■掲示板に戻る■ ■過去ログ倉庫一覧■

皇軍(明治〜WW2の日本軍)がファンタジー世界に召喚されますたvol.10
1 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/11(金) 18:19:34 [ xhoIG32o ]
自衛隊ではない日本の軍隊のスレッドです。
議論・SS投下・雑談 ご自由に。

ローテク兵器VS剣と魔法

戦国自衛隊のノリでいて新たなジャンルを開拓すべし
銃を手に、ファンタジー世界で生き残れ!

・sage推奨。 …必要ないけど。
・書きこむ前にリロードを。
・SS作者は投下前と投下後に開始・終了宣言を。
・SS投下中の発言は控えめ。
・支援は15レスに1回くらい。
・嵐は徹底放置。
・特定の作者専用スレは板として不可。
・以上を守らないものは…配給が欠配・遅配になります。 嘘です。

2 名前:名無し屯田兵@F世界 投稿日:2006/08/11(金) 18:20:10 [ xhoIG32o ]
暫定ガイドライン(分家皇軍Ver.)

1.「皇軍がファンタジー世界に」とあるように、あくまで「大日本帝国の軍事組織」が「ファンタジー世界」に関わる話であること。
2.大日本帝国というからには、日本軍の組織・装備は実在もしくはその延長上にあるものに限る。
実在しないが延長上にあるものを出すには、そこに至る流れを説得力のある理由つけてハッタリかますこと。
3.核兵器(含む動力源)・大陸間弾道弾・人工衛星、巨大人型兵器・海底軍艦・飛行戦艦・陸上戦艦など当時の日本が配備するにはナンセンスなものは極力避ける。
しかし確信犯(誤用)的トンデモ架空戦記としてならまた別かも知れない。
4.あくまで「ファンタジー世界」の話であり、F世界側の設定は作者が自由に決めることが出来る。
ただしそれ単独でパワーバランスを大きく揺るがす存在(兵器・魔術・キャラクター等)は作らない事が望ましい。
5.日本・F世界双方の人間をきちんと描写する方が好ましい。
一方の主観という演出などであえて描写しないのはこの限りで無い。
6.戦略・戦術としてありえないものを避ける。例えば一人の帝国陸軍軍人が軍刀一本で100人斬りとか。
7.萌え・エログロはあくまで表現手段であり、目的ではない。安易に狙ったり、しつこく要求するのは流石にウザイので自粛すべき。
どうしてもそれ主体でやりたい場合は各専用スレでやる事。
8.叩き・煽り・嵐は徹底放置。嵐認定を受けた後に、かまった者も同罪とする。
9.SS作者は、抽出がしやすいようにトリップ装着を推奨。
なお、二次創作の可否については原SS作者の判断に一任とする。現在、SS「帝國召喚」では公序良俗を乱す作品でない限り問題なし。
10.感想書き込む人も節度や口調を考えるべし。作品が気に食わないなら透明あぼーん汁

3 名前::名無し屯田兵@F世界 投稿日:2006/08/11(金) 18:21:29 [ xhoIG32o ]
過去スレ
01 http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1116672903/
02 http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1125644871/
03 http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1130199183/
04 http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1134983039/
05 http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1139108925/
06 http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1142596115/
07 http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1145757330/
08 http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1148549150/
09 http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1151766955/

SS「帝國召喚」関係

作者くろべえ氏のサイト
KUROのどこかでみたような世界
http://www.geocities.jp/wrb429kmf065/

ここまで読んだ氏による公開済み設定まとめWiki
帝國資料館
http://www12.atwiki.jp/kokomadeyonda/pages/1.html

4 名前:00 投稿日:2006/08/11(金) 20:08:32 [ nr.9R86Q ]
生活に役立つ裏情報公開中。。
http://jbbs.livedoor.jp/travel/5732/

5 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/12(土) 01:44:31 [ ToMVwDhk ]
新スレおつ。
と言う事で、投下。

815事件は翌16日までには鎮圧されたが、依然として
不穏な国内情勢を抑えるべく、8月17日、鈴木内閣は
総辞職するとともに、皇族を首班として、東久邇宮内閣が成立。
国民に好意的に迎え入れられた。

6 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/12(土) 02:12:19 [ ToMVwDhk ]
大陸に派遣された陸軍歩兵旅団は、関ケ原城塞にて待
機していた時、王国軍が関ケ原城塞を陥落すべく、
大部隊をもって攻囲する。

陸軍歩兵旅団は、この攻囲を解くべく、王国軍に火力を投射。

しかしながら、簡易ながらも野戦塹壕を敷いた王国軍
は、龍騎兵を投入。
陸軍旅団は思わぬ苦戦を強要されつつも、城塞解囲に
成功したが、追撃する余力を失い、王国軍残存兵力を
取り逃がす。

これが皇紀2605年8月26日の事である。

この結果、統合幕僚部は予定していたもう一つの旅団
を送り込む前に、消耗した弾薬、補充兵、そして
高射砲隊を送るよう参謀本部に命じたのだった。

これにより、参謀本部が建てた当初の部隊展開計画が、
狂う事となる。

7 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/12(土) 02:28:55 [ ToMVwDhk ]
一方、沖縄占領軍は逼迫する一方の物資に頭を悩ま
せつつ、食料の確保に乗り出す事となる。

島外に出る事ができない米軍は、島に閉じ込められ
たまま戦闘力と士気を失っていく事となる。

日本は米軍から手に入れた書類で、意外なものに
驚く事となる。
それは様々な装備の取り扱い説明書だった。
写真や絵があちこちに散りばめられており、文字が
読めなくても扱えるからだった。

また米軍技術者から八木式アンテナの存在を知る事となる。

8 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/12(土) 07:29:49 [ Kog99jB6 ]
前スレ>>998
「おら、一生懸命働いて帝都で毎日そんなうめぇ飯食える身分になるだ!」

「おお〜っ! 何と若者らしく壮大な夢を語るのだろう」

でも、帝國海軍下士官になれて、大出世して特務将校になれたら
そういった食事を「時々」とれる身分になるのだろうな。
故郷の村に錦を飾れますなぁ・・・・
公務で近くに寄ったとき上官が気を利かせてくれて
「貴様 故郷がそばだろう 今日明日帰参して良し」と海軍の車で
兵に運転させて実家に帰ったりしたら・・・・
村長以下、下にも置かない扱いで。
立身出世物語の生きた見本となるのでしょうな。

9 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/12(土) 08:19:46 [ yq9lkYzY ]
名無し屯田兵様、スレ立て乙です。
とうとう大台に乗りましたね!

陸士長様、投稿乙です。
これ、何かの罰ゲームですか?(笑)
それはさておき、知らない方がやはり幸せでしょうねえ…… 

大本営発表様、投稿乙です。
旅団苦戦ですか。流石に航空部隊がいないとキツイですねえ。

10 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/12(土) 08:20:26 [ yq9lkYzY ]
<SS関連のレス返しです>

977様、978様、979様、陸士長様、985様、ヨークタウン様、ここまで読んだ様、有難う御座います。
996様、もう少しお待ち下さい。

>この少年はまさか…
そのまさかです。まあおまけなんで。

>中尉…やっぱりあれ犬じゃないですよ…
とっても危険なナマモノです。

>面白い!です。
>早く気が向いてくれることを祈っています。
>このまま、「無かったこと」はしないで下さいね(笑)
有難う御座います。では後編は近い内に。

>>求婚者共をシロに追っ払わせた
>中尉成長してないw
……娘を嫁にしたけりゃあ、仏の御石の鉢、蓬莱の玉の枝、火鼠の裘、龍の首の珠、燕の子安貝の一つでも持ってきな! 話はそれからだ! (*゚Д゚)

>くろべえ様、駄ネタをヨハン氏の異文化体験にまで発展させていただき有難うございます。
何か本家本元の芋粥と大分かわってしまいました。しかも芋じゃなくて豆だし……

>続きを楽しみに待ってます。
有難う御座います。

>ていうか、ナリマサ、あの魔獣をいともあっさり・・・・・・・
シロが白いですからねえ。←?

11 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/12(土) 08:21:14 [ yq9lkYzY ]
>気長に待ちますのでお汁粉食べさせてやって下さいw
豆粥の正体、バレバレですね。 ……そりゃあそうか。

12 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/12(土) 08:21:44 [ yq9lkYzY ]
さてこのSS(>>963〜975)、ジャンクではありますが幾つかの点については公式設定となっています。

>タブリンが帝國領であった時代は、ほんの十数年程の間に過ぎなかった。
>治安が回復し、官僚制度が有る程度整ったところで、帝國はあっさりと旧タブリン王室に国権を返上したのである。
>名目については色々な理由付けがされているが、理由は今ひとつはっきりとしない。
>本音を言ってしまえば、さしたる資源も無く、戦略上重要な拠点でも無い以上、持っていても無意味と判断した。――そんな所であろう。
>実はここ数年、この様な『贅肉落し』が頻繁に行われているのだ。

帝國は十数年後にはかなり領地を邦に昇格させる筈です。対象は『重要性の低い地域』ですね。


>邦國昇格に伴い、タブリン王には帝國子爵位が下賜された。
>(規定通りならば帝國伯爵位が下賜される筈ではあるが、直轄領から邦に昇格したため、元から邦だった諸王と差をつけている)

やはり元直轄領の諸王は、元からの邦の王とは差が付く筈です。


>数日に渡る王宮での式典が終わってからも、貴族達はこうして宴を繰り広げている。
>彼等は何の遠慮も無く豪華な料理を貪り、美酒を次々に飲み干す。
>美食に至上の価値を見出すタブリン貴族、その健啖さは帝國支配を経ても未だ健在の様だ。
>が、如何な彼等とてこれだけの食を喰い尽すことは不可能である。
>(そもそも、タブリン貴族の宴において『用意した食事が全て無くなる』というのは、主催者にとってこの上ない恥辱である。故に、残るのが『当たり前』の量を出していた)

客は遠慮無く食すのが、主催者側は客が食しきれない程の食を用意するのがタブリン貴族の礼儀です。 ……しかし余り成長してませんね、彼等。大丈夫だろうか?

13 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/12(土) 08:22:21 [ yq9lkYzY ]
>まあ貴族といっても、この屋敷の主の様に都の中心に1万坪を超える本邸を構える大貴族もいれば、この男の様に都の外れの100坪程度のあばら家に住まう下級貴族まで幅が広い。
>タブリンの下級貴族は、領地どころか農園すら持てず、下級官吏として受け取る僅かばかりの俸禄を唯一の頼りに、狭い家屋敷を維持するのに汲々としている。――そんな存在であった。

例えばこの大貴族の本邸は、240〜250メートル四方(約1万8千坪)という大邸宅です。ヨハンの家が120〜130坪ということを考えれば、両者の差が分かります。


>ちなみにタブリンの役人の階位は12あり、それぞれ着る衣の色が異なる。
>上から順に、『紫』『青』『赤』『黄』『黒』『白』となっており、同じ色でも濃薄により上下の区別が付けられていた。
>(当然濃い方が薄い方より上)

衣の色は流石に原色通りではありません。

位階は帝國で言えば、『濃紫』は正従一位、『薄紫』は正従二位、『濃青』は正従三位、『薄青』は正従四位、『濃/薄赤』は正従五位、『濃/薄黄』は正従六位、『濃/薄黒』は正従七位、『濃/薄白』は正従八位に相当します。
まあナリマサが従四位上参議、ヨハンは従七位下治部少録といった所でしょうか?
……勤続年数と年の差を考えたら泣けてきますね、この差。

14 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/12(土) 08:22:55 [ yq9lkYzY ]
>ケネット地方の豪族であり、タブリン王臣下ながら帝國大騎士の爵位を持つ帝國貴族でもあるタブリン唯一の『直参』だ。

新設された爵位です。
石高3000石以上の武家、及びそれに相当する家→帝國男爵に編入
(3000石とは大名に準じた家です。江戸時代でも『高の人』と別格扱いでした)
石高500石以上の武家、及びそれに相当する家→帝國大騎士爵を新設、これに編入
(500石とは江戸時代の1ヶ村に匹敵します)
石高100石以上の武家、及びそれに相当する家→帝國騎士爵を新設、これに編入
(100石取りの武士は江戸時代でも上級です)

このSSでは、ナリマサ少年は父から帝國大騎士爵の永代爵位を譲り受けています。
姓は違うとはいえ、ナリマサ少年こそが正真正銘の嫡男だということを父は示したかったのでしょうね。
これは結果として、タブリンにおける少年の地位を高めています。


>帝國人とタブリン人の間の子、というだけでも珍しいが、このうえ上級役人になれる様な少年など唯一人しかいない。

実は、多くの帝國人はタブリン人……というより辺境の民を結婚相手としては見ていません。
加えて性病の危険性から、アレが徹底的に義務づけられてますし……
(守らなかったら営倉行き)


さて下級貴族ヨハンですが、実はタブリンにおいては恵まれた層です。
彼は都に120〜130坪の屋敷を構え、数人の下男下女を使っています。
無論、飢えることはありませんし僅かとはいえ蓄えもあります。
そんな彼は、紛れも無い中産階級なのですよ。

あと、たとえ最下級の白衣の役人といえどもれっきとした『官』です。
役所においては、『官』の数倍の数の『雇人』という非正規職員が働いています。
『雇人』から見れば、白衣とはいえ官は官、雲上の人なのです。

15 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/12(土) 08:23:26 [ yq9lkYzY ]
<くろべえ型重巡へのレス返しです>
>>989
>ところでくろべえ様。ツーロン沖の重巡足柄の対空兵装の説明で「25ミリ連装×4、13ミリ連装×2から、25ミリ三連装×12、同単装×16に増強」となっています。史実の最終状態の重巡摩耶で25ミリ40丁弱なんで積みすぎでは?

ならば単装機銃の数を減らして下さい。各舷2基の計4基でもOKです。
単装機銃はあくまで三連装の補助に過ぎません(操作員も2名ですし)。機銃運用員もまず三連装から埋めていきますから。
何れにせよ、この数字はあくまで殆ど単独でツーロンに派遣される2隻の重巡だからこその重巡最大値です。他の艦はもっと少ないでしょうね。
この世界では、25ミリ機銃の生産数は史実より遥かに少ないでしょうし、予算・運用人員そのものも少ないのですから。

>>995
>九八式だと無理ですけど、一五.五サンチなら、嚢砲なので対地射撃時などは減装薬できますから、砲身命数もさほど問題にはなりませんよ。
> むしろ、いざ対空戦。船団防御だ、手が早くて長い砲が一門でも欲しいって時に、とても具合がよろしいのではないかと。九八式が評価されているのも、高初速故に有効弾を送り込みやすいってところですから。

なる程、でも一五.五サンチって対空にも効くのですか……
でも重く、高くなりそうだなあ。いっそ安上がりに14.7センチ砲Ⅱ×3(人力装填式)の5500トン発展型とか。

基準7000t、速力35ノット、航続18ktで8000海浬
装甲 60ミリ(舷側)/30ミリ(甲板)/25ミリ(砲塔)
14.7cm50口径砲連装3基、8.8cm45口径高角砲単装4基、25mm 対空機銃?,
61cm魚雷発射管四連装2基(予備魚雷無し)、 爆雷 16発、航空機2機搭載可能。

……これ超大型駆逐艦? 下手したらギアリング型駆逐艦にも撃ち負けそう。

16 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/12(土) 09:05:02 [ /9tm..U. ]
続き投下です

17 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/12(土) 09:07:20 [ Xq7PfW/w ]
『弾が、足りない?』
上空を舞うワイバーンの数も三々五々帰還し始め少なくなってきたので、なんとか艦橋も余裕が持てるようになっていた。そこにこの報である
艦長が頷く
『本艦は伊勢や日向が爆発事故での長期ドック入りを利用した大規模な改装を行った時のように、副砲の撤去を行っておりません。また、地上制圧の観点からケースメイト副砲の存在は有意義・・・高角砲の砲身が余ってないのもあったかも知れませんが、弾薬庫には、主砲・副砲・高角砲弾・機銃弾とそれぞれがスペースを取り合って、搭載されています』
『あれもこれもと欲張ったおかげで経戦能力が下がっているわけだ。このような状態で空襲を受け続けるなど、普通考えんしな、ましてやこの世界、驚異の存在など感じなかった』
さもありなんと左近丞が頷く
『空襲の常識からもそうです、上空直援があり得る事を考えれば、逐次投入など愚の骨頂です。しかし我々には直援がない』
空は彼等のものだ
『第三艦隊はどうしたんですか?要請してみてはどうでしょう?囮の任務とはいえ、機銃弾がなければ戦えない』
話に参加していなかった航海長が話に加わる、左近丞と松浦以外この艦隊の目的をしらないのだ、我々が贄である事を

18 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/12(土) 09:10:23 [ ibELFYCQ ]
『いや、3Fに助力を求めては敵地上戦力撃滅に支障が出る、なんとしても我々単独で凌がねばならない、出来るな、艦長』
もっともらしい理由で左近丞が反論する、すましたものだ
『弾数からみて二次攻撃分までなら、充分ですから。攻撃がこの調子で続く限り、なんとか避け切ってみせましょう、しかし、私には百連歌が出来るほどにはうまくありませんので、そのあとはどうにかしませんと』
疲労の問題もあるだろう、戦闘とは精神をすり減らすものだ
『うむ、しかしとりあえずは次だ、旗下の各艦も同様に、いや、それ以上に弾を消費しているはずだ・・・本艦から補給は出来んかな?』
左近丞の言葉に航海長が血相を変える
『喫水の差が本艦と古鷹・加古とは4メートル!初春ら、駆逐艦が6メートルもの差があります!航行中ではとてもできるものではありません!だからといって停止していては敵襲と重なる可能性もあります!』
『第二十一根拠地隊を一時呼び戻したらいかがですか?最悪駆逐隊が対空能力を喪失しても、火力の維持は可能です』
確かにそれがベストな判断だろうな
『二十ノット出ない艦に護衛されていては、行動が制限される、かといって振り切っては護衛にならない、違うかな?』

19 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/12(土) 09:14:05 [ kXkOHBG6 ]
測量艦筑紫

『キュ〜・・・ターニャちゃん、凄い』
ニーギの額に脂汗が浮きあがる、戦闘配置に着いているため、ニーギとターニャ二人ともがヘッドホンを耳にあてている
『前経験無しででそれだけ出来れば十分以上です。さすがに至近で聞いたら私もキツいですが』
海中を伝播してくる、扶桑らを攻撃するワイバーンが投下した爆弾の水中爆発音。それがここまで届いていた、その遠雷のような音を使い、現場を離れていたニーギに耐性をつける為、探知器の最大感度で探音をしていた。
『長いな・・・』
同じく水測室に詰めている五島が記録を書きながら焦燥を募らせる、既に一時間近く攻撃を受け続けている
『桟橋に該当する人物らしき人影発見、五島大尉は艦橋まで来られたし』
伝声管から声が聞こえる
『お呼びです。』
『みたいだね、じゃあ二人とも、あとは頼むよ、無理しないように』
二人を見て、いや、ニーギを見て五島が念を押し注意する
『はーい、いってらっしゃーい』
明るく答えるニーギ、これではお邪魔虫しているみたいだ
『ふぅ・・・では、周りの観測を注意してやります』
ターニャが貯めた息を吐き出す
『じゃあ、一緒に頑張ろう♪』
まったく、この人の笑顔には負ける

20 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/12(土) 09:16:54 [ 2lSfKk9s ]
『どれです』
『左、10時の方向だ、間違いない、よな?』
『あぁ・・・だが・・・』
艦橋にあがってきた五島に対馬が答える、筑紫の乗員は少なからず面識がある、艦が違っていた対馬は知らないが。一支が言うなら間違いない、しかし何を口ごもって・・・
『うお・・・』
桟橋に乗っている馬車は弓矢が何本も突き刺さっている、それに・・・
『・・・左腕が、無いように見えますが』
『やはり間違いない、か・・・今、カッターを用意している、軍医も乗せて行かせるつもりだ、血液型とかわかるか?』
『たしかBだったかと』
一支が小値賀を見ると頷いた
『集めたまえ、彼の救助が第一の目的だ』
『はっ艦内各位、B型の者は医務室にて集まれ!』
『市街の方向から武装した騎馬隊が向かっています!』
見張り員が叫ぶ
『騎兵隊だ!?やっぱりなにかやらかしてやがったか!』
『行かせてください!このための典礼参謀です!』
守って見せる、今まで得た典礼参謀としての技術を駆使して・・・本来あの場に居るのは私だったのだから
『・・・よし、任せた!だが、ちゃんと帰ってこいよ』
『カッターはすぐ出る、急ぐといい』
『はっ!』
ありがとうございます、一支艦長、対馬航海長

21 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/12(土) 09:18:52 [ KRpK8t7E ]
幸いにもカッターは騎馬隊よりも早く桟橋に着いた。そこには馬車にもたれかかって息をついている志摩少佐と必死の形相で手に投げナイフを持ち騎馬隊へ突っ込もうとしている少女が居た
『やあ、五島参謀』
息も絶え絶え、こちらに手を振るのも精一杯だったのだろう力無く笑顔をみせる志摩少佐
『彼女を止めてくれないか?』
『いいえ!!!時間稼ぎぐらいはしてみせます!』
ああ、そういう事か、合点がいった、何があったにしろ、志摩少佐は彼女を庇ったのだ、そして左腕を失った
『まぁ、まて・・・任せてください、とりあえずあなたはカッターに』
騎馬隊が向かってくる、先頭の馬に乗っている人物(騎士には見えなかった)が馬を止め口上を叫ぶ
『その者!!大罪人にて我等の手によって切り捨て御免となっている!貴国の御人はその片棒をかつぎし者!直ちにその場より引き払い、その女を引き渡されたい!!!』
『立射用意!!』
五島が号令をかける、カッターに乗っていた他の乗員が慌てて小銃を構える、一戦やらかす気か?おもむろに五島がきりだす
『我等は貴国とほぼ同盟関係の状態にあるが、配下となった覚えは無い!馬上から口上、はなはだ無礼とは思わぬか!我は帝國男爵なるぞ!』

22 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/12(土) 09:21:15 [ gPuSt/kQ ]
はっと隊長らしい人間が表情を変え馬を降りる、しかし続けて
『は、これは失礼を、が、これは火急の儀にて』
『火急の時にこそ冷静さが必要である、焦り、事を損なう可能性のある使者と交渉を行う事は国家の間では不可である!引き取り願う!』
五島が強行につっぱねると相手が今度は交渉の切り口を変える
『では、我等は自侭にその女を捕らえる、邪魔だてなさる気はありませんでしょうな?』
『撃鉄引け!!』
号令でガチャッっと撃つ態勢に入る乗員達、二つの集団に殺気がほとばしる
『貴公は目が見えないのか?』
『何?』
見えないのかといわれてもミスミがカッターに乗っているだけである
『彼女は今帝國領土内に存在する、貴公らの捕縛権はその中では効力を持たない、お分かりか!!その中へ武力を持って進入する、これは明らかな我が國への侵略行為である!』
『あの手漕ぎ船を帝國領土と?沖の軍艦ならまだしも・・・』
『われら帝國ならびに邦国内での国際公法はそうなっている!ならば、貴国は他国からの船に無差別、かつ書類も無く臨倹をして良いとするのか!』
中世レベルの犯罪者を追うような立場の人間が書類等、持ち歩いてなど居るはずがない
『早々に立ち去れぃ!!!』

23 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/12(土) 09:25:02 [ hxY6CuZ2 ]
『外交官対等の原則もある!本来ならばこの交渉すら許されぬ、良いか、我々は好意で交渉してやっているのだ』
外交官対等の原則、彼等の立場と同じ程度かそれ以下の相手しか外交上接触してはいけないというルールだ、書記官なら書記官までと言った感じだ、しかしこの場合、男爵(実は本家はそうであるが分家である、この五島自身は爵位はない、はったりだ)である相手に騎士程度(実際はラスプーチンの諜報畑の人物、中世では下賎の者である)交渉できる立場に無いのだ
『我々は侵略行為には決して屈しない、踏み込むというのなら、こちらは支援国との戦闘も辞さない!』
『ぐぅ・・・!ならば、担当を変え、交渉を行った暁には、引き渡しを認可なされるのか?』
『当然だ』
『急いでハマの統治官を呼んでこい!』
隊長が部下に早駆けを命じる
『ただし!現在味方艦が戦闘を続行中である、我等はこれを支援に行かねばならぬのでこの場を離れる、別のルートからの交渉をされたし、以上だ』
『な・・・!?』
それでは目標が目の前に居るというのに数週間から数ヶ月かけてまた最初から交渉しなおす事になる!
『せめて、せめて!使いに遣らせた者が帰ってくるまで、御慈悲を!』
『くどい!!!』

24 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/12(土) 09:27:57 [ Xq7PfW/w ]
『すごい・・・』
私をこのカッターとか言うこの手漕ぎ船に乗せただけであれだけやり合っている
『あれが典礼参謀だよ、実際のな』
志摩が目を細める、松浦さんにから聞いたよりもやるじゃないか・・・
『担架乗せます、動かしますよ』
これまでずっと止血にかかっていた軍医が兵二人に命ずる、あとはカッターで運んで甲板から吊り上げれば良い
『まった!』
騎馬隊の隊長が思いついた!と声をあげる
『その女は我が国から出国しようとしてる、それに異はありませんな?』
『・・・そうだ』
『我が国からの出国には手形と所持している物の調査が必要である!身柄を引き渡していただきたい!!』
持ち出す所持品の検査は国家の権利として認められている、なにより帝國じたい禁制品がいくつあるのやら・・・しまった!!
『手形はここに』
これは諜報員として当然だ、だが、所持品の検査は・・・
『・・・』
きっ・・・と隊長を睨むとミスミが全ての衣服を脱ぎだす、周りも唖然となる
『ちょ・・・』
『所持品が、無ければよいのでしょう?』
脱いだ衣服、武器、その他ひっくるめて一糸纏わず、カッターから桟橋の隊長に向かって投げ捨てる
『ではこれで・・・納得なされましたか?』

25 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/12(土) 09:30:31 [ 50Ied/7E ]
ミスミが毅然としているのに五島ははっと気付いて続ける
『これは何か、貴国では女性をこれ以上辱めてからでしか出国を許可しないとするのか!?』
『あ・・・あぁ、承知した』
『各員乗り込め!』
志摩の担架が乗せられたのを確認してから命令する、持って来たカッターは二隻、担架が乗ったカッターは乗れる人数が減ってるがもう一つの方に押し込む
『では、これで』
最後に五島が乗り込む、目の前で獲物を掠われた騎馬隊長は顔を紅潮させる
『船は無いのか!統治官がこられるまで妨害して時間を稼ぐぞ!』
『どうやら、カッター競争になりそうです』
五島が志摩に話し掛ける
『尻を痛めんで済むのを感謝するよ・・・それよりミスミさんに服、を・・・うっ』
『志摩さん!!』
『志摩少佐!痛みが?鎮痛剤を!』
今まで脳がそれを遮断してきたがそれも限界らしい
『大丈夫だ、鎮痛剤は打ってもらった、まだ・・・耐えられる痛さだ』
右手で志摩が皆を制する
『それよりミスミさんに服を、寝そべっている分・・・なんだ、その・・・余計に見えるんだ』
『私は・・・その』
あ、これは自分にもわかる、これは少佐に・・・て、エライ事になりそうな気が
『すまなかったな恥かかせて』

26 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/12(土) 09:31:32 [ 25Xn9yoU ]
『いえ!とんでもありません・・・』
その言葉にニコリと笑う志摩少佐・・・落とした自覚なさそうだ
『少し寝ます、信頼しましたからね』
『はい!』『了解です』
『岸より手漕ぎ船二隻来ます!あ、水中に・・・』
櫓を漕ぐ者で後ろを向いてる者が追跡者と何かに気付く
『ひきはなs』
『ゴトー♪』
海からいきなり抱きつかれカッターから落ちそうになる
『うおおっニーギ、落ちる!落ちる!!何をしに来た!?』
『キュウ、ターニャちゃんと手伝いに来た〜』
『手伝い・・・?』
こちらに向かって来ていた手漕ぎ船の一隻がひっくり返った
『艦長が水中作業は得意だろうって、じゃあ行ってくるね〜』
『あ、おい!ちょっと待て!』

『せ、船底に穴が〜!!』
しばらくして残りの一隻から
『お、おい!なんだこれ!?櫓がもってかれる!』
とか
『ばっ馬鹿!いきなり跳び乗るな!バランスが、バランスがぁ!!』
といった声と共にひっくり返ってしまった・・・南無
しかしこれで無事に志摩少佐を送り届けられる、ありがとう二人とも


騎馬隊の隊長が水に浮かんで屈辱に激昂している、
『我が主にも連絡は行っているはずだ!貴様ら、今に見ておれ!』
見事な負け台詞だった

27 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/12(土) 09:51:10 [ gY4wlmWo ]
投下終了です

少しだけ左近丞中将らを、彼等は危険な賭けに出るかも知れません、駆逐艦の機銃弾、一時間撃ち続けてるわけではないのですが、逆算したらあと二十分しか撃てません、アパム、弾もってこいアパーム!!!です


あとは五島、典礼参謀らしい仕事を今回してあげられたかちょと不安ですが、いかがでしたでしょうか?それからこの世界にも国際公法の元祖みたいなウェストファリア条約みたいなものはある、としました。でないと会話が・・・(汗)


次回からは戦闘に戻ります、遂に対帝國艦船用決戦兵器(くどい)を搭載したワイバーン100機による第二次攻撃隊が到着します、危険な洋上補給は行うのか?扶桑らは攻撃に耐えきれるのか・・・
次回を待て!!!
なんて言えた物じゃないですが、生暖かい目で待っててくださいねm(__)m


微妙に投下しすぎでしょうか?(汗)

28 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/12(土) 10:21:04 [ YnrPq2J6 ]
乙です。

>>10
ところで駐留軍の司令官が現地の王室と結びつくのはいいんですかね?
この場合はないでしょうが現地の国政に介入する人間が現そうな気が…

29 名前:900 投稿日:2006/08/12(土) 13:49:48 [ /DnxdNTM ]
長崎県人様(〜氏では偉そうなんで様で統一します)
どうもこちらの資料では単装機銃が省略されていたようです。ご指摘ありがとうございます。
ダメコンの詳細解説についても感謝です。意外と頑張ってるんですね。

くろべえ様
偉そうな事いって済みません。無かった事に・・・

Gir様
>最上型機関が大和型と構成が同じ(近い)
大和 ロ号艦本式罐・重油焚×12基 艦本式オールギヤードタービン×8基4軸
金剛 ロ号艦本式罐・重油焚×8基  艦本式オールギヤードタービン×4基4軸
最上 ロ号艦本式罐・重油焚×8基  艦本式オールギヤードタービン×4基4軸
大和型と最上型の機関構成は全くの別物です。構成が近いのはむしろ金剛です。そもそも大和型の機関は本命がアテにならなくて急ごしらえした物。同じような事を他でもやってるていうのは無理な話。(副砲も流用品だし大和ってヴァンガードみたいにセコイ所を感じる)

>最上もその保守的な初春と同型の機関を
保守的と言ったのは大和のデチューンであって初春の機関についてではありません。
そもそも始めは8500tだった艦と64000tの艦と同じような機関と考えるのは無理。ていうか入らない。

>バルチモアの基準排水量
いくらサイトを並べられてもどれも何の排水量か書いて無いのでその排水量は何でしょうね?としかいえませんし、軽過状態の可能性だってあります。日本のサイト、もしくは書籍ではその多くで「基準排水量」と書いてあります。ノーマルとスタンダードの違いを当方に言われてもそちらの資料に何も注釈が無いと厳しいかと。

> バルチモアの定員
英語が弱いのは自覚してますが、乗員数(定員はおかしかったですね)は日本語の資料からです。そもそもそちらの提示した資料でも1700人とかありますよ。

>いまの米海軍で・・・
1940年代と現在では比較になりません。例えばイージス艦には300人強しか乗っていないんですよ。

>常識的に8年後に就役する艦艇では・・・
帝國は経済安定の見込みが未だに立ってないんで軍人の大幅な増強はもっと先かと。そもそも開戦前の米英海軍以上に支援艦艇を増強し、海防艦等の護衛艦艇を大量に保有するこの世界の帝國では史実アメリカ並みに対空要員とダメコンチーム増やすのは不可能ですしやる理由も乏しいかと。

30 名前:900 投稿日:2006/08/12(土) 13:50:20 [ /DnxdNTM ]
>VP削減
説明が悪かったですがバイタルパート削減というのは比率の話です。従来の重巡の全長は200m。予想される新型重巡の全長は210〜220m程度と想定されます。1割近く伸びますが主砲塔数が5基から3基に減り、機関出力は削減。バイタルパートは従来と同程度かそれ以下に減らせますから無理はありませんし機関部と弾薬庫で装甲を変える必要性は無いです。VP比率は従来の70%から60%前後で収められます。あと内部構造を戦艦形式にするとは言ってません。もしやったら大和並みの比率になると思いますが。

>浮力
船はVPのみで浮くわけではありません。船体全体の浮力で成り立っているんです。大和型はバイタルパート以外もボロボロにされたから沈んだんです。大体VP比率の低い大和型の浮力は非常に高いです。

> 防空意識
対策はされるでしょう。しかしあの被害で史実並みになる事はありえません。史実の昭和19年までにどれだけ大型艦が沈んだかを考えてみては。対空射撃は当たらないというのも変。対空射撃は基本的に敵の攻撃を阻止、断念させるものです。

>帝国対策が行われるこの先に
ツーロンで使用されたような対艦誘導弾は当分量産は無理ということが判明しているようですし、量産してもアレより威力、命中率、速度が下がるという事でした。この先の事件はこの先の計画でなされる話。というかくろべえ様がこの世界での防空意識について説明しているんでこれに従うのはマナーかと。

>19000tホテル
空調どころかプールに宴会ホールつけないと余るんじゃないかと。あくまで帝國人が良好と判断する居住性ですよ必要なのは。そもそも居住性に関わる重量は主に船殻と儀装の一部で全体の5割はいかない。ここに集中して2000t〜3000tも余分に付け足すと当然艦は肥大します。Gir氏は210×22mくらいで想定しているのではないのですか?

とりあえず艦の要目を想定してみました。

新型重巡洋艦試案 竣工1949年頃? 建造数6隻(後半の艦は改良型の別タイプになると想定)
基準排水量16500t 満載排水量21000t 全長220m 全幅22.5m 乗員1400名
機関出力120000馬力(4機4軸構成) 最大速力33.5kt
燃料搭載量4500t 航続距離18kt/10000海里
装甲 舷側155mm(20度傾斜) 甲板76mm 主砲塔155mm  (バイタルパート60%)
武装 60口径20.3cm砲   3連装3基(毎分4発)
   65口径10cm高角砲  2連装8基(防循付き砲架式、直線上2基、舷側3基づつ)
   25mm機関砲     3連装14基(足柄を参考に増加。単装機銃は後付)
   61cm酸素魚雷発射管 4連装4基(艦尾集中)
   偵察機3機搭載(艦尾集中、ひょっとするとワイバーンに変更かも?)

あくまで暫定的なものですがこんなものかと。よければGir様も想定してみては?

31 名前:Gir. ◆pi/XgnFjWE 投稿日:2006/08/12(土) 14:01:22 [ UDhaiCyM ]
> 長崎県人殿

まず前提ですが、ダメコンの基本は「被害ヲ極限スル」です。
その抑える被害は、人命も含まれております。
ダメコンが成功している場合、最悪でもフネはフネの形をしたまま沈んで、乗員を一人でも多く生還させなければ行けません。
ですから、艦上の人だけでなく、周辺に浮かんでいるであろう多数の乗員を直腸を破裂させるような爆沈が起こるということは、ダメコンに成功しているとは言い難いと考えています。


> 疾風・・・海岸砲による損失とありますが・・・(汗)機雷が起爆してしまったら駆逐艦でダメコンもなにも・・・しかも古いし

 同日沈没している【如月】と間違えたかな?
 それはともかく、チープキルされないようにするなんてのは、ダメコンの初歩の初歩なわけで。
 実際、火薬変えてこの件は対処されています。


> 比叡・・・ガ島でなければ持ち帰れたかと、応急舵の取り付けとかしてたようですし

 この場合、艦長の判断が一番問題だと思います。
 連合艦隊司令部の指示を待たずに自沈させていますから。


> 金剛・・・度重なる損傷を完全に癒す事無く魚雷を二本被雷して一気に傷口が開いた、ダメコンよりドックに入れてきちんと直してや(ry

 すでにダメージがコントロールできていませんねー(汗


> 扶桑・・・被雷四発、被雷箇所はわからず。だけどダメコンで救えるとは・・・
> 山城・・・被雷四発(二発+二発・時間差あり)に砲弾多数、それでも副砲(ダメコンの問題は主砲が止まってた事、か?)撃ったり我を顧みるなと通信送ったりしてますね

 弾薬庫に火が回るなんて、ダメコンの失敗事例の最たるモノだと思って、挙げていました。


> 大和・・・転覆の際にまでダメコンを期待しても、そりゃ無理っすよ。副砲火災なんて関係なく、水蒸気爆発と転覆時の衝撃による誘爆がとりあえず主流では?
能村中佐が危険値を示していたとしますが、もともと砲塔とかは激しい砲撃をすると熱射病で死人が出るようなところ、火災による熱が篭ったって、そう驚異でしょうか?(消火できた方がいいのは勿論の事ですが)

 いや、私もあの爆発は横転によるモノだと思っていますよ。ただ、横転すると言う事は、ダメコンの一領域である注排水量能力が飽和したか、指揮官が怠慢ぶっこいた(注排水区画は使い切っていたらしいですが、弾薬庫まで注水すれば、横転せずに静かーに海の底へ行ったかも知れませんよね?)

 まぁ、全体的にハードウェアからしてダメコンダメダメで、人命紙のごとし、ってのが、ものかなしー (T^T)



> 米軍は勝ってるから言えることで負けてたら自沈や、残敵掃討、潜水艦でボカスカ沈められてたでしょうね、内南洋やフィリピンで決戦した場合

 真珠湾攻撃の時みたいに、変温水層知らなくて待ちぼうけーって可能性が、チラチラと頭の隅をよぎる私は敗北主義者でしょうか?

32 名前:Gir. ◆pi/XgnFjWE 投稿日:2006/08/12(土) 14:03:00 [ UDhaiCyM ]
> くろべえ殿

> なる程、でも一五.五サンチって対空にも効くのですか……

 フィリピンの実戦で対空射撃やって、「遠くまで届くのでとてもよい」(意訳)という報告を大和の副長か砲術長がしているらしいです。


> 14.7cm砲

 一四サンチのことですか? あれ、一四〇ミリだったと思っていましたが一四七ミリだったんですか? それとも新開発?
 # いや、長一〇サンチも、陸軍式で計ると一〇五ミリとか、この世界では細かいこと部分でいつも新鮮な驚きがあるもので

 ソレはともかく、平射主体なら、一五二ミリより投射弾量が勝るといって採用されたのが一四サンチですから、くろべえ殿の主砲の扱い(平射重視)だとこちらを採用するのが自然かなぁ、とは思っていました。
# あるいは防空を重視するなら、防空巡のように駆逐艦と同じ砲を使うとか、一五.五サンチ半自動、とか思っていました。

 ちなみに戦前に三連装砲の設計終わっているとか言う話も聞いていたり。

 スペックですが、射程は一五二ミリと殆ど同じです。五吋なんて、楽々アウトレンジ出来ます。
 # いや本当は、測距儀から方位盤などの射撃式装置の差の方が大きいのですが
 貫通力で一五二ミリに一〇ミリぐらい(うろ覚え)劣りますが、カマボコ板やブリキ相手なら、一四でも一五でも大差はありません。

 また、自分の作品に登場させるつもりで計算したのですが、15.2cm九門と14センチ一五門は重量が大差ない(一四センチの方が一割ぐらい重い程度)んです。
 だから、8000tあれば、重巡みたいな戦闘能力重視の場合、一四サンチ三連装五基一五門載せられます。
 参考までにそのフネは、一九二〇年代のフネで概要は以下の通り。艦型はまんま最上をイメージしています。
 モノゴッツイ距離一〇〇〇〇以下の水上戦 only なフネなので、色々筆舌に顕わしがたい問題を抱えているだろうなぁとは思います。
 # 登場時期からすると、妙高辺りが適当なのですがその辺は好みです(爆)
 # なお、時代の前提条件上、妙高とかは居ません。
水無瀬級軽巡 14cmL50Ⅲx5 12cmAAx4 61cmTTⅡx4 8000t 35kt 砲塔非装甲 舷側装甲3吋

 でコイツの性能試算するときに計算した阿賀野と同じ人力式な6吋9門との投射弾量比較です。
 # いや、時期的に15.5cmが使えなかったモノで。
 口径の後ろにあるのは、砲身重量です。
口径(砲身重量) * 装備門数 = 砲弾重量*発射速度(毎分)* 装備門数 = 毎分投射弾量
一五.二cm(8.36t)*9 = 45.36*10* 9  = 4082.4 kg/min(額面最大)
一五.二cm(8.36t)*9 = 45.36* 6* 9  = 2449.44kg/min(実際)
一四cm(5.5t)*15 = 38   *10*15  = 5700 kg/min

 一四サンチの魅力に気づいたアナタはもう虜?
 それでは、また。

 追伸:全スレ900殿への返信はしばらく掛かります。

33 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/12(土) 14:45:08 [ J9Wna7Pk ]
ダメコンの範囲、対象、意味は人によって違うんですね。
私はサービス部隊、後方支援態勢、国力と言った方がしっくりきますが、
これらもダメコンの態勢には関係してくるのは納得です。

34 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/12(土) 15:31:52 [ zeLnApqc ]
>>33さんのおっしゃるよう、人それぞれダメコンの考え方が違うんでしょうね、私は人より艦を残さなければ何の意味も無く、それでいてさらに任務の遂行にこだわるのが正しいと私は考えますから・・・実際のところはさらにその上に戦局や状況、というものがあるのであって、艦の運命にダメコンの優劣が及ぼす範囲は思われているほど少ない、そう考えます

大和の場合、沖縄砲撃や艦隊突入など、先の事を考えれば弾薬庫に注水すべきかどうか、突入にしても避退するにも速度を維持する問題があるかと
比叡、その誤判断はガ島に居たからでしょう?空襲を受けるくらいの位置に居て、つまり制空、制海権さえ(ry
金剛、ダメコン以前の問題なんですって、まともに修理してやれないで、古傷が一気に開いた、そりゃあ戦局優勢で戦艦も替えがあって交代の修理等出来る米軍なら沈みやしなかったでしょうが、この状態ならどの国のどの艦だって沈みますよ
扶桑の爆発を止める、一気に四発魚雷を食らって、ですか?やったところでダメコン隊ごともう吹き飛んでませんか?
山城は耐えてますやん・・・何か問題が?
もちろん、チープキルは抑えなければなりませんけれども

難しい問題ですよね・・・いろいろ

35 名前:陸士長 投稿日:2006/08/12(土) 18:23:53 [ YpL91V7U ]
>>8さん くろべえさん 感想どうもです。
書き忘れましたが、あの食事は「オーク肉を国民食化」する際の試食会です。
勿論、この為のオーク肉は厳選され、冷凍輸送された状態の良いオーク肉なんですが。
……やっぱり、知らぬが仏でしょうかね?w

と、「小豆汁」で再度閃いたので投下。
久し振りに"あの"男の登場です。

36 名前:ゴイ氏の災難 投稿日:2006/08/12(土) 18:49:29 [ YpL91V7U ]
とある、帝国領から遙か西に行った国にゴイと言う大領主がいた。
この男は数奇な人物で知られ、金にあかせた道楽や奇行を非常に好んだと言う。
そんなある日、東から異邦の軍人に率いられた探検隊が領地にやって来た。
丁度退屈していた彼は彼等を歓迎し、ご馳走を振る舞った。
宴もたけなわの頃、その軍人が甘い豆を磨り潰し甘い蜜で炊いた汁を啜りながらこう呟いた。

「懐かしい味です。小官の故郷の甘味に近い。ああ、もう一度小豆汁を腹一杯食べてみたいですな」

それを聞いた領主の目がキラリと輝く。
側近の者が気付いたらまた性もない事を思いついたと溜息を吐いただろう。
だが誰も気付かなかったので、止められる事もなく、領主は思い付きを実行した。

「よし、完全に同じものとは言いませんが、この汁であれば満足行くまで馳走致しましょう」

軍人の方も冗談だろうと思い、承諾の返事を返してしまった。

翌日、従者に起こされて領主の家の中庭に呼ばれた軍人と一行が見たモノ。
それは、俵に山と積まれた甘味料と小豆、そしてグラグラと煮詰めていく鍋の群れであった。
何十人の使用人と料理人が次々と小豆汁を作りお椀に盛っていく。
これ程の量を作るのは、この家が始まって以来の事だろう。

唖然としている一行の前に小豆汁で満たされた大量の椀が並べられ、満面の笑みで領主は叫んだ。

「さぁ、心行くまで賞味召されると良い。お代わりはたんとございますぞ!」




〜数時間後〜




「ふぅ……ゴイ殿。小豆汁大変美味でした。小官も部下達も、満足の極みです」

腹八分に膨れた腹をポンとたたきながら、軍人は満足げに笑う。
彼の後ろでは、鍋に残っている甘い汁を夢中で啜りまくっている部下達一行。

過労でぐったりとした使用人と料理人。スッカラカンになった俵と鍋。
そして、唖然とした表情で中庭の惨状を見ているゴイ領主。

「こ、これではオチがつかーん!!」



37 名前:陸士長 投稿日:2006/08/12(土) 19:05:36 [ YpL91V7U ]
と、勇み足だったか。くろべえ氏に申し訳ない事したかも。
削除した方がいいかな?

38 名前:Gir. ◆pi/XgnFjWE 投稿日:2006/08/12(土) 19:08:27 [ UDhaiCyM ]
>前スレ900殿

ちょっと長かったので分割
----まずは作品世界において
> いまの米海軍で・・・
> 1940年代と現在では比較になりません。

 確かに全世界に制海権を置いている現在の米海軍と、あくまで地域の一勢力に過ぎない作品世界の日本帝国海軍では、確かに比較対象としてはマズイと思います。必要とされる後方人員の数も全く違うでしょう。より正面に人員を回せる作品世界では、人員不足を理由に艦艇の設計をマイナス方向へ変更するほどでもないと言う事は理解できました。
 足りない場合は、おそらく根拠があると思いますので、それをお聞かせいただけますでしょうか?

> 防空意識
> 対策はされるでしょう。しかしあの被害で史実並みになる事はありえません。

 他人の作品世界を捕まえて、断言できる理由がすごく知りたいのですが、教えていただけますでしょうか?


> 対空射撃は当たらないというのも変。対空射撃は基本的に敵の攻撃を阻止、断念させるものです。

 実際の運用が、そうなるのは理解できます。
 しかし、命中速度試算などを見る限り、日本海軍は当初当てるつもりだったみたいです。これが当たらないのだから、当たるように軍令部や造船部が青写真を描き、詳細設計を行い、工事を実施することは、別段不思議でも何でもありません。


> マナーかと。

 いや、くろべえさんが再度新重巡は18,000tだと明言しているにもかかわらず、15,000-16,000tでいける。みんなもそう思うよな?と言い続けている状態でマナーと言われましても。
 私は、
 ・15,000-16,000tは無理っぽい
 ・常識的に、帝国対策は始まったばかりでその対策が進捗されるであろう未来に戦訓への対策が必要な被害を被る可能性が高い。
 ・で、この戦争では決戦など希求できないから、ダラダラ長く続く。第一次大戦前の様に、絶えず、紛争が起こり、戦訓が生まれ、取り込み、活かす時間的余裕がある。

 と言っているだけです。

 また、わたしがくろべえさんの18,000tを否定したことなど一度もありません。私の出した数字はくろべえさんの概要からこのぐらいですかと、聞いた参考の数値です。
 くろべえさんの出してきた新重巡の数字に対しては一切否定したつもりはないのですが、どこかの発言が誤解を与えるような部分がありましたでしょうか?


>19000tホテル
> 空調どころかプールに宴会ホールつけないと余るんじゃないかと。

 何かを揶揄したいのかわかりませんが、720人の乗客に快適なサービスを提供する武装重量なんて有るわけがない豪華客船「飛鳥Ⅱ」は全長241メートル、総排水量5万1千トンの大型客船です。
 「あすかⅡ」船体の構成比率を概算計算して、一人当たりへ割り当てられる船体重量を考えると、新重巡において一五〇〇〜二〇〇〇人へたかだか数千トン程度で与えられる快適とは、いかほどのモノかと。
 揶揄したくなるのもわかりますが、その妥当性も考えるべきではないでしょうか?

 まぁ、たしかに、まともな見識持った人間が頑張ったなら、宴会ホールならぬオペラハウスことCDCは有るかも知れません(ぉ
 # そぉいえば確か伊勢には、土俵があったな……


>あくまで帝國人が良好と判断する居住性ですよ必要なのは。そもそも居住性に関わる重量は主に船殻と儀装の一部で全体の5割はいかない。ここに集中して2000t〜3000tも余分に付け足すと当然艦は肥大します。

 集中はしませんよ。
 ただ、
 ・4割増近い武装重量
 ・5割増以上かも知れない防御重量
 ・米艦の数割増以上の機関重量
 ・2倍以上の燃料
 ・日本艦艇のお粗末な補機類で、電探・注排水量ポンプ・増設機銃への電力供給 etc.,etc.
 ・居住性を高める
 をなどなどを当時の日本の技術でまともに取り入れると、伊吹などよりかなり船殻が大きくなり、かなり排水量の増す可能性が高いとは言っています。
 そして、その比率は、バルチモア→デ・モインよりもかなり大きいのでは無いだろうか?と述べているのです。


> Gir氏は210×22mくらいで想定しているのではないのですか?
> とりあえず艦の要目を想定してみました。

 見やすい要項ありがとうございます。
 一応、こちらでも想定していて、それを最初に出して居るんですが、ある数値の結果として参考させていただきます。

39 名前:Gir. ◆pi/XgnFjWE 投稿日:2006/08/12(土) 19:21:47 [ UDhaiCyM ]
----つぎに重量に関して
>最上型機関
 いや、構成全体ではなく、使用しているユニットの数と補機類が違う程度で、それぞれの構成要素は一緒と言っています。
 しかし、上記を見ると、私は単純に2/3構成で重量だと思っていましたが、タービンの部分が半分だったのを見落としていたみたいですね。
 感覚的に2700tぐらいなのはわかりました。米艦よりも機関重量だけでおそらく一〇〇〇トン以上、一.五倍以上二倍未満の差があることもわかりました。


> (副砲も流用品だし大和ってヴァンガードみたいにセコイ所を感じる)

 いくら日本とはいえ、あのサウスダコタの半分のお値段で作られているのですよ。なんとも泣かせる話じゃありませんか。


>バルチモアの基準排水量

 各排水量値で一番小さい値が基準排水量ではないのですか?
 一つのユニットとして、完成されたフネで、基準排水量より小さい値が出てくる可能性は何?
 いろんな数値が出てくるから、数値の中身を考察する必要はないのでしょうか?


>ノーマルとスタンダードの違いを当方に言われてもそちらの資料に何も注釈が無いと厳しいかと。

 更に情報をさらうと、2番艦ボストンが公試で三四ノットちょいをだして居たときの重量が14700t前後でした。
 # 英語サイトでしたが、URLは失念……

 でも、基準排水量って、燃料も人も水も何にも無しですよね?
 イタリアじゃ有るまいし、どうやって動いていたのか、考察は尽きません。

 別の考察をすると、基準排水量が 14472t なら、満載排水量は 17000t(何故か満載はほぼ一致しているのが不思議ですが) でペイロード2528tです。
 ちょっと考察すると、燃料だけで 2250t 積みますよね。
 17000-14472-2250 = 278 t
 人がまぁとして一七〇〇人で一人頭65kg(日本のエレベータでの重量計算基準:成人男性)で、約110トン
 さて、残り約180トンで、真水や食料や弾薬、その他消耗品を積まなければならないのですが、足りない気が多大にします。
 どこか計算おかしい場所ありますでしょうか?

 ちなみに歴代の重巡のペイロード追っていきますと、最旧式のペンサコラで2500tぐらい、ニュー・オリンズで3000t、ポートランドで3500t、ウィチタでちょっと落ち込んで約3000t、デ・モインで、約4000-4500tです。
 どうみても条約制限のないバルチモアが燃料を除いたペイロードで旧式の1/4〜1/5、デ・モイン相手だと1割しか無い数字が出てきて、問題ない筈は無いと思えるのですが。

40 名前:Gir. ◆pi/XgnFjWE 投稿日:2006/08/12(土) 19:23:34 [ UDhaiCyM ]
----それ以外に関して
> 史実アメリカ並みに対空要員とダメコンチーム増やすのは不可能ですしやる理由も乏しいかと。

 八年も戦争状態で、主として大量にある護衛艦が受けるであろう被害に抗するには、ダメコンで対策を講じるしかない状態で、何も戦訓が生まれないという見通しはどうかと。
 作品でも二年で駆逐艦の防空火力挙げる措置すら施されています。

 あと日本艦艇で戦訓もりこんだ例が少ない様に見えるのは、開戦後起工して就役した大型艦艇が阿賀野級と雲龍級程度しか無いためでは?
 阿賀野は改設計する時間がありませんでしたし、雲龍は「戦訓対策は運用で何とかするから、今はとにかく隻数よこせ」ってねじ込んで、改設計に掛かる時間リソースを削って、そのリソースを戦力増強へ振らせようとしています。
 また小艦艇では、松を筆頭に戦訓の取り込みとか意欲的では無いでしょうか?
 作品世界では、他に阻害する理由がないから、設計に戦訓なり研究結果の対策する時間もあると思うのです。


>VP削減
> もしやったら大和並みの比率になると思いますが。

 仮想的を米軍に見据えて、最悪敵主力を護衛して居るであろうアラスカの12吋にボコられる予定のフネですよ?
 大和までは行かなくても、改大和と改大鳳以外では唯一の大型艦(くろべえさんの発表時)である新重巡(他の水上戦艦艇は小船ばかりです)が、それに近いことになると言う事は否定する理由が見あたらないのですが、何かお考えがありますでしょうか?


>浮力
> 船はVPのみで浮くわけではありません。船体全体の浮力で成り立っているんです。

 私はVPの浮力で艦が浮けることが可能である設計が基本と言っているだけで、船体全体の予備浮力の存在を否定した憶えはありません。


> 大和型はバイタルパート以外もボロボロにされたから沈んだんです。

 むっ、大和のVPの浮力では水に浮かないと言っていますか?
 出来れば、そのヘンの根拠となる数字の出典なり、資料なり聞かせて貰えますか?

 VPも一緒にボロボロにされたから沈んだ、と言う文意であれば全く同意します。
 私の発言を否定する内容は何処にもありません。

それでは色々と、つたない文章でご苦労されるかも知れませんが、よろしくお願いします。
# そろそろ続けるならどこか別のところでやった方が良いような気がしてきた。^^;

41 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/12(土) 20:03:53 [ fYyIMEuM ]
議論・考察スレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1079385543/l50
とかですか?

42 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/12(土) 20:10:07 [ 1pexHEsk ]
>>41
だよなあ。どうもこのスレは時々SSも投下せんとスレ違いの俺考察を語りたがる奴が沸いて困る。

43 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/12(土) 20:34:49 [ 8RP7mTUI ]
帝國海軍でも小豆煮であるところの「汁粉」「ぜんざい」はご馳走であったと。
つまり、海軍に奉職している獣人は辺境邦国の貴族よりも良い食生活を
おくっているのでしょうな。

44 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/12(土) 20:39:21 [ RpxFCjzQ ]
>>36
吹いたw

45 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/12(土) 20:52:27 [ yq9lkYzY ]
長崎県人様、大量投稿乙です。
戦艦の価値や敵航空戦力の撃破を考えたら、戦闘機部隊を派遣しても良いのでは? とも思いますが…… はっ!もしかしたらたこ殴り想定済み!?

陸士長様、投稿乙です。
もう胸焼けしそうです(笑)

46 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/12(土) 20:52:59 [ yq9lkYzY ]
>>28
>ところで駐留軍の司令官が現地の王室と結びつくのはいいんですかね?
>この場合はないでしょうが現地の国政に介入する人間が現そうな気が…

そういう現実的な問題を気にせず、かえってはしゃぐのが帝國の新聞と臣民……問題ですね。
それはさておき……
無責任な新聞や一般市民はそれで済むかもしれませんが、やはり御国はそうはいきません。物にはけじめ、というものがありますし。
まあ敵国ならばともかく、外交権も無い法的には帝國の一員たる邦、しかも婚姻当時は直轄領なのですから、それ程大した問題では無いとの声もありますが……(この辺りはやはり帝國の帝國たる所以か?)

このSSでも、邦昇格時に一悶着あったようですが、どうやらうやむやになったようです。
連合帝國創設期、未だ種々の法が未整備な過渡期故のことでしょうか。

ただ結婚はしていません。故にナリマサの姓は母のものです。
これは妻や子供達に財産を作ってやるためのことですが、内心忸怩たるものがあったらしく、父は爵位を受けると直ぐに息子に譲ってしまいます。(>>14参照)

*前にも述べたとおり、この頃の帝國人は大陸人を結婚相手とは見ていません。
(加えて当時は、帝國人とこの世界の人間との結婚は許可制です)
にもかかわらず、『帝國の有力者や爵位持ちの家』と『邦國の王侯貴族の家』との間にぽつぽつと婚姻申請が出始めています。
明らかな政略結婚です。
特に『新規に爵位(帝國男爵/大騎士/騎士)を得たが生活の厳しい家』が狙われています。比較的容易に帝國爵位を得られる方法ですからね。
これを憂慮した帝國は、爵位の価値を守るために爵位持ちの婚姻を厳しく審査――帝國人同士の間ですら駄目な例が出る程の厳しさ――する様になります。

ただナリマサ少年の場合、爵位授与の前に生まれましたので、多少ややこしい手続きが必要だったもののなんとか帝國大騎士爵位を贈与できました。これが男爵位だったら無理だったかも……

47 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/12(土) 20:53:29 [ yq9lkYzY ]
>>32
>> 14.7cm砲
>  一四サンチのことですか? あれ、一四〇ミリだったと思っていましたが一四七ミリだったんですか? それとも新開発?

140ミリでしたか…… 御免なさいずっと147ミリと勘違いしていました……

140ミリなら、この軽巡は出来るだけ安く上げたいでしょうから、

基準7000t、速力35ノット、航続18ktで8000海浬
装甲 60ミリ(舷側)/30ミリ(甲板)/25ミリ(砲塔)
14cm50口径砲連装4基、8.8cm45口径高角砲単装4基、25mm 対空機銃?,
61cm魚雷発射管四連装2基(予備魚雷無し)、爆雷 16発、航空機1機搭載可能。

かな? 指揮統制機能を考えたら、もう少し重くなるだろうか?
あと全ての新型艦は、派遣される地域の気象を考えて強力な冷房・通風能力が付加されるでしょう。

48 名前:900 投稿日:2006/08/13(日) 00:11:53 [ /DnxdNTM ]
批判も出たので議論・考察スレ(軍事・現代兵器)に移動して議論を続ける事にします。
Gir様もこちらに来て続けましょう。

くろべえ様。ご迷惑おかけしました。

49 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/13(日) 01:05:47 [ 0fF50mD6 ]
くろべえさん こんにちは
>>46
>新規に爵位(帝國男爵/大騎士/騎士)を得た
とありますが、男爵の下がすぐに大騎士なんですか?
新設として大騎士以上だが譜代の男爵と並べるにはいささか・・・・
という家に対して「準男爵」(爵位持ち扱い)というような「グレーゾーン」は
色々便利だと思うのですが。

50 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/13(日) 10:17:59 [ yq9lkYzY ]
>>49
男爵については、旧大名が子爵以上なため、準大名たる3000石以上或いはそれに相当する家に下賜しています。
男爵の数が大幅に増えたため、準男爵は必要無いかと。まあ準男爵と男爵が合体したとお考え下さい。

51 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/13(日) 10:19:37 [ yq9lkYzY ]
さてSS投下、ジャンクです。

52 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/13(日) 10:20:10 [ yq9lkYzY ]
「帝國召喚」ジャンク08

先生はいつもの部屋にいた。

いつもと同じ様に、ピンとを背を伸ばして机に座って本を読んでいる。

何もかもがいつもと同じ。

唯一違うものは先生の着ている服。

……先生は軍服を着ていた。

「……先生」

先生は、僕が声をかけると本を閉じ、やはりいつもと同じ様に答えた。

「おお少年、来たか」


――現在の帝國は、ローレシアとの泥沼の戦いに陥っている。

戦況は……良くない。

ローレシアには頼りになる味方が一杯いるけれど、帝國には面倒を見てあげなければいけない味方ばっかりだからだ。

加えて、馬鹿な将軍が聖ヤコフ廟を聖職者や巡礼者ごと吹き飛ばしたため、世界中のアムール信者まで敵に回してしまった。

その馬鹿な将軍が、ローレシアの王都で敵の大軍に包囲されてしまったため、先生が救出に向かうことになったんだ。

……先生、病気なのに。

53 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/13(日) 10:20:40 [ yq9lkYzY ]
先生は、初めて会った時と比べて大分痩せた。僕が見たって調子が良くないことが分かる。

それを、厳冬期のローレシアに向かわせるなんて!


「……どうした、少年?」

先生が穏やかな顔で笑う。 ……本当に痩せてしまったけれど、その眼光は昔から変わらない。

「……先生、行くのですか?」

我ながら馬鹿な言葉だけれど、それしか口に出来なかった。

「ああ、軍人だからな」

「……でも、先生は予備役だ」

「ちゃんと現役復帰したさ。しかも大将だぞ?」

「他にも、将軍なら一杯いるのに……」

「俺が認めている将軍はその中のほんの一握りさ。 ……そしてそいつらは、それぞれ忙しい」

先生は、僕の馬鹿な質問に一つ一つ丁寧に答えてくれる。

僕は言葉に詰まってしまった。

本当は言いたいことは沢山ある。けど、それ以上言葉が出てこない。

54 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/13(日) 10:21:11 [ yq9lkYzY ]
暫くの沈黙が流れる。

――が、そんな時間は直ぐに過ぎてしまう。

ドアがノックされ、出発の用意が出来たことを告げる声が聞こえた。

先生は、おうと答えると立ち上がり、僕の方に歩いてくる。

「少年……」

先生は僕の頭を優しく撫でると、優しく語りかけた。

「少し長い旅にでなけりゃあならん。残念ながら、少年に教えるのは今日で最後になりそうだ」

そう言いながら襟元、その片方の階級章を剥ぎ取る。

そしてそれを僕の手に包み込ませた。

「今日で卒業だ。餞別にこれをやろう。 ……これに相応しい男になれ」

内緒だぞ? といいながら悪戯っぽく笑う先生。

そして肩を軽く叩くと、ドアに向かう。

ノブに手を回いながら、振り向かずに僕に最後の言葉をかけた。

「……じゃあな、ロイ」

先生は、初めて僕の名前を呼んだ。


僕の手では、ピカピカの帝國陸軍大将の階級章が光っていた。

55 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/13(日) 10:21:42 [ yq9lkYzY ]
<裏>

「で、様子は?」

車に乗り込んだ石原将軍は、副官に鋭く問う。

「現在、帝國ローレシア派遣軍主力はロ−レシア王都で完全に包囲されています。武器弾薬はおろか食料医薬品の類すら欠乏しており、最早自力撤退は不可能です」

……そして、帝國陸軍に降伏の文字は無い。

「残るは玉砕だけ、か…… 全くあの阿呆、やってくれる!」

現在のローレシア情勢は帝國中の耳目を集めている。

玉砕なんてことになれば……

「内閣の一つや二つ、軽く吹っ飛ぶな」

「国内的にもそうですが、対外的にも拙すぎます!」

不幸中の幸いにも、同盟諸国や邦國の軍は独断で撤退した一師団長と共に、夥しい損害を出しつつも沿岸部の味方と合流出来た。

もしもこの師団長の独断がなければ、今頃は……

「考えるだにぞっとするな? ……まあ何もかもが最悪、という訳では無いのだ」

だから肩の力を抜け、と石原将軍は笑う。

「閣下は、現ローレシア派遣軍である第六軍の上位、ローレシア方面軍の司令官となられます。それに伴い現ローレシア派遣軍は第六軍と呼称を変更、閣下の指揮下に入ります」

56 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/13(日) 10:22:13 [ yq9lkYzY ]
「……使い物にならん戦力などいい、俺が使える兵力は?」

「近衛機甲軍です」

近衛機甲軍とは、完全自動車化部隊たる近衛師団と第二戦車団を主力とする完全機械化軍であり、帝國本国に残された最後の予備戦力でもある。

「他に本土防空軍より三式戦3個戦隊と司偵1個戦隊を、北東ガルム方面軍とバレンバン軍から四式戦各1個が引き抜き第11飛行師団を編成、ローレシア方面軍隷下となります」

「三式が主力、か…… 大丈夫か?」

「支援体制には万全を期す、だそうですが……」

そう言って副官は首を振る。

「第六軍は信頼性の高い一式戦も加えていましたが、ローレシア戦線では攻撃機としてしか使えなかった様です」

「……まあある物で如何にかするしかないだろう。で、第六軍はどの程度持つ?」

「現在、海軍の第一一航空艦隊と第一二航空艦隊が総力を上げて補給物資の空中投下、及び対地支援を行っています。 ……かなりの損害を出しながら、ですが」

王都付近にはワイバーン・ロードだけでも数百の航空戦力と、分厚い対空陣地で守られている。

このため、陸攻と護衛の零戦――紫電改では航続距離が不足――は大出血を強いられていた。

ローレシアの大地は、帝國の国力を恐ろしい程の勢いで吸い取り始めていたのだ。

57 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/13(日) 10:22:43 [ yq9lkYzY ]
「その間に何とかしろ、か……」

石原将軍は溜息を吐いた。

状況は最悪に近い。 ……が、やらねばない。

全世界がこの一戦を注目しているのだ。最早国内がどうのこうのなど関係ない。


……それに、俺は『先生』だからな。


苦笑する。

先生としては、教え子に良い所の一つでも見せたいでは無いか!

「……閣下?」

不思議そうな顔をしている副官に、石原は傲慢そうな口調で答えた。

「さて、ロ−レシアの……いやこの世界の連中に、本当の戦争というものを教えてやろうじゃあないか!」

58 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/13(日) 10:23:13 [ yq9lkYzY ]
SS投下終了。

>>前996
前996様、御免なさい。
いえ、わざとじゃあ無いのですよ? 元から投下する予定でしたので……

59 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/13(日) 10:53:24 [ yq9lkYzY ]
ありゃ、
>>52
いつもと同じ様に、ピンとを背を伸ばして机に座って本を読んでいる。
       ↓
いつもと同じ様に、ピンとを背を伸ばして机に向かって本を読んでいる。

60 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/13(日) 11:04:10 [ sQuW24DU ]
いつもと同じ様に、ピンと背を伸ばして机に向かって本を読んでいる。
ですよね?
ツッコミすいません。

61 名前:Gir. ◆pi/XgnFjWE 投稿日:2006/08/13(日) 15:19:27 [ ruf08RZs ]
> 長崎県人殿
 いやー、典礼参謀って凄いんだと思わせぶりがよくわかります。

> くろべえ殿
 そうか、あの自覚のない大悪党が、出馬しますか。く〜、しびれるー。
 ただ、妙な毒も残しそうなのが大悪党たるゆえんですので、ちょっと心配?

各位殿、次回の投下をお待ちしております。

62 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/13(日) 16:06:17 [ vBUTWp2s ]
くろべえ様、投下乙です。
それなんてスターリングラー(ry

63 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/13(日) 17:08:43 [ 7FqL.Nek ]
>馬鹿な将軍
さぁて、誰だろう
牟田口?

64 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/13(日) 17:23:44 [ 8kGssc1U ]
くろべえさん、投下乙です。
いろいろな話題のSSを書けるというのは素晴らしいですね。

5500トン級軽巡の代艦案が載っていましたが、人力装填はちょっと…。
時間当たりの発射回数が減るのもありますが、それより人を使うというのが。
くろべえさんの世界では軍縮中ですから、少ない人員でより多くの艦を動かす事を考えれば、省力化の方向に向かうかと。
…14cm砲が高仰角でも撃てるように改造されればなあ。

現在、話に上がってきた新巡洋艦は、装甲巡洋艦・8000トン級6インチ軽巡・7000トン級14cm軽巡ですかね?
帝國海軍の貧乏さから考えれば、失敗作は作れませんから、かなり話し込むでしょうね。
大淀型もわずか2隻しか建艦の予定に無いのに、かなり揉めましたからね。

65 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/13(日) 17:43:40 [ 8kGssc1U ]
くろべえさん、帝國海軍主要艦隊一覧ですが、
今度は第六駆逐戦隊(第三艦隊と第五艦隊)がかぶってますよ。

66 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/13(日) 19:33:29 [ OELr2/0w ]
そして撤退した一師団長は肩に小猿を載せてるのか・・・

67 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/14(月) 01:10:14 [ ApcW1i4Q ]
>>46
>ただ結婚はしていません。故にナリマサの姓は母のものです
>父は爵位を受けると直ぐに息子に譲ってしまいます
爵位は個人ではなく家(戸籍)によって継承されるので例え当主が許そうが名字の違う者に(名字を変えずにそのまま)継承は出来ないはずですけど?
非嫡出子だろうがなんだろうが爵位を継承した時点で黒部の性を継がなければなりません、いわゆる家制度の戸主になる訳ですから。
ナリマサ少年は非帝國臣民との混血なので養子に準じる扱いになるんじゃないかな?
ってそういえば名字と言えばこれが初出ですね、サーナさんのファミリーネーム。
ウェクスフォードですか。やっぱりそれなりの家出身だったのかな、彼女。

68 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/14(月) 03:28:29 [ E/FpaXmQ ]
>>63
牟田口に限った話でもないような。日本陸軍(とくに若手)は牟田口大量生産ってイメージがある俺。

69 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/14(月) 08:05:32 [ ltqrOq2I ]
朝起きたら天から妄想が降ってきた
「エルフ相変異説」

近年スコットランド王国において黒エルフの子供が白エルフになると言う現象が
増えている。この現象については様々な学説が提唱されており統一的な解釈は
いまだ成立していない。
このほど、東京帝国大学の○○助教授が新たな学説を発表し、学会の注目を集めている。
助教授によれば、白エルフと黒エルフは実は遺伝的に同一の種族だというのだ。
生物の中には、置かれた環境によってまったく異なった形質を発現させる種がある。
遺伝子は変化していないにもかかわらず別の種であるかのように形質を変化させるこの
現象は「相変化」と呼ばれている。
これまで日本の生物学者は白エルフと接触する機会がほとんどなく、黒エルフと白エルフの
違いについて研究することはきわめて困難であったが、助教授は白エルフと人間の混血、
いわゆる「半エルフ」と接触し、協力を取り付けることに成功した。
結果、黒エルフと白エルフの遺伝的差異はほとんどないらしいことが分かった。
この説に拠れば、なぜはるか昔に森を追われたエルフが黒エルフとなったのか、そしてなぜ
スコットランド王国において白エルフが増加しているのか説明がつくと助教授は主張している。

70 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/14(月) 09:57:24 [ yq9lkYzY ]
投稿乙です。
白エルフ…… 親は大混乱だろうなあ。薄黒く塗ったりして誤魔化したりとか。


>>60
御指摘有難う御座います。自分も投下してから気付きましたよ、何でだろう?

>>61
Gir様、有難う御座います。

>そうか、あの自覚のない大悪党が、出馬しますか。く〜、しびれるー。
あの石原莞爾、初登場です。
何せ東亜連盟構想を提案したり、「最終戦争論」を著したりした御人です。
……転移後、じっとしているとは考えられないんだよなあ。(少年に何吹き込んだ?)

>>62
62様、有難う御座います。

>それなんてスターリングラー(ry
気分はもう東部戦線。果たして帝國第六軍の運命は?

>>63
>>馬鹿な将軍
>さぁて、誰だろう
>牟田口?
誰でしょう?

71 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/14(月) 09:57:57 [ yq9lkYzY ]
>>64、65
名無し三等兵様、いつも有難う御座います。

>今度は第六駆逐戦隊(第三艦隊と第五艦隊)がかぶってますよ。
ありゃ本当だ。重ね重ねどうも。
……話は変わりますけど、GF司令部を陸に上げて良かったのかどうか疑問。(自分で書いておいてなんだけど)
第一戦隊だけ第一艦隊から独立させて、GF長官直轄にしようかなあ? でもやると第一艦隊の戦力がた落ち。

72 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/14(月) 09:58:28 [ yq9lkYzY ]
>5500トン級軽巡の代艦案が載っていましたが、人力装填はちょっと…。
これ、本当に難しい問題ですよね。『次世代の帝國海軍巡洋艦はどうなるか』理想と現実の狭間で今でも悩んでます。

前提
①旧式の戦艦10隻と重巡12隻の後継を改大和6隻に高速戦艦6隻に決める。
旧式戦艦は保管(但し金剛型は解体)、旧式重巡12隻は方面艦隊旗艦の任務を務める。

②第三艦隊所属の駆逐戦隊旗艦、5500トン型軽巡(5500トン型軽巡は解体)の後継として、10ヵ年計画中に新型巡洋艦3隻を就役させる。

③新しい最上型/利根型重巡6隻及び阿賀野型軽巡4隻については現状維持。

よって10ヵ年計画達成時には、巡洋艦戦力は最上型/利根型重巡6隻、旧式重巡洋艦12隻、阿賀野型軽巡4、新型巡洋艦3隻の計25隻となります。

あとかなりの確率で、方面艦隊増強に伴う駆逐艦/哨戒艇群の戦隊旗艦や分艦隊の旗艦としても新型巡洋艦が必要となるかもしれません。
この場合、10ヵ年計画中に10隻近い(或いはそれ以上の)追加建造が必要となります。
この場合、巡洋艦は計35〜40隻にまで膨れあがるでしょう。(守備範囲が広がればもっと)

10ヵ年計画達成時には、帝國海軍は戦艦14隻(更に保管6隻)、空母24隻を保有することになります。この維持費たるや相当なものでしょう。
この上数十隻単位の巡洋艦まで維持するとなると……

(……ああ、大英帝国が何故巡洋艦の隻数に拘ったのか、何故大英帝国巡洋艦の個艦性能がしょっぱいのか痛いほど良く分かる)

この様な考えから、当初は戦隊旗艦については駆逐艦で代行しようと考えました。
が、どうも皆様の御意見を考え合わせると無理っぽいです。
なら出来るだけ安くするしかありません。小型化、均一化は不可欠でしょう。

(旧八八艦隊の例からしても、絶対量産するとおもう)

けど、『広範囲な海域の空海地部隊を指揮統制する能力』『駆逐戦隊を始めとする小型艦艇部隊旗艦としての能力』を統一して持たせるとなるとなあ。
『駆逐戦隊を始めとする小型艦艇部隊旗艦としての能力』といったって第一、第二艦隊と第三艦隊じゃあ求める用途が違うだろうし、『広範囲な海域の空海地部隊を指揮統制する能力』といっても大淀なんて艦隊砲戦に向かないフネを量産するとも思えない。

やはり別々に造るか? 甲巡乙巡みたいに。

でも金無いだろうしなあ。排水量も制限されるだろうし。

……堂々巡り。

73 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/14(月) 09:58:58 [ yq9lkYzY ]
>>66
>そして撤退した一師団長は肩に小猿を載せてるのか・・・
小猿(っぽいもの)だったりして。

>>67
>爵位は個人ではなく家(戸籍)によって継承されるので例え当主が許そうが名字の違う者に(名字を変えずにそのまま)継承は出来ないはずですけど?
あっそうだった…… 失敗しました。至急小改正せねば。
御指摘感謝します。

>ってそういえば名字と言えばこれが初出ですね、サーナさんのファミリーネーム。
>ウェクスフォードですか。やっぱりそれなりの家出身だったのかな、彼女。
一応ある程度の家の子郎党がいて、彼等がケネット採用の新参組と共に新生ウェクスフォード家の中核となる、という設定です。

74 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/14(月) 10:02:29 [ yq9lkYzY ]

訂正>>72
よって10ヵ年計画達成時には、巡洋艦戦力は最上型/利根型重巡6隻、旧式重巡洋艦12隻、阿賀野型軽巡4、新型巡洋艦3隻の計25隻となります。
           ↓
よって10ヵ年計画達成時には、巡洋艦戦力は最上型/利根型重巡6隻、旧式重巡洋艦12隻、大淀型1隻、阿賀野型軽巡4隻、新型巡洋艦3隻の計26隻となります。

75 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/14(月) 11:00:31 [ 8kGssc1U ]
もともと5500トン軽巡の後継艦として作られたのが阿賀野型ですが、
この世界ではちょっと使いづらいですねえ(雷装より対空兵装を)。

阿賀野型も決して悪いフネじゃないんですけどね。

76 名前:Gir. ◆pi/XgnFjWE 投稿日:2006/08/14(月) 14:10:15 [ ruf08RZs ]
> くろべえどの
> 今でも悩んでます。
び、貧乏神に取り付かれている……

それはともかく、取り敢えず、機関が腐って30ktも出れば上等な5500t級の代替だし、どうせあの27-28ktしか出ない松やその更に5kt以上、下の海防艦の旗艦にするんだからという割り切りをすると、30ktで機関出力5-6割程度、27ktで4-5割程度でいけますねー。秋月の機関そのまま流用しても、丁度いいか過剰なぐらいかな?
燃料代ケチるなら、イ400のディーゼルそのまま流用して、燃料千トンもあれば巡航16ktぐらいで1万浬超えるか?
# 高速発揮時にはスチームタービン使用。CODAS?

いずれにしても……、うむ、しょっぱい。

77 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/14(月) 14:31:52 [ c7ArwGiI ]
帝國から貧乏神が出て行ってくれるのはいつのことだろう……

昭和20年代の経済・産業発展の見通しはどうなってるのでしょうかね。
計画後半の時期には幾らか余裕が出てくるかも。
って、あと5年以上先ですね。orz

78 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/14(月) 18:13:10 [ E/FpaXmQ ]
景気自体はいいから、じきに貧乏から脱出できると・・・いいなあ。

79 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/14(月) 18:44:50 [ /qO17T3c ]
ぉほ。石原さんの出撃ですか。
ダークエルフに飲み込まれた感もありますが
ハルピン特務機関なんかの暗躍の場もありそうですねぇ。

それに満鉄があるならば、あの調査部もあるわけでw
シンクタンクなんかは多いに出番がありそうですが・・・

80 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/15(火) 00:38:33 [ 8kGssc1U ]
>高速発揮時にはスチームタービン使用。CODAS?
ディーゼル機関だけで高速でないかな?
以前にもディーゼル機関の話題は出したような気がする。
意外と高出力なのがあって、新型艦に使えないか?という話もしたような。

>貧乏
日本の軍隊は貧乏なのが当たり前になっている気がする。…あまり笑えないなあ。

81 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/15(火) 01:13:04 [ 1r5Lvbw2 ]
比較がアメちゃんとかですから。
逆に清や露等の完全大陸系なら命と金を交換できますけど、
兵器は買えますが国力は……。

82 名前:陸士長 投稿日:2006/08/15(火) 01:58:23 [ reRPA/yc ]
>>44 くろべえ氏 感想どうもです。
まぁ、健啖な獣人達と辻ーんの前ではあらゆる食物は屈するしかないと思われますw

遂に石原完爾登場ですか。
移転後数年経過しているようなので、かなり拙くないですかね体調?
下手するとこれが最後のご奉公になるかも。
ところで、上等兵閣下との仲は最低限レベルでの復元は為されたのでしょうか?
意見の衝突が突き抜けた結果、予備役へと石原は追放された訳ですし。
石原さん戦時中も彼から何度か意見求められて、その都度突っぱねてますからねぇ。

83 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/15(火) 04:56:36 [ 1r5Lvbw2 ]
>>さてSS投下、ジャンクです。

84 名前:大本営発見 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/15(火) 07:37:38 [ ToMVwDhk ]
唐突に投下


全般状況

日本・連合帝国側
王国軍の再攻勢に備え、縦深陣地を構築。
未成状態のまま、王国軍を迎える。

王国側
再編なった大軍団で再進攻。
結果、主導権を失う。

85 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/15(火) 08:06:04 [ yq9lkYzY ]
>>75、76
今の所、案としては――

<新5500トン型巡洋艦>
基準5000t、速力30ノット、航続16ktで8000海浬
装甲25ミリ(舷側)/50ミリ(弾薬庫)/25ミリ(甲板)/−ミリ(砲塔) *砲塔は密閉式なるも無装甲
14cm50口径砲連装3基(前1後2)、37mm対空機銃四連装2基(前後各1)、25mm対空機銃単装4基(各舷2)
61cm魚雷発射管四連装2基(各舷1、予備魚雷無し)、爆雷36発、航空機1機搭載可能。

辺境警備用の小型巡洋艦。旧5500トン型軽巡の焼き直し版であり、『新5500トン型巡洋艦』とも呼ばれている。
但し装甲防御力に関しては、仮想敵水上艦艇の非力さから大きく削られている。(本格的な対空攻撃に対しては考慮外)
ブロック工法及び溶接工法を全面的に取り入れて工期を短縮したり、主砲や魚雷発射管は旧5500トン型のものを流用する等、できるだけコストの上昇を抑えている。
とはいえ新型だけあって対空/対水上電探を当初から装備しているのに加え、指揮統制/通信能力も数段向上している。
また南方での活動を考慮し、強力な通風/冷房機能も付加される等、居住環境にも考慮が払われている。

本型は巡洋艦としては破格の値段であることから、昭和19〜28年の10ヵ年計画内に10隻以上が調達され、各方面艦隊に配属された。
また昭和29年以降も調達は続き、最終的には帝國海軍だけでも20隻以上、邦國や同盟国への輸出も含めれば50隻以上が生産されることになる。

本型はそのコンセプトや船体規模から、よく大型海防艦と比較されるが、純粋な戦闘艦としては本型に軍配があがる。

86 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/15(火) 08:06:40 [ yq9lkYzY ]
<改阿賀野型巡洋艦>
基準7000t、速力35ノット、航続18ktで8000海浬
装甲60ミリ(舷側)/30ミリ(甲板)/25ミリ(砲塔)
15.2cm50口径砲連装3基(前2後1)、12.7cm40口径高角砲単装6基(前後各1及び各舷2)、25mm対空機銃三連装2基(各舷1)、25mm対空機銃単装4基(各舷2)
61cm魚雷発射管四連装2基(各舷1、予備魚雷無し)、爆雷36発、航空機2機搭載可能。

駆逐戦隊旗艦用の巡洋艦。老朽化の進む旧5500トン型軽巡の代艦として早期の就役が求められていたため、阿賀野型軽巡の改正型として建造された。
本型は、阿賀野型軽巡に欠けていた対空戦闘能力を付加するため、魚雷発射管の位置を変更したり艦尾をやや延長する等の改正を行っている。
これ等の処置により、指揮する改秋月には劣るものの旧式重巡や松型駆逐艦並の対空戦闘能力を獲得したが、逆に魚雷の射線は8から4に半減した。

本型は昭和19〜28年の10ヵ年計画内に3隻が調達され、第三艦隊に配属された。
ただやはり次世代の巡洋艦としては中途半端であり、調達はこの3隻で打ち切られ、昭和29年以降は新型巡洋艦に移行することになる。


よって10ヵ年計画達成時には、巡洋艦戦力は最上型/利根型重巡洋艦6隻、旧式重巡洋艦12隻、大淀型軽巡洋艦1隻、阿賀野型軽巡洋艦4隻、改阿賀野型軽巡洋艦3隻、新5500トン型軽巡洋艦10隻以上の計36隻以上となります。


――かな? まあ新5500トン型巡洋艦が非力(割切り)すぎるけど、員数外の巡洋艦と考えれば……

87 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/15(火) 08:07:10 [ yq9lkYzY ]
>>77、78
>帝國から貧乏神が出て行ってくれるのはいつのことだろう……
資源消費量が右肩上がりですからねえ…… 運んでも運んでも追い付かない、備蓄なんて夢の又夢。

>>79
>ぉほ。石原さんの出撃ですか。
辻大佐が出るならこの人も、という訳で。

>>80
>ディーゼル機関
商船と取り合いになりますからねえ。

>>貧乏
>日本の軍隊は貧乏なのが当たり前になっている気がする。…あまり笑えないなあ。
金満帝國軍なんて帝國軍じゃあありません。パチものです。

>>81
>比較がアメちゃんとかですから。
如何考えても反則ですよ、あの国は。
まるで『パンが無ければケーキを食べればいいじゃない』と言いながらケーキを食べてる様な国ですから。

>>82
>ところで、上等兵閣下との仲は最低限レベルでの復元は為されたのでしょうか?
このジャンクSS中の設定では、上等兵閣下はトライアングルアロウの影響(ある程度成功した)で失脚しています。

88 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/15(火) 08:15:58 [ ToMVwDhk ]
先の解囲戦において、王国軍を退けた
日本・連合帝国同盟軍は、補充を受けつつ、
再攻勢に備えるべく縦深陣地を関ヶ原
城塞西部に構築を始める。

七割型完成仕掛けたところで、王国軍
が来冦を受ける。
王国軍竜騎兵に対し、陸軍高射砲隊が迎撃、
3割近く侵入を許すも、退却する竜騎兵を
捕捉、壊滅に追い込む。

陣地が未成状態とは言え城塞に10kmまで
接近するも、縦深陣地に突撃衝力を失い、
戦いの主導権を失う。

予備兵力を投じた本間第六十軍の迂回
作戦により、王国軍の包囲に成功。

ようやく第六十軍に送り込まれた残り
の歩兵旅団を戦線に投入、王国軍は
降伏する。

89 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/15(火) 08:37:14 [ ToMVwDhk ]
続く、関ヶ原西北に広がる漁玉盆地を奪還
すべく、連合帝国軍は独自で行動するも、
王国軍の野戦反撃により、大打撃を
こうむる。

王国軍の再攻勢に、日本帝国軍は、
関ヶ原と漁玉盆地を結ぶ塩峠にて迎撃、
撃破に成功。

これ以後、連合帝国軍の指揮を本間将軍が
取る事となる。

90 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/15(火) 12:56:55 [ ToMVwDhk ]
漁玉盆地を奪還した第六十軍の元に、
日本から派遣された技術者から良質の
油田があると報告を受け、簡易ながらも
精油所の建設を始めると共に、連合
帝国との協定により油田を中心とする
一帯を租借。

当面、戦力が整うまでの間、戦略守勢を
方針とする。

しかしながら、参謀本部の強引な攻勢
命令に押し切られ、六十軍司令部は攻勢
作戦を実施するが、兵站が限界に達し
ていた。
そのため、戦線崩壊の恐れがある中、
参謀本部の無理解に現地六十軍は
参謀本部に対する中央不信から、
統合幕僚部に直訴。
これを知った吉田首相は激怒、統合
幕僚部を通じて参謀本部−−作戦課
−−の人員の入れ替えと増援の
派遣を命じる。

これにより、六十軍は戦線崩壊の
危機を逃れる。

91 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/15(火) 13:41:34 [ ToMVwDhk ]
年が開けた皇紀2606年−昭和21年、
1946年−、新編された戦車6師団(独
立戦車2旅団、及び同5旅団)、及び
第七師団27連隊が無事六十軍に
合流。

ようやく、油田の製造能力も増加。

この頃には連合帝国軍も戦力が
戦闘行動が取れるまでに回復。
ここに日本・連合帝国同盟軍は
帝国北部の奪還に乗り出し、数
度の会戦により、王国軍を撃破。

日本帝国軍に危機感を抱いた
連合帝国及び7諸邦のうち4邦は
皇太子の指揮の下、本間六十軍
に対し攻撃するも、連合帝国
軍は関ヶ原城塞にて壊滅し、
皇太子は自害。

残った皇女を国主として、連合
帝国側は帝国軍に降伏。
ここに連合帝国は消滅し、残る
3邦は帝国の属国に、皇女を国主
とする旧連合帝国は、その領土
を半減した上で、衛星国とした。
フランベリア公国の誕生である。

92 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/15(火) 14:05:31 [ ToMVwDhk ]
大陸で発見された油田−漁玉盆地
から漁玉油田と名付けられた−
から運ばれる油により、帝国の
燃料事情がようやく好転するに
連れ、台湾からの米が行き渡る
ようになり、食糧状況も回復
し始める。

ようやく、目のこぶであった沖縄
占領軍に対する行動が可能となる。

降伏するよう促したが、強く
拒否され、敢なく失敗。
二正面作戦を避けたい帝国は再
度交渉し、時限を設けての停戦
で合意する。

93 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/15(火) 14:22:17 [ c7ArwGiI ]
>>85
>また南方での活動を考慮し、強力な通風/冷房機能も付加される等、居住環境にも考慮が払われている。
そもそも日本本土が低緯度地方にあるんでしたね。謎の現象で気候は前と変化なしということだけど。
神州大陸がインドネシア並の気候だから、赤道付近くらいかな?

94 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/15(火) 14:36:30 [ ToMVwDhk ]
開けて皇紀2607年、昭和22年、ようやく
転覆したり大破したりしていた海軍艦艇
の修理がなり、5隻の空母(凖鷹、天城、
葛城、竜鳳、海鷹)、3隻の戦艦(長
門、伊勢、日向)、4隻の巡洋艦(北上、
大淀、利根、青葉)が戦列に復帰。

旧連合帝国領の過半と4邦を、版土に新た
に加えた帝国領フランベリアよりもた
らされる鉄資源などにより、海軍は
改松級及び改冬月級の量産に乗り出
すとともに海運各社と諮り、新標準
船形を定め、逼迫したままの船腹量
の回復に乗り出した。

95 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/15(火) 14:56:07 [ ToMVwDhk ]
吉田内閣の後を継いだ鳩山内閣になって、
寸断されたままの国内輸送網は、ゆっくり
と、だが着実に再編へと向かう。

この頃、ようやく国内体制の刷新、社会構
造の変革により、景気が上向き始める。

この結果、大戦中より男子労働人口の不
足を補う形で、労働の重要な部分を担い、
さらにその流れが加速され、女性労働
者に対する各種支援策が、打ち出され
ると共に、
参政権の付与に関する普通選挙法案が
衆議院を通過する事となる。

96 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/15(火) 15:13:23 [ ToMVwDhk ]
帝国国内は、青森を中心とする東北
経済圏、新潟を中心とする北陸経済
圏、東京を中心とする関東経済圏、
名古屋を中心とする東海経済圏、
大阪を中心とする阪神経済圏、広島
を中心とする中国経済圏、福岡を中
心とする九州経済圏、台南を中心
とする台湾経済圏を形成する形で、
国土、社会構造の変革が生じる。

また、破壊された八幡製鉄所を始め
とする国内産業を、各経済圏毎に
バランスよく再編していく事となる。
国土の過半が焼け野原となっていたから
こそ、出来た事でもあった。

97 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/15(火) 15:21:45 [ ToMVwDhk ]
とりあえず、終了。
実は、連合帝国が日本の手で消滅したので、
日本が元の世界に戻れる司祭の制約も消滅、
戻れなくなりますた。
南無〜

98 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/15(火) 17:29:55 [ 8kGssc1U ]
>新5500トン型巡洋艦
夕張型の拡大型という感じですね。
辺境地域ならこれくらいで充分かも。

>改阿賀野型巡洋艦
九八式8センチ連装砲は諦めましたか。
魚雷発射管が艦の中央ではなく、各舷に装備されたのに少々驚きました。
確かにちょっと中途半端ですね。


大本営発表さん、投下乙でした。

99 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/15(火) 18:07:24 [ 8kGssc1U ]
くろべえさん、今、フリー素材をいじって、改阿賀野型の絵を作っているのですが、高角砲の配置に困ってます。
前後に1基ずつ、各舷に2基の高角砲を艦橋・煙突周りに集中的に配置しようとしているのですが、
後ろの高角砲の目の前が水偵なんですよね。これって良いんですかね?

100 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/15(火) 19:37:17 [ 8kGssc1U ]
連続ですいません。
とりあえず、改阿賀野型の想像図をくろべえさんのアドレスに送っておきました。
改善すべき点がありましたら、教えてください。

101 名前:名無し屯田兵@F世界 投稿日:2006/08/15(火) 19:43:51 [ pNparMJ6 ]
大本営発表様、乙です。
日本を取り巻く情勢も一段落ですね。沖縄は依然として気になりますけど。
米軍と皇太子軍が結託していたら等々の妄想をそそられますw

しかし復帰した軍艦の顔触れが応召の古強者というか何というか(つ∀`)

102 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/15(火) 20:31:15 [ ToMVwDhk ]
屯田兵氏、どもども。

さすがに棒名あたりはそのまま処分でつ(つ∀`)
まあ、このSS自体が氏からのインスパイアなんで、
氏の妄想もみたいと思ったり思わなかったり(w

それに国内情勢もまだ一波瀾ありそうでつよ?

ああ、そうそう海軍は大戦で、建艦方針がかなり
変わらざるを得なくなってるでつよ。
史実でも、末期になってようやく、いかに早く造れ
るか気付いたぐらいだし。。。
その流れで、これからの海軍の主力は、改松級に代
表される護衛駆逐艦と改冬月級の流れを組む防空
駆逐艦、打撃戦力・領海警備としての巡洋艦、
そして大型艦としては空母のみになるでしょう。

これからは外洋海軍として、歩むかな?

103 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/15(火) 20:47:51 [ ToMVwDhk ]
本日、二度目の投下。

全般状況

日本側
帝国政府は沖縄問題の最終解決のため、
米軍と再度交渉、決裂。

第二次沖縄戦始まる。


大陸側

帝国領フランベリアに資本を投下、
精力的に開発を行う。

本間将軍率いる六十軍は、残る旧連
合帝国領奪取を企図。
西部打通作戦開始

104 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/15(火) 21:22:20 [ ToMVwDhk ]
全般状況からのSS

喉に刺さった小骨のような存在である
沖縄占領軍に対し、帝国政府は再度特
使を派遣した。

数日に及ぶ交渉は決裂、ここに帝国は、
沖縄奪還を決意。
統合幕僚部は沖縄奪還を参謀本部に下す。
61軍編制を下令、数カ月
の準備の末、
第二次沖縄戦が始まる。

苦戦を強いられつつも、半年に及ぶ
戦闘により、継戦力を失った米軍はこ
こに降伏。

105 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/15(火) 21:32:07 [ aCJyvu0E ]
>大本営発表氏
投下乙。
ですが、全部書いてから一度に投下してください。それと、改行が多すぎて読みにくいです。

106 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/15(火) 21:41:33 [ ToMVwDhk ]
皇紀2607年半ばより、帝国政府は、
帝国領フランベリアの実際の統治を
旧来からの官僚機構を利用しつつ、
統治を行う。

その中、帝国政府はフランベリアの
開発を加速。
縦断鉄道の建設、精油施設や鉱山開発、
農業生産性の向上に着手する。

107 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/15(火) 21:57:09 [ ToMVwDhk ]
既に60軍が揃っており、王国軍の再攻勢が
懸念される中、60軍は西部打通作戦を発動。

竜騎兵の補充がままならない王国軍を、
数度の野戦と攻城戦にて撃破。

王国軍との交渉にて、ここに停戦が成立。
現進出線を境として、講和が成立。

108 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/15(火) 22:07:25 [ ToMVwDhk ]
一応、第一部完という事で。


>>105
おや、それは失礼。
携帯からなので、一度に投下した結果がこれですorz

え、パソコンはどうしたって?
先月、物理的に壊れて、未だ直ってません(つ∀`)

改行はどのぐらいの文字数が良かった?
私ゃあ、このぐらいがいいかと思ってるん
ですが(ノ_・)

109 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/15(火) 22:23:45 [ ZCnPwPVg ]
大本営発表氏、投下お疲れ様です。
海軍艦艇ですが、笠置、阿蘇、生駒、伊吹、酒匂あたりも使えるかも。
阿蘇は着底しているので、損傷状況にもよりますが。

110 名前:Gir. ◆pi/XgnFjWE 投稿日:2006/08/15(火) 22:40:28 [ qfTNlMGw ]
> くろべえ殿
>新5500トン型巡洋艦
 ……おやじさん、今日の小豆粥、塩効いているねぇ。まるで噂に聞く英海軍の塩ココアみたいだよ。

> 大本営発表殿
 第一部完おめでとうございます。

111 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/15(火) 23:05:15 [ ToMVwDhk ]
酒匂はしっかり数に入っております。

おお、笠置に生駒!
空母が2隻増える!(w
伊吹は多分航空機輸送用かなぁ。。。
阿蘇は多分無理かもなぁ。。。
特攻兵器の標的にされてるしなぁ

112 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/15(火) 23:44:40 [ ZCnPwPVg ]
>>111
阿蘇は漏水により傾斜着底ということだから、乗員がいたなら沈まなかった程度の損傷じゃないでしょうか。
必要なら使えそうですね。
伊吹は使い勝手悪いかも。

113 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/16(水) 02:39:37 [ ToMVwDhk ]
航空機の大型化は、避けられないからねぇ。。。

烈風の運営、噴進式航空機の登場・・・。
葛城クラスですら、第二次沖縄戦の時には、既に2
線級だし(ノ∀`)

少なくとも、翔鶴クラス以上でないと、ねぇ。。。

というか、海軍の改マルロク計画(ここから、漏れの妄想でつ)

で、改大鳳級もしくは改葛城級とでも呼べる大型空母の
建造に着手してるでつ

これからの海軍は、無数の護衛艦と、3個ないし4個以上の
空母群、それを支える多数の支援艦船を目にする事に
なるんでしょうねぇ

114 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/16(水) 07:07:51 [ yq9lkYzY ]
大本営発表様、大量投稿乙です。あと第一部完結おめでとう御座います。

壊滅状態の国内産業と深刻な労働力不足。難問山積みではありますが、どうやら希望が見えてきましたね。

でもまだ難問だらけだなあ。
数百万単位で青年男子が足りない以上、今後の人口減は避けられないだろうし、労働力の不足も如何ともし難い。
今後、一時的にでも近隣諸国の民を労働力として呼ばざるをえないでしょうね。

降伏した10万単位の米軍将兵を帝國に同化させることも必要かな?
米軍将兵の知識を他に漏らすのは拙い、ならば積極的に帝國人に同化させた方が良いかと。
少なくとも『只の労働力』でしか無い近隣諸国の民よりは良いでしょう。彼等の頭脳や技術は役に立ちます。
……問題は、当時の反米感情の強さだろうなあ。爆撃とかでより増幅されてるだろうし。

(以上の疑問は無視して下さい)


ところでこの作品、くろべえのHPに掲載させて頂いてもよろしいでしょうか?

