールやビニールシートが転がっている。
そこに来てようやく絹旗は、建物が倒壊し、自分がその下に押しつぶされているのだということに思い至った。
ならば、最初に絹旗を襲った激音と衝撃も予想がつくというものだ。
ソニックブーム。
超音速航行によって発生する衝撃波。
それが絹旗とこの建物を襲ったのだ。
つまり垣根帝督は、あの白い翼を用いて、時速300キロ超の速度でワゴン車を追いかけていったのだろう。
200キロどころではない。
最早ワゴン車が病院に着く前に垣根に追いつかれるのは明白だ。
フェイズ1の時点で、絹旗達の負け。
結果、
佐天涙子と浜面仕上は殺され、

――そして、絹旗最愛は生き残る。

なんだ、それは。
なんなんだ、それは。

しかし、いくら憤ったところで。
満身創痍の絹旗最愛に出来ることは、無い。

569わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜6:2010/06/06(日) 01:03:59 ID:jrRp5WJY
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「くそッ!」
バルーンから飛び降りて、ショチトルは走り出す。
垣根帝督はワゴン車を追いかけていき、絹旗最愛は生き埋めになった。
完全な、詰みだ。
「くそッ!くそッ!」
ショチトルはがむしゃらに垣根を追いかけようとする。
無論、追いつける筈がない。
そんなものは無駄でしかない。
『自殺術式』は攻略され、最早垣根に通用しない。
ショチトルに垣根帝督を止める術は、無い。

♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「何だよ、何なんだよありゃ!」
直線道路を時速100キロでワゴン車を飛ばしながら、浜面仕上はバックミラーに映る何かを認識した。
初めは黒い点でしかなかったそれは、どんどんワゴン車に近づいてくる。
「追いつかれてたまるかよ!守るって、絹旗と約束したんだぞ!」
とは言え、アクセルは既に抜けんばかりに踏み込まれている。
これ以上の加速は不可能。
浜面仕上に、飛来してくる何かに対抗する手段は、無い。

♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
拍手喝采が巻き起こる。
親船最中の発言に、聴衆が有らん限りの賞賛を浴びせる。
親船は、何も知らない。
『逃げ出したまま』の今の親船最中には、出来ることどころか、状況に対する認識すらも、無い。

♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
垣根帝督は直線道路をただ一台だけ走っているワゴン車を視界に収めた。
道路の両脇には合流してくる車線が見えてきている。
もうそろそろ隣街に着こうという所なのだろう。
無論、だからどうということはない。
目撃者になり得る他の車両は一つも見当たらないし、数人の一般人に見られたところでそんな程度の目撃情報はどうとでも出来る。
ワゴン車を射程圏内に収め、垣根は光線射出の準備を始める。
垣根帝督の勝利を阻むものは、無い。

♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
最早状況は終了している。
今更誰がどう足掻こうが、盤面はひっくり返らない。
今から何かしようとしたところで、どんでん返しは起こせない。
故に、だからこそ。

「――私達の、勝ちです」

初春飾利はネカフェのパソコンのエンターキーを叩いて、メールを送信した。

初春飾利に出来ることは、『もう』無い。

570わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜6:2010/06/06(日) 01:04:14 ID:jrRp5WJY
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
(……メール?)
マナーモードにしていた携帯電話が、振動してメールの着信を訴えかける。
何とか動くようになってきた左手で、不器用に携帯を取り出す絹旗。
「…………え?」
その文面を見て、絹旗は驚きの声を上げる。

♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「おい、大丈夫か!?」
建物の残骸の横を通り過ぎる時、生き埋めになっている絹旗最愛を発見して、ショチトルは声をかける。
「……?どうした?」
絹旗は、瓦礫の中で携帯電話の画面を覗き込だまま固まっていた。
「ショチトルさん……これ」
絹旗は携帯を震える手でショチトルに差し出す。
そんなことをしている場合ではないと思いつつも反射的に受け取り、
「……なんだと?」
メールの文面に困惑の声を上げる。

♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「クッソォォぉぉ!!」
バックミラーに映る影は、もうその概形が分かるほどにまで浜面の運転するワゴン車に近づいてきていた。
その6枚の羽を持つ空飛ぶ人間は、空中に停滞すると(浜面から見て、である。つまりは時速100キロのワゴン車と等速度で飛んでいるのだ)なにかの準備を始めた。
まるで今から砲撃でもしようかというような。
「どうすりゃいいんだチクショォ!……?」
その時、浜面の携帯がメールの着信を告げた。
「んだよこんな時に!」
余所見をする余裕はない。
メールを無視して走行を続ける浜面。
だが、
「は?…あァ?」
突如急変した周囲の状況に、浜面は混乱の声を上げる。
合流車線から次々と現れた、三つ叉の矛のデザインをあしらった車両――警備員の車両が、ワゴン車を取り囲むように陣形を作ったのだ。
計6台の警備員の車両が、さながらVIPの護衛のように速度を落とさずにワゴン車に張りついている。
そして、
「攻撃してこない……?」
相変わらずつかず離れずの距離を保っているものの、翼を生やした人間は先程までしていた砲撃準備のようなものを解いてしまっている。
「警備員のおかげ……なのか?」
と、
「な!?浜面じゃん!」
ワゴン車の右側を併走する車両の助手席の窓から顔を出した何者かが、浜面の名を呼んだ。
「は?黄泉川!?何でこんなとこに!」
浜面の叫びを受け、警備員である黄泉川愛穂もエンジン音にかき消されないよう大声で叫び返す。
「それはこっちの台詞じゃん!突然上から、『ここを走っている筈のワゴン車一台を早急に護衛しろ』なんて命令が一方的に下されて、詳細も分からないまま駆けつけてみたら、そのワゴン車を浜面が運転してるってどういうことじゃん!?つーか浜面、お前自動車免許持ってるじゃん?」
「うるせぇ、今はそんなこと言ってる場合じゃねぇんだよ!だが、よく分からねぇけどグッドタイミングだ!後部座席に重傷の女の子がいる!そいつを病院まで届けたい!どうやらあの羽野郎、あんたらが囲んでれば手が出せねぇみたいだ!隣街までこの状態を維持してくれ!」
「怪我人じゃん?」
黄泉川はスモークガラスで中の様子が見えない後部座席と、後方を飛んでいるおかしなシルエット、そして浜面の真剣な顔へと順に視線を移していき、最後に正面を向いてしっかりと告げた。
「了解じゃんよ。事情は後で聞くじゃん」
「……済まねぇ」
同じく正面に向き直り答える浜面は、先程携帯にメールを受けたことを思い出した。
片手で携帯を操作し、メール画面に目を遣ると、
「…………あぁ、勿論だ」
知らないアドレスから送られたそのメールには、
メールの送り主が現在の浜面達の状況を把握していること、
ワゴン車に警備員の車両を護衛につけること、
そして、

『どうか佐天さんを助けて下さい』

という訴えが書かれていた。

571わたしたちのウォーゲーム!〜佐天涙子超防衛戦線〜6:2010/06/06(日) 01:04:31 ID:jrRp5WJY
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「小賢しいこと考えやがる……」
警備員の車両に囲まれたワゴン車を見て、垣根帝督は苦々しく言葉を吐き出す。
警備員は、『表』の『組織』だ。
それは垣根がこの場でワゴン車を攻撃することを二重に阻んでいた。
『表』であるが故に、彼らに『裏』の事件を目撃されることは今後の垣根の行動を縛ることになり、垣根は彼らの目の前でワゴン車を潰せない。
『組織』であるが故に、例え垣根がワゴン車を潰した後この場にいる全ての警備員の口封じをしようとも、目撃情報は警備員のネットワークを通じて各所に配信されてしまう。
結果、垣根は沈黙することしか出来ない。
(とは言え俺が廃棄施設に乗り込んでからそんなに時間は経ってねぇ。こんなに早く警備員が現れたってことは、それより前に準備していたか、何者かが警備員の命令系統に介入して強制的に動かしたか……今回の『アイテム』潰しは思いつきだったし、おそらくは後者だな。この数分の間に、警備員を用意したってことだ)
ワゴン車の目的地は、おそらく最短でも隣街。
時間にして10分程の距離だ。
そして、垣根は10分以内にワゴン車に追いついた。
これだけを見れば垣根の勝利と言えるのだが――
(成る程、逆転の発想だ。目的地に着くまでに追いつかれる。ワゴン車の速度には限界がある。なら、目的地の方を近くに置いちまえばいい。ぶっちゃけ『人の目』と『ネットワーク』さえあればいいんであって、隣街ってのはその両方を満たしていたってだけだからな)
そして警備員を起用したということは、ワゴン車で運搬している物資は一般の目に触れても構わない、或いは一般人ではその価値が判断できないもの。
どちらにしろ後々に手を出すのは難しい状況に置かれるのだろう。
「つまり俺の完全敗北ってことか」
このゲームの勝敗は、5分以上も前に――垣根より先に警備員がワゴン車に追いつくように何者かが手配した時点で、決していた。
ショチトルの『自殺術式』に執着した時点で、或いは高々『超音速程度』でしか飛行できない時点で、垣根帝督の敗北は決定していたのだ。
最早状況は終了している。
今更誰がどう足掻こうが、盤面はひっくり返らない。
今から何かしようとしたところで、どんでん返しは起こせない。
「ったく、なんだそりゃ」
垣根にとっての目的(ゴール)であるワゴン車はすぐ目の前にある。
にも関わらず垣根には能力攻撃(シュート)を放つことは出来ない。
垣根は、ワゴン車(ゴール)を囲う鉄壁の守りと化した警備員の車両を見ながら呟く。


「まるでゴールキーパーじゃねぇか、オイ」

572■■■■:2010/06/06(日) 01:05:51 ID:jrRp5WJY
以上です。

それでは、感想・ご意見などいただけると幸いです。
あとひとつで終わりますので、どうかお付き合いくださいませ。

573■■■■:2010/06/06(日) 02:19:00 ID:VCmSo32c
>>572
GJです。つーかもう最高です。
ていとくん無双過ぎwwまぁ第二位なんだから当然ちゃ当然なんですが、メルヘン能力を遺憾なく発揮してますね。『超音速程度』のところはヒューズ=カザキリを意識しての表現でしょうか? はいむらーの絵もないのに、光景がダブって仕方ありません。
そして、当り前の様に例のキメ台詞。正直痺れました。
各キャラの魅せ方は言わずもがな、一番凄いのは原作に引けを取らない(あくまで一個人の主観ですが)「地の文」の運び方だと思います。
本当に15巻の直前の正史みたいな錯覚に陥りそうで困る。もちろん良い意味で。
次で終わってしまうというのに一抹の寂しさを禁じ得ませんが、ていとくんの過去バナSSも後に控えている様ですし、そっちの方も今から楽しみです。
毎回長々とすいません。最高の完結を期待してます!!

574■■■■:2010/06/06(日) 05:19:44 ID:1Vv0GaxY
>>562
 うーん……。
 メールと小説は同じ文章であっても、その意図が異なるから、この場合比較の対象にならないような……。
 何というか、小説の体をとっている以上、必要最低限の文章作法は踏襲すべきかと思うが。
 そもそも原作も小説な訳だし。

575■■■■:2010/06/06(日) 11:38:02 ID:snwex0bA
SS書きは本当の意味での同人活動だってことを忘れちゃだめよ。
書き手は思いの丈をぶち撒けてくれればそれでオッケーっすよ!
その思いの外にある表面的な体裁は創作にとって無駄に時間や労力を食っちゃう部分だし
同人の片割れである読み手が脳内で補完していこうよ。
書き手も読み手も活動者ってことでね!

576■■■■:2010/06/06(日) 13:04:50 ID:iwoYQTbs
同人でもよほど妙な文章書きでない限りはきちんと小説の体裁を取ってるよ。

577salvere000:2010/06/06(日) 20:14:42 ID:Q9pVXBYI

とある禁種な能力者(とあるタブーなのうりょくしゃ)の続きを投下します。

45スレぶりぐらいの投稿です。

今回もバトルはありません。

578とある禁種な能力者:2010/06/06(日) 20:17:27 ID:Q9pVXBYI

日が傾きつつある第七学区の喫茶店に上条と神裂は向かい合って座っていた。

「で、話っていうのは?」
「ええ、それを今からお話しようと思ったのですが……」

神裂は辺りの席や喫茶店の外を自席から見渡す。誰かに聞かれちゃマズい事なのか、
と上条は適当に考えたが、店員以外誰もかった事に逆にがっくりしているように見えた。

「誰か待ってんの?」
「……ええ、実は土御門も一緒に来るはずだったのですが「用があるから遅れるにゃー」とか、
ふざけた言葉を残してどっかに行ってしまったのですよ。そろそろ来てもおかしく無い時間なのですが……」

余談だが、さきほど上条が神裂の胸にダイブした件については「急いでいるので謝らなくて結構です」と、
許しているのか怒っているのか解らない返答を頂いた。
だが、逆に言うとそれほど重大な話という事で、十中八九それに上条も巻き込まれるという事を意味している。
(……不幸だ)

上条が久々にお決まりの言葉を吐いた時、カランコロンという音と共に、
金髪アロハシャツな噂のあいつが喫茶店に入ってきた。

「遅れてすまんにゃー、ねーちん。おっと、かみやんはすでに着席済か」
「遅いですよ土御門。あなたが居ないと話が始められないんです」
「おし。じゃぁ、三人揃った所で、お話をさせて貰うとするかにゃー」
「にゃーにゃー言うのはやめなさい。耳障りです」

579とある禁種な能力者:2010/06/06(日) 20:19:01 ID:Q9pVXBYI
上条はそれからしばらく話を聞いた。相変わらず訳の分からない専門用語が満載の
暗号トークだったが、上条は辛うじて、次の事を理解した。

