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その他のキャラ祭りスレッド
1 名前:(MOUSOU1Q) 投稿日: 2005/01/04(火) 22:10
「30万ヒット記念・キャラ祭り」の、その他のキャラ祭り用のスレッドです。
その他のキャラ祭りは17日(月)一日の予定ですが、前夜祭・当日本スレに
UPしにくい時・後夜祭などは、このスレをご利用くださいませ。

なお、祭り全体の告知は、ここにコピペしてあります。
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/1322/1028085248/160-161
このスレでも、日にち以外は、同じお約束でお願いいたします。

2 名前: 有閑名無しさん 投稿日: 2005/01/18(火) 00:02
30万HITおめでとうございます。
日付変わってしまいましたが、うpさせてください。
『池の鯉誘拐事件』に出てきました浦霞緋久子主人公のSSです。
原作を半ば無視した浦霞→副総監話なのでダメな方スルーお願いします

3 名前: 30万hit記念・<婚約者1> 投稿日: 2005/01/18(火) 00:03
招待された剣菱家のパーティで、彼女の顔を見るなり父は頭を下げた。
「その節はありがとうございました」
父の反応は仕方のないこととはいえ、予想通り彼女はかわいそうな位にうろたえた。
「ちょ、ちょっと、なにやってるんだよっ!」
慌てて父の肩に手を伸ばしている。
逃げるように去っていく彼女の後姿を見ながら父がつぶやいた。。
「……緋久子はいい友達を持ったね」
友達、というのもおこがましい気がして、私は口を開いた。
「最近お話するようになったばかりですから、友達と言えるかどうか……」
「友達でもなくて、いったい何の得があってあんな大金を貸してくれるんだ」
元来人を疑うことを知らない父は、私の心情など読み取ろうとせず、能天気に笑う。
そして不思議そうな表情を浮かべた。
「しかし緋久子とは全くタイプのちがう子だね。
いったいなにがきっかけでつきあうようになったのかい?」
彼女と知り合ったいきさつなど話せるはずもない。
酒に酔い、見知らぬ男に連れ出されそうになっているところを助けられたなどとは。
ありがたいことに、父はそれ以上立ち入ろうとはしなかった。       。
「人と人の縁は不思議なものだね。彼女が私たち家族の運命を変えたともいえるな」
しみじみと感じ入ったようにつぶやく。
「緋久子の婚約も……婚約解消をよかったの言うのもおかしな話だが……私はホッとしたよ」
思わず体をこらばらせた私に気づかず父は続ける。
「敷嶋君は、最近あまりいい噂は聞かないからね……」
彼については、火事の責任を問われ警視庁を辞職したのだ、という話は聞いている。
どのみちもう私には関係のないことだ、とも思う。
今の私は、彼のことも婚約のことも、遠い過去のこととして考えるようにしているのだから。
けれども、まるで自分の責任を感じていないような父の物言いに苛立ちを感じないわけではなかった。
――婚約の理由を作った張本人のくせに。
そのまま側にいると、取り返しのつかないことを口にしてしまいそうだった。
私はパウダールームに行くふりをして、父から離れた。

4 名前: 30万hit記念・<婚約者2> 投稿日: 2005/01/18(火) 00:03
そうして、広間の隅で一息ついている時だった。
「……らがすみさん」
いきなり腕をつかまれ、私は驚いた。
無地の黄色のパンツスーツに、柄物のシャツの彼女は――。
「剣菱さん」
彼女は、先ほどと違いのびのびと顔中に悪戯っぽい笑みを広げる。
「あたいと一緒にパーティ抜け出そうよ」


ディスコの黒塗りの扉に一歩足を踏み入れた途端、音楽の振動が肌に伝わってきた。
舞い踊る光は眩しく、人々は思い思いに体を動かしている。
こんなところに来るのは、婚約の一件で自暴自棄になった時以来だった。
一緒に踊ろうと言う剣菱さんに首を振り、私は席に残った菊正宗さんと白鹿さんと一緒に
フロアを眺めていた。
私には、決してあんな風に踊れないとはわかっているけれど、見ているだけでも面白い。
少しして、黄桜さんと美童さんが席に戻ってきた。
「今日の浦霞さん、きれいだね」
社交辞令だとわかっていても、きらびやかな容姿の彼に言われ、頬に熱が集まる。
「ちょっと、美童。浦霞さんには、手出さないでよ」
隣で黄桜さんは声を荒げたが「でも、ホント素敵でしょ」と楽しげに笑った。

