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暴れん坊将軍のSSを書きました
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暴れん坊将軍114 第514話「怪奇、男同士の心中」
暴れん坊将軍!
デデドーン デン デン デン デーン
(♪メロディ)
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江戸の朝は早い。東の空が白む頃には、すでに働き手達は己が生業に励み始めていた。
「人が死んでいるぞ!」
「心中だ!」
その静寂を破る声。その中心にいたのは、川から上がった2人の男の死体だった───。
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田所屋。才能ある職人を数抱え込み、様々な品物を揃えた商家である。
「あら、このかんざし見てご覧よ!」
「うわぁ大胆、すっごいおっきい!」
そんな中、店の一角に区切られた棚。そこには店を訪れた女達の目を特に引くかんざしがあった。
「大きさはねえ、自信があるんですよ!」
後ろから女達に笑いかけた若い男。彼は新進気鋭のかんざし職人、出可杉(でかすぎ)。その奇抜なかんざしは簡単に売れるものではなかったものの、才能の片鱗を感じた田所屋の息子が買い取ったのだ。
「じゃあ、ひとついただけるかい?」
「うお〜っほっほ、ありがとうございますぅ!」
久しぶりに渾身の逸品が売れて喜ぶ出可杉。
田所屋の息子浩二が、男と心中したとの知らせが入るひとときほど前のことであった。
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下界の悲喜交々を見渡す日の本の頂たる江戸城は今、若年寄西田玄蕃(にしだげんば)が男と心中したという一大事に揺れていた。
「上様、検視(検死を担当する同心)によれば西田殿には川の水を飲んだあとがなかったとのこと。やはり何者かの手にかけられたのち、心中を装うために川に投げ込まれたものかと……」
「しかし、若年寄と一商人の心中に江戸の町は混乱しております。事実ではないにせよ身分違い、それも男同士での心中。口さがない者たちに餌を与えてしまったのも……」
「余にとって、政を支える大切な人材であったが……」
徳川家8代将軍、徳川吉宗の前では重鎮たちによる議論が繰り広げられていた。内々の話し合いにおける常は吉宗に御側御用取次の田之倉孫兵衛、そして南町奉行大岡忠相の同伴であるものの──。
「……そちはどう思う?」
この日はさらにもう1人吉宗を仰ぎ見る者がいた。
「執務おかしくなっちゃうよ〜」
元若年寄、市川暮雄(いちかわくらしお)である。寺社奉行や京都所司代を勤めた重鎮であったが、吉宗が断行した御政道の改革により退任後の今は七茶と名乗り茶湯にふけっていた。しかし、急死した西田の後任を決めるまでの間、若年寄の定員を補うために急遽白羽の矢が立ったのだ。
「辣腕を鳴らした市川殿がこれは弱気なことを申される。若年寄の後任が決まるまでとはいえ、空位があれば人心が乱れますからな」
「ああ、余もそちに期待しておるぞ」
「どうしよ……」
緊張した市川が、恥いるようにすっかり薄くなった頭をかいた。本来ならば隠居も当然の身。自らが再び表舞台に返り咲くなどとは思ってもいなかったのだろう。
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「へぇー、これがそのかんざしねぇ……なんかデカすぎてでんでん太鼓みてェだ」
「んもぅお兄ちゃんったら、ものの良さがわかんないんだから!」
活気あふれる江戸の町。その中でも一際明るいのがここ江戸町火消し48組の1つ、め組であった。
「中々いいと思うぞ。細工は荒削りながらも景色がしっかりとしている。まるでそれ自体が小さな盆栽……いや小さな庭ひとつを内に封じ込めているようだ。お葉ちゃんの大きな目によく似合ってるよ」
「やだ新さんったら〜」
「あらいらっしゃい。流石は新さん、見る目があるんじゃないの」
表通りから入ってきたのは吉宗──否、ここでの名は徳田新之助である。吉宗にとってめ組は将軍としての重責をしばし忘れることができる憩いの場であり、また身分を隠して動く時のための拠点でもあった。
「そのかんざし、あの田所屋で買ったのよ」
奥から出てきたのはめ組の頭の妻、おさい。しかし彼女の顔は髪飾りの話をするには妙なかげりが差し込んでいた。
「そう、今日はその田所屋の息子について聞きたくてな……」
「なんだかお偉いお武家様と男同士で心中されたって……」
「江戸にいくら女が少ないからって、まさか男となんてねぇ……」
吉宗は眉を顰めた。やはり耳聡い者たちの間では早くも噂が広がっているのだ。
「まあそう言うな。それに俺はまだただの心中とは決めつけていないぞ」
「新さんがそう言うなら……」
