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く西遊記第810回 野獣妈妈(ママ)
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月光寺にて住職苦悶し
山洞にて女怪絶頂す
さて、三蔵一行が西へ歩みを進めるうちに高い山が見えてまいりました。そのまま近づくうちに麓に山門があるのがわかります。ちょうど暮れ方。三蔵はほっと息をついて
「悟浄や、ちょっと先に行きあの僧院の方に私たちのことを説明して一晩の宿をお願いしておくれ」
といいました。悟浄は荷物を八戒に預けると
「承知いたしました」
と足取り軽く駆け出します。
三蔵たちが悟浄の後からゆっくり進んでいくと、例の僧院は随分大きいことがわかります。その様子は
殿閣は層々
回廊は畳々
山門の外には巍巍として万道の彩雲
五福堂の前には艶々として千条の紅霧
入定の僧性を定め
木に啼く鳥音関たり
寂寞として塵なきは真の寂寞
清虚にして道あるは果たして清虚
三蔵は馬を降り、悟空と八戒は荷物を下ろして門内へ入ろうとすると、1人の僧侶が悟浄を伴って出てきました。しかし妙なことに僧は筋骨隆々で剃髪もしていません。それとわかったのは、絹帯で結んで上をはだけた着物がよくよく見れば袈裟でさらに片手に木魚を提げていたためでした。三蔵は門の傍に侍立して挨拶します。奇妙な僧も急いで礼を返し、
「お見それして失礼いたしましたっす。拙僧はこの月光寺の院主を務めておる鯉須賀(こいすか/リーシュフェア)と申す者。事情はお弟子より伺っているっす。どうぞ方丈へ、お茶を差し上げます」
悟浄がうまく説明したのでしょう。鯉須賀と名乗る僧は悟空や八戒を見ても驚いた様子を見せず一行を山門の奥へ案内します。
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しかし、しばらく歩くうちにきょろきょろと落ち着きなく見回していた八戒が悟空に囁くのです。
「おい兄貴おかしいぜ。これだけでかい寺院だ、それなりに坊主がいるのが道理ってもんだろう。だが見ろよ、長い階段を登って広い敷地をずいぶん歩いた割に僧侶なんて数えるほどしか見かけねえ」
たしかにここまで見かけたのは院主のほかは僧が2人と壮年の寺男が1人ばかり。言われて悟空、この寺が怪しく見えてまいります。おれたちの飯の用意は大丈夫なんだろうか、と鼻息荒く寄せてくる豚面をぽかり、と殴りつけ、
「おい悟浄、お前はどう見る」
悟浄に水を向けます。悟浄は油断なく周囲に目を配りつつ
「なるほど、たしかに私が挨拶に伺った時も稚児の1人すら見かけなかった。改めて見ればこの寺には僧侶……とりわけ若い者が不自然に少ない。二師兄(アースーシォン)も偶には鋭いところに目をつけるものだ」
それを聞いて頷いた悟空は耳より如意棒を取り出だしひとゆすり。鉄棒ほどの長さに変えると、素早く飛び上がって鯉須賀の前に躍り出ます。
「やい坊主、貴様何者だ。どこの妖魔や精怪か知らぬが下手な変化でみどもを騙そうなど思うなよ。寺の僧侶たちをどこへやった」
突然の悟空の大喝に三蔵は青ざめ、
「これ悟空、お前はなんということを言うのだ。それにそんな物騒なものを振り翳して。お前は我々に一晩の宿を貸してくれるという僧正に申し訳ないと思わないのか」
と数珠を握りしめます。悟空慌てて
「お師匠さま、お師匠さま、緊箍呪を唱えるのはおよしください。この寺を歩いて気づきませんか。僧が異様に少ないのです。その割に大きな僧房があって敷地もそれほど荒れていない。つまりこの寺には元々坊主が山ほどいて、そいつらはつい最近ごっそり消えちまったってことです」
悟浄と八戒は得物を構えて鯉須賀と三蔵の間に立ちました。三蔵は紙のように血の気が引いた顔を険しくして思案します。すると黙り込んでいた鯉須賀の目から不意に涙がハララララァ…と溢れるではありませんか。彼は三蔵に叩頭し、
「御仏に誓って拙僧は妖怪変化の類ではないっす。しかしながら当院に僧侶が少なく、また稚児が1人もいないのは紛れもなく妖魔の仕業。無礼を承知の上でお頼み申し上げます。どうか、この山に巣食う妖魔を退治していただきたいっす」
苦悶の表情を浮かべるその顔はとても演技だとは思われないほど憫然たる様子であります。ひとまず話を聞こうという三蔵の提案により泣き濡れる院主を宥めすかして抱き支え、一行は方丈へと入りました。
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院主の涙も歩いているうちにようよう止まり、部屋に入る頃には足腰に力も戻ったようでした。茶の支度を手ずから整えつつぽつりぽつりと話し始めます。
