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私も暴れん坊将軍のSS書きました
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上様が異世界にも世直しに行くそうで
・いつも書いている人とは別人です
・吉宗評判記を想定しています。若上様にしゃぶらせたい
・一部の設定は小池一夫先生のケツ作、首斬り朝から借りました
・ファミリー以外の登場人物はホモ関係を明記し、時代劇にホモの目を向ける事を目指します
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暴れん坊将軍!
「肥汲みはいけねえや。あっしら火消しは四十八組、三十組、大名火消しとありますが、肥汲みは江戸八百八町丸ごと縄張りですぜ」
江戸の衛生と食とをつかさどる肥汲みに、汚い奴の手が入った!
「こんな小便ばかりの肥で野菜は出来ねえ。混ぜ物をしやがったな?」
「これが珍味なんだよ!分かるか?好きな奴は食っちゃうんだよ!」
将軍様でもお菰でも、食べて出すのが世の習い。江戸の肥汲み腐るなら、これが本当の糞詰まり
「わしの顔にどば〜っと糞と銭が流れ込んできた」
「うんちして」
飢えが、病魔が、肥が江戸を駄目にする。吉宗は今日も汲み取り船に乗って町へ乗り込む
「このままだと『ころり』が流行るな」
「肥汲みなら某、多少伝手がござる」
「貴様も野菜を食うし糞をするであろう。汚いぞ!」
次回、暴れん坊将軍「肥の喧嘩が江戸の華?」どうぞお楽しみに
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ナレーター:若山弦蔵
将軍吉宗が質素倹約を旨としたのは今更説明するまでもない事であろう。吉宗は天下人となって尚若き日の部屋住み時代と変わらぬ粗食に甘んじ、それが幸いして健康と長寿を保ったのも、今や栄養学における常識である。
加納五郎左衛門:有島一郎(じいも結婚しないからホモ)「上様、葛西の肥汲みから献上の沢庵が届きましてござりまする」
徳川吉宗:松平健(言わずと知れたホモ)「おお、今年もこんな季節か。この沢庵は絶品だ。早速今日の昼餉に出してくれ」
当時の江戸では肥を肥汲みが買い集め、肥料として野菜を育てて江戸で食べるという、今で言うリサイクルが成立していた。江戸の街は当時の世界のどの都市より清潔であった。
特に江戸城から出る肥は最高の品質とされ、これを汲み取る葛西の百姓の出す船は「葛西舟」と呼ばれて江戸市中の堀を自由に通り、城中に自由に出入りして、その礼として当地で作られた沢庵が献上されるのが恒例であった。
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大岡越前:横内正(芸能界最強クラスのホモ、加藤剛の分身)「上様、昼餉前にまこと言いにくい事でございますが、その肥につきましていささか」
「これ、越前殿。いくら何でもそれは」
「構わぬ。忠相、申してみよ」
「はっ。ご承知の通り江戸市中の肥汲みは専ら葛西の百尻組が取り仕切っておりますが、その肥の汲み取りに不審な滞りが見られるのです」
「滞り?それは良くないな。肥があふれては民が迷惑する」
「肥汲みを怠るとは言語道断。まったく、沢庵などで誤魔化そうとしおって」
「じい、その沢庵を余より楽しみにしておったではないか」
「そ、それは、その…」
「しかし、百尻組にとってまさに黄金花の肥を汲まぬとなると只事ではあるまい」
「どうやら、肥汲みに割り込む者と百尻組を邪魔する者とが市中に居る様です」
「そうか。では早速調べねばならんな」
「上様、今日は見合いの予定が入っておりまするぞ。その前に肥改めなどとはもっての外…あっ!居ない!」
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まんまと見合いから逃げた吉宗が御庭番に出させたのが件の葛西舟。通称「汁出し舟」とも言って、運ぶ物が物だけに江戸市中で一番威勢の良い魚河岸の舟も避けて通ったとか。吉宗はこの舟の肥桶に隠れて江戸市中に出るのが毎度の事である。
__め組
龍虎(元力士かつホモ人気抜群)「おい、大変だ。裏の長屋で肥があふれて大騒ぎだ」
おさい:春川ますみ(元ストリッパー)「お前さん。何とかしておやりよ」
おまち:岐邑美沙子(当て馬女)「そうよ、お兄ちゃん。いつも鳶は火事の無い時はドブさらいだって言ってるじゃない。肥汲みも同じような物でしょ」
辰五郎:さぶちゃん(演歌業界はハッテン場)「冗談言っちゃいけねえよ。助けてやりてえのはやまやまだが、肥汲みは百尻組の縄張りだ。俺達火消しが出張ったら喧嘩沙汰だぜ」
「何さ!喧嘩が怖くてめ組の頭かい?」
小頭源三:園田裕久(影が薄い)「おかみさん。百尻組は駄目ですよ」
常(デカい方):阿波地大輔「ぬ組の連中なんてあいつらと吉原で喧嘩して糞ぶっかけられたんですよ」
鉄(小さい方):井上茂「火の粉は被れても糞は被れねえや」
「情けないねえ。大体なんだよ?あんた達は人の倍も食べてるんだから出す方も倍じゃないか。無責任じゃないのさ!」
「いや、臭うな」
「あ、新さん///」
め組の頭、辰五郎の妹、おまちは徳田新之助に恋をしている。だが、彼が実は将軍吉宗である事も、女に興味が無い事も知らない。
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「どうした。話の内容も臭いが、本当にこの辺りは臭いぞ」
「いやね、新さん。裏の長屋で肥が溢れて困ってるんでさ」
「江戸中の長屋ならともかく、一軒くらいの事ならどうにでもなるだろう」
「駄目ですよ、新さん。町方の仕事ってのはちゃんと縄張りってもんがあるんですから。まして百尻組が相手じゃあとてもとても」
「頭らしくもないな。喧嘩が三度の飯より好きなのがめ組じゃないのか?」
「そりゃあ隣の火消しがドブさらいをしないって程度なら喧嘩を承知でやりますがね。あっしら火消しは四十八組、本所三十組、大名火消しと縄張りが細々分かれてる。けど百尻組は江戸八百八町全部が縄張りですからね」
「成程。そりゃあいくら何でも分が悪いな」
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「まったく、最近の町方はこういう下らねえ揉め事と糞が山積みでさあ。新さん、もし俺ら相撲の衆が火消しと喧嘩になったとしますぜ。そしたらどこが仲裁するんです?」
「そりゃあ関取、相撲は寺社奉行の管轄だから…」
「だけど火消しは町奉行だ。もしそうなったらお奉行同士が喧嘩して火に油、鰻にすいか、下痢腹に大食いってもんだ」
関取の懸念は文化年間になって現実の物となった。それがかの名高い「め組の喧嘩」である。
「賭場ってのは貧乏寺か武家屋敷と相場が決まってるもんな」
「町奉行が踏み込もうとしても管轄が違うってんでまごまごしてる間に逃げれちゃう」
「俺達は臭くても今のままの方が助かるな」
「馬鹿野郎!それでも火消しか!どぶに落ちても根のあるやつは、いつか蓮の花と咲くてえが、手前ら肥溜めに落ちてウンコ椿は肥の花だ!」
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なんか始まってる!
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「まあまあ。臭い例え話は置いて、とにかく肥を片付けなきゃいかん。よし、俺がやろう」
「駄目よ新さん。お旗本が肥汲みだなんて」
「何で駄目なんだ?将軍様でもお菰でも、食って糞をするのは世の習いだ。それに、貧乏旗本の三男坊と言っても天下の直参のこの俺がやる事だ。直参のお節介な尻拭いにそうそう文句は言えまいよ」
「流石は新さんだ。よし!お前ら手間賃弾むから暇してる浪人を集めて来い。とりあえずこの一帯で肥の溢れてる長屋を助けるんだ」
「へい!」「へい!」「へい!」
かくして、吉宗自ら浪人を率いて肥を汲み、臭い物に蓋がされた。
「金肥と言うが、これが一桶何文という金になって、野菜になるのだから大した物だな」
山田朝右衛門:栗塚旭(隠さないカマホモ)「しかし、奇妙ですな。百尻組にとってこの肥は飯の種。それを取りに来ないのはいくらなんでもおかしい」
浪人衆の中に混じっていたのが、将軍家御試役という要職に在りながら身分の上では浪人の、首斬り朝こと山田朝右衛門である。
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「やはり、そう思うか?」
「長屋の肥は安物ですが、吉原や湯島葭町の肥は何倍、大名屋敷の物ならその更に何倍。湯島や葭町の陰間茶屋では、肥の臭いでもよおしして困ると客が苦情を申し立てているとか」
「詳しいな」
「百尻組にはいささか縁故がござりますれば」
「しかし、葭町に百尻組が来なくて困っているのであろう」
「…」
朝右衛門の話は決して誇張ではなく、男色がごく普通に行われた江戸においては、肥の臭いに馴染みの陰間を思い出してもよおすなどという古川柳が遺されている。江戸の民はまこと風流だ。
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「しかし、百尻組に縁故があるなら都合が良い。少し探って来てくれぬか」
「…そればかりはどうか」
「何故だ?」
「あそこの跡取り娘と祝言を上げてすぐに離縁を」
「何?そんな都合の良い祝言があるのか!?」
「五縄張り参長脇差の殴り込みの調停の為にやむなく」
「そうか。町方の縄張り争いはかようにも酷いのか」
「まったく、迷惑な話でございます。女と祝言をするくらいなら、肥を自分で汲む方いくらか楽かと」
「そこまで言う事はないではないか」
「…」
五縄張り参長脇差(ごばりさんどす)とは、江戸市中に縄張りを持つ稼業人の各種を指す。これは小池一夫の世界に誇る名作『首斬り朝』のエピソードを借用したものである
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「非常に新鮮で、非常に美味しい」
その時、観音長屋に怪しい男が押しかけてきて、汲みたての肥桶を調べ始めた。
「あんたが大家だね」
「へえ。上方屋呉万と申しま」
「私達は悪尻党ってもんだ。百尻組が最近仕事をしないから、私達が代わりに肥を買っているんだ」
「ちょっと遅かったんとちゃう?」
「私達は便通を自称していてるんだが…もうこの江戸にある肥という肥を全て買いつくしちゃう勢いなんだよ、なぁ」
「はい、よろしくお願いさしすせそ(長屋経営の基本)ナンボなん、これ?」
「そう、一桶十四文ってところだな」
「14文!?うせやろ?」
「いえ、本当です」
百尻組の他にも小さな汲み取り業者は存在し、大名屋敷などは御用の汲み取り屋を相手に肥を売って藩財政の足しにしたという。だが、当時の江戸における長屋の肥の相場が一桶25文。14文とは大変な買い叩きである。
「もう待ちきれないよ、早く出してくれ」
「はーつっかえ!それでええから持って帰って」
結局、宝の持ち腐れとばかり観音長屋の肥は悪尻党が買って行ってしまった。
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「あれは怪しいな」
御庭番助八:宮内洋(全身タイツフェチ)「上様、あの悪尻党という連中、江戸市中で余っている肥を安く買いあさっているようでございます」
御庭番おその:夏樹陽子(千葉ちゃんの愛人=真田広之と竿兄弟)「それと、百尻組にはやくざ者が嫌がらせをして肥を集められないようにしているという話です」
そこへ現れたのが吉宗の懐刀、助八とおそのの御庭番二人である。
「成程、それは臭うな。早速悪尻党の素性を探ってくれ。それと、忠相にこの件を預かっている者を調べるよう差配してくれ」
「御意」
江戸の肥に陰謀の臭い。
♪てーってれーてれれれ!