ちなみに、吉宗も男を知らぬわけではない。経済政策の一環として大奥を縮小した吉宗であったが、一方で湯の世話をする湯殿番に見目麗しい美童がいたことは記録にも残っている。
「でもなあ、それにしたってなんで田所屋がお武家様なんかと……」
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「お前よ、とにかくうちではもうかんざしはやらねえからな」
戸惑うかんざし職人、出可杉にそう告げたのは弟を亡くした田所屋の若旦那であった。
「えぇ……」
「お前を推してたのは浩二だからな。売れ筋にもならねえおもちゃは外させてもらうずぇ」
「いや〜いやいやいや、最近は売れるようになってきてて……」
「それにしたって今更おせえんだよ。もっと売れるようになってからまた来るんだな」
田所屋に新たな風を求めていた浩二の死により、彼に目をかけられていた若い才能たちも苦しむこととなった。大店の二枚看板の片方を失った田所屋の経営が守りに入るのも仕方がないことだ。
下を向いて震える出可杉に小袋が投げ渡された。どうやら手切金のつもりらしい。
「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
かんざししか作らない無力な飾り職人に田所屋の方針転換を責める術はない。そして、出可杉が崩れ落ちるところを眺めるものがもうひとりいたことを知る者はいなかった。
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夜も更け、酔い潰れた出可杉はひとりとぼとぼと家に戻るところだった。
「田所屋なんかもう……」
「──めちゃめちゃにしたい?」
つい魔がさしてこぼした愚痴。それを拾い上げたのは──。
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半刻後、出可杉は廃寺で見るからに怪しげな数人の男たちの中に紛れていた。
「あー出可杉くん、ようこそ」
お堂の奥で呑んでいた2人のうち、黒い眼帯の男が馴れ馴れしく笑いかけた。否、態度こそ軽いが彼の全身からは只者ならざる気配が漂っている。
環斎と名乗った男にすっかり気圧されていた出可杉も、なんとか頭を下げた。
「あのね出可杉くん、ちょ〜っとお手伝いしてほしいの。な?」
あくまで気安い雰囲気を崩さずもう一度名前を呼ぶ。裏を返せば、名も身元もすでに筒抜けというわけだろうか。
「田所屋さんにお金をもらおうと思ってて、お手伝いしてくれる人を探してんねん。わかるなこの意味」
「……えぇ」
そういえば聞いたことがある。上方で最近まで暴れていた盗賊団狩井組の頭、黒眼帯の環斎。噂では鮮やかに警備の隙をつくとのことだったが、こうやって内通者に襲う屋敷や店についての情報を吐かせていたのだろうか。
「……少し考えていいですか?」
なんとか言葉を絞り出す。周りに控えていた男たちが急に静かになった。
怪しい雲行きに焦って必死に言い訳を連ねる出可杉だったが、ふと頭を上げると意外にも環斎が機嫌を損ねた様子はなかった。
一瞬環斎が後ろの老いた男を睨むと、再び出可杉に笑いかける。
「わからんでもないねんこの気持ち。まま、ゆっくり考えて」
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──少し後、出可杉は自宅の水瓶で勢いよく顔を洗っていた。とりあえず生きて帰ってくることはできた。しかし今日一日であまりにも多くのことが起きすぎて、すでに精も根もとっくに尽き果ててしまっている。
「ア゛ッ゛、はぁ^〜……」
もう一度水しぶきをあげる。脂汗が止まらないのだ。
出可杉は明日からのことを考え、さらなる苦悶の表情を浮かべた。
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め組に田所屋の情報を集めるよう頼んだ吉宗であったが、その全てを人任せにできる性格ではない。その日も徳田新之助に扮し、田所屋からほど近い場所で調査を進めていた。
「お主、少し良いか?」
「…… あ゛あ゛い゛?お侍さん買いますか?」
かんざしを売り歩く職人が持っていたその特徴的なデカすぎる飾りが吉宗の目に止まる。田所屋にあったとされるかんざしを売る者なら、店のことや殺された息子についても知っているかもしれない。
「いや、田所屋について知りたくてな」
「……御公儀の方で?私、田所屋さんに見捨てられたばかりなんですが、ええ」
違う。数多くの人間を見てきた吉宗にはわかる。
言葉こそ急に聞かれて疑問に思っている者のそれだが、その態度は明らかに後ろ暗いなにかを隠していたのだ。
「俺は徳田新之助、田所屋の息子さんを弔いたいただの貧乏旗本の三男坊だ」
「浩二さんの……?」
てっきり盗賊のことを聞かれると思っていた出可杉から毒気が抜ける。それを見逃さなかった吉宗だったが、ふと傍らに目を向けると、出可杉が持っていたかんざしをひとつ手に取った。
