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とあるSSの禁書目録 PART3
1■■■■:2007/08/10(金) 21:00:15 ID:3FhuQoDw
ここは「とある魔術の禁書目録」のSSを書いたり読んだり原作の予想外の展開にテンパってみたりするスレッドです。
次スレは余裕を持って>>970くらいの人にお願いします。
注1)ネタバレは本スレ同様公式発売日の0時から。
注2)基本マターリ進行で。特に作品及び職人への不当な文句と思われる発言は厳禁。
注3)職人さんは随時募集中。ジャンルは無制限。IF物、クロスオーバー、嘘予告、TSからBLまでもうどんとこい!(やっぱ流れも考えて)
注4)地球がリングだ!


とある魔術の禁書目録 Index SS自作スレまとめ
ttp://www12.atwiki.jp/index-index/pages/284.html

2■■■■:2007/08/13(月) 12:41:19 ID:1x8Bx842
禁書風味考察より抜粋。書き手諸氏は参考程度にどうぞ。

・原作は基本、当麻視点三人称文体。
・地の文では基本的に日本人は名字、それ以外は名前。
 名字の重なる連中は名前。メインが名字でそれ以外名前ってパターンも有。
 ex)土御門/舞夏、美琴/御坂妹/美鈴
 基本が当麻視点だからそうなってるっぽいので、オリキャラ主人公などの場合はこの限りではない。
・地の文でも時折くだけた表現が用いられる。
 ex)〜のような→〜っぽい
・擬音語は単体で使わない。文の一部に。
 ex)バギン!!という破砕音で、上条は右手が何かを破壊(ころ)したことに気が付いた。
・霊装、能力名等の強調部は二重鉤括弧『』がつく。電話とかで会話が『』の場合は鉤括弧「」。
・オリキャラ有の場合は程よく妙な名前及び口調が要ると思われます。口調は文に表さず地の文で補足するのも有り。
 ex)コピー用紙をそのまま吐き出すかのような口調
・カタカナ名前の繋ぎは等号=。

・禁書っぽいルビ。固有名詞以外の部分にも有るとなお禁書風味。ここらへんはセンス任せかな?
・ルビ部分は平仮名、片仮名、英字のみにするとルビっぽい。
・尚、能力や霊装の名称は「漢字四字+ルビ」。幻想殺しは正体不明なので除外、吸血殺しも同類?

・地の文でのキャラの呼称。名前以外で特定人物を示す表現が多用されているのも禁書味。
 ex)銀髪シスター、ツインテール、ビリビリ
・また、各人物間の呼称や、特定人物の口調・呼称は結構注意点かも。特に一方通行やインデックスはWikiを参考にするヨロシ。
・人物の外見に関する描写は詳しい部類に入ると思う。尤も、魔術側に関しては服装に意味があるからだろうけど。
・所々に近未来アイテム有。魔術関連は元になる伝承があると禁書感up。
・各章サブタイトルは英題付き。英単語間の半角スペースは半角アンダーバー_で。巻ごとの統一性はあったりなかったり。
 ex)統一有:一巻及び三〜七巻 ex)第一章 黒の騎士団 Lelouch_of_the_Rebellion

・俺は最初からクライマックスだぜ!  訳)一文目が大事です。

以下は推奨事項。
・傍点は範囲を引用符“”で閉じて代用すると良いかも?
・ルビは振りにくいので括弧()で。
・沈黙や間は三点リーダ…で。中黒・の連続だと字数嵩むし隙間開くし見目麗しくないですよ。
・ダッシュ―は2つ以上重ねるべし。

重ねますが、これらは「文章をこんな感じにすると手っ取り早く禁書っぽいヨ」という趣旨なので、そこんところ注意して下さいな。

3■■■■:2007/08/16(木) 22:07:26 ID:Wj6oZ6Gg
とりあえず前スレ埋まったな
ついでに>>1乙

4■■■■:2007/08/17(金) 00:17:42 ID:IKs.LpTA
「(……この>>1は住人さんのお知り合いですか。なんというか、その、とっても個性的なスレ立てですけど)」
「(……世の中には>>1乙という言葉があります。あれにはきっと禁書板に伝わる重要な意味があるんですよ)」

5■■■■:2007/08/19(日) 00:55:41 ID:xD524dnQ
>>1>>1乙の十字架を背負う」

6■■■■:2007/08/19(日) 15:04:57 ID:uVsDQOn.
ぶっちゃけ、誰も出さないから、出しにくいってあるよね

7とある嘘14巻:2007/08/19(日) 23:44:47 ID:06zVx2M6
今後ちょっとづつ書いていこうかと思うんですが。
今考えてるキャラだけキャラ説明を書きますね。
設定的に突込みとかいれてください。

柊終(ひいらぎ おわり)
レベル5『停止命令(プリーズフリーズ)』能力者。
年齢 15才。中学三年生。腰に届く青髪、地面につくような長いリボン。
突然上条当麻の家に居座り、上条及び禁書目録を守るといい始める少女。
現在学園都市第一位の少女。
触れた能力を消滅させたり、魔術を消滅させたりする能力で、上条当麻の幻想殺しに似通っている。
ただし、彼女が消すことのできるものは能力だけではなく、実在する火炎や質量を持つ岩なども消すことができる。
すべてを面倒だと言いながら、自分を切り捨ててまで上条を守りつづける。
家事全般が得意で、笑顔が恐い。
「しょうがありませんね、面倒ですが」

ジョルジャ・デ・キリコ
ローマ正教の刺客 得意魔術は人形を使う『人形芝居(パペットショウ)』。
年齢 21才。顔を隠すような前髪。髪の毛自体はショートカット。
ローマ正教の命を受けて上条を狙う刺客。性格は内気で人形がいなければ話すことができない。ただし言葉自体は悪辣。
各国の人形をもちあるいており、彼女のリュックサックの中は完全に人形で埋まっている。
押しに弱く、強く言われると従いそうになる。
「えっと、その、しんでくださ……え、あ、はい、すいません」

8■■■■:2007/08/19(日) 23:52:57 ID:WhuWz0jg
オリキャラは本終えん見ないと何ともいえないのだけども、
残り二人分しかないレベル5を使うのはアウト。
実際出てきた時に対処のしようがない。
というか、その能力だとまずオリキャラTUEEEEEEになりそうで怖い。

9■■■■:2007/08/20(月) 00:26:34 ID:zOaHxJhk
てかレベル5の人、一方に勝っちゃいそうだ

10■■■■:2007/08/20(月) 00:35:55 ID:Is48ZAb6
ん〜、こういう方向性の物が書きたいのなら理想郷はどうよ?

11とある嘘14巻:2007/08/20(月) 06:42:39 ID:dLEZQ4GE
んー、難しいですね。
一応オリキャラは全盛の一方さんよりは弱く、御坂さんよりは強いという設定なのですが、
確かに本編キャラより目立つといけませんね…。
能力は一応の出来ることを書いて、本質(ネタバレ)な部分を隠しているので、そこをうまく書きたいのですが、ちょっと考えて見ますね。
あと、すいませんが…えっとレベル5ってすでに5人でてましたっけ?
御坂と一方と常盤の思念操作の誰かしか出てきてないような気がするのですが…

12■■■■:2007/08/20(月) 06:48:52 ID:Is48ZAb6
>>11
三人しか出ていないからこそ、本編で出たときに困るぞてめぇが、と>>8は仰っているのですよ?
あーゆーおーけー?

13■■■■:2007/08/20(月) 12:25:12 ID:IW3e/5HQ
というか能力的にも学園都市第〜位とかのトップに立ちそうだしなー。
オリキャラレベル5を作品に出すのは殆んどタブー状態だぜ。

強すぎても弱すぎても、ましてや普通過ぎても色々批判が来るだろう。

14とある嘘14巻:2007/08/20(月) 13:53:49 ID:dLEZQ4GE
なるほど…了解です。
んー、色々考えつつ設定考えて見ますね
あと、聞きたかったのは>>8さんがレベル5が残り二人と仰られていたことだったんですが…。
出すとしたらどの程度の強さがいいですかね?
もしくは強さとは別に特殊な能力の持ち主だったりしたほうがいいのでしょうか?

15とある嘘14巻:2007/08/20(月) 13:55:23 ID:dLEZQ4GE
あ、レベル5ということではなく、オリキャラを出すならとお考えください

16■■■■:2007/08/20(月) 15:07:13 ID:.uZVi6RU
>>14
>>8だが二人ってのはレベル5の人数忘れて5人だと思い込んでたんだorz
本編で出てないのはあと4人だった。

別にレベル4以下ならレベル相当の能力持たせればいいと思う。
あとは本編見ないと何とも言えないのは相変わらず。
オリキャラの絡ませ方とか立ち回りとかキャラ付けとかは実際動いてるのを見ないと。

1701-641:2007/08/20(月) 18:39:08 ID:adNt1E2k
どうもこんにちは。お久しぶり。初めまして。01-641 です。
新スレに移行してからなかなか作品が投下されていないので、以前投下していた社会見学モノを投下してみたいと思います。
様子見がてらに量は少ないですが、とりあえずどうぞー。

18とある授業の社会見学 第二章-2 1/2:2007/08/20(月) 18:41:53 ID:adNt1E2k
                           ◇                        ◇ 


 上条たちが集合場所となっていた会場を出て別の目的地に向かっているように、他の多くの学生達が移動しているのには訳がある。
 学園都市内外にある様々な企業、研究機関などを集め、その研究内容を展示し、それを観覧させる事によって自分達が生活してい
る学園都市、並びに 『外』 の環境などに触れさせるための『社会見学祭』ではあるが、さすがにそれら全てを一つの箇所に集めるの
は到底不可能といえる。
 さらに、業種や研究内容によっては会場として用意された建物の中に展示する事自体が無理な場合もある。
 その為大抵の場合、用意されている会場には簡単な展示用のブースを用意して、そこでどんな内容なのかを見てもらい、興味を持っ
た学生たちが自分たちのところに来てもらう、という方法を取っている所が多い。
 つまり、各学区ごとに数箇所用意されている会場は大きな見本市のようなものと言えるかもしれない。
 そして、それを見学する学生のほうにも様々な見学方法がある。
 幼年児や小学校低学年などの低年齢児には、それぞれの学校が学年ごとにあらかじめ見学させる企業や研究機関などを選んで最
初からそちらに行っているために、会場のほうにわざわざ来ることはあまり無い。
 比較的年齢が上がった中学生などでは、前もって幾つかの企業・研究内容を知らせておいたものの中からクラスごとに選ばせて見
学させるために、やはり、会場に足を運ぶことはあまり無い。
 ただし、学校によってはあえて会場に行ってそこで見てから判断させるという方式を取っているところもある。

 ちなみに、過去に学園都市内で行われた社会見学際において見学させる場所を学校側が事前に決定していた例としては、
「学園都市西部に残っている丘陵地帯を利用した高山植物の生態研究」を行っている研究機関。
「広大な敷地内に埋め込んだ特殊複合板水槽内で飼育している大型海洋生物の生態研究」を行っている研究機関。
「学園都市内で消費される食物生産ライン」を管理している研究機関。
 などがある。
 この内、丘陵地帯を利用している研究機関では、敷地となっている場所が用途上人の立ち入りが制限されていることもあり、まるで
ハイキングに来たかのような体験が出来る為、学校の施設内とはまた違う感性を得ることによる能力向上に繋がる事も期待されてい
るようである。
 また、特殊複合板水槽内では、おそらくは世界でここだけでだろうとも言われているシロナガスクジラの飼育が行われており、その姿
を見るのはそこいらにある水族館を見に行くよりも遥かに興奮する為に競争率の高い見学場所ともなっている。
 もっとも、学園都市に幼い頃から生活している生徒達は、大半が『外』においての水族館等を見たことは無い為に施設自体の希少性
といったものには関係なく、純粋にそこで飼育されている生命の姿を見ているようではある。
(もちろん、学園都市にある以上単に水族館として終わる事はなく、飼育にあたって培われてきた技術、例えば水槽内に蓄えられてい
る大量の水による超高水圧に耐えうる特殊複合板や、水槽内の水を浄化するシステム、そしてそこに水槽を埋めるために行われた新
しい掘削工事の方法等は様々な方面に転用できるものとしても注目されている)

19とある授業の社会見学 第二章-2 2/3:2007/08/20(月) 18:43:19 ID:adNt1E2k
 なお、食物生産ラインについてであるが、クローン食肉が管理されている牧場ビルを見学することは過去に理論ばかりを追求するよ
うな典型的なエリート校がよく調べもせずに見学を申し込んだため、その内部で管理、培養されている食肉の様子を見た生徒の多くが
トラウマにより精神に問題を抱え、結果能力開発に多大な損害を出したことがある為禁止されてしまっている。
 まあ、実際一面に広がる培養層に浮かぶ食肉の様子を嬉々として眺めるような生徒がいれば、それはそれで大いに情操面で問題
があるかもしれないのだが、学園都市側としてはあくまで結果を重視するために能力開発で問題となる事が無ければ見学禁止の措置
は取られなかったのではないか、とも言われているのだが。
(もちろんこれは事前の調査を怠った学校側の配慮の欠如が引き起こしたものであり、むしろ学園都市の食事情においては非常に重
要な施設であるのに不遇の目にあっている管理側は毎年不満が募っている)
 野菜の人工栽培を行っている農業ビルについては問題ない為に見学者を受け入れているが、一面に広がる水耕栽培の様子は変化
に乏しい地味なものでもあるために、年々見学申し込みの数が減ってきているようでもある。
 どちらも学園都市にとっては重要な施設ではあるのだが、今一つ人が集まらないために他の研究機関からは低く見られがちになって
いる。
 閑話休題(それはさておき)……。

  土御門たちと歩き続けていた上条だが、ふと違和感のようなものを覚えた。
 具体的に何がどう、という訳ではないのだが、何となくいつもの学園都市の雰囲気とは違うとでもいうのか空気が違うとでもいうのか。
 ともあれ、意識の端に浮かんだその感覚が何なのか明確な形になろうとする前に前を歩く土御門が隣の青髪ピアスに話しかける。
「しっかしあれだにゃー。やっぱしこうやって歩き回ってるのはウチらみたいな学年の生徒や『外』からのお客さんが殆どで、小さい子らは殆ど見かけんもんだぜい」
「?」
 そんな土御門に対して青髪ピアスはなにやら勝ち誇ったような感じで答える。
「はっはっは! 何ゆうてんねん。この程度の難易度、どうってことあらへんでー。むむ、告げる、告げるでー、ボクのアンテナがあっちやって言うとる。ほれ! あそこにおったでー!」
 得意満面な顔で指差す先には5、6人ほどであろうか、中学生らしき生徒たちが一つのグループになって歩いている。 様子を見ていると、どうやら班長らしき生徒の指示のもと、一生懸命にメモを取りながら見て回っているようである。
「んー初々しいやないの。こう、いかにも自分たちで決めて行動するんだー、って気合が入った感じが出てるところなんかイイやない? 特にあの班長さんの女の子なんかは『自分が責任を持ってみんなを連れて行かなきゃ!』ってな意気込みが見えてるところなんかポイントが高そうやでー」
「いいからお前は少し黙れ」
 途中から何だか暴走しだした青髪ピアスはとりあえず放っておくとして、話題に出たそのグループを目で追っていく。
(あーほんとだ。こうして見てると確かにちょっと緊張しながら歩いてる感じがするのがわかるなぁ。それにあの班長さんらしき子も責任
感強そうだしなぁ。張り切ってみんなをまとめようとするところなんかウチのクラスの吹寄みたいだし、きっと苦労するんだろうなー。まぁ
無理もないだろなー、周りは殆ど大人や高校生とかの年の大きい生徒たちばっかだもんなー。――――……って)

「あれ?」

 思わず声に出してしまう。

20とある授業の社会見学 第二章-2 3/3:2007/08/20(月) 18:44:29 ID:adNt1E2k
 前を行く二人からはまたしても何事かと怪訝な目を向けられたため、慌てて「何でもない」と答えておいたが、今さっき自分が考えていた事がどうも引っかかる。
 考え込む上条をよそに、土御門が続けていく。
「それにしてもあの子らも大変そうだぜい。大方いくつかの候補の中から見学する所を選ぶんだろうけど、それでも自分たちで判断しないといけないだろうしなー。ふむ、自由度と選択肢が限られてはいるけどある程度予定が決められている安心プランと、自由度はあるけど自分たちで選択していかないといけない判断力と行動力画求められるプランかー。どっちがいいもんかにゃー?」
「あっはー! そんなん決まっとるやん! せっかくこんな面白そうなモンがそこいらにあるんやからいろいろ見て回れる方が楽しいんやで。……って、待てよ、それともここは敢えて周りが自分たちよりも年上ばかりで慣れていない学区を歩き回らないといかんっちゅー設定を生かして、優しそうな年上のお姉さんに親切にしてもらえる方を選んだほうが正解なのか?! なあなあカミやんはどっちの方がええと思うー?」
 そんな二人の会話から、上条がさっきから感じていた違和感のようなものが何だったのかが分かった気がした。
 『歩き回ってるのはウチらみたいな学年の生徒や『外』からのお客さんが殆どで、小さい子らは殆ど見かけない』『周りは殆ど大人や高校生とかの年の大きい生徒たちばっかり』という状況、つまり、今この通りでは年齢の低い生徒などは注目されやすい、ということに
なる。
(あれ? 何だか分かんないけど、嫌な予感がするのは何ででせう……?)
 普段は対不幸レーダーなるものの効果はあって無きが如しであるはずなのに、この背筋にゾクゾクときている予感めいたモノは一
体何なのか?
 上条がそれでも一応注意を払いつつ見回していると、ふと、右手の方向に小さな人だかりが出来ているのが見えた。
(何だろうあれ……)
 前を行く青髪ピアスと土御門は何やら『年下を優しく教えるのがイイ』という意見と『年上に優しく教えてもらうのがイイ』という意見を激
しく闘わせており、上条の見ているモノに気付いた様子は無い。
 上条が眺めていると、その人だかりはどうやら外部から来た人間が多くその輪に入っているようである。
 それも、少人数が数人が作っている輪から一人が抜け出すと暫くは人が加わらないのだが、やがて何かに気付いたような顔をした大人がそこに寄って行くようである。
 しかも輪から抜け出てくる大人は外国人が多く、皆が皆、先程吹寄が持っていた『案内パンフレット』とやらを広げながら歩いていく。
(パンフレットを持ってるってことは何か目的地があったんだろうけど、何であすこに固まってるんだ? どうも目的地は別っぽいし、何があったんだろなー)
 まず人垣の隙間から僅かに見えた背格好からして、どうやら小さな学生のようだった。
 いや、学生『達』と言った方がいいか。少なくとも二人いるようだからだ。
 そして、一人はどうやら中学生のよう、もう一人はそれよりもさらに幼いようだった。
 さらに、時折隙間から見える中に、銀色の光があった。
(…………銀色?)
 何か心当たりがあるような気もするが、思い当たる節はとりあえず、無い。
 自分のよく知る人物は、もっと違う格好をしているからだ。
 人の輪がさらに少なくなったときに見えたのは、ここ学園都市においてもあまり目にすることの無い制服であった。
 それは、人に仕える立場の人間が着る為の制服だった。
 始めは、その制服が珍しい為に人が寄っているのかとも思ったが、どうも違うようだ。
 どうも様子を見ると、輪の中心にいる人間と一言二言話をして立ち去っているようである。
 そうこうするうちに『ソレ』を取り巻く人だかりが少なくなったとき、上条は驚愕の光景を眼にすることになる。

 「ぶっ!!?」

 『ソレ』を見た瞬間、思わず吹いた。
 まず最初に目に入ったのは、前を行く土御門元春の義妹である舞夏の姿であった。
 次に目に飛び込んできたのは、銀色の髪のメイド服の少女だった。
 あれ、何か見覚えがあるよーな? と思ってよくよく見ると、

 イ ン デ ッ ク ス が メ イ ド 服 を 着 て 周 り の 大 人 達 と 話 し て い た 。

2101-641:2007/08/20(月) 18:45:16 ID:adNt1E2k
とりあえず今回はここまで。
このスレに職人さんたちが戻ってきて本格稼動するまでの間の代行みたいな感じでやらせてもらいますよ?
あと、以前の投下と比べて一行毎の文字数や一レス分の桁数をだいぶ変えてみました。
見やすい作品にしたいと思っているので前のスタイルの方がいいのか、現状のほうがいいか意見下さい。
それではではー。

22■■■■:2007/08/20(月) 18:50:21 ID:Is48ZAb6
GJ!!!
どうなる、どうなる!?

改行等については、自分はこちらの方が見やすいです。はい

23ごめんなさい 01-641:2007/08/20(月) 19:49:48 ID:adNt1E2k
偉そうな事を言っておきながらこの体たらく………。
しかも気付いたのが一時間以上経ってからってどういうことよ………orz

改行についてですが、なんかぐちゃぐちゃになってて余計に読みにくいと思います。
どうもコピペで失敗してたようです。
分かりにくくなったのでこちらから選択肢を出しときます。

1.1/3のレスにある文字数あたりで改行していく。
2.もう少し文字数を少なくして改行していく。







3.………2/3、3/3に混ざってしまってるけど、もう改行しないほうがすっきりして良くなくね?

意見の多い形式にこれからは統一したいと思います。
では、今度こそ本当に失礼をば。

24■■■■:2007/08/22(水) 00:20:35 ID:TFQ91Pbk
10分スレがなかったらビリビリは俺の嫁

25■■■■:2007/08/22(水) 00:23:42 ID:TFQ91Pbk
阻止

26■■■■:2007/08/23(木) 18:28:55 ID:I5BjQlwk
暇なのでねーちんとデートにいってきますね

27■■■■:2007/08/24(金) 00:24:09 ID:tZhlOdQk
それも阻止

28■■■■:2007/08/24(金) 00:37:01 ID:tTxpNh1s
そーいうのは本スレでやってくださいねー?

29■■■■:2007/08/25(土) 11:14:02 ID:NhHVsxyM
SS書いてみたんだけど
投下するなら全部書き終わってからのほうがいいのかな?

30■■■■:2007/08/25(土) 23:45:56 ID:utx/QXi6
できれば書き終わってからがいいのかもしれないけど長編だったりある程度
纏まった量があれば途中でもいいのでは?

31■■■■:2007/08/26(日) 18:38:27 ID:8Cd1jcPI
>>29
とりあえず早く投下してくれ

てか>>24>>25は自作自演

32■■■■:2007/09/04(火) 19:59:16 ID:8pwOrUCg
またえらく過疎ってんな……。

33■■■■:2007/09/05(水) 17:51:43 ID:HHtfmQEY
だれか投下してくれー

34■■■■:2007/09/05(水) 19:52:41 ID:pMzXeP2Y
何なんだこの過疎っぷりは・・・

35su-i:2007/09/06(木) 22:01:14 ID:osjgkvD2
今まで楽しく読ませてもらっていましたが、書き込みの場所は今始めてしりましたw

36nya:2007/09/07(金) 14:43:25 ID:FZnHo2aQ
誰もいないんですかーーー?

37とある忘却の再認識 Prologue(予告):2007/09/07(金) 21:26:41 ID:UZbPW07s
 退院当日、彼はインデックス、というおよそ人につけられるようなモノとは思えない名前を持つ少女が『上条当麻』の住居に居候していることを知った。ここは学園都市であるからして『上条当麻』は高確率で男子寮に居住していたはずなのだが。
 『上条当麻』は、どうしてそんな状況に陥ったのだろうか。
 そんな彼の疑問が顔に出ていたのだろうか。横にいるインデックスが、心配そうな顔でこちらを覗き込む。
「とうま?」
 その口から出てきた言葉に、彼は再認識する。
 ――自分の名前は、『上条当麻』、なのだと。
 次の瞬間、螺子を巻くイメージで、彼――上条当麻は『上条当麻』になった。

 上条当麻は記憶喪失である。人物、学園都市内の地理などの情報を含む自らの記憶の一切をとある事情により忘却した。
 知らないコトばかり。知らないモノばかり。
 ただ、インデックスが泣くのは哀しい、と何故か思えたから。
 上条当麻は形骸となった自分に中身を注ぎ、『上条当麻』になりきることにした。
 結果、インデックスは未だに笑顔を振りまいている。
 そのこと自体は歓迎すべきことだ。上条当麻は自身の偽りから生まれたそれを何の迷いもなく許容する。
(――だけど)
 上条当麻は時折思う。
 目覚めた頃から、その疑問は常について回った。
 即ち――自分は本当に上条当麻なのだろうか、と。

 記憶がない。
 最初は、生活に不便が出るだけだ、何とかやっていける、などと上条は思っていた。
 違った。
 ガランドウだった。何もかも、知識として知っているだけ。だから何もかもがあやふやで、上条には自分というモノが、酷く薄っぺらく感じられた。
 そんな過酷な状況の中、感情の揺れ動きを、上条は確実に制御しなければならなかった。
 『上条当麻』と大きな齟齬があってはならないから。

 上条は朝早く起きて郵便物の束を取りに行く。
 それらは全て、転入の案内書。
 これほど学園があれば、無能力者でも受け入れてくれるところがあるのではなかろうか。
 夏休みが終われば学校が始まってしまう。そうなれば流石に月詠先生にも誤魔化しきれなくなってしまうだろう。
 ――だから、その前に人間関係をリセットする。

 今日も上条は螺子を巻く。『上条当麻』に成るために。
 それは間違った行動ではないはずだ。
 過去の自分を追っているだけのこと。
 上条もまた『上条当麻』なのだから。そうであるはずなのだから。
 偶に、上条はどうしようもなく泣きたくなるときがある。そんなとき、上条は誰もいない所へ行くのだ。
 『上条当麻』の知り合いが、誰もいない所へ。

38とある忘却の再認識:2007/09/07(金) 21:30:36 ID:UZbPW07s
>>37
駄文すみません。
今までずっとROMってましたが、過疎ってきたので場繋ぎ程度に投下。
上条がもしも記憶喪失のことを真面目に悩んでいたら、というIf。
暇があれば感想を。続けるかどうかは反響と今後の過疎具合で。

39■■■■:2007/09/07(金) 22:05:23 ID:Vt/dV2.M
たのむ!
面白そうだ!!

40とある忘却の再認識:2007/09/07(金) 23:33:02 ID:UZbPW07s
>>37
……早くもミス発見。
つい一人称小説のノリで地の文に月詠先生とか書いてしまった。
この場合は担任教師に置き換えですかね。

41■■■■:2007/09/08(土) 01:37:09 ID:WGyiJ9tc
>>37
HandSを連想したのは俺だけでいい
それはともかく続きに期待

42■■■■:2007/09/08(土) 07:08:59 ID:JHl02WvU
これはwktk
期待してるぜ

43■■■■:2007/09/08(土) 11:47:48 ID:LA76Xh52
>>38
>月詠先生
文体は三人称でも視点は一人称だし、何れにしろ「記憶を失ってる」当麻ならその表記でも問題なしかと。
待ってまっせー。

44とある忘却の再認識:2007/09/08(土) 14:28:09 ID:9InylC4Q
 ――存外、『上条当麻』の行動半径は広かったらしい。
 薄暗い路地裏に腰を下ろし、目を瞑ってじっとしていた上条は、軽く溜息をついた。
 見上げれば、そこには学生のモノとは思えないような過剰な武装をした、俗に不良と呼ばれる人々が、酷く嫌な笑みを浮かべていた。
 彼らは何事かを喚いている。呆としていたのではっきりとは聞き取れなかったが、どうも『上条当麻』の知り合いらしい。
(――さて、どうしたものか)
 虚飾も装飾もない“記憶喪失の上条当麻”は思考回路を稼動する。
 人数は五人。残された時間はそう多くはない。あと数秒もすれば攻撃が始まるのではないだろうか。
 流石に銃器はないが、よく観察すれば服の下に何かを着込んでいるようだ。
 ――決定。
 イメージは発条。上条当麻は起き上がり――跳ね上がり、“二番目”に隙が多い部分を突破する。
 走る。この肉体は平均と比べて持久力に優れている、と改めて認識。
 奔る。何故だろう、追ってくる様子がない。
 そう疑問に思って、少しスピードが落ちたのが拙かったのだろう。次の瞬間、ズン、という嫌な音と共に上条の脇腹に鈍い衝撃が奔った。
 息が詰まる。足が縺れて転んだ。
 あとは――もう、済し崩しにやられるだけだった。

 ――目を閉じたまま、目が醒めた。
 恐らく衝撃の正体は投石だったのだろう、と上条当麻は他人事のように推察する。
 着込まれていたのは対衝撃のチョッキではなく、パワードスーツの類だった、というただそれだけのコト。
 ――それだけのコトで、人は容易く死にかける、と。
 『上条当麻』の能力は『幻想殺し』という、異能を無効化するモノらしい。炎の魔術師とやらからの手紙の六枚目に、そのようなことが書かれていた。
(やれやれ。そんなチカラ、今みたいなときには何の役にも立たないだろうに)
 ――だというのに、何故、上条当麻は不良集団と敵対していたのだろう。
 その答えが、今後頭部に感じる暖かさにあるのだろうか、と上条はゆっくりと目を開けた。
 視界に映るは茶色の短髪。体型と骨格から推察すると、女子中学生だろうか。
 こちらが目を醒ましたのには気づいていないらしく、彼女は溜息をついて呟く。
「ったく、何やってんのよ、本当に」
 ――存外、『上条当麻』の行動半径は広かったらしい。

45とある忘却の再認識:2007/09/08(土) 14:32:11 ID:9InylC4Q
>>44
短文すみません。
とりあえず、上条が不良に襲われてみたり。
一巻で御坂美琴やられてしまった不良達が逆襲図ったり。
この短さですが、更新は早めにやっていこうかと思います。

46nya:2007/09/08(土) 15:11:29 ID:2mXIgoeI
御坂フラグ?

47とある忘却の再認識:2007/09/08(土) 17:27:55 ID:9InylC4Q
 太腿の温度を感じながら上条当麻はふと思う。
 ――もしも、この場で自分が記憶喪失であることを告げたら?
 それはとても魅力的な選択肢であったが、同時に、選ぶわけには行かないものだった。
 何が原因でインデックスにバレるか分かったものではないから。
 現状、切り抜ける為にはどうするべきか。
 ひとしきり考えたが、浮かばない。
 だから――そう、単純に。
「って、アンタ何逃げ出してんの!? 待ちなさいっ!」
 上条当麻は逃げ出した。

 後方から驚いたような声が聞こえるが、この場合はやはり無視すべきだ。
 路地裏はもう危ないので、大通りへと走り出す。
 そろそろ昼食を摂るべき時間だが、インデックスには補習だと言ってある。食べ物も置いてあるので、家から抜け出すことはないだろう。
 上条はとにかく走る。後ろでバチバチと何やら不吉な音が聞こえるが、上条はそれでも走った。
 必死になるのはいいコトだ。余計なコトを考えなくてすむからきっと本来の『上条当麻』に近づいているだろうし、状況が切迫していれば多少性格が違っていても見咎められることもない。

 ――大通りに出た。他人も多いので、攻撃はないだろう。
 軽く、息を吐く。
 先程の彼女は敵だったのだろうか、味方だったのだろうか。
 振り向いてみれば、目を疑うほどの傷痕が、コンクリートの壁面に残されていた。
 死ぬかと思った。

 ――雑踏の中はあまり好きではないが、結局の所、この中に紛れるコトが、一番簡単な独りになる方法なのかもしれない。
 疲労を感じながら上条は歩く。服の裾は焦げていた。
 空腹。財布を開くと、そこにはあまりにも頼りない額が申し訳程度に入っていた。
 体中の様々な部位が、思い出したかのように痛みを訴えはじめる。
(何をするにもまず休憩が必要か)
 自身の悲惨な現状に自嘲しつつ、上条はさしあたって経済的な負担が少ないファーストフード店へと歩き出した。


 案の定、着いた先はほぼ満席といっていい状態だった。
 いい加減体力も限界が近づいてきていたので、店員にどうすればいいか訊いた。
 目つきが悪くなっていたのだろうか。店員は軽く怯えたような顔で窓際の一角を指差した。
 相席をしろ、ということだろう。幸い、あちらも独りだ。特に不都合は出ないだろう、恐らく。
 知り合いだったときが面倒だが、そのときはそのときで上手く誤魔化すしかない。
 ハンバーガーと飲み物を注文して、そのテーブルへと向かった。
 強面の男だったりしたら気まずいだろうな、と思いながらそこにいる人物に目を向けた。
 ――巫女だった。

48とある忘却の再認識:2007/09/08(土) 17:30:36 ID:9InylC4Q
時期としては二巻です。
どこまで原作の流れに沿わせるか迷ってますけど。
あと、三巻の前に御坂にあってますけど、所詮はIfなので見逃してください。

49■■■■:2007/09/08(土) 21:19:02 ID:Wy5RuE2w
いやいや、話の流れ的には一応矛盾してませんよ。
巫女以外は

50とある忘却の再認識:2007/09/08(土) 21:23:58 ID:9InylC4Q
え、でも三巻の記述からだと記憶喪失のあとであったのはアレが最初でしょう?
まぁどのみち此処から狂いまくるんですが

51■■■■:2007/09/09(日) 09:02:03 ID:p2SwyQTU
名前も聞いてなかったしいいんじゃないですか?
ついでに最初っからいきなり切れたのもこれが原因ってことにすれば

52とある九月の重陽演義:2007/09/09(日) 23:16:54 ID:GOyvC8nw
 9月。
 夏の間、恵みとなっていた日差しも少しずつ短くなっている今日この頃、人通りの無い道路を一人の少女が歩いていた。
 時刻は午前……というよりも早朝の4時過ぎ、もう少しすればウォーキングなどに勤しむ人の姿もちらほら見かけるようになるだろうが、さすがに
このような時間帯では見かけることは無い。
 あまり一人身で出歩きたくなるような雰囲気ではない筈なのだが、歩いている少女は上機嫌である。
 こみ上げてくる笑みを抑えようとしているが失敗しているために口元には笑みが浮かび、足取りは実に軽やかである。
 手に持つのはキャスター付きの大き目のトラベルバッグ。それをガロガロと引きながら一路目指すはパディントン駅。
 歩きながらチラ、と横にある鞄を見る。正確にはその中に入っている物を。
 思えば苦労の連続だった。
 まず、目的のために必要なものを調べ上げることから始まった。
 そして、それを手に入れるためにさらに多くの下準備が必要とされた。
 無論、ここまで来れたのは自分一人の力だけではない。
 自分の願いのため、多くの仲間が走り回ってくれた。
 人から見れば、取るに足りない願いと一蹴されてもおかしくないそれのために、一丸となって……。
 ならば、その想いに応えるためにも自分は必ず、この計画を成功させよう。
 そう思い、決意も新たに歩む少女に対し、声が掛かる。

「……どこへ行くつもりですか、五和?」

 その声に、ビクリと体を震わせる五和と呼ばれた少女。
 歩みを止めた体をぎちぎちと音が出そうなくらいに強張らせながら振り返ると、そこには予想していたとおりの姿があった。
「プ、女教皇(プリエステス)様………」
 洩れ出た言葉に対して、返ってくる言葉は素っ気無いものであった。
「ですから、わたしはもはや天草式を抜けた身だと言った筈です。そのような称号で呼ぶのはもうやめなさい」
 元天草式十字凄教女教皇、神裂火織はそう言いながら、五和に近づいてくる。
「ふむ。なにやらこれと同じような遣り取りを以前したような覚えがあるのですが、あなたは覚えていますか?」
 呼びかけは軽いものだが、こちらを射るように見つめる眼は彼女が本気であることを示している。
「そうでしたあれは確か7月の七夕の時分ですあなた方がロンドン中を巻き込んで起こした騒ぎであの時は本当に大変でした」
 ぱっと見では分かりにくいが、語る言葉の声色が平坦なことから神裂がかなり限界に来ているであろうことが想定される。
 というかマジで怖い。
 見据えられている五和は先程から身じろぎ出来ないでいる。
 そんな五和に向かって神裂は続けていく。
「さてそう言えばあの騒ぎを引き起こした責任としてあなた方天草式には罰則が与えられていたはずですが間違いはありませんでしたね?」
 質問、というよりはもはや単なる確認作業のようなものとして喋り続ける神裂。

53とある九月の重陽演義:2007/09/09(日) 23:17:30 ID:GOyvC8nw

 そう、確かに七月におけるとある騒ぎの責任として天草式のメンバーには二ヶ月間の謹慎処分が下されている。
 その間は自分達が寝起きしているアパートメントに掛けられているような結界のような恒常的な術式を除き、外部での術式の使用を禁じられて
いたのだった。 
 もっとも、『必要悪の教会(ネセサリウス)』としては出来ればアパートメントに閉じ込めておきたかったのだが、地域住民の人気スポットであるスシレ
ストラン 『AMAKUSA』 が持つ人気の高さから店舗の営業を認めざるをえなかったという逸話がある。
 それはともかく。
「は、はい。確かにそうですけど罰則として与えられた謹慎処分は昨日で終わっています。別に問題は無い、筈です、けどぉ……」
 弁論を試みるも神裂を前に語尾が尻すぼみになっていく。
 と、
「ところで、ここロンドンにはイギリスが世界に誇るキュー王立植物園があるそうなのですが」
 唐突に話題を変える神裂。
 ジーンズのポケットから何やら紙を取り出し、そこに書かれているメモを読み上げていく。
「117㌶の美しく整えられた植物園の中に4万種以上の生きた植物が集められているそうです。知っていましたか?」
 そして、チラと五和の方を見、そのまま続けていく。
「そこで昨晩から今日の未明に掛けて、ちょっとした騒ぎがあったそうです。閉園時間をかなり過ぎた頃に外部から何者かが侵入。人的被害は無
し、展示してあったキク科の植え込みの周りに複数の足跡があった事からあるいは貴重種を狙った窃盗かとも思われたようですが物的被害も無
し。それとは別口でカワハジカミの木の周りにも同じように足跡があったそうですがこちらも植えられていた木に被害は無かったそうです」
 話を聞いている五和の顔は徐々に強張っていく。
「そ、そうですか……。被害が無くてよかったですね……」
「そうですね。直接的な被害は無かったそうですが、気になる事がある、と」
「な、何でしょうか……?」
 五和の言葉に、ええ、と答えるとメモをポケットにしまうと改めて五和を見据えて、
「キクの花からは夜露が残らずなくなっており、カワハジカミの木の周りだけは何故か下草一つ無いくらいに綺麗になっていたそうです」
 その言葉に、大きくビクリと体を震わす五和。
「さて、ここで最初の質問をもう一度しますが五和、あなたはどこへ行くつもりですか? いえ、さらに尋ねるならそこにある荷物を持って何をするつ
もりなのですか?」
「えーっと、ですね……」
「補足しておくなら私は今非常にイライラしていますのでつまらない言い訳はやめてさっさとその鞄を開けなさい!」
「は、はいぃぃっっ!!」

 訂正。もはや質問ではなく尋問になっています。

54とある九月の重陽演義:2007/09/09(日) 23:18:32 ID:GOyvC8nw
 さて、神裂に言われて五和が開いたトラベルバッグからは出てくる出てくる、大量のお絞りが蓋を開けた瞬間まるでビックリ箱のように飛び出し、
二人の周りに雨のように降り注ぐ。
 あわわ、と言いながら慌てて片付けようとしている五和を横目に、頭の上に乗っかったお絞りの一つを片手でどけながら、
「……まったく、どんな術式を組み込んでいたらこんな騒ぎになるのですか……?」
 その言葉にキョトンとしながら五和は、
「え? いえ、この鞄自体には何も術式を使ってませんけど?」
「どう考えてもおかしいでしょうこのお絞りの量は!!」
 見れば、お絞りの山はトラベルバッグと同じかそれ以上の嵩があり、尚且つそれらは今外に出ているだけで鞄の中にはまだ残りがある、という
状態だった。
「む、待ちなさい!」
 その鞄の中にある残りの中に、目当てのものを見つけたらしく手を突っ込む神裂。
 そして取り出したのは、大き目のペットボトルに入った水と手のひら大の布の袋。
 さらに目を向ければ、鞄の中にはまだ数本のペットボトルが入っていた。
「さて、ここまで証拠が揃いましたが、一応聞いておきましょう。あなたはこれで何をするつもりだったんですか?」
「そ、それは…………」
「答えられないようであればこれから天草式のメンバー全員を拘束した後、しかるべき尋問を行わなければならないのですが」
 その言葉に顔色を変える五和。
「……っ、い、言いますっ、言いますからっ!」
「ではどうぞ」
 暫く躊躇していたが、やがて観念したのかぼそぼそと語りだす。
「…………しの…………に、……うよう…………す……」
「なんですか? はっきりと言ってください」
「……が、学園都市の、カミジョウさんに重陽のお祝いをしに行くつもりだったんです!!」
 顔を真っ赤にしながら、半ば自棄になったように声を張り上げる五和。
 それに対して神裂は呆気に取られ、目をパチクリさせながら尋ねる。
「……えっと、また、ですか……?」
 なんだか緊張がほだされてしまったのか、それとも別の理由からか、途端にがらりと態度が変わる神裂の言葉に、
「またって何ですか!? 私がこういうことをするのは可笑しいですか!?」
「いえ、可笑しくは無い、筈……?」
 何だかあやふやになる神裂に対し、先程までのおびえた様子は何処へやら、猛然と食って掛かる五和。というか、いつの間にか様付けじゃなく
なってます。
「大体、女教皇(プリエステス)は何にも行動しないからってわたしの邪魔をするのはやめてください!!」
「なっ! わ、私が何の行動をしていないというのですか!?」
「惚けないで下さい! 女教皇(プリエステス)があの人のことを想っているのはみんな知ってるんですから!! なのに自分が何も出来ないからって
人の邪魔をするなんてやめてください!」
「私がいつあの少年のことを想っているというのですか!? そんな根も葉もないことを!!」
 真っ赤になって否定にかかる神裂。
 その後もギャイギャイと大声で騒ぐ二人。もはや天草式の元トップと一メンバー、あるいは『必要悪の教会(ネセサリウス)』の一員とそれに詰問され
ている魔術師といった姿ではない。
 その騒ぎはやがて空が白み始め、夜が明けだして辺りにちらほらと人の姿が見え出した頃にようやく終わる。
「はっ! い、いけない! こんなことをしている場合じゃないです!」
 言うが早いか辺りに散らばるお絞りを素早く鞄に詰め直すとそれを引いて走り出す五和。
「あ、こら、待ちなさい! まだ話は終わっていません!」
「待ちません! ただでさえ日本とこっちとじゃ時差があるから早くに動こうと思っていたのにこんな卑怯な手で邪魔しようとする女教皇(プリエステス)
様の言葉なんか聞きませんよーだ!!」
 微妙な捨て台詞を残して走り去る五和を見ながら置いていかれる神裂。下を向くと何やらぶつぶつと呟いていたがやがてゆらりと顔を上げて言
い放つ。
「いいでしょう。卑怯と呼ばれて大人しく引き下がっていたのでは聖人の名折れです。覚悟していなさい五和、今日あなたが言い放った言葉を必ず
や後悔させてあげましょう。…………ともあれ、今最初にすべきことはあのような誤解を招く噂を流した張本人にその責任を取らせるべきでしょう
か? ふ、ふふ、ふふふ、今日の七点七刀は鞘の滑りが一段と良い様に感じます。…………覚悟していなさい建宮斎字、ふ、ふふふ……」
 その日ロンドン市内では何故か幾つかの建物に損壊が出る等の被害があったそうだが、不思議なことに公式には何も記録されていないという。

55とある九月の重陽演義:2007/09/09(日) 23:18:45 ID:GOyvC8nw
 一方、日本に向けての飛行機の中でようやく自分が神裂に対してどんなことをしでかしたのか思い至った五和だが、さらなる騒ぎに巻き込まれる
ことになるのはまた別の話である。






 ところで、イギリスと日本との時差については思い至ったようではあるが、イギリスから日本へ向かう場合にかかる時間というものを考慮に入れ
ていたのかどうかの結果を五和が知ることになるのは、日本の空港に降り立ってからのことである……。

5601-641:2007/09/09(日) 23:20:05 ID:GOyvC8nw
こんな時間にこんばんはー。
時期物だけど微妙な出来ですー。
良かったらお一つどうぞ。
それでは。

57■■■■:2007/09/10(月) 17:34:27 ID:lZ.mSBJQ
GJ
笑えたし和めた

58■■■■:2007/09/11(火) 06:05:37 ID:GfhF35nM
書いてみたので載せてみる

【 とある九月の振替休日 】

上条さんがイタリア旅行に当選しなかったifストーリーっぽい駄文
SSだから普段とは違った人選がされる中、ヒロインに禁書を採用

59とある九月の振替休日:2007/09/11(火) 06:06:10 ID:GfhF35nM

「とうまっ、今日こそは私とずっと一緒にいてほしいかも!」
 大覇星祭による振替え休日の初日、上条当麻の部屋に居候をしている少女――インデックスはそう叫んだ。
 そう言いたいのも無理はないかな? とは思う。
 九月十九日から二〇日までの一週間、学園都市では大覇星祭と呼ばれる大規模な体育祭のようなものが開催されていた。学校単位で
種目に参加するほどの行事だ。しかも大覇星祭は年に数回しかない学園都市が一般公開される行事なので、その騒動に乗じてローマ正
教の襲撃にもあったり、それがインデックスには知られずに対処しなければいけないことだったりで、余計に一緒にいる時間は少なか
ったのである。
 素直に頷きたくなる衝動を抑えて、
「……よくそんな恥ずかしいことが言えるなぁ」
 瞬間湯沸かし器のようにインデックスは真っ赤になった。
 上条としては露店で食ってばかりいたインデックスにすこしくらい物申したい気分だったのだ。
「ま、昨日まで忙しかったしそれくらい――ってインデックスさん? どうしてそんなに震えてるのでせうか?」 
「――当麻の頭蓋をカミクダクっ!」
 学生寮名物である上条当麻の断末魔が雨上がりの涼やかな空気を響かせる。

 そんなわけで上条たちは午前中から出かけることにした。ちなみにスフィンクスは今日はお留守番である。
「どっか行きたいところとかあるのか?」
 第七学区の大通りを歩きながらインデックスに聞いてみる。
「ばかにしないでほしいかも。この街に来てからもうすぐ二ヶ月近くたつけど、どんなところがあるかなんて全然わからないんだよ。
だから今日はとうまがしっかりと私をエスコートするんだよ?」
 へーい、と呟きながらこれから行く場所を考える。
(とりあえず最初に行くとこを決めなきゃいけないな。後は、その場で決めてもいいし、インデックスがなにか言うかもしれないし。
どこ行くかなー? 大覇星祭の振替え休日でどこも割引になってるし、すこしくらいなら高くてもいいよな。っても一日中だろ? や
っぱ最初はなるべく安く、かつお昼まで過ごせるようなとこがいいな。んー……バッティングセンターとかボーリングとか――)
 上条が自分のお財布と真剣に相談しつつ、今日の予定を考えていると自分の袖が引っ張られていることに気づく。
 インデックスであった。
「どした?」
「二ヶ月近くたつけど、この国の映画はまだ見てないかも。とうまがいない間にテレビはたくさん見たけど映画はまだなんだよ。だか
らとうまは私を映画に連れてってくれることを考慮してもいいかも」
 それを聞いて、今日はレディースデーだったかなー、と必死に思い出そうとする上条だった。

60とある九月の振替休日:2007/09/11(火) 06:06:47 ID:GfhF35nM
 この時間の上映内容は――、
 日本中が涙した!! 話題の恋愛小説、感動の映画化。『いま、逢いにゆきます』。
 コンバット・バトル・アクション第三段!! 『リーサル・ウェポンズⅢ』。
 あなたのハートに、ドラゴン☆ブレス! 『劇場版・超機動少女カナミン〜ロシアの赤き死神〜』。
 見るものは瞬時に決められた。
 料金は割引にならなかったが、サービスとして『お一人様、ポップコーンを一つ無料』だった。ポップコーンを四つとコーラ二つを
持って場内に入る。上条としては烏龍茶がよかったのだが,インデックスが「なに血迷ってるのとうま! ポップコーンにはコーラな
んだよ!? それは宇宙の真理なんだよ!? そういうわけでお姉さん、コーラ二つとポップコーン六つ!!」とか言いだしたので、
なんとかポップコーンを四つに減らしたしだいである。
 しかし……落ち着いて映画を見る、とかそんな余裕は上条にはなかった。
 映画が始まると、インデックスはポップコーン片手に食い入るように夢中になった。
「おぉーっ! さすがは神国日本なんだよ。口の動きで相手に魔術を予想させないように『けーたいでんわー』で擬似的な詠唱をして
いるとゆうわけだね。でもそれじゃ『声に出す』ってゆう魔術的要素が……はっ! だからこその『けーたいでんわー』なんだね。最
後のボタンで変換された詠唱が異なる音で再現されるのかも……これは魔術の新しい形かも」
 それだけならばよかったのだが……戦闘シーンになると腕を振り回し上条に攻撃をしかけ、派手なエフェクトが入るとこれまたバタ
バタと腕を動かした。家で見ていたときは大人しかったがスクリーンでは迫力が違うからなのか、かなりはしゃいでいる。
「むむっ! あれはどう見ても『あらざる者』なんだよ。さすがのカナミンでもロシア成教じゃないし、ここは――ってあれはもしか
して『処刑(ロンドン)塔の七つ道具』? 少し形は違うけど……あの金槌、やっぱり『あらざる者』に効果がある。す、すごいかも
……『蓮の杖』だけじゃなく『処刑(ロンドン)塔の七つ道具』まで使いこなすなんて」
 インデックスが他の客の迷惑になるのは避けたいので、仕方なく上条は隣に座るインデックスの手を肘かけに押さえつけた。
 普段は上条ではどうしようもないくらい暴れるインデックスだが、そこはやはり小さな女の子である。その手は上条の掌にすっぽり
と収まってしまう。小さな手だな、と思う。
 するとインデックスはもう片方の手がポップコーンで使えないからか、急に静かになって映画を見だした。
 我ながら素晴らしい作戦だ、と上条は満足げに映画を見続けるのであった。

 映画を見終われば、時間はすでに十二時近く。
 朝から動いていたので、ハラペコシスターではないが、上条もかなり空腹だった。
「んーっ! 腹減ったなぁ……インデックス、昼はなに食べたい? ……おーい、インデックスさん?」
 インデックスはなぜか正面を向いたままぼーっとしていた。
 上条が声をかけたのに、なんの反応も返してこない。目の前で手を振ってみたものの無反応だった。
 仕方ないので視線の先を追ってみると――、
 『本日、先着一〇〇組様限り!! 当店自慢の「すぺしゃるじゃんぼぱふぇ」を半額で!』とあった。
(あぁー、お昼じゃなくて今はデザートが食べたい気分だったのね。さすがは欲望に忠実な不真面目シスター。上条さんには理解しが
たい思考ですこと)
 時間も時間だったので店内はけっこう混んでいるように見えたが、座れなかったり待たなければいけないほどではなさそうだ。それ
に上条としても『すぺしゃるじゃんぼぱふぇ』とやらには少しくらい興味がある。
「おっしゃ! じゃ、あそこで昼にすっか。……ってまだぼーっとしてんのかよ? ほら、行くぞ! 一〇〇組限定みたいだし、早く
しないとなくなっちまうからな」
 相変わらずなインデックスを引っ張って上条はお昼時で賑わっている店内に入っていった。

61とある九月の振替休日:2007/09/11(火) 06:08:25 ID:GfhF35nM
「でけぇ……」
 『すぺしゃるじゃんぼぱふぇ』は、その一言に尽きた。
「とうま、さすがの私でもちょっとびっくりかも」
 席に座っているインデックスの顔を隠してしまうくらいに大きいそのパフェは、ジョッキほどのきれいな器にたくさんの具が敷き詰
められていた。下から、バニラアイス、コーンフレーク、生クリーム、フルーツ、生クリーム、コーンフレーク、バニラアイス、チョ
コソース、生クリーム、フルーツ、バニラアイス、チョコソース、最後にたくさんのフルーツと申し訳程度に添えられたウエハース。
 ひどく甘そうだが、インデックスはキラキラと目を輝かせている。
 パフェがくるまではうわの空だったが、どうやらいつものインデックスに戻ったようだ。
「んじゃ、いただきます」
 上条は自分用に頼んでおいたチキンフィレのハンバーガーにかぶりつく。表面がカリカリでなかなか美味しい。
「――ばくばくもぐもぐむしゃむしゃーっ」
 口の周りに生クリームの化粧をしているインデックスを見ると、少しだけ妹のように思えて微笑ましかった。
(いや、勘違いしないでほしいけど、土御門なんかと一緒にするなよ? あんな「義理じゃない妹なんていらない」的な思考の持ち主
とは上条さんは違うんですよ?)
 とはいえ、さすがに鼻先まで化粧をしなくていいと思う。
「ったく仕方ねぇな……インデックス、ちょっと待て」
「んっ? ……んむっーーーーー!?」
 そばにあった紙ナプキンでインデックスの鼻や口元をぬぐってやる。暴れるかと思ったが素直にふかせてくれた。
「――これでよし! なに固まってんだ。もうふき終わったぞ?」
 インデックスは口を開けたままぽかーんとしていた。
 すでに三分の二以上は食べきっていたが、インデックスのことなのでさすがに満腹とゆうわけではないだろう。
(んー、どうしたんだ? そんな大口開けて固まって……って、まさかっ!? いわゆるあのすっごい恥ずかしいことを俺にやれと言
いたいのか? いやしかし、この状況からそれ以外に上条さんができることは――)
 上条は試しにパフェをこちらに引き寄せ、インデックスの前で少しだけ食べてみた。
「……」
(無反応っ!? くそっ、本区的にアレな気がしてきた。インデックスのやつ、なに考えてんだよ……はっ! こうやって上条さんを
羞恥に染めようって作戦か!? 大覇星祭のときは事故とはいえ、色々と恥ずかしいことさせちまったからな。……しかし、上条さん
をなめないでもらいたい。『男なら――やってやれ』だっ!!)
 食べやすい量をスプーンですくってインデックスの口元に運ぶ。震える手を無理矢理に抑えて、空いている口の中へ、
「インデックス、あ、あーん」
「ふぇっ……はむっ!?」
 なんとか食べさせることに成功したので、ゆっくりとスプーンを引っ張って――、
「なぁ、噛みついたままだとスプーンが取れないんだけど。ってかもういいよな? さすがに二回はさせないよな? 上条さんの心の
耐久度は一回で限界寸前ですよ?」
 納得したのかわからないが、頷いたように見えたので上条も自分の食事に戻る。
 途中、ペースが落ちたインデックスを見て上条はパフェを少し貰おうとしたが「と、とうまには絶対あげないんだよ!」と真っ赤に
なりながら叫んで、一気にかきこんでしまった。
 なんにせよインデックスも昼食は満足できたようだ。

62とある九月の振替休日:2007/09/11(火) 06:09:39 ID:GfhF35nM
 追加で飲み物を頼んで、午後の予定を決めることにしたのだが――、
「――ってわけで、ボーリングとかにしようと思うんだけど……インデックス?」
 出かけようと言った本人はなぜか再びぼーっとしていた。まさに『心ここにあらず』と言った感じだ。
 今日はこんなのばっかりだな、と思いながら上条もぼーっとインデックスの顔を眺める。
 不意にそんな上条に気づいたのか、インデックスが顔を赤くして切り出した。
「とうまは……とうまは、恥ずかしくないの?」
「ん?」
 なんのことだかわからなかったので上条は首を傾けるしかなかった。
「その……さっきのやつとか……」
 もごもごとはっきりしないインデックスは口調で続けた。
 その言葉で上条はなんとなくだが予想がつく。
「――それって、さっきのパフェのやつか?」
 一つのパフェを、二人で、しかも一つのスプーンで――。
 さっきの光景を思い出したのか、インデックスは耳まで真っ赤になってしまった。
(そんな反応されるとこっちも恥ずかしくなるんだけどなー。ってかアレはインデックスが仕組んだことじゃないのか? ……もしか
して俺、カンチガイシテマシタカ? でっ、でもでも! ここでそれを知られちゃ余計マズイ展開になるはず! 今日までの上条さん
の経験が力強く告げている)
 上条は自分の動揺がばれないように勤めて冷静をふるまう。
「んー、恥ずかしかったのは恥ずかしかったけど……でもまぁ、インデックスって俺とは妹みたいに見えそうじゃん? だからそんな
に気にしてないかなー」
「――とうま? もう一回言ってほしいかも」
 インデックスの雰囲気に違和感を覚えながらも上条は、同様の内容をできる限りわかりやすく伝えようとする。
「だから、俺はそんなに恥ずかしいもんじゃなかったぞ? 簡単に言えばインデックスって妹みたいなもんだし――ってことを言った
んだけど……あれ? インデックスさん? どうしてそんなに震えているのでせうか?」
 見ればインデックスは小さく両肩を震わせて手に持っていたコップを握りしめている。
 その視線は上条に向いたものではなかったが、インデックスが発している気配はすべてが上条に向いていた。この感覚を上条はイン
デックスと知り合ってから何度体験したであろうか。
 予想とは正反対の反応に戸惑いを隠せなかった。
「イ、インデックス!? なにをそんなに怒っているんだって? だから上条さんはそんな気にしてないし、そんな怒ることじゃない
って! むしろ周囲の視線が誤解してなくて安堵するとこ――って、どうしてさらに怒ってるんですかぁ!?」
「――と、とうまのばかーーーっ!!」
 インデックスの叫び声で目をつむり、びくぅっと身をすくめた上条……だったが少したっても噛みつかれる気配がない。
「……あれ、インデックスさん?」
 目の前には空になったパフェの器。
 それだけだった。
 インデックスは上条の前からいなくなっていた。

63とある九月の振替休日:2007/09/11(火) 06:09:56 ID:GfhF35nM
 ファーストフード店を飛び出したインデックスを追ってさまようこと一〇分たらず。
 目当ての人物はそれほど離れていない近くの公園にいた。
 夏の外出でなぜだかインデックスには『臨時発行(ゲスト)』IDがあることがわかったが、当の本人は自動改札や生体認証などの
科学らしさあふれる場所を極端に避けているようなので行動範囲はかなり狭い。そのためこうも簡単に見つかったのだろうが――、
(それにしても公園でブランコって……いつの青春マンガだよ。逃げるにしたって脚止めてちゃだめだろ。これじゃ、見つけてくれっ
ていってるもんだぞ?)
 ゆらゆらと振り子を描きながら、インデックスは地面と顔を向き合わせていた。
「――インデックス!」
 近寄る上条をちら一瞥し、再び大地とにらめっこを始めるインデックス。相当に機嫌が悪いようで、隣のブランコに上条が座っても
うんともすんとも言わなかった。
 午後の日差しは九月後半とは思えないほどに強く、上条の頬をつぅっと汗が滑ってゆく。
 このまま黙っていても仕方ないので、上条から声をかけて現状の打開を図る。
「どうしたんだよ? いきなり店を飛び出したりして……今日一日は俺と一緒にいるんだろ?」
「……だって、とうまがいけないんだよ?」
 ぼそぼそと呟くも、なんとなくだが――そこには会話を打ち切るのではなく続行の意思が感じられた。
 相槌をうたないでインデックスの言葉を待つ。
「とうまったら映画館でもさっきお店でもあんな恥ずかしいことしてきて……挙句の果ては妹みたいって……ばかにしないでほしいか
も。実際、とうまより若いかもしれないけど、私……そこまで子供じゃないんだよ?」
 今になって上条は今日の自分の行動が少なからずインデックスに影響を与えていたことを知った。
 上条にとってのインデックスは『記憶を無くす前の上条当麻』との知り合いであるため、普段から対応に困る場合がある。
 上条は以前の自分がインデックスにどのような感情を抱いていたかを知らない。
 行きずりの他人か、助け合う友人か、寄り添うべき恋人か。
 インデックスは上条が記憶喪失であることを知らない。
 その出逢いを、投げかけられた言葉を、与えられた未来を。
 いくつもの大切な想いを上条は覚えていない。
 だからこそ上条はインデックスにそれを悟られないように生活してきた。知っていしまえば少女の笑顔が崩れてしまうから。『記憶
を無くした上条当麻』では少女の想いに答えることができるかわからないから。
 けれど、インデックスにとっては『記憶を無くした上条当麻』も『記憶を無くす前の上条当麻』も同じ人物なのだ。
 ひたむきな想いは、きっとあの夏の日から決して変わることなく続いているのだろう。
(対等に見てほしい。守る側じゃなくて一緒に戦う――肩を並べて同じ歩幅で歩く位置にいたい。何もできない子供じゃなくて、一人
の女性として見てほしい……ってことなのかな? これぐらいの子によくある大人に対する憧れみたいなもんか? だとしたら――)
 だとしたら上条は――『記憶を無くした上条当麻』はどうすればいい?
「……」
 自分の迷いを断ち切るために上条は立ち上がり大きく伸びをした。
 依然として俯いているインデックスに右手を差し出す。どんな出逢いだったのかはわからないけれど……この右手がインデックスと
上条を繋ぎ合わせたはずなのだから。
「ほら。正直よくわかんねぇけど、今日一日は一緒にいるんだろ? だったらさ――」
 目の前の少女に負けないように、できる限りの笑顔を向ける。
「その……デ、デートの続きだ」
 上条は自分で言ったそばから恥ずかしくて、どうにもインデックスの顔を見ることができなかった。
 そっぽを向いてインデックスの返事を待っていた上条の右手に、映画館でも触れた柔らかな温度が重なってくる。照りつける太陽よ
りも、触れ合う体温によって汗をかく。いつもよりインデックスを近くに感じる。
 守るようにゆっくりと握ると、同じような力で返してくれる。
 思い切って振り向けば、インデックスはまっすぐに上条を見つめていた。
「――今度は、しっかりとエスコートしてほしいかも」
 淡く頬を染める異国の少女に、少しだけ胸がしめつけられる。
 あの笑顔を守りぬくと上条は決心していた。
 でも、今はそれだけじゃない。
 一時の想いかもしれない。この場の雰囲気かもしれない。
 それでもこの瞬間、上条は自分の持つすべてでこの少女を守りたいと思った。

 九月の休日。
 一度は離れていった想いが再び交差し始めた。
 上条当麻とインデックスの――二人だけの物語はここから始まってゆく。

64とある九月の振替休日:2007/09/11(火) 06:15:04 ID:GfhF35nM
以上で終わりです
一話完結みたいな感じだけど……ちょっと長すぎた?
ってゆーか、タイトルが一つ前のにかぶった気がする
でも変える気はまったくなかったのが事実
地の文がダメ……ってか心理描写が甘いけど勘弁

65■■■■:2007/09/12(水) 18:00:24 ID:fQv2gqTc
いいお話でしたv

66■■■■:2007/09/12(水) 21:05:03 ID:ejgZMEz.
あれ?俺は御坂の婿だったはずなのに……?

67振替の俺:2007/09/13(木) 06:36:15 ID:uynr5Mj6
過疎ってるね
やっぱ九月だし休みが終わった人が多いのか

読んでくれて感謝
今は姫神の七話構成(妄想を全部つっこむと×5くらいで死ぬでも書きたい)と
美琴ラヴのミサカ書いてる
TSもので上嬢さん読んだら書きたくなった……でもTSは書けないから百合
俺の向かう先っていったい……
てか他の職人さんは忙しいのかし?
自分以外の作品を読むと意欲が沸くのに
頑張れ俺! もっと書け俺!

68とある忘却の再認識:2007/09/13(木) 23:03:33 ID:jiwx.6do
 初対面だろうか。
 上条がまず考えたのはそのコトだ。
 こんな格好をした人間と会ったコトなどあるはずがない――と断定したいところだが、我が家にはインデックス(銀髪シスター)が居候までしている。上条は確信を持てなかった。
 仕方が無いので対応を保留。とりあえずはハンバーガーを喰らう。
 変わり映えのしない味だな――とまず思い、続いてそう思えたことに軽く驚く。
 『エピソード記憶』の全損。それが上条の障害だ。詰まるところ人々との思い出の全消去。それまでに脳髄に刻みつけた『知識』は消えはしない。
 だが、そもそも『知識』と『思い出』との分類はどういう基準で行っているのだろうか。
 反復回数で分けている、などというコトはありえない。それならば親の顔まで忘れてしまうコトは無かったはずだ。同じ理由で情報を取得した時期、という仮説も却下。
 上条はその疑問を退院する前に蛙顔の医者にそれとなく訊いてみたが、困ったような顔で曖昧に誤魔化されるだけだった。
 ――結局は。
 この学園都市でさえ、脳のメカニズムは未だに把握し切れていない、という、ただそれだけのコト。
 それだから――自分の現状についてのはっきりとした説明がつけられないから――だろうか。
 自分は偽物だ、という錯覚が、上条の頭の隅にいつまでも残っているのは――

 机に突っ伏した黒髪巫女を眺めながら、上条はそんな益体も無い思考を打ち切るコトにした。
(まあ、どうしようもないコト――か)
 時を巻き戻すコトは叶わない。やり直しは、できないのだ。
 時折、自分の立ち位置を確認するように考えるのはいいが、それに囚われてしまっては 意味が無い。
 上条が席についてからそろそろ二十分。
 ――そろそろ、向かいの少女の様子が気になってきた。
 先程からほとんど身動きをしていない。体調でも悪いのだろうか。
 本来、『上条当麻』でもこんな怪しい人物に関わろうとはしなかっただろう。――インデックスと関わってさえいなければ。
(だが、まあ――仕方無いか)
 諦めてばかりだな、と苦笑しつつも、上条はその巫女の肩を揺さぶろうと手を伸ばした。

 パシン、と鋭い音が響いた。続いて感じたのは微かな痛み。
 上条は現状を認識するためにしばらく時間を要した。
 肩に手を掛け――そして次の瞬間、払われた。
 何だ、起きてたのか――そう納得し、叩かれた左手から彼女の顔へと視線をずらす。
 恐れているような――怯えているような、そんな顔。
 失敗したな、と上条は心の中で舌打ちした。

「…………」
 寝惚けていたのだろうか。しばらくして、彼女は無表情になる。
 未だに初対面なのかどうかはわからない。仕方無く螺子を巻く。
「あー、大丈夫か? 悪かったな、馴れ馴れしく肩に手を置いたりして」
 今ではもう失われた『上条当麻』の言動を模倣。
 ズキン、と心の底の方が痛む気がする。
 それでも、仕方が無い。
 万が一上条が記憶を失っていることがインデックスに知れたら、すべてが破綻するのだから。

 ――誤解は解けた。何故そんなに怯えたのかはわからないままだったが、きっとそれは踏み込むべきではないコト。上条当麻は軽く安堵し、黒髪の――自称魔法使いと割とどうでもいいコトを喋り続ける。
 どうやら上条と彼女は初対面だったらしい。最初に『上条当麻』として接してしまったのは失敗だったようだ。もし仮面を被ったりしなければ『上条当麻』ではない上条当麻の知り合いにできたのに。

 別れ際、100円程貸してほしいと言われた。『上条当麻』の知り合いではない人と此処まで長く話したのは初めてだったので帰ってこないことを承知で渡しても良かったのだが、財布の中には五十円玉一枚しか入っていなかった。
 情けないコトだが、別に何かを買いに来たわけでもなかったのだ。寮からは徒歩なのだし、最低限入っていればいいだろう、と出るときに上条は判断した。
 そんなコトをつらつらと語りながら謝っていると、同じようなスーツを着た男達がやってきて、彼女を連れて行った。彼女は特に動揺した様子も無く、塾の先生だ、と言っていた。
 ――最近の塾講師は、随分と気配を消すのが上手いらしい。

69とある忘却の再認識の中の人:2007/09/13(木) 23:05:41 ID:jiwx.6do
短くてすみません。
更新ペースはそれなりに速めに頑張りますが、遅筆なので。
とりあえず目標は過疎の防止で頑張ります。
モチベーション維持のために感想とかいただけると中の人はとても喜びます。

70■■■■:2007/09/14(金) 11:46:33 ID:Oren7Ds2
>>69

続き、待ってます。
……にしても、この過疎具合はどうしたものか。

71■■■■:2007/09/14(金) 15:22:10 ID:R3O0j7RI
再認識……いやぁー、いいですね
俺(振替の中の人)、こういうのうまく書けないから羨ましい
どうしても台詞をたくさん書いてしまうという罠
うし! 俺も書くぜよ

72とある忘却の再認識の中の人:2007/09/14(金) 16:42:41 ID:v2X.99qE
寧ろ作者のコミュニケーション不足のせいで台詞が思うようにかけないので逆にうらやましいです。
個性――だと、思いたいですね。
にしても、再構成系のSSはやはり多少退屈なのかもしれない、とこの頃思います。

73振替の俺:2007/09/15(土) 17:01:49 ID:vKudRm32
すごい個性がほしい今日この頃
んー、でかい口たたきますが……

退屈か判断するのはこれからじゃないかし? 今んところ俺はそうは思わないけどね
ってか再構成って『起承転結』の『承』だと思うのです
小説は冒頭が大事なのは知ってるけど
やっぱり『転』まで……むしろ『結』まで書いてから考えるのがイイかと
なんだかんだで最後まで書ききるってのが一番大事では――

とかなんとか言ってみる
途中で挫折した小説がたくさんある俺が言えることじゃないんだけどね

74■■■■:2007/09/15(土) 17:30:57 ID:mCN2VVU6
まぁ、そやね
どんな物でも最後まで書ききらないと、伏線とか色々使えないし

俺も書ききってない物結構あるから人のこと言えないけどな
まぁ、少なくともスレに書くことではないか……

75とある忘却の再認識の中の人:2007/09/15(土) 23:35:09 ID:VsmUTRLY
>>73
『承』……
間を持たせようとすると上条からどんどん乖離してしまうのでバランスを考えつつ頑張ります。(まぁ既にオリキャラも同然ですが
>>74
確かに。
とりあえず張ったものが回収できる程度には続けて生きたいなぁ、と思っています。

76nya:2007/09/18(火) 21:11:09 ID:uP2mTfsI
過疎ってるニャー

77■■■■:2007/09/19(水) 21:14:37 ID:eZ5e8jnA
ん〜、これまたえらく過疎ってるなぁ

78■■■■:2007/09/20(木) 14:12:43 ID:FoNFQsYM
こう過疎ってると「早く書け」って詰問されてるみたいだぜ
だけどまだまだ終わらない……
あぁ、腹減ったから昼メシ食ってくる

――そう言えばスレ違いだけど、いまさら初音ミクにハマリました

79■■■■:2007/09/20(木) 14:21:39 ID:BWThhqss
全テも発売だし、あれで勢いづいてくれるといいが。
参考資料には最適。学園都市地図とか学区ごとの特徴なんて設定好きにはたまらないぜ。
書ける幅もだいぶ広がりそう。

80とある忘却の再認識:2007/09/20(木) 22:10:39 ID:U/vopKcM
 ――夕方。人々の喧騒が溢れている。
 茹だるような暑さが少しだけ薄れ、生ぬるい風が上条を撫でた。
 インデックスはどうしているだろうか。建造物の外壁にもたれながら、そんなコトをぼんやりと思う。
 そして上条は目を閉じた。

 気がつけば、辺りには誰もいなくなっていた。
 ――撤回。耳を澄ませば、カツカツと靴音が聞こえてくる。
 その方向を、上条は注視する。嫌な予感がした。
 ぷん、と漂ってくる香水の匂い。染み付いた“何か”の匂いを誤魔化しているかのように強烈で、不快感を感じさせる。
 一歩。真紅に染め上げた髪。
 一歩。右目の下のバーコード。
 一歩。指輪とピアス。
 修道服を纏ってこそいるもののとても神父には見えず、寧ろ悪魔崇拝者だと言われる方がしっくりくる。
 ――さらに、一歩。
「久しぶりだね、上条当麻」
 男――顔立ちは幼いが――が口にしたのはそんな言葉だった。

「――あぁ。久しぶりだな、“魔術師”」
 蛙顔の医者から聞いた、『魔術師』を名乗る二人組の特徴。
 目の前の男は、それに見事に合致していた。
 加えて、周囲に全く人のいないこの状況。何らかの異能を行使しているのだろう。
 ――そう、例えば。
「ルーン魔術、か」
 また、違和感。そんな知識が脳内に存在することも異常だが、それよりも気になるコトがあった。
 ――この『知識』は、『いつ』得たモノなのだろうか。
「あぁ、その通りだよ。この辺りには僕が『人払い』のルーンを刻んである。それにしても――ふん、随分といい顔をするようになったものだね」
 記憶を失うよりもある程度前に得た知識なら何も問題はない。だが、学園都市にいながら魔術(オカルト)に関わるコトが早々あるものなのだろうか。
 もし、記憶を失う直前、インデックスと出会ったよりも後に得た『知識』ならば。
 それならば、“そのとき何を感じたか”若しくは“何を考えていたか”を覚えていないのはともかく、“そのとき何があったか”は覚えていてもおかしくないというコトにはならないだろうか。
 或いは――思い出せていないだけ、なのだろうか。
「まぁいいさ、気に食わないがそれなりに使えそうだ。実のところ――大きな仕事を追えて腑抜けているんじゃないか、とも思っていたんだけどね」
 いや、それはないか。退院してから今日まで、『エピソード』の断片すら浮かび上がったコトはない。だから、原因は恐らく別にある。
 そこまで思考を進めたところで、上条は考察を中断しなければならなくなった。
「聞いているのかい?」
 苛立ちが感じられる魔術師の声。
 ザクリ、と肋骨の隙間に刃物を捻じ込まれる錯覚。
 やけに暑いと思えば、魔術師が炎で構成された剣を大きく振り上げていた――

 ――本来なら、動転すべき状況、なのだろう。
 しかし上条は特に慌てることもなく、無造作に右腕を上げた。
 当然のように動いた身体に驚きつつ、上条は認識する。
 『上条当麻』にとって、異能で攻撃されるような状況は当然のモノであったのか、と。

 上条当麻の右手は当然のように炎剣を受け、
 炎剣の消滅を待たずに動き出した左拳は、全体重を乗せて当然のように魔術師の鳩尾を穿った。
 魔術によって防御したのだろう、薄笑いを浮かべたままの魔術師に、当然のように幻想を殺す右拳を叩き込んだ。
 当然のように、魔術師の顔は酷く歪んだ。

81とある忘却の再認識の中の人:2007/09/20(木) 22:14:00 ID:U/vopKcM
――やや微妙ですが、とりあえず続きを。
二巻の時点で感じた疑問点を解消してみようかな、と思いつつ。(蛙顔に自分を病院に連れてきた奴の特徴を聞いてないのは不自然ではなかろうか、とか)
この話も、何処まで持つことやら。

82■■■■:2007/09/20(木) 23:41:20 ID:ebJwIK1Q
・・・終わり方は、もちろん考えてやってるよね?
だらだらして書かないよね?
一応聞いて見ます。

83■■■■:2007/09/26(水) 06:12:13 ID:gjzhdzWg
過疎ってますね……

84nya:2007/09/26(水) 17:23:37 ID:rct4c7lY
誰もおらん

85■■■■:2007/09/26(水) 23:31:19 ID:XXI/3g26
誰も来ないな

8601-641:2007/09/27(木) 22:22:30 ID:lH6AXp32
まず初めに、遅ればせながら>>64(振替の人)、>>81(忘却の人)、乙です。

そして>>83-84
『パンがなければ、ケーキを食べればいいじゃ(以下略)』 何処ぞのマリーさんが言ってたそうな。

「人が来ないなら、貴方が行けばいいじゃ(以下略)」

まぁ、あまり大きなことは言えませんがとりあえず投下しますよ?

87とある九月の中秋名月:2007/09/27(木) 22:23:08 ID:lH6AXp32
 カチャカチャ、トントン、ジャー、カチッ、ボッ、コトコトコト。――――ゴソゴソ、カチャカチャ、ジャー、チャッチャッチャッチャッ………

 さほど広くはない台所に賑やかな音が響いている。
 音の出し主は幾つかの作業を並行して進めているようだが、手馴れた様子でそれらをこなしているようだ。
 ふんふん、と鼻歌のようなものを口ずさみながら作業を進めていると、がちゃり、と鍵を外すのに続いてやや軋んだ音を立てて玄関
のドアが開かれた。
「あ、 お帰りなさい」
「ふいー、ただいまなのですよー」
 挨拶を交わしながら部屋に入ってきたのは愛らしい姿の小学生、のような月詠小萌その人であった。
「何だかお疲れみたいですねー」
「そうなのですよ。今日もまた帰り際になって仕事が入ったもんですから長引いてしまって、もうくたくたなのですよー」
 などと言葉どおりにえらいくたびれた様子で鞄を床に置くとそのまま卓袱台に突っ伏してしまう。
 と、何かに気付いた様子でふんふんと鼻を鳴らしながら尋ねる。
「いいにおいがしますねー、今日のおかずはおいもさんですかー?」
「あ、分かりますか? はい、今日はサトイモの煮っ転がしですよ」
 言いながら卓袱台に歩み寄ってきたのは二重まぶたがくっきりとしている少女、五和である。
 おつかれさまです、と置かれたお茶を口に含み一息ついた小萌先生は感慨深そうに、
「それにしても、こうやって家に帰ってくるとごはんの用意が出来ているっていうのはいいですねー。前にいた結標ちゃんは家事が出
来ない子だったのでそのお勉強を見てあげるのも良かったですけど、こう、疲れて帰ってきた日なんかは五和ちゃんみたいな子が居
るとありがたかったりするんですよー」
「いっ、いえいえ! そんなわたしなんかまだまだですよ!」
 わたわたと焦る五和。
 彼女が小萌の家にいるのには訳がある。といってもそれほど大層な理由でもないのだが。
 遡ること九月の初旬、五和はとある目的を持って遠くイギリスの地からここ学園都市に降り立った。
 彼女にとって重要な決意を秘めていたのだが、その目的は結局果たせずじまい。おまけにイギリスを出立するときには所属している
天草式のメンバーに少なからぬ協力と迷惑をかけ、おまけに元女教皇(トップ)である神裂火織に盛大な啖呵を切る形で別れてきたの
で今さら帰るに帰れない(と本人は思い込んでいる)状況にあった五和が街をうろついているところを小萌先生が見つけ、そのまま自
分の部屋に連れて帰り、今に至るというもの。

 なお、五和は預かり知らぬことではあるが、現在彼女には臨時のIDパスが発行されており、つつがなく学園都市での生活が送れる
ようになっている。(ちなみにID発行に関して土御門に仲介協力を要請をしたのは現状を聞いたとある聖人さんだとか。まあ、若干呆
れながらではあった様だがそれなりに気に掛けてもらっているという事であろう)
 それはさておきさておき……。

88とある九月の中秋名月:2007/09/27(木) 22:23:29 ID:lH6AXp32
 いそいそと食事の用意をする五和の様子を眺めていた小萌先生であったが、ふと、台所に何やら置いてあるのに気付く。
 どうやら作業の途中らしく、食事の用意は一人分しか並んでいない。
「何ですかーそれは?」
「すみません。まだもうちょっとかかるので、出来れば先に食べていってください」
 申し訳なさそうに言う五和に対し、ちょっと気分を害したように反論する。
「五和ちゃん。前に言ったはずですよ? 食事はちゃんと一緒にするって。そんな変な風に気を使うなんて他人行儀な仕方、先生感心
しません」
 ちょっと怒った風の小萌先生を見て、『は、はあ』 ともぞもぞとしていた五和だが、『五和ちゃん!?』 と小萌先生が強く呼ぶと、『す
いません』 と縮こまる。
「じゃ、じゃあ、もうちょっとだけ待っててもらえますか? すぐに終わらせますから」
「はいはい、やっぱり食事は二人で一緒に食べたほうが美味しいんですよー」
 途端に機嫌を直す小萌先生。
「ところで、さっきから何をやっていたんですか?」
 矛先が逸れてホッとしながら答える五和。
「あのですね。お団子を作っているんです」
「お団子、ですか? でもそんなには食べきれないと思いますよ?」
 見つめる先にはちょっとした小山になっている団子の数々。
 真っ白なままで出来ている白玉や、あんこで包まれたおはぎなど種類も豊富であるが、さすがにその量をここにいる二人で食べきろ
うとするのは無理があろう。
 ただでさえ多いのにその上夕食まで一緒となれば言わずもがなである。
 それなりに家事をこなすこの少女が何故このような行動に出たの頭をひねっていると、
「今日は、満月ですから」
 という答えが返ってきた。
「はい?」
「昼間は曇ってましたけど、今は雲も切れてちょうどいい具合に朧月夜になってますよ。お月見するにはいい夜です」
 何処となく浮かれて言う五和。
 どうやらお月見をするためにお団子を用意しているらしいのだが、
「えーと、その、あのですね………」
「?」
 対する小萌先生のほうは説明しがたい表情で五和に話しかける。
「五和ちゃんは、お月見をしたいんですか?」
「はい、そうですよ。今日のためにいろいろ回って準備してきたんです。ほら、学園都市って整備が進んでいるところが多いから意外と
ススキが生えているところを見つけるのに苦労したりもしたんですよ!」
 嬉しそうに語る五和。
 そんな相手に対し、これから自分が告げなければならない事の重大性を慮っているのか、言いにくそうに、
「そのお月見は、もしかして中秋の名月の、ですか……?」
「やだなー先生、お月見って言ったら、大抵はそうじゃないですかー!」
 浮かれて答える五和であったが、
「それ、今年はもう終わっちゃって……ます……よ?」

「…………はい?」

89とある九月の中秋名月:2007/09/27(木) 22:24:31 ID:lH6AXp32
 ピシリ、と固まる五和。

 それに対し慌てて、
「いや、その、よくみえるんですが、中秋の名月を満月の夜にあるものだと思われている人がいますけど、あれは旧暦の八月十五夜
に行われるものであって、必ずしも満月の夜に限るというわけではなくてですね、って、五和ちゃぁぁぁん!! しっかり、しっかりしてく
ださい大丈夫ですかー!?」
 説明を始めたものの途中から五和の介抱になってしまう小萌先生。
「…………も、もうダメです。こんな、こんな初歩的なことで躓いているようでは、何が、何が天草式ですか、何が女教皇(プリエステス)と
張り合うですか!! わた、わたしは、わたしはもう…………!!」
 己のアイデンティティーを問い始めた五和とその周りでおろおろする小萌先生。というか、さりげに機密事項を口走ってます五和さん。
 五和がようやく立ち直ったのは日がとっぷりと暮れ、月が天頂から下り始めた頃合だったそうな……。

 なお、五和が丹精込めて作ったお団子の山は、その量をちゃんと片付けてくれそうな人物は、ということで白羽の矢が立てられた一
人の白いシスターだったそうな。
 彼女に連絡を取りたいのだが何処にいるのか知りませんか? と尋ねられたのは、とある学生寮にいる男子生徒だとか。
 まあ、いろいろあってやや煤けていた五和さんがその男子生徒の部屋にお団子を届けることで気持ちが持ち直したとか持ち直さな
かったとか。
 人生これいろいろですよね?

9001-641:2007/09/27(木) 22:24:50 ID:lH6AXp32
はーい、時事ネタですが、相変わらず変化球ばっかりの 01-641 です。 皆さんの所では月はよく見えましたか?
いろいろ突っ込みどころ満載だと思いますが、平にご容赦を。
以前の節句ネタの番外編、といったところでしょうか。
五和さんのキャラが毎度毎度こんなんなってるのは偏に自分の偏見です(マテ)
まあ、自分としては彼女は愛すべきアホの子、となってるので、「こんなん俺の(私の)五和じゃねえ!!」 という方は多分、きっとあるいはもしかしてみえるかもしれませんがごめんなさい、といっておきます。
ちなみに、節句ネタはあと一つでおしまいの予定です。



まぁ、自分語りは置いといて、スレの現状についてちょっと、といっても自分ごときがなんですが。
基本的に自分は明確な目標があればそれに合わせて書いていくんですが、変化球が多い書き手ですのでいつもこんな調子に投下間隔かと。
やっぱり職人さんがいてこそのSSですから以前のような賑わいが欲しいです。
ちょっと前のレスを見ると前スレ序盤のfestival if に対しての流れを思い出すのは自分だけですかね。SS全般がそうですが再構成モノはやはり好き嫌いがハッキリしてるんでしょうか?
別にどうこう言うつもりはありませんし、言える立場にもありませんが、職人の皆さん頑張って投下してくださいとだけは伝えたいです。
長々と書き込んでしまうのでこれくらいで失礼します。では。

91とある乙女の恋愛革命:2007/09/28(金) 06:28:43 ID:yZUHD1ro
私がどこかで使っている名前を引っ張ってきました。芳乃です
まぁ、知らないと思うので――ってか知ってても気づかないふりをしてください

>>87
五和ー! だんだんとボケっぷりが増してくる。そんな五和も素敵です
01-641さん
私は最後まで書いてからじゃないと誰にも見せたくない、というダメな性格の持ち主です
おかげで書いてるSSもろくに投下できません

……しかし、書ききりました
主役はミサカ
では、過疎ってるスレに姫神の祝福を――


 【 とある乙女の恋愛革命 】

 ミサカ一三五一〇号は沸き起こる感情に思考が追いつかなかった。
「ミサカはどうしてしまったのでしょう、とミサカは新調された冬服を試着しつつも考察します」
 学園都市のとある病院。
 目の前にはさきほど支給された冬服を着た自分の姿が映っている。
 肩口まで伸びている髪は鮮やかな茶色で、窓から入ってくる穏やかな秋の空気にふんわりとたなびいている。常盤台中学の制服はな
んだか自分には少し不自然に思えてしまう。
 お姉様(オリジナル)と同じ容姿であるというのに、そこに明らかな差異を感じてしまうのは……やはり自分の感情のせいだろうか、
とミサカ一三五一〇号は鏡に映る自分の顔を覗き込んだ。
 最近はお姉様(オリジナル)である御坂美琴のことを考えると自分の体温、心拍、挙動が不安定になることは自覚している。
 それでもミサカ一三五一〇号は美琴のことを考えてしまう。どうしようもなかった。
(もはやミサカにはお姉様(オリジナル)という無粋な呼び方などできないのです、とミサカは自分の感情を抑制することに耐えられ
ずついに行動してしまいます)
 小さく、何度も深呼吸を繰り返す。
 そしてミサカ一三五一〇号は小さく呟いた。
「――美琴、お姉様」
 自分で言った言葉なのにその響きがひどく甘美なものだったので、ミサカ一三五一〇号はすぐに自分のベットに飛び乗って奇声を発
しながらゴロゴロと悶絶するのであった。

92とある乙女の恋愛革命:2007/09/28(金) 06:29:28 ID:yZUHD1ro
 ミサカ一三五一〇号はネットワーク内であの人の話題を聞いていた。
『あの人はもう退院したのでしょうか、とミサカ一四四七三号は同じ病院にいるミサカたちに回答を求めます』
『九月三〇日現在ではもう退院して今日は登校しているでしょうし、ここの医者の技術は確かなのであの人はもう心配ありません、と
ミサカ一〇〇三二号は心底丁寧に教えてあげます』
『……それは自分たちで直接確認したのですか、とミサカ一〇七八三号は質問を掘り下げます』
『い、いえ、ミサカたちが確認したのではなくあの医者に事実を聞いただけです、とミサカ一九〇九〇号は着衣の乱れを直しながら返
事をします』
 どうして自分は他のミサカのようにならないのだろう、とつい思ってしまう。
 自分にとってもあの人はミサカたちの価値を命をかけて教えてくれたとても大事な人物である。それでもミサカ一三五一〇号は他の
ミサカのようにあの人に感情を向けることができなかった。
(クローンでも個体差はある、とあの医者は言っていましたとミサカは記憶を引っ張り出します)
 だとしたらこの感情も個体差になるのだろうか。
 どうにも相談しにくいこの感情をどうしたらいいのか、と悩みミサカ一三五一〇号は大きくため息をついた。
『ならば病院にいるミサカたちはあの人を看病するせっかくの機会(チャンス)をみすみす逃したのですね、とミサカ一〇七二三号は
間抜けな姉妹(シスターズ)を嘲います』
『そのような作戦はまったく考えていませんでした、とミサカ一三五七七号は自らの失敗に歯軋りしているようすを演じます』
『こうなったら今からでも……どうして嘘がばれそうな犯罪者のような顔をしているのですか、とミサカ一〇〇三二号はミサカ一九〇
九〇号ににじり寄って詰問します』
『もしかしたらまたしても抜け駆けをしていたのでは、とミサカ一〇〇三九号はさきほどの汚い真似(ダイエット)を思い出し疑いま
す』
『こ、今度はなにもしていません、とミサカ一九〇九〇号は生命の危機を感じつつ姉妹(シスターズ)の優しさを信じてみます。それ
に抜け駆けと言うなら何度もあの人と直接会っているミサカ一〇〇三二号の方ではないですか、とミサカ一九〇九〇号は羨ましさをひ
た隠しながら形勢逆転を狙います』
 抜け駆け? 直接……会う?
 ネットワークからは相変わらず姉妹(シスターズ)の騒ぎ声が聞こえてくるがもはやミサカ一三五一〇号には関係なかった。
 不意に思いついた不安についてネットワーク上からいくつもの情報を集めて検討する。
(……やはり、美琴お姉様はあの人に少なからず好意が……あの人自身は特になにも思ってはいないようですけど、どの観点から見て
も体質的にあの人は……)
 ミサカ一三五一〇号の様子に気づいたのか、ネットワーク上ではさっきまでの喧騒がおとなしくなっていた。
『ところでミサカ一三五一〇号はお姉様(オリジナル)やあの人、更にはその友人たちの情報を収集してなにをしているのですか、と
ミサカ一五〇〇一号は疑問に思い問いかけます』
 その声にもなに一つ反応しない。今、ミサカ一三五一〇号に大事なことは美琴のことだけである。
 そしてはじき出された結論は――、
「美琴お姉様が危ないっ!!」
 自分のベットから飛び降り、さも遅刻しそうな学生のごとく着替えを始める。
『美琴お姉様とはお姉様(オリジナル)のことですか、とミサカ一〇七二三号は慣れない呼び方に確認をとります』
『危ないとはどうゆうことか説明してください、とミサカ一〇〇三二号はミサカ一三五一〇号の慌てっぷりに驚きつつ冷静な判断を求
めます』
 姉妹(シスターズ)が色々と質問してくるが今はそれどころではなかった。すぐにでも美琴のところへ向かわなければいけない。
『ミサカが使用した情報と、その結論はネットワーク上に残しておくので各自で参照してください、とミサカ一三五一〇号は提案し病
院から外出する準備を進めます』
 すべての仕度を終えるとミサカ一三五一〇号は戦地へおもむくような表情をして病室をでた。

93芳乃:2007/09/28(金) 06:39:42 ID:yZUHD1ro
以外と長くなったので五回くらいに分けてみます
オリジナルのミサカ一三五一〇号です。美琴大好きっ娘です

では、適当に時間が空いたらまた投下します

94■■■■:2007/09/30(日) 00:42:20 ID:0EOAmY.k
半端ない過疎り

95■■■■:2007/09/30(日) 01:06:05 ID:h6nIZDfM
敬虔なるカソリック教徒?

96とある乙女の恋愛革命:2007/09/30(日) 04:54:24 ID:6sfd1ODA
もうすぐ二日くらい経過するし続きを投下しようと思うけど……
読んでる人いる?

一応、続きは投下してく
気が向いたら挙手くれ。スレにどれくらい人がいるか知りたい

97とある乙女の恋愛革命:2007/09/30(日) 04:54:37 ID:6sfd1ODA
 とある地下街の人目につきにくい路地の入口からミサカ一三五一〇号は犯罪者(ターゲット)を確認していた。
 上条当麻である。
 とくに目立つでもない普通の黒髪をワックスで尖らせ、近くの高校の学生服に身を包んだ、どこにでもいそうな容姿の男性。眠そう
な目をこすって歩く姿に、今にも張り倒したい衝動を抑える。
「どうして他の姉妹(シスターズ)はあのような男性がいいのでしょう、と早速発見した犯罪者(ターゲット)を見て心の底から疑問
に思います」
 まぁ、命の恩人ではあるのですけど、とは思う。
 上条に注意を払いつつもミサカ一三五一〇号は懐に収めた重量感を確かめる。
 これは万が一の場合に備えて持ってきたものだが、このような人目の多い場所では少し使用に戸惑ってしまう。
(戦場ではこのためらいが命を奪うのです、とミサカは体験したこともないですが知ったかぶってみます。それに……これは美琴お姉様の、ひいては、その……ミ、ミサカと美琴お姉様の素敵な……っ! これ以上はいけません、とミサカは暴走気味の思考回路を押さえるために作戦内容を確認して冷静さを取り戻します)
 御坂美琴を守る。
 それが今回のミサカ一三五一〇号の目的だった。
 ネットワークの情報から上条は一般的な同世代の男性と比較して女性との出逢いが膨大で、またその後の展開が加速度的なことがわ
かった。救いといえば、本人がその事実に気づかない極度の鈍感だ、ということだろう。
 そして、どうも大覇星祭で美琴が上条となんらかの契約を交わし、それはまだ実行されていないらしい。
 その契約がなんであれ、美琴に会わせたらどのような危機(ハプニング)が発生し危害が加わるかわからない。そのため上条を監視
し接触があった場合は臨機応変に対応することが必要だった。
(もしものときは……やります、とミサカはどこかの誰かに高らかに宣言します)
 小さく拳を握って決意を新たにしたミサカ一三五一〇号だった。

98とある乙女の恋愛革命:2007/09/30(日) 04:55:35 ID:6sfd1ODA
「はぁ……っはぁ……こ、このフナムシがっ、とミサカは目の前でぶっ倒れている不届き者を見下ろしながら再装填を開始します」
 足元にはさっきまで美琴の隣にいたはずの上条は這いつくばって地面と挨拶を交わしている。
 四肢を動かして必死に抵抗しているがミサカ一三五一〇号の左足が上条の腰をしかと押さえつけているため効果がない。しかも、絶
対の右手に当たらないようにミサカ一三五一〇号は電流を加えて、断続的に微弱なスタンガンを当て続けている状態を保っている。
 銃口を上条の後頭部に押し当てる。
 腕にじわじわと力を加え、手動で自動式拳銃のスライドを引くと、その音とともに上条の動きもおとなしくなった。
(最初からこうしていればよかったのです、とミサカは美琴お姉様を魔の手から救い安心しつつも初動捜査の甘さを悔やみます)
 ミサカ一三五一〇号はさっきまで言動と比較しても、随分と辛抱していた方だろう。

 尾行を始めて数分で上条は美琴と遭遇した。それくらいは予想していたが、待ち合わせをしていたのは完全に不意打ちで一瞬思考が
停止した気分だった。安全装置を外すくらいは平気とミサカ一三五一〇号は自分に言い聞かせて、どうにか持ち直した。
 美琴は上条を罰ゲームを口実にデートに誘っていたらしく、二人して携帯電話のサービス店に入っていった。
 そこまではよかった。まだ耐えられた。しかし、その後がいけなかった。
 ツーショット。
 ソワソワと落ち着きのない美琴、なぜだかぐったりとしている上条。
(あの人には美琴お姉様とのツーショットは興味ないのでしょうか、とミサカはあの人と代わりたい願望を抑えて監視を続けます)
 そして、なぜだかいきなりやる気になった美琴が、ぶつかるように上条の隣へ。
(み、美琴お姉様!? そんなに近づいてはお体があの女たらしに、とミサカは無用心な美琴お姉様が心配で心配で懐に伸ばした手を
抑えることができません)
 同じようなことを二度繰り返した後だった。
 それは起こった。
 お互い睨みあって、あの野郎がちょっとだけ真面目な顔になって、いきなり美琴お姉様の肩に腕を回して、美琴お姉様も少しお顔を
赤く染めて――。
 限界だった。
 ミサカ一三五一〇号は体躯をかがめて隠れていた路地裏から飛び出した。
 まだ上条は気づかずにミサカ一三五一〇号へ背を向けている。周囲の人間たちはいぶかしむが、声を上げる暇など与えない。
 勝負は一瞬だ。
 発電系能力者(エレクトロマスター)である美琴にはミサカ一三五一〇号の発している気配、肉体制御のために使用している電磁波
を感知してしまうはずだ。
 だからこそ――そこを突破点にする。
(美琴お姉様には気の毒ですが少し脅かさせてもらいます、とミサカは心の中で美琴お姉様に事前に謝罪をしておきます)
 二人との距離が五メートルまで縮まった瞬間――気づくか気づかないか程度の電磁波を美琴に放つ。
「――っ!」
 予想通り美琴は身をひるがえして間合いを取った。
 ミサカ一三五一〇号を視界に収めたときにその表情が固まったのがわかる。
(さすが美琴お姉様、瞬時に攻撃に移ろうとしたのでしょうが……集中力が切れているようですね、とミサカは電撃が放たれなかった
ことから心情を察します。ですが――)
 やっとのことでこちらを振り返っている上条の視界に映らないように身を沈める。
「ちょっとアンタなにして――」
 思わず美琴が声を上げたが、もはや遅すぎる。
「はぁっ!? ――って、んなぁぁあああっ!?」
 上条の膝を折るように両脚をはらう。
 完全に上条の体勢が崩れ落ちる前にミサカ一三五一〇号は身を引いて不安定なその背中に蹴りを入れる。
 その勢いのまま上条の背中ごと脚で地面に押えつけた。
「これでチェックメイトです、とミサカは無様にひれ伏したあなたに完全勝利を宣言します」
 とはいえ、ゴキブリなみにしぶとい上条はジタバタと抵抗を続けた。
 そのためミサカ一三五一〇号は必死に当てたい衝動を抑え射線をずらしながら何度も威嚇射撃を繰り返した。

99■■■■:2007/09/30(日) 06:29:32 ID:QkY9OSBk
>>96

はい、読んでます。

100■■■■:2007/09/30(日) 09:12:51 ID:gXDtBK1I
レス的な意味では過疎だが覗いてる人自体はそれなりにいると思いたいな。

101■■■■:2007/09/30(日) 10:23:42 ID:6DF6bB9Y
きっといるはず
多分

102■■■■:2007/09/30(日) 13:24:05 ID:hnKgjgsM
はい、居ます。此処に居ますよ〜

103■■■■:2007/09/30(日) 15:52:22 ID:1l5a3JLo
書き込むのはごく少数でROMはいっぱい居ると言うぞ

104とある乙女の恋愛革命:2007/10/01(月) 08:24:10 ID:tnNdA6QQ
もう一日くらいあけるつもりだったけど
五人もいるなら十分だと思うので、さっそく投下する

105とある乙女の恋愛革命:2007/10/01(月) 08:24:26 ID:tnNdA6QQ
「――さすがね……ってなにやってんのよ!? その脚どけなさいって! それになんでアンタがここにいるわけ!?」
 状況に追いつけず放心していた美琴がミサカ一三五一〇号に詰め寄る。
 両手を腰にそえていかにも怒ってますな美琴は、じっとミサカ一三五一〇号の顔を覗き込んでいるため、向かい合った顔の距離は両
者の吐息が聞こえるほどに近い。
 一気にミサカ一三五一〇号の思考が沸騰する。
(あ、あ……ああぁ……み、美琴お姉様のお顔がこ、こんなにも近くにあります、とミサカはこれが夢ではないかと目の前の光景を疑
ってしまいます。こ、こうゆうときは――)
 上条を踏みつけている脚に急激な力を加える。
「んぎゃぁぁあああああっ!!」
 地下街に不幸な少年の悲鳴が響き渡った。
 ミサカ一三五一〇号の鮮やかな捕縛術によりできた人だかりが上条の悲痛な叫びで一層大きなものに発展していく。それでも風紀委
員(ジャッジメント)や警備員(アンチスキル)が派遣されてこないのは、中心人物に常盤台の超能力者(レベル5)が加わっている
からだろう。誰だって命は惜しい。とばっちりは受けたくないのだ。
 周囲の視線を一身に浴びながらも、ミサカ一三五一〇号はマイペースに目の前の人物だけを瞳に写す。
(やはり夢ではないのですね、とミサカは生ゴミの出した騒音で確認しました。とゆうことは、この艶やかに流れる髪も、透き通った
力強い瞳も、柔らかそうな唇も……唇も……唇――)
 眉根を吊り上げる美琴すらミサカ一三五一〇号には初めての表情ですっかり興奮してしまったわけで――。
「な、なにやってんのよ!!」
 吸い込まれるように自分のものを美琴のそれに近づけたものの、不穏な空気に気づいた美琴が距離をとってしまった。
 寂しさを感じながらも、うっとりとした表情で美琴を見つめる。
 その視線に気づいたのか美琴もミサカ一三五一〇号を見つめ返してきた。
 視線が交わる。
 一秒ももたずミサカ一三五一〇号は自分から視線を逸らしてしまった。相変わらずその顔は真っ赤である。
 そんなしぐさに美琴は首をかしげた。
「ん? アンタ……いつものあの子じゃないわね?」
 『いつものあの子』と呼ばれたミサカ一〇〇三二号がひどく羨ましかったが、そこは顔に出さないのがミサカ一三五一〇号。
「はい。あのミサカは検体番号(シリアルナンバー)一〇〇三二号、このミサカは一三五一〇号です、とミサカは初めてお会いする美
琴お姉様に心臓がどうにかなりそうですが完結に説明します。あまり気にしなくてもよいのですが、ミサカのこともあのミサカ以上に
覚えてくれると大変嬉しいです、とミサカはささやかな望みをさりげなく伝えてみます」
 しかし口には出すのがミサカ一三五一〇号。
 へぇー、と美琴は最後の台詞をすっぱり無視して目の前にいる自分そっくりの他人を眺め始めた。
 どうやら普段とは異なる姉妹(シスターズ)の登場で美琴の怒りも冷めてしまったようだ。さっきまでとは違う穏やかな声で話しか
ける。
「それで、アンタはどうしてこんなとこにいるの? 街中であの子以外を見るのって初めてなんだけど……なんかあった?」
 その声音に若干の不安を感じ取ったがミサカ一三五一〇号はそれを気にしたそぶりを見せず返事をする。
「いえ、美琴お姉様が不安に思うような事態はなに一つ発生していません、とミサカはネットワーク上でのバカな会話を思い出しなが
ら報告します」
 それを聞いた美琴が穏やかに微笑むのを見ると、ミサカ一三五一〇号は自分の胸が大きく高鳴るのを感じた。
 美琴が一方通行(アクセラレータ)の件以来、不用意にDNAマップを提供したことを後悔してる、とゆうことはネットワーク上で
も話題になった。そのDNAマップがなければ自分たちは生まれなかったのだから今更気にして欲しくなかった。
(ミサカたちが生まれてきたことさえも後悔しているのでは、と不安だったのですが――)
 美琴は強く責任を感じながらも、姉妹(シスターズ)たちの現状を気にかけてくれる。そこに義務感以外の感情を期待してしまう。
「――ところで」

106とある乙女の恋愛革命:2007/10/01(月) 08:24:48 ID:tnNdA6QQ
 と美琴が神妙な面持ちで口を開いた。しかし、その表情はどこか満足そうだ。
「いつまでそのバカを踏みつけてるのよ?」
「てめぇ! さっきからこっちをチラチラ見てたくせに今更ですか!? やっぱり御坂に思いやりなんか期待しちゃいけなかったんだ
な……今はっきりとわかったよ。――ってかごめんなさい早く助けてぇーっ!!」
 ミサカ一三五一〇号は目線を下げることすらせず、潤んだ目で叫びだす上条を一踏みで黙らせる。
「うるさい生ゴミです、とミサカは命の恩人とゆうことなどもはや頭の片隅に放置して足蹴にします。――とゆうわけで、この生ゴミ
が美琴お姉様に危害を加えそうなので護衛と……あ、憧れの美琴お姉様を見にきたのです、とミサカは恥ずかしながらも今日の目的を
暴露してしまいます」
 色々と暴露してしまったミサカ一三五一〇号だったが美琴はとくに気にすることはなかった。「護衛って」と苦笑いをする美琴に、
自分の行動が裏目に出たのでは、と本物の美琴に浮かれっぱなしだったミサカ一三五一〇号は焦ってしまった。
「ってゆーかさ……」
 どう説明しようかと考えていると、美琴が口を開いた。緊張でめったやたらに心臓が打ち鳴らされるのを必死に抑えて、ミサカ一三
五一〇号は美琴に姿勢を正す。
 まっすぐに見つめられると美琴はほんのりと頬を赤らめて、
「美琴お姉様っての? ……ちょっと恥ずかしいんだけど。あははっ、おなじ顔だけど――やっぱり妹だからかな? なんていうか、
くすぐったい感じ?」
「お、おお……」
 うつむき肩を震わせるミサカ一三五一〇号。
 このときの美琴は普段以上に無防備だった。その相手が自分のクローン体である姉妹(シスターズ)だとしても――その反応が身近
な人物に、白井黒子に誤差数パーセントの精度で似通っていることに気づかなかった。
「ど、どうしたのよ!?」
 美琴が、無用心に近づく。
「――お、お姉様ぁあああああっ!!」
「きゃっ!?」
 完全に不意をついたミサカ一三五一〇号の抱きつきは美琴を逃さない。
 ここぞとばかりに美琴に頬ずりをするミサカ一三五一〇号。白井と同様の、いやそれ以上の行動に寒気を覚える美琴。
(あ、ああ……これがあの美琴お姉様の柔肌なのですね、とミサカは……こんなまどろっこしい話し方にうんざりしながらミサカは全
力で美琴お姉様とお近づきに――あぁ……この吸いつくような質感、キメの細やかさ、そして……お姉様のお、温度――)
 ミサカ一三五一〇号は正常な判断を放棄し、その生まれたばかりの本能と言えるものに従う。
「ちょっ、やめ――ひゃぁ!」
 触れるか触れないかの力加減で、美琴の右手を撫でる。
 互いの頬を合わせたまま、優しくゆっくりと美琴の耳に息を吹きかける。
 美琴の反応を全身で慈しむかのように強く抱きしめる。
「あっ、いやっ――こ、このいい加減に……」
「あぁ……美琴お姉様ぁ、素敵です……ミサカは、ミサカはぁあああああ!!」
 もはや完全に理性を失ってしまったミサカ一三五一〇号は白井が見たら発狂しそうな――今でさえ二人の美琴の姿をした少女たちの光景に卒倒寸前だろうが――その行為をしでかそうとする。
(さっきは失敗でしたが今度こそは、とミサカは自分の体温上昇が異常値(エラー)を出して頭がボーっとするのなんか無視してやり
たいようにやってやります。とうとう美琴お姉様の唇に、ミサカの、ミサカの――)
 必死に抵抗する美琴を抱きとめながら、その少し潤んだ瞳を見すえる。
 その真摯なようで実際は欲にまみれた視線を受けて美琴はこれから自分に訪れる行為を理解した。
「え、嘘でしょ? それはまずいんじゃない? だって私たち姉妹なんだし……ねぇ、ホントにダメだから」
 二人の距離が縮まっていく。
「アンタだって女の子――そ、それにあのバカのことす、好きなんでしょ!?」
「――美琴、お姉様」
 地下街の電飾で生まれたいくつもの影。ゆっくりと対となったもの同士が重なっていく。
「い、いや……キスなんて……ダメ、なんだから――」
 人々の賑わいと鮮やかなイルミネーションに華やぐ地下街、美琴の言葉は遮られた。

107■■■■:2007/10/01(月) 17:51:35 ID:iqYwboOI
とりあえず、
>>105
あのミサカは検体番号(シリアルナンバー)一〇〇三二号、このミサカは一三五一〇号です、とミサカは初めてお会いする美
琴お姉様に心臓がどうにかなりそうですが完結に説明します。
完結→簡潔

108とある忘却の再認識の中の人:2007/10/01(月) 18:35:52 ID:DZx1XYoQ
>>87
いつも楽しく読ませてもらっています。これからも頑張ってください。
>>91
ミサカシスターズを群体として見ない、というのは盲点で、とても興味深かったです。

風邪でダウンしつつ投下します。
あと、読んでる人っていますかーって聞いてみたり。
過疎は直りつつあるかもしれませんが、やはり気になるものです。

109とある忘却の再認識の中の人:2007/10/01(月) 18:37:10 ID:DZx1XYoQ
 魔術師がよろめく。気絶もしない。殴っただけで人を飛ばせるような腕力は上条当麻には備わっていない。今魔術師がダメージを受けているのだって、フェイントを入れ油断させたからだ。
 だというのに、何故『上条当麻』は魔術(オカルト)と関わったんだろう。
 切り札は確かにある。あらゆる幻想を殺し尽くすこの右手は、確かに戦闘行為において有用だろう。だが、それはこんなにも容易に戦闘に巻き込まれるような世界に首を突っ込む理由には、ならない。上条には、理解できなかった。無論、そうせざるを得ない状況というモノも、確かにあるのだろうが。
「ぐ……」
 ダメージが抜けてきたのだろう、魔術師は静かに呻く。
「まいった。腑抜けているのは僕の方だったみたいだ」
 魔術師ステイル・マグナスともあろう者が、なんて、無様――
 そう、彼は自嘲する
「腑抜けているとかそういう次元でもないだろう」
 事情もロクに話さずにいきなり切りかかってくるなんて――
 上条は、呆れながらそう言った。
「それもそう、か」
 ぽつりと呟くその顔には、寂寥感が浮かんでいる。
 彼は首を振り、気を取り直したかのように何処からか大きな封筒を取り出し、投げる。不自然な軌跡を描くそれからは、魔術を用いていることが容易に推測できる。封筒は、上条の右手に触れた途端、慣性の法則を感じさせることもなく非科学的に停止した。
 中身は書類の束。建物の図面らしきモノもある。
 上条はそれらに軽く目を通した。
「――三沢塾?」
 書類の一枚に書かれているのはそんな名称。
 『上条当麻』の『知識』にはその名称は存在しなかったが、予備校であることはまず間違いないだろう。
 これが何だというのだろう。
 気になったので魔術師――ステイル・マグナス――に尋ねる。
 真逆彼がこの予備校に通うわけではないだろう。
 尋ねてみると、ステイルは心底退屈そうに言った。
「そこ、女の子が監禁されてるから。どうにか助け出すのが、僕の役目なんだ」
 ――だから、君も来い。
 言外に彼はそう言っていた。

 実際問題、インデックスのことを持ち出されたら、上条は抗うことができない。
記憶を失って間のない上条当麻にとって、インデックスは自身を構成する重大な要素なのだから。
 ――まぁ、そうでなくても上条当麻はステイル・マグナスに協力していただろうが。
 監禁されている少女の写真を見たとき、上条は愕然とした。
 馬鹿だろう。誰かに事情を話しさえすればすぐにでも逃げ切れたはずなのに。他人を巻き込まない代わりに捕まってしまっては元も子もないだろうに。
 何を考えているのか上条には理解できなかった。
 少女――姫神秋沙――は上条に助けを求めなかった。その報いは彼女が負うべきモノだ。
 ――それでも。それでも、上条が100円を渡してやることができなかったというコトは事実。
 塾の先生だ、という姫神の言葉に、違和感を覚えたのも事実。
 だから、上条は、姫神を助けたい、と思うのかもしれない。
 『上条当麻』ではない上条当麻は、自身が『初めて』抱いた感情に対して、こう思った。
 『上条当麻』のときも、自分はこのように感じていたのか、と。

110とある忘却の再認識:2007/10/01(月) 18:37:34 ID:DZx1XYoQ

 本当はすぐにでも三沢塾へ向かいたかったのだが、インデックスのことを蔑ろにするわけにも行かない。他勢力の魔術師からすれば、10万3000冊の魔道書はまだまだ狙う価値のあるモノだ。帰ってきたらインデックスは攫われていました、では話にならない。
 一定範囲内の指定対象を守護する。上条はその能力を保有していないが、ステイルは保有している。上条に『幻想殺し』があるように、ステイルには『魔女狩りの王』がある。それだけのコト。自分の能力だけではできるコトとできないコトがある、というのは当然のことだ。面白い事実であるとは言えないが。
 インデックスに今日の夕飯について話し、次いで猫を飼う、飼わないで揉めて、ようやく寮の部屋を出る。打ち合わせどおり、ステイルがコピー機で量産したルーン文字を通路に貼り付けていた。手書きである必要すらない、というのは如何なモノだろう。相変わらず、反則じみた必殺技だ。
 『魔女狩りの王』。
「――ルーンをばら撒いた『結界』の中でしか使えず、ルーンを潰されると形を維持できなくなる、か」
 何が言いたい、とでも言うような顔でステイルがこちらを睨む。
「いや、まぁ……大丈夫だとは思うんだがな」
 歯切れ悪く上条は言う。真逆そんなコトはないだろう、と。
 敵地に向かう間、相手の魔術師について聞き、あとは雑談に努めた。
 『上条当麻』がどんな人間だったかを知ることは重要だ。

「――見た目からは、特におかしな感じはしないものだな」
 外からわかってしまうようでは意味がないので、当然といえば当然なのだろうが。
「ああ。僕が見ても怪しい所は見当たらないよ。だからおかしいんだ」
 ――そう。それは異常であるはずなのに異常が感知できないという異常。
 確かにそこにいるはずなのに、魔術師アウレオルス・イザードの存在は感知できなかったのだ。
「実は魔術師なんていませんでした、とかいうオチじゃねーだろうな」
 時折、意識して『上条当麻』の言動を挟む。常にそこに気を使う余裕は、今はない。
「それはないね。もしそれが真実だったとしたら、僕が此処に呼ばれるはずがない」
 なら高度な隠蔽を施しているのか。上条は不安を感じた。そんな所に素人同然の自分が足を踏み入れて、大丈夫なのか、という不安を。
「大丈夫なはずがない。最悪、入った途端にトラップ全起動即時串刺し、なんてコトも有り得るさ」
 そのために君がいる、と魔術師は嗤いながら言った。
「……は?」
「死にたくなければ死力を尽くして右手を楯にしろ。そして僕も守れ」
 君がいる限り隠密行動なんて不可能なんだから。ステイルはそう言って一歩前に足を踏み出す。
「……ちょっと待て。隠密行動が不可能、とはどういうことだ?」
「君の右手は発信機のようなモノだ、ということさ」
 理解はできなかったが納得はした。故に上条も覚悟を決め、一歩前に足を踏み出した。

111とある忘却の再認識の中の人:2007/10/01(月) 18:38:11 ID:DZx1XYoQ
短文&>>109のタイトルミスすみません。

112■■■■:2007/10/01(月) 19:12:12 ID:9Dbnj1wk
>>104 >>108 乙です。
とりあえず自分も読んでますよー。
まあ、ここいらで過去作の職人さんらが出てきてくれると祭りになるんじゃないかなぁ………なんて思ったり。
や、根拠は無いですが。
ではでは (〃д)ノシ

113恋愛革命の中の人:2007/10/01(月) 21:36:48 ID:CHOap2js
>>107
……俺ダメ人間だ
貴君の誤字発見に感謝です

>>108
かなり無理矢理なんだけど面白そうだったんで
再認識はもうすぐ動きがありそうですねって勝手に推測してみたり

>>99-103 >>107 >>108 >>112
挙手と拝読とか、いろいろ感謝
相変わらず過疎気味だけど投下は明日か明後日にする
知らないうちに新しい職人さんが出てくれることに期待

114とある乙女の恋愛革命:2007/10/04(木) 07:28:56 ID:MM0bjjEw
三日後になったけど
過疎りすぎで連レスですか……投下しづらい

ま、読んでくれる人がいるようなので続き、行きます

115とある乙女の恋愛革命:2007/10/04(木) 07:29:28 ID:MM0bjjEw

「あ、あぁ……ぁ……」
 ほんのコンマ数秒前までミサカ一三五一〇号に抱きしめられていた美琴は、急にその支えを失い――目の前を銃弾が通りすぎたこと
に腰を抜かしていた。
(とっさに回避しなければ完全にミサカの鼻を消し飛ばすコースでした、とミサカは冷静さを取り戻すために思考を状況把握に徹底、
周囲を警戒します。……それにしてもせっかくのチャンスを奪ったのはどこのどいつですか、とミサカは美琴お姉様の唇が奪えなかっ
たのでかなり苛立ちながらも犯人を――)
 ミサカ一三五一〇号は視界の片隅に見知った人物がいることに気づいた。
 御坂美琴でも、上条当麻でもない。それ以上によく知る――同じ顔を持った異なる人間。
『――ミサカ一〇〇三二号、これはいったいどうゆうことですか、とミサカは――いえ、ミサカ一三五一〇号は路地裏から歩いてくる
あなたに説明を要求します』
『あなたが足蹴にするなどという粗末な扱いをしていたその人に会いに来ただけです、とミサカ一〇〇三二号は命の恩人へのひどい対
応が許せないですが大人になって静かに返答します』
 距離が離れているので口頭ではなくネットワークを使用する。これでは他のミサカにも聞こえてしまうがこの状況ではしかたない。
 ミサカ一〇〇三二号はしっかりとした足取りでミサカ一三五一〇号に歩み寄る。
 ――先刻の銃撃。
 人ごみの中で他人に危害を加えず標的を狙うほどの技術。
 それを周囲の人間、更には各種の警報機(アラーム)に悟られないだけの振舞い方。
(――ですが、一番の理由はそれが可能な銃器です、とミサカは犯人に突き出す証拠を発見した探偵のような気分に浸ってみます)
 悠然と歩を進めるミサカ一〇〇三二号に立ちはだかる。
「そこをどいてあの人のところへ行かせなさい、とミサカ一〇〇三二号は進路をふさぐあなたに毅然とした態度をとります」
「さきほどの説明に答えてもらっていません、とミサカ一三五一〇号はあなたの説明不足を指摘します。あなたがここへ来た理由では
なく、発砲した理由を聞いているのです、とミサカ一三五一〇号は補足しつつ思考がそこへ至らないミサカ一〇〇三二号の能力に疑問
を持ってみます」
 五メートルほどの距離をとって対峙する。
 基本的に長距離からの狙撃や銃器、電撃を使用した中距離戦闘などが得意な姉妹(シスターズ)だが、それでも一般人とは比較にな
らないほどの接近戦の技術を保有している。
 ミサカ一〇〇三二号を視認できた時点で油断などできるはずもない。
 けれど、ミサカ一三五一〇号はありもしない余裕を見せつける。
「――言っておきますが、あなたが撃っていないなどの誤魔化しは不必要です、とミサカ一三五一〇号は念入りに釘を刺しておきます。
あのようなことができる銃器などスキルアウトが持っていはずはないですし、学園都市に存在する正規部隊に狙われる可能性、まして
や外部犯など侵入すらできないでしょう、とミサカ一三五一〇号はあなたに言い逃れができないように追い詰めます」
 ミサカ一〇〇三二号はこれに大仰な溜息をつく。
「疑問を持つのはミサカの方です、とミサカ一〇〇三二号はあなたの発言に呆れて言い返します。ミサカたち姉妹(シスターズ)にと
ってお姉様(オリジナル)がその人と同等……とは言いませんが、それでもとても大切な人であることはあなたもわかっていると思い
ます、とミサカ一〇〇三二号はもったいぶって遠まわしに言ってみます。まぁ、ミサカが想定した事態よりも不可思議な現象が発生し
ていたため不本意でしたが、発砲とゆう原始的な方法をもってあなたの行動を阻止したのです、とミサカ一〇〇三二号はあなたにもよ
くわかるように詳細に説明してやります」
 新たに同一の容姿を持ったミサカ一〇〇三二号の登場に不穏な気配を察し、周囲にできていた人ごみが少しづつ距離をとり始めた。
 目の前の姉妹(シスターズ)は上条を、そして美琴を守るためにこの場所へ来たらしい。
 それは即ち、ミサカ一三五一〇号の想いを妨げる壁となることだ。

116とある乙女の恋愛革命:2007/10/04(木) 07:30:18 ID:MM0bjjEw

(あのゴミ野郎を引きずって、さっさと帰ってくれるならミサカもこの場は下がろうと思いましたが、ミサカ一〇〇三二号がそのつもり
なら仕方ありません、とミサカは自分の決意を固め最後の手段にでます)
 ゆっくりとした動作で電子ゴーグルを引き下げる。
「それは戦闘の意思ありとして対処してかまいませんね、とミサカ一〇〇三二号は自分もゴーグルをかけながら確認します」
 確認とはよく言ったものだ。
 電子ゴーグルをかけるということはミサカ一三五一〇号を受けて立つことと同じ。
 決闘などではない。そんな高尚なものではない。
 ミサカ一三五一〇号はもっと美琴と近しい存在になりたい。ミサカ一〇〇三二号はその行為に納得がいかない。
 これはただの姉妹喧嘩なのだ。
 ネットワークはすでに切断済み。もはや後戻りなどできない。
「今現在一番生まれが早いからと言って偉そうにしないでください、ただの年増ではないですか、とミサカ一三五一〇号は障害となる
あなたに言い返してやります。早速ですが――戦闘開始です、とミサカは宣言します!!」
 その声と同時にオモチャの兵隊(トイソルジャー)を抜き放ちミサカ一〇〇三二号に駆け出す。
 通行人などに被害を出さないため、また一気に勝負を決めるためにも接近戦による短期決戦を選択した。同じようにミサカ一〇〇三
二号も距離を詰めてくる――がその手には銃器などの武器はなに一つない。
(格闘ですか、とミサカは相手の出方を予想します。銃を持っているミサカにはその方が有効と判断したのでしょうが――)
 距離が零になる前に、オモチャの兵隊(トイソルジャー)を――ミサカ一〇〇三二号の目の前に投げつける。
 一瞬の目くらましになればかまわない。その隙に懐へ入り込めばいい。
「――想定済みですっ、とミサカは落ち着いて対処します!」
 ミサカ一〇〇三二号は飛んできたオモチャの兵隊(トイソルジャー)を右手で受け止め、地面へ払いのける。
 身体をかがめて、飛び込もうとした瞬間――。
 払い落とされたその向こう、突き出されたミサカ一〇〇三二号の左手に――高強度の電界の歪みがあった。
 それは馴染み深い欠陥電気(レディオノイズ)による雷撃の予兆。
 集約された『力』が紫電の雷光を生み、一振りの槍となって襲いかかる。
「くっ!!」
 電場を操作し、その矛先を地面へと向けさせる。
 それでも全てを受け流しきれず余波で右腕に痺れがあるが、腕をかばって戦える相手ではない。
 逆に不意をついてきたミサカ一〇〇三二号が一足で懐に入り込んできた。
 鳩尾を狙って右拳が繰り出される。
(調子に乗らないでください、とミサカは真っ向から迎え討ちます)
 一歩を踏み込み、完全に速度が乗る前の拳をいまだ力の入らない右腕で受ける。
 右腕をクッションにして衝撃を軽くしたので、痺れのおかげだとしても軽い痛みだけなの体勢を崩すほどではなかった。
 防御と同時に、がら空きになったミサカ一〇〇三二号の脇腹に右膝をえぐりこむ。
「ごほっ!」
 ミサカ一〇〇三二号が顔を歪め息をもらす。
 追い討ちをかけるために左拳をはなつ――が、ミサカ一〇〇三二号に届く寸前にその軌道がズレた。
「――なっ!?」
 視界が揺れ、足首に弱い衝撃を感じる。
 立っているのはコンクリートのはずなのに、力を込めて踏みしめようとした右足に確かな感触が存在しない。
(足を払われて――)
 体勢を立て直そうと思考が追いつく前に鈍い衝撃と焼けるような痛みが腹部に走る。
 崩れ落ちそうな体勢では打撃の回避も、衝撃の緩和も不可能だった。
「がはっ!!」
 今度こそミサカ一〇〇三二号の右拳が突き刺さった。
 さっきのお返しとばかりにくの字に折れ曲がったミサカ一三五一〇号に膝を叩きこもうとする。
(そう簡単にはくらいません、とミサカは右手の感覚を確かめ待ち構えます)
 両腕を交差する形で膝蹴りを受け止め、衝撃を受け流すと同時にバックステップで間合をはかる。
 狙いを定めるように左手を伸ばし、ミサカ一三五一〇号の全身から空気の爆ぜる音とともに青白い火花が撒き散らされる。
 さながら鏡ごしの存在のように、ミサカ一〇〇三二号も雷撃の槍を構えていた。
 刹那。
 空気を突き破るような轟音とともに二人の欠陥電気(レディオノイズ)が力を解き放った。

1171-169:2007/10/04(木) 11:04:49 ID:a/lH5cig
 とある喫茶店の一日 〜Mad_Tea_Party〜

 君はこんな噂を耳にしたことはないかな?
 その喫茶店には、普通にはありえない出会いが待っている。
 現在過去未来の全てにおいて接点のないはずの人とも、“偶然”巡り会えてしまう不思議なカフェ。
 アーネンエルベ。
 もしも街を歩いている時、そんな名前の看板を見かけたなら。急ぎの用事がないなら、足を踏み入れてみるといい。
 とても貴重な経験が出来るはずだ。
 まあ身の安全の保証は出来かねるが……いやいや、何事も自己責任ということだよ。
 店自体の質もとてもいい。マスターオリジナルのブレンドコーヒーに、軽めのツナのサンドウィッチ。あとはモンブランでもあれば言うことなしだ。
 そうそう、座るならテーブル席を選ぶべきだ。向かいに座る人がいたなら、その人はきっと、君が絶対に出会えない相手だろうからね。

 キィッ、と擦れる音を立てて木製の扉が開く。カランコロンという鈴の音が、少し遅れて続いた。
 視界に入ってきたのは、電灯を極力排した薄暗いカフェテリア。まあ雰囲気づくりは悪くない。さびれていると言い換えることも出来そうだが、どうせ“この街”では平日の昼間に繁盛している店はないから気にすることもないだろう。
 案の定、並べられたテーブルはどれも空席だった。たった一つ、奥まった場所に置かれたテーブルに赤っぽい制服の少女と白っぽい修道服の少女が陣取っている。白昼堂々サボリとはたいした度胸だ。修道服ということは、第十二学区の学生かもしれない。わざわざこんな所まで足を運んだのは、教員の見回りを回避するためだろうか。
(…………ン?)
 不意に、自分の思考に疑問が浮かぶ。
“こんな所”って、一体どこだ?
 この店に入る前に、街のどのあたりを歩いていたのか思い出せない。
 しかし、疑問が違和感に変わる前に、カウンターから声がかかった。
「――いらっしゃいませ。お一人ですか?」
 男にも女にも、大人にも子供にも、聖人にも囚人にも見える人物。ついでに言えば店長とも店員ともとれる態度だった。長すぎる髪を大きな三つ編みに束ね、花柄のエプロンをつけてコーヒーカップを持ち上げている姿に、彼はなぜだか対軍兵器級のツッコミを入れたくなったが、ギリギリで自制する。
「……あァ」
「テーブル席とカウンター席がございますが、どちらに?」
「テーブル」
「かしこまりました。左手奥のCテーブルをお使いください。注文がお決まりになりましたら、卓上のベルを鳴らすか、カウンターに直接声をかけてくだされば承ります」
 手振りで了解したことを伝えると、彼は支持されたCテーブルとやらに向かう。静電気で髪の毛を持ち上げられているような奇妙な感覚があったが、不思議と店を出ようという気にはならなかった。
 ――その喫茶店には、普通にはありえない出会いが待っている。
 いつ聞いたのかも思い出せない、うさんくさい噂話を真に受けた訳でもないのだが。

 こうして学園都市最強の超能力者、一方通行(アクセラレータ)は、今日という取り戻せない日をアーネンエルベで過ごすことになった。
 時刻は午後一時。少し遅めのランチタイム。

                    ◇   ◇

1181-169:2007/10/04(木) 11:05:32 ID:a/lH5cig
 一方通行が座ったテーブルの二つ隣り、Aテーブルには、赤と白の対照的な少女達が座っている。
 クリームソーダのアイスに刺さってしまったストローと格闘している修道服の少女がインデックス。注文した紅茶に自前のブランデーをボタボタ足らしている冬用制服の少女がサーシャ=クロイツェフ。
 彼女達は、一方通行が想像したように学校をサボってこの店に来ていた訳ではなかった。二人はもともと学園都市のどの学校にも所属していない、いわゆるモグリの住人なのである。
 しかし、それも実は今日までの話。
「明日から、かぁ。いいなぁサーシャは。ロシア成教公認で転入出来るなんてー」
「そうは言うけど、あくまで諜報活動の一環としてであるし。むしろ周りの人たちを騙しているようで気が引けるというか」
 インデックスのぼやきに、サーシャが控えめに答える。
 ここ最近の彼女たちの話題は、「サーシャの学園都市への転入」に集中していた。
 一端覧祭と『灰姫症候(シンデレラシンドローム)』の事件が無事終わり、さあ別れを惜しもうとした所へやって来た国際郵便。開けてみれば近所の中学校への転入手続き書類とサーシャに当分の間学園都市への駐留を命じる指令書だったのだから驚いた。
 えらいこっちゃえらいこっちゃと騒ぎながらも準備しているうちに、いよいよ明日が初登校の日。
 今は学生向けのデパートで注文しておいた冬服教科書その他の必要雑貨をまとめて引き取ってきた帰りなのである。テーブルの下にはパンパンに膨れた紙袋がいくつも置かれていた。大分冷え込んできたこともあって、冬服だけは受け取ってすぐに着替えたが。
 ちなみに、サーシャは転入先である夕凪中学校の女子学生寮に既に部屋を与えられていたが、そちらではほとんど寝泊りしていない。これまで通りとある少年の部屋に押しかけ居候のような形で暮らしている。
「でも、さあ」
 インデックスの愚痴は止まらない。ここ数日ずっとだ。
 上条さん家の白シスターは、決して赤シスターを妬んでいる訳でも、ましてや恨んでる訳ではない。それだけは絶対だ。
 けれども、
『サーシャが学校に行くようになると、また私は昼間一人ぼっちになっちゃうもん』
 口に出した訳ではないが、サーシャは友人のそんな隠された本音を察してしまっていた。
 自分が属している魔術サイドとは敵対していると言って差し支えない科学サイドの街で、朝から放課後までという長い時間をたった一人で過ごす寂しさはどれだけのものだろう。サーシャはようやく出会えた、さの寂しさを分かち合える友達なのだ。
 その彼女までが、学校に通うようになれば。
(……問一。どうすればいいのでしょう?)
 落ち込み続ける友にかける言葉も浮かばず、天にまします我らの父とかに祈ってみる赤シスター。だがそう簡単にありがたいお告げを下さるほどこの作品(せかい)の神様は親切じゃない。
 その代わりと言ってはなんだが、感覚的には右斜め後方から幻聴じみてか細い女の子の声が聞こえてきた。
(えっと。……とりあえず、何でもいいから褒めて、褒めて、褒めまくってみるのはどうですか……?)
 なるほど。ありがとう私の天使(スタンド)。
(え、そんな、私オラオラとかアリアリとかだが断るとか出来な――あれ、もしかして今後私ってそういう扱いなんですか?)
 それこそ神のみぞ知る、だ。
 サーシャ=クロイツェフは意を決し、怒涛の褒め殺し作戦を敢行する。
「そう、だ。インデックス、注文した時と今日と、デパートまでの道案内をしてくれてありがとう。やはりこの辺りの地理には、まだ慣れていないから」
「大した事じゃないよ。私が案内できたのは、昼間暇な時にぶらぶらするコースだったからだもん。――うん、昼間、暇だから」
 一層暗くなる声に、サーシャは第一撃が裏目に出てしまった事を悟る。
「うう……ん、荷物も、半分持ってくれて、感謝している。これはとても一人で持てる量ではない」
「……でもさりげなく教科書とかの重い袋を自分で持って、服とか靴なんかの軽い方を私に回してるよね」
 続く第二撃が(両者の)ボディをえぐるように打つ。
「ああああああ。そ、そのクリームソーダ、おいしい?」
「うん。サーシャのおごりだけどね。とうまは私にお金持たせてくれないから」
 第三撃が急所に当たった! 効果は抜群だ!
「…………大丈夫?」
「うん。うん。大丈夫だから……今は貴女のために祈らせてください……」
 挙句の果てに慰められてしまう。十行足らずで精神的にフルボッコされたサーシャの明日はどっちだ。学校か。


 その頃、彼女達の二つ隣のテーブルで白く、白く、白い超能力者が四肢を震わせてツッコミ衝動に耐えていたことを知る者はいない。
 誰にだって出会いを選ぶ権利はある。

1191-169:2007/10/04(木) 11:08:23 ID:a/lH5cig
しばらく来ない内にまたえらく過疎ってますが……ともあれ復活の1-169です。
とは言え新たな長編を引っさげて――ではなく、今回はこっそりクロスオーバー気味のギャグSSです。
考えついたはいいものの、「これ話に組み込むの無理じゃね?」といった“ありえない展開”のストックを、某ドラマCDの形式に則ってぶちまけようかと目論んでおります。
ちゃんと続くかどうかは不明、てか収集つくのだろうか、とか思いながら、少しでも過疎の解消になれば幸いです。

>>恋愛革命の方
>>再認識の方
まとめて読ませて頂きました。ダブルGJ!
ローギアな上条さんは新鮮だし、お姉様一筋のミサカは可愛いし、続きを楽しみにしております。

120■■■■:2007/10/04(木) 11:22:06 ID:Wz6cxHKI
>>114 遅ればせながら、乙!

>>119 1-169氏復活キター!!(そしてそのCDネタを知っている身としてはニヤニヤさせてもらった)
初めてのリアルタイム投下にちょっと感激。できれば終幕まで続けてほしいと勝手に希望を述べてみる。

どちら様も続きに期待して、また以前のような祭りが起こるといいなぁ、と月の裏側に願いをかけてみる。
ではでは。  (〃д)ノシ

121■■■■:2007/10/04(木) 13:08:30 ID:EH6afwZA
シンデレラの方復活キタ!?そして恋愛革命の方もGJ!!

122恋愛革命no:2007/10/04(木) 13:53:02 ID:iL6K0xfo
>>119
おぉー、1-169さんキタ
SSならではって感じでサーシャが素敵ですねー

>>119 >>120 >>121
読んでくれて感謝です

123恋愛革命の中の人:2007/10/04(木) 14:07:11 ID:iL6K0xfo
ミスった……名前がおかしい
途中で書き込んじまった、連投すまん

現在投下中の『とある乙女の恋愛革命』だけど……一応、次回で終わり
ちょっと投下が遅くなるかもだけど勘弁してくれ

124■■■■:2007/10/04(木) 17:24:46 ID:xZkxT/p6
AA○Mですか

125■■■■:2007/10/06(土) 16:35:54 ID:FA81RdJA
1-169さんは型月スキーな人ですか?

126■■■■:2007/10/06(土) 17:36:05 ID:H08R5hVo
友達に借りて聞いたけど、おもしろかたよ〜〜

127■■■■:2007/10/07(日) 03:16:27 ID:9H8X8rWo
過疎っている現状に嘆きつつ

恋愛革命の方
再認識の方
1-169さん

みなさんまとめGJ! 応援してます。

128Ghost056:2007/10/08(月) 11:44:19 ID:MlddsM8k
お久しぶりです、恋愛革命の中の人です
今回はデスクトップに懐かしの『伺か』がやってきたので
魔法名など名乗ってみました――Ghost056(二次元にも愛を)

ごめんなさい、続き投下します

129とある乙女の恋愛革命:2007/10/08(月) 11:46:31 ID:MlddsM8k

 ミサカ一三五一〇号はその存在に息を飲み、強大な力に身を震わせ肩を抱き寄せた。
 二槍の雷が交わることはなかった。理性を失った獰猛な牙はどちらも獲物を捕らえることもなく――、
 一人の少女によって打ち消された。
(これが美琴お姉様の……ミサカたちのお姉様(オリジナル)である超電磁砲(レールガン)の力なのですね、とミサカは目の前の光
景に唖然としながらも美琴お姉様の素晴らしさに感嘆の溜息をこぼします)
 ミサカたちが放った雷撃の槍を美琴は自分で生み出したかのように操作し、全てを放電しきってしまった。
 両側からの雷撃を同時に操作するなど、たとえ超能力者(レベル5)であろうとも一瞬のミスが命取りになるような行為だった。そ
もそも受け止めること自体が間違っている。
 周囲に被害が及んでしまうが、普通は相殺とゆう選択肢を受諾してしまうだろう。
 その妥協を拒絶し、平然として困難をやってのける。超電磁砲(レールガン)とはそういう存在なのだ。
「――アンタたち、もうやめなさいっ!!」
 感情の高ぶりを示すように全身で激しい火花をまとうと、美琴はミサカたち二人に怒号を飛ばした。
 今日が初対面のミサカ一三五一〇号にとっては、当然だが、美琴に怒鳴られることも初体験だ。眉根を寄せた表情で睨まれミサカ一
三五一〇号はすくみ上がってしまう。
「ちょっと来なさい」
 もはやどうすればいいかわからないミサカ一三五一〇号は大人しくその言葉に従った。ミサカ一〇〇三二号も特になにも言わず美琴
に歩み寄る。
 美琴たちを取り巻いていた人だかりはミサカたちが戦闘を始めると散り散りになって逃げていたが、それでも能力者同士の喧嘩など
珍しくないので今では再び喧騒が戻ってきている。
 美琴は路上の片隅に逸れて苛立ちを隠さず告げる。
「ったく――地下街のど真ん中でなにやってんのよ? 姉妹喧嘩くらい別にいいんだけど……さっきのはやりすぎだからね?」
 怒られるということ自体、ミサカ一三五一〇号には経験が足りないのだ。
(あぁ……ど、どうすればいいのでしょう、とミサカは不測の事態に対応できずに慌ててしまいます)
 美琴と目が合った瞬間、肩をすくめ目を瞑ってしまった。
 すぐ近くに人の体温を感じる。きっと美琴だろう。
 一発くらい雷撃をくらうのでは、とミサカ一三五一〇号が身構えた瞬間だった。
「お、おお、お姉様が三人もぉおおおおおおおっ!?」
 騒がしい地下街に一際大きな嬌声が響き渡る。

130とある乙女の恋愛革命:2007/10/08(月) 11:48:27 ID:MlddsM8k

 地下街で発電系能力者(エレクトロマスター)二人が喧嘩をしている。
 その報告が届いたのは『学び舎の園』からちょうど目的地であった『風紀委員活動第一七七支部』に移動していた最中だった。
『もしもし? まだこっちに着いてないですよね。ちょっと寄り道してもらえますか?』
 電話越しに同僚の初春飾利が用件を報告した。
 たかが喧嘩ぐらいで風紀委員(ジャッジメント)が出る必要はないのだろう、仕事放棄というわけではないが正直そう思ったので素
直に言ったところ、
『まぁ、異能力者(レベル2)ほどの能力者みたいなんで、私もそう思うんですけど……でも行った方が良いと思いますよ?』
 もったいぶった言い方に今すぐにでも背後から頭の花をむしり取ってやろうと思った。
 が――、
『どうも「御坂」さんもそこにいるみたいで……』
 前言撤回ですの。今度お礼に何かおごってあげますわ。
 空間転移(テレポート)で学バスから途中下車し、白井黒子は驚異的な速度で地下街へ向かった。

 ともすれば鼓膜を破りそうなほどの大声にミサカ一三五一〇号は閉じていた目を見開いて振り返った。
 そこには自分よりも二〇センチほど小柄な、リボンで髪をツインテールにまとめた少女――白井黒子が、さも驚いたという表情でわ
なないていた。その視線は美琴、ミサカ一三五一〇号、ミサカ一〇〇三二号の三人を行ったり来たりしている。
(この少女は誰なのでしょう、とミサカは初対面の少女を見て素直に疑問に思います)
 お姉様と言っていたし、もしかして美琴の知り合いかと思って見てみると――、
「あぁ……これが不幸だぁーってやつなのかしら」
 さっきまでの威厳などどこへやら、がっくりとうなだれた超能力者(レベル5)がそこにはいた。
 ミサカ一〇〇三二号も初めて見た人物のようで不思議そうに美琴を眺めている。
『これは美琴お姉様の知り合いと見ていいのでしょうか、とミサカ一三五一〇号は美琴お姉様の態度からはそうは思えないので率直な
意見を求めます』
『知り合いだとは思いますがお姉様(オリジナル)はひどく憔悴していますね、とミサカ一〇〇三二号はあなたの意見に若干の同意と、
かなりの疑問を含めて回答します』
 ネットワーク上で会話をしていると突如として美琴とミサカたちの真ん中に白井が現れた。
 音もなく、衣服をたなびかせることもなく……それは写真を切り抜き、貼り付けたかのような挙動だった。
「お、お姉様っ! こ、こここ、これはいったいどうゆうことなんですの!? 大覇星祭のときにお姉様のお母様にはお会いなりまし
たけれど、あ、あああのときにはご姉妹がいたなんて言わなかったじゃないですのっ!!」
 白井の瞳はひどくキラキラしていたのだが、ミサカ一三五一〇号は逆にその輝きで背中に嫌な汗をかいてしまった。
 なんというか――この少女は危険な気配がする。理屈ではなく感覚で理解した。
 それをミサカ一〇〇三二号に告げると、
『ミサカもこの少女からは生理的な嫌悪感がします、とミサカ一〇〇三二号は初対面で申し訳ないですが本音を言わせてもらいます。
つけ加えると……先ほどのミサカ一三五一〇号からも同様の怖気を感じました、とミサカ一〇〇三二号はあなたを射撃した理由につい
て言及させてもらいます』
 苦笑いを続けている美琴を見ると、どうやら悲しいことに同じ感覚なのだろうと容易に想像できる。
 「ですけど――」と不意に白井が真剣な声音で美琴を見据えた。
 その表情に美琴が過剰に反応したようにミサカ一三五一〇号には見えた。
「あまりにも似過ぎではありませんか? ――っ! もしやお姉様は三つ子なんですのってゆーかこうなりゃお姉様だろうがそっくり
さんだろうがみんなまとめて頂きますわ!!」
 直後、美琴の鉄拳が白井の額に吸い込まれていった。

131とある乙女の恋愛革命:2007/10/08(月) 11:50:12 ID:MlddsM8k

 白井は傍観を決め込んでいた上条に引っ張られてどこかへ行ってしまった。
 去り際に、
「ちょ、殿方!? 貴方につかまれると空間転移(テレポート)ができませんの! ですから放して――ってお姉様ぁっ! そっくり
さんに浮気しそうになった黒子を許してください! やはり黒子はお姉様一筋ですの、一生ついて行きますわ――ってだから貴方は早
く放してください!! お姉様ぁあああっ!!」
「――って俺ってば雑用ですか? 今回はしかたねぇけどさぁ……ちくしょう不幸だぁあああっ!!」
 そう叫んでいたが気にしたら負けだ。
 また、ミサカ一〇〇三二号も「あの人が心配なのでミサカはここで失礼します、とミサカ一〇〇三二号はお姉様(オリジナル)も心
配ですが、所詮あの人と比べるほどじゃないな、と自己完結し二人の追跡を開始します」と言って追っかけて行ってしまった。
 台風のように現れた白井がいなくなると美琴は大げさなくらい盛大に溜息をついた。
「ごめんね、アンタたちをあの子に知られるわけにはいかないんだわ。踏み込んで欲しくないってのもあるけど……あの性格だから。
姉妹(シスターズ)が九〇〇〇人近くいるなんて知られたら、なにが起きるかわからないし」
 うんざりした様子で口を開いた。
 その言葉にミサカ一三五一〇号は胸を締めつけられる。
(あぁ、美琴お姉様はベタベタされるのが嫌いなのですね、とミサカはさきほどの少女にミサカと同様の雰囲気を感じてしまったこと
に愕然とします。これを機にミサカもお姉様(オリジナル)と呼び方を戻した方がいいのですね、とミサカは落ち込みながらも渋々で
すがそう決めることにします)
 行き着いた結論にミサカ一三五一〇号が呆然としていると美琴はそれに気づき、
「……アンタも、あんなふうになっちゃダメなんだからね? わかった?」
 諭すように告げる美琴だが今のミサカ一三五一〇号には死刑宣告もいいとこだ。
(ミサカはこれからなにを糧に生きればいいのでしょう、とミサカはいもしない神様にすがるような気分で聞いてみます)
「それにね――」
 少しうつむきながら美琴は付け加える。
「アンタは本当の妹なんだから……その、お姉様とかじゃなくて……『お姉ちゃん』とかでいい、のよ?」
 真っ赤になってそう言ったがそれでもかなり恥ずかしかったのか「あ、でも気が向いたらっていうか、別にそう言ってほしいわけじ
ゃなくてね? アンタがそう呼びたいなら……その……ね?」と両手をバタバタさせながら言い訳がましいことを言った。
 ……お姉ちゃん?
 停止寸前だったミサカ一三五一〇号の思考回路に不自然な語彙(キーワード)が入ってきた。
(お姉様(オリジナル)は今なんと言ったのでしょう、とミサカは自分の聴覚器官に異常がないか念入りに確認してみます。……機能
正常(オールグリーン)、ということは本当に『お姉ちゃん』と言ったのでしょうか、とミサカはいまだに信じられない事態に思考が
追いつかなくて対処できません)
 美琴は相変わらず呆けてしまっているミサカ一三五一〇号に小さく溜息をつくも、柔らかな笑顔を浮かべる。
「ほら、いつまでもここにいるわけにはいかないでしょ? 私も病院まで一緒に行くから、さっさと戻るわよ!」
 言うが早いか、もはや競歩では、と疑いたくなる速度で美琴は歩き出してしまう。
「あ、待ってください……その……お、お姉ちゃん? とミサカは恐る恐る口に出してみます」
 一度だけ美琴は立ち止まり――、
 「行くわよ」
 と呟いてまた歩きだしてしまった。ただ、その頬には鮮やかな紅葉が訪れていたが。
 ミサカ一三五一〇号は美琴に駆け寄り、歩調を合わせて歩きだす。
「お・ね・え・さ・まぁーっ」
「だぁああああっ!? だから、それはやめなさいって――」
 思いっきり嫌な顔をされてしまったが、それでも歩幅は小さく、さっきよりゆっくりと歩いてくれた。
 自分たちは造られた関係だが、それでも本当の姉妹として肩を並べて歩くことができる。そう思うと、ミサカ一三五一〇号の足取り
は自然と軽くなっていった。むろん隣に美琴の存在を感じるからなのだが。
 だからこそ――さりげなく手を握ろうとするのは止められない。
(この際ですから性別も血縁関係も無視の方向でいきます、とミサカは憎き恋敵を出し抜くために決意を新たにします)
 ミサカ一三五一〇号の、恋する乙女としての戦いはやっとこさ始まったばかりだ。

132Ghost056:2007/10/08(月) 12:20:33 ID:MlddsM8k
全五回でお送りしました『とある乙女の恋愛革命』でしたが
いかがったでしょうか?
わかったことはミサカを登場させると呼称がちょっと面倒だ、とゆうことです
それでも美琴ラヴのミサカは書いてて楽しかった

次はなんだろう……
姫神はまだ書き終わってないし、一方さんは企画倒れだし
――まさか初音ミクとのクロスオーバーか!?
ってことで次のSSも鋭意執筆中です

小夜に橘花、安子さん、さくら、岡本さん……みんな素敵です

133■■■■:2007/10/10(水) 03:56:30 ID:.Tridtv.
潤い少ないサーシャ分に潤いを与えてくれるのは1-169さんだけでっすv
今後の活躍にも大期待でスーvv

134DIS:2007/10/11(木) 00:12:30 ID:kte3gC.k
gj

135■■■■:2007/10/11(木) 16:36:04 ID:959Ce3so
ひどく過疎ってるな
いや、ROMならいる……のか?