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江戸で集められた肥は船で関八州一帯に運ばれ、当地で農業に用いられて出来た野菜が江戸に売られた。このため、江戸は川越の恩を尻で返すというざれ歌もあったという。
「こんな小便ばかりの肥で野菜は出来ねえ。混ぜ物をしやがったな?」
「これが珍味なんだよ!分かるか?好きな奴は食っちゃうんだよ!」
悪尻組は百尻組を妨害する一方で江戸近在の農家に混ぜ物をした粗悪な肥を押し売りし、暴利を貪っていた。
「オラ達は江戸の肥で野菜さ育てて江戸に売るんだ。こんな肥を使ってみろ。凶作になって飢饉になる」
「金金言ってるんじゃねえよ、百姓のくせによぉ!」
「田舎百姓は金の事しか考えないのか(偏見)」
悪逆非道の限りを尽くす悪尻党の行いを遠くから眺めて笑う悪党二人。
「(人間は)嫌て言ってもするんだようんちを…」
大物に見せかけた小物という体の禿げ頭のこの男、廻船問屋で悪尻党を裏で操る舛添屋運一という。
「たまに農作業の爺さんに見られるが興奮するぜ。」
その隣で人中黄(うんこ漢方)の薬湯をすする武家、この男が江戸の街の土木関係を一手に取り仕切る旗本、土方美作守雲国斎。
美作守はかつて駕籠での登城が禁じられると大久保彦左衛門の故事に倣い、肥桶に入って用人に担がせ「肥桶は駕籠に非ず」と唱えながら堂々と登城してみせた、度胸と切れ者ぶりを高く買われている男である。それだけに越前守もまさかこの男がこのような汚い悪事に加担しているとは思わず、捜査の手が遅れていた。
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「ところで雲国斎様、君のかわいいうんち、見たいんだぁ…」
「いつもの浪人者のおっさんと先日矢文くれた喧嘩好きの土方のにいちゃんと3人で大川にある橋の下で盛り合うぜ」
「ホラ…ここにぃ、いっぱい出しておくれぇ… いいんだよおもいっきり出して」
「糞、ためて待つぜ」
2人は地面にイチヂクの枝で地図を書き、符丁で話している。助八には2人の言う事の意味が呑み込めなかった。これでは証拠にならない。
「もう江戸中糞まみれや」
「神君の綺麗な田が…うんちで…茶色に染まっていく…」
舛添屋の最後の一言が突破口になった。神君の綺麗な田。つまり肥を汚れてとして禁じる神田である。とすれば「君のかわいいうんち」とは…
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「よもや、その者ども葛西舟を狙っているのではないか?」
「とすると、美作守は江戸市中の独占して肥のみならず、作物の値を操って儲ける算段では?」
「いかん。そんな事があっては民百姓が飢え、江戸は糞まみれになってしまう!」
天守閣に吉宗の怒りの声が響く。美作守と舛添屋の陰謀を許せば、江戸は飢えと糞に覆い尽くされるのは必定である。越前もまた、一度は信用した美作守がこのような汚い悪事に身を落としていようとは信じられず、その顔には怒りが覗いた。
「じい、百尻組の件はどうなっておる?」
「はい。あまり関心は致しませぬが、浄円院様の口利きで音羽屋半右衛門(特別出演:山村聡(ハッテン場の上得意))という口入屋を使って浪人を肥汲みとして集めております」
吉宗の肥流通作戦は大胆なものであった。将軍生母、浄円院(中村玉緒:マツケンをケツマンした勝新の嫁)の紹介で口入屋を使って浪人者を肥汲みとして雇い、悪尻党の妨害を防ごうというものである。
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「いけませんぞ、上様。この備前守、浪人とは言え武士を肥汲みにするのは反対でござる」
この吉宗のやりかたに待ったを唱える男が居た。幕閣きってのうるさ型、老中鷹野備前守(遠藤太津朗:ヤクザ映画で立て続けに3回ホモ役)である。
「備前守殿、かの石田梅岩の言葉に『職に貴賎なし』という言葉がござりまする。いずれにしても、浪人がやくざ者の用心棒にでもなるよりは、肥汲みをして世の為、人の為になるならこれ以上の事はありますまい」
「いいや加納殿。武士は食わねど高楊枝。痩せても枯れても武士たる者、かようなる下賤な仕事に就くのはまかりならん」
備前守の顔と言葉には有無を言わせぬ迫力がある。
「備前守、下賤下賤と言うが、その方糞をせぬのか?また、糞をせぬ人間を一人でも知っているか?」
「そ、それは…」
「その方の若衆好きはその下賤の民でもざれ歌に歌うではないか。衆道は糞の道と、その方が知らぬはずがあるまい」
「うぐ…ぐぅ…」
吉宗にこうも言われると備前守は引き下がるしかない。彼の男好きは広く知られるところで、板東正臣なる陰間に入れ挙げてふられたのは市中で語り草である。未だ所帯を持たない五郎左衛門とは、喧嘩ばかりしていても類は友を呼ぶという事か。
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その頃、江戸市中では百尻組に雇われた二本挿しの肥汲みが走り回っていた。中には自らを囲んだやくざ者を草笛を吹きながら皆殺しにした凄腕や、仕込み杖を持った按摩を従えて剛腕を振るった者も居ると噂に広まり、江戸の街にあふれた糞は急速に片づけられ、近在の農村へ送られつつあった。
勿論、め組の面々もこの吉宗の計らいに黙っていられない。夜回りや道の修理に精を出し、やくざ者を警戒して目を光らせていた。
「う〜寒いな。冷たい風に糞の臭いときやがる。付き人にケツ拭かせた罰が当たったなこりゃ」
関取は居候の身の上で拍子木を持ち、相撲甚句で鍛えた美声で声をかけてめ組の縄張りの治安に寄与するところ大である。
「戸締り用心火の用心〜マッチに舐めさすメリーさんっと…おい、大丈夫か?」
関取は思わず拍子木も提灯も放り投げた。焼ける提灯の向こうに見えたのは、竹槍で刺された肥汲み浪人である。
関取は大慌てで小石川の療養所に浪人を運び込んだが、そこは既に同じように闇討ちされた浪人で一杯であった。
「先生、こりゃどうなってるんです?」
小川笙船(天知茂:宅麻伸を仕込んだイケおじホモ)「こいつは人間のやる事じゃねえな」
「先生、これは一体」
「ああ、あんたか。こいつを見な」
慌てて駆け付けた吉宗に、小石川療養所の主、小川笙船が示したのは、哀れな浪人を貫いた竹槍である。
「糞小便を塗りたくってやがる。こんな物でやられたらはらわたが腐って手の施しようが無い」
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「そんな…何とかならないのか?」
「こいつばかりはどうしようもないね。だけど、このまま江戸の街を糞まみれにしているともっと不味い事になる」
「そうだろう。臭くては人間嫌なものだ」
「そういう事じゃない。この前来た通信使から聞いたんだが、朝鮮の漢城では肥を使わないとかで、そこらの道端に黄金花の花盛りらしい。すると何が起こると思う?」
これはテコンドーなど関係なく掛け値抜きの事実で、20世紀に至っても漢城、今のソウルは糞まみれであったと多くの旅行者の記録に残っている。
「もっと悪い事が起きるのか?」
「疫病が流行る。長崎で『ころり』という病気が流行る事があるのを知ってるか?あれを貰うと下痢になって弱って死ぬ。それが糞小便から伝染る。長崎に持って来るのは、決まって糞まみれの汚い国から来た船だ」
吉宗は全身の血の気が引くのを感じた。肥が病気を伝染すというのなら、江戸の人々の食はどうなってしまうのか。吉宗は想像するだけで恐ろしかった。
「幸いころりはまだ来ない。その前に糞を散らかす連中をどうにかするのが将軍の仕事だと俺は思うね」
小川はカミソリのように鋭い視線を新之助に向け、暗に吉宗に決意を促した。
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「金!暴力!陰間!って感じで」
「おじさんはね、おじさんはね、罪のない人を理不尽に殺すのが大好きなんだ」
「ジュージューになるまでやるからな)」
江戸城から堀へと出る葛西舟を狙い、美作守の差し向けた悪党が小舟で堀を進んでいた。肥にも善し悪しがるが、葛西舟で運ばれる江戸城の肥は肥の横綱であり、値段も肥料としての効き目もこれ以上の物はない。そんな貴重で高価な肥を運ぶ葛西舟が、煌々と灯りをともして堀に出た。
バァン!(小破)
人通りの無い所で葛西舟に横からぶつかって飛び乗った三人組、しかし、肥桶から身の丈六尺の大男が刀を手に飛び出した。
「おのれ悪党、己らも飯も食えば糞もするであろう。汚いぞ!」
漕ぎ手に化けた助八とおそのも加勢し、三人組は吉宗に簡単に制圧された。
「貴様らの頭はどこに居る。吐け!」
「ぼくひで」
「うんこ…うんこ…」
「ポッチャマ…」
三人組は頭のおかしいふりをしてしらを切る。それが余計に吉宗を怒らせた。
「よし、口がきけないならきけるようにしてやろう。罪もない浪人が今、小石川の療養所ではらわたが腐って苦しみながら死んでいる。あの世が暇だろうから、貴様らを三途の川までの話し相手に送ってやる!」
「おじさんやめちくり〜」
