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('A`)はっぴーえんどのようです
-
バカな真似をするもんじゃない。
そんなことを身をもって体験してしまった。
俺はどこにでもいるような普通の高校生で成績は中の上、スポーツは下の上、顔はまぁキモくはないがといったところである。
つまるところなんの面白味もない人間であり決して漫画や小説の主人公を張れるような人間ではないことは確かだ。
でも、残念なことに俺は男であり、そしてそんな主人公たちに憧れている。
届かないとわかっていながらもどうしても憧れてしまっているのだ。
あんな風に格好いい人間になり、女性からモテるなんて、最高じゃないか。
うんでも、あれだ。
憧れは憧れのままの方がいい。
ちょっと調子に乗った結果がこれだ。
なんかかわいい子が歩いてるなーって思ってちょっと後ろから眺めて着いていってたらその子がつまずいてふらついて歩道に出そうになったところをかっこよく引き戻してやろうとしたら俺までつまずいてしまいその子は歩道に引き戻せたけど俺が今度は道路に飛び出てしまった。
もちろん轢かれた。
トラック。
めっちゃでかいの。
せめて小型がよかった。
まぁ飛び出しちゃったし、仕方ないね。
-
あ、今の俺の状況?
絶賛血の海に沈み中。
もうどこからも血が出まくってさっきから誰かが近くにいるような感じはあるのに何にもわかんね。
まあでもあれだ。
女の子が助けられたならいいや。
なんか主人公みたいで格好いいし。
「......」
あ、もうヤバイ。
何にも感じなくなってきた。
なんだろ。
もう死ぬのかな。
俺の人生なんてまぁこんな感じだよな。
でもまぁ、出来ることなら。
彼女が欲しかったなぁ。
俺を愛してくれる、夢のような。
黒髪で、綺麗で。
俺だけを愛してくれる。
そんな女の子。
まあそんなのこの世にいるわけないけど。
まぁ死んじまうならせめて夢のなかだけでも。
そんな女の子に、会いたいな。
-
('A`)はっぴーえんどのようです
.
-
......
......
......ん?
頭が痛い。
体が重い。
つまり、感覚がある。
つまり、生きてる?
体は動かそうとしても言うことを聞かない。
無理矢理体に命令し、四苦八苦して何とか重い瞼を開ける。
('A`)「......知らない天井だ」
まさか本当にこんな台詞を言う場面に遭遇するとは。
マジで俺主人公みたい。
やっべ、マジやっべ。
こんなブサメン主人公でいいの?
物語始まんないよ?
-
('A`)「......」
ほらみろ。
折角事故後に目を覚ましたのに誰もいねーじゃねーか。
俺の主人公っぽい台詞を誰も聞いてねーじゃねーか。
あ、むしろそれはよかったか。
でも家族すらいないってどうゆうことでしょ。
泣いちゃうよ?
('A`)「......えっ、マジで誰もいないの?」
俺意識不明の状態だったってことでいいんだよな?
え、なのにこの放置プレイ?
脇役Aですらもっとましな扱いされると思うよ?
畜生以下の扱いじゃねーか。
やっべ、興奮して視界が歪んできた。
決して泣いてなんかない。
ちょっと昂って目からしょっぱいものが溢れそうになってるだけだ。
-
('A`)「......はぁ」
川 ゚ -゚)「目覚めていきなり溜め息とはな。どうかしたのか?」
('A`)「......は?」
川 ゚ -゚)「ん?」
('A`)「......いつからそこに?」
川 ゚ -゚)「私は君が目覚めたときからずっとそばにいるぞ?」
('A`)「mjd?」
川 ゚ -゚)「mjd」
('A`)「」
え、なに。
え、マジでなに?
誰この人。
看護婦......じゃないな、私服だし。
でも、友達でもないな。
友達いないし。
おっと、危ない。
またなんか目から溢れそうになった。
オーケー、クールになれ。
-
で、だ。
落ち着いて目の前の子について思い出すんだ。
('A`)「......」ジー
川 ゚ -゚)「?」
......
うん、該当者なし。
もし知っていれば絶対忘れられないような黒髪美人だし絶対知らん人だ。
え、じゃあなに?
目が覚めたら知らない黒髪の美人が俺のそばにずっといたってこと?
ホラー?これホラーなの?
('A`)「......あの」
川 ゚ -゚)「ん?」
('A`)「どちら様......ですか?」
川 ゚ -゚)「ん?ああ、そうか。自己紹介がまだだったな」
コホンと、小さな咳をする。
その動作すらめっちゃ美しい。
美人ってすごい。
チートじゃん、こんなん。
-
川 ゚ -゚)「私は素直クールだ。よろしくドクオ君」
('A`)「あ、うん......よろしく」
なんかよろしくされた。
てかなんか向こうさんこっち知ってるっぽいし。
まあ、じゃなきゃ病室なんてこないよな。
うん。
何かよくわかんないけど納得しとこう。
('A`)「えーとそれで」
川 ゚ -゚)「ん?」
('A`)「素直さんは......」
「......ドクオさん?」
('A`)「ん?」
不意に新たな声が聞こえてくる。
女性の声だ。
立て続けに女性との遭遇イベントとは。
え、なに?モテ期?
違う?
うん、知ってた。
-
(*゚ー゚)「あ、目が覚めたんですね。よかった」
('A`)「あ、えーと」
白い服に包まれた若い女性。
ナース。
今度こそ看護婦さんだ。
よかった、俺、放置されてなかった。
病院ですら俺のことをスルーするのかと思った。
まあ俺のステルス迷彩はスゴいから仕方ないけどな。
修学旅行の班決めで名前無かったりとか。
あれなんか視界が歪んできた。
うんまあ目覚めたばかりだからね。
仕方ない、仕方ないんだうん。
(;*゚ー゚)「えっと大丈夫?」
色々とダメみたいです。
お医者さんを呼んでください。
出来たら可愛い人。
あ、お姉さんでも大丈夫です。
-
('A`)「......はい、大丈夫です。で、その俺は......」
(*゚ー゚)「あ、はい。なんでも事故に遭ったみたいで。確か一週間ほど寝てたんですよ?」
('A`)「一週間ですか」
一週間か。
長いような短いような。
何とも微妙なところだな。
まあ少なくとも教室に俺の席はないな。
あ、元からか。
HAHAHA。
(*゚ー゚)「詳しくは後程先生が来ますのでその時にお話しします」
('A`)「あ、はい」
(*゚ー゚)「あ、そうそう。そこのお花、見ました?」
('A`)「花?」
-
ふと横を見ると花瓶に花が生けられていた。
名前はわかんねーけど色とりどりの花が生けられている。
普通にきれい。
え、これってあれだよな?
お見舞いだよな?
俺に?
花を?
マジかよやるじゃん俺。
(*゚ー゚)「ほら、君って女の子助けて車に轢かれたんでしょ?」
('A`)「え?あ、っと、はい」
(*゚ー゚)「その助けられた子がね、毎日お花持ってきてくれてたのよ」
('A`)「おっふ」
マジかよ。
漫画?
小説?
とりあえず現実ではないよなうん。
そんなラブコメ主人公みたいなこと起きる訳ねーもん。
え、でもマジで起きてるんだよな?
つまり、俺、春来た?
永遠の友になると思ってたDTちゃん捨てれるの?
奇跡かよ。
('A`)「神はいたっ!」
(*゚ー゚)「へ?」
('A`)「あ、え、その......はい」
-
(*゚ー゚)「ん、まあとりあえず元気そうでよかったわ。じゃあ先生を呼んでくるから待っててくれるかしら」
('A`)「あ、はい」
看護師さんが部屋から出ていく。
おっふ、いいケツ。
いやいや、俺には花をくれる天使がいるんだ。
浮気はいかんいかん。
まぁまだ顔すら知らんけど。
何となく可愛かった気はするけどどんなんだったっけな。
んー......確かショートカットで銀色っぽい髪の毛で......
川 ゚ -゚)「......」ムー
('A`)「......あ」
-
忘れてた。
この黒髪のかわい子ちゃん。
てかほんと誰なのこの子。
しかもなんでむくれてるの?
可愛いんだけど。
めっちゃムニムニしたいんですけど。
川 ゚ -゚)「......お前はああいう女性が好きなのか?」
('A`)「へ?」
川 ゚ -゚)「だからお前の好きな女性のタイプだ」
('A`)「え、あ、へ?」
何?
え、まじで何?
何でこんな話の流れに?
今日日修学旅行ですら恋ばなしないよ?
俺がしたことないだけかもしれんけど。
-
('A`)「え、えー......まぁきれいだなーとは思いましたですよ?はい......」
川 ゚ -゚)「......ふーん」
なによふーんって!
答えたのに失礼しちゃう!
......マジで何だったの。
なに、そんなこと聞くって俺のこと好きなの?
勘違いしちゃうよ?
('A`)「えっと、それで君は」
「ほ、本当に起きてる......」
('A`)「......」
また新しい人来た。
しかもまた女性の声。
ヤバイな。
これが確変か。
-
从 ;∀从「よ、よがっだー。も、もじめざめながったらどうじようかと......」
(;'A`)「......おおぅ」
顔を向けると短い銀髪の美少女がいた。
いや、いるけどさ。
何かめっちゃ泣いてる。
もうぐっちゃぐっちゃ。
それでも可愛いとか。
反則すぎる。
(;'A`)「......ん、っと確か君は」
从 ;∀从「は、はいっ!わ、私!ハインっていいます!あなたに命を助けられました!」
(;'A`)「あ、うん」
从 ;∀从「ほんっとおおぉおおに!ありがとうございましたあ!」
-
何かものすごい勢いで頭を下げまくってる。
ここまでされると逆に申し訳なくなるのは何故だろう。
そのくらい凄い謝り方だ。
なんか頼めば何でもしてくれそう。
いや、頼まないけどさ。
俺紳士だし。
('A`)「えっと、ハインさんでいいんだよね?」
从 ;∀从「は、はい!」
(;'A`)「......うん、とりあえず涙拭こっか」
まあこれはこれで可愛いけどさ。
それでもやっぱ普通の顔の方がいいに決まってる。
俺、女の子泣かせて喜ぶような性癖はないしね。
-
从 う∀从グシグシ
('A`)「えっとそれで、ハインさん」
从 ゚∀从「はい!」
('A`)「あの花、ハインさんが持ってきてくれた......ってことだよね?」
从* ゚∀从「あっ!そうっす!」
('A`)「そっか、ありがと」
从* ゚∀从「い、いやその、別になんかこういうのよくわかんなかったんで適当に綺麗なの買ってきただけだったんですけど」
从* ^∀从「気に入ってくれたならよかった」
('A`)
-
あかん、この子メチャクチャ可愛い。
何て言うの?
後輩タイプって言うの?
とにかくストライク。
この子と二人っきりだったら告白して振られてたわ。
そして泣いてたわ。
二人っきりじゃなくてよかったうん。
ん?二人っきりじゃない?
('A`)「......あ」
またあの黒髪の子忘れてた。
てかなんか話せばいいのに。
無視されてむくれるくらいなら自己アピールしなくちゃ。
ま、俺も出来ないけど。
てへぺろ。
-
川 ゚ -゚)ムー
('A`)(またむくれてる......)
从 ゚∀从「あ、それでドクオさん!」
('A`)「え?あ、ああ、なに?」
从 ゚∀从「今度退院したらでいいんですけど......」
('A`)「ん?」
从;* ゚∀从「あー......その、恩返しと言うか?まぁ、っと......えー」
('A`)「?」
-
从;* ゚∀从「その、一緒に、出掛けたり......とか」
('A`)
('A`)
('A`)「えっ」
え、なにそれ。
女の子とお出かけ?
デートのお誘い?
俺が受けてるの?
