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ミセ* ー )リ 豪雨のようです

1 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 00:25:35 HyxvZm6I0





───ベチャッ



  ベチャッ


  ベチャベチャベチャベチャッ











  べチャリ。








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2 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 00:28:06 HyxvZm6I0

......八月十五日



('A`)「あーあー、今年もとうとう降り出したか。予報ちゃんと見といてよかった」

( ・∀・)「間一髪だったなぁ。ちょうどファミレスがあってよかったな」

('A`)「ああ、ついでだし雨宿りがてら飯にするか。ちょうど昼時だしな」

 大通り沿いに面する普通のファミレス。二人組のサラリーマンが窓際の席に腰を下ろしていた。長身の男───モララーが口を開く。

( ・∀・)「しっかし何なんだかね。俺未だに慣れねぇよこれ。気持ち悪い」

('A`)「俺はわりと慣れたけどな。まあでも気味はわりぃよなぁ」


小柄な方の男───ドクオの目線が窓の外を向いた。しとしとと降る小雨にまじって、時折ベチャッ、と水浸しのタオルが落ちたような音がかすかに鳴る。

('A`)「あ、また落ちたな」

( ・∀・)「迷惑だよなぁ、ほんと」


音のした方を見れば、大通りで女子高生と思しき少女が倒れていた。どうやら頭が割れているようで、脳漿が溢れている。
そんな惨状が広がっているのに、道行く人は傘を差しながらそれをさも存在しないかのように避けて歩く。
それどころかまた、一人、二人、少女の死体が落ちてくる。よくよく見れば、彼女達が瓜二つ(三人なら瓜三つだろうか?)であることが確認できる。

( ・∀・)「一体誰が名付けたんだろうなぁ?」








「“ミセリ豪雨”ってさ」


3 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 00:32:07 HyxvZm6I0


 “その現象”が初めて起きたのは、三年前の八月十四日だ。当時未だかつてない現象だとして、日本中、いや世界中から注目を浴びた気象現象がとある地域で観測された。
ごく普通の雨雲から、日本人の少女のような人型が、小雨に混じって落下してくるのだ。同じ個体の人型が何百、何千体も。

落下する人型の特徴は、短い茶髪に赤いカチューシャ。白いブラウスの胸元には青いリボン。そして紺色のプリーツスカート、紺の靴下に赤いスニーカー。
いかにも日本の、今時の女子高生然としているそれは、微笑みを浮かべ続けている。
気味が悪いのは、身体の構造が人間と変わらないこと。彼女達は地面に落下する時、べチャリと音を立てながら、臓器を撒き散らして潰れる。
先程のように頭が割れている死体などざらにあり、無傷の個体はほぼ存在することはない。

そんな彼女達の死体は、一体どこへ行くのかというと。不思議なことに、雨が止んでから数時間もすると、彼女達は無色透明の液体と化し、そのまま他の雨と変わらず蒸発したり染み込んだりして消えていく。

観測されてからは、気分が不快になる公害であると政府へ対策を迫る者、終末論を振りかざす者、なかには落下している彼女達にも人権はあると騒ぎ出す団体も存在した。
しかし毒性もなく、危険性も無いとして政府は、国民の生活に支障を及ぼすものではない、と公言した。それもそのはずで、気分を害した以外に、それが元で怪我をした、物が壊れたという被害報告は全くないのだ。
不規則に落下する彼女達が、人間や物に危害を加えた前例は、一度もない。


4 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 00:33:23 HyxvZm6I0

彼女達について、不可解なことは他にもある。

一つ目。この現象は美布県下楽羽市周辺でしか観測できないこと。
二つ目。発生するのは八月十四日から二十日までの七日間のうち三、四回程。

この三年間、この条件が崩れることは無かった。気味の悪いほどに規則的な現象は、未だに学者達の研究の的である。

この現象は、発生地域の名前を取って『下楽羽豪雨』と正式に呼ばれることになった。恐らく天気予報の番組を見ても、そう言われているだろう。

しかし、現地の人間は違った。いつから呼ばれるようになったのか、どこから言われ始めたのか。ともかく、こう呼んでいるのだ。『ミセリ豪雨』と。



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5 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 00:34:15 HyxvZm6I0




( ・∀・)「おー晴れた晴れた。今回のはすぐ止んでよかったな」

('A`)「そうだな」

暇つぶしに長話をすること数十分。机の上の皿が空になる頃には、もう太陽は照っていた。ファミレスを二人で出る。
ふと大通りを見ると、既に少女は消えていた。人型の一際濃いシミだけがそこに残っている。それがあの残骸であることを思い出して、なんとなく避けた。






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6 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 00:36:33 HyxvZm6I0

......



『もしもし?姉だけど、生きてるー?母さん心配してっから、生存報告はしてよねー』

('A`)「……はいはい」

 ドクオが会社から帰ると、姉から留守電が入っていた。一人暮らしを始めてからだいぶ経つ、が、何せ実家が遠いものだからなかなか帰れない。
なので電話で定期的に連絡を取っている。

時間的にまだ起きているだろう。姉の番号に電話をかける。

('、`*川『あっもしもしー?留守電聞いてくれた?』

('A`)「聞いた聞いた。だからかけてんだろうが」

('、`*川『そりゃそうだ。まあ元気そうね。母さんも安心するわ』

('A`)「母ちゃん心配性だからなぁ」

('、`*川『あとは彼女でも出来てくれればねぇ……』

(;'A`)「うっ……」

この頃、実家に電話をすると大抵この話題になる。だからあんまりかけたくなかったのだが、こうなっては仕方がない。

('A`)「……俺はまだ結婚とか興味ないから」

('、`*川『そう言ってられんのも今のうちだよー?ていうか、モテないだけでしょ』

(;'A`)「ギクッ」

('、`*川『それ口で言う人滅多にいないし。……ならさあ、あんたんとこで降ってる、みせり?っての彼女にしちゃえば?』

('A`)「は?」


7 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 00:37:38 HyxvZm6I0


唐突な姉の提案に、ドクオの身体は固まる。姉はそのまま続けた。

('、`*川『いや、実は面白い噂話聞いたんだけどさぁ。聞いてよ』

('A`)「なんだよ……」

('、`*川『落ちてきたミセリ……なるべく傷が少ないやつね?それを塩水に漬けるんだって。
そうすると人間と同じように動きだすんだってさ』

('A`)「胡散臭せぇ〜」

('、`*川『まあ私も胡散臭いと思うけどさぁ。モテないならもうなんでも良くない?』

('A`)「よくないですぅ〜。俺にも選ぶ権利あるわ。つか俺明日も早いから。そろそろ切るぞ」

('、`*川『はいはい、おやすみ〜』

そこで通話は切れた。馬鹿馬鹿しい、と思いながらシャワーを浴びて、寝た。


8 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 00:40:24 HyxvZm6I0


......八月十七日



 二日後。ドクオは久々の三連休初日を楽しんでいた。多忙ゆえにロクに盆休みもとれなかったから、その分の休みをとったのだ。
今日はどこか行こうか。それとも漫画でも読みながら過ごそうか。そんな時、あの不快な音が聞こえてきた。思わず舌打ちする。
ミセリ豪雨だ。