136■■■■:2007/10/11(木) 18:31:18 ID:0i6PklmY
いるぞ

137■■■■:2007/10/11(木) 18:43:21 ID:8n93tKwk
ここにもいます

138■■■■:2007/10/11(木) 19:57:16 ID:t8EyIUho
ここにもいますよ

139とある乙女の恋愛革命 ―後日談―:2007/10/12(金) 00:02:14 ID:Xvlx20To
「べ、別に殿方にお逢いになりたくて来たわけじゃありませんのよ? 今日は、その――そう! 風紀委員(ジャッジメント)の仕事
ですの! まったく……こんなに忙しいわたくしが貴方のようなお暇な方に時間を使ってあげてるのですから、少しくらいは感謝して
ほしいですわ!!」
 白井はそうぼやきながら、今日も上条の前でたくさんの書類とにらめっこをしている。
 またしても初春が面倒そうな内容のものばかりを回してきたのだ。ここ最近、どうも白井への対応に嫌がらせな雰囲気をビシビシと
感じてしまう。一度これでもかというほど地獄を見せた方がいいかもしれない。
「いや、だったら俺のことはほっといていいんだけど……」
 上条は上条で小萌先生から出された山のような宿題を前に悪戦苦闘している。
「かまいませんわ。一般高校レベルの宿題の一つや二つ……それに九月のお礼がまだですのよ? わたくし、借りは返さないとすっき
りしませんの。――ほらそこ、そうではなくて……この方が簡単に解けますの」
 常盤台中学は世界有数のお嬢様学校であり、『学園都市』でも五本の指に入る名門だ。上条が通っている高校の内容などとっくの昔
に履修済みなのだ。
 土曜の昼下がり、小さな喫茶店のテラスには上条と白井の二人しかいない。
 冷たいアイスティーの甘い香りを楽しみながら、白井は上条を眺める。
(まったく……いつからわたくしは変わってしまったのかしら? お姉様に憧れ、その高みを目指しているというのに――)
 白井にとってはどうということはない問題に真剣に悩んでいる表情は、あのときに見た真剣なまなざしとはかなり違う。熱心で、で
も少し抜けているような、どちらかと言えば子供っぽい顔立ち。
 自分の胸の高鳴りが信じられなくて、実はただの病気なのでは、と思ってしまう。
 それでも……数日前に感じた、体温はとても心地よかった。
 手を握られたくらいで――そこまで初心だったのか、と自分でも思う。
(もしかして、わたくしってちょっとくらい強引でも引っ張ってくれる殿方に弱いんですの? なんとゆうか……自分で言うのもなん
ですけど、ひどく女の子っぽいですわ)
 『女の子っぽい』
 その言葉から、休みを合わせて予定を立てて、鏡の前で何時間もかけて洋服を選んで、一緒に恋愛ものの映画を見たり、たくさんの
買い物をしたり――そんなふうに過ごす自分の姿を想像してしまう。
 発想が貧困ですの、正直そう思ってしまった。
 でも――、
 そういうのも悪くない。
 だた、場合によっては美琴と上条を取り合わなければならないかもしれない。それにあのシスター姿の少女のこともある。
 ライバルは多いが、目的地はわかっているのだ。
(ふふっ、目的地を知った黒子は速いですわよ。たとえお姉様であろうと追いつかせませんの。殿方は驚くかもしれませんけど……鈍
い方が悪いんですのよ?)
 白井はおだやかな微笑を上条に送る。
「――なぁ白井、ここってどうなってるんだ? 開発ってのはどうしても苦手でさ」
 上条が視線を落としたまま疑問をぶつけた。
「まったく……殿方はしかたありませんですの。いいですか? この場合は……」
 うんざりと、でも表情は笑顔のまま白井は説明を始める。

 もう少しくらいは今のまま――そう、ただの知り合い程度の関係でもかまわない。
 美琴や、上条のいる場所に自分が登りつめるまでは。
 背を預け、隣を歩き、手を握り、鼓動を感る。
 自分が――白井黒子が目指しているのは世界中でただ一人の、上条当麻にもっとも近い場所なのだから。

140056:2007/10/12(金) 00:04:39 ID:Xvlx20To
Ghost056……意外と気にいった
でも長いので056だけにしてみた次第

とある乙女の恋愛革命では黒子エナジーが足りなかったから
ちょっとヤケになって書いてみた後日談的なもの
展開がおかしいけど勘弁

そういや>>135は俺
こう過疎ってると投下しづらいもんがある
でもあんなレスにでも反応してくれる住人に感謝

141■■■■:2007/10/12(金) 00:57:07 ID:mgCSx1QU
>>140
GJです。
ROMはいっぱい居ると思いますよ。

142■■■■:2007/10/12(金) 07:35:58 ID:A0hR.b12
今かこうとしてる内容なんだけど、
■神と■斬が自分の存在をかけてマジカルパワードカナミンのキャラのコスプレをして
カナミンのコスプレをしたインデックスとミーシャと戦うって話なんだがどう思う?
コスプレは土御門が開発したもので科学と魔術を融合させた感じの無茶設定なんだが。

143■■■■:2007/10/12(金) 15:20:23 ID:ZyihfJYs
良いんじゃね?萌えに世界は関係ないんだし

144056:2007/10/12(金) 18:11:06 ID:DkpBDNH.
新しい職人さん!?
かなりの無茶設定でもアリだと思う
そこまでもってくのが大変な気もするけど楽しければそれでよし

さっき自分の読んでて気づいた
『冷たいアイスティー』ってどうなの? 頭痛が痛いと同レベル?
あともう一個……
一行が『恋愛革命』くらい長いと読みにくいかし?
ってか、全部改行してから投下じゃなくて
ブラウザが自動で折り返しするのにまかせた方がイイと思う?

145■■■■:2007/10/12(金) 20:53:29 ID:ZuATCMvw
>>144
冷たいアイスティーは頭痛はが痛いと同レベルじゃないかな
アイスティーってのは冷たいもんなんだし

あと改行は自分の好きなようにやればいいと思うよ
投下したときに読みづらいと思ったらまとめる時に直したりしてもOKだと思うし

146056:2007/10/12(金) 21:12:08 ID:DkpBDNH.
>>145
やっぱりか……
脳内変換で『アイスティー』を『ミルクティー』に変えてくれ

んじゃ、改行はこのままでいかせてもらう
期待する人がいるか知らんけど――次のSSは小萌先生だ!!
頑張れば明日までに
でなかったら確実に来週になるから
じゃ、麻婆豆腐作ってくる

147■■■■:2007/10/13(土) 03:19:59 ID:XAzz/r3g
>>146
普通そこは「よく冷えたアイスティー」なんじゃね?

148056:2007/10/13(土) 03:56:37 ID:4Zpt8vLo
>>147
それがかなりべたーなんだが……

まぁ、ミルクティーで決定打
甘い香りの描写したし、ストレートとかレモンとかちょっと変かと
ダージリンとかベリーなんかはかなり甘い感じだけど
なんか黒子とは違う気がする
正直ハーブ系もありか思ったけど俺自信がよくわからんから却下
そんな感じでヨロシク頼む

149■■■■:2007/10/13(土) 14:21:30 ID:2IP1n5M2
「夏の日差しにやられたのか、自らの名前に反逆するかのような生温かいアイスティー」とかも有りそうだし、
「冷たいアイスティー」でも(若干の違和感はあるが)構わないんじゃないかなと思った。

150■■■■:2007/10/15(月) 04:34:37 ID:OntxcBPg
いやいや、”生暖かい”のはノーサンキューでしょ
ちなみに、俺的には冷えているのがレモンティーってイメージがわいた。
多分サッパリしていて熱い夏にはピッタリじゃないかい?

151■■■■:2007/10/16(火) 01:10:06 ID:PIyyar42
>>150
いや、生暖かいアイスティーを好む猛者はなかなかいないだろうが、
可能性として「ぬるいアイスティー」は存在し得る。よって
「冷たいアイスティー」も間違っているとは言えないのではないのだろうかとアホなことを考えてみたのですよ

152056:2007/10/16(火) 01:20:42 ID:N5zW/O7M
紅茶談義に花が咲いてます
土曜日は……まぁ頑張んなかったよ、うん
小萌先生はあとちょっと……期待はしないでくれよ?

今日はボツにした一方ネタをいじってみたから投下してみる
たぶん意味わかんないだろうけど
ウソ予告みたいな気分で色々妄想しながら読んでくれ

153056:2007/10/16(火) 01:21:00 ID:N5zW/O7M

 一方通行(アクセラレータ)は眼前に広がる光景を疑い、そして嫌悪した。
 人が汚らしく血肉を撒き散らし、無様な物になり下がる瞬間は何度も見てきた。
 筋肉、脂肪、軟骨、硬骨、眼球、舌、耳、鼻、大腸、小腸、胃袋、肝臓、心臓、肺、神経、髄液、脳漿(のうしょう)――人間とい
う生物から噛み千切れるもの、引きずり出せるもの、抉り取れるもの、そのほとんどを見たことがあった。色、臭い、手触り、だいた
いは覚えている。味わったこともある。
 だが――、
 それでもこの空間は異常だった。
「ねぇ、一方通行(アクセラレータ)? ここがアタシの居場所なの。『人間』を否定されて、『生物』さえも拒絶されちゃった。実
験動物(モルモット)だって褒め言葉の一つなんだから。……唯一の望みだってどうせ叶わないんだけどさ」
 楽しそうな表情で、悔しそうな声で、涙を浮かべて少女は言った。
 少女は子猫のように軽やかに駆け出し部屋の中心に近づくと、なにかしらの溶液が入っている円筒形の機器を優しくなぞる。
 その中に浮かぶ生命の律動を眺めて一方通行は思い出す。
『んー、眠るように死んじゃいたいかな? ポックリってやつ』
 それが自分の望みだと少女は言った。
 眼前の光景はその望みをむさぼるように喰い散らかしていた。
「――それでもね、ちょっとだけ期待しちゃうわけよ。なんかすっごい人が助けてくれるんじゃないかって……アタシだって女の子だ
もん。妄想の一つや二つくらいするわ」
 部屋の壁一面に全身の部位をさらされて、それでもなお少女は生き続けている。
 肉体とは異なる次元で繋がっている少女の片割れたち。
 自分自身の心臓を眺めながらなにを思っているのだろうか、一方通行には想像もできなかった。
 けれど、
「だからね――」
 少女の言葉を遮った。
「ごちゃゴチャうるせェンだよ」
 血を浴びて生活してきた自分のなにができるかなんてわからない。――いや、考えたくもない。
 正直、目の前の少女だってどうでもいい。
 ただ――あんなふうに笑う顔が気に入らない。
「で、オマエはなンだぁ? 結局ナニが言いてェンだ。生憎と俺の能力じゃ殺スしかできねェンだけどよ」
 現状から逃げ出すなにかを望むだけの日常。望んでもいないことを機械的に繰り返す。昔の自分を見ているようだった。
「あ、アタシは――」
「ン?」
 少女の瞳から液体が流れる。
「……たす……け、て……ここから連れ、出して……お願い……」
 呼応するように部屋中の眼球が瞳孔を広げ、心臓が早鐘を鳴らしていく。
「チッ――晩飯には帰るからナ。じゃなきゃアイツがうるせェからよォ」
 ゆっくりと首のチョーカーに指を伸ばす。
 躊躇うことなどありはしなかった。
 一方通行にとって誰かを救うのは慣れていない。けれどもう……初めてではないのだから。

154056:2007/10/16(火) 01:28:06 ID:N5zW/O7M
もうないからな?
題名とかもあるにはあったけど
――【 とある狂気の最終報告 】――
まぁ気にしないでほしい
一方さんムズカタ

じゃ、小萌先生書いてくる
明日にはレポートなどありけるから投下は水曜の夜になりにけりなのよ

155■■■■:2007/10/16(火) 05:12:28 ID:1kGxQaek
そう言われるほどに期待したくなるのが人間というものですよw
あ〜、でも良ければ姫神さんも投下してくれませんか?

156142:2007/10/16(火) 19:13:45 ID:A2OLIC5M
142だが。
がんばって書いてるけどひと段落着くのはもうチョイかかりそう。
とりあえずタイトルは
『とあるアニメの機動少女』
に決定したので、それらしいタイトルで出てたら読まずに僕のこと忘れてください。
…百合子さんにカナミンさせるかでまよってるんです。これ入れると構成ががががが

157056:2007/10/16(火) 21:17:46 ID:YQGryPTU
一方さんのSS……なんかダッシュが多かった

>>155
姫神SSは中盤まで書き終わってるんだが……どうも先に進まない
今となっては少し内容を誤った気がする
とりあえずは小萌先生だ!!
……スマン、先にレポートだった

>>156
百合子ちゃんはアリだと思う
もうかなりやっちゃってるんだからなんとかなるかも?
まぁ後日談的に書いちゃうのが簡単なんですが……

158■■■■:2007/10/19(金) 07:39:36 ID:bMh7xL4I
土御門←ねーちん

同志が誰もいないなら俺が書く!

神裂火織は長身な方だ。
世界的に見て小柄な日本人の女性としては特別に高く、まず同性相手では相手を見下ろす事になる。
相手が男性ならば見下ろすか、それとも対等の目線か、だ。
だから、彼と対峙した時に見上げる事になるのは
彼が特別と感じられて少し恥ずかしかったり嬉しかったりする。
とある教会の廊下を歩く彼女の視線の先にはとがった金髪と
お世辞にも趣味のいいとは言えない柄のシャツがあった。
どちらも教会には相応しくなく、まず間違いでない事を確信させる。
と、その件の人物の方から声をかけてきた
「お、ねーちん。どうかしたのかにゃー?」
「土御門、こんなところにいましたか。最大主教が探していましたよ」
その言葉に土御門は笑うが、サングラスで隠された瞳の奥の意志は解らない。
「そんな理由ならばっくれさせてもらうんだぜぃ。どーせ言葉の事だろうし」
「……あの言葉遣いは貴方の仕業だったのですか。
 悪戯も度が過ぎると身を滅ぼしますよ?」
「毎度毎度滅茶苦茶な事おしつけてくれる無茶な上司にひとさじの復讐を…
 自由無き労働者のささやかな権利だにゃー」
「ひとさじどころではないでしょう」
軽口の応酬。ヒトと話す時は真面目一辺倒な神裂だが土御門といる時は別だ。
付き合いが長いのでそれなりの対応も出来る。
とはいえ、根が真面目な事には変わりは無い。
彼女が彼を探していたのはこのようなやりとりをする為ではない。
神裂はおもむろに頭を下げた。
「……何の真似かにゃー?」
「いえ、礼を、と思いまして」
土御門は首をひねる。本当に何の事か解らないようだ。
「刺突杭剣…いえ使徒十字の件です。
 アレが持ち出された時にかなり頑張ってくれたそうじゃないですか」
「結局俺はほとんど役に立たなかったんだが……何でそれでねーちんが礼を言うのかにゃー?」
「いえ。ただ嬉しかったものですから」
そう、嬉しかったのだ。
結果的には違ったとはいえ、最初は刺突杭剣だと考えられていた。
聖人を殺す剣が使用された時にまず狙われるのは聖人である神裂火織である。
神裂は彼が一番大事なものを決めている事を知っている。それが自分で無い事も。
そして彼が助ける人を選ぶ事を決めた人間だという事も解っている。
人を選ばず全てを救う事を決めた自分とは決して相容れない人間だ。
そんな彼が、しかし間接的にとはいえ自分を助けようと動いてくれた事、
それがただ嬉しかった。
彼の守りたいものの中に入ってると錯覚出来たから。
「そうニコニコされると何か気味が悪いぜぃ…」
頬に一筋の汗をかく土御門とニコニコ微笑み続ける神裂火織。
普段とは逆の立場に神裂の笑みは一層深くなる。
(ホントに……………嬉しかったのですよ?)
英国に来たばかりで右も左も解らなかった時に色々教えてくれた事も。
仕事を始めたばかりの頃に色々面倒をかけてしまい謝ったら
いつもの軽薄な笑いを浮かべて
「気にする事はないにゃー。むしろ礼なら体では―――へぶぁっ!?」
と言って有耶無耶にしてくれた事も。
自分がまずい対応をしてしまったらさりげなくフォローをいれてくれる事も。
思いつめて相談したら冗談まじりに一応の解決策を示してくれる事も。
嘘にまみれて解りにくい優しさを感じられる全ての事が嬉しい。
「そうですね。食事でも奢りましょうか。美味しいお店を見つけたのですよ」
「イギリス料理だけは勘弁にゃー?」
そう言って教会の扉を開く。

ロンドンは今日も霧につつまれて、何もかもぼやけてしまっている。
そんな中を珍妙な恰好をした日本人ふたりがとても楽しそうに歩いていく。

こんな感じで。

159■■■■:2007/10/19(金) 17:14:50 ID:D.ArlA0s
GJ!!

160■■■■:2007/10/22(月) 19:47:10 ID:AfCBtD/6
誰もいない・・・・・

161056:2007/10/22(月) 20:47:42 ID:2y9RfzDw
いやゴメン、速さが全然足りなかった
やっとこさ書き終わったんで小萌SS【 とある教師の進路相談 】を投下します

162とある教師の進路相談:2007/10/22(月) 20:48:42 ID:2y9RfzDw

 肌寒さに急かされて重いまぶたをゆっくりと開く。
 月明かりのスポットライトに照らされて、星屑と身を寄せ合うように埃(ほこり)たちは輝き、部屋中を舞い踊る。
 夜は好きだ。
 恥ずかしさもなく、素直にそう思う。
 無粋な呼吸一つで静けさを失ってしまうその儚さは、世界をより鮮明により先鋭に変化させる。がらにも無いがそれはとても美しい
光景だ。
 けれど、だからこそ――、
 夜は怖い。
 強調された世界では、曖昧に生きている自分がひどく浮いてしまう。
 病室にいるときはいつもそうだ。
 誰かを救うことができたという充実感。誰も本当の自分を知らないという孤独感。
 二つの感情が飽きもせずメリーゴーランドのようにやってくる。
 こんなときはひたすらに眠り続けるのがいい。そう思って掛け布団にくるまろうとしたときだった。
 夜のとばりを揺らす小さな足音。
 室内の無個性な壁掛けは午後九時を知らせている。看護師の巡回にはまだ早い。普段なら同じ入院患者が散歩でもしている、と無視
したことだろう。けれど――今日はそう思うことができなかった。
 なんとなくだが……この病室のドアを叩くのでは、そう思った。
 それは予想だったのか、それとも期待だったのか。
「失礼するですよー?」
 遠慮がちな申し出と同時に、焦らすようにドアが開き、
「――あれれ、起こしちゃったですか? 十分静かにしたつもりだったのですけど」
 幼顔(おさながお)の小柄な担任――月詠小萌が訪れた。

 一〇月中旬。上条当麻は毎度のごとく入院していた。
 もはや常連とまで言える入院回数に担当の医師も院内の看護師も呆れるばかり。お見舞いの人間すら顔を覚えられている。
 その日もそれなりのお見舞いがやってきて上条を笑い、けなし、噛みついていった。
「小萌先生にもお仕事があるのですよ。お見舞いに来たくても終わってからじゃ時間が遅くなっちゃいますからねー。今日は上条ちゃ
んのカワイイ寝顔だけ見て帰ろうと思っていたのです」
 小萌は慣れた手つきで林檎を剥いていく。
 一緒に置いてあった蜜柑や葡萄、白桃などはことごとくインデックスに食べられてしまった。唯一残されたのが二つの林檎。ここま
できたら残されたことを哀れにさえ思う。まぁ、これはインデックスのちょっとした反逆……いや、優しさの裏返しだと願っている。
「わざわざすみません」
「ふふっ、気にしなくていいのです。そんなにしおらしいのは上条ちゃん『らしくない』ですよ?」
 滑らかに動くナイフをとめると、小萌は幼い顔でふんわりと笑いかけてきた。
 『らしくない』
 つらい言葉だ。特にいまの上条にとっては。
 記憶喪失にもなんとか慣れ始めたから、こんなときは軽口でも言えばなんら問題ないことくらいわかる。それでも『記憶を失う前の
上条』と自分は違う。小萌の表現は『記憶を失った上条』と『記憶を失う前の上条』を暗に比較しているふうに聞こえてしまう。
 自分らしさ……『記憶を失った上条』にとって、それはどのようなものだろう。
 こんなことを考えると、どうも意識が自分の内側ばかりに向いてしまう。小萌といる現状ではそれは芳しくない。
「らしくないのは小萌先生ですよ。そんな子供っぽい顔してお料理スキル満点だなんて……上条さんはそんなギャップに屈しませんか
らね、えぇ屈しませんとも!」
 『子供っぽい』など、わざとちゃかすような発言をして話を濁す。
「な、なに言ってるのですか! こう見えても……いえ、小萌先生は見てわかるように家事全般は大得意なのですよ!?」
 案の定つっかかってくれた。
 とはいえ自分のした行動が、わざと好きな女の子をいじめる小学生くらいの男の子みたいで、無性に恥ずかしくなってくる。
 そんな上条を知ってか知らずか……、
「まったく……上条ちゃんは仕方ないのです、えへへ」
 年上とは思えない――いや、実際問題として小萌の容姿は小学生と言っても通用するだろうが――ような愛くるしい表情で、林檎を
さっきの倍以上のペースで剥きだした。ダメな子ほど絶大な効果が発揮される世話焼きスキルである。
 結局それから上条が小萌をなんとかして帰すまで、これでもかというほど介抱された。
 小萌とのやりとりに疲れたのか、その夜はいつもより穏やかに眠れた気がした。

163とある教師の進路相談:2007/10/22(月) 20:49:29 ID:2y9RfzDw

「上条ちゃんっ、病室に引きこもってばかりでは体に悪いのですよー! いまから小萌先生とお散歩に出かけるのです!!」
 昨日より少し早い、まだ月が建造物で顔を隠している時間。小萌はそう宣言して車椅子を持ってきた。
 その表情は昨夜に見た眩しいほどの笑顔である。
 世話焼きはまだ続いていたわけだ。
「はぁー」
 二の句を告げられなくなった上条は、溜息一つをお土産にして小萌には帰ってもらうことにした。
 布団に潜り込もうとしたが驚異的なスピードで腕をつかまれ、現実逃避をこばまれる。
「……もう夜なんですけど?」
「むむっ、小萌先生だってそれくらいわかってます。昨日も言いましたけど、小萌先生には時間がないのです」
「あと数ヶ月で死んじゃう悲劇のヒロインみたいなこと言わないでください……」
 あまりの傍若無人っぷりに呆れてしまう。
「えへへ……まぁ、冗談はここまでにしといて」
 あろうことか小萌はそんなことを言い出した――が、夜の散歩が流れてしまうなら、との思いでツッコミたいのを我慢する。
「――上条ちゃんは温かい格好をするのですよ?」
「結局行くんかいっ!!」
 相変わらず小萌の瞳は一昔前のLED光源のようにわざとらしいほどまぶしく輝いている。どうやってでも上条を外に連れ出したい
ようだ。このまま拒み続ければ最終的には女の武器を使用するだろう。そうなったら上条に退路はない。
 秋の涼しさは街中に広がっているとはいえ、今日は比較的暖かいほうだ。上条は寝間着としてジャージの下に長袖のTシャツといっ
た格好だったので、少し見栄えは悪くなるが薄手のカーディガンでも羽織れば問題ない。
 腹をくくる必要がありそうだった。
「……外出許可は取ってあるんですよね?」
「あ、その……上条ちゃんが本当に嫌だったら小萌先生も諦めますよ?」
 そうは言っているが、自分がいまにも泣きそうなのをわかって言っているのだろうか? まぁ、きっと無自覚だろう。
 上条としても、ここまでしてくれた小萌をそのまま帰すのは……まぁ、それなりに忍びない。
「いいですよ、散歩くらい。ちょっと準備するんで廊下で待っててもらえますか?」
「あの、平気です? やっぱりやめましょうか?」
「……小萌先生が誘ったんでしょ。それとも……生徒の生着替えでも見たいんですか? キャッ、小萌先生のエッチ!!」
 それでも少しだけからかってみれば、
「なっ、なに言ってるんですか、上条ちゃん!!」
 小萌は小さな両手で朱に染まった顔をなんとか隠しながら病室を飛び出していった。
 なんというか……あんなことで真っ赤になるなんて本当にちっちゃい子みたいだ。きっと土御門や青髪ピアスにしたら、そこが小萌
の魅力なのだろう。上条には理解できない世界だ。
 ……とはいえ、あの仕草には上条自身もグッとくるものがあったのも現実なのだが。

164056:2007/10/22(月) 21:00:26 ID:2y9RfzDw
今日はここまで
……短く感じるだろうけど耐えてくれ
もとから短いんだ

今回はかまちーの文体とか完璧無視のSSになってる
俺本来の文体……読みにくいだろうけど勘弁

そういや本スレでカナミンの嘘予告とか投下してきた
だったら姫神でも書け
とか色々言わないでくれよ?
そうなったら謝るしかないからな

165とある忘却の再確認の中の人:2007/10/23(火) 20:45:29 ID:VzNGtDVg
――テストが、テストがいけないんです!
以上、言い訳。
長期放置。すみません。読んでいる人どれくらいいるかわかりませんけど。
>>164風に名乗るならばHaeresis044(最果てを進む異端)ですかね。略称044.
056氏、1-169氏、>>158氏と皆さん頑張っていらっしゃるようで。
テストも終わったので投下します。
――まぁ、明日からは修学旅行なんですけど。

166とある忘却の再確認:2007/10/23(火) 20:45:55 ID:VzNGtDVg
 ――走る。走る。走る。
 精神が汚染されそうな言葉の羅列が、鼓膜に侵入する。同時に、背後から複数の光球が飛んでくる。
 光球は光球で脅威ではある。だが上条はそれよりも――
 ――身体を爆ぜさせながらもなお向かってくる、機械じみた行動力が恐ろしかった。
 左隣にいたステイルも、疾うに消えている。
 右手で防ぎ、右手で殴り、右手で倒す。左手は姿勢制御のためにのみ使う。
 階段を昇り、降り、余裕のないまま繰り返したせいで今何処を走っているのかも分からない。
 ――廊下を走る。迷走する脳内地図。破滅へのカウントダウン。泡と消える肉体。精神は無意味に。明滅する世界。ブチブチと引きちぎれる音。筋肉。或いは皮膚。流れるは緋色。ヒーローなんていない。世界は何処までも冷たい。
 ――振り、払う。益体もない思考を。模索する。現状の打破を。考えろ考えろ考えろ。
 大体、どうしてこうなった――


 ――足を、踏み入れる。その先にあった世界は呆れるほど平常だった。
 何かの騒音が耳に入りはするが、ロビーを出入りする生徒達は普通そのもの。生徒達は険しい顔で入ってきた上条もステイルも気にせずに――
 ――おかしい。上条は思考する。見た目一般的な学生である上条(じぶん)ならともかく、あからさまに非常識な格好をしたステイルにさえ気を払わないなどということはありえない、と。
 学園都市にも神学系の学校がないわけではない。一つの学区にまとめられてこそいるが、確固として存在している。だが、ステイルの格好は神学生のそれでもないのだ。寧ろ神を蔑ろにしているかのような印象を受ける。実際は違うのだろうが。
 そんなステイルのコトを塾生の誰もが気にしない、というのはどうしたところで異常としか言いようがない。
 上条は嫌悪した。誰も自分の存在に気づかないこの状況を。
 それは、まるで“上条当麻などという人物は存在しないのだ”と言われているようで。
 ――酷く、
「――気に、入らないな」
 がしゃんがしゃんと音がした。
「――ああ、気に入らないね」
 がしゃんがしゃんと音がした。

167とある忘却の再確認:2007/10/23(火) 20:46:22 ID:VzNGtDVg

 表と裏。魔女狩りの王と同じくコアがあるタイプの魔術。位相をずらし通り抜けさせるわけでもなく、一方的にこちらが弾かれるだけの干渉不可。それはもう攻撃ではないだろうか。コアを見つけなければ魔術師だろうと幻想殺しだろうと解除は不可能。そんな高機能を抱えているくせに、ステイルは然程驚いているようには見えない。上条は何よりもそのことに戦慄した。
 一定のレベルに達した魔術師であれば、この程度のコトは然るべき手順を踏めばできてしまう、ということなのだろうか。
 常人が金銭を対価に武装を購入するのと同様に。
 常人にはある制約――法による規制など――は、魔術師にはない、或いは常人を縛るそれとは比べ物にならないほど軽いものなのだろうか。
 ――考えても仕方ないコト。上条は無駄な思考を戒める。
 今は『上条当麻』ですらない。最善を模索する機械であればいいのだ。
 きりきりと螺子を巻く。


 がしゃんがしゃんと音がした。
 音のする方向にステイルが歩いていき、ようやく上条は“それ”を見た。
 特に感慨は湧かなかった。上条はただ、赤黒い液体を撒き散らしている戦闘者の残骸を観察した。
 圧壊しているそれは、まるで桁違いの力に叩き潰されたかのようで――
 ステイルが、十字を切った。


 十字を切る。それはキリスト教において大きな意味を持つ、極めて象徴的な行為だ。
 魔術師は詠唱し、或いは特定の動作を取り、特定の道具を使うことで魔術を発動するらしい。
 ――ならば、外敵の『十字を切る』という動作を感知し発動する魔術、というものはありうるのだろうか?
 その答えがステイルを押し潰すのを防ぐため、上条は不本意ながらステイルを抱き寄せた。
 瞬間、転がっていた残骸は完全に損壊した。
 息をつく間もなく、ぞわり、と悪寒がする。
 上条は無駄を承知で跳んだ。炎が掠ったかのような灼熱感。
 足元にぽたぽたと血が垂れる。
 ステイルを降ろし、改めて上条は“それら”を見る。
「――結「果は未来、未来」は「「時間、時間は一律」―――」――」
 無表情で淡々と詠唱する、たくさんの姫神。
 ――何だ、それは。

168とある忘却の再確認:2007/10/23(火) 20:47:24 ID:VzNGtDVg
はい、超展開ですね。
すみませんがお付き合いいただけると幸いです。

169suiknight:2007/10/24(水) 04:30:45 ID:kuN4ieTI
おいおい、学園都市はついに吸血殺し(ディープブラッド)のシスターズまでの生成に成功しちゃったのかw

170とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 17:37:20 ID:nuErDCOg
第五話『対人指向性散弾地雷の日常』have a break

闇。
 太陽が存在しない世界。
 月がこの世の全てを支配する時間。
 突然だった。
 夜の世界を埋め尽くす静寂の中、風を切る影が、月の中に現われた。
 だがそれも一瞬のこと。黒に浮かぶ黄色い円を横切ったシルエットは、現われた時と同じくすぐに消え去った。
 闇に溶けて消えたそれの姿は、誰の目にも止まることはなかった。
 暗黒。
 静寂。

 バキッという音とともに殴り付けられて、学生服姿の少年は薄汚い路地裏の地面に倒れ伏した。
「ギャハハハ!ザマァ見やがれ!もやし野郎が!」
「ハッハァーッ!思い知ったか!調子野郎!」
 数人がかりで少年を痛め付ける不良達の輪の外では、その惨状に一人の少女が震えている。
「イチャイチャしてるからいけねぇんだぜぇ?!イケ面クンよォー!」
「裏の世界で最強を誇る俺たちに見つかったのが運の尽きだったな!」
 ボキッ!という一際不気味な音がして少年が動かなくなると、不良達は少女を相手に振り向いた。
 その下卑た視線に、少女はヒッと身を震わせる。
「ギャハハ!そんなに怖がんなよ!可愛いお顔が台無しだぜぇ?!」
「そうだぜお嬢ちゃん、あんな弱っちい野郎なんて置いといてさ、俺たちと遊ぼうぜ?!」
「今はそいつもお寝んね中だから、ちょっとぐらいの浮気なんてバレやしねぇよ!」
 ピクリとも動かない少年。にじり寄る不良達。
「い……いやぁ!!」
 耐えかねたように、少女は暗い路地の奥へと逃げ出した。
 しかしそれも長くは続かない。
 キャッと悲鳴をあげて、少女は何かに足をとられたように転んだ。不良達のうち、一際体の大きな一人が、手元にあった小石を投げ付けたのだ。
「ゲへへへ、そんなに俺たちが嫌だってのかい?」
「そんなら仕方ないなぁ――」
「ちょーっとだけ、痛い目にあってもらおうかぁー?」
 不良達が、倒れこむ少女に手を伸ばす。
 迫り来る恐怖に、少女が甲高い悲鳴をあげる――
 ――その時だった!

171とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 17:37:49 ID:nuErDCOg
「そこらへんにしておくんだな、不良共」

 声と同時、少女に手をのばしていた不良三人の指がぽろぽろと落っこちた!
「ギャアアアアア!!」
「なんだ!いったい誰の仕業だ!」
 姿の見当たらない敵!怒鳴り合う不良達!
「よく言うぜ、か弱い女の子によってたかったりなんかしやがって」
 そこか!と不良達が振り向いた先には!なんと!包帯巻き姿の少年が、空中に浮いていた!
「お前等、完璧な暴行罪だぜ?分かってんのか?」
 空中で不敵に告げる少年に、不良達は怒り狂う!
「てめえ!よくも俺様の指を!俺の最強の能力、“加速装置”(アクセルレート)でボコボコに――」
 最後まで言い終わる隙もなかった!包帯の少年は目にも止まらぬ速さでに背後に回り込み、手にした日本刀で切り付けていた!
 声もなくくずおれる不良!
「確かに、最強に似てはいるな。名前だけ」
 言い捨てる少年!不良達の怒りは頂点に達した!
「てめぇぇええぇえ!よくもやってくれたな!俺の超絶能力!“肉体硬化”(フルメタルボディ)で生ごみにして――」
 直後!その体は、バラバラに切り刻まれていた!
「はいうぇいいいいいい!」
 その早業!何をしたのかも分からぬ間の出来事に、不良たちは肝を潰す!
「誰なんだお前!第七学区最強の俺たち“サンダーフレイム”のリーダー、グレンゴリとギーリムを、一瞬で倒すなんて!」
 その恐怖の声に、少年はフッと笑って答えた!
「学園都市最強の風紀委員と言えば、お前たちにも分かるだろう?」
 なっ!?と、不良の一人が息を飲む!
「まさかお前は!チャイルド・オブ・ピーチの異名を持つ、最強の――!?」
 最後まで言うことはできなかった!少年が腕を一振りすると、喉から血を流して倒れこむ!血に濡れた包帯をだらりとぶら下げて、少年は他の不良達へと振り返った!
「そうだ……俺は最強の風紀委員……戦場に生きる破壊神……」
 顔に巻かれた包帯を歪ませ、獰猛な笑みを浮かべながら。日本刀と血塗られた包帯を携えて、少年は高らかに言い放った!
「その名は、桃太郎!」

「なんてもん見てんだよ、ミサカ」

172とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 17:38:22 ID:nuErDCOg
 そのあまりにも破滅的なネーミングセンスその他に、ちょっとの間見入ってしまっていた俺もさすがに声をあげた。
 ここはとある病院の談話室。教室程の広さに椅子と長テーブルを並べ、テレビをポイッと置いただけの部屋。中庭に向けられた一面のガラス張りからは日光がさんさんと降り注ぎ、太陽は今日も核融合に励んでいることを知らせている。
 その正午の日光によって明るく照らされた空間には、現在二人の人間が存在していた。
「何をと言われれば、『桃太郎伝説エピソードONE〜暗闇からの始まり〜』ですが?とミサカは番組情報欄通りの題名を答えます」
 という無表情な不思議口調の不思議少女ミサカと、
「エピソードONEって……まだまだ続編があんのかよ……」
 ちょっぴり脱力的に絶句中の俺。
 午前中に行われる診察等を終えた俺は、ミサカと一緒に中庭で電磁波障害克服の訓練をしようと思っていたのだが、その準備の途中で彼女を発見しただった。ミサカはいつものようにボーっとした表情で安っぽい椅子に腰掛け、珍しいことにアニメを放送するテレビを視ていた。
 いや。眺めていた、と言った方が正確かもしれない。
 こいつはただ何となくフラフラとこの部屋に入り込んでユラユラと椅子に座り、ポケーっとして顔を上げるとたまたまそこにテレビの画面があったのだろう。
『ミサカは、言葉を発さない』
「お前、これいっつも見てんのか?」
 画面を見やって言う。そこでは今、ちょっと強そうな不良(イケメン)と一騎打ちを始めようとしている少年を映していた。
 ミサカは、いいえ、と首を横に振る。
「アニメを見るというのも、これが初めてです、ミサカは事実を述べます」
「……そうか」
 俺はポソっと呟いた。
『ミサカは、言葉を発さない』
 なんだよ、それ。
 お前は今まで、どんな生活をしてきたんだ?
 俺はひどくやるせない気持ちになった。
 あの夜カエル先生が告げた事実に、俺もようやく気付き始めていた。
 彼女は、普通の人間が経験していて当たり前なことをほとんどしたことがなかった。それほどに長い間、彼女は病院の中に閉じ込められていたと言うのだろうか。そうして、普通の人間たちが当たり前に楽しむことさえ知らされなかったというのだろうか。人と関わる術を持つ必要がなく、一言も話すことがなくなるまでに。
 しかし、ミサカは今、俺と言葉を交わしていた。
「そういえばあなたも風紀委員でしたね、とミサカはいつか聞いた情報を反芻します」
 彼女は、ふと思い出したように言った。
「ん?あぁ、一応な。でもあんな理不尽な暴力なんかは現実にはないぞ」
 俺は少し呆れたように言う。現在、画面には力尽きた不良少年の頭を足で踏み付けてポーズをとっている暴力少年がいた。

173とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 17:38:48 ID:nuErDCOg
 ふへぇ、と呆れたため息。
 ほんまもんの風紀委員から言わせてもらうと、このアニメの展開には突っ込みドコロが満載だった。
 まず第一に、街の治安を守る風紀委員が人を一方的に半殺しにしてどうするのか。まぁあの不良達は確かに問答無用でぶっ飛ばしたくはなるのは認める。しかしそれにしたって、そういった稀少生物はごく少数しか生息しないのだ。
 でもって第二に、あの人格異常な暴力包帯少年の風紀委員としての適性。
 この少年の能力はおそらく目に見えないほど細い念力で紡いだ糸を操るものではないかと思う。そう仮定すれば、何本かを体や建築物に巻き付けて宙に浮いたり、極限まで細くして指を締め千切ったり、それを包帯の中に仕組んで自由に操ることも可能だ。人間とは思えない身体能力も、ワイヤーの補助が働いているのだとすれば説明が付く。それだけでも相当評価は高く付くし、現に不良数人を瞬殺したことから、その能力はレベル3を下らないといえる。
 しかし、こんな危険な人格をしているようでは定期的に行われる心理適性検査で一発免停だろう。これは様々な規制で縛り付けられている読心能力者がその力を存分に発揮することが許される、数少ない機会の一つだ。この審査の前に、プライバシーという言葉は存在しない。異常嗜好、謀反・テロ計画の考案、規則違反などの項目に引っ掛かってしまえば、緑に白線の腕章は即没収である。
「まあ、学園都市外の制作会社みたいだし、フィクションにケチ付けても仕方ないけどな」
 俺のそんなリアル話に、ミサカはふんふんと頷いた。
「面白いが正義、ということなんですね、とミサカは必殺技を繰り出す主人公に目を奪われながらまとめます」
 その目は相変わらず無表情だったが、ミサカは今、確かにテレビを“見て”いた。どうやら、本腰を入れて見入り始めてしまっているらしい。
 生まれて初めてファンタジーの世界に身を浸すミサカ。どうやらその頭の中からは『訓練』の二文字が消え去っているようだった。
 ……仕方がない。
「外は天気良過ぎだし、今日は室内でまったりするか」
「いいのですか?とミサカは新たに始まった人と架空小動物とのふれあい冒険物語のオープニングから目を離さずに問い掛けます」
『ミサカは、言葉を発さない』
 俺が話し掛けるまで部屋の設置物だったミサカ。しかし彼女は今、聞き分けの良い子供のようにテレビの前に座っている。
 あのカエルの言う通りだ。ミサカの一切の人的行動は、俺との接触によって起動するのだった。
 何故、俺なのか。自分はどちらかといえば無口な部類に入る。人の心を開かせる話術なんて持ち合わせてはいないし、その相手が病人などという特異な精神状態の人間であるなら、なおさら不可能なはずだ。
 しかし、そんな疑問はもう、俺にとってはどうでも良くなっていた。
 ミサカに、普通の人間のような振る舞いをさせられるのは、俺だけで。
 俺は彼女に、そんな『普通』でいて欲しかった。
 他に理由は必要ないだろう?
 俺は中庭のガラス戸を開け、部屋の中に猫を入れ込みながら思う。
 とりあえず今俺がすべき事は、ミサカの隣で一緒にアニメを鑑賞することだった。

174とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 17:39:13 ID:nuErDCOg
 世の中には、実に色々な事がある。戦争、繁栄、飢餓、飽食。一つも欠けた完璧な人生を歩む者に、崩れに崩れた、ボロボロの道に這いつくばる者。そして、明日の心配をする必要もない健康な人間と、今日さえ信じられない命を抱えて日々を過ごす病人。不幸や幸運なんてのは、きっと同じ数だけ存在していて、そのバランスが崩れることは有り得ないのだろう。
 俺はどちらかと言えば、幸運な方の世界に住んでいるといえる。安全を約束された生活。飢えることのない食料供給。持病があるわけでもなく、ましてや、いつ死んでしまうかビクビクしながら生活しているなんてこともない。
 その世界に住んでいる者にとって、不幸というものは実に遠い存在だ。馬鹿な独裁者による戦争。何百万人も死ぬ飢餓。思いもよらぬ事故によって失われる命。この世のどこかにそんなことがあるとは聞いていても、自覚なんてものは持てるもんじゃない。それが自分の世界に侵攻してきて初めて、人は知るのだ。
 自分の信じてきた世界が、いとも簡単に崩れ去る恐怖を。
 惨劇というものは、いかに容赦の無いものであるのかを。
 ……うーん。我ながら、なんとも哲学的なことを語ってしまったものだ。こういうこと考えると、自分はかなりの思想家ではないか、とか思っちゃったりする。だけど、たいていの人間はこの程度のことぐらい考えてるんだよな。そして、そのことを知って、自分はやっぱりなんの変哲もないやつなのだということを思い知らされたりする。有りがちなことだ。
 とにかく俺が言いたいのは、
「人は、自分自身を取り巻くものにしか関心を持たない」
 ということだ。
 それはもちろん、俺だって例外ではない。
 ミサカにしたって、同じようなことなんだ。
 保健所やどこやらでたくさんの犬がぶっ殺されていようが気にしないくせに、目の前の段ボールにうずくまっている小犬を助けてしまうように。
 目の前にミサカという病人を見せつけられた俺は、彼女を助けることにした。
 それは、自分の世界にそんな人間を存在させたくない、という自己中心的な理由からの行動だ。でないと、俺は恵まれない全ての病人達のために、全財産を赤十字にでも寄付し、寝る間を惜しんで医療の道を突っ走っていなければおかしいだろう?
 だから、そう。
 毎日毎日、自分からミサカとの会話に付き合っていても。
 いつかそうなれるかもしれない、ミサカが楽しそうな声で笑う姿を思い浮べ、暖かい気持ちになったりしていても。
 ミサカのために、一日二十時間ほど悶々とした思考を繰り返しているとしても。
 それは全て、まったくもって下らない、俺の自己満足というやつのためなのさ。

「これは本当にアニメなのですか?とミサカはリアル過ぎる映像に驚きと疑心を同時に抱きます」
『行け!ライトニングマウス!五千ワット放電現象だ!』
『OK!Master!』
 ミサカが向ける視線の先では、メチャクチャド派手な演出を使うアニメ(一応)が放映中だった。目も狂わんばかりの激しい光が点滅する中、架空超動物と、それを使役する猛獣使いが二組、命を賭けた戦いを繰り広げたり、熱く語り合って和解したり、というソウルフルな物語だ。
「だなー。こりゃもう実写の域に入ってるな。よくやるよ、こんな手のこんだCGアニメ」
『Chew on this!』
 BARI BARI BARI BARI――!!
 俺が呆れ半分、感心半分で言うと、画面の中の超動物が強烈な電撃を放った。しかし、この描写がまた、問題有りまくりだった。普通ならば、人間が雷に撃たれたら骸骨のシルエットが点滅する、というのがお約束だ。だが、このアニメはそんなものなど全く無視していた。皮膚の焦げた生々しい黒ずみまでリアルに描かれていやがる。

175とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 17:39:35 ID:nuErDCOg
「うへ……こんなもん、この時間帯で放送していいのか……?」
「もとは深夜アニメだったものを再放送しているようですよ?とミサカは本物に近い負傷に感心しつつ報告します」
 そう言った口調は、いつものごとく平然とした無表情だった。
 ……さっきの学園都市もどきといい、もとは深夜アニメでも、夏休みキッズアニメタイムで放送しては意味が無かろうに。俺は番組表見ながら、テレビを放映する会社の神経を疑った。
「お前、こういうバイオレンスなものって大丈夫なの?」
「はい。恐怖や拒絶とは本来、自身の危険を回避するために持つようになった感情です。しかし、肝心な時に身がすくんで危機に対処できないようでは本末転倒ですからね、とミサカは画面から目をそらす事なく答えます」
 これまた、平然と言ってのけた。
 少し。いや、かなり感心した。それは、仕事内容上、そこそこ危険な現場に身を置くことのある俺の心構えによく似たものだった。『能力を開発された動物ですか、やりますね、とミサカは同じ電撃使いとして対抗意識を感じて』しまっているらしい彼女を見る限り、その言葉は戯言でも何でもない、本心からのものであるようだった。
 十代前半の少女らしからぬ持論。それはおそらく、病を患っているという、普通の人間とは違った環境から生み出されたものなのだろう。
 病が彼女に与えたもの。しかし、俺はそれを思っても、いつものように暗い気持ちになることはなかった。その独特な思考回路は既に、彼女の個性――まぁ、その中でも、魅力というやつの一つとなっていたからだ。
 ミサカとのお喋りは、楽しかった。
 俺が話すとき、彼女は聴神経の全てをこちらに向ける。
 俺の語る言葉を一つ残らず聞き取る。
 話題に対する考えを素直に意見し、自分なりの結論をまとめようとする。
 自分はどちらかといえば口数が少ない部類に入る。しかしそんな俺でも、彼女とならば何時間でも話していたいと思えた。
 でもさ、なぁ、ミサカ。
「この登場人物達の服は、どうして陰部を覆う部分だけ破損しないのでしょう、とミサカは当然の疑問を抱きます」
 なんて言葉はね、年ごろの女の子としてどうなのかと思うわけだよ。年ごろの男の子としてはさ。
「ミサカ」
「はい、なんでしょう?とミサカは返答します」
「これから始まるアニメは、しっかりと見ろ。勉強になるから」
「はぁ。勉強、ですか……?とミサカはよく理解できないながらもとりあえず指示に従うことにします」
 言葉通り、彼女はもとからまっすぐだった姿勢を正して座り直った。
 大爆発を起こして腰布一枚になった人間が倒れている場面が切り替わると、新たなアニメのオープニングが画面に映し出される。そして、アニメタイトルらしくデザインされた輪郭が浮かび上がり、次のような文字を描いた。
 ――超起動少女カナミン。

 三十秒後、俺達は窓の縁に座って中庭の猫達を眺めていた。
「何故テレビを消してしまったのですか?私は勉強しなくてはならなかったのではないのですか?とミサカはあなたに質問を浴びせかけます」
 いや、あれは勉強しないでいい。というか、しないでくれ。
「すまんな。ちょっと変な電波が飛んで来てたもんだから。すぐに電源を切らないと、テレビから火が噴いたり、爆発したりして大変なことになってたんだよ。」
 俺は『アセアセ』という効果音と共に弁解した。電撃使い(エレクトロマスター)である彼女にこんな言い訳が通じるとは思っていなかったけど。
 やっぱり納得してないようだった。『ジ――と、ミサカはジ――とします』とか言って、泳ぎまくる俺の目を無表情に睨み続けていた。彼女の言葉無き視線に突き刺され、俺は体を小さくした。

176とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 17:40:02 ID:nuErDCOg
 油断していたのだ。
 あの魔法少女だか起動少女だかなんとかというアニメは、実はとんでもない代物だった。
 俺は前に一度だけこれを視聴したことがあった。ミサカにそれを勧めたのは、その時のストーリーとか、登場人物のやりとり、訴えかけるテーマ、そういったものが結構いい感じだったからだ。しかし、今日もそれを期待したのが間違いだった。
 四十秒前、俺達が見たものを簡潔に説明しよう。
 ピンク。
 肌色。
 他に言葉は要らない。というか、付け足してはならない。それを言ったら、何か大変なことになってしまう。それが目に入った瞬間、俺は即座にテレビを覆い隠した。ミサカの目に何も映らないように。そしてメチャクチャな理由を並べ立てて窓辺に移動し、今に至るわけである。
 後で知った所によると、そのアニメのコンセプトは『七色』であるとのことだった。熱血ど根性(赤)な話もあれば、超鬱展開(ブルー)な場合もあるとか。監督は多重人格者かよ、とか、ピンクは七色に入ってねぇだろ、とか色々突っ込みたくはなるが、今のところはとりあえずスルーだ。
「だからさ、俺は猫と触れ合わないと5分で死んじゃうんだよ」
「どこまで行くんですかあなたの猫好きは、とミサカは嫌疑の視線をぶつけます。というか、あなたは以前猫に触らなければ5秒で死んでしまうと言っていたではないですか、とミサカはあなたの猫々理論の矛盾点を指摘します」
 あれ、そうだったっけ。しまったな。というか、よく覚えてるな、お前。
「えーっとそれはだな、あれだ。俺も5秒しか耐えられないんじゃいけないなぁーとか考えたんだよ。で、練習に練習を重ねて、5分まで耐えられるようになったんだ」
「たった数日の間に六十倍の時間延長、ということはそれをあと5回程繰り返せば一生猫が要らなくなりますね、とミサカはしたり顔で解析します。それはただ単に猫への愛が尽きているだけではないのですか?とミサカはズバリ指摘します」
 俺達は、そんなどうでもいい事を喋り合った。窓の縁は陰になっていて直射日光は当たらなかった。猫達も木陰で気持ち良さそうに寝転がっている。学園都市製クーラーは、窓を全開にしても快適な温度を保っている。灼熱の外界へと旅立つ涼気はミサカ髪も一緒に連れていこうとしていて、俺はそのたびにそよそよと凪ぐ栗色のやわらかな流れを見つめながら反駁した。
「いや、俺の猫への愛が尽きるなんてことは有り得ねぇぞ。俺は猫を愛する為に生まれ、猫を愛しながら死んで行くのだ」
「そこまで言いますか、とミサカは呆れます。あなたの猫好きは遺伝子レベルからのものだったのですね、とミサカは少しだけ納得します」
 遺伝子、か。
 俺はその単語について思いを巡らせた。そういえば、あいつらも相当の猫好き――というか、“猫狂い”だったな。

 大ちゃーん!ほら見て!そこの林の中で見つけたの!可愛いでしょ!
 また拾って来たのかよもう何匹目だよというかなんだよその格好見つけたと言うよりもはや捕獲だろう
 いいじゃないか大助。母さん喜んでるし。
 良くねぇ。第一俺は動物ってトコからしてが嫌いなんだよ。毛とか体臭とか。つうか家計の何割を猫の食費にあててると思ってんだ。
 いいじゃないお金ぐらい。猫はこの世で二番目に愛しいものよ?ねぇ父さん。
 あぁ、猫はこの世界で二番目に愛すべき存在だ。全くその通りだよ母さん。
“ねぇ〜っ”
 黙れバカ夫婦。

 思わず、苦笑した。こんな事を思い出したのは、さっきの言葉のせいか。それとも、いつの間にかミサカの隣にやってきた二匹組の雄猫と雌猫のせいだろうか。
 しかし、どちらにせよその回想はすぐに途切れた。それに引きずられるようにして、俺の中に弾け飛び出して来たものによって。

177とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 17:41:36 ID:nuErDCOg

――閃光。衝撃。壊れる何か。

「どうかしましたか?とミサカはあなたの意識を確かめます」
 反応して隣を見ると、ミサカの無表情が七センチの距離から覗き込んできていた。それまで気が付かなかった自分に驚いて、我に帰った。どうしたんだろうな。昨日はよく寝たはずなんだけどな。
「いや、ちょっと寝不足でさ。ぼ〜っとしてただけだよ。何でもねえ」
 ミサカは、そうですか、と言うと猫に視線を戻した。そこでは今や五匹程の猫達が彼女の脚に群がっていた。もともとは猫受けする人間だったのだろうか。今では彼女も、皮膚に触られなければ大丈夫な所まで上達していたらしい。そのせいで猫達は『触りたいのに触ると怖い!不思議!』と言いながら手を出したり引っ込めたりという状況に陥っている。
 それを離れた場所から見守る二匹の猫がいた。よく見ると、それはさっきの猫カップルだった。しばらくすると、ミサカの脚にアタックをかけていた一匹の子猫が、その二匹の元に歩み寄った。二匹と一匹は三匹となり、歩調を揃えてどこかへ歩き去った。
「親子でしょうか、とミサカは根拠のない推測をします」
 彼女も同じものを見ていたらしかった。ぼんやりとした言葉に、俺もまたぼんやりと頷いた。あぁ、きっとそうだよ。


  ▼

 俺は、レストランにいる。
 壁の一面がガラス張りになった、小洒落た造りだ。
 満席に近い店内では、それぞれの客達が明るい正午の一時を過ごしている。
 俺の向かい合わせには、見慣れた二人が座っている。
 そして、それら全てが、赤く弾けて消えた。

 そんな夢だった。
 いい加減にしてほしいものだ。見る夢の内の二つに一つは決まってこれなのだから。はっきり言って、飽きた。目の前に並べられた料理は食べられないし。目の前には馬鹿みたいな顔した二人が日に照らされて光ってるし。最後は決まって弾けて消えた、だし。だし。
 まあいいか。俺は起き上がると、病室のカーテンを開いた。光を遮る垂れ布が裂け割れ、夏の青空が現われた。
 夢の事をグダグダ考えても仕方ない。こんな天気の良い日には、ミサカに会いに行くのが一番だ。夏の今、天気が悪い事のほうが少ないんだけど。悪くても行くんだけど。
 俺は薄味の不味い朝食と得体の知れないカプセル数錠を胃の中に収め終わると、寝巻きと区別が付かない袖なしとハーフパンツに着替え、寝起きに決めた通り、ミサカに会うために病室の扉を開けた。

  ▼

 彼の声が聞こえたのは、丁度僕がミサカ10039号さんの聴診を終えたときだった。
「ミサカー、いるかー?」
 一応はノックしたようだが、ドアは返事も合間もない内に開かれた。
 珍しいことに、妙に愛想の良い仕草で片手を挙げた姿を現した彼は――
 そのまま、劇画チックに石化した。
 しまった。苦笑いと共に冷や汗を垂らす僕。半開きの口で、目を白くして固まったままの彼。
 そしてそんな男二人の中間地点には、
「??」
 と無表情に突然の沈黙を訝しがる、上半身裸のミサカ10039号さんがいた。
 瞬間。
「ブバァッッッッ!!!」
 彼の顔の中心が赤く弾けた。
 彼はそのまま、血の赤い霧を煙幕のように残し、自分が開けたドアの向こうにぶっ飛んで姿を消した。

178とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 17:42:01 ID:nuErDCOg
  ▼

「いや、ホント見事にぶっ飛んだね?ダイ君」
 カエル先生はそう言いながら、俺の鼻に絆創膏を張り付けた。
「痛ッ――仕方ねぇだろ、勝手になるんだから。俺だって迷惑してんだよ」
 参った。何しろ緊張でガチガチになりながらドアを開けたら、×××××だったのだから。
 実は、ミサカの部屋に入るのは初めてのことだった。病室とは言え、一応は立派な“オンナノコの部屋”だ。人生初の経験値を我が身に積むべく、それ相応の緊張と構えをもってして挑んだのだが、散々な結果に終わった。
 しかし、自分の血管を傷つけてしまうまでの深さで暴発してしまったのは問題だ。反省の必要がある。自分の能力で自滅するなんて格好わるい事には絶対になりたくない。
「いや、君の能力が、驚いたりしたときなんかに勝手に発動するのは知っているけどねぇー?」
 カエル先生は、純真な若者をからかうエロ爺さんの笑みを浮かべた。どうやら、ミサカの素肌の上半身(しかもカエルの方を向いていたので後ろ姿のみ)を見ただけであんな失態を演じた事をからかっているらしい。くそ。どうせ俺は女に対しては免疫ゼロだよ。あのフラグ野郎がクラスメイトと桃色接触事故を起こしてんのを目の端に捕らえる度に、部屋の一角に災いを引き起こすぐらいだよ。
「しかし、今日は君の顔面花火だけじゃなく、もっと面白いものまで見せてもらったよ」
 不意に、カエル先生の口調が今までとは違う、しみじみとしたものになった。
「彼女、僕に初めて口をきいたんだよ」
「……ふうん。なんて?」
「黒山大助って、なんですか?だってさ」
 先生はなぜか俺を一瞥して、苦笑いを浮かべながら言った。俺は黙っていた。先生は、娘が自分に懐いてくれなくなった父親のような表情を浮かべた。
「いやはや、初めて話し掛けてくれたかと思ったら、やっぱり君の事なんだねえ?しかも君のこと全てに関して、なのに漠然とした質問と来た。これはますます、ミサカさんとよろしくやって頂かないとね?」

 ミサカは、先程の事を全く気にしていなかった。
「猫缶買ってきてください、とミサカは依頼します」
 そんなわけで、俺は猫缶を求めてぶらぶらと歩道を歩いていた。分かってたけどさ。いくら医者相手だから言っても、肌を見せるのが恥ずかしくならない奴は居ない。だから聴診の時にあんなにはだける必要はない。そりゃマッパの方が楽には楽なんだろうが。しかし、ミサカはその合理的な方法に従っている。
 分かってたけど。あいつがそんな人間してるって事は分かってたけどさ。もうちょっと、あれだ。頬を赤らめたりとか、しどろもどろになりながら言い訳するとか、あるいは殴り付けるとかいうリアクションが欲しいものだ。と、そこまで考えて俺は頭を冷やした。
 ちょっと待て、暴走し過ぎだぜ、俺。世の中そんなギャルゲーみたいな事は起こらない。二次元の世界に飛び込まなければそんなことは――じゃなくて。俺は頭を振って、今度こそ思考を修正した。
 そもそも、なんで俺はそんな事をミサカに求めてんのか。客観的に見てだな、あいつはただの、知り合って間も無い知人だ。そんなことを期待する権利なんて、俺には無いのだ。そういう事は、もっと親密な人間同士ですることなのだ。
 しかし、俺はまたもやメビウスな思考にこんがらがる。
 でも、あれ?あいつ俺としか話せないんじゃなかったっけ?それって結構凄いことじゃね?いやいや、もうカエル先生とも話せるようになったじゃねぇか。でもそれは毎日俺と話してたおかげなんじゃないか?そうすると、あれ?どうなんだろう。俺とあいつって、どんなものなんだ?
 そうこうして考えているうちに今朝の光景が蘇ってきて、俺は頬が熱くなるのを感じた。くそ、これもみんな、カエルがあんな変なことを言うせいだ。なんだよ、ミサカをよろしく頼むって。お前は保護者なのかっての。5億歩譲って保護者だとして、一介の高校生に過ぎない俺に吐く言葉じゃないのは確かだろう。
 しかし暑いな。そして熱い。そうだな、この太陽のせいか。絶対そうだな。今日も相変わらずバカ天気振りまきやがって。どっか涼しい所に避難しないといけないな。
 ドロドロな思考に耽り、またもや頭の天辺からプスプスと音を立てていた俺は、気を取り直して周りを見渡した。そこへ丁度良くコンビニを見つけたので、俺はこれ幸い、と、クーラーによって満たされた冷涼空間へいそいそと身を投じた。

179とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 17:42:17 ID:nuErDCOg
 あった。
 猫缶が。
 コンビニの棚に。
 「……ラッキー?」
 俺はリアクションに迷った。
 たまたま入ったそのコンビニには、他の客が一人も居なかった。俺が自動ドアをくぐった時、暇そうに欠伸をかましていたアルバイトらしき女子高生店員が慌てて居住まいを正したぐらいだ。
 そんな所に入ってしまった俺は、なんか買ってかないと悪いな、と思いつつ見回したところで目的の物品を発見したのだった。いつもは結構な苦労と時間を掛けて手に入れる猫缶が、こんなにもあっさり手に入ってしまうとは。なんか、有り難みが半減してしまうような気がしないでもない。
 でも手っ取り早く猫缶を見つけられたのはいいことだ、と俺は気を取り直した。ミサカも喜ぶかな。いや、十中十、十一で無表情だろうな。でもほら、胸の内じゃあちょっとは――という所まで考えて、“胸の内”というフレーズに“あれ”を連想してしまい、クーラーの効いている店内にもかかわらず頬が熱くなるのを感じた。
 今度のこれは、夏風邪のせいだ。必死に自分へ言い訳をする。
 だからその時、俺はヤバイ目をした男が店内に入って来たのに気付く事ができなかった。

「金を出せ、でないと死ぬぜ」
 それは、日常を守る平穏を崩し落とすかのように響いた。

 言葉が耳に届いた瞬間、俺は音も無く身を隠してレジを注視した。
 俺がいた場所は入り口からは死角となっていたので、今店内に入ってきた人物がこちらに気付いている可能性は少なかった。
 そいつはレジの前に唖然として立ちすくむ女子店員に刃渡り二十数センチの包丁を突き付けていた。
 間違いなかった。今時褒めてやりたいほどのステレオタイプだ。
 白昼堂々コンビニ強盗。
 目の前で行われる光景に、頭を抱えたくなった。
 どうして、俺が巻き込まれなければならないんだ。
 俺は風紀委員、この街の治安を守る人間達の一員だが、この状況に職業意識や義務感というものを覚えはしなかった。
 そもそも自分は、悪を滅するため、正義を行うために風紀委員になったわけではなかった。見た目の治安が善くなれば、犯罪は裏で溢れかえる。事件の件数が減れば、一つ一つの事件が凶悪なものになる。悪の絶対数は変化しない、というのが俺の言い訳論だ。だから治安維持活動等の風紀委員の活動に、俺は積極的に参加していなかった。そんな事をしても、世の中から犯罪が消えるわけではないのだ。少しは減ったりするかもしれないが、そういう事は起きるときには起き、遭う時には遭うものなのだ。そう思っていた。
 そして、それは俺の目に入らない所でやって欲しかった。そうすれば、そこへ関わらなければならない義務がない。それなら、自分は何もしないでもすむ。
 しかし、俺の目の前では正に犯行が現在進行している状況だった。
「ボケッとしてんじゃねぇ!早く金出しやがれ!」
 男が怒鳴った。店員は恐怖に身を震わせた。
 その時。
 彼女の涙を浮かべた顔が目に入ってしまった瞬間、俺の腹の底がうずいた。
 あーあ。泣かせちゃってるぜ、こいつ。
 あーあ。むかついてきたぜ、こいつ。
 しゃーないか、あの子可哀想だし。ついでに可愛いし。やる気出て来ちゃったし。
 俺は覚悟を決めた。この世のどこで悪事が起ころうが、そんな事は知ったこっちゃない。俺に関わらなければそれでいい。しかし、それが目の前で繰り広げられようとしているなら、話は別だった。
 俺は自己中心的な人間だ。だが、俺に後味の悪い思いをさせようとするのなら、黙っているわけにはいかなかった。
――やってやるよ。こんな糞ショボ臭い悪事、木っ端微塵に叩き壊してやる。
 俺はあるものを取り出すべく、ケツのポケットをまさぐった。
 それはこの街の治安を守る者の証、緑に走る白線。風紀委員の腕章。
 犯罪者に対する引導とも言えるそれを腕に――
 留めようとした。
 でも、ありませんでした。
 ポケットの中、空っぽでした。

「ミャー」
「??と、ミサカは文章ならではの表現であなたに疑問を示します。その口にくわえているのはあの人の所有物ではありませんでしたか?とミサカはあなたに問い掛けます」
「ミャー」
「言葉は通じませんか……とミサカは先日見たアニメを思い出しながら、空想と現実の違いを思い知ります」

180とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 17:42:40 ID:nuErDCOg
 敵は一人。
 距離は七、八メートル。
 凶器は包丁。
 そして、何も考えられない様子で呆然としている店員が、犯人のすぐ手の届く位置に一人。
 この状況での最良は、何も手出しをしない事であった。
 犯人だって、怖いのだ。人を傷つけたのとそうでないのとでは、罪の重さも全く違う。こちらから手出ししない限り、こちらに危害を加る事は滅多に無い。犯罪を犯している人間の、興奮状態にある神経を刺激しないためには、素直に言うことを聞くのが一番だ。そうすれば誰にも怪我をさせないで済む。誰も傷つけさせないで済む。
 まあ俺は、犯行を終えて店員から離れ、店の外へと向かった瞬間を奇襲するつもり(普通の人はそんな余計な事しないでね☆)だったのだが――そんな計画は見事に吹っ飛んだ。
「へ?」
 腕章が無いことに気付いた俺は、間抜けにも声をあげてしまったのだ。
 それだけならまだ良かった。それは犯人の耳に届いたが、その“音”が人の“声”だとまでは分からなかったらしい。しかし、店員は違った。それまで頭が真っ白になっていた少女は、その音を聞いて我に帰った。店の中には男性の客がいたをの思い出し、それが“声”だと分かって、助けを求めようとした。
「た、助けて!!お願い!!」
 おういえー。実にストレイトなHelpCall!おかげで犯人さん、こっちをバッチリ睨んで来ちゃったじゃないかYO!
「なんだ!誰かいるのか!出てこい!」
 思わず先輩風紀委員のような口調になってしまったが、そんな馬鹿なことをしている場合ではなかった。犯人は急に慌てふためき、よりによって店員の女に向かって、レジ越しに手を伸ばそうとした。
 俺は行動を起こす判断を下した。
 興奮状態に陥って、人質をとろうとしている。ヤバイ。
 俺は即座に商品の陳列棚から飛び出すと、手にした猫缶を犯人の頭部目がけて投げ付けた。
 若干店員寄りに投げたため、そいつはそれ以上少女側に近付くこと無く回避行動を取らなければならなくなる。ビュン、と掠める猫まっしぐらをやり過ごした犯人は、次撃に備えるべく体勢を立て直す。
 しかし、その時。
 俺の両足は、既にその首を射程圏内に捕らえていた。
 ドべコッ!!という、肉のぶつかる鈍い音。
 それは、ドロップキックが急所を破壊する炸裂音だった。
 俺の全体重が秒速8メートルで生み出すエネルギーをまともに食らった犯人は壁までぶっ飛び、そのまま叩きつけられて気絶した。

 ふぅ、と一息。
 取り敢えずの危機は過ぎ去った。
 そう感じた俺は、体に縛りついていた緊張を解く。
 その油断が、命取りだった。

181とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 17:43:08 ID:nuErDCOg
 ドンッ――

 衝撃が、俺の体を貫いた。
 え?
 マジ?
 そんな現実逃避した事しか考えられなかった。
 完全に不意を突かれた一撃だった。
 そうこうしている内にも、それは確かな感触をもって俺の腹に食いつき、捕らえて離さない。
 本能で悟った。
 あぁ、俺、死ぬのか。
 実感はなかった。あるいはその方が幸せなのかもしれないな、と思うと、様々な出来事が俺の頭を駆け巡った。まだご飯をあげられていない猫達。そういえばこの頃あまり構ってあげていない寅之助。投げつけてしまった猫缶。
 最後に俺は、自分の人生を終わらせたモノでも冥土の土産にするか、と視線を下げた。
 俺の腹。
 何かが零れ落ちてゆくような感触を伝える、そんな異常の爆心地には――
「うぅ……えぅっ……グス……怖かったですぅうぅううぅぅぅ……」
 なんか、別の意味で死んだり殺されたりしそうな光景が、腹に抱きついてきていた。
「いや、ちょいちょいちょいちょいちょいちょいちょいちょいちょいちょいちょいちょいちょいちょい待った!!」
 またしても微妙な口調でまくしたててしまった。しかしこの女の子は離れない。乙女のくせしてあんた肉体強化系ですか、というぐらいの力でグイグイ締め付けている。レジ越しに身を乗り出して、まな板に乗っかる鯛って感じ。でもって痛い。頭が腹にめりこんでる。そんなにグリグリ押し付けないで下さい。嬉しいんだけど痛いです。幸せですけどヤバイです。
 俺が必死に引き剥がそうともがくと、彼女はやっとの事で腕を緩め、顔をあげてくれた。助かった、と思いきや、俺はうっと息を詰まらせた。
 そこにあったのは、ザ・乙女の涙(ティアー・オブ・レディ)。
 俺が、この世で最も苦手とするものだった。最大の弱点であった。しかも『ふぇ……』等という戦略級音波兵器とのダブルコンボであった。
 俺はどんな犯罪者よりも激しくキョドった。
 いや泣いてるよいやさっきからだったけどいやあれはあいつのせいだけどいや今俺の胸で?いや俺が泣かせてんの?いや助けんの遅かった?いや引き剥がそうとしたのが乱暴だった?やっぱ俺のせい?慰めないと!?
 これは非常に危険だ。女性免疫ゼロの俺にとって、乙女の涙は漏れ出した放射汚染液並みに危険だ。
 やっぱあれか。拭うのか。この悲しみの雫は、払い去らねばならないか。
 これ以上の暴走を回避するため、俺はあえて危険な、あの『涙拭い』を決行することを決断した。
 落ち着け。お前ならできる。さぁ、目標確認。いや、潤んだ瞳は直視するな。そう、目に指を突っ込む事など無いように。慎重に、優しく、その赤く光る水滴を、

 ――赤く、光る?

182とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 17:43:56 ID:nuErDCOg
 危険。そう告げた本能に従い、俺は店員を引っ張って横へ跳び退く。
 床へ倒れこむと同時、ボンッ!!と、さっきまで自分のいた空間が爆弾となって消し飛んだ。
「なんなんだてめえ等!!邪魔してんじゃねえ!!」
 店の角から、怒鳴り声が飛んできた。そこには頭へ血を登らせた男が立っていた。年は俺の五つほど上、服は何処に出歩いていてもおかしくない、ごく普通の装い。しかし、その手にはコンビニという場所には全くそぐわない物品、折畳みナイフが握られていた。
 抜かった。仲間だ。
 見ると、トイレのドアが乱暴に開け放たれている事に気付いた。あそこに隠れていたのか。強盗やテロなどの襲撃を行う時、実行者はよく一般人の中に仲間を紛らわしているのだ。この場合、俺はトイレの中まで気が回らず、犯人は一人だけだと決め付けてしまっていた。俺が初めてこの手口を知ったのは元グリーンベレーなナイスマッチョマンの著作だが、最近は有名な少年漫画の中で取り扱われ、知名度が広まっていた。
「クソッタレが!計画をパーにしやがって!!」
 男は完全に血迷った様子で叫んだ。
 俺は胃の中の物が重油に変わったかのような暗鬱を感じた。
 イレギュラー。それは状況判断を狂わせ、戦況を劇的なまでに転変させる。
 さっきの爆発、あれはおそらく彼が発動した能力だろう。極めて殺傷力の高い危険な系統の力だ。店員はと言えばさっきの衝撃で気絶していた。自分で回避行動を取らせることができない。こちらが不利なのは明らかだった。俺は一気に危険な状況へに捕われていた。
 しかし、俺をこれ以上無いほどささくれ立たせているのは、そんな戦的状況ではなかった。
「クソ、まあいい、そこのオマエ、これ以上怪我したくなかったら黙っておとなしく」
「黙れやクズゴミ」
 俺は、与えられた救済条件を一言で切り捨てた。
「言葉を吐くのは知能持ってからにしようぜ可燃物」
 俺一人に注意を向けるため、わざわざ自分から危険を犯す。だが、理由はそれだけではない。
 あちらに劣らず、こっちも頭に血が登っていた。
 その原因。まず、すぐ足元。こいつは、この店員の頭部を中心に爆発を起こそうとしていた。俺は女の免疫はゼロだが、それ故に女性に対する暴力は人一倍嫌悪している。こいつは自分のために、最も安直、簡単な『排除』という方法を選んだ。自分が危機から逃れるために、他人を、しかも女を傷つけようようとした。ムカつくなという方が無理だった。
 そしてもう一つの原因、それは他でもない、奴の操る能力だった。
 忌々しい光景が脳裏にフラッシュバックする。
 爆発。爆風。壊れる人、物、平穏。
 それは体の芯を炙るように凍てつかせる。
「んだとこの野郎!これにぶつクルまたゴル出ろや!」
 俺の挑発に、爆破男はもはや言葉にもならない声で怒り狂い、ギラついた目でこちらを睨み付けた。と、俺の目前に赤く輝く光の点が現われる。それは『焦点』――爆破系能力者が生み出す爆発の起爆点だった。
 光が徐々に強まっていく。それは炸裂の瞬間が近付いている事を意味する。しかし俺はそれを避けようともせず、男を見据えたまま微動だにしない。
「ぶっ飛べ!!」
 直感。それが合図だ。
 男の叫びが終わる前に、俺は床を蹴って前方へと飛び出した。

183とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 17:44:18 ID:nuErDCOg
 いきなり移動した標的に、男はうろたえる。しかしそれを修正する時間はなかった。俺は光点を素通りする。『焦点』が、背後で起爆する。
 俺は爆破すべく放たれた爆発を背中で受け止め、爆風を推進力に利用した。加速を得た体は、それを起こした張本人へと一気に接近する。
 その距離がゼロと縮まるのに、一秒とは掛からなかった。
 一切の容赦も無く、驚愕に歪んだその顔面を鷲掴む。そのまま、胸に抱える凶気をぶつけるかのように、俺は自身の能力を掌に発動した。

 爆圧。轟音。仰け反る男。どう、と、一息遅れて崩折れる肉体。

 爆発。俺が犯罪者に対抗して行使する力。俺にとってのそれは、破壊の象徴。破滅の具象。
『人間爆弾(クレイモア)』
 それが、俺がこの街で手に入れたパーソナルリアリティだった。

 爆破能力。
 それは学園都市に存在する無数の能力の中でも、『誤観測』の程度が著しいものだ。
 能力というものは、脳開発によって回路を開く事で獲得される『パーソナルリアリティ』から、この世を『誤観測』することで発生する。そしてその誤った観測は、普通の人類の観測方法では垣間見る事ができない、『不可視領域(ブラックボックス)』に蔓延する『ダークマター』へと干渉し、操り回す事で、原理が解明不可能な不思議な現象、『超能力』を生み出す。
 その超現象を観測することで、『不可視領域』並びに『ダークマター』を逆算してやろう、というのが学園都市の目的であり、『人でありながら神の計算を』うんたらかんたらというやつだった。と思う。少なくとも、俺はそのように噛み砕いて飲み込んでいる。そんな指先で食事を味わうような事をしても『不可視領域』に到達できるはずが無いと思うのだが、科学者さん達はいつだってこの世の不可能を可能にしてきたのだ、何も言うまい。
 そんなこんなで、学園都市の科学者さん達は日々能力の研究に取り組んでいる。具体的に言えば、電撃使いが操る、電子を自在に動かす何かとか。それはもう、光子一つ存在しない暗闇のサバンナを手探りで進むが如き果敢さで。
 しかし、そんな科学者達も、全く手を付けようとしない分野の能力があった。
 それが爆破系能力である。






 一息付く間も与えられなかった。
「きゃぁぁぁ!?」
 床にのびた男からそちらへ目を移すと、さっきまで気絶していた男が、同じく今まで気を失っていた店員の喉元に刃物を突き付けていた。
「来るな!それ以上動いたらこいつをぶち殺すぞ!」
 俺が爆破男を爆破し返す所を見ていたのだろうか。やけに震える声で叫ばれる。それと同時、俺を取り囲むようにして四人の人間が出現した。それらは全て男と同じ顔、同じ服していて、つまり俺の視界には五人の男が存在していた。
 これがこいつの能力――視覚の撹乱か。
 意識を集中すると、かすかな耳鳴りを感じた。音楽を聞く時、人はその印象から海や雨、山などのを映像を頭に浮かべる。この男はそいつを原理にして、その醜い面五倍増しを俺の脳へと叩き込んでいるようだ。しょせんはただの幻影に過ぎないが、これだけ鮮明だと、痛覚が誤反応を示す。御丁寧にも包丁まで再現しているため、それで切り付けられたらショックで気絶してしまわないとも限らない。男が幻影を抑止力に使っているのも、それを知ってのことだろう。
 どうやらそれは店員の目にも映っているらしかった。絶望に沈む涙目が俺を見る。男がその喉元で包丁を動かす度に、その体が恐怖で震える。
 男は何かを叫んでいる。おそらく、「両手を挙げろ」のような言葉で、降参の意志を示せと告げているのだろう。
 しかしその声は、俺の耳には届かない。
 俺の顔に、歯を噛み砕くかのような笑顔が浮かぶ。
 なあ、若者。
 そんなに、ぶっ壊されたいのか?

184とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 17:44:41 ID:nuErDCOg
 お前等、レベル2はあるだろ?あの爆発精度とこの視覚撹乱の規模。それに、事前に一人を潜り込ませておくという作戦。その役割分担も、追っ手を簡単に撒く事ができる実行犯と、いざという時に現れて高い威力で状況を打破できる共犯ときた。おまえら、結構頭良いだろ?でも、バカじゃねぇか?何でこんな事やってんだよ。遊ぶ金が欲しかったのか。犯罪を犯すというスリルを味わいたかったのか。自分ならやってのけられると思ったのか。どちらにしろ、やっぱりバカだな。
 なあ、若者。世の中にはな、決してやってはならない事があるのだよ。
 一度犯してしまったら、二度と取り返す事ができない物があるのだよ。それは大抵の場合、法律によって禁止され、犯罪という形をとった行為となっているんだけどな。
 お前は、踏んだんだぜ?
 絶対に踏んではならない、地雷ってやつを。
 そして、残念。
 起爆され、爆発となってお前に降り注ぐ爆風と鉄片の役目を言い渡されたのは――
 この場合、どうやら俺だったみたいだな。
「聞こえてんのか!?両手を挙げて後ろを向けって言ってんだよ!!」
 俺はその言葉に従って、おとなしく降参のポーズをとる――
 ふりをした。
 ボンッという破裂音。
 それは俺の肩袖口から飛び出た鎖付き分銅の射出音だと男が気付いた時、既にその手に握られていた包丁は、遥か彼方へと弾き飛ばされていた。
 一方俺は、目の前に立ちふさがる邪魔な障害物を排除するために行動を起こしている。鎖の反対側をヒュンヒュンと振り回して右手に巻き付け、一回り大きく膨れた拳を前に突き付ける。鎖と鎖の間から赤い光が漏れた次の瞬間、バツンという音をたてて千切れ飛んだ鎖が、散弾銃のごとく幻影達に降り掛かった。あらかじめ切れ目を作っておいた鎖は、一つ一つにバラけて飛んでゆく。それが体に突き刺さった瞬間、幻影達は跡形も無く掻き消え、鎖は何も無かったかのように通り過ぎた。
 超常現象、能力に立ち向かうコツその一。
 どこまでも、常識的に対処すること。
 いくら脳を誤認識させようが、所詮は実態のない幻影には、飛散する物体という、意識が介入しない物理現象は防げない。そしてそれは物理現象に干渉することができない物であるということを認識した脳は、誤認識の呪縛を断ち切ったのだ。要は実物と変わらないほど緻密なホログラムに手を突っ込んで、これは只の光の映像だということを確かめるようなものである。
 いくら人間の常識を越えた現象を起こそうとも、科学のルールにある程度従っていることには変わりない。その原理さえ理解できれば、対処することは十分に可能なのだ。
 もっとも、その原理を解き明かす事ができれば、の話だが。

185とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 17:45:08 ID:nuErDCOg
 俺は、丸腰でただ呆然とするだけになった男に引導を渡すべく、再び自らの能力を発動した。
 ボウ……と、赤い光が生み出される。
 それは一般的な爆破系能力者が作り出す起爆点、『焦点』と同じ物だった。ただ一つ、“体そのものが発光しているということをのぞいて”。
 俺が発現した能力、『人間爆弾(クレイモア)』は、極めてレアな代物らしかった。
 爆破能力――マイクロウェーブによる水蒸気爆発や、重力子加速によるグラヴィトンではない、純粋な爆発を起こす能力が研究者受けしないのには理由がある。その原理が、全く以て理解不能なのだ。
 まず、その爆発だが、そこからして原理が分からない。化学変化も核変化も何も無しに起こされるのだ。空間からいきなり力が生まれ、四散するのである。
 爆発の起爆点『焦点』は、爆破能力者が放つ二つ以上のビーム(のようなもの)が重なり合う場所に生み出される。それがビームの線と線の交点であれば『一点爆破(イグニッション)』、 線と線を完全に重ならせるか、円柱状ビームの中に線を通せば『直線爆破(ラインボム)』、円柱と円柱を交差させれば『空間爆破(イクスプロード)』だ。そしてその交差した場所は赤く発光することから、何らかのエネルギーを帯びる事は分かる。しかし、研究されたのはそこまでだった。ビームのようなものというのは、ただ能力者本人がそのようなイメージを感じるだけ。赤い光も、交点から突然に可視光線が発生していて、その原因はいかなる観測機器であろうと感知することができない。
 その中でも、一際異色を放っているのが『人間爆弾』だ。
 何せ、体にしか『焦点』を生み出せないのだから。
 爆破能力のレベルは、威力、有効距離、座標精度によって決まる。俺は威力だけはレベル4並みだが、どうあがいてもその射程距離はゼロ。よって他の二つも最低評価。風紀委員として真面目にいくらかの功績をあげ、ようやく異能力(レベル2)認定される程度だ。
 しかし、今目の前にいる標的を撃破するのに、そんな些細な事は関係が無かった。
 俺はスキージャンパーのように身を低くすると、ボカッ!という音をたてて足の裏と肩を爆発させた。その反動で、体が前へ弾き出される。
 男の顎に再度ドロップキックを叩き込み、このコンビニ強盗事件を終着させるのには、あと5秒も掛からないだろう。
 俺は宙を切り裂きながら、呆然とした顔に狙いを定めた。

186とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 17:45:24 ID:nuErDCOg
  ▼

「ねぇあなた、黒山クンって何処に居るか知らないかしら?」
 見ると、その彼と同年代らしき少女が自分に尋ねていた。黒髪のショートに、平凡な学生服。意志の強そうな瞳が、こちらを覗き込んでいる。
「彼の病室を訪ねても、誰も居なかったものだから。それで病院の人に聞いてみたら、ここで女の子とイチャ付いてるって」
 ベンチの上で私は首を傾げた。イチャついてるという表現が私と彼の関係を表すのに妥当なのかどうかよく分からなかったが、とにかく突然現れた彼女は彼を求めて自分に話し掛けて来たらしい。しかし、彼は今ここには居ない。それに名前も知らぬ人間にいきなり話し掛けられ、どう答えて良いのか分からない。彼女はどういった用件で彼を探しているのか。猫缶を買いに出かけているという情報を与えてもいいものなのだろうか。
「あ、ごめんなさい。いきなり自分だけ問い詰めちゃって。ちょっと急いでたものだから」
 こちらの当惑を察したのか、彼女は自己紹介した。
「私は長谷美冴子。黒山大助の風紀機動員としての力を借りに来たの」
 その腕に留められた腕章が、キラリと揺れた。

  ▼

 大丈夫だろうか。
 不安。
 恐怖。
 刃物を持ち、人を傷つけるために能力を振るう犯罪者と対峙しても感じなかった感情に、俺は心を揺さ振られていた。
「だ、大丈夫ですか!?」
 今の蹴りは、さっきとは比べ物にならない。当分目を覚ます事は無いから拘束しなくてもいいだろうと思い、倒れこんだままの店員に駆け寄った。だが、どうしたことか。彼女は何も喋らず、先程のように泣き喚くこともしなかった。躊躇いを覚える余裕も無く、店員を抱き起こす。
「聞こえますか?どこか痛い所はありますか?吐き気などはないですか?」
「いえ……だ、大丈夫です……」
 どこかで仕入れた知識を総動員して確認すると、一応安心させてくれる答えが返ってきた。しかしまだ油断はできない。自分自身で気付いていない傷があるかもしれないではないか、と体全体を見渡す。いつもの俺なら女性をジロジロ眺め回すなんて不可能な事だが、自分が関わった事件で被害を負わせてしまったという罪悪感と、少しだけ沸きあがった風紀委員としての責任が、それを可能にしていた。まず、腕。白い、細い、出血無し。問題無し。足、これも白い、スラリ、出血無し。問題無し。胴――は、さすがに服の上から見るだけだが、赤い染みなどは確認できない。
「よかった……怪我は無かったか……」
 ホッと安心すると、こちらを見上げる店員と目が合った。あーあ、顔が真っ赤だ。よっぽど怖かったんだな。そりゃそうだよな。くそ、もっと穏便に解決できればよかったのに。見ろよ、耳まで赤くなってるじゃねぇか。
 異変に気付いたのは、その時だった。熱い。店員の体が、メチャクチャ熱い。慌てて、額に手を当ててみる。更に熱くなった。
 え!?何!?どうした!?
 赤みを増してゆく顔を覗き込むと、なんと言うことか、その瞳がプルプルと揺れ、目蓋が閉じられてしまった。心なしか呼吸も乱れているように感じる。加えて、背中から腕に伝わる鼓動が激しくなってきた。
 オーマイゴッド。どうすればいいんだ。風紀委員になるための訓練である程度の応急手当ては習得しているものの、発熱などという症状には対処できるはずも無かった。
 何かの持病でもあったのだろうか。このまま安静にしておくべきなのか。担いでカエル先生の所までとんでいく方がいいのか。
 混乱を極める俺に救いの手が差し伸べられたのは、コンビニを爆砕して騒ぎを起こし、救急車の方からこちらに来てもらうしかない、と決断を下した時だった。
 その救いの手は、宙を舞う二本の足の形をしていた。
 その二本の足は、俺の使い物にならなくなった頭を、九十度ほど傾けた。
 頭を寝違えたみたいにへし曲げられた俺は、その勢いで壁まで吹っ飛び、叩きつけられて停止した。
 デジャブを覚えながら体を起こす俺に、その救いの足の持ち主は、ツインテールを揺らしながら言い放った。
「風紀委員(ジャッジメント)ですの!おとなしくなさい!」
 真顔で先輩にドロップキックをかました同僚風紀委員、名実共にトップクラスのテレポート能力者、白井黒子がそこにいた。

187とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 17:45:43 ID:nuErDCOg
  ▼

「白黒か!?助かった!!」
 まず今まさに拘束されんとしているくせに喜んでいる現行犯に眉を潜め、次に失礼極まりない名前で呼ばれたことに腹を立て、しかしその呼び方をするのはあの猫バカ男だけだったはずではと疑問に思い、それから自分が蹴っ飛ばした人物の顔を確かめて私は驚きの声をあげた。
「ええ!?黒山さんですの?!」
 どういうことか?と店内を見渡してみれば、先程0,1秒で確認した『女性に覆いかぶさる男』の他に、二人の男が地べたとラブシーンを演じているのに気付いた。それに爆破能力特有の爆風に薙ぎ倒された商品も。
 どうやら、事件はもうこの人によって解決されていて、自分はその功労者のドタマに足裏印のスタンプをだけということらしい。
 タラリと流れる冷や汗をごまかすために、努めて明るく、
「あ……あ、あはははは……どうやら、ご苦労様だったようですのね……」
「気付くのオセェ。いくらお前でも踏み込む前には覗いとけよっていう所だけどどうでもいいや。頼む!この人をすぐそこの病院まで運んでくれ!」
 珍しい。『頼むから決闘は頼むから勘弁してくれ』や『今は猫の相手だけで手いっぱいなんだよ、シッシッ』ではなく、ましてや途端に逃げ出すでもなく、あちらから先に頭を下げてくるとは。
「怪我人ですの?」
「ああ、怪我かどうかは分かんねぇけどなんかやばいんだよこの人!」
 どうやら腕に抱えた人物を心配しているみたいだが、その容態を見て私は、
「これが怪我人ですの?」
 メチャクチャ低い声で答えた。
「ああ、なんでか知らねぇけどいきなり熱出して――」
「こう、赤くなって?」
「そう」
「目も潤ませて?」
「ああ、なんか汗かいたみたいに」
「目線も踊らせて?」
「そうなんだよ、意識が朦朧としてんのかな?やばいよな!?」
 取り敢えずその女性店員を床に寝かせ、バカ男を上下逆さまに空間移動した。
「んでぁッッ!?な、何すんだよ!?」
「こちらの方は問題ありませんわ。まあ、念のため救急車のお世話になっていただくことにしますけど」
 微妙にシカトした答えだが、無事だという保障をされただけで安心し、気にはしなかったらしい。頭の天辺を擦りながらよかった、と息を吐く。
 3分後に到着した救急隊員に店員を引き継いでもらって、私は黒山大助に向き直った。
「まったく、あの店からの自動警報器の通報から2分で駆け付けましたのに、何で入院中のあなたが現場にいて、しかもとっくに制圧してますのよ」
「仕方無いだろ。猫缶の買い出し中に、偶然巻き込まれたんだよ。それに待ってられないような状況だったしさ」
 偶然、ねぇ。宝くじに当選する確率とどちらが高いのだろう。その疑惑を察してか、彼は更に情けない声で懇願する。
「なあ、だからさ、全部お前が始末しましたって事にしてくれれば有難いんだけどさ〜」
 まあ、仕方ないか。
「いいですわ。この事件の報告書には、私がいち早く駆け付け、犯人を昏倒させたことにしておきます」
 倒れている二人の男に非金属製の手錠をかけながら、私は彼の頼みを受け入れた。
 本来風紀委員の管轄は校内のみであり、非常事態でもないのにコンビニへと駆けつけた私の行為は越権である。だが、私は警備員に準ずる風紀機動員の資格を持っているし、実際に警備員では手遅れとなり、被害を拡大していたかもしれない事件を食い止めた実例が多々ある。だから多少のことは始末書を書くぐらいで目を瞑ってもらえている。
 しかし、いくら犯罪者を無効化するためとはいえ、通報を受けて駆け付けた風紀委員でもない者が人に危害を加えてとなれば少々面倒だ。彼は腕章も付けずに行動してしまったようだし。
 彼の頼みを受け入れた私は、しかし意地の悪い笑みを浮かべて言った。

188とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 17:46:04 ID:nuErDCOg
「その代わり――」
「その代わり……なんだ?」
 尋ね返してはいるが、私が企んだ交換条件には察しがついているようだった。そろそろと後退りするのを、肩からぶら下がっている千切れた鎖を掴んで引き止め、言い付ける。
「逃げようったってそうはいきませんわ!今日こそは決着を付けさせて頂きますの!第七学区最強の風紀機動員さん!」
 彼は、心底うんざりだという顔をした。
「やだよもう勘弁してくれよ捕まえたが最後心も体も切り刻んで再起不能にする最悪の腹黒空間移動能力者の風紀委員さん」
 とりあえず蹴り上げといた。
「やっぱりあの噂はあなたが原因だったんですのね!?そのせいでわたくしを見る民衆の目が最近居たたまれないことになってますのよ!」
「いいじゃんお前にもキャッチフレーズができたじゃんそれに当たらずとも遠から――イテッ。だって初春になんか良いアイディア無いかって聞かれたらすぐに閃いたもんだから――ォブッ!そんな気にすんなよー。俺のだってあいつが面白はんぶん抑止力防犯目的はんぶんでつけた肩書きだろー?」
「それでもあなたが最強の肩書きを我がものにしている限り、私はあなたより劣っているという看板をぶら下げていることですの!!とにかく今ここで勝負なさい!!」
「えぇー。もうそろそろ警備員(アンチスキル)も現場に到着する時間だろ?俺、黄泉川姉ちゃん苦手なんだよ。とっとと帰らせてくれよ。それにお前だって入院中の怪我人に勝っても嬉しくないだろ?」
「人を二人伸しといて言うことですか」
「そっちこそ人を入院させといて言う言葉かよ」
 う。
 それを突かれると弱い。耳に痛い反撃に、私は固まってしまった。
 学園都市最強の能力者が無能力者に打ち倒されたなどというデマ騒動の鎮静化中、彼を傷付けてしまったのは、実は私なのだ。いくら徹夜の疲労と錯乱する『鈴科百合子隊』の異様なオーラに怯まされていたとはいえ、金属矢を彼の首に誤って発射してしまってのである。幸いにも掠った程度ですんだらしかったものの、一歩間違えれば命に関わっていたかもしれない。その上、彼はその傷を負わせた私に何の非難をするでもなく『ああーいやー疲れて首がギックリいっちゃったなー俺も年だなーじゃあ帰って寝るわー』と言ってその場の仕事を片付け、どこかへ飛び去ってしまった。今こうして見るかぎり、やはりあの傷は入院モノだったらしく、罪悪感が重くのしかかる。

189とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 17:46:31 ID:nuErDCOg
 そんな私の後ろめたさに付け入って、彼はナハハと笑いながら、
「いやー別に気にすること無いんだぞー?まあこれが治ったら相手をしてやらんでもないから、またなー」
 妙に愛想を振りまきつつ、形のつぶれた猫缶を手にしてコンビニを出ていった。
 その背中にはこの事件で刻まれたのであろう真新しい傷があった。それを見送りながら、またも言い様のない罪悪感が沸き起こってしまって引き止めることができず、なんか私はいつもこうやってはぐらかされているな、と口を尖らせた。

 到着した警備員とのやりとりを終えて一息着いた所で、初春飾利から携帯に電話が入った。
 私は扱いにくい口紅のようなデザインを操作して通話ボタンを押すと、それを何の躊躇いもなく地面に叩き着けた。
「い、痛い……受話器が、ピガーッ、って……ひどいですぅ」
「その言葉、そのままお返しいたしますわ。今のは最悪腹黒風紀委員の名付け親への、ちょっとした感謝のおしるしですの」
「ゲッ!何で白井さんがそれを知ってるんですか。もしかして、黒山先輩がバラしたんですか?」
「それはもう、ぺらぺらと。あなたが黒山さんに私のキャッチコピーの作成を命じ、そのネーミングセンスを大絶賛した場面まで詳細に」
 デタラメだけど。本当はそこまで聞いてないし、大袈裟だけど、釣ってみた。すると、思いもよらなかったモノが食いついた。
「えぇー、確かに私はあれに賛成しましたけど、立案したのも命名したのも、全部黒山先輩の所為ですよ?」
 何!?
「……どういう事ですの?」
「そんな、私にむかって恐ろしい声出さないでくださいよぉ。だから、『白黒がキャッチーな肩書き欲しがってるみたいでうるさいんだけど、こんなのどうだー?』って言ってきたのが先輩で、私はそれに賛成しただけです」
 死刑だ。いや、それは初春で、あの男は極刑だ。執行人白井黒子が、直々にこの世の地獄を味わわせてやる。
「白井さん、そんな下品に笑ってないで、報告してください。コンビニ強盗はもう収拾がついたんですよね?」
 たしなめるような言葉だが、声が震えていた。確かに公衆の面前でゲヒヒヒなどと声をあげたのはヤバい。これではあのバカ男のつけた名前そのものになってしまう、と私は気を取り直して、彼女がこの電話をかけてきた本命の用件に応答した。
「え? じゃあ黒山先輩がたまたまそこに居て、白井さんが到着する前に鎮圧し終えてたんですか」
「そういう事なんですの。あの人もよくよくトラブルに巻き込まれる体質ですわね」
 あれで意外と風紀委員に向いているのかもしれない、と脱力しつつ一人呟く。
 思えば、私が黒山大助に初めて出会った時も、彼は何かの買い物をしている途中の様だった。
 まだ風紀委員に所属していない一般人だった頃、己の能力に慢心していながら、突然身に降り掛かってきた無差別な悪意に何も対応する事ができなかった自分。そこへ忽然と現れ、ペット用スナックを舞い散らせながら取り囲む男達を吹き飛ばしたドロップキックは、今でも鮮明に覚えている。
 彼は、どうなのだろうか。その時の事を覚えているのだろうか。彼と言葉を交わしているとしばしばそう考えてしまう時があるが、その態度を見れば、悩むまでもない。これっぽっちも覚えていやしないだろう。私だって、数年前に仕事で助けた人間をいちいち覚えていやしない。当然のこと。分かってはいるものの、なぜか悔しく感じてしまう。

190とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 17:46:51 ID:nuErDCOg
「とにかく、わたくしがいち早く現場に到着し、犯人を確保しておいたことにしておきなさい。別にこれくらいはでっちあげても大したことは無いでしょうし」
「はーい、了解です。でも白井さんって、黒山先輩の言うことなら聞くんですね」
 警備員達への説明と食い違わないように指示をしたが、予想外の答えが返ってきて、私は不覚にも動揺した。
「な!?な、何を言うんですの?」
「えー、だってそうじゃないですか。なんか先輩相手だと素直っていうか――」
「条件付きだからですの!今回も正正堂堂勝負する機会を取り付けたから引き下がってやりましたのよ」
「それで毎回『逃げるも戦略の一つだぜいえー』ってうやむやにされてませんか?そんなにあの肩書きが欲しいならあげるって先輩も言ってるのに……」
「私がこの手で倒さないと意味が無いんですの」
 うんざりとしながら主張するが、聞いていない。
「じゃ、間をとっておふたりの肩書きを合体させませんか!?『Mr and Mrs 最凶』ってどうでしょう!うわ!ぴったり!?私すごい!!」
 ふざけんな!私は再び携帯電話を地面に叩き落とした。『うぅ……いいと思ったのになぁ』という声を無視して通話を終了。
 ミスターアンドミセスって、そりゃ夫婦に使うものだろう。あんな奴と一緒にされてたまるか。私の隣は、一人限りの指定席だ。
 お姉さま。学園都市でも七人しかいない超能力者(レベル5)の一角。最高の電撃使い。二百三十万人中の第三位。
 私が唯一崇める人間は、あんな猫好きバカ男とは比べ物にならないのだ。
 こうしてはいられない。お姉さまエナジーが不足している。仕事を終えて、一刻も早く接触しなければ命の危険に関わる。
 私は頭を振って黒山大助のことを消し飛ばすと、愛しの人が待つ場所へ歩を踏み出した。

  ▼
 緑の中庭に帰還した俺は、一応レジに金を置いて買ってきた潰れかけの猫缶を手に掲げた。
「ミーサーカー、帰ったどーい」
 白黒の相手で遅くなってしまった。あいつは何故か知らんが何かと俺に突っ掛かってくる。肩書きなら譲ってやるって言ってるのに勝負にこだわってる辺り、あれか、お嬢様学校では騎士道の精神も指導しているのか。まあ、人が怪我してるのを見た途端にしおらしくなるのは可愛いもんだが。あの怪我を直に見せるとかなり責任を感じさせてしまうだろうなと思っていたんで咎めずに病院へ直行したのだが、意外なところで役に立ったな。
 そんな風に意外と扱いやすい後輩の事を考えていると、予想外の、しかし聞き慣れた声が俺の鼓膜を直撃した。
「≪黒山!!てめえドコほっつき歩いとったんじゃボケェ!≫」
 突然の野太い中年男ボイス。それはどの方向から飛んできたものかを知ることはできないものだったが、俺はその言葉の送り主をはっきりと目に捕らえていた。
 ゆっくりとそこを見る。
 中庭のいつものベンチには、相変わらず無表情にたたずむ猫好き女、ミサカと……
 先程の音波射撃犯である“女”、長谷美冴子が立っていた。

191とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 17:49:38 ID:nuErDCOg
  ▼

 なんか、俺のまわりには押しの強い人間が多い気がする。それとも、俺の弾力が弱いのか?握り拳を飲み込めることが自慢の顎だが、確かに言葉を連射するには向いていないかもしれない。
「≪ったく、どれだけ探したと思ってんだ、この猫バカ。平和ボケにも程があるわ≫」
 俺は抵抗する間も無く拉致された。猫缶をミサカに投げ渡すのがやっとで、彼女はわけが分からないといった様子だった。取り敢えず歪んだ猫缶に舌打ちすると、俺に見向きもせずご飯を与え始めたのを見届けた所で、その姿は白い壁の角の向こうへと消えた。
 なんだかなーという俺のせつなさなど意にも介さず、首根っ子を引っ掴んだままずるずると引きずる同じ支部の風紀委員、長谷美冴子は怒鳴り続けている。
「≪とにかく緊急事態なんだよ。んだってのになんだ、テメエはその頃カワイコチャンといちゃつき放題か?ええ根性しとるやないか≫」
 猫のような目(これは形状を表現した言葉であって、その愛らしさを表しているのではないぞ)を鬼のように歪ませ、黒いショートヘアを揺らしながら、彼女は口を閉じたままオヤジ声で叫ぶ。
 さっきミサカが状況を理解できなかったのも無理はない。この同僚は、能力を使って俺だけに言葉を叩きつけていたのだ。
 その能力とは『阿鼻叫喚(シュプレヒコール)』、強能力(レベル3)認定を受けた結構な代物である。簡単に説明すれば、見えない糸とコップを作り出し、自分が思う通りの音を一方通行で送り込む糸電話のようなもの、だな。コップの形状は直径約50センチメートルの球体で固定、糸の長さは最長約200メートル、その本数は2本なら100メートル、20本で10メートルといった具合である程度まで無限。特筆されるべきはその送り込まれる音で、その周波数は人間が聞き取る全範囲、そして大きさは最大約150デシベル、人間が気絶するレベルである。今の中年男声は説教用に設定してあるものらしい、聞き慣れたものだ。
 しかし、いくら十数人の不良にまとめて泡ブク吐かせる貴重な戦力とは言え、こんな用途で使われてはたまらない。
 俺は適当に手を振り回して空気振動率計算を妨害し、ヘッドホン的な説教から脱出すると、身を起こして自分の足で歩きながら更なる状況説明を求めた。
「俺の助けが必要な事態ってどういうことだよ?先輩達がまとめてかかってもどうにもならないとでも?」
「む。悔しいけどその通りだわ。あなたにも協力してもらってやっとどうにかなるってぐらいかしら。まあ入院してた間のペナルティって事で、頼むわよ」
 まだ入院中なわけなのだが。
 そういやこいつと初めて会ったときもこんな感じではなかっただろうか。今の高校の入学初日、廊下で洒落にならないようないざこざを起こしている生徒がいたのでやむを得ず両成敗すると、入れ替わりにくっかかって来たのがこいつだった。そのまま風紀委員支部部屋に連れ込まれてしまったのだが、そこにあった俺用のデスクを見るなりしおらしくなった。彼女は俺と同じ新入り風紀委員だったらしい。
「もう、もっと速く!あんた探し出すだけでも十分時間潰しちゃっているんですからね!」
 地声の彼女は先程とは打って変わってただの正義感が強い女の子になっており、やっぱり能力使わずに喋った方が良いよなコイツ、などといった事を考えている間に俺は現場へ辿り着いてしまった。

192とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 17:49:57 ID:nuErDCOg
  ▼

 その研究施設は、事件が起きているにしては穏やかだった。日頃よく目にすることもあるのだが、少なくとも外見上ではいつもとの違いは見受けられない。
 しかし当然の事ながら、異変が起きているのは確からしい。
 また能力を使っての説教を受けながら手を引かれ、俺は研究施設の死角らしき場所へとつれていかれた。そこには二人の風紀委員と一人の警備員が集合していた。
「おーおー、来たじゃんよ、少年」
 ゲ、黄泉川姉ちゃん、と思わず口走ってしまうと、すかさず唇を摘まれてアヒルにされた。対面早々過剰なスキンシップだな怪物メロンと言いたい所だが、この警備員には頭があがらない。学園都市の編入当初から世話になっているのもあるし、何より武器を持った敵への対処法を“手取り足取り”教えてくれたのが彼女である。己の肉体のみを駆使してのガチンコファイトなら、今だに勝てる気がしない。何となく“笑う鬼”と表現したくなるような人物である。
 そうして俺が上司からの叱責を謹んで堪え忍んでいると、あとの二人が助けてくれた。
「いいからセンセー、早く突入しようYO」
 という若者(と書いてバカモノと読む)口調で早まったことを言っているのは、赤髪マスクこと四条玲花。多分シャギーとかいう赤く染められた髪型にマスクを着け、熱で頭がとろけたようにな言動が特徴。なぜか“女の子”という表現がしっくりくる17歳だ。
「そのためにも、挨拶は程々にしてまずは状況説明が先だと思うのですが」
 と、丁寧言葉で赤髪マスクのフォローと司会進行を同時にこなしたのが、金髪眼鏡こと藤堂宗定。髪を派手な色に染めているくせに細い銀フレームの知的な眼鏡が似合っている姿は、“麗しの秀才不良”という表現が――うん、イメージとしては合っているが、変だな。
 付け加えておくと、赤髪マスク、金髪眼鏡は二人とも3年生で、ちなみにその能力も同じく強能力(レベル3)である。
 そう、何とも有り得ないことに、俺の通う平凡な学校に居を構える第九九支部は、その人員の四分の三を強能力者が占めている。更に大能力者相手に武器を使わず立ち向かう女警備員がその顧問を務めるということで、周辺の学区にもその名を轟かす名物風紀部隊なのだった。
 しかし、金髪眼鏡の言う通り、そろそろその高い実力を誇る支部を悩ます事態というものを説明してほしい。つうか、緊急なんじゃなかったのか。
 俺とトードーさんの視線に促され、黄泉川ねえちゃんはやっとこさ事件の状況説明を始める。
 その内容を聞いて、俺はニガリを飲んだような顔をした。
 赤髪マスクは、かめはめ波の撃ち方を教えてもらっているような表情をした。
 金髪眼鏡は、新種の草履虫が発見されたというニュースを聞いているような面持ちだった。
 内緒話女は、ずっと俺に説教し続けていた。
 それはあまりにも異様な事件だったのだが、町の治安を維持するのが俺たちの仕事であり、また今回はサボるという事もできそうにない。俺は女警備員の指示に従い、他の三人と共にその研究施設への突入準備を開始した。

  ▼

 全ては、我らの祈願のためだった。
 その願いは、永遠に届くことのない、夢物語であるかに思われた。
 しかし、この学園都市の科学力はそれすらも現実のものとする事ができた。
 実現可能となった夢。
 あとに必要なのは、ただ己の決意と行動だけであった。
 しかし、どこに立ち止まる理由があろうか。我らは、積み重なる年月の間望み続けていたのである。
 そうして我らは、必要な設備の揃っているとある研究施設を占拠することにした。
 もちろん犯罪であった。法に背を向ける以上、社会の逆風に襲われるのは避けられない。しかし、我らは微塵の不安も抱いてはいなかった。一つの目標のために一致団結した我らに不可能な事があろうか。
 答えは、否。
 断じて、否。
 我らは一人残らず、そう答えていた。そう。信じて疑わなかった。
 しかし、それは間違いであった。
 同胞達が集っていた、研究施設の一室。その熱気に満ちた部屋の窓が、突然砕けた。
 ガラスを破った勢いのままに部屋の中へ飛び込んできたそいつは、その異様な姿を我らの目に焼き付けた。
 真に、異様――異形、威容な姿であった。その四肢、首、頭部全てに、肌が見える所はないほどに鎖を巻き付けていたのだ。
 我らは、気付くべきだった。
 その鈍色の乱入者こそ、我らの夢を打ち砕く敵であり、また絶対に逆らうことのできないこの世の法律だったのだ。
 そいつは餌となる小動物の巣に入り込んだ猛獣を思わせる動きで床にむっくりと起き上がり――
 我らに、破滅を振り撒いた。

 ボフンッ――

193とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 17:52:41 ID:nuErDCOg

 両手足と頭に巻かれた鎖は、若干くぐもった音と共に爆散した。
 場を一瞬にして混乱に陥れると同時、俺は目の焦点を合わせず、視界全ての映像を脳に送り込むようにして状況を把握する。
 締め切られていて薄暗い、約10メートル×20メートル程の広い部屋。
 規則正しく並べられた大きなテーブルに、壁一面の巨大な棚。
 そして、その何かの研究室を思わせる場所には――六人の人影が床に倒れ伏した状態から体を起こし、こちらに食ってかかろうとしていた。
 首を90゜回転させ、突入してからの3秒間に得たそれらの情報と、事前に確認しておいた情報――この部屋にいるのは実行犯だけであり、人質の類の存在はなし――を照らし合わせ、行うべき行動が導きだされた。
 この六人全員を、無力化する。
 俺は決断から間を置かず動き出した。手始めに3歩ほどの距離で仰向けに倒れ、見上げるままに固まっていた人影の腹へと拳を振り下ろす。爆発によって増強された一撃は、それだけで対象の意識を刈り取った。
 残り、五人。
 その時、背後に動きを感じた。
「「うぉぉぉぉぉ!!」」
 二人分の叫び声。振り向くと、実験時に試験官やフラスコを空中で留めるためのスタンドを手に持った影二つが、こちらに突っ込んできていた。
 もう体が動くか。結構早いな。
 そんな評価を下したのは、彼らの頭上、床から3メートルの空中からだった。
 バック宙で一気に死角へと移動していた俺は、爆音を残して消えた敵に面食らって硬直する、二つの影を仕留めるべく能力を発動する。
 爪先と後頭部に起きた爆発により宙に浮かんだ俺の体に強烈な回転と加速が生み出され、そのまま体操競技の選手のように着地。
 その両足と床との間には、既に体を動かす機能を失った頭が転がっていた。
 あっという間に、あと三人。

194とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 17:53:00 ID:nuErDCOg
 そこからは、もうこっちのものだった。今の二人は、彼らの中でも行動的な人物だったのだろう。それがあっさりと倒された事におじ気付いたのか、引け腰になった影達。その中で最も近くに位置する者目がけてテーブルを飛び越え、首筋ヘ踵をめり込ませる。その体が床に崩れ落ちるよりも早く、次の人影へ。背中に拳を溜めながら肉迫し、上半身を一気に回転させて拳を突き出す。その直線的な攻撃は動きを先読みしやすかったためか、スレスレの所で回避されてしまった。しかし俺は気にせずそのまま体をひねり、ろくに体重の乗っていない蹴り胸に押し当てた。
 その踵を爆破。
 それは体重移動という考えを無視した動きだった。普通ならダメージを与えることもままならず、むしろ自分の態勢を崩して反撃されてしまうのがオチだ。しかし、俺はそのトリッキーな動きを、能力で補助する事によって可能としていた。
 爆発の衝撃波に後押しされ、人影は勢いよく吹っ飛んで壁に激突、動かなくなった。
 一つの傷も負う事無く五人の人間を床に転がした俺は、最後に残った人影に振り返った。
「どうする?あとはお前だけだ。おとなしくするならいいけど、まだ抵抗するのなら痛い目にあうぞ」
 どちらでも構わないと思いながら降服を勧めてみたが、どうやらそいつは諦めが悪い性格であるようだった。
「断るッッッ!!この猫耳大実験は!!ボクらの永遠のロマンやねん!!こんな所で諦めてたまるかい!!」
 そう答えた人影――なぜかクラスの学級委員である青髪ピアスの無駄に燃え盛る瞳を見せ付けられて、俺は今日で何度目かのため息をついた。
「何だかうちの生徒がガッコの生物室で愉快な事をやってんじゃんよ。女の子にとってはある意味危険過ぎて有毒だから、オマエ行ってこい」
 それが、強能力者の先輩風紀委員を差し置いて、異能力持ちの俺が、この理科室――学校という、生徒に発現させた能力を研究する学園都市の研究施設の一つ――に突入させられた理由だった。金髪眼鏡さんも男だが、あの人の能力は戦闘には向かないものだった。
 しっかし、猫耳?アホかオマエ等。どうせまた変態同人同盟のガセ情報だろ。て言うか、半年に一回は『ついに猫耳少女誕生!!』とか言って実験レシピを売り捌いてるじゃねぇか。いい加減学習しろ。
 どうしようも無くくだらない理由で現場に駆り出された俺は、やけくそ気味な不機嫌に突き動かされていたのだった。そのためにかなり暴力的な手段で事を落ち着かせようとしたのが……まあ、殴る蹴るの加減はよく承知している。さっき二つ頭をいっぺんに踏ん付けた時も、脇下から逆噴射的に爆破して軽減しておいたので、気絶する以上のダメージは無いだろう。
 怒りをぶつけるにしても手加減の配慮が必要であることにまた苛付く、という悪循環に身を流されていると、
「黒ピーなら分かるやろ?キミの猫ヘの愛は、よう知ってる。ボクも少しは分かるで。あの肉球、あの毛、あの目、あの尻尾……あいつは人間を誘惑する術というのをよう分かってる……」
 青髪ピアスが熱に浮かされたような危うい顔で語り掛けてきた。どうやら俺を仲間に引き入れようとしているらしい。その目に倒れた同志への憐憫の情は見受けられず、猫耳生成方法の確立という目標に全てを捧げる心意気だけが無駄に伝わってくる。この勧誘も、勝手に学校の教室ヘ忍び込んで事をやらかそうとした自分の身を案じての行為では無く、純粋に目的を果たさんとしてのものなのだろう。
「しっかーし!!その魅惑の結晶は耳にこそ詰まっているんや!」
 だが勿論、そんな事に耳を貸すつもりなど毛頭無かった。潰れた猫缶。破れた衣服。無駄に潰された、貴重な夏の休日。あいつと過ごすはずだった時間を、こんな所で浪費している現状。さっきも言ったように、俺は無性に苛立っていたのだ。
「青髪、お前は重大な間違いを犯している」
 言うなり、俺はやつに殴りかかった。だがその攻撃はバレリーナのような華麗な体捌きで回避される。俺は、不意を突いた突入に能力による反撃はできないだろうと思って大胆な一方的鎮圧を行っていた。が、これまでの行動はさすがに十分な時間を与えてしまっていたようだ。
「何故!?何でや、黒ピーは猫耳少女の夢を叶えたくはないんか?あの最強のパーツを、猫なんかやない、本物の女の子に生やしてみたいとは思わへんのか?」
 段々と熱くなって行く叫びに呼応するかのように、青髪ピアスの動きは加速していった。

195とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 17:53:38 ID:nuErDCOg
 フィギュアスケート並みの回転速度を教室の床で実現しつつ、切り裂くような蹴りを放ってくる。
 直線的、かつ方向が限定されている攻撃だが、いかんせんそのスピードが速過ぎた。俺は肩や側頭部、頭頂部を次々と爆破して必死に避けつつ攻める。肘に起こした爆発による拳撃。インパクトの瞬間に起こす爆破。そしてその衝撃で引き戻し、繰り返される連打というローテーション。
 拳と足先が激突、相殺し合い、まるで格闘マンガのような打撃音の嵐が吹き荒れる。
「これが俺の答えだ、青髪ピアス」
 打ち出した何十発目かの拳が、青髪ピアスの頬を掠めた。そのままに終わるかと思われた動作は、しかし、青髪ピアスの方向へと強烈な爆破を浴びせる事により、膠着を動かす起爆剤となった。
「猫耳要素をォォォ!三次元に持ち込むんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええ!!!」
 爆風に体勢を崩した青髪ピアス。その隙を見逃さず、俺は失速した胸蔵を掴み、制裁の鉄拳を下顎に叩きつけた。

 ▼

 爆発の衝撃を利用した、常人離れな身体能力を武器にしての戦闘。それが、風紀委員の役目を遂行するために俺が用いる、『人間爆弾』の使い道だった。
 ビームのようなものを交差する事で生み出す『焦点』を起爆する爆破能力者は本来――というより当然、自分の体から離れた場所に爆発を起こす。身体測定(システムスキャン)で評価される項目の大部分も、爆破の距離と精度だ。能力を用いての戦い方も、自分が巻き込まれない距離にいる相手に対して爆破を使うのが一般的である。
しかしながら、俺は一般的ではなかった。そのため、新しい戦法を編み出す必要があったのだが、自分の体を爆破してでできる事と言えばたかが知れていた。この戦術は、半ば必然的に生み出された。
 能力が発現して間もない時には、制御不足で体中をへし折り、穴だらけにした事もあった。それでも、強くなるために鍛え続けた。
 俺は、強さヘの執着が強かった。
 きっかけは、幼い頃に見たアニメだったと思う。その番組はそれ以前によく見ていたような子供騙しの物語ではない、つまり結構シビアな展開が含まれていた。親友の死とか、師匠の殉職、主の逝去、無益な犠牲……ま、有りがちなやつなのだが、俺はそれまでに突き付けられた事のないスリルに心を奪われ、夢中になった。最後はちゃんとハッピーエンドで終わったしな。
 しかし、敵味方問わず死んだはずのキャラクター達までもが一同に笑顔で勢揃いするエンドロールを見て、俺は思ったのだ。
 物語をもっと幸せな方向に向かわせる事はできなかったのだろうか、と。
 味方側に改心したおいしいポジションの悪役が始末されない、天然系の幼なじみも主人公の目の前で暴漢に殺されない、そもそも初っ鼻から、生まれ育った村を兵士達に踏み潰されないということにはできなかったのか、と。
 究極の問いと思えたその答えは、しかし、いとも簡単に導きだされた。
 その解こそ、強いことだった。
 何も、個人が悪の本拠地を核爆弾級の火力で炭にしなければならないというわけじゃないのだ。恐るべき軍団達を食い止めたいなら、影で操る親玉の首を落とせば、事は足りる。素手で巨漢数人を相手にするにしても、勝利方法が無いわけじゃない。
 ほとんど有り得ないような解決方法を、確実に成功させる。そのための強さ。
 俺はそういったものに憧れた。
そんなこんなで、小さな頃は我流で体を鍛えたものだ。その成果がいじめっ子達との喧嘩三昧というのは、まぁ、そんなこともあるよな。きっかけが気弱な女の子を庇護するためだったのならまだ良いが、全く記憶に残っていない。どうせしょうもない事だったんだろう。そんなもんだ。
 というわけで、そんな学童時代を過ごし五年前に学園都市に編入された俺なのだが、能力をという力を手に入れてもその姿勢が変わる事が無かったのは言うまでもない。むしろ、個人の持つ事が許される強さの限界を楽々と凌駕できることに感激し、ますます鍛え励んだ。
 そうして『人間爆弾』を開発し続けた結果、俺は徐々に能力を発達させる事ができた。
 今では手足と頭を主として身体全体に『焦点』を発生させ、ゼロ距離以下の爆破を確実にゼロ地点で起こせる。『焦点』発生中ならば、ほとんど筋肉と連動した発動を可能とする。そして、爆発にある程度の指向制御をかける事ができる。
 これらのおかげで、アクロバティックな体捌きや複数地点の同時連続爆破、腕表面全体を爆発させても潰れないといった戦闘を実現しているわけだ。
 この実力を風紀委員で遺憾なく発揮してきた実績により、能力強度(レベル)認定も、無能力からから異能力へ格上げされ、第七学区の実力者として頼りにされるようになった。

196とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 17:54:02 ID:nuErDCOg
  ▼

「ご苦労でしたね、黒山君」
 部屋にいた全員を地べたとキスさせ、閉じられていた教室の鍵を開けると、姉ちゃんと赤髪マスクと騒音女が雪崩込むように入ってきた。
 夏休みの自由研究にしてはいい度胸してんじゃんなにが猫耳だますらお共めがよーしバッチリお仕置きしちゃうZO?などと、男の暗黒面を垣間見てしまった女性達はお怒りのようだ。
 ボケっとしていたら同じ男だという理由だけで俺にまで被害が及びそうだったので、慌てて廊下に出てきた次第である。
 一番の功労者であろう俺を唯一ねぎらってくれたのは、サラサラな金色に銀眼鏡の一筋が光る優男、藤堂正定だった。
「ほら、服が破れていますよ。よろしければこれにでも着替えてください」
 何故か後輩にまで丁寧語なこの先輩は、一仕事終えた俺にタオルとスポーツドリンク、それにダメになった衣服の替えまで手渡してきた。
「すんません、有り難いっス」
 コンビニで背中に爆発を受けた時点でもうボロボロになってしまっていたし、突入第一に全方位爆破した際、首の辺りもまとめて千切れ飛んでいたため、断る理由は無かった。それに恥ずかしながら、能力の特性上衣服の破損は日常的なこととなっており、俺の家計を切実と苦しめているのだ。
 彼は直接的な戦闘行為による風紀活動は行わないが、そういった事態には一歩離れた場所からの状況判断、連絡・司令係を担っている。ただ、そんな事件が、風紀委員の管轄である学校内で起きる事は滅多に無い。そのため、大抵はこのようなマネージャー的役割をこなしてくれている。コンビニで使い切ってしまっていた所に、手足と頭に巻けるだけの長めの鎖を提供してくれたのも彼だ。
 いつも通りお礼を言いつつ、それらの品々は能力でコンパクトに持ち歩いているとして、揃えるための金はどうやって調達しているのだろうか、と第九九支部の年間予算を思い返しながら疑問に思った。彼の能力はマジックのように物を持ち運べるだけであって、何もないところから質量を作り出しているわけではない。まさか風紀委員が街の秩序を破っているんじゃないでしょうね。
 そんな風に影で小首を傾げていると、、
「グギャー!」「あひぃー!」「許してー!」「ごめんなさいもうしませんにゃボッ!?」「チョーっとお待ち下さいワタクシは青髪ピアスに強引に巻き込まれただけであってですねバッ!?」「ヌハー!も、もっとー!」
 男達の凄惨な悲鳴(変態16.66%入り)が鼓膜に飛び込んできた。
 どうやら、教室の中では目を覚ました奴らに聴覚拷問と肉体的説教が施されているらしい。
 あ、それに『灼熱地獄(レッドゾーン)』もプラスされているかもしれないな。これは赤髪マスクこと紫条玲花先輩の、華氏と摂氏を誤観測することで発動する能力だ。華氏表示の温度計の視認を引き金として、最大半径約五十メートルの熱量を華氏a℃から摂氏a℃まで上昇させるという、アホっぽいけど実はエネルギー規模的にすごい能力だ。
 我等が弟九九支部の女性軍は最強である。
「今なら、都合が良いですね。ちょっと耳を貸してもらえますか?」
 トードーさんは唐突に言った。だが、男二人の状況を都合が良いという言葉に、俺は何のことなのかすぐにピンときた。すぐさま覚悟して、彼がやや調子を低くして告げる言葉に耳を傾ける。
「――、――」
「…………………………………はぁぁぁああああああああああああああ」
 そして、たっぷりとため息を付いた。二十リットルぐらい?

197とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 17:54:30 ID:nuErDCOg
 勘弁してほしい。今日一日で何回目のネガティブイベントだ?この調子で俺にため息を付かせると地球の酸素が足りなくなるぞ。
「……同棲っスか、先輩」
「うむ。同棲だよ、後輩」
 俺は知らされてしまった内容を口に繰り返してみたが、聞き間違い等ではないようだった。正されること無く肯定されてしまった。
 はぁ、と今一度のため息を吐き、俺は愚痴った。
「あんの旗男……学園都市を引っ繰り返す気か……」
 旗男が同棲。
 金髪眼鏡が告げたその5文字には、この街の平和が懸かっていると言っても過言ではなかった。
「いやぁ、参りましたよ。八月八日でしたかね?上条氏の右腕ポロリした事件の日、昼が過ぎた頃の事でした。僕は玲花さんと喫茶店でお茶をしてたんですけど、彼が偶然入店してきたんです。二人の方を連れてね。一人は今この部屋で折檻されている――おやまぁ、痛そうですね――あの青髪の学生、つまりなんて事はない、単なる男性の友人でした。しかし、もう一人が問題でしてね。なんと、銀髪碧眼の外国人修道女だったんです。」
「それは――確かに。あいつが銀髪のガイジンに旗立てたって話は聞いたこと無いスね」
「はい。僕もそれで気になって、チラチラ見てたんです。玲花さんを見つめるついでですけどね。“その時は”別に尾行してるわけじゃ無かったし、あくまでもお茶の途中でしたから。彼らは相席で四人席に収まり、それからごく普通の娯楽施設を巡り、特にこれといった事も無く帰路につきました。しかし、そこから……まぁ、察しの通りです。彼は外人修道女さんと一緒に寮の中ヘと消えました」
 その後、先輩は『三沢塾の中で大勢の人間が血塗れになっている』という誤報で駆り出されたため、事の詳細は後日改めてとなったらしい。(この三沢塾事件というのには俺も赴いたのだが、奇妙だった。複数の、無関係な目撃者が通報してきたような事実は何も無かったのだ。しかもそろそろ帰ろうかという時になって、屋内にいたはずなのにいつの間にか外に出ていた。不審に思って現場に戻ってみれば、校長室で気絶した巫女さんと、なんと右腕がもげた旗男が倒れていた。その巫女さんは数日前からそこに監禁されていたらしい。見る限りでは上条はそれを救出したという英雄的な状況解釈に至らざるをえなかったのだが、彼女こそはその日喫茶店で相席をした人物だったんですけどね、とは先輩の弁だ。本当に訳が分からん)。
「あの事件のゴタゴタが治まってから、数日ほど学生寮を監視しました。と言っても、玄関のドアに貼り付いて、廊下に聞き耳を立てるだけですけどね。結果、間違いありません。修道女さんは、一日の内二十時間以上を上条氏の室内で過ごしています」
 これぞ最悪。
 こうなっては、とるべき道は一つしかなかった。

198とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 17:54:47 ID:nuErDCOg
「仕方ないスね」
 トードーさんも同意見だ。
「ええ。そうですね」コクリと頷いて、「この事実は徹底的に隠蔽します。この街の平和のためにも、旗男が女性と同棲しているという情報は、一片たりとも知られてはなりません」
 旗男。学園都市治安維持機関において、その名はもはやコードネームと化すほどに危険視されている。
 その理由は、奴が持つ異常なまでの対人関係という点に尽きた。
 いや、『異常なまでの』という表現は不適切だな。これはあくまでも、普通の範囲内で異常に著しく偏っている事を指す言葉だ。
 しかし、奴はどう贔屓目に見ても、異常以外の何物でもなかった。いや、だがこれも適切とはいえないかもしれない。異常とは書いて字のごとく常と異なるという意味があるが、我々が抱いている常という概念が奴に通用するのかどうかはなただ疑問である。
 なにせ、奴がこの高校に入学してからの出来事を紹介させていただくと、だ。
 ワケアリな“高位能力者のスキルアウト”と頻繁にぶつかり合う、その中で異性とあれば無差別にフラグを立てまくる、ついでにぶつかった奴の“ワケ”を解決して更正させる、それを繰り返して(全54件)ヤバい奴らとの交友圏拡大、フラグの数は3桁突破、なんていう自分の口で言っていても現実とは信じ難いようなもんばっかなのである。
 そして、そんな光子力ロケット並みにブッ飛んでる奴が退学処分になっていない理由。それは、ここ数か月、奴の活動に合わせて第七学区の治安が改善されつつあるためだ。白黒がこの前片付けた薬がらみの事件以来、俺も首の骨を金属矢で貫通させる怪我を負う羽目になるほど体を鈍らせてたぐらいだし。
 ……と、公式にはそういうことになっているが、断言していい。本当は、奴が風紀委員・警備員のお偉いさん、果ては学園都市統括理事会員の親戚家族本人孫その他の淑女にまでフラグを立てているからだ。彼女等が、こっそり旗男の身分を保護しているのである。
 彼女等の思惑は、今の所は表面化してはいない。
 だからこそ、それが表面化してしまった時の事を考えると恐ろしい。
 というわけで、第九九支部の男二名は、『路地裏の人間達と関わりを広く持つ男』という風紀委員全体の名目とは別に、日々旗男を注視しているのであった(その活動の中ですら旗を立てられる危険があるので、女性陣には秘密だ)。
 だから勿論、同棲なんて事態は全力を以て隠蔽しなくてはならなかった。
 憂欝な顔して旗男の傍迷惑さにうんざりする俺を、トードーさんは笑って元気付けた。
「まぁ、もう管理人には話を付けておきましたよ。生活音が漏れる可能性がある、上条氏の部屋の隣と上下の住人にも、堅く口止めをしています」
 毎度の事ながらこの人の手際良さに感心しつつ、俺は改めて旗男の危険性を憂えるのだった。

199とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 17:55:03 ID:nuErDCOg
 学園都市。脳開発のカリキュラムに能力の発現を組み込む研究機関。外界と隔てれた街で、日々生まれ続ける能力者。そして当然のように行使される異能の力。
 だが俺は、これだけは言っておきたい。
 学園都市、世界で唯一超能力を発現される場所とはいえ、他のどんな所とも、何も変わらないのだ、と。
 超能力という言葉を聞いて思い浮べる事、大多数の人に言えると思うが、それはまず間違いなく刺激に満ちたものだろう。
 確かに、そうかもしれない。
 不可視の力を操る念動力、熱量を操作する発火能力、遠く離れた相手と意志疎通する念話能力、心紐解く読心能力、そしてその他、誤観測の程度が激しい奇怪な力の数々。それらは数多くの漫画やゲーム等、人間の創作物の中に頻繁に登場してきた、つまり人間の心が追い求めるものだ。
 しかし、ここで冷静に考えてもらいたい。
 そもそも能力というのは、そんなに魅力的なものかと。
 火を点けたければライターを使えばいい。物を動かしたいなら、両手がある。近頃は携帯電話という便利な機械があるし、少し強引な手でいくなら拷問という技術もあるが、心を伝えるなら言葉が最適だ。
 能力には、一般人にとって実用的な価値など無きに等しいのだ。
 超能力という物のファンタジック性に憧れる奴、そいつも、そんなのを抱くのはやめておけ。
 この街で五年を過ごしてきた者として言わせてもらえば、こんなもの、自己紹介の時に一発芸として役立つぐらいだ。入学当初は物珍しさに感動するが、すぐに飽きる。日常に溶け込む。
 偏差値と同じ、人間の価値を測る物差し。学生達の能力に対する認識は、その程度のものだ。
 祭り等のイベントの際には能力を利用した人気の催し物もあるが、普通の場合、公共の場で能力を使うのはマナー違反である。
 それに、能力を駆使したド派手な超能力バトルというのも、起こることは滅多にない。学園都市の六割は頭に血を昇らせて気張ったところでスプーンがやっと曲がる程度のレベル0なので、それなら自分の腕で殴った方が早いのだ。それに、『超能力』と呼べるような力を持つ強能力者(レベル3)以上の能力者は、大抵頭のお偉い進学校の在籍しているためそんな事態が起こるトラブルとは無縁だし、また招き寄せるような頭の悪い事もしない。同じ理由で、カリキュラムから落ちこぼれた人間の集団、物騒が絶えないスキルアウトでも、能力での戦闘というのは有り得ない。唯一の例外は、風紀機動員、もしくは風紀委員の中でも高レベルの者達による治安維持を目的とした活動ぐらいなのだ。
 逆に言えば、そんなド派手なことも無いわけではないのだが、俺は絶対にお勧めしないな。
 あと3センチずれていたら頚動脈からウォーターアートなんてやり取り、楽しくもなんともない。戦いというのは、偶然と偶然の途方もない賭け合わせだ。確立という不思議に首を傾げるぐらい。やはり、『マンガ』というのは寝転がってポテトとコーラを口に運びながら、無責任に観賞するのがいちばんなのだ。
 それでもそんな危険に身を浸したいと言うのなら、なにも学園都市に来る必要はない。しかるべき服装で、そこら辺のアブナイ路地裏を歩けば十分だ。
 だから、能力を、能力者というものを特別視しないでほしい。
 学園都市は、情報をあまり世に公開していない。そのため、能力や脳開発などには偏見的な誤解が多い。その最も典型的で分かり易い例が、休暇中に『外』の実家へ帰ると、親戚一同から化け物呼ばわりされた、という体験談だ。
 人間は未知の物体ヘ恐怖を抱く、という性質上、それは致し方ないことなのかもしれない。原理の分からない超現象も、とても危険なものに思えるかもしれない。そして何より、その力を意のままに操ることこそが脅威なのだと思う。
 だが、五年間風紀委員を務めた経験から、自信をもって断言できる。
 人を傷付けるのは、人なのだ。
 能力者というのは、身から離すことができないナイフを持たされた人間であるといえる。
 だが俺は、そいつらを危険だとは思わない。
 ここにいるやつらは、ほかと何にも変わらない。
 能力というものを持っていても、考えることは皆同じ。例えば女の子の命を救って、仲良くなったり、闇の組織のエージェントや秘密の兵士になって暗躍したり、逆に正義の力を振りかざしたり、そういったことに憧れる、ただのふつうの人間たちなんだ。

200とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 18:24:10 ID:nuErDCOg
はい、風紀の人です。まずは色々と長すぎることに深くお詫び申しあげます。
いや〜、読みにくい。今から第六話を修正します。はい、一章はもうすでにできるんです、ということで続けて投下します。

では、引き続きお楽しみください。

201とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 18:25:29 ID:nuErDCOg
     第六話     破滅狂走曲 第惨番 破綻調 


 第一章 give me a break〜じわじわと侵食しながら〜

  ▼
「どうかしたのですか?とミサカはグロッキー状態のあなたに一応心配の意を示してみま
す」
 彼女は無表情にあさっての方向を見やりながら言った。
 はぁ。できれば外面の方でも心配の体を示してくれると嬉しいのだが。
「今はちょっと、精神的な疲労が大きくてな」
 あの旗男対策会議(全議員二名)からしばらくして、教室で勝手にアホな実験をした生
徒達はフラフラにされた体で帰っていった。簡単に言ってしまえば、彼らの行為は自分の
学校に忍び込んでわいわいしていただけであるため、厳重注意という事で許してもらえた
らしい(それだけでも十分すぎるかもしれないが)。
 その後、説教して暴れてすっきりした黄泉川姉ちゃんは職員室ヘ戻り、デート中だった
らしい先輩お二人方はその続きを楽しむために街の雑踏へと消えていった。
 俺も勿論病院に帰る気だった。しかしもう一人の風紀委員、長谷美冴子によって、家路
は断たれてしまったのだった。彼女は俺に第九九支部の書類等を押しつけて、今日中に仕
上げろと有り難いお言葉をかけてくださった。そういえば、彼女は夏休み中なのに制服姿
だった。どうやらその日は支部当番だったらしい。
 誰かを道連れにしたくなるのは理解できるが、それが俺に向いてくるのなら当然同意は
できない。しかし、俺は入院していた事で掛けた迷惑等の弱味に付け込まれてしまい、結
局一緒に支部室ヘこもることになった。
 すぐに嫌になった。逃げることにした。
 俺は同僚の様子を伺う――までも無かった。彼女は机に突っ伏して寝ていた。俺に仕事
押しつけておいて、テメエは寝てやがるのかそうかそうか。脱出は後回し。憤った俺は、
手元にあった油性でコイツを超人にしてあげようと思った。しかし、そうしなかった。覆
い被さり、抱き抱えるような姿勢をした彼女の腕の中に、繕いかけのノースリーブを見つ
けたからだった。それは、一日の激務の内に使い物にならなくなって着替えた、俺が朝着
ていた服だった。いつの間に、どうして拾ったんだろう。こいつも着るもので困っている
くちなのか。
 それにしてもこの女は寝顔まで真剣な表情だな、と眺めていると、突然中年オヤジの怒
鳴り声が俺の鼓膜を震わせた。どうやら能力で寝言を吐いたらしかった。器用な奴だな、
と苦笑する。

202とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 18:25:49 ID:nuErDCOg
 メチャクチャに喚く声は、誰かを責めあげているらしかった。そしてその最中、時折彼
女の唇はくにゃりと曲がって、にんまりとした顔をつくった。
 俺は結局、油性ペンを使う事なく元へ戻した。
 彼女の腕の中の生地には縫い針が刺さったままだった。そいつを剣山に立たせてから、
俺は今度こそ支部室を後にした。

 ミサカは突然言い放った。
「どこかへ出かけましょう、とミサカは立ち上がります」
 いつものベンチに座り、近頃の風紀委員としての活動を話してやっている時の事だった。
 当然、驚いた。
「は?いや、お前大丈夫なのか?」
 こいつは、あまり体を動かしてはいけないんじゃなかったか。
「大丈夫です。少し歩き回るぐらいなら問題ありません、とミサカは我が体が安全である
事をここに証明します」
 なんかカッコ付けた台詞だな。
 そんな言い方しても心配なもんは心配だ。
 俺にとって、彼女はいつ底を付くか知ることができない電池だった。体を動かしてはい
けない。ということは、激しい運動や、長時間連続した運動は禁止なのだと思う。だが、
俺にはその『激しい』や『長時間』の程度が分からなかった。
 いくら走ってはダメなのか。
 どれほど歩き続けてよいのか。
 ミサカ本人には分かるだろう。
 その彼女は大丈夫だと言っている。
 だが、そんなものは酔っ払いのおっちゃんが「酔っ払ってねぇよぉ」と喚くようなもの
だ。
 俺は何よりも、ミサカ自身のために、その要求を却下するべきだった。
 ……だったのだが。

「なあ……本当に大丈夫なんだろうな?」
 俺は早くも少しだけ後悔しながら尋ねた。
「大丈夫です。第一これぐらいの距離なら病院内を歩くのと変わり無いではないですか、
とミサカはうんざりします」
 無表情に切り捨てられた。
 そんなやりとりの数メートル左には、時速40㎞で飛び交う鋼鉄の固まり、自動車。学
園都市特有の、きめ細かいアスファルトで固められた道路。そしてそのど真ん中にそびえ
立ち、悠々と風に身を任す風力発電機。
 俺たちは、二人してこっそり病院を抜け出してきたのだった。

203とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 18:26:08 ID:nuErDCOg
 敷地を脱出するのは簡単だった。いつも居座るベンチの中庭は隣の公園と繋がっていて、
そこには見張りも何も置かれていない。病院中には種類様々な売店があり、娯楽も健康に
支障が出ない程度ならばあらかたが揃えられているので、そもそも俺以外には抜けそうと
する奴が稀なのだ。
 むしろそのさまたげになったのは、その俺の、病人を、しかも自分の手で抜け出させて
いいのだろうかというささやかな良心の方だった。
 なあ本当に大丈夫なんだよなはい大丈夫ですマジで信じるぞいいんだろうなはいだから
大丈夫ですもう一度聞くけど本当にだから大丈夫だといっています――
 と、度胸も情報量も生産性も無い押し問答を5回ほど繰り返した3分前だが、今となっ
てはさすがに開き直っている。
第一、 止めようと思えば、もっと確実な手段で止める事ができたはずだ。だが、俺はグ
チグチと心配するだけで本格的な制止はしなかった。それはつまり、俺もミサカと一緒
に外へ出たかったということなのだ。
 こういう天の邪鬼な言動を認めてやるのは少々癪だが、今の俺にはすんなりとそうす
る事ができた。
 なぜか?
 その理由は、俺の60センチ右手にあった。
「……と、ミサカは、おぉ……」
 気のせいかも知れないが、目まぐるしく刺激的な街の世界に、目をいつもより2ミリ
見開いているようにも見えるミサカ。
 こいつを隣にして、ゆっくりと歩調を合わせながら歩いてみろよ。
 誰だって、道端に転がる落ち葉の一生に思いをはせてしまうような、そんな素直で温
情な気分になるだろうさ。

204とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 18:26:28 ID:nuErDCOg
 目的があっての外出ではなかったらしい。それならこれから目的地を作って赴こうとい
うわけでもなく、結局俺たちは猫缶を買って帰ることにした。外出といえば猫缶とイコー
ルになっていた、俺の最近の習性による。
「そういえば、あのコンビニにはまだ猫缶あったな?」
 というわけで、俺は先日見つけた新たな猫缶出没スポットヘやって来た。

 ウィーン――

 自動ドアの赤外線が、二人分の影に反応して客を迎え入れる。
 お目当ての物はちゃんとまだそこにあった。
 店の中は綺麗なもんだった。俺も鎖を弾き飛ばしたりして傷を付けてしまっていたと思
われるが、おかげで後ろめたい感も少なく買える。
 ドアの前で一歩も動かずキョトンと突っ立っているミサカを待たす事もなくレジで会計
を済ませ、さあ帰ろうか、と彼女に振り返ってから、

 ――ザァーー

 ミサカの視線は、外でいつの間にか始まっていた、降水の着陸音に向いていることに気
付いた。
「あぁー、雨……」
「降っていますね、とミサカはさらに強くなっていく勢いに目を見張ります」
 どうしようか。
 さすがに、この雨の中をずぶ濡れで帰るわけにはいかないだろう。入院患者の外出を許
してしまった俺だが、それぐらいの判断はできる。そうなると傘買うなりしなければなら
ないが、ポケットに入っている小銭はたった今25円(税込)となったところだ。これで
は雨が止むのを待つ他に無いということに。
 すると、

 ウィーン――

「え?あ、ちょっとおい、ミサカ?」
 考えあぐねて立ちすくんでいる間に、彼女はすたすたと店外へ出てしまった。
 開いた自動ドアが閉じきらないうちに、後を追う。

205とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 18:26:51 ID:nuErDCOg
 ミサカは雨の降り注ぐ元ヘ踏み出すでもなく、コンビニの廂で水滴に濡れない空間に身
を置いていた。
「雨が止むのを待つぞ。どうせ夕立だろうから、すぐに通り過ぎるさ」
 返答は、頷き。
 5分待った。
 雨はまだ止む気配すら見えない。
 10分待った。
 始めの勢いは若干削がれたようだが、以前として順調に降り続けている。
 昼過ぎ頃までは晴れていたせいだろうか。熱されたアスファルトにエネルギーを与えら
れ、水蒸気となった水分子たちが空気中を漂っている。
 辺りは白い霧が立ちこめていて、まるで雲の中にいるようだった。
「……止まないな」
 ふとミサカを見ると、彼女は空中に描かれる垂直な直線にむかって手を差し伸べていた。
 着陸するはずだった目的地を遮られ、白い手の上に水が跳ねる。
 砕け散った雫の欠けらが、宙を踊る。
 単純な、しかし見ていて飽きない光景に、俺は何となく小さな頃の事を思い出した。雨
に手をかざして感触を楽しむなんて子供らしい行為は、小学三年生にして『黒山おじちゃ
ん』のニックネームをほしいままにしていた俺でも、さすがにやってみた事ぐらいはあっ
た。自分はたしか、椀を作った両手に貯水する派だったと思う。
 と、こんな無意味な回想をしてしまう程に暇だった。する事が無い。雨はまだあがらない。
「止みませんね、とミサカは退屈を持て余します」
 水素原子二つに酸素原子の集合体との戯れに飽きているようには見えなかったが、一応
彼女からも要請が出た。どうしよう。
 そこで気がついた。
 自動ドアを抜けたすぐ右隣。
 そこに設置された傘立てに、誰かが置き忘れたビニール傘が立て掛けてあった。
 コンビニは今日も人気が無かった。俺たち以外には誰もいなかったよな?と、思い出し
ながら振り返る。
 やはり、店内にいるのは、やる気無さそうな男子学生のアルバイトだけ。
 十秒とは迷わなかった。
「ミサカ、この傘を使って帰ろう」
 彼女はこちらを、正確には俺の手に握られた物を見ると、
「それはあなたではない、他の誰かの所有物ではないのですか?とミサカは眉をひそめま
す」
 俺は拒否を掲げる無表情に、この世の物の流れとか八百万の神いうのを説いてやった。
この傘は本来の所有者であった人間に見捨てられた事。それを必要としている者、つまり
俺たちが使ってあげた方がこいつも幸せだという事。でないと、満月が七回交差する時、
負の念を持ったがらくた達は無差別に人を襲う醜い化け物になってしまう、というあるこ
と無いこと。
 それを聞いた彼女は、注意深く、傘から目を離さずに、
「……それでは、仕方ないですね、使うとしましょう、とミサカは承諾します」
 じゃ、とっとと行くとしよう
 俺は傘を押しつけると歩き始めたのだが、そこへまたもや待ったがかかった。
「これはどういう意味ですか?とミサカは手渡された傘に戸惑います」
「意味も何も。それをさして歩くと体が濡れない」
「そういう事ではありません。これは一つしかないのですから、私だけか持っていてはあなたが濡れてしまうではないですか、とミサカは抗議します」
「いや、俺は別にいいから」
「よくありません。ミサカのせいであなたが被害をこうむるのは納得しません、とミサカ
は断固拒否します」
 そこで彼女は、無表情な顔を背けて続けた。
「だから、あなたが傘をさして、ミサカもそこに入れてく――なさい」
 俺は素手に掴んでいた猫缶をポケットにねじ入れ、
「分かったよ」
 そっぽを向いたまま突き出された傘を仕方なく手に取り、雨模様の空に向けて展開した。
 仕方なく。
 あくまで仕方なく。

206とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 18:27:55 ID:nuErDCOg
 辺りを取り囲む雲のように白い霧は細部を包み隠し、見飽きたいつもの眺めとは違う、
夢の中のような世界を作り出していた。

 ミサカが、いつもと違う。
 鈍感を自覚する俺でも、さすがにそう感じ取っていた。
 例えば今日の朝。俺はミサカの声で目を覚ました。ねぐらにしているカエル先生の研究
室の中、俺の網膜が一番に目にしたのは、西洋鎧じみた義手でも、脳に寄生するんじゃな
いかと思うような人工視神経でもなかった。寝起きで不鮮明な視界にあったのは、こちら
を覗き込みながら、ついでに縞々パンツも覗かせている、整った顔の無表情だった。俺の
頭は機能を止めて氷結し、誰かに助けてもらわなければ永久凍土となる道を避けられなか
った。しかし、俺を睡眠から引き上げそのまま凍獄に突き落とした彼女は、そこからどう
していいのか分からない様子だった。自分がこの世に留まる理由を思い出そうとする記憶
喪失の自縛霊のように、しばらくキョロキョロと視線を迷わせてから、やっとの事で『夏
休みの宿題は終わっているのですか?』という言葉を発した。
 これは今までに無いことだった。
 ミサカが自分から何かの行動を起こすというところを、俺は見たことが無かった。
 そりゃそうだ、何せ彼女は数日前まで、俺が接触して初めてスイッチの押されたロボッ
トのように行動を開始していたのだから。俺が異性の危険地帯の露出に忠言するだけの余
裕が無かったのも、無理はないよな?
 驚天動地なミサカと強制昇天の素朴下着にノックアウトされてしまった俺は抵抗する事
も叶わず、動天驚地に手を引かれてテレビを置かれた娯楽室に連行された。最終日に一日
で終わらせるつもりで一つも手を付けていなかったのならそれは無計画とはいわないのさ、
という俺の持論は即却下された。
 その後俺はアニメを鑑賞するミサカの隣で、延々と指先を動かす作業を続けさせられた。
余りにも溜まりすぎるストレスに脳が耐えきれなくなろうとしたあの日あの時あの場所で
ミサカが俺に話し掛けてきてくれていなければ、俺は文部省大臣のお家を爆雷していただ
ろう。
 自分が命令した事そっちのけで超能力アニメに夢中になっていた彼女は、学園都市にも
守護霊を作り出すような能力は存在するのか知っているかと尋ねてきた。その瞳の中には、
今まさに壁紙型液晶の中で大活躍している(一応霊らしい)大巨人が輝いていた。
 質量があって宙に浮けて色があって声を出してビームも発射する元気いっぱいな巨人、
なんて芸当はおそらく超能力(レベル5)、そうでなければ多重能力でなければ無理だろう。
しかし二百三十万分の七人の中にはそんな器用な奴はいなかったし、能力の重複(デュア
ルスキル)は人間の脳容量的に不可能という事になっている。よってそんな能力者は存在
しない、との結論を俺は告げた。
 すると、

207とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 18:28:13 ID:nuErDCOg
「……そうですか……、とミサカは当然の返答に……」
 なぜか俺は、ナノパウダー加工された塩の吹雪に放り出された青菜を幻視した。んなも
んだから慌てて、
「いやっ、でも最近は変な能力を発現する新入生とかも多いから、これから出てくるんじ
ゃないか!?」
 と、実際にそういう傾向が報告されていることを付け加えた。
 学園都市に遍在する異能の力は、行儀が良いというかなんというか、科学的な法則にき
ちんと則っている物が多い。電撃使いは電子を操っているワケであって、肉眼で回避でき
るような電撃は打たないし、超人的な身体能力を誇る肉体強化能力者も、それ相応のカロ
リーを摂取していなければ最大限の力は発揮できない。
 しかし、近代の発達し過ぎた娯楽文化の中で育った子供達の未完成な精神は、いったい
何処へむかおうとしているのでしょうか、と言ったところだろうかね。近ごろ、能力を開
帳したはいいが、原理が分からず研究施設(学校)の引き受け先に困っている、という事
態が増えているらしい。
 原理が不明というのは、能力の大元――ダークマターが通常よりマクロな場所に干渉し
ている事による。
 そしてそれを表した言葉が過誤観測、俺もその傾向のある状態の事だ。
 具体的に言うと、体育の選択種目の一つにある『切断』をこなすためには、例えばエア
ロハンドなら特定の気体原子の動きを司る『ダークマター』を操作して風の刄を作り出す。
しかし過誤観測の能力者の場合、『何か刀のようなもの』という、科学的な観測不能の感覚
を作り出して物体を切り裂いてしまう(爆破能力の場合のそれは、交点上に爆発を発生さ
せるビームのようなもの、だな)といった具合だ。
 このような能力者を受け入れてくれる場所は少ないが、その分野で実績を上げているの
が、かの不気味な校風で有名な霧が丘女学院だ。おかげで最近株があがっているらしく、
関連する研究施設も増加中、過誤観測から『過』の字がとれる日も近いかもしれない。
 そうしてそんな能力も増えていけば、分子を繋げて十数メートルもの人型を形成し、そ
れらしい動きをさせながら発光する程のエネルギーを帯びさせて一部を射出する、なんて
ややこしい制御をしなくてもいいような、『ビームとか撃っちゃうスーパー巨人を操る』と
いう能力も現われるだろう。
 その話を聞き終えたミサカには、無表情の中にも安心満足したような雰囲気があった。
 すかさず息抜きを兼ねての磁場相殺訓練を提案すると、俺の夏課題の事は忘れたかのよ
うにあっさりと頷かれてしまった。あれ、よかったのか?というくらいに。まぁ、そろそ
ろ何か他の事をしないとホントにやばかったし、もともと明日一日で終わらせるつもりだ
ったので、構わなかったのだが。
 そしてもはや俺が付き添う必要性ゼロの訓練、もといくっちゃべりin中庭ベンチが始ま
り、風紀委員支部内の近ごろを語ってやっていると、ミサカがその場の思い付きをエウレ
カしたというわけだ。
 そんなわけで今に至る。

208とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 18:28:33 ID:nuErDCOg
 穏やかに降りしきる雨の風情というのは、人を物憂げな気分にさせる。いや、そんな気
分に浸りたくさせるのかもしれない。
 昔の人は純粋に物憂くなったんだろうけど、今現在ではそんなリアクションは既に常識
の域に達しているのではなかろうか、ととりとめのない考え事をしていると、何か温かく
て適度な手応えのあるモノが右手に触れた。
 俺はミサカの斜め左後、七時の方向から、手を背中に添えるようして傘をさしていた。
その背筋から生え立ったかたちのアルミ骨格のビニール屋根は彼女を中心として広がって
いて、これは俺に必要の無い心遣いに対しての、せめてもの配慮だ。
 手に感じ取られた、プラスチックの取っ手以外の感触の正体は、ミサカの肉付きが少な
い背筋(はいきん)だった。どうやら、急に立ち止まった所に俺が気付かずぶつかったら
しい。
「おとと」
 また5センチ程距離をもたせてから彼女を見ると、なにやらキョロキョロと周囲を見回している。
「どうした?雨に震える子猫か何かか?」
 ミサカはこちらを振り返り、首で否定の動作をすると、
「いえ。ですが今、不可解な音を捕らえたので、とミサカは――」
 と言ったところで、俺にもその不可解な音らしきものが聞こえた。

 ポトタパパッ――

「――っ!!!!」
 ミサカはピクリと身を震わせて後退り、おかげで俺の傘を持った右手がまた背中に当た
った。
 そこへもう一度、

 バタボトバタタパパパッ――!!