一つは上条に同行を願いたい仕事があるということ。
一つはあまり危険な事は無い仕事だと思うのであまり心配しなくて良いということ。
一つはその仕事は『とある超能力者』に接触する目的があるということ。
一つは、これはあまり聞きたくなかった事だが、仕事はイギリスで行うということ。
一つは『最大司教(アークビショップ)』とよばれるイギリス清教のトップからの
直々の指令(つまりはイギリス清教側の仕事)だということ。

そして、最後の一つは、

その『とある超能力者』は『原石』の人間だということ。


「……以上だ。どうだかみやん、理解できたか?」
「まぁ、大体。それで、原石ってなんだっけ?宝石か?」
土御門が、うわこいつありえねーという顔をして、となりの完全魔術側の神裂にさえ
呆れた目で見られた上条は少し俯いて、「……分からないので、説明お願いします」と
小さな声でお願いした。

「『原石』っていうのは、学園都市の『外』で自然に生まれた能力者のことだ。つまりは
かみやんみたいな『生まれつき』や、『外』で成長していくうちに勝手に『力』が発現した能力者の
ことを『原石』と言うんだ。どうだかみやん、理解できたか?」

「……う〜ん、つまりは、俺はその『原石』の能力者に会いにイギリスまで行かなきゃならんと。そういう訳か」
「つまりは、そういう訳だな。物分かりが良くて(?)助かったにゃー」

「一つ聞きたいんだが、なんで能力者に会いに行くのに魔術サイドが動くんだ?
普通は科学サイドがする仕事だろそれ」

「いえ、実はそうゆう訳にもいかないんですよ」
神裂の言葉に「?」が二,三個浮かんだ上条に対し、神裂はさらに言葉を続ける。

「その『能力者』はイギリスに居る、というのも理由の一つですが……」
神裂は一度息を止めてから、

「主点の『とある能力者』には、超能力と同時に魔術を使うことができる、という興味深い噂があるのですよ」
在り得ないことを口にした。

580とある禁種な能力者:2010/06/06(日) 20:20:43 ID:Q9pVXBYI
「超能力と魔術を同時に……?」
上条は突拍子のない話に目を丸くした。

超能力者に魔術は使えない。使ったとしても三沢塾の時の様に体中に傷を負って、
下手をすれば死んでしまうかもしれない。上条にとっても常識になりつつある事を
神裂は一文でぶっ壊した。

「ええ。どこから流れた噂かは分かりませんが、調べる必要があると清教のトップが判断しました。
まぁ、実質我々イギリス清教と学園都市の共同作業……ということでしょう」

調査する対象が『超能力者』という事で,どうやら学園都市も手伝うらしいが、
上条には一つだけ、決定的に引っ掛かることがある。

「……で、なんで俺がついていくの?」
「……それについては私も『最大司教』に問い合わせました。あなたを連れて行くよう
指令したのも彼女ですから。そしたら電話に出ない上にFAXで、

『女には人には言えない秘密が一つはありけるのよ。おほほほ』

……という思わず抜刀したくなるような迷惑FAXを送ってきてそれから全く連絡が着きません。
……えっと、それほど危険な仕事では無いと思うので付いてきてくれますか?」

そんな憤慨エピソードを聞かされた後に「ごめんなさい行きません」とか絶対言えない
お人良し上条であったが、またしても問題が浮かんでくる。

「インデックスはどうするんだ?一緒に連れて行く…って訳にもいかないし」
「あぁ、彼女に関しては多分……多分ですが、大丈夫です」

581とある禁種な能力者:2010/06/06(日) 20:23:13 ID:Q9pVXBYI
「え、ちょ、こもえ!?」
「はいはーい、ちょっとお邪魔させてもらいますよー」

割と散らかっている部屋に月詠小萌がどしどし上がってきた。
「え、あの、まだ食べかすが……」
インデックスが自分で食い荒らした食料を頬を赤らめながら、光速で掃除していく。

「で、なんで、こもえがいきなりとうまの家に押し入ってきたの?とうまならまだ帰ってないけど」
「う〜ん、よく分かんないですけど「かみやんは一週間ほど家に帰らないと思うから小萌せんせーが
インデックスのとこにいってあげたほうが良いんじゃないですか?」とか、久々に真面目な顔した土御門ちゃんに言われましてねー。とりあえず来てみました。一応寮監の許可は取ってますから大丈夫です」

当然、完璧幼児体型の月詠小萌が寮の許可など取れるはずが無いため、無断で寮の部屋に入ってきた上条担任であったが。
「!? ということは、またとうまは私を置いて危険な事件に首突っ込んでいるんだね!?
今回という今回は絶対に絶対にして許さないんだから!!」

鋭い歯を丸出しにして野獣のように吠えるインデックスに対して月詠は落ち着いた表情で、

「帰らないといってもお友達の家で一週間缶詰勉強会らしいですよ?」
え、とインデックスの歯が若干丸みを帯びる。冬休みも近いし、まあ在り得ないことでは無いのだが、少女の顔はなんと言うか交際相手にフラれた時に見せるような絶望感溢れる脱力系の表情に変わっている。
どっちにしたって自分に言わずにどっかに行ってしまうことには変わりは無い。

「………いいもん。どうせとうまにとって私なんか…………」
アックア戦あたりに見せた極スネモードに突入した哀れな少女に、月詠小萌は持ってきた
紙袋から悦の表情で最終兵器を繰り出す。

「ちなみに今ここには、デパ地下特製もう食わずにはいられない最強無敵の百戦錬磨、
グルメリポーター独占のロールケーキがあるのですが……まぁその様子ですと、
『あなたは』残念ながら食べらないようですね。先生はとても残念です。はい。」

ニヤニヤしながらロールケイク(発音注意)にフォークをブッさそうとする月詠の手に、
空腹少女の手が添えられる。
「……それとこれとは別なんだよ」
次の瞬間には元の欲望丸出しのシスターさんに戻ったインデックスが凄まじい勢いで
ロールケーキを口にもりもり頬張っていた。

月詠小萌は心の中で小さくガッツポーズをする。

作戦成功、と。


どっちにしたって、本当は上条がイギリスに行くことなど月詠は知らない訳だが。

582とある禁種な能力者:2010/06/06(日) 20:26:05 ID:Q9pVXBYI

「……なるほど。土御門は小萌先生を騙してインデックスの相手をさせているから
大丈夫……と、そう言いたい訳か」

「ま、そうゆうことだ。じゃあ早速、第二三学区に停めてある七〇〇〇キロオーバーの
内臓圧迫飛行機に乗ってイギリスへ……」
「行かねーよ。そんなんで納得できるか」
疲れた顔で席を外そうとする上条に土御門が追加説明を施す。

「まぁ、実際『接触』じゃなくて、『護衛』なんだけどにゃー」

上条の動きが若干鈍る。『護衛』ということはその『超能力者』はだれかに狙われている事を
意味するのではないか?

なんというか、上条が黙ってスルーできない事を的確に突いている気がする。

土御門の声が少し低くなる。
「超能力と魔術が同時に使えるってのは相当美味しい話らしくてな。『外』にいる
『研究者気取り』の奴らが、その『能力者』を狙っているらしい。で、『安全のため』に
俺らが先に接触した方がいい……ってのが『上の報告』だ」

その『研究者気取り』を知っている者なら、
それを『スターゲート計画の残党』と呼ぶだろう。

当然、上条には理解できないが、要するに狙われているから助けましょうという事だけは解った。
正義感溢れる上条としてはなんとなく行く気になってきたが、自分が手伝されるのはやっぱり
納得がいかない。特に理由が分からない辺りが。

悩む上条にトドメの一言が突き刺さる。

「かみやんのいない状態での『仕事』は上層部から禁止されてるからにゃー。
もし、かみやんが行きたくないって言っちゃったら、ぶっちゃけ『その能力者』死んじゃうかもよ?
例の『研究者気取り』さんは結構乱暴だから」

やっぱり自分のせいで人が死ぬのは忍びないですよね、と神裂が棒読みで言ったのを
合図に上条の心は折れ、同行を許可してしまった。


不幸だー、という上条の声は一陣の風ともに消えて無くなった。

583salvere000:2010/06/06(日) 20:29:14 ID:Q9pVXBYI
今回は以上です。

次こそイギリスに行きます。

誤字脱字、意見は遠慮なくどうぞ。

前に言ったけどオリキャラ暴れますんで、観る方はご注意ください。

584■■■■:2010/06/06(日) 22:16:54 ID:figs1hcI
>>572
ここまで本編に対して齟齬や違和感がないと
最早、禁書の世界に足りないものを足しているというレベルですね。

585■■■■:2010/06/06(日) 23:11:25 ID:wtZz8yX.
>>584
に同意。
一体どこでこんな才能を培ってきたんだ?
まさか!?作者は原石なんじゃ!?

586■■■■:2010/06/06(日) 23:31:29 ID:ZMqz9VF.
>>572
超電磁砲みたいなスピンオフ作品にしてもおかしくない出来だと思いますよ。
ここでも第2位を妨害した初春は凄いですね。

587■■■■:2010/06/07(月) 23:01:01 ID:ACWwRmNE
禁書2期きたーーー!

588■■■■:2010/06/08(火) 00:38:34 ID:8ttqBKqE
ここはこのような報告する場所じゃないことは知っていますが
言わせて下さい!!
禁書2期キタァァァァァァァ

589美恵子:2010/06/08(火) 03:53:00 ID:b6q/KlFo
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590■■■■:2010/06/08(火) 06:59:42 ID:Mi3vgH4o
>>588
分ってるなら書き込むなヴォケageんなクソが

591■■■■:2010/06/08(火) 13:18:31 ID:XtUX/Cho
>>590
とか言ってお前も嬉しいんだろ

592■■■■:2010/06/08(火) 22:38:01 ID:Mi3vgH4o
ぶっちゃけ質しだいだな
そして反応してるから自分もダメなんだろうけど純粋にウザイと思ったから>>590を書き込んだ
後悔は少ししてる

593■■■■:2010/06/09(水) 00:04:18 ID:kDeTiYtw
てか、>>588より>>589のほうがウザいだろ
しかもちゃんとsageてるところが、なんか腹立つ…まあスルー体質つけりゃいいだけだけど
それと禁書2期楽しみです

594Ψ:2010/06/09(水) 16:41:37 ID:Q/u2S20I
こんにちは。前に>>392のプロローグだけを書いたΨです。
あれから、結構書いたのですが、急きょ書くのを止める事にしました。
理由はそれとは別に今書いている物があり、そちらばっかり書いていたので両立は無理だと判断し書くのを止めさせてもらいます。
ちなみにそれは禁書を舞台にしてないのでこちらに書きませんが、(まぁ、少し禁書からすこしネタを取っているんだが。)探してくれると嬉しいです。(まだ載せてないけど。)
では、そちらの方に移りたいのでこれで失礼します。

595■■■■:2010/06/10(木) 04:18:58 ID:AZA8fRt.
>>594
「小説を読もう!」のサイトですか?

596Ψ:2010/06/10(木) 07:08:50 ID:ZbOGW9gs
>>595……当たってます。
まぁ、少し禁書ネタを取っているって言っているのでどれか分かると思いますが。

597■■■■:2010/06/10(木) 15:42:51 ID:AZA8fRt.
>>596
今度拝見させていただきます

598■■■■:2010/06/12(土) 01:05:38 ID:4psjp9ro
またまたお久しぶりです。
「とある妹達の番外個体」を書いてた者ですはい。
>>490 >>492 >>493 >>494さんには多大な感謝を!
予告通り新作引っ提げて帰って来てしまいました。
タイトルは「ビリビリメルトダウナー」。
20巻後に学園都市を飛び出した美琴と麦のんの話です。
一部、前作と共通した設定があるので、そこだけ注意です。
また、中盤からは第六位が出る予定なのでそこも注意です。
では投下します。

599『ビリビリメルトダウナー』:2010/06/12(土) 01:06:34 ID:4psjp9ro

戦火が容赦なく世界の全土を覆う。ロシアからの宣戦布告を真正面から承った学園都市は科学の粋を
極めた兵器、戦略、民兵を駆使し、圧倒的な人的力量差を埋め尽くた結果、対等、
いやどう贔屓目に見たとしても明らかに学園都市はロシアの戦力を確実に抉り、戦況を当然のように
有利に持ち込んでいく。無理もなかった。ロシア側は右方のフィアンマという男に煽動されるが故に
自分達を騙し騙し戦っている。逆に学園都市には自陣の防衛という大義名分が存在する。
技術の差では無く精神的な力量の壁が二つの陣営に影響を与え、暴動、制裁、死闘が円満していく。
科学サイドの勝利。その結末が近い未来として訪れるであろう。それほどまでに大差が連綿としていた。

だが、そのような大局的結果とは裏腹に、学園都市に勝る軍もあった。
ノリリスクと呼ばれる、シベリア高原北西部に存在する鉱山地帯。
この周辺ではニッケル、胴、コバルトといった重工業に欠かせない金属資源が採掘されている。
当然、この地から供給されるそれらは戦争においても重要な兵器の材料となる。
ここを学園都市に奪われれば、新規の兵器の製造に歯止めが掛かり、不利な位置に居るロシアには
痛手となる。そのためにもここの拠点にはロシア軍の中でも選りすぐりの人員が配属されている。
学園都市も襲撃の一手に全力を注ぐが、ロシア側も馬鹿では無い。既に学園都市が誇る、
時速七〇〇〇キロオーバーの輸送機かつ戦闘機であるHsB-02への対策も不完全ながら用意されていた。

600『ビリビリメルトダウナー』:2010/06/12(土) 01:07:03 ID:4psjp9ro
超音速爆撃機による物資供給は確かにロシアにとっては脅威だ。しかし、その物資は降ろさなければ
『物資』として働かない。つまり、大量の重火器、食料、軍兵を戦場に堂々と音速で運び込んでも
敵拠点に到着した際にはパラシュートで降下する必要がある。
これが学園都市の穴だった。この物資降下を妨害する、または横取りすればロシア側も
必要な武具等に困る事が無くなる。むしろ学園都市側の最新型兵器を奪取出来ればこちらでもそれを
製造出来る余地がある。そのため物資降下時を狙った奇襲に全力を費やせば勝機が見えてくるのだ。