5 名前: 30万hit記念・<婚約者3> 投稿日: 2005/01/18(火) 00:04
私の着ている服は、実は黄桜さんのものなのだ。
パーティーの服装で遊びに行くわけにもいかず、剣菱さんは自室で服を着替えてきた。
しかし私は家には戻らず、そのまま彼女の自家用車で黄桜さんの家に向かった。
「夜遊び用の服なんて持ってないでしょう?」
その言葉は、たしかに正しかった。私は彼女に服を借り、化粧まで施してもらった。
もっとも、彼女の服はどれも体の線が出るもので。
「だめよ。このくらいの服装でないと、逆に浮いちゃうわよ」
と強く言われたものの、今見につけている黒いワンピースも着るのに随分と勇気が必要だった。
何着か出された中からそれを選び出したののも、体にフィットするものの、
唯一胸元が開いていなかったからだ。
「せっかく婚約解消してフリーになったんだから、いい男見つけていい恋愛しなきゃ」
私には名前のわからない赤紫色のカクテルに口をつけながら、黄桜さんは言う。
私は烏龍茶を飲む手を止めた。
――恋愛?
正直なところ、私は今まで恋愛というものをしたことがなかった。
恋愛感情自体が、よくわからない感情だともいえる。
だからこそ、反抗しながらも最終的には親のいう結婚に従うつもりでいたのだろう。
もし婚約者が、家柄だけでなく少しでも私自身を望んでくれていたなら、
反発さえしなかったかもしれない。
「ろくに恋愛もしないで、結婚するなんてもったいないわよ」
考え込んだ私に、黄桜さんはさとすように言うと、あでやかな笑みを浮かべた。

6 名前: 30万hit記念・<婚約者4> 投稿日: 2005/01/18(火) 00:04
ディスコでしばらく過ごした後、「おなかがすいた!」と言う剣菱さんの希望で
多国籍料理のお店に入った。
あらかた料理を食べつくす頃には、午前一時を過ぎており、そろそろ解散するのかと思ったのだが、
「どこか静かなところで飲みなおしたいですね」
菊正宗さんの一言で、場所を変えることになった。
美童さんが時々行くというバーに入り、入り口近くのソファに席をとる。
慣れた調子で注文をする彼らのかたわらで、私はバーの中を見回していた。
間接照明は等間隔に設けられているが、その光は弱く店内は薄暗い。
客の年齢層は、私よりあきらかに一回りは上だ。
しかし不思議なことに、私の周りの彼らはその雰囲気から浮いてはいない。
私一人だったら、場違いなこともはなはだしいだろうに。
これが、経験の差から来る精神年齢のひらきというものなのかもしれない。
自分が世間知らずなことは承知しているつもりだが、彼らといるとそのことを再確認させられる。
だからこそ、彼らに連れられて、覗きみる世界が新鮮で楽しく感じるのだろう。
ソファに寄りかかり、体の力を抜きながら私は思った。

その時、何気なく見回していた店の中で私は見慣れた姿をみとめたのだった。
店の一番奥。カウンターの端に、男性がひとりカウンターに肘をつき、
うつむくようにしてグラスを握り締めている。
――あれは……
スーツに包まれた痩せた背中はやつれてみえた。後ろに撫で付けられた髪は所々乱れている。
なによりも肩を落としたその姿は、私の知っている彼のイメージにはそぐわない。
しかし、頬のこけた鋭角的な輪郭は――
『最近あまりいい噂は聞かないからね……』
やはり彼は――敷嶋純一だった。
バーテンが作業をしているカウンターの奥だけは、暖かみのある光が満ちている。
それに照らされているというのに、彼の顔色は悪い。青白くさえ感じられるのは暗い表情のせいだろうか。

7 名前: 30万hit記念・<婚約者5> 投稿日: 2005/01/18(火) 00:05
「どうしたの?」
黄桜さんの声で我に返った。同時に剣菱さんの声が響く。
「あれ、副総監じゃないか」
皆の視線が一点に集中し、少しの間辺りに沈黙が流れた。
「双子が副総監がヤケになって荒れてるって言ってたけど……本当だったんだな」
松竹梅さんがつぶやいたのを皮切りに
「なんか……」
「ちょっと良心が痛みますわね」
黄桜さんと白鹿さんは顔を見合わせる。菊正宗さんが苦々しく言い放った。
「僕たちたちが彼の人生を狂わせたのと一緒ですからね」


「……敷嶋さま」
どのようにして席を立ったのか、歩を進めたのか、私はよく覚えていない。
だが、気がつくと私は彼の前に立っていた。
私の呼びかけに、彼はふらりと顔を上げる。
けれど充血したその目はただ見つめているだけで、私のことを認識していないようにみえた。
言葉に詰まり黙っていると、すぐに彼は興味をなくしたように顔を背けてしまう。
ただ立ち尽くす私の肩に手を置いたのは黄桜さんだった。困ったような表情を浮かべている。
「行きましょう」
――でも
私がカウンターの彼を見ると、
「あとは、清四郎たちが面倒みてくれるわ」
黄桜さんは目配せをして私の腕を取る。
彼女の言う通り、菊正宗さんや松竹梅さんが彼の側に来ていた。
「敷嶋さん。うちにお送りしますよ」
「俺達のこと、わかりませんか」
ふたりは左右から彼に話しかけていた。
剣菱さんは、怪訝な表情のバーテンダーに、彼の分まで清算を申し出ている。