115 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/16(水) 07:08:22 [ yq9lkYzY ]
>>93
>神州大陸がインドネシア並の気候だから、赤道付近くらいかな?
赤道より少し南ですね。丁度インドネシア辺りでしょうか?
本土より南へ行くと、甲板上で目玉焼きが……

>>98、99、100
>>新5500トン型巡洋艦
>夕張型の拡大型という感じですね。
>辺境地域ならこれくらいで充分かも。
あくまで警備艦の親玉ですからねえ。

>くろべえさん、今、フリー素材をいじって、改阿賀野型の絵を作っているのですが、高角砲の配置に困ってます。
矢張り各舷後方の高角砲、無理っぽいですねえ。
第三艦隊所属だからカタパルト撤去かな? でもいつまでも第三艦隊所属じゃあいられないし……
12.7cm40口径単装高角砲6基から、8.8cm45口径連装高角砲4基に変更しようかなあ?
(7.6センチ60口径高角砲は生産数が少ない上、陸軍の二式重戦車に回している)

>>110
>> くろべえ殿
>新5500トン型巡洋艦
> ……おやじさん、今日の小豆粥、塩効いているねぇ。まるで噂に聞く英海軍の塩ココアみたいだよ。
……安いんですよ。とっても。(遠い目)
まあ英国条約型重巡も、後に装甲追加したとはいえ当初は舷側25ミリ。多分大丈夫でしょう。きっと。
帝國初の量産型巡洋艦でもありますし、帝國の造船技術の発展に役立つ(多分)と思えば……

116 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/16(水) 08:14:30 [ ToMVwDhk ]
>>114
不足する青年男子を解消すべく、300・200番台のほぼ全て
(202師以外の全て)、100番台の師団のおよそ半分を、独混
旅団の半数近くを解体しても、労働人口足りてないし。。。

降伏した米軍将兵を北海道に移して、彼らに北海道の開発を
担ってもらっても、まだ労働者不足は解消されず。。。

あ、強制労働じゃないですよ
ちゃんと給料払ってまつ
台湾の比重が高まるなぁ・・・。

近隣諸国と言っても、本土に入れる気は帝国政府には、ない
と思う。
寧ろ、労働工数を短縮するために生産工程の過半を機械化
するだろうなぁ。。。


えーと、転載は勘弁。。。(核爆

wikiあたりでご容赦の程を(;___)

117 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/16(水) 09:33:28 [ 8kGssc1U ]
>12.7cm40口径単装高角砲6基から、8.8cm45口径連装高角砲4基に変更しようかなあ?
海軍の装備に8.8cm砲ってあったかなあ?
…もしや、あのドイツの高射砲?

>矢張り各舷後方の高角砲、無理っぽいですねえ。
クレーンの動作範囲内に内火艇をおさめなければいけませんし、
後方艦中央に置かれている高角砲とも少し距離を置こうとすると、図の位置に置かざるをえないんですよね。
良く見れば、バランスよく対空兵装が置けたとも見れますが…。

118 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/16(水) 11:23:02 [ yq9lkYzY ]
>>116
>えーと、転載は勘弁。。。(核爆
大本営発表様、了解です。残念ですが仕方がありませんね。

>>117
>海軍の装備に8.8cm砲ってあったかなあ?
>…もしや、あのドイツの高射砲?
陸軍から提供された旧式のアハトアハトです。

やはり水偵の運用とかに支障が出ますねえ。
やはりアハトアハトの連装4基かな。

119 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/16(水) 11:23:54 [ yq9lkYzY ]
さて、SS投下です。

例の豆粥、その2です。

120 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/16(水) 11:24:29 [ yq9lkYzY ]
「帝國召喚」外伝4 『辺境警備隊隊長よもやま物語』おまけ2

7、

ケネット。

ウェクスフォード家の本拠地として、現在急発展中の町である。

帝國の建築家を招いて計画的に建設したこの町は、他地方の雑多な町々の中で異彩を放っており、その殷賑振りと合わせて『小王都』とすら言われる程だ。


ウェクスフォード家の本邸は、ケネットの町の中心、その小高い丘にあった。

(丘全体を広く深い堀で囲んだ総石垣造りのそれは、本邸と言うよりも『城』そのものだ)

丘の周辺は、ウェクスフォード家家臣団の居住区や直営の畑、公園で囲まれており、更にその外周を一般市民の居住区や商業、工業区が囲んでいる。

それは正に城下町の姿であった。


自動車が近づくと表門が開いた。

橋を渡って堀を越え、門に入る。

……正直、後のことはよく覚えていない。

一下級役人に過ぎないヨハンにとって、ただただ圧倒されることばかりであったのだ。

ヨハンは豪華な客間に案内されると、供された寝酒を震える手つきで飲み干し、無理矢理眠りに陥った。

目が覚めたら全てが夢だった、ということを半分望みながら。

121 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/16(水) 11:25:00 [ yq9lkYzY ]
8、

客のヨハンは直ぐに寝てしまったが、当主たるナリマサはそうはいかない。

留守を預かるサーナに、ヨハンのことを説明する必要があるし、王都での活動を報告――遊びにいった訳ではない――しなければいかないのだ。


サーナはことの次第を息子から聞くと、頷いて尋ねた。

「では、どうなさる御積りです?」

「はい、折角来て頂いたのです。国中に、我が家が恩には礼をもって報いることを示すためにも、そして我が家の力を見せ付けるためにも、盛大にもてなそうかと」

「……具体的には?」

「客人の目の前で高価とされる豆汁を大釜一杯に作り、作りたてをお食べいただきます」

その言葉を聞いたサーナは、いかにも『頭が痛い』とばかりに額に手を当てながら、息子を諭す。

「……ナリマサ、貴方は少し、いえ大きな考え違いをしています」

「というと?」

「貴方の考えは鄙者のそれです。それではまるで成り上がり者丸出しではありませんか」

品が無さ過ぎます、と嘆く。

122 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/16(水) 11:25:31 [ yq9lkYzY ]
「これは母上の御言葉とは思えませぬな! 力を見せるには圧倒的な物量を見せ付けるのが第一かと愚考いたしますが?」

が、流石に母に『鄙者』などと言われては黙っていられない。すかさず反論する。

元服を済ませ、名実共にウェクスフォード家の当主になったという意気込みもあるのだ。


母はそんな血気盛んな息子の様子を見て、内心で大きな溜息を吐いた。

生まれた時から多くの家臣に囲まれ、日の出の勢いで急成長するウェクスフォード家しか知らない息子にとって、その力を喧伝するのは当然であり義務だとでも考えているのだろう。

(その点、放浪時代を知っている二人の姉は違う。彼女達は実に慎ましいものだ)

加えてタブリンにおける『帝國の代理人』を実父に持ち、自らもタブリンにたった二人しかいない『帝國直参』の一人(勿論もう一人はタブリン王)。

――ウェクスフォード家こそ、タブリン第一の家なり!

そう気炎を上げるのも仕方ないのかもしれない。

……が、それでは困るのだ。

所詮ウェクスフォード家は新興勢力であり、その足元は未だ不安定。

当主たる者はもう少し冷静になる必要があるとサーナは考えていたし、何よりも増長した息子を見たくなかったのである。

123 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/16(水) 11:26:01 [ yq9lkYzY ]

「……それにヨハン殿のことも考えて御覧なさい」

サーナは搦め手から攻めることにした。

「?」

「貴方の御話によれば、ヨハン殿は豆汁に格別の思い入れがある御様子」

「私もそう見えました」

「ならば、見せ付けるような卑しい真似は慎むべきではないですか? 貴方がしようとなさっていたことは、ヨハン殿が大切にしていた思いを壊し、侮辱するも同然のことですよ?」

「! それは……」

ナリマサは指摘された事実に愕然とする。

……違う、そんな積もりじゃあなかったのだ。

「ナリマサ、殿方の面目を潰すような真似をしてはいけませんよ」

「はい……」

項垂れて返事をするナリマサ、その様はサーナに叱られて項垂れるシロそっくりだ。

(いや、どちらかといえばナリマサが似たのだろう。シロはナリマサの傳役でもあったのだから)

「では、母上は如何なされば良いと御考えですか?」

「……そうですね。豆汁にも様々な種類があります。それらを一椀ずつ丁寧に作り上げ、お出ししなさい。無論、他の御料理もです」

124 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/16(水) 11:26:32 [ yq9lkYzY ]
料理は帝國式が良いでしょう、と付け加える。

つまり、通常の貴人に対するもてなし方で良いということだ。

「成る程、分かりました」

自分の考えを理解してくれたナリマサを見て、サーナは穏やかに微笑むと本題に入った。

「ではこの話はここまでにしましょう。次は都でのことを御聞きしたいのですが?」


9、

サーナは、王都でのナリマサの『公務』を途中まで黙って聞いていたが、やがてドニゴール公の屋敷から抜け出した件まで来ると、サーナは頭を抱えて蹲ってしまった。

「……ナリマサ、では貴方はドニゴール公の招待を受けておきながら、途中無断で抜け出したというのですか!?」

「はて? 先のヨハン殿の際に既に御話したと……」

「聞いてはいませんよ。ただ『大変世話になった御人』としか」

「そうでしたか?」

「……ナリマサ、そこに御座りなさい」

どうやら長い御説教になりそうな雰囲気である。


「貴方はドニゴール公の招待を受けたのですよ? しかも話によれば、貴方は主賓らしいではないですか!」

125 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/16(水) 11:27:03 [ yq9lkYzY ]
主賓に逃げられたドニゴール公は、さぞや面目を潰されたことであろう。 ……しかも他の客人達の眼前で、だ。

「貴方が元服前ならば、或いは笑って済んだやもしれません。が、貴方は既に元服を済ませた大人、しかもウェクスフォード家の当主なのですよ?」

ことはウェクスフォード家とドニゴール家の問題でもあるのだ。

「しかし、あのままでは公の娘御にまで会わされそうになったのですよ!?」

「……ならば貴方は、その姫君の面目まで潰したのですね」

お気の毒に、と顔を顰める。

ドニゴール家の受けた屈辱は相当なものだろう。

宴が気に入らぬと主賓に逃げられた上、娘まで『会いたくない』と侮辱されたも同然なのだから。

(結果的にそうなる)

流石のナリマサも拙かったかと思い始めるが、やはり結婚は嫌なので尚も反論を試みる。

「しかし…… あのままでは……」

「良いではないですか、婚約なり結婚なりなされば」

ドニゴール家の姫君が御相手なら目出度いことです、という。

「母上!」

「……ナリマサ、貴方は一体誰ですか?」

126 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/16(水) 11:30:05 [ yq9lkYzY ]
「は?」

「貴方はウェクスフォード家の当主ですよ?」

一家の当主たる者、家の利益になる行動をとらねばならない。個人の好き嫌いなど関係無いのだ。

無論結婚も、である。

そうやって家を繁栄させ、その果実を家臣にも分け与えるこそ、家臣達も付いてくるのだ。

ましてウェクスフォード家は新興勢力である。積極的に既存勢力と結びつかねばならないだろう。

「……どうやら、少し自由にさせ過ぎた様ですね」

未だ納得出来ない様子のナリマサを見て、サーナは軽く溜息をついた。

「まだ早いと考えていましたが、貴方に妾をつけましょう。が、妾とはいえ豪族の娘です。大切になさい?」

そして子をもうけるのです、という。

「母上!」

堪りかねたナリマサが叫ぶが、サーナは厳しい声で抑え付ける。

「これは誓約、義務なのです」

127 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/16(水) 11:32:14 [ yq9lkYzY ]
豪族はウェクスフォード家に臣従する代わりに実の娘を当主の妾とする。

ウェクスフォード家の当主は豪族の娘を妾とし、子を為す。

子は長じて豪族の当主となり、豪族はウェクスフォードの一門となる。

只の臣下になるのではない。御一門、親族となるのだ。

(これは最も平和的な臣従の形態である)

「…………」

それが分からぬナリマサではない。が、理解はできても納得は出来ない。

「……母上、その様なことが許されるのですか? 相手の娘も気の毒ではないでしょうか?」

ナリマサの搾り出す様な質問に、サーナは軽く微笑んだ。

「貴方がそう思うのならば、その娘を愛しておやりなさい。いえ、これからも同じ様なことが何度もあるでしょう。皆同じ様に愛し、慈しんでおあげなさい」

そうすればその誠意は必ず伝わるでしょう、とサーナは言う。

「未だウェクスフォード家は磐石ではありません。足元を固める必要があるのです。
家臣に領民……貴方の双肩には、多くの人達の生活が懸かっているのですよ? それを忘れてはいけません」

「……はい」

「宜しい」

その言葉を聞き、サーナはにっこり笑って答えた。

128 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/16(水) 11:32:44 [ yq9lkYzY ]
「ドニゴール公には、御父様が御詫びするそうです」

「!?」

「貴方が帰る前、御父様から連絡がありました」

「……では、母上は全て……」

絶句するナリマサ。

母は全てを最初から把握していたのだ。


『帝國の代理人』たるナリマサの父が、公衆の面前で公に頭を下げることにより、この件は『済んだこと』とする。 

……覆水盆に返らずで、さすがに無かったことにはできないが。

そして、あらためて此方から公の娘を所望するのだ。

公が如何出るかは分からぬ――十中八九受けるだろう――が、少なくとも公の面目は立つ筈だ。


「父上が頭を下げられるのですか!? ……公衆の面前で!」

「全ては貴方の過ちを償う為にですよ?」

「父上……」

自分のしでかしたことの重大さに、愕然とする。

(最も父の方は、『何、息子のためさ』と笑っていたが)

「……夜も遅くなりました。もう部屋に戻りなさい」

そんな様子を見かねたサーナは、ナリマサを促して部屋に帰す。

後には、静寂だけが残った。

129 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/16(水) 11:33:17 [ yq9lkYzY ]
「ですが、ドニゴール公の件は……」

10、

「……御免なさい」

ナリマサがいなくなり、一人だけになった部屋でサーナは呟く。

僅か十三で、一家の責務を負うのはさぞ辛いだろう。

全ては自分のせい、自分がウェクスフォード家の出でなければ……

今頃は気楽に暮らしていただろう。


今の夫と再婚――厳密には結婚はしていないが――した後、それを知った多くの旧ウェクスフォード家の郎党が自分を頼ってやって来た。

ウェクスフォード家の者として、そんな彼等を見捨ててはおけなかったのだ。

彼等の窮状を救うため、サーナはウェクスフォード家の再興を決意する。

サーナにとって、それは何よりも優先すべき義務だったのだ。 ……自分の感情よりも。

幸い今の夫は笑ってそれを許し、積極的に協力してくれたが、申し訳ないことをしたとも思う。

結果、ウェクスフォード家は以前とは比べ物にならない程大きくなった。

が、その代償として自分はとうとう正規の結婚ができなかったし、今も夫と離れて暮らしている。

……自分はいい。自分はかつてのウェクスフォード家、その最後の義務を背負った世代なのだから。

痛恨の極みは、その義務を子供に継承させてしまったこと。

ナリマサを筆頭に、子供達はそれぞれ義務を遂行しなければならない。子々孫々に至るまで。

それが何よりも痛かった。

130 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/16(水) 11:34:23 [ yq9lkYzY ]
SS投下終了。
中篇です。ご希望があれば後編も書くかもも。

131 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/16(水) 11:57:00 [ .muDXL0E ]
くろべえさん
GJです。
ここまで来て後編を書かないというのは、かの「佐藤大輔病」に罹患するようなものです。
どうか、執筆をお待ちしております。
あと、ナリマサ卿の育ち故の暢気さと傲慢がかいま見えましたが、
卿が父親から「帝國大騎士爵」を満座で(多分ダブリン国王も居たでしょう)
継承したときの短編も期待してしまいます。
当時、卿は帝國本土では、国民学校在学中程度の年齢でしょう。
少年らしい気負いと、帝國の代理人と言っても家庭では母の尻に敷かれており
息子(娘達にも)大甘な父親の威厳ある態度と儀式が彼にどのように作用したのか
読み切りをどうか・・・・・
そして、城下町では町をあげて祝いの祭りがあったでしょうな。

132 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/16(水) 12:00:20 [ Nz0LbtT6 ]
 続きを希望します。
 ここで止められては蛇の生殺しかと………ねぇ?(笑

133 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/16(水) 13:00:00 [ 1pexHEsk ]
投下乙です。乙ですが…
>>131
確かに。今現在ですら完結した外伝が一つとしてなく、良いところで止まっている現状ですからね。

134 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/16(水) 15:19:43 [ 8kGssc1U ]
くろべえさん、投下乙です。
サーナさん、立派です。ナリマサ、頑張れ。
現在、本編に加え、書きかけの外伝が4つもありますねえ。戦線の整理はお早めに。

>陸軍から提供された旧式のアハトアハトです。
>やはり水偵の運用とかに支障が出ますねえ。
>やはりアハトアハトの連装4基かな。
了解しました。設計変更します。

135 名前:名無し屯田兵@F世界 投稿日:2006/08/16(水) 19:51:05 [ 5PhziaaQ ]
大本営発表様、第一部完結乙です。
何となく連合帝国と王国が明と清、日本乞師ならぬ日本召喚と思わせます。

自分の妄想はとりあえず、
・キ115「剣」を改設計、操縦席前進+主翼の木製化と面積増大+固定脚+ガンパック+手動爆弾投下装置で、
如何にも帝国陸軍好みな煮え切らない万能COIN機(むしろコロニアル・ボマー?)に。
それが通用するようなF世界だとしても、97式軽爆や99式襲撃機を再生産するという選択肢は妄想なので却下。
・石橋湛山首相、巨額の対フランベリア投資に憤死す
・女性の地位が向上したのに、日本は人口減阻止に一夫多妻制を大々的導入。それなんてエロゲ?
の三本立てあたりでw

くろべえ様、乙です。
溺死するぐらい汁粉を馳走しようというナリマサ君の陰謀が阻止されたのにも関わらず、
ヨハン氏がどんな不幸に見舞われるか期待しておりますので、気が向きましたら是非後編をお願いします。

136 名前:F世界逝き 投稿日:F世界逝き [ mFHFBMfM ]
F世界逝き

137 名前:F世界逝き 投稿日:F世界逝き [ mFHFBMfM ]
F世界逝き

138 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/16(水) 21:53:08 [ PX2g/hVY ]
続き投下です

139 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/16(水) 21:54:52 [ jqMmKaZo ]
『よし、よくやった、よしよし、がんばれ、な』
ワイバーンによる第一次攻撃隊を率いていた騎士団長は未だ扶桑らの居る海域に遠巻きに留まったままだった、他の団員はその殆ど全てが陸地へと戻っていった。
自分の乗るワイバーンの疲労もかなりのものだが、首筋を撫でつつ労りの言葉をかけてねばる
『やはり・・・弾が少なくなって来たようだな』
見れば小型艦が大型艦に近づき、縄らしきものを渡して箱のような物を引き渡している。火の弾の元に違いない
目論見は図に当たったらしい、帰った部下が再度来る頃には無くなっている事だろう、小型艦の方は一隻撃沈した、帝國の軍艦を我々も沈めることができるのだ、ならば波状攻撃だ
『来たかっ!!』
龍騎士の常として周囲を警戒していると遠く西の空にワイバーンの影が薄く映る。対艦魔法の槍、初めての集中運用による攻撃隊だ
『まだやつらは補給中だ!!いいぞ!絶好のタイミングだ!!!』
第二次攻撃隊に攻撃のアドバイスを伝えるためにワイバーンを翻させる、少しでも攻撃を有効に与えるのだ、特に第一次攻撃隊が最初に浴びた攻撃を避けさせなければ・・・!
自騎に無理をさせた分、彼等にはもっと働いてもらわなければならないのだから

140 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/16(水) 21:58:51 [ bBlcovoo ]
『そうだ・・・洋上給油管だ』
主計の兵が呟く
『どういう事かね?』
左近丞がすかさず聞き返す
『洋上給油では戦訓として、演習の際、初月の艦長から十四ノットで行った方がよい、とありました、金剛と不知火がした例もあります。が、給油であって弾薬の補給ではありません!』
航海長が異を唱える
『まぁ聞こうじゃないか、航海長。言ってみたまえ』
『はっ給油のホースがあります、それを繋げて、滑車のような物、輪っかでもいいかも知れません。それを使い、弾薬を喫水からの高さの差を使って降ろします、一回の重量を制限すれば危険性は下がると思われますが』
物の出し入れを担当する主計の兵ならではの献策だった
『・・・採算が、立つか?』
正確な直線航行を維持し続けなければならないし衝突の危険性を避けるために一隻ずつしか出来ない
『案はともかく、一回それを行うのにどれほどの弾量が運べるかによりますね・・・時間が問題ですから、主計長に問い合わせましょう』
艦長はどっちかというと乗り気らしい、いや、可能性があるかどうか、あるならばするべきだというスタンスなのだろう
『一応、駆逐隊には旗艦に集まれを送ろう、それから機銃要員に優先的に水を配りたまえ』

141 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/16(水) 22:01:39 [ wezaJ53A ]
『各艦一万二千発、計三万六千発程度が限度かと、これでも九トン近くを艦内の弾庫から運び出さねばなりません、手作業で。さらに起爆や落ちないように梱包する作業がつきます』
上がって来た主計長が説明する
『初春級駆逐艦の場合、各21丁の機銃が配備されております、これを全力で使いますと一門あたり、220発/分なので軽く見積もって三分程度しか・・・』
危険に見合うだけのものであろうか・・・誰もが疑問だったろう
『三分間にできることもあるだろう、私は何もしないで待つことはしたくない、やろう』
左近丞中将が決断する
『了解しました、艦内の兵を最大限使って運びだし作業にかかれ、主計長、全権を委任する初春以下に命令を伝達、急げ!』
艦長が敬礼して向き直ると矢継ぎ早に命令を下す
『・・・』
後の事は任せたと左近丞は通称お猿の腰掛けと呼ばれる椅子に座り目をつぶって黙る
『(次の攻撃あたりが潮かな・・・松浦君)』
最善は尽くす、だが、余裕を持って対応できるのはこの攻撃まで、あとは一方的となるだろう、いつまで持久できるものか。
『初春、近づきまーす』
まずは給油管を通すべく、艦を寄せ始める
『日頃鍛えた帝國海軍が戦艦乗りの気概を見せてやれぃ!』

142 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/16(水) 22:04:00 [ WERj3NJg ]
『よおっし!皆頑張れ!弾が切れちゃあ戦えんしな、働いた後には冷たい水が待っとるぞ!』
機銃弾の引き渡し作業に吾妻達も借り出されていた、十五発の弾丸が入った弾倉を箱に詰めては、給油管を使い併送する初春に梱包できた箱から渡していく、一回一回は少なくとも、量が量なので結構な作業だ
『しかし、これだけの弾では・・・分けないで本艦で使った方が良いのでは?』
新庄が疑念を口にする
『新庄君、戦争は一人でやるもんじゃあ無い!艦だって同じ事よ、この艦だけじゃどうにもならん、弾幕は重ねてこそだ』
一人でなにもかも出来るなら、あの事件の時、息子の元に駆け付けることだって出来ただろう・・・だが、それは出来なかった。しかし、現場に駆け付けてくれた第二十一根拠地隊は出来るだけの事をしてくれた。海軍には感謝している、今は出来るだけの奉職をするだけの事だ
『いらん問答は無用だわい!さっさと運び出すんだ!敵は待っちゃあくれんぞ!』
ふんぬ、と梱包の終わった箱をたった一人で持ち上げ、統制官自ら給油管の所に持って行く
『何であんなに暑苦しいんだか』
呆れ気味に事情を知らない新庄が続く、早めに終わらせた方がいいのは、吾妻に言われずとも確かだからだ

143 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/16(水) 22:06:23 [ /9tm..U. ]
『初春、予定量搭載完了しました、次の艦に移ります』
初春が離れていく、次は若葉だ、予定していた時間より早い
『早いね、兵はよくやってくれている』
うんうん、と優しい顔で頷く左近丞
『水と発破が効いたのでしょう』
『我々も気合を入れねばな』
やもすれば兵より先に物事が見えるが故に萎えてしまいがちな艦橋要員にもそれは良い気付けになっていた、否定的だった航海長も水を得た魚のように声を張り上げて舵の指示をしている、腕の見せ場だからだ
『これを狙っておいでで?』
艦長が莞爾と微笑んで振り返る
『いや、そんな事は無いよ』
正直この効果は考えていなかった、何事もあがいてみるものだ

『はぁっ、はぁっ、はぁっ、伝令!!!』
凶報は不意に、最低最悪のタイミングでやってくる
『敵機!!!西の方向!!!おおよそ100!!!』
艦橋が一瞬で凍りつく
『補給中止!!!陣形戻せ!!』
『対空戦闘用意!!!』
『主砲による三式弾での攻撃許可を!!』
砲術長が伝声管から要請してくる
『ダメだ!!発射の爆風が若葉にかかる!!このままでは同士討ちだ!』
戦艦の主砲発射のブラストは、海を凹ませるほどの威力を持つ、駆逐艦に対しては大損害を与えかねない

144 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/16(水) 22:10:33 [ gPuSt/kQ ]
『敵機散開していきます!』
主砲で迎え撃つべきチャンスが失われていく

『給油管はかまわん!引きちぎれ!!このままでは一緒くたにやられる!』
舵を切ると給油管がちぎれて若葉に送るはずだった弾薬の入った箱が海中へと落下する
『ああ・・・もったいない・・・』
誰かの呟きが聞こえる
『主砲発射・・・』
『無理だ!砲術長、諦めろ!』
扇状にまるで艦隊を絡めとるようにワイバーンが広がっていく、前回の攻撃の時のように音で爆弾を手放したりする効果も期待できそうに無い、機銃員を下がらせ、また配置に着かせる間の隙を考えると許容出来るはずも無かった
『低空から突っ込んでくる!』
攻撃の仕方が前回ともまた違う
『爆撃では、ない・・・雷撃?』
いや、落着の衝撃ほか難しい物がある、ならば・・・
『足柄を襲ったというあれか・・・!!』
対艦魔法の槍、ワイバーンに積めるほどの大きさ改良したものだと言うのか!
『敵機!!なにか切り離した!!向かってきまーす!!!』
見張り員が絶叫する、あらゆる方向から対艦魔法の槍が放たれる
『こ、これは・・・!』
左近丞が艦橋から見て、どの方向からも光点がこちらに向かっているのが見える
『駄目かもしれんな』

145 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/16(水) 22:12:29 [ 2FpTlyyE ]
最初の被弾は扶桑の右舷に位置していた加古だった
ワイバーン100騎からなる第二次攻撃隊の対艦魔法の槍、整備不良などから飛翔がうまくいかず、放たれたと同時に水面に落ちてしまったのが8基、残りの92基が飛翔を開始した
被弾が発生した状況は発射地点に一番近い所にいた加古が採った行動にある(古鷹は自発的に輪形陣を狭くするべく扶桑に寄っていた)
加古艦長は被弾面積を小さくしようと飛んでくる対艦魔法の槍に対して直角、魚雷を避けるように面舵をとり艦橋をその真正面に向けたのだ、しかしこの時点で対艦魔法の槍は人間に対する感知装置を起動させておらず(時限式)それが作動した際、人間の一番乗っている扶桑ではなく、加古を認知し、その内の14発が向かってくる事になってしまった
少し考えてみるとわかる、対艦魔法の槍が感知する範囲に直角になった加古の場合、艦の全てが納まってしまうのに対して舷側をむけた扶桑は輪切りにされた部分の人員数を魔法の槍は感知することになる、どちらがより多くの人間を感知してしまうか・・・一目瞭然だ
まるで獲物に群がる蜂の様に飛び込んでくる魔法の槍、予想外の動きに加古艦長は対空射撃に主砲の咄嗟射撃と前部弾薬庫注水用意を命じた

146 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/16(水) 22:15:08 [ 5k.cDmFg ]
艦橋前の三連装機銃と一、二番主砲、そしてその周囲に配置された単装機銃が四丁に二番高角砲(一番は先の攻撃で損失)が前方を指向し射撃を開始する、だが、向かってくる魔法の槍を六発迎撃した所が限界だった
『艦長!!!逃げてください!!艦長!!!』
『主砲も機銃についとる兵も頑張っておる、それを命じた私は逃げられん!君達は逃げろ!!』
加古艦長は退避を請う艦橋要員に、こう言って突入してくる対艦魔法の槍を振り返って睨みつけた所まで確認されている
魔法の槍を加古が被弾したのは以下の場所である
二番砲塔基部に2発
艦橋前部機銃座と艦橋にかけて4発
二番砲塔後部、単装機銃座のある艦橋基部に2発
250キロ爆弾相当の対艦魔法の槍は多少の角度と時間差をつけて着弾、その魔硝石を炸裂させた
弱装甲の二番砲塔にめりこんだ二発の魔法の槍の炸裂は二番砲塔そのものを吹き飛ばし、一番砲塔をめくり上げ、人員を殺傷した。弾庫への炸裂の流入は弱装甲の勝利か、火炎の大部分が外に漏れたのに加え、子の日の爆沈を見た加古艦長が注水用意をかけていたことが利し、注水によって完全に食い止められた。
次に艦橋基部から艦橋にかけての6発の被弾は、更なる打撃を加古に与えた

147 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/16(水) 22:18:51 [ fIFx11L2 ]
艦橋に飛び込んだ4発は艦橋そのものの大部分(艦橋側部の3.5m測距儀より上全て)を消失させ、加古そのものの破片が一番煙突の斜め部分の煙路を破損、吹き出した高温の煙に前方に火力を指向していて唯一直撃をま逃れていた一番高角砲も使用不能とした
艦橋基部の2発、これは単装機銃の人員よりもその斜め下、機関室等に詰めている人員に対して突入を意図したものであろう。着発で単装機銃に取り付いていた者達を靖国の花見に強制的に参加させたあと、甲板を大きく削った。前部弾薬庫に注水したため艦首が下がり、その削られた穴から海水が勢いよく流入する
機関室が先に異常を察知したのか、後部艦橋に居た副長が命令を出す前に自発的に速力を落とした、注水準備を告げたりしたのもあったろう、初動としては悪くない、加古の沈没は防がれた・・・はずだった
対艦魔法の槍を手放したワイバーンの一団が強行着陸してこなければ。煙路から漏れた煙が後部からの視界を遮り、それを突き破ってワイバーンが舞い降りる
『な!』
誰かが反応するより早く、甲板をワイバーンのブレスがなぎ払う、咄嗟に後部煙突の機銃がそのワイバーンを蜂の巣にするがもう一機が煙の奥から現れて、機銃座と相討ちになった

148 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/16(水) 22:22:57 [ kXkOHBG6 ]
今までの彼等とはまた違った狡猾さを第二次攻撃隊の彼等、空中騎士団は持っていた。対艦魔法の槍が少しでも攻撃されぬよう、敵にとっての目標を増やすため、発射されてからも共に艦隊に突撃をかけたのだ、そして強行着陸をかけた。基本的に帆船を相手取る彼等にとって、船舶に乗り込んで乗っている人間をブレスで焼いたり、ワイバーンの爪で切り裂いたり、海に放り出すのはいたって普通の攻撃方法であったのだから

やがて加古のいたるところが炎とワイバーン、そして人間の死体に溢れ、火葬されていく。機関室など艦の機能に不可欠な場所も他の部署から応援が来ないまま、やがて応急処置の人員が足りなくなり、浸水によって、閉鎖と機能停止に追い込まれていった
最後まで粘った後部指揮所と三番砲塔のうち、後部指揮所に撃破されたワイバーンが体当たりして出来た隙を他のワイバーンが衝き、武器保管庫から持ち出した小銃で抵抗していた副長らをブレスで消し墨したのを最後に加古の組織的抵抗は消滅した

加古は、あとは燃えて沈むだけの巨大な鉄の塊にしか過ぎなかった

時系列を戻そう。加古に命中、迎撃されたものを除いて、扶桑らへと向かった対艦魔法の槍、残りの78発の行方についてだ

149 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/16(水) 22:31:19 [ e.yRiOXc ]
とりあえずここまでで投下終了です


加古、大破炎上!!!撃沈確実!!!


あと対艦魔法の槍78発が扶桑らに向かっていきます・・・はたして左近丞中将らはこの攻撃を凌げるのか!?
海戦の戦闘が好きで書いてたら終わらない終わらない・・・(汗)よければもう少しお付き合い下さいなm(__)m

150 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/16(水) 22:34:40 [ njlPJyHw ]
一度も読んだ事無いけど投下乙






いや完結したら纏めて読もうと思ってな

151 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/16(水) 22:47:00 [ tbx.pPDc ]
長崎県人殿
あのーワイバーン搭載型魔法の槍は無誘導爆弾だったかと・・・。
それともオリ設定?

152 名前:Gir. ◆pi/XgnFjWE 投稿日:2006/08/16(水) 22:50:52 [ qfTNlMGw ]
・海兵隊式貧乏神の場合
 彼は彼女を見つけた。齢二六〇〇は堅い貧乏神の知ったにまだ生まれてもいない、新5500t級軽巡【吉野(仮称)】船魂は、眠たげに目をしばたかせる。
「おい、貴様!」
「……むみゅ〜」
「起きろ! 起きろ! 起きろ! マスかきやめ! パンツ上げ!」
「きゃっ、あ・あなたは誰ですか!?」
「口でクソたれる前と後に『サー』と言え! 分かったか、この公共投資の墓場め! 悔しかったら、社会資本の再生産をしてみろ!」
「サー、イエッサー」
「ふざけるな! 大声だせ! タマ落としたか!」
「サー、イエッサー!」
「貴様ら雌豚が俺の貧乏ゆすりに生き残れたら、兵器になる! 戦争に顕現する戦いの女神だ!!
 その日までは産業廃棄物だ! 地球上で最下等の鉱物資源め!」
「サー、イエッサー!」
「貴様らは厳しい俺を嫌う!
 だが、それだけ学ぶ!
 俺は厳しいが公平だ。艦種差別は許さん!
 巡洋艦、駆逐艦、海防艦、潜水艦、その補助艦を俺は見下さん!
 すべて――、平等に価値がない!
 俺の使命は役立たずを刈り取ることだ!
 愛する海軍の害虫を!
 判ったか、ウジ虫!」
「ふざけるな! 大声だせ!」
「サー、イエッサー!!」
「お嬢様、続けてよろしゅうございますか?」
「はい……」
「貴様、排水量は?」
「五〇〇〇トンです、サー」
「まるで、そびえ立つクソだ! 新五五〇〇トン型なんぞと言われとるくせに! サバ読んでいるのか!?」
「その方が臣民の皆さんに親しみやすいから……」
「何だ、貴様!
 おれをクソ莫迦だと言いたいか!?」
「い、いえ……」
「貴様、生まれは?」
「まだ生まれてないけど、佐世保です」
「何だ、貴様! そのなりで巡洋艦の聖地の生れだと!? 駆逐艦の聖地、舞鶴を見限っただと!?」
「はっ、はいぃ〜」
「佐世保で造られるのは、巡洋艦と潜水艦と補助艦だ!
 姉貴の利根や阿賀野とは似ても似つかんし、沈んだら最後浮かび上がれるとも思えんから潜水艦でも無い!
 貴様、補助艦か!?」
「違います〜ぅ」
「なぜ、トン単価が莫迦高くなる竜骨なんぞある?
 貴様、そんなに臣民の血税を啜り取りたいか!? 違うというなら姉の香取を見習って、商船構造にしてみろ! 重油喰らいな蒸気タービン降ろして、ディーゼル積んでみろ!」
「ひーん」
「オマケに14サンチ連装だと!? そんなに姉たちのお下がり2つ重ねで飾り立てて、見せびらかしたいか!?
 貴様など、駆逐艦の5吋で十分だ!」
「そんなぁ〜」
「そら、空から敵だ! やってみろ!」
「うてぇー」
「ふざけるな! それで墜とせるか! 気合いを入れろ!」
「う、うてぇー」
「迫力無し! 練習しとけ」
「しかし、ご大層に菊の御紋なぞ付けよって! 貴様、もしかしてワシを誘っているか!? それともウブな初年兵タラシこむつもりか、この淫売め!
 カマを掘られるだけ掘られて、相手のマスかきを手伝う外交儀礼もないやつめ、きっちり見張るぞ!」
「だって、私、巡洋艦だから、軍艦だし……」
「なんだって!?」
「軍艦なら、御紋付けないと…… 大蔵省の人が……」
「なんだって!?」
「なんでもありません」
「ふざけるな! 艦首噴き飛ばして、ドブ水流し込むぞ!」
「後進全速ーっ!」
「沈むか? 俺のせいで沈むつもりか? さっさと沈め!
 いいや、計画承認すらゆるさん! 俺がこの世でただ一つ我慢出来んのは―――、タマに撃つタマがないがタマに瑕、とかいう贅沢だ! 貧乏神の許可無く、予算成立は許されない!」

 ……こんな貧乏神はイヤだなぁ

153 名前:Gir. ◆pi/XgnFjWE 投稿日:2006/08/16(水) 22:56:56 [ qfTNlMGw ]
×→知った
○→叱咤

……orz

154 名前:ヨークタウン ◆r2Exln9QPQ 投稿日:2006/08/16(水) 23:12:05 [ XwixsAvk ]
長崎県人さん投下お疲れ様です。

ついに加古までもが・・・・・・・ますます苦戦を強いられる帝国海軍。
扶桑らの運命も、かなり危ないものになっていますね。

>海戦の戦闘が好きで書いてたら終わらない終わらない
それ、分かります。自分が海戦シーンになるとかなり長くなる原因も
長崎県人さんと似たような理由です(;´∀`)

>>Gir氏お疲れ様です。
神様コエエ(((( ;゚д゚))) こんな貧乏神がいたら、ノイローゼで狂う兵員が多数出そうですね。

155 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/16(水) 23:43:52 [ ToMVwDhk ]
長崎県人氏投下もつ。
人物描写しっかりしてるなぁ
漏れは、どっちかと言うと淡泊だし・・・

屯田兵氏、どうも
キ−115は、陸軍は使わないような。。。

第二次沖縄戦頃より、五式戦を依然主力として、戦闘攻撃機として
再設計された橘花が、五式戦の後継として国民の前に姿を顕して
いる希ガス

>嵩むフランベリアへの投資に憤死する石橋首相
石橋湛山、実際問題として首相在任短すぎだよね・・・。
病気さえしなければなぁ。。。
国内の社会構造を立て直しながらだから、当面は鉄道敷設と港湾整備ぐらいかと(爆

156 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/17(木) 00:07:42 [ 8kGssc1U ]
長崎県人さん、投下乙です。
…100機の攻撃機が来たら、米軍でも無事ですまないような気がする。
まさしく飽和攻撃。適当に撃てば、いくつか落ちそうなくらい。
でも、列強もこれで収入がどれぐらい吹っ飛んだんだろう?

Girさん、投下乙です。
こんな貧乏神だから、帝國はずっと貧乏なのか(苦笑)。
この貧乏神が居なかったのは…弥生時代(笑)?
あと、旧5500トン軽巡も、基準排水量だけなら5000トンちょいですよ。
5500トンぐらいなのは公試や常備排水量。
吉野(仮)も、公試・常備排水量なら5500トンぐらいになるはず。

…そのうち暇ができたら新5500トン軽巡も描いてみようかなあ。

157 名前:シロべえ 投稿日:2006/08/17(木) 01:07:41 [ pgJYoUkE ]
突発的に浮かんできたネタ 

注意書き

・ これはくろべえ氏の世界観を完全にぱくってます。しかし氏の作品内容になんら干渉するものではありません。超外伝的な位置づけです
・ 戦闘シーンはありません
・ SSは初めてですので質は期待しないように
・ 以上を理解していただける方のみどうぞ

158 名前:シロべえ 投稿日:2006/08/17(木) 01:09:58 [ pgJYoUkE ]
ユフ戦記

「連中気は確かでしょうか。あまりにも不経済だと思われませんか、閣下」

 ユウジルド王国海軍中佐レンザール・ユークフィンデルノ・アシムールは口調に怒気をにじませて吐き捨てる。冬を控えるこの時期に、寒冷期にはむかない頭までもが血流で赤く染まっている。その淋しげな頭とは裏腹に、三十路を迎えたばかりの血気盛んな青年将校であるレンザール少佐の怒りは理由のないものではない。十年の歳月を要しつつも完成の目を見た新生王国海軍がただ一度の決戦ですり潰されかねない戦いへ引きずり込まれようとしているのだ。彼が新生王国海軍の整備計画にこの十年関わってきたことを考えればその怒りぶりにも頷けるというものである。

「その分では厳寒期を迎えても君の頭は風邪の心配は要らないのではないかね?」
 レンザール中佐の直属上官である軍務省建艦部長ブラシアーノ・ブーレグリート・アイスティルツ少将は取り合わない。頭を冷やしてはどうかと言いたげであるが、ここが王国軍務省本部の大廊下であることを考えれば当然である。言いたいことは理解できるが場所が場所だ。とりあえず一刻も早く建艦部長執務室に入らなければ腹を割った話し合いはできない。足早に廊下を進み執務室に帰参する。

159 名前:シロべえ 投稿日:2006/08/17(木) 01:11:11 [ pgJYoUkE ]
ここはわれらが愛の巣だ。二人の甘い一時をすごしながら語り合おうではないか」

 温かい豆茶を運んできた従兵を下がらせ、ブラシアーノはレンザールを掛けさせる。
グリート地方農民出身者であることを示すブーレのミドルネームから貧相な執務室を想像されがちであるが、その内装は目立ちはしないが機能的で高価な調度品で仕上げられている。
すべてフィンデルノ卿が息子の恩人であり、敬愛する直属上官のために揃えた物だ。ユークフィンデルノは帝國風に言えばフィンデルノ侯爵家と訳せる。
海洋国家であるユウジルド王国にあって、地方領主の権力と財力は他の列強に比べれば相対的に低くなるがそれでも息子の恩人であり有能な海軍士官をさまざまな面から支援していくだけの力は有している。

160 名前:シロべえ 投稿日:2006/08/17(木) 01:13:56 [ pgJYoUkE ]
切れ者でありながら血気盛んゆえに四方に敵を作りがちなレンザール中尉を見込んで救ってやったブラシアーノは、激動期であること、有能なものは衆民出身者でも高位につけるユウジルド王国の気風、有能で円満な性格で敵を作らずにやってきたこと、そしてフィンデルノ侯爵家の惜しみない支援というさまざまな条件の奇跡ともいえる出会いが連鎖することにより衆民としては異例の将官としての地位を手にしている

そのことを考えれば彼がこの執務室を愛の巣と呼称したのにも納得がいくというものである。

ここは二人が新生王国海軍を実現するために奔走し、そのための権力を得るためにあらゆる手を打ったその努力が結実したことを示すからだ。
が、レンザールにはそのような諧謔を楽しむ余裕はない。

「閣下はなぜそう冷静でいられるのですか?艦隊は閣下の息子のようなものではないですか。それが博打のような作戦に投入されるのですよ?十年以上前のレムリアのときよりも敵は強力になっていますよ。それなのに帝國を挑発して海軍が無事であると思いますか?」
「計算があってのことだよ。われら海洋国家は海上貿易の利権に頼らなくては国力を維持できない。王国も、フランシアーノ皇国もその点は同じだ。君は交易路が帝國に独占されて国が成り立つと思うのかね?」

161 名前:シロべえ 投稿日:2006/08/17(木) 01:15:13 [ pgJYoUkE ]
「しかし、フランシアーノはともかく我々は火遊びをするほど切羽詰っていませんよ。」 
「すぐにわれらも後を追うことになるだろうよ。そうなる前に手を打つことにしたわけだ。
今が二国が共同して戦える最後の機会になるかもしれない。
想像してみたまえ、かつての列強二大海軍が手を組んで戦うのだ。
さぞかし壮観だろうよ。上層部の判断もそう悪くはないかも知れんな。」

ブラシアーノの穏やかな声色とは裏腹に、顔には自嘲めいた表情を浮かべている。
本心からの言葉でないのは確かだ。
とはいえ己の内心とは違う大流に身を任せるだけの決心と理由を、すなわち自らが仰ぎ見るべき新たな何かを見つけ出したようだ。

「冗談ではありませんよ!海軍は今回のような事態のために整備されたのではないことは閣下が一番よくご存知のはずです」
レンザールは未だにブラシアーノのような境地にはいることはできず、諦めがつかないようだ。

162 名前:シロべえ 投稿日:2006/08/17(木) 01:17:19 [ pgJYoUkE ]
二人の会話は、つまりこういうことだ。

 まず、ユウジルド王国は根っからの海洋国家だ。いくつもの交易都市をもち、貿易により莫大な富を得てきた。
他の列強も交易はするが、ユウジルドほど大規模ではない。そして自らが貿易をする他、列強が貿易する際に荷運びを請け負うことによって、また植民地経営によって国庫を潤してきた。
海洋貿易に特化したその商船団のコスト競争力とキャパシティーに対抗できるのはフランシアーノ皇国だけであった。

 では、両国が制海権や権益をめぐって抗争を繰り広げてきたかといえば、そうではない。
過去200年の間に三度の大規模な衝突があったが、いずれも相手に致命的な深手を負わせるようなものではなかった。
それどころか、この100年に限っていえば大規模な衝突はなく、小競り合いに終始してきたといえる。
三度の戦と、その商人的な感覚から軍事とは経済に奉仕すべきものであるという風潮が両国に芽生えるのである。すなわち、海軍力はその貿易体制を保護するに十分な能力で、かつ貿易体制を圧迫する程の金を掛けない範囲でのみ許容される。そして国家は経済的な意義があるときのみ戦争を起こす。

となれば、広大な海域で二大海軍が覇権を競って血みどろの大戦争をすることはない。なんとなれば、自国の広大な海域を守るために各地に艦隊を分派している両国が戦争するとなれば、一度の決戦で勝負がつくことはなく小規模の(それでも他国から見れば大規模な)海戦を繰り返し、両国の国力が疲弊するからだ。であるからこそ、両国は強大な海軍を分散して配備して、その交易路を守ってきた。
一大海戦を念頭に置いて決戦用の艦隊を作り、一箇所に纏めて配備するような贅沢は許されるはずもなく、緊張感がありつつも大火事には至らないシーパワーのゲームを二国間で繰り広げてきた。
帝國が出現するまでは。

163 名前:シロべえ 投稿日:2006/08/17(木) 01:19:13 [ pgJYoUkE ]
帝國とそのシーパワーはまさに脅威であった。
瞬く間に北東ガルムを制圧し、外交の表舞台に立った帝國。
レムリアという典型的な大陸国家を手中にしながら、その領土には目もくれず、利権と交易ばかりを気にして行動をとった。

他の列強諸国は訝しがったが、ユウジルドとフランシアーノは直感的に戦慄した。

帝國のとった行動は紛れもなく海洋国家のそれであり、その海軍力とともに、おそらく民間商船団も並みの列強を凌ぐだろう。
すなわち、両国の海洋覇権に挑戦するだけの力と野心を持った新たなる列強が誕生したわけである。
両国はそう判断し、杞憂かもしれないと思いつつ対策を講じてきたが、悪いことに彼らの判断は正しかった。
帝國の海軍力は予想以上に強大で、嫌になるほど徹底した海洋国家であった。

その海軍力に恐怖を憶えた両国は帝國に抗し得る艦隊の整備に取り掛かることになる。
莫大な国費を投じて建造される艦隊は当然国庫に過大な負担を押し付けたが、国家の存亡という暗い未来がちらつけば否も応もなかった。

制海権を奪われるだけで国家として成り行くかも怪しくなるのだ。

164 名前:シロべえ 投稿日:2006/08/17(木) 01:21:18 [ pgJYoUkE ]
が、帝國にも言い分がある。
彼らは何も伊達や酔狂で海洋国家の真似事をしているわけでなければ、嫌がらせでもない。
信じがたいことに、この新興の列強は海外からの物資がなくなれば国家として立ち枯れ行くという、信じがたい構造を持っているのだ。
そのシーパワーを自らの国力維持と勢力圏下での交易に使うだけならユウジルドはまだ我慢できたが、帝國は国力増大のためにその海洋覇権を伸張しようとしていた。

これまでは怪しげな油や各種金属を支配権で採掘し、本国(位置の推定はできるが正確な場所は帝國人以外は知らない)に大量に運び込み、自活してきた。
帝國勢力圏と他の列強の交易といえば、高級な嗜好品を邦国の商人に販売権を与え、細々と取引させていたぐらいであった。
それが、帝國の海運会社が「早くて安い」をうたい文句にして長距離海運業に乗り込んできたのだ。
それだけではない。最近は外貨獲得のため、儲かりそうであれば他国の利権と衝突することも平気で行うようになっている。
その結果真っ先に困窮するのが同じ土俵に立っているユウジルドとフランシアーノであった。

いずれ行われるであろう大規模な経済的な締め付けを阻止するため帝國船舶を拿捕し、以後交易を規制することにより両国の覚悟を知らしめよう、そのために艦隊を派遣するというわけである。
全てがうまくいけば、帝國は決戦による損害を恐れて交渉のテーブルにつき、三カ国で世界の海を三等分して平和に金儲けにいそしむ。
これが理想的なシナリオだ。

165 名前:シロべえ 投稿日:2006/08/17(木) 01:23:35 [ pgJYoUkE ]
「今は何とか我々もやっていけてるが、10年後は財政が破綻しているだろう。
10年前と比べれば帝國の海上輸送力は桁が違う。
10年後はどうなるか想像もつかない。そのころに帝國に喧嘩を吹っかけても勝ち目はない。
連中、艦隊の増強に本腰を入れ始めたという話だしな。」

「今なら勝てると?」

「そこまで楽観的ではない。
だが今なら連中も我々の艦隊に脅威を覚えてくれるのではないかね?少し自重して我々の都合も考えてくれればいいんだよ。
何も艦隊決戦を行うというわけではない。そのために十年掛けて艦隊を造り上げたんだ。」
「しかしもし連中が戦争を望んだらどうします?」
レンザールの言葉には、他の列強の軍人としてならおかしなものであるが、ユウジルド王国海軍軍人としてなら至極真っ当なものだ。対帝國用に造り上げた艦隊は、帝國との決戦のためでなく、周辺国を苛め抜いてその能力を帝國に見せ付け、帝國に「ユウジルド侮れず」と思わせることによって戦争を抑止するものであるから、決戦など行って磨り潰されれば不経済の極みというほかない。
「なに、フランシアーノも行動を共にするんだ。帝國もめったなことでは戦争を仕掛けないさ。
なにせ連中は圧倒的な軍事力に対する信頼で諸国を束ねているんだ。
二カ国と戦って海軍を傷つけるようなまねは政治的に許されるはずはない。
無論経済的にも大きな負担だろう。」

「連中がよほどの馬鹿かよほどの自信家であれば?」

「そのときは海軍としての本分を果たすのだ。」

彼は知らなかった。
嶋田が国際政治ではなく、自らの支持率を気にする首相であることを。
国民からも軍部からも支持を失いつつあることを。
海軍に過剰なまでの自信を持っていることを。
民主主義体制をとる国家では、戦争での勝利が内閣の支持率に直結することを。

灼熱の、長い長い冬が迫りつつあった。


                    続かない

166 名前:シロべえ 投稿日:2006/08/17(木) 01:32:40 [ pgJYoUkE ]
投下終了
 
くろべえ様無断で失礼しました

167 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/17(木) 02:41:03 [ 8kGssc1U ]
シロべえさん、投下乙です。
嶋田が首相ですか。陸も海もついてこないよなあ。
10年経っていれば海軍はかなり増強されているでしょうけど、油断は禁物。

…吉田茂に条約交渉させれば良いかも。きっとおいしい条件で結んできてくれるはず(笑)。

168 名前:シロべえ 投稿日:2006/08/17(木) 04:03:23 [ pgJYoUkE ]
投下どころか書き込み自体はじめてでしたが大過なく終了しました。
>>167
国内や海軍の状況も二カ国の軍備も(出来れば海戦も)描写しようと思ったんですが
くろべえ氏の構想から逸脱しすぎたら迷惑でしょうから控えておきました
思いっきり世界観にふみこみますから
あくまで超外伝であり独立した作品ではないですから
それにしてもssを書くのがこんなに時間がかかるものとは知りませんでした

これからは諸氏のssのありがたみをかみ締めながら拝見させていただきます

169 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/17(木) 05:15:51 [ ToMVwDhk ]
シロべえ氏、もつ〜
嶋田首相はいいけど、山本五十六や井上成美やら高須四郎やら、
米内やら栗田やらが海軍にいる限り、負けそうな希ガス

両国海軍がどの程度の戦力を整備したのか不明だけど(爆

170 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/17(木) 06:23:53 [ yq9lkYzY ]
長崎県人様、投稿乙です。
100発の誘導弾とはきばりましたねえ。 
しかしワイバーンによる強行着陸、いつかやろうと思っていたのですけどこされちゃいました。(笑)
実際、戦艦辺りを仕留めるにはこれ位しか思いつかないですよね。
対艦誘導弾とかで機銃座を壊滅させ、数名ずつの歩兵を乗せたワイバーン群が強行着陸、ワイバーンという『戦車』の支援の下、戦闘。
トライアングルアロウ失敗後の亡命者からの情報により、艦内の概略が判明した後やろうと考えていたのですよ。


Gir.様、投稿乙です。
いやあ、笑わせて頂きました。
新五五〇〇トン型、哀れ。でも大型海防艦も同じ様に言われているんだろうなあ。
商船構造の癖に商船の代わりも出来ないとか。
船魂……フネの間にも厳しい上下関係があったりして

この作品、くろべえのHPに掲載させて頂いてもよろしいでしょうか?


シロべえ様、投稿乙です。
何か帝國召喚世界の未来を感じさせますねえ。
帝國は現在も大量の船舶を建造していますが、いつかは需要に達するでしょう。
が、大規模投資によって整備され、肥大化した造船産業に仕事を与え続けなければいけない。
しかし大半は比較的新しいフネばかり……
ならば需要を無理矢理にでも増やすしか無いですよねえ。世界中の航路を独占するのは魅力的ですし。

この作品、くろべえのHPに掲載させて頂いてもよろしいでしょうか?

171 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/17(木) 06:24:24 [ yq9lkYzY ]
>>131
131様、有難う御座います。

今回のSSは、蛇足の感があったものの付け加えました。
サーナのナリマサに対する叱責は、この世界における『まともな貴族』の考え方、そのスタンダートです。
まあ個々人や家、地域により差(例えば何を第一とするかとか)がありますので、グローバルスタンダートとは言い切れませんが。

>佐藤大輔病
  orz

>読み切りをどうか・・・・・
余裕があれば……

>>132
>続きを希望します
ではまた近い内に。

>>133
133様、有難う御座います。

>今現在ですら完結した外伝が一つとしてなく、良いところで止まっている現状ですからね。
確かに180話位投稿しているのに完結したものが無い、というのも問題ですねえ。
ちなみに外伝の『少年と帝國』『カナ姫様の細腕繁盛記』 『辺境警備隊隊長よもやま物語』は、ぞれぞれ異なった立場から見た『帝國(或いはこの世界)像』を書いた三部作でもあります。

172 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/17(木) 06:24:55 [ yq9lkYzY ]
>>134
名無し三等兵様、いつも有難う御座います。

>サーナさん、立派です。ナリマサ、頑張れ。
ナリマサ少年もまだ子供(法的には大人だけど)ですからねえ。彼女も苦労が耐えないでしょう。

ちなみに彼女の苦労(血気盛んな子供に対する)は、獣人やダークエルフもしています。
この頃、『放浪時代を知らない子供達』が増え始めてきましたからねえ。僅か数歳の違いでジェネレーションギャップを感じる例すら……

改阿賀野、有難う御座いました。『kaiagano2』は船体延長されていないですよね?
これなら基準6800位でいけるかな? 
早速HPに掲載したいと思うのですが、よろしいでしょうか?

>>135
名無し屯田兵様、いつも有難う御座います。

>ヨハン氏がどんな不幸に見舞われるか期待しております
一時の欲望に負けたためとはいえ、彼にとってはありがた迷惑かもしれないですね。
仕事も気になるでしょうし。

173 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/17(木) 07:28:40 [ 8kGssc1U ]
>『kaiagano2』は船体延長されていないですよね?
はい、船体延長していません。必要性が無かったので。

>早速HPに掲載したいと思うのですが、よろしいでしょうか?
是非お願いします。

174 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/17(木) 08:09:56 [ yq9lkYzY ]
>>173
>>早速HPに掲載したいと思うのですが、よろしいでしょうか?
>是非お願いします。
有難う御座います。早速掲載させていただきますね。



さて、SS投下。

175 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/17(木) 08:10:27 [ yq9lkYzY ]
「帝國召喚」外伝4 『辺境警備隊隊長よもやま物語』番外3-1 戦闘

1、

17台もの竜車が国道を疾走している。

その荷台には、多数の帝國兵。

彼等は独立歩兵第一〇九大隊第二中隊の将兵であった。


歩兵第一〇九大隊第二中隊は、定員136名。

中隊本部(10名)と歩兵小隊3個(各42名)よりなり、歩兵小隊は小隊本部(2名)と小銃分隊3個(各10名)及び擲弾筒分隊(10名)からなる。

(これは野戦師団の歩兵中隊と比べて二回り以上小さい)


この中隊が、分隊ごと(又は中隊/小隊本部ごと)に竜車に分乗していたのだ。

……ちなみに余分な1台は中隊本部が2台使っているためであり、中隊/小隊本部の竜車には多くの補給物資が人員と共に搭載されている。


荷が軽いこともあり、竜車は1日100㎞(定格では満載時で80㎞)の速さで進む。

(竜車の最大搭載量は3000㎏。歩兵1人を60+30㎏として1個分隊で900㎏、これに予備の装備弾薬、竜と人の食料10日分に水3日分を加えても2000㎏がいいところ)

このため、三日目の朝には目的地に到着した。


……やはり、竜車は早い。

176 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/17(木) 08:10:57 [ yq9lkYzY ]

中隊長である黒部中尉は、つくづくそう思う。

徒歩なら1日30〜40㎞、竜車ならば1日80〜100㎞と三倍近い開きがあり、通常ならば丸五日はかかる様な距離を実質二日、それもまるで中隊/小隊段列がついたかの様な補給物資と共に到着したのである。

加えて兵に疲労は殆ど無く、直ぐにも戦闘が可能。

良いことづくしである。

(実際、大陸での活動――特に資源を始めとする物資輸送――において、既に竜は必要不可欠の存在となっている)

が、軍は竜の制式採用には消極的だ。

竜がこの世界特有の生き物であり、マナ無しでは活動できないと推測されていたからである。

再転位を恐れている軍にとって、これは決して無視出来ない要因であろう。

故に竜は、軍において未だ員数外の『装備』に過ぎなかった。


歩兵将校の反発もある。

――歩かない歩兵など歩兵では無い! 竜車に慣れれば兵が弱くなる!

頑固と切って捨てたい所ではあるが、残念ながらこの意見には一理あるだろう。

歩くのを億劫がる様な歩兵など使い物にならない。 ……些か過剰反応とも思えるが。

(意外なことに、当の歩兵科下士官からも多くの否定的な声が上がっている。
古参の下士官からすれば、『兵の教育とは歩かせること』なのだそうだ)

177 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/17(木) 08:11:32 [ yq9lkYzY ]

が、正規師団ならばともかく、地方軍区などは少ない将兵を効率的に運用するため、むしろ積極的に竜車を活用していた。

前出の独立歩兵第一〇九大隊第二中隊を乗せた竜車群も、タブリン軍区が保有している竜車を一時的に貸与されたものである。

(竜車の数には限りがある。貴重な竜車を効率的に運用するため、竜車は軍区輜重隊が一括管理しているのだ)

……ならば何故、そんな貴重なものを17台も貸与したのか?

重量から考えれば、12台でも大丈夫のはずである。


答えは簡単、重量に余裕はあっても、空間には余裕がなかったからである。

10名の兵に予備の物資や食料を乗せたら空間は殆ど残らない。何日も揺られる兵の身になれば、とてもこれ以上は無理だろう。

(荷物と違い、人は動くのだ。とても寿司詰めには出来ない)

加えてスプリングもシートも無い荷台の上、国道とはいえ決して良好とは言えない道路状態では、徒歩よりはマシとはいえ、乗っているだけでも疲労が蓄積していく。

ある程度の空間的な余裕が不可欠だった。

(ちなみに第二中隊の疲労が殆ど見られないのは、上記の様に空間にある程度の余裕を持たせたのに加え、即時行動する羽目になる可能性も考慮し、三日目の乗車時間を二時間足らずに止めたため)

178 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/17(木) 08:12:02 [ yq9lkYzY ]
2、

目的地では、数百の現地軍(旧タブリン軍)が陣を布いている。

帝國は、旧タブリン軍を解散せず、補助兵代わりとして軍区司令部隷下に編入していたのだ。

(矢張り地域警備や武装警察任務には、彼等の存在が不可欠なのである)


竜車は陣の近くで停車、兵が次々に下車する。

下車し隊列を整えていると、現地軍の指揮官が挨拶にやって来た。

彼の話によると、前方に見えるあの小山――ビーノスキー山というらしい――に、200〜300程の匪賊とその家族が身を寄せているらしい。

各地で追い詰められた匪賊が、この山に逃げ込んだそうだ。

(これは此方の事前情報と一致する)

旧タブリン軍は、匪賊を封じ込めるためにここに展開していたのだ。

黒部中尉は、現地軍と共同で匪賊を掃討することを決断、直ちにこの現地軍を指揮下にいれ、作戦を開始することにした。

……幾分、不安を持ちながらも。


各軍区における独立歩兵大隊の任務は、機動打撃である。

が、タブリン軍区においては一時的な措置とはいえ、野戦軍から増強歩兵連隊(1個大隊欠)が回されている。

179 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/17(木) 08:12:33 [ yq9lkYzY ]
である以上、独立歩兵第一〇九大隊の任務は、警備隊と共に旧王都――正確には『六波羅』及び飛行場周辺の――を警備することになる。

とはいえやはり実戦経験も必要であるし、歩兵連隊とて人手が余っている訳では無い。

そのため、訓練を兼ねて交代で1個中隊を歩兵連隊に貸し出すことになっていた。

今回は、それがたまたま第二中隊の番だったのだ。

凶暴な山賊海賊は歩兵連隊が始末する、此方に回す敵は戦意の低い盗賊集団位のものだから、訓練代わりに気楽にやれ。――との『有り難い御言葉』を、黒部中尉は大隊長から頂戴している。

とはいえ、黒部中尉にとっては初の中隊指揮――しかも着任直後で未だ把握していない中隊である上、その練度には疑問符が付く――である。

勢い、慎重にならざるをえない。


黒部中尉は、現地軍に命じてあらためて匪賊の退路を断つと共に、付近の村々に注意を呼びかけた。

そして中隊からは分隊規模の偵察を各小隊から1個、計3個を出して匪賊の動向を探らせる。


――負傷者が出なければ良いが。


内心、それを恐れながらではあるが。

惰弱と言う無かれ。

現在の第二中隊の医療体制からすれば、負傷は死に繋がりかねない危険なものであるのだ。


もし負傷者が出れば、単純な骨折や裂傷程度ならば中隊配属の衛生兵でも対処できる。

……まあ竜車で何日も揺られるのは流石にキツイため、現地で暫く静養する羽目にはなるが。

(このため、中隊は戦闘終了後、最大十日間の駐留が許可されている)

180 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/17(木) 08:13:05 [ yq9lkYzY ]
問題は、毒矢を受けたり動脈に損傷を受けたりするなど、衛生兵の対処能力を超えた事態――複雑骨折や単純骨折でも治療の難しい粉砕骨折等もこれに含まれる――が起きた場合だ。

この場合、衛生兵は応急手当を行うが、それ以上のことはお手上げである。

が、骨折はともかく毒や動脈損傷は、放っておいたら命に関わる問題であり、事態は一分一秒を争う。

(無論、命に別状が無い『高度な骨折』とて、そう何日も放ってはおけない)

が、王都までは竜車でも丸二日以上かかる。軍医がいる一番近い町についても、同様かそれ以上だ。

現在、軽輸送型の小型飛竜を救急輸送として配備し始めてはいるが、それでも最低5〜6時間はかかるだろう。

(ちなみに小型飛竜の最大積載量は150㎏以下、無人・無積載状態で最高速度80〜100㎞/h、航続40〜50㎞/h―300キロ前後。
これでは竜士に患者一人を乗せたらそれで終わりである上、その飛行性能は大きく低下してしまう。
このため、現在ワイバ−ンの導入が検討されてはいるが、時期不明だ)

また数そのものも少なく、黒部中尉は飛竜の事前配備を要請したものの、却下されている。

……これでは、積極的な戦闘を躊躇するのも仕方が無い。

援軍の歩兵連隊とは訳が違う――自前で何人も軍医を抱え込んでいる――のである。

(まあ彼等には彼等の言い分があるだろう。彼等とて決して軍医が余っている訳ではないのだ)


黒部中尉は、偵察隊の安否を気遣いながらも、現地の住人達から目標を始めとするこの地域の情報(地理等)を集め、ビーノスキー山周辺の地理特性の把握に努めた。

181 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/17(木) 08:15:50 [ yq9lkYzY ]
SS投下終了。

実際、当時の帝國軍衛生兵のレベルってどの程度だろう?
帝國軍の野戦医療体制も気になるなあ。歴史群像とかでやってくれないかなあ。
(まあ師団野戦病院2個のうち、レントゲン装備がわずか第四の1個のみだから余り高くなさそうだけど)

182 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/17(木) 09:21:36 [ vmEEgS4w ]
>>150さん
ありがとうございますm(__)m
ただ、ヴァイスローゼン編はまだまだかかります、扶桑らの海戦はもう少しなのですが・・・

>>151さん
くろべえさん設定の対艦魔法の槍とそう違いは無いとしています。だってあくまで吉良少将の妄想ですし(こっちの世界機銃科、ないので)
ただ、ワイバーンから放たれるのが無誘導の場合、命中率、魔硝石のコストその他、あまりにリスクが高すぎますし、誘導こそがF世界の利点、その機能を取り外すことはないでしょう。

>>ヨークタウンさん
(*´Д`*)しかしやめられない、とまらないかっぱえびs(Pam!

大本営発表さん
いやいや、逆に私は淡々と進められなくて、私は私で大本営発表さんが羨ましいですよ?

名無し三等兵さん
この戦訓で飽和攻撃対応の為の戦闘指揮所の増設、のちの水鏡機構(敵の動きが水面に映る夜の星のようであるので命名、まぁイージスシステムの事)開発に繋がったり繋がらなかったり?(ぁ)

183 名前:シロべえ 投稿日:2006/08/17(木) 09:22:25 [ pgJYoUkE ]
くろべえ氏投下乙
掲載はもちろんおkです。土台がくろべえ氏の作品ですから。名前までぱくってます

>未来を感じさせますねえ
えーと、しばらく時間がたたないと連合艦隊は燃料の心配が付き纏うし
軍備の増強もままなりませんから。(下手すりゃ代艦なしで大型艦の退役も)
列強2カ国を相手に戦いを挑むなんて国内基盤が整ってからでないと
当初の構想では2カ国あればの戦備の違いも出てくるかなと思ってました。
>>169
えー、個人的には嶋田は好みではありません。
しかし対米戦が起こらなければ彼が首相になることもある?でしょう。
まあ二カ国の戦備はファンタジー世界としてはなかなかのものです(脳内設定)
でもF世界の、それも列強の軍備となればくろべえ氏に無断で書くわけにもいきませんから

・甲案 両国の軍備について書く
・乙案 昭和30年ごろの帝國艦隊を書く
・丙案 艦隊決戦を書く
のいずれか、もしくは全てを書くには道義的にはくろべえ氏の許可が必要なわけで
ということでくろべえ氏いかがでしょうか?
また、需要がなければかけませんからそこらへんも皆さん方に諮りたいのですがどうでしょう?

184 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/17(木) 09:37:26 [ fIFx11L2 ]
>>Girさん投下乙です
あのじゃけ〜からとするとお◯ェラ豚は・・・まぁどっちにしろ進水式の時にぶっかk(Zum


>>シロべえさん投下お疲れ様〜
で、続きはあるんでしょうなぁ?(*´▽`)


>>くろべえさん投下乙であります
くろべえさんはすでに150話投下・・・ま、負けませんからねっ(何


海軍病院は足りない場合温泉旅館とか接収して利用したとありました、そんな類いが大陸にあればよいのですが・・・


>>対艦魔法の槍のコスト
列強六ヶ国も集まれば余裕がでます、一国あたり量産型16発ですしね、第三次攻撃隊はまた元の爆弾ですし

185 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/17(木) 10:00:35 [ ToMVwDhk ]
くろべえ氏、おつ−

えーと話の本筋からするとどうでもいいので、流し読みしてもらえると嬉しい(謎
気に障ったらスマソ
まあ、くろべえ世界の軍の改革によって生まれたと思うとしまつ(さらに謎
という事で、どうでもいいダウト
中隊本部、小隊本部なんてなかったり(謎
本部は大隊以上から(ぇ

186 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/17(木) 18:13:19 [ CRM.K4Rw ]
しかし十年でどうやったら帆船海軍がWWII海軍に対抗できるようになるんだろうか……きっちり技術情報も秘匿しているだろうに。
使われた魔法がどんなものだかとても気になるところですな。

187 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/17(木) 18:44:33 [ ZkaOQvV6 ]
>>186
勝手に対抗できると思い込んでいるだけだったりして

188 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/17(木) 19:08:22 [ xEce2yXA ]
一時的に対抗できたとしても、日本VSアメリカみたいな事になるだけだろうなぁ。

189 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/17(木) 19:38:26 [ 8kGssc1U ]
くろべえさん、投下乙です。
竜車活躍してますねえ。トラックが普及するまでは竜車がメインの輸送手段ですね。

掲載ありがとうございます。
第2弾として、新5500トン軽巡を描き始めたのですが、またいろいろ楽しく悩みながら描いています。
とりあえず今、検討しているのは、艦橋と煙突です。
さすがに旧5500トン軽巡より艦橋は大きくしなければなりません。とりあえず、阿賀野型の艦橋を載せています。
煙突は、機関と直結する問題で、基準5000トンの艦を30ノット、6万馬力〜7万5千馬力程度の機関を積んでいる事になります。
巡洋艦で言えば夕張以上旧5500トン軽巡以下。ぴったりなのが金剛改装前・扶桑改装後。
また、ブロック工法なので、結合煙突が良いのか、それとも煙突2本か。
まあ、楽しんで描いていきます。

190 名前:Gir. ◆pi/XgnFjWE 投稿日:2006/08/17(木) 20:19:20 [ qfTNlMGw ]
> くろべえ殿
 掲載OKです。どうぞ、よろしくお願いします。
# しかし、ちょっと見直しただけで直したいところ2,3あるから、ためらわれる部分はある。

> 長崎県人殿
 いやー、艦隊防空戦白熱していますねー。
 私は飛行船ヒンデンブルク号の爆薬塗料ほどではないにしても、可燃塗料塗りたくっている日本艦艇艦上にいつ火炎地獄が顕現するか、ドキドキしています。

191 名前:名無し屯田兵@F世界 投稿日:2006/08/17(木) 20:40:34 [ 0Hl.o3rQ ]
くろべえ様、投下乙です。
皆さんも言及されていますが、竜車は大したものですね。
長期的な視点に立たないならば幹線だけでも鉄道竜車としたいところですw
……どこかの列強が石畳を彫ったレールとか、帝國の見様見真似で手を付けてはいそうでもありますが>鉄道竜車
そして輜重専用としても、他の改革と同じに自らの拠って立つ足元である社会構造を掘り崩すかも。

>>155大本営発表様
5式戦→橘花が主力となると、
5式戦を基本に大型化とハ-214ルで空戦能力に加えて急降下爆撃(800kg爆弾)または雷撃(900kg魚雷)を
可能としたキ-119襲撃機が、ハイの橘花に対するローとして採用されるやも知れませんね。
何といっても心臓の発動機が4式重爆のハ-104系で、誉の系統ではないのが有難いですw

両エンジンを搭載した機体の陸海共同作戦でも、
銀河→連日徹夜しても稼動は8機中7機。しかもさらに1機が発動機不調で引き返す。
飛龍→連日酒宴しても8機中8機が稼動。
なんて例があったそうですし。

192 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/17(木) 21:52:43 [ munXrmbY ]
しかしF世界のか海軍(水軍)の未来はかなり悲惨だと思う。
木造船では機関砲なんかでバラバラにされ、必死こいてある程度の防弾性のある鉄鋼船を開発しても、待ってるのは出番を待ち続けた魚雷とか、久しぶりに陸地以外を撃つ艦の主砲。
ワイバーンがある程度通用するもんだから、なおさら悲惨な感じだなぁ・・・・・・

193 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/17(木) 22:07:41 [ ToMVwDhk ]
屯田兵氏、キ−119でつか。
良さそうな気が。

第二部、ただ今準備中。
第二部は第一部とは違って、一人の人間の視点を通して、変貌しつつある
帝国領フランベリアを追体験していただければ、幸いでつ。

11時から投下開始で。

194 名前:タイフ―ン ◆sePHxJrzaM 投稿日:2006/08/17(木) 23:00:07 [ eImMvDlU ]
皆さん投下お疲れ様です。

足元にも及ばない奴ですがよろしくお願いします・・・(汗

195 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/17(木) 23:28:55 [ ZCnPwPVg ]
昭和30年頃だと、ワイバーンロード主力の航空兵力でさえ、帝國に対抗不能になってるかもしれませんね。

196 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/17(木) 23:29:47 [ VIqguwfo ]
>>175-181
グッジョブです。
戦闘のためにいくつもの手順を踏んで準備を積み重ねていく軍隊の描写が素晴らしいですね。
兵士の疲労を抑えるため最終日の移動時間を短くするなど感心させられました。
竜車の生活空間確保など本当に細かいところまで描写されていて、もしも自分がそこにいたらと想像が広がります。
読者に想像させる、考えさせるきっかけ作りが上手いので、二次創作したくなる人が多いのでしょうね。

状況と戦力配置の描写からこれから何が起こるか想像しつつ、続きから目を離せません。
作品、楽しみにしております。

197 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/17(木) 23:33:44 [ ToMVwDhk ]
こそーり、投下。

帝国異史 第二部
01

 初代兵部相たる東条予備役大将が着任したのは、政治的思惑
からだった。
要は軍部−特に陸軍を抑える事の出来る人物が、必要だからである。
そして、東久邇宮首相たっての要請により、着任した。

 東条兵部相は、まず海陸軍の軍政を兵部省が掌握するべく、海陸軍
に対する予算配分権を掌握した。
軍部の生殺与奪を握ったのだ。
続いて、陸海軍が有する資財を兵部省が把握するべく、差し押さえ
た上で改めて分配した。

198 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/17(木) 23:35:50 [ ToMVwDhk ]
 当然阿南陸相との腹芸の末にである。
またあらゆる戦備及び装備開発は、兵部省の事前の了解と審査を請ける事
を義務付け、戦備条令として布告したのだった。

 当然軍部は反発したが東条兵部相の政治力が上であり、統帥大権、編制
大権を盾に、さらには御上の御言葉を引き出して、押し切ったのだった。

 兵部省の指導のもと、あらゆる装備が一新されつつある中、第二次沖縄
戦が起きたのだった。

199 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/17(木) 23:38:00 [ ToMVwDhk ]
 沖縄奪還戦に置いて、陸軍はようやく量産体制が整い始めた五式戦車を
始めとする陸戦装備、技術的問題を解決し、新たに戦闘攻撃機としてその
姿を現した噴進式の橘花、九九式小銃の大量配備でもって、臨んだのだった。

02

 フランベリアが帝国領となってから、この大地の風景は、急激に変化し
ていた。
多くの民に取って、良い悪いは別として精一杯だった。
 その代表が鉄道だった。
帝国に反感を持っていた貴族ですら、その意志を喪失させるに相応しいものだ。

200 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/17(木) 23:39:40 [ ToMVwDhk ]
 何せ見た事のない鉄の箱が物凄い速さで、通り過ぎるのだから。

「あ〜あ、もう旅銀ないや。・・・お前はいいね、そこら辺で食べられて」
 そうぼやくその声はまだ若く、フランベリアと その周辺地域で見られる
青みがかった髪を、うなじの辺りで束ねている。
 服装は旧連合帝国軍の士官のそれだった。
つまり、必然的に近衛軍の士官を意味する。

 この世界の軍隊というのは、王国軍であれ、連合帝国軍であれ、常備軍
たる近衛軍と戦役義務のある領主勢が軍備の中心だ。

201 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/17(木) 23:45:36 [ ToMVwDhk ]
 統一された装備の近衛軍に対し、領主勢は数も 装備もまちまちである。
 ちなみに騎士団なる存在は、この世界にはない。
実に簡単な事だ。
騎士階級に連合されてしまっては、王家や政府にいつ何時寝首をかかれる
か判ったものではないからだった。

03

 その人間の服の襟の色は、青色だった。
つまり竜騎兵である事を意味していた。
それだけでその人物が、エリートである事を、意味する。
 そんな人物がなんで放浪しているかと言うと、これまた単純明快だった。
敗残兵。

202 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/17(木) 23:54:01 [ ToMVwDhk ]
 その一言で全てを物語れる。

 もっとも、連合帝国竜騎兵隊にも、言い分はある。
なにせ、開戦時、敵の作戦に上層部が、誤判断さえしなければ、戦力の逐
次投入をしなくても済んだのだから。

 結果として連合帝国軍竜騎兵隊は、最後まで戦力回復がままならないまま、
皇太子軍による日本帝国との戦いによって、消滅した。

 彼女のような敗残兵が敗れたと言えど、敵軍の服を来ていて、それでも
堂々と街中を歩けるのは、帝国陸軍が寛大、と言うより敗残兵狩りが面倒
だったからで、むしろそのような行為を固く禁じたからだった。

203 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/17(木) 23:57:36 [ ToMVwDhk ]
今晩、ここまで。

いやあ、最近の携帯便利でいいや(w

204 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/18(金) 09:57:26 [ yq9lkYzY ]
大本営発表様、投稿乙です。

成る程、第2部は元エリートの敗残兵が主役ですか。楽しみです。

>五式戦車
九九式九センチ高射砲と三十七ミリ砲積んだアレですね。いいなあ……


>>183
シロべえ様、有難う御座います。

>掲載はもちろんおkです。土台がくろべえ氏の作品ですから。名前までぱくってます
有難う御座います。早速掲載させていただきますね。

>えーと、しばらく時間がたたないと連合艦隊は燃料の心配が付き纏うし
>軍備の増強もままなりませんから。(下手すりゃ代艦なしで大型艦の退役も)
>列強2カ国を相手に戦いを挑むなんて国内基盤が整ってからでないと
>当初の構想では2カ国あればの戦備の違いも出てくるかなと思ってました。

まあくろべえ世界の帝國には、とても大規模戦闘を長期間行えるような燃料、人員、輸送船舶の余裕はありませんからねえ。

陸軍は大陸にどっぷりと足を突っ込んでいるので兵力の余裕は僅かだし、その余裕とて支配地域のことを考えればそうそう切れないカードです。
仮に切っても、最大で2個師団程度の戦力を短期的に展開する程度でしょう。正直、現在の兵站維持で手一杯です。

生命線たる資源地帯の防衛のためには、当分は現在規模の兵力が必要でしょう。
『豆粥』の話にもあった様に十数年もすれば、統治も安定し、重要度の低い地域からは兵を引けると思いますが……
(それまでは周辺地域の安定上、不安定地域には兵を置かざるをえない。第一、近くに帝國軍がいるからこそ周辺の豪族も帝國に従う)
それに大陸での開発・統治活動に携わっている数十万の帝國人のことを考えれば、陸軍が兵を引く訳にはいきませんからねえ。

205 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/18(金) 09:57:56 [ yq9lkYzY ]
海軍は海軍で、通常の警備・訓練活動の他は第三艦隊の短期全力出撃が精一杯、第一/第二艦隊は動けず…… といった状態です。
普段はせいぜい1個空母群(正規空母2、軽空母1、重巡2、軽巡1、防空駆逐艦2〜4、駆逐艦8、その他支援艦艇)を緊急展開用に待機させるのが限度でしょうね。

帝國としては最低でも5年、出来れば10年程はこのまま小競り合い程度でことを収めていきたいところでしょう。その頃には大分楽になっている筈ですから。

そして15年もすれば……

10ヶ年計画の大型艦も全艦就役します。陸海軍の航空戦力も、あらゆる面で列強のそれを突き放していることでしょう。焦ることは無いのです。時は帝國の味方なのですから。

(そうなれば、第一艦隊による威嚇航海も良いかもしれませんね。
大和/改大和型6〜8隻、空母3隻、巡洋艦2隻、駆逐艦32〜36隻その他支援艦隊による世界一周とか)


……帝國の計算通りにいけば、の話ですけどね。


>まあ二カ国の戦備はファンタジー世界としてはなかなかのものです(脳内設定)
>でもF世界の、それも列強の軍備となればくろべえ氏に無断で書くわけにもいきませんから
>・甲案 両国の軍備について書く
>・乙案 昭和30年ごろの帝國艦隊を書く
>・丙案 艦隊決戦を書く
>のいずれか、もしくは全てを書くには道義的にはくろべえ氏の許可が必要なわけで
>ということでくろべえ氏いかがでしょうか?

その辺は自由にして頂いて結構です。作者様ごとの解釈もあるでしょうし、その辺を縛って他の作者様のアイデアを束縛したくないですから。
だから別に設定に違いがあっても気にしませんよ?
(上の状況も、あくまでくろべえの考え方なので、無視してかまいません)

206 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/18(金) 09:58:28 [ yq9lkYzY ]
>>184
>海軍病院は足りない場合温泉旅館とか接収して利用したとありました、そんな類いが大陸にあればよいのですが・・・
医者の数も足りませんからねえ。大陸における帝國医の価値、相当高いだろうなあ。

>>185
大本営発表様、有難う御座います。

>中隊本部、小隊本部なんてなかったり(謎
すいません。指揮班でしたね。

>>189
名無し三等兵様、有難う御座います。

>竜車活躍してますねえ。トラックが普及するまでは竜車がメインの輸送手段ですね。
ですね。便利すぎて、トラックが普及してもそうそう消えないかも……

>掲載ありがとうございます。
いえいえ。
ちなみに新型機銃とは、九六式25ミリ機銃の銃身を500ミリ近く延長し、初速を上げたものです。この結果弾道が安定し有効射程/射高が向上しました。(無論命中率も)
ついでに三連装機銃座も新型にしてあります。この銃座は旋回/俯角速度が大きく向上したのに加え、その操作を一人で出来るようになったのが大きな特徴です。
その反面、総重量が重量が従来型の5割増(機銃そのものも重くなった)なり、価格があがりましたけどね。
また機銃そのものも重くなったため、単装の場合かえって取り扱い難くなっています。

この新型機銃は、従来の艦には空母及び『大和』『武蔵』のみに配備(換装)されます。
また新型艦艇については、とりあえず改大和型戦艦6隻、新型高速戦艦6隻、改大鳳型空母1隻、改阿賀野型巡洋艦3隻にのみ配備されます。よって、新5500トン型巡洋艦や改秋月型/松型駆逐艦、大型/新型海防艦には当分配備する予定はありません。
彼等には、上で換装されて余った旧25ミリ機銃を配備します。(廃艦になる金剛型とかの分もありますしね)

*新型機銃は昭和20年以降に登場する予定です。まあ生産が軌道に乗るのは更に後でしょうが。

207 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/18(金) 09:59:00 [ yq9lkYzY ]
>>190
>掲載OKです。どうぞ、よろしくお願いします。
有難う御座います。早速掲載させて頂きますね。

># しかし、ちょっと見直しただけで直したいところ2,3あるから、ためらわれる部分はある。
無理言って御免なさい。何かありましたら、直ぐに訂正しますね。

>>191
名無し屯田兵様、有難う御座います。

>竜車は大したものですね。
こんな便利な生き物がいては、そりゃあ機械文明発達しませんよねえ。
元の世界における中近世の軍よりも兵站の負担が軽くなっていますし。

>>196
196様、有難う御座います。

>状況と戦力配置の描写からこれから何が起こるか想像しつつ、続きから目を離せません。
有難う御座います。無駄に説明が細かいのが唯一の売りです。(笑)
いろいろ想像している内に、どんどんそういうとこに考えがいっちゃうんですよね。
通貨が出てきたら『それがどの位の価値か?』とか、騎士が出てきたら『その騎士の社会的な地位は?収入は?』とか。(苦笑)

208 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/18(金) 17:16:10 [ ToMVwDhk ]
くろべえ氏、どうも。

、五式戦車は、ボ式75mm高射砲のコピーと37mm戦車砲だけではないでつよ。
半自動装填装置も装備されてまつ(w

帝国は敗残兵狩りに、経済的価値を見出ださなかっただけですから。。。
そんな事にうつつを抜かすような精神的状態ではないですし。

209 名前:名無し屯田兵@F世界 投稿日:2006/08/18(金) 17:51:13 [ Zjw4BuhY ]
大本営発表様、投下とタイトル命名乙です。
5式中戦車はさらに加えて砲塔バスケットも(ry
そこいらで食糧を調達できる主人公の相方の「お前」はやっぱり竜ですかね?

>何せ見た事のない鉄の箱が物凄い速さで、通り過ぎるのだから。
大分と木の箱(木造車)も混じってそうですw

210 名前:シロべえ 投稿日:2006/08/18(金) 19:54:12 [ k/hCqbfE ]
>>184
>で、続きはあるんでしょうなぁ?(*´▽`)
くろべえ氏の許可が下りたので書くことになりました
>>186
>>187
そのために10年与えました。
>>188
うーん、両国とも早期講和を望んでます。一時的であれ対抗できれば
……あれ?どこかで聞いた展開
>>204 >>205
ありがとうございます、存分に暴走します

でSS投下

211 名前:シロべえ 投稿日:2006/08/18(金) 19:54:50 [ k/hCqbfE ]
ユフ戦記2 
戦争計画 player A 前編

補足事項 フランシアーノの長さの単位
1リーグ=1,000フィフィク=1,000,000フィング
1フィフィクは約3メートル
また、1ボワーズ=1フィフィク立方の水の重量=約27トン

新皇暦321年(昭和31年) 夏
フランシアーノ皇国宰相府内

「帝國の艦隊戦力は着実に増強されつつあります。おそらく五年もすればユウジルドと組んでも対抗不可能となります。」

25平方フィフィク(約225㎡)程度の薄暗い部屋に乾いた声が響き渡ると、その場にいた全員が呻き声をくぐもらせた。

ある程度予想できていたことであるが、仮想敵の戦力分析に責任を持つ水軍諜報部部長のシグリド准提督の言葉であると、それなりの重みを持つ。誰もが冷徹な現実に向かい合わされると、場の空気は沈みがちとなる。

その空気を察知して宰相のアテゴラスは問いを発する。
「アウステル殿、貴官の意見は如何?」

212 名前:シロべえ 投稿日:2006/08/18(金) 19:55:57 [ k/hCqbfE ]
発言を求められたフランシアーノ皇国水軍参謀本部長は冷たさすら感じさせる双眸を以って室内を見渡すと、おもむろに口を開いた。
「准提督の意見はかなり的確に現状を突いています。まずはお手元の黒い冊子を御覧頂きたい。」

室内に海軍高等養成学校講義室を思わせるの緊迫した空気が流れる。思わず背筋を伸ばすものもいる。
皇国の上層部は文武問わず官僚出身であるから、出生の貴賎を問わず高等教育経験者となる。
建国当初の小さな国家ならいざ知らず、広大な海域と点在する植民地や多くの民族、膨大な水軍艦艇、そして目端の利く商人を纏めるには貴族階層の尊大な姿勢を以ってするのは限りなく不可能に近いことをこの300年の経験が教えてくれる。
そして高等教育を受けたものは、教練担当者の冷徹な迫力に無意識のうちに畏怖を憶える。

アウステルは参謀本部に返り咲く前は水軍飛竜学校の校長をしていたから、誰もが苦しい高等教育時代を思い出すのも無理からぬことであった。

各々がその迫力から逃れるように手元の冊子に目を落とす。
慣例からいえば水軍諜報部の後は地軍諜報部が発言することになっていたが、全体的な戦力比較で場の空気を変える様な発言は望めない。恐怖心に駆られて会議を進めても実りは少ない。細心であることと臆病であることは違うのだ。
アウステルの迫力により帝國に対する恐怖心が幾分緩和されたことは確かだから、それを計算して問いを発したアテゴラスはなかなかの心遣い上手といってよい。まあその程度の呼吸が読めなくては列強の宰相とはなれないから当然といってよいが。

213 名前:シロべえ 投稿日:2006/08/18(金) 19:56:35 [ k/hCqbfE ]
部外秘の印を押された黒い冊子には収集した帝國の軍事情報が記載されている。
帝國はどのような思惑があってか実戦部隊の艦艇情報を公開している(建艦計画に関しては別で、徹底した秘密主義を採っている)。まあ一般的な見解では現状の海軍力を公開することで相手を威圧することが目的だとささやかれている。事実はまさしくその通りであり、なにも目新しい発想ではない。清国海軍にかつてされたことをそのまま列強に行っているだけである。
そのためユウジルドでも似たような情報を握っている。部外秘なのは皇国の情報収集能力ではなく分析能力だ。平たくいってしまえば、皇国が帝國海軍にどのような評価を与えているかが秘密の対象となっている。

それではいっそ建艦計画と国家予算も公開してはいかがかと部内では議論があったのは確かだ。が、詳細な国力や技術段階、今後の見通しまで与えれば、早まって戦争を仕掛けてくる可能性があるといわれたため、近未来の帝國軍の予測はフランシアーノ独自のものだ。

214 名前:シロべえ 投稿日:2006/08/18(金) 20:00:04 [ k/hCqbfE ]
「まず、帝國海軍の艦艇を説明します。第16頁を御覧ください。」
アウステルに従い冊子をめくると、帝國海軍の艦艇一覧が艦種別に記載されている。

水軍実戦部隊の代表として会議に参加している第4艦隊司令官レビンスキー提督はまず水上砲戦の王者、センカンの一覧に目を向けた。
なにせ彼の率いる第4艦隊は旧態依然とした戦列艦を主力としているのだ。気にならないはずはない。
見るところ帝國海軍は依然として良好な状態で艦隊を維持しているようだ。何を以って良好とするかは人によって異なるが、少なくとも比較的新型の艦艇を揃えているのだ。

215 名前:シロべえ 投稿日:2006/08/18(金) 20:00:38 [ k/hCqbfE ]
あれほどクウボの直衛として恐れられたコンゴウ級の各艦は現役を退き予備艦扱いになっている。
まあ解体されないのは正規のクウボ部隊に随伴できる速力を惜しんでだろう。 対地艦砲射撃の代名詞とされたフソウとその准姉妹艦の計四隻は解体されて名簿から姿を消している。

では帝國海軍が水上砲戦部隊に見切りをつけたかといえばそうではない。帝國の基礎工業力が確固たる物となり財政的にも余裕が出てきた(とされる)ころに、新型重巡の能力不足を懸念してコンゴウ級の後釜が登場した。
新皇暦324年(昭和24年)に4隻全艦が就役したアサマ級。
帝國海軍は巡洋戦艦といっているが我々から見れば超高速戦艦だ。
なにせ皇国水軍には砲力でも防御力でもアサマ級に対抗できる艦はない。
時速約21リーグ(33ノット)の快速自慢が備えるのは50口径10フィング砲。それを三連装砲塔に収め、前部に2基後部に1基備えている。
コンゴウ級より口径は劣るものの、進歩した冶金技術と砲技術による単発あたりの貫徹力の向上に加え半自動装填装置を採用し発射レートを高めた結果、少なくとも中砲戦距離ではコンゴウ級やフソウ級を圧倒するといわれた。

216 名前:シロべえ 投稿日:2006/08/18(金) 20:01:15 [ k/hCqbfE ]
レビンスキーには知る由もないが、就役当時、高速と新式の対空システムから発揮される強大な防空力から現場(特に機動部隊指揮官)から絶賛されたが軍上層部の砲術屋たちからは不満タラタラであった。
(その延長線上に組閣したばかりの嶋田首相がいたのだが)

彼らは、少なくともナガト級と同等の火力と防御力(アサマ級は若干防御力を犠牲にしている)がないと元の世界に戻った場合使い物にならないと主張した。
(まあ元の世界云々はともかく、アサマ級の砲力と射程は対地砲撃をするには満点といえなかった)さらに、機動部隊に随伴できる速力も欲しいと言い出したことにより必然的に大型化したが、軍拡を推し進める内閣の援護射撃を受けて新皇暦329年には4隻の新型高速戦艦が揃った。

217 名前:シロべえ 投稿日:2006/08/18(金) 20:02:04 [ k/hCqbfE ]
 その成果がレビンスキーの読んでいる冊子に記載されている。

タカチホ級、50口径13.7フィング(16インチ)砲を4連装二基、連装1基装備。
防御力は、主要部分は自艦の砲撃に耐えられる直接防御を採用し、艦全体はフランシアーノの航空攻撃とユウジルドの魔法の槍に対する間接防御を採用している。
ナガト級を優に上回るといわれる攻防力をもつ艦体に命を吹き込む機関はドワーフから冶金技術を移植したことで高圧缶の小型化に成功しオーバ−20リーグで動き回る、基準排水量1700ボワーズの正真正銘の怪物。

 彼はその実物を目の当たりにしたことがある。それどころか帝國海軍から乗艦の招待に与ったのだ。
現皇主陛下の戴杖式にあわせて、帝國海軍が友好の使者と称して皇都にタカチホ級全艦を派遣してきた。そのとき、彼は帝國があれほど多くの小型(それでも彼の基準からすれば巨艦といえるが)クウボを持ちながらセンカンを建造するのかを、直感的に理解した。センカンはその単純な機能に、男性的な力強さと美しさを体現する外観を兼ね備え、過去の実績もある。
そのわかりやすさがあれば海洋戦力の象徴として衆民の圧倒的な支持を得ていると聞かされても得心が行った。

218 名前:シロべえ 投稿日:2006/08/18(金) 20:02:51 [ k/hCqbfE ]
それにあれだけの金満国家だ。
クウボの方が柔軟な運用が出来ても無駄遣いをする余裕があるのだろう。
しかしあの時タカチホ級に乗艦したときは度肝を抜かれたが、冷静になって考えれば帝国の外洋戦力の主体は第一航空艦隊だから、戦争になっても随伴してくるのはアサマ級だ。タカチホ級はヤマト級とともに本国で鎮座ましますことだろう。
あんな怪物と撃ち合うことのなればどう考えても将来設計をふいにしてしまう。

 まあアサマ級であれば、われらが航空部隊で深手を負わせるのも決して不可能ではない。その後動きの取れなくなったアサマ級の捕獲ぐらいなら手伝ってもよいが、元気なうちから会敵するのには気が引ける。ただでさえ強力な敵艦に、航空部隊の整備に金と資材を取られ一向に増強されない水上砲戦部隊。最近ではユウジルドとのいさかいが無くなり、従来型の軍備を削って維持費を浮かしてまで決戦用の艦隊を整備しているのだ。面倒なことは新鋭艦ぞろいの彼らにやってもらいたいものだ。

アウステルが説明している内容は水軍提督である彼にとって既知のことであったから聞き流しつつ、問題のクウボ一覧へと目を移した。

219 名前:シロべえ 投稿日:2006/08/18(金) 20:04:35 [ k/hCqbfE ]
投下終了

うわーこの話し長くなりそうだなあ。

220 名前:シロべえ 投稿日:2006/08/18(金) 20:13:57 [ k/hCqbfE ]
訂正
>>211
新皇暦321年ではなく331年

……なんかごちゃごちゃして見難いなあ。
文章力以前の問題だぜ
改行増やしたほうがいいのかな?

221 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/18(金) 20:22:15 [ ToMVwDhk ]
シロべえ氏、もつ〜
しびれるなあ、この強大な敵に立ち向かわなければいけない状況。

男には負けると判っていても(ry
byハー〇ック

222 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/18(金) 23:52:18 [ 8kGssc1U ]
シロべえさん、投下乙です。
>それにあれだけの金満国家だ。
>クウボの方が柔軟な運用が出来ても無駄遣いをする余裕があるのだろう。
金満な帝國なんて、大日本帝國じゃない!と思ってしまう自分がいます(笑)。

223 名前:シロべえ 投稿日:2006/08/19(土) 00:07:06 [ k/hCqbfE ]
>>221
望んで煉獄に赴こうとする輩ですから、勇戦が期待できる?
>>222
金満というのは、まあ私の自虐的なギャグのようなものです。
軍事予算が余ることはありえませんから、
必要度と政治的な綱引きの両方を勘案して優先順位が決められました
まあ、この帝國は贅沢ではありますがまったくの無駄ではありません。
出番はあります。
まあ両国も贅沢といえば贅沢ですけどね。
帝國に通用するかどうかは別の話でありますが

224 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/19(土) 08:53:05 [ yq9lkYzY ]
シロべえ様、投稿乙です。

状況は深刻ですねえ。

しかし帝國が何を考えているのかも気になりますね。
彼等が対帝國用の決戦型海軍を建設していること位は承知している筈ですから、それに関して如何考えているのかなあ?

融和を図るつもりならば紳士協定を結んでいるだろうし、そうでなくとも何らかの外交的なサインを送っている筈。

……でも、帝國だしな。(笑)

所詮大した事はできないと高をくくっているのか、
実は戦争を待ち望んでいるのか、
国内の政治的混乱でそれどころではないのか、
或いは何も考えていないのか……

何れにせよ今後が楽しみです。
(無粋な書き込み御免なさい)



名無しの三等兵様、新5500トン型の図をたくさん有難う御座いました。

やはり艦首の形は、クリッパー型よりもバルバス・バウが良いですね。
煙突も2本より1本の方が良いでしょう。021型が一番良いと思います。
欲をいえば、37ミリ四連装はドイツの20ミリ四連装の様な上下に連装を重ねたタイプではなく、米軍の40ミリ四連装の様なタイプが良いですが。(ごめんなさい)

225 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/19(土) 09:22:56 [ yq9lkYzY ]
021型が一番良いと思います。
御免なさい011型でした。

226 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/19(土) 10:27:02 [ yq9lkYzY ]
名無しの三等兵様、こんな感じどうでしょう?

改マル五/改マル六計画艦 巡洋艦編

改阿賀野型巡洋艦
http://www.geocities.jp/wrb429kmf065/itadakimono/05-sanntouhei06.htm

新5500トン型巡洋艦
http://www.geocities.jp/wrb429kmf065/itadakimono/05-sanntouhei07.htm

227 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/19(土) 10:43:14 [ 8kGssc1U ]
くろべえさん、見てみましたが良い感じですねえ。

あと、機銃修正版(+おまけ改装版)も送っておきました。

228 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/19(土) 11:32:04 [ yq9lkYzY ]
有難う御座います。早速掲載させて頂きました。

229 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/19(土) 11:45:48 [ 5qcHWy0I ]
>>226 等々・・・
うーん、フリー素材で「自由にご利用ください♪ 」と、言っていたとしても、
それを少々の変更で自分の作品として発表するのはいかがな物でしょう?
少々厳しいことを言っているかもしれませんが、私はどうかと思います。
ご両人の冷静な判断を期待します。

230 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/19(土) 12:18:02 [ 8kGssc1U ]
>>229
素材の入手先を記載したほうが良いのかな。
入手先は「いやぽぽ」さんの所です。

231 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/19(土) 12:38:41 [ yq9lkYzY ]
>>229
成る程、確かに229様の仰る通りです。
229様、御不快な思いをさせてしまって申し訳ありませんでした。あと御忠告感謝。
名無し三等兵にも申し訳ないことをしてしまいました。反省。

>>229>>230の御意見を考え合わせ、

『*この作品は「いやぽぽ」様から入手した素材を使用しています』

との一文を至急加えることに致します。
(名無し三等兵様、よろしいでしょうか?)