「ああ、俺は息子さんの死は巷で騒がれているほど単純ではないと睨んでいる……うむ、この波の形の細やかさといい、作り手の妥協を許さないという心根にあふれたかんざしだ。田所屋でなくとも、すぐに引き取り手が現れるだろう」
「浩二さんがですか……それは波じゃなく生のこの……水しぶきです」
妥協を許さないどころか、私は世話になった田所屋に押し入ろうとしているのだ。出可杉はつい喉から出かかった言葉を飲み込んだ。
「もう、そこまで言うなら徳田様にも買ってほしいっすよ。110、いえ105文」
「……持ち合わせが」
そそくさと立ち去る吉宗だったが、彼が出可杉に密かに見張りをつけていたことを知る者はいなかった。
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薄暗がりから月が上り始めたころ、出可杉は再び廃寺の前で立ち尽くしていた。
(心根……)
昼間の侍に言われた言葉が脳裏から離れてくれない。生活がかかっているとはいえ、恨みだけではなく恩もある田所屋を裏切っていいのだろうか。
無論、そんなはずはない。しかし───。
「……これはないですね」
やはり盗賊の片棒を担ごうだなんて間違っている。自分はきっと悪い夢でも見ていたのだ。頭を振り、相変わらずうかないがそれでもどこかすっきりとした表情で、出可杉は寺に背を向けた。
「なんだもう来てたのか」
「…… あ゛あ゛い゛」
背を向けたところで賊のひとりと出くわした。
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寺の中の賊は前ほどの人数はいなかった。おそらくここは数ある潜伏場所の一つに過ぎないのだろう。
「で、どう?ちゃんと一緒にやってくれる?」
奥の環斎が震える出可杉に声をかけた。今日は以前にも増して上機嫌かつねちっこい。前回、共に呑んでいた老人が不在のせいだろうか。
「う〜ん……」
「賢く生きようよ……ねぇ……」
ここまできて未だ協力を渋る出可杉だったが、それでも環斎は無理強いはしない。あくまで自分から悪事に加担するという決断、最後の一線を己で越える覚悟を求めているのだ。
出可杉は祈るように手を組み、大きく息をついた。
「ゴメンなさい。やっぱりこれ手伝えません」
「……そっかぁ。悲しいかな」
「これ絶対身に余りそうですよこれもうホントもう難し過ぎですよーホントに」
ペコペコと頭を下げながら立ち去ろうとする出可杉だったが、振り返ると狩井組の者たちと目が合った。
恐る恐る頭を前に戻す。
「じゃあ、浩二くんみたいに死んでもらうね」
環斎がドスを振り下ろそうとしていた。
「──っ!?」
刹那、開け放していた外から飛んできたなにか──正義と書かれた扇子が環斎の手を強く打つ。間をおかずお堂に飛び込んできたのは昼間の侍だった。
「徳田さん!」
「早く逃げなさい!」
混乱する賊たちを殴り飛ばしながら侍が言う。駆け出した出可杉の口を塞ごうと思い思いの得物を手に寺の門まで追いかけた狩井組に、侍──吉宗が刀を抜いて立ち塞がった。
「ヒェーッ!」
「クキキキキ!」
なんとか襲いかかる賊たちだったが、無抵抗な相手を一方的になぶってきた今までとは立場が違いすぎる。数秒と経たぬうちに拳打や峰打ちで打ち据えられ、背中や脇腹を押さえ地べたを這いつくばることになった。
「南町奉行所、大岡越前守である!神聖な場であるはずの寺社を寝ぐらにするなど何事か!」
捕物の備えを済ませた奉行所の者たちが突入したころには、その場にはすでに倒された賊たちしか残っていなかった。
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「そんなことが……」
吉宗に助け出された出可杉が連れられたのは町火消し、め組の辰五郎の元だった。上方へも出張で飛ぶことのある辰五郎は狩井組のような向こうの話題にも明るい。
「ああ。狩井組の大方は縛についたが、首領である環斎には逃げられてしまった。奴らの本当の住処がわかるまでは出可杉を守ってやってくれないか」
「ええ新さん、ここならどこよりも安全だ」
辰五郎が興奮して鼻を広げる。新さん、もとい吉宗の正体を知るのみならず人一倍の正義感を持つのがこのめ組の頭、辰五郎という男なのだ。
「浩二さん……」
出可杉が呟く。環斎の言葉通りなら浩二も田所屋を襲う手伝いをするように脅され、それを拒んで殺されたのだ。
「任せてくれ。浩二の仇は俺がとる──」
ピ~ロピ~ロピ~ロリロ~♪
ピ~ロピロ~ピロロロロ~ロロ~
ピ~ロリ↑~ピ~ロリロ~
ピロロロロ↓ピロロロロ↓ピロロロロ↓ピロロロロ↓ピロロロロ~ロロ~ピ♪
その時、外から聞こえてきたのは行商人の笛の音だった。吉宗がそれに反応して表に出る。そこに立っていたのは飴売りなどではなく、吉宗が擁する御庭番だ。
「狩井組頭、環斎が逃げ込んだ先は──若年寄、市川暮雄が別邸」
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なんだこのSS!?