 彼女は面白い反応を示した。
「未確認音源を察知、第三級危機対処姿勢を措置します。あなたはミサカから離れないで
くださいとミサカは――」
 ずいぶんと慌てているようだ。急に加速した動きで姿勢を低くし、俺をどこかへ押しや
ろうとし始める。
 もう少し見ていたい気もした。しかしそんな全身に警戒心を漲らせるのは悪いし、ドス
ドスとヒップアタックをくらわされるのも何なので、俺は正直に言ってやる事にした。
「ミサカ、大丈夫だ、なんて事無い。今のは傘に雨粒が落ちてきただから」
 ザラザラと、雨がまんべんなく降り付ける音。
「はい?とミサカは理解に苦しみます」
 クルンっと、身構えたまま振り返る。
 その目は、雨粒があんな音を立てるわけないだろう、と語っていた。
 こんな経験も無かったのなら、わけもないか。俺は説明するために少しだけ傘を傾けて、
頭上がよく見えるようにした。
 灰色の建築物に切り取られ、雨雲に覆われた空。機械仕掛けの見慣れた町並み。しかし
そこには、学園都市にとっては時代遅れなエネルギー伝達ラインである電線が、黒い線を
描いて伸びていた。
「ああいう半端に遮る障害物に落っこちた雨は、ある程度まで蓄えられてな、風とかの振
動で一気に降ってくるから、でっかい塊になってるんだな」
 言って俺は傘を元の角度に戻す。
 ついでに、ミサカの頭の上のビニールを指で弾いてみる。そして起こった、ボンッ、と
いう独特な音色に、彼女のは納得の色を表した。
「で、傘に当たると、変な楽器になるわけだ」
 黒山センセーのなるほど講義は終了した。これで疑問も解けたと思うが、ミサカはまだ
歩き出そうとしなかった。
 まだ気になる事があるのだろうか。その目線は、透明のビニールの向こうでぼやけた電
線に注がれて動かない。
 少し焦れったくなる。しかし不思議な事に、そう感じているのはミサカも同じであるら
しかった。
 すぐ横にぶらさがる、旧電線近日撤去の看板。
 古めのコンクリートの壁に垂れている黒ずみ、それに沿って流れ落ちる雨水。
 そして何かを待ち続けるミサカ。
 そう。俺は、彼女は何かを待っているのだと悟った。そして同時に、なにを待っている
のかも察した。
 再び、少しだけ傘を傾ける。その動きで飛び降りようとし始めた水滴たちが、ミサカのに降り掛からないようにしながら、何も持っていない左手を空に掲げる。
 その人差し指に赤い光を灯らせて、俺は伝染を指差し、自らの能力を発動させた。

 バスン――

209とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 18:28:59 ID:nuErDCOg
 それは爆発というより、風船の破裂に近い。
 運動量保存の法則や作用反作用と言ったものをあっさりと無視した現象、指向性爆破。
その方向をある程度まで限定された光も熱も少ない爆風は、落下中だった雨粒を霧に変え
ながら電線に命中した。
 ふいに与えられた衝撃によって解放され、重力に従順に自由落下した大粒の水滴は、そ
のまま真下にいたビニール傘を叩き付けた。
 もうよく思い出せない程小さい頃に見たアニメの映画に、似たような場面があった気が
する。記憶の中のそのシーンは、恐ろしいものだったのか、可笑しかったのか、それすら
も曖昧な程に不鮮明だ。
 それでも、その時自分の隣にいた誰かはどんなふうだったのかは思い出せた。そいつは、
いや、そいつ等は、可笑しくておもしろくて仕方が無い、というように笑っていた。
 今。
 特大の振動音が、ビニールのスピーカーを通して降り注ぐ中。
 すぐ20センチも離れていない所にいる人の表情もまた、俺はこの先、長い間覚えてい
るのだろうと思った。
 俺が土砂降りを演出する間も、全く身動きしなかったミサカの目。
 そこにあったのは、紛れもない恍惚だった。
 彼女は、感情を表に表すという事が不得手だ。しかし、その心の中までもが全くの不動
ではない事を、俺はこの数日の間に感じ取っていた。
 そして、今生まれ立ったその感情は、水晶体なんて透明度の高い物体で覆い隠されるに
は大きすぎるものだったらしい。
 彼女の顔は相変わらず能面のまま、何の喜怒哀楽も作ってはいない。
 しかしそれでも、その双眸だけは、まるで生まれて初めて流星群を仰ぎ見た子供の瞳の
ように輝いていた。

 ミサカが、いつもとは全く違う。
 だがしかし、そんな彼女は、決して悪くはなかった。
 全く、悪くない。
 むしろ、イイ。
 メチャクチャ、良い。
 だってそうだろ?人間ってのは、動くものに心を動かすようにできているんだ。確かに、
抑揚の無い、淡々としたミサカも良かった。でもやっぱり、これなんだ。人間には、何か
飛んだり跳ねたり、弾けたりしてる物が似合うんだ。それこそがあらゆる活動の動力であ
り、魅力でもあるんだ。
 そして彼女はやはり、それを持っていた。これまで目にした事は無かったけど、今、確
かに見た。
 ビニールのスクリーンは滲むように歪んだ映像から立ち直り、ポツポツとノイズを発生
するだけの状態に戻った。
 静まり返る空気。
 俺にまじまじと見られていたとも知らず、ミサカは何かを訴えたげな雰囲気でこちらを振り返る。

210とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 18:29:16 ID:nuErDCOg
「もう一度はできないぞ。電線に溜まってた水は全部吐き出させちゃったからな」
 口を開いてものを言いかけていた所に、先手の釘止め。すると彼女はパクパクと酸欠の
魚のようにうろたえて、
「ち、違いますっ、ミサカは、えぇーっと、ミサカは……」 
 その時俺は突然、体験した事の無い不思議な感覚に襲われた。なにぶん初体験なもんだ
から、どう表現したらいいのか。例えるなら、肺や心臓、肝臓・腎臓に、胃、小腸・大腸、
それらあらゆる臓器の隙間で、蛇か何かの触手が蠢いて暴れているような、とにかくとて
も奇妙な感覚だった。
 決して悪い気分ではない。それどころか、これに身を任し、その衝動の赴くままにこの
腹の中の何かを此処に吐き出してしまえば、とても良い気分になれるだろうと思った。
 しかし俺は、留めておく事にした。今それを実行してしまっては、何か失敗を犯してし
まう気がしたからだ。
 端的に言うと、度胸が無かったんだ。
 でも、どうって事は無い。この衝動がまた繰り返されるようならば、いつか何度目かの
時には、つい、ポロっという感じで自然に漏れ出してしまうだろう。それがベストのよう
に思われた。
 そう考えると、体内の暴動が、急にスゥっと静まった。五臓六腑を食い破るらんとして
いた触手や蛇たちが、獲物はすぐには逃げ出さないと気付いて、安心して余裕を持ったよ
うだった。
「えーと、そうです、あなたの力は爆発を起こすものだと聞ていましたが、今のはとても
不可解な爆裂でした。あなたのパーソナルリアリティはどうなっているのですか?とミサ
カは興味を持ちました」
「んー、それはちょっと難しい質問だぞ。俺に限らず」
 んな事聞かれてもな。自分自身の事ってのは意外と知らないものだって言うだろ?発現
当初はデベロッパーたちも珍しがってたけど、所詮は爆破能力。原理の測定方法の見当も
つかないから、すぐにほっぽり出された。俺は以後、どんな教育プログラム(ドーピング)
を課せば能力の規模が増幅されるのかを研究する脳みそ方面の学校で過ごした。そこでは
個人の能力についての探求など行われない。能力者の六割が役立たず(レベル0)である
ここでは、普通の事だ。まぁ、俺はそんな普通の中でもそれなりの努力を重ねたわけだよ。
風紀委員としてだけど。
 ようやく足を動かし始めたミサカに付き添いながら語る。並んでいるのか、付き従って
いるのか、微妙な位置関係。彼女は、俺の言葉の端々にチョコチョコと振り向きながら耳
を傾けた。
 堅い話の連続を遮るようにして、でもそういえば、と俺は思いついた。
「こんなことぐらいはできるな」
 ミサカに向かって伸びたものと反対の手を、再び雨の中へ突き出す。
 何かを受け取るように上を向いた手の平を赤く発光させ、俺は感覚神経に集中した。雨
粒が平均より固めの表皮と衝突する度に発生する触覚信号に対応させて、パシュパシュと、
炭酸ガスの抜けるような音の爆発を起こす。
「射程がゼロだからってわけなのか知らないけど、力加減や起爆点、爆発の連射ってのは
結構得意だな」
 掌に触れると同時に跡形もなく消し飛ばされていく水滴。
「だから、色紙の紙吹雪をひとつかみ握れば、いつでもクラッカーを鳴らせたりする」
 俺はそう言い、一旦爆発を止めて少しばかり貯水した水たちを一気に弾き飛ばす。同一
方向に揃って弾道を描く水飛沫は、地面に転がっていた吸い殻を排水溝に流し落とした。
「そうですか。それなら、あんな事も……いや、それよりも、あっちの方が……」
 何を考えているんだろう。ミサカはその目をしきりに瞬きさせながら小刻みに頷いた。
 そして、バッ、と勢い良くいきなり振り返った彼女は、いかなる理由か、赤く上気させ
た顔で俺を見て、口を開いた。
「お願いがあります、とミサカは懇願します」
 俺はこの後起こったことを、いつまでもいつまでも――悪寒とともに、思い出すことになる。

211とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 18:29:36 ID:nuErDCOg



































 ミサカの体が、ストン――と崩れた。

212とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 18:30:04 ID:nuErDCOg
 ひどい倒れ方だった。糸を断ち切られた操り人形よりも力無かった。彼女は水溜まりに
沈み、俺は地上171㎝に取り残された。
「あ?」
 俺の水晶体を、ただ一つの光景を映す光子が通過し続ける。うつ伏せになったままピク
リとも動かないミサカ。雨水に濡れ、手術衣を身体にへばりつかせても何の反応も示さな
いミサカ。肩までの栗色の髪に隠れて、どんな表情をしているのか教えようとしないミサカ。
 俺の顔には、今の今まで浮かべていた笑みが貼り付いたままだった。それは、なかなか
直らなかった。まるで、そうやってさえいれば、この悪魔はそこから溶け散るのだとでも
言うかのように。
 そうだ、そうだよ、これはコイツの分かり難くてあまりパッとしない未熟なジョークな
んだ、(薄汚い水)ほら、あまりにも受けが無かったら、しくじった方もなんとか挽回しよ
うとして無理矢理な一芝居うったりするだろ、ゴルフプレーヤーのモノマネが滑ってしま
ったけど何をしたらいいのか分からずにテンパって、スイングポーズの後ひたすらボール
の行方を追い続けたりさ、(投げ出された細い手足)そこはやっぱりヘラヘラと笑って迎え
るしかないよな、芸に対してと言うより、オマエは頑張ったよ、ドンマイドンマイ、って
感じでさ、そうすればしくじっちまった奴も、いやー、やっちゃったよ、あぁ恥ずかしい、
ってさ、やっと元に戻ってくれるよな、(靴が脱げた裸足の右足)なぁ、戻るよな、だから
ミサカ、ほら、もういいから、俺はもともと笑いのツボが深いしさ、そんなうまいリアク
ションもとれないけど、だからって笑わせられなかった奴を馬鹿にしたりしないからさ、
(泥水を吸い続ける布に包まれた華奢な身体)もういいんだぞ、オマエが冗談を吐いたっ
てだけでも俺にとっては十分嬉しいんだよ、(同じように水を吸う毛髪)だからさ、ほら、
立てよ、(濡れそぼる首)そんな苦しいロスタイムなんて(肩)やらないで(背中)いいか
ら、(腰)その顔を(膝)今すぐあげて(脛)みせろ、(爪先)見せるんだ、こ れ は た 
だ の ジ ョ ー ク な ん だ よ ――と、
 思えるわけがなかった。
 ミサカは今、確実に苦しんでいた。
 首筋が血の抜けたようにみるみる真っ青に変わっていくだけでも、それを知るには十分
だった。
 その姿を背景に、ある夜の記憶が浮かび上がる。闇に横たわる重病患者棟に吸い込まれ
てゆく、小さな背中。それは、今ここで濡れ汚れているのと同じものだった。
 俺はようやく悟った。彼女の病が、発作を起こしたのだ。
「ミサカ!!!」
 ビニール傘が、ボス、と間抜けな音を立てて地面に転がった。
 俺は非常な恐怖に襲われ、冷静とは程遠い対応しかできなかった。倒れこむようにして
覆いかぶさり、彼女の名前を連呼しながら背中を叩く。揺さ振る。水溜まりに突っ伏して
いる事に気付き、肩を掴んで仰向けにさせる。

213とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 18:31:54 ID:nuErDCOg
 首ががくがくと震えているのは、俺の腕のせいだった。抑えようとしても抑えきれないものにおびえるうでを、俺は心の底から恨んだ。
「ミサカ!大丈夫か、ミサカ!?」
 あらわれた彼女の顔は、酷い程に青白かった。さっきまでの生気は欠けらも無い。
 しかし驚いた事に、その面持ちはとても落ち着いたものだった。まるで、こうなること
はとうに予期していたかのような、そして、その後すべき事を実行する覚悟をした顔だっ
た。
「問題ありません、よくあることです。ミサカの部屋へ運んでいただければ、それで大丈
夫です、とミサカはあなたに足の代わりをお頼みします」
 静謐の瞳にあてられた俺は、いくらかの平静を取り戻していた。わかった、と回復しか
けの頭で精一杯の一言を返し、肩と膝裏に手を通す。
 特別に力が要らない運び方をするまでも無かった。
 俗に言うお姫さま抱っこを傾けて、腕に座っているような姿勢。
 俺は軽々と一人の肉体を抱え上げ、一直線に病院を目指した。
 熱を持たないミサカの体は、俺にされるがままだった。
 また、その重みは人間を抱えているのだとは思えない程にあっけなく腕の中へ納まって
いた。その軽さが、悲しかった。

 俺は世界一の馬鹿だ。
 いつの間にか、ミサカの病気は人とのコミュニケーションがうまくとれない事だと勘違
いしていたのだ。
 あの日カエル先生は彼女を頼むと言った。彼女にとっての俺は他とは違うのだと。俺は
その事を受けて、彼女を正常にできるのは自分だけなのだと思うようになっていた。
 どうしようもなく馬鹿だった。
 よくある事です、だってさ。あれがよくある事なんだってさ。突然に全身の力が抜けて、
そのままピクリとも動かず、脈があるのかすらも疑わしく、ほとんど死体になるような発
作が、よくある事なんだってさ。
 どれだけ重病なんだよ。
 ミサカの対人能力の欠陥は、俺に何とかできるようなレベルを遥かに超えたものだった。
俺にできることなど、何一つして無かった。
 そして今なら、カエル先生の言葉の意味が分かった。
 俺はミサカの病室で、衝撃の事実を明かされた。

214とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 18:32:14 ID:nuErDCOg
 開け放たれたままの窓から飛び込んだ部屋の一角を占めていたのは、SF映画に出てくる
ような、バカでかいガラスの円柱だった。
 その隣に並べられたベッドにとりあえず横にされたミサカは何も言わず、入院患者の個
室とは思えない設備に呆気にとられる俺を見つめた。
「これ、培養器……だよな」
 厚さ5センチ程で、その中に薄く色付いた液体の満たされているガラスの柱は、まさに
その形だった。
「しかも、ちょうど人間が入れるようなサイズだ」
「……全て説明しましょう、とミサカは居住まいを正します」
 上体を起こそうとしたので手伝おうと手を伸ばしたが、彼女はいくらか回復していたら
しい。自力で長座の姿勢をとる。
 そして、告白は始まった。
「耳にした事ぐらいはあるのではないでしょうか。超能力者のクローンをつくり、大きな
力を持つ兵士を量産する軍事企画があるという噂を」
 しかしそれは、本当に行われていたことなのです、とミサカは淡々と語った。
 彼女の話はあまりにも突拍子の無いものだった。しかしまたそれは、ここ最近、この街
の治安を監視する風紀委員の任務中に見つかった疑問を解決するものだった。
 その軍用クローンは実際に製造されていた。が、結局失敗したらしい。
 その軍用クローンは実際に製造されていた。が、結局失敗したらしい。超能力者のコピ
ーであるはずのクローンの能力は、レベル3にも満たなかったのだという。
 だが、頓挫したこの計画は別の企てによって拾い上げられることになった。
 絶対能力進化実験。
 それは、一人の超能力者を実戦において開発し、まだ見ぬ世界を切り開かんとする計画。
そしてその実戦戦闘の標的として選ばれたのが量産軍用クローン、その数実に二万体だっ
た。
 実戦での能力使用とは、その相手役二万人を全て殺害する事だった。
「……………………」
 俺は沈黙以外に言葉を持たなかった。
 ミサカは俺から全く目を逸らさない。
「学園都市はこの実験を黙認していました。クローンも自分達が殺害されることに特別な
感情を持ちませんでした。しかし、そんなことなど構いもせずに実験を阻止しようとする
人間がいました。クローンのオリジナルである超能力者と、その友人の、不思議な右手を
持つ少年です」
 そして八月二十一日、ついに実験は破綻した。貧弱なレベル0の少年が、最強の超能力
者であるはずの実験の要を打ち倒した。
「その後、生き残った残りのクローンたちは、事後の処置を受けるために世界各国の学園
都市系の病院へ引き取られました」
「――――――」
 地面がぐらり、と揺れた気がした。

215とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 18:32:32 ID:nuErDCOg
「もう推察できますね?とミサカはもったいぶります」
 そのよろめきは、表の世界には決して知られることのない、学園都市の裏を垣間見たせ
いではない。
 八月二十一日の騒動の真相に驚いたわけでも、やはりあの男が関わっていたことに呆れ
たからでもない。
「ミサカは――」
 それは諦観と絶望と落胆と、そして無意味な逃避の試みが入り交じったものだった。呼
び出されて連れてこられた生徒指導室。テスト結果が帰ってきた晩の食卓。それらの怖い
ところは、事がやってくるまでの首をじわじわと絞められるような時間だ。
 しかし俺は悟った。
 この後に待っているものは、生易しく終わりをむかえたりはしない。
「ミサカは、その二万人のクローン――妹達のうちの一固体なのです」
 今度は、地面が消えた。
 膝にかかる重さが、地球の重力のそれではなかった。
 そして逆に、床が消えた事で、今まで目に入らなかったものがいきなりむこうから飛び
込んできた。
 四角い白のシンプルなドア。
 水垢の一つも無い流し。
 小型の冷蔵庫。
 生けるものがない花瓶。
 そして人を入れるガラス容器と、その隣に並ぶベッドに腰掛けるミサカ。
 ミサカは俺を全く動きの無い瞳で見ていた。
 ぐらり、とよろめく。
 そのまま倒れなかったのは、背後にあった窓のおかげだった。
「……ミサカ。一つだけ聞かせてくれ」
 俺はただ一つの事が気掛かりだった。
 問い掛けに、彼女は無言で応えた。
「病院での処置ってのは、……お前の細胞年齢についてか」
 首は、縦に頷いた。
「はい、妹達の元になった体細胞はお姉さま(オリジナル)の毛髪細胞、その細胞年齢は
5年です。ミサカ達は実験の都合上から、短期間でオリジナルのスペックと同等になるこ
とを求められたため、十四日の間に十四歳相当の容姿を得るよう、投薬によって成長を促
進させられました、とミサカは述べます」
 そして、最も恐れていた言葉が、告げられた。
「そのため、ミサカたちの寿命は通常の七十分の一、一年強しかないのです、とミサカは
核心を突きます」
 俺はもう、耐えられなかった
「だからミサカたちはそれぞれの病院で――」
「もういい」
 背中を窓枠で支え、爪先を見つめながら遮る。
「もう、やめろよ」
 そんな事を話すミサカなど、俺は見たくなかった。彼女の目は、いつか見たような、全
くの虚無しか映さない人形のようなそれに変化していた。
「そんな目、するんじゃねぇよ」
 少しの間の後に返ってきた言葉に、俺はハッとした。
「あなたも、変な目してますよ」
 そうか。
 俺も、変な目をしているのか。
「ごめん。散歩行ってくるよ」
 どうしても駄目だった。
 これ以上、この場所に居るのは耐えられなかった。
 俺は背後の窓枠を後ろ手に掴んで体を釣り上げ、一息に外ヘ放り出した。
 地上三階の高さを、降りしきる雨粒を貫きながら落下する。
 最後の視界にあったミサカのガラスの瞳は、いかなる非難も訴えてはいなかった。

216とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 18:32:50 ID:nuErDCOg
 目の前には一面の闇が広がっていて、その光源の無い宇宙空間を進む俺の頬には、通り
過ぎる小さな星達がぶつかっては消えていく。
 ここは何処なのか。
 首を巡らせようとして、自分は地面に仰向けに寝ていることに気付いた。
 背中には、ざらついたコンクリートのへばりつく感触。
 目の端に、枯れた植物の転がる花壇。
 向こう側に、傷んだ落下防止用の手すり。
 そしてその更に向こうには、何も無い。
 気が付くと、空は黒かった。
 どうやら俺は、寂れたビルの屋上の空中庭園で何時間も無意味な天体観測をしていたら
しい。自然体験行事ではお決まりのプログラムだが、雨に打たれながらやったりなんかし
たら風邪をひいてしまうだろうな。
 見上げていると目の中に雨水が入ってきてしみるので、俺は起き上がろうとした。
 しかし、起き上がれない。
 いつも何度となくこなしている動作が、うまくできない。
 俺は不思議に思ってしばらくの間手足を動かし続けた。膝を曲げ、伸ばす。親指を縮め
て、開く。コンクリートに踵を落とし、肘を突き立て、後頭部を打ち付ける。何となく生
まれたばかりの動物や車に轢かれた直後の小動物を連想して、そうして頭の中に流れた映
像が可笑しくて、少し笑う。
 体が全く言うことを聞かないと分かったので、能力を使って立つことにした。別に珍し
い事じゃない。寝起きに頭がフラフラするときなんかにも、眠気ざましとしてよく使う。
 『焦点』を、肘と肩甲骨あたりに発生。地面との隙間から赤い光を漏らし、数瞬の後に
爆発する。
 しかし、どこかで加減を間違えてらしかった。
 俺の体は、自動車に跳ねとばされたような勢いで真横に吹っ飛んだ。
 バシャバシャと水溜まりを転がり横切ってガツンと花壇に乗り上げ、泥の上をベチャベ
チャとバウンドしながら回転し、手すりにぶつかった所でようやく止まる。
 駄目だこりゃ。どうしらいいんだ。
 けれど、泥まみれになった顔を拭いながら手摺りを頼りにしてか立ち上がると、なんと
か歩けるぐらいには体が動き出した。

217とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 18:33:09 ID:nuErDCOg
 屋内ヘ通じるドアは取り外されていて、ただポッカリとした穴が空いているだけだった。
 そこを抜けると、更に深い闇に沈む階段が続く。埃まみれで、所々に赤いチョークのよ
うなもので専門用語の指示が書き込まれている。やはりここは無人の廃ビルのようだ。
 そのためか、階段には手すりも無くて、まだぎこちない体で下りるのには苦労した。
 下りて、滑って、下りて、こけて、下りて、下りて、落ちて。
 もう何階まで来たのだろうかという所で、やっと手すりが現れた。
 俺は緩慢な動きで、止まり木を見つけた鳥のようにその金属の棒に捕まり――
 どうしたものか。
 また、動けなくなった。
 いや、体のほとんどの部分は普通に動くのだが、手すりを掴んだ右手が、そのまま石に
なったように放せない。
 もどかしいので、今度はすぐに能力を使うことにした。
 肩から先、爪の端までを赤い光に包み、適当に爆破。
 しかし、自分が思ったような結果は得られなかった。右手は爆発の衝撃を加えられても
手すりを放さなかった。そのため、逆に手すりの方がへし曲がって進路を変更しようとす
る芋虫のようになっている。
 面倒臭い。そのまま爆破し続ける。
 腕は何かを振り払うだだっ子のように激しく暴れた。それでも右手は放さない。そのう
ちに、手すりは壁につながる辺りが千切れ、はぎ取れて、結果、俺は十数メートル程の金
属棒をぶら下げることになった。
 当然重くて邪魔なので、更に爆破する。壁に、天井に、踊り場に、段差の角にぶち当て、
ぐしゃぐしゃにし、やっとどこかへ吹き飛ばす。それでも右手には十センチほど残ってい
た。
 手すりを失った俺はまた自分の足だけで下りることになったが、今度はあまり苦労しな
かった。
 地上一階までたどり着く。
 やはりドアが無く、ただの穴でしかない出入口から外に出て、相変わらず止まない雨を
見上げる。
 声をかけられたのは、目的地も決めずに歩きだそうとした時だった。
「こんな夜中に何処をほっつき歩いてんじゃん、少年」

  ▼

 俺が所属する風紀支部隊の顧問警備員、黄泉川愛穂は仁王立ちで湯気の立つカップを差
出した。
「全く、どうしてあんな所に……いくらまだ暑さは残っていても、雨にさらされてちゃ風
邪引くじゃん?」
 車に乗せられ、引きずられるようにして連れて来られたのは、第一九九支部室だった。
「最近はめっきりおとなしくなったと思ったのに。これじゃ昔の二の舞じゃん。バカなこ
とは考えるんじゃないよ」
 昔、か。
 そんなこともあっただろうか。
「私はまだ仕事があるけど、もう少しで終わるから。寮まで送ってってやるじゃん。それ
まで暖かくして待ってな」
 そう言い置いて、彼女は三重の鍵がついた扉を閉めた。
 沈黙に満たされる室内。
 今ではすっかりお馴染みの、風紀委員としての活動拠点だ。音波乱暴女長谷の勘違いに
よって色々と引っ張り回され、連行されて来たのが初めての入室。その後は個性的な先輩
二人に従ってそれなりに充実した治安維持活動を行ってきた。そこの壁にかかってるのは
新入生に扮した外のスパイの発見、捕獲の功績を讃えた楯。この机の上に置かれているの
は定期に行われる合同訓練合宿で優秀な成績を収めているとして贈呈された多機能ラック。
そしてあの窓が新しいのは……この間はずみでぶっ壊れてしまったからだ。トードーさん
が窓枠ごと交換してくれたので助かった。
「……」
 俺は目の動きだけで室内を見回す。
 体は、また動かなくなっていた。
 全身の筋肉は運動神経根こそぎを引き抜かれたかのように反応を示さず、くたびれきっ
たゴムチューブのごとく弛緩している。
 その劣化は脳まで届いているのか、自らの肉体の異常にもさして思うことはなかった。
「……」
 ただ、今の自分がおかれている状況だけは理解していた。
 この部屋は今、俺を閉じ込めている事。
 そして、自分はこのままでは確実に壊れてしまう事。
「……」
 黄泉川愛穂は、三重のロックのうち二つを外側からしか解錠できないようにして行った。
目的は他でもない、俺を閉じ込めるためだろう。
 そして俺は、このまま閉じ込められていては助からない。
 穴だらけの思考は、やっと一つの結論を出した。
 ここから、逃げる。

218とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 18:33:47 ID:nuErDCOg
 その思考が頭の中で直結した瞬間、何かが急速に体を満たしていった。そうだ、この感
触だけが、俺を救う事ができる。
 逃げ出して、その後はどうするのか。
 その答えは簡単。
 散歩だ。
 そもそも、俺はそのためにあの病室から逃げてきたのだから。

  ▼

 危険だ。
 私は外側から施錠したドアに背を預けて思い悩んだ。
 三十分前、黒山大助が不審な行動をしていると知らされた。雨がざあざあと降る中、ビ
ルの屋上で横になったまま動かない。普通なら『バカなことを言ってんじゃない』とそれ
こそバカにして信じないか、相手にしないかのどちらかだ。学生のそんな奇行にいちいち
付き合っていられるほど暇じゃない。
 だが、私は何かを察知した。かすかな、きな臭い、それは暗い危惧だった。
 私は知らせの通りの場所にむかっていた。
 彼とは五年前――編入直後から始まり、その半年後に風紀委員になったときからは治安
維持機関の先輩として、その更に数ヵ月後に風紀機動隊ヘ入部してからは部下と上司とし
て付き合って来た。その関係は良好で、彼からは『黄泉川姉ちゃん』と呼ばれるほど。自
分の方もそれを悪くは思っていなかった。
 私の知る少年は、そんな意味不明の奇行に走るような人間ではなかった。
 五年前の、とある一時期を除いて。
 愛車であの廃ビルに駆け付けて彼を見付けた時、私は不安が的中してしまった事を悟っ
た。
 危険な状態だった。
 彼は、五年前のあの時の状態に逆戻りしていた。
 背後の部屋の中を思いながら、重い溜め息。
 閉じ込めてしまったのは悪い判断ではなかったと思う。
 私には、あの状態のあの少年を止めるすべが無い。
 だが、ずっとこのままにしておく訳にもいかないだろう。
 どうしようか。今の所麻酔弾を使って眠らせる正当で合法な理由など無い。それに、起
きてからはどうすればいいのか。だがしかしこのままではいけないのだから、あのカップ
に睡眠薬でも入れておけば良かったのか。
 その時、気付いた。
 出口の無い思考に沈んでいた自分を、静寂が取り囲んでいることに。
 あの音が聞こえないことに。
 慌てふためきながら振り返り、スチールの扉に耳を押し当てる。
 何も聞こえないなんて、そんなはずはないのだ。黒山大助の体は、私の車に乗せられて
数分経ったあたりから断続的な爆発を起こしていた。バシュンバシュンと、なかなか止ま
らないしゃっくりのように鳴り止まないそれは、支部室のパイプ椅子に身を沈めてからも
彼の体をピクピクと動かしていて、その振動でガタガタと音を立てるビジネスデスクとパ
イプ椅子椅子が騒がしかった。
 ドア越しにも耳に続いていたそれが聞こえないという事は、つまり――
 急いでロックを解錠し、ドアを押し開く。
 その先にあったのは、馴染みの支部室。いつもと同じくたたずむ備品。
 デスクの上には中身のこぼれたカップと、その横に転がる鉄の棒……何に使われていた
のか、真新しい断面で千切れている。
 そして、部屋の中を通り抜ける風。
 嵌め殺しのはずの防弾窓ガラスが枠ごととるはずされ、床に打ち棄てられていた。
 そこにあったのは、それだけだった。
 そこにいたはずの少年の姿は、何処にも無かった。

219とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 18:34:04 ID:nuErDCOg
  ▼

「YOーYOー、黒チャンドコ行くんだYO」
 校門を抜けようとした所に掛けられた声の主は、学校名の彫られた看板の張り付いてい
る分厚いコンクリートの壁の上に座り込む赤髪マスク、紫条玲花だった。
「支部当番サボってたら黄泉川センセから電話かかって来たんだよNEー。そしたらその
時キミがなんか変な事してるのを見付けてさー。それをポロって電話にこぼしたら、セン
セーも妙に怖い声で居場所聞いてくんの。一体何やってたのー?一応心配してたんだZ
O?」
 その割にはその口調はあまり深刻そうなものではなく、むしろ俺の状態を見て楽しんで
いる事がありありと見て取れる。
「でも――」
 彼女はひょいと俺のすぐそばヘ飛び降りると、
「安心したよ」
 いつ何時も外される事の無かったマスク人差し指で下に引っ張りずらし、鼻同士が触れ
合いそうな程の至近距離から俺の顔を覗き込んだ。
 初めて見る上級生の素顔は、意外にも、極めて和風的な顔立ちをしていた。
 狐のように細められた目、線の浮き出ないなだらかな鼻筋、窄まったような小振りの唇。
「うんうん、これなら大丈夫だね。今さっきのキミはけっこう危なっかしかったけれど、
これなら大丈夫だ」
 そして、とびきりの笑顔。
「ほんっと、イイ目をしているよ」
 そりゃどうも。
 俺は何事も無かったように先輩の目の前を通り過ぎていく。
 彼女の方も気を悪くした風はなく、満足そうに背を向けて帰りはじめた。
 今の俺にとって必要な物、興味のある事はここには無かった。
 廃ビルの屋上にいた俺の姿をサボっていた途中で見付ける、傘を差してもいないのに水
滴一つ濡れていない女風紀委員も、今の俺にとってはたいして重要なことではなかった。
 確かな足取りで歩を進める俺を阻むものは何も無い。
 ふと、額を叩く目障りな感触が消えたことに気付く。あれほど降り続いていた雨は、い
つの間にか止んでいた。

220とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 18:37:23 ID:nuErDCOg
  ▼

 俺の体は、人間を破壊することに特化している。その性質が特に表れているのが、右腕
だ。
 まず、その皮膚は『皮』というより『殻』に近いほど硬化している。長年爆発と共にヒ
トを殴り続けていたためか、火傷と擦過の絶えない外皮は変質と変容を繰り返し、関節に
は昆虫のような節さえ生まれている。一番接触の多い拳の部分は、もはや何処から骨なの
か見当も付かない。その骨も、衝撃の大きい場所――例えば手首なんかは互いに癒着し強
度を増してしまっていて、普通より二割ほど自由度が低い。そんなように、異様は目に見
える範囲には留まらない。常人離れした膂力を振るう運動に耐えられるように骨密度が数
倍高くなっているらしいし、その手助けとして筋肉の方も非常に発達している。おかげで
体脂肪率は10%前後なのにBMI指数が27.4という異常なことにもなっている。
 俺は、その運動器官に熱く煮えたぎるものが沸き上がるのを感じながら歩き続ける。
 まるで別の生き物が体の内部から暴れているような感覚。一度気を抜けば、すぐさま下
垂体のあたりを乗っ取られてしまうだろう。
 だが、それでは俺もお前も十分には楽しめない。
 だから、最高の快楽を味わう事ができる場所まで、俺は宥め賺しながら歩き続ける。
 休むことなく足を動かし続けているうちに東の空が明るみはじめる。それは無機物だら
けの街の気温を上昇させながら頭上に取りつき、核エネルギーを惜しみもなく地上へ降り
注ぐ。
 とにかく俺は歩き続ける。第十八学区を抜け、第五学区を通り過ぎ、第六学区を素通りする。

 歩いて、歩いて、歩いて、歩いて、歩いて、歩いて、歩いて、歩いて、歩いて、歩いて、
歩いて、歩いて、歩いて、歩いて、歩いて、歩いて、歩いて、歩いて、歩いて、歩いて、
歩いて、歩いて、歩いて、歩いて、歩いて、歩いて、歩いて、歩いて、歩いて、歩いて、
歩いて、歩いて、歩いて。
 やがてその太陽も西へ沈もうとする頃、俺はやっと目的の場所に着いた。
 そこにいたのは、七、八人の少年達。ファッションセンスなど欠けらも無い、実用本意
の薄汚れた衣服。
 そして、その手に握られているのは金属バットやチェーン等の物騒な鈍器。
 学園都市のカリキュラムから落ちこぼれた不良集団、スキルアウトだ。
 俺がそいつらを物欲しそうな目で見ていると、やつらは漫然とした様子で俺を取り囲ん
だ。
 その中でもリーダー格らしき男が、俺にむかって何か頭の悪いことを言った。
 悪いものでも食べたかのように笑う、他の不良達。
 実を言うと、俺の方も思わず笑ってしまう所だった。口の端ぐらいは微動してしまったかもしれない。
 あぁ……やはり、この場所は最高だ。望んで訪れれば、そこはいつだって望む通りの物
を差し出してくれる。
 ちょうど良い暇つぶしを見付けた彼等、下品で中身が薄くて口調の荒いだけの啖呵を切
ったリーダーの男は今、とても気分がよいのだろうな、と思った。
 そして、目の前の人間を簡単にくたばらせられると信じているこいつらを叩き潰すのは、
もっと最高に気持ちが良いだろうなと、そう思った。

221とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 18:37:44 ID:nuErDCOg
  ▼

 血のように赤い夕焼け。
 ヤツは、その紅に染まる街の中、燃える太陽を背にしてやって来た。
 無能力武装集団の巣窟、第十九学区ヘと。
 この学区は、他よりも古くさい、前時代的な町並みが続く。数年前までは再開発とやら
の計画もあったそうだが、失敗して急速に寂れてしまったらしい。その時代に乗り遅れた
学区にもようやく再度の再開発計画が持ち上がり、三ヶ月前、全面的な設備取り壊しのた
めにそれほど多くもなかった全住民を立ち退かせた。
 無能力武装集団は、その機を逃さなかった。
 無人になった街を、数百人の大人数で強引に占拠したのだ。
 オレ達は定まった住みかを持たない。薄汚れた路地裏に天幕を張り、バリケードを作り、
警備員に強制撤去されてはまた違う場所に移り住む。しかし、そんな生活はもううんざり
だったのだ。
 オレ達は武器を集め、一つに団結してこの学区を手に入れた。
 今なお続く警備員達との衝突は、なんと均衡を保っている。オレ達がここに集中したこ
とで付近の治安が相対的に改善されたらしく、学園都市側もここの扱いを考えあぐねてい
るらしい。取り締まろうとしているのは、十九学区をスラム街にするわけにはいかない学
区委員会の奴らと、少数の小煩い元住人 だけだ。
 オレ達の希望は、叶えられようとしていたのだ。
 八月三十一日、アイツがやって来なければ。
 その日の夕暮れ、オレは数人のグループで学区外部の見回りをしていた。警備員達がゲ
リラ的に強襲を仕掛けてくるのを警戒してのことだ。だが、その士気は低い。というのも、
ここ数週間はスキルアウトに牙をむくような輩など一つも無かったからである。とうとう
オレ達に逆らうことを諦めたのだと、最近皆喜んでいた。
 ここへやってくる敵などいない。
 見回り隊に渡されたされた装備――金属バットやチェーン、折畳みナイフなんかのショボ
臭い武器からも、上の連中の配慮の低さが表れていた。
 そんなだったから、フラフラと現れた見慣れない少年を発見した時、オレ達はむしろ喜
んだ。
 いろんな意味で、役に立つと思ったのだ。
 敵がいなくて、スリルの足りない最近のイライラを解消するおもちゃになる。
 ギタギタにしてから手柄を報告すれば、自分達も一目置かれるようになる。
 オレ達はゆっくりとそいつを取り囲む。そして完全に輪の中に取り込んだところで、一
番体と声のでかいやつがそいつをバカにして挑発した。
 たいしてよく聞き取れなかった言葉に大声で笑い、さらに煽るオレたち。
 だがその浮かれた顔は、だんだん戸惑った表情に変化していった。
 その原因は、囲まれた輪の中に突ッ立ったヤツだった。
 笑っていたのだ。オレたちよりも、よっぽど嬉しそうに。
 狂喜していたのだ。その顔いっぱいに、まるで頬がひび割れたような笑みを浮かべて。
 コイツ、ちょっとおかしいんじゃないだろうか。
 そう思った時には、すでに遅かった。
 赤く染まる世界の中で、ソイツの体はそれより深い血色に煌めき、オレの意識ははいつ
やられたのかも知らないうちに闇に沈んでいた。

222とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 18:37:57 ID:nuErDCOg
  ▼

 黒山大助は、どこにいるんだ。
「白井さん、聞いてますか!?」
「ああもう、ちゃんと聞いていますっての」
 私は疲労の溜り過ぎでささくれているのを自覚しながら携帯電話に言い返す。
「で、次はどこで騒ぎが起きましたのよ!?」
 今日の午前十時ごろ、学園都市にテロリストが侵入した。この街をぐるりと囲む障壁に
奇襲を仕掛けられ、十数名の警備員が病院送りにされる。
 その後十二時三十六分、今度は第七学区内にある人通りの多いファーストフード店付近
で謎の破壊現象。建設中のビルの鉄骨が数十メートル下の地上ヘばら撒かれるという、一
歩間違えれば大惨事につながりかねなかった事故も起こった。
 最初の外壁を突破された時点で、学園都市内対テロ警報は第二級警(コードオレンジ)。
建設中ビルの半壊によって、今現在は第一級警報(コードレッド)へと移行している。
 朝、私はお姉さまが寮の目の前で殿方と手を取り合ってどこかへ消え去った事で甚大な
ショックを受けて、ベッドの下へ引き籠もっていた。そこへやってきた、全風紀委員警備
員召集命令。あくまで学生である風紀委員達は交通規制などを担当するが、風紀機動員は
警備員の水増し役として動き回るよう指示された。
 しかし、そこに黒山大助の姿は無い。
 これは相当堪えた。『最強の風紀委員』というのはただの肩書きだとしても、彼の実力は
風紀機動隊に無くてはならないものだった。テロリストが潜伏している可能性の高い廃ビ
ルをいくつも捜し回り、ねぐらを荒らされて逆上する浮浪者達を叩き伏せながら痛感する。
不特定多数を相手に立ち回るのは、彼が一番得意とする戦況だ。
 そして私たちの捜索の甲斐も無く、三度目の被害が出てしまったらしい。
「場所はファミリーレストラン、やはり第七学区の南部です。詳細はメールで。午後六時
三十六分、丁度八十秒前に起きました」
「被害は?」
「店の通りに面した窓ガラスを破壊されただけで、怪我人はありません。しかし、その身
体的特徴が外壁突破時のテロリストと一致しています。その上、目撃者によると店内にい
た学生一名を誘拐したと思われます」
 普段とは違う、確淡とした口調の初春。その情報探査能力の驚いている暇は無い。すで
に被害を起こしている犯罪者を逃す訳にはいかないのだ。
「隊長(リーダー)!絶対座標Хー654781、Yー234970で新たな犯行です!」
「直線距離で5キロか。白井、四葉を伴ってお前だけ先行、精神感応(テレパス)でホシ
を探知するじゃん!その他面々は自力で包囲ポイントヘ直行!全速力!」
 私は広範囲の精神感応を行える少女の手を取り、十一次元ベクトルの把握・演算を開始
する。風紀機動員になるためには、高速移動検定、探知検定、危険対処検定など漢字検定
と同じような感覚で行われている能力検定で優秀な級を取得している事が条件となる。一旦遥か上空へと『ジャンプ』した私の視界には、それぞれの方法で夕暮れの街を飛んでゆ
く同僚達と、異様なエンジン音を響かせ発進するスポーツカーがあった。
 しかし、私に匹敵するほど多くの検定を取得している異能力者の姿は、そこに無い。
 わずかに唇を噛み締めながら、私は再び三次元を飛び越えるべく把握と演算を実行し、
一瞬訪れる無重力に身を任せた。

223とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 18:38:10 ID:nuErDCOg
  ▼

 あの二人は、どこにいるのだろう?
 僕は娯楽室に置かれている椅子に疲労の詰まった体重を預けながら、窓の外の夕暮れに
沈む中庭に目をやった。
 今日の昼前、この学問の街に良からぬ企みを持った人間が侵入したらしい。その際に交
戦した警備員の中には、命に関わる重傷を負った者もいた。その患者は応急手当てを済ま
せた後にこの病院ヘ転送されて来たため、僕は今までその手術に付きっきりで取り掛かっ
ていたのだ。
 若い頃、よく考えた。医者の手術の腕の善し悪しで、一つの生命、人生がそこで終わる
か、そのまま続いていくのかが決まってしまうのか、と。たった数分睡眠を取っていたか
いないか、ほんの数行の文字を知識としているかしていないかで、今この自分が感じてい
るような自我を、世界を観測する能力を失ってしまうのかが決まってしまうのか、と。
 名医と呼ばれ、『冥土還し』の二つ名が広まった今ではただ患者のために全力を尽くすだ
けであるが、それでもたまにふと考える事はある。
 しかしそれはさして感傷的なものではない。自分が現役を引退してから後継ぎについて、
という現実的な懸案である。
 まだ見つかってはいない。この病院にも優秀な医者はたくさんいる。しかし、何かが足
りないのだ。技術という時間が解決してくれるようなものではない、医療を極める事の情
熱、盲目、生命に対する執念、執着といったものだ。
 その事について考えた時、病院を多用し僕の研究室に潜り込んでいる、あの問題児が頭
に浮かんだのだった。
 彼との初対面は、五年前に瀕死の重体だった男の子を治療したときだった。
 変わった子供だ。いつもぼうっとしているかと思えば、一つの物事(主にネコ科関係)
に凄まじい集中力を示したりする。人との接触が苦手で、極端に触れ合いを避ける行動パ
ターンを持っているくせに風紀委員の役についているし、その仕事中に怪我をすればなん
と女生徒がたびたび見舞いに来る。彼女等の話によれば実力もかなりのものらしいのに、
日常生活ではその素振りも見せない。
 何より僕が気になるのは、彼の体のつくりについてだ。自然治癒力が常人の7・8倍な
のだ。それに加えて、環境適応能力も異常に高い。危険な仕事内容をこなす彼の体は、も
はや少年のものとは思えない。
 一体、彼は何者なのだろうか。
 僕には想像も付かないが、これだけは言えると思う。
 その異常性は、彼が持つ一番の問題点、『壊し癖』と密接な関係があるという事だ。
 僕が彼をあの無口なミサカさんとくっつけようとしたのは、彼女を思ってのことだけで
はなかった。
 夕焼けの赤色から、夜の黒へ変わりかけている中庭。
 そこに、あの二人の姿はない。
 今日の朝から、顔すら一度もみかけていない。

224とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 18:38:29 ID:nuErDCOg
  ▼

「あ……れ――?何だろ――う、これ」

「どうかしましたの?」

「衛――星写真の、……映像が、変なんです」

「それは新しい被害って事ですの!?」

「――いえ、今追っているテロリスト……とは、無関係だと思うんですけど……場所は十九学区です」

「十九学区?じゃあ、スキルアウトに何か動きでも?」

「はい、でもこれは……内部分裂でしょうか――」

「……というと?」

「……、」

 ――あちこちで、爆発のような光が起こっているんです。

225とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 18:38:57 ID:nuErDCOg
  ▼

 なぁ、ミサカ。
 俺、知ってたんだぜ。
 おまえが御坂美琴のクローンだってことぐらいさ。
 俺の同僚にはな、そのレベル5を狂信するテレポーテーターがいるんだ。見た事がある
よ。お前と遺伝子レベルで寸分違わないだろうその人をさ。その人にはな、お前が言った
ようにその能力をコピーした軍用クローンが作られてるって噂話が立ってたんだ。そんな
のはよくある話だよ。学園都市に七人しかいない超能力者だもんな。でも、目撃例があっ
たんだ。全く同じ容姿をした常盤台中学生数人を見た、っていう。その時はまだ、見間違
いだろうと思った。そうでなければ何かの能力でも使ってたんだろうってさ。
 でも、俺もこの目で見たんだ。しかも、お前が入院している病院の中でだ。
 あれは一緒にアニメを見てる時だったな。『チャイルドオブピーチ、それは神話上の人間と同じDNAを持つ超戦士を生み出すクローン人間計画だ。俺様はその中でも最高の力を持
った――』って話があったから、覚えてるよ。
 変に真面目な顔して見入ってるお前の後ろを、お前が通り過ぎて行ったんだよ。その時
はさすがにびっくりした。それでちょっと気を付けて見てみれば、『ミサカ一万うん千うん
百号』なんて名前札を病院の所々に見付けた。
 そりゃ、動揺はしたさ。あれって本当だったのかよ、とか、お前ってメチャクチャ大家
族ってことになるなー、とか。
 でもな、そんな事関係無かったんだ。ホラー映画なんかではさんざん化け物扱いされて
るけど、同一の遺伝子情報を持った生き物なんて、一卵性双生児で分けるようにたいして
特別な物じゃない。伝染病の心配はあるけどな。憂えるべきは、一般人の偏見の方だ。
 俺はそんなこと、どうでも良かったんだ。
 でもさ。
 寿命が短いって、そりゃないよ。
 テロメアという仕組みがある。テレビや情報サイトで聞き齧った程度なので細部に間違
いはあると思うが、俺の認識からすると、それは細胞の寿命にかかわると考えられている
ものの一つだ。
 細胞分裂の回数には限度がある。テロメアは染色体の端の方につながっているのだが、
それが分裂の度にすり減っていくのだ。それが短くなるというのはつまり、寿命のカウン
トダウンと同義である。テロメアがコピーエラーを防いでいたから分裂が止まるのか、古
い細胞がこれ以上分裂するとエラーが発生するから止まるのか、どちらだろうか。
 俺がこの事を覚えているのは、クローンを作る際、生まれる固体はもとの固体の寿命を
受け継いでしまうという事になるからだ。
 もとの細胞が幼ければ、まだ良い。しかしミサカは、投薬による成長促進で大幅に寿命
を縮めていた。
『ミサカたちの寿命は、通常の七十分の一、一年強しか――』
 慌てて、思考を振り払う。
 ダメだ。それ以上考えてはいけない。そこにたどり着いてはいけない。
 もっと体を動かすんだ。
 余計な事を考えないように。
 何よりも、俺自身のために。
 そうだ、思考を他の事に使おう。
 何でも良い。そうだ、昔話なんかいいかもしれない。
 そういえば、その時もこんな風にして暴れた気がする。よく思い出せないな。そうか、
そういえば自分から記憶を閉じ込めたんだった。これ以上壊れないように、自分のために。
 でも、今は非常事態だし、それに昔の事だ。もう何ともないさ。これは本当だ。五年も
経てば、どんな出来事だって色褪せる。
 じゃあ、決まりだ。思い出上映会でも行こうじゃないか。
 今宵御披露すんのは本邦初公開の黒山大助秘蔵フィルム、このお話はうんちゃかかんち
ゃかなんとやら。めんどくさいのはどうでもいいや。早く始めよう。
 五年前。俺が学園都市ヘ編入する理由となった出来事。
 正真正銘マジもんの魔術師だった俺の両親の、その人生と爆死の物語だ。

226とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 18:39:41 ID:nuErDCOg
  ▼

 これで良かったのだ。
 私は病院隣にある公園の暗い林の中で、三角座りにした膝へ顔を埋める。病室に居る気
にはなれなかった。あの中庭のベンチも駄目だったから、追われるようにしてここに来た。
身に身に纏う手術衣は昨日のままだ。着替えるという事を思い付かない。
 彼は私のもとを去った。咎めようとは思わない。
 彼は私とは違うのだ。ガッコウで教育を受け、将来のために努力をし、そういう通常の
生活を送る人間なのだ。
 私には未来など無い。自分が必要とされていたのはあの実験の中だけだ。それを奪われ
てしまった今、私はレベル0の少年の言葉に絞られて生命活動を続行する事しか許されな
かった。
 私は殺されるため、破壊されるために生み出されたのだ。
 そのためだけに存在しているのが最も正しい姿なのだ。
 そのはずなのだ。
 はずなのに。
 なぜ私は、こうも彼の姿を求めているのだろう。
 きっかけは一つの猫缶だった。
 私が病院で処置を受けることになった三日後、廊下にポツンと猫缶が落ちていた。誰か
の落とし物らしいと判断した私は、その持ち主を探して病院中を捜し回った。
 そこで、見つけた。
 中庭のベンチでご飯を与える少年と、それを幸福に満ち溢れた様子で歓迎する猫達を。
 今でもどうしてあんな事をしたのか、分からない。少年はその内うたた寝を始めた。そ
れを見た私は、手に持っていた猫缶の中身を少年の使っていた取り皿に出したのだ。
 そこで、彼は目を覚ました。
 そこで、私達は初めての言葉を交わした。
 その後の成り行きで、私は彼に電磁波障害を克服するための訓練を受ける事になった。
細部に問題点はあるが、自ら磁場を発生する事によってAIM拡散力場を相殺するというの
は盲点だった。だが、そこに彼の助力は必要無かった。自室には、電子線磁力線を視覚す
る事ができるゴーグルがあるのだ。あの訓練は、私一人だけでも十分可能だった。
 でも、そうはしなかった。私は、彼の手に従って訓練を続けた。
 その内、私は彼との訓練を、彼と会うのを心待ちにしている事に気が付いた。
 最初は戸惑った。しかし、そんな事はすぐにどうでもよくなった。
 本当に、どうでもよかったのだ。
 彼と一緒に居るだけで、全てがどうでもよかった。
 あの実験も、指が求める銃器の手触りも、電気刺激(トレーニング)も学習(インスト
ール)も無い一日も、全てがどうでもよかった。
 私はただ、彼と居る事だけを考えていればよかったのだ。
 だが、それももう終わりだ。
 バチが当たったのだと思う。そんな話があった。とある所に、継母とその娘達にいじめ
られる一人の少女がいた。少女はいつも暖炉の灰の中で眠らされていたので、灰被り姫と
呼ばれていた。しかしある日、娘たちがバケツの水を少女にぶっかけた所を見た継母は唖
然とする。今までじぶんたちが虐げていた少女は、実は絶世の美女だったのだ。その日か
ら少女ヘの待遇はガラリと変わった。お前は絶対に王さまの妃に選ばれるんだよ。そう言
って継母は少女にこの上ないぜいたくをさせた。その逆に娘たちには厳しい教育を受けさ
せた。お前たちはこうでもしなければこの先生きていけなどしない不細工なんだ。そして
時は過ぎた。娘達は、厳しい教育の成果で聡明な人物に成長し、裕福な男性と結婚して玉
の輿となっていた。しかし少女の方は、ぜいたくのかぎりを尽くしていたために傲慢な女
に成長し、王さまどころかそこらの男からも見向きされなくなっていたという。
 同じではないか。やはり私には、自らの境遇に甘えていた罰が下ったのだ。
 ……と、
 そこまで考えて、愕然とした。
 なんだ、この話も、彼と一緒に見ていたアニメのストーリーではないか。
 すっかり日の沈んだ公園。
 その中でも更に暗い林の中で、抱えた膝により深く顔を埋める。
 そこはいつか彼と一緒に訓練を行った場所だとも気付かず、私は彼の姿を振り払おうと
いつまでも努力し続けた。
 私を全てのしがらみから解放してくれるものがやってくる、その時まで。
 私の存在を、ただの殺人兵器に変えてくれる、あの電波が届けられるまで。
                                        to be conted

227■■■■:2007/10/24(水) 18:54:29 ID:w3R8rhNU
衣服を透かして女性の裸体を盗撮する透視カメラというものが市販(無線雑誌ラジオライフなどに広告掲載)されており、それを改造したもので「家やマンションの中の様子を建物の塀や壁を透かしてくっきりと盗撮」する盗撮器を所持!!
警察無線の傍受も行っている北朝鮮国籍の要注意人物!
通報情報
名前 杞山 岳史(キヤマ タケシ)
本籍 大阪府東大阪市太平寺2丁目3番4号

住所 大阪府東大阪市柏田東10-9

通報先
大阪府警 公安課
0669454744

大阪府警 メールで通報・犯罪者を逮捕しよう!
gazo110@abeam.ocn.ne.jp
警視庁 公安課
0335814321
東北公安調査局
0222564161
中部公安調査局
0529514531
中国公安調査局
0822285141
四国公安調査局
0878226666
九州公安調査局
0927211845

警察に確認をとると犯罪者検挙協力者への警察表彰の審査基準をみたしている案件であり、通報しておくと、杞山が逮捕された後で警察表彰を送られるとのことです。

228■■■■:2007/10/24(水) 19:09:33 ID:w3R8rhNU
衣服を透かして女性の裸体を盗撮する透視カメラというものが市販(無線雑誌ラジオライフなどに広告掲載)されており、それを改造したもので「家やマンションの中の様子を建物の塀や壁を透かしてくっきりと盗撮」する盗撮器を所持!!
警察無線の傍受も行っている北朝鮮国籍の要注意人物!
通報情報
名前 杞山 岳史(キヤマ タケシ)
本籍 大阪府東大阪市太平寺2丁目3番4号

住所 大阪府東大阪市柏田東10-9

通報先
大阪府警 公安課
0669454744

大阪府警 メールで通報・犯罪者を逮捕しよう!
gazo110@abeam.ocn.ne.jp
警視庁 公安課
0335814321
東北公安調査局
0222564161
中部公安調査局
0529514531
中国公安調査局
0822285141
四国公安調査局
0878226666
九州公安調査局
0927211845

警察に確認をとると犯罪者検挙協力者への警察表彰の審査基準をみたしている案件であり、通報しておくと、杞山が逮捕された後で警察表彰を送られるとのことです。

229とある風紀の活動日誌:2007/10/24(水) 20:31:52 ID:nuErDCOg
 全テではレベル3ぐらいからやっと日常生活に役立ちはじめるとありましたが、『スプーン曲げんのって定番でしょぼく思えるけど、あれって結構力要るよな?』ってことで、全体的に能力の水準が高めになっています。よって、風紀委員も事件時に結構活躍します。(十三巻で白井たちがのんびりしてたのは学区が違ったから、と解釈させてください)
 そして金髪眼鏡に関してはスルーして下さい。

 強さの例。能力開発していない帰宅部の中肉中背平均的男子高校生を一人力とすると、
弱能力者……格闘選手並み(2〜3人力)
異能力者……少年漫画一話目の主人公並み(5〜8人力)
強能力者……『いわゆる超能力者』並み(約十人力)
大能力者……少年漫画終盤の主人公並み(十数人力)
超能力者……戦略級(数十〜百人力)


次回予告

「テメエ等みんなまとめてブッ壊れちまえ!!!」
 己の崩壊を食い止めるために破壊を繰り返す黒山大助。思考の中から破滅の結論を追い
出すため、彼は過去に閉じ込めた記憶を紐解き始める。――craymore

「最優先非常事態です。いったん第一七七支部ヘ帰還してください」
 白井黒子は同僚のオペレーターから既続任務の中断を告げられる。そして新に言い渡さ
れたのは、学園都市統括理事会直々の指名による、第十九学区に現れた暴走能力者の排除
命令だった。――teleport

「エリアβよりルートDを経由してコマンドC標相変換マイナスルート1548673998――」
 何も考えないようになる事を望んだ少女のもとヘやって来た、絶対服従の電波命令。カ
ウントダウンが尽きるその前に、彼女はある決意を実行するため動きだす。――rail shot

 というわけで、次回作者の妄想が大爆発です。なるべく早く書き上げられるようがんばります。
ttp://pict.or.tp/img/27699.bmp

230■■■■:2007/10/24(水) 21:55:08 ID:e9m04rec
チャイルド・オブ・ピーチが妙なつぼにはまった。

続きを楽しみにしています。

231■■■■:2007/10/25(木) 17:59:26 ID:vQrYH/TU
GJ!次回も楽しみでござるよ。

232■■■■:2007/10/25(木) 21:45:35 ID:u61Ro/g.
GJ以外の何を言えというのか

233■■■■:2007/10/26(金) 07:07:44 ID:nbpuYTK2
>>232
具体的に「どこが」GJだったか言ってあげればいいんじゃないかな

234■■■■:2007/10/26(金) 23:59:46 ID:nzM/hpyA
えと、再認識から再確認にかわっとぉー?

修学旅行ですか。 存分に味わってくださいませ。  …見てなさげですがー!

235056:2007/10/27(土) 00:51:50 ID:bIY0Wt/U
>>158
遅くてスマン
神裂ってか土御門のテレ具合がイイ感じ
次も期待しちゃっていいのかし?

>>168
再認……再確認? SSの行方を再確認? 違うか
ぶっ飛んだ展開はアリだと思うよ、うん
でもさ……姫神なの?
爆ぜるのが姫神なのですか?
いや、続きが気になるからいいんだよ? いいんだけどさ……

>>229
活動日誌を最初から読んできた
いや、中の人すごいね
強度とか能力の設定が上手い具合だと思う
オリキャラってのも結構好きだし、かなり楽しかったので次が楽しみ

>>162-163
結構レスが離れたからアンカーつけてみた
これで平気?

俺も書き終わってるから一気に投下した方がいいのか?
と思いつつ結局そんなことしないで小出しにすることに決定

236とある教師の進路相談:2007/10/27(土) 00:55:41 ID:bIY0Wt/U
 病院を後にすると、小萌はデートプランを練ってきたかのように迷いもなく歩を進めた。
「小萌先生、どこに向かってるんですか?」
 素直にそう問いかける。
「特には決めてませんよ? 今日はお散歩なので着の身着のまま赴くままに、といった感じなのです。……それとも、上条ちゃんはど
こか行きたいところがあるです?」
「特にはないですよ。それじゃ、小萌先生にまかせますね」
 なんだかはぐらかされたような気もするが、変な勘ぐりはやめることにした。
 もし上条に内緒で行きたいところがあるいのなら、それは小萌にとって本当に知られてはいけないのだろう。
 自分の意思とは関係なく景色が動いていく。
 ここのところ怪我ばかりの上条だったが車椅子に座ったのは初めてだった。
 上条は自分が座っている車椅子を小萌が押すのは少々無理があるのでは、と松葉杖で行くことを勧めた。なにせ身長一三五センチの
体格では、ほぼ全自動の駆動輪付き車椅子でさえ扱いづらいはずだ。それなのに上条の言葉を一蹴して看護師から車椅子を略奪した。
よほど上条を連れて行きたいところがあるのかもしれない。単なるお節介という線もなくはないが……。
「えへへ、まかせてほしいのです!!」
 肩越しに見た小萌は、左手を小さく握り締め、息巻いて頷いた。
 この担任は教え子である上条にこんなにも無邪気に笑いかけてくる。そんなあどけない笑顔をじっくり見ていては小萌にも失礼かも
しれないし、なにしろ上条自身が恥ずかしい。
 車輪の行方を小萌に任せ、月明かりに照らされた科学の街を眺める。
「なんか……この辺りは静かですね」
「そうですねー、やっぱり病院が近いせいだと思うのですよ。……それに、どこかの誰かさんみたいに不良さんと追いかけっこするよ
うな子もいないと思うのです。有り余ってる体力は勉強の方で発散してほしいですねー。上条ちゃんも、そう思ないです?」
「……ははは、そうとう元気な人ですね」
 どこか乾いた声になってしまう。
「まったくもってその通りなのです。なんとですね、その子ったらなにかといろんなことに巻き込まれてたのです。不良さんと遊んで
るのもその一つみたいで……女子中学生にもちょっかい出されたりするらしいのですよ? ほんと……とっても楽しそうなのです」
 小萌の声は弾んでいて、明らかに上条をからかっていた。
「そ、そうですか?」
 なんとか返事をしたが……心中穏やかではなかった。
「そうですよ。正直……学園都市は子供にとって住みよい場所だとは思えないのです。小さい頃から強度(レベル)による上下関係が
生まれるですし。傷ついてしまう子、傷つけてしまう子。どちらにとっても悲しいことです。……でも、その子は笑っていました。痛
いのは嫌だけど他の誰かが痛いのはもっと嫌、そんなことを言っていたのです」
 いま、小萌の顔を見たら築いてきたものが崩れてしまう、そう思った。
 記憶喪失以来、上条はそんなことを小萌に言った憶えはない。つまり小萌の話は『記憶を失う前の上条』のことだ。
 小萌は上条が知っている教師の中でも、学園都市にいる大人の中でも、とてもとても素晴らしい人物だ。年端もいかない上条に対し
てでも、まっすぐな気持ちと言葉をぶつけてくれる。
 きっと頼ってしまう。どうしようもない想いを吐き出してしまう。
 それだけは耐えなければいけなかった。
「――上条ちゃんは憶えていますか?」
 この街の無機質な律動の音、その中で小萌の澄み切った声はやけに大きく聞こえた。
「初めて会った日のことを」

237とある教師の進路相談:2007/10/27(土) 00:56:27 ID:bIY0Wt/U
 病院さほど遠くない小さな公園で小萌は足を止めた。
 所々にある遊具たちは本日の業務を終えて故障したかのように動きを止めている。閉館後の遊園地も同じ雰囲気なのだろうか。外界
から切り離されたような、どこか違う時間を流れている感覚。
 上条も彼らと同じ空間にいた。
 縫いつけられたように車椅子に座っている。膝の上で絡ませていた両手が小刻みに震えだす。
「――は、初めてって『あの時』……です、か?」
 『あの時』? それはいつだ!? 俺はなにを言っている!
 小萌の不意打ちで思考は完全に止まっていた。しかし、身体は動くことをやめなかった。
 知りもしない幻想を吐き散らしてまで小萌を事実から遠ざけようとする。
「……憶えてるです? 小萌先生は『あの時』、『あの場所』で出会えたのが『上条ちゃん』で本当によかったと思ってるですよ」
 投げかけられる言葉が何度も胸をえぐる。
 悲鳴を叫び続ける心とは裏腹に、不自然なほど滑らかに言葉が流れていく。
「なに言ってるんですか……俺だってそうですよ」
 やめろ! これ以上『上条当麻』を演じるな! もう、この人だったらバレたっていいじゃ――、
 上条の脳裏に焼きついて離れない、向日葵のような笑顔。
 それを守らなければいけない。陰ることすらあってはならない。
「本当に……本当にそう思ってるです? 小萌先生に気を使ってるんじゃないです? お世辞とかじゃなくて……上条ちゃん……いえ、
『上条当麻』として言っていますか?」
 いつの間にか小萌が目の前にいた。
 上条が車椅子に座ってちょうど同じくらいの目線。心の奥まで覗き込むように、じっと上条を見つめている。
 『能力』と『学力』で全てを評価される学園都市で小萌ほど学生に真摯な態度をとる大人はいないだろう。上条は記憶を失ってから
の数ヶ月足らずで心からそう思っていた。
 バカなクラスメイトにも、怪しげな外国人のシスターにも、無鉄砲な上条にも小萌自身ができる精一杯のことをしようとしてくれる。
表面的な印象だけで決め付けず、ちゃんと向き合ってくれる。
 だからこそ、この人には誠実でありたい。
 たとえ言えないことでも、向けられた想いだけは返したい。
 なのに、
「――もちろん、です」
 『上条当麻』はそう答えていた。
「そう、ですか……それならいいのです。えへへ、なんか変なこと聞いちゃいましたね」
 やめてくれ……そんな笑顔で俺を見ないでくれ。俺はあなたに嘘をついたんだ。笑いかけてもらう資格なんてもうないんだ!!
 小萌の笑顔は心から守りたいと思う少女にどことなく似ている。それがいま、嘘にまみれた上条に向けられている。
 喉が枯れる。胸が痛い。心が軋む。
 とり返しがつかないことをしてしまった思いが全身を支配して、まともなことを考えられない。
「正直、小萌先生は不安だったので――」
 小萌の顔に一瞬だけ影が走った。しかし、それは本当に一瞬で次の瞬間にはまったく別の表情になっていた。
「ちょ、ちょっとどうしたのですか? 上条ちゃん、どうして泣いてるです!? あぁっ、やっぱり小萌先生のせいです!?」
 急に慌てだした小萌がそうまくしたてる。
 泣いている? 俺が? ……俺はまだこの人に迷惑をかけるのか!?
 笑いかけなければ。
 霞がかった意識の中でそう思った。
 ふざけたことでも言わなければ。いつも通りの冗談だと、心配する必要などまったくないのだと。
 そう確信できたのに――、
「あ、あぁ……」
 『上条当麻』はことごとく裏切った。
「――うわぁあああああ!!」
 堰(せき)を切ったかのように泣き叫んだ。
 唇を噛んで嗚咽を殺そうともせず、目元を隠さずこぼれ落ちる涙で頬を汚し、恥ずかしげもなく子供のように泣きじゃくった。崩れ
そうな心を支えるために小萌の服のすそを掴んだ。からっぽの心を誤魔化すために小萌の気配を感じていた。
 溢れ出した『弱さ』を全身で受け止めて、小萌はそっと上条に寄り添った。

238056:2007/10/27(土) 01:10:29 ID:bIY0Wt/U
きりがいいとこで終わらせてみる
相変わらず短いが勘弁

次のSS誰にしよう
……スマン、姫神だよな
でも色々と妄想は膨らむわけ
ローマ系とか書いてみたいわけ
禁書も白井も吹寄とかも書きたいわけ
サーシャは灰色遊戯の印象が強く出そうだから書くのが怖いわけ
……とりあえず頑張るわ

239とある忘却の再認識の中の人:2007/10/28(日) 08:25:10 ID:DoZ.j7vk
>>235(056氏)、>>234氏。
すみません、いろいろと急いでたんで間違えました。
――てか、自分の作品の名前間違えるとはorz

240056:2007/10/29(月) 23:58:40 ID:QR/RTmT6
やほ
さっそくだけど投下するさ
小萌SSは今回が最後なんでそのつもりで……

241056:2007/10/29(月) 23:59:02 ID:QR/RTmT6

 それから一〇分ほど上条は泣き続けた。
 涙が静まると、とめどなく溢れていた感情も影を潜め、冷静な思考と身体の自由が戻ってきた。
 やってしまった。
 思った以上に追い詰められていたことには驚いたが、それを堪えきれないほどに自分が脆かったことを痛感した。記憶喪失を隠し通
せていたと油断していた。
 横目でベンチの方に視線を向ける。小萌はなにを考えているかわからなかったが、一応は笑顔で天頂に上り始めた月を見上げている。
 上条が泣いている間は、ぽつりぽつりと小さな言葉を紡いだ。
「小萌先生はずっとそばにいるですよ。だから……上条ちゃんは泣いてもいいのです」
 なに一つ思い出を持っていないことを知った上で。
 上条は感情の昂ぶるまま記憶喪失のことを吐露していた。
 あの日より前の記憶がなにもないこと。それが決して戻ってこないこと。記憶喪失ということを知られてはいけないこと。それでも
自分のこと以外――インデックスや魔術に関することを言わなかったのは、インデックスを想ってか、それとも小萌を巻き込まないた
めか。
 上条の視線に気づいて小萌がおだやかに微笑む。
「……『あなた』は自分のことをどう思うです?」
 普段の呼び方――『上条ちゃん』ではなく『あなた』だった。
「俺は……気づいたら真っ白な病室だった。なんかのマンガみたいな、信じられないことばっか説明された。全然実感がなかったけど、
インデックスが……あの女の子が俺の前で泣くのを見たら……すごく、辛かった。だから、あの子を泣かせちゃいけないって思った。
だから――俺は『上条当麻』になった」
 その言葉は小萌に説明しているようで、上条自身に言い聞かせるようでもあった。
 事実を追いかけ、感情を鮮明にしていく。
「最初は、ほんとわけがわかんなかった。『上条当麻』って人間が……台本がないまま舞台に立たされてる、っていう感じ……かもし
れない。そういうの、よくわからないけど……でも大変だった」
 目を背けていた想いに再び出会う。
「――自分のことを考えてる暇なんてなかった。あの子と『上条当麻』の知り合いたち……いろんなことが起きたけど、俺は見て見ぬ
振りなんてできなかったし……やっぱ、したくなかった。知識だけしかなかったけど身体は動いてくれた。バカみたいなことだけど、
どっかに残ってたのかも、って思う。……俺は少しずつ『上条当麻』に近づいた」
 小萌はなにも言わない。
 いきなり自分の生徒が泣きだしたら、記憶喪失だなんて言い出したら、事情を聴きたくなるはずなのに――、
 ただ、そばにいてくれるだけ。
「だけど……近づいたのは外側だけだった」
 目頭が熱を帯びていく。
「みんなが俺を『上条当麻』って認めると、その度に自分がわからなくなった。記憶がなくなっても『上条当麻』は『上条当麻』だと
か、そんなこと言われなくてもわかってる。けど、でも……納得なんてできなかった! 俺の中で『上条当麻』はちゃんとした形にな
っていくのに……俺自身は空っぽのまま」
 揺らいだ世界に気づいて顔を隠すように俯く。もう、泣き顔は見せられない。
「結局……俺は誰、なんだよ」
 情けなさと、苛立ちと、虚しさと――混然した感情に思わず開口する。
「……」
 不意の気配。
 かわいらしい小萌の革靴が視界にはってきた。
 怖い。
 視線をあげることが怖い。小萌の顔を見ることが怖い。『上条当麻』ではない――初対面の人間と向き合う小萌が怖い。
「『あなた』は……」
 肩が震える。惨めな上条を嘲るように膝が笑いだす。
「『あなた』は『上条当麻』です。おバカさんで、どうしようもなくて……でも一生懸命で、ちっともめげない。小萌先生の大事な大
事な教え子です」
 小萌は笑っていた。いや……『あの日』自分に向けられた笑顔のように……精一杯、笑おうとしていた。
「――っ、だからっ!!」
 荒ぶる感情が声となって吐き出される。
 小萌が放った言葉はどうしようもなく正しいのだろう。記憶喪失になったからといって異なる人物に成り代わることなどありはしな
い。『記憶を失った上条』も『記憶を失う前の上条』も所詮は同一人物だ。
 けれど……それは偽善だ。慰めにすらほど遠い。

242とある教師の進路相談:2007/10/30(火) 00:00:14 ID:utngfQvc

「違います。そうじゃないのです」
 頭(かぶり)を振って小萌は言った。
「どんな経緯で記憶喪失になったのか、小萌先生に詳しいことはわかりません。……でも『あなた』は……記憶を失ったときから、シ
スターちゃんを守ろうと思ったときから……『あなた』は『上条当麻』になったのです」
 温かい優しさが肩の震えを抑えていく。
「さっき『あなた』が言ったように、きっと……どこかに『上条当麻』が残っていたですよ。シスターちゃんに出会って、姫神ちゃん
と過ごして、風斬ちゃんと仲良くなって、土御門ちゃんたちと笑って、吹寄ちゃんに怒られて……『あなた』の中の『上条当麻』はみ
んなに触れて少しづつ大きくなったはずです」
 ゆっくりと首に腕を回され抱きしめられた。
 ちょっとタバコ臭い……でも陽だまりのような匂いが包み込んでくる。
「それはいままでの『上条当麻』じゃなくて……新しい、『あなた』が成長して創りあげた『上条当麻』なのですよ。以前と同じ必要
なんてありません。なりきる意味なんてないのです。だって……」
 小萌の腕に力が入った。
「だって『あなた』は、いままでの『上条当麻』よりずっと素敵な『上条当麻』なのですから」
 そんなの詭弁だと思った。この場凌ぎの言葉遊びだと罵りたかった。
 だけど――、
 その台詞は心の奥底に突き刺さって決して引き抜けないほどにめり込んでいく。
「小萌……せん、せい……」
 たとえ詭弁でも、たとえ言葉遊びでも……、
「――ありが、とう」
 送られた言葉はひどく嘘っぽくて――そして、嘘みたいに温かかった。
 上条は声を押し殺して再び、泣いた。

 上条が落ち着いてから、二人は公園を背に帰路を歩む。
 車椅子に揺られながら上条は気になっていたことを尋ねる。
「小萌先生は……俺が記憶喪失だって、気づいてたんですか? それであの公園に行ったんですか?」
 今日、小萌はまっすぐにあの公園に向かっていた。上条と小萌が出会ったのが『あの場所』というのなら記憶喪失のことを知ってい
て連れ出したとしか思えない。
 しかし――、
「あは……あはははは……か、上条ちゃん、それはですねー」
 小萌の反応は妙に落ち着きがない。
 なんというか……教師にいたずらがばれた小学生のようだ。
「小萌先生?」
「お、怒らないで聞いてくださいねっ?」
「……話の内容によります」
 小萌の表情はわからないが、ぐっと息を飲んだことがわかった。どうにも言いづらいことらしい。
 こほん、と喉を整えて小萌は話を切り出した。
「その……最近、上条ちゃんの様子がちょっと変だったので気になっていたのです。少し元気がないようい見えたので、まずはお見舞
いに行ったのですけど……案の定、上条ちゃんに違和感を覚えてしまったのですよー。それでですね……」
 振り向いて視線を合わせる。
「――カマ、かけたんですか?」
 一秒もしないで顔をそむけた小萌。少し頬がひくついている。かと思えば鼻先が触れ合いそうなほど顔を寄せてきた。
「ち、違うのですよー! 上条ちゃんのことなので、小萌先生がなにを聞いても『大丈夫』とかそんなこと言って、絶対はぐらかすと
思ったのです。なので、ちょっとだけ……ちょっとですよ!? その、上条ちゃんをからかっちゃおうと思いまして……」
「……から、かう?」
 予想外の告白だった。
 上条としては最初から小萌が記憶喪失のことを知っていたと思っていた。だから上条の昔のことを話し出したと思っていたのに……。
 からかおうとした?
「どうせ上条ちゃんったら小萌先生と会ったときのことなんか忘れてると思ったので、わざとその話をして焦らせてやろうと思ってた
のです。そしたら……その、上条ちゃんがいきなり泣き出して――」
「ちょ、ちょっと待ってください!!」
 ということはまさか……、
「最初から記憶喪失って知ってたんじゃ……」
「そ、そんなことわかるわけないじゃないですか! 上条ちゃんから聞いて小萌先生だってビックリしてるですよ!?」
 まさか……思いっきり墓穴を掘ったのか?
 盛大な脱力感に襲われ、なにもかも投げ出したくなる。
 しかし、その前にもう一つ聞かなければいけないことが増えた。
「じゃ、じゃあ……俺と小萌先生が初めて会った場所って……」

243とある教師の進路相談:2007/10/30(火) 00:03:06 ID:utngfQvc

 一瞬の間。その後、不安に覆われていた顔を眩しい笑顔に塗り替えた。
「もちろん、あの公園じゃないですよー」
「……うだー、マジかよ」
 もはや文句を言うだけの気力すらない。というか、もとから文句を言うつもりなど全くない。
 深く身体を車椅子に預け、黒塗りの天井を見上げる。雲一つない空で月は煌々(こうこう)と輝き、夜の色合いを深めていく。
 今日も静かな夜になるだろう。
 けれど、安らかな眠りが待っている。そう確信できる。
 もう自分はいままでの『上条当麻』とは、仮初めの存在とは違うのだから。


 穏やかな夜。
 視界の隅にはさっきまで泣いていたかわいい教え子の黒髪。
(えへへ、上条ちゃんったら、まだまだ子供なのですよー)
 ナデナデとかヨシヨシとかイイ子イイ子とか、大好きな教え子に色々したい感情を必死に抑える。こうして一緒に歩いていると自然
と気分が高鳴っていった。
 それでも……、
 どうしても表情が曇っている気がする。
(記憶喪失、ですか……)
 なんとか笑顔を作ってみるが、やはり表情筋が固いようだ。たった数十分ではあの衝撃からは立ち直れない。
 本当に側頭部を鈍器で殴られたような鈍い衝撃だった。
 クラスの中でムードメイカーとして、まとめ役の一人として振舞う彼を知っている。
 自分の信念を曲げずに、誰かのために身を削っている彼を知っている。
 どんなにつらくても決して諦めない彼を知っている。
 そして記憶を失っても彼は彼のまま、誰にも迷惑をかけず全てを一人で抱え込んでいた。
(やっぱり……『あの時』となにも変わっていないのですね)
 一つだけ嘘をついていた。
 あの公園。
 いまの高校に赴任して数日足らずの月詠小萌と、学園都市に来たばかりの上条当麻。
 そこは本当に二人が出逢った場所だった。
(ごめんなさい、上条ちゃん……でも、これだけは言えなかったです)
 それは二人だけの思い出。
 『上条当麻』にさえ踏み入ることを許さない月詠小萌の大切な記憶。
 なにかあればいつも思い出していた。
(いつのまにかお別れしちゃったのですね……本当にずるい子です、本当に)
 けれど、その思い出も深く深くしまわなければいけない。
 忘れることなどできないから……一つの想いに添えられた言葉とともに、二度と開くことのない宝石箱の中へ。
(――さようなら『上条当麻』君)
 秋の夜風が慰めるように優しく頬を撫でていく。
 月詠小萌は『上条当麻』に気づかれないように一雫だけ涙を流した。
 たった一雫だけ。

244056:2007/10/30(火) 00:22:50 ID:utngfQvc
終わり
スマン、>>241は名前んとこ失敗したな

ちょっとネガティブな上条……どうだったろ?
かまちー文体じゃなかったからかなり不安
最後の方とかわかりにくくなってる気がするさー
今のところ後日談的なSSは用意してないからホントに終わり
続きを希望する人が多いなら書かないこともないが……ま、そのとき決めるさー

245■■■■:2007/10/30(火) 01:30:36 ID:LtYxJgFw
GJ!��Ь(>∀・)

俺的にはこういうのも大・大・大好きですwww
原作の上条を壊さずにここまで書けるんだからすごいな〜

246とある忘却の再認識の中の人:2007/10/30(火) 18:35:07 ID:ERK.MF5E
いや、本当に凄いですね。
拙作の別人上条とは比べ物になりませんし。
何故こうも上手く書けてしまうのか……

247■■■■:2007/10/30(火) 23:15:28 ID:OSzWbs8.
ほろり。 後日談が気になるがこれでピリオドをうつというのも・・・

248■■■■:2007/10/31(水) 19:51:28 ID:pzmt3YUY
2ちゃんねら〜のみんなでつくりました。

スペシャルホームページ
ttp://www.freepe.com/i.cgi?きやまたいほ

きやまたいほはアルファベットにしてください。

249■■■■:2007/11/10(土) 05:34:28 ID:MJlmmdlk
かなーり過疎ってますね……

250■■■■:2007/11/10(土) 18:23:34 ID:ljSuacYQ
小説制作中、ROM続きになるので完成してから投稿するつもり。

251■■■■:2007/11/11(日) 21:15:10 ID:pwB1tPA6
新刊出たから初出設定とか色々盛り込めそうな予感

252高機動幻想殺し(嘘予告):2007/11/11(日) 22:52:47 ID:zhwG0DDA
学園都市とローマ正教の緊張の糸は、どちらかが最初の引き金を引けば簡単に切れるような状態であった。
魔術と科学両方の世界が注目するなか、両者の争いは唐突に終わりを迎えた。

始まりは本来の月を隠すように浮かぶ黒い月の出現。
そして、人類の天敵、幻獣の出現であった。
神話の獣の名を冠した生物。
世界各地の都市に幻のように現れたそれは、無差別な殺戮を始めた。
多くの被害を出しながらそれを殺すと、その死体は幻のように消えていった。
悪い夢のようだった。
悪夢はいつか終わり、目を覚ませば昨日と変わらない日常があるような。
だが、人は今後何度も同じ夢を見ることになる。
悪い夢を……

繰り返される幻獣との戦いで各国が疲弊するなか、学園都市とローマ正教は一時的な和平を結ぶ事となった。
そして、科学サイドと魔術サイドで二つの決定が成された。
一つ目は、魔術の公表。本来魔術とは秘匿されるべき存在であったが、人を守るために戦った魔術師が殺される事件が多発した為である。
魔術師と幻獣を同一視した為に起きた事件で、その認識が広がりつつある為であった。
二つ目は、超能力者の戦場への投入。14歳以上の超能力者達が学園都市での一定期間の訓練の後、戦場に駆り出されることになった。

これからの物語は一人の少年が主人公である。

上条当麻。

無能力者の烙印を押された少年。
少年の視点を通してこの物語は描かれる。
少年の右手に宿るそれが異能であるならば、神の奇跡さえ打ち消す『幻想殺し』。
少年はその右手で何を殺し、何を護り、何を手にするのだろうか。
何も護れず、何も手にすることが出来ないのかもしれない。
結末は未だ誰にも分からない。

それでも、物語の幕は上がる。

上条当麻の物語が……







おまけ
『Hな雰囲気』

「とうま、そんなところかまれると嬉しいの?」
「とうまのはおいしいから好きだよ。」

「…んっ、そんなとこ…かんで、灰になっても知らないから。」
「今の私は巫女さんだから…後ろから……何でもない…あ。」

253■■■■:2007/11/12(月) 22:25:56 ID:A0HgrjU2
なんとなくお題提供
「上条の未来の結婚生活と子供」
「カエル医者、禁書の14巻」
「御坂妹が甘々になったようです」

254■■■■:2007/11/13(火) 19:25:35 ID:ISQRYNuM
ども
あ、新作じゃないから期待しないでくれ
過疎ってるから連絡とかしてみる

今月は投下できねぇ!!

……と思う
なんせ新刊すら読んでない状況
まぁ、基本はオレのやる気次第なんだ

姫神SSを書き終えるのが先か
クリスマスSSを書き始めるのが先か
オレの誕生日を姫神に祝ってもらうのが先か
でわ……

255■■■■:2007/11/13(火) 23:44:48 ID:hhIZZhnk
新刊とネタが被った・・・・
また作り直さなきゃ(泣)_l ̄l●

256■■■■:2007/11/14(水) 17:36:56 ID:a4t7KTXU
佐天や初春、白黒辺りを上条さんとラブコメさせるといいですよ?

257■■■■:2007/11/23(金) 20:50:58 ID:33v6xFx.
こちら本部。

誰か生き残りがいたら応答しろ!

あの旗男はどうした。

誰か応答しろ。

258■■■■:2007/11/24(土) 08:16:40 ID:LMn70wTE
ここ学スレの誤爆……?
とりあえずROM一人、生きてはいるヨ
ノシ

259■■■■:2007/11/24(土) 13:05:20 ID:nGj/PTF.
読み専ならここにも一人いきてますぜ〜w

260056:2007/11/25(日) 00:37:29 ID:IkVnKR2M
いや、生きてはいるんだが……11月もあとちょっとで終わるな
SSはまぁ、予想通り期待しないでくれ
最新刊は読んだ!
一方と美琴の出番に期待、禁書の出番に涙目
鎌池さん……このあと姫神は、メインで出られるのでしょうか?

261■■■■:2007/11/25(日) 02:02:22 ID:SVtf7Iow
ROMならもう一人いるぜww

262■■■■:2007/11/25(日) 17:52:54 ID:GDsIUMkY
さらにROMを一人追加

263■■■■:2007/11/26(月) 10:51:15 ID:ldYmNFMc
ノシ

ロムおるよー。

264■■■■:2007/11/26(月) 18:35:38 ID:/mcqlXAc
ノシ
読み専で、生存中。

265■■■■:2007/11/29(木) 20:31:57 ID:plulPnLE
ノシ
同じくロム一名生存中

266■■■■:2007/11/29(木) 20:56:42 ID:Ah6Ehx.I
ノシ
同じく、ついでに話題提供ってみたり
ビットリオ=カゼラたんでSSってありかな?
キャラ固めができたら書いてみたいんだけどみんなアレをどんな萌えとみるよ?

267■■■■:2007/11/30(金) 14:28:30 ID:B8AwTWs6
同じくROM生存中

268はじめまして:2007/12/02(日) 01:01:20 ID:7eOfdnm.

   序章

 午後6時30分。かろうじて太陽が沈み切らない時間帯。
 薄紅の光にさらされたビルとビルの間。人目をはばかるような細い道に
二つの人陰があった。
 大きい影と、それに比べて小さい影。
 やがて、小さい方の影が口を開いた。
「……こんな戦争が始まりそうな時期に何を考えているんだ。あの野郎は」
と、苦々しくつぶやいた。
「僕に言われても困るよ。僕はただ君に『奴』へ伝言頼んだだけだ。それと、
『仕事』をしにね」
と、小さい影に対して軽口をきいた。
「分かっている。だが、納得がいかない。禁書目録〔インデックス〕だけつれ
て行けば良いものを……そう思うだろう?ステイル」
 まあね、とステイルは言い、
「だけど、『上』が決めたことだ。僕達がどうこうしたって、しかたがないだ
ろう」
「お前はこの件に賛成するのか?」
「ああ。『奴』がついてくる事については気にくわないけどね。
 彼女にとって学園都市〔ここ〕は安全じゃなくなってきた。だからこの『仕
事』が終わったら、あの子と一緒にイギリスへ帰ろうかと思っている」
さらりと、そんな事を言った。
「さて、僕はそろそろホテルへ戻る。それじゃあ失礼するよ、土御門」
と、言い残してビルの角に消えた。
「……」
 土御門はしばらく無言で佇んでいた。
 そして踵を返し、とある人物に伝えるためにステイルからの伝言と会話を反
芻していく。
 そうして歩いている内に、目的の建物が見えてきた。

269268:2007/12/02(日) 01:21:12 ID:7eOfdnm.
はじめまして。

ずっとROMてたけど投下する人がいないので投下しました。
時系列が変になるけど、そこはあらかじめご了承下さい。
なにせ14巻が出る前に書こうと思ったやつだから。
13巻からの分岐物としてよんでくれるとありがたいかも。
これからも書いてこうと思ってるけど、つまったり、自然消滅したりするかも
しれないから、あまり期待しないで下さい。(投稿は不定期)
PCで打つのあんま得意じゃないので誤字とかあるかもしんないけど、そこは
脳内補正で。           それでは神達の出現を祈って。

長文、駄文SMN

270■■■■:2007/12/02(日) 08:48:13 ID:R0PaOUvE
gj 待ってるゼ

271■■■■:2007/12/02(日) 10:44:16 ID:tFEKgOis
序章とかいって1レスだけ投下するのはSSとして地雷認定されるぜ
もう少し先の展開を考えて書き溜めてから投下したほうがいい

272緑炎:2007/12/03(月) 18:00:06 ID:8bGRqqG.
はじめまして、こんばんは。
禁書モノのSSを書いてみたので、投稿します。
小説は1年くらいブランクがあるのでいろいろと見苦しいとは思いますが
最後まで読んで下されば幸いです。

273緑炎:2007/12/03(月) 18:03:28 ID:8bGRqqG.
「とある学園の前日談録(プロローグ)」

陸上自衛隊・東富士演習場。
富士の東斜面一帯に広がる演習場であり、この国に於ける唯一の実弾射撃が可能な大規模演習場である。
内部は荒地や丘陵、迷路のような塹壕、森林、そして鉄とコンクリートで再現された都市といった地形がある。
その都市の一角。首都の政治中枢辺りをモチーフとしたその場所に、いくつかもの緑色で構成された制服を着た人影があった。
皆一様に鉄帽と防弾着といった服装で、手には狭い場所で取り回しが聞くよう、ストックが切りつめられた89式自動小銃がある。
右肩の記章は、彼らが東部方面隊隷下の第一普通科連隊――すなわち、首都防衛を担う部隊の所属であることを示す。
彼らは所々に設置された信号機や電柱、自販機や花壇、乗用車といった遮蔽物になりそうな物の合間を縫うようにして、ごくごくゆっくりと、しかし迷った様子もなく、ある建物へと向かっていた。
都内ならば何処にもありそうな低層の雑居ビル。
一団が何の変哲もないそのビルの入り口周辺に到達するとともに、先頭にいた男――春日 陽亮2等陸士曹が後ろの部下に向けてハンドサインを送った。
サッと兵士たちが壁に張り付くように並び、上下左右、全方位の視界を各々が警戒する。
「―――」
再び陽亮が手を掲げ、指を折りたたんでカウントダウンする。
それを合図に、入り口の近くと窓際にいた隊員が閃光音響手榴弾(スタングレネード)を取り出し、それを構える。
最後の指がありたたまれるとともに――
バゴンッ、という音とともに背後のコンクリート壁が吹き飛ばされ、張り付いていた兵士たちが吹き飛ばされ、一瞬遅れて閃光音響手榴弾特有の壮大な閃光と炸裂音が響く。
「――っ」
その轟音の中、耳障りな警告音を伴って、左腕に括り付けられたMFDに死亡判定の文字が次々と表示される。
「突入、突入、突入!」
耳に残響が残る中、言い放って扉を開き、内開きの扉にもたれ掛る様にして小銃を構える。続く隊員が彼の反対側で同じように小銃を構え、さらに続く2名が同じ要領で室内奥にある階段の袂で銃を構える。
「1階フロア、制圧完了。班員6名死亡。これより階上に突入する。通信終わり」
呟く様に無線報告を入れ、隊員たちに階段を上るように指示する。
階段の袂にいた2名が微かに頷き、足を踏みだそうとした瞬間

274緑炎:2007/12/03(月) 18:04:40 ID:8bGRqqG.
隊員の真上の天井が、ハンマーで砕かれたかのように砕け、次いで衝撃波と破片が襲いかかり、全員が壁際に叩き付けられる。
MFDに死亡判定の文字が躍り、次いで総員死亡と作戦失敗の文字が浮かぶ。
「は・・・班長」
部下の一人が、肩を押さえつつ問いかける。
「さっきのは・・・いったいありゃ何でありますか」
陽亮はそれに答えることなく、天井と、そして床に穿たれた大穴を交互に見やっていた。
「もしかして・・・能力者、ですか」
能力者。
大脳生理学の飛躍的な発達によって解明された、ヒト脳の未使用領域(ブラックボックス)の存在理由と、そこに秘められた力。その力を使いこなす事が出来る者のことだ。
有態に言えば、手から火の玉が飛んだり、瞬間移動したり――今日日、小学生でも信じない様な力を使いこなせるスーパーマン、ということになる。
一時はニュースや新聞で、大学名誉教授だの軍事評論家なる連中によって軍事転用が話題となったが、そんなことは有得ない筈だ――そう、その筈だ。
(――能力者、なのか)
吹き飛ばされ、肩や脚を押さえて呻く部下たちと、コンクリートの床を基礎ごとぶち抜いたさっきの「攻撃」の痕跡を見て、陽亮は心の中で呟く。
あんな夢の世界(ファンタジー)の住人に、自分の班は叩きのめされたのか――
そうなると、無性に腹が立ってきた。
立ち上がり、そして転がっていた89式小銃を手にする。MFDに命令違反の表示が浮かぶが、それを無視して、彼は慎重な足取りで階段へと向かう。
「動ける者は負傷者を連れて屋外に退避。その後に衛生隊員を呼べ」
「班長!」
部下の一人が咎めるが、無視して階段の様子を伺い、そして一気に駆け上がる。
銃口を階上へと向け、中央をなるべく低い大勢で突き進み、階上へと、そして扉を蹴り開き、室内へと突入する。
三方向を窓に囲まれ、事務デスクと安っぽいパイプ椅子が置かれた部屋の中央に、人影がいた。
自分と同じ迷彩服とヘルメット姿で、左手は無線機を持ち、右手はコインを回している。
右の太ももには正規品ではないポーチが括り付けられ、本来そこにあるべきホルスターは、拳銃を収めたまま左の太ももに括り付けられている。
彼我の距離は10メートルほど。絶対必中の距離だ。
「動くな!武器を捨ててうつ伏せになれ!従わぬ場合は発砲する!」
武器を持たぬ敵に対する文句を、怒気を込めて言い放つ。
人影は振り向くと、左手の無線機を床に放り、右手のコインを握り締めて、ゆっくりと両手を上げつつ、こちらに向き直ろうとする。

275とある学園の前日談録:2007/12/03(月) 18:06:09 ID:8bGRqqG.
差し込む日差しが、迷彩服と防弾着の上からでもわかる、女性特有のシルエットを浮かび上がらせる。
(女――?)
ほんの一瞬だけ、銃口がぶれる。その一瞬の間に女性の右腕が彼に向かって伸ばされる。
「動く――」
言い終えるより早く、バシッという電気質の音が響き、右手からコインが飛び出す。
次の瞬間には彼の背後の壁が吹き飛び、一瞬遅れて衝撃波と轟音が彼に叩き付けられ、全ての窓ガラスが内側から吹き飛ばされる。
「――っ」
思考するまもなく思い切り吹き飛ばされ、彼は事務デスクの上へとダイブ。積み上げられていたダンボールを巻き込んで、盛大に埃を立ち上らせて停止する。
「い・・今のは・・・」
痛む体を叱咤激励し、何とか起き上がると、その眉間に拳銃が突きつけられた。その向こうには、銃を構える女性の姿がある。
「そこまでだ、総員動くな!」
この演習を取り仕切る、教導連隊の1等陸尉の怒号が響き、女性は銃をホルスターに収め、彼は痛む体をかばうようにして床に降り立つ。
1等陸尉はそんな2人のそばまで来ると、わざとらしく室内を見渡し、そしてわざとらしく盛大なため息を吐く。
「――特技官は指揮所で待機をお願いします」
「了解です」
女性にしてはやや低音な、しかしよく通る声で女性は答えると、敬礼も無しに退出した。その後ろを、陸尉と同じ教導連隊の隊員がついていく。
「さて――」
そう言ってわざとらしく咳払いをし、口を開く。
「春日2等陸士曹、貴様、死亡判定を無視して突入するとはどういうつもりだ!」
それを皮切りに、1等陸尉の罵声が窓のない部屋で轟くが、陽亮の意識は退室した少女へと向けられていた。

276とある学園の前日談録:2007/12/03(月) 18:07:07 ID:8bGRqqG.
1等陸尉殿の長い長い説教と、それに続く「どきっ!300回耐久自衛隊式腕立て伏せ☆脱落者が出たら最初からっ」から3日後、春日陽亮は陸上自衛隊練馬駐屯地の一角、指揮所や幹部の執務室が集まる棟の廊下を歩いていた。
上官がすれ違う度に立ち止まっては敬礼をし、答礼を受けてはまた歩き出すというサイクルを何回か繰り返し、目的地である、師団長の執務室へと続く扉を叩き、返事と共に扉を開く。
「春日陽亮2等陸士、出頭しました」
敬礼と定型句を述べつつ、目だけを動かして室内を見渡す。
正面には日の丸と師団旗が掲げられ、その間には樫の木で作られた立派な執務机があり、そこには師団長である陸将が腰掛け、その傍らには連隊長である1等陸佐が佇んでいる。
「話の前に、まずこの書類にサインしろ」
答礼もなく、連隊長がクリップボードとペンを押しつけてくる。
「守秘義務の誓約書・・・ですか」
「はやくしろ」
苛立たしげに突きつけられたクリップボードを受け取り、内容にざっと目を通してから所属と階級、氏名を書き込む。
連隊長がそれを受け取り、師団長に手渡し、その内容を確認して、ようやく師団長が口を開く。
「・・・なぜ呼び出されたか、わかっているだろうな」
「はい、陸将殿」
直立不動の気をつけ体制を取り、陽亮は答える。
「そうだろうな。ここまで凄まじい記録を打ち立てたのは、我が師団始まって以来だ」
師団長はそう言って、手元の書類に目を落とす。
「昨日の演習に於けるROEの無視。故意の死亡判定の無視。命令不服従。班長としての職務放棄。訓練施設に於ける無用な破壊行動。まだまだあるぞ。本来なら服務規程違反で厳罰処分となるところだが――」
陸佐はそう言い放ち、一冊のファイルを彼に差し出す。
「その埋め合わせとして、貴様に任務を与える」
「任務・・・でありますか」
「そうだ」
(どうせ駐屯地の草むしりかとかそんなもんだろうが・・・)
そんな事を心中でぼやきつつ、陽亮はファイルを受け取る。
「能力者――常識だから知っているだろうが聞いておく。知っているか」
「はい。一般的な知識のみですが」
「その能力者の研究開発を、我々も行っている」
「・・・初耳です」
「当然だ。これは本来、軍機だからな」
煙草に火をつけ、煙を噴いて陸将は続ける。
「・・・今から5日ほど前、我々の能力研究施設から被験者が1人、脱走した」
「・・・それでしたら、自分ではなく警務隊の管轄に思えますが――」
「施設には当時、1個小隊規模の護衛が配置されていたが、全滅が確認された。戦術的な意味ではない、文字通りの意味として、だ」

277とある学園の前日談録:2007/12/03(月) 18:07:58 ID:8bGRqqG.
「さらに施設の監視システムには、脱走を手引きしたと思われる一団が映されていた。人数は2個分隊規模。自動小銃と分隊支援火器で武装した、よく訓練された軍隊だ」
1個小隊といえば、人数にして40人ほど。対して分隊は一個で10人ほどだから、半分以下の人数に全滅させられたことになる。
「では――」
書かされた守秘義務の誓約書、ここにいる連隊長と師団長。妙な引っ掛かりが消え、彼の中で急速に意味を持った事象として再構成されていく。
「警務隊や、ましてや警察に委ねる訳には行かない。内々だけで処理せねばならない問題だ」
豪華なガラス製の灰皿で煙草を潰し消し、席上で姿勢を正して、陸将は令する。
「春日陽亮2等陸士曹。本日付で現任務を解き、特技研と合同で能力者の追跡、およびその身柄拘束の任を与える」
「本日付で現任務を解除。特技研と合同で能力者の追跡と身柄拘束の任に就きます」
「よろしい。現刻より任務開始とする。以後は、特技研のスタッフと合流し、別名あるまで即時待機とせよ」
「了解です――陸将殿、ひとつだけ質問してもよろしいでしょうか」

「どうして、自分なのでしょうか」
「――内々に処理せねばならない、という点がひとつ。もうひとつは貴様が有能だからだ」
「――ありがとうございます。では、自分は任務に就きますので、失礼します」
腑に落ちない表情を浮かべたまま、陽亮は敬礼。師団長がそれに答礼するが否や、さっさと回れ右して退出する。
「有能だから・・・よく言えたモノですな」
閉まる扉に視線をやりつつ、連隊長が口を開く。
「母子家庭に生まれ、中学卒業後、高校も行かずに警察沙汰を何度か起こす。その後広報官に誘われて入隊。命令不服従2回を始め、度重なる不祥事を起こす――」
誰に言うでもなく陽亮の経歴を暗唱し、そして師団長を見やる。
「だからだ。この追跡劇はなんとしても失敗させなくてはならない」
新たな煙草に火をつけつつ、師団長は答える。
「例の能力者が米国に渡れば、機密漏洩を口実にあの研究所を潰すことが出来るからな」
「そうなると、我々も矢面に立たされることになりませんか。あの施設は、一応は防衛省の管轄ですし」
「国家の機密保持と、小娘の人としての権利。マスコミと民衆が食いつくなら後者だろう」
閉ざされた扉に視線をやり、そして言い放つ。
「なに、奴には精々踊ってもらうさ」

278とある学園の前日談録:2007/12/03(月) 18:10:06 ID:8bGRqqG.
東京都港区、品川駅。
都内の主要駅のご多分に漏れず、駅前こそ都市整備が行われているモノの、100メートルも離れれば乱開発の名残である雑多な――不良のたまり場となる路地裏などが残る、典型的な駅前の街である。
そんな駅前の、大通りに面した駅舎の入り口に陽亮はいた。私物と着替え、そして制服をぶち込んだボストンバックを足下に置き、誰がどう見ても不機嫌そうな面を浮かべて。
(・・・)
憮然とした表情のまま、ポケットから携帯を取りだし、液晶画面に表示された時刻を確認する。20時16分。午後8時16分。自衛隊式に言うなら2016時。
反対の手で内ポケットを探り、折りたたまれた書類を開いて中を確認。記載された合流時刻は1700時。間違いない。既に3時間以上、実に216分も待ちぼうけを食らっている。仕事でなければさっさと帰っているところだ。
盛大にため息を吐き、携帯と書類をポケットに収め、せめてもの気晴らしにと、周囲を行く人間の観察を再開する。
摩耗したリーマン風のおっさん。誰も聞いていないのに演説する政治家に、もう10人ほど連続で無視されている政見ビラ配りの婆さん。対照的に大好評なティッシュ配りの小娘。お前ほんとに仕事してんのかと言いたくなる若造共。二人っきりのいい感じのムードに浸るカップル。それに影響を受けたのか、2人で連れ添って歩く中高生。自分と同じく待ち合わせなのか、洋服店の紙袋を両手でもった、カチューシャでセミロングの髪をオールバックにした10代半ばくらいの少女。
(・・・だめだ、余計腹立ってきた)
懐から煙草を取り出し、ライターを求めてポケットを探る。
品川区は全面禁煙を声高らかに唄っているが、そんな事にかまってられる状況ではない。任務遂行のために必要な事だ。理論武装よし、戦闘配置完了と心中で意気込んでタバコをくわえ、火を付ける。周囲の人間が露骨にいやな顔をするが、んなことにかまって言われるほど余裕はない。
煙を吐き、そのままぼーっと空を見上げる。
「――」
「――」
不意に、喧騒が耳についた。視線をその方向へと向けると、紙袋を両手にした少女を、5人ほどのいかにも知能指数の低そうな不良共が取り囲んで、なにやらよろしくないムードを演出している。
意訳すれば、不良共が暇なら遊んでいかないと誘い、少女がいや人を待っているからさーと断る。そこでプライドを傷つけられたのか不良達が少女の手を掴み、んだくらぁなぁめてんのかぁとごるぁと意味不明な呪文を唱え、なかば強引に――というか強引に少女を連れ去っていく。
「―――」
もたれ掛かっていた柱から引き離された瞬間、少女と目が合った。
しかし目が合ったことに驚いた様子はなく、まっすぐと此方を見据えてくる。
その一瞬後には、少女は目線をそらし、不良共に連れられ、人ごみへと消えていく。
(まぁ、気晴らしにはなるか)
かなり物騒な思考をしつつ、陽亮は煙草をつぶし消し、不良+少女の後を追う。

279とある学園の前日談録:2007/12/03(月) 18:10:52 ID:8bGRqqG.
大通りから一方通行の細い道、雑居ビルと雑居ビルの合間にある細い路地、そしてこの手のトラブルにお似合いな路地裏へと一団が消える。
ボストンバックを路面に置き、怒鳴ろうと小さく息を吸い込んだ瞬間、轟音を伴って不良の一人がたたき出される。
ばきゃがらぐっしゃっぐえ
ゴミ箱がひしゃげ、次いで周囲のゴミ箱が倒壊する音、更に残飯が雪崩のように崩れる音。あと不良の悲鳴。
周囲のゴミ箱を巻き込み、残飯に埋もれてはいるものの、気絶しているだけだ。
視線を問題の路地裏へと戻すと、先ほどの不良たちが折り重なり、思い思いの状況で伸びているのが確認できた。その向こうに、ただひとつだけ佇む人影ある。
冬物のプチコートに、細身のジーンズ。腰には服装とつりあっていないごついポーチ。
セミロングの黒髪はカチューシャでオールバックに纏められ、その為か強調された顔立ちは、10代半ばくらいの少女のもの。そして傍らには洋服の紙袋。
間違いなく、先ほど拉致られた少女であった。
「なんだ、やっと来たの」
少し遅れた待ち合わせの相手が来たような、そんな普通の口調で、少女は陽亮に話かけ、そして歩み寄ろうと不良を跨ぐ。その不良は、明らかに脚が間接の稼働限界を超えた角度で曲がっている。
よくよく見ると、他の不良共も腕や脚があり得ない角度に曲がっていたり、頭や口から血を吹いていたり。死人こそ居ないモノの、軽傷と呼べる者もまた居ない。
「おい・・・」
陽亮が現状を認識すると共に、パトカーのサイレン音にとブレーキ音、次いで微かながら聞こえるドアの開閉音。
「やばい・・・おい、とりあえず逃げろ!」
「んー・・・なんで?」
まじめな口調で陽亮が言い放ち、クエスチョンマークを浮かべんばかりの勢いで少女が返す。
「なんでって・・・お前、この状況で警察沙汰になったらやばいだろ!」
「この場合正当防衛じゃないの?」
「やりすぎだアホ」
そんなやり取りの間にも、足音は大きくなってゆく。
「だぁー・・・ほら、逃げるぞ!」
強引に少女の右手を掴み、左手でボストンバックと紙袋を持ち、狭い路地を先ほどとは反対側に駆け出す。
「これって、愛の逃避行ってやつー?」
「黙れ!」
状況に不似合いな暢気な少女の言を、陽亮が一刀両断する。
2人の足音が、夜の街に響き渡る。

280とある学園の前日談録:2007/12/03(月) 18:15:15 ID:8bGRqqG.
と言う訳で、第1話です。
タイトルの通り、学園都市の設立のきっかけとなった事件を描いていこうと思います。
では、失礼しますー

281Haeresis044:2007/12/03(月) 22:49:37 ID:2Dv7c8l2
>>268
続き期待してます。過疎化に歯止めをかけましょう。

>>272(緑炎)氏
今までにないタイプなので続きが楽しみです。頑張ってください。

どうも、とある忘却の再認識の作者です。
随分と間を空けてしましたが続きを投稿します。
〜の中の人といちいち打ち込むのが大変なので以後はHaeresis044でお願いします。

282Haeresis044:2007/12/03(月) 22:50:08 ID:2Dv7c8l2
 ――当然、姫神は一人しかいない。
 故に、これは幻なのだろう。
 走りながら上条は、そんな簡単なコトにも気づくことができなかった自分を叱咤する。もっと早く気づいておけばステイルと対策を練ることもできたというのに。
 今となっては全てが手遅れで、ただ生き残り、敵の数を少しでも減らすことしかできない。
 操られているとはいえこちらに干渉してきているのだから、こちらから攻撃することができないわけがない。そう思い、苦し紛れに拳をぶつけたのはつい先程のことだ。その推測は正しかったようで、姫神という外殻はいとも容易く剥がれ落ち、どこにでもいそうな学生が血塗れのまま崩れ落ちた。倒せないことも、ない。
 ――が、難しいのだ。
 壁や床、天井などは未だに『表』のままらしく、普段の十割増で上条の膝を軋ませる。
 加えて光球も危険極まりない。どういう理屈だろうか、床を溶かすようだ。『表』に属しているはずの、床を。
(管理者権限……ということか?)
 製作者のみが知っている抜け道、なんてモノはプログラムなんかでは珍しくもない。魔術においてそれが存在し得るのかは知らないが。

 ――凌ぎつづけるにしても限界はある。
 というより、状況としての限界はもうすぐそこだ。
 死にはしない。時折身体を掠める光球が明らかに健康によろしくない音を立てはするが、それも致命傷からは程遠い。
 だから、今すぐどうにかなる、ということはなかった。――上条だけは。
 背後からはぐちゃり、とかべちょり、とかそんな音が聞こえてくる。
 ――存外、精神的にきついものがあるのだ。人が壊れていく音を聞きつづけるのは。その辺りも計算に入れてアウレオルス某がこのトラップを作製したのだとすれば、彼とはとても友人になれそうにはない。
 加えて、ステイルのこともある。
 核を見つけさえすれば当然のように右手で全て解決できるものの、特化している事柄以外はまるで無能なのが一点強化型の常だ。
 ――有り体に言ってしまえば、上条には核を見つけるだけの能力がない、ということだ。
 ステイルならば可能であろう『探知』が、上条にはできない。
 だから当然、ステイルがやられていたら現状の打破は不可能だ。いくらグレゴリオ・レプリカ――詠唱の相乗効果による強化がされているからといって、素人――どころか適正値がマイナスといっていい学園都市の能力者たちと比べてステイルの力量が下回るとは思っていない。――ステイル・マグナスという魔術師の戦闘スタイルを考慮に入れさえしなければ、今こうして懸念を抱くこともしなかっただろう。
 様々な工夫によって欠点を補ってはいるものの、所詮ルーン魔術は対象に『刻む』という行為によって神秘をなす『設置型』の魔術だ。そもそも相手の『城』を墜とすようにはできていない。――寧ろ、今回の敵方がやっているように、自分の『陣地』で相手を迎撃することにこそ真価を発揮するタイプのはずだ。インデックスを護るために身に付けたのか、或いは他に守りたいものがあったのかは上条には分からないが、ステイルが今のような任務を受けているのは明らかに異常なのだ。
 加えてステイルは今回、さらにハンデを負っている。切り札とも言うべき『魔女狩りの王』は、既に上条の寮に設置されているのだ。大技を使って一掃、というわけにもいかないだろう。
 ステイルが生き残っているか。また、どうやって合流するか。全く方策が浮かばないまま、上条はまた、姫神の外殻を一つ剥がした。

283Haeresis044:2007/12/03(月) 22:50:35 ID:2Dv7c8l2
 ぐちゃ。べちょ。ぎちゅ。
 相当数の姫神・ダミーを墜としたはずなのだが、正直、上条には負担が軽くなっている気が全くしなかった。
 数の暴力には抗いようもなく、多数決による民主主義に政治体制が移行するのも仕方のないことだなと現実逃避。張り詰めた状態を継続できるのならばそれがベストではあるが生物・非生物に関わらずそんなコトをしていたらあっという間に限界を超えてしまう。現状、余力を残すことも考えたら発揮するスペックは七割程度までに抑える必要があるのではなかろうか。人質さえいなければ撤退して増援を待つということも可能だろうが、今回は不可能だ。作戦を実行する魔術師がステイル一人というふざけた現状が何よりもまずい。『必要悪の教会』とやらは何を考えているんだ。適性も考えず単独投入など、正気の沙汰とは思えない。実はステイル、捨て駒なのではなかろうか。
 思考がずぶずぶとネガティブに落ち込んでいく現状を問題だと思いつつ、なんで自分はこんなに冷静でいられるのか、と上条は自身に疑念を抱く。
 真っ当な精神の持ち主なら、とうに精神に異常をきたしていても不思議はないような惨状。だというのに、まるで感情が根こそぎ壊死してしまったかと誤認するほど、上条は機械的に『作業』――そう、『作業』をこなすことができている。
 元からそういう人間だったのか。
 あの日からそういう人間になったのか。
 考えても詮のないことながら、上条はその疑問を手放すことができなかった。
 ――だから。
 それだから、失敗してしまった。
 限界――瞬間的な出力の限界ではなく、持久力のそれに、上条は達してしまったのだ。
がくん、と冗談みたいに力が抜ける。まるで立ち上がるのに失敗したロボットのように呆気なく、転んだ。ブツブツ、と全身の機能がカットされていく。脳内で精製されるおクスリの効力も切れてしまったらしい。
 今まで、角を曲がるときくらいしか視界に納めなかった『彼女達』を、上条はぼんやりと見た。
 遠慮することもなく光球を放つための詠唱を続けている――たくさんのひめがみ。
 ――ああ、よくみたら。
「――ぜんぜん、にてないな」
 上条は意識を手放した。
 あの食い倒れ巫女は、もっと表情豊かだったな、などと思いながら。

284Haeresis044:2007/12/03(月) 22:51:20 ID:2Dv7c8l2
タイトルミス&ageすみません。
上二つは『とある忘却の再認識』です。

285■■■■:2007/12/06(木) 11:27:41 ID:P9scG9e2
巫女さんの海で・・溺れる?

286:2007/12/06(木) 23:06:53 ID:9S8KhoAA
光の・・いじめ撃退法

287■■■■:2007/12/10(月) 17:24:34 ID:mXzvB8Gw
過疎ってるなぁ…

288■■■■:2007/12/10(月) 19:18:09 ID:sF28WT8M
ですねー

289■■■■:2007/12/10(月) 20:40:11 ID:hwOgpvlM
誰か111スレが>>117をSSにしてくれないかなーとミサカは期待を込めた眼差しでこのスレの住人達を見つめます
117: 2007/11/15 12:54:09 /iaklcX9 [sage]
きっと風邪一つ、虫歯一本なかったんだろーなー、あの連中。
急に上条さんちに転がり込むねーちん、事情を聞いても涙目で首をフルフルするだけで何も言わない。
そしてそんなねーちんに追撃をかけるステイルとアニェーゼ部隊。
飛び交う魔術、解放される聖痕、ニタニタ笑う土御門。
追い詰められたねーちんに突き付けるステイルの叫び!
「インフルエンザの予防接種くらいうけろ、僕だって我慢したんだぞ!」
後日、虫歯を作って逃げて来たステイルを喜々として追い回すねーちんだった。

290056:2007/12/14(金) 23:10:43 ID:jOQ9W/Xg
久しぶり。相変わらず過疎ってるね
姫神の書き始めたんだけど、ちょっと自分を追い詰めるために
投下し始めようかと思う……

って誰かいるの?
いなかったらエロパロに改変して(ry

291■■■■:2007/12/15(土) 00:25:25 ID:IJyHeDbc
過疎っているんじゃない
ROMっているんだ……。

投下? どうぞどうぞというかお願いしますいや本当に

292056:2007/12/15(土) 00:47:44 ID:xJ/iDbsY
うぁ、ROM専かい?
ここらで書いてみるのもいいんじゃ(ry
まともなペースでSS書けてない俺が言うことじゃないか……

んじゃ、姫神&オリキャラSS投下するさー
がっかりしても知らないぜい?

293とある世界の三重記号:2007/12/15(土) 00:54:43 ID:xJ/iDbsY
1章 一〇月三日 Birthday_of_the_memory

「上条ちゃん? この追試を頑張らないとすけすけ見る見るだけじゃすまないのですよ?」
 静まり返った放課後の教室にいるのは二人の人物。
 教卓からちょこんと頭だけを出しているのは、この一年七組のクラス担任である月詠小萌。身長一三五センチ、見た目年齢一二歳で
発火能力者(パイロキネシス)を専攻しているこの女性は、どう見ても幼女なその体型から『月詠小萌は虚数学区で研究された不老不
死に関する貴重なサンプル』とまで言われるほどだ。
 一方、そんな机にへばりついている平々凡々な高校生――上条当麻は白紙のままの解答用紙を恨めしそうに眺めては担任に抗議の言
葉を送る。
「うだっー! 無理だって! 上条さんには粉末(エルプラーゼ)やら錠剤(メトセリン)やら、その他諸々の薬品の構造式なんて覚
えられません!!」
「なに言ってるのですか! 上条ちゃん以外はみんな完璧だったのです。やればできる子なのですから頑張るのですよ!」
 おぉーっ、と一人で勝手に盛り上がっている担任を横目に上条は溜め息をついた。
 本日の日付、一〇月三日。
 大覇星祭での疲れをイタリアで吹き飛ばす予定のはずが、結局いつもどおりに不幸な上条は向こうでも一暴れしてきたのだ。その結
果が学園都市への強制連行と強制入院である。そして今日にいたるわけだが――、
 ともに追試の常連である青髪ピアスの席を睨みつける。
(なにやってるかわかんねぇ土御門はともかく……アイツまでいないってのはどうゆうことだよ。あんまし考えなかったけど、俺って
魔術とのいざこざで入院ばっかしてろくに勉強してねぇよな? ……いや、普段からしてなかったんだが。もしかして……もしかした
らの話ですが、上条さんすっごいピンチ?)
 そんな上条の不安に気づいたかのように小萌先生が喋りだす。
「一人なのが気になるのですか? 上条ちゃんってば世話がかかるのです……えへ、進級とかテストのことなら心配ご無用なのですよ。
えへへ、上条ちゃんには私がじぃっくりと教えてあげるので、えへえへへへ、覚悟して欲しいのですよー」
 ニコニコニコニコと眩しいほどの笑みを浮かべる小萌先生を見て、今日は終バス乗れねぇな、とひときわ大きく溜め息がこぼれた。

* * *

 下駄箱に体を預けてうつらうつらと船を漕いでいる少女を見て、上条は小首をかしげた。
(完全下校時刻すぎてんのに、なにやってんだ?)
 小萌先生のつきっきり補修は結果的に三時間も行なわれた。もはや夕暮れ時を過ぎ、少しずつ夜へ近づいている。
 いつまでも眺めているわけにはいかないので上条は少女に近づく。
「起きろ、姫神。こんなとこで寝てると風邪ひくぞー」
 熟睡状態なのか姫神秋沙はいくら揺さぶっても起きる気配がなかった。
 仕方なく上条は制服の上着を姫神の脚にかけ、その隣に座る。
 部活動も終了して喧騒のすぎさった校舎で、姫神の穏やかな寝息だけがはっきりと聞こえてくる。すぅすぅと繰り返される単調なリ
ズムは、さながら電車の振動のように上条の意識まで奪っていこうとする。
「姫神ー、そろそろ起きねぇか? おーい、姫神さーん?」
 ふらふらと揺れる顔を覗き込む。
 大覇星祭は大変だったし……やっぱ疲れてんだろうな。
 九月十九日から一週間にわたって行われる大規模な体育祭――それが大覇星祭である。その初日、姫神秋沙は魔術師に襲われ重体に
陥った。ローマ正教の『使徒十字(クローチェディピエトロ)』による科学の駆逐。すべての人が成功を望んでいた大覇星祭を奪われ
ること。その恐るべき両事態は避けられたが、姫神はその争いに巻き込まれてしまった。
 カエル顔の医者のおかげで怪我のあともなく今は前と変わらず生活していたようなのだが――。
(どうせ歩いて帰るんだし、もう少し寝させてやるか)
 上条には心地よさそうに眠っている姫神の寝顔がとても神聖なものに感じられた。

294とある世界の三重記号:2007/12/15(土) 00:56:08 ID:xJ/iDbsY
 姫神が目を覚ましたのはそれから十分ほど後のことだった。
「お、やっとお目覚めか」
「……」
 寝起きでなかなか焦点が定まらないのか、まだ意識は夢の中なのか、姫神は上条の投げかけに無言で応じた。
「ったく、こんなところで寝るなって――ぐぼぁっ!?」
 上条の言葉を無視してくりだされる手加減無視の右ストレート。吸い込まれるように顔面直撃コースに乗った拳は上条を思いっきり
吹っ飛ばした。姫神の体は震えていて、その視線もいっこうに険しいままである。
 さっきの神聖さはどこへやら、鬼のような気配をまとって立ちつくす姫神だった。

 そんなこんなで上条たちは一緒に放課後の第七学区を歩いていた。
 姫神はというと、さっきの先制攻撃以来ぶすっとしていて取りつく島もなかった。
 そうして何度目かになる押し問答を繰り返していた。
「姫神、なんであんなところで寝てたんだ?」
「君こそ。どうして私の隣にいたの?」
 それに対する弁解も同じものだ。
「いや、さっきのは悪かったって。驚かそうとしてたわけじゃなくて――」
「わかってる。……そんなの。わかってる」
 不意の切返しが今までとは違ったものだったので上条は言葉に困ってしまった。
(んーっ、機嫌は戻ったのか? いや、でも、さっきの一撃は熊でも殺せそうな威力だったしなぁ)
 唸る上条を横目で睨むと少しだけ語気が強くなった。
「なんだかとても失礼なことを考えている気がするんだけど」
「い、いえ! そんな滅相もございません! ワタクシはいつでも世界の平和と愛について真剣に考えています!」
 無言のまま姫神はスタスタと早足で歩いていってしまう。
「……上条君」
 駆け足で追いかけようとした矢先、姫神の声で上条の動きが止まる。
 姫神は振り返らずに前を向いたままだったが、気持ちだけは真っ直ぐに上条に向かっている気がした。
 どんな話をされても驚かずに聞いてやろうじゃねぇか! と気合を入れていた上条だったが、
「君は。七日の予定ある?」
「はい?」
 あっさりと出鼻をくじかれた。
「だから。……秋祭りの日。もう予定は決まっているの?」
 七日。秋祭り。予定。
(なに一つ身に覚えが――じゃなくて、記憶がないから俺にはなんのことだかさっぱり。……ってか、あれ? 駄フラグばっかの上条
さんになにが起きているのですか? この展開って……あれれ? まさか……いや、落ち着け! 相手は姫神だぞ? いや、でも姫神
だって実は結構……じゃなくて! 姫神がこんな大胆な――)
「――君? 上条君?」
「はいっ! で、でもでも上条さんにだって心の準備が――って、姫神ぃっ!?」
 思考の渦に完璧に飲み込まれていた上条は近づいていた姫神にまったく気づいていなかった。

295とある世界の三重記号:2007/12/15(土) 00:57:00 ID:xJ/iDbsY
 おかげで裏返った返事をし、挙句の果てには目の前にいた姫神を再びビクつかせ――、

「どうしたの?」

 両手を胸の前で握りしめ、不思議そうな視線を向けてくる姫神がいた。
「あ……いや、そうだよな! さっきと同じノリでもう一回殴るなんて姫神はしないよな!」
「……私のことを。どうゆうキャラだと思っているの?」
 呆れた声で姫神は呟いた。
(あ、でもさっきあんな殺人パンチくらった後だし、それくらいは誰だって警戒するって……いや、姫神さん? あぁ、そんな目で見
ないで! ワタクシ上条当麻にそちらの趣味は……って、青髪ピアスと同じ視線を向けないでぇっ!!)
 うろたえる上条の反応などもとから気にしてないかのように姫神は淡々と話を進める。
「それで。予定はある?」
 そんな姫神のようすに上条も自然と落ち着きを取り戻し、
「ん? いや、予定とかそんなもんねぇけど。っつーか秋祭りだったか? そんなんあるの今知ったしな!」
 上条当麻は夏休みの初め頃から『エピソード記憶』、つまり『思い出』に関する記憶を失っていた。
 その原因はわからないが、上条は自分が記憶喪失だということを隠して生活している。
 全ては一人の少女のため。『記憶を失う以前の』上条当麻を演じ続け、その少女の笑顔を守り通すため。
 禁書目録(インデックス)。
 それが少女の名前だった。完全記憶能力を持った必要悪の教会(ネセサリウス)に所属する魔術師。一〇万三〇〇〇冊の魔道書を記
憶している魔道書図書館。
 インデックスは上条の学生寮でともに生活している。同棲だからといって絵に描いたような素敵イベントがあるわけでもなく、日夜
財布の中身と献立に頭を悩ませるばかりだ。
 そのためこの時期に秋祭りがあることなどまったく知らなかった。
「で……誘うのが俺なんかでいいのか?」
 魔術師やら『非日常(オカルト)』な世界に足を踏み入れて経験豊富な上条だったが、こうゆうことにはめっきりだった。
 上条の発言に一瞬だけきょとんとする姫神。
 それでもすぐに上条の発言を理解したようで、穏やかな笑顔を浮かべて、
「期待させたみたいだけど。それに応えることはできない。みんなで行くつもり」
 その言葉で一気に自分の勘違いを知った上条は、
「そ、そうだよな! みんな! みんなでだよな! HAHAHAッ!! 姫神、言っとくけど、わかってたからな? フラグまみれ
の上条さんにとってこんなの日常茶飯事ですのことよ?」
「ぐだぐだ」
 一言で上条のプライドはぶった切られた。
「はぁ……で、みんなってクラス全員か? だとしたら多すぎじゃね?」
「さすがに全員は無理。残念だけど。私は吹寄とインデックスを誘うから」
 吹寄とインデックスか。
 インデックスは大覇星祭のときにクラスのみんなに溶けこんでしまったので吹寄とも問題はないだろう。
「じゃ、俺は土御門と青髪ピアスとかでいいか?」
「それでかまわない。もう遅いから詳しいことは明日にでも学校で。こんなに遅くまで迷惑かけたよね」
「……じゃあ姫神が残ってたのってこれを俺に言うためだったのか?」
 思えば放課後に姫神と会ってからまともな内容を話したのは今が最初だった。
 ということはその可能性が一番高かったのだが――、
「それが正しいかったとしても。そうゆうことを聞くのは配慮にかけると思う」
「うっ! ……ごもっともで」
 今日だけでかなりの失態を姫神にさらしてしまい、しゅんとなる上条だった。それでも姫神の顔を見ると、まぁいいか、という気に
なってくる。
(あんなことがあったってのに笑っていられるんだから、喜んでいいんだよな?)
 薄っすらと微笑んでいるように見える姫神と別れ、上条は家路を急いだ。

296056:2007/12/15(土) 01:00:32 ID:xJ/iDbsY
今回はこれで終わり
推敲が足りなくて誤字とかあるかも
とりあえず年内には書き上げたいと思ってる
……頑張らねば

297■■■■:2007/12/18(火) 23:50:48 ID:nzDLJqnw
まだ書いてる途中何で消えてもらっては困る

298056:2007/12/19(水) 02:57:27 ID:1/2oVRNg
>>297
ん?俺のことか?

299■■■■:2007/12/19(水) 23:04:02 ID:K2VyE/9g
貴方以外おられるのかな。

300056:2007/12/20(木) 09:23:03 ID:HyioKrzY
むっ……少し間を空けすぎたのか?
まぁ、今のところ途中で消える予定はないです
んじゃ、このまま続きでも……

301とある世界の三重記号:2007/12/20(木) 09:23:28 ID:HyioKrzY
 上条は自分の感性をそれなりに信じていた。
 だから姫神と別れて学生寮に向かう途中の公園で、一人の少女を見たとき思わず立ち止まってしまった。
 時刻は七時半。街灯なしでは道路を歩くのさえ危険なほど夜は深まっている。そんな中で少女は制服姿のまま、ずぶ濡れでベンチに
座っていた。こんな季節に水浴びはありえないだろうし、雨にうたれたなんて論外。となると――、
(強度(レベル)による迫害(いじめ)か……)
 目の前の少女も学園都市において学生として生活しているからには能力を開発したのだろう。ここは時間割り(カリキュラム)で薬
を飲んだり、頭に電極をぶっ刺したりと外から見れば異様なことを平然と行っている。そのため全ての学生がなにかしら開発を施され
、その結果を背負って過ごしている。
 しかし、それは能力の強度(レベル)に大きく依存する。
 学園都市では暴力や学力ではなく能力の強度(レベル)が基本である。結局のところそういった個人の権力を示すものは、必然的に
上下関係を生み出してゆく。原因の全てが環境に依存しているとは思っていないが、当然のように自己の価値を否定されるのだ。周囲
からの反応は大きな一因となるだろう。
(くそっ、あれじゃ本当に風邪ひいちまうじゃねぇか!)
 近くの自動販売機から暖かくて比較的飲みやすそうな『撫子ミルクティー』を買って少女に歩み寄る。少女は上条の気配に気づいて
顔をあげたので、持っていた缶を見せる。
「そんな格好じゃ風邪ひくだろ。これ、おごってやるから」
 少女は手に持っている缶をじぃーっと睨みつけると、
「――ゴメン」
 高めの透き通った声だ。
「ん?」
「おごってくれるんなら、アタシ冷たいのがいいかな。熱いの飲めないんだ」
 少女の体は濡れて冷えていると思ったのだがどうやら取越し苦労だったようだ。しかし、飲めないとはどうゆうことだろう? 猫舌
なら冷めてから飲めばいいだけ。苦手とでも言えばいいはずだ。
(まぁ、言い間違いみたいなもんだろ。気にしても無駄かな)
 缶を少女の隣、ベンチの上に置く。
「ったく、しかたねーな。ちょっと待っててくれよ?」
 「うん」と頷いた少女を背にし、今度は『ヤシの実サイダー』を買ってベンチの隣に座る。
「ほら。これでいいか?」
「ありがと」
 喜んで缶ジュースを受け取る少女を眺める。
 遠くからではっきりと見えなかったのか、少女の制服はそこまで濡れているわけではなかった。少し湿っている程度と言えるかもし
れない。短めに整えられた黒髪はしっとりとして街灯に鈍く輝き、風呂上りのような印象を受ける。しかし、少女の足元にはくっきり
と大きな水溜りの跡が見受けられた。
(事情を聞くのは……やりすぎか? でもとりあえず家出かどうかは確認すっか。そうだったら、申し訳ないけど小萌先生にでも)
 小萌先生はかなりの世話好きで、心理学を応用してまで家出少女を保護する人物。ぶつくさ言われそうだが信頼はできる。
「ね、アタシの顔なんかついてる?」

302とある世界の三重記号:2007/12/20(木) 09:24:04 ID:HyioKrzY
「うわぁあああっ!?」
 無遠慮に見すぎたのか、少女が上条の顔を覗き込んできた。
「え? やっぱなんかついてるの? たはぁー……恥ずかしぃー」
「いや、そうゆうわけじゃ――」
 そう言うと、お返しとばかりに立ち上がって上条を観察してくる。
「ふーん。……ほぇーっ……ん、……ふむふむ……」
(な、なんだよ。俺が見てたのそんなに嫌だったのか? そうなのか、そうなんだなそうなんですね!?)
 上条は、今にもベンチの上で「ごめんなさい! でもワタクシ上条当麻に不謹慎な気持ちはありませんよ?」と土下座までして謝ろ
うとしていた。潔い言えば聞こえはいいが、もはや情けない条件反射とも言える。
 それを遮るように少女の顔がさらに近づいて、
「アタシ、因幡里数葉(いなばりかずは)ていうの」
「へ?」
 いきなりの自己紹介だった。しかし上条を驚かせるのはこれだけではなかった。

「たはは、いきなりだったか……。んとね、キミが噂の上条当麻クンだね?」

 このずぶ濡れ少女こと、因幡里数葉が言うには、一部で上条は有名らしい。
 曰く、
「だってさぁ、夜にスキルアウトと追いかけっこしたり、街中で意味わかんない能力者と喧嘩してたり……果ては常盤台中学の超能力
者(レベル5)ともバチバチやってるじゃん? しかもかなりの入院経験者でお見舞いにはお菓子とおもちゃが大好きなシスターさん
までやってくるらしいじゃない! こりゃ気になるってものよ。そう思わない?」
 加えて、
「それに同じ学校の子は『ストライクゾーンは幼女から教師まで』とか『角を曲がれば女の子にぶつかってる』とか『立てたフラグは
三桁を超えた』とか言われてるみたいだし。あぁ……なんか『カミやん病は空気感染するんだにゃー』とか『カミジョー属性は鉄壁の
女すら攻略するんや』とか意味わかんないことも言われてるよね」
 と言うことらしい。
(あの野郎ども俺がいないところでそんな評価を……。この憎しみどうしてやろうか? ここは思い切って、階段の踊り場にある窓か
ら二人を投げっぱなしジャーマンスープレックスで池にぶち込んでやるってのがいいか)
 と上条がクラスにいる二人の馬鹿への報復を考えていると、
「それなのに……無能力者(レベル0)、だもんね。そりゃ有名になるでしょ」
 上条は今の因幡里の言葉に少しだけ影を感じた。
 自分自身が無能力者(レベル0)だからこそ感じるものなのか、それとも因幡里自身が与えるものか。どちらにせよいい気分になる
ような気配ではない。
 とりあえず当初の予定どおり家出かどうか聞こうとした上条だったが、
「んじゃ、アタシそろそろ行くよ! これでアタシにもフラグが立ったみたいだし、また会えるかもね?」
「なっ、おい! ちょっと待てって!」
 たははっ、と――少し変な笑い方だが――笑いながら因幡里は駆け出していってしまった。
 一人残された上条はぼんやりと照らされた公園の時計に目をやって不意に思った。
 インデックスを忘れていた。
 ただ今の時刻は午後八時すぎ。寮に着くにはもう三〇分ほどかかるだろう。
 帰宅すればあの欲望丸出し腹ペコシスターがいることを考えると、今から頭がズキズキと痛む上条だった。

303056:2007/12/20(木) 09:28:48 ID:HyioKrzY
今回は短いけどここまで
さてと、続きを書かなきゃ……
んじゃね

304■■■■:2007/12/21(金) 09:37:12 ID:gGxN.4mo
 ども。 ROMすらしないで保存専門っす。

 とある異界の偽書目録 とか涌いてきたのでキャラを作っているものの
米国『不要者の教会』所属の偽書造りor写本使い
鈴科妹(異界なので3文字) 原価13万
「乱反射」(ランダムアクセス)
非フルカバーかつ制御甘い 姉妹レズ 性格多少甘め 姉妹以外触れることが出来ない
「袋小路」(デッドエンド)
停止/減速使い 近距離遠隔/全周囲可 他者思考停止/減速 空間冷凍
 ・・・で止まって何もでない。



「ケーキが無ければパンを食べればいいじゃない。」・・・てクリスマスどころか正月過ぎても掛けそうに無い・・・

305056:2007/12/21(金) 12:15:39 ID:eeVGmG02
>>304
保存専門!? 初めての部類だ……

偽禁書的なものはいいかも、だけど、能力として百合子ちゃん系は使いにくいと思うかも
共闘とかさせるなら、まったく違う能力の方が書きやすいかと
『袋小路』強すぐる……ハンデがないと破綻しそう

色々と呟いてみたけどキニシナイ!!!
自分が書いた文を何度も読み返すとかして、糸口をつかむです
冬休みはこれからなんだぜ!
姫神SS終わらなーい(´・ω・`)

306とある師走の学生事情:2007/12/24(月) 19:27:35 ID:GCj8TNIY
 ――十二月。
 世間一般では年末に向けて何かと忙しくなり、かつ、20日を過ぎればあるイベントに向けて大いに盛り上がる次期である。
 超能力開発を目的として作られた学園都市においてもそれは同様である。
 色とりどりのイルミネーションが煌びやかに町並みを飾って浮かれた雰囲気になり、道を行きかうのもその多くがカップルで
連れ立っている姿が多い。
 そんな賑やかな喧騒の中で、不機嫌な様子で歩く学生の姿があった。
「まったく、クリスマスだのイブだのと浮かれまくって。私たち学生の本分はこんな浮かれているべきものでは無いでしょうがっ!
どいつもこいつも色恋に走りまくりやがってっ!!」
 ぶつぶつと呟きながら苛立ちもあらわに大股でずんずんと進んでいくのは吹寄制理。
 面倒見がよく、その委員長気質なところや、ある男子生徒に対する行動からも「頼れる姉御」「吹寄姐さん」「対上条最終兵器」
などと呼ばれている。
 彼女がいきり立っているのには訳がある。
 冬休みに入り、常日頃から頭を痛ませる原因となっている男子生徒とも顔を合わせる機会が減り、少しのんびりできると思って
いたのにばったり会ったのだ。
 しかも、会うなりいきなりそいつは「こんな時期なのに何の出会いも無い上条さんに優しい手を差し伸べてください!」などと抜
かして迫ってきたのだ。
 当然、そんなあほなことをいう頭に教育的指導(なんだか周りを見ていて感じていた自分のいらいら含む)の渾身のヘッドバット
を喰らわせたやったわけだが。
 というか、自分だってそんな出会いなんかあるわけないのだ。
 なまじ相手が普段の言動に自覚の無い男だったので余計に腹が立ったのだ。
 そんなことがあったので街の様子が一層気に障ってくる。
 はぁ、と溜息をついて上を見上げる。
 耳から入ってくる音楽は無理だが、こうしていればとりあえずカップル連れの姿を見ないですむ。
 すると、吹寄はあることに気がついた。
「あ、月が大きい……」
 見れば、どうやらもうすぐ満月になりそうな様子である。
 後ろを通り過ぎるカップルの会話を漏れ聞くところによると、どうやら24日に満月を迎えるらしい。
 よく言われるホワイトなんとやらにならなくても、月を眺めてロマンチックに〜などという言葉は右から左へ聞き流すが、月を眺め
るのも悪くは無いかも、などと思った。
 ちょうど、寮の部屋にはこの間通販で買ったある品物がその他大勢と一緒に置いてある。
 先だっての流星群が観測されると話題になったころ、夜星空をずっと見上げていても首が疲れず肩がこらないとの広告に惹かれ
て買ってしまったその名も『見上げるクン』、首に巻く保温性の覆いと頭を支える補助棒がついているものである。
 肩が疲れずしかもアルファ波が出るとのことで勢いで勝ったはいいが、あいにくと予定の日は雨で使う機会が無かったのである。
「ま、使わずに置いとくのもなんだしね……」
 そうと決まれば話は早い。早速寮に帰って準備をしようとさらに足を速める吹寄だが、さらにあることに気が付いた。
 実はその商品、二個セットで買うとさらにお買い得ということで二個注文してしまったのだ。
 届いた商品を見て自分のポカミスに恥ずかしくなったものだが、さて、どうするか。
 実を言えば周りが浮かれている最中に一人寂しく月を見るというのもなんだかなぁ、というものだ。
 いやいや、別に浮かれようなど気にするわけではないのだが、何となく『独り』じゃない『一人』でいるのもしゃくに障る。
 となれば誰かを誘ってみるのもいいかもしれない。
「うーん……」
 だが、生憎とクラスメイトの女生徒たちはそれぞれ予定があるらしいので、今から自分の思いつきに誘うのも気が引ける。しかし
このまま一人で見る訳にもいかない。どうするか。

307とある師走の学生事情:2007/12/24(月) 19:28:42 ID:GCj8TNIY
 などと頭を悩ませていた時、ふとある男子生徒の姿が浮かんだ。
「なっ、何でこんなときにあいつのことを思い出さないといけないのよ!」
 とひとしきり呟いていたが、他にいい案も思い浮かばず、さりとて、このままあの男を誘うというのも何だか気分が良くない。
「まぁ、あいつも出会いが無いとか騒いでいたし。ふむ、どうしようかしらね……」
 すると、ちょうどそこに別のカップルの声が聞こえてきた。
『せっかくの満月が曇りだったらどうする〜』
 甘々な会話はこの際置いておいて、その内容からヒントをもらうことにする。
「そうね、賭けてみることにしますか。その日がちょうど晴れてたら、あいつを誘ってみようかしらね。それなら面白そうだし」
 こうして、吹寄の予定が一つ増えた。
 現金なもので、そうなると今までつまらなかった周りの景色も別に気に障らなくなった。
 それどころか、その日が早く来ないかと思うほどである。
 一つの懸案事項が解決されて、すっかり気を良くした吹寄は足取りも軽く帰宅していった。



 さてさて、彼女の賭けがどうなったのかは、一人の乙女の秘密である。

308桃色郷:2007/12/24(月) 19:33:19 ID:GCj8TNIY
お久しぶりです今晩は。
>>056氏、お疲れ様です。
>>268氏、>>272氏、『忘却』氏、続き期待して待っててもいいですか?

