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【北沢志保誕生日SS】弟の心、姉知らず 友の心、友知らず
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・北沢志保さん12回目のお誕生日記念で、12年後のIFです。
・高校生になったりっくんが出てきます。(セリフは)ないです。
・アイドルの恋愛要素がありますねぇ!ありますあります。
・昨日スレ立てできなくて遅刻しました。許してくださいなんでもしますから!
・アイグラでスフィアのポーカー役そろえるの難すぎィ!
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ターゲットは、駅前広場で手持無沙汰に携帯画面を眺めている。
すらりとしたスタイルの彼は、シンプルだが品の良い服装を着こなしていて、噴水をバックにたたずむ姿はファッション雑誌の男性モデルであると言われても納得できるだろう。
彼が高校生になったのは知ってはいたのだが、こうして成長した彼を街中に置いてみると、やはり雰囲気があるなと実感する。
かつての彼女と同じような、華やかなオーラというよりは鋭い存在感で人目を惹くタイプだ。
切れ長の眉ときりっとした目鼻立ちは気が強いクールな一匹狼といった印象を受けるが、おそらく待ち人に対してスマホのメッセージを返す際に目尻が下がる柔和な表情や、肩から吊るすバッグに付いている猫のフェルト人形を指で撫でる仕草で心暖かな内面が窺える。
こうして観察してみるとよく似ているなと、横にいる彼女に伝えようとしたのだが、
「……まだ、相手は来ていないみたいですね」
今回の同行者であり共犯者、私の元担当アイドル、そして現在新進気鋭の女優である北沢志保があまりに真剣な顔をしていたものだから、余計なことを言って噛みつかれぬよう出かけた言葉を呑み込んだ。
駅前の自販機横からコソコソのぞき見している私たちの殺伐とした様子はつゆ知らず、噴水前の彼は、志保の弟である北沢陸は、待ち人が来ないことを心配してか小さくため息をついた。
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志保SSやったぜ。
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「りっくんが悪い女に騙されているかも知れません」
かつて一緒にトップを目指していた元アイドルとの食事、その開口一番にこんなことを言われて、思わず咽そうになる。
かろうじて噴き出すのを堪えたのは、飲み物がもったいないという貧乏性と、志保が冗談を言っているようには見えない暗い顔をしていたからだ。
志保がアイドルから女優に転身したのは三年前のこと、担当という立場ではなくなったが、ちょくちょく事務所で顔は合わせていたし、時たまアイドルへの特別指導をお願いしたりもしていた。
デビュー当時、孤高で他者とつるみたがらない頑固な一匹猫だった志保だが、劇場の仲間たちと友情以上の信頼関係を築いてからは、芯の強さを残しながら、自分だけでなく周りのフォローも厭わない、正しい大人、良き手本へと成長していった。
そんな彼女から、急に”相談したいことがある”とのメッセージが入ったのだ。これはただ事ではないと勇んで相談に乗った。
「私が一人暮らしを始めたときぐらいから、実家に戻ってもりっくんとあまり話さなくなったんです。その頃から母ともあまり積極的に話さなくなったらしくて……そこできちんと話をしていれば、こんな悪い女に引っかからずに済んだんでしょうか」
その結果がこれである。
年頃の男の子が母親に不器用に接してしまう気持ちもわかるし、ましてや10歳近く歳が離れている美人女優の姉にならなおさらだろう。
そう言いたい気持ちを、志保の哀しげな目を見てぐっとこらえる。今は余計な言葉を挟まない方がいい。
「なんとなくりっくんの様子がおかしいなとは思っていたんです」
志保の嘆きは止まらない。
「長期休みになるとバイトだって言って深夜に出かけて行ったり……」
