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真・三國無双Origins主人公「董白ルート…?」

1 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2025/01/30(木) 09:45:42 yVfuKQkw
━━━━呂布の裏切りに遭い、董卓は倒れた。
間もなく王允らが率いる諸侯たちが長安の統治を引き継ぎ、民はようやく暴政から安寧を得ることになる。
だが、その傍らで涙を流す一人の少女がいた━━━━

長安

王允「反董卓連合軍が瓦解した時はどうなるかと思ったが…ついにあの男が斃れたか。
よくやってくれたな、貂蝉。お前には苦労をかけた」

貂蝉「いいえ、お義父様… 私は役割を果たしたのです。そこになんの迷いもありはしません」

(登場する主人公)

王允「おお、紫鸞殿か。貴殿も、連合軍内で活躍したと聞いている。この戦乱を終わらせるのに役立ってくれたこと、大いに感謝しているぞ」

主人公(以下、紫鸞)「董卓を止められてよかった」

王允「うむ、二人とも、よくやってくれた。これで、長安の民も安心して寝床に就けるというものよ。
あの男が洛陽に火を放ってしまった以上、この街が新たな都となるのは避けられん。これからこの地はしばらく忙しくなるであろうな」

(騒ぎの音が聞こえてくる)

民「いやぁ!やめて!」

民「頼む!なんでもする!雑兵にでも、召使いにもなる!だから、命だけは!」

民「どうせ老い先短い命じゃが……そこまでわしらを刈り取りたいのか、お前たちは……」

兵士「黙れ!さっさと歩け!」

紫鸞「…あれは……?」

王允「むう……できれば、目に入れてほしくはなかったが」

王允「あれなるは、董卓の親族……あの男と血を分けた者たちよ」

紫鸞「…全員殺すのか?他にやりようが……」

王允「おぬしの言いたいこともわかる。だが、これしかないのだ。董卓が残す遺恨は見逃すにはあまりに大きい。あの男に家族や近しい者の命を奪われた者も大勢いる。
洛陽にも、この長安にもな。あの男が死んだとて、その親族が生きているとわかれば、心休まらぬ者も多かろうて」

王允「世の太平のためには、必要なことなのだ……」


2 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2025/01/30(木) 09:46:24 yVfuKQkw
貂蝉「……っ」(刑場に連れていかれる親族から目を背ける)

兵士「おい、一人足りなくないか? あの小娘はどうした?確か、董白とか言ったか」

兵士「ちっ、目を離した隙に逃げ出したか?まあいい、董卓亡き今もはやただのガキだ。そう遠くにも行けまい。さっさと探し出すぞ」

紫鸞「…………」

その夜……長安の路地裏にて

紫鸞「(どこからか微かに泣き声が聞こえる……)」

???「ひぐっ…ぐすっ……おじいさまっ……どうして……っ」

紫鸞「大丈夫か?」

???「!? だ、誰っ!?」

紫鸞「ただの武芸者だ」

???「武芸者…? う、嘘よ!今の長安で帯刀して歩ける人間なんて、あいつらの仲間に決まってる…!」

???「それ以上近寄らないで!もし近寄ったら…おしおき、してやるんだから!!」

巡回中の兵士「おい、なんの騒ぎだ?」

???「! いけない…逃げなきゃ……!もう、どこにいるのよ紫鸞って奴は……!」

(逃げていく少女)

巡回中の兵士「おお、紫鸞殿でしたか。 先の虎牢関の戦いでたいへん活躍されたと聞き及んでおります。 ところで、こんな路地裏で何を?」

紫鸞「泣いている子供がいた」

巡回中の兵士「ああ……きっと、孤児でしょうね。おおかた董卓にあらぬ疑いをかけられて親を殺されたんでしょう。珍しくもありません」

巡回中の兵士「まったく嫌になりますよ。 黄巾の乱が起きてからというもの毎日どこかでああやって子供が泣いている。 早く平和になって欲しいもんですねえ」

紫鸞「…………」


3 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2025/01/30(木) 09:47:04 yVfuKQkw
数日後 長安の宿屋にて