「お慈悲^〜」
「そうだよ(便乗)」
糞まみれの竹槍の前に三人組はあっさりと口を割り、吉宗一行は舛添屋が居るというそこへ急いだ。
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「君のかわいいうんち見たいんだ」
舛添屋は何も知らず、大川の端の下に屋形船を停めて、陰間を何人も並べて糞をさせて愉しんでいた。この男は肥であくどく儲けようとするばかりでなく、根っから糞が好きなのだ。
「りゅうくん、こぉんなにおっきくて、匂いが濃いの出しちゃって…ダメじゃないか!こんな下品なことしちゃ…(自己矛盾)…JAXAっ!(素)」
なのに、この男は一番糞をひり出した陰間の糞の臭いに気が動転した。小物である。
「大丈夫だから…食べ物なんだから!(パラダイムシフト) なにも… ほらチュって…舌を出してペロッて… ほら美味しいだろう?」
舛添屋は泣いていやがる陰間の口に糞を押し込み、サディスティックな笑みを浮かべて欲情している。そこへ助八の竹とんぼが襲った。
「アークサイン!(逆正弦関数)」
右手に突き刺さった竹とんぼに悲鳴を上げる舛添屋。そこへ葛西舟が寄せて来て、臭さを我慢していた用心棒が一斉に抜刀して向き直った。
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「舛添屋運一、その方江戸中の糞を滞らせ、民百姓を糞地獄に陥れた挙句飢えさせようとし、神田に糞を流して私服を肥やそうと企み、あまつさえ罪なき浪人を何人も殺めたる罪、万死に値する!」
「あんた誰?」
「俺は天下の風来坊、三つ葉葵の風が吹くってな。だが、便秘でもあるまいしもったいぶる必要もないだろう。貴様が喉から手が出るほど欲しい、日の本一高い糞をする男だ」
「都知事…じゃなくて上様!」
ここへきて舛添屋は事の重大さに気付いた。葛西舟を狙う事、それは吉宗の尻を掘ろうとするに等しいのだ。
「貴様のした事の償いは死でも生ぬるい。成敗!」
「…上様の、この綺麗な乳首も、汚してあげるよ(認知症)」
あくまでしらを切り、手下同様に話の通じないふりをする舛添屋の肥を合図に、用心棒が一斉に切りかかった。
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(BGM 4-43)
舛添屋が風呂敷一杯の小判で雇い集めた用心棒が一斉に吉宗に襲い掛かり。
福本清三、八名信夫、石橋雅史、河合伸旺、山本麟一、その他悪役ローテーションを1日で使い切る勢いの面々が一斉に吉宗に殺到し、船が揺れる。しかし、怒りに燃える吉宗の剣筋は狭い船の中にあって揺るぎなく、力強く、荒々しかった。
もはや逃れられぬ運命を悟りながら、舛添屋は次々と用心棒が倒されていく様に、理想の美少年のひり出す糞の美しさを見た。
だが、一本糞が必ずそうなるように、舛添屋の悪徳と退廃に満ちた夢は唐突に終わった。彼がその時見た物は、鬼の形相の吉宗と、その指料の切っ先に映る自らの貧相な顔であった。その次の瞬間、舛添屋は峰打ちを食らって意識を失った。
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美作守は根っからの糞好きという点は舛添屋と共通しているが、柔和な陰間を好まない。美作守はその地位をいいことに糞を浴びるのを厭わない力士や武芸者を数多抱えて遊ぶのが好きで、舛添屋の運命も知らず大川の土手で糞濡れになって相撲を取っていたのだという。
そんな美作守に将軍吉宗公から呼び出しがかかった。既に糞で天下を取った気の美作守は、抱えの力士の担ぐ肥桶に入って意気揚々と登城した。
「申し訳ないが朝の呼び出しは御容赦。それから晦日はまったく登城に応える事が出来ない」
美作守の無礼な物言いに備前守は呆れて言葉もない。計画では関八州は肥の供給を絶たれて飢饉に陥り、秘かに貯めて待っていた肥で自分の領地の田畑だけを耕し、それを足掛かりに老中、いや、糞公方になる気でいた。
吉宗を前にしても美作守はその計画に揺るぎない自信を持っていた。美作守は吉宗に糞の掃除で泣き付かれるのだろうと事を甘く見ていたのだ。
「土方美作守、その方、近頃江戸で肥の流通が乱れておる事をどう思うか?」
「畏れながら、 けつの穴が糞と小便でずるずるして気持ちが良い」
美作守はにやりと笑って糞を自分は愛していると吉宗に公言して見せた。
「その方、糞が好きか?」
「 やはり大勢で糞まみれになると最高やで。こんな、変態殿様と糞あそびしないか」
美作守はあまつさえ吉宗を糞の世界へ引きずり込もうとしている。越前守はこれに顔をしかめ、五郎左衛門は目を背けた。
「それ程に糞が好きか?」
「 ああ〜〜早く糞まみれになろうぜ」
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「なれば、これなら?」
吉宗はやおら立ち上がると、小姓が嫌そうに持っていた大盃を取り、美作守に投げつけた。
「 ああ〜〜たまらねえぜ」
盃の中身は糞であった。だが、美作守りは興奮に叫び、逃げ惑う幕閣達を一顧だにせず糞を畳から舐め取っている。
「面白い奴。もっと欲しいか?」
「 もう考えただけでちんぽが勃起してしまう」
「よし、あれを持てい!」
吉宗の声を合図に肥桶が運ばれてきて、美作守の前に置かれた。
「城内の肥を取らす」
「 やったぜ。」
もう糞まみれの美作守は大喜びで肥桶の蓋を取った。だが、その瞬間顔色が変わった。
その中には確かに肥があった。だが、その肥に縛られた舛添屋が浮いているのだ。
「美作守、その方、江戸の街を糞濡れにし、あまつさえ糞で幕府転覆を謀るとは言語道断。貴様の悪事は皆その舛添屋が白状した。貴様も武士の端くれなら、糞まみれでも潔くせい!」
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吉宗に大喝され、美作守は自らが二度と出られない糞壺に落ちてしまったのを悟った。
「切腹して死ぬのが夢やったんや」
だが、美作守は悲しまなかった。切腹して死ぬ。それが美作守生涯の夢であったからだ。
「 上様よ、わしの後ろにきてわしが倒れないように支えてからわしと一緒に腹を切っておくれ!わしの手の上に重ねてから刀を引いておくれ!頼んだぞ」
感極まって吉宗に介錯を頼み、美作守は腰に帯びた九寸五分を抜いた。その瞬間、美作守は地獄に堕ちた。
恍惚とした表情の美作守は首の皮一枚を残して後ろから首を打たれ、肥桶に頭から突っ込んでそのまま沈んでいった。朝右衛門が切腹を許さず、美作守の首を落としたのだ。
「出過ぎた真似とあらば腹を切ります。ですが、祝言と同時に離縁したとはいえ、手下を大勢殺された心の妻が不憫故」
「その心意気、見事」
御役目で百尻組の跡取り息子の首を落したために起きた喧嘩を収める為にその妹と祝言をあげた、本当は女を愛せない朝右衛門の一世一代の妻への愛を吉宗は褒め称え、咎めは無かった。
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糞騒動はこうしてようやく終わった。舛添屋以下下手人は一人残らず火あぶり。これが本当の「やけくそ」だと江戸の庶民は笑った。
臭い正月が過ぎ、春の桜と入れ替わるように江戸市中にしぶとく残っていた黄金花は散り、本当の意味で糞騒動は落着した。騒動の元となった奉行同士の管轄争いに吉宗が改革を加えたのは、言うまでもない。
天守閣から眺めても、糞の臭いがしない。吉宗は復興を果たした江戸の街と、満開の桜に思わず笑みがこぼれた。
「上様、この度の騒動はまこと、ご政道の肥やしになりましたな」
「じい、やはり江戸は良いな。これだけの民が暮らしていて、糞小便がどこにも落ちていない。こんな街は三千世界のどこにもあるまい」
「お世継ぎを作ろうとしない君主という物も三千世界にありますまい。臭いのを我慢してじいが良い縁談を探しておきました。早速見合いの義をば」
「いや、忠相。まだ上野あたりには黄金花が咲いているそうだ。花見に来た民が臭い思いをしてはいかん。調べに参ろうぞ」
「いや。上様が桜の名所は一番にやれと申して、その通りにいたしましたが?」
「そんなはずはない。め組の頭から直接聞いたのだ。ほれ、ついてこい」
「ああ、上様!」
食べたら出して、出した肥やしでまた食べる。江戸には咲かない黄金花。山は桜の花盛り。江戸に、吉宗の心に、久方ぶりの爽やかな風が吹く。
♪(炎の男)
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CMその1:
今日発売の月刊少年チャンピオンで、「マツケンクエスト」なるマツケンが異世界に行ってサンバで天下を取る漫画が始まります
CMその2:
アマゾンプライムビデオに「東映オンデマンド」というチャンネルがあります
月500円で暴れん坊将軍が見放題!三匹が斬る、桃太郎侍、遠山の金さん(松方弘樹版)やヤクザ映画も観れてお得
CMその3:
「子連れ狼」で知られる小池一夫、小島剛夕コンビの世界的傑作「首斬り朝」から本作の設定は借りました
スキマで無料で読めるから今から読め!