他の皆様にも御迷惑をおかけしました。
今回の件は、くろべえが一人突っ走ってしまったのが原因であり、全ての責任はくろべえにあると考えます。
以後気をつけますので、どうか御容赦のほどを。

232 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/19(土) 13:09:12 [ 8kGssc1U ]
こちらこそくろべえさんに迷惑をかけてしまい、すみません。
一文加える事には全く異議はなく、こちらからもお願いします。

233 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/19(土) 13:13:05 [ 6/94.nTY ]
くろべえさん こんにちは
すいません、荒しではありませんが一部のドワーフが帝國に臣従したことに
対する反発と帝國に対する情報不足問題を考えたら
・・・なんか、ツボにはまってしまいましたので
     ↓
http://www.hobbyjapan.co.jp/queen/character/char_009.php

ところで、美人や美男のダークエルフはいるようですが、同様の獣人とか
ドワーフは居るのですか?
前の二者は、将来銀幕のスタアとか、宝塚音楽学校入学とかがありそうですなぁ・・・

234 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/19(土) 13:25:45 [ bJFcWGuQ ]
>>233
待つんだ!
君は危ないほうに足を踏み入れかけている。
引き返せ!
まだ遅くはないぞ…多分

235 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/19(土) 14:19:47 [ 6/94.nTY ]
華族制度と言えば、家柄や旧家だけでなくとも、国家に大功があれば
叙勲されたはず。
つまり、明治以降昭和の華族制度廃止の時まで華族の数は増え続けていた。
でもって、邦国の大量編入で爵位持ちが激増したわけだが、そうなると
歴史のある大邦の王であった帝国伯爵と平民出だが手柄を立てるか業績を
残して、かつ上の覚えもメデタク、何とか伯爵に引き上げられた某氏との
力関係はどうなるのでしょう?
同じ帝國伯爵とはいえ、う〜ん・・・・・
ま、近衛公あたりならどこ行っても通用するでしょうが。

236 名前:229 投稿日:2006/08/19(土) 16:09:57 [ 5qcHWy0I ]
>>くろべえさん、名無し三等兵さん
冷静に判断していただけたようで何よりです。

>>御不快な思いをさせてしまって申し訳ありませんでした。
別に不快な思いはしていませんよ、内容的にちょっと間違うと荒れる原因になるかと
思った為、荒れる前に指摘しておこうと思い書き込みました。
こちらこそ、私の書き込みで不快な思いをしていましたらすいません。

237 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/19(土) 17:33:35 [ bJFcWGuQ ]
>>235
邦国=外様
帝國臣民=譜代

という区分けが絡むから公式上、同格には成りえないと思う

238 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/19(土) 19:45:03 [ skNTXpN. ]
そういえば、本文中で爵位制の細分化と帝國内でのそれらとの差別化が検討されてるような描写もあったね。

239 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/19(土) 19:57:50 [ 1pexHEsk ]
>>238
後からの人は男爵補佐代理心得とかになるのか。

240 名前:ここまで読んだ ◆zJ6rFHbX8Q 投稿日:2006/08/19(土) 21:59:52 [ XA/lA57k ]
爵位もちとかならいざ知らず
下手をすると帝國一般市民を一等市民とか扱っちゃうかもね
現地の人たちが…

日本は階級制度があったくせに階級間移動が
同時代の他国にくらべて緩やかだったから
階級社会が厳格なこの世界と市民レベルの交流がこの先始まると
無用な混乱を招きかねないね。

外地で活動する帝國臣民には帝國臣民心得なんてものが
本気で作成されそうな予感がw

241 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/19(土) 22:53:04 [ W5oOpJUs ]
>>239
何その課長バカ一代。

242 名前:名無し三頭兵@F世界 投稿日:2006/08/19(土) 23:27:09 [ zl8xxdK. ]
ネタです。

それいけ辻パ〜ンマ〜ン

 死の砂漠と恐れられる一帯がガルム大陸の辺境に存在する。
 はるかなる古代、ここには今や失われた魔法技術を駆使する民が存在した。
 かの人々はオークやダークエルフ、更には伝説のエンシェントドラゴンをも下し、魔法を持たない諸民族は奴隷として支配した。
 その魔法技術はミスリルを始めとする金属を苦も無く採掘、加工精錬し、
 都市を空中に浮かべ、更には気候をも制御し得るほどであった。
 人々は海を、空を征服し、果ては遥かなる宇宙をも目指し巨大な塔を建設した。
 だが今ではその民族の名前すら忘れられている。
 塔は朽ち果て、空中都市は海に没し、かつて世界の富と権力を一身に集め君臨していた首都は今や生ける物も無く、砂漠の中に死の都としてあった。
 魔法金属の加工精錬技術はその残滓がわずかにドワーフたちに受け継がれている。
 
 彼らが滅び去ったのは魔法気候制御に失敗したためである。
 彼らは巨大なエンシェントドラゴンの力で気候を操っていた。
 だが王位継承を巡るありふれた内乱が破局の始まりであった。
 内乱に敗北した第三皇子の一派が起死回生の策として、気候をも操るドラゴンの強大な力を利用したのである。
 それに対抗して第二皇子の派閥もドラゴンを使った。
 内乱はドラゴン同士の熾烈な闘争となった。
 ドラゴンはいつしか両派のコントロールから離れ、敵味方かまわずに暴れまわった。
 最後のドラゴンが倒れたとき、魔法によって栄えた帝国はすでに崩壊していた。

243 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/19(土) 23:45:04 [ ApcW1i4Q ]
邦国々王は本国貴族に準じる、ということは邦国陪臣貴族は本国直参士族に準じるってことになるんですかね。
邦国の階級は本国では一ランク下ってことになるから

本国 :皇帝>国王>貴族>士族>平民
邦国 :      国王>貴族>士族>平民
直轄領:         貴族>士族>平民

まとめると

皇帝(天皇)>>>>国王(朝鮮王)>>>>本国貴族(華族)>>邦国々王>>>>本国士族>>邦国、直轄領貴族>>>>本国民(臣民)>>邦国、直轄領士族>>>>邦国、直轄領民

こんな感じのヒエラルヒーになるのかな?
そうなると帝國臣民はすべからく邦国士族と同格(むしろやや上)てことになりますな。

>>235
その辺は問題ないかと。
平民出身の華族は明治時代の元老、功臣を除けば皆男爵止まりですしその元老にしたって皆平民ではなく士族(武士)出身です。
大正以降に男爵位を賜りその後陞爵したのは加藤家(加藤友三郎)だけですし純粋な平民出身者は授爵後百年単位の年月が経たなければ陞爵は無理だと思われます。
実際三井財閥の三井家や三菱財閥の岩崎家も男爵止まりでした。

個人的には準男爵が無いことによる男爵の異状増加を懸念するべきかと。
旧華族、旧華族分家、神道神官、浄土真宗僧侶、軍人、実業家、そして制度変更による士族からの編入者とやたら該当者が多いですから。
下手すりゃ議員費で生計建てている前者二族が没落しかねません。
下級貴族とはいえそのほとんどはF世界の貴族よりも長い歴史を持っています。
家の歴史がステータスとなるF世界において彼らの消滅は国家的損失となるかと。

244 名前:名無し三頭兵@F世界 投稿日:2006/08/19(土) 23:47:20 [ zl8xxdK. ]
 気象制御の力を失った帝国に容赦ない飢餓が訪れた。
 少し前まで艶やかな服を着て豪奢な生活をしていた人々は飢えで数を減らしていった。
 一片のパンを巡って殺しあう時代が訪れ、更に今まで奴隷として扱ってきた諸民族が彼等に襲い掛かった。
 加えて気候制御の力で抑えていた砂漠化が急速に進行し、帝国の民は四分五裂となった。
 魔法文明は完全に崩壊し、その後再建されることはなかった。
 かつての肥沃な大地は死の砂漠として長く訪れるものも無かった。
 この世界とはまるで異なる機械文明を持つ帝國が召還され、
 獣人による特殊部隊を率いて大陸横断珍道中を繰り広げる辻正信陸軍大佐が来るまでは・・・

245 名前:陸士長 投稿日:2006/08/20(日) 03:03:25 [ .ExatBPE ]
小ネタを投下。
スコットランド方面基地異状あり?の外伝です。そろそろ完結させないとなぁ。

246 名前:スコットランド方面基地異状あり 〜異種婚はつらいよ〜 投稿日:2006/08/20(日) 03:05:12 [ .ExatBPE ]

スコットランド王国
北部『ハイランド』の港町『アバディーン』沖合

『アバディーン』の沖合数キロの地点にある2つの島。
大きさ、外観共に似ている事、丁度向かい合わせになっている事から『双子島』と名付けられた。
両方とも周囲15キロ程度の、山は無く小高い丘がある程度の平坦な島。
此処に、この地方唯一の日本帝国軍の海軍基地と陸軍基地がある。
日本人とダークエルフ達から、海島と陸島と呼ばれていた。

アバディーン港の桟橋

「ふー、南国だけあって、こっちは暑いねぇ」

開襟シャツから覗く首筋に扇子でパタパタと空気を送り込みながら、男は呟いた。
男は、とある飛行機会社の技術者であり、アバディーンにある部品工場で技術指導を行った帰りである。
工業化への道を目指そうとするスコットランド王国に先鞭として、幾つかの工場が建設された。
無論、帝国式で装備を固めているスコットランド軍が速やかに装具を充足させる為でもある。
密接な関係が成熟しつつある今日この頃、ようやく限られた数ではあるが、スコットランドに民間人が住まうようになった。
以前は陸島か海島の日本人街に限られていた活動が、本島の方にも広がった訳である。
男の仕事も、その一環と言えるだろう。

桟橋に陸島への連絡挺が横付けされる。
今でも緊急時以外の本島への直接着陸や接岸は認められてないので、相変わらず島への渡航は双子島経由だ。
それでも、連絡挺は少し前より大型になっている。これは渡航者の数が増えつつあるからだろう。

(全く、異世界とか何処に行っても、人間ってのは結局適応しちまうもんなんだろうなぁ)

そういうものかもしれない。
彼が数年前なら全く予想だにしなかった、耳の長い技師見習い達を受け持つ事になったように。
感慨に近い思いを抱いてしまい苦笑しつつ、連絡挺に歩み寄る。
既に渡航者が乗船を始めていたが、まだ出港まで時間がある所為か大半が見送りに来た人々との別れを惜しんでいる。

まだ時間はある、男は煙草を吹かしながら彼等を観察する事にした。
渡航者の3割は自分達と同じ技術者や企業の出向者、2割が本土へ出張するらしいスコットランド軍将校。
そして残りが陸軍や海軍の将校だった。まだ若い、尉官クラスの青年将校ばかりだ。

247 名前:スコットランド方面基地異状あり 〜異種婚はつらいよ〜 投稿日:2006/08/20(日) 03:07:02 [ .ExatBPE ]
彼等は全員、見送りとの別れを惜しんでいた。
相手は若いダークエルフの婦女子。耳が長い小さな子供を連れていたり中にはお腹が大きく膨らんでいる娘も居る。
おやおや、妬けるね憎いねと親父っぽくにやついてると、見た目十代半ばのダークエルフ少女と話し合っている陸軍将校と目が合った。
側には、スコットランド将校も立っていて、彼もこちらを見つめてきた。
何故か酷くやつれたその将校はそっと此方に会釈し、スコットランド軍将校もそれに習う。
慌てて煙草を口から離し、出来るだけ丁寧に会釈して連絡艇の方を目指す。
相手は軍人さん達だ。あんまり長々と観察するのはよろしくないだろう。そう、判断して。

陸島へ向かう連絡艇の中。
先程の将校がぐったりと席にもたれ掛かっていた。
そして、冷たいハンカチを彼のおでこに当てているスコットランド軍将校。

「すみません義兄さん。姉さんがまた無茶したみたいで」
「いや……大丈夫だエンドリー。ラーゼが心配性で嫉妬深いのは相変わらずの事だしな」
「はい……姉さんが女性らしくなったのは個人的には嬉しいんですが、行き過ぎるのも考え物ですね」
「全くだ。子供を産んで少しは落ち着いたかと思ってたが……本気で枯れるかと思ったぞ」

ダークエルフ氏族の魔術師の長を娶った将校は呻くように呟き唸った。
そんな将校を技術者達は不思議そうに、スコットランド将校は労りを持って、陸海軍青年将校は共感を含めた同情の目で見つめた。

「全く……僕らより遙かに年上なのに。いい年して若妻ぶってもしょうがないのになぁ」
「え、エンドリ!いい年して発言禁止っ!!」

後に、エンドリーは当然のように魔術で監視していた偉大な姉から折檻を受けたという。
異種種族の結婚。ヒューマノイドとして比較的近い存在である日本人とダークエルフでも、まだまだ問題は尽きないようだ。



248 名前:陸士長 投稿日:2006/08/20(日) 03:07:55 [ .ExatBPE ]
完了。時代設定は昭和二十年前半期です。

249 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/20(日) 07:07:49 [ k/hCqbfE ]
>>224
そこらへんはまた述べる機会があるでしょう
現時点ではちょっと手が回らないので。
<無粋な書き込み御免なさい
いえいえ、他の方がどういった点に興味を持っているのかがわかって参考になります
>>246
陸士長どの、投下乙であります
<そろそろ完結させないとなぁ
自分は完結どころか全体の分量すら見えてきません…

でSS投下

250 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/20(日) 07:09:19 [ k/hCqbfE ]
ユフ戦記2 
戦争計画 player A 中編−1

レビンスキーが目を移したクウボ一覧、その内容はここ10年大きな変化はない。
そのことに不審な点はない。
帝國人はクウボの数よりも搭載する機械式飛竜の質的向上に傾注してきたからであり、決して航空戦力を軽視しているわけではない。

 帝國の保有するクウボ、その中核戦力はレビンスキーの手元にある資料によれば

タイホウ   同型艦なし 
ハクホウ   タイホウの準姉妹艦、同型艦なし
ショウカク、ズイカク(以上ショウカク級)
ヒリュウ   同型艦なし
ソウリュウ  同型艦なし
アカギ    同型艦なし、練習艦
カガ     同型艦なし、練習艦

(ただし、ショウカク級は新皇暦325〜327年にかけて二隻とも大改修を実施。タイホウ、ハクホウのような重装甲クウボに変容している)

このほか多数の軽クウボがあるが、殆どが通商路や遠隔地を守るために分派されているから直接の脅威とはなりえない。

251 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/20(日) 07:10:15 [ k/hCqbfE ]
アウステルの説明を聞き流しつつ、戦力配備状況へと頁を進めていく。われらが参謀本部長閣下は未だクウボの個艦性能をご説明なさっている。
知っていることを延々と聞かされるのはなんとも退屈なことだ。文官連中は興味津々のようだが。

皇国水軍が刃を合わせなければいけないのは第一航空艦隊のタイホウ、ハクホウ、ショウカク、ズイカクに加え、皇国を牽制するようにライアール諸島でうろうろしている第十六艦隊のジュンヨウとヒヨウの計六隻。
それだけのはずだ。少なくとも参謀本部はそう判断している。

「本当にその六隻だけで済めばいいんだが」
レビンスキーはひとりごちるがアウステルの声にかき消されて、注目を集めることはない。
頁をめくると、第一航空艦隊の箇所に目が留まる。
なんとまあ、連中本気か?面倒は近衛だけに背負ってもらいたいものだが、そうはいかないらしい。

252 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/20(日) 07:10:45 [ k/hCqbfE ]
帝國との交渉が決裂すれば、皇国には戦争しか選択肢は残らない。
ではどう戦うか。
長期戦になれば世界中に分派したクウボや練習艦となっているアカギやカガまで持ち出してくるだろう。うん、やはり短期決戦しかないわけだ。

開戦劈頭の痛撃。敵は大混乱。
そして復讐に燃える第一航空艦隊に近衛艦隊とユウジルド艦隊が手を取り合って挑み、少なからぬ損害を与える。その際味方の損失は問題にならない。
国際政治への影響と、長期戦の膨大な戦費や出血を懸念する帝國。
そして帝國臣民に芽生える厭戦気運。それを無視できない民主主義とやら。
そして列強二つが消え、直接帝國の圧力にさらされることを恐れる列強諸国。
お互いその辺でいいじゃないですか。
かくして講和は成れり。

はは、なんとも素敵じゃないか。
何事もそう上手くいかないだろうが、座して滅ぶよりは希望があるじゃないか。
決戦艦隊たる近衛艦隊が全てを握るわけだ。

レビンスキーの視線は隣席の近衛艦隊司令官、クロイツェン大提督へと注がれる。皇国の運命は閣下が握っているのですよ。

253 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/20(日) 07:11:24 [ k/hCqbfE ]
クロイツェンはレビンスキーのよりもいささか真面目であるから、アウステルの説明に耳を傾ける。帝國海軍艦艇の分析を終えた後、艦艇の配備状況へと話は移る。
第十六艦隊は目立った変動はなし。二隻のクウボと旧式の護衛艦のほか、ミナツキ級が対空用として六隻配備されている、と参謀本部長が説明したときクロイツェンの横から声が上がる。

「まあ、帝國の公式発表を信用すればの話しですな」

ここは宰相府で、相手は参謀本部長(水軍元帥)であることを考えれば、なんとも失礼な行為だ。こんな態度をとるのはクロイツェンの知る限り、一人しかいない。
案の上、発言の主は隣でタバコを(宰相や軍高官に断りもせず!)燻らせているレビンスキーだ。階級は提督に過ぎないというのに宰相や元帥を前にしてこの態度。
文官連中なんぞ眼を丸くしている。
これで艦隊司令まで出世したのだから、能力だけは確かだ。

254 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/20(日) 07:13:33 [ k/hCqbfE ]
「ええ、勿論そうです。ただ諜報部もずいぶん努力して裏をとっていますから、信用に値すると判断しています」

アウステルもレビンスキーの無礼な態度に慣れたもので、丁寧に応じる。

「ただ、第一航空艦隊に若干の配置転換がありました。タカチホ級がアサマ級と替わって配備されました。あなたの言う通り、帝國の公式発表を信用すればの話ですがね。そういえば、第4艦隊はいざというとき敵水上砲戦部隊へ対処することが主任務でしたねえ。」

アウステルは意地の悪い笑みを浮かべて付け加える。
それに応じて、レビンスキー顔を真っ青にさせながら声を押し殺すと、周りから笑い声が上がり、弛緩した様な空気が漂う。
なんとも無礼な水軍提督を冷徹な参謀本部長がやりこめる。
大臣や文官連中にすればアウステルに拍手喝采といったところだろう。

 これがレビンスキーの演技なのだから、なかなかたいしたものだ。
参謀本部長との息も合っている。こう見えて二人は仲がいいのだが、文官連中にはそんなそぶりを見せない。ともかくも、皇国にとって不利な話題を場の空気を悪化させることなく消化したのだから、その手腕は評価できる。

255 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/20(日) 07:14:13 [ k/hCqbfE ]
 一通り帝國軍の概略を説明したところで、アウステルがクロイツェンに近衛艦隊の状況説明を求める。レビンスキーとは異なり、宰相に一礼してからしゃべり始める。

「現在のところ、近衛艦隊の各戦隊は分散配置をしております。これは帝國軍に正確な戦力を掴ませないためであり、ある程度は成功しています。勿論戦時には集中運用を行いますが」

クロイツェンの述べたとおり、近衛艦隊の正確な戦力を帝國は把握していない。皇国宰相ですら正確な戦力を知らされていないのだが仕方ないともいえる。この問題について戦後帝國内で一悶着起こるのだが、皇国には戦後の帝國政治にまで気遣う余裕などない。

「初動では奇襲的に第十六艦隊を叩きます。この時点では戦略、戦術両面の理由からユウジルドの支援を受けられませんが、十分な成算はあります。」

256 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/20(日) 07:14:57 [ k/hCqbfE ]
「当然ですな、我々があれほど苦労して予算を捻出したのです。前座に負けるようでは話になりません」

金務大臣が声を上げるが、文官はこぞって首肯する。
増税と各方面の支出削減に加えて、大商人達に供出金をお願いに行ったのは彼らなのだ。支出削減の一環で給金をカットされるなか、商人に供出金を求めて歩き回ったあの過ぎし日々の苦労は誰もが鮮明に覚えている。
皇国が商人を保護するために成立した統一国家であり、その商人に『艦隊の建造費を出せ、しかし詳細は国家機密で教えられない』と言って回るのだ。その苦労は並大抵ではないことは経済観念の鈍いタブリンの旧貴族にも想像つく。 

 が、皇国も初動で二隻の準正規クウボを撃破することに自信を持っている。
この点については、皇国水軍内部では一致した見解を持っている。 
10年掛けたワイバーン・ロード部隊の大量育成。
恐ろしく高価だが破壊力の高い魔硝石をふんだんに使った対艦爆弾の備蓄。
それらを搭載する竜巣母艦と防空専用艦の建造、そしてそれらの集中投入。
第十六艦隊を叩くのはそう難しいことではない。問題は補充がきかない航空戦力の損耗がどこまで押さえられるか。
帝國の最精鋭たる第一航空艦隊との衝突まで余計な出血は避けたい。

257 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/20(日) 07:15:31 [ k/hCqbfE ]
「興味深いですな、今までにそのような形の戦いは記憶にありません。」
宰相がつぶやくが、クロイツェンは満面の笑みを浮かべて答える。

「はい、宰相閣下。
洋上航空兵力を持つ艦隊同士が衝突するのは戦史上例がありません」

つまるところ、全てが順調に進めば皇国水軍大提督にして功二級・皇国準男爵たるユーリッヒ・オプト・クロイツェンは、戦史上初の機動部隊決戦を勝利した指揮官として永遠に記憶されることになる。

258 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/20(日) 07:16:08 [ k/hCqbfE ]
投下終了

259 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/20(日) 09:20:50 [ 8kGssc1U ]
名無し三頭兵さん、投下乙です。
辻大佐人気ですねえ。現実では珍しい「何かやらかしてくれる」キャラクターのせいかな?

陸士長さん、投下乙です。
連絡艇の乗船客の見送りの半分が帝國人と結婚したダークエルフですか。結構居るなあ。
その中に枯れそうになっている将校さんが居てもおかしくないですね(笑)。

シロべえさん、投下乙です。
艦船の名前、考えるの得意ですねえ。
竜巣母艦、1隻に何頭のワイバーン・ロードが載るのかなあ?
10頭載せたらもういっぱいって感じがするけど。

260 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/20(日) 10:18:13 [ 6KnBHENQ ]
皇国なだけに竜巣母艦か…この単語は響きが良いですね。

261 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/20(日) 10:52:34 [ yq9lkYzY ]
陸士長様、投稿乙です。
ダークエルフの調略、ちゃくちゃくと進んでいますね。(笑)

シロべえ様、投稿乙です。
>竜巣母艦と防空専用艦
どんなのか凄い気になる……


>>233
>ところで、美人や美男のダークエルフはいるようですが、同様の獣人とかドワーフは居るのですか?
勿論獣人にもいます。比率的にはダークエルフとは比べものになりませんが……
(というより、ダークエルフが『異常』。決して獣人は不細工な種族では無い)
……ただドワーフに関しては、体格からして違いますから。

>>236、237
江戸幕府における1万石級の譜代大名と50万石級の外様大名みたいなものです。
同じ大名とはいえ、両者は江戸城で詰める間などはきちんと区別されていました。
(基本的に、50万石級の外様大名は国持/准国持大名として大広間に、1万石級の譜代大名は他の中小の譜代大名と共に帝鑑間)
また、譜代大名ならば1万石級でも若年寄になれる『可能性』があり、その後加増されて数万石級になる『可能性』もあります。

まあたとえ爵位持ちでも、邦國の王は帝國貴族院議員にはなれませんからねえ。格式は認められても実利は……

262 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/20(日) 10:53:06 [ yq9lkYzY ]
>>240
>爵位もちとかならいざ知らず
>下手をすると帝國一般市民を一等市民とか扱っちゃうかもね
>現地の人たちが…
これはあるかもしれませんね。旧世界の白人と植民地人のように。

>外地で活動する帝國臣民には帝國臣民心得なんてものが
>本気で作成されそうな予感がw
できます、確実に。帝國は、将来の帝國臣民の大陸進出に伴うトラブルを本気で憂慮していますから。
現在でも、大陸に派遣される者は、軍民問わず教育されていますからねえ。

>>243
>邦国々王は本国貴族に準じる、ということは邦国陪臣貴族は本国直参士族に準じるってことになるんですかね。
基本的に陪臣には位を与えませんが、多分帝國士族待遇にはするでしょう。
直轄領の小領主についても同様でしょうね。
(直轄領の小領主については、邦の陪臣貴族との争いになると困るので与えていない)

>個人的には準男爵が無いことによる男爵の異状増加を懸念するべきかと。
男爵の七割方は勲功家ですからねえ。他も諸侯や公家の分家が大半ですし。
新制度で男爵に昇格するのは、三千石以上の武家、又はそれに匹敵する家です。
幕臣で三千石以上の武家は250家前後、他の大名の家臣を加えても倍には届かないでしょう。400家がいいところです。これに他の名門を加えてせいぜい600〜700家程度では?

>旧華族、旧華族分家、神道神官、浄土真宗僧侶、軍人、実業家、そして制度変更による士族からの編入者とやたら該当者が多い
軍人、実業家は叙爵されません。(官や軍人に関しては地位に応じて一代限りの叙爵はあるかも)
神道神官、浄土真宗僧侶についても、世襲制の高位の家で無いと駄目なので、100も無いでしょう。
旧華族、旧華族分家とは、叙爵されなかった公家のことでしょうか?何れにせよ、騎士爵、大騎士爵位もありますので、余り多くはならないかと思われます。

263 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/20(日) 12:59:09 [ ToMVwDhk ]
ただ今より今日一日、断続投下

264 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/20(日) 13:08:12 [ ToMVwDhk ]
帝国異史第二部

04
 川辺に膝をつけ、川の水を一掬い口に含むと、大きく背を伸ばした。
どうやら、背はそれほど大きくなく寧ろ小柄だ。
そしておもむろに、川面に視線を落とすと、そこには自分の顔と、そんな
自分を見つめる竜の姿があった。
 川面に移った顔は、まだ若い娘のものだった。

 竜騎兵隊が消滅したあの日、彼女の竜は日本軍の対空砲火の前に傷付き、
なんとか戦場を離脱した後、竜の看護をしている内に連合帝国が滅んだ事を、
風の便りに伝え聞いたのだ。

 連合帝国が滅んだ後、彼女と竜は放浪を始める。
彼女が育った村には、人影がなかった。
国境に程近い村だった。
彼女が目にしたのは、家という家が焼けて風雨に曝された無人の村だった。
 家族の消息を尋ね歩く内に、兵隊崩れの野盗に声をかけられたり−−もち
ろん、返り討ちにした−−、対象の護衛をして日銭を稼いだりした。

05

 それから数年、ようやく帝国軍は治安維持のため、野盗討伐を繰り返し
て治安が向上したのと、街道の整備に伴う流通の興隆により、次第に護衛
に彼女のような存在を、連合帝国が滅亡した時ほどには必要としなくなり始めていた。

265 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/20(日) 13:13:32 [ ToMVwDhk ]
 彼女のぼやき、旅銀がないというのは、こんな事情からだ。
だからと言って、野盗になる気はなかった。
彼女と行動を共にしている竜は、軍に誘われる前からの仲でもあった。

 もともと竜は気高くてしかも偏屈なのだ。
だから、彼女しか背中に乗せないのは、竜の性向からしたら当然で、それ
に食べ物ぐらいなら、竜が持ってきてくれるから不自由しないので、野盗の
まね事などしなくても良かった。
 もっとも寝る時ぐらいは、屋根のある場所で休みたいから、旅銀がいったが。

「今日は宿に泊まりたいなぁ」
 そう言って袖の臭いを嗅ぎつつ、懐から巾着を取り出すと、嘆息した。
何をか言わんやだ。

 袖の匂いを嗅ぐ様に、それほど旅銀が乏しいようだった。
士官教育と言うか、竜騎兵として、徹底的に躾られたから、単なる村娘に
過ぎなかった彼女も、今では身なりに気を使うようになっていた。

 彼女の収入源である護衛の募集などの依頼は減っているが、それでもなく
なる事はないし、運が良ければ町や村の自警に雇って貰えるかもしれなかった。
最も彼女の場合、家族を探しているから、一つ所に留まる事は難しいが。

266 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/20(日) 13:16:43 [ ToMVwDhk ]
 帝国は大規模な野盗や山賊は討伐しても、それ以外は元からある治安組
織に、任せきりだからだった。
だから、隊商の護衛などの競争率は高い。

06

 主要な街道は帝国軍とフランベリア総督府が管理していて、今ではフラ
ンベリアの人々に取って、見知らぬ世界と化していた。
見知らぬ材料で固められた道に、その道の上を走る車。
その車には、車を引く動物さえいないのだ。

 その上、主な街道と縦断鉄道は、帝国軍が常時警備するので、ならず者に
取って、どうにも手を出しづらかった。
だから、彼らの矛先が自然と隊商や、帝国の管理外にある町や村に向いていた。

 帝国は、油田と主要な鉱山とそれを結ぶ港湾都市、そして五大都市−−他に
主要な大都市は四つあるが、帝国は元からある現地官僚機構との政治的配慮
により、現地に自治を任せていた−−以外は現地官僚機構に委ねている。

267 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/20(日) 13:18:22 [ ToMVwDhk ]
第一次投下作戦終了

268 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/20(日) 16:34:22 [ ToMVwDhk ]
第二次投下っと

帝国異史第二部

 町や村は基本的に、住民の自治に委ねている。
当然ながら、治安も。
故に治安に人手がさけない所では、人を雇う事になるが、貧しい地域だと
そうもいかず、寝る場所と食事すら出せない所もあり、そのような地域に限り、
現地官僚機構や近在豪族及び貴族に対して、警備兵の派遣を命じていた。

 帝国はフランベリアの過半を支配下に置いたが、出来るかぎり深入りを避けて
いるのは明らかだった。
7

 彼女のような元士官−−実はこれにはカラクリがあって、竜騎兵隊では
竜と意思を通じ合える者は士官になれる−−ともなると、それなりに依頼が入る。
文字も読めるし、指揮も取れるからだ。
それに彼女の襟の兵科色を見れば、かなりの確率で枠があれば、仕事にあ
りつけた。
 今のフランベリアでは、竜乗りはごくわずかなのだから。
もっとも始めこそ帝国軍は竜騎兵を再建する気はなかった。

 統治を始めてから数年、現地帝国軍では、フランベリアの治安維持に、
竜騎兵を使う案が出て来ていた。

269 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/20(日) 16:46:38 [ ToMVwDhk ]
 大規模な内乱や貴族同士の対立−−この世界でも水の分配で争いに発展
する事もあるのだ−−の鎮圧、または、山賊の討伐に使えないかと言う考えが
でてきた。
それに有力貴族が、わずかな生き残りの旧連合帝国竜騎兵を獲得する動きもあり、
実際少なくない数が、彼らの臣下に入ったと言う報告も入って来ていた。

 もっとも帝国にとって、竜騎兵は脅威ではないが、相手にしたらかなり
煩わしいものである事は、先年の王国軍との戦いで、実証されていた。

08

 彼女は宿と仕事を求めて、竜の背に乗ると都市の外周へと降り立った。
彼女の眼前に拡がる都市。
それは、膨脹を今将にしている都市の姿だった。

 都市の中ほどの所々に壁が残っているのは、それが都市の外壁である事
を物語っている。

 都市の最外縁の街道に、ようやく街門があるが、それはあくまでも屯所
であり、都市の案内などを行う場であり、不審者に対する質問を行う場所に
過ぎない。

270 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/20(日) 16:50:03 [ ToMVwDhk ]
 彼女の姿をみた警備兵は、彼女の服とその襟の色をみて目を見開いたが、
彼女の言葉に警戒を解いた。

「あの、隊商の護衛を募集してるとこってしらない?」
「隊商?ああ、それなら六番街のアス商会に行ってみるといい」
「アス商会ね、ありがと」
 青みがかった髪を揺らして一礼すると、六番街へと向かったのだった。

09

 さて、この〇番街というのは、帝国直轄都市にのみ付けられている行政
区分で、
おもに新市街に与えられる。
つまり、都市の拡大に伴うものだった。

 アス商会は、膨脹する帝国直轄都市で商いを拡大しようと、乗り込んで
きた者の一つだった。

 帝国は自らが管理する都市にのみ、既存の組織の既得権益の制限もしくは
撤廃を、強力に推し進めた結果、各地から一旗揚げようと人々が集まって
きたのである。

271 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/20(日) 16:53:02 [ ToMVwDhk ]
 当然ながら、既存の組織は猛反発し抵抗したが、帝国が代わって食料や
工業製品を流通させた結果、彼らの抵抗は腰砕けとなったのだった。
 もっとも、総督府は彼ら職能組合に対し、技術や物品の取扱を優先する
という政治的配慮により、彼らを宥めた。

 それでもその効果は高く、人と物の都市への流入が、加速度的に増
加していた。

 確か、六番街はこっちだったよね。
 そう呟きながら彼女は、辺りをお上りさんよろしく、周囲を見回し
目的の場所へと向かう。

 帝国の直轄らしく、新市街とは言え、街道から都市へと入る道路にそって、
ある程度整理された町並みを人の波がうねり、あちこちで客引きの声や、
物を品定めする客の声、かなりの数の馬車の往来と、時たま行き交う帝国人
が乗る鉄の車が、喧騒を生み出している。

 フランベリアが帝国の統治下に入って早三年、実はこれまで帝国直轄都市
に彼女は数えるほどしか立ち寄っていない。
帝国が直接支配している場所に入ったら、敗残兵だと言う事で捕まるのでは、
と考えてしまうのだ。
実際そんな事は今までなかったが。

272 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/20(日) 16:54:11 [ ToMVwDhk ]
投下完了

273 名前:名無し屯田兵@F世界 投稿日:2006/08/20(日) 18:33:17 [ Jk9VIiQg ]
大本営発表様、投下乙です。
主人公のように竜との相性如何によっては平民、しかも女性が正規の常備軍で士官に昇進可能となると、
旧連合帝国の身分制度運用は案外と柔軟なようですね。
女性が現フランベリア国主になれたのも、そんな軍事文化の影響があるのかも。
帝国に再編された竜騎兵がどんなものになるのかも期待しております。

274 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/21(月) 01:42:12 [ 8kGssc1U ]
大本営発表さん、投下乙です。
>見知らぬ材料で固められた道に、その道の上を走る車。
戦前の日本では国道さえまともに舗装されていたのは少なかった、と聞いた事がありますが、
この頃にはアスファルトの供給が間に合ってるのかな?石油から精製されるものですが。

275 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/21(月) 03:12:43 [ 8kGssc1U ]
くろべえさん、新型海防艦や新5500トン軽巡の説明に同盟国や邦国へ「輸出」しているような記述がありますが、機関の整備は大丈夫なのでしょうか?
新型海防艦はディーゼル機関、新5500トン軽巡は蒸気タービンだと思いますが、異なる機関よりは同じ機関で統一した方がメンテナンスを考えれば良いのでは。

スコットランド王国やシュヴェリン王国への輸出は早そうですね。どんな軍艦旗がはためくのでしょうかねえ。

276 名前:陸士長 投稿日:2006/08/21(月) 05:43:37 [ .VKFB2cM ]
感想どうもです。

>ダークエルフの調略、ちゃくちゃくと進んでいますね。(笑)
進んでますねぇ。婚礼による結束と取り込みってのは古典的ですが確かに効果的でしょう。
後、ダークエルフと結婚した将校を多く感じたのは、婿組が周期的に本土に帰還する時期に鉢合わせたと言うことで。
全体数を感じればそれ程多くは無いと思いますが……実数はくろべえさん次第でしょうw

277 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/21(月) 07:03:43 [ tuDUgTpw ]
上でダークエルフの銀幕のスタアとか、宝塚とかを話しましたが、獣人が主役の
興業もあるかと。
芸人扱いで、地方興行で「獣人○○ 現る」とか。
あと、芝居や俳優で活躍する獣人もいそうですな。
前の世界のコナンドイルの小説を下敷きにした映画とかで。
・・・でも、相撲好きで力士になりたいと部屋の門を叩いた少年獣人が
どんなに懇願しても力士にはなれないでしょうなぁ。
で、親方の知人の陸軍将校が、不憫に思って養子にして・・・・
彼が、後、獣人として始めて陸軍大将となることをその時、誰が予想したであろうか、とか

278 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/21(月) 11:39:19 [ 7aDTpUKk ]
>>127
>豪族はウェクスフォード家に臣従する代わりに実の娘を当主の妾とする。
>ウェクスフォード家の当主は豪族の娘を妾とし、子を為す。
>子は長じて豪族の当主となり、豪族はウェクスフォードの一門となる。
>只の臣下になるのではない。御一門、親族となるのだ

帝國の代理人である元中尉は孫馬鹿にもなりそう。
内孫はしばらく先になるとしても、子供を産むためにお家帰りした豪族の娘の
ところに満面の笑顔で帝國産の贈り物を抱えて行くだろうし、孫が幼児のうちには
・・・・妾の父たる豪族の現当主がお館さまご訪問と聞き急いで出迎えに赴いたところ
帝國の代理人にして帝國軍司令、前帝國大騎士爵、そしてご当主さまが未だに頭が上がらぬ
一介の豪族に普通なら目通りも難しいお方が、笑顔で孫に「お馬さん」をしていたりする!
私生活では子煩悩で孫馬鹿
そして、誰が産んだか関係なく分け隔てしないで孫たちを可愛がり、後に孫たちが成人し、
世を去る際にもベッドの周りに集まった孫、ひ孫達に
「お前達は兄弟なのだから・・・皆仲良くするのだぞ」と子供の頃から言っていた事を遺言として
残すとか・・・・
これが、後のウェクスフォード家繁栄を盤石のものとした理由の一つである!
とかを考えてしまいました。

279 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/21(月) 14:27:56 [ jqMmKaZo ]
続き投下〜

280 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/21(月) 14:29:26 [ 9TlQkVJc ]
二番目の被弾は左舷側の古鷹、彼女には9発の扶桑へと感知に失敗した対艦魔法の槍が突入をすべく飛翔を開始する
古鷹が幸運だったのは加古と違い舷側を向けていたこと、反対舷の火器を除き出来うる限りの火力を向ける事が出来た事、それから扶桑に寄っていた為加古より対応時間が長かった事だ。
9発のうち対空砲火で7発の迎撃に成功、2発の命中も、一発は古鷹艦橋基部左舷側(缶室周辺の人員を感知か)で爆発、機銃員のいくらかと艦橋側部の測距儀を使用不能にしただけですんだ。
残りの一発は後部指揮所に突入し、その周辺にあった25㎜連装機銃二基、搭載機のいないカタパルト、中身の無い魚雷兵装を海に吹き飛ばしたり、使用不能にしたりと破壊を撒き散らした
二次被害としてはカタパルトほか航空兵装から火災が発生したが、それをチャンスと見た騎士団のいくらかが強襲をかけるも、古鷹側の対空砲火にそれほど穴が空かなかった事、指揮系統の遮断がなかった事が彼等の勇敢な突撃を粉砕することに成功した、それとほぼ同時刻に鎮火に成功している、艦外火災は消火もしやすい
古鷹は依然健在だ、その証とばかりに古鷹の頭上を飛び去り、扶桑に向かった魔法の槍を加えて5発を叩き落としてみせる

281 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/21(月) 14:31:25 [ zeLnApqc ]
最初に加古の艦橋が弾け飛んだ、次に古鷹が被弾して炎上した
『新庄君!右だ、右舷に銃座を回せ!!!』
吾妻らの担当の機銃座は艦橋前の三連装機銃座だ
『左舷の古鷹らと重ね合わせた方が撃墜率は増えると思いますが!!』
他の銃座からも射撃を開始しているので新庄が意見を怒鳴り返して伝える、もちろん右に指向して、射撃ペダルを踏みながら、だ
『間に駆逐艦がおる!まだ離れきれとらん!!うまくすれば目標も引き付けてくれるかもしれん!!だが!!加古があれほどやられておったら、右から来る残りの全部を扶桑は貰ってしまうぞ!!!』
『了解です!!!』
まわりにまた空になった弾倉と薬矯がうずたかく積まれていく

シュオオオオーン!!!ヒューーー!!!

『な、なんの音ですか!?耳に来ますね!!秘密兵器ですか!?』
甲高い音が耳をつんざく
『後艦橋下の噴進砲だ!!前の攻撃じゃ距離があるのと、勿体ぶって撃ってなかった!!この音は鏑矢だ!!!ワイバーン用のな!!!』
今で言うロケット花火のヒューーーという音を何倍にもしたような音だ

ドドドドドド

時限信管で一斉に爆発する噴進弾、見た目は派手だ
『すごい!!!』
『次弾に時間がかかるのがな』

282 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/21(月) 14:33:14 [ /9tm..U. ]
『加古被弾!!!大破っ!!!』
『相手が誘導弾ならば、回避行動はむしろ迎撃の邪魔になります、舵はギリギリまで切りません、よろしいですね?』
『・・・かまわん、操艦は全て君に任せる、私が君以上にできる自信は無いよ』
敵弾が向かってくるのに舵を切らないというのにはかなりの決断力が要る、本人に動かせるもの、力があるからだ。そして先程の言葉を恥じる、艦長始めまだまだ諦めてなど居ない、あとはどっしりと、ここで座っているのが仕事だ
『古鷹被弾!!こちらは健在です!!!』
『噴進砲座、撃ちます!!!』

シュオオオオーン!!!ヒューーー!!!

『新兵器か・・・』
この甲高い音は弾頭に穴が空いた噴進剤のみ搭載した噴進弾で音響兵器とでも言うべきものと聞いている
『迎撃に全力を尽くせ!!』
『左舷高角砲!!射撃できません!味方撃ちになります!!』
まだ補給の為に扶桑に寄っていた駆逐隊がまだ離れきって居ないのだ、高角砲といえど駆逐艦にしてみれば主砲(対空射撃にあまり使えない主砲より威力が劣るが)相当だ、当ててもいい、などとはできない
『射線から外れるまで射撃待て、機銃座、すまん!踏ん張れ!!』
艦長が精力的に指示と激を飛ばしていく

283 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/21(月) 14:34:59 [ 2FpTlyyE ]
『ぬぁっ!?落ち着け!!うわぁあああっ!!!』
扶桑後部から放たれた鏑矢噴進弾に動揺し、避けようとして隊列を外れ、翼を暴れさせたワイバーンが、対艦魔法の槍を巻き込んで自爆する
『楯よ!!手前の船の上を飛び越るの!!』
駆逐艦を背にして飛ぶよう空中騎士団の女騎士が叫ぶ、今現在の最先任なのだろう

ドドドドドド!!!!!!

『抜けろぉおおおおっ!!!』
一斉起爆した噴進弾に驚いたワイバーンはもれなく機銃弾を被弾し、もちろん弾片などに引き裂かれたワイバーンも水柱の中に消えていった、だが本望だろう、自分に射線が向く、すなわち自らを含め、放った対艦魔法の槍へ向けられる火線が減るのだから。
噴進弾が爆発した事で発生した黒煙を突き抜ける
『ぷはっ』
空気が悪いので息を止めていたのを吐き出す、綺麗な顔も鎧も黒く硝煙臭くなってしまった。水浴びをしたい、と考える間もなく先ほどより激しい火の玉の雨を浴びせかけられる
『まるで炎の壁!!でも、その壁を打ち崩してくれるわっ!!いけぇええっ!!』
ブレスを目標を定めずめくら撃ちしつつ対空砲火の穴と見えた三番砲塔直上で騎を急上昇させる、後ろから爆炎が吹き上がるが後ろは見ない、まずは離脱だ

284 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/21(月) 14:38:44 [ 50Ied/7E ]
『撃て〜!!!撃って撃って撃ちまくれぇい!!!一基も近づけるんじゃなぁいっ!!!』
吾妻が土佐犬のような顔で吠える
『ちょっとばかし!数が多すぎやしませんか!!』
新庄が引きつった諦念ともみれる笑いを浮かべつつ機銃を乱射している、数は魔法の槍、ワイバーン含めて吾妻らが見える範囲には50越えている、反対側もそうだろう
『新庄君!!!当てやすいからといってワイバーンを狙うなよ!!光ってるやつに集中させたまえ』
ワイバーンは時たま耐えきれず羽根をはばたかせ上昇離脱したりするので、標的としての面積も速度も広く遅くなるのだ、しかしそれを狙って射撃をするならば、たとえ撃墜に成功したとしても魔法の槍に対しての撃墜効率は下がる、それこそが彼等の勝利だ、吾妻にはそれが良くわかっていた

ガンガンガンガンッ

『ぬぅっ!!!』
『うわっ!?』
反対側にワイバーンのブレスが命中したのか、着弾して飛び散ったブレスの火花がこちらまで飛んできた、物凄い音がする、思わず誰もが身をすくめ、弾の補充の切れた機銃座が沈黙する
『いかん!!!』
気を取られ過ぎた、射撃を続けさせるか・・・いや、無駄だ!!
『新庄君!貴様ら!!みんな伏せろぉっ!!!』

285 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/21(月) 14:41:58 [ bBlcovoo ]
一基、また一基と光点が消えていく、噴進砲も効果はたしかにあった、だがしかし迫ってくる数が違い過ぎる、敵の攻撃方法も巧みであり、士気も良く保持され、一糸乱れぬ機動をとり続けている
『あの連中なら、帝國でも欲しいところだな』
しかし叩き潰すべき相手であることが恨めしい
『くぅっ・・・!ここまでか!面舵一杯!!!』
加古と同じく、艦首を飛び込んでくる魔法の槍の数の多い方へとだ、加古の艦橋部分があのようになったのを見ても、だ。艦長の勇気がここに現れている。加古はあのようになってしまったが、被弾する箇所は少なければ少ないほど良い。ものによっては集中させてもよかろう、しかしそれは自分に向かってくるのだ、頭で判断できてもそうできることではない
ぐぐぅ〜っと艦が直進のエネルギーを殺し頭を振りはじめる
だが、ただ一つ問題があった、加古は回頭が早過ぎた、扶桑は遅すぎたのだ。見慣れない対艦魔法の槍の速度を見誤って、艦長の基本動作として染み込んでいる魚雷を避けるタイミングの間の取り方で艦を動かしていた、対空砲火で粘ろうかという踏ん切りの付け方で戸惑った間、魔法の槍は艦長が考えるよりも至近に擦り寄って来ていたのだ


着弾の閃光が走る

286 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/21(月) 14:43:27 [ KYi//xS. ]
扶桑に最終的に向かっていた対艦魔法の槍は64発、うち撃墜に成功したもの、29発、撃墜率約45%
七隻の艦隊の防空火力でここまでの効力をあげた事自体、どれだけ艦隊が奮戦したかわかろうものだ、そして防空体制のなっていないうえに上空直援すらない艦隊がどれだけ攻撃側にイニシアチブを奪われてしまうのか、そしてそれが与えた攻撃力が帝國の軍艦、防御力に於いて最強と言える戦艦に叩きつけられたらどうなるのか


被弾した36発の行方はこうだ
第一砲塔、第二砲塔部分に3発
艦橋部分に14発
左舷艦橋横、一番高角砲周辺に3発
三番砲塔両脇の連装機銃座に両舷合わせて7発
煙突横、右舷副砲座と連装機銃座にかけて2発
四番砲塔上部に2発
後艦橋の高角砲座に3発
五番砲塔に1発


これらが時間差をおかずにほぼ同時に着弾した、着弾の傾向として前後の艦橋、機銃座のついた砲塔、缶室、機関室、人間の居る位置に的確に命中したことが後の戦訓に生かされ、対艦魔法の槍が着発信管であることから、海防艦らに金網や装甲外板が取り付けられることになる
だが今は置いておこう、僚艦の乗員からはまるで炎が覆い尽くしたようだったといわれた扶桑の被害はどうだったのか、だ

287 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/21(月) 14:46:11 [ 2WXBLbPM ]
対艦魔法の槍は第一砲塔に天蓋に一発、第二砲塔前循に二発が激突し爆発、そのいずれもが装甲貫通に失敗して爆発力の全てが中空へと拡散していく、ただし、第二砲塔上部に設置されていた三連装機銃座を巻き添えにして
前艦橋へは14発の被弾、あまりに被弾数が多かった為に特定の被弾箇所をはっきりと指摘することはされていない、ただ、扶桑艦長の転舵が効き出した直後で艦が傾斜していたため、昼戦艦橋に狙いを定めていた魔法の槍は左舷側は目標よりも上部、主砲指揮所並びに電探等の装備品に多数が命中し、右舷側は昼戦艦橋の下、副砲指揮所付近に直撃、少なくとも8発が命中したのは間違いない。最悪の場合6発が命中したとされる主砲指揮所は壊滅、ただいびつな残骸を残し、かんざしとも、毒電波とも呼ばれた電探は跡形もなく吹き飛んだ
副砲指揮所に命中した魔法の槍はその爆発力で上部にあるものを吹き飛ばそうとするも、載っている物が加古と違い重量があり過ぎた、爆風は副砲指揮所にある人間を含めた全てを窓から海へ放りだし、それでなお納まらないエネルギーが副砲指揮所周辺に火災を生じさせつつ、特徴的な扶桑の艦橋のバランスをさらに悪い物とした、そう。さらにバランスの悪いものに

288 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/21(月) 14:47:23 [ jqMmKaZo ]
左舷から艦橋基部の高角砲座にに突っ込んだ対艦魔法の槍は扶桑の艦橋にさらに振動と衝撃を与えて死と破片を撒き散らした高角砲座とその周囲の単装機銃が破壊され、直撃した高角砲座はどうにもならないが、向き出しの単装機銃座の兵は無残な姿を二番砲塔にその身を持って刻みつけ
三番砲塔両舷に配置された連装機銃座六基も相次いで飛来した7発の魔法の槍で破壊され、甲板はめくれあがり、見た目にも大きい破孔を出現させた、しかし第二次改装で行われた装甲甲板の増量で艦内部には大きな損害はないようにみられる
右舷側、煙突横の15㎝副砲にも対艦魔法の槍が突入したがこれもケースメイトとはいえ張られた装甲に弾かれて爆発、砲身こそ持って行かれたものの、比較的軽傷で済んでいる
四番砲塔は他の砲塔と同じく天蓋に配置された三連装機銃と単装機銃を吹き飛ばされ兵員を殺傷した、また五番砲塔も同様の被害を被った
後艦橋に命中したそれは高角砲座を落下させ、その下にあった殊勲の噴進砲と機銃を押し潰し被害を拡大させた、幸いにも次弾を持ってくるところで弾体が無く、誘爆はさけられた。高角砲座が楯にもなった為、後艦橋の機能も維持され、副長が艦橋の様子を見て別個に指揮を採り始める

289 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/21(月) 14:51:01 [ JaGeE3cU ]
たとえ直接の命中弾がなくとも艦橋の中はひどい有様だった
『くぅ・・・艦長、艦長!どうなっt!!』
左近丞はお猿の腰掛けと呼ばれる椅子から投げ出されて床と羅針盤に叩きつけられて肋骨を折っていた
『司令・・・』
艦長は海図台に挟まれて下半身が潰れてしまっていた
『桜の下で春死なむ、そは如月の望月のころ・・・靖国の桜は、さぞ、よい詩を詩えるのでしょうな』
ふっ・・・と笑うと艦長の目が力を失う
『ああ・・・そうだな、艦長』
航海長は後頭部を計器に打ち付けて事切れている、見張り員達は首がなかったり、投げ出されて落ちたのか影も形も見えない、まだ無事なのは自分一人らしい
『かしいどるな・・・げほっ』
床が爆圧によってか膨れてるのもあるが段々と傾きを増しているように見える、吐いた咳に血が混じる・・・肺に達しているようだ
『艦橋!応答してください!艦長!司令!!』
伝声管は無事らしい、痛みを堪えてたどり着く
『私だ』
『艦長!松浦です、ご無事でしたか!今すぐそこを退去してください!艦橋が倒れようとしています!』
ああ、艦が傾いでいるわけではないのか、それはよかった、艦の水平が維持できていればなんとかなる
『君の方は無事かね?』

290 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/21(月) 14:53:35 [ 5k.cDmFg ]
『頭を打ちましたが、無事です!トップは揺れますが、まさか負傷なされて・・・!』
『無事か・・・目論見通りだな、よかった。ああそうだ、動けそうにない、年だしな・・・それに』
気付いてなかったが階下から煙が流れてくる
『火災でおそらく通路が遮断されておる』
艦橋が傾きをます、長くはないだろう
『艦橋の消火に人を回すより他に人を回しなさい、被害状況は副長から君のところに来たのだろう、後艦橋は無事ということだな。指揮は君に任せる』
『無駄、なのですね?』
『ああ、生者は存在しないものと考えたまえ、倒れる際の避難を確実にな』
『・・・中将の指揮下で、楽しゅうございました・・・指揮を、受け継ぎます』
『ああ、君も、みなも有能で、良い部下だったよ、私も楽しかった』
伝声管の弁を閉じる、立ってられるうちに羅針盤に身体を結び付けなければ・・・
『豊久公のように、七度突き上げられ叩きつけられ、それでまだなお生きろ、扶桑よ』
左近丞の出身地で、いにしえの英雄を守って死んだ武将の名をあげる
ぽろぽろと傾きが増したせいか前艦橋で被弾のためボロボロになって固定が外れた部品や残骸などが落ちていく
『これで、しまいだな』
艦橋が大きく振れた

291 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/21(月) 14:56:01 [ WERj3NJg ]
『今回はいい湯とはいかんかったのぅ・・・みんな無事かっ!?』
吾妻が背中に落ちて来た部品を払い除けつつ問う
『なんとか・・・みんな無事です、気絶した者も居るようですが』
兵が気絶した仲間の兵を介抱している
『前の機銃座は壊滅か・・・』
二番砲塔上の機銃座はひどいことになっている
『新庄君、機銃は撃てるか?』
『え・・・ええ、はい、大丈夫かと』
吾妻が向こう側を見ている、新庄が目を追ってみてみると加古がワイバーンに襲われていた・・・あれではまともな反撃も・・・
『隙を見せんことよのぉ、ま、扶桑は大きい、生き残りの機銃座もおおかろうて』
『はい・・・!』
喉がカラカラだ、今度はワイバーンごと突っ込んでくる気かよ

カランカラン

『うん?』
何かが落ちて来た、どこかの部品か?
『と、統制官!統制官!!上、上っ!!』
『なにっ!?敵か!?』
見れば艦橋が大きく傾いでいる、右舷側に向けて・・・これは間違いなく、倒れる!!
『・・・みんな逃げろォッ!!!気絶した者は叩き起こすか背負え!!急げ急げ!!!』
自分も気絶した兵を背負う
『左舷側は被弾してて足の踏み場が!』
『下敷きよりはマシだろうがっ!構わず走れぇっ!!!』

292 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/21(月) 15:00:06 [ BWp6c0w2 ]
『はぁっ・・・はぁっ・・・!やったわ!』
比較的安全な高度まで昇ってから、様子を伺う、あの海を動く城塞がもうもうたる爆煙に包まれている
『そ、そんな・・・!』
しかし、それはまだ動いていた、あまつさえ、まだ火の玉すら吐き出していた、一体この攻撃にいくらの資金と労力、犠牲が払われたというのだろうか・・・それが無駄だったというのか!!
『あっ・・・!悪魔の塔が・・・!!』
ひどくゆっくり、ゆっくりと、彼等のうちで悪魔の塔と呼ばれている扶桑の艦橋が倒れていく
『・・・』
何故だろう・・・対艦魔法の槍を命中させたときの興奮も、喜びも、まだ動いているという悔しさもどこかに失せてしまった。ただ・・・沈む気配は無いが、偉大なる者が去った、そんな気がした
『我が騎士団の名に於いて、いつかまた、天上にて戦わん』
サーベルを抜き、肩にあてて礼を失しないようにする・・・誰に対してかはわからないが。部下も続く
『隊長!味方船団です!』
『イェンサー様の水軍か・・・騎士道に浸ってるわけにもいかないわね、小型艦を抑える、健在なものは続きなさい!!』
『おおーっ!!!』



『空中騎士団はよか仕事ばしもした!次は、おい達の番たい!!』

293 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/21(月) 15:05:01 [ 9TlQkVJc ]
投下終了〜


扶桑がえらいことになりました、しかし次はまだまだ水上決戦だ!!!五万人規模の大船団が向かってきます


と、いろいろコメント付けたしはあるのですが夜に・・・回させてください・・・指が痛い、これだから携帯は・・・(涙)

294 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/21(月) 18:11:18 [ 6KnBHENQ ]
乙です。

って携帯電話ですか!!!

295 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/21(月) 18:34:53 [ MsAR/znU ]
投下乙

まだ携帯だったのか…
WIN98SEの800Hz程度なら中古で1万半ば
CRTモニタなら3000円程度で買えるし
あわせて2万あれば何とかなるんじゃないか?

296 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/21(月) 20:06:47 [ 8kGssc1U ]
長崎県人さん、投下乙です。
全方向からの攻撃だったのが幸いだったかもしれませんね。
着発信管とはいえ、一方向から一斉に36発も食らったら被害がより大きくなってたかもしれませんし。
しかし、自力航行可能とはさすが戦艦。

扶桑の艦橋を倒したのは長崎県人さんの悲願ですか?(笑)
だいぶ前に扶桑の艦橋折りたいと言っていたような気が…。

297 名前:名無し三頭兵@F世界 投稿日:2006/08/21(月) 21:39:48 [ zl8xxdK. ]
長崎県人さん投下お疲れ様です。
扶桑はこれは廃艦ものの損害ですね。
帝國海軍の受ける衝撃が想像できます。

298 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/21(月) 22:17:17 [ ToMVwDhk ]
>>274
感想どもども。

アスファルト舗装ですけど、つい最近まで国道は酷道でしたし。。。

フランベリアは帝国に取って第二の満州みたいなものですし、精油所も近くにあるので、
わざわざ内地からアスファルトを持ってくるより安価に舗装できまつ。

といっても、フランベリアの統治に深入りする気がないので、帝国直轄都市と油田地帯、主要
鉱山を結ぶ街道にしか舗装してません。



といかにも、前から設定していたように思わせる罠( ´∀`)

299 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/21(月) 22:55:09 [ ToMVwDhk ]
長崎県人氏、もつかれ。
漏れも携帯っすorz


23時30分ぐらいより投下開始

300 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/21(月) 23:55:40 [ ToMVwDhk ]
予定時刻過ぎたけど 投下

帝国異史 第二部

10
 このある程度整理されながらも、その町並みの奥では雑然とした様が、
街の景観を趣のあるものへと変えている。
その中の一軒に、彼女の目が留まる。
細かく言えば、槌と鍬が互いに交差している看板にである。

 これは何を商売にしているかを、文字の読めない人間にも判りやすいよ
うにしていた。
例えば、ジョッキならば酒場であるし、鋸なら大工だし、鋏なら仕立て屋というように。
なら槌と鍬という一見なんら関連のない看板はと言うと、
斡旋屋、口利き屋の事だった。

301 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/21(月) 23:57:26 [ ToMVwDhk ]
 彼女はその看板の下にアス商会と書いているのを認めると、扉を押して中へと進んだ。

「いらっしゃ・・・?!」
 新たな客が入って来たのに気付いた店員がいつもどおりに、いらっしゃ
いませ、と言おうとして絶句したのに気付いた中の人間が一斉に振り向いた。
そして、絶句した店員同様、言葉には出さないものの驚いた。

 彼女にとってその反応は何時もの事だった。 
旧近衛軍士官、しかも竜騎兵の制服を今でも着ているのだから。
流石に階級章ぐらいは既に外している。
軍そのものがないのだから。

 彼女はまたかと思いつつ、静まり返った店内を礼儀正しく無視すると、
呆けたように見つめる店員に、仕事があるかどうか尋ねた。
その店員は我に返るや、慌てて帳簿を広げると首を振った。
 残念そうな顔をした彼女が立ち去りかけた時、
店員が何かを思い出したようで、彼女の半分後ろを向いた姿に声をかけた。

「そうそう、帝国軍が竜騎兵の生き残りを探しているみたいで、私どもの方に
も見つけたら憲兵本部の方に来るように、言うよう頼まれまして」
「今更私を捕まえようとしているのかしら?」

302 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/21(月) 23:59:06 [ ToMVwDhk ]
「いえ、旦那様が帝国人から聞いた感じでは、生き残りを処罰しようなどと
いった感じではなかったそうですが。
むしろ、普通の仕事の依頼に近かったそうですから。
ああ、そうそう、憲兵本部に来るだけで、足代が出るそうですよ?」
 その言葉に彼女は、思わず首を捻っていた。
処断したり敗残兵狩りでなければ、一体何だというのだろう。
 それに憲兵本部に行くだけで、足代が出るなど信じられない。

11
 帝国陸軍憲兵隊と言えば、フランベリア人に恐れられる存在だった。
帝国のフランベリアに対する治安維持は、一般治安組織としての現地人警備兵
や自警団、そしてそれらを指揮監督すると共に、警備兵レベルでは対処できない
凶悪犯や殺人犯の捜査を行うのが陸軍憲兵隊である。
 また、近在の貴族や豪族のレベルでは解決できない、大規模な山賊や野盗の
討伐は、独立混成旅団がそれぞれ治安を担当している。

303 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/22(火) 00:02:47 [ ToMVwDhk ]
 さてフランベリアに展開する陸軍憲兵隊は、フランベリア憲兵司令部を頂点として第一〜七
憲兵本部を 、五都市と帝国本国との接点である港湾都市、そして油田地域におき、各憲兵本部
の管轄にある帝国直轄の鉱山に、憲兵分隊を配している。
更に幾つかの交通の要衝と港湾部には、憲兵分遣隊を置いてある。

 ここからフランベリアの警察機能は、行政警察として現地警備兵が、司法警
察として憲兵が、また皇太子軍の決起にも関わらず、中立を保ち帝国に従った
貴族や豪族の領地においては、彼らに治安責任の義務があるとした。

12
 だから彼女のような存在を憲兵が探していると聞いて、彼女が不審に思うのは
当然だった。

「どうされます?いってみますか?」
 その言葉に彼女は思考を現実に戻すと、足代がでるなら行ってみるのもいいかと
思い直して店員の言葉に頷き、紹介状をもらうとその足で憲兵本部へと
向かったのだった。

 憲兵本部はこの街の旧市街にあった。
旧いが瀟洒な造りの建物だった。
元は貴族の館か何かだったのだろう。
今はお役所らしく、詰め所が門に置かれている。

304 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/22(火) 00:07:12 [ ToMVwDhk ]
 彼女は門番に来意を告げるや、少し待つように言われた。
この人も憲兵なのかな、などと思っていると門番のそれほど大きくはない声が、
彼女の耳に飛び込んで来た。
どうやら、中と話をしているらしい。

 何やら黒い小さな箱に向かって話しかけているのが、視界に入る。
 あれは何なのだろう?
魔法か何かなのだろうか。
しかし帝国人が精霊に話し掛けていると所を見た記憶は、彼女にはなかった。

 なぜなら、魔法使いは須らく精霊に話し掛ける事ができるからだった。
というより、精霊に話し掛けられなければ、魔法使いになる事は出来なかった。

 そんな事を思っていた彼女に、紹介状を返すと門番が声をかけた。
貴女に会われるそうだから、建物に入って二階の右側、三番目に行くように。
そう言うと門番は彼女に興味を失ったようだった。

 言われたようにその部屋の前について中に声をかけると、入るように指示されたのだった。

305 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/22(火) 00:10:57 [ ToMVwDhk ]
投下完了。

憲兵の組織編成調べてたら、日曜の第三次投下計画は、しぱ〜いしますた(死

306 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/22(火) 06:47:22 [ k/hCqbfE ]
>>259
軍機につき詳細は……
>>260
ありがとうございます
>>261
うーん、近々演習シーンを入れる予定なのでそのころに判明させようかな

でSS投下

307 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/22(火) 06:47:58 [ k/hCqbfE ]
ユフ戦記2
戦争計画 player A 中編2


クロイツェンの話は続く。

「第十六艦隊を叩けば、速やかにライアールを早期に安定化し敵主力の逆襲に備えます。
敵主力の母艦は四隻、これは帝國海軍第一航空艦隊の全航空兵力でありますが、同時に帝國の緊急展開可能な母艦の全てです。
ライアール奪還に来寇する敵主力を近衛艦隊で迎撃します。
我々が致命傷を負わせられなくとも、ライアール攻略のためにはセンカンの艦砲射撃と上陸船団の接近が不可欠ですから、これを緊急展開した基地航空兵力とユウジルド艦隊で迎え撃ちます。
ここで敵に多大な出血を強くことにより、早期講和が可能になると思われます。
あとは渉外努力ということで。」

308 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/22(火) 06:49:16 [ k/hCqbfE ]
クロイツェンは渉務卿に目配せをする。

「勿論、皇主陛下とお国のために出来うる限りのことは致します。
現在も避戦のための交渉を続けておりますゆえ。
しかしその前に疑問点がございます。」

「ええ、何なりと」

「なんと言っても、敵主力が即座に来寇しない場合。
ライアールに敵艦隊が居座れば皇国本土の防衛上好ましくないのはわかりますが
必ずしもくるとは限りますまい。
我々としてはライアールを抑えておけば大内海での交易は行えるのですが、
帝國が我々の交易を妨害せずにひたすら戦力の拡張に努めれば厄介では?」

一同は、もっともだという顔をして頷く。
戦争には相手があるのだから、こちらの思惑通りとに行くとは限らない。
むしろ、歴史上脚本どおりに進んだ戦争など数えるほどだ。

309 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/22(火) 06:50:46 [ k/hCqbfE ]
現時点では何とか洋上兵力で対抗できるが、
それは帝國が本格的な戦力拡張を行わなかったからであり、
戦時ともなれば本腰を入れてくるであろう。

かわって答えたのはアウステルだ。
確かに艦隊司令の職分で答えられる問題ではない。

「ええ、そのような悪夢は見たくもないですが、
とりあえず軍では長期戦を想定して予測を立てました。
帝國の機械式飛竜は性能が向上し続けますが、
ワイバーンは現状で頭打ちです。

さらに確度の高い情報として、
帝國は母艦の数を拡張しようとしているとの話が入っています。
敵の防諜活動のおかげで詳しいことはわかりませんが最低二隻、
最大で六隻の母艦が建造もしくは計画中とのことです。
航空兵力が質量ともに向上した後に纏めて叩きつけられては打つ手がありません。

敵が戦力を整えた後に反攻すれば、
三ヶ月で近衛艦隊とユウジルドの主力が小内海の藻屑となります。
六ヶ月以内には基地航空戦力も壊滅します。
その後は沿岸の主要都市は艦砲射撃で、内陸部は航空攻撃で壊滅的な打撃を受けるでしょう。
そして制海権を奪われ、国力の回復の出来ない我々は反撃の機会もないまま降伏します。
これが考えうる最悪の状況です。」

310 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/22(火) 06:53:47 [ k/hCqbfE ]
アウステルは一つだけ隠し事をしているのだが、
それを知っているのはこの場では宰相のみである。
帝國流に言えば、敵を欺くには何とやらである。

アウステルはいったん息をつき
「短期決戦が望ましいですが、
長期戦の場合でも敵主力にまず傷を負わせなければいけません。
そこで我々は敵主力を誘出する策を練りました。

敵が主力を温存する場合、フェンダートに上陸、
ここに艦隊根拠地を設けます。」

おお、と部屋の中が騒がしくなる。
誰もが帝國におけるフェンダートの重要性を熟知している。

フェンダートとはガルム大陸の北側およそ400リーグに位置する島である。
大陸沿岸から離れているため、列強の商船や艦隊は近づけないが、
皇国水軍の航海技術ならば造作もない。

帝國はそこに貿易の一大中継地を作り、
そこから大内海を経て本国へ物資を搬入している。
まさに帝國のアキレス腱であるが、二大海軍以外には辿り着くことすら出来ない島だ。
無防備であっても不思議でない。

「フェンダートを占領されれば、帝國も主力を出すのでは?」

たしかに、先手を取って主導権を握れば、
有利に戦争を遂行できるかもしれない。
相手が超大国であってもだ。

311 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/22(火) 06:57:45 [ k/hCqbfE ]
投下終了

312 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/22(火) 08:46:10 [ 2lSfKk9s ]
訂正とか書こうとしたら寝ちまったよぃ( ̄▽ ̄;)


×『艦長!ご無事でしたか!!!』
◯『司令!ご無事でしたか!!!』
です


>>294さん>>295さん、大本営発表さん
パソはあるのですが投下の仕方がわからず、今までの投稿は全部携帯から(携帯の未送信メールに1024半角文字まで書いて書き貯めておいたのを、切り取りとかして投下してます、これなら一気に投下が可能ですしね)ですから右手痛い痛い、今回長かったですから、ご心配ありがとうございますm(__)m


名無し三等兵さん
覚えられてましたかw
しかし誰もが考えてしまうあのくびれ、あぁくびれ!
被害は一方向というより砲塔部分への被弾が多かった事が被害を減らした原因でしょう、航行は可能ですが、火災を広げぬよう速度はおとさざるをえないでしょうね、沈む気配はカケラもありませんが


名無し三頭兵さん
いえいえ、廃艦などありえません、米戦艦もマストが折れるのは良くありましたし、真珠湾でも倒れてます、が、致命傷ではありませんし戻せれば修復はできます、扶桑にそれをするだけの価値があるか、が今後の問題です

シロべえさん
投下乙です、見てますよ〜
しかし四連装砲塔・・・帝國海軍も遂に変態(ry

313 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/22(火) 11:15:05 [ yq9lkYzY ]
どうも。昨日はトイレで蹲っていたくろべえです。
……『お盆さようなら記念飲み会』ってなんなのさ。


大本営発表様、投降乙です。
彼女の様な兵隊崩れの傭兵は結構いそうでうよね。今はまだ良いけど、職が無くなれば困った存在になりかねないなあ。
江戸時代でも浪人が一揆を扇動した例は結構あるし、彼等そのものが盗賊化する可能性も。


長崎賢人様、投降乙です。
扶桑哀れ。こりゃあ廃艦か、それとも空母に転用か……
(でももう艦齢三十年モノだからなあ。費用対効果が)


シロべえ様、投降乙です。
彼等は総力戦を知らないのでしょうねえ。『戦争とは。相手の妥協を引き出すための手段に過ぎない』という思い込みがあるのでしょう。
まあ帝國とて総力戦に関してはWWⅠでの又聞き程度の理解であり、彼等と五十歩百歩なのですが。

314 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/22(火) 11:15:50 [ yq9lkYzY ]
>>275
>くろべえさん、新型海防艦や新5500トン軽巡の説明に同盟国や邦国へ「輸出」しているような記述がありますが、機関の整備は大丈夫なのでしょうか?

もちろん整備は帝國企業が担当しています。中東の小国がF15とか輸入した様なもの、とても自力では……

あと今気付いたのだけれども、改阿賀野はともかく、新5500トンに61センチ魚雷の四連装発射管を並列配置出来るかなあ? 出来なきゃ2基じゃなく1基になる……

>>276
>全体数を感じればそれ程多くは無いと思いますが……実数はくろべえさん次第でしょうw
ダークエルフの絶対数そのものが少ないですからねえ。

>>277
>獣人力士
獣人以外勝てないだろうなあ……

そういえば、この世界では結構現在と違った武道体系になるでしょうね。
柔道一つとっても講道館の他にも組織があったらしいし。

>>278
>これが、後のウェクスフォード家繁栄を盤石のものとした理由の一つである!
一族を増やすのは当座の緊急事項ですからねえ。
後にウェクスフォード家は邦國王家に昇格するなんて裏設定もあったりなかったり。

315 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/22(火) 11:16:20 [ yq9lkYzY ]
さて、SS投下。

316 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/22(火) 11:16:56 [ yq9lkYzY ]
「帝國召喚」外伝4 『辺境警備隊隊長よもやま物語』番外3-2 戦闘

3、

中隊指揮班の臨時指揮所として一時接収した小屋で、黒部中尉は情報を整理していく。

事前情報を基とし、これに現地軍や地元住民からの情報を加え修正していくと、どうにか『地図らしきもの』が出来た。

地図と言っても、概略図に注意事項を記入しただけの実に簡素――いい加減ともいう――なシロモノである。

当然、等高線など無いし、距離や位置関係も不正確極まりない。

が、それでも有ると無いとでは雲泥の差がある。

何の情報も無しに戦うなどという事態は、少なくとも帝國軍指揮官にとっては悪夢そのものだ。こんな物でも、無いよりは遥かにマシだろう。

(実際、各部隊が各地で作成したこれ等の『地図』――というよりも地理情報――は、タブリン軍区、ひいては帝國の『財産』となっている。
前出の『最大10日間の現地滞在』の時も、周辺地域の様々な情報を出来るだけ収集することが求められていだ)


黒部中尉は、完成した『地図』に匪賊の情報を記入していくが、直ぐに筆を止めて地図を睨みこむ。


――何故、連中は『こんな所』に逃げ込んだ?


湧き上がった疑問に首を捻る。

317 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/22(火) 11:17:30 [ yq9lkYzY ]
いくら追い詰められて立て篭もるにしたって、此処よりもいい場所が他に幾らでもあるのだ。何もこんな山とは名ばかりの、平野のど真ん中で孤立している小山なんぞに逃げ込む必要など無いのである。


第一、こんな小山では、数百人分の食料や水なんてとても……


そこで考える。

追い詰められて逃げ込んだ以上、手持ちの食料はそれ程無い筈だ。せいぜい三日分が限度だろう。

(まあ竜車で逃げたのならば話は別だが、少なくとも集まった情報からは、竜の存在は確認できない)

連中が立て篭もってから既に一週間。どんなに引き伸ばしたとしても、もう食料も水も無い筈だ。


……けれどそれならば、麓に降りて食料を調達しようという奴が出てもおかしくは無いのだが。


そういった報告は無い。

やはり、食料はまだあるのだろうか? だとしたら竜車を持っている可能性が高いのだが。

堂々巡りだ。


何故、これ程食料の有無に悩むかといえば、黒部中尉としては出来れば飢えて弱った所を襲いたいからである

318 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/22(火) 11:18:09 [ yq9lkYzY ]
が、攻撃開始はそれ程引き伸ばせない。

この討伐にはおおよその時間制限があり、下手に攻撃開始を引き伸ばせば、実際の戦闘時に時間制限に縛られてしまう。これは好ましくない。

また、初の中隊指揮――それも慣れない中隊を――であることから、必要以上に気張っているせいもあるだろう。

(精鋭である歩兵第二八連隊の出身というプレッシャーも否定できない)

しかしこれ以上は幾ら考えても所詮は憶測、想像でしか無い。


……まあ、偵察隊の報告如何だな。


そう結論付けると、床に寝っころがった。


4、

帰還した偵察隊からの報告は、意外……とはいかないまでも、一寸した認識の転換を黒部中尉に促すものだった。

「……それは、本当か?」

「ハッ! 事実であります!」


――逃げ込んだ匪賊は、只の食い詰めた農民集団に過ぎない。


故に、竜どころか刀槍の類すら持っていない。せいぜい手製の弓矢に棍棒、木の槍が精一杯。

319 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/22(火) 11:18:39 [ yq9lkYzY ]
「……ならば何故、我等が出る必要がある? 現地軍だけでも容易に片が付くだろうに」

当然の疑問。

確かに、数こそ展開している現地軍とほぼ同数であるものの、報告によれば『匪賊』の半数以上は女子供に老人だ。武器の差も考えれば、十分彼等だけでも制圧できるだろう。

そして彼等が動かないからこそ、黒部中尉は山の『匪賊』を『ある程度以上の力を持つ戦闘集団』と考えたのだ。

「中隊長は赴任したばかりなので、御存知無いかもしれませんが……」

現地軍の連中、戦意が乏しいのですよ。余り信用しないことです。

中隊指揮班付きの准尉が耳打ちする。

「……サボタージュか?」

「そんな立派なものじゃあありません。まあ支那兵みたいなもんですか」

「つまりは烏合の衆、ということか」

「そんなもんです。追い詰めたことで、取りあえず『義務は果たした』とでもいった所でしょうか?」

まあ流石に直接命令すれば連中も攻撃するでしょう、と付け加える。

「いらん! そんな連中など何の役にも立たん!」

現地軍の余りの怠慢さに、黒部中尉は怒りを込めて言い捨てた。

320 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/22(火) 11:19:16 [ yq9lkYzY ]
5、

タブリンでは、貴族の所領から軍役税を徴収しているため、貴族に軍役の義務は無い。

(故に、貴族達は少数の警護兵しか保有していない)

これはかつてタブリン王国の大きな強みとなったが、腐敗後は寧ろ軍の弱体化に結びついていた。

……この世界において諸侯という存在は、良くも悪くも軍の中核なのであろう。


タブリン軍の総兵力は公称1万、定数8000、実勢7000だ。これは実在人口の0.3〜0.4%の水準である


これで竜兵5個軍団、歩兵15個軍団を編制する。

歩兵の場合、

『班』は5人、『分隊』は2個『班』で10人、『小隊』は5個『分隊』で50人、『中隊』は2個『小隊』で100人、軍団は5個『中隊』で500人。

竜兵の場合、

『分隊』は5騎、『小隊』は2個『分隊』で10騎、『中隊』は5個『小隊』で50騎、軍団は2個『中隊』で100騎。

この軍団までが固定編制である。

(ちなみに『中隊』以下の名称は、帝國軍による意訳)

321 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/22(火) 11:19:50 [ yq9lkYzY ]
軍団が複数集まって軍となるが、この軍の司令官を将軍と呼ぶ。

上記20個軍が、王都及びその周辺地域を守護する近衛軍、機動打撃を任ずる竜軍、各地域の警備を担当する北軍、西軍、南軍の計5個軍(各軍3〜5個軍団)に集約されているのだ。

……尚、輜重部隊は存在しない。

手持ち分以外の物資は各地の官衙の備蓄や徴発に頼り、輸送も徴用した付近の住民が行うのである。

これ等一連の行動も、全て現地の官衙が差配する。軍は少数の警備兵を出す程度であろうか。

このため国外の遠征は農閑期以外は困難であり、農閑期でも能力不足に起因――なにせ全くの素人だ――する輸送能力の限界から、大軍の長期遠征は事実上不可能となっていた。

これでは折角の常備軍も、宝の持ち腐れであろう。

要するに、タブリン軍は自己完結能力に欠けた軍だったのである。

(タブリン軍の軍事行動は、現地官衙との連携が不可欠となっているが、これは軍の叛乱を防止するための措置だ。
タブリンの軍人は『卑しい出』が多いため、タブリン貴族は彼等を信頼してはいなかったのである)

また各級指揮官は直卒部隊の長も兼ねているのに加え、手足となる司令部や本部も存在しないため、全般指揮に集中出来ないという欠点もある。

このため、各級の指揮官は軍師や副官、従卒といった共廻りを私費で雇用しなければならない。

322 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/22(火) 11:20:20 [ yq9lkYzY ]
タブリン王国において、軍はある程度の実力重視を謳っている――このため軍人の位は他の官と比して低い――が、これでは必然的に指揮官は裕福な者に限定されてしまう。

事実、大将軍や将軍位、それに軍団長位といった高位職は中級貴族、『中隊』長の様な中堅職でも下級貴族でないとなれない。平民はせいぜい『分隊長』止まりで、どんなに努力しても『小隊長』がやっとだろう。

(それでも平民が官になるには軍に入るしか道が無いが)

……所詮、現実とはそんな物であった。


ちなみに、各軍団の兵士は志願及び徴集制併用であり、志願で足りない分を徴集で補う制度だ。

軍の規格化といい、兵の集め方といい、かなり異色の軍事制度である。

一見先進的とも言えるかも知れないが、上記の様に欠点も多い。

そもそも軍事制度などというものは、その時代、その地域に適したものがあるのだ。この場合は些か『不適格』と言うべきであろう。

その証拠に、タブリン軍は昔から一度崩れると弱い。

踏み止まって支える者がいないからだ。

これが他国であれば、必ず幾らかの諸侯や騎士が踏み止まる――忠誠心にせよ名誉心にせよ――であろうし、その指揮下の兵も諸侯・騎士への忠誠心や恐怖心といった感情から奮戦する筈だ。

これがきっかけで逆転したり、無事撤退できた例は数多い。

が、タブリン軍ではそれを期待できない。指揮官と兵は主従でもなければ、領主と領民でも無いのだから。

これを考えれば、やはり『早過ぎた』軍制なのであろう。

323 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/22(火) 11:20:51 [ yq9lkYzY ]
6.

黒部中尉は、『手助け無用、但し一人も逃がすな』と軽く現地軍指揮官を呼びつけて軽く脅すと、中隊に出撃命令を下した。

竜の警備に第一小隊から小銃分隊1個を割き、中隊を前進させる。

第二、第三小隊を左右に展開させ、指揮班は第一小隊と共に中央を進む。

その後方には、中隊長直属の集成擲弾筒隊。

各小隊から擲弾筒分隊を引き抜き、臨時に編成した部隊である。

これは黒部中尉のかつての上官が得意とした戦法だ。

その上官――第二八連隊時代の直属の中隊長――は、『中隊にも独自の支援火力が必要』として、よくこの戦法を用いていた。

まあ、小隊長達からは甚だ不評であったが。


「撃て!」

黒部中尉の命令一下、3個分隊計9門の擲弾筒が火を噴く。

軽い発射音と独特の飛翔音、その後の一斉爆発。

その瞬間制圧火力は凄まじい。

各筒4発、計36発の擲弾を十数秒で発射する。

「前進!」

324 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/22(火) 11:21:22 [ yq9lkYzY ]

敵の正体が判明した以上、下手な作戦は無用だった。

ただ狩り出すのみ。

爆発音で腰を抜かした者や、もつれた足で必死に逃げ出そうとしている者を一人ずつ『始末』していく。

女子供や痩せ細った体に哀れを覚えるが、生きるためとはいえ彼等は許されぬ一線を越えた連中である。

加えて帝國の帰順呼びかけも無視するという、二重の犯罪を犯した罪人。見逃す訳にはいかない。

見せしめのためにも、法と秩序を守るためにも、そして帝國の言葉の重みを保つためにも、彼等は死ななくてはならぬのだ。

全ては帝國のために。


その後、数時間足らずで頂上に着き、掃討は終了した。

此方が小勢であることから、それなりの数の匪賊が中隊の網を突破したが、そこから先は現地軍の仕事である。

幾ら士気が低いとはいえ、その始末位は出来るだろうと黒部中尉は判断していた。

(そんなことも出来なければ、さすがの帝國も軍を解散している)


……まあ出来なければ出来ないで、きっちり責任をとらせるが。


黒部中尉は不敵に笑った。

彼は、匪賊共が逃げ切れないであろうことを確信していたのだ。

325 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/22(火) 11:21:52 [ yq9lkYzY ]
7、

「……無様、だな」

黒部中尉の声が響く。

結局、現地軍は10人程の匪賊を取り逃がした。

それを詫びる現地軍の指揮官を見下ろすような形で、黒部中尉は先程の発言を行ったのだ。

指揮官も頭を下げるしか無い。

如何な王国将軍に次ぐ地位にある旧王国軍軍団長が一人とはいえ、帝國軍の将校には逆らえないのである。

(しかも大失態を起こした後だ)

「貴公は、鼠狩りも出来ぬのか?」

「はっ、只今全力を挙げて追跡を……」

「……その必要は無い」

指揮官の言葉を遮る。

「先程、付近の農民達が取り逃がした匪賊を全て狩り出したそうだ」

助かったな?

そう言い残すと黒部中尉は席を立ち、小屋から出て行った。

326 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/22(火) 11:22:23 [ yq9lkYzY ]

これが黒部中尉の確信の正体だった。

農民達に、ある噂をばら撒いたのである。

逃亡した匪賊を捕まえれば、匪賊一人につき黒麦を大枡一杯(約2L)分、死んでいたらその半分授ける。――と。

効果はてき面、農民達は血眼になって匪賊を追い立て、狩り出した。

悪辣だが、非常に効果的な手と言えよう。


これで今回の任務は無事終了した。

酷く後味の悪い結末ではあったが、匪賊を掃討する以上、彼等には徹底的な恐怖を与える必要があったのだ。


8、

黒部中尉は、部下の小隊長達と共に、近くの村長の家で持て成しを受けていた。

周囲の村々からの持て成しだ。

(これはタブリンにおける『しきたり』の一つである)

まあ『一人当たり自作の酒を小枡(約200mL)数杯分に肴を幾らか』程度のものだが、それを人数分ともなれば、これを賄う村々の負担は相当なものだろう。

幸い、脅しが効いたのか現地軍は早々に陣を引き払ったため、村々の負担は大分軽くなった。

が、それでも中隊だけでも100人以上という数だ。用意した農民達の苦労は相当なものであったに違いない。

327 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/22(火) 11:22:53 [ yq9lkYzY ]
また、酒肴とは別に指揮官への接待もある。これは全員分の酒肴に匹敵するかそれ以上の負担だ。

(というより、こっちがメイン)

この場合は中隊の士官、准士官の六人ではあるが、それでも中隊全員分への酒肴以上の物資と気配りとを消費していたのである。


籠には山盛りの白パン(!)や山で採れた様々な果物。

皿には溢れんばかりの肉、これは仔牛一頭を丸々調理したものだ。

鍋には小麦を獣乳やチーズで煮込み、それに野菜や先の肉をたっぷりと加えたもの。

酒はわざわざ買い求めた上酒、肴は雑魚では無い魚の干物。


まさに農民達の血と汗と涙の結晶だった。


……年に数度の祭りでも、これ程の食事は出来ぬであろうに。


黒部中尉は、この『しきたり』のあまりの馬鹿馬鹿しさに呆れ返る。

が、これは数百年に渡る『しきたり』でもあるのだ。『郷に入りては郷に従え』、内心の感情を抑えつつも、御馳走を手に取る。

そして、まあ皆調理した物だから大丈夫だろうと判断――タブリン軍区司令部は軍区の全帝國人に対して『生物は食すな』と警告している――し、口に入れる。


うん、まあいける。

328 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/22(火) 11:23:23 [ yq9lkYzY ]

味付けは単調だが、素材の良さだけで十分に食べられる。 ……考えてみれば、帝國人から見ても十分『御馳走』だ。


タブリンの作法では、『接待される者は遠慮無く食べ尽くす』のが礼儀、『接待する者は接待される者が食べきれない程の食を提供する』のが礼儀。

――故に、『接待される者が遠慮する』のは、接待する者に対して非礼であり侮辱である。

――故に、『用意した食を全て喰らい尽くされる』のは、接待した者にとって最高の恥辱である。


……悪循環だな。


そう考えながら食す。

黒部中尉の傍には、二人の若い女が付っきりで控えて酌をする。

(他の者にも一人ずつ付いている)

周囲の村でも見目良い女を選んだのか、多少は見れる貌だ。

が、食指は動かない。

女達の視線が、偶に豪華な食事の方へ行くのに気付いていたからだ。


……馬鹿馬鹿しい、何もかもが馬鹿馬鹿しい。

329 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/22(火) 11:23:55 [ yq9lkYzY ]

このような茶番に付き合う自分も、つき合わせている『何か』も、何もかもが馬鹿馬鹿しくなった。

「馳走になったな。十分満足できた、礼を言おう」

そう言うとその場を引き払った。

……後に半分ほどの馳走を残して。


9、

「良かった、中隊長は『例の決まり』を御存知だったんですね」

着任したてだから、もしかいたら御存知無いのではないかと思い、内心ヒヤヒヤしましたよ。――と准尉が頭をかく。

「ついうっかり、念を押すのを忘れてしまって……」

「? ……何のことだ?」

黒部中尉は首を捻る。

「!? ……御存知、無いのですか?」


つまり、こういうことだ。

農民達から接待を受ける際、タブリンのしきたり上、受けざるをえない。

但し、必ず酒食の半分を残すこと。

――その様な申し合わせが、タブリン軍区の帝國軍の間で共有されているのだ。

330 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/22(火) 11:24:30 [ yq9lkYzY ]

「残り半分は村人達に残す、ということです。これは軍区司令の発案だそうですよ」

司令の故郷でも同じ様な風習――客がわざと馳走を半分残す――があるんだそうです。 ……あの方は結構な苦労人らしいですから。

「……俺も青いなあ」

その准尉の言葉を聞き、黒部中尉は自嘲気味に苦笑した。

あれは反発しての行動だったのだが……

まるで道化である。

「? 良く分かりませんが、結果が良かったのだから良いじゃあありませんか」

任務も無事達成したし、饗宴も無事切り抜けた。『終わりよければ全てよし』です、と准尉は笑う。

「……そうだな。そうかも知れない」

帝國には、自分より優れた者などごろごろしている。

である以上、自分如きの憂慮など、とっくに気付いて如何にかしている筈なのだ。


――そう。だから自分の思いなど、所詮は杞憂に過ぎない。


黒部中尉は、そう無理矢理結論付けると中隊の待機している場所へと向かった。

村人達が村長の家に群がるのを横目で見ながら。

331 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/22(火) 11:25:22 [ yq9lkYzY ]
SS投下終了。
地味だ……地味すぎる……

332 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/22(火) 11:36:59 [ 8kGssc1U ]
くろべえさん、投下乙です。
現地軍使えないなあ。まあ、昔から敗残兵を捕まえるのは現地の人間ですからねえ(石田光成とか)。

>新5500トンに61センチ魚雷の四連装発射管を並列配置出来るかなあ?
大丈夫でしょう。旧5500トン軽巡の「大井」や「北上」は61センチ魚雷の四連装発射管を並列配置してましたから。

あと、輸出用新5500トン軽巡は機関を少しデチューンしても良いかもしれませんね。
30ノットもいらないでしょうし、電探や魚雷とかも外されて(技術が漏れないように)軽くなってそうですし。

333 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/22(火) 11:37:20 [ yq9lkYzY ]
>>328
最高の恥辱→最大の恥辱

334 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/22(火) 12:01:47 [ yq9lkYzY ]
>>332
名無し三等兵様、有難う御座います。

>現地軍使えないなあ
まあ辺境の軍なんてそんなものです。というより、彼等がしっかりしていたら治安はここまで悪化してはいないでしょう、
追い詰めただけマシですが、それとて帝國軍の存在があってのことですからねえ。

>あと、輸出用新5500トン軽巡は機関を少しデチューンしても良いかもしれませんね。
>30ノットもいらないでしょうし、電探や魚雷とかも外されて(技術が漏れないように)軽くなってそうですし。
魚雷や電探については帝國にとっても危険なので装備されていません。
(電探は帝國にとっても未だ最先端の兵器だし、魚雷なんてこの世界では対帝國にしか使えない)
ですが、速力とかは特に注文が無い限り現状通りでしょう。
兵装や機関については、各国の好みと懐具合により、ある程度自由に変更します。



シロべえ様、地図有難う御座います。早速HPに掲載させて頂きました。
……しかし、地図上手いですねえ。

(でも精華じゃなくて清華なんです)

335 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/22(火) 12:05:02 [ MsAR/znU ]
>>くろべえさん、投下お疲れ様です。

>地味すぎる

そうですか?
ここ最近の作品でもこの赴任間もない黒部中尉シリーズは
個人的に一番気に入ってます。

世慣れた黒部中尉も悪くありませんが、帝國や自分の常識から
外れる事に青臭く悩む感じが良いいんですよ。

336 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/22(火) 12:26:54 [ 8kGssc1U ]
シロべえさん、地図拝見しました。
国の位置関係が判り易いですねえ。
(「メルンブルク」はメクレンブルク王国の事ですか?)

>魚雷や電探については帝國にとっても危険なので装備されていません。
>ですが、速力とかは特に注文が無い限り現状通りでしょう。
>兵装や機関については、各国の好みと懐具合により、ある程度自由に変更します。
そういえば、無線はどうなっているんですか?
無線をつけないならマストもただの見張り台だから、1本高いのだけでいいかも。
水偵も古くなった九〇式水偵(機銃・爆弾架無し)かな?
…主砲は一番大きくて14cm砲だろうなあ。6インチ単装砲じゃ危険だし。

337 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/22(火) 13:10:05 [ MsAR/znU ]
シロべえさん、投下お疲れさんです

おや? ボルドーって南レムリアの沿岸部だったはず…
えーと…ドンマイ!

あとあえて聞きたいのですが、第六艦隊対策を行っているのでしょうか?

338 名前:Gir. ◆pi/XgnFjWE 投稿日:2006/08/22(火) 14:23:46 [ hEk2m4sU ]
> くろべえどの
 そういえば、前から不思議だったのですが、電探ってこの世界でどの程度有効なのですか?
 相手が生物だけにレーダー反射面積が小さいため、やたらに大出力化して、敵だけでなく味方にも「浮かぶ電子レンジ」「子種殺し」「お家潰し(レーダや電子機器の関係者の子供には何故か子供が少ない傾向がある)」等々の戦果を挙げそうな気がしております。

339 名前:名無し屯田兵@F世界 投稿日:2006/08/22(火) 18:16:27 [ gGnLYJJ. ]
くろべえ様、投下乙です。
いやいや地味、というか貧乏でないと帝國軍ではありませんよw
それにしてもタブリンの軍制は封建制な国状に見合わず中央集権的ですね。
どこか先進国の律令をそのまま真似したのかも。

さて最近、スレへのSS投下が活発で喜ばしい事です。
この速さに乗じて何だかよく分からない実験的なものを導入部のみ投下。
相も変わらずオリジナリティに乏しいですが、二次創作ではありません。一応。


「桜の落葉」
かつて戦場で感じたものにも似た異様な気配に跳ね起きた男を迎えたのは、穏やかで涼やかな夏の夜だった。

網戸越しの微風が遠くの田から運ぶ蛙の鳴き声を聞きながら、酔眼と手探りと月明かりを頼りに台所へ辿り着くと、
甕から柄杓で水を掬い取る。
沢水は手製の激烈な芋焼酎で焼かれ渇いた喉に甘いが、現状は苦い。

故郷とはいえこんな田舎で一介の入植者として鍬を、戦地で体得した自活の技術を振っている元上官に、
いま秘密裏に構想されつつある新国軍の幹部要員として再起を促すべく、
汽車と木炭車を延々と乗り継いでこの関東平野を縁取る山中まで訪れたにも関わらず、
翻意させられないまま当の相手に酔い潰されてしまったという現状は。

農地改革にも関わらず依然として素封家かつ篤農家である元上官の本家が協力しているだけあって
ここは十二分に先進的な農場だが、骨を埋めるべき場所とは思えなかった。
「何だ、君も起きてきたのか」
もう軍曹と呼ばれることはなく、この男を少尉殿と呼ぶこともないのか。
酒の所為か、妙に感傷的な気分になった元軍曹がそれを言葉にしようとした時。
蛙の声が、月の光が途切れた。
世界が、静かに暗転した。



皇軍でも自衛隊でもない端境期、しかも国家ごとではなく一寒村、さらに和風F世界(構想のみ)という
露骨に隙間産業なだけの殴り書きでした。
……このスレに投下するべきではなかったですねはい

340 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/22(火) 19:10:33 [ k/hCqbfE ]
くろべえどの早速の掲載ありがとうございます。
えーと、みなさま見苦しいところを見せてしまいまして。
急遽地図を手直ししました。

それから、訂正を
第二話 戦争計画 player A 前編 を 第二話 戦争計画 player A 前編
第二話 戦争計画 player A 中編1 を第三話 戦争計画 player A 中編1
第二話 戦争計画 player A 中編2 を第四話 戦争計画 player A 中編2
に改題します。
一話があまりにも長くなるので。

長崎県人さま
おお、拙作をお読みいただきありがとうございます。
戦闘描写、いいですねえ。私も早く艦隊決戦に持ち込みたいのですが
>しかし四連装砲塔・・・帝國海軍も遂に変態(ry
ええと、趣味丸出しですね。まあ高千穂級は実験艦的な要素を持ってますからな。
帝國海軍はこれ以降四連装砲塔を装備しません

341 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/22(火) 19:11:09 [ k/hCqbfE ]
くろべえ様
いつも楽しく読ませていただいております
>彼等は総力戦を知らないのでしょうねえ
ええ、遠距離の列強を屈服させるような渡洋能力や長期戦に耐えうる国力がありませんからねえ。例外的にユウジルドとフランシアーノが可能かな?

>第六艦隊対策
潜水艦は秘密兵器的な位置づけですし。まあ元帥は知っています。
彼は帝國の強さの一端を航空戦力の活用だけでなく、戦場の三次元化と見ています。
>>アウステルは一つだけ隠し事をしているのだが、それを知っているのはこの場では宰相のみである。
つまり???

で投下

342 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/22(火) 19:12:25 [ k/hCqbfE ]
ユフ戦記 超外伝 〜皇都よりお詫びをこめて〜

この作品を336、337の両氏に捧げる


凛と張り詰めた雰囲気を漂わせる彼女は、いつになく不機嫌であった。
北方出身からか、清華渡来の白磁器のような白い肌。
漆黒の瞳と艶やかな髪に彩られた顔の造形は、神々が細心の注意を払い最高のパーツを最適な座標に配置したものであり、現代皇国芸術の粋を集めても再現できまい。

その万人が讃えるであろう美貌とは裏腹に、内面に激情家としての一面を持つ。
贅肉をそぎり落した、たおやか腕は、蒼穹においては鋭剣を手にし飛竜を駆り帝國軍機六機撃墜を果たし、皇都においては蠢動する親帝國勢力を近衛とともに叩き潰した。
部下に篤く、有能な上官には敬意を払い、無能な上官を蔑む。
勇猛にして冷静、大胆にして細心、まさに皇国の理想とする部隊指揮官。

343 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/22(火) 19:13:18 [ k/hCqbfE ]
軍服を脱ぎ現在の地位についてからは外見にふさわしい振る舞いをしてきたが、
その本性は皇国人であれば誰もが知っている。
手には白金を元に精緻ながらも簡素な金細工が施された杖の先端には五色の宝玉がはめ込まれている。
五色の宝玉は皇国の藩屏たる五王家を意味し、それらを一つの杖に纏め上げられるものは、現世にはただ一人。

フランシアーノ皇国ロイ王家第三息女にして第弐拾四世皇主、カリュン・フェースト・ロイ・フランシアーノ。
御年二十一。

不機嫌な理由は他でもない。
皇国地勢院の失態、それに尽きる。

「ヒッテング院長、面を上げよ」

344 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/22(火) 19:13:52 [ k/hCqbfE ]
ヒッテングは、帝國であれば美空ひばりも裸足で逃げ出すであろう佳声を耳にし、
思わず鼓動が高まる。
役職としては重要でありながら、皇主と連携する必要性が薄いことから皇国地勢院長が謁見する機会は非常に限定される。
それも彼ただ一人に声が向けられる機会など、この先あるかどうか。
麗しき陛下の声による性的興奮とその怒りへの恐れが調和し、
奇妙な精神状態を形成しつつある。

「余がこの指揮杖を手にして以来、これほど不快な思いを覚えるのは初めてのこと。
人生においては、戴杖式前の帝國の策謀に次いで二度目だ」

ああ、お怒りになられた陛下も御美しい。
これほど愚息が張詰めるのはあの青春の日々以来のことでございます。
それにしてもこのヒッテング、陛下の心中での存在感がたとえ一時であれ帝國と肩を並べるようになるとは、欣快の念に堪えません。

345 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/22(火) 19:14:33 [ k/hCqbfE ]
ねっとりとした不躾な視線を豊かな胸元に感じカリュンの眉は危険な角度をとりつつある。

「そなたどこを見ておる。もうよい、面を伏せたままでおれ」

ああ、御麗姿を目にすること叶わずとも、その声だけでこのヒッテング十回はイケます。

まさかそのような不埒な思いを抱いていると知る由もなく、カリュンは続ける。

「余は人の能力を見極めることにはひそかな自負があった。」

当然である。五王家の王子王女は数多おるとも、
その中で王室諮問会の指名を受け至高の座につくのはただ一人。
他は半ば実体を失った各王家に戻されるから、王族の苦労は並大抵ではない。
であれば、生半可な能力や人望で皇位に就くことなど有り得ず、カリュンが自らの能力に自信を持ったとしても誰も咎めることはない。

346 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/22(火) 19:15:03 [ k/hCqbfE ]
「それが、勅任官たる皇国地勢院長が世界全図に幼稚な失態をいくつも盛り込んだとなれば、余の矜持と自負は崩落を目前にしておる」

ああ、私の理性も崩落を目前に控えております。

「誰があのような物を拵えたのか」

「シロべえと申す若者でございます。
なにぶん政治学畑のものでして。
徹夜で飲み歩いた後宰相府内の会合を文章にして纏め上げた後でしたから多少の不出来は仕方ないかと
それを精査せず世に出したとしてはまことに遺憾であります。
地勢院長の名に懸けて、速やかに回収し訂正を致します」

「そなたの名が失墜しようがそんなことはどうでもよい。
問題は皇国に対する視線だ。
まともな地図を作れぬ国の軍事力に誰が脅威を覚える?
誰が交易を任せる?」

347 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/22(火) 19:15:49 [ k/hCqbfE ]
確かに、海洋国家として精細な地図を持つことは至上命令である。

「他の列強の地図に比べれば、格段の出来では?」

「なんとまあ、無礼な口を利くものよ。
地勢院にどれだけの予算を割いていると思うてか。
飛竜を飛ばして地図を拵えるなぞ、皇国ぐらいのものよ」

鋲で裏打ちされた靴音を黒晶石の床に高らかに響かせながら、ヒッテングに歩み寄る。

ああ、そのおみ足で股間を御踏みあそばしていただけるなら、私めはたちどころに達してしまいます。

「そなたに秘められた自殺願望があったとはな。
いつでも協力するぞ。
不本意だが臣下と民の利益を最大限に取り計らうのが皇主の役目だからな。」

どうやら声に出してしまったようだ。
首筋に冷たい杖の感触。
これで首を叩かれれば臣下は死を選ばなくてはいけないが、未だ首をなでるだけ。
どうやら慈悲深い陛下は猶予を与えてくださったらしい。

「もうよい、行け。
アテゴラスとアウステルが奏上に参内する時間だ。」

「最後に陛下、お一つだけ」

「うむ」

「女王様とお呼びして宜しいでしょうか」

348 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/22(火) 19:19:17 [ k/hCqbfE ]
投下終了
カリュンは当初この物語の主人公でした。

第六艦隊とフェンダート失陥の関係について、
いずれ海軍大学校附 真田忠道中将からおはなしがあります?