白髪の少女「見つけた……!あなたね!」

紫鸞「君は、あの時の……」

白髪の少女「あの時の、って……あ、あんたは!この前の武芸者!」

白髪の少女「黒い衣に、赤い鸞の帯……あの時は涙…じゃない、暗くてよく見えなかったけど間違いない、あんたが紫鸞だったのね……!」

紫鸞「そういう君は?」

白髪の少女「はぁ?なんでおじいさまに推されておいて私の名前を知らないのよ!」

董白「私は董白!偉大なる董卓おじいさまの孫よ!!」

董白「紫鸞、出立の準備をしなさい。すぐにここを出るわよ」

紫鸞「ちょっと待ってくれ。いきなり言われても……」

董白「待たないわ! あいつらが追ってきてるの、早く!」

兵士「ここに逃げ込んだぞ、囲め!」

兵士「取り逃がすなよ!董卓の親族だ!」

董白「私を助けてくれるんでしょ!? 早く!!」

紫鸞「……仕方ないな……」


4 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2025/01/30(木) 09:47:44 yVfuKQkw
長安郊外

董白「はぁ…はぁ……やっと、撒いたわね……ほんと、屈辱だわ…!この私が、あんな連中から逃げ回らないといけないなんて……!」

董白「あんた、足速すぎなのよ……!でも、おじいさまの言っていた通り腕はいいようね。身のこなしでわかるわ」

董白「ちょうどいいわ。あんたを私の手下にしてあげる。これから復讐しなきゃいけないやつがたくさんいるんだから……」

紫鸞「どうして自分が…?」

董白「おじいさまのご指名だからよ、ほら!!」

(懐から書簡を取り出す)

白へ

この書簡を読んでいるということは、わしは既にこの世を去っている頃合いだろう。
近頃、呂布めがわしへの翻意をいよいよ隠さぬようになってきた。
忌々しいことよ。だが、かく言うわしも弱者を喰らい、黄巾の者どもを、漢室をも喰らい、帝さえも利用してきた。
弱き者であろうと強き者であろうと、より強い者に喰われるのは道理、わしとて例外ではない。
呂布がわしに刃を向けるならば、それはわしの『番』が来た、ただそれだけのことよ。
だが…お前を残して逝くのはいささか心残りではある。
わしを討たんとするものはわし亡き後、禍根を断つため、そして自らの権力の基盤を固とするために、
わしと同じ血が通うものすべてを狙うだろう。幼きお前とて例外ではあるまい。
もしお前が追手から逃れ、この乱世で足掻くことを望むのならば、『張遼』、もしくは『紫鸞』、このどちらかを頼るとよい。
張遼はおぬしとも面識があろう。紫鸞は黒い衣に、赤い鸞の帯そして暁天の瞳を持つ武芸者である。長安の宿を当たればいずれ見つかるであろう。
彼奴ら宝物や領土を与えてやることはできぬが、お前を守り、お前の皿に糧を乗せることはできる者たちだ。
弱き者として強者に喰われ終わるか。泥を啜ってでも強者となり、この祖父の仇を討つか。あるいはどちらでもなく、凡庸に生き延びその生を終わらせるのか。
死者は生者の行く手を阻むことも変えることもできん。お前が行く道は、お前が選べ。その行く末を見守らせてもらうぞ、白よ。

董 仲穎

紫鸞「えぇ…(困惑)」


5 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2025/01/30(木) 09:50:10 WAb.DmuU
なんか始まってる!