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「あの浪人ドウシテクレ、どうしてくれるねん……ねえ?」
吉宗から逃げた環斎が、猫撫で声で老人に話す。
老人──市川はうんうんと頷くと、環斎から注がれた酒をあおった。
「予定狂っちゃうよ〜」
上方で拾ってきた狩井組を暴れさせ、世を乱し失った権力を取り戻す。それが環斎に持ちかけられた計画だった。その第一歩が若年寄暗殺と商家の襲撃のはずだった。実権と金を手に入れるはずがどうだ、今後のための活動資金を手に入れる前に狩井組は半壊、計画を見直さざるを得ない。
「全然全然こんな……ここで終わりなはずないから。みんな見とけよ」
「気合入っちょる」
「よし、ほとぼりが覚めたらあの浪人探しにいこうな」
『その必要はない』
突如、外から何者かの声が聞こえてきた。すぐさま障子を開け放った環斎の目に入ったのは、月光に照らされた庭先に佇む件の浪人者の姿だ。
「お前、よくもやってくれたな!どうしてくれんのこれ!」
復讐に燃えた環斎の恫喝にも、彼は懐手のままかけらも怯む様子はない。
「市川暮雄。幕府要職にありながら、盗賊を操り天下を混乱に陥れようとした企み、すでに露見しておるぞ。狩井組環斎。数知れぬ悪行、そして未来ある若者を悪の道に引き込もうとした罪、断じて許すわけにはいかぬ!」
「何者!?」
環斎を無視し、あくまで市川を睨みつける。
「市川、余の顔を見忘れたか」
「余……?」
市川はしばし乱入者の姿を眺めていたものの、数瞬ののちにその顔に恐ろしいまでの驚愕を浮かべた。
「上……様!」
「上様!うせやろ!?」
市川と環斎が慌てて庭に降り、平伏する。他ならぬ天下人、8代将軍吉宗に企えが暴かれてしまったのだ。その企み、もはや全てが詰みである。
「本来なら打首が相応とはいえ、任じた余にも責任はある。いくら腐りきったとて其方も侍。市川、潔く神妙にいたせ」
神妙にする。すなわち将軍直々に切腹を申しつけられた市川は矮躯を震わせることしかできなかった。しかし、大悪党として世を渡ってきた環斎はここで折れるようなタマではない。
「諦めたら助かる機会はもうないねんで?……誰か、すぐ来て!」
半ば呆然とした市川の肩に手を当て、彼の代わりに家中の者たちを呼び出す。その声にただ黙して控えていた侍たちも戸惑いながら吉宗を囲んだ。すわ一大事となれば将軍家に刃向かってでも主人を守らねばならないのだ。
頭を抱えていた市川が表を上げた。5代将軍から支えていたにも関わらず半ば強引に隠居されられ、燃えさしのように燻っていた日々。しかし環斎という手駒を得て、その消えかけていた野望にもう一度新たな薪がくべられたのだ。
「上様ァ……お手向かいいたします」
「斬って!」
その言葉に吉宗が懐から手を出し、太刀を抜く。
「……やむを得ぬか」
刃を返し、ハバキに刻みつけられた三つ葉葵が、月の輝きを反射して煌めいた。
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武家の世界は絶対的な階級社会によって構成されている。頂点にいただく征夷大将軍に刃を向けたとなれば一族郎党に未来はない。とはいえ腐っても代々支えてきた主君を裏切ることもできるはずがなかった。
「ようッ!」
「ヤァーッ!」
ひとり、またひとりと決意を固めた侍たちが将軍に襲いかかる。そんな悪しきしがらみに囚われた男たちの迷いを断つように吉宗は刀を振るった。正面、右、左。どこに立とうがその剣から逃れることはできない。
卑怯を覚悟で後ろから襲いかかろうとした者は振りかぶった姿で静止することになった。吉宗の構えた切先はすでに背中側に向けられているのだ。彼はその瞬間の戸惑いのせいで飛び込んできた御庭番の白刃を避けることができなかった。
戦場の核心は庭から屋敷の廊下へと移りつつあった。殺意が吹き荒れるその中を吉宗が悠々と歩いたかと思えば、一瞬で敵を打ち倒す風と化す。一見して無造作に太刀の切先をだらりと下げた姿、その正体は柳生新陰流、無行の位。長身から繰り出されるどこまでも鮮やかで自由な剣捌きこそ、8代将軍徳川吉宗が修めた天下人の剣である。
「ア"ア"ア"〜!」
剣舞の合間に睨みつけられた市川が声にならない悲鳴を上げた。すでに郎党の多くは地面に倒れ伏し、残った侍たちも斬り込んだ者から色付きの暴風に食われていく。
「ヴォー!」
「ムゥォォォォォォォオオオオン!」
追い詰められ、やぶれかぶれになった環斎と市川がついに吉宗に飛びかかった。しかし、技も心も怒る吉宗に到底届くはずがない。
「成敗!」
打ち据えられたふたりの体が、ついに御庭番の刃に貫かれた。土にまみれたその亡骸をしばし見つめていた吉宗だったが、やがて太刀を納め、世の無常を嘆くようにその視線は天へと投げかけられた。
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市川暮雄の死は病死ということで届けられ、その家督は養子が継いだ。また、稀代の悪党狩井組を捕まえることに貢献した出可杉は田所屋の危機を救い、浩二の名誉を挽回した功労者として讃えられ、正式に田所屋に雇われた。