https://www.sukima.me/book/title/BT0000262302/
今後色々書いていきたいです
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乙シャス!
暴れん坊将軍SSは意地でも流行らせろ
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乙シャス!
まごう事なき糞SS(直球)で笑っちゃうんすよね
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迫真糞SSの中に散りばめられた時代劇愛に何回も漢汁を流した
悪役時代劇俳優連名とかネタ満載で笑っちゃうんですよね
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やりますねぇ!
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ストーリーがお太い! 当時の衛生状況や役職など考証がすごく丁寧でびっくり
セリフ回しや地の文がコメディチックで先駆者とは違った独自色があって面白かった
吉宗に謁見してからの裁きやEDなどⅠをリスペクトしたこだわりをカンディル
もっと読みたいから至急次回作くれや
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小川先生に備前守にこの悪役陣、スペシャル回ですねコルルェは…
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好評!絶賛!
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暴れん坊将軍の良さを広めてくれる人が増えてウレシイ…ウレシイ…
こんな本当にうまい人の心を動かせたなら今まで書いてたのが報われた気分です
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さりげなく必殺仕掛人から元締めと左内さんが客演してて笑っちゃうんすよね
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さてはこういうSS(時代劇二次創作)の経験者だな!とガタイで分析
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江戸時代の実態と、暴将に限らない時代劇への広範な知識
殺陣シーンでの無駄に重厚な文章
コロコロコ並みのウンコへのこだわり
め組周りの再現度
朝右衛門をネタにしてからの格好良い見せ場
うん提を通した暗な社会批判
練り込まれている。
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上様が2回も見合いから逃げるのは何気にレア回
おさいの静御前が入れは100点
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ここから刀葉林お願い
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乙シャス!
暴れん坊将軍SS流行らせコラ
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何だこれはたまげたなあ
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浄円院様が音羽屋を知っていて、役者のホモ疑惑にも踏み込むという中の人ネタは創始者にはないオリジナリティ
だけどマツケンをケツマンは草
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(書いた者ですが意外と好評で)成し遂げたぜ。
別の機会に新作、いいっすか?
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当たり前だよなぁ?
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>>45
お主のような者がいてくれたことを幸運に思う。見事。
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>>45
KMR早くしろ〜?
早くしろよ
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>>45
あ、良っすよ(快諾)
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>>45
オナシャス!
マジで読みたい
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>>45
次回作は浄円院様のつてで市松(演者が昭和ドラマ界屈指の有名なホモ)出して♥️
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>>51
その、涅槃顔で待つ人は次の次くらいでひらに御容赦を
だけど、必殺とのコラボはあーいいっすねぇ!やりますやります(執筆中)
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暴れん坊将軍!
「陰間茶屋か…一度行ってみたいと思っておった」
江戸に咲いた大輪の菊の花、陰間茶屋に暗い影
「俺の一本うどんを食べろ!」
「おじさんやめちくりー」
「女などとは汚らわしい。女などは大嫌いだ」
「You、団十郎みたいになりたいかい?」
湯島の白梅も黒くなる、汚い男達の陰謀が少年の身体に襲い掛かる。
「陰間茶屋はねえ…あっしら男は買うくらいなら仲間内で済ましちまいますから不調法で」
「新さんが、陰間通い…///」
「陰間茶屋をお取り潰しにするは容易。なれど、女を愛せぬ者が難儀する。己らのような尻の穴の小さい者が居ては、ご政道が切れ痔になる!」
次回、暴れん坊将軍「湯島の白梅男菊」どうぞお楽しみに
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クロスオーバーはウケると確信したので、大胆にやります本日良い色の日、20時より2話目投下します
・糞回を書いた方です
・メインキャストに関しては評判記を想定しています。若上様をしゃぶらせたい
・ファミリー以外の登場人物はホモ関係を明記し、時代劇にホモの目を向ける事を目指します
・だから小五郎なんて駄目だって言ったんだ!
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ナレーター:若山弦蔵
将軍吉宗が大奥の奥女中に一斉に暇を出して、質素倹約に努めたのはつとに有名である。その一方で吉宗は男色を好み、風呂で自らの世話をさせる湯屋番には美少年を揃えたことは、意外に知られていない。
徳川吉宗:松平健(議論の余地の無いホモ)「何?神隠しだと?」
大岡越前守忠相:横内正(ハッテン場俳優座出身)「はっ。江戸市中の美童が次々と姿を消している由にございます」
加納五郎左衛門:有島一郎(軽演劇出身だからやっぱりホモ)「なんと嘆かわしい。越前殿、これは町奉行の手落ちでございまするぞ」
「じい、よさぬか」
「加納殿の言う事は尤も。なれど、神隠しは専ら北町の月番に起こり、私には手が出せぬのでございます」
越前守は南町奉行である。当時の江戸には北町奉行と南町奉行があったが、これは江戸市中を南北に分けるという意味ではなく、隔月で交代で勤務をしたのである。北町の月番に起きた事には、南町奉行の越前守は迂闊に手を出せない。
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「うぬ。それは何か裏があるな。だが越前、おぬしも手をこまねいて見ているだけというわけでもあるまい」
「はっ。どうやら、これは神隠しではなく誘拐のようでございます」
「誘拐だと?」
「消えた子供が湯島の陰間茶屋で色子として働いているという噂が」
「かような事があっては一大事。上様、かくなる上は陰間茶屋の取り潰しを」
「いや、それはならん。そんな事をしても子供は帰って来ぬし、陰間を求める者が私娼を買うようになっては尚の事不味い」