......オーケー、クールになれ。
こういうときこそビークールだ。
-
('A`)「い、いいでひゅよ」
噛んだ。
从;* ゚∀从「い、いいんでひゅか!?」
噛み返された。
川 ゚ -゚)ムー
まだむくれてた。
なんだこれ。
-
流石にここまで露骨にされると反応しないわけにはいかない。
なんか釣られてる気もしなくはないが反応してあげることにしよう。
わあ俺って優しいなぁ。
......うん、素直に今のはちょっとキモいな。
('A`)「......言いたいことがあるなら言いなよ」
川 ゚ -゚)「ん?」
从; ゚∀从「へっ!?いやっ!私としては来ていただけるだけでもう!はい!」
('A`)「ん、あ、いや、ハインさんじゃなくて」
从 ゚∀从「へ?」
('A`)「君だよ」
川 ゚ -゚)「ああ、私か」
何あからさまに気づきませんでしたオーラ出してるのよ。
あんなに構ってちゃんオーラ出しといて。
これでマジで俺の勘違いだったら死ぬほど恥ずかしいんですけど。
-
('A`)「いやさっきからメチャクチャなんか言いたそうじゃん」
川 ゚ -゚)「別に」プイッ
(;'A`)「......いや、メチャクチャなんかありそうなんですけど」
从 ゚∀从「あ、あの、ドクオさん」
('A`)「ん、ああ、ごめん。なんか」
从; ゚∀从「あ、いやその......誰と話してるんですか?」
('A`)「ん?......クールさんって言うらしいんだけど俺もよく知らないんですよね。ハインさんは......その感じ、知らないっぽいですね」
从; ゚∀从「あ、いや......というかその」
('A`)「?」
-
从; ゚∀从「この部屋、私以外誰もいない、ですよね?」
.
-
......
......
......は?
('A`)「え、いやそこに......」
川 ゚ -゚)
いる。
確かに俺の目には黒髪の美少女が写っている。
俺のすぐ横にいる。
ハインさんからは絶対に見える場所に。
从; ゚∀从「......」
何だその顔は。
まるで俺がおかしいみたいな。
-
......いや、おかしいのか?
从; ゚∀从「......あの」
('A`)「......なーんてね」
从; ゚∀从「へ?」
('A`)「その......冗談です、なんか、すみません」
从; ゚∀从「え?......あ、あー!あー、そうですよね!あー、もう、驚かせないでくださいよ!」
('A`)「あ、ごめん」
この反応。
間違いない。
見えてない。
彼女には。
俺のとなりにいるクールという少女が。
-
じゃあ、なんなんだ。
この俺に見えているこの少女は。
俺の妄想?
それにしては何ともリアル。
童貞も来るところまで来るとこんなになるのか。
知らなかったわ。
从 ゚∀从「......あ」
('A`)「ん?」
从 ゚∀从「先生来たみたいなんで少し、席はずします」
('A`)「ん......ああ、うん、ありがとう」
从 ゚∀从「いえ、では」
ペコリと小さくお辞儀をして部屋を出ていく。
うん、可愛らしい。
あの子を助けた過去の俺、グッジョブ。
-
ハインさんが部屋から出ていくと入れ替わりで白衣の男が入ってきた。
男だ。
確変はどうやら終わったみたいだ。
短い確変だったなうん。
なんともまぁ、俺らしい。
( <●><●>)「......おはようございます、ドクオさん」
('A`)「あ、はい......えっと、先生、でいいんですよね?」
( <●><●>)「はい、まだ起きたばかりで辛いかもしれませんが少しだけ質問させてください」
('A`)「ん、分かりました」
-
その後、軽い質問をいくつかされる。
気分はどうだとかそんな感じの。
あとは事故のときの様子などをちょこちょこ話してくれた。
あとついでに俺の見舞いに来た人の話をしてくれた。
まあそれについては約一名しか来てなかったみたいだけど。
おかしいな。
俺の親とかまだみんな生きてるんだけど。
忙しいのかな?
そうじゃなかったら泣くよ?
( <●><●>)「さて......今日はここら辺にしておきましょうか」
('A`)「......先生」
( <●><●>)「ん?」
-
('A`)「......その、変なことを聞いてもいいですか?」
( <●><●>)「はぁ、なんでしょうか?」
('A`)「今、この病室に何人いますか?」
( <●><●>)「......?二人、ですが。私とドクオさんの」
('A`)
......ああ、まただ。
この人にも見えないのか。
つまり、俺が見えているこの子は。
普通じゃない。
人じゃない。
-
じゃあ、なんなんだ。
この、目に写るものは。
この人のような存在は。
川 ゚ -゚)「......ドクオ君」
('A`)「......」
反応はしない。
いや、しちゃダメだ。
だって、そこにはなにもいないはずなのだから。
川 ゚ -゚)「そうか、反応してくれないのか。それでもいい」
( <●><●>)「ドクオさん、何故そのようなことを?」
('A`)「いえ、その」
-
川 ゚ -゚)「だがな」
('A`)「何て言うか......ングッ!?」
不意に唇に熱いものを感じる。
そして、言葉が出ない。
口を塞がれた。
目の前には目を閉じた少女の顔が広がっている。
なんだ、これは。
柔らかな感触が脳に伝わってくる。
確かにそこに存在しているという証が、伝わってくる。
-
(;'A`)(......なんだよ、これ)
頭を動かし、唇と唇を離す。
それでも唇に残る熱は消えない。
感触が、残っている。
初めてしたキスの感触が。
俺の知らない感触が確かに残っている。
川 ゚ -゚)「私は、ここにいるぞ。誰が何と言おうと。君が、私を見てくれている限り」
訳が、分からない。
-
('A`)「......君は」
( <●><●>)「......ドクオさん」
('A`)「......」
( <●><●>)「ドクオさん!」
(;'A`)そ「えっ!?あ、はいっ!」
( <●><●>)「......何か、見えているんですか?」
('A`)「あ......」
( <●><●>)「そのようですね......ふむ」
医師の表情が変わる。
まあ当たり前か。
見えないものが見えるといってるわけだし。
医師からしたらそんなのどっかに異常があるとしか考えられないしね。
-
('A`)「......」
( <●><●>)「......詳しく聞いても?」
('A`)「はい」
従うしかない。
自分でも自分がおかしいというのは分かっている。
訳が分からないんだ。
なら、他人に頼るしかない。
('A`)「お願いします」
狂っていることを、認めるしかないんだ。
-
.........
......
...
( <●><●>)「......どうやら事故のショックで何らかの影響が出てるようですね」
クールと名乗ったその存在の見た目やどんな風に現れてるか等、一通り話し終え、医者が出した結論はこれだった。
うん、知ってる。
聞かなくてもわかってるわそんなもん。
だからどうすりゃいいんだよ。
( <●><●>)「一度、脳に異常がないか確かめてみましょう」
('A`)「はぁ......」
( <●><●>)「大丈夫ですよドクオさん。必ずなんとかしますから」
何が大丈夫なんだろ。
しかも何とかするって。
何もわかってないこと丸出しじゃないですか。
何一つ安心できないですはい。
-
( <●><●>)「では、今日はこれで」
('A`)「あ......はい」
どうやら今日、俺に対して何か出来ることはなにもないらしい。
まってくれよ。
こんな妄想かなんなのか分からないやつと二人きりっとか。
見た目美少女でも俺レベルになると余裕でチビるぞ。
まぁそんなこと、言えないけど。
('A`)「......」
バタンと扉が閉められ部屋に一人取り残される。
-
そう、一人。
一人のはず、なんだ。
川 ゚ -゚)「......何故君はそんなに私を拒絶するんだ?」
('A`)「......」
川 ゚ -゚)「話してもくれないのか......流石に傷付くな......」
ああ、ならそのまま消えてくれ。
川 ゚ -゚)「でも、私はここにいるぞ」
('A`)「......」
川 ゚ ―゚)「私は、君の事が好きだからな」
-
ニコリと微笑むその彼女の顔は本当に綺麗で。
拒絶しなければならないはずなのに自分の心の中に溶け込んでくる。
鼓動が早くなる。
顔が暑くなる。
ほんと、自分が嫌になる妄想だ。
......妄想、なんだ。
............そこには、何もないはずなんだ。
だからこの、沸き上がる感情も。
体の暑さも。
心の昂りも。
存在、しない。
そして、してはいけない。
受け入れては、いけないんだ。
-
.........
......
...
从 ゚∀从「ドクオさん、おはようございます」
('A`)「あ、ど、ども」
目が覚めてから一週間が経った。
今日もハインさんが俺の病室へと来てくれた。
この一週間欠かさず来てくれるとか天使なのかなこの子。
从 ゚∀从「あ、今日はこれ持ってきたんですよ」
('A`)「?」
从* ゚∀从「その、リンゴが好きって言ってたのでリンゴを......」
天使でした。
文句なく天使でした。
なにこれ。
もうこれ以上俺の好感度上がんないよ?
カンストしてるよ?
-
('A`)「あ、ども......」
从 ゚∀从「じゃあ、ちょっと待っててくださいね。今剥きますから」
('A`)「......」
从 ゚∀从「〜♪」シャリシャリ
小さな手にナイフを握り、リンゴを剥いてく。
リンゴを剥く音と何処か少し音程のズレた鼻歌が病室に響く。
......なんかいいなこういう感じ。
なんかカップルみたいで。
あ、もちろんそんなこと言わないけど。
言ったら拒絶されて俺泣いちゃうし。
-
从 ゚∀从「うっし、出来ました!」
('A`)「おおっ」
从 ゚∀从「はい、どうぞ!」
('A`)「ん、ありがとう」
从 ゚∀从「食べられる?」
('A`)「......頑張れば、多分」
忘れてた。
俺、怪我してるんだった。
一週間寝込むような怪我してたわ。
あまりにリンゴ食べたすぎて忘れてたけど普通に起き上がれねぇわ。
-
でも、でもだ。
ここで起き上がらなきゃあのリンゴはお預けだ。
ただのリンゴならまぁ、我慢する。
だがしかし、あれは美少女、ハインさんが剥いてくれたリンゴだぞ?
諦められるわけがない。
(;'A`)「ふんむぐぐぐ......」
あ、これ辛い。
めっちゃ辛い。
てか動かねぇ。
無理だわ。
こんなこともう、一生ないかも知れないのに。
(;A;)「ぉぉ......」ググッ
从; ゚∀从「ちょ、ちょっとやめときなって!」
-
(;A;)「ふぐぅ!」グッ
从; ゚∀从「無理なのわかったから!私が食べさせてあげるから!」
(;A;)「むぐ......へ?」
......今なんつった?
タベサセテアゲル?
えーと何語かな?
日本語?
え?
それって食べさせてあげるってこと?
え?
ええ?
それってつまり?
从;* ゚∀从「ほら、口開けて。あ、あーん」
(゚A゚)
从; ゚∀从「め、眼は見開かなくていいかなー」
(;'A`)「......はっ!」
-
なんか意識飛んでた。
ヤバイって。
なにあれ。
あれがあーんの魔力ってやつか?
めっちゃかわいい。
顔赤くしながらおそるおそるリンゴ差し出されるとか。
色んな意味で食べちゃいたいです。
だめ?
知ってた。
从; ゚∀从「......やっぱ嫌ですよね」
('A`)「へっ!?」
从; ゚∀从「す、すみません、やっぱな」
('A`)「食べさせてくださいお願いします!」
从; ゚∀从「......」
('A`)「......」
-
从; ゚∀从「じゃ、じゃあ......」
(;'A`)「あ、う、うん......」
从;* ゚∀从「......口、開けてください。あーん」
(;*'A`)「あ、あー......ん」
口の中に甘い味が広がる。
甘い。
めっちゃ甘い。
今まで食べたもののなかで一番甘い。
胸のなかが温かい。
ああ、今俺、めちゃくちゃ幸せだ。
ずっと、こんな時間が続けばいいのに。
从* ゚―从「まだまだあるから沢山食べてね」
(*'A`)
ハインさんといるこの時間。
ああ、幸せだ。
-
.........
......
...