ノリリスクでもその作戦は有効に働き、屈強な男達がまた徒党となって輸送機の訪れを待つ。
タイムテーブルも事前に確認し、軍用時計で照らし合わせた後にロシアの強兵達が遭遇ポイントまで
移動した。一人、また一人と軍用車を降りてポイントまで接近する。
それに加え今は夜。超音速機も敵を味方と誤認して物資の補給を間違えるのにも期待出来る。
五十人程の大群が声を潜め、供給機の到来を心待ちにしていると、それは来た。
男達の口が歓喜で歪む。物資を受け取る一軍を狩る時間がやってきた。この戦法を続ければ勝てる。
早くも勝利の余韻を感じた彼らは輸送機の着地地点を確実に見定め、手元の殺人兵器に発破をかける。

601『ビリビリメルトダウナー』:2010/06/12(土) 01:08:05 ID:4psjp9ro

だが、もう、ここで、彼らは間違っていた。
まず、降りて来たのはたった一つの飛来物。明らかに食料や弾丸が詰まった箱などではない。
また、それの落下速度は物資降下のそれを凌駕する。まるで隕石が天から落下してきたかのようだった。
そして、雪積もる大地にヒビを入れる程の衝撃が喚起されたにも拘らず『それ』は優雅さを秘めている。
ロシア兵達にも異変を感づくチャンスがあった。もっと考えを厳しく持てば生還する事も出来た。
そう、学園都市の超音速機HsB-02が輸送してくるのは物資や人員だけでは無い。決して無い。
ごく稀に、少なくとも後五回はその『別の物』を投下する機会があった。
『それ』には影があった。超音速機からのライトで頭部、胴体、脚部が正確に大地に投影される。
だが、一部は抜け落ちている。右腕はかろうじてあった。左腕はどうかとロシア兵達が見定めるとーー

横一線に光が走った。雪を切り、大気を両断し、存在する量子を押退けて、
戦火が迸る。
その攻撃の前兆すら捉えられない未熟な男達は黒ずんだ炭になる。
襲撃だと把握した熟練の戦士達は後退していた。焼き払われた仲間に助けの手をかける余裕は無かった。
「あれは何だ!?」
「よせ!手を出すなッ!!」
一人が不安と好奇心に駆られ、『それ』に発砲してみる。
最近実用化されたAK−200型短機関銃だ。装填された六〇発の弾丸を全て標的に撃ち込む。
ダダダダダッ!!とキーボードをタンピングする音を一段低くしたような銃撃音がなる。
人肉を弾き飛ばし、生半可な鉄製防具なら余裕で食い破れる威力を秘めた銃弾が山のように着弾する。
だが、カカカカッ!と軽い火花が飛ぶだけで、『それ』は怯みもしなかった。
まるで、SFに出てくるようなバリアでも張ったかにも思える。
「何で、何で効かないんだ!こっちは完璧に武装してるのに素手で受けき」
ヒュン、と風を切った音が鳴る直前、発砲した兵の首が飛んだ。
天高く血のリングを描きつつ回るその人の首は現代的な芸術的オブジェに見える。
主人の脳が削ぎ落とされた胴体が地に着くのを見届けた残兵達は『それ』の異常さに漸く気付き、
「ぜ、全軍撤退だぁあああああ!!!」

602『ビリビリメルトダウナー』:2010/06/12(土) 01:08:30 ID:4psjp9ro
一人が手榴弾を投げ捨て、煙幕を張る。『それ』に追尾されずに逃げ切れるように。
男達は走る。先程まであった勝機など思い出すのにも無理があった。
一分、それだけの時間を費やして、ロシア兵達は移動用に使っていた軍用車に辿り着き、乗り込めた。
(こ、これで大丈夫だ。ヤツの戦力は未知だが時速二〇〇キロで振り切れば…………!)
凍えるような寒さの中、運転席に収まった男は汗をかいていた。これは焦りからくる汗だ。
そう思っていた。

「おコンバンワー♪」

その汗は、恐怖からくる物だった。
「……え…………」
正常な判断力を失った運転者がその不自然なコトバがする方向を反射的に目で追ってしまう。
「馬鹿野郎!さっさと出せ!下手すればこのまま全滅するぞ!!」
そのせいで発車に遅れが生じ、ケージの中にいる仲間から罵声が轟く。
だが、もう何も耳に入らない。
軽く開いたサイドドアの隙間に在ったのは、
整っている顔。茶色の長い髪。不自然にまで白い肌。甘い感触がするであろうピンクの唇。
それらの調和を乱す、悪鬼のような残酷で歓楽的で刺々しい破顔の笑顔。
そして顔の右側を真っ二つに埋め尽くす鋭い傷跡。
その中心には腐った精肉のケロイドで覆われた発光体があり、そこから鈍い輝きが発せられていた。

「お客さまだよ?」

強引にドアの開閉部分に頭部を食い込ませた『それ』は、
禍々しい狂気をただ、シンプルに、与えて、
怯え、恐れ、泣き叫ぶ、カワイイカワイイ子羊ちゃんを、

「オオカミさんでーすよぉ☆」

不気味な光を宿した左手のアームでその頭を『掴む』。鉄をも溶解させる高温のアームで。その結果、
「ぎゃ、ぎゃぁああぁぁあぁあああああああああああああ!!!!!」
素敵に運転者の顔表面が焼き爛れ、肉がこんがりとした風味の匂いと蒸発した血液の鉄臭さが
軍用車に充満していく。

「か弱い子豚さぁん?出てこないのぉ?だったらそんな藁葺き、吹き飛ばしちゃうよぉーん?」

『それ』の放つ無造作な光の束が爆発的に展開され、軍用車ごと乗組員を焼却処分する。
抵抗する間は、圧倒的な力で蔑ろにされ、ただただ屈服と苦痛に満ちた絶叫が続く。
真っ黒。ただの炭素の塊と化したゴミらを踏みつぶして、『それ』は呟く。
恋人の耳元に囁くように。唯一の幸福を噛み締めるかのように。

「どぉーこにいるのかなぁ…………は、ま、づ、らぁー?」

麦野沈利。学園都市第四位の超能力者『原子崩し』は、問題無くロシアに到着した。

603『ビリビリメルトダウナー』:2010/06/12(土) 01:09:16 ID:4psjp9ro

日本海を抜け、オホーツク海を迂回して飛ぶ超音速機があった。
学園都市は建前上は日本一帯をロシアからの中距離弾道ミサイルから守り通す義務を負っている。
そのためのHsB-02だが、件の一機は当たり前の様に巡回ルートから外れていた。
ユーラシア大陸の拠点に物資を送る機体にしてもその航空ルートは絶対におかしい。
だが、学園都市側はそれを百も承知で黙認していた。理由は一つ。

幻想殺しの監視。必要な場合には個体を回収しアレイスターの絶対的管理下に置くという任務のためだ。
そのために幻想殺しの弱点である『多人数』と『無効化出来ない重火器』を輸送させて、
上条当麻を無力化するために、警備員とは違う学園都市の暗部に所属する実行部隊が控えていた。

「あ〜あ。音速越えの戦闘機も直に乗ると不便ねー」
とされていても、実際に操縦席の背面で指揮を取っているのは、この場では不相応な少女。
学園都市第三位の超能力者『超電磁砲』たる、御坂美琴本人だった。
艦長席に深く座り、足を組み、腕を広げて伸びをする。
「まったく、真っ直ぐ向かえば三十六分であのバカの目的地に先回り出来るのに、
 戦闘空域はなるべく避けないといけないなんて慎重にも程があるわよ」

そう、御坂美琴がこの超音速機を『お借り』した理由はただ一つ。
あのツンツン頭の少年を助けに行くためだった。
ロシアと学園都市の正面衝突。
その裏で蠢く人々の中に上条が紛れているのを知った美琴は、居ても立ってもいられなくなり、
ロシア、正確にはあの少年が現在目的地として定めたノヴァヤゼムリャへと辿り着く道を選んだ。
もう、あの少年に傷ついてもらいたくない。何かを失ってまで戦ってほしくない。
この戰いで、今度こそ上条が大切な物を取り戻せなくなるような予感があった。
彼が嘗て持っていた筈の、記憶。それ以上に大事な物を。
それだけは嫌だ。自分が彼に会う事に意味があるかはわからない。
むしろ、上条なら美琴が戦地の中心に参戦するなどと聞いたら絶対に反対するだろう。
美琴を巻き込みたくない。きっと、必死に、優しくそう言ってくれるはずだ。
それでも、美琴は力に成りたい。
上条の負担や苦悩がもし加速していく一方ならば、それを和らげてあげたい。

604『ビリビリメルトダウナー』:2010/06/12(土) 01:09:39 ID:4psjp9ro
だから、この選択に後悔は無かった。
(……もう、これ以上アンタ一人で背負い込む必要は無いのよ。
 …………頼ってよ。もう、私を、『守りたい人』の枠に留めるのは、やめて)
そう願った時には、いつも重傷のまま戦場に飛び込んでいった彼の顔が浮かぶ。
自分がどれだけ地獄に堕ちても、大切な人を守り抜くために、その人に安堵を齎す笑顔。
優しくて、思い出すだけで心が体に保温を乱すよう信号を出してくる。
胸に手を当て、加速する鼓動に身を委ねたくなる。でも、今は、まだその時じゃない。
頬に朱が入った美琴はすぐに頭を切り替え、席から立ち、配線機のケーブルと自分の携帯を
繋いで、特殊な波長で連絡を取る。その相手は、
『また、お姉様によるあの人の目的地の再確認ですか、とミサカはお姉様の強迫観念に呆れます』
御坂妹。妹達の中の一人、ミサカ一〇〇三二号だった。

いくら超能力者第三位の美琴であっても、テレビの端に一瞬映っただけの上条の現存位置を
正確には把握しきれない。この超音速爆撃機を襲撃する直前に不正に入手した
上条討伐計画のレポートを読了しても、『上条が今どこにいるか』といった至極具体的な
情報は得られなかった。そのため、全世界に撒かれた妹達の情報網を頼ったのだ。
リアルタイムであらゆる噂、情勢を手に取り続けられる彼女達の助力が無ければ、
上条の目的地すら耳に入れることも不可能だっただろう。
「ええ、ってかまだ一回しか聞いてないハズだけど?本当にノヴァヤゼムリャで合ってるのよね」
『はい。最近ミサカネットワークに新規者が現れ、その二〇〇〇二号の掴んだ情報、
 また最終信号の二〇〇〇一号も同種の情報ソースを持っています、とミサカは説明します。
 不透明ですが、ロシア在中のミサカ達も断片的にこの情報を肯定する噂を耳にした、
 とミサカは補足します』
妹達の新規者とは誰かが非常に気になるが、問題があれば他の妹達が反応すると思われるから
危険な存在ではない。と美琴は素早く考える。
「やっぱりそこか。ありがと。ああ、後アイツになんか伝えたい事とかある?会えれば言えるし」
『…………無事に帰って来て下さい。その後は一発ぶん殴らせていただきますと伝えて下さい、
 とミサカはあの人の安否に一抹の不安を感じます』
「……同感。じゃ、言っとくね」
と、美琴は通話を切り、航空経路の微調整を指示しようとしたその時、

605『ビリビリメルトダウナー』:2010/06/12(土) 01:10:14 ID:4psjp9ro

ドォォオン!!と、地盤を揺るがす程の衝撃が超音速機に大打撃を与えた。
慣性の法則が狂い、乗組員がベルトを付けているのにも拘らず席から転がり落ちる。
だが美琴は一歩も崩れる事無く仁王立ちのまま振動に耐え切る。
(……もうバレたか)
こうなるであろう、と美琴は事前に察知していた。学園都市も上条討伐船が超電磁砲に簒奪された事情に
ようやく気付き、そのまま航空機ごと陸に叩き付けて始末するつもりなのだろう。
現在地はプトラン高原上空。後十分ほどでノヴァヤゼムリャに着くはずだったが、
「クソッ!推進エンジンを二基やられた!不時着しようにも学園都市側は確実に撃墜する気だぞ!」
電撃で黙らせたパイロットが叫ぶ。やれやれ、と美琴は歩み寄り、
「アンタ達は投降しなさい。私が死んだ事にすれば、向こうも責任を追及してこないでしょ」
は……?と乗組員達が邪推する。超能力者を殺したなんて報告をすれば、間違い無く首を切られると
決まってるのに、何を言ってるのか、と疑問視するが、
「あー……言い方が悪かったわね。要は私がこの機体から降りれば問題無しって事よ。
 ハッチだけ開けといて」
「ば、馬鹿言うな。今の高度は五〇〇〇〇フィートだぞ!パラシュート程度じゃ
 落下速度を相殺出来るわけがない!本当に死ぬ気か!」
何で脅迫した人間を弁護するのか美琴には意味不明だったが、
「ま、確かにこのまま降りれば死ぬけど、それでいいのよ。
 どうやら仕事はちゃんとうまく遂行出来たようね。褒めてあげる」
と、下船ハッチに美琴はいそいそと走って行ってしまった。
残された乗組員達はもうどうしようもないと思いつつ、攻撃側に投降シグナルを出す。
ついでにハッチも繰るようにしたが、超電磁砲が何を狙っているかは不明のままだった。

美琴は跳ね上げ式扉に腰掛け、開閉するのを待った。確かにこのまま外に落下すれば
空気抵抗、衝撃波諸々の影響で粉微塵になるだろう。
「アイツに会うまでは、死ねないのよ。この私は」
ガコン!!とハッチが抉じ開けられ、凄まじいエネルギーが籠った風が美琴に叩き付けられる。
しかし、笑顔のまま、彼女は超音速機から飛び降りた。
その瞬間、空気中からありったけの砂鉄を能力で集結させ、美琴の全身を包み込ませた。
鉄のカプセルのような殻で覆われた美琴はその形状を保ったまま投下していった。
摩擦熱を外側に放出するよう調節し、雲を抜きさって、安定航路まで落下した後、
バッ!と砂鉄の包みを開け放つ。
まるで、翼を広げた渡り鳥の様に砂鉄を展開し、風を捉え、美琴はハングライダーの要領で飛んで行く。