「まさか上様、陰間茶屋へ行ってお調べになる気では?」
「陰間茶屋か…一度行ってみたいと思っておった。忠相、じい、お前達も満更嫌いではあるまい」
「それはなりません、上様!上様!」
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ーめ組
龍虎(猿之助の親戚になるはずだった男)「おい、川口屋の且坊はまだ見つからねえのか?」
小頭源三:園田裕久(影が薄い)「関取、こりゃいけねえや。多分例の神隠しですぜ」
常(デカい方):阿波地大輔「けど、消えるのは背の低い子供ばっかりだろ。背の高い且坊なんてさらうかな?」
鉄(小さい方):井上茂「お前がそれを言っちゃいけねえだろ」
辰五郎:さぶちゃん(演歌歌手=ホモ)「ことによると単に迷子になってどっかに預けられてるのかも知れねえ。お前ら、ちょっと隣の組へ行って聞いてこい」
「へい!」「へい!」「へい!」
「おい、これは一体何の騒ぎだ?」
「あ、新さん、丁度良かった。こういう目鼻立ちの整った、背が高くて人蹴る癖のある且坊って小僧見ませんでした?」
「いや、見てないが、まさか例の神隠しか?」
「そうなんでさあ。そこの川口屋ってお店の小僧が消えて、あっしら必死で探してるんですよ」
-
「…そうか、子供がさらわれて陰間茶屋に売られてるって噂がありましたが、やっぱり本当だったんですね」
「頭、居場所が分かるなら確かめるのは簡単ではないか?」
「いや、そりゃあ駄目ですよ。だって、さらわれるのは大抵は陰間茶屋に行くような野郎が見ただけでおったてちゃうような子供なんですよ。見つけても知らん顔して掘って帰っちゃう」
「うん、そりゃあ道理だな。よし、俺がちょっと湯島へ行って調べて来るから、頭は吉原の時みたいに手引きをしてくれないか?」
「陰間茶屋はねえ…あっしら男は買うくらいなら仲間内で済ましちまいますから不調法で」
「何?」
「あっ、いけね」
一般に陰間茶屋は高価で、江戸では男色は富裕層の楽しみであったと誤解されがちである。だが、実際にはこうして仲間内で尻の貸し借りをするのは珍しい事ではなく、わざわざ金で買う必要のある美少年だけが陰間茶屋に集まっていたというのが真相なのだ。まして、男を売る稼業である火消しなら尚の事。
「頭が駄目となると弱ったな。誰か陰間茶屋に詳しそうな者は…」
-
山田朝右衛門:栗塚旭(堂々たるカマホモ)「なるほど、それで某に」
「お前は女を遠ざけているから、陰間茶屋には詳しいだろう」
「はあ、そういう事でしたら」
山田浅右衛門代々は、その仕事の罪深さから子を成す事を避け、専ら息子ではなく弟子にその地位を相続させた。歴代の山田浅右衛門の内で、実子相続が行われた例は僅か数例に過ぎない。
おさい:春川ますみ(元ストリッパー)「嫌だねえ。新さんったら陰間茶屋に行く相談してるよ。あんないい男なら女が放っておかないだろうに、わざわざお金出してなよなよした男の子のお尻掘ろうってんだからねえ」
おまち:岐邑美沙子(当て馬女)「新さんが…陰間茶屋///」
「やだ、おまちちゃん。顔が真っ赤だよ。風邪でもひいたのかい?」
め組の頭辰五郎の妹、おまちは徳田新之助に秘かに思いを寄せている。だが、新之助が陰間茶屋に行こうとしていると知ったその時、おまちは下腹に何か熱いものが駆け巡るのを感じた。
-
その頃江戸城では、北町奉行、喜熨斗薩摩守中車が呼び出され、五郎左衛門と越前守から詮議を受けていた。
「これ、薩摩守殿。近頃市中で多発しておる神隠しについてどうお考えかな?」
喜熨斗薩摩守中車:香川照之(懺悔出演)「はっ。北町奉行の総力を挙げて捜査に当たっております次第」
「しかし、北町の月番でばかり神隠しが起こるのはどういうわけじゃ?」
「畏れながら、それは相撲のような物かと?」
「何?」
「相撲は東方と西方に分かれて取り組みまする。どちらが勝つかは時の運。東方ばかりが勝つ事もあれば、その逆もありましょう」
「薩摩守殿、貴殿は奉行職を相撲と一緒になさるのか?」
「これは物の例え。なれど、人を裁くのが某のお役目とあらば、良からぬ連中の恨みも買いましょう。あるいは…」
薩摩守は無言であった越前守の方に一瞬視線をやり、睨みつけた。
「某を陥れれば得をする者もあちこちにありましょう」
-
「薩摩守殿、貴殿何を申されたい?」
「おや、冷静沈着なる越前殿がそのように声を荒げるのはお珍しい」
「これ、薩摩守殿」
「とにかく、奉行所が二つあっても江戸は一つ。某だけに責任があるとは言えますまい」
白々しいと越前守は思ったが、薩摩守は終始堂々としていて、度胸が据わっている。並大抵の相手ではないと越前守は思った。
「某も下手人を捕まえるのには全力を尽くす所存でございます。越前守殿とは手に手を取って、共に下手人を探し、追い詰めとうございます」
-
「そうか。薩摩守はそのような事を」
御庭番助八:宮内洋(昭和ライダーは全員おやっさんの小姓)「しかし、薩摩守は幕閣中でも知られた文武両道の俊英。なんでも元は陰間上がりで、豪商に身請けされたのを足掛かりに旗本株を買って、ついには奉行職に就いたとか」
御庭番おその:夏樹陽子(千葉ちゃんのカキタレ=JACとジャニーズは同じ仕組み)「それ故、いささか酒癖は悪く、相撲見物が道楽と申しますが、とりたてて悪い評判は聞こえてまいりません」
士農工商の身分制度は後世想像されるほど固定的ではなく、百姓町人の子供であっても武士の養子となる事で武士になる事が出来た。金で養子の身分を売り買いする例もあり、これを俗に御家人株を買うとか、旗本株を買うと称した。
「よし、とにかく薩摩守の身辺を洗え。余は陰間茶屋を調べて来る」
-
「これが陰間茶屋という物か。なるほど凄い賑わいだな。だが、出家が多いな」
「ここには出家はおりませぬ。もし出家が居たら、医者だと偽りまする」
当時の江戸の陰間茶屋は、日本橋葭町と湯島の物が特に大規模であった。特に湯島の陰間茶屋は上野寛永寺の僧侶が通う事から、吉原に負けず劣らずの盛況ぶりであったという。そして、僧侶は遊郭や陰間茶屋に行くときは医者と身分を偽った。当時の医者は坊主頭だったのである。
「しかし、女が歩いているのはどういうわけだ?吉原には女の客は居なかったぞ」
「陰間を欲しがるのは何も男だけとは限りませぬ。裕福な後家なども陰間を買いまする。まったく、汚らわしい」
「そんな言い方は無いではないか」
「…」
-
吉宗と朝右衛門は引手茶屋で酒を飲み、「蛇尼図屋」という大見世に登楼した。
「京山科から来た茶羅男と申します」
「ほう、山科か。大石内蔵助が隠匿した所だな」
「はい。それじゃあ『黒船節』やります。それズンズンズンズン」
茶羅男と名乗った陰間は吉宗の前で服を脱ぎながら、奇妙な踊りを踊り始めた。上方では親しまれている黒船節という踊りである。
「紀州白浜に夏が来りゃ」
「おい、待て。俺の知っている黒船節とは違うな。そもそも、お前は上方の生まれではないだろう」
陰間茶屋では柔和な上方出身の少年が好まれ、江戸の生まれの陰間も上方生まれと偽って商売をした。これは何も陰間茶屋に限った話ではなく、吉原で所謂廓言葉が発達したのは、遊女が田舎生まれである事を隠す為であるという。
-
「変に上方風にせんでもいい。俺は肩を張ったのが嫌いなのだ」
「すいません。見て、見て、見て肛門!」
「そのゲイはやめろ!手討ちにするぞ!」
とはいえ陰間茶屋の実態を知る為にも、吉宗は陰間と仲良くなる必要があったし、そこは天下の将軍吉宗。男には大層モテる。
「しかし、お前は踊りはそれなりに上手だが歌は下手だな」
「店の方針なんです。踊りは藤間紋蔵先生(舞踊指導:ガチホモ)がばっちり仕込んでくれるんですけどね」
「そんな適当でいいのか?」
「まあ、うちは男の客より女の客に人気がある感じで…」
「ん?隣がうるさいな」
「あの人は得意客っすから。さあ、お侍様も…」
吉宗は不審に思ったが、あまり深く留めなかった。結局のところ、吉宗は男が好きなのだ。
-
「おら、俺を誰だと思ってる。俺を怒らせると江戸で陰間は出来ねえぞ!」
「渡辺様、痛いよ。やめて…」
「じれったいね。お前達もただ観ているんじゃねえ。俺の一本うどんを食べろ!」
隣に将軍が居るとも知らず何人もの陰間を侍らせて好き放題に振舞うこの男、渡辺小五郎:東山紀之(懺悔出演)という北町奉行所同心である。
同心は僅か30俵取りの貧乏侍。それが何人もの陰間を呼んで残酷に扱っている。その真相やいかに?
てーってれーてれれれ!