('A`)(予報見んの忘れてたな)

ずぼら故、洗濯物はまだ出してない、が一応ベランダの窓を開けた。瞬間、目の前の物干し竿に見覚えのある少女が引っかかっていることに気付いた。

(;'A`)「うお!」

思わず仰け反る。ミセリだ。まさかベランダにまで入ってくるとは思わなかった。今まで間近で見たことがないそれを、まじまじと観察する。


9 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 00:42:05 HyxvZm6I0


ミセ* ー )リ


見れば見るほど、その辺の女子高生にしか見えない。窓の外で繰り広げられている地獄絵図の原因とは到底思えなかった。

('A`)(よく見ると普通に可愛いな)

好みのタイプでは無かったが、ミセリは普通に生きていれば美少女の類だろう。
ふと、姉の話が脳裏をよぎった。

“('、`*川『落ちてきたミセリ……傷が少ないやつね?それを塩水に漬けるんだって。そうすると人間と同じように動きだすんだってさ』”

そういえば、目の前のミセリには、目立った傷はなかった。

('A`)(……)


正直、下心がなかったと言えばそれは嘘になる。しかしそれよりも好奇心が勝ってしまって、ミセリを降ろして浴槽に運んでみる。

('A`)「絵面だけ見れば俺犯罪者だな」

そんなことをボヤきながら、浴槽の中を水で浸して、食塩を適当に入れた。
ダメで元々、どうせ何もなければ溶けてしまう存在だ。実験したところで彼女に人権など無い。
ドクオは浴槽の蓋を閉め、ミセリが動き出すのを待っている間、漫画を読むことにした。


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10 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 00:45:14 HyxvZm6I0


......



 周囲の暗さに気付いて、ドクオ目を覚ました。いつの間にか寝てしまっていたらしく、時刻は十八時を過ぎている。

('A`)(あーあ、また寝過ごしちまった)

自分のだらしの無さを後悔しながら起き上がる。が、部屋に人の気配を感じて、硬直した。

(; A )(……空き巣、か……?)

もし空き巣や強盗ならば、自分に勝機などない。ここで自分の人生は終わるのだろう。
ならばうじうじしていても仕方がない、そう思い意を決して、ふり返った。


11 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 00:45:56 HyxvZm6I0


ミセ*゚ー゚)リ


そこには、浴槽に寝かせた筈のミセリが、こちらを見つめながら立っていた。

(;゚A゚)「!!!??」

一瞬で頭が覚醒する。急いで立ち上がり、浴室に向かった。

(; A )(……蓋が、空いてる……)

恐る恐る浴槽の中を覗く。たまたま間違えて瓜二つの女子高生が入ってきただけではないか、いやそうであってほしい。

その願いも虚しく、浴槽は空っぽになっていた。あれだけ溜めた食塩水すらも、跡形もなく消えている。

(; A )「う……そだろ」

有り得るはずのない現実が、目の前にあった。後ずさる、と同時に誰かに当たった。短い悲鳴を漏らし、振り返る。


12 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 00:47:19 HyxvZm6I0


ミセ*゚ー゚)リ

(; A )


ミセリだ。付いてきたのだろうか。思わず身構える、がミセリはあの微笑みをたたえたままこちらを見つめるだけだった。
しばらくそうしたまま、数分が経過する。このまま放置するわけにはいかない、とドクオは少女に話しかけてみることにした。

(;'A`)「お前……なにモンだ?」

ミセ*゚ー゚)リ

(;'A`)「どこから入ってきた?ここ二階だぞ?鍵はかけたはずなんだが」

ミセ*゚─゚)リ

(; A )「……何が目当てだ?こんなボロアパートに住んでるんだ。金なんてないぞ。援交なんてやめとけよ……」

ミセ*゚ -゚)リ

一言も話さないが、段々見たことの無い表情に変わっていく。どことなく、寂しそうな。
一番聞きたくなかった疑問を、そっと、ぶつける。

(; A )「……お前、ミセリ、なのか?」






ミセ*^∀^)リ


笑った。いつも見る微笑みよりも深く、嬉しそうに。それは、人間の娘と何も変わらない、愛くるしい微笑みだった。


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13 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 00:48:40 HyxvZm6I0
続きは今日の13時頃に投下する予定です。


14 : 名無しさん :2017/08/20(日) 00:57:53 7s5fycwI0
ジャンルが特定できぬ


15 : 名無しさん :2017/08/20(日) 01:01:16 FxtJvS1g0
クソスレかと思って来たが違った
でも面白い期待


16 : 名無しさん :2017/08/20(日) 02:15:21 cCsh7aSc0
このミセリは頭ゆるゆるじゃなさそう


17 : 名無しさん :2017/08/20(日) 06:37:01 C3X5lOPU0
発想が好き


18 : 名無しさん :2017/08/20(日) 06:38:51 ALdYwWLk0
これは期待


19 : 名無しさん :2017/08/20(日) 11:43:40 pdvLPu8o0
今年はいい意味で頭おかしい作品が大いな!


20 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 13:06:45 HyxvZm6I0


......