8 名前: 30万hit記念・<婚約者6> 投稿日: 2005/01/18(火) 00:06
そんな中、黄桜さんに促されているというのに、
私はその場から動くことが出来なかった。――彼もまた動こうとしない。
虚ろな表情でただ前を向き、菊正宗さんや松竹梅さんの声に無視を決め込んでいるようにさえ見える。
一向に反応を返そうとしない彼に業を煮やしたのか、菊正宗さんが呆れたように言った。
「敷嶋さん。聞こえてるんでしょう?」
返事はない。菊正宗さんは息をつき、その口調は冷ややかなものに変わる。
「……まったく、たかがあれくらいのことで駄目になる男とは思いませんでしたよ」
聞き覚えのある低い声がした。
「――貴様」
彼の目に光が宿っていた。その目は菊正宗さんを睨みつけ――私はその彼を見つめた。
しかし、立ち上がろうとした彼の足元はふらつき、スツールから崩れ落ちる。
すかさず横から松竹梅さんの腕が伸び、彼の体を支えた。
「くっ……はな……せ」
呂律の回らない口調で彼は抵抗を示す。だが自力で歩くことはかなわず――私の側を通り、
ふたりに支えられ、彼は店の外へ連れ出された。

9 名前: 30万hit記念・<婚約者7> 投稿日: 2005/01/18(火) 00:06
人と人の出会いがその運命を左右するならば、と私は考える。
彼と私が出会ったことにどんな意味があったのだろうと。
――彼の人生を狂わせるため?
スツールの前に残された、琥珀色の液体が満ちたグラスを見つめ私は笑った。
香りだけで酩酊しそうな、濃い酒の香りが鼻をくすぐる。
そこから香ったのか――それとも気づかなかっただけで
はじめからバー全体にたちこめているのかもしれない。
『なんという醜態ですか。緋久子さん。元華族の姫君が』
ふいに彼の声が脳裏に蘇る。
あの時、私を探していたのも、婚約者に不祥事を起こされ体面が傷つくのが耐えられなかっただけだ。
婚約者であった時も、そうでなくなった今も
私本人を見たことなど一度もなく、
彼にとっては、どこまでも私は家柄がいいだけのそれだけの価値しかないのだ。
それ以上でもそれ以下でもなく。
「……浦霞さん」
黄桜さんが気遣わしげな顔で私を見つめていた。
「……ごめんなさい」
私は黄桜さんに謝ると、早足でドアに向かって歩き始めた。
表に出ると、ちょうど彼らを乗せたタクシーが立ち去るところだった。
車は素早く発進すると、その姿はネオンに彩られた道の向こうへ遠ざかっていく。
私は唇をかみしめた。
――彼は私のことを一度も見てはくれなかった。
それだけはたしかなことだ。
だというのに、胸の奥が苦しくなる。
けれども、それが何故なのか、私はわかりたくもない。
私もまた心を狂わされたのだと――今更どうしてみとめられるだろう。

終わり

10 名前: 有閑名無しさん 投稿日: 2005/01/18(火) 01:03
切ない…。
淡々とした語り口に、胸が締め付けられる思いがしました。

11 名前: 有閑名無しさん 投稿日: 2005/01/18(火) 02:26
緋久子の中にある、微妙で複雑な感情が凄く伝わってきて、
読み終わってホーッと溜息をついてしまいました。
なんというか、気が付いたら作品世界に連れ込まれていた、
という感じです。

それと可憐が好きなので、彼女の面倒見の良い、姐御肌な
ところが描かれていて嬉しかったですw

12 名前: <あぼ〜ん> 投稿日: <あぼ〜ん>
<あぼ〜ん>

13 名前:(MOUSOU1Q) 投稿日: 2005/01/18(火) 20:31
>12は怪しげな宣伝だったので、削除しました。

14 名前: 有閑名無しさん 投稿日: 2005/01/18(火) 23:45
副総監と、結局最後まですれ違う切なさがよかったです。
自分を見てくれない彼を、冷静に見つめる感じとかも。
古きよき時代の有閑が蘇り、当時の絵で思い浮かべながら堪能させていただきました。

ただ、浦霞さんは緋沙子さんですね。
ちょっと気になりました。

15 名前: 有閑名無しさん 投稿日: 2005/01/19(水) 19:34
「婚約者」を書いた者です。
14さんにご指摘いただいた通り、緋沙子の名前を間違っていました。
おかしな名前でうpしてしまってすみません。
14さん、教えていただいてありがとうございました。
それから読んでくださった方、感想を書いてくださった方に、この場を借りてお礼を申し上げます。
ありがとうございました。

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