「拙僧は元々この寺の院主ではなかったっす。いえ、僧侶ですらなかった。『自分』は本来ここの寺男で、ことの始まりは一月前、僧侶の真似事をするなんて考えたこともない頃の話っす」
鯉須賀は一同に茶を差し出して続けます。
「毎朝起きると寺の稚児が数名消えているんす。調べてみればどうやら最近この山に住みついた女怪が攫っていることがわかりました。しかし寝ずの番をつけても一向に女怪を止められません。それどころか番をしていた若い僧や寺男、終いには結界を張っていた院主たち高僧も攫われてしまったんす」
「幾人ほど攫われたのですか」
悟浄が口を挟むと鯉須賀は答えます。
「まぁ120人ぐらいじゃないすか。残った者も皆怖がって逃げてしまいました。今残っているのは身寄りのない僧や下働きの者が10人ちょっとくらいっすね、案外少ないっす。その残った者達で話し合った結果、形だけでも院主を置くことになったので僧たちを差し置いて自分がそれをやっているわけっす」
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そこまで聞いた三蔵は悟空に向き直ります。
「悟空や、私は鯉須賀殿を助けて差し上げたいと思う。できれば攫われた方々も。そなたの力ならなんとかできるのではないか」
悟空嫌な顔をして、
「やれと言われたならできないこともありませんがね、攫われた連中全員を生きて返すのは無理ってことはご承知おきくださいよ」
顔をしかめた三蔵の様子を察し、悟浄が慌てて補足いたします。
「お師匠様、大師兄(ダースーシォン)は決してお師匠様に背くつもりはないのです。女怪が攫ったのは稚児に始まり若い僧、そして法力のある高僧ばかり。きっと精気を求めての所業でしょう。そうなれば初めの頃に攫われた稚児達は恐らくもう……」
三蔵はそれを聞いて惨いことだ、と呟くと小さく念仏を唱え始めます。鯉須賀は頷いて
「でも女怪の目的が肉でなく精気ならまだ生きている者もいるはずっす。院主代理を住職でない自分が務めているのも、髪を落としていないのもそれを信じているからっす」
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こうして話はまとまりました。今日はもう暮れて、一同お疲れでしょうからと鯉須賀はお斎の準備をしに行きます。4人は車座になって翌日の妖魔退治に向け相談をいたします。
「妖怪は山中の洞にいるって話だ。退治に出かける組とここに残ってお師匠様とこの寺の連中を万が一のため守る組に分かれることになるな」
悟空が言えば八戒が
「そんなら兄貴と悟浄で退治に行ってくれよ。人質がいることを考えれば稚児か若い僧に化けて行くのが妥当だ。変化の術では俺は兄貴に及ばない。悟浄だってちと肌が青いが顔貌は若くて男前じゃないか」
「お前まさかおじけているんじゃないだろうな」
悟空がじろりと睨みますが八戒の言うことはなるほど理に適っています。結局その通りにすることにして、お斎が済んだ後は各々床につきました。
その夜、三蔵は厠へ起き出しました。今日の夜空には薄らと雲がかかり、ようやく足下が見えるといった具合です。手を壁につきながら歩き、用を済ませて部屋に戻ろうとすると禅堂の前に女が1人佇んでいることに気がつきました。よく耳を澄ますと泣いているようです。三蔵は近づいて
「もし、そこのご婦人。どうしてそのように泣きなさるのです」
優しく声をかけると女は泣き声を抑え、
「う、うちの坊やが、うちの坊やがいなくなってしまったんだよな〜」
と言うではありませんか。もしや女怪に子を攫われた母親かもしれないと思い、
「わたくしの弟子が明日、山中に入り妖怪を退治しにまいります。もしかすればあなたのご子息も助けてさしあげられるかもしれない」
女は泣き止んで袖から顔を離します。そして一言
「お 前 が ゆ う す け だ ら ?」
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その時、霄漢に風がふーっと吹いて薄雲の簾を捲ります。月光に照らされたその姿は
褐色肌は屎泥の色で
濁った眼(まなこ)は烏金の黒で
皮脂はべたべた漆の如く
襤褸の薄衣乳房も隠さず
腹まで濡らす膿乳幾条
悪臭放つ彩霧を噴いて
容貌魁偉で相は法悦
五体醜悪三尸も逃げる
といった有様です。三蔵がこれが女怪かと悟った時にはもう遅く、女怪の纏うぼろ衣とぶよぶよした肉との間に巻き込まれてしまいました。にわかに湧き立った妖気と臭気に勘づいた悟空が寝所の戸を蹴破った時にはすでに妖魔は山中に姿を消していました。
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哪吒と紅孩児を呼ぼう(提案)