349 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/22(火) 21:59:27 [ VIqguwfo ]
>>316-331
足が地についた良作グッジョブです。
黒部中尉の学習過程につきあっていると、自分が帝國軍人として作戦に参加しているような気分になってわくわくします。

>取りあえず『義務は果たした』
この表現など現地軍の感情が理解できるだけに心に痛い。
こんな人間くさい連中にも主人公にも同じように同情してしまいます。描写の積み重ねで、どちらの理屈もわかってしまう。

>小隊長達からは甚だ不評であった
被害を最小限に抑えた効果的な作戦にも誰からか不満は出る。
本当に多面的に「人間」が描かれていますね。

現地人の接待がどれほど彼らの生活から搾られたものか、これまでの作中で嫌になるほど説明されてきただけに、黒部中尉の英断、軍区司令の発案にほっとさせられました。
人、土地、生活、どれをとっても見事に描かれていますね。

350 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/22(火) 23:53:29 [ 8kGssc1U ]
シロべえさん、投下乙です。
お詫びから作品を1つ作り上げるとは凄いですね。しかもキチンとオチまである(笑)。
作品に間違いがあるのは良くあることですから(1枚の絵を描くのに何回描き直した事やら)、
これからもめげずに頑張ってください。

>飛竜を飛ばして地図を拵えるなぞ、皇国ぐらいのものよ
陛下、帝國は機械竜を飛ばしたり、専用の船(測量艦)を使って地図を拵えておりますぞ。(急に言いたくなっただけです、はい)

351 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/23(水) 01:27:35 [ uTgXxxBU ]
比較しては可哀想ですぞw
それは言うならば、太陽系の地図を作るのに電波探査をもってしている地球人類に
「超光速プローブやタキオンレーダー無しで恒星系の測量とはまたずいぶん頑張ってますな」
などとどっかの異星人がなま暖かい視線を向けるような物で――ナニ?帝國の技術はそこまで隔絶していない?

352 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/23(水) 03:47:40 [ qVJdi3cw ]
くろべえさん こんにちは
現地で苦労している帝國将校の視点が良いです。
中尉殿は地方とは言え名族出身で大學出!でもありますが
地方の貧困家庭出身→幼年学校→陸士と苦労を重ねてきた人材が
(また、そういう人材が辺境に昇進と一緒にやられる)辺境帝國軍の長として
現実と理想のすり合わせに心を砕いているのでしょう。

でも、それなりに裕福で暢気な気風(でも、戦略的価値皆無)な邦国もあるんでしょうなぁ。
以前、後藤隊長似の中年昼行灯帝國将校に前領主の娘を妾に!というネタを
書きましたが、帝國的にはそういう風習はどう対処してるのでしょうか?

353 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/23(水) 08:02:37 [ ILxfbBDg ]
あくまで派遣されていると言う事を強調すれば良いじゃなかろうか?
上からの命令次第で今日明日にでも別の場所へ転出する可能性があることを
良く理解させればそんなこと言い出さないようになるんじゃないか。
娘を妾とかは、あくまでその人が半恒久的に現地に止まってこそ意味があるわけだし。

354 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/23(水) 10:20:27 [ yq9lkYzY ]
シロべえ様、投稿乙です。
その後の某青年の運命は……減俸?

地図の改訂版、早速掲載させて頂きました。(超外伝は独立させた方が良かったでしょうか?)


名無し屯田兵、投稿乙です。
自衛隊発足時のお話ですね。最初期の旧軍人が参加しなかった頃は、そりゃああ酷いものだったと聞きます。


>>335
335様、有難う御座います。

>世慣れた黒部中尉も悪くありませんが、帝國や自分の常識から外れる事に青臭く悩む感じが良いいんですよ。
有難う御座います。黒部中尉は、未だ学生気分の抜けない中尉モドキです。
そんな彼が見た辺境地域、その実態を書いていけたらなあと考えております。

>>336
>そういえば、無線はどうなっているんですか?
>無線をつけないならマストもただの見張り台だから、1本高いのだけでいいかも。
無線とかは付いてます。ただ旧式の奴ですが。

>水偵も古くなった九〇式水偵(機銃・爆弾架無し)かな?
水偵については、ワイバーンが用いられるかも。

>…主砲は一番大きくて14cm砲だろうなあ。6インチ単装砲じゃ危険だし。
多分、デルとかのパソコンみたいに、搭載兵器の一覧表があるんだろうなあ。
これつけると「+幾ら」みたいに。

355 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/23(水) 10:20:57 [ yq9lkYzY ]
>>338
>そういえば、前から不思議だったのですが、電探ってこの世界でどの程度有効なのですか?
ワイバーンの巨大さ故、帝國製電探でも映ります。
でも航空機よりは反射面積小さいでしょうねえ。半分〜三分の二位? もっと小さい?

>相手が生物だけにレーダー反射面積が小さいため、やたらに大出力化して、敵だけでなく味方にも「浮かぶ電子レンジ」「子種殺し」「お家潰し(レーダや電子機器の関係者の子供には何故か子供が少ない傾向がある)」等々の戦果を挙げそうな気がしております。
確かに対水上電探はともかく、対空電探はやたら大出力化しそうですよね。まあ既存艦については巡洋艦以上、新型についても巡洋艦以上の艦の他には改秋月に搭載する程度だから、多少高度になっても大丈夫だろうけど。
(但し新型の松型や海防艦には、後日搭載を考慮して設置スペースあり)

>>339
名無し屯田兵様、有難う御座います。

>それにしてもタブリンの軍制は封建制な国状に見合わず中央集権的ですね。
>どこか先進国の律令をそのまま真似したのかも。
ですね。多分ローレシアの体制を真似た近場の大国を真似たのでしょう。
真似の真似、劣化コピーですね。

>>341
シロべえ様、有難う御座います。

>>349
349様、有難う御座います。

>>取りあえず『義務は果たした』
>この表現など現地軍の感情が理解できるだけに心に痛い。
現地軍も外国軍の若造にあれこれ指図されたら、そりゃあ面白く無い訳です。
これが軍の活動を一層消極的なものにしています。(特にこの話では占領して数ヶ月目のことですし)
帝國軍の駐留がなければサボタージュもしかねないでしょう。

356 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/23(水) 10:21:50 [ yq9lkYzY ]
>現地人の接待がどれほど彼らの生活から搾られたものか、これまでの作中で嫌になるほど説明されてきただけに、黒部中尉の英断、軍区司令の発案にほっとさせられました。
>人、土地、生活、どれをとっても見事に描かれていますね。
過分な御言葉有難う御座います。獣人やダークエルフ等の一部の者や地域を除き、大半は帝國の恩恵を殆ど受けていません。
まあ元の生活よりは、ほんの少しマシになった程度でしょうか?

>>352
352様、有難う御座います。

>中尉殿は地方とは言え名族出身で大學出!
中尉の実家は帝都出身の中産階級です。まあ自宅のほかに、家作幾つかと帝都郊外に数町歩の田を持ってはいますが、それだけでは生活できません。
(少なくとも息子を私大にいれるのは……)

>地方の貧困家庭出身→幼年学校→陸士と苦労を重ねてきた人材が
>(また、そういう人材が辺境に昇進と一緒にやられる)辺境帝國軍の長として
>現実と理想のすり合わせに心を砕いているのでしょう。
大佐殿は苦労人ですからねえ。この現状は歯痒いでしょう。

>でも、それなりに裕福で暢気な気風(でも、戦略的価値皆無)な邦国もあるんでしょうなぁ。
そういう国には帝國軍は駐留していないでしょう。というより、大概の邦には帝國軍は駐留していません。

>以前、後藤隊長似の中年昼行灯帝國将校に前領主の娘を妾に!というネタを書きましたが、帝國的にはそういう風習はどう対処してるのでしょうか?
やはり>>353様の仰る様に、『いつまでいられるか分からない』と理解させるしかないでしょうねえ。理解すれば、実の娘は遣さないでしょう。
ただ実の娘でも身分の低い女に産ませた娘とか、身寄りの無い娘を引き取って養女という形にして……というのはありそうだ。

357 名前:352 投稿日:2006/08/23(水) 11:14:49 [ N7WUch5A ]
くろべえさん ご返事ありがとうございます。
>ただ実の娘でも身分の低い女に産ませた娘とか、身寄りの無い娘を引き取って養女という形にして……というのはありそうだ
まさしくそれです!
前領主の弟が継いでいて、じゃまな姪を・・・とか。
あと、邦国全てに帝國軍や大使館(帝國連絡機関)を置けないと言うのは
同意しますが、全くほったらかしというのもどうかと。
帝國軍人(予備役復帰組とか)を駐在員として配置する制度とか考えられませんか?

358 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/23(水) 12:06:58 [ ILxfbBDg ]
別に要らないのでは?
人を置けば例え少人数でも確実にある程度の負担は生じるし
配備された側の国からは確実に、帝國の代表と目されるし、能力的なことも考えると誰でも良いと言うわけでもないし。
少人数と言うことにするとますます優秀な人材でないとやっていけない。
邦国の数が多い事を考えると、ただでさえ人不足な現状では事実上不可能かと。

現実にも、重要度の低い地域では、数カ国の大使を兼任させた人物を配置しているような所もあるし。
日本の大使の配置でも、そういう地域はあったはず。
ダークエルフ達による諜報活動も行われてるしさほど問題は生じないのではないだろうか?

359 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/23(水) 12:37:14 [ 8kGssc1U ]
>水偵については、ワイバーンが用いられるかも。
ということはカタパルトは無しですね。
クレーンは付けたままでいいか、空いたスペース活かして物資運搬もできるし。

>多分、デルとかのパソコンみたいに、搭載兵器の一覧表があるんだろうなあ。
>これつけると「+幾ら」みたいに。
一番安いのは45口径12cm砲かな(峯風などの主砲)?
37mm4連装機銃は意外と高そうだなあ。
…安いのが欲しければ新型海防艦でいいか。

360 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/23(水) 14:33:02 [ ltqrOq2I ]
>>338
生物のRCSはそんなに小さくありませんよ。人間で1平方メートルぐらいですから。
これはF-2と大体同じです。

361 名前:名無し三頭兵@F世界 投稿日:2006/08/23(水) 15:29:54 [ zl8xxdK. ]
またネタを

辻大陸横断隊に関する一考察

なぜ本来は参謀であるはずの辻大佐が部隊を率いて大陸横断行に赴く事になったのであろうか?
筆者は厄介払い半分であったのでは、と考えている。
下克上、独断専行、指揮命令系統を無視した私物命令、横紙破りetc・・・は満州事変以来の関東軍を始めとする陸軍の参謀達の悪しき性癖であり、
同時に日本を米英との戦争一歩手前まで追い込んだ元凶でもあった。
それを体現したのが辻政信という男であった。
だが辻はやりすぎた。
陸軍のトラブルメーカー、歩く非常識、ノモンハンの仕立て人・・・
部下には慕われていたが、同僚や上官からの人望は無いに等しい。
そんな中で辻が(しつこく)申し出た『マケドニアの獣人を使った特殊部隊の編成』と『大陸内陸部への遠征』は彼らにとってまさに渡りに船であった。
もし失敗してもそれで死ぬのは辻一人と獣人のみ、
成功すれば未だに使用法の確立していない獣人部隊の貴重なサンプルを得られる。
それに辻の分のポストも空くとなれば、どっちに転んでも帝國陸軍にとって良いことずくめではないか!
と、いう様な邪な打算と憶測が働いていたという事は十分に考えられる。
まあ関係者の殆どが物故している今となっては、詳細は分りようもないが、どうも資料の裏からそのような意図が私には読み取れてしまう。
まあ彼らの誤算は辻が大陸の各地で様々な『戦果』をあげて戻ってきたことであり、
それによって帝國の魔道技術が進歩し、ガルム大陸全体に辻政信の勇名(悪名)が広まってしまったことであった。

362 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/23(水) 16:16:11 [ 8kGssc1U ]
名無し三頭兵さん、投下乙です。
このくろべえさん世界での辻大佐はそんな感じですよね。
>もし失敗してもそれで死ぬのは辻一人と獣人のみ、
「辻一人」が「辻ーん」に見えてしまった…。

363 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/23(水) 16:32:32 [ yq9lkYzY ]
ちょっと小ネタを投下します。
シロべえ様に触発されたジャンクなんで。

364 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/23(水) 16:33:03 [ yq9lkYzY ]
「帝國召喚」ジャンク

『此度は新5500トン型巡洋艦(輸出仕様*1)のパンフレットを御取り寄せ頂き、真に有難う御座います。

新5500トン型巡洋艦は、帝國海軍軍艦規格の基準を満たしながらも、ブロック工法及び溶接構造を全面的に採用し、大幅なコストダウンを達成した新世代の巡洋艦です。

貴国海軍の総旗艦として、主力艦として、新5500トン型巡洋艦は必ずや貴国の御期待に御答えするでしょう。

<仕様明細>
新5500トン型巡洋艦は、貴国の様々な問題に応じられる様、種々のオプションを御用意しております。

①機関*2
機関A 最高速力30ノット*3
機関B 最高速力25ノット*3
機関C 最高速力21ノット*3
機関D 最高速力16ノット*3

②兵装
・前部2箇所、後部3箇所の計5箇所に以下の兵装を施す事が可能です。
兵装A1 四一式15センチ50口径単装砲(防盾のみ)
兵装A2 四一式15センチ50口径単装砲(砲塔式*4)
兵装B1 三年式14センチ50口径連装砲(防盾のみ)
兵装B2 三年式14センチ50口径連装砲(砲塔式*4)
兵装B3 三年式14センチ50口径単装砲(防盾のみ)
兵装B4 三年式14センチ50口径単装砲(砲塔式*4)
兵装C1 三年式12.7センチ50口径連装砲(防盾のみ)
兵装C2 三年式12.7センチ50口径連装砲(砲塔式*4)*5
兵装C3 三年式12.7センチ50口径単装砲(防盾のみ)
兵装C4 三年式12.7センチ50口径単装砲(砲塔式*4)
兵装D1 三年式12センチ45口径連装砲(防盾のみ)
兵装D2 三年式12センチ45口径連装砲(砲塔式*4)
兵装D3 三年式12センチ45口径単装砲(防盾のみ)*5
兵装D4 三年式12センチ45口径単装砲(砲塔式*4)
兵装E1 十年式12センチ45口径連装高角砲(防盾のみ)
兵装E2 十年式12センチ45口径連装高角砲(砲塔式*4)
兵装E3 十年式12センチ45口径単装高角砲(防盾のみ)
兵装E4 十年式12センチ45口径単装高角砲(砲塔式*4)
兵装F1 九六式25ミリ三連装機銃
兵装F2 九六式25ミリ連装機銃*5

365 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/23(水) 16:33:35 [ yq9lkYzY ]
・左右舷側1箇所(旧魚雷発射管部)の計2箇所に以下の兵装を施す事が可能です。
兵装E3 十年式12センチ45口径単装高角砲(防盾のみ)
兵装E4 十年式12センチ45口径単装高角砲(砲塔式*4)
兵装F1 九六式25ミリ三連装機銃
兵装F2 九六式25ミリ連装機銃

・九六式25ミリ単装機銃については省スペースを達成し、多数の装備が可能となっております。御注文の数を当方で最適の場所にセッティングさせて頂きます。
兵装F3 九六式25ミリ単装機銃( )基

③装甲
お好みの部位に装甲の追加が可能となります。*6
追加装甲A 25ミリ
追加装甲B 50ミリ

④来賓室
来賓室の追加も可能です。各グレードについては別添えの写真を御覧下さい。

③保守整備
保守整備A 20年間のメンテナンスを無償で行います。*7
保守整備B 10年間のメンテナンスを無償で行います。*7
保守整備C 5年間のメンテナンスを無償で行います。*7
保守整備D 全てのメンテナンスを有償で行います。

④乗員教育
乗員教育A 艦長級他数名の退役帝國海軍士官、及び帝國海軍下士官複数を配置します。
乗員教育B 艦長級他数名の退役帝國海軍士官を配置します。
乗員教育C 艦長級の退役帝國海軍士官を配置します。
乗員教育D 引渡し前の乗員教育のみです。

*1 輸出仕様型には、電探及び魚雷関連装備等が省略されています。
*2 機関は全て蒸気タービンです。
*3 速力は標準状態での計測値です。武装や装甲の追加により変動します。
*4 砲塔式なるも無装甲
*5 この兵装には中古品の在庫が多数御座います。中古品を御利用頂くことにより、一層のコストダウンが可能です。
*6 重量配分の問題上、追加が不可能な場合も御座います。
*7 但し通常の整備のみとし、戦闘及び事故時の損傷を除かせて頂きます。  

――――帝國兵器輸出公社』

366 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/23(水) 16:34:21 [ yq9lkYzY ]
「これを購入しようと思う」

国王のこの一言に、廷臣達は唖然とする。

「我が国も海軍の大幅な増強が必要だ。周辺国に負けてはいられない」

話を続ける国王は興奮気味だ。

帝國に招かれた観艦式に見入られ、すっかりその気になっているのだろう。


……まあ仕方が無いのかも知れない。


改マル五、改マル六計画を達成した帝國海軍。

その総力を挙げた大観艦式は、それだけの迫力があったのだ。

超音速飛行で賓客の度肝を抜いた戦闘機群の大編隊飛行から始まり、

全同盟国、邦國及び直轄領をはじめ、世界各国から招かれた要人達の前で一矢乱れぬ艦隊行動を行う第一、第二艦隊。

そして大和/改大和型戦艦8隻による一斉艦砲射撃や、30ノット超で航行する薩摩型高速戦艦6隻の勇姿……

ただただ圧倒されっ放しであった。

……そこで渡されたのが、このカタログである。


「……陛下、御戯れを」

真っ先に我に返った財務大臣が切って捨てる。

「御戯れでは無い、余は本気だ」

「そんな金、何処にありますか! これ1隻で一体幾らすると御思いです!?」

367 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/23(水) 16:34:52 [ yq9lkYzY ]
「隣のマリネラとて購入している」

「あそこは世界一のダイヤモンド生産国でしょう!」

「……あの潰れ豚饅頭め、余に散々自慢しおって」

怒りの余り、拳が震える。 ……余程悔しかったのだろう。


「そんな下らないことで予算は出しかねますな」

財務大臣の冷酷非情の声。

「しかし!」

「しかしも案山子もありません。軍ならば、この間強化したばかりではありませんか」

そう。つい最近、帝國から中古兵器の貸与を受けたのだ

具体的には――

零式艦上戦闘機二一型改二 20機、
哨戒特務艇(木造、漁船形式) 5隻、
三八式歩兵銃 100挺、

――等、中々のものだ。

「これ等供与兵器はタダではありますが、その維持は自弁です。弾薬、燃料、維持整備費…… 一体幾らかかると御思いで? 加えて言えば、訓練費とて従来以上ですぞ?」

「む……」

「それでも買いますか? 税を増やし、それでも足りずに三度の食事を二度に減らして」

「う……う……」

がくり、と膝をつく国王。

……かくして、隣国マリネラ王国に対抗し、計画された海軍軍拡計画は挫折した。

368 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/23(水) 16:35:22 [ yq9lkYzY ]
――――マリネラ王国。

「お前達も見ただろう! タリン国王のあの悔しそうな顔を!」

家臣達に向かって大笑いしているのは、マリネラ国王だ。

未だ10歳の少年だが、天才錬金術師としても名高い。何しろ帝都帝國大学にも招かれた程である。

「しかし、ケチな殿下がよく高価な帝國兵器あんなにを買いましたね?」

家臣の一人が首を捻る。

「そうですよ! 殿下ならタダの中古兵器貸与で済ますかと考えていましたが……」

他の家臣達も首を捻る。

それ程、異常な買い漁りだったのである。

まあ只自慢したいだけだったのかもしれないが、それにしても……

「ふむ、御前達にすらそう思われたのなら、大成功だ」

「と、いいますと?」

「……お前達、この僕が、ただ自慢したいだけであんなに兵器を買い漁ると思うか?」

「違うんですか?」

「やりそうだよなあ」

369 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/23(水) 16:35:54 [ yq9lkYzY ]
得意満面で話す国王に、家臣達が突っ込む。 ……普段どう思われているかが如実に分かる光景だ。

「馬鹿者! 大切なおぜぜをそんなことに浪費して堪るか!」

家臣達をドつきながら叫ぶ国王。

「いいか、良く聞け。 ……近い内に戦争が起こる。それもとびっきりのがな」

「はあ? ……って、ええ〜!」

「とびっきりって、あの『対4カ国戦争』みたいな!?」

驚愕する家臣達。

「『対4カ国戦争』なんて前座みたいなものだ。もっと凄い、僕達が歴史上経験したことも無いような『とびっきり』の奴だ」

「『対4カ国戦争』が前座!?」

「そうだ」

「何でそんなことが分かるのですか?」

「兆候なら、幾つもあるぞ」


一つは『直轄領の大縮小』

旧王国は邦に昇格させ、そうで無い地域もちゃんと信頼出来る国に預け、大陸各地の直轄領を大幅縮小し、軍を引き上げている。

370 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/23(水) 16:36:24 [ yq9lkYzY ]
「軍の引き上げだけが目的じゃあ無い。そうやって信頼出来る国を大きくしているんだ。 ……その地域の目付役としてな」

例えば、ボルドー王国は人口200万に達した。南レムリアの目付け役、もっと正確に言えばトスカーナ王国に対する牽制だろう。

メクレンブルク=シュヴェリン王国に至っては、人口が10倍以上に膨れ上がった。帝國最重要地域の要としての役割が期待されているのだろう。

この様な例は、他にも沢山ある。

「信頼出来る国に力を与えて地域の要、或いは信用できない国々に対する牽制役にすると共に、自由に動かせる軍を増やす。 ・・・…この意味がお前達に分かるか?」

「でも、何時かはやる必要があることですよ? 直轄領も帝國もようやく安定した今、時期的にもおかしいことではありません」

「そうだな、僕もそう思う。これだけならば」


今回の『大観艦式』

帝都大開発が一段落ついたため、各国の要人を帝都に招待する。そのついでに、というのが名目である。

「世界中の国や地域に帝國の力を見せ、敵や中立国にはには恐怖を、味方には畏怖と信頼を与える。味方陣営の結束を固める上でもかなり有意義な方法だ」


「極めつけは、降って湧いた様な中古兵器の大量供与とこのパンフレット」

帝國は、今まで慎重だった兵器提供をここ数年で大分緩めてはいた。

が、ここ最近は更に加速している。

371 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/23(水) 16:36:57 [ yq9lkYzY ]
「それぞれ単独ならば不審は無い、二つ重なっても偶然かも知れないと思う。が、流石に三つ重なれば……」

それは必然。

「つまり、帝國は大きな戦争の準備をしている。だがそれは一体何か? ……決まってる。『対4カ国戦争』、その完全なる決着だ」

『対4カ国戦争』の完全なる決着、それは4カ国のみならずその支援国、支援種族全てを相手にする……

「ど、どうしましょう!? そんな大それた……」

「落ち着け! 近い内と言っても今日明日の話じゃあない。引き上げた帝國軍の再編が完了し、信頼出来る国々が膨れ上がった領土を消化してからだの話だ」

数年後かな? と国王は呟く。


「じゃあ、殿下が帝國の兵器を買い漁っているのも……」

「僕は帝國に賭けた。ならば帝國の有力な同盟国として戦うまで。 ……見返りも多そうだし」

……4カ国はケチなんだよなあ、と頭を掻く。

「結局はそこですか!?」

「馬鹿者、重要な問題だろ〜が! 第一、帝國の下の方が商売がし易い!」

帝國は(自陣営間に限り)自由貿易体制を整えつつあるのだ。

加えて、シーレーンも帝國が保護しているため、何かと金がかからない。

372 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/23(水) 16:37:28 [ yq9lkYzY ]
「でも、帝國が負けたら……」

「大丈夫だ、負けないさ。例え勝てなくても、負けは無い」

あの爆弾が量産されれば。

……が、それは口が裂けても言えない。

偶然知ってしまった帝國の最重要国家機密、『ゲ号計画』。

自分が知っていることがばれれば、只では済まないだろう。その位のことは分かる。

ちょっとした、少年の軽い悪戯の積もりだったのだが……

誤魔化すために大量の兵器を買う羽目になってしまった。

悪いことは出来ないものである。


実はこの大戦争の話、高い買い物をする羽目になった国王が、大臣達を誤魔化す――御尻ペンペンされてしまう――ためにでっちあげたでまかせである。

(ちなみに今いる家臣達は侍従)

『軽い悪戯の積もりで、うっかり帝國の最重要機密に接してしまい、それを隠すために帝國兵器を買い捲った』とも言えず、やむをえず採った苦肉の策だ。

まあこいつらの反応を見る限り、どうやら上手くいきそうである。

373 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/23(水) 16:37:58 [ yq9lkYzY ]
……御尻ペンペンは痛いからなあ、でも今は懐が痛い〜


飛んでいったおぜぜを思い、半泣きだ。

――と、

「殿下の御覚悟は分かりました。マリネラの力、全世界に見せてやりましょう!」

「はあ?」

「我々も大臣達の説得に廻ります! マリネラ万歳!」

「ちょっ! お前達、待……」


侍従達の説得が実り、大臣達も全員一致で大軍拡を支持。今後数年間に渡るマリネラ王国の大軍拡が始まった。


「僕のおぜぜが〜」




終了。

374 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/23(水) 16:48:32 [ NbVPvpP2 ]
地図を見ていたのだが、赤道はどこにあるのだろうか?
元の世界の世界での南米がガルムだとすると、帝國は南半球にあることになる。
だとすると帝國の向きによっては帝國は南が暖かく、北が寒いという変な国家になってしまう。
この世界の気候によっては、特にホラズムなどの地方はかなり寒い地方になるはずだが?
まあ、常識的に考えて周囲が熱帯気候の中に温帯の帝國が存在したら、帝國は年がら年中雨が降っているはずなので、
その当たりは気にしなくてよいのかもしれない。占守島と周りの地域とかだと恐るべき温度差になるんだろうなあ。

375 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/23(水) 16:50:35 [ W5oOpJUs ]
ちょwwwwこれってパタr(ry

もし続きがあるのならバンコラン少佐とマライヒも是非!

376 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/23(水) 16:51:54 [ NbVPvpP2 ]
あ、書き込んでいる間にくろべえ様の書き込みが。
帝國の国家戦略が明らかに。
しかし、マリネラって(汗)。

377 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/23(水) 17:00:10 [ 8kGssc1U ]
くろべえさん、投下乙です。
輸出用新5500トン軽巡、選択肢がかなり多いですねえ。
全て連装砲にすればF世界ではかなりの攻撃力になりますし。
それにしても、零戦20機の貸与ですか。帝國も成長したなあ。

>>374
この世界で気候に常識を持ち込めませんよ。
マナのせいで砂漠地帯の隣に水田が出来るような地域がある(シュヴェリン王国)世界ですから。
帝國にも、海上にその気候が変わるラインがあるようですし。

378 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/23(水) 17:39:40 [ bJFcWGuQ ]
くろべえさん、投下おつかれさんです

>>常春の国の少年国王
あのへちゃむくれのつぶれ肉饅頭が…
なにげに世界最高のゴーレムメーカーなんですよねw

プラズマXとか出てきたら爆笑しちゃうんだがw

379 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/23(水) 19:09:16 [ 8kGssc1U ]
そういえば、「帝國兵器を買い捲った」とあるけど、他に何買ったのだろう?
新型海防艦輸出型や改造三八式野砲とかも買ったのかな?

380 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/23(水) 19:23:56 [ bJFcWGuQ ]
武器供与から10年もすれば魔改造した珍兵器でてくるんだろうなぁ

無意味に金で象嵌した王太子専用九八式軽戦車とかw

381 名前:ヨークタウン ◆r2Exln9QPQ 投稿日:2006/08/23(水) 19:51:34 [ XwixsAvk ]
くろべえさん投下お疲れ様です。それにしても、大量に兵器を買い捲るとは・・・・

もしかして、その中に軽空母クラスも含まれていたりして。

382 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/23(水) 20:49:31 [ mAg9gmmw ]
帝國製AWACSはいつ出てくるのかな

383 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/23(水) 21:26:52 [ ToMVwDhk ]
22時より投下開始しまつ。

話がさほど進んでないのはなぜたろう(´Д`;)

384 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/23(水) 22:35:04 [ ToMVwDhk ]
予定時刻過ぎたけど、投下

帝国異史 第二部

13
 部屋の中には男が机に座り書類を読んでから、押印している所だった。
入室した彼女に、男は一旦目を向け、書類がもうすぐ終わるので、椅子に座って
待っているように伝えた。

 その言葉に従って彼女は机の前にある椅子に座って、男が書類仕事を終えるのを待つ。
間もなくして全ての書類を片付けたらしい男は、詰め所にあったのと同じ黒い箱
に手を延ばすと、箱と同じ黒色の棒を持つと、茶と菓子を持ってくるように
伝えた後、彼女の向かいに座る。
男は片手に一枚の紙を起き、ペンを手に持って腰掛けた。

385 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/23(水) 22:37:35 [ ToMVwDhk ]
「さて、小官はここの憲兵隊長の脇永夏門(わきながかもん)輜重兵大尉と言う。
以後見知りおきを」

 ワキナガ カモン シチョウヘイ タイイ?
やけに長い名前だけど、ワキナガと言うと良いのだろうか、それともタイイが
名前なのだろうかと困惑していると、当の本人が苦笑いして説明してくれたので、
彼女はようやく理解できた。

「貴女の名前を聞いてもいいかな?」
「はい。レドナといいます」
「レドナ?それだけか?」
「竜騎兵になってから貰った姓は、アストゥスです。
私が生まれた村にある山の名です」
 ふむ、レドナ・アストゥスと。
脇永大尉はそう呟きながら、紙に書き、所属していた部隊と部隊から離れた場所を聞くと、
大尉は目を丸くした。
 何せ皇太子軍が帝国軍と事を構えて潰滅した戦いの生き残りなのだから、
驚いたのも無理はなかった。

 それで貴官の竜はどうしたと言う質問にレドナは、有りのままを話した。
別に嘘を付く必要がなかったからだった。

 脇永大尉は必要な事を書き込むと、紹介状をレドナから受け取りひとしきり
眺めると、おもむろに切り出した。

386 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/23(水) 22:43:06 [ ToMVwDhk ]
「ここからが本題だが」
 大尉はそう切り出して運ばれて来た茶を、一口飲んで続ける。
「我が軍で竜騎兵隊を編成してはどうかと言う話があって、物は試しと言うことで
旧連合帝国軍竜騎兵の生き残りを中心に編成するために、取り敢えず君が持っていた
紹介状を発行したアス商会のような斡旋屋に頼んでいるのだ」

 その言葉にレドナは首を捻った。
「でも帝国には竜より速く飛ぶ鉄の鳥がいるから、竜騎兵なんていらないでしょう?」
「いや、君の言う鉄の鳥では、投入しようにも些か能力が過大な場合がある。
その点、竜騎兵のような存在なら地上すれすれで戦う事も可能だからな」

 大尉は、また茶を一口のみ、レドナがまだ茶を飲んでいない事に気付いて、
飲むよう奨めた。
 本国から取り寄せた物だ。熱いのが1番美味しいのでね。
そう言うと、レドナが手を付けやすいように茶菓子にも手を付けた。
実は大尉は、結構甘党なのだが、勤務中はそのような素振りを見せない為、
さほど知られてはいない。

387 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/23(水) 22:46:51 [ ToMVwDhk ]
 それはともかく、大尉が茶菓子に手を延ばした事で、彼女も軽く一礼して茶菓子に
手を延ばした。

「ところで、旧フランベリア軍には女子兵がいたと聞いていたが、本当だったな・・・。
この目で見るまでは信じていなかったが」
「女がいたのは竜騎兵だけです。
他の部隊には一人としていませんから」
「それは竜騎兵だけが例外なのかな」

 その言葉にレドナは自分が理解していた事を話し、その都度脇永大尉は頷きながら、
彼女の言葉をメモしていった。
 そうして脇永大尉はおもむろに、軍と契約しないかと切り出す。

 レドナが思わずきょとんとしてしまったのを見て、大尉は言い方を変えた。
「貴女の軍歴も聞かせて貰ったし、部下を持ったこともある。
故に雇い入れるのに十分だと判断したからだ。
どうかな?新たに編成される竜騎兵に入らないかな」

 その言葉に彼女は明言を避けた。
その様子を見て取った大尉は、何か気にかかる事でもあるのかと尋ねる。
レドナが家族の事を伝えると、大尉は憲兵隊の方でも捜す事を条件として受け入れると、
それならと言う事で、帝国軍に雇われる事を承諾した。

388 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/23(水) 22:48:46 [ ToMVwDhk ]
14
 レドナが脇永大尉と面会して数日後、フランベリア憲兵司令部とフランベリア派遣軍中枢、
そして帝国本国との複雑な書類のやり取りの結果、彼女を旧連合帝国軍の最終階級から
二階級昇進させた上で、雇い入れる事とした。
帝国軍としては竜騎兵など初めて運用する、海の物とも山の物ともつかない代物なので、
派遣軍預かりとして編制した。

 実は竜騎兵の募集にあたって、最初に帝国軍に接触したのが彼女であるため、半ば
自動的にレドナを指揮官に任じた事に、彼女自身驚いたが。

 帝国軍、と言うよりフランベリア派遣軍は、初めて編成する事になる竜騎兵団の運用
及び訓練に関して、レドナ−−陸軍少佐として、軍が雇用した−−に一任すると同時に
竜に関する対応、竜騎兵の部隊編成、騎兵の育成に関して、フランベリア派遣軍は
航空部隊と派遣軍司令部兵站班より、一人ずつ参謀として派遣する。

 ここで、レドナに難題が立ち塞がる。
竜の確保についてだった。

389 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/23(水) 22:49:46 [ ToMVwDhk ]
 竜乗りになるには、二通りある。
まずは竜に遭遇し、互いに感情を感じる事ができた場合。
もう一つは、人を乗せている竜同士が卵を産み、なおかつ母竜側の竜乗りが母竜を宥めた上で
から、竜乗りになるように育てられた若者と仔竜が感情や意志の疎通ができた場合の二つだ。

 ちなみに竜同士は、人が仕向けて交配するなど馬のようには出来ないから、より優秀な仔
を残すと言うのは不可能だ。

390 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/23(水) 22:51:16 [ ToMVwDhk ]
取り敢えず終了。

391 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/23(水) 23:47:52 [ 8kGssc1U ]
大本営発表さん、投下乙です。
レドナの慎重さが良い感じに出てますねえ。茶菓子に先に手を出さないとか。
ふりがなの「わきながかもん」を見て、「わき…ながもん」「腋臭カモン」と一瞬思ってしまった(笑)。

392 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/23(水) 23:53:36 [ Mu.Cjibw ]
>>マリネラ王国
思わず“7世”の御姿をイメージ・・・案外日本の近くに浮いていたりしてマリネラ・。

そんでもって能天気な国民達がダークエルフや獣人、はぐれのドワーフ種族とかと和気藹々な生活を送ってたりして。

393 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/24(木) 01:45:23 [ bf0FMRfo ]
・・・ま、バンコランとかが出なければ特に問題ないかと。
ただ、警察庁長官は出て欲しいですなぁ。

394 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/24(木) 02:25:57 [ 4vrN/x3M ]
ここはずいぶん平均年齢の高いインターネットですね
パタリロ談義で盛り上がれるとはいやはや

え?ボク?18さい。うっふん。

395 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/24(木) 02:40:36 [ 8kGssc1U ]
パタリロ知らなかったけど、友人から聞いた事あるなあ、と思って調べたら、結構長寿な作品なのね。

くろべえさん、そろそろ新5500トン軽巡のネームシップを決めていただけないでしょうか?
名前がないと不便&不憫で。

396 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/24(木) 02:41:48 [ m6ftaY2. ]
あれ?
国王なんだから「陛下」じゃないの?
元ネタ知らないけど、そっちでもこういう呼称なのかな。

397 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/24(木) 04:09:44 [ 5GG/QO8A ]
陛下じゃじじむさいから殿下と呼んでほしいそうな>原作

398 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/24(木) 08:04:56 [ ILxfbBDg ]
無粋な発言で失礼。
思ったのだが、ダイヤモンドはこの世界だから高額なのであって
本来ダイヤは結構ありふれた…とまではいかなくとも希少な品ではないはず。
ダイヤ流通を握りコントロールしているシンジケート(?)の無い異世界で、
ダイヤ生産世界一は大金持ちで居られるのだろうか?

あと技術を流出させるのは非常に危険なのだが、それをしなければならないほど
帝國は追いつめられるのだろうか…。

399 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/24(木) 08:53:09 [ .i42bVY2 ]
>>314
>>278
>後にウェクスフォード家は邦國王家に昇格するなんて裏設定もあったりなかったり。
こういった、元々帝國直参の家が邦国王家に昇格した場合は、「帝國臣民の血が入った王家」
ということで、授与される爵位に”色が付く”のでしょうか?
帝國貴族院に議席が与えられることはないかもしれませんが、帝國への出入りとか
帝國本土や直轄領への投資等、優遇されそうです。
・・・ただ、国王が代々正室を帝國華族から迎えたりしたら王家は限りなく日系となり
王家から血が入り続ける貴族団も日系の血が行き渡り・・・
国民と支配層の民族的統一が難しくなるかも。

400 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/24(木) 08:59:25 [ yq9lkYzY ]
名無し三頭兵様、投稿乙です。
そういえば、辻ーんって、大将は無理だろうけど中将にはなれるだろうなあ。
辻ーん中将…… 悪夢だ。


大本営発表 様、投稿乙です。
> ちなみに竜同士は、人が仕向けて交配するなど馬のようには出来ないから、より優秀な仔を残すと言うのは不可能だ。
なんか直ぐに消耗しちゃいそうですね。


>>357
>あと、邦国全てに帝國軍や大使館(帝國連絡機関)を置けないと言うのは同意しますが、全くほったらかしというのもどうかと。
>帝國軍人(予備役復帰組とか)を駐在員として配置する制度とか考えられませんか?
一応監視はしています。が、僅かとはいえ人を送るということは、後方支援体制も作らねばならぬので。

>>360
>生物のRCSはそんなに小さくありませんよ。人間で1平方メートルぐらいですから。
>これはF-2と大体同じです。
うわっ! じゃあ人間でも映りまくりかあ。そういや対人レーダーとかもあったっけ。

>>375
>もし続きがあるのならバンコラン少佐とマライヒも是非!
後編に出ます(ニヤリ)

>>376
376様、有難う御座います。

>しかし、マリネラって(汗)。
無謀にも、くろべえ初の二次創作、初のクロス作品です。

401 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/24(木) 09:00:09 [ yq9lkYzY ]
>>377、379
名無し三等兵様、有難う御座います。

>それにしても、零戦20機の貸与ですか。帝國も成長したなあ。
まあ十七、ハ年前の中古品ですから。
ちなみに、零戦は酷使されている機体なので、余り評判が宜しくありません。かえって隼の方が喜ばれます。
比較的余裕のある国は、引渡し前の再整備の際、発動機を換装した強化型にデチェーンします。

>そういえば、「帝國兵器を買い捲った」とあるけど、他に何買ったのだろう?
新型海防艦輸出型や改造三八式野砲とかも買ったのかな?
後編に少し書かれていますが、そんな旧式ではなく九五式野砲とか九一式榴弾砲とか一式中戦車とか……

>>378
378様、有難う御座います。

>プラズマXとか出てきたら爆笑しちゃうんだがw
流石にバランス崩れますからねえ。

>>380
>無意味に金で象嵌した王太子専用九八式軽戦車とかw
ガルマ専用零戦とか……

>>381
ヨークタウン様、有難う御座います。

>もしかして、その中に軽空母クラスも含まれていたりして。
後編では更に凄い発注が……

402 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/24(木) 09:00:04 [ yq9lkYzY ]
>>377、379
名無し三等兵様、有難う御座います。

>それにしても、零戦20機の貸与ですか。帝國も成長したなあ。
まあ十七、ハ年前の中古品ですから。
ちなみに、零戦は酷使されている機体なので、余り評判が宜しくありません。かえって隼の方が喜ばれます。
比較的余裕のある国は、引渡し前の再整備の際、発動機を換装した強化型にデチェーンします。

>そういえば、「帝國兵器を買い捲った」とあるけど、他に何買ったのだろう?
新型海防艦輸出型や改造三八式野砲とかも買ったのかな?
後編に少し書かれていますが、そんな旧式ではなく九五式野砲とか九一式榴弾砲とか一式中戦車とか……

>>378
378様、有難う御座います。

>プラズマXとか出てきたら爆笑しちゃうんだがw
流石にバランス崩れますからねえ。

>>380
>無意味に金で象嵌した王太子専用九八式軽戦車とかw
ガルマ専用零戦とか……

>>381
ヨークタウン様、有難う御座います。

>もしかして、その中に軽空母クラスも含まれていたりして。
後編では更に凄い発注が……

403 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/24(木) 09:00:06 [ yq9lkYzY ]
>>377、379
名無し三等兵様、有難う御座います。

>それにしても、零戦20機の貸与ですか。帝國も成長したなあ。
まあ十七、ハ年前の中古品ですから。
ちなみに、零戦は酷使されている機体なので、余り評判が宜しくありません。かえって隼の方が喜ばれます。
比較的余裕のある国は、引渡し前の再整備の際、発動機を換装した強化型にデチェーンします。

>そういえば、「帝國兵器を買い捲った」とあるけど、他に何買ったのだろう?
新型海防艦輸出型や改造三八式野砲とかも買ったのかな?
後編に少し書かれていますが、そんな旧式ではなく九五式野砲とか九一式榴弾砲とか一式中戦車とか……

>>378
378様、有難う御座います。

>プラズマXとか出てきたら爆笑しちゃうんだがw
流石にバランス崩れますからねえ。

>>380
>無意味に金で象嵌した王太子専用九八式軽戦車とかw
ガルマ専用零戦とか……

>>381
ヨークタウン様、有難う御座います。

>もしかして、その中に軽空母クラスも含まれていたりして。
後編では更に凄い発注が……

404 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/24(木) 09:00:44 [ yq9lkYzY ]
>>382
>帝國製AWACSはいつ出てくるのかな
このジャンク中では早期警戒機が配備されつつありますが、管制までは……

>>395
>くろべえさん、そろそろ新5500トン軽巡のネームシップを決めていただけないでしょうか?
>名前がないと不便&不憫で。
候補としては『四万十』とか『吉野』とか……

>>398
>ダイヤ流通を握りコントロールしているシンジケート(?)の無い異世界で、ダイヤ生産世界一は大金持ちで居られるのだろうか?
始めは金にしようかとも考えましたが、やはりダイヤモンドでないと……(苦笑)

>あと技術を流出させるのは非常に危険なのだが、それをしなければならないほど
帝國は追いつめられるのだろうか…。
これは昭和三十年代も半ばの御話です。転移時の兵器も完全に旧式化(帝國軍にとっては)しているし、原爆や超音速機の開発すら成功したという自信から、もうかまわないと判断したのでしょう。
輸出で企業を潤す必要もありますし、同盟国や邦国の軍もある程度強化する必要もありますから。
(それにいつまでも隠すわけにはいきませんし)

>>399
>帝國貴族院に議席が与えられることはないかもしれませんが、帝國への出入りとか
帝國本土や直轄領への投資等、優遇されそうです。
貴族院選挙・被選挙権を剥奪する代わりに一段階爵位を上げられています。

>国民と支配層の民族的統一が難しくなるかも。
支配者層は帝國系、被支配者層は現地系…… あれっ? どこかで聞いたような?

405 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/24(木) 09:03:03 [ yq9lkYzY ]
さてSS投下。後編です。

406 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/24(木) 09:03:33 [ yq9lkYzY ]
「帝國召喚」クロス『○○○○より哀を込めて』後編

3、

――常春の国、マリネラ。

総面積 約5万平方キロメートル、
総人口 約600万人、
主要産業 1、鉱業 2、海外交易 3、農業・漁業、

マリネラ王国は、小内海に浮かぶ九州より一回り程大きい島国である。

主な産業は鉱業。

特にダイヤモンドに関しては世界産出量の60%を誇り、他にもクロム、ニッケル、コバルト、モリブデン、マンガン、チタン、プラチナ等のレアメタルを大量に産出する世界有数の資源大国だ。

(まあレアメタルに関しては、一部を除いて帝國以外には取引相手がいないが)

特に帝國にとっては重要な資源供給国家であり、初期においては帝國侯爵位を持つ邦國として、それが無理ならば同盟国としてその傘下に引き入れようとやっきになった――武力制圧すら検討していた――程の国である。

が、当時の国王は帝國の要求を撥ね付け、その中立を守り続けた。

マリネラは貿易立国であり、貿易の中継地点でもあるため、帝國に肩入れをする訳にはいかなかったのだ。

(特に、当時はレアメタルも採掘しておらず、ダイヤモンドの生産量も非機械化のため現在の半分以下だった)

407 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/24(木) 09:04:04 [ yq9lkYzY ]

この風向きが変わったのは、新国王が即位したここ数年のことである。

新国王は先王の中立政策を破棄し、帝國との間に軍事条約を締結、中立国から一気に同盟国へとステップアップしたのだ。

(ちなみに帝國との関係には、邦國や直轄領を除いて、同盟国、友好国、中立国、非友好国、敵性国の五つのカテゴリーがある)

新国王は優秀な人材を多数帝國に留学させると共に、農業及び鉱業分野での帝國との技術協力協定を締結、その生産性を飛躍的に高めようとしていた。


驚いたのは反帝國陣営である。

海上交通上の要衝であるマリネラの中立政策破棄は、その付近の海上交通路を帝國に押さえられることをも意味する。

加えてマリネラには幾つもの良港があり、帝國海軍の策源地になりかねないのだ。

(これ等の事柄は、この方面の政治的、軍事的なバランスが決定的に帝國側に傾くことを意味する)


――マリネラを帝國陣営に渡す訳にはいかない!


反帝國陣営は手段を選ばぬ工作を開始する。

マリネラの反国王勢力と接触、新国王の失脚を画策すると共に、艦隊を派遣して直接的な恫喝すら行ったのだ。

408 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/24(木) 09:04:34 [ yq9lkYzY ]
これに激しく反応したのが帝國である。

帝國は直ちに空母群(正規空母2、軽空母1基幹)1個に水上打撃群(戦艦2基幹)1個を派遣、マリネラ防衛に対する断固たる意思を内外に示した。

両陣営の艦隊は数週間に渡る睨みあいを続け、まさに一触即発の事態であった。

結局、反帝國陣営が艦隊を引きあげるという、事実上の敗北宣言をおこない事態は収束したが、一歩間違えれば『対四ヶ国戦争』の再開となりかねなかっただろう。

(第一次マリネラ危機)


事態収拾後、帝國はマリネラへの帝國軍常駐を打診したが、新国王は戦時における帝國軍の受け入れ及び平時における帝國軍支援は認めつつも、帝國軍の常駐に関しては断固として拒否し、現在に至っている。

(マリネラ王国自主防衛宣言)


4、

――帝國、情報省。

帝國情報省とは、合法、非合法を問わず様々な手段で諜報及び防諜を行う、帝國における情報機関の総本山である。

その中でも最もアンタッチャブルな部局、第六局に彼はいた。

帝國陸軍少佐、ジャック・バンコラン。

軍人らしからぬ長髪を持つこのダークエルフこそ、反帝國陣営の同業者達から『死神』と恐れられる凄腕のエージェントだった。

409 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/24(木) 09:05:04 [ yq9lkYzY ]

「バンコラン少佐、陸軍情報本部長が君に会いたいそうだ」

「有馬閣下が私に?」

陸軍情報長官 有馬信実中将。

何かと角を合わせていた帝國情報省と陸軍情報本部も、彼が長官に就任してからは大分円滑な情報交換が出来るようになっていた。要は得難い存在、ということである。

第一次マリネラ危機におけるマリネラ国王暗殺阻止においても、彼の協力がなければ失敗していたかも知れない。

(正規軍同士は睨み合いだけで終わったが、水面下では血みどろの死闘を繰り広げていた)


が、直接的な面識は無い筈だが……


バンコランは首を捻る。

「心当たりがありませんね」

「まあ兎に角、お会いしてみれば分かるだろう」

課長は面倒臭そうにそう言うと、残りの天丼をかきこんだ。

410 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/24(木) 09:05:35 [ yq9lkYzY ]
5、

――帝國、陸軍情報本部。

「わざわざ済まないね、少佐」

「いえ、閣下には一度御会いして御礼を述べたかったことですし」

そう言って、バンコランはマリネラ国王暗殺阻止作戦の時の礼を述べる。

(『あの阿呆』のために頭を下げているみたいで、一寸癪だったのは秘密だ)

「いや、礼を言うのは此方の方だ。良くマリネラ国王の暗殺を阻止してくれた。
当時、マリネラにおける親帝國派といえる存在は、彼くらいのものだったからな。
いや、今でもその重要性は変わらない。彼にもしものことがあれば……」

「甚だ遺憾ではありますが、その通りかと」

バンコランは忌々しそうに答える。

『あの阿呆』が、帝國にとっての重要人物だという耐え難い事実。

理解は出来ても納得が出来ないのだ。

「……あと、詫びもせねばならんな」

「侘び?」

「あの時、結局最後まで軍は君達に援軍を送れなかった。 ……つまらぬ縄張り争いのせいで」

有馬中将は口惜しそうに嘆く。

411 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/24(木) 09:06:07 [ yq9lkYzY ]
「しかし、閣下は万難を排して援軍を送って下さいました。あれは正に『干天の慈雨』でした」

事実だ。あの援軍がなければ……

「……あれは軍部隊ではない、私の私兵だよ。知っているだろう?」

それは知っている。

が、有馬中将は公務の諜報活動に用いていた各地の私兵を掻き集めて送ってくれたのだ。

感謝こそすれ、非難する筋合いは無い。

「閣下は、詫びるために自分を呼んだのですか?」

……とはいえバンコランの性格上、いつまでもこの様な無意味な問答――過ぎたことだ――に付き合う気はさらさら無い。早速本題に入る。


「勿論違うな。 ……が、関係はある」

「と、いうと?」

「君は、例のマリネラ国王の『衝動買い』の件を知っているかね?」

「はい」

帝都見物に招待されたあの愚かな潰れ豚饅頭は、観艦式の後何をトチ狂ったのか大量の帝國製兵器を買い漁った。

412 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/24(木) 09:06:45 [ yq9lkYzY ]
具体的には――

海軍からは新5500トン型巡洋艦(*1)2隻、海防艦(*2)4隻、艦上戦闘機『紫電改』50機、他練習機等20機余。

陸軍装備に関しても、昭和20年型機械化独立混成旅団(*3)を編制出来る程の武器装備……

(*1)特注型。装甲を舷側76mm/甲板35mmに強化し、主砲を15センチ砲連装3基に強化した水上砲戦型。
(*2)特注型。機関を換装・強化すると共に、主兵装を12センチ高角砲3門から12.7センチ高角砲3門に強化した対空強化型。
(*3)昭和20年型機械化独立混成旅団は、歩兵大隊3個、戦車大隊(中戦車32両)、砲兵大隊(野砲18門)、速射砲隊、機関砲隊、偵察隊、工兵隊、輜重隊、整備隊、衛生隊、通信隊、野戦病院隊、本部・本部付隊からなる。

――という大規模なものである。

名目こそ、『軍事体制を帝國式に転換する』という有触れたものであったが、余りに急激かつ大規模過ぎる。額面どおりに受け取る人間はそうはいないだろう。


「一体、マリネラは何を考えている? どこぞと戦争でも始めるつもりか?」

「……あの愚かな豚饅頭のことです。恐らく何も考えずに買ったのでしょう」

「国王は大の吝嗇家と聞くが?」

「確かに恐ろしい程の吝嗇家ではありますが、それ以上のお調子者でもあります。その場の勢いで買ったに違いありません」

「如何な金満国家マリネラといえど、国王の即断でこれだけの兵器を買い漁るとは考えられない。必ず大臣達の了承も得ている筈だが」

413 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/24(木) 09:07:17 [ yq9lkYzY ]
バンコランの言葉に納得できず、有馬中将は首を捻る。


……まあこれが普通の反応だな。


故に、腹は立たない。

有馬中将の懸念こそが正しいのである。 ……『常識』でいえば。

「閣下、あの豚饅頭にはこの世界の常識は通用しません。異界の常識で動く謎のナマモノです」

「……帝國も元は異界の国家だったのだがね」

「これは失礼」

有馬中将の苦笑をさして気にするでもなく、軽く流すバンコラン。

並の将軍ならば激怒しているであろう態度である。

(このせいで万年少佐なのだ)

もう少し大人しくしていれば、今頃大佐になれていたろうに、と内心苦笑する有馬中将。

まあこういう男だからこそ、『死神』と恐れられているのだろうが……

「まあそれで君を呼んだ訳だよ。一寸異常な買い物だったので気になってな」

「……一寸待ってください。何故そこで私が出てくるのです?」

「……君とマリネラ国王とは、大の親友なのだろう?」

414 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/24(木) 09:07:53 [ yq9lkYzY ]
「違います! その正反対の間柄ですよ!?」

畜生! あのへちゃむくれのつぶれ豚饅頭が何か問題を起こす度に、何故私が呼ばれなければならないのだ!?

ウガ〜、とシリアスさをかなぐり捨てて暴れまくるバンコランと、それを止めるでもなく興味深そうに眺める有馬中将。


……その均衡を破ったのは、一人の乱入者だった。


6、

「閣下! 大変です!」

「何事だ、騒々しい」

乱入者は有馬中将の副官だった。副官は二枚の紙を手渡す。

「なッ……!」

それを読んだ有馬中将が絶句する。

「どうされました、閣下?」

有馬中将は額に手を当てながらも、バンコランの問いに答えて二枚の紙を手渡した。

「これは!?」

バンコランも思わず絶句する。

415 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/24(木) 09:08:23 [ yq9lkYzY ]

一枚は、帝國註マリネラ大使からの緊急電。

『マリネラ王国ハ一大軍備計画ヲ閣議決定セリ……』

緊急電はマリネラが大規模な軍備拡張を決定したこと、それが国王以下全閣僚の総意――つまり国全体の意思――であることを伝えると共に、マリネラから要請された協力事項が列挙されていた。

「せっ千人の軍事顧問団に空母機動部隊だと〜!?」

……そう。リストには大量の軍事顧問団の派遣要求に加え、中型正規空母2隻からなる機動部隊を丸々1個買う意思すら伝えられていた。


そしてもう一枚は……

マリネラの軍備拡張計画――先の国王の帝國兵器の買い漁りの件だろう――に刺激された反帝國陣営が、マリネラ方面の警戒態勢を大幅に上げたことが記されていた。

現地の帝國軍もこれに反応し、北東ガルム方面艦隊及び北東ガルム方面軍は厳戒態勢に入る。

それを察知した反帝國陣営が更に……という悪循環だそうだ。


「あの潰れ豚饅、第二次マリネラ危機を起こす積もりか!」

「……最初の反帝國陣営の反応は、国王の『買い漁り』が原因だろうな」

これで今回のリストが洩れれば……

416 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/24(木) 09:08:54 [ yq9lkYzY ]

正直、考えたくもない。

「今はまだ現地軍同士でのことだが、このままでいけば中央の軍まで出張る羽目になるぞ」

そう有馬中将は憂慮する。

「……何故、そこで私を見るのです?」

「世界……はどうでも良いが、帝國の危機、そして君の親友の危機だ。君の出番ではないのかね?」

「だから親友ではないと!」

が、所詮は悲しき宮仕え、結局はマリネラへと旅立つ羽目になる。

……マリネラ国王への溢れんばかりの怒りを胸に秘めて、だが。


――ここから先のことは言うまでもなかろう。

国王の出まかせは直ぐに露見――さすがに帝國の最重要機密を知った件についてはばれなかったが――し、結局国王は大臣達からだけでは無く、侍従達からも御尻ペンペンされる羽目になったのである。

(宮殿には国王の悲鳴が数時間に渡って響き渡ったそうだ)

かくして第二次マリネラ危機は、バンコランの活躍により無事終結した。

が、安心は出来ない。

あれが最後のマリネラ危機だとはとても考えられないのだ。

あの国王がいる限り、必ずや第三、第四のマリネラ危機が起こるだろう。

バンコラン、彼の安息の日々は未だ遠かった。

「だから! 何で私が〜!」

417 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/24(木) 09:10:08 [ yq9lkYzY ]
投下終了。
くろべえ初の二次創作の上、初のクロスという無謀な作品でした。
まあジャンクということで、どうか広い心でお読み下さい。

418 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/24(木) 09:51:45 [ uTniPiX2 ]
くろべえさん投下乙です。
いやはやマリネラ国王の行動一つで世界危機にまで発展するとは……
ある意味この世界で最重要人物なのでは?
そして多方面から豚饅頭と揶喩される国王って一体……

419 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/24(木) 10:59:01 [ 8kGssc1U ]
くろべえさん、投下乙です。
特注型の水上艦、オリジナルよりかなり強化されてますね(笑)。
艦上戦闘機持ってれば空母も注文したくなりますよねえ。

>かえって隼の方が喜ばれます。
敗戦後、アジアに置いていった航空機みたいだなあ。

420 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/24(木) 11:06:12 [ sQuW24DU ]
パタリロは嫌いじゃないんで面白く読ませてもらいました。
若干キューバ危機も混ざっているみたいですが(汗)

421 名前:Gir. ◆pi/XgnFjWE 投稿日:2006/08/24(木) 18:22:58 [ hEk2m4sU ]
> SS
 いやー、帝国も懇切丁寧なロード・オブ・ウォーやってますねぇ。
 なにげに、作りやすく壊れにくい蒸気レプシロや、運航費が安いディーゼルなんかラインナップせず、タービンの整備費用と重油の輸出で儲けようとするあたり、帝国商人もあざとい。

> 5500t級艦名
 じゃあ、『四万十』かなー。
 『吉野』先代は防護巡洋艦で山から名称取ったらしいので、昭和16年あたりの日本海軍の名称付与基準からは外れています。まあ、名称付与基準が変わった可能性もありますが、味方艦にぶつけられて沈んだ艦の名前はまずつけないでしょう。心機一転で豊島沖海戦や黄海海戦での武勲艦として、何故か命名されてしまうかも知れませんが。
# それはそれで裏のどうでもいい騒動がロマンだな。
 くれぐれもどこかの莫迦が付けた名前なんて、気にしちゃダメですよー。あれは多分ノリだけで付けていますからねー

 なにしろ、本人が言うんだから間違いない!

422 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/25(金) 01:23:46 [ 0Uls0h8. ]
> 5500t級艦名
F世界に転位してから初めての新量産艦だから、神州大陸を開拓していく途上で発見&命名した川の名ではどうです?
これなら思うが侭名付けられますよ

423 名前:陸士長 投稿日:2006/08/25(金) 02:09:45 [ Ys8lRVL6 ]
くろべえさん、投下乙です。
クロスでこれを持ってくるとは思いませんでした。懐かしいですねぇ。
男色ダークエルフにはやっぱりナイフの扱いが得意な美少年ダークエルフが居るんでしょうか。
侍従達の髪型も大いに気になります。次回作を期待していますね。

そしてこっちも投下。

424 名前:繰り返される戦史? 投稿日:2006/08/25(金) 02:10:57 [ Ys8lRVL6 ]
大陸の西に広がる海。
その穏やかな海原を進む数十隻の艦隊。
甲板が真っ平らになっている六隻の大型船を囲むようにして、大小の戦列艦が護衛している。
東方大日本帝国領方面『陸軍』艦隊。それが、彼等の掲げし名称である。

目指す先にあるのは、とある島。
パール・アイランドと呼ばれ、数ある海洋国家でも群を抜いて豊かな島国である。
彼等は抵抗した。この大陸西部で急激に力を増し始めた東方大日本帝国領に対して。
今回の出撃は、その"制裁"の為である。しかも、帝国領総督自らの出陣でだ。

「旗艦より発光信号、作戦領域に突入。攻撃隊を出撃させよ との事」
「了解。クウボ全艦に通達。攻撃隊、直ちに甲板に搭乗。攻撃準備に移れ」

六隻の大型船の甲板の中央がぱっくり開き、下から巻き上げ式の人力エレベーターによって板が持ち上げられて来る。
其処には、変身済みの獣人達が満載されていた。誰もが、空を飛べるタイプの獣人である。
そのクウボだけではなく、他の五隻も同じだった。
各艦で200人前後の獣人達が甲板にエレベータによって運び上げられた。

「攻撃ぃ〜準備。始め!」

隊長のかけ声と共に、準備体操を行う獣人達。
変身した後なので、かなり体操をし辛そうだった。この辺は改良の余地があると言えるだろう。

「全艦、攻撃準備、完了しましたとの報告。総督……ご指示を」
「うむ、それでは出撃せよ。我等が神国日本の威光を信じられぬ愚か者ども……神が許しても小官は許さん。突撃!」

旗艦の戦列艦からの号令を受け、各クウボから一斉に獣人達が飛び立つ。
その数、1200人弱。背中から翼やらを生やしたヒトガタが群れて飛ぶのは、かなり恐い。
おまけに、その先頭に軍刀を抜いてドラゴンに跨った男が居たら尚更恐い。

そして、その脅威はパールアイランドに攻めかからんとしていた。


「ん……なんだあれは?」

早朝、パールランドの主な産業である真珠の養殖業に励んでいた男はふと顔を上げる。
普段通りの、静かな湾内の養殖場。国内で生産される貝の8割を育てている『真珠湾』と呼ばれる場所だ。

その中で、一番外回りの筏で真珠の管理を行っていた男は、湾外にポツポツと浮かんだ黒い影に気が付いた。
寝不足かなと目を擦ってみて、改めて見る。いや、幻覚などではない。それどころか、ドンドン近付いて来るではないか!

「なんだあれは!」
「鳥か?」
「飛び魚か?」
「いや、獣人の群れだぁ―――!!!」

凄まじい勢いで飛来した獣人達を見て腰を抜かした養殖業者達を余所に、彼等は襲いかかった。
そう、真珠貝……アコヤガイを吊している筏の列に。
彼等は乱暴な仕草で筏に降り立ち、必死に命乞いするお婆ちゃんを押しのけ、アコヤガイを引き上げると。

「うまうま!」
「んまーい!」
「おーい、誰か醤油持ってないかー?」
「海水に漬けて喰えば充分じゃろ」
「お、ラッキー。真珠みっけ」

凄まじい勢いでアコヤガイを貪り喰い出したではないか!
「止めてー壊れちゃう。壊れちゃうよぉ」と遠巻きに懇願する養殖業者を完全無視。
垂下筏を引き上げてはむしゃむしゃと貝をそのままかっ喰らう。

1つの筏の列を丸裸にしては、次の筏へと襲いかかる。
片っ端から食い荒らしていくその光景は、まるで海の蝗のような有様である。

425 名前:繰り返される戦史? 投稿日:2006/08/25(金) 02:11:46 [ Ys8lRVL6 ]

パールランドが外貨を得るのに依存している真珠を生み出すアコヤガイが、次々と獣人達の胃袋へと消えていく。
真珠も丸ごと呑み込んでいるが、それは後で下から取り出せば良いだけの話である。

「総督、お味は如何ですか?」
「ん、悪くない。ただ、醤油か酢味噌が無いのが惜しいな」

先陣切って、総督閣下もアコヤガイを貪り食っている。
レッド・ドラゴンは、近くを泳いでいたシー・サーペントをふん捕まえて頭からバリバリと噛み砕き、ご満悦だ。
まさか変身状態の獣人の群れ(及びドラゴンに乗った変な剃髪男)を実力で制止する事も出来ず。
半泣きと怨嗟の表情で、仕事用の小舟で遠巻きに見守る他無かった。

「総督、潮時です。パールランド海軍が此方に向かっていると物見からの報告が!」
「何だと、まぁ……いい。主目的は果たした」

腹八分に膨れた腹をポンとたたき、丁度サーペントの尻尾を呑み終えたドラゴンに跨る剃髪男。

「パールランド国王に伝えよ、このように我等『東方大日本帝国領』は逆らう愚か者には容赦ないと。さらばだっ」

満腹の腹をさすりつつ、獣人達は凄まじい勢いで飛び去っていく。
そして、遅ればせながらやって来たパールランド海軍と、養殖業者達は彼等に何時までも罵声を浴びせつけたという……。



結果として、主産業である真珠養殖を脅かされたパールランド王国は東方大日本帝国領に屈した。
しかし、真珠養殖組合だけは、怨恨からか帝国統治時も度々養殖業を停止し、ストライキを断続的に起こしたという。
彼等の合い言葉は有名である。『真珠湾を忘れるな!』



426 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/25(金) 07:16:30 [ iuhvHujU ]
KUROさんのHPに掲載されている平行世界物語である「平成日本召還」だが
最新話で平成日本に接触を図る獣人たちとあるが、大事に隠していた古びた
帝国陸軍下士官制服を着て涙を流している獣人の老人もいるんだろうな。
ただ、F世界の外交使節団が現代の摩天楼が立ち上る「帝都」を見たら
それはそれでショックが大きそう。
下手に戦争が長期化しないで一度圧勝するだけで帰順する元邦国や直轄領が
続出して、一年くらいで旧帝國勢力圏が復活するのではないだろうか。

427 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/25(金) 08:59:19 [ k/hCqbfE ]
>>350 >>351
帝國は10年ちょっと、皇国は300年の情報の蓄積がありますから
いくら帝国の技術が進んでいても……

くろべえ殿、HP確認しました。あのままのほうがいいです。
地図と切り離したら意味がよくわかりませんからね。
地勢院長は…

しかし常春の国は機動部隊まで……洒落にならんなあ

428 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/25(金) 11:04:27 [ yq9lkYzY ]
陸士長様、投稿乙です。
辻〜ん、流石ですね。
でもアコヤガイって旨いのかな? いや、それ以前に喰えるのだろうか?
……まあ辻〜んだし、平気か。

>>418
418様、有難う御座います。

>いやはやマリネラ国王の行動一つで世界危機にまで発展するとは……
>ある意味この世界で最重要人物なのでは?
さすがの帝國も、彼には振り回されっぱなしでしょうね。

>>419
名無し三等兵様、有難う御座います。

>特注型の水上艦、オリジナルよりかなり強化されてますね(笑)。
きっと6000トン軽く越えているだろうなあ。バルジ追加とかしてそうだ。

>>420
420様、有難う御座います。

>若干キューバ危機も混ざっているみたいですが(汗)
元ネタはそれです(笑)

>>421
>なにげに、作りやすく壊れにくい蒸気レプシロや、運航費が安いディーゼルなんかラインナップせず、タービンの整備費用と重油の輸出で儲けようとするあたり、帝国商人もあざとい。
帝國への依存を深めさせるための措置でもあります。

> じゃあ、『四万十』かなー。
『四万十』型巡洋艦……うん、中々良い響き。

429 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/25(金) 11:05:10 [ yq9lkYzY ]
>>422
>F世界に転位してから初めての新量産艦だから、神州大陸を開拓していく途上で発見&命名した川の名ではどうです?
>これなら思うが侭名付けられますよ
名前付けるの苦手なんで。大内海北部にある、帝國海軍の一大拠点となっている島の名前も未だに決められないし。

>>423
陸士長様、有難う御座います。

>男色ダークエルフにはやっぱりナイフの扱いが得意な美少年ダークエルフが居るんでしょうか。
ダークエルフではなくこの世界の人間です。ただ美少女にしようかどうしようかと……

>>426
>一年くらいで旧帝國勢力圏が復活するのではないだろうか。
全部面倒見なければいけないから、維持が大変だろうなあ。

>>427
>しかし常春の国は機動部隊まで……洒落にならんなあ
ちなみに欲しがった中型正規空母とは、帝國海軍が計画中の改飛龍型です。飛龍型の簡易量産型ですね。
……帝國が空母の売却を許可するかどうかは不明ですが。

430 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/25(金) 11:06:16 [ yq9lkYzY ]
さて、SS投下
「マリネラより哀をこめて」に出てきた「対四ヶ国戦争」のダイジェスト版です。
本編で没になったシナリオを流用しました。

431 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/25(金) 11:07:26 [ yq9lkYzY ]
『対四ヶ国戦争』(ダイジェスト版)

第六艦隊による大規模な報復は、帝國と列強の関係を急速に悪化させた。

例え証拠が無かろうと、それが帝國の仕業であることは明らかであったからだ。

(証拠が無いことこそが、帝國の仕業であることを雄弁に物語っている)

この後、列強の中でも特に急進的な四ヶ国が対帝國を想定した軍事同盟を締結、反帝國を露骨に表す。

他の列強諸国も同盟にこそ加わらなかったものの、その一部を除き四ヶ国連合支持を明確にしていた。

帝國と列強の亀裂はここで決定的となったのである。


そして……


――昭和20年8月15日、ツーロン。

『我、四ヶ国連合ニヨル奇襲攻撃ヲ受ケル。コレハ訓練ニアラズ、繰リ返ス……』

ツーロンに集結していた第五艦隊(北東ガルム方面艦隊)は、四ヶ国連合による空襲により大打撃を受ける。

「畜生! 奴等は一体何処から来たんだ!」

上空には、我が物顔で空を舞う敵飛竜の大群。

艦隊軽空母『日進』『瑞穂』、練習巡洋艦『鹿島』、哨戒巡洋艦『天龍』『龍田』、旧式駆逐艦2隻、哨戒艇1隻、輸送船6隻等計21隻撃沈、航空機40機撃破、他損害多数。

432 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/25(金) 11:08:02 [ yq9lkYzY ]

彼等の牙は近海の船団にも向かう。

「船団を逃がせ! 盾になるのだ!」

彼等の前に立ち塞がるは、海上護衛総隊艦艇群。

が、その戦力は護衛空母『神鷹』を始めとする僅かに5隻に過ぎなかった。

頼みの綱の搭載機は、九六式艦戦と九七式艦攻が各1個中隊。

……その抵抗は蟷螂の斧に等しかった。

「『神鷹』、沈みます!」

結局、彼等は全滅する。 ……その任務達成と引き換えに。

それは帝國海軍史上最悪の一日であった。


折りしも第三艦隊の空母の半数がドック入り、残りの母艦は大内海の南の果てに展開している正にその時のことである。

「第三艦隊が帰還しても、長期航海を終えた後なので一時ドック入りする必要があります。
今すぐ動かせるのは、第四航空戦隊の『隼鷹』『龍驤』、第五航空戦隊の生き残りである『千歳』『千代田』だけです。
『飛鷹』は機関の調子が思わしくなく、参加は無理でしょう」

「海上護衛総隊からも召集しろ!」

433 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/25(金) 11:08:46 [ yq9lkYzY ]
第一、第二艦隊は動けず……

「第一及び第二艦隊は、その定員を大きく割り込んでいます。通常の航海や艦砲射撃程度なら問題はありませんが、戦闘任務となると……」

「動員は?」

「現在でも労働力不足なのです。この上、大規模動員などすれば……」

国家経済が破綻します。


「北東ガルム諸国は現在混乱状態だ。早急に彼等を安心させる必要がある。 ……出来るか?」

「御安心を、そのための我々です。連中に絶対的な力の差というものをを教えてやりますよ」

「出来れば空母部隊も同行させたかったのだが……」

「連中に戦艦を沈める力など、ありはしませんよ」

急遽第二艦隊より戦艦『比叡』『霧島』、駆逐艦4隻を抽出し派遣。司令官は黒木少将。

434 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/25(金) 11:09:43 [ yq9lkYzY ]
――ルム島沖。

「対艦誘導弾、多数!」

「撃ち方始め!」

多数の対艦誘導弾を受けつつも、『比叡』は未だ健在。

「主砲は無事だ! 敵艦隊を叩き潰してくれる!」

が……

「敵飛竜、爆弾を装備していません! 敵兵です! 爆弾の代わりに敵兵を乗せています!」

「くそ! 今時、切り込み戦術とは!」

既に阻止すべき高角砲、機銃は無力化。陸戦のプロたる特務砲術科も大半が戦死……

「敵兵多数、侵入!」

「特務砲術科の装備を使え! 白兵戦だ!」

艦内で一進一退の攻防が繰り広げられるも、戦況は徐々に敵側に傾いていく。

そして一つの決断。

「私だ、黒木だ。 ……無事か?」

「敵は『比叡』『霧島』に的を絞っておりますので、何とか……」

「間もなく、敵の艦隊がやって来る。 ……このままでは拿捕される可能性が高い」

435 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/25(金) 11:10:14 [ yq9lkYzY ]
「我等がさせません!」

「有難う。だが傷ついた3隻の駆逐艦で、一体何が出来る?」

「……それは」

「君たちが出来ることは唯一つ、その魚雷で『比叡』『霧島』を沈めることだ」

「しかし!」

「このままでは拿捕される。それだけは避けたい」

「まだ『比叡』『霧島』には乗員が!」

「それでも、だ。責任は私がとる。やれ、やり給え!」

「……了解しました」


『本艦は5分後に自沈する! 敵味方を問わず戦闘を中止し、速やかに甲板に上がれ! 繰り返す……』


「発射!」

帝國海軍が誇る秘密兵器『酸素魚雷』。その初の戦果は、味方の介錯。

「『比叡』と『霧島』が沈むぞ!」

「救出、急げ!」

黒木少将は救助を断り、海に消えた。

帝國海軍少将黒木忠文、ルム島沖海戦にて戦死。享年51歳。

436 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/25(金) 11:10:45 [ yq9lkYzY ]

「黒木が死んだだと! ……冗談を言え! あいつを殺すのはローレシアでもなければネーデルランドでもない! この俺だ! 帝國海軍中将吉良定信だ!」


日増しに活発する敵の通商破壊作戦。

数騎の飛竜を搭載した船舶、或いは無差別にばら撒く原始的な機雷を主力とするそれは、帝國に無視出来ぬ出血を強要する。

「海上護衛総隊は何をやっている!?」

「御言葉を返す様ですが、広域哨戒手段たる空母を奪われ、挙句の果てには人員まで抽出されて大きく充足率を低下させられた艦艇で、一体どうしろと仰るのですか!?」


そして度重なる信じ難い敗戦は、帝國の威信を大きく損ねていく。

「各地で不穏な動きが見られます! 最早、今後の経済がどうこう言っている場合ではありません。御決断を!」

「……止む無し、か。これで帝國の回復は三年、いや五年は遅れるな」


動員が開始され、帝國は急速に戦時体制に移行し始める。

437 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/25(金) 11:11:15 [ yq9lkYzY ]
まず動くは、ようやく完全回復した第三艦隊。

その10隻もの母艦戦力が、苦戦する『隼鷹』『千歳』『千代田』と合流する。

「……あと3日早ければ、『龍驤』を失わずに済んだものを」

帝國の反撃が始まった。


第二次ルム島沖海戦、そこで四ヶ国連合は帝國の底力を知る。

「全滅!? あの大艦隊が、僅か一戦で? そんな馬鹿な……」

僅か50日足らずで四ヶ国連合の快進撃は終わりを告げた。


「現在の所、夥しい損害を出しつつも何とか戦線は維持できています。
が、それもここ10日程で終わるでしょう ……帝國の主力艦隊が動き始めました」

ようやく充足、訓練完了がなった第一、第二艦隊。

開戦後100日目、四ヶ国連合の戦線は崩壊した。

以後、戦線は徐々に北上していく。

438 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/25(金) 11:11:49 [ yq9lkYzY ]

そして開戦後200日目、遂に帝國軍は四ヶ国連合の最終防衛線に達する。

両軍は持てる力を振り絞り、戦線の突破と防衛を図る。

「何故だ! 何故、敵の補給船団が通り過ぎるのを指を咥えてみていなければならないのだ!?」

「……あれは『敵』では無い、『中立国』の船団だ」

「『中立国』だって!? 奴等は親四ヶ国連合ではないか! 中立が聞いて呆れる!」

「……我が軍とて中立国からの補給がなければやっていけない。
それにこれ以上、敵を増やす訳にはいかんのだ。我が軍の兵站は伸びきっている」

ここから帝國本国まで、実に5000海里以上。

これは帝國の兵站能力の限界を越えていた。

帝國軍が攻め倦んでいるのは、敵の勇戦以上に距離の壁が大きかったのだ。

「潮時、か……」

439 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/25(金) 11:12:19 [ yq9lkYzY ]

臣民の戦意は旺盛なれど、帝國国内の経済状況は急速に悪化しつつあった。

「……軍人として内心忸怩たるものがありますが、現在の帝國軍には四ヶ国連合の防衛戦を突破することは不可能であります。
これ以上の戦闘は、無駄に物資と金銭、そして血を消費するだけかと」

「仮に敵の防衛戦を突破出来たとしても、それ以上の侵攻は物理的に不可能でしょうな」

「経済も限界です。船舶の徴用による資源輸入量の減少と開発速度の低下、動員による生産量の低下、増大する軍の消費…… 全てが合わさって負のスパイラルを起こしています」

「四ヶ国連合も限界だろう。我が軍の力も見せことでもあるし、ここら辺で手打ちといきたいものだな」

戦争の長期化を懸念する政府及び軍上層部と、更なる進軍を望む臣民。


ここに突如、今まで沈黙守ってきた列強『清華』による停戦仲介が。

他の列強から距離を置き、孤高を保っていた清華が、何故?

440 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/25(金) 11:12:49 [ yq9lkYzY ]

「清華を甘く見ないことです。貴方方の言う『支那』と『清華』は違います。その国力は文句無しに列強最大でしょう」

その内心を計りかねるも、誰もが戦争の終結を望んでいたこともあり、四ヶ国連合と帝國は交渉の席に着く。

紛糾する交渉。

が、帝國も四ヶ国連合も疲れ果てていた。

結局、両者は痛み分けでこの戦争を『停止』することに合意する。

開戦後300日目のことである。

責任をとり、内閣は総辞職した。


「『終戦』ではない、これは『停戦』だ」

「小内海を東西に横切る鉄のカーテンが降ろされた。その北にある国は、すべて敵である!」

南北冷戦が始まった。

それは平和の始まりでは無く、次の戦争への準備期間。

441 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/25(金) 11:13:47 [ yq9lkYzY ]
「この戦争で帝國が得た物は何も無い。夥しい物資と金銭、血を消費して、だ」

国外では、帝國の無敵神話にひびが入った。

国内では、臣民の不満から強硬派が息を吹き返し始めた。


……そして世界は分断された。




SS投下終了。
うん、やっぱり本編で没にして良かった。

442 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/25(金) 11:42:06 [ RpxFCjzQ ]
乙。
これを経てラウ・ル・クルーゼが一目見たら
呼吸困難に陥りそうなほど爆笑するであろう全世界荒廃ENDに
なるわけですな・・・

443 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/25(金) 12:32:34 [ LIawiXzY ]
続き投下

444 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/25(金) 12:33:14 [ CDVnjlgM ]
『観客が来るのが、多少早かったですか』
昼戦艦橋倒壊の衝撃を夜戦艦橋で耐えた松浦が船団発見の報を受けて口内で呟く
『速力下げ、火災鎮火に全力を尽くせ、古鷹以下は扶桑復帰まで持久せよ!』
『何を言っておりますか!!機銃弾が駆逐艦ではもうないのですぞ・・・!!ワイバーンに対して有効打を与えられません!!』
禿頭の煤まみれが艦橋内に入ってくる
『誰か!?』
誰何する
『前部機銃座、統制指揮官の吾妻特務中尉です!中佐』
兵隊の中将、しかも留年組か
『先に一時海域から撤退する事が先です、火災は見たところほぼ全て船外火災、多少の延焼は問題になりますまい!』
『帝國の戦艦が炎上しながら海域を去る、まるで敗北ではないか。扶桑はまだまだ戦える、ここの夜戦艦橋、後艦橋も無事、主砲も側距儀が個別に生きている砲の方が多い、近づいてくるなら主砲のブラストで蹴散らせばよい!やれるのだ、中尉!』
結末までにはまだ無駄に時間を潰さねばならない、いい合いの手だ
『ちょ、統制官!』
『黙っていたまえ新庄君!!』
突然の爆発音が後方から聞こえた、艦橋が静まる、松浦が報告を求める
『今の音はなにか?』
『初春です!初春が・・・爆発、炎上中です!!』

445 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/25(金) 12:34:18 [ BWp6c0w2 ]
『壁が一枚減ったか・・・』
『若葉、ワイバーンによる集中攻撃を受けています!!』
次に伝令が届けた知らせも凶報だった
『やつら、対空火力がある、まだ抵抗できる艦から狙ってやがる・・・!』
機数が一次攻撃隊よりも少ないためか、今度の攻撃隊は無理をせず、かといって、逃げているというわけでも無く、いまだ健在ぶりを示し火力も強い古鷹は狙わず、対空火力を保持するが与しやすい駆逐艦から叩いている・・・弾が切れたのか乗員が小銃持ち出してやけくそのようになっている初霜は完全に無視されている。
ある意味、大物病にかかっている我が帝國、いや、我々を含めたあちらの世界のパイロットより粘着質で手強いかもしれない
『あの船団と戦う前に駆逐隊が失われますぞ!!!たった扶桑一艦だけ残って勝利など!!』
百や二百では利かない帆船の群れ・・・古鷹だけでは・・・死にに行くようなものだ、扶桑の主砲で三式で撃ったって、対艦では一隻、二隻巻き込めばいい方だろう
『ボロボロであれば、ボロボロであるほど良いのだ、この戦は』
『どういう・・・意味です、それは?』
艦橋全員の目が松浦に集まる
『釣り、を知っているかね、特務中尉は』
松浦はニヤリと不敵に笑った

446 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/25(金) 12:35:23 [ QDKBCzwM ]
古鷹艦長が迫り来る船団に目を向けている
『この古鷹・・・一隻で逃げるわけにもいかん、命令も明確に出ている』
『各機銃の門あたり残弾、700発を切りました、こういうときの為の機銃増設だと言うのに!』
停泊している港湾が帆船で埋められているなどざらだ、そこでテロなり奇襲なり(群れてる船全てが敵の場合も無いわけじゃ無い)かけてこられても主砲と高角砲は咄嗟の取り回しに難があり、かつ・・・いや、これが本音だ、弾が帆船相手にはもったいない、ならばもしもの対米戦での対空にも有効な機銃を、ドックに整備で入るたびに載せれるだけ載せとこう、となるのは自然の流れだった。なるべく25㎜に統一したのは弾を含めて生産効果を期待してだ、高射機銃も欲しいところだが、ラインが割かれるのを忌避したのだ(陸式の銃など使ってたまるか、の意見もあった)
『是非もあるまい、突入と離脱を繰り返そう、小船は波をあてて転覆させるのも手だ、ワイバーンの動向には絶えず注意をしておけ』
『敵の船が進路の全てを塞いでしまったら・・・』
『・・・そりゃ君、ぶつけるしかなかろう。』
おどけた調子で言って見せる艦長、自分の制帽をかぶり直すと表情を元に戻す
『さぁて、行こう、諸君』

447 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/25(金) 12:36:30 [ 9TlQkVJc ]
『イェンサー様!!もっと船を下げてください!ここでは危険過ぎます』
軍師の女騎士、リィズがイェンサーに注進する、乗っているのは日本の中世で言う小早の部類、下手すると帝國の艦が作り出す波だけで転覆しかねない代物だ
『指揮官陣頭がサオーマの流儀たい!ばってん簡単にやられてん意味のなかけん、こいば選んだったい』
イェンサーら列強将兵の殆どは帝國の戦いというものを見たことが無い、伝聞だけである。見識を広める必要がなんにしてもある、敵情は前に出なければわからない、それがイェンサーの信条だった
この場には各国五万人余の水軍、ほとんどが水夫だがこの数だ、大小250隻以上の大船団を形成している
『向かってくるのは一隻だけね?なら都合がよか』
向こうの方ではサオーマのどの城よりも大きくて強固でありそうな巨艦が燃えている

ドンドンドン!!ダダダダダダダダダダ!!

向かってくる艦が大きな火の玉と小さな火の玉を吐き出している、大きな火の玉はイェンサーの頭を飛び越えて後方の大型帆船を一撃で粉砕し、小さい火の玉は目の前の中型帆船の甲板上とガンルームをズタズタにした、焼夷弾故か、しばらくしてから船そのものが燃え上がる
『すごかなぁ!!』

448 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/25(金) 12:37:37 [ ApfSecOw ]
嬉しそうにイェンサーが目を細める、リィズは気が気ではない、あの小さな火の玉はいつこちらに向けられるかわかったものでは無いからだ
『こりゃあうかうかしとられんばいね、対艦魔法の槍ば使う!リィズ!伝達をせぃ!』
『はっ!』
鎧の胸の隙間から合図の人指し指大の鏡を出して反射させる、しかしいいのだろうか?この対艦魔法の槍はいわゆる切り札、オリジナルに近いタイプで攻撃力も大きいがニ発しか後方の船に据えつけていない
『こいじゃ魔法の槍ばつんどる船がいつ沈められてんおかしくはなか、使わんで沈んだら損たい』
疑問に答えるようにイェンサーが笑う、戦うのが心底楽しいようだ
イェンサーの心づもりでは大火災を起こしてのろのろ動いている扶桑はあとでじっくり片付けるつもりだった、それよりも近くに来て、積極的に戦うものを討ち取るべし、と
これは、あとは士気を失った敵軍の裏崩れを期待し、また睨みあいに戻すという陸上の合戦のセオリーを海戦も同じように通用すると考えたのだ
『やる気のあるもんば全部倒せば戦は勝ちじゃ!皆の者!今が潮である!総ががりじゃあっ!!!』
後方から二つの光点が打ち出された、船団も素早く動き始める、風の魔石を使う船もあった

449 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/25(金) 12:38:58 [ gY4wlmWo ]
『右舷!ニ基!対艦魔法の槍です!大きい!!!』
『高角砲、機銃座は迎撃に集中せよ、やつらが我々に打撃を与えられる兵器はそれだけだ』
帆船の船団も相対速度でか急速に接近してくる、機と見たらしいが残念だったな
『一基迎撃成功!』
光点が砕け散るのを見てニマリとする、すぐに離脱してアウトレンジだ、現代艦に帆船が追いつけるものか、いくらか攻撃は受けるだろうが、先程言ったように魔法の槍以外に敵は無い
『か、艦長!!右・・・!』
『どうし』

ガギィン!!!

どうしたと言う前に艦長の身体がふっとばされていた、ふっとばしたものの正体は丸太、あちらの帆船のマスト用かと思われるぐらい大きなものだ
『艦長!!!』
『げふっ・・・大丈夫だ、死んではいない・・・なんだこれは?』

ガコン、バコン、ガギン、ヒュンヒュヒュンヒュンヒュン

弓矢の飛翔音が投げ掛けられる丸太棒の当たる音に加えて聞こえてくる
『ニ基目!撃墜!しかし機銃弾、弾切れです!!!加えて弓矢で外に出られません!』
『よし、取り舵!これは堪らん』
弓矢もそうだが重量物が飛んでくるだけで厄介だ
バギャン

イヤな音と振動が走った
『木材を巻き込んで舵とスクリューが!!』

450 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/25(金) 12:41:18 [ u9FMJxgs ]
本来は攻城兵器と呼ばれるものを船に持ち込んでいたのだ、城門や薄い壁なら貫通してしまう丸太飛ばし、カタパルトといっていい、は思った以上の働きを見せた、スクリュー等を破壊したのは幸運過ぎたともいえるが
『動きが止まりおるか?それに小さい火の玉もやんだ・・・これはもろた!リィズどん!!』
『はっ!全軍突っ込めぇっ!!』
乗り移ればこっちのものだ、同じ次元に降りて来てもらおう、あとは数だ。
『氷の魔石で転覆させる案は使わなくてもよかったみたいですね・・・これもイェンサー様の御慧眼、恐れ入ります』
リィズが主将を褒める、果断な指揮は彼でなければできなかったろう
『奪えるならそれが一番よか、沈めるのは我々にとって二の次、今回は運がよか、それだけたい。それができるのも、ワイバーン隊と今も撃たれよる船にのった兵たちあってこそじゃ、でなければおいはとっくの昔に粉みじんたい、やっぱり帝國は噂通り、強かぁ』
目を細め、扶桑を見やる、まだ、あれが居るのだ
『しかし私たちはそれに打ち勝ちました!』
『・・・』
勢いは確かにこちらにある、しかしイェンサーには勝った気が全くしない、こんな戦は初めてだ
『三次のワイバーン攻撃隊が来ました!』

451 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/25(金) 12:43:13 [ BWp6c0w2 ]
『釣り・・・とはなんです』
こうしている間にも古鷹の状況は悪化していく
『古鷹より、我、航行不能と・・・それからワイバーンの影を見たり、気をつけたし、本艦は艦内戦に突入せり、機密保持のため通信機その他を処分す、です』
電探はどの艦も失われていた、蚊帳の外に置かれた朝霜は加古らの溺者救助を行っている
『おお、ワイバーンですか、ちょうどいい、最後の御奉公に主砲斉発を行います、それにどうやら、役者が揃ったようですから』
『中佐!!』
『まずしなければならないことは敵への対応だよ、吾妻中尉。左砲戦用意!弾種三式!機銃座、及び応急修理要員は中へ!』
扶桑の六つの砲塔がそれぞれの目標へと旋回する、肉眼でも見えるところまで来た、今度は200機程であろうか、第二次攻撃隊もまだ空域にいるので、約300ものワイバーンがここに居る算段になる。攻撃隊はこちらの火災で反撃不能と見てバラけるのを怠っていた、ふふん、と松浦が鼻で笑う
『奢敵を撃て!!撃ち方始め!!』

ドドドドドド!!!

十二の軌跡が指示された空域へと向かう、三式は大輪の死の花火を咲かせることだろう、戦果も期待できる。しかし、と吾妻が呟く
『奢っているのは一体どっちなのかね』

452 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/25(金) 12:44:44 [ QAIBb81Q ]
第三次攻撃隊は少々混乱に陥っていた、パイロットは一次攻撃隊の者が多いのだが、二次攻撃で扶桑が被った被害の受け具合いが外見上酷いので、どこかで安心してしまっていたのだ
『まだ生きてやがるのか!!!』
あれだけの攻撃を受けて、あれだけの火炎と黒煙を吐いて反撃など・・・!何てしぶとい!!
『散開!!!散開!!!散開!!!』
一騎でも被害を減らさなければ

ズババババババババ!!!

跡形も残らなかったり、身体の一部がちぎれたり、全身を穴だらけにされてしまったワイバーン達が落ちていく
『くそったれめ!!!』
今度は高いところからでなく肉薄して確実に爆弾を叩き込んでやる、それで終いだ!!!
しかし終いにされたのはワイバーンを駆る事に集中していた彼の方だった、それからその災厄は彼一人に降りかかったものではなかった。
『まさに紫の電に打たれたようだった』
老いた龍騎士はそう語ったという。
薄い青紫、この周辺の海の色に合わせて塗装された紫電改の上空から逆落としに行った奇襲の成果だった
『な、なんでいまさらこいつらがここにっ!?』
彼等は第一次、第二次とも空中迎撃を受けなかったので、もはや無いものとして頭から放り出していたのだ

453 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/25(金) 12:46:43 [ kXkOHBG6 ]
『そ、そんな・・・あれだけ燃えて、なお生きているのですか・・・あれは』
リィズが自らが言った勝利という言葉のあっけない崩壊に打ちひしがれていた
『み、見ろ!!!向こうにやつらの大艦隊だ!あのデカいのともう一隻同じ奴が居やがる!!』
水夫がもうダメだと恐怖の交じった声で叫ぶ
『加えて機械龍・・・こいははめられたばいね』
イェンサーは龍の舞う空を見上げて呟く
『・・・』
『・・・』
『・・・』
『・・・』
『どぎゃんした?』
リィズさえ答えないあまりの無反応に海の方に視線を戻す
『・・・』
そして彼も沈黙した
『なんね、あれは・・・』
ようやく出した言葉は、それだけだった。
先程まで列強がその全力をあげて戦っていまだ生きているあの要塞艦、それと同じ船が先頭を走っている、しかしあの後ろの、馬鹿デカい船は一体なんなんだ、しかも二隻、回りを見てみればあの船と同じぐらいの大きさだがデザインが纏まっていて精悍そうな船が二隻にあの馬鹿デカい船よりは小さいが、あの要塞艦より大きくて強そうなのが二隻
『私たちは、一体何と戦っているんですか・・・』
他の比較的小型のどの船をみても自分達が戦って来た相手より新しく、強大そうではないか

454 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/25(金) 12:49:17 [ zeLnApqc ]
『第一艦隊に航空隊は第三艦隊の・・・何故ここに』
列強の基地等を攻撃しているはずじゃなかったのか?居るならもう少し早く・・・
『チェックメイト、と。何故、本艦が組むべき山城と組まずに一艦だけでここに出向いたかわかったかな?書類上でも分隊ごとに動かした方がやりやすい、被害も分散したはずだ。では何故?』
わかるわけが無い
『・・・』
松浦が一人で説明する
『視覚効果だ、もう一隻大変苦労している相手と同じのが居る、だというのにその後ろには、あの大和というこちらの世界にとって卑怯極まりない存在を見せ付ける。他の艦もそうだ。比べられる。扶桑は大和と、古鷹は最上と、初春級は陽炎級や秋月級とな』
『つまり我々に投入した戦力が多ければ多い程・・・絶望を味わう、と』
『御名答』
愉しそうに松浦が笑う
『彼等は撃破せんよ、彼等は連合軍だ、彼等の存在そのものが列強に対して情報爆弾足り得る。彼等の情報が戦争や紛争抑止に繋がる。そして帝國にとって最大脅威足る列強のワイバーン隊はこの通り』
上を指差す、空中戦は一方的に紫電改が追い回している
『奇襲で壊滅的な被害を受けてしまった、回復に一体何年かかるか』
最悪二十年で利かないかもしれない

455 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/25(金) 12:51:41 [ 62Dc2aCc ]
『ダメ押しに見せ場を造らなければなりませんので、今すぐに、総員退艦を命じます』
『総員退艦ですと!?中佐自身がおっしゃったように機関は無事、主砲も無事なのですぞ!?』
『ええそうです、まだ戦える扶桑をあの大和の主砲で自沈処分します、持ち帰って修理、大改装する予算を得るよりは、喪失したとして代艦の予算を得た方が何かと喜ばれるものでな、まぁ、紀伊級でお流れになりそうな超甲巡二隻あたりに化けると思われるが』
事もなげに松浦が言い放つ
『何故、君らにこの事を聴かせたかと言うと退艦の理解をしてもらうためだ、君らが理解するならば他の乗員の退艦はたやすい』
夜戦艦橋にいた兵達が顔を見合わせる
『海軍が新たな力を得るためと帝國の平和の為だ、協力してほしい』
『命令である以上・・・退艦には協力します、ですが、中佐のやり方には賛同できかねます』
司令、艦長以下、何人の人間が死んだ事か、なにより今の説明では政治色が濃過ぎる、海軍軍人は政治に関与すべからずじゃなかったのか。
いや、賛同できないのはそれが大元じゃ無い。死力を尽くした者達を劇場化し、見世物然として利用しようとしている点だ
吾妻の言には何人かが頷く
『海軍の美徳か・・・』

456 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/25(金) 12:53:35 [ e.yRiOXc ]
第一艦隊旗艦大和

ここまでしなきゃならんのか
開封による命令と分派艦隊の目的と命運、作戦の意図をを聞かされての司令部の反応は、やはりその念が大きかった
『扶桑から退艦始まります』
『宇垣戦隊司令・・・大和が、大和が撃たねばならんのですか!敵主力艦一撃轟沈を夢見たこの艦が、最初に撃つのが同朋の扶桑とは・・・!あまりにも・・・』
『有賀君、大和でなければならんのだ、この作戦は』
鉄仮面とは言われただけはある、心根はどう思ってるかはわからないが、全く表情を変えない
『艦長、介錯はその者と仲のよいもの、その中でも腕のよい、一撃で命を絶ってやる事が一番の手向けなのだと聞いた・・・ならばこの大和がやるしかあるまい』
『近藤長官・・・』
第一艦隊を統率する近藤が、諭すように有賀に答える
『一撃で苦しまずに、できるな、有賀艦長』
宇垣が抑揚をつけずに言う、やはり落ち込んでいるのかもしれない
『・・・わかりました、最善を尽くします、戦隊司令、全門命中を期すため、接近の許可を』
『・・・一万まで許可する、あまり近くても傍観者的に言ってしまらない、それでは威圧の意味を成さん』
『それでやれるなら十分です、ありがとうございます!』

457 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/25(金) 12:56:11 [ JlgIauw. ]
『やつら・・・攻撃してこないのか?』
当初はパニックが起きて船から飛び込む水夫がかなりの数発生していたが帝國艦隊が何もしてこないので、今は落ち着きを取り戻している。攻めてくるとなれば一気に崩壊しそうな士気ではあるが、人間誰もが持つ恐い物見たさといったところか
『攻撃しないのは占拠しかけているあの船の為でしょうか?』
リィズが言う、古鷹の事だ
『いや、ちがいもそ。あの馬鹿デカい船ん動き出してから脱出ば始めたとはあちらの船、なんばする気か?』
彼等にとって船とは奪ってまた活用するものである、燃やすことすら珍しい。自沈作業など理解の外だ、ましてや戦艦の艦砲として最大である46センチ砲でそれを行おうとは
『戦船を突きつめていった究極の船とはあん船ん事ば言うとやろうね』
直感的にイェンサーが大和を見て感じている
『ならばおいは見たか!究極の船っちゅうもんが示す力を!』

ドドドドドドド!!!!!!