「『超電磁砲』にかかれば、こんなもんよ」

推進する燃料も機構も持ち合わせていないが、しばらくは距離を稼げるだろう。
ロシア特有の冷風が何故か心地良い。

御坂美琴。学園都市第三位の超能力者『超電磁砲』は、問題無くロシアの上空を駆けて行く。

606『ビリビリメルトダウナー』:2010/06/12(土) 01:11:10 ID:4psjp9ro
2.5
プライベーティアの攻撃ヘリによる襲撃を撃退した後、浜面と滝壺はディグルヴ達がいた集落から
旅立っていた。怪我人の配送や滝壺への出来る限りの処置、といったやるべき義務を果たし果たされた
事で下地は既に整ってしまっていた。あそこに留まるといった選択肢もあるにはあったし、魅力的で
甘えてしまいたかったが、それでは滝壺を救う手段にまでは行き着けない。
やはり、『体晶』によって汚染される滝壺の体を治すには学園都市の技術が必須。
そして、その技術を借りるには何らかの交渉材料が必要だ。
それを求め、浜面は再び車を出した。戦乱の中心たるノヴァヤゼムリャに向かうため。

珍しく雨が降りしきる中、ひたすら車を走らせる。ディグルヴから拝借してもらった一台だった。
彼や他の人々からの好意から貰った恩賞には、他にもある程度の食料や金銭、また幾らかの銃器も
含まれている。これらを無駄には出来なかった。
助手席で静かに眠りにつく滝壺を横目で見たり見なかったりしながら浜面は考える。
(とにかく、やれる事を確実にやっていくしかないんだ。ノヴァヤゼムリャに行って何が得られるかは
 わからない。もしかしたらもっと危険な目に遭うかもしれねぇ。でも、滝壺のためになるなら、
 どんな戦場にでも殴り掛かってやる)
そうして、ひたすらアクセルを踏む。その前進が滝壺を失うという恐怖を削ぐ道に繋がる事を信じて。

「うむ、覚悟を決めた高邁な男の顔である。
 やはりこの後方のアックアの目に料簡違いは無かったであるな」
「…………あ、ああ」
そう、戦場に向かっているのは浜面と滝壺の二人、だけではなかった。
後方のアックア。
浜面達の生死の行き先を決定する要諦の時に颯爽と現れた男。
攻撃ヘリを得体の知れない大剣と水を操る様な能力で叩き落とした怪物。

その男が、浜面が操縦する車と並走していた。
自身の足だけで。しかも全長三・五メートルもの大剣を背負ったまま、でだ。
ターン、ターン、と地面を軽快に蹴りつつ、大幅に立ち跳びながら進んでいる。

607『ビリビリメルトダウナー』:2010/06/12(土) 01:11:38 ID:4psjp9ro
どうやら雨を弾いて走っているようだ。水の流れに干渉して濡れないように
能力を行使しているのかもしれない。だが、そんな未知のチカラよりも、目で捉えられない程の
高速で両足を作動させている事実の方が、浜面にハッキリとした恐怖を与えていた。
(この人、一体何なんだよ……凄く強いし、尊敬するけどさ、幾ら何でも絶対おかしいだろ。
 超人とかそういうレベルを超えてるんじゃないか?)
「? どうかしたであるか」
「い、いやっ!何でも無いですはい!!順調結構健康ですッ!!」
とにかくこの現実を受け入れる心の準備を慌てて完了させた浜面は、おかしな挙動を押さえつけて
アックアに目的地の確認を行った。
「そ、それで、ノヴァヤゼムリャとかいう孤島にこの戦争の『カギ』になる重要な品があるんだよな?」
アックアが、うむ、と答える。
「その通りである。この戦争の首謀者、右方のフィアンマは『プロジェクト=ベツヘルム』に必要な
 技術や儀式を例の基地で既に遂行させ、本格的な天使降臨をその地で行うようなのである。
 そこにはあらゆる人員、武力、思惑が複雑に絡み合い、確実に戦況を揺るがす大業が起こるであろう。
 学園都市も一枚噛んでくるのは明白である。ならば行く他あるまい」
よくわからない単語が多々飛び出すが、
浜面にもその孤島で戦況を覆すような大事が発生することだけは理解出来た。
「じゃあ、その争乱の中で学園都市が一番欲する物を俺達が頂けばいいってワケだな」
「確かにそうである。そして学園都市の最大の目標物は既に判明している。
 これを掠めとれば貴様の目的も果たされるというわけであるな」
最大の目的の物。それとは何だろうか。浜面にもわからないが、アックアの見解に従ってみると、

答えは、シンプルかつ、
「右方のフィアンマの身柄。これを学園都市に差し出す立会人となれば、問題あるまい」
手に入れるのが、この世界で最も難儀な物だった。

「え、つまり、そのフィアンマっていう、世界を牛耳ってるヤツを俺が倒すって事?」
「倒すとまでは要求しないのである。だが奴を屈服させる一端には参加しなければならないであろうな。
 奴はこのアックアをも凌ぐ武力を持つが、やるしかあるまい」
どうやら、事態は浜面の甘い考えを遥かに凌駕する状態まで達してしまったようだ。
右方のフィアンマを倒す一因になる。そんな力量が自分にあるのだろうか。浜面は一考する。
「……無理かも」
「泣き言を吐く段階はもうとっくに過ぎてしまったのである。……確かに今の貴様では
 これから起こる闘いで生き残るのも難しいかも知れぬ。そこで一つ提案がある」
提案とは何だろうか。と浜面は期待と予感に身を構えていると、アックアが車を止めるように指示した。
車から降りて、雨を拭いつつ、アックアに真意を尋ねる。
「この剣を貴様に貸そう」
ゴン!と大地にヒビを入れるような轟音を響かせつつ、アックアが大剣を地に突き刺した。
「……これを、俺に?」
「そうだ。このアスカロンは魔術的要素をあまり内包しておらん。
 よって魔術を扱う能力を持ち合わせておらずとも手懐ける余地が貴様にもある。
 これを従えれば、必ず貴様の力となり逆境を退ける切り札にもなろう」
浜面が喉を鳴らす。この大剣、これほどまでの巨大さからすれば重量もそれ相応にあるはずだ。
振るどころか、持ち上げることすら、浜面の筋力では不可能だろう。
だが、浜面は辟易しなかった。剣の前に律して立ち、アスカロンの取っ手を力強く握りしめる。
(……滝壺一人を守れるだけの力が欲しい。それ以上は何も求めねえ。
 力に成るなら何でも利用してやる。例え数百キロあるかもしれない大剣でも、俺は)

恐れない。
地に伏すアスカロン。全長五〇フィートの悪竜を斬り殺す事すら可能な剣。
その剣は浜面を認めるのか。
滝壺の命に全てを懸ける覚悟を決めた浜面は、一人の少女のためならヒーローになれる少年は、
奇跡に頼らず、ただ自分の力を信じて、新たな力に手を掛けた。

608『ビリビリメルトダウナー』:2010/06/12(土) 01:12:03 ID:a4t.X8l6

点々と続く血痕。雪原に残されるのは足跡だけではない。ましてや、ここは戦場。
当然の様に犠牲者は兵器と暴力によって量産され、
この山一つ聳えもしない平和の地だった平原にも重い爪痕が残る。
人為的な手法で自然は破壊され、星の寿命は確実に六〇億の生命体によって削られていく。
それを認めるのなら、この『集落』も自然破壊の一つ、とも言えなくも無い。
生物が生存するとは、地球に存在する下位のモノを消費する事なのだから。
カラーン、と門を開けた拍子に備え付けられていた鈴が景気の良い爽快音を小さく鳴らす。

一人の少女が、集落にある酒場に踏み込んだ。
実は戦場において、酒が飲める場所とは割と民衆に重宝される。
自国の同胞がとある地で殺し殺される辛い現実を歪曲したい、忘れ去りたいと、アルコールが施す
一時の快楽的な錯乱を欲して訪れる人間達が多々現れるからだ。
また、戦時中あってか自主規制によって飲酒が制限される事も有り得る。
それでも非合法であっても人々はつい足を運んでしまう。
例え酒を口にするのを禁忌とされる未成年の少年少女であっても、戦場の酒場はそれを許容してしまう。
そのため、その少女が入店するのも不自然では無い。
新たな客の来訪にバーも活気つく。

そう、『その少女の左腕がすっぱり抜け落ちていても』。

麦野沈利はちょこんと木製の椅子に腰掛け、右肘をカウンターに引っ掛ける。
何人かの小男たちが麦野に目を向ける。アジア人だが相当の別嬪だ、と同席で飲まないかと誘うが、
その喪失した麦野の右目でギッ、と睨まれると臆病風に吹かれて断念する。
戦闘の影響で体の部位を欠損した者はそれなりに存在するが麦野の損傷はそれらを無下にする程の物だ。
店主も麦野の形相に目を背けるが、何を飲むかをロシア語で尋ねる。
「ご注文は?」
麦野が潜めたか細い声で、はっきりと答える。
「私を噛んだ犬の毛」
流暢なロシア語で返答されるのが意外だったと店主は驚くが、
「バーボン・オン・ザ・ロックだな」
注文通りの酒類を作って麦野に差し出す。……英語でのジョークをロシア語で話すとはどうなんだ?と
疑問は尽きなかったが、麦野は店主の動揺など気にも留めずにバーボンを口に運ぼうとする。
反射的に左手でグラスを取ろうとするが、ここで麦野は軽く笑った。自分に『左腕』など無い。
全く笑えるジョークだ。含み笑いを堪えつつ、酒を少量口に含んだ。
一気に飲み干すのは素人がやる失敗だ。
あのバカな浜面のように。
ふとその思考が頭を駆け抜けたのをきっかけに、麦野は酒を肴に追憶に浸った。

609『ビリビリメルトダウナー』:2010/06/12(土) 01:12:28 ID:4psjp9ro

酒を呷ったのはこれが初めてでは無い。昔、日日にすれば二週間くらい前にもあった。
確か、『アイテム』での任務を見事完遂させ、新しく加えた下部組織のパシリの入隊記念も兼ねて、
自分の奢りで高級バーに五人で行った時の事だ。
学園都市では酒、とはあまり価値のある商品とは認識されていない。
人口の八割が学生という特殊な街だ。残り二割の大人達のために酒場を開くのは
商売としてはリスクがある。その分、学園都市に参入してくる大人向けの店とは全般的に
商業として安定している企業の傘下にある事が多い。超能力者第四位の麦野や『アイテム』の権限が
あれば、そんな場所を貸し切るなど朝飯前だ。そのおかげで、本来未成年の飲酒を静止すべき大人達の
目も届かなくなり、麦野や滝壺、フレンダももちろん、多分一番年齢的に危険な絹旗も酒を思いっきり
飲みまくる好機が整ってしまったわけである。
一番高年齢の浜面が保護者扱いになるんだし、責任は全部コイツに押し付けてバンバン飲むぞー!と
一晩明けるまで酒地獄を五人で堪能しまくった。
麦野はアルコールに耐性があるため問題無いが、フレンダは何故か泣き上戸になって麦野に対する不満を
涙ながらに訴えたりしてきたり、滝壺は一滴喉を通っただけでダウンしたり、絹旗は逆に有頂天になって
もっと超強い酒を持ってくるべきですッ!と果敢に挑戦したりして、
それはさすがにヤバいだろーがー!!と慌てて浜面が止めに入ったりと、
バカバカしい、平和な時間だった。麦野にとっては、掛替えの無い思い出でもあった。

それが、今になってはどうだ。
麦野は一人、しかも左腕と右目を無くし、フレンダは体をぶち撒かれて死亡し、
絹旗は学園都市で反乱分子の粛正に追われ、滝壺と浜面は未だロシアを放浪している。
クソったれな命令に追われてでも、まだあの頃は居心地が良かった。
一週間に一回は悪人を始末する、反吐が出そうな日常でも、仲間が居れば息も晴れた。
だが、今この寂れた辺境の地の酒場で酒を飲んでいる『アイテム』の人間は自分一人。

麦野沈利だけ。

浅い絶望だった。何故こうなったのか。こうなってしまったのか。
後悔が脳裏を走る。
自分がもっと強ければ、自分がもっと甘ければ、自分がもっと普通だったら、
こんな下らない場所で寂しく酒に浸る未来など、避けられた筈だったのに。
握ったグラスに力が入る。麦野の握力ならばこんな安物のガラス製の物などいとも容易く粉々に出来る。
だが、そこで気付く。自分は何に憤激しているのか?
…………。

フッ、とまた軽く笑い、冷静さを奪還する。そのまま麦野は目的のために再び動く。
「ねぇ、この男を知らないかしら?」
麦野がそうして店主に提示したのは、
浜面の顔が入った一枚の写真。
『アイテム』の四人、麦野沈利、滝壺理后、絹旗最愛、フレンダと浜面の五人で撮った集合写真。
学園都市製の最近のデジタルカメラで激写し、出力したため、画質は最高峰だった。

そして、運命は、加速していく。
「ああ、ついこないだ、ここから出て行ったヒーローだよ。
 全く、アイツの助けがなかったら俺達は軽く全滅してたな。どうやら厳つい大男と一緒に……
 ああ、ノヴァヤゼムリャに行くとか言ってたな確か」
最高の答えを手に入れた麦野は礼を言い、代金を払って出店していった。悪魔の笑顔をぶら下げて。
資金は麦野が元々持ち合わせていた大金に加え、学園都市側から大量の軍資金を得ていた。
それほどの出費までしてでも、学園都市は浜面というイレギュラーをどうしても潰したいらしい。