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最近の中国は海外コンテンツをシャットアウトして国内コンテンツのリメイクが盛んと聞いていたけどこれは…
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悟空は地団駄踏んで悔しがり、遅れて飛び出してきた悟浄をこづいた後寝所に舞戻って鼾をかいている八戒を蹴飛ばして叩き起こします。八戒ぎゃっと叫んで飛び起きてあたりを見回し、三蔵の姿が見えないことに気がつきます。事態を察して青ざめますが後の祭りです。その時騒ぎを聞きつけたらしい鯉須賀が走り寄ってきました。彼も寝所の有り様を見て事態を理解したようでした。
「しまった……。三蔵和尚はあれだけの美形で徳を積んだ高僧、狙われることを考えるべきだったっす。自分たちを助けてもらうことだけ考えていたなんて、未熟です……」
苦悶の表情で悔やむ鯉須賀に悟空は声をかけます。
「鯉須賀殿、予定は変わりましたがみどもと悟浄で今から出かけてお師匠様と寺の皆様を助けてまいります。八戒を置いていきますので守りはご安心めされよ」
言い終わると同時に庭に飛び出した悟空はとんぼ返りを打って雲に乗り、山を登って行きます。悟浄もこれに続き、雲を呼び出して飛んで行きました。
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さて、女怪に攫われた三蔵は山中の洞に連れ込まれていました。これがずいぶん広く入り組んでおり、灯りで煌々と照らされた内部は大きな商家ほどの広さがあるでしょうか。女怪は洞の一室に三蔵を寝かせます。饐えた臭気から解放され咳き込む三蔵に女怪は猫撫で声で
「もう夜だからいい子で寝ててくれよな〜」
と声をかけ、寝台に固定された錠を手足にかけました。三蔵は声を上げようとしますが口の中に液体を流し込まれ、声は喉の奥に落ちていきます。どうやら紅茶のようでしたが、わかるのはそこまででした。なにか猿轡をかまされたのを自覚したところで強烈な眠気が襲い、三蔵を前後不覚にしてしまったのです。
次に三蔵が気がついたのは戸が開いて蝋燭の灯りが差し込んできた時です。入ってきたのは女怪。漂ってくる耐え難い臭気が弟子達の助けではないことを悟った三蔵は気落ちしました。
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「ゆうすけ、起きてくれよなぁ〜頼むよぉ〜」
女怪が突然しなを作って媚びるような声を出しました。
「お、お前さゆうすけさ、狸寝入りしてんだら?さっさと起きろよ起きろよぉ〜❤︎❤︎❤︎」
気色の悪い声に鳥肌を立てた三蔵でしたが、それに応える声があり仰天しました。
「こ、これは寝言だけど妈妈(ママ)のミルクを飲まなきゃ起きませーん!それに朝勃ちもしてるからこれも鎮めないとねぇ〜」
ゆうすけ、と呼ばれた応答の主は声と裏腹にひどく衰弱しているようでした。ほおはこけ眼から精気は失われ、やや髪が伸び青々とした頭をしています。それは紛れもなく攫われたという僧の1人のようでした。顔や胸を中心に得体の知れない白いカスや形容しがたい汚物が飛び散り固まったその姿は壮絶なものがあります。
よく見れば入り口から順に攫われた人々が寝台に乗せられ猿轡をかまされています。一番手前の彼だけが猿轡を解かれていたのです。
「ファッ!?朝っぱらからセクハラとかやっぱ好きなんすねぇ〜」
女怪は予定調和と言うように言葉を続けます。
「早くしないと勤行に遅れちゃうけど言うとおりにしてくんなきゃ一生寝たきりのままなんだよなぁ〜」
「まったく、しょうがねぇなぁ〜ホライグどぉ〜」
ボロ衣の帯を解いて、豊かな乳房が弾けるように飛び出します。中には異臭を放つ特濃女怪ミルクがたっぷり詰まっているらしく、三蔵が昨夜飲まされた液体にもこれが入れられていたようでした。
授乳を施そうと、勃起した変色乳首を僧の薄く開かれた口へあてがいます。呼応するように、乳首の先に歯が当たると
「チンポもシコシコしてやるからなぁ〜❤︎❤︎❤︎❤︎❤︎❤︎」
「妈妈(ママ)ーッ!!!!!!!!」
ぬっと伸びた手がシーツの盛り上がりに触れます。ただそれだけで、僧はほとばしるような叫びとともに射精しました。あまりのことに三蔵はたまげます。
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つづきあくしろよ
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三蔵にこんな試練を与えるブッダは、やはりゲイのサディスト
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ガンだーら?