从 ゚∀从「......あ」
('A`)「?」
从 ゚∀从「そろそろ面会時間終わりみたいですね」
('A`)「あー」
从 ゚∀从「じゃあ、私はそろそろ」
('A`)「ん......いつもありがと」
从 ゚―从「好きでやってることだし」
('A`)「そっか」
从 ゚∀从「じゃ、また明日」
('A`)「うん」
-
また、明日か。
明日また来てくれるのか。
いかん、今絶対すげぇ変な顔になってる。
頬が緩みまくってる。
ああ、誰かに見られたら絶対キモいって言われるわこれ。
誰もいないからいいけど。
川 ゚ -゚)「ずいぶん幸せそうだな」
('A`)「......」
川 ゚ -゚)「ふむ......誰かに食べさせてもらうのは嬉しいものなのか?」
('A`)「......」
川 ゚ -゚)「どれ、私もしてやろう」
('A`)「......」
川 ゚ -゚)「......口を、開けてくれないか?」
-
('A`)「......」
川 - )「......流石に、泣きそうだ」
('A`)「っ」
......そんな顔、するんじゃねぇよ。
川 - )「......」
('A`)「......」
「......」
望んでいた静寂のはずなのに。
なんでこう、落ち着かないんだ。
胸の奥が痛む。
この気持ちはなんなんだ。
だけどそれに気づいてはいけない。
知らないふりをしなきゃいけない。
だってこの気持ちは。
存在しないはすなんだから。
-
.........
......
...
(*゚ー゚)「今日で退院ですね。すっかり元気になられたみたいで良かったです」
('A`)「あ、はい。今日までありがとうございました」
(*^ー^)「いえいえ」
事故から数週間経った。
体を元のように動かせるようになり退院することとなった。
あれからも毎日ハインさんが見舞いに来てくれていた。
そんなハインさんとの毎日が無くなるのは少し寂しい。
-
从 ゚∀从「あ、ドクオさん!退院おめでとうございます!」
('A`)「あ、今日も来てくれたんだ」
从 ゚∀从「迷惑だった?」
('A`)「いや......嬉しいよ」
ああ、今日もかわいい。
恐る恐る聞いてくるその仕草。
襲いたくなる。
入院してたせいで溜まってるし。
まあ襲ったところで俺、返り討ちにされそうだけど。
-
('A`)「んじゃ、帰りますかね」
从 ゚∀从「あっ!送りますよ!荷物とかありますよね?」
(;'A`)「い、いや荷物とかは親にやってもらえばいいし......というか女性に荷物持たせるってのは」
从 ゚∀从「気にしない気にしない。私を頼ってくださいよ!これ運べばいいんですよね?よっと」
あかん、この子優しすぎる。
というかうちの親どこいった。
俺、退院だぞ?
迎えに来いよ。
あ、でもそのお陰でハインさんと二人っきりか。
やっぱ来なくていいや。
-
( <●><●>)「ドクオさん」
お、なんだ先生。
せっかくこれからハインさんときゃっきゃうふふの二人っきりの世界にはいるところだったのに。
水を指しやがって。
テンション下がるわ。
('A`)「あっ、はい」
( <●><●>)「......薬、忘れずに飲んでくださいね」
('A`)「......っす」
-
......ああ、マジでテンション下がるわ。
チラリと視線を横にずらすと黒く、長く、そして綺麗な髪が目に入る。
まだ、消えない。
川 ゚ -゚)「ドクオ、退院、おめでとう」
......嬉しくねぇよばか野郎。
頭がズキズキと痛む。
気分が悪い。
胸の奥がざわつく。
ああ、なんてこった。
まだ俺は、完治していないようだ。
-
.........
......
...
从 ゚∀从「あっ、ドクオさんって独り暮らしだったんですね」
('A`)「あー、まぁ」
从 ゚∀从「いいなぁ、憧れるなぁ」
('A`)「そんないいもんじゃないけどね......っと荷物はそこにおいてもらえる?」
从 ゚∀从「あ、ここ?」
('A`)「そ、ありがとね」
从 ゚∀从「いえいえ、これくらい。もっと頼ってくれていいんですよ?」
('A`)「はは、これくらいで十分すぎるよ......ちょっと荷物整理するから待っててね」
从 ゚∀从「むぅ」
-
現在地、俺の家。
状況、女の子と二人っきり。
いかんよこれは。
相手はしかも美少女。
もうそれだけでビンビンですよ。
从 ゚∀从
('A`)「......ハインさん?」
从; ゚∀从「......へっ!?」
('A`)「どうかした?」
从 ゚∀从「あ、いや......ちょっとボーッとしてて......」
('A`)「?......まあ、いいや。片付け終わったよ」
从 ゚∀从「もうですか?......物、少なくないですか?この部屋の家具とかもそうですけど」
('A`)「え?......まぁ男の一人暮らしってこんなもんじゃない?」
从 ゚∀从「そう、なのかな?それだと......うーん......」
-
('A`)「どうしたの?」
从 ゚∀从「あ、いや......あ、ちょっとキッチン見させてもらいますね」
('A`)「?」
从 ゚∀从「......んー」
('A`)「えーと」
何してるんだろ。
なにか探してるみたいだけど。
あそこにはエロ本隠してないから荒らされてもいいけどさ。
......あ。
俺、事故前のときエロ本ちゃんと隠してないじゃん。
普通に棚にいれっぱなしじゃん。
いかん、変な汗が出てきた。
どうしよう、今のうちに移動させるか?
いやでもそれはそれで見つかりそうな気もするが。
-
从 ゚∀从「ドクオさーん」
(;'A`)「ひゃいっ!」
从; ゚∀从「......どうしたの?」
('A`)「え?あ、い、いや?べ、別に?」
从 ゚∀从「??」
怪しまれてる。
いかん。
これはいかんぞ。
ここでエロ本なんて見つかったら間違いなく嫌われる。
こんな風に接してくれる女性なんてこの先会える気がしない。
何としてでも死守しなくては。
-
('A`)「そ、それよりさ!何か探してるの!?」
从 ゚∀从「え?あ......ん、いや探してるって言うか何が足りないか見てるって感じで」
('A`)「足りない?」
从 ゚∀从「......その、退院祝いに何か料理しようかなって思ってて」
(*'A`)「えっ!マジで!?」
从; ゚∀从「あっ、でもキッチン勝手に借りちゃ迷惑ですよね!ご、ごめんなさい!」
('A`)「いやいやいや!使っちゃってください!思う存分使っちゃってください!めっちゃ作ってくれたら嬉しいです!」
从; ゚∀从「......ほ、ほんとですか?」
('A`)「もちろん!」
从 ゚∀从
从* ゚∀从「じゃ、じゃあこれから買い物に行ってくるんで、た、楽しみにしててください」
(*'A`)
-
ええそりゃもう楽しみにしてますとも。
例え何が出てきても美味しくいただかせてもらいます。
あ、でも勿体なさすぎて食べれないかも。
まあなんにせよ、心踊る。
今日は、最高の日になりそうだ。
(*'A`)「......楽しみだなぁ」
川 ゚ -゚)「随分楽しそうだな、ドクオ」
......気のせいだったようだ。
一気に気分が落ち込む。
胸の奥がモヤモヤして、頭がズキズキする。
気分が、悪い。
ああ、最悪だ。
-
('A`)「......」
川 ゚ -゚)「好きなのか?」
うるせえ。
('A`)「......」
川 ゚ -゚)「ふむ、それは困ったな」
何がだよ。
('A`)「......」
川 ゚ -゚)「私も君のことが好きだからな」
......やめてくれ。
-
('A`)「......薬」
先生からもらった薬を探す。
早く、気分を落ち着かせたい。
早く、はやく、はやく。
焦ってるせいか、なかなか見つからない。
おかしい、貰った荷物はここに置いたはずなのに。
川 ゚ -゚)「ドクオ」
('A`)「っ!?」
急に後ろから抱きつかれる。
女性の柔らかい感触が、背中から伝わる。
暖かな体温が、背中から伝わる。
まるでそこに、誰かがいるかのように。
なにもそこに、いないはずなのに。
-
川 - -)「......」
('A`)「......あ」
ただ、抱き締められる。
心が、安らいでいくのを感じる。
頭痛が消えていくのを感じる。
胸の奥が、熱くなる。
抱き締め返したくなる。
でも、ダメなんだ。
('A`)「......やめてくれ」
川 ゚ -゚)「......何故だ?」
('A`)「......お前は、存在しない」
川 ゚ -゚)「私は、ここにいるぞ?」
('A`)「いない」
川 ゚ -゚)「君に見えているんだ。君が感じているんだ。なら、いいじゃないか」
('A`)「......」
-
口の中が渇いていく。
言葉がでない。
心臓の鼓動が早くなる。
ダメだ。
このままじゃ、ダメなんだ。
川 ゚ -゚)「......ドクオ?」
('A`)「......あ」
ようやく、見つけた。
キッチンのコンロの近くにポツリと。
赤と白の小さなカプセルがそこにあった。
その中から数粒を掌にのせる。
軽いはずなのに、重い。
早く飲まなきゃ、いけないのに。
腕が、思うように動かない。
-
川 ゚ -゚)「......そう、まだ、ダメなんだ」
('A`)「......」
川 ゚ -゚)「......でも、忘れないで」
薬を無理矢理飲み込んだその瞬間。
愛してる。
そう聞こえた気がした。
でもそれは、気のせいだろう。
だってこれは、全部、俺の妄想なんだから。
だからこの、胸の奥の不快感も、頭の中から彼女の顔が消えないのも。
全部、ありはしないんだ。
-
.........
......
...
トントンと何かを刻む音が部屋に響く。
グツグツと何かを煮込む音がする。
そしてその音の方にはエプロンを着た天使がいる。
うん、いい。
从 ゚∀从「〜♪」
相変わらずの音程の微妙にずれた鼻歌がさらに可愛さを倍増させる。
思わず頬が緩くなる光景だ。
('A`)「何か手伝おっか?」
从 ゚∀从「え?いいよ、今日はドクオさんのお祝いなんだから」
('A`)「ん......じゃあお言葉に甘えて」
もう少し、ハインさんを視姦することにしよう。
エロ本にはないリアルなエロが、そこにある。
俺は今後のためにもしっかりとこの光景を脳にインプットすることにしよう。
うん、それがいい。
-
从 ゚∀从「......っし、出来た!」
('A`)「おおっ!」
从 ゚∀从「今そっち持ってくからー」
(*'A`)
ああ、俺って幸福者だ。
神様、ありがとう。
こんな天使をこの世に産んでくれてありがとう。
从* ゚∀从「さ、食べよっか」
(*'A`)「うん!」
-
食卓に並べられた料理はどれも本当に美味しくて。
それをハインさんと一緒に食べれて。
ああ、なんて素晴らしい時間なんだ。
「......」
('A`)「......」
从 ゚∀从「どうかした?」
('A`)「あ、いや......何でもない」
-
そう、何でもない。
こんな幸せな時間に、二人っきりの部屋なのかで。
他の女性の声が聞こえたり、別の女性が見えたりするはずがない。
川 ゚ -゚)「......ドクオ」
('A`)「......」
川 ゚ -゚)「......私を、見てくれ」
それが例え、俺のすぐ横にいても、だ。
-
从 ゚∀从「んじゃ、洗いますかな」
('A`)「いや、それくらい俺が」
从 ゚∀从「いーのいーの、私を頼って」
('A`)「むぅ......」
なにもしないってのも辛いが。
ここは好意に甘えるとしよう。
まあハインさんを視姦出来るのは嬉しいけど。
......うん、最低だな俺。
改めてそう思う。
-
('A`)「ふぅ......」
川 ゚ -゚)「疲れてるな」
誰のせいだと思ってんだこの野郎。
('A`)「......」
川 ゚ -゚)「失礼するぞ」
クールは静かに俺のとなりに座る。
チラリと横を見ると彼女の綺麗な顔がすぐ近くに見えた。
思わず、ドキリとする。
川 ゚ -゚)「......ふふっ」
('A`)「?」
-
川 ゚ ―゚)「もっと見てもいいんだぞ?」
('A`)「......」
からかうように彼女は笑う。
でも、そんな姿も綺麗で。
川 ゚ -゚)「少し、肩を借りるぞ」
('A`)「......あ」
彼女がしなだれかかってくる。
触れ合っているところが、温かい。
胸の奥がざわついている。
川 ゚ -゚)「好きだ」
('A`)「......」
-
川 ゚ -゚)「ドクオ......私は君が好きだ」
('A`)「......」
川 ゚ -゚)「君は?」
('A`)「......俺は」
俺の、気持ちは。
从 ゚∀从「ドクオさん!」
-
('A`)「っ!?な、なに!?」
从 ゚∀从「何じゃないですよ。さっきから呼んでたのに......」
顔を上げるとそこにはむくれたハインさんがいた。
危なかった。
あのままだったら俺は。
......俺は。
......
