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【SS】高垣楓「吐く息は白くとも」
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拍手喝采。
そう表現していいだろう。
手前味噌ながら、今回のパフォーマンスは上手くいったと思う。
その感覚が自惚れから来る勘違いではなかったことに胸を撫で下ろしつつ、客席に向かって頭を下げた。
鳴り止まない拍手の音はその大きさを増したようにすら聞こえた。
少しばかりの名残惜しさを抱えながら舞台を後にする。
ふと、ちょうどモニターから顔を上げた相手と目が合った。
「あら。見ていてくださったんですか?」
「———ええ。素晴らしいステージでした」
「ふふ、ありがとうございます」
ライブの興奮冷めやらぬまま舞台袖で言葉を交わす、とても懐かしい感覚。
本当に魔法にかけられて、時間が巻き戻ってしまったかのようだ。
「高垣さんは終盤まで空きでしたね。かなり冷えますから、どうぞ控え室へ」
ひとの感傷にも気が付かずそんな無神経な厚意を申し出る彼に自然と口を尖らせてしまう。
まだもう少しだけ、デビューしたての新人気分を味わっていたかったというのに。
そんな意図は微塵もないと承知しているものの、その頃とは何もかも違うのだと言外に否定されたように感じた。
「…何か、気に障ってしまったでしょうか」
「ええ。そういうところは相変わらずですね、つーん」
擬音を口にしながらわざとらしく顔を逸らす仕草にすら、本気で困り果てたように首に手を当てる、そんな見慣れた姿。
それが視界の端に映ったらどうにも笑みが溢れるのを我慢しきれなかった。
よし、今日は私の負けということで。
拗ねるのはやめにして、一口ばかりの本音を伝えてみよう。
「———それにしても、今日は本当に寒いですね。ちょこっと一杯、熱燗の気分です」
「はい?」
「CPの子たちの門限後で構いませんよ。どうせ明日はオフですし…」
「『プロデューサー』。お付き合い、いただけますか?」
「…ええ。ご相伴にあずかりましょう」
彼は観念したように言って、やっと、あの頃のような優しい微笑みを浮かべてくれたのだった。
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感動した!
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ふーん?
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こういうのでいいんだよ
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自然を感じられるドームでしたね
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優しい世界
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すき
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あぁ^〜
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やっぱり楓さんがナンバーワン!
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