麦野は集落を後にして、また一人雪原を歩いて行く。足跡と、血痕を残しながら。
もう、『アイテム』の仲間にも、浜面にも、容赦の心など、とっくに消え去っていた。

610『ビリビリメルトダウナー』:2010/06/12(土) 01:13:21 ID:4psjp9ro

「あ〜あ。ここから先はひたすらマラソンね……」
砂鉄で取り繕ったハングライダーによって滑空し続けた美琴だったが、それにも限界があった。
誤って無風地帯に突っ込んでしまったために、推進力が全て損なわれてしまったのだ。
バランスを完全に崩した美琴は、空飛行を諦め、仕方無く地面に降り立った。
着地における衝撃をかろうじて残留した砂鉄で押し殺し、無傷で着地する。
そうして、目の前に広がる、無限の大地に問う。
どれだけ走れば、上条に出会えるのか。
「…………あ、の、バカーーーーーーーーッ!!!!」
周囲は針葉樹だらけ、方角も何もわかったもんでは無い。
完全に八方塞がりだった。

……と、一式調子の乱れた美琴だったが、冷静に落ち着いた後は最善の策を練り、実行し続ける事で
この森の迷宮を拍子よく抜ける事に成功した。方角は太陽の位置と時計で知り、邪魔な林は電撃で薙ぎ払って道を無理矢理開拓し、襲いかかる野生動物達も電撃で追い払い……と、超能力者としての力を
最大限生かす事で、一般人のサバイバル技術を全てあざ笑う様な強引さで森林を抜け去った。

その奥にはこざっぱりとした平原が延々と地平線まで続く。美琴はハァ、と溜息をつく。
(電流操作の応用で高速移動でも出来たらなぁ……)
なんて夢物語を連想しつつ、冷たい雪景色を足で踏みつけながら前進する。
と、その内、
「げ、雨だ」
ロシアでは珍しい雨が降りしきる。それも無視出来る様なほどの小雨などではない。
(うう……準備はちゃんとしてきたけど、傘なんて持参する程余裕なかったしな)
ここまでの大雨だと、寒さ対策に着込んで来た冬服が逆に重荷になる。雨宿りできる場所でもあるか、
と雨を手で拭いながら当てずっぽに走ると、
金網にぶつかった。痛さが体に堪えるが、しかと双眸で全景を確認すると、
このクソ広い平原に、一つだけ建物がぼっちで佇んでいた。どうやら形状からして研究所のようだ。
小規模だったり、半分寂れていたりと、不満はあるがとにかく雨宿りにはちょうどいい。

611『ビリビリメルトダウナー』:2010/06/12(土) 01:14:17 ID:4psjp9ro
美琴は中で少し休養を取ろうと、正門に回る。その横の看板に目を向けると、
(……人類基盤史研究所……?)
人類基盤史研究所とは、学園都市の『外』での企業では随一を誇る医療組織だ。
完全なる不死の生命体を独自に研究し、そのデータを元に最新鋭の医療技術を開発して
世界の医療体制の向上に大いに貢献したとされる。噂では学園都市にも密かに参入し、
『見えないビル』に鎮座する生命維持装置の開発の助力となった前歴があったとも言われている。
しかし、それらは『新』人類基盤史研究所での話だ。以前の研究所には暗い話しか聞かない。
とある実験のために全人類を壊滅に追い込んだとか、そんな眉唾モノの荒唐無稽な冗談ばかりだ。
(何で、こんな辺境の地に研究所がぽつんとあるわけ?……まぁ、細かい事情はどうでも良いし、
 雨宿り出来るならどんな建物でも良いしね)
と、不用心に美琴は施錠された門を強引に破壊して中に土足で入り込んで行く。

中は空っぽだった。椅子や机も、機器も、人がいた形跡すら何一つ残っていない。
ただただ、壁の白、床の白、ガラス張りの透明さ、
とここだけあらゆる人間の形跡を全て処理したような雰囲気だった。
ここで美琴はかつての『実験』が頭に過った。美琴があの実験を中止させようと研究所に襲撃し
メインコンピューターを破壊して、全ての計画が終了した後に同じ研究所をまた訪れてみたが、
その場合はいつも例外無く、このような白く空っぽな一室だけが存在するのみだった。
嫌な予感がする。単なる雨宿りという目的などもう忘れ、美琴は研究所の奥の奥へと入り込んで行く。
すると、何故か音楽が聞こえて来た。あまりに小さく、弱々しい音なので気付きにくいが、
どうやら歌……なのだろうが、一音一音ずれていたり、テンポがぐちゃぐちゃと、聞き惚れるには
力不足な代物だ。人の声にしては、復唱が正確すぎる。おそらくだれかがBGMを鳴らしっぱなしで
ここから去り、狂ったロムだけが狂った旋律を繰り返しているのだろう。
一貫性が保たれていても、構成される音程はどことなく僅かな不安を誘発してくる。
(地下から聞こえてくる……)
狂った歌の音源を仄聞した美琴は、嫌な予感に従ってしまった。
『あの時』と、同じ疑惑、同じ違和感、同じ吐き気が脳から全身に染み渡ってくる。
よく室内を見渡すと、一番奥のワンフロアに敷かれたタイルが一枚だけ躄っているのを発見した。
美琴は何故か固唾を飲んで、そのタイルを剥がしてみる。
この行為に至った誘因は何か、美琴本人にも理解し辛かった。
「…………うっ」
タイルの下には重層的な隠し階段が設けてあった。この真っ白な部屋とは裏腹に、ただ暗黒だけが
静かに鎮座している。それに加え、何だか生臭い。どこか『人間臭い』。

612『ビリビリメルトダウナー』:2010/06/12(土) 01:14:54 ID:4psjp9ro
しかも、その腐臭は長年蓄積したかの如く、濃厚だった。
この金属階段の奥底には何が隠れているのか。美琴はここで一度躊躇する。
この下には、美琴が知ってはならない、深甚たる深淵が眠っているのだろう。
だが、もう美琴の第六感は悟っていた。
ここには、学園都市に関わる重要な物が偏在しているのだと。
絶対能力進化実験と同レベルほどの闇が。
頬を伝った汗が『穴』に吸い込まれていった。それに背中を後押しされ、美琴は階段に足を踏み入れる。

その『穴』は美琴の想像以上に地下へ地下へと続いていた。
一切の照明がヒューズ飛びしていたが、美琴は電流を無意識に発生させ、一つ一つの電球に光を灯しつつ
降りて行く。もう降り始めてから三十分は経過しただろうか。
あの狂ったBGMも地下に潜る程、音量が上がり、音質もクリアになってきた。
美琴は全身の悪寒を強い意志で押し殺しながら、段差を確実に足蹴にする。
その内に、階段地獄も何時の間にか終了していた。最深部に到達したようだ。
「寒い……地下だし仕方無いけど」
床は階段と同じ金属板が敷かれているらしい。一歩進むごとにカン、カン、と精神を揺るがすような
不愉快な高音がしつこく鳴る。
それでも、美琴は狂った音楽に誘われるように、さらに奥へと進んで行く。
通路だけが用意されていた。所々には電気が生きており、能力を使わずとも視界は確保出来た。
自分は何をしているのだろう。本来なら今頃、あのツンツン頭の少年と再会していたであろうに。
上条に会えたら何をまず伝えようか……そう思案している内に、暗闇以外の物質が目に飛び込んでくる。
「何よコレ?……試験管?」
実験の痕跡だろうか、通路の横一線に並べてあるのは、大量の試験管とスポイト。
それらが天井まで届く程高い棚にぎっしりと納められている。数は、千の単位を超えるぐらいか。
一つを手に取ってみると、試験管の外装部にラベルが張ってある。霞がかっているが、そこには、
トキソプラズマ、と拙い文字で書かれていた。
トキソプラズマとは、胎児の脳内の扁桃体に寄生する原生生物だ。
軽い風邪、重い場合には脳炎を引き起こす危険な原虫感染症を発現させる。
しかし、トキソプラズマには扁桃体に嚢胞を発生させる生態があるため、それを逆手に利用して
脳内にどんな影響を与えるか、どんな障害が脳に出来るかを調べる事もあるらしい。
(どうやら、ここでも実験がされていたってワケか。一体何を?)
手にある試験管を棚に戻し、さらに通路の奥に進む。
まだ狂った旋律は止まらない。ここまで長時間聞いていたがために、もう慣れてしまった。
今度の道程は長くは続かなかった。美琴はまた実験に関わったであろう機具を発見した。

613『ビリビリメルトダウナー』:2010/06/12(土) 01:15:21 ID:4psjp9ro

いや、それは、『機具』と呼んで良かったのだろうか。
美琴は闇に関してはある程度の耐性が自然と身に付いていたという自信が在った。量産能力者実験、
絶対能力進化実験、人が踏み入ってはならない残酷で機械的な惨状に触れてしまった美琴は、
もう、あれ以上に慄然とするような悪魔の所業など無いだろうという確信が在った。
だが、そこに置かれていた『機具』は、美琴の知る常識外の存在すら赤子に帰す、凄惨なモノだった。

人のミイラ、だろうか。両手を上げて、壁に鉄槌で固定され、中腰のまま磔にされている。
両手の先端は肘の辺りから両断され、その延長部分には直接、何本ものコードの束が埋め込まれ、
背後に点在する機械と繋がっている。
ミイラに眼球は無い。皮膚は完全に水分が失われ、辛うじて申し訳ない分だけ筋肉と骨のみが残り、
何万もの枯れ果てた血管が浮き彫りになっていた。

美琴は戦慄する。思わずショックで両手で口を覆った。瞳は小さく縮み、眼孔が細くなり、
呼吸を忘れ、心臓だけが鼓動を早めていく。狂ったリズムが、狂った音楽と同調する。
ただのミイラだけなら、美琴は悪寒のみで留まり、冷静に調査を続けられただろう。
だが、ミイラの骸骨のような頭部には、少女の心をメッタメタに無慈悲に切り裂く絶望が根ざしていた。

茶色く、短く、それにはまるで、『美琴によく似た人物が持つであろう毛髪』が伸びていた。

間違い無い。このミイラは、
妹達の一人だったモノの、成れの果てだ。

美琴は想像という名の汚染に身を震わせる。五感が不必要な情報たる現実を確実に脳内に感知させ、
心身が弾け飛びそうになるまでの恐怖が美琴を苛む。
実験は、まだ、終わっていなかった。未だ解決していなかったのだ。
あの少年の救いの手が届かなかった妹達が、この辺境の地で、地獄に生きていたのだ。
血を抜かれ、脳内電気を引っ掻き回され、得体の知れない薬品を打ち込まれ、
心をズタズタにされた、美琴の妹が一人、実験という厭世に喰い破られていたのだ。
実験。何の目的でこのクローンは贄にされた?ただの少女を食い物にした研究者達はどこに行ったのか?
美琴は畏れをどうにか正気が保てるギリギリまでに抑え込み、周囲に詳細を求める。
妹達のミイラの周りには、インクが霞んでいる資料が書かれた無数の紙、壊れた注射器や電極、といった
実験の証拠が幾つも転がっている。しかし、これだけでは美琴が望む情報は一切得られない。
そこで美琴はミイラの背後の機械に近づいた。後ろに回る形で、機械の液晶部分に着眼する。
どうやらコンピューターなのだろう。学園都市のそれと同機種だと思われる。
電源は死んでいるが、美琴は無理矢理能力で電気を供給し、機械を起動させる。
パスワード等の承認は能力で素通りし、力づくで突破した。そして全データを閲覧出来る場面に進んだ。
割れかけた液晶画面には、一つだけファイルが生き延びていた。美琴は迷わずそのレポートを開く。
そこには、それには、こう、端的に書かれていた。

「学園都市超能力者第六位『X番雷霆(ミコトバースト)』、
 正式名称、個体名妹達〇〇〇〇〇号(フルチューニング)における経過報告」

614■■■■:2010/06/12(土) 01:24:52 ID:4psjp9ro
以上です。
企画段階では、浜面が『アイテム』の下部で働く前の麦野と美琴が出会うって
話でしたが、やっぱり未来の話が求められているのかな、と思いこうしました。

あと、フィアンマの現在地ですが、上条さんと最初に接触した基地では
もう上条さんと一度戦っていて、それでもフィアンマを止められずに、
最終決戦の場としてノヴァヤゼムリャに向かうという流れになってます。

なお、美琴が飛び立つ時間、麦野の到着時間等の時系列が複雑かも。

では、また次回の更新まで。本当にありがとうございました。

615■■■■:2010/06/12(土) 07:37:40 ID:rD.NCCzE
>>614
文章、展開、表現。
どれをとってみても普通のノベルとひけをとらない、
下手をしたら、そんじょそこらのノベルよりも売れるレベルだと思います。
GJでした!!続きに超期待です!!!