いや、考えないことにしよう。
それがいい。
そうじゃなきゃ、ダメだ。
('A`)「それで、どうしたの?」
从 ゚∀从「ん、いやその......今日なんですけど......」
('A`)「......?」
-
从 ゚∀从「泊まってっちゃ、駄目ですか?」
(゚A゚)
もう、これあれだよな?
事実上の夜オッケーですサインってことでいいんだよな?
大人の階段登っていいんだよな?
从 ゚∀从「......やっぱ駄目ですか?」
('A`)「......い、いいよ。と、泊まってって」
从* ゚∀从「あ......はい」
心臓の音がうるさい。
顔が熱くなるのを感じる。
ふとハインさんの顔を見ると彼女も真っ赤になっていた。
......もう、勘違いしてもいいよな。
-
(*'A`)「......」
从* ゚∀从「......」
ただただ見つめ合う。
ただそれだけなのに。
こんなにも胸が高鳴るのは。
ああ。
そうか。
俺は今、恋をしているんだ。
-
.........
......
...
......
......ん?
なんだか、いい匂いがする。
腹を刺激する、とてもいい匂いだ。
一度、そう感じるともう止まらない。
腹がぐうぐう鳴り始め、寝てるどころではなくなった。
目をうっすらと開け、時計を確認するとまだ時間は6時と早くいつも起きる時間より1時間以上早い。
道理でまだこんなに眠いわけだ。
('A`)「......んぁ?」
从 ゚∀从「あ、起こしちゃった?」
('A`)「......?......あ、そっか」
-
そうだ、昨日、ハインさん泊まってったんだった。
すっかり忘れてた。
結局、昨日は何もなかったから忘れてた。
うん、昨日、何もなかったんだよな。
......別に悔しくはない。
ちょっと目から汗が出る程度だ。
('A`)「ハインさん、おはよ」
从 ゚∀从「ん、おはよ。ごめん、またキッチン使わせてもらってる」
('A`)「ん......で、これってもしかしなくても朝食?」
从* ゚∀从「え?う、うん。泊めさせてもらったしこれくらいのことはしないと」
('A`)「マジか、ありがとう」
-
ああ、もう、幸せだなぁ。
こんな幸せな朝はいつぶりだろ。
嫁さんができたらこんな風に朝を毎日迎えることになるんだろうか。
朝食の匂いに誘われて目が覚めて、キッチンにはエプロン姿の嫁さんがいて朝からうまい朝食が食える。
なんて、なんて素晴らしいんだ。
ああ、結婚したい。
急激に結婚したくなってきた。
('A`)「......」
もし、もしもだ。
本当にこれが勘違いじゃないのなら。
そんな未来があるのだろうか。
-
......ハインさんがいる日常か。
悪くない。
てか、最高。
从 ゚∀从「んじゃ、持ってくよ」
('A`)「ん、手伝うよ」
从* ゚∀从「ん、ありがと」
('A`)「お、和食か。いいね」
从 ゚∀从「朝はご飯に味噌汁の和食が一番ですから!」
('A`)「ん、確かに。俺もそう思うわ。まあ朝食あるだけでありがたいんだけどね」
从 ^∀从「ふふっ。なら、作ってよかった」
-
ただまあ、妄想に留めておくけど。
だって怖いじゃん。
言葉にして、拒絶された日には死ぬ。
相手の気持ちなんて、言葉にしてくれなきゃ分からん。
('A`)(......)
川 ゚ -゚)「ん?」
ちらりと、視線をハインからそらすとそこにまだ彼女がいた。
真っ直ぐと想いをぶつけてきた彼女が。
......何を考えてるんだ俺は。
あれは、存在しないんだ。
考えちゃいけない。
今は目の前のご飯のことを楽しもう。
-
.........
......
...
('A`)「ご馳走さま、ほんと、料理うまいな」
从* ゚∀从「そ、そうかな......」
('A`)「いや、ほんとうまいよ。ありがとな。味噌汁とか大変だったろ」
从 ゚∀从「え?」
('A`)「ほらこれ、煮干しから出汁取ってるんじゃないの?」
从 ゚∀从
('A`)「どうかした?」
-
从* ゚∀从「あ......う、嬉しくって」
('A`)「へ?」
从* ゚∀从「その......味わって食べてくれてるんだなって......」
そりゃハインさんの手料理ですもの。
どんな状況でも味わいますわ。
('A`)「うん、本当にうまかったよ。ごちそうさま。ほんとにありがと」
从* ゚―从
ああ、照れてる顔も可愛いなぁ。
-
('A`)「......それで、これからなんだけど何かする?」
从 ゚∀从「あ、それなんだけど」
('A`)「ん?」
从 ゚∀从「ほら、入院してたときにさ、出かける約束してたでしょ?」
('A`)「あぁ、そういえば」
从 ゚∀从「今日、どうかな?......まあ一旦家に帰ってからになるから午後からになっちゃうけど......」
('A`)「んー」
从 ゚∀从「ダメ......かな?」
-
......それは、反則でしょう。
その、上目遣い。
断れるわけがない。
どんな男でも頷いてしまうわこんなん。
(*'A`)「い、いいですよ」
......よく考えたらそもそも、断る理由もないな、うん。
しかもハインさんとのデートだぞ。
こっちが金払って頭下げて頼みたいぐらいだ。
从* ゚∀从「ほ、ほんと?」
(*'A`)「う、うん......」
从* ゚∀从「じゃ、じゃあ一旦家帰って準備してくるから......」
(*'A`)「うん、じゃあまた」
从* ^∀从「うん」
-
(*'A`)
(*'A`)「......楽しみだなぁ」
ハインさんが出ていった後にポツリと呟く。
まさかたった数日のうちにこんなに俺の人生が変わるなんて思ってもみなかった。
もうこれ俺、リア充爆発しろとか言えないな。
(*'A`)「はぁ......」
川 ゚ -゚)「嬉しそうだな」
(*'A`)「......」
川 ゚ -゚)「君は彼女が好きなのか?」
('A`)「......」
-
川 ゚ -゚)「まぁ、だとしても諦めはしないが」
('A`)「......」
川 ゚ -゚)「私は、何があろうと君を愛し続けるよ」
......やめてくれ。
頼むから、そんな言葉を俺にぶつけないでくれ。
胸の奥がざわつく。
違う。
なにも、感じでない。
なにも、聞こえない。
感じちゃいけないんだ。
聞こえちゃいけないんだ。
-
川 ゚ -゚)「私を、見てくれ」
('A`)「......」
先程まであんなに心が踊っていたのに。
今も楽しみにしているはずなのに。
何で、俺。
こんなに、苦しんでるんだ。
川 ゚ -゚)「......待ってるから」
('A`)「......何をだよ」
川 ゚ -゚)
......答えは、帰ってこない。
ただ、彼女は俺を見つめ続ける。
俺からの、言葉を待つように。
真っ直ぐ。
ただ、ひたすらに俺のことを。
そして俺も。
そんな彼女から。
視線をそらすことが出来なかった。
-
ただひたすらの見つめ合い。
言葉はない。
それでも、胸の鼓動は早くなる。
その意味は、分かっている。
その理由も、分かっている。
ただ、分からないフリをしているだけ。
狂ってないフリを、しているだけ。
脳裏に浮かぶのはハインさんの顔。
ただそれも、すぐに彼女の顔で消されていく。
ああ、俺は。
いったい、どうしちまったんだ。
-
.........
......
...
从 ゚∀从「お待たせしました!」
('A`)「ん、早かったね」
気がつくと時計の針は昼を指し示していた。
......俺は、さっきまで何をしていた?
......
思い、出せない。
いや、それは正しくないか。
正確には思い出したくない。
思い出してはいけない。
('A`)「......さ、行こうか」
从 ゚∀从「え?......あっ!はい!」
だから、早く、忘れてしまおう。
あんなに楽しみだったんだ。
楽しめば、忘れられるはずだ。
頭を空っぽにして。
バカみたいに笑えば。
そうすれば。
頭から離れない彼女の顔も。
この胸の奥の感情も。
全部、なくなる。
なくなる、はず。
なくさなきゃ、いけないんだ。
-
从; ゚∀从「ど、ドクオさん!」
('A`)「え?......あ」
声をかけられ、ようやく自分が早足になっていたことに気がついた。
......何を焦っているんだ、俺は。
今日はゆっくり、楽しむつもりだっただろ。
折角のハインさんとの、美少女との時間で。
人生ではじめてのデートなんだ。
あんなに心踊った予定だったんだ。
じっくり、楽しまないと。
('A`)「......ご、ごめんごめん!ちょっと俺、楽しみすぎて、焦ってたみたいだ」
从 ゚∀从「え?あ、あー!そうなんですか?」
从 ^∀从「そんなに楽しみにしててくれたなら、嬉しいや」
('A`)
-
変わらない、綺麗な彼女の笑顔。
だが、胸は高鳴らない。
痛い。
この気持ちは、なんなんだ。
从 ゚∀从「......いきましょ!今日は私が恩返しするんですから!」
('A`)「......うん」
視界の端に黒髪が見える。
......ドクン。
胸が高鳴る。
目を、奪われる。
何もない、虚空に。
誰にも見えない、少女に。
俺だけの、少女に。
-
「......んで」
('A`)「......え?」
从 ゚∀从「ほらドクオさん!行きますよ!」
(;'A`)「あ......うん」
気のせい......だろうか。
今の声。
何かに絶望したかのようなか細い声。
それが、彼女の方から聞こえた気がした。
......
気のせい、だろう。
最近、俺は疲れすぎているのだ。
そうだ、きっとそうに違いない。
生活がここまで変わったんだ。
そりゃ疲れるよな。
女性とこんな風に話したりするなんて今までなかったから。
-
('A`)「......あ」
从 ゚∀从「ドクオさん?」
('A`)「ん、いや......まずどこにいこっか?」
从 ゚∀从「んー、とりあえずお店に行きませんか?」
('A`)「うーん......いいね、そうしよう」
俺は、疲れてるのか?
この関係に。
この、ハインさんとの関係に。
-
('A`)(......でも)
嫌な訳じゃない。
嫌なわけがない。
でも、こんなに疲れてしまうのは何故なんだ。
......そんなの、分かってる。
分かってるんだ。
だから視線が、視界の端に映る黒髪へと、引かれていく。
('A`)「......」
川 ゚ -゚)「......ん?」
こちらが見ていたのに気がついたのか、彼女もこちらを見つめ返してくる。
真っ直ぐ、その綺麗な瞳で。
その瞳に俺しか写っていないかのように。
真っ直ぐ、ただ、ひたすらに。
-
川 ゚ -゚)「......深呼吸をしたらどうだ?」
('A`)「え?」
川 ゚ -゚)「酷い顔をしている。少し、落ち着け」
('A`)「......」
川 - -)「ドクオ、大丈夫だから」ギュッ
('A`)「あ......」
抱き締められる。
なんだ、これ。
心の奥にあったモヤモヤしていたものが、消えていく。
落ち着いていく。
暖かい。
ずっと、このままでいたい。
-
ああ、でもダメだ。
ダメなんだ。
俺は。
だって、俺は。
俺は......