『!!!』
凄まじい発射音、そして衝撃、水夫には腰を抜かした者すらいた、今まで戦っていた扶桑の主砲音には何も感じて居なかったというのに
そして飛んでいった砲弾の為した行為に船上の誰もが膝を屈した、イェンサーただ一人を除いて

458 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/25(金) 12:59:04 [ 25Xn9yoU ]
『退艦、無事済んだようです・・・救助にあたった最上ら第七戦隊から扶桑の指揮をとった生存者の中の上級指揮官が自沈作業の後、説明に訪れるそうです』
伝令から紙を受け取った有賀が伝える
『そろそろか・・・』
宇垣が時計を見つつ呟く
『扶桑には親子二代で乗り込んだ者も居ると聞いた、長らく帝國に奉仕して来た勇艦だ、ここに沈めてしまうことは悲しいが、その遺訓はなんとしても残していかなければならない、それが手向けだ。艦長、始めたまえ』
『・・・一撃で沈めます、撃ち方始め!!』

ドドドドドドド!!!!!!

九発の巨弾が飛翔し扶桑の命運を絶たんとする
ある一発は列強が何をしても貫けぬ砲塔を貫通し吹き飛ばした、またある一発は艦内深くまで貫通し、強固な艦の構造を喰い破っていく、やがて砲弾の起こした爆炎は自沈と退艦の為開け放たれたハッチから副砲火薬庫に進入しそこの誘爆は艦全体に配置された砲塔下の弾薬庫に連鎖、艦全体へと広がっていく

ドドーン!!!ドゴゴゴゴ!!!

扶桑は大爆発を起こして、艦が三つに割れ、横転し沈んだ。列強の船団の誰もが膝を屈した光景とはそれだった
大和の艦橋では誰が言うでもなく挙手の礼が行われ、扶桑を見送った

459 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/25(金) 13:04:06 [ BWp6c0w2 ]
『そういえば、さらに分派したはずの第二十一根拠地隊の姿が見えませんな、そろそろ合流してもいいはずですが・・・』
挙手の礼を降ろして宇垣が問う
『うん・・・?そういえば、そうですな、見張り員、ハマの方向を注視』
有賀が命じるとすぐに報告が上がる
『筑紫と思われる艦、後退してきます!・・・各所が焼け爛れて斑になってます』
『筑紫一艦のみか?他に海防艦二隻が居たはずだが』
『見えません!一艦だけです!』



第二十一根拠地隊を壊滅させたモノ・・・パンドラの箱が開かれようとしていた

460 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/25(金) 13:13:39 [ 50Ied/7E ]
投下終了・・・


くろべえさんとベクトルは正反対ですが、内容が

カブッチマッター('A`)


ヴァイスローゼン編海戦パートこれでようやく終わりです、ヴァイスローゼン編(つーか唄う海自体か)自体も終局へ向けて収束していきます


長ったらしくてすいませんでしたm(__)m
帆船との海戦なんてへばっちまったしorz

461 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/25(金) 14:47:12 [ 8kGssc1U ]
陸士長さん、投下乙です。
大日本帝國としては、『東方大日本帝国領』をどう扱うか困りますねえ。評判悪そうだし。

くろべえさん、投下乙です。
第五艦隊が現状のままでは壊滅必至ですからねえ。
せめて九九艦爆+20ミリ機銃ポッドを。
昭和30年ぐらいまでは大規模戦争したくないなあ。

長崎県人さん、投下乙です。
扶桑が…。確かに改修するより新鋭艦の方が良いですけど。
松浦さんが言うまで、全部の艦が前の世代の艦ということに気づきませんでした。
やはり海軍凄いなあ。

「四万十」型軽巡洋艦、良いんじゃないですか?
それで、後の軍事マニアの失敗談で「『ヨンマンジュウ』型と、よんでた時期があったよ(笑)」となるわけですね。

462 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/25(金) 15:11:38 [ NbVPvpP2 ]
清華の国力って列強最大だったんですね。「帝国」はどうなってんだろ。
そういえば、あの某国王って真っ白けでしたね。
そして、エルフも真っ白け。
ということは(汗)?

463 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/25(金) 16:08:24 [ ILxfbBDg ]
新型5500トン型の内容を見ていると香取級の量産型も有りそうな印象がしてきた。
安い割に見栄えは良いし一通りの武装はあるし。
性能はいまいちだけど、乗り心地は悪くないし内装だって悪くないし。
何より訓練航海中の表敬訪問などで(買う側が)現物を見る機会があるのが。
どんなものでしょ?

464 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/25(金) 18:06:45 [ 8kGssc1U ]
>>463
香取型の量産型は、くろべえさん世界では大型海防艦「御蔵型」として海上護衛総隊で活躍してますよね。
ただ、輸出用にはディーゼル機関つけたくないしなあ。

465 名前:ヨークタウン ◆r2Exln9QPQ 投稿日:2006/08/25(金) 19:06:50 [ XwixsAvk ]
くろべえさん投下お疲れ様です。
うーん、南北分断編も呼んでみたいのは自分だけかm(PAN!

長崎県人さん投下お疲れ様です。
扶桑がついに・・・・・・それでも、立派な最後でしたね(`・ω・´)ゝ”

466 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/25(金) 21:20:42 [ RKvgjTm2 ]
切り込み戦術はボツですね。
主砲を打てば爆風で始末が付きますから。
その点、むしろ空母の方が波状攻撃で着艦しやすくないでしょうか?

467 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/25(金) 21:41:31 [ QDKBCzwM ]
F世界に於いて切込み戦術の問題点は
第一に防御火力が保持されてると殆ど成立しないこと
第二に船舶の場合速力差、大型艦程喫水からの高さで接舷に難があること
第三にワイバーン等からでは白兵戦の大きな要因になる人数が送り込めないこと(ワイバーンの支援を得るにしても制空権奪取が絶対)


さらにこれに加えて、乗り移られて武器がなくとも、最悪消火栓からの放水だけでも戦えますからねぇ・・・非常用の手斧とか、ハッチ締められたらどうするとか、注水されて溺れさせられるとか、これをどう処理していくかが問題なんですよね・・・自分とこの古鷹は完全占拠出来ませんでした、テヘッ♪
・・・orz

468 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/25(金) 22:45:25 [ dXhZJ/Jc ]
どちらにしても水密隔壁を内側から閉められればバーナーが無い以上突破不可能なのでは?
もうそろそろスウェーデンのボーフォース社の40ミリ機銃か、2インチクラス以上の大口径機銃がほしいところですね。
25ミリ機銃の有効射高は3000m前後(実際に弾道が直線を描くのは僅か1000m前後らしいです)ですが、ボ社の40ミリ機銃は7000m近くあったそうです。
ちなみに傑作といわれたボーフォース社製の40ミリ機銃は1941年にはスウェーデン軍に納入を開始しています。
ちなみに米海軍の双璧となったVT信管は日本では終戦間際の1945年に研究がスタートしたそうです。
情報出展は世界の艦船、対空兵装の変遷より

469 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/26(土) 01:48:26 [ 8kGssc1U ]
>>468
機銃の議論(議論・考察スレ(軍事・現代兵器)の160〜)の後で、くろべえさん世界では37mm四連装機銃の搭載が決定してますよ。
ただ、本採用になるのかは分かりませんが。
対抗馬は銃身延長型25mm機銃です。

470 名前:陸士長 投稿日:2006/08/26(土) 02:38:35 [ yJp9EK6U ]
感想どうもです。

>大日本帝國としては、『東方大日本帝国領』をどう扱うか困りますねえ。
何せ荒削りな国土と戦力だけはでかい国なので頭が痛くなる問題でしょうね。
それと、『西方大日本帝国領』の間違いでした。

くろべえさんへ。
アコヤガイは食べれます。
真珠を採取した際に付いている貝柱は別に採取して天ぷらなどに使うそうで。

471 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/26(土) 03:05:30 [ 4vrN/x3M ]
亀レスだけど、三重県でアコヤ貝のバター焼きを食べたことがあります。
結構おいしいですよ

472 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/26(土) 05:53:53 [ N//PcpOI ]
くろべえさん こんにちは。
帝國のF世界における超大国化が進んでいますが、そうなると邦国王族・貴族だけでなく
潜在的に敵対している列強や中立国においても「日本語」を子弟に教育していくのでは
ないでしょうか?
特に、裏技で意志の疎通には支障なくても、文字や文章表現、そして、当時あった
礼式に則った手紙の書き方とか、貴族だったら必須の知識になると思います。
師範学校卒で国文と史学を学んだ人材に対する需要が邦国で爆発するとか。

もしくは、京都帝國大学卒、言語学科出身だが国文や帝国、各国史学を広く学び
本人も歴史の古い士族出の助教授が、大邦の王家に教育と各種礼式助言の為
三顧の礼で来てもらうとか。
で、近隣だけでなく他の邦国もそれに習って・・・・
が、帝国人の出国は滅多に認められていないから、大邦だけなんでしょうな。

473 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/26(土) 06:02:09 [ N//PcpOI ]
>>426
>ただ、F世界の外交使節団が現代の摩天楼が立ち上る「帝都」を見たら
>それはそれでショックが大きそう。
宿泊先も帝国ホテルとかでしょうし、首都高を車でとか新幹線に乗車して
自国のなになに間の距離がこんな短時間でとか・・・・
あと、現代日本の魔法を超えた医療技術なんかも。
あとしばらくしたら再生医療も一般化しますし。

474 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/26(土) 06:11:04 [ 9TlQkVJc ]
1945年のヴァイスローゼン事変から5年、陸軍の動員解除等が原因のベビーブームで人口が増加し、大陸への移民が限定的ながら解放され、帝國人が集まって造りだした初めての祖界、または新日本人町であるニューコンチネンタル市。
帝國に属する雑多な種族が集まり、新天地、人種のサラダボウルと呼ばれたそこで、転移によって一度は失われた劇場オペラをレーヴァテイルの歌手を主役にして万聖節の夜に執り行うことになったのだ

それに感じた違和感を元にもう一人のレーヴァテイル、海軍湾港管理部嘱託が動き出す

流れる旋律は肉を溶かし焼き払う
乱れ飛ぶ銃弾
市を徘徊する変化させられた化け物
暗躍する帝國陸軍の影
動き出す旗艦山城以下の、帝國海軍緊急時即応派遣艦隊



『私たちが悪魔と呼ばれたわけはこの事かもしれない・・・』

『我々が動くということは本来あってはならないことなのだ』

『同じ血液型の人間だけが集められていた?』

『なんだってこんな時期に、最悪の正月だ!!』

『まさか、まさかこの湾自体が大きな・・・』

『今はこの力を怨まない・・・あなたと、決着をつけられるから!!!』

最凶の敵は私たちの中に居る

475 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/26(土) 06:15:50 [ kXkOHBG6 ]
と、こんな外伝を書こうかと思案中・・・いや唄う海が先なのはわかっているのですが
どうでっしゃろ?

476 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/26(土) 09:21:05 [ R8PCKt5M ]
>>472
>帝國礼式
格式高いが特に爵位や財産を持たない公家にお呼びがかかるかもしれんな。

>本人も歴史の古い士族出の助教授が、大邦の王家に教育と各種礼式助言の為
>三顧の礼で来てもらうとか。
>で、近隣だけでなく他の邦国もそれに習って・・・・
助言を受けた邦国が見事な帝國式典礼を行ない、それを宮内省から讃えられて・・・
邦国間の格式の高低や帝國爵位持ち王族間の嫉妬や意地、そして邦国に対する様々な実利。
帝國宮中作法が広まっていくのだろうな。

477 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/26(土) 09:52:59 [ yq9lkYzY ]
長崎県人様、投稿乙です。
似たような展開で申し訳ない。


>>442
442様、有難う御座います。

>全世界荒廃END
先のことは未定ですが、とりあえず米ソ冷戦並の素晴しい世界が待っています。
(しかも両国ともガチの強権国家。反政府運動や平和運動は即逮捕)

>>461
名無し三等兵様、有難う御座います。

>昭和30年ぐらいまでは大規模戦争したくないなあ。
帝国上層部もそう判断しているでしょう。現状では長期戦は不可能ですからねえ。

>>462
>清華の国力って列強最大だったんですね。「帝国」はどうなってんだろ。
そこまで行くのは何時の日か…… orz
このままでは「作品の進行度合い『だけ』は御大並」なんて言われてしまう。
結構頑張ってはいるんだけどなあ。

>そういえば、あの某国王って真っ白けでしたね。
?これは一寸分かりません。御免なさい。

478 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/26(土) 09:53:43 [ yq9lkYzY ]
>>463
四万十型巡洋艦(新5500トン型)と御蔵型大型海防艦(香取型練習巡洋艦の改正型)は輸出される軍艦の中でも最高級品です。大概は奮発して一号型海防艦(新型海防艦)止まりでしょうねえ。

(上記三艦種については、HPの頂き物の項を御参照下さい)

まあ大概の国は帝國軍のお下がりの供与で済ませるでしょう。
各国とも国の規模が小さいですし、戦争の危機が迫っている訳じゃあありませんから。

>>464
>輸出用にはディーゼル機関つけたくない
輸出型は、全て規格化された蒸気タービンで統一されています。

>>465
ヨークタウン様、有難う御座います。

>うーん、南北分断編も呼んでみたいのは自分だけかm(PAN!
有難う御座います。気が向いたら書くかも。……パタリロ編で

>>466
>その点、むしろ空母の方が波状攻撃で着艦しやすくないでしょうか?
空母が薄い護衛で出撃することはまずありませんし、防空戦闘機もいるから……

くろべえ世界の空母群(3個保有)は、
正規空母2、軽空母1に対して重巡2、軽巡1、防空駆逐艦4(定数)、駆逐艦8が護衛につきます。これに艦戦が多数加わりますからとても……

479 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/26(土) 09:54:39 [ yq9lkYzY ]
>>467
亡命者による技術・情報漏れや、横流しによる帝國製物資の調達、これ等の蓄積と入念な準備があれば不可能では無いでしょう。

まあこの手はあくまで奇策であり、戦艦の護衛が少ない場合、それも最初の一度だけしか使えない手でしょうが。

>>468
>バーナー
とりあえず横流し品を調達したということで……

>もうそろそろスウェーデンのボーフォース社の40ミリ機銃か、2インチクラス以上の大口径機銃がほしいところですね。
弾薬がそのまま使える25ミリ機銃の長砲身化(60口径→80口径)で行きます。
まあ一部の艦で採用しているラインメタルの旧式37ミリ機銃を併用する可能性もありますが、重いし、人手いるし、発射速度遅いからなあ……

>>469
>37mm四連装機銃
特型以降の駆逐艦を哨戒艇に改装する際、二番砲塔を撤去して、そこに1基設置する予定です。
他にも新5500トン型に装備されます。他は未定です。

>>470、471
>アコヤガイは食べれます。
食べられるのですか。
そういえば、この世界でも貝を食べるのを嫌がる国の人がいるだろうなあ。
ちなみにくろべえは海栗を食べられません。というか、見た目が駄目で口にしたこともない。

480 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/26(土) 09:55:25 [ yq9lkYzY ]
>>472
>潜在的に敵対している列強や中立国においても「日本語」を子弟に教育していくのではないでしょうか?
その可能性はありますね。特に今後は、帝國勢力圏内では帝國語が公用語となるだろうから。

>>476
>邦国間の格式の高低や帝國爵位持ち王族間の嫉妬や意地、そして邦国に対する様々な実利。
邦同士の争い、調停大変でしょうねえ。江戸幕府の大名統制が参考になるかな?
『邦國諸法度』とか、邦國間の格式制定とか礼儀作法とか色々制定する必要があるだろうなあ。

481 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/26(土) 09:55:56 [ yq9lkYzY ]
さて『対四ヵ国戦争』ですが、没になった一番の問題は『兵站問題』です。
昭和20年当時の状況では、大艦隊を1万キロの彼方に進出・戦闘させることは不可能です。
1個艦隊による通り魔的行動ならともかく、補給が続きませんよ……
船舶や物資を抽出される国内も凄いことになってそうだし。
(それ以上に経済の失速による臣民の熱狂の冷え込みが恐ろしい)

……『マリネラより哀をこめて』はジャンク扱いなので流用しましたが。


<くろべえ世界における列強の対帝國艦艇攻撃能力(昭和19年1月時点)>
重巡級ならば廃艦に出来る。主砲砲塔も装甲が1インチ程度しかないし。
タコ殴りすれば、衝撃により浸水、沈没も可能。

戦艦については、正攻法だけなら現状では中破が精一杯。
高角砲以下の兵装が全滅したり、非装甲区画がとんでも無いことになっても主要区画や主砲は無事。(まあそれなりの浸水とかもあるだろうけど)

矢張り、ある程度の破甲技術の開発は不可欠でしょうね。

『対四ヵ国戦争』ではトライアングルアロウの失敗による亡命者が出て、情報・技術の流出があったとしていますが、それでも昭和20年開戦では準備する時間が足りないでしょう。

まあ帝國の方も、こういう損害を受けてまで無理して艦を進めることはしないです。
特攻やってる訳じゃあ無いのだから、きちんと艦隊組んで、直援機も上げて進撃するでしょう。

戦艦中破なんてことになれば責任問題だろうし、主力艦撃沈された日には司令官の経歴が終わってしまいますから。

482 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/26(土) 12:54:56 [ yq9lkYzY ]
さて、SS投下。豆粥の後編です。

483 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/26(土) 12:57:40 [ yq9lkYzY ]
「帝國召喚」外伝4『辺境警備隊隊長よもやま物語』おまけ 豆粥3

11、

朝が来た。

目が覚めると全てが夢であった――ということを期待していたが、残念ながら昨日の出来事は現実だった様だ。


……その証拠に、背中が痛い。


普段の硬い寝床に比べて余りにも柔らかなベット――体が埋まる――で寝たため、変な体勢で寝てしまったためである。

ベットから起き上がると、まるで監視でもしていたかの様にノックの音が響いた。

返事をすると侍女達が入室、礼儀を守りながらも手早く部屋を整えていく。

朝食を如何なさいますか? との問いに食べると答え、何処でなさいますか? との問いにここでと答える。

侍女達は手早く部屋を整えると、一礼して退室していった。

(その手際の良さは、見事の一言に尽きる。家の者も見習って欲しいものだ)

484 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/26(土) 12:58:13 [ yq9lkYzY ]

しばらくすると再びノック。

今度は朝食だった。

午後の宴がありますので軽くしました、とのことではあるが、ヨハンにとっては贅沢極まりない食事である。

肉と卵がたっぷり入った麦粥に白パン、それに様々な種類の生野菜だ。

……後は、何やら得たいの知れぬ液体の入った小さな深皿。

尋ねると、生野菜にかける汁らしい。


ははあ、御偉方が生野菜の味付けに使うという、あれか。


聞いたことはある。が、見たことは無かった。

(貴族の宴の際には、残っても料理人達が下げてしまう)

指につけて恐る恐る舐めてみると、想像以上に旨い。

故に、ありったけかけてみる。

……その一連の動作を見た侍女が、その時一瞬だけではあるが、僅かに表情を変えたのは御愛嬌であろう。

幸か不幸か、ヨハンは気付かなかったが。

485 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/26(土) 12:58:45 [ yq9lkYzY ]
12、

さて朝食を終えて一息つくと、ようやく部屋の中を見回す余裕が出来た。

昨晩はとてもそんな余裕がなかったが、あらためてよく見ると恐ろしく立派な部屋である。


……さすが帝國貴族、金かけてるなあ。


そんなことをぼんやりと考える。

別に部屋が純金とか、そういう訳ではない一見簡素な部屋ではあるが、いかにも高価そうな材質がふんだんに使われており、目立たない所にさり気無く見事な彫刻が施されている。

(もしかしたら、純金とは言わないまでも、純銀の部屋並に金をかけているかもしれない)


窓から外を見下ろせば、多くの使用人達が庭の手入れをしたり荷物の出し入れをしている。

偶に何やら小脇に抱えて歩いているのは、ウェクスフォード家の事務官だろう。


朝も早くから仕事か、御苦労なことで……


そこまで考え、ふと気付く。 ……そういえば、今日の私の仕事は!?

486 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/26(土) 12:59:16 [ yq9lkYzY ]
下手をすれば無断欠勤である。

まあウェクスフォード家の方から何らかのフォローがあるだろう――念のために確認する必要がある――が、それはそれで別の意味で拙い。

あの少年のことである。冗談抜きで直接国王陛下に伝えている可能性があるのだ。


侍従長『陛下、ウェクスフォード卿より通信です。“義兄上、貴方の家臣のヨハンを少々御借りします”とのことですが』

国王『……誰だ、それは?』

国王の疑問に、控える文武百官が一様に首を捻る。

侍従長『ヨハン・オウルという名の治部省の官らしいのですが……』

治部大臣『……聞いたこともありませぬな? 至急確認しましょう』

治部大臣が各局の長達を集めて問うが矢張り判明せず、更にその下の長達を呼ぶ……

その場面を想像してヨハンは頭を抱え込む。

確かに仕事は休めるだろうが、後でどんな顔をして職場に戻れば良いというのだろう?

元来気の小さいヨハンにとって、とても耐えられない状況である。


その後暫く、ヨハンは己の想像上の出来事にのたうち回った。

487 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/26(土) 12:59:47 [ yq9lkYzY ]
13、

宴の用意が整ったことを報告しにきた侍女が見たものは、一人のたうち回るヨハンの姿であった。

が、彼女はその様子を完全に無視し、あくまで丁重にヨハンに宴の用意が整ったことを告げた。

……それはもう、ヨハンが居た堪れなくなる程に。


宴は盛大だった。

まず、魚と肉の燻製の薄切り、魚卵の塩漬けや酒蒸し、魚や肉の練り物等の前菜。

次いで、数種類のスープと汁を添えた生野菜。

魚を数種類の方法――フライ、シチュー、ムニエル、グラタン、クロケット――で調理したもの。

肉を数種類の方法――カツレツ、シチュー、ステーキ、ハンブルグステーキ、クロケット――で調理したもの。

贅沢にもこれ等を少量ずつ、最も上等な所だけ分けて食すのだ。もっと食べたいが、小心なヨハンにはとてもそれを口に出せない。

(残りを如何するのかも気になって仕方がない)

白パンもナッツや香草を練りこんだ、恐ろしく手間をかけたシロモノである。

酒が高価なのは言うまでも無い。

488 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/26(土) 13:00:18 [ yq9lkYzY ]
正直、それがどんな料理か分からないが、それぞれが恐ろしく手間暇と材料をかけたものである、ということだけは分かる。

(そして料理とは、手間と材料をかけるほど金がかかるものなのだ。一体幾らかけた――自分一人のために――か想像するだに恐ろしい)

味も美味い。今まで食べたことのある御馳走――宴の冷え切った残り物――など、比べることすらおこがましい程だ。

……緊張していなければ、もっと美味かっただろう。

それにしても、これだけの種類の料理を自分一人のために提供するとは!

ウェクスフォード家の財、恐るべしである。 ……自分如きに馳走する感覚はもっと恐ろしかったが。


そして最後に、本来のメインである豆粥が出された。

豆の姿が分からぬ程磨り潰された豆粥、豆が完全に汁に溶け込んだ豆粥、豆の姿がごろごろしている豆粥。

本来ならば餅などを加える筈なのだが、豆粥本来の味を味わって貰うため、他に何も加えていないそうだ。

夢にまで見た豆粥、それが湯気をたてて並んでいる。

小皿に盛られた豆粥。

自分のために作られた豆粥。勿論、好きなだけ食べて良いのだ。

……が、

489 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/26(土) 13:00:54 [ yq9lkYzY ]
「いや、もう、十分です。……大変申し訳ないが、十分です」

ヨハンは泣きそうな声で小さく呟いた。

今までの食事で、もういっぱいいっぱいだったのである。


14、

穴があったら入りたい、とは正にこのことであろう。

腹の配分も考えず、肝心の豆粥の前に腹一杯になるとは!

その情けなさといったら、例えようも無い。

(ナリマサは気の毒がったが、それが一層情けなさを煽った)


……その様な訳で、こうして肩を落として帰宅している。

あれから都まで送って貰った後、流石に家まで送って貰う訳にはいかぬ――御近所の注目の的だ――ので、そこで断ったのだ。

が、そうしたら竜をくれた。


騎乗用の小型地竜で、通常100㎏程度、無理しても150㎏程度しか載せられないが、燃費は良いし大人しくて扱いやすい種の竜だ。

自分と御土産を載せているだけなので、自分の気分と比して竜の足取りは軽い。

490 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/26(土) 13:01:25 [ yq9lkYzY ]

……家人に、一体なんと説明したら良いものか。


きっと呆れられるだろう。

まあそれも仕方が無い。何しろ何の断りも無くケネットまで行ったのだから。


夢の様な非現実的な出来事は終わりを告げ、直ぐに現実がやって来る。

現実は厳しいのだ。


こうして御土産に豆汁の材料(小豆と白砂糖)も貰ったが、これはヨハンの口には入らない。

もう直ぐ下の娘の嫁入りで、何かと物入りの時期だ。売られて幾ばくかの銭になるであろうことは間違いが無い。

(この竜も持参金代わりになる可能性が高いだろう)

……つまる所、夢の産物も全て消えてしまうのだ。


まあ良いさ。あんな夢の様な出来事など、直ぐに忘れてしまうに限る。


家人にも、急な仕事でケネットに言ったと誤魔化す必要があるだろう。

(土産はその礼だ)

491 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/26(土) 13:02:32 [ yq9lkYzY ]
ウェクスフォード家での出来事を、根掘り葉掘り聞かれたら敵わない。

あれは忘れるべき夢なのだから。

そう固く心に決めると、ヨハンは屋敷の門をくぐった。



さてその後のヨハンであるが、ケネットから帰って暫くの間、原因不明の下痢に悩まされたという。

……粗食に慣れたヨハンの胃腸にとって、ケネットで食した高栄養の料理はかなりの打撃だった様である。





SS投下終了。豆粥、即興にしては長くなりすぎた……

492 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/26(土) 13:30:30 [ QdG/BMvQ ]
投下乙ですくろべえさん
日本でも明治時代に肉食文化が広まった時期に、
ベジタリアン、魚食だった日本人に肉食は負担だったようで
原因不明の下痢が流行ったそうです。
代を重ねるごとに日本人は適応し、
肉に完全に適応したのは実は団塊の世代辺りだそうですよ

493 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/26(土) 13:34:55 [ ToMVwDhk ]
くろべえ氏、モツカレー

下痢かぁ
突然だから、初めて食べたものを受け付けなったか。。。

ヨハン南無( ̄△ ̄;)

494 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/26(土) 13:48:21 [ ecDQN3mk ]
一夜の夢ですなぁ・・・
これで、少しは名が売れれば。
例えば、ナリマサが王都にやって来るたびヨハンのところに顔を出して。
で、周囲も最初は何かと見ていたが、ヨハンが連れ回されるうちに国王にも
顔と名を覚えられて、いくらか出世と家禄の増が成されました、とか。

495 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/26(土) 14:01:21 [ ecDQN3mk ]
>>480
>邦同士の争い、調停大変でしょうねえ。江戸幕府の大名統制が参考になるかな?
>『邦國諸法度』とか、邦國間の格式制定とか礼儀作法とか色々制定する必要があるだろうなあ。

邦国間の色々を調停する国際裁判所として(それとも、帝國内の裁判となるのだろうか?)
「帝國裁判所」が発足しそうですね。
各邦国の帝國爵位持ち王族やその一門に連なる貴族、様々な利権を引きずるであろう
邦国間の婚姻、離婚についての調停。
邦国が確信的に、または無自覚に帝國、もしくは別の邦国に対して害を成す行為を
行った時の対処とか。
特に、多大な利権と王家の面子が関わってくる「帝國爵位」の剥奪や位階下げを
宮内省が理由を公開しないで行うより、公開裁判の元、検事、弁護人をたて
多角的な視点で検討した結果であれば「帝國の公正」に異を唱えることはできなくなるでしょう。
・・・最も、誰の目にも非が明らかであるなら、即時剥奪もあるでしょうが。

496 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/26(土) 14:39:35 [ QDKBCzwM ]
短いですが続き投下〜

497 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/26(土) 14:41:06 [ a1KJrS8g ]
帝都・軍令部

海軍部内は反対意見があれほどあったにも関わらず興奮を隠しきれぬ状態だった、やはり身内が戦果をあげるのは嬉しいらしい。手元にある新聞も
『ワイバーンを六百騎撃破!帝國海軍大奮迅!』
『海の荒鷲、鳴くだけで飛ばぬとはもう言わせぬ』
『我等が海軍が対馬丸の仇はとってくれた!』

煽っていることもあろうが
『熱しやすく、冷めやすい、か・・・』
すでに扶桑らの喪失が届いているだろうが、自沈であって撃沈ではない、駆逐艦や海防艦程度の撃沈では国民は動じないし、勝ち戦だ、報道部が美談にして伝えることだろう。予算も議会を通りやすくなるし、予科練や海軍兵学校への志願書は何倍増になるだろうか
『面白くないのは陸軍だ』
海軍がやったなら俺達も列強に対して何かしなければおいしいところを全て海軍に持ってかれる・・・という空気が流れているのがはっきりわかる、陸軍の石原莞爾らが作り出した馬鹿な空気だ。だがそれも、明日まで、明後日には対馬丸の下手人が列強ではなく、攻撃の大儀と掲げて支援すると決定した国であるヴァイスローゼンだった、と、これまた海軍の報道部が発表が行われる。謝罪と共に
『皆が皆、困惑するだろうな』
永野が一人笑う

498 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/26(土) 14:43:50 [ ewIsKeyI ]
だが列強への、対決姿勢は陸軍がせっせと広報したおかげで国民に浸透している、列強が攻撃する相手として間違いであったとしても、海軍批判はおきにくい
『あいつらはもとから怪しかったんだ、仕方ないさ、悪いのは間違えた一部のやつだ、海軍さんはこんな大戦果をよくやった!』
とか
『最後におえらいさんのバカはあったものの海軍さん自体は凄い!』
と国民的にはなるわけで
責任問題も、間違えたおえらいさんの俺自身がとっとと辞めるわけだからな、出来る限りのワンマンを通し、陸軍が大陸で何かする前に、と早急な作戦の実施を急かしたのはこの為だ、海軍部内は反対だったという、皆の言い訳も完璧だ、この醜聞をすっぱ抜くのも身内だしな
一番危険なのは、列強が衰退した今が攻め込む機である!と陸軍が独断専行で動いたなら、だが。これはいくら陸軍とはいえ無いだろう。我々並の戦果がすぐさまあがるわけが無いし、国民の支持も、それでは得られない
間違いで攻撃した相手が、その攻撃で弱ってるから攻めちまおう・・・無理だ、判官贔屓の国民がそのあまりにも卑怯な真似を支持する筈が無い
停戦交渉も現地で行われることになっている、それが締結されたなら、道化そのものでは無いか

499 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/26(土) 14:47:28 [ vmEEgS4w ]
陸軍の事を頭から追い出すと書類を取り出す
『戦時にこそ慎重な将を、平時には果断な将を、彼ならば十分以上にうまくやってくれるだろう』
後任には元GF長官で病気療養中だった山本君が復帰して就任する事になっている、自分が慎重な将だとは露ほどにも思わない、むしろ消極的と言えるだろう、だが、後任の彼が果断で有能だということに否やはない
『そういえば、三日天下だな』
昨日、今日、明日。なんとも短い、自分と同じ事をする後任が現れないよう、今日明日は派手に遊ばなければならない、凋落の前の最後の仇花、それが見事な程、ぶざまさと滑稽さは増す
『ふふ、今度は遊びすぎてぐったり大将というわけだな』
自分にお似合いのあだ名じゃないか
『軍事的検地から見れば大成功な作戦を一つこなせただけでも満足満足・・・さて』
軍令部に出仕している皆の分のビールを注文し、赤坂の料亭あたりに繰り出さねばならない、遊ぶ女には元帥杖などもらったようなものだと吹聴するのも忘れてはならない



役者は与えられた配役を最後までこなさなければならない、そうでなければ作品は完成しないのだから

500 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/26(土) 14:53:48 [ hxY6CuZ2 ]
投下終了
永野さんの三日天下と世論、その他でした
後追いで自分と同じような事をホイホイやらないように始末はつけなきゃなりません


くろべえさん投下乙です!
この作品を見ると非常に腹が減りますシャザイトバイショウスルニダw


>>495さん
帝國裁判所より、まず先に領事裁判があるだーよ、そこで裁判費用その他いろいろぼったくるだーよ

501 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/26(土) 17:40:49 [ ecDQN3mk ]
くろべえさん 質問です。
帝國大騎士爵を持つウェクスフォード家が後に帝國爵位持ちの邦国王家に
なるという裏設定があると前レスで読みましたが、その場合、帝國子爵どまり
なのでしょうか?
それとも、元々帝國爵位持ちであり、かつ当主は帝國人の血を引いている
と、言うことで帝國伯爵位を与えられますか?
あと、ダブリンにあれだけ近いというのに邦国を立ち上げれるかが疑問です。
どこかのもう少し離れた地を与えられるのでしょうか?
それと、帝國直参であるウェクスフォード家ですが、ダブリン貴族の称号は
保持しているのでしょうか?

502 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/26(土) 18:34:35 [ QK3erD3I ]
くろべえさん、投下乙です。
レストランのメニュー全部頼んだ感じですね(笑)。デザートが食べれなくなるって。
下痢は仕方がないよなあ。現代だって、外国に行って普段食べなれないもの食べて友人が腹壊してたもんなあ。
自分は同じ物食べて平気だったけど(笑)。

長崎県人さん、投下乙です。
永野さん、ちょっとかっこいい。
マスコミは暴走しやすいんだよなあ。


>輸出型は、全て規格化された蒸気タービンで統一されています。
輸出型新型海防艦も史実の海防艦みたいに蒸気タービンなんですね。
史実は1基でしたけど、これは小型の2基ですね。

503 名前:Gir. ◆pi/XgnFjWE 投稿日:2006/08/26(土) 18:43:31 [ 2bnOW4jA ]
> くろべえ殿
 5000浬? 日米間を渡って作戦行動できる日本海軍? うわ〜っ、と思っていましたが没案でしたか。
 ソレはともかくお疲れ様です。
 もうひとつの豆粥SSのオチで、昔あった警察犬マンガの1エピソード(夏バテ対策にウナギ喰わせて、警察犬ゲリピー)を思い出しました。生物は慣れが重要なのですね。


> 長崎県人殿
 SS、お疲れです。いやー、なんというか、壮絶な廃艦利用ですね。この間、米海軍がやった空母利用の人工漁礁なんて、めじゃありませんですねー。ここまで見事に手持ち資産の有効利用した日本海軍を見たことがない気がします。

追伸:
 あれから、佐世保工廠の調査をしているのですが、武蔵の船底塗装につかったとかいう第七ドックがどうしても見つからない〜
 いまの佐世保には1〜6号までしかドックはない上に、大型ドックは、3号(修繕用)・4号(新造用)しかない。
 工廠時代の記録だと、巡洋艦クラスの建造用1つに、戦艦修繕用が1つとかいっているから、こいつらのことなのかなぁ? 占領時代に再ナンバリングでもしたか?
 しかし現在では、4号で13万重量トン→22.5万重量トン、3号で18万重量トンまで入渠可能なまでにドック拡張して、攻撃空母でも建造・維持可能な施設になっているんですね。
 ……だが、第7ドックはみつからない。えぇい、他にドックは無いのか!?

 ――えーと、なになに。市民運動により、昭和49年100万トンドック建造のため、崎辺地区、返還される?
 2倍金田戦艦? 100サンチ100万トン戦艦?
 佐世保は奥が深い……

504 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/26(土) 18:51:00 [ Lo/LybhY ]
戦艦に着陸では艦橋に衝突の危険があり、
潰れたカエルのように張り付く竜と人。
上空から降下すると骨折で御の字。

505 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/26(土) 18:52:43 [ 4L9gijhs ]
現実世界では真珠の養殖は日本人が発明したものなんですが。
なんでこの世界に存在しているんでしょうか。
現実世界でも1893年に発明されたものなんですが。
真珠の養殖は実はかなり新しい技術なんですよね。
この世界に存在するには進み過ぎた技術ではないですかね。

506 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/26(土) 18:59:06 [ ecDQN3mk ]
真珠は鉱物ではないから、年月が経過すると劣化・崩壊するそうな。
最も、宝石も古い物は”褪せる”そうだが。

507 名前:陸士長 投稿日:2006/08/26(土) 19:00:55 [ yJp9EK6U ]
>>505

あーイヤー何というか。
その辺は異世界文明とか魔法万歳何でもありでお願いします。
元々『リメンバー・パールハーバー』をもじったネタですので。
しかし、真珠養殖がそんな新しい技術だとは知りませんでしたね。
その辺は勉強不足でした。

508 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/26(土) 20:44:41 [ r6xtDEqo ]
真珠養殖法発見は技術の進歩と言うよりひらめきと根気が大きかったと思うから
いいんじゃないかな

509 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/26(土) 21:12:09 [ N2tdnuNg ]
バイオ技術はF世界の方が圧倒的に上なんだから生物が絡んでいる限り
何があってもおかしくない。ペニシリンすらカビから作りそうだ。

510 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/26(土) 21:39:45 [ DDWyM0RU ]
投下乙です。
・・・そういやナリマサ少年とカナ姫って、作品中の年齢は同じくらいなんだよな・・・

511 名前:ここまで読んだ ◆zJ6rFHbX8Q 投稿日:2006/08/26(土) 23:09:07 [ XA/lA57k ]
>>くろべえさん投下お疲れ様です。

結局、お汁粉は食せず
夢は叶わぬからこそ尊いのか…

あと小型地竜(自動車で言ったら軽?いやスクータかな)が初登場で嬉しい限りですw

>>長崎県人さん、投下お疲れ様です。

まとめて読ませていただきました。
うん、阿漕だ帝國海軍w
効果的には間違いないし、ハードウェアの損失も最小限に抑えてますね。
ベテランの乗組員というソフトウェアは軽視ぎみなのが玉に瑕ですが、
兵を大切にするという方針に変わっても、長い間染み付いた行動
(軍事行動とは兵をいかに効率よく死なせるか)は払拭できないのかもしれませんね。

>>510さん
言われてみればそうですね。
本来ならカナ姫も婿取りとかで頭を悩ますところなんでしょうが
あの姫馬鹿な重臣達が居る限りすんなりとは決まりそうも無いですねw

512 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/27(日) 02:11:11 [ DUErFeR2 ]
>Gir.さん
Yahoo地図で見て、「あれ?7つドックあるじゃん」と思ったら、1つは船台なんですね。
昭和55年の「特定不況産業安定臨時措置法」辺りが怪しいけどなあ(船台を1つ廃止している)。

100万トンドックって、何作るんじゃ?!って思いますね。大型タンカー4隻一度に造れるし(笑)。

513 名前:Gir. ◆pi/XgnFjWE 投稿日:2006/08/27(日) 03:45:36 [ 2bnOW4jA ]
ナニカがドコかでつながったので、投下ー


 ここはボルドー、通称・帝國通り。歴史的経緯から、この町には日本帝國誇る利益代表達が群生していた。

「参謀、ではこの新巡洋艦は将来的に輸出されると考えておられるのですね」

「そう考えて貰って構わない」

「そうですか……」

 そういって、ボルドーはメディチ商会の若き名代は少し眉をひそめた。この番頭、若くして諸国を渡り歩き商才逞しくして、メディチ商会の名代を務めるまでの人物である。彼がこのような顔をするのであるから、それなりの理由があるはずだ。

 日本海軍典礼参謀はそう考えた。

「その名は、新五五〇〇トン型、と」

 なるほど。
 典礼参謀は、得心がいった。呼吸をするように公算を積み重ねて軍務に励む帝国海軍軍人とは違い、この世界の方々は、上から下まで、定量的ではなく、定性的に生きている(もちろん、日本帝國一般は所詮程度の違いでしかないと典礼参謀も理解している)。そんな人々に、性能というか、国家予算をどれほど消費したか端的に語っている無味乾燥この上ない数字の羅列などは、酷く、はしたなく見えるのだろう。丁度宴で、自らの付けている宝飾品を指しては、これこれは幾らで買ったとか、のたまう貴婦人のように。

 そうは言ってもなぁ……、と思う典礼参謀の目に入ったのは、時は春、花満開、とばかりに咲き誇る桜だった。日本帝國は、帝國との友好の証として、いつものようにここにも桜を植樹していた。

 ――よろしい。

 脳裏を駆けめぐったのは、その一言だった。

「申し訳ない、少し誤解があるようだ」

「――誤解?」

「新巡洋艦の名はまだついていない。だが、候補は挙げられている」

「なるほど?」

「例えば、【吉野】とか」

「【ヨシノ】……ですか?」

 そういったメディチ商会名代は、典礼参謀の目が自分へ向いていないことに気づく。彼の視線は自分の後ろへと向けられている。名代はその視線が何を意味するかを理解しようと、後ろを振り向いた。

 納得した。

 ソメイヨシノ。【ヨシノ】か、良い名だ。事あるに華一杯と咲き誇り、散る様は、各国上流階級、特に武力重んじる方々に感銘すら感じさせるだろう。商売もやりやすい。

 名代は、この収穫に満足して、残る些事を片付け、この会談を終えた。

514 名前:Gir. ◆pi/XgnFjWE 投稿日:2006/08/27(日) 03:46:31 [ 2bnOW4jA ]
「貴様、いったいどういうつもりだ」

 典礼参謀の仕事をやりやすくするという名目でお目付役を仰せつかっている佐官の彼は、典礼参謀に問うた。かなり、非難の色がキツイ。ほとんど、詰問とすら言えるほどだ。

「どういうつもりとは?」

「貴様は海軍大臣の権限を侵している。軍艦の命名は、海軍大臣の侍従長を通して天皇に奏聞して、裁定を仰いで決定される」

「もちろん。ですから、例え話をしただけですよ。海軍部内のそこここで挙がっている新巡洋艦の名前を、ね」

「だが、【吉野】だと?」

 あれ?、この人、反【吉野】派だったけ?と思いつつ、典礼参謀は答えた。

「良い名ですよね」

「先代が日露戦役で沈んでいて」

「日清戦役での活躍は胸のすくような気分にさせられました。坪井提督の指揮は素晴らしい。子供心に感動しました」

「……だが、新巡洋艦は二等巡洋艦で、【吉野】は山の名前だ」

「徳島には川の方もあったはずですが? 先代は、明治三十八年八月一日制定の『大日本帝國海軍艦艇の命名基準』以前の艦ですし、この際あまり気にしないことにしましょう。
 それに命名規則が近々一部修正されるとか聞いておりますよ。
 空母の名称付与範囲に、山岳名が加わるとか」

 確かにそういう動きはあるらしいとか聞いている。坊主憎くけりゃ、袈裟まで憎い。飛び大蜥蜴憎くけりゃ、龍まで憎い? だから、【x龍】なんてあり得ない? まぁ、過去には【初瀬】が爆沈したから、巡洋艦に付ける予定だった【綾瀬】を取りやめたとかいう。莫迦莫迦しいが、確かにあり得なくもない。

「だから?」

「それを巡洋艦種一般にしてしまえば。空母も巡洋艦種ですし、これから建造される予定の巡洋艦なんて空母以外は新五五〇〇トン型だけでしょう? 今更一等、二等なんて、ナンセンスですよね」

 莫迦莫迦しい。彼は確かにそう思いつつも、典礼参謀への追求を諦めない。

「だから、なんで貴様がそんな事を言える!?」

「いえ、ちょっと昔の学友へ差し障りのない近況などを手紙してみようかと。新巡洋艦の建造は新聞発表すらされていることですし、問題ありません」

 ……そうだった。コイツは華族だ。華族の通う学校なんて、兵学校を除けばあそこしかない。学習院だ。そこのご学友なんて、華族のサロンみたいなもんだ。まてよ、たしか宮様もいなかったか?

 恐るべき事実に、何か騙されているような気がする。その細っこい身体で、帝國の利益を裏からドッコショーと支えているダークエルフは、帝國利益代表たる外駐する帝國士官以上の近くには必ず居る。彼はダークエルフの情報参謀へと目を向けた。彼ならば、冷静な第三者の目で、帝國の不利益をつみ取ってくれるだろう。

「……よろしいのではないですか?」

 その言葉に典礼参謀笑みは深まり、彼は世の不条理に悶絶しそうになった。口から発することの出来た言葉はただ一言だ。

「……なぜだ」

「『義経千本桜』」

 なんてことだ、なんでダークエルフの口から、浄瑠璃がでてきやがる。

「桜と言えば、吉野ですし、『一目千本』も判りやすくて捨てがたいですが、『義経千本桜』は更によろしい。帝國二六〇〇年の歴史の髄を、各国へ知らしめるにはうってつけでしょう」

 しまった、こいつは数寄者だった。ダークエルフだから何とかじゃなくて、純粋な『床屋の看板全速』。普段言うことがまともだから忘れていたが、そこいらの帝國臣民より帝國歴史に通じ、古風を愛し――

「それに陛下もお喜びになる。
 陛下の尊敬する人物は、源義経公とか聞いておりますし、桜は先帝のご祝婚の象徴です。
 色々な意味で素晴らしい」

 そして、誰に劣るでもない、やんごとなきお方の崇拝者だった。

 なんでも、詠んだ短歌からその素晴らしさに気づき、語り尽くしても語り尽くせぬ偉業の数々に触れ、敬服したとか何とか。

 そういえば、流石に直接は会えないから、ご拝謁にあずかった(これまた希代の変人)南方熊楠へ話を聞きに行くついでに、吉野山の桜もみたが素晴らしかった、とか言っていたか。ふ、不覚。


 同志の契りとばかりに、固く握手を交わす目の前の二人に、議事録と報告の必要性を彼は感じていた。
 ただ、それを目にした人物にイゴッソウがいたことは全く彼らの想像の範疇を超えていた。

515 名前:Gir. ◆pi/XgnFjWE 投稿日:2006/08/27(日) 03:47:10 [ 2bnOW4jA ]
――数日後、海軍省

 ……ほぅ、大八木君、久しぶりだね。最近の東大の方はどうだね? 教授の目から見て有望な学生は多いかね?

 少なくとも私の前で、居眠りするヤツは居ない? 大丈夫、居眠りなんかしておらんさ。タバコを吸いながら、居眠りなんて出来るわけ無いだろう? 大丈夫、大丈夫、……Zzz

 随分と、くつろいでおられますな? いやいや、ここだけの話、米内のヤツにも言われたが、ジリ貧かドカ貧で負けるしかない対米戦が目の前から文字通り消えてしまって、正直救われた思いで一杯なんだ。Zzz……

 おっと、タバコが落ちる。タバコの吸い殻は灰皿へ。人として、基本だな。それはそれとて、今日も元気だ、タバコが旨い。さて、敷島をもう一服、と。Zzz……

 うん? 日米戦はどうしたかだって? 水野中佐の『此の一戦』や福永少佐の『小説日米戦未来記』を見るまでもない。金持ちには勝てない、ただ当たり前のことが、当たり前に歴史に刻まれようとしていた、それだけだったんだ。

 君の九三式魚雷の活躍の場を奪ってしまったようで、申し訳なく思うが。

 うん? そう思うなら、ちょっとばかり俺の言う事を聞け?

 君とは同郷のよしみもある、僕に出来ることならば、手を尽くそう。

 新巡洋艦の命名はもうされたか? いや、まだの筈だが。俺は【吉野】に決まったと聞いた? それは初耳だな。

 ――『まるでそびえ立つクソだ』
 ――『ひーん』

 ……ちょっと、白昼夢を見たような気がするが気のせいだ。ソレはソレで良かったんじゃないか? Zzz……

 え、良くない? 暴れ川の名前を、帝國の将来を担うべき魁けに使えるか!、だって? ソレを言ったら、【天竜】だって暴れ川では有名だが、五五〇〇トン型の魁けとなっているじゃないか。

 それに先代が、日露で味方にラムアタック喰らって沈んでいる? いやいや、古いことだ。ここは新世界で心機一転、ドーンといこう。

 ドーンといくのは自分のKAだけにしておけ? 自慢じゃないが、こうして居眠りが上手くなったのも、KAとよろしくやりすぎた所為だ。年若い嫁のため、主砲摩耗で命数切れるまで毎日お勤めしていれば、自然だろう? Zzz……

 いや、そんなことはどうでもいい、こっちに降れば『阿呆水』なんて言っている連中の喜ぶことを、私の酸素魚雷で積むフネで出来るか!、と。 それが本音か、いやはや。そうならそうと最初から言いたまゑよ、君。そういうことなら、こちらもやぶさかではない。高知県出身者として、当然のことをするまでだ。そうだ、アレは輸出も考えるとか言っていたから、外務の吉田君あたりにも伝えねばなぁ。

 え、もう言った? で、なんと言っておったかね。

 『私は高知県の利益代表ではない』? ……何を言っているんだかよくわからないが、イゴッソウだな。そういえば、彼も高知県出身だったか。

 まぁ、任せておけ。海軍軍令部総長以下、おれから見れば全員手下だ。ましてや、海軍大臣など。それでは、そういうことで、Zzz……

516 名前:Gir. ◆pi/XgnFjWE 投稿日:2006/08/27(日) 03:47:46 [ 2bnOW4jA ]
――刻は流れ、数ヶ月ほど後のボルドー

 このところ、話が弾む情報参謀との歓談を楽しむ典礼参謀であったが、そこにお目付役の彼が、青い顔をして飛び込んできた。

「これを見ろ」

 手にした紙にはこう書かれていた。

 ――命名:軍艦【四万十】

「五五〇〇が、四〇〇一〇!?」

 ……何というか、効果7.2745倍だ。その衝撃に呆ける典礼参謀。

「どうする?」

 一応、彼も帝国海軍将校だ、自分がどんな立場であるか理解している。理解しているだけにむしろ哀れですらある彼を前に、気を取り戻した典礼参謀はきっぱりといいきった。

「将校・士官・下士官・水兵を問わず、高知県出身者に非常呼集。重大な話がしたい」

 さすがは、典礼参謀。その態度に、ただただ圧されるばかりの彼は、情報参謀をみた。

「……四万十。土佐の小京都ですね。『土佐日記』? 手持ちの品にあったかな?」

 腐っていた。ドロドロだった。新鮮なツーンとしたにほひが、プンプンする。この世界の住人として、完全に間違っていた。


 ――だが、それはその後連日連夜続いた高知県西部に関する『良かった探し』と史料編纂に較べれば、どれほどのものでもなかった。

517 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/27(日) 04:03:34 [ 6KnBHENQ ]
投下乙、よしのおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。

>510-511
豆粥の話辺りだとカナ姫は
13〜14(Wikiより)
+ 2(カナ姫の話が昭和17年、黒部中尉のが19年なので)
+ 14(ナリマサが昭和20年生まれと仮定)で
29〜30歳か…その頃は立派にやってるんだろか。

518 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/27(日) 04:05:30 [ e7pPZtSc ]
>>505
古代中国のアルミ製の製帯留めや水晶ドクロ、コスタリカの石球、古代の鍍金技術
さらに言えば日本刀の製法だってロストテクノロジー。
真珠の製法だって発想の賜物だろ?別にファンタジー世界にあっても不思議は無い。



つーか戦艦の砲身も…… まあこれは今更復活させても意味無いから研究する人間が
居ないだけで、真面目に研究すれば今からでも作れる気は駿河。

519 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/27(日) 04:52:48 [ RKvgjTm2 ]
真珠は酸で変色しますよね。
ダイヤは燃えますし
その点元素からなる金はマシですね。

520 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/27(日) 06:36:33 [ 3LTujnGs ]
日光でも変色するそうだな。
推奨ドクロは代々砂で磨いて作ったとか。

521 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/27(日) 10:34:35 [ yq9lkYzY ]
長崎県人様、投稿乙です。
海軍の作戦は大当たりでしたね。こんなに上手くいくと揺れ戻しが怖いなあ。


Gir.様、投稿乙です。
名前一つでこれ程のSSを書けるとは……

>四万十
しかし現在の所は『軽巡』だけれど、将来重巡が全艦退役したらどう呼ぶのだろう?
その頃の巡洋艦、というか軍艦体系は一寸想像つかないなあ。いろいろ可能性があって。
戦艦と空母は健在だろうけど、駆逐艦なんかどんどん大型化していきそうだ。

昭和19年(改乙型2800トン&丁型1300トン)→昭和25年頃(甲型3000トン?&改丁型1500トン?)→???う〜ん。


>492
492様、有難う御座います。

>肉に完全に適応したのは実は団塊の世代辺りだそうですよ
といことは戦後かあ。この世界でいえば、オーク給食の洗礼を受けた子供達……

>>493
大本営発表様、有難う御座います。

>突然だから、初めて食べたものを受け付けなったか。。。
考えてみれば、高カロリー料理がてんこ盛りですからねえ。
現代人でもこれを食べ切るのは骨だろうなあ。

522 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/27(日) 10:35:05 [ yq9lkYzY ]
>>494
爵位降格に関しては、

①一代又は三十年間の間、爵位を一段階降格。
       ↓
②二代又は五十年間の間、爵位を一段階降格。
       ↓
③三代又は百年間の間、爵位を一段階降格。
       ↓
③永代に渡り、爵位を一段階降格。

なんていうのはどうでしょう? 下へ行くほど重くなります。
(『一代又は三十年間』というのは、その代の王が死去したりして次の王になっても、最低三十年間は降格されたまま、ということ)

帝國男爵の邦王に対する降格用には、便宜的に『準男爵』という呼称を……
いえ、男爵と『それ以下』ははっきりとした差がありますから……

『準男爵』とは正式な爵位ではなく、邦王として男爵に『準じる』待遇とするも、決して同列には扱わず別扱いとする便宜上の呼称であり、書類上は『男爵並大騎士爵』となる。

*全て仮の設定です。

523 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/27(日) 10:35:40 [ yq9lkYzY ]
>>495
>帝國大騎士爵を持つウェクスフォード家が後に帝國爵位持ちの邦国王家に
なるという裏設定があると前レスで読みましたが、その場合、帝國子爵どまり
なのでしょうか?

それは領国の大きさにもよるでしょうね。
人口十万未満ならば男爵、百万未満ならば子爵、1千万未満ならば伯爵、それ以上ならば侯爵というのが現在の内規です。これに種々の問題を勘案して一段階上げたり下げたりしています。
タブリン王の場合は、一時直轄領となっていたタブリンを『下賜する』という形で邦王となったため、元からの邦とのバランスをとるために、本来伯爵位が下賜されるべきところを子爵とされました。
ただウェクスフォード家(帝國名 黒部家)は帝國譜代扱いなので、邦王となった
時の状況にもよりますが、多分内規通りの爵位は貰えるかと。

後、今後の話の展開上、ウェクスフォード家の爵位を帝國大騎士爵から帝國男爵位に訂正することも検討中。

……爵位改正に伴い、突如転がりこんだ帝國男爵位。
帝國は、黒部中尉の実家に強引に帝國男爵位を下賜――拒否権は無い――する。
だがそれは、偶然・成り行きとはいえ黒部本家から奪う形で得た物だった。
分不相応の帝國男爵位は、黒部家に一体何をもたらすのか!?

(*現在開発中の仮の設定です。仕様は予告無しに変更される可能性があります)

524 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/27(日) 10:36:11 [ yq9lkYzY ]
>>496
名無し三等兵様、有難う御座います。

>レストランのメニュー全部頼んだ感じですね(笑)。
鋭い! 実はウェクスフォード家の料理長は、銀座の超高級洋食店で20年近く修行したコックです。
彼は新たな料理を作るために大陸に『不法出国(短期出国許可証でとうにオーバーステイ)』したものの、着いた場所がタブリン…… 
当然料理なんて勉強できず、途方にくれていた所をナリマサの父に見つけられ、ウェクスフォード家の料理長となりました。

ちなみに副料理長はタブリンの料理人です。
彼はタブリン料理界の閉鎖性に反発したため破門となり、行き倒れになっている所をシロに拾われて(食い物の匂いがした)ウェクスフォード家の副料理長となりました。

両者は意気投合し、ウェクスフォード家の庇護の下、協力して新たな料理の創作と、門下の教育に力を注いでいます。
(ちなみに料理長の夢は『帝國式とタブリン式をあわせたケネット独自の料理を作る』、副料理長の夢は『誰でもお金を出せば自由に料理を食べられるようにする』です)

525 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/27(日) 10:36:42 [ yq9lkYzY ]
>>500
長崎県人様、有難う御座います。

>この作品を見ると非常に腹が減りますシャザイトバイショウスルニダw
洋食はくろべえも大好きですよ。卵料理を出せなかったのが残念です。

>>503
Gir.様、有難う御座います。

>5000浬? 日米間を渡って作戦行動できる日本海軍? うわ〜っ、と思っていましたが没案でしたか。
しかも途中インフラが全くありませんからねえ。
実際、帝國-北東ガルム間の戦闘行動にしたってかなりの負担ですよ。

>>510
510様、有難う御座います。

>・・・そういやナリマサ少年とカナ姫って、作品中の年齢は同じくらいなんだよな・・・
カナ姫は昭和17年時点で数えで14(帝国式ならば12〜13)です。
ナリマサ少年はタブリン邦昇格時点(昭和?年)で数えで13(帝国式ならば11〜12)です。

>>511
ここまで読んだ様、有難う御座います。

>あと小型地竜(自動車で言ったら軽?いやスクータかな)が初登場で嬉しい限りですw
足代わりに良く使われる種です。行動半径も輸送力も極々小さな非力な竜ですが、お手軽な維持費が魅力です。(値段は成牛並?)

526 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/27(日) 10:43:52 [ yq9lkYzY ]
>>522を少し訂正……

>>494、495
爵位降格に関しては、

①一〜十年間の間、爵位を一段階降格。
       ↓
②一代又は三十年間の間、爵位を一段階降格。
       ↓
③二代又は五十年間の間、爵位を一段階降格。
       ↓
④三代又は百年間の間、爵位を一段階降格。
       ↓
⑤永代に渡り、爵位を一段階降格。

なんていうのはどうでしょう? 下へ行くほど重くなります。
(『一代又は三十年間』というのは、その代の王が死去したりして次の王になっても、最低三十年間は降格されたまま、ということ)

帝國男爵の邦王に対する降格用には、便宜的に『準男爵』という呼称を……
いえ、男爵と『それ以下』ははっきりとした差がありますから……

『準男爵』とは正式な爵位ではなく、邦王として男爵に『準じる』待遇とするも、決して同列には扱わず別扱いとする便宜上の呼称であり、書類上は『男爵並大騎士爵』となる。
(これは邦王のみの特別の措置)

*全て仮の設定です。

527 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/27(日) 11:11:27 [ 1C9K4j8A ]
見せしめの為には三親等降格又は剥奪、本家以下降格も形式上あれば睨みがききます。

528 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/27(日) 11:17:07 [ Sl88lCUw ]
帝國裁判所(邦国・同盟国等の「帝國勢力圏外交関係を裁く」の常設は無しですか?

529 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/27(日) 11:43:37 [ qmm3G85c ]
カナたんマダー?

てか家の娘がカナコだから愛着が湧いてしまって……

530 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/27(日) 12:42:44 [ HQCX1fnU ]
>>529
まあまあ、気持ちはわからんでもないがくろべえ様はいくつものストーリー練っているんだから。
せめてこれだけでも完結してからでないと・・・

531 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/27(日) 12:48:08 [ alg6JvLw ]
真珠の養殖法は真珠がどうやってできるかということがわかって初めて発明できるものなんですよ。
真珠を分析して真珠がどういうメカニズムでできているのかを解明して初めて真珠の養殖法の発明につながるのです。
真珠の養殖法は単純かもしれないですが前提として真珠の分析という科学的な手法が存在しているのです。
それに真珠ができるメカニズムがわかれば真珠の養殖法の完成というわけでもありません。
真珠の養殖法が完成するまでに何度も試行錯誤が繰り返されて多大な資金が費やされているのです。
それができたのも近代的な融資制度によって資金が調達できたからです。
単純そうに見える真珠の養殖法もこれだけの近代的な前提があって発明できたものなのです。
この世界でこの前提が満たせるとは思えないんですが。

532 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/27(日) 13:07:42 [ r6xtDEqo ]
先祖の残した資産で暮らしてるような金持ちの物好きなデレッタントが
暇に任せた研究の成果とか、ご都合主義にふと思いつきで真珠をぶっ壊して
破片を稚貝に入れてみた、とか色々理屈はつけられるじゃあないか。

533 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/27(日) 13:30:11 [ P1pqzP8s ]
荒れるからやめたら

534 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/27(日) 13:58:41 [ a1KJrS8g ]
続き投下です

535 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/27(日) 13:59:58 [ zeLnApqc ]
カランカラン

分散し浸透作戦を行うワラキア率いる歩兵部隊12000、その分散し前方へと偵察を含め放った部隊の一つが呼子に引っ掛かかって鳴らしてしまった

『止まれ!静かにしろ!』
部隊長らしき人物が命令して物音に耳を澄ます、鳴らしてしまった以上それを伝えに戻る伝令を潰さねばならない

ガサガサガサ

物音が聞こえた方向に命令を待たず兵が冷静に弓を構えて矢を放つ、そういう打ち合わせは出来ているのであろう、特に叱責も無い、精兵だ
『ギャッ!!!』
くぐもった悲鳴があがると木から黒い何かが落ちた、相手の草のようだ・・・うまく片付けた。
『ふぅ・・・ん?花の香?』
安堵と達成感から部隊長の口角が持ち上がる、そこに甘い花の蜜のような香が漂って来た
『やった!やったぞ!!ハハハハハハハ!!!』
兵の一人が笑いだす
『おい!お前!静かにしろ!』
『ハハハハハハハ!!!叱られてやんの!ハハハハハハハ!!!』
また一人今度は叱責に笑いだす
『ハハハハハハ!!!ハハハハハ!!!』
各自が何でも無い事を見つけ出しては笑いだしていく
『これじゃ指揮もなにもあったもんじゃないな、ハハハ・・・はっ!?ハ、ハハう・・・ハハハハハハハ!!!』

536 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/27(日) 14:02:21 [ 2FpTlyyE ]
最後に部隊長が笑いだして、ゲラゲラ笑う集団が森を歩く、やがて部隊の誰かが剣を抜いて仲間を斬りつける
『すげぇ切れ味だぜ、買い替えたんだよなぁ!!!ハハハハハハハ!!!』
その男の頭に矢が突き刺さる
『いやっほぅ!!!命中だぜぇ!!!ハハハハハハハ!!!』
お互いが笑いながら自傷行為をして死んでいく
『見ろよ、死ぬぜぇ!俺ってバカだ!ヒャハハハハハ・・・ぐぇ』
一度始めた殺傷行為は血をたぎらせてお互い止めようが無くなる

『俺一人になっちまっただ〜!アハハハハ、ハハハハハハハ!!!』

影がその男の背後に回って首を切り裂く、顔には簡単ながら密閉された防毒面

『こちら、メイデン5。敵部隊排除』
魔法通信を使い上空の飛行船《ヤドリギ》に報告する、同じような前衛部隊がすでに20近く撃破されていると聞く、諜報部隊数百のみでこの戦果だ。我が主上はやはり偉大な魔術師なのだ
防毒面の残りが切れたので取りに戻る、ただ持たされた缶に鎌を突き刺せばいいのだから
『ハハハハハハ・・・おっと、少し吸ってしまったかな?』
口角が持ち上がる、彼はなにも知らないが、完全な防毒など出来はしない、その時が来れば彼も笑いの中に交じって消えるだけだ

537 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/27(日) 14:04:13 [ 25Xn9yoU ]
『首尾は、上々のようだな』
飛行船に据えつけてある地図に書き込まれていく進攻状況を眺めつつラスプーチンが呟く
『上々もなにも、かような少戦力で我が国土の寸土も渡さないで済むなど、名将、いや神将と言ってよろしいかと、これで恭順しない諸侯も考え直しましょうぞ!』
『ふん・・・まぁ列強もバカではない、一万を越えるとはいえ、偵察戦力だ』
あの第一次世界大戦を見て来たのだ、この時代の戦術や考え方など、すべてお見通しだ、なによりラスプーチンはナポレオンに憧れていたと言われている、知識はそれなりにあった
『ガスの対処方を編み出すまで睨み会うか、突撃してくるか、ヒヒヒ、まぁ様子見だ』
第一次世界大戦、毒ガスが多用された戦場、ロシアの皇太子を治療したように、医術にも間違いなく精通していたであろうラスプーチンが虫の他に手にしていた奇手、圧倒的な戦力差があってもラスプーチンが動揺せぬ理由だ
『ベラドンナの快楽に酔え、列強と呼ばれる旧勢力どもよ』
ベラドンナという花の香が人間を極端な快楽に誘う性質がある。これを知ったのは彼が好色であった事を知って、媚薬として献上して来た娼舘の主人が持って来てからである。
ラスプーチンはこれを独占した

538 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/27(日) 14:06:12 [ QDKBCzwM ]
やり口は簡単だ、市井を惑わす薬を製造し云々だ、あわれ娼舘の主人は街の真ん中で張り付けにされた、あとは取締と称して産地を制圧し、今度は自分達がブローカーになる。
所持を問われても諜報部隊の拷問用として言い逃れが出来るといった次第だ
『ネームレス様から通信です、もう一つのラインを二重工作員にする為に仕込み中とも』
『そうか、やりおったか。しかしこんな時にか・・・まったく、痴れ者よの』
手をやる気なげに振って伝令を追い返す
『ハマの街から急使!高度下げます!』
飛行船がワイバーンの限界高度以上に位置していたので高度を下げるようだ、攻撃されないよう考えて飛行船を利用しているのだから当たり前の話といえば当たり前の話だが
このヤドリギの由来はこのワイバーンの休憩所足り得る事からなっている
ワイバーンが飛んで来てケージの中に入り拘束される、餌やりや体のマッサージを行えるくらいの余裕は与えてある
『主上、例の脱出した二人、取りにがした模様です』
伝令がまた入って来て報告する
『なんだと!?』
目まぐるしくラスプーチンの、その鋭敏な頭の中で思考が行われ、すばやく結論をだす
『虫を使う、船を王宮へ、帝國へも手をうっておかねばな』

539 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/27(日) 14:14:50 [ WERj3NJg ]
投下終了です、今回はラスプーチンら陸上戦力がどうなっていたか、です。
たかがしれている諜報部隊の少数兵力で大兵力にダメージ及び撤退を考えさせるにはやはり毒ガスでしょう、ラスプーチンはそのあたりの時代の人間ですし、同じく戦場をより良く把握し、指揮を行うという飛行船による原始的かつ簡単な地上の管制を行っております。


そして第二十一根拠地隊へと話は戻ります

540 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/27(日) 14:43:58 [ e.yRiOXc ]
ホントに今更ながらの話ですが新5500トン巡洋艦ですが、建造中止になった鹿島級四番艦橿原の名前が余っちゃったりしちゃったりしてるんですが・・・言いそびれちゃって・・・

>>ヨークタウンさん
立派に見えたなら幸いですm(__)m
多くの戦訓と帝國への強固なイメージを列強へと与えた筈です、戦艦として対等の相手とやり合わせるには至りませんでしたが
>>名無し三等兵さん
永野さんは元は頭の良い人ですから、米海軍のリチャードソン大将より『武人とはかくありたい』と言われた方ですし

>>Girさん
佐世保の事はもう少し待ってくださいな、たしか資料が・・・
視覚効果として一番目立ち、かつ簡単にやられそうに無い優秀な艦として扶桑に矢が立っただけです、まだまだ使える艦を廃品利用とはまた
それに帝國には、出雲級の二隻、標的艦とはいえ戦艦の摂津、八雲やら軽巡でも八十島級の二隻があるのですからね!これらを使って本当はやらせた(ry・・・無理無理w

>>ここまで読んださん

大英帝國海軍の弟子ですよ?スマートさの内に入る、陰謀や印象操作といったあこぎな真似は師匠譲りで得意中の得意です、と思っております

541 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/27(日) 14:48:27 [ 2WXBLbPM ]
>>くろべえさん
揺り戻しについて帝國は永野さんがぶざまに失脚することで手をうったのですが列強の揺り戻しに対してはそのうちに・・・いつも拙作をまとめて載せていただいて申し訳ないm(__)m


おそらくこれで50話越えたところでしょうか?本当にお手数をおかけしますm(__)m

542 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/27(日) 16:09:05 [ 6e1hnQZo ]
皆さまがたSSの大量投下してますねえ。
一日一作とかついていけません……
しかし私も旅行でリフレッシュして創作意欲がわいてきました。
駄文ですが完結までよろしくお願いします

投下開始

543 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/27(日) 16:09:36 [ 6e1hnQZo ]
ユフ戦記 05  戦争計画 player A 後編1

陽が空にあれば夏の小内海は碧海というべく色彩を持つのだが、
今は波間から顔を出したばかりの月明かりだけが光源たりえている。
月光に照らされた小内海は黒々と不気味な水面をたたえており、
魂ごと吸い込まれそうな錯覚を覚える。
空に目を移せば、まさに清風名月といった趣である。
月影は真円を描き、僚艦の影を闇に浮かび上がらせる。

竜巣母艦シンロードの艦上から望む月は、水面に一筋の轍を敷いているかのよう。
八年前、戦火のなかで姉様に拾われたとき。
三年前、雪の中鋭剣を手に姉様を助けに駆け回った晩。
私の人生に転機が訪れたとき、いつも天空に満月があった。
なれば私の人生は満月に導かれているのであろうか。
あの轍を月に導かれるまま通ってゆけば良いとでも?
まさか。

いつから皇都の乙女たちのような感覚を身につけた?
このレイ・ジグリード・ロイは、常に己の信念と思考に囚われて場を切り抜けてきたではないか。
三年前のあの夜もそうであったではないか。
だからこそ、今この場に居れるのではないか。

544 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/27(日) 16:10:08 [ 6e1hnQZo ]
新皇暦328年 中冬月 七日夜半

 その知らせを聞いたのは、日付が変わる一刻半ほど前のことだった。

「皇太女殿下は、戴杖式を目前に控え、皇都に蠢く謀反人を摘発、粛清しつつあります。
現在騒乱は鎮圧に向かいつつありますが、諸兄には戴杖式に備えていただきたい。直に正規の命令がくるはずです」

皇都より飛竜を駆ってきた伝令は皇太女からの言葉を述べた後、また何処かに飛び立った。

命令は四半刻ほどで届いた。

『皇都ニテ騒乱有ル旨報達セラルト思フモ此レ叛乱ニアラズ。
都周ノ三軍各隊ハ現状ヲ維持シ以ッテ爾後ノ収拾二備ウルベシ』

魔道通信で隊司令部に送られてきた文の末尾には、皇国皇太女カリュン・フェースト・ロイ・フランシアーノの署名がある。文字をそのまま再現できるのは魔道通信ならではの技であるが、さすがに色付とまでは行かない。

545 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/27(日) 16:10:56 [ 6e1hnQZo ]
本来統帥権を持たぬ皇太女が三軍に命を伝えること自体に疑問はない。

皇主の後継者は五王家の長からなる皇室審議会により指名される。
選ばれるのは各王の直系から最も秀でているとされるもの。
大多数の王族は皇主になることも王家を継ぐこともできず、臣籍に下る。
そして選ばれた後継者は皇太子(女)として皇主の下で研鑽に励み、次代の重臣達を見出していく。
その間皇主の補佐として執政に関与することはあっても正規の組織系統に組み込まれるわけではないので、法的な権限が付与されることはない。

だが、昨今の事情は皇国に例外を強要している。

先月皇主が崩御されたが、未だ皇太子(女)が選定されていなかった。
単純な理由だ。
四年前、皇太子が薨去されたから。
皇主、皇太子ともに不在という異例の事態を前に皇室審議会は全会一致でカリュン・フェースト・ロイ・フランシアーノを皇太女に指名した。
それが先月のこと。
皇主がいなければ皇太子が代理を務める。当然のことだ。
だから皇太女から軍に命が下ってもおかしくない。
どうせ二日後には皇主になるのだからなおさらだ。

546 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/27(日) 16:11:42 [ 6e1hnQZo ]
 が、周囲の見解とはよそに、レイの考えは違った。
伝令が来たときから囚われてきた奇妙な感覚。
小骨が咽に引っかかった様な違和感。
それらは魔道通信の署名欄を見たとき氷解した。
姉様の字を真似てはいるものの、身内から見れば一目瞭然。

『皇太女殿下の御水茎にあらず!』

と叫びだしたくなったが、ことがことだ。
取り急ぎ自室に戻り支度をしなければ。レイは足早に隊司令室を後にした。

歩きながらもいくつか疑問が出てくる。

誰が偽署を?
決まっている。謀反人どもだ。
恐らく昨今の政策に不満を持つ一部の大商人が裏にいるだろう。
何のために?
軍の足止めのためだ。その間に謀反を成功させる腹積もりだろう。

547 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/27(日) 16:13:21 [ 6e1hnQZo ]
そこで気がつく。
叛乱軍はどうやって連携したのか?

叛乱を起こすには、綿密な計画、多量の資金、そして緊密な連絡が欠かせない。
計画と資金は調達できても連絡に難点が残る。
商人の中でも少数派の反皇室勢力が謀反を企てても、諜報部や他の商人に察知されるだろう。
叛乱軍と商人の間で、魔道通信は使えない。
全て通信に限らず魔術にかかわることは皇室魔道院が総覧しているからだ。
人的な交流も、魔道通信もなしにどうやって大規模な叛乱を計画できたのか?

ふと頭に浮かんだのは、最近皇都を訪れる帝國人。
恐らくダークエルフを伴っているに違いない。
そして帝國と皇室の関係悪化。
つまり、そういうことか。
帝國はいつもいつも阿漕な手を使いやがる。
己の手を汚さずに謀反を煽動するとは全く度し難い。
勃然と湧き上がる憤怒を感じながらレイは自室に飛び込んだ

548 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/27(日) 16:14:03 [ 6e1hnQZo ]
投下終了!

549 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/27(日) 17:58:15 [ 4NRBDBvg ]
あの、もしかしてGir.さんって鉄人大戦を書いていたGir.さんですか?
スレ違いで申し訳ないんですが、少し気になったので。

550 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/27(日) 22:55:17 [ ToMVwDhk ]
今から投下


帝国異史 第二部


14
 レドナが脇永大尉と面会して数日後、フランベリア憲兵司令部とフランベリア派遣軍中枢、
そして帝国本国との複雑な書類のやり取りの結果、彼女を旧連合帝国軍の最終階級から
二階級昇進させた上で、雇い入れる事とした。
帝国軍としては竜騎兵など初めて運用する、海の物とも山の物ともつかない代物なので、
派遣軍預かりとして編制した。

 実は竜騎兵の募集にあたって、最初に帝国軍に接触したのが彼女であるため、半ば
自動的にレドナを指揮官に任じた事に 彼女自身驚いたが。

551 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/27(日) 22:57:37 [ ToMVwDhk ]
 帝国軍、と言うよりフランベリア派遣軍は、初めて編成する事になる竜騎兵団の運用
及び訓練に関して、レドナ−−陸軍少佐として、軍が雇用した−−に一任すると同時に
竜に関する対応、竜騎兵の部隊編成、騎兵の育成に関して、フランベリア派遣軍は
航空部隊と派遣軍司令部兵站班より、一人ずつ参謀として派遣する。

 ここで、レドナに難題が立ち塞がる。
竜の確保についてだった。

 竜乗りになるには、二通りある。
まずは竜に遭遇し、互いに感情を感じる事ができた場合。
もう一つは、人を乗せている竜同士が卵を産み、なおかつ母竜側の竜乗りが母竜を宥めた上で
から、竜乗りになるように育てられた若者と仔竜が感情や意志の疎通ができた場合の二つだ。

 ちなみに竜同士は、人が仕向けて交配するなど馬のようには出来ないから、より優秀な仔
を残すと言うのは不可能だ。

552 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/27(日) 23:19:43 [ ToMVwDhk ]
ミスったぁorz

既に投下してるのを投下しちまった。。。

気を取り直して投下

553 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/27(日) 23:22:14 [ ToMVwDhk ]
15
 まずレドナと二人の参謀は竜乗りの系統のうち、現在も生き残っている血族に
あたる事にした。
と同時に、竜騎兵隊に属し解散時まで生存していた輸卒兵や文官などの人員の捜索と、
竜騎兵団への雇用を進めた。

 ここで彼女らに困難が待ち構えていた。
何の事はない。
竜に乗る為に育てられていた者のうち、竜を相棒に持てていたのが数人だったからだ。

 そして、連合帝国崩壊後の時代の流れに耐えられずに途絶えた血族も多かった。
帝国軍に抵抗した一族が、その過半を占めていた。
 彼らの抵抗の主たる理由が、帝国に対する脅威からだった。
帝国は彼らの支配するフランベリアにおいて、竜乗りを敵視するのではないかと
考えたからである。

 ただ帝国は敵視するどころか無視した。
何せ、竜に対してなんら関心を抱かなかったのだ。
よって、少なくない数の血族が生活に窮乏する事となる。
連合帝国は竜乗り達の反乱を恐れ、彼らへの封土を少なくし、その替わりに毎年
給金を支給していた。

554 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/27(日) 23:24:29 [ ToMVwDhk ]
 故に連合帝国の滅亡によって、彼らに給金が入らなくなり、その日の生活に困る事となった。
結果、竜どころでなくなったのだった。

 生活に窮乏した彼らの中には、貴族の家臣になった者もおり、竜乗りを家臣にした
貴族らの存在を帝国陸軍は否定も肯定もしない態度でもって、潜在的不安定要員たる
彼ら竜乗りの血族を家臣に加えた一部の貴族を扱っていく事となる。
有り体に言ってしまえば、帝国の一人相撲なのだが、当時の現地の社会構造を知らない
のだから、仕方ないと言えば仕方なかった。

16
 とは言え、このままでは拉致が明かないのも事実である為、レドナ陸軍少佐は
本間将軍に直談判を申し入れた。
一介の少佐、しかも傭兵風情が軍司令官と直談判できるのは、竜騎兵団が軍直轄
である事が大きい。
一応、軍令は司令部の指揮下にあるが、その編制と運用については軍司令官と協議
する事ができたのだ。

 レドナの提案を受けた本間将軍は、総督府との話し合いにより、生活に困窮している
竜乗りの一族の封土を加増した上で、竜騎兵としての給金を旧連合帝国軍の倍額にする
と言う方針を打ち出した。

555 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/27(日) 23:29:00 [ ToMVwDhk ]
 封土の捻出については、それぞれの血族の所領を移し替えるという転封でもって、
なおかつ帝国の統治が開始した時に、抵抗した貴族の領土を充てた。
旧フランベリア貴族の内、所領持ちの六割が抵抗していたのだ。
王国遠征軍との戦いの末期は、彼ら抵抗貴族との戦いでもあったのだ。

 生き残りの血族の所領を倍増しても、それでも帝国直轄地のおよそ三割が
減った程度だった。

 とにかく、これらの政策により、帝国に恭順する血族が増えたのは事実だった。

 また、竜と遭遇し互いの意志が心の奥底で理解できた人間の捜索を、憲兵隊に
協力してもらう事により数人が入隊してきた。
どのみち、竜が傍にいる事になってしまった者は、人里を離れるか放浪するかの
どちらかでしかない。

17
 こうして、ようやく人員が集まりだすにつれ、航空参謀として送られた温井二郎
(ぬくい じろう)大尉は、人員が少ない事もあり、航空総軍司令部でも研究段階である
2騎一組を1小隊とする編成とした。

556 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/27(日) 23:30:46 [ ToMVwDhk ]
 この編成が可能となるのに必要な最低限の人員が集まるのに、実に半年近くかかったのである。
時に皇紀2611年−−1951年、昭和26年、東紀1321年−−9月の事である。

 その一方、兵站参謀の長江尚(ながえ ひさし)大尉の案により、レドナ・アストゥス少佐は、
捜索大隊の編成を行う。
これはフランベリア方面軍の方針が影響している。
本間将軍は、竜騎兵団を地上制圧に使えるのではないか、そう考えたのだ。

 だから、竜騎兵団固有の捜索大隊を保有する事により、地上制圧任務がよりやり易く
なるはずだと言う考えに基づいてのものだった。
この捜索大隊の要員には、警備兵として、帝国軍の指揮下に入った旧連合帝国軍の近衛
将兵を中心に募集したのだった。
 こうして曲がりなりにも部隊としての体裁が取れていったのである。

18
 長江兵站参謀にとって意外だったのは、竜が大食らいではなかった事だ。
あれだけ大きいのだから、さぞや食べる量も多いのでは、とひそかに悩んだ。

557 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/27(日) 23:32:00 [ ToMVwDhk ]
 そんな兵站参謀にアストゥス少佐は、
牛1匹ほど食べたら、5、6日は食べた所を見た事はないなぁ、
とそう宣ったのだ。
 牛ぐらいの量だから、別に牛でなくとも猪でも兎3、4匹でもいいけど。

 小首を傾げながら宣う少佐を見て、兵站参謀と航空参謀は互いの顔を見遣ると、
はぁ竜というのはそんなものですか、と応じた。
 もっとも両名はどこか釈然とできていないように、レドナの目に映ったのは確かだった。

558 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/27(日) 23:33:35 [ ToMVwDhk ]
とりあえず完了。


シロべえ氏、モツカレー

559 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/28(月) 08:54:03 [ yq9lkYzY ]
長崎県人様、投稿乙です。
確かに毒ガス攻撃は列強に対して効果的ですね。
仮に防御手段を持っていたとしても、兵一人一人に防毒面他の装備を支給する必要があるし、大量の医薬品も用意しなければならない。
行動の自由も制限された上、費用もかかるのだから堪らない……


シロべえ様、投稿乙です。
皇国の統治システム、集団合議制の色が強そうですね。
絶対王政じゃあなさそうだから、皇主はかなり彼等に気を使っていそうだ……


大本営発表 様、投稿乙です。
1951年かあ。復興、相当遅れてるだろうなあ。
「もはや戦後ではない」なんて宣言できるのは何時の日か?


>>527、528
>見せしめの為には三親等降格又は剥奪、本家以下降格も形式上あれば睨みがききます。
>帝國裁判所(邦国・同盟国等の「帝國勢力圏外交関係を裁く」の常設は無しですか?

その辺は帝國の国力が完全回復してからの話でしょうね。
加えて完全な手探り状態なので、法制度が整うまでは何年かかるか……
管理権の綱引きを巡って省庁間の対立とかもあるだろうなあ。

>>529、530
>カナたんマダー?
申し訳ない……

>>531
>おそらくこれで50話越えたところでしょうか?本当にお手数をおかけしますm(__)m
いえ、こちらこそ。何か改良点がありましたらどうか御遠慮無くお申し付け下さい。

560 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/28(月) 10:21:03 [ wezaJ53A ]
ちぃと早いですが外伝投下です

561 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/28(月) 10:23:59 [ kXkOHBG6 ]
闇の中、10メートル程の小船がなにやら中型の水蒸気船から、埠頭に向けて近づいている、荷物には毛布がかけられ小さく震えている。
獣人の子供達だ。帝國が獣人の保護をし労働に対価を出す事は良くなった。けど、帝國の範途外の国から奴隷として売られてくる獣人も多い、しかも運びやすいのと騙しやすいからとの理由で子供ばかり。
この新日本人町とも言われるこの街は、限りなくグレーだ、そういう面もあって、なにかと非公式な交渉事が行われやすい、外交上のやり取りもあるし、マフィア同士の会合も今回もそんな小さい取引の一つ
『おうちかえりたいよぅ・・・』
獣人の子の一人が喋った、あぁ、黙ってた方が良かったのに
『うるせぇっ!黙ってろ!!!』
ガッとバイヤーがその子の頭を真正面から蹴りつける、あ、鼻血、口も切れてる、歯が折れてないといいけど

ヒュルルルル、ドパーン

照明弾があげられる
『な、なんだ!?』
『サツか!?』
船上には二人、きちんと確認した
『う、うわぁあああああっ!?』
腕を延ばして呑気に照明弾を眺めてる馬鹿なバイヤーを船から落とすと防水加工した改・南部式拳銃をもう一人に向ける
『海軍湾港部のものよ!人身売買で検挙します!』

562 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/28(月) 10:25:47 [ fIFx11L2 ]
小船に対して私たちが良く使う手だ、照明弾に気は取られるし、船の影も深くなるので、海軍さんがこれまた開発した黒い潜水具でますます私の姿は見えない
『こ、この化け物・・・!』

バキュン

『抵抗は無駄です、弾倉全部叩き込まれたいですか?』
ボウガンを向けようとした相手に、一発掠らせる、なんとか相手に拳銃他この系統の小火器が普及する事は抑えてるけど、このままだとどうなることやら
『わ、わかった、捨て・・・のわっ!?』
ぽいと武器を捨てた所で、船を揺らしてそいつも振り落とす、すわらされてる子供達はこいつらより低い所にいるし、激しく揺らしても振り落とされにくい・・・重いって言うな!やり方があるのよ!
埠頭の方も騒ぎが起きていたがすぐ納まる、さ・て・と♪
一人はいきなり振り落とされたから泳ぐのにアップアップ、今さっきのは武器は捨てて両手開いてるし、落とされてもまぁ大丈夫、船のへりぐらい掴めるでしょ
『た、助けてくれぇ・・・!』
『ええっと、どこの国の人かなぁ?それからどこの組織の人?』
にこやかに聞く
『あっぷごぼっ!た、助け!』
着衣に重い刀剣類腰に挿してたらそりゃ溺れるわね、子供の顔に蹴り入てるし、同情はしないけど

563 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/28(月) 10:28:27 [ bBlcovoo ]
『キュキュキュ〜♪はい、準備できました、答えて答えて〜♪』
ペンと紙を取り出して用意オーケー、さぁカモ〜ン
『う、生まれはダヌカヌ!そ、組織は言えねぇ!こ、殺される!』
ちぇ、いつも通りの言葉が帰ってきたし
『あ、そう!じゃ、死んでね♪』
船の櫓を自分で漕いで埠頭へと向かわせる、大抵はこれで吐く、吐かないのは大物か、意志が強いか、ただの馬鹿か、だ
『言う!言うから待ってくれ!あっぷ、三丁目から西のクレーターヘヴンだ!死にたくねぇ!げぼぼぼっ・・・!』
やったね、いっちょあがり〜♪といってもあたし達の役目はここまで、あとは陸の警察庁の出張所が片付けるかどうか
『はいはい、じゃ、今行きますよ〜』
綺麗な弧を描いて海に入る、後ろでようやく助かったのが解ったのか、獣人の子供達がわぁ〜歓声をあげる、どうだ、すごいでしょ?
『た、助かった!・・・おふっ』
右ストレートをおみまいして気絶させる、子供の顔に蹴り入れたんだから、いい気味。なに?溺者救出の際は溺者を拘束ならびに気絶させるのはセオリーよ?なにか文句ある?
『こちら水中班、船は制圧、最低限の情報も手に入れました。状況終わり』
班、といっても現場勤めは一人だけだけどね

564 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/28(月) 10:31:20 [ gPuSt/kQ ]
『おつカリ〜、はふぅ』
『あ、お疲れ様です!ティータ先輩、出動ですか?明日休暇でしたよね?』
港湾部のデスクに戻る途中で後輩のキャサリンたんに会った、みんなはキャシーて呼んでるダークエルフの娘、実年齢はかなり上らしいけどとってもいい娘♪

この大日本帝國海軍港湾部は管轄内の麻薬捜査に今回の人身売買、簡単な所で船の塗装の規定違反なんかを取り締まる所。あとは安全な航海の為の講習会や釣り人達へ注意を促したりする、結構雑多な部署。場所が場所だけに結構実戦配置であるわけだけどね♪
『そうそ、だからって部長め、こき使いやがって〜』
『あはははは・・・悪い人じゃ無いですよ、あ・・・』
『ウォッホン!!・・・そこの魚!!!銃器使用の書類を書き上げてから帰れ!キャシー、身元が最大限判るまで、獣人の子達は頼む、わかったな!』
ゲッ!!この声は部長の相模中佐だ、ガミガミ中佐と良く言われている、良く怒鳴るんだこの人、こっちは耳いいんだから少しは黙れっての。あ、これだけで戻ってく、キャサリンたんが居たからかな?ラッキー♪
『ほら、書類を残してたら明日呼び出しですよ?気にして下さってるんですから』
庇わなくていいのにもぅホントにいい娘!

565 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/28(月) 10:33:13 [ WERj3NJg ]
『そんな訳ないでしょ、あのおっさん』
『そうかなぁ帝國の人って意外とみなさん繊細なんですよ?・・・じゃあ、私は子供さん達の所へ』
『うん、引き止めてゴメンネ』
とキャサリンと別れる

『ただいま〜』
『お帰りなさい、怪我、ありませんでしたか?』
こっちは獣人のゴン太君ことゴンダルス君・・・たんだとか、ゴン太とか人の名前に変なあだ名つけるな?その前に幼名とはいえ、お国の息子に奇妙丸とかつける人よりゃましでしょうが
『拳銃使用の書類を書き上げてから帰れ、だってさ』
『ハハハ・・・でないと明日呼び出されますからね、部長なりの優しさですよ』
なにこれ・・・私の方が空気読めない大ボケ?
『はいはい、まったくもぅ・・・』
たしか書類は自分のデスクに・・・あった、と
『休暇はあしたのオペラに行かれるんですよね、やっぱりレーヴァテイルですね』
『・・・うん』
ちょっと曖昧に答える、自分でも、なんで休暇とってまで見に行くのかわからない、ただ、ラジオから流れてきたあの歌、私だって素晴らしい曲や推進音(近頃の造船所にはレーヴァテイルの調音師すらいる)が聞こえたなら立ち止まるし口ずさむけど、何かが違う
『彼氏でも誘ってあるんですか?』

566 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/28(月) 10:37:13 [ gY4wlmWo ]
『あのねぇ、そんな玉じゃないでしょ、私は』
何言ってるのよゴン太君は、と机につっぷす
『そうですよねぇ!ティータさんが彼氏連れでオペラなんて、有り得ないですよね、ふぎゃっ!!』
ムカついたので、水筒を投げつける、彼氏居なくて悪かったわね!
ゴン太君は驚いて少し獣化してる、んで書き終わった、と
『ここで仮眠して着替えてからいくわ』
自宅に戻ると会場に行くのにむしろ手間ねこれは、こんな事もあろうかと服を持って来ててよかったよかった。宿直用の仮眠室で寝てよっと、あ、からかっちゃえ♪
『ゴン太君だから有り得ないと思うけど、襲わないでね?』
『な、何言ってるんですか!』
『もし襲って来たら・・・ちょん切るからね♪』
『うへぇ(汗)』
あっはっはっは、顔真っ青♪・・・ちょっと待ちなさい、私がそんな事しそうだってこと!?まぁ気を取り直して宿直室で横になる
なかなか寝付け無い・・・でも、何故あの歌手に引き付けられるのかしら・・・?オペラなんて知らなかったし(ちょっと調べたら、帝國でようやく有志が復活させたと聞いた)、今回初めて聞くのに、何故?好き、とかそういうものじゃない、もっと何か別の・・・

気付いたら、私は眠りに落ちていた

567 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/28(月) 10:49:05 [ bBlcovoo ]
外伝一話目投下終了です、また別な所で働くレーヴァテイルさんのお話です、舞台こそ本編の五年後、1950年ですが・・・


話には出しましたが造船所の調音師のレーヴァテイルの話もいつか書きたいなぁ・・・キャビテーションのノイズの聞き分けで、スクリューのわずかな違いや、傷を発見して整えたり、その船にあった的確なスクリュー形状を導き出したりしてます
おかげで帝國の艦船が一律0.5〜2ノット速力が向上する事になったりするのですが


またーりゆたーり、見てて下さると幸いですm(__)m

568 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/28(月) 11:50:50 [ yq9lkYzY ]
長崎県人様、投稿乙です。
>オペラ
1950年…… 転移して10年目かあ。結構インフラも整ってきているみたいだ。

さて、こちらもSS投下。

569 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/28(月) 11:51:23 [ yq9lkYzY ]
「帝國召喚」外伝4『辺境警備隊隊長よもやま物語』08-1

1、

――とーぞくのかくれがをみつけたの!


リータの突然の言葉に、黒部中尉は呆気にとられた。

シロを洗うその手も止まっている。

シロの不満そうな鳴き声に気付き、こりゃあすまんと謝って慌てて洗いを再開する。

(お湯で満たされた巨大な桶に浸かり、石鹸と亀の子たわしで洗われるシロは実に気持ちが良さそうだ)

「……そりゃあ凄い。で、戦果はどうだった?」

まさか烏の死骸とかじゃあないよな?

「……ほんとうなの」

先程から黒部中尉を手伝っていたリーナ――リータの双子の妹――が、リータの言葉を肯定する。


リーナの話によると、シロに乗って遠出した際に見つけたそうだ。

とある山中の洞窟だが、中には大きな箱――こーんなとリーナは両手いっぱいに広げてみせた――が幾つも置いてあるらしい。

570 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/28(月) 11:51:53 [ yq9lkYzY ]

「中は見たか?」

「ううん。ふたがしてあったし、かってにひとのものをみちゃいけないから」

「……そりゃあ何より」

万が一のこともある。危険な真似はして欲しくない。

「それにしても駄目じゃあないか、勝手にそんな遠くへ行っては! 家の周りか町で遊びなさいといつも言っているだろう?」

「しろもいっしょだったもん!」

と、リータ。

リーナのいうことばっかりしんじてずるい、とふくれている。

「シロが一緒でも駄目なものは駄目。 ……シロも悪いぞ。あれ程町の外へ出たら駄目だと言ったろう!」

項垂れるシロを叱り付ける。

「ぼーけんしただけだもん!」

「『ぼーけん』じゃなくて『探検』をやりなさい。町の中で」

「まちはつまんないもん! あきたよ!」

「……我儘言う子は嫌いだな」

そう言いつつも、ついリータとリーナに同情してしまう。

571 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/28(月) 11:52:24 [ yq9lkYzY ]
彼女達には、遊び相手がいないのだ。

同じ年頃の子供達がいない……訳では無い。


子供とはいえタブリンでは貴重な労働力である。

年上の子供達は、男の子は農作業や家畜の世話、女の子は針子仕事等の家内職で忙しい。

それより年下の子供達も、それぞれ掃除や炊事洗濯、子守等の家の手伝いがある。そうそう遊んでばかりはいられない。

基本的に家仕事のみ、それも老夫婦の手伝い程度のリータやリーナとは根本的に置かれた状況が違うのだ。

(ちなみに裕福な農家では、小作人や使用人の子を遊び相手を雇ったり、或いは買ったりしている)


……とはいえ、危険なことには変わりが無い。大分安定してきたとはいえ、タブリンの治安は決して『良好』とは言えないのだ。

「大人しく家の中で遊びなさい。それが嫌ならせめて家の周囲か町の中、これは約束の筈だぞ?」

「もうおこられたもん! おわりだもん!」

要するに、もう叱られたから終わったことと言いたいのだろう。

「……全然反省してないなあ、悪い子だ」

572 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/28(月) 11:52:56 [ yq9lkYzY ]
そんな悪い子はモモンガに食べられちゃうぞ、と脅す。

「! ももんが!」

モモンガと聞いた途端、リータは怯え始めた。

「そうだ。夜な夜な何処からともなく現れて、悪い子を食べて飛び去っていく怖い魔獣だ。リータも食べられちゃうぞ」

言う事を聞かない悪い子は、みんなモモンガに食べられてしまうんだ、と黒部中尉はモモンガの恐ろしさを強調する。

「……しろがいるもん」

「シロは飛べないから駄目だな。ヤツは自由自在に飛び回るんだ」

ク、ク、ク、と薄ら笑いを浮かべながら黒部中尉は脅し続ける。 ……結構楽しそうだ。

「モモンガはなあ、牛を丸齧りにしてしまう程大きいんだぞ〜? それに……ん、なんだシロ?」

先程から、シロが前脚で黒部中尉の肩を叩いて必死に何か知らせようとしている。

……シロの視線の先には、涙が決壊寸前のリータ。


拙い! 脅し過ぎたか!?


見るとリーナも泣きそうだ。

573 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/28(月) 11:53:27 [ yq9lkYzY ]
(今まで一年間に渡って脅し続けてきたせいで、二人のモモンガに対する恐怖は相当なものなのだ)

「シロ! 協力し……」

慌ててシロの方を向く。

が、そこには既にシロはいなかった。 ……逃げたのだ。

「くっ! 裏切り者め!」

思わずシロを罵る。

が、シロは何回も警告したのだ。黒部中尉がそれに気付かなかっただけの話であろう。


まあ逃げたものは仕方が無い。黒部中尉はなんとか自力で二人を宥めようとする。

「大丈夫、モモンガは怖くないぞ? あれでなかなかいいところもあるんだ」

……今更である。

「そうだ! 蜂蜜を買ってあげよう。焼いた白パンに、蜂蜜をたっぷり塗って食べるんだ。美味いぞお?」

他にも、お菓子でも何でも好きな物を買ってあげるから。

後でサーナに怒られるだろうなあと思いつつも、とりあえず何とかこの場を収めようと、そりゃあもう必死だ。

574 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/28(月) 11:54:19 [ yq9lkYzY ]
「今度休暇をとって湯治にでも行こう? きっと楽しいぞ? 色々な動物もいるだろうなあ、この辺りにはいない様な動物もいるかもしれない」

『珍しい動物』の名を上げていく黒部中尉。

二人の泣き顔が徐々に薄れて来た。効果有り、である。

……とはいえ、それ程こっちの世界の動物に詳しい訳ではない。仕方が無しに、帝國の動物も加えて挙げていく。

「……シマウマ、ゾウ……あとは……モモンガ? ……!!」

しまった、と気付いても最早後の祭りである。

今までの努力も空しく、その一言で遂に決壊してしまう。


……その後のことはあまり思い出したくない。

ただ二人を宥めるには相当の時間を要した、とだけ言っておこう。




SS投下終了。

575 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/28(月) 12:06:11 [ pTAPYPa2 ]
中尉…………なぜモモンガを魔獣にwww
バランを思い出したのは俺だけでよい。

576 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/28(月) 12:15:58 [ ToMVwDhk ]
モモンガ・・・ナンテ恐ロシイ魔獣ナンダ!?ガクブル(棒読み

577 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/28(月) 12:19:45 [ Xq7PfW/w ]
モモンガでかってにシロクマ思い出した俺って・・・orz

578 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/28(月) 12:25:20 [ ToMVwDhk ]
帝国異史第二部は、いよいよ物語の転機を迎えます。

起承転結の転にあたります。

と言うことで、設定なども含めた全般状況を投下。

579 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/28(月) 12:27:23 [ RpxFCjzQ ]
モモンガやムササビは歳を経ると野衾(のぶすま)という
妖怪に化けると言われていた所から来ているのではないでしょうか?