 時刻は二十時を過ぎていた。とても自炊などする気にならず、近所のコンビニで弁当を買ってきた。
一応ミセリにも買ってきた方がいいだろうか、と思いとりあえず女子高生の好きそうな冷凍パスタとプリンを買ってみた。

(;'A`)「あー、夕飯、食べるか?」

ミセ*゚ー゚)リ

ミセリは何も言わない。とりあえず目の前に温めたパスタを出してみた。

ミセ*゚ヮ゚)リ

すると少し嬉しそうに口元を緩ませた。そういえばこいつらはフォークなんて使えるのだろうか。
そう思うよりも早く、ミセリはトレーを持ち上げて口元に持っていくと、

ミセ*゚ヮ゚)リ ゴクゴク

まるで飲み物のように飲み干した。

(;'A`)(まじかよ)

トレーの上に盛られたパスタは、あっという間に彼女の胃袋に収まったようだ。満足そうな顔でミセリはこちらを見つめてきた。

('A`)「……プリンあるけど」

ミセ*゚ヮ゚)リ !

その一言に、ミセリの身体は揺れる。どうやら好物なのかもしれない。冷蔵庫から取り出して、フタをはがしてやる。

ミセ*^ヮ^)リ ♪

先程よりも更に嬉しそうにプリンのカップを掴んで、一気に煽った。綺麗に形の整えられたプリンが、そのまま口の中へ消えていくのが見えた。

('A`)「美味いか?」

ミセ*゚ヮ゚)リ ♪

どうやら美味いらしい。うっとりと顔を綻ばせていた。

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21 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 13:08:54 HyxvZm6I0


その後、いつもは適当に済ませる風呂の掃除を丁寧にやった。あんなものを浸したわけだし、何があるかは分からない。毒性は無いと言われてはいるが、単に気味が悪かった。

掃除を終えると、そのままシャワーを浴びた。流石に浴槽に浸かる気にはならなかったから。
頭を洗いながら、ミセリのことを考える。

('A`)(……どう見ても普通の人間だよな)

もしかしてドッキリじゃないだろうか。そんな思いが頭を過ぎる。しかしだとしたら、誰が、どんな意図で?
そもそも、あんな少女が落下するのが日常と化している現状がおかしいのだろうか。

('A`)(あいつは何なんだ)

人に害を及ぼすわけでも、幸運をもたらすわけでもない。ただ落下して、臓器を撒き散らして、溶けていくだけの存在。
何を訴えたいのだろう。そもそも何故ミセリと呼ばれているのだろう。

('A`)(考えてばっかりじゃキリがねぇな)

そういえば、この噂話を聞いてきたのは姉だ。明日電話して噂の出処を聞いてみよう、そう思った。


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22 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 13:10:07 HyxvZm6I0



......八月十八日



('、`*川『あの噂話の出処が知りたい?』

('A`)「うん、どこで聞いたんだ?」

 翌日、起きて真っ先に部屋を見回した。夢であってほしいと未だに思っていたのだが、残念ながらミセリは、相変わらず部屋の隅で蹲っていた。

仕方なく電話機の方へ向かう。姉なら何か知っているかもしれない。少なくとも何かしら情報は得られるはずだ。そんな淡い期待を胸に、実家の番号を押したのだ。

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23 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 13:12:09 HyxvZm6I0


('、`*川『何?アンタやっぱり寂しくなっちゃったの?』

('A`)「……そういう訳じゃないけど。あーほら、同僚が興味持っちゃってさ、教えてやろうと思って」

('、`*川『ふーん、物好きも居たもんねぇ』

(;'A`)「ハハ……」

お姉さん、物好きなのはアンタの弟だよ。そう言いたいのを我慢して、ドクオは乾いた笑いで誤魔化した。

('、`*川『私も詳しくは知らないんだけどね。前にSNSで知り合った娘が、ネットの掲示板か何かでそういう話を見たって。
まあネットの噂なんて大抵嘘だしねぇ。その子も半信半疑だったけど』

('A`)「掲示板……」

なるほど、ああいう場所なら胡散臭い噂話なんかもよく出回っている。ミセリについて話し合うスレッドなんていっぱいあるだろう。

('A`)「サンキュー、あとは自分で調べてみるわ」

('、`*川『はいはーい』

そう言って電話を切る。そして個人用のノートパソコンを取り出して、一番に思い付いた掲示板サイトを開いた。

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24 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 13:13:57 HyxvZm6I0


スレッド検索をすると、いくつかのスレッドが引っかかった。


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1.ミセリ豪雨は地球滅亡のカウントダウンである★3(276)

2.ミセリちゃんファンクラブスレPart54(823)

3.ミセリちゃんの血みどろおぱんつぺろぺろ(82)

...

──────

見事に覗きたくないスレッドばかりで、クリックするのを躊躇する。スクロールしても変態じみたスレか陰謀論者が立てたようなスレくらいしか引っかからない。
ここは収穫無しか、ため息をついて閉じようとすると、一つの古いスレッドに目がいった。

──────

...

72.みせりがうごいた!!れ!(146)

...

──────

見る人もあまり居ない過疎板のスレだ。慌ててスレ立てしたのか、変換もされていない。感嘆符の誤字から察するに、きっとこのスレ主はスマホで立てたのだろうか。
そのタイトルに目を惹かれて、思わずクリックした。


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25 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 13:15:12 HyxvZm6I0


──────

みせりがうごいた!!れ!

1:名無しさん 20xx/08/18 ID:jo3y

やべー!


2:名無しさん 20xx/08/18 ID:p86g

釣り乙

3:名無しさん 20xx/08/18 ID:ssAo

パンツうp

4:名無しさん 20xx/08/18 ID:jo3y

ちょっとさっきあったこと書くから待ってて
≫2
マジだよ
≫3
頼んでみるわ

......

──────


それは、ちょうど一年前のスレだった。なるほど、ちょうどミセリ豪雨の季節だ。更にスクロールしてみる。

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26 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 13:16:25 HyxvZm6I0


──────

......


10:名無しさん 20xx/08/18 ID:jo3y

なんか後輩の女が塩水に漬けるとミセリが動くって話してたから、気になってさっき降ってきた奴漬けたんだよ
そしたらミセリがまじで動き出した

あとごめん、スマホのカメラ壊れてた

11:名無しさん 20xx/08/18 ID:ssAo

はい釣り解散

12:名無しさん 20xx/08/18 ID:BOh5

はーつっかえ

13:名無しさん 20xx/08/18 ID:wkuc

低レベルな釣りやめろや

14:名無しさん 20xx/08/18 ID:jo3y

釣りじゃねーって

......