相変わらず上達しないSSですが、過疎り気味のスレに起爆剤にでもなればいいなぁ、と思います。
またぼちぼち書けたら来ます。
ではでは。

309056:2007/12/24(月) 22:57:53 ID:mcCJoMCs
>>306-308
こんばんは
無自覚吹寄GJです!!
先が気になるところだけど、こういう終わり方もありですね
こっちも姫神頑張らねば!

310056:2007/12/25(火) 18:15:41 ID:EN0xjjS6
連レスです。寂しいです

えっ、クリスマスSS?
そんなの書き終わらなかったに決まってるじゃないですか
そんなわけで姫神です。

311とある世界の三重記号:2007/12/25(火) 18:16:16 ID:EN0xjjS6
2章 一〇月四日 Float_one's_feeling

 姫神秋沙は朝早くから顔の火照りを抑えきれずにいた。
「私の頬。リンゴみたい」
 自分の部屋に備え付けてある鏡には面白いほど真っ赤に染まった自分の顔が写っていた。
 姫神は『三沢塾』の事件から月詠小萌のアパートで居候の身だったのだが、転校を機に学校の寮へ移動していた。もともと家事は苦
手ではなかったので、ここでの生活にも特に不自由はない。
「秋祭り。……とうとう誘っちゃった」
 昨日のことを思い出しただけでも嘘のように体中が熱をもっていくのがわかる。
 当初、姫神は上条を誘うつもりはなかった。これは二・三日前に決めたことではなく、秋祭りの日程が決定した九月上旬から考えて
いたことだ。
(私なんかが誘ったって迷惑なだけだと思ってたけど――)
「喜んでくれてた……。と思う」
 自分の口からでた言葉に一層恥ずかしさがこみ上げてくる。
「――こんな顔じゃ学校行けない」
 洗面台に汲んでおいた水でめいっぱい顔を洗う。首筋を流れる水滴もその少し冷たすぎる温度が今は心地よかった。

* * *

「なるほどね。私は貴様ら三バカの手綱(たづな)を握ってればいいわけね?」
 上条がクラスのおでこ委員長である吹寄制理に秋祭りのことを提案したときの反応である。
 前髪の片方をヘアピンでとめ、なかなかに豊かな体つき、通販の健康グッズにどっぷりはまっている吹寄は秋祭りのお誘いに快く了
承した。そのため今は休み時間を利用して教室前の廊下で詳細を話し合っている最中だった。
「カミやん? それにしても秋祭りだなんて、いったいどうゆう気違いなん?」
「そうなんだにゃー。俺だってカミやんのことだから、どうせ家でゴロゴロしてると思ってたんだぜい?」
 上条以外の三バカと名づけられた人物、青髪ピアスと土御門元春が二人ともニヤニヤしながら口を開いた。その顔から本気で理由を
気にしていないことが経験則として理解でる。
「そう言えばそうね。上条当麻、そこの所、私にも納得できるように説明してくれる?」
 吹寄の発言に上条は首をひねった。
 どうやら姫神は吹寄にも自分から誘ってはいないようだ。この話し合いだって姫神が「秋祭りの話し合い。君はみんなを呼んできて
ほしい」と言うので、上条が吹寄たちに声をかけていた。
(吹寄なんか、俺が声かけたら「私は貴様になんかなびかないわよ!」とか意味わかんねぇこと言ってたし。姫神、まだクラスのみん
なに馴染めてないのか? やっぱ少し内気なとこがあるし、まだ恥ずかしいのか? そうならこれは姫神を吹寄に慣れさせる大チャン
ス! 名付けてっ、『吹寄制理ろめろめ大作戦』!! ……いや、大作戦はいいけど、ここで俺がばらしていいものか?)
 どう答えようかと思って横目で姫神を見ると、普段はあまり起伏の少ない表情だがその質問が予想外だったのか、ほんのり頬を赤く
しながら上条の方をじぃっと見つめていた。
(くそぅ! 俺任せってやつですか? これは――)
「いやいや、俺がそんなこと考えちゃいけないと言いますか! この上条当麻さんは変わりゆく季節感を大切にする趣きある詩人です
よ? こういった行事はふるって参加するに決まってるじゃないですか。さらに友達思いの上条当麻ですから親友たちを誘って祭りに
くりだすのですよ!」
 上条が選んだのは、姫神が誘ってきたことを隠すという選択肢だった。

312とある世界の三重記号:2007/12/25(火) 18:17:26 ID:EN0xjjS6
「上条当麻……今日こそその腐った性根を――」
「はーい! みんなさん、授業を始めるので教室に戻ってほしいのですよ。チャイムが鳴るまでに戻らないとビシッと授業で指名しち
ゃいますからねー。今日は小萌先生も開発に関わった変換器(トランジスタ)の試験品(テストモデル)を使って擬似的ではあります
けど、発火能力者(パイロキネシス)を再現してみようかと思うのです。だから、指名されちゃうと被験者(モニター)になっちゃう
かもしれないですよー?」
 大きく声を張り上げながらバスケットボールほどの大きさの試験品(テストモデル)を抱えた小萌先生が登場した。
「と言っても、どうせ誰かにやってもらうんですけどねー。……って、なんでみんなさん一斉に教室に戻っちゃったんですか? そり
ゃぁ、小萌先生が戻ってって言いましたけど……そんなにやりたくないのですか? 小萌先生たちの力作なのですよ!?」
 学園都市で開発された能力者用の多種多様な試験品(テストモデル)。開発で得られたデータを基に設計され、能力者の性能を高め
たり、警備員(アンチスキル)や風紀委員(ジャッジメント)の武装などに活用される。学園都市の治安維持や低レベルの能力者にと
ってはこういった開発品も重要なことだ。しかし、そこはやはり試験品(テストモデル)。失敗する確立の方が高い現状では誰も被験
者(モニター)などやりたがるはずもなかった。
 涙目になりながら訴える小萌先生に同情はするが、ここは背に腹はかえられないので上条も一歩遅れたが教室に戻ろうとした。
 その眼前で教室のドアがぴしゃりと閉まる。
「なっ!?」
 ドアの小窓からニヤニヤした土御門の顔が覗いている。声は聞こえないが、その口がこう語っていた。
『カミやん、尊い犠牲は必要だにゃー』
「てめぇ、なに人を生贄に捧げてんだ! 上条さん一人じゃ人柱にもならないし、真っ赤な石だって練成できないですよ? ってか、
俺が無能力者(レベル0)だって知ってんだろ!? 土御門、このっ――開けろってんだ!」
 硬く閉じられたドアと格闘し始めた上条の背後から、素晴らしく眩しいのに背筋が凍るほどの気配がする。
 振り返ると――、
「上条ちゃーん? まったくしょうがない子なのですよー、えへへ、そんなに被験者(モニター)がやりたかったのですか? えへ、
上条ちゃんが開発熱心な生徒に育ってくれて、えへへ、小萌先生はすっごく嬉しいのですよ、えへへへへ、そうです! 放課後の警備
員(アンチスキル)用の武装開発にも参加してくれますか? なんか忍耐強い能力者の被験者(モニター)が必要らしいんですよねー
、えへえへへ」
 小萌先生は感動の臨界点を突破してしまったのか、先ほどの吹寄よろしく、小萌先生もその小さな体ながらかなりの威圧感で迫って
くる。小さな笑顔に収まっている細められた瞳に上条は恐怖を覚えた。
「小萌先生、なんか様子がおかしいですよ? いつものかわいい顔が台無しになってますし、落ち着いた方が……って、ちょっと! 
そんなギラギラと目を光らせないでください!」
「えへへ、『かわいい』だなんて……担任に言う台詞じゃないのですよ。それとも……えへ、上条ちゃんは小萌先生を女性として見て
くれるのですか? とっても嬉しいですけど、えへえへへ、それなら『きれい』の方がよかったのです、えへへへへ、でも、教師と生
徒なんで諦めてほしいのですよー」
 一歩間違えれば小萌先生のフラグを立てていたようだが、今はそんなこと考えている暇はなかった。

313とある世界の三重記号:2007/12/25(火) 18:20:06 ID:EN0xjjS6
 すぐ近くまで、世話焼きの鬼がやってきていた。
「小萌先生、上条さんは実験体(モルモット)にはなりたくありません! ここはなんとか見逃して――って、あれ? ちょっ――ぐ
げっ!!」
 上条は背中がドアにぶつかって退路を絶たれたと諦めた……のだが、そこにドアはなく寄りかかろうとした上条は背中から教室に倒
れてしまった。受身をとる余裕もなく、後頭部をしたたかに打ちつける。
「上条君。大丈夫?」
「ひ、姫神……」
 見上げた先には、心配してくれているのか、少し眉根を寄せている姫神の顔があった。遠くで小萌先生が「あわわっ! 上条ちゃん
が倒れちゃったのです! 平気ですか、上条ちゃーん?」と騒いでいるが、ここは被験者(モニター)を避けるため無視しておく。
 倒れたまま、姫神に声をかける。
「あぁ、俺は大丈夫だけど……ドア開けたのって、もしかして姫神?」
「そう」
「結果として、とりあえず助かった。ありが――っとぉおおお!?」
 お礼を言うために姫神を見ようとした瞬間に上条は自分の首を思いっきり横に曲げて視線を逸らした。
(今気づいたんですが、姫神さん立ってましたよね? そんでもってこの学校の制服は一般的なセーラー服。この位置から見上げると
必然的に例の光景が視界に入ってしまうはず。上条さんは健全な学生ですが、それ以前に誠実な男の子なので、ここで姫神を見てはい
けないと思うのです。というか、それは御坂妹のポジションなのでは――とトウマは自分の心中を包み隠さず吐露してみます)
 不自然な行動がバレたのではと、ダラダラと嫌な汗をかく上条を一瞥した姫神は、
「見えてるんじゃない。見せてるの」
「なにぶっちゃけてるんですか、姫神さん! ――って今度は吹寄ぇ!?」
 思わずノリで声のした方に向いてしまったが、そこにあるはずのものはなく……あるのは吹寄の光り輝くおでこ。
 よく見ると吹寄の肩越しに姫神がいた。
 どうやら上条が首を変な方向に曲げている間に姫神は移動していたようで、
「上条当麻、貴様はやっぱり一回ぐらいは死んだ方がいいと思わない? それがいいわよねそうよねそうしましょう!」
「自己完結ネタ!? 吹寄さん、それは上条さんの専売特許で――いぎゃぁあああ!!」
 悲鳴とともに額に大きなタンコブをもらって床をのたうつ上条。
「えーっと……それじゃ、昨日の続きからなのです。みんなさん、テキストの準備はおーけーですか?」
 ちょっと前から成り行きを眺めていた――慌てすぎて事態を治められなかった――小萌先生はひきつりながらも笑顔をたやさなかっ
た。慣れとは怖いものである。

* * *

「――上条ちゃん、ちょっといいですか?」
 悲惨だった授業が終わった直後、上条は小萌先生に呼ばれて廊下に連れ出された。
(なんの用だ? まさか……昨日の追試、そうとうやばかったのか? もしかして追追試? うだー……上条さんに開発の試験はきつ
すぎなんですよ。勉強したってなんの成果もないってのに、集中なんてできませんのことよ?)
 廊下の端、あまり人の気配がしないところまできて、やっと小萌先生は口を開いた。

「上条ちゃんは……因幡里ちゃんとお知り合いなのですか?」

 一瞬、聞き違いかもしれないと思ったので、声が裏返らないようにして小萌先生に聞き返す。
「因幡里って……因幡里数葉、ですか?」
「そうなのです。やっぱり上条ちゃんのお知り合いだったのですね。一応ですが、どうやって会ったのか説明してほしいのです」

314とある世界の三重記号:2007/12/25(火) 18:22:29 ID:EN0xjjS6
 つい昨日聞いたばかりの名前が小萌先生から聞こえて上条は驚きを隠せなかった。しかし、ここで慌てるのもおかしいので声を落ち
着けながら上条は話し始めた。
 昨日の追試のあと、帰るのが遅くなったこと――姫神のことは除く。
 帰り道にある公園で見知らぬ少女がびしょ濡れになっていたので、思わずいじめにあっていると思ったこと。
 話しかけるとその子が因幡里数葉と名乗り、一〇分ほど話して因幡里は帰っていったこと。
 上条の話を聞き終えると小萌先生は妙に納得したかのように、うんうんと一人で頷いている。そして、すっと人差し指を立てて、
「因幡里ちゃんは一週間くらい前からウチに居候しているのです。自分のこともたくさん話してくれるとてもいい子なのですよ。小萌
先生が話を聞いた限り強度(レベル)によるいじめとかは受けてないと思うのです。びしょびしょだったのは……たぶん、因幡里ちゃ
んの能力のためですね。だから上条ちゃんは心配しなくてもいいのですよー」
(能力? 水力使い(ハイドロハンド)なのだろうか? 自分自身が濡れていたということは能力の制御ができていない?)
 上条の疑問などお見通しというかのように小萌先生は続けた。
「ところで……ですけど、上条ちゃんは自分の能力が影で話されるのは嬉しいですか? ふふっ。因幡里ちゃんも同じなのです。小萌
先生も上条ちゃんの性格は知ってますからね、ちょっとのことでも気になるのも納得なのです。でも、気になったのなら本人から聞く
べきなのですよー。因幡里ちゃんなら放課後にはもう小萌先生のアパートにいるはずなので、帰りにでも顔を出してほしいのです。上
条ちゃんが来たら、因幡里ちゃんもきっと喜ぶのですよ」
 「それでは、お願いしますねー」と言って小萌先生は次の授業へ向かっていった。
 小萌先生の言ったとおりだと思った。俺が勝手に考えたって、それじゃ相手を値踏みするようなことだし……放課後、空いた時間で
会いに行くか。そう決心して、なんだかんだで小萌先生が尊敬に値する人物だと再認識した上条も教室に戻ろうとした。

「上条君。また女の子と関わったの? しかも私と別れた後すぐに」

 背後からの声に、ぎくぅっと上条の肩がすくんでしまった。
「ひ、姫神!? いつからそこに?」
「君がその女の子とのいきさつを話したあたりから」
「いや……いたなら声かけてくれればいいのに」
 しかし、ほとんど最初から姫神はこの話を聞いていたのなら、小萌先生はなぜなにも言わなかったのだろうか。やはり姫神は見つか
らないように隠れていたのか。どちらかと言えば後者の方がありそうなのだが。そうならそうで、盗み聞きはいけないことだと注意し
なければいけない。

315とある世界の三重記号:2007/12/25(火) 18:24:49 ID:EN0xjjS6
「――ってか、小萌先生には見つからなかったのか?」
 上条の問いにゆっくりと首を振る。
「小萌先生は私が君の後ろにいたことを知っていた。私がこうしたら――」
 そう言って小さな唇の前で右の人差し指を立てて、しぃーというジェスチャーをする。
「黙っていてくれた。さすが小萌先生」
(なんでだよ、小萌先生……)
 全身の力が一気に脱力していく。今すぐにでも、うだーっとしたいところだが、ここは廊下なのでそうもいかない。
 気だるい体を引っ張って姫神と一緒に教室へ戻る。
 その途中、
「どうして私が誘ったことを言わなかったの?」
「ん? あ、あぁ……なんつーか、言っていいのか迷ったから結局、ってとこかな。吹寄にも自分から言ってないんだろ?」
「そう。了解」
 言葉どおりに、満足げな表情をしていた姫神だったが、
「でも君はまた別の女の子に関わっていく。……やっぱり。私って報われない」
 ぽつりとこぼした。
「いや、だから、あれはだな……」
 あきらかに不機嫌で、ともすれば頬でも膨らましかねない感じだったが、慌てふためく上条の様子に姫神がくすりと笑った。
(なんだかこの頃……姫神もよく笑うようになったような気がするな。さっきみたいに冗談だって言うようになったし)
「だけど――」
 一転。姫神が真剣な顔をした。
「秋祭りは。……ちゃんと来てほしい。絶対に来てほしい」
 真摯な瞳が上条を見据える。
 普段の姫神からはあまり感じられない、焦燥、当惑、懇願、様々な感情が混ざったような複雑な表情に見えた。それは口にした言葉
にも表れていた。誰かに何かを頼むとき、姫神は『絶対に』などの強い言葉をあまり使っていないと思う。上条が考えていた以上に、
姫神はこの秋祭りを重要視しているようだった。
「あたりまえだろ? 約束だ……必ず行くから。姫神とは大覇星祭のナイトパレードも一緒に見れなかったしな」
 力強く宣言した上条に、姫神は心の底から安堵したふうだった。
 上条の事件に飛び込んでいく性格から考えれば、新しい人物との関わりが心配にならないはずがなかった。わずか二・三ヶ月の関係
だが、姫神もそれを十二分にわかっているのだろう。
 二度も約束を破るわけにはいかない、と上条は思った。
 ある少女と同じように、この少女の笑顔も曇らせてはいけないものだと、小さく右手を握りしめた。



2章 一〇月四日 Float_one's_feeling 終

316056:2007/12/25(火) 18:29:24 ID:EN0xjjS6
スマン……
>>312だが最初の数行が抜けてる
もうダメだ
下に追加したの書くよ……

317とある世界の三重記号 : 312修正:2007/12/25(火) 18:31:01 ID:EN0xjjS6
 上条が選んだのは、姫神が誘ってきたことを隠すという選択肢だった。
「……どうせこの機会に新しい出逢い(フラグ)を探すんでしょう? なんたって貴様は『上条当麻』なんだし」
 一言でこの場の雰囲気がガラリと変わった。
(あれ? 姫神優先の選択すぎて吹寄さんがお怒りモードですか? もしかして選択肢……間違えた? 自分で言うのもなんだけど、
このフラグ王である上条当麻さんが?)
 何をしでかそうというのか、吹寄がじりじりとにじり寄ってくる。
「上条当麻……今日こそその腐った性根を――」
「はーい! みんなさん、授業を始めるので教室に戻ってほしいのですよ。チャイムが鳴るまでに戻らないとビシッと授業で指名しち
ゃいますからねー。今日は小萌先生も開発に関わった変換器(トランジスタ)の試験品(テストモデル)を使って擬似的ではあります
けど、発火能力者(パイロキネシス)を再現してみようかと思うのです。だから、指名されちゃうと被験者(モニター)になっちゃう
かもしれないですよー?」
 大きく声を張り上げながらバスケットボールほどの大きさの試験品(テストモデル)を抱えた小萌先生が登場した。
「と言っても、どうせ誰かにやってもらうんですけどねー。……って、なんでみんなさん一斉に教室に戻っちゃったんですか? そり
ゃぁ、小萌先生が戻ってって言いましたけど……そんなにやりたくないのですか? 小萌先生たちの力作なのですよ!?」
 学園都市で開発された能力者用の多種多様な試験品(テストモデル)。開発で得られたデータを基に設計され、能力者の性能を高め
たり、警備員(アンチスキル)や風紀委員(ジャッジメント)の武装などに活用される。学園都市の治安維持や低レベルの能力者にと
ってはこういった開発品も重要なことだ。しかし、そこはやはり試験品(テストモデル)。失敗する確立の方が高い現状では誰も被験
者(モニター)などやりたがるはずもなかった。
 涙目になりながら訴える小萌先生に同情はするが、ここは背に腹はかえられないので上条も一歩遅れたが教室に戻ろうとした。
 その眼前で教室のドアがぴしゃりと閉まる。
「なっ!?」
 ドアの小窓からニヤニヤした土御門の顔が覗いている。声は聞こえないが、その口がこう語っていた。
『カミやん、尊い犠牲は必要だにゃー』
「てめぇ、なに人を生贄に捧げてんだ! 上条さん一人じゃ人柱にもならないし、真っ赤な石だって練成できないですよ? ってか、
俺が無能力者(レベル0)だって知ってんだろ!? 土御門、このっ――開けろってんだ!」
 硬く閉じられたドアと格闘し始めた上条の背後から、素晴らしく眩しいのに背筋が凍るほどの気配がする。
 振り返ると――、
「上条ちゃーん? まったくしょうがない子なのですよー、えへへ、そんなに被験者(モニター)がやりたかったのですか? えへ、
上条ちゃんが開発熱心な生徒に育ってくれて、えへへ、小萌先生はすっごく嬉しいのですよ、えへへへへ、そうです! 放課後の警備
員(アンチスキル)用の武装開発にも参加してくれますか? なんか忍耐強い能力者の被験者(モニター)が必要らしいんですよねー
、えへえへへ」
 小萌先生は感動の臨界点を突破してしまったのか、先ほどの吹寄よろしく、小萌先生もその小さな体ながらかなりの威圧感で迫って
くる。小さな笑顔に収まっている細められた瞳に上条は恐怖を覚えた。
「小萌先生、なんか様子がおかしいですよ? いつものかわいい顔が台無しになってますし、落ち着いた方が……って、ちょっと! 
そんなギラギラと目を光らせないでください!」
「えへへ、『かわいい』だなんて……担任に言う台詞じゃないのですよ。それとも……えへ、上条ちゃんは小萌先生を女性として見て
くれるのですか? とっても嬉しいですけど、えへえへへ、それなら『きれい』の方がよかったのです、えへへへへ、でも、教師と生
徒なんで諦めてほしいのですよー」
 一歩間違えれば小萌先生のフラグを立てていたようだが、今はそんなこと考えている暇はなかった。

318056:2007/12/25(火) 18:33:54 ID:EN0xjjS6
終わりだよ……
配分間違えて1レス増えたし、数行抜けててさらに1レス増えたし
ってかなんか文がおかしい気がするし

今回はホントにすまなかった
それじゃ……メリークリスマス

319■■■■:2007/12/29(土) 20:54:00 ID:sOdfdrDk
メリクリ!&乙!

320■■■■:2008/01/03(木) 10:47:11 ID:EdQ9z8Hg
激!過疎

321■■■■:2008/01/04(金) 20:15:57 ID:e/VZV1II
あけおめ!
誰かいませんかぁ〜

322■■■■:2008/01/04(金) 20:16:32 ID:e/VZV1II
あけおめ!
誰かいませんかぁ〜

323■■■■:2008/01/04(金) 20:17:49 ID:e/VZV1II
ごめんなさい

324■■■■:2008/01/05(土) 08:54:50 ID:WE5pXO.Y
乙!過疎

325■■■■:2008/01/05(土) 16:20:56 ID:HPmiS5N.
替え歌落とします
しっているかな?シンフォニック=レインの「秘密」Ver.美琴

みつめていることさえ 罪に思える
あなたの心を知りたい 
もしも盗めるのなら

報われない想いが濡れてく
傘もささない帰り道
通りがかる不良 吹き飛ばす
灼熱のレールガン

ほんのちょっとでもいいから
ねえ 私を見て
あなたに心を見せたい
いっそすべて言えたら

気づかれない想いをどうするの
馬鹿を殴った帰り道
好きよ キライよ いいえ愛してる 
迷う しずく 雨

報われない想いが濡れてく
傘もささないひとり道
決して あなた気づくことはない
涙 しずく 雨

報われない想いが濡れてく
傘もささない帰り道
通りがかる不良 吹き飛ばす
灼熱のレールガン

・・・ごめんあんま変えてないや

326■■■■:2008/01/05(土) 19:45:59 ID:MAGJnd9A
傘をささない中レールガンぶっ放すほど無思慮かなw

そして選曲がマイナー

327■■■■:2008/01/05(土) 21:24:39 ID:HPmiS5N.
>>326
いいじゃん。マイナーでも一応替え歌なんだから。

もういっちょ

天罰!エンジェルラビィVer.美琴

雷撃! 雷撃! 雷撃! 雷撃!(X4)

人を無視しちゃいけません
後輩泣かしちゃいけません

罪を憎んで人を憎まず
あなたに審判下します!!
レールガンでで・・・超電磁砲

ビリビリ ビリビリ
それがわたしのあだ名よ
ビリビリ ビリビリ
むかつくやつだけど
いざとなったら やるときゃやるの

雷撃! 雷撃! 雷撃! 雷撃!(X4)

人を殺しちゃいけません
人を(゜д゜)しちゃいけません

ピンチのときは 異能の力で
華麗に雷撃落とします
常盤台Lv5 レールガン

ビリビリ ビリビリ
わたしの電撃にのせて
ビリビリ ビリビリ
わたしの想い届け!!

ビリビリ ビリビリ
それがわたしのあだ名よ
ビリビリ ビリビリ
むかつくやつだけど
あんたがいれば なんとかなるの

雷撃! 雷撃! 雷撃! 雷撃!(X4)

32801+641:2008/01/07(月) 20:52:54 ID:fmc3erMA
「あれっ! 過疎ってる!」
「ほんとだー」
「ねー、ひとまだー?」
「ちょっとー。誰か来てよー」

 〜過疎ると不平を言う前に、自分でSS書きましょう〜
 ♪えぇぇぇ〜しぃぃぃ〜
 〜公共○告機構です〜

というわけで(どんなわけだ)お久しぶりです。
五節句シリーズのトリ、人日編いきます。
ところで、上のCM覚えてる人どれくらいいるんだろうか……?

329とある睦月の人日宴席:2008/01/07(月) 20:54:15 ID:fmc3erMA
とある睦月の人日宴席


 ワイワイ、ガヤガヤ――――。

「ん、醤油とって」
「あ、はいどうぞ」
「あ、わりぃサンキュー」

 カチャカチャ、ゴトゴトン――――。

「お料理の追加ですけどー」
「ほら、ちょっとそこのお皿をどけなさいよ、置けなくて困ってるじゃないの」
「なっ、それ俺が今から食べようとしたやつだぞ! ああっ! 言ってる間に取られちまったじゃねーか!」

 ゴトン。カパッ。グツグツグツグツグツグツ――――。

「今度はなーにー?」
「もしかして鍋?」
「え? こっちの鍋まだ終わってないわよ? あら? この匂いはお米?」
「はい。今度は七草粥にしてみました」
「へー七草粥ねー」
「でも、半分くらいは間に合わせなんですけどねー」

 バタバタ、ドタンバタン――――――――パシンパシン!

「「いってぇ!?」」
「暴れるな。せっかくの料理がまずくなるでしょうが」
「うう……」「だからっていきなりひっぱたくってのは――」
「うん? なんか言った?」
「なんでもないです、はい……」

330とある睦月の人日宴席:2008/01/07(月) 20:54:48 ID:fmc3erMA
 学園都市の中にある安アパートの一室。
 かつては酒と煙草を愛する見た目○学生の教師である小萌先生の食生活により雑然としていた部屋だが、今
は綺麗に片付けられ、大勢の人数が集まっている。
 この人数相手では普段使っているテーブルでは狭いために、何処に仕舞ってあったのかもう一つのテーブル
を引っ張り出してきたほどだ。
 そして、そのテーブルの上にはたくさんの料理が並んでおり、それを囲んでさながら宴会のようになっている。
「あっはっはー、カミやん怒られてやんのー」
「うっせぇ! だいたい元はといえば俺が取っておいたカマボコをお前が取ったからじゃねぇか!」
「ダメだぜいカミやん。この食卓の上では弱肉強食、まさに(目当ての料理は)食うか喰われるかなんだぜい」
「なんか語尾がおかしくなかった今!? っていうか、なんでお前までさらっとここに混じってるんだよ?」
「いやー、それが聞くも涙語るも涙でなー、実は舞夏のところの学校が『他の人が休みのときこそメイドは働
くものなのです』とかいう理由で強化メニューやらされる感じになってなー。食事を作ってくれる人がいない
から久しぶりの手料理が食えるとあっちゃ来ないわけにはいかないだろ? そういうカミやんこそどうして来
たんだにゃー?」
「いや、俺は昼飯を作るのもなんだったからファミレスに食べに行ったらちょうど食材を買いに出てた五和と
ばったり会ってさ、両手に重そうな荷物を持ってたから運ぶの手伝ったらついでに食べていけって言われたか
らなんだけど……って、なんだその目は!? 俺が何かしたのか?」
「いやー、カミやんはいつでもカミやんなんだなーって思っただけだぜい」
「五和ってあそこでかいがいしく給仕をやってる娘のことかにゃー? というよりむしろ問題にすべきはいつ
の間に名前を知るようになったってことかにゃー? まったくカミやんは油断も隙もないときたもんだ」
 そう言いながら青髪ピアスの目を向ける先には、周りに対してあれこれと世話を焼く五和の姿があった。
 さらにその先、狭い流しとコンロの前では姫神秋沙がテーブルを囲む大人数のために足りなくなってきた料
理の追加を作っているのだが、残念なことにあまり注目はされていないようである。
「それにしても、こんだけの人数がよく集まったもんだよな。というか、そもそもよくこの部屋に入ったもん
だよな」
 上条が見渡す部屋の中、テーブルの上に所狭しと並べられた料理をつまんでいるのは負けず劣らず狭い部屋
にずらりと並んだ見知った顔の数々である。

331とある睦月の人日宴席:2008/01/07(月) 20:55:12 ID:fmc3erMA
 上条の座る席の隣にはクラスメイトにして三馬鹿トリオの綽名を付けられている土御門と青髪ピアスが陣取
り、続いて中央の鍋の様子をちらちらと気にしている吹寄制理の姿があり、さらに料理が一段楽したのか席に
戻ってきた姫神の隣にインデックスが明らかに他のメンバーとは一線を画する数の皿を重ねながらなおも着々
と記録を伸ばし続け、その横には何故か常盤台中学のエースである御坂美琴とその後輩の白井黒子がこうやっ
てわいわいと騒ぎながら食事をするのには慣れていないのか緊張した面持ちで座り、この部屋の主である小萌
先生の横でお酌をする五和と何故か黄泉川愛穂が負けじとグラスを空けていた。
 (なんつーか、カオスだなー。でもまあインデックスも喜んでるみたいだし、食事も作らないですんだし、
よかったのかなー?)
 そんなことを考えている上条だが、そもそもの話は数時間前に遡る――――。

 一月七日。正月三ヶ日も終わり、冬休みもいよいよ今日で終わるというとき、世間一般では新学期に向けて
の準備や仕事始めませで気持ちを切り替えだす人が多い中、上条当麻の住んでいる部屋は朝から修羅場に突入
していた。
「お、終わらねえええぇぇぇぇ!!」
 休み中、遊びにかまけて宿題にまったく手を付けていなかった世の多くの学生と同じような台詞を吐きなが
ら、上条は必死になって机に向かっていた。
 隣ではインデックスがごろごろと寝転がりながらテレビを見ているが、かまっていられる状況ではないと一
心不乱に手を動かし続けている。
「もー、とうまってばお休みが終わるときになると毎回同じことを言ってるよね。どうしてそんなに学習能力
がないのかな?」
 世の多くの母親が口にする言葉を耳にしながらまったくその通りなので言い返せない上条だった。
(あれ? なんかこれって前にも似たようなことがなかったっけ?)
 と思わないでもないが、深く考え出すと何やらまたトラブルのフラグが立ちそうなのですぐさまスルースルー。
 相手にされないインデックスもしばらくは大人しくテレビを見ていたが、やがてお昼時になると「おなかへ
った」と連呼しだしたので上条も一旦休憩を取るために食事をすることにしたのだ。
 今から料理を作っていたのでは時間のロスになると踏んだ上条はインデックスを伴って近くのファミレスに
向かったが、その途中で買い物帰りの五和と会い、荷物持ちを買って出たところ今に至る。
 インデックスが「あれ?天草式の魔術師?」なんて言った時は、やっぱりトラブルに巻き込まれるのか!?
などと身構えてしまったが、その心配は杞憂に終わってくれたようだ。
 まあもっとも、五和と一緒に小萌先生の自宅に帰る途中で何故か姫神と一緒に買い物帰りの吹寄と出会って
人数が増え、さらに御坂と白井と顔を会わせるとそのまま付いてこられ、ぞろぞろとした集団で歩いていると
ころを土御門と青髪ピアスに見つかって突撃され、『こんなに大勢だと食材が足りなくなるんじゃないか?」
とのことで結局もう一度スーパーに買い物に行かされたのを気にしなければの話だが。

332とある睦月の人日宴席:2008/01/07(月) 20:55:41 ID:fmc3erMA

 そんなこんなで和気藹々と食事を続けている一団に向かって小萌先生が言う。
「ところで皆さん、明日から新学期が始まりますけども、ちゃんと宿題はやってくれましたかー?」
 にこやかな笑顔と共に生徒達に問いかける教師の図、である。
 手に持っているビールの入ったグラスを口に運びながら出なければだが。
 というか、すでに彼女の後ろに山となっている空き缶が怖い。
「大丈夫です。ちゃんと去年のうちに終わらせておきましたから」
 菜箸で鍋物の管理をしながら答える吹寄。その隣でこくこくと頷いている姫神。
「宿題? あー、なんか前にも同じようなこと聞かれた気がするけど、ウチはそういうのはないから」
「へー、常盤台の学校はそうらしい、って聞いてたけど、改めて聞くとすごいじゃん」
「でもでも、各学校によって教育方針は違うものですし、一概にどちらがすごいとかは言えないと思うのです
よー」
「小萌先生は宿題忘れた生徒を叱ってあげるのが楽しいんでしょ? ウチのクラスの奴等はそんな真似をする
ような面白味がある生徒はいないじゃんよー」
「そんなことないですよ! 生徒さんを叱るのは大変なのですよ!」
「またまたー、ホントは嬉しいくせにー」
 御坂の返事から何故か教師二人の教育談義へと発展している。
 正確には、黄泉川が小萌をからかう形になっているが。
 何気にこの黄泉川さん、からみ酒の気があるようである。
と、そんな教師達へ
「あー、俺まだ宿題やって――」
「うるさい黙るんだぜいカミやん」
「そうそう。小萌先生に叱られるのは新学期になってからなんだぞ?」
 上条が何か言いかけたが隣にいる悪友達によってにこやかに瞬殺される。
 口を押さえられた上条が息をしようと身をよじり、させじと土御門たちが身を乗り出して騒ぎが大きくなっ
ていく。
『ガチャン!』
 そうこうしているうちにテーブルの上のクラスが倒れ、お茶が零れていく。
「あーあーあーあー」
「ちょっ、ティッシュティッシュ」
「あ、あの、これどうぞ!」
 周囲が慌てる中、機敏に反応した五和の差し出したおしぼりはしかし、受け取ろうとした上条の手ではなく
横から手を伸ばした吹寄によって使われる。
「ありがとね、助かったわ」
「い、いえいえ……」
 ねぎらう吹寄に対し微妙な表情の五和。
(うう……、この部屋に入ったときに差し出したおしぼりはピアスの人に使われちゃうし、カニの甲羅を剥く
ときに渡そうとしたら小萌先生の同僚の人に持っていかれちゃうし、上条さんに渡せないです………。でもで
も、今年の五和は違います! こんなこともあろうかとまだまだおしぼりは用意してありますからここはじっ
とチャンスを窺います!)
 みれば、彼女の後ろにあるお盆の上には彼女の決意を表すかのようにおしぼりが山のようにつんであった。
 もっとも、それを上条に手渡そうとしては失敗し続けているわけであるが。

 さてさて、五和が無事上条におしぼりを手渡すことが出来るのかどうかは、まあ、前途多難なようである。

33301+641 私文あります。苦手な人はスルーで。:2008/01/07(月) 21:05:21 ID:fmc3erMA
はーい。五節句(別名五和さん)シリーズは今回でおしまいです。
今回のお話はそのまま14巻冒頭の鍋のシーンをパロったものです。
作中できちんと説明し切れていないので補足しておくと、時系列的には上条さんが2年生の冬休みということになります。
拙作の三月の雛遊びが2年生の春、という計算になります。
拙いものですが、シリーズを一つ完結させれたのは嬉しく思っています。
まあ、内容的には14巻での五和さんの活躍(いろんな意味で)に、
かまちーすごいよ! そして自分の五和さんは黒歴史確定だよ!
となったのもいい思い出です。

ではでは、新学期や仕事始めの方々、体にお気をつけて。

334■■■■:2008/01/09(水) 15:01:29 ID:SRuWgQAw
GJッ!!
としか言い様がない。 

まだまだ色んな五和さんが見たい気もするけど、ここはあえて新シリーズを楽しみにしてます、と期待を込めて言う事にします。

335<幻想殺し>:<幻想殺し>
<幻想殺し>

336■■■■:2008/01/11(金) 18:21:49 ID:Xohm1Wl2
こっそりとあげときますか……

激、職人募集中!

337■■■■:2008/01/11(金) 23:28:21 ID:l0JvPgb.
隠れてコソコソと書いてたら、読めてない新刊で能力名の由来について言及されているらしくて俺涙目w
能力名について適当に自分解釈で書いた部分、まるっと改訂しなきゃいけないとか……
しかも近所の書店に売ってないから遠出しないといけないし……出費がorz

338■■■■:2008/01/12(土) 00:20:11 ID:V7VxExQg
俺もアマゾンに注文してるけど新刊は時間かかるなぁ。
まあいいけどさ。
むしろ考えてたのとほぼ同じ能力でてきてアウトな俺。
提督め。

339前半:2008/01/12(土) 14:27:57 ID:zkEvCiOU
何となく浜面が書きたかっただけです(ごめんなさい)
そして相変わらず告白と18禁が書くのがだるい人間です(死ね)


「はまづら」
「何
「なん・・・・・・だ・・・・・」
後ろを見た瞬間、絶句した・・・・
「・・・・似合わないか?」
「・・・・・・あ・・・」
似合わないか?その質問の理由とは・・・・
家に来るまでジャージだった。俺の家に紙袋を持って来た滝壺はトイレを借りると言って
紙袋を持ったまま入って行った。そして10分ぐらい経ってドアを開ける音がした。水を流す音がしなかった事に疑問は感じた。
俺は部屋に入って来た滝壺の呼びかけに反応して後ろを向いた。
そこまでは良かった・・・・・問題・・・・というか俺の幸せの絶頂を迎える理由が其処にあった。
「・・・・やっぱり私じゃ似合わないか」
バニーの格好をした滝壺が其処に立っていた。もちろん、似合わない訳が無く
「馬鹿!!!似合わない訳ねぇじゃねぇか!!!!」
もう俺はこのまま死んでも良いと思った。何せバニーは俺のつぼな上に少し気になっていた
滝壺な上に恥ずかしそうにしてモジモジしてさっきから可愛すぎる!!!!!!
「そうか?」
「あぁ超似合ってる!!!てか何でそんな格好してんだよ!?」
「はまづらが戻って来てくれたから」
「・・・・・そうか」
「はまづら?嬉しい?」
「おう、嬉しいぜ」
「・・・・良かった」
そう言って胸を撫で下ろし安堵した顔を最高に可愛かった。
むしろ、今すぐ襲いそうだ・・・・でも我慢だ・・・・コイツはそんな気はねぇんだから
「はまづら・・・・好きだ」
「は?」
ん?何か間違った言動が聞こえた。
「好きだと言っている」
二回目にて確信・・・・・え?良いの?
「・・・・冗談じゃないよな?」
そう言うと黙ったまま頷いた。
「・・・・好きだぜ」
「・・・え?」
「俺も好きだぜ」
「・・・・冗談じゃない?」
「あぁ」
そう返事をした時、二人共、顔が真っ赤だった。お互いに目を合わせられなくて横を向いた。
それでも俺はちょっとした欲求があった。

340後半:2008/01/12(土) 14:31:04 ID:zkEvCiOU
「あの・・・・その・・・・・キスして良いか?」
そう言うと滝壺はこっちに向き直り頷いた。今すぐ噛り付くぐらいのキスをしたいけど
ムードが出ないとか言われて怒られるのも嫌だし、好きな相手との初めてのキスだ大事にしたい。
それから俺はゆっくりと顔を近付けた。距離が縮まると滝壺が目を瞑った。
俺は滝壺の肩に手を置いてさらに顔を近付けた。
近付ける速度が遅いせいか滝壺が少しだけソワソワしていた。
しかし、それも5秒も経たずに止まった。
俺は滝壺と軽めのキスをした。長くは無かった。触れて3秒も経たずに唇を離した。
それでも、好きな奴とやるキスは長くも感じたし短くも感じた。
キスが終わると滝壺は顔を真っ赤にして俺から少し離れた。
別に滝壺だけが顔が真っ赤じゃない、俺は人生でこんなに顔を真っ赤にしたのかと
思うぐらい赤かった。離れた滝壺は自分の姿を見て少し落ち込んだ
「・・・・キス・・・・バニーのままだった・・・・」
確かにそうだ、俺は好きな衣装だったから良いけど滝壺は嫌だろう
「格好なんてどうでも良いだろ?」
「・・・・ちゃんとした服でやりたかった・・・・・」
「そんなもんか?」
滝壺は黙って頷くと再びトイレに向かって行った。せめて風呂で着替えりゃ良いのに
そんな言葉を言う前にトイレのドアが閉まった。

着替えた滝壺に何て言えば良いんだ?まずはデートの誘いか?
いやいや計画無しで言うべきでは無いだろう。
もう一度キス?流石に間隔が短いだろう。えっと・・・・
「はまづら、何悩んでるんだ?」
何時の間にか出て来た滝壺が俺の前に立っていた。
「あ?えっと・・・・何でもない」
「・・・・そうか」
「・・・・どっか行かねぇか?」
結局言葉になったのはデートの誘いだった。その言葉を聞いて
「今は良い、はまづらがどんな風に生活してるのか見たい」
「・・・・えっと・・・・」
そう言われてもちゃんとしてると言えばちゃんとしてる。だが普通過ぎるんだ・・・・・
別に特別、料理が上手い訳じゃない、別に特別、洗濯と掃除をやってる訳じゃない
別に特別、何があるという訳じゃない・・・・・何を見せたら良いのか分からないし
何をしたら喜ぶのか分からない・・・・・・
「はまづら、どうした?」
「何でもねぇ・・・・・・なぁ・・・お前に何を見せたら良いんだ?」
それを聞いた滝壺は少しも迷わずにそれでいて平坦に
「全部」
「全部?」
「全部、はまづらが何をしてるのか見たいだけ」
「そっそうか」
俺は何て返したら良いのか分からなかった。全部なんて言われると思わなかった。
「・・・・えっと・・・何だ・・・・その・・・・見て面白くないぞ?」
「良い、はまづらが見たいだけ」
そう言われると顔を少し赤くして俺は何て言ったら良いのか分からなくなった。
その後、俺は何時も通りの生活をした。もちろん滝壺への配慮は忘れてない
俺が何かする度に笑顔で俺が話しかける度に笑顔になる滝壺は前の滝壺とは思えなかった。
そんな想いを秘めながら俺はそのまま一日を過ごした。
夕方になると滝壺は家に帰ると言ったので俺は滝壺を家まで送った。
別れ際にもう一度キスをされたので顔が赤くなった。「じゃあ」
とだけ言って俺は滝壺が家に入ったのを見ると自分の家へ歩き出した。
俺はやるべき事(滝壺を幸せにする)を確信してこれからの時間を過ごそうと思う

これからの道は何処まで続くか分からないけど出来るだけ
長く続いて最後まで滝壺理后と一緒に歩ける道でいたい・・・・・・

341339 340:2008/01/12(土) 14:32:45 ID:zkEvCiOU
さてと無駄な文を落としたところで浜面のほのぼのでも書こうかな・・・・(書くな

342■■■■:2008/01/12(土) 21:37:29 ID:nPW9e8.M
>>341 ナイス! 浜面×滝壷ってなかなか見られないんだよな・・・・・
書く気があれば書いて欲しい
(ちなみに俺はお前のサイトを漸く見付けた。とりあえず頑張れ!)

343■■■■:2008/01/16(水) 00:13:41 ID:7L859POE
投下を期待しつつあげるぜ。
ところで今の旬は何かな

344■■■■:2008/01/18(金) 12:37:49 ID:EfbX/l82
ここで一つリクエストだ。
最近影が薄い神裂さんのSSを是非

345■■■■:2008/01/19(土) 11:02:34 ID:lt6Al.sw
じゃあオレは今日の鮭弁第四位のSSを期待してみる

346■■■■:2008/01/21(月) 21:51:01 ID:o0L.hQpQ
>344
理想郷で誰かが書いてた。まだ始まったばかりやけど。

347■■■■:2008/01/22(火) 00:45:35 ID:qYFeevGY
理想郷……んなとこチェックしてないや

348■■■■:2008/01/22(火) 17:10:29 ID:JpycuB36
みんなの期待を無視俺は恋のミサカ伝説とフラグでしょでしょ(失敗)を投下する

ツ・ツ・ツンデレ ツンデレデレ
ツ・ツ・ツンデレ ツンデレデレ

素直に「好き」と言えないmeは
勇気を出して(デートしよう!)
恋のまじない超電磁砲(ちょうでんじほう)かけてあげるわ

レベルを1から5にあげた私
いつもアイツの背中を追うの
夜はどっさとベッドに倒れて寝るわ
明日もまたアイツに会えますように

TUN or DERE 
TUN or DERE maybre

涙を拭いて走り出したら(一方通行の所へ)
DED or STOP
DED or STOP ミラクル

最強へSpecial Generation

(いつになったらアイツにお礼言えるのかな?)
ツ・ツ・ツンデレ ツンデレデレ
ツ・ツ・ツンデレ ツンデレデレ

349フラグでしょでしょ:2008/01/22(火) 17:12:27 ID:JpycuB36
結果的に何回フラグと言ったか分からない
フラグはいつもみんなの中に
フラグだろう当麻を選んだ私です
もう止まらない 運命様から決められました

I flg shin(フラグ神) 恋だけじゃつまらないの
Are you like? 立てるがまま
立てる事だけをするよ

フラグでしょでしょ?ドジがフラグに
変わる当麻は 恋があるから強くなるのよ
誰の為じゃない 一緒に来てください(12巻絵)
どこまでも自由に
フラグを立ててね
フラグ駄目になった
今日の恋がキセキ(お相手が出来たようだ)
I flg shin

戻れないとこまでやらなきゃつまんない
さあ教えて 秘めてる願いをベッドに投げた
My hart you 身体ごと受け止めたら
You hart my 
フラグを立ててフラグ捨てて笑顔になろう

フラグでしょでしょ?フラグが恋を照らすみたいに
私の気持ちあなたの浮気どっちも消したいの

フラグに揺れる繊細な心が
傷つくのイヤ
想いましたいつもいつも胸の奥に
答えが(上条抹殺計画)

フラグじゃないのが当然なら
立てた私は何ができる?
フラグでもフラグじゃなくて
立てるがまま立てる事だけをするよ

フラグでしょでしょ?ドジがフラグに
変わる当麻で 恋があるから強くなるのよ
フラグでしょ?フラグなんでしょ?
フラグが恋を照らすみたいに
私とあなた恋愛の途中

一緒に進んでく どこまでも自由に
フラグを超えてね
フラグ駄目になった今日の恋が奇跡
確かなフラグを
掴もうフラグを
I flg shin

350■■■■:2008/01/22(火) 22:25:59 ID:qYFeevGY
替え歌スレと化してきたな

351■■■■:2008/01/27(日) 21:03:37 ID:0.kBp6J6
うーん、ふと冗談の様なSS考えついた。
現実から学園都市へ〜とかいう謎なSSを。

皆からキャラクターのアイデアを貰って作って行くSSとか。
キャラクターの名前と性別だけ貰って、能力は幾つかの質問に答えて貰って、
そこからタイプ別性格判断みたいな形で決める感じで。

……どうだろ?

352■■■■:2008/01/28(月) 00:05:28 ID:v2hPMYLE
流石にここまで落ちると作品も投下されなさそうなのでageをば。

というか本当に替え歌スレになっとるがなー!

353■■■■:2008/01/28(月) 20:32:16 ID:VN1.UZn2
替え歌でも面白ければそれで良い・・・結局暇潰しなのである・・・

354緑炎:2008/01/29(火) 04:31:50 ID:xCmc2a8Y
こんばんわ。「とある学園」の中の人です。
昨年末から友人と続けていたリレー的な物がある程度まとまったので、upします。

あ、ちなみに吹寄と姫神、メイd・・・基、御坂メインです。はい。

355とある旗男/part1:2008/01/29(火) 04:33:00 ID:xCmc2a8Y
「土御門ー土御門ー、あんたの妹、彼氏いたんだねー」
学園都市の高校の教室で、薄い茶髪をショートボブにした少女――桐嶋 透子(きりしま とうこ)が、にやにやとした笑みを浮かべ、いつものように青髪ピアスと談笑する土御門元春に、そう話しかける。
次の瞬間、ごぅっと風切り音が教室に響き、透子が教室の後ろ、窓側の角に押し付けられる。
「詳しく、聞かせて貰おうか」
がしぃっという擬音を鳴らし、透子の両肩を掴んで、土御門は詰問する。
「痛いんだけ・・・わ、判りましたぁ!」
透子の反論は、サングラス越しの目線で制され、そして茶髪少女の言葉で、物語は幕を開ける。
意訳すれば、透子のバイト先であるファーストフード店に舞夏と少年(茶髪少女もイイと思った)が来店し、二人で仲良くランチを楽しんでいたこと。女性向けの洋服店の紙袋を少年が持っていた事から、二人で買い物を楽しんでいたのかも、あと帰るときは舞夏が少年の腕を抱き締めるようにしていた、故に、彼氏だと思って・・・となる。
カップめんならば3つが完成するだけの時間を掛けてそれを聴きだした土御門は、無言のまま、透子を解放。
透子がその場に崩れ落ちるのを余所に、土御門は自分の席へと足を向ける。
「そういえば」
決して大きくはない、しかしよく通る声が、不気味な静けさに包まれる教室に響く。
教室にいた人間が声のした方を見ると、黒い長髪の少女、姫神がいた。
「彼、来てない」
姫神の視線の先には、土御門、青髪ピアスと共に、このクラスのデルタフォース(3バカトリオ)の一翼を成す少年、上条当麻の席があった。
「おい・・・まさか」
「いや、“旗男”ならあるいは」
「あの旗男・・・!」
誰もがまさかと思い、同時にもしやと疑いを拭いきれない中、がたんっ、と荒い音を立てて、一人の男が立ち上がる。
「つ、土御門くんー?んな怖い顔してどしたー」
冷や汗を浮かべ、若干呂律を狂わせ、青髪ピアスが問い掛ける。
「俺は、戦う理由を見つけた」
ぽつり、と呟き、土御門は教壇の上に立ち、そして教室を見渡す。
「勇猛果敢な紳士淑女諸君!」
日頃の軽い言動からは想像できない真面目な声で、土御門は言う。
「諸君らが感じている不満を俺自身、ここ数ヶ月、身を以て体験してきた。数多のフラグの乱立、周囲を顧みぬラブコメディ――俺たちは、耐えに耐えてきたのだ」
静まりかえった教室で、廊下で、土御門の演説は響く。
「しかし、それも今日で終わりだ。今日という日は、我々にとって大いなる歴史的転換点となるだろう」
言葉を切り、そして続ける。
「フラグの力を無自覚に行使し、我々に辛酸を舐めさせてきたかの少年に、俺は制裁を加える!」
誰かが息を呑む音が、妙に大きく聞こえる。
「諸君等に問う。フラグは旗男のみのものか?!」
「否!否!否!」
第二次世界大戦のとある国のとある国防軍の兵士のように、クラスメートは答える。
「ならば諸君等に問う。諸君等の敵は誰か?!」
「旗男!旗男!旗男!」
いつの間にかクラスに集結した他のクラスの生徒達も、いっせいに唱和する。
「――俺は、この歴史的転換点を、諸君らの様な勇士らと共に迎えられたことを深く感動している!そして、俺たちの胸には一つの誓いがある。その誓いとは!例え如何なる困難があろうとも、我ら反旗男解放戦線は今日のように揺るぎなく、永久に不滅であろう!」

356とある旗男/part2:2008/01/29(火) 04:33:57 ID:xCmc2a8Y
「立ち上がれ、諸君!そして我に続け!いまこそ真の自由を、奪われたフラグを取り戻すのだ!」
土御門の演説は、教室を埋め尽くす怒号で締めくくられ、土御門率いる兵士達は教室を出撃した。
後には、気絶したままの茶髪少女と、席についたままの姫神、握り締めた拳をわなわなと震わせる吹寄、そして
「ななななんですかーこれはっ!」
教室の入り口で、一部始終を見ていた幼女にしか見えない女性、我らがミニマムティーチャー小萌先生。
「まったくもー、まるで学生闘争みたいですよー授業もあれくらい真面目にやってくれればいいのに」
ぶーたれながらも教壇に立ち、閑散とした教室を見渡す。
「さーて、取り敢えず朝の会「「先生」」
小萌先生の声を遮り、姫神と吹寄が立ち上がる。
「急用が出来たので、早退します」
「私も。同じ」
二人の少女は言い放つと、鞄を手に、教室を去ろうとする。
「まちなさいー二人揃ってどこ行く気ですかーっ!」
二人は立ち止まって振り向き、そして答える。
「「戦いに」」
そう言い残し、二人は校則を無視し、廊下を駆けてゆく。
後には、ご立腹の小萌先生と、気絶したままの透子が残されるだけ。



Part:2/上条の寮

さて、時は土御門率いる解放戦線が教室を飛び出す少し前へと遡る。
件の“旗男”―――――上条当麻は困惑していた。
(あれ〜、一体なぜこんな状況になったのでせう?)
自問自答を繰り返しながらも右手を使い降り注ぐ雷撃の槍―――もはや、雨と称しても問題ない量のそれを防ぐことは忘れない。そして防ぎながら上条は今に至るまでを振り返ってみた。
始まりは呼び鈴を鳴らす音だった――――ピンポーンッ♪…………返事がない。
来客は少し考えた後………ピンポピンポピンポピンポーン♪♪呼び鈴を連打し始めた。
「だぁ〜〜〜、今出るから連打は止めろ!……いや止めて下さい!!ちょッ…!」
ピンポ♪ピンポーン♪ピンポーンッ♪
(軽くスルーされたッ!?しかも、なんだかリズミカルに!?)
訪問者は当初の目的を忘れたのか、上条の呼びかけを無視し、呼び鈴を鳴らすのに夢中になっているようだ。
それを認識した上条は、学校の準備を中断して慌てて玄関に向かった。
「はい!今出るから!!だからマジで連打を止めて下さい!ってか止めろ〜〜」
そう叫びながら、上条がドアを開けるとそこには、隣人である土御門の義妹の土御門舞夏と、ビリビリこと「超電磁砲」の御坂美琴が――――――――――――――――
メイド服を着て立っていた。
「…………………………………ハァ〜〜〜〜〜〜!?」
思考停止から一分程が経っただろうか、ようやく上条は現実を認識し始め、とりあえずドアを閉めた。
(イヤイヤイヤイヤイヤイヤ、ナンですかコレッ!もしや新手の魔術師か!?それともオヤジがまた大魔術を無意識に発動させたのか!?)
上条は混乱しながらもそこまで考えを進め同時に落ち着いてきた頭で玄関に目を向けると、
せっかくの来客をいつまでもドアの前で待たすのもなんだと思い再びドアを開けようとした瞬間―――――――
「だ、か、ら、早く開けなさいよ〜〜〜!!!」
という今までスルーされ続けていた御坂の叫びと、バチッという音が聞こえ、ドアが宙を舞った。
「はぃ〜〜〜ッ!?」

「御坂御坂ーそろそろ止めないかー?つーかご主人様に電撃喰らわすなんて、メイドとしてアウトだとおもうぞー」
上条家に於ける絶望的かつ熾烈な攻防戦は、土御門舞夏の声で停戦となった。
「・・・それもそうね」
雷撃を止め、しかし相変わらず怖い目で上条を見据えたまま、美琴は言う。
「一体全体何なんだこの状況は!とカミジョーさんはパニクりつつも状況説明を求めます!」
肩で息をしたまま、かなり混乱した上条が眼前のメイドさん達に問い掛ける。
「これは・・・か、課外授業なの!」
「・・・はい?」
「なんども言わせんなぁ!課外授業でメイドの実直研修ってのがあって、それでやむを得ずあんたのとこに来たって訳!ね、舞夏」
「お、おー。そうだなー」
「そう!ってことで、今日1日、あんたは私の課外授業に付き合ってもらうから!」
「お、ぉぅ・・・いやつーか私は学校があるのですがそちらはどうすればいいのでせう?」
「良いわね?」
「・・・はい」
初弾命中から僅か数秒、上条当麻は大破轟沈した。
(まったく、御坂も素直じゃないなー)
そんなやり取りを見つつ、舞夏は心中で呟く。
(一緒に居たいならそう言えばいいのになー)
無論、課外授業なんて真っ赤な嘘だが、この少年はそれに気づいてはいない。
(ま、そこがいいとこでもあるんだがなー)

357とある旗男/part3:2008/01/29(火) 04:34:27 ID:xCmc2a8Y
Part:3/上条の寮の近く

反旗男解放戦線(A.F.R.F.)が出撃してから10分ほど、吹寄と姫神は極端に人口密度の低い学生寮街を駆けていた。言うまでもなく、目指すは上条当麻の自宅である。
「急がないと。今回は。本当に危ない」
巡航としてはかなりのハイペースを維持したまま、姫神が言う。
「うん。ったく、うちのクラスの連中はなんでお祭り騒ぎになると一致団結するかなー」
「・・・彼が。関わってるから?」
「多分、いや確実にそうね。ったくあの旗男が――ん?」
不意に吹寄が立ち止まり、そして疑問を投じる。
「待って、おかしくない?」
少し先行した姫神が振り返る。
「場の流れであのバカが舞夏に手を出したと思ったけど・・・もしあのバカが相手だとしたら、なんで桐島さんはそう言わなかったの?」
「・・・言われてみれば。確かに」
「気になるな・・・」
「なら。確かめてくればいい。上条君の様子は。私が見てくる」
吹寄を見据えたまま、姫神は言い放つ。
「・・・あの混乱の中、辿り着ける?」
「・・・」
姫神はそれに答えることなく、ただ口元を真一文に結び、吹寄を見据える。
「・・・わかった」
先に折れたのは、吹寄だった。
「コイツで決めよう」
そう言って、ポケットからコインを取り出す。
「表なら、貴女がアイツの家に行く。裏なら、私がアイツの家に行く」
「わかった。それならいい」
「じゃ、いくよ」
――――――――――チャリーンッ……………パシッ!
弾かれ空高く宙を舞ったコインは、回転しながら本来の持ち主である吹寄の手に収まる。
「…………開けるわよ?」
「うん。開けて」
吹寄の問い掛けに対して、姫神は僅かな緊張感を含んだ表情ながらも決意のこもった声で応えた。
それを確認した吹寄は、満足そうに笑った後、手を退かした。
「…………………………………表」
(……やった!)
思わずあげかけた歓喜の声を心の内側に抑えつけながら姫神は、吹寄の様子を窺う。
「………表ね。じゃあ、貴女にアイツの事は任せるわ。」
(あ〜ぁ、肝心な時は、上手く行かないものね)
そんなことを考えながら、しかしそれを表に出すことなく吹寄はそう言い、頭を瞬時に切り換えた。
(ともかくあの子にもう一度話を聞く必要があるわね。)
今後のとりあえずの方針を決めると、姫神に向かって、
「また後でね」
と言い、返事を待たずに学校へと走り始めた。
「あっ……………」
(行ってしまった。)
もの凄い勢いで走り去った吹寄を見やりつつ、ため息をついた。

358とある旗男/part4:2008/01/29(火) 04:35:28 ID:xCmc2a8Y
Part:4/高校の近く

(教室から出たときは気絶したままだったから、いるとすれば・・・保健室か)
そんな事を考えつつ、一度来た道を駆け戻り、見慣れた校門を抜け、自分のげた箱から内履きを出して、速攻で履き替える。
(よーし、まだ帰ってない)
茶髪少女の靴箱を覗き、革靴がまだあることを確認。そして、保健室を目指し走り始める。
(それにしても、なんであんな事言ったのかな?)
古びた廊下を駆けながら、吹寄は今朝の出来事を反芻していた。
普通の学校ならば笑い話に終わるかもしれないが、相手はこと妹に関してはハートマン先任軍曹以上の恐ろしさを発揮するシスコン軍曹土御門だ。大騒ぎになることは簡単に想像できる。
(直接、聞くしかないか)
結論をだすと共に保健室に到達し、古びた扉を軽くノック。
「失礼します」
控えめにそう言って扉を開き、うっすらと消毒薬の匂いが漂う室内へと足を踏み入れる。
「すいません、桐島透子さんは?」
「んー?さっき起きて、もう教室に戻ってると思うけど」
吹寄の問いに、保健室担当の美人女性教師が答える。
「ありがとうございます、失礼します」
必要最小限の言葉だけを残し、吹寄は退室し、自らの教室へと廊下を駆ける。最早校則なんて無いも同じだ。
(革靴がまだあったってことは、まだ校内にいるはず・・・!)
階段を駆け上がり、教室の扉を乱暴に開く。
「桐島さん!」
だが答える者はいない。少女の席を見やると、先ほどはあった鞄が無くなっている。
「逃がしたか・・・いや、まだ間に合う!」
悔しそうに呟き、今度は玄関へと駆け出す。
震える両足を叱咤激励し、玄関に入り、少女の靴箱を開く。
女子生徒用の赤い内履きが、そこにはあった。
「−−っ」
校門へと至る道を見やるが、そこに人影はない。
「逃がした−−っ」
悔しそうに呟き、両手を握りしめる。
10秒程そうして冷静さを取り戻し、鞄に手を入れて、携帯電話を取り出す。慣れた手つきでアドレス帳から番号を呼び出し、コールする。
液晶には、「姫神 秋沙」の文字。程なくして、少女の声が電話から聞こえる。

「・・・もしもし?」
感情をあまり表に出さない姫神のしては珍しく、その声はどこか精気を欠いていた。
「大丈夫?」
意図していた言葉は頭から消え、思わず心配の言葉を投げかける。
「私は・・・平気。大丈夫だから。そっちの首尾は?」
それを察したのだろうか、姫神はこちらの心配が杞憂と思えるような力強い声でこちらの首尾を問う
(――強いな)
吹寄制理は素直にそう思う。
姫神は大覇星祭の最中、怪我を負い病院に搬送され、途中脱落した。やっとクラスにも馴染み始めたにも関わらずだ。なのに、彼女―――
姫神は見舞いに行った私達に対して、「大丈夫。」と微笑んで見せたのだ。
大丈夫な訳がない。彼女にとって初めての学校行事だったのだ。悔しかっただろう………しかし、それを全く表に出さず、見舞いに来た私達を励ますような彼女
は、強く、美しく見えた。その姿を瞼の裏に思い起こしながら吹寄は、下手な慰めなどではなく、相方への万感の思いを込め報告を始めた。
「ごめん。逃がした」
「・・・そう」
姫神は“逃がした”という言葉に対する疑問を抑え、続きを促す。それを受け吹寄も応える。
「やっぱり何かがおかしいわ。桐島さんとは表向きには入れ違いになったんだけど・・・どうにも私達を意図的に避けてるようにしか思えないの」
「・・・」
無言で何かを考えている姫神に重ねて言う。
「早退したって考えるのが妥当かもしれない、でも何かが引っかかるの」
姫神は吹寄に対し、一言投げかける。
「―――――なら、どうしたい?」

359とある旗男/part4_2:2008/01/29(火) 04:35:57 ID:xCmc2a8Y

『−−−−−なら、どうしたい?』
「きまってる。桐島さんを見つけて、あの話の詳細を聞き出す。唯一の手掛かりを逃すわけにはいかない」
静かながら芯のある問いに、凛とした答え。
『――わかった。お願い』
「任せて。そっちはお願いね」
『うん。それじゃ』
電子音が通話終了を告げ、液晶が待ち受け画面へと戻る。
「さて・・・どうするか」
携帯を鞄の定位置に戻し、腰に手を当てて考える。
(桐島さんの連絡先は知らないし・・・誰かに聞こうにも、ウチのクラスは全員A.F.R.F.に参加中で、聞けるとは思えない、か・・・)
右手を顎にやり、更に考え込む。
静寂の中、制服が擦れる微かな音がする。
どこかの教室から、最早天然記念物に指定されそうなくらい数が減った熱血体育会系教師の、廊下に立っていろと言う声が微かに反響して聞こえてくる。
(・・・そうだ、小萌先生なら知ってるはず)
決断。そして職員室へと続く廊下を歩き、他の教室と同じく古びた扉を叩く。
「失礼します」
本日二度目の台詞を言い、職員室へと入る。
教室2つ分の空間に設置された大量のデスク。奧には応接室や校長室へと続く扉があり、左手には大きな窓が、右手には教科書や参考書、辞書が詰め込まれた本棚がずらりと並ぶ。
ざっと室内を見渡すが、探し求める人はいない。小さいから死角にいるのかも、と背伸びしてみるが、やはりいない。多分、授業に出ているのだろう。
「おー、どうしたミスセイリさん。どうしましたか?」
比較的入り口の近くの席で、「ナウでヤングな若者語」と書かれた本を読んでいた英語担当のカナダ人教師、皆にアダムと呼ばれる教師が、くるりと向き直ってそう問いかける。
「小萌先生を探しているんですけど、いないみたいですね」
「あぁ、彼女なら授業中だよ。急ぎの用なら呼び出そうか?」
「あっいや、大丈夫です。ちょっとクラスメートの連絡先をお聞きしたいだけですから」
内線電話を手に、白い歯と爽やかかつ眩しいスマイルを振りまくイングリッシュティーチャーアダムを、慌てて制止する。
「そうか・・・で、知りたいのはトウマ君の連絡先かな?」
「なっ・・・なんでそうなるんですかっ!」
だぁんっ!とデスクを力いっぱい叩く。
「あーごめんなさい。さっきも彼の連絡先と住所を聞きに来た生徒がいてね、つい」
両手を合わせ、頭を下げて謝罪。滑稽だが、彼の精一杯の謝罪の現れだ。
「――さっき早退した、桐島透子さんです。かなり具合が悪そうで、心配になって」
大方、A.F.R.F.の誰かだろうと当たりをつけて、要件を嘘を加えて伝える。
「ミストウコさんのアドレスね・・・OK、ちょっと待ってて」
顔を上げ、何故か少し楽しそうな顔を浮かべ、アダムはキーボードを叩く。
「あった。今プリントするよ」
うぃぃぃ、という音を立て、机の隅に置かれた小型プリンターからコピー用紙が吐き出される。
「はいこれだ。ちょっと離れてるね。ここからだと、バスで行くことになるね」
コピー用紙を手渡しつつ、アダムは言う。
「そうですね、さすがに隣の学区まで歩きはキツいですから」
ゴシック体でタイプされた文字を見やり、折りたたんで鞄にしまいつつ、吹寄は答える。
「ありがとうございました。失礼します」
そう言って軽く一礼し、吹寄は職員室を後にする。
「ちゃんと授業後に行くんだよー」
去って行く背中に言葉を投げ、アダムは読みかけの本を手にする。
(さっきはミストウコさんがトウマ君のアドレスを聞きに来て、今度はミスセイリさんがミストウコさんのアドレスを聞きに来た・・・いや、青春だね)

360とある旗男/part5:2008/01/29(火) 04:36:26 ID:xCmc2a8Y
Part:5/上条の寮

土御門率いるA.F.R.F.の精鋭、規模にして一個小隊30名は、3つの分隊に散会し、上条当麻の自宅がある学生寮で突入の機会を伺っていた。
一つは、一階の正面玄関に布陣する、射撃同好会の会長であるポニーテールの少女が率いるC分隊。
一つは、非常階段から迂回侵攻する、青髪ピアス率いるB分隊
そして、エレベーターから侵攻する、土御門率いる主力のA分隊。
「土御門、他の連中から連絡があったよ」
「作戦中だ。隊長と呼べ」
念動力系の能力者であり、小隊の通信を担う少女の報告を、土御門が遮る。
「・・・失礼しました。B、C分隊より入電。戦闘配置完了」
「わかった」
そう言って、土御門は立ち上がり、待機する兵士たちの先頭に立つ。それを合図に、能力者は自らの力の準備を始め、能力無き者は、エアガンやらガスガンを構える。
「時間だ。状況を始めろ」
簡素で静かな命令。それを合図に、A分隊の兵士達が一斉に動く。
先頭の兵士が扉を開き、2番目の兵士が玄関を制圧。3番目がバスルームを制圧し、4番目以降がリビングを制圧する。
教本通りの室内突入をこなす級友達を見やり、土御門は満足げな笑みを浮かべた。
「・・・誰も、いない?」
リビングに突入したひとりが呟き、次いでバスルームやトイレを制圧した兵士も
同じ事を報告する。
「他の分隊から連絡は」
「各分隊、接触していません」
「逃げられたか・・・」
土御門は呟くと、通信担当の少女を見やり、そして令する。
「各分隊より偵察を出せ。そう遠くにはいないはずだ」
風が鳴り、一度言葉を切り、そして続ける。
「旗狩の時間だ」

361とある旗男/part6:2008/01/29(火) 04:36:56 ID:xCmc2a8Y
Part:6/上条の寮の近く

「よし!恒例の“アレ”行くぞっ!テレビの前の子も一緒に!せ〜〜〜のっ・・・不幸だぁ〜〜〜〜〜!!」
噂の彼こと、上条当麻は辺りを窺いながら走りつつ、そう叫んだ。
(ナゼ、コンナコトニ?)
思い返しても、全くもって意味が分からない。とりあえず、電話が掛かってきて―――――

土御門率いるA.F.R.F.が、旗狩り作戦展開の為の準備を進めている中、上条はソワソワと正座をしていた。対面には御坂が同じように正座している。
最初は学校を理由に断るつもりだったのだが、強引に了承させられた上条に、
「ま〜、い〜じゃん、い〜いじゃん、メイドさんを雇うのは男のロマンなんだろ〜?それに〜、御坂じゃ不満なのか〜?」
舞夏が御坂を指して言うと、御坂は肩をビクッと震わせ、顔を赤くした。
「・・・ちょっと、土御門―――」
しかし相手は上条である。御坂のそんな様子に気づくことも無く、
「・・・なぜソレをッ!まさか土御門から聞いたのか〜!?あの野郎」
ブツブツとここに居ない胡散臭さ満載のグラサン野郎に呪詛を吐いていた。
そんな上条と御坂を見やり、
(はぁ〜、先が思いやられるな〜)
と物思いに耽る舞夏だったが、閃いたとばかりに口元を笑みの形に歪め―――未だ呪詛を吐き続ける上条と、固まっている御坂に向かって口を開いた。
自分の世界へと飛び立っていた2人にとって、次の言葉は予想外だった。
「それじゃ〜、御坂〜、私は行くけど後は頑張るんだぞ〜」
「「・・・へっ?」」
思わず顔を見合わせる上条達に対し、
「私は〜、寮に戻って〜ご奉仕しないといけないんだな〜〜〜」
唖然とする二人に、もう用はないとばかりに背を向け舞夏は去っていった。
後にはあまりのことに声すら出ない2人が残った。
今日は銀髪シスターもおらず、家には上条と御坂のみがおり、お互いに妙に意識してしまう。
意を決して話しかけようとした上条だが、
「「・・・あのさ」」
見事にハモってしまい膠着してしまう。
かれこれ、一時間もした頃だろうか上条の携帯が鳴った。

362とある旗男/part7:2008/01/29(火) 04:37:50 ID:xCmc2a8Y
Part:7/上条の寮の近く

(これは。かなりまずい)
吹寄と別れてから10分後、学生寮街の一角、噴水のある広場の片隅で様子を伺い
つつ、姫神は呟いた。
視線の先では、一度解散したA.F.R.F.達がエアガンやガスガンといった武器を手に再集結しつつあり、総司令官たる土御門が部隊編成を行っている。
残された時間は、後僅か。
そう判断した姫神は、鞄からまだ新しい携帯電話を取り出し、あまり多くはないアドレス帳から番号を呼び出す。
(お願い。出て!)
数回の煩わしい呼び出し音の後、相手が電話に出たことを示すカチャッという音が響く。
「上条君。今。家にいる?」
『姫神か?』
電話の向こうから、聞きなれた少年の声が響く。
「まだ。家にいるの?」
『おう。あー、悪ぃ、ちょっと今立て込んでて学校行けそうにな』
「今すぐ。そこを離れて。大変な事になってる」
自分でも驚く程キツい声で、そう告げる。
『――っ。まさか、魔術側が?』
それまでとは打って変わり、真剣な声で上条は問い掛ける。
「そうじゃない――」
次の言葉を言うより早く、A.F.R.F.が移動するのが見えた。
「説明してる時間がない。早く逃げて!」

363とある旗男/part7:2008/01/29(火) 04:39:09 ID:xCmc2a8Y
Part:8/上条の寮

(・・・どうすればいいのよ)
気まずい沈黙が降りる中、御坂は舞夏とのやり取りを思い出す。
「御坂、御坂〜」
とある土曜日の放課後。いつものように食堂でうだうだしていると、課外奉仕活動とやらで常盤台中学の寮で奉仕活動を行っている舞夏が話しかけてきた。
「何度も言うようだけど土御門、仮にも奉仕中なんだから、雇用者側のあたしに対して呼び捨てはどうかと思うわよ?」
「私と御坂の仲じゃないか〜」
(………そーゆー問題だろうか?)
なんだか納得の行かない様子の御坂に対して、
「寮監もいないし、へっちゃらだ〜」
本来、人に仕える事を喜びにするメイドという幻想を殺しそうな問題発言を重ねる。
「まぁ、あんたがそれでいいなら良いんだけどね」
自分の中で沸き起こる葛藤を頭の隅に追いやる。
「それで?どうしたのよ?」
「前やったチェスのペナルティで〜“1日誰かの専属メイドにな――」
「ゴメン、よ、用をお、思い出したわ、わ」
しゅたっと手を掲げ、引きつった笑顔で走り去ろうとする御坂の方をガシィッと掴む舞夏。
「だからほら〜、御坂用に〜、メイド服を見繕ってきたんだぞ〜」
笑顔を浮かべ、右手で御坂の肩をつかみ、左手でゴスロリ風メイド服を掲げてみせる舞夏。
(ニッコリと微笑んでるけど、目、目が笑ってない)
冷や汗をかきつつも抵抗を試みるが無駄に終わる。
「・・・そ、そうだったかしら?」
「そうだったぞー。あ、一応言っとくけど、この状況からは逃げられないぞ〜。逃げた場合は上条に〜“アノ”写真を見せるからな〜」
「…………ッ!!」
(そんなのあり〜!?)
先日、舞夏がチェスの勝負を挑んできた。
ただ勝負するのではつまらない、ということからペナルティをつけることになった。そのときに舞夏が出した条件がこうだ。
勝ったらアイツ―――上条の事をなんでも教える。ただし、負けたら言うことを一つ何であっても聞かなくてはならない。その餌に釣られた御坂は、舞夏の邪悪な笑みにも気づかずに、表面上は如何にも興味がなさそうに―――内心では、拍手喝采を行ったのだ。
勝負の結果としては―――負けた御坂が、負けを取り戻そうと再勝負を挑んでは負け、恥ずかしい写真を撮られ、更に巻き返そうと勝負を挑んでは負けを重ね、今に至る。
「まさか、“超電磁砲”の御坂が約束を破らないよな〜」
この言葉に反応したのが行けなかった。その後は早いもので、気がついた(現実を認識した)ら、上条家の玄関におり、なんとなぁ〜く気まずい空気に身をまかせていだのだが・・・電話が鳴った。

「悪りぃ御坂、ちょっと出させてもらうぞ?」
返事の代わりに首を縦に振る。それを見た上条は、
「姫神?」
着信相手の名前だろうか?姫神という相手と話し始めた。
「おう。あー、悪ぃ、ちょっと今立て込んでて学校行けそうにな」
いかにもやる気のなさそうな声と表情で応えていたが、急に真剣な表情に変わると、
「――っ。まさか、魔術側が?」
それまでとは打った声で上条は問い掛けている。
(・・・魔術?)
意味が分からないが、そういえば彼が夏休みに、
『魔術師って知ってるか?』
と言っていたことを思い出す。そうして思案に更けている御坂の意識を、上条の声が現実へと引き戻す。
「おぃ!姫神ッ!?・・クソッ!!」
彼は急に立ち上がると御坂に向かって言った。

364とある旗男/part7_2:2008/01/29(火) 04:39:27 ID:xCmc2a8Y
「逃げるぞ」
携帯を握り締めたまま立ち上がり、上条当麻は言い放つ。
「ちょっ――体何があったの?」
「説明は後だ!早く逃げるぞ!」
問いには答えず、代わりに御坂の手を取り、半ば強引に立ち上がらせる。鍵の壊れた扉を開き、廊下を曲がり、無骨な非常階段を一気に駆け降り、閉ざされた非常扉を開く。
周囲を見やるが、追っ手のらしい姿は見えない。
「こっち。早く!」
声の方を見るやと、寮と寮の合間の路地の入り口に、半ば隠れるようにして姫神がいた。
「やっぱり。こんな状況でも。君は君なんだね」
上条と御坂。手を引くものと手を引かれる者を一別し、安心したような、呆れたような声で姫神が呟く。
「何があったんだ?」
姫神の呟きが聞こえなかったのか、真面目な表情のまま、上条は問い掛ける。
「・・・心当たりはない?」
「・・・ない」
「本当に。知らない?」
「マジで知りません」
「上条君が。舞夏に手を出したって話しになってて。土御門君と学校のみんなが怒って。討伐に来てる」
「・・・はい?」
「・・・アンタって奴は・・・最低」
真面目な表情でそう告げる姫神に対して、呆然とする上条。そして背景に電撃を伴い、目を細めて呟く御坂。
「いやちょっと待ってください!私めはそんなことした覚えは全く御座いませんことよって!だから電撃はやめてくださいっ!」
飛来する電撃を右手で迎撃しつつ、上条当麻は必死に弁解する。
「――静かにして。追っ手が来た」
上条の部屋がある棟に視線を固定したまま、姫神が二人のやり取りを一刀両断する。
「上条君は。逃げた方がいいと思う」
突入するA.F.R.F.を見やり、姫神は言う。
「姫神はどうするんだ?」
「舞夏を探してくる。本人がいれば。誤解は解けると思うから」
「だったら、私も探すわ。多分学校にいると思うし」
「おぅ・・・けど、御坂は寮に戻ったほうがいいだろうな。巻き込むわけに――」
「・・・さっき言ったこと、もう忘れたの?」
上条の言葉を遮り、覗き込むようにして視線を合わせ、御坂は言い放つ。
「今日一日は私に付き合うって」
「けどよ・・・」
「だぁー!ここでグダグダ言っても始まらないでしょ。アンタと私、姫神さんとで手分けして舞夏を探せばいいでしょ」
「・・・私も。それでいいと思う」
「わかったよ」
「それじゃ、行こ」
そう言って、御坂は上条の手をとる。
「姫神」
振り向いて、上条は言う。
「無理、するなよ」
「・・・うん。わかった」
微かに微笑んで、答える。
上条も笑ってそれに答えると、御坂の手を引いて路地の奥へと進んでいった。
「やっぱり。どんな時でも。君は君なんだね」
誰にでもなく呟き、二人が去っていった方を見やる。そして、今いる路地へと向かう兵士たち――青P率いるB分隊のいる方へと駆け出す。

365とある旗男/part9:2008/01/29(火) 04:40:11 ID:xCmc2a8Y
姫神と別れてから5分ほど、学生寮街の外れに位置する路地を、二人は駆けていた。
「とりあえず、お前の学校行って、舞夏を見つけて――」
「真偽を確かめて、騒ぎにケリつけるんでしょ」
「おぅ――にしても、なんでんなデマが流れるかな・・・」
「――本当に、何もしてないでしょうね」
「本当だっ・・・てとぉぅ?!」
上条の弁解を遮り、BB弾が二人の間を掠める。
「見つけたぞ!メイドも一緒だ!」
「本隊に通報。我、旗男を捕捉。交戦に突入せり」
「制圧射撃!メイドには当てるな!」
「旗男をヤレェ!」
コンバットかつ物騒なセリフが背後から飛び、次いでBB弾が次々と二人の周囲に命中する。
「きゃっ?!」
御坂の悲鳴。次いで繋いだ左手が離れる。
足を止めて振り向くと、御坂が転倒してるのがみえた。
「大丈夫か?」
「大丈夫、スカートが絡んだだけ」
御坂は、そう言って立ち上がり、真剣な目のまま微笑んでみせる。
「上条当麻!おとなしくその娘を解放しなさい!」
そんなムードをぶち壊し、少女の声が路地に響く。
振り向くと、身の丈の3分の2はある狙撃銃を背中に担いだ少女がいた。女子用の制服の上に、やたらとポケットがついたジャケット姿。被ったキャップには「shooting_freaks」の文字が刻まれている。
「それと。命令に従わぬ場合、私達は実力行使も持さないので、そのつもりで」
言を紡ぐ間にも、少し遅れてきたクラスメートたちが、元来た道を塞ぐように展開する。
能力者は少ないが、その代わりに皆小銃や機関銃のガスガンを装備し、おまけに統制が取れている。
「――」
「――」
御坂と目を合わせると、無言の頷きが帰ってきた。次いで、上条の左手が握られる。
「聞こえないの!?早くその娘を解放しなさい!」
その声を合図に、二人は回れ右し、再び駆け出した。
「動かないで!」
ポニーテールの少女の声が響くが、二人はそれを無視し、手を繋いだまま走り続ける。
瞬間、上条の眼前の地面が弾け、数瞬遅れて銃声が響く。
一瞬だけ振り向くと、ポニーテールの少女が体操座りの体制で狙撃銃を構えているのが見えた。
「なんで一般生徒が本物(実銃)もってんのよ!」
「射撃同好会の部長なんだよ!部員はあいつしかいないけどな!」
半ばヤケクソに解説しつつ、別の路地へと駆け込み、そして幾らも行かないうちに立ち止まる。
「「行き止まり?!」」
to be continue

366緑炎:2008/01/29(火) 04:41:42 ID:xCmc2a8Y
とりあえず今日はここまでです。

・・・改行とかタイトルとか誤字脱字とか突っ込み所満載ですが。見てあげてください。

367■■■■:2008/01/29(火) 22:37:27 ID:5UzDFQuM
お!久々の新作ですな。
GJ!

368■■■■:2008/01/30(水) 20:18:11 ID:ZrRTgTfU
久々ですなぁ、ほくほく

369■■■■:2008/02/08(金) 21:17:11 ID:pTfb2x6I
ひっさびさに来たら過疎ってんな〜。
でも新作は、GJ!!

370■■■■:2008/02/11(月) 18:22:33 ID:NMDRSCG6
盛り上がーれー 盛り上がーれー エスエスー

371■■■■:2008/02/14(木) 22:09:11 ID:Dz279olk
今日はバレンタインorz

372■■■■:2008/02/17(日) 12:57:33 ID:97LedPm.
過疎ってるからage

373■■■■:2008/02/17(日) 12:57:44 ID:97LedPm.
過疎ってるなぁ(苦笑

374■■■■:2008/02/18(月) 14:53:58 ID:lvaOCcOY
過疎ってる・・・
どこかほ他に盛り上がってるSS掲示板ってあるんですかね?

375■■■■:2008/02/18(月) 17:15:24 ID:3EpbyjA2
唯、とある魔術の禁書目録の新刊が無いから盛り上がって無いだけ

発売から一ヶ月・・・となると次回までの空時間は三ヶ月かな?

376■■■■:2008/02/18(月) 18:46:52 ID:OYcSioJw
電撃ブートレッグに4月までのが載ってたんだけど、
その中に禁書無かったから5月発売だと思う

377■■■■:2008/02/18(月) 19:56:37 ID:t5exTk3M
よっ四ヶ月・・・此処が過疎するのは見えた!

378■■■■:2008/02/18(月) 20:02:55 ID:cho6nC9k
そんなに過疎がイヤなら自分で書けばいいんじゃないかなぁ

379■■■■:2008/02/18(月) 20:32:36 ID:t5exTk3M
ネタが無いんだYooooooooooo

380■■■■:2008/02/18(月) 21:34:11 ID:Qs0RqNE6
>>379
問一。逆説。では、ネタを提供すれば書いてくれるのか?

381■■■■:2008/02/20(水) 15:19:25 ID:JK8jDGIQ
解一。ネタがあるなら御主が書いてくれ

382■■■■:2008/02/20(水) 18:19:34 ID:/mOIsHOw
回答一。何度か書こうとしたが、文章が下手なのであきらめた。黒当麻というコテハンで一瞬現れてた時期があったか゛な

383■■■■:2008/02/21(木) 04:40:25 ID:Wt2Gq/rU
新説一。ネタをお題として、テーマに沿ったSSを書いて貰えば良いのでは?

と思ったが、SS職人の数が足りないか。すまん、愚考であった。自己完結。

384■■■■:2008/02/21(木) 18:57:51 ID:kWB.klLo
提案一。ネタをお題にリレーで書いてみるかね?下手でもいいから

385■■■■:2008/02/22(金) 21:35:44 ID:A7BrOiCg
疑問一。なぜこの話し方で固定されているのだ?

386■■■■:2008/02/22(金) 23:11:11 ID:Rs3XXn6w
推論一。「ライトノベルの理不尽な〜」と同じような雰囲気が漂っているから。

387■■■■:2008/02/23(土) 08:37:08 ID:ew1Tx/8k
疑問二、>>385はそう言いながらもちゃんとやってる

388■■■■:2008/02/28(木) 18:02:59 ID:TnwCwfiA
強制終了。
しかし、過疎だ。
他の作品とのコラボでもなんでもいいから誰かSSをーー

389■■■■:2008/02/28(木) 22:11:36 ID:08.x9M32
本当に過疎だ

390エロパロ板 7-774:2008/03/04(火) 01:20:08 ID:zqllS7bE
向こうで謎のアクシデントがあって投下できなかったやつが通りますよ

391桃の節句と黒一点  ‐Girls’_Party‐:2008/03/04(火) 01:20:52 ID:zqllS7bE

「そっか、今日は雛祭りだっけ」
 ぽつりと、助手席に座る金髪碧眼の少女、フレンダが呟いた。
「え、そだっけ?」
「そうですね、今日は間違いなく3月3日です」
 運転席の浜面仕上が答えずにいると、後部座席の麦野と絹旗が反応する。
 ミラーでちらりと覗くと、静かではあるが滝壺も話を聞いているらしかった。
 ―――のんきに見えるこの一団は、ただの女学生の集まりではない。
 学園都市上層部の暴走を未然に防ぐことを目的とする秘密集団、『アイテム』。
 学園都市の暗部の中でも、その行動で科学サイド全体が左右されかねない、重要な組織。
 このときも任務が言い渡され、下部組織の構成員――要するに浜面仕上――の運転で、現場に向かっている
最中である。
 ……余談ではあるが。ここ最近、移動の際の座席配置は流動的になりつつある。
 以前はリーダーである麦野沈利が助手席で、残り3人が後部座席で少し狭そうに座ってる、という構図が定番だ
ったのだが、この頃はその時々で助手席の人間が交代している。
 麦野以外ではナビゲータ担当の滝壺が座ることが多いが、絹旗やフレンダもたまに座っている。そういった場合、
麦野はなぜか必ず運転席の真後ろに陣取っていた。きっと失言に対して制裁を加えるためだろう、と浜面は考えて
いる。一回ホントにチョークされたし。
「日付はわかった。んで、それがどうかしたの?」
「なんか、今気付いた自分が超オッサンくさくて自己嫌悪。仕事人間みたいでさ」
「………まーね。この頃変な仕事押し付けられること多いからね」
 自分も当てはまると気付き、急激にテンションが下がる麦野沈利、『アイテム』最年長(推定)。
「確かにここ最近仕事が増えてますけど、その中身は超どうでもいい雑用ばかりですし。
 正式な指示というより個人的な嫌がらせのような気がします」
 浜面は喉元まで出かかった「そりゃお前らのせいだよ」という言葉を、すんでのところで飲み込んだ。
 ……先月13日、『アイテム』の構成員たちが中心となってちょっとした騒動が起こっている。
 表向きは何事も無かったように取り繕われているのだが、任務放棄未遂とか器物損壊とか一般人への攻撃未遂
とか、実は『アイテム』の存続自体が危うくなるところだったのだ。
 結局、その『騒動』自体は被害者――本人はそう思っている――浜面仕上の尽力によってどうにか終息を迎えた
のだが、当時の行動を本人たちはさっぱり覚えていないのか、その日の出来事についてはまるで話題に上らない。
浜面としても思い返したら正気を保てない出来事なのでつとめて忘れるように心がけている。
 かくして学園都市の危機は去り、それを防いだ少年の活躍は誰にも語られることなく忘れ去られることになったの
であった、まる。
(………っと、いかんいかん)
 頭をふって、脳裏に浮かんだ記憶(きけんぶつ)を追い払う浜面。
 もし彼女達に思い出されでもしたら危険すぎる。あっという間に死の危険、具体的に言うと窒素パンチや不健康色
電子線が迫ってくる。
 せっかく平和に過ごしているのだ、わざわざ乱す必要は無いだろう。

392桃の節句と黒一点  ‐Girls’_Party‐:2008/03/04(火) 01:22:38 ID:zqllS7bE
「着いたぞ」
 仕切り直しの意味も兼ねて、浜面は停車しながら到着をアナウンスする。
「よし、それじゃあ行きますか」
 車から降り、目の前のビルに向かっていく『アイテム』の面々。
 ここから先は、彼女たちの領分だ。
「あ、そうそう浜面」
 今思い出した、とばかりに、麦野が振り返る。
「何だ」
「戻るまでの間にさ、お菓子類買い込んどいて」
「む、でしたらコ●ケヤの新作は超確保しておいてください」
「ポテトはコンソメ以外ねー」
「………いちごぽっきー」
 ―――繰り返すが、この一団はただの女学生の集まりではない。
 学園都市上層部の暴走を未然に防ぐことを目的とする秘密集団、『アイテム』である。



         桃の節句と黒一点  ‐Girls’_Party‐


                  1

「遅いよー浜面」
 浜面が手近なコンビニまで買い物に行き、再び現場へ戻ってきたころには、すでに任務は終わって
いたようだった。
「へいへい。で、どこまでだ」
「第3学区のホテルまで」
 助手席に乗り込みながら、麦野が行き先を伝える。
 後部座席にも3人が入ったのを確認して、浜面仕上は目的地に向けて車を出発させた。
 堂々と助手席に座るリーダーは、携帯電話を引っ張り出し、登録済みの番号に発信中だ。
 浜面には知る由も無いことだが、その番号は統括理事会が一人、親船最中のものである。
『ちょっとどこに掛けてるのよ?!』
 そんな番号に掛けたところで当然、別の声によって遮られる。
 普段は一方的に指示を出してくる『電話の声』の、裏技的な呼び出し方だった。
「あ、出た」
『「あ、出た」じゃないわよこいつときたら!! 用事があるときはこっちから掛けるんだから、変な呼び出
し方するんじゃないわよもー!!』
「はいはい判った判った。雑用(しごと)終わったから連絡したんだって」
『そのぐらいこっちでも把握してるわよ、いつもしないでしょそんな事。他に言いたいことは?』
「今日はもう『アイテム』の仕事はオフ。なにかあっても動かないから」
 その一言を聞くや否や、十分大きかった電話の声は『こいつときたらー!!』とさらに大音声を張り上げる。
『ただでさえこの前の件でカツカツだっていうのに! 直接怒られるのは私なんだからちゃんと仕事しろー!!』
 麦野は顔をしかめながら携帯を耳元から離していたが、叫び終わったところでまた電話を近づけた。
「最近は精力的に動いてたから大きな問題は残ってないって。さっきみたいな雑用は下っ端にでもやらせといて」
 それだけ言うと、麦野は尚も続く反論を無視して通話を打ち切った。
「…………いいのかよ、それで」
 無駄とは思いつつも確認する浜面。
「いいんだよ、これで。どうせ単なる嫌がらせなんだし」
 麦野のほうもあっさりと返す。実にいいかげんである。
 それよりさ、と、麦野沈利は言葉を続ける。
「パーっとやるよ、今日は。せっかくの雛祭りだし、最近のうさ晴らしも兼ねてね」

393桃の節句と黒一点  ‐Girls’_Party‐:2008/03/04(火) 01:23:49 ID:zqllS7bE


                  2


 ―――外は快晴。
 高級な調度は金銭感覚を麻痺させる。
 空調は常に完璧で、ソファーのクッションが日々の疲れを緩和させる。
 文句の付けようのない快適な環境。
 政治家たちの別荘ともいえそうなその一室は、しかし。

「おーい、はまづらぁ? 次持ってきてつぎー」
「なんだか超ユカイです、フレンダさんが二人になってます」
「ううぅぅ……結局、私なんて…………」
「…………ユゴスから銀の鍵?」

 いつにも増してやりたい放題な四人組によって、近寄りたくない魔境と化していたのだった……!

「……っつーか、なんだありゃ」
 直属の上司ながら目を背けたい状況に一瞬、浜面仕上の脳裏に「逃亡」の二文字がよぎる。
 だが当然、そんなことをしても逃げ切れるわけがない。
 後に残るのは『酔っ払いから逃げ出すも捕まり、粛清』という不名誉極まりない結果のみである。
 溜息と共に浜面はひなあられを口に放り込む。
 ………何が原因でこんな状況になったのか?
 ここに到着してから買い込んだブツを部屋まで運び込み、それでお役御免だろうと思っていた浜面は、
そのままいつものノリで雑用を申し付けられた。それでもこのときは、まだ普通のパーティに過ぎなかったはずだ。
 暫く後に補充命令が下り、パシリとして部屋から出る。このときホテル内部の店には置いていない商品が注文され
たことと、一時的な息抜きも兼ねて、浜面は外のコンビニまでのんびりと向かって行ったのだ。
 そして帰ってきた時には、すでに室内は魔宴の会場と化していたのであった。
(…………理不尽だ)
 外出の間に飲み始めたのは考えなくても分かるし、結果論とはいえ止めるタイミングが無かったわけではないのだ
が、今の浜面にはそこまで考える余裕は存在しなかった。
 ルームサービスで取り寄せたらしい洋酒のボトルが、部屋のあちこちに転がっている。
 四人で飲んだにしても多すぎる量に、浜面は今さらながらに不安を覚える。
(一応、様子を見たほうがいいか?)
 何もせずにいて被害が拡大した場合、その被害はまず真っ先に浜面に降りかかるだろう。それだけは御免こうむり
たい。
 不幸だ、とでも叫びたい気分になりながら、浜面仕上は動き出した。

394桃の節句と黒一点  ‐Girls’_Party‐:2008/03/04(火) 01:25:15 ID:zqllS7bE


                  3


 まずは手始めに、浜面は絹旗最愛の元に近づいた。
 『アイテム』内最年少(推定)の彼女は、外見から判断するととてもじゃないが酒が飲める歳ではない。
 健康という観点からすれば、まず真っ先に確認すべき人物であろう。
 深紅の液体をたたえたグラスを、両手に持ってちびちびとすすっている小動物チックな少女へと近づく。
「おい、大丈夫か」
「むむ、浜面ですか。三人に増えてキモさが3倍です。いつの間に超レベルアップしたんですか」
 光学操作(オプティック)ですか、などと、焦点の合わない瞳で呟く絹旗。
 完璧に出来上がっているようだ。
 これ以上飲ませるのはまずいだろう。
「人間大でそれだけの像が作れれば異能力(レベル2)はかたいです。超急成長ですから、頑張ればその
まま『アイテム』入りですね」
「あーはいはい、分かったからそれ以上飲むな」
 絹旗の話を右から左に受け流しつつ、浜面は彼女から手にしたグラスを取り上げる。
「むむむ、何なんですかいったい。いきなり取りあげるなんてひどいです。のこりも超もったいないじゃない
ですか」
「はいはい」
「ひゃっ?!」
 尚も言いすがる絹旗を無視して、浜面はこの酔いどれを抱え上げる。
 触れた瞬間に伝わる人体らしからぬ硬い感触は、彼女の『窒素装甲』(オフェンスアーマー)の自動防壁に
よるものだ。
 本当に無意識に発動してるんだな、と妙なところで感心しながら、浜面は絹旗を手近なソファーへと運んで
いく。
 この間彼女は抵抗らしい抵抗を見せなかった。
(やっぱり飲みすぎか)
 赤ら顔で「い、いきなりですか」とか「超心の準備が」とか支離滅裂なことを呟いているところを見るに、限度を
知らずに相当飲んでしまったのだろう。
 固い感触で少々分かりづらい力加減に苦戦しながら、浜面は絹旗をなるべくゆっくりとソファーに横たえた。
「寝てなさい。そしてもう飲むな」
「……………………………………………………………………え?」
 何故かきょとんとしている絹旗を置いて、浜面は行動を再開する。
 後には、さらにアクの強い三人が待ち構えて(?)いる。


                  4


 次に浜面が向かったのは、滝壺理后。
 いつもフラフラとしている彼女が酔っているとなると、実は相当危険ではないかと思われたからだ。
 決して、酒癖の悪そうな面子を避けているわけではない。
「滝壺?」
 見れば、滝壺はいつもと変わらないぼんやりとした様子で、グラスのワインをくるくると回していた。
 ほんのりと赤く色づいた頬、かすかに濡れる瞳には、普段には無い色気のようなものも漂っている。
(…………って、何見とれてるんだ俺は)
 気を取り直し、改めて近づく浜面。
 気付いていないのか無視しているのか、滝壺からの反応は無い。
 無意味に回していたグラスを止め、ポケットから小さなケースを取り出し、その中身をパラパラと振りまいたあと、
グラスを傾け―――
「待て待て待て待て!?」
 普通に飲んでるかと思えばこいつときたらー! と、電話の声のような感じで怒鳴る浜面。
 それに対して、滝壺の方はグラスが無くなってもすぐには事態が飲み込めなかったようで、
「あ、はまづら」
 などと、どこかピントのずれた返事をよこした。
「………お前、いつもこんな飲み方なのかよ」
「どこいってたの?」
 聞いちゃいねぇ。
 普段からマイペースな少女だったが、酒が入ってその度合いがますます酷くなっているらしかった。
「もう一杯、ついで?」
「……………『体晶』は無しだ」
 さっき取りあげた汚染済みのグラスは使えない。
 浜面はその場に滝壺を残し、予備のグラスを取りに行く。
 少し考えてから、一緒にミネラルウォーターのボトルも携えて戻る。
「…………………?」
 透明な液体……単なる水が注がれる様子に、首をかしげる滝壺。
「……もう一杯……」
「これ以上はやめとけ。体に毒だ」
 聞くかどうか分からなかったが、一応の忠告と共に、浜面はワインではなく水の入ったグラスを手渡す。
 滝壺は手元のグラスと浜面の顔を数回見比べた後。
「うん。はまづらがそういうのなら、そうする」
 柔和に微笑みながら、思ったよりも素直に、忠告を受け止めてくれた。
「――――――――っ」
 普段は表情変化に乏しい滝壺の、滅多に見られない笑顔に目を奪われる。
 だが次の瞬間には、滝壺はいつものぼんやりとした様子に戻って、水の入ったグラスをくるくる回し始めていた。
 なんとも複雑な心境を抱えたまま、浜面は次の行動に移ることにした。

395桃の節句と黒一点  ‐Girls’_Party‐:2008/03/04(火) 01:27:03 ID:zqllS7bE


                 5


 さてあとの二人は、と振り返った浜面の視界に、何か変なものが見つかる。
(……………………あれ、フレンダか?)
 場末の酒屋のような雰囲気を漂わせながら、金髪碧眼の少女がテーブルに突っ伏している。
 別に見知らぬ誰かに変身しているわけではなく、普段の女子高生然とした空気からあまりにかけ
離れているせいで、一瞬フレンダだと認識できなかったのだ。
 宙を眺める瞳に力は無く、なにやらブツブツと呟くさまは完璧にアル中のそれだ。
「………おーい、フレンダ?」
 警戒しながら……もはや何に警戒しているのか分からないまま、浜面は恐る恐る接近する。
「――――――」
「………………」
 こちらに振り向いたフレンダと目が合う。
 数秒の間何の反応も無かったかと思うと、
「――――――ぅぅぅうう」
 突如として大粒の涙を浮かべだした。
 思わず後ずさる浜面。だが近寄りすぎたのか、白く細い指が上着の裾をがっちりキャッチ。
「なに?!」
「ぅぅぅぅぅ………」
 服よ伸びろとばかりにぐいぐいと引っ張りながら、「きいてよはまづら〜」と絡みつく金髪少女。これは
本当にあのフレンダなのだろうか?
「結局さ、私のポジションよくわかんないんだって。
 切り込み役は絹旗だし、滝壺は追跡役だし、リーダーは押しも押されぬ超能力者(レベル5)だし、雑
用だったら浜面がいるし!」
 雑用決定に異議を申し立てたいものの、勢いに飲まれている浜面ではそれも能わない。
「どうなのよ実際、みんなバンバン能力使ってる中一人だけ道具を常備って正直選考基準おかしくない?
 っていうか結局私にはあわないんだってばこんなハードボイルドな環境は〜」
 もはやキャラが崩壊するほどのグダグダっぷり。
 一体なにが彼女をここまで追い詰めていたのだろうか?
「うう〜、平和な学園生活を返して〜」
 泣き崩れつつも裾を離そうとしないフレンダさん。
 浜面としてはどう対処していいか、見当がつかない状態だ。
 スキルアウトの連中で酒盛りになったこともあるにはあるのだが、その場合大概は襲撃成功の打ち上げ
で、その戦利品の中に混じった酒をチーム内で分けていたときである。学生の集まりであるスキルアウトに
は、自棄酒をあおるほどのアルコールの余裕は無かったのだ。勝利でハイになってる連中ばかりだったた
め、泣き上戸なんてほとんど見かけなかった。こんな少女に泣いて絡まれるなどもはや異次元である。
「ぅぅ……、ぐすっ……」
 どうしていいか分からないまま、とりあえず、浜面はフレンダの肩に手を置き、ゆっくりと頭を撫でてみた。
 フレンダは一瞬ビクッと身を竦ませたが、そのまま払いのけずにされるがままになっている。
 本当に、普段からは想像もつかない変わりようだ。あるいは普段は空元気に過ぎず、涙とともに弱音を語る
この状況こそが、この少女の本来の姿かも知れなかった。
 少しずつ、フレンダの緊張がほぐれてきたのが伝わってくる。
 ずっとこうしているわけにもいかないと、浜面が口を開く。
「……まあ、落ち着くまでは―――っ?!」
「ひぅっ?!」
 浜面が言いかけた言葉は、周囲からの異様な気配によって中断を余儀なくされる。
 フレンダもそれは感じたらしく、あれほどしっかり握っていた手どころか、擦り寄っていた体ごと一瞬で飛び
退いていた。
(な、何だ今のは?!)
 激しく疑問に思いながらも、浜面は振り向くことが出来ない。
 情けないなどと思う無かれ、勝ち負けにこだわったら行きつく先は死である。
 路地裏のルールは冷徹なのだ。
「わ、私疲れたみたいだし、もう寝るね。うん、飲み過ぎかも」
 彼女もそれは良く分かってるようで、早々に隣のベッドルームに退散するようだ。
 てか逃げたなフレンダ。
 残された形になる浜面は、無視するわけにもいかず、先程の気配の方にぎこちなく向き直った。

396桃の節句と黒一点  ‐Girls’_Party‐:2008/03/04(火) 01:28:16 ID:zqllS7bE



                 6


「はーまづらぁ」
 それは、地の底から響いてくるような、声だった。
 もちろん実際には麦野沈利の声であり、普段より多少低めでドスが効いている程度なのだが、今の浜面の心境
からすればまさしくそんな感じだったのだ。
 ……どれ程の酒精を飲み干したのか。
 ここに座れと手招きする麦野の目は、完璧に据わっていた。
 これ以上この超能力者(ぼうくん)の機嫌を損ねないよう、ボトル片手に早急に馳せ参じる。
「さっきからわたしが呼んでるってのに、どーゆうつもりぃ?」
 麦野の表情は尚も不機嫌そのものだ。
「わたしが呼んでるんだからさっさとこいっつーの」
「……………………」
 表情は不機嫌そうなまま、なのだが。
 なんかどう聞いても、声にはさっきほどの迫力がない、ような。
「おーい、はまづらぁ? きこえてんでしょー?」
「……………………あ、ああ。聞こえてる」
「んー、ならよし」
 数秒前までの空気はどこへやら。
 最悪とも言えた麦野の機嫌は、『六枚羽』もかくやという速度で急速に良くなっていた。
 おびえて逃げ去ったフレンダが哀れに思えてくる。
「ほら、注いで」
「…………へいへい」
 浜面は結局、お酌担当になったらしかった。
 ここで断って無意味に不機嫌にする必要はないだろう、と判断し、特に反対はしなかった。
 情けないと思う無かれ以下同文。
「んー、なんかさっきまでのワインと今のワイン、味が違う気がする。あれー?」
 いつか聞いたような調子で、麦野は違いなど無いはずのものに対し、本格的に疑問を持って首を傾げだした。
「もういちど飲んだらわかるかも。はまづら、もう一杯」
 まるっきり飲んだくれの言い分である。
 浜面が苦笑しながら注ぎ終わると、麦野が浜面の手からボトルを取り上げた。
「お、おい」
「ほらほら、はまづらもグラスだして」
「グラスってお前」
「あんたも味をたしかめるの。おーけい?」
 言ってることは支離滅裂で、どう評しても酔っ払いのたわごと、なのだが。
 これだけ楽しそうにしている麦野の提案(めいれい)を断る術は、浜面には存在しなかった。

 ―――まあ、たまには羽目を外してもいいか。
 殺伐とした学園都市の暗部にいようが、休息があってはいけないなんて決まりは無い。
 これから明日まで半日ぐらいは、のんびりしていてもいいじゃないか。

 そんなことを考えつつ、後ろからの誰かの視線を勤めて気にしないようにしながら、浜面仕上はグラスをつき合わせた。

397エロパロ板 7-774:2008/03/04(火) 01:31:35 ID:zqllS7bE
以上、本来埋め立て用のネタでした。長々と失礼いたしました。
どういう理由か何回やっても書き込めなかったのは、一体何が原因なんでしょうか?

398■■■■:2008/03/04(火) 02:03:48 ID:OkZlRW6w
GJ

399■■■■:2008/03/04(火) 02:53:02 ID:RFCMb4FQ
久々にグッジョブ

400■■■■:2008/03/04(火) 04:39:35 ID:6JhPG3a.
なにこのフラグ総立ち具合…GJ
あのカッコいい浜面がしかもエロカッコ良く麦を押しとどめでもしたかのよーだ。




というか あの後チョコ食って何があった

401■■■■:2008/03/04(火) 23:24:51 ID:yvE6DDZA
ところどころFateの影響受けてるって言うかあんまり元の文から変えてないところあるのが気になった。
ネタは面白いからあとは自分の文を確立すればもっと良くなると思う。

402■■■■:2008/03/05(水) 01:03:04 ID:TFSteIp6
今更月厨が出てくるか……
それに関してはこっちも色々言いたいことはあるが荒れるので黙る。

泥沼化するのでそちらも控えてくれると助かる。

403エロパロ板 7‐774:2008/03/05(水) 09:17:46 ID:YUOrwn26
>>401-402
ついカッとなってやった
今では反省している

ニヤリとする人が少しでもいれば、と書いたつもりでしたが、そりゃあ不味いですよね冷静に考えれば。
騒動になる失言をした人物の気持ちが今なら分かる気がします。
滑ったジョークを眺めるように、寛容の精神で受け流して下さい。

スレ汚し失礼しました。窓から帰ります

404■■■■:2008/03/05(水) 10:36:07 ID:TFSteIp6
>>403
あっと、申し訳ない。誤爆だった。402は勘違いだったので忘れてくれ。
うん、重ねて謝る

405■■■■:2008/03/05(水) 23:42:22 ID:TLl8YCV2
何かの改変SSなら改変だと
前文かどっかに書いとけば良かったね

406■■■■:2008/03/11(火) 15:37:45 ID:cjl3OHfU
カモーン!

407(今更帰ってきた)とある忘却の再認識:2008/03/11(火) 18:48:56 ID:l3tz6/52
 驚くべきことに、上条の意識は再び浮上した。
 ――奇跡、というわけではないのだろう。そんなものはとうにこの右腕に殺し尽くされている。
 ステイル・マグナスがうまくやったのか、或いは――
 上条は近くも遠くもない距離に立っている人物を意識した。
 この場で唯一、平常時の呼吸を保った彼女――食い倒れ巫女こと姫神秋沙のおかげ、なのだろうか。
 この状況で、それでも動じている様子はない。感情が枯死しているのだろうか。そんな危惧を抱いた上条の耳朶を、姫神の声が震わせた。

「――どうして」

 動揺の意を孕んだ――一般的な感覚からすれば無感情極まりないのだろうが、それでも少しだけ、揺れていることを感じさせられる声で、疑問を投げかけられた。
 辺りの血まみれの塾生を――顧みもせず。
 ただ姫神秋沙は、上条当麻にだけ、言葉を投げかけた。
「どうして。きみが。ここにいるの?」
 そこまでボロボロになって。そんなニュアンスを含んだ言葉に、違和感を覚えつつも上条は思う。
 どうしてだろうか。たかが一回、ファストフード店で相席しただけの人物を助けるために、何故自分はここまで必死になってしまっているのだろうか。
 噎せ返るほどの血の臭いの中、上条は思う。
 インデックスと引き離されないようにするため? それもあるだろう。姫神秋沙を救出することができなければ、今の生活は終わる。『記憶を失った上条当麻』の原点たる、インデックスを悲しませたくない、という思いも、破れてしまう。――だが。
 だが、それだけの理由か、と問われれば上条当麻は、上条当麻という名を持った一人の記憶喪失者は、首を横に振るだろう。かといって、突入前に抱いた、漠然とした『助けたい』という思いも、理由としては薄い。
 上条が――そう、上条当麻がしたかったことは。
「姫神。手を、出してくれ」
 絶えるのではないかとさえ思える呼吸をどうにか繋ぎながら、上条はポケットの中を探る。横たわりながら行うその作業は、目当ての物に指が届くその瞬間まで、上条に酷くもどかしい思いをさせた。
 そんな上条を不審に思いつつも、姫神は上条の言葉に従う。躊躇い、そして覚悟を決めたかのように揺らぎなく、ゆっくりと白い手が伸ばされた。
 その、伸ばされた手を見て、上条は純粋に、美しい、と感じた。
 そして、その手の平に、上条はそれを握った右手を伸ばした。

408(今更帰ってきた)とある忘却の再認識:2008/03/11(火) 18:49:33 ID:l3tz6/52

 戦闘を終えたステイルは、いつものように煙草に火をつけた。タールとニコチンのない世界を地獄と言う、などといつも口にしているステイルにしては珍しく、気の乗らない一本だった。
 煙草を覚えたのはいつのことだったか。覚えてはいなかった。ただ、そのきっかけだけは覚えている。
 ――この煙はな、死者への手向けなんだ。
 それは、かつて共に仕事をした、中年の魔術師が言った言葉だった。彼が何を思ってそんなことを口にしたのかは覚えていない。今にして思えば、彼が十字教の信徒だったかどうかすら、怪しいものだ。――しかし。
 しかし、いつの間にかステイルは煙草を吸うようになっていた。戦闘という区切りを終えた後に、一本。勿論それ以外のときも煙草を吸うのだが、ステイルにとって、戦闘後の一本は特別だった。愛煙家に感化された。言ってしまえばそれだけなのだろう。だが、ステイルはそれでも、喫煙という習慣を続けている。
 ちょうど、煙草の箱が空になった。目の前の黄金に背を向けると、自動販売機が見えたので追加で買っておこうと思った。タールとニコチンのない世界は地獄だ。彼も言っていたその台詞を呟きながら財布を取り出す。当然のように十字を施されている財布から硬貨を取り出そうとして、ステイルは舌打ちした。
 足らなかった。ステイルの所持金は決して少なくはなかったが、それらの多くは一万円札だ。滞在時の経費として支給されたのだから不思議はない。しかし、ステイルは予め煙草代の分の小銭を用意していた。だというのに――足りない。ステイルは、記憶を辿った。そして、思い出す。
 自らの疑問に納得のいく回答を出したステイルは、財布を仕舞い、歩き出す。そもそも、学習塾の自動販売機で、煙草は売っていないだろう。そんなことにも、思い至りながら。
 ステイルは加えていた最後の一本を、半ばまで吸った後で先端の火を揉み消した。
 ――ステイルに煙草を教えた中年の魔術師は、その仕事の際に死んでいた。



 上条は、姫神の手に自らのそれを重ね――ずに、その手の平に、ある物をのせた。

 ――百円の、硬貨だった。

「貸してくれ、と言っていただろう?」
 意図してか否か、上条は本来被るべき『上条当麻』という人格を模倣することもせずに、静かに笑ってそう言った。
 そう、上条はこのために、姫神に百円を貸すために、三沢塾へとやってきたのだ。
 そのために、ここへくる途中にステイルから百円を借り、今ここで血まみれになっている。
 上条は今、そう言い切ることができた。
 姫神はそんなことが理由であると考えもしなかったのだろう。呆然としている。
 そんな姫神を見ながら、上条はここに至るまでを思い出して笑う。
 家に帰ったときに取ってくればいいものを、ちょうど百円の硬貨がなかった、というだけで諦めたり。
 それでもどうしても必要だからと、道中でステイルに頼み込んで百円を借りたり。
 百円硬貨のために、どれだけ苦労をしているというんだろう、自分は。
 自身に対する呆れを感じながら、それでも『記憶を失った上条当麻』は満足だった。

 ――何故なら、姫神が傍から見てそれと分かるほど、表情を変えていたのだから。

409Haeresis044:2008/03/11(火) 18:55:36 ID:l3tz6/52
 ……すみません。本当にすみません。
 文芸部の活動のほうが忙しかったとかその他諸々の事情はありますが言い訳にしかならないので割愛するとして。
 自分でも、ここまで間が空いてしまうとは思っていませんでした。ちょっと忙しいから先送りにしよう、程度の気持ちだったのですが。
 さておき、学年末試験も終わってどうにか最新話を書き上げることができました。
 これからも何とか続けていけたらいいな、と思っています。
 ……いや、これから受験勉強をしなきゃいけないんですけどね? 合間を縫って、何とか。


試験終了の開放感に酔いながら

Haeresis044

410■■■■:2008/03/11(火) 22:14:41 ID:oiFAnjAY
GJです。
受験勉強も頑張れぃ

411■■■■:2008/03/12(水) 11:50:47 ID:9nijkaCo
>>409
遅ればせながらGJ!

つーか文芸部だったのか。オリ書いて二次書いてテストもして、とは物好きだなw俺も人のこた言えないがw

412■■■■:2008/03/17(月) 18:26:46 ID:YnEw56kM
>>409
GJ!です!
&、……だれか!過疎をとめてください!!!

413■■■■:2008/03/18(火) 12:04:14 ID:qtv3v5qY
三月はみんな忙しいからねぇ…

414■■■■:2008/03/19(水) 13:29:13 ID:twxy9h2Y
何かネタが欲しい・・・。

415■■■■:2008/03/19(水) 16:15:15 ID:JXloWlTY
入学前の当麻が卒業式の直後に泣きまくってる子萌を必死にあやそうとするとかいう電波を発信してるのは誰だ

416■■■■:2008/03/19(水) 16:47:14 ID:6bNP8Fg2
吹寄さんが上条さんに冷たく当るのは、中学時代に一度助けられた事があったの
だが、その事を上条さんがすっかり忘れてたから、というのは既出ネタですか。

417■■■■:2008/03/21(金) 11:09:36 ID:OzjkznMI
>>416
俺は見たことないぜ

418■■■■:2008/03/21(金) 12:13:30 ID:P3.ejXVA
>>415
お前だ
>>416
見たことない

419■■■■:2008/03/21(金) 20:09:29 ID:uW7VVXUE
その話見てみたいな

420■■■■:2008/03/22(土) 20:52:52 ID:mV3vBgBA
過疎かい?

421■■■■:2008/03/23(日) 14:21:47 ID:Ycjbf40U
?いか疎過

422■■■■:2008/03/23(日) 17:19:21 ID:2XFimBvI
あのリレー小説スレはどこへ消えた……
やるならこのスレでやれって無言のお達しか?

423■■■■:2008/03/23(日) 19:13:59 ID:RQFWpimE
もっかい立たないかな
リレー小説

424■■■■:2008/03/26(水) 15:05:41 ID:WCklI9ac
リレー小説スレ立ったぞ

425■■■■:2008/03/26(水) 18:04:56 ID:1.MoPrTo
随分離れたけど Deep bloodさんもう来ないのかなあ?

426■■■■:2008/03/27(木) 18:54:13 ID:2fKbUM2E
Deep blood は自分も読みたい

427■■■■:2008/03/27(木) 22:51:47 ID:oHX1pYRA
正確には DEEP BLOOD さんだった。月姫(メルブラ)とのクロス書いてた人。

428■■■■:2008/03/29(土) 10:16:23 ID:YZQ34D5c
幻想きょうにいかれたのかな。

429■■■■:2008/03/29(土) 18:07:32 ID:5r5Us5ZY
どこのこと?

430■■■■:2008/03/30(日) 02:11:33 ID:jNroM0YM
夢に満ち溢れたところさ

431■■■■:2008/03/30(日) 02:13:18 ID:POwW1XB6
それってここじゃないか。

432■■■■:2008/03/30(日) 10:07:10 ID:UxxyimIA
この流れにワロタ

433■■■■:2008/03/30(日) 22:25:56 ID:a2jpUDw2
11巻の再構成で上条とイタリアに行くのが禁書ではなく美琴っていうifストーリー
の電波が来た。

434■■■■:2008/03/31(月) 13:34:54 ID:hxxBzgR.
その場合、美琴がオカルトに
詳しくするか、しないのかが問題だな。

435■■■■:2008/03/31(月) 19:19:06 ID:mOTOrAKo
普通に考えると詳しくないと思う。地理とか観光名所なら詳しいかもしれないけど。あと、それだとオルソラと話したところでドロップキックされる可能性大。

436■■■■:2008/04/01(火) 00:36:00 ID:FLPZrmUc
つまり、旅行が当たった時、たまたま近くを通った美琴に知られて罰ゲームがその旅行に連れて行く
事になってしまう・・・ってことですか?
なんか凄い真っ赤になりながら「旅行に連れて行け!」言ってる姿が浮かびました

437■■■■:2008/04/01(火) 10:05:56 ID:gXedXzT2
なんだか、もの凄く良いネタだな。
試しに書いてくるw

438とある第三位の新婚旅行:2008/04/01(火) 11:38:21 ID:gXedXzT2
序章 罰ゲームは海外旅行①  


 上条当麻は不幸な少年である。それはこの七日間を振り返るだけでも明らかである。
誰でも分かる。
能力者同士がぶつかり合う大覇星祭に無能力で挑むだけでもキツイのに、いつの間にか学園都市を救うために奔走することになっていたり、
小萌先生の着替えを目撃してしまったり、デコクラッシャーを喰らったり、ドロップキックを喰らったり。
と、まあ不幸の総合商社なのである。
また、それを友人に話しても決して不幸とは認めて貰えないのも不幸な点であると言っておこう。

閑話休題。

上条当麻は不幸であるからして、
「えー、来場者ナンバーズの結果。あなたの指定数字は一等賞、見事ドンピシャです!
賞品は北イタリア五泊七日のペア旅行、おめでとうございます!!」
めでたいことなど、あり得ないわけである。

そもそも、上条が来場者ナンバーズの屋台に立ち寄ったのにしろ当選の確認をしに来たのではなく
参加賞のボックスティッシュを受け取りに来たのだ。
もちろん、上条とて「八等の食事券とかが当たったら、第四学区でインデックスと美味い物でも食いに行こう」ぐらいの淡い期待を
抱いていなかったわけではない。
いつも不幸な上条だってそれぐらいの幸運は有ってもいいんじゃないかと思ったわけだ。
だが、現状はどうだ。

「あのー、一等賞ってあの一等賞ですよね?」
「ご質問の意味が分かりかねますが」
「一等賞って一番運のいい人が当たるあの一等賞なんですよねっ!?」
「えっと、もう行ってもいいですか」
「いやだってさ、一等賞だろ!?飛行機に乗ったら意味不明な宗教団体の巣窟だとか、飛行機が試作機で爆発とかじゃなく!?」
「……後がつかえてるので、この辺で」
「あ、いや、もう怖すぎるからこの際四等ぐらいにふりかてもらうとか……。!!わかった。わかっちまったぜ。
ハハハ。危うく騙されるところだった。危ない危ない。ふふ。霧ヶ丘女学院がお嬢様学校だからって油断していたぜ」
「……今度はなんですか?」
もう完全に受付の女の子は上条を可愛そうな目で見ていた。
「これ、全部ドッキリってことだろ!なんせ、これ投稿日がエープリールフールだし。ああ、危ない。騙されるところだった。
で、カメラはどこ?」
もう完全に電波の入ってしまった上条は意味不明なことを喚いている。
「あの、もう本当に後がつかえてますから……」
受付の女の子はビビってしまって最後まで言えなかった。
ただし、ビビった相手は上条ではなく、その後ろの学園都市第三位だったわけだが。



「あんた、そんなに四等のノートPCが欲しいなら、私の四等と変えてあげようか。
つうか、早くどけ」
上条の後ろに仁王立つのは両手に電撃を迸らせた御坂美琴であった。
「ああ。こういう不幸ね」
上条は納得したかのように呟いた。

もっとも、それを彼の友人に話しても誰も納得してくれないわけだが。

かくして、物語が幕を開けるのでありました。

439■■■■:2008/04/01(火) 12:09:06 ID:rMSLF85o
>>437
wktkして待ってますw

440■■■■:2008/04/01(火) 12:30:27 ID:28eX9I2M
超wktk
続きを待ってます!

441■■■■:2008/04/01(火) 18:29:40 ID:woFv6jIQ
美琴さんの火力なら女王艦隊相手でも正面から戦えそうだな。でも海の上だとみんな感電したりしないか?

442とある第三位の新婚旅行:2008/04/02(水) 22:34:48 ID:55AMBMAM
序章 罰ゲームは海外旅行①

「あんた、そんなに四等のノートPCが欲しいなら、私の四等と変えてあげようか。
つうか、早くどけ」
その声の主は酷く嬉しそうだった。
ネズミを見つけた猫とか、晩ご飯を前にしたインデックスとか、美少女と街角でぶつかってしまった青髪ピアスとか。
そういうなんかもう、捕食者独特の余裕である。
ギチギチギチと、嫌な音を立てながら振り向いた上条は既に逃げ腰だった。
「何の用でございませうか?」
体を走る静電気のためか、パチパチという音を絶えず響かせ、綺麗な茶色に染めた短髪をふわっと浮かせながら立つ少女は
どう見ても絡んでくる気が満々である。
「そうねぇ。色々と言いたいことはあるけど、とりあえず約束事からいきましょうか」
「約束?俺がお前と?何かあったっけ?」
「あったっけって、あんたねえ!そんな投げやりな」
しらばっくれた様子もなく、ごく普通に思い出せない様の上条に御坂はいらついた。
因みに、彼女が罰ゲームを考えるのにウンウン唸って黒子に(スキンシップを含む)心配をされたり、
実は負けた方が良かったかもとか真っ赤になりながら考えたりしたことは秘密である。
「罰ゲームよ!罰ゲーム!まさか忘れたとは言わせないわよ!」
「罰ゲーム?ああ、そういやあったな。そんなの」
上条の大覇星祭はそれどころではなかったから完璧に忘れていた。
「ふふふ。良い度胸じゃない」
パチパチという音があからさまにバチバチという危険な音に変わる。



「待った!タイム!別に忘れてだだけで従わない訳じゃないぞ!うん!今思い出した!
思い出しましたー!」
上条の必死の言い訳も空しく、御坂から学園都市随一の電撃が放たれた。
もっとも、突き出された上条の右手が避雷針の役割を果たしたため被害は一切無かったのだが。
一歩間違えれば黒こげである。
「ふー、ふー」
渾身の電撃を放った美琴は起こった猫のような声を上げて肩で息をしている。
「お、お前しゃれになってないから!」
「うるさい!黙って食らえ!」
「食らえるか!」



 一頻り愉快な喧嘩が行われた後。
「ま、まあいいわ。それよりも罰ゲームよ、罰ゲーム」
「……今ので十分罰ゲームじゃねえか?」
「いいえ。まだまだ足りないわ。とりあえず、直ぐには思いつかないわね。そうね。
とりあえず明日一日中私に付き合いなさい。待ち合わせ場所は……」
それを聞いた上条は一度封筒を見やり、ニヤリと笑った。
「残念でしたー。上条さんは明日から『北イタリア五泊七日の旅』なのですよ。
という訳で、それはまた別の機会に……」
上条としては、美琴の思い通りにならないだけでもしてやったりというところだったのだが、
上条の行動はいつだってさらなる不幸を招くのだ。
「そう。それは困ったわね。七日もいなくなるなら今のうちに決めてしまわないと」
「あれ?なんか変な方向に行ってません?」
「決めたわ。その旅行、私も行く」
「…………………………………………………………………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………………………………………………………………はい?」
そっぽを向いた美琴の顔は見事なまでに真っ赤であった。

443とある第三位の新婚旅行の中の猫:2008/04/02(水) 22:38:22 ID:55AMBMAM
短くてすまぬです。
大筋として、美琴と上条と禁書目録の三人で旅行するお話になるかと思います

444■■■■:2008/04/02(水) 23:37:37 ID:u1Ve1OJQ
GJですw
この先の顔真っ赤のミサカが大好きだったりww


ところで上条のあのツンツン頭って地なのかな?

445■■■■:2008/04/03(木) 08:29:40 ID:UdMlsmzE
GJ
ですが『五泊七日』ってなんか変だと思うのは僕だけ?(´・ω・`)
普通は六泊七日か五泊六日かと(苦笑

446■■■■:2008/04/03(木) 10:16:08 ID:.XcDcdmc
日付変更線をまたぐとか終了が深夜とかだっけ?
存在は知ってるけど参加したことないんで詳しいことは知らない俺

447■■■■:2008/04/03(木) 11:02:36 ID:R7VyyI0Y
日本からイタリアまで13時間くらいかかるらしいから
飛行機内で一泊する分をぬいて五泊七日になるとか?

同じく参加したこと無いんでよく知らない

448■■■■:2008/04/03(木) 13:54:22 ID:BpMro4/Y
ペアってことは美琴は自腹か?

449■■■■:2008/04/03(木) 16:47:12 ID:UdMlsmzE
普通に上条のペアチケットで行くんじゃね?