-
その頃、助八とおそのは薩摩守の屋敷で薩摩守の動向を探っていた。
薩摩守は大の好角家で、回向院の本場所には毎日通い詰めるような男である。用人や中間に庭で相撲を取らせ、それを見てあれこれと講釈を垂れるのが薩摩守の道楽なのだ。
「こら、!そんな事ではいかん。大体お前の左の突っ張りが狙いが甘くていかんのだ。左が強くなければ右が生きん!」
中間として屋敷に潜り込んだ助八は、薩摩守の周りに芸者が侍っているのを見ながら、薩摩守が実に相撲に詳しいのに感心した。
「次、そこの新入り!」
助八にお呼びがかかり、いつもの厚着を返上してまわし一本になった助八が土俵に立った。薩摩守の力士の好みは変わっていて、細身で引き締まった、突き張りの得意な力士を好む。だから助八は口入屋で喧嘩をして売り込んだのだ。
相手は天狗のような赤い顔と大きな鼻をした男だ。行事の軍配が返った途端、助八はこの大きな鼻に横殴りの張り手を食らわせた。
「おお、いいぞ!」
天狗も負けてはおらず、助八の顔を張り返し、そのまま突っ張りの応酬となった。これこそが薩摩守の好む相撲で、芸者に酌をさせる酒も増える一方だ。
「見ろ。あの助八とやら、左の使い方がしっかりしておる。天狗も4戦3勝のなかなかの使い手だが、これは手強いぞ」
取り組みは二度の水入りが入り、最後には助八が天狗の横面に左の張り手を食らわせ、天狗は気絶して土俵に落ちた。薩摩守は大喜びだ。
-
「助八とやら、見事なり。この調子で勝ち進めば、お前を用人として取り立ててやろう。おぬしら、酒と料理を用意してあるから、今日は存分にやれ!」
にわか力士たちはわっと声を上げ、助八には褒美の一両小判まで贈られた。江戸の庶民の評判も決して悪くなく、一見すると尚武を旨とする気前の良い立派な殿様に見えるこの男が、果たして子供を誘拐して陰間茶屋に売るのかと助八は疑問に思った。
薩摩守は芸者を連れて奥座敷へ入った。それを天井裏から覗いているのが、おそのである。
「まったく。せっかく苦労をして北町奉行になったというのに、神隠しの件でやりきれん。わしを癒してくれるのは、相撲と芸者だけ」
薩摩守は好色な笑みを芸者に向ける。だが、この芸者は顔は良いが、あまり芸が上手ではない。
どこから呼ばれたのか知らないが、置屋が分かれば代わりに呼んでもらえるとおそのは確信した。
「もう唄はよい。床に参れ。ほれ」
「あ、お殿様、お戯れを…」
ここで主役が殴り込んで来るのが時代劇の型であるが、ここはR-18なので助けは来ない。芸者は嫌と言いつつ甘い声を出しながら、玉の柔肌を曝け出し、薩摩守は息も荒くのしかかる。勿論、こんな光景に目を背ける程おそのは初心ではない。
-
薩摩守と芸者のまぐわう音だけが、しばらく響いていた。陰間上がりだけあって薩摩守は床上手らしく、芸者の気のやり方は商売っ気だけの物ではないように見える。
「あっ…あぁ!!」
芸者の声色が変わった。おそのは最初は薩摩守が少し乱暴にしたのかと思ったが、そうではない。
「やめて…痛い!あぎっ!」
おそのの顔色が流石に変わった。薩摩守は、芸者に噛み付いている。
「やめて!いたっ!おぉ!」
「泣け。もっと喚け。お前の女陰は痛い痛いと言いながら魔羅を締め付けて来るわ」
「お殿様…お戯れが…過ぎまする!」
「ここはわしの屋敷よ。お前が嫌がるのなら、無礼打ちで済むのじゃ。ほら、血が滲んで良い化粧になったのう。おっ…うっ…」
赤子が鼠に噛まれるという事はあっても、芸者に噛み付く殿様というのは常軌を逸している。おそのも男を悦ばせる術は色々と学んでいるが、これは手に負えない。
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「女などとは汚らわしい。女などは大嫌いだ。下賤な生き物の癖に血が流れていて、下賤なくせに交わりの悦びは感じよる。ほら、どうじゃ?どうじゃ!」
芸者の肌を噛み破りながら獣のように芸者を貪る薩摩守の狂気には、それなりの理由があった。
薩摩守は本来は陰間ではなく、名門の役者の御曹司だったのだ。だが、父が妻を捨てて大年増の踊り子に狂い、薩摩守は母と共に家を出され、貧苦の末についには陰間に落ちた。
薩摩守は自分を地獄に落とした女を呪い、自分を慰み者にして苦しめる男を呪った。尻の痛みに苦しみながら男が果てるのを待つ地獄の日々に耐え、ある豪商に身請けされて武道と学問にはげみ、ついには旗本の養子となって奉行職にまで上り詰めた。だが、その出自がいつも邪魔だった。こうして奉行職に就いた時には薩摩守はもう50歳。
「越前守め、上様の権勢を良い事にわしを疑いよって。わしの方があいつよりも良い奉行じゃ。陰間として地獄を見たわしが、子供をかどかわして陰間に売るなど、そんな事は…女、もっと締めろ、もっと苦しめ、うお、おっ、う…っ!」
おぞましい物を見たおそのもまた、薩摩守が犯人だという説に疑問を持った。お役目の上で特に悪評が聞こえて来ず、陰間がどれだけ辛くて苦しい仕事なのか知っている薩摩守が、いくらなんでも子供を誘拐して陰間茶屋に売る事が出来るだろうか?
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一方、助八は離れの宴会で他の者と酒を飲んでいた。中間、用人、同心、単なる町方の相撲自慢、参加している者は色々だ。
「皆の衆、やっとるな」
そこへ入って来たのが、血だらけの芸者を床に残して戻ってきた薩摩守である。さっきまでの事が嘘のように、薩摩守の目は相撲取りに憧れる少年のように輝いている。
そこで助八の妹のふりをしておそのが迎えに来て、薩摩守がいかに危険な性癖の持ち主であるかを耳打ちした。
「それは恐ろしいな」
「しかし、陰間の苦しみを知った薩摩守が、果たして子供を陰間に売るような所業が出来るでしょうか?」
「確かに。だが、そうだとしても薩摩守は芸者に噛み付いて血だらけにしたのだから、見張らないわけにはいかんな」
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薩摩守が招いた同心の中に、渡辺小五郎が居た。甘やかされた婿養子で、昼行燈と呼ばれる無能な男だ。無論、相撲でも良い所が無い。
小五郎は厠に立ったが、誰も気に留めなかった。それからしばらくして薩摩守も続いた。
(必殺のテーマ♪)
薩摩守は厠に行かず、その途中にある仏間に入った。そこには小五郎が待っている。
「渡辺、本当か?本当に明石志賀之助の手形があるのだな」
「ええ。妻の一族に代々伝わっていた物で。何しろ日野下開山は神様ですから、まずはご先祖様にお知らせを」
小五郎は仏壇の横で懐から巻物を取り出した。そこには日下開山、後に初代横綱と呼ばれる明石志賀之助がおされている。
「おお。よし、ご先祖様に報告を」
薩摩守は仏壇の前に正座し、仏壇を開いて手をあわせた。
「おぉ!…おっ!」
その瞬間、薩摩守は腹に刀を深々と突き立てられ、口から血の泡を吹きながら絶命した。
「手前の神も仏もねえ芸者遊びの報いだ。俺達までお役御免になったらたまらねえから、切腹って事で勘弁してやるよ」
仕事人渡辺小五郎、薩摩守に身も心もずたずたにされた芸者から十両で依頼を受け、偽物の手形を餌に上役を殺した。
小五郎は薩摩守が切腹したという体裁を整え、何食わぬ顔をして厠に戻った。薩摩守が切腹したと判明したのは、客が帰ってからだ。
-
「何?薩摩守が切腹!?」
すっきりして城に戻った吉宗は、薩摩守切腹の急報を聞いて仰天した。
「私達が目を離した隙に仏間にて」
「しかし、あの薩摩守が切腹するとは信じられませぬ」
「忠相、北町奉行所の様子はどうなのだ?」
「はっ。いささか奇妙な点が」
「奇妙?」
「確かに薩摩守が芸者に非道なる行いをしたのは事実。なれど、神隠しの件に関しましては、ちゃんと捜査を行っていたようなのでございます」
北町奉行所は薩摩守切腹によって機能不全に陥り、臨時に南町奉行所が詮議に当たっていた。そして、神隠しの一件に関して言えば、薩摩守は隠密まで雇って犯人を捜していた。
「とすれば、神隠しの真犯人は陰間茶屋を探らねば見つかりそうもないな」
「上様、まさか今宵も陰間茶屋に?なりませぬ。上様…上様!」
-
吉宗は今日は朝右衛門の案内をつけず、一人遊びである。今日は昨日とは別の陰間を呼んだ。だが、吉宗は早くも陰間茶屋に飽き始めていた。
「陰間というのは、入れて出すだけで味気ない物だな」
確かに吉宗は男色家だが、所詮陰間は客が欲を満たす行為であって、武士の崇高な衆道とは似て非なる物である。売り物買い物の仲は、思ったより退屈だと吉宗は思った。
「それが陰間じゃないっすかね?」
陰間は男と男の交わりをそういう物だと思っているので、吉宗の言葉に不思議そうにしている。そもそも、この陰間は吉宗の眼鏡にかなうような美男とは到底言えないのだ。
「しかし、今日も隣はうるさいな」
「今日は楼主様も居ますね」
-
「わはは。今日は金がたっぷりあるぞ。おら、今日も俺の一本うどんを食え!尾張風の味噌味だぞ!」
「おぉ…いいぞ…もっと掘れ」
糞の付いた魔羅を陰間にしゃぶらせて下品な笑みを浮かべる小五郎と、その陰間に尻を掘らせて生娘のように愉悦に叫ぶこの男、この店の楼主で蛇尼図屋喜多衛門(市川猿之助:懺悔出演)という。
高野山の女犯僧の子だと伝わるこの妖怪は、一代にして湯島で一番の陰間茶屋を作り上げ、今や江戸で陰間茶屋をやりたいのなら、この男の機嫌を損ねれば不可能とまで言われている。
「ほら、もっと腰を使えyo!」
「ふはは。蛇尼屋、おぬしも好きよのう。生意気な東陰間に掘られて俺の女房よりも鳴きよる」
「渡辺様にはかないませぬ。北町同心でありながら、糞の付いた魔羅を陰間にしゃぶらせるなどとは」
「「ふはははは!」」
-
醜い。厠帰りに思わず覗いてしまった吉宗は、この渡辺という同心をさげすんだ。吉宗は確かに小姓を抱えているが、小姓たちの将来に責任を負う立場でもある。小姓がやがて小姓を持てるような立派な武士になれるように育て上げるのが衆道の醍醐味であり、美しさなのだ。
確かに陰間茶屋は女を愛せぬ男にとって必要な場所なのかもしれないが、衆道のように崇高な美しさが無い。ましてや、あの座敷は地獄だ。
「おい。あの渡辺という同心は、何者なのだ?」
「さあ?大方楼主様の知り合いじゃないっすか?」
同心は30俵取りの小身だが、その立場上各地の商家と繋がりを持ち、わいろや各種の役得を得ている。あの渡辺という男もそうなのだろうと吉宗は考えた。
「だが、あのように陰間に乱暴に振舞うのは関心せん」
「お侍様は、優しいから好き」
とんだ陰間に惚れられた。吉宗は思わず苦笑した。
-
「何?薩摩守の切腹に?」
「あれは他殺かと存じます」
城に帰る前にめ組に寄った吉宗は、朝右衛門から驚くべき報告を受けた。
「何故そう思うのだ?」
「傷の角度が切腹とは異なりまする。それに、薩摩守の差料は奉行にしては安物。あれだけの傷は余程腕の立つ使い手が業物を使わねば」
山田朝右衛門は刀にかけては当代一の目利き。まさか間違いがあろうはずもない。
「それに、女と交わりながら噛み付くような犬畜生に、切腹する覚悟は無いかと。まったく、武士が女などにうつつを抜かすからいかぬのです」