──────

どうやら釣り扱いされてしまっていたらしい。当たり前だ、とドクオは思った。
いつも降ってくる物体が動き出すなど、荒唐無稽でしかないのだから。
ただ、このスレ主の状況が他人事に思えず、スレを読み進めた。


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27 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 13:17:46 HyxvZm6I0

──────

......

34:名無しさん 20xx/08/18 ID:pp2x

まあ信じてやるとして なんでやろうと思ったの?

35:名無しさん 20xx/08/18 ID:jo3y

≫34
信じてくれ!
ラブドール欲しかったけど高かったから

36:名無しさん 20xx/08/18 ID:BOh5

俺のミセリたんに性的な目向けんなよ

37:名無しさん 20xx/08/18 ID:jo3y

≫36
悪いな ミセリたんの処女はもらうぜ
今プリンあげたら喜んでた 可愛い

......


58:名無しさん 20xx/08/18 ID:jo3y

ミセリが元気ないんだが

59:名無しさん 20xx/08/18 ID:pp2x

餌とかあげた?塩水で動くなら塩水飲ませてみれば?

60:名無しさん 20xx/08/18 ID:yk8u

寿命やろ

61:名無しさん 20xx/08/18 ID:jo3y

塩水飲ませたら治った


......

──────

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28 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 13:18:58 HyxvZm6I0


塩水。そういえばうちのミセリは大丈夫だろうか。パソコンから目を離す。

('A`)「おいミセリー……」

ミセ;´p`)リ グデン

(;'A`)(なんかぐったりしてる!)

急いで塩水をコップに作り、ミセリの口元にやった。

(;'A`)「ほれ、飲め」

ミセ*´p`)リ ゴクゴク

ミセ*゚o゚)リ !

ミセ*゚ヮ゚)リ ♪

('A`)「おお……」

塩水を飲み干すと、ミセリは見事に復活した。塩辛くないのだろうか、とドクオは思ったが、まあ人間とは味覚が違うのかもしれないと自己解決した。

('A`)(……こいつ、寿命とかあんのかな?)

先程眺めていたスレで、寿命という単語が目に入ったことを思い出した。
普通のミセリは時間が経つか太陽の光を浴びると溶けて消えてしまう。
ならこのミセリはどうなのか?

ミセ*゚ー゚)リ ♪

('A`)「……」

彼女達が溶けてゆく姿を思い出して、ドクオは今まで感じなかった一種の哀れみのようなものを覚えた。

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29 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 13:20:57 HyxvZm6I0


......



('A`)「さぁて、メシ作るか」

ミセ*゚ー゚)リ ?

 ちょうど正午を回った頃。規則的な空腹感に見舞われて、台所に立った。

ドクオは基本的に自炊をしている。貧乏性故、実家から定期的に送られてくる大量の野菜なんかを消費しなければならないからだ。
昨日はコンビニで買ってきたが、今日はその分明日の飯も作らねばなるまい。

('A`)「肉ないけどカレーでいいや」

ミセ*゚ヮ゚)リ !

('A`)「カレー好きなん?」

ミセ*^ヮ^)リ ♪

('A`)「そうかそうか、庶民派だな」

ミセ*゚ー゚)リ チラッ

('A`)「なに?見たいの?」

ミセ*゚ヮ゚)リ

(*'A`)「ふふ……可愛い奴め」

ミセ*^ー^)リ ♪

('A`)(……なんか彼女っつーよりペット飼ってる気分だ)

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30 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 13:22:38 HyxvZm6I0


当初は下心さえあったものの、彼女の純真無垢な姿を見るうち欲望などすっかり失せていて、代わりに愛玩動物へ向ける愛着のような感情が胸を支配する。

どうやら彼女は無害そうだ。必要な栄養素は塩水くらいで、あとはなんでも食べる。特にプリンなんかは大好物のようだ。感情もちゃんとあるらしいし、言葉は無くとも意思疎通はできる。
正直、これらを回収して商売でも始めそうな企業でも出てきそうなものだが。

もしかしたら、まだ世間の関心を引くには早いのかもしれない。そのうち老人の話し相手だとか、雑用だって覚えさせれば出来るかもしれない、ともかく彼女たちは、無限の可能性を秘めているだろう。

何故この事実が公表、周知されずに噂話のままなのだろうか。

('A`)(……悪用する奴とか出てくるかもしれんからかなぁ……)

ちらりと隣のミセリを横目で見る。ミセリは視線に気付かないまま、グツグツと煮える鍋の中身をまるで子供のように眺めていた。

('A`)(……悪用なんてされたらやだな)

そういえば先程のスレでは“ラブドール”代わりに使うような文言が出ていた。

('A`)(……生きてるとして、今頃何してんだろ)

ニュースでそんな話は見たことが無い、ということはまだ隠しているのだろうか。

('A`)(……あとでもう一度覗いてみるか)

ドクオはミセリと同じように、具材が煮え立つ鍋を眺めた。


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31 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 13:23:40 HyxvZm6I0
続きは深夜頃投下する予定です。


32 : 名無しさん :2017/08/20(日) 14:10:02 bFxGRoMg0
いいぞいいぞ


33 : 名無しさん :2017/08/20(日) 14:10:23 .T1xcsYM0
いいねぇ



34 : 名無しさん :2017/08/20(日) 16:47:37 zHwvkFos0

これ好きだわ


35 : 名無しさん :2017/08/20(日) 19:12:21 C3X5lOPU0
これタイムリープものだったりするのか…?

ミセリたんのおぱんつペロペロ


36 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 23:10:07 HyxvZm6I0


......八月十九日


ミセ*゚ー゚)リ ♪

ドクオが昨晩忘れないように、と作り置きしていた塩水を朝一番に与えたところ、なかなか調子が良いらしい。
好奇心旺盛な瞳が、窓の外をぼんやりと映していた。

('A`)「さぁて、スレの続きを読むかね」

ノートパソコンを取り出し、ドクオは昨日アクセスしたスレッドを開いた。
スレ主の書き込みを中心に読んでいく。
日付は既に変わっていて、スレ主はトリップを付けていた。


──────

......

78:名無しさん 20xx/08/19 ID:oob2

つか≫1はこれからどうするわけ?
オナホにでもすんの?