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ちょっと夢枕獏の沙門空海的な雰囲気も感じますね
あの人も玄奘三蔵に詳しかったと思うけどこんな作品を書きたかったのかもしれないな
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三蔵法師って男性なんでしかね?
ドラマの印象で女性だと思ってた
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男ですね
しかも完璧超人です
こいつ一人で何でもできます
お供は別にいらないです
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女怪は飛び散った白濁を愛おしそうに指で掬い、音を立てて弄びます。粘着質の水音が壁に反射し、青臭い匂いが部屋の中に充満しました。ひとしきり精で手遊びをした女怪は、指を、掌を音を立てて啜り、舐め、精液を品のない音とともに咀嚼し飲み下します。満足げなげっぷを1つして、女怪は最初の犠牲者の隣にいた僧に歩み寄ります。
「ゆうすけ、起きてくれよなぁ〜頼むよぉ〜」
始まったのは先ほど寸分違わぬやり取りです。衰弱しきっているはずの僧も抵抗らしい抵抗もせず、生気のない目で同じ文句を繰り返します。三蔵はぞっとして耳をそば立てていました。女怪は攫ってきた者たちから精気を順々に吸い取って段々近づいてまいります。女怪はとうとう三蔵の耳元までやってきました。蝋燭の火にてらてらと照らされる女怪の容姿は月明かりの下で見た時よりも醜悪に映りました。鼻にある大きなイボや凹凸の多い肌が複雑な陰影を作っています。心なしか上気した肌は脂ぎってぬらぬらと光り、妖魔の法悦の表情を不気味に彩っていました。
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「ゆうすけ、起きてくれよなぁ〜頼むよぉ〜」
三蔵は女怪を頭上に感じながら一心不乱に般若心経を誦じます。妖魔は自分の問いかけに応答しない三蔵に苛立ちを感じたようです。
「ゆうすけ、どうして妈妈(ママ)を無視するんだら?いい加減にしないと怒るどぉ〜❤︎」
それでも三蔵はただ無心に読経致します。女怪はとうとうしびれを切らして
「妈妈(ママ)の言うことが聞けない悪い子にはおしおきだどぉ〜❤︎❤︎❤︎❤︎❤︎❤︎」
などと叫んだかと思うと腋から毛を一掴み毟ります。
「ほらいぐどぉ〜❤︎❤︎❤︎」
と言う間にそれを三蔵の口目掛けて放り込もうとしてきます。もうだめかと三蔵が思ったその時。凄まじい勢いで空を切り裂いてきたのは毛玉が1つ。悟空です。悟空はその勢いのまま妖魔に飛び蹴りを喰らわせて師匠を窮地から救い出しました。遅れて悟浄が部屋に駆け込んできました。
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「やい田舎妖怪、貴様小賢しくも洞に隠形の術などかけやがって。おかげでわしと弟弟子は一晩中山の中を駆けずり回ることになったんだぞ」
怒りに毛を逆立てる悟空に三蔵が声をかけます。
「悟空、悟浄、よく来てくれました。だが見てくれ、攫われた方々の様子がおかしいのだ」
弟子たちは僧たちを一瞥します。悟空がなんでもなく言うことには、
「お師匠様、安心してください。精気を吸われて弱っているところに幻術と定身の法をかけられているだけです。おい悟浄、お前はお師匠様と他の坊主どもを解放して守れ」
「承知した。だが大師兄、ここは狭い。私が皆様を助け出すまで無茶はしないよう気をつけてくれ」
悟空はそれを聞いて舌打ちを1つ打ちます。確かに屋敷の1部屋ほどの広さしかないここで暴れては洞が崩れ、生身の僧たちは死んでしまいます。如意棒を派手に振り回す訳にはいかないようです。そこで悟空は毛をひとつまみ抜くと噛み砕き、ふっと吹きます。
「変われ!」
身外身の法です。毛の一片一片が小猿に変じて妖魔に襲いかかります。女怪も負けていません。陰毛を鷲掴んで引き抜き、噛み砕いてぶっと吹き出します。恥垢と唾液でぐっしょり濡れた縮毛がそれぞれ小さな女怪に変わりました。それらはきいきいと喚きながら小猿たちを迎え撃ちます。
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待ってたぜ!
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クオリティが高すぎて若干怖い
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プロかな?
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結構いい文体してるけどなにかやってるの?