「しかし、女と交わるのを武士が辞めたら、武家は残らず無嗣断絶ではないか」
「…」
吉宗が男色を好み、大奥を嫌ったのは確かだが、お世継ぎが居ないわけではない。実は、紀州藩主時代には既に嫡子家重は生まれていたのである。
-
「それで、お主は薩摩守を斬った刀が安刀の中に混じっておれば、それが分かるか?」
「はっ。あれだけの業物は世にいくらもないかと」
「ふぬ。それなら、お主にも一肌脱いでもらおうか」
「まだ、それには日が高うございます」
「何を言っておるのだ」
「…///」
-
北町奉行所は奉行を失って混乱に陥り、臨時に越前守が指揮を執っていた。
「なるほど。与力同心の中に下手人が居ると」
「そうだ。薩摩守は宴会の最中に抜け出して腹を切った。それなら、宴会に来ていた与力同心の中に下手人が居るとすれば筋が通る」
「しかし、私が北町の役人に疑いの目を向けると、それこそ江戸の街の治安に取り返しの付かない問題が起きましょう」
北町と南町の間には埋めがたい溝があり、越前守が北町の内紛に疑いを向けるのは江戸の治安維持上の深刻な不安を招く可能性があった。
「と言って、与力同心全てを調べるのは容易ではない。御庭番が足りん」
奉行所の役人は与力が各25騎、同心が約100人である。そのほとんどが薩摩守の宴会に参加していたので、御庭番だけでは到底手が回らない。
「それで、良い考えがある」
-
「北町の諸君、大儀であった。薩摩守殿の突然の切腹は残念であるが、上様が皆の働きに感動されておられる」
薩摩守は表向きは神隠しの捜査の難航を理由に切腹したと結論付けられ、その旨が越前守によって北町の与力同心に発表された。
「ついては、公儀御試役、山田朝右衛門殿がおぬしたちの差料を目利きして、最も優れた差料を帯びた者は特別に上様にご拝謁して差料を献上し、その代わりに上様の差料と御目録が下げ渡されるとのお達しである」
与力同心はどよめいた。何しろ、彼らは本来将軍との謁見は許されない身分である。そして御目録とはとどのつまり金が貰えるという事であり、この場合百両は下らない。常に貧乏している奉行所の役人にとっては、一生拝めないような大金だ。
早速朝右衛門が呼ばれ、与力同心が行列を作った。不正が出来ないように非番の南町同心が見張りに付いて、次々と朝右衛門が彼らの差料を確かめていく。
「うぬ…これは?」
ある同心の番が来た時、朝右衛門は顔色を変えた。
「相州物だが、誰の作だ?」
「はあ、無銘です」
「…恐ろしい。無銘でもかようなる業物が世にあろうとは」
北町奉行所きっての無能の昼行燈、渡辺小五郎がこの滅多に無い栄誉を勝ち取った。
-
「何?渡辺だと」
「間違いございませぬ。同心の差料などはなまくらが通り相場。貧乏同心があれほどの業物を帯びているはずもなく、またあの刃にはかなり人を斬った跡が」
朝右衛門の報告を聞いて、吉宗はまさかと思った。薩摩守を殺したのが渡辺で、その渡辺が陰間茶屋で豪遊しているとすれば。
「忠相、その渡辺という同心はこう、優男風の少し背の高い男であろう。働きぶりはどうなのだ?」
「極めて不熱心。お役御免にならぬのが不思議な無能と評判でございます」
「金持ちの倅か?陰間茶屋で豪遊できるような悪い事をしているのか?」
「ちょっと、新さん。なんだよ、軒先で陰間陰間っていやらしいねえ」
め組の側で相談していたので、徳田新之助が助平な話をしていると思ったおさいが嫌な顔をした。越前守も朝右衛門も、どうもこのおかみさんが苦手である。
「あ、すまないな。実は今夜にでも繰り込もうと思って皆で相談してたんだ」
「もう、良い若い者が真昼間からいやらしいねえ。大体大岡様まで何だい」
「ははは。すまんすまん。こればっかりは男だけの世界だからな」
「新さんたちが…陰間通い///」
物陰から見ていたおまちは、心地良く、しかし後戻りのできなくなるような後ろ暗い興奮を感じていた。
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この時代、芝居小屋は木挽町にある中村座、市村座、守田座の所謂江戸三座のみが公認されていたが、実際には各地の盛り場や寺社の境内に地芝居や宮芝居があり、江戸三座よりも安価な娯楽を市民に提供していた。
渡辺小五郎は御庭番に後をつけられているとも知らず、そうした掛け小屋の一つに入り、芝居を見ずに客を物色していた。
そう、それこそが渡辺小五郎のやり口である。芝居に目を輝かせる美しい少年を見つけ出し、同心の地位を利用して身辺を探り、誘拐して蛇尼図屋に売って掘る。まさに鬼畜の所業である。
(…あの小僧は蛇尼図屋が高く買ってくれるだろう)
渡辺小五郎が目をつけていたのは、秀という貧しい知恵遅れの少年であった。貧しい家の子供を狙うのが、この商売のコツだ。
芝居が終わり、渡辺小五郎は秀に言葉巧みに言い寄って茶屋で菓子を奢った。お茶には眠り薬が入っていて、眠りに落ちた少年は蛇尼図屋が手引きした籠に放り込まれ、連れ去られるという仕組みである。
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「You、団十郎みたいになりたいかい?」
立派な座敷の布団の上で目覚めた秀が最初に見たのは、不気味なおじさんであった。
「おじさんだあれ?」
「おじさんはねえ、君みたいな可愛いねえ、子のキラキラした姿が大好きなんだよ!」
蛇尼図屋は鼻息も荒く秀にのしかかり、訳も分からずいきり立つ秀の股間の一本刀を撫でまわす。これ以上醜い光景は、この世にあるまい。
「ライダー助けて(オーズ世代)」
「まったく、蛇尼図屋は好きだな」
渡辺はそれを咎める事なく、秀と引き換えに受け取った金を数えて上機嫌だ。
「You、掘っちゃいなyo!」
「おじさんやめちくりー」
哀れな秀を渡辺に掘るように蛇尼図屋は命じた。最初に掘るのは渡辺で、掘らせるのは蛇尼図屋という暗黙の了解があるのだ。だが、この秀という少年は、渡辺の好みではない。男色家は男の好みにうるさいのだ。
「いや、俺は今日は女房に顔見せなきゃいけねえ。精々楽しみな」
渡辺は婿養子で、妻と姑に甘やかされている。将軍に謁見して金と差料を拝領できるとなれば、家にも顔を出さなければいけない。ましてや明日は将軍と拝謁するのだから、色々と準備が要る。
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「陰間の力は楼主の力、You、もっと腰使っちゃいなYo!」
「あぁ、出る!ああ^〜」
蛇尼図屋は若い陰間の精を尻で受け止めるのが何より好きだ。こんな男に訳も分からず初めてを奪われては、もう秀は女を愛せないに違いない。
秀が射精しようとしたまさにその時、蛇尼図屋の顔に扇子が飛んだ。
「ファッ!?」
驚いて秀を離した蛇尼図屋が見た物は、目に怒りの炎を宿した吉宗であった。
「何者?」
「俺は天下の風来坊、三つ葉葵の風が吹くってな。蛇尼図屋喜多衛門。その方北町奉行同心、渡辺小五郎と結託し、江戸市中の子供をかどかわして陰間にして尻私欲を肥やしたる罪、言語道断!」
「な、何を証拠にそんな事を」
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「この且坊という陰間にされた少年が全て俺に褥で教えてくれた。蛇尼図屋、お前は犬畜生にも劣る外道だな」
「このおっさん、俺に浣腸して糞遊びさせたんだ!」
吉宗が陰間通いをしたのは、単なる私欲の為だけではない。め組が探していた且坊という少年を探す為だ。うまい具合に、今日吉宗に付いたのが陰間に落とされた且坊だったというわけである。
「蛇尼図屋、己のやった事の償いは死でも生ぬるい」
ジャキン!と刀が鳴るところだが、吉宗の腰に刀は無い。吉原同様、陰間茶屋でも心中や喧嘩を避ける為に刀を預けてから登楼するのだ。
「成敗!」
「出合え、出会え!」
そこへ牛太郎と呼ばれる用心棒兼雑用係がドスを手に殺到した。
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(BGM 4-43)
吉宗は丸腰だが、全く臆した様子はない。吉宗の相撲好きはつとに有名で、龍虎と初めて会った時には八百長相撲を断った龍虎の弟分を殺した侍を、素手で全滅させたこともある。
用心棒は天下泰平の侍よりは強い。だが、子供を愛する吉宗の心は燃えている。且坊から習った上段蹴りまで飛び出して、用心棒たちは蹴散らされた。芸妓のふりをして潜り込んでいたおそのと、客のふりをしてやはり隠れていた助八が加勢し、たちまちのうちに蛇尼図屋を取り囲むのは闖入者と小姓たちだけになった。
「お前達、助けてくれ。一生貧乏暮らしのはずだったお前達に、決してできないような贅沢をさせてやったのは誰だ?」
陰間たちを盾にしながら情けなく身を守ろうとする蛇尼図屋。しかし、陰間たちが蛇尼図屋に襲い掛かった。
蛇尼図屋が好みの江戸生まれの気の荒い陰間ばかり集めたのが裏目に出た。彼らは幼くとも江戸っ子だ。受けた屈辱は許さない。そして、ケンカが三度の飯より好きだ。
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「蛇尼図屋はあの子達に任せておけばよかろう」
「しかし、渡辺小五郎を逃がしました」
「おその、心配するな。あやつは向こうから来ることになっている。それより助八、お前は臭うな?」
「臭う?」
「まさかお前、任を忘れて…」
「そ、それは…」
「助八殿!///」
御庭番助八とおそのは互いに憎からず思っている幼馴染。おそのが怒るのも無理もないが、女を心から愛せない吉宗にはその若々しさが羨ましい。
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蛇尼図屋が陰間に嬲り殺しにされたとはつゆにも知らない渡辺小五郎は、本来決して許されぬはずの登城を果たし、将軍の前に平伏していた。
「北町奉行同心渡辺小五郎。その方小身でありながら武士の魂を決して疎かにせず、奉行切腹という難事を乗り越えたるはあっぱれ。おぬしの差料、見せてもらう」
「ははぁ」
渡辺は五郎左衛門に差料を渡し、吉宗はそれを抜いた。確かに、朝右衛門の言った通りかなりの業物で、切っ先に僅かに鈍りがある。
「見事なり。代わりに余の差料を下げ渡す」
今度は吉宗の差料を五郎左衛門は渡辺の元へ持って行った。
「構わぬ。抜いてよく見ろ」
「上様のお許しが出た。さあ、よく見られよ」
渡辺は吉宗の差料を抜き、その美しさにほれぼれした。だが、刀を裏返すと渡辺の顔色が変わった。表裏の波が同じ。これは御禁制の村正だ。
「気付いたか?それは村正だ」
-
「こ、これを差料にするのは恐れ多き事!」
「ところで、お主の差料は、切っ先が少し鈍っておるようだのう」
「畏れながら、同心の身分では研ぎに出す金子にも事欠く次第。それでも武士は高楊枝。家伝の刀を安刀に取り替えるも忍びなく、そのままに」
「なるほど。30俵取りでは研ぎ屋に頼めぬは道理。じい、目録を持て!」
次が渡辺お待ちかねの目録。はたして金は百両か?二百両か?