616■■■■:2010/06/12(土) 15:18:41 ID:Sy08sibQ
>>614
相変わらずのクオリティで安心した

617■■■■:2010/06/13(日) 02:20:38 ID:Yr4xOUeg
すっげえ。
オリジナルなのにここまで魅せるとは。

618■■■■:2010/06/13(日) 06:13:54 ID:uK87YU4Y
しかし、小説の体裁は全く取れていないので、読みにくい……。

619■■■■:2010/06/14(月) 15:07:44 ID:jdQW4nxQ
読みごたえがあって嬉しい

ところで
> 一番高年齢の浜面が保護者扱いになるんだし、
麦野の年齢設定はいくつなんだろぉ。浜面も気になるけど

620salvere000:2010/06/14(月) 20:46:58 ID:FOFmdzAQ
こんばんは。
「とある禁種な能力者(とあるタブーなのうりょくしゃ)の続き投下します。

40ぶりぐらいの投下です。

621とある禁種な能力者:2010/06/14(月) 20:48:57 ID:FOFmdzAQ

(……さすがに能力を使わねェとしんどいな)
一方通行が搭乗しているのは『超音速旅客機』。時速七〇〇〇キロオーバーで大空を滑空するという
学園都市オリジナルの馬鹿みたいな化け物飛行機のことである。
だが、強力なGのせいで乗っている間は終始、内臓が圧迫されるような不気味な圧力が
人体に容赦無く襲い掛かる。ベクトル変換でも使えば楽になるかもしれないが、『仕事』のために
バッテリーは温存しておく必要がある。

(マッハ5、75で高速飛行する『旅客機』か……。こりャ、『外』の奴らが学園都市に追いつくのは不可能なンじゃねエか?)
『減速します。何かに掴まっておいてください』
パイロットの緊張感の無い声が無線を通してコックピットから伝わってきた。

一時間半も経ってないのにもうイギリスか。相変わらずアホみたいな速さだ。
一方通行は、ようやく通常の旅客機並の速度に減速した超音速の飛行機のドアのレバーに現代的なデザインの杖を支えにして手を掛け、首筋のスイッチを「ON」の状態にし、ドアを勢いよく開け放つ。
常人なら投げ出されてしまうほどの強風が機内で暴れまわるが、反射を適用している一方通行には関係の無いことだ。
そのまま体を傾け、一方通行は高度二五〇〇mから何気ない顔で落下し、十秒程経ってから一方通行は地響きにもなる轟音ととも
にロンドンの裏通りに着地した。

(誰もいねェか。つか、街中にこんなクレーター作っていいもンなのか?)
一方通行は足元にある自分で作った直径五m弱のクレーターを見ながら適当に呟く。
そして、周りを見渡し先ほどと違う風景が目に留まった。
「……いきなり大歓迎だな。イギリスってのは歓迎パーティーとか頻繁にやるタイプの国だったか?」
一方通行の周りには全身黒服の背の高い男達が二十人程いることに気づいた。
そして、その全員が殺傷能力の高い手動マシンガンを構えている。
(『外』の安っぽい銃器を使用している。……て、ことは外部の裏組織か)
海原のクソ野郎から「外部の馬鹿共に邪魔される恐れがありますから気をつけてください」と
聞いた憶えがあるが間違ってはいなかったようだ。
一方通行がそれだけ考えると、それと同時に周りを囲む二十以上のマシンガンが火を噴いた。

622とある禁種な能力者:2010/06/14(月) 20:51:02 ID:FOFmdzAQ
爆音が鳴り響く。一つの銃を発砲するなら「うるさい音」だがそれを二十倍以上の量にすると
「鼓膜が破れそうな音」になる。そして、その銃撃を受けた者は当然銃一つでは計り知れない威力を
受け止めることになる。
二十のマシンガンが生身の人間に発砲したのだ。当然、目の前の人間はよく分からない肉片になって
いるだろう、と発砲した内の一人、即ち黒服の男の一人は当たり前の事を考える。

が、しかし。眼前の少年にはそんな常識は通用しなかった。

このままでは殺されるかもしれない。本来目の前の白髪が僅か以上に思わなければならない言葉の
はずなのに自分達が嘘偽り無くそう思っているのはどうゆう事なのだろうか。
全身黒服の男はその答えが導き出せない。その手にある手動マシンガンが『自分の撃った散弾で』大破し
ていることなど気にして居られない。恐怖より疑問ばかりが浮かんでくる。

なぜ、この少年は無傷で立って居られるのだろうか?

少年は笑っていた。前に垂れた白銀色髪で彼の目は見えない。だが、彼の口元は裂けたような壮絶な
笑みに包まれている。やがてその不気味な口前が言葉を発する。
「そういや、『外』の奴らは能力の知識が「こっち」に比べて劣ってたっけなァ。」
目の前の少年は俄かに笑い出す。それを合図に黒服の仲間達は使い物にならなくなった手動マシンガン
をレンガ道に放り投げ投げつけ落とし、慌ててその場から抜け出そうとする。恐ろしさに声を上げて
間抜けに転び出す奴さえ居た。
自分もそうした方が幸を呼ぶかもしれない。抑えきれない悲鳴を僅かに声に出して謎の少年に背を向けようとしたが、

「おいおい。遺言にしては随分間の抜けた御言葉だな。遺族の方々をあンまり
ガッカリさせちゃァ駄目なンじゃねェのか?」

笑い混じりの少年の声が聞こえた所で、男の意識は永久に途絶えた。

623とある禁種な能力者:2010/06/14(月) 20:52:49 ID:FOFmdzAQ

ロンドンの旧市街のさらに人の少ない裏通りと言ってもいいレンガの歩道を三人の東洋人
の男女が目的地に向けて歩を進めていた。
その内のただ一人の女性が手元の地図を拝見しながら隣の少年に話し掛ける。

「この先のアパートメントに『原石の能力者』が居るはず……って、一体どうしたのですか? 上条当麻」
上条当麻と呼ばれたツンツン頭の少年はいかにも気持ち悪そうに背を丸めて歩いている。

「……ふざけんなっ!! あんな空飛ぶトラウマ製造機(及び音速旅客機)に乗せられて、
ピンピンしてるお前らのほうがおかしいんだ!! あんなもんに乗ってたら内臓の位置が
おかしくなること間違い無しだろうが!! 」
騒ぎ出したツンツン少年(被害者)に対し、一歩後ろを歩く金髪サングラスの長身の男が気の抜けた声で火に油を注ぐ。

「まー、カミやんにとってはあれ(音速旅客機)に良い思い出は無いしな。満身創痍の状態でイタリアから『それ』で
連れて来られたり、『それ』に乗ってアビニョン上空から突き落とされたたり、色々大変だったからにゃー」
「半分以上御門のせいだぞそれ!! 」
土御門と呼ばれた金髪でアロハシャツを着た少年は「ああ、ごめんごめん」と適当に批判の声を受け流す。上条はさら
に犬歯を剥き出しにして土御門を睨みつけた所で、

「……土御門。もうすぐ『接触対象』の家なのですから、真剣に物を言ってください。」
地図から目を離さずに神裂火織が真面目な注意をした。

上条当麻、土御門元春、神裂火織。

この三人は今、ロンドンに居るという『原石』に「接触」及び「調査」するため、三人
揃ってロンドンまで『仕事』をしに来ていた。
超能力と魔術を同時に扱うと言われる『原石』を調べる仕事に。

「能力と魔術ねぇ……。そんなもんどうやったら一緒に使えるようになるんだ?」
上条が素で呟く。
「ですから、今からそれを調べに『その人』に会いに行くのですよ」

624とある禁種な能力者:2010/06/14(月) 20:54:33 ID:FOFmdzAQ

着いたアパートメントは築五十年ぐらいの寂れた建物だった。入り口はとことん汚れていて、壁、床、天井全てが荒れ放題の廃墟みたいな家屋だった。
「では、私と上条当麻が『原石』のいると思われる部屋に行ってきますから、土御門はここで待っていてください」

主題の『原石』は「超能力と魔術が同時に使える」という謳い文句のせいで沢山の組織(土御門が言うには『研究者気取り』)に
追われる羽目になっているらしい。(上条はその研究者気取りがスターゲート計画の残党であることは知らない)
そこで、危険がある前に学園都市とイギリス清教が共同で保護することになったらしい。
何故、上条が仕事を手伝う羽目になったかは、神裂や土御門も存じてないようだが。

「なぁ、神裂。なんで土御門はアパートの前で待機しているんだ?」
ギシギシと心配な音を立てる階段を上りながら、神裂が質問に答える。
「いまから会う『原石』は世界中の組織から狙われる立場にあるのですよ。だと言うのに金髪サングラスアロハシャツ
の土御門が会いに行けば確実に警戒されます。ですから、せめて普通の格好の私達が会いに行かなければならないでしょう」
神裂の格好が普通かどうかはツっこんだら負け、と自分で決着を着けた上条とそんなことは露知らずの神裂
は目的の部屋に辿り着いた。簡単に蹴破れそうなドアには、
『YURI AYAKARI』というプレートが貼ってあった。
ドアを三回ノックする。僅かに返事が聞こえ、ボロボロのドアのカギが開けられ、中の住人が姿を現した。

「どなたさまです?」
出てきたのは上条より二歳ほど年下の少女だった。肩辺りまで伸びる漆黒の髪とそれに反してアクアマリンのような透き通った
水色の目が印象に残る少女で、上条が一番驚いたのは、少女が日本人であったことだ。確かにプレートには
「あやかり ゆり(またはゆうり)」と書いてあった気がするが。

「私達はイギリス清教の者です。少しお話伺ってもよろしいですか?」
単刀直入だなーと上条が適当に考えていると、
「あ、はい。よろこんで」
少女は割と簡単に許可を出した。

625とある禁種な能力者:2010/06/14(月) 20:57:27 ID:FOFmdzAQ

「綾狩 優李と申します。で、お話というのは?」
外の廊下に反してかなりピカピカに整理された部屋に三人の男女がテーブルを跨いで
座っていた。その内一番背が高い神裂が勝手に自己紹介した目の前の蒼目黒髪の少女に質問する。

「あなたが超能力者兼魔術師であるという噂……はもうご存知ですか?」
直球すぎるだろと上条が何となく考えても、
「はい。やっぱりその話だと思いましたよ」
綾狩と名乗った少女はまたもや即答。
「では最初に聞きますが、その噂は本当ですか?」
「ええ、本当ですよ」

結論はとても速かった。さすがにこれには神裂も驚いたようで目を丸くして
動揺が隠せない様子だった。

無理して言葉を選んでいる神裂の代わり上条が質問してみる。
「どうやって?超能力と魔術を同時に使うなんて……」
「無理だと思いますよね?でも、私はそれができますから。」
笑顔で解答。なんか信用できない気がする。
綾狩が言葉を続ける。

「ええっと、説明より観てもらったほうが速いと思うので……」
そう言って綾狩は懐から一本のナイフを取り出した。神裂が一瞬身構え、上条も
攻撃されるのではないか、と眉間に皺を集めたが、

綾狩は取り出したナイフで自分の手首を切りつけた。

「「 っ!? 」」

上条と神裂は一瞬怯んだように動きを止めたが、
「……あれ?」
上条が間抜けな声を出したときには、綾狩の手にたった今付けられたはずの傷は
綺麗サッパリ無くなっていた。切り付けた際に飛び散った血液を覗いて。

「これで、分かりました?」
わかりました?と言われても、上条にはよく分からない。傷が一瞬で無くなる……
それも幻覚ではない。ちゃんと、流れ出た血は彼女の服に残っている。上条には疑問詞
しか思い浮かばないが、隣の神裂は何か歴史を変えるような物を観てしまったというような顔をして、完全に硬直していた。

「 ? 神裂、何か解っ……」
「……!! 高Lvの肉体再生(オートリバース)……!!! 」
上条の声は神裂の怒号にも似た叫びに遮られた。綾狩が笑いながらこちらに首を傾げるのが横目で見えた。
当の神裂はそれを見ても顔の硬直が解れない。
「……神裂。それって……、」
「えぇ…。綾狩 優李、と言いましたか。彼女の「能力」は『肉体再生』。それも体の外傷を
一瞬で完治する位……同じ『肉体再生』の土御門とは比べ物にならないほど驚異的な再生能力だと思います…」
「あら、酷いですね。私がここに居ないみたいにそちらの殿方とだけ楽しく談笑だなんて」

綾狩はくすくすと笑う。嘲笑うかのようにも見える。

「もう一度、言います。『これで、分かりました』? 」

626とある禁種な能力者:2010/06/14(月) 21:00:28 ID:FOFmdzAQ
そして、上条はすべてを理解した。
実際、簡単な話だったのだ。超能力者が魔術を使えば体が拒絶反応を起し、体の内部から破壊されていく。
実際、海の家の一件で土御門が無理に魔術を使用し、絶命寸前まで追い詰められたことを上条は知っている。
だが、それでも土御門が死ななかったのは、彼が微弱ながらの『肉体再生』を持っていたからに外ならない。
つまりそれは、『超能力者が魔術を使用した際の副作用は「肉体再生」によって治すことができる』という事になる。

そして、綾狩はその『肉体再生』を高Lvにて所持している。

それはつまり、
「……綾狩 優李。あなたはつまり『能力者が魔術をしようした時の拒絶反応』を自身の「肉体再生」により一瞬
で再生、完治することができるということですか。なるほど、それなら納得です。痛みを感じる前に傷が完治するなら、
魔術を連続で使用することも可能。それこそ『通常の魔術師と同じように』。……どうやら、噂は本当だったようですね」

代理で語ってくれた神裂に、上条が新たに生まれた疑問をぶつける。
「でも、いまの『傷が一瞬で治った』ってのも魔術の一つかもしんねぇし、綾狩…さんが
本当に能力と魔術を同時に使う証拠にはならないんじゃないか? もしかすると、『肉体再生』は
本物で魔術は全く使えませんかもしれないし」
「いえ、それは無いでしょう。彼女からは魔術を使った形跡も気配も全く感じ取れませんでしたから」

それを聞いた綾狩が適当に手を振った。すると、テーブルの上に小さな水の玉が浮かび上がる。
「魔術も使えますよ」と言うことなのだろう。上条が横目で神裂を見ると、
「……ええ、魔術の使用痕跡がありますから、間違いなくそれ(小さな水玉)は魔術でしょうね」

『肉体再生』は本物。今使った魔術も本物。

結論から言うと、彼女の「超能力と魔術を同時に使える」という
突拍子の無い噂は、『本物』。綾狩 優李という人物は紛れ無くイレギュラーな存在だった。

そして、綾狩がもう一度、

「分かってもらえましたか?」

笑顔で言った。

627salvere000:2010/06/14(月) 21:04:07 ID:FOFmdzAQ
今回は以上です。

話が変な方向に歪曲してきた気がする。
一応、『原石』と『肉体再生』の関係は考えてあるつもりです。

次あたりにバトルを入れようかと。

誤字脱字は遠慮なくどうぞ。ではまた。

628神浄の討魔=美琴信者:2010/06/14(月) 21:35:44 ID:efOSH0eU
こんばんわ〜。今回も200スレくらいあとの投下ですwww
今回は、4章の初めから超能力者(レベル5)の開放&絶対能力者(レベル6)お披露目まで。
多分14,5スレくらいになりますかね?
毎度の如く品質は低いです。今回は特にグダグダ…
こんなのでよければ見てやってくださいっ