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執筆できるAIが暴走しないとこんな恐ろしい文章書けないだろ
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わかりにくそうな部分に適宜解説を交えてるのが憎いですね
女怪の描写をそんな丁寧にしなくていいから…
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腋毛を食わせるとかいう謎の悍しいオリジナル要素
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小猿と小女怪の数はほぼ同じ。力は拮抗するかに思えましたが、意外にも優勢なのは小猿たちです。
「先手衆は敵を抑えろ。残りの者は変化を使え」
悟空は小さな分身たちに的確に指示を飛ばして立ち回ります。身外身たちも元は悟空の一部だけあって中々の働きを見せました。前列の者は身体にそぐわぬ大力で女怪の分身どもを押し留め、後列の者は印を結んで顔が3つ、腕6本の三面六臂に変化ます。それから変化分身は先手衆を飛び越えて、足の止まった小女怪をなぎ倒していきます。
それを尻目に当の孫悟空は見栄を切って声を張ります。
「みどもこそ東勝神洲傲来国は花果山の生まれ、水廉洞主たる天生聖人にして美猴王。斉天大聖、孫悟空なるぞ。この身はかつて天兵10万を相手取った大戦の総大将を演じたのだ。用兵で勝てると思うたか」
仙気を浴び、登仙にまで至った石猿の怒声に洞全体がびりびりと震えます。しかしそれでも女怪は怯みません。
「お前はゆうすけだら?ちんちんとかいろんな所に毛が生えてびっくりするのはわかるけど、妈妈(ママ)に全部任せたら大丈夫だから安心しろよなぁ〜❤︎」
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体をくねらせながらぼろぼろの服をずらし、変色し、垂れ下がった乳房を完全に露わにします。そのまま乳房をむぎゅうと揉んで押しつぶした途端、乳から薄い黄色や紫の混じった白濁が迸りました。
身外身たちは咄嗟に体を寄せ合い背後にその液体を逸らさないように致します。その判断は正解でした。得体の知れない乳を被った分身たちはじゅうじゅうと音を立て煙を噴いて溶けてしまうではありませんか。
炎、雷、刀に槍、矢。しまいには太上老君が持つ八卦炉の熱波すら凌いだ悟空の毛から生まれた小猿たちです。生半なことで斃れるはずがありません。それを溶かす女怪の乳に悟空は目を眇め、三蔵は青ざめます。肉体は只人である三蔵が飲まされた乳と小猿たちを溶かした乳は別物でしょうが、それでも震慄するものがありました。
「元来わしの毛とはいえ、よく尽くしてくれた……」
悟空は静かに、静かに呟いて如意棒を一振り、鉄棒ほどに変えました。後ろでは丁度悟浄が僧たちを部屋の外へ誘導し、動けぬ者を背負い、抱えて入り口まで後退したところです。
「大師兄、その部屋はもう潰して構わぬ」
悟浄の声を聞くや否や、悟空はその脚力で吶喊いたしました。ただ一歩で彼我の距離を食い潰し、女怪の喉元に如意棒を突き込むとさらに踏み込みます。部屋の最奥の壁を突き抜けて、土の中を一息に掘り進んでもまだ止まりません。ついには山の中腹から外へ飛び出してしまいました。
「こ、こんな激しいのが好みなんてやっぱ好きなんすねぇ〜❤︎」
女怪は苦しげな顔を見せますが余力を残しております。吐瀉物と母乳、それから愛液を吹き出してそれを固め、それに乗って宙へ浮いています。悟空も空中で器用にとんぼ返りを打って筋斗雲を足場にします。
突然女怪がしゃがみ込みました。もしやくたばるのかと思えばそうではありません。小汚い褐色の肌をどす黒く染めて、いきんでいるのです。
「で、出ますよ……❤︎」
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最悪の宣言でした。
ジョボッ、ジョボボボボボ……ジョボボボボボ! バチィッ! ミュリッ ギュィィッ……ポンッ! ブチィ……ブッチッパ! ……ピチョン……。
女怪が汚物雲の上にひり出したのはそれを大きく上回る劇物でした。ほかほかと湯気をたてるそれは女怪の肌を思わせる茶色を基調に、硫黄のような濁った黄色や冴えざえとした黄緑、黒や紫といった暗色、さらには白が点々と散る実に不愉快な色合いです。
さらに尻まで覆った女怪の縮れた毛が巻き込まれて汚物からまばらに生えているように見えます。未消化のニラやとうもろこしの粒も色合いを豊かにしております。
常人の視力を上回る悟空の目にはさらに糞便の表面にぽつぽつと気泡のような穴を開けて顔を覗かせる、ギョウ虫などの寄生虫がウヨウヨと蠢くのを捉えました。
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迫真の文章力でジュマを出力するとこんな怪物と化すんすねぇ
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読者に悟空の気持ちを追体験させていく文章
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岸部シローも天国で泣いてるよ
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地獄かな?
