パワポケ「え……なにその二択」
典子「今日の私との過ごし方。選ばせてあげます」
パワポケ「い、いや。典子ちゃんは典子ちゃんだよ」
典子「なんですかそれ。ちゃんと選んでください」ｼﾞﾄｯ
パワポケ「と言っても、俺と典子ちゃんは強いて言うなら同居人だし……」
典子「パワポケさんは、なんでもない女の子とクリスマスを一緒に過ごすの？」ｼﾞﾄｰｯ
パワポケ「うっ……そ、それなら、家族……」
典子「……パパ？」
パワポケ「その呼び方は色々危ない！」
典子「お兄ちゃん？兄さん？お兄様？」
パワポケ「そこの違いにこだわりは無いな……」
典子「お兄ちゃん、クリスマスなのに1人で寂しそう。今日だけ私が恋人のフリしてあげよっか」ﾆｺﾆｺ
パワポケ「結局一択に！？」
パワポケ「いやいや、典子ちゃんの歳で知らないわけないでしょ」
典子「む……なんですかその答え方。『俺がお前だけのサンタになってやるよ』くらい言ってください」
パワポケ「典子ちゃんの中の俺、どんな奴だよ……」
典子「私は暖かい家庭が欲しいです」
パワポケ「それ入って来たサンタさんびっくりしちゃうから。その一言書かれてるの見たら悲しい想像しちゃうからね？」
典子「じゃあ赤ちゃんでも良いですよ」
パワポケ「じゃあのハードル高すぎるだろ。せめてお金で買える物にしない？」
典子「婚約指輪」
パワポケ「ははは、サンタさんと結婚したら1年に1回しか会えないのに。典子ちゃんも乙女だなぁ」
典子「すみませんヒモ無職の手足を縛りつけて監禁するための鎖とか助けを呼ばせないための猿ぐつわとか具体的な物を挙げた方が良かったですね」ｷﾞｭｳｳｳｯ
パワポケ「ごめ、ごめんなさい、やめてぇっ！」
パワポケ「そ、そっち方面はともかく……実際、典子ちゃんへのクリスマスプレゼント、何が良いのか迷ってたんだ」
典子「え。別にいいですよ。私もパワポケさんにプレゼント用意してないですし」
パワポケ「でも、成り行きとはいえ一緒に暮らして、毎日お世話になってるから」
典子「はぁ」
パワポケ「今日もクリスマスだからって手の込んだ料理作ってるし、ケーキまで手作りだし……」
典子「私がやりたいからやってるだけなので。料理の勉強のついでです」
パワポケ「それでも感謝してるし、純粋にお礼はしたいんだ。典子ちゃんが望む事は難しいけど……ささやかなプレゼントをさせてくれないか？」
典子「…………」
パワポケ「典子ちゃん、聞いてた？」
典子「……え、ええっ！？」
パワポケ「……いったい何に驚いたんだ？」
パワポケ「？？？」
典子「急になんですか！私がよろ、喜ぶような事……きみっ、気味が悪いですけどっ！」ﾃﾚﾃﾚ
パワポケ(おおっ。典子ちゃんが素で照れてる。最初に出会った頃みたいだ)
パワポケ「いらない？」
典子「いります！少し待って！考えるから！」
パワポケ「あ、うん……」
典子「……」ｳｰﾝ
パワポケ(凄い真剣だ……)
パワポケ「え？」
典子「筆箱が欲しい。今使ってるの、もうかなり古いんです」
パワポケ「ええと……遠慮してる？一応、俺のへそくりから全額出すから気にしなくていいぞ？」
典子「じゃあ婚姻届にサインして貰います」
パワポケ「振れ幅が極端！？」
典子「は、早く選んでください！筆箱を買うか、婚姻届出すか！」
パワポケ「その二択この星において最初で最後だろ……わかった、筆箱プレゼントするよ」
典子「あの、デザインはパワポケさんが決めてください。それを使います」
パワポケ「俺が選ぶの？」
典子「はい。あ、ドラゴンの柄とかやめてくださいね。私もちゃんと女の子なので」
パワポケ「ドラゴンかっこいいのに……」
典子「露骨にピンク色のデザインでセンス悪いですけど、機能的ですね。ありがとうございます」ｶｷｶｷ
パワポケ「うん、喜んでくれたなら……喜んでる？今更だけど筆箱で本当に良かった？まだ欲しいのあるなら……」
典子「嬉しいですよ。パワポケさんが私のために真剣に考えて、選んでくれた物ですから。宿題だって捗ります」
パワポケ「そっか。というかクリスマスに宿題って。典子ちゃんは偉いなぁ……」
典子「偉いので頭撫でてください」
パワポケ「偉い偉い」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ
典子「ん……まあ……今年は及第点にします。来年はこれ以上のクリスマスを期待してますよ？」
パワポケ「こ、今年以上か。習字セットでも買い替える？」
典子「…………」ﾆｺﾆｺ
パワポケ「無言で笑わないで！？怖いから！？」
典子「学校に持って行くの、少し恥ずかしいけど……ふふっ」ｽﾘｽﾘ
パワポケ(筆箱に頬擦りする人初めて見た……)
END