待合室は混み合っている。
お水系のお姉ちゃんからバリバリの営業マン風まで、人種のバラエティに富んでいる。
どういう因果かここに集まった仲間たち、彼ら彼女らを眺めていれば、長い待ち時間も退屈しないだろう。
クリスマス前特有の寂しさが、私とタクヤを邂逅させたのだろう。
けど、ちょっと足りなそうながら一生懸命な彼のトークを聞いてたら、ちょっと愛おしくなった。
口臭も体臭もひどかったけど、キメながらシてると心地よいアクセントにさえ思えた。
噂と同程度に哀れな、それでいて愛おしいゲイの成れの果てが私の眼前に横たわっていた。
未だに誰かのウルトラマンに、誰かのシュワちゃんになれると信じてる。
悪いけど、主人公になる人間って、幼い頃から母親の愛情を一身に受けて育ってるんだよね。
虐待おばさんを引き当てちゃったタクヤは、悲しいけど一生主人公にはなれないんだ。
可愛い人。
今日の彼は私に"当てて"くれるって、本能的に分かってた。
ぼやけた意識の中で、私たちは何度も交わった。
私は、保健所の待合室の席を立った。
ありがとナス！
あのSSはナニ？
貝になりたい(アワビ)
タクヤに｢私｣が愛しさを抱いたのは、彼が悲惨さ以上に一生懸命だったからだろうか、と思いました
ポジ種を孕むことは自身の破滅をも招く行為ですが、だからこそ｢私｣は彼と、苦しみを共有したくなったのではないでしょうか
雨の降る日、待合室もまた、同じ傷を持つ仲間たちで混みあっている。人間の侘しさ、いじらしさ、そしてそこに宿る慈愛が描かれているように思います
きっとタクヤさんにしかできないことだってあったんだと思う
直木賞あげます。