野衾=空からふわりと降りてきて人の顔を塞いで(この時に精気を
   吸われるとも言われる窒息させたり家畜にへばりついて生き血を
   吸ったりする妖怪。どんな刃物でもなかなか切れないが
   お歯黒をした歯なら容易く噛み切る事が出来る。

580 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/28(月) 12:27:37 [ XFnxgb.c ]
落語の落ちで最後に脅かし役のあんまが「ももんがぁ!」と言うところを
「ももうかぁ」と言った話もあるしね。

おまけ
そして、その「モモンガの恐怖」は黒部家に代々伝わるおとぎ話となり
そして、それは領民、国民へと伝播し・・・・モモンガ系獣人から
多大な苦情を受け、帝國議会における議題にも取り上げられるほどの
問題となるのであった。

581 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/28(月) 12:40:15 [ RpxFCjzQ ]
実際旅人の中には野衾除けにお歯黒をしていた人も
かなり居たそうだから笑い話ですまなくなったり・・・

582 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/28(月) 13:26:20 [ ToMVwDhk ]
全般状況

日本国内

海軍側

港湾設備が1948年後半にあらかたその機能が回復、笠置など未成艦の再着工に着手。

海上護衛総隊の増勢。

陸軍に倣い、空地分離を採用。
6万噸級油槽艦、5万噸級工作艦など後方支援艦船の増強。

任務の多様化、複雑化に伴う船体の大型化による従来の艦籍区分の見直しにより、
巡洋艦種の一本化、駆逐艦種の廃止と護衛艦種及び防空艦種の新設。
戦艦の新規建造計画の見直しと、航空機の大型化と噴進化による航空母艦の大型化。

1948年末より日本商船隊の再建に向け、新規船舶の着工増大。
なお、海陸軍省並びに逓信省の方針により、外洋航路・主要国内航路に於ける大型商船
の建造に対する補助金政策の開始。
なお、船腹量の完全回復は、1956年初頭。

1951年における海相は豊田副武 大将、軍令部総長は小澤治三郎大将

583 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/28(月) 13:57:52 [ uMyZnN/. ]
>野衾
うしおととらで飛行機を落とそうとしたアレですかな?
モモンガ系の獣人は災難ですが、ムササビ系の獣人もあらぬ疑いをかけられて迷惑してそうw

ところでこの手の滑空系の獣人で、空挺部隊を作れませんかね?
もし高高度からの空挺は無理だとしても、無音(低音?)で空を移動できる技術は
なにか応用ができそうですが。

584 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/28(月) 14:06:32 [ SMvyJK2w ]
大本営発表殿 投稿乙です
竜の利用かあ。実用性よりも見栄えのほうが良さげ。
しかし竜が小食なのは助かりますね。
シロべえ世界の皇国では莫迦みたいに予算を食いますから。

くろべえどの投下乙です
なんだかこんな話が漏れると帝國本土は魑魅魍魎の闊歩する悪の帝國みたいな
印象が……
>>559
うーん、合議制ではなく一部有力王家(つまり親戚同士で)で一族の長を
選挙する、という感じです。皇主選出に影響を及ぼせても実際の政治に影響を
及ぼしにくい、という設定です。

ところで自作あたりから皇国飛竜の話しに入るのですが
く ろ べ え 氏 設 定 と 別 物
ですが、見逃していただきたい。

長崎県人 殿投下乙
レーヴァテイルがこのまま帝國化するとソナー員は?
ピアノの調律士は?

585 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/28(月) 14:15:54 [ SMvyJK2w ]
584がなんだか誤解を招きそうな記述でしたから追記しておきます。
くろべえ氏設定と異なる部分は
飛竜が作られた存在であり、エルフによって世界に広められた云々
の部分です。

586 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/28(月) 14:22:11 [ XFnxgb.c ]
>>580
>モモンガ系獣人
これで、変身前(人間形態)の時に美少女だったりしたら・・・・
モモンガ系獣人・・・でも女の娘だもん、と。

ちなみに、見た目さえない・モテナイけど獣人に変化したら「もの凄いハンサム獣人」
になる男子も居ると見た。
で、普段のサエナイ自分と変身時のモテモテのギャップに密かに悩んでいると。
しかも、彼が帝國軍人であったら・・・・
理不尽な命令が来そうな気がする。

587 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/28(月) 14:54:47 [ ToMVwDhk ]
全般状況

日本国内

陸軍側

各師団の弾薬備蓄量の見直し、各砲の砲数増強による火力強化。
部隊増勢のため各級部隊の定数削減。
これに伴う作戦展開を迅速に行う為の機動力の強化を開始。
1951年後半時点に置いて、2割が上記施策を達成。

五式戦車の装甲強化型、出力向上型の登場。
部隊の機動力強化の為、自動貨車の増勢と防弾板の付与。

戦闘機隊の3割に橘花、4割が五式戦闘機、残る3割が従来機の編成。
爆撃機隊の4割が五式爆撃機に、2割が連山、4割が従来機。
ただし、連山は最後まで発動機に苦しめられ、1958年には全機が退役。

なお、陸海軍機ともに米軍機の調査により、無線機の信頼性が向上。

1951年の陸相は梅津美治朗予備役大将、参謀総長は樋口季一郎大将

588 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/28(月) 15:40:01 [ ToMVwDhk ]
全般状況

日本国内

社会構造
鉄道省の指導による電力化を推進。
1951年時点で、東京横浜間、阪神間の一部、名古屋広島福岡各市内が電機化を完了。

商務、逓信、兵部省の合議により、産業復興促進を企図した、帝国工業規格を制定。

不足する労働人口は女性の社会進出により解消されつつあるが、この事が女性就労問題を
始めとする各種社会問題を発生させ、帝国政府は問題解決の為の緒施策の制定と実施に悩まされる。
この解決には、1953年制定の労働基本法を始めとする各種基本法によってである。

高規格道路建設問題

各経済圏の相乗効果と景気回復の決定打として、高規格道路建設計画が、1950年に政府内で浮上。
しかしながら建設するにあたって、どこから財源を捻出するのかまた建設作業員をどう
手当てするのか、そして各省の利害対立、軍部の意向が複雑に絡まり、暗礁に乗り上げる。
この問題は、1968年に空港整備計画が本格始動した事により、1972年の田中角栄政権の
手で実行に移される。

589 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/28(月) 15:44:16 [ MsAR/znU ]
>>くろべえさん、投下おつです

双子のちみっこに名前が出てきましたね
未来日記で王妃予定は順当に姉のほうでしょうか?


「モモンガ…何故モモンガなんですか中尉w?

「ん?ああ、餓鬼の頃にな夜中に用足しに出かけたら、庭木から音も無くスーッと
飛ぶ白い布のようなのを見かけてな。モモンガだと教えられるまで怖くて夜中に厠に
いけなかったんだよ」

「つまり子供の怖がるもの=自分の怖かったもの、ですか?」

「咄嗟にはその位しか思いつかなかったんだよ」

こんなやり取りがされてそうですw

>>長崎県人さん投下乙です

ラスプーチンは毒ガスにたいする条約を知る前にこっちに来てしまったんですかね?
知っていても使いそうですが…

シロべえさん
ワイバーンの独自設定ですか、新しい発想をお待ちしていますw

590 名前:Gir. ◆pi/XgnFjWE 投稿日:2006/08/28(月) 16:10:14 [ 2bnOW4jA ]
> 517
 ども〜

> 大本営発表殿、シロべえ殿
 SS投下乙です

> くろべえ殿
 SS乙です。昨日の強敵は、今日の親友。シロとの和み具合は、昔日の少年マンガしていますね。

> 25年以降の艦隊
 10年も経てば現実に適応し始める連中も多くなるでしょうから、これからの展開次第っていう部分が大きいでしょうね。極端な展開の一例だと、海上護衛総隊の天下になって、『軍艦』が消滅して、なんでもかんでも『護衛艦』(予算上は警備艦だったか?)の可能性も。
 あと、ジェット戦術機・ミサイルなどは、今のところ相手が見あたらないので、史実より何十年遅れるか想像できません。
 昭和50年代でも、平然とプロペラ機が飛んでいる様な気が……

> 長崎県人殿
 佐世保の件、楽しみにしております。

> 549
 Σ( ̄∇ ̄||| ヤベッ

591 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/28(月) 16:22:24 [ ToMVwDhk ]
全般状況

大陸
フランベリア総督府の間接統治と各種法制の整備による法治主義の徹底により、全土の七割
の民心安定に成功。

東部諸国との関係安定化のため、公使館を設置。

1951年、帝国産物品の輸出開始。

フランベリア縦断鉄道、1952年に一部区間が単線ながら開通。
同時に複々線化計画に着手。

王国軍フランベリア遠征軍の再建と増強が開始された事を確認。
帝国軍フランベリア派遣軍司令部は警戒を強化。

これを受け、統合幕僚部はフランベリア方面艦隊の増勢を下達。

592 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/28(月) 16:25:31 [ ToMVwDhk ]
全般状況終了

593 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/28(月) 19:35:11 [ Eo7O8pOo ]
シロどんだけ知能あるんだw

594 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/28(月) 20:49:57 [ uMyZnN/. ]

モモンガはのぅ、恐ろしいことに10年ほど生きるとやがて尾が二つに割れ
人語を解し人肉を喰らうムササビに化けるのじゃよ。
ムササビは大きさがモモンガの倍ほどにもなってのぅ、凶暴さも増すばかりか
殺して喰らった人間に化けることもあるそうでな、ほんま恐ろしいことじゃて。


モモンガには天敵が居てね、ムササビと言うんだ。
一見姿はムササビに似ているんだけど大きさが倍近くあってね、良い子がモモンガに
食べられそうになると何処からともなく現れて空挺師団のようにその子を救うんだ。
だからモモンガに襲われても「ムササビ、ムササビ、ムササビ」と3回繰り返すと
モモンガは恐れて逃げ出しちゃうんだよ。


妖怪モモンガに襲われても魔法陸軍少女クーテームササビちゃんが助けてくれるよ☆
意地悪なモモンガを倒すために大元帥陛下からいただいた魔法のステッキ、
オシンノグントウを手に魔法の呪文「わっふるわっふる、モモンガはいなくなれ☆」を
唱えればモモンガは逃げ出すんだ☆



どれでもお好きなのをどうぞ。

595 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/28(月) 20:58:33 [ uMyZnN/. ]
自己レス
× オシンノグントウ
○ オンシノグントウ

魔法陸軍少女が幸薄な少女になってしまいそう・・・orz

596 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/28(月) 21:10:24 [ 4opYXIHo ]
二式重戦車の初陣はシロの種族の
別の群れだったりしそうだなぁw

597 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/28(月) 22:01:55 [ XFnxgb.c ]
107氏の平成日本召還は、大日本帝國が消滅してから出現しているわけですが、
帝國が超大国として安定的な統治を行っているF世界に現代の平成日本が出現
したらどうなるのでしょう?
帝國から元世界のハワイくらいの位置に。
平行世界の日本ということなので、これもアリかと。
くろべえさんの基幹設定である「日本人だけ」「海外資産も転移」
「妙な不純物(社会的な)は転移しない」となれば、帝國がどれだけ混乱することか?
(何と言っても皇室が二つできる、自分たちより遙かに進んだ国である。
 そして、負けないまでもただでは済まない戦力と、同一人物がまだ結構生存している)
くろべえさん どうでしょう?
ジャンクのネタにはなりませんか?
ちょっと期待してしまいます。

598 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/28(月) 22:07:08 [ RpxFCjzQ ]
ちなみに歳を経たモモンガが化ける妖怪には
ももんじい(百々爺)と山地乳(やまちち)いうのがいて
ももんじいは襤褸着を着た毛深い、または髭マッチョの爺さんで
夜遅く人通りのなくなった村の辻や町角に出てきて人をからかったりする。
(気味の悪い爺さんだな・・・と道を変えても次の辻でニヤニヤしてる等)
基本的に野衾みたいな凶悪さは無いが
聞き分けのない子供には「だだをこねると百々爺に食われるぞ」とか
「早くねんねしないと百々爺がくるよ」などという地方もあった。

山地乳は野衾がさらに歳を経た物で
夜中に熟睡している人の寝息を吸う事で精気を奪う。
これを誰かが見ていれば失敗して何事もないが
誰も見ていなければ吸われた人は翌日には死ぬという。

599 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/28(月) 22:19:41 [ RpxFCjzQ ]
余談だが歳を経た蝙蝠も野衾や山地乳に化けると言われている

600 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/28(月) 22:44:40 [ njlPJyHw ]
お化けは「ももんがぁ」と鳴くもんだ

601 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/28(月) 23:01:47 [ eT5v/RCk ]
キンタマの皺伸ばしてモモンガの真似事するキャラが出てくる漫画って何だったっけ?

602 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/28(月) 23:12:25 [ X3uNR9WA ]
行け!! 稲中卓球部・・・・・かな?

603 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/28(月) 23:17:52 [ uMyZnN/. ]
ジャングルの王者ターちゃん

タマキングライダーで滑空して見せ、これをマスターできれば登山は通常の半分の
エネルギーで済む、何故なら帰りは歩かずに一気に下れるからだ。と豪語していた。

604 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/28(月) 23:28:59 [ 161Eh5h6 ]
>>大本営発表氏
投下乙です。段々日本もまともに成ってきてるな・・・でも5,6年でこんなに回復するかな?

あと、できればメモ帳にでも書いてからまとめて投下してもらえないでしょうか・・・?
ぶつ切れで少々読みにくいです・・・ガッと一遍に投下してもらえるとありがたいです。
勝手なお願いですがどうかお願いします。

605 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/28(月) 23:34:13 [ 2M8fvCpI ]
>>604
携帯だから無理

606 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/29(火) 00:04:54 [ SMvyJK2w ]
>>589
いや、そんな大それたもんじゃなくて
設定を都合のいいように改竄するだけです

モモンガであれならなんか帝國本土がジュラシックパークみたいな目で見られそう。
生態系自体違うからF世界から見れば未知の怪物が沢山いるんだろうなあ

607 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/29(火) 01:32:18 [ 4vrN/x3M ]
ももー






んが

608 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/29(火) 07:10:44 [ ToMVwDhk ]
>>604
携帯からというのは間違ってないけど、コマ切れなのは仕事中にあげ・・・
ちょ!?まてなにする!うわっやm(どうやらどこかに連れていかれたようです。)

609 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/29(火) 11:29:22 [ pSg9AV/c ]
くろべえさん こんにちは
リータとリーナの二人ですが、宝玉(みたいな)ビー玉を現在どうしていますか?
やっぱり、時々出してうっとりと眺めていたりするだけでしょうか?
使用人夫婦に「もらったの」と見せたらさぞかし驚かれたでしょうね。

610 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/29(火) 14:45:01 [ NbVPvpP2 ]
シロべえ様の世界観をWW2にたとえると
連合国:帝國 枢軸国:皇国
となり、祖国は勝ち組で、
主人公には立場的に感情移入が可能という一石二鳥な見事な設定ですな。
しかし、美麗な皇主様には悪いですが、皇国の将来は暗いですね。
自分の予想では
1・緒戦に敗北 BAD END
2・緒戦に勝利したけど、総力戦となり敗北。 TRUE END
3・戦争に勝利(だけど、10年後に怒り狂った帝國によって国が焦土に。) HAPPY END
確率的にはTRUE>BAD>HAPPYの順だと。
いや、緒戦で勝利しても、軍事力で邦国を束ねている以上、軍事力にけちがついたらおしまいなので、本気で皇国を叩き潰すのではないかと。
当時の日本人のメンタリティーからして、講和の可能性はかなり低いかも。

611 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/29(火) 15:42:35 [ DUErFeR2 ]
2日ぶりの書き込みですが、皆さん作品投下お疲れさまです。
量が多い(良いことだ)ので、感想は次回からで勘弁を。

612 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/29(火) 17:45:32 [ wezaJ53A ]
外伝第二話投下〜


>>名無し三等兵さん

俺も今携帯のみですけん誰からレスされてるのか見にくくて、お返事が書きにくいこと書きにくいこと、でも投下が多いと嬉しいので今日も投下

613 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/29(火) 17:50:59 [ qolO/Z6Q ]
『ふぁああああっ・・・』
朝だ、デスクの方で物音がしないから、ゴン太君帰ったのか
湾港部の建物は海に面しているから窓の向こうには海と船、桟橋で朝釣りしてるおっさん達しか見えない・・・あ、海防艦が二隻減ってる、四隻で一単位だから、なにかのルーティンで出てるみたい。舷側に三箇所に取り付けられたL字型の着脱式の対対艦魔法の槍装甲が特徴的だ、これのおかげで一艦につき海防艦でも、最低片舷三発以上発射されないと被害を一切与えられないなんて言われてる。
『シャワー、浴びよっかな?』
最初の頃は普通に海に飛び込んでたんだけど、ニューコンティネンタル市自体の人口急増に下水処理が間に合わなくなって来たのか、汚くなっちゃって。潜水具なしだと潜りたくなくなっちゃった。
『ふんふふふーんふん、ふんふふふーんふん』
クラシックのアレ、を口ずさみながらシャワー室へ、シャワー室は倉庫の方にあって、倉庫では潜水具ほか、小さい哨戒艇が整備されてる、整備担当はドワーフのおやじさん、片眼鏡で気の良い爺様。水中班となってたのはおやじさんとだ、潜水具に不具合が見つかった時の対処とか、バックアップをしてる、今まで一回も不具合とかないし、腕のいい職人さんよ

614 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/29(火) 17:52:07 [ a1KJrS8g ]
あれこれ考えているうちにシャワー室にとうちゃーく、服をぬぎぬぎっと

シャー・・・

熱いお湯が頭から綺麗な流線形の体を流れる
『ふぃ〜、良いお湯』

二十分程楽しんであがる、なに?シャワーシーンの描写が少ない?・・・ちょん切るわよ?
ま、ともかく足をよく拭いとかないといけないのがこの体の不便な所、水に漬けたままだと両足くっついてひれになっちゃうし、鱗も生えるし、それからまた二本足にするのは面倒だし痛いのよ、これが。海に居続けるならヒレのままが楽なんだけど
『よっと♪』
この前遊びに行った時キャサリンたんが選んでくれた黒いイブニングドレスを着る
相模中佐なら、公共の場だ、制服を着ていかんか!となるのだろうけど、劇場みたいな暗いところでシロフクのようなの着てたいったら、おもいっきり目立つのよ!メインの賓客でも無いのに、紺の方を着れば良いじゃないかって?下士官用のやつは袖についてる錨のマークがなければね、恥ずかしくって着れやしない。デザイン的に没!というわけでこれ、念のためにスリットに拳銃も忍ばせる、あくまで内地ほど治安が良い、というわけじゃ絶対ないから。拳銃携帯使用の許可証はもった、と

さあ、いきましょうか!

615 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/29(火) 17:55:04 [ zeLnApqc ]
ニューコンティネンタル市
元は物凄くアホな国王が居た土地だったらしい。あまりにもアホなので重巡、たしか高雄らの戦隊からの艦砲射撃を食らって城ごとおじゃん、直轄領にされちゃったとか、詳しいことは忘れちゃった
でも、限定的に志願制の移民を始めた帝國の人達にとって、海沿いで、かつて人が住める程はインフラがあって、資源は無い。っていう立地は移住民にはありがたかったのはわかる。
列強さん達も五年くらい前までは資源地帯へのちょっかいも結構やってたから、地下資源がない所で直轄領であるここは、下手な厄介事も起きずに街造りが出来る、と考えた訳
帝國人だけの街になるかと思えば、お人好しにも流れてきた流民や、ドワーフさんたち、獣人さんたち、もろもろ色んな方面を受け入れてから物凄い勢いで人が集まっちゃって、都市は急速に発展したものの
・・・治安はこのとおりだし、帝國と列強の国家機関もあれこれと、ある物は有効活用しなきゃならないなんて義務感だしちゃって、いろいろ暗躍したりする
これでこの街のカオス的な状況はわかってもらえたと思う。それでも今回のような娯楽の催しは時たまやってるし、みんなとも会えたし悪いだけの街じゃ無い。私はそう思ってる

616 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/29(火) 17:57:12 [ wezaJ53A ]
会場は元コロッシアムの劇場、簡単な屋根がつけられてて、雨の日も大丈夫になってる。時たま小学校とかの組体操のお披露目や、学園祭の劇とかもここでやってるし、市民にはかなり解放されてるとこ。警察もイカれたやつらが入って来たとしてもここなら守りやすいというのも聞いた事がある
湾港部から駅馬車で10分くらいで到着、少し歩いて正面玄関、人だかりが・・・どいつもこいつもペアでエスコート付きね・・・べ、べつに悔しくないわよ、全然!
『チケットを拝見させていただけますか?』
ドアボーイに引き止められる
『あ、はい!』
運よく取れたのよね、これ、夕食を挟んで昼から夜までかかる長丁場・・・寝てしまわないかちょっと心配
『どうぞ』
にこやかに一礼されて通される
『!!!』

一歩会場に足を踏み入れる

熱い・・・!!!

おもわず後ずさる、びっくりした、人の熱気かしら?

『お客様・・・やはり熱いでしょうか?』
困ったようにドアボーイが顔を曇らせる
『え?えぇ・・・凄い熱気ですね』
『空調がどうもおかしいようなのです、皆さんそうおっしゃられて。申し訳ありません』
『まぁ、熱過ぎて不快って程じゃないから、気にしないで』
『恐れ入ります』

617 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/29(火) 17:58:34 [ ewIsKeyI ]
曲目は『椿姫』貴族と高級娼婦のお話だとか、ヒロインはヴィオレッタという娼婦、ヴィオレッタというのはスミレとかいう帝國で咲いてる花の名の別の呼び方・・・もらったパンフにはそう書いてある
弾き語りの旅芸人とかが物語を伝えて回るのが他の開発されてない地域じゃ当然主流なんだけど、それが洗練されていくとここまで昇華されるんだ、と、ちょっと圧倒されちゃった。ただ、これほどの規模で照明、舞台とか整えるのはお金がかかって普通の人は見れないんじゃないかしら、加えて上演時間が長いし。いや、私ぐらいが見れてるんだけどさ

『不思議だわ』

主演女優は私と同族のレーヴァテイル、マーニャとかいう名前・・・何か私が感じたのは気のせいだったのかしらね?今はなんともないし、私と何か関連があるかなと思ったけど、全然
『さすがはレーヴァテイル、歌を歌う事に関しては天賦の才をもつな、素晴らしい!』
『ふふ、あなた、声が大きいですよ、でもまるで歌の神様、ディーバが降りて来たみたい』
隣の老夫婦が感激している、たしかに同族の私が聞いても物凄くうまい方ね、それに舞台での演技、セリフの覚え、彼女は私とは別な方向の努力をしたに違いない
やがて第一幕が終わる

618 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/29(火) 17:59:52 [ /9tm..U. ]
第一幕がやっと終わった・・・

『マーニャさん、良かったですね、体調が戻って!しかも今日は凄い声がのってて我々も演技してて最高ですよ』
共演者の人だ
『ええ・・・』
『・・・どこかまた体調が?』
心配そうに覗き込まれる
『大丈夫ですっ!いくらでも歌えますよぅ!』
そうよ、今日は歌が凄く伸びていつもより、もっと・・・もっと歌えるんだから!!
『でもちょっと疲れたので楽屋へ』
お薬を飲まなきゃ、薬を飲めばいつも治まるのよ、薬さえ飲めば・・・

第二幕

ああ・・・よかった・・・まるで鳥のように体が軽い・・・歌も最高に歌えて・・・歌え・・・て・・・

『アルフレード、あなたを愛しているわ、あなたも同じだけ私を愛して・・・・・・さようなら』

『ぐぅあぁああ!!!』
『ああああぁあ!!!』
『か、体が熱い!!』
共演者達が悶え苦しみだす

『ああ、不思議だわ、新しい力が湧いてくるよう・・・!』

ボォオオオオオッ!!!

最終幕のラストワードの言葉と共に演者、演奏者達が盛大に燃え上がる、それは幕間のカーテンへと燃えうつり、全体へと炎を広げていく


まだまだ足りない、新たな種の誕生の祝いには、新たな世界の誕生には

619 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/29(火) 18:01:35 [ 5k.cDmFg ]
『なっ・・・!!』
私はまた、急に場が熱くなるのを感じた、第二幕からだ、一体なんなの?これ?

『・・・さようなら』
さようなら、旧種族達よ
どくんっ!!!

胸の動悸が激しい、苦しくは・・・ないけど、いまさっき聞こえた言葉は

『ああああぁあ!!!』
『ぐぅあああああ!!!』

『ああ・・・新しい力が湧いてくるよう』

ボォオオオオオッ!!!

『何てこと・・・!!!はっ!?』
まわりの観客を逃がさなきゃ!!!誰も状況に飲まれて席を立とうともしない
『みんな!!!みんな逃げて!!!』
『君、帝國の事だ。え、演出じゃ無いのかい!?』
反対側のデブな男が汗をかきつつ問う
『う、うわぁっ燃えてるぞ!!』
『そんなわけないでしょ!!!私は帝國海軍の人間よ!その歌をやめなさい!!』

タァン!!!

演劇を聞いてないの!?これじゃストーリー無茶苦茶でしょうが!!!それに出演者を焼く劇があってたまりますか!!!やっとまわりも逃げ出している、拳銃を取り出して相手に警告射撃
『早く逃げなさい!!』
『おお・・・わ、わかった!』
『ひぃぎゃああああっ!!!』
今度は観客席の方で何十人単位で燃えだした
『なんなのよ、これは!』

620 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/29(火) 18:03:01 [ 50Ied/7E ]
に、逃げ出したい、逃げ出したいけど・・・戦えるのは私だけみたいだし・・・予感のもたらした物としては最悪よ!!
群衆を掻き分けてステージへ
『あなた!いったい何をしたの!魔術にしたってこんな!あなたレーヴァテイルでしょ!?』
銃を向ける、あちらは意に介さない
『マーニャ、マーニャ!?これは君の仕業か!?』
誰!?
『さがって、危険よ!!この惨劇を今すぐ止めないと、躊躇せずに撃つわよ!!』
『春野・・・さん?』
ゆっくりとこっちを振り向く、なに?瞳孔の色が始めてみた時と違う!!!
『そうだよマーニャ、座長の、こんな事やめるんだ!な!』
『近寄らないでくd』
『お前はこの体を維持するのに世話になった、ソロではなく、モブで焼いてやる』

ヒュゴォオオオオオ!!!

なんで・・・さ、あっと言う間に春野とかいう男がカリカリの焼死体に、どうやればこんな風に人を殺れるのよ!!!
『こ、この化け物っ!!』

タタタタタァンタァンタァンタァン!!

劇場効果で音が反響する、改・南部式の弾倉全部、一発警告で撃ったから十四発全部撃ち込んだ
『お前は、燃えないな?』
き、効いてない・・・全部貫通したのに・・・液体みたいに・・・そんな!

621 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/29(火) 18:05:33 [ wslbeVyE ]
『この体ではさすがに戦えんな、使いにく過ぎる』
『ちょっと!!!どこへ行く気!?』
弾倉を入れ替える、とりあえずこいつが言うには私は燃やされはしないみたいだけど、どうすりゃいいのよ!
『今日の公演はこれだけでは無いのでな・・・』
マーニャだった体が熔けてコロッシアムの側溝から流れていく、ちょっとまて、そんなのあり!?拳銃が効かない訳だわ・・・て
『お、追わなきゃ!!!あんなの外にだしたら!!』
何やるかわからない!えっと・・・次の公演ってたけど・・・まだこの劇場の中に居るかもしれない・・・いえ、中には居ないわね・・・どこか別な場所
『待って』
なんで私、ここには居ないと言い切れるの?
『・・・ううん、あれだけの力を持ってたらコソコソ隠れる訳が無い!もっと別な場所よ!』

私とあんなのに関係性なんてあってたまりますか・・・!

622 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/29(火) 18:07:42 [ 5k.cDmFg ]
投下終了〜レス返しは夜に、すいませんm(__)m


ほ、本編につまってるわけではありませんですぞ(多汗)

623 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/29(火) 18:37:00 [ NEYu2gEE ]
オペラハウスでパラサイト・イヴ思い出した

624 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/29(火) 20:20:19 [ 9eLGw/is ]
>>602
稲中に出てきたのはイジメられた復讐に金玉狩りなる蛮行を繰り返したあげく
「お前も金玉あるじゃないか」と問い詰められて「これはモモンガだよ」と誤魔化そうとした
後の通称「モモンガ社長」氏ですね。

625 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/08/29(火) 20:58:08 [ SMvyJK2w ]
>長崎県人様 投下乙です

>>610
確かに第二次大戦のような構図になるのは避けられませんね。
>祖国は勝ち組で、
主人公には立場的に感情移入が可能という一石二鳥な見事な設定ですな。

そういっていただけるのは非常にうれしいのですがそこまでの効果を狙ったわけではありません。
皇国側からの視点が多くはなりますが王国と帝國視点からの話もあります。

戦争の結末は2になりそうですが、それを避ける事が皇国と王国の目的です

626 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/29(火) 21:13:53 [ DUErFeR2 ]
長崎県人さん、投下乙です。
自分も「人が燃える」「新たな種の誕生」で、>>623さんと同じように「パラサイト・イヴ」を思い出しました。

クラシックや劇で思ったのですが、F世界でオーケストラなど集団で演奏する文化ってあるんですかね?

627 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/29(火) 22:25:07 [ yq9lkYzY ]
大本営発表様、投稿乙です。
>6万噸級油槽艦、5万噸級工作艦
6万噸級油槽艦は一度に10万トン近い石油を運べるだろうし、5万噸級工作艦は沢山の艦艇を一度に整備可能……
やはりWWⅡで相当痛い目にあったのが効いたのだろうなあ。


長崎県人様、投稿乙です。
何かに乗り移られた可能性もあるけど……う〜ん。
次回を楽しみに待ってます。


シロべえ様、589様、Gir様、有難う御座います。

>なぜモモンガを魔獣に
モモンガは年をとると妖怪になり人を襲うそうで、一部地域では子供の躾にその名を使うと聞いたことがあるのですよ。

>帝國本土は魑魅魍魎の闊歩する悪の帝國
ダークエルフと獣人束ねているだけでも、一部から既にそう思われていますしねえ。

>双子のちみっこに名前が出てきましたね
はい。名前決めるの苦手なんで一寸大変でした。

>未来日記で王妃予定は順当に姉のほうでしょうか?
その辺は機会があれば……

>昨日の強敵は、今日の親友。シロとの和み具合は、昔日の少年マンガしていますね。
黒部中尉とシロは結構いいコンビ、というか悪友同士なのです。

628 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/29(火) 22:26:35 [ yq9lkYzY ]
>> 25年以降の艦隊
> 10年も経てば現実に適応し始める連中も多くなるでしょうから、これからの展開>次第っていう部分が大きいでしょうね。極端な展開の一例だと、海上護衛総隊の天>下になって、『軍艦』が消滅して、なんでもかんでも『護衛艦』(予算上は警備艦>だったか?)の可能性も。
艦艇整備計画が迷走したのも、あっちの世界とこっちの世界の狭間で揺れ動いたせいですからねえ。
仮想敵が明確に定まっていないから……

> あと、ジェット戦術機・ミサイルなどは、今のところ相手が見あたらないので、>史実より何十年遅れるか想像できません。
> 昭和50年代でも、平然とプロペラ機が飛んでいる様な気が……
一応今のところは、『将来保有機数が大幅削減されていき、軍は戦力維持のためジェット化に走る』と考えています。

>シロどんだけ知能あるんだw
シロは賢いのですよ……

>二式重戦車の初陣はシロの種族の別の群れだったりしそうだなぁw
そのブレスは九五式や九七式の装甲をまるでダンボールか何かの様に撃ち抜き、その防護結界は短砲身57ミリ砲や37ミリ砲弾を軽々弾く……

何処の化け物だ、これ?

>107氏の平成日本召還は、大日本帝國が消滅してから出現しているわけですが、帝國が超大国として安定的な統治を行っているF世界に現代の平成日本が出現したらどうなるのでしょう?
両国とも貿易立国ですからねえ。市場を食い合って共倒れする可能性もありますし、正直難しいですよ。
平成日本は資源を馬鹿食いするし、恐ろしいほどの物資を輸出入しないと生きていけません。そしてそれらは全て帝國のもの……
帝國が一部を割り当てる程度じゃあとても生きてはいけません。奪うしか無いでしょう。かつて帝國がそうした様に。
まあ帝國が超大国化した頃なら、核の一つや二つ持ってるだろうから、そう簡単にやれる相手じゃあないだろうけど。

それに帝國が平成日本を同胞として認めるかも怪しいです。
(皇室典範が改正されて女系になってたら完全に終わってるだろうなあ)

>リータとリーナの二人ですが、宝玉(みたいな)ビー玉を現在どうしていますか?
現在も大切に保管していますよ。

629 名前:名無し三頭兵@F世界 投稿日:2006/08/29(火) 23:05:27 [ xg0l1Cog ]
くろべえさん、投下乙です。
女系はほんと、やめてほしいですよ。
少なくとも女系有りきな議論はやめてほしいです。
皇室というものをそんなに軽く考えないでほしいです。

二式重戦車対魔獣・・ちょっと燃えるものがありますな。
まるでT-34かM-4のようだ・・

630 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/29(火) 23:15:02 [ wXB4VivE ]
>>シロべえさん
ソナー員はあまりにも耳が良いため、急な衝撃に弱かったりするので、きちんとバックアップのためについてます。それにレーヴァテイルにも個人差があります、ピアノの調律にしろなんにしろ、人間が居なくなる、ということはありません

>>623さん
バレチマッタゼ(゚А゚;)
いろいろ変えていくので、またーりニヤニヤしておいてくださいm(__)m

>>名無し三等兵さん
ジプシーの楽団とか集団で楽器を演奏するってのはF世界に於いてもありだとおもいますよ?王宮でのファンファーレだとか儀杖にも必要でしょうし、長門とかの軍楽団もひっぱりだこでしょうな、いろいろと
ラスプーチンは1914年に44でとんでもない死に方してるのでいろいろネジが飛んでるかもしれませぬ

>>くろべえさん
この熱い夏、レーヴァテイル、熔けました
とたれレーヴァテイルとはさすがに、乗り移られたにしろ人格はもう・・・


バレタならいっそこのまま毎日投下でみなさん待たせないでさっくり進めようか思案中・・・

631 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/29(火) 23:45:21 [ ToMVwDhk ]
くろべえ氏、感想どーも。


六万噸級油槽艦や五万噸級工作艦は、外洋海軍として活動せざるを得ない帝国海軍にとって、
なくてはならない物でつ。
何せ、この世界の国は、この世界において未知の技術で造られた船を治す事など出来ませんからね。


この流れで移動式船渠の建造にも手を付けてまつ。


名無し三等兵氏、どうも。


1951年から、復興が加速されるだろうという想定でたててまつ。
最初は被害を受けてない工場が、細々ながらも資源が入るようになってからは再建されていく大型工場が主力となるだろう。
さらに製造を均質化する帝国工業規格が制定される事。
中島飛行機の流れ作業が広まらざるをえないだろう。
などという推測ですが。


というか、今回の全般状況の一文節だけで外伝ができまつ(w

632 名前:陸士長 投稿日:2006/08/30(水) 01:19:20 [ hgFaT5yk ]
投下〜。かなーり、ネタSSです。

633 名前:Gir. ◆pi/XgnFjWE 投稿日:2006/08/30(水) 01:19:50 [ 2bnOW4jA ]
>くろべえ殿
> 一応今のところは、『将来保有機数が大幅削減されていき、軍は戦力維持のためジェット化に走る』と考えています。
 そーいえば、既に吉良少将云々で、防空システムの概論は既に出ていましたか。ジェット化による滞空時間・エアカバー率の低下はそれで補うのかなぁ。それが希望の星だ ъ( ゚ー^)☆
 F-4あたりで、フライアブルコスト170-240万$/1973・戦闘行動半径680km(巡航0.7時間)・10t近い燃料(1式ライターの2倍)とか見ると気が遠くなりそうだけど……
 F-104のフライアブルコスト140-240万$/1973-78・戦闘行動半径670km(巡航0.7時間)・4t近い燃料とか見て、気が休まるってのも、なんだかなー
 参考:P-51D 約5万$/1945年・戦闘行動半径925km(巡航1.6時間)ぐらい?・燃料0.7t近く
# 20年のインフレ率考えても……たかだか、相手がワイバーン程度じゃ、全然採算があわん気がチビっとしているのはご愛敬ということで〜 orz
# あ、そうか、CAP/CASはワイバーン・ロードにやらせればいいのか。

634 名前:Gir. ◆pi/XgnFjWE 投稿日:2006/08/30(水) 01:21:35 [ 2bnOW4jA ]
×→20年の
○→30年近くの
……orz

635 名前:魔導工学研究計画:黎明の章 前編 投稿日:2006/08/30(水) 01:22:15 [ hgFaT5yk ]

アバディーンから比較的近い山間部のとある建物。
『スコットランド王国軍 第51研究所』とだけ正門の脇に銘が打たれている。
幾つもの"隠蔽"の結界によって、外界から隠されたその施設の存在を知る者はスコットランドでも少ない。
実際、警備は神経質とも言える程厳重であり、その施設規模は国内でも最大級だろう。
そして、そんな施設に限って裏黒い事が行われているのも、また世の常である。

入り組んだ研究棟の一室。
何やら怪しげな培養槽を観察している数人の研究者。

「はい、主任。その点については問題ありません」
「そりゃ良かった。些か心配してたんだが無事で良かった」

主任と呼ばれた1人は痩せぎすで分厚い眼鏡を掛けたダークエルフの男である。
白衣を羽織り、プルプル震える指先を神経質そうに唇の下に当てていた。

「研究の推移は予定よりは順調です。来月にも生体部品の試作を行う事が出来るでしょう」
「そうか、思ったよりも匪賊共の集まりが悪かったんで心配しちゃったんだけど。まぁ、何とかなったな」
「そうですね。現地軍の能無し共が男性体の捕獲命令無視してバカスカ殺すもので一時は難儀しましたが」

残りの研究者達も全てダークエルフだ。
全員が白衣を着込み、衛生帽とマスクをしている。
それらの彼方此方に得体の知れない斑点が滲んでいるのが不吉さを煽っていた。

「ま、過ぎた事さ。用途も意図も隠したままで捕獲命令出してるんだ。必要量に足りただけでも良しとしなきゃ」
「全くですな……ところで主任、少佐殿が本日こちらへ立ち寄られるとか?」

"少佐"という単語に、主任と呼ばれた痩せぎす以外のダークエルフ達の身体が僅かに震える。
怯えとも、畏敬ともつかない感情がその場を覆ったが、それに構う様子もなく主任は呟くように答えた。

「ああ、もう暫くしたら来られる。帝國本土での関連機関やお偉方との折衷が終了し、昨日帰国されたからな」
「少佐殿も大変ですね。責任者の務めとはいえ、方々へ足を運ばなければならないとは」
「この手の研究に対して『帝國人』の方々は理解が浅いという事だ。神州大陸での『広域警戒網』も結局試作止まりだしね」

この世界で生きていくには、些か思慮が足りないと言わざるを得ないけど。
そう続けた主任の言葉にダークエルフ達は肯定するかのように首を縦に振る。
彼等も歯がゆさを感じているのだ。
その重要性を認識しつつも、本格的に魔術を受け入れてくれない帝國人達に対して。

と、その時、主任を呼び出す棟内放送が入る。
その内容は、彼等を慌てさせるに充分なものであった。

「少佐が正面ゲートに来られた! 予定よりも早く来られたぞ!!」
「早くお出迎えをしなければ」
「君達は各々の持ち場へ戻り給え。少佐殿は怠慢を嫌われる方だ!」
『はっ!』

いそいそと持ち場へと戻っていく研究員達を尻目に、痩せぎすとお供は通路と渡り廊下を幾つも渡って玄関へと向かう。
建物の高さを気にしてか、この施設は地上施設は高さが二階までで平べったく、主要研究区画は地下に作られている。
その所為か、どうしても移動に時間がかかるのが難点であった。

636 名前:魔導工学研究計画:黎明の章 前編 投稿日:2006/08/30(水) 01:23:42 [ hgFaT5yk ]

「はぁはぁ……ぜいぜい……少佐殿!!」
「ま、待ってください主任!」
「そんなに付いてこなくてもいい、えー、いや、君と君は食堂に行って例の物を用意しておいてくれ!」
「「ははっ!」」

息を切らしかけ、すれ違いの研究員を押しのけながら玄関を目指す主任。
ダークエルフの割に、結構軟弱なのかもしれない。が、本人にその感慨を抱く余裕などある筈も無かった。
エントランスに立っている衛兵に敬礼もそこそこに正面玄関のドアを開け放つ。

「……ぁ」
「到着……されて、ましたね」
「されて……たね」

正面玄関の前に広がるロータリー。
そこには一台のちよだ軍用四輪乗用車が横付けされていた。
そして、その車体に乗っている人影が2人。

「ふっ、ははっ、遅いでは無いか主任。予定よりかなり早く到着して何だが、待ちくたびれてしまったぞ」

後部座席で、白手袋に包まれた手を意味もなく振りかざしながら偉そうに踏ん反り返っている将校。
スコットランド軍の『特務』を示す黒い軍服を着込み、制帽を深く被ったダークエルフの女だ。
小柄な上に珍しく"眼鏡"なぞ掛けている割には、横柄な態度でニヤニヤと口の端を吊り上げながら主任を睨め上げていた。

そして、運転席でハンドルを握る軍服。階級章は、大尉。
こちらは、人間だ。身長は2m近くある頑健な体躯の男で、無表情な面持ちは何を考えているか悟らせない。
ただ、眼光は身を切るように鋭く、戦場で敵として相対したくない畏怖を見る者に与え続けている。
何故、人間なのにスコットランド軍軍服を着ているのかは極めて謎だ。

「は、ははっ。お待たせして申し訳ありません少佐殿っ!」
「ははっ、構わんよ。今の私は最高絶頂に機嫌が良い。何せ、ようやくにして、上等兵閣下から計画の認可が降りたのだからな」
「ほ、本当ですか少佐殿!!?」
「マジだ。まぁ続きは食堂で話そう……準備は出来ているのかね?」
「は、万全です。ご安心ください!」
「そうか」

ゆっくりと腰を上げ、ついでに口の端をも1回吊り上げる少佐。
僅かにずれた眼鏡を直しつつ、喉を震わせながら呟いた。

「実に、実に楽しみだ」

続く

637 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/30(水) 10:54:08 [ 207yU0ss ]
>>597

現代日本の海外資産が一緒に転移してきても置く場所がないと思います。
戦前なら海外資産の量も少ないし国内には空いてる土地も結構あるから転移してきても置く場所がありますけど。
現代だと量は戦前よりも多いのに空いている土地は戦前よりも少ないんですからね。
まあ日本企業が購入したけどまだ日本に到着していない資源の類も一緒に転移してくるから戦前日本よりは状況はいいでしょうけどね。
問題は税金の問題で船舶の類の殆どが外国籍ということですね。
つまり船舶の類は殆ど一緒に来ないということです。
この船舶不足の問題をどう解決するかが現代日本の最大の課題ですね。

638 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/30(水) 13:17:00 [ FZ3KgEfs ]
>>590
あー、そうだったんだ。
もうモチベーションないのかも知れんけど、いまだにマッタリと続き待ってる。
スレ違い承知で失礼。

639 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/30(水) 13:41:17 [ ToMVwDhk ]
タハー(ノ∀`)
やっちまった。
第二部は大まかなプロットに従いつつ、順調に書き上げてたんだが、やっちまった。。。
思わずやっちまった。。。
予想外の事を入れちまった。












ダークエルフノバカヤローorz
話が飛んでもないとこに行かない事を祈ろう。

640 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/08/30(水) 14:04:12 [ DUErFeR2 ]
陸士長さん、投下乙です。
>黒い軍服を着込み、制帽を深く被ったダークエルフ
ドイツのSSを思わせるような格好ですね。ダークエルフには似合いそうだけど。

大本営発表さん、何が起きたのかは分かりませんが、とりあえず…、頑張れ!

641 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/30(水) 16:27:47 [ yq9lkYzY ]
陸士長様、投稿乙です。
何やらヤバそうな匂いが……


>>629
名無し三頭兵様、有難う御座います。

>二式重戦車対魔獣・・ちょっと燃えるものがありますな。
>まるでT-34かM-4のようだ・・
二式重戦車はまだ数両しか出来ていませんからねえ。二式重戦車に対抗できる程の化け物(M4A3E8とかT34-85級?)いたらヤバイ……

>>633
>20年のインフレ率考えても……たかだか、相手がワイバーン程度じゃ、全然採算があわん
問題はそこですねえ。まあ現状では2000馬力級エンジンにやっと手が届いたところで、まだまだ排気タービンとか越えるべき山は多いですが……

642 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/30(水) 16:28:18 [ yq9lkYzY ]
さて、SS投下。

643 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/30(水) 16:28:54 [ yq9lkYzY ]
「帝國召喚」外伝4『辺境警備隊隊長よもやま物語』08-2

2、

シロの先導の下、2台の竜車が疾走する。

黒部中尉以下、小銃分隊(10名)1個に擲弾筒班(3名)1個からなる臨時捜索隊の面々だ。


あの後なんとか騒ぎは収まったものの、黒部中尉は『とーぞくのかくれが』のことが気になって仕方が無い。

まあ幼子の言うことではあるが、だからこそ余計に気になるのだ。

(何のことは無い、『お父さんは心配性』という奴だ)


……子供達の行動範囲内の危険物は、全て排除せねばならんからな。


――という、凄く個人的な理由により、黒部中尉は捜索隊を編成して現場に向かっていた。

(ちなみに2台の竜車は、『公儀の御用』として竜借屋より一時拝借したもの)


「ええいっ! 子供達をこんなに遠くまで連れて行ったのか、この馬鹿犬!」

キャン!

怒鳴りながらシロに小石をぶつける黒部中尉を、第二小銃分隊長である高木軍曹は呆れた様に見ていた。

644 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/30(水) 16:29:24 [ yq9lkYzY ]

……中尉、やっぱりそういうことだったのですね。


黒部中尉は、警備隊に帰還するなり分隊長達を集め、『住民より不審な場所があるとの通報があった』と述べ、至急捜索隊を組織することを命じた。 

(捜索隊指揮官は勿論自分だ)


……怪しい。


突然の言に、普段から黒部中尉との付き合いが深い高木軍曹は、中尉の真意を訝った。

が、黒部中尉はこの警備隊の隊長であり、警備隊唯一の将校でもある。その命令は絶対だ。

加えて、警備隊の主任務は鉱山防衛・管理であるが、鉱山周辺地域の安定を保つことも任務の一つである。黒部中尉の命令に何ら不審な点は無い。

故に、鉱山警備上の問題――鉱山警備隊は僅か50名程度――はあったが、訓練も兼ねて偶には外部に派遣するのも良かろう、と警備隊幹部である下士官達も積極的に賛成、計画はとんとん拍子で進んでいく。


――ま、いいか。


勿論、高木軍曹も賛成した。

645 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/30(水) 16:29:56 [ yq9lkYzY ]
多少不審な点はあったが、気分転換の意味でも丁度良いと判断したのだ。

(それに反対した所でどうにもならない)

派遣組にも居残り組にも、適度な緊張と訓練経験が得られる貴重な機会だ。士気の向上にも役立つだろう。

……まあ黒部中尉の真意は、どうやら別の所にありそうだったが。


3、

街道近くにある小山、その手前でシロは歩みを止めた。

「この山…… ですか?」

「その様だな」

「しかし、この周辺での被害報告はありませんが」

『地図』を見ながら、高木軍曹は首を捻る。

この山を含めた周辺地域は官地(国有地)であるが、とくに何か特徴がある訳でも無い、極普通の土地だ。

「念には念を、さ。盗賊も自分の居場所を触れ回るようなことはしないだろう」

「……そりゃあまあ、そうかもしれませんがねえ」

「ま、本当に盗賊の隠れ家かどうかは不明だし、その可能性も低いだろう。訓練と思って気楽にやれ」

646 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/30(水) 16:30:27 [ yq9lkYzY ]
黒部中尉はそう言うと、竜車を街道から離れた山林に伏せ――待機――させ、留守と周辺監視も兼ねた小銃班(3名)1個を置き、残りを引き連れて山へと登る。


山を登るのは黒部中尉以下11名。

武装は黒部中尉が軍刀に拳銃、10名の兵が九六式軽機関銃1挺に三八式歩兵銃9挺。他に擲弾筒1門。

(短時間の行軍なので、武装以外の装備は軽装)

これならば、盗賊が100人いようが問題無い。 

(あくまで『いれば』、の話だが)

暫く獣道を進むと、急に開けた場所に出た。 ……そして山腹にはぽっかりと開いた穴。

「ここか」

「ここに誰かがよく来ることは間違いなさそうですね。 ……それも集団で」

高木軍曹が指差す場所には、自分達が通ったよりも遥かに大きな『道』が広がっていた。

「この広さだと、竜も使っているようだな」

「ですね。もしかして、『大当たり』でしょうか?」

「さて、な」

と言いつつも、黒部中尉は油断無く辺りに気を配る。部下の兵も同様だ。

647 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/30(水) 16:30:55 [ db2dpcp6 ]
そこからは、先程までの気楽な雰囲気など微塵も感じられない。

(この様な場所に、『竜で来る』ということ自体が怪しいのだ)

そして、拳銃片手に洞窟の中へと入る。


が、中は10mも進むと行き止まりだった。

幾つかの箱が置いてあるが、蓋などしておらず中も空っぽだ。

「……娘の言葉では、蓋がしてあった筈だが」

「底には小石や砂が沢山落ちてますね? 一体何を入れていたのでしょうか?」

「さて…… が、どうでもよい物をわざわざ入れるとも思えん。臭うな」

「同感です」

黒部中尉の意見に、高木軍曹も同意する。

「どうやら本格的に調べる必要がありそうだ。地区司令部に応援を……」

そこへ部下の一人が駆け込んできた。 ……誰かがここに向かって来るらしい。

「……手間が省けたかな?」

「ですね」

高木軍曹は頷くと、手早く分隊を周囲に伏せさせた。

648 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/30(水) 16:31:59 [ yq9lkYzY ]
SS投下終了。
今回はあまり内容が無いなあ。

649 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/30(水) 17:14:04 [ jqMmKaZo ]
外伝三話目〜今日の投下分投下〜

650 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/30(水) 17:15:19 [ 62Dc2aCc ]
『ともかくここから出ないと・・・』
一人じゃどうにもならない、死体もゴロゴロ転がってるし、これの処理もしらせなきゃ・・・どのレベルで対応すればいいのか皆目検討つかないわ
遺体を踏まないように玄関へ・・・あ、あの焼け残ってる帽子の傍の死体、ドアボーイの人だ、逃げる人の足で踏まれたのかマネキンみたいにばらばらになっちゃってる・・・ひどい、ただ、中から焼いたみたいに炭化してるからあんまりグロくないのが救いね
『おい、貴様!相模のとこの魚じゃねぇか!中から出て来たのか!?なにがあったんだ!?無事か!?』
質問は一つにして頂戴よ、もう一人の今度は暑いガミガミ親父こと浦出警部、ニューコンティネンタル市の警察庁出張所の叩きあげ、警官達の精神的支柱といったところかしら、海事事件での犯人、及び、情報の引き渡しでよく見る顔でもある
『なんとか、死なずには済んだわ』
『消防隊が先に到着して突入しようとしたんだが、いきなり燃え上がってひどい火傷をしてな、控えさせておいた。元が石づくりのコロシアムだ、遠巻きに包囲して固めていたんだが・・・魚ぁ、貴様一体何やらかしたんだ!?』
『私の方が知りたいわよ!・・・待って!何か出てこなかった?』

651 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/30(水) 17:18:01 [ ewIsKeyI ]
『なぁにを言っておる、のこのこ出て来たのは貴様以外おらんわい、だから驚いとるのだろうが、見ろ』
指で浦出警部の後ろを指す、警官達が10人ばかし遮塀物から拳銃を向けて指をトリガーにかけてこちらを睨んでいる、消防隊もポンプで水噴射ぐらいしそうな感じ・・・とりあえず両手万歳しとこ
『これをやらかしたのはこのオペラの主演女優よ、本当に見なかった?まだ、公演は終わっていないって言って、出ていったわ。』
熔けて出ていったとは言わないでおく、信じられるはずないもの、銃弾が効かなかったのも。私だって聞かされたら笑ってほっておくわ、錯乱してるとしか思えないし
『犯人は確実に見たんだな』
念を押される
『ええ、間違いなく彼女よ』
『わかった、何を使ったのかはわからんが。こんな騒ぎをおこしよって!見つけたらさっさと、お縄につかせてやる!』
浦出が不敵に笑ってがしっと拳を打ち合わせる
『ダメ!ためらわず射殺して!』
無茶よ、逮捕なんて!
『・・・おいおい、こちとら警察だ、先ずは身柄の確保が優先に決まっとろうが』
この人達は中の惨状を知らないから、そんな事が言えるのよね
『中では100人単位でこんがり焼けてるわ、それこそ、焼き魚みたいに』

652 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/30(水) 17:20:03 [ JlgIauw. ]
『なにぃ!?ということは複数犯か!?脱出した客を拘束しなけりゃならんな!誰か、病院ほか使いをまわせ!それから銃をおろさんか貴様ら、大丈夫だ、こいつはわしが保障する』
みんながやっと銃を降ろしてくれた、やっと手が降ろせるわ
『それなら、今日の入舘リストと従業員の名簿です』
ヒョロッとした警官がリストを片手に駆け寄る
『落葉君か、よぉし!とりあえず偽名を使ってないかぎりは現住所他は確保できそうだな!どうやら中もこいつが出て来たし、大丈夫そうだ、消防各位と協力して署のものはできるだけの証拠をひったくってこい!』
わぁっと警官と消防隊が劇場の中に突入する
『魚!お前はこっちだ!』
その姿に見とれてるうちに浦出がパトカーの上で地図を広げている
『次にやつらが何かするとしたらどこだ?』
そんなの検討つくかい!あ・・・
『下水設備の流れを地図に書き込める?』
熔けて流れていくなら水の流れが一番考えるのに手頃かも
『下水か!表に出てこないで逃げるにはうってつけだな!よし!』
パトカーの中からペンを取り出して書き込んでいくかなり多岐に渡ってる、海にも流れ込んでるし
『それで人が通れるのはな・・・』
『警部、除外しないで考えて』

653 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/30(水) 17:22:02 [ JaGeE3cU ]
『あぁん?』
理由は・・・えっと
『複数犯なら、手数があるし、100人単位で殺すにはそれなりの計画があったはずよ』
『採掘したってのか・・・よし、あらゆる可能性からさぐらにゃな!』
単純だけど物分かりが良いってのは楽よね
『彼女はまだ公演は終わっていないって言ってた・・・誰かに聴かせる気があるのよ』
人口の密集地、とにかく人が集まるところ
『聴かせるっていうのは燃やすってことか?』
『たぶんね・・・なにかイベントがほかに開かれてるとかない?』
浦出警部が少し考えて頭を横に振る
『博物館がなんかやってたが、今日は休館日だ』
『商店街のバーゲンとか』
『そりゃ、貴様の方が詳しいだろ』
そうだったそうだった・・・えっと・・・
『無いわ、今日はそういうのは無かった。ええ、確かに』
『船の入港は?特に客船、移民船』
『無いわね、中型船舶以下が17、8隻かそこら・・・それに帝國以外のこっちの船、100人以上の船なんて滅多に無いし・・・』
人数的に陸の人間より密度が高いとか有り得ないわ
『帝國の船・・・ならあるぞ、あるじゃないか魚!!』
『へ?』
なにかあったっけ?
『海防艦だ!あれには100人以上乗ってるじゃねぇか!それも二隻な!』

654 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/30(水) 17:24:38 [ 25Xn9yoU ]
そっか!半舷上陸してても一隻分は人間が一箇所に集まってるわね
『行きましょう!』
パトカーに乗る・・・あれ?浦出警部は?
『魚ぁ、通報したら海軍さんの軍艦だぞ?自力で何とかするさ。一応こちらもパトロールは増やすが・・・ふぅ、奇襲を受けずに済んだのは幸いだったな、思えば警備を減らす為の騒ぎだったわけか、どこの馬鹿だ?こんなのやらかしたのは』
港でドンパチするなら被害は少ないし、それに軍艦なら、確かに勝てるかも・・・うん、そうよね。
『浦出警部!!』
『どうした!』
落葉とか言った人だ、慌てふためいてこっちに走って来た
『犯人の主演女優のマーニャですが、今日の公演のあと、お忍びで海軍の慰問コンサートを行うことになっていたそうです!!』
『やはりか!!』
推理じたいは的中ね・・・あ!
『待って!ということは海防艦の所に彼女が現れてもフリーパスで入れちゃうって事!?』
うまい!でも、あの化け物が一人で計画してやってるの・・・?もしかしてホントに複数犯?
『無線!!海軍さんに繋げてくれ!!!』
車の窓からパトカーの無線を取って警部ががなりたてる
『少しお待ちください』
交換所の人が繋げる間がもどかしい
『繋がりました』

655 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/30(水) 17:28:20 [ ibELFYCQ ]
『はい、こちら海軍第211根拠地隊』
やっと無線に根拠地隊の桟橋詰め所(湾港部が管理するが常駐するのは根拠地隊の人間)が出る
『そちらに、オペラ歌手が行っておりませんか!!!?』
『歌手の方なら、お一人で今そこに』
『今すぐ拘束してください!!!そいつは』

キィー!!!ザザザザザザザザザザザ!!!

黒板を爪でひっかくような高い音のあと雑音が入って切れてしまった
『ど、どうなされた!?もしもし!もしもーし!!』
『交換所です』
別の声が間に入る
『おい!何をしている!繋げろ!!』
『向こうが切れました・・・今のはおそらく、私の経験からいうならば、火事に依る高熱で回線が焼ききれた音です』
『なんだと!!くそったれめ!!』
『警部!車を!!』
私は叫んだ、一刻も早く現場に向かわなければ
『おう!こうなったら直接乗り込むしかねぇか!落葉ぁ!あとは任せたぞ!』
『はっ!!』
『急ぎましょう!』
『まかせろ、港までぶっとばすぞ!』
私は車に乗っている間、予感していた。内懐にあれが入られては、どんな精兵も抵抗もあったもんじゃない、まして女一人、コンサートの予定なんか入っていたら・・・あれに対して一体何ができるというのよ!

656 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/30(水) 17:32:43 [ CDVnjlgM ]
投下終了〜
敗北の予感・・・次はバトルだ!


>>Girさん投下乙です
あらゆる世界のどこにでもいて、どこにもいないんですね、彼等は


>>くろべえさん投下乙です

シロは黒部さんに頭あがらないのですね?

657 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/30(水) 22:52:27 [ ToMVwDhk ]
長崎県人氏、お疲れンコン


ホラーじみてますな(w



さて、23時30分より投下開始。第二部完まで断続的に投下します。

658 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/30(水) 23:57:01 [ ToMVwDhk ]
これより、我が軍は爆撃せんとす。
誘爆に注意せよ。



帝国異史  第二部


19
 脇永大尉率いる第三憲兵本部に、紅河の河口から陸地に入った場所にある町に置いて
ある第二憲兵分遣隊から、その報が入ったのは、年末の迫った11月の事だった。

 第三憲兵本部は北部フランベリアを担任しており、中でも紅河の川辺にある町に置かれた
第二憲兵分遣隊は、紅河で別れたフランベリアの北と南を結ぶ河川交通の治安維持の
要である。
 ちなみに、紅河はフランベリアを含む東部地域を流れる国際河川で、フランベリアに
入った中ほどで赤土の影響により、河が赤く見える事から紅河と呼ばれる。


 所で、脇永大尉が受けた報告。
それは、皇太子が生きており、フランベリアから帝国を駆逐するべく兵を起こした。
と言うものだった。

 実は連合帝国軍が壊滅した際、皇太子の生死を帝国は確認できなかったのだ。
第60軍首脳は、皇太子を捕まえてどうこうしようなどとは考えていなかった。
まあ、生きていたなら、僧院に入れる程度で済ました筈だった。
挙兵しない限り、という但し書きが付くが。

 まあ、当然だ。
帝国は中世の国家ではなく、現代を生きる法治国家なのだから。

659 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/30(水) 23:58:35 [ ToMVwDhk ]
 だから、旧連合帝国軍が敗れた後、降伏した士官や将校については、彼等の身分を
確かめた後、帝国に叛旗を翻さないという条件付きで、彼等の身分や封土を第60軍が
保証する事を、本国の承認の下で行っていた。


 これと対象的なのは、帝国に抵抗した貴族連中だった。
帝国は、容赦なく彼らを討伐したのち、国内法に基づいて裁く事で東部諸国に対して、
帝国が法治国家である事を示した。
さらに、統治を始めた初期に頻発した一揆の類に関しても、帝国の各法に基づき裁定
した事で、フランベリアの統治がわずか2年ほどで安定したのたった。


 そんな事もあり第二憲兵分遣隊は、最初その噂を都市伝説の類だろうと一顧だに
しなかったが、急速に広まる噂に通常の業務の片手間に、調査を始めた。
 この時点ではその噂の真偽と、もし皇太子の名を騙っているならば、その人物を
捕まえて処分すればいいだろう、と分遣隊が判断したのは、常識の範囲内である。

660 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 00:00:31 [ ToMVwDhk ]
 噂の真偽を確かめるべく、まず地区警備隊に聞き取り調査と噂の出所を捜査させた。
地区警備隊の調査の結果、第二憲兵分遣隊の担任区域の北部から噂が広がっているのが
判ると、一班を派遣した。


 状況は思ったより悪かった。
何せ、山沿いの村々を中心に、二本赤と黒の線が斜めに
交差した旧フランベリア帝室の紋章を象った旗が翻っていたのだ。
調査に向かったその班は、二人が戦死し、一人が逃げ切り、その報をもたらした。
事態を重く見た分遣隊は、本部の判断を受ける必要に迫られたのだった。


20
 脇永第三憲兵本部長は、直ちに首謀者に出頭命令を出したが、逆に彼らに捕らえら
れた憲兵の首が晒されたのだ。


「地区警備隊は、直ちに北部で起きているこの騒擾を鎮圧せよ。
人心を惑わす輩を捕らえよ!」
 脇永大尉の命に、地区警備隊は鎮圧部隊を編成し、北部山系に出動したのだった。


「くそっ!右からだ!」
 そう叫んだ警備兵を矢が貫き、死に致らした。
神出鬼没の賊軍に鎮圧部隊は、混乱の極みにあった。
日夜を問わない襲撃に、心身ともに疲れ果て、幽鬼のごとき姿で敗退した。

661 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 00:04:31 [ ToMVwDhk ]
元々が町や村々の治安維持にあたってきた警備兵らにとって、賊軍との戦いは勝手の
違う相手だった。


 この敗北に地区警備隊は人員の三割を失い、通常業務に支障が生じた。
事ここに至り、脇永大尉は憲兵司令部に判断を仰がざるを得なくなる。


 憲兵司令部はフランベリア派遣軍司令官、本間雅晴大将にこの事を報告した。
この結果、本間派遣軍司令官は早期の鎮圧が必要と判断、独立混成第六六旅団に
出動を下令する。


 未だ王国軍西フランベリア駐留軍とは停戦状態にあるだけで、講和していない。
それに隣国たる東部諸国との関係もあったからだった。
為に、早期の鎮圧を命じたのだ。


 賊軍の鎮圧に際し、旅団長は一歩一歩制圧していく方針で臨んだ。


「本拠はどこだ?」
「帝国に仲間を売ったりしないわ!このフランベリアから去れ、帝国人よ!」
「法に基づき裁くだけだと言うのがなぜ判らん!?」
「誰が貴様らの法を信ずるか?!どうせ、我らを鏖ろしにするだけであろう!?」
 捕虜との会話は全てがこの有様で、尋問はことごとく失敗する。

662 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 00:06:27 [ ToMVwDhk ]
 始め独混六六旅団による鎮圧は、上手くいくように見えたが、賊軍による度重なる
兵站線への襲撃に、独混はその足を止められてしまったのだ。
独混は輸送部隊に護衛を付けたが、今度は戦線を展開する部隊の負担増大として跳ね返った。


 悲鳴のような増援要請にフランベリア派遣軍は、事態の打開を図るべく、独立
第一竜騎兵団の派遣を決めたのだった。


 派遣軍首脳は、竜騎兵団がどの程度使えるか調べようとしたのである。


21
「それで、本拠を見つけ速やかに叩け、と。
それで兵団長、北部山系ですがどのような場所でしょう」
「あら、地図なかった?
いいけど、私だって訓練で二、三度低空を飛んだだけだし、それほど詳しくはないから・・・、
そう南の西側は、峻険な連なりが続いてて、東側は峻険なままの所となだらかな場所が
入り組んでる感じね」

663 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 00:08:51 [ ToMVwDhk ]
 中肉中背で丸顔の温井参謀は眼鏡をかけ直し、アストゥス少佐の言葉を反芻しながら、
絵地図に毛が生えた程度−−軍の測量部とて、未だ全土を測量出来たわけではない−−の
代物に、僅かだが彼女の付け加えた。


 両参謀にとって、こんな代物の地図に頼って作戦計画を立てなければならないほど、情けないものはなかった。
だが、レドナから見たらこれほど詳しい物はないらしい。
  三者は互いの認識に大きな隔たりがある事に気付いた。
と言うより、今まで気付かない事の方がおかしいのだが。


 さて、兵団が使える竜騎兵は七個小隊14騎、これにレドナの竜が加わるので、15騎。
これを兵団は3中隊に編成し、交互に運用している。
もう数カ月すれば、新たに竜乗りが加わるが、それはまだ先なので致し方ない。


 つまり、1中隊は二個小隊4騎と指揮官騎の5騎からなる。

 航空参謀の編制案では、1中隊三個小隊6騎+指揮官騎の七騎、これを三個中隊+指揮小隊2騎の
23騎からなる竜騎兵戦隊を編制する計画だ。


 確保の難しい竜乗りの事だから、2個戦隊規模を維持できるとは、確約できないが。

664 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 00:10:47 [ ToMVwDhk ]
「殿下が生きてるなんて噂、それも今頃・・・」
「まさか少佐殿も彼らに与するなどと言わないでくださいよ?」
「それこそまさかよ」
 長江兵站参謀の言に、レドナは心外そうに眼を細める。


「帝国は、ローゼスラウム家の存続を認めた上に、負けた人たちを寛大に扱ったじゃない。
帝家も滅んでないのに、なぜ賊軍に与する必要があるのよ」
 それに、と少佐は続ける。
普通なら、反乱を恐れて主な国の人間を全員処刑するのに、帝国は法でもって裁いたし、
それも死刑になった人なんていない。
これで反乱を起こすのが不思議よ。


 捜索隊の指揮官ラウタ・クローデン卿も、彼女の言葉に同意したのだ。
彼の封土は連合帝国滅亡後、日本陸軍に正規に降伏していた為、帝国によりその所有を安堵されていた。
 とにかく、竜騎兵団は慌ただしく戦地へと出動する。


22
 先行した捜索大隊の面々には、独混将兵の精神が疲労しているのが明らかだった。
それは現地兵である彼らに、疑いの眼を向けていたからだ。

665 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 00:13:42 [ ToMVwDhk ]
 捜索大隊長陸軍大尉、ラウタ・クローデン卿は危険な兆候だと受け取った。
何せ、強力な武器を持つ彼らが弓や槍ぐらいしかない賊軍に、いいように翻弄されている。
しかも、独混将兵にとってまともな地図すらなく、土地勘すらない。
これで神経が摩耗しないのがおかしいぐらいだ。


 クローデン卿は、旅団司令部に挨拶に出向くや、長駆偵察に赴く事を伝え、出発した。
捜索大隊に立ち塞がったのは、北部山系の連なりと木々が林立し下草の絡み合う森だった。


  なるほど、これでは翻弄されるのも無理はないな。
クローデン卿は空を見上げ、呟いた。
クローデン卿も噂を耳にした程度だが、北部山系の森は昼なお薄暗い、そう聞いていた。
そして足を踏み入れた今、その噂は真実だった。


23
  下草を掻き分けながら進撃する捜索大隊は警戒を怠っていなかったが、僅かな隙をついて、
襲撃された。
右翼を進んでいた第二中隊が最初だった。
慌てるな!身を低くし、敵を狙え!

666 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 00:16:32 [ ToMVwDhk ]
  クローデン卿の命は、突然の襲撃に動じた二中隊を立ち直らせる。
だが今度は左翼の三中隊が狙われ、たちまち混戦状態となった。


 どうやら、敵は大隊の近くに接近してきていたのか、クローデン卿を初めとする大隊幹部も戦いに参入せざるを得なくなった。
相手は面覆いをしているらしく、何物かは判らないが手練れだ。
山刀に似た曲刄の刀を矢継ぎ早に、繰り出してくるのだ。


  クローデン卿は、足場の悪い草を踏み砕きながら、三八式小銃を放り捨て、サーベル
に似た軍刀で受け止める。
打ち合わされる剣戟から飛び散る火花が数度、その度に攻守所を入れ換えつつ、両者
ともに打ち合わせる。
長いようで短い時間、クローデン卿と対峙していた敵が、思わぬ失態をしてしまう。
近くで同じように戦っていた者が倒されたのを見て、動揺したのだ。

667 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 00:18:47 [ ToMVwDhk ]
第一次投下完了

少し手直ししたりするので、1時間後に。

668 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 04:15:37 [ ToMVwDhk ]
誰もいないうちにこそーり投下


帝国異史  第二部



24
 それを見逃すクローデン卿ではない。
鍔先に力をこめてたたき付けたのだ。
刀を落としてタタラを踏んだその足を払って、地面にたたき付け、刀の先を相手の喉元に
やって、全体重で押さえ付けた。


  その頃には、戦闘はあらかた終わりつつあり、敵は撤退していった。

それを横目で見つつ、大隊長はもって来させた縄で両手を縛り上げた。


 縛り上げている時、クローデン卿は何か違和感を持ったが、それが何かは判らなかったが、
面を覆う物を外した時、その違和感が明らかになった。



  その正体は、女性でしかも蒼く暗い肌と人間に比べ先がやや尖った耳、そして端
が釣り上がったアーモンド型の瞳。
ダークエルフだった。


  敵意を持って睨むダークエルフの女性に困惑しつつ、周囲を見回すと、ダークエルフ
と人間がほぼ半分ずつだった。
 捜索大隊の誰もが、なぜダークエルフが人間に手を貸す?と言う思いを抱いた。


25
 この世界に取って、ダークエルフとは、幾つかあるエルフの氏族の中から、闇の精に
任せた者の成れの果てで、産まれてくる子もまたダークエルフだった。

669 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 04:18:17 [ ToMVwDhk ]
 その性向は、およそ自らの欲望に従順にして残忍、と言われていた。
だから、捜索大隊将兵も金で雇われたのではないかと思った。
ダークエルフの事だから、尋問しても口を割らないだろうと思われた。


「我らを皆殺しにきたくせに、金で雇われただと?
はっ、帝国とかいう邪教徒の手先がよくいう!」
  その言葉にクローデン卿は違和感を抱いた。何がどうと言うものではないのだが。
「私が知る帝国の人間は、邪教徒ではないのだがね。
なぜそう思うのかね」
  がっしりした体を思わず困惑させて竦めた陸軍大尉に、ダークエルフの女性は、
猜疑感に包まれた光を瞳に宿す。
「私たちを、後からやって来た人間どもと一緒にするな!
この山々は我らの故郷なのだ、この山々から追い出すつもりなのだろうが!?」


  彼女の言葉はクローデン卿の違和感を決定的にさせた。
そして、話を突き合わせると次のような事がわかった。


  まず彼女らはダークエルフの主流と袂を別けた氏族という事。
しかしながら、闇の精霊の力に従ってはいるが、残忍でもなければ欲望に従う訳でもない事。

670 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 04:20:02 [ ToMVwDhk ]
むしろ、主立ったダークエルフとはその考え方の相違から対立しているらしい。


  第二に彼女らと手を組んだと言うより、唆したのがあの戦いで生きていた皇太子の一派と言う事。
さらに彼らの再興を促したのが、西から時たま資金を持ってやってくる人間である事。
彼女らダークエルフや人間の捕虜の話から、王国人の特徴が浮かんで来た。


 クローデン卿はこれがただの反乱騒ぎでないのを確認し、レドナ・アストゥス少佐に
報告の為、伝令を送るとともに、彼女らダークエルフとの誤解を解く事に専念した。
ここで彼女らと賊軍の関係人間楔を打ち込めば、討伐が楽になるのだから。


  クローデン卿は彼女らに話を持ち掛けた。
私の一存では確約はできないが、と前置きした。
「彼らと手を切るなら、君らを処分しないよう進言しよう。
それに皇太子殿下も、あの戦いの後で帝国に降っていれば、その身分に相応しい待遇が
あっただろうが、安寧に向かいつつある中で兵を起こしたのだ。
もはや帝国は、彼の助命など考慮しないだろう。
我々に協力するなら、我々と敵対した経緯を考慮して、君らが望む恩賞が下されるかもしれん」

671 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 04:23:57 [ ToMVwDhk ]
「だが、それはあんたの思いつきだろうよ。
感謝すると見せかけ、我らを欺くつもりだろう?」
  彼女は既に縄を解かれた腕を組み、クローデン卿をねめつけた。
ある程度、意思の疎通が進むにつれ、全員とは行かないまでもダークエルフに限って
いうならば、縄を解いていた。


「そう思うのは勝手だがな、少なくとも協力すれば、帝国は君達の存在を認めるだろうよ」
  その言葉に彼女はしばし黙考すると、組んだ腕を解き、目ノ前の白湯を一口すすると
立ち上がって言い放った。
「どちらにせよ、私の一存でどうこうはできん。
主立った者で話し合わせてもらおう」
「長くは待てんぞ?」
「解っている。二、三日には戻る。それまで待ってもらおうか」
  軽く頷いた陸軍大尉を一瞥するや、彼女は足音を立てずその場をさった。

672 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 04:27:37 [ ToMVwDhk ]
「よろしいので?我々の戦力を伝えるかも知れません」
「それは大丈夫だ。
伝えるつもりなら、この場にいた我々を、縄を解いた瞬間に殺しているからな。
それに彼女はどうやら人望があるらしい。
見たか?
縄を解かれてもダークエルフの連中、逃げ出したり反撃したり自害したりする者は一人もいなかっただろう?」
  副官は、そう言えばと頷く。
クローデン卿は、副官の様子を見ながら、白湯を一口飲んだ。


「これは私の感だがな。
あのダークエルフの一族、−−いや一属というのかもしれんが、我々に協力してくれる気がする。
賭けてもいいぞ?」
  ニヤリと笑うクローデン卿に、副官は呆れるのだった。


26
  果たして、捜索大隊長の賭けは、副官から百連銭を巻き上げる事にした。


「ドゥーリエット・ナクロムという。見知り置き願う。
この者らを率いる身でもある」


  クローデン卿らと接触した彼女は、改めてそう名乗った。
「彼らの長殿かな?」
「私は氏族を率いる長なとではない。
氏族を守護する者にすぎんよ」

673 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 04:28:42 [ ToMVwDhk ]
  大隊長と副官が互いの顔を見遣るのを見て、ドゥーリエットの傍らに立つ男が、
まるで自分の事を言うかのように
二人に言った。
「ドゥーリエット様は、我々守護戦士を率いる3人のうち、蒼の陣光と称される方だ。
我らの村を脅かす輩を未だ生かして返された事はない」


  ナクロムは苦笑いするかのように、勝手にそう呼ばれているだけだと言ったのだった。

674 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 04:30:33 [ ToMVwDhk ]
投下完了


また後ほど投下〜〜

675 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/31(木) 04:31:35 [ xAlSflIo ]
>>674

リアタイで待つあほうがきますた

676 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/31(木) 04:34:29 [ h4aEybGQ ]
>>674
(・∀・)ノあほう二号

投下乙です

677 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/31(木) 04:37:12 [ 6KnBHENQ ]
三号参上!
乙です

678 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 05:24:43 [ ToMVwDhk ]
うわ!
リアタイて待つ愛すべき阿呆どもがいやがるぜ!


てゃんでぇ
投下だ、ばかやろー!

679 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 05:26:23 [ ToMVwDhk ]
27
  早速ナクロムらと情報を突き合わせ、方針を定めた。
その計画とはこうだ。


ナクロムらが本拠を包囲した後、竜騎兵が上空から突撃。
その混乱に合わせ、捜索大隊が突入し、できるだけ皇太子を生きたまま確保すると
ともに王国の関与を示す証拠を発見する事。
  逃げ出した者については、包囲するダークエルフが全て捕捉殲滅する事とした。


  この案をレドナらも承認した事で、作戦が開始したのだった。


28
  高空より竜騎兵を賊軍の本拠上空に進出するや、一気に降下し火焔を吐き出すと、
再び空を駆け上がる。
竜騎兵が急に攻撃した事で、地上は混乱に包まれた。
 その様を見て取った捜索大隊は、腰溜めに三八式小銃を抱えて突撃した。

680 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 05:27:38 [ ToMVwDhk ]
「皇太子殿下の身柄を探すんだ!」


  その命に捜索大隊将兵は突撃していく。
もはや、賊軍は壊乱状態である事は、誰の目にも明らかであり、命惜しさに逃げ出す者も
少なくないが、そういった者はダークエルフの手にかかるだけだろう。


 いたぞ!
その叫びが唐突にあがると、洞窟の中にクローデン卿は入っていき、疲れ果てたような
男と対面した。
男の顔にクローデン卿は見覚えがある。
つい数年前まで、やんごとなき身分におられ、斜陽の連合帝国
を支え苦闘していた男。


「お探ししておりました、皇太子殿下。
潔く、降伏願います」
  恭しく一礼するクローデン卿に皇太子は皮肉った。
「帝国の犬となって嬉しいか?」
「嬉しいとかそうでないとか、そんな時代ではもうないのです。
あの時、帝国に降っていればそれなりの待遇で扱われたでしょうに」
「我らの知らぬアヤカシの技を使う輩が、この地をのさばっているのが悪いのだ!
貴公もなぜ判らん!」
「では、我々は王国に蹂躙されれば良かったとでも?
それこそ、悪夢です」

681 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 05:29:33 [ ToMVwDhk ]
  そう言うと、部下に丁重に扱うよう言い渡すと、独混に身柄を引き渡した。
帝国の事だ。
法で裁いた後、名誉ある死を与えて下さるだろう。
これほどの反乱をしたのだ。
名誉ある死が下されるだけでも寛大だ。


  クローデン卿は、何か一つの時代が終わったかのような、空虚な思いに囚われた。
これからは名実ともに、帝国が主としてフランベリアに、君臨していくだろう。

  しばらくして王国の関与を示す書面が見つかった。
はっきりと王国だと言う書類ではないが、残っているあらゆる物質が、王国の関与を物語っていた。


誰の目にも、平和の春は終わり戦争という名の夏が近づきつつあった。


29
  フランベリア派遣軍と総督府は事後処理の為、代表者らが協議すべく、顔をだした。
きんきんに冷えた麦茶を半分飲み干したフランベリア総督石橋湛山が、書面をもう一度ねめつける。
「元皇太子を軍法会議で裁くのはどうかと思うけど、そこの所はどうなのよ?」

682 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 05:31:04 [ ToMVwDhk ]
「お言葉ですが石橋閣下。まさか元皇太子を釈放したりなどなさりますまい?」
「だから、僕が言うのはだね。
えーと岩畔参謀長、軍法会議は非公開な訳だろう?
それはまずいんじゃないかと言いたいんだ」
「おっしゃりたい事は判りました。
あくまで司法による裁判をと言う事ですね」


 そうそうと頷く石橋に、岩畔豪雄小将は懸念を表明した。
「それでは時間が掛かりすぎます。
あくまで迅速に処理する必要があります」

683 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 05:38:14 [ ToMVwDhk ]
「だが、急いては事を仕損ずる、ともいうだろう。
それに、事はただ処刑すればいいと言う訳ではないんだよ。
元皇太子の係累の目もある。
例え死刑にするとしてもだ。やはり弁護人をつけた上で、裁判をやるべきだろう?」
「なるほど。所謂政治的判断と言う奴ですか」
「そういう事。それに実妹の東フランベリア大公国の大公殿下にも納得して貰わないといけないだろう?」

  岩畔豪雄小将は、自分もまた麦茶に手を出す。
「全く見る人が見れば、茶番ですな。
・・・所で北部山系のダークエルフについては、どうしますか?」
「ダークエルフか。まあ、我が方に協力してくれた経緯も聞いているし、・・・その竜騎
兵団の人間、言ったんだろう?
恩賞があるかもしれないと」
「そのようですな。軍としては、彼らの能力に驚嘆しておりましてね。
特殊な事に使えないか、考えている所です」
  石橋湛山は、本間将軍の言に、ひとしきり頷いた。


「あそこら辺、彼らしかいないのだろう?
それに確か豪族の領地でもなかったはず。
なら、謝礼として彼らの自治領とする代わりに、我々に協力してもらうのもいいだろうね」

684 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 05:43:05 [ ToMVwDhk ]
「後は王国だけど、いつ事を起こしそうなんだ」
  堀中佐がこれに答えた。
「早ければ、今年の冬に。遅くとも来年の春に。
王国は、どうやら王権が強大らしく常備軍が中心のようです」
  一口麦茶を口に含み、皆の視線を集めつつ、書類に目を落としながら堀中佐は続けた。
「まず、王国軍は外征を繰り返している軍隊のようでして、以外にも中世の水準でありながら、
分厚い兵站能力。
国内において整備された街道、それを使う事による迅速な補充能力。
そして、竜騎兵という存在や精霊魔法によって、既にこの世界では塹壕や陣地戦が
行われている事です。
未だ火繩銃の類がないにもかかわらず」
「それで、王国軍に対し、陸軍は負けないのですか?」


  宮澤喜一総督府財務局長の問いに、岩畔参謀長が答えた。
「負ける事はありませんな。それは誓ってもいい。
ただし、苦戦は強いられるでしょうし、奥深くまで攻め込まれるかも知れません。
それでも負ける事はない。
しかし、王国領内に攻め込み降伏させられるかと言うと、不可能ではないが、困難で
あると言えます」

685 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 05:44:45 [ ToMVwDhk ]
 宮澤財務局長の疑問を意味する沈黙の問いに、今度は本間将軍が答えた。
「財務局長。要は兵站に難を抱えているのだ。
いや、兵站といよりは本国の生産力や船腹量だな」
  それでようやく宮澤財務局長は納得した。
戦いは厳しいだろうと言う言葉を、それで理解する。


「海軍は船団護衛に万全を期す覚悟であります」
  フランベリア方面艦隊司令官、田中頼三中将の傍らで発言したのは、海上護衛総
司令部から出向してきた大井篤
小将が発言した。
「連合艦隊に無駄な燃料など使わせません」

686 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 05:54:46 [ ToMVwDhk ]
  田中艦隊司令が思わず苦笑いする。
それはそうだろう。
大井小将と言えば、本邦における海上護衛の権威で、大和の沖縄特攻に激怒した人物だ。
しかも、官僚体質の軍令部とも何度もやり合っている。
  そんな大井小将の味方は、海上護衛に理解力のある海軍省と、海軍に不信感を抱き
続けた陸軍、そして統合幕僚部だ。
だから、大井小将が燃料をやらないと言えば、実際にそうなってしまう。
今もまだ、沖縄特攻を始めとする怨みは深いのだった。


  否、海上護衛総司令部の、連合艦隊と軍令部に対する怨念でもあり、それは一度は
決まりかけた海軍戦備整備計画を政治的問題へと発展させ、ご破算に追い込み、
戦艦の新規建造を無期限中止に
追いやった事でも窺い知れた。
「戦艦一隻よりも10隻の護衛艦艇を!100隻の支援艦船を!」と言う怒号の前に、
連合艦隊司令部は破れたのだった。


 そして大井小将が万全を期すと言えば、まず実行に移されるだろう。

687 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 05:56:41 [ ToMVwDhk ]
31
 なんで私がノゼムダリン伯にならねばならん!?
憤然として言い放ったその女性に、皆が顔を見合わせた。


「だってなぁ?あいつらと最初にあって行動をともにしただろうが」
「それにこの山々を我らの自治領として、やるってんだ。
有り難く受け取るのが筋と言うもんだろう?」
「これを言うのもなんだけどな、お前さんほど下から慕われているのはいないんだ。
だから、お前さんが伯爵になるのがいいんだよ」
「それに帝国人の奴ら、俺たちを見ても怖がらんではないか。
まるで異国人を見るぐらいの感じでしかなかったな。
彼らに力を貸すように最初に言い出したのは、お前だ。
責任は最後までとらんとな?」


途端に苦虫をかみつぶしたようになった彼女は、痛恨事の要に呟いた。
「・・・あの時はあれが一番いいと思ったんだ」


  彼らの長はその呟きに頷くと、炉端に薪を投げ込んだ。

688 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 05:58:36 [ ToMVwDhk ]
「その判断は我らに取って、大きな転機をもたらしてくれた。
これからも、他の同胞の性向ゆえに、陰口を叩かれるだろう。
後ろ指を刺されるだろう。
だがそれでも、日の下を歩ける機会なのだ。
これ以上の機会はこれから先もないだろう。
なら、これは受けるべきなのだ。帝国に、一つ尽くしてみてもよいではないか。
それだけの価値はある。
ならば爵位は、この機会をもたらしたドゥーリエット・ナクロムが受けるのが相応しい」


  その長の言葉に皆思い思いの格好をしているが、賛同しているのだけは間違いないらしい。
思わずため息をついたドゥーリエットは、諦めたようにいった。


「どうなっても、私は知らないからな!」


  ドゥーリエットは、好き放題な事を抜かしまくる同胞を視界の隅に見つつ、大きく
嘆息するのみだった。

689 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 06:02:57 [ ToMVwDhk ]
32

  第一回、第二回公判ともに無事に過ぎ、第三回公判による結審と判決が言い渡される日がきた。
1951年12月始めの事である。

  そしていよいよ判決文が言い渡されようとした正午、国境から至急電が派遣軍司令部に飛び込んだ。


我、敵ノ攻撃ヲ受ク。
コレヨリ、全力デ以テ迎エ撃チ、盾トナラン。
皇紀2611年12月七日
11:54
独立混成第百九旅団
旅団長  陸軍小将 田邉敏信


王国との戦いが再び始まった瞬間だった。




帝国異史  第二部完

690 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 06:07:12 [ ToMVwDhk ]
足早ですたが、第二部終了でつ


第三部に入る前に語られなかったエピソードを、外伝でやりまつ。

住民の要望があれば、おながいしまつ(  ̄ー ̄)

691 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 06:23:28 [ ToMVwDhk ]
えーと、>>689の先頭を修正。
「『皇太子に対する』第一回、第二回公判」


誰に対する裁判なのか判らなくなるorz

692 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/31(木) 08:25:51 [ yq9lkYzY ]
長崎県人様、投稿乙です。
まさか海防艦が燃やされた? なんという熱量……

大本営発表様、大量投稿乙です。
うむ、これこそ正統なるダークエルフ。『汝の為したいことを為すが良い』を地で行ってる。


さて、SS投下。8月最後を記念してジャンクです。
寝てて変な電波を受信しました。数多の異なる運命、そのひとつです。

693 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/31(木) 08:26:24 [ yq9lkYzY ]
「帝國召喚」ジャンク10


……こんな夢を見た。


とある大学の講義室、ここで私は講義を行っていた。

「さて、帝國史もいよいよ最終章を迎え様としている。 ……が、諸君等に改めて言おう。
諸君等が今まで学んできた事は、帝國史のほんのさわりに過ぎない。帝國史というものは、それだけ奥が深いものなのだ。
帝國登場からの千年以上の間は、帝國史こそが世界史であったし、この後の世界史も帝國史や帝國の諸制度を理解しないことには理解できない。
現在の我々とて、未だ帝國の呪縛に縛られている。言語、度量衡はその最たるものだが、他にも例は幾らでもある」

そこで私は学生の一人を指名し、尋ねる。

「他には、どんなものがあるかな?」

「はい、年号です」

「その通り! 現在はパルマ暦121年だが、これは我がパルマ国内でしか通用しない年号だ。隣のロマーニャなら、現在はロマーニャ暦133年だな。
世界中の国々が、皆異なる年号を好き勝手に使っている。 ……故に、どこの国でもこう教えるのだ。○○暦元年は皇紀何年だから、○○暦○○年は皇紀○○年だ、と!
帝國の年号たる『皇紀』を、我等は後生大事に世界標準年号として使っているのだよ! そして公式な外交文章に至っては『皇紀』しか使われない!」

私は熱弁を続ける。

694 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/31(木) 08:26:54 [ yq9lkYzY ]
「それに留まらない! 恐れ多くも我がパルマ王家は『帝國譜代伯爵』、ロマーニャ王家は『帝國外様侯爵』の称号を抱いている!
千年も昔に消えた帝國の称号を誇っているのだ! 『我が国の王は、帝國以来の名門』と!」

些か熱くなり過ぎた私は、教壇の上の水差しからコップに水を注ぎ、喉を湿らした。

うん、旨い。

「……それだけ、帝國の影響力とは大きなものなのだ。何しろ、『未だ帝國の世は続いている』という連中もいる位だからな」

確かに杓子定規に考えれば、そう言えられないことも無い。 ……かなりの強弁ではあるが。


私はこの大学の助教授だ。世界史……それも帝國史を専攻している。

帝國史といえば史学、考古学の花形。故に研究者のプライドも高い。

『歴史とは帝國史のことである!』

そう臆面も無く述べる史家すら存在する程である。

私はそれ程極端ではなかったが、それでも『帝國史こそが第一史学』であると誇っていた。


「言うまでもなく、帝國は史上初の世界統一国家である。そしてこの偉業を達成した国は、現在に至るまで他には存在しない。
帝國は千年という長きに渡って世界を支配し、繁栄した。伝承によれば、今よりも遥かに進んだ文明だったようだ」

695 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/31(木) 08:27:24 [ yq9lkYzY ]
この点に関しては、考古学的にも証明されている。

現在の世界の文明レベルは、帝國出現時に達するかどうかすら怪しいそうだ。

ならば、末期にはどれ程の文明だったのか! ……現在では知る由も無い。

「が、この世に永遠などというものは存在しない。死なない人間が存在しない様に、滅びぬ国家もまた存在しないのだ」

帝國も例外ではなく、今から千年以上も前に滅び去った。多くの『遺産』を残して。


帝國が衰退した原因、それは外敵の侵入でも、国内の腐敗でも無かった。

『皇統の断絶』だ。

帝國開闢以来、四千年近くに渡り維持してきた万世一系、それが途絶えたのだ。

……この様な理由で滅びた国家は、他に例がない。

『流石は帝國』と評すべきであろうか?

「この原因は幾つも挙げられるが、やはり一番の原因は『側室制度の廃止』だろう。第171代帝が決めたことだが、この後数代で幾つもの宮家が自然消滅している」

以後、皇位継承者の数は坂道を転げ落ちるかの様に減少していく。

その頃になると、流石に帝國自身も拙いと感じたのか、盛んに皇家の改革が唱えられる様になる。

まあ所詮は掛け声だけで終わりであったが。

696 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/31(木) 08:28:15 [ yq9lkYzY ]

「……そして第180代帝、帝國最後の皇が即位する。皇紀3689年のことだ」

第180代帝は最後に残った皇位継承者であり、女性だった。

結局今までの努力は徒労に終わったのである。

しかしまだチャンスは残されていた。が……

「帝國は皇統維持のために様々な議論をおこなった。無論、今までもだ。
が、結局何一つ実行に移せなかった。帝國にとって、皇とは不可侵の存在だったからだ」

様々な意見の狭間で、身動きがとれなくなっていたのである。

問題が問題なので、突出した意見を言えば失脚どころの騒ぎでは無かったのであろう。

「とうとう何の結論も出ないまま、皇紀3720年に最後の皇が息をひきとる。帝國、事実上の終焉だ」

私はそこで再び喉を湿らした。


「ここまでは前回のおさらいだ。質問は?」

何人かの学生が手を揚げた。

「では、君」

「帝國は、何故無為に時間を費やしたのでしょう? 皇位継承者が早晩いなくなるであろうということは、それこそ滅びる百年以上も前からわかっていたことなのに」

697 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/31(木) 08:28:45 [ yq9lkYzY ]
その学生は、その出現時をはじめ、危機が起きる度にそれをバネとして強大化していった帝國が、何故こんなにも簡単な問題を対処出来なかったのかが分からない、と言う。

「ふむ、君の疑問は最もだ。 ……が、この問題は帝國にとって『開闢以来最も解決困難な問題』だったのだよ」

帝國は、皇を異常なほど神聖不可侵化することにより、その団結を保ってきた。

如何なる困難も、皇を掲げてに解決してきたのだ。

「その皇を使えないのだよ?」

加えて神聖不可侵化し過ぎたせいもあり、下手に制度を変えられなくなっていた。

「でも、『背に腹は変えられない』でしょう?」

「……それも帝國時代の言葉だな」

私はニヤリと笑う。

「が、無理だな。逆に言えば、『変えられないからこそこれまで帝國は続いた』とも言える」

ここら辺は実に微妙な問題で、現在でも様々な説がある。

「まあ兎に角、帝國から皇が消え、帝國は無主の状態となった。 ……終わりの始まりだ」

そしてここからが今日の本題。


「当時の帝國は、軍事的にも経済的にも安定していたが、政治的には大きな問題を抱えていた。
中期以降から徐々に顕在化してきた『帝國本国の没落』と『属州・邦國問題』だ」

698 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/08/31(木) 08:29:34 [ yq9lkYzY ]
SS投下終了。
一発ネタのジャンクなのでこれで終わりです。

699 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/31(木) 10:55:41 [ XpD6KBxY ]
投下乙です。

それにしても帝國崩壊から1000年たってもなお、世界の技術水準が出現時並み…
こりゃあ本国や直轄領に残ってる末期の遺産とかは高く取引されそうですね。

帝國崩壊から1000年、彼らは今なお生きてる帝國施設の警備システム
(魔法併用式)をかいくぐり、貴重な帝國の遺産を求める者達がいる。
危険も顧みず、一攫千金を夢見て帝國の遺跡を荒らす彼らを、人々は侮蔑と尊敬を込めてこう呼んだ。
遺跡荒らし、トレジャーハンターと…

とかそんな商売が成り立ちそうだw

700 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 12:26:01 [ ToMVwDhk ]
くろべえ氏、投下おつです。


皇室問題で滅びる帝国・・・。
将に内憂外患ですな。



帝国異史世界のダークエルフの主流は、混沌の代名詞ですからねぇ。
自らの欲望に従順ですし。


帝国から伯爵位を得たこの氏族−−同志とでも呼ぶべき代物−−は、そんなダークエルフの
ありように異議を唱えて離反した経緯があります。
そんな彼らを主流なダークエルフは、混沌に相応しく刺客を差し向けるでもなく放置プレイ(w

701 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/31(木) 16:12:18 [ N2tdnuNg ]
ところでここにいる作者さまは共産主義について書かれる予定の方は
いらっしゃられないのですか?
エルフや列強がどれほど強いのかは知りませんが赤の嵐より最悪な存在を
私は知りません。
今のアメリカのように帝國最強の敵は赤であると愚考します。

702 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 18:50:08 [ ToMVwDhk ]
>>701
共産主義が敵の話が読みたいなら、市販小説でいいんでない?


大体中世レベルで共産主義は有り得ないもんな。
よくて、帝政ロシアの農奴階級かと思う。


むしろ、そんな世界を>>701氏が構築して、旧軍なり自衛隊を活躍させるのだ(w

703 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/31(木) 19:19:26 [ Yi613abE ]
確かに中世レベルではありえませんね。

共産主義は資本主義があって生まれたものですから。

704 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/31(木) 19:44:56 [ Xq7PfW/w ]
外伝今日の分投下です〜

705 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/31(木) 19:47:08 [ gPuSt/kQ ]
駅馬車や、露天商の荷車等を浦出の運転で乱暴に避けて海防艦がつけてある桟橋へとパトカーで急ぐ
『魚ぁ貴様何か隠し事してねぇか?』
運転で正面を睨んだまま浦出が問う
『射殺しろだの人の通れない場所を考慮に入れろだの・・・何か知ってんじゃねぇのか?』
『・・・』
もしかしたらあれと相対するかもしれない・・・自信無いけど説明しなきゃかな
『相手は人間でも獣人でも、ダークエルフでも・・・そしてレーヴァテイルでもないわ』
『・・・なんだそりゃ?新手の珍動物の一種か?擬態をつかう、いや、それでも共演者らが気付かないはずが無い、そんな完璧な擬態なんてできるはずがねぇ』
『ううん・・・擬態とか、そういうのであれば、それほど私も心配しないのだけど』
自分の拳銃をだしてみせる
『これを一弾倉全部食らわせたけど・・・あれは平気な顔をしてたわ、そして、熔けて下水に流れていった、次の公演は終わっていないって言って』
キキィー!!!と浦出がブレーキを踏む
『おい!なんだそれは!犯人(ホシ)が熔けるだってぇ!?』
『全部、全部よ、叩き込んだわ、確実に・・・』
浦出がティータの拳銃を取って銃口を鼻に近づける・・・確かに発砲した肖煙の香りがした

706 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/31(木) 19:49:03 [ 50Ied/7E ]
『火炎放射器でも使った特殊部隊あたりかと思ってたが・・・』
『信じられないのもわかるけど!!本当なの!信じて!』
私だって否定したいし、逃げ出して他の人に担当してもらいたいぐらいなのに
『拳銃をしこたまくらって人を燃やす化け物、な・・・想像つかんし、この目で見るまでは信じた訳でもねぇが』
アクセルを一気に踏み込み、パトカーを先程と同じく乱暴に飛ばす
『俺のシマで暴れた分はきっちりお縄にしてかえさなきゃならねぇ!!違うか?』
『ど、どんなやつなのか、全然わからないのよ!?』
ものすごく不安な私ににやりと浦出警部が不敵に笑う
『だったらなおさら、海防艦の海軍さんにゃあ活躍してもらわなきゃなんねぇ!そのための俺達だ!つかまってろ!少し浮くぞ!』
坂を全速力で駆け上ったパトカーがジャンプした、痛っ!頭打った
でも、この人のこういう言動ややり方だからこそ、警官達の精神的支柱になれるのかしらね
『そう、そうよね・・・確かに。ごめんなさい、あたしらしくなかったわね』
『しゃあねぇさ、100人単位での人死にだけでも普通じゃねぇ、化け物がどうとか、それがなくても動転するのは人間様として当然でぇ!』
『私はレーヴァテイルだっつの』

707 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/31(木) 19:51:11 [ a1KJrS8g ]
多少は気が楽になった
『少し、落ち着きました。ありがとうございます、警部』
『年季がちげぇよ、年季が』
ガハハハハと豪傑笑いをする浦出警部

桟橋に到着した、人がいる気配がしない、あたりを慎重に確認しつつ車から降りる
『発砲音もなにも聞こえない』
劇場で感じた熱さも、遅かった・・・?
『おい!』
浦出警部が呼ぶ、無線に出た桟橋入口の詰め所だ
『ひでぇ事しやがる、劇場のやり口もこれか?』
兵が無線の受話装置を持ったまま炭化している、間違いない、彼女はここに来ていた
『ええ、間違いないわ』
桟橋には簡易ステージが作られてる、艦の舷側、外から見えないように2艦の内側に合わせて横断幕まで、こういう所は海軍はミーハーというかなんというか・・・床には白い布でコーティング・・・
『なによ・・・これ』
桟橋に何枚も落ちていた白いもの
『服だな、水兵の・・・数が多すぎるが』
浦出が回りに注意を払いつつ、ちらりと落ちているものを見て答えた
『コンサートを観て、場が興奮して裸になって踊りだした、か?こういうのはかなりの盛り上がりを見せるんだろ?』
『この数はいくらなんでも異常よ』
まったく、変な露出狂集団みたく海軍をいわないでよ!