深夜の方が実入りいいし、陸くんは頑張ってバイトしているんだな。
「小さい頃は大きな声で将来の夢を教えてくれたのに、今聞いても誤魔化されるし……」
まさか、海美にシュートを褒められて、ぼくサッカー選手になる!って言っていた頃と比較してるのか。
「それに、最近……お姉ちゃんって呼ばなくなったんです……!”姉さん、それ、何見てるの?”とか、”姉さん、最近好きなものある?”とか、なんだか急に距離ができたみたいで……」
多分距離できてないぞ。すごくいい弟のままだよ、陸くんは。
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もちろん諸々の反論を抑えて黙ってうなずく。女性のお悩み相談で余計なことは絶対に言わない。
口達者な女子高生になった育、桃子、環と日々格闘して改めて学んだことだ。
たとえ感情にまったく共感できなくても、横から口を挟むのだけはしてはいけない。3倍くらいの量の反論で押しつぶされるのが関の山だ。
とはいえ話を先に進めないと本題が分からない。悪い女とやらがどこから生えてきたのか、まだ聞いていない。
「……今日は久しぶりに実家で泊ったんです。朝ごはんを食べていたら、ふと食卓のカレンダーの明日のところに印がついているのに気がつきました。」
一息置いて努めて静かに語ろうとする口調が逆に物々しさを感じさせる。そういえば読み聞かせをしたらあまりにも真に迫っていて子どもを泣かせたことがあったな。
「もうりっくんは学校に行っていたので、お母さんに尋ねたんです。そうしたら……」
テーブルに置かれた手がブルブル震える。
「……クスクス笑いながら、りっくんがね、誰かさんとデートに出かけるらしいわよ、って……!」
悪い女どころかお母さん公認じゃないか。
「どうして、母は止めないんでしょうか……!りっくんが、見知らぬ人とデートだなんて……!」
確かに志保のお母さんはいたずらっぽいというか、お茶目な所はあるが、まさか娘がこんなにショックを受けているとは思っていないだろうなぁ。
もちろん口には出さない。うんうん、それは志保以外の全てが悪いねと頷いておく。
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「…………プロデューサーさん。どうすれば、いいと思いますか」
全肯定マシンに成りすましていたのに急に年長者としての意見を問わないでほしい。
真面目な話、陸くんの年齢から考えれば、誰かとデートに行くなんてとても自然なことだと思う。
ましてあの可愛い子どもだった陸くんが成長した証として、気持ち的には応援しつつ、ぐっとこらえて静観するのが正しいだろう。
前に会ったのは一年ほど前だったか、贔屓目に見ても落ち着いた雰囲気の美青年に成長した彼は、姉が世話になっているという謝辞と高校で演劇を始めてとても楽しいという近況報告をしてくれた。
「私がりっくんともっと一緒にいれば防げたのでしょうか……?一人暮らしはしない方がよかった……?」
陸くん、こうなった君のお姉さんはちょっと私ではお世話しきれないかもしれない。
とはいえ志保の気持ちもわかる。もともと芸能活動を始めた理由が家族に少しでも楽をさせるためだった彼女にとって、陸くんは庇護すべき対象であり輝き続ける理由だったはずだ。
その彼が自分の忙しくしているうちにすっかり一人立ちした。自分でお金を稼ぐようになり、自分のやりたいことを見つけ、自分で恋を経験するようになった。
言うなれば子の巣立ちにも近しいこの成長を、まだ若い志保にすぐに受け入れろというのはやや酷かもしれない。
いわんや私は、彼女が家族のために頑張ってきたのを近くでずっと見ていたから、彼女の感情もわかってしまうのだ。
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「……プロデューサー?」
何か言葉をかけてやらないと。
志保の気持ちに配慮しつつも、陸くんの成長を実感させて前に進めるような、パーフェクトなコミュニケーションに繋がる一言を……!
……デートの相手が本当に悪い女なのか、確かめれば志保も安心するんじゃないか?