「ドクオさんっ!」
('A`)「っ!?」
後ろからドンと抱きつかれる。
顔は見えない。
だがこの声、間違いない。
ハインさんだ。
-
('A`)「は、ハインさん?どうかしましたか?」
「......して」
('A`)「え?」
泣いているのだろうか。
声が震えている。
体が震えている。
「どうして......私を見てくれないんですか?」
('A`)「......え?」
-
「私を......見てください」
震える声で。
すがるような声で。
俺にそう、彼女は頼んでくる。
見てくれ?
どういうことだ?
とりあえず、振り返ればいいのか?
('A`)「え、えっと......」
体は抱きつかれているから動かせない。
だから顔だけを動かし、後ろを見ようとする。
-
川 ゚ -゚)「ドクオ」
('A`)「え?」
だが。
それを止めるように彼女は俺に声をかけてきた。
無視すればいい。
無視すればよかった。
だけど。
俺は、振り向くのをやめて彼女の方を向いてしまった。
「......どうして」
('A`)「あ......」
バカなのか、俺は。
また、ハインさんを傷つけて。
何がしたいんだよ、俺。
-
「......好きなんですか?」
('A`)「へ?」
「......いるんですよね、そこに」
(;'A`)「な、へ?」
何を、言ってるんだ?
そこに、いるかだと?
確かに、俺の目にはそこに何かがいるといっている。
だけどそれは、俺だけにしか見えない、存在しない存在のはず。
でも、じゃあなんで。
-
(;'A`)「ハインさん、まさか見えてる?」
「......ううん」
(;'A`)「じゃあ......」
「......黒髪の女性のこと。先生に相談してるの、聞いてしまったんです」
(;'A`)「......」
思い当たったのは目を覚めたその日。
先生に相談したとき。
頭がうまく回っていなかったときとはいえ迂闊だった。
まさか聞かれてたとは。
-
だが、だとしてもだ。
(;'A`)「す、好きとかそんなの、あるわけないじゃないか......」
そう、だって。
そこには何もない。
だから俺も何も感じてない。
そう、そのはずなんだ。
「......なら」
('A`)「え?」
「どうして、私を見てくれないんですか?」
-
('A`)「......」
「私はドクオさんをずっと見てるのに、どうして......私じゃなくて彼女を見るんですか......」
('A`)「そんなこと」
ない、と言おうとして口を閉じる。
そんなこと言っても、無意味だ。
だって俺は今もなお、ハインさんを見ていないのだから。
「......」
('A`)「......」
-
「......好きです」
('A`)「っ」
「私はドクオさんが好きです!だから、ドクオさんも私を好きになってください!私を見てください!」
('A`)「......」
誰かに愛されること。
誰かに好きだと言われること。
何度も夢を見たことがあった。
だけど俺は、それに何も感じられない。
-
......ああ、そうか。
「......答えてくれさえ、しないんですね」
('A`)「......」
もう、俺は。
狂ってしまっていたんだ。
-
「......ごめんなさい」
彼女が背中から離れ、走り去っていく音が聞こえる。
だけど俺は、それを追いかけない。
視線も、追わない。
ただ、目の前の彼女を見つめる。
('A`)
川 ゚ -゚)
ただ、ひたすらの見つめ合い。
すると、心の奥からふとひとつの言葉が浮かんでくる。
言ってはいけない。
頭のどこかでそんな声が聞こえた気がした。
-
だけどもう、押さえられない。
狂ってしまったものはもう、戻らない。
('A`)「......俺はお前が好きだ」
川 ゚ -゚)「......」
川 - -)「ああ」ギュッ
だから狂ったことを受け入れる。
ただ、目の前のクールを抱き締める。
ああ、暖かい。
腕の中に温もりがある。
それは、そこに何かがいると言う存在の証。
('A`)「......お前は、ここにいるんだな」
川 - -)「ああ、いるとも。今までも、そしてこれからも」
-
('A`)「うん......ありがとう」
川 ゚ -゚)「ふふっ、なんだそれは?何に対してだ?」
('A`)「俺を愛してくれたことに対して、かな?」
川 ゚ -゚)「似合わないな」
('A`)「駄目か?」
川 ゚ -゚)「いや、もっと好きになった」
('A`)「そっか」
ああ、心が暖かい。
体が、軽い。
幸せだ。
こんな近くに幸せがあったのに。
俺は何をしてたんだ。
-
('A`)「ずっと、一緒にいよう」
川 ゚ -゚)「ああ」
周りの人々の声が聞こえる。
皆が俺達を見ている。
ああ、そんなにこっちをみて。
俺達を祝福してくれてるのか。
ありがとう。
ありがとう、みんな。
なんて俺は、幸せなんだ。
-
.........
......
...
クーとの生活が始まって数日が経った。
部屋のなかで二人。
いきなりの共同生活。
ああ、なんて心踊る日常。
彼女と共に歩む生活。
ただ側にいるだけなのにこんなにも明るい気持ちになれるなんて。
('A`)「クー、今日はどうしよっか?」
川 ゚ -゚)「ん?そうだな......ドクオ、君は何をしたい?」
('A`)「んーそうだなー」
したいことなんてない。
こんな風に二人でいられるのなら。
それだけで、俺は幸せなのだ。
ああ、今の俺。
最高の気分だ。
-
川 ゚ -゚)「なら、今日もゆっくりしようか」
(*'A`)「うん」
二人っきりの部屋で。
ただただくっついて座るだけ。
それだけでこんなにも心踊るのは。
ああ、目に映る全てのものが輝いている。
まるで世界が俺達を祝福してくれてるかのようだ。
('A`)「クー」
川 ゚ -゚)「ん?なんだ?」
('A`)「愛してる」
川 ゚ -゚)「ああ、私もだ」
-
そしてまた、何度目かもうわからない口づけを交わす。
ああでもダメだ。
こんなんじゃまだ、伝えきれない。
この俺の気持ちはまだ、こんなものじゃない。
なのに伝えられないこのもどかしさ。
('A`)「好きだ」
川 ゚ -゚)「私もだ、ドクオ」
だから俺は何度もいい続ける。
彼女にこの気持ちのすべてが伝え終わるまで何度も何度も何度も。
-
('A`)「大好きだ」
川 ゚ -゚)「私も愛してる」
('A`)「愛してやまないんだ」
川 ゚ -゚)「何時までも一緒にいよう」
まだ、伝え終わらない。
でも、いいんだ。
こんな時間も、俺にとって大切で幸せな時間だから。
-
('A`)「......あ、もうこんな時間か」
気がつくともう、夕飯時になっていた。
話をしているうちに時間を忘れてしまっていたようだ。
('A`)「んじゃ、夕飯を作りますかな」
川 ゚ -゚)「手伝おうか?」
('A`)「いや、休んでて」
川 ゚ -゚)「ん、そっか」
こうは言ったもののクーと離れるのが、凄く辛い。
同じ屋根の下にいるのに。
少ししか離れないのに。
彼女がこの瞳に映っていないだけで心が締め付けられるような感覚に陥る。
彼女がいなくなってしまうような気がしてきてしまうんだ。
-
あり得ないことだって分かってる。
だって約束したから。
ずっと、一緒にいようと。
なのに、なんなんだ。
この、気持ちは。
('A`)「......」
頭がいたい。
胸が苦しい。
なんなんだ、これは。
でも、それがなんなのか。
考えたくない。
考えたら、ダメだ。
何故かは分からない。
けど、ダメなんだ。
-
('A`)「......クー」
俺は彼女の名前を呼ぶ。
目を向けず。
ただ言葉だけを放る。
川 ゚ -゚)「ん?どうかしたか」
('A`)「......いや、なんでも」
答えは、あった。
思わず笑いそうになる。
ああ、俺はやっぱりバカだ。
クーはそこにいる。
それでいい。
それだけでいいじゃないか。
頭を軽く振り、料理に取りかかる。
気がつけば先程の不快感はもう、どこにもなかった。
-
.........
......
...
あれから俺は、幸せな毎日を過ごしている。
たぶんこの世で一番幸せだ。
悪いなみんな。
俺は今、最高にリア充だ。
嫉妬される立場だ。
なんて気分がいいんだ。
今日もまた一日、幸せに過ごすとしよう。
('A`)「......んあ?」
目を覚ましてすぐに違和感に気がついた。
なんか、いい匂いがする。
これは、ご飯と味噌汁の匂い?
どこからだ?
まだしょぼしょぼする目で辺りを見渡してみるとすぐに匂いの元は見つかった。
-
('A`)「......これ、朝食か?」
なんか、机の上に綺麗に並んでる。
これぞ日本人の和食っていう感じの。
('A`)「??俺作ってないけど......」
川 ゚ -゚)「ん、起きたか。おはよう」
('A`)「あ、おはよ......あ、クー!もしかしてこれ」
川* ゚ -゚)「あ......ああ、私が作ったんだ」
薄く頬を染め、恥ずかしそうに彼女がいう。
ああ、朝からこんな彼女を見られるなんて。
これだけでもお腹一杯です。
あ、朝食は別腹な。
どんな状態でもくうわ。
クーが作ったんだ。
食わないわけがない。
-
('A`)「じゃ、食べていいかな?」
川 ゚ -゚)「ん、どうぞ」
さて、まずは一口。
味噌汁を啜り、ご飯を口へ運ぶ。
......うまい。
ご飯はうまいし、味噌汁も出汁をちゃんと取ってありさらにご飯が進む。
('A`)「うまいっ!」
川 ゚ -゚)「ふふっ......どんどん食べてくれ」
('A`)「ああ」
ああ、本当に手が止まらない。
ふっくらご飯がうまい。
煮干し出汁の味噌汁もうまい。
だし巻き卵もうまい。
焼き魚もうまい。
何もかも、全部が美味しい。
勿体ないと思うが食べる速度はどんどん上がっていく。
-
......ゴクリ。
('A`)「ん?」
川 ゚ -゚)「?どうかしたか?」
('A`)「あ、いや」
なんか今、味噌汁の中にあった固いなにかを飲み込んだ気がする。
......まあ、気にすることはないか。
変な味もしないし。
たぶん、食材の何かだろう。
-
('A`)「なぁ、クー」
川 ゚ -゚)「ん?なんだ?」
('A`)「その、迷惑じゃなければなんだけどさ」
川 ゚ -゚)「?」
('A`)「これからも、食事、作ってくれないか?」
川 ゚ -゚)「......」
('A`)「......駄目か?」
川 ゚ ―゚)「気が向いたらな」
('A`)「!クー!」
ああ、これからもこのご飯が食べられるのか。
やはり俺は今日も、幸せのようだ。
-
.........
......
...
あれからと言うもの。
彼女は何だかんだ言いながら毎日朝食を作ってくれている。
さらに、掃除や洗濯もしてくれているようで、最近では夕飯までも作ってくれている。
ああ、彼女は天使なのだろうか。
('A`)「......ん」
そしてまた、気がつくと時間は夕飯時に近づいていた。
目を机の方に向けるとそこには今日も美味しそうなご飯が並んでいる。
ああ、神様仏様クール様。
ありがとう。
今日もおいしくいただきます。
-
('A`)「クー、そろそろご飯にしないか?」
('A`)
('A`)「......あれ?」
そういえば彼女はどこにいった?
さっきまで近くにいた気がするのに。
部屋のなかを見渡す。
独り暮らしのこの家は狭い。
隠れたってすぐに見つけられるはずだ。
-
('A`)「あれ?」
いない。
おかしい。
なんでだ?
なんでいないんだ?
だって、ここにご飯があるんだ。
さっきまで彼女は。
ご飯を作っていたんだから。
この部屋にいないとおかしい。
あれ?
じゃあ。
今いないのは。
それは。
川 ゚ -゚)「ドクオ!」
('A`)「っ!?クー!」
川 ゚ -゚)「全く、何度も呼び掛けたのになぜ反応しないんだ。ご飯が冷めるところだったぞ」
('A`)「え?」
-
川 ゚ -゚)「ん?どうした?」
('A`)「......そこに、いた?」
川 ゚ -゚)「ああ、ずっとな」
おかしい。
だってさっき見たときには居なかったはず。
あれ?
じゃあ、何で。
......
......