708 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/31(木) 19:52:47 [ M7VYRcWY ]
『そは不思議な恋の妙薬』
『誰!?』
私は後で知ったがオペラのセリフをのたまってマーニャと言われてたそれが桟橋の先から現れる、体はまだ変わってない、使いにくいといっていたけど。それに拳銃を向けてもやっぱり全然動じやしない

ぬめぬめぬめめぬめめ

『な、ななななっ!!!』
桟橋の下や海防艦のいたる場所から赤紫色のぐろい液体が流れ出してくる、浦出警部が銃を構えていたのに、びっくりしてあとずさってる、呂律も回ってない、無理もないわ
『乗員達はどこ!?』
『肉の頸を捨て、目の前にみえておろうに』
『なっ・・・!?』
目の前の彼女の元に集まっていく液体が、海防艦の乗員達だっていうの?
『言の葉を繋げたは、我が倦属の力を知るため』
それって・・・あの言葉をわざと伝えたって事?
『つまり・・・おびき出されたってわけね、私達は』
彼女の前の桟橋からこちらに向かって何かが、波をたて、板を弾け飛ばしつつ近づいてくる

ザッパーンっ

カサカサカサカサカサカサ

5メートル近い蟹が、2隻の海防艦の艦首に挟まれた部分の桟橋からよじ登ってくる
『こ、これは・・・でっかい蟹じゃのぅ』
浦出警部なんか、驚きのあまり言葉が平板になってるし

709 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/31(木) 19:57:24 [ 2FpTlyyE ]
『警部!!応戦します!!支援してください!』
まぁ正直、こんなでっかい蟹とか、警部と同じく驚いてたけど、もういいや!何か諦めついた、私はもう何が起きても驚かないぞ!
『お、おおぅ!こんな蟹の化け物みたいな畜生だったら幾らでも弾ブチ込んでかまわん!』

タタン!タタン!!

ダメ、弾が食い込んだりもしているけど、拳銃弾じゃ・・・!むこうでマーニャがじっとこちらを観ている
『魚!!上だ!避けろ!!』
『キュウッ!?』
振り上げられた大きなハサミが私に向けて振り降ろされた、転がって間一髪で避ける、浦出警部、サンキュー、助かったわ!
『俺の94式じゃどうにもならん!弾かれる』
『私のも食い込むだけ!』
甲羅なりなんなり全部硬い、くそぅ、あっちの残った桟橋でなぶり殺しにしてるのを見てて楽しいのかしら!?怒りがふつふつと湧いてくるわ!

ドスン!!!

『わっ!?』
普通の側足もとんがってて危険きわまりない、焼きがににして食べちゃうわよ!・・・焼き蟹?焼き蟹。焼き蟹って殻やわらかくなるわよね、茹でてもそう・・・熱で蟹とかの種類は外殻がやわらかくなるんだ!そうだ、あれがある!!!
『浦出警部!なんでもいいから引き付けて!』

710 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/31(木) 19:58:52 [ ApfSecOw ]
『おいっ!引き付けろったって・・・ええぃ!だったらここならどうだ!!』
浦出警部が頭の上の狙いにくい目玉を狙って撃ってくれてる、よしっ目指すは海防艦のタラップ!CD215、海防艦215号と書かれた階段を蟹の足を擦り抜けて駆け上がる、途中でイブニングドレス引っ掛かかってやぶいちゃった、ごめんキャサリン
『給油管のノズル!』
キャップを外してホースを引きずり出す、まだ機関が生きてる!電力が通じてるなら、動いて!!!

ドルルルルル

動いた!!!
『よぉっし!!!警部!さがって!!』
『お前それは・・・そうか!やっちまえ魚ぁ!!!』
この化け蟹め!!!

ブシャアアアアアアアア!!!

『ちょ!?わっ!』
思ったより勢いよく噴出するので体が振り回された、結果的に全体に重油がかかったのでよしとする、ホースは手を離して放置!勝手に流す!あとは・・・
『ありったけぶっぱなして火花に引火させれば!』
タン!タタン!タタン!
浦出警部と共に手頃な所に打ち込む、ろくに気化してないのでなかなか着火しない、やばっ!こっち気付かれた!蟹がゆっくり向きを変えてこっちへ、そこに浦出の放った銃弾が海防艦の舷側にあたり火花をちらす、引火した!!

711 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/31(木) 20:00:37 [ /9tm..U. ]
炎が化け蟹を包む、体の各所から水分を吹き出して悶えている、だが粘着性の高い重油がそれでこそぎ落とせるもんですか!焼き蟹いっちょあがり!

ショゲェアアアアアアアッ!!!

『ざまーみろ!あり?』
マーニャの方を見るともう居ない、乗員の肉の塊も
『魚!船の方にも火が回ってる!早く脱出しろ!こっちは先に逃げるぞ!!』
ノズルから火が回ってる、乗員が居たならばすぐに消し止められただろうけど、それがない・・・やばっ!!重油が満杯なわけないから、火が入ったら気化した物含めて大爆発じゃない!浦出警部の薄情者〜!!
艦尾方向に走って逃げる、レーヴァテイルは楽に泳げて本当によかった!
ガン!!!

『えぇえ!?』
海に飛び込もうとしたところを、熱で断末魔になり暴れた蟹が艦に体当たりをした衝撃で投げ出される、そのタイミングで火が回ったのか海防艦は艦中央部で大爆発を起こした、蟹がばらばらになったのは言うまでもない
『げほっげほっ!』
少し海水飲んだ・・・体にはとりあえず異常はないみたい
『あー・・・最悪の一日ね』
そしてそれは、まだ終わりじゃない事に気付いて私は凹んだ

712 名前:長崎県人 投稿日:2006/08/31(木) 20:08:20 [ wslbeVyE ]
投下終了です


蟹は5メートルだとちと小さすぎたかな?とすこし後悔orz


くろべえさん投下乙です
政体は変わっても国民や軍事力はいったいどこへ・・・宇宙とかw

713 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/31(木) 20:28:44 [ 003Fn6oo ]
>>701
コミュニスト、というより連中に焚きつけられる下層民が脅威。
民主主義はおろか資本主義さえ通過していない者が余計な知恵をつければ
暴動しかない。治安の悪化がさらに呼び水となる。

714 名前::名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/31(木) 20:55:56 [ TfTc01yE ]
ぶっちゃけ共産主義の理念って

「みんなで貧乏になろうよ」

ですし。
全く働かない人間と凄く働く人間の給料が同じだし、それなら誰も働きたがらないから。
因みに、マルクス・レーニン主義と一般に言われておりますが、マルクスとレーニンは明らかに共産主義に向かう過程が異なってます。
マルクスは「資本主義の最終段階で共産主義が」ですけども、レーニンは「暴力革命による共産主義」ですからね
(うろ覚えスマソ。突っ込み歓迎、意味のない中傷はイラネ)

715 名前:ここまで読んだ ◆zJ6rFHbX8Q 投稿日:2006/08/31(木) 21:15:15 [ XA/lA57k ]
くろべえさん投下お疲れ様です。

歴史というのは後世から振り返ってみれば答えは明らかな事でも
当事者にとっては試行錯誤の迷い道ですから、こういう結末もあるんでしょうね

長崎県人さん、投下お疲れ様です
高周波によるレンジでチンかと思っていましたが、服だけ残すというのは
また違う能力ですね。おまけに奇怪なナマモノまで即製で作り出せるとは
内陸部から変なウイルスでも紛れ込んだのでしょうか?w

>>701さん、私は共産主義よりはこの世界だと宗教のほうが広く庶民受けしそうだと
思います。
一般の人々は階級差があって当たり前という感覚だと思いますから

716 名前:名無し三頭兵@F世界 投稿日:2006/08/31(木) 22:08:25 [ xg0l1Cog ]
赤といえば、尾崎秀実なんかはどうしているでしょうね。(処刑されてるかな)
近衛公のブレーンや革新派官僚にも隠れ共産主義者は多いですし・・
そう云えば、陸軍には共産主義と国体は両立するとか言っている連中もいたようですし、

717 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/08/31(木) 22:15:51 [ 4WUZu7cM ]
投下乙華麗。

日本の共産主義が古今東西、もっとも異質。
何せ真宗大谷派なんて歴史ある宗教組織が今や左翼の巣窟。
安土桃山時代はイスラム原理主義並のガチガチの過激派が今や左翼とは世も末。

718 名前:ここまで読んだ ◆zJ6rFHbX8Q 投稿日:2006/08/31(木) 22:30:46 [ XA/lA57k ]
>>717
確かに、日本の共産主義も異質ですが
近場の国では共産主義を元に王制をひいてるトンデモ国家がありますよw

719 名前:名無し三頭兵@F世界 投稿日:2006/08/31(木) 22:40:30 [ xg0l1Cog ]
>>718
キムチ王朝ですな(笑)

720 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 22:45:05 [ ToMVwDhk ]
ちゅうか、日本の場合は右も左も共産主義ですから(核爆

721 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/08/31(木) 22:48:32 [ ToMVwDhk ]
外伝第一弾は、海軍戦備整備計画でつ。
大井篤提督のブチ切れ具合はどの程度かなっと(w


一両日には公開しまつ

722 名前:名無し三頭兵@F世界 投稿日:2006/08/31(木) 23:58:42 [ xg0l1Cog ]
それにしても隣のあの国の歴史を調べると、
ファンタジーの悪の帝国でもあそこまで極端な身分差別と悪政をやっている国ってないなと思えてしまいます。
ぶっちゃけあの国自体がファンタジーのネタになりそうだ・・

723 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/01(金) 00:15:27 [ 5VRlauS2 ]
救世主が現れるのがファンタジー。
現れないのが現実。しかし、アノ国では前王は勇者にして建国の父!
まさに存在自体がファンタジーw

724 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/01(金) 00:26:24 [ 4vrN/x3M ]
重油ってそんなに簡単に燃えたっけか と思ってしまうのオイラは悪い子

725 名前:陸士長 投稿日:2006/09/01(金) 00:42:26 [ 4A.RY1Ys ]
>>640 くろべえ氏 感想ありがとうございます。
まぁ、一番黒い研究の部分をしている場所ですので。SSを意識させてるのはワザとと言う事で。
途中で再転移出来る見込みが無ければ、何れ科学と魔術の混合技術が本格的に研究されるのでは……と個人的に思ったりしてます。
まぁ、予算が無いけどw

726 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/01(金) 00:53:06 [ ObCzRRzU ]
半島がファンタジー世界に召還されますた

資源の輸入が出来なくなって、あっという間に北と同レベルに落ちぶれる南
その隙に革命的統一を狙うも、宗主国の援助が無いので何も出来ない北
破滅的な混乱を撒き散らす半島がくっついてしまったF世界に未来はあるか!?

一方、現実世界では突然のイタリアの消失に世界中が貴重な文化の喪失に
悲しみのあまり極東の半島が消えたことには気付かなかったとか

727 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/01(金) 01:11:29 [ h4aEybGQ ]
それではスカンジナビア三国がかわいそうではないかな?

フィンランドとかは割とまともな国家だけにw
あとスペインが召還されたらリーガが見れなくなっちゃう (ノ∀`)

728 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/01(金) 02:16:37 [ l/fRk0Rw ]
イタ公なんぞと組んだ時点で負けは決定してるんだから
あきらめてもらうしかないんじゃないか。

宗教を打破したいんだったらF世界各国にテレビを持ち込むのが一番です。
今、宗教問題が活発になっている地方はテレビの復仇率が低いことを
考えてもかなり使えるアイデアだと思います。

そして日本の売国マスコミみたいに世界に親帝國マスコミを作れば
おそらく完璧になるでしょう。

729 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/01(金) 07:04:50 [ NbVPvpP2 ]
マスコミはたぶんその国の高度な教育を受けた人々が担うことになりますから
日本の売国マスコミのような****と同列に扱っては失礼ですよ。

730 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/01(金) 12:42:49 [ Yi613abE ]
>>727
甘い、甘いぞ!! 彼らは美女のためなら武装SSなみの力を発揮する。

731 名前:長崎県人 投稿日:2006/09/01(金) 14:08:29 [ gPuSt/kQ ]
外伝第5話今日の分投下っす〜

732 名前:長崎県人 投稿日:2006/09/01(金) 14:09:38 [ a1KJrS8g ]
『おーい、魚ぁ!生きとるかぁ!?』
桟橋の前につけた車の影から浦出警部が叫んでるので手を振り返す

『ひでぇ有様だな、お互い』
海から上がってみれば浦出警部も爆風で体を持ち上げられたらしく、泥と埃だらけの風体である、ちょっと悪態ついた自分に自己嫌悪
『湾港部のオフィスで整理しましょう、このままじゃ、後手もいいとこ・・・弾もいい加減切れちゃったし、補充しないと』
『そうだな』
警部の九四式は効かないし、何か良い手を相模中佐なら編み出してくれるかも・・・ああその前に説明があるわね、面倒だけど
『よし!車は動くようだな、風通しが良くなり過ぎちまってるが、乗れ!』
海防艦の爆発した方が全部割れてる、動作確認やらをしていた警部が私が乗ったのと同時に車をだす
『中佐も含めて、何か現場で証拠があがってるかも、それを持って来させないと信用させられないわ』
『だな、海軍さんなり陸軍さんなり、こっちに増派してもらわねぇと話にならねぇ、落葉を呼ぼう』
これはもう、警察力程度でなんとかできる事態じゃないもの。警部が無線をいじる
『そうか、でかしたぞ!』
『どうしたんです?』
『劇場での一部始終を報道班が8㎜で撮ったやつが手に入った』

733 名前:長崎県人 投稿日:2006/09/01(金) 14:12:47 [ 7Vp0wi8U ]
『ど、どうなさったんですか!?お二人とも、それに港で爆発音が』
キャサリンたんが湾港部に戻って来たら真っ先に応対してくれた、後ろに獣人の子供達、一緒に建物の中で遊んでて外で何があったのか全く知らないらしい
『まぁいろいろあったのよ、着替えてくるわ』
『落葉が来るまでここで待っとる、キャシー君、タオルをくれんか?顔は拭きたい』
『あ、はい!ただいま!みんな、おとなしく待ってるのよ?』
『はーい!!!』

後ろの子供達とキャッキャと遊んでいるらしい子供達と浦出警部の声を聞きつつ更衣室で服を脱いで、菜っぱ服(第三種軍装)を着る、ポケットが多いから弾倉をより多く持ち運べるのが魅力だ・・・しかし、私らどうするのかしらね、あくまで湾港部に過ぎないのだし
『警察力で出来得るかぎりの治安維持をしつつ現状を維持、かしらね・・・』
まぁ私らもそれを手伝うことにはなるだろうけど
『先輩、伝言です。みなさんお揃いになりましたので着替えが終わったら会議室に来てください』
キャサリンたんが呼びに来た、落葉さん意外と早かったわね
『あ、うん。待って、今行くわ』
ともかく、あのガミガミ中佐を黙らせて、何としても部隊の増援派遣を頼み込まなきゃ

734 名前:長崎県人 投稿日:2006/09/01(金) 14:14:52 [ a1KJrS8g ]
会議室に着いたときには現場で撮られた8㎜フィルムが上映されていた、バッチリ自分も撮られてる、恥ずかしいわねこれは・・・ただ、見てる殆どの人間はア然としている、何の前触れもなく人が燃え上がり、そして私の銃撃。それなりに当てられる腕だとの認識はみんなに持たれてある、そして・・・熔けた
『な、なんのトリック映画ですか?これは』
ゴン太君、まぁ普通はそうよね
『こ、こんなもの相手に我々は戦うのでありますか?警部』
あ、落葉とかいった警官、中身は見ていなかったのね。直接対峙するには確かにこれじゃ不安過ぎるかも
『先輩、これでよくご無事で・・・』
キャサリンが胸をなでおろしている、ありがとう、でもこれからなのよ
『海防艦の爆発は私も見ていた、これは由々しき事態だという認識は浦出警部とティータ潜水士の二人と変わらん・・・こんな化け物が居るとは未だ信じられんが、こういった映像を見せられてはな』
浦出警部が頷いた、ガミガミ同士話を先につけたみたいね、ありがたいわ、私じゃ説得する自信ないもの
『海防艦は先に出航していた2隻に早晩戻ってくるよう要請しよう。地上の人員増援は2艦からの陸戦隊抽出で行う。すぐに出来るのはまだこれだけだ』

735 名前:長崎県人 投稿日:2006/09/01(金) 14:16:54 [ 9TlQkVJc ]
これには浦出が渋い顔をする
『それでは少な過ぎる、武器の方も我々警察機構が保持している九四式拳銃ではどうにもならないことは言わせていただいた、正直ここに置いてある南部式でも相対するのはこちらに不利窮まりない』
私も相模中佐を見つつ頷く
『しかし、私の権限で好きにどうこうできる範囲はそこまででしかない、もしくはさらにもう一つ上、緊急時派遣艦隊群を呼ぶか、だ』
緊急時派遣艦隊群・・・大陸に常に配備され、突発的紛争が発生した場合、帝國海軍が一番最初に展開させて解決にあたらせる部隊だ、大陸に展開する全ての根拠地隊の親玉でもある、戦艦山城を中心とした旧式艦を隊の主体とし専用の陸戦隊も持っている
『この事件を紛争と同じレベルと見なさなければ艦隊は動かせない・・・たしかに海防艦はやられたが、こうして警察機構は動いている、何らかの部隊に攻め込まれてるわけでもない』
つまり、簡単に言えば死人が足りないのだ
『傭兵を集めるとかは出来ないんですか?』
ゴン太君が聞く、そっか、その手が・・・
『誰が賃金を払うのかね?軍や警察が報償を払うとしても、出張所あつかいの警察庁、湾港部の我々では払える金自体がたかが知れている、貯蓄を含めてな』

736 名前:長崎県人 投稿日:2006/09/01(金) 14:18:31 [ ewIsKeyI ]
全市をカヴァーする程の人員は雇えない、武装もバラバラ・・・なにより雇用に乗ってくるのは流民、下手をすると肩書きだけで何をするかわからない所がある
『その案は最後までとっておこう、あまりにも劇薬過ぎる。関東大震災で自警団がある種の暴徒となった事を忘れてはならない』
浦出が舌をうつ、やはり私と同じく期待していたが相模の言うことももっともだからだ
『武装に関しては多少あてがある。数は揃えられそうにないが』
『え?』
どこに?
『海防艦は2隻とも完全に破壊されたわけではあるまい?武器庫に陸軍のあまりものの三八式歩兵銃があるはずだ、ライフルだから貫通力その他拳銃とは比べものにならん、それからゴンダルス!貴様の私物も提供せい!』
ゴン太君?
『あ、あれは部長・・・狩猟用でかなり接近しないと・・・使いにくいですし』
『ショットガンでも拳銃よりはましだ、今は貴重な武器だ、つべこべ言わずに出せ!』
『は、はいぃっ!!』
しどろもどろで答えていたゴン太君に相模中佐が一喝する
『我々から警察の方に余剰兵装を提供するというのは本来ありえないが、保管する要員が失せてしまい、我々だけでは完全な管理ができない・・・つまりはそういうことだ』

737 名前:長崎県人 投稿日:2006/09/01(金) 14:20:44 [ 25Xn9yoU ]
『おじちゃーん!!』
預かっている獣人の子供達が会議室に入って来た
『あ、こら。入って来ちゃダメでしょ?パトカーのところで遊んでなきゃ、めっ!ですよ?』
キャサリンが子供達を窘める
『違うの〜、パトカーから助けてくれ〜って、それからバァンバァンっておっきな音がいっぱいして・・・切れちゃった』
『なんだとっ!?』
キャサリンを除く全員がその場を立ち、パトカーの元へ

無線を浦出が扱う
『出張所本署、応答願う!』
『ザザー・・・』
『第四分署!!応答を!』
『ザザー』
『だ、第六分署!!!聞こえるか!』
『浦出警部!』
『よしっ!繋がっt』
『た、助けっ!ば、化け物どもが警察署に!!う、うわぁあっ!!』
『ザザザザザ・・・ザザー』
『おい!どうした!おい!!』
無線は砂嵐を伝えるだけでなにも答えない
『何故警察署を襲う・・・何故だぁああああっ!!!』
浦出がガンッとボンネットを拳で殴る、握り締め過ぎて血が出ている
『・・・浦出警部、警戒に出ている者達は無事なはずだ、状況を確認しつつここに集めてくれ、そして!私は緊急時派遣艦隊群の派遣をここに要請する事を決定する!』
相模中佐が宣言した、異を唱える者は誰も居なかった

738 名前:長崎県人 投稿日:2006/09/01(金) 14:33:40 [ zeLnApqc ]
投下終了〜


警察力をほぼ今回の襲撃で喪失しました、ついに緊急時派遣艦隊群が動き出します

>>ここまで読んださん
高周波では中まで炭化しませんよ(ニヤリ)
何故そんな事が出来るのかはのちのち


>>724さん
重油の発火点は60〜150度だそうです、だから最初から燃やさずに、気化したガス分が引火としました、重油の表面温度がそれで上がってからは一気に燃え上がるのです・・・724さんが悪い子ではないのです!描写が拙いウリが悪いのです・・・ナマハゲに悪い子はいね〜が〜されてきまつ・・・

739 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/01(金) 21:29:54 [ jc511Ldk ]
上のジャンクを読んで、帝國滅亡後千年を経ても帝國の冊封体制は続いているのだなぁ・・・
と、しみじみしてしまいました。
譜代の王家がいるなら、臣下した旧宮家が発祥の名門王家もいそうですが。

740 名前:F世界逝き 投稿日:F世界逝き [ mFHFBMfM ]
F世界逝き

741 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/02(土) 09:09:34 [ yq9lkYzY ]
長崎県人様、投稿乙です。
近くに航空隊とかはいないのかなあ? 航空機なら、直ぐにこれると思うけど。


>>699
699様、有難う御座います。

>こりゃあ本国や直轄領に残ってる末期の遺産とかは高く取引されそうですね。
資源も帝國の廃材漁り……とかだったら嫌過ぎますね。

>>700
大本営発表様、有難う御座います。

>皇室問題で滅びる帝国・・・。
他人事じゃありませんからねえ。

>>701
>ところでここにいる作者さまは共産主義について書かれる予定の方はいらっしゃられないのですか?
アカの人には当分牢の中に入っていただきます。

>>702
ここまで読んだ様、有難う御座います。

>当事者にとっては試行錯誤の迷い道
結果を見て考えられる後世の人とは違いますからねえ。

>>712
長崎県人様、有難う御座います。

>政体は変わっても国民や軍事力はいったいどこへ・・・宇宙とかw
内戦と分割で消えてなくなりました。

>>739
>譜代の王家がいるなら、臣下した旧宮家が発祥の名門王家もいそうですが。
特に初期〜中期においては、爵位とかの称号を巡って戦争が多発しました。
第一次トクガワ公爵位継承戦争とか。(笑)

742 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/09/02(土) 10:11:39 [ ToMVwDhk ]
帝国異史外伝、自分で納得出来なかったので、書き直してんですが、
資料やら技術経緯を検索してるので、もう少しかかりまつ。

743 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/02(土) 13:35:13 [ yq9lkYzY ]
SS投下。

744 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/02(土) 13:36:10 [ yq9lkYzY ]
「帝國召喚」外伝4『辺境警備隊隊長よもやま物語』08-3

4、

「まったく! 急に『移動しろ』って言われてもなあ?」

「……仕方が無いだろ? 万が一のこともある」

二人組の男がこっちに向かってくる。

一目で『まともな連中』では無いことが分かる……という訳では無い。一見、極普通――その会話は怪し過ぎるが――の平民達だ。


『……玄人、だな』

黒部中尉が呟く。

粗暴な犯罪集団では無く、知能犯の類の様である。

『ええ、裏には大物がいる可能性が高いですね』

高木軍曹も同感だ。

こういう手合いは、その犯罪規模も大きく、裏で大物と繋がっていることが多いということを、二人は経験から知っていたのだ。


「でっかい白犬に乗った餓鬼二人が、山から降りて来る所を見ただけだろ? 用心のし過ぎじゃあないのか?」

「……御頭の判断だぞ? 逆らう気か?」

745 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/02(土) 13:36:41 [ yq9lkYzY ]
片方の男が鋭い目付きで睨みつける。

「まっまさか! ……ただ、餓鬼の言うことなんか誰も本気にしないだろ、ってことさ!」

「後ろ姿を見ただけだが、あの二人はなかなか良い身なりだった。もしかしたら、この辺りの有力者の子供かもしれない」

話を聞いた親が、心配して役人に働きかけたら面倒だからな、と続ける。

「面倒臭いなあ。あの餓鬼共、犬と一緒に殺しちまえば良かったんじゃあないのか?」

「……それこそ愚問だな。本当に有力者の子供だとしたら、大規模な捜索隊が組織されるぞ? 昔と違うのだから、ことを大きく……」


ダンッ! ダンッ!


黙って二人の話を聞いていた黒部中尉は、いきなり何を思ったか、二人組めがけて拳銃を発射する。

「中尉!」

高木軍曹が慌てて止めようとする。

が、二発の銃弾は見事命中。黒部中尉は無言のまま、二人が倒れている場所へと向かう。

「……貴様等、いい度胸だな?」

746 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/02(土) 13:37:18 [ yq9lkYzY ]
そして二人を見下ろし、黒部中尉は怒りを込めて言い放った。

「てっ帝國軍!?」

「馬鹿な! 動くのが早すぎる!?」

痛みに呻きながらも、驚愕の表情の二人。

……まあ当然であろう。こんな短時間で役人――それも帝國軍――が動くなど、常識では考えられない。


「高木軍曹!」

「ハッ!」

「こいつらの尋問は俺がする! 貴様は引き続き警戒に当たれ!」

「ハッ!」

そう言い捨てると、黒部中尉は洞窟の中に消えた。 ……その後を、兵共が男達を引き摺りながら追いかける。


「……やれやれ」

ああなると止まらないんだよなあ、中尉。

高木軍曹は溜息を一つ吐くと、血で汚れた地面を偽装するよう数人の兵に指示、残りの兵を引き続き警戒に当たらせた。

747 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/02(土) 13:37:49 [ yq9lkYzY ]
5、

余程急いでいるのだろうか? 日没も近いというのに、隊商の一団が街道を進んでいく。

が、やはり諦めたのか、隊商は街道脇に竜を寄せて野宿の準備を始めた。

(普通は日が暮れる前に町に入り、町で泊まるか野宿する。最近では治安も大分向上したため、街道脇で野宿する隊商も出始めてきたが、これはあくまで『隊商』という多人数だからこそ出来る行為だろう)

……?

一体どうする積もりか、彼等は竜を荷車から開放すると、今度は竜の背に荷を括り始める。

そして数人の男達を留守に残すと、竜共を連れて山の中へと入っていった。


彼等は、まるで慣れた道を進むかの様に山道を進み、洞窟の前までやって来る。

洞窟の前に向かって、男の一人が叫んだ。

「アルフ! ヴァロ! 寝てないで手伝え!」

が、返事は無い。

男は軽く舌打ちすると、洞窟に入ろうとする。

すると――

「……二人共、ここにはいないぞ」

748 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/02(土) 13:38:19 [ yq9lkYzY ]
「!」

そう言って、一人の男が洞窟の中から出てきた。

タブリン人では有り得ない、黒い髪――大分短いが――と黒い目。 ……そして、茶色い服。

「……帝國軍!?」

誰かが、怯えた様に叫ぶ。

「帝國陸軍警備隊である! 神妙に致せ!」

その声を合図に、周囲から帝國兵達が銃を構えて出てくる。

「くっ! 何故帝國軍が!」

そう叫びながらも、内心は後悔で一杯だった。


――やはり、あの後直ぐに立ち去るべきだった!


『御頭』は、自分の判断の甘さを呪う。

そう。不審な餓鬼共を見つけたその時点でここを放棄すれば、何の問題も無かったのだ。

(多少は面倒なことになったかもしれないが、捕まるよりは遥かにマシだろう)


――手間を惜しんだばっかりに!

749 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/02(土) 13:38:50 [ yq9lkYzY ]

歯軋り。

昔ならことは簡単だった。殺すなり売り飛ばすなりすれば良かったのだから。

子供が消えることなどそれこそ『よくある話』だったし、自分達の後ろ盾を考えれば、多少の足が付いたところで如何にでもなったものだ。

が、帝國が新たな支配者となってから少し……いやかなり状況が変わった。


かつての土地の顔役をはじめ、名のある犯罪組織の幹部達は、現在では帝國のお墨付きの下、『日の当たる場所』に出て商売を始めている。

そして古着屋や斡旋屋等、儲かること確実な商売を独占的に認められた彼等は、すっかり帝國の犬に成り下がってしまっていたのだ。

表では、専売を許された大店として巨万の富を合法的に得、その裏では地元の悪党共を束ねて『やり過ぎない』様に管理する……

帝國の庇護の下、彼等は完全な合法集団と化していた。

……彼等は帝國の耳目であり、手足でもある。

多少の事ならば、袖の下を弾めば見逃してもくれるだろうが、『子売り』や『子殺し』ともなれば流石に見逃してはくれない。何もかもが昔とは違うのだ。

そんな真似をすれば、彼等は自分達を見つけ出し、捕らえて帝國に引き渡すだろう。 

後先のことを考えれば、とてもではないが下手な真似は出来なかった。

750 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/02(土) 13:39:25 [ yq9lkYzY ]

もっとも、『子供の言うことなど、誰も本気にはしないだろう。見逃したほうが利口だ』と考えたことも事実である。

故に、この場所を引き払おうとしたのもあくまで『念のため』であり、だからこそ数日後で構わないだろうと判断したのだ。

(仮に役人に届けたところで役人が動くとは限らないし、動いたとしても今日明日の話では無いという、ごく常識的な判断もあった)


……この判断が甘かったとすれば、『今すぐ立ち去れば次の取引が大きく遅れ、信用に関わる』という損得計算が働いていたせいだろうか?


が、所詮は後知恵である。当時の彼等の判断は、必ずしも間違っていたとは言い切れない。

(何度も言うようだが、彼等はごく常識的な判断を下しただけに過ぎないのだ)

ただ、何重もの不幸が続けて起こった。 ……それだけだ。


一つ目は、シロという化け物犬の存在。

(そもそもシロがいなければ、子供達は街から離れたこんな場所にまで来れないし、仮に行けたとしても、もう一度同じ場所に辿り着けるかは怪しいだろう)

二つ目は、子供達が黒部中尉という、この地方最有力者の『身内』だったということ。

三つ目は、黒部中尉が子供達の安全のために、話を聞いた次の日の朝には、わざわざ兵を割いて見回りに来る程の『親馬鹿』だったということ。

751 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/02(土) 13:39:57 [ yq9lkYzY ]

……『運が無い』としか言いようが無かった。


6、

この集団の正体、それは密輸組織であった。

各鉱山から運ばれる鉱石を間引きし、売り捌くのが彼等の仕事である。

……一見しみったれた犯罪とも感じるが、個人の小遣い稼ぎ以上のレベルでこれを行うには、相当大規模な組織が必要な犯罪だ。


今回なら――

先ず、『輸送(保管)中に間引くための協力者』。

間引く量にもよるが、最低でもそのルートの輸送(保管)責任者――最低でも幹部――を含む、数人以上の協力者は必須である。

次いで、『間引いた鉱石の一時保管場所の提供者』。

ここは官地である。この周辺を担当する警吏が仲間とまでは断定できないが、買収されていることは間違いないだろう。

(最悪の場合、この郡の官衙全体が汚染されている可能性すらある)

次いで、『間引いた鉱石の売却先』。

無論、彼等はその鉱石が不正な手段で得られたものだと承知している筈だ。

752 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/02(土) 13:40:38 [ yq9lkYzY ]
――という、最低でも『間引き先』『一時保管先』『売り先』の三ヵ所での協力者の存在が必須なのである。


この他にも情報提供者等の存在も考えれば、かなりの規模の人間が関わっているものと思われた。

(黒幕の存在すら否定できない)


――最早、一警備隊の手に負える事態ではない。


そう判断した黒部中尉は、軍区司令部に応援要請を行った。

が、事態は黒部中尉の想像を遥かに越えた展開を見せ始める。

(これで全てが終わる、と黒部中尉は考えていた)


応援に来たのはタブリン軍区の憲兵分遣隊ではなく、憲兵本部直属の憲兵だった。


……そして黒部中尉には、ダソレルの軍区司令部への出頭が命じられた。

753 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/02(土) 13:41:42 [ yq9lkYzY ]
SS投下終了。
ここの所内容が無い……

754 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/02(土) 13:45:22 [ nhYleMhY ]
GJ!
毎日楽しみにしています。
続きが待ち遠しいですなぁ・・・・

755 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/02(土) 14:06:55 [ nhYleMhY ]
>>524
>鋭い! 実はウェクスフォード家の料理長は、銀座の超高級洋食店で20年近く修行したコックです。
>彼は新たな料理を作るために大陸に『不法出国(短期出国許可証でとうにオーバーステイ)』したものの、着いた場所がタブリン…… 
>当然料理なんて勉強できず、途方にくれていた所をナリマサの父に見つけられ、ウェクスフォード家の料理長となりました。

>ちなみに副料理長はタブリンの料理人です。
>彼はタブリン料理界の閉鎖性に反発したため破門となり、行き倒れになっている所をシロに拾われて(食い物の匂いがした)ウェクスフォード家の副料理長となりました。

>両者は意気投合し、ウェクスフォード家の庇護の下、協力して新たな料理の創作と、門下の教育に力を注いでいます。

この話を期待してしまいます。
いつごろの話なんでしょうね?黒部家が叙勲して、でも娘二人がまだ家にいて
ナリマサが幼児で、姉二人への求婚者をシロが毎日追っ払っていた頃でしょうか。
でも、黒部男爵(まだ、ナリマサに継承していない)家では帝國の一流料理人が
腕を振るっている、と聞いて憧れるダブリン人は多いでしょうなぁ・・・。
美食家揃いのダブリン貴族も、黒部家に招待されたがって色々便宜を図ったりするでしょう。
ダブリン国王が召し抱える以上の料理人を専属に持っているようなものですし。

756 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/09/02(土) 14:15:13 [ DUErFeR2 ]
くろべえさん、投下乙です。
鉱石の密輸ですか。
日本では鉱石が大量に出るわけでもないし、輸送が大規模になるので、大陸ならではの犯罪ですね。
>ここの所内容が無い……
定期的に投下することだけでも大変なのに、そう卑下することありませんよ。

他の皆様も投下乙です。
時間があまりないので、簡単ですみません。
読むだけで精一杯(それだけ量があるということで、良い事ですけど)。

757 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/02(土) 14:21:50 [ r6xtDEqo ]
投下乙です。
うーん、シロは他の人が見ても大きさはともかく犬に見えたんですねぇ。(そこかよ!

758 名前:F世界逝き 投稿日:F世界逝き [ mFHFBMfM ]
F世界逝き

759 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/03(日) 01:39:03 [ .jWdN08I ]
久しぶりに投下します

760 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/03(日) 01:39:51 [ .jWdN08I ]
ユフ戦記 06  戦争計画 player A 後編2

 自室に戻ったレイは素早く軍装を整える。
たかが新米の列騎竜士(帝國のいう中尉に相当)とはいえ、まがりなりにも士官である彼女は個室を与えられているから、女であっても気兼ねなく着替えられる。
尤も彼女が異性の目を気にするか否かは甚だ疑問であるが。

皇国軍が採用する翼竜飛翔服は士官と下士官、兵の物に相違点はない。
竜を駆るにはそれなりに機能性を考慮した服を着る必要があるから、自ずと服の外観は限定される。
であるならば、わざわざ階級で別個の服をつくる必要はなく、階級章のみで区別するのが合理的である、と誰かが発案したおかげで彼女が翼竜飛翔服を着用しても一瞥しただけでは階級がわからない。

761 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/03(日) 01:41:06 [ .jWdN08I ]
雪と雲の迷彩効果を期待してか、白鼠色に彩色された飛翔服を着た後、
軍刀を手にしようとした手が止まる。
家から持ち込んだ私物、そのうちの姉に託された鋭剣が目に入ったからだ。
姉がかつて南方の地で翼竜飛翔士官として名を馳せた際に佩用していた逸品。

ジグリード・ロイという名は、ロイ王家と血縁があるものの直系ではないことを示すから、
彼女がロイ王家の養預子であることを知る物はいない。
剣を持っていればいろいろ役に立ちそうだ。
レイは軍刀に代えて鋭剣を手に部屋を出る。

 誰か同士を募りたいところだが、着任して間もないこの基地で信用の置ける人物を未だ見出していない以上、
単独で行動するしかない。
それよりも誰にも告げず、迅速に行動したほうがよい。
レイは基地の廊下を歩くと、上官の部屋の扉が空けたままであることに気付く。
部屋は無人。
椅子には百竜長(中佐に相当)の階級章が縫い付けられた外套が掛けてある。
役に立ちそうな物は、上官のものであっても徴発してもよい。
まして今は皇室の一大事。
即座に皇国の如何なる軍令にも記載されていない規範を編み出したレイは素早く外套を取り、翼竜格納庫に向かう。

762 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/03(日) 01:42:27 [ .jWdN08I ]
格納庫といえば聞こえがよいが、その実態は穴倉だ。
山の岩盤を穿ち、その中に皇都第三直衛翼竜隊の全騎…
即ちおよそ二百騎の翼竜が収められている。

レイは監視の目を潜り、速やかに愛騎のもとにたどり着く。
そこには冬毛を纏った翼竜が惰眠を貪っていた。
竜の尻を鋭剣で叩いて優しく起こすと、その背に跨る。
(無論軍規違反。竜の暴走を防ぐため格納庫の外まで手綱だ曳くのが普段のやり方だ)
幸い翼竜は知能が高いので、主人の内心を察し即座に反応する。
彼とて愚鈍たるを理由に鍋料理にされてはかなわない。

 レイを背にした翼竜は制止する兵卒を尾で気絶させると一気に上昇する。
その加速は他国の飛竜とは比べ物にならない。
直衛隊、口悪く言えば新米を扱き、教導隊が訓練するだけの部隊。
生殖能力を削除されたワイバーンロードとはいえ、新型を与えられているわけではない。
であるのにこの飛翔能力。
その理由を皇国人はこう解していた。

763 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/03(日) 01:43:39 [ .jWdN08I ]
もともと、飛竜(あるいは翼竜、ここでは便宜上ワイバーンと呼称する)は、
皇国の東にあるネストリア山系原産である。
大量のマナを消費するワイバーンは、その起源が人為的なものであるにせよ、
自然に生まれてきたものであるにせよ、人間の保護がなければマナの溜まり易い地でしか種族を維持できない。
ネストリア山系でワイバーンが全盛を振るっていたころ、
他の地域では精々単騎のワイバーンが人里を襲ったという伝承がある程度だ。
これはかなり不自然な記述だ。
ワイバーンは社会を持ち、集団で行動する性質を持つ
(そのおかげで現在ワイバーンでスムーズに編隊を組めるのだが)から単騎で遊びまわったりしない。
故に、皇国人はそのような伝承上のワイバーンを、ネストリア山系での生存競争に敗れ、
マナの薄い各地に逃げていったのではないか、と推測している。

764 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/03(日) 01:44:56 [ .jWdN08I ]
確かに、ネストリア山系付近の国家がワイバーンを軍用として捕獲するまで、ネストリア山系はワイバーンが溢れ、人間が入れる場所ではなかった。
ワイバーンはネストリア付近の国家を軍事強国にするには役立ったが、それで国家の永遠の繁栄が保障されるわけではない。
古の、名前すら忘れられた大国がワイバーンの劣等種をエルフを通じて全世界に売り払った。
その劣等種が各国のワイバーンの起源だ、とする説がまことしやかに囁かれている。
これが真実かどうかは確かめる術はない。

だが、皇国以外に野生のワイバーンが生存している国はない。
そして皇国の翼竜部隊は他大陸の飛竜部隊に圧倒的な優位を誇ってきた。
(帝國人は知らないことだが、対帝國との紛争でも皇国翼竜飛翔隊は圧倒的なキルレシオを達成した。
新皇暦323年のカイアール紛争において、列強各国は帝國兵器の性能確認のため義勇軍を募り、投入した。
その際、皇国翼竜飛翔隊は四式戦や紫電改を主力とする対帝國戦闘機に対して撃墜17、被撃墜2という戦果を残しているが、皇国はその情報をひた隠しにしている)
手を加えていない在来種ですら、列強のワイバーン・ロードより優位に立ってきた。
生殖能力を削った種や新たに開発されつつある新型では、いったいどのような結果がもたらされるのだろうか。

765 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/03(日) 01:45:32 [ .jWdN08I ]
であるからこそ、皇国は他国のワイバーンと自国のそれを区別して、翼竜と呼称している。暑いところでは寝つかない、餌が高価なものばかり、気位が高くて乗りこなすのが一苦労といった欠点を抱えているものの、帝国が出現した今も未だ有効な戦力として機能する、皇国はそう考えている。

ともかくも、レイは翼竜を駆り、皇都を目指している。
疲労を考慮しても毎時二百リーグで飛翔できるから、皇都上空まで六半刻(十分)程度だ。

766 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/03(日) 01:46:05 [ .jWdN08I ]
投下終了

767 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/09/03(日) 01:59:14 [ DUErFeR2 ]
シロべえさん、投下乙です。
>皇国翼竜飛翔隊は四式戦や紫電改を主力とする対帝國戦闘機に対して撃墜17、被撃墜2という戦果を残している
四式戦や紫電改に勝つとは、このワイバーン、強いですね。
シロべえさんの世界ではジェット機開発が進みそうですねえ。
それまでは時速700キロ台の震電、キ94、キ98で頑張るしかないなあ。

768 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/03(日) 02:44:24 [ .jWdN08I ]
>>767
ええ、しかしこれは開戦三年前の話(紛争は開戦八年前)ですから、その間に帝國が
ジェットの開発に力を入れているかがキーになるかもしれません。
8年あれば呑気な帝國も新型機を投入しているはず。
(皇国も投入しますが)

769 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/09/03(日) 11:25:26 [ ToMVwDhk ]
シロべえ氏、モツ
レイタソはどこに行くのだろう(´Д`;)ドキドキ

770 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/03(日) 13:41:23 [ yq9lkYzY ]
シロべえ様、投稿乙です。
>皇国翼竜飛翔隊は四式戦や紫電改を主力とする対帝國戦闘機に対して撃墜17、被撃墜2という戦果を残している
つ、強い…… これが同数同士の結果なら、米のムスタングより強いだろうなあ。初期のジェットでも互角かも。

>>754
754様、有難う御座います。

>続きが待ち遠しいですなぁ・・・・
そう言って頂けるとは、嬉しい限りですよ。

>>755
>いつごろの話なんでしょうね?黒部家が叙勲して、でも娘二人がまだ家にいて
>ナリマサが幼児で、姉二人への求婚者をシロが毎日追っ払っていた頃でしょうか。
そうですね。多分そのあたりかと。

>帝國の一流料理人
帝國料理が食せるというのは、一種のステータスでしょうからねえ。

>美食家揃いのダブリン貴族も、黒部家に招待されたがって色々便宜を図ったりするでしょう。
帝國式の洋食料理をアレンジ(材料の大半はタブリン産)したフルコース。帝國の方々にも大変御好評です。

>>756
名無し三等兵様、有難う御座います。

>定期的に投下することだけでも大変なのに、そう卑下することありませんよ。
いやあ、そう言って頂けると有り難いです。
最近の二〜三話、書きたいことを書くための前置きみたいなものなので、つい……

>>757
757様、有難う御座います。

>シロは他の人が見ても大きさはともかく犬に見えたんですねぇ。
遠目から、ですからねえ。近くで見たら……

771 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/03(日) 13:41:56 [ yq9lkYzY ]
SS投下。

772 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/03(日) 13:42:26 [ yq9lkYzY ]
「帝國召喚」外伝4『辺境警備隊隊長よもやま物語』08-4

7、

黒部中尉が、ダソレルのタブリン地区司令部への出頭している間、レディング鉱山警備隊は将校不在となっていた。

その間の隊長代理として、黒部中尉に次ぐ階級を持つ『鬼の曹長殿』こと、石井曹長が任に当たることになる。

……が、『鬼』だろうが『最古参』だろうが、下士官に過ぎないその身では、隊長任務は不都合この上無かった。

何しろ『将校でなければ出来ない(やってはいけない)こと』が、山とある。


例えば、武器庫の鍵。

これを開けることが出来るのは、本来は将校たる黒部中尉のみ。

例えば、書類の決裁。

最終的な決裁には、やはり将校たる黒部中尉の捺印が必要だ。

――等々、挙げていけばきりが無い。


隊長が不在でも他に将校がいれば、その将校が代行できるのだが、あいにく下士官ではどう足掻いても出来ないものは出来ないのだ。

(まあ帝國軍とて軍事組織であるから、非常時にはその辺の問題はどうとでもなる。 ……が、今は生憎と平時である。故に、組織として規則は厳守せねばならなかった)

773 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/03(日) 13:42:56 [ yq9lkYzY ]
警備隊の下士官達は、『あれが出来ない、これも出来ない』と大弱りだ。自然と集まり、愚痴が多くなる。

「中尉殿、いつ帰ってくるのだろう?」

「さあ? まあ状況説明だけだろうから、数日で戻るんじゃあないかな?」

「しかし、なんでわざわざ地区司令部に呼びつけるのかなあ? 事件解決後に、応援の奴等が報告すりゃあ済むことだろう?」

「それだけの大問題なんだろ?」

何しろ、帝國が採掘した資源を大量に盗まれていたのだ。問題にならない筈が無い。

「……何れにせよ、色々不便でしょうがない。早く帰ってきて欲しいものだ」

「全くだな」

部下達は、突然の黒部中尉に対する出頭命令が、『状況説明』であると頭から信じ込んでいた。


……そんな時である。黒部中尉が要請していた『応援』が来たのは。

774 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/03(日) 13:43:27 [ yq9lkYzY ]
8、

応援に来たのはタブリン軍区の憲兵分遣隊ではなく、憲兵総司令部直属の憲兵だった。

――ことは、ここまで大事か!?

レディング鉱山警備隊の下士官兵達は、思いがけない事態に驚愕する。


帝國陸軍憲兵隊の組織構造は、増強に次ぐ増強を重ねた結果、現在では以下の様な構成になっている。

帝都の憲兵総司令部の下――

本国に、北部管区憲兵隊、東北管区憲兵隊、東部管区憲兵隊、東海管区憲兵隊、中部管区憲兵隊、中国管区憲兵隊、四国管区憲兵隊、西部管区憲兵隊の8個管区憲兵隊。

大陸に、東ガルム方面憲兵隊、南ガルム方面憲兵隊、西ロディニア方面憲兵隊、
南ロディニア方面憲兵隊、北東ガルム方面憲兵隊の5個方面憲兵隊。

――がある。(*北東ガルム方面憲兵隊は現在編成中)

本土の各管区憲兵隊は、各都道府県毎に憲兵隊(例、新潟憲兵隊)を置いており、各憲兵隊は、その指揮下に複数の憲兵分隊やは憲兵分遣隊を保有している。

(*憲兵分隊は、憲兵少佐〜中佐以下数十名の規模を誇る大所帯――いわば『軍の警察署』の様なもの――であり、通常の分隊とは異なる)

大陸の各方面憲兵隊は、各軍管区毎に管区憲兵隊を置いており、管区憲兵隊は、各師管区毎に憲兵隊を置いている。また各憲兵隊は、各地区毎に憲兵分隊又は憲兵分遣隊を保有している。

775 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/03(日) 13:43:58 [ yq9lkYzY ]
(*大陸の各軍管区は、各直轄領を担当する師管区を統括するだけでなく、多数の邦國の監理も担当している)


……つまりタブリン地区でおきた事件は、本来ならばタブリン地区の憲兵分遣隊が担当するのが『筋』なのだ。

それを憲兵本部直属の憲兵が、しかも初っ端から担当するということは、『地方の警察署管内で起きた事件に、警察庁――警視庁では無い――の役人がでしゃばる様なもの』とも言い換えられるだろう。

要は、それだけ『異常』だったのである。


「憲兵総司令部所属の本郷憲兵少佐だ。この後ろにいるのが、中山憲兵少尉とカウナス憲兵少尉」

如何にも憲兵らしい、高圧的な口調の憲兵少佐が身分を名乗る。

(カウナス憲兵少尉は、噂はあれど姿は……のダークエルフだった。ダークエルフ自体が珍しいが、憲兵のダークエルフは更に珍しい)


――何故、憲兵少佐なんて大物がやって来るんだ!?


応対に出た石井曹長は、内心の驚きを隠しきれない。

憲兵少佐といえば、憲兵分隊の分隊長や大規模特務機関の長として活躍出来る程の『大物』だ。

間違っても、こんな『辺境地域での横流し事件』の捜査現場に出向く様な位階では無い。

776 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/03(日) 13:44:29 [ yq9lkYzY ]

……が、

「貴官等は、只今をもって本官の指揮下に入る!」

突然の爆弾発言。

「おっお待ち下さい! いくら少佐殿とはいえ、その様な権限は……」

必死に抵抗する石井曹長に、本郷少佐は一枚の書類を渡す。

「これを見たまえ」

「こっ、これは!?}

その書類には、本郷憲兵少佐を『特別捜査官』に任ずること、それに伴い『現場の部隊を補助憲兵として、その一存で臨時徴用できる』旨が、陸軍大臣と海軍大臣の連名付きで記載されていた。

「石井曹長! 補助憲兵として、直ちに2個小銃分隊を抽出せよ!」

「それでは鉱山警備が!」

石井曹長が悲鳴を上げる。


レディング鉱山警備隊は、本部指揮班(10名)、小銃分隊(10名)3個、擲弾筒分隊(10名)、機関銃分隊(5名)の計55名からなる。

内、本部指揮班は隊長(黒部中尉)、隊長補佐(石井曹長)、衛生担当1名、炊事担当2名、経理担当2名、通信担当2名、従卒1名の計10名だが、それぞれの任務が有りとても警備任務にまで手が回らない。

777 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/03(日) 13:44:59 [ yq9lkYzY ]
つまり実際に軽微に当たるのは、小銃分隊(10名)3個、擲弾筒分隊(10名)、機関銃分隊(5名)の計45名なのだ。

そして、通常機関銃分隊は帝國人居住区の警備や雑用を担当し、他の4個分隊が『休養』『訓練・待機』『鉱山警備』『労働者監視』を交代で行う。

ここから、2個分隊も引き抜かれたら……


「2個分隊の抽出は不可能です! 当警備隊の現有戦力では、1個分隊が限度……」

「……曹長、命令だ」

が、本郷少佐はにべも無い。あくまで2個分隊の抽出を要求する。

「が、流民の労働者相手にこれでは、さすがに不安だろう。よって、捜査終了まで『特別警戒態勢』の発令を許可する。 ……中山憲兵少尉!」

「ハッ!」

「貴様をレディング鉱山警備隊の臨時隊長に任ず! 残余部隊を指揮し、鉱山警備にあたれ!」

「ハッ! 中山憲兵少尉、レディング鉱山警備隊臨時隊長として、鉱山警備にあたります!」

「!」

レディング鉱山警備隊の下士官兵達は、絶句する。

778 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/03(日) 13:45:38 [ yq9lkYzY ]

――『特別警戒態勢』。

これに従えば、鉱山の操業は全面的に停止され、現地労働者と帝國人労働者はそれぞれの居住区に待機・禁足、軍部隊は完全戦闘体勢に移行する。

そして、無断侵入者や逃亡者、禁足を破った者には即時射殺が許可されるという、実に荒っぽい警戒態勢だ。

(裁判も簡易化された上、全ての犯罪の最高刑も銃殺刑に引き上げられる)

……が、これは戦闘地域内、それも最前線で発令される『抜かずの宝刀』の筈だった。


一体全体、如何なっているのだ!?


黒部中尉の突然の出頭命令。

憲兵本部直属の憲兵少佐という大物の来襲。

そして『特別警戒態勢』の発動……


事態は、容易ならざる事態へと突入しようとしていた。

779 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/03(日) 13:46:15 [ yq9lkYzY ]
SS投下終了。
ようやく本題に入り始めた……

780 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/03(日) 13:53:46 [ F5q7wA42 ]
乙です
ここまでの大事とは・・・もしや帝國本土のクーデター計画と何か関係があるのかな?

781 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/03(日) 14:49:43 [ EfnZMrnQ ]
漏れは直轄領統治の件で、軍と内務省の勢力争いと見た。

782 名前:ヨークタウン ◆r2Exln9QPQ 投稿日:2006/09/03(日) 15:50:57 [ XwixsAvk ]
くろべえさん投下お疲れ様です。
まさか、憲兵少佐まで出張ってくるとは。
黒部中尉はかなり危ない状態ですね。

783 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/03(日) 17:06:30 [ h5EJqhIw ]
この世界の鉄の需要を考えると鉄鉱石の横流し先が誰か疑問だったんだが、
帝國内部の問題の有る相手だったのかな?

784 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/03(日) 21:15:52 [ 6YqkINFo ]
>>783
ダブリンは石炭の宝庫という設定だったから、石炭の横流しでは?

785 名前::名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/03(日) 22:10:37 [ p9byHlxA ]
軍政下に在る場合は内務省警保局(警察庁)よりも憲兵隊の権限の方が強かったはず。

それにしても、大事になりましたね。きっかけは子供の何気ない一言だったのに。

786 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/09/03(日) 23:21:32 [ DUErFeR2 ]
くろべえさん、投下乙です。
憲兵は初登場かな。この時代ならではの存在ですよね。
ダークエルフの憲兵なんて恐すぎますね(一番恐がるのは悪い奴だけど)。

>>784
レディング鉱山は鉄鉱石を採掘してますよ。
「底には小石や砂が沢山落ちてますね」という発言もあるので、石炭では無いでしょう。
石炭なら黒ずんで一発でわかります。

787 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/04(月) 05:43:07 [ u9DhzF1A ]
各国軍にはいまも憲兵やMPはいるのでは?

788 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/04(月) 17:00:26 [ CU5dhYaM ]
「この時代の日本の軍隊ならでは」って意味じゃないの?

確か警務隊ってのが代わりにあるらしいけど。

789 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/04(月) 17:01:11 [ CU5dhYaM ]
×確か警務隊ってのが代わりにあるらしいけど。
○確か自衛隊には警務隊ってのが代わりにあるらしいけど。

790 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/09/04(月) 19:57:11 [ ToMVwDhk ]
現在の各国の憲兵には、
オランダ王立保安隊、フランス国家憲兵隊(ジャンダルムリ)、イタリア国家憲兵隊(カラビニエリ)
などがあります。
それぞれ特色があり、その性格も様々なので、wikipediaなどをを参照するといいかも。

自衛隊の警務隊は、他国のような司法権や捜査権などはないです。

791 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/04(月) 20:28:56 [ CU5dhYaM ]
自衛隊員が軍事絡みで犯罪犯しても
裁くのは一般人と同じ刑法なんだよね、確か。

こら、中国とかに機密ダダ漏れになるのも無理無いかも。

792 名前::名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/04(月) 22:45:48 [ Efmm9/9M ]
791>

その場合の適用法令は「国家公務員法第100条」で罰則が「懲役一年」だったはず(汗
ファイルやFD等で漏洩した場合は「窃盗罪(紙&FDを盗んだので)」、中身が国家機密であっても刑法上は「窃盗罪」なんですよね(大汗
ぶっちゃけ、日本にはスパイ防止法がありません。どこかの政党やら自称平和主義者という名の売国奴共が潰してきましたから。まあ此奴らの裏にいるのが○国共産党だしね(爆

793 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/05(火) 01:34:51 [ .jWdN08I ]
くろべえ殿、投下乙
黒部中尉大丈夫かなあ?
昇進に響いたりしませんよね?

ここから投下

794 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/05(火) 01:35:24 [ .jWdN08I ]
ユフ戦記 07  戦争計画 player A 後編3

 レイは叛乱軍の補足、迎撃を避けるため海上から皇都に進入する。
夜間とはいえ、マナを放出して飛び回っているわけだから用心に越したことはない。
皇都湾上空に差し掛かると、昏い海面に派手な明かりを燈した二隻の巨艦が浮かび上がる。
大小三十隻近くのお供を連れ回し、(帝國人が正直者だと仮定すれば)戴杖式への慶祝を述べに遥々帝國本土から馳せ参じたタカチホとホタカ。
言わずと知れたタカチホ級の一、二番艦。噂ではさらに二隻が建造中であるという。

勿論、帝國人はともかく帝國政府が正直者であるなど有り得ないというのが列強各国の共通認識であるし、レイもそれに賛同している。
現に恐れ多くも皇主旗艦専用と定められた皇都西港の第壱埠頭に停泊している上に、其の主砲は皇都中枢部を指向している。
何かあれば、叛乱軍の鎮圧に協力すると理由をつけて皇軍を吹き飛ばそうという魂胆だろう

795 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/05(火) 01:36:34 [ .jWdN08I ]
これだから帝國人は信用ならない。
その上この傲慢さときたら。
カイアールでもそうであったように、この世界は武力と発言力が比例関係にあり、
そして帝國軍が世界最強であると信じているようだった。
皇国をはじめとする列強諸国にとって腹立たしいのは、少なくとも後者については事実であるということだ。

帝國艦隊上空を通過し、レイは皇宮の斎聖殿を目指す。
戴杖式を控えた皇太女は、
世俗から離れた斎聖殿で禊をし皇主たるの心構えを斎官に説かれるのが慣わし。
であるならば、皇太女を斎聖殿に隔離し軍との接触を断つことが叛乱軍にとって最善の筈。

村と両親を帝國軍に焼き払われ、兄と生き別れてカイアールの砂漠地帯を彷徨っていた私を拾い上げ、
王家の養預子として姉妹のように接してくれた皇太女殿下。
装飾過多の服を無理やり私に着せ込み、翼竜で連れ回し、
怪しげな御菓子を拵えては毒見をさせられる以外はなんの不満もなかった。
ここで恩義を返さず、いつ返すというの。

796 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/05(火) 01:41:52 [ .jWdN08I ]
 同時刻 皇都皇宮斎聖殿内


 カリュンは卓上の法令案を見つつ、溜息を零す。
叛乱軍が署名を求める法令案だ。
中身は、皇国商人の自由な交易と、海外資本の大量導入。
そして皇主の権限を弱め、皇国商会の政治的発言力強化。
法律案の端々に見慣れない言い回しが挿入されている。
大方帝國の役人が作ったものを訳したのだろう。
全く、帝國人はいつも詰めが甘いのだから。

斎聖殿に見知らぬ兵士たちが乱入し、カリュンと斎官達を拘束してからもうじき二刻が経つ。
流石に部屋の中にまで監視はいないが、斎聖殿内とその周辺には叛乱軍が屯しているだろう。
連中本気のようね。

叛乱軍の兵士は訛りからして本国人ではないようだ。
商人たちが植民地で忠誠心の薄い民をかき集めてきたのだろう。
それだけならば大したことはないのだが、問題は連中の装備だ。
叛乱軍が所持していた装備は帝國のもの。
半年ほど前に、帝國が各国に武器が散逸した旨を伝え注意を喚起していたが、今回の叛乱を後押ししていながら失敗の時にはシラを切り通すための方便ということか。

 カリュンの中では今回の叛乱の全容が整理されつつある。
以前から、皇国の一部大商人の間では皇室に対する不満が募っていた。
その理由は、まず以って皇国軍の戦力拡張方針。
翼竜の強化、恐ろしく高価だが少数の近衛艦隊の整備、そして高価だが少数の陸戦装備。
これらの皇国国産兵器に加えユウジルド王国から大量に輸入される魔石類で皇国の軍事予算の大半が占められる。

797 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/05(火) 01:42:24 [ .jWdN08I ]
皇国は、少数精鋭の軍備で以って帝國に対抗しようとしている。
これは、高度な技術を持ちながらコスト面から敬遠されていたような商人や技術者が台頭するのに引き換え、従来の汎用軍船を大規模に建造し、大量の火器、装備品を調達する旧時代の軍需商人達が黄昏の時を迎えていることを意味する。
結果、皇室への忠誠心を上回る不満を抱える商人が出現する。

恐らく帝國人に紛れてダークエルフが皇都に潜入し、煽動したのだろう。
資金や武器の援助、それから親帝國政権(これは帝國の支配下に組み込まれることを意味するが)下でのさまざまな特権を餌にした、というところだろう。
愚かなことだ。
帝國の独壇場となるような経済体制において、叛乱に功のあった特権商人などいつまでも存続できるものではない。
彼らが帝國にとって利用価値があるのは、皇国が帝國と対立している現状においてのみだというのに。

798 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/05(火) 01:43:36 [ .jWdN08I ]
 叛乱人どもの十年後の将来設計よりも今宵のわが身の振り方を優先したいが、如何せん打つ手がない。
皇太女とはいえ臨時に統帥権を委ねられているし、
実際に命が下達されれば全軍電雷が走ったように付き従うだろう。
だが外部との連絡が遮断されている現状では軍と接触できないし
斎聖殿などその神聖さが一人歩きし近衛すら近づこうとしない。
中央集権を推し進め、王家の政治介入を排除した結果出来上がったのが、皇主の命令がなければ一発の銃弾も撃てない軍だ。
何かおかしいと感じても積極的に皇宮の中に入り様子見をすることはないだろう。
今頃私の命がないため動かず、その間に叛乱軍は私の命と称して皇都の中枢を押さえ、要人を拘禁ないし殺害していることだろう。

本当、肝心なときに役立たずな軍ね。
その責任の大半は軍組織を作り上げた歴代皇主にあるのだが。

誰か積極果敢で型破りな軍人はいないかしら。
斎聖殿での戦闘も辞さず、叛乱軍の包囲を突破して私の元に駆けつけてくれるような軍人は。
ともかく、手元の命令を皇都中の軍に伝えるだけで叛乱は収束するのに。

799 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/05(火) 01:44:49 [ .jWdN08I ]
皇都皇宮斎聖殿上空


 レイの夜間視力が頼りないことを差し引いても、斎聖殿付近の敵兵力は軽く二百以上。
恐らく殿内も含めれば、四百を超えるだろう。
その上、愛騎の背中に備え付けられた戦術魔道通信端末からは、皇太女殿下の私兵(叛乱軍の誤認とみて間違いない)は帝國風の武器を所持しているという情報が飛び込んでくる。
単騎突破は無理だろう。
地上部隊は時間がかかる。斎聖殿を目指している間に叛乱軍は大規模な兵力を集結させるだろう。
翼竜が、少なくとも一個士隊(一二騎)、欲を言えば三個は必要だ。
近場で、私の顔と身分が割れていない翼竜部隊。
好みではないが地軍に頼るしかないようだ。

姉様、すぐに戻ります。
レイは呟くと斎聖殿を後にした。

800 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/05(火) 01:45:28 [ .jWdN08I ]
投下終了

長くなったのでここでカット

801 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/05(火) 06:43:04 [ l/fRk0Rw ]
しろべえさん乙

802 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/05(火) 10:45:33 [ yq9lkYzY ]
シロべえ様、投稿乙です。
>皇国国産兵器に加えユウジルド王国から大量に輸入される魔石類で皇国の軍事予算の大半が占められる。
ユウジルド王国、儲け過ぎですね。何かとバータ取引出来れば良いのだけれど。


780様、ヨークタウン様、名無し三等兵様、シロべえ様、有難う御座います。
今回はネタばれになってしまうので、短めです。御免なさい。

>>780>>781
これは次回以降明らかに……

>>782
>黒部中尉はかなり危ない状態ですね。
現在、六波羅の地下牢で拘束中です。哀れ。

>>783
>帝國内部の問題の有る相手だったのかな?
今回、その一端が明らかになりました。が、まだまだ疑問が……

>>785
>きっかけは子供の何気ない一言だったのに。
黒部中尉にとっては、災難でした。

>>786
>ダークエルフの憲兵なんて恐すぎ
憲兵は、原則として異民族を受け入れていません。ダークエルフでも、です。
それから考えても、この憲兵隊の異様さと特殊さが……

>>790>>791>>792
日本の情報は盗み放題ですよねえ。産業関連も加えたスパイ防止法は必要でしょう。
……まあ出来たとしても、せいぜい『懲役10年以下』程度だろうなあ。
最高刑が死刑じゃなければ、抑止にはならないと思う。

>>793
>黒部中尉大丈夫かなあ? 昇進に響いたりしませんよね?
下手すれば軍法会議です。
しかも略式の上、裁判長は悪意ありまくり(笑)

803 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/05(火) 10:46:12 [ yq9lkYzY ]
SS投下。

804 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/05(火) 10:46:43 [ yq9lkYzY ]
「帝國召喚」外伝4『辺境警備隊隊長よもやま物語』08-5

9、

中山憲兵少尉の指揮の下、レディング鉱山は厳戒態勢に入った。

鉱山の各出入り口は閉鎖・封印され、居住区内をはじめとする鉱山要所には、土嚢が積み上げられる。

鉱山にある2基の監視塔にも、三八式重機関銃が大量の銃弾と共に運び込まれ、物々しいことこの上無い。

勿論、残留する35名の将兵も完全武装だ。


現地労働者達には、労働の一時停止と当座の食料三日分――労働が無いので基準の七割――が配給され、同時に禁足令が言い渡された。

……『破ったら即射殺』という警告と共に。

数少ない非戦闘員の帝國人にも、やはり当座の食料三日分――こちらは基準通り――が配給され、同時に禁足令が言い渡される。

現地労働者と違う点は、『居住区域内なら出入り自由』であることと、自衛用として各人に一四年式拳銃1丁と弾丸16発が貸与された点だ。

(居住区域内とはいえ、外に出るときには必ず拳銃を携行すること。家でも拳銃は身近に置くことが、貸与と同時に義務付けられている)

これだけを見ても、帝國軍にとって『身内』はあくまで帝國人のみであり、現地労働者、特に流民は『他人』に過ぎないということが如実に分かるだろう。

805 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/05(火) 10:47:14 [ yq9lkYzY ]
帝國軍は、外敵の他、内部の現地労働者に対しても、露骨に警戒の目を向けていたのである。


「では中山少尉、後を頼む」

「お任せ下さい!」

本郷少佐は中山少尉に後を任せると、カウナス少尉と2個小銃分隊を率い、出発する。

「出動!」

2台の竜車――鉱山の動力用として飼われていた竜に荷台を繋いだもの――は勢いよく走り出した。

(尚、動力用の竜を他の目的に使用することは厳禁されているが、『超法規的措置』として、本郷少佐が強引に押し切った)


10、

――タブリン地区司令部。

その地下営倉で、黒部中尉は拘束されていた。


話は暫し遡る。


地区司令部に出頭すると、黒部中尉は直ぐに司令官に呼び出された。

806 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/05(火) 10:47:44 [ yq9lkYzY ]
……実は、いきなり地区司令部に出頭を命じられた時点で、薄々『怪しい』と感じてはいたのだ。

そして『司令官が呼んでいる』と聞いた瞬間、疑念は確信に変わった。

(それまでは『事情説明だけだろうから、他の者が処理するかもしれない』と、一縷の望みをかけていた)


黒部中尉と現司令官は馬が合わない。 ……というか、向こうが一方的に敵視している。

黒部中尉が、前司令官に目をかけられていた――少なくとも現司令官はそう思い込んでいる――のが原因だろう。

(前司令官時代、現司令官は副司令官であり、何かにつけて前司令官と対立していたのだ)

それ故、『前司令官派』である黒部中尉は、現司令官の昇格後に、ダソレル勤務の中隊長から辺地の警備隊長へと追いやられたのである。

故に、普通ならば顔も見たくない筈だ。 ……普通ならば。


……こりゃあ何か、俺を責める材料を見つけたかな?


そう当たりをつけるも、心当たりは無い。

(あるとすれば、時期的に見ても『今回の事件』だろうが、それにしても……)

「レディング鉱山警備隊隊長、黒部中尉入ります!」

不審に思いつつも、黒部中尉は、覚悟を決めて司令官室に入室した。

807 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/05(火) 10:48:15 [ yq9lkYzY ]
11、

「中尉、よく来たな」

地区司令官こと松島中佐は、如何にも機嫌が悪そうな声で、黒部中尉に話しかける。

「ハッ! 出頭命令に基づき、至急出頭致しました!」

「貴官を呼んだのは他でもない。今回の『捕り物』についてだ」

「はあ」

内心『やはり』と思いつつも、何故それで司令官の機嫌が悪いのか分からない。

(顔も見たくないのだとしたら、他の者に任せれば良いのだ)

「中尉、君は実に余計なことをしてくれたものだな?」

「……は?」

何を言っているのだ? この人は?

「……恐らく君は、『犯罪を見つけて大手柄』とは燥いでいるのかもしれないが、実に『考え無しなこと』をしでかしたものだよ」

「しかし!」

「我々が、『間引きに気が付いていない』とでも考えたのかね? ……愚かなことだな」

「! まさか、気付いておられたのですか!?」

808 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/05(火) 10:48:46 [ yq9lkYzY ]
馬鹿な。アレは、まさしく帝國が採掘した鉄鉱石だ。


それを奪われたというのに、『見逃していた』というのか!?


「ふむ、納得出来ない様だな? ならば説明してやろう」

司令官は軽く頷いた。

「君も、タブリン人官僚の無能振りと、強欲振りは知っているだろう? 連中は、口で言っただけでは動かん」

それついては百も承知である。

それ故に、帝國はタブリンを直轄領にしなければならなかったのだ。

(資源地帯のど真ん中に、不安定要因があっては困る)


力を誇示し、服従させ。

自力で国内を安定出来ないために、直轄領とし。

口で言っても分からないので、軍を置いて常に威嚇する。

――そこまでして、やっとここまで安定したのだ。


「だが、矢張り力だけでは駄目だ。鞭だけでは無く、飴もしゃぶらせてやる必要があるのだよ」

「……『だから』横流しを黙認したのですか?」

809 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/05(火) 10:49:16 [ yq9lkYzY ]
黒部中尉は呆れる。

現在の統治ですら、現地の役人達は好き勝手――以前よりは百倍マシだが――にやっているのだ。

帝國もそれを知っているが、余りにも目に余る者以外、積極的な処罰は行っていない。精々、偶に運の悪い者が『自爆』する程度である。


……この上、更に『目をつぶる』だと?


信じられない。

確かに絶対額から言えば、今回の件は『余りにも目に余る』とまでは言えないのかもしれない。

(確証は無いが)

が、連中が奪ったのは『帝國が採掘した資源』である。

現地人からの年貢を誤魔化したり、賄賂を取ったりするのとは、少々次元が違うのではないだろうか?


「納得出来ない様だな? が、これには理由があるのだ」

「理由?」

「今回の事件の黒幕は、タブリン現地軍の軍団長バザルだ」

「バザル軍団長!? まさか!」

意外な名前を聞き、黒部中尉は驚愕した。

810 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/05(火) 10:49:46 [ yq9lkYzY ]

バザル軍団長のことは、黒部中尉もよく知っている。

何しろレディング鉱山は、バザル軍団の守備地域内にあるのだ。

が、何もそれだけが理由では無い。

彼は、タブリン軍人としては珍しく有能かつ熱心であり、匪賊討伐にも積極的であると評判だったからだ。

(そして自分自身の経験――中隊長時代の――からも、その評判は肯定すべきものと考えていた)


「意外な様だな? が、事実だよ」

司令官は、驚愕の表情の黒部中尉を、面白そうに眺めながら話を続ける。

「彼が、我等にとって有用な存在だということは、言うまでもないだろう。  ……だが悲しいかな、所詮は下級貴族に過ぎない。
本来ならば中隊長止まりのところを、我等の推薦で『何とか軍団長にした』という所が実際だ」

それは知っている。

彼は下級貴族出身でありながら、僅か一年足らずで、副中隊長(正確には先任小隊長)から軍団長に抜擢されたのだ。

(帝國統治下、それも帝國の積極的な推薦が無ければ、とても不可能な人事であっただろう)

……とはいえ、流石にこれが限界だ。

811 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/05(火) 10:50:17 [ yq9lkYzY ]
これから十数年間は、軍団長のままだろう。 

(たとえ帝國の推薦でも、下級貴族を将軍にするのは、非常に困難なことなのだ)

「その件はまあいい。とりあえず軍団長でも役に立つ。 ……問題はこれさ」

そう言うと司令官は、親指と人差し指を繋ぎ、手に輪――おそらく金銭のことだろう――を作った。


軍団長は、500人からの兵を持つ。

高い士気を保つためには、彼等にも十分な食料や俸給、そして武器を与えなければならないが、軍から支給される経費や装備ではとても足りない。

加えて、従卒や軍師、副官といった『竜廻り』については自分で賄わなければならないし、軍団長として恥ずかしくないだけの装備――著しい出世のせいで先祖伝来の装備では不足――も整える必要もある。

「……この出費は、下級貴族じゃあ厳しかろうなあ。が、周りの目もある。我等が直接手を貸す訳にもいかんのだ」

だからこんな迂遠な手を使ったのさ、と笑う。


司令官の内意を受けた担当者が、『横流し分』を差っ引いて帳簿に計上する。

後は、『横流し分』を別の所に保管するだけだ。

それを、黒部中尉が捕まえた連中が運んでいく。

812 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/05(火) 10:50:49 [ yq9lkYzY ]

そして、それを仲介するのが鉄商人ザルカ。

只で手に入れた鉄鉱石で鉄を作って売り捌き、巨利を得る。勿論、利益はザルカと折半だ。

更に、その鉄の一部で武器防具を作り、寄進と称して格安――それでも損はしない額――でバザルの軍団に売る。

これで軍団の装備は整えられるし、バザルにも軍団長としての格式を保ち、かつ部下の面倒を見てやれるだけの金が手に入る。正に一石二鳥だ。

(ザルカが大儲けするのは、仲介料と口止め料ということだろう)


「それを貴様はぶち壊した! しかも、よりによって帝都から来た憲兵が巡回している時に、だ!」

司令官は激昂し、机を叩く。

「『帝都から来た憲兵』、ですか?」

何故、こんな辺境に……

首を捻る。

彼等が、何の目的も無しに動き回るとは、とても思えないのだ。


偶々、か? それとも……


が、思考は司令官の声で中断を余儀なくされる。

813 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/05(火) 10:51:21 [ yq9lkYzY ]
「手柄を立てたい阿呆共が、現地の事情も知らずに乗り出してきたよ! まるでハイエナの様にな!」

なるほど。確かに帝都から来た憲兵なら、規則通りに『犯罪者』を取り締まるだろう。 ……下手をしたら、タブリン地区の帝國軍にも飛び火しかねない重大事だ。

「しかし、納得がいきません。何故その様な、こそこそとした真似をなさるのですか?」

一見、納得出来そうな説明ではあるが、やはり納得できない。

この様なことが露見すれば、帝國の権威は地に落ちるのでは無いだろうか?


……が、その意見は火に油を注ぐだけだった様だ。

その言葉に、司令官は更に怒り狂う。

「政治も知らん若造が、偉そうなことをぬかすな!」

「お言葉ですが、同じ闇給与を渡すにしても、こんな犯罪まがいの真似ではなく、公費から出せば良かったのでは?」

「だから貴様は若造と呼ばれるのだ! 一個人に対する利益供与なぞ、認められる訳が無かろう!」

「しかし帝國は、悪党共にすら利権を与えているのですよ? ならば、帝國の役に立つ人材に、認められない筈が……」

そう言いつつ、黒部中尉は首を捻る。 

……何かがおかしいのだ。

814 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/05(火) 10:51:51 [ yq9lkYzY ]
「あれとて現地での便宜を図っただけで、直接与えた訳じゃあ無いだろう! 帝國自身は、一銭たりとも払っていないぞ!?」

……やはりおかしい。

何だろう?

話の内容にも気にかかるが、それ以上に司令官の態度がおかしい。

何を、そんなに怒り狂っているのだろうか? あまりに異常だ。


……自分にも、火の粉が降りかかろうとしているから、か?


確かに今回の件は、軍法会議にかけられてもおかしくない事件だ。

が、『帝國のためにやったこと』と主張すれば、弁護する者は大陸に幾らでもいるだろう。

現地を統治するには、何事も杓子定規では済まない。賛成反対は別としても、同情者や弁護者には事欠かないのだ。

(黒部中尉にしても同様だ)

加えて、これは南ガルム方面軍の管内で起きた事件である。

自分達の縄張りで無断に捜査した上、軍法会議まで本土の憲兵に任す様な真似は、絶対に許さない筈だ。

815 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/05(火) 10:52:23 [ yq9lkYzY ]
そして方面軍内での裁判ならば、それこそ同情者や弁護者には事欠かない。

せいぜい『訓告及び減俸の上、数ヶ月の謹慎処分』、といったところではないだろうか?

まあ経歴に傷はつくかもしれないが、どうせ今(中佐)以上の出世は見込めないのだから、それ程問題は無いだろうに。


……冷静に考えれば考える程、違和感は膨れ上がる。


「このままで済むと思うなよ! 今、貴様のこれまでの行動を徹底的に洗い出している! 絶対に軍法会議にかけてやるからな!」

「!?」

司令官は最後にそう吐き捨てると、黒部中尉を営倉に放り込んだ。

罪名は、上官反抗罪。


黒部中尉にとって、甚だ不本意であった。

816 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/05(火) 10:52:53 [ yq9lkYzY ]
SS投下終了。

817 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/05(火) 12:01:08 [ KR5dEv4. ]
うわ、司令怪しいなぁw

818 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/05(火) 12:31:50 [ .jWdN08I ]
くろべえ殿 投下乙

松島中佐、なーんか裏がありそうですねえ。
それにしても帝國が巨大な領地と数多の邦国を支配下においても
司法制度(軍法会議含む)が進歩してないとなればお寒い限りですねえ

>ユウジルド王国、儲け過ぎですね。何かとバータ取引出来れば良いのだけれど。

王国が生産(世界シェアナンバー1)していましたが、例外的に皇国に輸出しました。(両国に限らず魔石類を輸出するのはきわめて例外です)
とはいえ、王国も対帝國戦には不可欠なので海外から闇ルートを使って取り寄せて不足を補うほか、皇国の翼竜で相殺しようとしています。

819 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/05(火) 16:30:51 [ F5q7wA42 ]
この司令官・・・確実に裏持ってる
やはりクーデター派か?

820 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/05(火) 17:05:01 [ 003Fn6oo ]
鉱山利権の一部ををポケットの入れてるな?

821 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/05(火) 18:31:34 [ Schjr.C6 ]
人買い市場で買った女を複数囲っていると見た!
・・・冗談はともかく、中央に戻れる希望も出世の望みも無い「先が見えた男」が
赴任先で中央の目が無いのを良いことに蓄財に励んでいたんだろう。
それが、帝國内諜報網と憲兵司令部に発覚したと。
やっぱり、帝國が邦国一千時代に突入してこれだけ拡大したのですから
「武装憲兵連隊」とか「巡回法務官」が必要ですよ。
各部隊や土地に配属された「草」や「隠密」と一緒に。
基本的なところで「帝國」は連邦国家じゃなく「中央集権国家」なんですから。
「辺境軍」が土地の権力と結びついて独立勢力と化すなんざ、古くはローマ、
最近ではお隣の今度五輪をやる国のようにありふれています。
ソ連では、政治将校と内国監視網、アメリカでは・・・とりあえず衰退し始めたら
見物ということで。

822 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/05(火) 19:30:56 [ KYTPqnKQ ]
あそこはウサウサとハリウッドからのプロパガンダで括ってる感じがするとです。
2マナの持ち合わせのない人間たちはそれに従って……え?話が違う?

823 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/09/05(火) 22:28:36 [ DUErFeR2 ]
シロべえさん、くろべえさん、投下乙です。

怪しすぎますよ、司令官(笑)。
膿はしっかりと出しておかないとなあ。

824 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/05(火) 23:12:04 [ .ivlx4a. ]
みんな騙されるな!これは辻ーんの罠だ!!

825 名前:239 投稿日:2006/09/05(火) 23:20:35 [ lXgnFIfs ]
>>824
愛国義烈軍人辻ーんに限ってそのようなことは無い!!

断言できないですけど……(´・ω・`)

826 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/06(水) 01:04:39 [ XQjSounM ]
あるゆる悪事の裏側で暗躍する辻の影・・・やはりヤツはショッカーだ!


地獄大佐ツジ率いる獣人軍団vs仮面バロン“西”との死闘が始まる・・・。

827 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/09/06(水) 01:06:06 [ DUErFeR2 ]
>>824
辻ーんなら鉄鉱石の密輸なんてみみっちい事じゃなくて、
もっと大きな・度肝を抜く事をするに違いない!

828 名前:名無し三等楽士@F世界 投稿日:2006/09/06(水) 01:47:52 [ r9DJpMoo ]
辻ーんは1を聞いて10を勝手に作る人なのに、鉄鉱石の買い付けなんてやらせたら何をやらかすのやら…

829 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/06(水) 02:23:54 [ Q72KNyfE ]
その鉄で空母機動部隊を作る(陸軍の)

830 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/06(水) 08:25:48 [ yq9lkYzY ]
>>817
>うわ、司令怪しいなぁw
ぶっちゃけ、司令も私腹を肥やしています。それだけではなく……

>>818
シロべえ様、有難う御座います。

>それにしても帝國が巨大な領地と数多の邦国を支配下においても
>司法制度(軍法会議含む)が進歩してないとなればお寒い限りですねえ
領土の急激な膨張に、対応が追い付いていないのですよ。何しろ、過去に例の無いほどの膨張振りですからねえ。
加えて帝國は、開発で精一杯の状態です。資源開発が第一、よって現地の早急な安定こそが第一命題なのですよ。
よって現地統治に関しては、『かなりの譲歩』及び『現場での臨機応変な対応』を行っています。
これは止むを得ないことでしたが、後々高いツケを払うことになるでしょう。

>>819
>この司令官・・・確実に裏持ってる
次回以降、この司令官の事情が明らかに……

>>820
>鉱山利権の一部ををポケットの入れてるな?
です。塵も積もれば……

831 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/06(水) 08:26:20 [ yq9lkYzY ]
>>821
>やっぱり、帝國が邦国一千時代に突入してこれだけ拡大したのですから
>「武装憲兵連隊」とか「巡回法務官」が必要ですよ。

ちなみに、現在の制度では……

<本土>
従来通り、高等軍法会議(長官は陸軍大臣)、軍軍法会議(長官は軍司令官)、師団軍法会議(長官は師団長)の常設軍法会議が担当します。
対象は、現役軍人、軍属、召集中の軍人、捕虜、特定の犯罪を犯した民間人『等』です。

<大陸>
方面軍軍法会議(長官は方面軍司令官)、軍管区軍法会議(長官は軍管区司令官)、師管区軍法会議(長官は師管区司令官)、軍軍法会議(長官は軍司令官)、師団軍法会議(長官は師団長)の常設軍法会議が担当します。

対象は、現役軍人、軍属、召集中の軍人、捕虜、特定の犯罪を犯した民間人、及び現地人『等』です。(帝國人の民間人はいませんが)

この他にも、大陸では必要に応じて臨時軍法会議が特設されます。この場合の長官は、部隊や地域の司令官ですが、その最たる例は地区軍法会議でしょう。

*これは仮設定です。

>>823
名無し三等兵様、有難う御座います。

>怪しすぎますよ、司令官(笑)。
露骨過ぎますよね。今の心情としては、『死なば諸共』?

>>824〜829
あの人なら、もっと金目のものを……

832 名前:239 投稿日:2006/09/06(水) 09:32:21 [ f4PyIywQ ]
親王殿下降臨キターー!!!!!!!

833 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/06(水) 13:37:36 [ 4Vb..9NI ]
念願の男の子であられたようで…
ご立派な方に(願わくば次期天皇陛下)なられることを願ってやみません


チャラ男陛下になりません様に・・・(´・ω・`)

834 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/06(水) 17:31:51 [ pEJokseI ]
次代の天皇陛下は現皇太子殿下で、その次は皇室典範では秋篠宮殿下で
その次に・・・・愛子様の弟宮が生まれなければ・・・・になります。
ところで、君の発言を特高の刑事さんに教えました。
向こうでも元気でね(笑)

冗談はさておき、ダークエルフの憲兵がいると言うことは、同じく
ダークエルフの特高刑事が居てもおかしくはないよなぁ・・・
少なくとも、次世代とかには。

835 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/06(水) 21:21:12 [ F5q7wA42 ]
特高までダークエルフ化したらマジで日本乗っ取られてないか?
ただでさえ上流階級に食い込んでいるのにこのままだと吉田茂の危惧が・・・

上流 ダークエルフ
平民 もとの帝國臣民
奴隷 その他

ここまでいかんにしても心配だ・・・

836 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/06(水) 22:08:21 [ 6xNsOH/I ]
くろべえさん こんにちは
獣人少年の話で、帝國製子供番組が大人気とありましたが、
将来、帝國と邦国にテレビ網が張り巡らされたら
やっぱり帝國製の子供番組が大人気になるのでしょうね。
いや、これを見たらはまるだろうなと。向こうで子供に異常な人気ですし。
    ↓
 http://www.youtube.com/watch?v=gejSKSnREFQ

837 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/06(水) 22:26:48 [ yq9lkYzY ]
親王殿下御誕生、おめでとう御座います。
これで帝國は、あと数十年戦えます。

>>834>>835
>ダークエルフの憲兵
>特高までダークエルフ化
現在、司法・警察関係にダークエルフは進出していません。
(ダークエルフ自身も、『尚早』と考えています)
このダークエルフの憲兵も特例で、捜査や検挙については、帝國人上官の指揮の下でしか行えません。

>>836
特撮技術も魔法使えばかなりの物が出来るだろうし、スタントマンも獣人とかダークエルフがやれば……

838 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/06(水) 22:27:23 [ yq9lkYzY ]
さて、SS投下。

839 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/06(水) 22:27:54 [ yq9lkYzY ]
「帝國召喚」外伝4『辺境警備隊隊長よもやま物語』08-6

12、

『六波羅』は、貴族の別邸が集まる区域を接収し、周囲を柵と堀で囲んで、タブリンにおける帝國の中枢――総督府や地区軍主要部隊が集まる――とした場所である。

故に地区軍司令部も、元は某大貴族の別邸であり、地下営倉も地下牢をそのまま転用したものだった。


……なんで貴族の別邸に、地下牢なんかがあるのだろう? 座敷牢なら、まだわかるのだけどなあ。


そんな疑問を持ちつつも、何となく知らない方が良い様な気がして、慌ててその疑問を頭の中から追い出す。

(壁の所々にある黒ずんだ『染み』も、きっと只の汚れに違いない。うん、きっとそうだ)


黒部中尉は、あれからこの地下営倉に閉じ込められている。 ……どうやらあの司令官は、本気で自分を軍法会議にかける積もりの様だ。

別に疚しいことは無いが、万が一のこともあるし、あの司令官の様子だと、誇張や捏造すらやりそうで不安だった。

何しろここは、帝國から遠くはなれた異郷の地。詳細な事実確認など、期待出来ない。


黒部成之。異郷の地で死す、か……

840 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/06(水) 22:28:27 [ yq9lkYzY ]

無念だ。

この心の叫び、是非とも後世に残したい――そう考え、『帝國陸軍中尉、黒部成之。無実ノ罪デ死ス』と壁に刻み込む。


「……貴様、一体何をやっているんだ?」

そんな様子を、牢越しに呆れた様に眺める者がいた。

『先輩』こと、長谷川軍医大尉である。


13、

「! 先輩!」

「……一体、これは何の真似だ?」

「いえ、心の叫びを、是非とも後世に残したい、と考えまして」

「阿呆」

長谷川軍医大尉は、黒部中尉の戯言を、容赦無くその一言で切り捨てる。

「自分に酔うのは構わんが、営倉入りしてから、まだ半日も経っていないだろうが……」

「ここ、地下なので時間や日にちの感覚が無くなるのですよ。だからこうやって食事が来る度に、壁に印も刻んでいます」

841 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/06(水) 22:28:58 [ yq9lkYzY ]
良い手でしょう、と少し自慢げに話す。

「……まだ、一食しか来ていない様だが?」

「まあ、今の所はその通りですが、そのうち……」

長谷川軍医大尉は、深く溜息を吐く。

「馬鹿なことをやっているんじゃあない。いい年した大の大人――貴様、来年には三十だろう?――が、『岩窟王ごっこ』とは何事だ? 故郷の御両親が見たら泣くぞ?」

「……まだ29ですよ」

「俺は、来年の話をしたんだ。いつまでも遊んでないで、さっさと出ろ!」

鍵を開け、促す。

そして地下の番兵に、『あの壁の落書き、消しとけ』と、些か投げやりに命じた。


「先輩、いいのですか?」

自分は、一応『抗命罪』で営倉入りしていた筈だ。

「構わんよ。あの司令官、ありゃあもう『終わり』だ」

「『終わり』?」

黒部中尉は、首を捻る。

「あの司令官、鉱山資源の横流しをやっていたのだ」

842 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/06(水) 22:29:28 [ yq9lkYzY ]
もう話は広がっているのか。が……

「そりゃあ、多少やり方が拙かったかもしれませんが、幾らなんでも『終わり』は言い過ぎでは?」

「阿呆。あの司令官、横流しついでに、自分の私腹も肥やしていたんだぞ?」

「は?」

「だ、か、ら、自分も横流しして得た利益を着服し、私腹を肥やしていたんだよ!」

まあ、問題はそれだけじゃあないがな、と付け加える。

「しかし、何故そんな真似を?」

この恐ろしく物価が安いタブリンでは、中尉の自分ですら『御大尽』なのだ。

ましてや中佐なら……

「……面白い話をしてやろうか?」

そう言うと、長谷川軍医大尉は愉快そうに話し出した。


14、

ある所に、一人の男がいた。

男は陸軍中佐であったが、定年まで残り短く、大佐に昇進どころか営門大佐すら怪しかった。

加えて男の任地は、これまた恐ろしい程の辺境の地であり、残りの任期を考えれば、恐らく定年までここにいる羽目になるであろうことは、容易に想像が出来た。

843 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/06(水) 22:30:00 [ yq9lkYzY ]
……まあ、要するに『先の見えた男』だったのだ。


さてこんな男だが、任地で女が出来た。それも若く美しい、貴族の娘だ。

そりゃあそうだろう? 任地じゃあ占領軍の司令官様、地位と権力は相当なものだ。良い女を手に入れるなど、造作も無いことさ。

が、この女。その容姿に反比例にして、相当金遣いの荒い女だった。

加えて、取り巻き連中もいる。その消費たるや、かなりの物だ。

この調子では、如何な物価の安いタブリンとはいえ、そうそう金が持たない。


それに司令官……じゃなかった、男は婿養子であり、財産は全て帝都の細君に握られていた。勿論、俸給もな!

男が自由に出来る金など、始めからたかが知れていたのさ。 ……『独身貴族』の貴様とは違うんだよ。


そんな訳で、蓄えを使い果たすのに、さしたる時間は必要なかった。

男は、たちまちの内に、無一文になってしまったのさ。

が、今まで味わった蜜の味は忘れられない。

かと言って、金策のあては無い……


困り果てる男。

844 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/06(水) 22:30:31 [ yq9lkYzY ]

ここで、一人の商人が登場する。

商人は、男の赴任先の商人で、まあ言うなれば、『貴様と竜借屋の様な関係』だった。

男は、商人に借金の申し込みをする。

とは言え、相手は『商人』だ。返せる見込みも無い奴に、金は貸さんよ。 ……普通なら、な。

が、男は任地内では絶大な権力を持っている。こうなると話は別だ。

商人は、『機会到来!』とばかりに大金を貸す。

男が返せる見込みは無いが、そんなことはどうでも良いんだ。これは『投資』なのだから。


案の定借金は膨らみ、男は二進も三進も行かなくなった。『首も回らない』って状態だ。

そこまで来て、今まで黙って貸し続けてきた商人が、返済を願い出る。

『恐れながら、そろそろ……』とな。

……男は、さぞ震え上がっただろうなあ。

こんな不始末が、上に知れたら? 家内に知られたら? ……破滅さ。


そこで商人は、代案――本当はこっちが本命だが――を出す。

それが今回の事件、その始まりだ。

845 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/06(水) 22:31:03 [ yq9lkYzY ]

多少強引な手だが、合法と言えなくも無い。仮に露見しても、大した罰は受けないだろう。 

そりゃあ、借金のことが露見すれば問題だが、双方が黙っていれば誰にも分からないことだ。特別に調べない限りは、な。

いや実際、これを考えた商人に脱帽するね! よくここまで、我々のことを調べ上げたものさ!

兎に角、これで商人は大金――貸し金を遥かに越えた――が得られるし、男も借金を返せる。

両者共に、言うことなしだ。

ここで終われば、まあそれ程問題は無かったのさ。

……ここで終われば、ね。


15、

「よく、そこまで調べ上げましたねえ?」

感心する。この人、本当に只の軍医か?

「何、叔父貴の受け売りだよ」

「叔父貴?」

「叔父貴は、憲兵大佐なんだよ。憲兵総司令部付で、今ここに着てるんだ」

846 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/06(水) 22:31:34 [ yq9lkYzY ]
「任務での情報喋っちゃって、叔父さん大丈夫なんですか? ……って、ここに!? 憲兵大佐が!?」

驚愕。


司令官が言ってた『帝都の憲兵』って、憲兵大佐かよ…… 一体全体、何をやらかしたのだ?


だがこれで、あの時の司令官の恐慌振りが理解できた。

憲兵大佐といえば、憲兵隊本部長――言わば県警本部長みたいなもの――クラスの重鎮なのだ。

そんな大物が、直接指揮を執るということは……


……そりゃあ、怯えるのも無理無いよなあ。


しかし、憲兵大佐が出張るからには、何か相当大きな裏がある筈だ。

「話を聞く限りでは、只の『賄賂による便宜計らい』みたいですけどねえ?」

そんなケチな犯罪に、わざわざ憲兵大佐が出張るだろうか?

「俺も、そこから先は知らん。協力したので、当たり障りの無いところまでは教えてくれたが、それ以上は流石にな」

仕方ないことだが、と苦笑する。

847 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/06(水) 22:32:09 [ yq9lkYzY ]
「……ところで、自分等は何処に向かっているのです?」

このままでは、司令官室に着きますよ?

「司令官室さ。叔父貴が、『連れて来い』って言ったからな」

「……何故です?」

理由が分からない。

「さあ? が、叔父貴はなかなか『いい性格』をしているからな、気をつけろよ?」

何の用も目的も無しに、呼び出す訳が無い。あの人使いの荒い叔父貴のこと、きっと碌でもない目に会うだろうなあ。

――そう呟くと、健闘を祈るとばかりに敬礼する。

「じゃあ俺はここで。頑張れよ?」

「一緒に来てくれないのですか!?」

悲鳴を上げる。

憲兵大佐と司令官の一騎討ちの場になど、居合わせたくも無い。

「俺は駄目なんだ。重要な話だそうだから」

「じゃあ、何で自分が!」

「知らん! 叔父貴に聞け!」

そう言い残し、長谷川軍医大尉は帰ってしまった。


……司令官室の前に、黒部中尉を一人残して。

848 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/06(水) 22:32:49 [ yq9lkYzY ]
SS投下終了。

849 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/06(水) 22:47:18 [ yq9lkYzY ]
御免なさい。まだ中尉は28歳でした。

850 名前::名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/06(水) 22:51:43 [ t6CFb0x2 ]
投下乙です。

何時の世の、どんな世界でも女で人生ダメにするヤツって居るんですね〜(苦笑

851 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/09/06(水) 23:37:55 [ DUErFeR2 ]
くろべえさん、投下乙です。
黒部中尉、地下牢から1食で出れて良かったですね。
これから中尉がどうなるのか楽しみです。

852 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/07(木) 02:28:33 [ rV9H0.gg ]
くろ様、乙
>その容姿に反比例にして、相当金遣いの荒い女
しかしコレは……「もんの凄いブスの癖に金遣いが荒い」という
恐ろしい意味になると思うのですが。。。

853 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/07(木) 02:48:29 [ .ivlx4a. ]
だがその上に

>さてこんな男だが、任地で女が出来た。それも若く美しい、貴族の娘だ。

こういう一文があるぜよ
だから、清純ぽそうだったけど実際は牛丼特盛り生卵付きかっ食らって爪楊枝咥えてるみたいなもんじゃまいかw?

854 名前:長崎県人 投稿日:2006/09/07(木) 03:43:55 [ wXB4VivE ]
くろべえさん投下乙です!

しかしこれって手玉にとった貴族の娘さんはある意味英雄というかなんというか・・・のちに演劇モノになりそうな気が



右手があれで続きの投下がかなり遅くなりつつあります。待ってくださってる方がいらっしゃったら申し訳ないm(__)m

855 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/07(木) 12:06:36 [ 4opYXIHo ]
>この心の叫び、是非とも後世に残したい――そう考え、『帝國陸軍中尉、黒部成之。無実ノ罪デ死ス』と壁に刻み込む。

1食ということは精々半日だわなぁ。
その半日でここまで雰囲気出せる黒部中尉、良い味だしてるわw

856 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/07(木) 12:23:31 [ XpD6KBxY ]
>>855
何故かエクセルサーガのスネ夫ヘアーを思い出したw

857 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/07(木) 14:58:49 [ BI5umwz2 ]
いや、GS美神の平安時代編だろ。
あれは、女癖の悪い陰陽師が藤原氏ゆかりの姫にまで手をだして、だったよな。

858 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/09/07(木) 23:05:01 [ DUErFeR2 ]
>>855
確かに長谷川軍医大尉も
>営倉入りしてから、まだ半日も経っていないだろうが……
と言ってますしね。

しかし、刻み込まれたのを「消しとけ」と言われて困ってるだろうなあ。
かんなでもかけるか、ヤスリがけしないと。

859 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/07(木) 23:27:30 [ 7Axb/oTY ]
>>857
あっちは無実の罪でもなんでもないけどな
藤原氏ゆかりって大貴族もいいとこだから死刑以外ありえない

860 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/07(木) 23:51:00 [ Yi613abE ]
>>857
たしか高島って名前だったな、てか文殊って反則だと思った。

861 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/08(金) 00:26:56 [ sDQBA9wA ]
>無実ノ罪デ死ス
 だけ残して、下の方にご自由にお使いくださいと書き添えておくとかw

862 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/08(金) 12:08:43 [ yq9lkYzY ]
>>850
850様、有難う御座います。

女を見る目が無かったんでしょうねえ。恐妻に押さえつけられていたため、美女に擦り寄られたら直ぐに陥落した、と。

>>851
名無し三等兵様、有難う御座います。

一食で出れなしたが、気分は完全に『無実の罪で投獄され、死刑を待つ哀れな男』です。(笑)

>>852
852様、有難う御座います。

『比例して』でしたね。御免なさい。

>>853
美しいが、恐ろしいばかりの浪費家、ということで。 ……ホステス?