79:1◆8Od/e1Iy4o 20xx/08/19 ID:rgUj

≫78
んーなんか可愛く思えてきちゃってなぁ
性的なことするの罪悪感沸いてきた
一人暮らしだしぶっちゃけ隠せば飼えるだろとか思ってる

80:名無しさん 20xx/08/19 ID:gypa

女子高生ペットとか犯罪臭やばすぎ
通報しますた

......

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37 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 23:11:53 HyxvZm6I0

......


87:1◆8Od/e1Iy4o 20xx/08/19 ID:rgUj

なんかおかしい やばいかも

88:名無しさん 20xx/08/19 ID:os6g

お前さんの頭が?

89:名無しさん 20xx/08/19 ID:u8k2

捕まるかもしれんな


......


99:名無しさん 20xx/08/20 ID:9Oc5

≫87 日付跨いでもレスないけどまじで捕まったのか?


......

──────

(;'A`)「……」

スレの流れが少し不穏になっている。一年前のスレというのも忘れて、ドクオは思わず唾を飲む。

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38 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 23:14:01 HyxvZm6I0


──────

......


101:名無しさん 20xx/08/20 ID:No3x

何?捕まったの?

102:1◆8Od/e1Iy4o 20xx/08/20 ID:ms6r

しせゆか ためかも にけなきや

103:名無しさん 20xx/08/20 ID:t31F

≫102
大丈夫か?何かあったのか?

104:名無しさん 20xx/08/20 ID:Soa4

タイホクル────(゚∀゚)────!!!?

105:名無しさん 20xx/08/20 ID:D9wg

おい何があったんだよ やばいなら悠長にかきこんでんじゃねぇはよ逃げろ馬鹿

106:名無しさん 20xx/08/20 ID:Soa4

≫105
ツンデレ乙w

......

,


39 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 23:15:14 HyxvZm6I0


......


111:名無しさん 20xx/08/20 ID:t31F

≫1来ねぇな……まじで警察でも来たのか?それとも親あたりに見られたか?

112:1◆8Od/e1Iy4o 20xx/08/21 ID:irEs

ミセリが動くと思った?残念!釣りでしたwww
来週から学校忙しいくなるし今のうちに釣りでも嗜もうと思ってなw
連休中はやっぱ過疎板でも釣れるんだなーwww
てなわけでみんなありがとう!楽しかった!
留守電溜まってんの対応してたから宣言遅くなってすまんな

113:名無しさん 20xx/08/21 ID:fU70

は?

114:名無しさん 20xx/08/21 ID:gYp1

ふざけんなや心配したんだぞこっちは

115:名無しさん 20xx/08/21 ID:i5a7

結局釣りで草 まだ夏すねー

116:1◆8Od/e1Iy4o 20xx/08/21 ID:irEs

ただの釣りスレに熱くなんなよwww
すまんなって謝ってんだから許しちくり〜
結構心配してくれた奴いたの嬉しかったわ!サンクス!
てなわけで俺は消えるぜ!じゃあなおまいら

117:名無しさん 20xx/08/21 ID:5teP

二度と来んな糞ガキ


......

──────

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40 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 23:16:37 HyxvZm6I0


('A`)「なんだ、釣りスレかよ……」

思わず画面に釘付けになってしまっていた。ただの時間の無駄だったか。
画面を閉じ、別のサイトでも見ようとして、はたと思い直す。
塩水に浸したら動き出す、プリンが好物である、塩水が栄養源らしいこと。全てドクオの身に起きていることそのものだ。

('A`)(……釣りじゃないのか……?)

なら何の為に宣言をしたのか。ミセリが動くということを知られたらまずいと思ったのか、それとも別に、何か理由でも───


ベチャッ


外から聞こえたあの不快な音が、ドクオの思考を遮った。

('A`)(ああ、ミセリ豪雨か……)

窓から少女達が落ちていくのが見えて、そういえばミセリが窓の外を眺めていたことを思い出す。
もしかしたら悪影響を及ぼすかもしれない。
いや、そうでなくても自分と同じ容姿の物が落ちて潰れるのなんて嫌に決まってる。

(;'A`)「ミセリ、カーテン閉めるから退きな」

端の方にいたミセリに話しかける。しかしミセリは黙ったまま、動こうとしない。

,


41 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 23:17:13 HyxvZm6I0

(;'A`)「……ミセリ」

もう一度ミセリに話しかける。

ミセ*゚ -゚)リ

ミセリに、表情はなかった。
ただ、何の感情も見出せない瞳で、何も言わず潰れていく同胞達を眺め続けていた。

その日、ミセリの反応は無いに等しかった。何か、考え事でもしているような。そんな表情だった。

('A`)(……明日、プリンでも買ってきてやろうかな)

そう思いながら、ドクオは布団に潜った。


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42 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 23:36:01 HyxvZm6I0


......八月二十日



 相変わらずの曇り空。連休明けの仕事がキツイのも重なって、少し気分が重くなる。

('A`)「ハァー……じゃ、俺仕事行くからな。留守番は頼んだぞ」

ミセ*゚ヮ゚)リ

('A`)「よしよし、いい子にしてろよ」

ミセリはすっかり元の調子に戻っていた。人当たりの良さそうな笑みを見て、こちらの頬も思わず綻ぶ。

('A`)「じゃ、行ってくるな」

ミセ*゚ヮ゚)リノシ

そうして手を振るミセリを後にして、ドクオは会社へ向かった。


......



( ・∀・)「お、ドクオじゃん、連休どう過ごしたんだよ」

出勤してきたドクオを目敏く見つけてきたのは同僚のモララーだ。友人、とまではいかないが、会社ではなんだかんだつるんでいる。

('A`)「あーまあ、普通?」

( ・∀・)「なんだよー。ま、ドクオらしいけどな。お互い今日も頑張ろうぜ!」

('A`)「おう」

自分のデスクに着く。連休前と何も変わらない現状。とりあえず自分に託された書類に手をつけ始めた。

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43 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 23:37:51 HyxvZm6I0


......