450■■■■:2008/04/03(木) 17:17:55 ID:yEGINN4U
とある風紀の活動日誌、いっきまーす

前章は>>201-226

第六話     破滅狂走曲 第惨番 破綻調

第二章 ネコ科の魔術師は愛に生きる

  ▼スキルアウトA 01

 最初は鳶か何かの鳥だと思った。
 八月三十一日、日暮れ時の事だ。
 私は十九学区にいくつもある住居用の路地裏から少し外に出て、大きめの通りの歩道に
座り込んでいた。
 この学区には、学園都市としては古い町並みが広がっている。
 耐久年数が低い、粗い目のアスファルト。
 光触媒の含まれていない、くすんだビルの外壁。
 何よりも目に付くのは、風力発電機の代わりに点在している電信柱だろう。そびえ立つ
ビルとビルの間に覗く夕暮れの空を寸断する電線は、最先端技術が溢れるこの街にはここ
以外に見る事ができないものだ。
 取り残され、見捨てられ、ただ寂れていくだけの場所。しかし私は、どこか生まれ故郷
を思い出させるこの眺めを気に入っていた。
 それを失わせずに済んで、良かったと思う。
 三ヶ月前、この学区は全面的な再開発のために無人状態にされた。その隙を、私達スキ
ルアウトが突いた。
 無能力武装集団(スキルアウト)。今では単なる不良集団の代名詞となってしまっている
が、その元は強大な力を持つ能力者達から身を守るために無能力者達が結成した組織だ。
 外界から隔絶されたこの街における強さとは、すなわち能力に他ならない。統括理事会
は『学生の六割はスプーンがやっと曲がる程度の無能力者』という広報を行ってはいるが、
よく考えてみればあの金属棒をひん曲げるには結構な力が必要なのだ。それに、そのスプ
ーンだってどんな金属で作られているのか知れたものじゃない。どの程度で『曲がった』
としているのかもはっきりしていない。学園都市特製超合金のスプーンを蝶々結びさせて
おいても、それを『スプーンを曲げた』と言っているのかもしれないのだ。
 さすがにそこまでの事はないだろうにしても、能力というのは人間の力の及ばないよう
な強さを持っている。
 そして強さを持った人間は得てして傲慢になるものであって、弱者を虐げる場合がある。
 私が、そうだった。
 と言っても、自分は虐げたのではない。
 虐げられたのだ。
 『読心能力(サイコトメリー)』。私がこの身に発現した能力は、人の心を覗き見する力
だった。とはいえ、実際には、『読心』なんてレベルの情報量を感じ取る事はできないし、
それを処理するだけの脳も持ってはいなかった。目をこれ以上無い程に凝らしてようやく、

451■■■■:2008/04/03(木) 17:19:14 ID:yEGINN4U
快か不快か、人の心の最も基本的な感情が分かる程度だ。そして、それ位なら普通の目で
見るのと変わりなど無い。
 しかし、周りの人間達はそうは思わなかったらしい。読心系の能力は希少な方の力で、
一般的な認知の度合いが低かった。
 最初にその事について思い当たったのは、中学生になってからだった。
 ある日教室に入ると、固まって喋り合っていたクラスメイト達の動きが止まった。その
時は一瞬の事にすぎなかったが、それこそはいずれ舞い来たる日々の予兆に他ならなかっ
るという事が無くなり、私が話し掛けるとその場の温度が下がるようになり、会話に参加
しても相手にされなくなり、一番の親友からはあからさまに避けられるようになり、つい
には誰からも完全に無視されるようになり――初めて人を病院送りにしたのは、押しつけ
られたゴミ袋を運んでいる途中に足を引っ掛けられて転ばされ、その拍子にぶちまけられ
た屑に紛れていた回し手紙が目に入ってきた時だった。
 それから私は学校へ行かなくなった。受験なんかしていなかったので、卒業するはずだ
った日が来てから数日後、寮を追い出されて真っ当なスキルアウトになった。
 もし今も普通の人生を送っていれば、と思う事が無いわけではない。
 しかし私は、今の生活も決して悪くはないと考えている。
「空を見るのが、好きなのか?」
 背後からかかってきた声が、その理由だった。
「何となく、いっつもそうしてる感じがするな、クミは」
 それも仕方ないかもしれない。私が初めてタカに会った時も、私は空を見上げて何を考
える事もなく呆然としていたのだから。
「うーん、別に、特に好きってワケでも無いんだけど」
 つれない言葉とは裏腹に、私の心は弾んでいた。
 私なんかが今までスキルアウトとしてやってこれたのは、目の前にいる男のおかげだっ
た。タカは住む場所を失って裏路地に倒れこんでいた私の前に現れ、スキルアウトとして
の簡単な仕事と居場所をくれた。
 私にとっては、もっと別のものを与えてくれる存在でもあるのだが。
「そういうタカだって、結構空眺めてんじゃん」
「んー、まあなー。だってさすがに、一日中天幕に覆われてちゃかなわねぇよ」
 スキルアウトは路地を挟むビルとビルの間に色とりどりのビニールシートで天幕を張っ
て生活する。学園都市を遥か上空、大気圏外から監視する人工衛星の目から逃れるためだ。
こうすると、どこで何かをしているのは分かるが、“何を”しているのかまでは分からなく
なる。これらは月に一度の頻度で警備員等に強制撤去されるのだが、私たちはそれと同時
にまた別の場所に天幕を張り、意図的にイタチごっこの構図を築く。

452■■■■:2008/04/03(木) 17:19:51 ID:yEGINN4U
 一つを壊されては一つを作り出す。簡単に捨てては、簡単にやり直す。
 それがスキルアウトの本質。
 住みかを荒らされれば別の場所へ移り、本拠地が壊されればすぐ近くに別の居場所を作
り、組織が潰されればあぶれた仲間を集めて新たな組織を結成する。
 それが私たちのやり方……だった。
 しかし、疲れてしまったのだ。
 いくら作りあげても作り出しても、阻まれ、壊され、潰される螺旋に。終わりの見えな
い堂堂巡りに。
 だから私たちは十九学区を占拠することにした。
 朽ちない、変わらない、擦れ尽きない平穏を手に入れるために。
「もうすぐ、なんだよね」
 夜と夕暮れが同居する空を見上げて呟く。
 ん?という顔をこちらに向けるタカに、確かめるように聞く。
「もうすぐ、ここは私たちのものになるんだよね。そうしたら、私たちはもっと自由に生
きられるんだよね」
「ああ」
 答える彼は、笑顔だった。
「そうだ。もう少しだ。もう少しで、俺たちは自由を手に入れる。そうすれば、もう天幕
の下で生活する事なんて無くなる」
 その声は、何よりも頼もしかった。私は心身が暖まるのを感じた。
 それを誤魔化すようにして、一つの話題を持ちかける。
「ねぇ、そうしたら、まず最初に何したい?私は、フカフカのベッドで一日中ゴロゴロし
てみたいなぁ」
「そうだなぁ。確かに、それだけゆっくりしてみたいもんだなぁ。俺は、そこにテレビも
欲しいかな。別に面白い番組があるわけでもないのに、ただ何となく付けておくだけのや
つ」
 彼の答えが私の望みに付している随ことに、またもや何かが溢れ出し、それこそ極上の
毛布の包まれているような気分になる。
 そして私は、そんな気分を保ちながら空を見上げ――
 ソレに、気付いたのだった。

 ――……ぉぉん

「ん?」
 どこからか、震えるような響きが聞こえた。
「どうした?」
 タカには聞こえなかったようだ。
「うーん……なんか、変な音しなかった?」
「変な音?」
 警備員たちがやってきた可能性を考えてだろう、彼は急に警戒した姿勢になる。
 そのまま路地に転がればよかったのに、私はその入り口をつくる建物の角に向かって回
転した。直線的にぼやける視界の中で危険を感じて身を固くする。が、体に感じたのは思
っていたような衝撃はではなかった。思わず瞑っていた目を開くと、タカが私の体を受け
止めていた。
「大丈夫か?」
 そう言いながらも、目線は私を見ていない。体に触れている腕は硬直していて、全身に
警戒を漲らせている事を知らせる。
 私は無様に転がった状態から身を起こし、突然やってきた乱入者を見た。
 ソイツは、たった今着地した場所から一歩も動いていないようだった。あっという間に
吹き飛ばされていたのにそれと分かったのは、クレーターのようにえぐられた地面のため
だ。
 直径2メートルはあろうか。外気に触れる事の無かったアスファルトとその下の土くれ
が掘り起こされている。
 その荒地の円の中心に、ソイツは堂々と立っていた。その奇妙な出で立ちに、私は眉を
ひそめた。
 数十メートルという高さから着地し、もはやつるつるのクレーターの中心部に突き立て
られた両足は、何も履いていない、全くの素足だった。少し大きめの、薄っぺらなハーフ
パンツに、同じくサイズの一つ大きなノースリーブで上半身を覆っている。広い首回りの
上に乗っかっている顔は、縮れたボサボサの癖っ毛が上半分を隠していて、表情は伺えな
い。
 何よりおかしいと思ったのは、首にぐるぐると巻かれた鎖と、両手に握った二本の金属
バットだった。
「それはどの方向からだ?」
 私は座っている体の向きそのままの方向を指差した。
「……でも、多分気のせいだと思うよ……?」
「なら、いいんだけどな……」
 腰を浮かしかけていたタカはゆるゆると座り直す。
 その姿を視界の中心にもってきた時、私は端の方に何かを見付けた。その方向、直前ま
で指差していた広い道路の向こう側を再び振り返る。
 左右に続く二点遠近法の道路と、それに沿って立ち並ぶ廃ビル街。

453■■■■:2008/04/03(木) 17:23:27 ID:yEGINN4U
 その上空、数十階はあろうかという高さを飛び越えて、ソイツは“飛んで”来た。
「……鳥?」
「トリ?何が?」
「あれ。こっちに向かって飛んで来てる」
 ソレは鳶か鷲の、上昇気流に身を任せてゆっくりと空を横切る動きにそっくりだった。
ビルの上辺りからゆるゆると離れ、だんだん私たちの頭上へ移動して来ている。
 しかし、ソイツは鳥にしては大き過ぎた。
「……ひと?」
 そう呟いたのは、私だったのか、タカだったのか。
 私たちの真上ヘ到着したソイツは、いきなり降下し始めた。
 遠くにある物体の運動は、小さく見える。その方向が自分に向かっているのなら、更に
顕著だ。
 避ける暇も無かった。
 今までゆっくりと動いていたものが真上で静止して、そして少し膨らんで大きくなった
ような気がして、それはひょっとして落ちて来ているという事だろうか?と思った時には
――ソイツは、ほんの数メートルの所のアスファルトに突き立っていた。
 体を突き飛ばすような轟音は、地面を揺るがす振動と、人間二人を空き缶のように転が
す豪風と一緒だった。
「きゃあっ!?」
「うおっ!?」
 なんだ、風紀機動員ではないのか。
 風紀機動員。風紀委員の中でも実戦的な能力の高い者達で組織される、準警備員とでも
言うべき治安維持部隊員だ。が、近代兵器と高度な能力を併せ持つその戦闘力は警備員の
何倍も厄介だと言われている。
 ここにやってきたソイツも、それだと思っていた。ただの警備員ならもう何度も返り討
ちにしている。あんなふうに飛んでこれるのは能力者しか考えられない。向こうの奴らは
とうとう痺れを切らして、風紀機動員を投入したのだ、と。
 しかしソイツは、先端技術の粋を集めたボディーアーマーや銃器はおろか、風紀委員の
腕章さえ付けていなかった。
 一体何者なのか。
 ただ一つだけ言えるのは、この十九学区に乗り込んで来た者は、誰であろうと無事では
帰れないという事だ。
 ……と、この時はそう思っていた。
「――っ、」
 ソイツはいきなり動き出した。私たちなど目にも写らぬ様子で、体いっぱいに息を吸い
込むと、
「グッっッッッもーにーぃぃィィっエブリワン!!!」
 岩石でできた拡張器を使ったような、ひび割れた声でそう叫んだ。
 私とタカは思わず耳を塞いだ。こんなひどい音は聞いたことが無い。
 ソイツは私たちを無視して目の前を通り過ぎながら、尚も叫ぶ。
「やぁヤぁ皆さぁーン、楽しんデまスかぁー!?いいですよねー、ガッ校も授業(カイハ
ツ)も無イ生活!偏差値なんて物差しに縛られない人生!実に素晴ラしいッ!!!あなタ
方はジユーに生きている!それだケではない!流行りの歌にもありましたねぇー、いつも
ギリギリで生きてイタいって。貴方ガタは正にそれだ!いやいや、時代を先取りしてます
よねー!!ンぅぅ?アレ、あの曲自体は時代遅れデスかねェ?」
 叫んでいる言葉の内容は喧嘩を売っているとしか思えない。ここにいるのは、その気が
無くても暴力ヘと話を捻曲げる人間たちばかりだ。正気ではない。
  しかしソイツは少しばかり能力が発達しただけで神様にになったと錯覚したわけでも、
ちょっと頭の血行と脳内麻薬の分泌がよくなって喧嘩を売りに来たわけでもないようだっ
た。

454■■■■:2008/04/03(木) 17:24:35 ID:yEGINN4U
 薄暗い裏路地ヘ、踏み込んだ者をことごとく捕らえて放さぬ胃袋、決して救いの手など
差し伸べられない場所ヘ自ら歩み入るそのその足取りは、修業僧のように重々しい。
 ふざけた叫び声をあげる顎とは裏腹に、髪の隙間から覗く双眸は般若のようにしかめら
れている。
 私はその威容なオーラに圧倒されて、ソイツの足を止める事もできずに凝視し続けた。
「しかしここでェ、皆さんに残念な事をお聞かせしなけレばナりませぇん。」
 薄暗闇の路地に、チラチラと動く影が現れる。スキルアウトたちだ。ここから見えるだ
けでも五、六人、それでもソイツの足は止まらない。
「皆さんが更なる自由のために手に入れようとしているこの十九学区、もウちょっとでボ
コボコにされちゃうんですヨねー。というのも――」
 何をたわける気かと思ったが、次の言葉は私たちの頭を冷やした。
「早ければ来週から始まって、九月中には終わるでショうねぇ。十九学区は、千人規模の
警備員風紀委員合同治安維持部隊によって、徹底的に“お掃除”さレまーす」
 今、コイツは千人と言ったか?
 その言葉が本当かどうかは分からないけど、ありえない話では無かった。現在、十九学
区に接する第四、六、十二、十四学区では治安維持人口が高くなっている。それらが合わ
さった上に全学区からいくらかを掻き集めれば、それ位はいけるかもしれない。
 そして、そんな大人数が相手では、私たちスキルアウトに勝ち目は無かった。
 今の十九学区の人口は約一万人だが、そのほとんどは、スキルアウトに占領された=『警
備員達の居ない学区』という魅力に寄り付いて来たただの不良や、いかがわしい商人達だ。
実際に武器を持って戦うスキルアウトは、初めにここを乗っ取った四百人弱ほどか。
「そして更にィー、もーット残念ナ事にー、実弾の使用許可も下りちゃってるんデスよー、
どうしまショー。死人出ますよねー。つーか皆さん、人として見られてないデスねー。し
かーし、そんな貴方たチにも助かるための選択肢が用意されたイマーす」
 そこでソイツは空を仰ぎ、両手の金属バットを振りかざして叫んだ。
「今すぐ裸足で逃げ出すか、“俺たち”にこの場でブチ壊されるかでぇーす!」
 仲間達は明らかに動揺していた。 千人だと?来週から?実弾だって?本当の話なの
か?俺たちは全部で何人いるんだ?九月中に終わる?
 ただし、そこに鎖男ヘの配慮は皆無だった。
「クミ、本部ヘ行ってみよう」タカが私の肩に手を置いた。
「え?本部ヘ?」
「ああ。アイツの言ってることを一応確かめないといけないからな。仲間がいる可能性も
ある。それに、どっちにしろ俺は情報伝達係だから」
「アイツはどうするの?」
 私は自分からスキルアウトの輪の中へ入っていく背中を訝しげに見ながら問うた。
 タカはまるで興味無さげに歩き出す。「ニック達がなんとかするだろう」
 私は『一人ぐらいなら私も加わってちゃっちゃと済ませられるだろう』と思った。いつ
も肌身離さず持っている小さな折畳みナイフを、胸ポケットから音も無く取り出す。
 ずるずると引きずられている鎖の音は、今なら仲間達よりも私の方が近かった。それに、
死角だ
 私は肋骨の隙間を切り裂くべく刄を覗かせようとする。が、その時、今だにイカレた事
を叫ぶ首がこちらに振り向き、黒髪越しに睨み付けてきた。
 その目を見た瞬間、私の頭の中を特大のシンバルが砕け散ったような音が響いた。
「何してんだよ、ほら、行くぞ」
 ついて来ていない事に気付いて催促するタカに、私は今度は逆らわなかった。 早歩き
でその場を後にする。
 本場に続く道の途中、今さっきの事を不思議に思い、考え、一つの推測が浮かんだが、
自分でそれを否定する。
 ありえない。能力を無理矢理発動させる程の感情が、アイツの中に詰まっていたなんて。
 額を押さえて首を振ろうとして、折り畳まれたままのナイフをまだ手に持っていた事に
気付いた。妙に濡れて滑りやすくなっている。それを裾で拭いながら、とにかく今はタカ
と二人で一緒に居ることに集中しよう、と、私はまだ一回も使った事の無い得物をポケッ
トにしまった。

455■■■■:2008/04/03(木) 17:27:02 ID:yEGINN4U

  ▼スキルアウトB01

 ソイツは中世の功城に使われる火矢のようにして飛んで来た。
 八月三十一日、夕か夜かの間の頃だ。
 天幕に覆われた暗い路地の中、オレはニックやその他の仲間達と暇を持て余していた。
天井の無い空の下を闊歩でもすれば気分はいいだろうが、そういうワケにもいかねぇ。オ
レ達スキルアウトが占拠した十九学区は、最近はご無沙汰になっているとはいえ、常に警
備員達のゲリラ的な強制撤去の危険にさらされているんだ。警備員達のいないパラダイス
学区、というのに釣られてホイホイ集まってきためでたい奴らとは違って、オレ達は然る
べき時には武器を持って戦わなくてはならない。具体的に言うと、アンチスキルの分厚い
装備の弱点、首筋を小刀付き鉄パイプで突いたり、胡椒や何やらの粉爆弾を投げたり、顔
面にスタンガンを押しつけたり、景気の良い時にはボウガンや拳銃を浴びせかけたりする
ワケだ。そしてそのために、配置された場所でいつでも準備を整えておかなくてはならな
い。これも不意の襲撃にいち早く対応するためだ。うんざりする程に馴染みきった裏路地
に一日二十一時間以上駐屯していなければならなくても、別に仕方ねぇと思う。
 だけど、むこうからオレ達を訪ねて来やがるとは思ってもいなかった。
 オレがソイツに気付いたのは、ニックが言ってきた下品なギャグに顔をしかめ、そっぽ
を向いたからだ。
 その碧眼の少年はしばしば、わざと英語でこちらの理解できない言葉を吐く。外国から
の留学生で、母国からのプレッシャーに耐え切れずに学校を飛び出したという彼は、元は
とても頭の良い人間だったんだろう。初めは油断ならないという態度でオレ達に接してい
たけれど、そのうちにそつの無い会話を交えるようになり、回転の早い切り返しを繰り出
すようになり、今では仲間達の中心で濃密な時間を作り出すムードメーカーとなっている。
 どんな話題の中だったか。
 その時も彼は場を笑わせ、暖かい色の時間を作り出していた。そしてその途中でオレに
はあまり意味の分からない冗談を言って、更に皆を笑い転がらせた。
 キョトンとしちまってたオレにむかって、英語で彼は言ったのだ。言葉の内容は更に分
からなくはなったが、逆に雰囲気で伝わった。自分は、下品な言葉でからかわれたのだと。
 彼はそっぽを向く私に八の字の眉毛で許しを請いた。
 さて、あと何種類の謝り方で許してやろうか、と思った時だ。
 表の大きな通りに続く路地の出口を見るとも無しに収めていたオレの視界に、妙なモン
が映った。
 路地を出てすぐの所には、二人の男女が歩道に腰掛けて何やらダベっていた。天幕の中
から出てはならないと決め付けられているはずだが、あの新参の女は何度言っても聞かな
い。加えて、そんな時にはいつもタカが割って入ってきて、根暗女の肩を持ちやがる。世
話好きな古株は、どうやらソイツを新入りの仲間という人間以上の意味で気に入っていや
がるようだ。はん、胸でかいからな、あの女。
 その姿を認めた瞬間にそれだけの評価が脳内スクロールされるが、それは日頃思い積も
った思考がショートカットで起動されただけで、ほとんど条件反射的な脳活動に過ぎず、
それほどの意味は無かった。
 重要なのは、表の大通りの向こう側に立ち並ぶビルの上、地上数十メートルの場所を縦
に通り過ぎた影だ。
 何だ、アレは。カラスなんかの鳥のシルエットか。いや、それにしては何かがおかしか
った。そこには生きものを発見したワクワク、じゃねぇ、なんつうか、同じ生物として遭
遇した者ヘ抱く興味というか、とにかくそんなものが全く無かった。
 むしろ逆。
 逃げ出したい。
 自分の中に沸き起こった感情、オレはまずそいつに対して戸惑い、それからそんなもの
を抱かせたアレに急激な警戒を抱いた。なんだろう、この気持ちは、とても不安で、しか
し過去にも味わった事がある、それはどちらかと言うとネガティブな記憶に包まれていて、
そしてあまり取出しやすくない場所にしまわれていて、そうだ、思い出した、これはオレ
が初めて命の危険、死の恐怖を味わったあの日の作戦の時のものだ、次々と捕まっていく
仲間、動かない体、止まらない出血、追い立てる足音、役立たずの武器、絶望に打ちのめ
され、諦念に縛り付けられ、そしてガスの糸を引きながら撃ち込まれた榴弾――

456■■■■:2008/04/03(木) 17:27:22 ID:yEGINN4U
「ニック、あれっ」
 オレはとっさに、背後で謝罪の言葉を並べ続けている少年の名を読んだ。が、ここから
見える外の景色は左右の建物と頭上の天幕に遮られ限定された長方形だ。あの影はビニー
ルシートに邪魔されて見えなくなっていた。
 ヒューゥ。きっと彼はあの二人を見たのだろう、わざとらしいお調子者の仕草で口笛を
吹く。そしてオレの顔をチラリと見やって何かの感情を瞳の中に表した。今さっきまでな
らその虹彩に浮かぶものを解読できたのだろうが、現在そんな余裕は無い。
 オレは首を左右ヘ交互に振りながら、ニックとあの影のいた方向をもどかしく見比べた。
 それを自分の態度に対しての否定と受け取ったのか、おかしな動きに何かが起きたのを
察したのか、尖らせた唇の動きを止めた彼。
 その口はすぐに、驚愕の形にこじ開けられる事になる。
 首をあらん限りの勢いで振る。バケツいっぱいの水をぶちまけられたように流れ去るニ
ックと路地の壁、地面。そして次に映った表通り脇の歩道。浮き足立つ人一組の男女。
 そこに、オレ達の場所に、『アイツ』は襲来の足音を響かせた。

 ボ…ボボ……ボババ、バ、バ、ボババババババババババババババ バ バ バ バ バ バ バ 
バ バ バ バ ! ! ! ! ! ! !

 ムチャクチャな改造をされたエンジン音のような振動があたり一帯に轟いた次の瞬間、

 ――ッゴウン!!!!!!

 天幕のビニールシートが数枚いっぺんに引き剥がされ、吹き飛ばされる。
 固ささえ感じるような突風が襲い掛かり、顔を腕で覆わなければならない。
 空気が耳元でビリビリと震える。遠くで何枚ものガラスが砕かれ、降り注いで地面を叩
きつける音がする。
 隕石のような、と言っても間違ってはいなかった。
 やっとのことで『ソイツ』の姿をこの目におさめた時、『ソイツ』は真っ赤に焼けた鉄の
ように発光する四肢を大地に突き立てて、眠りから醒めた老竜のような動きでのそりと立
ち上がるところだった。
 そして、まるで高級車に乗り付けて到着した重役のような堂々とした態度でこちらを見
据え、肺に深々と酸素を吸い込んでから、頭の涌いた叫びを発する。

「グッっッッッもーにーぃぃィィっエブリワン!!!」

 八月三十一日、第十九学区終焉の日。
 破壊と崩壊の限りを尽くした『ソイツ』は、このようにしてオレ達の前に姿を現したの
だった。

 しばらくの間、誰もが呆気にとられていた。ある者は座り込んだまま、またある者は中
腰の態勢で、地震が来て驚いたような格好のやつもいれば、爆発に対処するような、頭を
覆って地面に伏したままの姿もあった。
 そんな状態のスキルアウト達ヘ、『アイツ』は、威風堂々、そんな言葉が当てはまってし
まうような態度で、しかしその顎だけは狂気の言葉を吐きながら歩み寄ってきた。
「やぁヤぁ皆さぁーン、楽しんデまスかぁー!?いいですよねー、ガッ校も授業(カイハ
ツ)も無イ生活!――」
 ひどい音だ、鼓膜に痛みさえ覚える。しかしオレには耳を押さえる余裕なんて無かった。
 わずかばかりの明るみに逆光になっている黒いシルエット、そして更にその足から伸び
る影。幾重にも巻かれ、首から無造作に垂れ下がっている鎖の束。両手に一本ずつ握られ
た、球よりも人間を殴った回数の方が多そうな金属バット。二つの眼(まなこ)を無秩序
に茂る黒髪に隠し、下半分だけを開閉させる顔。
 『アイツ』。
 オレは、その姿を目にするだけで噴き上がってくる感情を押さえ付けるのに精一杯だっ
た。
(何なんだ、いまさっきのは)
 落ち着け、たかが人間一人だ、それに風紀起動員でもねぇらしい。
(どんな力を使えばあんな距離を飛んでくる事ができる?)
 異能の力と言っても、神様になれるわけじゃない、できる事なんてたかが知れてんだ。
(この風貌は本当に人間のものなのか?)
 それにコイツは何だ、頭だってイカレてるじゃねぇか。
(そうだよ、『コイツ』はイカレてるんだ、)
(常識なんて通用しない、どんな測定も受け付けない、)
(そして殺しに来るんだ、少しの躊躇いも見せずに、血の通わない兵器のように――)

 ガツン。

 地面に打ちつけられた鉄パイプの音。オレの泥沼な混乱は、それを聞いた瞬間に、解け
るようにして断ち切られた。

457■■■■:2008/04/03(木) 17:27:40 ID:yEGINN4U
「何だ?あのイカレポンチは?」
 ニックだった。
 口先では不良らしい台詞を吐いているが、その目は鋭く冷静で、毎度の事ながら全く不
良らしくない、スポーツマンのような雰囲気だ。
 混乱していたスキルアウトはオレだけではなかった。しかしそいつらも、異国人の少年
の姿にいつもの調子を取り戻していく。
 ジャキン、バチリ、スチャリ、ガチャリ――。
 それぞれの武器を手にして、臨戦態勢を整える少年たち。その光景はまさに、“武装集団”
の呼び名の謂われだ。
 オレは急速に落ち着きを取り戻し始めた。そうだ、それがオレ達なんだ。超常の力を振
りかざす能力者どもに対抗するため、武器と人数を力とする集団。そう、それがオレ達な
んだ。
 オレも同じく武器を取り出――そうとして、自分は今にも走りだしそうな姿勢でカチコ
チに力んでいた事に気付いた。何事も無かったような素振りでポケットの中のスタンガン
を握り、重心を落として構えをとる。
 大丈夫だ、こっちには何人いると思っている?それに対してあっちはたった一人だぜ?
いくらあんな着地ができたって、こんな大勢を相手にできるはずがない。
「しかしここでェ、皆さんに残念な事をお聞かせしなけレばナりませぇん――」
 ぶっ飛んだ頭の男は、気兼ねの無い足運びで路地の入ってきながら突拍子も無い事を口
にする。
 オレはそんなものを信じたりはしなかった。千人規模の強制撤去?実弾の使用許可?ん
なモンに騙されるものか。そんな言葉でオレ達が乱れるわけが無い。敵の言葉などには動
じず、ただ無慈悲に、一つの情けも無く――
「はぁ?千人?」
「ダハハ、コイツマジで言ってんの?」
「実弾ー?うわーチョーコエぇー」
 緊張感の欠けらも無い声。目の前にいる敵の事など少しも考えていない仲間たちに、オ
レは呆然とした。いや、なんでそんなに余裕なんだよ、アイツはメチャクチャな高さから
で飛んで来るようなヤツだぞ?
「何みっともない顔してんだよ」
 ニックが肩を叩き、言葉をかけてきた。
「もうアイツは手榴弾も何も持ってないぜ?金属バットなんか屁でもないさ。すぐに片付
けられる」
 え?
 オレは一瞬呆然としたが、すぐに合点がいった。
 皆は、あれを爆弾だったと思っているんだ。
 しかし我に帰った時にはすでに時遅く、オレ以外の奴らは路地の出口にむかって駆け出
していた。
 ダメだ。アイツは爆弾と鈍器だけを手にして喧嘩を売りに来た奇人じゃない。数十メー
トルも飛ぶ事ができるような、危険な能力者なんだ。
 オレはその事を教えようとして、半歩踏み出しながらあわてて手を伸ばす。
 が、そうする必要などどこにも無かった。
 ニックの言った通りだった。
 事はすぐに片が付いた。オレが何を言おうが言うまいが、その結果には何の差異も現わ
れなかっただろう。
 47秒。
 十一人のスキルアウト達が一人の人間に叩きのめされるまでに要した時間は、一分にも
満たなかった。

  ▼クレイモア01

うッわー、こイつ等、バカだ。
 俺は緊張を塗り隠した余裕の笑顔で走り来るスキルアウト達を眺めながら、少し引いた。
 いきなりノ闖入者に動転しちゃっタけど、相手がただの人間一人だと分かった途端、面
子を回復しようとして慌てて格好付けてるってカンジ?ププー!チョーウケルーッ。
 特に構えをとるでもなく、迫ってくるスキルアウト達を観察する。
 その数は6、7……8、……9、10……それぐラいか?運動不足って事は無さそうだ
なあ。武器はそれぞれに物騒なモンが一つずつ以上。さて、どウ捌くかね。
 その間も、互いの隔たりは20メートルから15メートル、10メートルと縮まってい
く。うーん、近くデ見れば見ルほどバカ顔だ。
 一番前が三人、その次に二人、三人――と、並びの悪い三列縦隊。
 ザッザザッザッザザザザザ――左右の壁に反響しているのか、足音も非常によく聞こえ
る。
 その距離はとうとう5メートル。
 先頭集団の真ん中が、その手に持つ警棒を高々と振り上げた。俺の持つ金属バットを警
戒していたのか、そのモーションは少々遠めで行われた。
「オラァ!」
 静止した鈍器を凶器と成して打ち放つには、エネルギーを与えてやらなければならない。

458■■■■:2008/04/03(木) 17:28:03 ID:yEGINN4U
 その作業が必要とするタイムラグ、警棒が速度を伴って振り下ろされるまでの隙を突い
て、俺は動き出していた。

 ポイ――

 バットを躊躇い無く捨て去り、一瞬の内に警棒男との距離――4メートルほどを取り払う。
左肘にスナップをきかせて相手の肘の裏をはたき、警棒を取りこぼさせると同時、空中の
それを右手でキャッチ。
 驚愕の表情がやっと追い付いて来た顔に、鉄(くろがね)の棒を叩き込んだ。
「カッキーン☆」
 力を無くした肉体が倒れ伏す振動が、背後で地面に落ちたバットの、乾いた金属音と重
なった。
「な……て、テメ――」
 吠える暇など与えない。手の届く距離にあった残りの先頭集団二人。左右に腕を伸ばし
てその胸ぐらを引っ掴み、手繰り寄せて目の前でぶつけ合わせる。筋力にものを言わせた
スピードとダメージにふらつく体を二つまとめて、パンの生地でもこねるようにして地面
に叩きつける。
「ベチャッ!」
 俺の手際に今更警戒のレベルを改めようと思ったのか、継続の奴らはブレーキをかけて、
駆け足程度だった速度を緩めた。
 あーあ。戦場でハ動きを止めた者から死ぬ――はちょっと違うかもしレんが、勢いに乗り
損ねると辛いぞ?俺はそのうちの一人、減速し遅れて前に取り残され、結果一番近い場所、
3メートルほどの距離に来た男に目標を定めた。
 体に宿っていた運動エネルギーを地面に逃がすために、負担のかかった脚。その不自由
を狙う。
 一瞬の計画を元に動き出す。
 俺は回転ジャンプを跳ぼうとするかのように体をひねると、そのままの格好で一気に標
的ヘ接近、完全に間合いに入ったところで、全身の発条を解き放った。
 目の見開いた顔面を横殴り、脚を逆方向へと蹴り払う。空中で奇麗な横一文字となった
体に寄り添うようにして飛び上がり、垂直な後ろ回し蹴りを打ち下ろす。
「ズッドーン!」
 重心を軸にして90度回転され、何をする間も無くの字に折れ曲げられた骨格は、地面
に衝突して小気味の良い音を立てたのち、動かなくなった。
 このあしらいはスキルアウトに変化をもたらした。
「サンォヴァヴィーッチ!!!」
 俺のリスニング能力に間違いが無ければ、sun of a bitch 、つまり糞女の息子と罵られ
たようだった。どうやら、幼稚な言葉とともに数人を打ち負かすような人間に抱く感情は、
恐怖や警戒から、侮蔑と嫌悪、憤怒に変わったらしい。
 確かに、俺ノお袋は品を持っているとは言えなかっただろうサ。凄まじい速さで肉迫す
る金髪を睨む。しかし、テメエに言われちゃむかツくんだよ。それとこれとには関係ハ無
いけどな。今は母親なんて関係ない。俺を罵ってるだケダからな。
 鉄パイプを振りかざす金髪男が迫ってくる。俺はそのリーチが届く前に、右手に握った
ままだった警棒を投げ付けた。
 ヒュン、と、挙手をするようなモーションで投擲され、やや上昇気味に飛来する凶器を、
金髪は大きく横に翻る事で回避した。
 いい動きだ。
 だが、再び攻撃の姿勢をとろうと体を向け直す前に、俺はその襟首に指を絡み付かせて
いた。
「ぐぉォッ!?」
 重心の傾いている体、そのバランスを更に効率的に不安定にさせる上部を、目一杯引き
寄せる。俺はクルリと背中を向けて、前のめりになって倒れこんでくる体の下に潜り込み、
鉄パイプを離さない腕を肩に担いだ。

459■■■■:2008/04/03(木) 17:29:00 ID:yEGINN4U
 そして、金髪が宙を舞った。
 助走のついた一本背負い。床に叩き付けるはずの本来のそれとは違い、俺は意図的に大
きく斜め上方向ヘ投げ飛ばした。屈折する上半身を発射台にして、さっきまでうるさかっ
たスキルアウトは声を出す事もできずに浮遊、頂点静止、落下。俺が作ったクレーターの
辺りに横になった。
「コンのくそおぉ!」
 俺は老廃物ではなく人間だが反応しておく。
 首を軽くひねって見やると、投げ技で180度回転して背後を晒した俺にむかって、二
つの少年が競い合うようにして迫っていた。
 うーん、また何アクションも起コすのは面倒だ。まとめて倒すことにする。
 俺は少し身を落として膝を曲げると、その落差を一瞬にして再獲得、頭の高さは変えな
いままに跳び上がって、脚部を少年たちに突き出した。
 両の足がそれぞれに目的の破壊を狙ったドロップキックは、その奇抜性からか、何の防
御も許さぬままに首筋ヘ到達すると、確かな感触を足の裏に伝えた。
 再び暗い路地の奥向きになおり、またも地面に転がった人間を確かめる。これで七人処
理した。あと四・五人といったところか。
 が、俺の誤算は頭部ヘの突然の衝撃という形であらわれた。

 ボガツンッ――

 視界の横端、自分のこめかみから、見覚えのある金属バットの先端が伸びていた。
 振り返って視認、そこにいたのは金髪だった。どうやら投げだけでは気絶しなかったら
しい。俺が投げ捨てたバットの一本を横殴りにぶつけた格好で、そしてもう一本を、今ま
さに殴りかからんとして振りかぶっている。
 その目がキラリと青く光り、口は歓喜を叫んだ。
「ファッッキィィィィィンッッッッ!!」
 そして、鉄の塊が振り下ろされる。
 しかし、その軌道が俺の頭の中に消える事はなかった。
 インパクトの瞬間が訪れるよりも前に、俺の手がその先端を掴み、目前でぐるりと円を
描かせたからだ。
 最も破壊力を持つ地点以外では、鈍器はそれほどの脅威ではない。プロペラに巻き込ま
れるようにしていなされ、制御を失った金属バット。俺はその真心の部分を鷲掴むと、そ
のまま少年の顔に殴り付けた。
「ソノママ飲ミ込ンデ!ボクノエクスカリバー!」
 鋼鉄の打撃は口の部分に命中し、前歯の何本かを砕いて白い顔面を血色に染めた。
 それを最後までは見届けない。俺はバットを持直しながら振り返り――そウ何度も後ろか
ラ襲うなよ――そこに迫っていたスキルアウトにむかってフルスイングした。
「再びカッキーン☆!!」
 ベコンッという、一際爽快な手応え。一拍おいて、ドサリ、と味気ない音で崩れ落ちる。
 残っていたほんの数人は、あたかも物理的な影響を受けたかのように、その音にビクリ
と身を震わせた。そしてじりじりと後退りして、今にも逃げ出したそうな重心移動を始め
る。
 どうやら、さすがに怖くなってきたらしい。が、俺にとってはどうでもいい事だった。
 手首をしならせ、腕・腰・背筋を脈動させて、手ごろな目標にむかって金属バットを投
げ付ける。ソフトボールの投球方で飛び出したバッティング用具は、空気を切り裂きなが
ら縦方向に回転していた。その凶暴な運動の外円がスキルアウトに触れた瞬間、その顎は
真上に殴り上げられ、体はそれに引っ張られて伸び上がった。
 俺は地面に落ちていたもう一本を拾い上げながら走り寄り、勢いに乗った一撃を腹にか
ます。既に気絶していて力が入っていなかったのか、その体はそこまで吹っ飛ぶ事無く、
代わりに折畳み式携帯電話のようになってコンパクトに落下した。
 その姿が決定打となったらしい。もうすぐに数えられる程になったスキルアウト――たっ
た三人が、我先にと背を向けて逃げ出した。しかし、その速度は俺の足より遥かに遅かっ
た。

460■■■■:2008/04/03(木) 17:29:19 ID:yEGINN4U
 すぐに一人に追い付き、相対速度をゼロにした世界で背中を打ち据える。力を無くした
体は過ぎ去る地面に接触し、後方に流れて消えた。
 もう一人も同じようにこなした。今度は腹を突き上げたが、一瞬全体が跳ね上がった後
はさっきと同じだった。
 あと一人。
 最後に残ったニット帽のそいつは、もはや逃げることを諦めていた。怖くて逃げたくて
仕方ないのに、目を奪われたようにして立ちすくんでいる。
 ああ、分かるぜ、そノ気持ち。俺も昔山の中で狼に鉢合わせした時は助からないと思っ
た。自由に足運びできない中を、そいつだけは飛ぶような速さで近づいてくる――でも安心
シな。そんなもの、気を失ったら全部どっかへ行ってしまうから。
「アーディオース!」
 最後の仕上げだ、俺はバットを握り直して歩きながら間合いに入った。スッと腕を引き、
横に凪ぐべく力をこめる。
 が、自分の体が思うように動かせたのはそこまでだった。
「?」
 後ろに引いた腕が、何かに絡み付かれたように動かない。
 不審に思い、首だけを回して見てみると、
「止まるな!逃げろぉッ!!」
 腕にしがみついていたのは金髪だった。いい加減しつこい。
 それから二人は、俺越しに視線で言葉を交わしはじめた。多分、自室に残した恥ずかし
いブツ等を片付けておいてくれとか、そんなドラマチックなやりとりをしていたのだろう。
 ニット帽は悲愴な顔で頷き、きびすを返して路地の角に消えた。もういいだろう。そこ
で俺はブロンド付きの腕を払って地面に投げ飛ばした。ニット帽とは反対方向にゴロゴロ
と転がり、丸めた紙屑のようにガサリと止まる。
 俺はその腹にむかって、フリーキックの真似をして足先をめり込ませた。
「良かったな、不良A。ちゃんと逃がせたじゃないか」
 ビクンと転がるブロンドに、また蹴りを入れる。
「でもさ、いいのか?俺はお前が動かなくなったら、またあいつを狙うぞ?」
 金髪の毛先がピクリと揺れた。その頭を踏み付ける。
「どうしようかな。お前が止めなかった方が良かったかもしれないな。次にあいつを見た
ら徹底的にやってやるよ」
 投げ出されていた腕にかすかな力が宿り、指先が震え始める。俺はぐりぐりと踏み躙っ
て、頭皮に砂利を擦り込ませる。
「どうする?俺を止めなきゃいけない。だけど今のお前に何かできる事があるか?こんな
簡単に地べたに転がって、あいつを助けるために何ができるんだ?」
 一瞬体が動いたが、俺はそれ以上の体重をかけてくたばらせ続けた。
「俺を恨むか?あいにく感情だけでは現象にはならない」
「何かに祈るか?いつかは叶うぜ、二世紀後くらいに」
「殴りたいか?一発程度じゃ解決しないさ」
「汚い言葉を並べるか?言ってみろよ。耳貸さないから」
 頭にかけた足が浮き上がった。俺はさらに体重を乗せるが、一時勢いを失っただけで、
足またジリジリと押し戻される。頭が起き上がる。
「逃げちゃダメだろ。とっとと帰れよ」
「泣いて喚けよ。気持ち悪い」
「投げ出してんじゃねぇよ。早く諦めろ」
「負けを認めろよ。まだ希望はあるんだぞ」
 その瞬間、俺の体は車に跳ねられたように後方ヘ吹っ飛んだ。
 大太鼓の破裂するような音が沸いた。粗末なドアが歪み、あちこちで壁がひび割れ粉塵
が散る。
「俺の仲間に手ぇ出させるかよぉ!!」
 ブロンドの周囲を、不可視のエネルギーが渦巻いていた。それは手を触れずして物体を
動かす力、一般的には最もポピュラーな能力、『念動力』だった。
 スキルアウトに落ちぶれるようなレベルの力にしては有り得ない規模だ。しかし、能力
者が精神的な窮地に立たされると、時として爆発的な能力発達がみられる場合があり、そ
れはそのまま、『能力爆発』と呼ばれている。
 俺は腕をたてて起き上がり、口を伝う血を拭いながら少年漫画のカタルシス的なクライ
マックスの光景に目を見張り――
 ショボい。心底がっかりして首を振った。
 舐めているのか、コイツは。火事場の馬鹿力というのは普段使っていない筋肉も総動員
することで数倍の筋力を発揮する。が、脳は平常時にどれだけ使われていないかを知らな
いのか。俺が今まで見てきたヤケクソの中には、レベル5もかくやというものも何度かあ
ったぞ。
「おぉぉらぁぁぁぁぁ!」

461■■■■:2008/04/03(木) 17:29:41 ID:yEGINN4U
 叫びに呼応して、そこらに落ちていたものがブワリと浮き上がり、狙いを定めて次々と
飛び掛かってきた。その一つ一つが直撃すれば大怪我間違い無しの殺傷力を持っていたが、
しかし俺にとってはそんなもの、気軽なドッジボールで使うゴムボールほどの脅威でしか
ない。
「その程度かよ、アウトロー坊や」
 能力爆発は風紀委員が最も警戒するものであって実際俺も幾度となく遭遇して対処して
きたし、能力の規模が増したとは言っても戦闘のセンスまでがスキルアップするわけでは
なかった。首を傾げ腰を振り、難なく飛来物を躱していく。ご丁寧にも放ってきてくれた
金属バットの片割れを左手で受け取り、二刀――もとい、二振流で障害物の処理速度を増や
し、ブロンドの方に近づいていく。
「それがお前の限界か」
 マンホールを弾き返し、コンクリートブロックを粉砕し、吊り看板をへし折りアスファ
ルトの欠けらをはたき落とし照明を突き飛ばし壊れたバイクを撥ね除けながら歩み寄る。
「それならお前はもう黙ってろ」
 脈動感のあるダンスのように身を翻しながらブロンドを射程圏内にとらえ、最後に自身
を庇おうとした不可視の障壁を打ち崩して、
「俺に大人しくぶっ壊されて、屍肉晒してればいいんだよ」
 ブロンドの頭蓋は、二本の金属バットに左右から叩き潰された。大きく歪んだ血色の顔
面に、泣いているようにも笑っているようにも見える面白い表情が浮かんだ。
 力を抜いてバットを離すと、間を置き遅れて体が倒れ始め、万歳のように両手を天に差
し伸べながら地面に崩れて動かなくなった。
 今度こそはもう立ち上がる事はないだろう。
 俺は散々殴りまくって使いものにならなくなった二本の鉄クズを、同じくゴミのように
転がる血まみれの上に放り捨てると、それに背を向けて路地の奥へ歩き出した。
 次はどこを漁ろうか。こんな事を既に七、八回は繰り返しているので、十九学区の混乱
は相当なものになりはじめているはずだ。自然警戒も広まっているだろうから、より気の
置けない行動が必要とされるだろう。望むところだ。
 体も温まって気分も大きくなってきたことだし、そろそろ能力も使って本気で行ってみ
ようか。
 裸足の足の裏に粗雑な感触を踏みながら、次の壊し場に最適な場所を思い出した。
 学区の中心に広がる、巨大なショッピングモール。支部室の端末で確認した情報によれ
ば、そこは現在スキルアウトたちの本部になっているらしい。
 おあつらえ向きじゃないか。今ならそこには相手をしてくれるヤツがうじゃうじゃと犇
めいて待ってくれているだろう。しかし、それは最後のメインディッシュに取っておく方
が良いな。そのためにも、この学区を最大限に掻き乱さないといけない。
 俺は心の踊る絵を想像して我慢ならなくなり、脚を赤く揺らめかせて爆発させると夜の
街を一直線に駆け抜けた。

462■■■■:2008/04/03(木) 17:30:07 ID:yEGINN4U
  ▼スキルアウトB02

 笑っていた。『アイツ』は、最初から最後まで笑い続けていた。
 ショウを警棒で叩いた瞬間から、落として、投げて、蹴って、殴って、打って、ぶつけ
て、折って、はたいて、突き上げる間、『アイツ』狂った道化のように笑い続けていた。
 そして……ニックが、オレを逃がすために犠牲になってくれた仲間が背中に取り付いた
時、『アイツ』は人間とは思えないような、いや、人間には絶対にできるはずのないような
冷たい顔をした。
 嫌だ、『アイツ』は嫌だ、どうしてあんな事をしながら笑う事ができるんだ、どうしてあ
んな表情を作る事ができるんだ、どうしてオレ達を襲うんだ、嫌だ、オレは嫌だ、オレに
はもう無理だ、ニックはオレの身代わりになった、もうオレは『アイツ』に見つかったら
おしまいだ、オレは一人で『アイツ』に殺される、それは嫌だ、一人は駄目だ、だから人
がたくさん必要なんだ。
 本部に行けば、ニックが行けと言ってくれたスキルアウトの本拠地に行けば、人がたく
さんいる、そうすれば安心できる。大丈夫なんだ。
 自分を全力で励まさなければ走れない。そうしなければすぐに膝が柔らかくなって立て
なくなる。しかしあの笑い顔を払い除けるのと体を動かすのを一緒にこなすのは難しかっ
た。何度も足がもつれ、転びそうになる。体勢を立て直すのに体へ集中すれば、その後そ
の分だけあの笑顔が近付いている。そして払い除けるのに集中すれば再び足がふらついて
――オレはついにバッタリと転んだ。拍子に頭のニット帽が落ちて、前髪がだらりと視界を
覆う。オレはその縦格子の隙間からあのひび割れた笑みが現れて来そうな気がして、唐突
な恐怖に襲われた。あわてて帽子をしっかりと被り直し、転がるようにして走りだす。
 本部ヘ。人がいるところへ。あの化け物の襲来を知らせるために。助けを求めるために。
 オレは必死に、力の限りに肺と脚を動かしたが、『アイツ』の笑顔からはちっとも逃げ出
せた気がせずに、何度も転びながら、その度に飛び跳ねるように起き上がりながら走り続
けた。

  ▼クレイモア02

 人は見た目が九割、って誰カが言ってたな。イや、至言だよ、至言。言い換エると名言。
でも俺はソレをちょっと改変したものを声高に叫びタいね。
 人は見た目が十割、外見が全てである、と。
 俺はいわゆる不良というものを毛嫌いしている。あいつらの顔を見ていると、食道の根
元あたりから言い様も無い嫌悪が噴き出してくるのだ。
 明るいヤツはよく笑う。よく笑えばそれだけ表情筋が発達して頬が膨らみ、その結果、
外見的に明るい印象を持つ顔立ちになる。その変形させる程の感情はその者が最も大きく、
長時間に抱いているものだから、外見と中身は直結する。
 前述の言葉はこの短絡な理屈によるものだが、これを俺は結構気に入っていて、なおか
つ高く信頼している。しょっちゅう出くわす犯罪者や不良には、本当にゴミみたいな顔を
したやつしかいないからだ。そしてそいつらは印象に違わず、ゴミみたいな事をして生活
している。そりゃ、たまにはまともな顔をしたのもいるが、そいつは大抵ゴミみたいな事
はしていない。何か筋の通った理由で大義ある仕事をこなしているか、並の人間にはこな
せないとんでもない事をしでかしているかのどちらかだ。
 出来損ないがいてくれるからこそこの世は安い労働力とかに困らないのであって、世の
中には無駄な事なんて一つも無いというこれまた名言な事実を再確認してはいるものの、
やっぱり不良の価値が平均以下なのも確かだった。それが第十九学区を壊して回ろうと思
った一番の理由だ。今この学区にいる者を皆殺しにしたなら――勿論こんなやつらでも死を
悲しんでくれる誰かがいる事を思慮に入れても――この世はプラスマイナスで言えば間違
いなくプラスに傾くだろう。さっき言った例外は居なくなってしまうとマイナスかもしれ
ないが、分別する労力はそれ以上にマイナスだし、その存在がいつもプラス側であるとは
限らない。
 この考えは一般的なところから見ると十分マイナスな思想である事は理解していた。だ
から布教しようした事はないしもともとしようとも思っていないが、今日初めて疑問に思
った事がある。それはある瞬間突然に、今まで隠れていた障害物がパッと掻き消えてしま
い、もはやどこにも誤魔化しようがなくなったような状態で頭の中に出現したのだった。
 俺は、どうしてこんなに不良が嫌いなのだろうか。

463■■■■:2008/04/03(木) 17:31:05 ID:yEGINN4U

  ▼白井黒子01

 初春からその命令を言い渡されるまで、私は手ごろなビルの屋上で精神感応(テレパス)
能力者と一緒にテロリストを探索していた。
「ぅうーん……ぅうーん……ううぅぅぅぅうーん……ふぅぅぅううぅぅん……」
 が、その成果はあまり芳しくない。
「ふぇえぇぇ〜ん、テロリストさん、見つかりませんよぉ〜」
「口を閉じたままできませんかしら、先輩」
 泣き言を吐く風紀機動員を、普段は取り払われる学年の上下をあえて持ち出して封殺す
る。
 何がふえーんだ異性に使うならまだしばきたくなるほどむかつくぐらいだが同じ女に使
っても吐き気をもよおすだけだしかしそのなよなよとした感じはいただきだな今度お姉さ
まに使ってみよう。
 この四葉という名の女子生徒は私より二つも年上だというのに先輩らしいところが一つ
も無かった。立ち振る舞いはこのように誰かの保護がないと2秒で孤独死するような習性
だし、背は同学年の中でも低い方である私とほとんど変わらないし(そのくせ胸部には、
不釣り合いな程の脂肪が付着しているが)。
「ところで、そろそろ私のスカートを握っている手を放してくださいません?」
「うぅ……どうしても放さないといけませんかぁ……?わたし、高いところ苦手なんです
よぉ……」
「……あなた、それでよく風紀機動員になれましたわね」それとも、精神感応にはこんな
気の持ちようが必要なのだろうか。
 呆れて嘆息しながら、自分の平高線上よりも下に広がる街に目を向ける。
 街中を走り回っているうちに消費した時間は太陽をとっくに地球の曲面の向こうに引き
ずり下ろし、今は建造物によって作られた地平線から間接的な光が投げ掛けられるのみで
ある。現在時刻は七時十四分。ここから約300メートルの距離にあるファミリーレスト
ランでテロリストが被害を出してから、たった今30分が経過したところだ。そしてじき
に東から夜に沈んでゆくであろう薄暗闇のあちらこちらでは、私と同じ第七学区の風紀機
動員が警備員の水増し役として要所を警備しているはずだった。
 私もどちらかと言えばそっちに行って怪しそうな人間を心ゆくまで問い詰めたかった。
朝から働き続けで蓄積した疲労は数十分もつっ立っているとすっかり回復してしまい、
逆に何か運動をしていた方が楽なほどになっているのだ。頼りないパートナーの相手をし
ているよりは犯人確保に駆けずり回る方がまだ心安らかな状態でいられるとは思うのだが、
しかし勝手にこの人をほっぽり出すわけにもいかない。
 精神感応による広範囲探索の起点の移動を、瞬間移動(テレポート)によって迅速なも
のにすること。それが今の私に与えられた命令だった。
 高速移動検定準一級の速度でエスコートされる少女の感応探索は、今まで例のファミリ
ーレストランの東西南北の四地点で繰り返し行われ、ここの南方面では5回目だ。時計で
言うと12時から3時、6時、9時とぐるぐる制覇して5周したことになる。しかし、テ
ロリストはそれだけ探しても気配すら掴ませない。
(監視カメラに姿は確認されていない、道路は規制が敷かれていて使えない、鉄道も同様、
そして徒歩で逃げようとしてもこの半径3キロは被害の300秒後には警備員と風紀機動
員が包囲を完了している――現場からは離れる事はできないはずですのに、どこに行きまし
たのよ……)
 ここまで来ては一つの結論を出さざるを得なかった。テロリストは、監視カメラに察知
されずに、しかも精神感応の効果範囲が届く前に自力で逃げ延びたのだ。
 上の人間達も分かってはいるだろうが、私たち風紀機動員は所詮学生、つまり子供。い
くらこの包囲網の中にテロリストの精神活動が見当たらないと報告しても、とりあえずも
う一度探しておけという命令が返ってくるばかりだった。毎回同じ台詞で。

464■■■■:2008/04/03(木) 17:31:27 ID:yEGINN4U
「うぅ……見つかりません……」
 だから、フラフラになりながらもそんなに必死で探さなくていいと思う。私はそうしい
るんだし。でもこの人はやめない。なぜそこまで必死になれるんだろうか。理解はできそ
うになかったが、この人が風紀機動員になれた理由は少しだけ分かった気がする。
 と、認めかけていたところで彼女がこけた。
「あゃーっ」
 1メートル先の地面の終わりにむかって。
 握られていた私のスカートも一緒に。
「な゛」
 その時路上で『もうすっかり夜だね。ほら、一番星があんなに綺麗だ。おや、あれは君
の星座じゃないか』とかぬかしているヤツがいたなら、ソイツはビルの屋上で寝転がって
肩から上を空中に晒してあたふたするヘルメットと、薄いショーツだけ残して下半身を披
露しながらビールマンスピンのポーズで直立する女子学生を目撃した事だろう。
 幸いにもスカートは私の足首に残ったままで、四葉が力いっぱい握り締めたまま空に引
きずり落とすという事は無かった。しかし私にはそんなサービスを続ける気など毛頭無か
ったので、
「ぎゃあぁぁぁぁぁっ」
 濁点を隠して聞いてもらいたいような悲鳴を上げながらスカートをたくし上げて(手汗
でしっとりとしていた)、次いで落ちかけている少女の両足をジャイアントスイングのよう
に脇に抱えて引っ張り、安全な場所まで退いて事なきを得た。
「だっ、なぁっ、ばっ、もうっ、はっ、し、死ぬかと思いましたのよっ!」
 私は目尻に涙を浮かべながら風紀機動員仕様防護ヘルメットの頭をペンペン叩いた。も
はや年上だという事など頭の中から吹っ飛んでいる。
「あ、い、う、えぅ、ごめんなさいぃー」
 ひとしきり叩き終えたところでようやく落ち着いた。雨風に研かれたコンクリートに身
を投げ出し、身なりを整えながら息を吐き出す。
「はーーーーーーーーーーーぁ……間違いなく、寿命が縮まりましたわ、5センチは確実
に。ついでに膝の皮も剥けましたし」
「ほんとぉに、すみませんでしたぁ……でも、白井さんにはテレポートがあるのに、なん
で――」
「十一次元を『跳ぶ』には、面倒な計算が要るんですのよ!あんなふうにいきなりとっ掴
まれたら、対処なんて不可能なんですのっ!」
「うぅ……すみませぇん……」
「はぁ……まぁ、もういいでんすけれどね」
「すみませんでしたぁ……」
 謝罪の言葉は、高みに浮かぶ地面の上、黒に近付く紺色の空に吸い込まれて消えていっ
た。
 しばらくの間、どちらも何も言い出さない沈黙が続く。多少気まずい雰囲気でない事も
ないが、考えてみればさっきまでのサーチとあまり変わらない。
 と、その静寂は不意に断ち切られた。
 ピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピ
ーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピ――
「ああうるさい!」
 その電子音の音源は私の携帯電話だった。そしてそのメロディは風紀委員の任務時に使
用される番号に設定しているものだ。
 また、探索地点の移動か。
 口紅型のそれを開いて耳に響く音を黙らせ、それから発信者の確認をする。
 しかし、ディスプレイに表示されていたのは、予想していた女警備員でも風紀機動隊長の番号でもなかった。
 そこにあったのは第一七七支部のパソコン通話を知らせる数字の羅列。つまり、電話を
かけてきたのは、風紀委員のオペレーター役を務める初春飾利からのものである事を意味
していた。

465■■■■:2008/04/03(木) 17:31:50 ID:yEGINN4U
  ▼スキルアウトB03

「そんなに騒ぐな。タカ達の報告に応えて、南区にはもう20人ほど送って増援しておい
た。心配は要らない」
 オレはその答えを聞いて一瞬言葉を失った。
 20人?その程度でなんとかなると思っているのか?タカの奴、最初にくたばったと思
っていたら、何も見ないままに本部ヘ逃げ込んでいたらしい。
「冗談じゃない!リーダー、『アイツ』は20人ぐらいじゃ止められないんだ!南区の天道
大通りの、オレ以外の仲間はあっという間に全滅させられたんだ!20人ぐらいじゃ5分
でやられちまうよ!」
 思わず大声で怒鳴ると、周囲の人間たちが食事の手を止めてこちらに目を向けた。
 スキルアウトの本部、十九学区の中心的な建造物である大規模ショッピングモール、『ク
リスタルシティ』。ここはその最上部の一角に設けられたレストランだった。そして今は、
スキルアウトの司令室だ。
 食事処としても機能を続けている場の視線を一身に集めるほど声を荒げたオレに、リー
ダーは決して機嫌を良くしてはいなかった。
「じゃあ聞いてみるがな、そのイカレた野郎はどうやっておまえたちをぶっ倒したんだ?」
「どうって、こっちの持ってた警棒をあっという間にもぎ取ってぶん殴ったり、金属バッ
ト振り回したり――」
「だろうが。ソイツは能力なんか使わずに、素手で殴り込んできたんだ。能力も銃なんか
も使ってない奴に油断して、おまえらは簡単にぶっ殺された。そうだろう、あぁ?」
「い、いや、でも、『アイツ』は、何十メートルも飛んで爆発して現れて――」
「風紀機動員でもない奴にそんなことができるわけないだろう。あれは手榴弾、そしてそ
れはもう無くなった。そうだろう、タカ?」
 リーダーはもはやオレの話に半分も耳を貸さず、フロアの隅にたたずむ男ヘ問い掛けた。
その隣では新入り女が気まずそうな顔をしてオレを見ていたが、タカは自信有りげに「そ
の通りです、リーダー」と答える。
 リーダーはそれに満足そうに頷き、横に太い腹から、肌で聞き取れるほど凄みのある声
で言った。
「そういうことだ。もう必要な対処はすませた。おまえは黙って役場に戻ってろ」
 そう締め括ると、それきりテーブルに並ぶ料理にナイフとフォークを突き刺す作業に戻
り、オレの方など見向きもしなかった。
 消えろ。
 そう言っているのを感じた。リーダーだけじゃない、このレストラン全体から、リーダ
ーのお気に入り達からも。
 消えろ下っ端。ビビッて錯乱した三下。うるさい、目障りだ。
 悟った。まるで相手にされていない。そして立ちすくんだ。ここにいる人間たちは、オ
レの言葉などに一つも耳を傾けはしない。
 膝が緩みはじめた。フラフラと、地面が柔らかくなる。テンパって、頭が真っ白になる。
ここに持ってきた希望は、すっかり崩れてしまっていた。
 ボケっと突っ立つオレはとてもカッコ悪かったに違いない。ぶつけれる気配が、軽蔑す
るようなものになった。早く消えろって言ってるだろうが、クズ。
 自分の体に手が届かなかった。動けない。邪魔だ、能無し、マヌケ。打ちのめされて麻
痺してる。
 やっと届いた。体を動かす。オレは夢中でレストランを飛び出した。遅刻寸前の朝に引っ掴まれるカ
バンのように、そんな光景はもうずいぶんと昔に自分とは遠くなったはずだけど、なぜか
そんな連想をした。

466■■■■:2008/04/03(木) 17:32:13 ID:yEGINN4U
 オレは自由になりたかったんだ。
 どんな事でも、オレは、オレの意志でオレを決める。
 スキルアウトになったのは、その方がオレに合ってて、うまくいけると思ったからだっ
た。裏路地、自力、闘争、生存。
 なのに、今のオレはどうしている?学区の端っこで、ショボい武器を渡されてショボい
事を命令される。マジメにやっていけばいつかなんとかなると思ってやってきたけど、見
ろよ、それがこの様だ。
 オレはただ助けたいだけなんだ。こんなオレでも認めてくれる奴等がいた。オレを逃し
てくれた。みっともなかったけど、せめてそこからはちゃんとしたかった。
 畜生。
 それなのに、どうして何も言う事を聞いてくれないんだ。
 このままじゃ被害は絶対に増える。『アイツ』は今のままじゃ勝てない、全員の力を合わ
せないといけないのに。
 もうあいつらなんてどうでもいい。どうにでもなっちまえ。でも、あそこに残してきた
やつらだけはだめだ。怪我をしてまだ地面に倒れているはずだ。そのままではいけない、
手当てをしてやらなければいけない。絶対になんとかしてやる。
 他の助けなんて要らない。オレだけでもやってやる。オレがあいつらを助けるんだ。
 エレベーターのボタンをガチャガチャ押して呼び出して、最上階から一階まで一気に降
りる。扉が開いたらすぐにダッシュして、建物の出口を飛び抜けた。
 そこで、何かにぶつかった。
「ぎゃっ」
 壁だと思った。なにせオレは反動で2メートルも跳ね返ったのだ。
 しかし、そこに立っていたのは人間だった。
「ああ……すまない。……怪我はないか……?」
 機械的な、抑揚の無いその声には聞き覚えがあった。
 リーダーとは違う方向にデカイ体。短い焦げ茶色の髪に、調理服をピチピチに突っ張る
筋肉。
「駒場さん!?」
 それは司令部のレストランで料理長をしているはずの人間だった。どうしてここに?そ
れに、オレはエレベーターで降りてきたのに、なぜ先回りされてるんだ?
「ああ……ちょっと、おまえに用事があってな」
 巨漢のコックは無感情に言った。
「用?」でもは今それどころじゃない。「悪いけど、オレは急いでるんだ。それに、もう上
の命令を聞くつもりは無いっ」
 オレは駒場さんを大きく迂回して走り出そうとした。しかし、一歩も動かないうちに伸
ばされた腕に襟首を掴まれ、引き戻された。
「気が急くのは分かるが、まぁ聞け……。俺の用というのは、“おまえの仲間”を助ける事
を含んでいる」
「え?」本当か?「でも、なんで?」 言っている間に、巨漢のコックはその服を脱ぎ始
めていた。窮屈そうだった白い布の下から、ぴっちりとしたタンクトップと、軍人のよう
なズボン、ぎちぎちに詰まった筋肉があらわれる。
「こんなに情報が少ないんじゃ何も始まらないからな…その“アイツ”は俺“達”と言ったん
だろう?…なのにアイツはろくな情報収集もしない……それに……」
 駒場さんは事もなげに、つまりいつもと同じ全くの無感情で答えた。

「末端の人間の面倒を見るのが……上の人間の仕事だろう」

467■■■■:2008/04/03(木) 17:32:30 ID:yEGINN4U

  ▼クレイモア03

 片側二車線道路いっぱいに、スキルアウトが立ちふさがっていた。その数……何人だろ。
だいたい20人。ぐラい。
 丁度いい数だ。もう準備運動は終えているので、本気で行く。
 スゥ――、と一吐きして、頭を戦闘用に組み替える。水に沈んでいくようなイメージ。足
先から浸食して、じわじわと、頭の天辺までを感覚に包み込む。水面ヘ逃れる事はしない。
同時、要所に『焦点』を展開する。猫に尻尾の動かし方を聞けたとしても、人間にはちっ
とも理解できやしないだろう。今体に走っているのは、学園都市の脳開発技術によって“開
かれた”、個人個人で全く違う、固有の回路。俺の場合、あえて言うなら、全身の筋肉骨格
皮膜を想像上の神経で直結させるような、ニトログリセリンのように不安定なエネルギー
の塊を肉体という風船に詰め込むような、そんな感じだ。
 腕に赤い光が浮かび上がる。脚をさざ波のような明かりが走る。
 スウーと、細く長く吐き出し続けていた息を、ピタリと止めた。水中に飛び込む泳手の
ように。
 そして、足裏の光を限界ギリギリまで高め――
 爆発。
 飛び出す。
 五本の指でぐりぐりと地面を掴み後方ヘ蹴りつけ、十分にエネルギーを搾り取ったとこ
ろで爆破。爆破。爆破。浮かび上がろうとする体を、飛行機のように水平に広げた両手に
爆発を連続させて地上に縫い付ける。
 空気すら液体の如く絡みついてくるスピード。筋肉と爆発の衝撃を連動させた運動速度
は、人間の反応の限界を越えている。だが能力使用中の俺の頭には異常な量のアドレナリ
ンその他の脳内麻薬が垂れ流されるため、時間の感覚が狂ってしまっていた。
 鼻の先から切り分けられ、肌表面を流れて髪をくしけずる空気の動き。
 足の裏の皮膚と地面との間で砕かれ、粉となる石粒。
 指向を制御されていない、本来の爆発のままに飛び散るエネルギーの風が、自らの表皮
を波打たせる感触。
 俺は感覚器官から送り込まれてくる情報、その一つ一つを完全に把握することができた。
それは金をかけすぎたCG映像のように、むしろ本物よりもリアルな世界を感じ取らせる。
 そして、“壊し”の段階に入ると、それはなお著しくなる。
 俺は両足で踏み切って高々と跳躍すると、ほぼ円状に広がっていたスキルアウト、その
中心に突っ立っていた人間の懐ヘ、何の妨害も受けずに着地した。
 いきなり足元に降ってきた外敵。人に囲まれて安心していた顔が、その色を残したまま
で硬直する。
 俺はその顔を目がけて、殴り上げた。
 屈んだ体を一直線に弾き戻す。俯いた額を爆破、上を向く。肘に爆発、腕が飛び出す。
 握った拳は、顎を深く捉え過ぎたためか、気管にめり込んでいた。
 パァ――ッ、と広がる赤色の飛沫は、唾液と血液が入り交じったものだろう。
 別の物体が割り込んだために盛り上がった、周囲の肉。その波紋が伝わるにつれて、天
を仰ぐ体が後方に倒れこむ。俺はそれ先回りして、背中に隠れるように拳を構える。
 今度は、打ち上げた。
 仰向けに傾いた体、その重心直下の腰あたりに掌を添え、甲を爆破。海老反りになった
体は、空中5メートルまで上昇する。
 エネルギーを高さに全転換し、重力の手に引かれ始める体。落下するより速く、追い打
つ。
 下半身全体に『焦点』を展開、屈伸のポーズで足を折畳み、ケツ・膝・踵を爆破して垂
直跳び。一瞬で浮遊物に追い付くと、勢いをそのまま両手にこめて手渡しした。
 再び夜の大空に舞い上がる体。
 スピードを失って静止した俺は上方向ヘ爆発を起こして素早く着地し、再度ジャンプし
て二度目の追い打ちをかけた。中心から少し外れた、肩あたりを突き上げると、支えの無
い体はクルクルと回転した。

468■■■■:2008/04/03(木) 17:32:47 ID:yEGINN4U
 もう一度殴り上げる。
 再度叩き上げる。
 空中を藻掻く体は噴水の勢いに乗っかったゴミのようにほとんど上下せず、ただ次々と
与えられる衝撃にでたらめなダンスを踊らせられるだけだった。俺は壁と壁の間で跳ね返
るピンポン球のように鋭く往復を繰り返し、無数の殴撃をたたき込んだ。
 最後は、サマーソルトでしめた。
 逆立ちで着地した状態からバネというバネを全て駆使し、回転を伴って飛び上がる。
 下の位置から、力無く漂うそいつ腹に、足首あたりをまずぶち当てる。そこから脛と足
の甲で挟み捕らえ、ふくらはぎあたりを爆破して俺を中心にぶん回した。本来二人分の合
計からなる中心軸を、爆発による補助で無理矢理ずらしたのだ。
 上下を逆転された体は素直に地上ヘ引きずり落とされ、危険な音を立てて衝突。それを
BGMにして、俺は次なる“壊し”の見当をつけていた。
 相手を下へ落とした事で、対照的に短時間浮遊する体。その空中の眺めから、瞬きの間
に判断決定、動きだす。
 総標的数は19。
 最大行動半径は13メートル。
 想定爆破必要回数は29±3。
 推定必要時間――20秒。

  ▼スキルアウト

 ただ立ち続ける事だけしかできなかった。
 徒歩での移動中、『ソイツ』はいきなり空から降って来て、僕たちの前に仁王立ちした。
 かと思えば、赤く光ったとたんに『ソイツ』の姿が掻き消え、次の瞬間には僕の隣のヤ
ツが空にいた。
 何やってんだろう、と思った。
 そいつはなかなか地面に戻ってこなかった。その代わりに、そいつとアスファルトの間
を、何か赤いものが行き来していた。その赤が、ほんの10秒ほど前まで今日の寝場所に
ついて雑談していたそいつを、風に巻き上げられる木の葉のようにしているらしかった。
 そう気付いた時には、生ゴミのようになった体が、地面に転がっていた。
 その時、僕は、そしておそらく他の仲間たちも、『ソイツ』の姿を、初めてまともに見た
と思う。
 『ソイツ』は僕たちのど真ん中に浮きながら、見下ろしていた。 その顔にあったひび
割れが笑みだという事に気付いた時、『ソイツ』は既に消えていた。
 ボンッと、音がした。
 それはさっきまで俺たちが歩いていた方向との反対側、つまりほとんどのやつらにとっ
ての背後から聞こえた。
 そういえば、久しぶりに音を聞いた気がするなと思いながら振り向くと、そこには地面
に倒れたしんがりとそれを見下ろす『ソイツ』がいた。
 と、姿を認めた瞬間また『ソイツ』は消えた。そしてまた背後で音がした。今度は先頭
だったやつが吹っ飛んでいた。また後方で爆音があった。しんがりの近くにいた男が血を
吐いていた。『ソイツ』の姿は、赤い光越しに一瞬だけ見えるだけだった。
 右端が崩折れた。左端が転がった。皆首を回して目を向けるぐらいしかできなかった。
仲間がやられる時だけ『ソイツ』は姿を現すが、次の瞬間にはその反対側で誰かが餌食に
なっていた。
 ほぼ中心にいた僕は大まかな成り行きを目にする事になった。『ソイツ』は円の外側から、
ほぼ180度ずつ回転しながら、次々と僕達を仕留めていった。ボン、と耳に届く度に一
人がやられていった。赤いものを目にした時、そこには必ず誰かが倒れていた。その輪は
徐々に狭められていった。その輪に触れた時が、自分の番だった。
 爆発音は今やリズミカルな程に連続して響いていた。最初は20人いた仲間が、もう1
0人ちょっとしかいない。それも見る間に少なくなっていく。
 どこかの誰かが一時停止と再生のボタンを交互に押して遊んでいるのだろうか。
 6メートル後ろにいたヤツが潰れた。『ソイツ』が頭を掴んで地面に押しつけていた。
 7メートル左にいたヤツが消えた。腕を大きく振り抜いた格好の『ソイツ』だけがいた。
 4メートル右にいたヤツが地面を滑っていった。拳を突き出した『ソイツ』が残ってい
た。
 3メートル斜め後ろにいたヤツが悲鳴を上げた。頭を鷲掴みした『ソイツ』がどこかへ
適当に投げ捨てた。
 気が付くと、一人になっていた。無事な人間は、自分以外には一人もいない。皆どこか
を徹底的に破壊され、立てる者はいなかった。
 しかし、『ソイツ』の姿も見えなかった。
 助かったのだろうか――と振り返ってところに『ソイツ』がいた。
 直後、恐怖の感情を取り戻す暇すら与えられず、僕の視界は真っ赤に染まった後に暗転
した。

469■■■■:2008/04/03(木) 17:33:20 ID:yEGINN4U
  ▼スキルアウトB04

「爆発音だと!?」
 オレたちが全滅させられた時の詳細を話し始めたとたん、いつも冷静な態度を崩さない
駒場さんが勢い込んで聞き返してきたので、かなり驚いた。
「いや、……いや――すまない。しかし……また……『アイツ』が……?」
 何の事だ?
 駒場さんはオレの疑惑に気付き、説明した。
「おまえは知らないだろうが……実は、俺達スキルアウトがその名で呼ばれるようになっ
てから、五年も経ってはいないのだ」
 声の調子は、いつもの抑揚の無いものに戻っていた。困惑が浮かび上がるが、黙って聞
く。
「もちろん、無能力者等、社会に弾き出された者達のグループはあった。だが、その目的
は『外』のならず者と同じ。彼等は数十人から数百人単位で集まり、自分達で決めたグル
ープ名を名乗り、各々好きな活動を行っていた」
 当時のオレはまだ普通の学生だったので、初めて耳にすることだった。しかし疑問があ
る。
「なあ、じゃ、そいつらは何で今はいなくなってんだ?」
 学園都市の不良集団と言えば、それはスキルアウト以外に存在しない。他の集団がいな
いのだ。夜に街をうろつく人間は、連絡網に組み込まれていなくとも、まとめてひとつの
名前で呼ばれる。スキルアウト、と。
 五年前までは、他のグループもいたのか?じゃあ、今そいつらはどこへ消えた?
「あぁ……その理由は、一人の能力者だ」
 駒場さんは、焦茶色の眉を不快そうに歪めながら言った。
「五年前のある日を境に……学園都市の不良集団が一夜のうちに壊滅させられるというが
立て続けに起こった。情報が集まるうちに、それはたった一人の能力者による仕業だとい
う事が判明した……」
 駒場さんが視線をオレと合わせた。
「……『ソイツ』はあらゆる集団を片っ端から潰していった……。その内に、もとあった
グループはひとつ残らず解散してしまった……スキルアウトは、バラバラになった無力な
者達を掻き集めて、ほとんど『ソイツ』に対抗するためだけに結成されたのだ……」
 そして、核心は突かれた。
「後に風紀機動員となりながらも薄衣一枚でスキルアウトを狩り続けた能力者……俺たち
はそれを“爆弾魔(ボマー)”と呼んだ」

▼白井黒子02

「あはははははははー、白井さーん、私、Aランク秘匿検索鍵語に引っ掛かっちゃいまし
たぁー」
 どうしましょー、というような白々しい笑顔で迎えられた私は、一気に憤った。
「それが任務中の風紀機動員を別件に呼び寄せる理由になると、本気でそう思ってます
の?」
 この専属サポーターはとにかく第一七七支部ヘ来いと言うだけで、何の説明もしなかっ
た。疑問に思いながらも第七学区風紀機動隊長と指揮官の警備員に任務離脱の許可をもら
い、急いで駆け付けてみればこの出迎えだ。
 Aランク秘匿検索鍵語?
 何だそれは、からかっているのか?
「ああー、すいませーん、言葉が足りませんでしたねぇー、秘匿検索鍵語っていうのは、
学園都市さんが全ての検索機能に組み込んでる“網”みたいなものなんですー。特定のワー
ドを検索しようとすると、その人はブラックリストに載っちゃうんですよー」
 初春の声は、いつも以上に苛立たしい程の甘ったるさだった。が、怒鳴り声を上げる寸
前に気付く。その中には自棄になったような無気力さがあった。
 彼女はこちらを見ないまま、専用のディスプレイに体を向けて俯いていた。
「何があったのか、最初から説明してくれませんこと?」
 いくぶん柔らかに聞くと、初春は話し始めた。
「……命令が来たのは、20分前でした」打って変わった、陰欝な声。
「白井さんが四葉さんと一緒に精神感応の探査をしていた頃です。あの時、衛星映像に一
九学区で爆発みたいな光があったって言いましたよね?それに関わる命令です。学園都市
から、大能力者の風紀機動員白井黒子に」
 覚えている。空間移動のせいでぶつ切りにされた通信の中、初春がポツリと呟いていた。
あちこちで不審な光が瞬いていると。
「スキルアウトが動きだしましたの?それで私の力が必要、と?でも――」
 それはおかしい。一九学区に隣接する学区には十分な数の警備員と風紀委員が補充され
ているはずだ。私一人が赴いたとしても、数百人単位のやりとりに違いが出るとは思えな
い。
「違います」初春は否定した。
 私は別の可能性を見いだした。「では、空間移動で誰かを護送すればいいんですの?」
 初春はこれにも首を振った。

470■■■■:2008/04/03(木) 17:33:39 ID:yEGINN4U
「違うんです」
「じゃあ、何を――」
「そもそも、スキルアウトが何かをしているんじゃないんです」
「え?」
「元凶は別にあります。むしろ、スキルアウトはそれに巻き込まれた被害者でもあります」
 どういう事なのか?
 初春は、説明する代わりにキーボードを操作し始めた。さほど複雑そうでない作業の後、
ディスプレイに一つの真っ黒なウィンドウが表示された。
「これは第一九学区の外れにある地下に設置された監視カメラがリアルタイムで映してい
るものです」
 始めは一面が暗闇に浸されているだけだったが、その内くぐもった雑音が聞こえだした。
その音源がだんだん近付き、鮮明になる。
 黒一色でも、その映像がブレている事が分かり始めた。どうやら何かが近くで激しい運
動をしているらしい。
 そして一段と激しい振動にカメラが震えた時――赤い何かが、粗雑な映像の中に現れた。
そのぼんやりとした発光には、見覚えがあった。
「白井さん、あなたに命令された任務は、第一九学区を蹂躙している暴走能力者を止める
事です」

  ▼クレイモア04

 思い出した。
 学区の外れの地下街でたむろしていた、末端の末端達に囲まれた時だった。
「なぁーに?どうしたのぉ、ぼくぅ?」
「パパとママはぁ?はぐれちゃったのかなぁー?」
 自分でギャハハ、と笑うそいつらは酔っ払っているらしく、七で今何が起こっているの
かも知らないようだった。生ごみの方がまだ使い道がありそうな人間たちを見ているうち
に、俺の脳裏に、チラチラと、記憶の欠けらが引っ掛かって揺れているのに気付いた。

――おまえの母ちゃんと父ちゃん、詐欺師なんだろー?

――人を騙して悪いことする、最低なヤツなんだろー?

 それは声変わりを控えた子供の声だった。
 これは俺の記憶なのか?
 疑問はすぐに解決した。
 不良たちの一人が手を伸ばしてきたので、ノーモーションで顔面を殴った。その時、先
程の記憶がより鮮明に再生され、目の前の映像に重なった。

――放課後の教室。いつもの面子。ニヤニヤ笑い。適当に逃げよう。パン屑の入ったランド
セル。小走り。投げ掛けられた言葉。見過ごせなかった言葉。勝手に動いていた拳。初め
ての感触。叫んでいた喉。

――父さんと母さんを侮辱するなぁ!!!

 思い出した。俺は、自分の両親の事を『オヤジ』『オフクロ』と呼んでなどいなかった。
 父親は、妻を『母さん』と呼んでいた。だから俺も母親の事を『母さん』と呼んだ。そ
れにならって、父親も『父さん』だった。
 俺が暴力を交えたいじめを受けるようになったきっかけは、俺の方から手をだしたのは、
自分の親の事をバカにされて我慢ができなくなったからだった。
 あいつらの魔術(マジック)は本物だった。
 俺はそんな両親を尊敬していた。将来はそんな人間になりたいと思ってすらいた。理想
の人物像は一位が父さん母さんで、二位はいなかった。
 しかし、俺はそれらの記憶を歪める必要があった。自分の両親はくだらない奴らだった
として価値を下げ、記憶のありかを隠してしまわなければならなかった。
 でも、もういいだろう。俺も、もう16になったんだ。親が死んだ時の事なんて、今更
どうってことはない。五年も経ってしまえば、どんな出来事だって色褪せる。これは本当
だ。現に、記憶が元に戻った今も何とも無い。
 ちょうどいいから、有効利用させてもらうとしよう。昔話ほど花の咲くネタもないだろ
う。今の俺には、頭の隅々までを埋め尽くしてくれる何かが必要だった。“壊し”だけでは
足りない。芝居じみた立ち振る舞いも足しにはならなかった。
 そうと決まれば、早く始めてしまおう。
 今まで陽にあたる事無く埃をかぶっていた記憶の再上映。
 五年前、俺が学園都市に来た理由。風紀委員、そして風紀機動員になるまでの経緯。
 そして本物の魔術師だった両親の、その人生と爆死の物語だ。

471■■■■:2008/04/03(木) 17:34:07 ID:yEGINN4U
  ▼スキルアウト

 カズが倒れた。カクン、と首が揺れたかと思ったら、グニャリと崩れて動かなくなって
いた。
 それは目にも止まらぬ速さで迷子の男に殴られたからだと分かった時には、シンとリュ
ウもやられていた。体が動く時には、もう三人ほどがやられていた。
 逃げろ、と誰かが言った。その腰の抜けた言葉に、いつのまにか従っていた。
 皆一目散に走りだした。『アイツ』が出口を塞いでいたから、暗い通路を走るしかない。
幅が狭いから、押し合って何人か転んだ。そいつは後ろから迫る爆発に飲み込まれていっ
た。
 縦横無尽に張り巡らされたトラップが次々と炸裂していくかのようだった。『ソイツ』は
上半身をめったやたらと振り回し、腕をあらゆる方向に回転させ、コンクリートの壁を抉
りながら走り迫る。
 力の限り走った。でもそれも長くは保たなかった。
 あっという間に追い付かれていた。背中のすぐ後ろを、触れるだけで粉々にする何かが
ビュンビュンと飛び交っているのが聞こえた。背中に火が付いたようだった。
 どれだけ力を振り絞っても、逃られそうになかっ

  ▼クレイモア05

 ランドセルの中に、コッペパン。
 帰りのあいさつが終わり、教科書を収めようと開いた黒革のランドセルの中か
ら現れたそれを見て、今日はラッキーだと思った。
 俺に嫌がらせをしてくるやつらは、毎日飽きもせずに給食をランドセルへ忍び
込ませるのだ。汁物の日はさすがにイヤになる。でも今日みたいに、俺の好物を、
けっこう綺麗なままで入れてる事もたまにあった。バカだよな、あいつら。グウ
グウ鳴る腹を押さえながらこっちをチラチラ伺ってるのを見ると、ムカつく気も
あんまり起きない。勝手にやってれば?って感じ。
「おーい、クソ山ぁー」
 嫌がらせボーイズのお頭がアホそうな声を投げ掛けてきた。
「なんじゃぁそのランドセル、コッペパン詰め込んで今からどっかに行くんか
ぁ?」
 ちなみに今、俺はランドセルの蓋をしめて背負おうとしているところであって、
ヤツは中に入っている素朴な味わいの小麦食品を目にする事はできないはずだ。
なのにわざわざ言ってしまうなんて、何考えてんだろう。こういうのは『やった
のはおまえだろう!』というのを『はぁー?俺じゃないよぉ、どうしてそんなに
キレてんのぉー?』みたいにバカにするためにあるんじゃないか?
 たぶん、俺がとっとと帰ろうとするのを見て、慌てたんだろうな。
「いやー、開けてみたらパンが入っとってさー。ボクこれ見るだけでもイヤにな
るほど嫌いなんじゃー。だけーとっとと捨てようと急いでたとこ」
 思いっきりバカにした声でそう言ってみた。今からかってきた声に似せて。あ
と、母さんに話してもらった昔話にあった『饅頭こわい』の手も使ってみた。二
重のからかい、だ。
 でも、だんだん集まってきている嫌がらせ軍団は、
「ヘーそうか、大変じゃなぁー、クソ山」
「早く捨ててこないとランドセルが腐っちゃうんじゃねーのか、クソ山ー」
 って感じでもっとニヤニヤするだけ。給食の時、隣で泣きそうな顔してたサキ
ちゃんのも食べてあげてたのに。見ていなかったんだろうか?
「うーん、そうなんだよー、ランドセルが腐っちゃうよー、だけん、ボク早く帰
んないとー。大変だーっ」
 そう言って俺はパタパタと教室を出ていってみた。通せん坊するヤツはいなか
った。みんな、ゲラゲラ笑い転げていたのだ。
 廊下を少しだけ歩いて、教室から死角になったところで立ち止まり、俺はため
息を一つついた。

472■■■■:2008/04/03(木) 17:34:26 ID:yEGINN4U
 白い壁と床が伸びる細長い空間には、さざ波のような笑い声が響いていた。ま
だ聞こえる。まだ、笑ってる、あいつら。
 俺があいつらに抱く感情は、嫌がらせをしてくるのについてのムカつきとか、
憎しみとか、そんなのだけじゃなかった。それもあったけど、ほとんどはそれだ
ったんだけど、それだけじゃなかった。
 俺は寂しかった。俺はぜったいにあいつらの仲間には入れなかった。嫌がらせ
を受けているからとか、そんなせいじゃない。あの中にいるちょっと下のヤツ、
俺よりもずっと気の弱いのにちょっかいをかけてやれば、そんなのは簡単にどう
にでもできる。いっしょに嫌がらせをする立場にかわる事ができる。でも、それ
では俺はあいつらの仲間になれなかった。だから輪に混ざろうとはしなかった。
 俺はあんなふうには笑えなかった。あんな猿芝居に騙されられない。あんなち
っぽけな事で笑えない。あんなにバカ笑いする事ができない。それがいつも、無
性に寂しく感じられてしょうがなかった。特に、学校での人と人とのつながりが
ほどけ始める放課後になると。つまり、今なんか、そうだ。
 でも、まあ、そんなのはたいした事じゃないさ。本当に仲間になりたいなら、
上辺だけでも成り済ましているはずだし。今俺はピエロの役に納まっている。そ
れが答えだ。それに、チューガクセーになったらもっと気の合うヤツも現れるだ
ろう。
 そうやって、俺はいつものように気を持直し、生徒玄関に行こうとした。そこ
までは、本当に、何も変わらないいつもの事だった。
 でもその日、あいつらは絶対に許せない事をした。
「クソ山の家はイカレてるから、俺たちが食物を恵んでやんないとなー」
 次いで、騒めく笑い声。
 廊下を歩く俺の背中にそんな音が届いた。足が止まった。
「アイツの親は、なんか変なまじないを信じてて、家事なんかろくにないんだぜ、
きっと。朝から晩までぶつぶつ呟いてて――」
 ガキ大将のわざとらしい呪文が聞こえた。爆笑の渦。
 そして、更に繰り出された言葉。
「だってアイツの家って、困ってる人から金をだまし取る最低のヤツらなんだろ
ー?」
 その時、俺の足は勝手に回れ右をして教室ヘ戻って行っていた。
 今までは、親の事でバカにされた事はなかった。親が普通じゃない仕事をして
いた事が嫌がらせを受けるきっかけだったけど、俺に向けられるのはあくまで俺
に対する嫌がらせだった。親の事まで持ち出される事はなかった。
 しかし今、アイツは、あのガキ大将は俺の親をバカにした。父さんと母さんを
笑いものにした。
 バカにした。父さん。母さん。クソガキ。バカにされた。父さん。母さん。ク
ズ野郎。頭の中を同じようなものが何度も何度も駆け回っていた。猛スピードで
回転して生み出されたとてつもない遠心力が、頭を破裂しそうな程パンパンにし
ていた。
 力一杯に引いた扉が、ガラスが砕けそうな勢いでガシャンと開く。
 笑い声で満たされていた教室が、一瞬で静まり返る。
 輪になっていたガキたちのうち、こちらを向いていたヤツの顔が凍り付く。
 ずんずんと、未だ背を向けたままのソイツに歩み寄る。
 どんどん近づいてくるソイツが、ゆっくりと振り向く。その顔は何が起こった
のかを理解していない。
 知らぬ間に叫んでいた。
「父さんと母さんを侮辱するなぁ!!!」
 瞬間、俺の頭は弾け、 中に詰まっていたものが一斉に飛び出していた。
 さっきまでソイツの顔があったところには、白くなるほど握り締められた俺の
手があった。ソイツは2メートル離れた床に、鼻血を出しながら倒れていた。気
絶していた。
「ヒッ」
 誰かが息を飲んだ。悲鳴をあげようとして喉を締められたような音だった。俺
はそいつの方をキッと睨んだ。今度は音も出せずに息を飲み、泣きだしそうな顔
になった。

473■■■■:2008/04/03(木) 17:34:52 ID:yEGINN4U
 俺はバッと身を翻して教室を飛び出した。廊下を駆け抜け、階段を飛び降り、
靴を手に握ったまま玄関を突き抜けて靴下だけで道を走った。次第に、頭が今ま
で感じたことがないくらいクリアになるのを感じた。俺は、人を殴ったんだ。人
を殴ったんだ。人を殴ったんだ。殴ったんだ。
 その日、俺は初めて、言葉とかの、平和的なそういうもの以外での接触を知っ
た。暴力をふるう事を知った。
 そしてその日から、俺への嫌がらせはいじめに変わった。

  ▼白井黒子03

 隠蔽された監視カメラ。監視という役目を果たさないそれは、つまり盗撮カメラ。
 これは何だ。
 そこに映っているのは誰だ。
 どうして、おまえがそこにいる?
「黒山、さん――?」
 初春はディスプレイの前で石のように俯いたままだった。
「初春、どういう事ですの?一九学区で起きているのはスキルアウトの暴動ではなくて、
能力者の暴走?しかもそれは一人?黒山さんが?なんで?私はそれを止める?」
 急に落ち着かなくなって、いつの間にか私は二つ縛りにした髪の毛の右側を強く引っ張
っっていた。動揺した時の癖だった。それを見て、初めて自分がひどく混乱している事に
気付いた。
 慌てて手を離し、デスクに手をついてディスプレイを覗き込む。
「なんで……黒山さんが……」
 私の知っている彼はこんなのじゃない。何考えてるのかよく分からなくて、いつも私の
事を軽くからかい半分にあしらって、あほみたいなネコ馬鹿で、でも風紀機動員としてす
ごい実力を持っていて、それなのにちっとも偉そうにしていなくて、それどころか機動隊
の後輩の面倒見もよくて、年下の隊員たちはみんな彼のことを尊敬していて、何より非番
当番関係なしに事件に巻き込まれては片っ端から解決していくような人なんだ。私だって
昔それに助けられて、それで――
「あんなところに、黒山さんが、いるはず、ない、じゃない、ですの……」
 映像にその姿が映っていたのは一瞬だった。しかし、それで十分だった。炎が揺らめく
ような、体の表面に走るあの赤い光は、任務中に見せる彼のものに間違いなかった。
 信じられないのはその表情だった。彼は、今まで一度も、自分がこれまで目にしてきた
全てのモノの中でも一度も見たことがないような顔で笑っていた。
 信じられないのはその後送られてきた音声だった。画面に再び黒一色がが戻ると、代わ
りにコンクリートの瓦解音と身の毛もよだつような悲鳴がスピーカーから届けられた。誰
の声なのかは考えるまでもなかった。
「違う……」
 既に無音と闇を伝えるだけになった画面にむかって呟き、私は頑なに否定した。

474■■■■:2008/04/03(木) 17:35:29 ID:yEGINN4U
  ▼スキルアウトB05

 キキキ、とタイヤをきしませてバイクが止まる。
「……すまない。お前の仲間のところに行く余裕がなくなった。俺は本部に戻らなければ
ならない」
 クリスタルシティから数キロの場所、駒場さんはオレに信じられないような話を聞かせ
た後で謝り、バイクを降りた。
「ちょっと待ってくださいよ!本当なんですか!そんな化け物が本当に、」
 ズン……と、何かの地響きが届く。
「本当だ。お前は仲間のところへ戻れ。おそらくそこにはもう、爆弾魔はこない。その後
はできるだけじっとしているか、でなければより遠くへ逃げるんだ」
 そう言い残して、駒場さんは地面を蹴るなり数十メートルのビルの向こうへ消えていっ
た。
 ……どうなってるんだよ……。

  ▼スキルアウト

 その腕はまるで空を切るヌンチャクだった。            
 肩で風を切るような、体の中央の部分で作られる小さな一挙動。   
しかしそれに引かれる腕は爆発的なスピードで動き出す。       
どちらかというと、勝手に暴れる四肢に引っ張れるのに任せている   
とさえ感じる体の使い方。空間を一瞬で横切るその動きは、残像と   
してしか認識できない。                      
 肉体を殴る事でエネルギーが逃げているはずなのに、その後も拳   
は全く変わらぬ速さで駆け抜け、また次の殴打となって襲い掛かっ   
てくる。                             
 そのフットワークはまるで跳弾だった。              
 音は聞こえる。しかし目に見えないのだ。爆発音は自分達の周囲   
を飛び交うが、そこには煙を撒き散らす荒された地面や壁がある    
だけ。                              
 だがその時一瞬、一瞬だけ、『ソイツ』の姿をとらえた――と思っ   
たら、真後ろから延髄切りらしき衝撃をもらっていた。        
                                 
 ……、目に見させる事すらも、計算の内だったの

475■■■■:2008/04/03(木) 17:35:50 ID:yEGINN4U
  ▼スキルアウト                        
                                 
 『ソイツ』の動きは人間業ではなかった。             
 体を使った喧嘩とは、極端に言ってしまえば『溜める』→『殴る蹴る』→『引く』の動
作を延々と繰り返す作業である。        
 しかし『ソイツ』は『溜め』と『引き』の動作を必要としなかった。にもかかわらず、
ノーモーションで繰り出されるその拳はもはや鉄槌のレベルだった。
 おかしいのはそれだけではない。ありえない体重移動で当たり前のように体を起こした
り、果てには空中で直角に方向転換、さらに空中ジャンプまでをもこなしてしまうのだ
 まるで画面の中の格闘ゲームのキャラクターを見ているようだっった。
 子供が駄々をこねて振り回すようでいて、全身が鞭でできている
かのような、そして突発的に生まれる圧倒的なスピードとパワー。
鋭角的に弾け飛び回る拳撃と蹴撃の嵐。予備動作も無しに繰り出される、上半身と下半身
の統制が全く取れているとは思えない、のたうつような回転を纏わせた跳躍。そしてその
空中より回転する影から伸びる、カマイタチのごとき一振り一振りに倒される仲間たち。
 そのうちの一なぎに倒される、自分の――              
                                 
  ▼クレイモア06

 次の日の下校途中、横手の林からいきなり飛び出してきた竹に頭を殴られた。
 ガキ大将だった。
 地面に倒れた俺は、頭に葉っぱをそのクソが林の中から出てくるのを見て、と
りあえず殴り倒そうと思った。でも、起き上がるより早く何度も何度も竹をぶつ
けられたので、そのまま地面にへばっているしかなかった。
 霞む視界には、他の何人かも、ちょっと細めの竹を持って俺を囲んでいる光景
が映っていた。ていうか、一人で殴り続けているこのクソが持っているのは太す
ぎやしないか?
 ただ、実際に俺を痛め付けているのは一人だけだった。そのことに苛立ったの
だろう、大将は言った。
「おい、おまえらも殴れや、コイツはサギシのガキのくせに歯向かいやがったん
じゃぞ!?」
 俺はその時、自分がどんなふうにとらえられていたのかを心底深く理解した。
そして同時に、今まで少しだけ感じていた疎外感なんかは綺麗に消え去っていた。
 大将の気が手下達に向いている隙をつき、俺はすっくと起き上がった。そして
戸惑うように竹を掴んでいた一人の胸ぐらを掴み、竹を奪いながら振り回して大
将に向けて突き飛ばした。そこからは、大将以外のヤツに突っ掛かって盾にした
りして、とにかくメチャクチャにする事を優先した。そして仲間同士で団子状に
もつれ合っているところへ、その中にあった大将の頭に一撃をかまして逃げ出し
た。

 家に帰って尋ねた。
「母さん、母さんと父さんの仕事は、困っている人を助ける事だよな?」
 母さんは微笑みながら、でもすごく真剣な目で頷いた。
「そうよ。私達はね、どうしようもできない事を、それでもなんとかしたい、そ
んな人たちのためにいるの」
 その晩、母さんから聞いたのだろう、父さんも俺に言って聞かせてくれた。
「実はな、お前も母さんやわたしと同じような力を持っているんだよ。それは自
分一人だけではなく、他の人にも大きな何かを与えられる力だ。でも、その使い
道はお前で決めなくちゃならない。例えばナイフだ。これは外敵から身を守る武
器になる事もあれば、木を削って道具を作る事もできるし、おいしい料理だって
作れる。でも、人を傷つける事も同じぐらい、いや、より簡単だ。自分だって傷
つけてしまうかもしれない。ちょっと握って、ツイっと動かしたとして、そこに
頸動脈なんかがあればな」
 母さんが慌てて口を挟んだ。
「とにかく、ね。大ちゃんには誰かを守るために頑張るような人になってね」
 そう言う目は、なぜか父さんの顔を見つめていた。
 父さんはその視線に気付いていない様子で言った。
「まぁ、大助ぐらいの年なら、そのうち嫌でも守りたくなるような人ができる。
いいか、その人は大事にするんだぞ」
 そこで父さんは母さんの方を見た。母さんは何かを思い出したのか、体をクネ
クネさせながら、いやぁねぇもぅと言って父さんをバシバシ叩いた。

 俺は父さんと母さんに助けて欲しくなんてなかった。俺は、俺の父さんと母さ
んをバカにするヤツは自分が懲らしめてやると決めていた。
 父さんも母さんも、俺が今日作ってきた傷には気付いていた。そしてたぶん
、誰かを傷つけてきた事も知っていた。でも、俺の気持ちも分かってくれていた。
それだけで十分だった。

476■■■■:2008/04/03(木) 17:36:16 ID:yEGINN4U
 暴力的ないじめ――俺にとっては、俺を気に入らないヤツらからの挑戦みたいな
もの――を受けるようになってから、生活はむしろ充実した。毎日朝早くに起きて、
家の裏の森の中で殴ったり筋トレしたりする。それから朝ご飯を食べて、学校に
行って、授業以外の時間をガキたちの視線に睨み返しながら過ごす。そして、学
校が終わってからが大事。
 学校は先生とかの目があるから、殴り合いになるのは主に放課後の通学路なの
だ。
 大将以外のヤツが戸惑っていたのは最初の頃だけだった。仲間意識が呼び覚ま
されたのか、ほぼ俺と大将だけのやりとりであった争いに巻き込まれてボロボロ
になる内に俺にムカついてきたのかは知らないが、みんな本気で俺にかかってく
る。
 三回に二回は負けてボコボコにされた。でも、要領を覚えて、筋トレの成果で
筋肉が付き始めてからは、逆に三回に二回はバキバキにしていった。するとむこ
うもいろいろ努力しはじめたみたいで、何ヵ月か経つと互角の戦い――俺は一人で、
あっちなんか何人もいるんだけどなっ――になった。
 半年もすると、俺は放課後以外ではほとんど普通の学校生活を送っていた。あ
いつらとはもちろん話したりはしないけど、絡まれる事はなくなった。俺たちは
人目のつかない場所を選んでいて、そのことをばらすヤツもいなかったから、ま
わりから特に注目される事はなかった。俺は普通のやつと普通の友達付き合いが
できた。でも、何となく物足りなかった。
 不思議な事に、放課後の帰り道が一日で一番楽しい時間になっていた。そして
もっと不思議な事に、あいつらも同じような気持ちであるらしかった。
 絶対に表に出したりはしないけど。

 何通りもあるルートから、待ち伏せしていそうな場所を避け、あるいは奇襲す
る。分散して探査の網を広げてくるのを、一人密かに始末して穴を空け、速やか
に突破する。または大きく離れた場所にいる二人を一気に潰し、撹乱する。はた
また、正面から豪快に突っ込み、殴って投げては蹴り飛ばす。
 まるでゲームだった。いや、ゲームそのものだったんだ。個人的な恨みなんか
は全く無くなっていた。誰も大きな怪我をした事などなかった。一番ひどかった
ので拳の骨が潰れたぐらいだ。どちらかにある程度きついのが決まって体がうま
く動かなくなると、それ以上続ける事はしなかった。俺なら次の狙いを付けて放
っておくし、あいつらが俺を倒したのならそこで終了。全部が済んだら、無言で、
ちょっとの優越感に浸りつつ、ヘンって笑ってやってみたりしながら立ち去る。
そして家に帰ってご飯を食べるのだ。ガツガツと。

477■■■■:2008/04/03(木) 17:36:35 ID:yEGINN4U
「毎日楽しそうねぇ、大ちゃん」
 母さんは俺に三杯目のご飯をよそいながらニコニコした。
「子供のうちはよく遊ぶ事が仕事だからなあ。よく食べよく遊ぶ。やんちゃなの
はいいことだ」
 なあ母さん、と父さんは母さんを見た。母さんはまた、もぅやぁねぇあなたっ
たら、とくねりながらしゃもじをペチペチした。
 山盛りになった米がどんどん密度を増していく自分の茶碗を見ながら、俺は言
った。
「遊んでんじゃないよ。勝負してるんだよ」
 あれは遊びではないけど、勝負なのだった。

  ▼スキルアウト                     
                                 
 たった今、そっちの方向から「敵だ――!」と声がした。警備員ンチスキル)でも風紀委
員(ジャッジメント)でも風紀機動員(アンパイア)でもない、『敵』という叫びに少し疑
問に思ったが、もちろん行かないわけにはいかなかった。
 少し近づくと、暗くてよく見えない路地の向こうに、怒声とくぐもった爆発音が鳴り響
いているのが分かった。続いて、赤い光の瞬きも目に届いてくる。                       
 確かに誰かが何かをやっているんだ、大変だ――           
 そう思った時、『ソイツ』はもう目の前にいた。自分は物凄い速さの回し蹴りを放たれよ
うとしていた、そう分かったのは奇跡だった。                               
 そして奇跡はそこまでだった。反射的に屈む事はできたのだけれど、その逃げた先には
また足が待ち構えていて、次の瞬間には     
                                 
  ▼スキルアウト                     
                                 
 『ソイツ』は、緩やかな回転力を与えられた『ト』の字の形をして、数十メートルを飛
行してきたのだった。実際には“跳んだ”のだろうが、あんな距離をあんな矢のようなスピ
ードで接近して来られては“飛んだ”としか受け取れない。しかもそれは陸上の幅跳びのよ
うなものではなく、後ろ回し跳び蹴りの“跳び”の部分の跳躍だった。
 その餌食となったのは一番先頭のチビだった。直前で爆発的に急回転した脚、しかしチ
ビはなんとその回し蹴りを下に避けた。が、まぐれだったのだろう、2度目は許されなか
った。回転の軸だった『ト』の下部分であるもう一方の足に、回し蹴りの勢いを全てその
まま宿らせたような蹴りをもらって吹っ飛んだのだ。         
 一瞬で回し蹴りからトウキックへの変更をこなした『ソイツ』は、その時空中で足が地
面に届いていなかったにしては出来過ぎなバランスのとれた態勢で着地した。                   
 一目ではどんな立場にあるのかは分からない、軽装の、高校生と思しき男だった。目に
見える武器は持っていない。つまり能力が武器、だから仲間が癇癪を起こしたわけでもな
い。風紀委員の腕章をしていない。アーマー等の装備を着用してもいない。よって風紀機
動員、警備員とも違う。                      
 チビを見直してやる気持ちになった。『アイツ』が目にも止まらぬ   
速さでこめかみに拳をめり込ませてくるまで、自分はそんなしょう   
もない事しか考えられず、体など一つも動かせなかったのだ。

478■■■■:2008/04/03(木) 17:36:57 ID:yEGINN4U
  ▼スキルアウト                       
                                 
 続け様に二人がやられた。                    
 今度は自分にむかって『ソイツ』が襲い掛かってきた。       
接近するそれは人間のスピードではなかった。パソコンに表示さ    
れた画像を拡大するような、カーソルをピクチャの角に置き、ドラ   
ッグで一気に画面の端から端まで引き伸ばしたような、そんな異様   
な圧迫感を伴って、『ソイツ』の掌は巨大化しながら視界を占め――   
                                 
  ▼スキルアウト                       
                                 
 前方の仲間の頭を鷲掴んだ『ソイツ』はいとも容易く地面へ捻じ   
伏せさせる。そしてバコリと地面を蹴りつけ、遮るものがなくなっ   
た互いの距離を、『ソイツ』はまるでぞんざいに放られた長剣のよう   
な軌跡の跳躍と回転でブワリと縮め、棒のように一本に伸ばされた   
その脚の、膝の、ふくらはぎの、腱の先に取り付けられている凶器   
としての両踵が、                         
                      頭に         
                                 
  ▼スキルアウト                     
                                 
 そのスピードは現実感を抱かせないくせに、目に映るその他あら   
ゆるどんなものよりもリアルに満ちていた。             
 これは何かに似ていると思ったら、そうだ、テニスボールや野球   
ボールに似ているんだ、と思い出した。自分にむかってくる豪速球   
というのは、本当にCG映像のようにリアルで、そして嘘っぽく見   
えるのである。                          
 そして同時に、スポーツを嗜んでいた時代の感覚で分かった。    
 絶対に、勝てない。                       
 地元のスポーツのイベントで、有名なプロのスポーツ選手を相手   
にプレイができる機会があった。その事を思い出した。その時の、   
圧倒的な実力の差というプレッシャー、それを何万倍にも濃縮した   
ようなものを、今の自分は感じ取っていた。             
 勝つとか負けるとか、そういうレベルではない。          
 次元が違うのだ。                        
 『アイツ』に立ち向かうというのは、例えるなら、迫撃砲弾のバ   
レーサーブをレシーブしようとするような、デッドボール狙いでマ   
ウンドに立つ狙撃手の銃弾を打ち返すためにバッターボックスに入   
るような、そんなギャグにもならない自殺行為でしか

479■■■■:2008/04/03(木) 17:38:34 ID:yEGINN4U
  ▼スキルアウト                       
                                 
 分かった。                           
 『アイツ』は自分の体表面に爆発を起こす事で、あの異常なパワ   
ーとスピード、そしてトリッキーな動きを実現しているのだ。     
 さらにもう一つ、その爆発は、必ず赤く光った部分に起こってい   
る。                               
 そう、赤く光った部分以外には起こらないのだ。          
 爆発とはすなわち、『ヤツ』の動きそのもの。            
 それをうまく読んで予測すれば、                 
 予測も読むのも無理だった。                   

  ▼クレイモア07

 ある日、いつものように周囲を注視しながら下校していると、大将が路の真ん
中にたった一人で待ち構えていた。
 他には誰もいなかった。これなら楽勝で突破できると思ったけど、何か様子が
おかしかった。第一、俺を見つけた時に他のヤツに知らせるための笛を、大将は
持っていなかった。
「なんなんだ?」
 素直に聞いてみた。
 すると、大将は頷いた。……頷いただけだ。それだけ。他には何も。
 俺はもう一度尋ねた。
「だから、どうしたんだ?」
 大将はもう一度頷いた。いや、それはさっきもしただろ。しかもすんげぇぎ
こちない。油さしてやろうか。
 なんか不安になってきた頃、大将はスウっと深呼吸した。そしていきなりババ
っと加速した動きになって、紙切れみたいなのをランドセルから取り出した。
 そして叫んだ。
「ク、ろ山!この手――」
 気になって途中で割り込んだ。「ソレ何?」
 すると大将は人形みたいに固まった。しまった、と思った。さっきみたいにな
ってしまった。また動かなくなるかもしれない。
 でも、大将は今度はさっきよりも早く、20秒くらいで元に戻ってくれた。
 そしてまた叫んだ。
「これはお前ヘの果たし状だ!くソ山!一対一で正正堂堂勝負しろ!」
 大将はその果たし状をランドセルにクシャクシャとねじ込んで収めると、ファ
イティングポーズをとった。なんかおかしいな。もともと多数でかかってきてい
たのはそっち、俺はいつでも独力だったぞ?それに果たし状は俺に読ませもせず
に収めてしまった。つうか、必要だったか?口で全部言ったじゃん。あーあ、地
球の資源がまた一つ……
「おりゃぁぁぁぁー」
 首をひねっている間に大将が突っ込んできていた。でもやけに単純な動きで読
みやすい。
 俺は手を素早く伸ばして襟を掴んだ。そして走ってくるスピード以上でグイと
引っ張り、同時にすねを蹴っ飛ばす。
 つんのめった大将の体は脚を払われたことで完全にバランスを崩し、びっくり
するぐらい綺麗に空中へ浮かんだ。ちょうど俺のわき腹にむかって水平に飛び掛
かってくる格好だった。あんまりうまく出来過ぎてちょっと焦った。このままじ
ゃやりすぎてしまう。俺もそれなりの手加減や思いやりというのを手に入れてい
た。
 俺はとっさに態勢を入れ替え、空飛ぶ大将の体を捕まえて小脇に抱えた。俺の
身長は、ここ2,3ヵ月で大将を追い抜いていた。こうしてみると、大将の体は結
構細くて軽く感じた。
 地面におろしてやってから、一応言っておいた。
「お前さあ、正正堂堂の勝負にスカートなんか履いてくるなよ」
 もう決着はついたと思っていたから、油断していた。それがいけなかった。
 直後、真っ赤な顔の大将に顔面をぶん殴られていた。俺の顔も真っ赤にされた。

480■■■■:2008/04/03(木) 17:39:11 ID:yEGINN4U
「なー、タイショーはなんであんなに怒ってんの?」
 俺は今まで勝負し続けてきたやつらと初めて会話してみた。最初はバツが悪そ
うな感じでぎこちなかったけど、慣れると拍子抜けするぐらい普通に喋れた。
「ワシに聞くなや。知るか、んなもん」
 スポーツ刈りは迷惑そうに言った。
「女ってのはそんなもんじゃろ、たぶん」
 適当だな。
 でもそれはなかなかいい考えに思えた。『そういうことにしておいてもいいんじ
ゃねぇ?ポイント』が70越えるぐらいだ。他のヤツも『あーあー、まぁそうい
うことかねぇー』って顔をしていた。
 でも一人、おかっぱ頭のソイツはすっごく呆れた顔をした。そして低い声で言
った。
「あんたら、ホンマに分からんのか?」
 その睨むような目はなぜか俺を射貫いていた。俺は首を傾げるだけだった。

 それから大将は俺との勝負にやたら本気で挑んでくるようになった。ろくに体
も動かせなくなっているのにまだ続けようとしたりするのだ。それに加えて、み
んなでの勝負が終わって解散してから、家に帰っている途中で一対一の勝負を挑
んできたりもした。
 俺は全く理由が分からなかった。おかっぱ頭に聞いてみても教えてくれなかっ
た。父さんと母さんに聞いてみたら、母さんがすごい勢いで暴れ出したのでやめ
た。家じゅうにいる猫たちに聞いてみるのも手だったけど、俺はあいつらが苦手
だし、バカにされるかデタラメを教えられるかのどっちかだから止しておいた。

 大将が足を挫いてしまい、歩いて家に帰れなくなった。するとおかっぱ頭がこ
こぞとばかりに言い付けてきた。
「クソ山!あんた、家まで送ってってやんなさいっ!」
 確かにこんなにさせたのは俺のせいだ。組み合った状態から大将を投げようと
して力をこめたんだけど、大将の体は変なところで急に力を抜いてバランスを崩
し、いつもなら何でもないような事で転んでしまったのだ。
「わかったよ。でも、どうやって?」
 渋々承諾した俺に、おかっぱ頭は、いきいきとした目で言い放った。
「もちろん、おんぶ!」
 そうして俺は大将を家まで背負っていくことになった。
 勝負の連中とはそれなりに話すようになった俺だけど、大将とだけはうまく話
せていなかった。もともと口数の多い性格ではないのだ。ましてヤツは大将であ
り、勝負相手であり、ああ、あと、一応女だ。
 やっぱり、一時間弱の道中に会話は無かった。でも、気まずいってのも無かっ
たと思う。言葉がいらないってわけじゃあなくて、それが普通だったんだ。
 俺はランドセルを前に掛引っ掛け、後ろに大将を背負ってただ黙々と歩いた。
腹と背中に両方ぶら下げている格好だ。
 大将の顔は首の後ろ。喉にまわした腕が俺の黒ランドセルヘのっかっていて、
俺の手に膝の裏を引っ張りあげられている脚がぶらぶら揺れている。絆創膏をべ
たべた貼られた、力はあるけど、なまっちろい手足。
 大将の体は、今、一つも働いてはいなかった。俺の体によって持ち上げられ、背負われ、体重を預けきり、ただ無抵抗に運ばれている。少しだけそう意識した。

481■■■■:2008/04/03(木) 17:39:42 ID:yEGINN4U
 夕焼けが綺麗……と言えなくもなかった。
「もういい。おりる」
 あと一つ角を曲がれば到着、という所でそう言われた。今まで耳に入るのはカ
ラスの間抜けた鳴き声ぐらいなものだったので、とんでもない近距離からいきな
り発せられた声にちょっとびっくりした。
「おう」
 腰を低くして足をつかせてやると、ちゃんと両足で立った。
「ここでいいのか」
「うん、いい」
 うんだってよ、コイツが、大将が、うん。よっぽど足首が痛いのか?――しかし、
次の瞬間耳にした言葉には、もっとびっくりした。
「ありがと、クロヤマ」
 固い顔だった。でもまっすぐとこちらを見ていた。俺はなんと返したらいいの
か分からず、ただ喉を詰まらせるだけだった。
 大将は夕焼けのせいで、そう、絶対に夕焼けの光によって赤くなった固い顔で、
早口に続けた。
「じゃね、クロヤマ」
 そして小走りで去っていった。
 夕焼けが赤かった。

 それからというもの、俺は勝負の後にはちょくちょく大将を送り届けることに
なった。おかっぱのヤツがうるさいのだ。それに大将も、クロヤマのせいで歩け
ない、なんて言い出すものだから逆らえなかった。
 やがて勝負をする頻度が減っていった。いつもの面子で鉢合わせしても、くだ
らない話をしながら一緒にだらだら下校する事が多くなった。そして隣にはいつ
も大将がいた。しだいにいつもの面子が揃う事も減っていった。勝負はもうする
事もなくなった。たまに思いついたように、技を2・3発かけあう程度。じゃれ
合う程度。
 そして12になる頃には、俺は大将と二人っきりで下校するようになっていた。
たまにおかっぱとスポーツ刈りも一緒に帰った。
 それらはとても穏やかな日々だった。毎日欠かせず一緒にいて、休日にも会っ
て、たまに殴り合って、けっこうボコされて、家に誘って、らしくもなく縮こま
って、親が二人して踊り回って、ちょっと引かれて、苦笑いを返して、こぼれた
ように吹き出した顔に思わず見入ってしまって、部屋に二人っきりで、そいつは、
彼女はもはや大将ではなく、もう思いっきり女の子で、誕生日プレゼントで、言
葉が出なくて、そして――

482■■■■:2008/04/03(木) 17:40:09 ID:yEGINN4U
 ▼ スキルアウト

 あれは、本当に人間なのだろうか?
 あの腕を動かしているのは、筋肉なのだろうか。
 あれは呼吸するのに、肺を使っているのだろうか。
 その鼓動は、心臓の収縮によるものなのだろうか。
 そもそも、あの中には血液が巡る血管が通っているのだろうか。
 あの存在は、自分達と同じような、ちゃんとした原理で動いているのか。

 あれは、本当に人間なのだろうか?

  ▼ スキルアウト

 その腕は、旋風だった。

  ▼ スキルアウト

 その拳は、鉄槌だった。

  ▼ スキルアウト

 その脚は、機関銃だった。

  ▼ スキルアウト

 その有様は、猛獣のそれだった。

  ▼ スキルアウト

 あれは、人間なんかじゃない。
  ▼ スキルアウト

 悪魔だ。

  ▼ スキルアウト

 死神だ。

  ▼ スキルアウト

 あんなものは、

 人間なんかじゃない。

  ▼ スキルアウト

 人間じゃ、ない!

  ▼スキルアウト

 逃げ出した。
 『アレ』相手にあんな顔ぶれでに立ち向かうのは馬鹿のすることだ。
 走る。走る。逃げる。
 逃げる。逃げる。震える。
 震える。震える。怯える。
 怖い。必死で逃げる。逃げながら考えを巡らせる、でなければやってられない。
 何なんだよあいつなんでここに居るんだよ俺たち襲ってんじゃねえよ、
 逃げた。
 脇目も振らずに全力で逃げた。
 目的地は、天幕だらけのこの街の中でも一番太い通りだ。
 そこへ行けば、そこはバイクや銃やその他の凶器を大量に持っている、影響力の強いグ
ループの管轄地区、つまり縄張りであり、そいつらがたむろしているはずだった。
 見えた。
 路地の出口。
 壁と天幕と地面でかたどられた、縦に伸びる出口。
 その幅3メートルの切れ目は、通りの明かりでオレンジ色の塔のように見えた。
 これで、助かる。後は、頭でも何でも下げればいい。
 これで、助かる
 安堵、した。
 ゆとりが、できた。
 そこで、気付いた。

 なぜ、明るい?

 スキルアウトが天幕を張っているのは、その中のどこで、何をしているのかを隠蔽する
ためだ。こんな時間に明るくしていれば、天幕越しと言えど衛星の目には一目瞭然である。
 頭に疑問が生まれはじめた、しかし脚は止まらない。
 3メートルの、救済のオレンジ色が近づいてくる。
 あと10メートル。
 あと5メートル。
 あと

 その時、そこを『アイツ』が通り過ぎた。

 左から右へ、まるで水平に上昇する竹トンボのようにきりもみ回転しながら通り過ぎた。しかも、その両手にはスキルアウトらしき人間の首根っ子を一つずつ掴んでいた。
 一気に腰が砕け、走っていた勢いのままに通りへ転がり出る。
 身を起こして見回したそこは、地獄だった。
 明るかったはずだ。
 何十台ものバイクが、グシャグシャになって、そこらじゅうで炎上しているのだから。
 ドサ、と鈍い音をたてて、先程まで散々振り回されていた二人が地面に捨て落とされた。
 『アイツ』の姿はない。
 その代わりいつの間にか、自分の両肩に、何者かの両足が乗せられていた。
 まるで組体操の一種目のようにして自らの体の上に存在する『ソイツ』。そのパートナーへ、ゆっくりと顔を上げると、そこには――

 アレは、悪魔ではない。
 死神でもない。
 アレは、そういった神聖な、神だとか天使の対などといった存在では決してない。もっ
と下賎で、醜悪で、欲に塗れた理由の元に、災厄をもたらす妖怪――

 アレは、鬼だ。

483■■■■:2008/04/03(木) 17:40:38 ID:yEGINN4U
  ▼スキルアウトA02

「ああ、そうだ、全員だ。十九学区中のスキルアウトを、クリスタルタウンに集めろ。…
…ああ?……くそ、じゃあAチームを二つ寄越す、あとはてめえでなんとかしろ!」
 どうにも何かがおかしい気がしてならない。
 リーダーの与える指示は、適切と呼べるのだろうか?
 レストランの他の幹部たちは何も感じていないようだが、私は疑問に思えて仕方がなか
った。
 注意していると聞こえてくる独り言のようなつぶやき声には、心底狼狽した様子があっ
た。

「どうし…だ……約束…と違う、一日早いじゃ…か……」

  ▼ クレイモア08

 寝不足だからまだ寝ていようと思うのに勝手に目が覚めてしまうような感覚の
後、意識が外側の現実世界に向き直った。おそらくボサッとしたままでは対処で
きそうにない事態でもやってきたのだろう。
 見てはいるけど見えてなかった眼の神経、ただ鼓膜が震えるだけだった耳に脳
みそを割り当てる。
 自分を囲む世界に情報が戻り、やっと普通の感覚に戻ってみると――
 ゴーッ!という耳鳴り。
 重力を感じない三半器官。
 穏やかなはずの大気に、髪をのたくらされ、肌を掻き撫でられている体。
 俺は、高さ90メートルぐらいを思いっきり自由落下していた。
 瞬時に焦点を発生、同時に感覚変質。体感時間を歪ませながら、自らの無意識
に感心する。ちょうどいい戦場だ。よく分かってんじゃん、俺。これぐらいがい
いんだよ。
 どうやら俺は50人ほどのスキルアウトの群れにむかって身を投げ出していた
らしかった。
 足元を物凄い勢いで流れる、廃ビルの壁でできた地面。その先に切り立つ、ア
スファルトの絶壁。びっしりと生える建築物の突起、その間にひしめいているイ
ガグリ、フラスコ、肉団子、毛玉、ワカメ。
 パシッ――
 主観的前方に何かが炸裂する閃光が起こった。と思った直後、俺のすぐそばを
細い線が通り過ぎ、主観的後方からビシビシと硬いものが弾ける音がした。銃弾
だった。しかも連射――マシンガンだろうか?スキルアウトの使う『外』方式の自
作銃は独創的なものが多い。
 このままではさすがに命中してしまうので、落下軌道を乱す。
 体の中心から外れた場所を適当にボンボン爆破、何かにぶつかられたように、
技を連続する体操選手のように右へ左へとび跳ねながら落下する。
 でたらめな回避行動は俺の視界もめったやたらに流転させた。左右がない。上
下もない。天地は一色。すべてが回って一緒くた。
 しかし構わない。
 俺は肩甲骨あたりの鎖巻きを3メートルばかり引き千切ると、それを両手に握
って親指に力を込めて焦点発生、爆破、一つずつ切り離して撃ちとばし始めた。
 小指の側からベルト給弾のようにして鎖が吸い込まれ、引っ張られる環の連な
りがミミズのようにのた打ち、コイントスの形で握られた人差し指と親指の間か
ら、歪な一本となった鉄が遠心力も上乗せして飛び出し、飛び出し、飛び出し、
飛び出していく。
 流れ星のように尾を引きながら俺の全方向を取り巻く紳士淑女、その本体であ
る先端部分ヘ狙いをつけ、というより射線上に入ってきたものからすかさず撃ち
抜く。『拘束』や『捕縛』の意味合いを持つ、それでいながら自らもまた縛られ、
繋ぎ止め合っている輪っか達を解き放つ事で行う射撃。なかなか洒落が利いてい
る気がして気に入る。
 うるさい喚き声が多数あがった。音と音源はやはり俺の全周囲を飛び交う。そ
の圧迫で推し量り、残り十数メートルの高さから墜落を防止した。勘で肘を爆破
して、回りっぱなしの勢いへの肘打ちによる相殺停止、続いて下方ヘ爆発を乱射、
積層されたベニヤ板を木っ端微塵に突き抜けるようにして、無事に地面ヘ降り立
つ。

484■■■■:2008/04/03(木) 17:41:23 ID:yEGINN4U
 今の時間で既に周りは走査している。幅約3メートルの20メートル以内に4
0人弱。どことなく重装備。
 ほとんどの者が銃器を持ってはいるが、こう密集した状態のど真ん中に入り込
まれたとなっては、同士討ちの畏れから撃てるワケがない――と思ったのだが、泣
きそうな顔で震える指を引き金にのせるヤツが3人いた。
 そいつらはみんなそう遠くない場所だったで、たぶん当たる。判断した俺は肩
関節を外して鎖巻きを弛ませ、結構な長さの三本をとばすと一人ずつをぐるぐる
巻きに絡め捕った。
 一見すると、自分から鎖で三方向に縛り止められた形。その隙に飛び掛かって
くる者もあるが、そんな事はもちろん承知済みだ。
 俺は肩甲骨から左右に広がる二本をそれぞれ両手に握り締め、爆発と共に上半
身を回転、伸ばした腕の先の拳を大きく振り回した。
 ちょうどいい場所に飛び込んできていた、そのガッツは評価してやってもいい
少年が腕ごと脇腹を破壊されて飛ぶ。俺はなおも回転を止めず、脚に地面を砕か
せながら全身で鎖を巻き取る。その勢いに囚われた二人は水中から引きずり出さ
れてしまった魚のように、何人かを巻き添えにしながらこっちにむかって飛んで
きた。腹周りで巻き取っていた残りの一人もやってきた。距離が一時に縮まった
事で弛んだ部分の鎖を掴み、再びベルト給弾式の要領で、今度は地面と水平に回
転しながらの掃射を放つ。
 スキルアウトは既に大混乱になっていた。銃を持って強気になり俺をぶっ殺そ
うとする者、その銃口を必死で掴み止めようとする者、振り掛けられた鉄の粒に
血を流す者、鎖につながれたまま振り回される三人がバラ撒く銃弾から逃げる者、
ただ怯えてうずくまり無数の足の裏に蹴られ転がり潰される者。
 ついに仲間同士で殴り合うスキルアウトの姿が目に入ってきて、急に萎えた。
俺はなんてやつらの相手をしているのだろう。ここは底だ。平均以下の評価に耐
えられず、自分を昇華させる努力も持たず、社会から落ちこぼれ、生活の手段を
食い違え、それでもただ沈むに任せきり、挙げ句にどうしようもなくくだらない
事で人生を終える、ゴミ箱の一番下にへばりついているゴミとも言えない汚れで
できたような、そんな人間のいる場所だ。
 纏っていた残りの鎖5キロほどを一気に爆破して使いきり、作り出した嵐の中
心で思案する。もうとっとと壊しきってしまおう。汚物は一刻も早くまとめて排
除すべきだ。
 ちょうどその時、路地の果てに一台の自動車が横停めされた。ブレーキをかけ
られてタイヤが止まる前に俺は駆け寄っていた。両側の壁を右へ左へ蹴りとばし、
邪魔な汚物の沼を跳び越え接近してボンネットに着地、同時にフロントのエンジ
ンあたりに爆風をぶつける。内部から四つの悲鳴があがる鉄の箱。そのドアは歪
んで開かなくなった。
 少し機嫌がよくなるのを感じる。下拵えは終わり。ここからは準備の分だけ楽
しい時間、作業の工程で一番盛り上がる、いわゆるサビとかキモというヤツだ。
俺は路地にむかって車体の反対側に立つと、相撲取りの格好で屈んで下部をメキ
リと掴んだ。いけそうだ。

485■■■■:2008/04/03(木) 17:41:43 ID:yEGINN4U
 バンバンとうるさい音がしている鉄の板を隔てた向こう側。その更に向こうで
相変わらず喚き声がひしめいている路地の中。腕にありったけの力と焦点を込め、
俺はすべての雑音を振り払うように車を投げ飛ばした。
 フレームが歪むほどの力と速さで端を持ち上げられた軽自動車は、グシャゴロ
ガシャンと転がって横向きに路地ヘ侵入し、薄汚れたれたコンクリートの中をロ
ーリングし始めた。勢いが衰える前にもういちど投げ上げる。回転する塊となっ
た車は後部を押し上げられた事でエネルギーを得て更に一斉処理の行進を続ける。
 ゴトン、ガタン、ゴロン、ボコン、圧倒的な重さの音が路地を震わせた。時折
その中にメキリとかグチャリという音が交じった。俺がいる車からこっちの側に
は、汚物がちゃんと汚物らしく同じ仲間である地面や壁等に赤くへばりついて人
間の真似をしていないという、とても好ましい光景があった。
 しかし俺とは反対のローリングの向こう側からはまだ汚物が耳障りに叫び回る
という我慢ならない光景が残っていた。俺はそっちの側も早くにこっち側にして
しまうために、更に何度も車を押し転がした。重々しく巡るその回転を手助けす
る、万歳をするように、励ますように、背中を押してやるように、いいぞ、もっ
とだ、車の下からは静かになった赤色の汚物が次々と吐き出されている、通った
跡はどんどん赤色になっていく、俺の好きな色だ、更に転がす、快走するサラブ
レッドに鞭の激励を入れるように、並走する友と戯れ合うように、
 ゴドン。凍り付いたようにして車の回転が止まった。路地は直角に折れ曲がっ
ていたのだ。壁にぶつかった鉄の箱はぴくりとも動かなくなった。。
 振り上げ抜いた格好のままだった腕をゆっくりおろす。クライマックスでテレ
ビの電源を引っこ抜かれたような気分だった。今度こそ本当に冷めきってしまっ
たのを感じた。こっち側には誰もいなかった。あっち側の皆はもう逃げ切ってし
まっていた。空気が急に静かになった。一人だ。独りぼっちだ。
 しょうがない。また記憶あさりに戻ろう。

  ▼スキルアウトA03

  地上10階の窓ガラスがいきなり砕け散り、何者かがドスンとレストランの中へ着地
した。
 キラキラと舞うガラス片。
 侵入者という存在の圧倒的な異物感。
「何だ!誰だぁ!」
 私はタカの背中に隠れながらそれを見る。
 突然の喧騒に包まれる空間の中、うずくまった姿勢から立ち上がるその人物は――
「何だ、駒場か」リーダが拍子抜けした様子で言った。「どうしたんだ、窓を突き破って登
場するとは、おまえらしくも――」
 リーダーの言葉は、途中で途絶えた。
 バコン!!という音をたてて、駒場さんがその体を蹴り飛ばしたからだ。
 私は何が起こっているのか全く理解できなかった。リーダーと同じぐらい偉い副リーダ
ーなのにコックをしている駒場さんが突然窓からやってきて、そしてリーダーを容赦なく
蹴ったのだ。他のみんなも、同じように呆気にとられていた。
 その間に、駒場さんはサイボーグみたいに素早い動きで事を成し終えていた。
 気が付くと、レストランの中央にはリーダーが仰向けに倒れ、その喉を駒場さんに踏み
付けられていた。
 私たちはようやく我に返った。
「この、どういうつもり――」
 懐から拳銃を取り出そうとした男もいた。しかしそれよりも早く、駒場さんが両手に構
えた二丁拳銃が火を噴いていた。
「少し黙っていてくれ。……俺はコイツと話がしたい」
 銃弾が男の顔から数センチを掠められたのを見て、みんな黙った。
 彼は両手で周囲に銃口を広げ、片足でリーダーの首を地面に押し付けながら見回す。
 この場の主導権は、もはや完全に駒場さんが握っていた。

486■■■■:2008/04/03(木) 17:42:19 ID:yEGINN4U
「アツシ」駒場さんはリーダーを呼び捨てで呼んだ。「今から聞く事に答えろ……その質問
は、おまえが本当のスキルアウトのリーダーであるならば難なく答えれるはずのものだ
……」
 みんな聞き入っていた。
 リーダーは頷きはしなかったけど、もう駒場さんの言う事に従うしかない、と悟ったよ
うだった。そして、急に油汗をかきはじめた。
 駒場さんは拳銃を握る両手を水平に掲げながら問う。「おまえにも、もう分かっているは
ずだ……今十九学区に仕掛けられている襲撃は、一人の能力者……『爆弾魔(ボマー)』の
仕業だと」耳慣れない言葉だったが、リーダーは知っているようだ。「今すべきは、全スキ
ルアウトに割り当てた役務を解除し、ヤツにの手が届く前に避難させる事だ。それなのに、
何故おまえはこの学区の中心部である『クリスタルタウン』へ、逆に集結させている……?」
 リーダーは喉を踏まれながら答える。「そんな事、当たり前だろう、いくら強え能力者で
も、人間の一人ぐらい、スキルアウトが数を揃えれば――ぐぇッ」
 リーダーは言葉を詰まらせた。駒場さんが足に体重を乗せたのだ。
「何を寝呆けているんだ……『爆弾魔(ボマー)』は人間なんかじゃない、化け物だ。おま
えもよく知っているはずだろう……」
 続いて、駒場さんはいきなり二つの銃口を揃えて突き付けながら吠えた。
「やはりか……おまえは、学園都市と繋がっているな!?」
  隙が生まれているが、止めようとする者はいない。
 全員の注目が集まる……
 「……そうだ」リーダーが開き直ったように口を開いた。「確かに俺は学園都市と命令を
取り合っている。『爆弾魔(ボマー)』がやって来たら、クリスタルタウンにスキルアウト
を集めろと、そうすれば善処してやると言われていた」
 駒場さんは悲しそうな顔をした。「スキルアウトは愚かな能力者に対抗するために団結さ
れた集団……その頭が、この様か……」
「仕方がないだろう!」突然リーダーは喚いた。「そもそもそのグループが結成されたのは
何のせいだと思っているんだ!『アイツ』を使われて、俺たちに勝ち目なんかあるわけな
いだろう!そうだよ、『アイツ』は化け物だ!忘れるわけがないだろう!俺とおまえがいた
チームは五年前に『アイツ』に皆殺しにされたんだ!誰もかないやしなかった!他のチー
ムもみんなやられた!最近はやっといなくなったと思ったのに、また出てくるって言いや
がる!そうなったらもうスキルアウトは終わりだ!俺はもうそんなのは嫌なんだ!それだ
ったら、学園都市の言う事を聞くほうがまだマシだ!」
 そこで猫撫で口調に変わって続ける。「なあ駒場、学園都市が助けてくれると言ったのは、
俺だけじゃないんだぞ、この場にいるみんなを、もちろん、おまえも助けてくれるって言
ってるんだ、すごいだろう、今まで夢でしか見られなかったような生活を、あいつらは保
障してくれ――」
 言葉は最後まで続かなかった。駒場さんが、最後まで聞き届ける前に、相槌の代わりと
ばかりに両手の引き金を引いたのだ。

487■■■■:2008/04/03(木) 17:42:39 ID:yEGINN4U
 ダガダガダガ!と、景気の良い音が破裂する。
「おまえはもう、リーダーなどではない……」
 銃弾はリーダーの頭に当たってはいなくて、すぐ横の床にぶつかっていた。リーダーは、
飛び散ったその破片で頬を切っただけで、無事だった。しかし、自分が撃たれたと勘違い
したのか、その体脂肪の多い男は気を失っていた。
 駒場さんは足をどけ、私たちに振り向く。
 そこへ足音高くやってきた者がいた。
「リーダー!大変だぁ!『アイツ』が!クリスタルタウンの駐車場までやって来――」
 動きが止まった。床に気絶している男と、拳銃を両手にぶら下げている副リーダーとい
う異常な事態に気付いたのだ。
 彼は周りの幹部たちに目を向けて助けを求めた。
 私たち幹部は多少は混乱していたものの、誰についていくべきかは分かっていた。
 中央に毅然と立つ、軍人のような格好の駒場さん。
 その目に反抗しようとする者はいなかった。
 駒場さんはポケットから携帯電話を取り出して、誰かに電話をかけだした。
「浜面……俺だ。“ラジコン”の取り付けは終わっているか?では、早急に準備しろ。早速
使用する事になった。……命令権……?」
 その時、気絶していたとばかり思っていた肥満の男がムクリと上体を起こし、腰に下げ
ていた奇妙な銃を駒場さんに向けた。
「駒場ぁぁ!」
 しかし駒場さんは動じなかった。
 ブオン!と空気が掻き分けられる音。その一瞬の間に、元リーダーだった男の上半身は
赤く弾けてなくなっていた。
 目にも止まらぬ速さで、駒場さんが振り向き様に蹴り払っていたのだ。
 そう気付いた時、既に彼は、クルクルと舞う奇妙な形状の銃を空中でパシリと掴み、携
帯にむかってこう言っていた。
「……問題ない。今のスキルアウトのリーダーは、俺だ」

488■■■■:2008/04/03(木) 17:43:29 ID:yEGINN4U
  ▼白井黒子04

 私は笑い飛ばしてしまおうと思った。
初春、あなた役者を目指したらいいんじゃありませんの?私が推して差し上げてもよろ
しいぐらいですわね。自棄になった笑顔から一転してのシリアスモードなんて、ちょっと
見事でしたわね、ほとんど騙されてしまいましたわ。
 だが私は、目をパソコンの画面に奪われて食い入るように『ソレ』を凝視していた。
「……お、おかしいじゃありませんの……」
 やっとの事で、それだけの言葉を搾りだす。
 それは、とても論理的とは言えないただのうわごと。
「あの、猫バカ……今日は、確かに風紀機動員(アンパイア)の任務をさぼって、という
より、無視して、姿も見せませんでしたけど……こんな所で……こんな……任務さぼって
……何を……」
「午後6時ジャスト、」初春が平板な口調で遮る。「暴走した能力者が第十九学区外円部で
警羅中のスキルアウトへ危害を加えました」
 画面が切り替わり、ディスプレイに録画された衛星映像が流れる。そこにいた豆のよう
な人間数粒。そのうちの一つがすごい勢いで動き出し、他の豆が少し長くなって人の形に近くなった。倒れたのだ。
「その4分後、暴走能力者は東へ5キロの場所で再びスキルアウト十数人に暴行、ほぼ全
滅します」
「さらに3分後、また数人へ暴行」
「そのさらに5分後、再び数人を暴行」
「6分後、また。以降、40分間に7回繰り返されます。これらは十九学区を取り囲むよ
うに行われました。攪乱が目的ですね」
「暴走者はこの後、十九学区の内側へ行動を移します。私の所へ命令が来たのはこの時で
す。」
「これを境に暴走能力者は攻撃をさらに活発化ししました。信じられないかもしれません
が、平均して5秒に1人という手際でスキルアウトを――」
「お待ちなさい!」
 次々と早口で並べ立てれる状況報告に、私はやっと割り込んだ。
「そんな馬鹿馬鹿しい事、本気で言ってますの?確かに黒山大助はアンパイアとしての実
力がありますわ、彼がもし精神に異常をきたしたとして――もしそんな事があったとした
らの話ですけど――その場合には同じ風紀機動員に命令が来るでしょう、でもおかしい事
が多すぎますわ、なぜそれを命令されたのが私一人であるのか、それ以前に、何よりも――」
 そう、全く根本的な問題として、
「十九学区への侵攻ですって!?あそこは今、無能力武装集団(スキルアウト)で一杯に
なっていますのよ!?たった一人の人間に、そんな事ができるわけがないじゃないです
の!!」
 いくつもの戦場を経験してきた私には分かる。
 結局のところ、強さとは数の多さなのだ。
 いくら私のような能力者は絶大な力を持っていると言っても、スキルアウト10人にい
っぺんに襲われては、おそらくは勝つ事はできない。
 一人一人と、連続で10回戦って10連勝する自信ならある。一対一の戦いなら、その
対戦相手が持つ『強さ』を、毎回毎回上回れば良いのだ。私はそれだけの『強さ』を持っ
ている。有効な射程距離、行動の速さ、攻撃のバリエーション――それを毎回相手より上
回った数値で発揮すればよいのだ。
 自分に1人味方がいて、相手が3人、つまり2対3の戦いとなるのならまだ良い。
 しかし、自分が一人だけで、相手が複数人であるなら話は違う。二人になれば2倍強い
とか難しいとか、そういう事にはならないのだ。
 押さえ込められない、とでも言おうか。
 イメージとしては、壁と、そこに空く穴、さらにそこから流れ出てくる水を思い浮べる
といい。

489■■■■:2008/04/03(木) 17:44:08 ID:yEGINN4U
 自分は壁の穴から噴き出す水を止めなくてはならない。穴の直径は数センチ。一つであ
れば、簡単に塞ぐ事ができる。たとえ水圧が大きくなってしまっても、その数が二個や三
個に増えてしまっても、より力をこめたり、両手を使ったりすればなんとかなるだろう。
 しかし、新たな穴が、今まで押さえていた所から数メートルも離れた場所に開いてしま
ったらどうしようもないのだ。そしてそれらはいつのまにか穴同士で数珠のような円を
作って壁を刳り貫いており、今までとは比べものにならないほど大きな穴が壁に穿たれて
いる。次々と開く穴は壁にひびを入れ、終には壁そのものが崩れ、押し流されてしまう……
 大人数を相手にするというのは、そういうものなのである。
 まして、十九学区にいるのは、学園都市の脳開発を施された不良集団だ。能力としては
成果が現れず、スキルアウトに落ちぶれているとはいえ、状況判断、運動の把握・命令、
頭の回転の速さなど、“脳の処理能力”自体は『外』の一般的な人間達よりもはるかに優れ
ている。
 なるほど、確かにあの猫バカは強い、第七学区の風紀機動隊の中でも上位に入る。加え
て複数人を相手にした戦闘も得意だ。
 しかし、初春が言ったような事は本当であるはずがない――
「私もそう思ってましたよ、白井さん」
 思考を読まれたかのような台詞。
 初春はとても冷静だった。
「私も、そうやって、反論しやすそうな所から理屈を並べて、この命令はでたらめだと……
黒山先輩が十九学区なんかに攻め入るわけがないって……そう決め付けようとしました。
でも、私たちって、先輩が本気を出したところなんて見た事がありますか?風紀機動隊(ア
ンパイア)の任務中でだって、黒山先輩は全然余裕だっていうじゃないですか」
 そこで初春はまたも画面を操作して、一つのメールに書かれた文章を呼び出した。
「あの人が普通の人間じゃないって、すぐにぜんぶ本当の事だって思い知らされたんです」
 これがその命令文です、と示されたそこには、
『黒山大助。現在十九学区を蹂躙しているこの者、「人間爆弾(クレイモア)」を、空間移
動(テレポート)である白井黒子の手によって討たせん事を命ず』
 という、最後の学園都市の正式なコードがなければ悪戯だと思うような事が書いてあっ
た。
 私が気になったのは、聞いた事のない、黒山大助の個人能力名だった。
 人間爆弾……クレイモア……?
「白井さん、前に私たち、『書庫』から黒山先輩についての情報をこっそり調べてみたけど、
個人能力名だけはどうしても分からなかった事がありましたよね?」
 黒山大助は個人能力名を他人に教えようとはしなかった。だからちょっと気になって調
べようとした事があった。
 学園都市で発現される能力の呼称に使われる名前には、学校側が能力を大雑把な分類の
もとに呼び分ける、『発火能力(パイロキネシス)』、『電撃使い(エレクトロマスター)』な
どのシンプルな名前と、各自が自分で決める(意欲向上が目的らしい)個人能力名がある。
 これらは二つとも一緒に『書庫』へ登録される事になっている。はずなのだが、黒山大
助の個人能力名だけはどうしてもヒットしなかったのだ。
「『人間爆弾(クレイモア)』。それが先輩の個人能力名でした。そして、Aランクに指定さ
れる秘匿検索鍵語だったんです」
 それを検索してしまった瞬間、私はブラックリストに載りました。その代わりに、今ま
で検索しても開示されなかった情報も手に入れる事ができました。
 ピ、という単純な電子音と共に表示された資料。
 それは、一般的な『身体測定(システムスキャン)』とは明らかに精度の違う、黒山大助
の個人データだった。「握力900N、視力7.5、体脂肪率は9%なのに、体重、816N
ですって。すごいですね。あとほら、先輩の爆発って、エネルギー量と連射速度だけなら
余裕で大能力(レベル4)らしいですよ」
 それは、過去5年の間に黒山大助が壊滅させた不良グループの一覧表だった。「知ってま
したか?学園都市にいる不良の皆さんが、統一してスキルアウトって呼ばれる理由。黒山
先輩が、他はぜーんぶ倒しちゃったんですよ。それで、また新しい名前を名乗って結成し
ようとする人がいないんですって」
 それは、今まで黒山大助が今まで参加した大規模なスキルアウト捕獲作戦の詳細だった。
「5年間でこんな事を200回以上ですって。しかも、戦闘のほとんどは黒山先輩が行っ
て、他の要員は負傷したした人を手当てしたりそのまま逮捕したりするためにいるそうで
す」

490■■■■:2008/04/03(木) 17:44:35 ID:yEGINN4U
 その最後には、こうあった
『作戦要項――九月一日、24時より、第十九学区に「人間爆弾(クレイモア)」を投下、
絶対座標……――続く形で特別警備隊および特別風紀隊を進行させ――当作戦中においては
実弾の使用を許可し――』
「もういいですよね?」
 とても冷ややかな声。
「白井さん。黒山先輩はそういう人なんです。普通の人が知ってはいけない所で活躍して
る人なんです。一人で、生身で、何百人っていうスキルアウトの相手をできる人なんです。
そういう人が、作戦を無視して、独断で暴れているんです。これは止めなければなりませ
ん」
 これほどの情報をこんなにも簡単に入手できたのは、おそらく命令してきた者が意図的
にそうしたからだ。知ってはならない情報をあえて握らせ、この命令が真実のものである
事を思い知らせながら、こう言っている。もう後戻りは許されないんだ、分かったらとっ
とと従え。
「まだ理解できない事がありますわ……命令では、なぜ私が指名されていますの?」
 やっとまだ解決されていない疑問点を見つけるが、初春はそれにも平然と答えた。
「明確な答えは出せませんが、理由の根拠と思しき資料があります」
 再びの操作の後、表示された画面には、氏名と能力名、そしてその横に見慣れない言葉
を一行に収めたものだけをびっしりと並べられた、名簿のようなものが映った。
 花峰貞子 植物操作 階級2
 伊藤雅也 肉体軟化 階級1
 足利太郎 鉱質繊維 階級3
 その見慣れない言葉には、レベル認定と同じように、数字が付随していた。
「『階級(グレード)』……2、1、3……?何ですの、これは……?」
「見ててください」
 初春が操作すると、一番右横にあったその数字が、全て1に変わった。どうやら、そこ
にあわせて名簿をソートしたようだ。
 彼女は画面を上へ上へとスクロールする。見知らぬ名前、能力名、そしてそこだけ規則
正しく縦に並ぶ階級1111111……その数字が2に変わり、さして長くない時間の後
に3へと変わった。
 その時から、名前の羅列の中に見覚えのあるものが目に入りだした。
「これは……もしかして、ここに載っているのは、全員風紀委員なんですの?」
「その通りです」
 2の時よりさらに早く3がついた羅列が終わり、4が縦に並び始めると、そこにはいく
つもの見知った名前が登場しはじめた。第七学区の同僚風紀機動員、第一学区の有名な風
紀機動隊隊長、アンパイアではないが成績が高く評判の風紀委員……
「そろそろ、一番上に届きますよ」
 既に名簿には知らない名前の方が少ないぐらいだった。第九学区の風紀機動隊隊長『階
級4』、嘘のような伝説を持つ風紀機動員(アンパイア)『階級4』。初春もいる。その他名
立たる名前の数々……
 そしてその一番上、名簿の頂点である先頭には、こうあった。

 黒山大助 人間爆弾(クレイモア) 階級4+(グレード4プラス)

 白井黒子 空間移動(テレポート) 階級4+(グレード4プラス)

「この名簿には、題名も説明書きも『階級』という言葉の意味も何も書かれていませんで
した。でも、一つだけ言える事があります」
 この中で『階級4+』とされているのは、黒山先輩と、白井さん――あなただけだという
事です。

491■■■■:2008/04/03(木) 17:44:57 ID:yEGINN4U
  ▼駒場利徳01

 携帯電話のカメラ機能の一つ、望遠モードの四角い映像の中。    
 拡大された、数百メートル先の、駐車場の端。
 赤い光を体に走らせる爆弾魔が、幽霊のようにそこへたたずんで   
いた                               
 クロヤマが、そこにいた。                    
 ヤツは、駐車場に接する、立体駐車場の柵や店舗の窓という窓に   
ズラリと並び構えているスキルアウト達を、みるでもなく視界に収   
めている。                            
 思えば――ボクは広大な駐車場に接する、クリスタルタウンで最も   
高い建物の屋上で、画面の中の赤い少年を見つめながら思い出す――   
あの人間はいつもこんな感じだった。                
 平然と裏路地の世界へ訪れ、好き勝手に土足で踏み荒らし、また   
平然と、挨拶も無しに帰っていく。                 
 スキルアウトがどれだけ爆弾魔を怖れても、憎んでも、意にもか   
いさない。クロヤマはただ、『不良とされる者』を『壊す』事、そし   
て猫科の動物を保護する事にしか興味を持ってはいないのだ。     
 だがそれ以外は、あいつは普通の、『ちょっと変わった』という範   
囲内の人間だった。                        
 だからこそ、騙されたのだ。五年前、ボクがクロヤマに、そんな   
化け物だとは知らずに心をかけ、近付いてしまったせいで、ボクの   
チームは潰されてしまった。                    
 それ以降も、爆弾魔は学園都市中の不良集団を片っ端から潰し続   
けた。その中で、ボクは何度か爆弾魔に出会った事があったが、ア   
イツは「あ、おまえ、あの時の」と口で言いながらボクの胸骨を掴   
んで投げ飛ばしていた。                      
「クロヤマ……」ボクは人知れず呟く。「おまえはいつまで、俺の邪   
魔をすれば気が済むのだ……」                    
 ボクはただ一つ、力のない者も平等に存在できる世界をつくりた   
かっただけなのだ。                        
 そしてそれをつくる事は不可能だという事を知った時、ボクは力   
を得る事にした。                         
 今、スキルアウトという現在学園都市最大の集団の頂点を極めて   
しまっているのは、成り行きからの事である。目標へと努力してい   
るうちに生まれてしまった副産物だ。それでも、目標にたどり着く   
ための役には立つ。                        
 しかしその目標に爆弾魔は邪魔だった。いや、邪魔どころではな   
い、アイツは壁だ。しかも、乗り越える事も打ち崩す事もかなわな   
い、その前で途方に暮れるしかない壁である。            
 最高の命令権を握った今、最善の行動は全員を爆弾魔から逃がす   
事だった。何度検討しても変わらない、それが現段階での最善であ   
る。

492■■■■:2008/04/03(木) 17:45:19 ID:yEGINN4U
 しかし、将来をも視野に入れて考えると話は違った。        
 今爆弾魔を倒さなければ、ボク達に未来はなかった。        
 今ここにある戦力は、今までにない、そしてこれからも揃える事   
は難しいと思われるほど巨大なのだ。                
 が、それ程の力をもってしても、爆弾魔に歯が立つとは思えない。  
 それでも、今やらなくては、もう永遠に爆弾魔に勝つチャンスは   
ないかもしれない。                        
「やるしか、ないのだ……」                    
 ボクは携帯電話を外部接続モードに切り替えて演算銃器に繋げ、   
同じ屋上にいる数人の幹部たちに戦闘態勢の命令を放った。      
「……全員、射撃用意」                      
「全員、射撃準備っ」幹部たちが復唱して個々の指揮下に伝える。   
 2秒ほどの間の後、夜のクリスタルタウン専用駐車場に、さざ波   
のような金属音が満ちる。                     
 それは、総勢百二十余人もの人間が、一斉に銃器を構える騒めき   
だ。                               
 ボクは、一度でも火器を使用した経験のある者には全員に銃を持   
たせた。それ以外の者にも手製の手榴弾や給弾の役目を与えている。  
 その配置はクロヤマの接近を30秒前まで告げていた報告へ愚直   
に従ったものだった。視界の開けた駐車場、そこから見える壁、足   
場、窓にはことごとく外敵を待ち構えるスキルアウトがいる。     
 その真正面から素直にぶつかるのは、何か特別な理由が無い限り、  
自殺以外の何物でもない。                     
 そしてクロヤマは普通ではなかった。               
「駒場さん……『アイツ』は本当に、こんな待ち伏せている所に馬   
鹿正直にかかって来てるんですか……!?」             
 爆弾魔はまだ撃ち始めるには遠すぎる場所で、動こうとしない。   
音の無い緊迫の中で、幹部の一人が聞いてきた。           
「大丈夫だ。……心配せずとも、アイツは必ず」           
 来た。                             
 あたり一面に緊張が走るのが分かった。              
 駐車場には無数の外灯が墓標のように立っているため、肉眼でも   
見える。                             
 遥か遠くの赤い人影が、気だるげに引きずりながらこちらにむか   
って足を動かし始めたのだ。                    
「……合図がまで、引き金を引くんじゃないぞ……」          
 小声になりながら幹部へ念を押す。しかしその命令は、この場に   
いない下の部下達に守らせる事はできないだろう。          
 “今俺たちの学区を踏み荒らしているのは、爆弾魔(ボマー)とい   
う、学園都市が雇った一人のイカレ能力者である。”ボクは3分前、   
作戦の説明の際にそう全棟放送した。“いくら能力ばかりが発達した   
いようと、スキルアウトが力を合わせれば敵ではない”、とも言った。  
しかし、その外敵は、たった一人でこれだけの混乱をもたらしてい   
るという恐怖を消すことは叶わないだろう。

493■■■■:2008/04/03(木) 17:45:40 ID:yEGINN4U
 だから、それでいい。今は非常時であるために詳しく知らせては   
いないが、いくらかの人間はスキルアウトのリーダーが入れ替わっ   
ている事に気付いている。そんな所から下る命令がいつも通りに染   
み渡ると考えない方がいいだろう。誰かが一人でも我慢できなくな   
って引き金を引いてしまうとき、それが一斉射撃の合図だ。      
 ボクは携帯を操作して演算銃器を設定しながら、浮遊霊の足取り   
のクロヤマに狙いを定める。周囲数キロに渡って静寂が支配する中   
を、そいつの引きずる足が立てる音だけが動いている。着実に、ゆ   
っくりと動いている。しかしこの距離では秒速1メートルにも満ち   
ない速度は何のプレッシャーも感じない――              
 と、そこで急にボクの視界が急にぼやけた。額に浮き出た脂汗が、  
目蓋を乗り越えて瞳に零れてきていたのだ。それに気付いた途端、   
眼球に浸食した塩分が痺れるような痛みを主張しだす。        
 顔の筋肉が瞬きを欲した。だがそれを許すわけにはいかない。ヒ   
クヒクと痙攣が起きる。しかしそれ以上許すわけにはいかない――    
ボクは歯を食い縛って、より一層の集中力で標準を重ねる。だがあ   
まりにも緩慢でもどかしいクロヤマの動きに一つの考えが浮かぶ。   
今ここでこの衝動を癒しておく方が正解なのではないか。でなけれ   
ば、決定的な瞬間が訪れた時、最善を尽くす事ができないのではな   
いか。いやしかし、と別の思いも立ち上がる。その決定的な瞬間と   
いうのが、正に瞬きをした時に来たらどうするのか――ボクは目の事   
など気にならない集中力を振り絞らせ、充血を感じながらもサイト   
と爆弾魔を睨み続ける。                      
 幹部達も、それぞれの銃を構えて赤い人影に狙いを定めている。   
ここから下方に50メートル、横に100メートルの範囲に張り付   
く仲間達も、マッチのように小さな、赤い色の滲む人型のシルエッ   
トに狙いを定めている。その背に控えている者の目も、ぼんやりと   
光る標的から離れない。                      
 200の視線を浴びながら、爆弾魔は夢遊病者の足取りでただ左   
右の足を動かし、足の皮を地面に削らせる……            
 その瞬間は、いきなり現れた。                  
 フッ――、と。クロヤマが、インスピレーションの舞い降りた詩人   
のような挙動で顔をあげた。そして、その時やっと気が付いたよう   
にあたりを見回し――ニヤリ、と笑ったのだ。             
 直後、その体は今までとは全く違う勢いで光を発しだす。      
 途端、爆弾魔が突然大きくなったような錯覚が生まれた。さっき   
までは蝋燭の先に灯されているのが関の山、ぐらいの光量だったそ   
の体は、いきなりキャンプファイヤーのような、圧迫感すら立ち合   
わせる存在として改めて出現した。                 
 それは気を緩めた隙に火力の増した炎に顔の表面を舐め上げられ   
るような突然の恐怖だった。今までは十分な距離があったと思って   
いた――実際に、今も70メートルは下らない距離があるのだが――   
しかし、ボクは危険を感じた。知らない間に一気に距離を縮められ   
てしまっていたのだと思った。背中の肩甲骨と肩甲骨の間が強ばる   
のが分かった。指はいつの間にか引き金を引いていた。        
 ボババババババババババババァッ!!耳を塞ぎたくなるような、   
絶え間無い破裂音。

494■■■■:2008/04/03(木) 17:45:57 ID:yEGINN4U
 駐車場の広い闇を、ほとんど一斉に銃弾が駆け抜ける。スキルア   
ウトははからずとも息の揃った射撃を行っていた。          
 幅広く広がった無数の射撃地点から発射された弾丸は、オレンジ   
色の光の粒を含む扇型、厳密に言えば薄くおぼろな四角錐すいの風   
となり、その根元であり頂点である爆弾魔へと濃度を増しながら押   
し寄せ――                             
 ヅバァァッッ!!                        
 灰色の粉塵が爆発のように広がる中、砕けたアスファルトが飛散   
する。その炸裂は明らかに銃弾によるものだ。爆弾魔の放つ、赤光   
を中心とした無色の爆風ではない。                 
 膨大な数の鉛玉が極めて狭い範囲に密集する破壊力は、思ってい   
たよりも遥かに凄まじいものだった。そこへ弾速の遅い榴弾が一息   
遅れて着弾し、おまけの爆発を巻き起こす。             
 数秒と経たないうちに、爆弾魔が立っていた場所はコンクリート   
やアスファルトの瓦礫が覗く鼠色の靄に包まれていた。        
 先程と同じく、スキルアウト達はほとんど一斉にマガジン中の弾   
を全て吐き出し終える。するとそこには、さっきまでの騒音が嘘だ   
ったかのような静けさが舞い降りた。パラパラカラカラと地面に落   
ちる薬莢や駐車場の地面だった破片の音が、冬の寒空の下で静かに   
はぜる焚き火の薪のようだと思った。それ以外に、音は無かった。   
人の力が動く気配は無かった。                   
 油断したのだ。                         
 スキルアウトは、数百の銃を構える前にフラフラと現れたあのア   
ホな人間は確実に死んだと思っていた。               
 あっさりと。被害も無く。それに疑問を覚えなかった。ただどう   
しようもなく浮き足立った前向きな希望や驚きや期待が、胸の中を   
支配して膨らませていた。                     
 気付いているべきだったのだ。                  
 爆弾魔が一斉射撃を受けた場所に。                
 かつて川だったこの地を埋め立てた事で造られていた、人間が    
悠々と入れる程の大きさの水路に被せられた蓋の連なりが、その下   
を横切り、梯子状の模様の切れ目を走らせていた事に。        
 風が、立ちこめていた粉塵を払う。皆が待ち望んでいた光景は、   
そこにはなかった。煙幕の晴れたアスファルトとコンクリートの荒   
れ地には、生命の赤黒い残滓の代わりに、1メートルほどの穴がポ   
ッカリと、飄々と空いていた。                   
 スキルアウトは首を傾げ、ボクが自らの愚に気付きかけたその時。  
 ゴバッ!!と空気を轟かせて、その穴の左右10メートルの横一   
線が、まるで地雷の連鎖のようにして吹き飛んだ。

495■■■■:2008/04/03(木) 17:46:21 ID:yEGINN4U
  ▼ クレイモア 09

 と言っても、思い出したものはほとんど回想し終えてしまった。あとは終盤の
記憶だけだ。せいぜい噛み締めるとしよう。
 ガラス窓が壁の多くを占めるレストランだった。親が一緒だった。同級生もい
た。ということはたぶん、学校の卒業生のための祝宴とか、そういう行事にあわ
せた学校外の食事会だったのだろう。全校で百人あるかないかぐらいの大きさだ
から、同級生とその保護者でそんな事ができる。とすると、レストランではなく
バイキングだったのだろうか。とにかく分かるのは、ただ楽しそうな雰囲気で何
かを食べていたという事だ。
 明るかった。空気中に光の粒子とガスが立ちこめているようだった。笑い声も
満ちていた。ざわめきが包んでいた。
 俺はガラスの壁を背にしてハンバーグを食っていた。母さんの作った方がうま
い。そう言うと母さんは嬉しそうに笑った。でもハンバーグは好物だ。全部食べ
るつもりだった。友達の所に行かなくていいのか、大助。これ片付けてから行く
よ。父さんと母さんは光る顔で笑っていた。それは俺が見た両親の最後の幸せそ
うなツーショットだった。
 やっぱり母さんの方がうまかったな。食べ終わった俺は立ち上がって大将達の
集めるテーブルを見た。大将がこっちを振り向いて笑い掛けた。
 ダイスケ、こっちで食おう。
 おう。答えて俺は行こうとした。その時、声がした。大助大ちゃん伏せろ臥せ
なさい。
 俺は大将の顔を見たままだった。声はまだ頭に届いていなかった。見つめたままだった。スプーンを持って笑う顔を、歯を見せて笑う顔を、目を細めて笑う顔を、

 次の瞬間、彼女の顔が切り裂かれた。

 ガラス片だった。俺の視界の外から飛来した大小様々な透明の刄が大将の眼球
に生え口に入り頬を抉り喉を貫き眉間に突き立ち鼻に沈み顔の造形が崩れるほど
グチャグチャに切り裂いていた。ブワッ、と遅れて血が噴き出して、それは顔が
膨らんだようにも見えた。血飛沫や表皮の欠けらや筋繊維の端っこや黄色い脂肪
やらが、ゆっくり、ゆっくりと舞い上がる。
 俺は何を思う暇もなかった。大将の変貌を目にするだけの時間を与えられた直
後、背中から体をバラバラにされるような衝撃にぶっ叩かれたのだ。
 それは爆発だった。化学反応や核反応により作り出されたエネルギー、固体液
体から気体となった直後の圧縮された物質ががその行き場を周りに求め押し寄せ
て雪崩を起こし、全てを飲み込み砕き焼き崩しへし折り潰し捻り殴り踏み付け踏
み躙る、爆発とはすなわち破壊の全てだった。それを俺は全身で学んだ。そして
その渦に飲み込まれた。
 気が付くと暗かった。俺は暗い場所に寝転がっていた。夜の田舎町のような小
さな光がポツポツと散らばっている。音は無くとても静かだ。
 夢だったのか、と思った。俺は父さんも母さんも寝静まった真夜中に怖い夢を
見たのだ。あの光はしばしば家の中を通り過ぎていく光球なのだ。もう一度目を
閉じて朝を迎えれば、今度こそみんなと一緒に飯を食うんだ。今度は父さんも母
さんも大将もいつものやつらも大人たちも、みんな最初から一つのテーブルで座
って食って笑うんだ。
 しかし同時に悟っていた。これはあの悪夢と繋がっている現実だと。あの悪魔
は現実のものだと。俺はなけなしの解釈を並べて逃避しているのだと。バッドエ
ンドの結末を視ながらも頭の中では和やかな映像を組み立てている感覚に似てい
た、だから気付いた。自分が寝ているのはカサついた粉塵が敷き詰められた硬い
床だった。それは間違いなくいまさっきまで皆が歩き回っていた地面だった。自
分の体はあらゆる箇所が壊れていた。口の中はハンバーグではなく血の味がした。
暗いのは無数の瓦礫が人の生きるだけの間隔よりも狭い密度で積み重なっている
からで、小さな光はその隙間からわずかに届く外界の太陽だった。
 間違いなく現実だった。大将が、彼女が、あの少女が止める事もできない間に
高速で破壊された光景は本当に俺の目の前で起こった事だったのだ。
 事態を認識すると頭が澄み切っていった。俺は、俺たちは爆発に巻き込まれた。
破壊の渦に飲み込まれた。大将は死んだ。そしてこの瓦礫の暗闇の中に音は無い、
みんなも同じように死んでしまったのだ。みんな死ぬのだ。俺も死ぬのだ。俺も
同じように……俺も……いや……、俺は?