629神浄の討魔=美琴信者:2010/06/14(月) 21:37:08 ID:efOSH0eU
1

「で?実際どのように戦えって言いやがるつもりですか、上条当麻」
うっさいな、と返しそうになったが、そこはこらえる上条。というか、ここでそう返せる立場ではない。
「えーと、俺たちは…」
上条は、土御門に言われた『やるべきこと』を思い出し、
「…まぁ、相手をぶっ倒せば良いだけだ」
「単刀直入すぎます」
正確に伝えたはずなのだが、ルチアに即答された。
「いや、本当は『敵勢力を引き寄せる』…みたいなのもあるんだが、なんかそれは勝手に俺の右手がやってくれるらしくて」
だから俺らは闘うだけでいい、と続けようとした上条の耳に、
「ええっ!?ってことは、なんかお強い方たちがいっぱい集まってきちゃうんですかぁ!!?」
甲高い、且つ心底驚いた、というアンジェレネの叫びが響いた。
「…いや、そりゃ驚くのは分かるけどさ…見えてはいないけど、一応敵、いるんだぜ?」
わぁぁ、どうしましょうどうしましょう、と一人騒ぐアンジェレネをなだめるように…というか、注意するように上条は言った。
「…だが、確かにこいつの言うとおりだ。なぜかは知らないが超電磁砲(レールガン)もいない今、複数の超能力者(レベル5)を相手するのは難しいと思うが」
そうだよねー、超能力者(レベル5)そんなに相手…って、超能力者(レベル5)?
と、上条はそこまで考え、

「…んにゃろぉーっ!!絶対能力者(レベル6)相手のことしか言ってねぇじゃねぇぇかぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

アンジェレネさえも『それは無いだろ』な表情を浮かべるほどの叫び声をあげた。



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そんなコメディのような時間を送っている上条たちだが、実際には臨戦態勢(を取らなければならないはず)である。
唐突に始まった、反乱因子との戦い。いや、昨日の方が唐突だったが、今回は『殺る気』があるらしいのでこっちを扱ったほうが正しいだろう。
相手勢力は、超能力者(レベル5)と絶対能力者(レベル6)のみ。しかも、多数…とまでもいかないまでも、計8人くらいはいるらしい、との事。
そんな化け物を相手にしなければならない上条たち―――――――
なのだが。
「それはまずいですね。よし、上条当麻。アンタを生贄に捧げます」
「意味分かんないわけでもないが、とりあえず意味分んねぇから!!いきなりなんだよ生贄って!?」
「それは当然超能力者(レベル5)とか絶対能力者(レベル6)とかいう方々へのですよ」
「当然っていうな当然って!そして俺は断じて生贄なんぞになるつもりはないッ!!」
「じゃあ、か弱い女性たちが生贄になれと?上条さんはそう言うんですね??」
「ぐっ…あ、いや、ほらお前ら以外にも優秀な超能力者(レベル5)さんがいるじゃないか!!」
「ただの超能力者(レベル5)ごときが、絶対能力者(レベル6)への生贄になるとでも?」
「わけわかんねぇ。じゃぁなおさら無能力者(レベル0)の俺が相応しいわけないだろ」
『アンタのどこが無能力者(レベル0)だッ!!?』
…などなど、かなりコメディな展開に陥っている。あまり関わらないだろうと考えられた超能力者(レベル5)も、その気満々である。

630神浄の討魔=美琴信者:2010/06/14(月) 21:38:55 ID:efOSH0eU
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「…あいつラ、こんなノにやられた、っテいうのカァ?」
そんな馬鹿どもを、冷静かつ冷ややかに見つめる、一つの視線。
「…わざわざ超能力者(レベル5)なんてノが出てくる幕ジャないだロォ」
「なめてかからないほうが身のためだと思われます、聴覚潜り(ノイズキラー)。せめて無駄なことはしないように」
「精神操作(メンタルコントロール)さんの言うとおりですわね。あなたは少々おふざけが過ぎましてよ?」
「あんた…視覚潰し(ライトメーター)も、妙にお嬢様ぶってないでさっさと殺しちまえよ」
「はん。まるデ、お前ハさっさトぶち殺せる、みたいニ言うジャないカァ、触覚壊し(センサーブレイク)」
「…それ以上の討論はやめなさい。やめないものは、強制的に脳に介入しますよ」
彼らの中でのリーダー的存在である精神操作(メンタルコントロール)が一声入れ、彼ら超能力者(レベル5)は黙った。
「私たちの目的は、ただ敵の抹殺のみ。主な戦闘方法は、各自の能力、およびそのほかの者の能力を使用した上での発弾。出来るだけスマートにいきますよ」
…チッ、面白くねぇナ、という声が超能力者(レベル5)たちの間で交わされた、最後の会話だった。
これからの会話は、情報交換、及び応援要請などだ。こんな気楽な会話ではない。
「では、ただいまより各グループへの襲撃を開始します。
グループAは聴覚潜り(ノイズキラー)、グループBは視覚潰し(ライトメーター)、グループCは触覚壊し(センサーブレイク)、そしてグループDは精神操作(メンタルコントロール)が勤めます。異存は?」
精神操作(メンタルコントロール)の声以外に、交わされる言葉はない。
「では、各自各々行動を開始してください。健闘を祈ります」
その言葉を皮切りに、
強力な力を持った能力者たちが、殺人を目的に動き出した。

2

うぜェ、と単刀直入に一方通行(アクセラレータ)は感じた。
まず、ウザい要因その①。
長谷田鏡子とかいう超能力者(レベル5)がうるさい。
ウザい要因その②。
(順番がおかしい気はするが、)そもそもこんな戦いをしなければならないこと。
そして一番でかいウザい要因その③。
なンで俺が上条の後ろでコソコソやってなくちゃならねェ?
…結局、土御門に言いくるめられたものの、不満が残っている一方通行(アクセラレータ)だった。
「ってか、そんなどうだっていいこと考えてんじゃないわよ。さっさと作戦なり何なりを教えてくれないかしら?」
鏡子が、一方通行(アクセラレータ)を睨みながら言ってきた。おそらく心理掌握(メンタルアウト)を使って一方通行(アクセラレータ)の思考を読み取りでもしたのだろう。
「…調子ン乗ってンじゃねェぞ三下ァ。AIM経由でテメェの脳細胞でも破壊されてェのかァ?」
「はん。いきがるのもいい加減にしなさいよね。あんたは今電極のスイッチを入れていない。この状態で私が『電極を入れる』という思考をさせなければ、そのまんまアンタを殺すことだってできるのよ?お分かりかしら、『旧』学園都市最強さん♪」
…馬鹿が、と一方通行(アクセラレータ)は吐き捨てて鏡子との会話を打ち切った。

631とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 4章 二:2010/06/14(月) 21:42:00 ID:efOSH0eU
その程度で一方通行(アクセラレータ)がどうこうなるはずがない。
確かに、鏡子の言うとおり能力を使用することはできなくなってしまうだろう。
しかし、
一方通行(アクセラレータ)には、能力以外の『異能の力(チカラ)』がある。
あの、黒い噴射の翼。
ある程度操作にも慣れてきたので、もしかしたら意図的な発生も促せるかもしれない。
まぁ、面倒だから説明なんてしないのが一方通行(アクセラレータ)だが。
「…って、勝手に二人で話し込んでるようですが…えと、鏡子さんの言うとおりですよ?できればお早めに話してもらいたいんですが…『私たち(魔術サイド側)』としても」
と、そこで五和が一方通行(アクセラレータ)に話しかけてきた。
これ以上引きずると更にウザいことになりそうだし、話さない理由もとくにはない。
「…俺たち、Bグループは、上条たちのところに集まってきた馬鹿どもを殺せばいィらしい。もちろン、自分の敵は自分で殺る必要はある」
「殺る、ねぇ…」
五和たちと話していた…牛深とかいう男が、いやそうに言った。
「仕方ないですよ、結局、やることは科学側だろうが魔術側だろうが同じなんですから」
同じく、五和たちと話していた少年…香焼が言った。
「何なら、さっさとグループAのところに行ってサクっと殺しちゃいましょ?」
鏡子が、あっさりとかなり危ない発言をする。
…?と疑問に思う一方通行(アクセラレータ)。
彼女が、あの作戦会議…のような事を行った部屋に入ってきたときの上条に対する態度から見れば、こんなあっさりとした返答(…もちろん、一方通行(アクセラレータ)にとっての)はない、と一方通行(アクセラレータ)は思っていたのだが。
「?ああ、あれね。あんなの演技に決まってるじゃない。何で私が出会ったばっかの男を好きになんなくちゃいけないのよ」
「ああ?ンじゃ、何なンだよ、その演技っての目的はァ?」
さらに疑問を感じ、口に出す一方通行(アクセラレータ)。
「あの学園都市最強を打ち破った奴には興味がわかないはずないでしょう?まぁ、あくまで『能力者』としての興味であって、『男性』としての興味は微塵もわかなかったけどね」
なんであんなのに『あいつ』は惚れたんだろう…?と首を傾げる鏡子。
と、そこで、
鏡子は、後ろから強大な殺気を感じた。
(!?反乱因子…ッ!?)
能力をフル稼働させる準備に移ろうとする鏡子は、同時に敵を確認するために後ろを振り返った。
そして、鏡子の目に映った殺気の主とは、

632とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 4章 三:2010/06/14(月) 21:42:53 ID:efOSH0eU
「…………………………」
ひどく怨念じみた目でこちらを見つめてくる五和だった。
「…は?」
思わず間抜けな声を上げてしまう鏡子。
よく聞けば、五和は何か言葉を発していた。
(…上条さんはあんなのじゃない上条さんはあんなのじゃないそんなことを言うというならば女教皇(プリエステス)のお力を借りてでもあなたのことを打ちのめしますがかまいませんか)
というか、なんか殺人予告でもしているようだった。


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(…ふふ、青春してますわねえ)
そんな光景を、子供が無邪気に遊ぶ風景でも見つめるように、視覚潰し(ライトメーター)は見ていた。
(ですけど…あの方たちにとって、青春は、命よりも大切なんでしょうか?)
そんなことを思いながら、視覚潰し(ライトメーター)は、いかにもお嬢様らしく広がったスカートから、その姿には似合わない拳銃を取り出し、
次の瞬間、
パァァン!
と、誰がどう聞いても、何が起こったかが分かる、乾いた音が響いた。

3

まったく…と、神裂火織はため息をついた。
(先ほど構成員には話をしましたが…それでも、『反乱因子の戦力の分析、それに見合ったグループの配置、他のグループへの助太刀、反乱因子の打倒』…なんて長ったらしくて馬鹿なほど難しい任務なんかを遂行できるのでしょうか?やはり、あそこは土御門のことを殴ってでも引き受けないべきでしたか…)
やはり、と表現されてるあたりが怖い。どうやら土御門は、たまたまあの時死ななかったらしい、聖人の魔の手によって。
「まぁ、そんなに気負わずに。大丈夫ですよ」
と、そんな神裂の様子を見てか、エツァリ――――いや、なぜかみんなが海原と呼んでるから海原でいいか――――が話しかけてきた。
「…大丈夫ですよ。少なくとも、あなたたちのことは守れますから」
天草式メンバーに聞こえると、少々厄介なことになりそうだったので、神裂は少し控えめにいった。
そうですか、とにっこり笑って海原は引いた。
たいていこういうパターンは、神裂の魅力に惹かれた馬鹿な男がとる行動なのだが…彼の場合は、まったくなる厚意だろう。
土御門の話によると、彼は違う女性が気になっている…というか、ぶっちゃけ好きらしい。いや、ぶっちゃけなくてもなのだが。
と、そこで、天草式のメンバーの一人…野母崎が話しかけてきた。
「…それで、女教皇(プリエステス)。自分たちの相手…れべる5とかれべる6とかって、どんな人間なんですか?」
ほかの天草式のメンバーも、みな同様に頷いていている。
…実を言うと、神裂も頷きたい一派だった。
だからといって、素直に頷けるはずもない。あくまで神裂はリーダーなのだから。
…え、と、…と、神裂が返答に困っていると、
「まぁ、私たちの中で言えば…教皇クラスの力を持った人たちですよ」
海原が助け舟を出してくれた。
「…へぇ。教皇クラス、ですか…あまり相手にしたくはないですねぇw」
「でも、女教皇(プリエステス)がいるから、大丈夫でしょ」
天草式、初老の諫早と、数少ない女性の対馬がそういった。
…そんなものですか?と神裂は首を傾げるが、海原は特に気にも留めてないようなので、神裂も無理に納得した。
まぁ、といっても、
(…別に、無理に緊張させる必要もないですしね。場を和ませて、リラックスさせて敵に臨めればいいんじゃないでしょうか?チームワークもあがりますし)
完璧に嘘っぱちなのだが。
しかし、確かに海原の言うことにも一理ある…ような気がしないでもない。
実際のところ、超能力者(レベル5)は聖人かそれよりも上、絶対能力者(レベル6)は…もしかしたら各最高権威者――――イギリス凄教で言えばローラ=スチュアート――――並の力を持っているかもしれない。少なくとも、神の右席程度の力は所持していることだろう。

633とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 4章 四:2010/06/14(月) 21:43:59 ID:efOSH0eU