昼休み。今日は社員食堂で昼食を済ませようと決めていたドクオは、とりあえず空いてる窓際の席に腰を下ろした。

('A`)(いただきます)

心の中でそう言って、目の前のうどんに口をつけた。その時、後ろから声が掛かった。

「すみません、こちらの席いいですか?」

('A`)「ああ、どうぞ」

振り向かずに答える。ありがとうございます、と声の主は礼を言うと、ドクオの前の席にカレーが載ったトレーを置いて座った。
暗い焦茶の髪が視界の端で揺れる。ドクオは、声の主を確認しようと顔を上げた。

(*゚ー゚)

声の主はドクオの後輩の女性社員、椎名しぃだった。大人しめな性格ながら、その愛らしいルックスと清楚な出で立ちで、先輩後輩問わず話題の的である。

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44 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 23:39:44 HyxvZm6I0


(*;'A`)(あ、あの椎名さんが……俺の前に来るとか)

かくいうドクオも、いいな、と思ったことは一度や二度ではない。そんな人が目の前に座ってきたのだから、なんとなく箸を持つ手が緊張する。

(*゚ー゚)「いつもはお弁当なんですけど、ちょっと寝坊しちゃって……」

(;'A`)「あ、そ、そうなんだ……椎名さんでも寝坊するんだね……」

(*^ー^)「えへへ……お恥ずかしいことに私、学生時代は結構な遅刻魔だったんですよ」

('A`)「へぇー……意外だなぁ」

('A`)(……あれ)

ドクオはふと椎名の笑顔に既視感を覚えたが、おおよそ何かの雑誌のグラビア女優に似てる人がいたのだろう、と自己解決した。


食を進めようとしたその時、視界の隅を何かが掠めた。

('A`)「あ……」

ミセリが落ちていく。そういえば今日は二十日。ミセリ豪雨最終日だ。

(*゚ー゚)「……下楽羽豪雨ですね……」

('A`)「そうだね。まあ今日で終わるけど……」

ふと、椎名が正式名称で呼んだことに違和感を覚えた。彼女は下楽羽出身だと聞いたことがある。
そうでなくとも、この地域に住む人間がその呼び名を使うことに、多少の疑問を抱いた。

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45 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 23:41:47 HyxvZm6I0


(*゚ー゚)「……鬱田さんは、どう思います?」

('A`)「なにが?」

(*゚ー゚)「この……女の子が落ちてくるのって、やっぱり気持ち悪い、とか思ったりするんですか……?」

なるほど、推察するに彼女はミセリ愛護派なのかもしれない。それなら正式名称で呼ぶことに納得がいく。
それならばなるべく彼女を不快にさせないように、慎重に言葉を選ばなければ。

('A`)「うーん、俺は別に気持ち悪いとかは……。逆になんか、可哀想だなーって思う」

(*゚ー゚)「……可哀想って?」

('A`)「何の為に落ちてんだか分からないけどさ、潰れる為に生まれてるなら可哀想な話かなって最近思い始めてきて……。変かな?」

(*゚ー゚)「……」

椎名は押し黙る。何かまずいことでも言ってしまったか、とそっと顔色を伺う。

(*゚ー゚)「あの、鬱田さん……私が言う事、信じてもらえないかもしれないんですけど……」

('A`)「?」

(*゚ー゚)「……ミセリは、私の従姉妹だったんです」

('A`)「……は?」

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46 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 23:42:52 HyxvZm6I0


突如突きつけられた言葉に、ドクオの頭は混乱する。

(;*゚ー゚)「すみません、意味わからないですよね……。私も分からないんです。でも、ずっと黙ってるのも辛くて」

(;'A`)「う、うん……。とりあえず、続けて」

(*゚ー゚)「……ミセリは、近所に住む母方の叔母の一人娘でした。時々遊びに来てくれて、妹が出来たみたいで嬉しかったんです」

(*゚ー゚)「中学生くらいの頃、一回いじめられたかなんかで、引っ越しちゃって。暫く会えなくなったんですけど……」

悲しそうに椎名は目を伏せた。少し間が空いて、話は続いていく。

(*゚ー゚)「ちょうど、四年前のこの時期のことなんですけど。ミセリから電話がかかってきて」

(*゚ー゚)「久しぶりだから嬉しくて、何処にいるの?って聞いたら下楽羽駅前にいるって言ってきて」

(*゚ー゚)「私、迎えに行こうか?って聞いたんです。ちょうど雨が酷い日だったから。
そしたら、ミセリは、『お姉ちゃんは私のこと忘れないでね』って……電話が、切れて」

彼女の顔が苦しそうに歪む。

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47 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 23:44:28 HyxvZm6I0


(;'A`)「大丈夫?具合悪いのか?」

(;* - )「……大丈夫です。それで、その後、ミセリがビルから飛び降りたって……」

(;'A`)「……自殺?」

(;* - )「……わかりません、ショックであまり記憶が……。あの子がテレビに出てたのは、なんとなく覚えてるんですけど。
それで、それ以降ミセリの家とは暫く連絡取れなかったんです」

(;* - )「一年経って、そろそろ一周忌だからお墓参りに行こうと思って母に聞いたんです。『ミセリのお墓ってどこにあるの?』って」

(;* - )「そしたら、母が、『ミセリ?誰それ』って……」

(;* - )「父にも、叔母にも叔父にも聞いたんです!でも、皆、ミセリって誰?って……言うんです……」

(;'A`)「……」

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48 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 23:44:53 HyxvZm6I0


全てを話し終えたらしい椎名は、コップの中の水を口に含んだ。

(* - )「私……おかしいんですかね……怖くて、誰にも言えないんです。でも、ミセリがあまりにも可哀想で」

俯く椎名の目から、涙が流れていくのが見えて、ドクオはポケットティッシュを渡した。
礼を言って椎名がそれを受け取る。

(*; -;)「……すみません鬱田さん……こんな変な話しちゃって……」

('A`)「いいよ、暇だし。俺は椎名さんの話信じるからさ、気に病まなくていいよ」

(*;ー;)「……ありがとうございます。鬱田さん、お優しいんですね」

(*;'A`)「あ、あはは……」

涙を拭きながら椎名が微笑む。その微笑みが愛らしく、またミセリとどことなく似ているため、少しどぎまぎしてしまった。


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49 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 23:47:59 HyxvZm6I0


......夜



 帰宅してからずっと、椎名の話が頭の中で反芻している。残り物のカレーを二人分温めながら、ぼんやりと考える。

('A`)(椎名さんの話は本当なのかな……。でも四年前……確かにミセリ豪雨が始まる前の年だ)

('A`)(だとするとなんでミセリは皆に忘れられたんだ?何故椎名さんだけが覚えてる?)