496■■■■:2008/04/03(木) 17:46:55 ID:yEGINN4U
 俺は生きていた。大将はとっくに、一瞬であんな姿になったのに、俺はこうし
て、ボロボロになりながらもまだ生きている。
 体さえ、一部だが動かせた。動けるだけの空間も、この瓦礫の中に、おそらく
俺だけに与えれていたという事だ。麻痺していた指先に触覚が戻り、何か暖かい
ものの存在を把握し始める。徐々に背中の感覚も蘇り、俺は背後から誰かに抱き
締められるようにして護られているのをはっきりと感じた。
 大助、伏せろ。
 大ちゃん、臥せて。
 あの時俺の名を呼んだのは誰だったのか。分かり切った結末を、それでも息を
飲んで見守るような緊張。寝転んだ軋む体をを動かして、ゆっくりと後ろを振り
返る。
 僅かな光源によって浮かび上がる、血に塗れた瓦礫。
 そこに、半分埋まるようになりながらも母さんを抱き締める父さんと、父さん
の腕の中から俺を優しく見つめる母さんがいた。
 首から上を失ってもなお母さんを守ろうとした父さんと、首から下を無くしな
がらも俺を元気付ける眼差しを絶やさない母さんがいた。
 その時の衝撃は、脳天の頭蓋の割れ目をてこでこじ開けて電極を刺されたとで
も言えば少しは伝わるだろうか。俺は目から20センチも無い距離に横たわるそ
の絵をダイレクトに受けとめるしか無かった。首無しの父さん。生首の母さん。
足りない分を合わせれば一人分になる体。
 俺が発狂しなかったのは、母さんが穏やかに語り掛けてくれたからだった。
 大ちゃん、大丈夫、お母さんの目をよく見て。
 母さんは首だけの体になってもまだ生きていた。話す事ができた。俺はその幼
稚なまでのホラー的記号よりも、ただ、生きている、まだ死んではいない、とい
う安心を強く感じた。
 俺はすがるように指示に従った。言われなくてもそうしていただろう。母さん
の、突如として虹色の光を放ちはじめた虹彩を食い入るように見た。
 そう。もう大丈夫になるから。すぐよくなるから。お母さんの目を、そのまま
真っすぐ見て――
 その時、俺は母さんの目の奥から放たれる眼光に乗った、圧倒的なエネルギー
を持つ波が体に流れ込んでくるのを感じた。それは弾ける音を持ち、あふれる光
に満ちてた。
 俺の体の中を、見覚えの無い記憶の映像が駆け巡った。
 神聖の森。霞を食べ、朝露を飲み、風と踊り戯れる幼い自分。世界には歓喜ば
かりしか存在しないと思っていた幼少期。
 少し冒険してみるだけのつもりだった遠出。突然感じた激痛。忽然と現われた
『ヒト』。襲い掛かる網。
 生まれて初めて感じる痛み。初めて知った恐怖。一生続くかのような苦痛。閉
ざされた檻。陽の届かない地下。手足に噛み付く鎖。
 ながい、ながい暗闇――
 天を割って轟いた音の衝撃。もう忘れかけてすらいた、光。炎に包まれてボロ
ボロと崩れる、今まで自分を閉じ込めてきた暗闇。
 そして、差し伸べられた手。
 出たいか?
 問い掛けた、炎の少年。
 ここから出してやる。

497■■■■:2008/04/03(木) 17:47:16 ID:yEGINN4U
 外。すっかり変わってしまっていた世界。はこびる狼。荒れる村。決意。少年
と、その仲間たちと共に行くと誓った少女の自分。
 熾烈な闘い。累々と積み重なる、狼と仲間たちの屍。命を削り合う大魔狼と少
年、自分。
 ついに勝ち取った平和。訪れた幸せ。仲間と皆で、恋人と二人で世界を旅した、
光輝く日々。
 結婚してくれ。生まれ故郷の森の泉のほとり。輝きを秘めた彼の瞳。少年から
青年へ、そして夫になった男の顔。どうしようもなく熱くなった胸。絶対に忘れ
ない、言葉、言葉、口付け。
 安らかな日々。森に構えられた新居。時に舞い込む仕事。二人で営む生活。二
人だけの幸せ。
 想像妊娠によって産まれた我が子。自分にも夫にも似ている生命。弛んだまま
戻らない自分の頬。なぜか苦笑いを浮かべる夫。
 元気すぎる男の子。生後10ヵ月ですいすい歩き、どこかへ隠れ、見つけた場
所は裏の大木の枝の上。安らかな寝顔。楽しくてたまらない子育て。
 なんでうちには猫がいっぱいいるの?猫はこの世で2番目に可愛い存在なのよ。
ああ、猫はこの世で2番目に愛すべき存在だ。ねぇあなた。なぁ母さん。……仲
好いな、父さんと母さんは。呆れ顔をする、この世で1番目に愛している最も可
愛らしい存在。
 思春期に入った息子。両親の仕事を知った息子。一時は反発した息子。父さん
と母さんは俺の誇りだと言ってくれた息子。将来俺もそうなりたいと言ってくれ
た息子。
 傷だらけで帰ってきたある日の夕暮れ。何も聞くなと語る目。夫と共に感じる
成長。少しの寂寞。
 豊かな顔つきに変わっていく息子。あの少年とそっくりになっていく息子。心
身共に強くなっていく、息子――少年。11の誕生日。初めて女の子を連れ込んだ
息子。狂喜する自分。
 そしてこの日。
 楽しい記憶になるはずだった一日。惨劇に変わってしまった祝いの場。
 息子が席を立った時、ガラスの向こうに見えた大型トラック。その運転席には、
黒黒とした狼達の怨念がウジャウジャとひしめいていた。それを回避する事は不
可能だった。あの者達は気の遠くなるような年月をかけて半壊した魂を寄せ集め、
爆弾と化して玉砕を決したのだ。私たちは防げない。私たちを恨む執念が勝った
のだ。
 ただし、何もしないまま死ぬつもりは無かった。たとえこの身が滅ぶとしても、
無関係な一般人を巻き込んでしまっているとしても、自分の一番大切な、自分よ
りも世界よりも大切な存在を壊されるわけにはいかなかった。
 心は一瞬で決まっていた。いや、決めるまでも無かった。
 大ちゃん、臥せて
 夫も同じだった。
 大助、伏せろ
 その体を護るため、私は自分の全身と引き換えにした。夫は息子を護らせるた
めに私を護り、頭部を狼に食い千切られた。
 全てが破壊に覆われた。そして死の静寂が訪れた。崩れるだけ崩れた崩壊は止
まり、怨念も爆発を起こした代償としてこの世から消えた。
 私と息子はまだ生きていたが、このままではどちらも死んでしまうだろう。自
分は考慮に無かった。息子を生き残らせる方法を探した。
 そして見つけた。
 それは人間ではない私が扱う事のできる秘術だった。そしてそれは愛する者の
瞳を最後まで見つめている事ができる死にかただった。
 私は人間の変装を解き本来の姿に戻ると、最期に息子の瞳へ自分の全てを注ぎ
込んだ――
 ――映像の奔流が止まった。俺の五感に再び瓦礫と血と生首の暗闇が戻った。
 目の前にある女性の首に、虹色の目を持ち、ネコ科の耳を頭に生やす顔に、今
垣間見た人生の主人公である女の子、少女、女の姿が重なった。
「母、さん……?」
 自分を産み育てたその人は俺の言葉に答えてかすかに微笑んだ。
 そして、それが母さんの行った最後の生命活動となった。

498■■■■:2008/04/03(木) 17:47:47 ID:yEGINN4U
  ▼ 駒場利徳 02

 宙を舞う、いくつものコンクリートと金網の長方形。それらと共   
に10メートルほどの高さに浮かびながら、幾千の軍勢を連れる将   
軍のような壮絶な笑みを浮かべるクロヤマ。             
 僕達は完全に呑まれた。ヤツの巻き上げた瓦礫の壁が、まるで押   
し寄せる大波のように感じられた。体が動かなかった。勝てるわけ   
がないと思った。銃弾の速度に回避行動をとれる人間、そんなもの   
は人間ではなかった。                       
 爆弾魔はその間にも動き続けていた。               
 一瞬の間だけ緩やかな動きになる空中の長方形に飛び付くと、手   
を取り合ってくるくる踊るかのような重心の回転を作り出し、充分   
な速さに達するとあっさりと手を放して何キロもあるソレを投げ飛   
ばす。                              
 ボクらに向けて。                        
 手品師の放つトランプのような鋭さで飛来する巨大な鈍器は、特   
に固まって銃を構えていた地点へ集中的に吸い込まれていき、破壊   
と悲鳴をもたらす。                        
 爆弾魔は投げ飛ばした勢いのままに次の飛び道具へと空中を移動   
し、全てのものが地面に落下するまでのうちに毎秒2発のベースで   
ボクらへ砲撃を行った。その瓦礫の滝の間を赤い光が飛び回る光景   
は、ある種幻想的なものでさえあった。しかしその赤い光が黒い長   
方形と結び付いて共震を開始すれば、その四半秒後にはトランプの   
砲弾がクリスタルシティの壁や立体駐車場のどこかへ突き立ってい   
た。                               
 スキルアウトの銃撃は止んでいた。第2陣は用意していなかった   
のだ。そして最初に息が合いすぎた。しかも全員の弾倉が空になっ   
たところでクロヤマが本性を表し、今のこの混乱だ。時折オレンジ   
の射線が駐車場に伸びるが、この距離であの動きを続ける爆弾魔に   
は当たるはずもなかった。                     
 今の状況では“ラジコン”を使っても有効ではない。やはり、大人   
数での同時射撃しか意味はない。                  
 ボクは演算銃器の設定を猟銃に変更しながら叫ぶ。         
「とにかく撃て!爆弾魔の動きを止めろ!」             
 幹部たちも無線で皆を鼓舞しながら銃声をたてる。         
 その時、ガラガラと降り注いでいた瓦礫の滝が止まった。全てが   
落下し切ったのだ。同時に爆弾魔の動きも途切れ、ヤツは瓦礫の山   
のふもとに着地する。                       
 チャンスだ。                          
「今だ!撃てっ!」                        
 いち早く態勢を整えたいくらかのスキルアウト、約50人分の銃   
弾が、爆弾魔目がけて吹き荒れた。                 
 水路は既に瓦礫で塞がっていたため、再びそこへ避難する事はで   
きない。先程の勢いには劣るとはいえ、爆弾魔もあくまで生身の生   
命体にすぎない。防御をせざるは得なかった。体が隠れる程の大き   
さのコンクリートの塊に赤く揺れる体を隠し、鉛の疾風をしのごう   
とする。                             
 スキルアウトは防勢に回り攻撃の手の止まった隙を逃さなかった。  
 たちまち轟く銃声の数が増える。描かれるオレンジの射線の密度   
が増加する。爆弾魔付近のコンクリートの弾ける範囲と勢いが倍加   
する。                              
 ついに爆弾魔が隠れていたコンクリートの岩が砕け散った。     
 赤い光はすぐに近くのコンクリートへ逃れるが、スキルアウトの   
銃勢は尚も増し続けている。数秒ほど保っただけでコンクリートは   
砕かれた。

499■■■■:2008/04/03(木) 17:48:29 ID:yEGINN4U
 爆弾魔はまた新たなコンクリートに移ったが、ボクは休息など許   
さない。携帯の操作で弾性を榴弾(グレネード)に設定し、弓なりな    
弾道を描く銃弾を撃ち込む。                    
 その爆発は狙い違わず爆弾魔の隠れたコンクリートの向こう側で   
起こった。ヤツはなんとか回避したようだが、次のコンクリートに   
隠れる動きが鈍い。それにその身を隠せるようなコンクリートも、   
あと3つぐらいだ。                        
 希望が見えた。ここで決めてやる。                
 ボクは携帯を無線機能を呼び出し、とある準備を終えて待ってい   
る人物に告げた。                         
「浜面、“ラジコン”の出番だ」                    
 答えの代わりに聞こえたのは、駐車場に鳴り響くクラクションだ   
った。                              
 地下駐車場の出入口から、続々と十数台の自動車が吐き出される。  
それらはスキルアウトがこの日のような時のために用意しておいた   
特功用の遠隔操作車、通称“ラジコン”である。文字通り、ラジコン    
の要領で操る事ができる、実物の自動車だ。             
「よし。全車、突撃させろ」                    
 その命令は必要なかったらしい。                 
 姿の見えない運転手に操縦される自動車は既に、四方八方に散開   
しながら爆弾魔目がけて突進していた。               
 特に動きの速い4台が、一足先に前後左右から突っ込み――直後、   
業火を撒き散らしながら爆発、炎上する。その一台一台には、爆弾   
が仕掛けられていたのだ。                     
 しかし、それでもまだ爆弾魔は死なない。             
 もう油断などしない、と抜かり無く見定めていたボクの目は捉え   
ていた。爆発直前、ヤツが畳ほどの大きさの銀色の板を瓦礫から拾   
って投げ上げ、爆風で舞い上がるそれの上に乗っていたのを。     
 炎を上げる4台の自動車。                    
 その上空に浮かぶ銀色の板――コンクリート板と共に水路にかぶ    
さっていた、何枚もの長細い鉄板を重ねた、どんな車重にも耐える   
鉄の畳――に乗った爆弾魔。                     
 下方からの光に照らされるヤツの顔は、今だに、歯を剥き出した、  
ひび割れた笑みを失ってはいなかった。               
 まだ、屁でもない、そう言っていた。               
 クソ、吐き捨てて指示を続ける。「手を緩めるなっ!銃弾もラジコ   
ンも全てぶち込め!」                       
 しかし思い通りにはいかなかった。                
「え?あれ、もう死んじゃったんじゃないんですか?」        
 幹部が首を傾げる。そう、ボク以外のスキルアウトは、爆弾魔が   
あの爆発から逃れていた事に気付いていなかったのだ。        
「まだだ!アイツはまだ――」                    
 指差そうとして、気付く。その姿が見えない。そうだ、もう下に   
落ちてしまっているはずだった。しかし、地面にもいないのだ。指   
示した隙に見失った。                       
 どこに行った?                         
 その疑問はすぐに解決した。                   
 ボン――ッ!                           
 突如として響く爆発音。

500■■■■:2008/04/03(木) 17:49:01 ID:yEGINN4U
 見ると、巨大な焚き火の向こう側のあたりで止まっていた“ラジコ   
ン”のそばに、銀色の畳を担いだ爆弾魔が立っていた。         
 ヤツは、ボクらからはよく見えない、車四つ分の炎の裏側に隠れ   
ていたのだ。                           
 気付いたときには遅かった。銃弾も、“ラジコン”の動きも止まっ   
ていた。それが決定的なものとなった。               
 爆風の速さで一つの“ラジコン”へ接近した爆弾魔が、そのそばに   
あった外灯の鉄柱に手を添える――直後、その部分が鋼鉄の吹雪とな   
って“ラジコン”へと突き刺さっていた。その一台はたまらず爆発し   
てしまう。爆弾魔の方はといえば、例の銀色の畳で身を庇っており、  
被害を受けた様子は無い。                     
 炎を上げる“ラジコン”を尻目に、爆弾魔は、下の辺りを吹き飛ば   
された事で頭の方から地面にぶち倒れようとしている外灯を受け止   
めた。太さ20センチ、長さは10メートル、重さは数十、もしく   
は百を越えようかという、その学園都市製の鉄柱を、空いていた腕   
に抱え込む。                           
 それはまるで、巨大な盾と長大な槍を鎧う、重槍兵の装いだった。  
 そこでやっと、スキルアウトも攻撃を再開する。オレンジ色の粒   
が再び吹き荒れ、ラジコンが唸りをあげながら走り回る。       
 だが、盾と武器を手に入れた爆弾魔は、そのことごとくを弾き返   
してしまった。                          
 向かってくる銃弾の全てを銀色の畳に花火を生みながら遮らせ、   
武器として扱うには長く重すぎるはずの鉄柱を、ジャイアントスイ   
ングの要領で振り回し、自分の方をスライド移動させる事で自在に   
操ってしまうのだ。                        
 盾には常に一定の方向を維持させながら、巧みな足捌きで鉄柱に   
勢いを与え、近づく“ラジコン”を次々と薙ぎ倒していく。鉄柱に自   
らの怪力を伝わらせるのではなく、鉄柱自身に宿らせた遠心力をぶ   
つける扱い方だ。そして起こる爆発も難なく防ぎきる。        
 いくら連携をとって連続で突っ込ませても無駄だった。       
 追い込もうとすればするほど、ヤツはより巧みな動作を繰り出し   
てしのいでしまう。大振りな一撃で一台を処理し、続く一台を、自   
らが鉄柱に対して動く事により短くした、素早い一振りで弾きとば   
す。同時に真反対の方向から突っ込まれても、鉄柱の中心点にスラ   
イドして腰の後ろで担ぎ、振り回す大回転で薙払う。鉄柱に脚の下   
をくぐらせ、腰をなぞらせ、肩首をまとわり付かせ、決して回転力   
を失う事無く、流れるような勢いの円運動を継続する。        
 横方向の豪快な一撃で一台を引っ繰り返し、続いてかかってきた   
一台を盾で正面から激突、潰し返す。巻き起こる爆発を、そのまま   
銀色の畳に遮らせ、水面を跳ねる石のように、姿勢を崩さないまま   
にたたらを踏みながら、爆弾魔は、一面に広がるスキルアウトのう   
ちのとある一点に目をやった。                   
 まずい、と思った。その先には、“ラジコン”を操作している者が   
密集していたのだ。あの車にカメラは内蔵されておらず、操縦者は   
肉眼で状況を確認しなければならない。そのため彼等は見晴らしの   
良い場所に集っているのだが、既に十を越えた炎の遮蔽物の位置、   
死角、そして各地点の“ラジコン”の反応から、爆弾魔は操縦者の位   
置を逆算、特定してしまったのだ。                 
「危険だ、爆弾魔が気付いた、逃げ――」               
 間に合わなかった。

501■■■■:2008/04/03(木) 17:49:21 ID:yEGINN4U
 ビュルルルルォォ――と、切り裂かれる空気をたなびかせ、緩やか   
に回転しながら、獲物に襲い掛かる鷹よりも速く飛んできた鉄柱が、  
クリスタルシティの最上部ににある、ガラス張りのレストランに突   
っ込んだ。ボクが立っている場所の数メートル下にある空間は、完   
全に破壊の色へと染められた。ボクは地響きに耐えながら、必死に   
状況を把握し続けようとする。が、今ので、もう、スキルアウトの   
勝ち目は失われたと悟った。                    
 ラジコンの動きが一斉に乱れる。今までは、爆弾魔に突撃する順   
番を鳶のように弧を描いて廻りながら待ち構えていたのが、糸が切   
れてしまったかのように散り散りになってしまったのだ。       
 爆弾魔は残る装いの盾すら未練無く捨て去ると、人が走る程度の   
速さで操縦者の操作が無くなった無作為な走行を惰性で行う一台の   
ラジコンに正面衝突し、バンパーにめり込みながら腕を突き立てて   
取り付いて、それを力任せに回しだした。それは先程の、空中でコ   
ンクリート畳を投げ付けてきた方法に似ていた。初めは、タイヤを   
ギュルギュルと軋ませながら元の進行方向とは垂直に引っ張り、そ   
の方向に車体がついてきだすとまた直角の方向に引っ張り、それを   
ぐるぐると繰り返し――次第に、爆弾魔よりも車体の方が大きく動き   
始め――車の方が爆弾魔を中心に回り――ついには車体が地面から浮   
き上がり――スキルアウトも銃弾を放ってはいるが、軸である爆弾魔   
は回転力を得ながらもでたらめに、しかし、車体が自身を遮る時間   
がより長くなるような足運びで踊り回り、それどころか銃弾が車体   
に命中する衝撃すら勢いに加え――充分なエネルギーを与えられた    
ラジコンは、ジャイアントスイングそのままの方法で放り投げられ、  
射撃手が特に密集していたフロアの壁面に激突、爆発し        
て、駐車場に転がる他のものと同じように業火を撒き散らした。起   
爆されなかった爆弾が残っていたのだ。               
 これが決定打となった。残存する正常な射撃手は、最初の4分の   
1も残っていないだろう。もはや爆弾魔は、それらの銃撃を個別に   
見極めながら避けていた。炎でまみれる中で迷彩効果を持ちはじめ   
た上半身むき出しの赤い体が、鋭い爆発音と共に、瞬間移動のよう   
な素早さで弾け飛びながら近づいてくる。              
 最初の総攻撃が100メートル以上の距離であったのに対して、   
今はもう40メートルもない。あの距離でも相当な威圧感を受けた   
のだ。ここまで近づいてこられては、心の保ちようが無かった。    
 さらに爆弾魔は、またもや鉄柱に手をかざし、粉砕せんとしなが   
ら止めを吐いた。                         
「てめえ゛らまとめて、死に゛腐らしやがれ゛ぇッ!!!!!!」   
 それは口の中に起こした爆発を利用して拡大した、鼓膜が歪むか   
と思わせるほどに、ひどく狂暴な叫びだった。その音と共に、人肉   
を切り裂く凶器となった鉄の破片が広範囲に飛び広がり、スキルア   
ウトのほぼ全員に襲い掛かった。

502■■■■:2008/04/03(木) 17:49:46 ID:yEGINN4U
  ▼ クレイモア LAST

 その事故現場にいた人間は俺を除いて全員死亡したらしい。俺だけが、体重の
13分の1を占めるはずの血液のうち、20リットルを失いながら生き残った。
生き残ってしまった。
 そこからは歪められる前の記憶にもはっきりしたものは映っていなかった。そ
の断片から推測するに、俺は茫然自失状態で山の奥深くに閉じこもっていたよう
だ。なぜか何日も飲まず食わずでいても死ぬ事がなかった。ある日、自分が誰か
も分からないまま家に帰ると、遠い親戚だという見たこともない人間が母さんの
漬物をかじっていた。
 何日か後、俺は学園都市の小学校へ編入されていた。そしてその三日後には俺
の生家は売り払われていた。もちろん保護者となっているはずの人間とは一切の
連絡がとれなかった。俺は立派なチャイルドエラーとなった。
 そして、思い出した本物の記憶が語る最後の日。その日俺は、脳を開発されて
能力を発現した。
 俺に現われた能力は、爆発だった。
 何もかもを破壊する、あの日俺の全てを破壊した力だった。
 脳内にその回路が開いた瞬間、俺の爆発は研究所の障壁を食い破って設備を滅
茶苦茶にしていた。俺はそこにできた穴を潜り抜けて脱走し、学園都市をがむし
ゃらに走った。
 鉄とコンクリートの街を歩く俺は何も持っていなかった。山が無い。木がない。
親はいない。友人達もいない。帰る家も失った。すべて無くなった。そして与え
られた、たった一つの力。爆発。俺から全てを奪った力。
 気が付くと、手術衣のような薄衣一枚で放浪する俺は暴走族に取り囲まれてい
た。当時無数に存在していた、個々が好きな名を名乗りそれぞれの目的を持つ不
良集団の一つだった。俺はそんなものに興味などわかなかった。ただ虚ろな目で
楽しそうなバイク達を不思議がるだけだった。
 しかし、その団旗がいけなかった。
 赤い染料で書かれた団名、ブラッドキャッツ。そしてそのシンボルマークとし
て、白目を向いた猫の生首がはためく大きな布に描かれていた。
 それを見た瞬間、俺は暴走族全員を皆殺しにしようと思った。
 俺に残されたのは、爆発だけだった。破壊の力だけだった。その使い道を、俺
はやっと見つけたのだった。
 俺は幸運だった。
 まず一つ目に、俺が叩きのめしたのは俺を危険な目にあわせかけていた暴走中
の暴走族であり、また、能力が発現したばかりだったために自滅して動き続けら
れず、殺すまでには至らなかったために、とくに咎められる事にはならなかった
こと。
 二つ目に、その騒ぎを一般人が早いうちに警備員へ通報しており、動けなくな
った俺をボロボロの生き残りが殺す前に優秀な女警備員が保護してくれた事。
 三つ目に、体の中で焦点を発生して爆破し穴だらけになった俺が搬送された病
院には、何でも治せる医者がいた事。
 ここまでが俺の本当の記憶だ。
 そしてここからが、俺が自分のものとして持っている記憶でもある。

503■■■■:2008/04/03(木) 17:50:06 ID:yEGINN4U
 その翌日白いベッドの上で目覚めた時、俺は記憶のほとんどを書き替えていた。
俺はくだらない詐欺師の両親の元に生まれクソみたいな不良の同級生達と殴り合
う生活を送っていたところを学園都市に無理矢理放り込まれ、そのまま捨てられ
たガキになっていた。
 カエルみたいな顔をした爺ィが俺の顔を覗き込んできたとき、俺の中で何かが
暴れ始めた。
 その衝動に従い、俺はカエルを不意打ちで蹴り転がし、看護婦やノロい患者た
ちを突き飛ばしながら、俺は病院を飛び出した。
 壊さなければならない。
 でなければ自分が壊れてしまう。
 俺の頭は、そんな意味不明な言葉で埋め尽くされていた。
 そして、それ以外に何も保有していなかった。
 持っていたのは、それを実行できる能力だけ。

 三日三晩不良どもを狩り続けると、外を出歩くならず者はさすがに一人もいな
くなってしまったため、、ハンバーグを買い漁った。それはあのクソったれなバカ
親が作る事のできる数少ない料理の一つであり、俺はそれだけは認めていた――
そういう事になっていた。学園都市の店には無意味なほどバリエーションが異な
る無数の種類の冷凍ハンバーグが並べられていたから、その全種類を一つずつ。
金はいつの間にか7桁ほどに増えていた口座の数字を全部おろして使った。ATM
では無理だったから受け付けで要求すると不審がられ、レジでは気味悪がられた。
 12になってまだそんなに経っていなかった俺には、新品の家具が揃えられた
僚の部屋はとても大きく感じられた。お化けのような染みがある木の天井は無か
った。歩くとギシギシ鳴って夜中は通りたくない廊下も無かった。もちろん鼻を
押し付けると埃と乾草の匂いがする畳なんてものもなく、すべては見たことも無
い建材で覆われていた。そんな綺麗で落ち着かない生活空間だったが、リビング
の数平方メートルを残してハンバーグのパックで埋め尽くしてやると少しだけ自
分と馴染んだ気がした。
 夜中だった。
 電気の代わりにテレビをつけた。
 どこを見回してもハンバーグだった。
 楽しくなってきていた。
 俺は早速目の前に積み上げられた山から一つを掴むと、包装を破って中身をぶちまけた。ミイラみたいな肉の塊が出てきた。それは今引き裂いたビニールにプリントされていた写真とは全くの別物で、俺は騙されたと思って、ミイラと包装をまとめてグチャグチャに引き潰した。と、舞い散る切れ端に“調理手順”とあるのをとらえた。そこには、ズタズタで見えにくくなってはいるものの、レンジで5分とか熱湯とか、そういう事が書かれていた。
 キッチンだった場所から電子レンジと電気ポットとボウルを掘り返して持ってきてコンセントに繋ぎ、なんだ結構面倒臭いなとこぼしながらさっきグチャグチャにしたミイラに熱湯をぶっかけて、ドロドロになったそれを電子レンジに注いでから一番大きなボタンを押してみた。ブーン、と音を立て始める四角い箱にかなり感動した。
 しかし、出来上がったのが湯気を立たせる温かい泥水だと分かると、俺は再び癇癪を起こして今度はレンジを丸ごと壁に叩きつけた。
 もうこんな食物なんて信じないと思いながら、ビシャッと広がってその後垂れ落ちる茶色の泥を眺めていたのだが、その内に腹が大声で空腹を訴え始めた。仕方なく電子レンジを拾い上げて、次のハンバーグを、今度は最初からちゃんと説明書を読みながら作る。
 5分後、ちゃんとしたハンバーグがレンジの中から現れたのを見て、俺は狂喜していた。嬉しくなって、それを食べるのは置いといて、続け様に7個ぐらいレンジにいっぺんにぶち込んで調理した。7個ぐらいのホカホカのハンバーグができた。俺は皿を掘り返して持ってくるのも待ちきれなかったから、レンジの中に腕を突っ込んで、一つを手掴みで口に掻き入れた。
 直後、全部吐き出した。

504■■■■:2008/04/03(木) 17:50:23 ID:yEGINN4U
 ひどい味だった。この肉になる前の生きていた牛は、一度も太陽の光を浴びた事が無かったのだと分かった。尻にたかってくる羽虫と戦う事も、湿った匂いのする黒い土に茂る朝露を纏った青草を食んだ事も、体にこびり付いた土埃や自分の排泄物を二日に一度人の手で隅々まで洗いあげてもらった事も無かったのだと、正確に分かった。その計算し尽くされた管理から生まれた絶妙な脂の味に全てが現れていた。
 俺は、一口食べただけの肉の塊をさっきと同じ壁へ投げ付けた。比較的やや小さめで粘り気の高い模様が弾けるのを見ることもせず、まだレンジの中にある他のハンバーグに手を伸ばす。一つを口にする。吐き出す。投げ付けながらまた手掴みで口に持ってくる。吐き出す。壁にぶつける。掴む。食べる。もどす。投げる。口に入れる。吐く。ビシャリ、グチャ、ゲホ、ブチャ、ブシャリ、グスリ、グズ、グスリ、そうしながら俺は何か大切な事を忘れているような、勘違いをしているような気がしてならなかった。だがこうしている他に何も無いという事も分かっていた。今はこうして、何かを欠落したままに、たった一人でハンバーグを食い散らかすしかなかった。
 唯一部屋を照らすテレビの光が滲んで見えた。気が付くと俺の顔には鼻水と涙が垂れていた。そして唇が勝手に動いて、声に出さずに何かを言っていた。何となく、人の名前のような気がした。何度も何度も呼んでいた。俺の知らない人の名前を呼んでいた。そのうち、鼻水と涙が口の中に入ると丁度良い塩加減のアクセントとなって少しだけマシになることに気付き、舌を出して口の周りをベロベロ舐めとった。その間も口は動き続けていて何度も舌を噛み切ったが、血の味もしてもっといい感じになった。
 そこで俺は付属のソースを使っていなかった事に気付いた。しかし少量舐めとってみると化学調味料の味しかしなかったからすぐに見放した。
 俺は数人分のハンバーグをレンジに入り込み、手掴みで食べ、吐き出し、投げ付け続けた。
 誰かの名をを呼ぶ口に舌を切らせ、ダラダラ垂れる血と鼻水と涙を舐めながらハンバーグを消費し続けた。
 なんとなく付けていたテレビに照らされながら食べ続けた。
 だいたい四日ほど、眠らず、休まず。

 安っぽい電子音のチャイムの連打が止んだかと思ったら、その数分後にカチャリと鍵の開く音がした。マスターキーを使ったのか。
 滑らかに回転するドアノブ
 すんなりと開くスチールドア。
 目を見開いて驚く、二十代前半ぐらいのババア。ドアが騒ぎだしてからずっと玄関に座っていたのだが、そんなにびっくりしたのだろうか。俺をハンバーグ食いながらテレビ見て四日も過ごすような変人だとばかり思っていたら大間違いだぜ。来客が来たらチャンと玄関でおもてなしするんだ。同級生の女を袴姿で出迎えた事だってある。同級生の女なんて知らない。袴なんて大嫌いだ反吐が出る。んなことしなくていいんだって、ちがうよ母さん、そんなんじゃないって、あいつはただの友達でクソでクズでゴミで死ねよ殺すぞブッ壊してやろうか。
 鬱陶しく騒々しい音。女が悲鳴を上げている。
 近所迷惑なんて、うちは考えないでいいわよねえ、都会はすごく気を遣うらしいけど。俺はソイツの頭を髪の毛ごとつかんで力任せに引っ張り、一本釣りのようにして部屋の中へ投げ飛ばした。
 天井にぶつかって片方の靴をこぼしながら落ちた先には、血の池に浮かぶ、糞山のように積もったハンバーグがあった。奇声をあげながらヨロヨロと起き上がった女は見渡してから嘔吐した。本物の肥溜めになった。
 しかし俺はそんなものには構わず、テレビの前に座り込む。前日の夜中、猫の耳を生やして巫女の服を着たアニメのキャラクターが画面の中に現れてからというもの、なんとなく喉が渇いて仕方がなかったのだ。今まではお気に入りのマンガがテレビになったときぐらいしか見ていなかったアニメを、俺は食い入るようにして見ていた。
 そんな生活は、ついに突入してきた警備隊員のうちの一人(なんと女)にロケットのようなドロップキックを食らわされるまで続く。

505■■■■:2008/04/03(木) 17:51:27 ID:yEGINN4U
 鳴り響いていた銃声が激減し、代わりに響く悲鳴。ボクは決断し   
た。あと数秒あれば爆弾魔はクリスタルシティに侵入する。建物内   
の閉じた空間ではアレに対抗する事など不可能だ。そうなればボク   
らは一方的に屠られるだけになってしまう。             
 そうなる前に、ボクが囮になるしかない。             
「クロヤマァァァ――ッ!」                     
 できるだけ大きな銃撃音をたてながら、ボクはヤツに声を振り絞   
る。                               
「スキルアウトのボスはここにいるぞ!スキルアウトの頂点の首は、  
ここだぁーっ!!」                        
「なっ、ちょっとリーダー、何をしてんすか!」幹部が皆慌てふた   
めき、一人が口を出す。                      
「おまえたちは、逃げるんだ。全員に命令だ。スキルアウトは全て   
の責務を放棄して全力で逃げろ」ボクは言い聞かせる。「アレは俺一   
人で引き付ける。ここに居れば巻き添えにするぞ」          
 爆弾魔は呼び声に反応してこちらを見上げていた。近くになって   
見下ろすその顔は、自分の名を呼ぶ声の主を探している。       
「こうなったのも俺の責任だ。それに勝算が無いわけじゃない。俺   
には発条包帯がある、それに演算銃器は一発限りで『炸裂弾』とい   
うのが撃てるらしい」                       
 ワンタッチでそれに切り替えられるようにし、また数発撃ってク   
ロヤマと叫びながら、                       
「だからおまえたちは早く逃げるんだ」               
 決して怖くないわけじゃない。ボクはたぶん死ぬだろう。ただ、   
義務には従わなければならない。この状況を作ってしまった、一番   
の責任者であるボクは、だからこの身を犠牲にしても、        
「何言ってるんですかリーダー!」                 
 幹部の一人が怒鳴った。                     
 そして自分の銃をわななかせながら、「リーダーひとり置いて逃げ   
られるわけねぇじゃねぇか!」                   
 それに全員が続く。憤りながら、勇みながら、あるいは怯えなが   
らも。                              
 その時、ボクは初めて幹部の姿をよく見たと思う。頑強なゴウ。   
女みたいなサスケ。メガネのリョウ。細身のシンジ。体育系のタカ。  
その後ろのミホ。                         
「……好きにしろ」                        
 でも、その代わりに。                      
「だが、この炸裂弾を撃つ時には合図する。5メートル以上離れて   
伏せろ。そしてそしてそのためにはタカとミホ、お前たちがいては   
窮屈だ。二人は昇降口に隠れていろ。炸裂弾を撃った後、あるいは   
全員が巻き込まれているかもしれない。その時はお前たちに任せる」  
 志望を受け入れた上での命令として、強制させた。タカとミホは   
顔を見合わせて複雑な表情で頷いた。そして走り去る         
 ボクはそれを尻目に、爆弾魔に向き直った。「構えろ。来るぞ」    
 クリスタルシティ眼前、駐車場のヤツはついに、自分の声を呼ぶ   
者がすぐ近くの一際高い建造物の屋上にいる事に気付く。       
 そしてボクに気付いたらしい。その顔がグニャリと曲がってより   
一層の笑みをつくり――しかし、その口から放たれたのは、悲痛の色   
に染まった叫びだった。

506■■■■:2008/04/03(木) 17:52:09 ID:yEGINN4U
 体の内側にブラックホールが入り込んだような喪失感があった。その穴は力を使いものを壊す事によってのみ癒す事ができた。なんでもいいから力を使って壊したい、俺にはそれしか無いのだという思いに突き動かされていた。だから、壊しても許される約束をしないかと電話が来たとき、俺は特に考えもなくイェアーと答えた。
 5ヵ月後、俺は合法的に人に暴力をふるう事のできる風紀委員になっていた。さらにその2ヵ月後には、より暴力的な仕事の多い風紀機動隊へ入隊。異常な早さの認定だった。それを幸いに俺は思う存分暴れ回り、飢えを満たし、何かを少しずつ薄めていった。
 そうして月日が過ぎ、能力をつかい続けるうちに、俺はだんだんと落ち着いていった。入学して1年程は学園都市じゅうの不良集団を潰しまわっていたが、スキルアウトという自衛目的のグループしかいなくなってからは飽きたから辞めた。壊す事がすっかり生き甲斐になってはいたものの、それはあくまで趣味のようなものであり、任務と『お知らせ』以外で不良達の相手をする事は無かった。
 壊すの大好き。でもそれは隠れた楽しみ。普段は風紀委員(ジャッジメント)と風紀機動員(アンパイア)の忠実な隊員であり後輩であり経験豊かな先輩である実力派の口数少なめな男子学生。その役どころを目指し、そして確立する事に成功して中学校時代をやり過ごし、大した努力も無く普通の高校に進学し、相変わらず任務をこなし、黄泉川姉ちゃんにこき使われ、いつものように病院へ通い、カエル先生の世話になり、猫達を拾って来ては飯を食わせ、馴染みのベンチで昼寝をして――
 そして、ミサカと出会った。

「う、う……ぅぅぅぅぅヴ、ぅぅ、ぅぅぅぅぅぅぅヴぉぉぉぉぉおおおおおおおおおぉおぉおぉおぉおぉおおおおお!!!」


 何故だ?クロヤマ、お前は壊すのが楽しくて楽しくて仕方ないの   
ではなかったのか。楽しいからそうやってボクの邪魔をしているの   
ではなかったのか。                        
 クロヤマ、                           
「お前は……何故、そんなに追い詰められた顔をしているんだ     
……?」                             
 ヤツは答えるはずもなく、新しく得た二本目を振り回す。全身を   
うならせ、半径10メートルの円を幾回にも描かせた末にお辞儀す   
るようなモーションで放られた鉄柱は、ボクの立つ建物の中腹に突   
き刺さった。爆弾魔はその後を追い、蛙のように飛び上がって壁か   
ら突き出た足場に取りつき、そして鉄柱を踏み砕きながら再び跳躍、  
悲鳴と銃弾をくぐり抜けながら一直線に屋上へ、ボクの所へ飛び込   
んでくる。                            
 ボク等が一斉に飛び退くと、入れ代わりに爆弾魔が屋上の縁へ爪   
を立て、銃撃する暇を与えぬ速さで屋上に乗り上げた。        
 びょうびょうと眼下に広がる、炎にまみれた駐車場を背中に、た   
った一人でスキルアウトを全滅しかけている能力者が間近に姿を晒   
す。                               
 腰に残ったボロ布だけを纏い、むき出しになっている上半身に盛   
り上がる、スジだらけの筋肉。                   
 数え切れないほどの荒事を繰り返したために変質している、甲殻
類のような右手。
 そしてその体表面を、揺れる水面のように染め上げる、赤色の光   
――『焦点』。                           
 幹部達もいつまでも惚けているわけではない。罵声をあげながら   
銃を向け、至近距離から銃弾を放つ。だが爆弾魔は十にも満たない   
数の銃口など意にも介さず、翻る魚影の動きで踊り回って瞬く間に   
距離を縮めてくる。

507■■■■:2008/04/03(木) 17:52:48 ID:yEGINN4U
「銃は止めだ!手で抑えろ!」ボクは炸裂弾を設定しながらナイフ   
を取り出し、同時に発条包帯を稼働させての運動負荷に備えるべく   
全身の筋肉を膨張させる。                     
 爆弾魔が爆音と共に跳躍して頭上を過ぎる。ボク等の中に踏み込   
み紛れて暴れるつもりだ。ボクは今にも動体視力の限界を突破して   
しまいそうなヤツを追って構える。あのスピードに付いていけるの   
は、発条包帯を巻いている自分しかいないのだ。           
 だが、その空間にバラ撒かれた破壊の乱生を見極める事ができた   
者など、はたしてこの世に存在するのだろうか。           
 ヤツは赤い残像すら残さず消えた。                
 見失った、と思うと同時に体を爆風が襲った。可視できる程の爆   
風に遮られたから見えなくなったのか、それとも衝撃に煽られ視界   
が動いた事で見えなくなったのか、分からなかった。         
「だああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」

 駄目だ。どうしても駄目だ。壊すだけではどうしても足りない。五年前はこれでなんとかなったのに、今は全く通じない。過去の思い出まで引っ張り出してきたのに、どうしてもあいつから離れる事ができない。
 消せない。隠れない。それを考えてしまっては駄目だというのに。
 彼女と座ったベンチと猫達の中庭が忘れられない。二人でテレビ画面を眺めた真夏の休憩室が忘れられない。一緒に歩いた霧雨の道路が忘れられない。
 突然崩れ落ちた冷たい体が頭から離れなかった。
 動じていない様子の真っ青な顔が頭から離れなかった。
 巨大な培養器が鎮座し、重力の無くなったあの病室が頭から離れなかった。
 突き付けられてしまった真実を振り払いたかった。
 俺は命を失うというのがどういう事かを知っていた。血の抜けた皮膚がどういう色をするのか知っていた。その体温がどのようにして無機物に奪われていくのかを知っていた。
 どれだけ呼び掛けても、泣き叫んでも、喚いても、引っ掻いても、懇願しても、いつまで待っても永遠に答えなくなる事だ。
 その眼が物を見なくなり、ただ網膜に光がぶつかるだけで終わる事だ。その耳が声を聞かなくなり、ただ音を振動としてとらえる鼓膜が揺れるだけになる事だ。
 その体が、ただの酸素と水素と炭素と窒素でできたアミノ酸でできた蛋白質でできた細胞でできた組織でできた器官でできた個体という“肉”のかたまりになる事だ。“人間”ではなくなる事だ。“ひと”ではなくなる事だ。
 俺は耐えられなかった。
 ミサカとそれを結び付けてはいけなかった。
 それ以上考えてしまっては壊れてしまう。
 『ミサカは』駄目だ。男『細胞年齢』の額を陥没させろ。
 早く。ソイツの『寿命』腕をへし折ってしまえ。
 邪魔だ。『クローン』あのガキを地べタに叩き潰せ。
 『薬物投与』ほら、アそこに3人もいるじャないか、今スgぐ壊セよ。『通常より』
 あそこノ『一年』dKguWだ。そう、クsB.Q、を、クソ、まだだ、壊レたクない、俺ha、まdだ、壊れたくない!

「だああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」

 夜のクリスタルタウンに四角く浮かぶ屋上が、絶え間ない爆発音   
にさらされる。

508■■■■:2008/04/03(木) 17:53:52 ID:yEGINN4U
 まるでありったけの手榴弾をぶちまけられたかのよ   
うに、空間という空間が爆破されていく。爆弾魔の姿は目に捉えき   
れない。突然ジグザグに通り過ぎた風の通り道にただただ爆発が連   
続し、地面が弾け、幹部たちが吹っ飛び、崩折れ、そこへ再び、爆   
発の尾を引く突風が襲う。その風の接近に気付いた時には既に自分   
の体は何処かを破壊されている。爆風を食らわせれたのか、殴られ   
たのか、蹴られたのか、叩かれたのか投げられたのか突かれたのか   
抉られたのか、それすらも分からない。全てかもしれない。      
 足を掬われる。転がされる。膝を立てる事もなく地面へ戻される。  
逃げようとしたシンジも既に気絶しているサスケを投げ付けられて   
倒れる。なんとか立ち上がるゴウ、彼がやられる瞬間にを狙い、ボ   
クは渾身の力を振り絞って挑みかかるが、虫でも払うかのようにし   
て弾き返される。                         
 ボク等は一瞬で勝機を失った。いや、最初から勝ち目の無い交戦   
なのだったか――洗濯機の中に放り込まれたがごとくゴロゴロと揉    
みくちゃに地面を転がりながら、ボクは思う。が、直ちにそんな無   
意義な思考を取り止める。                     
 衝撃が、やってこない。                     
 爆弾魔の様子が、おかしかった。                 
 ボロボロの顔を向けて見ると、そこには何もない中空にむかって、  
愕然と立ち竦んでいる爆弾魔の背中があった。            
 それはひどく不思議な光景だった。そこにいる彼の後ろ姿は、空   
っぽの宙へ向かって、まるで神の顕現を目撃する敬虔な信徒のよう   
に目を奪われている彼は、どういう訳か、他のどんな時よりも――    
幽霊のように歩いていた時、炎をあげながら笑っていた時、無数の   
銃弾をくぐり抜けた時、そして苦悶とも言える表情を浮かべた時よ   
りも――一番、“まとも”に見えたのだ。                
 腕を動かし、演算銃器を構える。炸裂弾。内蔵する全ての爆薬を   
純化させ、一発のうちに標的を消滅させる弾丸。辛うじて言う事を   
聞く腕を掲げて、身を固めるままの爆弾魔に銃口を合わせる。     
 止めてやる。終わらせてやる。引き金を引いた瞬間、そんな事が   
頭を通り過ぎていった。                      
 そして放たれた炸裂弾は、狙い過たずに爆弾魔の背中へと突っ込   
んで――

509■■■■:2008/04/03(木) 17:54:16 ID:yEGINN4U


 腕に脚に首に額に拳に焦点を精製して爆発させ、取り囲むスキルアウト達を薙ぎ倒す。
 俺は何か訳の分からない言葉を声の限りに叫びながら腕を振り回して俺の代わりに壊れ
てくれる相手を求めた。
 転がったまま起き上がれていない一人の足首を引っ掴み、立ち上がって走りだす誰かの
背中にぶん投げる。
 なんとか上半身だけを起こした男の頭を問答無用で叩きふせ、飛び掛かってきた少年を
後ろ回し蹴りで吹き飛ばす。
 真正面から挑んできたソイツの腕をとって捻り弾き、顎を蹴り上げ、そのまま踵落しに
移行、宙を漂う体を引き落とす。
 背後から迫ってきていた巨漢のそいつにむかって、爆発に乗った裏拳を体の回転ごと叩
き込み――

 そこに、ミサカが現われた。

 大きな体の後ろに隠れていた。俺が手の甲でカーテンを割るようにしてそれをどけると、
そこにはミサカが立っていた。
 真っ白な薄い夏物のワンピース姿だった。
 軽くて涼しそうな木のサンダルを履いていた。
 みずみずしく健康的な肌が透き通っていた。
 栗色の髪がところどころ金色に煌めいていた。
 恥ずかしそうな、笑顔だった。
 世界の光が、音が、色が、俺が、その体に吸い込まれていくのを感じた。この世でただ
一人だけスポットライトを浴びているかのようだった。彼女は本物として俺の前に存在し
ていた。
 俺はミサカがはにかむところなんて見た事はなかった。あいつはいつもむっつりとした
顔で笑ったりなんかしない。考えてみればあいつ、本当はすごく自分中心で人使い荒くて
うんざりするような性格をしてるんだ。恥じらいなんてものも持っていやしない。上半身
の裸を見られても平然としているぐらいだ。着ている服も、寝巻き代わりの手術衣以外に
は見た事がない。私服の一枚すら持っていないかもしれない。
 しかし、このミサカには、俺の好みに直球命中ド真ん中の格好をし、いきいきとした表
情で頬を赤らめ綻ばせている彼女の姿には、不思議と安心するような既視感があった。長
年寄り添って生活し続けて何年も見続けていた身内を見ているようだった。むしろそれが
本来の彼女なのだという気さえした。
 その光景は長くは続かなかった。
 ミサカの白い爪先に、ピシリと音無き亀裂が走った。それを合図にして、彼女の体は下
から徐々に粉となって崩れはじめたのだ。
 俺は静かな気持ちでそれを見届ける。自分の頭の中が、禁断の思考へと到達してしまう
のが手に取るように分かる。
 しかし、もうそれでいいのかもしれない。そこに行ってしまえば、俺はもう苦しむ事も
ないだろうと思う。
 ミサカの崩壊が肩まで届いた。
 なぁ、ミサカ――
 ゴトリと地面に転がり、目と額のあたりを最後に粉と消えゆく彼女の首を見て、俺はつ
いに思考してしまった。
 ――おまえ……死ぬのか。

 そウしtEb、俺ヴァ、壊れde pt――ッ

510■■■■:2008/04/03(木) 17:55:15 ID:yEGINN4U
「キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
イイイイイイイイイイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィャァ
ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
ァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア アア ア ア ア ア ア ア
ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア
ア ア !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!」

511■■■■:2008/04/03(木) 17:55:54 ID:yEGINN4U
  ▼ スキルアウトA LAST

 巨大な塔の最上階、クリスタルタウンで最も高い場所が真っ赤な光に埋め尽くされた。
 駒場新リーダーが放った炸裂弾が爆弾魔に突き刺さり、その内に込められた炎を解き放
ったのだ。
 私はタカと一緒に待機していた昇降口から、爆弾魔に止めを刺すべく飛び出した。
 しかし、その必要は無かった。
 屋上には無事に立っている人間が一人もいなかったのだ。
 自ら志願した者達は黒く燻って端の辺りのいたる所に転がっていた。
 駒場リーダーは、屋上の中心近く、床の焼け焦げのひどい場所に横たわっていた。
 そして爆弾魔は、ボロボロの上半身を曝け出し、真っ黒な消し屑のようになって屋上の
中心に倒れていた。
「……、死んだか」
 タカは呟いて緊張を解いた。私もそれにならう。
 間違い無い。爆弾魔は死んでいた。体中の肌が炭化しているのだ。あれで生きているわ
けがない。
 タカは爆弾魔に歩み寄りながら言った。
「俺はアイツの首を取る。おまえは駒場リーダーと他のみんなを」
 頷いて従う。私は駒場さんの傍に駆け寄って跪き、安否を確認した。
「リーダー?駒場さん?大丈夫ですか?聞こえますか?」
 うぅ、と駒場さんは火傷を負った唇でかすかに呻いた。よかった。リーダーは生きてい
る。相討ちにはならなかったのだ。
「うぅ……、……、だ……」
「え?どうかしました?」
 リーダーの呻きの中に、“〜だ”という言葉感じた気がした。
「あまり喋らないほうが、すぐに手当てを――」
「……だ……駄目、だ……」
 今度ははっきり聞こえた。駄目だ、と。
「駄目だ……アイツは、まだ……“死んでない”……」
 何のことか分からなかった。
 リーダーは震える手で爆弾魔の方を指差した。
 ゆっくりとそちらに顔を向ける。そこには、ナイフを持った手とは逆の手を爆弾魔の首
に伸ばそうとしているタカの姿があった。死んでいるはずの爆弾魔、ソイツの足がピクリ
と動いた。
 私はやっと駒場さんの言葉の意味に気が付いた。
 “爆弾魔は、まだ、死んでない”――!
「タカッ!」
 叫んだ。しかし遅かった。
 タカは私の警告に答えるよりも前に、いきなり弾けるようにして口を開いた爆弾魔に手
を喰われていた。

512■■■■:2008/04/03(木) 17:56:24 ID:yEGINN4U
  ▼ 駒場利徳 03

 僕は見た。自分の放った炸裂弾が、クロヤマに突き刺さる前に爆破で迎撃されてしまっ
た瞬間を。
 クロヤマは飛び散った炎の熱による被害しか受けてはいなかった。
 爆弾魔は、あれぐらいでは死なない。アイツの異常な戦闘性の一つにあるのが、2時間
も与えられれば負傷しても大抵の怪我なら独力で回復し、行動可能な肉体にしてしまう点
だ。ましてや今負っているのは体表面を炭化させられた程度の火傷のみ。爆弾魔は感受さ
れる神経情報を無視して破壊を続行してしまう。
「……駄目だ……」
 傍に歩み寄ってきた女が自分に心配そうな声を掛けてくるが、駄目だ。そんな事をして
いる場合ではないのだ。クロヤマは今は一時的に倒れているが、もう止めを刺すには遅い。
何よりも優先して、ここから一刻も早く逃げ去――
 遅かった。
 ガチュリ。
 そんな湿った音がした。
 傍にいる女の視線がある方向に釘付けになる。
 その先には、唖然とした表情で自らの手を凝視する男と、その手首を丸々口の中に包み
込んだクロヤマ――爆弾魔の姿があった。
「えっ!?あぁっ!?ぎ……あぁああ!?」
 そのおぞましい感触に男は声をあげ、咄嗟に腕を引き抜こうとする。しかし爆弾魔はそ
れを許さず、喉を鳴らせて手首をくわえ直す。
 それはワニを連想させた。一度その顎に捕えられた獲物は決して逃げる事かなわず、身
を捩って抵抗しようが懇願しようが、牙は肉を引き裂いて食い込むばかり。
 実際、爆弾魔の歯は――信じられないことに――肉食獣のような鋭さを持ったそれへと変
化していた。その爪はナイフのように鋭く伸び、毛髪は雄ライオンよりも長くたなびき、
数十秒前とは全く違う奇怪な容貌を月光の下に晒している。
 爆弾魔は男の手を引き千切らんと、野性の肉食獣に酷似した動きで首を強引に左右へ振
り回す。男はその強力な動きにたたらを踏まされ、あまりの激痛にも歯を食い縛りながら
も足を踏張る。
「い゛い゛い゛ぉぉぉぉぉっ!!放んなせこのぉぉぉっ」
「タカっ!ナイフ!」
 女がもう一方の手にあった得物の存在を思い出させた。彼はその刃物を振りかぶり、自
分を離さないソイツに突き立てようとする。しかし正にその時、喰われた手からグパリと
嫌な音がし、男は悲鳴をあげてナイフを取り落としてしまった。爆弾魔がより一層の力を
込めて手首を噛み絞めたのだ。
 喉を引き絞るような叫び声。力を緩めない爆弾魔。男の名を連呼する女。
 彼女は二人にむかって走り出した。男を助けるべく、一番近い爆弾魔の足に手を伸ばす。
 しかしヤツはそれを嘲笑った。膝を赤い光に包んで爆破すると、口に手首をくわえたま
まで、それを軸にして反対方向へ宙返りしたのだ。一見、男が爆弾魔を勢い良く一本釣り
したようにも見える動きだった。
 それから起こった事は、スローモーションでやけにきっちりと頭に届けられた。
 女の手から逃れた爆弾魔は、自分を釣り上げるように振り上げられた男の手の真上で爆
発を起こし、空中で逆立ちになった状態で一瞬静止した。
 かと思えばその直後、全身を爆破してきりもみ回転を始め、男の手首をガリガリと削り
出したのだ。長く伸びた髪は遠心力でスカートのようにふわりとはためいた。その毛先は
飛び散る血液とともに、すぐ傍で凍り付く女の顔をピシャピシャと叩いた。
 ガリガリ、ギリギリ、ジャリジャリ、そして、
 ブチンッ――!
 爆弾魔は大技を決めた体操選手の動きで地面に着地した。男と女はそのままで固まって
いた。何が起きたのかのかを理解したくない様でもあった。
 直後、天に掲げられたままの男の腕から、手首が無いその赤い肉断面が、バチャリと音
を立てて噴血した。
「「……ぁ……ぁぁ……ぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!」」
 二人は同時に別々の色を込めて叫んだ。

513■■■■:2008/04/03(木) 17:57:39 ID:yEGINN4U
 ぐちゃり、ぐちゃり。爆弾魔は行儀悪く屈んで口の中の肉を咀嚼していた。ボフンッ、
ゴチュッ、と時々爆発を使いながら。口の端から指の先端を溢しながら。
「あ……あ……あ……」
 男は気絶した。女はその変わり果てた姿を見て言葉にならない音を喉から溢す。男の体
を揺さ振る。何度も、何度も。片方の手首を失い、止まらない血を流す体を、何度も揺ら
す、しかし男は目覚めない。
 と、
「……せ……せ……」
 彼女は突然すっと立ち上がり、
「返せ……」
 返せ、返せ、無表情に、顎を動かし続ける爆弾魔へむかって囁きはじめた。
 返せ、返せ、返せ、
 ぐちゅ、ギチャ、ぴちゃ、
 返せ、返せ、返せ、
 クチャ、キチャ、ニチャ、
 返せ、返せ、返せ、
 ゴリッ、ガリ、カリ、
 返せ、返せ、返せ、
 ブシュ、ジャビ、ガリ、ゴチュ、バキ、パキ、ズリズリ、ピシャピシャ、ジャコジャコ
ガリガリズリズリ、
 返せ、返せ、返せ、返せ、返せ、返せ、返せ、返せ、返せ、返せ、返せ、返せ、返せ、
返せ、返せ、返せ、返せ、返せ、返せ、返せ、返せ、返せ、返せ、返せ、返せ、返せ、返
せ、返せ、返せ、返せ、
 ブチブチゴリゴリ、ズチズチニチニチ、バキバキビシギシ、ベキベキベキベキベキベキ
ベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキゴリゴリゴリゴリゴリゴリ
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリブチャブチャブチャブチャ
ブチャブチャブチャブチャブチャブチャブチャブチャブチャブチャブチャブチャブチャブ
チャ
 返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返
せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返
せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返
せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ
 ビチャビチャギチギチ、バリコリズチャミチミチミチミチミチミチミチミチミチミチミ
チミチミチミチミチミチギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリブチブチブチブ
チブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチグチュグチュグチュ
グチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグチュグ
チュグチュグチュグチュ
 返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返
せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返
せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返
せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返
せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ
 バキベキ、ビ

「タカの手を、返せえええええええええええええええええええええええええええええええ
ええええええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇェェェェェェェェェェ
ェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ
ェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエェェェェェエエエエエエエエエエッ
ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ
ッッッッッッッッッッ
ッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

514■■■■:2008/04/03(木) 17:57:55 ID:yEGINN4U
 女は一変、狂った声をあげて髪を振り乱し唾液を撒き散らしながらながら爆弾魔に飛び
掛かった。しかし無論、爆弾魔は造作も無くその喉を掴んで動きを止めてしまい、その言
葉が聞き入れられる事は無い――
 かと思われたが、予想は外される。
 もはや赤い泥となった手首の成れの果て。口一杯に頬張られたそれを爆弾魔は女の顔に
近付けると、ブパァッ!!と一気に吐き出したのだ。
 喉を掴まれて気管を圧迫される苦しさから、女は口を大きく開けてしまっていた。彼女
の望んでいたものは、その奥深くまで容赦無く飛び込んだ。
「ッ――ゴホッ――ヴッ――ウヴォォェェェッッ!!」
 女はすぐに嘔吐した。なりふり構わず地面にすがり、異物を吐き出そうとして全身を脈
動させながら咳き込む。
 爆弾魔はそれを、狂ったように物珍しげに眺めていた。いや、たぶん、本当に狂っ
ている。何ヵ月も伸ばしたままで、切る代わりに研いだような両手の爪。真っ黒くボロボ
ロに炭化した皮膚を次々と崩し落とし、その間から覗く赤黒い肌。そして落ち武者のよう
に荒々しくたなびく、地面に届きそうな程の長髪。その下に垣間見える、ひび割れた笑み
と狂人の叫び。だが彼は覚めたように口を閉じ、目の前にひれ伏す女を朦朧とした目で見やった。
「あ゛ぁ……い゛ぁあ゛……ひぁあ゛……!」
 女のさっきまでの気迫は、嘘のように消え去っていた。タカ、タカと零しながら、肉片
をかき集める彼女は、その持ち主である本人のことさえも目に入らないようだった。嗚咽
を洩らしながら鼻と口から赤い半液体を垂れ流すままに地面へ顔をこすり続け、爆弾魔の
放った断頭斧のような手刀を防ごうともしなかったのだ。
 僕が気を失う前最後に見たのは、新たな獲物を求めて屋上から飛び降りる爆弾魔の、踊
るように翻る長い髪の毛だった。

515■■■■:2008/04/03(木) 17:58:39 ID:yEGINN4U
  ▼ テレポーテーター 01

 パソコンのスピーカーからこの世のモノとは思えない身の毛もよだつような叫び声が響
き、高い建物の屋上を映す衛星映像に、大輪の花のように撒き散らされる真っ赤な光が広
がった。
「もう、本当の黒山先輩とか、私たちには想像のつかない学園都市の実態とか、わけのわ
からない任務とか、そういう事はどうでもいいと思うんです」
 初春は落ち着き過ぎな口調でそう言った。
「黒山先輩は、本当はとんでもない人なのかも知れません。というか、たぶん、とんでも
ない人です。ハハ、だって、一人で百人単位ですもんね、普通じゃありませんよね、どう
やったらそんなに強くなれるんでしょうね……普通の人じゃ、ないですよね……」
 無理な笑い声は、途中から無様に崩れて泣き声になった。
「でも、私は黒山先輩には本当にお世話になったんですっ」
 言葉を震わせながらも、初春は言い続けた。
「初めてあの人に助けられたのは、風紀委員になったばっかりで、すっごく浮かれてた時
ですっ。一つの経験も実力も無いくせに、腕章を持ってるってだけで調子に乗って!訓練
で教えられた事なんかまるっきり忘れちゃって!やることなすこと全部あまのじゃくで、
挙げ句にはみんなの足を引っ張って!危険に晒してっ、でも、あの人はっ、黒山先輩はっ、
何でも無い事みたいに私をカバーしてくれて、……何回でも付き合ってくれて……ナビゲー
ターの才能があるって言ってくれて……初めて表彰された時は、まっさきにおめでとうっ
て誉めてくれて……」
 初春はもう、思いっきり泣いていた。
「私は、黒山先輩に、あんな事をしてほしくないです……」
 建物の中にある監視カメラのスピーカーからは、柔らかいものが潰れる音が拾われてい
た。恐怖が音になったような無数の悲鳴が響いていた。範囲の狭い暗闇の映像には獣のよ
うな赤い光が何度も一瞬だけ映っていた。
「黒山先輩、苦しんでますよね?いまさっきのあの声、悲鳴でしたよね?」
 そこで初春はべそをかくのをやめ、私を真っすぐに見た。また泣きそうになった。もう
一度目をこすり、呼吸を整え、再び、もっと真っすぐに私を見た。
「白井さん、お願いです。黒山先輩を止めてください。助けてあげてください。これ以上
人を傷つけさせないでください。お願いです。白井さん、しか、できない、んです……」
 初春はまた涙声に戻った。しかし目だけはそのままだった。真っすぐなままだった。
「白井」
 背中を向けながら言い放つ。
「全力でわたくしをサポートするんですのよ」
 彼女は燃える瞳で頷いた。
「当然です」
 頭の中の地図を呼び起こし、第十九学区への最短ルートを十一次元的に演算しながら思
う。
 私だって、あの猫バカには言ってやりたい事ややってやりたい事が、たくさんあるのだ。
 そのためには、あんな破壊活動など、一刻も早く蹴り止めなければならなかった。

516■■■■:2008/04/03(木) 17:59:29 ID:yEGINN4U
  ▼スキルアウトB LAST

「頑張れよニック、あともうちょっとだ!」
 励ます声に返事は無い。オレは背負った彼の体を割れ物のように注意しながら、クリス
タルタウンへ運んでいる。
 天道通り脇の路地に戻ってみると、仲間たちは傷ついた体で横たわったままだった。特
にニックはひどかった。まるで死んだように動かないのだ。オレが体に触れた時にはピク
リと反応したものの、頭をやられたためだろうか、かなりヤバい。皆は体が正常に動くよ
うになるまでそこに居て、オレが大至急でクリスタルタウンまでニックをつれていく事に
なった。ニックのためなら当然だと思った、むしろ有り難かった。あの中で一人だけ無事
な自分を恥ずかしく感じる気持ちがあったのだ。
 電力の無い街は、暗い。
 建物と建物の切れ間、遥か遠くにある第六学区や第四学区の空がうっすらと白んでいる
以外に、光源は無い。月は新月。星も“外”生まれの汚れた空気のせいで霞んでいる。
 闇は自分以外の全てを塗り潰す。闇に上塗りされ、とたんにその属性を変えてしまった
世界は自分を圧殺しようとしているのではと思えてくる。が、今は怯えるわけにはいかな
い。オレはニックを助けないといけねーんだ。もっとも、たとえ意識が無かろうと、道連
れがいるというのは心強い。オレはいつのまにか彼に頼ることで落ち着いている。
 近道の路地を抜けると、ようやくクリスタルタウンの光の気配が見えてきた。十九学区
で唯一電力が通っているその場所はスキルアウトの本拠地だ。医者の真似事ができる人間
も物資もある。
「見えたぞニック!もう大丈夫だ!」
 彼は呻き声を上げる。心なしか、背中で揺れているうちに少しずつ回復している気がす
る。これなら大したこともなく治るかもしれない。
 だが、そんな能天気も、クリスタルタウンの駐車場に出る次の角を曲がるまでだった。
 最初は、祭りでもしているのかと思った。
 だがいくらなんでも車を燃やすというのは――いや、そういう斬新なのもアリなのか?
 次に、そこらじゅうでスキルアウトらしき服装の人間がごろごろ転がっているのに気が
付いた。
 振る舞われた酒でも飲んで酔っ払ったのだろうか?介抱する奴も一人もいない。それは
ちょっと厳しいんじゃねぇのか?
 その内、地面が一面なにかの液体でヒタヒタに濡れているのに気が付いた。橙色の炎の
光が、チロチロと明滅している。
 ああ、これがその酒だね。全く、あたりにぶちまけるほどの大騒ぎとは。ビールかけの
真似でもやっていたのか?というか、そんなにテンションが上がるというのは喜ばしい事
があったからだろう。つまり今の状況で喜ぶべき事というのは、『アイツ』がぶちのめされ
たのではないだろうか?くっそー、もっと早く来るんだった。完全に出遅れてるじゃねえ
か。
 それにしても、あのグチャグチャしたものはなんだろう。駐車場の中心にこんもりと円
形に積まれた、酒がにじみ出ている、あのブヨブヨグチャグチャしたものは何なのだろう?
 震える膝をついて、手のひらを地面に付ける。
 裏返して、付着した液体を確かめる。
 血だった。
「うああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」

517■■■■:2008/04/03(木) 17:59:52 ID:yEGINN4U
 いつのまにか地面へ投げ出していたニックの体にすがり付きながら、沸き上がる恐怖を
必死で吐き出す。叫んでいなければ押し潰されてしまう、あるいは破裂してしまう。
「あーーーッ!ニック!ニック!あーーーッ!」
 そうだ、逃げるんだ。そのまま喚きながらニックを抱えてあっちまで、この狂った祭り
が目に入らない所まで逃げろ!頭に流れ込んでくる情報を遮断しろ、話はそれからだ、こ
んな、血を流す肉塊を中心に据えた、参拝者は一人として動かない、こんな、こんな、早
く逃げろ!こんな事をするヤツなんて、そんなのは『アイツ』に決まっている!早くしな
ければ、

 『アイツ』が、現れた。

 広大な駐車場の反対側。
 クリスタルタウンの自動ドアから。
 右手に、ニンゲンをぶら下げて。
 左手に、ニクをぶら下げて。
 全身、浴びたように血まみれで。
 どういうわけか、貞子のような長い髪になっていて。
 そして
 その顔が
 クルリと

 こっちに――

 パシュ、と、そんな音が遠く離れていてもはっきりと聞こえた。ヤツの体の血が霧散し
て、その髪の間からのぞく顔が露になる。が、そこにあったものは果たして顔と呼べるの
だろうか。その目は光が見えているのか。その口は言葉を喋るのか。
 再び、バシュリ。
 『ソイツ』は両手に掴んでいたものを放り出して、物凄い速さでこっちへ走ってくる。
飛んでくる。
 ぐちゅり。赤い湿った塊の上。
 バコリ。燃える車の残骸を乗り越え。
 メキリ。鉄柱の天辺を蹴り付け、折り曲げながら。
 ビシリ。アスファルトを踏み砕き、
 そして、その拳がオレの腹へ――
 骨と内蔵が潰れる音がした。腹と言わず体全体を衝撃が突き抜ける。一瞬の浮遊感の後、
地面に勢い良く回転しながら墜落し、四方八方から叩き殴られる。
 オレは5メートルも吹っ飛ばされていた。たった一撃で体がボロボロだった。被ってい
た帽子もどこかへいき、たくし込んでいた髪がダラリと垂れる。
 『アイツ』は――そんなオレを無言で、水の中を藻掻くボウフラでも見るような目だ見下
ろしている。
 一歩。また一歩。近づいてくる。
 しかしオレは動かなかった。体中が痛んでいる。それに逃げても無駄だ。何より怖かっ
た。震えが止まらない。蹲ったまま動けない。
 嫌だ。オレは、嫌だ、壊されたくない、あんな、グチャグチャな、嫌だ、アタシは、あ
んなのになりたくない、
「嫌だ……助けてよ、ニック――」
 助けて、助けて、助けて、
 アタシはそれ以外の全てを忘れてしまったように乞い続けた。
 何度も乞い続けた。
 何秒も、乞い続けた。
 何十秒も、乞い続けた。
 さすがにおかしいと想い、恐る恐る顔を上げた。
 そこには、呆然と立ちすくむ男がいた。
 彼は直後、爆発と共にバウンドしながら駐車場を突っ切り、クリスタルタウンの店舗へ
突っ込んでいった。

518■■■■:2008/04/03(木) 18:00:33 ID:yEGINN4U
  ▼ 黒山大助 ビギンズ

 女。
 十代半ば。
 肩までの茶髪。
 茶髪の、少女。
 それを俺の正気を失った目が認識した時、屋上で起こった不思議な現象が、再び目の前
に、今度は逆再生で繰り返された。
 収束する光の粒子。
 地面に這い蹲う女を媒体として、その表面に纏わりつき、構成されていく、見覚えのあ
る手足。
 そして現れた、ミサカ。
“真っ暗な木立の中”、“泥に濡れた服のままで”、“膝へ目一杯に顔を押し付け埋めた三角座
りの”、“置き去りにされた子供のような”、ミサカ。
 それが表すものを理解した瞬間、俺は全力で自分自身を爆破した。
 馬鹿が、馬鹿が、馬鹿が、馬鹿が、馬鹿が、馬鹿が、馬鹿が、馬鹿が、馬鹿が、馬鹿が、
馬鹿が、馬鹿が、馬鹿が、馬鹿が、馬鹿が、馬鹿が、馬鹿が、
 約80キロの渾身が、凶器と化して炎の駐車場を縦断する。のた打つ膝がアスファルト
をひび割り、暴れる腕が肉片を飛び散らし、跳ねる背中が鉄柱をへし折り、挙げ句はガラ
スの壁を粉にしながら店舗に突っ込み、そこでようやく止まる。それでも俺は自壊を止め
ない。何度も何度も、床に額を打ち付ける。
 俺は馬鹿だ。
 どうしようもない馬鹿だ。
 現実が直視できなかった?
 馬鹿が。
 事実を受け止めきれなかった?
 馬鹿が。
 考えてはいけない?
 壊していなければ壊れてしまう?
 だからここへ逃げて来た?
 あの病室から抜け出して?
 ミサカを、あの猫好きで電波で栗色で変人で綺麗で病気で仮死状態になるような発作を
日常的に起こして覚悟した表情でその露見を受け入れて押し殺した顔で自状を告白した娘
を置き去りにして?

 馬ッッッ鹿じゃねぇのか、オマエ!!

 オマエなんかオマエ如きなどこの糞野郎なんて、何度でも幾回でもいくらでも、二百八
十三回でも三千八百五十回でも何万回でも何億回でも壊れてしまえばいいんだ。ミサカの
ためならそれが何だと言うんだ。確かに俺には病気を何とかする力なんて無い。俺にでき
る事はどうしようもなく偏っている。だがそれが何だと言うんだ。無力だから、耐えられ
ないから、そんな一立場からの理由で逃げるなど、安易な破壊に逃げ込むなど人外下道の
狂妄も甚だしい。
 それに、それにだ。
 少し考えてみればすぐに分かった事だろう。
 ミサカを忘れるなんてできるわけが無いと。消すことも隠す事も不可能だと。そんな事
は脳の30%以上を一度に爆破でもしなければできない芸当だと。
 俺は、ミサカが大好きだった。
 少し特徴的なあの口調が大好きだった。猫を見つめるあの真剣な目が大好きだった。無
機質的に告げる淡々とした感想が大好きだった。俺の話を聞くバカ真面目な眼が大好きだ
った。機械的な、でもゼンマイのようにコミカルな足の運び方が大好きだった。風に揺れ
る細い栗色の髪が大好きだった。

519■■■■:2008/04/03(木) 18:01:08 ID:yEGINN4U
 凹みだらけにした床に散らばるガラス片に、伸びきった髪と爪をくっつけた自分の姿が
映っている。なんだ、このクソふざけた格好は!?
 俺はネイルアートなんてしねぇ。両手を噛み合わせ、関節と逆方向にへし折る。捻じ切
る。
 俺はうしおじゃねぇ、ヒッピーでもねぇ。血が滴る手で梳くように挟み掴み、ブチブチ
ビチビチという湿った音を無視してむしり取る。当然二つしかない手だけでは効率よくな
い。焦点を髪の毛の内部に発生させ、一度に全てを千切り飛ばす。
 何下らない事やってたんだ、爆弾魔。堕楽してんじゃねぇぞ、人間爆弾(クレイモア)。
気は澄んだかよ、黒山大助。分かったらさっさとミサカのところへ戻るんだ。アイツの為
に全ての無力を、全無能を捧げるんだ。テメエの崩壊など知ったことか。死に触れ壊れて
震えて狂れて、無残に無様に足掻き悶え続けるがいい。
 ――と、言いたいところだが。
 ちっとは、誉めてやってもいいだろう。
 とある記憶を思い出した事については。
 とある方法を思い付いた事については。
 ミサカを、カエル先生でも匙を投げたあの重病の少女を救う方法。
 俺が、おそらく俺だけがアイツを救えるという、超ご都合主義上等至上の、最高に有り
難い方法を見つけた事だけについては、黒山大助、お前は神だ。
 ミサカは死ぬ?成長促進過多?細胞寿命?余命数年?医学の頂点、カエル先生にだって
無理?この世の理として不可能?
 馬鹿言ってんじゃねぇぜ。
 おら、世界。
 お前だよ、世界。
 お前はアイツを助けられないと言うのか。
 医学的に無理か。
 科学的に無理か。
 1+1=2、そんな理屈に則った、糞ツマンネェお行儀良しな公理に絞られたお前では、
アイツを救うことはできないか。
 それなら、話は簡単だ。
 壊れろ。
 詳しく言うなら、、消えろ、どっか行け、失せろ、死ね、去ね、砕けろ、崩れろ、潰れろ、
弾けろ、爆ぜろ。つまり壊れろ。
 お前なんかに用は無い。
 お前がいなくなったところで、なにも困りはしない。
 俺は知っているのだから。
 俺は思い出したのだから。
 もう一つの世界を。
 魔術の世界を。
 俺の、故郷を。
 だから、そうだ、隠したって無駄だ。今の俺になら何だってできる。俺に与えられた唯
一の能力を、至上の目的に符合させられるのだ。
 お前が隠すと言うのなら。
 貴様ごときが俺の邪魔をすると言うのなら。道を遮ると言うのなら。
 俺も、俺の本質を賭けて相手をしよう。
 やってやろうじゃねえか。
 ミサカの為なら。
 壊すぜ、世界。


「クロヤマァーッ!」
 聞き覚えのある声。駒場兄ちゃんだ。そういえばさっきも呼ばれていて、顔を合わせた
ような気がする。相変わらず暑苦しいなぁ。仲間は逃さなくていいのか。そうか、今の俺
ってチャンスっぽく見えるもんな、そこはちゃんと止めを刺しとかないといけないよな。
 俺は完全に包囲されていた。ガラスの欠けらだけしか無い空っぽの店舗の外には、半円
状に並んだスキルアウトが銃を構えている。その数――……、少なくとも、楽には避け切れ
ない。
 そこに渦巻いているのは、暴力。
 それが強要しているのは、死。
 人がその志を断ち切られるのにはさまざまな理由がある。力不足しかり財政難しかり体
調不良しかりその他エトセトラー。それらは邪魔するのではない。諦めさせるのだ。そい
つらがねじまげようとするのは、人の心そのもの。
 だがそんなことは関係無い。今の俺のハートが曲がるわけがねえ。それに最悪の抑止力
である暴力ほど、俺の力と相性のいい相手はいない。
 壊せない気が、しなかった。

520■■■■:2008/04/03(木) 18:01:44 ID:yEGINN4U
  ▼ 駒場利徳 04

 ヤツは追い詰められてなどいなかった。弱ってなどいなかった。狂ってはいなかった。
 むしろ正気を取り戻している。
 今のヤツにあるのは、無差別的な破壊欲に思考を任せ切った狂暴さではない。
 この上なく自覚的な破壊意志に力の全てを集中させた、指向性爆弾のような凶猛さ。そ
れがヤツの瞳には溢れていた。
 その双眸が赤く発光し、瞬く間に全身が焦点に包まれていく。それは爆発寸前を示す明
るさだった。その密度で一度に展開可能な範囲は、両膝両肘から先までのはずだった。そ
れが今や、内部に炎を湛えたガラス容器と化したがごとき輝きを放っていた。
「邪魔したな、利徳兄ちゃん」
 真っ赤な彼は、ふてぶてしい顔をして、笑った。
 その刹那、赤い津波が爆発した。

  ▼ 笹之佐暁美 LAST

 『アイツ』が私の相手を中断して突っ込んでいった店舗にスキルアウトが群がったが、
その人垣はすぐに発破されることになった。
 突如としてほとばしった紅の光から生まれる、赤い衝撃波。
 足が地から離れ、浮き上がり吹き散らされるスキルアウトたち。
 剥がされていくレンガブロック、コンクリート、アスファルト。
 巻き上げられていく肉片、血液。
 隕石衝突のCG映像さながらの光景が迫ってくる。
 しかし、それが私に破壊をもたらす事はなかった。
 私の前に、一人の背中が立つ。
 そこへ衝撃波が襲い掛かるが、見えない壁に阻まれたかのように、赤い奔流は二つに割
られて左右を過ぎ去っていく。
 周囲を真紅と轟音と激動に包まれる中、その人物はゆっくりと私に振り返る。
「助けに来たぜ、暁美」
 ニックだった。
 それを認めた瞬間、私は彼に飛び付いていた。

  ▼ 岡牧汲音 LAST

 駐車場が見たこともないほど赤い色をした衝撃波に飲み込まれた、と思ったら、屋上に
爆弾魔が飛び上がってきた。
 私は反射的にタカをかばう構えになる。応急処置を施し、一応は出血も止まったものの、
まだ安心などできない。ましてやコイツはこんな事をしでかした張本人だ。
 懐のナイフを握り締めた私をチラリと横目で一瞥して、爆弾魔は「ニィ」と笑った。か
なりむかつく笑い方だった。そうしていたのも一瞬、ヤツは全身を真っ赤に輝かせ、爆風
を残して彼方のビルの屋上へと飛び去り、幾数秒と経たずに見えなくなった。
 私はしばらく、ヤツの目から流れ込んできた感情に呆然としていた。
 無能力の私にすらはっきりと分かるほど、溢れ滾っていた、ヤツの心の中。
 破壊欲求。
 懐郷。
 全能感。
 そして、愛。
「はぁ!?」
 愛!?

521■■■■:2008/04/03(木) 18:02:24 ID:yEGINN4U
  ▼ 駒場利徳 LAST

「結局アイツは、何がしたかったんですかね?」
 一人が疲弊しきった顔で、嘆くように聞いてきた。
「……さあな……」滅茶苦茶になってしまったクリスタルタウンを見回しながら、ボクは
答える。
 分からない。あんな破壊狂いに、理解という行為を施すこと自体、適切であるのかどう
か。
 ただ、あいつが駐車場に並べていた、ありとあらゆる肉の塊。それについて、一つだけ
確かな事は――
「……どうせ、ハンバーグでも焼きたかったのだろうさ……」
 えぇ?心ここにあらずといった様子で声を返してくるが、その時、ボクの携帯が着信を
告げた。そこに映る小学生の写真つきの名前を見て、ため息をつく。
「りーくんっ、おなかすいたーっ!きょうはオムレツがたべたーいっ!」
 繋がった途端に飛び出してきた声に辟易しながら、考えをめぐらせる。ああ、冷蔵庫に
まだ食材は残っていただろうか。しかし、この体ではまともにフライパンも握れるかどう
か。全く、クロヤマの奴にも困ったものだ。今度会う時は、作り置きしている日にしてほ
しい。

522■■■■:2008/04/03(木) 18:04:22 ID:yEGINN4U




 どうもお久しぶり、またもや文章・所要時間共に長すぎな風紀の人です。
 というわけで、前回予告した通りに妄想爆発な第二章>>450-521でしたー。
 未読の方のために忠告しておきますと、この話はホント妄想だらけ、と言うか妄想しか
ない、つうか大丈夫だろうか、この先、ってぐらいです。なんかいきなり超人化してるし、
アブナイ人になってるし、軽く200人ぶっ飛ばしてるし。まあ何故ブラックアウトにな
らなかったりGに耐えれたり殴りまくっても骨折しないのか、という問題には一応の能力
的理由を考えてるし、最終的には提督さんを倒せるぐらいに強くなる予定なのでさほど構
わない、かなー。
 しかしまー、この構成はどうにかならなかったものなのだろうか。うまく纏めれば半分
ぐらいにはできただろうに。しかもやる気がなかなか起きなくてスキルアウトさん達の所
はかなり適当。もうドンパチはお腹いっぱいです。早く登校初日に遅刻させて姫神に再開
させて吹き寄せとクラスメイトさせてぇなぁ。ついでにゴーレムを楽々爆破させたりして
ぇなぁ。ちなみに補足しておくと、笹之佐暁美15歳男装が生き甲斐にして処世術並びに昆布飴が好物さんの能力はいろいろといい具合に回復できるやつです。だからニックも生き返ったんだって。めでたしめでたし。
 ここで一つ言い訳させてもらうと、傍迷惑なアブナイ人がスキルアウトに八つ当りして
いる辺り、あそこは二重進行になるはずだったんです。二段落構成の小説みたく。左には、
自分達を次々と手にかけていく爆弾魔を、被害者スキルアウトの目から見た描写。で、右
にはそんな事なんかうわの空で色々とダベり続ける傷心黒山大助の叙情、モノローグ。っ
ていう同時進行。
 駒場利徳アニキとのがっちんこでは叫び声が左右一面を貫いてたりとか、黒山大助ビギ
ニングでは左右が一転、左が黒山側、右がスキルアウツ側になったりとか、すっげく色々
考えてたんです。二つの文章をとんでもない手間かけて切った貼ったしながら、スペース
三つ分隔てた二列羅列にしてたんです。
 しかし数日前、いざ試しに掲示板へ、と書き込んでみると、アレ?なんかズレてる。あ
っちもそっちも侵食し合ってる。
 もーこの上なく絶望しました。涙が枕で濡れました。こんなにショックなのは放送が中止されてポケモン無しで過ごした保育園児の日々以来です。そしてついに放送再開されたと思ったら、全然知らない町での顔も知らない登場人物たち。あの時の疎外感と言ったら!
 ちなみにそのズレズレは脳内妄想スレにあります。あーあ。AAでもたまにずれてるのがあったりするけど、それとおんなじような事だったんだろーか。
 いい感じに意味不明かつ言い訳と愚痴だらけになってきたところで、次回予告です。


「よく聞け白黒。俺は、学園都市から離反する」

 破壊の力しか持たない人間爆弾は、一人の病人を救うため、自らを取り巻く役立たずの
世界を目の前から抹殺する事を決意する。
 止まるつもりのない反逆者。
 アンパイアとして対立する白井黒子。
 ついに激突するテレポーテーターとクレイモア。
 暴走能力者駆逐の命を受けた第七学区風紀機動隊。
 敵として立ちはだかる、21名の元同僚(プロフェッショナル)たち。
 黒山大助と風紀委員の全面衝突が、今、つうか早くて数週間後か遅くて数か月後、始まるっ!らしいよっ!

ttp://pict.or.tp/img/50699.bmp
 そして併せて、予告絵。もー自己満足以外の何物でもありませんけど。次回からはやめとこ。

523■■■■:2008/04/03(木) 18:49:52 ID:BpMro4/Y
グッジョブ! ただ、いきなり大量に投下されててビックリした。せめて書く前に一言を。

524■■■■:2008/04/03(木) 21:48:18 ID:UdMlsmzE
GJw
ってか凄いなw
読むのに苦労する程の量だw

525■■■■:2008/04/03(木) 22:54:40 ID:Su.B1o0.
だぁー、時間が小さい範囲でも前後してんのは読みにくすぎるわぁっ
もう少し小出しにしてまとめる選択肢はなかったのかと小一時k(ry

なんにしても久々の大量投下と少年漫画的展開GJ!
いや悪側ライバル系(後に正義側の仲間になる)だけどな、主人公が。

526■■■■:2008/04/04(金) 00:15:38 ID:yLRX49.w
大量投下されたのはいいんだが・・・・流れが・・・断絶してしまった・・・。

527■■■■:2008/04/04(金) 00:17:30 ID:74yx48gE
長すぎて眼と脳がかったるい信号出し始めた・・・!

528■■■■:2008/04/04(金) 03:30:33 ID:ZxA1dPgo
>>526
これで途切れるような流れなんてあったか?

529■■■■:2008/04/04(金) 10:32:57 ID:o0g7MU9k
なんか>>452の文章がイマイチ理解出来ないのは俺の読解力の無さのせいか?

530■■■■:2008/04/04(金) 10:33:01 ID:o0g7MU9k
なんか>>452の文章がイマイチ理解出来ないのは俺の読解力の無さのせいか?

531風紀:2008/04/04(金) 11:56:52 ID:9t4zeTkc
すいません。>>452にて一部文章が欠けていました。変な音が聞こえた、という女の知らせに男が警戒したところで、以下の文章を入れてあげてください。

「それはどの方向からだ?」
 私は座っている体の向きそのままの方向を指差した。
「……でも、たぶん気のせいだと思うよ……?」
「なら、いいんだけどな……」
 腰を浮かしかけていたタカはゆるゆると座り直す。
 その姿を視界の中心にもってきた時、私は端の方に何かを見付けた。その方向、直前まで指差していた広い道路の向こう側を再び振り返る。
 左右に続く二点遠近法の道路と、それに沿って立ち並ぶ廃ビル街。
 その上空、数十階はあろうかという高さを飛び越えて、ソイツは“飛んで”来た。
「……鳥?」
「トリ?何が?」
「あれ。こっちに向かって飛んで来てる」
 ソレは鳶か鷲の、上昇気流に身を任せてゆっくりと空を横切る動きにそっくりだった。ビルの上辺りからゆるゆると離れ、だんだん私たちの頭上へ移動して来ている。
 しかし、ソイツは鳥にしては大き過ぎた。
「……ひと……?」
 そう呟いたのは、私だったのか、タカだったのか。
 私たちの真上ヘ到着したソイツは、いきなり降下し始めた。
 遠くにある物体の運動は、小さく見える。その方向が自分に向かっているのなら、更に顕著だ。
 避ける暇も無かった。
 今までゆっくりと動いていたものが真上で静止して、そして少し膨らんで大きくなったような気がして、それはひょっとして落ちて来ているという事だろうか?と思った時には――ソイツは、ほんの数メートルの所のアスファルトに突き立っていた。
 体を突き飛ばすような轟音は、地面を揺るがす振動と、人間二人を空き缶のように転がす豪風と一緒だった。
「きゃあっ!?」
「うおっ!?」

 この後、女は壁のほうへ転がっていき、でも男が庇ってイヤ〜ン、となります。

>>529-530ご指摘どうも有難うございました。

532風紀:2008/04/04(金) 12:08:32 ID:9t4zeTkc
もうひとつ関連的な誤記がありました。
>>452-453にて、上記の抜けていた部分が割り込んでいます。
つまり453の「それはどの方向からだ?」〜「うぉ!?」を抜き、さらにそれを452へ移植、という。

……ただでさえ長いのにその上ミスまで。ごめんなさい

533■■■■:2008/04/04(金) 12:08:32 ID:o0g7MU9k
いや〜んになるんですか(≧∇≦*)ニヤニヤ
おや、俺どうやらミスって同じ文を二回書いてレスを無駄に消費しちゃってたみたいぽ(´・ω・`)
とりあえず謝っとこう
ご・め・ん・ね♪(^_-)☆(反省してませんw)

534■■■■:2008/04/04(金) 13:17:28 ID:i0YA6xCg
533のウザさは異常

535■■■■:2008/04/04(金) 17:26:17 ID:yLRX49.w
>>534
まあまあ。このくらいならまだウザいですませるレベルだろう。あと、風紀の黒山クン。人の話は最後まで聞こうな。

536とある第三位の新婚旅行:2008/04/06(日) 22:29:07 ID:XCc6E2ME
序章 罰ゲームは海外旅行③

それからはもう大変であった。
たかが一緒に旅行に行くぐらいで罰ゲームを行使しては勿体ない等と抜かした美琴は
イタリアにいる七日間の間に罰ゲームを考えるとかで封筒を見てどこやらの旅行代理店に電話をかけ始めて無理矢理チケットを取得してしまったとか、
パスポートを探しまくって部屋中ひっくりかえしたりとか、
外人国籍のインデックッスが入国履歴ないのってヤバくね?っててんぱってみたりとか。
パスポートにインデックスの年齢が書いてあったりとか。
まあ、色々である。

で、翌日。
「む。とうま、とうま。なんか向こうの方にに短髪がいるんだよ」
「ああ。いるねえ」
「あれ?こっちに来てるかも」
「ああ。来てるねえ」
「そういえば、とうまってイタリア語話せたんだね」
「話せません」
「へ?じゃあ、とうまははるばるイタリアまで行って何をするつもりなのかな?」
「ぐっ」
「まったく。今時の学生なら最低でも三カ国語ぐらいはしゃべれなくちゃダメかも」
「ぐっ。しかし言い返せないのが辛いところ」
上条が弱気になったのに気をよくしたのかインデックスが喋り出す。
「ふふふ。別に私が通訳をやってあげても良いんだけど」
「な!今更お姉さんキャラ演じるとか無理が有りすぎるぞ。インデックス
てか、お前本当に喋れるのかよ」
「Ciao!」
「チャ、チャオー」
「発音が全然ダメかも!もう一回いくんだよ。Ciao!」
「チャオ……」
「Ciao.」
その時、上条の頼りない発音と被って流暢な(もちろん、上条には実際の判定は出来ないのだが)声がした。
「……お前、本当に来たんですかー!」
「な、何よ。そんな来てしまってガッカリみたいな顔は。
安心して。私、イタリア語もそれなりに喋れるから、通訳ぐらいならやってあげても良いわ」
呆れる上条を他所にインデックスはお怒りのようである。
「********!****!」
「****!******!」
「******.***!」
などなど、イタリア語でインデックスと美琴が口論を始めだす。
「だー!やめろ!お前らそんな風に喋り出すと日本語しか喋れない上条さんが迷惑だろうが」
「とうま、とうま、今のはイタリア語じゃなくてフランス語なんだよ」
「え?当たり前じゃない。鼻から抜ける発音だったでしょ」
「……もう帰って良いですか?」


空港に着いただけでぐったりの上条さんだが、もちろん彼の不幸はこんなものでは終わらない。

「えっと、何ですか?その体に無数に付けている安全ピンは……」
              ・
              ・
              ・
「ちくしょー!第二十三学区の空港は絶対に面積無駄に使ってやがる!」
「え?何々?とうま、服買ってくれるの?」
「え?そ、それじゃあついでに私のも買って貰おうかなぁ、なんて……」
という騒動は序の口で。

537とある第三位の新婚旅行:2008/04/06(日) 22:29:53 ID:XCc6E2ME
序章 罰ゲームは海外旅行④



上条さん一行はぎりぎり飛行機に乗り込んだ訳なのだが。
何やら、客室乗務員がトランシーバーぐらいの機械を持って機内を歩いている。
「なー。あれって何してるんだ」
「む。そういうこと私に聞かれても分からないかも。
あ、でも想像するとあれでみんなの好物を調べているのかも!それで、美味しいご飯が……」
「だー!端からお前には聞いていない!面倒くさいから黙っててくれ!」
「あー、あれ?多分、携帯の走査でしょ。付けっぱなしになっている携帯がないか探す奴」
「はー。そういや、携帯付けてると飛行機に異常が出るんだったけ?って、あれこっち来るぞ。
俺、携帯消してるよな。インデックスは持ってないし、美琴、お前は?」
ガサゴソと鞄を見て携帯の電源が落ちているのを確認してから美琴を見る。
実際は、この間ずっとインデックスが上条の頭にかぶりついているのだがスルーだ。
「ヤ、ヤッバ」
「?どうした?」
美琴の顔に焦りが満ちている。
あと、よく見たら客室乗務員の綺麗なお姉さんの顔からも汗がダラダラと流れている。
「あ、あのー。も、申し訳ありませんが、そちらのお嬢様から異常な程電磁波が出ているようでして」
そういって、客室乗務員が上条に計器を見せる。
針はこれでもか!と言う程に振り切っている。


御坂美琴。学園都市第三位にして、学園都市随一の電撃使い。
その潜在能力は、黙っていても猫が逃げる程である。
「……御坂って普段海外旅行どうしてるわけ?」
「……そ、それはそのー。電波遮断の客室が付いた飛行機チャーターするとか?」
「気付くの遅ぇよ!」
「だ、だっていきなりだったから」
「あ、あのーフライト予定時刻を過ぎておりますのでどうにかして頂かないと……」
「ふ、不幸だー」

その時、上条の右手が偶然美琴に触れた。
「あれ?急に計器がゼロに」
「……」
「…………」
「………………………………はい?」


こうして、上条さんのイタリア行き約十時間の旅行は右手に御坂を。頭部に禁書目録を携えた奇妙な道中になったのでありました。

「不幸だー!」

538■■■■:2008/04/06(日) 22:36:43 ID:mXYlMn/U
GJ
続きがすごく気になって眠れないや(苦笑

ヤバいなぁ、明日から学校なのに

539■■■■:2008/04/06(日) 23:15:50 ID:yjefcV3I
GJ
オルソラとかどうするんだろ?

540■■■■:2008/04/06(日) 23:55:03 ID:ycCoJgfs
うっひゃー転げまわるぜ!美琴カワユスw

541■■■■:2008/04/07(月) 01:31:06 ID:k0SJV8UU
座席はどうなってるんだろ?
インデックスが頭に噛みついて、美琴の手を握っているってことは・・・
両手に花状態?

542■■■■:2008/04/07(月) 15:55:01 ID:Zutu9muw
  禁
美 上 知らない人(女性)

きっとこんな感じ。
え、禁書の座席?やだなぁ、荷物を座席に置いちゃいけませんって習わなかったのかい?

543■■■■:2008/04/08(火) 01:23:37 ID:2xcQlnGg
おいおい、せめて「猛獣は檻に入れて貨物室へ」くらいにしておこうぜ

544■■■■:2008/04/08(火) 04:36:22 ID:dkQluEag
ここで
つ[てのりインデックス]

545■■■■:2008/04/08(火) 11:42:00 ID:Sku3CsjE
知らない女性が巨乳なのか、はたまたロリなのかが気になって仕方ないw

546■■■■:2008/04/08(火) 20:39:17 ID:Qa9cxOXE
>>544
小っちゃなお口でとうまを、カプカプ、あむあむ
噛むわけですな。

547■■■■:2008/04/09(水) 01:53:52 ID:aaK9Zrek
いや待て……それもあるが、体格が縮んでるおかげでいつも一緒に居やすいし、
なにより食費が今の十分の一以上に抑えられるのがデケェな

色々不都合だが都合がいい。癒し系サポート役にはうってつけの存在になれるぜ……!!

548■■■■:2008/04/09(水) 07:15:48 ID:HRE62t12
ちっちゃくなって肩に乗る魔導書娘と申したか

549■■■■:2008/04/09(水) 19:18:58 ID:Z.X/oUvY
てのりインデックスは上条の右手には乗れないな

550■■■■:2008/04/09(水) 23:11:28 ID:jKInM6fc
まだかな?

551■■■■:2008/04/10(木) 02:04:46 ID:MarKeXOQ
>>549
1.常時発動魔術を受けている
2.もともと幻想ではない
3.特殊効果で平気
4.右手には乗れない。現実は非情である

552■■■■:2008/04/10(木) 08:47:09 ID:JePZW2Ww
>>542からなんか話が変な方向に・・・

553■■■■:2008/04/17(木) 14:18:39 ID:ITVvgz.s
「あー暇だ。」
右を見たら俺の部屋。
左を見たら壁。
結論から言うと熱でねこんでいるわけだ。

暇なので近況を説明しておこう。
なんと私上条はある女性から愛の告白をされた。
その女性とは超電磁砲こと御坂美琴なのだ。
そしてなんだかんだで付き合うことになった。
まあそんなところである。

「つまらねぇな。」
今部屋には俺一人である。
「とてつもなく暇だ。」
そのとき部屋に携帯電話の着信音が鳴り響いた。

着信「御坂美琴」

「冗談だろ。」
今の時刻は学校の授業の真っ最中なはずである。
教師に見つかってないだろうな。じゃないとソフトバンクの白い犬に怒られるぞ。
とりあえず電話にでよう。

「もしもし。」
「ちょっとアンタ、熱で学校やすんでるってホント?」

誰からきいたのだろうか?学校もちがうのに。

「まあホントなんだけど。」
「だったら連絡よこしなさいよ馬鹿。」
「別に会う約束をしているわけじゃないしいいだろっていうか今は授業中だろ。」
「言い訳無用!」
「ゴメンナチャイ。」
「そうやって最初から素直に謝ればいいのよ。」

シラン。

「まあ熱なんだからおとなしく寝ときなさいよ。」
「なんだ?心配してくれてるのか?可愛いとこもあるじゃないか。」
「う、うるさい!ともかく・・・・」
「ともかく?」
「そこから動くんじゃないわよ!!」

ツーツー

切りやがった。
とりあえず寝る事にする。


俺の睡眠はピンポーンという音によって邪魔された。
ドアをあけるとそこにいたのは美琴だった。
予想外の事態に困惑したがとりあえず中に入れることにした。


「アンタ本当に大丈夫なの?」
「え?いや、別に何とも無いけど。」
「ねえ、本当に?」
「どうして?」
「顔色が真っ青よ。」

そのとき足下がふらついた。

「大丈夫?」

本格的にヤバそうだ。

そのままベッドに倒れ、深い眠りに入った。

554■■■■:2008/04/17(木) 14:40:03 ID:ITVvgz.s
続きは今日中に書きます。

555■■■■:2008/04/17(木) 14:40:16 ID:ITVvgz.s
続きは今日中に書きます。

556■■■■:2008/04/17(木) 16:48:54 ID:eNTFIbWw
さて早速あぼーんに入れるか

557■■■■:2008/04/17(木) 17:27:20 ID:ITVvgz.s
ごめん続き書けそうにない
誰か書いてくれ

558■■■■:2008/04/17(木) 18:18:12 ID:EjN0Daxw
誰も書く気なんか起きるわけ無いから心配しなくていいよ

559死者蘇生(リビングデット):2008/04/24(木) 23:00:28 ID:Ype7VOzs
とある魔術の禁書目録0

序章 悩める乙女の事情 be iovesick.

少女は目を覚まして、最初に目に入ったのは、白い天井だった。
それからボーっとして、汚れのない、潔白の天井を見つめていた。
天井が白く、小さなシミさえもないのは、清掃員のおばちゃんががんばって磨いたからだろう、と少女は思った。
それからして、少女は体をゆっくり起こした。体が起き上がる際に、肩までかかってる茶色い髪がゆれ、透き通うったように白い肌が
、窓から差し込んでる太陽の光に照らされて、何もかものみこまれそうな目がひらいた。
御坂妹、10032号の妹達《シスターズ》の一人がいた。
御坂妹は、ベッドから起き上がろうとし、「にゃ〜」と猫の鳴き声が聞こえた。
鳴き声の聞こえたほうを見てみると、そこには猫がいた。
御坂妹は、その猫のほうに歩み寄っていくと、その猫が【あの人】と、あの人と一緒にいる白い少女が飼っている毛が三色の三毛猫だときずいた。
「おはようございます、とミサカは答えます。ミサカのことを心配してくれたのですか、とミサカは質問してみます」
そういいながら歩み寄ると、三毛猫は飛び降りるように逃げてしまった。
「あっ・・・・」
御坂妹は寂しそうな顔をして、三毛猫のいいた場所を見つめていた。
あの三毛猫は、【あの人】の元に帰ったのだろうか?【あの人】は今どうしてるのだろうか?
御坂妹はふと、ベッドの隣にあるナイトテーブルの上に置いてある【あの人】からもらったペンダントを見つめた。
急に、頬が赤く染まった。頭の中は【あの人】のことでいっぱいだった。
私達、妹達《シスターズ》を絶望の中から、右手に宿る不思議な力・・・・、いや、
【あの人】という名の希望の光で、私達妹達《シスターズ》を救い出してくれたのだ。
「・・・・・・・・・・・・・・」
コンコンッ、という音がした後、ドアから一人の白衣を着た女の人、芳川桔梗が現れた。
「10032号、調子はどう?」
「はい、特に問題はありません、とミサカは答えます」
そう、と芳川は穏やかな笑みで少しうなずいた。
「じゃあ、そろそろいいころかもね・・・」
「?、何がですか、とミサカは疑問を持ちながら聞いてみます」
「ふふふ、実は・・・・」
芳川は、その笑みの真意を告げた。

560■■■■:2008/04/25(金) 15:00:01 ID:fxBbOFqQ
……?終わったのですか?

561死者蘇生(リビングデット):2008/04/25(金) 18:28:27 ID:0njEwoVE
いいえ、まだ続きます。

562■■■■:2008/04/25(金) 18:49:20 ID:Ie.Ux1So
>>561
出来るなら一回分の投下が済んだらその旨表示してほしい。
あと欲を言えば、長編はある程度以上書き貯めてからの投下が読みやすい。そのためにPCからの投下が推奨される。
酉をつけてもらえると住人的にはさらに色々あるんだが、そこは別にいい気もする。

ここ最近過疎ってるから書き手は貴重なんよ
続くならどうぞ

563死者蘇生(リビングデット):2008/04/25(金) 23:18:20 ID:0njEwoVE
とある魔術の禁書目録0

第一章 突然の訪来者 change one's school.

230万人の学生を抱える超能力開発機関『学園都市』。開発の遅れてる東京の西地区を丸ごと買い取り、
そこに超能力開発機関の『街』をつくった。
その街に集められるのはほとんどが学生のため、『学園都市』はいろいろな学校が集まった『学校の街』である。
学園都市に通う学生達は、みんな血管に直接クスリを注入して耳の穴から脳に直接電極を刺せば、超能力者のなる。
かといって、誰もが超能力者になれるとは限らない。超能力に目覚めた者は、それぞれレベル1〜5までに判別される。
そして超能力に目覚めなかった者は、全員が無能力者《レベル0》という烙印が捺されてしまう。
そして今、学園都市に通う、一人の無能力者《レベル0》が、
「不幸だあああああァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・走っていた。
「チクショーーーーッ!!久しぶりに目覚ましセットしたってのに、どこも問題ないハズなのになんで目覚まし作動しないんですかーーーーッ!!
しかも追い討ちかのようにインデックスがなんか寝ぼけて俺をなんか食い物だと思って頭に噛み付いてきたし上条さんはもう頭も心もボロボロになってしまいますよーーーーーーーーーッ!!!!!!!
もう一度言うぞ、ふーーーーーーーこーーーーーーーーうーーーーーーーーーだーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
走りながら叫んでいる少年、上条当麻はいくつかの不幸が重なって学校を遅刻している。
上条当麻は無能力者《レベル0》、しかし、彼の右手には、それが異能の力ならば、神様の奇跡さえ問答無用で打ち消す力、幻想殺し《イマジンブレイカー》が宿ってる。
彼は、その力をもってして、ありとあらゆる脅威をその右手を使って『殺し』てきた。
しかし、それは、同時に神のご加護や運命の赤い糸などという幸の力さえも『殺し』てしまう。そのため彼は、いつも不幸に見舞われる。
ハァハァ、と息をきらしながら走っている上条は、やっとのことで上条の通う高校に着いた。
上条は階段を上り、急いで自分のクラスに入った。
「ハァ、ハァ、フーーー、間に合ったーーーー」
すると、青髪ピアスと土御門元春が上条の下にやってきた。
「カミやん、遅刻ギリギリやったなーーーーー、もっとゆっくりきてもよかったんやでーーーー(怒)」
「は?お前、何怒ってるわけ?土御門、コイツどうした、の・・・・・・?」
「カミやーん、いつもなら完全遅刻してくるカミやんが、なーんで今日に限ってギリギリセーフなんだにゃーーー。
そのあたりのとこ、このやさしー土御門元春さんに教えてほしいんだにゃーーーー(怒)」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!二人からドス黒いオーラがゾワゾワと発している。
上条は理不尽な不幸を感じたのか、とっさに右手でドス黒いオーラを消そうと思い、青髪ピアス、土御門元春の順にオーラを打ち消した。
「な、なんや、急にどうでもよくなったんや」
「くっ、カミやん、やるにゃーーーーー、次は負けないぜよ」
「一体全体何なんだよ?俺が何したってんだよ!誰かこの上条さんに説明プリーズ!」
とんとん、と誰かに肩をたたかれた。振り返ってみると、そこには姫神秋沙が上条の後ろに立っていた。
「上条くん、君、間に合ったんだね」
「?、あ、あぁ」
「そう、じゃあ、私の勝ちだね」
そういうと、姫神は教卓のとこで談話している青髪ピアス、土御門元春のとこへいった。
「賭けは、私の、勝ちだね」
「賭け?」
上条は首を斜めにたおし、わけのわからない顔をした。
「あちゃー、負けやねん、負け。この出費はイタイワー」
「にゃー、次は負けないぜよー」
二人はそれぞれ、2000円を、合計4000円を姫神に渡した。
「上条当麻、貴様遅いわよ!!」
「今ごろっ!?」
そこに、いつ見ても不機嫌な表情をした、吹寄制理があらわれた。
「あぁ、姫神さんが勝ったのね」
「吹寄さん、何か知っていらっしゃるのですか?」
「・・・・なんでここで敬語になるわけ?」
吹寄はやや引き気味の表情をした。
「姫神さんとあのバカ二人、貴様が今日遅刻する遅刻しないって賭けをしてたのよ」
「・・・・・・・、は?」
上条はそのまま3人(バカ二人)の方を見た。次は5000円で勝負だにゃー、とか、男に二言はないやな?とか聞こえた。
その言葉で、上条の怒りはピークに達した。
「お・ま・え・ら〜〜〜〜〜、何人を使って賭けなんて真似事してるんだーーーー!!!」
上条の右手が、バカ二人に炸裂した。
「イタァーーーーーーーッ!!!×2」
二人の叫びが重なった。

564死者蘇生(リビングデット):2008/04/25(金) 23:22:56 ID:0njEwoVE
第一章はまだまだ終わりません、てか、全部書ききれませんでした。
少しずつ書いていくので楽しみにしてください。
あと、次のSS作品はHPで書こうと思ってます。
まだHP自体作ってませんが、いつか作ってみようと思います。
それまで、少しずつの作品をお楽しみください。

565■■■■:2008/04/25(金) 23:41:14 ID:VRfmyfk2
むう
最近色々な神の続きが気になって死にそうだ

566■■■■:2008/04/25(金) 23:52:23 ID:fQ3Nh7Hc
なぜ上げるの?

567■■■■:2008/04/26(土) 01:56:19 ID:6GVVe.cU
sage方を知らないお客が少なくとも一人はいらっしゃるわけか。

568■■■■:2008/04/26(土) 22:53:57 ID:eP464NhM
スレッドフロート型掲示板

569死者蘇生(リビングデット):2008/04/27(日) 11:27:44 ID:fT.hZ10M
「姫神も何でこいつらと一緒に賭けなんてしてたのさ、そこらへんの説明プリーズッ!!」
姫神はいつもどうりの無表情で言った。
「別に、いいじゃない。あなたが、遅刻しない方に、賭けたんだから」
「そういう問題じゃねぇーーーーーーーーー!!!」
上条は天井に向かって叫ぶと虚しくなったのか、やや猫背気味な体勢で自分の席に戻っていった。
「ふんっ、男のくせに情けないわね」
「ウルへー、吹寄サンに不幸人生真っ最中の私上条当麻の気持ちなんてわかるはずありませんっ」
吹寄は肩にかかってた髪を手で後ろの方に持ってきながら、「フンッ、わかりたくもないは」という言葉を残し、自分の席に戻っていった。
吹寄に言われたセリフで、けっこう傷ついた上条のそばに、さっき上条を使って賭けをしていた青髪ピアスがやってきた。
「まーまーカミやん、そない落ち込まんで楽しくいこーや」
青髪ピアスはそういいながら、期末テストの点が今までで非常に悪く、親に起こられるどころではすまないようなドロドロなオーラを
漂わせている上条に背中をバシバシッ、と叩いてそういった。
その瞬間、上条は背中を叩いている手をガシッ、とつかみ取り、
「どの面下げてんなぁこといってんだきっさまぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!」
鬼以上の形相で青髪ピアスを睨み付けた。
「アカンアカンでカミやん暴力は反タイダダダダダアアアアアアァァァァァーーーーー!!!
わかった、わかったカミやんに特別情報やるからこの手を離してェェェェェーーーーーーーーーー!!!」
青髪ピアスは命乞いのように続けて言った。
「あんな、今日うちのクラスにに転校生がくるんや、しかも女の子や女の子!
んでな、ここからが本題や、その女の子・・・・、ムッチャカワイーねん!
だからね、不本意なんやけどボクの相手よりその女の子にフラグ立てる計画たてといたほうがァァァァァァーーーーーーーーーーー!!!!」
いいねん、と言う前に上条は憤怒の右手で青髪ピアスをKОさせた。

570■■■■:2008/04/27(日) 14:13:01 ID:duxd9o72
むむむ

571■■■■:2008/04/27(日) 16:58:53 ID:NbsycdiA
あえてまた問おう!
1!なぜ上げる?あげてまで他の人に見てほしいのだろうか!
2!なぜまとめて書き上げない?そしてなぜ全部書きあげれない?
これにこたえてもらおうか!

572■■■■:2008/04/27(日) 19:06:19 ID:Fee1QUFA
sage厨

573■■■■:2008/04/27(日) 19:52:21 ID:tQtQ6Yyg
sageの仕方がわからないんじゃないか?

574■■■■:2008/04/27(日) 20:00:32 ID:tQtQ6Yyg
>>571
文句いうなら自分で書けば良いんじゃないかな?
まあ確かにまとめて載せてもらった方が見やすいっていう意見に対しては同意するがな(苦笑

575■■■■:2008/04/27(日) 20:58:03 ID:rwKJJmXw
下げはメール欄に sage と入力すると出来ますよー。

というよりも特に上げても下げても気にする必要はないような……。
確かにスレッドの変動が激しすぎるのは困りますが、たまに上がるくらいなら問題ないと思うのですが。

しかし、長さについては同感かとー。少しずつだとどこで感想を述べればいいのやら。

576■■■■:2008/04/27(日) 23:31:49 ID:tQtQ6Yyg
まあ別に絶対下げないといけないという規則もないしなw
今更だが感想
続きをwktkして待ってます

577死者蘇生(リビングデット):2008/04/28(月) 21:28:11 ID:zGTIa6Dk
571の問いに答えます。第一章の部分はある程度書いたんですよ。
でも書き込もうとしたら、スレが長すぎて書き込めないってエラーがでたんですよ。
あと、リアルのほうがちょっと忙しくてなかなかここに顔出せないんです。
明日続き書きます。あと、書き込みが長くても全て書き込める方法があるならどなたか教えてください。

578■■■■:2008/04/28(月) 22:43:29 ID:KCMl0Q/I
>>577
数レスに渡って分割投下すればおk
SSスレだからよほど長くなければ文句は来ないと思う

……うん? 『明日続き書きます』?
まさかとは思うが、その場で打ち込んでるのでせうか。
できるなら、メモ帳なりなんなりに一度纏めてから投下時にコピペする等、書き込み時間を短くする工夫は忘れないでほしい。
レス数についてはともかく、時間的に長く占有されるとちと印象が悪くなるのでご注意を。
>>562の「一回分の投下が終了したらその旨表示してほしい」はこの点から)

579死者蘇生(リビングデット):2008/04/29(火) 12:58:43 ID:T6hHwbDE
「か、カミやん、せっかくいいこと教えたのに・・・・・ひどいねん」
青髪ピアスはその場で真っ白になって気を失った。ピクリといわないその様子はまるで、屍のようだ。
「はあ・・・・」
上条は、ため息をつきながら青髪ピアスの言ったことを考えた。
(この時期に転校生・・・・?珍しいな。今世間ではローマ正教との戦争が問題になってんのに・・・)
そう思ってると、どこからか冷たい視線を感じた。一体どこから発しているのか辺りを見回すと、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
吹寄制理が上条当麻を睨みつけてた。
「・・・・吹寄サン、何故私上条サンをスゴイ目で睨んでいらっしゃるのですか?」
「別に・・・、何か考えてたみたいだけど、どうせ貴様、転校生攻略ルートのこととか考えてたんじゃないの?」
「いやいやっ!!なんでそうなるのっ!!俺そんなの考えてないから!!」
吹寄は、「フンッ、どうだか」といいながら顔を背けた。
ガララ、教室の扉が開き、そこから身長135cm、見た目小学生の月詠小萌が出席簿を抱えながらよちよちと現れた。
一応先生である。
「は〜い、みんな席に着くのですよ〜。今日は新しいお友達を紹介するのですから早く席に着くのです〜」
さっきまでざわついてたクラスがいっせいに静まり返った。
「じゃあ、入ってきていいですよー」
その言葉に反応すかのように、教室の扉が再び開いた。
そこから現れたのは、肩までかかってる茶色いをふわりと揺らし、透きとうった白い肌が光に照らされていた。
上条は目を疑った、『あいつ』がここにいるはずがない、よく考えればそんなこと絶対ありえない。
だって、『あいつ』は、超能力者《レベル5》の超電磁砲《レールガン》の『御坂美琴』がこんなとこにいるはずがない。
というと、考えられるのはただ一つ、あいつは・・・・
「さあ転校生ちゃん、みんなに自己紹介を」
そう、あいつは・・・
「わたしの名前は御坂美月といいます、とミサカは皆さんに自己紹介をします」
御坂妹だった。

580■■■■:2008/04/29(火) 18:59:33 ID:MduTlKbs
シエルにインデックスのパートナーだった時期があったとしたらどんな話になるんだろう?

581■■■■:2008/04/29(火) 19:03:31 ID:MduTlKbs
>>580ごめん。誤爆だった。

582■■■■:2008/04/30(水) 02:19:44 ID:ZVA3YPHE
なんか外部板にしては珍しいくらいの書き手初心者さんが来てる?
とりあえず、過去ログ読みつつルールとかマナーとか雰囲気とか掴んでおくことを奨めるよ。

半年ROMれ、とか言っても半年過疎ってて投下無いって可能性もある品w
……orz

583■■■■:2008/05/02(金) 17:37:06 ID:NnWxiubA
>>582
だねー。
書き込んでいる内に覚えるのも有りだけど、出来ればその前にsageとかは調べておくと良いかも。
まぁ、ここはそこまで何時も変動が激しい板じゃないし、多少なら構わないと思う。

>>579
むむむ、それにしてもここに来ると題名の意味が気になるトコロ。
ここから先、どんな展開があるのやら。

584死者蘇生(リビングデット):2008/05/05(月) 15:13:00 ID:6/OjI2kU
すいません、題名と『ある魔術の禁書目録0』てのは、いい題名が思いつかなかったので
仮でつけた題名です。
そのうちちゃんとした題名をつけます。

585■■■■:2008/05/05(月) 23:53:26 ID:JXKoX2yE
>>584
何故sageについてスルーし続けるのかまず訊いていいかな?
この手の場所を使うときは過去ログ眺めるなりしてルールや何やらを少しでも掴んでからレスした方がいいぜ。
曰く、「男の子の独り善がりな運動は嫌われる」ものだからね。

あと、半角大なり二連でレス番付けられるから応答の際には使うことを推奨しとく。

586■■■■:2008/05/06(火) 00:42:53 ID:hVy/dB2.
半角大なり二連の意味がわからず3秒ほど俺の脳がフリーズした

587■■■■:2008/05/06(火) 22:41:03 ID:LI7ujqKM
>>586
半角大なり2連は「>>」これのことです。

588■■■■:2008/05/07(水) 01:27:28 ID:hdJChCh2
いや、3秒後にはわかってたから! フォローしなくていいから!! 恥ずかしいからぁぁああ!!!

589sage:2008/05/07(水) 02:43:48 ID:uoFpTcfI
>>588
そうかじゃぁせめてレス番付けてくれ

590■■■■:2008/05/07(水) 02:45:15 ID:uoFpTcfI
↑sageミスった;
連コメすまん;

591■■■■:2008/05/07(水) 03:21:06 ID:RNoGvu7U
>>590
……ツッコんだ方がいいのかな?

592■■■■:2008/05/07(水) 03:29:08 ID:uoFpTcfI
>>591
そっとしといてくれ;

593■■■■:2008/05/07(水) 07:39:47 ID:3fldDCxg
sage厨の人も少しは自重してくれ
ここは2chじゃないんだよ

594■■■■:2008/05/07(水) 21:21:45 ID:wmwShmdk
おまいらドジっ子多すぎw

なんか萌えたじゃねえかw

595■■■■:2008/05/08(木) 00:07:27 ID:SzjJbyS6
>>589
もしかしたら勘違いしてるかもしれんので言っておくけど
>>586>>588の書き込みは、>>584とかの人とは別人だからね
「半角大なり2連」って凄い分かりにくい言い回しが何か面白かったから、流れに乗ってレスしただけだから

596587:2008/05/08(木) 00:50:15 ID:EV8S28O2
そうか勘違いすまん
もう自重します

597■■■■:2008/05/09(金) 08:10:25 ID:o8Luu2bg
というか、なぜこの初々しい書き方のほうには誰も訂正を入れてあげないのかと全員に小一時間(ry


>>584
長文、及び箇条書き失礼
とりあえず基本的なことのみだけど

1:末尾以外の!や?のあとはスペースを空けた方が読みやすい
ex.「君が!泣くまでっ!殴るのを!やめない!」
→「君が! 泣くまでっ! 殴るのを! やめない!」

2:!やその前の小文字はあまり大量につけない方が読みやすい
(!や小文字の多さで音量や勢いを表現しない方がいい)
ex.「ぅぅぉおおおおお!!!!!」「甘い!!!」「なにぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!?」
→「ぅおおおお!」
その砲声を力と変えるように彼は絶叫し、猛然たる勢いをもってその拳を振るう。しかし、
「甘い!」
彼よりは小さな、しかし格段に芯と威厳のある声が激しく彼の鼓膜をつらぬいた。
彼の視界からまさに相対していた老人の姿が消え──

「なにぃ!?」
瞬間を経て、彼は地に背を寝かせ空をあおぐ自分自身に気付く。
その余りの驚愕に、彼は先に発した雄叫びをしのぐ勢いでその喉を震わせていた。

3:沈黙は…で表した方が読みやすい
ex.「・・・・・・・・・・・・」
「? どうかした?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、すき」
→「…………」
「? どうかした?」

「…………………、すき」

4:ちなみに…は主に二つ以上で使ったほうが読みやすい
(…の多用も読みにくいので、短い沈黙などは句読点やその他の表記でまかなったほうがいい)
ex.「…いや…でも……そんな…まさか………」
→「いや、でも」
彼の重い口は、そこでさらに動きを緩慢にさせた。
事実が繋がり、そして自ら導きだされた真実を前に、彼は困惑を隠すことができない。
しかし、染み込むようにゆっくりと、彼の脳裏にはある像が結ばれ始めていた。

「そんな、まさか……」
この事件の真相が、まさに彼に理解できる形で浮かび上がってきたのだ。

5:ーはあまり大量に使わないほうが読みやすい
(どうしても伸ばしたいなら―――や───の使用を検討した方が往々にして良い)
ex.「なにィーーーーーーーーーーーー!?」
→「なにィ──────────────!?」

6:ここまで読みやすさを重視するのは、SS(や小説)だと漫画と違い、絵がないため。
文字ストレスを軽減できるものが何も提供できないので、よく使う表記方法で読みにくさを与えてしまうのはアウツ。
即座にストレスを溜めさせてしまい、読み手の読む気力を簡単に奪ってしまうのだ。
(読みやすさをそれほど優先しなくても良さそうなら"よく使う表記方法"以外はあまり意識しなくてもいいんだけどね)
(ただし、読みやすさを"軽視"できるような場面はないと思っていた方が無難)

7:■■■■は通常"、"を使わない
ex.「君が、泣くまで、殴るのを、やめない」
→「君が。泣くまで。殴るのを。やめない」



追伸
可哀想なので、つっちーの「自動再生」も超能力扱いしてあげといてください

598■■■■:2008/05/10(土) 01:15:54 ID:.6E2gO/A
>>597
むしろ初々しい書き方にこそ価値があるのではないかと私はここに宣言します!
いや、だって玄人の小説はここに来なくても読めるし(苦笑
それに読みやすい読みにくいにも個人差があるのではないかと(苦笑
でもまあ、確かに三点リーダーや句読点、ビックリマーク、クエスチョンマークについては使い方を考えた方が良いかなとも思う(苦笑
まあ、文才のない俺が何を言ってるんだって感じだが(苦笑

よく分からない文章になったがすまん(苦笑

599■■■■:2008/05/10(土) 05:14:26 ID:7nLICYDs
……あぁ。
なんか、書き方を直せといってるのか直すなといってるのか、よく分からん文章になってんな。
その辺りの使い方にも、初々しさは存分に溢れてるだろうて…。



あー話を移すけど
まぁ、その個人差を平均すれば、多少ぶれはあると思うけど大体>>597の辺りになると思うからな。
だからそのとおりにやれ、
とまでは言わないけど、ああいった基本事項を意識しとくと結構良いこともあるわけさ。
とりま、個性や応用力は基本の上に立って初めて光るっつーことで。


追伸
その(苦笑 は、読みやすさ云々の前にやかましいわっ!!

600■■■■:2008/05/11(日) 10:48:54 ID:JtJvspWM
誰かSS投下してくれないかな―

601■■■■:2008/05/11(日) 12:12:46 ID:llndQDTk
>>600
自分で投稿しろ
っていうか、あげるな!

602■■■■:2008/05/13(火) 18:43:44 ID:eP4ZwkA2
ハネムーンの中の人だが、続きの需要あるかね?

603■■■■:2008/05/13(火) 19:04:22 ID:OQ024jkA

こに約一名。





需要がないなんて、そんな幻想は──────俺の右手がぶち殺す!(邪気眼的に)

604■■■■:2008/05/13(火) 19:56:28 ID:gPwGHoro

ここにも一名、てか皆様応援してます。

605■■■■:2008/05/22(木) 04:11:37 ID:vx0stEmg
……結局二名か

606■■■■:2008/05/22(木) 22:39:54 ID:Awd7FXLI
ノシ×3ぐらい‥

607■■■■:2008/05/23(金) 17:18:23 ID:6gEJgx2o
ついに廃スレかな;

608■■■■:2008/05/23(金) 21:52:20 ID:qrID458E
>>602
ノシ
遅くなったけどここにも一名

609■■■■:2008/05/24(土) 11:32:47 ID:yIUm1huQ
>>602
ノシ
遅くなったけど俺も待ってるよ

610■■■■:2008/05/24(土) 18:52:57 ID:HfxTsUl6
遅いかもしれないけど待ってます

611■■■■:2008/05/25(日) 06:59:25 ID:Vy7uh37E
ノノノノ
ROMの人の分も手を上げてみる

612■■■■:2008/05/25(日) 12:33:45 ID:zRh4S8Oo
ハネムーンの中の人が帰ってくるまでの繋ぎ的に、ちょっとした嘘予告(パロディ物)を置いてみる。
元ネタは、A`s の頃のカナミンじゃない魔“法”少女。

〜〜♪〜〜♪〜〜〜
禁書目録本体から切り離された自動防御プログラムが暴走する。
立ち向かうのは、わたしたち学園都市チームと、そして、そして……!?
禁書目録事件の、これがきっと、最終決戦!

次回、魔砲少女リリカル・カナミンA`s 第12話 「夜の終わり、旅の終わり」

長い夜も、もう終わるから……。


CAST(激しく個人的見解含む)
一方通行…………嘱託魔道士。『白い悪魔』
御坂美琴…………嘱託魔道士。『黒の一番』
インデックス…………魔道書の主。

白井黒子…………守護獣。サポート。
結標淡希…………図書館司書。サポート。
ステイル…………執務官。
初春飾利…………管制官。
ローラ(小萌先生?)…………提督。未亡人。一児の母。

神裂火織…………守護騎士。剣の騎士。
オルソラ…………守護騎士。湖の騎士。
アニェーゼ…………守護騎士。鉄槌の騎士。
シェリー…………守護騎士。盾の守護獣。サポート。
風斬氷華…………管理プログラム。

アウレオルス…………禁書目録解決の為に裏で画策してた提督。

受けが良かったら12話だけでもパロディってみたいかなぁ・・・。

613■■■■:2008/05/25(日) 14:22:14 ID:hsmk.cy.
>>612
まて、そのキャストは美琴がステイルの義妹になるじゃないか

614■■■■:2008/05/25(日) 20:31:29 ID:vZX5HnKI
>>612
「白井…守護獣」は守護獣じゃなく使い魔の方が良いと思うが?

615とある睦月の人日宴席:2008/05/25(日) 23:09:21 ID:zRh4S8Oo
>>613-614
㌧㌧。
まぁ、もう少し反応を見て修正をかけてみることにする。



っていうか、何気に例の魔法少女ネタが分かる人はいるっちゃいるんだな〜。

616■■■■:2008/05/26(月) 08:33:29 ID:GysNJpP6
そりゃあ有名だしな>魔砲少女
>>613はおそらくネタ発言だし、個人的には超見たい。
しかしアニメ20分超を全部文におこして、って台詞だけでもものっそキツイと思った。超頑張れ。

617■■■■:2008/05/27(火) 07:04:50 ID:fSBfM0kM
俺からも頑張れ。

618■■■■:2008/05/27(火) 07:57:38 ID:PDS0fqiQ
゜Д゜)つ頑張れ

゜Д゜)………

゜Д゜)つみんな応援してるよ

619■■■■:2008/05/27(火) 23:07:05 ID:sKoEivzw
応援レスはこまめに。  書くヒトのやる気を上昇させるべし。

遅れたけど挙手 ノ

620■■■■:2008/05/28(水) 10:44:52 ID:BGN7Aang
言いたいことは分かるが、応援レスを義務化すんなっての。途端に薄っぺらくなるから。


そう。男は黙って挙手ノ
応援するなら心から!だ!

621■■■■:2008/05/28(水) 18:56:21 ID:5xLQV6Ig
>>615
(・ω・)/応援してるよ!

622615:2008/05/28(水) 20:33:04 ID:8DCF2ySM
とりあえず生存報告まで

>>616-621
おいおいおいおいおい!!
過剰な期待はプレッシャーになっちゃうんですよ? 旦那方

一応進捗状況としては、原作アニメの台詞のみを各キャラごとに改変中。(2/3が終了?)
それが終わったら情景描写と心理描写(こっちは時間の都合で無理かもしれんが・・・)
ぼちぼち期待せずに待っててくださいましなー。

623■■■■:2008/05/28(水) 22:18:49 ID:8DCF2ySM

  ( ゚д゚)
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/ 615 /
     ̄ ̄ ̄


  ( ゚д゚ )
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/ 615 /
     ̄ ̄ ̄

((;゚Д゚)) コテハンやっちまったーー!
もうね、なんで数ヶ月前の作品名がコテで付いたのか分かりませんよ?
指差して笑ってください・・・orz

624■■■■:2008/05/31(土) 23:43:55 ID:p4h9u8co
「Festival of large star IF」の続きマダー?

625■■■■:2008/06/06(金) 18:29:01 ID:H./9pYZ.
過疎は嫌だ―

626615:2008/06/08(日) 15:43:08 ID:4NWLUqGE
はいどうも、今スレ 615でございます。
えー、のっけからですがまずは >>616-621の方々に謝罪を。

折角応援レスを頂いたというのに失礼な態度をとり、申し訳ありませんでした。
改めて見直してみると無礼極まりないですね自分の書き込みは。
当方、物書きから暫く離れていたため、急にあれだけの応援を返されたので軽くパニックになってしまったのですが、
所詮言い訳にすぎませんし。もう少し良く考えた書き込みをするよう心掛けます。

さて、当初よりも遥かに時間と分量が掛かってしまいましたが、例の魔法少女パロディ作品が目処が付きましたので投下します。
投下予定は本日16:00頃
尚、この作品は例の魔法少女を元にしたパロディ作品であり、各キャラを禁書キャラに置き換える都合上、色々と齟齬があります。
特に『白い悪魔』のキャラ付けが大きく改変されたりしています。
元の作品に思い入れが大きい方はNG指定で飛ばしておかれますように予めお伝えします。
また、話の都合上、『デバイス』は登場しません。ある意味話の肝であるそれらとの遣り取りがありませんので予めお伝えします。
以下の嘘予告とCASTを見た上で判断なさいますように。

※この作品は魔砲少女です。
 物理法則によらない異能の力による攻撃は、それがどれ程の規模であろうと、余波でビル群が軒並み倒壊することになろうとも、
 決して、決して人死には出ません。
 それが、魔砲少女ってものですから。

627■■■■:2008/06/08(日) 15:44:00 ID:4NWLUqGE
〜〜♪〜〜♪〜〜〜

禁書目録本体から切り離された自動防御プログラムが暴走する。
立ち向かうのは、俺たち学園都市チームと、そして、そして……!?
禁書目録事件の、これがきっと、最終決戦!