6 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2025/01/30(木) 09:51:01 yVfuKQkw
董白「張遼のとこにも行ってみたわ。そしたら何があったと思う?
『董白様、私は呂布殿の武に魅せられてしまいました。これからはかの御仁を主と仰ぎ、
自らを呂布殿の刃と致します。主を変える不義をお許しください。ご達者で』
なんて書置きよ!ほんと信じられない……!張遼や他の連中がしっかりしていれば、おじいさまは、おとうさまやおかあさまは……!」

董白「だから、今頼れるのはあんただけなの。あんたは……あなたは、私を置いて行ったりはしない…わよね……?」

紫鸞「…………」

董卓の孫、董白。祖父の罪はあまりにも重く、まだ幼い彼女の肩をも押し潰さんとしている。
汝、太平の要よ。 世の太平のために、罪なき幼子を猛虎の前に放るか。
それとも、一人の命を守るために茨の道を行くか。 お前は選ばなければいけない……

紫鸞(親や祖父を失い泣いている子供を寄って囲み、刑場へ引きずりだす… そんな方法で迎える太平の世は、自分は望んでいない)

紫鸞「……自分がなんとかしよう」

董白「……わかった。あなたのこと、信じるわ。紫鸞。後悔させないでよね」

━━━━その後、紫鸞は黄巾の乱からの知己である劉備の伝手を頼った。劉備の人助けを是とする性格に加え、
王允と通じていた曹操や討伐軍の首長だった袁紹から董白を隠すには、
官位も低く陶謙の陰に隠れていた劉備の庇護下が都合がよかったためである。
董白は偽名を使い、劉備軍庇護下の戦災孤児に紛れて徐州で寝食を共にすることになる。


7 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2025/01/30(木) 09:52:04 yVfuKQkw
董卓庇護下の贅沢な暮らしとはかけ離れた質素なものだったが、劉備が陶謙から徐州牧の地位を譲り受けたことをきっかけにその質も向上していく。
紫鸞が律儀に身の回りの世話をし、洛陽や長安にはなかった同年代との交流も増えていった。束の間の安寧を得て、董白の心の中にあった復讐の炎も少しずつ小さくなっていった。

だが、董卓の仇である呂布が袁紹軍に追われ、劉備に救援を求めたことで、その炎は再び激しく燃え上がることとなる━━━━

〜〜下邳城 城下町〜〜
雑兵「おい見たかよ!?呂布がいたぜ、呂布が!人中最強と言われる武……遠くから一目見ただけでブルっちまったよ」

雑兵「味方としていてくれると心強い……と思ったけどさ、やっぱこえーよあいつ……何考えてるかさっぱりわからねえ。
紫鸞様も無口だけど、あの方と違って全く愛嬌がないんだよな、あいつ…」

紫鸞「…………」

董白「あ、あら紫鸞。久しぶりね。えーっと、その…調子はどう?」

紫鸞「少し疲れている」

董白「え、そうなの?まあ無理もないわよね。最近働き詰めだと聞いているし。もっと味方が増えてくれれば良いのだけどね」

紫鸞「味方なら最近一人増えた」

董白「え、そうなの?やったじゃない。じゃあそいつに仕事押し付けちゃいなさいよ。そしたらもっと私に時間を割けるわよね。
いい、あんたは私の世話をする義務があるんだから、それを忘れずに━━━━」

呂布「ここにいたか、紫鸞」

董白「」


8 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2025/01/30(木) 09:52:35 yVfuKQkw
呂布「赤兎の餌が足りん。お前から兵站の担当に倍の量を用意するよう言っておけ。お前の口からならば無理も通せるだろう?
あいつを他の駄馬どもと一緒にされては困る。劉備にも伝えておけ、俺の武をうまく活かしたいのであれば赤兎も……」

呂布「うむ?」

董白「」

呂布「……そこな小娘。 お前、どこかで……」

董白「…ッ!!」

(逃げ出す董白)

呂布「……ふん。女子供など、どうでもよいか。 俺は確かに伝えたぞ。もし赤兎が走るのを拒むようなことがあれば、
俺の方天画戟もお前たちのために振るわれることはない。承知しておけ」

(下邳城 城下町の路地裏)