(;'A`)(……駄目だぁ……全然わからん)

考えあぐねていると、ドクオのモヤモヤとした気分とは裏腹に、温め終了を知らせる軽快な音が鳴った。

('A`)「ミセリー、カレー温め終わったから食べるぞー」

ミセ*゚ヮ゚)リ !

('A`)「プリンも買ってきたから、デザートに食べような」

ミセ*^ヮ^)リ ♪

('A`)(食べ終わってからまた考えるか……)


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50 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 23:49:04 HyxvZm6I0


ミセリの前に皿を置く。流石に一気飲みは行儀が悪いので、スプーンの使い方を教えていた。ゆっくりと、覚束無い様子でカレーを救っていく。
こうして改めて見れば、ミセリはごく普通の少女だ。どこにでもいそうな、それこそその辺の道端ですれ違ってそうな。

('A`)(四年前……)

ちょうど四年前といえば、ドクオがこのアパートが越してきた年だ。その次の年にミセリ豪雨が始まったのでよく覚えていた。

('A`)(……そういや新聞集めてたな……流石に昔のは捨てちまったかなぁ)

廊下に付いている物置の扉をちらりと見遣った。貧乏性故に古新聞は何かに使えるのではないか、とつい取っておいてしまうのだが、結局ほとんど使わずじまい。
去年の末に半分ほど捨ててしまった気がする。
もし、四年前の新聞が残っていれば。自殺の報道が載っているかもしれない。


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51 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 23:50:37 HyxvZm6I0


......深夜


 ミセリの活動が弱まったのを見計らって、物置を開けた。先程は休日にやろうと思ったのだが、気になって寝付けず、どうせならということで作業を始めたのだ。
普段あまり開けておらず、掃除もしていないそこは、埃っぽくて思わず咳き込んだ。

(;'A`)「また掃除しねぇとな……」

そうボヤきながら、新聞をまとめているプラスチックケースを出した。去年半分ほど捨てたとはいえ、現在進行形で溜めているのだから、また一杯になるのだろう。
新聞の日付を確認し、古いものを何束か取り出した。

('A`)(あ、四年前のやつあった)

それどころか古いものばかりが入っている。間違えて新しいものを捨ててしまったのだろうか。自分のズボラさに嫌気がさした。

('A`)(えーと、十二月、十一月、四月……見事にバラバラだ……)

スマホを取り出して時間を見る。あと十分もすれば日付が変わる。

('A`)(まあ、今日終わらなかったらまた明日やればいいだろ)

楽観的に考えながら新聞の端をパラパラとめくる。中には三年前や二年前のものもあり、作業は滞りながらもなんとか進んでいく。

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52 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 23:52:02 HyxvZm6I0


('A`)「お、四年前の八月二十日だ……」

今に当てはめれば、ミセリ豪雨最終日の日付。一応目を通しておこうと束を取り出す。大体こういうのは地方欄のページだろうか。軽く流しながら目を通していく。
すると一つの見出しに目がいった。“愛娘の自殺 母親ら涙の訴え”。ドクオは息を飲みながら、ゆっくりと記事を読み進めていった。


(; A )「……これは……」


 記事内容を要約すると。
八月十四日に下楽羽駅前にある総作ビルの屋上から女子高生が飛び降りて死亡した。
遺書は遺されていなかったが、当人が生前人間関係の悩みを訴えていた為に、学校側に責任があるとして遺族が涙ながらに記者会見を開いた、というものだ。
記事には遺族が公開した当該女子生徒の顔写真と名前が載っていた。


【ミセ*^ー^)リ】


モノクロだが、カメラに向かって笑顔でVサインをしながら映る彼女は、紛れもないミセリ本人のもの。
椎名の言う通り、信じ難いことに確かに彼女は実在したのだ。

しかし、

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53 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 23:54:08 HyxvZm6I0


(; A )「……どういう、ことだよ」

写真の下に書いてある名前を、指でなぞった。











【生前の椎名しぃさん(享年17)】


椎名しぃ。あの、ミセリを従姉妹と言っていた本人の名前だ。

(; A )(たまたま同じ名前……?いや、それはないだろ。歳の近い従姉妹だろうし、近所に住んでたって言ってたし。
……そもそも椎名さん自体が“ミセリ”と呼んでたじゃないか)


じゃあ一体、ミセリとは、椎名しぃとは何者なのだ?


キィ、と廊下の床板が軋む音がした。思わず振り返ると、そこにはミセリが佇んでいた。

(; A )「……み、せり……」


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54 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 23:56:02 HyxvZm6I0


ミセ*  )リ

暗がりで表情を窺うことはできない。恐怖で高鳴る胸を抑えて、努めて平静に話しかけた。

(;'A`)「う、うるさかったか?ごめんな。俺、ちょっと調べ物してたから……もう寝るよ」

ミセ*  )リ

一歩、足を踏み出してきた。いつもなら気にならない足音が、やけに大きく感じた。

(; A )「な、なんだ、お腹空いたか?もうカレーは食べちゃったからな……。それともトイレか?
あ、いや、女の子にこんなこと言っちゃセクハラか、ハハ……」

ミセ*  )リ

彼女は、何も言わない。

(; A )「……なぁ、お前は、お前らはさ、何者なんだよ」

ミセ*  )リ"

ピクリ、と彼女が肩を震わせたのを感じた。ドクオは自分の声が震えるのも構わず続けた。

(; A )「お前らが、ミセリじゃないとしたら、ミセリっつーのは何なんだ?どこから来た名前だ?
……椎名しぃってのは……誰なんだ……?」

彼女が姿を現す。ドクオはもう近所迷惑など考えていなかった。

(; A )「なにか言えよ……!なぁ!?お前らは!お前は!誰なんだよ!」


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55 : 名無しさん :2017/08/20(日) 23:57:12 ftJoGSQM0
ドキドキする


56 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 23:58:28 HyxvZm6I0



とうとう、彼女は、暗がりから姿を現した。






ミセ*^∀^)リ




ソレは、笑っていた。最初に出会った時と同じように、深く、嬉しそうに、愛くるしいあの笑顔で。

気付けば、叫んで走り出していた。目の前のミセリを突き飛ばし、玄関へと駆けた。扉を押し開けると、外は土砂降りである。

もう世間体など関係ない。どこか近所のコンビニにでも駆け込んで、警察を呼ぼう。頭がおかしいと思われてもかまわない。そしたら、会社も辞めて、実家に帰ろう。
とにかくこのアパートから、下楽羽から逃げなければ。

