おめでとうございます
裏切らないアスランは本当に最強だって、また一つ確信させていただきました
このSSアスランの解像度高くて好き
PHASE-IF【正義の在処】
デスティニーのパルマフィオキーナをジャスティスのシールドが受ける。
シン「こんな嘘ばかりで固めた世界を創る為に！アンタはあの時裏切ったのか！？」
アスラン「違う！俺は、俺は！」
そのまま掌でジャスティスの腕ごとシールドを押し返し、僅かに距離を置く。
シン「違わないさ！そして俺達に刃を向け、仲間を、ミネルバの皆を、レイをを殺したんだろう！！」
ブーメランを放つデスティニーに、アスランは的確に腕でそれを捌く。
ああ「それは…。…俺は、それでも…」
シン「それでも、何だって言うんだ！？」
ブーメランの戻りに併せてもう一方のビームブーメランを展開し手に持ったまま、デスティニーが再度ジャスティスに迫る。
アスラン「俺はそれでも、今更歩んできた道を戻る事だけはしない！」
アスランの中で、何かが弾ける。
戻ってきたブーメランを今度は足で弾き、同時にサーベルの柄でデスティニーの手持ちの方のブーメランの取っ手部分を受ける。
アスラン「そうだ。確かに俺はお前達を裏切り、傷付けた」
アスラン「だが、もう今更どうしようも無いじゃないか！？俺はあの時裏切って、今の世界を創り上げる手助けをして。それで今更またこっちを裏切れって言うのか！？シン、俺は…、俺だって、本当はもう戦いたくなんて無いんだ！最初の戦争で親友と殺し合って、次はまた同胞と殺し合って！！」
アンカーに右腕を取られ、デスティニーがジャスティスに引き寄せられる。
アスラン「もう沢山だ！俺だって本当は、月の幼年学校でキラや他の友達に囲まれて、平和に笑って居たかった！プラントでだって、イザークの変な意地に付き合わされたり、ディアッカの性質の悪い冗談に苦笑したり、……ニコルのピアノだって！」
アンカーで引き寄せたデスティニーの右腕を足のビームカッターで切断する。
シン「ぐぅうっ！」
アスラン「だがもう全ては戻らない！ならせめて、裏切ってでも付いたラクスやキラ、カガリの力になると決めた！今の俺が決めたんだ！もうこれ以上、争ったり、悩んだりするのなんて、嫌なんだ！！」
勢い込んで今度は胴体を切断せんと迫る右脚を、デスティニーの左脚が食い止めた。
シン「だから、なんだ？」
アスラン「な、に？」
シン「アンタ、『戻らない』って言ったよな？過去に起こしたことは戻らないって。確かにそうだ。アンタが今更何をしようが、レイは戻らない」
大破した脚でジャスティスの脚を弾き返し、その脚でジャスティスの顔面に回し蹴りをお見舞いする。
デスティニーの脚の部品が飛び散り、ジャスティスのアンテナを僅かに曲げる。
シン「でもな、こんな世界を創り上げて、いったい何になるんだ？アンタも知ってるだろう？デュランダル議長を。あの人だって過去を確かに抱えて、背負って、世界を変えようと自分の足で立って頑張っていた！」
ジャスティスのもう一方の脚による攻撃を避け、一旦距離を置く。
シン「他にも、生まれつき出来損ないだとかって言う奴も居れば、今も砂漠に緑を育てようと未来を望んでいる奴らだって！でも今のアンタは違うだろ！？ただ悩むのが、痛い思いをするのが嫌で逃げてるだけじゃないか！！自分の物じゃない、借り物の自由と正義を殻にして、うずくまってるだけだ！」
アスラン「…それはシン、お前もじゃないのか？お前だって自分の復讐の隠れ蓑に議長の理想を利用して、自分を隠して戦っているんだろう？俺と一体何が違う！？」
アスラン「………！」
デスティニーの背中が輝く。
ビームウィングを広げ、残像を残してジャスティスに迫る。パルマフィオキーナを収束させ、そののコクピットを狙う。
シン「オオオォォオオォオオオ！！！」
光の槍がその胸を貫いた時、何故かジャスティスは防御すらせず、微動だにしなかった。
アスラン（ああ、そうか）
閃光に包まれてアスランは思う。
アスラン（最初にヘリオポリスでキラを見かけた時から、ずっと悩み続けて来たけど）
実際、絶命するまでの時間はそう長くは無い。それでも、残された時間の中で、思う。
アスラン（俺はずっと、あんな風に自分に納得の行く答えが欲しかっただけだったのかもな…）
ピシリとヘルメットの正面にヒビが入る。
アスラン（そんなことに気付かなかったなんて、俺は本当にバカだな）
カガリ『──しょうがないよ。コーディネィターでも、バカはバカだ』
ふと一瞬、今はもう亡き少女の面影に焦がれる。
アスラン（フ…。シンのお陰かな、気付けたのは）
アスラン「…シン、ありが」
正義は、大きな閃光になって消えた。
シン「………」
閃光を見つめた後、一言も残さずにシンは宙域を離れていった。
悩み続けた男の最後の言葉は、誰にも届きはしなかった。
終
ほんと迷いない時強いなこいつ