董白「はぁ…ッはあっ……」

(冷や汗を流して息をつく董白)

紫鸞「大丈夫か?」

董白「……あん、たっ……!」

(紫鸞につかみかかる董白)

董白「なんで、言わなかったのよ…… 劉備が、呂布と手を組んでる、って……!!」


9 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2025/01/30(木) 09:53:03 yVfuKQkw
紫鸞「……言わないほうが、いいかと思って」

董白「ふ、ふふ……あはははははっ!舐められたものね! 私がすべてを忘れて、ただの少女として生きるとでも思ったの?」

董白「忘れるはずないじゃない……おじいさまを斬り、私からすべてを奪ったあの男の顔を……!」

董白「正直、そんな生き方もあると思った。私自身で、生き方を選べると信じたこともあった。 でも、そんなのは全てまやかしよ。 あの男の顔を見て思い知ったわ」

董白「私はおじいさまのために復讐する。 呂布奉先がこの世に生きている限り、私は他のどんな生き方も始められない」

董白「……もう、私にはそれしか残っていないから」

董白「やっぱりあなたを頼って正解だったわ、紫鸞。呂布に復讐できる、またとない機会がこうして巡ってきたんですもの」

董白「おじいさまを裏切ったこと、絶対に後悔させてあげるんだから…!」

紫鸞「…………」


━━━━それから董白は呂布暗殺の準備を進めた。
彼の行動パターンを把握し、最も油断しているタイミングで寝首をかけるように。
しかし、その努力も呂布の思わぬ行動によって水泡に帰すことになる。

劉備が帝の詔で袁術討伐に赴いてる隙を突き、彼を裏切って下邳城を奪取したのである。
紫鸞と離れ離れになった董白は、呂布と共に下邳の街に閉じ込められてしまった。
城主となった呂布には物々しい護衛がつき、城下にも顔を出さない。武力も権力もない董白が近づく隙はなくなってしまった。
このまま復讐の機会は永遠に潰えてしまったと思われたが━━━━


10 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2025/01/30(木) 09:55:53 ExX2CSv6
無双SSだ
ありがたい


11 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2025/01/30(木) 09:56:37 yVfuKQkw
〜〜小沛〜〜

関羽「ならぬ、ならぬぞ、紫鸞殿!」

張飛「おうおう、何の騒ぎだ兄者?」

関羽「おお、翼徳!おぬしからも諫めてはくれぬか。紫鸞殿が単身下邳城に乗り込み呂布を討つと言って聞かぬのだ」

張飛「なんだよおい、唐突だな! おめぇの腕が立つのはわかるけどよ紫鸞、呂布の武は本物だ。
小癪だが、虎牢関で刃を交えた俺たち義兄弟が言ってるんだから間違いないぜ。
よしんば気付かれずに城の中に入りこめたとしても、取り巻き共をかわしながら呂布を打ち負かすのはいくらおめぇでも無理だ」

関羽「…紫鸞殿。なぜそこまで下邳に、いや呂布にこだわる。 曹操殿と同盟を結び、
準備を整えればいくら呂布軍といえど勝てぬ相手ではない。それはおぬしにもわかっていよう。
なぜ待てぬ?何が貴殿をそこまで焦らせるのだ?」

張飛「俺も気になってたんだ。呂布が来てから、おめぇはどこかそわそわして落ち着きがなかったよな。何かあいつに虎牢関以上の因縁があるのか?」

紫鸞「…呂布から守らなければいけない人が下邳にいる」

張飛「は? ちょい待て、それってつまり……コレか?」(小指を上げる)

関羽「これ、はしたないぞ翼徳。紫鸞殿…つかぬことをお聞きするが、我らに何か話していないことがあるのではないか。
我ら同志なればこそ、秘め事があるならば心休まらぬというもの。秘密は必ず守るゆえ、我らに腹の内を開いてはくれないだろうか」

