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美童祭りスレッド
1 名前:(MOUSOU1Q) 投稿日: 2005/01/04(火) 22:15
「30万ヒット記念・キャラ祭り」の、美童祭り用のスレッドです。
美童祭りは14日(金)一日の予定ですが、前夜祭・当日本スレに
UPしにくい時・後夜祭などは、このスレをご利用くださいませ。

なお、祭り全体の告知は、ここにコピペしてあります。
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/1322/1028085248/160-161
このスレでも、日にち以外は、同じお約束でお願いいたします。

2 名前: 有閑名無しさん 投稿日: 2005/01/16(日) 22:13
30万ヒット、おめでとうございます。
本スレの日に間に合いませんでしたので、こちらにうpします。
美→野風味ですので、苦手な方はスルーでお願いします。

3 名前: 30万ヒット記念・<そして、恋が始まった(1)> 投稿日: 2005/01/16(日) 22:17
僕は図書館で、ゼミの準備に必要な資料を選んでいた。
「あら、美童じゃありませんこと?」
聞こえてきた声に振り向くと、別の学部に通う野梨子がそこにいた。
高校の時はクラスが違ってもよくつるんでいたけど、大学に入ってからは学内で仲間を
見かけることはほとんどなかった。
もっとも、清四郎と魅録は外部の大学に行っていたし、悠理は同じ大学でもキャンパスが
違ったから会わないのも無理はなかった。
「僕がこんなとこにいたら、やっぱり珍しいかなあ」
「そんなことありませんわ。前にも2,3度見かけたことありますもの」
僕はわざとおどけて言ってみたのに、野梨子は至極真面目な口調で答えてくれた。
「えーっ、それだったら声かけてくれればいいのに」
「でも、何だかとても集中してるように見えたんですもの。だから、邪魔したく
 ありませんでしたの」
「そんなことないのになあ。…今度からは、全然気使わなくていいから、ね」
「ええ、次からそうしますわ」
野梨子はニコリと微笑んで、気に入った本を見つけたのか僕の側をするりと通り抜けて
窓際の席へと移動していった。
僕は微笑んで野梨子の後ろ姿を少しの間見た後、探してる本が見つからないので
隣の書架へと移動した。

4 名前: 30万ヒット記念・<そして、恋が始まった(2)> 投稿日: 2005/01/16(日) 22:19
僕は、結局夕方6時過ぎまで図書館にいた。
探してる本は何とか4冊とも見つけることが出来て、僕はそこそこ厚みのある本ばかりを
抱えてひとり暮らしをするマンションへと戻った。
当たり前だけど、マンションは暗い。
僕は全ての荷物を左手に持って右手で鍵をホールに差し込んでドアを開け、真っ先に
玄関の電気をつけた。
何の変哲もないワンルームは、静かに僕を迎えてくれた。
僕はスタスタと中に入ってテーブルの上に本を置き、床にペタリと座り込んだ。
途端に携帯電話のバイブ音が耳に入る。
僕は一瞬面倒臭いと思ったけどとりあえずジャケットのポケットに手を突っ込み、まだ
振動し続ける携帯を開いて通話ボタンを押した。
「美童、今お前どこにいる? 暇だったら出てこないか?」
魅録は結構あちこちに友達がいて忙しいはずなのに、割にマメに連絡を寄越してくれる。
「うちに帰ったところ。ちょっと片付けてからなら出れるけど。で、魅録どこにいるの?」
「いつもんとこ。まあ、待ってっから、出て来いよ」
「うん、わかった」
僕は電話を切って、とりあえず立ち上がった。
これから行くところは、魅録の知り合いが経営してるジャズバー。
広くはないけどダーツとかがあったりして、雰囲気が完全に魅録曰く『ヤロウ向け』。
僕はクローゼットの扉を開け、女の子とのデートで着ていく用の服を無視して端っこの方に
つってあるジャケットとズボンを引っ張り出した。
「こんなところだなあ」
僕はひとり呟いて着替えた後、携帯と財布だけ持ってマンションを後にした。