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孫悟空ー!がんばえー!
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絶望的にきたないのに引き込まれる文章
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なんで深夜にしか投稿しないのかと思ったら
この文章力を得るために、日中の殆どを寝て過ごさなきゃいけない呪いに掛かってるからなんすねぇ
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こいつ江南省に住んでる詩文やってる奴だよね。一度長興県で会ったけど恐ろしく高齢だった…(呉承恩)
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ブラジルの人なんでしょ
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視力いいと余計に汚いもん見えるの可哀想
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女怪は汚物を両の手で掬い上げます。なにをするかと思えば胸の谷間に落とし込み、涎と母乳を加えながら撹拌し始めるではありませんか。やや硬質で粘着質な水音を奏でながら人語では表現する術なき汚穢が練り上げられていきます。両乳房で十分噛み潰された不浄のものを、今度は顔にぶちまけて丹念に塗り込んでいきます。
さしもの斉天大聖孫悟空もあまりのことに驚きを隠せません。彼自身、かつて釈迦如来を指の根元に小水をかけるなどしたことはありますが、仙術を納めたその身は本来排泄行為を必要としません。また、三蔵一行が今まで相手取った妖魔たちの中にもここまで品のない者はおりませんでした。
やがて、顔を含めた体の前面を汚物で塗り込めた化け物は満足そうな笑みを浮かべます。
「じゃーん❤︎お化粧ばっちりのかわいい妈妈(ママ)だどぉ〜❤︎」
それは九天九地に至るまでの全てに対する侮辱であり、地獄の獄卒であってもこれほど醜悪ではないと断言できる有様です。
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薄く引き延ばされた糞は肌に馴染み、色彩を一際毒々しくすれど醜悪な造形を砂一粒ほども覆い隠しはしていません。毛穴からは時折小さく細い虫が顔を覗かせ、張り付いた陰毛はそよそよと風になびいています。
女怪はまるで上等な白粉を塗り、高値な紅を引いてめかしこんだつもりです。糞まみれの片手を腰に、もう片方を頭の後ろに回して柳のようにくねくねと腰を動かしております。
糞にたかる蠅でさえ触れるをためらうであろう有様に、悟空は歯噛みしました。わしの得物は下肥えをかき混ぜる棒っきれではないのだぞ、と呟いてみます。
それでも素手で殴りつけるのはさらに嫌です。如意棒をぐっと腰だめに構えて女怪の背後へ回ります。一飛び10万8千里のその雲は目の覚めるような速さで翻り、妖魔の汚物雲の動きを置き去りにします。
そのまま背中を1突き、2突き。振り返った女怪の後ろにもう一度回り込みもう一撃。女怪は苦しそうに呻きながら糞の滲んだ乳を眼下に振り撒きます。
降り注いだ乳は木々や地面に吸い込まれ、木の精や土地神を侵します。穢れた乳は純粋な神々にとってはまさに劇毒でした。
ある神は手足だけが胎児のように縮み上がり、ある精はその肌を爛れさせてなお乳を身体中に塗りたくります。そして力の弱い神々はたちまち神性を陵辱され、
「妈妈(ママ)ーッ!」
と口々に叫び出すではありませんか。悟空としては下級神らがどうなろうが知ったことではありません。しかし、恍惚とした顔で悲痛な叫びをあげる土地神たちの姿はとても見ていられるものではありませんでした。これ以上被害が出ないよう、一度撤退しようと考えた瞬間。
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「よう叔父貴」
頭上から声が降ってきたかとおもうと、次に降り注いだのは轟々と燃え盛る大火であります。
炎々烈々、空に盈して燎し
赫々威々、地は遍く紅し
火輪の上下に飛ぶに似て
炭屑が西東に舞うが如し
この火は燧人が木を鑽つものならず
また老子が丹を炮すものならず
天火にあらず
野火にあらず
乃ちこれ妖魔が修煉し成す真の三昧火。
「紅孩児、お前なのか」
あかあかと燃える三昧真火に照らされ、熱波に衣を悠々となびかせているのは紛れもなく悟空の義弟である牛魔王が嫡子、紅孩児ではありませんか。
「今は紅孩児じゃなくて善財童子だって」
頬を膨らませて抗議する紅孩児、もとい善財童子の姿はまさに豊頰の美少年といった佇まいです。ゆったりとした道着が若木のような手足を覆い、長い睫毛とほっそりとした首は女の子のようにも見えます。
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その美しい姿を目にとめて、妖魔は炎上している最中だというのに善財童子に声をかけます。
「ゆ、ゆうすけ❤︎ ぷるぷるぷるぷるぷる❤︎❤︎妈妈だら❤︎❤︎ ママだら❤︎❤︎❤︎今日のおめざはママの抜きたて親知らずだどぉ〜❤︎❤︎ 妈妈(ママ)ミルク入りお紅茶もあるしちんぽも」
それ以上はさらに火勢の増した三昧真火の唸りにかき消され、聞き取れません。ろくでもない誘いをかけているのでしょう。童子も端正な顔を歪め、すこぶる嫌な顔をしています。