......いや、考えちゃダメだ。
単なる、気のせい。
気にしなくても、いい程度の些細な問題だ。
川 ゚ -゚)「どうかしたのか?」
('A`)「いや、何でも。それよりご飯にしよう」
川 ゚ -゚)「ん、そうだな。さ、召し上がれ」
('A`)「ん、いただきます」
-
今日もご飯が美味しい。
手が止まらない。
米粒ひとつも残さず全てを完食。
('A`)「あーうまかった」
川 ゚ -゚)「そうか、よかったよ」
('A`)「おう」
川 ゚ -゚)「今日はこれからどうする?」
('A`)「......なんか疲れたから寝ていいか?」
川 ゚ -゚)「む?そうか。じゃあ今日は寝るとしよう」
('A`)「ごめんな」
なんか今日は気分が悪い。
頭が重い。
早く寝たい。
なんでこんな気分になっているんだろうか。
俺は今、幸せなのに。
ああ、なんかモヤモヤする。
早く寝て、こんな気持ちを忘れたい。
-
適当にシャワーを浴び、大して乾かしもせず布団に向かう。
なんかもう、めんどくさい。
('A`)「......おやすみ」
川 ゚ -゚)「ああ、おやすみドクオ」
布団に入り目を閉じる。
ああ、布団が冷たい。
何故こんなに冷たいんだ。
体が乾ききってないからだろうか。
まあ、それもあるだろう。
けど、一番の理由は。
いつも彼女が添い寝してくれるのにしてくれないからだろう。
-
.........
......
...
おかしい。
何かがおかしい。
何か、俺の日常が狂っている。
考えるたびに頭が痛む。
考えるたびに目眩がする。
俺はただ、彼女と共に日常を過ごしたいだけなのに。
なんで、こんな。
(;'A`)「クー!クー!」
最近、彼女がどこにいるのか分からない。
呼んでも出てきてくれない時が増えてきた。
どこからか視線は感じる。
だから、どこかにいるはずのに。
なのに、見つからない。
-
川 ゚ -゚)「なんだドクオ?」
(;'A`)「っ!!お前、どこいってたんだ!?」
川 ゚ -゚)「どこもなにもここにいたぞ?」
(;'A`)「......」
何かがおかしい。
でも、なにがおかしいんだ。
分からない。
分かりたく、ない。
川 ゚ -゚)「さあ、ご飯にしよう」
ご飯は変わらずに、いつものように並べられていた。
ほかほかと湯気がたち、いい匂いがする。
-
ひとつ、適当におかずを口に運ぶ。
いつものように美味しい。
だけど、頭の痛みはとれない。
目眩も落ち着かない。
気分が悪い。
食欲は最悪。
だけど、無理矢理にご飯を詰め込む。
彼女が作ったものを無駄にしたくない。
ゴクリ、と全てを流し込み、飲み込む。
ああ、気持ち悪い。
('A`)「......寝る」
食べ終わると同時に立ち上がり風呂に向かう。
早く、寝よう。
そうすれば。
明日にはもしかしたら全てを忘れてまた少し前みたいに過ごせるかもしれない。
そんな希望を抱いて。
('A`)「......はぁ」
ため息が思わず出てしまう。
......ああ、今の俺。
幸せじゃない。
好きな人の側にいるはずなのに。
こんなに遠くに感じるのは何故なのだろうか。
-
今日もまた、いい匂いに腹を刺激され目が覚める。
頭は重く、気分も最悪だ。
少し前までこの匂いを嗅ぐだけで気分が高まったのに。
今では眠りを妨げるその匂いのせいで鬱陶しく感じてしまう。
それでも、彼女が作ったものなんだ。
食べよう。
食べれば、もしかしたら元気になるかもしれない。
そう考えモソモソと朝食を腹の中に詰め込んでいく。
手が重く、思うように食は進まない。
('A`)「......あ」
そういえば彼女はどこいるんだろう。
今日はまだ、見てない。
辺りを見渡し彼女を探す。
-
('A`)「......」
見つからない。
日に日に彼女が俺から離れていくような感覚に陥る。
こんなにも側にいたいのに。
なのに、なんでこんな。
('A`)「......ん?」
ふと考え事をしながらご飯を食べ進むと何か固いものが口の中にあるのに気がついた。
そういえば前も何回かこのようなものが入っていたのを思い出す。
そのたびに何か確認する前に飲み込んでしまっていたが。
-
('A`)「なんだろ......」
飲み込んでしまう前に口から取り出す。
小さく、固く。
少し丸みを帯びたその物体。
取りだし手のひらに乗ったそれは赤と白の物体。
('A`)「あ......?」
俺はこれを知っている。
でも、なんでこんなものがここにある?
だってこれは。
これは。
-
(; A ) 「あ、あぁあああぁぁぁあああああ!!!!」
嫌だ。
やめろ。
やめてくれ。
思い出したくない。
考えたくない。
俺は幸せだったんだ。
なのに、どうして。
こんな。
(; A )「クー!クー!」
狂ったように彼女の名前を呼ぶ。
いや、実際俺は狂っている。
もう、思い出してしまった。
考えてしまった。
あのカプセルを見たときから。
彼女は俺の妄想。
どこにもいない、存在なのだと。
-
(; A )「クー!いるんだろ!?どこにいるんだよぉ!!」
でも、それでも。
俺はそれでもよかった。
考えず、忘れて。
彼女と過ごした時間は幸せだったんだ。
なのに。
なぜ。
どうして。
思い出してしまったんだ。
(; A )「......なんで」
彼女の返事はない。
彼女の姿はない。
彼女はどこにもいない。
そして、理解してしまう。
もう彼女は、どこにもいない。
一時の夢から俺は、覚めてしまったんだ。
-
(; A )「う、あ......」
嫌だ。
嫌だ嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
-
なんで、夢を見続けさせてくれないんだ。
幸せだったんだ。
それで、いいじゃないか。
それだけじゃ、ダメなのか?
(; A ) 「あぁあああぁぁぁああああああぁあああぁぁぁああああああぁあああぁぁぁああああああぁあああぁぁぁああああああぁあああぁぁぁあああああ!!!!」
ただひたすらに絶叫し、絶望する。
もう、あのときは戻ってこない。
その、受け入れがたい現実に。
俺はただ、無意味に叫び、無意味に拒絶することしかできなかった。
-
なにも考えたくない。
なにも見たくない。
ただただ幸せだったときを思い出す。
ああ、なんで俺は目を覚ましてしまったんだ。
どうしてもう一度、見ることができないんだ。
ただひたすら絶望する。
ただひたすら涙を流す。
「......」
世界から音がなくなったかのようだ。
世界から光がなくなったかのようだ。
俺の世界は止まってしまった。
狂ってしまった。
壊れてしまった。
もう、戻らない。
-
「......」
ずっと一緒にいる。
何度もそう、約束した。
何度も。
何度も何度も。
だけど、無意味だった。
消えてしまったんだ。
その事を思いだし、また涙が溢れる。
「......」
もう俺は死んでしまった。
呼吸はしてる。
心臓も動いている
けど、彼女がいない。
だから、もう俺は死んでるも同然だ。
-
目を閉じる。
現実から目を背けるために。
また夢を見るために。
また、幸せな夢を見れることを祈り、俺は目を閉じる。
ああ、神様。
お願いします。
また再び彼女に会わせてください。
それで、それだけで。
俺は、幸せなんだ。
だから、どうか。
神様。
俺の願いを聞いてください。
-
......ギシッ
.
-
('A`)「......え?」
暗闇に包まれた部屋のなか。
俺しかいないはずの部屋のなか。
床のきしむ音が響いた。
('A`)「......誰?」
日が暮れ太陽の光が入らなくなり電気もつけていない部屋ではそこになにがいるか、分からない。
でも、何かがいる。
そこに何かの存在を感じる。
-
('A`)「......あ」
ふと、窓から月の光が差し込んだのか、そこにいる何かを照らす。
見えたのは月の光に煌めく綺麗な黒髪の長髪。
('A;)「......ぁあ」
ああ、それは。
その、髪は。
知っている。
その、髪の持ち主を知っている。
暗闇で姿は見えないが。
俺は、彼女を知っている。
-
(;A;)「クー!」
「......ああ、私だよ。ドクオさん」
(;A;)「あぁああああ!!」
帰ってきてくれた!
帰ってきてくれたんだ!
もう二度と、会えないと思ったのに。
もう二度と、幸せな時は戻らないと思ったのに。
(;A;)「クー!」
彼女に駆け寄り、抱き締める。
ああ、暖かい。
その体温に彼女がそこにちゃんといるのだと感じ、安堵する。
そして、もう二度と失わないように強く、強く抱き締める。
それに答えるように彼女も抱き締めてくる。
-
暗闇のなか、俺と彼女は抱き締めあう。
「もう二度と、離さないからな」
「うん、私も、絶対離さない」
「あぁ、あぁ!」
「私だけを見てね、ドクオさん」
「あぁ!」
ああ、俺は今、満たされている。
こんな奇跡が起こるなんて。
俺はもう、この幸せを手放すつもりはない。
だからこれからもこの幸せは続いていくだろう。
彼女の側に俺は居続ける。
クーが俺の側にいてくれる。
ただそれだけで。
それだけでいい。
もう他に欲しいものなど、ない。
-
「幸せだ」
「うん、私も」
闇に包まれた部屋のなか。
二人っきりの世界で抱き締めあう。
いつまでも、いつまでも。
この幸せが続くように願いながら。
ああ、俺、幸せだ。
-
はっぴーえんど
.
-
終わりかな?おつ
ゆがんでんなぁ
-
引き込まれた、乙
-
初日から読ませてくれるな
-
これ最後に現れたのって……
考えさせられるいいはっぴーえんどだ
-
面白い乙
-
良い感じに歪んでた 乙
-
余韻にしびれる
ラストの展開で朝ごはんと薬が深い意味を持ってくる
-
おつ、すげーぞわぞわした
-
すまん蛇足とは思わんからまだ続きあったなら投下してくれ
-
乙
俺はこれで綺麗な終わり方だと思うが
-
>>158
俺>>157だけどせっかく書いたんなら見たくない?
あと俺が>>149書いたからこれで完結みたいな空気になったのかもしれんから申し訳なさもある
-
自分は>>149ありなし関係なく短編として完結したと思った。
しっかりオチがついている・タイトル回収してあるし、別に作者がつづくとも書いてないから。
もしつづくならこのドクオの話じゃなく、違う人物、違う話ではっぴーえんどを書いてほしい。あくまでもしもなので作者がつづきを書かないならそれで良い。
-
専用スレ確認してきた。
一言にもう少し投下したかったが蛇足っぽいからやめた(簡略)って書いてあるな
作者の好きなようにでいいんでない?