>>854
長崎県人様、有難う御座います。

演劇になるかもしれませんねえ。
『帝國の将軍(中佐だけど)を破滅させた稀代の妖女!』とか。

863 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/08(金) 12:09:14 [ yq9lkYzY ]
SS投下開始。

864 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/08(金) 12:09:45 [ yq9lkYzY ]
「帝國召喚」外伝4『辺境警備隊隊長よもやま物語』08-7

1、

――タブリン地区司令部、司令官室。

「……少し、落ち着いたらどうかね?」

まるで檻の中の熊の様に、先程から部屋の中を動き回っている松島中佐――タブリン地区司令官――に向かい、ソファにどっかり腰を下ろしている憲兵大佐が忠告する。

憲兵大佐は、まるで自分の部屋にいるかの様に寛ぎ、葉巻を吹かしている。

その後方には、ダークエルフの憲兵大尉と帝國人の憲兵軍曹が、直立不動で控えており、これでは誰がこの部屋の主か分からない。


「佐藤大佐、一体何の御用かは分かりませんが、早く本題に入って頂きたい!」

この状況に溜まりかねた松島中佐が、声を震わせながら叫んだ。

が、憲兵大佐はその叫びにもまるで動じず、かえって喉の奥で笑いながら、馬鹿にした様に諭す。

「……まあ落ち着きたまえ、中佐。慌てる乞食は何とやら、だぞ?」

「茶化さないで頂きたい!」

「まあ待て、まだ最後の一人が着ていない」

「最後の一人?」

松島中佐が首を捻る。 ――そこで、ノックの音が響いた。

865 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/08(金) 12:10:18 [ yq9lkYzY ]
「おや、来たようだな?」

松島中佐の疑問を無視し、憲兵大佐は『おう、入れ!』と来客を呼び込む。


「黒部中尉、入ります!」

「! き、貴様! 何故!」

黒部中尉の登場に、松島中佐は驚愕する。

「ああ、私が出す様に命じたよ。 ……いかんなあ、中佐。仮にも将校を、あんな簡単に営倉――それも重営倉――に入れるとは?」

彼が全ての始まりだし、とばっちりで投獄までされたんだ、聞く権利があるだろう?

――と、憲兵大佐は澄ましたものだ。

「憲兵に、そこまで口を出される謂れは無い! これは越権行為だぞ!?」

松島中佐は興奮の余り、口から泡を飛ばしながら叫ぶ。

……その様は、最早完全に常軌を逸していた。

「! そうか! 黒部、貴様は憲兵の狗だったんだな!? 俺の動向を、逐一この男に報告していたんだな!! 畜生! 殺して……」

最後まで言い終わらぬ内に、松島中佐は壁に激突した。

(憲兵大佐に殴り飛ばされたのだ)

「いい加減にしろ! 見苦しい! 貴様如き小物の動向なぞ、誰が一々調べるか!」

866 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/08(金) 12:10:53 [ yq9lkYzY ]
「う、う……」

憲兵大佐の一喝に、中佐は暫し呆然としていたが、やがて床に這い蹲り嗚咽し始めた。

「司令官……」

黒部中尉は、その姿に呆然とする。


こんな男でも、自分の上官なのだ。

そして何より、栄光ある帝國陸軍の中佐でもあるのだ。

……こんな姿は、見たくない。

誰が見たいものか……


まるで自分が侮辱されているかの様に、黒部中尉は唇を噛み締めた。

きつく握り閉めた手からは、血が流れている


「フン! まあ揃った事だし、始めるとするか!」

そんな黒部中尉の様子を鼻で笑い、憲兵大佐は本題に入った。

867 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/08(金) 12:11:24 [ yq9lkYzY ]
2、

「この男は、現地商人と結託し、不届きにも帝國の資源を着服、私腹を肥やしていた」

ビクッ!

憲兵大佐の指摘に、松島中佐は肩を震わせる。

「が、そんな下らん犯罪に、本来ならば私は関わらん。現地の憲兵に任せれば済むだけの話だ。 ……まあ大陸の憲兵諸君は、残念ながらこういった『目に見えぬ犯罪』には不熱心の様だが」

皮肉気に笑いながら、憲兵大佐はあっさりと同業者の批判をする。

その余りの率直さに、黒部中尉は目を丸くした。


憲兵大佐の言うことは、残念ながら事実であった。

大陸の憲兵達は、下士官兵の取り締まりこそ熱心に行っていたが、将校の『目に見えぬ犯罪』――特に現地との癒着や馴れ合い――の取締りには、どこか腰が引けていたのだ。

これについては、現地の帝國軍に大幅な裁量が認められている点も大きく影響しているだろう。どこからどこまでが合法か、非常に判断が難しいのである。

加えて現在の憲兵組織は、本土と大陸で分割され、大陸の各憲兵組織については、各方面軍司令官の元に置かれている。

故に、大陸の憲兵達は、その独立性を大きく損ねられていた。

(例えばタブリン地区の憲兵は、タブリン憲兵分遣隊として、地区司令部の隷下にある)

868 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/08(金) 12:11:56 [ yq9lkYzY ]
……これでは、大陸の憲兵達の腰が引けているのも、ある意味当然ともいえるだろう。


「……とはいえ、ここまで証拠が揃えば、さしもの大陸憲兵の諸君も動かざるをえなかっただろうな。だから私が来た理由は、そんなことじゃあない」

「と、いいますと? 失礼ながら、憲兵大佐という大物が直接出向く程の大事件に、心当たりはありませんが?」

そう言って、黒部中尉は首を捻る。

『自分が全ての始まり』と言われても、さっぱり心当たりが無いのだ。


――パサッ


が、憲兵大佐はその質問には答えず、代わりに何かを机の上に放り投げた。

「これは……中学校の教科書?」

それは数学、生物、化学、物理といった、極有り触れた中学校の教科書だった。

「我々が、密輸組織から押収したブツ、その一部だ」

憲兵大佐が、憮然とした表情で答える。

「? 密輸? ……こんな物を?」

「『こんな物』だと!?」

黒部中尉の何気無い一言に、憲兵大佐の怒りが爆発した。

869 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/08(金) 12:12:26 [ yq9lkYzY ]
黒部中尉も憲兵大佐の鉄拳を喰らい、壁に叩きつけられる。

「この阿呆共! この本の価値すら分からぬ愚か者共! この教科書一冊作るのに、一体我等は、我等の世界は、何百年の時をかけたと思っている!?」

憲兵大佐が吼える。

「例えば、この『元素周期表』! これは画期的な発見の一つだ! 今まで独立した存在だと考えられていた元素が、実は『全て一定の法則に支配されたもの』だという事実! ……これが、魔道士共に知れたらどうなると思う! 奴等は、錬金術師であり、学者でもあるのだぞ!?」

「!」


そう。一見、『たかが中学レベルの教科書』。

が、それはこの世界の学者達からすれば、『宝の山』でもあるのだ。

この世界の人間は、決して蛮族などでは無い。

特に、列強上層の人間達は、帝國から見ても十分優秀な人材だ。

彼等は、最初こそ手間取るだろうが、教科書の中身を十二分に理解するだろうことは間違い無い。

(ましてや、理解し易く書かれている『教科書』なのだ)

……そして、知るだろう。

『新たなる学問体系』の存在を、『新たなる知識』を。

場合によっては、魔道技術の発展すら促進させる可能性すら、充分考えられるのだ。

870 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/08(金) 12:12:59 [ yq9lkYzY ]

「松島中佐! 貴様は金に目が眩み、教科書を売ったな! 全て判明しているぞ!」

「あ、あ、あ……」

松島中佐は、顔面蒼白だった。


ちがう、ちがう、そんな積りじゃあ無かったのだ。


松島中佐とて、仮にも帝國軍人の端くれだ。愛国心はある。

もしもこれが、軍機といった機密情報や、兵器といったものなら、決して売らなかっただろう。

が、『たかが教科書』である。

――教科書一冊が、正金貨十枚!

この取引に目が眩んだのだ。

(これが『金貨一袋』とかなら、少しは怪しんで警戒しただろうが……)


これだけあれば、今の犯罪からも手を切れる!


そう考えた松島中佐は、この話を持ちかけた出入り商人の一人に、教科書を売ってしまう。

たかが教科書、それも一冊だけ、と軽く考えたのだ。

871 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/08(金) 12:13:29 [ yq9lkYzY ]
が、『悪銭は身につかず』。

その言葉どおり、金貨は直ぐに消えてしまう。

既に一線を踏み越えていた松島中佐は、一冊、また一冊と教科書を売却していった。


「出入りの商人の正体は、ローレシア王国の間諜だ」

「そっそんな…… 馬鹿な…… 何故、こんな辺境に……」

憲兵大佐の言葉に、松島中佐は驚愕する。

じゃあ、俺のしたことは……

「辺境だからこそ、だ。レムリアと違い、警戒もゆるいし、軍人の口は更に軽い」


最近、列強――特にローレシア――の間諜の動きは活発だ。

特にローレシアは、帝國の資源供給状や統治状況、そして何より技術情報を、貪欲に求めている。

……今回の教科書密輸騒ぎも、氷山の一角に過ぎないのだ。


「無論、この様なことを行っているのは、貴様だけでは無い。が、だからといって、それが貴様の免罪符にはならん! 貴様が、貴様等がしでかしたことの結果が、これだ!」

そう言い捨て、憲兵大佐は更に何かを放り投げた。

それは、一枚の写真だった。

872 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/08(金) 12:14:00 [ yq9lkYzY ]
「ローレシアに潜入させた連中が遣したものだ。その写真を最後に、消息を絶ったがな」

「これは…… まさか、蒸気機関!?」

それは、昔本で見た『ワットの蒸気機関』にそっくりだった。

そして、それが意味することは……

「そうだ。奴等は、試作段階とはいえ『蒸気機関』の開発に成功した。 ……今まで、人力や獣力を動力にしていた連中が、遂に蒸気機関を手に入れのだ」

これから数年で、ローレシアの工業生産力は、爆発的に増えるだろう。

勿論、噂に聞く前装式施条銃『アントノフ』や新型魔道砲も。

(もしかしたら、後装式の小銃や砲すらも)

「ローレシアは、国王による完全な中央集権国家だ。他の国と違い、一端動き出したら早い。蒸気船の計画すらある様だ。これを軍用に転用するとすれば、真っ先に考えられるのは『飛竜母艦』だろうな」

『飛竜母艦』。

呼んで字の如く、飛竜――恐らくはワイバーン・ロード――を搭載した母艦。

無論、登場するのに五年や十年はかかるだろうし、仮に実用化しても、暫くは『十騎前後搭載するのがやっと』と思われる。

が、それでも……

「海上交通には脅威だ。何処にいるか分からん敵を探し出すことの大変さは、先の大戦でも嫌という程見ている」

873 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/08(金) 12:14:32 [ yq9lkYzY ]
これに対抗するため、既に海軍では、海上護衛総隊への護衛空母6隻の移管を決定している。

(まあ、何もこのことだけが理由ではないが、大きな理由の一つには違いない)


「そんな積りじゃあ、なかったんだ……」

松島中佐が、振り絞るかの様に呻く。その顔は、まるで死者の様だ。

「『そんな積りじゃあなかった』? ハッ! 貴様等の愚かな行為により、列強は加速度的に進歩しようとしている! 
戦争にでもなれば、帝國臣民は、より多くの血を流す羽目になるだろう! 全て貴様等の、いや『お前のせい』だ! お前は『売国奴』だ!」

「あ、あ、あ……」

『売国奴』という言葉に、余程衝撃を受けたのだろう。

松島中佐は蹲ったまま、虚ろな目で何かをつぶやき続けている。


「ザグレブ大尉! 松島中佐を逮捕、連行せよ!」

そんな様子を見た憲兵大佐は、軽く舌打ちすると話を打ち切り、先程から後ろに控えていたダークエルフの憲兵大尉に命じた。

「しかし、自分には逮捕権はありません」

ザグレブ憲兵大尉は、戸惑ったかの様に答えた。

874 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/08(金) 12:15:02 [ yq9lkYzY ]

実は、各所に進出しているかの様に見えるダークエルフではあるが、司法・警察関係には未だ未進出の状態である。

これは流石の帝國人も、『異種族に裁判・逮捕されたら敵わない』という強い思い――或いは反発――があるのに加え、当のダークエルフ自身にも、『時期尚早』との判断があるからだ。

ダークエルフは賢明である。もし自分達が、犯罪者とは言え帝國人を逮捕すれば、必ずや帝國人からの反発があるであろうことを、充分理解していたのだ。

(この様な考えから、大陸の帝國人に対するダークエルフの調査も腰が引けており、結果としてより多くの情報が、列強に流出する大きな原因の一つになったことは否めないだろう)

今回のダークエルフの憲兵入りも、佐藤憲兵大佐の強い要請により、『逮捕権及び強制捜査権を持たない』という条件で、ザグレブ以下の一隊を渋々派遣したのが実情である。

「『帝國人上官ニヨル命令ノ下デノ、逮捕及ビ強制捜査ハ可能』となっている筈だが?」

「……畏まりました」

ザグレブ憲兵大尉は、渋々松島中佐の傍により、『失礼します』と立ち上がらせ、連行しようとする。

「手錠をつけろ!」

「それは…… 余りにも……」

「命令!」

875 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/08(金) 12:15:33 [ yq9lkYzY ]
ザグレブ憲兵大尉は、済まなそうに手錠をかけると、手錠をハンカチで隠し、部屋から連れて出て行く。


「司令官……」

黒部中尉は、その後姿を呆然と見送る。

……何故、こんなことになったのだろう?

確かに司令官とは馬が合わなかったが、彼は決して悪人では、ましてや売国奴では無かった筈だ。

自分と司令官の間に、差があったとも思えない。

なのに司令官は逮捕され、自分は結果として引導を渡す羽目になり、こうしてその後姿を眺めている。

が、幾ら考えても分からない。

堪らず、目を逸らす。

「見ろ!」

憲兵大佐が叱責する。

「何れああなったとはいえ、今回の件の引き金を引いたのは貴様だ! 男なら、己がしたことの結果を、最後まで見届けろ!」

「ハッ!」

876 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/08(金) 12:16:36 [ yq9lkYzY ]

黒部中尉は、直立不動し、松島中佐の後ろ姿を見送った。

……それは大した時間ではなかったが、黒部中尉には、恐ろしいほど長く感じられた。


最後に竜車に乗り込むその瞬間、急に松島中佐が振り返った。

その目は依然として虚ろであり、何を見ているかも分からなかった。

が、黒部中尉にとって、それは一生忘れられない光景となった。


松島中佐が、獄中で縊死したのは、それから数日後のことである。





SS投下終了。次回で何とかこのエピソードは終わりです。

ぶっちゃけ、大佐は言い過ぎです。分かってて言ってますが。
要は、大陸の軍人の意識改革のため、今回利用された訳ですよ。松島中佐は。
スケープゴートですね。

877 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/08(金) 13:40:03 [ reG4AbKQ ]
縊死するまでの数日間に全部話してくれましたかね?
こういうのは、犯人が情報を抱えたまま死んでしまうのが一番やっかいなので。
・・・しかし、憲兵大佐ですか。
中尉が呼ばれる前、先輩との間で「あいつは俺の弟分なんですよ。あんまり苛めないでやってください」
「わかっとる。多少将校として気合いを入れてやるだけだ」と叔父と甥の会話があったかと。

そして、その後、叔父と甥のコンビから「お前も子持ちの未亡人を囲っておるから
痛くもない腹を探られるんだ!さっさと所帯を持ってしまえ!あ、帝國の籍は難しい?
なに、ダブリンのことなんだから祝言をここの帝國軍と貴族らの前であげてしまえば
誰もそんなこと気にはせん!」とか言われるような気がします・・・。

878 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/09/08(金) 14:08:43 [ ToMVwDhk ]
くろべえ氏、投下乙。


ついに列強も技術革新が始まりましたか。
次の戦争はきつくなりそうですな。

879 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/08(金) 14:24:46 [ qeKNLg6g ]
これが帝國の終わりの始まりだった

880 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/08(金) 14:32:14 [ RpxFCjzQ ]
帝国というよりはF世界文明の・・・になるな

881 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/08(金) 14:39:59 [ vK5QDXN6 ]
E=MC^2は乗ってないので何とかなります。
アンモニア程度は工業合成法が乗っているかもしれませんね。窒素肥料の元。
やはり帝国の第一ターゲットは露助ですか。
見せしめの意味で報道しないと意味がないので中佐の家族も自殺コースですね。

何より一番気になることは「アカの書」が敵に渡ってしまったかです。

882 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/08(金) 14:45:01 [ AJDYN5zc ]
蒸気外輪船>スクリュー船の間って結構年月開いてた気がするんですが
そんな簡単に行くかな?
昔の教科書って写真とか載ってないですよね?

883 名前:名無し三頭兵@F世界 投稿日:2006/09/08(金) 14:46:42 [ xg0l1Cog ]
蒸気機関をローレシアが手に入れましたか・・
まあ帝國の蒸気タービン機関とは比べ物にならないとはいえ、
列強諸国の社会が大変革を遂げる日も近いでしょう。
近いうちに原始的な鉄道も作るかも。
教科書は文明の塊ですからねえ。
この世界に一番影響を与えた帝國人として中佐の名は永遠に記憶されるかもしれません。
・・・そのうち教科書に刺激された人たちが革命でも起こしてくれればいいんですが。

そういえば歴史教科書は無しですか?

884 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/08(金) 14:51:12 [ reG4AbKQ ]
一番怖いのは「民主共和制」の概念では?
F世界では、まだ国民軍の発想は無いのに「人民による革命政府」は
低コストで大軍団を構築できるので。
あと、元世界の宗教書とか魔術書あたりを欲しがる関係者が多いと思う。
・・・いや、実際には使えないんですけどね<魔術書
でも、「異世界の魔術書」っていったらロマンやん。

885 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/08(金) 14:57:33 [ FuY.2Fno ]
これは・・・リアル世界でも身につまされます。
最も情報に近いダークエルフにも強烈な警告になってますね。

886 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/08(金) 15:02:09 [ MsAR/znU ]
真に恐るべきは後追いの機械文明の産物でなく、
この世界の魔道技術に科学の裏づけによる発展の可能性だと思う

30年あればどんな風にワイバーンロードが進化する事か

遠からず航空力学にきづくだろうし飛竜の形状やその体を包む防護結界が
空気抵抗に適した新世代飛竜もでてくるだろうな

さらに元素の研究が進めば薬液→火薬の質向上にも発展するかもしれない

帝國の次の開戦時期は10年から15年先と思っていましたが
予定の短縮か、もしくは敵国内の研究機関の破壊が急務なのではないかと思います。

887 名前:長崎県人 投稿日:2006/09/08(金) 16:44:35 [ M7VYRcWY ]
リハビリにネタ文投下です

888 名前:長崎県人 投稿日:2006/09/08(金) 16:46:06 [ 50Ied/7E ]
帝國海軍は、己の編成した第三艦隊の航空攻撃力の強大化を省み、あるかも知れぬ対米戦の為、と、対空火力の増強を、建前としては海上のジャンク、帆船らの制圧火力を得るという理由をもって(これはこれで是非とも必要だったが)対空火器の更新や多数の機銃設置を行う事で解決することに奔走し、それに成功させてきた
そこで新たに問題になったのが1945年のヴァイスローゼン事変に於いて列強各国の行った、ワイバーンに依る全方位からの対艦魔法の槍を使用した飽和攻撃に、艦隊が大打撃を受けたことである。
個艦の対空火力は出来得るかぎりの増強はして来た、しかし命中弾は最悪の条件下であったが、現実に発生した。何故か?
議論は、火力をもたせたは良いが、兵員らがうまく統制が取れていなかったのではないか?となったが、これはすぐに否定された。確かに指揮装置が付いてないハンデはあるが、機銃を何丁かで群にわけ、統制官を置くことで各目標への分火射撃、統制射撃を行い成果も実際にあがっている
現場の問題としては、機銃の射撃音が邪魔で身ぶり手ぶりを使って連携する場合も多かった事だが、鉄帽の改良と、統制官の分だけでもとマイクやレシーバーを持たせる対応策が採用される事になる

889 名前:長崎県人 投稿日:2006/09/08(金) 16:49:15 [ ewIsKeyI ]
分派艦隊の回避運動についても問題は波及した、対艦魔法の槍に対しての回避運動について、だ
最初に撃沈されてしまった加古は敵弾に向かって艦首を向けることで、当時、誘導方法が必ずしも解明されている訳ではなかった対艦魔法の槍に対して被害の局限を図ろうとした。
しかし結果は裏目に出た、人に対して感知する対艦魔法の槍に映る人間の数の濃さが増大してしまい、戦死した加古艦長の想定以上の敵弾を呼び寄せてしまったことだ。

艦首を敵弾に向けたことによってもう一つ問題は発生した、対空火器の射界を遮ってしまったことである、元より対空火器は一部の艦船を除き、艦の中央線上ではなく両舷に配置されており、この点を見れば防空上の大失態を犯したと言えよう、現に同じ現場に居た同級の古鷹は数発を被弾しつつも護衛すべき対象である扶桑に向けて対空火力の傘をかける事に成功し、自艦を飛び越えた後の対艦魔法の槍(以下ASMLと略す)の撃墜すらしている。
しかし、現在の大陸における2艦、将来では単艦による行動すら、考慮に置かなくてはならない我が海軍にとって、敵からの被弾ずくで考え、自らを的にして被害の局減を行った加古艦長の回避行動は一考の余地があるのではないか?

890 名前:長崎県人 投稿日:2006/09/08(金) 16:51:26 [ PX2g/hVY ]
かつて長良で発生した艦首欠損の事例や、第四艦隊事件での初春、夕霧の艦首部欠損でも両艦は港に無事帰還しており、最悪の場合に艦首切断が発生したとしても自艦を連れて帰れると加古艦長は判断したのではなかろうか?
実際には上空直援がないため、列強のワイバーン隊が上空に居座り続け、乗り込んでくるとともに乗員と戦闘を始めるという、普通の航空攻撃では有り得ない事態が立て続けに発生し、応急処置にかかれず、機関室に流入した海水と缶室の高熱圧との出会いが加古爆沈を招いた。

しかし、長時間の航空攻撃自体、相手側の上空直援が無いことと、残存の対空火器での対応が難しいほどの数のワイバーンを用意しなければならない、というハンデが相手側に科せられるため、現状では除外してよろしかろう。なにより分派艦隊自体の構成規模が少ないことも列強の攻撃側優位に働いた

では、大陸に派遣してある海防艦らの、2艦、または単艦行動の場合でゲリラ的な襲撃を受けた時、艦の保全を考慮するならば。艦首を敵ASMLに向けた方が被弾を間逃れぬ場合有効な対応ではないだろうか?

そういった議論がなされ、艦隊編成時と単艦行動時の回避行動の対応マニュアルが作られることになった。

891 名前:長崎県人 投稿日:2006/09/08(金) 17:05:04 [ 62Dc2aCc ]
そして一番問題になったのが多方位からの攻撃に対しては何にしても各々の艦の対応が分散されてしまうことにある

ならば戦局全体を見通して指揮をする艦が要る、最低で戦隊に一隻、出来得るならば全部の艦に、と結論自体が出るのには時間がかからなかった

ではいったいどうするのか?

電子機器等の搭載とその性能の向上で幸か不幸か情報自体は伝令や伝声管ではやり取り仕切れぬほど多くなっている

情報源が分散しているから面倒になる、ならば一箇所に情報を集めて、艦長なり司令なりを、オールウェイズオンデッキをやるならばそこに誰か担当を置くなりすればいい、総合して情報をみれば見えてくる事もあるんじゃないか?
しかし反論がでた、案自体にではなく、設置するスペースはどうなるのか?とだ
艦内に一室を新たに設けるのは難しい、司令部機能を付加した大淀の様な改装にスペースのある艦は少ない、情報が集中するなら防御上の問題もクリアしなければならない

検討が開始された。いかに戦闘中央指揮所を、つまり史実の英米海軍におけるCICを既存の艦のどこに設置するか
くわえて改装にもドックと時間と予算がかかる、それに対するスケジュール管理や対策も必要とされていた

892 名前:長崎県人 投稿日:2006/09/08(金) 17:11:47 [ fIFx11L2 ]
まず改装艦として選ばれたのが伊勢級の2隻の戦艦だった
最初は金剛級の四艦からとなるはずだったのだが、伊勢級と長門級が中央戦闘指揮所を第一煙突と前艦橋の間の空間に置く事に決定したが金剛級ではその間が狭く、選定に時間がかかると却下されてしまった(伊勢級では10メートル内火艇の置場、長門級はケースメイト副砲廓廊の空間がある)

この試験結果は良好で(伊勢級は実験艦のような扱いで80年代まで運用される事になる)各艦に順次搭載され、長門級も同様の場所に 、大和級は残っていた副砲を全撤去、副砲弾庫に中央戦闘指揮所を設置した、上部には250㎜の甲板を敷き、その上に箱ものの噴進砲が設置された
金剛級と山城は結局のところ設置が諦められた

重巡の方は指揮機能のあった高雄級から改装が行われ、最上級は前艦橋の下部を拡張し設置、利根級は四番砲塔の位置上、設置は難しかったのだが大改装を行い、艦橋の再構築さえされた。設置されなかったのは青葉・妙高級である、やはり古過ぎるのと空間の欠如が問題となった

のちに電探の技術向上で水偵の必要が無くなり、飛行甲板に装甲を敷き、その下に指揮所を設置した艦よりも、艦橋下に設置した艦の方が使用実績では上であった。

893 名前:長崎県人 投稿日:2006/09/08(金) 17:17:51 [ vmEEgS4w ]
軽巡は大淀級ならびに阿賀野級以外の改装は行われず、新造艦に指揮所を取り付けることでお茶を濁した、軽巡洋艦自体、更新時期であるためそれでなんとかなったのだが、駆逐艦は深刻で、既存の艦の改装は島風級と秋月級に駆逐隊旗艦となっていた陽炎・夕雲級しか行われず、これもまた多くは改・松級や新造艦に譲ることになる

海防艦は建造隻数が多いことと、ブロック式の建造の為、再設計にこそ多少の時間がかかったものの、数隻のうちに指揮海防艦一隻を建造するペースで、多数が一年内に就役することになる


しかし、様々な制約を受け、最初は一艦隊分しか整えられなかったこの改装も、新造艦の就役や技術の向上とともにやがて普及していく。列強との戦端がヴァイスローゼン戦以降、今後10年は開かれない事が確実視されていた事がそれを可としたのだった
艦隊としての連携強化は対空火力の向上をもたらしていくばかりでなく、その運用にも一層の磨きがかかり、性能が頭打ちのワイバーンだけではなく、帝國が現用する航空機すらおいそれとは近づけなくなる存在へと変貌していくのである。


その成果は、仮面の戦争と呼ばれた陸海が皇軍相討つ激戦の中で最大限発揮されることになる

894 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/08(金) 17:45:19 [ KYTPqnKQ ]
とはいえ、社会進歩の段階が数で科学進歩のフライホイールを回せるところまで行ってない気がするので、
教科書で多少加速されてもすぐ失速しそうではあるんですな。
下手するとスクリュー船まで行かないんじゃないかとか、全鋼鉄製艦船を建造する所までいけないんじゃないかとか。
一国の、それも秘匿を考慮しての研究で辿り着けるところなんてたかが知れているわけで。
無論、漏洩という形で他国もまたじりじり知っていくのでしょうけれど、「民衆」全てに教育が行われてその数で押し進めていくこちらの速度とは較べ物にならないかと。
それどころか、正に数の不足により尻窄みなんて言うことも。

ナニ?帝國もそこは不完全?
いやまあ……ほら、こっちは社会体制で義務教育とかあるし……ねえ?何とかなる?いやならないっかなー?
この頃はまだ欧米に引っ張られる感じだったしなー

895 名前:長崎県人 投稿日:2006/09/08(金) 17:46:18 [ QAIBb81Q ]
投下終了、CIC、欲しいです。ただそれだけで書きますた・・・
史実の特攻を飛び越えて帝國海軍はしょっぱなからASML(ランスのL入れない方がいいかな?)の飽和攻撃受けた訳ですからあっていいはず!!・・・よね?(汗)

大和の副砲跡の噴進砲はかなりのちにアスロックかSAMの後、外付けのVLSが配置されるんじゃね?と妄想
伊勢級は優遇します、絶対です(ぉぃ)

金剛級は煙突二本続けてあるのがなぁ・・・艦首方向にもすぐ砲塔が来てて余裕無いしなぁ・・・
山城は艦橋後ろにデンっと三番砲塔があるので論外に(汗)、外せばいいんですが、金かけたくな(ry

この改装はヴァイスローゼン戦で手打ちにできて、列強とある程度のデタントができたのが実施できた理由ですが、戦艦等の改装に2年かかるとして、新造艦ができる期間が要るので、先の一艦隊分が用意できるのが五年後ぐらいで普及するのはやっぱり十年後ぐらい・・・米海軍より遅れとしては適当な期間かな?(あっちがカミカゼなしにどうなるかわかりませんが・・・既に英海軍のKGⅤが中央指揮所を持ってるからそれが流行るかどうだかで変わるかな?)

896 名前:長崎県人 投稿日:2006/09/08(金) 18:06:07 [ wXB4VivE ]
くろべえさん投下乙です


伝播を止める為には製紙場(印刷屋も)を監視か破壊し原本を印刷させないことが一番かも、そのうえで原本を奪い返せば・・・なんとか。
原始的な対応ですが、油紙印刷ぐらいのこの世界では結構効くはずです、流通が抑えられれば下手人(国も)はっきりするので、取り戻しの交渉もやりやすいはず。
技術の向上には素地が無ければなりませんから、その知識を一般に広げなきゃ意味が無い、それさえ止めれば・・・




・・・続きまd(PAM!PAM!PAM!

897 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/08(金) 19:04:09 [ sQuW24DU ]
くろべえさん&長崎県人さん投稿お疲れ様です。
教科書が文明発展のきっかけになるとは思いもしませんでした。
確かに言われてみればこの世界の文明の結晶なんですよね。
教科書を密輸以外にも廃棄されたはずの38式小銃とか墜落した零戦とか回収されていたりして。
その地域は51番地域と言われていt(PAM!PAM!PAM!

898 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/08(金) 19:43:38 [ vCzXk6yk ]
・・・ここで、トンデモ本を帝國大学出版局から発行ですよ!
しかし、この決定が後の世において帝國史を研究するもの達に大混乱を
引き起こすことを思いやるものは誰も居なかったという。

1.蒸気機関
  蒸気機関は燃素(フロギストン)を発生させて空気中の酸素と化合させる
  事によって得た熱で水を沸騰させ各種動力を働かせる機関である。
  燃素は主に木材、石炭に含まれているが「原初の塩」(別項を参照)を
  用いることにより空気中から直接生成することも可能であり・・・・

あと、万物の最小構成要素は原子である。あらゆる元素は原子の数と密度により
異なる性質を得ている。つまり原子量を操作することにより卑近の元素からあらゆる
元素を創り出すことが可能なのである。帝國科学院による実験ではまず原子の間に
魔力を充填することにより・・・・・

他にも、男性は生まれながら陽の気を持ち、それを用いて女性を妊娠させる。
故に、女体に接することなく陽の気を制御する修行を行うことで自由に気を扱えるようになる。
主に齢三十を超えた男性で女体に接することが無かったものは、別系統の「魔法」(魔術であらず)を
使えるようになる。この魔力は年を増すごとに指数的に強大になっていき・・・・

いくらでもネタがでますなぁ。

899 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/08(金) 20:19:58 [ z2JKFRAs ]
>>898
ちょwww童貞魔法www

900 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/08(金) 20:35:53 [ IyCJFpOc ]
>>864-876
グッジョブです!! 予想外の一大転機でした。
ついに「帝國」の基礎が列強に知られた!!
事態の意味を理解している憲兵大佐の発言や行動は、まさに読者を代弁していました。
F世界と我々の差分はどこにあるのか、作中の人物が考察し理解する様は読者のそれと同じです。
深く共感し、心に感じ入る話でした。

901 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/08(金) 21:22:27 [ 3.CGRU9w ]
>>864-876
ああ、恐れていたことが。列強の進歩が加速する。この種の書籍類は
内地(神州大陸除く)から外へ出ないように厳重に規制すべきなんですがね。

ただ、知識だけあってもそれを生かす社会基盤や知的基盤、基礎工業力、
がなければそうそう技術の進歩にはつながらないですね。
純粋な科学技術については、列強が帝國の脅威となるほどのものを
持つには100年以上かかりそう。人や物や情報の流れの制限が厳しいですから。
魔法技術の進歩加速については未知数ですが。

情報を軍などの研究機関の中に留めるよりも、
一般にオープンにして教育制度の整備までやったほうが
進歩が速いでしょうが、科学的・合理的思考をするものが増えると
既存の体制には脅威かもしれません。

902 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/08(金) 21:25:32 [ HQmdNeus ]
くろべえさん お疲れ様でした!

教科書・・・・・・そ〜でしたね。 教科書は歴史の積み重ね、色々な知識や技術の塊

身近に有る、当たり前の物だったんで、すっかりその価値を見落としてた|||orz

それにしても こんな事が起こるのでは、直轄領や邦國での帝國製品の監視が強化されますね。
今まで、別に大丈夫だろう・・・と思われていた物すら持ち出し禁止とかになりそ〜(雑誌とか新聞とか)


雑誌は来ない! 最近は輸送品の包み紙が新聞じゃなくなった!
糞っ!!! 何で暇を潰せば良いんだ!!!!

頭を抱える帝國直轄領レディング鉱山警備隊一同

とかになったりしてw

これからの展開が更に楽しみになってきました。
次回も頑張って下さい。
ではでは〜〜〜

903 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/08(金) 22:15:59 [ alg6JvLw ]
ローレシアはいったいいつどこで教科書の存在を知ったのでしょうか。
そもそも存在を知らなければ手に入れようという考えが浮かばないはずですよね。
こんな物の存在おいそれと知れるものじゃないはずですが。

904 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/08(金) 22:31:16 [ yGzPKZgQ ]
学術図書(中学の教科書レベルでも列強からすればそれでしょう)は
そのものを見せられたからといってその体系の知識を持たない者には理解し難いものですし
列強陣営の技術力を見るに教科書レベルのものなら既にある程度は近い場所に行き着いている気も。

もちろん、異なる歴史の中で至れなかった所産の多くにここで初めて与れるとは思いますが
もっとも脅威なのは教科書そのものというよりも
異なる技術体系の見本たる帝國技術へのミッシングリンクが補完されてしまうことだと思います。
ただ教科書を見せられただけならその後の技術革新はやはり試行錯誤に頼らざるを得ないのですが
「帝國」という見本があるだけに試行錯誤を飛ばして一種の「後知恵」に辿り着けてしまう、
ここが一番の脅威なんではないかと。

ある程度の情報が既に流出しているだろうことを考えると、
今後の帝國は余程突拍子もない(核とか)技術以外はおいそれとは使えなくなるような気も。
そしてそれはどのみち帝國には大変な足枷にはなってしまうでしょうね。

905 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/08(金) 22:31:33 [ brVTlzZU ]
まず日本語を読める翻訳者を訓練してからだろ。
で、翻訳の一番最初は
「アカイアカイ ヒノマルアカイ ススメススメ ヘイタイススメ」とか
「教育勅語」であるとか
「修身」の教科書であるとか・・・・
そ〜いうもの”だけ”であるならさして弊害はないかも。

906 名前:Gir. ◆pi/XgnFjWE 投稿日:2006/09/08(金) 23:08:21 [ DAE8na8s ]
>くろべえ殿
 これでイケイケすちぃむぱんく from F世界?
 この調子で、マナだけでなく何故か電波も喰って電磁波的無感症(違う)なワイバーンが登場する日も近いか?
 それはともかく一番怖いのは、沿岸航行術しか知らない連中が羅針儀その他を手に入れて、全洋での作戦行動能力を手に入れてしまうことでしょうね。
 洋上航法が出来ない日本陸軍が、米軍が不思議がるぐらい本土→フィリピン間の移動で行方不明となっていることからも、航法が発達しなければ、飛竜母艦といえど出現場所が限られ、驚異半径は極めて限定できますから。
 海防艦の増勢数を見るとそうなってしまったか…… orz

> 長崎県人殿
> CIC
 愛のない話をすると、2000tのフレッチャー級駆逐艦後期艦には新造時から既に CIC が存在し、それ以前の艦も逐次設置していたそうですから、それほど苦労するかなぁ?と。あのせっまい飛龍の艦橋で、戦況表示板っぽいの導入していたとかいう話も聞きますし。
 まぁ、ここは日本式完璧主義が高じて超絶能力を求めてしまった結果、要求容積が大きくなってしまったのだろうなぁと思っています。

 何故に伊勢級?と思ったら、【日向】が長崎三菱建造か……。
 しっかしー。同建造所の【霧島】に愛がないところを見ると、単に変態艦が好きなだけな気も……、してませんよ、全然。はい、全く。

 1980年代まで使用……。改装後の金剛で発電能力1350kwという事実を見ると、同等かそれ以下だろう【伊勢】ってすっごい改装してそうですね。電力が全然足りませんから。アメリカだと大戦中の駆逐艦でも1050kw発電能力があったりします。

 ところで、30サンチ4連装の変態艦は マダァ? (違) チン☆⌒ 凵\(\・∀・)

907 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/09/08(金) 23:23:02 [ DUErFeR2 ]
くろべえさん、投下乙です。
そうですよねえ、教科書や図説は技術・情報の宝の山ですから。
現在の高校生向け図説があればかなりの物が作れますし。
気になるのは、当時の中学生の教科書の範囲ですよ。
戦後に加わった分野・減らされた分野があるでしょうし、カラー写真もありませんからねえ。
蒸気機関も歴史教科書からなのかな?中学生の理科では習わなかったなあ。

長崎県人さん、投下乙です。
高雄型の大型艦橋の出番ですね。
伊勢型も頑張れ!主砲塔を2つぐらい取っても生き残れ。

908 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/08(金) 23:26:04 [ 0g0AmAhw ]
羅針儀なんて歴史の教科書に名前ぐらいしか乗っとらんのでは。

909 名前::名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/08(金) 23:29:22 [ qXaHEWUg ]
くろべえさん投下乙です。

中学生の教科書>
盲点でした。しかし言われてみれば「知識を分かり易く教える書物」なんですよね。教科書って

中学の教科書だけならまだ良いかも知れませんが「工業学校」「農業学校」「商業学校」などの専門学校の教科書は更に詳しく書かれていますからね。無線の傍受も材料さえ揃えば可能ですし。蒸気機関の発達は物資の迅速な異動には不可欠。今直ぐドウコウできるわけではないでしょうが、これが10年先20年先になったら鉄道や蒸気船、さらに質の高い鋼材の加工も出来る可能性が出来てしまいましたからね。
残念ながら、松島中佐は「帝國最大の売国奴」になってしまったようです

蛇足ですが、当時の旧制中学校は現在の高等学校に該当しますので(苦笑

910 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/09(土) 00:21:10 [ FyCxSqZM ]
教科書が大陸で禁制品になりそうだ。

911 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/09(土) 00:21:34 [ qeKNLg6g ]
しかし、どうやって専門用語とか解ったんだろうか。
基礎も何もない状況で、短期間で教科書読んでるだけでそこまで出来るのかどうか。
ちと極端すぎる気がするが…。
寧ろ、諜報戦でのカウンターとして、張りぼてをさも蒸気機関らしく仕立てて、リークしたんじゃなかろうか?

912 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/09/09(土) 00:41:28 [ DUErFeR2 ]
>911
そうだよなあ。今教科書見て蒸気船作れ、と言われてもそんなすぐには作れんよなあ。
材料があれば早いけど、本とその挿絵だけだもんなあ。教師を拉致したのか?

913 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/09(土) 00:51:30 [ z2JKFRAs ]
概念そのものが流出するのはどう考えても不味いと思われ
概念が無けりゃ物は作れんのだし。

914 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日:2006/09/09(土) 01:21:59 [ ll2Uv/Qs ]
復水器やシリンダーやピストンや耐圧釜を作る工作技術、製鋼技術
冷却や加熱や定常的な稼動に必要な工学、物理学、数学、熱化学
稼動に必要な石炭の採掘技術・・・
ワット機関を知る上で必要なニューコメン機関・・・
使われている数式それぞれの意味の理解・・・
一つの技術を作り上げるのには、その土台となる技術や知識がないとかなーり厳しい
現物があって、それのデッドコピーなら比較的短期間で再現可能でしょうが

>>913氏の言うとおり、「蒸気で動く機械」のような概念が広がるのが一番不味いですね
帝國の対抗手段は「常に一歩前へ」ぐらいですか

915 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/09(土) 01:33:44 [ t3ac0hx2 ]
ネジも作れんのによく蒸気機関など作れたものだ・・・

916 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/09(土) 01:53:17 [ 3.CGRU9w ]
>>914
科学と工学がリンクしたのは産業革命が始まってからかなり先なので、
それまでは経験と勘、試行錯誤の世界だったようですよ。

>>915
中世末期の鎧鍛冶の技術があれば、
「一応動く」レベルの蒸気機関は作れるものらしいです。
ただ、19世紀の蒸気船があまり現存していない理由が、
「ボイラーの爆発事故や火災が多かった」なんて理由らしいので、
列強の蒸気機関にはあまり近寄りたくないものです。(^^;

917 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/09(土) 02:02:59 [ eMCMiZEU ]
くろべえさん、投下乙です。
こういった情報が漏れて何故大変なのかといえば、科学技術が追いつかれるからではないと思います。
勿論、そういった観点もあると思われますが、今のところは諸兄方が論じておられるように帝國に科学技術が追いつくには、越えねばならないものが沢山あるでしょう。
ですが、F世界の国々が科学的論拠によって敵国(便宜上こういっときますね)の魔法技術が発展するのは、非常に困ります。何といっても帝國は魔法技術に関しては、向こうに水をあけられている状態ですし。
あと、忘れがちですが、この頃の『中学』って旧制中学校でしょうから、学習内容は現在の高等学校あたりだったりするんですよねw。

918 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/09(土) 02:32:27 [ usfg/wyc ]
皆さん、教科書だけで蒸気機関など造れないと仰っておりますが
江戸時代に日本人は黒船の蒸気機関を見ただけでコピーしましたぞ。
しかも、三つの藩が独自プロジェクトで。
未確認情報ですが、アメリカの歴史の教科書において
「欧米人は蒸気機関を発明後それを用いて世界中に赴き植民地を作ったが
 蒸気機関を見ただけで自力で作り上げた民族が一つだけあった。
 日本だ」と教えていると。
そういえば、鉄砲も数丁が国内に入っただけでうん年後に大量生産をしてますよね。
と、なると、F世界の魔術理論と派生技術を国内の物好きな学者や職人がよってたかって
研究し、F世界では「不可能である」と言われた何かを創り出す可能性も高いのでは?

919 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/09/09(土) 02:53:52 [ DUErFeR2 ]
>>918
実物を見れる、というのはかなり大きいんですよ。
理論は知っていても、形にするのは難しくて。
それよりは実物とその目的が分かっている方が作るのは簡単ですよ。
あとはその国の工業力・金属加工能力次第ですね。

…生粋の科学者タイプな魔術師が『帝国科学』に感銘を受けて、何とか帝國に行こうとする人もいるかも。

920 名前:陸士長 投稿日:2006/09/09(土) 02:55:17 [ ziDjG2Pc ]
その辺、日本人の適応力の恐ろしさですな。
実際、鉄砲が日本に普及し、自国生産に成功、改良が繰り返され。
安土桃山時代には、本元の欧州産よりも高性能な火縄銃を世界でも最高クラスの数保持していたそうな。

921 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/09(土) 04:39:49 [ .jWdN08I ]
くろべえ殿 投下乙
黒部中尉大過なくよかったです。
早く面倒なことから離れて幸せな家庭を…
そして長崎県人氏 お久しぶりの投下乙
>伊勢級は優遇します、絶対です(ぉぃ)

ごめんなさい、拙作では解体してしまいました。
人員も予算も食うし使い勝手が…
転移はいかに戦闘力を保持したまま人員を減らすのが重要課題だと思いまして。

で、ss投下

922 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/09(土) 04:40:22 [ .jWdN08I ]
ユフ戦記 08  戦争計画 player A 後編4

皇都郊外 五黎山山麓 


スリツカヤの持つ弐拾弐式軍用小銃は、彼の祖父が小内海の小島に送り込まれたときに手にしていた物と大差ない。つまり、旋条付銃身根装弾式小銃というわけだ。
帝國が元いた世界では単発式のライフル、といえば通りがいいかもしれない。
世界中の技術情報を集積した結果、世界で最も豊かで技術力のあった皇国とユウジルドは、帝國出現から六十年近くも前にこの手の銃を開発した。
他の列強が未だに前装式滑腔銃から脱却できてないのに比べれば格段の進歩といえるかもしれない。
が、皇国も最近まで(つまり帝國との戦雲が可視化するまでは)古式ゆかしい火打石の前装式滑腔銃を主力としていた。
その理由は莫迦でもわかる。
金が掛かり過ぎるからだ。

923 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/09(土) 04:41:58 [ .jWdN08I ]

 清華のような三百万とも言われる陸軍兵力を常備する国は別として、
列強諸国の常備兵力は百万前後で推移している。
海洋国家たる皇国とユウジルド陸軍は精々三十万強といったところだろう。
この世界の技術力で以ってしては、
百万近くの兵にライフリングを施した銃を与えるのは不可能に近い。
多くの列強が封建体制を敷いており、
軍備は地方領主の責任と財力で行うような場合はなおさら困難が付き纏う。
そして、必要性という観点から見ても、列強間の距離と輸送力の限界から大規模な軍事力の接触など起こりえず(皇国とユウジルドの衝突は貴重な例外)、
列強諸国は内乱と周辺国家に対応できるだけの軍事力を備えていればよかった。

 皇国とユウジルドはライフルを実戦配備した貴重なサンプルだが、
それも遠隔地に送り込んだ二個兵団(約三万人)程度に装備させたに過ぎない。
皇国にいたってはユウジルドが持っているから開発した、という程度の意識しかなかった。
そもそも皇国は中央集権を推し進め官僚機構を軍隊に持ち込んだ結果として高度な散兵戦術を駆使できたから、
他列強よりも劣勢な地上兵力でも何とかなると信じていたし、
本土決戦となれば世界最大・最強の翼竜戦力が援護してくれるから、地軍に贅沢させるつもりはなかった。
ユウジルドは世界で最も進んだ魔法技術国であったから、魔道士に火力支援させればいいと考えていた。
結果として、皇国とユウジルドが小競り合いの結果ライフルの有用性を確認し合った後も、ライフルは主力となりえず、両国の関心は海上兵力のみに向けられた。

924 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/09(土) 04:42:41 [ .jWdN08I ]
 その状況が一変したのが、帝國によるレムリア侵攻である。
近い将来帝國との衝突が予想され、そして主戦場が小内海とそこに浮かぶ島々であることが確認されて以来、両国は陸上兵力の回帰(近代化ではない)に躍起になった。
そんなわけで皇国地軍皇都直衛翼竜飛翔団基地所属のスリツカヤ従士長は、新皇暦322
年に正式採用されたばかりの小銃を手にして、雪の中歩哨に当たっている。
時刻は日付が変わる半刻ほど前のことである。

925 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/09(土) 04:45:00 [ .jWdN08I ]
 皇都の冬は厳しい。
歩哨といえども、冬の真夜中は楽な仕事ではない。
小内海の北沿岸に属する国は程度の差はあれ寒い冬が訪れるのだが、
ネストリア山系から吹き降ろされる風をまともに受けるおかげで皇都の冬は尋常な寒気ではない。
この上夏は海流と南からの乾燥した風のおかげで糞熱いときている。
皇国地軍皇都直衛翼竜飛翔団の基地は、皇国の翼竜基地の例にもれず山肌を刳り貫き基地施設を造成している。
水軍に比べて低廉な予算で運営させられている地軍であるが、翼竜を満足させられる程度の環境は備えている。
しかしながら、暖かい洞穴の奥で惰眠を貪ることができる地位にあるのは翼竜のみである。
もともと温度の変化に敏感な翼竜に安定した環境を与えるために洞穴を掘ったわけだから
人間の居住区画は石造りの建物となる。
翼竜を酷使してよいのは実戦と訓練のときのみであるが、人間は常に劣悪な環境に置いてよい。
どうも地軍上層部はそう考えている節がある。

よって今宵寝床に就いた軍人たちは冷えた石が発する冷気から身を守るために軍規と基地会計の許す限りの方法をとっているが、歩哨たるスリツカヤ従士長に許されるのは官製品たる外套の下に愛娘が編んでくれた上衣をそっと着込むぐらいだ。
スリツカヤは雪のちらつく下でもうじき潜り込める筈の布団に思いをめぐらせ、妻子に会えないことと俸給の安さを呪詛の対象としていたとき、ソレが目に入った。

926 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/09(土) 04:45:35 [ .jWdN08I ]
銀髪の飛翔士官用外套を着用した若者(恐らく水軍所属)が翼竜を駆り、こちらを目指していた。
満月を背に、音もなく舞い降りた女性士官は肩に降り積もる雪を払おうともせず基地の門に近づいてきた。
腰までありそうな髪は風にたなびき、闇夜に銀色の光を燈している。
紫苑色の瞳は怜悧な光を放ち、唇は引き締まっておりいかにも意思が強そうな面構えである。
年のころは十六,七といったところだろうか。スリツカヤの末の娘よりも年下に見える。
皇国人的感覚からすれば異国情緒溢れる美少女といってよい。
関われば碌な事にならない。間違いない。頭の中で退避命令が出ている。
彼は20年以上前、美人と関わってなけなしの蓄えを溶かした経験があるのだ。
面倒なことは避けて可及的速やかに宿舎に退避せよ。
交代まで後四半刻もない。
しかし少女は歩みを止めず正門に向かってくる。
正門の警備に当たっているものの中でスリツカヤよりも階級の高いものはいない。

927 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/09(土) 04:46:05 [ .jWdN08I ]
「皇国水軍百竜長レイ・ジグリード・ロイである。
当基地の最上級指揮官に取次ぎを願う」

この若さで百竜長というのは信じがたいが、確かに外套は水軍百竜長であることを示している。
ロイ王家と所縁のあるものなら皇太女殿下に引き立られたのかもしれない。
スリツカヤは布団を半ば諦め、答える。

「生憎、基地司令は帰宅しておりまして。
明朝に基地に戻られるので御用が御座いましたらお伝えしますが」
 
無論、こんな真夜中に約束を取り付けず翼竜で来る様な相手が引き下がるとは思えないが、一縷の望みを託した。

「ならば当基地の実戦翼竜部隊の最上級指揮官を呼んでいただきたい。
そして翼竜部隊の出撃体制をとってもらいたい。
これは皇太女殿下の御言葉と解していただきたい」

そう云うや否や、彼女は外套の下から一本の鋭剣を取り出す。
見事な装飾が施されたものであるが、何より目を引くのがロイ王家の紋章と柄に填められた千草色の宝玉だ。
魔道に詳しくないスリツカヤが見ても膨大な魔法力が込められたとわかるそれは、あまりにも有名な宝玉である。

928 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/09(土) 04:46:30 [ 4hle9deg ]
>920安土桃山時代には、本元の欧州産よりも高性能な火縄銃を世界でも最高クラスの数保持していたそうな
一説では、全ヨーロッパの銃全部より日本一国の銃の総数が上まあっていたという
話もあるほどだそうです。

929 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/09(土) 04:46:38 [ .jWdN08I ]
かつて初代皇主が自らの子に五王家を創氏させた際、王の証として五つの宝玉を与えた。
ロイ王家に与えられたのが海色乃勾玉、王家はそれを二つに分け、一つは王が、もう一つは王太子が持つことにした。
ロイ王家の王太女であった現皇太女がその宝玉を鋭剣に填めたが、皇主となるために王太女の地位を捨てて以来、皇太女の最も信頼厚いものがその鋭剣を所持している筈である。
スリツカヤの眼前に掲げられた鋭剣は、それほどの意味がある。
もはや逃げ道のないことを観念したスリツカヤは、兵に士官を全員起こすように命じた。

930 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/09(土) 04:47:09 [ .jWdN08I ]
ファンツリック地軍十竜長は、最近皇都に移らされた第三翼竜飛翔大士隊の部下とともに銀髪の少女の話を聞いている。


「第三翼竜飛翔大士隊の諸君、夜分ご苦労である。
水軍百竜長にして皇室侍従武官長レイ・ジグリード・ロイである。
皆は存じないと思うが皇都にて叛乱が進行している。
恐れ多くも皇太女殿下は斎聖殿に幽閉され、軍高官と指揮系統も叛乱軍に侵されている。
皇国建国以来の危機と言ってもよいであろう。
だが、殿下はこのような危難を予期していなかったわけではない。
このような事態に備え、本官に鋭剣を授けてくださり、さらに反撃のための兵を与えて下さった。
それが諸君ら第三翼竜飛翔大士隊である。
諸君がこの場に居合わせたのは偶然ではない。
殿下は貴官らの実力を高く評価され、皇主になられた暁には近衛に編入される旨内示された。
そして万が一の危難に際しては、諸君を反撃の第一陣として用いるよう言明なされた。
諸君、皇室に忠誠を誓うものであるならば、今こそ殿下のご高配に報いるときではないのか?」

931 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/09(土) 04:48:39 [ .jWdN08I ]
はじめは誰もが眠そうな顔を隠そうとはしていなかったが、
話が進むにつれて興奮した面持ちを隠せないでいる。
まず以って、水軍士官が地軍部隊を指揮するというだけでも異常を極めている。
その上皇太女が監禁されるなど前代未聞。
そして、翼竜部隊としてはじめて近衛になれるのだ。

 元来、地軍における近衛の規模は小さい。
水軍が一個艦隊を近衛に当ててきたのに対し地軍は精々身辺警護に過ぎなかった。
その地軍から、初の近衛翼竜部隊が誕生する。
翼竜士官の大半を水軍に奪われている地軍としては痛快極まりない。
(皇国は多くの翼竜を所持しているが、
翼竜を操る適性を持ったものがひどく少ない)
近衛となれば、階級昇進が自動的についてくるのだ。

最早士官室は興奮の坩堝と化していた。
何から何まで嘘で固め、ありもしない昇進の約束をしたレイは心苦しいが、少しでも戦意を高めて余計なことを考えないでいてもらわなければ困る。
たかが列騎竜士の身でできることは限られているから、後は姉様に何とかしてもらおう。

932 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/09(土) 04:51:49 [ .jWdN08I ]
「我々は何をすればいいのでしょう」
若い士官が勢いづいて尋ねる。

レイは一拍間をおき、もったいぶって答える。

「斎聖殿に突入し、敵の包囲を突破し殿下をお救いするのだ」

沸き上がる歓声を背にレイは士官室を後にし、ファンツリックと打ち合わせをしながら食堂に向かう。
軍人は如何なるときも輜重をおろそかにしてはいけない。

「ファンツリック十竜長、地上戦部隊を翼竜で運びたい。
人選をお願いする。
数は翼竜の半数
もう半数は、陸戦要員の代わりに爆弾を積む」

レイは丁寧だが、有無を言わさぬ口調で命令する。

「恐れ多くも聖斎殿を爆撃する気ですか?」

「恐れ多いのは叛乱軍のほうであろう
建てられて六百年も経つ。
古レイシーノ帝国時代の遺物を未だに使っているんだぞ?
建て替えを検討してよい頃だ。
費用は帝國に負担させればよかろう」

不幸にもファンツリックのお眼鏡に適った歴戦の下士官たるスリツカヤは、
布団に潜り込むことなく完全軍装を強いられた。
彼が安眠に就くための障害はあまりにも多そうだ。

933 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/09(土) 04:52:20 [ .jWdN08I ]
投下終了!

934 名前:シロべえ ◆VNwb/XaA9. 投稿日:2006/09/09(土) 05:04:28 [ .jWdN08I ]
おまけ 皇国軍位階一覧

皇国     水軍             地軍          

皇国元帥
水軍(地軍)元帥
大提督   近衛艦隊司令              
提督    艦隊司令           兵団(12000〜18000)     
准提督   戦隊司令           師軍(5000〜6000)        
千竜長   基地司令           旗軍(1800〜3000)     
百竜長   翼竜飛翔団(100〜200)、艦長 旅軍(600〜1000)    
十竜長   大士隊(48)             少  
央騎竜士  士隊(12)         大士隊 (約300)  
列騎竜士  士隊(12)         中士隊(約100)  
前衛竜士  分隊(3騎)                     
後衛竜士                 小士隊(24)

従士長                        
従士纏
従士
准従士
兵長
一等兵
二等兵
三等兵

935 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/09/09(土) 08:17:33 [ ToMVwDhk ]
シロべえ氏、投下お疲れ。


んでもって私も投下。
えーと、竜頭蛇尾になってる気がしないでもないが、ご容赦のほどよろしゅう(自爆

936 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/09/09(土) 08:23:16 [ ToMVwDhk ]
帝国異史  外伝
「海軍戦備整備計画」


01
赤煉瓦の一室にて、その会合が開かれたのは、皇紀2610年、昭和25年の秋も深まった頃だった。


ようやく苦しいながらも国民の過半は、それでも戦火が遠ざかった事で、活気がでている。
そんな中を一台の公用車が赤煉瓦へと走っていく。


ようやく経済が周りだしたか。
未だ焼け野原が残る中、あちらこちらの露店に集まる人だかりを見ながら、後部座席に座っていた
草色の軍服姿の男が、そんな感慨にふける。
身に帯びる階級章は、少将のものだった。

937 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/09/09(土) 08:28:17 [ ToMVwDhk ]
男の名を大井篤と言い、陸軍や産業界にも、その名を知られている男だ。


当然、彼も赤煉瓦での会議に出席する一人だ。
海上護衛総司令部司令長官の名代としてである。
海上護衛総司令長官井上成美大将からは、思う存分やりたまえ。何遠慮せずに思い切りやりたまえ。
という訓示を受けている。
当然大井少将らは、その訓示に従うつもりだ。


02
大井少将が入室したのを見た海軍次官が、今から会議を始める事を宣言した。


まずは国内の造船施設の状況の報告からだった。


海軍次官の言葉に従い、紙をめくる音が室内に響く。
それによると、現状でおよそ4割の造船施設の機能が回復しているのが判る。


まあ、造船施設の復旧に力を入れてきたから当然だろうな。
書面に書かれた数字を見ながら、大井少将は微かに頷く。
鉄工関連の操業を本格する事にも、これから力を入れないと駄目だろうな。


他にも細々とした現状報告が為された上で、今回の本題に移る。
そう。
これからの海軍戦備の在り方をきめる、その会議の始まりだった。

938 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/09/09(土) 08:33:18 [ ToMVwDhk ]
03
まずは航空関連から議案が始まった。
最初に航空技術の現状説明から始まった。


「まず、航空用発動機に関してですが、これからの主流となる噴進式発動機に重点を移していき、
噴進式では対応できない機種は従来通りの発動機で対応しますが、現在空技廠では噴進式の概
念を取り入れたレシプロ型発動機の基礎研究を今年より、開始しております」


航空技術廠から代表としてやってきた、種子島時休技術少将が口火をきる。
種子島少将は、本邦における噴進式発動機の第一人者だ。


「それで噴進式発動機を搭載した秋水改(震電の噴進式発動機搭載型)ですが、どの程度発動
機の信頼性はあがるのです?
今のままの耐用時間ではこまるのだが」
種子島少将に挙手で質問したのは、軍令部員の柴田武雄大佐だった。
「耐用時間についてですが、現在噴進式発動機の信頼性をあげるのに必要な合金類の元となる
材料、特に希少金属があまりにも足りていない状況です。
現在代用部材でごまかしている状態でして、どうにかして手に入れない事には、これ以上の性能
向上すら見込めません」

939 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/09/09(土) 08:37:51 [ ToMVwDhk ]
この発言に室内に嘆息する音が響く。


確かに各種金属はおろか希少金属すら枯渇しているのは、間違いない。
調査団を編成して探さねばなるまいな。
大井少将は、そう一人ごちる。


「しかしながら、空技廠としても現状に置いて、ネ−20の耐用時間の向上に力を注いでおりまして、更に20時間は延びます」
このネ−20というのは、推力475Kg、回転数11000rpmの発動機だ。


この種子島少将の言葉を引き取って、永野技術中佐が続ける。
「なお、空技廠は、秋水改1機に対し、5機の発動機を用意する事で、噴進式発動機に必要な合金が
充分に供給されるまで、凌ぎ切るべきであると考えております。
この件に関しては、しばらくの間この方針でいく方向でご了承願います」
そう言い永野中佐が軽く一礼した。


また、この問題に対し、紫電改を噴進式発動機の信頼性が向上するまでの繋ぎとして、今暫く
量産する事が決まる。
なお、烈風は昭和21年の時点で、発注が全て取り消されている。

940 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/09/09(土) 08:41:39 [ ToMVwDhk ]
これは、開発機種の削減と、陸軍との機種開発をなるべく統合するという兵部省の方針を受け
てのものだった。
この結果、遅れていた海軍戦闘機は、滷獲した米軍機や重戦指向の陸軍戦闘機の影響もあり、
重戦思想へと変わっていた。
この兵部省などの方針が柴田、源田両大佐の対立を、後ろ盾のない柴田の主張を優位へと立た
たせる契機となり、その影響がこの会議にも現れていた。


04
「艦攻艦爆に関してですが、銀河の後継機開発に着手します。
艦爆ですが、航空用噴進弾の目途がたったため、対艦用として採用します。
これにより、後継機開発が容易になるかと思います」
「確か噴進弾は命中率が期待できなかったと思うが、それについてはどう対処するのだ?」


航空本部技術部員の発言に、淵田大佐が疑念を呈した。
「降爆の方がよいと思うのだが」
柴田大佐も同じ疑問を口にする。

941 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/09/09(土) 08:42:41 [ ToMVwDhk ]
取りあえず、投下完了

942 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/09(土) 09:00:43 [ n6i0ke2M ]
みんな中学中学言ってるけど、WW2のころなら旧制中学(高校相当)なのでは?
いまの中学の教科書以上にヤバいのでは?と

943 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/09(土) 10:02:39 [ yq9lkYzY ]
皆様、沢山のコメント有難う御座います。
ちょっと忙しい日が続いているので、今日は補足だけしか出来ません。御免なさい。
各コメントへのお返しは、後日あらためて……

<外伝4について>
外伝4では、第1〜7話で『現在の直轄領における、現地人と帝國軍人それぞれの暮らしぶり』、番外編で『帝國統治直後の直轄領の姿』を書いてきました。
そしてこの第8話(多分数話に分割すると思うけど)では、『現在の大陸における、帝國軍の問題点』を書いたつもりです。

情報の流出も問題ですが、大陸における軍にもかなり問題があります。 ……上手く書き表せたでしょうか?

944 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/09(土) 10:03:12 [ yq9lkYzY ]
<今回の事件について>
え〜、たまたま『教科書』という分かり易いブツを流した松島中佐がスケープゴートにされましたが、この事件は本文にも書かれています様に、『氷山の一角』に過ぎません。
既に、結構な量の書物が流れています。
(高度な専門書とかの類はほとんど無いでしょうが……)
帝國語の教本自体は、既に広く流通していますから、解読も可能です。

この内の大半は、こと重大さに気付いていない連中が、小遣い稼ぎで売ったものです。
ですから今回の件が大々的に報道されれば、一罰百戒となり、不届き者の数も減るでしょう。

つまり今回の摘発は、大陸に展開している帝國人に対する荒治療、意識改革だったのですよ。
(加えて、本国と大陸との政治的な駆け引きでもあります)

……とはいえ、列強が収集しているのは、何も技術情報や知識だけではありません。

現在、列強(特にローレシア)は盛んに帝國の情報を集めています。

将兵との会話、新聞・雑誌の切れ端からも情報は集まります。
別に、技術情報でなくとも構いません。
帝國の国内の状況等、帝國の姿が分かるだけでも有り難いですから。

その甲斐もあり、現在では、帝國が『異界の魔術体系を駆使する謎の國』では無く、『科学技術だけが異様に発展した國』であることも判明しています。

……つまり、『自分達にも同様のことが出来る』(技術レヴェルの差はおくとして)ということが分かったのですね。

これは大きいですよ?

今まで列強は、帝國の技術体系を、『異界の法則に則った、我々とは異なる魔道体系』と考え、『再現不能(或いは困難)』と考えていたのですから。
(除くローレシア)

945 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w 投稿日:2006/09/09(土) 10:04:50 [ yq9lkYzY ]
<教科書について>
これ程分かり易い『基礎解説書』は無いでしょうね。
帝國の学問を系統だてて理解するのに、これ以上のものはありません。
他の本で理解不能だった箇所も、理解出来るようになる可能性が高いです。

帝國の技術の進歩過程を知る上でも、役に立つでしょう。

そして、自分達の魔道技術にも取り込める可能性は高いですね。
(数学・物理・科学・生物から得られる新たな知識。歴史に至っては……)

946 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/09(土) 11:08:32 [ O9YRkAJI ]
>>くろべえさん
『自分たちのにも同様の事ができる』
とは言っても、結局列強は本来の魔導技術に関する事に予算を馬鹿みたいに取られ、科学技術の発展に投入できる予算は極々僅かと考えるのが自然でしょうね。
二束わらじで行けば、中途半端にどちらの技術も進みはしますが、結局どちらかに特化した国に遅れを取るのは当然でしょうね。

947 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/09(土) 12:13:20 [ 5MaXVxwM ]
物語上、ここでは教科書云々より「情報漏洩」があったという事実設定をストーリーに組み入れることが目的では?情報漏洩の手段は伝聞、拉致、盗難等でもよいのです。結果としてストーリーに緊張感を持たせることができます。
物語上、ここでは教科書云々より「情報漏洩」があったという事実設定をストーリーに組み入れることが目的では?情報漏洩の手段は伝聞、拉致、盗難等でもよいのです。結果としてストーリーに緊張感を持たせることができます。

948 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/09(土) 12:15:10 [ 5MaXVxwM ]
間違った、二重にコピペしてしまった。
しばらくロムります。

949 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/09(土) 14:24:45 [ N/eAJa2w ]
大丈夫、帝國には究極超兵器赤化爆弾がある。
その一撃は国民の大半を粛清し疑心暗鬼にさせ国家体制を根本から瓦解させる。
ただしあまりの威力に帝國も被害を受けるので御注意を……

950 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/09(土) 14:57:18 [ elYjEkSA ]
帝政ロシアのようにごく一部の貴族、知識人、そして大多数を占める
無学文盲の農奴たち・・・・
これは、貴族ではないが教育を受けている階層から若い俊英を選んで
「理論的指導者」として教育を。
ちなみに、いくつか流派が違う思想教育を近在の数カ国にしておいて
将来的には「神学論争」で地域間でつぶし合いしてもらいましょう。
でも、革命が成功しなくても国力を大幅減退させる思想兵器にはなるでしょうな

951 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/09(土) 16:05:38 [ t3ac0hx2 ]
洗脳した共産党員使って列強を苦しめるのはいいかもな
将来は敵になるにしても時間は稼げる

952 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/09(土) 16:19:57 [ AJDYN5zc ]
共産主義の本来の敵である資本主義が存在しない状態で
どれほど広まるかは疑問な気もするけど・・・・

しかも結構、中世の農村部ってナチュラルに似たような事やってそうな気もするよ
粛清云々はないけど、基本はコミュニティ内での助け合いでしょ

953 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/09(土) 18:08:38 [ NbVPvpP2 ]
元の世界では文明的に遅れた地域であった中華地方での共産主義の浸透がある程度の参考になるかもしれない。
まあ、文明的に遅れてるといってもある程度は発達してるし、国民党の支持層であった大資本家たちも存在してるわけですが。

954 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/09(土) 20:56:39 [ dT.GhyLM ]
現代の悩みをそのまま持ち込まずに我々の世界が過去経験した思想を鍵がない状態で持ち込んでやればいい。
ブルジョワが存在しない&下層市民に教養が無いという状態で自由主義や民主主義を広めればそれだけで大変なことになるぞ?
あっという間に自由と革命の名の下の戦国時代に突入だ

955 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/09(土) 21:48:15 [ XBoJkZkg ]
列強は程度がww1以前のナポレオン〜近代だとすると
ギロチン革命が流行る下地としての文明程度は十分備えていますね。

956 名前:陸士長 投稿日:2006/09/10(日) 01:26:05 [ ziDjG2Pc ]
くろべえさん投下乙です。
良くも悪くも日本帝國の影響がこの世界に染みこみ始めた訳ですね。
中佐には……小さじ一杯程には同情します。自業自得と言えばそれまでですが。
しかし、首釣って死ぬのはあの時代だと最悪の死に方なんですけど。
銃殺すら許されなかったのかな? あの場で拳銃自決してた方が救いがあったかも。

957 名前:陸士長 投稿日:2006/09/10(日) 01:26:39 [ ziDjG2Pc ]
さて、投下。

958 名前:魔導工学研究計画:黎明の章 中編 投稿日:2006/09/10(日) 01:27:33 [ ziDjG2Pc ]
スコットランド王国軍 第51研究所
食堂 

ひたすら、ひたすらな咀嚼音が豪奢な食堂に響き続ける。
此処は貴賓用の食堂。調度品も室内の内装も拘っている。

だが、ただ1人食堂の椅子に座り、山積みになった帝国産の菓子を次々に胃袋へと納めていく女―――少佐には関係ない。
彼女は、右手で棒羊羹をモリモリとはみつつ、左手で山積みになった報告書のレポートを捲っていく。
どちらも凄まじいスピードだ。レポートの承認印を小刻みに押してながら菓子の包みを器用に破り、口の動きは全く止まらない。

「あの、少佐殿。度々申し上げておりますが、食べながら報告書を読むのは……」
「んがくっく……行儀が悪い? 確かにそうだな。だが、私が甘味を食べるのを邪魔しないでくれ」

視線を受けワタワタと慌てる主任を見やり、少佐は口の端に付いた漉し餡を別の部下が差し出したハンケチで軽く拭う。
長身の大尉は全く動かない。少佐の斜め後ろで、真っ直ぐ前を見たまま彫像と化している。

「知らないのか主任。甘党は一日おやつを抜いただけで別腹が餓死してしまうんだ。この私が言うのだから間違いない」

そう断言し、ワシャワシャと文明堂のカステラを端から囓っていく。
瞬く間に2斤のカステラが少佐の腹に収まっていくのを見て、慣れている筈なのに主任は思ってしまう。
この人、よく『放浪時代』を生き抜けたなと。あの、食べていくのですら精一杯の時代を。
実際、彼女―――特務少佐は不思議が多い存在である。過去を知る者が殆ど居ないのだ。
修技館を出たと言う話は無いのに、長老達に意見を出せるだけの権限を持っているしお抱えの実働部隊も配下に存在する。

その辺、主任は詮索を控えていた。
この少佐は甘党の癖に、行動や手段は極めて辛口なのだから。

959 名前:魔導工学研究計画:黎明の章 中編 投稿日:2006/09/10(日) 01:28:32 [ ziDjG2Pc ]
「今日の甘味は品揃えが良いな。どこで仕入れた?」
「は、アバディーンに出向している食品会社のつてで手に入れました」
「ほう、君のつてか。見事な人脈じゃないか」
「お褒めにあずかり光栄です」
「だが、研究の方は甘味の品揃えほどよろしくない。レポートの上を見るだけでもやや遅延が見られるな」
「は、はは。申し訳ありません!」

脂汗をタラタラ流しながら頭を下げている主任。
そんな彼に一瞥もくれずに、少佐は主任が話している間に口に放り込んだ牡丹餅を喉の奥に流し込んだ。
濃いめに入れた日本茶をずずっと啜り、主任の方を口の端を吊り上げながら見やった。

「まぁ、この辺は致し方無いな。此方に送る匪賊と流民の罪人どもの数が予定より2割程不足している」
「は、はい。何分、まだ開発初期の状態の部門が大半ですので、実験を頻繁に行わなければ基礎理論の完成に差し障ります」
「ふむ……まぁその辺は石井将軍と話を付けてきた。必要分、我が方への割り当てを増やしても良いとの事だ」
「そうですか。ありがとうございます!」
「勿論只では無かったぞ。交換条件として、我等が世界の疫病や病気媒体に関する情報を欲しいとの事だ。解るな?」
「ははっ、至急、上の方に資料提供の要請を出して置きます」
「よろしい。10日後に私はまた帝國本土へ渡る。それまでに用意しておくように」
「はっ!」

深々と主任が頭を下げるのを見て、少佐はくくっと喉を鳴らし。
最後に残っていた生クリームたっぷりのシューを一呑みにした。

960 名前:魔導工学研究計画:黎明の章 中編 投稿日:2006/09/10(日) 01:30:33 [ ziDjG2Pc ]
報告が済んだ後は、視察である。
主任と研究員数名を連れて、少佐は各部門を見て回っていく。
ちなみに大尉は居ない。エントランスで待機状態だ。

「大尉を連れて来なくてもよろしかったのでしょうか?」
「主任も解っていると思うが大尉が血を見過ぎるのはあまり良くない。具合の悪い事に今夜は満月だしな」

キャラメルをもきゅもきゅと口の中で遊ばせながら、少佐は廊下を歩いていく。
辺りには人影が少ない。所々に表示されている看板には『培養槽室』や『保冷室』等が書かれていた。

「モルグ等を見て下手に刺激が入ると、抑制するのに私が手間となる。まぁ、今回は視察だけだ。問題はあるまい」
「は、確かに……」

少佐の言葉に頷き、次の視察場所へ向かおうとした主任と一行の耳に、警報音が飛び込んで来た。
と同時に、通路の天井に設置されている赤ランプが乱舞し、通路全体を赤く染める。

「どうした。何があったのだ!?」

廊下に設置してある非常用電話機を使い保安室へと連絡を取る主任。

『主任、そちらに居られましたか。直ちに第弐棟から退去なさってください! 第6保冷室の実験体の活動が急激に高まっています!』
「何だと、それはどういう事だ!」
「保冷器の故障で、抑制されていた成長が異常促進したようです! 隔壁を降ろしますので直ちに……」

保安員の言葉が終わらない内に、二十数m向こうの廊下にある部屋の扉が爆砕した。
ぽっかりと開いた扉枠を破壊しつつゆっくりと姿を現したのは、体長が2m半ほどもある大柄な剥き身の厳つい人体標本。
直接外気に張り出した血管がピクピク動き、ピンクと朱のボディからは得体の知れない粘液が滴っている。

「あれは何だね主任。私の歓迎にしては些か雅に掛けるが?」
「も、もももも申し訳ありません。研究設備の不備の為、オーガの実験体を取り逃がしたようでして……」
「なるほど取り逃がしたか。不備の極みだな」
「は、はい。た、直ちに保安部によって制圧を」
「保安部が来るまで間が持たんな。どうやら我々に用があるらしいぞ実験体君は」

少佐の言葉に主任が振り返ると、オーガの実験体がジリジリと此方へ向かってくる。
足の表皮が溶解している所為か、歩みが遅い。
だが、たかが二十数メートルしか間が無いので直ぐに此方へと辿り着くだろう。

「少佐殿、は、早くた、退去を」
「そ、そうです。隔壁を閉めますので早くお下がりください!」

961 名前:魔導工学研究計画:黎明の章 中編 投稿日:2006/09/10(日) 01:31:30 [ ziDjG2Pc ]
早くも後ずさりながら必死に少佐へ退避を促す研究員達。
種族構成が戦闘民族と言っても過言では無いダークエルフ達だが、何事にも例外がある。
彼等は、学者及び技術者としては優秀だが戦闘技能はからっきしなのだ。
そんな怯える主任と研究員達の言に耳も貸す様子もなく、少佐はにやりと笑みを浮かべた。

「はは、とんだ歓迎イベントだ。だがまあいい、化け物が逃げ出すのは研究所の華だ」

少佐は一歩前に出ると、右手を上に掲げた。
するとあら不思議、彼女が首に掛けているストールの片方の先端がひらりと動きホルスターを開ける。
ストールの先端は器用にうぃ〜んと動きながら、南部式自動拳銃をホルスターから引き抜くと。
するすると上に舞い上がり、少佐の掲げた掌にグリップを納めた。
普通に右手でホルスターから抜いた方が早いんじゃないかと言う突っ込みは野暮である。

誰の突っ込みも無かったので、少佐は笑顔で発砲した。
一発、二発、三発、四発、五発、六発、七発、八発、九発。
九つの銃声が研究所の通路に響き。
そして、それら全ての弾が明後日の方向に飛んでいき、内2発は跳弾によって研究員達の直ぐ側に命中した。

「駄目だ主任。当たらん」
(…………射撃が下手過ぎます少佐殿)

どうやってこの人特務になれたんだろ?
あまりに下手な射撃に本音が漏れそうになり、慌てて口を塞いだ主任の耳にそれは聞こえた。

ふぅふぅ、ふぅふぅ。

生臭い息の臭いが、鼻に付く。
そう、もう直ぐ側までオーガの実験体は接近して来て居たのだ。


後編へ続く。

962 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/09/10(日) 08:27:38 [ ToMVwDhk ]
陸士長氏、投下乙。


続いて投下。

963 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/09/10(日) 08:48:17 [ ToMVwDhk ]
帝国異史外伝  「海軍戦備整備計画」会議


「確かに降爆の方が命中率は高いですが、複数の噴進弾を使用する事で命中率を補えると考えます。
技術の進歩により、噴進式発動機ならば、1t以上の噴進弾を運用する事が可能ですので。
また、防空兵器の発展により、生還率が著しく低下しているのは、
自明の理です。
搭乗員保護の観点からも、これからの艦攻には噴進弾が一番であると考えております」
「なるほど、噴進弾の利点については了解した。
それで、航空用噴進弾はどのくらいで運用できるのです?」
淵田大佐に技術部員は視線を向き直した。


「空技廠にて運用試験が行われている段階です。
命中率にはやはり難はありますが、運用は容易との事です」
「そういう事ならば、早期の実用化を目指してほしい。
場数を踏んだ搭乗員は、それだけで宝なのだから」
淵田大佐の言に、技術部員が一礼したのだった。


「次期対潜哨戒機ですが、東海の性能向上型でいく方針です。
ただ消磁されたならば、磁器探知の効力は弱くなりますので、音源探知も併せて開発していきます」
海上護衛総司令部航空参謀奥宮正武大佐が、次期哨戒機の説明を求めたその返答に、その方針になんら不満はない為、あっさりと決まる。

964 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/09/10(日) 08:54:24 [ ToMVwDhk ]
続いて、陸軍から導入した五式爆撃機(海軍名『靖国』)の後継機については、先年兵部省の
決定により、陸軍が開発したものを使用する事となった為、議題には上がらなかった。


05
「さて次は艦艇に進みますが、よろしいでしょうか?」
海軍次官の問いに出席者全員が同意した。
「まずは駆逐艦から始めましょう」


海軍次官が発言した直後に挙手したものがいた。
兵部省輸送本部長石川信吾海軍少将だった。


兵部省輸送本部とは、軍需省の海運総局を発展解消したもので、
海陸軍の輸送を全て所管するだけでなく、軍需物資の配分も管轄する。
また、その業務内容から逓信省や商務省とも関係が深い部署でもある。


輸送本部長の石川少将もこれまた運輸行政に長年携わってきた専門家で、大井少将とも面識の
深い人物の一人だった。

965 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/09/10(日) 08:59:31 [ ToMVwDhk ]
06
「松級の後継艦を是非ともお願いしたく存じます。
船団護衛を展開するにあたって、海防艦だけでは能力不足だからです。
それにこのような任務には、数が必要なので、量産に優れた松級が適任だからです」
「駆逐艦をさような事に使うなど勿体ない。・・・海防艦で充分です。
護衛など片手間で出来る筈です」


石川輸送本部長の言葉に反発したのは、連合艦隊の幕僚の一人だった。
石川少将が思わず眉をひそめた傍ら、その幕僚に頷くものもいた。
石川輸送本部長が口を開きかけた時、立ち上がった者がいた。
誰あろう、大井少将だ。


07
「未だにそんな事を言ってるのか!?
海防艦の性能が不足しており駆逐艦が足りなかったから、経済が破綻しかけた事になぜ気付かない!?」
「海防艦の性能が不足していたのではなく、作戦指導を誤ったからではないのですか?」
「作戦指導以前の問題だ!
数も性能も不足している状態で何ができるというのだ!?
第一、連合艦隊に応援を頼んでも船団護衛を嫌がったのは、貴官らだろうが」
「当然で・・・」


大井少将はその幕僚に最後まで言わせなかった。

966 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/09/10(日) 09:08:27 [ ToMVwDhk ]
「当然と?
貴官が馬鹿にした海上護衛で、連合艦隊自体が身動き一つ取れなくなったのではないか!?
よかろう、そうまでいうなら、連合艦隊単独で作戦すればよろしい!
海上護衛総司令部は油一滴たりと言えど、連合艦隊には渡さんぞ!?」


激怒する大井少将を奥宮大佐と石川輸送本部長らがなだめ、連合艦隊参謀副長の山本善雄少将が、
大井少将の激怒を買ったその幕僚をいなして、大井少将に頭を下げた。


「現状、船団護衛は数ですから、量産に優れた松級が適任である事に、ご理解願います」
石川少将に山本参謀副長が頷く。
「連合艦隊でも、これからの駆逐艦は数が重要である、という認識で一致しております」


怒りをようやく収めた大井少将も同意した事で、これからの駆逐艦は、松級に連なる量産に優れ
た艦になる事となる。


併せて、対潜対空兵装に重点を置き、対艦兵装は魚雷のみ−−次発装填装置はない−−となった。

967 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/09/10(日) 09:09:51 [ ToMVwDhk ]
投下完了。

968 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/09/10(日) 10:42:48 [ DUErFeR2 ]
陸士長さん、投下乙です。
凄い甘党な少佐ですね。胸焼けしそう。頭が糖分を欲しているのかなあ。

大本営発表さん、投下乙です。
まだ、海上護衛を馬鹿にしている幕僚がいるとは…。さっさと辞めさせろ!と言いたくなりますね。

969 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/10(日) 11:08:35 [ qXUtD3ho ]
そういや、必要ないのになんで教科書なんて物を大陸に持って行ってたんだろ?

970 名前:長崎県人 投稿日:2006/09/10(日) 12:07:54 [ qolO/Z6Q ]
しかし水上艦艇をシーレーン上に進出されたら海防艦や松クラスの駆逐艦じゃ対抗不可能な訳ですから、結局同じ。だったら護衛は片手間にしてその水上艦艇を撃破することに取り組んだ方が良いかと、つまり決戦ですね、まぁ英米軍相手なら、ですがね。

この点に立っていうならば、聯合艦隊から護衛になけなしの戦力を割いて護衛したが、決戦は一分の勝利の目も無くなり、手も足も出なくなって敗北、よし、持って行った分、護衛艦艇だけでなんとかしてみろったってどうにもならないのに対して
決戦に全力を向けて、少ない目の勝利を手にしたならば、敵艦艇の排除に成功しだい輸送自体はなんとかできるんですから。

多少なりとも可能性にかけれる戦力維持と、まったく勝てない戦力維持(但し国体には優しい)、どちらが良いかはまぁ人に依って変わるでしょうが
しかし負けたら国体がどうなるか・・・

全力の決戦でも所詮負けるから、どうにもならないからと諦めるなんてことは軍人として出来ないでしょうしね。


ま、こっちの大井さんは頑張りすぎてだったら一人でやれと海上護衛総隊ごと省から庁、別組織、海保として移行させられ、予算を十分の一以下にされて絶望のふちにたたされる訳ですが

971 名前:長崎県人 投稿日:2006/09/10(日) 12:38:12 [ dqay7chg ]
>>Girさん
いやいや造船所じゃなくフィーリングですよ、日本の艦艇は基本的に好きですが、好きな艦思い浮かべて見て俺って変態かもと・・・アルミランテラトーレとか、ガンクートとかでも体の興奮が・・・(汗)

>>シロべえさん投下乙です
なぁに代艦に伊勢級の名前をつけてもらえれば、しかし解体より記念艦で三重県と宮崎県n(PAM!PAM!PAM!)

>>陸士長さん投下乙です
カステラは一本まるごと掴んで食うのが通だという事を知っているとは・・・(芥川龍之介談)やりますな!
しかしカステラを斤で買うより、切れ端が製品を作る際に出るのですが、それをビニールの袋詰めにした奴が安くてお勧め(観光協会の回し者)

972 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/10(日) 13:42:25 [ RzUUDN.A ]
>>陸士長殿
この少佐殿、いつになったら自分の戦争好きを長々とカミングアウトしますか(・∀・)?

973 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/09/10(日) 14:04:06 [ ToMVwDhk ]
>>968

日本人が作り上げた組織の宿阿は、そう簡単には解決できないのですよ。


海軍兵学校、海軍大学校での教育方法や人材の育成の在り方、軍令部や連合艦隊司令部の作戦
立案思想、海軍省の兵備の在り方に対する考え方。


例え、米軍との戦いは実質的に消滅したとしても、全体が変わらない事には意味がないのです。


これは陸軍にも言えることで、陸大の試験にて、守勢を維持するのが正しくとも、「それでも
死中に活を求め、攻勢を敢行する」と書くと、高い点が貰えるような、出題者の性格にそった
解答を書くようなやり方をする限り、インパール作戦やノモンハンと同じ轍を踏むはずです。

974 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/09/10(日) 19:09:33 [ DUErFeR2 ]
太平洋戦争を経験しても未だに決戦を求めるというのがね。
まあ、学習能力があればミッドウェーの悲劇も防げたのかもしれませんが…。
それにせめて松型があれば並の駆逐艦相手には戦えますからね。複数隻対一隻じゃないと厳しいけど。

975 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/09/10(日) 19:37:33 [ ToMVwDhk ]
>>974
誰だったか忘れましたが(日下公人だったか渡辺昇一だったか)、ある書物で連合艦隊か
軍令部にいた人が言うには、戦争最末期ですら、まだ大和があるからなんとかなると思っていたそうです。


そう簡単に意識は変わらないのだと言う証左ではないでしょうか。

976 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/10(日) 20:14:00 [ CFpPae32 ]
アメリカ人が全面核戦争後の地球で、開拓時代レベルの社会がどこかには
残ると考えているようなもんでしょうか?
ある意味、核兵器の使用が日本人の意識を挫くためというアメリカ人の
意見を肯定するような話であります。

・・・しかし、日本って世界で唯一の「核戦争後の社会」なんだよね。

977 名前:長崎県人 投稿日:2006/09/10(日) 20:14:45 [ wezaJ53A ]
>>名無し三等兵さん

しかし守るだけではどうにもなりませんからなぁ・・・戦後だってその決戦や敵根拠地(昔の浦塩や今の中国沿岸)を叩く役目を米海軍に丸投げしたからこその海自、護衛艦隊であるので、思想的にどの時代でも間違ってるとまではいえないかも。
臭い物(潜水艦や艦隊)は根本から断たないとまた臭ってきますから、さしずめ、護衛艦隊は臭い移りしないためのファブ◯ーズみたいなものでしかないので。米海軍は場から完全に臭いをけす◯臭力といったところでしょうか?



そしてこんな例えしか思いつかなかった俺はADー1スカイレーダーに便器落とされてきます・・・orz

978 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/09/10(日) 20:54:01 [ DUErFeR2 ]
もちろん根本を断つのも大事ですよ。ただ、それを「決戦」に求めるのはどうかなあ、と。
航空戦に例えれば、航空機を護衛する戦闘機と、根拠地を潰す為の爆撃機が重要(戦場真っ只中において)で、
戦闘機は「味方を守るために」敵戦闘機と戦うわけで。

駆逐艦といえば秋月型もまだ作っているかな?あれは護衛として使えるしなあ。

979 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/09/10(日) 21:06:13 [ DUErFeR2 ]
ちょっと分かりづらい気がするので、要は、
敵の航空基地を潰す方が航空戦で勝利するより大事なことであるように、
決戦に全てをかけるな!というわけで。

980 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/10(日) 21:09:09 [ vV6BatAo ]
こうなれば戦標船のタンカーに片っ端からから甲板を張って日本版MACシップにするとか。

まあ93式中練×12で何とか対処可能な相手の場合に限られますが。

981 名前:魔導工学研究計画:黎明の章 中編 投稿日:2006/09/10(日) 21:11:44 [ ziDjG2Pc ]
大本営氏 >>968 長嶋県人さん >>972

感想ありがとうございまふ。
頭と別腹が糖分を欲しているのです。他意は多分ありません。

>切れ端が製品を作る際に出るのですが、それをビニールの袋詰めにした奴が安くてお勧め
羊羹と同じで甘さと旨味が詰まっているんでしょうか?
長崎行く機会があったら是非買いたいですね。

>カミングアウト
諸君、私は甘味が好きだ(以下略

982 名前:陸士長 投稿日:2006/09/10(日) 21:12:15 [ ziDjG2Pc ]
っと、名前変えるの忘れてた。失敬。

983 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/09/10(日) 21:13:23 [ DUErFeR2 ]
>>980
艦攻や艦爆も載せられればいいなあ。九六式じゃ無理かな?
そうすれば敵艦があらわれても、味方を射程外で守りつつ、敵に攻撃できるんだけどなあ。

984 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/09/10(日) 21:16:00 [ DUErFeR2 ]
陸士長さん、松山に行ったときにタルト(スポンジの生地で餡子を巻いたお菓子)の切れ端をまとめて売っているのもありましたよ。
緑茶や紅茶、牛乳ともあって美味しかったですよ。

985 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/10(日) 21:23:42 [ oQDOX1Rk ]
カステラの切れ端か・・・
修学旅行で行ったときに食わしてもらったな

986 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/10(日) 21:24:45 [ vV6BatAo ]
>>983
飛行甲板は155×23mなんで、99式艦爆や97式艦攻はヤバそうですが96式艦爆は運用できそうです>日本版MACシップ

でも斜め飛行甲板にすれば(ry

987 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/09/10(日) 21:32:32 [ DUErFeR2 ]
そういえば、艦上機って飛行甲板全部使って飛ぶわけじゃないよね。
何機か並んでから飛ぶから、離陸時に必要な距離ってどのくらいなんだろう?

988 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/09/10(日) 22:48:42 [ ToMVwDhk ]
投下しまつ

989 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/09/10(日) 22:50:58 [ ToMVwDhk ]
08
「秋月級の後継艦の建造を併せてお願いします。
冬月以降の艦では、性能に難があるため、量産性に考慮しつつ、防空性能にも考慮を願います」
実施部隊の代表として参加していた第一機動部隊(新編第一艦隊)参謀長末国正雄少将が、
会議の空気を変える為に発言した。
挙手により発言を求めた末国少将に、好意的な視線を向けた。


「防空専任艦として、設計していただきたいのですが」
「防空専任艦とするには勿体ないと思うが、やはり対艦兵装を付与すべきと思いますがどうでしょう」
軍令部員が、末国少将の要望に質問で返した。


「いや、早くから防空専任艦として建造していれば、冬月以降の艦の性能が悪化せずに済んだ筈です。
しかるに、再び同じ事を繰り返すのは、愚かというものでしょう」
「防空能力は確かに最重要ですな」
山本参謀副長が末国少将に同意したのを受け、後継艦は防空専任艦とする事となり、併せて
艦籍区分に防空艦を新設する事となった。


09
「さて次期巡洋艦ですが、何か意見はございませんか?」

990 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/09/10(日) 22:53:06 [ ToMVwDhk ]
「艦政本部技術中佐、福井静夫です。
まず巡洋艦の今後についてですが、甲型乙型の区分は消滅する事は確実であると思ってください」
出席者の誰もが、一斉に福井技術中佐を注視する。


「どういう事だ?」
「理由は幾つかありまして、第一に昨今の装備の大型化があげられます。
これは、対空、防空に注意を払わなければならない事。
将来でてくるであろうこれらの装備が大型になるだろう事。
第二点、これは第一点と関連しますが、艦体の大型化に伴い、乙型に匹敵するような小型艦艇
がでてくる事は間違いない事。
第三点、装備の増設に関して充分な冗長性がなければ、運用しずらい事です」
福井中佐の指摘に、大井少将は人知れず苦笑いした。
乙型を旗艦に宛てようとしていたのだがな。

「それならば、海上護衛総司令部としては、護衛隊旗艦用として通信・電波兵装を充実させた
上で防空装備を有する事、主砲には15.5Cm砲を連装ないし3連装で1基か2基装備するような巡洋艦
を要望させていただきます」
「おや、そのような巡洋艦を実施部隊としても要求しようとした所ですよ」

991 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/09/10(日) 23:10:35 [ ToMVwDhk ]
末国少将は視線を大井少将に向けつつ応じたのを受け、福井技術中佐がペンを走らせながら一人ごちた。
「なら、兵装をかなり共通できるな。
共通の艦型を用いれば、量産にも配慮できるかも。
やってみる価値はあるなぁ」
「そういう事なら是非お願いします」
末国少将が頭を下げたのを見て、福井中佐は思わず恐縮した。
将官が佐官に頭をさげるなど、滅多とない。
これには、実施部隊の現状−−巡洋艦が極めて不足しているのだ−−があっての態度でもあるが。


09
「連合艦隊としては、対艦能力を有する巡洋艦も必要であると考えております。
また、高速性にも留意する事で、迅速な展開が可能ですからな」
山本少将の意見には、別段大井少将も反対ではない。
護衛部隊の陣容が叶うならば、問題ないからだった。
それに敵を撃滅してくれるなら、海上護衛も容易になるというものだ。


先程、連合艦隊の幕僚に激昂してみせた態度とは正反対ではあったが、それは件の人物が海上
護衛に無神経だったからで、大井少将は何も艦隊戦など無用などとは思っていない。


この結果を踏まえ海軍省と協議した結果、後日艦籍区分における巡洋艦の単一艦種化が決まるのである。

992 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/09/10(日) 23:14:42 [ ToMVwDhk ]
空母に関しても状況は同じで、艦載機の大型化噴進化に伴い、大型になるのは裂けられなくなった。


ただ海上護衛総司令部は軽空母を護衛部隊の中心に置きたい事もあり、奥宮大佐は油圧カタパ
ルトの開発を促進するよう要請した。


これについては、海軍では技術的課題に阻まれている事もあり、兵部省に応援を求める事とし、
石川輸送本部長に根回しを求めた。
石川少将としても、船団護衛が充実する分には問題ないため、協力する事に同意した。


10
続いて戦艦をどうするかについてだったが、新規に建造した所で、現状では動かす油など戦艦
に回すだけの余裕−−大型空母でも状況は同じだが、制空権はどうしても必要なのだった−−
はなく、戦艦に回すだけの油があれば充分、海上護衛作戦を展開できる事などから、大井少将
だけでなく、石川輸送本部長や末国少将らの反対により、戦艦建造の無期限中止が決まった。

993 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/09/10(日) 23:20:26 [ ToMVwDhk ]
また、戦艦建造に回す資材で壊滅状態にある後方支援艦船群を再建する事については誰から
も反論はなかったし、大陸側に充分な造修施設もない事から、各艦船を大型化する事で、
輸送力や支援能力を強化する事となったのだった。


11
「聞いたよ、大井君。
あっちの幕僚とやりあったんだってな?」
「出過ぎたようで申し訳ございません」
「いやいや。僕の名代として出席したんだ。
君の言葉は僕の言葉でもある。
あのぐらい、きつく言ってくれていいぐらいだな。
まあ、なんにせよ、未だに意識は変わらないという事か。
もう4・5年は経つというのにな、嘆かわしい事だ」


そう言うと、井上大将は白湯をすすって、向かいに座る大井参謀長を見遣った。
木目が綺麗な長卓に湯呑みを静かに置くのを、視界の片隅に置いて、大井少将も湯呑みを置いた。

994 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/09/10(日) 23:24:47 [ ToMVwDhk ]
「海軍省とも話して、海大の教育方針について、更にやり方を変える必要があるか。
ああ、今は関係がない話しだな。
・・・・・・それで、木村君と話してな、現在建造中の松型を6割回して貰う事になったよ」


井上海上護衛司令長官がいう木村君とは、「髭の昌福」で知られる連合艦隊司令長官、
木村昌福中将の事だ。
敗勢濃い中、数々の作戦を勝利に導いたその知謀を買われての事で、長官就任に際して誰の
反対もなかった。
現在の連合艦隊を率いられるのは、木村以外にはいないだろうと思われたのだった。


「6割ですか?よく認めてくれましたね」
「大陸がきな臭いのだよ。
王国軍の陣容が整いつつあるという情報が陸軍から回って来てね、あちらでは警戒を強め
ているらしい。
木村君も当面、うちとフランベリア方面艦隊を優先する事に合意している」
「ならば、向こうの海上戦力に注意しなければなりませんね。
船舶の護衛もしなければ」
「宜しく頼むよ」


かくして、帝国海軍も次の戦争を睨みながら、兵部省の修正を受けた計画案を、次期帝国議会に提出。
いくつか削除はされたものの、大筋で承認されたのだった。


ここに戦力に不安を抱えつつ、次なる戦争に海軍は臨む事となる。

995 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/10(日) 23:29:31 [ Pusv3SwY ]
>>987
空母が合成速力を得るために20ノット程度で走って、
零戦では中型空母飛行甲板の1/3程度。
97艦攻魚雷装備でほぼ甲板いっぱい使う。

翼面荷重が大きくなればなるほど、機体重量が大きくなればなるほど、
発艦速度が大きくなる。
発艦速度を得るためには、
1.船の速度を上げて合成速力を大きくするか
2.翼面加重を低くしてボーダーを下げるか
3.発艦促進装置(カタパルト等)を使用するか
が必要。

996 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/09/10(日) 23:30:27 [ ToMVwDhk ]
海軍戦備整備計画会議、完でつ。


取りあえず、色々問題はあるけど、海軍もまた歩を進めていまつ。


しかし、未だにCICの概念がないんだな。。。
コマッタコマッタ、アハハハハ(棒読み

997 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日:2006/09/10(日) 23:46:57 [ DUErFeR2 ]
大本営発表さん、投下乙です。
秋月型、遂に防空専任艦になりましたね。もう1基主砲塔増やせないかな?
新巡洋艦は大淀型に近い艦ですね。

>>995
九七艦攻で中型空母ほぼいっぱい(200mぐらい?)ですか。
九六艦攻なら自重は少し軽いし、翼面積は大きいから良いかな?
九二艦攻はもっと軽いけど、さすがに古いか(笑)。

998 名前:大本営発表 ◆F2.iwy/iJk 投稿日:2006/09/11(月) 01:06:55 [ ToMVwDhk ]
>>997
長10センチ砲5基は可能かと。
秋月型の後継艦は基準排水量が3000tクラスになる事は、必定だから。
駆逐艦ではなく防空艦ですから、駆逐艦の制約には囚われないでしょうねぇ。


海上護衛隊旗艦用の巡洋艦ですが、改大淀型になるかな。
航空兵装は装備しないし、魚雷も搭載しないので、艦の容量には充分な余裕があるでしょう。
その代わり、各種アンテナが林立してそうだ(笑


まあ、松型だけでは水上艦艇に対抗できないので、、、
しかし、対する王国艦隊は、中世に毛が生えた程度だから、松クラスでもなんとかなりそうだ(爆

999 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日:2006/09/11(月) 04:09:07 [ 6cNUKpAg ]

皇軍(明治〜WW2の日本軍)がファンタジー世界に召喚されますたvol.11
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1157915129/

1000 名前:2647 投稿日:2006/09/11(月) 04:40:57 [ mXUexDwQ ]
1000

■掲示板に戻る■ ■過去ログ倉庫一覧■