女怪が火を消し止めるために乳を振り撒いているのが炎の奥で見えますが、水で消せないのが三昧真火というものです。火力を調節し終えた童子は悟空に向き直ります。
「叔父貴、おれがどうしてここにやってきたのかわかるかい」
「どうせ観音菩薩様が遣わしてくださったとかそんなところだろう」
童子笑って首を横に振ります。
「いや、まあそうなんだがね。いかに観音菩薩様といえどいつも叔父貴たちを見てる訳じゃない。菩薩様のおわす補陀落山に救援を求めにいらしたんだ」
「一体誰がだ」
訝しがる悟空の背後を童子が笑って指し示します。悟空慌てて振り向けば、雲に乗ってこちらへやってくる観音菩薩のお姿。付き従うのは菩薩の一番弟子、恵岸行者。そしてなんとその後ろに猪八戒の姿がありました。
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サッカーWカップの興奮を冷ますのに丁度良かった(小並感)
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ぷにる要素を入れるな
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奇書い…
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これから昼飯なのにどうしてくれるんだよ
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「あ、兄貴、ごめんよ。昨晩妖魔が兄貴さえ出し抜いてお師匠さまを拐っていっちまっただろ。おれ、心配になっちまったんだ。鯉須賀のだんなもいいって言うからさ。守りを白龍馬に任せて補陀落山に飛んでいったんだ」
よほど急いで飛んだと見える八戒の体は汗でびっしょり濡れています。そして豚耳をぺたりと倒して謝る姿に、
「まあ、わしもあの妖怪野郎には手を焼いておったところだ。それに白龍馬が陣を守っているならお前なんぞいなくても大丈夫だろうからな」
悟空も憎まれ口を叩くのみで済ませてしまいました。それを微笑ましく見届けた菩薩は善財童子にこう仰います。
「童子や、真火を消してくれるかな」
童子が仙気を止めて消火いたしますと、驚くことに女怪は生きておりました。褐色の全身を乳でできた乳白色の膜が薄く覆い、ときおり気泡が湧き上がっては弾けます。もぞもぞと手足を動かす姿は大きな芋虫のようでした。
「菩薩様、こいつをどうなさるんです。みどもやそこの善財童子、いつぞやの黒風怪の野郎みたく輪っかを嵌めて出家させるんで」
悟空が問うと菩薩は静かに首を振ります。
「いいえ。この者は連れ帰り、転生させることにいたします。この身はあまりに不浄です。補陀落山へ置いては私のいる場所へ祈りを向ける信者たちに申し訳ありませんから」
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菩薩は続けて女怪の出自について語り始めました。
「この者は元々人間でした。しかし尸解によって登仙を果たし、天界で仙女として暮らしていたのです。彼女は下界に残してきた息子を天界へと連れてくるつもりでしたが、それはついに叶いませんでした。ゆうすけというその息子は寿命を迎え、輪廻の輪に戻りましたがそれを諦められなかったのが彼女です。発狂した彼女は誰彼構わず息子に見立てて世話を焼くようになり、とうとう天帝に無礼を働きました。その咎で地上に堕とされ、行方がわからなくなっていたのですよ」
「だから男を攫ってきて母親の真似事をしていたというわけですか」
化け物の出自を聞いた悟空は彼女の奇矯な振る舞いのわけを理解しました。足元で蠢く生焼け、半煮えの塊が由緒を辿れば仙女とは。妙に頑丈なわけです。納得した悟空は最後の疑問を観音菩薩にぶつけてみました。
「それで、転生させるといっても仙人の寿命は長久ですよね。まさか菩薩様ともあろう方が殺生をするわけにもいきますまい。どう始末をつけるおつもりで」
「彼女の魂魄を分割して数百年かけ少しづつ転生させます。曲がりなりにも丹を練り、神気を蓄えた元仙女の魂です。分かれても1つ1つが魂魄として成立するでしょう」
菩薩はそこで女怪の体に手をかざしました。ふわりとその体が浮き上がります。続けて菩薩は
「分割した魂はを唐の東にある日本国で転生させます。かの国にはゆうすけという名の人間が多いと聞く。もちろんそれ以外の名の者でもいいが、彼女の魂を慰めてくれるはずです」
そこまで言うと菩薩と女怪は高空へすうっと登っていきます。恵岸行者と善財童子もそれに続きました。
「それでは、私たちはこれにて失礼します。悟空、八戒、これからも精進なさいね。三蔵にはくれぐれもよろしくと伝えておくれ」
去っていく菩薩たちを見送りながら八戒がぽつりと呟きます。
「日本って国も災難だな。あんなやつを数百年もばらまかれることになってさ」
悟空は何も言わず、ただ疲れた顔でこくりと頷きました。
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さて、2人が月光寺へ戻ると既に三蔵と人質の僧たちは戻ってきておりました。涙を流してしきりに礼を申し述べる鯉須賀を押しとどめ、三蔵に悟浄はどこか聞きます。
「悟浄なら例の洞へ。亡くなられた方のご遺体を探しにいってくれました」
白龍馬にもう少し皆を守っていてくれと言い置いて2人も悟浄の加勢に向かい、遺体を何往復もして僧院に運び込みます。すべての遺体を回収したときには暮れどきになっていました。
「ああ、ああ……。月光寺小的人会议(月光寺ちっちゃいものクラブ)の皆……。自分より先に逝くなんて、なんすかそれ。なんすかそれ……」