-
私の一言のせいで混乱させてしまい申し訳ない
ドクオの話、というかこの物語はこれで完結してます
これ以上はないです、てか書けないです
書いたのは続きではなくこの物語の一部を別視点にしたいわば補完的なものです
なんですが投下し終わって読み直したらないほうがいいなと思ったので投下しないと決めました
なので>>149の方のレスを見て止めたりしたわけではないです
分かりにくくてすみません
-
ああなんか作者にフォローまでさせてしまった
すまねぇID変わるまで黙る
-
前半ニヤニヤ見てたらいつの間にか引き込まれて一気に読んでしまった
乙
-
結局クーの存在はなんだったのかな。まぁ、わからないならわからないままでも十分か
-
【連絡事項】
主催より業務連絡です。
只今をもって、こちらの作品の投下を締め切ります。
このレス以降に続きを書いた場合
◆投票開始前の場合:遅刻作品扱い(全票が半分)
◆投票期間中の場合:失格(全票が0点)
となるのでご注意ください。
(投票期間後に続きを投下するのは、問題ありません)
詳細は、こちら
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1456585367/404-405
-
乙
誰にとってのはぴーえんどなんだろうな
-
どういうことなの…
引き込まれたわ
-
以下没部分
折角なので投下するけど蛇足です
-
私は恋愛と言うものがよくわからない。
友達との会話で誰々がカッコいいみたいな話になるけどそれすらついていけない。
恋とはどんな感情なんだろう。
漫画とかだと、甘酸っぱいらしいけど。
考えても、やっぱりよくわからない。
そんなことを考えながら歩いてたからだろうか。
気づいたときには目の前にトラックが迫ってきていた。
声すら出す暇がなかった。
気づいたときには私はドンっと弾かれていた。
......轢かれた。
最初はそう思った。
でもそれにしては、それほど痛くない。
手も動く。
足も動く。
身体中に感覚がある。
あるのは尻餅をついたときのちょっとした痛みだけ。
轢かれたにしては、おかしい。
混乱してうまく働かない頭を振り絞り、辺りを見渡してようやくあることに気がついた。
人が、血の海のなかにいた。
-
从; ゚∀从「っ!?だ、大丈夫ですか!?」
慌てて駆け寄り、声をかける。
だけど、反応してくれない。
それどころか目を閉じ、動かなくなる。
从; ゚∀从「......あ」
もう、どうすればいいのかわからない。
誰か、誰か来てくれ。
そうだ、誰かを呼ばないと。
早く誰かを。
助けを呼ばなければ。
从; ゚∀从「......あっ!救急車!」
ここでようやく、その存在を思い出す。
私はバカなのか。
一分一秒争う状況で。
早く、早くしないと。
从; ゚∀从(早く!)
自分のせいで、誰かが死ぬなんて、御免だ。
それも、命の恩人であるこの人を。
死なせたくなかった。
-
.........
......
...
从 ゚∀从「......はぁ」
あの事故から数日が経った。
まだ、私を助けてくれた人は目を覚まさない。
从 ゚∀从「このまま目覚めないなんてこと、ない......よね」
誰に言うでもなくポツリと呟く。
助けてくれた人なのに。
そのせいでこんな目に合わせてしまうなんて。
それも、見ず知らずの私のために。
命を懸けて助けてくれたのに。
なのに、私は彼のために何もできない。
从 ゚∀从「はぁ......」
今日も私は、彼のもとに花を届けにいく。
せめてもの償いのために。
そして、彼に会うために。
-
从 ゚∀从「......こんにちは、今日も来たよ」
扉を開け、病室に入る。
相変わらず病室には彼以外、誰も来ていない。
その理由はよくはわからないが、私にはその方が嬉しかった。
だって、二人っきりになることができるのだから。
从 ゚∀从「......ドクオさん」
顔にかかった髪を撫でる。
細い、ひ弱そうな印象を受ける顔立ちの彼。
私を助けてくれた、彼。
ああ、やっぱりだ。
彼の顔を見るたびに胸が苦しくなる。
从 ゚∀从「......ドクオさん」
話したこともないのに。
知り合ってすらないのに。
私は彼に、恋をした。
-
七つ目の花束を買ったその日。
つまり、事故から一週間が経ったその日。
病院につくと受付の人から彼が目が覚めたときいた。
その報告に私は思わず目から涙が溢れそうになる。
ああ、よかった。
彼は、助かったのか。
早く、早く会いたい。
廊下を走り、彼の病室へと急ぐ。
ああ、もうすぐ、もうすぐ会えるんだ。
ようやく、話すことができるんだ。
会ったらなんと言おう。
ありがとう?
ごめんなさい?
わからない。
わからないけど。
今はただ。
早く。
彼のもとへ。
从; ゚∀从「はぁ......はぁ......」
彼の病室の前に来る。
鼓動がはやくなり息が切れる。
走ったせいだけではない。
彼に会うのに、緊張してる。
-
胸の奥が苦しい。
早く会いたいのに、会いたくないような気もする。
もしこれであって嫌われたらどうしよう。
私のせいで入院することになったんだ。
嫌われても仕方ない。
いや、嫌われて当然なのかもしれない。
でも、だとしたら。
私は耐えきれない。
だって私は彼のことが。
从 ゚∀从「......いこう」
ああ、もう。
うだうだ考えるのはあまり性に合わない。
会おう。
会えば、分かる。
今はただ、祈るのみ。
どうか、私のことを。
受け入れてくれますように。
-
从 ゚∀从「っ!」
ガラリ、と部屋の扉を開ける。
いつもと変わらず彼しかいない病室。
だがひとつ違うのは。
彼が、目を開けていた。
从 ゚∀从「......あ」
从 ;∀从「あぁ......」
本当に、本当に目を覚ましていた。
从 ;∀从「ほ、本当に起きてる......」
涙が止まらない。
止めたくても、止まらない。
嬉しい。
嬉しい。
嬉しい。
ただ、その気持ちで一杯だった。
从 ;∀从「よ、よがっだー。も、もじめざめながったらどうじようかと......」
(;'A`)「......おおぅ」
言わなきゃいけない言葉はたくさんあるのにうまくまとまらない。
なんて、何て言おう。
何て言えば伝わるんだろうか。
-
ああ、ドクオさん。
私は。
(;'A`)「......ん、っと確か君は」
从 ;∀从「は、はいっ!わ、私!ハインっていいます!あなたに命を助けられました!」
(;'A`)「あ、うん」
从 ;∀从「ほんっとおおぉおおに!ありがとうございましたあ!」
そうだ、ありがとうだ。
助けてもらったのだ。
こんなんじゃ、とても足りないだろうけど。
何度もありがとうも言おう。
少しでも、私の思いが伝わるように。
('A`)「えっと、ハインさんでいいんだよね?」
从 ;∀从「は、はい!」
(;'A`)「......うん、とりあえず涙拭こっか」
......あ
ようやく、私の顔の現状を把握する。
私、今の顔、絶対大変なことになってる。
早く拭かなくては。
でも、よかった。
嫌われては、ないようだ。
その事に私は安堵していた。
-
そこから少し、話を続けていく。
二人っきりの病室で話をする。
ああ、さっきから胸がドキドキいっている。
彼の視線が私を捉えているのがよくわかる。
嬉しい。
心の底からそう感じる。
好きな人の視線を、世界を独占できることがこんなにも嬉しいことだなんて知らなかった。
ああ、ドクオさん。
私を、私をもっと、私だけを見てください。
('A`)「......言いたいことがあるなら言いなよ」
从; ゚∀从「へっ!?」
あれ?
もしかして今考えてること、顔に出てたのだろうか。
だとしたら恥ずかしすぎる。
だって私だけを見てくれなんて、そんな馬鹿げたことをいってしまったのだ。
顔が暑くなる。
あー、やだ。
もう、ダメかもしれない。
嫌われるかもしれない。
あぁ、私のバカ。
何をしているんだ。
-
('A`)「ん、あ、いや、ハインさんじゃなくて」
从 ゚∀从「へ?」
('A`)「君だよ」
彼の視線が私から外れる。
その視線の先。
そこには、何もない。
だけど、彼はまるでそこになにかがいるかのように話を続ける。
何がどうなってるのか、分からない。
でも、それよりも重要なことがある。
それは彼の視線。
その視線は私を見る目と違う。
その視線の意味。
心が痛む。
やめて。
ドクオさん、私じゃない人を、そんな目で見ないで。
私を見てよ。
私は、あなただけを見てるのに。
どうして。
-
その後、病室に先生が入ってきてその日の面会は終わった。
だけど、帰る気にはなれない。
当たり前だ。
彼は、私を見ていない。
彼が見ているのは見えないクールとかいう存在。
病室の扉の前から、病室の中の会話を盗み聞きする。
すると思った通りに彼はその見えないはずの存在について話始めた。
なるほど、黒髪の長髪か。
聞いた感じ、とても美人なのだろう。
顔は、私も負けてない......はず。
スタイルもまぁ、悪くない、と思う。
となると、髪。
流石にショートカットのこの髪を長髪にするのは無理がある。
つまり、手詰まり?
从 ゚∀从「はぁ......」
ため息をひとつつき、帰り道を歩く。
まあ、頑張って伸ばすしかないか。
-
いや、そもそも真似するのが間違いなんじゃないか?
そうだ、なに諦めようとしてるんだ。
彼はあの存在を妄想と拒絶している。
なら、そのうちに私を好きになってもらえばいい。
弱気になっちゃ、ダメだ。
相手は、単なる妄想なのだから。
从 ゚∀从(......うし!)
気合いを入れ、携帯をポケットから取り出す。
とりあえずやることはひとつ。
彼との時間を作るために、全部の予定をキャンセルする連絡をすることにした。
-
.........
......
...
それから毎日、私は病院に通った。
毎日、ドクオさんと会話した。
毎日、ドクオさんと笑った。
毎日、ドクオさんと遊んだ。
毎日、ドクオさんと過ごした。
ああ、毎日が充実している。
幸せで、溢れている。
でも、その幸せもどこか、欠けている。
理由はただひとつ。
彼の視線。
あれは、私だけを見ていない。
時折、何もないところをふと見るときがある。
ああ、ドクオさん。
どうしてそっちを見るんですか。
私を、私だけを見てください。
私なら、何でもしてあげられる。
でも、その存在はなにもしてくれない。
だから、私を愛して、私を見て。
その視線を、その愛する人を見る目を私にください。
でも、その祈りは届かない。
彼はまだ、私を見てくれない。
-
心が痛む。
でも、彼への気持ちはどんどんと膨れていく。
押さえきれないほどに、大きく、強くなっていく。
ああ、どうすれば。
彼は私を見てくれるのだろう。
どうすれば。
どうしても、彼は私ではなくあの存在を見てしまう。
二人っきりだと思っても。
あの存在がいるから。
あの存在がいるせいで。
从 ゚∀从「......邪魔、だなぁ」
ああ、そうか。
消しちゃえばいいんだ。
-
.........
......
...
彼が退院した。
めでたいことだ。
なのにテンションは下がる一方。
せっかくの二人の時間が終わってしまったのだ。
まだ、これからも入院してて欲しいと思ってしまう。
ああ、酷く醜いな、私。
从 ゚∀从「あ、ドクオさん!退院おめでとうございます!」
('A`)「あ、今日も来てくれたんだ」
从 ゚∀从「迷惑だった?」
('A`)「いや......嬉しいよ」
ドクオさんが私に微笑みかけてくれる。
私を見て、私に笑顔をくれる。
私のための笑顔。
ああ、嬉しい。
彼も私をようやく見てくれている。
-
......でも。
(; 'A)
ああ、まただ。
まだ、私以外を見ている。
まだ、足りないの?
うん、きっと、そうに違いない。
もっと、頑張らなくては。
そうすれば、いつか、きっと。
私だけを、見てくれるはず。
そうですよね、ドクオさん?
-
それからなんとかドクオさんを押しきり、彼の家に着いていくことができた。
一人暮らしの男の人の部屋に入る。
もうこれ、あれだ。
彼女みたいだ。
顔が赤くなりそうだ。
というか、顔が熱い。
多分もう、赤くなっている。
こういうとき、変な顔してないか不安になる。
これでもし変な顔をしてて、嫌われたらと考えると。
('A`)「......ハインさん?」
......
......
ん?
あれ?今、呼ばれた?
从; ゚∀从「......へっ!?」
私は何してるんだ。
今日ももっとアピールしようと思ってたのに。
こんな変なところ見られたら呆れられちゃうかもしれない。
もう、最悪だ。
-
从 ゚∀从(......あ)
でも、テンションが下がったお陰でやることを思い出した。
まあ、結果オーライかな?
このくらいのミス、取り返せるはず。
多分だけど。
从 ゚∀从「あ、ちょっとキッチン見させてもらいますね」
私はそういい、キッチンへと向かう。
ちょっとした、探し物。
大体どこら辺にあるかは想像できる。
だってドクオさんのことだ。
短い間だったがずっと見てたのだ。
彼のことは大分わかる。
-
その証拠に。
从 ゚∀从(......あった)
探し物は簡単に見つかった。
赤と白のカプセル。
忌々しい見えない女を消すためのものだ。
これを使い続ければ、見えない女を殺せる。
ちょっとずつじゃダメだ。
今すぐ、殺さないと。
負けたくない。
初めて好きになった人を、盗られたくない。
だから、私はなんだってする。
从 ゚∀从(......ふふっ)
さぁ、美味しいものを作ろう。
彼の退院祝いに。
薬が入ってることなど気づかないくらい美味しい料理を。
愛情がたっぷりこもったあなたのための料理を。
ドクオさん、だから私を見てくれますよね?