手元のスマホをつけた。日付はとうに変わっている。階段の手すりに手をかけた、が。

(; A )「あ」



階段を構成する鉄板は、非情にもドクオの足を滑らせるには充分すぎるほどに、ぬかるんでいた。

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57 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/20(日) 23:59:13 HyxvZm6I0


身体が浮遊感に包まれる、と同時に複数回にわたって衝撃が走った。湿ったアスファルトに全身が打ち付けられる。

(; A )(助けを、呼ばないと)

朦朧とする意識でスマホを探す、が、既に手の届かない場所に明かりのついたまま転がっていた。

(; A )(……や、ばい……)

ふと、真横に人の気配を感じた。アパートの住人か、近所に住む人か。それかこの際不審者でもなんでもいい。
人間であれば。

(; A )「あ……たす、け……」

息も絶え絶えに助けを求め、その人物を見上げた。


霞んだ視界に映ったのは、あの愛らしい微笑みだった。





ドクオの意識は、そこで途絶えた。



,


58 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/21(月) 00:00:06 AIZfkKYk0





   ザーーーーーーーーーー。





...ベチャッ



  ベチャッ


  ベチャベチャベチャベチャッ











  べチャリ。





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59 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/21(月) 00:00:26 AIZfkKYk0



























,


60 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/21(月) 00:02:15 AIZfkKYk0


......九月一日



ξ゚⊿゚)ξ「クー、おはよー。夏休みもあっという間ね」

川 ゚ -゚)「おはようツン。ちゃんと課題は終わったか?」

ξ;゚⊿゚)ξ「お、終わってるわよ!……今日提出する分は」

川 ゚ -゚)「……ツンらしいな」

 新しい月の初め、夏休み明けでもあるこの日。
夏服に身を包んだ二人は、他愛ない話をしながら高校までの道を共にしていた。


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61 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/21(月) 00:02:48 AIZfkKYk0


ξ゚⊿゚)ξ「そういえば見た?この前テレビでやってた“ミセリの噂”特集」

川 ゚ -゚)「……すまん、うちの家族はあんまりミセリの話題は見たがらないからな……」

ξ;゚⊿゚)ξ「あっ……ごめん。クーのお母さん、あれで去年入院しちゃったのよね……ごめんね」

川 ゚ -゚)「いや、いいよ別に。頭がおかしくなったのは事実だしな。
……実際、居もしない息子の話なんて、気味が悪いし」

ξ゚⊿゚)ξ「しかもミセリと一緒に降ってくるって言うんでしょ?
……なんか、私がテレビで見た噂に似てるのよね」

川 ゚ -゚)「……そういえば、その噂ってなんなんだ?」

ξ゚⊿゚)ξ「……今年だけ、二十一日にも降ったのは知ってるよね?」

川 ゚ -゚)「それは流石に知ってる。例年より回数も多かったって騒ぎになってたな」

ξ゚⊿゚)ξ「その中にね、サラリーマンみたいな謎の男の人も混じって降ってきたのを見た人がいたらしいって話」

川 ゚ -゚)「ふむ、確かに母さんの話に似てるな……」

ξ゚⊿゚)ξ「でね、その男の人にも名前があるらしいんだけど……
なんだっけな……ああ、そうだ」



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62 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/21(月) 00:04:08 AIZfkKYk0











「ドクオ」











(  ) 豪雨のようです 了


63 : ◆G7lcTp3PKs :2017/08/21(月) 00:04:32 AIZfkKYk0
以上です。ありがとうございました。


64 : 名無しさん :2017/08/21(月) 00:05:06 z3Sue/iw0
ホラーじゃねーかよ


65 : 名無しさん :2017/08/21(月) 00:11:21 V323ur4g0

ミセリとしぃさんの関係ってなんだったんだろう


66 : 名無しさん :2017/08/21(月) 00:11:43 cx.EOZvw0
雨続きの時だってのに何してくれてんの?


67 : 名無しさん :2017/08/21(月) 01:37:40 cOYWh68w0
雨続きだからじゃね?
ミセリ豪雨の期間が雨が降り出した日と重なってるような気がする
とりあえず乙です、めっちゃ好きだった


68 : 名無しさん :2017/08/21(月) 06:55:03 RfysHP/Q0
ミ来連て留
たす結て


69 : 名無しさん :2017/08/21(月) 07:39:37 36OuQlU60

てっきりドクオとミセリのいちゃラブだと思ったのに違った


70 : 名無しさん :2017/08/21(月) 20:13:42 /ByZAZaI0
ヒヒィ


71 : 名無しさん :2017/08/22(火) 20:12:56 GEAWLgF20

引き込まれてしまった


72 : 名無しさん :2017/08/25(金) 09:35:01 UOW0mN.I0
今回ほのぼのと見せかけたホラーが多いな


73 : ◆TflJu3mvXc :2017/08/27(日) 00:47:22 588xyH4E0
【業務連絡】

主催より業務連絡です。
只今をもって、こちらの作品の投下を締め切ります。

このレス以降に続きを書いた場合

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74 : 名無しさん :2017/08/28(月) 23:15:57 GnYP1dhc0
絵面が好きだ乙
ミセリ豪雨のネーミングセンスとか設定とか好きだ
オチもいいね


75 : 名無しさん :2017/08/30(水) 18:44:33 ivMgw0mcO
ぞわぞわしたものを残す後味が堪らなく好きだ


76 : 名無しさん :2017/09/09(土) 21:27:04 SCHedC1Y0
つまりこの説で行けば俺達の世界ではゲリラが降って来るわけか…


77 : あとがき ◆Y2ntqd/Oco :2017/09/16(土) 22:56:54 zF28N59c0
期間が終わったのであとがきを。

タモリになった気分で書かせていただきました。
ただ、これを思い付いたのは確かに雨の日でしたが、まさか期間ドンピシャで雨続きになるとは思いませんでした。ミセリちゃんの呪いでしょうか。

なお作中にでてきたスレッド、レス、酉などは全て架空のものです。トリップキーも存在しません。

たくさんの支援絵、投票、レスありがとうございました!

ミセ*^∀^)リノシ


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