紫鸞「……実は……」


12 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2025/01/30(木) 09:57:31 yVfuKQkw
(説明)

張飛「董卓の…孫ぉ!?」

関羽「なんと……あの童がか! 確かに紫鸞殿によく世話をせがんでいたが…」

関羽「話を聞く限り、おぬしを頼るように指名したのは董卓の自分勝手な判断だ。
黄巾の乱の折に同じ戦場に立ったとはいえ、そこまでの義理はないはず。なぜそこまで董白殿に入れ込む?」

紫鸞「……泣いている子供を放っておけなかった」

関羽「ふ……成程な。実におぬしらしい。官吏と戦った時から何も変わっておらぬようだ」

関羽「確かに、悪人から生まれた子といえど、罪と共に生まれたわけではない。大の安寧のために小を切り捨てるは、我らの兄者の本意でもなかろう。
もし彼女の素性を最初から知っていても、きっと同じく麾下に迎え入れたであろうよ」

張飛「けどよ、そんなあぶねえ素性よく隠してこれたな。 もし袁紹や曹操に董卓の縁者を匿ってたのがバレてたらと思うとぞっとするぜ…」

関羽「董白殿は復讐に燃えていたということだな? つまり紫鸞殿は、董白が呂布に刃を向け、あえなく返り討ちにされてしまうことを危惧しているのか」

張飛「あり得なくは、ねえな…俺も家族を斬った奴に媚びへつらって生きるのは御免だ」

関羽「むう……だが、こればかりは我らでは如何ともできぬ。董卓の死去から今の今まで、董白殿は素性を隠しておられた。
それだけ聡明なお方であれば、妙な真似は控えるであろう」

関羽「ここは彼女を信じ、反撃の時を待つしかあるまい。下邳を呂布の手から奪い返した暁には、共に彼女を探そう、紫鸞殿よ」

紫鸞「(頷く)」


━━━━かくして、反撃の準備を整えた劉備・曹操連合軍は下邳城に侵攻、呂布軍を打ち倒し、鬼神は下邳の地に散った━━━━


13 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2025/01/30(木) 09:58:26 yVfuKQkw
下邳城の戦いから数日

董白「紫鸞…紫鸞、あなたなの!?」

紫鸞「董白……無事だったのか」

董白「ああ、よかった……!呂布は…張遼は!?」

紫鸞「呂布は、死んだ。 張遼は闘いの後に曹操軍の陣地に連れていかれたのを最後に見ていない」

董白「そう……無事だといいのだけれど……」

紫鸞「何かあったのか?」

董白「……呂布が下邳を奪取してから、私は暗殺の機会を伺ったわ。けれど、城主になったあいつに近づく隙はなかった。
内側から取り入ろうとしても、私は武力も権力もない、ただの孤児。 絶望して、自棄になって、正門から突っ込もうかとすら思った。
でも……予想もしていなかったことが起こった。 呂布の奴が、逆に私を下邳城に招致したの」


14 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2025/01/30(木) 09:59:12 yVfuKQkw
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〜〜下邳城の戦いから数日前 下邳城 城主の間〜〜

呂布「どこかで見たことがある顔だと思えば……お前は確か、董卓の孫……だったな」

董白「……」

呂布「答えんか。無礼な童よ」

董白「ええ、そうよ。私は董卓おじいさまの孫娘、董白よ」

呂布「ふ、長安からここまで流れ、反董卓連合軍に組した劉備の麾下で暮らしていたか。哀れなものよな。だが、弱者に取れる手段としては上々か」

董白「っ……!」

呂布「俺の近辺をうろつく怪しい女の報告は兵から受けていた。そしてお前の素性が分かった今、点と点を繋げるのは容易い」

呂布「この俺に、復讐をしたいのだろう? 俺の身体に刃を突き立て、お前の祖父に報いたいのだろう?」

董白「……そうよ。あなたが劉備のところに転がり込んだのを知ってから、ずっとあなたの死を夢見てきた」

呂布「夢、か。そうだな、夢を見るだけなら誰にも出来よう。 ならばその夢、ここで現にしてみるか」

董白「え…?」

呂布(剣を董白の前に放る)