志保の目が丸く輝く。ああ、だからこういうときは余計な言葉を喋るべきじゃないんだって……。
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そういうわけでこの寒空の下で、志保と二人で陸くんを尾行する算段になった。
「風邪ひかないように気を付けてくださいね?はい、カイロもあげますから」
職務的には体調不良ももちろんだが、プライベートで男と二人で街中をうろつく方を心配してほしい。
髪をポニーテールにまとめて、マニッシュな服装に身を包み、いつか見た覚えのある伊達眼鏡までかけていれば、そこまで心配はないだろうか。
「……髪型とかメガネ、似合ってます?最近あまりこういう恰好をしていないので、ちょっと不安だったんですけど」
間違いなく似合ってるし変装としてもバッチリだ。
私立探偵役のオーディションを今から受けに行って来たらどうだ。
「そのあたりの仕事は百合子さんとか、未来に任せているので」
趣味を実益にしている百合子はともかく、未来が探偵役として人気ドラマの主演になったのはかなり話題になった。すっとぼけているが切れ者というキャラ造形はいつの世も人気らしい。
「本人は作中のトリックは半分くらいよく分かってないって言ってましたけどね」
ということは9割分かってないな。
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そんな他愛のない与太話をしていたとき、陸くんに動きがあった。
停車した快速電車に押し込まれていた人々が駅を通じて街に出てくる、その群れの一点に焦点を当てて、陸くんはすーっと長い手を上に伸ばす。
「来たみたいですね……っ」
志保の目が俄然熱を帯び、かわいい弟をたぶらかす相手を焼き焦がす勢いで群衆から飛び出してくる標的を探す。
志保が暴走しないよう気を払いつつも、私もなんだかんだ気になってはいた。陸くんがデートする相手とはどんな子なのだろうか。
普通に考えれば同級生女子だが、姉が北沢志保であることを踏まえると、そんじょそこらの女子高生には靡かない可能性がある。
どちらかといえば年上、バイトで知り合った女子大学生の方がありうるだろうか。
性格が割と大人しく顔もいい陸くんを遊び半分でデートに誘ったとか、高校生をからかって楽しもうとしているとか。
……いや、この想像は志保の悪い女発言に引っ張られすぎている気がする。
果たして陸くんとデートできる人物とはいったい誰なのか?
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人混みがある程度さばけた後、その中でもみくちゃにされた一人の人物がヨロヨロと陸くんのもとへ歩いてきた。
その女性は、私たちの想像から余りにもかけ離れていた、私たちの日常のありえないほど身近にいる人物だった。
「はっ、ぁぁ……?…………嘘、でしょっ!?」
「可奈……!??!」
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なんか始まってる!
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およそ二時間後、大型商業施設のフードコートにて、陸くんと可奈二人を確認できる位置取りで私たちも一息ついていた。
この道中に起こったことを整理したいが、衝撃のせいで言葉を口に出すことも億劫で、しばらくホットコーヒーと一緒に昼下がりの喧騒をすする。
「……この場合、泥棒猫と罵るのと、飼い犬に手を噛まれたと悲しむの、どちらが適切なんでしょうか」
どっちの場合も可奈をペット扱いしてるのはどうなんだ。……一番の友達だろうに。
「友達……。そうですよ、親友ですよ。……何も知らなかった私はさっきまでも、今でもずっとそのつもりですよ」
一口コーヒーを飲んで、志保は二人から目を背けると長い溜息をついた。
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矢吹可奈はシンガーソングライターだ。
世間ではのびやかな歌詞と本人の明るい性格、そして独特の歌声が魅力だと評価されている。
元プロデューサーの私としては、信じられないくらい上達した歌声をもっと評価したほしいと思っているのだが。
可奈も志保と同じタイミングで入ってきたアイドルで、なんでもそつなくこなせた志保に対して、可奈はあらゆる部分で欠点が目立っていた。
ドジが多く、てんぱりやすく、歌もお世辞にも上手でない。あと体重管理をもっと頑張ってほしかった。
だが可奈の歌は魅力は不思議と聞いていて楽しく、本人のひたむきさと愛嬌でいつしか人気アイドルになっていった。
前に向かって進めばいいことあるさと謳う彼女の声は、彼女自身が不安な自分を鼓舞するためであり、だからこそ世間に広く染みたのかもしれない。
そして志保もまた可奈の歌声に救われていた。同い年ぐらいしか共通点がないと思っていた二人がいつしか大親友になっていた。
確か同じユニットを組んでいた時に、お泊り会をして楽しかったという歌を可奈に聞かされたものだ。
当時角が取れかけていた志保と幼かった陸くんと一緒に料理をしたという素敵な歌も。
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「いつから、そういう仲に、なったんでしょうね?私、全然気がつきませんでした」
何が、とは聞かなかった。私も志保もあの二人の関係性について同じことを考えているから。
「……なんで、相談を、いえ、せめて一言でも言ってくれなかったんでしょうね」
誰から、とは聞けなかった。二人とも志保に内緒にしていた事実を私から突き付けたくなかったから。
