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(SS)俺が好きになった相手は男!?
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突っ張ってばっかの人生だった。小学生の頃からケンカに明け暮れた。
親も教師もこちらを不良と罵った。
中学でもそんなんだった俺は、高校でも突っ張ったままなんだろうと無意識に思ってた。
だが違った。俺は「あの子」に巡り合ったのだ!
他校の子だったが、タチの悪いオスに絡まれていたのを助けたのを切っ掛けに、交流が始まった。
「みんなはあなたを怖がってるけど、きっとあなたは見た目と正反対に優しい人だよ。でなきゃ、私を助けてくれなかったもん」
とても、とても可愛い子だった。そして優しく、温かかった。やたら尖っていた自分の人生がバカバカしく思えてくるほどに。
ある日言われた上記の一言を切っ掛けに、俺は告白する決意を決めた。
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なんか始まってる!
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愛の告白だなんて、もちろん俺はやったことがなかったが、それでもできる限り誠実に、大真面目にやろうと思った。
実際俺がやってのけた告白は、誠実で大真面目だった。結果、断られたとしても後悔はない。そんな風に自画自賛できるほどには。
だが俺に返ってきた言葉は、「いいよ」でも「ごめんなさい」でもなかった。
いや、正確には「ごめんなさい」という言葉は含まれた返事だったのだが。
「あの……今まで知らなかったんだね、ごめんなさい。私、男なんだ」
聞こえた言葉を必死に理解しようと、勉強にはまるで使われてこなかった脳みそがフル回転する。
しかし、こちらの理解が追い付かないままに、彼女……いや、「彼」は続ける。
「こういう格好は趣味でやってるの。うちの高校、男子でもスカートの制服を選べるほどの多様性がウリの一つでしょ?」
「だからあなたを勘違いさせちゃったんだね……ごめんね、本当に。てっきり気づいてるのかと思って……」
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半狂乱になった俺は、逃げるように家に帰っていくしかできなかった。
やがて追い付いてきた理解と共に、どす黒い感情が心の根底からグツグツと煮えたぎってくるのを感じた。
あいつは男……あいつはオス……あいつは男……あいつはオス……
よくも、俺が男嫌いなのを知ってて、今まで騙していたな。何が「気づいてるのかと思って」だ。
知っていたならあの日だって助けたりなんかしなかった!
かわいいとか温かいだとか、奴に抱いていた印象はその時、煮えたぎる負の感情に飲まれて消えた。
殺してやる。よくも汚い男が、この俺を騙してやがったな。
数時間前とは正反対の心情の決意に俺は飲まれ、計画を練りだした。
できる限り無残に殺してやるのだ。人気のないところで、奴が一人でいるときに……
翌日から丸一週間かけて、俺は奴を尾行し、奴の隙を探すことに躍起になった。
あの男だけは許さない。その執念が俺を突き動かしていた。
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尾行の結果、部活帰りに奴は滅多に人が通らない道にわざわざ入っていくのが分かった。
おそらく家への近道なのだろうが、それが自分の首を絞めるとは知らなんだろう。
決行日。その日も、奴は相変わらず女物の制服を着ていた。
好きでやっているだと?気持ち悪い!男が女物の服を!吐き気がする!
ナックルダスターを握りしめた俺は、離れたところから一気に駆け寄って距離を詰めんとする。
まずは頭を一発ぶん殴って意識がはっきりしなくなったところを引きずり、あの道の隅の角に……!
奴に駆け寄っていったはずの俺の視界は、グルンと一回転する。
えっ?と思ったのもつかの間、俺は地面に叩きつけられた。
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オリジナルホモSSかな?
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背中に走る激痛。腹から吐き出される息。自分が投げ飛ばされたのだとすぐに気づく。
なんだ?いや、誰が?立とうともがいた時、あの「男」が走り去っていくのが見えた。
視界に入った人間はそれだけではない。自分のすぐ傍に、学ラン型の制服を着こんだ細身の別の男がしゃがみ込んで、こちらの様子を伺っている。
「んだっ……なんだ、お前……!?」
痛みのせいでまともに喋れず、起き上がれず、そんな俺を「細身の男」は、軽蔑の念が籠った瞳で見つめている。
そして、口を開く。
「この前から君が凶器を持って尾行し始めていたのは、あの子にバレバレだったんだよ。だから僕にボディーガードを頼んでいた」
妙に高い感じがする声が耳障りだった。ボディーガードだと?
「君とはいい友人関係だとあの子は思っていたそうだけどね。狙われてるのが分かったあの子は、こんなことになって残念だと言っていたよ」
「ふざけるな!」
ナックルダスターをはめた手を振り回しながら俺は立ち上がる。細身の男はサッと距離を取って、やれやれと言った風に首を振る。
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(徐々に性別がわからなくなってきて)盛り上がって来ました
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「君が男嫌いなのも、時代遅れのスケバンなのも、そしてレズビアンなのも君の趣味や嗜好や、あるいはセクシャリティーといった部分の勝手だ。君の好きにすればいい」
分かったようにベラベラと喋る。何もかもお見通しという風に。
だから男は嫌いだ!!
「何も、何も知らないくせに!俺がたとえ断られたって構わないと思ってたことだって!俺があいつを男だと知った時の絶望だって!生まれてこの方やったことがない『同性への愛の告白』に踏み切ってみりゃあ実は異性でしたと分かったときのショックだって知らないくせに!」
自分が何を叫んでるのか、自分の心情を知ってほしいのか知ってほしくないのか、何もかも分からないまま俺は細身の男に殴りかかった。
簡単にかわされた。細身の男はその場でサッと屈んだのだ。次の瞬間、俺の鳩尾に鈍い衝撃が入った。
「そう。僕は君のことを知っているようで、その実、よくは知らないさ」
細身の男の正拳突きが、綺麗に俺の体に入ったのだろう。意識が薄れていく。自分が膝から崩れ落ちるのが分かる。
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「だがこれだけは言える。君が僕の恋人に手出しするなら、僕は君を許さない」
俺が気絶する刹那に聞こえたのは、そんな言葉だった。
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「彼女が気絶する時の顔を見たよ。疲れ果てた表情だった。もう君には手を出さないだろう」
夜。僕は、僕の大切な人の肩に手を置きながら、慰めるような口調で言う。
お互いベッドの上に腰掛ける形だったが、彼の肩は震えたままだった。
泣いているのだ。なぜ?決まっている。
「でも……でも、私がこんな格好をして、こんな趣味をして、あの子を勘違いさせてさえなければ……」
友人だと思っていた子が、凶行に走ってしまったのは自分の責任だと感じているから。
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レズだ!やった!
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ホモかと思ったらレズだった…
やられたぜ!
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