呂布「機会をくれてやる。 その剣を拾い、俺に斬りかかるがいい。その武が俺に届くならば、晴れてお前の復讐は完了だ」

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15 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2025/01/30(木) 09:59:52 yVfuKQkw
董白「本当に悔しかった。 玉座にふんぞりかえって、私を見下すあの目をえぐってやりたかった」

董白「でも、剣を拾って一歩でも前に進もうものなら、あいつが持っている方天画戟が私の身体を貫く。
それを避ける術は私にはない。それがわかってしまうことも、どうしようもなく悔しかった」

董白「歯を食いしばって玉座の呂布を睨みつけたとき、ふと気づいたの。 『この男はおじいさまと同じだ』って」

董白「洛陽や長安で何度か見たことがあるの。おじいさまが気に入らない貴族や武将を玉座の間に呼び出して、短剣を差し出す。
『貴様らの本意はわかっている。今ここでそれを遂げよ』と伝える」

董白「もし短剣を持って前に出ようとしたら、兵士たちや呂布が出てきてそいつを殺す…
もし立ち去ろうとすれば、命令に背いた咎で捕らえられて投獄されて拷問の上殺される…
どちらも嫌なら、その短剣で自害するしかない」

董白「玉座の間に呼ばれてしまった時点で、もう命運が決まっているの。選択をさせるフリをして、その無駄なあがきを安全なところから笑っている」

董白「小さい時は、ただ不思議だった。気に入らないなら、さっさと殺してしまえばいいのに、って思ってた」

董白「でもやられる側になってわかったわ。あれは徹底的に違いをわからせるための茶番だったって。
呼ばれた方の意思なんか関係ない、玉座に座っている者が楽しむだけの余興」

董白「心底思ったわ。『こんな風になりたくない』って」

董白「だから、言ってやったの……」


16 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2025/01/30(木) 10:00:31 yVfuKQkw

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董白「…………」

董白「私を舐めないで」

呂布「む?」

董白「私を誰だと思っているの? あなたなんか私が手を下すまでもないわ」

董白「あなたを見張っていたのは、あなたが滑って転んだり馬に蹴られてうっかり死ぬところを見逃さないようにするためよ」

董白「ただの小娘に見られているだけでこんなとこまで呼び出して、自分の一番得意な分野で戦おうとするなんて。
人中最強の武を持つあなたも意外と臆病なのね」

呂布「なに?」

董白「あなたは確かに強いのでしょう。私よりも、董卓おじいさまよりも。でもあなたには志がない。大義もない。あなたには武以外何もない」

董白「いずれ曹操や袁紹が……いいえ、この乱世があなたを飲み込む。わかるかしら?私の復讐は既に半分完了しているの。
目先の利益と自己顕示欲で裏切りを続けたあなたにもう先はない。あなたはもはやただの死人よ。
私を殺したければ殺せばいいわ。おじいさまにしたように、後ろから斬りかかればいいじゃない」

呂布「ふんっ! 何を言い出すかと思えば。結局お前も祖父と同じ臆病者だな。
大言壮語や詭弁を並べ立てておきながら、結局は己が可愛い小物でしかない」

呂布「武で俺に挑む覚悟がないというのなら、二度と俺の周りを嗅ぎ回るな。雑魚が」

呂布「興が覚めたわ。張遼、連れていけ」

張遼「はっ!」

董白「張遼……」

張遼「董白殿、積もる話もござろうが、今は黙ってお引き取りくだされ。呂布殿の気が変わらぬうちに」

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17 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2025/01/30(木) 10:01:13 yVfuKQkw
董白「その後、張遼は陰ながら少しだけ私の世話を焼いてくれたわ。こっそり服や食べ物を持ってきたり、
外を出歩くときにそれとなく護衛の兵士を私の近くに置いてくれたりね」