「でもよく考えれば……お姉ちゃんにも、親友にも、別に言わなくてもいいですよね?誰と付き合ってる、なんて」
弟と親友、二人分のやるせなさが詰まった言葉がこらえきれずにぽとぽとと落ちていく。
デートが始まった直後は動揺して怒りすら見せていた志保は、デートが進むにつれ、やがて静かに黙りこくってしまった。
傍目から見ても二人があまりにお似合いのカップルだったからだ。
駅近くの商業施設で、二人はたっぷりと時間をかけてウィンドウショッピングをした後、最後に寄った紅茶専門店でこれまたじっくり考えて、桃の薫りが立ち上る茶葉を購入した。
楽し気に話しかけ笑顔を振りまく可奈と表情の変化は緩やかながら目線を合わせてほほ笑む聞き上手な陸くん。
彼らを表現するのなら親子や姉弟ではなく、仲睦まじい恋人がしっくりくる温度感であった。
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「……あのお店、私が可奈に教えたんですよ」
そうこぼした志保は自嘲気味の笑みを浮かべてこちらを見上げる。
私はこんな状況でも美人は画になるなと現実逃避じみたことを夢想した。
「ちょっとお値段は張るけれど、疲れたときに飲むとリラックスできるんです。……今の私に必要なお茶かもですよね」
そう言ってぬるくなったコーヒーカップを一気に煽る。
まるで黒々としたコーヒーと一緒に今の気持ちも呑み込んでしまおうとするかのように。
志保、呼びかけた私の声に瞳だけが応える。
最初に出会ったときと同じ、人を頼りたいのに素直になれない、震える眼差しがそこにあった。
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志保、お前は自分が思っているほど、周りからはいい子だと思われてないぞ。
「……は?」
優しいところはたくさんあるけど頑固で、冷静に見えて意外とちょっとしたことでムキになって、でもそういう弱みを見せずに強く生きなきゃいけないって自制して、ときどき無理しているのはみんな分かってる。
「…………」
だからたまにはお姉ちゃんでも弟に甘えてもいいし、親友でも気に入らないって怒ってケンカすればいい。
「……プロデューサーには?」
今日みたいに突然無茶ぶりを言って連れまわしてくれていいよ。
「ふふ……」
それぐらいの方が多分みんな安心するよ。志保が弱いところを見せてくれるのは、自分たちのことが信用してくれてるんだって。
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唇に微笑を浮かべたまま、志保は目を閉じる。数瞬して開かれた目はいつも通り、クールな北沢志保の目になっていた。
「言っておきますけど、別にりっくんや可奈に怒っているワケじゃないですからね」
おほんと軽く咳払いして志保は続ける。
「どちらかというと、もっともっとシンプルでくだらない理由ですよ」
そう言って目を二人の方に向ける。
どうやら可奈が頼んだパンケーキが思っていた以上にボリューミーなものだったらしく、可奈が慌てふためいており、陸くんも一緒に食べることになったようだ。
「…………寂しいなって思ったんです」
暖かな瞳でその光景を見つめながら、そう零す。
「りっくんも可奈も私の一番近くにいた人なのに、私が知らないところで、知らない出会いと経験をして、私の知らない人になっていくんだなって」
その気持ちも伝えてあげればいいんじゃないか。私にはこれまでと変わらず色んなことを話してほしいって。
「……私も二人から離れて成長しないといけないんですよ。二人に同じくらい寂しい思いをしてもらうぐらい、立派にならないと」
「プロデューサーからも、ですよね」
志保の視線はいつの間にかまっすぐこちらを見つめていた。
離れたいときに離れて、必要な時に戻ってこればいいさ。せいぜいうまく使ってくれ。
「……本当に離れて疎遠になったら、すごく悲しがりそうな言い方ですね」
そんなことはない。教え子のアイドルたちが世界で活躍してくれるのが嬉しくて嬉しくてたまらないさ。
こんな下らないやりとりができなくなることなんて、全くもって大したことじゃない。
「そういうことにしておきましょうかね、ふふ」
お見通しですよというしたり顔で志保が笑う。
出会ってから10年以上、すっかり志保にしてやられることが多くなったのは彼女が大人になったからで、決して私が老いたわけではないはずだ。
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一応尾行は最後までということで、陸くんと可奈の頃合いを見計らい、駅へ向かう帰り道も距離を離して二人の後を追う。
「そういえば、あんまりデートっぽいことしてませんでしたね、二人とも」
ふと志保がそんな疑問を口にする。
確かに和気藹々といった雰囲気ではあったが、キスやハグはおろか、手を繋ぐこともついぞなかった。
デパートの中を巡って、贈答用らしき紅茶の茶葉を買い、フードコートでお茶をして解散。
デートでないとは追わないが、一般的な恋人のそれとは若干毛色が違うような気もする。
「付き合いたてとか?もしくは監視されていたことに気付いてたりしたんでしょうか?」
あるいは可奈に芸能人としての自覚が急速に目覚めたとか……?いやそれはないか……。
益体もない話と共に足音が駅に近づく。
志保の表情はリラックスしていて、これなら今日のもう一つの目的を果たせそうだ。
こっそりとカバンを開いて、用意していた包みをそっと取り出そうとする。
その瞬間に、はっと気がついた。
今日一日の珍道中を、拍子抜けするほどシンプルに説明できてしまうたった一つの理由に。
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志保、今日は実家に戻るんだよな?