次回、魔砲少女リリカル・カナミンA`s 第12話 「夜の終わり、旅の終わり」

長い夜も、もう終わるから……。


CAST
一方通行…………嘱託魔道士。『白い悪魔』
御坂美琴…………嘱託魔道士。『黒の一番』
インデックス…………魔道書の主。

結標淡希…………図書館司書。サポート。
白井黒子…………使い魔。サポート。
ステイル…………執務官。
初春飾利…………管制官。
小萌先生…………提督。未亡人。一児の母。

神裂火織…………守護騎士。剣の騎士。
オルソラ…………守護騎士。湖の騎士。
アニェーゼ…………守護騎士。鉄槌の騎士。
シェリー…………守護騎士。盾の守護獣。サポート。
風斬氷華…………管理プログラム。

アウレオルス…………禁書目録解決の為に裏で画策してた提督。

628615:2008/06/08(日) 16:00:32 ID:4NWLUqGE
それでは、今から禁書パロディ作品を投下します。
NGワードは 「夜の終わり、旅の終わり」 です。
予想レス数 20+α

629「夜の終わり、旅の終わり」 1/20:2008/06/08(日) 16:01:11 ID:4NWLUqGE
   〜〜♪〜〜♪〜〜〜

  初めて知った、真実の重さ。
  時を超え刻まれた、悲しみの記憶。
  過去の痛みは、心の中に静かに溶かれ――、
  あの日、胸に灯った炎を消さなねェように――、
  深い闇に、消えないように――、
  無限の絆を守るために――、
  今、未来へ向かう扉を開く――。

 魔砲少女リリカル・カナミンA‘s 始まりまるぞォ。

   〜〜♪〜〜♪〜〜〜

 学園都市一〇区。
 学園都市内で唯一墓場や実験動物などの廃棄場が存在する学区。
 その人気の無い街中は、今や空爆にでもあったかのようにめちゃくちゃになっていた。
 立ち並ぶビルは軒並み崩れ、辛うじて建っている建物にも無数の亀裂が見え、もはや使用には耐えられないのは明らかである。
 そのビル群が損壊している地区の中心点、爆心地のようなところはアスファルトが捲られ、その下の向き出しの地面も大きく抉れ、
クレーターのようになっていた。
 暴走した禁書目録の防衛プログラムを止めるべく空中で死闘を繰り広げた一方通行の渾身の一撃、風のベクトルを操ってのプラズ
マ弾の直撃を受け、上空から叩き落されたヒューズ・カザキリの墜落地点である。
 その傍らにはその恐るべき所業を成し遂げた一方通行が佇み、更に離れた所には禁書目録の内部空間に閉じ込められていた御坂美
琴がやや疲弊しながらも立っている。
 その後方、やや離れた所には一方通行と同じグループのメンバーである結標淡希と、御坂美琴のパートナーである白井黒子が幾分
緊張しながら身構えている。

630「夜の終わり、旅の終わり」 2/20:2008/06/08(日) 16:01:50 ID:4NWLUqGE
 その時、近くに取り付けられている広報用のスピーカーから音声が出てくる。
『禁書目録の主、防衛プログラムと完全に分離しました!』
『皆さん! 前方の白い澱みが、暴走が始まる場所になります。ステイルさんが到着するまで、むやみに近づかないでください!』
 上空に待機していた学園都市の飛行船『アースラ』内からの初春飾利からの通信であった。
「オッケー!」
「チッ、しょうがねえなァ」
 その声にそれぞれ答えるレベル5の二人。
 二人共、未だ緊張感は解かず、目の前を厳しく見続けている。
 その視線の先には、上空からの落下の後に光る繭のようなものに包まれたままの球体がある。
 直径はおよそ四〇メートル。直径が七〇メーター程のクレーターの中心に不気味な存在感を漂わせながら浮かんでいる。
 その光は白くはあるが、まるで太陽からの自然光の中で見る蛍光灯の輝きのようにどこまでも人工的、異質なものであった。
 そして――――。

                      #12
                  夜の終わり、旅の終わり


 そして、白い、不気味な光の球体があるクレーター、その斜面に落ちていくギリギリ縁のところに、それとは別の光があった。
 目の前にある白い光とは真逆の、しかし、磨き抜かれた黒曜石のような、新月の夜の星の光さえ届かない闇のような、どこか見る
者の目を引き付ける輝きの、その内部で――――。

「管理者権限を発動するんだよ――――」
 黒い闇の中、ゆったりと浮かんでいるインデックスが囁く。
 それに答えるように、
「ぼ、防衛プログラムの進行に、割り込みを掛けれたよ。数分ぐらいだけど、暴走の開始を遅らせると思う、よ」
 禁書目録の管理プログラムであり、インデックスから『かざきりひょーか』の名前を与えられた友人がたどたどしくもそれに答える。
「うん。それだけあったら、十分なんだよ。
――リンカーマナ、送還。水属性(ウンディーネ)の守護天使による治癒魔術を開始――――」
 
 そう呟くと同時に、インデックスが今まで入院していた病院の屋上に倒れ伏したままの四人の魔術師たちの上に光が灯り、その体
に吸い込まれていく。
 ダメージから回復し、一人、また一人と立ち上がる魔術師たち。

631「夜の終わり、旅の終わり」 3/20:2008/06/08(日) 16:02:16 ID:4NWLUqGE
「――来て、私の保護者たち――」
 そうインデックスが語った直後、クレーターの縁から天に向かって凄まじい勢いで黒い光の柱が立ち昇る。
 クレーターの周囲にいた一方通行ら四人が一瞬目を庇い、慌ててクレーターの方を見直すと、そこには――――。



「「!!」」
 目を見張る一方通行と御坂美琴。
 その視線の先には――――。



「我ら、禁書目録の主の側(そば)に集いし保護者たち――」
 神裂火織が――――、
「主ある限り、私たちの魂は尽きることは無いのでございますよ――」
 オルソラ=アクィナスが――――、
「この身に命がある限り、私らはあんたの側にいるんだよ――」
 シェリー=クロムウェルが――――、
「ウチらが保護する者、禁書の王、インデックスの名の下に――」
 アニェーゼ=サンクティスが――――、

 輝きを強める黒い光の周り、四人の魔術師が背中合わせにそれぞれの方角を向いて静かに宣言する。

 そして、その黒い光の中で、
「ひょーか、私の杖と甲冑を――」
「う、うん!」
 インデックスの声に風斬氷華が応じ、その身に新しい装束を出現させる。
 白い修道女の服に身を包んだインデックスが目の前に現れた蓮の花の飾りが付いた杖を握る。
 次の瞬間、黒い輝きが粉々に砕け、インデックスがその姿を現す。

632「夜の終わり、旅の終わり」 4/20:2008/06/08(日) 16:02:58 ID:4NWLUqGE
「白ィの!!」
 そう叫ぶ一方通行に向かってインデックスは笑顔を浮かべると、手に持つ杖を高々と掲げ、大きく叫ぶ。
「禁書の知識、私に集まって! 氷の華、かざきりひょーか、セーーット・アーーーップ!!」
 杖の先から黒い輝きが迸り、見る間にインデックスの衣装に安全ピンが付け加えられる。

「インデックス……」
 そのインデックスを見てアニェーゼが上目遣いに名前を呼ぶ。
「うん……」
 頷くインデックス。
「すみません……」
「あの……インデックスさん、私たち……」
 神裂が、オルソラが謝ろうとするのを制して、
「いいんだよ。みんな分かってる。ひょーかが教えてくれたんだもん。……けど、細かいことは後で――――。
今は―――お帰りなさい、みんな」
 そう笑顔で言うインデックスに対し、堪え切れなくなったアニェーゼが泣きながら飛びつく。
「あ、ああ、うわぁぁぁぁぁぁ!! インデックス! インデックス! インデックスーーー!!」
 インデックスにしがみ付いて泣き続けるアニェーゼと、その背中をやさしく撫でるインデックス。
 その背後から、一方通行と御坂美琴の二人が近づいてくる。
「白い人も短髪もごめんね。私の保護者たちが、いろいろと迷惑を掛けちゃって……」
「けっ、アンなもン、どオってこたァねェよ」
「べ、別に気になんかしてないわよ。っていうかその呼び名はやめなさい!!」
 三人が話していると、そこに別の人間が加わる。
「すまないね」
「アァ?」
 長髪長身で全身を赤く染めた神父が口を挟む。
「水を差してしまうんだが……。イギリス清教『必要悪の教会(ネセサリウス)』ステイル=マグヌスだ。時間が無いので簡潔に説明させて
もらうよ? あそこにある白い澱み、禁書目録の防衛プログラムが、後数分で暴走を開始する。僕らはそれを、何らかの方法で止め
ないといけない。
停止のプランは現在二つある。一つ、きわめて強力な獄炎魔術で灰にする。二つ、上空三千メートルで待機している飛行船『アース
ラ』にいる『幻想殺し(イマジンブレイカー)』で消滅させる。
これ以外に、何かいい手は無いかい? 禁書目録の主とその保護者たちに聞きたい」
 懐からルーンが刻まれたカードを見せながら説明をするステイル。

633「夜の終わり、旅の終わり」 5/20:2008/06/08(日) 16:03:20 ID:4NWLUqGE
 それに対して、
「ええーっと、最初のは多分、難しいと思います。主の無い防衛プログラムは、魔力の、塊みたいなものですから……」
「灰にしても、コアがある限り、再生機能は止まりません……」
 オルソラと神裂の二人が答える。
 さらに、
「『幻想殺し(イマジンブレイカー)』もぜったいダメ!! そんな上空から『幻想殺し(イマジンブレイカー)』撃ち下ろしたらインデックスの家の
家主が死んじまうじゃないですか!!」
 大きく両手を交差させて反対するアニェーゼ。
「よォ、ここへ撃ち込むのってそンなにやべェのか?」
 その様子に何気なしに尋ねる一方通行。
「半径百数○センチの範囲内なら右手で触れるだけでいかなる異能も完全に消滅させるんだけど、それ以外は生身の人間と変わらな
いから……」
「チッ! オイ、俺も反対だぞ。アイツにはまだ借りがアるからなァ!」
「ちょ、ちょっと、私だって反対よ! 何考えてんのよ!!」
 一方通行と美琴の両方から詰め寄られるステイル。
「僕も小萌先生も出来れば使いたくは無いよ……。でも、あれの暴走が本格的に始まったら被害はそれより、遥かに大きくなるんだ」
「暴走が始まると、周囲にあるものを無差別に破壊して、無限に稼動していくみたいですのよ」
「…………」
 ステイルの説明に補足する黒子の言葉に、一同が押し黙る。
『皆さん!! 暴走臨界点まで、後十五分切りました! 代理プランはお早めに決めて下さい!』
 初春からの通信に焦る様にステイルが尋ねる。
「何か無いのかい!?」
「すみません、あまり役に立てそうには無いです……」
「暴走に立ち会った経験は、私らにも殆ど無いからねえ……」
「でも、何とか、止めないといけませんねぇ……。インデックスさんの居候先のお家が無くなっちゃうの、困りますしねぇ……」
「いや、そういうレベルの話じゃ、無いんだけどね……」
 神裂、シェリー、オルソラの口からも芳しい意見は出てこない。
「発射地点をもっと降下させてからは出来ませんの?」
「今から飛行船を降下させても暴走開始には間に合わないでしょう。ビル群を無視した射角を取ろうとした事が裏目に出てしまいま
したね……」
 黒子の発案も神裂によって棄却される。

634「夜の終わり、旅の終わり」 6/20:2008/06/08(日) 16:03:45 ID:4NWLUqGE
「「「…………」」」
 重苦しい雰囲気がその場を包み出す。
「あーもう! なんかごちゃごちゃうっとぉしいわね! 皆でズバッとぶっ飛ばしちゃえばいいじゃないのよ!」
 イライラした様子で喋る結標。
「あのね、これはそんなに単純な話じゃ無いんだよ……」
「ふん!」
場を混乱させるだけのように思える発言にステイルも苛立ちを見せれば、意見をあしらわれた結標もそっぽを向く。

「ズバッと、ぶっ飛ばす……、か――――」
「ここへ撃ったら、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』の被害が大きいから撃て無いんだよね――――」
「じゃあ、ここじゃなければ――――」
 結標の発言に対して呟く一方通行、インデックス、美琴の三人。

「「「あ――――、!!」」」

 次の瞬間、三人は顔を見合わせて何かを思い付く。

「オイ! そこの赤イの! 『幻想殺し(イマジンブレイカー)』ってのはどこへ向けても撃ち出せンのかよ?」
「どこでもって……、例えば?」
 ステイルの疑問に、美琴とインデックスは勢い込んで答える。
「今、『アースラ』のいる場所」
「上空三千メートル、同じ高度上に向けて!」

『学園都市の科学力、舐めてもらっちゃ困りますよー。撃てますよー。同一高度上だろうが、宇宙にだって!!』
 上空に待機中の初春からの通信が響き渡る。

「おい! ちょっと待ちたまえ君たち! ま、まさか!!」
 その意図に気付き、慌て出すステイルに対して三人は得意そうに笑顔を見せるのだった。

635「夜の終わり、旅の終わり」 7/20:2008/06/08(日) 16:04:14 ID:4NWLUqGE
        □                          □

 その頃、第七学区の上条たちの高校の屋上から第一〇学区の方を眺めながら話す二人の少女たちの姿があった。
「光、収まった?」
「うん。小さくはなったけど。まだ。黒いのがあるみたい……」
「一体何なの? まさかこんなのが、このままずっと続いたりはしないわよね?」
「何となくなんだけど。大丈夫な気がする」
「え……?」
「きっと。戦ってくれてるから……」
「レベル5の二人が?」
「うん」
「姫神さんに真顔で言われると、なんかそんな気がするから、怖いわ……」
 上条当麻のクラスメイト、吹寄制理と姫神秋沙の二人である。
「まぁ、それにしても、よ……。
あーー、もう!! 訳が分からないわよ!!
楽しいクリスマスイブに、一体どういう事態なの!? 何を摂ればいいの? カルシウム? イソフラボンなの!?」
「吹寄さん。あの。落ち着いて……」
 若干テンパリ気味の吹寄とそれを宥める姫神の視線の先には、未だ収集の付かない事態の中心がある。

        □                          □

636「夜の終わり、旅の終わり」 8/20:2008/06/08(日) 16:04:42 ID:4NWLUqGE
 上空三千メートル、待機中の飛行船の指揮所の中で、
「何とも、まぁ……、相変わらず物凄いと言うか、ですねー」
 どことなく頭を抱える様子の小萌先生に対して、初春が話しかける。
「計算上では、実現可能ってのがまた、怖いですよねー」
 更にパネルを操作した後、地上に向かって通信を繋ぐ初春――――。


『ステイルさん! こっちの準備はオッケイです! 暴走臨界点まで、あと十分です!!』
 初春からの通信を聞いたステイルが全員を見渡しながら語りかける。
「実に個人の能力頼りで、ギャンブル性の高いプランだけど、まぁ、やってみる価値はあるだろうね」
 それを受けて説明するインデックス。
「防衛プログラムのバリアは、魔力と物理の複合四層式で出来てるんだよ。まずは、それを破らないとだね!」
 それを美琴が引き継ぐ。
「バリアを抜いたら、本体に向けてわたしたちの一斉攻撃でコアを露出させるのよね!」
 続いて一方通行が、
「そしたら結標たちの座標移動で、『アースラ』の前に、転送させるんだな」

 最後に、上空の小萌先生が結ぶ。
「あとは、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』で消滅させるんですねー」
「上手くいけば、これがベストですね!」
 いいプランが見つかったためか、初春の声も弾んでいた。


 それまでのムードから一転、対処の方法が見つかったことによって明るくなった一同から少し離れた位置からクレーターの中心、
光の繭を見つめるステイル。
 咥えたままの煙草を燻らせながらポケットから携帯電話を取り出すと、おもむろにある番号に向けて掛けはじめる。
「アウレオルス、見えているかい?」

637「夜の終わり、旅の終わり」 9/20:2008/06/08(日) 16:05:03 ID:4NWLUqGE
 ステイルからの電話に応じている人物は、そこから十数キロ離れたとある進学塾の一室にいた。
「当然。すこぶる鮮明に映っている」
 はるか上空、飛行船『アースラ』から送られてくる監視映像のモニターを見ながら、アウレオルス=イザードは答える。
 その背後に控えているのは、この学園都市にいる学生たち。
 性別も、年齢もバラバラなはずの少年少女たちはだがしかし、何故か皆一様に同じような表情をしていた。


「禁書目録は、呪われた、魔道書だった……。その呪いは、いくつもの人生を喰らい、それにかかわった多くの人の人生をも、狂わ
せてきた。あれのおかげで、僕も小萌先生も……他の多くの人間も、本来関わる筈も無かった人生を進まなきゃならなくなった……。
それはきっと、君も、三沢塾の生徒たちも……」
 携帯で会話をしながらおもむろにポケットからルーンのカードを取り出すステイル
「失われてしまった記憶は、取り戻すことは出来ない。――――だから、今を戦って、僕らは未来を変えるんだよ」
 そう言い切った次の瞬間、ルーンのカードが光を帯び、次の瞬間『魔女狩りの王(イノケンテイウス)』が姿を現す!!

 それをモニターを通して眺めているアウレオルスは、深く息を吐きながら瞠目するのだった――――。


「『幻想殺し(イマジンブレイカー)』、出撃準備を始めてくださいなのですよー」
「「「はい!!」」」
 飛行船『アースラ』内の全スタッフが返答をする。


 作戦開始まで、あと、少し――――。

638「夜の終わり、旅の終わり」 10/20:2008/06/08(日) 16:05:41 ID:4NWLUqGE
            C    M
      _ _                  _     ゝ
    ,´ノ从 ヽ                ,'´  `ヽ   / ビリビリ!
   ノノリ从从〉              リソリノ"゙从 ∠  /
   ソ(lリ゚ ー゚ノリ              ノjid゚ ヮ゚ノ  / 
    /i,ミ彡i>              く) Y iつ>    
   ┣ l. T l!               く/_|j〉
   ┃ |__l_j                し'ノ
            C    M

639「夜の終わり、旅の終わり」 11/20:2008/06/08(日) 16:06:03 ID:4NWLUqGE
 クレーターの中心で不気味に震動を始める白い繭。

『暴走開始まで、あと二分です!!』
 上空の初春からの通信に、改めて気を引き締める一同。
 そんな中、インデックスがふと気が付いたように一方通行と美琴を見て、後ろにいるオルソラを呼ぶ。
「オルソラ」
「はい、お二人の疲労回復ですね」
 インデックスの呼びかけに、オルソラが返事をしながら近づいてくる。
 そして、どこからとも無く取り出した水筒から中身をコップに空けて二人に手渡し、更にタッパーを取り出して蓋を開く。
「ハーブティーとレモンの蜂蜜漬けでございます」
 唐突な流れに軽く驚く二人に向かって、オルソラは言う。
「イギリス清教預かり、オルソラ=アクィナス。魔道書の解析と料理が本領でございますよ」
 受け取って口に運ぶ二人は素直に口に運んで感想を述べる。
「あ、この香り、ブレンド? なかなかいい組み合わせね」
「ふん。まァまァだな」
 そんな美琴と一方通行の反応にもにこやかに微笑むオルソラ。

 そうした光景をよそに、結標淡希は傍らにいる白井黒子とシェリーに向かって呼びかける。
「あたしたちはサポート班よ、あのウザいバリケードを上手く止めるからね」
「はいですわ」
「わかってるよ」

 各々が準備を済ませていると、目の前のクレーターにある光の球体から、一本、また一本と光が解れ、まるで触手のように天に向
かって伸びていく。
「始まる!!」
 それを見た一同は更に緊張を高める。
「禁書目録を、呪われた闇の書と呼ばせたプログラム……。禁書目録の、闇……」
 そして、光の繭を覆う輝きが一層濃くなった次の瞬間、ついに繭が全て解け、触手の光が一斉に蠢き出す。
 そこに現れたのは一方通行と戦っていた時の女子高生の姿をした『ヒューズ=カザキリ』ではない。
 頭上には発行する輪のような物があり、そこから周囲に向かってジャカジャカと音を立てながら細かい棒が伸縮を繰り返している。
 触手のような翼を背中から無数に生やし、虚ろな目をどこへ向けるとでもなく開いている。

640「夜の終わり、旅の終わり」 12/20:2008/06/08(日) 16:06:32 ID:4NWLUqGE
 それが本格的に動き出す前に、結標淡希と白井黒子が同時に動く。
「座標移動(ムーブポイント)!!」
「空間移動(テレポート)!!」
 結標が手に持つ軍用ライトを素早く動かして周囲にある瓦礫の塊を転送させる。
 その周囲では黒子が小刻みに空間転移で跳んでは手に触れた瓦礫を転送させる。
 それらの目的地は防衛プログラムの周りでのたうっている翼。
 その羽の密集部分に転移させられた瓦礫の塊は、座標を重ねる部分の羽を食い込みながら出現する。
「ははっ、崩れな!!」
 ビュバン!!
 その直後、シェリーが手に持つオイルパステルを抜刀術のように振るって周囲に魔法陣を描くと、それらの瓦礫が一斉に泥のよう
に崩れ落ちる。
 その身に食い込ませた羽が消失し、断ち切られていく。

「ちゃんと合わせてくださいよ! 一方通行(アクセラレータ)さん!!」
「はっ、おめェの方こそなァ!!」
 防衛プログラムの周囲を覆う光の羽に穴が開くと、待ち構えていたアニェーゼと一方通行がそれぞれの攻撃を繰り出す。

「イギリス凄教預かり、アニェーゼ=サンクティス! 
――――万物照応。五大の素の第五。平和と秩序の象徴『司教杖』を展開!!」
 彼女の呼び声に応じて手に持つ杖、その先端にある天使の六枚の羽が開いていく。
「偶像の一。神の子と十字架の法則に従い、異なる物と異なる者を接続せよ!!」
 完全に展開した杖を大きく振りかぶりながら詠唱を続けるアニェーゼ。次いで、それを渾身の力を込めて振り下ろす。
「『蓮の杖(ロータスワンド)!!』」
 何も無い眼前に振り下ろされた杖。
 しかし、遥か離れた防衛プログラムからは、とてつもない重量の物がぶつかった時のような破砕音が響き渡り、その周囲に展開さ
れていた不可視のバリア、その一層目が粉微塵に砕け落ちる!

641「夜の終わり、旅の終わり」 13/20:2008/06/08(日) 16:07:05 ID:4NWLUqGE
「学園都市、レベル5、一方通行(アクセラレータ)。いくぞォ!!」
 高々と宣言する一方通行。その両手は頭上に掲げられ、周囲から膨大な空気が圧縮されて突風が渦を巻いていく。
 立て続けに攻撃を加えられた防衛プログラムが周囲に展開する者達を漸く敵と認識したのか、断ち切られずに残った羽の何枚かを
一方通行に向かって振り下ろそうとする。
「はっ、遅っせェンだよォォ!!」
 それに対し一方通行はベクトルを操作、圧縮させた空気の一部を叩きつける。
 その暴風を受けて動きが止まった防衛プログラムに対し、一方通行が頭上に圧縮した空気の中心点にあるプラズマをぶち当てた。
 閃光が辺りを焼き、大音響が響き渡る。だが、それに伴う熱波や衝撃波すらベクトル操作されて攻撃と化し、ついにバリアの二層
目が消し飛ばされた!

「Aaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」
 防衛プログラムが金切り声を上げる。
 それを見たオルソラが声を張り上げる。
「次、神裂さんと御坂美琴さん!!」

 その声を受けるのはいつの間に回り込んだのか、クレーターを挟んで一方通行たちとは真逆の位置にいる神裂達である。
「イギリス清教『必要悪の教会(ネセサリウス)』、神裂火織。魂に刻み込んだ名を、七天七刀と共に」
 語りながら腰に差した大太刀の柄に右手を添え、左手は鯉口を切る。
「フェイクである『七閃』の奥に隠された、真の一刀を」
 その彼女に対して未だ残る羽の残骸が襲い掛かる。周囲にある瓦礫を崩して神裂に当てようとする。
 しかし、彼女が繰り出す鋼糸の『七閃』により悉く弾き飛ばされ、次いで裂帛の気合と共に彼女の魔法名が唱えられる。
「『救われぬ者に救いの手を(Salvere000)』!!」
 宣誓と同時に膨れ上がった魔力と共に彼女の持つ真の奥義『唯閃』が戦場を奔り、防衛プログラムにぶち当たる。
 一拍を置いた後に激しい震動と共にバリアの三層目が砕け散る!

642「夜の終わり、旅の終わり」 14/20:2008/06/08(日) 16:07:43 ID:4NWLUqGE
「学園都市、レベル5、御坂美琴。いくわよ!!」
 次に攻撃に出たのは美琴。その体からは周囲に紫電の火花が溢れている。
 その音色が、重く鋭く変化していき、音階がどんどん上がっていき、それと共に上空には黒く重たい雷雲が立ち込める。
「貫け、雷刃!!」
 音の変化が最高潮に達したとき、遂に美琴から雷撃の槍が発射される。
 それが着弾したと同時に、天から今度は本物の雷が降り、防衛プログラムに直撃する。
 ドォォン!! という腹の底を揺さぶる音が響き渡り、最後のバリアが破られる!

「Kyaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」
 度重なる猛攻の直撃、バリアの無効化という事態に、防衛プログラムが絶叫を上げながら背中に残る羽、その一際太い二本を大き
く振り上げる。
 と、その二本の羽の間に青白い光が瞬き始め、見る間に光球が発生する。
「イギリス清教『必要悪の教会(ネセサリウス)』、シェリー=クロムウェル。砲撃なんか撃たせるもんかい!!」
 それを見たシェリーが再び手に持つオイルパステルを再び振るう。
「『我が身の全ては亡き友のために(Intimus115)』――――。エリス!!」
 先の多重召喚による作為的な崩壊とは違い、今度作り出すゴーレムは一体のみ。
 その十メートルの巨体はたちどころに全身を形作ると両手を防衛プログラムに向かって突き出し、放電に似た現象を起こし始めた
羽を鷲掴みにする。
 見る間にゴーレムの両手が崩れていくが、一時的に攻撃手段を封じられた防衛プログラムに対して更なる攻撃がなされる。
「インデックスさん!!」
 オルソラの声に対してインデックスはその小さな口から言葉を紡いでいく。
「――――囁く声、噂の風よ、彼の者の心を暴き立て、その矛盾を糾弾せよ。――――『魔滅の声(シェオールフィア)』」
 呪文が唱えられ、魔術が発動すると、ビクン!! と身じろぎする防衛プログラム。瘧にかかったかのように体を震わせていたが、
その体と翼のあちこちからスパークが起こり、いたる所で体が爆ぜる。
「Cuoooooooooooooooooo!!」
 絶叫を上げながら体を崩壊させていく防衛プログラム。
 しかし、ひとしきり爆発が収まった後に姿を現したのは今までよりも更に姿を変えたものだった。

643「夜の終わり、旅の終わり」 15/20:2008/06/08(日) 16:08:06 ID:4NWLUqGE
 頭はグラリと垂れ、半開きの唇からは半端に舌が飛び出している。見開かれた眼球は不規則に揺れ続け、涙と涎が混ざり合ってそ
の胸元をベットリと濡らしていた。
「うわーーーー」
「な、何だか、もの凄いことになっているのでございますよー」
 顔を顰める結標とオルソラ。
 
 上空で監視している『アースラ』からも初春の通信が入る。
『やっぱり、並みの攻撃じゃ通じません! ダメージを入れた側から、再生されちゃいます!!』

 しかし、地上で戦っている人間たちはそれでも逃げない。
「だが、攻撃は通っている。プラン変更は無しだよ」
 咥えた煙草を揺らしながら言うと、ステイルは手に持つルーンのカードを目の前にかざす。
「いくぞ、『魔女狩りの王(イノケンテイウス)』。――――焼き尽くせ!!」
 その命令に従ってヒトガタの炎が防衛プログラムに組み付き、燃え盛る我が身を使ってその体を拘束する。
「――――神裂がいて助かったよ。限られた時間と枚数でここまで火力が上げられたんだからね」
 その言葉どおり、『魔女狩りの王(イノケンテイウス)』の姿は常のそれとは違い、炎の密度が違い、威圧感が違う。全身から放たれる熱波
は周囲の空気を歪め、その背中から巨大な翼が生えていると錯覚させるほどだ。
 だが、それほどの熱量を持った攻撃を受け続けても、防衛プログラムは尚も稼動し続ける。
 攻撃と再生を続ける『魔女狩りの王(イノケンテイウス)』なればこそ、その体を抑える付けることが出来ているが、それでは決定的では無い。
 その身に『魔女狩りの王(イノケンテイウス)』を組み付かせたまま暴れようとする防衛プログラムを前にして、最後の三人が動く。
「いくぞォ、第三位ィ、白イのォ!」
「うん!」
「了解なんだよ!」
 一方通行の呼びかけに応じる御坂美琴とインデックス。

644「夜の終わり、旅の終わり」 16/20:2008/06/08(日) 16:09:09 ID:4NWLUqGE
 一方通行はその場にしゃがむと無造作に右手を地面に突き入れ、アスファルトの塊を掴み取りながらその演算能力を行使する。
 地球の自転エネルギーをベクトル変換しながら大きく振りかぶる――――、
「全開でいくぞォ! ――――『天体制御(アストロハインド)ォォォ――――」

 御坂美琴は右手をポケットに突っ込むとそこからゲームセンターのコインを取り出す。
 ただし、その数は通常の一枚限りではない。ポケットに残るコイン、その数七枚を右手に握り締めたまま叫ぶー―――、
「――――雷光一閃、――――『超電磁砲(レールガン)――――」

 インデックスは暴れようともがく防衛プログラムを見ながら涙を滲ませて呟く。
「ごめんね……。お休み、なんだよ……」
 その目に去来するのは如何なる思いか。
 しかし、数瞬目を閉じ、迷いを振り切るように開くその瞳に映るのは決意の色。
「特定魔術『聖ジョージの聖域』の発動。――――現れよ、絶対なる守護者――――」
 彼女の唱える呪文に呼応して目の前に二つの魔方陣が出現、そして、その二つの中心から空間を引き裂いて暗黒の闇が顔を覗かせる。
「――――『竜王の殺息(ドラゴン・ブレス)――――」
 その亀裂の奥から『何か』が覗き込んで――――、

「――――ブレイカーーーーーー』!!」
「――――ブレイカーーーーーー』!!」
「――――ブレイカーーーーーー』!!」

 三者の声が同時に響く。
 そして、それぞれから自身が持つ最大の攻撃が放たれる。
 一方通行からは天体運行のエネルギーを変換したベクトル攻撃が、
 御坂美琴からは弾核を束ねたレールガンによる収束攻撃が、
 インデックスからは蓄えられた魔道の書十万三千冊の知識全てを駆使した魔術攻撃が、
 三方から防衛プログラムに向かい、直撃する。
 瞬間、音が消えた。
 別系統による同時多重一斉攻撃を受けた防衛プログラムが、今度こそ押し潰される!

645「夜の終わり、旅の終わり」 17/20:2008/06/08(日) 16:09:31 ID:4NWLUqGE
 その外殻を構成していたプログラムが弾け飛び、中にあるコアが露出されるのを見た瞬間、オルソラが手に持つロープを勢い良く
投げつける。
 如何なる魔術の働きによるものか、真っ直ぐにコアに向かって飛んでいくロープ。そして、
「本体コア、――――捕まえました、ですよ!」
 ロープがコアを絡め取ると、すぐさま次の行動に入る結標淡希と白井黒子。
「長距離転送!」
「目標、上空三千メートル!」
 共に大能力者である二人による一一次元計算式は直ぐに終了し、直ちに次なる手が打たれる。
「座標移動(ムーブポイント)!!」
「空間移動(テレポート)!!」
 結標は手の軍用ライトを大きく振り上げ、白井はオルソラが飛ばしたロープの端を握り締めて同時に叫ぶ。
 三人がかりによる強制転送により、防衛プログラムの本体コアが天高く飛ばされていく。

「コアの転送、来ます!」
 上空で待機していた飛行船『アースラ』ブリッジ内に緊張が走る。
「転送されながら、外殻データを修復中。すごい速さです!」
 次々と寄せられる報告を処理しながら、初春が指示を出す。
「『幻想殺し(イマジンブレイカー)』、射出バレル展開!」
 飛行船の前面、その先端に突き出ていたパーツが真ん中から分離し、二つに離れていく。さらに、それぞれのパーツが伸張して
十メートルほどの滑走用レールが現れる。
「ファイヤリング・ロック・システム、オープンなのですよー」
 命令する小萌先生の前に卓上のパネルが展開、無骨なスイッチがせり上がってくる。
「命中確認後、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』を安全圏にて回収します。準備をよろしくですー」
「「了解」」
 全ての準備を整えた『アースラ』の前に、地上から転送された防衛プログラムの本体コアが現れる。
 外殻データから剥き出しにされたコアが、その三角柱の身を回転させながら処理を行ない、元に戻ろうとしている。

646「夜の終わり、旅の終わり」 18/20:2008/06/08(日) 16:09:55 ID:4NWLUqGE
「『幻想殺し(イマジンブレイカー)』、出撃!」
 復元処理の為に動きが止まったそれに対して、遂に『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が出撃する。
 それは、滑空用レールから勢い良く飛び出すと、空中で機動翼を展開、メインエンジンを吹かしてあっという間に距離を詰める。
 その身に纏っているのは頭の上から足の先まで覆うスマートな黒の装束だが、唯一、右手だけが違っていた。
 正確にはその肘より先、腕の中頃から先は一回り大きな機械に覆われている。
 そうして飛来する『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が迫る時には何とか最低限の外殻データが修復し終わる本体コアは、己の手足だけ
を武器にして迎え撃とうとする。
 と、近づいてくる『幻想殺し(イマジンブレイカー)』の右手を覆う機械が勢い良く開き、そこから剥き出しの拳が姿を見せる。
「Aaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」
 落下しながらも腕を振り上げ、叩きつけようとする。
 対する『幻想殺し(イマジンブレイカー)』も右手を後ろに引いて構えながらその懐に飛び込んでいく。
 突き出される拳と拳。互いの攻撃が相手に届いた瞬間、しかし、結果はあっけないものだった。
 その右手が触れた瞬間防衛プログラムの腕は瞬時に消し飛び、それに驚いて目を見開いた顔面にそのままの勢いで拳が突き刺さる!
 そのまま外殻データをまとめて吹き飛ばした右手が本体コアに叩きつけられると、コアを形作っていた三角柱は霧散した。

「「「――――!!」」」
 地上では、上空を見つめる実働メンバー。

「――――」
 三沢塾では、『アースラ』からの映像を見つめるアウレオルス。

 それぞれが、それぞれの胸の内に思いを抱きながら見つめている。

 そして、観測班からの報告が寄せられる。
「効果空間内の物体、完全消滅! 再生反応、ありません!!」
「はいなのですー。準警戒態勢を維持、もうしばらく反応空域を観察しますよー。それと、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』ちゃんの回
収、よろしくなのですよー」
「了解! …………ふぅ」
 まだ警戒中とはいえ、殆ど終わったようなものなので緊張を解いて大きく息を吐き出す初春。
 地上に向けて通信を入れる。

647「夜の終わり、旅の終わり」 19/20:2008/06/08(日) 16:10:35 ID:4NWLUqGE
『というわけで、現場の皆さん、お疲れ様でしたー。状況、無事に終了しました!』
 その報告を聞いて安堵する一同。
「――――ふふっ」
「――――へへっ」
 顔を見合わせて笑顔を浮かべ合う結標、白井、オルソラ。
 ルーンのカードを操作し、『魔女狩りの王(イノケンテイウス)』が正常に終了されたことを確認するとそのまま懐から新しい煙草の箱を取
り出して早速一服し始める。
『この後、残骸の回収とか、市街地の修復とか色々ありますけど、皆さんは『アースラ』に戻って一休みして下さい』
 大きく息を吐いてへたり込みそうになるアニェーゼ。
 まだ警戒は解いていないが、それでも緊張を和らげる神裂とシェリー。
 そして、美琴とインデックスは手を打ち合い、一方通行は差し出された手を見て鼻で笑ってインデックスに飛び掛られ、それを見
る美琴は呆れ返っていた。
「――――アァ、そオいやァ市街地にイた一般人はどオなったんだァ?」
 ふと気付いた様子の一方通行からの質問に、情報を検索した初春からの返答がすぐさま返ってくる。
『被害が酷い場所以外の封鎖は解除されていますので、元いた場所に戻れると思いますよ』
「ふン、そォかイ」
 首をぐるぐると回しながら気の無い相槌を打つ一方通行。既にその関心は別の事へと向いているようである。

「――――えっと、ステイル、さん? お、お疲れ様……」
「――――ああ、とっさの申し出にも良く応えてくれたね。ありがとう、御坂美琴、さん」
 異なる世界に属する者同士の間でも事態の終息、といった空気が流れる中、
「インデックス!?」
「インデックスさん!?」
 突然響き渡る悲鳴。
 皆の視線が集まるそこには、突然倒れたインデックスを抱きかかえる神裂火織とそこに心配そうに詰め寄るアニェーゼとオルソラ
の姿だった。
「インデックス! インデックス! インデックス!! インデックスゥゥゥゥ!!!」
 突然の出来事に皆が呆然とする中、アニェーゼの悲痛な叫び声だけが無残にも響き渡っていた……。

「…………白イ、の?」

 〜to be continued〜

648「夜の終わり、旅の終わり」 20/20:2008/06/08(日) 16:11:00 ID:4NWLUqGE
   〜〜♪〜〜♪〜〜〜

  そして、禁書目録事件が終わりを迎えます。
  出会ったヤツ、触れ合ったヤツ等皆に、笑顔と感謝を。
  それから、旅立ちと、別れと。
  新しい道を進むとき――。

  次回、魔砲少女リリカル・カナミンA‘s 最終話 「スタンバイ・レディ」

  ――終わりじゃなくて、きっと、始まりなんだよォ――。

649■■■■:2008/06/08(日) 16:13:55 ID:4NWLUqGE
お、終わった…………。長かった…………。

折角なので少しだけ私事を書かせていただきたいと思います。
>>616氏が仰ってたように、とんでもない事でした。
たった一話、20分少々の話を文章に直そうとすることのどれ程大変なことか!
何故もっと早くそのことに気が回らなかったのか昔の自分!!
そして何故ダイジェスト版にしようと思い立たなかったのか昔の自分!!
ブランク明け、初っ端からキーを打ち込む作品がいくら原作付のパロディだとは言え、あまりにも無謀でした。
とはいえ、どうにか形に纏めることが出来たのも事実です。
個人的に書きたいと思っていたのはCM明け、Bパートの戦闘シーンですが、自分の浮かべていたシーンの何割かでも伝えられたなら、
この作品も一応モノに出来たといえると思います。
ここ迄読んでくださった方で、気が向いた方は改善点や指摘などをしていただけると自分のスキル向上になるのでお願いします。

長々とスレを占領してしまい申し訳なかったです。
暫くはリハビリを兼ねてボツボツと打鍵をしてみようと思います。(このスレに投下できるかどうかは分かりませんが……)
それでは、ここまでお付き合いありがとうございました。

追伸 ハネムーンの方、(負担にならない範囲で)作品待ってます。
   このスレが再び往時の勢いと職人さん達の集う場所となりますように!

650■■■■:2008/06/08(日) 16:20:55 ID:5LRZMhGg
お疲れ様でーっす!

うはぁ、凄まじい出来でバッチリだと思いますよ!
というか、違和感が無くてビックリでした。

あと、当麻が何やら最後に決めたので、更にビックリ。
まぁ、とにかく良い作品をありがとう御座いました。

続きも楽しみにしてm

651■■■■:2008/06/09(月) 13:55:25 ID:Pf/dxxuM
ちょっと来ない間にすげぇ分量の投下がっ
乙でしたー!

あとなんか上条さん、どこぞの復讐鬼みたくなっとるww

652■■■■:2008/06/09(月) 19:04:40 ID:m/k1xjo2
乙です
上条さん人間大砲状態www

653616:2008/06/10(火) 00:30:30 ID:RmXKJbbg
いやいや、恐れいりました。まさかここまでのものに仕上げてくださるとは
失礼な話、ここまでのものが出来上がるとは思ってませんでした。

うわ、すげぇ燃えた。一方さんも御坂もステイルも禁書もカッコイイ。アニェーゼと姫神が出て来るとは思わなかった。まさか三沢塾も出て来るとはですよ。
あー面白かった、と素直に楽しめるお話でした。途中、オルソラ優雅だな!とか吹いたけど。

次回がくるといいなー、と思いつつ、待ちぼうけ開始です。

PS 幻想殺し射出で思い出したのが「柊蓮司を発射しなさい」だった。いや、こんなカッコいい発射じゃなかったけどな、アレ。しかも誤射。

654■■■■:2008/06/11(水) 17:58:43 ID:lvDrM.sE
>>651
カミやん「俺は童貞だー!」

……というのを思い浮かべた。

655■■■■:2008/06/20(金) 12:14:37 ID:Z/TFPZ/c
>>613
美琴とステイルは無いと思うけど、フェイトとステイルならありそうな気がしてきた。
ステイルも上条に殴られて以来フラグ力がついたみたいだけど、
小萌先生とか、パトリシアとか幼女フラグばっかりたっているし。

656ransu521:2008/06/22(日) 17:28:36 ID:Ho6/LPHc
初めまして。
つい最近禁書目録を読み始めたものです。
突然なんですけど、SS、載せますね。

657とある脳の複数回路(プライラルサーキット)予告編 ransu521:2008/06/22(日) 17:29:57 ID:Ho6/LPHc
学園都市。

別名実験都市とも呼ばれるその街は、能力者達が集まっている都市だ。

無能力者(レベル0)から、超能力者(レベル5)まで、様々な人達が集まる場所。

故に、非現実など存在するはずのなかった都市。

しかし、禁書目録(インデックス)の来訪によって、そんな基盤もゆがみ始めた。

そして、新たなる噂が流れ出す。

「ねぇ知ってる?」

「魔術と能力を両方使える人がいるらしいよ」

そんなはずはない。

魔術と能力とでは、頭の回路が違うはずだから。

曰く、魔術師ながら能力者としての回路も持ち合わせているらしい。

曰く、能力としては水を操る力で魔術は何を使用するのかは不明らしい。

曰く、そいつに勝てる相手は誰一人としていないらしい。

いるはずのない存在で、二つの回路を持ち合わせていることから、

「プライラルサーキット」

という異名をもつらしい。

実力で言えば、一方通行(アクセラレータ)よりも上とのことだ。

将来、絶対能力(レベル6)になるのも夢ではないとのことだ。

そして、そいつを使ってある人物を殺させようとしているとのことだ。

再び始まる惨劇。

何も知らない街の人々。

開幕するは、殺人事件。

それらを食い止めるべく、上条当麻は再び戦いの渦の中へと入りこんでいくのであった。

そして、当麻を取り巻く様々な人達も、この戦いの中に巻き込まれることになるのだった・・・。

658■■■■:2008/06/23(月) 03:31:31 ID:ivKfKmlg
オリジナル設定が多々あるやつはよっぽど上手くないと
受け入れられんから気をつけて。
特に一方さんより強いオリキャラとか出すと最低SSと呼ばれることも
ありうるので要注意。

あと能力と魔術は一応土御門が併用してる。
両方フルに使いこなすって意味ならたしかにいないけど。

659■■■■:2008/06/23(月) 07:59:50 ID:SQP.u3V.
あまりに本編の前提無視しすぎで吹いたww
ここのスレでは一方超えていいのか?(苦笑
もう少し本編を熟読して設定を確認から書いた方が良いぞ(苦笑
学園都市での魔術の認識はローマ正教が独自に行っている超能力開発の結果っていう感じになってるはずだからその噂は間違いなく多重能力がいるっていう噂に他ならないし(苦笑

660■■■■:2008/06/23(月) 08:06:22 ID:GsImcNjo
まあ、噂だしね。話が大きくなって、一方通行より強いなんて話になってるだけという可能性もある。
ただ、絶対能力って、一般には出回っていない単語じゃなかったっけ?

661■■■■:2008/06/23(月) 13:52:05 ID:0hYQMVWY
一巻と三巻だけ読んでみて後は脳内で勝手に話を膨らませたような内容だな……

とりあえず16巻現在から基礎設定がかなりズレてるのはキツい。シリアスっぽいのに思わず吹き出しちまった。
まぁやるならせめて、どこらへんの情報から分岐的に派生した物語なのかを大体でいいから明らかにしてくれ

662■■■■:2008/06/23(月) 20:12:53 ID:eZp7tHc2
Festival of large star IFマダー?

663■■■■:2008/06/25(水) 15:01:38 ID:2LRnQfyk
だれもいない

664■■■■:2008/06/26(木) 14:58:10 ID:kSeat5Qc
ここは話思いついたら、新参者でも
投下してもいいんですかね?

665■■■■:2008/06/26(木) 17:40:53 ID:X47X0DPw
とりあえずちゃんと原作読んでてある程度しっかり設定把握してればよっぽど
ぶっ飛んだキャラや設定作らなきゃいいんじゃないか?当然、適当に書いたのはダメだろうが

666■■■■:2008/06/26(木) 21:05:39 ID:P5.CXg7M
俺さ書くとしたらFestival of large star IFの人
みたいな禁書がいない世界ってのやりたいな

667■■■■:2008/06/27(金) 00:33:50 ID:C8IvHtmk
別に気にせず書けばいいと思うよ。
どこから分岐したのかがすぐ分かるなら、こっちはそれを踏まえて読むだけだから。

まぁそういうifが嫌いな人もいるから、投下前に一言注意を入れておいたほうが無難だけどね

668■■■■:2008/06/27(金) 12:31:17 ID:/bdkgHjw
ご指摘どうもです。

今から書こうと思う話は完全に自己満足なんですが・・・
投下したいと思います。
しばしの猶予をくださいな

669とある少年の(不本意な)結婚願望:2008/06/27(金) 13:52:07 ID:/bdkgHjw
珍しく朝早くに目が覚めた高校生、上条当麻は少々欝気味だった。
毎朝毎朝、空腹少女のお腹を満たさなければならないからである。
上条の家は別段裕福というわけではない。むしろ少しお金に困っている状態なのだ。
だから、そんな現状に目もくれずにただただ食事を要求してくる彼女には心底困らされていた。


でも、だからといって作らないわけにはいかない。
きっともう彼女――――インデックスは上条が作る朝ごはんを待ちわびているはずだ。
それを無視して二度寝なんてした日に待っているのは・・・・・・考えたくもなかった。
頭部を軽く頭蓋骨が砕かれるくらい噛まれるに決まっていた。


(ああ・・・考えちまったよ)


そんな想像が容易になってしまった自分に軽く自己嫌悪を覚えながら、彼は私室兼寝室のユニットバスから這い出た。
リビングへと繋がるドアを開けて寝ぼけ眼をこすり、完全に脳の覚醒を促すと目を開ける。


「あ、やっと起きた。パパ、この絵本読んでって上条は上条はお願いしてみる」


「む、そうはいきません、パパは私とキャッチボールをするのです、と上条は上条はさりげなくパパの片腕をぎゅっとします」




・・・・・・



え?と。
上条はそのままたっぷり十秒間体が動かせなかった。


意味がわからない。
なぜ彼女がここに?


九月三十日。
学園都市の超能力者、御坂美琴が取り決めた罰ゲームの日。
その日に会った、御坂のクローン体である打ち止め。


そして今、上条に向かって健気に絵本を突き出して、早く読めよ、と暗に語っているのが打ち止め。
さらに、上条の顔をじっと見つめながら左腕をつかんで離さないのは、


「あれ?打ち止めが二人?なんで?増えたのか?って、お前は御坂のクローン体だろ?何で上条って名乗るんだ?」



上条が知る打ち止めという名前の少女は一人だけだ。
九月三十日に彼女から話を聞いた限りでは、打ち止めが二人も作られることなんてないように思うのだが。



というか、本当なら突っ込むべきところはもっと色々あるのだが、上条は気づくことができない。
不幸にも。



頭上に?マークを浮かべて首を傾げる上条。
そんな彼に不審感を抱いたのか、なぜか二人いる打ち止めは台所へと走っていく。
上条は思考に身を任せながらも何気なくそちらに視線をやる。

と、誰かの後姿が見えた。
インデックスとは違うようだ。
第一印象は白い、ただ純粋に白いと感じる女性。


もちろん、上条の家にはそんな女性はいない。
居るのは上条とインデックス、インデックスが拾ってきた猫だけなのだから。



じゃあ、あれはいったい?


「ママ、パパが変なの、って上条は上条は心配そうに話しかけてみる」


ママ?


「――――あァ?」


エプロン姿の白い女性が振り返る。


大きく目を見開いた上条が最後に見たのは、


「ったく、遊ンでやれよ。こっちは忙しいんだからよォ」


学園都市最強の超能力者。


「テメェにはお仕置きが必要みてェだなァ?当麻」


包丁片手の大変家庭的な一方通(ry

670とある少年の(不本意な)結婚願望:2008/06/27(金) 13:55:59 ID:/bdkgHjw
お目汚し失礼いたしました。




呼び名・・・・・・悩んだんだよ
上条上条二回言うのおかしくない?って・・・・・

671■■■■:2008/06/27(金) 16:17:16 ID:SBsk3C7I
ふいてしまったじゃないかw
でも面白かったよ。いいね久しぶりだ。

672■■■■:2008/06/27(金) 21:51:40 ID:xejkKqw2
TSスレかと思っちまったwww
投下乙、次も期待していいでしょうか?

673■■■■:2008/06/28(土) 23:41:45 ID:qEvW.7Zk
GJwww
そういう可能性もなくはないような気がしないでもないのが恐ろしいwww

674maki:2008/06/29(日) 17:25:55 ID:4o8mwC9M
エロエロ画像☆タップリありますよ〜♪
全部無修正は常識だよね〜!!あんなところまでっ…!!
ttp://tm.hmailde.com/takara/big/

675■■■■:2008/06/30(月) 00:41:03 ID:mptJEOr.
えーっとすれ違いじゃなくってこんなところに張らないでくれるかな?

676とある少年の(不本意な)結婚願望:2008/06/30(月) 12:29:10 ID:5ie1laGM
こんな駄文に感想をありがとう。


(多分)続きではありませんが、また投下したいと思ってます。




・・・次はちょっと題名かえよー

677とある少年の結婚願望:2008/06/30(月) 12:57:19 ID:5ie1laGM
「うばぁぁぁ!!?」


突如、絶叫とともに跳ね起きる不幸な高校生上条当麻。
何故だかとんでもない悪夢を見ていたような気がする。


それはありえないなんてレベルのものじゃなかった。
うろ覚えだが、なんというかこう・・・鬼嫁日記?


「・・・意味わからん」


自分で自分に突っ込んで――――突っ込んでから、違和感を覚える。


「ありゃ?」


まずは、周りの様子。
白一色の汚れ一つない綺麗で、それでいてお金持ちが好んで選ぶような装飾のされた広い部屋。


そして、己の格好。


これまた白のタキシードに豪華な刺繍が施されたネクタイ。
いつもだらだら過ごしている上条には合わないフォーマルな姿。


「これは・・・一体?」


見慣れない部屋に着慣れない服装。
もしかしてまだ夢の中?と自らの頬をつねってみたが、特に何が変わるわけでもない。
いまいち状況が掴めない上条だったが、このままこうして考えていても何もわからなさそうなので、とりあえず行動を起こすことにした。

678とある少年の結婚願望:2008/06/30(月) 13:28:14 ID:5ie1laGM
自分が寝ていたらしい高級そうな赤いソファーから立ち上がる。
そうしてから視線を前に向ければ、上条の背丈の二倍はあろうかという巨大なドアがあった。


どうやら出口はここしかないらしい。
一通り部屋を調べた後、上条はドアノブに手をかけた。


と、


今まさに開けようとしていたドアが、あちら側からノックされた。
不意を突かれた上条は、ついどうぞーと当たり障りのない返事をしてしまう。


「よろしいですか?花嫁さんがお待ちなのですよー」


・・・聞き慣れたロリ担任の声が聞こえたのは気のせいだろうか。
むしろそうであってほしい。

返事をして、ドアの向こうから「・・・ほら・・ちゃん。ばしっと決めてくるんですよー」
「う・・・わ、わかってますから・・・ちょ、ちょっと・・・深呼吸・・・」
とかなんとか声が聞こえて、それからしばらく間をおいて。


ドアがぎぃぃ・・・と音をたてて開かれた。
上条が目を凝らしてそちらを見ると。


そこにいたのは、


「き、貴様、何をやっているの?仮眠をとるとか言って。一体いつまで待たせる気?こういうところはいつまでたってもかわらないんだから!まったく・・・」



白いウェディングドレスに身を包んだ。


「・・・えぁぁ?」


少し頬を赤らめ、緊張した面持ちのクラスメート、吹寄制理の姿だった。

679とある少年の結婚願望:2008/06/30(月) 13:31:13 ID:5ie1laGM
はい。

吹寄編(?)でした。

でわでわ・・・

680■■■■:2008/06/30(月) 17:20:32 ID:2JtbgvEw
Mですか?
いやなんとなく

681■■■■:2008/06/30(月) 18:14:52 ID:DbqcHeB6
なぜに吹寄?w
ともあれ乙

682とある少年の結婚願望:2008/07/01(火) 12:44:22 ID:DyOP1qmo
なんか、また話が思いついたら投下したいと思ってます。


それはまったく別の話かもしれませんが、どうぞよろしく。


俺は・・・Mじゃ・・・!ない・・・多分

683nana:2008/07/01(火) 17:52:01 ID:66KGVN/s
ちょっと一息。。。
妄想たっぷり画像♪
ttp://tm.hmailde.com/otakara/heart/

684■■■■:2008/07/03(木) 22:07:50 ID:/T5Sx0Dc
カエル医者とドラマのHEROのマスターが知り合いっていう妄想が頭から離れない……何故だ……

685■■■■:2008/07/05(土) 22:51:22 ID:KqMAjsuo
>>679
仮にも新郎にむかって
『貴様』
なんていうか?

妄想もほどほどにしろや(゚Д゚)ゴルァ!!

686■■■■:2008/07/06(日) 16:18:12 ID:epm6usy6
艶っぽい画像を集めてみました〜!!
かなり萌えちゃいますゥ〜(※^○^※)♪
ttp://blogs.lovekatu.net/eroikana/yamamori

687とある少年の結婚願望:2008/07/07(月) 12:25:57 ID:Fs5gCDMs
き、きっと吹寄はてんぱっていたんだ!


怒られちゃった・・・
あれ、でもアンマリイヤジャナイ・・・

688■■■■:2008/07/07(月) 15:05:37 ID:Sxj9K2Rk
>>685
別に新郎に貴様呼ばわりでもかまわんと思うが
吹寄の男性用二人称が対上条用以外に公式にでてない以上、あとは作者さんの自由だろうに。どこまで夫婦に幻想抱いてんだ

>>687
書いてくれんのはうれしいが、まずsageろ
メール欄に、半角小文字で、sageって入力するだけだ。初心者ダメとかじゃなくて、明文化されてないだけのルールなんだ。覚えてくれ

689■■■■:2008/07/08(火) 12:23:23 ID:xYUKDG0c
>>685
勝手に捏造された方が萎えるわ

690とある少年の結婚願望:2008/07/08(火) 12:42:23 ID:DF6U2gWM
すいません
そういうのよくわからなくて・・・

sage

こういう感じでいいんでしょうか
どういうときに使うのとか全然わからないんです
あとどんな意味があるのかも・・・

ついでに言うと
皆さん使う不等号?みたいな記号を二つ組み合わせたやつ。
つかいたいんだけど使い方がわかりません・・・

691■■■■:2008/07/08(火) 13:09:12 ID:MwNoljR6
メール欄と……言ってるじゃないか………

>>690
このようにアンカーは、半角記号の>を2つ繋げた>>と、レスしたい番号(この場合は690)
をそのまま繋げれば他に何かしなくてもできる簡単便利な機能です。
是非上手くご活用ください、とミサカは釣りの可能性を内心危惧しつつ懇切丁寧に説明してみます。

692misaki:2008/07/08(火) 13:44:01 ID:FWr3BOeQ
それじゃダメだ!!
左を狙え〜!!
ttp://blogs.lovekatu.net/waraeru/yumenokuni/

693とある少年の結婚願望:2008/07/09(水) 12:21:57 ID:qqaSc6mw
>>691

こうですかね
いろいろと教えていただきありがとうございます

694■■■■:2008/07/09(水) 16:07:45 ID:dm3Ze18E
まぁ、普通は教えてもらわないからな・・・

695■■■■:2008/07/09(水) 16:33:22 ID:djHNk3tA
つーか、この辺のことってのはしばらくこういう掲示板見続けて作法として覚えていくもんだからな
誰かに聞けば教えてくれる奴もいるけど、半年ROMれ(しばらく静観して作法覚えてから出直せ、の意)で後は無視されんのが普通

sageは……まぁ、理由はたくさんあるが、基本的にはしてないと場所によっては荒らし扱いされることもあるから入れるのが無難。
知りたきゃ自分で調べてみてくれ

じゃ。続き待ってます。
PS レス番指定は番号まで半角じゃないと意味ないぜぃ

696■■■■:2008/07/09(水) 17:41:13 ID:yUzIGSSk
オレモツヅキマッテマス

697■■■■:2008/07/09(水) 20:50:28 ID:6YTWhKqc
bokumomatteruYO!

698■■■■:2008/07/11(金) 13:16:01 ID:UxI0eKvo
a

699とある少年の結婚願望:2008/07/14(月) 13:57:46 ID:mS5WxWZQ
>>688>>691>>695
皆色々とありがとう。

続きとか思い浮かぶには思い浮かぶけど
あんま面白そうな話じゃないことがしばしば・・・

700Haeresis044:2008/07/17(木) 02:15:19 ID:pO.ugOg2
果てしなくお久しぶりです。
とある忘却の再認識の作者です。
現在、次話が紙に書き終わった段階なのですが、
実際問題、今更過去の遺物を読もうという奇特な方はいるのだろうか、などと定期テストが終わってふと思いました。
完結にはまだ数話足りませんし、書き始めの段階より後に出た設定などを取り入れそこなったりして出来が悪い可能性もあります。
それでも希望する方がいましたら、挙手をお願いします。

701■■■■:2008/07/17(木) 10:07:04 ID:WvzPD5Co
>>700
そんな誘い受けに俺がクマー
ノシ

702■■■■:2008/07/17(木) 18:42:58 ID:T9oDkTdg
そんなちゃっちい餌に俺が釣られクマー
ノシ

703■■■■:2008/07/18(金) 15:54:20 ID:3NHSLEbg
ノシ
希望しま激しく

704■■■■:2008/07/21(月) 00:24:17 ID:h4BGPXHA
これはなんという誘い受け……
しかし餓えた心は茫然とその右手を挙げさせるのだったノシ

705Haeresis044:2008/07/22(火) 14:54:39 ID:xF7wJuSU
 上条当麻は疲弊していた。姫神秋沙は忘我していた。ステイル・マグヌスに至ってはそもそもその場にいなかった。無論、敵地において警戒を怠ることが死に直結することは周知の事実であるが、上条も姫神も歴戦の強者ではない。或いは『記憶を失う前の上条当麻』や、先程までの『姫神と再開する前の上条当麻』ならば、或いは気づくことができたかもしれないが、如何せん日常レベルにまで緊張を緩めてしまった彼には、どうしようもなかった。
 がつがつと立てられる金属的な足音。ぜえぜえと鳴る荒い息。じゃらじゃらと鎖の擦れる音。
 それら全てに、上条は反応することはなく。
 ひゅん、と鎖が飛んで。とすん、と鏃が刺さって。
 小さな呻き声を上条が認識した、次の瞬間には。
 姫神秋沙の、頬が、顎が、額が、頭髪が、瞼が、耳が、眼球が、唇が、歯茎が、歯が、舌が――崩れて。
 皮膚という皮膚が、筋肉という筋肉が、脂肪という脂肪が、骨という骨が、内臓器官という内臓器官が――姫神秋沙という姫神秋沙が――金色の粘液と化していた。
 上条は、先程の姫神秋沙のように、ただ呆然とするしかなかった。

 ――彼の認識が現実に追いつくのに掛かった時間は十数秒。しかし彼は未だ生存している。視覚を復帰させると、足元には変わらず黄金の液体。前を見れば、狂ったように笑いながら何事かを叫んでいる男。脳内の記憶領域を検索すると、魔術師アウレオルス・イザードが該当する。今作戦の第二目的は当該魔術師の排除であるため、彼は対象の情報を取得するために未だ休止していた四つの感覚を復帰させた。
 ホモ=サピエンスは外部情報の七割を視覚から取得する、という常識は現在の彼には当てはまらない。視覚障害者の聴覚が常人よりも発達するのと同じように、彼の全身の感覚器官は鋭敏化していた。
「私の専門は『人間』。必然、このような異能は無用! ひゃは、認めよう、確然私は間違えていた! しかし間違いは正すのが必然! 過ちには修正! 失敗には再始! そうして道を進むのが、『人間』たる私の完然たる在り方! ひゃは、ひゃははははは!」
 対象は錯乱状態にある。彼はそれだけを認識した。
 魔術師の発言そのものには何ら感情を抱くことなく、彼は拳を構える。無表情にして無感情な相手に、魔術師は微かに首を傾げた。
「泰然――いや、脱然か? たかが数十秒でブッディズムにおける悟りの境地へと至るか! ひゃはは、やはり人間は素晴らしい! その性質こそが真理へと繋がるのだ! ――瞬間、錬金!」
 飛来するは鏃。秘めたる異能は黄金化。彼は前傾姿勢を取り、次いで開いた右手を前に突き出す。
 中遠距離では届かない。近距離でもまだ分が悪い。――故に、彼は鏃を止め、走り出す。
 勝率が最も上昇するのは対象の初撃の直後。幻想殺しにて黄金化を無効化し、接近距離での戦闘へと移行する。
「――な、馬鹿な!」
 彼は魔術師の驚愕に反応を示すこともせず、ただ拳を握る。筋肉の出力制限を解除し、拳撃の理想軌道を演算――終了。
 ――彼は学園都市の人間であり、それは脳の開発が行われていることと直結する。現在彼に能力が発現しないのは、幻想殺しの影響か、多重能力となるからか、単に無能力なだけか。彼と幻想殺しが共に在る限り、意味のない問いであるが――一つ、揺らがないことがある。
 脳開発による演算能力の向上。程度の差こそあれ、学園都市の学生ならば誰でも、この恩恵を得ている。『神様』を真似る為に、この学園都市は存在するのだから。
 ――だから、稀有な事でこそあれ、在り得ない事ではないのだ。
 肉体的には一般人でしかない彼の拳の一撃で、魔術師が沈むことは。
「――チッ!」
 魔術師は迎撃のために鎖を射出する。しかし、鏃の当たった先は右拳。ボロボロと崩れていく鏃に魔術師は再び驚愕する。
 それが迫り来るものである事すら忘れて、魔術師は自らの顔面に突き刺さるまで瞬間錬金をないものとして扱った彼の右拳を凝視していた。

706とある忘却の再認識:2008/07/22(火) 14:55:30 ID:xF7wJuSU
「――かはっ」
 上条当麻は血を吐いた。全身のあらゆる機能に掛かった過負荷のせいでただ息をすることさえ苦痛だった。
 足元には、変わらず金色の液体。その中に百円硬貨が浮かんでいるのを見て、上条は意味もなく笑い出したくなった。錬金術という異能の結果を打ち消すことすら、この右手にはできないから。
「――神様の奇跡すら打ち消せる? 面白い冗談だ、全く」
 魔術によって失った記憶は取り戻せない。仮に液化黄金に効力を発したところで、結果として現れるのはぐずぐずに溶け落ちた姫神だったモノでしかない。上条当麻の右手は、学園都市の判定通りの『無能力』としか言えなかった。
 上条はため息をついて座り込む。ただ、いずれやってくるであろうステイルを待ちながら。

 炎の魔術師は記憶を消され、禁書目録も確保された。理想とは言いがたい黄金錬成の使い手は、己が望みを達するために流儀を曲げて行動する。
 無能にして全能の破壊者と、全能にして無能の創造者。
 互いが互いを知らずとも、既に衝突する運命にある。
 外界に繋がらないビル――否、ビルの形に納められた異界の中で、『人間』アレイスター・クロウリーは嗤う。
 自らのプランの短縮を喜んで。

707Haeresis044:2008/07/22(火) 14:59:59 ID:xF7wJuSU
 打ち終わって気づいたこと。
 ……………短ッ!
 しかし既にそれはどうしようもなく修正の効かないことだったりしたのでした。
 そんなこんなで色々と愉快な展開になりつつある昨今、結末は既に決まっています。
 新規設定を取り込もうとして失敗したりして丸投げに至ったり、などということはありましたが、ほぼ全てをあきらめ、あと私にできることは如何に親の妨害を掻い潜るか、というその一点だったりします。
 果たして、本編の終了とこのSSの終了、どちらが先なのでしょうか。
 …………マジで笑えませんが。

708■■■■:2008/07/22(火) 22:35:39 ID:rgGYlcfc
■■が死んだ?(゜Д゜)

なんてことだ!!


Haeresis044!貴様この俺にこんなにも続きを期待させてどうするつもりだ!?






( ´ー`)bGJだw

709■■■■:2008/07/24(木) 14:49:45 ID:BXjr2ju2
■■...何というでも面白かったよwGJ

710■■■■:2008/07/26(土) 21:06:24 ID:gCyeXyQg
あぁ、姫神グッバイ……なんという事だ。

お疲れ様なのだー。

711■■■■:2008/07/27(日) 02:51:32 ID:T42WYhO.
ちょっと関係ない話で申し訳ないんだが、荒らしが書いたのを幻想殺しで潰すにはどうしたらいいんだっけ?

712■■■■:2008/07/27(日) 11:36:50 ID:Dnyo.k.s
何の話? ネタ? それとも掲示板運営的な真面目な意味で?
後者なら雑談スレ向けの話題だけど、掲示板管理者に連絡すれば良い

713poti:2008/07/27(日) 16:13:14 ID:HAzZ0Wew
せつないブラックデビル♪
今日もまた行くよ!!
ttp://ai.nisimuku.com/iikanji/

714Haeresis044:2008/07/29(火) 10:52:45 ID:BxislWx2
……最近、すごく時間が無いです。
ネタはあるのに。
4巻の時に御坂と入れ替わった発電能力者が劣化超電磁パンチしか打てなくなるとか。
4巻の時に超能力者が魔術師と入れ替わって身体が爆砕するとか。
設定上の矛盾がありそうで無理ですが。
でも土御門か神裂あたりのポジションと入れ替わったりしたらどうなるのやら。
誰かかいてくれないかな、と虫のいいことを。

715とある風紀の活動日誌:2008/07/29(火) 16:01:35 ID:1fVGcR3Q
どーも、いろいろと長い風紀の人です
ひとまとまり書き終えたので投下しようと思っているのですが、かまわないでしょうか
前回投下したさいに、一言断っておけという指摘をいただいたので、一応。
ちなみに量は前回の4割(たぶん……)ぐらいです

716■■■■:2008/07/29(火) 19:58:28 ID:da18/Hmg
過疎過ぎてリアクションが無いwww

遅くなったけど投下よろです〜

717■■■■:2008/07/29(火) 21:31:22 ID:stzhoQtY
おぉ、待ってますw

718■■■■:2008/07/30(水) 17:37:00 ID:0nYIDIoA
なんか最近よくなってきてるな

719wei:2008/07/30(水) 20:26:45 ID:tiqVqSqE
投下まってまス☆

720とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:41:22 ID:zq3jMmE2
前章>>450-521

第三章

  ▼

 夜はすべてをおなじ色に染めあげ、すべてを闇に変えてしまう。どんな物だって夜にな
れば一致団結して闇に寝返り、そうして、たった一人だけ取り残されたされた自分を隙間
なく取り囲む。
 今夜、すくなくとも私の半径数キロに、人の営みの象徴たる光は存在しない。生気のな
いビルの隙間には、破壊が通り過ぎた残滓のみが転がっている。
 風はなく、とても静かだ。
 耳にとどくのは、『跳ぶ』たびに三次元に割り込む、自分の体の風切り音だけ。
 完全下校時刻をすぎてもバカ騒ぎをやめない夜行性たちも、渋滞のありえない快適な道
路を走るドライバーもいない。
 代わりにそこにあるであろう、おびただしい数の負傷者。しかしそのために奔走すべき
救急車のサイレンすら聞こえない。

 まるで世界の機能までもが死に絶えてしまったかのように。

 八月三十一日、午後六時前。
 3か月前よりスキルアウトの巣窟と化している十九学区外縁にて、一人の能力者がスキ
ルアウト数人に対して暴行する事件を起こした。当能力者は風紀委員の資格を持ち第七学
区風紀機動隊の一員でもあるものの、これはその任務活動の内ではない。動機・意図、共
に不明。同時刻には未だ正体不明のテロリスト侵入によるコードレッド発令に伴い全風紀
委員へ召集命令がかかっていたが、これにも一度として応答していない。
 衛星映像および十九学区各所に仕掛けられた盗撮カメラによると、能力者は超絶した実
力差によりスキルアウトを圧倒し、場所をかえながら被害を拡大していく。これは個人の
暴力活動のレベルを完全に逸脱していた。これにより十九学区に住み着いていた非合法の
商売人や、武器を所有せず組織を組まない半スキルアウトは周囲の学区へ避行。しかし一
方のスキルアウト側は、対処らしい対処を行わないまま、本拠地クリスタルタウン――十九
学区中心に位置する大型ショッピングモールへ集結。その後、それに合わせたかのように
真正面から戦闘を臨んだ能力者と衝突する。
 200人弱の無能力武装集団。
 風紀機動隊所属の暴走能力者。
 結果は、後者の勝利に終わる。
 能力者はリーダーと思しき人物を行動不能にした後、戦意を失ったスキルアウトをクリ
スタルタウン内で執拗に攻撃し大半を鎮圧しつつ、業務用の豚肉や鳥肉牛肉を駐車場に積

721とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:41:50 ID:zq3jMmE2
み重ねるという奇妙な行動をとる。しかしその後駐車場にて突然強大な爆発を起こし、そ
のまま南西に向けて飛び立った。
 そして現在、とある廃ビル郡で動きを止めている。
 ストン――
 『ジャンプ』の無重力状態から重力下へ移行。
 これで何度目になるか、私は真っ暗なコンクリートに着地しつつ、ふたたび目的地の方
向を11次元的に演算分解した。
『あと、300メートルです』
 残り1キロになった時から、100メートル毎につたえられる初春の声。
『いまだ、先輩にうご――きはありません』
 言葉の途中で、残りはあと230メートル。
「目標、視認しましたわ」
 見えた。
 闇の濃淡で構成された夜の世界。
 その屋上こそが地面なのではないかと思われるほど密集した廃ビルたち。
『あと200メートル』
 縦横にはしる亀裂、そのなかでも、一際おおきな裂け目の奥。
 そこに不審火のようにぼんやりとたたずむ、赤い光。
『あと100メートル』
 夜の谷底。
 そびえ立つビルに挟まれた大型の交差点の中央で。
 その髪と眼球を赤くゆらめかせながら、とぼけたように。

「遅せかったなあ、白黒」

 黒山大助が、待ち構えていた。
  ▼

「……髪型変えたんですのね、黒山さん」
「あー、わかるかぁ?」彼は気楽そうに答える。「ビロンビロンに伸びきって鬱陶しかった
もんだからな、チカラで一度にバッサリ。2秒でさっぱりしたよ」
「先日お会いした時のあなたの頭髪の長さを知っている私としては、むしろ伸びているい
るように見受けられるのですけれど。色のほうもまた大胆に変わってますわね」
「おう。こりゃ夏休みデビューってヤツかね」彼はやはり、とぼけた調子をくずさない。

722とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:42:12 ID:zq3jMmE2
「このイメチェンにはみんなもびっくりだろうよ」
 ありふれた日常のなかでも大した意味をもたない会話。ましてやそれが、現在暴走能力
者として捕捉対称となっている風紀機動員(アンパイア)の同僚と、風紀機動員としての
命令のために対峙している自分という状況下ではなおさら空々しく響く。
 会話が消える。
 再び静まりかえる夜。本当に静かだ。ありえない静けさ。その原因である男は、相変わ
らず軽々しいようすで、しかし視線は一直線に私を貫いている。
 私もその赤く明るい目を見返しながら、こちらから沈黙を破る。
「初春から、連絡がありましたのよ。あなたがサボっていた任務中に」
 そこで知った名前。つい数時間前までは知らなかった名前。
 この死んだ夜の世界を作り出した彼の名前。
「人間爆弾――クレイモア。その者を討て。私に命令が届いたのですけれど、それってあな
たで間違いありませんのね?」
「ああ。悪かったな、個別能力名秘密にしてて――俺で間違いないよ」
 黒山大助はあくまで鷹揚に答えた。
「わたくし、今でもこの状況がよくわかっていませんの。安全ほど不確かなものがない非
日常的な状況において、情報の不足ほど不安なことはありませんわ。よろしければ、ご説
明願えませんこと?――特に、この機能の停止した十九学区と、数ある治安組織の中でも一
介のアンパイアにすぎない私が選ばれた理由、そして、“階級(グレード)”という言葉に
ついて」
 なかば愚痴に近い文句のつもりだった。
 しかし黒山大助は、少しばかり目を見開くと、「いいぞ」と、あっさり頷いた。
「初春のやつも腕をあげたなぁ。そこまで知ってるんなら、たぶん俺が教えてしまっても
いいな。じゃ、まず、俺のことから話すのがいいかねぇ」
 クイクイと指先を宙にさまよわせながら、彼は述べる。黒山大助。十六歳。誕生日は三
月三日、実はいちど留任してて今年度じゅうに十七歳になる。風紀委員(ジャッジメント)。
なおかつ風紀機動員(アンパイア)。つまりナイスガイ。五年も務めつづけてる超ベテラン。
「俺についてお前が知ってるのはだいたいそんなとこだろうが――」
「留年なんて初耳ですし、性悪と猫バカとウソブキが抜けてますわよ」
「……じゃ、それと一緒に、アーミィのセカンドウエポンって情報も追加しといてくれ」
「アーミィ……セカンドウェポン?」
 聞き慣れない語に疑問を示すと、彼は少しだけ堅い口調で説明をはじめた。
「学園都市には、闇の組織ってヤツがたくさんあるんだよ。情報の操作・隠蔽・駆除・改

723とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:42:27 ID:zq3jMmE2
竄、公にできないイベント要員から秘密裏に行われる武力活動、そして非合法かつ非人道
的な実験――」そこで彼はギシリと噛み締めた。「――とにかく、どうして秘密にしとけるの
かってぐらいにごまんとある、構造すら不明な秘密組織――その中の一つに、俺は組み込ま
れてたんだ。その一組織――っても二人しかいないけど――の呼び名が『アーミィ』。そのセ
カンダリィである俺の識別名が『クレイモア』。他の俗称には『キリングスタッカート』と
か『ジェノサイドレッド』とか――……うん?改めて考えてみると、メチャ痛くねぇかな
……」
 それは明らかに、平和的な方向に使われる言葉ではなかった。
「簡単に言えば、俺は人間じゃなくて兵器なんだよ――戦車とかアパッチとか、その隣に黒
山大助って人間兵器が並べられるんだ。正式にいえば、対群衆鎮圧用人型兵器クレイモア
ってとこだな」
 彼は抑揚なく続ける。
「《アーミィ》に与えられる、公にするとまずい仕事は文字通り。で、ここはそのためにお
膳立てされた戦場なんだ。百害あって一利なしのスキルアウトをここでまとめて駆除され
る事になっていた。大覇星祭も近いしな。そもそも十九学区の再開発ってのも、そのため
の餌。あいつらの頭をこちらで操って、一つの学区に閉じ込めておく。十九学区の再開発
も、街じゅうに仕掛けられた盗撮カメラも、電力の通っていたクリスタルタウンも、全部
スキルアウトを十九学区から漏れ出さないようにするために仕組まれたことだ。一つの場
所に集中させた社会的害悪をまとめて叩く。そのための主兵力が、『クレイモア』――つま
り俺ってわけだな。そしてもちろんこれは秘密結社の秘密任務。いくらスキルアウトと言
ってもなぜ救急車も警備員も出てこないのかって疑問の、だいたいは、それが理由だ」
 私はただ情報を冷静に処理しつつ、疑問を口にする。「じゃあ、どうしてそれが暴走なん
てことに――」
「暴走だったからだ」黒山はあっけなく断言した。「俺の精神、昨日から危険なことになっ
てたんだよ。それでいろいろ――ストレスの発散やら気分転換やらベクトル変換やら現実逃
避やらの防衛行為――自己防衛?をなすために、そのために最適な、ここで暴れた。仕事の
計画を無視して、だ。本当は明日からの予定だったんだよ。それをメチャクチャにした。
スキルアウトの半分以上は、十九学区から逃げ去っただろうな。……そこで、だ。――ここ
からは俺の推測だが、たぶん間違っちゃいない――そこで、組織のお偉いさんは考えたんだ
ろうな。どーせならこの状況を利用して、例の計画の“実験”をしよう、と」
 学園都市の実験至上な合理主義には感心する、と彼はあきれたように言う。
「おまえの疑問の二つめの答え――能力者を軍用化する試みがあるのは、《アーミィ》だけ
に限った話じゃねぇ。その軍事計画は、ずっと大規模に、水面下で進められてきた。“グレ

724とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:43:25 ID:zq3jMmE2
ード”ってのは、その中での戦力的価値をあらわす、評価単位のことだ」
「ちょっと待ちなさい」そこで気付いて、私は声をあげた。「軍事計画の中での評価単位?
私はそれをすべての風紀委員が記載された名簿で見ましたのよ。それじゃ――」
「ああ。風紀委員を軍用化する計画――『学徒出陣』。おまえが見たのは、その一部資料だ
ろうさ」
「そんな――」風紀委員の、軍用化?
「確かに、突飛だ。しかも学園都市自身が戦争でもしかけようってんじゃないかぎり、実
行されることはない、それだけ、わりと優先度の低いものでもある。――だが、ありえない
話じゃねーだろう?」
 それに、と彼はさとすように言う。
「考えてみろよ。どうして風紀機動隊なんてものがあるのか。モラトリアムを貪るぐらい
にしか能のない、ただのガキの集まりでしかない俺たち風紀委員は、警備員より実戦的な
戦力を持ってはいけないはずだろう?――少なくとも、建前の上では。能力を治安維持活動
に使いたいんだったら、警備員の中にそういう部隊を特設するのが筋ってもんだぜ」
 それなのになぜ、一級装備の警備員すら凌ぐとうたわれる武力集団が、風紀委員のなか
に存在するのか。
 言葉をなくす私を横目に、黒山大助は続ける。
「最後。どうしておまえただひとりがここに派遣されたのか。答えは、軍用能力集団の頂
点――その“最高級(グレード5)”をはっきりさせるためだ」
 これがさっき言った“実験”のことな、黒山は思い出したように言う。
「計画内では能力の強度段階(レベル)にちなんで――大雑把だけど――六つの階級、グレ
ードが構えられたんだな。でも、その最高級を決めるとき、二人までは絞られたんだけど、
もうこの最終決定がもめにもめたんだよ。二人ともでいいと思うんだけど、『この一人こそ
がふさわしい』ってことらしい。んで結局、今も曖昧なままだったんだ」
「……それが、『グレード4+』……」
「ああ、話が早いな、そのとおり。でも、そこに、想定外とはいえなかなか適した状況が
やってきたできた。候補の一人が戦場で、見境なしに暴れまわってるんだ。じゃあそこに
もう一人を放り込んで戦わせればいいじゃないか、と、そうなったんだろうな」
 常盤台中学在籍というブランドと、十一次元移動能力という希少価値、それに大能力(レ
ベル4)の強さを重ね備えたエリート能力者か。
 不穏な組織に身を置き、本物の戦闘を数多く経験してきた、正真正銘の人間兵器か。
「つまり俺たちは、ここで潰しあわなければならないということだ」
 黒山大助は、言い切った。
 さも、当然のように。

725とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:43:50 ID:zq3jMmE2


「そんな――」理解が及ばない。「ありえませんわ、そんな無茶苦茶な理由で――」
「あいにく、おまえは自らの意志で俺と交戦せざるをえない。理由ならいくらでもあるだ
ろう。まず、俺はざっと200人以上の人間に傷害を与えた犯罪者だ。計画は無視したし、
仮に計画内であっても正規の治安維持機関にバレたら普通にブタ箱行きだからな」
 彼の言葉に、第一七七支部で見た盗撮カメラの映像が思い起こされる。そうだ。私は止
めるために来たのだ。
 恐怖に塗り潰された悲鳴をあげるスキルアウト。
 情けの欠けらもなく人間を踏み躙る、見たこともないひび割れた顔をした彼。
 しかし、私は考えてみる。今の彼はとても落ち着いて見えた。髪と目が赤い以外は、すこし口調がおかしいだけのの黒山大助だ。もうあんなことをするとは思えない。それならば――
「私は、わざわざあなたと衝突しなくとも、あなたがおとなしく投降してくだされば、そ
れですむ話だと思うのですけれど」
 秘密の組織はあくまで秘密であらねばならない。さっきの彼の話からすると、黒幕はス
テージのお膳立てや裏の情報工作はできても、陽のあたる場所での手出しや違法行為はで
きないはずだ。
「分かっているでしょう?どうせ学園都市の治安維持機関の手からは逃げおおせることな
ど叶いませんわ。……あなたの罪がどれほどの重さになるのかは察しがつきませんけど
……いずれにせよ、風紀委員である私に妨害行為を働く前に――」
「ちょっと待ちな、白黒」
 冷静に説得をはかる私を遮った彼。あろうことか、その顔はニヤニヤと笑っていた。
「おまえは、この状況が俺の自由意志に反していると思っていると思っているのかもしれ
ないが、それは違うぜ――俺がここに突っ立って待っていたのは、おまえに身柄を確保して
もらうためじゃない――俺は、おまえを潰すために、ここにいるんだ」
 ニヤニヤ笑いが、鋭くなっていく。
「俺は学園都市の手に落ちるつもりはない。よく聞け、白黒。俺はこれより、学園都市か
ら離反する。そのためには白黒、一番厄介な追跡者――空間移動(テレポート)の力を持つ
おまえを、ここで潰しておく必要があるんだよ」
 それらの言葉を、私の耳はほとんど素通りさせていた。
「それは、どういう――」
「まだわかんねぇのか。つまりこういうことだ。俺は昨日から、とある問題に直面したこ
とによりとってもデンジャーな状態だった。その八つ当りのために十九学区で暴れた。そ

726とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:44:08 ID:zq3jMmE2
して頭がスッキリすると、とある解決方法を導きだすことができた。俺はそれを遂行する
ことに決めた。だがその解決法には、とても数多くの障害があった。中でも最も大きな障
害の一つが、おまえ。取り除くにはどうすればいいか。あの計画によってここに派遣され
てくる可能性が高いおまえをここで潰しておく。その後で邪魔するものは全て壊しながら
用事を済ませて、学園都市を脱出する。そういう筋だ。俺はそのために、計画も利用した
んだよ」
 それにしても、と、黒山大助は酷薄な笑みをうかべながら、
「おまえがこんなにバカ正直に来てくれるとはな――」
 そこで、いきなり背中に回した手に拳銃を構えて、
「――ホント、大助かりだよ」
 瞳と同じ赤色のレーザーポインターのむこうから届けられるのは、軽薄な声、だった。
「んな……」
 その時私は、裏切られた、と感じた。そして驚くほどの動揺が眉間のあたりを貫くのを
感じた。風紀機動員の同僚として幾度もの任務をともに乗り越えてきた彼が、私を失礼千
万な名前で呼ぶ彼が、面倒見がよくて妙に年下受けする彼が、今まで私が彼と認識してき
たアイデンティティが、粉より細かく、液体のように崩れ、流れ去って消えていく。
 気付く。私は、黒山大助のことを、信頼していたのだ。自分で思っていたよりも、ずっ
と強く。
 しかし今目の前にいるのは、黒山大助ではない。今私がここで仕留めなければ、この十
九学区にもたらしたものをもっと広域にバラ撒くつもりの、忌むべき、犯罪者。
「……つまり、あなたは」
 私は拳を握り、赤い髪と目を見据える。
「……今まで私が知り得てきたあなたではない……」
 太股から抜き出した金属矢を指の間に挟み、突き出された銃の射線に真っ向から交錯さ
せる。
「今、黒山大助とは、私の敵の名である、ということですのね……」
 それに対して、彼はやはりフラリと笑いながら、
「気付くの遅すぎんじゃねぇ?」
 言葉と同時に、銃声を炸裂させた。

  ▼

 憧れの人ができたのは、5年前のことだった。

727とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:44:23 ID:zq3jMmE2
 かつて私は8歳という幼さにありながら、能力という絶対の価値基準から、自分という
人間の限界と価値を知り尽くしていると思っていた。
 レベル5にはとてもなれない。けれどレベル4には手が届く。そんな程度。とはいえそ
れだけでも十分に研究の対象として重要視されるし、あの常盤台中学への入学を保障され
る。どころか、二百七十万の全学園都市民のなかでも千といない大能力者の一人――しかし
私の胸の内は空虚だった。同じだったのだ。私は『外』にいた時から社会的高所に飽きる
ほど立ち続けてきたのだった。
 学園都市という、まったく別の価値基準をもつ世界に身を投じることに感じていた狂お
しいほどの心地よい不安や向上心は、一瞬にして冷え固まった。
 あまり治安のよくない地区の裏路地をよく散歩するようになったのは、私なんかに楽々
と征服されてしまう世界に対する失望からだった。今にして思えば恥ずかしいかぎりだが、
つまり私はわかりやすくて手軽な『スリル』を求めていたわけである。世界を挑発してい
たのだ。そのうちにただ歩くだけでは飽き足らなくなり、通りかかる不良学生――スキルア
ウトという言葉はまだ生まれていなかった――をこちらから挑発しながらも先に手を出さ
せ、正当防衛で痛め付けるという愚かしい遊びを楽しんだりもした。
 そして、あっさりと足元をすくわれた。
 痛苦に支配される頭で、多数の不良学生たちを横向きの視界におさめながら、私はよう
やく後悔した。同時にそれがこっけいなほど無駄な感情であることも悟っていた。
 いまさら。もう遅い。それこそ、致命的に。
 事実、その通りになるはずだったのだろう。
 頭上を覆う天幕を引き裂いて絶妙なタイミングで現われた少年が、不良学生へ垂直なド
ロップキックを炸裂させていなければ。
 奇妙な破裂音があがるたびに壁と壁をバウンドする少年の体、ボーリングのピンのよう
に次々と蹴倒されていく不良学生。眼前に繰り広げられる圧倒的な光景に、まだ混乱から
醒めない私は言葉もなく目を奪われていた。
 暴力。この世で最も直截で有効な対人・対物干渉手段。その速さ、鮮やかさ、強大さ、
すべてが大能力者である私のそれをはるかに凌駕していた。自分が何かに劣っていると思
ったのは初めてだった。
 数秒のうちに全員を伸し終えたところで、彼は私にこう声をかけた。
「ところで最近うわさの“ほとんど犯罪!極悪鬼畜のスキルアウトハンター!”ってのはお
まえなんだろうけど、でもさっきは無様に文字通り足元すくわれて殺されかけてた所だか
ら俺の行動は危機一髪で悪漢から小娘を救ったジェントルマンってことで間違ってないよ
な?ちなみにハンカチと手はどっちを貸してほしい?」

728とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:44:39 ID:zq3jMmE2
 それが、私が人生で初めて憧れを抱いた人間とのファーストコンタクトだった。
 しかし、その憧れの念はさほどの時間をおかずに単なる敵愾心へと変わり果ててしまう。
 半年後、ジャッジメントとアンパイア両方の適性試験を最短で突破した私は、彼をいつ
かは蹴飛ばして土下座させて頭を踏み付け生まれてきたことを贖罪させなくてはいけない
人間と断じていた。その時にはもう、あの完璧な理想像であるお姉さまとの邂逅を果たし
ていたのだ。当時強能力者(レベル3)でありながら私をこてんぱんにしたお姉さまに、
私は心底惚れ込んだ。ヤツを私の憧れの人などというポジションに置いておく理由などな
かった。
 当然だ。人のことを白黒なんて無礼な名前で呼ぶ男など紳士の風上にも置けない。あん
な愛玩動物を人間より優先するほどの猫バカっぷり、3秒として我慢ならない。ボケたよ
うな調子で人の話を聞き流しておきながら、嘘や誇張を平気で連射する対人手段、人間失
格も甚だしい。
 それにあいつは私を助けてくれた時のことをすっかり忘れてしまっているらしかった。
あの時にちゃんと自己紹介したのに、私をまともな名前で呼んでくれた事は一度もないの
だ。それに加えてあのあしらい。これではもう、天上人の背中を手を組み合わせながら瞳
を輝かせてただ見上げ続ける後輩の態勢なんて――そんな事を考えたことは一度としてな
いが――いまさら、できるわけがない。
 だから、そう……憧れるわけには、いかないのだ。
 いくらあいつが任務の時には自らの身を顧みず救命に命をかけるような男だとしても
――年下には慕われ、年長には信頼され、機動隊のみんなにとって不可欠な存在だとは言っ
ても――私自身、彼にはいくつもの借りがあるとしても――憧れるわけには、いかなかった。
越えなければならなかった。勝たねばならなかった。レベルなら私の方が上だ。彼のレベ
ルは二つも下の異能力。しかしそれはあの路地裏の時から――私が足蹴にされたスキルアウ
トを彼は一蹴した時から同じこと。
 決闘であいつを倒して第七学区最強の風紀委員の名を手にするというのは、それらの煩
わしい事情をどうにかする、唯一の無矛盾な解決法だった。ただ相手の生体活動を破壊す
る事だけを目的とした戦闘行為。学校のシステムスキャンではなく、危機管理能力検定の
取得数でなく、風紀委員会の成績でも評価でもなく、己の拳(その他)のみが両者の優劣
を決めるのだ。
 彼にはずっと決闘を挑み続けていた。相手とまったく同じ土俵で、完膚なきまでに叩き
のめして打ち負かす。自らの優越を証明する。誰も上手になど立たせない。ずっとそうや
って生きてきた。だが肝心の対戦相手は気乗りしない様子だった。俺の肩書きがほしいな
らやる。タコにしたいのなら死なないかぎりはいくらでもサンドバッグになってやるから

729とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:44:57 ID:zq3jMmE2
それで許せ。それでは意味がなかったが、詰め寄れば詰め寄るだけ無駄だった。勘弁して
くれ、上は3つから末は3ヵ月の子供たちが腹を空かせて待っているんだ。おまえカルシ
ウム足りてるか?おまえにもミルクが必要か?俺は猫に忙しいんだよ。猫に生まれ変わっ
て出直しな。
 しかし今。
 無音の夜の廃ビル群の底で不審火のように立つ、200の人間を蹴散らしてきた彼は、
どういうわけかこれ以上ないほどにやる気らしい。その事実に、どうしようもなく腹の底
が熱くなる。
 学園都市の暗部――クレイモアの正体――グレードという単語の意味――私がここに召喚
された理由――ハ、だからどうした。裏切られた?そりゃいきなりあれだけカミングアウト
されたんだ、今までの人物像との違和感があふれ出すのも至極当然のことだろう。だがそ
んなのは些事にすぎない。ヤツの本性が人を傷つける事をいとわないものであった事など、
どうでもいい。
 いま重要な事は、たった一つだ。
 おまえは、あいつに、勝ちたくないのか。
 あの人間に、私を認めさせたくないのか。
 そんな問い、答えるまでもなかった。

  ▼

 廃ビルに溜まった夜の底の中へ三発の銃声がひろがり、遠ざかっていくのを、私は上空
40メートルから見下ろす。多くの状況においてまず間違いなく人間の死角へと避難でき
る、有効な退避行動。あらかじめ確保しておいた8つの移動候補ポイントのうちの一つへ、
引き金が引かれると同時に『跳んで』いたのだ。

730とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:45:13 ID:zq3jMmE2
 拳銃程度の火力の銃器など、私にとっては牽制にもならない。そんなものを持たなけれ
ばならない相手には負ける気がしない。
 しかし、黒山大助はその枠内に入りはしなかった。
 バス、という音をたてて、拳銃を構えた腕が跳ね上がり、そして再びの爆発音でピタリ
と静止。
 その銃口は、正確に私を指していた。
 ――銃声、銃声、銃声。
 視認領域からの離脱、その余裕のうちに、何らかのフェイントや牽制を入れてからの一
撃必殺、または即撃破。用意しておいた私の筋書きは、いとも簡単に狂わせられた。
 あわてて『ジャンプ』、重力のなごりすら11次元ベクトル分解された浮遊感を潜り抜け、
今度は黒山大助の後方十数メートルの地上へ避難する。
 最初の場所からすれば、飛び越えて後ろをとった形になるはずだった。しかし振り向い
たそこには、またしても惑うことなく銃口をビタリと合わせる黒山の腕。
 お見通しだ――加虐的高揚に歪む笑み。
 腹の底を、捩れるような焦燥が走った。どうして、私の『跳び』先が分かる?正直、私
は黒山大助を侮っていた。いくらクレイモアとは言えども、しょせんは強度(レベル)認
定に適わない異能力者(格下)だと。あいつが私の決闘を避けつづけているのがその証拠、
200人を相手にできる力を相手にしても、私なら止められる――
 冗談じゃない。
「くっ――!」
 演算の時間がない。一瞬で稼げたのは数メートルだけだった。とりあえずそこに放たれ
た弾丸は回避したが、しかしその精一杯の『ジャンプ』は、たった一つの爆発で無意味に
なる。休みなく『跳び』続けるのに精一杯で、指の間に握ったままの金属矢を『跳ばす』
余裕すらない。
 モグラ叩きのようにでたらめな出現と消失を繰り返す私を狙う黒山の腕は、一見銃撃の
反動に暴れ、腕力が足りなくて振り回されているように見える。しかしその実、赤い揺ら
めきとともに絶え間なく起こる爆発は明らかに運動の補助として働いており、その銃口を
狂いなく私の胸のあたりへ向けつづけている。
 大型交差点のど真ん中という立ち位置も計算ずくだったに違いない。これではビルの屋
上へでも逃げないかぎり、どこに『跳んで』も丸見えだ。小刻みで反対方向へ逃げてよう
としても、たかの知れた距離では照準をあわせる時間を省かせるだけ。ビルの屋上までは
40メートルはあり銃弾を避けながらでは無理、屋内への退避は『割り込み事故』の危険
が高い。
 黒山の言っていたことが思い出される。邪魔な私を排除したあと、彼は全てを踏み潰し
ながらどこかへ去ってしまう……。

731とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:45:29 ID:zq3jMmE2
 決断した、攻撃に出るしかない。相手のペースに乗せられるわけにはいかない。あと3
回銃撃を受けたら、その直後、黒山へ至近距離から金属矢を連射、あるいは本人を『ぶっ
跳ばす』。
 レーザーポインターの赤い光が夜の底を切り裂く。それが私の体に重なる直前、右方5
メートルへ『ジャンプ』。
 銃声。あと2回で、攻撃だ。3次元と11次元では空間のとらえ方がちがう。11次元
の向こう側の座標からの11次元ベクトルを、さらに11次元分解して演算することは不
可能――つまり『跳んだ』先の地点からの『ジャンプ』の計算を、一回目に『跳ぶ』前から
あらかじめすませておくという二段行動をとる事はできないのだ。カウントダウンでの心
の準備ぐらいしかできない。
 四半秒とかからず、黒山大助は爆破とともに銃口を振り、再び私をロックオンする。

 極狭の空間に閉じ込められた化学反応が、小指の先ほどの鉛に人殺しの破壊力を与える
音。
 間一髪まで粘った時間を使っての『ジャンプ』で、ビルを二等辺直角三角形に通り越し
たむこうの路にあらわれる。いくぶん長く、奇をてらった、初めての能動的な『ジャンプ』。
 赤い揺らめきが横顔をなめあげる黒山、それを私が認識してから、やつは私をとらえた。
粘った甲斐があった、それだけの、コンマ数秒だけの時間さえ稼げれば、それでよかった。
 黒山の腕が、爆発の速さでこちらを向く――
 その瞬間、計算を終えていた私は、彼の背中にいた。
 カウントダウン・ゼロ。
 指と指の間に挟まれていた合計6本の金属矢が、3次元の壁を越え、次々と黒山大助の
11次元座標上へと『ジャンプ』していく。私は原点たる自分に二段構えの計算を行うこ
とはできないが、その代わり、一度に複数の対象を演算することに長けている。計算に時
間のかかる相対距離さえ短くしてしまえば、あとは幾通りもの転移候補座標を並列処理し
つつ、状況に応じてその時その時のリアルタイムで最も効率的な座標へ攻撃をたたき込め
る。
「――、」
 黒山の歪んだ口の端が、焦燥の色をもった。威力と連射性能でいうなら機関銃と同等の
攻撃だ、つい先日その身で味わった『割り込み』の鋭さを、知らない彼ではなかった。
 ボボボボババババガガガガ、連続して音をあげる爆発。
 貫通力の低い弾種の連射を全身に被弾したような、普通の人間ならば逆に負傷するに間
違いない無茶苦茶な動きで金属矢を回避していく黒山。見るまでもなく分かりきっている
ように迷いなく、肩にあらわれるものをどつかれたように、脛に出現するものを蹴つまず
いたように、後頭部を殴られてお辞儀するように、そしてなんのモーションもない突発的
な回転、バック転、スライド移動。

732とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:45:54 ID:zq3jMmE2
 やはり、見切られている。6本の矢は、あえなく全て不発に終わる――そう、黒山は思っ
たかもしれない。そして、それがねらい目だった。
 6本目の矢を避けた先へ、11次元ではなく、3次元を自分の足で移動してきた私の手
が、黒山の肩に触れた。
 二段行動はとれないが、並列処理ならばお手の物。すでに私の頭の中には、確実に決定
打を放つ計算式が出来上がっている。
 やはり。途中で気付いたことに賭けてみたが、正解だった。
 速すぎる運動のせいで、黒山の目にはものが見えていないのだ。
 それなのに、さっきのモグラ叩きからして、なぜ“瞬間”移動を見切ることができるのか、
思考予測のみで行動を立てられるとでも言うのか、今はそれを訝しむことに意味はない。
考えるべきはただ一つ、どうすれば勝てるのか。だから金属矢が避けられることさえ計算
済み、計算のうちだった。
 私の目論みの通りに動いてしまったことを悟ったらしい黒山は、憮然とした顔をしてい
た。
 私はその表情だけを地表に残して真下のアスファルトにめり込ませるべく、用意してお
いた計算式を、手に触れている黒山の体に適応し、

 『ぶっ飛ば』せなかった。

「んな――ッ!?」
 いい加減わけがわからない、また、なぜ?計算は完璧だった。しかし、それは黒山の体
に染み込み11次元へ引き込むことなく、するりと感覚の網を擦り抜けて、どうして、
 目の前に銃口があった。
 黒山が憮然とした顔のまま、私のこめかみへ斜めに銃を押しつけていた。レーザーポイ
ンターの赤い光が眩しくて、今まで黒かった世界は今や真っ赤に染まっていて、それ以外
は目に入ってこなくて、
 そして私は、混乱にまみれた意識の消失する音を聞いた。
 撃鉄が落ちて、空っぽの薬室が叩かれる音だった。
 我にかえった私は、かろうじて保留されていた退避用の転移候補座標を使って20メー
トル後退する。
 一瞬の無重力のあとですこしよろめきつつ地面に着地、そこで思わずつぶやきを洩らし
た。
「なんていうか、あなた、もう、メチャクチャすぎですのよ……」

733とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:46:08 ID:zq3jMmE2
 不敵な台詞だと思っただろうか。苛立っているように聞こえただろうか。
 黒山は、ただのL字をした鉄塊となった拳銃から空の弾倉をつまらなそうに抜き取りな
がら、
「お前こそ。11次元を介してなら相対性理論を無視していいのかよ」
 あまりこの場にそぐわない疑問への声。余裕ぶっこいていやがる。それにしても、さっ
きまではギラギラとニヤついていたのに、弾が切れると急に興醒めしたかのようだった。
観察しながら、申し分のない距離を持つ7つの座標を並列処理して確保。
 今、状況は膠着している。あちらが攻撃してきても、時間を得た自分には余裕で避けら
れる距離。しかしこちらの攻撃も、どうせ避けられてしまうに違いない。
 とりあえずの可能な最善は、情報の獲得。
 と、まさにそのタイミングで、
「俺の体、とばせなかっただろ?理由、知りたいか?」
 むこうから言ってきた。これがもし『教えてほしいか?』ならば私は首を横に振っただろうが、沈黙をもってイエスと答える。
 弾倉をポケットにしまいながら真っ暗闇にブラブラとレーザーをゆらす黒山は、どちら
の返答でもかまわなかった様子で、
「簡単に言えば、経験不足だ。これは俺も最近ピンときたんだけどな。おまえの能力(チ
カラ)ってさ、座標の計算よりもむしろ感覚的に一番デリケートなのは、原点であるおま
え自身と対象物をいかに同化――“つなげ”させるか、ってとこなんじゃないのか?そのため
には、対象の物質の構成に慣れるまで何回でも練習を繰り返さなければいけない。単純で
かたい物質ほどとばしやすくて、逆に液体なんかは苦手。気体にいたっては、無理。だか
ら『離れた場所にいる相手を、自分の体に触れている空気ごととばす』なんてことはでき
ない。おまえの不自然な所持品とか見てりゃ分かるよ、たとえばその無骨な得物とかな。
単体の純金属でできた特注の矢は、とばしやすいだろう?いつも戦闘中は電源を切らなけ
りゃならないあのペラペラ携帯だって、回路は規則正しい幾何学模様か、あるいは回路な
んてこまごまとしたものを使わない画期的なシロモノだったりするはずだ。アンパイアの
任務中もいつも制服しか着ていないのは、それがあの『学び舎の園』の特別製だから。年
に似合わない下着にも、きっと深いわけがあるんだろう。大変だな、もっと可愛いヤツを
楽しみたいお年ごろだろうに」
「馬鹿にしないでいただきたいですの。下着はちゃんと私の美的センスにのっとったもの
ですわ」
 からかいめいた台詞への切り返しを返答にしなければ、動揺を隠しきれなかったかもし
れない。

734とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:46:22 ID:zq3jMmE2
 その通りだった。11次元移動系の能力の開発で一番最初にぶつかる壁は、転移の原点
をいかに対象物と接続させるか、という問題なのだ。これはとにかく数をこなすしか解決
の道はない。対象を頭の中に寸分違わない立体映像としてスケッチし、その線一つ一つを
紡ぎあげた計算式で釣り上げ、自分という移動基点を介して目標地点へ11次元的に接続
する。それが11次元を移動する基本的なメカニズムだ。
 原点である私自身を移動させるのは造作ないのだが、それだけではとんでもないことに
なってしまう。だから一番練習したのは衣類で、2番目は人体だ。成人男性を安定して『跳
ばせる』ようになったのは、約一年前。
 どうして、おなじ系統の能力者でもない黒山がそんなことを知っているのか。移動の際、
実は自分の体以外は全て『ぶっ跳ば』さなければならないという都合上、いくら所持品に
工夫からのヒントがあるとはいえ。だがその疑問も今は無意味だ。
 今の私の『ぶっ跳ばし』は100パーセントと言ってよい成功率のはず、それなのに、
なぜ失敗したのか。
 人間の体を『ぶっ飛ばす』のに必要な情報程度なら、服の上からでも判断できる。体の
輪郭から骨格、筋肉、体重。肌の色つやから体温、血中成分濃度。実物の約9割ほどの値
を求めることができれば、あとは組み立てた計算式が11次元へ引き込んでくれる。初春
が言った黒山の詳細な身体情報は骨と筋肉の密度においてかなり平均を逸脱したものだっ
たが、アンパイアとしての彼を知っている私には予想外ではなかった。その程度ならば簡
単に修正して、戦闘にも支障を与えることのないはずだったのだ。
 さっき黒山の言った言葉。『経験不足』。
「ということは、あなた、バイオインプラントでも施して、」
「いや、違う」
 もっと、違う。頭をつんつんと指差して、
「ここにあるの、わかるか?」
 そう言う黒山は、なぜか嬉しそう――いや、誇らしそうに、見えた。
 目をひそめて、縮れたような癖毛の黒髪を観察する。能力による爆発で散髪したという、
しかし以前よりも若干伸びているようにしか見えない頭。ワックスも使っていないのに自
然とそれらしい髪型になるのだという癖髪。だが、特にどうということは――
 側頭部の髪の一束が、とても不自然に、ピクリと動いた。
 風ではなかった。首やらを動かしてそれらしく見せているわけでもない。小動物が潜り
込んで身じろぎしたような、明らかに肉体を感じさせる動きだった。
 もういちど、動いた。
 ピンクに近い、血色のいい肌色が、黒い髪――いや、黒い毛からのぞいていた。
 それは、確かに、
「――耳!?」
 猫の耳、だった。

735とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:46:42 ID:zq3jMmE2
「驚いたか?すごいだろう?まだ他にもあるぞ、肋骨が6本しかないかわりに鎧板みたい
になってたり、動脈だけじゃなくて静脈にも筋肉がまきついてたり、各関節に何種類か新
しい筋肉がくっついてたり」
 彼は、本当に嬉しそうに、誇らしそうに、
「つまり俺の身体は、おまえがとばした経験の無い構造をしてるんだよ」
 ……呆れるしかなかった。
「そもそもあなた、人間じゃなかったんですのね、これは私ともあろうものが、まんまと
想像の範疇を越えさせてしまったものですわ。そういえば数年前、人間の遺伝子を非合法
なレベルまでいじくり回したとかでガサ入れられた研究所がありましたけれど、ははあ、
まさかその実験体があなただったとは、よく今まで拒絶反応に耐えて生きてきましたわね
……」
「いくら現実逃避したいからといっても、勝手に人を悲劇の主人公化しちゃうのはやめよ
う。僕はそういうのよくないと思う」
 咎めるように空の拳銃を向けてくる黒山。
 その部品の一つ一つを爆散させ、銃そのものを無数の針のような弾丸となして浴びせか
けるという暴挙に出たとき、私は40メートル上空のビルの屋上にいた。
 いくつものガラスが破片となって舞い落ちる音が、屋上を素通りして夜の空へと去って
いく。ビルが揺れているようにさえ聞こえる残響が、ビル街の谷を満たして消える。
 もう語る言葉も無い。なんだ、あの耳は?あれでは計算式を『浸透』させることなど不
可能だった。それに目に見えない身体のそこらじゅうにも、私が『ぶっ跳ば』した経験の
ない構造があるらしい。どうしようもない、側頭部にもう一対聴覚器官のある人間の解体
新書など、どこにあるというのだ。
 一つ確かなのは、黒山をコンクリートの中へでも『ぶっ跳ば』しておとなしくさせる、
という(望み得るかぎりでは)穏便な手段をとることができなくなった、という事実だ。
あんな、私の構造把握能力の“範囲外”をゆくブツをくっつけられていたのでは、無理矢理
通常の人間として『ぶっ跳ば』そうとしても無理だ。11次元的概念を通過させる邪魔に
なってしまう。
 それにさっき――銃を爆破して飛び道具にするというとんでもない行動――の爆発。鉄の
塊を粉々にできるほどの威力を生み出せるとなれば、コンクリート漬けにした程度では拘
束の意味はないかもしれない。ヤツの爆発には指向性爆破という非常識極まりない特性が
あるのだ。……くそ、そんな威力が出せるなんて、知らなかった。ヤツにとっては、アン
パイアの仕事など片手間にでもこなせるものだったらしい――
 ビルが揺れるような断続的な音が響く。やめだ、これ以上の思考は無意味。態勢の立て
直し、休憩時間としても長すぎた。実際には数秒しか経っていなかっただろうが、それで
も、あいつ相手に油断は命取りだ。即時決定、動き出せねばならない。
 これよりの戦闘手段は金属矢や周囲の物体での飛び道具を直接『割り込ま』せるという
通常の一級攻撃方。状況によっては自分の身体そのものを標的の肉体に『割り込み』させ
る、という禁じ手の使用も止むを得ない。

736とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:47:00 ID:zq3jMmE2
 断続的な音。頭のなかで心得ながら、屋上の端まで移動しようとする。下の黒山を観察
しなければ。脳内の活動視野を読み取れるのでもないかぎり『跳び』先が分けるなどあり
えないはずだが、さっきのこともある、慎重に、覗いて、

 断続的な音。

 数年知り合ってきた人間が見せる、さまざまな“裏切り”、その衝撃に一時的な機能不全
を引き起こしていた私の頭がやっと危険信号を認識したとき、すでにヤツはすぐ側まで迫
っていた。
 断続的な爆発音。それは真下から響いていた。
 それに伴うビルの揺れ、その震源は着実と接近――上昇してきていた。
 ツインテールを宙に残す勢いで、夜の空を振り仰ぐ。

 真っ赤な、人の形をしたエネルギーの塊が、夜の空から見下ろしていた。

 目を奪われる時間は許されなかった。
 ほとんど動物的な本能によって跳び避けたところへ、黒山らしき物体が落雷の疾さで急
降下、突き刺さる。
 その間に、さらに隣のビルへと逃げ延びている私の慌てようが愉快なのか、赤い光体は
肩を揺らしながら、
「話は最後まで聞こうぜ、テレポーテーター。せっかくアドバイスしてやろうとしてんだ
からよお」
 弾切れしたときの消沈した調子からもとに戻って、学園都市を敵に回すと豪語した時の
高慢な口調。だがそんな姿で語り掛けられても応答のしかたがわからない。
 赫赫(カッカク)。明るく激しく輝く様子。その言葉はこの物体のためにあった。屋上の
隅々までが赤く染めあげられている。夜の黒が赤に塗り替えられている。今にもドロリと
溶けだしそうな鉄のように透き通った、強烈な赤色。
 爆発系の能力者が発生する起爆源、『焦点』。黒山はその現象を体表にしか現せられない
という極めて稀異な能力者だが、その見た目は不穏に揺らめく不審火のようなものであり、
その範囲も、一度に展開できるのは両肘と両膝に相当する面積程度のものであったはずだ
った。
 しかし、太陽が人間の形をしたようなこの姿はなんなのだ。

737とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:47:15 ID:zq3jMmE2
「よーし、さっきの続きだ。俺をとばせない理由は、俺の身体がおまえの把握できない構
造をしているから、というのは理解したな?じゃ、次の疑問。どうして、文字どおりの“瞬
間”移動であるはずのおまえの攻撃を、俺は予測・回避することができるのか――」
 危険だ、フェンスと10メートルほどの谷間をはさんでいながらも、私は計算式を追加
して退路を増やし、じりじりと後退る。あの疾さ、数秒でビルの壁を駆け登るのはまだい
い、爆圧で体重を生み出したのだろう、それならまだ平常だ、見たこともある、しかしそ
のあとの急降下、あれは危険だ。目が追い付かなかった。脳神経系を学園都市でも最高の
テクノロジーで強化されている大能力者の動体視力と反射神経を越えている。連射される
銃弾の方がまだ可愛げがあった。
「うん?俺のこの輝きっぷりが気になるか?いや、俺もさっきできるようになったばっか
りなんだけどな、まあそれはいい。ちゃんと聞いてるか?どうして行動が読まれるかだぞ?
有り難いアドバイスだぜ?まあ、まどろっこしかったならすまんな、単刀直入に言うか、」
 するといきなり、黒山は輝きを強めた。爆発の予兆。
 爆発したのは、黒山ではなくフェンスの方だった。
 一瞬、私は自身を光粒子に変化させる光学系能力者を思った。まるでレーザーだった。
目にしみる赤光の直線な尾を引く黒山は合成樹脂製のフェンスを一瞬で食い破ると、自分
の巻き起こした衝撃波より速く私の目の前にいた。
 迷わず、退避
 しようとした時、黒山の言葉が聞こえた。
「目で、わかるんだよ」
 退避先に向けていた視線が、ギクリと振り返る。
 一つの原色で輪郭以外が塗り潰された、笑う赤鬼――
 私はその間になんとか発動された計算式によって『跳んで』いた。再びビルの谷の底。
 上から、大気の引き裂かれる音がした。
『なぜ俺はおまえの行き先がわかるのか』
『目でわかるんだよ』
 上を見た。
 真っ赤に灼熱した小型の隕石が、壁一面のガラスにひび割れの波を作りながら翔んでき
ていた。
 たまらずに逃げ出す。斜めに突っ込んできた黒山の方向へ20メートルを『ジャンプ』、
墜落の勢いに引っ張られ、地面を叩きながら遠ざかる赤い光にむかって矢を一本『ぶっ跳
ばす』。
 しかしその時、すでに黒山の目はこちらをむいていた。動体視力も効く程度に減速して
いたらしい。かるがるとかわされる。
 私はそれ以上の連射をあきらめ、退避――しようとして、すでに詰められてしまったのを
悟った。

738とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:47:31 ID:zq3jMmE2
 たしかにあいつは目の動きによって予測できるらしい。しかし、それが判明したからと
いって根本的な問題は解決されない。私が現在デフォルトで使っている計算様式において、
視線の方向は11次元を計算処理するうえでは変更できない確定要素であり、つまり私は
その場所へ目を向けることなく移動することができないのである。視線を用いないタイプ
の計算式の心得もないではないが、とても実戦で使える練度ではない。
 もう、逃げも隠れもできないのだ。
 覚悟を決めた。金属矢の残り本数を確認する。右腿に5、左腿に7。

 ――認めさせてやる。私の力を。
 両手手の指の間に4本ずつをはさみ取り、残りの3本も手の平に握って計算式を展開す
る。
 自分と黒山とのあいだに生まれる、数十の『ジャンプ』候補。人知を越えたスピードの
黒山を、この網の目に引っ掛けられるかどうか、包みこめられるかどうか。すべての勝負
は数秒にかかっていた。
 まだ地面を後向きに滑り続けていた黒山が、身をかがめる。攻撃態勢に入る。
 激増する光量。
 『焦点』が告げる最終警告。
 その時、十九学区の一角に存在するビル街は、ありったけのクラスター爆弾と全方位コ
メットレーザーの蹂躙をうけた。
 空間という空間がつぎつぎと爆砕され、ありとあらゆる建造物がはじけとんだ。赤色の
光の柱が何本何十本何百本と明滅しては、地面を、壁面を、縦横無尽に串刺しにしていっ
た。地の底からゆさぶられる廃ビル街。それらすべての現象が、一人の生命体が破天荒な
軌道で通り過ぎたあとにできた残響にすぎないということを理解するのは難しかった。
 風の速さで迫る、破壊の津波たる赤い光柱の乱立。それが私に押し寄せるまでの数秒の
あいだに、すべてが終わった。
 手の中に残っていた金属矢の最後の一本が地面に落ちる。
 カラン、と転がる乾いた音。

 私の頭蓋骨は、黒山の右手に後ろから鷲掴まれていた。

739とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:47:46 ID:zq3jMmE2
  ▼

 手のひらから生み出された爆発によって紙屑のように圧縮する頭部、へし折られる頸椎。
 指の背に爆発させた圧力によって掴み潰され、指肢と骨の白い破片の侵入をうける脳髄。
 恐怖の入り込む隙間もなく、容易に想像できた。今、自分の生命は、文字通り黒山の手
の中にあるのだ。
 短い、肺まで届かない呼吸が連続する。体じゅうの皮膚が、冷たい汗にうすく包まれる。
 だが頭ではもうほとんど理解していた。
 黒山には、私に負傷させるつもりなど、最初から、全く、微塵もなかったのだと。
 廃ビルの街は再び夜の底に沈み、静まりかえっている。
「正直、」背中から、心底うんざりした声が届けられる。「こんなに長く“戦闘”を続けさせ
られたのは、おまえが初めてだよ。おとなしく俺の弾に撃たれていればいいものを、ちょ
こまかと動きまわりやがって」
 うんざりしたような、あきらめきったような、苦々しく渋るような、渋々ともったいぶ
るような、そんな声。いつもの黒山だった。
 まだ頭を固定された状態でいるために、私は背中を向けたままで答える。
「心外ですわね。むしろ貴重な経験をお積みさせてあげたことに感謝してほしいくらいで
すわ。大方、30秒間以上一人の人間と交戦し続けたことなんて一度もないんじゃありま
せんの?」
「ふん。余計な心配してもらう必要はねぇ。今までこれで十分間にあってきてるよ。そん
な経験値、弾を使いきってしまった損害を差し引けば大幅マイナスだ」
「あの状況であんな状態のあなたの意図を察しろというのが無茶ですわ。私に透視能力を
期待してもらっても困りますの。本当に撃ち殺されるかと思いましたわよ」
「失敬な。俺はいつだって のっぺりと生温かなハートを絶やさない男だぞ」
 その言葉に、私は打ちのめされる。
 全くの一人相撲だった。本気なのは私だけだったのだ。そして、最後まで傷つけないこ
とを考えていた手抜きの黒山に、あらゆる意味で完全に敗北した。
 ほそく、震える吐息を、できるだけ細く吐き出して、言葉をしぼりだす。
「……やはり、あの弾は麻酔弾だったんですのね……」
 背後の黒山は口を閉ざす。
「……ここまできても、こんな状況ですらも、あなたは手を抜いていたんですのね……」

740とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:48:07 ID:zq3jMmE2
「あー……うーん……」煮え切らない声に乗せて、頭を掴んでいる手がゆるむ。
 私はそれを咎めるように、黒山へ頭を押しつける。するとそれに比例するようにして、
自分の体から力が抜けていってしまう。思えば、この半日は休みなしで働き通しだ。
 このまま彼の手に体重をまかせてしまいたい。普段では考えられもしない無防備な願望
の浮かんだ自分に、呆然とした驚きを覚える。だが今なら、彼は何も言わずに受けとめて
くれそうな気がした。頭を掴まれて、ぶら下げられて、吊り下げられたままで居させてく
れそうな気がした。
 人を殴るため、人に暴力を与えるために変形し、適化し、特化した、何百という人間を
殴ってもヒビ一つ入らない、もはや凶器の存在としての腕。その甲殻類めいた感触を受け
る頭部に、しかし私は、まるで居間で眠りに落ちかけている子供を許す親のそれに近いも
のを感じる。
 実際、ここで私がなにかの理由で――疲労でも、緊張から解放された反動でもなんでもい
い――意識を失い、倒れ伏してしまったなら、彼はちゃんと安全な場所へ運んで寝かせてく
れるだろう。右前腕と右肩、そして脇腹に負った負傷も気にせずに。
 固定された視界のすみで今もポツポツと震えながら広がっていく血溜りの源泉となって
いるのは、彼の体から生えている金属矢だ。
 無我夢中で握った手汗とともに『ぶっ跳ば』された単体元素の無骨な金属の凶器は、今
や真っ赤な流血にその身を潤している。

 あの最後の正面衝突のとき、私はついに黒山の戦闘方法を見抜いた。幅30メートルの
反復上下左右跳びでUFOとUMAの境界線を飛び交い、一発、二発と直角に私の攻撃を
かわしながらも一定の速度で接近する運動を見て、気付いたのだ。あの不規則は、膨大な
経験から導きだされた規則によって完璧に計算し尽くされたものなのだと。
 彼は、戦闘の一切を、全てが統べて、予測していたのだ。
 戦闘の合間合間に生まれる数秒のインターバルの中で標的の目的を完全に見抜き、行動
を把握し、膨大な戦闘経験に基づいて次の予測行動と自分の行動計画を一瞬で立ち上げる。
あとはそれに従って、自らの能力が成し得るかぎりのスピードをもってして破壊を実行す
るのだ。たしかに彼は視線から私の『ジャンプ』先を予測することはできるのかもしれな
い。加えていくらかはリアルタイムでの修正もあるかもしれないが、それはあくまでも補
助、補強にすぎないのだろう。

741とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:48:20 ID:zq3jMmE2
 人間の反射神経が追い付いていけないのは当然だ。黒山本人は、反射行動というものは
ほとんどとっていなかったのだから。コンピューターでの出題にワープロで回答する形式
のテストを考えればいい。普通ならばいちいち問題を読解し、回答文章を構成して出力を
しなければならない。しかし彼は、最初の問題がでた時点でつぎに出てくる問題の方向が
分かっている。二つめの問題がでた時点では、プログラムが組み合わせる数百通りの順列
のなかから、すでに数十先の問題内容までが把握できる。なぜなら彼はそのテストをもう
何度もクリアしたことがあるし、問題の順番を決めるプログラムの仕組みを知っているか
らだ。そして彼にとっては解答の意味する言葉すらも特定の意味を持たず、出力されるべ
きただの情報の連なりにしかすぎない。自分の肉体というキーボードを相手に、ディスプ
レイを顧みることもなく、ひとえに速さだけを考えて一連のキーをぶっ叩く。そんな人間
に、まともな方法でかなう者はいない。
 現に彼は言った、こんなに長い間の戦闘は経験がない、と。それはそうだろう。力のか
なわない敵にはそもそも挑戦するという愚を犯さないし、たとえ圧倒的複数の標的が相手
でも、数十秒の戦闘シミュレートさえ立ち上げられれば、その間に全域を沈黙させ終えて
いるに違いないのだ。
 驚くべき――いや、諦観すべきはその演算のパワーとスピード、判断材料(データ)とな
る戦闘情報の収集力、それにそれらすべての基盤となる戦闘経験の膨大さだった。
 そして絶望すべきは、その力をもってして彼の起こした行動だった。
 彼の戦闘方法を見抜いた私は次に放った必殺狙いの十発のうち三回を命中させた。 一方
の彼は怯むことなく私に接近して背後をとり、決定的な王手を突き付けただけで私を武装
解除させたのだ。
 私が見破ることすら、計算のうちだったのだろうか。負傷をかえりみず私を無傷のまま
打ち負かそうという意志こそが、結果的に私を無傷で打ち負かすことすら、計算のうちだ
ったのだろうか。
 いずれにせよ確かなのは、私は最後まで黒山の思い通りに負け切り、そして一切の傷を
負わなかったということだ。


 いつのまにか、黒山の手は“掴んでいる”のではなく“置いている”状態になっていた。そ
して明らかに、私の頭を撫でていた。慰めていた。
 平常であれば最高の侮辱と受けとる行為だったが、私が思ったのは『最後に人にこんな
ふうにされたのはいつだっただろう』というようなことだけだった。
 そうしていた時間は、長いと言うなら長かったし、短いと言えば短かった。
 沈黙は、背中から破られた。

742とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:48:52 ID:zq3jMmE2
「なあ、おまえさ、」どこか、ふっきれた感じのする声だった。
「強くなればなにかすごいことができるとか、強ささえあればなんだって簡単に成し遂げ
られるとか思ったことはないか?思ってたりしないか?」
 我に返る。全く黒山大助らしくない台詞だったのだ。気付くべきだったのだが、さっき
の戦闘のときの偽悪的な立ち回りのような、典型的でありきたりな口調や、わかりきった
綺麗事を偉そうに説教するなんてまねは、黒山にとってはほとんど嫌悪の対象だった。一
度など、任務中に殴り倒したスキルアウトがもう悪いことはしないと嘘には見えない様子
で言ったのを、ありきたりでムカつくと言って締めあげ、もういちど竹林で修業して出直
してこいとわけのわからないことを叫んだことがあるほどだ。
 その彼が、どうやら一家言うとうとしている。
 ようやく、思い出す。
 ようやく、思いはじめる。
『ちょっとデンジャーな状態だった』
 彼ここで暴れていた、というそもそもの原因はなんなのか。
『俺は、学園都市から離反する』
 そして彼は、何のためにそんな行為を働こうとしているのか。
 どうやら彼にとってはかなり重大な話らしい、言葉を選ぶ。
 ――とはいえ、短時間で答えの出るような問いではなかった。
「……あいにく、明確な返答は持ち合わせておりませんわ」
「そうか。――まぁ、そうか」
 そこで、自分を自覚したようだった。
 少し力加減をかえた調子で、
「なあ、ちょっとだけ俺の話聞いてろよ」
 そこから彼は一気に言葉を続けた。まるで、一つの言葉も言い残すまいとしているよう
だった。
「強さってのはな、目的じゃないぞ、あくまで手段なんだ。そのことを覚えていろよ――
って言いたかったんだが、まあ、大して重要なことじゃぁない。大事なのは具象だな。そ
ういうわけで、さっきのおまえとの戦闘からのアドバイスだ。とりあえずはおまえ、視線
を媒介にしない計算式を、予備用程度でもいい、習得しろ。次はとばしの原点だな、おま
え、手に触れないとうまくとばせないだろ?靴や服ならイッチョマエにとばせてるんだ、
全身どこからでも自在にとばせるようになれ。少なくともモモのホルダーからは直接確実
に、手と同等になるまでだ。三つめに、おまえの戦闘スタイルはがむしゃらすぎる。せっ
かく生身で神出鬼没ができるんだ、一撃必殺なんて狙わないでいい、もっとヒットアンド
アウェイを心がけろ。体が3次元に割り込む際の風切り音もどうにかした方がいいな。耳
で分かるヤツなんかにとっては、視線以上に恰好の攻略方になるぞ。“学び舎”に請求しと
けよ、フクロウの毛皮で服を作れって。あとはこんぐらいの運動は息ひとつ乱さないぐら
いに基礎体力をしこたまつけとけ、って言いたいとこけど――」
 まあ、いいか。
 ポン、と置きなおされる手。
 次に続く言葉を、私は信じられない想いで聞いた。

743とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:49:09 ID:zq3jMmE2
「馬鹿強くなったなぁ。シライ、クロコ。ピーピー泣き喚いてた頃とはえらい違いじゃな
いか――」
 そして、つけ加えられた言葉。

「これなら、安心して第七学区を預けられるな」

 とっさに、私は振り返ろうとした。察知したからだ。
 黒山は、今そうして私を止まらせなければ、すぐに消えてしまっていた。
 黒山の硬い指の感触が食い込んでくる。力を込められた手の触れる頭の中を、たった今
与えられた言葉がかけめぐっている。馬鹿強くなったな、シライクロコ。強くなったな、
白井黒子。
 震える。――強くなったな。
 震えてくる――白井黒子。フルネーム。
 震えが沸き上がる。
――これなら安心。あとはよろしく頼んだぞ
「どうしてっ――!」
 あんな台詞を吐いたのはわざとに決まっていた。私を動揺させた隙に逃げ出そうとして
いたのだ、確実に。
 しかし、私は自分でも恥ずかしくなるような声を出すことしかできない。
「なんでッ!何のためにそこまでするんですの!正気じゃありませんわ!どんな目的のた
めに、そんなッ、馬鹿げてっ!」
 私は何を言っているのだろう。がむしゃらに黒山の手を振りほどこうとしている自分。
何をそんなに焦っているのだろう。
 なにも言い返してこない黒山が、なぜこんなにも、泣きそうなほど腹立たしいのだろう。
「今ならまだ間に合いますのよ!もう定期連絡の時間ですの!あと20秒で初春に連絡を
入れないと、初春はウスハ先輩にあなたのことを知らせるんですのよ!学園都市を敵に回
して、無事でいられるはずが」
「無事で済ますつもりなんて、最初からない」
 ブシュッ――と音がして、血にまみれた金属矢が地面に転がった。
 私は金縛りにあったように停止する。
「もちろん、死ぬつもりもないさ――」安心させようとする声で、黒山。「加えて、俺がと
るべき最善の中には、殺人は含まれてはいない。安心しろ。ここでおまえが俺を取り逃が
したとして、おまえが白黒な行事に参加する羽目になるようなことは絶対に起こらない。
約束する」

744とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:49:22 ID:zq3jMmE2
 赤く色づけられた金属矢がコロコロと転がっていく。黒山の体内にはまだあと2本残っ
ているはずだった。金属矢をのぞいた黒山の体だけを、頭に触れる手から『ぶっ跳ばし』
てみようとするが、やはり計算式が適応されない。ため息をついてあきらめた。
「……無理ですわよ」私は小さく答えた。「あんなアドバイス、もらうだけなら簡単ですわ
よ。でも、そう簡単に実行できるはずないじゃありませんの」
「それなら、だいじょうぶだろう」安堵した様子で、黒山は、「目的地さえ知ってしまえば、
おまえは、速いさ」
 そして彼は、私から手を放した。
 彼の手は、私から離れていった。
 私は、動かない。振り向かないように努力していた。しばらく掴まれていたせいで、や
けに頭が涼しい。風が抜けていく。そんなことに意識を向ける。
「ち、ちょっと――」しかし、やはりこれだけは聞かずにはいられなかった。「まだ、私の
話は終わっていませんわよ」
「なんだ、第七学区最強の風紀委員さん」黒山は、答えるつもりで応える。
 私は背後に聞く。
「だから――」すこし気恥ずかしさを覚えた。ごまかすために一気に言う。「あなたがこん
なことをする理由」
 すこしの間、いつにもまして渋るように、
「ちょっと一緒に里帰りしてもらいたいヤツがいて、な」
 その瞬間、私はついに振り返っていた。が、すでに黒山は飛び去った後だった。誰もい
ない空間を振り返る髪が、拡散する爆風になぶられる。
 廃ビル街を、無数の爆発音がコダマしていた。私の手は自然に携帯の電源を入れていた
が、これではもう、音声解析をしても黒山の行方の特定は不可能だろう。
 私はべたりとその場に座り込み、そのまま爆発の残響の漂う夜の街に身を浸した。

 思う。その身に赤い光をみなぎらせ、あらんかぎりの力で跳躍を繰り返しているであろ
う黒山大助を思う。
『ちょっと一緒に里帰りをしてほしいヤツがいて、な』
 思わず、笑ってしまいたくなる。
 今、彼は生まれてはじめての感情の中にいるのだろう。
 その人のためならば、何でもできる。他はどうでもいい。世界も、他人も、自分さえも。
命すら惜しくはない、むしろ捧げたい、投げ出したい。私は詳細に箇条書きできる。なぜ
ならその感情は私も体験しているからだ。

745とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:49:38 ID:zq3jMmE2
 笑える。最後の最後に口を開いた黒山の、それが世の中に溢れるほどありふれた、しか
し微笑ましいほどに純粋な理由だったとは。
 最初は、そうだ、留年生だ。黒山は留年していた。本当にいるんだ、留年する人なんて。
次はクレイモア、アーミィ、セカンドウエポン。学徒出陣計画のグレードに、学園都市離
反宣言。そして猫の耳を持つ、『ぶっとばし』不可能な肉体構造。異常な輝きを放つ焦点。
さらには行動の全てを読み切り反射神経の限界速度を越える黒山の戦闘方法――戦闘の完
全予測(シミュレート)。
 それらの最後の最後に、一緒に里帰りしてもらいたいヤツが、ときたもんだ。
 黒山大助。おまえ、はっきり言っちまえばよかったのに。ありきたりなのは嫌いだって
のは知ってるけど、さっきならけっこう様になってたよ。それに、女ってのはそういうの
に弱かったりするんだよ。
 だから、はっきり言ってしまったらよかったのに。
 好きな女のためだ、ってさ。

 まぁいい。私はスカートを払って立ち上がる。
 今から志を果たすにせよ半ばで挫折するにせよ、私はまたおまえに戦いを挑んでやる。
今度は第七学区の最強なんてチンケな肩書きを求めてではない。おまえという存在を超越
する証を求めてだ。命をかけて戦うという時に非殺傷武器を用い、その弾が尽きてすら意
志を曲げず、結果的に無傷で負けさせる人間に、私はかならず勝ってみせる。いつになる
かは分からないが、そうだ、おまえも言った。目的地を知った私は、速いさ。
 だから黒山大助、そのときまで絶対にくたばったりするんじゃ

 電話が鳴った。

 初春からだった。
「たった今、黒山先輩の全情報が、消失しました」
 書庫(バンク)からも、
 先輩の高校の名簿からも、
 第七学区風紀機動隊からも、
 住民票からもです。
「今、この世には、黒山先輩の存在を証明するものが、ひとつもなくなりました……」
 初春はそれから約3時間のあいだ、ボロボロの雑巾のような姿に変わり果てて眠る黒山
が発見されるまで、ひとつの言葉も発さなかった。

746とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:49:52 ID:zq3jMmE2
  ▼

 そのコマンドは、遠くはなれたコンピュータールームから発された。
 十九学区のいたるところに張り巡らされた盗撮カメラは、グレード5候補であるグレー
ド4+の戦闘も余すことなく監視していた。その14器のうち10器は一方の候補、識別
名称クレイモアによる巻き添えを受けて破壊されたものの、生き残りたちは決着を知るに
は十分な情報を自分達の親玉に送っていた。
 結果、判断された事実――
 テレポーテターの戦意消失による、クレイモアの圧勝。
 および、クレイモアの学園都市への明確な離反意志の確認。
 これにより、黒山大助の情報は次のように動かされた。
 対群衆鎮圧用人型兵器クレイモアはグレード5、つまり学徒出陣計画の最上級へと格上
げされ、同時にその存在の情報秘匿度もランクAからランクAAへ移項。
 しかし直後に、学園都市に背く危険因子として認定。その全存在を抹殺するべく、電子
回路の中を無数の命令が駆け回る。

 第一七七支部。デスクに突っ伏し、時折肩を震わせる初春飾利の目前のディスプレイに
変化があらわれる。
 散らかすようにして引っ張り出されたウィンドウ――とある高校の生徒名簿、黒山大助の
名前で検索を試みられた書庫の検索画面など――の隙間に、それらにのしかかられ、挟まれ
るようにして、ひとつの名簿がある。学園都市の全風紀委員をグレード別に表示した、文
字と背景の黒白だけの味気ない名簿。
 その一番上に表された、グレード4+の二人の階級が変化する。
 『白井黒子 テレポート グレード4+』から、『4+』の数字が消され、

 『白井黒子 テレポート グレード4』

 そして『黒山大助 クレイモア グレード4+』は、

 『黒山大助 クレイモア グレード5』

 しかし直後、全風紀委員の頂点に君臨した名前は、個人の姓名でも能力名でもない単語
へと変化する。
『VIOLATION』――反逆行為。
 そして一瞬の後には、その文字すら跡形もなく消え去る。

747とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:50:07 ID:zq3jMmE2
  ▼

 7分前。未だ尻尾の掴めないテロリストを求めて“偶然”付近の捜索を命じられていた第
七学区風紀機動隊の十九名へ、学園都市に仇をなす反逆者を討てとする命令が下る。継続
中の任務は一時中断、本命令を最優先せよ。
 散開して捜索を行っていた隊員たちは外耳道に差し込まれた骨振動式無線マイクによっ
て指示を受け、連携を取り合いながら、『グラス』――ヘルメットのゴーグルに映し出され
る情報映像を片目で参照しつつ、“目的地へと移動し続ける集合地点”へと寄り集まる。4
トンまでの圧力に耐久するブーツの足裏に仕組まれた『ランナー』をアスファルトに滑ら
せ、かすかな煙とブラックマークを引きながら、一人、また一人と闇から現れる、犯罪者
と戦うための白を基調とした装備に身を固めたアンパイア。風のようにビルの間を縫いな
がら縒り集まっていく彼らは、約3分で完全に集合を終え、今、とあるビルに到着しよう
としている。
 残り30秒で、アンパイアたちは任務を開始する。
 ここまで移動するためにとっていた団体陣形を解除、三人一組の自由度の高い隊列に分
かれる。一人が『ランナー』のジャンプ台作成などのスキルを持つ『セッター』、一人が高
速で移動できるスキルを持つアタッカー、残りの一人が銃器による援護を行うバックアッ
プ。しかし、本任務では標的の能力者の性質から近接混戦に持ち込まれることが予想され
るため、遠距離からの一方的射撃か、近距離からの物量戦か、状況しだいで迅速に切り替
える必要がある。『セッター』は『ランナー』の『ジャンプ台』に集中、各員も『レール』
には常に気を配るよう注意。本日は二名の欠員があるが、両名とも『セッター』ではない
ため支障無し。機動性を重視し、空いた二組は二名で行動。
 7つの組は7つの方向からビルを囲んでゆく。ある組は一直線にビルへと通じる道路の
物影へ。ある組はそのビルの二つ隣の屋上の給水塔へ。標的のビルの屋上からは目の届か
ない場所をくぐり、しかし迅速に。来た方向に近い場所から到着、進行方向から反対側の
最も遠い開始地点へと、最後の組が到着したとき、『グラス』の秒針のとおりに突入が行わ
れる。
 まず、それまでオートに設定していた『ランナー』のアクセルを随意操作に切り替え、
無音状態を保ったままで出せる最高速度まで加速する。『セッター』は『ジャンプ台』を一
瞬で構成できるよう、各自の操作粒子をいわゆる過冷却と同じような状態に高める。これ
らは、ビルの屋上へ乗り上げるための滑走路を走る数秒の間に済まされる。

748とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:50:23 ID:zq3jMmE2
 7つの点で構成される円が、一気に狭まる。
 絶妙のタイミングで固体化されるジャンプ台。
 七つの組の十九人は同時に空を昇る。正確に計算された速度の『ランナー』がクロソイ
ド曲線を描くジャンプ台とらえ、音無く、つまずきもブレも無く、横向きの運動を垂直に
変換し、完成された滑らかさで飛び立つ。
 その姿を見る者は不可能といわれる反重力装置の発明を疑う。
 定規ではかったような正三角形は崩れることなくビルの壁面をすべり、ちょうど運動エ
ネルギーを位置エネルギーに変換し終えると同時に、まるで後向きにビルから飛び降りる
映像を逆再生したように、着地のためのバネも必要とせず、その足は屋上の地面を踏み――

 来た。
 時間通りだ。

 ス――と。白いボディアーマーに身を固める亡霊が、屋上の淵へ魔法のように現れる。
 ス――と。警備員(アンチスキル)のものよりもいくぶんSF的なヘルメットの『グラス』。
管楽器のような銃器。まるでその体勢で生まれてきたかのように、自然に俺に向いている。
 ス――スタンロッドを片手に構える『アタッカー』。
 ス――能力のみで行動し、武器を必要としない『セッター』。
 ス――ナックルガードのついた二丁拳銃を持つ『ハーフプレイヤー』。
 ス――
 ス――
 ス――
 ス――
 ス
 ス
 ス
 ス
 スッテン、コロリ。「ちょっと四つ葉ちゃん」「四つ葉ちゃん」「大丈夫っスか四つ葉ちゃん」
 ス
 ス
 ス
 ス
 手摺りもなにもなかったはずの屋上は、あっという間に、十八の白い人柱の壁に囲まれ
ていた。

749とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:50:36 ID:zq3jMmE2
 そして最後に、わずかな偏りによって隙間のできていた場所へ、十九人目が舞い降りる。
 空気の流れる音すら、しない。夜に染まるビルの縁がそのまま盛り上がり、人の形をと
ったように、最後の一人が現れる。
 忍者のような闇色の装備に身を包む、細身の人物。“彼女は”第七風紀機動隊隊長、薄葉
艶花。選りすぐりの風紀委員たちの中から選ばれた、実力能力者の頂点たちを統べる指揮
官だ。
「こちらは第七風紀機動隊。学園の風紀を乱す犯罪者よ、無駄な抵抗はやめて――」隊長は
アクティブロッドをクイっと振って、紋切り型の台詞を切り替える。「――おとなしく投降
する気は、ないのかな?第七風紀機動隊『ファーストアタッカー』、黒山大助隊員。います
ぐ大人しくお縄についてもらえば、これに勝る恩幸はないのだが――私としては、状況の理
解も不完全に、戸惑いを抱いたまま己の同僚に縄をくれるというのは、いささか忍びない
ものがあるのでね」
 彼女の言葉に嘘はないのだろう。突入と同時に標的へとびかかることもせず姿を晒し続
ける作戦など聞いたこともない。それにこの突入法――『滝昇り』は、本来ならば最前線へ
姿を現すのは5、6人、あとは後方に控えているのが定石のはずなのだ。そのはずが、自
分と白黒――じゃなくて、白井、黒子――の二人を除いた全員で、この屋上にわんさかと押
し詰めている意味。
 泣けてくるじゃないか、畜生。
 そして、だからこそ――手を抜くわけにはいかない。
「悪いですね、ウスハ隊長」俺は38の視線を浴びながら答えた。「あいにく、俺がここで
皆を待っていたのは、全力で手加減をするためなんですよ」
 それですべては伝わった。
 第七風紀機動隊。彼らは白井のように、こっちが恥ずかしくなるような引き止めにうっ
て出たりはしない。
「ほう――」
 隊長の唇が、心の底からの安堵と歓喜によって柔らかくほころび――
 一転、翻るナイフの刃先のごとき、酷薄を描く。
「それではお手柔らかに頼もうではないか、“反逆者”黒山大助よ」
 薄葉艶花のアクティブロッドが、バチンと音をたてて2メートルの長さの鎌と化す。完
全な戦闘状態。切り替えのお速いことで。
 連続する不穏な金属音。他の隊員たちも、威嚇のポーズから純粋な戦闘体勢へ構えなお
していく。

750とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:50:59 ID:zq3jMmE2
 不意に、その狩る者の側に自分が立っていないことに、大きな違和感を覚える。まあ、
それも当然か。俺はこれまで、数えきれないほどの人間たちを力で屈服させてきたんだ。
 深夜の街を爆走する少年たちを一斉に包囲し、行き場を失って踊り狂うバイクから引き
ずり落とした。後ろ手に拘束された彼は、怯えきった顔で必死にガンを効かせていた。
 校舎内に立てこもる暴走能力者を力任せに蹴り倒し、有無を言わせずひざまずかせた。
自暴自棄な様子で脚をバタつかせ、彼女はわけのわからない言葉を泣き叫び続けていた。
 暴動を起こした50人ほどスキルアウトを、実弾を使って制圧した。股を真っ赤に濡ら
してうずくまる一人が、ごめんなさいごめんなさいと何度も謝っていた。
 俺は身に染みて承知している。この世の中で生きていくためには、その世の中に従うほ
かない。この世の道理に歯向かう行動をとった者は、例外なく大きな力によって叩き潰さ
れる。まして、この場所に起こされようとしているのは、学園都市でもトップレベルの治
安維持活動――つまり、武力行使。何人の背理も許さない、許すことのあってはならない、
法治の体現。
 それでも俺は、突き進まなくてはならなかった。19のアンパイアが阻めばこれを蹴散
らし、100のアンチスキルが現れればこれを乗り越え、千の戦車が道を防げばこれを突
破し、万の軍団が立ちはだかればこれを爆砕する。そんな妄言を貫き通さなければならな
かった。
 この学園都市に、俺の求めるものはない。あいつを救えない世界になど、要はない。
 俺は帰らなくてはならないのだ。
 俺の故郷へ。
 魔術の世界へ。

 ミサカを救える場所へ。

「かかれ」
 一言。第七風紀機動隊の指揮官が、突撃を告げる。一つの遅れも無く動きだすアンパイ
アたち。振り上げられるスタンロッド。固定される銃口。
 瞬間、ガラスの割れるような音とともに、窒素分子を固体化して造り出された『レール』
の蔓が、そこらじゅうを埋め尽くす。
 ビルの街を侵食する、凍てつくジェットコースタージャングルの戦場。
 『ランナー』を滑り止め処理された『レール』の表面に唸らせ、四方八方から夏の虫の
ように迫り来る、白い鎧の暴力。
 それでいい。それでは、全力で手加減してやって――さっさと先に進ませてもらうとしよ
う。

751とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:51:11 ID:zq3jMmE2
 俺は静かに拳を握り、頭の中の本能を開け放つ。
「遮ってんじゃねぇよ。俺の邪魔だろうが」
 激変する感覚情報。
 捻じ曲がっていく体感時間。
 自然と、両の眼が見開かれていく。動物としての衝動が体の中で暴れ回り、爆発を求め
てあふれ出そうとする。
 戦闘、開始。
 赤い輝きが、爪先から髪の天辺までを覆いつくした。


 勝負は最初の一撃で決まった。
 第七風紀機動隊の19名は、3人1組のグループを更にアタッカー1人とセッター・サ
ポーターの2人に分ける作戦に出た。アタッカーの行く先に邪魔な『レール』をサポータ
ーが射撃で排除し、足りない『レール』は各自セッターが追加する。付ききりの援護をう
けて自由に宙を飛び回るアタッカーによる、高速機動作戦。
 おそらく第七学区(ウチ)のアンパイアでしか実行できないであろう、綿密な連携を必
要とする、しかし強力な戦法だ。標的の俺がアンパイアだったとはいえ、たった一人に対
して妥協無くこの戦いを選択できた隊長には尊敬の念すら抱く。
 しかし――これはまったく仕方の無いことではあったと思うが――その隊長にも、致命的
なミスがあった。
 それは、風紀機動隊の総戦闘武力と機動力、それに隊長自身の戦闘センス、それらをす
べて凌駕する人間の存在を知らなかったことである。
 6人のアタッカーが短期決戦を挑んで一斉に飛び掛かってきた瞬間、俺は上下左右、3
60°の全方位に赤色の衝撃波を撃ち放った。
 第七風紀機動隊の連携は、一撃で木っ端微塵に崩れ去った。

 接近していたアタッカーたちは足場となる『レール』を爆砕され、たまらず屋上の宙に
放り出される。ドーム状に爆発する気体の壁に加えて、砕けた『レール』の破片をまとも
にかぶった。耐衝撃性の高い装備を身に付けながらも、ダメージは避けられない。開始と
同時、距離をとっていたセッター・サポーターたちは無事な『レール』の上で無傷。しか
し俺に群がって密集したアタッカーたちが邪魔をして、射撃は不可能。セッターの能力を
攻撃に使おうにも、操作分子・粒子は支配範囲外まで吹き飛ばされ、あるいは乱されてい
て、武器化して標的に突き刺すことはできない。

752とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:51:28 ID:zq3jMmE2
 その間に、俺は行動を起こすのに十分な情報を収集し終えていた。足の裏に感じる砂粒
の数、髪の毛をゆらす風、ゆるく構える腕の角度、宙踊るアタッカーの足で空回りする『ラ
ンナー』の減速度。
 戦闘の完全シミュレーション。カエル先生いわく、もはや偽装能力(ダミースキル)の
域に達しているらしい俺の戦闘法には、事象を分解しつくす数式も、未来予知のようにあ
らわれる映像も必要無い。ただ、感覚するのだ。足にかける体重の1グラムで変わる腹の
疼きを、肩の上下の1センチで明滅するこめかみの強張りを。身体の訴えは身体で処理す
る。膨大な情報の中から違和感を選り分け、突破口を弾き出す。そして俺は荒れ狂う窒素
のダイアモンドダストの中、かつてない鮮明さですべてを看破した。
 自分の体を、標敵を、戦場を、支配する。
 戦闘時の標準状態にしていた拳、肘、肩、頭頂、膝、足。それぞれの『焦点』を臨界点
まで高密度化。
 爆発。
 動き出す。
 能力使用状態の俺に、慣性などといった現象は通用しない。まだ空中にいるアタッカー
――斎藤の懐へ爆風の速さで突っ込み、分厚い胸板へ掌をすえる。密着した状態から肘と手
の甲を爆破して、押し出すかたちの正拳突き。
 矢のように吹っ飛ぶ斎藤は、水分子の結晶でできたジャンプ台でこちらにむかって来て
いたセッターとサポーターの一組にぶつかる。それは本来彼のサポートをするべき彼自身
の組だった。近くの二組がすかさずループを描く天地逆さまのジャンプ台を構成、落下す
る斎藤たちを追い掛け、フルスロットルでビルの谷間に消えていく。
 一方、屋上。俺はその間に、五つの拳と七つの踵をアタッカーたちの防護板の隙間に突
き込んでいた。結果、ギリー、さくま、武嶽の3人はすでにもの言わぬ身だ。『レール』を
爆砕されて空中に投げ出され、無様に屋上へ落下したアタッカーたちも体勢を持ち直して
はいた。しかし集団としての連携を失った彼らに、俺を止める威力は無い。突入した建築
物を平均時速40キロで駆け抜けながら制圧する運動能力も、毎秒速5発の拳撃を乱射す
る対人兵器(クレイモア)には適わなかった。
 ただの障害物となり果てた『コース』の残骸を、体内に組んだ『フレーム』にものを言
わせて押し退け、ロボットのように突進してくる獅子志。水平に凪ぎ払うスタンロッドに
対し、俺は直立のままから沈むようなスライディングで足払い。折り重なるように倒れて
くるのを、容赦なく突き上げる。
「『フレーム』の動きが機械的すぎだ!もっとキモイくらいに生生しく使いこなせ!」
 とどめに体勢を入れ替えて地面に叩きつけ、反動で自分は起き上がる。そこへ等速曲線
運動で飛び込んできた弾丸。一見射手の場所の特定できない攻撃を指向爆破ではじき、振
り向き様に桃野に踵落としをくらわせるついでに地面を粉砕。コンクリート塊を振りかぶ
り、爆発に爆発を重ねて連続で射ち放つ。

753とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:52:48 ID:zq3jMmE2
「その程度の偽装で満足してんじゃねぇ!トリックってのは最低でも五重に囲って、はじめ
て欺けるんだよ!」
 一投目は10メートルも進んだところで急激に進路を変えて弧を描き、様子を見定めな
がら『レール』を走っていた玉芽を襲う。柴瀬を巻き込みながらの二投目は真横に曲がっ
てジャンプ台をぶち壊し、まさに踏み切ろうとしていた沖馬が落下していく。三投目、あ
えて見当違いの方向に投げられたコンクリートは『曲壁』によって逆に方向を修正され、
死角になっているビルの向こうで狙撃手を昏倒させる。
 致命傷はもちろん、後遺症の残る重傷も負わせてはならない。かつ、向こう一日は体を
動かしてもらっては困る。風紀機動隊仕様のヘルメットとアーマー相手にはかなりきつい
条件。それでも、手加減の手を抜くつもりは無かった。
 一撃で戦闘不能に陥らせられないまでも、飛び掛かってくる者から手当たり次第に叩き
のめしていく。
 投げ飛ばしながら関節を極め、飛び掛かりながら頭蓋骨を揺さぶり、打ち倒すと合わせ
て胸部を圧迫する。
 爆発を乗せた拳を爆破し、爆発に乗せた掌を突き飛ばし、空中で何度も回転しながら両
手両足の連打を叩き込む。
 落下防止用のフェンスを千切りとばし、へし折った『レール』で凪ぎ払い、『アーマー』
状態の神田先輩を逆に利用し武器として振り回す。
 いくつものビルを跳びまわる。壁を蹴りつけてビルの隙間を飛び跳ね回り、セッターを
潰して隊の機動力を奪う。『ジャンプ台』を失って、窒素の『レール』を『ランナー』と自
分の脚力だけで移動するしかなくなったサポーターとアタッカー。宙を舞う能力を失った
者から捻じ伏せていく。
 15人目の失神を確認した時、俺はようやくその気配を感じた。最小限に抑えられた硬
質な音の連なり。それが空気を引き裂きながら迫る音。弾かれたように回転、地面に円弧
を交差させ、真横へ回避すると同時に振り返る。
 巻き戻されていく真っ黒な鎖。
 その先に、ビル街を浸す夜に背中を溶かす忍者がいた。
「気に入らないな」
 忌々しそうに微笑みながら、薄葉艶花は『グラス』越しに舐眼つける。
「今の攻撃、私の知るアンパイアの黒山大助ならば、肌に触れてからでなければ気付けな
いはずだ」
 私たちの前では全力を出していなかったのか。気に入らない。
 なじる言葉とは裏腹に、その顔は異様な歓喜に彩られている。俺が白井黒子に対して装
ったのと同じ表情。

754とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:53:03 ID:zq3jMmE2
「いいんですか、雨乃と四つ葉を守ってないで。今なら10秒以内に割り出して、『レール』
を完全に潰しますよ」
 雨乃とは、このビル街を覆い尽くす『レール』を作っている、窒素を操作する大能力者
の名前だ。精神活動が存在する座標を感知できる四つ葉の力を借りて絶対安全な場所から
第七風紀機動隊の戦場を築く、いわば隊の心臓とも言うべき存在。
 俺の第一目標は当然、雨乃だった。それが、決定打の要であるはずのウスハ隊長が前線
に立てなかった理由だ。真っ白な隊員たちの攻撃の中から、突如あらわれる黒い影。その
装備は装甲が薄いという欠点の代わり、手動で大まかな色を変化させる化学迷彩の機能を
持っている。心理的死角から放たれるアクティブロッドの一撃。しかし幾度となく雨乃の
隠れ場所を見つけだす俺に対抗するには、第七風紀機動隊の脳として撹乱に撤し、運動能
力に乏しい二人の手を引き、もとい引きずり回る他なかった。
 その彼女が、役目を放棄し、一人で俺の前に姿を表した意味。
「とぼけるな。貴様にはすでに予測済みのはずだ」笑み崩さず薄葉艶花。「能力の使用限界。
貴様の手に落ちるまでもなく、『レール』は崩れる」
 言い終わらないうちに、パラパラと、固く細かいものが落ちる音。ビル街を覆い尽くし
ていた窒素製の『レール』にヒビが伝染し、破片となって崩れ、それも粉煙となって消え
ていく。
「貴様に追い付かれないだけのスピードで逃げ続けるのは、あいつらには少々酷だったよ
うだ。四つ葉のやつも同じく目を回して倒れているよ」
 しかし、今となっては好都合だ。隊長は狂暴な笑みを浮かべて言う。
「黒山大助。私と一対一の勝負をしてもらおう」
 ガシャンッ、と両手に出現するアクティブロッド。
 俺は一応言い返してみる。
「失礼ですが、第七風紀機動隊はすでにその機能を破壊されています。俺がここでこれ以
上の時間を潰す必要は――」
「あるさ」隊長は花のように唇をほころばせ、さえぎる。「ここで私を行動不能にしておか
なければ、お前はこの先、より厳しい状況で私と対峙する事態に直面する可能性がある。
そこでは、こんな丁重なサービスは提供できんだろう?それに――」
 そこで一転、獲物を締め上げる狩人の表情。
「戦闘の完全予知。リアクション不要のワンサイドアクション。ふふ。私には貴様の戦い
方がわかったぞ、黒山大助。私に新たな部下が補給されれば、もう貴様の思い通りにはさ
せない」
 両手のアクティブロッドを連結させ、2メートルの棍を手にする忍者。
「貴様の答えは、一つしかないのではないかな?」

755とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:53:17 ID:zq3jMmE2
「……ええ、分かりましたよ」
 俺はうなずいた。
「飛び出した俺の4回の拳打をロッドで防御したところに、爆破で無理矢理膝を叩き込み
ます。ひるんだところへ間髪入れずに正拳突き。吹っ飛ぶ身体に次々と追い打ちをかけて
さらに加速した隊長の体は、あそこの金網まで吹っ飛んでメリ込み、十字架にはりつけに
された格好で動かなくなるでしょう」
「ほう、おもしろい。しかし最初の拳とロッドの攻防の後ひるむのは、背後から飛来した
鎖分銅を食らう貴様のほうだと、私は“予測”しよう。畳み掛けるような猛襲が次々と急所
に突き込まれるダメージに立つこともままならず、それでも引っきりなしの殴打に倒れる
ことも許されず、貴様は私の前に踊り続けるのだ」
「それはとてもおもしろい。俺の確信するシナリオとは少しばかり間違っていますが――
重要なのは最初の拳とロッドの攻防ですかね」
「ああ、そうだな。揺るがない私の未来の唯一の岐路は、初っ端の近距離でのぶつかり合
いらしい」
 ヴン――と、隊長の『ランナー』が唸りを上げる。
 俺は『焦点』を全身に展開し、戦闘準備を完了する。
 一瞬の静寂。
 刹那の緊迫。
 最初に動いたのは隊長だった。ロッドを放り出して両腕を大きく振り抜き、二丁のマシ
ンピストルからありったけの弾丸を雨霰と浴びせかけてきた薄葉艶花にたいして、俺はめ
いっぱいの指向性をかけた爆発を撃ち放った。
 コンクリートの屋上に、鉄のつぶてが弾けて火花を散らす。
「フン。黒山、初ッ端からハズレじゃないか」
「自分から先にハズしたのは隊長のほうです」
 それもそうか――言うが速いか、隊長は両手のフルオート状態のマシンピストルを回転さ
せながら投げつけた。放射状にばらまかれる銃弾の面が交差して飛んでくるのを、俺は後
方へバック宙しながら回避――
 ――したところへ、忍者が足から火花を散らしながら突っ込んできた。
 ひとりでに刃をバチンと飛び出して宙に浮いたアクティブロッドを回収しつつ、『ランナ
ー』の馬力を乗せた、必殺の勢いで繰り出される刺突。俺はそれを重力加速度以上の速さ
で身を低くすることで避け、直後に鋭利な角度を描いてカウンターを決めようとする。し
かしそれを隊長はバキンと分離したロッドの後ろ半分でフェンシングのように往なし、そ
してそれ以上の深追いはしない。そらされた腕が爆発によって再び真横から襲い掛かるの
をあえて受け、衝撃を利用して後転、距離をとる――
 それを許さず、俺は爆発に乗って突進する。体重移動や重心の制御といった言葉とは無
縁の軌道を描き、つんのめるような前宙から踵を落とし、拳を振り落とし、さらに前宙、
もう一回転。

756とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:53:30 ID:zq3jMmE2
 だが薄葉艶花はそのことごとくを避け切っていく。突然回転数を増した『ランナー』で
棒立ちのまま宙返り、ロッドをスキーヤーのように操って小回りに走り回り、自在に武器
を変更させてはカウンターを返していく。
 それは人間の女子高生ではありえない動きだった。筋力、動体視力、反射神経、判断速
度、神経系の伝達速度。すべてが人間ではありえないレベル。そして、クレイモアとして
の黒山大助を人間兵器たらしめている、戦闘の完全シミュレートによる高速戦闘。その世
界におかれてなお、互角を保つ実力。
 それらを可能にしているのは、彼女自身の人並み外れた努力と才能、そしてその『あら
ゆる肉体活動を強化する』という、オーソドックスに見えてその実、強力な能力だ。強度
認定こそレベル1だが、筋力の増強、耐久力の向上、短時間での自己治癒、状況の高速判
断など、その汎用性は計り知れない。
 そもそも、戦闘を計算分解するという戦闘法を確立したのは、他ならぬ薄葉艶花。俺は
それを自分の脳の処理速度と腕力に合わせて修正したものをコピーしたにすぎなかった。
「ふざけるのもいい加減にしろ、黒山大助」
 だから、やっぱり、バレた。
 頭を狙って大きく振った腕が、見事にスカった。完全に読まれていた。
 スピンの軸足を入れ替えるフィギュアスケーターの動きで身を翻し、『ランナー』を床に
滑らせ、火花とブラックマークの尾を引く回し蹴りが腹に直撃する。内蔵を苦痛の塊と入
れ替えられたような感覚にめまいを起こしながらも、なんとか距離をとる。
 隊長は苛々と叱咤する。
「貴様、私が気付かないとでも思っていたのか。本気を出さない貴様が私に勝てるとでも
思っているのか。私は貴様の本当の実力に用があるのだ。だというのに、なんだ、その薄
らボケた『焦点』は。初っ端『レール』を崩した時に見せた、あの『焦点』を出せ。それ
以外には用は無い」
 バチン、と両手のロッドに双刃を出し、二本の手斧を構える薄葉艶花。『ランナー』は右
足と左足が逆に回転し、今はブレーキに抑え付けられてうなりを低く轟かせている。
 足の裏がツリそうなアクセル操作を、しかし一瞬で難なくこなすが最後、その細身の身
体は独楽のように突進し、俺を横にスライスしてしまうことだろう。
 隊長は今、本気で怒っている。やむなく、答えるしかない。
「そうしたいのは山々なんですがね。あの超ピカピカ『焦点』、実は、つい、ほんの先程で
きるようになったばかりなんですよ。だから本気で手加減しなければならない俺としては、
必要に迫られないかぎり、実戦でいきなり生身の人相手に使うのは――」
 必要に迫られた。
 人の話を最後まで聞かないまま、隊長は独楽の突撃を仕掛けてきたのだ。

757とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:53:42 ID:zq3jMmE2
 仕方ない。俺はあの『焦点』を即座に全身へ展開した。
 凝縮された、小さな太陽のような光が輝き――
 勝った、と、俺の感覚は認識した。
 一撃目。赤い光を直線に残し、数メートルの距離をほぼゼロ秒で駆け抜けながら瞬速で
振られた俺の右腕を、薄葉艶花は防御もできないまま腿に受けた。華奢な身体は放り投げ
られた棒キレのようにクルクルと縦回転し、地面に叩きつけられるのを待つ以外に体勢を
立て直す方法を失う。
 二撃目。振り向きざまに放たれる裏拳が、乱回転に囚われた体をさらに加速させる。も
はやどんな物体に接触することも危険な速度。
 ――結局のところ、頭で予測できる事と実際に対処できることというのは違う問題なのだ
った。それにそもそも、判断の材料となる情報が不正確なのではどうしようもなかった。
 三撃目、四撃目、五撃目。人権を無視された運動状態へ、なおも容赦なく斬撃を浴びせ
る。赤い光が宙に浮く回転体を通過するたび、異様な音をたてて回転する方向が切り替わ
る。
 とどめを刺そうとして一直線に接近する直前、薄葉艶花はここに来て反撃をみせた。信
じられない根性で手放していなかった二本のロッドを、乱回転する勢いのままに乱舞する。
しかし察知していた俺は、2メートル手前で停止していた。回転途中で直径を広げたため
に、力のモーメントに従って速度の弛んだ体は、そのまま頭から落下しようとする。
 その前に、薄葉艶花は逆さまの状態からロッドを繋ぎ、最後の手段にうってでた。
 アクティブロッドに仕組まれた無数の武器。その奥の手、2メートル近い全長を余さず
バレルとして用いた、多段式単発銃。初動の火薬に加え、銃身からも加速度的に推進力を
与えることで携行兵器としては破格の威力を備えた弾丸は、装甲車程度ならばやすやすと
貫通する。さっきのマシンピストルの比ではない。
 しかし、俺はそれを避けはしなかった。
 真っ赤に輝く右手をピストルの形にして、向けられたロッドの先端の銃口を指差す。そ
の指先が赤熱する。熱をともなわないはずの『焦点』が燃えるように熱く、そして全身の
高密度の中でもなお一層に強く輝き――発射した。
 赤い衝撃波は針のような形をとって空気を切り裂き、狙いあやまたず銃口に突き刺さっ
た。
 アクティブロッドは粉々に破裂した。凶器となって飛び散る破片が、隊長の頭から闇色
のヘルメットと『グラス』を吹き飛ばした。
 ドサリ、と地面に横たわり、素顔の露になった隊長は、その垂れ目を細めて微笑んでい
た。
 ――まったく……どこまで“わかって”いたのだろうか。
 俺はその頭に手をかざし、
「……今まで、世話になりました」
 爆破を、一発。
 第七風紀機動隊隊長、薄葉艶花は、頭を仰け反らせ、意識を失った。
 すなわちこの瞬間、第七風紀機動隊は、一人の暴走能力者を相手に全滅させられたのだった。

758とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:53:57 ID:zq3jMmE2
  ▼

 ――目の眩むほどの赤い輝き。下半身へ重点的に、姿勢制御のための補助として、肩と肘
にも『焦点』を高密度で展開。
 ビルの屋上。滑走路は20メートル。横方向へ段階的に9回の爆発、踏み切りの際には
最大出力で仰角43゜へ飛び立つ。
 プロセスを確認、
 発射した。
 爆発が自分の体を叩く、今まで馴れ親しんだはずの、しかし桁違いな強さの衝撃、9回。
 空気を押し退ける轟音が耳を潰す。
 爆発的に加速していく感覚も一瞬、

 ――破壊的な衝撃。

 思わずとじた目を開いたとき、そこには別世界が広がっていた。
 目にも止まらぬ速さで眼下を飛び去っていくビル、ビル、ビル。
 物凄い音をたてて身体を撫で過ぎていく大気の奔流。
 弾道軌道を描く体に、重力の手は届かない。
 俺の体は時速300キロに近い速度で飛行していた。破れた服の代わりをタマヤ(今年
入った風紀機動隊の新顔、ツルツルほっぺの瑞々しい15歳)から剥ぎ取ったベストにし
ておいて本当によかった。並の衣服ならあっという間に千切れてしまっているだろう。
 本当に、スンゲェ。
 今までの『焦点』では考えられないエネルギー量だった。その他にも、奇妙な特徴。こ
の爆発には奇妙な衝撃波がともなう。赤い色を持ったそれは、ほとんど拡散することなく
とび、離れた場所へ硬い衝撃を与えるらしい。スキルアウトに囲まれたとき、隊長のアク
ティブロッドを破壊したとき、それに今、飛び立つのに使ったビルの反対側の柵はひん曲
がっていた。『焦点』が体外へ飛び出しているのだろうか、いずれ原理を把握しておく必要
があるだろうが、素手のままで可能な中距離攻撃手段は戦闘のバリエーションを大幅に広
げることができるだろう。
 欠点がないわけではない。空気抵抗に気を払いながら、踵と肘を見る。超高密度の『焦
点』を爆発させたそこからは、うっすらとした煙の震える線が伸び、後方へ流れている。
今までの『焦点』はその色と光り方こそ炎のようなかたちをしていたものの、発熱現象は
ともなっていなかった。せいぜいが、爆発によって瞬間的に圧縮された大気の発熱ぐらい
だ。

759とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:54:35 ID:zq3jMmE2
 加えて、今、『焦点』を発生させることができなくなっている。俺の能力は発動条件があ
いまいなためにほとんど感情や肉体と直結している。腹の中にある奇妙な空洞から感覚す
るに、これだけの使用の後は一時的な使用不可に陥ってしまうようだ。
 とはいえ、そう長い時間ではなかった。筋肉を巡り満たす感覚がよみがえり、四肢がふ
たたび赤い光を浮かべはじめる。戦闘中での連発を常用することはできないが、ここぞと
いうときの決定打には充分利用できる。火傷もそこまでひどくはない。無視できる程度の
痛みなので、ほうっておけば治る。
 なおも爆発で飛距離を伸ばし――500メートルも飛んだだろうか、眼下のビルの屋上た
ちが真下迫ってきた。そのうちの一つに狙いを定め、小刻みに落下を緩めながら、しかし
速度は落とさず着地し、すぐに駈け過ぎ、また跳躍。
 さっきとは違って高さにバラつきのあるビル群のため、一直線にはいかない。壁を走っ
て進路をねじる。ゲームの中でしか体感することのない対物速度。ガラスの破裂を後ろに
聞きながら、最小限の角度で通り過ぎていく。ひときわ大きく高いビルに目星をつけ、今
度はあらかじめの速度もあいあまって、更に大きく空を跳ぶ。
 ふたたび弾道軌道の無重力――その途中で気付いた。
 いつか初春と一緒に遊び半分で喧伝した、黒山大助のキャッチコピー。
『第七学区最強の風紀委員』
 ……いつのまにか、なってる。本当に。
 なんという事だろう。『最強』なんてイタい肩書き、実際にはありえないのに名乗ってい
るからこそネタで在れるというのに。ありがちな少年漫画じゃあるまいし、くそ、俺とし
たことが。
 だがこの程度の業績でうじうじと悶えている暇はない。超能力者(レベル5)になる前
のアクセラレータ、数年前に姿を消した『プライマリウエポン』、ここ最近『壁』をポンポ
ン飛び越えてくるやつらもいるし、学園都市の治安維持部隊を撃破した人間なんてめずら
しいもんじゃない。俺はその先を行かなくてはならないのだ。
 学園都市からの逃亡。
 それは今まで誰にも成し得られたことのない偉業、言うなれば、異業、だった。そして
それを成せなければ俺に未来はない。
 だが決して不可能ではない。世界の企業を牛耳っている学園都市にも、踏み込めない世
界があるのだ。母親の中にあった世界。魔術の世界に逃げ込みさえすれば、学園都市から
逃げ切るのも不可能ではない。そしてその場所にこそ、ミサカを救う手段がある。
 それに加えて、もう一つの希望。
 この数時間で異常な急成長をとげた、俺の能力だ。
 猛スピードで夜の学園都市を駆け抜ける。遠くに聞こえる警備員のサイレンも、俺に追
い付けるものはなにもない。

760とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 20:54:51 ID:zq3jMmE2
 何でもできる、と思った。
 何だってやってやる、と思った。
 踏み越え、
 抜き去り、
 ぶち抜き、
 くぐり抜け、
 走って、走って、走って、
 跳んで、
 飛んで、
 翔んで、

 ――、着いた。
 
 20メートル下に、夜にひたされた公園が広がっていた。
 その、緑というよりは黒に近い凹凸の波間にむかって、ビルの縁を飛び降りる。水面は
みるみるうちに近づき、着水、足が地面につく。
 体に付いた葉を適当に散らし、迷いなく歩く。落ち着いた色のレンガでできた歩道。控
えめにされた灯を、一つ、二つ、通り過ぎていく。むかう先には、ここの林と一体化した
病院の中庭がある。
 立ち並ぶ林が終わり、病院の中からの明かりの漏れる芝生。
 いつものベンチに、彼女がいた。
 その瞬間、俺は確かに風を感じた。ブワ、と音をたてて全身の毛を引き寄せる重力を感
じた。学園都市からエスケいプしよう、なんてどう伝えたらいいのか――今まで必死に考え
ていた口上は、あっという間にどこかへ吹き飛んでしまっている。当たり前だった。そこ
にいるのは、俺が惚れた女だ。
 ベンチの少し手前、こちらに背を向けて立っている。その浴衣のような真っ白な手術衣
は、夜の暗闇でもわかるほどに汚れている。どうしてこんな時間にここにいるのだろうか。
いつからここにいたのだろうか。
「……ミサカ……」
 ぴくり、細い肩が動いた。
 俺は必死に言葉を探そうとする。
 言え。言うんだ。俺と一緒に行こう。
 だがしかし――踏み切れない。ここにきて、中途半端に冷静になった俺の頭は逡巡という
感情を思い出す。
 そういうのには順序とか、タイミングとかいうものが、――いや、そもそも俺たちの間に
ある関係は、ただの知り合いというもの以上の何物でもないのではないだろうか――ここで
は助からない、外に行けば生きられるんだぞ?断られる理由なんてあるものか――いや、あ
る、そうだ、学園都市への離反者という烙印を押されてしまうだろうが。そんな危険な行
為、俺なんかの説得で――
 必死に絡みあわせようとした思考は、そのままもつれて解けなくなってしまい、そして
挙げ句には、再びどこかへ吹き飛ばされてしまった。
 そう、吹き飛ばされた。吹き飛ばされたのだ。
 
 ズガンッ――!という、耳をつんざく轟音。

 まず感じたのは、頬にぶち当てられた衝撃だった。とんでもない速度で飛ぶなにかが、
頬をかすめていった余波。
 バキメキメキッ! 、という音は背後の木々が、そのなにかの直撃を受けて引き裂かれる
音だった。
 そして、パチパチとはぜる、紫電の火花。
「3分前です。行方不明になっていた妹達(シスターズ)の上位固体、『打ち止め』の脳波
が、ミサカネットワーク上に姿を現しました」
 生物のようにうねる紫電を纏い、ミサカははっきりと、正確に言葉を発する。
「しかし彼女の脳はウイルスの汚染を受けていました。現在、そのウイルスコードは全シ
スターズの発信されるべく命令コマンドとして変換中。完了するまでの時間は、残り7分」
 これを脳に受けると、ミサカたちは無差別な武力行使を実行――つまりは、周囲の人間を虐殺します。
 彼女は、化け物のような武骨なライフルを構え、引き金に力を込めながら言った。

「ミサカを破壊しなさい。そうでなければ、ミサカはあなたを破壊します、とミサカ10039号は宣告します」

 そして、紫電が炸裂する。
『超電磁銃(レールショット)』が撃ち放つ轟音が、夜の学園都市へ響き渡った。

761とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 21:17:19 ID:zq3jMmE2
 お待たせしました。長い長い八月三十一日の第三章『空間移動は決別を描く』でした。
 そしてすいません。次こそはミサカがメインです。長い長い夏休みもようやくおわります。

 今回はもうひとつ謝罪を。
 このSS内では、私個人の妄想が生み出したキャラクターが禁書目録の作中登場人物に大きな影響を与えている、という自己満足を垂れ流しています。
 白井黒子ファンの方、気を悪くしたならごめんなさい。ちなみに彼女の一人称語り部分の口調は、“お嬢様”にしては粗雑かつ凶悪な性格を考えてのものですが、これも気に障った方がいればすいません。

762とある風紀の活動日誌:2008/07/30(水) 21:20:11 ID:zq3jMmE2
追記。第三章>>720-760

763■■■■:2008/07/31(木) 11:14:18 ID:Vb8FSB.g
GJ
読むのに時間かかったが楽しかったぜw

個人的にはドジっこ四つ葉ちゃんに萌えたww

続きをwktkして待ってますYO!

764■■■■:2008/08/03(日) 19:54:40 ID:wHnw14t.
正直オリキャラ物の長編ばかり目立っていて禁書のSSスレと言えるのか
まあこういうのはあぼーんして回避して見ない様にするのが良いんだろうがな

765舞い降りてメシア:2008/08/04(月) 21:53:34 ID:ciHieOfE
>>764
オリキャラ無しの長編SSは難しいだろ(苦笑
短編はまあまあ書けるが
まあ、読む読まないは個人の判断に任せておくとして、神がいっぱい舞い降りて来るのを待つが良いさw

766■■■■:2008/08/05(火) 00:38:11 ID:KvOSxKK6
くまー

767■■■■:2008/08/07(木) 00:23:41 ID:.n3HkjBI
姫神主体のSSって需要あるかなぁ……?
結構オリジナルストーリー気味なんですが。

768■■■■:2008/08/07(木) 17:03:44 ID:trk2lZ4Y
>>767
このスレに来ている人の数だけ需要の数はあります。まあ、ぶっちゃけ投下してくれるならどんと恋ですよ(誤字

769■■■■:2008/08/08(金) 09:22:06 ID:QsmHVAs.
>>767
結構需要あるだろうな
俺も読んでみたいし

770■■■■:2008/08/08(金) 10:23:08 ID:wxiXI5dU
>>765
>>764が言ってるのはオリキャラがでてくる作品ってことじゃなくてオリキャラが主人公(メイン)のものばかりなのが
まずいって言ってるんじゃないの?
たしかにオリキャラがでない長編っていうのも作るのが大変だろうけどオリキャラばかりだと
禁書のスレでやる意味があまりないっていうのも事実だし。
オリキャラだすのが悪いとは言わないけど禁書のスレなんだからちゃんと原作の面子も絡むませるべきだと思う
自分の意見書きまくった上に「じゃあお前書いてみろよ」って言われても出来ないけど
こういう意見や考え方もあるということをしめすために書き込ませてもらう。長文スマソ

771765:2008/08/08(金) 13:28:07 ID:QsmHVAs.
>>770
オリキャラメインのSSってそんなに多いか?今までに出たやつでも3つくらいしか無いはずだが?
しかも内2つはあまり目立ってないし

ただ単に最近風紀委員ぐらいしか上がってないからオリキャラメインばっかりと勘違いしてしまってるのではないかと指摘

772■■■■:2008/08/09(土) 19:30:24 ID:QjvWGujc
シリアス系は禁書的に敵の存在が必須だから難しいのと、恋愛系は主人公の鈍感さその他によって成り立たないのとが主な原因かと。
かといって鈍感さを内包しない上条は既にオリキャラじみてる気がするし。
五巻の闇咲逢魔イベントを最大限に膨らますくらいしか無理かと。
下手に上条メインで学園都市内の話を書こうとすると、原作が完結してないせいで矛盾に押しつぶされるし、記憶を失う前だとやっぱりオリキャラメインになりやすいし。
実際何をネタにするよ? とそういう話ではないかと。

773■■■■:2008/08/09(土) 19:38:17 ID:0hcnGFMA
ツンデレ闇坂きぼんぬ

774■■■■:2008/08/09(土) 19:38:26 ID:0hcnGFMA
ツンデレ闇坂希望ww

775■■■■:2008/08/23(土) 11:07:31 ID:l1SvXs7o
誰もいない。

776■■■■:2008/08/23(土) 15:07:17 ID:snwSb53I
いるッスよ

777■■■■:2008/08/23(土) 16:00:14 ID:l1SvXs7o
やっぱりROMしてる人はいるのか。
ここ2週間毎日見てたけど書き込みすらないな

778■■■■:2008/08/23(土) 17:05:01 ID:snwSb53I
みんな飽きちゃったんスかね?

779■■■■:2008/08/24(日) 20:37:45 ID:EtrRE3WM
ROM専門が多いのでは?

780■■■■:2008/08/24(日) 22:10:57 ID:0WFECWx.
皆さん書きましょうよー

781■■■■:2008/08/24(日) 22:42:07 ID:CILRqKCA
書いてもね
途中で折れる
今日この頃
てか俺に文才があれば!

782■■■■:2008/08/25(月) 00:47:53 ID:qfZLFCr2
書こうとしてもネタが無いし自信もないし文才無いしね。。。
書き上げても人様に見せられるか分かんなくてビクビクするんだよ!?

783■■■■:2008/08/25(月) 09:01:22 ID:IJngKwGQ
正直エロパロ板のスレだけで十分まかなえるからこっちの存在意義が薄い。
あっち非エロにも寛容だから住み分けする必要もないし。

784■■■■:2008/08/25(月) 09:56:18 ID:MWo4cS62
そうか、皆エロパロ行ってるのか。んじゃこのスレどうなるんだ?

785■■■■:2008/08/25(月) 12:57:16 ID:RduZhnsE
文才なんて良いじゃないッスか!
誰かが考えたのはその誰かしか作れないんスよ?

786■■■■:2008/08/25(月) 17:33:31 ID:Twweav/6
うん、いい事と言った。
しかし、まだ何行も書いてないんだ!かまちー尊敬するぜ

787785:2008/08/27(水) 19:41:31 ID:Zcuo/Mu.
じゃあ俺が連載もの書くっすよ

【コトバのカケラ〜Christmas Present〜】
これは少年が白い少女に嘘をつけなかった、そんなお話。

冬休み。
新年を迎えるための休み。
だがその中には大切な日も交ざっている。
皆さんは分かるだろう。
街がそれ一色に染まり始めるころーーー

少年は今日もなんというか……いつも通りだった。
「ちくしょーーっ!!不幸だーーーっ!!」
彼の名は上条当麻。学園都市において『無能力』と呼ばれる地位にいる。
またの名を『フラグマスター』。

「ちょっと!!待ちなさいよーーーっ!!」
ビリビリィ!!と飛んできた雷を当麻は裏拳気味になぎ払う。
「止まれって言ってんでしょーーっ!!」
そんな叫びと共に追いかけてくるのは学園都市第三位、『超電磁砲』御坂美琴。
名門常盤台中学のお嬢様だ。
「あんたお嬢様の頼みも聞けないのーーーっ!?」
「いーやっ!走りながら雷撃ってくるヤツなんてお嬢様じゃないね!!」
なんだとビリビリィ!!と更に撃ってくる御坂。
何でこんなことになってるんだろう……
上条は頭の片隅で思い出す。

あれは放課後下校途中。
寒い中一人だなんて寂しいなー彼女欲しいなー、なんてクラスの男子に聞かれたらギロチンにかけられそうな事を思いつつ歩いていると
「あ!……ち、ちょっとあんた!」
やっぱり手編みのマフラーが最高ですなー。
「ねぇ!聞いてんでしょ!?ちょっと!!」
あ、でもセーターって手もあるかも。
「ねぇ!……………」
やっぱり男のロマンだなぁ……。
「スルーすんなぁぁァァ!!!」
バチバチビリビリィ!!!
「ひぎゃぁあぁ!!」
牽制だったのか威力は低かったが…当然痛い。
「み、御坂!?一体何しやがる!!」
「こっちの台詞よ!!いつもいつもスルーしやがってぇぇェェェ!!」
ひぃいぃぃ!あのお嬢様目が行ってらっしゃるぅぅ!!
「ちくしょーーっ!不幸だーーーっ!!」
脱兎のごとく逃げ出し…今に至る。

このままではエンドレスなのでとりあえず止まる。
「ほらっ!上条さんは止まったから訳をォーーーっ!?」
「死ねやぁァァっ!!」
振り向いたその先には、
目がイっちゃった雷を纏ったお嬢様が。
(神よワタクシ上条は止まったのになぜこうもヒドいことをっていつも通りですねそうですねよし言うぞ、不幸だーーっ!!)
直後に轟音。

続く。

788■■■■:2008/08/27(水) 23:00:28 ID:3ANlZaT6
禁書ってエロが書きやすいからな
ここまで少年王道行ってると逆に非エロが書きにくいんだよ
だからエロパロが流行ってるんじゃないかな

789■■■■:2008/08/28(木) 10:05:02 ID:1IlaqiEs
あれ?まさか>>787 も禁書がいないIf書いてるのか奇遇だ。

790ogura:2008/08/28(木) 18:31:29 ID:NBwjdtwU
SEXで占うあなたの未来!!
いやらしい体験をしてみてね(〃^―^〃)
ttp://blog.m9ec.com/nnmkde/

791■■■■:2008/08/28(木) 23:23:39 ID:WG3dk30Q
>>787
IFなら上条さんが御坂の名前を知った過程もkwskよろしくww

792787:2008/08/28(木) 23:57:11 ID:1uaFAVQc
えっと時間設定としてはオルソラとか助けたりテッラを倒したりした後の冬休みです
関係としては当麻はインデックスと会ってるけど原作ほど仲良くないってことで

793■■■■:2008/08/29(金) 02:41:04 ID:iKJRcULQ
ちょっと参考までに質問していいすか?
SS書いてるんだけど(とはいってもあまりすすんでない)
オリキャラがメインヒロイン張ってるんですけどどうでしょ
そういうのアリ?
あとやっぱ前のスレとかみるに完結してから投稿したほうがいいんですかね

794■■■■:2008/08/29(金) 07:53:13 ID:T5/eXUVU
主人公が上条ならそこまで問題じゃないかと
書き込む時はある程度仕上げてからまとめて書き込まれた方が読み手としては喜ばしいかなw
長くなるなら何回かに分けて投稿するのも一つの手です

後、メインやヒロインにオリキャラを使ったりするときは投稿する前に注意書きとかするのが好ましい

795■■■■:2008/08/29(金) 09:00:25 ID:h1GaEvOY
>>793
とりあえずせっかくのオリヒロインが受け入れられずにボコボコに叩かれたり
反応が無かったりしても泣かない&途中で投げ出さない覚悟があるならどうぞ。

796■■■■:2008/08/29(金) 10:50:20 ID:s4bi1jYQ
>>794-795
㌧ わかりました。とりあえずがんばってみます。

797■■■■:2008/08/29(金) 22:27:15 ID:T5/eXUVU
>>796
まあ、別にあんたの書くSSなんかに興味ないけどせっかく頑張って書いてるんだし、どうしてもって言うなら仕方ないからちょっとくらいは応援してあげないこともないわ
か、勘違いしないでよね?べ、別に内心どんなSSを書いてくれるのかとか期待したりなんか全然してないんだからっ!
ちょっと、何笑ってんのよこのバカッ!!////
まあ、あんたなんかが書く文章なんかどうせ誰も見向きもしないでしょうけどね
な、何よ。何落ち込んでんのよ?
え?誰も読んでくれなかったらどうしようって?知らないわよ!
って、ちょっと何よ!そんな目でこっち見ないでよ気持ち悪いわね!
わ、わかったわよ。可哀想だし私だけでも読んであげるわよ
え?何勘違いしてんのよ!///
誰にも読んでもらえなかったら可哀想だから読んであげるだけよ!深い意味なんかないわよ!
で、でもこの私が読んであげるって言ってるんだからさっさと書き上げて投稿しなさいよね!あんまり遅かったら罰金だからね!罰金!

…………途中で諦めたりしたら許さないからね....





と、ちょっとツンデレ風味に応援してみるww

798fura:2008/09/08(月) 15:15:17 ID:3HNag8dM
あのおっぱい見たらムラッとするよな〜
ttp://l.ivedooor.com/

799■■■■:2008/09/22(月) 18:10:50 ID:rfJxsHZ2
灼眼のシャナのクロスはどうだろう?

灼眼の主人公くんの「あとで直せばよくね?」的な考えに
カミヤン、ブチギレ!紅世の輩の存在を知った魔術サイドも
駆けつけて戦争開始

血みどろな話になりそう・・・・

800■■■■:2008/09/22(月) 18:16:08 ID:rfJxsHZ2
ココ過疎ってきたから≫799のネタとSSを転載

801とある魔術の聖杯戦争:2008/09/22(月) 18:18:08 ID:rfJxsHZ2
 【とある魔術の聖杯戦争】〜始まり予感〜

 今より、二時間前。 ある魔術が発動した。

 イギリス清教がこの魔術を観測したのが一時間半前である。
 この魔術を解析・照合した結果、とある魔術だと判明した。
 それは、20年前にとある街を焼け野原に変え、10年前に
ローマ正教により封印されたはずの術式だった。

 イギリス清教はただちにローマ正教へ抗議するが、「我々では
ない」との事だった。
 どうやら、ロシア成教も抗議をした様だ。

 では、一体誰が?

 発動から三時間後、反応が突然途絶えた、
 何かが始まろうとしていた。

 観測されたポイントは日本のとある街。 その街の名は、

       『学園都市』

 魔術と科学が交差するとき、物語が始まる

802■■■■:2008/09/24(水) 20:57:17 ID:UK7Z7ET2
順調に過疎してる。
…ねえ、書いてもいい…?

あの、その、新参者で、半年ROMってないんだけど…。
上げるの意味すらよくわからず、とりあえずsageってうってるような馬鹿だけど…。
だ、駄目ならだれかが書くの待つんだけどさっ…!

803■■■■:2008/09/25(木) 03:31:56 ID:6H.k6l3w
「学園都市だろうが科学サイドだろうがまとめて【粉砕】できるだろうしさ」
って言葉から妄想してしまった
踏み台?何それ美味いの?だから見る人は選びます

東方紅魔郷×フィアンマ、
STGの戦闘前会話と戦闘後台詞みたいなもん、かな

フィアンマ「奥に篭りきりで分からなかったが、まさか『あれ』が『あそこ』に行ったとはな。全く、ヴラドの末裔も堕ちたものだ」

紅色の境〜
美鈴「ここは通しません……って、素通りしないで!ここは通さないって言ってるのよ!」

フィアンマ「眼中にないんだよ」

暗闇の館〜
フィアンマ「ふん?中々の蔵書だ。まあ、偽書、写本の類が殆どだろうがな」
パチュリー「そこの赤いの!私の書斎で暴れない」
フィアンマ「動かない大図書館……もしもの時の代用品にはなるか」
パチュリー「酷い惨状…汝の隣人を愛せよって十字教のやる事じゃないわね」
フィアンマ「まつろう民は寛容を、逆らう者は打ち倒す。ハッ、我等が偉大なるローマ正教は2000年前から何も変わらんよ、それに人間外にその教えを適用するつもりはないな」

フィアンマ「喘息持ちか。いかんな、産まれた時から人間を外れている者がそのような体たらくでは」

紅い月に瀟洒な従者を〜
フィアンマ「お前らに用は無いんだが……いかんな、そうも強情な態度を取られるとこちらも相応の態度で返したくなる」
咲夜「ここは通しません、お嬢様は滅多に人に会うようなことはないわ」
フィアンマ「違うな、違うんだよ。正確にはその妹の方に会いたいんだがな」
咲夜「どちらでも同じ事、あなたはお嬢様達には会えない。それこそ、時間を止めてでも時間稼ぎが出来るから」

フィアンマ「この館の攻撃もお粗末な物だが。楽しいな、圧倒的な勝負ってのは、馬鹿馬鹿しくてもやっぱり楽しい」

エリュシオンに血の雨〜
フィアンマ「居るんだろ?従者も大概片付けたし、出て来いよ」
レミリア「やっぱり、人間って使えないわね」
フィアンマ「いかんなあ、そういう反応は。まるで館の主人としての器に合わんように見えてしまう」
レミリア「ふぅん……で?」
フィアンマ「お前の妹をくれ、あらゆる物を破壊する力……あれが欲しくなってな」
レミリア「あげなきゃいけない理由が分からないわ」
フィアンマ「ふん?拒む気か?この世からお前が出て行くことになってもか?」
レミリア「ここは、私の城よ?出て行くのはあなただわ」
フィアンマ「さあて。どっちが出て行くと思う?」
レミリア「しょうがないわね……今はお腹いっぱいだけど――――こんなに月も紅いから本気で殺すわ」
フィアンマ「勇ましい事だが……たかが500年では―――残念だな」

 「熱い夜になりそうね、燃える赤」
 「短い夜になりそうだ、吸血鬼」

804■■■■:2008/09/25(木) 07:06:25 ID:senGw0Ic
えー…
生存確認。
何人いる?とりあえず、一。

805■■■■:2008/09/25(木) 10:00:53 ID:.Wlss.aM
ひとーり(^-^)/

806■■■■:2008/09/25(木) 11:10:30 ID:TExiqm1g
ふたーり(^-^)/

807■■■■:2008/09/25(木) 14:01:37 ID:kxFk4p/o
さんまー(^-^)/
≫802さん ガンガン書いてください
≫803 禁書でも特に扱いにくい吸血鬼とフィアンマを
だすとは・・・なんてだいたんな。

808とある魔術の聖杯戦争:2008/09/25(木) 15:16:06 ID:kxFk4p/o
 【とある魔術の聖杯戦争】 序章一

 〜不幸な少年〜

 土曜日の朝、上条当麻は身体に違和感を感じて目が覚めた。
本当はもう少し寝ていたかったのだが、違和感が気になって起きてしまった。
 違和感の原因は彼の右腕、なんだか異様に熱い。
まるで右腕だけが熱にうなされている様だ。
 上条はのっそりと右腕を顔の前にもってくる。

  ・・・−ん?

 右腕に身に覚えの無い『刺青』があった。
それは薄暗い紅色で、三つの図形を重ねた様だった。

 嫌な予感がした。(いや、確信だろうか)

 上条当麻は不幸な人間だ。
この刺青が、三つまで願いを叶えてくれたり。 
勇者に選ばれた証でもないのは分かる。(自分で言ってて嫌になるな)
 では、この刺青は何だろう?
 誰かのイタズラ? いや、密室トリックにしても目的がショボ過ぎる。
第一、バレない訳がない。 だとしたらコレは・・・

     『 異能 』

 腹の辺りから不安がイッキに込み上げてくる。
こういう時に脳を駆け巡るのは『その模様が全て消えれば・・』や
『その刺青が全身に廻れば・・』という不幸ワードばかりだ。
                 イマジンブレイカー
 とにかく、この身に宿る唯一の能力『幻想殺し』で破壊を試みるが、
人体の構造上、届かない。
「くっ、くそ! 届かん!!」

「ハっ、そうだ! インデックス。」
 上条当麻の部屋の同居人(もとい居候)。
 あの少女なら何か知っているかもしれない、少年は僅かな希望を手に入れ。
バスルームをあとにする。

809とある魔術の聖杯戦争:2008/09/25(木) 15:17:59 ID:kxFk4p/o
 【とある魔術の聖杯戦争】 序章一

 〜白い修道女〜

 居候シスターはすでに目を覚まして、朝のお祈りをしていた。
 彼女は10万3000冊の魔道書を頭に記憶している
トンデモ少女だ。 この刺青も知っているかもしれない。
「インデックス! インデックス〜〜!!」
 僅かな希望にすがりつくように少女の名を叫ぶ。
「とうま!静かに、お祈り中だよ。」
 冷静に足払われたが、ここで引き下がる訳にいかない
上条当麻。
「これ見て!インデックス!!」
 上条は勢いよく右腕を差し出す。 それを少女はうっとうし
そうに目をやる。

 「・・・・・−−−っえ!????」
 目をまんまるにしてアリエナイもの見るようにしている
少女の姿に上条はダラダラと汗を流す。

 「−そんなっ、 『令呪』!? うそ・・ありえない・・・」
 「何、ナニ、なにー! レイジュって何!??」
 彼女がこんなにうろたえるのは尋常じゃない。
やっぱり死の呪いなのかー!!と絶望する上条

 「とうまっ、落ち着いて聞いて。『令呪』っていうのはね・・・」
 「ふん!ふん!」
 「聖杯に選ばれた証なんだよ。」

 「ーふん?」
 以外にも死の呪いの類ではなかった。
 (・・・聖杯?)
 上条の知識で聖杯といえば映画よろしく、万病を癒し
不老不死にしてくれるステキアイテムだ。
 (とりあえず危険なモノじゃないのか?)と安心する上条。

 安心する上条に対して非常に真剣な顔つきで説明するインデックス。

 「・・・『令呪』は聖杯に選ばれたマスターの証であり
『聖杯戦争』に参加できる資格なんだよ。」
 戦争という物騒なワードに再び身体を強張らせる上条。
 「ーーちょっ!なに?戦争ー!??」
 少年の言葉に小さくうなずくインデックス。

 「いい?とうま。 『聖杯戦争』ていうのはね・・・・・」

810とある魔術の聖杯戦争:2008/09/25(木) 15:20:04 ID:kxFk4p/o
 【とある魔術の聖杯戦争】 序章一

 〜為すべき事〜

 結局、インデックスが一時間以上『聖杯戦争』について延々と
説明してくれたが、半分も理解できなかった上条当麻だ。

 とりあえず『令呪』の消し方を聞いてみた。
 「『令呪』の消し方その一、とうまの右手で消す。」
 「だから、届かないんっだってば!」

 「その二、『令呪』を消費して他人に譲る。」
 「お前さっき『令呪』は魔術の類だって言ったじゃん!
オレに爆死しろってかっ!!」

 「じゃあ、その三、右腕 切るしかないね♪」
 「うん。そうだね♪ ・・・ってなるかぁぁああああああ!!!!!!」

 そんな悪魔の三択を迫った修道女は今、不幸に打ちひしがれている少年
を無視してイギリス清教に連絡をとっていた。
 白い修道女の声を聞きながら、
 (戦争か・・・・・・・・・・。)
 自分の右腕を眺めながら上条当麻は思考する。

聖杯戦争について、

令呪について、

右手に宿る『幻想殺し』について、

自分の為すことについて、

そして、
(英霊か・・・・・・・・・・・・
日本語通じなかったらどうしよう・・・。)
 そんな、割とどうでもいい事を考えていた。

 まったく危機感の無い上条当麻だった。

811■■■■:2008/09/25(木) 15:22:19 ID:kxFk4p/o
3話まとめて書き込もうとしたら
拒否られた。

812802:2008/09/25(木) 21:31:12 ID:senGw0Ic
えー…書いてもいいと言われたので書きますね?
じゃあ、説明から

タイトル「とある少年の失くした日常」

テーマ「最初に当麻が記憶喪失を打ち明け、でもしすたーが一緒にいたら」

あれ、ショートじゃないかも…。

813とある少年の失くした日常。:2008/09/25(木) 21:32:44 ID:senGw0Ic
序章〜白い部屋の少年は〜

その白い部屋で、透明な少年は白いシスターに告げた。
「…ごめん…」
謝らないで。少年は、とうまは自分の所為で記憶を失ったのにそんなのだめだ。
シスターはボロボロの笑顔を透明な少年に向ける。
泣くのはだめだと思った。誰より辛いのは、その少年自身なのだから。

……思い出して、欲しい。彼の為にも、誰より自分の為に。

けど、それは無理なのだ。少年が幻想殺しである限り。
回復魔術さえ、打ち消してしまう。
覚えてないが、彼が記憶を失ったのはインデックスの放った、
光の攻撃の所為である、らしい。

こらえきれなかった涙がポロリと頬を伝った。
けれど、それでもインデックスはボロボロの笑顔を向けた。
「…ありがとう、とうま…。そして、ごめんね…」
そういって、病室を去ろうとした。けど、その足を少年が止めた。

「まって!君、きっとおれの知り合いだったんだろ?」
振り返ることも、出ていく事も出来やしなかった。
「教えてほしいんだ、おれの事。…嫌だったら…いいから」
インデックスは振り返る。病室のベット脇の椅子に腰かける。

「じゃあ…自己紹介から…私の名前はね、インデックスっていうんだよ?」
「…偽名?」
「見ての通り、協会の者です、ここ重要。あ、バチカンの方じゃなくてイギリス清教の方だね」
「え、無視?意味もわからないんだけど…」

インデックスは前にとうまに説明した内容を繰り返す。

「うーん、禁書目録のことなんだけど。あ、魔法名ならDedicatus505だね」
「えー…。じゃあ、おれの名前は?」

…それも、言ってあげなきゃ分からないんだ。
その言葉を口にするのは辛かった。

「か…上条、当麻…。とうまっていうんだよ?」
「上条当麻…。なあ、どうやって知り合ったの?」

なにも覚えてないことが悲しくて、色がついてきたのが少しだけ嬉しくて。
その少年に、薄く、薄く、色がついていた。
でも、とても薄い色だ。

「私がとうまのベランダに引っかかってたんだよ?」
「おれ、何処に住んでたの?」
「学生寮の七階のベランダで、インデックスととうまは出会ったんだよ」


何も覚えてない少年。だからインデックスはとうまの為に、傍についていようと思った。
彼が自分の事を覚えてなくても、彼は「上条当麻」。インデックスの大好きだったとうま。
覚えてないからそれでバイバイというのは悲しすぎる。

「おなかがへったって言ってるのにとうまはね………」
…。

その様子を、冥土返し…カエル顔の医者はドアの向こうで聞いていた。
(まあ、頑張るんだね?上条当麻クン?)

814とある少年の失くした日常。:2008/09/25(木) 21:33:36 ID:senGw0Ic
幕間〜隣人との出会い〜

ぴーんぽーん、と上条宅のチャイムが鳴った。
それを聞き、今までギャーギャー騒いでたインデックスと上条当麻がビシッと固まった。

「カミや〜ん?ちょっとご飯余ったからいらにゃいかにゃー?」

「(どうしよう、インデックス。相手はおれの知り合いっぽいんだが)」
「(うーん。わ、私が応対しようか?)」
「(…わりい、自分で行く)」
「(と、とうまっ!?なにそのお前には任せられねえ的な顔は!?)」

けど、どうやって言えばいい?


記憶喪失なんて。


ガチャリとドアを開ける。手が震える。

「今日はシチューなんだにゃー!…カミやん?どうしたにゃ?」

どう、告げればいい。

口を開いたのは、インデックスだった。

「誰?」
「にゃ?上条当麻の隣人、土御門元春だぜい。このシスターはっ!?カミやん!?」
「ちょっと言わなくちゃならないことがあるから中に入って。いいよね、とうま」
インデックスが普段より硬い声でいう。
「??」

インデックスが金髪サングラスを引っ張って行った。
いわなきゃ、いけないこと……。
(やっぱ、おれが言うんだよな……)

「言わなきゃならないことって…なんだにゃー?」
「………えっと………き…くそ…しつ…」
「聞こえないぜよ。はっきりいうんだにゃー」

「…おれは、何も覚えてないんだ」
「…にゃ?」
土御門がわけがわからないといった風に眉をひそめた。

「つまり、とうまは記憶喪失なんだよ」


「…。カミやんは何も覚えてないと」
「ああ」
「おれの事も、そうなった原因も」
「そう」

…………。


「とりあえず…シチュー食べるぜよー!」


インデックスと当麻が眼を白黒させる。

「ブルーなのとか土御門さんは嫌いですたい。舞夏の料理は激ウマだにゃー!」
「…誰?」
「ふっふっふっ…我が義妹だにゃー!」
「妹?お前、妹がいるのか」
「いもうとはいもうとでも義理の妹だにゃー。さて、二人は喰らうか!?」
「食らうー!」

インデックスが即答し、土御門宅に向かう。


「舞夏のやつがにゃ、『作りすぎたから隣人にでもあげるんだぞー』っていってたんだにゃ」
「へえ…」

「あ、カミやん明日から一人で補習だぜい」
「うわっ、マジかよ…不幸だー」
「にゃー…、今回のは自己責任だと思うんだがにゃー…」
「だって、知らない間に起こったのと同じだもん!カミジョーさん初耳だもん!」

「あ、学校ってどこにあるんだ…」
「……明日、忘れもの取りに行くから一緒にいくかにゃー…?」
「まじでか、ありがとう土御門!」

喋ってる間、インデックスはずっと食べていた。一心不乱に。
シスターがこんなんでいいんだろうか、教会。



さてさて、二人が帰った後。
土御門は、顔を手で覆った。
(まさか、記憶喪失だとは…)

プライベートに仕事は持ち込まない。
だから、必要な情報を調べた後、スパイとしては動かなかった。
知る必要のないことだと、調べなかった。

(オレも…参戦したかったにゃー)

そしたらもしかしたらあの少年は。覚えていたかもしれないのに。
そう考え、土御門は口を歪めた。今更、そんな事を言ったってしょうがない。


(カミやん…頑張るんだにゃー……)

815とある少年の失くした日常。の人:2008/09/25(木) 21:37:55 ID:senGw0Ic
しばらく幕間が続く予定です。
つまり、一巻でも二巻でもないのが幕間です。

えーと一週間以内に更新するんで…あの、まあ、感想とか?

ご、ご指摘とか下さい…(びくびく)

816■■■■:2008/09/26(金) 01:11:49 ID:.LbQZ0Gg
GJ!!
とても面白いよ
記憶喪失を明かした上条さんとインデックスがいっしょに
いるって設定も初めて見た!
次も期待して待ってる

ついでに上げ下げってのも説明しとく
ここや2chではsageってうたないとスレが板の一番上に行くんだ
で、上に行くとどうしても人の目に留まりやすくなるんで
変な奴や広告が来ることが多くなるんだ
だからなんか事情があって多くの人を呼びたい時以外はsageて
あんま目立たないようにするんだ

817とある少年の失くした日常。の人:2008/09/26(金) 07:15:42 ID:F4bWW1rg
≫816
ありがとうです!
単にインデックスと当麻が好きだから書いてみたかったんです。
頑張って書くので待っててくれると嬉しいです。

上げ下げってそういう意味なんですか…。
ありがとうございます。

818■■■■:2008/09/26(金) 18:23:27 ID:A08YcVEs
いやぁ〜面白かったGJw
これは期待w
あと安価つける時は>>817 ってやるんだぜぃ。ともかく良かったよ久しぶりさ

819■■■■:2008/09/26(金) 19:00:59 ID:BJsWuwPg
・・・いい。
何がいいって、土御門の親友っぷりが最高!

あと、ここは下げてばかりじゃいけないので上げます
ヴィトンに押し下げられちゃダメだ!

820とある少年の失くした日常。の人:2008/09/26(金) 19:35:38 ID:F4bWW1rg
>>818
で、いいんでしょうか…。
ともかく、ありがとうございます、とても嬉しいです。
幕間終わったら二巻内容をちょっと変えて送り届けます。
>>819
ありがとうございます。
個人的にあの人も大好きなんですよ(笑)
次あげてみます。

ちなみに、この人出してって希望があれば出番が増えます。
まあ、まだまだの未熟者ですが、希望があれば…。
(まだ読み始めてから一週間弱なんです、下手でも目をつぶって下さい)

821とある少年の失くした日常。:2008/09/26(金) 19:37:00 ID:F4bWW1rg
「カミやん!起きてるにゃー?」

「インデックス!冷蔵庫の中身夜食べただろ!」
「食べてない!私が食べたっていう証拠が何処にあるの、とうま!」
「ほほう…。その口についたチョコは何なのかなぁ…?」
「ビクッ!た、食べてないもん!」

「あーもう時間じゃねえか…あれ、土御門、ちょっと待っててくれ」
「うにゃー…」
「じゃな、インデックス。お昼、そこのおにぎり食べててくれ」

土御門に案内してもらいつつ、学校へ向かう。

「あれ、カミやん昨日小萌先生からラブコール(電話)来なかったんにゃ?」
「電話線抜いてるから」

土御門の顔がひきつった。
しょうがないんだ、電話なんて怖くて取れないぜ畜生!

「あーそこが女子寮だにゃ」
「ふーん…クラスメイトって何人?」
「覚えてにゃいにゃー」

「あ、○○駅で下車だぜい」
「歩いて通えるようにもなったほうがいいよなー」
電車が止まった時、道が分からないとか間抜けすぎる。

「あ、そこのパン屋にとあるばかがいるんだにゃー」
「…」
「あ、オレとカミやんとそいつで三馬鹿って呼ばれてるぜい」
「まじかよ」

こんな風に、二人は歩いて行った。

822とある少年の失くした日常。:2008/09/26(金) 19:38:17 ID:F4bWW1rg

「ちょっと早かったぜよ…。今の時間、小萌先生は職員室だにゃ!」
「えーと、小萌先生って、担任?」
「そうだぜい。あ、教室に行っててだにゃー。小萌先生呼んでくるから」

ふらりと歩いていく土御門を必死の思いで止める。
「待て土御門、教室ってどこだよ!?」
「あー…向こうにある一年の、そこの教室」
「さんきゅ。わりいな、色々」
「困った時はお互い様だにゃー」

土御門に教えてもらった教室に入る。
(ふーん…この間までここで授業受けてたんだ…)

教室の戸がからからと開く。
「で、土御門ちゃんは何しに来たですか〜?」
「いやまあいろいろだにゃー…(ホントは忘れものなんてしてないにゃー)」
「あ、上条ちゃん。じゃ、授業を始めるですよー」

………。

「(土御門、この小学生誰!?)」
「(いうなカミやん!小萌先生は小学生じゃなくビールの味の違いがわかる大人だぜい!)」
「(それもう犯罪じゃ…!?)」

ちなみにこの会話、先生にも聞こえちゃったようで。
小萌先生、俯いてプルプル震えてます。
表情が確認できてたら泣きそうかもしれません。

「…上条ちゃんは、上条ちゃんは、せ、先生をからかいに来たですかー…?」
「ち、違うんだにゃー、これには訳があるんだにゃー」

823とある少年の失くした日常。:2008/09/26(金) 19:39:03 ID:F4bWW1rg
「記憶、喪失?」
「はい…。そうです」
「か、上条ちゃんが?ど、どどどうしてですかっ!?」

小萌先生があわてている。そりゃそうだろう、誰だって知り合いが記憶喪失になれば驚く。

「いや、それも覚えてません」
「…原因だけ覚えてたらある意味怖いにゃー」

教室で、先生と生徒二名が向き合って座っていた。
一人が土御門元春、一人が上条当麻、そして先生が小萌先生である。

「そそそんなっ…か、上条ちゃん、大丈夫なのですか!?」
「平気です」
そういって、笑った。その笑みは、何処となく透明だった。

「な、何かあったら先生に言うのですよー?」
「あ、ありがとうございます」
「…今日は、特別に休みにします。だから、ちょっと頭の中整理してくるのですよ?」
「…はい」

「じゃ、気をつけてなのですよ」
「はい、さよなら」

まず当麻が出て行こうとした時。
そこにあった机に足を引っ掛けて転んだ。

「あー…不幸っぷりは健在なんだにゃー」
「…今のはドジというのではないですかー?」

そして、先に当麻が出ていき、土御門も行こうとした時に小萌先生に呼び止められた。

「あ、つ、土御門ちゃん!」
「…なんだにゃー?」
「………か、上条ちゃん、気にかけてあげてくださいなのですよ」
「OKですよ、小萌先生?」

824とある少年の失くした日常。:2008/09/26(金) 19:41:38 ID:F4bWW1rg
ということで、以上、幕間でした。
次は二巻内容に向かう予定です。
あ、もうあげてたんですね、馬鹿な私をお許しください。

さて、どうしたものか…。手元に二巻がない。
うろ覚えでもいいでしょうか…。

825■■■■:2008/09/26(金) 19:43:45 ID:F4bWW1rg
アップの予告がなかった…。

826とある魔術の聖杯戦争:2008/09/26(金) 19:44:02 ID:BJsWuwPg
そういえば。自分のSSに注意書きしてなかった
いまさらだけど・・・・・

注)本作品は禁書とFateのクロスSSです。
便宜上それぞれの公式設定等が都合良く
改変・捏造されているので注意して下さい

テーマはFateの十年後と禁書の13以降14未満の
ストーリを無理やりクロスさせた物です。

Fateは基本的にアニメルートを軸にするので
桜ルートLoveな人にはオススメできません。

感想・ツッコミ・ふざけんな!等がありましたら
きのこクロススレにお願いします
あそこ過疎らせないで!お願いします!

827とある魔術の聖杯戦争:2008/09/26(金) 19:44:06 ID:BJsWuwPg
そういえば。自分のSSに注意書きしてなかった
いまさらだけど・・・・・

注)本作品は禁書とFateのクロスSSです。
便宜上それぞれの公式設定等が都合良く
改変・捏造されているので注意して下さい

テーマはFateの十年後と禁書の13以降14未満の
ストーリを無理やりクロスさせた物です。

Fateは基本的にアニメルートを軸にするので
桜ルートLoveな人にはオススメできません。

感想・ツッコミ・ふざけんな!等がありましたら
きのこクロススレにお願いします
あそこ過疎らせないで!お願いします!

828とある魔術の聖杯戦争:2008/09/26(金) 19:45:24 ID:BJsWuwPg
やべー!!
二度押ししちゃった!!
ごめーんなさーい

829とある魔術の聖杯戦争:2008/09/26(金) 19:58:15 ID:BJsWuwPg
アホなこと書いてる間に
≫821あがってた!GJww!
≫予告ってするもんなの?

830とある少年の失くした日常。の人:2008/09/26(金) 20:37:49 ID:F4bWW1rg
>>829
あ、いや、私的にいつまでには投稿しますよ
って書いといた方が分かりやすいよなーっておもって…。

あ、明日には二巻内容入ります〜。

831■■■■:2008/09/27(土) 02:51:40 ID:Cpj/LZaM
wktkが止まらない!!
書くのもはやいし、その上一週間弱でキャラを掴めるように
なるなんてすげー!

リクエストには原作で不遇な姫神をお願いします

>さて、どうしたものか…。手元に二巻がない。
>うろ覚えでもいいでしょうか…。
物語の細かいところが必要なら手元にあった方がいいと思う
設定の細かいところが必要なら禁書wikiで十分だと思う

832とある少年の失くした日常。:2008/09/27(土) 07:21:00 ID:iX1pZYF2
第一章〜錬金術師と魔法使いなディープブラッド〜

「あつい…」
「…あついな」
炎天下の中、シスターと少年は歩いていた。
今日は補習無しになったので、ちょっと街の探索に出掛けることにしたのである。

インデックスは誘わない方が良かったんじゃ…。

「とうま、あれ」
…インデックスが指したのは、アイスクリーム店だった。
別にお金は無くもない。で、食べたいのかと聞くと――。


この後上条当麻は正直者と優しい人は別だという事を知るが、それはまた別の話。


そして、『今の』上条当麻にとって、とっても恐ろしい言葉がかけられる。

「あ、カミやん…!?なんやのその子は!?」

「…えーと…」

上条当麻はこいつと友達だったんだ〜…。

「(なあ、インデックス、コイツにはどうやって言えばいいんだ?)」
「(うーん…つちみかどーって人の方がはなしやすかったかも)」

「あ、とうま、あそこで話すことにしない!?」

インデックスが指したのは、とあるファーストフード店。

833とある少年の失くした日常。:2008/09/27(土) 07:27:29 ID:iX1pZYF2

シスターと青髪ピアスと巫女さんと不幸な少年が座っていた。

上条当麻はおなかのすいたインデックスにシェイクをおごらされた。
三つも。
むしろそんなにたくさん食べられるのか。あれすっげえ甘いのに…。

それは置いといて、
「えーと、君、おれの知り合いなんだよね?」

巫女さんと相席になってるが、まずそっちは置いといて。
とりあえず、この青い髪の二次元星人から片付けよう。

「は?何いうてますのん、カミやん。記憶喪失みたいなことは言わんでええから「それだよ」

青髪ピアスが首をかしげた。

「それは不思議系でんぱ「だから本当に記憶喪失なんだよ」

ちょっと黙る。インデックスがシェイクをチューチューすする音だけが聞こえる。
ふと、巫女さんが何か言ってることに気付く。

「く、」
あ、やばいデジャヴだなんかこんなこと前にもあったような――!?
「食いだおれた」

…聞かなかったことにしよう。
「で、青髪ピアス、なにか聞くことあんのか?」
「いや、話しかけられたら返事はするもんやで、カミやん」

そうは言われても不思議すぎる…。

「ほら、とうま話しかけてみてよ」
「いや、待ってください…」
「どうせじゃんけんやってもカミやんが負けんのやろ?だったら最初からカミやんが…」

不幸な上条当麻はじゃんけんで勝ったことはほとんどない。
(勝ったら掃除当番の場合は勝つ)

834とある少年の失くした日常。の人:2008/09/27(土) 07:32:38 ID:iX1pZYF2
>>831
スローガンは
「過疎化に歯止めを」です。
ホントは読むほうが好きだったりもするのですが。
でも、書くのも好きです。
ああ、可哀そうな姫神…。次は二巻なので、姫神が活躍する予定です。
今覚えてるのでここまでですね。あとは原作がないと…。

明後日から明々後日に更新します。

835■■■■:2008/09/27(土) 14:12:29 ID:PBhRVhNw
うん。カミヤンがじゃんけんで勝つのは
そういう時だけだね♪

836■■■■:2008/09/27(土) 15:25:57 ID:PBhRVhNw
立ち読みしちゃえばいいんじゃない?

837とある少年の失くした日常。の人:2008/09/27(土) 15:32:04 ID:iX1pZYF2
>>836
ん、いやキャラの喋り方とか、セリフとか。
学校にあるから。それ以前にストーリー暗記してるから。
でも、セリフまで覚えられないよ…。インデックスじゃあるまいし…。
細かい情報をもとにつくってるからさ…。

838とある少年の失くした日常。の人:2008/09/27(土) 17:53:40 ID:iX1pZYF2
あー…。書けないから代わりにこの先の予定など。
序章終章合わせて六章完結予定。
一章につき、一巻ずつ。五巻は飛ばすと思う。
その後は題名変わるか、オリキャラメインの話に移行。
題名変わる場合はオリキャラメインも片手で書きつつって所。

まあ、今のところはこういう予定ですの。
オリキャラメインはちょっと書きたくなったんですの。

839とある少年の失くした日常。の人:2008/09/27(土) 18:38:05 ID:iX1pZYF2
ああっ!
813誤字発見…。
協会って書いてあるところ、教会です…。

840とあるシスターの長い一日。:2008/09/28(日) 07:17:11 ID:KV0x.UTQ
とある少年の失くした日常番外編。

「とうま…」
今日は当麻が補習という事で土御門と出かけて行った。
今日は一人ぼっち。家にだれもいない。

「猫とかいたらいいのに……」
一人は寂しい。

インデックスはころころ転がった。

とうま、遅い。
もしかして、何かに巻き込まれたりしてないよね…。
あんな思い、もうしたくない。

とうまがまた記憶喪失なんかになったらどうしよう?

インデックスはそれが一番怖い。
一人でいると思いだしてしまう。

とうまがいなくなるのと同じぐらい、怖い。

はっきり言って、インデックスの全てはとうまだった。
とうまを中心に世界は回っていた。


…そして、ガチャリとドアが開く。
「ただいま〜。あれ、インデックス?」
「とうま!遅いんだよ…!」

白いシスターは大好きな少年のもとへとかけて行った。

841■■■■:2008/09/28(日) 13:41:38 ID:NbN2xw4E
そうだよなー
オリキャラ書きたいよなー

でも需要の無いオリキャラ・・・
こんなに愛してるのに・・・・
恋愛(SS)はむずかしい

842naho:2008/09/28(日) 17:11:02 ID:iKKT8jOA
猛獣使いの悲劇がここに!!!
ttp://tt.doko141.com/

843とある少年の失くした日常。の人:2008/09/28(日) 18:04:12 ID:KV0x.UTQ
まあ、色々あって。
色々というのは巫女が魔法使いだと名乗ったり、そこからシスターVS巫女の戦いが起こったり、
その巫女が百円くれとと言ってきたり、顔を売って金をもらおうとしたりという事である。

ふと、周りを見ると同じような服を着た十人ぐらいの男が立っていた。

(―っ!?)
これだけ接近されながら気付かなかった。しかも彼らは個性がなさすぎて、逆にあやしい。
その瞳には何の感情も浮かんではいない。…おかしい。

目の前にいる巫女さんは、これだけの人に囲まれてるのに瞳に感情がない。

そして彼女はこの人達は塾の先生だと言って、百円を受け取り去って行った。

844とある少年の失くした日常。の人:2008/09/28(日) 18:06:42 ID:KV0x.UTQ
あ、名前みすった…!
>>841
書きたいんです…。えーと当麻に恋する女の子…みたいな…。
(うわーよくあるー)

845とある魔術の聖杯戦争:2008/09/29(月) 14:41:06 ID:Ol8pZC.A
 【とある魔術の聖杯戦争】 序章二


  〜赤の魔術師〜


 「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。」

 ここは学園都市の地下街。
 その地下街の空き店舗に彼は居た。

 肩まである髪を赤く染め、耳にはピアス、一〇本の指には銀の指輪、
右目の下にはバーコード柄の刺青。
 
 ステイル=マグヌス。
         ネサセリウス           
 イギリス清教『必要悪の教会』に所属する、ルーンの魔術師だ。

 「祖には我が大師シュバイオーグ。降り立つ風には壁を。四方の
門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。」

 足元の魔術陣が紅く光りだす。ステイルが店舗内の内装をどかして、
床に刻んだものだ。
 (まったく・・・。世界のあちこちを飛び回ったところで、あてがわ
れるの仕事はこんなものばかり)
 彼が教会より受けた指令はこうだ。

 『学園都市にて、聖杯降霊の術式が発動した。これの調査にあたり
役割を三つに分ける。
・・・聖杯戦争に参加し勝ち上がる者。
・・・外側より調査・補助する者。
・・・内側より調査・補助する者。 』
 ステイルの役は『内側』。つまり、聖杯戦争に参加しながら調査
または他の参加者の排除である。

 満たせ 満たせ 満たせ 満たせ 満たせ 
 「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する。」

 英霊の降霊は本来。こんな小さな陣で行えるものではない。
しかし、聖杯のバックアップがそれを可能にする。

 「・・・・・告げる。
汝の身は我が下に、我が運命は汝の剣に。聖杯の寄る辺に従い、
この意、この理に従うならば応えよ。」

 彼が敷いた陣を這うように炎が奔る。

 「誓いを此処に。」
 自分の魔力が此処ではない、どこかに繋がる。
 「我は常世総ての善と成る者。」
 どこかから、誰かの魔力が絡みついてくる。
 「我は常世総ての悪を敷く者。」
 彼の首筋に炎が奔る。
 「汝三大の言霊を纏う七天。」
 彼の首筋に『令呪』が焼付けられる。

 「抑止の輪より来たれ
−−−−−天秤の守り手よ!!」
 瞬間、炎は勢いを増し劫火となる。
 この炎がおさまった時に、かつての英雄は姿を現す。

 炎が晴れる。そこに現れた英雄は。

 
 幼い少女だった。

(・・・・・・・・・・・っ!!!!!!?????????)
 ステイルは驚愕をあらわにする。
 その少女は、見た目一〇歳くらいで、肩まである金髪を黒光りする
カチューシャでまとめておでこを出している。ちょっとダブついたパーカー
にチェック柄のスカート。下には膝辺りで折り返したジーンズを
はいている。
 どこからどう見ても現代の少女だ。

 ステイルは思考が完全に停止していた。ただ口をあけて驚愕する
ばかりである。

 そんな間抜け面の魔術師の前で少女は可愛らしく微笑んでいる。

846とある魔術の聖杯戦争:2008/09/29(月) 14:44:31 ID:Ol8pZC.A
【とある魔術の聖杯戦争】 序章二


 〜金色の魔法少女〜


 あまりの出来事に思考が止まってしまったステイルだが
はっ!と我にかえる。
 (・・・なんだこの子は?)
 サーヴァントの召喚。
それは『聖杯戦争』で戦わせる使い魔として、人よりも精霊に
近い存在である『英霊』を使役するものである。
 それにより召喚される者は必ずしも誰もが知る偉人ではない。

 しかしこの少女は『英霊』と呼ぶには激しく違和感がある。

 それはこの少女の姿があまりにも普通だからだ。

 肩まである金髪を黒光りするカチューシャでまとめ
おでこを大きく出し、瞳は茶色。
顔立ちも日本人のようで、よくよく見てみると髪の根元が濃い茶色だ。
どうやら染めているらしい。
 さらにはちょい大き目なダブついたパーカーにチェック柄のスカート。
下に膝のあたりで折り返したジーンズをはいている。

 見た目10歳くらいの少女はどうみても現代っ子だ。
 「・・・・・君は・・ほんとにサーヴァントなのかい?」
 「そういうお兄ーさんは本当に私のマスターなの?」
 聞き方が気に食わないのか、おもてだけの営業スマイルを浮かべ
ながらも声はツンとしている。
 「ほらっ。コレでいいかい?」
 そう言いながらステイルは修道服の襟を手でのけて首筋を
強調するように見せる。

 首筋に刻まれた『令呪』は炎のような図柄だった。

 「ふーん。 とりあえずマスターのようね」
 なんて態度の大きい子なんだ・・・。ステイルはイラつくを通り
越して呆れてしまう。
 
 「はー・・・・それでっ?君は何の『英霊』なのかな?」
 マスターがサーヴァントを知るうえで最重要がこれだ。
自分のサーヴァントの正体を知ることで長所や弱点を確認し
それにより弱点を補うこともできるのだから。

 「・・・乙女の ひ・み・つ♪」
 おい・・・。
 (ふざけているのか?)おもわず唇が引きつってしまう。
 「んーとねー・・・・・実はわたしもわからないの・・・」
・・・・・っ!
 「なんだろうねー?聖杯戦争とか魔術とか知識はあるんだけど
それをどこで知ったかっていう思い出がないんだよ、ヘンな感じ〜。」
 ステイルは思わずある少女を思い浮かべ、目の前の少女と重ねてしまう。
 かつて自分が守ると決めた。そして守れなっかたあの子に・・・・。
 「まっ。そんなのどうでもいいかー」
 ステイルの心境も知らず。本人はいたってあっけらからんとしている。
 
 「それで?お兄ーさんの名前は?」
 「・・・あ、ああ。 僕はステイル=マグヌス」
 ステイルの名前を聞くと少女はにかーと笑う。
 「わたしはリサ、クラスはキャスターだよ。よろしくね!」
 「・・・よろしく」
 ちょっとブルーになってるステイルをよそにこの子は元気イッパイだ。

 ふたりはその後すこししゃべってから空き店舗を後にした。
 誰もいない地下街に二人の声だけが響いている。

847とある魔術の聖杯戦争:2008/09/29(月) 14:51:36 ID:Ol8pZC.A
あー、ようやく序章二だ。めんどい・・・
自分のSSは序章3つで主人公を出してから始まる
ソウル@イーター方式です。
そのあとはグダグだと続きます


はやくねーちんとランサーやりたいなー
長編はしんどい・・・

848とある少年の失くした日常。:2008/09/29(月) 19:54:23 ID:7o.PpFHc
上条当麻は隣を見てため息をついた。
こんな小さい女の子と、同棲?

(まずいよなー…)

「あ」
インデックスが前を見て短く言った。
「とうま、ネ―」
「だめ」
「ま、まだ何も言ってないんだよ!」
「飼うのはダメ」

しょぼんとインデックスが肩を落とした。
そしてペタリと地面に座り込み、のの字を書き始めた。

「…だって…昼……とうま、いなくて…さみしいし…」

(……)

「……一人って…さびしいんだよ…やなこととか…思い出しちゃうし…」

(………)

「だから…だから…」
「ああもう分かったよ!いいよ飼っていいから!」
「本当!?」
インデックスが顔をぱあっと光らせていった。
そして、猫を抱きあげる。

「スフィンクス、よかったね」

「いやまてそれ日本産の三毛猫につける名前じゃねーよ!」


「…む?」
「どうした、インデックス?」
「属性は土、色彩は緑。
この式は…地を媒介に魔力を通し、意識の介入によって…」
「どうしたんだ?」

インデックスはルーン?と呟いて、とうまを見た。

「とうま、この近くで魔術が練られてる…!」

インデックスが当麻の腕につかまった。驚いてるとうまを気にもしない。
彼女は怖かったのだ、とうまを失ったら?

調べたいけど、何より残して行って、何かあったら?

しばらくそうしていて、帰ろうぜと声がかけられた。

「う、うん…」

「久しぶりだね、上条当麻」

849とある少年の失くした日常。の人:2008/09/29(月) 20:55:06 ID:7o.PpFHc
はい明日から明後日にかけて更新します。
ところで早いけど、四巻のキャラ入れ替えについて募集。
募集するのは
乙姫→
海の家の店員→

あと…インデックス役も…かな。
これは男じゃないとだめだなあ。

原作は乙姫が御坂、店員が御坂妹、インデックスが青髪ピアスだったけど。

私が考えてたのは一方通行なんかに乙姫…とか…。

850■■■■:2008/09/29(月) 23:56:12 ID:gFlobow2
タクシーの運転手にアウレオルス。
これが真っ先に思いつきました。。

851とある少年の失くした日常。の人:2008/09/30(火) 07:17:37 ID:zWw4V192
>>850
……うーん、顔、変わってるから分からないと思うんです。
面白そうだけど無理…。
じゃあ、タクシーの運転手も募集にかけまーす。

852とある少年の失くした日常。:2008/09/30(火) 07:47:08 ID:zWw4V192
…………。後ろから声がかけられた。
今、久しぶりって言われた。
それは上条当麻にとっての禁句だ、

「悪いんだけど、上条当麻だけ残ってほしいんだけど」

振り返る。そこにいたのは破戒僧という言葉が似合う、二mを越した神父。

「…なんで?とうまに何の用?」
「それはこいつにだけ話すよ、禁書目録。
 だから一旦帰ってもらいたいんだ。手荒な事はしない」

「嫌!失ったばっかりなのに…」
「…?」

神父が不思議そうな顔をした。

「…インデックス、ちゃんと帰るから、先、帰っててくれないか?」
「……だ、って…」
「な、スフィンクスに餌かってくるから」
「………分かった」

そして白いシスターは走って帰った。

853とある少年の失くした日常。:2008/09/30(火) 19:42:29 ID:zWw4V192

「で、君…失ったというのはどういう事だ?」
「…おれが、記憶喪失だからだろ」
「……え?」
「よく分かんねえけどほとんど何も覚えちゃいねえ。あの子の事も思い出せない。お前の事もだ」

「…そうか。まあ一応名前だけは名乗っておこう。ルーンの魔術師ステイル=マグヌス。本当は…」

そこで言葉を切る。
ステイルと名乗るその神父…いや、魔術師は、
その手に炎剣を生み出し、その紅蓮の炎を当麻に見せつける。

「これを君に叩きつけようと思ったんだけどね、さすがに記憶の無い奴には悪いかな」

それを見て、頭に一つの『知識』がよぎる。
…ルーン魔術とは、二世紀に使われ始めたケルトの魔術文字。『力持つ文字』の事で、
紙に火炎と書けば文字通り、紙から火炎が出てくる、という魔術。

…これが…あのシスターが言っていた
『魔術』のことか?本当とは思えない、でも嘘とも思えなかったあの話の…

    非現実(オカルト)なのだろうか?

「あーでも、イラッとしたから…これぐらいは、いいかな!?」

『魔術師』ステイル=マグヌスが炎剣を地面に叩きつけた。
爆発がおこり、グラッとゆれて転びかける。

「な……、に。を――――――するつもりだテメェ!」
「うん?内緒話だけど?」

これだけの爆破騒ぎを起こしといて――と言おうとして、言葉を止める。
だれも、いない。

854toto:2008/10/01(水) 14:22:36 ID:O5QmM/06
初めまして。totoと言います。ちょっと「いちゃいちゃレールガン!」を読んで書いてしまったssですが読んでみてください。長編ものです。どんな感想でもかまいませんので感想、書き込みお願いします!!

855■■■■:2008/10/01(水) 16:07:54 ID:qh5LonVc
どもーtotoさん初めまして!
スレあげたい時以外はE-mailのトコにsageって
打ったほうがいいすよー
自分も初めに怒られました  きいつけてー

856m:2008/10/01(水) 17:30:20 ID:iUnGpX4Q
下級生と保健室で…
学園18禁ゲーム
ttp://l.ivedooor.com/

857toto:2008/10/02(木) 02:12:38 ID:6k4ag0x6
とある魔術の禁書目録

「並行世界(リアルワールド)」



朝。7時ジャスト。
上条当麻は強い日差しに目が覚めた。すっかり秋の季節になって少し肌寒い早朝。
「…ん、んーっ」
体を動かし、目をこすりながら起き上ろうとした。薄目で時計を確認する。
(…まだ7時じゃねーか。あと15分くらいはいいだろー)
昨日のうちにインデックスの朝食のためのご飯の仕込みは終わっている。おかずも昨日の残りがある。冷凍食品の在庫も問題ない。
(むにゃむにゃ、あと15分は寝かせてくださいましー)

ん?

上条当麻は、ふと気がついた。
なにやら美味しそうなにおいが漂っている。コトコトと鍋の音が聞こえてくる。
(俺、タイマーをセットしておいたっけ?)
そんなはずは無い。上条当麻は炊飯ジャーのタイマーしかセットしない。そう疑問に思い、布団を跳ね除けて起き上がろうとして―――
「へっ?」
上条はベッドから転げ落ちた。

「い、ぎゃあ!?」
盛大に頭から転げ落ちる上条。不器用な前転によって頭に激痛が走った。
「い、ってー。って、ベッド?え、え?ってここドコ!?」
上条は辺りを見回した。
ここは部屋の一室。クリーム色のカーテンから朝日が仕込んでいる。自分が寝ていたであろうベッドは全く見覚えがない。先程見たデジタル時計も自分が持っている時計とは違う。
自分の着ているパジャマらしきものも見覚えがない。床はフローリングだが、よく磨かれていて掃除が行き届いているのが分かる。ダークブラウンのクローゼットに張り付けられている等身大の鏡。ベッドの反対側にはちょっとばかり値が張りそうな机に最新式のパソコンまである。どこからどう見ても知らない場所だった。俺は寝ぼけているんじゃないのかと思って、
上条は自分の頬をつねってみた。
痛い。
(ちょ、ちょっと待て!俺は家に帰ってインデックスが寝静まってから米を研いで、朝食の確認を取って、自分の布団に潜ったはずですがー!?一体これはどうなってんだー?た、確かに昨日は自分の布団に…)
と、朝から自分の置かれた状況に混乱しかけていたその時。
ガチャリとドアが開いた。
「とうま、大丈夫?さっき大きな音が聞こえたけど…」

そこには、白いエプロンを着た可愛らしい銀髪碧眼の少女が立っていた。

858toto:2008/10/02(木) 02:20:36 ID:6k4ag0x6
「へっ?」
インデックス、と呼ぼうとしたが上条当麻は声が出せなかった。今、上条の目の前に立っている少女はインデックスだろう。居候しているシスターの声を聞き間違えるはずがない。            しかし、とても奇妙だった。なぜインデックスはあの修道服を着ていないのか。なぜ普段着の上にエプロンを羽織っているのか。なぜそんなにインデックスは成長して可愛らしい女の子になっているのか。

「インデックス、だよな?」
そう呼ばれた少女は首をかしげた。
「とうま。まだ寝ぼけてるの?私以外誰がいるのよ。まあ、朝食はあと5分くらいで出来上がるから、さっさと顔でも洗ってきたら?」
「は、はあああああぁっ!?」
(さっき、何て言った?イ、インデックスが、あ、あさ、朝飯をぉ!?手伝いもまともしてくれないあのインデックスが朝飯を準備してるだとぉぉぉっ!?)
上条は両手でインデックスの肩をつかんだ。きゃっ、と可愛らしい声を出していたがそんなことに意識は向かなかった。
「お、おいっ。インデックス!一体これはどうなってる?お前が朝食を作っただと?それもおかしいが、まずココは何処だ!?俺たち昨日は俺の家で寝てたよな?「明日は魚がいい」とか言って俺に三枚下ろしを頼んでたじゃねーか。しかも、何でそんなに背伸びてんだよ。150cmぐらいだっただろ?御坂より背高くないか?お前」
次々と溢れる疑問の数々。おかしい、絶対おかしい。ドッキリにしては手が込みすぎている。一体何が起こった。そう言おうとして、上条当麻はふと我に返った。
「と、とうま。本当にどうしたの?とうまが言ってること全然分かんないよ。私はインデックスだし、ここはとうまの家だし、ご飯だって半年前から私が時々作ってるじゃない」

―――――――な、んだって?

インデックスは上条の顔をじろじろと見ながら少し困った顔をしていた。大きな碧眼の瞳。きれいな女の子の顔を間近で見ているだけで上条は変な気分になってきた。当麻はあわてて目をそらした。
「す、すまん。インデックス。ちょっと変な夢を見ててな。つ、つい」
「…とうまが寝ぼけてるのはいつものことだけど、今日は結構ひどいね。熱でもあるの?」
おでこに手をあててきた。上目づかいで顔をうかがう仕草といい、インデックスのエプロン姿といい、女の子特有の香りといい、かぁっと上条の顔が赤くなってしまう。
「だ、大丈夫ですって平熱平穏平凡な高校生上条当麻ですよどんなことが起ころうともびくともしないバッチグーでストロングな心の持ち主上条当麻です!」
「うん、いつものとうまだね」
にっこりほほ笑むエプロンシスター。上条は不覚にもドキッとしてしまった。
「じゃ、じゃあ、顔洗ってくるから」
「うん」
そう言ってインデックスは長い廊下を歩きだした。奥に居間があるのだろう。
「あ、あのインデックスさん?」
「なに?」
「洗面所ってどこにあるんだっけ?」

「…とうま、病院行ったほうがいいかも」

859toto:2008/10/02(木) 02:22:19 ID:6k4ag0x6
さて、状況を確認しよう。
また世界が変わっている。「御使堕し」とはまた種類が違うようだが今の状況が異常なのは確かだ。現状を鑑みるに上条当麻は未来に来ているらしい。

上条は驚きの連続だった。鏡を見ると顔つきが少し刀夜に似てきており、身長が180cm程度もあった。髪は短く、ハードタイプのワックス(いつも使っているものより高価な品)を使ってツンツンした髪型にしてもしっくりこない。仕方なく当たり障りのない髪型に変えた。ここは2LDKの一室で最新式のTPSセキュリティになっているアパートであり、上条の家とはエコノミークラスとファーストクラスくらいの違いがある。居間に行くとインデックス作の完璧な和風朝食。これがまた美味かった。(上条感覚的に)高級感あるクローゼットを開けると自分の通っていた高校とは違う制服があった。学ランではなく、(上条感覚的に)これまた高級感溢れる黒で統一されたブレザー。袖にある金色のラインや左胸にあるエンブレムがなければスーツに見えそうな制服。そしてそのエンブレムはこの学園都市の生徒ならだれもが知っているマーク。
双頭の龍に一本の剣の刺繍。

「な、ななな長点上機学園!?」

流石の上条当麻も腰を抜かした。
無理はない。長点上機学園とは学園都市最高峰の難関校。大能力者(レベル4)以上の能力者、なおかつ軍事的分野に突出した能力を有していることが最低条件であり、その上いくつもの学園都市最難関の試験を突破するか、一定以上の地位を持つ有権者15名以上の推薦状が必要なのだ。ちなみに上条は無能力者。入学どころか受験条件すら満たしていない。なぜ俺がこの制服を持っているのか。俺は長点上機学園の生徒なのか。はたまた、今の俺はコスプレに目覚めただけなのか。上条の疑問は増える一方だった。
二十分ほど部屋や洗濯機の中、ベランダと探し回ったが、いつもの学ランが何処にもない。仕方なく長点上機学園の制服を着ることにした。ワイシャツが背丈にピッタリである。本当に信じられないことだが今の俺は長点上機学園の生徒らしい。
「…ネクタイの締め方が分からねぇ」
ポケットに仕舞っておくことにした。

そんなこんなで上条はアパートから飛び出した。
場所は第7学区の高級街。学園寮では無いらしい。長点上機学園の場所は知っているので地理感覚に困ることはなさそうだ。
「って、困ることばっかりだよ!!」
不慣れな制服に戸惑いを覚えつつ、とりあえず学園を目指した。上条の高校を訪れようとしたがこの制服では場違いだ。怪しまれる。土御門の家に行って直接確かめるのが良いが、前回のように土御門がこの変化に巻き込まれていないという保証はどこにもない。上条の家は学生寮であり、旧型だがいっぱしの監視カメラとセキュリティはある。不用意に近づくのは危険極まりないだろう。そんなことを考えていると常盤台中学の校門に差し掛かっていた。視線を感じるなと思いつつ周りを見渡していると常盤台の生徒がチラチラと上条のほうを見ていた。
(…やっぱ目立つよなぁ。この制服)
長点上機学園。五指の頂点に立つ学園。同じ五指に入る常盤台といえどブランドの点でも長点上機学園には翳る。そんなライバル校の生徒が登校時に名門学校の校門を横切るのだ。注目されて当然と言えば当然なのだが。
「………はぁ、なんか、不幸だー」
名門学校に入学して周囲からチヤホヤされる人たちが羨ましいと思ったことはあるが、実際にそうなってみるとそんなに良い気持はしない。むしろ鬱陶しく感じさえする。

860toto:2008/10/02(木) 02:26:36 ID:6k4ag0x6
トボトボと歩くこと数十分。長点上機学園の時計塔が見えてきた。周囲には登校している長点上機学園の生徒がちらほらと見え、生徒同士は視線が合う度に軽い会釈をしている。挙動不審だと怪しまれるので、周りの真似をしてみることにした。向かい側で歩いている長点上機学園の男子生徒と目があった。中学生と思われるがメガネを掛けていていかにも優等生らしい風体をしている。軽く顎を下げ、挨拶した。

ビクッ!と驚いたように上条を見てきた。そして体を震わせると何度もこっちに頭を下げ、走るように長点上機学園に向かっていった。

驚いたのは上条のほうだ。
(な、なんか間違ってたかー?俺。も、もしかしてネクタイしていないだけで変に思われたとか?)

後ろからゴロゴロと奇妙な音がした。
「すいませーん!道を開けてくださーい」
振り返ると人込みをかき分けながらローラーシューズで登校している女子生徒が見えた。
彼女も長点上機学園の生徒らしい。左胸に双頭の龍と一本の剣の刺繍がある。通り過ぎる直前、おはようと上条は声をかけた。彼女はゴーグル付きのヘルメットを着用していて、ゴーグルを上げながら挨拶をしようとしたところ
「あっ、おはようございまーす…って、えええええ!?ってて、きゃああっ!」
と、コントロールを失い盛大にズッコけた。
「あぶねぇ!」
上条は咄嗟に彼女の体を掴み、庇うように地面に叩きつけられた。
「うぐっ!?」
「あひゃ!」

背中に強い衝撃が走る。腹部に妙に柔らかい感触を感じるが、今はどうでもいい。
「…っ、大丈夫か。お前」
「…えぇ、あ、はい。すいませ…って、きゃああああああああっ!!」
「ど、どうかしたのか!?」
へたり込む少女は上条の顔を見るなり頬を真っ赤にすると、あわわわ、と慌てふためいて叫んだ。
「い、いいいいえ、か、かかかか上条様に、あ、朝からお逢いになれるだけでは無く、た、たた助けてもらえるだなんてぇぇ!」

………………………………………………………………………………………………はい?

上条当麻は凍った。
(か、かかかみ、かみ、上条「様」!?上条「様」だとおおぉぉぉ!?)
上条は限界メーターが振り切れそうだった。
「か、上条様!上条当麻様、ですよね!?本っ当に申し訳ありませんでしたぁ!わた、私は高等部1年A組の羽平くるると申しますっ!ああっ、助けてもらってのお礼がまだでしたね!ありがとうございますぅ!こ、ここのお礼はまた後日改めてお伺いしてもよろしいでしょうか!?上条様とこうしてお話ができるだけでも感激なのに、身を呈してまでこんな私を助けてくださるなんてぇー、きょ、今日はとっても幸せな一日になりそうですぅ〜」
周囲が引くほどのマシンガントークを発する女子を眺めながら、上条当麻は彼女を観察していた。
金髪でウエーブがかかったロングヘアーでインデックスと同じ透き通るような碧眼。西洋人風の女子でローラースケーターの格好がよく似合う生徒。なかなかの美少女だ。
うーむ、Aの75か76か。洗練された上条的触感(?)センサーで詳細なバスト値を測定していたところ
「あ、あのー上条様?」
「!…っは!?な、何でごさいましょう!私め上条当麻は貴女のバストがAの75か6だなんてちっとも思ってもいませんが!」
「……Aの75ですけど」
「って、答えるなよ!」
一体何なんだこの子。というかこの世界は一体どんな設定になっていやがる。俺が「様」扱いされるなんて夢にも思ったことはねぇぞ。ま、まさかこれは俺も知らない内なる願望が反映された世界だったりして―?!と、妄想に入り浸っていた。
「上条様!本当にありがとうございます!このお礼、必ずさせていただきますから!!」
万延の笑みで大きく頭を下げると、鼻歌を歌いながら何度もこっちを振り向いて走り去っていった。
若干引きつった笑顔で手を振る上条。
「…何だった。一体」
嵐が過ぎ去ったように周囲からの視線が薄くなってきた。
まあいい。と、学園に足を向けた瞬間―――

861toto:2008/10/02(木) 02:28:06 ID:6k4ag0x6
「とう、まっ!」
いきなり腕に絡みついてきた。それまたすんげー美少女が。
「どァあっ!?」
肘の辺りにマシュマロのような柔らかい感触を感じた。
「当麻はどーして私が目を離したすきにすぐ女の子と仲良くなるのかなぁー?」
ちょっと待て!当麻?俺を呼び捨て?こいつ一体誰!?ダレ?ダレナノヨ!?
しかし、声は聞き覚えがある。腰まである茶色いロングヘアーに、上条よりも十センチほど低い背丈。ベージュ色のブレザーに紺色のプリーツスカートを穿いている。Cの85程度(上条的触感(?)センサーより測定)のバストを持つスタイル抜群の少女。以上の情報から上条の脳内ではじき出した結果、

「美、美琴?」

「四日ぶりに当麻と会えると思ってすっごく楽しみにしてたのに、これだもんなー。もう慣れたけどね。当麻の浮気性には」
と膨れた顔で頬をつついてきた。
…何なんだ。こいつのデレッぷりは。
「ねえねえ、当麻」
「な、何だよ」

上条の頬に、ふいに唇が触れた。

――――――――え?
「ちょ、ちょちょちょちょっと、なにすんだお前!?」
周囲の視線が痛い。公衆の前でキスするとは。
「当麻が浮気するからでしょ!」
「はい!?」
御坂と付き合ってんの――!?Why!?What for!?How many(?)!?
て、天変地異だ。これは俺の願望でも未来でもねえ――!御坂と俺が?御坂と俺が!?カレシカノジョのカンケイ?誰の思惑だぁ?これはやり過ぎだろぉ!
けどやばいヤバいヤバイヤヴァーイ!!このツンデレっぷり何か胸に迫るものがありますよー!?
「ねえ、当麻。来週の土曜、空いてるよね?」
「は?」
「は?じゃないわよ!先週から言ってたじゃない。もう忘れてるの!?」
「…あー、そうか、そうだったな!い、いや忘れてたわけじゃないぞ?ここんとこ定期試験のことで頭いっぱいだったから」
(ど、どうにかして話しを合わせておかないと…)
「……ふーん。私より定期試験の方が大事なんだ。当麻は」
「そんなことねぇよ!」
反射的に上条は叫んでしまった。しかし、反射的にそう言ってしまうくらい御坂が可愛かったのだから仕方がない。
御坂は上条が見たこともない柔らかい笑顔を作ると、ガシッと両腕で上条の首をつかんだ。美琴の顔が近い。吐息の温かさを感じるほどに。
「ねぇ、当麻。来週の土曜日…」
美琴の顔が赤い。というかめちゃくちゃ可愛い。やべぇ。俺どうかなっちまいそうだ。
小さい声で、そっと呟いた。

「いっぱいエッチしよ?」

チュッ








「じゃーねー、当麻ー。後で連絡するからー」
大きく手を振りながら去っていく御坂美琴。反射的に手をふる上条。

上条当麻はどうかなってしまった。

862■■■■:2008/10/02(木) 06:29:36 ID:VA1Flc6s
>>857-861
乙です!やヴぇニヤニヤがとまらねぇ。俺きめぇwww
続き全裸待機でwktkしながら待ってるわ!!

863■■■■:2008/10/02(木) 06:30:38 ID:VA1Flc6s
sage忘れすまそorz

864■■■■:2008/10/02(木) 16:11:08 ID:qvjfcUic
toto!テメェーーー!
どんだけ破壊力だ!!!!!!
俺らを殺す気かーーーーーーーーーーーーー

いやー、最近SSの投下増えてきたねー
自分は夏からみだしたから三つしか確認してないけど・・・

【とある魔術の聖杯戦争】・・・まだ序章だし、様子見
【とある少年の失くした日常】・・・幕間のつちみーが最高!
【平行世界(リアルワールド)】・・・御坂の破壊力が絶大!

みなさん がんばってねー

865とある少年の失くした日常。の人:2008/10/02(木) 19:42:32 ID:RmDc.p6M
>>864
おお、土御門気に入ってくれたようでうれしいです。

…みんな、エンゼルフォールの入れ替わり考えてよぉ…。
このままだとほんとにアクセラレータが乙姫やるよ?
一方通行がとうまに、「お兄ちゃん♪」って言うよ?
…うわ、何か笑える。

866とある少年の失くした日常。:2008/10/02(木) 20:43:37 ID:RmDc.p6M
「ルーンを刻み、人払いは済ませておいた。さて、本題に入ろうか」

そして魔術師は紙袋を取り出し、当麻に渡した。
その後、ステイルが語った話は要約するとこういうものだ。

1、三沢塾という進学予備校に女の子が監禁されている。
2、そこが科学宗教に変貌し、それが錬金術師に乗っ取られた。
3、錬金術師の目的は監禁されてた女の子――ディープブラットである。
4、その能力は、ある生き物―カインの末裔と言われる吸血鬼を殺す力。
5、少女は、過去、灰だけになった故郷で立ち尽くしていた。
6、吸血鬼には寿命と魔力の際限がない。錬金術師はその吸血鬼を欲している。
7、そして、上条当麻も一緒に来る。来なければ禁書目録はイギリスに帰る。

「ああ、言い忘れてたけど吸血殺しの本名は姫神秋沙。写真はその中だ」

そんな物騒な力を持った能力者の顔はどんなもんだと思いつつ、見る。


そこに、昼間会った巫女さんの顔があった。

「…え?」

さっき、監禁されてるって、でも街を歩いてて。
――思い出作りに。
百円貸してくれって、それで。
――だから、やけ食い。
もしかして、百円あれば逃げ切れた?

どうして助けを求めなかった、と思うと同時に、一つの事を思う。


助けを求めるという事は、助けを求めた人も巻き込むことを意味する。


だから、だから彼女は。

「ちくしょう…」

人を庇って。それで。
当麻が百円を払えば済むことだったのに。

「ちくしょう…!」

867とある少年の失くした日常。:2008/10/02(木) 20:45:46 ID:RmDc.p6M
少女は、灰だけの村で立ち尽くす。
村を襲ってきた吸血鬼も、母さんも友達も皆、灰になって。

もう、この村には少女しかいなかった。

「おかあ…さん…?おとうさ…」
だって…、さっきまで…どうして。私だけ。

「おじさ…おばさ…ん…ゆずかちゃん…!」
また明日、遊ぼうねって…いったのに。

ただ、少女は呆然と立ち尽くす。



魔術師と当麻の話を、聞いてる少女がいた。
少女の名はインデックス。

当麻が…、そんな危ない所に、当麻が?
いやだ。もし何かあったら?

でも、きっと何を言っても彼は止められない。
どんなに言い聞かせても、彼は。

だって、それがインデックスの大好きな上条当麻だから。

868とある少年の失くした日常。:2008/10/02(木) 21:10:14 ID:RmDc.p6M
>>totoさん
おもしろそーです〜。
誰かの読むほうが好きですから、書いてくれるのはすごく嬉しいです。
楽しみにしてます。

869■■■■:2008/10/02(木) 21:47:44 ID:N7xf8RuE
totoさんと>>868さん二人ともGJです!
楽しく読ませてもらいました。

870toto:2008/10/03(金) 00:33:07 ID:Pkoq0Gms
午前11時ジャスト。
ここはある高級住宅街にあるアパートの一室。カーテンの隙間から差す強い日差しから目をそらした。
「…もうこんな時間かァ」
覚醒した白髪の少年はベッドから上半身を起こす。無造作にかけ布団を跳ね除けると、フラフラとした歩みで洗面所へと向かった。顔を洗い、歯を磨く。そのために洗面所へと向かった。

あ?

鏡を見て、違和感を覚えた。有るべきところに、有るものが無い。
(……チョーカーが無ぇだと?)
驚愕を覚えた白髪の少年、「一方通行(アクセラレータ)」は思案した。

いや、思案していること自体に驚愕を覚えたのだ。

なぜ彼は思案することが可能なのか。これ自体すでに奇妙なことだった。
「一方通行(アクセラレータ)」はある事件以来、自己の思考能力を失っている。そのため
情報処理や能力発動時に必要な演算能力は、チョーカー型電極を通して「打ち止め(ラストオーダー)」を介するミサカネットワークに任せてある。それが、無いのだ。
一気に睡魔が吹き飛んだ。
「っ!ラストオーダーァ!」
声を出しても返事は無く、部屋中を見回しても「打ち止め(ラストオーダー)」の姿は無い。黄泉川愛穂は現在入院中であり、この一室には彼以外誰もいない。

いや、彼以外誰かが居たという形跡が何も無かった。

「どうなってんだァッ!?」
部屋にあった携帯電話を取ると、とある人物へ電話を入れた。しかし、
「この番号は現在使われておりません――――」
「んだとォ!?」
(何が起こった?「上の連中」は出られなくてもメッセージは受け取れるはずだ。まさか、アイツラ消されたんじゃ無ェだろうな。闇が闇に葬られたってワケか?にしちゃあ処理が早すぎる)
「…しかも何で俺は歩けるんだァ?」
杖を使わずとも歩行に何ら違和感が無い。その上――――
シュッ、と黒い物体が彼の眼前を通り過ぎた。

「―――能力まで元に戻っていやがる」

手元にはM93R-βカスタムと呼ばれるハンドガン型の自動小銃があった。棚に閉まってある拳銃を彼の「ベクトル」の能力で引き寄せたのだ。自身の演算に寸分の狂いもない。
昨夜、彼が眠りについたのは午前4時前後。いくら7時間の空白があるとはいえ、彼に気づかれぬままここまで大がかりなことが出来る筈がない。となるとこれは超能力か魔術の類となるだろう。様々な観点から思考を重ねていた時―――

(どわぁー!?って、起きていきなり能力を使うとは何事だー!とミサカはミサカは貴方の乱暴さに避難の声を叫んでみたりー!)

と、元気な「打ち止め(ラストオーダー)」の大声が――――

「聞こえた」。

871toto:2008/10/03(金) 00:34:26 ID:Pkoq0Gms
午前11時ジャスト。
ここはある高級住宅街にあるアパートの一室。カーテンの隙間から差す強い日差しから目をそらした。
「…もうこんな時間かァ」
覚醒した白髪の少年はベッドから上半身を起こす。無造作にかけ布団を跳ね除けると、フラフラとした歩みで洗面所へと向かった。顔を洗い、歯を磨く。そのために洗面所へと向かった。

あ?

鏡を見て、違和感を覚えた。有るべきところに、有るものが無い。
(……チョーカーが無ぇだと?)
驚愕を覚えた白髪の少年、「一方通行(アクセラレータ)」は思案した。

いや、思案していること自体に驚愕を覚えたのだ。

なぜ彼は思案することが可能なのか。これ自体すでに奇妙なことだった。
「一方通行(アクセラレータ)」はある事件以来、自己の思考能力を失っている。そのため
情報処理や能力発動時に必要な演算能力は、チョーカー型電極を通して「打ち止め(ラストオーダー)」を介するミサカネットワークに任せてある。それが、無いのだ。
一気に睡魔が吹き飛んだ。
「っ!ラストオーダーァ!」
声を出しても返事は無く、部屋中を見回しても「打ち止め(ラストオーダー)」の姿は無い。黄泉川愛穂は現在入院中であり、この一室には彼以外誰もいない。

いや、彼以外誰かが居たという形跡が何も無かった。

「どうなってんだァッ!?」
部屋にあった携帯電話を取ると、とある人物へ電話を入れた。しかし、
「この番号は現在使われておりません――――」
「んだとォ!?」
(何が起こった?「上の連中」は出られなくてもメッセージは受け取れるはずだ。まさか、アイツラ消されたんじゃ無ェだろうな。闇が闇に葬られたってワケか?にしちゃあ処理が早すぎる)
「…しかも何で俺は歩けるんだァ?」
杖を使わずとも歩行に何ら違和感が無い。その上――――
シュッ、と黒い物体が彼の眼前を通り過ぎた。

「―――能力まで元に戻っていやがる」

手元にはM93R-βカスタムと呼ばれるハンドガン型の自動小銃があった。棚に閉まってある拳銃を彼の「ベクトル」の能力で引き寄せたのだ。自身の演算に寸分の狂いもない。
昨夜、彼が眠りについたのは午前4時前後。いくら7時間の空白があるとはいえ、彼に気づかれぬままここまで大がかりなことが出来る筈がない。となるとこれは超能力か魔術の類となるだろう。様々な観点から思考を重ねていた時―――

(どわぁー!?って、起きていきなり能力を使うとは何事だー!とミサカはミサカは貴方の乱暴さに避難の声を叫んでみたりー!)

と、元気な「打ち止め(ラストオーダー)」の大声が――――

「聞こえた」。

872toto:2008/10/03(金) 00:37:13 ID:Pkoq0Gms
すみません。二回書き込んでしまいました。
身勝手で申し訳ありませんが、削除の仕方がわからないので誰かお願いします!

873toto:2008/10/03(金) 00:38:07 ID:Pkoq0Gms
「ふ、ふふふ、ふふふふ、不幸、か?俺は…」
ここは長点上機学園内の中央に噴水がある大広場。長椅子にもたれつつ上条当麻は呟いた。現在は正午を過ぎた頃であり、昼休みになるまであと30分ほどはある。右手には先ほど学園内にある喫茶店の少女からタダでもらったカプチーノを持っている。
チュルルー、とストローからカプチーノを飲み干して一言。
「…どうなってんだ、本当に」
携帯に表示されていた日時は、普通の世界から丸一年たった「未来」だった。







長点上機学園二年特別クラス。兼「風紀委員(ジャッジメント)」第七学区担当委員長。

これが現在の上条当麻の肩書だった。はぁー、と大きなため息をついた。
長点上機学園に編入するだけでも異例中の異例なのに、「風紀委員(ジャッジメント)」第七学区担当委員長まで務めていると来た。これはもう頭を抱えるしかないだろう。「風紀委員(ジャッジメント)」となるにも試験を含めて最低6か月程度はかかるというのに、この一年余りで生徒数が一番多いこの第七学区担当の長になるというと、正攻法では到底たどり着ける筈もない。この一年の間に、それだけの地位につける「何か」を俺がやらかしたのだろう。
と、未来に起こりうる自分が巻き込まれる「事件」に少しブルーになった。
それに御坂美琴。一年であれだけの成長を遂げた美琴の成長ぶりにも驚きだが、それ以上に驚愕したのは彼女との関係。この一年で御坂美琴と上条当麻は、情事を軽く言い合えるほど深い関係にまで至っていた。現在の上条当麻はそんな記憶は無いので、ただ驚くばかりだ。
しかし、一つだけ分かることがある。これは単なる罰ゲームの延長線上では無く、二人の相思相愛の下で至った結果なのだと。
携帯電話の裏側を見る。そこには顔を寄せ合い、無邪気な笑顔で写っている一枚のプリクラが貼られていた。御坂美琴と上条当麻のツーショット。そこにある二人の表情からも読み取れる。本心から互いに惹かれ合っているのだと。
「…あいつ、こんな顔で笑うんだな」
今朝に会った美琴の笑顔、仕草、言葉。上条当麻が抱いている彼女のイメージとはずいぶんと異なる。上条は彼女の知られざる一面を垣間見ているような気がした。周囲をビリビリと帯電させているような攻撃的な御坂美琴では無く、愛らしい一人の少女としての御坂美琴。そんな彼女の姿に心奪われ――――――

「って、何考えてるんだ俺はああああああああああああああああああぁぁ!!!」

バサバサァッ!と噴水の周囲にいた鳩の群れが上条の突然の叫びに驚き、四方八方に飛び散っていく。頭を抱えながら立ち上がった上条当麻は、数回、深呼吸を繰り返し徐々に落ち着きを取り戻していった。
(冷静になれ、冷静になれ。これは現実じゃない。現実じゃない!)
可愛らしい御坂美琴や家事を手伝ってくれるインデックスにちょっぴり心にひっかかりを覚えた上条だったが、今はそれどころでは無いと自分に言い聞かせていた。
そして―――

「カーミやーんっ。お届けもの、持ってきたぜ―い」

救世主の声が、聞こえた。

874toto:2008/10/03(金) 00:38:39 ID:Pkoq0Gms
「つ、土御門っ!!」
声が聞こえた背後に振り替えると、長点上機学園の制服姿の土御門元春の姿があった。
「なっ!?そんなに大声出して、これがそんなに待ち遠しかったのかにゃー!?カミやん、今回はマ、マジでご堪能する気かー?常盤台のエース様にあんなことやこんなことをっ?この果報者がぁぁ!!」
「土御門、聞いてくれ!実はブゴハァあああっ!?」
訳も分らぬまま、上条当麻は金髪グラサンに思いっきり殴られた。



「………ほう、カミやんは俺に殴られたせいで記憶がぶっ飛んだと、そう言いたいのかにゃー?」
「だから違うって言ってんだろ!マジだ、大マジだよ!」
「わかってるって、分かってるってー。カミやんが嘘を言ってないことくらい顔見ただけでわかってるにゃー?」
「…何で最後が疑問形なんだよ」
土御門にはすべてを話した。自分が置かれている状況、記憶の全て、空白の一年があること、そして、現在は自分がいる場所では無いことを。
広場には長点上機学園の生徒がチラホラ見えてきた。時間は昼休みに入ったようだ。

「それで、土御門もこの学園の生徒なのか?」
「……マジみたいだな。いや、違うぜい。長点上機に編入したのは後にも先にもカミやんだけだ。今年の春からだったな。小萌センセーなんて、ショックで丸一週間酒とタバコを忘れていたらしいからにゃー」
「じゃあ、なんでココの制服着てんだよ」
「そりゃあ、親友の頼みの為にワザワザ危険を冒してまで来たんだぜい?」
「?その紙袋はなんだ?」
「ふっふっふっ…、それは開けてのお楽しみだにゃー。カミやんがソレを俺に頼んだんだぜい?これで前の借りは返したってことにゃー」
「???」
「まぁ、今は分からなくっていいぜい。時が経てば教えてくれるからなー」
あばよ、という感じで手を振りながら去っていく土御門。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。土御門!俺一人じゃあ何も出来ない。協力してくれ。この通りだ!」
上条は土御門に大きく頭を下げた。
「当たり前だろ、カミやん。今からツテに連絡を入れるところだ。残念だが俺はカミやんと同じ状態では無い。むしろカミやんのほうが異常に見える。しかし、「幻想殺し(イマジンブレイカー)」を持っているカミやんが魔術の類にかかるとは思えない。早急に手を打つぜい」
「…土御門」
いつもフニャフニャしていて義理の妹にゾッコンなアブナイ野郎だが、いざという時には頼りになる。いい友達を持ったもんだと上条は思った。

「超能力って線もあるかもな」

そう言った時、土御門の顔から笑顔が消えた。
「土御門?どうしたんだ。一体…」

「カミやん。この世に「超能力」なんて、何処にも存在しないぜ」

875■■■■:2008/10/03(金) 13:57:18 ID:FkvZ4QTY
超能力が存在しない世界!?ともかくtotoさんGJ!続きがきになるぜぃ。
レスダブったのは気にしなくていいんじゃない?

876とある少年の失くした日常。:2008/10/03(金) 18:39:11 ID:JSN7Ac7I
「今日、これから科学施設行ってくる。ついてくる?やめとけやめとけ、お前機械音痴だから。
無理だよ閉じ込められちまうぞセキュリティレベル四だし。餓死するぞ」

「む…。夜ご飯は」
「冷蔵庫に入ってる。レンジでチンして食べろよ、じゃな」

そう言って部屋を出た。
こっそりついてくる少女に気付かないで。

(とうま、無理するから見てられないんだよ)

877とある少年の失くした日常。の人:2008/10/03(金) 18:41:52 ID:JSN7Ac7I
うう…。
書きためてないから毎日書いてるわけですが。
一章終わったら小休止を挟んでおこうかしら…。
えっ?幕間?…ああ、次は当麻と両親の電話…。
うーむ、微妙に変えるってのが存外むつかしい…。

878■■■■:2008/10/03(金) 20:43:24 ID:zqCaCzYo
とある少年の失くした日常。の人さん(←長っ)
入れ替わりには四巻以降のキャラ出したらどうでしょう?
今後の仕込みにもなりますよ?

879とある少年の失くした日常。の人:2008/10/04(土) 08:41:24 ID:WsTjF2bE
>>878
あ、ああはい。
私が考えてもいいんですが、ただ…。
こんなのがいいって要望が聞きたかったんですけど…。

あ、名前長いようだったら緋埜火とお呼び下さい。

880とある少年の失くした日常。:2008/10/04(土) 08:57:55 ID:WsTjF2bE
そして。

「アルスマグナ…んなもん本当にできたらそいつはどうすんだろうなー」
「さあね。世界の覇権でも何でも手に入るからな…。まあ、欲しいものならすべて手に入る」
黄金錬成。世界の全てが自分の物になる技。
「……おれの、記憶喪失もなおるんだろうか」
上条当麻は寂しげにわらって言った。

「…直したいのか?体がぶっ壊れるぞ。いや、それ以前の問題だな、君の右手がある限り不可能だ。
 それにきっと『君』は消えるぞ。一日でも体験した事柄が違えば人は変わるのだから」
「…………直せるものなら直したい。体が壊れても、おれが消えても」
どうして、と目顔で尋ねた魔術師にこたえていう。

「おれさ、どうしてもあの子のことが思い出せない。
 知識はあるのにな。時々あの子、ふっと誰かを探すように眼が彷徨うんだよ。
 あの子、病院でおれを見てぼろぼろ泣いた。…泣きながら笑ったんだ。それこそぼろぼろで完璧な笑顔でさ」

当麻はそこで一旦言葉を切った。
何かを思い出すように瞑目する。

まるで、それは祈る様でもあって。

「おれが救ったって言っても、な。あの子ってさ、記憶一年周期で消してたんだろ?」
「ああ」
「一人友達ができたら一人仲間を失う、そんな生活だったんだろ?」

ステイルは思う。
この少年はどこまで聞いたのだろう。それともまだ覚えているのだろうか。
無言を肯定とし、かつて自らをフォックスワード、偽善使いと呼んだ少年は、話を続ける。

「おれは、あの子といる資格があるのかな。おれが今いるこの場所はきっとたくさんの人が立ったところだろう。
 ああ、お前もだっけ?それで、おれがあの子の記憶を消さないで済むようにしたって言ったけど」

「それはおれじゃない。『上条当麻』という別人だ。
 今まであの子が出会った人の思いを踏みにじってるようで…。
 あの子と一緒にいると楽しい。だけど、それはおれが持ってていい幸福か?」

当麻は、目を細めた。手に届かない眩しすぎる光でも見るように。
その様子を見て、魔術師は感じる。
少年は時々全ての色がかき消える。もしあっても透明な色にしかならない。
今は、蒼だ。蒼くて透明な色。

「怖いんだ。今立ってる道が間違ってないか。人を踏みつけてるんじゃないかって」

少年は、そこまで言うと、笑って、一雫だけ地面に涙をこぼした。

たった、一滴だけだったけれど。それはとても悲しくて。
悲しいのに透明な少年は、笑った。
涙の一雫はアスファルトに落ちて、ぽつんと雨に打たれたように黒く。

881toto:2008/10/05(日) 02:44:24 ID:Wi1M8tZs
(――――――――ということなの。信じてもらえたかな?とミサカはミ…)
ガッシャーン!とテーブルにあった一枚の皿が、触れられること無く天井に叩きつけられた。

「っるせぇなあ……」
(…でも、本当のこと。ミサカはミサカは真剣に告げてみる)

「ッ!!…だからァ、うるせぇって言ってんだよおおおおォ!!」

白髪の少年は、感情のままにガラス窓に思いきり頭をぶつけた。
鈍い衝撃音と共に頭に激痛が走る。
このアパートの窓は防弾用に作られている。一人の少年が頭突きした程度では傷一つつかない。しかし、タンパク質でできた彼の額の皮膚は衝撃に耐えられず、赤い血が滲み出してきた。
だが、そんなことは瑣末な傷など痛くも痒くもない。
先ほど、彼の心を貫いた大きな傷跡に比べれば―――

882toto:2008/10/05(日) 02:45:18 ID:Wi1M8tZs
―――――二時間前に遡る。

「……おい、かくれんぼはナシにしようぜェ。俺は色々聞きたいことあンだよ」
「一方通行(アクセラレータ)」は状況に混乱していた上に、近くからは間抜けなラストオーダーの声が聞こえた。今回はどれほど手の込んだイタズラを仕掛けてくれたのか。大脳の感覚器にダイレクトに電気の疑似伝達を促し、今のビジョンと感覚を見せているのだろうと考え、こんな素敵なお遊びのお返しに、このアパートの最上階からパラシュート無しのスカイダイビングをさせてあげようと思考し――――

要するに「一方通行(アクレラレータ)」は今にもブチ切れそうだった。

しかし、待っても一向に「打ち止め(ラストオーダー)」が姿を見せる気配は無い。
「お嬢ちゃァん。隠れないで出ておいでェー。さもねぇと、辺り一面ハチの巣になるぜェ?」
聞かれただけで通報されそうなセリフを吐いたが、
返事は無い。

「…ほォ。こりゃお仕置きが必要みてェだなァ」
何の躊躇もなくM93R-βカスタムのセーフティを外し、スライドを引いた。ガチャリと銃弾を装填する金属音が鳴る。
「十数える間に出てこォい。ラストオーダー」
と言いつつ、先ほど声がしたドアの方面に銃を向けた。
(…降参する気は、無ぇみてえだな。朝っぱらからとはイイ度胸してやがる)
「じゅう、きゅう、…いっちぃ、ぜーろぉ」
十全部数えるのも面倒なので、トリガーに力を込めようとした時――――――

(朝っぱらから笑えないセルフジョークをかましてるのは貴方だよー!!!ってミサカはミサカは現在の前頭葉に配信される定期型電気信号の正常機能にリサーチをかけてみたりー!?)

大声で叫ぶラストオーダーの声が「聞こえた」。

「ァッア!?どっから叫んでんだぁ!?」
脳に響くほどの大声。声は銃口を向けている方向の逆。つまり居間のほうから聞こえた。「打ち止め(ラストオーダー)」はすぐ近くにいる。それは間違いない。しかし、辺りを見回しても誰もいない。

(ミサカはいないに決まってるじゃん!って当り前のことを言わせないでってミサカはミサカは朝から緊急時の演算アプリケーションを起動させられたことにプンプン怒ってみる!)

「うおおぉオッ!?」
「一方通行(アクレラレータ)」の体がフワリと宙に舞った。
さらには右手にあった拳銃は、ユラユラと元にあった下から二番目の戸棚へ飛んでいきながら、空中でカチャリカチャリと安全装置などがかかっていく。まるで透明人間がそこにいるが如く。

「お、おいっ!これはお前の仕業かッ?とっと下ろしやがれこのクソガキがァ!」
(俺の能力が「打ち止め(ラストオーダー)」に操作されてるだと?しかも、拳銃みてェな小さい物体にあんな細かい動作も同時に演算できンのか!?最強じゃねえか!)
大気の流れを組む大規模な高速演算も困難な部類に入るが、実は微小な「ベクトル」演算の方が難しい。
重い物質を動かす時にはその物体が動くほどの「ベクトル」を加えればいいし、人を吹き飛ばすほどの風圧を生み出すためには人間が吹き飛ばされ、かつ人間が死なない範囲の「ベクトル」量を加えればいいだけのことだ。しかし、空中で携帯電話のボタンを的確に押すような精密な演算は困難を極める。拳銃の場合なら些細な演算誤差で安全装置をかけるどころか引き金に「ベクトル」が向き、誤って発砲してしまうかもしれない。
地面から一メートル程の高さで何のなす術もなく浮上している彼だが、現在の状況を冷静に分析していた。

(…………ッ!!)

いきなり、大きな音をたてながら彼は地面に叩きつけられた。
「がっ!…あっ」
たかだか100センチ程の高さとはいえ、受け身もとれずに仰向けに倒れると痛い。
(クソガキって言った言ったぁ!!絶対言わないって約束したのにぃー!『貴方のこと、信じてたのに!』とミサカはミサカは人気ドラマの手塚かなめの名ゼリフを真似してみりぃー!?)
頭が割れそうなくらいの大声が「一方通行(アクレラレータ)」に「聞こえた」。
(何なんだァ?こいつの声は直接脳に響くみてぇに…)


ちょっと待て。直接、脳に響くだと?―――――――――


「……ラストオーダー。お前、俺のアタマに何埋め込みやがった」
腑に落ちた。姿を見せない少女の声が「聞こえた」ワケが。
しかし、疑問は募るばかりだ。

「一体何処からこのメッセージを流してンだ?…「連中」にヤられたのか?」
ドス黒い怒りが彼の心に湧きあがってくる。
だが、彼の心の闇をさらに濃く染め上げたのは他ならぬ彼女本人の言葉だった。



(何を言ってるのかなー?ミサカの肉体はとうの昔に無くなってるよー、ってミサカはミサカは呆れながら貴方に呟いてみる)

883toto:2008/10/05(日) 02:46:16 ID:Wi1M8tZs
「…確かになァ。ここは俺が知ってる「時」とは丸一年違う」
(貴方の脳波には何の変化も無いんだけど、心拍数に乱れも無くこんな笑えない嘘を貴方がミサカに言うとは思えないって、ミサカはミサカは真面目に思ってみたり)

第七学区にある、ビルが立ち並ぶ大通り。現在は午後5時あたりを過ぎたころであり、多くの中高生が歩いている。その中に「一方通行(アクレラレータ)」はいた。白髪の少年は紅い瞳をギョロギョロと動かし、周囲を分析していた。彼の鋭い視線に、目があってしまった通行人が震えていたりもするが。
「『artist』?ここの『shericker』は潰れたのか。以外に気に入ってたンだがな。あの店の服のセンスはよォ」
彼と目があった「artist」の定員が営業スマイルで会釈しようとし、そのまま固まっていた。
それを察した「一方通行(アクレラレータ)」は軽く舌打ちした。
(これからどうするの?ってミサカはミサカは情報分析中はあまり動かないほうが得策だと思うけど…)



「決まってンだろ。会いに行くんだよ。――――――『ドラゴン』によ」

884toto:2008/10/05(日) 02:47:29 ID:Wi1M8tZs

「…確かになァ。ここは俺が知ってる「時」とは丸一年違う」
(貴方の脳波には何の変化も無いんだけど、心拍数に乱れも無くこんな笑えない嘘を貴方がミサカに言うとは思えないって、ミサカはミサカは真面目に思ってみたり)

第七学区にある、ビルが立ち並ぶ大通り。現在は午後5時あたりを過ぎたころであり、多くの中高生が歩いている。その中に「一方通行(アクレラレータ)」はいた。白髪の少年は紅い瞳をギョロギョロと動かし、周囲を分析していた。彼の鋭い視線に、目があってしまった通行人が震えていたりもするが。
「『artist』?ここの『shericker』は潰れたのか。以外に気に入ってたンだがな。あの店の服のセンスはよォ」
彼と目があった「artist」の定員が営業スマイルで会釈しようとし、そのまま固まっていた。
それを察した「一方通行(アクレラレータ)」は軽く舌打ちした。
(これからどうするの?ってミサカはミサカは情報分析中はあまり動かないほうが得策だと思うけど…)



「決まってンだろ。会いに行くんだよ。――――――『ドラゴン』によ」



そう言い切ると白髪の少年は歩調を早めた。着慣れない長点上機学園の制服を身に纏って―――

885toto:2008/10/05(日) 02:50:18 ID:Wi1M8tZs
午後3時17分。
白髪の少年は部屋にあるディスクやUSBチップ。スキャニングノートを徹底的に調べていた。Aクラスの『書庫(バンク)』閲覧はもちろんのこと、『グループ』が使用する極秘ソースからの情報までくまなく目を通していた。
パソコン画面から離れずに素早いタイピングをしながら少年はつぶやいた。

「ラストオーダー。俺の置かれている状況は把握できたか?」
(うーん、貴方の脳から体の隅々までスキャンをかけているんだけど何の異常もないよ、ってミサカはミサカは貴方の言動にいまだ半信半疑だったりー…)
「…俺だって今の状況が信じらんねぇンだよ」
(……そうだね。貴方が一年前までの記憶が無いとしたら、今の現状は理解できないのも無理ないってミサカはミサカは考える)
「俺の意識が一年後に跳ンだってことは有り得ねェのか?」
(そう考えるよりも「ここ一年間の記憶を喪失した」と考えたほうが納得がいくって意見にミサカはミサカは賛成の一票を投じてみたり)
「けどよォ…俺は丁度一年前の昨日のことをハッキリと覚えてんだぜぇ?ここ一年の記憶だけ抜け落ちたって言うには不審な点が多すぎる」
(それは私もひっかかる。たかだか一年前の記憶ならミサカのネットワークを通して情報を引き出すことは出来るけど、それはあくまでワタシ『達』の視点から通した情報であって、貴方の忘却された記憶を呼び起こすことはできない。って、ミサカはミサカは人の脳の働きについての謎にググーッっと首をかしげてみたりー)
「っておい!人のアタマを傾げさせンなッ!」
自分の意識とは反する体の動きに「一方通行(アクレラレータ)」は戸惑うばかりだった。
「ってアア!?パスワード間違えちまったじゃねぇかァア!!」
(ごめんなさーい!!ってミサカはミサカは少し落ち着いた貴方にちょっとしたジョークをかけようと思っただけなのにーって、アマーい言い訳を言ってみたりー?)
「ぶっ殺すぞテメェ!」

(ワタシが死んだときは貴方も死ぬよん、って可愛くミサカはミサカは残酷なことをケロッと言ってみたりっ)

「…………………糞が」
ピーッというノイズがなると画面上に『PASSWORD ERROR』と赤い文字が点滅し、既存のデータが消滅した。これは第一級機密情報のチップであり、パスワード入力を二回間違えると強制的にデータが消されるようになっている。
(!!!?それってとっても重要なチップって言ってなかったけぇ!?そんなことで破棄しちゃっていいの!?ってミサカはミサカは貴方に問いただしてみる!)
「…いいンだよ。『今』の俺には関係ねぇ」
彼の脳波を感知したのか、「打ち止め(ラストオーダー)」は黙った。

「……なぁ、ラストオーダー」
彼女は答えない。



「――――――――――――――――――――――――俺はお前を、守れなかったのか?」

886toto:2008/10/05(日) 02:51:04 ID:Wi1M8tZs
(そんなことないっ!!)
「打ち止め(ラストオーダー)」は「叫んだ」。今の彼女は肉体すら無いけれど、
(貴方はよくやった。頑張った!私を助けるために多くの人を犠牲にしたけど、それでも貴方はワタシですら不可能と思った絶体絶命の状況からワタシを救ってくれたっ!)

(貴方は、貴方は、そのせいで死にかけていた。ワタシは息すらしていなかった。でもでもっ、私は貴方を死なせたくなかった!ワタシは貴方と共に生きたかった!だからだからっ、損傷した貴方の脳にワタシの脳とミサカネットワークを可能にするチップを移植したの!これはワタシの望んだ結末。だからワタシは貴方の傍にずっといられる。……だからだからぁ、貴方は自分を責めないでぇ。ミ、ミサ、ミサカはミサカはっ!)

バン!

白髪の少年は強く握りしめた拳をキーボードに叩きつけた。画面上には規則性のない文字が表示された。奥歯を強く強く噛みしめながら。
「『この』俺はよォ………一体、何やってたんだ」


(貴方は、できることをした。いや、それ以上のことをして、今のワタシたちがある。だから貴方は、誇っていいんだよ?)


「………………納得できるかよ」
白髪の少年は呟いた。
これ以上の言い合いは先ほどの繰り返しになってしまって怒り以外の何も生みださない。

守るべきものも守れなかった自分の無力さに、嘆いたのだ。



(…あの時はどうしようも無かった。ローマ正教を主とする勢力の総攻撃に加えて十人の「聖人」を相手に「絶対能力者(レベル6)」の貴方でも絶望的な戦力差があったから…)




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――は?


今、聞き逃せないことをラストオーダーが告げた。
「おい、ラストオーダー。今、何ていった?」
(え?だから「絶対能力者(レベル6)」の貴方でも絶望的な戦力差があったからって…)
「それだ!俺は、「絶対能力者(レベル6)」なのか?」

(……うん、この学園都市に二人しかいない「絶対能力者(レベル6)」の一人。学園都市第二位の能力者「神如き存在(ルシフェル)」。人類史上初、人の身でありながら努力によって到達した「神人」の領域に位置する人間。それが今の貴方だよ?)

887toto:2008/10/05(日) 02:53:02 ID:Wi1M8tZs
「……基準は一体何だ?二位のメルヘン野郎も相手にならなかったが、どうゆうことで格上げになったんだよォ、俺は」
(…そこのところも記憶が無いんだね貴方は。ってミサカはミサカは貴方の脳の深刻なダメージに危機感を募らせてみる)
「まだそう決まったワケじゃ無ェだろがよぉ。ンなことより教えろ。全部だ」
(学園都市での『超能力』開発が魔術の一つだってことは説明したよね?ってミサカはミサカは情報確認をとってみる)
「あァ。アレイスターは元魔術師で、脳開発ってェのは術式?だっけか?それを脳に直接ブチ込むことによって、魔術に用いる詠唱や文字が必要無しに非科学的な現象を任意で発動できる固有魔術。それが『超能力』の正体なんだろ?別に驚きはしねェが…」
(そうゆうこと。魔術は魔力というガソリンの下に詠唱や文字によって『この世』の世界の力を利用する『凡人が使うために作られた技術』。でもその習得には膨大な知識と長期間の鍛練が必要になる。その上、その力は生まれ持った才能やその日の精神の強弱によることが大きい不安定な代物。それに比べて科学の方は誰でも扱うことができてその用途、応用も幅が広く、その力は魔術より強大。だから科学は産業革命以降、全世界に普及したんだけど、一方で科学を嫌う宗教国家やその地域では魔術の開発が進んでいた。最も、科学の方が圧倒的に強いけどね。ってミサカはミサカは慣れない口調にミサカキャラの崩壊の危機が!って心配してみたりー)

「…………………で?」

(ちょ!?それヒドッ!)
「分かった分かった―――――って、オイィッ!また体を浮かすんじゃネェ!」
(説明続けるね。って自己承諾を取ってみる。
…学園長アレイスターは自身の魔術回路を元に、今行われている『超能力』開発を立案した。人間の肉体にある魔力の流れ方や魔力量や質、一人一人違うから学園都市の脳開発の適合者と非適合者が出てくるのは当然であって、強い能力を引き出せるほど、その人の魔術回路はアレイスターの魔術回路に似ているということ。そして、同じ術式をしても、人によってその効果が十人十色なのと同じように、同じような魔術回路で同じ術式を組み込んでも一人一人全く異なってくる。これが能力の『性質』と『強弱』の差違が発生する理由」
「……じゃあ、何だ?俺はアレイスターとよく似た人間だったってことか?」


(うん。異常なまでに似すぎていた。同じ遺伝子を持つ人間が100億人の中に一人存在するように)


白髪の少年は沈黙した。
(彼が一番得意とした魔術は風や水、はたまたは人の意識すら範疇に入る『流れ』を読み取り、それ操作し、干渉する魔術『神の真似事(マスター オブ アカシック)』。貴方の『ベクトル操作』の汎用性は彼の魔術には劣るけど、その威力はアレイスター以上のものだった。そして『神物質(ゴッドマター)』の発現。貴方はアレイスターにとって、アレイスターが『神人』を超える『神』や『魔神』となるための道筋を示すキャラクターだった)

「アァ?『神物質(ゴッドマター)』ってのは一体…」

(かつての学園都市第2位の超能力『未元物質(ダークマター)』の正式名称。あれは本当にこの世に存在しない物質で、人の『心』のみが干渉できる『神の世界(ヴァルハラ)』に存在すると言われている物質なの。時折、貴方が強烈な感情によって『神の世界(ヴァルハラ)』に干渉した際に引き出す『黒い翼』もそう。それが『神物質(ゴッドマター)』。今回の『戦争』で貴方はある程度の『神物質(ゴッドマター)』の制御方法を得た。今でもその実態は謎に包まれたままだけど…)
学園都市最高峰の頭脳開発を受けた「一方通行(アクレラレータ)」ですら会話に付いていけなくなってきた。魔術だの神だのと宗教側の存在は知っていたが情報量は圧倒的に少ない。機密情報にすら載っていなかった情報をこの「打ち止め(ラストオーダー)」が湯水のように垂れ流してくるのだ。真偽を確かめることよりも内容の咀嚼で精一杯だった。

(その物質の発現と制御方法を知ることがアレイスターの真の狙いであり、貴方の『役目』だった。そしてこの存在こそが一つ存在の証明となった)
白髪の少年はふと思いつく。一つの仮説を。
「おいオイオイ!…………まさか」



(そう―――――――すなわち、『魂』の存在の証明)

888toto:2008/10/05(日) 02:53:46 ID:Wi1M8tZs
(足の先から髪の毛一本まで『超能力者(レベル5)』の御坂美琴と同じ『欠陥電気(レディオノイズ)』を二万体量産してもお姉様(オリジナル)と同等の力を持つ個体は一つも出来なかった。それは製造過程に問題があったわけでは無く、『魂』の影響が一番強い『精神力』や『心』といったものを計算に入れていなかったから。元は『低能力者(レベル1)』だったお姉様(オリジナル)が学園都市第3位、今は『超能力者(レベル5)』の第一位だけど、そこまで上り詰めることが出来たのは、心の内に秘められた向上心と『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』が人一倍強かっただけのこと。
現在、一〇〇三二号のミサカは『とある』感情の出現で強い自我が形成されて、『大能力者(レベル4)』クラスの能力を有してる。ミサカネットワークの新たな管理者としての責任感もあるみたいだけど、これは些細なことだと思う。

そして私たちが量産された理由は、軍事的な意味合いも大きかったけれど、それはお姉様(オリジナル)を含む私たちミサカシリーズが絶対に『絶対能力者(レベル6)』に到達できない優秀な『欠陥品』だったから。

「力」というのは自分の意思で『物事を動かす』もの。火や物質をそこに結集させるだけ自然界では存在しない物質を生み出すことが出来ても、それは所詮、物と物との『合成』であって、詰まるところ「力」というのは荷物を運ぶローラーのようなものでしかない。その点に関して言えば、それは魔術も同じ。魔力と術式をブレンドして、世界の理に準じた現象を発生させているだけ。『有』と『有』から『有』を生み出しているにすぎない。

しかし、『神物質(ゴッドマター)』は違う。『この世』では無いところから引き出される『モノ』。
『無』から『有』を生み出すような神の如きチカラ。
貴方と垣根帝督は230万の能力者を有する学園都市の中で、唯一『神の世界(ヴァルハラ)』に干渉できる能力者。だから貴方たちの能力は『格』が違うの。もし彼らが量産されていたら2万人の『絶対能力者(レベル6)』が登場する可能性が出てくる。これを科学兵器に例えるなら、意志を持つ『核』兵器を2万個作り出すことになる。そんなことになればいくらアレイスターでも制御しきれない。だからミサカたちの量産は『魂』の存在の証明と、貴方の『絶対能力者(レベル6)』へのシフトの供物という役目だけで十分だった。

もう分かるよね?『絶対能力者(レベル6)』とは『神の世界(ヴァルハラ)』に干渉でき、かつそこから引き出したモノを制御できる能力者。すなわち『神上』と呼ばれる領域に到達した人のことだよ)

889toto:2008/10/05(日) 02:54:44 ID:Wi1M8tZs
「………大体は把握できた」
(ホントに―!?ミサカの知識は主に、今魔術にハマってるエジプト在住のミサカ一七七五〇号の知識とミサカ―〇〇三二号が集めた情報を分析したもので信憑性はかなり高いかもーってミサカはミサカは自分の優秀さを自慢しつつ貴方の情報処理能力の速さを疑問視してみたりー!)

「ようするに『この問題』とは何の関係も無い話だったってことだ」

(ちょっとー!?あれだけワタシに喋らせておいて、『そんなの関係ねえ!』なんて何処かの芸人の一発ギャグ的な発言で完結されるのはムカツクー!ってミサカはミサカはー!!)
「うおおおっ!?逆サマにすんじゃねぇ!アブねえだろうがァ!大体そのタリィ話を聞いてる最中もずっと俺を宙吊りにしたまんまだっただろォオ!?」
パソコンがある書斎で、空中でタロットカードのハングマンのようになっている白髪の少年は叫んでいた。
(うがー!!貴方の記億だけを1年後に跳ばしてしまうだなんて、そんな非科学的なことを出来る人が一人いるって言おうとしたのにー!もう教えてやんない!ってミサカはミサカはプリプリ怒ってみるー!)
「…ンだとォオ!!?じゃあ前置き無しに言えってんだ!ってオイッ!ベッドまで持ち上げてんじゃねェ!俺を殺す気かァ!?」

それからが凄まじかった。ベクトル操作の主導権を握られた「一方通行(アクセラレータ)」
は三〇分間も地面に着地できずに、空中で少女の思いのままに動かされていた。

ようやく、ベッドの上に戻してもらった白髪の少年は
「ヒイ、ヒィ…ハア、ハア、ハアァ…な、なかなか、やるじゃ、ねーか。ラスト、オーダーァ。ハア、ハァ…」
(まだまだ序の口だよー?ってミサカはミサカは貴方の疲労ぎみな姿にちょっぴり優越感に浸ってみたりー)
「…テメェは、サドか、フゥ、フゥ、フゥ―――ッ!ゴホッ!」
彼は自身の強力な能力のあまり、生身の人間としての身体能力は極端に低い。その上、無重力状態のような感覚で、何回も体を回転されたり、壁に超特急で激突させられそうになるなどハードな悪戯は肉体よりも精神的ダメージが大きかった。
「フゥー、ハァー…。ハァー」
(…何かいうことは?)
何も無ぇよ、と言ってしまいたかったが、そうすると先程の二の舞になることは明らかだった。自分のプライドなんか殴り捨てて、チッ!っと舌打ちすると覚悟を決めた。

「…かった」

(んー?何て言ったのかなー?ってミサカはミサカは悪戯心たっぷりな口調で貴方に聞いてみたりー?)

「……なかった」

(んんー?聞っこえないなー?ってミっサカはミっサカは〜)











「……………………………………………………………………………………すまなかった…」


(うん!許す!)
「打ち止め(ラストオーダー)」は即答した。

(でね!そんなことが出来る人物ってのはね、貴方と同じ『絶対能力者(レベル6)』で!貴方のクラスメイトで!お姉様(オリジナル)の恋人で!そしてそしてワタシ『達』の命の恩人!

上条当麻―――――――――――『ドラゴン』を宿す『神人』だよっ!)



「………………」

(あれー?ビックリしたー?って仕方無いよねー。彼はミサカシリーズ全員の想い人だしー。能力なんて貴方が一〇〇人いようが勝てっこないしー。天然の『神上』だもんねーって、ミサカはミサカは反則すぎる彼の設定に世界の不条理を訴えてみたりー)

「………………」
(あ、あれー?大丈夫―?ってミサカはミサカは貴方の驚きっぷりに少々…)

「ラストオーダー」

(な、な、なに?)
唐突に名前を呼ばれたことで危機感を覚える「打ち止め(ラストオーダー)」だったが
次に来る彼の一言は、彼女の予想の遥か斜め上を行っていた。








「ありがとよ。愛してるぜ」

890toto:2008/10/05(日) 02:58:17 ID:Wi1M8tZs
「ちょ、ちょっと待て土御門。まだ状況をよく飲みきれてない。……つまり俺の中には「龍(ドラゴン)」がいて、その力が強大だから俺は「絶対能力者(レベル6)」で、「幻想殺し(イマジンブレイカー)」はその力を抑えるフタみたいなもので…
そして、その力によって魔術世界と学園都市との戦争を止めた「英雄」でもあるってことで…いいのか?」

「その通りだにゃー。表だっては報道されてはいないけど、すでに周知の事実みたいになってる。特にイギリス正教の連中にはカミやんを英雄どころか「神」扱いしている奴らもいるくらいだからにゃー、まさに「神やん」ってカンジだにゃー」
「…寒いオヤジギャグはどうでもいいけどよ。俺が「風紀委員(ジャッジメント)」の委員長ってのもそのせいなのか?」
「っ!カミやんがその気になれば学園都市上層部の幹部になれるどころか、教会や学園都市に匹敵する第3勢力を作れる程なんだぜい!?それくらいドでかい功績が学園都市「風紀委員(ジャッジメント)」の一学区の委員長のポストだなんて割に合っていないのにも程がある。イギリス清教にいけば「必要悪の教会(ネセサリウス)」よりも強大な武力を持つ上条派閥が出来上がるし、ローマ正教にいたっては「神の右席」の席を用意しているなんて話があるぐらいだぜい?」
朝から驚きの連続であったのに、先ほどから語られる唐突でかつあまりにスケールのでかい上に身に覚えがない自分の過去話に付いていけなくなった上条は、

「………………………………………………………………………あー、えーっと……マジ?」

マジだにゃー!と叫ぶ土御門のリアクションに上条当麻の脳みそはオーバーヒート寸前だった。
「未来」に意識が跳んだだけでは無く、身の回りの著しすぎる変貌。恋人の存在。「風紀委員(ジャッジメント)」という地位。一年前には妄想を脹らませても辿り着けないような場所に、自分はいる―――――――

なーんて夢オチでした。テヘッ。

と、上条当麻は叫んでみたいくらいだった。

891toto:2008/10/05(日) 02:59:26 ID:Wi1M8tZs
気持ちを整理して落ち着きたいところでもあったが、土御門との会話が繋がらなくなるのも癪なので、上条当麻は少し気なることを聞いた。
「…ところで土御門。何でそんなに震えてるんだ?風邪か?」
「……カミやん、「風紀委員(ジャッジメント)」にカミやんが入るって学園都市の理事長の前面で言ったときのことを覚えてるかにゃー?」
「覚えてるも何も、さっき言っ…」

「だぁー!!!まるまる一年記憶が跳んでてもそれくらい予知ってほしかったにゃー!理事長にその理由を聞かれたときのカミやんは何て答えたと思うっ!?」
「知らねぇよ!」
知る由もない未来や前世の記憶などを覚えてるやつがいたとしたらそれはただの嘘つきか結婚詐欺師だ。
「カミやんはこう言ったんだぜ!こう言ったんだぜ!?」
土御門のあまりのリアクションに上条の額に嫌な汗が流れる。



「『守りたい女(ひと)がいるから』―――――――だぜぃ!!」


「は、はいいいいいいいいいいい――っ!!?」
何言ってんだ未来の俺は!?(現在からすると過去となるが)最近の少年マンガ家ですら描くことに躊躇いを覚えるほど歯の浮くようなセリフに上条はただ驚くしかなかった。
そんな上条のことを無視して若干壊れ気味に金髪グラサンは一気にまくし立てる。
「カミやんのそんな強さと謙虚さに上条フラグが4桁を突破し、しかもしかも!選択肢イッパツでグッドアンドトゥルーエンド直行の重要フラグばかりを立てやがってェー!カミやんに助けられた巨乳シスターさんやロリっ子シスター率いるシスター軍団やありとあらゆる属性を持つカワイイ女の子たちが東西南北どこからともなく次々とカミやん目当てで学園都市に入ってくるわでそんな報告を淡々と受け取るしかなかった俺の気持ちを考えろや!!青髪ピアスを筆頭とするクラスメイトは俺でもビックリするような練りに練った『カミやん暗殺計画』を実行する寸前だったし、カミやんを慕う女たちにそれを気づかれた青髪ピアスたちは一人残らず粛清されて天に召される一歩手前だったし!それから『あの』常盤台のエース様をメロメロ(貴方なしじゃ生きられない)レベルまで落としやがって!!アーッ!思い出しただけでもムカついてきたにゃァア!!!モテナイ男たちの代表として一発殴らせろー!カミや――――んっ!!」
「ええええええ――――――!?ちょっと待ってー!?なんでカミジョーさんは勝手に思い出し逆ギレされて殴られなきゃならないワケ―???俺は身に覚えがないし何よりモテナイ男軍団から彼女が出来たってことで卒業の祝福されてもいいと思うのですが間違ってないよね間違ってますかすみませんごめんなさいって二発目じゃんよ俺って不幸だー!!」
理不尽かつ強烈な土御門の鉄拳を哀れな(?)上条は――――――



「ッ!―――――――――――――させませんッ!!」
「!?ブへァアッ――――――!!」



とはならずに、第三者の介入によって上条に危害を加えようとした金髪グラサンは、紺色の長点上機学園の制服を着た金髪でウエーブがかかったロングヘアーの少女に『文字通り』ブッ飛ばされた。

892toto:2008/10/05(日) 03:26:36 ID:Wi1M8tZs
こんにちは。totoです。美琴の激甘ssから一変して、とてもシリアス(?)な雰囲気になってきてますが、この物語は一日目と二日目があり、
そして上条当麻