「爺、爺はどういったかんざしが好きだ?」
「上様、かんざしよりもかんざしをお贈りになるようなお相手を探す方が先なのでは?」
「…………」
この後、吉宗は田所屋を公儀御用達として認め、長く重用したという。
-完-
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なかなかいいSSしてるけど、何かスポーツとかはしてるの?
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玉も竿もでけぇなお前(褒めて伸ばす)
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非常に新鮮で、非常に面白い
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御庭番ハン舞兄貴で草生えた
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いい時代劇だ…
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はえ〜すっごいクオリティ…
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ちょうどオリンピックにマツケンが出るかもって噂がたつ少し前に腰を据えて観る機会があってすっかりハマったのでちょっとマジメくんに書いてみました
20年以上続くだけある奥深さでしたが特におすすめなのはⅢのあたりです
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結構いいシナリオしてるけど、いま何か脚本家とかやってるの?
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NaNじぇいってたまに文豪湧くよな
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サンテレビで流せ
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ここで死ねばTDNは徳田新之助だった…?
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NaNじぇいってたまにTBSの脚本家湧くよな
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そのうち水戸黄門兄貴も出てきそう
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>>1のような文豪がこんな汚い掲示板に来られるはずがない!斬ってしまえい!
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登場人物がクッソ汚いこと以外テレビで流れててもおかしくないとおもった
情景が目に浮かんで見える見える……(文章力)太いぜ
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じっくり読みたいけど早目にレスしとかないとまとめられちゃうから…
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ちょうど浮世絵の展示を見て江戸の河川って護岸がされてないただ掘っただけみたいのも多くて、
ため池のへりみたいになってるから落ちたら上がれなくて死ぬんだろうなと思ったことが活きました
あと病死扱いで家督が移るところそれっぽくてすき
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こいつぁいいSSですぜ旦那!
シリーズ見てた人間ならありありと情景が浮かんできますね
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現場監督と野獣先輩は川に浮かんでるの想像したら草生えた
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映 画 化 決 定
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いいゾ〜これ(ご満悦)
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江戸時代はホモ同士の刃傷沙汰が多かったらしいから仕方ないね
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環斎は元の人物を考えると両目眼帯の可能性が……?
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