5 名前: 30万ヒット記念・<そして、恋が始まった(3)> 投稿日: 2005/01/16(日) 22:21
「あら、美童じゃありませんこと?」
僕は、背後から聞こえてくる意外なひとの声に思わず後ろを振り返った。
「野梨子?」
驚く僕を尻目に、野梨子はいたずらっぽく微笑みながら僕に近づいてきた。
「私がこんな時間にこんなところにひとりでいたら、やっぱり珍しいと思います?」
「正直言って、うん、思っちゃうなあ。どうしたの?」
僕は野梨子の顔を、ちょっと不躾なくらいじっと見た。
女の子の顔をこんな風に見るのは僕の主義に反することだけど、野梨子はそこら辺の
女の子と違って全然わかりやすくない。
いや、僕が勘ぐり過ぎてるだけで、本当のところは別に何もないのかもしれない。
それに、野梨子だってもう充分に大人だから、こんなとこをひとりで歩いてても
気にするのはおかしいのかもしれない。
だけど。
僕の頭の片隅で、アラームが鳴っている。
僕に、このまま『じゃあね』と別れて野梨子をひとりにしないように訴えている。
僕はあんまり勘がいい方じゃないと自覚してるからこういうのは普段無視してしまうんだけど、
今日は待たせてるのが魅録っていうのもあって、気が付いたらポケットから携帯を取り出して
魅録に電話をかけていた。
「魅録、あともうちょっと待ってくれる? …違うよ、ちょっとね。後でちゃんと説明するから。
 …魅録が思ってるようなことじゃないって」
僕は疑う魅録を無視して電話を切った。
野梨子は苦笑いして僕を見ている。
僕がいろんな女の子と付き合ってることは、今更野梨子に隠すことでもない。
なのに、何故か僕は気まずい思いがして、慌てて言い訳みたいなことを口走っていた。
「全く、魅録もひどいよね。僕だって、女の子以外の付き合いもあるのに」
「でも、私も『女の子』ですわ」
「うーん、それは違うんだよね。野梨子は野梨子だからね」
「ええ、わかってますわ。私にとっても、美童は美童ですもの」
僕達は歩道に立ち止まったままで、ふたりして声を上げて笑った。

6 名前: 30万ヒット記念・<そして、恋が始まった(4)> 投稿日: 2005/01/16(日) 22:23
「美童、ありがとう。何だかすっきりしましたわ」
ひとしきり笑った後、野梨子は目に溜まった涙をハンカチで拭いながら言った。
「人数が足りないからって同じゼミの方に頼まれたので合コンに行ってみたんですけど、
 あんまりにもつまらなくて」
「で、抜けてきたんだ?」
「ええ」
野梨子は、くすっと笑って答えた。
僕はそれを聞いて、その場面がありありと頭に浮かんだ。
野梨子の家は、普通のひとには躾の厳しい家だと思われている。
だから中学の終わり頃から野梨子が僕達と一緒に夜遊びをしていたなんて、多分僕達以外は
誰も知らない。
恐らく、そのゼミの子は野梨子のポーカーフェースにまんまと騙されたのだ。
ありもしない門限について、野梨子は本当に申し訳なさそうに言ってきたに違いない。
「野梨子、これからどうする? もし真っ直ぐに家に帰るんなら、タクシーのとこまで送るけど」
「そうですわね…。万が一見られると都合が悪いんですけど、食べるに食べられなかったので
 ちょっと付き合って下さいません?」
野梨子は僕を見上げて訊いてきた。
僕も実はおなかがすいていた。
作り置きもレトルトも全部食べ尽くしてしまっていたから、魅録からの電話がなければ
近所のラーメン屋にでも行くつもりだった。
僕はさっと周りを見渡し、反対側に大き目のカフェを見つけた。
「じゃあ、あそこのカフェにでも入ろうか?」
僕の言葉に、野梨子は首を縦に振った。
僕達はどちらからともなく歩き始め、すぐそこの交差点を渡り、また少し歩いて、
僕はカフェのガラスドアを開けた。
店内は、そこそこ混み合っている。
だが満席ではなかったらしく、程なくウェーターが僕達に近づいてきて奥の方の席へと
案内してくれた。