遺体の中にはまだ年端もいかない少年も多くおり、鯉須賀は泣き崩れました。彼の嘆きに感応して、帰ってきた僧侶たちのやつれた顔にも涙の跡が幾筋となく通ります。
赤く燃えながら揺れる夕日を線香の煙が霞みます。一同の慟哭は空に夕闇が滲んでも止むことはなく、星月の冷光の中をどこまでも響いていくのでした。
数日後、盛大な葬儀を見届けた一行は月光寺の一同に見送られ寺を出立いたしました。高い山の間を縫って歩みを進め、小高い丘の上に出ました。遠くに街が見えます。
「よし、今日はあの街まで行って宿を借りよう」
三蔵の言葉に悟空は返事をいたします。
「それは構いませんがね、今度は1人でいるとき怪しいやつに声をかけたりしないでくださいよ」
そう笑うと悟空は跳ねるように先へ進みます。三蔵は手綱を緩めて白龍馬に悟空を追わせ、八戒と悟浄が後へ続きます。
さて、これからなにが起こるか、それはお次の回で。
完。
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反省点、所感
大野忍先生の訳を下敷きに、日本語の文章の練習も兼ねて書きました。元々固い訳文なのでヤジュマ文学との相性は微妙だったかもしれません。
文体を原文から大胆に崩す、汚い描写を序盤から盛れる展開を作る、全体を簡潔にまとめるなど工夫次第でもっと面白いNaNじぇい古典文学が作れると思います。
私にはできなかったので皆様ぜひチャレンジしてみてください。
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観音菩薩様────
許せねぇーーーッ!
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>>52
小野忍先生でした(池沼)
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すごく面白かった(小並)
菩薩様さぁ…
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これって勲章ですよぉ……
海を隔てた島国に化けもん不法投棄した菩薩くんを絶対に許すな
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香取慎吾で実写化しろ
慎吾ママもやってたし一人二役も余裕でしょ
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菩薩お前なにしてくれとんねん
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ただでさえ自然災害も多い島国にさらなる厄災を背をわせる菩薩様の暴挙を許すな
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>>57
ゆうすけ役は草なぎ君の盟友であるユースケ・サンタマリアさんに頼みましょう
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菩薩様は信者に申し訳ないと思う前に日本人に申し訳ないと思え
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優れた文才を菩薩様のネガキャンに使うな
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歴代野獣ママスレTOP5に入る出来だなぁ
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ボサツはゲイのサディスト、はっきりわかんだね
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凄く良かった。更新されるのを楽しみにここ何日か楽しませて貰ったゾ
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野獣ママネタを書いたやつの九族を惨殺しただけでこんな仕打ちを受けなければいけないゆうすけ
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なんでこんな才能をヤジュママで汚染するのか、これがわからない
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ここ何年かで読んだ文章の中で一番引き込まれる内容で楽しく読みました、ありがとうございます
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普段なにを読んでるんですかね…
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普段なにを読んでるんですかね…
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原ゆたか先生の西遊記の本でも白龍馬がいいとこの息子ってことで活躍してたの思い出して懐かしくなりました
この作品が日中の懸け橋になることを願っています 戦争でなく対話と理解を
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>>53
チョッパリ(日本人野郎)をも気遣う世界最高民族の鑑
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これほんとに何かに憑りつかれたようなスレですき
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