-
.........
......
...
なんで。
どうして。
訳が分からない。
なんで私じゃないの?
どうして私じゃないの?
今日は彼と二人でお出かけして、楽しみたかったのに。
だからこんなにお洒落をしてきたのに。
今、私は彼の部屋の前にいる。
でも、中には入らない。
いや、入れない。
彼は何もない空間を見つめている。
ああ、どうして。
その視線は私が浴びるはずのものだった。
なのに、なぜ。
ドクオさん。
気付いて。
私があなたを愛してること。
あなたのためならなんでもできる。
だから。
だから、そんな存在、早く忘れて。
-
彼は出掛けても様子は変わらなかった。
いや、むしろ悪化している。
どこか、少なくとも私ではなく何かを見つめている。
どうして?
今日は私と約束したのに。
嫌だ。
私を見て。
ドクオさん。
お願い。
ドクオさん。
こっちだよ。
ドクオさん。
どうして。
ドクオさん。
なんで。
ドクオさん。
ドクオさん。
ドクオさん。
ドクオさん。
ドクオさん。
ドクオさん。
ドクオさん。
ドクオさん。
ドクオさん。
从 ∀从「どうして」
ああ、もうダメだ。
こんなに近くにいるのに。
まるで一人っきり。
それは彼が私でなく他の人を見てるから。
-
耐えられない。
吐き気がする。
目眩がする。
助けてよ。
前のように。
ドクオさん。
私のヒーロー。
私だけの大切な人。
从 ∀从「どうして......私を見てくれないんですか?」
('A`)「......え?」
彼を抱きしめ、思わず本心が口からあふれでる。
声が震える。
体が震える。
なんでこんなに震えるんだろう。
ドクオさんに触れているのに。
でも。
それでも。
ドクオさんは振り向いてくれない。
どうして?
私はまた、傷ついているのに。
あのときのように私を助けてよ。
私を見てよ。
ねぇ、なんで。
なんで、私じゃないの?
-
ドクオさん。
ダメ。
ダメだよ、そんなの。
絶対。
だから。
否定してくれるはず。
从; ∀从「......好きなんですか?」
ああ、いってしまった。
でも、私は信じてる。
ドクオさんだもの。
絶対、分かってくれる。
こんなに好きなんだもの。
絶対、報われる。
(;'A`)「す、好きとかそんなの、あるわけないじゃないか......」
ああ。
良かった。
やっぱり、ドクオさんは分かってくれていた。
これで、これでようやく。
ようやく私を......
-
なんで?
......どうして。
从 ∀从「......なら」
......どうして。
('A`)「え?」
......どうして。
从 ∀从「どうして、私を見てくれないんですか?」
まだ、彼女を見ているの?
-
('A`)「......」
从 ∀从「私はドクオさんをずっと見てるのに、どうして......私じゃなくて彼女を見るんですか......」
('A`)「そんなこと」
ドクオさんの言葉がつまる。
否定の言葉がない。
つまり、それは。
いや、イヤ、嫌!
こんなの嘘に決まってる。
从 ∀从「......」
('A`)「......」
ドクオさん、ダメだよそんなの。
ああ、そうか。
もしかしたらドクオさんは勘違いしてるのかもしれない。
私があなたが好きだって気づいてないだけ。
うん、そうに違いない。
そうじゃないと、おかしいもの。
-
从 ∀从「......好きです」
('A`)「っ」
从; ∀从「私はドクオさんが好きです!だから、ドクオさんも私を好きになってください!私を見てください!」
('A`)「......」
私の全部をぶつける。
これで、ドクオさんは振り向いてくれる。
それで、ハッピーエンド。
全部、オールオッケー。
そうでしょ?
そうじゃないなら私は。
私はどうなる?
私はどうすればいい?
好きな人を奪われて、全部を失って。
そんなの、おかしい。
だから、ドクオさんは振り向いてくれる。
-
そう、信じてた。
でも、ドクオさんは振り向かない。
もう私に、残されているものは何もない。
全部、拒絶されてしまった。
ドクオさんが私を、受け入れてくれることはもう。
もう、ないのだ。
从 ∀从「......答えてくれさえ、しないんですね」
('A`)「......」
ああ、何なんだろう。
この気持ち。
泣きたいはずなのに涙が出ない。
叫びたいはずなのに声が出ない。
心が、空っぽ。
何も、感じられない。
この現実を、受け入れられない。
-
从 ∀从「......ごめんなさい」
そういい、私は早足で彼から離れる。
背中に視線は感じない。
ああ、彼はこんなときでも私を見てくれないのか。
何でダメだったんだろう。
何で私じゃなくて彼女なのだろう。
何で。
何で。
......あ。
そうか。
从 ∀从「......私、だからか」
ああ、そういうことなんですね。
わかりました。
あなたがそう、望むなら。
从 ゚∀从「......」
私は全部、叶えてあげる。
从 ゚∀从「ドクオさん」
私はあなたが好きだから。
-
.........
......
...
あれから、私は彼と暮らしている。
朝には彼のためにご飯を用意し、食べ終わったら洗濯、それから掃除、全部終わったら買い物をして最後に夕飯の準備。
あんなことがあったあとだから少し時間を置こうかと思い様子を見ていたが彼は一人だとなにもしようとしていなかった。
駄目ですよ、ドクオさん。
ちゃんとしないと。
でも、大丈夫。
私が全て、やりますから。
从 ゚∀从「〜♪」
今日もお母さんに教わった味噌汁を作る。
彼に美味しいと言われたから。
毎日美味しそうに食べてくれるから。
从 ^∀从「うん、出来た!」
彼がそろそろ起きる時間だ。
早く配膳しないと。
-
('A`)「......ん?」
あ、彼が起きた。
ほら、早く食べて。
私の愛情がたっぷり入った朝食を。
('A`)「おお、またクーが作ってくれたのか?」
('A`)「いやーいつも美味しいしほんと嬉しいよ」
('A`)「はは、嘘じゃないって」
('A`)「んじゃ、いただきます」
('A`)「ん、これ美味しいな」
('A`)「ははは、本当だって」
('A`)「いつも美味しいよ」
('A`)「うん、これも。これも。ほんとうまいわ」
ああ、良かった。
ちゃんと、食べてくれている。
美味しいと笑ってくれてる。
胸の奥が暖かい。
この気持ち、幸せだ。
私、今、幸せなんだ。
私の料理が彼を笑顔にしたんだ。
私が、私が。
ふふ、じゃあ、次は洗濯をしよう。
これも全部、ドクオさんのため。
でも大変なんかじゃない。
これが私の幸せ。
私と共に彼が生きている。
私は今、満たされているんだ。
-
あれから、数週間が経った。
どのくらい経ったかは覚えてない。
でも、髪が邪魔になるくらい長くなったから結構長かったのだろう。
まあ毎日が幸せで私にとってはとてつもなく短い時間だったが。
さてそれより。
最近ドクオさんの様子がおかしい。
ドクオさんのために念のため部屋においておいたカメラが役に立つときが来るとは思わなかった。
今日も彼に異常がないか確認するため、映像を確認していると彼がいつもと違う動きをし始めた。
('A`)「?......クー?」
('A`)
('A`)「ああ、探したぞ?どうしたんだ?」
どうやらドクオさん、彼女が見えなくなってきているようだ。
思わず、笑いそうになってしまう。
-
ああ、そうか。
薬が効き始めたんだ。
彼の顔に、不安が見てとれる。
ごめんなさい、ドクオさん。
そんな顔をさせてしまって。
でも、仕方ないんです。
私とあなたのために、必要なことなんです。
でも、分かってくれますよね?
だって、私たちのハッピーエンドのために必要なことなんですから。
ああ、ドクオさん。
あと少し、あと少しです。
だからもう少しだけ。
私は、あなたに辛い想いをさせることになってしまいます。
でも、絶対幸せになれますから。
だから、許してくれますよね?
-
またあれから何日経ったんだろうか。
髪はもう伸びに伸び、以前の私の髪型の原型はどこにも残されていないほどになった。
そしてそんな私の髪型が変化したように彼にもまた、変化が現れた。
今日も映像をつけると彼は絶叫していた。
顔はひどく絶望しており、悲壮としか言いようがない。
ああ、ドクオさん。
辛いんですね。
分かります。
私も、この気持ちが届かないと知ったとき心が壊れるかと思いました。
でも、大丈夫です。
私があなたを救います。
待っててくださいね。
すぐに、あなたのもとに行きます。
あなたの愛する人が、今。
会いに行きますから。
-
日も暮れ辺りが暗くなり、外灯がつき始めた頃。
私は彼の部屋にたどり着いた。
彼の家の鍵を開け中にはいる。
するとなかは電気をつけていないのか真っ暗であった。
暗闇のなか、目を凝らし辺りを見てみると奥にひとつ、うずくまる人らしきものが見える。
その姿を見て、私は思わず泣きそうになる。
彼が苦しんでいるのが辛くて。
そして、これから起きる出来事を考えて。
溢れそうに涙を必死に堪える。
ああ、ドクオさん。
ようやく。
ようやくです。
ようやく、私とあなたが本当に幸せになれるときが来ました。
さあ、顔を上げてください。
ドクオさん。
あなたが望む幸せが、ここにありますから。
-
彼に近づくためにゆっくりと歩く。
その音に気がついたのか、彼が顔を上げた。
その顔はひどく疲れていた。
その顔に心が痛む。
でも、それもこれで終わり。
さあ、ドクオさん。
私を、私を見て。
('A`)「......あ」
彼の表情が変わっていく。
何かに気がついたのか、驚きの表情を浮かべたかと思うとすぐにそれも歪み、涙を流し始めた。
('A;)「......ぁあ」
ああ、見てる。
その、その視線だ。
愛する人を見る目だ。
私が欲しかった、彼の視線。
私が欲しかった、彼の世界。
それがようやく、手に入ったんだ。
-
(;A;)「クー!」
「......ああ、私だよ。ドクオさん」
そう、私はクーだ。
ハインなんかじゃない。
ドクオさんに好かれないような女なんかじゃない。
あなたが大好きなクーだ。
あなたが望む、あなたが愛するクーだ。
(;A;)「あぁああああ!!」
この涙も。
この叫びも。
全部、私のために彼が出してくれている。
愛する、私のために。
(;A;)「クー!」
彼が私に駆け寄り、抱きついてきた。
彼が、私を求めてきてくれたのだ。
彼が抱き締めてくれている部分が暖かい。
私を愛してくれているのが伝わってくる。
ようやく、私の愛が伝わったのだ。
その事を再確認し、私はまた泣きそうになる。
私は、なんて幸せなんだ。
-
暗闇のなか、私と彼は抱き締めあう。
「もう二度と、離さないからな」
「うん、私も、絶対離さない」
「あぁ、あぁ!」
「私だけを見てね、ドクオさん」
「あぁ!」
ああ、私は今、満たされている。
こんな奇跡が起こるなんて。
私はもう、この幸せを手放すつもりはない。
だからこれからもこの幸せは続いていくだろう。
彼の側に私は居続ける。
ドクオさんが私の側にいてくれる。
ただそれだけで。
それだけでいい。
もう他に欲しいものなど、ない。
-
「幸せだ」
「うん、私も」
闇に包まれた部屋のなか。
二人っきりの世界で抱き締めあう。
いつまでも、いつまでも。
この幸せが続くように願いながら。
ああ、私、幸せだ。
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ハッピーエンド
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お粗末さまでした
過去ログ送りはよ
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おつー
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おつおつー
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更新に気づかなかったら危なかった
つづき読めて嬉しい
おつー
-
乙
わりと初期からハインはいろんな意味でがんばってたんだな
これはハッピーエンドですわ
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