7 名前: 30万ヒット記念・<そして、恋が始まった(5)> 投稿日: 2005/01/16(日) 22:25
結局僕が魅録の待つジャズバーへと向かったのは、野梨子をタクシースタンドまで
送り届けた後で、夜も10時を回っていた。
ジャズバーの入っているビルは、表通りから路地をふたつほど入ったところにある。
僕はまずビルの玄関ドアを引いて中に入り、それから階段を降りていって
目の前にある重たいドアを押して開けた。
薄暗いが広くないので、すぐに魅録とそして珍しいことに清四郎までも見つけることができた。
ふたりは僕が入ってきたのに気付いていない。
僕はまずカウンターでジントニックを手にして、それからふたりのいるテーブルに近づいた。
「よお、美童。遅かったじゃないか」
「久しぶりですね、美童」
ふたりはそれぞれグラスを片手に持ったまま僕に話し掛けてきた。
「ごめん、遅くなって」
僕は一応ふたりに謝って、それから近くの椅子を引っ張ってきてそこに座った。
「お前、何してたんだ?」
早速、魅録が僕に聞いてくる。
言葉だけ聞くと、魅録が僕が遅れた訳を問いただしてるように聞こえるけど、実はそうじゃない。
これは単に、始まりの合図みたいなものだ。
だから僕も嘘はつかないけど、そんなに真面目には答えない。
気が乗らない部分は、適当に端折ったりする。
「地下鉄の駅から出たらさ、偶然ひとと会ったんだよ。それでさ、おなかすいてたもんだから、
 ちょっと食べてきちゃった」
僕はそう言いながらも、テーブルの上に置いてあるフライドポテトに手を伸ばした。
隣のトマトソースをたっぷりつけ、口に運ぶ。
ポテトはすっかり冷たくなっているけど、思ったほどまずくはない。
僕はおなかがすいているわけではないのに、一度食べ始めたら何となく止められなくなった。
口をモグモグ動かしながらふたりの話を聞き、時々適当なところで相槌を打った。
結局、僕は残りのポテトを食べ尽くした。
と同時にグラスが空になった魅録は席を立ち、僕は清四郎とふたりになった。
「今日会ったの、実は野梨子なんだ。合コンの帰りだって。もっとも、つまんなかったから
 途中で抜けてきたって言ってたけど」
僕は気を使って、軽く聞こえるように清四郎に言った。
だが返ってきた清四郎の言葉は、僕を驚かせるのに充分だった。
「そうですか。途中で抜けるなんて全く野梨子らしいですけど、そういうのにちゃんと
 付き合うのも大切だって言っとかないといけませんね」
「どうして? 清四郎は心配じゃないの?」
僕の質問に、清四郎は首を横に振った。
「美童。僕にも人並みに、大切にしたいと思うひとがいるんですよ」

8 名前: 30万ヒット記念・<そして、恋が始まった(6)> 投稿日: 2005/01/16(日) 22:28
この時の清四郎の言葉がきっかけで、僕は野梨子を本当の意味でひとりの女性として
意識し始めた。
まず、キャンパスで見かければ必ず声をかけるようになった。
そのうち、しつこくない程度にメールで連絡を取ってみるようになった。
そして今、僕は野梨子に不自然に思われないように注意しながら自分の都合を
野梨子の都合に合わせるようになっている。
それなのに。
―僕はいまだに、野梨子の手すら握っていない。

END

9 名前: 有閑名無しさん 投稿日: 2005/01/16(日) 22:32
<そして、恋が始まった>以上で終わりです。
妄想スレ並びに嵐様の妄想同好会の益々の発展をお祈りいたします。

10 名前: 有閑名無しさん 投稿日: 2005/01/17(月) 10:08
>そして、恋が始まった
うわー。こういうの大好きです。
落ち着いた雰囲気と、流麗な文章がとても素敵でした。
美童や野梨子たちの仕草や行動、心の動きが丁寧に描かれていて、
頭の中に、すんなりと情景が浮かんできます。
ラスト、野梨子に恋をした美童の行動が何とも微笑ましくて、
〆の一行が、めちゃくちゃイイ&萌えです。美童頑張れ〜。
上質の素敵なお話を、ありがとうございました!

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