オグリキャップ「ベルノの作るサンドイッチが美味しいからつい」
ベルノライト「ふふ、よかった」
ベルノライト「…」
ベルノライト「ねぇ…」
ベルノライト「オグリちゃん、もうレース止めたら…？」
オグリキャップ「…」ﾓｸﾞﾓｸﾞ
オグリキャップ「こっちの卵の方ももらうよ」
ベルノライト「どうぞ…」
ベルノライト「…レース、やめたらって」
オグリキャップ「…なんで」
ベルノライト「だって、この頃のオグリちゃんを見てると、怖いの」
ベルノライト「もしこのままオグリちゃんがレースを続けて行ったら…」
ベルノライト「いつかきっと悲しい目に遭いそうで…」
ベルノライト「だから私…」
オグリキャップ「レースってのはなぁ、レースってのは…」
オグリキャップ「レース、ってやつは」
オグリキャップ「弱肉強食の世界なんだ、嚙みつかなければ嚙み殺される」
オグリキャップ「だからこっちとしては必死で、それこそ死に物狂いで噛みつくんだ」
オグリキャップ「けど…だけど、相手の流した血に、止まってしまった脚にある負い目が残るのも確かさ」
オグリキャップ「だからと言って中途半端は許されない、変な例えだけど人を殺した人が死刑になるように」
オグリキャップ「レースで血の流しっこをしてきたからには中途半端は許されない」
オグリキャップ「…私はそう思う」
オグリキャップ「疲れただの、やめたいだの、金輪際言えないんだ」
オグリキャップ「ターフ去ったタマモクロス、中央行きへの決意をさせたマーチ、狂気的な執念で立ち向かって来たクリークに対してもな」
ベルノライト「そんなの…そんなの考え過ぎだよ！」
オグリキャップ「…」
ベルノライト「オグリちゃん！」
ベルノライト「オグリちゃんは寂しくないの？」
ベルノライト「同世代の子たちが街に、海に、山に青春を謳歌してると言うのに」
ベルノライト「オグリちゃんたちは来る日も来る日も」
ベルノライト「柔軟体操をしたり、芝の上を走ったり、学園から一歩も出ないで練習ばかり」
ベルノライト「たまに学園の外から出ればターフの上で走って、誰が一番速いかを競い合うだけの生活」
ベルノライト「青春と呼ぶにはあまりにも暗すぎるよ」
オグリキャップ「…」
オグリキャップ「ベルノ、さっきはちょっと言葉が足りなかったのかもしれない」
オグリキャップ「私は、負い目や義理だけでレースをしているわけじゃないんだ」
オグリキャップ「レースが好きだから、やってきたんだ」
オグリキャップ「コイツはホントだよ、本当なんだよ」
ベルノライト「そんなこと、そんなことわかってるよ…でも…」
オグリキャップ「ベルノの思う青春とはちょっと違うかもしれないけど、私は私なりに燃えるような充実感を何度も味わって来た」
オグリキャップ「血だらけのターフの上で」
オグリキャップ「ぶすぶすとそこらにある、みてくれだけの不完全燃焼とは訳が違う」
オグリキャップ「ほんの一瞬にせよ、まぶしいほどに真っ赤に燃え上がるんだ」
オグリキャップ「そして、後には真っ白な灰だけが残る」
オグリキャップ「燃えカスなんか残りはしない、真っ白な、灰だけだ」
オグリキャップ「タマモクロスだって、スーパークリークだって、きっと、きっとそうだったんだ！」
ベルノライト「…」
ベルノライト「私…」
ベルノライト「私とても付いていけそうにない…」
オグリキャップ「ベルノ…？」
オグリキャップ「…」
オグリキャップ（そうさ、燃えカスなんか残りはしない、残るのは真っ白な灰だけだ…）
りゃいあんはコーナーで真っ白な灰に燃え尽き
吉村と村田は病院で静かに息を引き取る