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(…妙にいい雰囲気だが…こいつら、本当に戦う気はあるのか?)
いや、無くても殺すものは殺すけどな…と、触覚壊し(センサーブレイク)は考える。
(まず一番厄介そうなのは、馬鹿でかい日本刀をぶら下げてやがる巨乳女だな…次はヘラヘラ笑ってる男か?)
そう考えながらも、触覚壊し(センサーブレイク)はベルトに挿しておいた拳銃を取り出す。
そして、ゆっくりとその銃口を神裂火織へと狙いを定め―――――

4

さて…、と土御門元春は考える。
グループについてのいろいろは、もうメンバーに語った。そして、やはりというか、あっさりというか…とりあえず、引き受けてくれたので、そちらは問題ない。
問題は、インデックスたちだった。
(こういう敵の動きを予測していなかった…俺のミスだな)
そう思い、チッ、と舌打ちする。しかし、反省ばかりしているわけにもいかない。
迅速に、かつ安全にインデックスたちを、あの建物に送り届けなければならない。
と、そこまで考えて、
自分のメンバーの中に、逸材がいるのを忘れていたことに気づいた。
その『逸材』に、土御門は話しかける。
「悪い結漂、こいつらを空間移動(テレポート)させてくれないか?」
結漂淡希は、興味無さそうに土御門の言葉を無視した。それに苦笑する。そうなるのは見えていた。
結漂淡希。
大能力者(レベル4)の空間移動者(テレポーター)。その能力名は『座標移動(ムーブポイント)』。彼女の座標移動(ムーブポイント)の場合、空間移動(テレポート)させるものを触れていなくとも、座標を指定すれば空間移動(テレポート)させることが可能なのだ。まぁ、今は普通の空間移動者(テレポーター)でも問題ないのだが。
そして、土御門元春、一方通行(アクセラレータ)、海原光貴が所属する、学園都市の暗部組織、『グループ』に彼女も所属している一員である。
さらに彼女は、『窓もないビル』の『案内人』を勤めているのだが、それらは別の話。
今は、彼女をどうやって説得させるか、だ。
「一応聞いておくが…なぜ拒む」
「こいつらがどうなろうが、私には関係ない」
どうせそんな答えだろうと思った、と土御門はまた苦笑する。行動パターンがわかりやすい人間なのだ。
しかし、やはりそういう理由ならば、協力を仰ぐのは簡単だ。
「5万」
「座標をさっさと言いなさい」
…話はまとまったようだった。


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インデックスには、あっちについてからの行動は話してある。完全記憶能力を所持している彼女から、他の者にも今回の動きを話してもらえば、ほぼ問題ない。
…はずだったのだが、白井黒子が見つからない。どうやらまだ御坂美琴のことを探しているらしい。
あいつのことだ、美琴が見つかるまでそのほかのことなんて目にも入らないだろう…土御門はそう結論付ける。そして、それは限りなく正解に近いだろう。
「…白井の役は、こいつには不適応だしな…」
結漂のほうは特に見ずに言ったのだが、結漂は土御門のことを思いっきり睨んでいた。
結漂は、過去のトラウマにより、自分の体を移動させることだけは得意としない。できないわけではないが、発動までの時間と発動後のリスクがでかすぎる。よって、何度も空間移動(テレポート)しなければならない白井の役は結漂にはできない。
「…ま、それだったら…俺がムチャクチャがんばるしかないっか」
彼にしては珍しく、他力本願ではなく自分の力で物事を解決しよう、としているようである。
「それじゃ、結漂。頼む」
何も言わず、目を閉じる結漂。
一応インデックスたちには説明した。そして、魔術サイドのインデックス以外は理解しているのだが…インデックスは信用していない。まあ、彼女の抱える物が物だから仕方ないといえるが。
「…まぁ、とりあえずだインデックス。無事に向こうについたら、他の奴らにも説明してくれ」
インデックスは頷かなかったが、おそらく大丈夫だろう。
そして、結漂が座標移動(ムーブポイント)の力を使い、彼女たちを空間移動(テレポート)させた。

634とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 4章 五:2010/06/14(月) 21:44:57 ID:efOSH0eU
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「…あの女の能力は空間移動(テレポート)…座標移動(ムーブポイント)、ですか」
厄介ですね、と精神操作(メンタルコントロール)は呟いた。
さっきから一言も発していない男…葛城妖夜の能力は、肉体変化(メタモルフォーゼ)だと分かっている。
後は、妙な服を着ているくせにあまり印象に残らない、クワガタのような髪をした男と…リーダーのようなチャラけたグラサンの男の能力が分かれば、かなりこちらに有利に進められるのだが…相手も馬鹿ではないだろう。そこまで待ってくれるとも思えない。
…すばやく、かつ確実に…と、口ずさみ、彼女はズボンのポケットから拳銃を取り出す。やはり、他の超能力者(レベル5)が取り出したものと同様のタイプだ。
(超能力者(レベル5)が一番厄介ですか…いや、座標移動(ムーブポイント)もなかなかに…)
一発目の対象を悩んでいた精神操作(メンタルコントロール)だが、そこで銃身を、
土御門に向けた。
(能力不明、さらにリーダー的存在、そしてそれに見合う行動力はある…まずは、戦術的に『柱』から壊していきますか)
そして、

5

やはり同じく、視覚潜り(ノイズキラー)も、ほかの反乱因子の超能力者(レベル5)同様、ためらうことなく銃を取り出し、その銃口に上条に向け、
一瞬もためらわず、発砲した。
もちろん、それだけで上条の生命維持能力は格段に下がるはずだった。少なくとも、ほうっておけば死ぬ程度には。
そう、
下がる『はず』だった。

ガギィィン!!
と、甲高い音が鳴る。

「ア?」
と、視覚潜り(ノイズキラー)が、上条を凝視する。人間の柔らかい肉に鉛弾が当たって、あんな音を出すはずがない。
何か起こった。
視覚潜り(ノイズキラー)を含む反乱因子たちには、上条の幻想殺し(イマジンブレイカー)の話を聞いている。よって、これハ彼ノ右手ガ起こした結果でハない…そう、視覚潜り(ノイズキラー)は考える。
まさか、防弾チョッキのグレードアップしたモンのような服でも着てるのか、とでも思ったが、
上条のほうも、原因不明の音に戸惑っている様子だった。
「…んだぁ、こりゃあ」
とりあえず、もう2,3発打ち込んでみるカ…そう結論づけた視覚潜り(ノイズキラー)は、そのまま立て続けに発砲した。
しかし、やはり甲高い音が鳴り響くだけで、上条には傷一つ付かない。
そして、こちらもやはりというべきか…上条も戸惑っている。ほかのメンバーもみな一様に戸惑っている…
…のだが。
一人、いかつい男だけが、違う『戸惑い方』を見せていた。
キョロキョロと辺りを見回して、上条たちを守るかのように、一歩前に出る。
(…アイツ、超能力者(レベル5)だったっけカア…?)
彼――――削板軍覇――――を睨みつけながら、視覚潜り(ノイズキラー)はそう思い出した。


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「…なんですか、この音…?」
アンジェレネが、少し不安そうにルチアの修道服の袖をつかみながら、上目遣いで上条に尋ねてきた。
もちろん…と言ってしまえば頼りないのだが…実際のところ、上条にも事態は理解できていなかった。
なので、なんかさっきから挙動不審な動きをしている軍覇に聞いてみることにした。
「…えと、削板軍覇…ああ、なんかだめだ仰々しい…ってことで軍覇。お前、この事態が理解できているのか?」
一応上条は高校一年生、軍覇は高校三年生なのだが…やはり肉体変化(メタモルフォーゼ)の葛城同様、彼にとってそんなものはちっぽけなことにしか思っていないだろう。特に突っかかることなく上条の問いに答えた。
「半分半分だな」
そっけない答え。もちろん、それを聞いて終わり、なんてことにはできない。
「じゃぁ、その分かってる『半分』を教えてくんねぇか?」
「もとよりそのつもりだ」
警戒を解かずに、軍覇が言った。そのとき、また甲高い音が響くが、もはや誰も気に留めていなかった。

635とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 4章 六:2010/06/14(月) 21:45:21 ID:efOSH0eU
「まず、俺が布いていた『防御』についてだが」
やはり辺りを見回しながら言う軍覇。
「俺の能力を知ってるか?」
それは、おそらく肯定の言葉を予想して言った言葉だろう。
しかし、上条はあっさりとこう言った。
「さあ?俺、半分寝てたし」
「…」
いや、別に上条は寝てもいなかったのだが…おそらく、『必要のない記憶』として、上条が強制的に眠らされたときに処理されてしまったのだろう。
くっ…、と軍覇は言いながら、自身の能力の説明を始めた。
「…俺の能力名は念動砲弾(アタッククラッシュ)といってな…念動力(テレキネシス)系の能力だ。まぁ、念動砲弾(アタッククラッシュ)はちょっと違ってな…念動力(テレキネシス)の力で、自分の前にあえて不安定な念動の壁を作り出し、それに衝撃を加え、壁を意図的に破壊。その破壊の衝撃で相手を攻撃する…らしいのだが、詳しいことは分からん」
?と上条は首をひねる。上条の幻想殺し(イマジンブレイカー)でもないのに、『詳しくは分からない』能力なんてあるのだろうか?
まぁ、なんだか聞くだけ無粋っぽかったので追求はしなかった。軍覇は続ける。
「だが、念動力(テレキネシス)の力で壁を作り出せるのは事実だ。そして、『あえて』不安定な壁を作り出せるならば、『普通に』強固な壁を作ることも可能なんだよ。俺は、その『壁』で、グループを囲んでいただけだ。攻撃されないようにな」
「…あっさり言ってるけど…実際できるのか?走りながら移動してた俺たちを囲む、なんて」
「できるさ。その『動き』にあわせて、壁も移動させればいいだけの話だ」
…やはりこのお方も超能力者(レベル5)なんですね、と上条は無理矢理に納得した。
対し、魔術サイド勢…アニェーゼたちは、元から話を聞いていなかった。理解できると思ってもいなかったのだろう…賢明な判断、とでも言うべきか?
「…で、今はその『壁』が攻撃を受けたのだが」
「…あ、そういうことなんだ」
そこまで説明されて、やっと上条は自体が理解できた。こんな調子で、彼はリーダーをまっとうできるのだろうか…
「…じゃあさ、そこから逆探みたいに、相手が攻撃してきたところを特定できないのか?」
「できる。だから今それをやっている最中だ」
「あ、悪ぃ。邪魔してたか?」
上条は謝罪の意思を表明したが、軍覇は、やはり特に気にしていなかったようだ。その言葉を無視し、逆探知のようなことに没頭している…ように見える。
と、そこにアニェーゼが首を突っ込んできた。
「…話のほとんどは理解できませんでしたが…ようは、馬鹿野郎どもが襲ってきやがった、ってことでいいんですか?」
「ん?ああ、まぁ…多分そうだろうな」
「…そうだとしたら、なぜあなたはそんなに無防備なんですか」
ルチアが、冷ややかな視線を投げかけてきながら言った。
「…言われてみれば、そうだな」
「その台詞そのものが緊張していないことを表しているぞ」
と、突然軍覇も混じってきた。逆探のようなものは終わったらしい。
結果を聞こうと上条が口を開く前に、軍覇に先に言われた。
「それで、逆探の結果なんだが…分からなかった。俺の能力不足だ、すまない」
いやいや、お前のおかげでなんか俺ら無事なんだからさ、と上条は頭を下げる軍覇に対し、慌てて手を振る。
(ってか…こいつのほうがリーダー適任じゃね?)
そんなことを思ってしまう上条だったが、今更どうにかなる問題でもなさそうだったので口には出さなかった。

636とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 4章 七:2010/06/14(月) 21:46:00 ID:efOSH0eU
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「そおいうことカよ」
視覚潜り(ノイズキラー)は、そう呟く。上条たちの会話を聞いていたのだ。
「っしかしまぁ、随分ト無防備ナもんダ。狙われてるっテ感覚、ねえのカ?」
もはや使い物にならなくなった拳銃を、横合いへと投げ捨てる。
金属と土が擦れ合う音がした。
しかし、上条たちは、そちらのほうを見向きもしない。
まぁ、当たり前だろう。そうでなければ、彼の能力が不発していることを表すことになる。
(銃声ニ気づかなかっタ時点デ、もう術中なのハ分かっていたガ…やはり、視覚潜り(ノイズキラー)ハ有効カ)
一人そう考える視覚潜り(ノイズキラー)。
そして、上条たちの下へと歩み寄る。
そして、それにさえも上条たちは気づかない。

もはや、両者の間隔は10メートルもない、というのに。

(精神操作(メンタルコントロール)、視覚潰し(ライトメーター)、触覚壊し(センサーブレイク)モちゃんト機能しテいるカ…そうデなけれバ困るけどヨ)
そう思い、…そろそろ面倒ニなっテきタシ、殺すカ…そう考える。
もともと、彼の能力のほうが、銃より高性能なのだ。銃を使ったのは、あくまで能力を『隠し玉』にしておくためだけだ。そして、今がその『隠し玉』を使わなければいけない時、というだけの話だ。
「まずハあの超能力者(レベル5)ヲ殺る…」
能力使用のため、声を出す。
そして、大きく息を吸い、

「よおバカ野郎、死ねヨ」

そう、誰にも聞こえない程度の声量で言った。
そして、次の瞬間、


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ドッッッッッザッァァァァァァァァァァァァッッッ!!!!!!
轟音が、すべての者の耳を穿つ。
上条は、反射的に両耳を潰さんばかりの勢いで、手で耳を塞ぐ。
おそらく、軍覇が壁を張ってくれていなければ、最初の一瞬だけで上条たちの鼓膜はズタズタになっていたことだろう。何せ、耳を塞いだ今でも大量の轟音が流れ込んできている。もはや『音』だけのせいで、上条は脳が潰れるか、と思った。
どうにかして状況を把握しようと、無理矢理首を動かして回りを確認する上条。
そして、ほかの面々も必死に耳を押さえていることがわかり、とりあえずほっとする。気絶したりはしていないようだ。
そして、今度は前を向く。
音の元凶を確認するた