「え?まぁ、はい。明日までは実家にいるつもりです」
じゃあきっと明日は特別に美味しい手料理が食べられるわけだ。
「ええと……なんでそんなことわかるんですか?」
明日が何の日か、私は知っているからだ。
「明日……?……あっ」
「私の、誕生日……?」
だからこそ今日、陸くんは志保に黙ってデパートに来たのではないだろうか。
それも志保の好きなものをよく知っているであろう可奈と一緒に。
何を渡しても喜んでくれる姉だからこそ、本当にもらって嬉しい品を選びたくて。
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「プロデューサー!いつから気がついてたんですか!?言ってくれれば……!」
私も気がついたのはたった今だよ。これを取り出すときにようやく思い当たったんだ。
そうして手に取った包みをようやく頬から離れた志保の手に握らせる。
「えっと、これは……?私へのプレゼント、ですか?」
未だに落ち着いていないのか、微妙に震える指先で包みをほどく。
その中から現れたのは銀色に光るネックレスだ。
ペンダント部分の形を見て、志保がほほ笑む。
「これ、肉球の形になってるんですか。ふふ、かわいい……」
志保が夕日にかざすと大きく一粒配置されたガーネットが赤く輝く。
その瞬きに目を細める志保は、出会ったときの少女も、舞台を沸かせていたアイドルも、今をときめく役者も、そのすべての姿が重なってまぶしく見えた。
「ありがとうございます。……大切にします」
志保は掌に載せたネックレスをぎゅっと握りしめてそうつぶやいた。
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ところで、一月の誕生石であるガーネットは愛情や友情、真実を象徴する宝石らしい。
色々あったとはいえ家族への愛情や可奈との友情を大切にする志保に、結果的にはとてもマッチしたプレゼントができた。
自らのプレゼントセンスをそう自画自賛していた私は、つい見てしまった。
ネックレスを箱に戻し、バッグにしまう志保が二人から目を離したタイミング、
陸くんと楽しく話していた可奈が時計を見て駅に向かおうとする瞬間、
陸くんが思いを決したようにして伸ばした手が可奈の手を掴み、
気恥ずかしそうな二人が手を繋いだままでじっと見つめ合い、
数秒後にそっと手を離して二人ともが紅い顔でバイバイと手を振ったところを。
一月の誕生石であるガーネットは愛情や友情、真実を象徴する宝石らしい。
改めて誕生日おめでとう、志保。家族への愛と友達への情を大切に。
そして私は、今見た真実をサプライズプレゼントにするのかどうか、困り果ててしまうのだった。
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志保誕生日SS(1日遅刻)でした。
アイグラ、志保の家族への思いの描写を補強してくれるとともに、志保がめちゃくちゃ近くに来てくれるのでオススメです。
https://imgur.com/5zo7VBy.png
あと志保のお母さんやりっくんもちゃんと出てくるので、ぜひ、やろう!
https://imgur.com/JmUkcyl.png
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オメシャス!
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感動した!
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お誕生日オメシャス!
りっくん、付き合ってるのか…俺以外のヤツと…
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