「構わぬ。開けて読め」
「ははっ!」
だが、目録の中身を見た渡辺はまさかと思った。そこに金額は無く、薩摩守を筆頭に、以下自分がさらった陰間の源氏名が並んでいる。
「こ、これは?」
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「渡辺小五郎、その方薩摩守を切腹を偽って殺し、挙句同心の地位を利用して江戸市中の子供をさらって陰間茶屋に売るとは言語道断。山田朝右衛門の目利きで薩摩守の腹を切ったのはこの刀である事は明白。蛇尼図屋との一軒も南街奉行所が改めた。わざわざ村正を下げ渡したのは、その方にもはや差料は必要ないからだ。貴様も武士なら、その村正で潔く腹を切れい!」
「…大事ござらぬ。お騒ぎあるな」
全て露見した。幕閣たちが迫って来る。だが、渡辺は冷静だった。
「騒ぐなっつうの!」
だが、次の瞬間渡辺はたまたま近くに居た老中鷹野備前守(遠藤太津朗:近藤正臣に迫って拒まれる)に斬りつけた。
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渡辺小五郎、その正体は凄腕の仕事人である。許せぬ悪とは言え、金の為に人を殺す業深さの癒しを渡辺小五郎は陰間茶屋に求めるようになり、ついにはその快楽に溺れ、陰間茶屋で遊ぶ金欲しさに殺される立場に落ちた。
だが、その手にあるのは妖刀村正。渡辺小五郎は腹を切るのを拒み、あろうことか妖刀を手に殿中を駆け出した。
「かかってこいっつうの!」
高笑いしながら次々と幕閣を切り伏せて広い場所に出た渡辺小五郎。そこに吉宗が現れたの見て大喝した。
「どうした上様?俺の首はまだついてるぜ」
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「陰間茶屋をお取り潰しにするは容易。なれど、女を愛せぬ者が難儀する。己のような尻の穴の小さい者が居ては、ご政道が切れ痔になる!」
不遜な渡辺小五郎に吉宗は峰打ちではなく本気で斬りかかった。だが、渡辺小五郎の剣筋は並ではない。
「はっ!やるじゃん」
ついには吉宗は守勢に追い込まれ、大刀を落して脇差を抜いた。
「どうしたどうした?そんな短いので俺の首に届くのかよ?」
その瞬間、死を覚悟すべきであろう。だが、吉宗はしなかった。助八の竹トンボが飛び、渡辺小五郎の右手を貫いたのだ。
「そういうのありかよ?」
右手の自由を失って左手一本で助八に迫る渡辺小五郎。だが、慌てて駆け付けた越前守が、渡辺小五郎の背中を深々と突き刺した。
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「とぅないやややややてぃあ…とぅないややややや…てぃあ…」
倒れ伏せた渡辺小五郎は一瞬起き上がり、奇妙な歌を歌ったかと思うとまた倒れ、二度と起き上がらなかった。
「忠相、助かったぞ」
「某も奉行、薩摩守も芸者に非道な行いをしたとて奉行、上役に罪を押し付けて殺す外道は許せませぬ。それに…」
「陰間に狂った犬が、衆道の契りを交わした上様に手向いするのを見過ごしたとあれば、この越前守、腹を切って詫びなければなりません」
「これこそ、衆道の美しさよのう」
それ以上の言葉は吉宗と忠相には必要なかった。衆道は、言葉が要らない。
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幸い斬られた幕閣に重傷者は無く、渡辺小五郎は狂乱して死んだと届けられ、渡辺家の者は江戸払いで済まされた。
薩摩守は神隠しの捜査に失敗したのを苦に切腹したと表向きは届けられ、減封の上で末期養子での相続が許された。
蛇似頭屋をなぶり殺しにした陰間たちはおとがめなしで親元に返され、蛇尼図屋は財産没収の上でお取り潰し。蛇尼図屋に挨拶をせねば陰間茶屋は出来ないという暗黒時代は終わり、また湯島に白い梅が咲いた。
陰間茶屋を禁令にすべしという意見も出たが、吉宗はこれを退けた。男色を欲する者、陰間を欲する者は沢山居るからだ。
「且坊、良かったな。お旗本の養子に取り立てられるなんて、なかなかねえことだぞ」
「頭、おいらは馬に乗るのが夢だったんだ。きっと立派な騎馬武者になって見せるぜ」
事件解決に大きな役割を果たした且坊は、吉宗の仲介である信頼できる旗本の養子になる事が決まった。この活発で体格の良い若者はきっと良い武士になる。それが日本の未来になる。徳田新之助として且坊の門出を見守る吉宗の顔に、大輪の菊のような笑顔が漏れた。
(炎の男♪)
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CMその1:漫画シーンの話題をさらった意欲作、マツケンクエストが読めるのは月刊少年チャンピオンだけ!
CMその2:Amazonプライムビデオの東映オンデマンドに加入すれば時代劇が見放題。柳生一族の陰謀、影の軍団、銭形平次、素浪人月影兵庫まである!
CMその3:必殺シリーズは松竹なのでU-NEXTで全部観られます。渡辺小五郎なんかより劇場版観ようぜ。ガチホモ真田広之の薙刀アクション観ようぜ。千葉ちゃんになりたいね(レ)
CMその4:舞踊指導でお馴染み、藤間紋蔵先生の嵐電太秦広隆寺駅のホームにある世界唯一(多分)のエキナカ稽古場で、君も、稽古、しよう(提案)
最後に:やらかした俳優が殺され、やらかした企業や政治家が殺される、いわゆる懺悔が必殺シリーズの重大な社会機能でありました。私はこの精神に則り、市川猿之助と香川照之の贖罪を微力ながら支援する所存であります。東山はひでたるとまひろじゅんぺい
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SS形式でもはっきり分かる教養の深さ、男色への造詣の深さ、時代小説としての奇想
これ書いてるの野生の荒山徹でしょ
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脳天気な暴れん坊将軍と陰鬱な必殺シリーズを巧みに接ぎ木し、ホモネタに次ぐホモネタで読ませる
もうさ、東山はこれスペシャルでやって芸能界完全引退でいいんじゃない?
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激エロだな(褒め言葉)
私もあなたのようでありたい
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尻私欲で草
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>>衆道は、言葉が要らない。
この名文狂おしいほどすき
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ホモばっかりじゃねーかお前の暴れん坊将軍世界(褒め言葉)
お前もしかして無類の香川照之好きか?
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>>95
私は埼玉県民なので必殺シリーズといえば朝のテレ玉ですねぇ!
やっぱ……悪役に津川雅彦さんや中尾彬さんが出てた頃の必殺シリーズを……最高やな!
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懺悔ホモビをマジでやったのもさることながらファミリーの脇での使い方が上手い
そしておまちちゃんが危険な領域に突入してるの草
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