董白「主君を変えた自責からかは、わからないけど。一度、話をしたかったのに……曹操軍に連れていかれたんじゃ、もうその望みは薄そうね」

紫鸞「傍にいてやれなくてすまない」

董白「本当よ、もう。下邳城から帰ってから、思わずへたりこんじゃったわ。本当に怖かったんだから!」

董白「…でも、もういいの。呂布に刃を突き立てなくても復讐はできるってわかったから」

董白「最初ここに来た時は、この街が大嫌いだった。どうして私がこんな目に、って思ったわ。私は兵を集めて呂布や曹操を攻めたいのに、
何も知らないじゃりん子と一緒に勉強して、畑を耕して、手作業もして……でも、下邳で呂布に相対して気付いたの。
これが、『太平』なんだって。賊に怯えることもない、軍が街に迫ることもない。偉い人に急に呼びつけられて、
命を捨てることを強要されることもない、この状態こそが、あなたや劉備が戦っている理由なんだって。
そして、これをいろんな人から奪ったから、きっとおじいさまは死ななきゃいけなかった。
呂布に斬られなくても、近いうちに誰かにきっと……」

董白「きっとそれは、呂布やおじいさまのような人間ではたどり着けない世界。獣の理を超えた先にある、眩しい世界……」


18 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2025/01/30(木) 10:02:05 yVfuKQkw
紫鸞「そういえば、復讐の半分は完了しているって…」

董白「ええ、実際その通りになったでしょ?あんな男、死んでせいせいするわ」

董白「でも、私の復讐の残り半分はこれから」

紫鸞「もう半分は一体……?」

董白「それは当然、この乱世を生き延びてやることよ。 天下なんか取れなくたっていい。曹操や袁紹や袁術に復讐しなくてもいい。弱き者を喰らわなくたっていい。 
ただ生きて、董家の血筋を後世に残して、太平になった世を子供たちと一緒に迎えて、幸せに逝くの。
それは呂布にも、おじいさまにも最後まで見れなかった光景でしょ?私はおじいさまとは違う道を行く。これが、私の選んだ道」 

董白「劉備が言ってたわよ、あなたは太平の要だって。 どういう意味かは詳しく知らないけど、
あなたといれば私の復讐を完遂できる。そんな気がするの。だから紫鸞、これからもよろしくね?」


董卓の孫、董白。董卓亡き後、彼女がどうなったか、確かに知る者はいない。
長安で他の親族と共に処刑されたとも、祖父を追って自害したとも、祖父の故郷である涼州へ逃げたとも…
あるいはひっそりと生存し、蜀国のとある将と結ばれ子を授かり天寿を全うしたとも言われる。

太平の世が中国の地に訪れた時、彼女の復讐は果たされただろうか。

おわり


19 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2025/01/30(木) 10:09:26 yVfuKQkw
無双8の董白すき

https://imgur.com/eDjDoe7.jpg
https://imgur.com/yo8FBri.jpg


20 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2025/01/30(木) 11:06:01 ZVCqDqy.
いいゾ〜これ


21 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2025/01/30(木) 11:25:46 PS1/uUTg
董白は抜ける👍


22 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2025/01/30(木) 11:33:03 uXnkBgfg
む゛う゛う゛ん…(男泣き)


23 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2025/01/30(木) 15:19:24 gX/NRmwg
オリジンズの董卓すき


24 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2025/01/30(木) 17:13:19 974S1l1w
😭


25 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2025/01/30(木) 17:51:19 1eYdjSp6
>>19
ファッ!?


26 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2025/01/30(木) 18:00:04 WrfnE3iw
>>19
無双4までしか知らなかったから董卓が女の子になってしまったのかと思った(無知)


27 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2025/01/30(木) 18:46:09 hRzA8X36
三国志大戦の董白も良いゾ〜コレ


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